衆議院

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第1号 平成28年1月13日(水曜日)

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本国会召集日(平成二十八年一月四日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 奥野 信亮君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 門  博文君 理事 井出 庸生君

   理事 山尾志桜里君 理事 漆原 良夫君

      あかま二郎君    大塚  拓君

      上川 陽子君    城内  実君

      今野 智博君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    葉梨 康弘君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮崎 謙介君

      宮澤 博行君    宮路 拓馬君

      吉野 正芳君    若狭  勝君

      黒岩 宇洋君    階   猛君

      鈴木 貴子君    柚木 道義君

      大口 善徳君    國重  徹君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      木下 智彦君    上西小百合君

    ―――――――――――――

一月四日

 奥野信亮君委員長辞任につき、その補欠として葉梨康弘君が議院において、委員長に選任された。

平成二十八年一月十三日(水曜日)

    午後四時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 山尾志桜里君

   理事 國重  徹君

      あかま二郎君    大塚  拓君

      奥野 信亮君    上川 陽子君

      木村 弥生君    今野 智博君

      田所 嘉徳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    藤原  崇君

      古田 圭一君    前川  恵君

      前田 一男君    宮川 典子君

      宮崎 謙介君    宮澤 博行君

      若狭  勝君    階   猛君

      鈴木 貴子君    山井 和則君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      木下 智彦君    上西小百合君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局経理局長            笠井 之彦君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局次長)           松尾恵美子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 大塚 幸寛君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   黒川 弘務君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        小川  誠君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月四日

 辞任         補欠選任

  黒岩 宇洋君     逢坂 誠二君

  柚木 道義君     山井 和則君

  漆原 良夫君     吉田 宣弘君

同月十三日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     前田 一男君

  門  博文君     木村 弥生君

  宮路 拓馬君     前川  恵君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     門  博文君

  前川  恵君     宮路 拓馬君

  前田 一男君     奥野 信亮君

同日

 理事伊藤忠彦君及び山下貴司君平成二十七年十二月二十四日委員辞任につき、その補欠として吉野正芳君及び鈴木馨祐君が理事に当選した。

同日

 理事漆原良夫君同月四日委員辞任につき、その補欠として國重徹君が理事に当選した。

同日

 理事門博文君及び山尾志桜里君同日理事辞任につき、その補欠として城内実君及び逢坂誠二君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

一月四日

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三〇号)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三一号)

 総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第五七号)

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六三号)

 民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第六四号)

同月十二日

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 このたび、法務委員長の重責を担うことになりました葉梨康弘でございます。

 本委員会が所管する分野におきましては、国民生活の根幹にかかわる重要な問題が山積しており、本委員会に課せられた使命はまことに重大であると考えております。

 ここに、委員各位の御指導、御協力を賜りまして、公正かつ円満な委員会の運営に努めてまいりたいと存じます。

 何とぞよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

葉梨委員長 それでは、理事の辞任についてお諮りいたします。

 理事門博文君及び山尾志桜里君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、理事の補欠選任についてお諮りをいたします。

 ただいまの理事辞任及び委員の異動に伴い、現在理事が五名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      城内  実君    鈴木 馨祐君

      吉野 正芳君    逢坂 誠二君

      國重  徹君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 裁判所の司法行政に関する事項

 法務行政及び検察行政に関する事項

 国内治安に関する事項

 人権擁護に関する事項

以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長の承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 この際、御報告申し上げます。

 去る平成二十七年十二月十六日、最高裁判所から国会に、損害賠償請求事件(平成二十五年(オ)第一〇七九号)についての判決正本が送付され、同月十八日、議長より当委員会に参考送付されましたので、御報告いたします。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。岩城法務大臣。

    ―――――――――――――

 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案

 検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岩城国務大臣 裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。

 これらの法律案は、政府において、人事院勧告の趣旨に鑑み、一般の政府職員の給与を改定することとし、今国会に一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を提出していることから、裁判官及び検察官についても、一般の政府職員の例に準じて、その給与を改定する措置を講じようとするものであり、改正の内容は、次のとおりであります。

 一般の政府職員について、平成二十七年の民間給与との均衡を図るため、俸給月額を引き上げることとしておりますので、裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額についても、これに準じて引き上げることとしております。

 これらの給与の改定は、一般の政府職員の場合と同様に、平成二十七年四月一日にさかのぼってこれを適用することとしております。

 以上が、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として人事院事務総局給与局次長松尾恵美子君、内閣府大臣官房審議官大塚幸寛君、法務省大臣官房長黒川弘務君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、外務省大臣官房審議官下川眞樹太君及び厚生労働省大臣官房統計情報部長小川誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君、人事局長堀田眞哉君及び経理局長笠井之彦君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古田圭一君。

古田委員 自由民主党の古田圭一でございます。初めての質問となりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 時間も限られていますので、早速質問させていただきます。

 今回の裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、裁判官、検察官についてそれぞれどのような根拠に基づいて一般職の国家公務員と異なる別個の給与体系が規定されているのでしょうか、お伺いいたします。

萩本政府参考人 まず、裁判官につきましては、司法権の行使というその職務と責任の特殊性から、憲法の規定、具体的には憲法七十九条六項と八十条二項ですが、これらの規定により、「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」とされているところでございます。これを受けまして、御審議いただく裁判官の報酬等に関する法律におきまして、一般の政府職員と異なる独自の給与体系が定められているものでございます。

 検察官につきましては、司法権の発動を促し、その適正、円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有するものであり、また、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経て任命されるなど、裁判官に準ずる性格を有していることから、検察官の俸給等に関する法律により、他の一般職の国家公務員とは別に、裁判官の報酬月額に準じて定めるべきものとされているものでございます。

古田委員 ありがとうございます。

 次に、一般職の国家公務員の給与の改定と裁判官、検察官の給与の改定の関係はどのようになっているんでしょうか、お伺いいたします。

萩本政府参考人 裁判官の報酬月額及び検察官の俸給月額の改定は、いずれも、従前より、人事院勧告を受けて行われる一般の政府職員の俸給表の俸給月額と同じ改定率で改定額を定めているところでございます。

 このような方法を採用しておりますのは、人事院勧告の趣旨が、一般職の国家公務員の労働基本権制約の代償措置として、その給与水準を民間の給与水準に準拠して定めるところにあり、合理的なものであることを前提に、一方で、裁判官及び検察官の職務と責任の特殊性を反映させつつ、他方で、人事院勧告の重要性を尊重し、国家公務員全体の給与体系の中でのバランスの維持にも配慮するという理由に基づくものでして、給与水準の改定方法として合理的なものと考えているところでございます。

古田委員 ありがとうございます。

 それでは、今回の一般職の国家公務員の人事院勧告というのはどのような内容でしょうか、お伺いいたします。

松尾政府参考人 人事院は、昨年八月六日、国会と内閣に対しまして、一般職の国家公務員の給与及び勤務時間に関する報告及び勧告を行いました。

 給与につきましては、月例給について、公務員給与が民間給与を千四百六十九円、率にして〇・三六%下回ることとなったことから、この較差を解消するため、俸給表の水準の引き上げ等を実施することといたしました。

 特別給につきましては、公務の支給割合が民間の支給割合を下回ったことから、〇・一月分の引き上げを行い、年間四・二〇月分とすることといたしまして、勤務成績を反映する勤勉手当に配分することといたしました。

 そのほか、給与制度の総合的見直しの段階的実施についても所要の報告をさせていただいたところでございます。

 加えまして、近年のワーク・ライフ・バランスに対する意識の高まりや働き方に対するニーズの多様化の状況等を踏まえまして、平成二十八年四月から、適切な公務運営の確保に配慮しつつ、原則として全ての職員を対象にフレックスタイム制を拡充するよう勧告をいたしたところでございます。

古田委員 ありがとうございました。

 今、今回の人事院勧告の中にフレックスタイムの拡充というのがありましたけれども、裁判官と検察官についてはどうなるんでしょうか。それぞれお伺いいたします。

堀田最高裁判所長官代理者 裁判官につきましては、裁判事務を円滑に処理するため、裁判所の通常の執務時間に勤務するとともに、職務の必要に応じて、令状事件処理のように執務時間外における勤務をしているところでございまして、その職務の性質上、その執務を一定の時間によって画することにはなじまないところでございます。

 このことから、明確な勤務時間の定めがございませんで、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律が準用されておりませんので、フレックスタイム制の導入も想定していないところでございます。

萩本政府参考人 検察官につきましては、裁判官が特別職の国家公務員であるのに対して、一般職の国家公務員でして、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律、いわゆる勤務時間法の適用対象に当たりますので、同法の改正によりフレックスタイム制が拡充された場合には、その適用対象になります。

 もっとも、検察官は、事件の適正迅速な処理のため、日中はもちろん、夜間など勤務時間外においても急遽対応を求められることがあり得ます。また、裁判所の主宰する裁判手続が滞りなく進行するように、弾力的に裁判所の期日指定などに協力する必要もございます。

 そのような検察官の勤務形態の特殊性を勘案し、公務の運営に支障が生じないように適切に運用していく必要があるものと考えております。

古田委員 どうもありがとうございます。

 裁判官も検察官も超過勤務手当がないというふうに聞いています。公立の教員も時間外の勤務に対する手当はないんですけれども、時間外に勤務する時間を調査して、それに相当する金額として教職調整額四%というのが支給されているというふうに思います。

 裁判官及び検察官の場合、この超過勤務に相当するような手当というのはどういうふうに考えればよろしいんでしょうか、お伺いいたします。

萩本政府参考人 まず、裁判官についてですけれども、先ほど最高裁から答弁があったことと関連いたしますが、裁判官は、事件の適正迅速な処理のため、夜間や休日など一般職の職員の勤務時間外においてもこれに対処するということが要求される場合も少なくなく、一般職の職員と同様の勤務時間を観念することが困難であるという事情がございます。

 そこで、裁判官には、時間外手当的な要素も考慮した上で、その職務と責任の特殊性を踏まえた報酬が設定されているところでして、裁判官報酬法九条一項ただし書きにより、超過勤務手当は支給されないこととされております。

 検察官につきましてですが、検察官も、事件の適正迅速な処理のため、夜間などの勤務時間外においても対処することが要求されており、時間外に勤務した時間を計測して給与上の措置を講ずるにはなじみがたい面がございます。

 そのような検察官の特殊性を踏まえまして、全ての検察官について、検察官俸給法一条一項ただし書きにより、超過勤務手当は支給されないこととされております。

古田委員 どうもありがとうございました。

 裁判官及び検察官の職務の特殊性が報酬、俸給に大きな影響を与えるということがよくわかりました。

 まだちょっと時間があるようなので、もう一つ質問させていただきます。

 民間の弁護士が非常勤の裁判官に任命されることがあるというふうに聞いたことがあるんですけれども、非常勤の裁判官の報酬はどのようになっていて、今回の改定で変わるのかどうか、お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 お尋ねのものは、いわゆる調停官と言っているものかと存じますけれども、法制度上は、調停官につきましては、一般職に準ずる非常勤の職員という扱いをしておりまして、それに準じた形で給与を支給しております。そちらの一般職としての非常勤の職員の給与が改定されるのに準じまして、こちらは連動するということになってございます。

古田委員 どうもありがとうございました。

 裁判官も検察官も大変な職務であるというふうに認識をしております。また、適性のある裁判官、検察官が採用できて、意欲、使命感を持って国民のために働けるような報酬、俸給が必要でありまして、優秀な裁判官、検察官を養成できるような人事評価及び昇給の制度も重要というふうに考えております。

 岩城法務大臣におかれましては、国民の期待と信頼に応える司法制度の確立に向け引き続き御尽力くださるようお願い申し上げまして、少し早いですけれども、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で古田圭一君の質疑は終わりました。

 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 初めて法務委員会に所属をさせていただきます。したがって、本日が初めての質問でございますけれども、国民の人権の向上や、国民生活が豊かになるような、そういった仕事にしっかり取り組んでいきたい、そういう意味でも、委員各位、また岩城法務大臣以下法務省の皆様にもさまざま御指導いただきながら、しっかり委員会の中で質問等々取り組んでいきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

 では、質問に入らせていただきます。

 今般の法律改正は、裁判官と検察官の、それぞれ報酬、俸給に関する法律の改正についてでございます。そのことをお聞きする前提として、人事院勧告制度の意義について、確認の意味でもお聞きをしたいと思います。

