衆議院

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第32号 平成27年7月14日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十七年七月十四日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 盛山 正仁君

   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      大塚  拓君    門  博文君

      門山 宏哲君    菅家 一郎君

      今野 智博君    辻  清人君

      冨樫 博之君    藤原  崇君

      古田 圭一君    牧島かれん君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      八木 哲也君    簗  和生君

      山口  壯君    若狭  勝君

      黒岩 宇洋君    階   猛君

      鈴木 貴子君    柚木 道義君

      重徳 和彦君    大口 善徳君

      國重  徹君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  林   徹君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十四日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     八木 哲也君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     牧島かれん君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第二部長林徹君、警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、警察庁刑事局長三浦正充君及び法務省刑事局長林眞琴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 本日は、与野党の筆頭さんたちの努力で会議が開かれるようになったことをつけ加えておきます。

 特に犯罪捜査のための通信傍受の対象事件の範囲の拡大等について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國重徹君。

國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。

 本日は、通信傍受の対象事件の範囲の拡大等について質問させていただきます。基本かつ重要と思われる事項についてできる限り多くの質問をしたいと思っておりますので、簡にして要を得た答弁をよろしくお願いいたします。

 まず、上川法務大臣に伺います。

 今回の改正法案では通信傍受の対象犯罪が拡大されておりますが、それらの対象犯罪はどのような考え方ないし基準のもとに選定されたのか、現行通信傍受法の対象事件の選定と比べてその基準が緩やかになったということはないのか、大臣の答弁を求めます。

上川国務大臣 現行の通信傍受法について、対象犯罪につきましては四罪種に限定されたということでございますが、その当時におきましては、その犯罪が通信傍受に伴う通信の秘密への制約に見合うほど重大なものであるか、また、当時の犯罪情勢を踏まえ、その犯罪が組織的に行われることが現実的に想定されるものであり、かつ、その犯罪の捜査におきまして通信傍受が必要かつ有用な手段と言えるか、犯罪の重大性と通信傍受の現実的必要性、有用性という二つの点を個別の罪ごとに検討し、通信傍受の対象とすることが必要不可欠と考えられる最小限度の範囲に限定することとされたものと承知をしているところでございます。

 今回の改正におきましても、これまでの通信傍受の運用状況、現時点における犯罪情勢、捜査の実情等を踏まえまして、同様の観点、先ほど申し上げたような観点から個別の罪ごとに検討し、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものを追加することとしたものでございます。

國重委員 ありがとうございました。

 今、大臣から、犯罪の重大性と通信傍受の必要性、有用性、この二つの観点から対象犯罪を選定している、こういった旨の答弁がございました。

 そこで、まず、犯罪の重大性、つまり、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化している犯罪なのかどうか、改正法案で拡大された対象犯罪を時間の関係上大きく三つに分類して、それぞれがこの基準を満たすと言える実情にあるのかどうか、順次伺っていきたいと思います。

 最初に、殺傷犯関係の罪、逮捕監禁関係の罪、略取誘拐関係の罪、人身売買関係の罪は、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化していると言える実情にあるのかどうか、その立法事実について法務当局に伺います。

林(眞)政府参考人 近時、暴力団等が、その意に沿わない事業者等に対しまして報復、見せしめ目的で敢行したと見られる現住建造物等放火、殺人、傷害致死、傷害、爆発物使用等の襲撃事件というものが相次いでおりまして、首謀者等の背後関係を含む事案の解明が強く求められているところでございます。

 また、逮捕監禁につきましては、検挙人員総数に占める暴力団構成員の比率が約四八・四%を占める典型的な暴力団犯罪の一つでございます。

 また、略取誘拐については、平成二十五年における認知件数が人身売買と合わせて合計百八十五件と少なくない上に、暴力団組員らによる組織的に行われる事案も多いわけでございます。

 人身売買につきましては、売春等の性的被害を伴うものが大半を占めている上に、ブローカーが介在するなど、組織的に行われることも少なくなく、また、外国人女性が被害者となる事案におきましては、本国で暗躍する人身取引ブローカーも関与して、国際的な組織犯罪としての性格を持つことが珍しくないわけでございます。

 これらの事犯につきましては、生命身体の危険を生じさせ、人身の自由を侵害するなど、一般の国民にとって重大な脅威となっておりまして、首謀者等の背後関係を含む事案の解明が強く求められるところでございます。そこで、本法案におきまして、これらの罪について通信傍受の対象犯罪に追加することとしたものでございます。

國重委員 次に、窃盗、強盗関係の罪、詐欺、恐喝関係の罪は、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化していると言える実情にあるのか、その立法事実について伺います。

林(眞)政府参考人 組織的な窃盗事件につきましては依然として後を絶たない状況にありまして、密入国した外国人が窃盗組織を構成した上で、複数の犯行グループを分散させて、広域にわたりまして被害総額約十億四千四百万円相当の侵入盗を敢行していた事案、こういった事案も発生している上に、こうした事案は、強盗あるいは強盗致死傷罪に容易に発展し得るものでございます。

 また、振り込め詐欺等の特殊詐欺による被害はいまだ増加傾向にございまして、平成二十五年におきましては、認知件数が一万千九百九十八件、被害総額約四百八十九億五千万円と極めて深刻な状況にございます。

 こういった事犯につきましては、誰もが被害を受ける可能性がある上に、犯罪被害額も極めて多額に上るということで、現に一般国民にとって極めて重大な脅威となっておりまして、やはり首謀者等の背後関係を含む事案の解明が強く求められるところでございます。そこで、これらの罪につきましても通信傍受の対象犯罪に追加することとしたものでございます。

國重委員 それでは、児童ポルノ関連犯罪は、現に一般国民にとって重大な脅威となり、社会問題化していると言えるのかどうか、その立法事実について伺います。

林(眞)政府参考人 児童ポルノの不特定多数の者に対する提供等の事犯におきましては、児童ポルノがインターネット上に流出すればその回収は事実上不可能となる上に、被害者の約半数は低年齢の児童でございます。その害悪は深刻なものがございます。

 この種事犯につきましては、近年、検挙件数が増加の一途をたどっている上に、児童ポルノ等の不特定多数の者に対する提供等の罪が適用されるような事案の中には、犯行グループ内における役割が細分化されて、組織的に行われているものが多いのが現状でございます。

 このように、児童ポルノ事犯は社会的に重大な問題となっておりまして、首謀者等の背後関係を含む事実関係の解明が強く求められるところでございまして、本法律案においては、こうした犯罪について通信傍受の対象犯罪に追加することとしたものでございます。

國重委員 冒頭の大臣答弁で、対象犯罪の選定に当たっては、犯罪の重大性とともに、通信傍受の必要性、有用性、この二つの観点から判断する必要があるという答弁でありました。そして、新たに追加される対象犯罪についての犯罪の重大性について、これまで答弁をいただきました。

 そこで、次に、新たに追加される対象犯罪に対処するために、なぜ捜査手法としての通信傍受が必要かつ有用であり、必要不可欠なものと言えるのか、法務当局に伺います。

林(眞)政府参考人 新たに対象犯罪に追加する罪につきまして、組織的に行われる事案におきましては、実行犯、犯行に必要なものの調達役、必要な見張り、逃走車両の運転の役、こういった役割を分担して敢行されまして、他方で、その首謀者は直接犯行に関与しないということも多いわけでございます。

 また、あらかじめ犯人の特定、検挙を困難にする手段というものが講じられて、団体、組織の持つ威力や影響力によりまして報復を恐れて供述をちゅうちょするなど、犯人や被害者、目撃者の関係者から供述を得ることは困難でございます。

 こうした事情から、通信傍受以外の捜査手法によっては、この背後関係を含む事案の解明が極めて困難である場合があることが指摘されております。

 他方、こうした犯罪におきましては、首謀者から実行犯に対する犯行についての指示、また、実行犯の間の相互の連絡、実行犯から首謀者に対する犯行結果の報告、こういったことを携帯電話等の通信手段を用いて行う場合が多く、背後関係を含めて事案の解明を図る上では、こうした犯罪関連通信を傍受して客観的証拠を収集することの必要性、有用性は極めて高いと考えております。

國重委員 今、対象犯罪を拡大する立法事実について伺いました。

 ただ、立法事実があるとしても、通信の秘密、プライバシーを不当に侵害してはならないことは当然でありまして、現行通信傍受法におきましても、傍受令状の発付要件として、さまざま要件が定められております。

 傍受令状の要件等をここでお伺いしたいと思っておりましたが、時間の関係でこの質問を飛ばします。三問程度飛ばします。

 通信事業者等による立ち会いに関して、何点かお伺いしてまいります。

 まず、現行通信傍受法で、傍受の実施の際に通信事業者等の立ち会いが必要とされておりますが、その趣旨、及び立会人が必要とされている役割について伺います。

林(眞)政府参考人 現行通信傍受法におきまして、傍受の実施をするときは、常時立会人を立ち会わせなければならないとされております。その趣旨は、捜査機関以外の第三者を立ち会わせることにより、傍受の実施手続の公正を担保しようというものにございます。

 具体的に、立会人の役割としましては、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないかどうか、許可された期間が守られているかどうか、傍受した通信等について全て録音等の記録がなされているかなどの外形的な事項についてチェックすることのほか、傍受の中断または終了の際に、裁判官に提出される、傍受した通信を記録した記録媒体につきまして、これの改変を防止するための封印を行うこと、こういった役割がございます。こういった役割を果たすことによりまして、通信傍受の実施についてその適正を確保することとなります。

國重委員 通信傍受が適正に行われるために立会人による立ち会いが義務づけられているということですが、通信傍受の際に立会人が必要とされることで通信事業者は現実にどのような負担をこうむっているのか、警察庁に伺います。

三浦政府参考人 傍受実施の際には立ち会いが必要となるわけでありますけれども、通信事業者は、原則として、社員の中から最大三十日間の長期にわたって常時立ち会いを行う者を確保しなければなりません。また、通話があった場合には、スポット傍受の方法により該当性判断を行うとしても、多くの場合、さほど頻繁にはなされない通話に備えて長時間の待機を強いられておりまして、大変効率が悪い状況となっております。

 また、事業者の施設内に捜査機関のための傍受実施場所を確保し、提供しなければならないということで、この期間も一回当たり最大三十日間に及ぶ。そういった面でも、事業者に多くの負担をおかけしているものと認識をしております。

國重委員 では、そのような負担をこうむっている通信事業者が立ち会いをしたことによる対価、場所を提供したことの対価は現実に支払われているのかいないのか、答弁を求めます。

三浦政府参考人 現在のところ、通信事業者に対しまして、施設の提供や立ち会いを行ったことに対する金銭的な補償というものは行っておりません。

 例外的にといいますか、例としては、終電を超えて傍受を実施したために立会人がタクシーでの帰宅を余儀なくされた場合に、タクシーの実費分を支払うといったこともあると承知をしております。

國重委員 現行通信傍受法十二条一項におきまして、通信事業者を立ち会わせることができないときは地方公共団体の職員を立ち会わせなければならないと定められておりますが、通信事業者の立ち会いができず、地方公共団体職員の立ち会いによって傍受を実施した事件数はどの程度あるのか、警察庁に伺います。

三浦政府参考人 法の施行から平成二十六年までの間に警察において通信傍受を実施した九十八の事件のうち二十七の事件におきまして、傍受の実施のうちの一部で通信事業者の立ち会いが得られず、地方公共団体の職員に依頼して立ち会いを得たものと承知をしております。

國重委員 約三割の事件で通信事業者の立ち会いがかなわなかったというような答弁でありました。

 では次に、現行通信傍受法十二条二項で、「立会人は、検察官又は司法警察員に対して、当該傍受の実施に関し意見を述べることができる。」とされております。この法文に基づいて立会人が傍受の実施に関して意見を述べたことはあったのかなかったのか、答弁を求めます。

三浦政府参考人 通信傍受を実施する場合には、その都度必ず立会人から意見書の提出を受けることとしておりますが、平成二十四年から二十六年までの三年間について調べましたところ、立会人が意見を述べた事例はなかったものと承知をしております。

國重委員 わかりました。

 では、傍受令状が発付されたにもかかわらず、立会人を確保することができなかったため、これは通信事業者のみならず地方公共団体の職員も含みますけれども、こういった立会人を確保することができないで、傍受ができずに捜査に支障があった事例は、これまで過去の事例であったのかなかったのか、お伺いいたします。

三浦政府参考人 立会人につきましては、まず、通信事業者に立ち会いを依頼いたしまして、通信事業者から立ち会いを得られない期間や時間帯については、地方公共団体の職員に立ち会いを依頼しているところであります。

 もっとも、立ち会いの打診から傍受の実施までが短期間であったり、立ち会いに適当な人物の日程調整がつかなかったりした場合には、通信事業者だけでなく、地方公共団体の職員からも立会人を得られないことがございました。そうした場合には、捜査機関として実施を予定していた期間に傍受を実施することができず、そういった意味で捜査に支障を生じるということがございます。

 また、事案の内容によっては、深夜にも犯罪関連通信がなされる蓋然性が相当程度認められる場合がありますが、一般に、深夜は立会人の確保が難しく、通信傍受の実施が困難な場合があるという実情がございます。

國重委員 立ち会いによる通信事業者の負担、また、立会人が確保できずに傍受ができなかった、こういったことに鑑みると、傍受手続を合理化する必要性については、私は一定の理解ができないわけではございません。ただし、いろいろな制度を考える際には、必要性とともに許容性も検討しなければならないことは当然のことでございます。

 そこで、現行通信傍受法において立会人が果たしている役割は、改正法案によって新たに導入する、立会人を置かない通信傍受の手続において代替されていると言えるのか、法務当局の答弁を求めます。

林(眞)政府参考人 本法律案により導入します特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続は、通信事業者による立ち会いや記録媒体の封印にかわりまして、暗号技術等の進歩に伴い、これを活用した技術的措置により通信傍受の適正な実施を確保することで、立ち会い及び記録媒体の封印を不要として傍受を行うものでございます。

 この特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきましては、まず、通信事業者が、傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、許可された期間に即しまして特定電子計算機へ伝送することとされております。このことから、これによりまして、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないか、また、許可された期間が守られているかの点の適正は担保されると考えております。

 また、現行通信傍受法において、立会人が、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックし、また、裁判官に提出する記録媒体の封印を行うこととされているのは、傍受が適正に行われたかどうかを事後的に検証できるようにするためのものでございますけれども、この点につきましては、特定電子計算機が傍受した通信の全てと傍受の経過を自動的に、かつ改変ができないように暗号化して記録することによって担保されると考えております。

 したがいまして、立会人がなくても通信傍受の適正を担保できる手当てはなされておると考えております。

國重委員 そうしますと、傍受の適正を担保する特定電子計算機が重要な肝となってまいりますが、改正法案二十三条二項で求められている機能を備えた特定電子計算機が実際に用いられることをどのようにして確保するのか、法務当局に答弁を求めます。

林(眞)政府参考人 本法律案の通信傍受法第二十三条第二項におきましては、立会人を立ち会わせた場合と同様の通信傍受の適正を確保するために用いる機器としまして、特定電子計算機が具備すべき機能を詳細に定めることとしておりまして、傍受をした通信の内容及び傍受の経過を記録媒体に自動的に記録するとともに、当該記録を即時に暗号化してその改変を不可能とする機能などを有するものでなければならない、このように定めているわけでございます。

 そして、この特定電子計算機を用いる通信傍受を実施するに際しましては、このような機能を有しているかどうかについて、傍受令状を請求する段階で裁判官による審査を受けることとなります。したがいまして、捜査官が実際に用いる特定電子計算機が法定の機能を備えていることが確保されることになると考えております。

國重委員 それでは、特定電子計算機を用いる新たな制度のもとで、警察は、傍受の適正を担保するためにどのような技術的措置を検討しているのか、警察庁に伺います。

三浦政府参考人 新しい制度のもとでは、捜査官が傍受または再生した通信は、特定電子計算機により全て自動的に暗号化され、改変不可能な形で記録媒体に記録され、裁判官に提出されることになります。

 この特定電子計算機を用いる新たな傍受手続の実施について、警察では、データの暗号化について十分な暗号強度を持つ政府推奨暗号を用いる、暗号化のための鍵について、データの取り出しや改ざんが技術的に困難な鍵媒体に格納することなどについて検討しておりまして、これらの技術的な措置を講ずることによりまして、現在立会人が果たしている機能を代替し、通信傍受の適正性を確保することが可能であると考えております。

國重委員 では、警察で検討している技術的措置で傍受の適正性を担保できるとなぜ言えるのか、答弁を求めます。

三浦政府参考人 お尋ねの技術的措置は、法制審議会において警察庁が提案し、採択されたものでございまして、この技術的措置によって通信傍受の適正性が担保されることについては、警察においても責任を持って検証を行い、確認をしているところでございます。

 もっとも、今回講じようとする技術的措置は、広範かつ技術の進歩の目覚ましい分野において高度な専門性が求められる事項であることを踏まえまして、当該措置により傍受の適正性が担保されるかどうかということについて、IT技術等に知見を有するデロイトトーマツコンサルティング社に調査研究を委託したところであります。

 そして、先日の御視察の機会に同社からも説明がありましたとおり、当該措置は技術的に実現可能であり、これによる対策を漏れなくとることによりまして、通信傍受の適正性の担保が可能と結論づけられたものと承知をしております。

國重委員 ありがとうございました。

 私は、きょう、広く質問をしまして、またこの質問をもとに各委員から深掘りしていただきたいと思っておりますが、先ほど、通信傍受の要件を飛ばして質問しましたので、戻って質問させていただきたいと思います。

 現行通信傍受法においては、傍受令状の発付要件として、対象犯罪の高度な嫌疑、犯罪関連通信が行われる疑い、通信手段の特定、ほかの捜査手法によるのでは犯人特定等が著しく困難であること、いわゆる補充性の要件が必要とされております。

 そのうちの補充性について、捜査機関として、いかなる場合に補充性を満たすと考え、令状請求してきたのか、実際の運用についてお伺いいたします。

三浦政府参考人 いわゆる補充性の要件とは、通信の傍受以外の他の方法によっては、犯人を特定し、または犯行の状況もしくは内容を明らかにすることが著しく困難であることをいいまして、実務上は、傍受令状の請求の時点までに、事案に応じて可能な限り、取り調べ、捜索、差し押さえ、各種照会等といった通信傍受以外の捜査方法によって捜査を行ってきたものの、犯人を特定等するに至らず、その後も通信の傍受以外の手段によっては犯人の特定等ができず、または著しく困難である場合をいうと解しております。

 警察においては、当該要件を満たすかどうか慎重に検討しまして、傍受令状請求の可否について判断をしているところでございます。

國重委員 令状の発付要件を満たすかどうか、これについては最終的には裁判所が判断するにしても、改正法案におきましては対象犯罪が拡大されているわけですから、捜査機関側でもこれまで以上に補充性をしっかりと吟味して、ほかの捜査手法がしっかりと尽くされたということで、本当に補充性があるという場合に限って令状請求をするという運用を行っていただきたいと思います。

 現行通信傍受法におきましては、傍受令状の発付要件として数人共謀の要件が必要とされておりますが、改正法案では、新たに追加する対象犯罪については一定の組織要件が必要とされております。

 そこで、この一定の組織要件を新たに加えた趣旨、これは数人共謀の要件と何が違うのか、法務当局に伺います。

林(眞)政府参考人 まず、現行通信傍受法の対象犯罪は、薬物犯罪及び銃器犯罪については、犯罪の性質自体から暴力団等の組織が関与していることが多く、また、組織的殺人及び集団密航の罪につきましては、その構成要件自体から組織的な形態で行われる犯罪でございます。

 これに対しまして、新たに追加する対象犯罪については、いずれも組織的に行われることが現実に想定されるものではあるものの、その犯罪の性質ないし構成要件自体からそのことがうかがわれるとは必ずしも言いがたいわけでございます。そこで、新たに追加する対象犯罪につきましては、組織的な犯罪に適切に対処するという通信傍受法の趣旨を全うするために、一定の組織性の要件を加えることとしたものでございます。

 この新たに追加する対象犯罪につきましては、数人の共謀の要件のみならず、組織性の要件をも満たすことを要するものとすることによりまして、例えば、偶発的に発生した複数の者による傷害事件で、相手方に対して共同して暴行を加える意思があったために、数人の共謀の要件というものは満たすものの、役割の分担がなされないままに行われたと認められる場合であるとか、あるいは、役割の分担はなされたものの、それが犯行時に定められたものであった場合には、今回加重された組織性の要件によりまして、通信傍受を実施することができないこととなります。

國重委員 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 おはようございます。黒岩宇洋でございます。

 それでは、引き続きまして、きょうは通信傍受に関しまして、法務大臣そしてまた国家公安委員長、また当局の皆様に質問をさせていただきます。

 今、國重委員からも重要な観点で質問がございました。私も問題意識は同じなんですけれども、あえて、今回、通信傍受の対象が拡大しますといったときに、これは、特に法務省は、法案概要でも、その立案趣旨についてこうやって明記しているわけですよ。振り込め詐欺、そして組織窃盗、さらに加えて暴力団等の犯罪組織による殺傷事犯、この三つを例示して、このような社会問題化している犯罪に対応するため、このように明記しているわけです。

 そこで、この類型化された特に象徴的な三つの犯罪類型について、これは現状どういうような犯罪動向になっているのか。それに対して、捜査現場の最前線にいる警察当局としてどのような対策を今までとってきたのか。やはりこういった現状把握をしっかりして、それからまた議論を深めていきたいと思っていますので、まずは警察当局にお聞きします。

 まずは組織窃盗からお聞きしましょう。

 組織窃盗とこれだけ前面に押し出しましたけれども、この組織窃盗の近年の発生件数の推移と被害額の推移について教えていただけませんでしょうか。

三浦政府参考人 組織窃盗といいますのは法令上の用語ではございませんで、犯罪統計上も組織窃盗という分類はございませんことから、その厳格な定義は行っておりませんけれども、今回の法改正で念頭に置いている犯罪は、複数の者があらかじめ定められた役割分担のもと組織的に敢行する窃盗であるということでございます。

