衆議院

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第34号 平成27年7月31日(金曜日)

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平成二十七年七月三十一日(金曜日)

    午前十一時三十分開議

 出席委員

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 盛山 正仁君

   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君

   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君

      大塚  拓君    門  博文君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    木内  均君

      工藤 彰三君    小松  裕君

      今野 智博君    武部  新君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      簗  和生君    山口  壯君

      若狭  勝君    黒岩 宇洋君

      階   猛君    鈴木 貴子君

      柚木 道義君    重徳 和彦君

      大口 善徳君    國重  徹君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         上川 陽子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 山谷えり子君

   法務副大臣        葉梨 康弘君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 塩川実喜夫君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    三浦 正充君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     大橋 秀行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月三十一日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     武部  新君

  辻  清人君     木内  均君

  冨樫 博之君     小松  裕君

  宮川 典子君     工藤 彰三君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     辻  清人君

  工藤 彰三君     宮川 典子君

  小松  裕君     神山 佐市君

  武部  新君     門  博文君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     冨樫 博之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)


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     ――――◇―――――

奥野委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官塩川実喜夫君、警察庁刑事局長三浦正充君、総務省総合通信基盤局電気通信事業部長大橋秀行君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君及び法務省刑事局長林眞琴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局平木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥野委員長 本日は、特に犯罪捜査のための通信傍受の対象事件の範囲の拡大等について質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今野智博君。

今野委員 おはようございます。自由民主党の今野智博です。本日は、質疑の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、昨年、党の司法制度調査会で刑事の小委員会の事務局長を仰せつかりまして、そこでの提言案としてまとめた内容が今回の刑事訴訟法の改正案にほとんどそのままの形で盛り込まれているという関係もございまして、このたびの刑事訴訟法の改正については特に強い関心を持ち、また、責任を感じているところでもございますので、三十分という限られた時間ではございますが、しっかりと御議論をさせていただければというふうに存じております。

 今回、テーマは通信傍受法ということでございまして、言うまでもなく、憲法二十一条の通信の秘密、あるいは令状主義との関係、あるいはプライバシー権との関係で、今まで我が国においては、通信傍受というものを、極めて謙抑的、また限られた制限の中で運用してきたという実績がございます。

 一般的に考えれば、逮捕で人身の自由を奪う、あるいは捜索等で私生活の本拠地である住居に侵入していくということに比べて、プライバシー権、通信の秘密の保護のもとに通信傍受がなぜこれほど厳格な要件のもとで運用されているのかということについては、さまざまな理由がございますけれども、やはり密行性あるいは継続性が極めて高い捜査手法でございますので、捜査比例の原則からしてもできる限り謙抑的に運用しなければいけないということが理由かなというふうに感じております。

 まず、今回の改正案においては、対象犯罪の拡大と、あとは方法の合理化、効率化ということで大きな改正が加えられているわけでございますが、現行の通信傍受法について、基本的には組織的な犯罪において活用されるべきものだということで厳格な要件が決められております。

 現行の通信傍受法において、組織的な犯罪以外にこれが適用されないということについてどのような仕組みを設けているか、まずそこについてお伺いをします。よろしくお願いします。

林政府参考人 現行の通信傍受法でございますが、まず、通信傍受の対象犯罪が、同法の別表に掲げられておりますところの薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航に関する罪、そして組織的な殺人の罪に限定されておるわけでございます。これらの罪は、その多くが暴力団等により組織的に行われているものである上に、その捜査のための通信傍受が不可欠であることから対象犯罪とされているものでございます。

 これに加えまして、捜査機関が通信傍受を行うためには裁判官の発する傍受令状が必要でございますが、傍受令状は、裁判官が、その対象犯罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由があることのほかに、さらに、その犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があること、さらには、他の捜査方法では、犯人を特定し、犯行の内容や状況を明らかにすることが著しく困難であること、こういった厳格な要件をも満たしていると認めた場合でなければ発せられないわけでございます。実際にこういった厳格な要件を満たす事案は、組織的な犯罪に限られると考えております。

 したがいまして、現行通信傍受法のもとにおきましては、組織的な犯罪以外の事件が通信傍受の対象とされることはないものと考えられるところでございます。

今野委員 お述べいただいたように、諸外国と比べても、我が国の通信傍受法、現行の傍受法についてはかなり厳格な要件が課されている。私もいろいろ勉強しましたけれども、それはまず間違いないところかなと。

 そうしたすごく厳格な要件のもとで、今まで十五年近く通信傍受が運用されてきて、現行の通信傍受法のもとで行われた通信傍受が組織的な犯罪の真相解明にどれだけ役に立ったのか。後ほど述べる、方法がかなり厳格過ぎて使い勝手が悪いということもあって、数的にはかなり限られた数ですけれども、その中でも、組織的な犯罪の真相解明に役立ったという事例があれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

三浦政府参考人 通信傍受が組織的な犯罪の真相解明にどういう成果を上げてきたかというお尋ねでございますけれども、例えばということで申し上げますと、平成二十五年及び二十六年に通信傍受を実施した事件に関しまして、平成二十六年中に逮捕した人員数は百十名でありましたけれども、そのうち、暴力団の幹部に当たるとして都道府県警察から報告を受けている人数は二十一名でありまして、約二割に上っております。

 これは、刑法犯における暴力団等被疑者検挙人員のうち幹部の占める割合の過去三年の平均、約八%と比較をしてもかなり高いものとなっておりまして、通信傍受が暴力団等の犯罪組織中枢の検挙や組織の実態解明に一定の効果を上げているものと考えているところでございます。

今野委員 捜査手法として通信傍受が一定の有効性があるということは私も感じているところでございまして、ただ、今回、対象とする犯罪をかなり大きく拡大すると。

 私、自分のミニ集会等で、今、法務委員会でこういう法案を審議していて、刑事訴訟法はこういうふうに変えるんだという説明を随時しておりますけれども、やはり通信傍受の話になると、一般の国民の方には、プライバシー権の侵害とか、あるいは無差別に傍受が行われて自分たちの通信の秘密が過度に制約を受ける、侵害されるのではないかというような不安を口にされる方も、ごくごくまれではございますけれどもいらっしゃいました。

 今回、対象犯罪を拡大するに当たり、一般の国民の方々の通信の秘密が侵害される危険性が高まるのではないかという懸念に対して、御見解があれば賜りたいと思います。

林政府参考人 本法律案におけます対象犯罪の拡大は、現に一般国民にとって重大な脅威となり社会問題化している犯罪であって、通信傍受の対象とすることが必要不可欠なものを追加するものでございます。

 こうして新たに対象犯罪に追加される罪につきましても、通信傍受を行うためには、当然のことながら裁判官の発する傍受令状が必要であるわけでございますが、この傍受令状は、裁判官が、その罪が犯されたと疑う十分な理由があること、他の捜査方法では犯人を特定することが著しく困難であること、こういった極めて厳格な要件を満たしていると認めた場合に発せられるわけでございます。その際、裁判官は、犯人により被疑事実に係る犯罪関連通信に用いられる疑いがある通信手段を電話番号等によって特定した上で、傍受令状を発付するわけでございます。

 さらに、本法律案では、こうした新たに追加される罪につきましては、こうした現行通信傍受法の厳格な要件、手続に加えまして、組織的な犯罪に適切に対処するという通信傍受法の趣旨を全うするために、一定の組織性の要件を加えまして、それを満たす場合でなければ傍受令状が発付されないこととしております。

 したがいまして、実際にこうした厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限られることから、一般国民の通信の秘密が侵害される危険性が高まるといった懸念はないものと考えております。

今野委員 私は、こう見えても弁護士資格を持っておりまして、七年ほど実務についておりました。その間に自分の仕事の中で一番力を入れてやってきたのが実は刑事弁護事件でございまして、一番最初にやった、これは少年犯罪でしたけれども、実は、振り込め詐欺の受け子をしていた少年で、何とか、更生のためにいろいろ、両親にかけ合ったりして力を入れたわけです。

 また、いろいろ事件をやる中で、この振り込め詐欺が本当に当時から社会に横行しまして、あるとき、我々弁護士会が力を入れて、何とか、銀行口座の凍結ですとか、あるいはATMの引き出す上限をかなり低く抑えたりということで対応してきて、ただ、それによって多くの国民の皆様の利便性が失われたということもまた事実かなと。

 実際、私も、保釈保証金、そのときは三百万という保釈保証金を金曜日の午後二時過ぎに裁判官から言われて、普通であればそれを預かり金口座からATMですぐおろせるはずのところを、五十万という上限があったがために、それを自分ですっかり忘れていまして、五十万しかおろせなくて、残りの二百五十万を、そのとき持っていたクレジットカードを総動員して借り入れをして工面したということもございました。それは本当に卑近な例でございますけれども、多くの国民の方々は、本当であればATMを使っておろせたものがおろせなくなってしまったということの利便性というのはかなり損なわれたのかなと。

 また、弁護士をやっていて、私は痴漢の事件に結構縁が深くて、十件以上やりましたけれども、夜遅くに逮捕されて、旦那さんが逮捕されたということを、まず一報、奥様に連絡しなければいけない。弁護士の今野です、旦那さんが今痴漢で逮捕されましたと言ったら、もう間違いなく振り込め詐欺だという疑いを受けて、その場で電話を切られてしまう。何度電話してもつながらないから、しようがないから家まで行ってその事実を告げるとか、本当に、弁護士の活動にとっても、この振り込め詐欺による弊害というか、そうした影響というのははかり知れないものがあるなということです。

 とりわけ、この振り込め詐欺あるいは組織窃盗等について、今回、対象が拡大された中に入って、通信傍受を適正に運用する中で、そうした組織、これはほとんどは暴力団組織が背後にいてやっているんだと私は思いますけれども、そうした組織を一網打尽にする、そのくらいの成果をぜひこれで上げていただきたい。そのために我々も汗をかいて、この法案成立に向けて頑張っているところでございます。

 ただ、おとといの参考人質疑の中で、私、聞いておりまして、彼らも犯罪者集団としてプロだ、携帯電話なんか一回使ったらもうすぐかえてしまうんだ、そんなところに通信傍受をやろうと思っても全く効果が上がらない、むしろホームレスの方を減らした方がいいんだというような話も出ていました。

 ただ、私は、政治家になって二年半ずっと、この振り込め詐欺を何とか撲滅しようということで、今までの個人的な法益の詐欺罪とは別に、そういった金融システムであるとか通信システムであるとか、そういう社会的な法益も加えた特殊詐欺罪というものをもっと高い法定刑でつくれないかみたいな話も警察の方ともよくしましたけれども、捜査関係者の方は、いや、それは通信傍受さえできれば必ず組織を一網打尽にできるんだというようなことをよく強調されていたのを思い出します。

 ただ、先日の参考人質疑の中での通信傍受が効果がないという批判について、今どういうふうな御見解をお持ちか、お聞かせいただければと思います。

三浦政府参考人 振り込め詐欺グループが被害者との通信に用いる携帯電話を頻繁に変更しているのではないかといった指摘があることは承知をしておりますけれども、各種の捜査を尽くすことによりまして、かけ子が被害者との間の通信に用いる電話とは別に、グループ内部、例えば組織中枢等との間で使用する電話を特定できる場合もあると考えられまして、そのような場合には、通信傍受という捜査手法は、組織中枢の検挙に向けた捜査に極めて有効と考えております。

 振り込め詐欺に限らず、組織的な犯罪において、携帯電話等の通信手段は、犯行の謀議、実行等に重要なツールであります。現在対象犯罪とされている薬物事犯においても、通信傍受がされていることを前提としてさまざまな対抗策がとられていると考えられますけれども、通信傍受を実施した事件について相当数の人員を逮捕するなど、実際に一定の成果を上げているところでありまして、通信傍受が振り込め詐欺等の実態解明や検挙に効果がないといった批判は当たらないと考えております。

今野委員 私も、常識的に考えて、携帯電話を一回の通話ごとにかえてしまうというのは、犯罪者側にしても物すごい負担ですし、コスト面においてもかなりの負担だと思いますので、そうした批判というのは当たらないのかなと思っております。

 ただ、特定した番号を適時適切に傍受するということができなければ、それこそ一カ月も二カ月も傍受までにかかっていたのでは時期を逸してしまうということもまた確かだと思います。だからこそ、今回、対象犯罪の拡大とともに、改正案では、方法をできるだけ効率化、合理化しようということで、現行のリアルタイム方式に加えて新しい方式を導入しようとしているわけであります。

 まず、確認の意味で、現行の通信傍受法のもとで実際の傍受手続がどう行われているか、少し簡潔にお答えいただけますでしょうか。

林政府参考人 通信傍受実施のためには、通信傍受以外の方法による捜査を遂げた上で、傍受令状の発付を受けて通信事業者の施設において傍受を実施しております。この傍受の実施は、通信事業者の施設において通信事業者の常時立ち会いのもとで行われることになり、立会人は、傍受の実施期間中、同所に待機し続けることとなります。さらに、立会人は、その傍受の実施が終了した場合においても、裁判官に提出される傍受の原記録の封印を行う役割を担っております。

 こうして、現行通信傍受法におきましては、通信傍受を実施する間、例外なく通信事業者が常時立ち会うこととされておりまして、傍受の実施の場所につきましても、立会人確保の観点から通信事業者の施設を使用することとなっておりまして、通信事業者に多大な人的、物的負担を強いるものとなっておるわけでございます。

今野委員 そうした過大な負担、立会人の人選等についてもかなりの日数を要するということがあって、そもそも傍受をやろうと思っても始めるまでに何週間もかかってしまうというような実態があって、それでは時期を逸してしまうということで、今回新たに一時保存方式あるいは特定電子計算機を用いる方式が加えられようとしている。

 ちょっと、この一時保存方式と特定計算機を用いる方式等の、どういうふうな使い分け、どういうような状況を想定しているのかということを簡単に御説明いただけますでしょうか。

林政府参考人 今回新たに法案の中にあります一時的保存方式でありますとか特定電子計算機を用いる傍受、こういったものをどのように使い分けるかということにつきましては、個別具体的な事案ごとに、その事件の内容、また傍受の実施中に行われることが予想される犯罪に関連する通信の内容、また必要な電気通信回線の設備の状況等を勘案して判断されることとなります。

 例を挙げますが、一時的保存を命じて行う通信傍受の実施手続について言えば、これは、例えば、既に行われた殺人事件であって、これから重要な物的証拠が隠滅される余地が少なくて、傍受の主たる狙いが被疑者らの関与や共謀の立証に不可欠な口裏合わせのための通信を捕捉することにあるような場合、被疑者らが事件に関連する内容の通信を行う回数というものも多くないと予想されるわけでございますが、こういった場合には、被疑者らの通信をリアルタイムで傍受を行うことではなくて、通信を一時的に保存しておく方法をとることによりまして、捜査の効率化を図り、他の捜査活動に人員と時間を振り向けることができる、こういったことが効果的なこともあり得るところと考えております。

今野委員 本当に、今までの現行方式では、立会人の負担もそうですけれども、捜査関係者の負担も、それこそ長ければ三十日間ずっと部屋にこもって聞いていなければいけない。その時間、労力をほかのところに向けてもらって、犯罪捜査により力を入れてもらうということは合理化かなと思います。

 ただ一方で、現行のリアルタイム方式、立会人のもとで行われている方式が、過度の制約があったがために、一定程度通信傍受をできないような歯どめになっていたということもあって、私は、それ自体は好ましいことではないと思います。要は、捜査側の通信傍受の濫用、そうしたものをきちっと防止して、刑事手続というのは何よりも適正手続、デュープロセスが重んじられますので、いかにデュープロセスを保持できるかということが最も大切な観点ではないか。やはり今までの質疑を聞いていても、立会人を外して特定計算機を用いる方式あるいは一時保存方式だと、捜査側の恣意的な運用がされて通信傍受が濫用されかねないんだというような御指摘もかなりあるわけです。

 私は、この電子計算機等の方式も自分の中でずっと何度かシミュレーションをして、なかなかそういうことは難しいのかなというふうな思いがあるんですが、例えば一時保存方式あるいは電子計算機を用いる方式において、その適正さの担保がどのような形で図られているのか、ちょっと細かく教えていただけますでしょうか。

林政府参考人 まず、一時的保存方式による適正担保の仕組みでございますけれども、一時的保存方式による通信傍受を行う場合においても、当然、裁判官が発付する傍受令状が必要でございます。

 そして、一時的保存方式による通信の傍受を行う場合、傍受の実施中に行われた通信は全て一旦保存することになるものの、一時的保存をされる通信は、これが全て通信事業者によって、裁判所の職員が作成した暗号化鍵を用いて暗号化が行われます。そして、その通信事業者によって暗号化された通信は、裁判所の職員が作成した復号鍵を用いなければ復号して復元することができません。また、その暗号化された通信及び復号鍵は、通信事業者が管理することとなるわけでございます。そのために、捜査機関がその通信の内容を知ることは物理的に不可能となっております。

 また、保存されている暗号化された通信の復号は、通信事業者が行います。そして、この場合には立会人がおります。その立会人の立ち会いのもとで、復元された通信の再生を行うわけでございます。再生をした通信は、現行の通信傍受法の傍受の場合と全く同様に、全て記録媒体に記録され、立会人によりその記録媒体の封印がされます。

 そして、こういった形で通信事業者が一時的に保存していた暗号化された通信の復号が終了したときには、その後、捜査官が再生した部分か、あるいは再生していない部分かを問わず、通信事業者が全て消去するということになっておりますので、捜査機関は、再生をした部分以外の通信の内容を知ることができません。また、再生されなかった通信は、捜査機関のもとにも通信事業者のもとにも残らないということになります。こういった適正の担保がなされているということでございます。

 もう一つの特定電子計算機を用いる方式によりますと、この場合には、暗号技術等を活用することによって通信事業者の立ち会い及び封印が不要とされるわけでございますが、まず、そうした機能を用いる特定電子計算機が法定の機能を具備しているかどうかについては、傍受令状を請求する段階で裁判官による審査を受けることとなります。

 また、傍受のための機器に接続する通信手段というものが傍受令状により許可されたものに間違いないか、また、許可された期間が守られているかどうかにつきましては、この方式によれば、通信事業者が、傍受令状により許可された通信手段を用いた通信を、許可された期間に即しまして特定電子計算機へ伝送するということになっておりますので、これによって担保されます。

 さらに、現行の通信傍受法におきましては、立会人が傍受をした通信等について、全て録音等の記録がなされているかどうかをチェックして、傍受の中断または終了の際に、裁判官に提出する記録媒体の封印をするとされておりますが、こういった点につきましては、特定電子計算機が、傍受をした通信の全てと、また傍受の経過を自動的に、かつ改変ができないように暗号化して記録するということによって担保されます。

 こうしたことで、特定電子計算機を用いる方法につきましても、手続の適正が担保されると考えております。

今野委員 言葉にすると大変複雑でわかりづらいんですけれども、要は、音を、携帯電話の音声を抜き取って、それを暗号化して、例えば、特定電子計算機を用いる一時保存方式であれば、警察の方に暗号化したものを送って、そこで復号して今までどおりのスポット傍受をして、聞いたものについては全部記録として保存され、裁判所に送られる。聞いていないもの等については全部自動的に消去されていく。だから、そこには、聞かなかった部分も含めて記録としては全く残らない、また、それを暗号化して裁判所に届ける。そういうような形で行われるがゆえに改ざん等の余地がないんだということで、言葉としてはすごくわかるんですが、ただ、実際は、これから本格的に開発される特定電子計算機であったり、あるいは伝送のための仕組みであったり、そうしたものがきちんとできるかどうかということが、今回の方式の簡易化、合理化については一番肝になってくるのかなという気がしています。

 私も、デロイトトーマツの物すごく分厚い報告書も全て目を通しましたけれども、要は、そうした技術は可能だと。コストについてもいろいろ比較検討の上で、いかにセキュリティーを保ちながらコストも低く抑えてできるかみたいな比較検討が詳細にされておりましたけれども、ただ、実際にそれを開発するのは通信事業者になるのかなという気がします。

 ちょっと懸念されるのは、これから通信事業者がそうした機材を開発したりあるいは導入したりするに当たっての、今までの質疑の中でも少し出ていましたけれども、費用負担をどういうふうな形で行うのか。そこがおろそかになってしまうと、結局、この間の参考人質疑であったように、そうした機材が開発されなくて、方式の合理化が図られませんでしたということにもなりかねない危険があると思いますので、その費用負担について、今まだ開発段階に至っていないので具体的なことはおっしゃれないかもしれませんけれども、お考えがあればお聞かせいただけますでしょうか。

三浦政府参考人 新たな方式の通信傍受におきましては、技術的措置によって、現行制度で立会人が果たしている役割を確実に代替するなどして傍受の実施の適正を担保する必要があるところ、このような観点から、法律により定められたさまざまな機能を確実に備えた機器を整備することが必要不可欠であります。

 新たな傍受方法の導入に伴って必要となる設備等については、各事業者における設備の規模や構成等の状況がさまざまでありまして、一概に申し上げることは困難でありますけれども、例えば、事業者が行うこととなる暗号化、伝送などに必要となる機器については、その開発等を警察が行うことも含め検討を行っているところであります。

 いずれにしましても、新たな方法による通信傍受の具体的な実施に当たって設備等の整備が必要となる場合には、通信事業者と十分に協議をし、その負担が過度なものとならないよう適切に対応してまいりたいと考えております。

今野委員 機材の開発、システムの開発に三年の猶予期間というものがありますけれども、三年というのは結構あっという間に過ぎてしまいますので、そうした国と事業者側の負担割合、あるいは誰が何を開発するかということについては、できる限り早期に話し合い、協議をして、具体的に覚書みたいな形で取り決めをしておくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 改正通信傍受法の施行時期につきましては、三年以内の政令で定める日とされているところでありまして、通信事業者との具体的な協議は今後進めていく予定でございます。

 その際、事業者側にいかなる協力をお願いする必要があるかは、今後開発することとなる特定電子計算機の具体的な仕様等を踏まえまして、個別の事業者ごとに協議をし、決定をしていく必要がございますけれども、いずれにしても、通信事業者の負担が過度なものとはならないように配慮しながら、事業者側の御意見も十分に拝聴しながらその協議を早急に進めてまいりたいと考えております。

今野委員 この点については、私も引き続きまた関心を持って注目していきたいと思いますので、どうぞ善処のほどよろしくお願いします。

 本日はありがとうございました。質問を終わります。

奥野委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十分開議

奥野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。柚木道義君。

柚木委員 民主党の柚木道義でございます。

 午後からも、どうぞよろしくお願いいたします。

 この刑事訴訟法の改正案、この法案審議だけでも、私自身も今回四回目の質疑に立たせていただくわけですが、きょうは通信傍受部分を中心に質疑させていただくわけですが、これは本当にこの間、可視化でありましたり、あるいは証拠開示、保釈要件、さらには司法取引もそうです、そして今般の通信傍受、これは与野党、当然真摯に質疑をさせていただいているわけですが、他方で、質疑を重ねれば重ねるほど問題点もどんどん出てくる。これは、まさに今、参議院で審議が行われている安保法案も、国民の皆さんの評価は残念ながらそういう状況にあると思っているんですね。