 と申しますのも、このような給与に関する勧告制度というものは、民間では考えられないものでございます。民間では、例えば毎年必ずニュースになるような春闘であったりとか、そうした労使の交渉によって決められるというふうに私自身承知をしております。

 そして、労働者の側からすると、民間においては、使用者の側が、例えば理不尽であったり不合理であったり、そういった給与面に関する扱いをしたときには、ストライキというふうな実力行使も認められているわけでございますが、公務員がストライキを行うということは、昨今、私はちょっと聞き覚えがないような状況でございます。これはそもそもなぜなのか。

 公務員の労働基本権について、民間との違いに関連をさせながら、人事院勧告制度の意義について御教示をしていただければと思います。

松尾政府参考人 国家公務員法第二十八条は、国家公務員の給与について、国会により社会一般の情勢に適応するように随時変更することができると規定しております。さらに、人事院には、その変更に関して勧告をすることを怠ってはならないとするとともに、国会及び内閣に対し、毎年少なくとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて報告し、必要な勧告を行う責務を課しているところでございます。

 国家公務員につきましては、その地位の特殊性及び職務の公共性に鑑みまして、憲法で保障された労働基本権が制約されております。人事院の給与勧告は、その労働基本権制約の代償措置として、国家公務員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものとなっております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 公務員は、労働基本権については民間と違い制約をされているというふうな点で人事院勧告制度というものに取り組まれているというふうに理解をいたします。

 さて、この人事院勧告制度、昨年も人事院勧告があったということで、法律の改正を経て一般の公務員の給料が改定されるというふうな手続になっていると思います。この点は別の委員会でまた審議がなされていると思いますが、裁判官の報酬は一般の公務員とは違う法律によって定められているということで、本委員会で今審議がなされているわけでございます。

 その名前が裁判官の報酬等に関する法律改正案ということでございますけれども、そもそもこの人事院勧告制度、裁判官も公務員でございます。そういった意味においては、人事院勧告制度は裁判官の報酬にも及ぶのでしょうか。それについてお聞きをしたいと思います。

萩本政府参考人 人事院勧告は一般職の給与法が適用される職員を対象とするものでして、裁判官は特別職の国家公務員に当たりますので、裁判官の報酬については人事院勧告の適用対象には当たりません。

 もっとも、人事院勧告の趣旨が合理的なものと考えていることは先ほど御答弁申し上げたとおりでして、今回の裁判官報酬法の改正法案におきましても、従前と同様に、裁判官の職務と責任の特殊性を反映させつつ、他方で、人事院勧告の重要性を尊重し、国家公務員全体の給与体系の中でのバランスの維持にも配慮するという観点から、人事院勧告に基づいて改定される一般の政府職員に準じて裁判官の報酬月額を改定することとしているものでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 同じことは検察官の俸給についても言えるというふうに考えております。この点も一般の公務員とは違う法律によって規定をされているということで、今、本委員会で審査をされているということですが、検察官の俸給にも及ぶのかどうか、その点についてもお聞かせいただければと思います。

萩本政府参考人 今御答弁申し上げましたとおり、人事院勧告は一般職の給与法が適用される職員を対象とするものですが、検察官は、裁判官と違いまして一般職の国家公務員ではありますけれども、その俸給につきましては、検察庁法二十一条において、「検察官の受ける俸給については、別に法律でこれを定める。」とされておりまして、これを受けて、一般職給与法とは別に検察官俸給法が制定されているところでございます。したがいまして、検察官の俸給につきましても人事院勧告の対象には当たらないということになります。

 もっとも、検察官につきましても、先ほど裁判官について御答弁申し上げましたのと同様の理由から、人事院勧告に基づいて改定される一般の政府職員に準じて検察官の俸給月額を改定することとしているものでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございました。

 続きまして、先ほど古田先生の方からも質問がございましたけれども、フレックスタイム制の拡充についてもお聞きをしたいと思います。

 昨年の人事院勧告において、一般の公務員については、希望する職員から申告があった場合、公務の運営に支障がないと認められる範囲内において勤務時間を割り振ることができるというフレックスタイム制の導入が盛り込まれているところでございます。

 育児や介護などの家庭の事情と仕事の両立をバランスさせる画期的な改正であると私は積極的に評価をしておりますが、このようなバランスへの配慮というのは、裁判官も人間でございますので、裁判官にも図られるべきだと私は考えているんですけれども、このフレックスタイム制は裁判官にも及ぶかどうかについてお聞きをしたいと思います。

萩本政府参考人 まず、前提としまして、裁判官は特別職の国家公務員ですので、一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律は適用されません。

 また、裁判官は、先ほど最高裁から御答弁がありましたとおり、裁判事務を円滑に処理するため、裁判所の通常の執務時間に勤務するとともに、必要に応じて令状事件処理のように執務時間外における勤務をしているところでして、その職務の性質上、その執務を一定の時間によって画することにはなじまないものと考えております。

 こうしたことから、裁判官については明確な勤務時間の定めがないところでして、一般職の勤務時間法の準用もされておりません。したがいまして、裁判官については、勤務時間法に基づくフレックスタイム制の導入も検討されていないものと承知しております。

吉田(宣)委員 よくわかりました。

 同じことについて、また検察官に関してもちょっとお聞きをしたいと思います。

 今、裁判官が特別国家公務員であり、その職務の特殊性から勤務時間という概念がなくて、フレックスタイム制そのものが裁判官には考えられないという理由であったことがよくわかりました。この点、検察官についてもお聞きをしたいと思います。

 検察官というのは、準司法官的性格を有しているという意味においては、先ほど御答弁いただいたフレックスタイム制ももしかすると検察官に及ばないのではないか、そういうふうなことも考え得るわけであって、その点について確認の意味でお聞かせいただければと思います。

萩本政府参考人 検察官は、先ほども御答弁いたしましたが、一般職の国家公務員に当たりますので、一般職の勤務時間法の適用があることになります。したがいまして、勤務時間法の改正によりフレックスタイム制が拡充された場合には、その適用対象ということにはなります。

 もっとも、検察官は、これも先ほどの繰り返しになって恐縮ですが、事件の適正迅速な処理のため、日中はもちろん、夜間など勤務時間外においても急遽対応を求められることがあり得ますし、裁判所の主宰する裁判手続が滞りなく進行するように、弾力的に裁判所の期日指定に協力する必要もあるところです。

 したがいまして、そのような検察官の勤務形態の特殊性を勘案しながら、公務の運営に支障が生じないように適切に運用していく必要があると考えているところでございます。

吉田(宣)委員 検察官についても適切な運用ということで、ぜひよろしくお願いいたします。

 最後に、この法律の改正によって、これを速やかに行うことによって、裁判官それから検察官のモチベーションがこれまでのように維持をされて、国民の皆様に資する職務の執行というものを行っていただけるように私は期待をさせていただくところでございますが、最後に岩城大臣の御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。お願いいたします。

岩城国務大臣 司法がその機能を十全に果たし、法の支配のもとで自由かつ公正な社会を実現するためには、その担い手であります裁判官及び検察官が高い職業意識を持って職務を遂行することが必要だと考えております。そのためにも、裁判官及び検察官に対しては、給与面を含めて適切な処遇がなされることが重要であると考えております。

 したがいまして、法務省といたしましては、このような観点を踏まえまして、裁判官及び検察官が適正に職務を遂行できるよう、引き続き適切に対処してまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

葉梨委員長 以上で吉田宣弘君の質疑は終わりました。

 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 通常国会が始まりまして、今国会でも法務委員会に所属をさせていただきます鈴木貴子です。

 きょうは法案質疑ということであります。限られた時間でありますので、早速質問の方に移らせていただきたいと思います。

 まず、基本的なところから、おさらいの意味も踏まえまして質問をさせていただきたいと思うんですけれども、裁判官と検察官の給与規定の根拠を簡潔に御説明いただけますでしょうか。事務方で結構です。

萩本政府参考人 委員のおっしゃる根拠というのに当てはまるかわかりませんが、裁判官につきましては、先ほども申し上げましたが、憲法で「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」とされておりまして、これを受けまして、一般の政府職員とは異なる法律、すなわち、裁判官報酬法により独自の給与体系が定められているものでございます。

 検察官につきましては、先ほど来も出ていますが、司法権の発動を促し、その適正、円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有するものであり、また、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経て任命されるなど、裁判官に準ずる性格を有していること、こうしたことから、その俸給月額につきましても、他の一般職の国家公務員とは別に、検察官俸給法により裁判官の報酬月額に準じた定めがされているものでございます。

鈴木(貴)委員 ちょっと一つずつ細かく伺ってまいりたいんですけれども、今、検察官の給与規定の根拠の説明の中で、極めて重大な職責を有するがゆえという旨の一文があったかと思うんですけれども、そこでおっしゃっているところの極めて重大な職責というのは具体的にどういったことを指すのか。具体的に御説明をお願いします。

萩本政府参考人 司法権の発動を促すという言葉を使いましたけれども、我が国では起訴権を検察官が独占しているところでありまして、起訴するしないを検察官がみずから判断作用をもって判断しているということ、あるいは検察の立場において検察を監督するという性格も持っているということ、そうしたもろもろのことを指して、重大な職責を有すると御答弁したところでございます。

鈴木(貴)委員 ありがとうございます。

 並びにといいますか、今、検察官の側のことをちょっと詳しくお聞きをさせていただいたわけでありますが、あわせて裁判官についても、先ほど、責任の特殊性というようなことをおっしゃられたかと思うんですけれども、これについてもう一度言及いただけますでしょうか。

萩本政府参考人 裁判官につきまして、何度か憲法を引用いたしましたけれども、裁判官につきましては、憲法上、司法権の独立という観点から、裁判官の職権の独立を実効あらしめるため、「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」こう定められておりまして、その身分保障が強く図られているところでございます。

 これを受けまして、一般の政府職員とは異なる独自の給与体系を別個の法律において定めているということになります。

鈴木(貴)委員 私も、そしてまた今この委員会室にいらっしゃる先生方も、裁判官そして検察官が非常に特殊な、特殊性というものを持っているということは共有できたか、このように思っております。

 その上で質問をさせていただくんですけれども、先ほどの大臣の趣旨説明の中でも出てまいりましたけれども、この両法案、例えば裁判官報酬法第十条にもあるんですが、一般の国家公務員について政府が俸給その他の給与の額を増加するときは、その例に準じて、裁判官の報酬その他の給与の額を別に法律で定めるところにより増加する、つまり今我々が審議をしているこの法案、との規定がある。

 先ほど来から、検察官も裁判官も、一般の国家公務員と比べても非常に特異というか特殊性があると述べられているにもかかわらず、つまり、一般の国家公務員の例に準じて引き上げがなされるというのは逆に矛盾を生じるのではないかというような私の思いがあるんですけれども、その点について、ぜひ納得がいくように御説明をいただきたいな、このように思います。

萩本政府参考人 ちょっと、御納得いただけるか、難しいところがあるんですが。

 特殊であり、その特殊性を反映した給与体系を定めているわけですが、それはまさに、さっき、裁判官であれば司法の独立ということになりますし、検察官であれば裁判官に準ずる性格に照らしてということになるわけですが、他方で、裁判官も検察官も同じ国家公務員ということになりますので、国家公務員全体の中での給与体系のバランスも当然図らなければいけないということから、一般の公務員と別の給与体系を維持しつつも、全体が動くときにはその中でのバランスを考慮して、準じた改定を従前からしてきているという説明でございます。

鈴木(貴)委員 何事もやはり比較対象というものはもちろん必要である、私もそのように踏まえております。

 ここでまた私の素朴な疑問で、ぜひ御説明をいただきたいと思うのが、特殊性であるだとか独立性というところでお話があるのであれば、一般的な国家公務員と比べるというのが本当に最適なのかという議論も出てくると思うんですね。同じ法曹という枠の中で、例えば弁護士と比べるというのも一つの選択肢として、もしくは議論として出てきてもよいのではないのかなと思うんですが、その点についていかがお考えでしょうか。

萩本政府参考人 今、鈴木委員の御質問を伺いながら、昨年でしたか、一昨年でしたか、階委員から同じような御指摘を受けたのを思い出しましたが、そのときももしかしたら御答弁申し上げたかもしれません。