 なお、組織窃盗の例としましては、その犯行態様や盗品の処分の困難性等により組織性が強く推認される自動車盗が挙げられるところであります。その発生状況につきましては、平成二十六年中において約一万六千件、被害総額では年間二百億円超となっているところでございます。

黒岩委員 そうなんですよ。組織窃盗というのは何かすごく社会問題化しているようなイメージで、これは法案概要のしっかりとした二行の中に、その二番目に入れ込まれているわけです、括弧書きで。

 にもかかわらず、実際には、組織窃盗というのは定義がないわけですよね。ですから、データを示せと言ったって示せないわけですよ。ふえているのか減っているのか、被害額がどうなっているのか、実は全くわからない。こんなのが現状ですよ。これが現状なんですよ。これでどうやって国民の皆さんに、通信傍受の拡大の対象になりますと説明できるんですか。局長、ちょっとお答えください。

三浦政府参考人 組織窃盗は法令上の用語ではなく、犯罪統計上も組織窃盗という分類は行っていないものですから、自動車盗以外の組織的な窃盗に関する過去の統計につきまして、確たる数値を申し上げることは困難であります。

 ただ、自動車盗だけではなく、例えば組織的な侵入盗などにつきましてもかなり大きな被害が出ているものでございまして、そういった組織的に敢行される窃盗事案につきまして新しい捜査手法として導入をさせていただきたい、そういう趣旨でございます。

黒岩委員 山谷国家公安委員長にお聞きします。

 今のやりとりをお聞きになって、かなり大きなとか、私、そんな抽象的なことをお聞きするために当局に来てもらったんじゃないんですよ。まさに警察の現状のデータ、これの推移を聞かせてもらう、逆に、もらわなければ国民にも明確に説明できないでしょうという、これはごく自然の問題意識でお聞きした。しかし、答えがこのような内容でしたよね。

 大臣、大臣は政治家ですので、いかがですか、今のような、定義もない、しかも数字もない、かなりとかいう抽象的な言葉でしか説明できない、これで国民に理解が得られると大臣はお考えでしょうか。

山谷国務大臣 刑事局長の方から、現場のさまざまな感覚から御説明を申し上げたところでございますけれども、組織犯罪に対しては、その発生を未然に防止するため、さまざまな取り組みについて全力を挙げていくということは当然のことであります。

 一方で、未然防止のための取り組みを推進しているにもかかわらず、特殊詐欺や組織窃盗、暴力団等による事業者襲撃等事件など、組織的な犯罪の被害がなお深刻な状況にあることも事実でございまして、このように組織犯罪の被害が深刻な状況にあることの背景には、犯罪組織中枢の検挙が困難であるという捜査の実情があるところでありまして、犯罪組織の中枢を切り崩すためには、組織犯罪捜査において刑訴法、通信傍受を活用する必要性が極めて高いと考えております。

黒岩委員 大臣、私があえてここで議論したいのは、深刻という言葉を聞きたいんじゃないんですよ。深刻というものの裏づけが、一体どういう数字があるのか、どういう犯罪動向の推移があるのか、これを確認しようと言っているんですよ。そのことは、大臣、よく御理解いただきたいと思います。

 そこで、先ほど三浦局長がおっしゃった、結局、定義がないから、苦しい中でも、自動車盗、自動車窃盗ですよ、これは組織性が高いと。ですから、今、自動車窃盗一万六千と言いましたけれども、それはあれでしょう、単独犯も入っているんじゃないですか。

 私、聞きましょう。そのうちの共犯によるもの、複数犯によるもの、これに限定して、だって、そうでしょう、自動車窃盗で、今、単独犯まで数字に入れて一万六千もあるなんて、またそういう膨らますような話をしている。話を盛らないでくださいよ。

 もう時間がないので、これは事務当局はわかっていると思いますから、いいですか、私が申し上げた、自動車盗のうち複数犯によるものの、十年前、平成十七年の数字と、そして直近の平成二十六年の数字、この発生件数、何件かだけお答えください。(葉梨副大臣「認知件数では組織性はわからないよ」と呼ぶ)だから、認知件数と言っていないでしょう、発生件数と言っているでしょう。認知件数じゃわからないでしょう。検挙件数でもいいですよ。

奥野委員長 ちょっと待ってください。両方とも、必要なら手を挙げて物をしゃべってください。

 今質問されたことに対して、答えられないと思いますが、どうぞ。(黒岩委員「いやいや、答えられます、数字を持っていますから」と呼ぶ)

 では、三浦刑事局長。

三浦政府参考人 認知の段階ではそれが組織性を持っているかどうかということはわかりませんので、検挙の数で申し上げたいと思いますけれども、平成十七年におけます自動車盗の検挙件数は一万四千八百九十八件でございまして、うち複数犯の割合は五四・七%でございます。(黒岩委員「複数犯の数だけでいいですから」と呼ぶ)複数犯の数でございますか。複数犯の数は、平成十七年におきましては七千七百六十七件でございます。

 直近の平成二十六年におきましては三千六百二十三件でありまして、複数犯の割合は五八・一%ということであります。(黒岩委員「いいんです、いいんです。割合なんかいいんです」と呼ぶ)

奥野委員長 余り憤らないで、落ちついてやってください。

 黒岩君。

黒岩委員 今、お聞きになっておわかりになったでしょう。典型例として一つだけ示した。私は十七年からの数字を全部いただきましたよ。要するに、七千数百件からどんどん減ってきて、二十六年では三千六百二十三件と、この十年、ともすれば過去最低の数まで落ちているんですよ。

 どうですか。組織窃盗と言いながら、定義もないけれども、典型例として出してきた事案が、これが実はどんどんどんどん減ってきて、十年前の半減化され、しかも最低の数字になってきている。これは私、すごい警察の努力だと思っていますよ、局長。どうしてこれだけ減ったんですか。

三浦政府参考人 自動車盗対策としましては、これまでに、関係省庁と民間団体から成る自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチームを設置して、広報啓発活動や、イモビライザーの普及促進、性能向上等の実施でありますとか、盗難自動車の不正な輸出や名義変更等を防止するための関係省庁への盗難車両情報の提供でありますとか、また、盗難自動車の解体や不正輸出のための作業場として自動車盗の温床になっている一部のいわゆるヤードに対する実態解明と取り締まり等の諸対策を推進してきたところでございます。

 そうした対策を講じてきたわけではありますけれども、しかし、なお……(黒岩委員「もう結構です。対策を聞いただけですから」と呼ぶ)

奥野委員長 ちょっと待ってください。(黒岩委員「結構です。では、質問に答えてくださいよ」と呼ぶ)説明しているんだから、ちゃんと聞きなさいよ。

三浦政府参考人 なお、自動車盗につきましては、年間二百億円という被害額を計上しているわけでございまして、看過できない問題であると考えているところであります。

奥野委員長 黒岩君。指名される前にしゃべらないでくださいね。

黒岩委員 局長、もう胸を張ってくださいよ。

 いいですか、官官協力、官民協力で、七千件から三千六百二十三件まで、ここまで頑張っているじゃないですか。私は、警察のこの対策、本当に胸を張っていただきたいですよ。こういった対策で、事案に対して、精密に、しっかりとした、ヤードの把握だとか、そういった対策を私もお聞きして、しかもこれもどんどん先に進めていくとお聞きしていますので、私は、まずそういった警察の現状、皆さんも大体御理解いただいたと思いますし、対策のすばらしさも御理解いただけたと思います。

 では、二点目に行きましょう。

 暴力団等による殺傷事犯について、これも同じ質問です。

 これも、実際の事案の数と死傷者の人数、近年の推移でいいですから、これを端的にお答えいただけますか。三浦局長お願いします。

三浦政府参考人 平成二十二年から平成二十六年における暴力団等によると見られる事業者襲撃等事件の発生件数は、平成二十二年が十五件、平成二十三年が二十九件、平成二十四年が二十一件、平成二十五年が二十三件、平成二十六年が六件となっておりまして、平成二十六年においては発生件数が減少したところでございます。

黒岩委員 二十二年から切ったのは不思議ですけれども、その前も二十何件とかで、大体二十件前後で推移しているんですよね。

 では、お聞きします。

 直近、二十六年、がくっと六件まで減りましたね。これもすばらしいと思いますが、これはどうした原因なんでしょうか、教えてください。

三浦政府参考人 平成二十六年に発生件数が大きく減少した理由に関しましては、同年中、過去に広島県において連続して発生した事業者襲撃等事件を検挙したことに加えまして、事業者襲撃等事件が多発していた福岡県において工藤会に対する集中的な取り締まりを推進していることなどがその発生の抑止につながったものと考えております。

黒岩委員 そうなんですね。平成二十六年に減ったもの以外もお聞きしたかったんですけれども、時間の関係上、聞きません。いろいろな対策をとる中で、今、何とか六件、特にまた九州の北部については、ある意味命がけで警察が対処されている。私は本当に立派なことだと思いますよ。

 このことによって、今言った暴力団等による殺傷事案というのもここまで減ってきた。一年間で何とか六件まで抑え込んできている。この努力を今後も私は継続していっていただきたいと思っております。

 では、三点目、振り込め詐欺。

 この振り込め詐欺は、これは認知件数で聞きましょう。早口でお願いしますね。十年間の認知件数と被害総額の推移について教えてください。既遂でいいですよ。

三浦政府参考人 振り込め詐欺につきましてですが、これは年によってかなり大きな変動があるわけでございますけれども、平成十七年の既遂の件数は一万九千八百四十件でございました。それが徐々に減ってまいりまして、平成二十四年には五千九百二件というところまで下がってきたわけでありますが、ここ最近また急増いたしておりまして、平成二十六年では一万三百九十八件ということになっております。

 また、被害総額は三百七十九億八千万円、前年比プラス四六・八%という大幅な増加を示しているところでございます。

黒岩委員 どうも私がお聞きしたいところが抜けるんですけれども、十年間でいうと、特に平成二十一年に、それまでずっと二万件台だったものが七千件まで落ちていますね。被害総額も約三分の一に落ちましたね。

 平成二十一年、何で認知件数も被害額も前年比約三分の一まで激減させることができたのか、この点ちょっと教えていただけますか。

三浦政府参考人 平成二十年の既遂件数が二万百二十四件であったものが、平成二十一年には七千百五十六件ということになったわけでありますけれども、これは、さまざまな対策、検挙でありますとか、それから、このころはいわゆる還付金等詐欺がかなり横行していた時期でありました。

 還付金詐欺と申しますのは、税金等を還付するといったようなことで、携帯電話を使いまして、被害者を銀行のATMに誘い出しまして、そこで操作をさせて、還付してもらうつもりであったものが実は相手に振り込んでしまう、こういう手口のものでございますけれども、これのATM周辺における対策というのをかなり徹底しまして、かなり人海戦術をとったわけでありますけれども、こうしたことなども奏功いたしまして、一時的には減少したということがございました。

 ただ、振り込め詐欺グループも年々手口を進化させておりまして、新しい手口が次々と出てきております。そういったことで、ここ最近、また急増に至っているという状況であります。

黒岩委員 私があえてお聞きしたのは、そうなんですよ、増加してきても、今言ったように、いろいろな対策、例えば携帯電話不正利用防止法の改正なんかも平成二十年の末に行ったとか、これが大きかったと聞いていますよ。これは、レンタル事業者がレンタルするときに本人確認の義務づけを厳格化したとか、いろいろな対策を行ってきているんですよね。そういうことをお聞きしたかった。

 昨今で最も有力な対策は、警察にお聞きすると、声かけ等ということです。これは、金融機関、郵便局、コンビニなどで声をかけて、未然に防ぎましょうと。これは、平成二十六年でも、実は、一万七百三十一件だったかな、阻止した。額にしても二百九十六億円阻止したとありますよね。これはすごいんですよ。

 この声かけという対策、たくさんある対策の一つですよ。そのうちの一つであるこの声かけ等による近年の阻止件数と阻止額と、そして阻止率、これも簡単に答えてもらえますか。

奥野委員長 三浦刑事局長。

 ただ、国民が後ろにいますからね。ちゃんとした説明をしてもらうことの方が意味があると思いますから、私はとめませんよ。それだけ理解しておいてください。

三浦政府参考人 御質問の声かけ等による金融機関における阻止の件数でございますけれども、平成二十六年の阻止件数は一万七百三十一件となっております。その前年の平成二十五年は六千五百四十件でございましたので、件数がかなり大きく増加をしております。

 また、阻止率につきましては、平成二十六年におきましては四六・三%ということになっておりまして、前年の三六・九%から増加をしているという状況でございます。

黒岩委員 どうもちょっと丁寧な説明に欠けるのは、二十四年まで行くと、二十四年だと阻止件数だと三千件台でしょう。二十六年までのわずか二年間で三倍、一万件。まず、声かけ阻止が三倍ふえているんですよ、二年間で。

 額についても、大体、額は触れなかったですよね。額で言うと、二十四年が九十五億、その次が百九十三億、そして直近がさっき言った二百九十六億ですから、これも二年間でちょっきり三倍の額を未然に防いでいるんですよ。

 さっき阻止率も四六・何%かと言いましたけれども、これも、七年前から見れば、あのころは一二・四%ぐらいでしたから、七年間で阻止率でも四倍になっている。

 どうですか。このペースでいったら、毎年毎年百億ずつ阻止できているんですよ。さっき言った、この十年間で被害額がふえたといっても、現実には、二百七十八億から三百七十九億と百億程度ふえているわけですから、今、声かけの阻止額だけでも毎年百億という、くどいようですけれども、局長、すごい数を阻止しているんですよ。胸を張ってくださいよ。

 今の振り込め詐欺という特出しの一つについても、今申し上げたように、警察の物すごい努力でいろいろな対策が効果を生じてきているということを大きく御理解いただいたと思います。ちょっと時間がかかり過ぎました。

 そこで、では、この対象犯罪の拡大について、法務省当局、刑事局長でいいですけれども、これをやはりお聞きしたいと思います。

 では、先ほどの冒頭の、私が一つ目に聞いた組織窃盗。これは、今言ったように、定義もなければ、その増減についてのデータもない。そして、典型例として示した自動車盗のうち、複数犯によるものは半分まで減少してきている。こういう現状において、通信傍受の拡大、これはさっきからずっと、必要最小限のものだ、こういった抑制的な発言も大臣はされていますけれども、そういう状況で、今、警察の事実が明らかになった。

 そこで、では、通信傍受を拡大しなければいけないまさに立法事実というのはどう説明されるんですか。

林(眞)政府参考人 犯罪を防圧するに当たりましては、一つには、犯罪を予防する、防止する、未然に防ぐという、その措置が必要であろうかと思います。他方で、もう一つは、起きた犯罪について確実に捜査を遂げて的確に処罰をする、こういったことが双方必要であろうかと思います。

 今回、通信傍受法の中で、窃盗関係を対象犯罪に追加することにつきましては、やはりこれについては、窃盗というものが、まず一つには、人の財産を侵害する重大な犯罪である上に、法定刑の上限が懲役十年であって、重いものである。また、強盗致死傷罪、強盗罪と続いても、やはり重大な犯罪である上に、法定刑の上でも重いものである。こういった中で、実際に、この組織的窃盗事件というものが、やはり依然として後を絶たない状況にある。

 例えば、密入国した外国人が、日本国内で不法残留していた同国人から成る窃盗組織を構成した上で、複数の犯行グループを関東以西の西日本一帯に分散させて、三年以上もの間、組織窃盗、侵入盗を敢行していた事案、こういったものについては、被害総額が約十億四千四百万円に上る、こういった事態が実際に発生している。こういったことの事案は、窃盗から、また強盗や強盗致死傷罪にも容易に発展し得るものであると考えます。

 また、こういった形での組織的な犯罪として敢行される事案におきましては、やはり、実行犯、下見役、見張り役、盗品運搬、処分役、こういった役割を分担して、または共同して行われる犯行でございますので、その背後関係、特に、その首謀者というものが直接犯行に関与する、表に出てくるということが非常に少ないわけでございます。

 こういったことでは、やはり通信傍受以外の捜査手法によりましては、背後関係を含む事案の解明、実際に起きたこういった組織的な窃盗犯罪についての背後関係を含む事案の解明というのは極めて困難である場合が多いわけでございます。

 そうしたことから、こういった事案につきましては、犯罪の重大性のみならず、犯罪関連通信を傍受して客観的な証拠を収集することの現実的必要性、有用性が高い、こう考えられますことから、今回、こういった窃盗関係の罪につきましても対象犯罪に追加することとしたものでございます。

黒岩委員 局長、犯罪が続発するのは当たり前じゃないですか。どれも続発していますよ、どの犯罪だって。そんなことが理由だったら、全てが通信傍受の対象になるわけでしょう。

 今、組織窃盗というもので、具体的に数字の出せるものということで、警察が、これがもう確固たる典型例だというものを示してもらった。そして、今言ったように、いろいろな対策によって未然に防いだり、その後にしっかり検挙につなげたりしているわけですよね。

 その状況が明らかになったときに、今回の立案趣旨として、法務省が出したんですよ、組織窃盗という言葉をわざわざ使ったんですよ。法的には定義もない言葉を使って、そして社会問題化しているという、国民が聞くと何となくうなずきそうな言葉を出してきたけれども、今の数字や現状を聞いて、社会問題化しているかどうか、深刻かどうかとか、そんなことをどうやって推しはかることができるんですか。

 組織窃盗を何とかして立件し検挙するために窃盗罪を加えたというよりは、窃盗罪を通信傍受に加えたいがために、組織窃盗なんという言葉を持ってきて、社会問題化という言葉で網をかぶせて、そして正当化しようとしているとしか、今の説明を聞いても、多くの国民はそういう理解しかできないんですよ。

 大臣、この議論を聞いていかが思いますか、組織窃盗。

上川国務大臣 今、御質問の中から、件数ベースとか被害総額ベース、いろいろなトレンドも含めて御説明をしたわけでございますが、そうした組織的な犯罪によって、その犯罪そのものが大変深刻になっているということにつきましては、国民の皆さんの被害の実態、そしてその問題の深刻性ということからしても、大変大きな課題であるというふうに思います。

 事件の推移はもちろんのこと、そうしたものを十分に検証していかなければいけないということではございますが、グローバルな社会になりながら、また組織というものの範囲も、今までと違ったタイプのものも出てきているというようなことを鑑みてみますと、やはり新しい捜査手法につきましては、これは今回お願いをしているわけでございますけれども、そうした御議論の上で、こうした犯罪を絞って、組織性のあるところの要件をきちっと絞って対応していくということについては、私は一定の合理性があるというふうに考えているところでございます。

黒岩委員 大臣、グローバルとかそんな言葉で、今回、十六年ぶりに対象犯罪を拡大する、これを国民に納得していただく説明責任が大臣にはおありなんでしょう。そうですよね。ですから、今は、一個一個積み上げで警察に状況を聞いた。でも、現実には、組織窃盗という言葉を法務省は使ったけれども、実際はそんなものは定義もない、データのとりようもない。こういったことを今議論しているんですよ。

 暴力団等による殺傷事犯も、今言った警察のさまざまな対策、努力、別に通信傍受を使っていない。だけれども、昨年は六件にまで減らすことができた。本当にそれは御尽力、御努力だと思いますよ。その数字、その対策、さまざまな御労苦、こういったことをこれからも継続していくと言っていますよ、警察は。さらに新たな対策もとっていくという話もされていました。通信傍受ではありませんよ。

 そんな中で、暴力団等による殺傷事犯というものを通信傍受の拡大対象にする必要性、立法事実、大臣、端的にお答えいただけますか。(葉梨副大臣「よろしいですか、補足します」と呼ぶ)いやいや、大臣ですよ。

奥野委員長 先に大臣、それを後で補足してください。大臣から答えてください。

上川国務大臣 今御説明をさせていただいたところでございますけれども、やはり組織的犯罪においては、その首魁、首謀者の関与についての全容の解明をした上で根本的なところで問題の事案を解明していく必要がある、そういう認識につきましては、法制審議会におきましても、その後の分科会におきましても、問題を共有していただきながら、そして、組織的な要件ということを付して対象犯罪について絞った、そういうこの間の経緯であったというふうに思っております。

 もとより、犯罪をどのような形で取り締まり、またそうした事案が起こらないようにしていくかというのは、いろいろな手法を駆使しながらやっていくべきことであるということで考えますと、先ほど御指摘いただきましたとおり、さまざまな方法で、しかも、ことしは六件かもしれないけれども、来年はそうではないかもしれないという、非常に変動があるというところも事実であります。そして、問題もどんどん進化している、あるいは複雑化している、そして深刻化しているということについても、これも事実である。先ほど局長から、具体的な、十億の損害があったということの部分の……(黒岩委員「一事例でしょう」と呼ぶ)一事例ではございますが、そうしたことが起きないとも限らないという中で、そういう中での手法としては、今申し上げたような、さまざまな手法、対策を講じるものの、通信傍受という新しい手法によってこの根絶を図っていくというのは、これはあってしかるべきことではないかというふうに思います。

奥野委員長 葉梨副大臣は警察の経験が非常に長いですから、ちょっと国民に理解してもらうためには、警察の……(黒岩委員「いいです。もう最高責任者が答えたからいいですよ」と呼ぶ)ちょっと待ってくれ。そういうふうに言っているんだから、葉梨君に端的に少し。(黒岩委員「いやいや、法務省の方ですから。警察の方じゃないですから。要求していないですよ」と呼ぶ)

葉梨副大臣 委員長の仕切りですので、お答えをさせていただきます。(発言する者あり)

奥野委員長 私が国民のために葉梨君に説明していただいた方がいいと。(発言する者あり)

葉梨副大臣 委員長の議事整理権がございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 先ほど刑事局長が、首謀者が検挙しづらくなっているというようなことをしっかりと答えております。

 そして、まず窃盗ですが、この間、損害保険協会の方が私のところにも御相談に来ました。そういう中で、実際に、発生と認知は一緒ですけれども、認知の段階で、組織的と思われるような自動車盗というのは非常に多い、例えばイモビライザーの改善とか、ほかの方法も含めて何とかやっていただけないか、そういうようなことで、実態として非常に多くなっていることも間違いありません。

 ただ、検挙ということになりますと、首謀者を、突き上げ捜査を行うというのは極めて難しいわけです。ですから、最終的な段階においては、やはり首謀者をしっかり検挙して根絶をしていくということが極めて大切。