 上川大臣、この法案審議を始めて最初のときに、私が、この刑事訴訟法の中に、それこそ通信傍受、いわゆる盗聴とか、あるいはいわば他人密告型の司法取引とか、こういうものが含まれているというふうに認識できる国民の方はどれだけおられるかと言ったら、正直、なかなか難しいと思いますと答弁されましたよね。あれから随分審議を進めてきました。

 今現状で、国民の皆さんの中に、この刑事訴訟法は、理解が広まり、また賛意が広まっていると率直に思われますか、いかがですか。

上川国務大臣 今回の刑事訴訟法の改正に伴いまして、スタートのときから、この問題につきましては、冤罪に端を発し、大変重要な問題があったということに鑑みながら、さまざまな法制審議会あるいは専門部会におきましての御議論を踏まえた上で提案をさせていただいているというところでございます。その内容については、大変重要な要素をたくさん含んでいるということでありますので、真摯に御質問を受けながら、また説明の責任を果たしてまいりたい、こんな思いで立たせていただいているところでございます。

 それぞれの課題につきまして、テーマを絞った形で非常に工夫をしていただきながら御議論を積み重ねてきたということにつきましては、そこの中で出てきた論点あるいはそれに対しての考え方、こういうことについて御理解を深めていくことができる、そうした委員会の審議ではなかったのかなというふうに私は思っているところでございます。

柚木委員 この委員室におられる皆さん、あるいは政務の皆さんの中では、もちろんいろいろな審議をさせてもらっていますよ、論点も共有をされつつあるかもしれません。

 しかし、私も地元で、安保法案だけじゃなくて、柚木さん、どういう質問をしているんですかと。刑事訴訟法というのがありましてと。盗聴の話とか司法取引の話とかいっても、誰も知らない。本当にこれは残念ながら誰も知りません。そして、その中身の話をすると、ええっと。

 通信傍受は、もちろん犯罪検挙のために合法的にいろいろな要件のもとでやってきた、あるいはこれからやる。しかし、きょうも質問しますけれども、それがいわゆる証拠採用されない。実際にこの間も、二千八百回ぐらい傍受したけれども、結局、証拠採用ゼロ、犯人検挙ゼロ、こういうこともあって、その場合は本人に通知すらされない。そういうような内容を聞くと、ええっ、とんでもない、そういう話になるんですよ。認知されていないし、知れば知るほど、ええっ、とんでもないと。これは本当に安保法案と一緒なんですよね。

 これは、この間の……(大塚大臣政務官「理解していない」と呼ぶ)いや、理解をしていないというような声がどこかから聞こえましたけれども、そういう姿勢が、安保法案においても、国民の皆さんから見て、こういう状況になっているんだと思いますよ、政務官、ちょっと不規則発言を慎んでいただけますか。

 それで、実際に安保法案も、大変恐縮なんですが、これは違憲で危険だという言い方をすると皆さんわかりやすいんですね。憲法違反の指摘があり、かつ、テロや戦争への巻き込まれリスク、この部分との関係で説明をすると、もちろん自衛力の強化は必要なんだけれども、そういう懸念については皆さんが心配をされている。

 この刑訴法も、まさに通信傍受部分については、プライバシーの侵害を伴う、つまりは憲法二十一条違反、通信の秘密との関係、あるいは傍受の法的な歯どめとされる令状主義、傍受の通知、不服申し立てなどなどの機能が十分ではないということをこの間議論もしてきているわけです。

 この改正法案の、とりわけ通信傍受、盗聴における対象犯罪の拡大、そして事業者の常時立ち会いを外すという点につきましては、これは一九九九年の法案の与党修正の根幹でもあったわけで、当時の修正にかかわられた先生も与党委員の中にもおいでになられると思います。公明党さんも、当初は明確に反対姿勢を当時示されておったわけですね。

 これらの修正による制約によって公正で適正な傍受が担保され、違憲とのそしりを、いろいろな最高裁の判例も含めて、ぎりぎりの緊張関係の中でこの間推移してきていますが、それも当時の与党修正の中で、ぎりぎり、対象犯罪の限定と事業者常時立ち会いを行うことで賛成に回られたということでもありまして、その重要なポイントが今回、合理化とか効率化とかの理由で変更できるかどうか、これはこの法案審議の中でも非常に、私は、では十分に国民の皆さんに理解をいただける状況にあるかというと、そうではないと思うんですね。

 これは、質問をさせていただきますが、まず重要なことは、この通信傍受、一般国民の方々からしてみれば盗聴なわけですけれども、これをやることで、実際に犯罪検挙、逮捕、こういったことがしっかりと成果が上がっていく、あるいはこれまでもその成果が上がってきた、こういうことでなければならないわけです。

 この通信傍受の報告によりますと、平成十二年から二十六年まで傍受による逮捕者が五百二十五人ということですが、この同じ期間における傍受法の対象犯罪での逮捕、検挙者の総数というのは、これは警察庁、幾らになるんですか。

三浦政府参考人 平成十二年から平成二十六年の間における通信傍受法の対象犯罪に係る逮捕者の総数は、十一万二千八百三十六人でございます。

柚木委員 これは本当に、割合からすれば高いと言うか低いと言うかは、十一万の中の五百ですから、皆さんどういう御評価をされるか。いわば、本当にごくごく一部なわけです。

 傍受記録を証拠に逮捕に至る事件というのがこれだけ本当に一部という中で、いわば組織犯罪であったり薬物犯罪であったり、犯人が検挙されるその状況が、実際には、通信傍受というよりも、さまざまな、それ以外の現場の皆さんの地道な捜査活動、裏づけ捜査等によって成果が上がってきていると考える方が私は自然だと思うんです。

 それで、では、組織犯罪、薬物犯罪等あるわけですが、通信傍受によって実際に逮捕、検挙された方々、よく、末端の方は捕まるんだけれども、いわゆる幹部まで含めて、まさに組織全体を一網打尽にできるような状況というのが一体どの程度あるのか、これについても、警察庁に事前通告しておりますので、答弁をいただけますか。

三浦政府参考人 例えばでございますけれども、平成二十五年及び二十六年に通信傍受を実施した事件に関しまして、平成二十六年中に逮捕した人員数は百十名でありましたけれども、そのうち暴力団の幹部に当たるとして都道府県警察から報告を受けている者は二十一名でございまして……(柚木委員「何名中の。もう一回」と呼ぶ)百十名のうちの二十一名でございまして、通信傍受が暴力団等の犯罪組織中枢の検挙や組織の実態解明に一定の効果を上げているものと考えております。

柚木委員 きょう、資料の二枚目以降で、通信傍受が実際に行われた事案、罰条という表現ですが、それから実際の実施期間、通話回数、そして実際に証拠採用がされた件数、二十二条の二項一号、あるいは逮捕人員等、るる、これは平成十二年から資料としてつけております。

 実際に、資料の中でいうと後ろから二枚目、通信傍受報告取りまとめ、これは国会報告されている中で、逮捕人員がゼロというのがこれだけあるんですね。この中で見ても、ぱっと見て目が行くのは、やはりこの二十三年の、延べ八十五日、二千七百二十一回にわたって傍受を行っても証拠採用記録はなく、逮捕者ゼロ、こういうようなことが行われております。

 もちろん、どこまでが本当に機会費用の損失、ある意味成果が上がっていないという基準がどこにあるかという議論はあるわけですが、今御答弁で一定の成果が上がっているという話がありますけれども、しかし、やはり、例えば高校生への覚醒剤の浸透が非常に危機感を持って語られていたときに、実際に検挙されるのは高校生や売人のイラン人の方とか、そういう方の検挙数がふえるばかりで、なかなか犯罪組織の幹部に司直の手が届かない、そういう指摘もあり、そしてまた、この資料にもお示しをしたように、実際には正直成果が上がっているとは、これは何をもって成果というかというのもあるかもしれませんが、しかし、実際に検挙に至っていない、こういう状況もあるわけでございます。

 これは、例えば北九州において広域暴力団に対して捜査が今行われているあの手法も、もちろん、市民の皆さんからしてみれば、いろいろなあらゆる手だてで、市民が巻き添えになり得るようなああいう発砲事件、殺人事件等が起こらないようにしてほしいというのはあるんです。それは、あの北九州の事件においても、脱税について、ちゃんと裏づけのメモまで入手をして、資金の流れを解明して、まさに市民の皆さんからしてみれば、当然、巻き添えにもなりたくないし、そういう不正なお金の流れをしっかり摘発してもらいたいという願いの中で、新たな捜査手法として、福岡方式とも言われて、私は、まさにああいう地道な取り組みによって裏づけ捜査を行って、犯人検挙、実際に法によって裁かれる、そういうことがまさに最も必要な捜査手法であり、そしてまた国民の皆さんの理解も得られると。

 この通信傍受、盗聴によって、犯人が検挙されるということ以上に、やはり国民の皆さんのプライバシーが侵害をされていく。この表を見て、これだけ逮捕者ゼロ、証拠採用ゼロというものが、今後、一般犯罪にまで拡大をされて、やられている本人は、証拠採用されなければわからない、通知もされない、そういう事例がどんどんふえていくということを非常に懸念するわけでございます。

 先般もこの委員会で参考人陳述の際に、共産党の元参議院議員でいらっしゃった緒方さんから、盗聴の実態について、本当にこれは我々議員も与野党を超えて人ごとじゃないと私は思います、そういう実態についての話があったわけです。

 これはちょっと伺いたいのは、その参考人陳述に、警察庁には、四係というんですか、非合法活動を進める部署があり、一定数の通信専門職員が働いていたという話があったんですが、これは現在も存続、活動されているんですか。

塩川政府参考人 お答えします。

 警察庁には、お尋ねのような非合法活動を行う四係という係はございませんし、過去にも存在したことはございません。

柚木委員 その御答弁の延長が、長官の、これまでに盗聴というのを行ったことはないという国会答弁につながっていくんでしょう。

 私は、そのこと自体もこの後やはり少し議論が必要だと思っていますが、緒方参考人のお話の中で、御自身の裁判過程で明らかとなった話として、警察の盗聴の決まりというのがあると。どういう決まりなのかというと、一に全部聞く、二に全部記録を起こす、三、その日のうちに報告する、どんなたわいのない会話にも注意を集中して聞き逃さない。これは、私なんか、逆に、そこまで徹底しているんだ、さすが警察だなと。同時に、傍受、盗聴の本質をこれは端的にあらわしているんじゃないかと思うんですね。

 つまり、違法かどうかということはあるにしても、とにかく全部聞いて、全部記録にして、報告をして、聞き逃さない。それがどこにどう使われるか、盗聴されている方にはわからない。結局、犯罪に関係がない、本人にも知らされないまま。緒方さんについても、盗聴されている当初はそういう状態だったわけですよね。

 これは、私が今ここに表に起こさせていただいた、こういう形で国会報告をされているわけですが、先日もこの委員会で國重委員から、この報告、犯罪関連通信が全く得られなかった事件が一一%で、八九%の事件で通信傍受により犯罪関連通信等が得られているという客観的事実のやりとりがされたということなんですが、どういう見方をするかというのは非常に重要だと思うんです。

 もちろん、成果が上がらないことを違憲すれすれの緊張関係の中でやってもらっては困るのは当然なんですが、逆に言うと、一一%、一割強が実際に犯罪関連通信が全く得られなかった、しかも、その中には当然プライバシーが含まれる、本人に通知されるされない、そういう問題もはらんでいる、こういうことであります。

 そこで伺いたいんですが、この通信傍受報告によると、平成十二年から二十六年、傍受事件九十九件中で二十六件が逮捕者ゼロとなっておりますが、その逮捕者ゼロの概況的な御説明をいただけますか。

三浦政府参考人 通信傍受を実施した個別の事件について、お尋ねの逮捕人員数がゼロであった理由について申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、傍受期間中に犯罪関連通信が行われるかどうかということは、傍受の実施時期、当該期間の被疑者の行動状況等のさまざまな要因に左右されるほか、犯罪関連通信が行われたとしても、内容に具体性がない等の理由により逮捕に至らない場合もございます。

 また、傍受の実施が終了した後、さらに長期間にわたって捜査を行った結果、関係被疑者の逮捕に至る場合もございます。

 なお、国会への報告が求められている傍受が行われた事件に関して逮捕した人員数としては、傍受をした通信の内容が主要な証拠となって逮捕された者や、傍受をした通信の内容が直接の端緒もしくは契機となって逮捕された者等を計上しているところでありまして、お尋ねの事件の中には、このような意味での逮捕人員には当たらない逮捕人員がある事件もあるということでございます。

柚木委員 そうすると、今後もしこの法案が成立をして傍受対象が拡大をされていくことになると、犯罪に関連をしない傍受、当然それは逮捕、検挙にもつながらない、これも当然公費で行われる活動ですから、こういうことを税金の費用対効果という言い方が適正かどうかは別として、これだけプライバシーも侵害をされ得る、犯罪検挙に至るかどうかも実際にやってみないとわからない、違憲の疑いも指摘をされている、こういう中で傍受がさらに拡大をされていく。裏取りというよりも、先取りの捜査手法という側面もあるわけですよね。

 ですから、そういうことが本当に国民の皆さんの理解を、これは皆さん知りませんからね、今議論されていること。これは、本当に理解をいただいたときに、どこまで本当に皆さんにそうだと思っていただけるかについては、私は、非常に疑念を感じざるを得ません。実際にそうやって地元の方とやりとりしていると、そういう状況です。

 そこで、私、伺いますが、逮捕者がゼロの案件がこれだけ頻発している状況から、これは捜査機関による令状請求目的外傍受の疑いもあると思いますし、また、裁判所による機械的令状発行の疑い、これは資料の最後にもつけておきましたけれども、この間も指摘をされているように、各令状の裁判所による却下率、ほぼ一〇〇%発行される、こういうことでもありまして、逮捕者ゼロの案件のこれだけの頻発状況から、法務大臣あるいは国家公安委員長並びに最高裁、捜査機関による令状請求目的外傍受の疑い、それから裁判所による機械的令状発行の疑いについて指摘せざるを得ないと私は思いますが、それぞれ、その御認識をお答えいただけますか。

平木最高裁判所長官代理者 令状の審査に関しましては、各裁判官が事件ごとに判断すべき事項でございまして、事務当局としてお答えする立場にはございませんが、一般論として申し上げますと、各裁判官は、法令上の令状発付の要件に従って一件一件慎重に判断しているものと承知しております。

山谷国務大臣 通信傍受法は、捜査の必要性と通信の秘密の保護の必要性の比較考量を適切に行うために厳格な要件を定めて、これを裁判官に審査させる仕組みを採用しております。傍受令状は、裁判官が法の定める厳格な要件を満たすと認めた場合でなければ発付されません。

 その上で、傍受の実施に当たっては、法の定める厳格な手続に従うこととされておりまして、恣意的な運用というのが行われる余地はないと考えております。

上川国務大臣 通信傍受法が定める通信傍受でありますけれども、これは、限定された対象犯罪の捜査のために、裁判官が発する傍受令状によってのみ行い得るものであります。傍受令状につきましては、通信傍受の対象犯罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由があると裁判官が認めた場合でなければ発付をされないということでございます。

 御指摘のような、犯罪予防のための情報収集のように特定の犯罪の嫌疑を前提とせず、特定の犯罪の捜査、検挙目的以外の通信傍受を行うことはできないというものでありまして、傍受を実施しながら逮捕者がいない事例がある、先ほどこういう御指摘がありましたけれども、これは情報収集目的の傍受がされたのではございませんで、結果的に犯罪関連通信が行われなかったことなどによると考えられるところでございます。

柚木委員 今るる御答弁をいただいたわけですが、法の定める厳格な手続によって、恣意的な運用はあり得ないという国家公安委員長の御答弁だったり、限定された対象犯罪でちゃんと運用制限を設けてやっていると法務大臣も御答弁いただいたわけですが、これは本当に、それぞれがそういう認識で、今御答弁されましたけれども、歯どめになるのかどうなのかというのは、私は、そうなのかなと思わざるを得ないんです。

 今回、傍受のいろいろな対象拡大の中で、実際には、私は、やはりプライバシーの侵害というのは拡大をしていかざるを得ないと思いますし、この後も質問いたしますが、立会人の今回の改正というのも、私は、最後の歯どめの部分が非常に、結果的にもう二十四時間やりたい放題に、先ほど情報収集じゃないと言ったけれども、本当にそうですか、いろいろな消去の手続をするからいいんだと言われるけれども、そうじゃないと思っていますよ。

 ですから、認識がやはりこれは、実際に犯罪事実があって、それで検挙される対象の方はそういう法の運用の中でされればいいんですが、そうでない方々までもそういう対象になっていき得る中で、私は、どちらの立場に立つのかというのは非常に重要だと思っています。

 これは、これまでの議論の中でも、令状請求事件で、直接証拠採用する法的記録がなくとも、あるいはデータを消去したとしても、法外記録、そういうものが残らないのか。さらには、仮に残らないにしても、捜査員の記憶までは消せないわけですよね。

 そういうことも含めて、これは、それぞれ議員の皆さんだって、仮に自分たちの会話が傍受されていて、記録を消したからと言われたって、日ごろ自分たちが会話しているいろいろなことを聞かれて、記録が消去されたからって、安心できますか。いろいろな、政局の話とか、プライバシーの話とか。安心できませんよ。

 ですから、そういう中で、今、とりわけ国家公安委員長から、法の定める厳格な手続、恣意的な運用はないんだと言われるんですけれども、大変残念ながら、今の安倍政権の中に、法的安定性というのは関係ないと言う方が補佐官でいて、今度、八月三日に参考人招致されるんですか、そういう考え方を持った政権中枢の方がおられる今の政府がこういう法案を出してきて、本当に法の定める厳格な手続、運用がなされるのか、私は非常に心配しています。

 安保法案もそうなんですけれども、やはりこの法案においても、犯罪事実をしっかりと認定し、捜査をし、検挙をし、法的な対応をとることは当然ですが、それ以外の、冤罪の発生とか、プライバシーとか報道の自由の侵害、こういったいろいろな懸念についても当然リスク評価を行って、そのリスクや心配、国民の懸念をいかに最小化していくかという視点がそれぞれの今の答弁から私は十分に感じられない、そう言わざるを得ません。

 こういう形で、要は、犯罪検挙のため、抑止のためという大義があって、それは必要なことです。しかし、そうでない対象にまでどんどん拡大をしていくことで、行き着く先は、例えばスノーデン事件でも、本当にあれだけの盗聴、傍受が行われていて、ドイツの首相のように自分が盗聴されていることを知らない。上川大臣だって、自分が盗聴されていて、気づきますか、ああ、今、盗聴されているんじゃないかと。わからないんですよ。そういう方がどんどんふえていく。

 ですから、私は、やはり傍受のハードルを下げることは認められないと思うんです。

 特に、事業者の常時立ち会いについてこの後伺いますが、これがいわば、令状主義も実際に、表もつけましたが、ほとんど機能しているかどうか、そういう見方もせざるを得ない中で、唯一の実効的な歯どめである事業者の常時立ち会いについて、この間視察もさせていただきましたが、今の事業者の負担等も含めて、私は、これをしっかりと継続していく必要があると思っています。

 先日も清水委員も取り上げられていましたが、法改正を見越して、警察による事業者への傍受機器の増設要求がされ、これはある事業者のお話によると、現在二台の傍受機器を三十台に増設を要求されている。一台当たり数千万円、しかも、その費用は事業者負担。

 これは、法によって事業者の協力を得てやってもらうことに対して、まず伺いたいのは、通信傍受に係るこれまでの機器の開発とか設置費用とかの負担、これはどうなっているのか。警察庁、お答えいただけますか。

三浦政府参考人 通信事業者が通信傍受に関連してこれまでに負担したコストについては警察においては把握をしておりませんけれども、警察におきましては、通信傍受を実施するための機器の購入等に充てるため、平成十二年度には四億三千六百三十万円、平成十三年度に一億五千二百四十五万円、平成十五年度に九千二百八十三万円、平成十六年度は二億二千二百五十二万円、平成二十一年度一億四千四百五十九万円、平成二十七年度一億三千九百七十七万円の予算措置をしているところでございます。

柚木委員 今御答弁いただいた、それだけの高額な傍受機器の開発、設置費用。さらに今般、新設費用というのは、私は、やはり国が、これは警察庁の予算ということになるんでしょうけれども、しっかりと負担をして、そして、国民の皆さんから見て、ちゃんと歯どめが機能していますよ、そういう状態を考えるのが筋合いだと思いますが、費用負担をされるというお考えはあるんですか。仮にないのであれば、その理由は何なんですか。

三浦政府参考人 通信事業者といいますのは、公共的な性格を有する業務を行っておられますので、一定程度の負担をお願いしなければならないことはやむを得ないというように考えております。ただ、民間企業である以上、その負担が過度なものとならないようにすべきというように考えております。

 新たな傍受方法の導入に伴って必要となる設備等につきましては、各事業者における設備の規模や構成等の状況がさまざまでありまして、一概に申し上げることは困難でございますけれども、例えば、事業者が行うこととなる暗号化や伝送などに必要となる機器については、その開発等を警察が行うことも含め、検討を行っているところであります。

 いずれにしましても、新しい方法による通信傍受の具体的な実施に当たって設備等の整備が必要となる場合には、通信事業者と十分協議をし、その負担が過度なものとならないよう適切に対応してまいりたいと考えております。

柚木委員 先日、この委員会の視察で、ある通信事業者の方々から実際にお話を伺った中で、最も要望があったのがこの点なわけですね。これはぜひ、今は機器の費用という話をしましたけれども、人員ですよね、シフトを組んで、夜、決して早いとは言えない、深夜にまで及ぶ立ち会いをやっていただいて、そういうことも含めて、私は、これが当然歯どめとなって、そのことを存続していくという立場から、そういった費用負担についても考えていただきたいと思っております。

 現在二台の傍受機器を三十台に増設を要求されるということであれば、これはどういう実施計画なのか。つまり、ハードの整備に見合った捜査員の拡充、予算措置等はどのように計画をされているか、お答えいただけますか。

三浦政府参考人 御指摘の傍受機器というのが何を指すのかというのが必ずしも明らかではございませんけれども、例えば、同時に傍受可能な回線数が明らかになりますと、警察の傍受能力が推察をされ、今後の捜査に支障を生ずるおそれがあることから、具体的な通信事業者との話し合いの内容でありますとか、傍受の実施方法の具体的な検討状況につきましては、お答えを差し控えたいと思っております。

 ただ、新しい制度が導入された場合に、通信傍受の実施件数がどの程度増加をし、それに伴って必要となる捜査員の数がどの程度となるのかは、現時点で一概に申し上げることは困難でありますけれども、いずれにしても、傍受を実施する際には必要な体制の確保に努めてまいりたいと考えております。