 弁護士との比較というのが考え方として出てくることは十分理解できるところでございますが、一方で、先ほども申し上げましたが、裁判官及び検察官は、国家公務員という立場で職務に従事し、定額の給与の支給を受けるのに対しまして、弁護士は、一般的にはみずから顧客と契約を締結し、その契約に基づいて経費を負担しつつ報酬を得るという、いわば事業主的な営業形態をとっているところでございまして、裁判官及び検察官と弁護士とでは所得を得る態様あるいは職務内容が大きく異なるということも同時に指摘できるところでございますので、裁判官及び検察官の給与と弁護士の所得とを単純に比較してその給与水準を論ずるのは難しい面がありますし、また適当でもないと考えているところでございます。

鈴木(貴)委員 では、ちょっと視点というか考え方を変えてなんですけれども、例えば、これまで、今挙げていただきました特殊性だとかを鑑みれば、逆に世の中には、ならばもっと給与が高くてもいいじゃないか、これだけ公益に、公共の社会に貢献をしていただいているのであればもっと高くてもいいんじゃないかというような意見もあるやに私も思いますが、それについて率直にどのようにお考えでしょうか。

萩本政府参考人 大臣を差しおいて政府参考人がお答えするのが適当か、若干疑問がございますが……(鈴木(貴)委員「大丈夫です、順々に聞きますので。どうぞ遠慮なしに」と呼ぶ)

 ちょっと同じことの繰り返しになってしまいますけれども、やはり国家公務員の中での全体のバランスというのがありますし、また、諸外国の給与水準と比べても高くもない、低くもない、いわば遜色のない今の給与水準になっているというように理解しておりますので、これまで行われてきた、人事院勧告を受けて他の国家公務員に準じて改定するというやり方が現時点では合理的なものと考えております。

鈴木(貴)委員 ちょっと今の答弁で気になった点があるのでお伺いするんですけれども、今、海外の給与水準と比べても遜色ないということを一つの理由として述べていらっしゃったかと思うんですが、海外の給与水準と比べることの合理性について教えていただけますでしょうか。

萩本政府参考人 済みません、海外を持ち出したのが、積極的な理由ということではございません。もっと高くてもよいのではないかというお尋ねを受けましたので、そういうものと比較してみても遜色はないということに照らして、ありがたい御指摘ではありますが、不合理なものではないと考えていると御答弁申し上げました。

鈴木(貴)委員 先ほど、ちょっと三役を差しおいてという御発言もありましたので、ぜひちょっとここを大臣にもお伺いしたいと思うんです。

 給与をもっと上げてもいいんじゃないかというような意見に対してどのように考えられるか。もしくは、先ほど、これが全てでないというお話ではありましたけれども、海外と比べてもその給与水準が遜色ないという話で、私がなぜあえて繰り返し質問させていただいたかといいますと、そもそも、前国会、この委員会で、刑事訴訟法について非常に膨大な時間を費やし、議論をさせていただきました。例えば取り調べの可視化一つとっても、日本という国はおくれているわけです。給与水準を海外と比べて遜色ないということに胸を張るのであれば、まさにそういった刑事司法の問題、可視化の問題だって海外水準と遜色ないと言い切れるぐらい頑張ればいいじゃないですかと私は素直に疑問を持ったがゆえに、ちょっと繰り返した質問をさせていただいたわけであります。

 大臣、そこまでの自信といいますか、特にこれまでの委員会質疑でも、真に公正公平な捜査を心がけているというような答弁も何度となく繰り返されているわけでありますが、それぐらいの自信があるのであれば、給与をもっと上げればいいじゃないか、こういった声に対してどのように大臣はお考えでしょうか。今の刑事司法であるとか今の制度等を鑑みた上で、そういった声にはどのようにお考えでしょうか。

岩城国務大臣 率直な御指摘、ありがとうございます。

 裁判官の報酬につきましては、先ほど来答弁してまいりましたとおり、その職務と責任の特殊性、これを踏まえたものであります。そして、なおかつ、超過勤務手当の支給がない、また、その重責にふさわしい適材確保、その必要性を満たすべきものであることなどを考慮しつつ、民間企業の給与水準とのバランスを踏まえて決まる国家公務員全体の給与体系の中でのバランスにも配慮して、これを法により定められているもの、このように理解をしております。

鈴木(貴)委員 大臣、ありがとうございます。

 今、民間企業との水準、いわゆる民間準拠についても触れられたかと思うんですけれども、私も、この民間準拠規定なるものについて、ちょっと人事院のホームページなどをのぞかせていただきました。

 人事院のホームページによりますと、人事院の給与勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し、社会一般の情勢に適応した適正な給与を確保する機能を有するものであり、公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させること(民間準拠)を基本に勧告を行っております、このようにも書いてありました。

 そこでお尋ねをさせていただきたいんですが、ここで言うところの社会一般の情勢というのはどういったことを指すのか、具体的に答弁を求めます。

松尾政府参考人 社会一般の情勢というのは、国家公務員については、市場の抑止力という給与決定上の制約が存しないということになりますから、その給与水準というのは、その時々の経済とか雇用情勢を反映して労使交渉によって決定される民間の給与水準に準拠して定めるということが最も合理的であると考えられるということで、人事院勧告というものを行っておるところでございます。

鈴木(貴)委員 適正な給与というものの適正を判断するバロメーターには、例えば国民の理解とかというものも含まれているんでしょうか。

松尾政府参考人 先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、その時々の雇用情勢を反映した民間企業の給与に基づいて国家公務員の給与を決めるという仕組みになっておりますので、そういう点におきまして、国民一般の理解を得ているものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 給与水準と均衡させるということがイコール国民理解という判断というのは、どういった判断によるものなのか、もう少し具体的に。例えば、実際に今、民間企業と一くくりに言ってもさまざまあるわけです。業績がいい民間企業もあれば、片や悪い民間企業もある。さまざまにそういった差というものは生じていると思うんですけれども、国民の理解というものを得ているというその自信の根拠のほどをもう一度教えていただいてもよろしいでしょうか。

松尾政府参考人 ちょっと調査方法の話に入ってしまうんですけれども、今、人事院が公務員の給与水準を定めるに当たって民間企業の方を調査しております。

 民間企業の給与につきましては、五十人以上の企業で、かつ五十人以上の事業所ということで企業を調査させていただいておりまして、この規模で調査をしていくことによって国民の皆さんの理解を得ているものというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 大臣にもお尋ねをさせていただきたいんです。

 今申しましたように、民間企業といってもいろいろある。例えば、日本を一つの大きな企業と考えるのであれば、まさに日本の借金は今一千兆円を超えて火の車の企業であるということで考えれば、先ほど来からおっしゃっている、社会一般の情勢に照らし合わせても、もしくは社会一般の常識に照らしても、国民の理解というものをいかほど得ているのかなという疑問を感じるんですが、大臣の忌憚のない御所見のほどを伺わせていただきたいと思います。

岩城国務大臣 お答えをいたします。

 人事院勧告につきましては、例えば、調査対象とされている民間企業の企業規模や事業所規模が大き過ぎるのではないか、そういった御指摘を含め、さまざまな御指摘があることは承知しております。

 人事院がそこで行っている官民比較の手法については、調査対象企業の規模も含めて、第三者機関としての人事院において専門的見地から判断されるものである、そのように考えております。

鈴木(貴)委員 納得がいくかと言われると、ちょっと難しいというのが正直なところでもあるんですけれども。

 まさに国家公務員の給与について今議論をしているわけでありますが、国家公務員というのは国民全体の公共のための奉仕者である、国民の理解というものを最大限に得るという努力、飽くなき努力というものも国家公務員であるのであれば知っていかないといけない、こんなふうにも思うところでもあります。

 そういった意味では、やはりもう少し、人事院勧告制度が、先ほど来から言われておりますけれども労働代償措置である、こういったところそのものを見直す必要性というものはどのようにお考えか、大臣、お尋ねできますでしょうか。

岩城国務大臣 人事院制度のあり方につきましては、先ほどもお答え申し上げましたとおり、第三者機関として位置づけられて、公平で公正な立場からさまざまな取り組みをされているものと承知をしております。

 現在のところ、私の認識としてはそれ以上申し上げることはできません。

鈴木(貴)委員 であるのであれば、例えば代償措置とされる労働基本権の回復を図る、これが、先ほど来から出ているように、社会一般の情勢に適応した、そして適正な給与を確保する機能という部分、人事院のホームページから先ほど引用させていただきました、というものに一応資するのではないのかと思うんです。

 それについて、もう一度、大臣、代償措置とされる労働基本権の回復を図るというものが、先ほど来から大臣もおっしゃっていただいている最適な、適応した適正な給与を決めるということに資するのではないかということに対しては、率直にどのように御所見をお持ちでしょうか。

葉梨委員長 いささかちょっと所管外のような気もいたしますが、大臣から忌憚のないところを自分のお言葉でお答えください。

岩城国務大臣 これはもう何度も答弁されておりますとおり、一般職の国家公務員の、それこそ鈴木委員御指摘の労働基本権制約の代償措置として、そして民間の給与水準に準拠して定めるということは、これは極めて合理的な形であろう、制度であろう、そのように考えております。

鈴木(貴)委員 大臣の、紙を見ず、みずからの言葉で答えていただく姿勢に私も非常に感謝をしているということは率直に申し添えをさせていただきたいな、こんなふうに思うところであります。

 時間もあと二分と限られてきましたので、せっかくなので、質問の機会をいただきましたので、ちょっとこの点についてあえて触れさせていただきたいと思います。

 きょうも検察官の俸給に関する法律の一部を議論しているわけでありますが、きょうの新聞で皆さんもごらんになったかもしれません。鹿児島で新たに、女性に暴行をしたとして強姦罪に問われた二十三歳の控訴審で、福岡高裁宮崎支部は、十二日、二審で実施したDNA型鑑定の結果を重視し、逆転無罪判決が出た、こういった報道が昨日来からメディアにも出ているところでもあります。

 ここでの問題は、逆転無罪自体、つまり冤罪が防げたという点では非常によかったなと思うんですが、なぜこうなってしまったか。これは、いわゆる足利事件の教訓が全く生かされていなかった。何かというと、その証拠を、DNA、特にこういった性犯罪におきましては、皆さんも御承知のとおり、目撃証言であるとかそういったことが非常に乏しい、証拠というものが非常に乏しい中で難しい捜査を強いられる、そしてまた当人にとっても、被害者にとっても非常に苦痛を強いられるということは想像ができるかと思います。

 そんな中で、そういったDNA型、DNAはしっかりと残しておこうと。例えば再審、公判の段階で必要であればしっかりとDNAを鑑定できるように残しておこうということがあったにもかかわらず、今回もまた証拠を廃棄していたという点も指摘をされているわけであります。

 こういった事件がいまだ相次いでいるということに対して、大臣、一言でも結構です。いや、一言だとちょっと足りないから、忌憚のない、これについてどのような心持ちを持って今回この法務大臣という職に当たられるのか、決意のほどを伺わせてください。

葉梨委員長 質疑時間が終了しておりますので、簡潔に答弁をお願いいたします。

岩城国務大臣 せっかくのおただしではありますけれども、個別具体的事件における捜査機関の活動内容にかかわる事柄につきまして、私の立場からお答え申し上げることは差し控えさせていただきます。

鈴木(貴)委員 非常に残念ではありますが、質疑時間が来ましたので、次にまた伺わせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で鈴木貴子君の質疑は終わりました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。

 岩城大臣初め、皆さん、よろしくお願いいたします。

 まず、岩城大臣、大臣就任が昨年の十月七日でしたか、それ以来、直接おめでとうございますなんてお祝いを申し上げる機会もなく、三月近くも過ぎてしまいました。かつて、地域も自治体の質も規模も全く違うところで、お互い自治体の首長も務めていた。そのときの交流もあったということもありまして、岩城大臣が誕生したということを、本当に掛け値なしに、心からうれしく、心からお祝い申し上げたいと思います。

 ただ、一つ残念なのは、この三月間、大臣が法務大臣をやるに当たって、どういう基本的な姿勢でやるのかといったことについて国会の場でまだつまびらかにお話しになられていないということでありますので、できましたら早い時期に、どんな姿勢で臨んでいくのかということをしっかりと国民の皆様に国会の場でお話しをいただいて、これからの議論がさらに深まる方向になっていけばというふうに思っております。

