衆議院

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第4号 平成28年3月16日(水曜日)

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平成二十八年三月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      あかま二郎君    大塚  拓君

      奥野 信亮君    門  博文君

      上川 陽子君    笹川 博義君

      田所 嘉徳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    中谷 真一君

      藤原  崇君    古田 圭一君

      宮川 典子君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    若狭  勝君

      階   猛君    山尾志桜里君

      大口 善徳君    吉田 宣弘君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      木下 智彦君    上西小百合君

      鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   最高裁判所事務総局総務局長            中村  愼君

   最高裁判所事務総局人事局長            堀田 眞哉君

   最高裁判所事務総局経理局長            笠井 之彦君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           菅野 雅之君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  今野 智博君     中谷 真一君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     今野 智博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官高嶋智光君及び法務省大臣官房司法法制部長萩本修君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長中村愼君、人事局長堀田眞哉君、経理局長笠井之彦君、民事局長兼行政局長菅野雅之君及び刑事局長平木正洋君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。若狭勝君。

若狭委員 自由民主党の若狭でございます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、いわゆる定員法についての質疑ということでございます。

 ここ数日で、私は、東京地裁の現職の一線の裁判官に生の声をちょっと聞きました。そうしますと、もうとにかく忙し過ぎるということであります。今回、三十二人増員ということですが、現場の感覚からすると、三十二人というと、都道府県にならしますと一庁一人にも至らない、極めて、そのぐらいの程度だと今の多忙さというのは解消できないというのが生の声でした。私は、やはり四百人、五百人ぐらいを一気に増員しなければいけないぐらいに切迫した危機感を持っております。

 司法は、御案内のとおり、法治国家のかなめです。ですから、そうした多忙さゆえに十分な審議ができないとかいうことになると、このかなめが崩れてしまうということでありますから、極めて問題が大きいと思います。ただ、増員したとした場合に、やはりその中に基礎的な能力に欠ける裁判官がいたりすると、これまた問題であります。

 やはり司法というのは、かなめではありますが、国民の信頼を得ていなければいけない。国民の信頼を得るということは、なるべく、やはり最高裁判所あるいは裁判所が国民に対して説明責任を果たすということが肝要だというふうに思います。これまで、裁判所というと、そうした説明責任というのがなかなか発揮できない、果たせないというところもあったと思います。

 今回、そうした説明責任という形で最高裁判所の方に幾つか説明を求めたいというふうに思っております。特に、憲法の規定が幾つかあるわけですが、その憲法の規定との絡みにおいても質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、今回、この法律改正ということで、三十二人の裁判官、判事ですが、増員ということを内容としております。主にこの三十二人という増員の必要性について、具体的に、なるべくわかりやすく御説明をしていただければと思います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所といたしましては、司法制度改革審議会以来、民事訴訟事件について合議率を一〇%に、人証のある対席判決事件の審理期間を平均十二カ月にするということを目標としてきており、平成二十四年の定員法の審議の際には、この目標を実現するために、当時の事件数を前提として四百人規模の増員が必要であるというふうにお答えさせていただいたところでございます。

 その後、平成二十七年までの四年間で百三十名弱の増員を認めていただいたところでございますが、医事関係訴訟、建築関係訴訟、ITシステムに関する訴訟など専門的知見を要する事件、また、老人介護施設での死傷事故に関して人的、物的体制が当時の要求水準を満たしていたものであったかどうかということが論点になる訴訟のように、先例に乏しく、社会活動に与える影響を踏まえた判断が求められる事件という、複雑困難な事件が増加しているという状況にあります。

 そのような状況のもとで、合議率は依然四・七%、人証のある対席判決の事件の審理期間は平均二十・一カ月にとどまっているところでございまして、さきの目標に向けて、さらに合議による審理ということをこれまで以上に充実強化していく必要があるというふうに考えております。