柚木委員 そうすると、ぜひあわせてお考えをいただきたいのが、現行の事業者立ち会いが無償なわけですよね。これは、事業者側からの、私たち、ボランティアでやりますよという申し出によるものではないですよね。

 普通の感覚でいえば、本来の業務外の立ち会いによって、通常の自分たちの事業者としての業務に当たっていれば得られる費用の弁済を行うというのは当然の考え方だと私は思いますが、これはそういうお考えはないのか。ないのであれば、それはなぜなのか。これは、法務省、警察庁、説明できますか。

林政府参考人 一般に、刑事訴訟法における立ち会いの考え方についてまず御説明をいたしますと、刑事訴訟法上、例えば人の住居において捜索令状の執行をするときには、その住居主を立ち会わせなければならないこととされておりますけれども、これは住居主の権利利益の保護を図るためでもありますので、立会人に一方的な不利益を課す性質のものとは言えないわけでございます。

 通信傍受法が、傍受の実施をするときは、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者を立ち会わせなければならないとしているのも、通信管理者等はその管理する通信手段や傍受の実施場所、電気通信設備について捜査官による強制処分を受け、その管理権に制約を受ける立場にございますことから、これを立ち会わせることによって通信管理者等自身の権利利益の保護を図るという面がございます。専ら第三者、すなわち、傍受をされる通信の当事者の権利利益の保護のために立会人に不利益を課すものではございません。

 したがいまして、通信管理者等に対して、傍受の実施に立ち会ったことについて、その不利益に対する対価として例えば費用を弁償しなければならないというような形の法のつくり方にはなっていないわけでございます。

三浦政府参考人 通信事業者の費用負担につきましては、その負担が過度なものとならないようにすべきということは考えておりますけれども、通信事業者は公共的な性格を有する業務を行っておりますことから、一定程度の負担をお願いしなければならないことはやむを得ない面もあるというように考えております。

 この点、今回の改正法案におきまして、立会人にかえて技術的措置を講じ、警察施設等における適正な通信傍受の実施を担保することによりまして、立会人を確保するといった事業者の負担が軽減をされますほか、傍受の実施場所の提供に伴う負担も軽減をされることとなるというように考えておりまして、事業者にとっては一定の負担軽減といった側面も有するものと考えております。

柚木委員 それぞれ御答弁があったわけですけれども、やはり一時的な現場検証や参考人の供述をいただくとか、そういった限定された頻度、回数での捜査協力をボランティアで行うとか、そういうことというのは、もちろん我々一般市民も、犯罪を認知した場合には通報したり、何かあったときには人命を救助したりとか、いろいろな義務は当然あるわけですが、今回のように法が強制する事業者の立ち会いというのは、非常に長時間で多頻度に及ぶものなわけですから、今御答弁の中で、過度な負担にならないようにという部分があったわけですけれども、これについては、ぜひしっかりと通信事業者とのやりとりもしていただく中で、私は、サポートをしていただきたいというふうに思います。

 そして、この事業者の常時立ち会いなんですけれども、これは法務大臣にぜひお考えをいただきたいんですよ。令状主義というのも、私は形骸化を指摘せざるを得ない。そして、今回の事業者の常時立ち会いについては、事業者の方といえども普通の市民の方です、その方々がまさにある意味我々を代表してちゃんと立ち会ってくれて、不服申し立て等いろいろな制度がありますけれども、事実上、実効的な唯一の歯どめだと私は考えます。

 ですから、今質問もいたしましたが、事業者の常時立ち会いに係る過大な負担については適正に補償していただいた上で、常時立ち会いについては、私の質問の中でも幾つか申し上げました、不正な利用、関係ないのに聞かれている、そのことが通知もされない、いろいろな懸念がある中で、ぜひ、国民の皆さんから見て公正さを最低限保障するものとしての公費の支出、そして国費による、そういう意味では事業者の立ち会い補償というものを新たにお考えいただきたいと思いますし、もう一点は、まさに事業者の常時立ち会いについてはしっかりと存続をいただきたいと私は思いますが、法務大臣、いかがですか。

上川国務大臣 現状の通信傍受の制度におきまして、通信事業者の施設をお借りし、また立ち会いもお願いをしているという中にありまして、通信事業者の皆様に対しましても大変負担を強いているということの実態については、先生御指摘のとおりであるというふうに思っております。

 その意味で、この制度そのものがしっかりと適正に行われるための措置ということにつきましては、さまざまな角度から検討すべきことではないかというふうに思っておりますので、今先生御指摘のことについてもそのような意味で認識をさせていただいたところでございます。

 今回、新たに導入する効率化のための通信傍受の仕組みづくりにおきましては、まさに通信事業者の皆様に対しましての御負担を軽減するということもあわせて、特定電子計算機等を用いて立ち会いの機能もしっかりと果たしていくというような形でのシステムの提案をしているということでございます。

 いずれにしても、それに係る費用等につきましては、先ほど警察の方からの答弁もありましたけれども、さまざまな協議を行う中で、しっかりと御協力をいただくことができるようなものにしていくということが必要ではないかというふうに考えております。

柚木委員 認識が異なると思うのが、事業者の負担軽減は立ち会いをなくすことによってやるのではなくて、それはやはり、国民の皆さんの視点に立てば、プライバシーの保護、侵害がされない、その安心が担保される、さっき申しました公正さ、国民から見た正義、そういう部分について、予算の支援というものをしっかり行って、その上で事業者の常時立ち会いの存続を考えるべきだ、そういうふうに私は思うんですよ。

 事業者負担を軽減して、我々のまさにかわりとして立ち会っていただけている側面もあるわけで、そういう方々の目をなくすということが、私は、考え方として、国民の皆さんから見たら、何で立ち会いをなくすことで負担を軽減するのかというふうになると思うんですよ。私は、その点についてはまだ納得が全くできません。

 それで、先ほど法務大臣や国家公安委員長から令状請求目的外傍受とか、それから最高裁にも機械的令状発行の疑い等についての認識をいただいたんですが、私、本当に懸念をいたしますのは、ちょっと法務大臣と国家公安委員長に認識をぜひお答えいただきたいんですが、たび重なる報道で、首相補佐官の礒崎さんの発言、何かいろいろとツイッターとかで釈明もされておられるんですけれども、特に法務委員会ですから、法的安定性、これはそもそも憲法を頂点とする法体系、解釈、適用、こういったものがころころ変わることなく、安定、持続なものとして、当然、国民の皆さんの法に対する信頼を守る、これは法治国家の大原則だということだと思います。これが危うくなると、こんな法案審議をしていたって何の意味もないし、立憲主義そのものが崩壊をする。こういう本当に重大な御発言で、八月三日にどういう釈明をされるのか、私も注目をしております。

 これは、この法務委員会で刑事訴訟法の議論を、与野党、本当に真摯に丁寧に議論してきているんですよ。しかし、政権の中枢でそういう考え方を持たれて法を運用されるようなことがあれば、安保法案のみならず、この刑事訴訟法そのものも本当にどういう運用をされてしまうのか、私は、これは本当に正直重大な懸念を持っています。

 今回の礒崎首相補佐官の、法的安定性というのは関係ないんだ、時代が変われば変わるんだ、憲法解釈は必要に応じて変わる、それに伴って法的安定性というのは関係ない、こういう発言をされていることに対して、法務大臣として、この審議をしっかりと、法的な担保をいただくことも含めて、認識を明確にお答えいただけませんか。どういう認識でこういう発言を受けとめておられますか、内閣の一員として。

上川国務大臣 今御指摘いただきました件につきましては、具体的な問題ということで、私の方から所感を述べることにつきましては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 あくまで一般論としてということでございますけれども、やはり法的安定性につきましては大変大事なものである。法治国家におきまして、また、今、刑事訴訟法の改正につきましても御議論いただいておりますが、まさに憲法との関係の中で、通信傍受につきましても極めて重要な関係性を持った形で実施をしてきたところでもございますし、今回の改正案におきましても、そういう趣旨の中でしっかりと御議論いただいているということでございます。

 まさに、法的安定性につきましては大変重要だというふうに認識をしているところでございます。

柚木委員 この法案審議の中でも、これまで参考人でお越しをいただいた方々も含めて、本当にこの法の運用がどうなるかによって、真犯人検挙どころか、そうじゃない人が検挙されて死刑判決まで受けると。そして、村木さんのああいった証拠改ざんとかいろいろなこともあって、冤罪を防止するための法改正を今議論している。これは、運用によっては冤罪リスク増大法案になりますよ。

 そして、本当にこの間も、自白の強要、これは供述調書に頼り過ぎて、科学的捜査とは別の次元で、あるいは司法取引が今回導入される、いろいろな論点があった中でここまで議論が来ているんです。捜査手法についても、国家公安委員長、いろいろな問題があって、いろいろ御答弁もいただいていますよ。しかし、それら全ても法的安定性というものが大前提として担保されている中での議論でなければ、どんな法案審議をしたって意味がないですよ。

 国家公安委員長、今法務大臣はそういうお答えがありましたが、今回の首相補佐官の法的安定性は関係ないという発言、実際に捜査を進めていく立場の国家公安委員長という立場からも、この法的安定性についての認識をしっかりここで御答弁いただいておきたいんですが、いかがですか。

山谷国務大臣 法的安定性というのは大切なことだというふうに思います。

 礒崎補佐官に関しましては、誤解を招くことがないような発言というのは常に政府の一員としてしなければならないことというふうに考えておりまして、その真意につきましては、三日、御本人自身から御説明をされるというふうに思っております。

 また、治安基盤の強化ということは国民の願いでございます。あらゆる地道な捜査努力を積み重ねていくということは当然のことでございます。

 その上で、通信傍受法につきまして、法の定める厳格な手続に従うこととされておりまして、先ほども申しましたように、恣意的な運用が行われるという余地はないと考えております。

柚木委員 これについては、八月三日の御本人の釈明を私も注視した上で、安保特だけではないです、他委員会も含めて、本当に我々はこれは注視すべき発言だと思っていますので、八月三日の発言を見ながら、私は、それぞれの委員会でのそれぞれの重要な法案審議について、しっかりと法的な安定性が担保される中ででなければ、皆さんがどんなにすばらしいやりとりをしても意味がない、そういう危機感の中で、それぞれ今御答弁をいただきました。

 それで、国家公安委員長、この件はいいんですが、せんだって参考人でお話をいただいた緒方さん、詳細な意見陳述をいただいたわけですね。これは、長官の過去の国会答弁、今般の緒方さんの件も含めて、盗聴を認め、そして、裁判では結果が出て、賠償もそれぞれ判決の中で行われている。しかし、いまだに警察庁としては、それを認め謝罪することを行わないという立場で今でもいらっしゃるんですか。国家公安委員長、いかがですか。

山谷国務大臣 御指摘の事件についてでございますけれども、国賠訴訟の控訴審判決において、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示されておりますが、組織的犯行と断定した判決ではなかったものと承知をしております。

 いずれにせよ、警察といたしましては、今後とも法に基づき適切に職務を遂行していくものと承知しておりまして、引き続きしっかりと指導してまいりたいと思います。(発言する者あり)

柚木委員 そんなことでは清水さんも納得できませんよね。

 私は、本当にこれは不思議なんですよ。私は、認めて謝罪することから警察の信頼回復が始まると思いますよ。これは、認めることで何か不利益があるんですか。ちゃんと認めて謝罪をされたらいいんじゃないですか。何か不利益があるんですか、認めることで。国家公安委員長、何か不利益があるんですか、認めると。

山谷国務大臣 国賠訴訟の控訴審判決におきまして警察官による盗聴行為があったと推認されたことは、厳粛に受けとめております。まことに残念なことだというふうに考えております。

 警察としては、今後とも法に基づき適切に職務を遂行してまいりたいと考えます。

柚木委員 残念だと。残念と謝罪は違いますよね。

 私は、ここで何か、御本人もいらっしゃらないわけですけれども、謝ってもらいたいということ以上に、私は当然謝罪すべきだと思うんですが、何で認めないのかと。この間の質疑の中で、国家公安委員長ともやりとりをさせていただく中で、常にそういったスタンスでおられるんですよ。その他の冤罪事件のことに関してのやりとりも、残念とか遺憾とか、今後そういうことのないようにと。

 私は、そういう一貫したスタンスの背景には、これは私の理解が間違っていることをむしろ望むんですが、要は、真犯人を検挙する、そのために捜査を行う、そのプロセスの中で、違法な盗聴とかその他いろいろな、自白に至るまでの証拠の改ざん、強要、いろいろなことが起こっています。それは、真犯人検挙のためだったら、ある意味そういうことがあっても仕方がないと思っているのかなとすら思わざるを得ないんですよ。そこまでかたくなに認めない、謝罪をしない。むしろ、悪いのは今の法律なのか、悪いのは憲法なのか、そういうふうにすら思えるようなかたくなさなんですよ。

 これは警察として、いろいろなことがこれまで冤罪事件も含めてあって、そして今回の盗聴事件、緒方さんの件があって、こういうときにはしっかりと、普段は国民の皆さんのためにいろいろな捜査手法でやっているけれども、間違いは誰でもありますよ、組織だって。そのときには、その間違いを認めた上で、そして国民の皆さんの信頼回復のために真摯に議論に臨んでいただく。そういうスタンスをぜひ今回この刑訴法の中で。

 特にこの緒方さんの件は人ごとじゃないんですよ、本当に。みんなですよ、与野党の議員。我々だって気づきませんよ、盗聴されていたって。そのことが犯罪事実に関係していなかったって、聞かれるだけで皆さん嫌ですよね。国民の皆さんだってそうなんですよ、我々の嫌なことは。

 そういうことが実際に判決まで示されていて、まずはしっかりとここの場で謝罪をいただいた上で、そして今後の信頼回復に向けた議論に当たる、そういう認識をぜひ、国家公安委員長、お示しいただけませんか。

山谷国務大臣 日本は法治国家でございます。法律を尊重していくというのは当然のことであります。

 国家公安委員長としましては、刑事司法制度の役割の重みや適正捜査の重要性について思いを深くしながら、信頼ある警察行政を行ってまいるように指導してまいりたいと思います。

柚木委員 私は、国家公安委員長が心の底からそう言われているのか、原稿でそれ以外言うなと念押しされているのかよくわかりません。

 安倍政権全体においてぜひお願いをしたいのは、やはり今回のことでいえば、被害を受けられた緒方さん、あるいは国民全体がそういう対象にもなり得る。国民の皆さんの目線で、まあ、支持率のために政治をやっていないと安倍総理がおっしゃるのは、ある意味、政治家としては、時にはそういう国民の皆さんから不人気な政策を進めることが求められる場面もあるかもしれない。しかし、私は安保は違うと思いますよ。やはり、国民の皆さんの視点、目線で考え、そして、特にそれぞれの閣僚の皆さんには御答弁いただくということをしなければ、法案の理解も深まらないし、国民の皆さんだって、これは安保法案だけじゃなくて刑訴法だって、後々、こんな内容だったのと。そのそしりは免れない、そう思います。

 時間がもうなくなっているんですが、これは上川大臣も、今ここまで、盗聴、通信傍受の部分まで含めて議論が来ているんですけれども、この間の審議で、これはたまたま並行して安保が行われていることから余計に私が感じている部分でもあるので、その懸念をぜひ払拭いただきたいと思うんです。

 安保法案、衆議院でも議論がありましたし、参議院でも議論を今されているわけです。この安保法案というのは、今実際に議論をされている法案の中身に加えて、例えばこれまで特定秘密保護法とか日本版のNSC法、そういう法律、あるいは、まだこれは実際に法案審議されていませんけれども共謀罪とか、いろいろな法案と、当然、法体系的にそれぞれが総合的に運用される。そういう中で、国民の皆さんから見たときに非常に懸念が持たれているというのは事実です。

 刑事訴訟法についても、確かに可視化は、議論をしてきて、与野党みんな、ちょっとでも進めたいと思っているわけです。しかし、それは本当にごくごく一部限定で、他方で、今回の通信傍受の拡大、あるいは他人密告型の司法取引制度の導入、そして証拠開示とか、あるいは勾留、保釈の要件とか、いろいろな面で、むしろ国民の皆さんから見たときに、本当にこれは冤罪リスクというものが下がっていくものなのか、国民の皆さんの人権、報道の自由、言論の自由も含めて、そういったものが侵されるおそれはふえるのかそうじゃないのか、そういった点については非常に懸念が持たれている。

 弁護士会からも話があった。でも、それも、確かに可視化とか幾つかの点については前向きなスタンスかもしれないけれども、この通信傍受を含めて、その他の点については非常に懸念も持っている。

 そういうことでありますから、この懸念の部分について、この委員会の中でしっかりと、その懸念が払拭されるまで丁寧な審議を行っていただくということを大臣としてしっかり最後に御答弁いただけませんか。

上川国務大臣 刑事訴訟法の改正の議論のスタートに当たりましても、問題の発端になったさまざまな大変厳しい事態を受けて、そして、長年にわたりましてさまざまな視点から御議論をいただいたことを踏まえて、捜査そして供述調書に過度に依存する、こうしたところから脱却を図るという中で、きょう通信傍受の問題についても御議論いただいているわけでありますが、捜査手法につきまして多様化をしていく、そして効率化も図る、こういう中で御議論をいただいているものというふうに思っております。

 丁寧に、真摯に、そして、しっかりと論点につきまして御答弁させていただきながらということでございますので、その姿勢を今回も、またこれからの御審議におきましてもしっかりと踏まえた上で対応してまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 民主党の山尾志桜里です。

 きょうは傍受の議論に入ってまいりましたので、御議論のほど、よろしくお願いをいたします。

 最初、ちょっと大臣に伺います。

 六月五日のこの委員会の中で、法制審議会のメンバー構成の問題を取り上げました。そのときの私と大臣のやりとりをちょっと申し上げます。私が、法務省の審議会のメンバー構成というのは、「一度ぜひ洗い出していただいて、原則として入っていないはずの行政機関職員がどれだけ入っていて、それに本当に理由があるのか、厳に抑制されているOB出身者が今どれだけ入っていて、それに本当に理由があるのか、ちょっと検証していただけないですか。」というふうに問いかけたところ、大臣が、「今の委員の御趣旨、よく拝聴しましたので、そのことにつきましてもしっかりと対応していきたいと思います。」こういうふうに御答弁をいただきました。

 六月五日の答弁ですので、二カ月弱が経過をしております。対応の進捗状況を教えてください。

上川国務大臣 六月五日に、法制審議会及び各部会のメンバーに行政職員と府省出身者がいるということにつきまして検討をという形で御意見をいただきました。そして、この間も、そうした御趣旨をしっかりと踏まえて調べてきたところでございます。

 具体的なことについて、まず当局から報告をさせたいと思います。

萩本政府参考人 まず、現状を私から御報告したいと思います。

 法制審議会及び現在審議中の各部会のメンバー構成ですけれども、まず、いわゆる親会に当たる法制審議会ですが、委員、幹事は合わせて二十三名おりまして、その中に、行政機関職員が三名、府省出身者が二名おります。

 それから、その下に置かれている部会で現在審議中のものは三つございますが、順次申し上げますと、一つ目、国際裁判管轄法制(人事訴訟事件及び家事事件関係)部会につきましては、委員、幹事合わせて二十五名のうち、行政機関職員が五名、府省出身者が六名おります。

 商法(運送・海商関係)部会につきましては、委員、幹事合わせて三十一名のうち、行政機関職員が五名、府省出身者が一名おります。

 民法(相続関係)部会につきましては、委員、幹事三十名のうち、行政機関職員が五名、府省出身者が三名おります。

 なお、今、府省出身者と申し上げましたけれども、これらは全て、法律実務家として参加していただいている裁判官の中に行政機関に出向した経験を有する者がおります、それらの数と、それから、法律専門家として参加していただいております研究者で、やはり行政機関に常勤あるいは非常勤の形で働いた経験を有する方がおりまして、それらを合計した数字でございます。

山尾委員 私も今初めて御回答いただきましたので、後でペーパーでいただけるものと思いますけれども、しっかり分析をさせていただきたいと思いますが、大臣も今の御報告を受けていらっしゃると思います。それで、この前もお話ししたとおり、原則はだめなんだ、例外的に、属人的な知識や経験が必要な場合に入ることが許されているということは共有したと思います。

 大臣、御報告を受けて、その一人一人の、例外に当たるかどうかというところの説明を聞かれたんでしょうか。

上川国務大臣 この御質問をいただいた折に、問題意識にございました審議会等の組織に関する指針を踏まえまして、この法制審議会、各部会の委員のメンバー構成については公正かつ均衡のとれた構成になるようにということ、そして、行政機関職員や府省出身者、今答弁の中で人数を盛り込んだところでありますが、専門的知識及び経験を有する者ということで、そうした限定の中であったというふうに思っております。

 一つずつの法制審議会あるいは部会につきましても、そのようなことについてしっかりと踏まえた上で人選されたものであるというふうに私自身は認識しているところでございますし、説明も受けたところでございます。

 同時に、法制審議会と各部会というのが法務省の中におきましてどういう役割、位置づけにあるのか、このことについて少し基本のところを把握していかなければいけないのではないか。

 先ほどの審議会等の組織に関する指針ということにつきましてはそのとおりであるというふうに思いますが、そもそもこの法制審議会あるいは部会の役割ということにつきまして、そしてその中で、先ほど来お話があります専門的知識及び経験を有する行政機関職員や府省出身者も含めた形で位置づけることがどういう意味があるのかということもあわせて検討する、そうした本質的なものがあるのではないかというふうに私は思っております。

 先ほどの御質問の中では、法制審議会そして部会の中で、この人は行政機関出身者、府省出身者、その者が専門的知識と経験を有するということについて一人ずつチェックしたのかというような御趣旨の御質問ではなかったのかなというふうに思うわけでありますが、その前の段階で、そもそもその位置づけにつきましてしっかりと把握した上でというふうに思っているところでございます。

 その上で、検証的な評価ということもございますけれども、またしっかりと考えてまいりたいというふうに思っております。

山尾委員 きょう示されたものの適性については私も確認をさせていただきたいと思いますが、今大臣が言っていただいた問題意識はとても大事だと思います。

 実際にこの刑事訴訟法の改正の議論が始まる前から、今議論中ですけれども、私自身も、例えば、政府・与党の口から、この法案は法制審議会で三年の議論を経てガラス細工のようにでき上がったものなのだというようなお話が出てきたりだとか、やはりその中には、実際に冤罪被害者でもあります村木さんがおられたり、参考人として来てくださった周防監督がおられたり、私どももそういう方の話を聞いて、不十分なところは共有しながらも、それでも第一歩で、それでも僕は反対しないと言った周防監督の言葉、そういったものも含めて、法制審議会の結論というのを私たち立法府はいかに受けとめるべきなのか。

 でも、もちろん、立法府としての全く異なる、やるべき役割があるはずですし、すごく私も共感します。大臣は、諮問をする行政府の長たる立場から、この特別部会、あるいはその上の法制審議会、ぜひ検討していただいて、何らかの形で、大臣の言葉なのかペーパーなのかわかりませんけれども、成果物をつくっていただきたいなというふうに心から思います。