 さらに、振り込め詐欺の問題につきましても、平成二十年当時、私も、例えばプリペイド携帯の本人確認ですとか、あるいは、階先生とも一緒にやりましたが、振り込め詐欺の被害者救済法、いろいろな法制をさせていただきました。それで、いろいろな広報をやっても、それでも減らないんです。(発言する者あり)

奥野委員長 そろそろ終わってください。

葉梨副大臣 そして、減らなくて、実際、声かけをしても、本当の首謀者というのが捕まらないで、出し子とか、そういう方だけの、本当にそういう検挙だけでとまってしまっている。

奥野委員長 もうそろそろ、葉梨さん。(黒岩委員「議事整理権に従ってくださいよ」と呼ぶ)

葉梨副大臣 そこではなかなか根絶ができないだろうということです。

奥野委員長 葉梨さん、もう大体わかりましたから。

葉梨副大臣 委員長の仕切りですので、これで中断させていただきます。

奥野委員長 私も言っているんだけれども、私自身も自動車屋だから全部わかっていますよ。今、彼の言っていることは結構正しいですよ。

 黒岩君。

黒岩委員 いや、違います。

 損保協会の事例なんかをまた出しましたけれども、そういういいかげんなことを言わないでください。さっき刑事局長が言ったように、自動車窃盗のうち複数犯の率は五、六〇%台で全く変わっていないんですよ。そういう間違ったことを言わないでくださいよ、国民をミスリードするような。いいですか、組織化が進んでいると言うけれども、複数犯の率は上がっていないんですよ、この七年間。

奥野委員長 余り興奮しないで、落ちついて。

黒岩委員 だから、結局、そういう一事例を挙げてミスリードするようなことをしてくださるなと。

奥野委員長 だから、事実関係が違うのなら、事実関係を法務当局に聞くなり、刑事局長にもう一度確認していただいてもいいです。

黒岩委員 刑事局長もさっき頑張って答えようとしていたじゃないですか。(発言する者あり)

奥野委員長 いずれにしても、質問はきっちりしてもらって、質問に対する答弁は、事実関係については事務当局からきちっとした説明をしてもらって、政治家の判断というのは大臣が基本的に答弁しますから。そういう論理で進めさせてください。

 黒岩君。

黒岩委員 さっき三浦刑事局長も、自動車盗に占める複数犯の割合、そこまでちゃんと数字を説明していたじゃないですか。だから、それをもとに、私もきちんとした事実関係をもとに質問している。それが、途中から手を挙げてきて、何か個別の事例だ、こういう議論をしたくないから。私は、精緻な法務委員会の質疑をしたい。その趣旨を委員長に御理解いただいて、これを先に進めていただければと、私も強くお願いします。

奥野委員長 事務方の説明の中に、暴力団の話、暴力団というのかな、ロシアの話が余り入っていなかったんですよ、僕がさっき聞いていて。だから、それで、もうちょっと……

黒岩委員 いいです、いいです。もう時間がないので先に進みます。

 振り込め詐欺に関しても、今申し上げたとおり、そうはいったって、七年前に比べれば、二万件から、今、一万件まで、認知件数は既遂で減っているわけですよ。その都度さまざまな努力をしてきている。これは、凍結口座のリストを銀行業界に公表したりとか、そして被害金送付先のリストを郵便局が宅配業者にきちんと提供し、なおかつ、提供するだけでなく、しっかりと、その被害金送付先にはもうお金を送らないでくださいねとか、一個一個積み上げているじゃないですか、警察が。

 何か今、局長が首を振っているけれども、やっていないということですか。

奥野委員長 いや、ジェスチャーだけではなくて、答弁させなきゃ。

黒岩委員 わかりました。

 だから、私は、今言った、現状許されている捜査手法でここまで警察が努力し、効果を上げているということを、逆に胸を張って言っていただきたい、こう言ってきたわけですよ。私は、すごくその功績を認める立場で話をしているわけですよ。

 さはさりながら、では、振り込め詐欺、確かにこれは、まさに政治の感覚で言ったら、数字以上に国民には不安を抱かせている事案である。地元でもこれはすぐ話題になります。いろいろな方と話しても話題になりますね。

 そうすると、やはり対象犯罪というのは極力必要最小限度にすべしというのは、これがもともとの法制定時の趣旨だったわけですから、そう考えますと、これは一つの提案というか考え方ですけれども、さっきの三つの類型のうち振り込め詐欺だけに絞ると、これは、詐欺罪、電子計算機使用詐欺罪、恐喝罪、基本的にはこの三つに絞られるんですね。そうなると、直近の犯罪白書の、一年間の刑法犯の認知件数百二十一万件のうち、これが多いか少ないかはなかなか議論ですけれども、三・八%まで絞り込める。しかし、先ほどの窃盗を入れると、窃盗は七三・数%ですから、四分の三を占めちゃう。これだけ広がっちゃうんですよ。さっき言った組織窃盗、そして暴力団等による殺傷事案を入れると、傷害も入っちゃうし、もちろん殺人も入る。

 ですから、振り込め詐欺だけに絞れば、今言った三・八%まで絞り込むことができる。こういうような考え方について、大臣、どのようにお考えになるか、そしてどのように国民にこのような提案についての説明をなされるか、お答えいただけませんか。

上川国務大臣 今の御質問、あるいはお考えということでございますけれども、組織的な犯罪、またそれが進化しながら絶えず新しい事案が出てきているということ、そして、先ほどグローバルということに、そんな一般論を言うべきではないと言われましたけれども、自動車のことにつきましても、大変大きなスケールで行われるようになっている。

 そういう、今、量というか件数ベースの話と、その中の質ということについては、私は、事例としてはそれは一件というふうになろうかと思いますけれども、そこのところをよくよく吟味した上で、そして、そうしたことに対しての、解明する期間、あるいは解明に至るまでのさまざまな取り組み、こういったことを総合的に勘案したとしても、こうした新しい手法によって首謀者、首魁者に真っ正面から切り込んでいくということは、さらに犯罪防止に非常につながっていく、こういう趣旨で、今回、組織性というところに着目した形で、問題の解明に、新しい通信手段という形で適用をお願いしているというふうに理解をしているところでございます。

 今委員の方から御質問になった部分が、件数ベースで非常に下がっているからそれでよしとするというように少し聞こえてしまうわけでありますが、同時に、質ということにつきましても大変重要な要素ではないかというふうに思うところでございます。

黒岩委員 件数だけに絞ってなんて言っているんじゃないんですよ。

 大臣、もともと平成十一年にこの法律が制定されたとき、与党修正で大幅に対象犯罪が削減されました。そのときの質疑を私はしっかりと読んで、まさにここにいらっしゃる漆原良夫委員の質問等に与党がしっかりと答えている。その中には、もともとの政府原案では、およそ全て、大体の犯罪を対象にしたいとなっているけれども、憲法が保障している通信の秘密を制約するおそれがあるから必要最小限にする、その趣旨だと。

 だから、私は、この法制定時、そして与党のこの修正趣旨、ここを踏まえていただきたいと言っているのであって、一つの例として、一つ一つ事実、データを今私は吟味したということなんですよ。だから、そのもともとの法に臨む姿勢というものを、大臣、それを示していただきたい。

 私はこの点についてもっともっと詰めて聞きたかったけれども、これをやり出すと時間がないから、今言った与党修正で、サリンの散布だとか内乱罪だとかハイジャックだとか汽車転覆だとか旅客自動車転覆だとか、テロ関連事案も社会問題化しているけれども、でも、今言った謙抑性によって原案から落としたわけですよ。それが、今回なぜか、社会問題化しているという言葉で、しかも今、一個一個吟味したら、どこまで社会問題化しているか深刻かも曖昧な、あやふやなデータが出てきている。

 そんな中で、大事なことは、社会問題化しているか以上に、平成十一年当時は、やはり憲法の制約もあるから必要最小限に抑え込もう、抑え込もうというこの思いによって、そのとき国民にとっても大変不安であった犯罪であっても、これは謙抑的であるべきだという姿勢からスタートしているんですよ。

 これが、十六年たって全く方向性が変わるとは私は思っていませんし、あってはならないと思っていますし、この視点で、対象犯罪についてはこれだけこだわらなきゃいけない。その中でも、振り込め詐欺についてはどうですかという提案をしても、それについて真正面から答えるわけでもない。

 だから、このような姿勢だったら、対象犯罪なんて、さっき申し上げた十六年前のまさに政府原案どおり、これは与党の答弁者が答えているんですよ、もともとの原案は、およそ全て、大体の犯罪を入れようとしたけれどもそうはさせなかったと。まさにこの政治家としての判断というものを今回の改正にもしっかりと生かしていただきたい。これはもう大臣への要請にとどめておきます。このぐらい重要な意識と感覚を持って十六年前議論した、それを私たちは今引き継がせていただいているわけですよ。これをどうか大臣として強く認識していただきたいと思います。

 それでは、時間がまたなくなってきたので、対象の拡大について今お話ししましたけれども、では、要件についてお聞きしましょう。

 今回、加重要件で一定の組織要件が加わるということであります。まず、現行の要件について、これは当局、林局長の方に聞きますけれども、補充性の要件、これは今回変わりませんから、今回、現行の数人共謀に一定の組織要件が加わるわけですけれども、では、お聞きします。数人共謀、「数人の共謀によるもの」という文言ですけれども、これを、さらに厳密にこの数人共謀の定義を教えていただけますか。

林(眞)政府参考人 まず、数人ということですので、数人の間における共謀、具体的な犯罪について共同して実行する意思、これを通じ合うことが共謀の要件であると考えております。

黒岩委員 平たく言うと、単独ではないというだけのことですよ。

 局長、もともとの十一年法制定時に、非常に謙抑的なものにする、対象犯罪がある程度あるならば、では、そこには要件をかぶせて絞っていこうという意味での要件がかぶせられました。その要件として、単独犯ではありませんよという緩やかなものが、私は、よく縛りとしてかかっているなと。私はちょっと不合理に思ったんですけれども、その点についてちょっとお答えいただけませんか。

林(眞)政府参考人 現行の通信傍受法の考え方で、憲法の通信の秘密を制約する重大な手続であるので、極めて厳格な要件を必要とする。その中での、一つ、数人の共謀という要件がございまして、もとよりこれだけでの厳格性ではなく、当然、補充性の要件等々さまざまなほかにある要件と相まって厳格に要件を定めるというところが立案されたものと考えております。

黒岩委員 何で私、こんなことを確認したかというと、局長答弁としてはそういうような答弁になるんでしょうけれども、単独でないもの、共犯ですと、これだけで、二つのうちの一つの要件として、これはちょっと緩やか過ぎますよねという議論をしたときに、事務方の方は、補充性の要件がきっちりかかっているから大丈夫なんですと。

 だったら、今回、補充性の要件は変わらないわけですよ。数人共謀に加重要件が加わる、そう考えると、補充性の要件で大丈夫なんだと言っている数人共謀に上乗せしたって、効果としてはほとんど変わらないんじゃないのか、それが私の問題意識なんですね。言っている意味はわかりますよね。補充性が大事なんだ、数人共謀自体は要件としてはそんなに厳格なものじゃないんだと。だったら、そんなものに加重要件をかけても何も変わらないんじゃないのかという問題意識なんです。

 そこで、お聞きします。

 さっきの局長の答弁の中にもありましたけれども、では、この数人共謀、法改正では、一定の組織要件、すなわち、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体」云々かんぬん、まあ、役割分担が入っているということですよ、先ほどの答弁にもありましたけれども。

 では、今は別に一定の組織要件はかかっていませんから、現時点で、数人共謀なるもので役割分担のない事犯というのはどういうものを想定しているんですか。

林(眞)政府参考人 質問の趣旨をちょっとよく理解できていないんですけれども……

奥野委員長 では、もう一回説明してもらいます。

 黒岩君。

黒岩委員 数人共謀という要件がかかっていますけれども、その中で、役割分担がないような数人共謀というのは一体どういうような事例をイメージしているんですかという質問なんです。お答えください。

林(眞)政府参考人 まず、数人共謀ということでも、現場共謀というものがございます。偶発的に発生した複数の者による傷害事件のような場合、こういった場合に、共同して犯行を実行しようとする意思があったとしましても、相互の間で役割分担というものが定められていない事案、こういったものは、数人共謀が認められる場合であっても存在し得ると考えております。

黒岩委員 そこで、お聞きします。

 先ほど、偶発的な事案というような表現もありました。では、その現場共謀なるものに対して通信傍受が行われることはあるんですか。

林(眞)政府参考人 もとより、現行通信傍受法においては対象犯罪の限定がございます。その対象犯罪に当たらない場合には、通信傍受というのは行うことができません。

黒岩委員 局長、何度でも丁寧に聞きますよ。

 局長がおっしゃった、役割分担のない数人共謀というものがあると。それはどんなものですかと言ったら、現場共謀ですと。これが、今の説明だと、通信傍受の対象になっているわけですよね。

 実際に、今おっしゃった現場共謀なるものが通信傍受されること、されたことと言ってもいいですし、されることというのはあるんですか。

林(眞)政府参考人 先ほど申し上げたように、対象犯罪において、現行の通信傍受法においては四罪種に限定されております。それぞれが、犯罪の性質上、組織的に行われるものでありますとか、あるいは犯罪構成要件自体から組織性が求められているもの、こういったものが現行の通信傍受法の対象犯罪となっておりますので、数人の共謀という観点だけで通信傍受が行われるという要件をクリアするわけではございません。

黒岩委員 わかりづらく答えていますけれども、現場共謀なんというものが、罪種が何であろうと、こんなものが通信傍受されるわけがないですよ。

 だって、今回、私たちも視察に行って、フローチャートを見せてもらいましたよ。通信傍受するかというのは、事前に警察が通信事業者と相談を始めて、一定の目安として、立会人を確保するまでに一カ月ぐらいかかるわけですよ。これは実際は三週間かもしれない、五週間かもしれない。でも、一カ月がめどだというときに、現場共謀を事前に把握して、相談して通信傍受するなんということは、論理的にあり得ないと言っているわけです。

 現実には、今言った、罪種によっては組織性が構成要件の中に入っている。となると、皆さん、私が何を聞きたいかもうおわかりだと思いますが、今回、数人共謀に加重要件として役割分担というものを入れた、厳格化したと言いながら、現行の実際の要件と、今回の組織要件を加えたと言っている要件は、実際の運用上、効果においてはほとんど変わりはないんじゃないんですか、このことを聞きたいんですよ。いかがですか。

林(眞)政府参考人 今回、数人の共謀という要件に加えまして、一定の組織性の要件を加えたことにつきましては、これは、現行の対象犯罪というもの自体には、先ほど申し上げましたように四罪種ございますけれども、犯罪の性質上、組織性があるもの、あるいは構成要件自体から組織性を持つもの、こういったものに限られております。

 他方で、今回、対象犯罪を拡大いたします。拡大するときに、先ほど来問題になっております窃盗でありますとか詐欺とか、必ずしもそのもの自体では組織的に行われるものとは限らない対象事件に拡大するわけでございますので、その際にはやはり、今回、対象犯罪を拡大するに当たりまして、現行の数人共謀の要件のみならず、加重された一定の組織性の要件というものを今回課すこととしたわけでございます。

 当然、これによりまして、拡大される犯罪の中で組織性を要求されるものについてだけが対象犯罪となるということに限定される、極めて大きな効果があると考えております。

黒岩委員 局長、そこは違うんですよ。

 いいですか、局長。では、傷害にしましょう。今回、ふえるかもしれない。改正案が通ったとして、ふえました。そのときに、では、現場共謀だったら、それだけじゃ要件が甘い、組織性をかけましたと言うけれども、仮に今言った一定の組織要件をかけなくたって、現場共謀なんてものはもともと、傷害だって、これは事務方とも議論しましたよ、偶然誰かと会ったときに、複数の人間がいきなりそこに対して傷害を犯した、そんな場合に、もともと数人共謀のままの要件であったって、こんな事案に対して今言った通信傍受なんかできるわけがないわけですよ。

 だから、もともとできっこないものに対して、今度新しく組織要件をかけましたといっても、効果としては何にも違いがないわけですよ、未来において。現行においてもそうだけれども、今後、改正案が通ったとしても、未来においてだって、今言った、傷害をふやしました、厳格化しましたと言ったって、しなくたって、数人共謀、現場共謀で通信傍受なんかできっこないわけですよ。そうでしょう。

 だから、厳格化した、厳格化したと言っていますけれども、これは、悪いけれども、一つのお題目、方便であって、そのことによって、対象犯罪が広がったことに対して、そして冒頭言った、平成十一年当時の必要最小限に絞っていくという謙抑性が、この改正の要件厳格化において、では、この目的、趣旨が果たされていますかといったときに、どう考えても果たされていないんじゃないですかということなんですよ。(大塚大臣政務官「すごい独自解釈だ」と呼ぶ)

 また何か不規則ひとり言が出ているんですけれども、政務三役が何かしゃべるなんて、私らの与党では考えられなかったけれどもなあ。

 では、質問しますよ。

 今言ったように、厳格化と言っていますけれども、この厳格化自体が、もともとのこの法律の制定時、そして、くどいようですけれども、与党修正のときの趣旨である、必要最小限に抑制していく、謙抑化していくための厳格化として、大臣、本当にこれを国民にわかるように、今、幾つかの事例も出しましたけれども、厳格化なんですよと大臣の方から説明していただけますでしょうか。

上川国務大臣 現行の通信傍受法の審議の過程におきましても、先ほど委員がおっしゃった、必要最小限にとどめるということでありますが、その議論の中でも、組織的な犯罪に絞った形で、四類型という形で限定するということになったわけであります。

 もともと初めて取り組む通信傍受ということもありましたし、また、その後十六年たちまして、さまざまな運用実績その他を勘案しながら、最新の事例ということも含めまして、そして、対象につきましては、とりわけ、先ほど局長から答弁をしたとおり罪種としては拡大するわけでありますけれども、そこはあくまで、通信傍受法は、組織的な犯罪に特化した形と目的規定になっている、そしてその要件についても明確にしていくということが必要である、こういう中で加重要件というものが付加されたというふうに考えているところでございます。

 もとより通信傍受につきましては、憲法に照らして、やはりそこについては極めて謙抑的にしていかなければいけないという理念は十分に踏まえた上で、今回の拡大及びその組織的な要件については、厳しく要件をさらに加重に課すということを提案させていただいているというふうに理解しております。

黒岩委員 時間がないので、今の議論の中で、何せ条文にすれば二十二条から二十三条にもなる犯罪が拡大されるわけですから、それに見合うだけの厳格化の要件が必要だという中で、とてもとても厳格化と言えるまでは行っていませんねという問題意識を提示しました。

 そして、これはもう提案ですけれども、それだったら、組織犯罪処罰法という法律がありますね。これは確かに実体法ですけれども、ただ、ここの二条の一項に組織の定義があるわけですよ。実際に、今回の組織要件だって、この定義をある程度用いる。ただ、ここには、冒頭に指揮命令という言葉が入っていますし、そして、結合体の前に「構成員が一体として」という言葉が入ってくる。

 ただ、私は、このぐらい厳格化して、今回の改正刑事訴訟法の通信傍受に関しては、組織犯罪処罰法の定義を要件化するぐらいの厳格化を図っていただきたい。そして、もとに戻りますけれども、対象犯罪についてはさらなる限定化を図っていただきたい。このことは強く強くお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 暑くなってまいりましたが、この法務委員会の議論も外に負けず劣らずの暑さになるよう、私も頑張って努めてまいります。

 それでは、今、黒岩議員の、そしてまたトップバッターであった國重委員の質疑などを伺いながら、改めて私も、基本といいますか基礎から、まさに先ほど来から委員長もおっしゃっているように、私どもの後ろにいらっしゃる国民の皆様にわかるように、そんな議論のためにも、そういった点から質問を始めさせていただきたい、このように思います。

 特に今回の質疑時間は、刑事訴訟法等一部改正案の中でも、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律の一部改正ということであります。改正というからには、もちろん現行法があるわけで、今までの現行法よりも国民にとって必ずやいいものが生まれる、そのための改正というものである、このように思います。

 ということで、私のこの質疑時間では、今回政府が出してきたこの改正案がどのように国民の安心、安全に資するのか、こういった点で伺いを立てていきたい、このように思います。

 まず、法務大臣にお尋ねをいたします。

 先ほど来から出ておりますが、平成十一年のいわゆる通信傍受法、そのときの立法趣旨について改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

上川国務大臣 まさに通信傍受法の目的規定、ここに明確に規定されているところでございます。第一条でございます。

 組織的な犯罪が平穏かつ健全な社会生活を著しく害していることに鑑み、数人の共謀によって実行される組織的な殺人、薬物及び銃器の不正取引に係る犯罪等の重大犯罪において、犯人間の相互連絡等に用いられる電話その他の電気通信の傍受を行わなければ事案の真相を解明することが著しく困難な場合が増加する状況にあることを踏まえ、これに適切に対処するために、犯罪捜査のために強制処分として行う電気通信の傍受に関し、通信の秘密を不当に侵害することなく事案の真相の的確な解明に資するよう、その要件、手続その他必要な事項を定めることとするわけでございます。

 まさに一条に規定されている趣旨、目的でございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 そこで、しかしながら、原案から大幅に修正案が出された、先ほども黒岩委員もおっしゃっておりましたが、まさに今この委員会にもいらっしゃいます漆原先生が、当時法務部会長という立場で、その修正案のために奔走、御尽力をされた、このように私も思っているところであります。

 今回、改正案では立会人が要らなくなるというようなことでありますが、私は、やはりこの委員会においても漆原先生がいらっしゃるというだけで空気が締まる、そういう観点でも、やはり立会人、第三者のチェックといいますか、そういったものが非常に大きいというのはまさに私たちが一番よくわかっているのではないのかな、このような視点も持ち合わせているところであります。

 そこで、改めて上川法務大臣にお伺いをさせていただきます。

 まさに大幅な修正案が出されまして、その修正案が大変な議論の末に、しかしながらそれが通った。そこには、やはり国民の大きな不安の声、世論の声というものも背景にあったかと思います。覚えていらっしゃる範囲で結構ですので、当時どういった議論がなされたのか、何点か教えていただけますでしょうか。