 また、家庭裁判所の分野におきましても、近年、累積的に増加しております成年後見関係事件について、不正の早期発見や被害拡大防止のための適切な監督ということが必要ですし、個人の権利意識の高揚、少子化の急速な進行を背景として、子をめぐる事件を初めとする複雑困難な事件がふえてきております調停事件の適正迅速な処理を行うため、裁判官の人的体制を強化するということが必要であるというふうに考えております。

 このように、民事及び家事部門における事件の適正処理のために、人的体制の強化が必要な状況にはございます。ただ、判事の給源が限られておりまして、一度に増員するということが困難でありますため、判事にどれだけ充員できるかどうかということを踏まえつつ毎年の増員数を決定してきているところでございまして、平成二十八年については三十二名の増員をお願いしているというところでございます。

若狭委員 そういう形で増員をしていくというのは極めて大事な、必要なことだと思います。

 続いて、私は刑事事件に非常に関心が高いものですから、刑事事件においていわゆる冤罪というのが明らかになった場合、これを、いわゆる第三者による冤罪の理由とかいうものを検証するということは可能なんでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましても、無実の人が有罪判決を受けるようなことは決してあってはならないことであると考えております。

 もっとも、確定した事件でございましても、裁判所が個別の事件の具体的な内容に踏み込んだ検証を行うことは、個々の裁判の当否の評価になりかねず、裁判官の職権行使の独立の観点から問題があるのではないかと考えております。

 また、第三者に委嘱して検証を行うということにつきましても、裁判所の事務当局が依頼して検証を行うということになる以上は、やはり裁判官の職権行使の独立という観点から問題があるのではないかと考えておるところでございます。

若狭委員 憲法七十六条三項に、全て裁判官は、その良心に従い独立して職権を行使するという旨の規定があります。そのことを今、職権行使の独立ということで言われたと思うんですが、この職権行使の独立というのは本当に無制限なものなんでしょうか。

 例えば、裁判官の基本的能力の欠如が著しく、その結果、明らかに冤罪だというようなことが明らかになった場合に、その裁判官が判決した後は、私は職権行使の独立がありますから一切もう関係ありません、仮に冤罪だったとしても関係ありませんというようなことがまかり通ってしまうというのは、やはり一般人の感覚からすると、ちょっと解せないというところはあると思うんですね。

 ですから、職権行使の独立というのは無制限なものなのかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。

平木最高裁判所長官代理者 個別の事件に関する具体的な判断内容に踏み込んで責任を問うようなことは、個々の裁判の当否の評価になりかねず、裁判官の職権行使の独立という観点からして適切ではないことを御理解いただきたく存じます。

 他方、繰り返しになりますが、裁判所といたしましても、無実の人が有罪判決を受けるようなことは決してあってはならないことであると考えておりまして、このような事態が生じないように、裁判官の職権行使の独立に配慮しつつ、裁判所内部におけるさまざまな取り組みを進めてまいりたいと思っております。

若狭委員 七十六条三項の職権行使の独立というのは、そもそも、どういう趣旨で憲法上規定されているものなのでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 裁判官の行う訴訟行為や判断等の適正、公正を確保するために必要であると一般的に理解されておるものと承知しております。

若狭委員 先ほど、第三者による冤罪の理由等についての検証は職権行使の独立にやはり抵触するので難しいというお話でしたが、例えば、マスコミあるいは一般国民が、この刑事判決はこの点が事実認定において全くなっていないというようなことを批評するということが許されるのかどうか。あるいは、法律実務家が、いろいろな解説書において事実認定あるいは評価の点について明らかに間違っているとコメントをするということは、この職権行使の独立に抵触するのでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 委員御指摘のようなものは問題ないのではないかと考えておるところでございます。

若狭委員 その辺の、例えば、第三者による検証は職権行使の独立に抵触するけれども、今申し上げたマスコミとか法律実務家がその判決内容についてさまざま批評を下すというのが、どうして問題がないということになるんでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 公的な機関が裁判官の判断等について検証するということになりますと、先ほど述べているような問題が生じるのに対しまして、委員御指摘の学者の論評等についてはそのような問題が生じないことから、問題ないというふうに考えておるところでございます。