 もう一つ、今、法制審議会と特別部会の話がありましたが、きょうは傍受の議論なんですけれども、傍受の議論というのは、特別部会がメーンというよりは、この新時代の刑事司法制度特別部会の中の、さらに第一作業分科会、私が見るところ、メーンの議論はほとんどここでなされているように受けとめました。

 それで、では、分科会のメンバーを見てみます。

 分科会長一名、委員が二名、幹事が八名います。全部で十一名です。この十一名のうち、法務、警察で六名です。法務、警察で過半数です。裁判所から一名、弁護士から一名、いわゆるアカデミア、学者さんから三名。この中の一人が、この間与党が呼ばれた川出参考人です。

 過半数を捜査機関側が占めているこの作業分科会で傍受のメーンの議論がなされています。その成果物がいわゆる特別部会に上がって、民間の有識者のもとで議論もされているんですけれども、特別部会の方は、もちろん傍受もされていましたけれども、やはりメーンは、可視化の範囲であるとか、あるいはやはり証拠開示とか保釈の問題にほとんど割かれていまして、私が読む限り、傍受とか取引には、なかなか特別部会の方で真剣に議論できるいとまが割けていなかったというのが多分現実だと思います。

 なので、私が申し上げたいのは、この作業分科会というものについても、今おっしゃった大臣の問題意識、検討の俎上に上げていただきたいということなんですけれども、いかがですか。

上川国務大臣 外部のさまざまな専門の皆さんにしっかりと知の巨人として審議に加わっていただきながら基本的な法制についての審議をしていくということは、これは非常に大事なことである。その中で作業分科会の役割ということも重要な視点でございますので、そうしたことについても問題意識をしっかりと持って取り組んでいきたいと思っております。

山尾委員 ぜひお願いします。

 最後に、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の第二十一回の会議の中の、ある委員の言葉をちょっと紹介します。

  議事進行についてですが、前半の議事進行を聴いておりましたけれども、ひがみかもしれませんけれども、捜査側の発言の当てられる回数が極めて多い。例えば、録音・録画についての議論の際に、日弁連委員は手を挙げていたのにもかかわらず、一回も指名されていません。司法取引につきましても、ようやく小野委員が最後の最後に指名されました。それまで、捜査の側は何回か指名が当たったということを考えますと、進行について一定の妥当性というのか、公平性というのか、そういうことについても配慮いただきたいと思います。特に刑事弁護の一線を担っている弁護人の意見も適切に聴いていただきたい、こう要望いたします。

これを、メンバーである弁護士の方がおっしゃいました。

 それに対して、進行を受け持っている部会長さんは、

  皆さんの挙手のタイミングと時間との関係だと思いますが、部会長の責任でございますので、できるだけ、おっしゃるような方向で努力していきますので、よろしくお願いいたします。

 タイミングや時間もあるのかもしれませんけれども、要は、やはり捜査機関が多いですから、当たる率も高いですし、発言の時間数もやはり多くなるんですよ。その時間数の積み上げの中で出てきたものが法制審議会の今回の案であるということもありますので、ぜひその検討の重要性をかみしめていただいて、しっかりと御報告をお願いしたいというふうに思います。(葉梨副大臣「過半数で決をとるわけじゃないからね」と呼ぶ)

 副大臣、もし何かあるんだったら、どうぞ。

葉梨副大臣 構成につきましては、適切な構成というのは、やはり我々としても気にとめていかなければいけないものだと思います。

 ただ、この特別部会におけるいろいろなそれぞれの委員の方の印象はあるかとは思いますけれども、私自身は、非常に真摯な議論が丁寧に尽くされていると。特別部会において通信傍受ですとか合意制度について議論が尽くされなかったというふうには必ずしも考えておりませんし、また、過半数で決をとるという性質のものでもございませんので、委員の構成等につきましては先ほど大臣が述べられたとおりでございますけれども、この特別部会においては、全体の意見がバランスよく取り入れられたものではないかなというふうに私は理解をしています。

奥野委員長 さっきから聞いていると、時々こっち側から不規則発言があるんだけれども、どうしても発言しなくちゃいけないときにはぜひ手を挙げて。私が質疑者に了解をとりますから。後ろでこそこそ言っているよりは、そういう正当な手順で議論をした方がいいと思うから、ぜひそれは、副大臣、政務官、理解をしてください。

山尾委員 私も同感です。

 私は、あくまでも法務大臣は、少なくとも法務省内における法制審議会や特別部会のメンバー構成やそのあり方について、やはりこの刑事訴訟法の議論の中で聞いていただいて、大臣なりの問題意識を持っていただいて、きっと真摯に対応していただけるというふうに信頼をしますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは次に、傍受のことについて入ってまいります。これは刑事局長でも結構です。

 傍受の合理化、効率化、これが今回入っているわけですけれども、その必要性について、ちょっと確認です、なぜ合理化、効率化をすべきなのかという理由。違ったら違うと言ってください。

 与党で参考人に来られて、部会のメンバーでもあった川出参考人がおっしゃったのは、私の整理だと主に三つなのかなと。一つが通信事業者の負担軽減、二つ目が捜査機関側の負担軽減、二つ目とリンクするような形で三つ目と別に立てるとするならば、本来傍受できたはずの犯罪関連通話が事実上傍受できずに終わった例があって、そういうことがあってはいけないのでそれを解決したいのだ、こんな整理だったかと思うんですけれども、局長、いかがですか。

林政府参考人 今回の通信傍受法の改正でございますけれども、組織的犯罪等において、事案の解明に資する客観的な証拠をより効果的かつ適正に収集するということを可能にしようとするものでございます。

 その観点に立って現行法上の運用上の問題点というものを考えますと、一つには、現行法では、通信傍受を実施する間、例外なく通信事業者などが常時立ち会うことが必要とされ、傍受の実施場所や立会人をする職員等の確保が通信事業者の大きな負担となっているという点、このところを一つの問題点と捉えて、これを解消するというのが一つでございます。

 もう一つは、それと関連するわけでございますが、傍受の実施場所や立会人の確保等のために、傍受を行う数週間前から捜査機関と通信事業者とで協議をする必要がある。それが通信傍受を迅速に行う上での障害ともなっている実情にある。また、捜査員や立会人は、実際に通話がなされるまで著しく長い時間を待機のために費やすという非効率な事態が生じている。こういった捜査の障害、あるいは非効率な捜査の実態というものを解消する、これが二つ目の理由でございます。

 委員が三つ目で言われた点については、二つ目の問題に関連してくるものと考えております。

山尾委員 言葉をかえられましたけれども、私も、一つ、通信事業者の立ち会いを含めた負担、二つ、捜査機関も負担が大きい、三つ、二つ目と関連するような形で、本来できたはずの傍受ができなかったようなことがあるならそれを解決しなければならない、こんなことなのかなと思うわけです。

 まず、通信事業者の負担ですが、負担はあると思います。では、今回の改正がなされたら通信事業者の負担は軽減されるのでしょうか。大臣にちょっと聞きたいんですけれども、トータルとして通信事業者の負担は軽減されるとお思いですか。

 では、もう少し追加しましょうか、ちょっと漠としていたかもしれないので。

 今回、立ち会いはなくなりますが、結局、運用管理者という人の必要は残るんですね。そしてまた、新しいシステムを導入することで、その開発だとか維持だとか保守管理だとかいうものも必要になってくる。後でまた細かくやりますけれども、軽減される部分もありますが、ふえる部分もある。そのプラスマイナスを考えたときに、負担は全体として事業者に対してマイナスになるんだというふうに考えておられるのか、そうではないのか、そこをちょっとお伺いしたかったんです。

上川国務大臣 通信事業者の関与の仕方につきましては、新しい制度になりますと、また新たな部分も出てくるということでございますし、また、現行と違って、立ち会いを必要としないという暗号技術を導入した形で、高度なシステムによって、それにふさわしいものとしての開発をしていく、こういうことになりますので、いろいろな観点によりましてプラスマイナスがあろうかと思います。

 トータル差し引きどうなのかということについては、私自身、通信事業者の皆さんが今回の制度にしていくということについて御意見を伺う機会がございました折に、ぜひ新しい制度につきまして対応していただきたいという、そうした御意見を考えてみますと、今の負担というものが通信事業者にとりましてさまざまな形で大変厳しいものであるというふうな認識を持ったところでございます。

山尾委員 私も、今の状態が通信事業者にとって非常に厳しくて、何とかしてほしいと思っていらっしゃるのは間違いないと思うんです。ただ、今回、立ち会いがなくなるだけじゃなくて、範囲も拡大して新しい手法になったときに、事業者の皆さんが本当に負担が減ると思っていらっしゃるかどうかというところをちょっときょうは議論したいと思います。

 皆さんのお手元なんですけれども、ちょっと一枚めくっていただいて、二枚目、ドコモさんからの当社意見というのがありますね。この後ずっと続くんですけれども、これは、作業分科会で通信事業者四名の方がそれぞれの事業者の立場で負担の問題について資料を出されて、それぞれお述べになっています。一応その四社を全部皆さんのお手元に置きました。

 まず最初ですけれども、NTTドコモさんのを見ますと、ちょっと圧縮して言いますね。後でぜひ目で追いながら共有をしていただきたいと思います。二番、「新システムの導入により、」現行の通信傍受、「一の負担はどのようになるのか。」「立会人の稼動は削減されますが、これに代わるシステム開発及びその維持が新たに必要になると考えます。 また、運用担当者が実施する「傍受対象番号登録」「削除」「発着信番号確認」等の稼動は引き続き発生します。」負担がふえるとも減るともおっしゃっていません。ただ、立会人がなくなる分は楽になるけれども、新しいシステムが新たに必要になるよ、あと、運用担当者については今と変わらないよ、こんなことなんだろうと思います。

 次、KDDIさん。

 めくっていただいて、(1)、「設備監視等を担う要員一名は必要だが、立会人は不要となる。」さっきと言っていることは同じですね。立会人は不要となるけれども、そういう設備とか運用する人は一人必要なんだよと。

 場所の提供は不要となる。通信傍受実施のための保全業務は従来と変わらず必要だし、やっている間は工事を自粛しなきゃいけないんですね、それも従前と変わらず必要であると。新システム導入については、もし今のままでいいなら変わらない、これを変更するには投資が必要、そんなことが書いてあります。

 「(5)弊社意見」、「立会人拠出の負担、場所等負担の軽減が実現することは望ましい。」三つ目のポツを見てください。「対象罪種拡大、及び新システム導入等の合理化で通信傍受実施件数が増加し、要員の稼働増が懸念され、通信傍受が二十四時間実施となると、要員確保のための体制拡大が懸念される。」

 要は、立会人や場所の負担がなくなるのはうれしい、でも、新たに対象も拡大するし、時間も延びるんじゃないか、大勢、結局、さらに要員を拡大しなきゃいけないんだとしたら不安ということをおっしゃっています。

 次、ソフトバンクモバイル。こちらは、「見直しによる新たな負担の回避」、新たな負担があるということを前提として、ぜひ次のようなものは回避をしてくださいよということが書いてあります。ちなみに、三―三では、「現行制度では、これ以上の依頼件数増加は、対応が困難」と。本当に大変なんだろうということはよくよくわかります。

 最後、東日本電信電話、西日本電信電話さん。これはもっとわかりやすいです。最初の二行、「通信傍受の見直しにより、通信事業者として、一部の作業は不要となるものの、新たな作業も生じるため、全体としては負担は軽減されないと想定されます。」はっきりおっしゃっています。

 余りにもはっきりおっしゃっているし、そのほかの三つの事業者からも、トータルとして負担が減るという話は出てこなかったので、この分科会で、大変困ったのかもしれませんが、最初の資料のページを見てください。議事録の抜粋です。第一作業分科会の第五回の議事録です。

 一番下に三行、線を引かせていただきました。これは、警察の方から出ている幹事の方の発言です。「今回、冒頭のプレゼンの中で全体としての負担軽減には必ずしもならないのではないかという御意見がありましたが、立会いの負担はものすごいものがあると私どもも承知しておりまして、この点を考慮するとまた御判断も変わるのかなと。」

 変わらないですよね。一番わかっている人たちが通信事業者の立場で話しているわけですから。立ち会いの負担は物すごくあるということをわかった人たちが、それでも負担が軽減されるかどうかわからない、あるいは負担は軽減されないと言っているわけですから。困ったんだと思います、通信事業者さんの口から、これで負担が減るからありがとうというストレートな言葉が出てこなくて。それがわかりやすいと思ったので、これを抜粋させていただきました。

 今、るるお話をしたんですけれども、大臣、こういう状況を見て、通信事業者さんがトータルで負担が減るということをおっしゃっていない。はっきり、負担は変わらないとおっしゃっている方もいる。どう考えますか、この負担の問題。

 私は、ちょっと精査した方がいいと思うんですよ、本当に負担がどうなるのか。だって、事業者さんの負担軽減というのは、今回、新手法をつくるための非常に大きな二本柱のうちの一つですよ。

 大臣、今の段階でいかがですか。

上川国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、現行のシステムの中で、立会人の方の負担が極めて大きいということもありまして、そこのところによって、また、通信傍受の目的について十分なる成果が上がらないではないか、こんなこともありました。負担は大変重いものがあるというふうに思います。

 新たな制度になりまして、また対象犯罪も拡大するということでございますので、どの程度ボリューム感があるのかということについては、恐らくそれぞれの通信事業者の皆さんにとりましてもやはり予測がなかなか難しい、そういう印象を今三つの事業者の中で持ったところでございます。

 人員そして費用面ということでございますが、少なくとも現行のものより軽減をされるということについては、これはしっかりとそうした方向になるようにしなければいけないというふうに思っております。

奥野委員長 今のは印象ですから、具体的に、考えた方がどう見ているかというのを事務方から答えてください。

 林刑事局長。

林政府参考人 今回のヒアリング等々での意見では、一つには、今回法改正を行おうとしている、常時立ち会いというものを一部でなくすという点について、これについては、負担の軽減になるという意見が当然ございました。それは、立会人の負担あるいは実施場所の提供ということについて、その負担が軽減されると。

 各社の意見の中で一番よく出てきていますのは、今後、この新しいシステムを導入した場合、この新しい法律に基づいて導入した場合のシステム開発、あるいはソフトウエア開発もあるかもしれません、さらには、例えば通信事業者から伝送路を実施場所まで引く、こういったものについて、仮にそれを事業者が負担するとなれば、これは全体として負担は軽減されないのではないか、こういった意見がございました。

 これにつきましては、法律の建前でいきますと、現行法でも、法律の十一条に、通信事業者に必要な協力を求めることができるというところがございますが、このときにも議論がございまして、この必要な協力というのは、一般的に個々の通信の傍受を実施するための必要な協力を指しているのであって、通信傍受が導入された当時に、一般的に、傍受を可能とするためのシステムとかネットワークを構築したりする、ソフトの開発をすること、これについてはこの協力義務には入っていないということで法律ができ上がったわけでございます。

 そうしますと、今回の新しいシステムを導入する場合のネットワーク開設、システム開発、あるいはソフトウエア開発というものは、法律で協力義務を事業者に負わされるものではないわけでございます。こういったところで、法律上、必然的に通信事業者の負担となる、法律上負担を受忍しなければいけない、こういう形にはなっておりません。

 ヒアリングの段階では、そういった今後起きるであろうさまざまな負担を当然懸念に入れられた上で、そういったものまで法律上自分たちの負担になるのであれば、それは全体として負担の軽減にはならないのではないか、こういった意見がなされたというふうに受けとめております。

山尾委員 トータルとして事業者の負担が減るというふうに思っているのかいないのか、ちょっとその判断のところは結局聞けなかったので、もうちょっと答えやすく質問します。

 多分、負担というのはお金と人が主なものだと思うんですね。

 では、まずお金の面について。

 今、大臣は、運用、費用面で軽減されるような方向で努力をしたいというような趣旨だと思ったんですけれども、刑事局長にお伺いしますが、今回、改正後、費用面で負担は軽減されるというふうにこの場でおっしゃることはできるんですか。それとも、まだわからないよという状態なんですか。それとも、ふえるよという状態なんですか。

林政府参考人 費用面ということでいきますと、現在、立会人を確保して、また実施場所を提供する、こういったものについては、これは通信事業者が負担しておるわけですね。ですから、そこの部分の費用面というものはコスト換算されておりませんけれども、その部分については減るものであろうと考えます。

 さらに、ふえるとしたときの一番の大きな問題点は、先ほど申し上げた、新しいシステムを導入する場合の開発あるいはソフトウエアの開発、こういったものについては、少なくとも今回の法律案の中で、当然に事業者に負担を強いるということにはなっておりません。

山尾委員 いや、だから、今、ちょっとわかりやすくしようと思って人とお金を分けたんですね。だから、立ち会いとか運用管理者とかの人の問題とはちょっと分けていただきたいんです。

 それで、いわゆるお金の面ですよね。今の答弁は、新しいシステム開発、そしてまたその運用管理、維持、そういうものを含めて、現行よりも負担が減るというふうにおっしゃっているんですか。

 申し上げると、要は、見積もりも、十一億から三十一億と三倍の開きがある見積もりの中で、しかも、警察がどこまで持つのか、事業者がどこまで持つのかは今決まっていないという答弁がありますので、正直に答えていただけるなら、金銭的な負担がふえるかどうかはまだわかりませんということだと思うんですよ。どうなんですか。

奥野委員長 林刑事局長、なるべく質問の趣旨に沿って答えてください。

林政府参考人 法律的に、ネットワーク開発とか先ほど申し上げたソフトウエア開発、システム開発、これについては、今回、当然に事業者の負担になるとは義務づけていないわけですね。

 ただ、今後、その部分が、警察において開発する部分、負担をする部分というのが当然あると思いますけれども、これをどのように配分していくかということについては今後任意の段階での事業者との協議というものによって決まってくる、法律上義務づけた形で必ず事業者の義務になっているわけではないという点でございます。

 そうしますと、法律論の話は今申し上げましたが、今後、実際上どのような負担が出てくるのか、事業者においても、任意において通信事業者の責務として行われる部分がどの程度になるかというのは、これについては今後の協議に委ねられているということでございます。

山尾委員 警察に確認してもいいんですけれども、警察の方からも出ていましたよね。たしか前の質疑の中で、別の日だったかと思いますけれども、今おっしゃったとおり、要は警察と事業者がどういうふうに配分するかはこれから協議をするんだということですよね。だから、要は、金銭的に負担がふえるのか、そのままなのか、減るのかということは今の段階ではわからないという前提で私たちは議論をしないといけないということだと思います。

 人の点なんですけれども、人は減るんだというような感じでおっしゃったんですけれども、もしそうなら、ちょっとお示しをいただきたいんですが、立会人はいなくてよくなる、だけれども、運用担当者は必要だ。そういう中で、今回の提案は、範囲が物すごく拡大をして、そしてリアルタイムのみならず、一時的な保存で後から聞くということも考えられている。そして、場合によっては傍受回線というものをふやすという可能性も排除されないかもしれない。

 そういうこともリアルに考えたときに、刑事局長、もう一度お答えいただきたいんですが、必要とされる人は減るんですか、本当に。減るんだったら、これからどれぐらい事件がふえそうで、掛ける一と掛ける二でこう違うんだ、こういう説明が欲しいです。本当に減るんですか。

林政府参考人 全体としての件数がどのぐらいになるかというのは、これは予測ができません。そういった意味で、全体のボリュームアップを前提にすると、今の委員の御指摘の点について正確にお答えすることはできません。

 ただ、一つ、ボリュームアップの点だけではなくて、例えば先ほど、運用担当者は必要だということがございました。確かに、特定電子計算機に伝送するという、伝送する側の運用担当者というのは必要なのでございますが、こういったことは、今後の最終的な技術開発の結果におきましては、接続部分をしっかり確認して、令状に示された期間に特定の通信手段をつなぐということがなされますと自動的に伝送というものが行われていくということがありますので、今の立会人の制度というのは完全に常時張りついているわけでございますが、そこで変わるところの運用担当者というのはもちろん残りますけれども、技術的な対応でその負担というものは随分軽減できるのではないかと思っております。

山尾委員 だから、人についても、減るという根拠はわからないということだと思います。だって、範囲が拡大するんだし、実際どれだけ傍受件数がふえるかという数字をお持ちでないということなので、必要な人員の数がふえるのか、維持されるのか、減るのかもわからないということだと思います。

 そうだとすると、お金もふえるのか減るのかわからない、人も、必要とされる数がふえるのか減るのかもわからない。そうすると、通信事業者の負担を減らすためのこの制度とは何なんだというふうに私としては思うわけです。

 これは後で理事会で協議していただきたいんですけれども、実際、事業者さんは、ここに書いてあるように、要員の稼働増を懸念しています。そして、新システム開発を含めた負担増についてもやはり懸念しています。私、今回説明を聞いて、そこのそごが一致できたならよかったんですけれども、事業者さんは負担増を心配している、あるいは軽減されないと言っている、一方で、事業者さんの負担を軽減するためにやるよと言っている法務省に聞いても、本当に負担がふえるのか減るのか答弁が得られない。私は、ぜひ通信事業者さんの現場の声をこの委員会で聞かせていただかないと、この負担増減問題についてはちょっとこれ以上らちが明かないのかなというふうに今感じていますので、かなりこれに費やしたんですけれども、これは後ほど協議をしていただきたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

奥野委員長 難しいと思うけれどもね。(山尾委員「頑張って。協議ですから」と呼ぶ)理事会で協議をすることまではいいですよ。非常に難しい、予測の領域が入っていますからね。いずれにしろ、理事会で協議をするというところで引き取りたいと思います。

 山尾君。

山尾委員 ありがとうございました。

 それでは、次に行きたいというふうに思います。これは公安委員長にお伺いしたいと思うんです。

 細かい話ではありません。今回、傍受の手法がすごく変わりますよね。今までは、事業者の施設の中で立ち会いの方がいて傍受をしていた。今回の新手法に基づくと、警察署内で立ち会いなしで傍受ができるようになる。これが手法の合理化、効率化というものなんですけれども。

 私は、すごく厳格な、厳しい、労力のかかる手法を使っているということは、傍受というのは乾坤一てきの、このときにやろう、やはりそういう濫用を抑止する機能を今も果たしていると思うんですね。だから、この十六年間、ある意味、傍受の表に出ている範囲では少なくとも不適正だと思われるような事例は出てきていない。多分、当初、十六年前に議論されていたときよりも数的には謙抑的なんだと思います。その理由の一つに、やはりこれは大変な労力がかかる、だから、乾坤一てき、どうしてもやりたいときにこれをやるんだ、絞り込むんだ、こういう機能を果たしてきたし、果たしていると思うんですけれども、委員長はどうお考えになりますか。

山谷国務大臣 立会人なしの新手法で、立ち会いのある現行手法と同様に、その適正な実施というものが担保できるかという御質問でしょうか。(山尾委員「いや、違います」と呼ぶ)