 それから、もう一点ですが、今の鈴木貴子議員の最後の質問に関してでありますけれども、確かに鹿児島の件は個別の事件であります。個別の事件ではありますけれども、あの事件が持っている課題、要するに、証拠物を、どうなったのか詳しいことはここでは明確には言えないわけですけれども、必ずしも適切ではない取り扱いがあったということであります。

 個別の事件云々ということではなくて、ああいうことが起こるということに対して、やはり大臣として、どうやってそれを防がねばならないのかということについては、やはり個別の事件を乗り越えてしっかり言及をする必要があるし、それを考えていく必要もあるだろうというふうに私は思います。

 きょうはもちろん答弁は求めませんけれども、あらゆる問題について、個別の事件だから答えない、こういう姿勢はやはり改めてもらわなきゃいけないなというふうに思っておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 さて、そこで、きょうは給与に関する法律でありますので、人事院勧告そのものについて、制度ではなくて、大臣がどのようにお考えになっているかというところを、過去の経験も踏まえてお伺いしたいと思います。

 制度については、もうここにいる方は百も承知だというふうに思いますけれども、公務員は労働基本権が制約されている。したがって、一般の労働者のように使用者側といろいろな交渉をしながら給与を決めていくということはできないのだ。だから、それの代償措置として、公平な第三者機関、人事院があって、そこで、民間とも、あるいはほかの要素も絡み合わせて、給与の適切な水準を検討した上でそれを勧告するんだと。それに沿って公務員の給与が決められていくというものであります。

 私は、この人事院勧告制度、確かに労働基本権が制約されている公務員にとってみると、もしこれなかりせば、それは非常に、何というか、よりどころのない、そういう雰囲気になるだろうというふうに思います。

 しかも、民間企業と違って、公務員というのは、利益を幾ら上げましたとか、あるいは何々をこれだけ販売しましたとか、そういう、必ずしも明確な尺度、メジャーがない職でもあります。ある種、場合によっては、仕事によっては、失敗しないでやって当たり前、でも、そのやって当たり前をやるために物すごい努力をしているけれども、そういうことは表には見えない職でもあるわけですので、この人事院勧告制度というのがなければ、公務員の皆さんの立場というのは相当に危うい雰囲気になるのだろうというふうに私は思います。

 しかしながら、その一方で、人事院勧告制度も随分時間が経過をいたしまして、課題もやはり多いんだろうというふうには思います。

 そこで、大臣は、この人事院勧告制度に対する評価をどのように捉えているのか。教科書に書いてあるような言葉は聞かなくても大体わかるわけですが、御自身の感想というか、そういうもので、どういうふうに感じているのか、まずお聞かせいただければと思います。

岩城国務大臣 逢坂委員におかれましては、お話がありましたとおり、かつて私もいわき市の市長を務めておりましたときに、恐らく三年間でしょうか、私が市長、逢坂委員が町長さんとして、重なった期間が三年間ございました。平仮名、片仮名を市町村の名前とする、そういった自治体の集まり等でお会いさせていただきまして、いろいろと意見交換させていただきましたことを非常に懐かしく思っております。

 同時に、間違えていなければ、三十五歳で町長さんになられたと思っておりますけれども、若くて、非常に住民参加の町づくりに熱心に取り組んでいらっしゃることにみんなが敬意を表していたことを、今よみがえってまいりました。これからは、当時の縁で、いろいろと御指導、御鞭撻を賜れればと思っております。

 そこで、私も市長を経験しましたからですが、職員が意欲を持って、そして、住民の福祉の向上のために、地域の発展のために仕事をしていただく、そのためには、やはり適正な給与や適正な勤務時間を確保することが大事だと思います。ただ、公務員の場合には、そのよりどころとなるものが人事院勧告以外にはないんだ、そんなふうに思っておりまして、その点については、評価をして、合理的だなと考えております。

 ただ、先ほども申し上げました、調査対象とされている民間企業の企業規模や事業所規模が大き過ぎるのではないかといった御指摘や、ほかには、公務員の場合には、民間企業のような倒産がなくて、身分が保障されているから、これはその分民間の給与水準よりも低くてもよいのではないかという御指摘、また、国の財政事情、こういったものも考慮すべきだというふうな指摘があることも、これは委員御承知のとおり、事実であります。

 そういったことを踏まえながら、第三者機関であります人事院の方で、勧告という制度をとって、それに従って勧告をされているわけであります。そのことにつきまして、私は、一定の評価をしなければいけない、そのように考えております。

逢坂委員 大臣からお話しいただきましたとおり、私自身も、人事院勧告制度についてはある一定の評価できる部分はあるだろうというふうに思います。

 ただ、あわせて、大臣も御指摘いただいたように、やはり課題も多い。特に官民比較の部分での課題が多いし、さらに、この制度そのものが本質的な意味で、先ほど人事院が言ったような意味ではなくて、民間と比較しているから国民の理解は得られているんだというような意味ではなくて、本質的な意味でこの制度そのものが国民の理解を得られているのかというと、私は、逆に、時代がだんだんこっちに来るに従って徐々に国民の意識と乖離しているような気もしないではないんですね。したがいまして、評価はできる部分もあるけれども課題が多いというのは、基本認識は一緒だというふうに思います。

 そこで、私、こう思うんですね。今の人事院の勧告制度というのは、ある一定の評価はできるものの、最終的には自律的労使関係というものが確立されることが非常に大事ではないかというふうに思います。

 自律的労使関係というと、多くの方は、ああそうか、やはり労働組合の応援をしに来ているんだなというふうに感じる方がいるかもしれませんが、実は必ずしもそうではないんです。

 人事院勧告に、かつて何年か勧告どおりにやらなかったことが政府はございました。東日本大震災のときも、実は人事院勧告どおりにはやらなかったわけであります。あのとき、七・八%給与の引き下げをいたしました。これは今までにはない大幅な引き下げだったわけであります。もちろん、東日本大震災という非常に大きな、未曽有の大災害があった、だからそれが引き下げのインセンティブになったということは事実だというふうに思いますけれども、私はもう一つあったと思っているんです。

 それは、当時、民主党政権で、国家公務員制度改革に乗り出して、自律的労使関係を何とかしてつくり上げたい、そして、人事院勧告とは違った、労使が納得できる給与決定の仕組みを導入したいということに取り組んでいたわけであります。したがいまして、働いている皆さんの側も、いずれは自律的労使関係ができ上がるんだ、そういうことに向かって、今回の給与の引き下げというのもそのある種の前倒しといいましょうか、それに向かう一つのプロセス、道のりなんだという思いがあったのではないかなという気がするんですね。

 したがいまして、自律的労使関係というと、何となく、給与を上げるためだけにみんながわいわいやっているようにとられるわけでありますけれども、必ずしもそうでもない。労使がしっかり納得をした上で給与を引き下げるという意味においても、私は、有効に機能する部分があるんだろうというふうに思います。

 ただ、今の状況を見ますと、自律的労使関係を樹立できるまでにはもう少しまだ道のりがあるというふうに私は思っています。したがいまして、今の人事院勧告制度を基本的には尊重しなければいけないだろうというふうに思います。

 ただし、基本的には尊重するんですけれども、やはり課題も多い。その課題は先ほど大臣が例示いただいたとおりだというふうにも思いますし、さらにまだ、ほかにも私はあるような気もしています。

 我々税に携わって仕事をする者は、最少の経費で最大の効果を上げるということが原則になっていますから、その原則に照らし合わせて、本当に人事院勧告で言われている給与水準が適切なのかということについても、常に厳しく見ていかなきゃいけないんだろうというふうに私は思っております。

 私はこんな思いでいるんですが、大臣、いかがでしょうか。御感想でも結構です。

岩城国務大臣 ありがとうございます。貴重な御意見を賜りました。

 私も委員と同じように地方自治体の長を務めておりまして、それで、やはり労使が信頼関係を築いていくということは極めて大事なことだな、こんなふうに考えておりました。

 これからもさまざまな課題がたくさんあろうかと思いますが、逢坂委員の御指摘にありましたそういったことを踏まえながら、私自身もよく考えていきたいと思っております。

逢坂委員 それでは、次の話に移りたいと思います。

 次の話は、少し皆さんにしてみるとシャビーに聞こえる話かもしれないんですが、全国の裁判所や刑務所の事務用品や事務備品、物品の類いですね、あるいは図書の類い、これの調達についてお伺いをしたいんです。

 私は、先ほども申し上げましたとおり、最少の経費で最大の効果を上げる、なるべく税は少なくして最大の効果を上げていくというのが最大の原則だというふうには思っているんですが、最近の役所の物品の調達の方式によって、随分地域の疲弊に拍車がかかっているのではないかという気がしてしようがないんですね。それは、やはり少しでも安く買おうとする余り、どんどん一般競争入札を入れていくとか、少しでも安い物品を購入するためには、地場の商店や地場の事務機器屋さんから買うよりも、大手のところから買った方が安く入る、これは事実なんですけれども、それをどんどんやっていけばやっていくほど、地域の疲弊に拍車がかかっていくのではないかという気がするわけであります。

 そこで、お手元に資料をちょっと用意させていただきましたが、法務省作成資料というものがございますけれども、この資料の中身について、まず法務省の方から、簡潔に、物品の調達に関連して説明をお願いいたします。

小川(新)政府参考人 お答えいたします。

 昨日、委員から御照会をいただきまして、刑務所において調達する事務用品等について、地域の業者あるいは地域外の業者からどういう割合で調達しているのかという御照会をいただきました。

 それで、急遽、可能な範囲で、北海道内の刑務所のうち、月形刑務所、旭川刑務所、函館少年刑務所の三庁につきまして、平成二十二年度から平成二十六年度における事務用品等の調達実績を調査させていただきました。それをまとめたものが配付資料の表でございます。

 まず、北海道内の業者からの調達割合につきまして御説明いたしますと、配付資料の表で、道内業者の欄の一番上の欄をごらんいただければと思います。平成二十二年度から二十六年度まで順次申し上げますと、それぞれ金額と件数で表示しております。道内業者の割合は、まず金額で申し上げますと、平成二十二年度以降、七六・五%、七九・四九%、八七・七六%、九〇・三五%、八三・五五%ということで推移をしております。それから件数ベースで申し上げますと、平成二十二年度以降、六九・三八%、六九・二一%、七五・六三%、七一・五〇%、六三・三二%という比率で推移をしております。

 先ほど申し上げました北海道内業者と申しますのは、北海道に本社がある業者と、北海道のみに事業所がある業者を指しております。北海道内に支社があるけれども本社が北海道外にある業者につきましては、北海道外の業者として整理をしているところでございます。

 それから、調達先が北海道内業者か北海道外業者かを問わず、調達方法につきまして、一般競争入札の占める割合につきまして御説明します。

 合計欄の一般競争契約の欄をごらんください。金額ベースのところだけで申し上げますけれども、平成二十二年度以降、一二・五八%、一三・四二%、一七・八七%、二九・四二%、四六・四七%という割合で推移をしているところでございます。

 以上でございます。

逢坂委員 これを見ますと、どちらかというと地元の業者、北海道内の業者が割と大宗を占めているのかなという印象を持つわけでありますけれども、また一方で、随意契約と一般競争契約で見ますと、平成二十二年は一般競争が一二だったのが、平成二十六年は四六にはね上がっているということになる、はね上がるという言い方がいいかどうかわかりませんが、ふえているということですね。

 私は、一般競争入札というのは必ずしも悪いとは思っておりませんけれども、一般競争入札がふえればふえるほど、多分、傾向としては、地元のいわゆる本屋さんや事務屋さんというのはなかなか入っていきにくい状況になっていくのかなと思っています。

 そこで、もう一枚、裏を見ていただきたい。今度は最高裁判所に作成いただいた資料ですが、これを簡潔に説明いただきたいんです。お願いいたします。

笠井最高裁判所長官代理者 裁判所の関係についてお答えいたします。

 札幌高等裁判所管内の裁判所におけます平成二十四年から二十六年度までの契約のうち、予定価格が百六十万円以上のものにつきまして、その契約の相手方の業者の所在地を調査していただきました。