若狭委員 わかりました。

 公的なところからそうしたいろいろな批評とか検証がなされると職権行使の独立に抵触するということだと思いますが、仮に、政党の部会等において、冤罪と思われる判決のここがおかしいとかいうのを議論するのは、裁判官の職権の独立において問題が出てくるのでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 政党の部会等であったとしましても、国会議員の方々が個々の事件におきまして裁判官の判断の当否について検証するということになりますと、やはり、憲法上認められた裁判官の職権行使の独立という観点から問題があるのではないかと考えております。

 他方、繰り返しになりますけれども、裁判所といたしましても、無実の方が有罪判決を受けるようなことは決してあってはならないことと考えておりまして、このような事態が生じないよう、裁判官の職権行使の独立に配慮しつつ、裁判所内部におけるさまざまな取り組みを進めてまいりたいと考えております。

若狭委員 政党の部会等において個々具体的に、この裁判官のここがおかしいとかいうような、そうした裁判官の資質とか裁判官のその者の訴訟指揮などについて問題にするのは少なくともおかしいと思いますけれども、少なくとも職権独立に抵触するという可能性はあるのかもしれませんが、一般的に、もちろん、判決を受けて、その判決についていろいろと議論するのは、政党の部会等においても許されるという理解でよろしいでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 なかなかお答えが難しいところでございますけれども、政党の部会等で国会議員の方々が個々の事件につきまして裁判官の判断の当否について検証するという形になりますと、先ほども申し上げましたような職権行使の独立という観点から問題が出てくると思っております。

若狭委員 そうしますと、やはり、職権行使の独立というのは、公正な裁判というのを事後的にもきちんと担保しなければいけないという要請がかなり強いという理解でよろしいわけですね。

平木最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、個々具体的な冤罪事件の振り返りという形ではなく、実務上よく問題となる事実認定の問題につきましては、現場の裁判官は、日々の執務の中で、合議体の他の裁判官と議論したり、裁判官同士の勉強会等を通じて研さんを行っているものと承知しております。

 また、このような現場の裁判官の研さんを支援するため、司法研修所では、裁判官の研究会や研修などにおきまして、刑事裁判における事実認定のあり方や実務上の問題点について取り上げまして、実証的な議論を行ったり、事実認定のあり方をテーマに高等裁判所の裁判官を講師に招いて講演を行うなどしているほか、近時、特に重要性が増しているDNA型鑑定のような専門的、科学的証拠についての理解の促進のために、司法研究を実施して、その成果を報告書として刊行するなどしておるところでございます。

 このような内部的な取り組みを通じまして、冤罪等の事件が起こらないよう、今後も努めてまいりたいと思っております。

若狭委員 今は、要するに、第三者の検証とかあるいは政党の部会等で議論されることについては、裁判官の職権の独立上やはり問題があるので、むしろ裁判所内部においていろいろと、そうした基礎的な能力の欠如が見られるというようなことがないように、研修とかいろいろな学習の機会を設けていると理解してよろしいわけですね。

 そうしましたら、今度は、担当裁判官の能力に問題があると感じた例えば弁護士などが、裁判所に伝える方法というのは何かあるんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判官の人事評価制度におきまして、評価権者は、多面的かつ多角的な情報の把握に努めなければならず、この場合には裁判所外部からの情報にも配慮するものとされておりまして、弁護士を含む裁判所外部からの情報につきましては、当該裁判官が所属しております裁判所の総務課において受け付けるということになってございます。

 このような情報につきましては、その的確性を検証できるようにするという観点から、原則として顕名、名前を明らかにするということにより、具体的な根拠事実を記載した書面で提供していただくようお願いしているところでございます。

若狭委員 今の点をもう一度確認させていただきたいんですが、ある特定の刑事事件などにおいて、その判決等で問題を感じた弁護士が、具体的に、地方裁判所の総務課などに、こういう点が問題がある、裁判官の訴訟指揮に問題があるとかいうようなことを書面において伝えるというシステムがあるという理解でよろしいんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 そのような制度を整備しているということでございます。