 では、もう一度。済みません。

山尾委員 では、もう一度。

 担保できるかどうかということを言っているんじゃなくて、要は、今は、傍受がすごく厳格な、なかなか労力がかかる手法でやられているわけですよね。通信事業者のところまで行かなきゃいけないし、しかも、何週間も前から立会人を含めた打ち合わせもしなきゃいけないし、そして、自分たちがこうやって聞いている間、立会人に必ずいてもらわなきゃいけないし。こういう労力がかかるということが、できるなら何でもかんでも傍受をやるぞじゃなくて、やはりここぞというときだけやるんだ、そういう、濫用を抑止する、捜査機関側が自制をして数を絞り込む、傍受をやるという数を絞り込むという役割を果たしてきたんだと私は思うんですけれども、公安委員長はそうお考えにはなりませんか。

奥野委員長 通信傍受そのものを見ていないから。わかりますか。(山尾委員「えっ」と呼ぶ)いやいや、我々と一緒に見ていないという意味ですよ。

 国家公安委員長。

山谷国務大臣 通信傍受のシステム等々は私も見ております。

 新たに導入する特定電子計算機を用いる通信傍受では、捜査官が傍受または再生をした通信は、特定電子計算機により全て自動的に改変不可能な形で記録媒体に記録され、裁判官に提出されることになるわけでございまして、恣意的な傍受等々は行われないと考えております。

山尾委員 では、参考までにというか、この第一作業分科会では、警察からももちろんメンバーが入っています。ちょっと紹介しますね。

 第一作業分科会では、警察から来ている人が、そういうのを果たしているよねということを言っているものだから、委員長も同じ考えかなと思ったんです。ちょっと紹介しますね。

 これは、第一作業分科会の第四回、警察庁刑事局刑事企画課長の方が話しています。テーマは、傍受の範囲をどこまで拡大するかという議論の中で、要は警察だからもちろん拡大したいですという話をしているんですけれども、それに対して弁護士さんとかほかの方から、でも、広げるとちょっとやはり心配だな、どんどんどんどん数がふえちゃうんじゃないかなというような議論のやりとりなんです。

 そこで警察の方がどう言っているかというと、例えば詐欺なんですけれども、「捜査機関は単純な詐欺について通信傍受を行うことは考えていないと言っても、実際にはやり得るではないかと思われるかもしれませんが、やはり通信傍受というものは非常に捜査の労力が掛かる捜査手法でありますので、本当に組織の上位者をターゲットとする場合に実施したいと私どもとしては当然考えております。」こういうふうに警察の方が言っているんですね。要は、すごく労力がかかるから、今回罪種を拡大しても、私たちは本当にやりたいときしかやれないんですよ、だから安心してくださいと言っているわけです。

 これはこのお一方だけが言っているんじゃありませんで、第五回のときには、人がちょっとかわって、今度は刑事局組織犯罪対策部暴力団対策課長、この方が第五回でも同様のことを言っています。「捜査経済を考えますと、令状請求というのは非常に大変なことであり、かつ、執行する、傍受をするというのは、先ほど事業者からのヒアリングにもありましたように、捜査機関にとっても負担がものすごく重い捜査手法でありますので、これがいたずらに広がるという懸念は現実的ではないということを申し上げさせていただきたい」と言っているんです。

 要は、物すごく労力がかかるから、だからこんなのはいたずらに広がりませんよ、そんな懸念は、弁護士さん、現実的じゃないから、大変なんだから、そんなにそんなにできないんですよと警察の方が説得しているわけですよ。なので、私は申し上げているわけです。

 私もそう思います。厳格で、すごい労力がかかるということが実質的にはその範囲をすごく絞り込んでいる、もう言うとおり。

 委員長も、今御紹介した警察の方と同じ考えですか。

奥野委員長 いや、その前に、一回、三浦刑事局長に、こういう言葉があるけれども、三浦さんも同じことで考えていますかというのも一つの手だよ。(山尾委員「一つの手ですね。では、どうぞ」と呼ぶ)

 三浦局長。

三浦政府参考人 まさに通信傍受というのは、もともと極めて厳格な要件のもとで令状をいただいて実施をするというものでありまして、非常に組織性の強い、まさに傍受でなければ解明ができない、そういった事件において用いられる極めて限定的な捜査手法であるというように認識をしておりまして、その点は、新しい手法、効率化、合理化に基づく制度が導入されたとしても、何ら変わるところはないというように考えております。

 極めて限定的といいますか、法に基づく要件を満たす、そういった組織性の高い事件、また、傍受を使わなければ実態の解明あるいは上位者の検挙ができないと目されるような事件、そういった事件に限ってこの手法を使うということでございますので、それは、現行法のもとでも、また新しい制度のもとでも、警察が傍受を実施するに当たりましては、そういった要件を十分考慮の上、ある意味謙抑的といいますか、限られた事案において使っていくということになろうかというように認識をしております。

山尾委員 そうすると、引き続き刑事局長に聞きたいんですけれども、では、この分科会での発言は、説得内容として、手法として、ちょっと適切ではないというお考えですか。

 つまり、私が言いたいのは、ちょっとずるくないですかと思ったんですよ。範囲の拡大を説得するときは、いや、すごく手法が大変なんだから心配に及ばずと言っているわけですよね、だから拡大させてくれよと。でも、これが終わると、今度は、ちょっと負担が多過ぎるから手法も楽にしてくれよと。それが今回セットになっているわけですよね。それってちょっとおかしくないですかという質問なんですけれども。

 ただ、今の三浦刑事局長のお話からいうと、本当にやむを得ないときにやるのだということと労力がかかるということは何ら関係ない、こういうお話ですか。

三浦政府参考人 通信傍受が、極めて要件が厳格でありまして、例えば単純な詐欺とか単純な窃盗とか、そうしたものにおいて用いることができるという手法でないという点においては、何ら変わるところはないという認識であります。

 ただ、実際、現行の傍受の方式といいますのは、これまでもるる御説明がありましたように、通信事業者側にとってのそうした立ち会いの負担でありますとか、あるいは捜査側にとっても大変非効率な状況というものが生じている、この十数年の運用の中でさまざまな問題点というものも出てきているということでありまして、そうしたことによって、極めて機動的な通信傍受の運用というものが大変難しくなっているという問題がございます。

 先ほど答弁ありましたように、相当前から、最低でも二、三週間前から立会人を確保するためのいろいろな交渉を始めていかなければいけない。それも、必ずしもうまく立会人が確保できるとも限らない。そうしますと、例えば今の振り込め詐欺のようなものにつきましては、犯罪者も、例えばアジトを転々とするとか……(山尾委員「ちょっと、短くお願いします」と呼ぶ)ええ。そういった、非常に向こう側が、犯罪者側が大変機動的に動いているわけでありまして、そうした事態に迅速に対処していくといった面においても、現在の通信傍受のやり方は、ある意味では大変非効率なものとなっているということでありまして、そうした通信傍受に本来期待されている機能、組織犯罪の解明、犯罪中枢の検挙……(山尾委員「ちょっと、本当に。もう質問と関係ないので」と呼ぶ)ええ。その目的を達するために、より合理的、効率的な方式をとらせていただきたい、そういうお願いでございます。

山尾委員 本当に、限られた時間ですので、答えだけ聞かせていただきたいと思います。

 今の問題提起については、委員会の皆さんには共有していただけたかと勝手に思いまして、最後に進みたいと思います。

 皆さんのお手元の資料の一番最後を見てください。資料四と右側に小さく書いてあるものです。

 これは何のことを言いたいかといいますと、私どもが視察に行ったときに、デロイトトーマツコンサルティングという、警察提案措置なるものの適正性を担保した、要は、適正ですと判こを押す役割を果たした方から私たちはお話を伺いました。そのときに、私、質問したんですね。趣旨としては、本当に第三者ですかということを質問しました。

 その後に、警察の方にお願いをして、これは、警察が提案した措置なるものがあって、それに対して客観的に第三者の立場で、これなら大丈夫、要するに、措置をつくる人と、それをチェックする人がしっかり別になっているかということがとても大事だと思ったんです。

 では、実際に警察は何をつくってこのデロイトさんに見せたのか、警察がつくった警察提案措置というのを下さいと言いました。出てきたのがこれです。要するに、私の理解では、警察庁がデロイト社に、部会の答申と、第一作業分科会の第一回の議事録と参考資料を渡した、それに対してデロイトが報告書をつくったと。

 ということは、すごく疑問なのは、実際は、警察提案措置って、警察は何をつくったのかと。だって、デロイトに渡しているのは、法制審議会の答申書と第一作業分科会の第一回の議事録なんですよね。これをデロイト社に渡して、このデロイト社が、ここでなされているように、警察がやりたいことに関して必要な技術的対策を整理して、十四項目整理されたものに対して複数の技術要素をラインナップして、そのラインナップからデロイト社が自分で一つ選んで、最後、それを組み合わせてデロイト社がオーケーと担保したと。

 私がこの資料をいただいて、デロイトの報告書を読んで、この渡したという作業分科会の資料を読むと、こういうふうにしか理解できなかったんですけれども、刑事局長、いかがですか。

三浦政府参考人 今回の委託の経緯でございますけれども、警察庁におきまして、通信傍受の合理化、効率化を進めるために必須であると思われる、通信傍受の実施の適正性を担保する技術的措置について検討を行ったわけでありまして、それにつきまして、法制審議会でも、発表といいますか、こういうことが考えられるのではないかということを説明したということがございました。

 そして、その後、法制審議会の答申、それからその関係の議事録、その内容といいますのは、かなり技術的な部分も含むこういった措置をとればその適正性が担保されるのではないか、そういった内容のかなり詳細なものでございますけれども、それをデロイトトーマツ社に示して、説明を行いました。それについて、技術的、専門的な観点からいかがなものであろうか、そういった調査研究をお願いし、そのお返事をいただいた、そういう経緯でございます。

山尾委員 確認なんですけれども、私がこれをいただいたときは、デロイトトーマツに渡したのはこれだけですか、ここに書いてある答申と、この作業分科会の第一回の議事録と参考資料、渡したのはこれだけで、これに対してデロイトがあの報告書をつくったんですねと確認したんですけれども、そこはもう一度御確認いただけますか。ほかに何か渡したものはないという確認をさせてください。

三浦政府参考人 御質問のとおりでございまして、答申と関係議事録を示してということでございます。

山尾委員 だから、デロイトの方もそう言ったんです。私、あの場で聞いたら、結局、考えられる技術要素をラインナップしたのもデロイトで、その中から一個選んだのもデロイトで、それでオーケーだという判断をしたのもデロイトだというふうに、デロイト社があの場でおっしゃったんですよ。

 ただ、ちょっと私、やはりここはすごく大事だと思うんです。私は反対ですよ。反対ですけれども、この新しい手法なるものが、新しい技術的措置なるものが、本当に適正性が担保されているのか。警察は、第三者であるデロイトに担保をお願いした、担保してもらったといって、千七百万かけて報告書をつくってもらいましたけれども、本当にこれは第三者と言えるのか。私は、この傍受を議論するに当たって、非常に大事な論点だと思います。

 私は、これも一度デロイト社からこの場で聞き取りをお願いしたいと思いますが、理事会で協議していただけますでしょうか。

 というのは、済みません、時間が過ぎているのはわかっているんですけれども、それではいかぬと思って、部会に来てぜひお話を聞かせていただきたいとお願いをしましたら、私どもは警察から委託を受けているのでそちらでは説明はできません、こういうお話だったんです。だけれども、委員会では説明していただけると思いますし、前のときは、報告書をあの場で渡されたので、時間も制限がありました。ぜひ理事会で協議させていただきたいです。

奥野委員長 理事会で協議をいたしましょう。

山尾委員 ありがとうございました。時間を押して失礼しました。

奥野委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。きょうもよろしくお願いいたします。

 冒頭、今週私の方からいろいろと御主張させていただきまして、特に、きょう、こうしてまた質疑に臨めることをまず委員長に一言感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 きょうは三十分ですので、二倍速、まあ、私の二倍速といったら普通の人と同じぐらいなんですが、コンパクトに質問していきたいと思います。

 冒頭、お配りした資料をごらんいただきたいんですが、これは、通信傍受を実施するに当たって警察が厳格な運用をやっているんだ、そう言ってきたものを私が一覧にしたものであります。

 対象犯罪を限定して、いざ傍受以外に手法がない、そういう補充性も設けて、裁判所から令状もちゃんと出してもらって、事業者の立ち会いがあって、そして記録はきっちりと封印をされて、原記録はそのまま裁判所に行きます、当事者にきちんと通知をして傍受記録も聞いてもらうことができるんですと。こういう仕組みになっていて、特に、最後、記録が見られる制度になっている、必要なら記録が見られる制度になっているよというところは通信傍受の適正性を担保していく上で重要な部分であるということは、警察サイドも異論はないかと思います。

 しかし、さきの委員会で、この五年間で最高裁が保管をしている百七十五令状分の原記録について、その閲覧、複製の請求があったのは二十五件、そのうちの二十三件は捜査機関側からのものだった。ですから、二件は被告、弁護側からあったんですが、それを詳細に伺いますと、お一人の弁護士さんが、自分の担当している事件について二つの令状にまたがっていたということで、一つの事件について原記録を見たい、そういう申し出があったと聞いております。

 そして、最高裁の方にも調べていただいたのですが、平成二十四年からこれまで、裁判所の方で把握をしている不服の申し立て、これは一件あった。この不服申し立ては認められたんですが、これは捜査機関側からの不服申し立て、記録を見せることはできませんという裁判所の判断に対して捜査機関が不服を申し立てて、それは結局認められた。

 ですから、原記録の閲覧というものは、仕組みとしては、被告であろうと、弁護士であろうと、裁判官であろうと、捜査機関であろうと、必要であれば閲覧することはできる。しかし、その実態は、特に被告や弁護側、裁判官はほとんど原記録というものに触れていないのが実態だと思います。

 そうした実態にしっかりと向き合っていただかないと、通信傍受は非常に厳格な要件を設けてきちっとやっているんです、最後に記録を提出して見られるようになっているからスポットもちゃんとやるんです、絶対に我々はスポットをすっ飛ばすような違法な通信傍受はしない、そう言ってきてもらっているんですけれども、原記録の閲覧実績が、このように記録のチェックというところで大変疑わしい。

 このことについて、まず三浦さんからコメントをいただきたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(忠)委員長代理着席〕

三浦政府参考人 原記録の閲覧の実施状況につきましては、ただいま御質問の中にもございましたけれども、これは裁判所が原記録を保管しておりますので、警察として、その閲覧の実態について把握をしているものではございません。

 なお、捜査機関からの閲覧請求が多いという御質問がございましたけれども、傍受を実施した個別の事件について、原記録の閲覧等の請求をした理由について申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、傍受が行われた事件に関し、犯罪事実の存否の証明または傍受記録の正確性の確認のために必要があると認めるときなどに、原記録の聴取、閲覧等の請求をする場合があるというように承知をしております。

井出委員 なかなか質問に向き合っていただけないので大臣に伺いたいのですが、通信傍受をした原記録は、必要であれば見られる制度にはなっております。しかし、この五年間のデータ、裁判所に調べていただける限りのことを調べてもらいますと、裁判官や被告や弁護士といった立場の人は原記録というものにほとんど触れていないんじゃないかと思います。

 ここにしっかり向き合わなければ、通信傍受は厳格だよと言っている部分で、この原記録がしっかり見られているかいないかというのは非常に肝だと思いますし、これを余り被告や弁護士、裁判官が見ていない、そういう実態があるのであれば、見直しをかけていかなければいけないと思いますが、いかがですか。

上川国務大臣 今、原記録の閲覧の請求あるいは不服申し立てがなされた数ということで数字の御紹介がありまして、法務省として、そのことについて子細に把握するというところではないわけでございますけれども、原記録にアクセスしていないということをもってこれは問題であるというふうな御指摘、問題意識なのでしょうか、私の方から質問するのも大変恐縮でございますが。

 それぞれの事件におきまして、傍受を実施する時点におきましては、捜査官においては、裁判官が保管する傍受の原記録を閲覧する者が現にあるかどうかということでありますとか、あるいは、捜査官がした傍受の処分に対する不服申し立てを行う者があるかどうかということにつきまして、予測をすることができるものではございません。

 だから、仮に不正な傍受を行いますと、傍受をした通信の当事者のうちいずれかの者がこの傍受の原記録を閲覧したときに、そのことが問題であるということが発覚をするわけでありますので、そうしたことにならないように行動する、そういう意味での結果になっているのではないかということであります。不正を行うことはできないということであります。

 そのように、傍受の原記録が裁判官に保管されて事後的に検証することが担保されている、このこと自体が捜査官の不正行為について抑止する力があるというふうに理解をしているところでございます。

井出委員 三浦さんに、今の大臣のお話を踏まえて伺いたいんです。

 原記録をきちっと事後チェックできる制度になっている、それが不正をしない抑止力だ、それはおっしゃるとおりだと思うんです。

 でも、実際に原記録を裁判官や被告、弁護人側がほとんど見ていないんじゃないか、それでは抑止力が揺らいでいると私は思うんですよ。抑止力が十分の一ぐらいになっちゃっている、百分の一ぐらいになっちゃっているかもしれないし、私みたいなちょっとひねくれ曲がった人がもし警察官だったとしたら、どうせ見ないよ、どうせ見ないし、ここは肝だからもうちょっと聞こう、そういう考えが起こるんじゃないか。

 そういう心配で、これは制度的に言えば、原記録があることは、多分、被告や弁護士に伝える必要もないと思うんですよね。制度的には傍受記録だけ伝えればいいと思うんです。原記録があることをきちっと伝えるだけでも全然違うと思いますし、今の状況で果たして抑止力が働いていると言えるんですか。

三浦政府参考人 実際に原記録の閲覧がどの程度なされているかということについて、それは警察としてコメントのしようもないわけでありますけれども、ただ、制度的に、いつ何どきそれを見られるかもわからない、後から検証されるかもわからない、そうした状態に置かれているということは、やはり適正な傍受の実施、特にスポット傍受でありますとか、そうした事柄に関しまして、委員の表現をおかりすれば、大きな抑止力として働いているものというように承知をしておりまして、それは、実際に閲覧がどの程度なされているかということとはまた別な問題だというように認識をしているところであります。

井出委員 不正ができないように制度を設計する、それはいいことだと思います。制度には、不正ができないようにするという目的があるわけですね。目的が達成されているかどうかというものもちゃんと見ていく責任があると思いますよ。制度はつくってあるんです、実際に原記録を全然みんな見ていないんじゃないか、制度が機能していないんじゃないか、それはちょっと私たちは知りませんでは、私は、制度の目的まできちっと責任を持っていただきたいと思います。

 次に、裁判所に伺いたいんです。

 この法案、取り調べの可視化については、可視化は非常に立証上いいという議論、共通認識がありましたし、司法取引についても、そういう供述は少し注意を持って見るべきだという議論、共通認識が裁判所の中である、そういうお話があったのは過去の委員会で出てきていると思うんですけれども、通信傍受は十六年間で二百八十三の令状しか出ておりません。

 恐らく、十六年間で扱ってきた全国の裁判所の令状というものは星の数ほどあると思います。身柄をとる事件だけでも年間で十二万とか、十万を超えておりますので、二百八十三件という通信傍受の令状というものは非常に数が少ない。恐らく、平木さんが、何か裁判官の皆さんとの集まりで通信傍受について話そうとしても、いや、通信傍受の令状を見たことがない、事件を見たことがないと。

 私は、多分、裁判所は、通信傍受について、可視化とか司法取引のような議論をする材料も持っていないというのが正直なところなんじゃないかなと思うんですけれども、そこをざっくばらんに教えてください。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、通信傍受令状を発付した経験のある裁判官というのはそれほど多くないものと思っております。

 ただ、重要な法律でございますので、各庁、各裁判体ごとに議論はなされているのではないかと思っております。もっとも、事務当局といたしまして、どのような議論をしているのかという詳細につきましては把握していないところでございます。

 最高裁といたしましては、国会や法制審議会などでの議論を全国の裁判官に情報提供してまいりたいと考えておるところでございます。本制度が採用されまして、裁判体が令状発付の要件を判断する際には、それらの議論の趣旨も踏まえて、慎重に、適正に判断することになるものと考えておるところでございます。

井出委員 私も、通信傍受の事件や令状に触れた経験のある裁判官は少ないと思います。ですから、もしかしたら、この法律が始まってから通信傍受の件数がふえるかもしれない、議論しよう、何かそういう問題意識を持とう、そういうことはあるのかもしれないとは思っているんです。

 あともう一つ伺いたいのは、裁判所は通信傍受をするときに令状を出していますよね。ですから、一定のきちっと責任ある立場で関与をしているんですけれども、私は、原記録の閲覧に関しても、裁判官は、恐らく、被告、弁護士や検察官の方が何か言ってこない限り、自分たちから、この原記録、捜査をちゃんとやったのかなと自発的に見ることはまずないと思います。

 そう考えると、これまでの裁判所の原記録に対する向き合い方というものは、それをチェックするというよりは、むしろきちっと保管するというところに重きがあったかと思いますけれども、その点の認識はいかがでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 捜査機関が、傍受の実施をしている間に、傍受令状に被疑事実として記載されている犯罪以外の一定の犯罪について傍受をした場合、これは通信傍受法十四条一項の場合でございますけれども、そのような場合には、通信傍受法二十一条二項により、裁判官には、法十四条の要件を満たすかどうかを審査すべき義務が課せられております。したがいまして、この場合には、裁判官は、傍受の原記録の閲覧等をすることになるものと考えられます。

 また、委員御指摘のとおり、原記録の閲覧等の請求があったり不服申し立てがあった際には、判断に必要な範囲で閲覧等をしている例があるのではないかと思っております。

 また、委員御指摘のとおり、原記録を保管するというのは大変重要な職務でございますので、裁判所としましては、厳格に原記録を保管しているところでございます。

井出委員 厳格な保管は大変重要なんですけれども、恐らくこれから、それをチェックするというところの議論も、件数がふえてくれば出てくるのではないかと思います。

 私がつくったこの図なんですけれども、対象犯罪が拡大する、立ち会いもなくなる、補充性というものは、傍受以外に手がない、傍受でいこう、そういうことですので、これは捜査機関側の慎重な判断の上でなされることだと思います。令状も本来であれば大変厳格な手続です。実際、今は厳格なんじゃないかなと私は思っています、二百八十三件しかやっていませんから。でも、二百八十三令状のうち二百八十一令状を認めている、率にすれば一〇〇%に近いというところ。ですから、私は、ここにも、申しわけないけれども、はてなマークをつけさせていただきました。

 こうやって横に並べて、私は、この原記録の閲覧の状況にも今お話しした問題意識を、疑問を感じておりますので、どこかできちっとやはり歯どめというか、抑制的に、厳格にやっていくということを考えていただきたい。

 そうすると、やはり私は、一番は立ち会いの問題だと思います。立ち会いの問題というか、もっとストレートに言っちゃえば、今回の法改正で私が一番大きいなと思っているのは、警察署、警察の施設で通信を傍受することができるようになる。