上川国務大臣 これは、当時の衆議院の法務委員会におきましてやりとりがなされたということでございます。

 その時点の政府原案に対しまして、与党修正ということで、対象犯罪につきましては四罪種ということで限定されたということでありますけれども、ここのところのやりとりを拝見させていただきますと、憲法の保障する通信の秘密を制約するものであるということ、そして我が国におきまして初めて行われるものであるということから、対象犯罪につきましては、平穏な社会生活を守るために通信傍受が捜査手法として必要不可欠と考えられる最小限度の組織的な犯罪に限定することとした、こうした説明がなされたというふうに思っております。

鈴木(貴)委員 先ほどの立法趣旨、そして今の御答弁の中でも、組織性、そして世論の不安の中にもあった憲法との関係性の問題、そしてまた新たな捜査手法の導入ということで、やはりこれは適正化というものが非常に大きな論点の一つだったかと思うんですが、私も、この改正案においてもこの三つの点になるべく絞って質問をさせていただきたい、このように思っています。

 まず、憲法。安全保障の方でも憲法は非常に大きな話題となっておりますが、この委員会で、当時ももちろん、憲法にこれは触れるんじゃないか、どうなんだ、こういった議論が非常に大きかったと、私もさまざまな資料、議事録も読ませていただきました。

 大臣にお尋ねをいたします。

 この改正案、もちろん過去の通信傍受法原案、修正案、憲法との関係で大きく修正がなされたという事実があります。今回の改正案においても、やはり憲法との関係性というものは我々も非常に注視をしなくてはいけない、慎重になるべきではないか、このように思います。

 今回の改正案と憲法、この関係性について、大臣の所見、御見解をお伺いします。

上川国務大臣 通信傍受についての議論を平成十年、十一年にかけてなされたということでありますけれども、通信の秘密につきまして保障した憲法二十一条ということに鑑みまして、そうした中で制約を課すという中で対象犯罪を四罪種に絞ったということでございます。

 その当時も、憲法二十一条との関係につきまして御議論がなされたということでございまして、それにつきましては、既にその以前から検証許可状によりましての電話傍受の合憲性が争われた事案がございまして、それに対しまして最高裁の判例におきまして判断が示されたということでございます。その当時も、そうした判例につきまして説明がなされました。

 その判例におきましては、「重大な犯罪に係る被疑事件について、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存する場合において、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許される」、こうした判断ということでございます。

 今回、法律の改正案におきまして、対象犯罪について追加をするということをお願いしているわけでございますが、その罪につきましては、いずれも相当重い法定刑が定められているものである上に、現に一般国民にとりましても重大な脅威となり社会問題化しているもの、しかし、その際に、やはり通信の秘密に対する制約があるわけでありますので、それに見合うだけの重大性を備えたものであるということが大事であるというふうに考え、そして、その意味で、組織的に行われることが現実的に想定されるものであり、かつ、その犯罪の捜査において通信傍受が必要かつ有用な手段である、ここにつきましては、対象犯罪を絞る中での大きな判断要素ということでありますが、それによりまして絞っているということでございます。

 現行の通信傍受法の第三条第一項に規定されている他の要件ということでございますが、犯罪実行に関連する事項を内容とする通信が行われる蓋然性があること、他の方法によって事案を解明することが著しく困難であること、このことについてはそのまま維持されるということでありますが、さらに加えて、加重要件ということをしっかりと明示させていただきながら、今回の対象犯罪の拡大は、組織的な犯罪に対して、通信傍受法の目的に照らして、この手段を憲法の制約の極めて限定された範囲の中で実施をする、こういう内容になっているところでございます。

鈴木(貴)委員 御丁寧な答弁、ありがとうございます。

 ただ、大臣、最高裁の判例も、引用といいますか、出していただきましたが、平成十一年十二月十六日の最高裁判例のことかと思うんですけれども、確かに最高裁のこの判断でも、通信傍受が憲法上許されるのは、重大な事件であって、傍受以外の方法では証拠を得られない場合というのが最高裁の判例であり、特に要旨にも書いてあり、後の詳しい主文の方でも、再々、またここは出てくるんですね。

 また、私は、法務省のホームページで今回の法律のことをいろいろ勉強していたんですけれども、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案Q&A」というコーナーがあるんです。国民の皆さんに対しての説明文ということなんですけれども、例えば、その中でも、「Q2 通信の傍受を認めることは、通信の秘密を保障する憲法に違反しないのですか。」という問いに対して、その答えでも、今大臣がおっしゃったように、「通信の秘密の保障も、絶対無制限のものではなく、公共の福祉の要請に基づく場合には、必要最小限の範囲でその制約が許される」、そういった答えになっているわけなんです。

 なので、判例を見ても、この法務省の「Q&A」を見ても、大臣の答弁、この三つを総合的に鑑みて、必要最小限だということが非常に重要なんだと思うんです。

 しかしながら、今回の改正案は、九つも罪種がふえているんです。かつ、その平成十一年当時のときよりも、例えば、窃盗だとか強盗、いわゆる日常的犯罪といったものがプラスアルファで追加をされている。

 ここで、改めてお尋ねをいたします。

 大臣は先ほどあくまでも組織性そしてまた重大な犯罪なんだというふうに答弁でもおっしゃっていたんですけれども、ここにプラスアルファで日常的犯罪が罪種に加わっている。これの必要性、また憲法との関係性。憲法的にも、最高裁判例でも必要最小限と言っているにもかかわらず、プラスアルファの拡大がある。

 まず、これ自体が必要最小限の枠を超えているのではないかと思うんですけれども、大臣の所見のほどをお願いいたします。

上川国務大臣 今回新たに追加する対象犯罪ということで挙げているわけでありますが、まさに加重要件ということで、これは、これまでの組織的な犯罪に加えて、今回対象犯罪を広げるということでありますので、そのときに要件としていた数人の共謀の要件のみならず、組織性の要件ということを満たすこと、これを明示いたしまして、これについてしっかりと加重要件を課して、そしてそれについて限定をする、こういう中で必要最小限の犯罪に特化する形で今回構成しているところでございます。

 暴力団の事案、事件、あるいはこの通信傍受法の施行後に新たに発生した特殊詐欺、こうしたことにつきましては、今現状におきまして大きな社会問題化している、こういう事案の解明ということについては非常に要請が高まっているということ、さらに、組織的な犯罪ということをとってみましても、やはり首謀者に対してしっかりとそこに切り込んでいかなければ、犯罪そのものの真相解明もできませんし、また繰り返し行われる可能性は非常に高いということもあります。

 そういう中で、必要最小限の要件に絞りながらも、そうした対象犯罪につきましては社会的な問題に広げて、そして、その真相解明に資する手段として通信傍受という手段を限定的にお願いしているということでございます。

鈴木(貴)委員 有用性ということを大臣も指摘されていらっしゃいますけれども、私は、この質疑を始める前に冒頭申しましたが、あくまでもこれは改正案である。ということは、現行法、平成十一年当時に紛糾したその議論に対しても今回の改正案でも一つ一つやはり丁寧に応えていく、これが改正案を出すことのまさに必要最低限の応えるべき使命、改正案を出す上での必要な手続なんだ、このように思うんです。

 ここで、現場を監督されます山谷国家公安委員長にも同趣旨でお尋ねをさせていただきます。

 つまり、先ほど来から、最小限でなくてはいけないと。しかしながら、今回、九つの罪種がふえた。しかも、二つの罪種はプラスアルファです、いわゆる日常的犯罪と言われているものがプラスアルファで追加をされたわけです。

 この九罪種を追加するということが必要最小限の範囲とされる、その根拠のほどを教えていただけますでしょうか。

山谷国務大臣 近年、特殊詐欺や組織窃盗、暴力団による殺傷事犯等が一般国民にとって重大な脅威となっております。

 これら組織的な犯罪では、その準備及び実行が密行的に行われ、犯行後にも証拠隠滅や逃亡などの工作が組織的に行われることも少なくなく、その実行のための手段としてしばしば携帯電話等の通信手段が悪用されている、また、末端被疑者を検挙しても、組織による報復等を恐れて、組織実態や上位者の関与の状況について供述を得ることが容易ではないというような状況がございます。

 このような特性を有し、通常の捜査方法では真相の解明が困難な組織的な犯罪に対処するためには、通信傍受という捜査手法が必要かつ有効であるということから、今回の法案に通信傍受の対象犯罪の拡大が盛り込まれたものと承知をしております。

鈴木(貴)委員 今、国家公安委員長も、通信傍受そのもの、そして今回はその範囲の拡大、これの必要性であるとか有用性ということを何度となく答弁されるんですけれども、必要性というあくまでも主観的なことではなくて、立法事実といいますか、これらを入れなくてはいけない根拠、先ほどの黒岩議員も、ゆえに、数を示してほしいと事務方の皆さんにも質問をしていた。実際に統計データを見ていたら、皆さんの不断の努力のおかげで率も右肩下がりに減っているじゃないか、あえてここで通信傍受の範囲を拡大する必要があるのかという基本的な議論、かつ一番大事な、重要な議論を先ほど黒岩先生もされていたわけです。

 しかしながら、先ほどの黒岩先生のときにも、そして根拠は何かという今の私の問いに対しても、事実関係をもってしての答弁というのがない。これは非常にゆゆしき問題だと私は思うんです。これは、もう一度改めて聞いても堂々めぐりになりかねないので、ちょっと視点を変えて伺わせていただきたい。

 というのは、この答弁を聞きながらも、私は、今回改正をされた、九つふえた、数年後にまた改正案が出てきてもっともっとその範囲が拡大していくんじゃないか、最終的には結局、歯どめがなく、全て通信傍受可能なんだというような判断にこれはなりかねない。

 もし、それはそうじゃないんだとおっしゃるのであれば、やはりそれは立法事実、根拠というものを示していただきたい。それが法案提出者としての責任であると、私は立法府の人間として改めてその点については強調をさせていただきたいと思います。

 今後の範囲、対象犯罪の罪種の拡大について伺わせていただきたいと思います。

 例えば、平成二十六年六月十二日、第二十七回の特別部会の会議で、当時の警視庁の種谷副総監が、テロに関連する犯罪、それからサイバー犯罪といったものが今回の試案の中に入っていないというのはまことに残念である、あと、マネーロンダリングなどについても述べていらっしゃったんですけれども、今後の課題として、検討事項として残されている罪種というものはほかにあるんでしょうか。

林(眞)政府参考人 法制審議会での議論の中で、対象犯罪の拡大のところでさまざまな議論がありまして、その中で、今御指摘のあった、テロの犯罪についてどうするのか等々の議論があったわけでございます。今回は、そのような形での対象犯罪の拡大の中にテロ犯罪という形での追加はなかったわけでございます。

 議論としてはそれでございまして、対象犯罪について、どの事件についてどのように今後検討していくのかということについて、明確に対象犯罪を例示した形で課題として挙げていることは承知しておりません。

鈴木(貴)委員 テロ犯罪等々という、その等々が、刑事局長、気になるんです。承知していないと言いながらも、犯罪等々と言われて、どっちなんだろうと思うんですけれども、ちょっとそこを明らかにしていただけますか。

林(眞)政府参考人 等々と申し上げたのは、たしか議論の中では、テロ犯罪ということが議論に上がったのと、あとマネーロンダリングの犯罪などについても議論に上がっていたことから、先ほど、あわせて、等々というふうに申し上げました。

鈴木(貴)委員 今後、つまり、また新たなものに拡大するかというと、きっとそこの可能性というのは残したままだということだと思うんですね。

 そこで、まずこの特別部会の議事録を、膨大な資料ですが私も頑張って読ませていただいております。その中で、私は非常に気になったのが、その作業分科会においても、そしてまた部会の会議においても、これは両方なんですけれども、あくまでも対象拡大のプレゼンテーションから入っているんですね。この通信傍受がこれまでどうだったかという検証からスタートするのではなくて、分科会においては、警視庁の人間が、まず、これに対して、これも傍受の対象にしてくれという希望をつらつらと、冒頭、プレゼンテーションをされるんです。

 本当に、新たな時代の、そしてまたこれまでの反省に立った刑事司法改革というのであれば、本来であれば、捜査側の希望によるプレゼンテーションでの議論というそのあり方自体が間違っているんじゃないか、まずは検証から、見直しから、必要であれば反省から議論をして初めて改正案というものが生まれると思うんですけれども、この点についてどうお考えでしょうか。

林(眞)政府参考人 法制審議会での当時の状況を申し上げますと、まず議論に先立ちまして、さまざまな刑事司法の手続の現状というものについての事実認識の共有化から始めて、議論があった上で、その上で、二十五年一月に、時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想というものが中間的に取りまとめられたわけでございます。

 その中で、通信傍受については、合理化、効率化という観点での検討を今後行っていくということが基本構想として取りまとめられました。これについては、当時の委員全員の一致でこの基本構想が取りまとめられて、それを受けまして作業分科会が二つできました。そのうちの第一作業分科会において、通信傍受というものについての合理化、効率化等についての具体的な、技術的な問題も含めて議論がなされ、その後、それに基づいてたたき台というものができ上がりまして、その作業分科会のたたき台を今度は部会に戻しまして、その後部会で議論がなされた、こういう経過がなされております。

 そういったことから、作業分科会におきましては、既に二十五年一月に取りまとめられた基本構想の論点に従って議論がなされたものと考えております。

鈴木(貴)委員 大臣もそうですし、局長もそうなんですけれども、合理化だとか効率化、確かにそういったものは世の中一般において重要かもしれないんですけれども、この特別部会においては、合理化、効率化の前に、適正化の担保というものが第一優先事項だと思うんです。

 特に、これは第十五回会議、私は非常におもしろいなと思ったのが、佐藤委員の発言なんですけれども、通信傍受の仕組みは、十二ひとえを着てテニスをやれと言っているようなもので身動きがとれない、このように批判的な発言をされていらっしゃるんですね。

 こういった発言で何が見てとれるかというと、つまり、使い勝手が悪いんだということをアピールしている話であって、この改正案というのは、捜査当局側の使い勝手をよくしますよというものではなくて、あくまでも適正な捜査、そのための手続をどう法改正していくかというところが本来であれば議論の軸になるべき点だったと思うんです。

 特別部会、今回、これに関しましては取りまとめ、答申も出ました。しかしながら、今後も大臣諮問でさまざま特別部会であるとかそういった会議の場所が開かれるかと思うんですけれども、ぜひ、ただ諮問をするだけでなくて、議論の軸のためにどういった適正な会議の手続というか運営がなされているかというところもしっかりと注視をしていただきたい、今後を含めての私からのお願いを大臣にはさせていただきたい、このように思います。

 そして、時間も限られてきました。先ほど来から組織性ということについても言われておりますけれども、いわゆる加重要件の妥当性という観点で私も質問をさせていただきたいと思います。

 もし先ほど来から言う組織性というのであれば、私は、この要件の中に、例えば、繰り返し行われているか、つまり反復性、そしてまた上司というか親分がいて子分がいるという指揮命令系統、こういったものが要件の中に加えられていない限り、組織性に対して縛るということにつながらないと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 先ほどもちょっと答弁を申し上げたところでもございますけれども、新たに追加する対象犯罪につきましては、現通信傍受法の対象犯罪になっている組織的な犯罪の要件であります数人の共謀の要件のみならず、組織性の要件をも満たすということ、これを要するということにいたすわけであります。

 ここのところは、数人共謀の要件を満たすものの、例えば、役割の分担がなされないままに行われたと認められる場合でありますとか、あるいは、あらかじめ役割の分担はなされたものの、それが犯行時に定められたものであった場合などにつきましては、通信傍受を実施することができないことになるわけでございます。

 組織性の要件を設けるということにつきましては、対象犯罪を追加するわけでありますが、その中でもとりわけ加重を加えることによりまして限定をしていく、こういう趣旨で行われるところでございます。

鈴木(貴)委員 そうなんです。その趣旨が大事なんです。その趣旨を守るために、ぜひ、その要件の中に、反復性、繰り返し行われているか、そして指揮系統というものがあるのか、こういったことを加えるということは一つ手だと私は思うんです。そうしたことで初めて、大臣が先ほど来からおっしゃっている、いわゆる組織性、こういったものにつながってくると思うんです。

 私は、私なりに考えた非常に前向きな、建設的な提案だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 反復継続というところを要件に設けるということについて、いわゆる組織的な犯罪ということでありますけれども、これは、今のような反復継続というのが要件に加えられますと、そうでないケースにつきましては除外をされるということに当然なるわけでございます。

 例えば、暴力団組長等の組織的な、組織的というか数名が被害者に制裁を加えるということを企てるということでありまして、そのとき、組長の指揮のもとで、被害者を車に押し込んで連行する役でありますとか、あるいは被害者を監禁する施設の見張り役でありますとか、そうしたことを分担した上で犯行に及んだ、こういったケースにつきましては、反復ということになりますと、これについては対応しないということでありますので、こうしたタイプの組織的な犯罪というのは存在しているということでございます。

 したがって、事案の解明を図りたいと思う組織的な犯罪ということが、委員の今のような要件を加えるということになりますと、その場合には対象から外れるということでありますが、しっかりとこうした事案については適用することができるようにしていくということは、真相解明及び犯罪の首謀者のところにアプローチする上では非常に重要な捜査手法であるというふうに考えます。

鈴木(貴)委員 であるのであれば、例えばそれを指揮命令及び反復ではなくて、指揮命令または反復、こういったことで、それこそ個別の事案に対して十分に対応もできるかと思うんです。それもつけ加えてのこの提案、私の改正案、どう思われますか。

林(眞)政府参考人 組織犯罪の形態は多様でございまして、指揮命令というものを一つの要件にするかどうかということでございますけれども、やはり、共犯者間に指揮命令がある事案に限定されるということにつきましては、指揮命令関係まではないものの多数人が綿密に役割分担して計画的に実行するという犯罪においては、指揮命令がなくてもそういった役割分担において組織犯罪が実行される場合はございますので、指揮命令というものをあらかじめ一つの要件にすることは、そういった組織犯罪の中の対象を狭めることになるので、相当でないと考えております。

鈴木(貴)委員 改正案というのは、もちろん守るべき、考えるべきは国家国民であるわけで、そういう意味では、逆に言うと、私が先ほど申し上げた、私の改正案バージョンというのは有用性は非常に高い。逆に具体的に明示をすることで、先ほど冒頭にもあったように、憲法上も許されている、それはなぜか、そして何が必要か、必要最低限度だ、最小限なんだと。しかるべき枠というものを与えることが、捜査当局側に過大な権力を与えない、そういったチェック・アンド・バランスの機能にも同時に資するのではないか。

 そういったある程度の枠組みがあるからこそ、国民の皆さんも、警察しかり、検察しかり、刑事司法というものに対して信頼というものを寄せられるのではないのかなと。フリーハンドであるということが信頼につながるというふうには、過去の多々出てきた冤罪事件などを見ていても、私はそのようには全く思わない。この点についても改めて強調させていただきたいと思います。

 そして、今回、全体の法律案を見ても、大きく分けて九本、可視化であるとか司法取引であるとかこの傍受であるとか、そしてまた、これはおもしろいことに、施行するタイミングというのはそれぞれ全てばらばらなんですよね。例えば、可視化でいえば三年とか、取引でいえば二年とか、今回の傍受に関しても、拡大についてはたった六カ月、そして立会人が要らないよという部分に関しては機材の開発だとかもあるので三年、裁量保釈に関しては二十日となっています。

 施行日がばらばらということは、九本を一くくりにする必要というのは本当にどこにあるんだろう、私は、このように改めて、質疑をしながら考えているところなんです。

 そしてまた、対象犯罪の拡大は六カ月ということなんですけれども、同時に、通信事業者の皆さんの負担というものもおのずとふえてくるであろうと推察をされるところなんです。

 そこで、もう一つ、私の改正案、建設的な提案をちょっとさせていただきたいなと。

 それは何か。通信事業者にかかる負担を少しでもやはり軽減しないといけない。何ができるかと考えたときに、運用がしっかりと行われているかということを第三者がしっかりとチェックするということも一つ通信事業者の負担軽減にも資する、このように私は思っているんです。

 特に、以前、これはたしか清水委員が質疑のときにも指摘をされていたかと思うんですけれども、令状請求が拒否された件数というのは非常に少なくて、ほぼほぼ、令状を裁判所の方に求めれば基本的に許可が出るというような今現状なわけです。ということは、対象犯罪が拡大されれば、おのずとその件数もふえるというのが素直な解釈だと思うんです。

 ということで、では、この令状発付の率が、今九九%近いパーセンテージがあって、本当に正しいのか、本当に通信傍受するに値するのかというところで、まず、水際対策じゃないんですけれども、そこで第三者がしっかりと運用をチェックすれば、通信事業者の負担軽減にもおのずと資すると思うんです。

 この前向きかつ建設的だと自負をしている私の改正案、どのようにお思いでしょうか。

林(眞)政府参考人 御指摘は、捜査機関から独立した、裁判所でもない第三者、これが通信傍受の手続についてチェックする、監視する、こういった制度を取り込む、そういった御指摘であろうかと思います。

 これにつきましては、そもそも、捜査機関の令状に基づく捜査の適正確保というのは司法手続によって図られるべきでございまして、こういった第三者機関を司法権と別のところで設けることについては、それは、行政権と司法権との間の関係でありますとか、特に司法権との関係の中で問題を生ずることが考えられると思います。

鈴木(貴)委員 であるならば、例えば、これまで過去に二千七百二十一回、三千回近い傍受が行われている、その中で犯罪に関するものが一件もなかったケースもある。(発言する者あり)第四号事件。三千回も傍受をしたにもかかわらず、結局、事件の真相解明にはつながらなかった。簡単に言えば、空振りに終わった。

 これについて、しっかりと、空振りに終わってしまった、つながらなかったということに対しての検証というのはされているんでしょうか。

林(眞)政府参考人 これまでの通信傍受で、令状発付を受けて通信傍受を行ったものについては国会へ全て報告をしているわけでございますが、その中で、全く犯罪関連通信等を捕捉できなかったというのは、むしろ、事件との関係でいえば少ないわけでございます。