 その結果によりますと、契約件数が、平成二十四年度が十七件、二十五年度が二十一件、二十六年度が十四件となっております。平成二十五年度の一件を除きましては全て北海道に所在する業者が落札しております。そのうちの平成二十四年度の十二件、平成二十五年度の十六件、平成二十六年度の九件、こちらは札幌市の業者が相手方となっているということでございます。

逢坂委員 要するに、私が何を言いたいかというと、一般競争入札が随意契約に比べてどんどんふえている、それから、刑務所の物品の調達の状況を見ると、道内での調達が多いように一般的には見えるんだけれども、一方、裁判所で具体的なものを出していただきましたけれども、それでは道内ではどこから調達しているかということになると、札幌市からの調達が非常に多いということなんですね。

 すなわち、こういう傾向がどんどん進んでいきますと、例えば函館とか旭川とか帯広とか、そういうところにある事業者の方々は、物品を納入する機会をどんどん失っていっている、これが私は現状ではないかなというふうに思っております。

 私は、予算を適正に執行する、少しでも安くするという意味では一般競争入札は必ずしも悪いとは思わないんですけれども、これをやればやるほど、資本力のある方がどんどん納入をしてきて、地場の商店や地場の事務屋さんや地場の本屋さんはどんどん衰退をしていくということになるんだと思うんです。

 これでは、地方創生という観点から、私は、本当にこんなことばかりやっていっていいんですか、ここは少し工夫の余地があるんじゃないでしょうかという気がするんですけれども、政務官、いかがでしょうか。お越しいただいております。

牧島大臣政務官 答弁いたします。

 今、逢坂委員がおっしゃいましたとおり、地域経済を活性化させるためには、地元の中小企業の受注の確保は重要であると私どもも認識をしているところでございます。

 国等が行う契約は不特定多数の参加者を募る一般競争入札が原則とされてはおりますが、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律において、「予算の適正な使用に留意しつつ、」「中小企業者の受注の機会の増大を図るように努めなければならない。」と定められております。また、同法に基づく基本方針において地域の中小企業を積極的に活用するよう定められており、入札制度の枠組みの中で各府省庁において配慮されているものと考えておりますし、御期待申し上げたいと思っております。

逢坂委員 各省庁において配慮されているものと思うというか、余り配慮されていないんですよ。だから、もう少し具体的に配慮できるような方策を講ずる必要があると私は思っております。

 そこで、大臣にこの問題についてお伺いしますけれども、やはり、どんどんこれをやっていくと、地場の事業者がどんどん衰退をしていく、地方の衰退につながるというような気もしますので、今、中小企業者の受注の確保に関する法律があるというふうには話されましたけれども、それを踏まえて、多少なりとも改善できる方向というのを何とかお考えいただけないかな、特に大臣の所管する出先について、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 法務省といたしましても、刑務所の物品調達に限らず、中小企業者からの調達につきましては、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律の規定に基づき、法務省として契約の方針を定めております。具体的に申し上げますと、官公需情報の提供の徹底や、調達機関が所在する地域の中小企業を見積もり先に含めるように努めるなど、地元中小企業者の積極的活用を推進している、このように認識をしております。

 刑務所等の国の機関の調達が地方の活性化につながることは重要であります。今後も、早期に入札公告を実施し、入札までの準備期間を十分に確保することや、入札公告を地元の多くの中小企業者の目に触れる商工会議所等に掲示することなどを実施してまいりたいと考えております。そのため、改めて各刑務所等に対し地元調達の積極的活用について周知を行い、広く地元の中小企業者が入札に参加できるよう取り組んでまいりたいと考えております。

逢坂委員 ぜひ地元の中小企業に配慮した方法をやってもらいたいと思うんですが、入札の公告を多くの人に見てもらうとか、それだけでは私は十分ではないと思っております。要するに、少額で随意契約できる範囲のものはそういう範囲で発注をするとか、そういう配慮も場合によっては必要なんだろうと思っています。

 入札ということになれば、基本的にはやはり資本力のあるところを落札せざるを得ないということにもなってしまいますので、ぜひそのあたりも考えて、大臣、これからもこの問題、私、もう少しやりたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の問題に移りたいと思うんです。

 裁判所にお伺いします。

 今、裁判官一人当たりの手持ちの事件数というのは、ちょっと前段を省略して直接お伺いしますけれども、どの程度になっておりますか。東京地裁、大阪地裁の民事の例で構いませんので、御紹介ください。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 東京地裁の例で申しますと、民事事件、手持ち事件は約百八十件程度、大阪地裁でも約百六十から七十件程度ということでございます。

逢坂委員 一人の裁判官が、今のお話を聞いていただいてわかるとおり、かつてより減ったとはいえ、東京地裁で百八十件案件を抱えている。大阪地裁で百六十件抱えている。これは事前に調べさせていただきましたが、刑事訴訟では、東京地裁で六十件、大阪地裁で約六十件なんですね。しかも、これは平均ですよね。

 それで、最も多い人というのはどれぐらい抱えているかというのをお調べになりましたか。

中村最高裁判所長官代理者 最高裁として、個々の裁判官がどれぐらい事件を持っているかということの統計をとっておりませんので、最大どれぐらいの件数を持っているかということは調べておりませんし、お答えできませんが、やはり、百八十件よりかなり多い人もおられれば、少ない人もおられるということだろうと思います。

逢坂委員 すなわち、今の百八十件というのは平均なわけですよね。ということは、抱えている人は、二百件なのか二百五十件なのか、わかりませんよ、それは。わかりませんけれども、そういう人もいるということです。

 一年三百六十五日ですよ。百八十件といったらどうなるんですか。土曜、日曜を入れて、祝日も入れて、二日に一本はやらないと、これは一年で処理できないような案件。もちろん全部一年で処理せよとは言いませんけれども、これはどう考えてみても私はいびつだと思いますし、こういう状況を放置しておけばおくほど、日本の裁判が劣化していく、その質が落ちざるを得ないのだというふうに思うんですね。

 だから、これは何としても、裁判官の数をふやすとか、あるいは一人の手持ちの件数を何とか平準化していくとか、創意工夫が必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 先生の御指摘のとおり、裁判官の手持ち事件の数を見ましても、まだまだ繁忙だと考えております。

 また、事件の質も見ましても、専門的知見を要する事件や非典型的な事件、難しい事件が多くなっているということで、このような状況に対応して事件を適正に解決するためには、合議体の活用等の取り組みもさらに進めていかないといけないと考えております。

 そのため、裁判官の人的体制の充実というのが肝要であるというふうに裁判所としては考えておりまして、毎年、裁判所職員定員法の改正をお願いして、裁判官の増員を認めていただいていたところでございます。

 今後も、短期的な事件数の増減だけではなく、中長期的な事件動向、充員の見込みなども踏まえつつ、人的体制の充実に努めてまいりたいと考えております。

逢坂委員 以上で終わりますけれども、この裁判官の問題についてはこれからももう少し深く掘り下げたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で逢坂誠二君の質疑は終わりました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。本年もどうぞよろしくお願いをいたします。

 きょうは、私も、先ほどの公明党の吉田先生と同じ問題意識で、人事院勧告のフレックスタイムのことで、特に育児に関するようなところの言及もあったもので、男性の裁判官、男性の検察官、この育児休暇の取得について伺いたいと思っておったんですが、先ほどの吉田先生のやりとりを聞いていたら大変暗雲が立ち込めてきまして、どこから質問していったらいいか、ちょっと困っておるんですが。

 まず、裁判官について教えていただきたいんですが、裁判官ですと、事務総局の人事局長なのか、大臣官房司法法制部長なのか、どちらでも結構ですが、裁判官は、そもそも一般公務員のものが適用されない。ただ、過去の答弁では、平成二十五年十一月八日の法務委員会で、子の看護休暇制度は裁判官にも導入されている、そういう答弁もあるんですが、男性を聞く前に、まず、女性の裁判官は果たして出産、育児等でお休みがとれているのかどうか、教えていただきたいと思います。

萩本政府参考人 裁判官につきまして、運用状況は最高裁の方に別途お尋ねいただきたいと思いますが、まず制度について御説明いたしますと、裁判官につきましては育児休業制度がございまして、裁判官の育児休業に関する法律で規定されております。

 この法律は、平成三年に、子を養育する裁判官の継続的な勤務を促進し、もって裁判官の福祉を増進するとともに、裁判事務等の円滑な運営に資することを目的として制定されたものでして、平成四年の四月一日から施行されております。

 この法律が定める裁判官の育児休業制度につきましては、基本的に一般職の国家公務員の育児休業制度と同様でして、三歳に満たない子を養育する裁判官が、男性、女性問いません、最高裁判所の承認を受けて、その子が三歳に達するまでの期間において育児休業をすることができること、育児休業をしている裁判官は、裁判官としての身分を保有するが、報酬その他の給与を受けないことなどを規定している法律でございます。

井出委員 今、男性、女性問わずにという、少し希望が出てきたかなと思ったんですけれども。

 運用の方はどうですか。しっかり、男性、女性、とれているんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 手元にございますのが平成二十六年度の数字でございますけれども、育児休業の取得が可能になりました女性の裁判官は三十九人おりましたところ、このうち育児休業を取得した者が三十八人でございまして、率にいたしますと九七・四%でございます。これに対して、男性裁判官は取得が可能になった者が七十人ございますが、このうち育児休業を取得した者は五人でございまして、率にすると七・一%ということになります。

 男性、女性を問わず育児と仕事の両立を図るという制度の趣旨、内容も含めて、今後とも、制度の周知に努めながら、必要のあるときにはちゅうちょしないで育児休業を取得できるように、さらに環境整備に努めてまいりたいというふうに思っております。

井出委員 今、女性はほとんど全ての方が、男性も七十人中の五人というお話があったかと思うんですが、報酬はなしというお話があったかと思いますけれども、職務の、休む前と休む後の、復帰といいますか、ざっくばらんに申し上げますと、私はもともとマスコミの世界におりまして、特に女性の記者ですね、女性の記者さんは、出産、育児で休みはとれるんですけれども、お子さんがいるとなかなか第一線に、一番昼も夜もないみたいなところに、何か明文の規定があるわけじゃないんですけれども、なかなか復帰できないという実態があって、一度、私が若かったときに、同僚の女性記者が社内で上層部と大げんかとなったところを目撃していたのを思い出すんですが、職務の、休む前と休んだ後の復帰に際しては、何かルール的なものというのはあるんですか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 育児休業を取得いたしました結果、復帰後に不利益な取り扱いがないということは当然でございます。その上で、裁判官が育児休業を取得いたしますと、その間の立法の動向でありますとか判例の動き、そういったものをフォローしておかないと職務復帰後困るということで、当然、各裁判官が自己研さんに励んでいるところでございますけれども、さらに職務復帰後は研修に参加する機会をできるだけ保障するというような配慮もしているところでございます。

 私どもの方は、多くの研修は応募型という形でやっておりますので、そういう育休から復帰した裁判官についても、そういった研修に応募して参加をするといったようなことを含めて、執務能力の維持向上を図りながら復帰をしてもらうということを考えているところでございまして、引き続きそういう環境整備に努めてまいりたいと思っております。

井出委員 先ほど逢坂先生から裁判官は大変抱えている事件数が多くて忙しいという話もあったんですが、少し前の漫画になるんですが、「家栽の人」、昨年、作者の毛利甚八さんがお亡くなりになられた漫画がありまして、家庭裁判所の判事さんを描いた漫画で、実在するモデルがいるというような話もちょっと聞いたことがあるんです。

 少し話はそれるんですけれども、あの漫画を見ていますと、まず少年審判に対する理解が深まりまして、私は昨年末に十五巻を三度読んで、これで少年法の引き下げについて強い決意を持って臨もうと思ったので、まず大臣にもお時間があるときに読んでいただきたいなと思います。

 その漫画で、要は、家庭裁判所が舞台ですので、少年事件とか離婚の取り扱いが非常に多い。裁判官の漫画ですので、その裁判官自身も子育てですとか、裁判所は転勤も全国転勤で、単身赴任だ、お子さんの養育だと大変な御苦労があるかと思うんです。

 私は、先ほどの男性、女性の育児休業の取得率という数字をいただきましたけれども、これは裁判官に限らないんですが、育児にかかわるということは男性も女性もよいことではないか、そういう思いを持っておりまして、そういう思いで裁判所としては育児休業に対して積極的にとれと言っているのかどうか。