 これまでは、通信事業者のところに行って、立ち会いをしてもらってやってきた。スポット傍受がちゃんとされているかとかそういうところまでは立会人は見ていないんですけれども、やはり人の管理する場所で人の管理するものを見る。今度はそれを、事業者が管理するべき通信を暗号化して警察の方に送ってもらって、警察署で聞くことができる、立会人がいない。

 私は、これは、前にもちょっと視察の話をしましたけれども、視察のときにイヤホンじゃなくてスピーカーで我々が聞かせていただいた、ああいうことだって絶対にないとは言い切れないのではないかと思います。

 この法案が成立をしたときに、私は、この法案の成立によって日本の警察は警察の施設でも通信傍受ができるようになったんだ、そういうことを言いたい。恐らく、それを聞けば、有権者、国民の皆さんは、ああ、そうなんだ、そこが変わったんだ、警察署で通信傍受ができるんだねと。そういうことに対して不安を覚える方は結構いると私は思うんですよ。

 暗号技術、伝送技術、それは技術の進歩でそういう評価できる部分もあるのかもしれないんですが、それでも私は、警察署の施設では傍受をしていただきたくない。これまでどおり事業者に行くか、もしくは、裁判所が令状を出しているんですから、裁判所にもちょっと責任を持ってもらって、場所でも提供してもらってそこでやるか、警察施設と離れたそういうところで傍受捜査というものをやります、そういうことをお願いしたいんですが、局長、いかがですか。

    〔伊藤(忠)委員長代理退席、委員長着席〕

林政府参考人 今回の特定電子計算機を使う場合には立会人というものが必要なくなるわけでございますが、これは、暗号技術を活用した通信技術を踏まえることによって、これまで必要とされていた立会人の役割をそれによって全て代替することができる、そういうことに基づいて今回の制度を法律案としているわけでございます。

 通信傍受の場所が今まで通信事業者の施設であったというのも、やはり立会人の確保ということからそちらでやっていたわけでございますが、今回、立会人というものが不要となった場合、立会人の役割は特定電子計算機が代替するということで不要となった場合においては、通信事業者ではなくて捜査機関を傍受場所としてすることによって、何ら、これまで行われてきた通信傍受というものが、その傍受できる範囲を拡大するものでもないですし、また不正な、不適正な傍受がなされないための担保措置が今回なくなるわけではないわけですので、それは捜査機関において実施されることは問題がないと考えております。

井出委員 林さん、もう一つ伺います。

 確かに、技術の進歩によって、令状どおりの通信対象をきちっと限定して聞くことはできると思います。立会人が要らないという今の御趣旨もわかるんです。

 先ほど、立会人に対価を支払う必要はないんだという話の中で、通信事業者が管理している施設で管理しているものを捜査という形で入る、だから、そこを管理している事業者は、わかりやすく言えば、恐らく立ち会いをする権利が認められていると。向こうの権利だから、向こうに不利益な話じゃないから、お金を払う必要はないというお話で、立ち会いというのは向こうの権利だというふうに僕はさっきの答弁を解釈していたんです。

 通信事業者に電話のデータを暗号化して伝送してもらってそこを聞くときも、それは通信事業者が管理している通話データを警察署に送って聞くんですから、やはり通信事業者がそこにいる権利はあると思いますし、そこで、私がちょっと懸念しているような、例えばスポットが全然なっていないとか、スピーカーでみんなで聞いているとかとなったら、そういう聞き方をされては困るんです、そういうこともやはり言っていただかなきゃいけないと思うんですよ。

 ですから、私は、特に警察署でどうしても聞く必要があるんだ、通信傍受捜査の未来、日本の治安のため、警察署でどうしてもやる必要があるというのであったとしても、そこにきちっと事業者の立ち会いをつけていただきたいと思いますけれども、いかがですか。

林政府参考人 今、通信事業者の施設で傍受をする場合に、立会人を原則としては通信事業者側にお願いしているわけでございます。

 これの理由につきましては、一つは、通信事業者の場所で行われる以上、そこには当然通信事業者の管理権がございます、それに対する制約という面がございますので、そういう制約を受ける側の通信事業者が立ち会うという側面が一つございます。

 もう一つは、やはり、通信事業者は多数の通信を媒介するという公共的な使命も帯びた事業体でございまして、当然、通信の秘密というものについても非常に強い関心を持っている、また、みずからも通信の秘密を守らなくちゃいけない立場にございます。

 そういったことから、立会人として通信事業者にお願いしていますし、また、必要な協力というものもお願いしているという関係にあります。

 今回、特定電子計算機でそれを伝送してもらう、ここについては、暗号化の上伝送してもらうというのは、通信事業者に命じて行うということになっております。これも、通信事業者にとっては、命じられるということについては、やはり通信事業者においては公共的な使命もありますし、また、通信の秘密に関して守らなくちゃいけないという責務もございますので、それを甘受して、命じられた場合には暗号化した上で伝送する、こういうところまではやっていただくわけでございます。

 その上で、その後、捜査機関を傍受場所として行われる傍受におきまして、そこで、暗号の技術を活用した技術的な措置によって、通信の秘密というものがこれまでの通信傍受と全く同様に確保されるということが技術的に担保されるのであれば、通信の秘密を守らなくてはいけないという使命を持った通信事業者におきましても、それはあえて立会人という形でそれを果たす必要はない、このように考えております。

 結局のところは、通信事業者にとりましても、今回の特定電子計算機というシステムにおいて、これまで立会人という形で行ってきた通信の秘密に対する適正性の担保というものが十分に図られるというふうに納得できるのであれば、それは立会人という形でそれを行う必要はないのであろうかと考えております。

井出委員 暗号技術の進歩で通信の秘密をしっかり守って、場所を変えてこれまでどおりの傍受をするということだと思うんですけれども、現行の通信傍受法でも、まあ、ほとんどないんですけれども、全然ないんですけれども、立会人が意見を言うことはできる。実際スポット傍受しているかどうかも聞けないんですけれども、でも、仕組みとしては、きちっと立会人が物を言える環境、制度がつくられて、それもなくなっちゃうわけですよね。

 だから、技術の進歩で聞ける範囲がばちっと決まって、秘密が守られて送られるから立会人は一切要らないんですというのは、私は不十分だと思います。

 大臣に伺いたいんですが、私は、ずっと、この通信傍受というものは、必要ないとは全く言っていないんです、必要性は最低限ある。でも、抑制的にやっていただきたい。これまでの議論で、私は、これからも警察施設での傍受というものは控えるべきではないか、こういうことをお願いしているんです。

 日本の犯罪の発生率は、海外に比べると、人口比較でするとすごく低いんですよ。検挙率も、重大事件はほかの国に比べるとしっかりと検挙をしていますし、事件があったときに警察に相談が来るその相談数というのも、各国に比べると日本の警察は突出して多い、そういう論文もあります。ですから、私は、日本の警察に対する信頼、治安に対する信頼というものは世界の中でも高いのかなと思うんですよ。例えば、ちょっと話はそれますけれども、交番という仕組みが世界に輸出されたり、日本の警察の評価は極めて高いと思っています。

 通信傍受の議論、司法取引もそうなんですけれども、ほかの国もやっています、使い勝手が悪いんです、件数も傍受の仕方も全然海外と違うので海外と同じ水準にしていく、そういう議論もあるんですけれども、通信傍受に関して言いますと、立会人を設けるというのは日本だけだと思うんですね、当時の議論を振り返れば。だけれども、立会人を設けるとか、そういう抑制的にやっていくところというのは、日本の警察の評価されるところだと思うんですよ。

 こういう抑制的な取り組み、いろいろな捜査手法を地道に尽くして、そして、犯罪の発生率も低い。だから、ここを別に、ほかの国と捜査手法を並べたからいいんだというものではなくて、私は、これは抑制的にやって、日本の治安はそれでも世界に比べていい、通信傍受とずっと言ってきて、これをむやみやたらにやれば海外みたいに盗聴みたいな話にもなってしまうわけですけれども、そういうことに踏み込まない日本の警察というものが評価されると思います。

 であるからこそ、これは極めて抑制的に、みずから歯どめをかけて、警察施設ではやらない、そういう運用をしていただきたいと思います。いかがですか。

上川国務大臣 通信傍受の捜査手法については、通信傍受以外の捜査手法において犯人の特定や犯行の状況の内容の解明が著しく困難である、こうした補充性の条件ということの中で傍受令状が発付されて、そして、そのもとで厳格に通信傍受が行われる、こういう仕組みになっているところでございます。

 必要な事件、事案に対して、そして組織性の高い、極めて厳しい犯罪に対して、しっかりと首謀者に、組織的な実態解明を行うという形の中で、捜査の手法として大変重要な、最後のとりでと言われるような形でのぎりぎりの運用というふうに位置づけられているものと思っております。

 新しい技術の導入によってこれまでの立会人に置きかえることができる仕組みをつくる、そういう前提の中で、抑制的な、厳格な適用がなされる、これが今回提案している内容そのものの大変大きな鍵になるのかというふうに思っております。

井出委員 便利に、使い勝手をよくしたり、犯罪の種類を拡大して、それでも厳格にやっていく、そういうことだと思うんですけれども、私は、その拡大の仕方ももう少し慎重にと思っておりますけれども、まず今こだわらなければいけないのは、その手法、特に警察施設で傍受をしない、その抑制をしっかりと働かせて、引き続き、乾坤一てきの捜査手法、ウルトラC、最後のだめ押しといいますか、最後の打開策でする捜査であってほしいと思います。

 三浦さん、きょうは公安委員長にお休みいただいたんですけれども、私は、警察のことを評価している、評価は高いとさっき言いましたけれども、警察のことを私は物すごく信頼しています。原記録を見られている実態が曖昧でも、私は、しっかりやってくれていると思っています。ですから、警察署でやるかやらないかというところはどうしてものお願いなので、それをぜひ公安委員長に伝えていただいて、また、今後の議論をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

奥野委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 維新の党の重徳和彦です。

 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、非常にシンプルな法案の名前でありますが、中身はてんこ盛りということで、これまで議論が進んでまいりましたが、いよいよ、やはり今回の法案はどっちを向いている法案なのか、議論すればするほど全体的な方向というのはばらばら、そういう印象でございます。

 そもそも、可視化を進めて、密室での自白の強要、そういったことへの反省から始まったはずの今回の議論が、一体どういう内容の法案なのか、非常に理解されづらくなっています。三方一両損のような、何かそれぞれ賛成するところもあるけれども反対するところもある、それぞれの議員だけじゃなくて、それぞれの立場の方々、関係者の皆さんそれぞれ、そんな思いで法案を見ておられるんじゃないかと思います。

 上川大臣、今回の法案の提出の仕方、これはよかったんでしょうか、こんな法案の提出の仕方で。改めて問いたいんですが、いかがでしょうか。

上川国務大臣 今回の法律案につきましては、取り調べ及び供述調書への過度の依存を改めるために、証拠収集手段の適正化、多様化と公判審理の充実化を図るというものでございまして、そして、それぞれの目的に照らして、今回のさまざまな手段につきまして、統一的なものである、また、その趣旨そして目的が共通している、こういう中で、これを一つの一括したものとして御審議を願っているところでございます。

 ただいまベクトルが違うのではないかということでございますが、それぞれの目的に照らして、この間審議が進められてきた、法制審議会においてもまた審議が進められてきたことを十分に反映させる形で今回の提案をしてきたものでありまして、より適正で機能的な刑事司法手続を構築することができるものというふうに考えているところでございます。

重徳委員 今、大臣の言葉の中で、統一的とか、趣旨、目的が共通しているという言葉がありましたけれども、そうおっしゃる一方で、それぞれの目的ということで、それぞれだよねというようなニュアンスも醸しておられます。

 あえて言えば、同じ法務省が所管していますとか、同じ刑事裁判手続だというぐらいのことであって、今回、少なくとも、形式的には刑事訴訟法等でありまして、刑事訴訟法と通信傍受に関する法律、これは別の法律なんですよね。こういうものを一緒にしているわけなんですよ。もう何でもかんでも、これから民法をやるんだったら、何でも「等」の中で読み込んで、法務省、法務行政の総合法案とかいって出して、一国会一本の法案でやったらいいんじゃないか、こういうぐらいに、私は、非常に議論の方向性が錯綜していると思います。

 今回の法案について、それぞれの国民の立場から、この部分は賛成だけれどもこの部分は反対だとか、そういう賛否がばらばらの法案になっていると思われませんか、大臣。どう思われますか。今回の法案は、もろ手を挙げて皆さん賛成の法案だと思いますか。この部分はいいけれども、可視化はいいけれども、ほかは行き過ぎじゃないかとか、あるいは捜査を進めるためにはその逆じゃないかとか、全部賛成という方ばかりだと思われますか。

上川国務大臣 今回の法律案につきましては、いわゆる一括法という形で御提案をさせていただいてきているところでございますが、こうした手法につきましては、従来から立案方式としては用いられているものでございます。

 その際重要なことは、法律案に掲げられた政策が統一的なものであり、法律案の趣旨、目的が一つであると認められる、そして、法律案の条項が相互に関連しており一つの体系を形づくっている、こうした場合には一本化にふさわしいものである、こうした考えにのっとっているところでございます。

 今回、取り調べ及び供述調書への過度の依存を改めるためということで、証拠収集手段の適正化、多様化とそして公判審理の充実化を図るというものでございまして、政策が統一的なものであり、そして趣旨、目的が共通をしているということでございます。また、法律案の条項が相互に関連をしており一つの体系を形づくっているというふうに言えるということでございまして、先ほど申し上げました考え方に適合するものであるというふうに思っております。

 したがいまして、本法律案を一本の法律案として提出したことにつきましては、合理性があるというふうに考えているところでございます。

重徳委員 結論をおっしゃっているだけで、政策が統一的とか相互に関係しているとか、どこがどう関係しているかというのは恐らく説明し切れないと私は思います。その意味で、もはやこの質問に対しては答弁のしようがないんじゃないかなと私は思っています。

 やはり、参考人の方々にいろいろ聞いても、そういう声が上がっているわけなんですよ。例えば、可視化は不十分だけれども、やらないよりもまず一歩進めるために賛成だと言わざるを得ない、ほかの部分については反対だけれども、それを反対してしまったらこの法案が全部パアになってしまうということで、やむなく賛成だ、こういう方もいらっしゃるわけなんですよね。

 こういう思いを持っている人たちにやはり真摯に対応するには、我々、一生懸命ここが問題じゃないかといろいろ指摘しているんです、そしてこう修正すべきだという提案もさせていただいています。法律をばらばらにして今から出し直せなんて言ったって物理的に無理だし、全部統一していますから、関連していますからという結論だけの答弁に終始するのであれば、せめて私たちが求めている修正はきちんと受け入れていただきたいと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 今回は、法制審議会の審議の出発点ともいうべき検察の在り方検討会議の提言、そして法制審議会の諮問でも指摘されているとおり、現在の捜査、公判につきましては、取り調べ及び供述調書に過度に依存した状況にあり、このような状況につきましては、取り調べにおける手続の適正確保が不十分となったり、事実認定を誤らせるおそれがあると考えられるという大変大きな問題意識に立って、それぞれの手法について御議論いただきながらということでございます。

 真摯な議論を通じて、さまざまな論点等も踏まえた上で説明をさせていただいてきているところでございます。立法府の中でしっかりと御議論いただき、この法案につきましては、しっかりとその結果を踏まえて、通していただきたいということでございます。

 立法府の中の修正につきましては、各党の御判断ということでございますが、この法案につきましては閣法ということでございますので、ぜひともこの一体化した法案につきまして、一日も早く、御審議をいただき、また通していただきたいというふうに思っております。

重徳委員 ここは大臣が結論を言われる場なのかどうかもよくわかりませんけれども、でも、大臣が修正に応じると言えば、それは実現すると思いますよ。それはそういう方向で与野党で議論してちょうだいというふうに言っていただければ、そういうリーダーシップも発揮できると思います。一日も早く通してもらいたいという思いがあるのであれば、伊藤筆頭理事とともに私たちも一生懸命議論しておりますので、ぜひお願いしたいと思います。

 さて次に、山谷国家公安委員長に質問させていただきますが、先ほど柚木委員からも質問がありましたが、私からも、いわゆる緒方事件、共産党幹部にいわゆる盗聴が行われた、これについて、ちょっと不可解な話なんですよね。民事裁判では、この違法な盗聴は警察が組織的に職務として行っていたんだと。それから、法務大臣も認めているんですね、不起訴であるけれども認めている。だけれども、警察庁だけは認めていない。これは何かよく意味がわからないんですよ。

 責任も認めていない。謝罪するしないも、責任を認めなきゃ謝罪もしません。だから、責任を認めているのかどうか。当時は何だかうやむやだったかもしれませんが、今この事件を見て、責任は警察組織にあるというふうに、私はどう見てもそう思うんですけれども、いかがでしょうか。

山谷国務大臣 責任についてどう認識しているかという御質問でございますけれども、御指摘の事件については、国賠訴訟の控訴審判決において、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示されておりますが、組織的犯行と断定した判決ではなかったと承知しております。

 警察としては、今後とも法に基づき適切に職務を遂行していくものと考え、引き続きしっかりと指導してまいりたいと思います。

重徳委員 私は、前回、二週間ほど前なんですが、この委員会で、通信傍受について、山谷委員長に、通信傍受は誰の責任でやるんですかと言ったときに、都道府県警の組織的責任を明確にして実施するものであるというふうに明確に御答弁されました。私は、また、令状は裁判所が出すんだから、裁判所に責任があるとかなんとか言われるのかなと思ったら、そうじゃなくて、県警でいうと本部長を筆頭とする警察組織に責任があるということでよろしいですねというふうに確認、念押しをしたところ、山谷大臣は、さようでございますと一言で言い切られました。

 これからこの責任を県警が、警察がしっかり持ってやるという決意を述べられる一方で、過去の違法な捜査、事件については、裁判所が組織的犯行と断定していないからでしょうか、組織としての責任は認めておられない。これは矛盾しませんか。過去のことも認めずに、これからは責任を持ってやりますなんて言われて、誰がその言葉を信じるでしょうか。

 大臣、いかがでしょうか。過去の緒方事件と言われる事件についても警察は責任がありますと山谷大臣が今おっしゃれば、そうすれば、そうか、過去のことも責任を持っていた、では、これからも責任を持ってやられるんだろうなと一歩進むと思うんですよ。一歩も進めませんよ、これは。いかがでしょうか。

塩川政府参考人 お答えします。

 先ほど大臣が申したところでございますけれども、各種訴訟において、例えば、国賠訴訟の控訴審判決におきましては、警察官である個人三名が県の職務として行ったものと推認することはできると判示されていますけれども、組織的犯行と断定した判決ではなかったというふうに承知しているところでございます。

 警察としても、これを厳粛に受けとめておりまして、まことに残念なことであるというふうに考えております。

重徳委員 こんなやりとりが続くんですかね。残念とか厳粛とか、そういうことじゃなくて、責任があったのかということなんですよ。

 裁判所が断定しているしていないというのは、それは一つの判断材料でしょうけれども、そこまで裁判所としては断定できないかもしれないけれども、警察は当事者なんですから、これはどこからどう見ても責任があると思うんですけれどもね。何かそうじゃないという、あるいはそう言い切れない理由があるんですか。何か柚木さんと同じようなことを聞いている感じもしますけれども。

 これは、ここであると言わずして、これからは責任をとりますと、そんな御都合主義のようなことでは、盗聴される我々の方は、我々というか、誰か知りませんけれども、人はたまらないですよ。とんでもない盗み聞きをされて、誰がやったんだと言っても、いや、厳粛に受けとめますというのでは。

 山谷委員長、ここも政治家のリーダーシップだと思いますよ。ここではっきりさせなければ、これから進めないですよ。こんな、通信傍受をこれだけ広げて、立会人もいない、場所も警察署内で聞く、これを、責任はこれからは警察にあるけれども、過去にやった失敗は認めませんなんというのでは、これは進めませんよ。どうでしょうか。

山谷国務大臣 警察として厳粛に受けとめており、まことに残念なことだと思っております。

 今後とも法に基づき適切に職務を遂行してまいりたいと考えますので、引き続きしっかりと指導をしてまいりたいと思います。

重徳委員 委員長、これはもう私の申し上げている趣旨も委員長ならおわかりだと思いますが、ここを今の答弁のままで、これからは責任は警察にある、前回お聞きして、すぱっと答えられた。ここは矛盾していると思うんですけれども、ちょっと持ち帰って検討していただいても構いませんから、きちんと答えを出すべきだと思いますよ。

 今、延々と時間の浪費になるかもしれないので、この取り扱いについて理事会で協議をしていただけないでしょうか。いかがでしょうか。

奥野委員長 私は、聞いていて、これは三人の人たちがやったことなんですと言ったわけだよな。しかしながら、これからはそういうことも発生しないようにちゃんと管理していきますよと言っているわけだよな。(発言する者あり)そうか。いやいや、俺はそう思うよ。今の答弁はそうだよ。

 だから、そういうことをこれからは絶対発生しないように管理していきますよ、監督もしていきますよ、こう言っているわけですよ。この議論を追及していっても、これは前へ行かないと思うんだよ、僕は。

 どうぞ、重徳君。

重徳委員 これは委員会の場なので、それは委員長のお裁きもあるかもしれませんが、しかし、今私が言っていることは、過去における責任、そしてこれからの責任、過去においてそんな責任とれませんと言っている組織が、これからはしっかりやります、これを聞いて、なるほど、これは信頼できる警察だねなんて思っていただけないと思いますよ。

 このまま終わらせて、委員長、いいんですかね。これはやはりはっきりさせないと。

奥野委員長 審議官。(重徳委員「これは勝手に審議官が答弁できるはずがないじゃないですか。同じ答弁だったらとめてください」と呼ぶ)いや、だから、中身は違いますね。はい、どうぞ。

塩川政府参考人 当時のことにつきましては警察としても厳粛に受けとめておりまして、累次、関係警察官に相応の懲戒処分を行い、また必要な人事の刷新を行い、また情報収集活動の適正な推進について業務管理の徹底、指導教養の徹底、人事管理の徹底を指示するなどの措置をとりまして、国民の信頼回復に努めたところであります。

重徳委員 答えにはなっていないと思うんですね。こんなこともやっています、あんなこともやっていますと。やられたのであれば、それはそれでいいでしょう。

 しかし、今の点については、やはりはっきりしていないわけですから、委員長、きちんと理事会で協議をいただくということを、協議もできない話なのでしょうか。

 これはちゃんと持ち帰っていただきたいんですね。複数の委員がやはり、これは、答弁の意味が、内容がわからない、答えてもらっていないといって、もうずっと言っているわけですから。ここで浪費するよりも、ちゃんと理事会で責任ある進行をお願いします。