 もちろん、御指摘のように、事件によれば、当該令状に基づいて通信傍受を行ったけれども、全く犯罪関連通信等が得られなかったという事案がございますけれども、それにつきましては、やはり、その事件におきまして、当該令状発付を受けるまでにさまざまな疎明をして、それが認められるような事件を選んだものの、実際にその事件において、当該携帯電話における通信の中で犯罪通信が必ずなされるか、なされないかというのは、まさしく犯罪現象の中で起こり得ることでございまして、そのこと自体を捉えて検証しているということはなかろうかと思います。

鈴木(貴)委員 検証はなかったということなんですが、これは、局長、三十回やって一回もひっかからなかったというのはまだわかるんです。三百回でもない、三千回近い回数を聞いて、しかしながら一件も、期待をしていたというか、その真相解明に資するものではなかった。これは私はしっかりと検証する必要性があると思うんです。逆を言えば、検証しなくてもよいという合理的な根拠というものはない、私はこのように思います。

 そして、時間も限られてきたので、手続のまさに合理化、効率化という部分について伺いたいと思います。

 今回の改革の原点というものは、まさに取り調べだけでなく刑事司法全体の可視化、透明化、こういったものだったかと思います。しかしながら、今回、これまで必要とされていた立会人がこれから要りませんというふうになれば、まさに可視化に相反するというか、余計、国民が一番恐れている秘密性というものを逆に高めることにつながる、今回の改革の筋と真っ向相反するものにつながると思うんですけれども、この点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

上川国務大臣 今回の通信傍受法の改正でありますけれども、通信傍受法が平成十一年にスタートしてから十六年目ということになるわけでございますが、この間の通信暗号技術については著しい発展があったというふうに思っております。

 そうした発展をも踏まえまして、手続の合理化と効率化を図るということによりまして、より組織的犯罪等におきましての事案の解明でありますとか、あるいは客観的な証拠をより効果的かつ適正に収集することを可能にし、供述調書等に過度に依存しない、今までの状況から脱するために捜査手法の多様化を図る、こういう趣旨の中でこの議論が行われているわけでありますが、そういう背景も含めて改正するということをお願いしているわけでございます。

 現行法におきまして要件とされております、通信傍受を実施する間、例外なく通信事業者などが常時立ち会うということを必要とされていたわけでありますが、先ほど来の答弁もございましたけれども、傍受の実施場所でありますとか、あるいは立会人をしていただく職員の確保等、これにつきましては、通信事業者の大きな負担となっているということもございます。

 また、傍受の実施場所あるいは立会人の確保のために、傍受を行う数週間前から、捜査機関と通信事業者との間で協議をするということが必要であるということでありまして、これが、通信傍受そのものを本来ならば迅速にかつ的確に行うということについてのさまざまな障害となっている、こういう、ある意味では評価という御指摘もあったところでございます。

 また、捜査員、立会人につきましては、実際に通話が行われるまでの間、著しく長い時間待機する、こうしたことにつきましても非常に非効率な状況が発生しているということでございます。

 こうしたことを踏まえた上で、今回、暗号技術という最新の状況にのっとって、一時的な保存を命じて行う通信傍受の実施手続というようなことをお願いするわけでございまして、その技術的な措置によりまして通信傍受の適正の確保を図る、立会人という形ではなくて、そうした電子的なシステムというものを最大限導入することによって同等の基準が守られる、そういう形での提案になっているところでございます。

鈴木(貴)委員 今、大臣、答弁の中で、今の現行法だと、通信事業者の負担も含めて、的確に捜査を行う上で障害となると。

 しかし、多分それはないんですよ。なぜかというと、私は何度もこの場所でこれまでの捜査のあり方についてただしてきましたけれども、どんなときにも答弁は、捜査当局としては、公正公平を旨に、法と証拠に基づいて適正な捜査活動というのが紋切り型の答弁なんです。

 なので、これは的確に捜査を行う上での障害ではなくて、量をふやす上でのあくまでも障害なんですよ、捜査当局側として。というのが、まさに先ほどの、十二ひとえを着てテニスをやれと言っているようなものだというような発言からもかいま見られるというか、逆に裏づけ証拠だと思うんです。

 そこで、では、適正な捜査の担保という意味でいえば、その機材は今現在この世にまだ存在していないものだ。民間のITのコンサル会社に依頼をしたら、大体十億程度という非常に膨大な予算というか見積もりが出てきた。

 しかしながら、まだこの世の中に存在しないものを前にして、逆に、よく答弁の中でも、仮定の質問にはお答えできませんと大臣たちも答弁なされるのに、ならば我々も、存在しない機材のことについてどうやって議論をしろというんでしょうか。私、そこの時点で非常におかしいと思うんです。

 そして、それに関連してなんですけれども、山谷国家公安委員長にお尋ねします。

 今現在の傍受の運用実態、これについて、大臣は、適正さという意味でどのような運用がなされているとお考えですか。適正な傍受が行われているか否か、端的で結構です。

山谷国務大臣 現行法に基づく通信傍受は、施行から十年以上にわたり、累計で百件ほどの事案についての実施を積み重ねてきておりまして、その間、現行制度に定められたとおりに厳に適正な運用を行うよう努めてきたところと承知しております。

 私といたしましても、引き続き、その適正性が確保されるように頑張っていきたいと思います。

鈴木(貴)委員 これは事務方にお答えいただきたいんですけれども、例えば、これまでのその百件ほどのもので、一回の通話の平均的な長さ、もしくは一回のメールの平均的な文字数、こういったデータ、統計というのはとっていらっしゃいますでしょうか。

三浦政府参考人 御質問のような一回ごとの平均の通話時間といったようなデータはございません。

鈴木(貴)委員 何でこれを聞いたかというと、いわゆるスポット傍受というものをしているわけです。例えば、頭の一分を聞いて、一分二十秒お休みをして、また一分十秒聞くだとか。そのスポットの何分聞いて何分休むというのは、それぞれ事案の罪種によってまちまちなんだ、そして、それを公にすることは、捜査に支障があるので、できない、こういったお話を伺わせていただきました。

 というのであれば、例えば、私も携帯を使っていますし、あと、タブレットでLINEというアプリも使っているんですけれども、往々にして、最近、メールというものは、一回のメールの長さというのはそんなに長くないと思うんですよ。

 例えば、この間、私、デモのときにびっくりしたんですけれども、デモのときに見せていただいたメールというのは、いわゆるパソコンの、机に座っての、五百字近い原稿だったんですね。それの頭の七十文字をまず見ます、そして五十文字ぐらいお休みします、そしてまた次の七十文字を見ます、こういうようなもの。

 でも、例えば、メール自体が三十文字程度、もしくは、今、ツイッター、つぶやきなどというのは七十数文字ですよ。だったら、これはスポット傍受どころか、丸裸なんですね。という意味で考えたときに、なので、私は先ほど、一回の平均通話時間であるとか一回のメールの長さの大体の平均値みたいなものをとっているのかと。

 逆に、お尋ねします。スポット傍受をして見る部分、見ない部分、その文字数、こういったものは、どういった根拠を軸に判断というか設定をされていらっしゃるんでしょうか。

三浦政府参考人 通信傍受法におきましては、現行法第十三条第一項において、「傍受すべき通信に該当するかどうかを判断するため、これに必要な最小限度の範囲に限り、当該通信の傍受をすることができる。」という規定をされているところでございます。

 これに基づいて、音声であれメールであれ、この必要最小限度の範囲という法の考え方を実現すべく、スポット傍受というやり方をとっているところであります。

鈴木(貴)委員 私の質問、疑問に全くお答えをいただいていないんです。

 最小限というのはわかっています。最小限でないと困るんです。ゆえに、その最小限というのは何を基準にして判断をされていらっしゃるんですかと。

 この間デモンストレーションしていただいたときのああいった五百字近いメールというのは、皆さん、最近なかなか打ちませんよね。皆さんもメールなんかのやりとりをされると思うんですけれども、大体、短い文章というか、せいぜい頑張って百文字だとか、画面一回におさまって、スクロールダウンするような長いメールというのはなかなかないと思うんですよ。

 ましてや、犯罪に関連している人間が長々と四百字、五百字とメールを打つというのは、これはなかなか想像しがたい。足を残したくないという観点から考えても、もしかしたら、それこそ隠語みたいなスラングを使ってより短くしようと考える人たちだっているかもしれないんです。であるなら、頭の七十文字を見ます、これはスポット傍受にならない、丸裸なんです。

 という点で、もう一度お尋ねします。

 この最小限の判断の基準は何なのか。そしてまた、今後、この基準について、私が今述べさせていただいたような観点から、改正というか、変えていただく可能性というのは何かありますでしょうか。

三浦政府参考人 メールにつきましても、そういったスポット傍受と同様の方式で行うということとされているところでありますけれども、一概に何文字までが最小限なのかということを申し上げるのはなかなか難しいところだろうと考えております。

 いずれにしましても、まず、該当性判断のためにそうした方式をとるわけでありますので、例えば、冒頭の一部分を見て、そこで一旦判断をする、その冒頭の一部分を出した上で、そこでまだ該当性判断ができないということでありますれば、また一拍置いて次の部分を見る、そういうやり方をとるということが想定をされているわけでございまして、なかなか何文字ということを申し上げるのは難しいということを御理解いただきたいと思います。

鈴木(貴)委員 そうなんです。なかなか難しいんですよ。

 しかしながら、ここで、共通認識としては、スポット傍受というからには、スポットじゃなきゃいけない。ということで、では、その基準をこの改正案でどのように置くかというのは、私は、これは改めて考え直す必要があると思うんです。

 例えば、メールにおいては一回全てのデータを受け取るわけですから、機械的に、このメールは百文字だ、だから、そのメール全体のまず十分の一を見る、そして何文字あけて、またそのメール全体の十分の一を見る、何かそういったシステムがつくれるのであれば、まさにそれはスポットで見られると思うんです。

 しかしながら、文字数で一概に何文字とお答えできませんと言っておきながら、何文字という基準を設けていらっしゃるんですよね。基準を設けていなかったら、これはスポット傍受じゃないですよね。

 答弁の矛盾点を私は非常に感じるんですけれども、基準について改めてもう一度お聞かせください。

三浦政府参考人 基準と申しますのも、完全に、例えば最初何分、どれぐらいの時間をあけて次何分ということが確定的に定められているというものではございませんけれども、ある程度、実際の捜査の運用として、最初にどれぐらい聞くといったような基準はございまして、それに基づいて各都道府県警察で実施をされているところでございます。

 ただ、その時間がどれぐらいかということを明らかにすることにつきましては、結局、それでは関係のない通話を最初にどれぐらいの時間すればいいのかということを犯罪組織の方に、ある意味では無用に知恵を与えてしまうということにもなりますので、その時間について公にするということは控えさせていただいているところでございます。

鈴木(貴)委員 もちろん捜査に支障が来ては本末転倒です。しかしながら、こういった問題点があるということは、今、私は、この委員会において皆さんと共通で認識をいただいた、漆原先生にも笑顔でほほ笑んでいただいておりますので、非常に心強く思っているところであります。

 私も、まさに修正案を通すために尽力をされた漆原先生の御経験また御見識、御指導をいただきながら、引き続き質疑の方でもただしてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いいたします。

 午前中、上川大臣の答弁を聞いておりまして、特に黒岩先生のとき、中身はちょっと私も速記録を見ないといま一つ理解ができなかったんですが、力強さを感じました。副大臣、政務官を制するかのような、私に任せろという、そういう力強さを感じました。

 きょうは国家公安委員長にまた、前回は一度お休みいただきましたが、来ていただいておりまして、通信傍受は言うまでもなく警察がまさに捜査の主体となりますので、私の質問なんぞは余り大したことはないんですけれども、力強い答弁をお願いできればと、よろしくお願いいたします。

 通信傍受の議論なんですが、過去を振り返ってみますと、やはり法律を導入するときは、憲法と照らしてどうなんだと、通信傍受自体の必要性に対して議論がなされてきた。それが、やはり、平成二十年以降、取り調べの可視化とセットでこれが議論されるようになってからの議論を見ると、一定程度その必要性を前提とした議論に変化をしてきているのではないのかなと思います。

 先ほど鈴木先生からも憲法との関係がありましたが、私もその問題については大変問題意識を持っておりまして、言うまでもなく、我が国の憲法二十一条、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と。韓国にも同じような文言が憲法十八条にあります。アメリカでも修正第四条。ドイツにも、通信の秘密、電気通信の秘密は不可侵であるという条文があります。また、EUでも同じような条文がある。

 ですから、通信傍受というものは、捜査の必要性があるとはいえ、やはり慎重に議論をしていかなければいけないと思います。

 私も、鈴木先生と同じように、憲法と果たして合致しているのかというところに問題意識を持っているんですが、まず、先ほど大臣もお話があった平成十一年の最高裁判決なんですが、この最高裁判決は、この法律ができる前に、検証令状による電話傍受を合憲とした判決と言われております。詳しいことは、最初に大臣から鈴木先生に対してお話があったとおりだと思います。

 私も特にこの「重大な犯罪に係る被疑事件について、」というところに着目をしておりまして、通信傍受というものは、もともとアメリカで、マフィアが麻薬の密売で大きな収益を上げている、そういうものに対して摘発をしていかなければいけないというところがスタートだったと思いますし、日本の議論を見ていても、当時、やはり覚醒剤に対する取り調べ、摘発を強化していかなければいけない、そういうことが語られてまいりました。

 また、当時言われてきたのは、暴力団の関係、暴力団に対する摘発もそのときの重大なテーマだったと思うんですが、まず、私から提案させていただきたいのは、今回のように幅広く犯罪の種類を拡大するのであれば、少なくとも、やはり暴力団に限定をするべきではないか。この通信傍受の捜査というものは、犯罪と関係ない通話記録とか、そういうところに幅広く一般の方が入ってしまうんじゃないか、そういう不安、懸念があることが、これは一点紛れもないそういう不安があるわけであります。暴力団犯罪だけにします、そう言ってくださった方が国民の理解も得られると思いますし、最高裁判決で言われている重大な犯罪ですとか、そういったものも明確にクリアするのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

上川国務大臣 冒頭に委員の方から最高裁の判例ということでお触れになりまして、その当時は通信傍受がなかったということなので、電話傍受の合憲性ということでの争いのところで、電話傍受について憲法上許容される要件の一つとして、重大な犯罪に係る被疑事件であることを掲げているということ、そして、重大な犯罪に係る被疑事件の意義については触れるところはないわけでございますが、侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪捜査上真にやむを得ないと認められることを必要要件としているところでございます。

 今、そういう意味で、現状の通信傍受法におきましても、重大な事件に係る部分という形の中で、対象犯罪を四類型に絞るという大きな御決定をしていただいたわけでございますが、今回、その対象犯罪に追加する罪ということで挙げられているものにつきましては、いずれも相当重い法定刑が定められているものであり、また、現に一般国民にとりましても重大な脅威となり社会問題化している、こういうものを対象としている。そして、このことにつきましては、通信の秘密に対する制約に見合うだけの重大性を備えたものであるということを、法制審議会あるいは部会におきましてのさまざまな御議論をいただいた上で、今回、対象犯罪として拡大をし、しかも、その要件につきましても、加重要件を課すという中でお願いをしているところでございます。

 あくまで最高裁の判例の考えに沿ったものであるということで、今回、そうした拡充のお願いをしているところでございます。

井出委員 法制審の議論は私も少し読ませていただきましたが、今回の犯罪の種類の拡大が国民の理解を得やすいものなのかというところは疑問を持っております。

 今は暴力団という観点から伺いましたが、罪種に関しても、当時、覚醒剤を何とかしなければいけないという意識がありましたし、そもそもアメリカもマフィアの麻薬の密輸の問題で、今やはり日本で問題になっているのは、一番は振り込め詐欺だと思うんですね。ああいうものは、本当に弱い立場のお年寄りを何の正当性もなくおとしめる犯罪ですので、これをなくしていこう、そのために何か新たな手だてを講じようというのは国民の理解が得やすいと思いますし、私は、もし対象を拡大するというのであれば、まず振り込め詐欺、これに係る詐欺罪ですとか恐喝、または電子何とか詐欺という、そこを振り込め詐欺に限定してやってみるということも提案したいと思いますが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 通信傍受法が施行されまして、この十六年の経過の中で、さまざまな犯罪が大変深刻化し、また、委員が御指摘のように、振り込め詐欺等も含めまして、組織的な犯罪の中で一般の方がその犯罪の被害者になるということについては見過ごすことができない、こういう認識の上で今回やるわけであります。

 先ほど来の暴力団の案件にかかわりましても、一般の方が巻き添えになるというようなことも含めまして、さまざまな犯罪が組織的に行われる、しかし、その一番の首謀者にたどり着くことができない、こういうことについての解明を図っていく。こういう中で、重大な犯罪に絞りながら、また同時に、社会的に非常に問題が大きい、しかも補充要件という形の中で捜査手法になかなか頼ることができない、こういうことを厳密に限定しながら対象犯罪のお願いをしている、そのように理解するところでございます。

 そういう意味では、何かに絞るということについてのさまざまな考え方について、今、二つの対象犯罪ということで御指摘いただきましたけれども、組織的な事案に関して言うならば、今回の通信傍受の手法によりまして、その犯罪にしっかりと肉薄していくことは非常に大事であるというふうに考えております。

井出委員 次に、ちょっと過去の議論の中から伺いたいことがあるのですが、平成十一年の議論、この法律を導入するときの議論で、そのときに、当時の臼井日出男法務大臣が、通信傍受法は極めて厳格な要件のもとでやっていく、それは令状に基づいて行い、常に第三者が立ち会って、全て記録され封印されて、関係者に不服の申し立てが認められている、そういうことを述べられているんです。

 実際、今の現状を見ますと、令状請求に対して裁判所が令状を認める率は一〇〇%。そして、常に第三者が立ち会うというところは、一部その立ち会いがないケースもあるというようなことは午前の委員会でも議論があったと思います。関係者等による不服の申し立てというのもこれまで一件しかない。そういうこともこれまでの議論の中に出てきていて、私は、当時の臼井法務大臣がおっしゃった、極めて厳格な要件というものがこれまできちっと守られてきたのかなというところにも今疑問を感じています。

 きょう、最高裁の平木さんに来ていただいたので伺いたいのですが、令状の発付率は、これまでの資料を見ますと、全て令状が発付されていると承知をしております。これから対象犯罪が大きく拡大すれば、この十五、六年の令状発付と比較にならないほどの件数の令状が請求されて、それを裁判所の方で出していかなければいけないという事態は容易に想像されると思いますが、この通信傍受の令状発付、令状を認めるに当たっての裁判所の考えというものを確認させてください。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 現行法の通信傍受の件数が少ないのは、傍受の実施に当たり、通信事業者に大きな負担がかかることが一因であるとの指摘がなされていると聞いております。

 そういたしますと、本改正法案のうち、対象犯罪を拡大するという部分の法改正がなされましたとしても、傍受の実施の手続に変更がない段階では、直ちに請求件数が大きくふえることにはならないのではないかというふうに考えております。

 他方、本改正法案の中には、傍受実施の手続を合理化するという法改正が含まれていると承知しておりますが、そのような通信事業者の負担を軽減することにそれがつながるとしますと、これが施行された段階では制度の利用が増加するということになるのではないかと想定しております。

 具体的にどの程度傍受令状の請求が増加するかを現段階で予測することは困難でございますけれども、最高裁事務当局といたしましては、適切に対応できるように準備をしてまいりたいと考えておるところでございます。

井出委員 今度は国家公安委員長に伺いたいのですが、今、平木さんの方から、どれだけ増加するかは予測が困難だと。たしか同じような御答弁を本会議の段階で、事件がどれだけふえるのかということに対して予測は困難だというようなお話が警察としてもあったと私は記憶しているんです。

 犯罪の種類がふえる、暗号化によって立ち会いが不要になる。今、平木さんは合理化とおっしゃいましたけれども、私は、こういう捜査はある程度非効率であった方が、慎重であった方がいいかなとも思っているんです。

 暗号化によって警察署でもできるようになって、犯罪の種類も大きくふえる。これは、本来であれば、私は、どれほどの事件が年間ふえるのかということをまずしっかり想定するべきだと思いますし、警察のマンパワーもあると思うんですね。今までは、事業者のところに行って、警察の人がイヤホンを当てて、まあ、人間のやることですから限界があるわけですよ。それを警察署でもやれるようになる。記録も、一時的に保存して、後で聞くこともできるようになる。

 そうはいいつつも、この通信傍受というものは、八割五分が犯罪と関係ない情報である。非効率な、捜査手法としてどうなのかという一面もありますし、私は、警察のマンパワーを考えても、まず、やはり犯罪の種類を振り込め詐欺に絞るとか暴力団に限定してやるとか、そういう運用をすることが警察側の体制にとっても望ましいと考えているんですが、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 組織的な犯罪では、その準備及び実行が密行的に行われ、犯行後にも証拠隠滅や逃亡などの工作が組織的に行われることも少なくなく、それらを実行するための手段として、しばしば携帯電話等の通信手段が悪用されております。また、末端被疑者を検挙しても、組織による報復等を恐れて、組織実態や上位者の関与の状況について供述を得ることは容易ではございません。

 このような特性を有し、通常の捜査方法では真相の解明が困難な組織犯罪に対処するためには、特別の捜査手法として通信傍受が必要かつ有効だと考えます。

 特殊詐欺はもとより、暴力団による殺傷事犯等が一般国民にとって重大な脅威となっておりますが、通常の捜査手法によっては犯罪組織中枢の検挙が困難であることから、通信傍受の対象犯罪を拡大する必要があるということで、今回の法改正となっております。

井出委員 引き続き、今度は三浦刑事局長に伺いたいんですが、今、必要性があるという国家公安委員長からのお話なんですけれども、通信傍受で、例えば集団密航に関しては全く実績がないんですよ。実績がないんだったら、私はやめた方がいいと思うんです。これがまず一点。

 それと、メールの傍受なんですけれども、この間視察に行ったときに、伏せ字をして、この八文字に当てはまる文字を入れなさいみたいな形式のメールになっていて、私は、メールもそもそもこの捜査をやる必要性は全くないと思うんですね。