 そのような外部情報の多くは弁護士からの情報であるということも考えまして、質の高い的確な情報を広く寄せていただくという観点から、各弁護士会に対しましても、そういった仕組みを周知していただくようにお願いしているところでございます。

若狭委員 そもそも、裁判所の内部において、裁判官の能力などにおいてはいかなる情報収集をしているのかという点についてお聞きしたいんですが。

堀田最高裁判所長官代理者 地家裁の所長等が人事評価制度における評価権者ということになりますが、そういった評価権者は、裁判官の人事評価をするに当たりまして、裁判官の独立に配慮しつつ、当該裁判官の能力、資質についての情報を把握しているところでございます。その中には、裁判所内部で、部総括裁判官あるいは同僚の裁判官、さらには書記官等からの情報も含まれているというところでございます。

若狭委員 最高裁は、下級裁判所の裁判官の事実認定能力等に欠けるところがあるとかいうような点は把握しているということでよろしいんでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 裁判官の人事評価制度におきましては、事件処理能力の一つといたしまして、証拠を適切に評価する能力についても評価するということとなってございまして、最高裁判所は、地家裁所長等の評価権者による人事評価を通じまして各裁判官のこれらの能力について把握をしている、そういうことになってございます。

若狭委員 憲法の規定、八十条の一項において、「下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。」という規定があると思います。これは今どのような形で運用されているのか。

 つまり、内閣が任命権があるわけですが、実際は、どのような流れで、どのように行われているのかについてお聞きしたいと思います。

堀田最高裁判所長官代理者 裁判官の任命手続につきましては、最高裁判所の裁判官会議の議決に基づきまして、最高裁から内閣に対して、裁判官に任命されるべき者として指名した者の名簿とともに裁判官への任命資格等に関する書面等が提出をされて、内閣はこの名簿に基づいて裁判官を任命するということになってございます。

 このような任命手続におきまして、最高裁は、判事に任命または再任されるべき者として指名することの適否を、最高裁に設けております下級裁判所裁判官指名諮問委員会に諮問しなければならないこととされております。

 最高裁は、この委員会が任命希望者について能力、資質等において判事としてふさわしい人材かどうかという観点から述べた意見を尊重して、判事に任命されるべき者として指名するか否かを判断しているというところでございます。

若狭委員 そうしますと、今の実情としては、内閣が任命するといっても、事実上、下級裁判所裁判官指名諮問委員会というところにおいて、まずは自主的な適否、適格性が判断されるということでよろしいわけですね。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたような指名諮問委員会を含む手続を通じて、裁判官の任命の適否を検討しているということでございます。

若狭委員 下級裁判所裁判官指名諮問委員会というのは、どういう趣旨で、いつごろ設置されたのでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 下級裁判所裁判官指名諮問委員会は、平成十三年六月に取りまとめられました司法制度改革審議会意見においても提言がなされたところでございまして、この趣旨を踏まえまして、下級裁判所の裁判官の指名過程の透明性を高め、国民の意見を反映するため、国民的視野に立って多角的見地から意見を述べる機関ということで、平成十五年五月に設置したというものでございます。

若狭委員 そうしますと、問題がある裁判官への対応としては、今の下級裁判所裁判官指名諮問委員会というのが一つあるわけですが、それは適切に機能しているか、あるいは任務を果たしているのかという点について、諮問委員会のメンバーなども教えていただいた上で御教示いただけますでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 指名諮問委員会は十一名の委員から成っておりまして、その過半数の六名は学識経験者から成っております。その余の五名は、裁判官二人、検察官一人、弁護士二人ということで構成されているものでございます。

 委員会は、平成十五年の六月に第一回の会議が開催されて以来、ことしの二月までに合計七十三回開催されておりまして、この間の再任候補者二千六百人余りについて審議がされたということでございます。

 その結果、諮問された判事の再任候補者のうち四十九名の候補者については、指名することが適当でないという答申がされておりまして、最高裁判所としては、この委員会において指名の適否については適切に御判断いただいているものと考えている次第でございます。