奥野委員長 わかった。では、理事会協議事項にしましょう。

 重徳君。

重徳委員 次の点に参りますが、先ほどからずっと立会人の話が出てきています。これも、要は、精密で間違いない機械だから、特定電子計算機がやること、民間事業者が暗号鍵、復号鍵をつくってやるから間違いない、ログ、記録もきちんと残るから間違いないんだとおっしゃいますが、この機械が壊れたらどうするんですか。そういう想定はされないんですか。

 今まで立会人がいるというのは、やはりこれは、世の中何が起こるかわからないんです。だから、きちんと厳正に管理されていたはずの機械が、プログラムがうまくいかないとかそういうことだって想定されるんですよ。

 例えば、ホームページにもこう書いてあるんですね。立会人は傍受が令状に従って行われていることを確認する役割を果たしている、あるいは、立会人は傍受の実施に関して意見を述べることができる。

 これは、今後は機械がやるんだ、あるいはそういうシステムがちゃんとするからいいんだという答弁が続いて、何となくそうなのかななんて、余り深く考えないとそう思うんですが、でも、機械が壊れたらというのは、たしか可視化を、録音、録画をしなくていい要件でありましたよね。機械が壊れたら録音、録画しなくていい、こういう例外をみずから設けているような法案なのに、今回の立会人不要という説明に関しては、いや、機械を信じてくださいよ、こういう内容なんですよ。こういう御答弁をずっと続けているんですよ。

 答弁が非常に長いので、聞いているだけだと何かわからなくなっちゃうような答弁なんですが、しかし、ちゃんと読めば、人がついていなくても、機械が、システムがしっかりしているから大丈夫なんだ、その域まで技術的に進歩してきたから大丈夫なんだ、こういう答弁をされているわけです。だけれども、録音、録画は、いつ何どき壊れちゃうかわからないから、そのときはごめんねと。一本化した一つの法案の中で、こういう矛盾した規定の仕方だってしているわけですよ。

 こういう意味で、立会人というのは、しょせんは人間がやることなんですから、ヒューマンエラーを前提にするべきなんです。無謬神話とか安全神話というものは信じちゃいけないことだと思うんです。

 これだけ異論、心配がある中で、対象となる犯罪をふやして何でも盗聴できるようにするなんというおそれがあるんじゃないか、こんなことまで言われている中で、立会人はいなくして、場所は警察署の中で、これでこの法案をそのまま通しちゃって、これは与党の皆さんもよく聞いていただきたいんですけれども、本当にいいんでしょうかね。

 この立会人の役割、何かしらの形で今回補強する、あるいは今までどおりのやり方、場所で行う、こういったことを考えるべきだと思うんですが、これは、最初は技術的な話で局長と思っていたんですが、大臣クラスの御答弁じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

林政府参考人 今回の新しい方式の中で、特定電子計算機を使う場合にのみ立会人というものが不要となります。

 特定電子計算機の機能というものは法定化されておりまして、その法定化された機能がなければ、裁判所は、傍受令状を出すときに特定電子計算機による傍受を許可することができません。

 したがいまして、一旦許可されたものが、その後に特定電子計算機として法定化されている機能が失われたような場合、壊れたような場合、このような場合には、それ以上その特定電子計算機を使った傍受というものはできなくなります。したがいまして、それは新たにもう一度別の特定電子計算機による傍受というものを請求しまして、その特定電子計算機とペアになっている暗号を出してもらって新たに傍受を行うということが必要となるわけであります。

重徳委員 機械が壊れたらというのは一つの例でありまして、私は、およそヒューマンエラーというのはたくさんあるだろうということを申し上げたかったわけであります。

 つまり、井出委員が言っているみたいに、実際には、典型的な傍受の仕方じゃなくて、みんなが聞こえるような聞き方だってするかもしれない。だけれども、それは、一つの警察組織の中でやっている限りは他者が見られないわけですから、何のチェックもかからないわけじゃないですか。それから、捜査官だって、本当に必要最小限の担当の方しか傍受していないかどうかだって必ずしもわからないですよね。

 暗号鍵、復号鍵というのは技術的に本当に大丈夫なのかということだって、大丈夫だから信じろと言われればそれまでというレベルの話であって、これが実は違いましたということが今設計されている制度の中で少しでもあったら、また責任の所在はどこにあるんだという話になっちゃうわけです。

 こういう不安な状況のままで、曖昧な状況のままで、そして、嫌みじゃないですけれども、警察は過去の責任をとっていない、これはしっかり協議していただいて明確にしていただきたいと思いますが、こういう状態のままで本当に立会人抜きで、そして警察、捜査機関の施設の中でやるということをこのまま強行していいんでしょうか。

 大臣、少しはお答えいただきたいんですよ、最初から申し上げていることについて。賛成、反対、いろいろある法案なんです。反対部分についてはちゃんと修正をするべきじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

上川国務大臣 今回、新しい通信傍受の仕組みを導入するという形の中で、立会人にかわりまして適正な運用ができるように担保をする、つまり技術的にしっかりとその機能を果たすことができる開発が大前提の提案ということでございます。

 そして、自動的にかつ改変ができないように暗号化して記録するということによりまして、事後的な検証をするということを担保するということでありますので、立会人を置かないということであったとしても手続の適正が確保される、そうした仕組みを提案させていただいているところでございます。

重徳委員 時間が来ましたので終わりますが、何せ同じ御答弁の繰り返しでは決して納得できませんので、ここはぜひとも、私たちの真摯な意見を、参考人とかいろいろな方から寄せられている意見を反映した修正案に応じていただきたいと与党の皆様方にもお願い申し上げまして、質問を終わります。

奥野委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 初めに、六十分の質問時間をいただいたことを野党の民主、維新の皆さんにも感謝しながら、一秒も無駄にすることなく、本日、四人の委員の皆さんの思いを私は共有しておりますので、その質問の流れの連関性の中できょうは質疑をさせていただきたいと思います。

 冒頭、お断りいたしますが、私たち日本共産党は反警察ではありません。かつて本委員会で私が、北九州の暴力団の工藤会のトップを死刑もしくは無期懲役にするという警察庁長官の発言について、これは訴追裁量権があるかのような発言ではないかという質疑をさせていただきました。そのことで、共産党は親暴力団か、暴力団を応援しているのかとか、工藤会の回し者かとか、いろいろ誹謗中傷が私にありまして、ネットの「保守速報」にも、共産党の清水は、あいつはだめだみたいなのが載ったんですね。これは全く本意ではありません。

 議事録を読んでいただいたらわかりますように、暴力団というのは、検挙、壊滅、当然ですよ。市民の安全確保のために警察が必要な捜査をやる、そして足らない場合は警察官をふやして市民の命、安全を守ることが必要だというところまでしっかりと私は言わせていただきました。

 二十九日の参考人質疑で、緒方靖夫参考人が同様のことを述べておられます。

 「私は、決して反警察ではありません。市民の警察をつくるべきだということを考えてきました。どの社会にも、市民の権利の保障のために公的な力が必要であります。そして、そのために警察は不可欠です。」盗聴された緒方さんがこう述べた上で、「みずからの犯罪行為をやっていないと歴代警察庁長官が国会で虚偽を繰り返し、法令を軽視し、組織防衛という特殊な利益を優先する警察に通信傍受の実務を一層広範に担当させることは、国民のプライバシー権にとって極めて危険だと考えます。」

 重徳委員の質疑もありましたが、緒方参考人は、みずからの居宅が少なくとも九カ月間にわたって盗聴されていたと、その裁判の過程や判決について語られました。ここにおられる委員の皆さん、大塚政務官も含めまして、その生々しい警察による盗聴の手口、その後の無反省ぶり、聞かれたはずです。

 今回、通信傍受法、いわゆる盗聴法は、その違法な盗聴を行った事件の真摯な総括なしに、対象犯罪の拡大とか、あるいは立会人をなくして警察署の中で傍受をする、これは認めるわけには絶対にいきません。

 そこで、参考人質疑については承知されていると思いますので、上川陽子法務大臣そして山谷えり子国家公安委員長、順に、緒方参考人の意見陳述、その後の質疑についてどのように受けとめておられますか。所見を聞かせてください。

上川国務大臣 先日の参考人質疑の折に、緒方靖夫参考人が御自身の御経験を踏まえた御意見を述べられたということで、その思いに対しても、また経験に対しても、大変重たいものというふうに受けとめさせていただいたところでございます。

 御家族の御不安も含めて全てをしょった上でこの場に立たれたというふうに思っておりまして、当日の映像につきましても、また議事録につきましても、何度も拝見をさせていただきました。

山谷国務大臣 先日の参考人質疑におきまして、通信傍受をテーマに各参考人からの貴重な意見陳述がなされたところでありまして、緒方参考人の、私は反警察ではない、市民の警察をつくるべきというその言葉、表情もしっかりと映像で見ております。

 プライバシーは大切でありますし、法令尊重は当然のことであります。改めて、今後とも、適正な職務執行に努めるように警察を指導してまいりたいと考えます。

清水委員 お二人の大臣とも、しっかりと受けとめていただいたのではないかと思います。

 大事なことは、法案を審議する上で、その受けとめと同時に、やはり、政府として、警察として、過去の事件についてしっかりと向き合う、これが非常に重要だと思うんですね。

 緒方靖夫参考人も、みずからの盗聴事件についていまだに謝罪もないと。では、今警察が謝罪したら許してくれますか。では、まず謝罪を聞かせてもらいたい、こういうふうに言っているんですね。

 もう一度、上川法務大臣と山谷国家公安委員長にお伺いします。

 警察が過去に、緒方事件ですね、違法な盗聴を行ったという事実について、認めるのか認めないのか、単純にお答えください。

上川国務大臣 お尋ねの事件、捜査をいたしました東京地方検察庁でございますけれども、本件につきましては、神奈川県警察に所属する警察官二名が、共謀の上に、昭和六十一年十一月、当時の日本共産党国際部長であられました緒方議員宅の電話の通信内容を盗聴しようとしたとの電気通信事業法違反の事実を認定した上で、事件に関与していたと見られた警察官二名を、諸般の事情を考慮し、起訴猶予処分としたものであるというふうに認識しているところでございます。

山谷国務大臣 お尋ねの事件でございますが、国賠訴訟の控訴審判決において、警察官である個人三名がいずれも県の職務として行ったものと推認することができると判示されておりますが、組織的、計画的に行われたものと断定した判決ではなかったと承知しております。

 警察として、今後とも、法に基づき適切に職務を遂行していくということで、引き続きしっかりと指導してまいりたいと思います。

清水委員 ちょっと、大塚政務官、一緒に聞いていただいたので、もし何か御所見があれば。緒方参考人の話も聞いていただいたので、この事件についての事実関係についてどう思われたか。

大塚大臣政務官 当時の事情等についてつまびらかにするものではないわけでございますけれども、現在と当時の一番大きな違いとしては、当時は、通信傍受を法的に担保する、そういう法律がなかったわけでございます。そうした中で、これは、電気通信事業法の違反ということまでは認定をされているものと思います。

 警察からの御答弁になかなか御納得がいかない様子でありまして、余り踏み込んでそこについて感想は申し上げませんけれども、しかし、そうした状況も踏まえた上で、やはり法的に一定の権利の制約を伴うような行為については、法律でしっかりと整備をし、厳格な要件を設けていく、適正手続を定めていく、その中で実施していくことが必要だという認識が起きてきたのも、恐らく通信傍受法が制定された背景にあったのではないのかなというふうに思っております。

 今回の通信傍受法改正も御提案をしておりますけれども、厳格な要件を満たす場合にしか使えない、諸外国に比べても非常に厳しい制約のもとでの法改正の御提案となっていることもございます。

 一方で、国民の安心、安全、一般の方々のですね、一般の方々の権利を守るためにも捜査機関が一定の役割を果たさなければいけないというのがやはり基本にもあると思います。

 そうした意味で、私としても過去の経緯についていろいろ思うところはありますけれども、踏み込んだ感想は申し上げませんが、今回の法律についてはぜひ御理解をいただきたいというふうに考えているところでございます。

清水委員 それぞれお答えいただきました。

 この法案を理解してほしいという前提として、やはり、警察が行ったということを認めて被害者に対して謝罪をする、それが大前提だと思うんですね。

 私は、先ほど理事会で議論するということが決まりましたので、きょう細かくは言いませんけれども、一つちょっと紹介しておきたいと思うんですね。

 これは警察庁に聞きます。三浦さんでいいです、塩川さんでもいいですけれども。

 先ほどから、警察官個人三名がというふうにおっしゃるんですが、警察官がなぜ緒方靖夫さんの家を盗聴したんですか。誰の命令でしたんですか。誰の命令もなく、この三人だけがやったんですか。先ほどの重徳議員の質問に対して、諸般の事情でというところにも鑑みながら答弁いただけますか。

塩川政府参考人 先ほどもお答えしたところでありますけれども、警察官が県の職務として行ったというところは推認されております。それ以上のことについては承知しておりません。(清水委員「いや、諸般の事情と言ったじゃない、さっき質疑で」と呼ぶ)

 それは、ちょっと今、手元があれなんですけれども、私の御答弁させていただいたときの記憶としては、いろいろな処分をしておりまして、そのときに勘案したものとして申し上げたのではないかと思います。

清水委員 とにかく、なぜこの三人が刑事処分を受けなかったのか、不起訴になったのか。そこは、当時の増井清彦次席検事が説明しております。今、塩川さんが言われたように、一つ、被疑者は私欲、個人的動機があるとは言えない、二つ目、警察が相応の懲戒処分をすると約束している、三つ目、警察が直接の上司や責任者を更迭し人心を一新した、四つ目、二人の被疑者は末端の人間であり、二人だけの処罰は厳し過ぎるというものですよ。

 つまり、警察官三人が盗聴マニアで、何か盗聴したいよね、誰をやろうかということで、三人で共謀して、じゃあ、何となくここの家をやろう、それがたまたま緒方宅だったというはずがないんですよ。もちろん、県の職務として、上司の命令に応じて、組織的な盗聴行為、違法行為として、これは犯罪検挙のためじゃないですよ、大塚政務官。当時は通信傍受法はなかったですけれども、今も電気通信事業法違反ということにはなりますけれども、れっきとした違法行為が行われた。

 それから、組織的でないというふうに言われましたけれども、要するに、こうした違法行為に神奈川県警として県民の公金が使われた、これは返金しなさいという神奈川県民の住民訴訟が行われて、これで、横浜地裁の判決では何と書いているか。本件盗聴行為が組織的に行われた可能性が極めて強いことからすると、少なくとも、直接の上司である被告何がしは、これを指揮命令したか、承認していたものと認めるのが相当である、こう述べておりますね。

 同じく東京高裁の判決では、もっと限定しています。警察組織の末端に位置する一部の警察官限りで敢行されたものであるとは考えがたいのであって、これに従事していた被控訴人らの直属の上司、公安一課長ですね、であった被控訴人何がし及び何がしが、その所掌する事務として、組織的にこれを指摘命令していたものと推認することが相当と判断されるとした上で、県警トップの関与についても疑う余地があるとしている。

 きょう、実は、山谷国家公安委員長の答弁を聞いていて、変わったなと思ったんですよ。必ず答弁の後にあった、いずれにしましても、警察は、過去に違法な盗聴を行っておらず、これからも行うことはございませんという答弁が落ちているんです。これは、やはり警察としてもいろいろ意識しているんだなというふうに思いますよ。

 通信傍受を拡大しようというのであれば、やはりこの緒方事件についての総括は真摯になされるべきですし、理事会の場で協議するということですから、これまでの認識からもう一つ踏み込んで、明確な解決を望み、次の質問に移りたいと思います。

 先日の参考人質疑で長澤彰弁護士が述べておられましたが、憲法でも、公共の福祉によって制限されるものとそうでないものがあるんですよというふうにおっしゃっておられました。

 確かに、十三条の基本的人権のところで、公共の福祉という総括的なくくりでいうと、二十一条の通信の秘密についても絶対無制限でないかもしれません。しかし、例えば財産権や経済的自由権を保障した条文には、「公共の福祉に反しない限り、」という一文がありますよ。しかし、二十一条、表現の自由、結社の自由、検閲してはならない、通信の秘密を侵してはならない、この二十一条には公共の福祉というただし書きがありません。つまり、民主主義国家としてこれは全面的に保障されなければならないという点で、その制限については極めて謙抑的でなければならない、こういうふうに思うんですね。

 そこで、基本的な認識を上川陽子法務大臣にお伺いします。

 通信の秘密やプライバシー権、これは、その権利の性格上、それが侵害されれば事後的な救済は非常に困難な権利、そういう認識はございませんか。

上川国務大臣 通信の秘密に係る基本的な権利ということにつきましては、憲法に極めて明確に位置づけられているとおり、大きな権利でございます。

 その意味で、この権利につきまして、今回の通信傍受とのかかわりにつきましても、極めて抑制的にしていくべきものというふうに考えております。

清水委員 となると、是非はともかく、この通信傍受という法律は、国民の通信の秘密やプライバシー権を制約する、侵害する、そういう捜査手法である、そういう法律ですね。是非はともかく。

上川国務大臣 最高裁の判例にも明確に位置づけられているところでございますが、犯罪捜査におきまして必要最小限の範囲で通信の秘密を制約するという、こうした極めて限定的な位置づけの中で、通信傍受法につきましても位置づけられているものと考えております。

清水委員 まさしく今大臣がおっしゃったとおりです。必要最小限、極めて謙抑的でなければならない。なぜならば、一度被害をこうむれば、例えば物品のように、後で返すということができないからなんですね。

 ここで最高裁にお尋ねします。

 権利侵害の事後的な救済が困難であるからには、やはり事前のチェックが欠かせません。傍受をする際、これが本当に犯罪に関連する通話なのか、あるいは全く関係ない通話なのか、第三者によるチェックが極めて重要だ、これが一九九九年十二月十六日の電話検証に関する判例、検証許可状に記された傍受の手法だと思うんですが、刑集五十三巻九号の一千三百三十三ページ(二)の五行目の、最高裁が認めた、まだ通信傍受法がなかった、最高裁が違憲ではないと判断した通信傍受、いわゆる「検証の方法を」以下について読み上げていただきたい。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘の部分は、以下のように記載されております。「検証の方法を「地方公務員二名を立ち会わせて通話内容を分配器のスピーカーで拡声して聴取するとともに録音する。その際、対象外と思料される通話内容については、スピーカーの音声遮断及び録音中止のため、立会人をして直ちに分配器の電源スイッチを切断させる。」と記載した検証許可状を発付した。」このように記載されております。

清水委員 ありがとうございます。

 法務省にお尋ねします。

 今、最高裁より読み上げていただいたように、憲法違反でないという必要最小限の傍受を認めた検証方法は、いわゆる地方公務員二名を立ち会いにつけ、そして通話の内容はスピーカーでその立会人に聞こえるようにし、犯罪と関係のない通話の場合は切断する切断権も与えて、この令状を認めたわけなんですね。それでも、最高裁小法廷では、五人の最高裁判事のうち一名は憲法違反という判断を下しているんですが、ともかくこれぐらいやらなければならない。

 そういう意味では、そもそもこの立会人の規定というのは、第三者による事前チェックを担保するものではなかったんでしょうか、林刑事局長。

林政府参考人 立会人の規定というのは、基本的には、最終的に、傍受した通信というものを完全に全て原記録という形で記録して、それを裁判所が保管する、そのことをまず前提とした上で、その後の不服申し立てであるとか、あるいは閲覧という形での第三者からのチェックがあった場合にそういったものに資する、そういうところにあったものと考えております。

清水委員 今のお話を聞くと、では、立会人の役割として、犯罪関連の通話であるのかどうかというチェックは、内在的であれ外形的であれ、含まれないというお考えですか。

林政府参考人 現行の通信傍受法、今回の法律案においても同様でございますが、立会人の役割というものについては、今委員が御指摘のような、当該傍受できる通信の範囲を必要最小限にする、また、傍受すべき通信に当たらない場合には立会人が傍受を中断するとか切断するとか、こういったものは立会人の役割としては想定しておりません。

清水委員 それはおかしいです。

 一九九九年五月二十七日、衆議院法務委員会、ここにおられる漆原先生が質問された議事録を持ってまいりました。

 当時、漆原先生は与党修正に加わっておられたわけですが、「私は、」漆原先生のことですね、「私は、捜査の適法性を担保するということに大きな意味があると思うのですね。」こう述べた上で、「しかし、今回、切断権を認めるべきではないとおっしゃっていますけれども、本来ならば、常時立ち会いをするのであれば、第三者機関が、内容をわかって切断権を行使できる人、ある意味ではこれは弁護士会なんかがやったらどうだとか、」こんな案が出ているけれどもどうだ、こういうふうに質問しているんですね。

 ただ、法務省の回答としては、通信傍受をやるたびに弁護士を立ち会いさせる、そんな暇な弁護士はいませんよというような話だったんですが、畳みかけて漆原先生が、では通信事業者の立会人の役割は何だ、こう問い詰めて、三つ述べられているんです。これは、当時の松尾法務省刑事局長ですね。

 一つ目は、「立会人という、いわば捜査機関からいいますと第三者でございますが、第三者がその場に現にいて監視をしているということは、それ自体としても一つ意味がございます。」いるだけで意味があります、それが一つ目。

 二つ目、これは技術的なチェックですね。コードが外れていないか、令状に応じた電話番号がちゃんとつながっているか、これが二つ目です。

 三つ目、何と答えているか。これが重要なんですよ。「電話傍受といいましても、全部ずっと傍受するわけではなくて、その傍受対象犯罪に関連する会話が傍受されるわけでございます。関連するかしないかは、短時間聞いてみて、関連するという明らかなものだけが傍受されまして、それ以外は切断されます。」これはいわゆるスポット傍受のことですね。続けて、「つまり、そういうような切断と、入れる行為、」これはまたスイッチを入れるという意味でしょう、「入れる行為、これは外形的にわかるわけでございますが、そういうことをきちっとやっているかどうか。少なくとも、外形的にはずっと聞いていましたよということはやはりおかしいわけでございまして、その場合は、立会人は意見を記録に付するように、あるいは意見をその場の捜査官に言うということになります。」と言っているじゃないですか。

 立会人には、犯罪関連の通話かどうか、中身を聞くことはできないけれども、スポット傍受をやっているかどうか、捜査官が該当性の判断をやっているかどうかということをチェックする役割はあるんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

林政府参考人 立会人の役割の中で、いわゆるスポット傍受、該当性判断の傍受をしているかどうか、これは、チェックすることが立会人はできます。それはどの限りにおいてできるかと申し上げますと、通信の内容自体は聞いておりませんので、スイッチをオンしている、あるいはオフしている、こういったことを繰り返している、これ自体を外形的にチェックすれば、これはスポット傍受をしているということがわかります。それが、これまで、実際にその場に立会人がいる場合の一つの役割とされていました。

 今回の特定電子計算機による傍受でいきますと、特定……(清水委員「今回の話は聞いていないからいいです。委員長」と呼ぶ)そうですか。

奥野委員長 清水君。

清水委員 今回の法案との関連で、私、聞きます。

 ですから、先ほど林刑事局長は、立会人の役割に含まれていないと言ったけれども、今は、立会人はそれができます、そういう役割がありますと。後で私、議事録を精査しますけれども、違うことをおっしゃったわけですから、これは、今答弁されたことに統一していただくということがまず一つ。