 それと、きょうさんざん出ている話で伺いたいもう一つが、首謀者までなかなか行き着かないからこういう捜査手法が必要だということなんですけれども、通信傍受で首謀者に行き着いて、この事件が上がったみたいな話というのは実際にあるんですか。

三浦政府参考人 幾つかのお尋ねがあったかと存じますので、順番にお答えを申し上げます。

 集団密航について実績がないではないかというお尋ねでございましたけれども、これはまさに、最初に通信傍受法ができた当時の社会情勢といいますか治安情勢におきまして、集団密航というものが大変横行していた、そういった状況を踏まえて対象犯罪として取り入れられたものと承知をいたしております。その後、ある意味では大分その情勢も変わってまいりまして、従前のような、船を仕立てて海を渡ってやってくるといったような集団密航という形態については、近年、大分その数が減少しているといいますか、最近、余りそういった例を聞かなくなっているという状況は確かにあろうかと思います。

 それから、メールにつきましてでございますが、メール傍受につきましては、確かにこれまでまだ実績というのがないのでありますけれども、これは、おのおのの事件の内容あるいは捜査状況に応じまして、通信傍受の有効かつ適正な実施に努めてきたところでございますが、その結果として行われなかったものというように理解をしております。

 そういう意味では、実績の有無にかかわらず、捜査上の必要性が認められた場合に、技術的に傍受が可能な通信について適正な傍受を実施する、そういった制度は必要と考えておりまして、今現在、これまで実績がないから不要であるという御指摘は当たらないものと考えております。(井出委員「首謀者を」と呼ぶ)

 申しわけございません、首謀者の特定に至った事例があるかと。個々具体的な事件捜査についてこの事件で行き着いたというようなことはなかなか申し上げにくいのでありますけれども、過去、傍受を行いまして、そうした組織中枢の犯行への関与を解明し、立件に至ったという事例は当然ございます。

井出委員 犯罪の態様、形式というものは時代に応じて変わりますので、集団密航というものがなくなってきたのであれば、やはり外すという検討もしっかりするべきだと思いますし、メールについて申し上げますと、被疑者を逮捕したときに携帯電話なりパソコンなりを押収すれば、そこに残っていれば全部わかるわけですよ。私は、余り効率という言葉は使いたくないんですが、いつメールするかわからない、しかも伏せ字で見なきゃいけないという捜査よりは、逮捕したときに携帯電話なりパソコンなりを押収して、ある程度データも復元できるわけですから、メールの傍受というものはどうしてもその必要性というものに大きな疑問を持っております。

 もう一つ伺いたいのが、やはり暗号化技術の革新の問題なんです。

 これはまだ未開発で、十億から三十億ぐらいお金がかかると言われていて、そのお金があるのであればICレコーダーをたくさん買っていただきたいというのが私の切なる要望なんですが、私は、これは、仮に暗号が開発されたとしても、警察署で通信傍受をするというのは大きな、いろいろな問題が出てくると思うんですね。

 業者に負担がかかるという話もありましたが、私は、やはりその場所というものは、絶対、警察署、警察の施設ではやらない方がいいと思うんですよ。それは何でかといいますと、この間視察に行ったときに通信傍受の様子をデモンストレーションしていただいて、通常であればイヤホンで聞くのを、我々がいるということでサービスで、スピーカーでみんなに聞こえるようにやっていただいたんですよ。だから、ああいうことも、警察署、警察の中だったらなきにしもあらずだと思うんですね。

 さっきのマンパワーの話にもなるんですけれども、一人で聞いているのは大変だから交代で聞こうとか、ちゃんと聞き漏らしがないように何人で聞こうとか、また、もっとうがった見方をすれば、スピーカーであれが流れていたら、私が買ってほしいと言ったICレコーダーを持っている人がいたら、そこで録音もできてしまうわけですし、警察署で傍受を実施するということに対してはいろいろな懸念が想定をされます。

 この件に関しては、これも過去に話がありまして、平成十二年の八月の九日に参議院の法務委員会で中村敦夫委員が質問をしているんですけれども、当時、将来的な技術革新の話で、通信事業者から線を引っ張ってくれば警察でも傍受ができるだろうという話を中村さんが御指摘されていて、そのときに政府参考人が、今の法律の枠組みであれば当然なし得ないし、考えるつもりもさらさらないというふうに申し上げたいと。システム上、回線を引っ張ってくれば、技術的な革新によって警察署でもできるんじゃないか、そういうことに対して、極めて慎重な発言を警察庁の政府参考人の方がおっしゃっているんです。

 今回、暗号技術、しかもまだないんですけれども、あったとしても、この平成十二年の慎重な姿勢、警察が警察署ではやらないとおっしゃっていたその姿勢を転換するということは、これは本当に、技術革新したからいいんだと簡単に言ってしまってはいけないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 今お示しをいただいた議事録を拝読しておりませんので、ちょっとそれについての詳細はよくわからないのでありますけれども、十数年前のその当時の認識としては、そういったことはおよそ想定はされていなかったわけでありますので、そのような御答弁を申し上げたということがあるいはあったのかもしれないというふうに考えております。

 ただ、その後十数年、実際にこの通信傍受を運用してまいりまして、やはり先ほど来申し上げているように、例えば、通信事業者に大変大きな御負担をおかけしている、常時立会人に立ち会っていただくとか、かなりの期間にわたってそうしたことをしてもらわなければならないですとか。あるいは、傍受できる場所というのも非常に限られておりまして、実際には東京その他のわずかな施設の場所でしかできないものですから、例えば遠隔の警察で傍受を実施したいというときに、北海道であれ九州であれ、そういった傍受ができる施設に多数の捜査員が出張してまいりまして、そこで傍受を実施する、そういう運用になっている。ある意味、大変非効率な状態が生じているということがございます。

 そういった実際の運用をしながら、そうした問題点といいますか、実際に捜査を行っていく上でのさまざまな支障というものが認識をされるに至ってきたということでございます。

 そういったことで、それに加えまして、こういった暗号技術というものも進展をしてまいりまして、法の制定当初想定をされていたそうした立会人による機能というものも、特定電子計算機、暗号化その他のさまざまな機能を持った計算機によって代替ができる、そうした確信を持つに至ったということでございまして、そういう理由で、今回の通信傍受の効率化、合理化という規定が盛り込まれたものというふうに承知をしています。

井出委員 山谷さんに伺いたいのです。

 私は、仮にこれから暗号技術が今想定されているようなものが開発されたとしても、今、合理性、非効率という話がありましたけれども、この種の捜査手法に、令状もそうですけれども、厳格な運用を持たせていくという意味では、やはり警察署でやらないということは非常に大事なことだと思うんですね。なかなか言葉が難しいんですけれども、立会人は今事実上ちょっと遠目から見ているだけなんですけれども、私はやはり、通信事業者がどうしても場所の提供も嫌だと言うんだったら話は別ですけれども、やはり立会人が大きな支障だということは通信事業者もおっしゃっていますし、とにかく、令状を通すということは、裁判所という第三者の目でその正当性を、最初の手続として通すわけですし、やはり、実施の場所が警察署の中になってしまうと、身内の中だけになってしまってチェックができなくなるということに対しては、もう一度慎重に考えていただきたい。

 振り込め詐欺を撲滅したいといって拡大するのは私はいいと思いますよ。暴力団だったら、私も犯罪の種類を拡大してもいいと思います。でも、この運用の部分、実施方法を、警察の施設でやるということはやはり慎重に考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受では、捜査官が傍受または再生をした通信は、特定電子計算機により全て自動的に改変不可能な形で記録媒体に記録され、裁判官に提出されることとなります。この記録媒体を通じて捜査官がどのような傍受を行ったかは全て明らかとなることから、捜査機関による恣意的な傍受が行われる余地はございません。

 このような仕組みによりまして、新たな制度のもとでも、立会人がいる場合と同様に、傍受の手続の適正が担保されることとなります。場所にかかわらず、適正な担保が行われると考えております。

井出委員 三浦さんに伺いたいんです。

 不服申し立ては一件しかないわけですよ。今、山谷さんがおっしゃったのは、最終的な記録はきちっとチェックできる体制にあるから、場所はどこでやっても、記録を提出しなきゃいけないから、ちゃんとやるんだというお話だと思うんですけれども、不服申し立ては一件しかない。

 伺いたいのは、実際、原記録とか傍受記録を、閲覧の希望、必要性があって閲覧したというケースというのは一体どれだけあるんですか。

三浦政府参考人 まず、傍受記録の閲覧につきましては、これは網羅的に把握をしておりませんけれども、都道府県警察において通信当事者に閲覧を行わせた例はあると承知をしております。

 また、原記録の閲覧の実施状況につきましては、原記録は、裁判所の方に提出をいたしまして、裁判所の方で保管をされるものでございまして、警察としては把握をいたしておりません。

井出委員 平木さん、原記録の閲覧例というのは聞いたことがありますか。

平木最高裁判所長官代理者 傍受の原記録を聴取、閲覧または複製した件数についてでございますけれども、平成二十七年六月十二日時点で、裁判所が保管していた傍受の原記録百七十五件につきまして調査をいたしましたところ、傍受の原記録の聴取、閲覧または複製が許可されたものは二十五件ございました。

 その内訳でありますが、通信傍受法二十五条三項に基づき、検察官または司法警察員から請求がなされたものが二十三件、通信傍受法二十五条五項に基づき、当該傍受に関する傍受記録の取り調べ請求がなされた被告事件の被告人またはその弁護人から請求がなされたものが二件でございました。

井出委員 被告人の側からは、やはり二件しかないわけなんですね。

 ですから、視察をする限り、スポットですか、各時間ごとに聞ける時間と聞けない時間とやっていただいていると思うんですけれども、事後の検証というか、事後チェックが働くからというところも、その二十五件のうち二十三件はやはり捜査機関側からの照会なんですよ。ここはすごく問題意識を持たなければいけないと思います。

 先ほど、傍受記録について網羅的に把握していないけれども例はあるという話があったんですけれども、実は、不服申し立てについても、警察庁は、ことしの参議院の内閣委員会で、山本議員の質問に対して、やはり、網羅的に把握していないとおっしゃっているんですよ。でも、一件あったことは聞いているというのが警察庁の答弁で、事後チェックが完璧になされるから暗号化でいいんだ、合理化していいんだというところはもう一度しっかりと検証する必要がある、そういうことを申し上げて、きょうは終わりたいと思います。

 どうもありがとうございます。

奥野委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。本日もよろしくお願いいたします。

 先般の参考人の堀江貴文さんが、今回の一連の刑事訴訟法案は捜査機関の焼け太りだということをおっしゃっていました。確かに、冤罪防止という観点から可視化の導入の必要性があるということで取り組んできたわけですけれども、それも対象範囲が十分広くないじゃないかという議論が続いているところです。

 その一方で、今回の通信傍受については、これこそ本当に一般の国民の皆さんも不安に感じる制度だと思います。まして、プライバシーの問題ですから、一旦自分のプライバシーが外へ漏れたら、これを取り戻すといったって、知れ渡ったら取り戻しようがない、取り返しがつかない、このような案件であります。

 そこで、まず最初に、通信傍受を行うに当たって、まず権限としては、条文上、検察官または司法警察員が判断し実行するというような書きぶりになっているんですが、通信傍受を行うに当たっての判断権限、それから、もしも、そのやり方が適法ではなかったとか、さまざま問題が出てきた場合に、一体どなたが責任をとるということになるのかについてお尋ねをいたします。警察組織に対してお聞きしたいので、山谷国家公安委員長にお願いします。

山谷国務大臣 通信傍受の実施に当たっては、傍受令状の請求や実施の方針等につき、当該都道府県警察の警察本部長までの決裁を得て、都道府県警察の組織的責任を明確にして実施するものでございます。

 また、一般論でございますが、責任のとり方については、その原因等に応じて判断されるものと考えておりますが、まずは通信傍受の適正な実施の徹底を図ってまいりたいと思います。

重徳委員 一応、令状は裁判所の方から出てくる、これを求めるということになっておりますけれども、あくまで責任は裁判所じゃなくて、本部長を筆頭とする警察組織にあるということでよろしいでしょうか。

山谷国務大臣 さようでございます。

重徳委員 まずそこが確認できましたので、警察組織として取り組むということがわかりました。

 さて、今回、この通信傍受については、午前中に鈴木委員から、平成十一年に成立した通信傍受法に基づくこれまでの運用について「Q&A」がホームページに載っているということで、これが法務省としての公式見解ということだと思います。

 それを見ますと、「Q1 なぜ犯罪捜査のための通信の傍受を行う必要があるのですか。」という問いに対して、るる説明があった上で、「主要先進諸国のほぼすべてにおいて通信傍受制度に関する法整備がなされており、我が国においてもこれを整備することが国際的要請になっています。」というような表現がありますが、これも、よく言うなというふうに私は思うんですね。

 私がこの委員会で再三取り上げましたように、国連などから、日本の刑事訴訟制度については、取り調べの可視化、弁護人の立ち会いなどなどおくれているという指摘がされている。あるいは、人質司法、代用監獄、さまざま言われている中で、国が、日本の政府がきちんと対応しなくちゃいけないだろうということに対しても、まあ一生懸命やりますぐらいの話で、このようにホームページに、先進諸国に追いつかなきゃというようなことがこの通信傍受については明示されているわけであります。

 その一方で、私は、今回、この通信傍受については、やはり憲法との関係で慎重に考えなければいけないと思っております。現行法が成立するときにもそのあたりは大いに議論になって、立法府による修正が行われたわけですから、今回も、憲法との関係をきっちりと整理して、疑いのない法案にしていかなければ間違うと思っております。

 そこで、林刑事局長、憲法十三条に由来しますプライバシーの権利、それから二十一条二項の通信の秘密との関係で、今回の法案は、特に前回と比べて拡大をします。今回の法案のその整合性について、まず御説明をいただきたいと思います。

林(眞)政府参考人 通信傍受は通信の秘密等を制約するものでありますけれども、犯罪捜査という公共の福祉の要請に基づく必要最小限度の制約は許されると考えられるわけでございます。

 本法律案における通信傍受法の改正は、一つには対象犯罪の拡大と、手続の合理化、効率化から成っております。

 このうちの対象犯罪の拡大につきましては、新たに追加する対象犯罪は、通信の秘密に対する制約に見合うだけの重大性を備えており、かつ、その犯罪の捜査において、通常、通信傍受の必要性、有用性が認められること、現行法が規定する通信傍受の要件はそのまま維持されている上に、新たに追加する対象犯罪については加重要件を設けることとしていること、こういったことから、通信の秘密等の保障に反しないと考えております。

 また、手続の合理化、効率化の面につきましては、まず、通信傍受の要件を改めるものではなく、裁判官の発する傍受令状が必要であることも現在と変わらないこと、また、新たに導入する手続のうち、いずれによる場合でありましても、捜査機関がその内容を知り得る通信の範囲は、現行通信傍受法による傍受の場合と変わらず、通信の秘密に対する制約の程度に実質的な差異は生じないことなどから、これについても通信の秘密等の保障に反しないものと考えております。

重徳委員 先ほどの「Q&A」に立ち戻りますと、「Q2 通信の傍受を認めることは、通信の秘密を保障する憲法に違反しないのですか。」という問いが書かれています。

 これに対して、答えは、今の局長答弁ほど詳しくありませんけれども、「憲法第二十一条第二項は、通信の秘密を保障しており、これについて最大限尊重すべきことは言うまでもありません。他方、憲法第十二条及び第十三条は、公共の福祉による制約を規定しており、通信の秘密の保障も、絶対無制限のものではなく、公共の福祉の要請に基づく場合には、必要最小限の範囲でその制約が許されるということは、憲法解釈の常識です。」と書いてあるんですね。「常識です。」というのも、何か、そんなことも知らぬのかと言わんばかりで、ちょっと感じが悪いんですが。

 それから、「Q3 通信傍受が認められると、警察が、犯罪に関係のない一般市民の通話を自由に聞くおそれはないのですか。」という問いに対して、「本法案の通信傍受は、その対象となる犯罪が薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航の罪、組織的な殺人の罪に限定されており、」というふうに堂々と書かれているんです。

 何か、このように限定をかけているから大丈夫なんだよという説明が、最初の法案で何度も繰り返し説明されたと思うんですけれども、今回の、はっきり言って大きく広げる局面にあって、これまでと何ら変わりませんというような御説明というのは、これはなかなかしっくりくるものじゃないと思うんですね。

 だから、このときから世の中どれだけ変わったのかとか、そういう立法事実の方がきっちりと説明されない限り、これは、国民的に納得できるなんて、この委員会においてもなるほどねというふうにはならないと私は思います。

 ちょっと確認したいんですが、これは私の質問というよりは、午前中に黒岩委員が質問されていました加重要件について、ちょっと私からも、黒岩委員からの質疑を踏まえてもう一度確認をしたいんです。

 今回の加重要件というのは、要は、これまでは「犯罪が数人の共謀によるもの」という要件だったところに加えて、何が加重かというと、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるものに限る。」ということなんですが、少なくともこれまでの四つの類型に関して言えば、加重も何も、数人の共謀によって行われる以上は役割の分担ぐらいは事前に打ち合わせるだろうということで、加重というほどのことじゃないんじゃないかと思います。

 今回加えられる九類型についても、確かに、単独犯とは違いますということは当然明示しなきゃいけないんですが、単独じゃないよと言っているにすぎないんじゃないかという、これも黒岩委員は指摘していたと思いますが、私もそう思うんですよ。数人の共謀ということに何が加重されているのか、現場で行き当たりばったりで一緒にやったということは含まれませんというのは、それはそのとおりですけれども、そんなことを通信傍受でやりとりするはずがないわけですから。

 ですから、数人の共謀であり、それを通信傍受によって解明しようとする、それをするに当たって、この加重要件というのは何の意味があるんでしょうか。いま一度御説明いただきたいと思います。

林(眞)政府参考人 現行法の対象犯罪については四罪種でございますが、四罪種については、その犯罪の性質上、組織的な犯罪、あるいはその構成要件自体から組織性が求められている、こういったものが対象犯罪となっております。

 今回、対象犯罪を、例えば窃盗とか詐欺とか、そういった罪名の犯罪にも広げるわけでございますが、その際に、やはりそれらの罪につきましては、その犯罪の性質上、そういう組織性というものがあるわけではございませんので、あえてこの要件の中で今回の組織性の要件というものを加重したわけでございます。

 その際に、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により」というところの要件でございますけれども、一つには、単純に、役割の分担なくして行われた犯罪についてはこの要件を満たさないということが一つございます。さらには、その役割の分担も、現場において生じたものというものでは足りないわけでございまして、あらかじめそういった役割分担というものが定められている必要があります。この二つの要件によって、組織的な犯罪に対処するというこの法律の趣旨に沿うために、こうした加重要件を課すものでございます。

重徳委員 あらかじめ要件とか、それから何となく組織性を言いあらわしているのかもしれませんが、こういうもの以外で通信傍受の目的にかなうものというのはないと思うんですよね。だから、何が言いたいかというと、加重要件というほどの要件じゃないんじゃないかということなんですよ。当然のことであって、この加重要件によって極めて何かを限定しているよということではないんじゃないか。

 そもそも、通信傍受で本来の目的に沿って犯罪の解明をしようとする以上は、このぐらいのものにとどまるのは当たり前の話であって、だから、特段これによって厳しく限定をしたということではなくて、疑われるような、単独犯だろうと、単独犯のときに他人とやりとりするのかどうかわかりませんが、何か単に当たり前のことを規定しただけであって、特段意味のある規定ではないんじゃないかと思うんですけれども、ここに込められている特段の意味があるのであれば、そこをきちんと説明していただきたいんです。さもなくば、今回は加重要件を加えましたなんということを、そんなに胸を張って言えるような要件じゃないと思うんですよ。

 もう一度、その点に絞って御答弁いただけますか。

林(眞)政府参考人 今回のような加重要件を加えない場合には、数人共謀による詐欺罪、あるいは数人共謀による窃盗罪、こういった事件が通信傍受の対象となってしまうわけでございます。そこには何ら組織性というものはうかがわれないわけでございまして、数人共謀というだけでは組織性はうかがわれません。

 その際に、やはり組織性というものの要件を加重する場合においては、数人の関与する者が、一つは、役割を分担して一つの犯罪に対して関与しているということ、さらに、あらかじめその分担が定められているということ、このことを加えることによって、窃盗でありますとか詐欺事件につきましても、そういった組織性というものが要件となると考えております。

 実際に傍受令状を請求するに当たっては、「あらかじめ定められた」という点と「役割の分担」というものがあることを疎明しなくては令状請求において令状が出ないわけでございますので、そういった形で、この通信傍受の手続に、組織的な犯罪に対処するというこの法律の趣旨というものをそこに具現しようとしたものでございます。

重徳委員 そうなると、組織犯罪処罰法という法律があって、そこに言う組織というか団体というんですか、そこの定義は、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体」であるというようなことでありまして、かつ、ちょっと違うのは「反復して行われるもの」ということなんですが、きょう質疑の中でもあったように、反復する要件まで入れてしまうと一発目ができないじゃないかというような御答弁もありましたが、今回の法案に入れている役割分担というところが重要なのか、継続的結合体、組織であるということが大事なのか、ちょっとわからないんですよ。

 それは、二人以上で一緒にやろうといったら、それは役割分担はしますよね。だから、そんなに大した要件じゃないと思うんですね。それよりも、組織性というところが重要なのであれば、そこをきちんと明記しなければ、何を言っているんだかわからないと思うんです。結合体という一言はありますけれども、これが組織だということなんでしょうかね。組織を狙い撃つんだという方が明確だと思うんです。

 たまたま何人かで初めて共謀しようとしているところであればどこでも狙える、役割分担さえしていれば狙える、こういうことなんでしょうか。もっとかちっとわかりやすくしないと、みんな、別にみんなが犯罪者じゃありませんけれども、何か悪巧みのような話をしていたら全部通信傍受されるんじゃないか、こんなようなおそれすら生まれてしまう可能性があります。ここはやはりきちんと明確にターゲティングをしないと、非常にわかりにくい法案になると思うんですが、いかがでしょうか。