 先ほどの答弁ですとか過去の答弁を見ますと、大変忙しいんだ、時間の定めもない、そういうことが答弁されているんですけれども、そうすると、逆に、育児休暇というものが、女性はとられていますけれども、男性はとりにくいのではないかなと思います。その辺の育児休暇の勧めみたいなことは、裁判所内の取り組みはどんなものがあるか、教えていただければと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所におきましても、裁判官についても、いわゆるワーク・ライフ・バランスの実現というのは非常に重要であるというふうに考えておりまして、これは国全体の取り組みの一環でもございますけれども、次世代育成支援対策推進法に基づきまして、裁判所におきましても、特定事業主行動計画、いわゆるアクションプランというものを策定し、仕事と育児の両立を支援する諸制度、さまざまな制度の周知を積極的に行ってきているところでございます。

 中でも、男性の育児休業につきましては、平成二十七年度から行っております第三期の行動計画におきましても、さらなる利用促進を図っているところでございます。

井出委員 人事局長にお伺いしたいんですが、現場にいらっしゃったときに、自分の同僚ですとか、部下ということはないでしょうけれども、自分より年の若い人たちが御結婚されたり出産されたりというところを現場でも実体験としてあるかと思うんです。

 今、男性についても進めていくというような取り組みのお話がありましたけれども、実際の経験と照らして、昔と今と変わってきたとか、昔はとてもとれそうになかったとか、そういう実体験のことをちょっと聞かせていただけませんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 実体験でということでございますので、客観的なデータと合っているかどうかはわかりませんけれども、経験的なところで申し上げさせていただきます。

 育児休業制度ができましてから、裁判官については、比較的取得はしやすい職場環境ということで、もともと取得は進んできているところというふうに思っております。

 その中でも、どうしても、もともとは女性裁判官の取得が中心で男性が少なかったというのは、背景事情はいろいろあろうかと思いますけれども、実態としてはそういうところがあったところかと存じますけれども、近年、いろいろな制度周知もありますし、あるいは、それぞれの裁判官の家庭の中での育児についてのいろいろな役割分担といったようなこともあって、徐々に同僚の男性裁判官も取得をするというケースがふえているように実感はいたしますし、そういう、育児をするに当たって自分もとろうというふうに考える裁判官もふえてきているように感じてはおります。

井出委員 ありがとうございます。

 次に、検察官のことについて伺いたいと思います。

 検察官についても、過去の法務委員会の答弁とかを見ますと、検察官が休日に出勤することも珍しいことではなく、残業についても常態化している現状にあるが、刑事司法のかなめとしての自負を持って日々の職務に従事しているところであると。簡単に言えば仕事人間というような印象を受ける答弁があるんですが、検察官の方は公務員のものが適用されると。

 ただ、私は、なかなか、事件の一線でやっている男性の方がとれるのかどうか、また、裁判官も検察官もそうなんですけれども、割合、司法修習ですとか転勤のめぐり合わせですとか、同業の御結婚ということもあって、お互いの理解が深まるところもあれば、同業だからこそ支え合わなきゃいけないというところもあるかと思うんですが、検察官の男性の育児休暇の取得の状況というのはいかがでしょうか。

黒川政府参考人 お答え申し上げます。

 検察庁において、平成二十六年度中に育児休業、配偶者出産休暇及び育児参加休暇の取得が可能になった男性検察官は七十二人おりました。このうち育児休業取得者は三人で、取得率は四・二%となっております。

井出委員 そうしましたら、林刑事局長にお伺いしたいんですが、実務経験に照らして、やはり男性が育児休暇をとる、または部下に勧めるということは難しいでしょうか。

林政府参考人 私の実体験から申しますと、当時、やはり男性がこういった育児に関してのいろいろな制度を取得するということは多くはなかったと思います。しかしながら、最近、当然法務省としましてもワーク・ライフ・バランスに向けた取り組みというものがございまして、実際に、検察庁の男性検察官についても育児休業をとる例が出てきております。そういった場合に、育児休業を実際に経験した、取得した経験のある検察官にこの制度の周知とか啓発に一役買っていただくというようなことで、組織の中でこういった育児休業をとりやすい状況を今つくっているところでございます。

 他方で、育児休業だけでなくて配偶者出産休暇とか育児参加休暇、これにつきましては男性検察官も数多く取得しておりまして、配偶者の出産の前後について休暇を取得している例は非常に多くなっております。そういった意味では、過去と比べれば非常にそういった男性検察官の育児に対する諸制度の取得というものがふえてきているものと考えております。

井出委員 少しずつふえてきているという話ですが、政府の方では、二〇二〇年にたしか男性一二%でしたか、そういう取得率の目標を掲げていて、平均を見ると何か二%前後だというような話を新聞記事とかいろいろなところで目にするんですが、私もだんだん広がってきていることは大変結構だと思いますし、その経験というものが仕事にもつながってくるのかなというところも感じております。

 大臣にお尋ねしたいんですが、少しずつとはいえ、ただ、さはさりながら、裁判官も検察官も大変だと。ましてや国会議員の男性も今大変御苦労されている方が同じ法務委員会にいらっしゃるんですが、男性の育児休暇に対する大臣の個人的なお考えというものをまず伺いたいと思います。

岩城国務大臣 私が子育てにかかわったのは二十五年前から三十五年ぐらい前のことでありますので、その時代からすれば大きく皆様方の意識が変わっているな、そういう気持ちであります。

 政府全体の施策であるワーク・ライフ・バランス推進のため、それぞれの機関で、また省庁でも取り組みをされているものと思いますけれども、やはり各職場における子育ての意識についての理解を深めて、そして、育児休業等の取得がより一層促進されるよう、さまざまな努力をしていくことが大切かな、こんなふうに考えております。

井出委員 きょうは裁判官と検察官について話を伺いまして、基本的には検察官の育児休業の推進というものは法務省でやっていかれると思う。裁判所の方は、そこもやはり最高裁ということになるんですか。ちょっとそこだけ。

堀田最高裁判所長官代理者 先ほど来御説明しておりますような取り組みを最高裁が中心になってしておりますけれども、最高裁のみならず、高等裁判所、地方裁判所、裁判所の組織全体でこういう取り組みを進めてまいりたいというふうに思っております。

井出委員 裁判所も検察官も司法修習が一緒であり、また全国転勤、その辺の苦労は同じかと思います。それぞれ独立した組織であると思いますが、ぜひ、ワーク・ライフ・バランス、その辺の意識のところはそれぞれで切磋琢磨して取り組んでいっていただきたいなと思います。

 きょう、この質問をさせていただいたのは、とある法務委員の方の問題提起、私は大変いい問題提起をしていただいたんじゃないかなと思うんですが、国会議員に関して言いますといろいろな議論があるかと思いますけれども、ただ一方で、先日、北朝鮮に対する決議を急遽やったときに、参議院では三十人の欠席が出る、衆議院も十四人いたと報じられておりますし、そういうものも含めてこの議論を、国会議員のものも注目をしていきたいと思うんです。検察官、裁判官も、取り組んではいるものの、恐らくまだ、仕事の性質上かなりの御苦労がおありかと思います。ぜひ、この議論が、特定の仕事、業種というものだけでなく、社会全体の男性の育児に対する問題提起、そういうことになっていったらいいな、そういう思いできょう私は質問をさせていただきました。

 法務省にはまた法務省の、役所の中でのそういうワーク・ライフ・バランスということもあるかと思いますが、ぜひそうした視点でやっていただくようお願いいたしまして、きょうは終わりにしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終わりました。

 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 まず、裁判官の報酬等に関する法律の一部改正案及び検察官の俸給等に関する法律の一部改正案について、司法の独立の観点から、身分保障することは当然であり、賛成するものですが、裁判官、検察官の報酬体系と一般職の給与体系との違いについて伺います。

萩本政府参考人 今、司法の独立という御指摘がございましたが、裁判官につきましては、憲法上、司法権の独立の観点から、裁判官の職権の独立を実効あらしめるため、「裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。」と定められ、その身分保障が図られております。これを受けまして、一般の政府職員と異なる独自の給与体系が定められているものでございます。

 検察官につきましても、司法権の発動を促し、その適正、円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有するものであり、また、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経て任用されるなど、裁判官に準ずる性格を有していることから、他の一般職の国家公務員とは別に、裁判官の報酬月額に準じて定めるべきものとされているものでございます。

畑野委員 司法の独立という点でお話がありました。そうであるならば、裁判所の職員の増員と待遇の改善も同時に進めるべきだと思います。

 家庭裁判所の調査官の異動先について、夫婦同居も含め、仕事と家庭の両立のためさまざまな努力を最大限すると、昨年四月、清水忠史議員に答弁されました。

 どのような改善が図られたのか、今後も答弁の立場で対応するのか、伺います。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成二十七年四月十五日の当委員会におきまして答弁させていただきましたとおり、仕事と家庭生活の両立のため、さまざまな努力を最大限してまいりたいと考えているところでございます。

 職員個々の希望や、育児、介護といった家庭事情等を一層きめ細かく把握するように努めておりまして、今後とも、こうした諸事情に可能な限り配慮した異動を実施してまいりたいというふうに考えております。

畑野委員 きめ細やかにという話がありました。ぜひ、現場の声をよく聞いて、引き続き対応をしっかりしていただきたいと思います。

 さて、本日の委員会の冒頭に、最高裁大法廷における判決の参考送付がされました。夫婦同氏の強制と、女性だけに離婚後六カ月の再婚禁止期間を課した民法についての最高裁の判決が、昨年、二〇一五年十二月十六日にありました。

 これまで政府が、一九九六年の法務省法制審議会による民法改正答申後も、民法改正を求める国民や女性の声と運動を無視して法改正を棚上げし続ける中で、原告の皆さんは、やむにやまれぬ思いで裁判に訴えられたのであります。

 判決は、百日を超える再婚禁止期間は違憲としたものの、夫婦同氏については、氏の変更を強制されない自由は憲法上の権利として保障される人格権の一内容とは言えない、どちらの姓にするかは合意に委ねており、形式的な不平等が存在するわけではない、家族の呼称を一つに定めることには合理性があるなどとして、合憲と判断し、訴えを退けました。

 これに対して、日弁連会長声明は次のように指摘しております。

 「五名の裁判官(三名の女性裁判官全員を含む。)が、民法第七百五十条は憲法第二十四条に違反するとの意見を述べた。」「夫婦同氏の強制によって個人識別機能に対する支障や自己喪失感等の負担がほぼ妻に生じていることを指摘し、その要因として、女性の社会的経済的な立場の弱さや家庭生活における立場の弱さと、事実上の圧力など様々なものがあることに触れており、夫婦同氏の強制が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえないと説示している。」さらに、「夫婦同氏の強制は、憲法第二十四条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等に違反すると説示し、「家族の中での一員であることの実感、夫婦親子であることの実感は、同氏であることによって生まれているのだろうか」と疑問を投げかけている。」

 私も、最高裁大法廷を傍聴し、その場で判決を聞き、強い憤りを覚えた一人です。

 一方で、最高裁判決は、制度のあり方については、国会で論じられ判断されるべき事柄として国会の議論に委ねました。

 ここで岩城法務大臣に伺いたいんですが、十二月十六日の最高裁判決に基づいて、選択的夫婦別姓制度について政府として今後どのように取り組みを進めていくのか、この間の政府の取り組みの経緯と、国会で論じられ判断されるべきということへの責任をどう果たしていかれるつもりなのか、伺います。

岩城国務大臣 選択的夫婦別氏制度の導入につきましては、畑野委員からお話がありましたとおり、平成八年に、法務大臣の諮問機関である法制審議会から答申を得ています。そこで、法務省は、平成八年及び平成二十二年に、法案の提出に向け、その法制審議会の答申を踏まえた改正案を準備いたしました。

 しかしながら、この問題につきましては、国民の間にさまざまな御意見があったほか、与党内においても異論があったことなどから、改正法案の提出にまでは至らなかったものであります。

 他方、先ほどお話がありましたとおり、最高裁判決において、選択的夫婦別氏制度の導入の是非については国会で論ぜられ判断されるべき事項であるということの指摘がなされました。