 今回、新手法では、大臣、一時記録したものを警察署内に伝送する、もしくはリアルタイムで現行の通信を伝送する、そして警察署内で、これもやはり該当性の判断ということで、スポット再生もしくはスポット傍受、これをやることになっていますか。

林政府参考人 今回の特定電子計算機を使った場合にも、傍受できる通信の傍受できる範囲あるいは再生できる範囲は全く変わりませんので、同様に、再生する場合において該当性判断の傍受ができますし、また、そういった必要最小限の再生しか許されておりません。

清水委員 いや、私は、やるんですかと聞いたんですけれども、やるということで、これは法律でやらなきゃならないものというふうになっていますか。丁寧に聞きます。

林政府参考人 現行法でもやらなければならないわけでございまして、今回の特定電子計算機を使った再生の場合にも、必要最小限の傍受しかできない、それ以上やることは違法であるということになっております。

清水委員 それを担保するためにはスポット傍受ないしスポット再生をやるということですが、現行法で立会人が外形的なチェックをしているかどうか、これを警察署内でどうやってやるんですか。

 特定電子計算機には、傍受した部分は全て改変不能な記録として最終的には残るとおっしゃるんですが、今も、封印して原記録というのは残るんですから、後で検証できるというのはどっちも一緒なんですよ。問題は、一たび奪われてしまうと、無関係の通話を聞かれてしまうと後で被害回復できないからこそ、執行現場で該当性の判断をやるということが、これは当時の議論から行われてきたことなんですよ。

 これは、警察署内でスポット傍受、スポット再生、事前チェック、いわゆる執行現場でやっているかどうかということをどうやって確認できますか。

林政府参考人 現行法におきましても、立会人が、捜査官が傍受機器のスイッチのオン、オフを行っているかどうか、ここまでは確認できますけれども、実際にオン、オフをしたときに、これが正式な該当性判断という形での必要最小限の傍受であるかということは、現行の立会人でもそこまでは判断ができないわけでございます。これは、通信の内容自体は聞いていないので、要するに、該当性判断ができるかどうかというのは通信の内容によりますので、必要最小限かどうかというのは通信の内容でありますので、それを知らない限りは立会人はチェックができないわけでございます。

 他方で、スイッチのオン、オフをしているか、実際にスポット傍受を行っているかどうかということは、今回の特定電子計算機におきましては、そこに入ってくる信号の、通話の開始と終了というものは全部記録されます。さらに、実際に傍受した部分、この開始部分と終了部分というのも記録されます。したがいまして、スポット傍受をしたことの痕跡は、原記録には全て明らかになるわけでございます。

 そのことで、事後的にそういった不服申し立て等があった場合に、その原記録によってスポット傍受をしていたかどうかということの違法性が審議されるわけでございまして、そういったことが担保される手段があるということから、実際に傍受に当たる捜査官においては、そういった不正な行為、必要最小限を超えるような傍受をすることはできないということになるわけでございます。

清水委員 法律の内容を説明されていると思うんですけれども、現行法でも、通話の中身が聞こえないんですから、該当性の判断というのは、私が言いましたように外形的にしかできないわけですよ。だから、今の法律そのものが私は憲法違反だと思うんですよ。

 それは、最高裁にお答えいただいたように、最高裁の検証許可状では、音声が表に聞こえるようになって、関係のない通話はすぐ立会人が切断するんですから。ここまでやって、憲法の必要最小限のぎりぎりだということで認めたわけですからね。現行法そのものが、私はこれは憲法の要請に立っていないと思うんですよ。

 それでも、先ほど漆原さんの議事録を読んだように、外形的にでも、そこにいるだけで心理的な抑制が働くと。

 そして、目でしか見られませんよ。私も見ましたが、画面を見るんですよ、メーターが動いているかどうか、入力しているかどうか。スポット傍受をやっているときは、音声の方は、通話の方は振れているけれども、聞こえているかどうかというラインの方はとまるんですよ。これを見ているんですよ。それを現場でやることの意義。

 事後でチェックできるのは、今も新法も一緒ですよ。現場でやらないと、万が一それをしなかった場合に該当性のない通話がずっと聞かれる。捜査官というのは、もうちょっと聞こう、もうちょっと聞こう、もうちょっと聞いてみようと。もっと言えば、スポット傍受のスポットの単位、一分にするのか三十秒にするのか、それも捜査官の恣意的判断ですよ。

 例えば、では私は質問をかえますけれども、新しい特定電子計算機にスポット傍受を強制的に実行させる仕組みというのは入っていますか。

林政府参考人 今回の特定電子計算機においては、改変不可能な形で自動的に記録媒体に記録される、それが原記録となる、それによって事後的な検証が可能となる、こういったことで、法律で定められている必要最小限の傍受あるいは再生ということが担保されていると考えております。

清水委員 私の聞いたことにお答えにならなかったと思うんですね。後で改変不可能な記録が残るというのはわかりましたよ。しかし、後でわかっても遅いんです。関係のない通話を聞かれたということは、上川大臣がおっしゃったようにプライバシーの侵害になるわけですから。

 例えば、家宅捜索して令状に書いているものを持っていくというときに、何でも持っていっていいんですか。令状に書いているものしか持っていったらだめでしょう。

 つまり、検証令状で言われている差し押さえしていいものは、犯罪関連の通話だけなんです。だからその場で、まさか立会人を被疑者にするわけにはいきませんから、今からあんたの電話を盗聴するからなと言うて令状なんか見せたら誰も電話しませんから、後で見せるんですよ。しかし、それが適正に行われているかどうかというために第三者を置くというのは、これは三十五条で言われる令状主義の要請だと私は思いますし、今、林局長はお答えにならなかった、できなかったけれども、あなた方が今導入しようとしている特定電子計算機というものに自動的にスポット傍受やスポット再生をやる機能はないということです。それもその場で誰も確認することはできないということだと思います。

 私は次の質問に行きたいと思うんですけれども、警察庁、三浦刑事局長。

 先日、井出議員の質疑に答えて、なぜ警察署内で聞きたいんですか、昔は警察署内では絶対やりませんと言っていたときがあるじゃないですか、何で今回警察署内でやるんですかというときに、三つ理由をおっしゃられました。一つ目は、通信事業者に大変大きな負担をかけている、二つ目、傍受できる場所が非常に限られている、三つ目、立会人の機能を特定電子計算機と暗号技術によって代替できる、こういうように答弁された。これは間違いありませんか。

三浦政府参考人 現行法のもとでの通信傍受におきましては、立会人を置いた上でのリアルタイムの通信傍受ということのみでございますので、先ほど来御議論がありますような立会人の負担というものが大変大きなものとなっているということがまずございます。

 それから、通信傍受をできる場所が限定されているということによりまして、特に遠隔地にある警察が通信傍受を実施しようという場合には、多数の捜査員が相当期間出張しなければならない。また、現行法では原記録を遅滞なく裁判官に提出することとされておりますので、捜査員が数日置きに傍受場所と令状発付の裁判所、つまり地元の裁判所を往復しなければならないといったような負担も生じているところであります。

 また、立会人の役割の代替ということにつきましては、暗号技術を初めとする技術的措置を講ずることによりまして、通信事業者みずからが傍受の対象となる通信を暗号化して確実に捜査機関へ伝送するとともに、傍受結果の全てが機械的かつ確実に暗号化、記録化されて、裁判官による事後の正確な審査が可能となるといったことで、立会人の役割が確実に代替をされる、通信傍受の適正が従来どおり十分に担保される、このように認識をしているところでございます。

清水委員 今私が述べたことと同じですね。

 先ほど、通信事業者に大きな負担をかけているかどうかということについては山尾委員が質疑をされましたけれども、本当に負担になっているのかどうか、トータルで見ると人と費用の問題で怪しいものだな、これは私も問題意識は全く一緒でして、通信事業者に大変大きな負担をかけているということなんですね。

 現行法第十一条には「通信事業者等の協力義務」という条項がありますね、新法では十二条になるんですけれども。ここでは何と書いているかというと、通信事業者に対して「傍受のための機器の接続その他の必要な協力を求めることができる。」協力義務が規定されているわけですが、しかも、「正当な理由がないのに、これを拒んではならない。」というふうにされているんですね。

 法務省に確認しますが、通信事業者の立ち会い、これはこの協力義務に規定されているものですか。

林政府参考人 この協力義務とは別の条項に「立会い」というものがございまして、現行法の十一条による協力義務から立ち会いへの協力というものが出てくるわけではございません。

清水委員 それでは、その立ち会いの義務、立会人を置かなければならないというのはどの条文で規定されていますか、別の条文というふうに言われましたけれども。

林政府参考人 現行での十二条、新しい法律では十三条になりますが、ここに立ち会いの規定がございます。

清水委員 これは、実は私もずっと勘違いしていたんです。立ち会いをするというのは通信事業者の協力義務だと私は考えていたんですね。必要な協力を求めることができる、立会人になってくれと。しかし、今答弁があったように、これは現行法十一条にある通信事業者の協力義務ではないんですよ。立ち会いというのは協力義務に入っていないんです。

 では何かというと、今答えていただいたように、現行法十二条、いわゆる傍受の実施をするときは、通信手段の傍受の実施をする部分を管理する者、通信事業者もしくは地方公共団体の職員を置かなければならない。つまり、これは捜査機関側の義務なんですよ。通信事業者の負担と言いながら、本当に解消しようとしているのは、捜査機関、警察の義務を軽減しよう、なくしてしまおうということだと思うんですね。

 では、もっと言いますけれども、協力義務でないということは、立ち会いは断れるんですよね。林刑事局長、法文上どうですか。

林政府参考人 通信事業者が立ち会いを断るということは可能でございます。

清水委員 断れるんですよ。だから、通信事業者に負担だ、負担だと言いますけれども、通信事業者は、確かに捜査に協力する公的な義務は大きな意味であるでしょう。しかし、業務を曲げてまで、この協力を拒んではならない、正当な理由がなく拒んではならないというこの協力義務の規定にはないんです。つまり、正当な理由がなくても断れるんですよ、立会人は。だから、バックアップ機能として地方公共団体の職員を置くことができる。

 先日、通信事業者へ行って三十日間のシフト表をもらいました。朝十時から四時まで、夕方四時から十時まで、二交代。前半部分はほとんど地方公共団体の職員ですよ。もらった資料では、三十日のうちに三日か四日だけでしょう、通信事業者の人が昼間のシフトに入ったのは。確かに、後ろはほとんど通信事業者でした。

 ですから、ここをまずしっかりわきまえて議論をしないと、何か、断れない義務を通信事業者に押しつけるのは酷だから、これを解消するために合理化あるいは効率化しようというのは、私はちょっと違うんじゃないかなというふうに思うんですよね。日程を調整すれば事足りるというふうにも思いますし、どうしても今やらなければならないというときには、地方公共団体の職員を立ち会わせたらいいんじゃないんですか。

 これはどちらが答えますか。通信事業者に負担、負担と言うんだったら、地方公共団体の職員にお願いしたらいいんじゃないですか。

三浦政府参考人 確かに、現行法上、通信事業者を立ち会わせることができない場合には、地方公共団体の職員を立ち会わせなければならないというように規定されております。

 ただ、地方公共団体の職員に対しましても、私ども捜査機関としては任意の協力をお願いできるにとどまるわけでありまして、地方公共団体の職員といえども、本務、本業もございますから、例えば、いろいろと忙しい時期などにおきまして常にそういった立ち会いを求めることができるかというと、事実上難しいという場合もございます。

 現実に、通信事業者も地方公共団体の職員も、いずれの立ち会いも得られず、こちらが捜査上必要と思われた時期に傍受の実施ができないということも生じているわけでありまして、そういった点で、地方公共団体の職員の立ち会いの規定があるからといって、立会人の確保という問題が解消されるものではないというふうに考えております。

清水委員 ということは、今まで、二百八十三件の令状を請求して二百八十一件認められて、九十九件の傍受をやってきたと思うんですけれども、その中で、どうしても通信事業者もしくは地方公共団体の職員が確保できず、実際、傍受ができなかったケースは何件ありますか。

三浦政府参考人 それは都道府県警察に報告を求めている事項でもございませんので、数をちょっと正確に把握しておりませんけれども、確かにそういった事例もあるというふうには承知をしております。

清水委員 いや、通信傍受の捜査の機動性の話をしているわけですから、いかにこの機動性が損なわれたかということを数をもって私たちに示していただかないと、それが本当かどうかというのはわからない。

 二つ目の理由として、傍受する場所が非常に限られていると。実際には、東京その他のわずかな施設の場所でしかできず、遠隔地の警察は傍受できる施設に多数の捜査員が出張せざるを得ない、こういうふうにおっしゃった。つまり、傍受できる施設は、各社、通信事業者ごとにありますからね、東京都に集中しているというふうに思うんです。

 では、確認します。

 これは刑事局長自身がおっしゃったんですけれども、北海道とか九州とか、遠方から傍受するための出張が手間だというふうにおっしゃられたんですが、その手間を理由に傍受をやめるということはあるんですか。

三浦政府参考人 あくまで一般的に申し上げることしかできませんけれども、やはり事件の重大性や捜査手法としての通信傍受の有効性が認められ、その通信傍受による負担を勘案してもなお傍受を実施すべきといったような場合には、たとえ遠隔地にある警察であったとしても、傍受を実施するという場合はあるだろうというように考えております。

 ただ、やはり遠隔地の警察からしますと、そうした実施に伴うもろもろのコストといいますか、特に、例えば多数の捜査員を一定の期間出張させなければならないとか、そういった準備に伴う時間ですとか、そういったものもあるわけですので、やはりそうした実情に鑑みますと、この通信傍受という捜査手法をなかなか機動的かつ効果的に活用できないという問題が生じているところでございます。

清水委員 私が捜査員だったら、通信傍受で東京へ行くぞといったらすごくうれしいですけれどもね。十日ないし最大三十日行ける。仕事といえば、机に座ってじっとこうやっているんでしょう。それで、終わったらちょっと新宿で一杯やろうかとか。まあ、これは冗談ですけれども。

 今おっしゃったように、だからといって、やらないわけではない。やれているわけですよね。

 機動性に欠けるというふうにおっしゃいますけれども、もともと、この通信傍受という法律そのものに機動性を与えているわけじゃないんです。極めて謙抑的に、これによってしか犯罪を検挙することができないというときにしか使えない。そのために、通信事業者の施設内において、あわせて立会人がいるもとでということでやっているわけですからね。

 たしか、これは特別部会で、とにかくもう面倒くさくて、遠くから行かなければならないということで、十二ひとえを着てテニスをやらされているみたいなものなんですよと。とにかくもっと自由にやらせてほしいと。自由にやったらだめなんですよ、この通信傍受というのは。憲法との関係でいえば、極めて謙抑的にやらなければならない。

 ですから、遠隔地からわざわざ出張するのが大変だからと言いますけれども、それをしてもなお必要だというときに行くものだと、この法律の是非はともかくですよ、そういう趣旨だと私は思っております。

 それから、三つ目の理由として、立会人の機能を特定電子計算機と暗号技術によって代替できるのかどうかということですけれども、先ほど私、林刑事局長と議論しましたけれども、スポット傍受、スポット再生をやっているというのは、現行では立会人が目視しますけれども、警察署内に送られれば、事後で検証することはできるかもしれないが、取り返しがつかない、回復不能な、いわゆる通信の秘密の侵害ということを事前に防止するという点でいえば執行段階で該当性の判断をすべきだが、これができないということがはっきりしました。

 山下幸夫参考人も、暗号化というのは、伝送するときにほかに漏れないようにするためのものであって、現行の立会人の要件を全て代替するものではないというふうに述べられたのは非常に重いというふうに私は考えております。

 それで、私は、最後残された時間、費用の問題で聞かせていただきたいと思います。

 これは、前回の私の質疑でさわりだけ聞かせていただいたんですね。今回、新たに回線がふえると、通信事業者の施設内に通信傍受監視サーバー、通信傍受制御サーバーというものを増設しなければならない、これの費用負担は含まれるんですか、警察庁、誰が負担するんですかというふうに私が聞きましたら、三浦刑事局長が、七月十日、このように答えました。「御指摘のような通信事業者の方に負担していただくようなものにつきましては含まれてはおりません。」

 これは間違いありませんか。

三浦政府参考人 一般的に申し上げますと、通信事業者が保有する設備等の整備に係る費用の負担は、警察としては行ってはおりません。

清水委員 では、法務省にお伺いしましょう。

 現行盗聴法制定時に、当時通信事業者の主管庁であった郵政省と法務省との間で覚書が交わされております。きょう、資料で皆さんに配付させていただいております。平成十年三月十二日、法務省刑事局長と郵政省電気通信局長が覚書ということで押印しております。

 この二ページ、第六項、「法案第十一条について」、法案第十一条というのは通信事業者の協力義務についての覚書なんですね。赤線を引いております。「個別の令状による傍受の実施への協力を超えて、傍受を可能とするネットワークを構築したりソフトの開発をしたりすることは、法案第十一条による通信事業者等の協力義務には含まれない。」こうあるんですね。

 法務省林刑事局長に聞きます。

 この覚書に照らした場合、通信傍受監視サーバー及び通信傍受制御サーバーなどの増設費用は、ここの通信事業者の協力義務というところに含まれますか、含まれませんか。それだけ答えてください。

林政府参考人 この覚書は現行法の十一条に関するものでございまして、この部分については今回改正をしておりませんので、ここの覚書に書いてあるような形での理解が今回も維持されるわけでございます。そういった形で、ネットワーク構築あるいはソフト開発というようなものは、協力義務の中に入りません。

清水委員 では、総務省の方にも同じ質問をさせていただきたいと思います。

 七月十日の本委員会での私の質問に対し、機器の接続について、あるいは通信傍受監視サーバーや通信傍受制御サーバーなどの増設費用、これは含まれますか、含まれませんか、総務省の方で答えていただけますか。

大橋政府参考人 お答えいたします。

 一般論ではありますけれども、捜査に必要な機器等を整備する費用といいますのは、捜査機関において負担するのが基本であるというふうに承知をしております。

清水委員 極めて明快な答弁、ありがとうございました。

 つまり、この覚書は今も生きていると。法務省、総務省は、いわゆる通信傍受監視サーバーや通信傍受制御サーバーは捜査機関側が負担するものだと述べている。ところが、私が今確認しましたように、三浦刑事局長は、通信事業者の方に負担していただくようなものについては含まれません、通信事業者が負担するものだというふうに言った。これは認識が違うんじゃないですか。統一してください。

三浦政府参考人 警察と通信事業者の間の関係といいますのは、あくまで警察からお願いをするという任意のベースの話でございまして、今回の通信傍受を実施するに当たって何らかのコストが不可欠であるといった場合には、その事業者にとって過度にわたらない限りにおいて御協力をお願いするということはできるものと考えております。

 ただ、それにどの程度応じていただけるかというのは、まさに今後の協議といいますか折衝の内容になるわけでありまして、もちろん、過度に事業者の方の負担が大きくなるというようなことであれば、それはまたシステム全体の見直しをしていかなければいけないと考えておりますし、ある程度お願いができるという範囲のことであれば、それは両者の協議の上でお願いをするということになっていこうかと考えております。

 いずれにしても、事業者の負担が過度にならないものということは大事なことだと考えておりまして、今後の協議を通じて適切に対応してまいりたいと考えます。

清水委員 今のお話を聞いていると、何かこの覚書を骨抜きにしようとしているというふうにしか聞こえませんね。

 通信傍受サーバーについては捜査機関側が持つものですというふうに、法務省も総務省もこの覚書の中で明確に今御答弁いただいたんですよ。にもかかわらず……(大塚大臣政務官「法務省は義務じゃないと思っている」と呼ぶ)いやいや、これは任意で協力をお願いするものだ、具体的にこれを協議したいと。

 三浦刑事局長は、七月十日、同じ委員会で何とおっしゃっているか。この通信傍受サーバーですよ。「基本的には、一定程度は通信事業者に御負担をいただくことになろうかというように考えております。」と、負担してもらうということを考えているじゃないですか、最初から。

 大臣に聞きましょうか。大臣、つまり今回の法案提出者ですから。

 新法になると、この委員会の議論でも明らかになっているように、通信傍受の回線がふえるということが予測されている。通信事業者もそう言っている。となると、通信傍受サーバー、制御サーバーや監視サーバーの増設が必要になる場合がある。これについては、費用負担は通信事業者はよしとしていない。そして、覚書にあるように、これは通信事業者の協力義務に含まれません。総務省が今述べたように、総務省としては、捜査機関側が費用を負担するものでありますと。ところが、警察庁としては、一定協力をお願いしたい、任意での協力はできる、一定程度は負担をお願いするものと考えている。もっとひどいのは一番最初の答弁で、それは通信事業者が負担するものだと、ここまで言っている。

 これはちょっと、何十億という話になるかもしれませんので、その費用負担を誰がするのか、これをはっきりさせないと、法案の審議はなかなかできないんじゃないでしょうか。

上川国務大臣 今回の通信傍受のシステム全体の新規の開発、またメンテナンスも含めて、新しい機器やソフトの開発にどのぐらいの金額を要するのか、さまざまな検討をしていかなければいけない、まさに大変重要な点でございます。

 その上で、その費用についてどのように負担するかということについて、先ほど、覚書がある、そしてそれぞれの当事者がいらっしゃるわけでありますので、しっかりと協議をした上で適正な形で運用ができるようにしていくという大変大事な協議の段階に入るというふうに思います。

清水委員 法務大臣として、この覚書については尊重する、当然こういう立場でよろしいですか。

上川国務大臣 覚書は現在も生きているというふうに思っております。

清水委員 最後に私、述べたいんですけれども、なぜこの費用負担の話にこだわったか。

 恐らく、仮に莫大な費用負担になった場合、通信事業者がその費用を捻出するために、今は考えていないということなんです、私、いろいろリサーチしましたけれども。余りにも負担できないようなことになれば、それは、契約者、つまり携帯電話利用者に負担させるということも考えなければならない、つまり、盗聴法が拡大すれば携帯電話料金が上がる。こんなことになってはだめだと思うんですよ。

 法務省も警察庁も、通信事業者の負担軽減と言いますが、一方では、費用では負担を押しつけようとしている。

 しかも、十一条と十二条の関係は今私が整理しました。立ち会いというのは協力義務ではないんです、もともと。義務は警察にあるんです。みずからが盗聴捜査を自由気ままに勝手に拡大したいがゆえに、根拠のない理由をいろいろ並べて、警察署内でどんどん盗聴していこう。

 しかも、緒方事件について、これは理事会で協議するということですけれども、今までどおりの答弁であるならば、これ以上審議しろというのは、私たち国会議員を余りにも愚弄する行為だということを申し述べて、質問を終わります。

奥野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十二分散会


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