林(眞)政府参考人 委員の御指摘のあるところで、組織性の明確性を高めるために、特に、今委員御指摘ありましたが、組織的犯罪処罰法の三条一項の要件、こういう限定をかけるという御意見、こういったものは議論の過程ではございました。

 これによりますと、組織犯罪処罰法三条一項は、「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」こういった要件がございますけれども、一つには、この要件自体は、これは実体法でございまして、刑の加重のための要件でございます。したがいまして、まず、通信傍受という手続の実施要件をこれと同じにする必然性はないと考えております。

 その上で、かつ、この場合には、もしこの三条一項の要件を付加するとなりますと、共犯者の間に縦の指揮命令関係がある事案に限定されることとなりますけれども、縦の指揮命令関係はないまでも、多数人が綿密に役割分担をして計画的に実行する犯罪、こういったものについてもやはり通信傍受の対象とする必要があると考えております。したがいまして、この組織的犯罪処罰法三条一項のような、「団体の活動として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたとき」、こういった要件を通信傍受の要件とすることは相当でないと考えられたものでございます。

 したがいまして、今回、そうした指揮命令関係というところの要素は求めずに、あらかじめ相互の役割の分担というものが定められているという点に組織性を求めたわけでございます。

重徳委員 ちょっとこだわるようですが、とすると、指揮命令がないような組織も対象にするということですから、それによってターゲットとなる組織はどのような組織のことなんでしょうか。

林(眞)政府参考人 指揮命令のないものをターゲットとするという意味ではございません。当然、指揮命令のある組織による犯罪というものがターゲットとなり得るわけでございますが、組織的な犯罪の中には、そうした上下の指揮命令関係というものが明確でないものもございます。むしろ、フラットな形で多数人が役割分担をして一つの犯罪について敢行する、こういったこともございますので、そういった場合にはやはり通信傍受という手続を使うことができる、このようにする必要があろうかと考えたわけでございます。

重徳委員 聞けば聞くほど、ちょっと曖昧な要件だと思うんですね。今おっしゃるようなことも、この条文を見るだけでははっきりはしないんです。だから、解釈によって、実はこうでしたというような説明が後づけで可能になるような条文というのは、私は非常によろしくないと思います。

 今回、やはり当事者となり得る人というのは、潜在的にはいわば国民全員、そのぐらい広いと思うんですよ。司法取引とか可視化とか、今回の保釈とか、そういうものと違って、この通信傍受の世界だけは今回の刑事訴訟法においては非常に広い。多くの国民がもっと関心を、この話がもっと知れ渡れば、できるだけ知れ渡るようにはしたいんですけれども、こういう法律を政府が目指しているよということをちゃんと知ってもらった上で、本当に大丈夫かということも確認しながら議論をしていく必要があると思っております。

 さて、次に、必要最小限という言葉がよく出ますね、憲法との関係で。これは安保法制もそうなんですけれども、その時々の政府の解釈によって必要最小限の範囲が変わってき得るのではないかなと思うんですね。

 きょう午前中の議論の中で、立法事実は一体何かという話が何度か出てまいりました。私、通告では、今回の九類型の罪名ごとに全部それぞれ立法事実を説明されたしという通告もさせていただいておりましたが、それはちょっと改めてやりたいと思うんですが、きょう、特に、組織窃盗という名のもとに、窃盗という部分がクローズアップされておりました。私が通告しております九類型のうちの窃盗、強盗、強盗致死傷などありますけれども、その分野についての立法事実、つまり、具体的な通信傍受の必要性を改めて御説明いただきたいと思います。

林(眞)政府参考人 まず、窃盗につきましては、人の財産を侵害する重大な犯罪である上に、法定刑の上限が懲役十年であって、法定刑自体重いものでございます。また、強盗致死傷、強盗につきましては、財産のみならず人の生命身体にもかかわる重大な犯罪である上、法定刑の上でも、その上限は、強盗致死が死刑、強盗致傷が無期懲役であって、いずれも最も重い犯罪類型かそれに次ぐものとして位置づけられて、強盗の法定刑の上限も懲役二十年でございまして、法定刑自体重いものであると考えます。

 そして、組織的な窃盗事件は依然として後を絶たない状況でございまして、密入国した外国人が、日本国内で不法残留していた同国人から成る窃盗組織を、組織体を構成した上で、関西以西の西日本一体にグループを分散させて、三年以上もの間、被害総額約十億四千四百万円相当の侵入盗を敢行していた事案、こうした事案などが発生している上に、こうした窃盗の事案というものは、強盗とか強盗致死傷にも容易に発展し得るものであると考えております。

 また、組織的な犯罪として敢行された強盗といたしましても、そういった実行犯グループまた情報提供グループ、さまざまなグループに役割分担をした上で、警備会社を襲撃して現金六億円を強取した、こういった建造物侵入、強盗傷人の事案などが発生しているわけでございます。

 こういった事案につきましては、一般国民にとって重大な脅威になっておりまして、やはり首謀者等の背後関係を含む事案の解明が強く求められるところでございます。

 こうした組織的な窃盗、強盗、強盗致死傷の事案におきましては、実行犯とか見張り役とか、あるいは盗品の運搬あるいは処分役、こういった役割を分担して共同して行われる組織的な犯行でございますので、なかなか組織の犯行の全容解明が困難でございます。また、組織において行うために、報復を恐れて供述を拒むというような場合もございまして、犯人を含めた関係者からの供述を得ることが困難でございます。

 こういったことから、通信傍受以外の捜査手法におきましては、背後関係を含む事案の解明が極めて困難である場合があると考えられます。その上で、こうした犯罪につきましては、役割分担をした関与者相互間で、携帯電話などの通信手段を用いて相互連絡、指示等を行う場合が多くございますので、やはりこうした場合においては、通信傍受によって客観的証拠を収集する必要性、有用性は極めて高いと考えられます。

 そういったことから、犯罪の重大性及び通信傍受という手続を使うことの必要性、有用性が極めて高いと考えられたことから、窃盗、強盗、強盗致死傷、こういったものを対象犯罪に追加することとしたものでございます。

重徳委員 個別の話を聞けば、物によっては重大な犯罪があって、国民も有用性を感じるようなものも当然あろうかと思います。しかし、この案件は、何といっても憲法の要請との兼ね合いでございます。

 上川大臣に確認したいんですが、必要最小限だよということを、ずっとこれまで、平成十一年から現行法について説明をしてこられたわけですよね。今回、九つも類型がふえて、それはこういう重大犯罪があってと、それは、今のように局長もるる答弁されていましたけれども、だけれども、余りに広がりがあると思うんですよ。しかも、この不明確な加重要件でですね。

 きょう午前中にも、さらに今後、テロだとかマネーロンダリングとかいろいろな課題があるんだ、場合によってはこういうことも含めていきたいというようなこと、これはもう必要最小限というものが、いわば政府から提案の法案ですから、政府の解釈によって際限なく広がっていくというおそれがあるんじゃないかと思うんですが、ここは責任を持って、今の法案も問題だと思いますよ、だけれども、今、どのようにこの状況を御説明されるんでしょうか、お答えください。

上川国務大臣 平成十一年に現行通信傍受法がスタートしたということでありますが、その前からの議論におきまして、やはり憲法の求める通信の秘密に対する制限ということがございまして、その意味で、必要不可欠なものに限定されるということで、四対象犯罪というところに絞られたというふうに考えているところでございます。

 この考え方につきましては、現在の改正におきましても同様でございまして、この間十六年たっているわけでありますが、こうしたこれまでの運用の状況を勘案した上で、現時点におきましての犯罪情勢等を踏まえた形で、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものに限定して追加をするということでございます。

 現時点の犯罪情勢等をしっかりと踏まえた上で、この通信傍受の対象とするということが必要不可欠と考えられる、先ほど局長が御答弁したような、そうした判断にのっとって対象犯罪に新たに加えるということ、そしてそれにつきましては、通信の秘密を保障する憲法の要請に反するものではない、そうした限定の中で今回改正をお願いしているところでございます。

重徳委員 これはもう安保法制と同じような論理のぶつかりだと思うんですね。広く認めておいて、実際、立法事実は何だといったら、非常に限定的で重大な犯罪の例を挙げられます。だったら、最初からそのぐらい限定する条文にちゃんと書き下したらいいじゃないかというのが、今、安保法制でも維新案はそういうことで限定的な要件をかけた対案を出しているわけでありまして、これと同じ話だと思うんですね。

 憲法には全く抵触しない、必要最小限度というのも全く考え方は同じだと言いながら、今まで四つだったのが、さらに九つ、しかも、誰がどう見ても身近な犯罪です、そういう類型まで加える。これは非常に大きな問題があると私は思います。

 最後に、立会人の話についてちょっと確認をしたいんです。

 これも「Q&A」にしきりに書いてあるんですね。いろいろな心配事に対して、大丈夫です、立会人が常時立ち会って、そのもとで実施されますと。「立会人は、何のために立ち会うのですか。」というと、「傍受が令状に従って行われていることを確認したり、記録の封印」、これは今回はないかもしれませんけれども、「などによって、傍受が適正に行われていることをチェックする役割を果たします。」「立会人は、傍受の実施に関して、意見を述べることもできます。」意見は余り述べていないらしいですがね、実際には。

 だけれども、やはり立会人がいるから問題のない捜査が行われ、立会人も意見を述べる必要もなかった。だけれども、これから立会人がいなくなって、それでも今までの状況を本当に維持できると思われますか。

 山谷大臣にお伺いします。

 これは、警察の言い分は警察の言い分、捜査の必要性も、それはあるといえばあるでしょう。だけれども、それと、個人のプライバシーの問題、通信の秘密の問題、そういった非常に重要な国民一般の利益と捜査上の必要性、この大きなぶつかり合いなんです。だから、これはもう本当に一政治家としてもバランス感覚が非常に求められる問題だと思っております。山谷国家公安委員長の御答弁を求めます。

山谷国務大臣 現行制度においては、立会人は、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないか、許可された期間が守られているかなどを外形的にチェックするとともに、傍受結果の記録を封印するなどの役割を担っているものと承知しております。

 新たな方式による通信傍受においては、暗号技術を初めとする技術的措置を用いて、現行の立会人の機能にかえて、通信事業者みずからが傍受対象の通信を捜査機関の施設に設置された正規の傍受装置に確実に暗号送信するとともに、裁判官による事後の正確な審査が可能となるよう、特別な機能を有する特定電子計算機を用いて傍受を行い、傍受結果の全てを、直ちに機械的に暗号を記録いたしますこととなり、現行制度で立会人が果たしている役割は技術的措置により確実に代替されることから、通信傍受の適正は十分に担保されると考えております。

重徳委員 今、私がお聞きしたかったのは、立会人がいることによって、いわば運用の抑止力になっていたんじゃないかということなんですよ。その機能はこれからちゃんと果たされるのか。まして、今回は警察署内でやるわけでしょう。だから、そこの部分をお尋ねしているんです。その点をお答えください。

山谷国務大臣 新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受では、捜査官が傍受または再生をした通信は、特定電子計算機により、全て自動的に改変不可能な形で記録媒体に記録され、裁判官に提出されることとなります。この記録媒体を通じて、捜査官がどのような傍受を行ったかは全て明らかとなることから、捜査機関により恣意的な傍受が行われる余地はないわけでございます。

 このような仕組みによりまして、新たな制度のもとでも、立会人がいる場合と同様に、傍受の手続の適正が担保されることから、御懸念は当たらないというふうに考えております。

奥野委員長 重徳君、時間です。

重徳委員 あらゆる分野で刑事訴訟手続が先進的である国ならまだいいんですよ。だけれども、あらゆる分野でおくれている国が、ここだけは先進国並みに信頼しろというふうに言われても、ここはやはり、いきなり立会人を取り除くような、そういうところから入る、通信傍受を広げるところから入る、こういうことに対して非常に大きな疑念があるんです。こういったことをきちんと受けとめていただきたいと思います。

 また引き続きやらせてください。

奥野委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 刑事訴訟法等一部改正案ですが、本日から通信傍受法、いわゆる盗聴法の改正案についての審議が始まりました。

 私は、まず初めに、憲法違反と言われ、多くの反対の声が寄せられてきた盗聴法を今回さらに拡大するとともに、それをほかの法案とともにあわせてのめと言わんばかりのこそくなやり方で刑訴法改正案が提出されたことに強く抗議をするものです。

 私は、緒方宅盗聴事件の住民訴訟原告として、盗聴を許さないと訴えてまいりました。当委員会でも、奥野委員長のもと、通信傍受施設の視察が超党派で、委員会として行われました。私もその調査を求めてきた一人です。

 そもそも、現行の通信傍受法、盗聴法は、憲法で保障された通信の秘密、プライバシー権を侵害する違憲の法律と言わなければなりません。

 通信傍受方法について、まず伺います。

 お手元にお配りいたしました資料ですけれども、その一枚目に四つの方式が書かれております。一、現行のリアルタイム方式、通信事業者の施設で聞くものです。この方式に加えて、法案では、二、一時的保存方式、通信事業者の施設で行うもの、三、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式、これは捜査機関の施設で行うもの、四、特定電子計算機を用いる一時保存方式、捜査機関の施設で行うものの三種類の新しい通信傍受方式が準備されております。

 まず、一つ目の現行の方式について伺います。

 これは今後も使われるのですね。確認です。

林(眞)政府参考人 御指摘のとおりでございまして、現行のリアルタイム方式で行う通信傍受は今後とも制度として残っております。

畑野委員 そうしますと、その次の資料のところで、この間当委員会で通信傍受施設に調査に伺ったときに警察庁から資料をいただきましたので、それを、二枚目、電話傍受(音声傍受)装置と、それから三枚目、メール等傍受装置の資料、そして次に、メール閲覧時の表示内容、スポット傍受が行われるときのものをつけました。

 今の方式について、資料の五枚目なんですが、ここのちょうど左のところにあります立会人のところも見させていただいたわけですが、その部屋から出て、ちょうど真ん中の下のところに七と黄色い囲みがありまして、犯罪関連通信等以外の通信を消去するというところがございます。

 通信傍受をする場合、警察によって傍受された通信傍受記録の中で、犯罪関連通信等以外の通信であれば消去されることになっております。伺いたいのは、それを判断して、その通信部分を消去するのは誰になるか、お答えいただけますか。

三浦政府参考人 その対象の通信が犯罪関連通信であるかどうかということを判断するのは、その捜査を担当している捜査責任者ということになろうと思います。

畑野委員 捜査責任者、具体的にお名前を言えますか、どういう人か。

三浦政府参考人 例えば、本部の薬物担当課においてそういった薬物関係の通信傍受を行っているという場合には、そうした所属の幹部といいますか、そういった捜査を担当するセクションのしかるべき幹部、責任のある者が判断をするということだと思っております。

畑野委員 幹部というのはどういうクラスの方ですか、階級でいうと。

三浦政府参考人 一概にはちょっと答えにくいと思いますけれども、一般には、捜査主任官をしている警部であり、あるいは、その上司である警視級のクラスの者であろうと思っております。

畑野委員 警察庁からいただいた依命通達からは、それぞれかかわる捜査主任官ですとか、それから傍受実施主任官ですとか、通信記録物等管理者とか、そういうのを伺っているんですが、そういう人たちですか。それとも、もっと上の方ですか。

三浦政府参考人 そのとおりでございまして、そうした主任官が判断をするものと理解しております。

畑野委員 それでは、そういう人が消去したというのをチェックするのは誰になりますか。

三浦政府参考人 そうした捜査資料、通信傍受の結果等も含めまして、それはまたその上司等に報告をされるということになろうかと思いますので、そうした者が一義的にはチェックをするということになろうと思います。

 そのほか、傍受の経過につきましては、全て原記録という形で作成をされますので、その原記録は裁判所に提出をされまして、最終的には、どういう傍受を行ったのか、どういう内容の通信を取得したかということについては、裁判所の方でそうした記録が残されるということだと理解をしております。

畑野委員 最後のところが全然違うんですよ。

 原記録は裁判所に行くんですけれども、捜査上必要な記録をもう一つつくりますよね。そこで犯罪に関係ないものは消去しなくちゃいけない、担当者が消す、それをチェックするのは上司ですということですよね。そこまではいいんですけれども、その次なんです。

 適正に消去されているかどうか、犯罪に無関係な通信が消去されているのかどうか、これを検証する制度というのはあるんですか。

三浦政府参考人 傍受をいたしますと、一般に、その通信当事者に対して通知が参りますので、そうした通信の当事者につきましては、事後的ではありますけれども、どういった記録がつくられたのかということを、例えば閲覧するといったことが可能でございます。

畑野委員 質問に全然お答えになっていないんです。よくわかっていないのかというふうに言わざるを得ないんです。

 私が聞いているのは、この資料の五枚目の真ん中の黄色の七、犯罪関連通信等以外の通信を消去、つまり、裁判所に行ったのではない、捜査機関に行く、作成された傍受記録について聞いているんです。これは犯罪に関係なければ消去しなくちゃいけないということですが、では、それを本当に消去したのかどうかをチェックする体制はあるんですかと聞いているんです。

三浦政府参考人 ちょっと御質問の趣旨を正しく理解しているかどうかというところはありますけれども、傍受記録を作成する際に犯罪に関連しない通信を消去する、それは、先ほど来申し上げておりますように、一義的には捜査主任官といいますか、そうした捜査を担当する者の責任においてなされるものだというように考えております。

 そのほか、傍受記録の通信の当事者に対しては通知がなされるわけですので、その当事者は、原記録ではなく傍受記録の閲覧をするということが可能でございます。また、傍受記録につきましては、最終的には捜査資料として裁判所に提出をされるといったことにもなりますので、そうした無関係な通信が含まれているとすれば、そういったところでもチェックが働くものというように考えております。

畑野委員 ですから、その傍受記録ですけれども、消しましたということにして違うものが残っているということだってあり得るじゃないですか、考えようによっては。そういうことを含めて、本当に正しく消去できたのかということを客観的に検証するような制度はあるんですか、過ちのないようにできているんですかということです。

三浦政府参考人 法律上も消去しなければならないということが明確な規範、規律として書かれているわけでございまして、もしそうしたものに違背をして正しく消去をしていなかったとなれば、そうした規律といいますか、規制にも違反をすることにもなりますので、通常、そうしたことは行われ得ず、特に、傍受というのは非常に重要な手続といいますか、慎重な処理を要するものでございますので、捜査機関としては、そうしたことは起こらないように心して行われているものというように理解をしております。

畑野委員 つまり、そういうのを検証する制度はないということですよね。法律に書かれていますということしかないじゃないですか。結局、ブラックボックスですよね。

 山谷国家公安委員長に伺います。

 お話を聞いていて、これは本当に、法律に基づいてやると言うんだけれども、それをきちっと客観的にチェックできる制度があるのかどうかということが問われていると思うんです。山谷大臣の御所見を伺いたいと思います。

山谷国務大臣 警察といたしましては、法制度に従って運用をしていくという立場でございます。制度設計に関するお尋ねであれば、制度所管の法務省からお答えするのが適当かと存じます。

畑野委員 警察内部で行い、あるいは捜査内部で行って、チェックができるわけはないということを申し上げたいというふうに思います。何の保証もないということです。

 一つ目はそういうことで、現行で、これからも続けられるということなんですが、では、先ほどお配りした一枚目の資料、四つの方式がありますけれども、時間の関係で、三つ目と四つ目について伺います。

 三、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式、四、特定電子計算機を用いる一時的保存方式です。これは、濫用のおそれが極めて高い、問題のある方式だと思うんです。なぜならば、立会人制度が廃止されているからです。

 通信傍受をする際に立会人がいるということは、捜査官にとって、違法な捜査はできないという大きなプレッシャーがかかっているというふうに私は当委員会での視察でもよく理解ができました。

 伺いますけれども、そもそも立会人を置いてきた趣旨について御説明ください。

林(眞)政府参考人 現行通信傍受法において、傍受の実施をするときは、常時立会人を立ち会わせなければならないとされております。その趣旨は、捜査機関以外の第三者を立ち会わせることにより、傍受の実施手続の公正を担保しようとするものでございます。

 具体的に言いますれば、立会人は、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないかどうか、許可された期間が守られているかどうか、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかどうかなどの外形的な事項についてチェックをする役割がございます。

 また、傍受の中断、終了の際に、裁判官に提出される傍受した通信を記録した記録媒体について、改変を防止するための封印を行う、こういった役割を果たすことによりまして、通信傍受の実施について、その適正を確保することが求められております。

畑野委員 立会人はそういう役割だったという話ですが、それでは、今回の法案で、三、特定電子計算機を用いるリアルタイム方式と、四、特定電子計算機を用いる一時的保存方式の場合に、立会人制度を廃止した理由は何ですか。

林(眞)政府参考人 特定電子計算機を用いる通信傍受の実施手続におきましては、まず通信事業者が、傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、許可された期間に即して、特定電子計算機へ伝送することとされております。そのことから、これによりまして、傍受のための機器に接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いがないか、許可された期間が守られているかという点の適正は担保されると考えております。

 また、現行通信傍受法におきまして、立会人が、傍受をした通信等について全て録音等の記録がなされているかをチェックし、裁判官に提出する記録媒体の封印を行うこととされているのは、傍受が適正に行われたかどうかというものを事後的に検証できるようにするためでございます。この点につきましては、特定電子計算機が傍受をした通信の全てと傍受の経過を自動的にかつ改変できないように暗号化して記録することによって、担保されます。

 したがいまして、こうした立会人がなくても、通信傍受を適正にできる手当てはなされているわけでございます。

 なお、通信傍受で、現行のもとで立会人が行う外形的事項のチェックといたしまして、捜査官が該当性判断のための傍受、いわゆるスポット傍受の際の機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうか、こういったことを外形的に立会人がチェックすることも含まれているとされております。

 もっとも、仮に捜査官がこの傍受機器のスイッチのオン、オフを行っていないことを立会人が認識して指摘し得ることがあるといたしましても、捜査官が適正に該当性を判断して傍受を継続しているかどうかにつきましては、最終的には通信の内容を踏まえなければ判断することが困難であり、現行通信傍受法は、この該当性判断のための傍受の適正というものは、基本的には、傍受した通信が全て傍受の原記録に記録されて、事後検証が可能となるということによって担保されていると考えます。