 私としましては、最高裁判決における指摘を踏まえ、まずは、国会における議論の動向を注視しながら慎重に対応を検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 今、岩城大臣からのお答えにありましたように、法制審の答申から二十年経過しているんですね。もう慎重に、慎重過ぎるぐらいやっているんじゃないでしょうか。ですから、これは、本当に、慎重というお言葉は次に伺うときにはぜひ外していただいて、国会の議論ということであれば、政府を先頭に法務大臣がやっていただきたいというふうに思います。

 実際、国民的な意見の動向を見ますと、本当に変化がございます。最近の報道等の調査でも賛成が反対を上回っていますし、それから、政府の二〇一二年の調査でも、人口補正をしますと賛成が反対を上回っていたということが明らかになりました。それから、家族の名字が違っても家族の一体感には影響がないと答えた人は六割に及んでおります。

 先ほど言った二〇一二年の内閣府の調査で、特に二十代の女性は、別姓容認が五三・三%、反対は一六・一%と、若い世代で賛成がふえている。十八歳選挙権も始まろうという時代でございます。

 さて、現在、林陽子弁護士が委員長を務める国連女性差別撤廃委員会は、二〇〇三年の第四回、五回報告審査の総括所見で選択的夫婦別姓導入などの改正を勧告し、さらに、二〇〇九年の第六回報告審査の総括所見でも同様の勧告をしました。加えて、フォローアップ報告の対象にしております。

 外務省に伺いますが、二〇〇九年の女性差別撤廃委員会の総括所見十八について伺います。

下川政府参考人 前回の政府報告審査におけます女子差別撤廃委員会の最終見解パラ十八の内容は、以下のとおりでございます。

  委員会は、男女共に婚姻適齢を十八歳に設定すること、女性のみに課せられている六カ月の再婚禁止期間を廃止すること、及び選択的夫婦別氏制度を採用することを内容とする民法改正のために早急な対策を講じるよう締約国に要請する。さらに、嫡出でない子とその母親に対する民法及び戸籍法の差別的規定を撤廃するよう締約国に要請する。委員会は、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依存するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべきであることを指摘する。

 以上でございます。

畑野委員 そして、今度の二月に第七回、第八回日本政府報告審査が行われるということですが、それでは、選択的夫婦別姓についてどのような態度で臨まれますか。

岩城国務大臣 本年の二月に政府報告審査が行われるわけであります。そこで、我が国は、今、外務省から答弁がありましたとおり、女子差別撤廃委員会から、選択的夫婦別氏制度の採用等を内容とする民法改正のために早急な対策を講じるよう勧告を受けております。

 この勧告は、我が国が選択的夫婦別氏制度の導入等の民法改正を行わないことが条約に違反しているとの解釈を前提にしているようにも読めますが、我が国としては、民法改正を行わないことが条約に違反するものではない、このように認識をしております。

 この選択的夫婦別氏制度の導入の問題は、我が国の家族のあり方に深くかかわるものであり、国民の皆様方の間にもさまざまな意見があります。したがいまして、国会における議論の動向も踏まえながら、慎重に対応を検討する必要があると考えております。

 御指摘の審査に対しては、このような我が国の立場や状況について十分な説明をし、理解が得られるよう適切に対処してまいりたいと考えております。

畑野委員 ダブルスタンダードは困るんですね。

 つまり、既に政府は、女性差別撤廃条約実施状況の第七回、第八回報告できちっと言っております、選択的夫婦別氏制度の導入及び再婚禁止期間の短縮に係る民法改正について、「引き続き法案の提出に向けて努力する必要がある」と。ですから、これはずっと生きているんです。それはよろしいですね、大臣。

 大臣、それでいいですね。そういうふうに言っているんですから。

小川(秀)政府参考人 ただいま委員から御指摘ありましたように、この第七回、第八回の政府報告の中には、男女共同参画会議監視専門調査会の意見として、これは非嫡出子に関するものでございますが、「今般の民法改正法案にとどまらず、婚姻適齢の男女統一、選択的夫婦別氏制度の導入及び再婚禁止期間の短縮に係る民法改正及び出生届の記載事項に係る戸籍法の改正について、引き続き法案の提出に向けて努力する必要があるとした。」ということでございまして、これは、専門調査会としての御意見としてこういうものが出されたということで、先ほど来大臣が答弁しておりますのは、法務省の立場としての考え方でございます。

畑野委員 ですから、国としても、民法を最も担当するのは法務大臣ですから、そういうことをきちっと打ち合わせもして、よく議論もして、ちゃんとまとめてやっていただきたいということを申し上げておきたいんです。

 それで、これまで最高裁判決は、氏名は人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものと判断してきました。

 ところが、今回、最高裁判決は、氏の変更を強制されない自由は、憲法上の権利として保障される人格権の一内容とは言えない、どちらの姓にするかは合意に委ねており、形式的な不平等が存在するわけではないと言っております。

 現状は本当に自由な話し合いによる合意が行われているのかということだと思います。

 この点でまず伺いたいのは、女性が結婚した際、夫の姓を名乗っている割合について、この間の状況について厚生労働省に伺います。資料一をつくっていただきました。御説明ください。

小川(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十六年の人口動態統計によりますと、平成二十六年に婚姻届のあった夫婦のうち、夫の氏を選択した夫婦は九六・一%となっており、この二十年間で見るとわずかに減少しております。

畑野委員 資料の一を出していただいたんですが、一九九五年、夫の氏を選んだのは九七・四%、二〇一四年、九六・一%。資料を皆さん見ていただくように、ずっと九七%から九六%と、若干は減っているけれども、ほとんど変わらないで、あらかた九割以上ということでよろしいですか。

小川(誠)政府参考人 委員御指摘のとおりでございます。

畑野委員 つまり、ほとんど変わらない、高どまりしているということですよね。

 それで、これが自由な話し合いによる合意の結果であるかということが問われると思いますが、そこについての調査はされていますか。

小川(誠)政府参考人 お答え申し上げます。

 夫婦間においてどのような経緯で夫または妻の氏を選択したかについては、厚生労働省では調査を行っておりません。

畑野委員 ですから、これは調べていないと。でも、実態は、一九九五年は九七・四%が夫の氏、二〇〇五年も九六・三%が夫の氏、そして二〇一四年も夫の氏が九六・一%という状況ですね。

 ですから、形式的にはどちらの姓を名乗ることもできるので、差別には当たらないかのように見えますけれども、結果としては、長期間にわたって多くの女性が、結婚する際、夫の姓を名乗っている。この不平等な結果を見れば、間接的に女性が差別されていると言わなくてはなりません。夫か妻のどちらかの姓を選択する制度なので女性差別に当たらないという主張は通用しないと思います。

 今回の最高裁判決も、改姓、氏を変えることによるアイデンティティーの喪失感や、社会的信用などの維持が困難になるなどの不利益は、主に女性が受けることだと認めました。しかし一方で、通称使用により不利益が一定緩和されるなどとしております。

 そこで伺いますが、通称使用の不利益について、どのような調査をされていますか。

大塚政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの件でございますが、まず、平成二十四年に内閣府の政府広報室が、先ほど委員もお触れになりました家族の法制に関する世論調査、この調査をやっておりまして、その中で、まず、結婚により姓を変えた場合に仕事上で何らかの不便を生ずると回答した方が約半数いらっしゃいまして、さらにその中の六割の方が、不便を生じないようにした方がいいと回答され、またさらにそのうちの四割の方が、通称使用できてもそれだけでは対処し切れない不便があると思うというふうに回答されていらっしゃる、そういう結果となっております。

 それからもう一つ、これは平成十三年ということで、今から十五年ほど前になるわけでございますが、男女共同参画会議の基本問題専門調査会が、選択的夫婦別氏制度が導入されていないことによる不利益につきまして、体験、事例というものを広く募集いたしました。その際、通称使用につきまして、戸籍名と通称名の使い分けにより、本人のみならず、周囲、社会も混乱するといった事例が寄せられたところでございます。

畑野委員 そのことの最後の言葉、資料の二にもつけさせていただきました。内閣府の調査ということですね。

 通称使用というのは、本当に皆さん苦労されているんです。通称使用の制度がなかった会社で、結婚と同時に申し出をしたところ、会社が受けてくれて、その後も後輩が通称使用をするということで後に続いたんですが、ある日突然会社から通称使用は認めないという通達が出されて、人事部長からも呼び出しがあり、混乱と苦痛を経験しました、その後転職した職場でも通称使用の制度がなかったために、つくっていただくようにお願いしたと。本当にたくさんの方が、そうやって個人の苦労と努力で切り開いてきているんですね。本当に、職場の上司、あるいは国でいえば制度を所管する省庁に勇気を持って働きかけてこられた個々の皆さんの努力によってこれは実現されてきた。

 今回、不当判決と皆さん言っておられますが、これまで声を上げてこなかった方も、この判決は認められないと声を上げている。つまり、通称使用の拡大だけでは問題は解決しないということだと思うんです。

 大体、この問題は人権問題です。それを個人の良心や努力に委ねてよしとすること自身が間違っているんじゃないでしょうか。

 その上で、職場で通称が認められたとしても、給与や社会保険や税などは戸籍名が求められます。通称を使えない場面もたくさんある。新しく開設する銀行口座、健康保険証、運転免許証などでは通称は使えません。

 そういう点で、岩城大臣に伺いますが、通称使用によって女性の不利益が解消されていないという実態を御認識していらっしゃるでしょうか。

岩城国務大臣 先ほど来の議論の中にもありましたとおり、職場等において最近旧姓の通称使用が広く認められつつあり、社会生活における旧姓の通称使用は以前よりも進んできているとは思っております。ただ、具体的な実態調査はしていないものの、通称使用がいまだ認められないために女性が不便を強いられている場面も少なくないものと認識をしております。

 したがいまして、こうした社会生活上の不便を解消すべく、国、地方、企業などがそれぞれの部門において旧姓の通称使用を拡大するための措置を講じていく必要があるものと考えております。

 法務省では、このような措置の一環として、商業登記簿の役員欄に、戸籍名に加えて婚姻前の氏をも併記することを可能とする旨の商業登記規則等の改正を行い、昨年二月二十七日から施行しております。

 今後、旧姓の通称使用をさらに広く認めるための措置としてどのようなものが考えられるか、関係省庁と協議しながら検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 通称使用の拡大というふうにおっしゃったんですが、それだけでは解決できない根本問題があるということを私は申し上げたんですね。

 例えば、ある会社では、突然、業務の簡素化のために組織図、メールアドレス、名刺、社員証について戸籍上の姓を使用することで統一させていただきますと通達されて大混乱したことがあると。こういうことは繰り返されるわけですよ、その場その場の状況によって。上司がかわっただけで変わるという会社もあるわけです。

 ですから、今回の最高裁の判決に林陽子国連女性差別撤廃委員長からも、古色蒼然で残念、裁判官の多数意見は平等概念を形式的に捉えている、通称使用で緩和されると言うが、そうせざるを得ない実質的不平等を踏まえて判断すべきだったなどの批判が上がっている。本当に、大臣を先頭にこういう現場の苦労をさらによくつかんで、きちっとした対応をしていただきたいと思うんです。

 それで、選択的夫婦別姓制度の導入は、私は、国民の選択肢を広げるものだと思います。国民全体に夫婦別姓を強制するものではありません。それによって利益を損なわれる人はいない、こういう立場で民法改正を政府の責任として行うべきではないかと強く申し上げたいと思いますが、岩城大臣、いかがですか。

岩城国務大臣 仮に選択的夫婦別氏制度を導入した場合には、夫婦の双方が婚姻後もみずからの氏を称することができるという新たな選択肢が設けられることに当然なります。もっとも、選択的夫婦別氏制度を導入した場合には、その夫婦の間の子が必ず夫婦の一方と異なる氏を称することになるなど、我が国の家族のあり方に大きな影響を及ぼすことが予想もされます。

 この問題は、我が国の家族のあり方に深くかかわるものであり、国民の間にもさまざまな御意見があることから、それらを踏まえて慎重に検討する必要があるものと考えております。

畑野委員 親子で名字が違う、あるいは兄弟で違うという人たちも出てきているんですね。でも、それはそれで特に違和感はない、そういう声も上がっているんです。ですから、そういうのもぜひ聞いていただきたいと思います。

 そこで、委員長に提案なんですが、葉梨委員長、ぜひ、この委員会で選択的夫婦別姓について議論する場を設けていただいて国民の期待に応えていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