 この点、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続におきましても、該当性判断のために傍受をしたものをも含め、傍受をした通信が全て改変できない形で自動的に記録媒体に記録され、事後的に検証され得る以上、立会人がいる場合と同様に、傍受の実施の適正が確保されるものと考えております。

畑野委員 詳しい話をいろいろとしていただきました。

 伺いますけれども、通信傍受令状がありますよね。これを発付する際に、この事件についてこの特定電子計算機が使われる、それが適正に作動するかどうかということをきちんと検証する必要が出てくると思うんですね。

 それでは、裁判官が通信傍受令状を発付するときに、それを判断することはできるんですか。

林(眞)政府参考人 通信傍受令状を請求する際に、特定電子計算機を使うということであれば、そのことの疎明を必ず裁判官に向かってすることになります。その際に、裁判官においては、どのような特定電子計算機において行われるものであるか、その特定電子計算機の仕様がどのようなものであるか、こういったことをあわせて判断した上で、令状相当と認めるときには令状を発付するということになろうかと思います。

畑野委員 裁判官全員が、難しい暗号の話とか、あるいはいろいろな仕様のことについてわかるのか、疑問ですよね。

 大体、私たちも委員会で現行の傍受装置は見に行きましたけれども、これからどういうものができるか、それが本当に正しくできるのかというのは誰も見ていない、つくってもいないわけですから。ですから、国会議員もここで審議するんだけれども、チェックもできないですよね。どうですか。

林(眞)政府参考人 新たな通信傍受の手続の許可を得ようとする場合には、捜査機関は、傍受令状の請求に当たりまして、実際に用いようとする装置の仕様書でありますとか、当該装置を製造した民間業者がこの仕様書に沿って製造したものであることを証する文書、当該装置が法律で定めるところの特定電子計算機の要件を満たす機能を有するものであって、裁判所の職員が作成する鍵を用いた暗号化や復号を行うことができるものであることを示す資料、こういったものを提供することとなろうかと思います。

 また、通信の暗号化等を行う通信事業者の設備面、人員面での体制でありますとか、捜査機関と通信事業者との間の事前協議の状況に関する資料など、技術的な事項も含めまして、裁判官が新たな傍受の方法を許可するのが相当であると判断するに足りる資料を提供することとなろうと思います。

 裁判官におきましては、そうした資料を吟味するなどして、法定の手続に従って適正に傍受が実施されると判断した場合に、傍受令状を発付することになろうかと思います。

畑野委員 この特定電子計算機は、本当にブラックボックスだと思うんですよね。どういうふうな仕様になっているか、チェックすることができないというふうに言わなくてはなりません。

 さらに、こうした三番目と四番目の方式ですけれども、捜査機関が自由に通信データを聞くことができるわけですね。これまで通信事業者の施設だったのが、捜査機関の施設になるわけです。

 この場合に、捜査機関が、記録された通信データを違法にコピーすることは可能なのではないかと思いますが、いかがですか。

三浦政府参考人 通信傍受を行う際には、復号したものが全て原記録として自動的に保存されるということになります。その瞬間、暗号化をされるということになります。

 それを復号するための鍵というのは、これは裁判所のみが保管をすることとされておりまして、捜査機関はその鍵を保有しておりませんので、捜査機関が原記録の複製を作成し、それを活用するということはできません。

畑野委員 なぜそれができないんですか。

三浦政府参考人 原記録は、特定電子計算機の中の処理で、傍受または再生と同時に暗号化をされて記録されるわけであります。その記録を復号する、再び聞くことができるようにするための鍵というのは捜査機関は保有をしておりません。裁判所の職員があらかじめ、通信事業者、それから捜査機関、それから裁判所自身が保管をするものとして三つの鍵をつくるわけですけれども、原記録を復号するための鍵というのは裁判所のみが保管をしているわけでありまして、捜査機関は持っておりません。持っておりませんので、複製を作成するということはできないわけであります。

畑野委員 複製のことを聞いているんじゃなくて、その装置そのものについて聞いているんですね。

 この特定電子計算機ですよ。これはブラックボックスだ、誰も見たことがない、つくられてもいないわけですから。そういう機能をつけるというふうに法律上書くというふうになっているわけですけれども、例えば検察庁や警察署において立会人がいない状態で傍受することを認めるわけですよね。例えば、特定電子計算機の仕様を改ざんして、もう一本ラインを引いて通信データを聞き放題にするということは容易ではないかというふうに指摘する人もいるんです。

 この間、通信傍受施設を視察に行きましたら、先ほどお話があったデロイトトーマツ社からは、破られることのない暗号はあるのかという問いに、絶対ないとは言えない、今は大丈夫と思うけれども将来はわかりませんという話だったわけですね。当たり前ですよ。年金の問題だってそうだし、アメリカでもサイバー攻撃で二千二百万件の情報が漏れるという時代ですよ。

 通信傍受された通信データというのは、個人のプライバシーに関する極めて重要なデータです。この三のところを見ると、赤い線で、通信事業者の施設から直接捜査機関の施設に送られるということですけれども、その傍受データが送信されるときに、その途中に情報の流出の可能性というのはないんですか。

三浦政府参考人 警察におきましては、個人情報初め多くの機密情報を保有しておりますけれども、それらを取り扱う業務に用いるネットワークは、そもそもインターネットとは接続をしておりません。そのため、近時大きな問題となっている標的型メールやDoS攻撃等のセキュリティーリスクとは遮断をされているものであります。

 また、新たな方式による通信傍受では、ネットワークのインターネットからの遮断等、これらの措置を講じることに加えまして、送受信される通信傍受に係る情報それ自体にも強固な暗号化を行うことになっておりまして、セキュリティーについては万全を期しているところでございます。

畑野委員 万全を期すといっても、それも保証がない、通信データが流出する危険性が否定できないということは今の答弁でも明らかになったと思います。

 立会人をなくして特定電子計算機で通信傍受を行う方式では違法な通信傍受が行われる可能性が高いと私は言わざるを得ないんですが、上川法務大臣に伺いたいんですが、立会人をなくすことの危険性についての御認識はいかがでしょうか。

上川国務大臣 今回の法律案におきまして、新たに導入するということで、特定電子計算機を用いる通信傍受の実施の手続ということでケースを三つ追加する、こうしたことでございました。

 立ち会いや記録媒体の封印にかわりまして、暗号技術の進歩、こうしたものを最大限活用した技術的な措置、システムを開発して、そして適正な実施を確保するということで、立ち会いと記録媒体の封印を不要として傍受を行う、こうしたシステムをつくり上げる、これが前提になっているものでございます。

畑野委員 装置もない時点で機械の信頼性について断言するということは、全くの空論であるというふうに申し上げたいと思います。

 最後に、法案では対象犯罪が大幅に拡大をしております。したがって、傍受対象事案は大幅に増加することが予想されます。しかしながら、傍受禁止規定は従前のままになっております。現行法の十五条、法案では第十六条、医師、弁護士などを傍受してはならないという規定がありますが、報道関係者が入っていない、その理由をお示しください。まず、そのことを伺います。

林(眞)政府参考人 現行通信傍受法の第十五条、これにつきましては、医師や弁護士等の職にある者との間の通信については傍受をしてはならない旨を規定しておりますけれども、報道機関との間の通信については、傍受の禁止の対象とはしておりません。

 この理由でございますが、これは、通信傍受法第十五条は、刑事訴訟法の押収拒絶権あるいは証言拒絶権と同様に、依頼人との個人的な関係に基づいて個人の秘密を委託されることによって成り立つ特定の職業に対する信頼の保護を図るもの、こういったことから、報道機関による取材及び報道機関に対する情報提供は、原則、報道に資することを前提としたものでございまして、個人の秘密を委託されることによって成り立つ医師や弁護士と同一に論じることができないことが理由でございます。

畑野委員 きょう、資料の六枚目以降、この問題について法務省から資料をいただきましたので、添付させていただきました。

 これは、結局、法律じゃない。そして、通達ではいろいろと書かれております、適正な運用をされるようにと。しかし、通達に反する傍受がなされた場合でも、厳格な制裁、すなわち刑罰は捜査機関に科せられないということですか、法律でないので。

林(眞)政府参考人 一般に、通達というものに対しては、当然、職員としてはその通達に従う義務がございます。

 他方で、通達の違反の効果というものについては、それは直ちに刑罰とかそういったものが適用されるものではございません。

畑野委員 厳格な制裁がないと言われました。通達どおりに運用がなされるとは思えない。

 大臣、この点はいかがですか。

奥野委員長 上川大臣。もう時間が来ていますから。

上川国務大臣 報道機関等の通信傍受については禁止をするということで、通達によってそれを担保するということでございます。

 十五条に規定はないわけでありますけれども、先ほどの局長答弁のとおりの理由ということでありますが、通達によってこれを禁止するということでございます。

畑野委員 そうした曖昧な基準だということを申し上げて、撤回を求めて、質問を終わります。

奥野委員長 次に、上西小百合君。

上西委員 上西小百合でございます。

 きょうも質問の機会をお与えいただきましたことに感謝を申し上げ、委員の皆様方のこれまでの質問を踏まえて質問を行わせていただきます。

 まず、刑事局長、刑事局長の御経歴を拝見いたしましたが、検事の御出身でいらっしゃいますね。伊藤栄樹さんが書かれた「秋霜烈日」はお読みになったことはありますでしょうか。

林(眞)政府参考人 読んだことがございます。

上西委員 ありがとうございます。

 伊藤さんは、おとぎ話としながらも、八六年に発覚した日本共産党の幹部宅への盗聴事件について触れています。この事件は、単に盗聴事件としてだけでなく、オウム真理教の犠牲となった坂本弁護士も弁護グループに入っていたため、神奈川県警は坂本弁護士の事件捜査に及び腰だったとか、横浜地検のチェックがきかなくなり、その後の神奈川県警の不祥事の遠因となったのではないかと当時取材に当たった記者は話しておりました。

 通信傍受は、今申し上げたような盗聴事件の負の歴史を背負ってスタートいたしました。ですから、それだけ国民は不安に思っているわけで、逆に、これから払拭しなければならない、こういった努力の継続が必要ということであります。

 そのことを確認して、質問に入らせていただきます。

 まず、今回の法改正では、対象犯罪が広がります。なるほどと思える案件もあれば、この犯罪も入るのかと正直疑問に感じる案件もありますので、少し確認をさせていただきます。

 まず、放火。火付盗賊改の時代から放火というのは凶悪犯罪だというふうに思いますが、現住建造物等放火が今回対象となった根拠は何でしょうか。お聞かせをいただけますでしょうか。

林(眞)政府参考人 近時、暴力団等が、その意に沿わない事業者等に対しまして、報復あるいは見せしめ目的で敢行したと見られる襲撃事件がございます。

 その中には、例えば、暴力団構成員が、金銭要求等に応じないことへの嫌がらせの目的でパチンコ店に放火しようと企てて、ガソリンをまいた上、点火してその店舗に引火させた事案、あるいは、暴力団組長等数名が、金銭要求等に応じない店舗経営者への見せしめといたしまして、飲食店店舗内にガソリンをまいた上で放火して同店の従業員ら三名を死傷させた事案、こういった現住建造物等放火の事案も発生しておりまして、この種事案が組織的に行われることがございます。

 これらの事案につきましては、やはり不特定多数の者の生命身体に危険を生じさせるなど、現に一般国民にとって重大な脅威となっておるわけでございますけれども、首謀者等の背後関係を含む事案の解明が強く求められるところでございます。

 そうしたことから、今回、通信傍受という手法によりましてこうした背後関係を含む事案の解明を行う必要があるということから、対象犯罪に追加するものでございます。

上西委員 今のお答えをお伺いいたしますと、組織的に行われる事案であることと、要は複数人の共謀による事例があるからというふうな認識ではないのかなというふうに思いますけれども、一般的に見ると、放火は単独犯の方が多いですよね。それがどうして、組織的で共謀性があるとの理由で放火が選ばれたのか、これが理解できないんですね。そして、通信傍受をしないと放火犯を捕まえることができないのか、こういう疑問もありますので、あわせてお聞かせをいただけますでしょうか。

林(眞)政府参考人 もとより、この放火事案については、御指摘のとおり単独犯の放火というものが多数ございます。

 他方で、先ほど申し上げたような形での組織的に行われる放火事案というものにつきましては、これは、放火の実行犯でありますとか、ガソリンなどの犯行に必要なものの調達役、また見張り役、逃走車両の運転手、こういった役割を分担して敢行されることがあるわけでございます。そうした場合には、その首謀者というものは、そうした役割分担の中で直接犯行に関与しないことも多いわけでございます。

 こういったことを、この組織的な犯行の全体像を、背後関係をも含む形で事案の解明を行うためには、やはりこの通信傍受という手法が極めて有効性、必要性が高く、また有用性が高いということから、今回、対象犯罪に追加しようとするものでございます。

上西委員 組織的な犯行もある、それはもう重々承知はいたしているんです。

 例えば、八四年のグリコ・森永事件の連続工場放火、こういったものもありますから、放火に組織的な犯行は当然あるんですけれども、今申し上げたように、一般的には放火は単独犯の方が多いということでありますから、やはりそこは一度整理をし直す必要があるのではないかな、こういうふうに思っております。

 その一方で、テロやハイジャック、オウム真理教事件のような、考えもできない、組織が引き起こす犯罪、賭博関連が今回対象にならなかった理由は何でしょうか、教えてください、刑事局長。

林(眞)政府参考人 今般の法整備で新たに対象犯罪を追加する罪を選択するに当たりましては、犯罪の重大性という点と通信傍受の現実的必要性、有用性、こういった点から二つの要素を考慮して追加する罪を選択したわけでございます。

 御指摘の、例えばハイジャック、いわゆる航空機の強取等の罪、あるいはサリン等の発散などのテロに関係する犯罪につきましては、実際に、対象犯罪として挙げるべきかどうかの議論はございました。もちろん、これらの犯罪は、一般国民にとって非常に重大な脅威というものでございますけれども、他方で、目下の犯罪情勢において、実際に多発しているという状況にあるとは言いがたいわけでございます。

 こういったことから、法制審議会におきましても、新たに追加する対象犯罪としてこうしたテロ関連犯罪としての議論が交わされたわけでございますが、最終的には、通信傍受の対象犯罪として追加すべきという認識の共有を得るには至らなかった。このことから、今般の法整備においては対象犯罪としての追加が見送られたものでございます。

上西委員 今の御答弁ですと、テロやハイジャック、そしてサリン、こういった事件は、国民にとって重大な脅威である、これは確かだけれども、実際には多発していない、こういうお答えでありました。

 そうしたら、さっきの放火に戻らせていただきますと、数人が共謀しての放火、これは割合が少ないわけですから、それだと、今申し上げたテロやハイジャックの事件と放火の事件、整合性がとれていないように感じざるを得ないのですが、この件に関して御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

林(眞)政府参考人 先ほどの、暴力団等組織等の関係から報復目的あるいは見せしめ目的で現住建造物等放火等を行う、こういった事例については、これまでも発生しているわけでございます。そういったことに対処する必要があるということ。

 他方で、テロ犯罪につきましては、今回の法整備においては対象犯罪としての追加というものは見送られたわけでございますけれども、他方で、テロ組織が、テロとして、今般の改正によって対象犯罪に追加されますところの殺人でありますとか爆発物の使用、逮捕監禁、略取誘拐等の罪を組織的に行った場合には、当然これは、法改正後に、犯罪捜査のためにそうしたテロ犯人間の通信を傍受することは可能となります。

 そういったことで、今回の法改正については、実態面としては、テロ等行為、テロ組織による犯罪行為に対しての対処が一定程度できるものとなっていると考えております。

上西委員 こういった組織犯罪が殺人等を引き起こせば対象に入るということでありますから、ちょっとそういった線引きがよくわからないんですけれども、本当に、一度しっかりと整理をしていただく必要があると思います。それをお願い申し上げて、次に参りたいと思います。

 まず、九九年に通信傍受法が成立し、この十五年間捜査が行われてきました。先般の委員会において、八万七千八百十四回の傍受が行われ、このうちの何と八五%に当たる七万四千三百十五回は事件とは無関係、容疑者の日常会話だったということが報告されました。

 これは、対象範囲を広げても同じことが繰り返されると思います。より効果的といいますか、犯罪摘発に結びつく、通信手段をより効率的に選別できるようなノウハウ等をアドバイスできる機関、検証できる機関、有識者からの意見を聞く場、こういったものも必要ではないでしょうか。刑事局長、お答えください。

林(眞)政府参考人 これまでの通信傍受におきまして、捜査機関におきましては、被疑者が通信事業者等との間で契約に基づいて使用している通信手段など、犯罪関連通信が行われると疑うに足りる通信手段というものをまず特定して、そして傍受令状の発付を受けて適切に傍受の実施を行って、組織的な犯罪の捜査に効果的に活用してきたものと考えております。

 実際に事件ベースで申し上げれば、やはりこれまでの国会報告で行った事件の中で、割合にすれば、全く犯罪関連通信が得られなかった事件というのは一一%になっているわけで、逆に言えば、八九%の事件では、事件ベースで考えますと、通信傍受からいろいろな犯罪関連通信等が得られた事案であったと思います。

 ただ、御指摘の助言機関というものがどういった機関であるか、必ずしも明らかではございませんけれども、捜査機関におきましては、これまでの通信傍受の実施状況を踏まえまして、今後とも引き続き、適切な傍受を実施するための体制でありますとか、そのための技術的な検討というようなものを行っていくべきものと考えております。

上西委員 ちょっとはっきりわからなかったのでもう一度確認をさせていただきたいんですけれども、冒頭の方で、八九%はしっかりと事件にかかわっていたものだからそんなに問題はないというふうな御答弁ですね。

 最終的には、助言機関といったものも必要ではないかというふうなお話だったと思うんですが、刑事局長の御見解としては、第三者機関による精査といったものは必要だとお考えなんでしょうか。端的にお答えください。

林(眞)政府参考人 先ほどは、助言機関とか第三者機関の私の捉えているイメージがよくわからなかったことを前提としてお答えしたわけでございますが、少なくとも、第三者機関というものが、傍受の実施の手続の適正を図るために、裁判所とは離れて、適正を図るための組織としての第三者機関が必要であるかということであれば、それは必要はないと考えております。

上西委員 必要はないというふうな御答弁だったんですけれども、それでは、上川法務大臣にお聞きをさせていただきます。

 先ほど鈴木委員からも、特別部会の議論の様子が質問されました。より精度を高めるには、これまでの摘発事件の総括、検証からまずはスタートすべきだと思うんですが、大臣の御所見を伺えますでしょうか。

上川国務大臣 この通信傍受法が成立して以降、国会に対しましても毎年きちっと報告をする、その意味では、検証に付すという中で行われていると承知をしているところでございます。

 今、八五%でありますとかいろいろ数字もございましたが、いずれも、国会報告に対して行われていたものに対して説明があったものというふうに思っておるところでございます。

 こうした通信傍受そのものが運用されることに対して、もともと、組織的な犯罪によりまして健全な社会経済の維持発展に大きな影響を及ぼすというような、こうした重大犯罪に対処するための一つの大きな手段ということでございまして、しかし、その運用におきましては適正な運用をするということにつきましては、とりわけ憲法に規定している通信の秘密等の規定にのっとって考えてみますと、大変抑制的にしていくべきだと。

 こうした制約のもとで、公益性の観点からしっかりとこれに対応するということでございますので、こういった経緯そして実績、毎年の報告、ないし、こうした法務委員会での御議論をしっかりと踏まえた上で、適正かつ効果的に実施していくべきものというふうに考えております。

上西委員 今、一応、大臣の方から、検証に付す必要があるというふうなお話がありました。一一%しか犯罪にかかわりのない傍受をしていないといえども、国民の皆さん方から信頼を得るためには、しっかりと検証していく必要はあると思います。そして、これは、本来であれば法案をつくる前にすべきことだということを申し伝えさせていただきたいと思います。

 昨日のNHK「クローズアップ現代」では、それこそ社会問題化している、いわゆるブラックバイトについて取り上げていました。

 例えば、労働組合やNPO、市民団体が、労働条件改善や残業代未払いの経営者に対して行動を起こす、団体交渉を要求することを考えてみますと、ブラック企業の経営者ですから、当然、交渉は長期になることが考えられます。青空団交でもやってくれればいいんですけれども、普通は、交渉というのはどこかの会議室で行うものであると思います。

 あくまでも一般的な、ごくごく普通の労使交渉、活動を行っていても、NPO、市民団体等が一般的な普通の労使交渉、活動を行っていても、例えば、ブラック企業の経営者がこれは逮捕監禁だというふうに訴えてしまえば、労働組合やNPO、市民団体の事務員や役員の電話、携帯電話、メールは通信傍受の対象になるのでしょうか、お聞かせください。

林(眞)政府参考人 新たに対象犯罪に追加される逮捕監禁の罪につきましても、捜査機関が通信傍受を行うためには、裁判官が発付する傍受令状が必要でございます。

 この傍受令状は、その罪が犯されたと疑う十分な理由があること、また、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であること、こういった厳格な要件を満たしていると裁判官が認めた場合に発付されるものでございます。

 御指摘のような労働組合の雇用者側との間の交渉活動、こういったことに関連して逮捕監禁に当たると疑われる行為が発生した場合でありましても、この罪が犯されたと疑うに十分な理由があるか否かを含め、この厳しい要件について、裁判官による厳格な審査を受ける必要がございます。これを満たすものとして、労働組合や市民団体の適法な活動に関連して傍受令状が発付されるということは考えられないものと考えております。

上西委員 ありがとうございます。

 通信傍受の導入時や共謀罪でも議論され、今申し上げたことは、非常に多くの市民が実際懸念をしていることであります。一般的な労働組合やNPO、市民団体が行う活動は、逮捕監禁、そして恐喝にもならない、通信傍受の対象にならないことをここに確認をさせていただきました。

 組織犯罪に対して厳しい態度をとることは、非常に重要で、そして必要なことだと思います。ただ、通信傍受は、冒頭触れました負の歴史からスタートしているわけですから、国民の懸念の払拭、そして理解が何よりも重要であります。捜査は市民の信頼によって成り立っていることを再度確認して、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

奥野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十七分散会


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