葉梨委員長 ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議をいたします。

畑野委員 ぜひお願いします。

 次に、女性にだけ課せられた離婚後六カ月の再婚禁止期間について伺います。

 同じく二〇一五年十二月十六日の最高裁判決で、百日を超える期間については違憲との判決を受けました。民法そのものを直ちに改正すべきだと思いますが、岩城大臣、いかがですか。

岩城国務大臣 再婚禁止期間を定める民法の規定につきましては、違憲立法審査権を有する最高裁判所において憲法に違反する旨の判断が示されたのでありますので、速やかに違憲状態を解消する措置を講ずる必要があるもの、そう考えております。

 そこで、現在、法務省において、最高裁判所の判決の趣旨を十分に踏まえまして、必要な法案を今国会へ提出することを目指して検討を行っております。

畑野委員 ぜひ進めていただきたいと思います。

 世界で夫婦同姓を義務づけている国は日本だけです。私、この委員会で質問させていただきました。再婚禁止期間も多くの国で撤廃をしています。今回合憲とされた百日についても、二人の裁判官は違憲との意見を出しております。

 ことしは、女性参政権行使から七十年。政府は、個人の尊厳、両性の平等など憲法の精神と国連女性差別撤廃条約の立場に立って、ぜひ国民や女性たちの願いと運動を真摯に受けとめて改正に着手をしていただきたいと思います。

 最後に、きのう、性暴力被害の実態に即した刑法の見直しを求める院内集会が開かれまして、私も参加をしてまいりました。性暴力の被害者に寄り添った刑法の見直しの議論を行うために、法制審議会の部会で被害者や支援者のヒアリングを行うことが必要不可欠と考えますが、大臣、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 性犯罪被害者等のヒアリングにつきましては、法務省において開催しました性犯罪の罰則に関する検討会において実施はしております。この検討会のヒアリングの結果は、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会においても資料とされていると承知しております。

 これに加えて法制審議会の部会でさらにヒアリングを行うかどうか、これはあくまでも部会において判断されるべきものと考えております。

畑野委員 きのうの院内集会の状況や、また、きょうの審議も含めてぜひお伝えいただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で畑野君枝君の質疑は終わりました。

 次に、木下智彦君。

木下委員 おおさか維新の会、木下智彦でございます。

 まず最初に、きょうの質問時間につきまして適正にお時間をいただきましたこと、この場にいらっしゃいます委員の皆様、それから委員部の事務方の皆様にも御努力いただきましたこと、ありがとうございます。

 それでは、本題に入らせていただきます。

 今回の件、そもそも論がやはり一番重要なんだろうというふうに思っております。確かに、きょう、いろいろなところでいろいろなお話を聞いておりましても、裁判官の方々であるとか検察官の方々であるとか、特殊性が相当あるだろうという部分は否めないなというふうには思っておりますが、まず、そもそも人事院の勧告といった部分から、もともとをちょっとただしていかなければならないんじゃないかと思いますので、そういった観点から質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど来、大臣の方からもお話がありましたけれども、一つの事業所で五十名以上、そういった事業所が調査対象になっているというふうな話、はっきりとおっしゃられたかどうかというところはありますが、そういったところの見直しもやはり進めていかなければならないだろうという思いがあります。きょう行われておりました予算委員会でもお話があって、人事院の総裁がちょっと口ごもりながらお答えをされていたんですけれども。

 そこで、ちょっとお聞きしたいんですけれども、今回の人事院勧告のもとになる調査、これは日本にある全事業所のうち何%に相当するか、何%がその調査対象になっているかといったところをお聞かせ願えればと思います。

松尾政府参考人 職種別民間給与実態調査では、企業規模五十人以上、事業所規模五十人以上の全国の民間事業所を調査対象としておりまして、平成二十七年の調査における母集団事業所の総数は五万四千八百六十所となっております。

 総務省の平成二十六年経済センサス基礎調査によりますと、民営事業所の総数は五百七十七万九千七十二所と承知をしております。

木下委員 ということは、一%なんですね。この一%というのをきょう人事院の総裁はなかなか言われなくて、無理やり言わされていたような感じで、今も、何%と聞いたんですけれども、何%とは言わずに、数字を言われています。それぐらいインパクトのある数字だと思うんですよ。わずか一%の人たちの調査に基づいて行われているということなんです。

 細かく言うといろいろあります。というのは、今回の人事院勧告に従って地方ではどうなるかといいますと、地方公務員の給与の決め方は、大体は、地方に人事委員会なんかがありまして、そこでの勧告があり、議会で決まっていく。では、その人事委員会はどうやってそういう給与の体系を決めているかというと、国で行われる人事院の勧告、これを相当参考にしているんですね。相当参考にしていると言いながら、これも今までの国会でも何度も話がされておりますけれども、一事業所で五十人以上の従業員の人たちがいるような、そういったところが地域によっては全くないようなところがあるらしいんですね。

 地方議会なんかも、私も地元の地方議会の傍聴によく行くんですが、同じような話をよくしています。そうしたら、実際に調査したのかというと、調査はほとんどしないらしいんですよね。しないというのか、したかどうかも答えないということのようなんです。それは地方の人事委員会の勝手だというふうに言われてしまえばそれまでかもしれませんが、それぐらい、人事院の勧告をするための調査、日本の、我が国の全国津々浦々、これの影響力はすごく大きいことだと思うんです。

 そういうことを考えたときに、この調査の基準をやはり見直していくべきなんじゃないかなというふうに思うんです。先ほど来大臣もお答えになられていました、第三者機関だから、公正公平にというふうに言われておりましたが、では、そういう疑問をどういうところでぶつけたらどう直っていくのかということだと思うんですよ。そこがやはり、議論の場というのはどこかというと、私はこれは国会だと思います。

 きょう賛成されるか反対されるか、私は知っておりますけれども、維新の党の方々、きのうの予算委員会でも、井坂委員でしたか、言われておりました。先にもう言ってしまいますけれども、何と言われていたかというと、やはり、人事院の調査のあり方を決める、そういった役割が誰にあるのかというと、それこそ国会で議論を闘わせるべきところなんじゃないかというふうなことをまず私は最初に言わせていただいた上で、お話をさせていただきたいと思います。

 先ほど、全事業所の一%ぐらいと。これも維新の党の方々も言われていました、私どもおおさか維新の会も言っておりますけれども。これは大臣にちょっと御見解を聞かせていただきたいんですけれども、今回、全体的な話ですけれども、公務員の給与が上がる。これは、政策的な意図がある程度あるんじゃないかと私は思っているんです。

 というのは、民間の企業も含めて、給与をやはり上げていかなければいけない、賃上げを努力してほしいというふうなことを総理も民間企業に対してお話をされています。そういったときに、やはり国家公務員の給与も上げることによって全体的な給与が上がる、給与水準が上がっていく、これは政策的な意味合いを持っているのではないかというふうに私は思っているんですけれども、この辺は政府としてどうお考えになっていらっしゃるか、それがそうなのかどうなのかといった部分で御見解をいただければと思います。

岩城国務大臣 私の個人的な思いからすれば、人事院におきまして民間の給与と比較しながら勧告を出したもの、そのように考えております。

木下委員 なかなか期待に沿える発言をされることはないだろうなとは思ったんですけれども、私は、そういった意味では政策的な意味合いがあってもしかるべきだと思っております。日本全体、我が国全体が成長していくためには、やはりそういった観点も非常に必要だろうというふうに思うんです。

 ただ、これは私どもからも言わせていただいておりますし、他党からも予算委員会なんかではお話しされておりましたけれども、同じように政策的な意味合いがあるのであれば、今の我が国の財政状況、この財政状況が、人事院の調査それから勧告につながる部分になぜないのか、なぜそういった部分が勘案されないのかといったことについて、これは人事院の方から、わかれば、お答えできればで結構ですから、お答えいただけますでしょうか。

松尾政府参考人 御指摘のありました、国の財政状況を考慮すべきとの御指摘につきましては、国家公務員給与を含む国の歳出の優先順位とか歳出に必要な財源の確保というのは、内閣が国政全般の観点から判断して、最終的に国会において議決される事項であるというふうに考えております。

木下委員 そうですね、優先順位とかと。優先順位、低いんですかね、それとも高いんですかね。どっちなんでしょう。

 ただ、一つだけ言えることは何かというと、これでは国民の大半の人たちがええっと思いますよ。冒頭言いましたけれども、一%の調査だけなんですよ、全事業所の一%。ある程度の人数はいます。ある程度の人数はいるけれども、そうはいいながら数%ですよ。その人たちの給与体系を見て国家公務員の給与体系を決める、これはやはり納得いかないでしょう。財政状況が今本当に喫緊の課題だというふうに言われている中で、優先順位。では、優先順位を上げてくださいよ。

 これはここで手前みそで言うのもなんですけれども、国会議員の給与、それと地方議員の給与もそうですけれども、我々おおさか維新の会は、地方議員、大阪府議会議員の給与を三割カットしました。それによってやはり民意をしっかりとつかんだ、皆さんから支持していただいた、それが大阪では結果として今もあらわれているんだ。多数の人たちがそういうふうなことを考えている中で、今こんなことをやっていていいのかどうかというところが私はやはり疑問なんです。

 きょうはほかのことも用意してきましたけれども、時間がないのでだっと言いますけれども、例えば、おもしろいんですよね、手当。いろいろなところでもともとの給与以外に手当がつくというところで見てみると、地域の手当、これが、見ていたらおもしろいんです。びっくりしました。

 というのは、例えば私の地元の周辺にあります大阪の地域手当を見てみたんですね。細かく決まっています。大体、級地というのがあって、段階がありまして、一から七級地まであります。その中で、大阪の中で、大阪市内と、それから私の地元の豊中とか、それぞれ等級が異なっているんですね。その一番高いところでいうと、手当の支給割合一八・五%というのが一番高くて、低いところでは、例えば大臣の御出身の福島県なんかは級地の手当がないらしいんですね、もともとは。そういう形で差がある。

 でも、大阪の中を見てみても、もう電車で十五分ぐらいで行けるようなところで全然給与の体系に差があったりして、しかも、要は、都会にいればいるほどこういう地域手当がたくさんもらえる。

 これは本当に現状に合っていないと思うんですけれども、この辺のことについて今御見解をいただければと思います。どういった説明をされるか。

松尾政府参考人 国家公務員の地域手当は、地域の民間給与を国家公務員の給与に適切に反映させるため、全国一律に定められている俸給を補完し、民間賃金水準が高い地域の給与水準を調整するために設けられたものでございます。

 それがどのようにして設定されているかということについてでございますけれども、一般職給与法における地域手当の支給地域や支給割合を定めるに当たっては、民間賃金を都市ごとに集計できて、かつサンプル数が多い賃金構造基本統計調査の過去十年平均のデータを用いておりまして、このデータの安定性の観点から、人口五万人以上の市を単位として集計した賃金指数に基づいて定めております。

 また、指定基準を満たさない地域のうち、支給地域である中核的な都市への通勤者が多くて、これらの地域との一体性が認められる地域については、一定の補正を行っているところでございます。

木下委員 いろいろあると思います。ただ、そういうふうにして考えたときに、まだまだ見直さなければいけないんじゃないかな、実態に合っているのかなというふうに思うんですね。

 それからもう一つは、だから国家公務員の方々が、言ったら申しわけないですが、田舎の地に赴任することを嫌がるんですよ。そんなことをしていると、地方創生だというふうに言っていても、全国津々浦々までしっかり目の届くような、そういった施策が滞っていくんじゃないかなと私は思っております。

 そういったことも考えながら、今回の件、これは到底、やはり裁判官であるとか検察官の方々といったものは特殊性があるかもしれないですけれども、そもそも俸給であるとか報酬というふうに言われている部分の決め方に私は問題があるのではないかというふうに思っております。

 最後に、そういった観点で、大臣の方から、実際にどう思われているかということをお聞かせいただきまして、最後とさせていただきます。

葉梨委員長 岩城法務大臣、簡潔に御答弁をお願いいたします。

岩城国務大臣 簡潔に申し上げます。

 さまざまな御指摘がございましたけれども、あくまでも第三者機関としての人事院において専門的見地から判断しているもの、そのように考えます。

木下委員 ありがとうございました。

葉梨委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、内閣提出、裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

葉梨委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

葉梨委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三十四分散会


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