若狭委員 ただいま、四十九人が余り適性がないということで、諮問委員会では要するに裁判官として認めないという結論になったということですが、その四十九人というのは、個々具体的はともかくとして、やはり、基礎的な事実認定能力に著しい欠如が認められるとか、そういった類いのものということなんでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 個々の具体的な適否の理由については公表していないと。本人のプライバシー等にもかかわりますので、その点についての御回答は差し控えさせていただきたいと思います。

若狭委員 公開しているところというのは、逆に、諮問委員会の議論の中では何かあるんでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 議事要旨というものはホームページにも登載しておりますし、その審議の結果というものについては公表しているところでございます。

若狭委員 これまでのことを少し要約いたしますと、要は、憲法七十六条三項の裁判官の職権行使の独立という規定が憲法上ある。したがって、第三者による検証とか公的機関からのいろいろな検証というのは、その職権独立行使に抵触する。したがって、その点はなかなか難しいけれども、裁判所の内部としては、各種いろいろと研修等を通じて裁判官の能力チェックをしているし、その情報収集にも努めているということだと思うんですよね。さらに、指名諮問委員会において、それまでなかった制度を平成十五年に導入して、それによって公正な裁判官の任命手続というのをより一層確保したという理解でよろしいんでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 今御指摘されたとおりだと思います。

若狭委員 それでは、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で若狭勝君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 おはようございます。民主党、もう間もなく民進党に変わりますけれども、階と申します。

 きょうは定員法の審議ということなんですが、その前に、まず法務大臣にお考えをお聞きしたいと思います。

 きのう、衆議院の地方創生特別委員会で石破大臣が、法案の趣旨説明で、何と去年の法案についてのものを読んでしまった。あるいは、参議院の予算委員会で林経産大臣が、原子力発電所の政策について不勉強であることを自認した。私は報道でしか見ておりませんけれども、こういったことがあったようです。

 同じ内閣の一員として、私は、ちょっと気が緩んでいるといいますか、余りにも国会を軽視しているというか大変問題だと思っていますけれども、この点について、内閣の一員である法務大臣の御所見を伺います。

岩城国務大臣 国会での審議は極めて大切なことでありますので、今後とも、私自身も身を引き締めて、誠心誠意努めてまいりたいと考えております。

階委員 岩城法務大臣が誠心誠意というのは私もふだんから感じておりますけれども、ぜひ、後ろにいる人たちに頼らないで、御自身の言葉で一生懸命答弁していただけるよう、この場をかりて改めて申し上げます。

 それでは本題に入ります。

 今回、判事の定員を三十二人ふやすという内容が含まれておりますが、仮にこの判事の定員を昨年と同じにした場合、判事補から判事に昇格できない人数というのはどれぐらいになるのか、このことについてまず教えていただけますでしょうか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 判事の増減数について、正確な見込みを立てることにはおのずと限界があるところでございますが、過去の傾向をもとにいたしました数字ということでお示しをいたしますと、平成二十七年十二月の判事の人数、千九百十五人でございましたが、これから平成二十八年十月までの増加数は百五人から百二十人程度、減少数は五十人から七十人程度となりまして、その結果、平成二十八年十月時点での判事の人数は千九百五十人から千九百八十五人程度になるものと予測をしております。

 以上を前提といたしますと、判事の定員が現状維持とされた場合には、最大で三十人程度の判事補が判事に任命されない可能性があるということになります。

階委員 委員長はよく御存じだと思いますが、昨年、この数字を出すまでに大変すったもんだのやりとりがあったわけですね。ことしは、そういう意味では一瞬にしてこの数字を出していただいたということについては、評価はいたします。

 ただ、今のお答えから明らかになったのは、最大で七十人ぐらい判事をふやさなくてはいけなくて、そのためには今の定員では足りなくなるんだと。

 どれぐらい足りなくなるかということをおっしゃったわけですけれども、ちょうど今回の法案で増加させた後、千九百八十五人になるかと思いますが、ちょうど千九百八十五人にふやすと、最大限増加する人数があったとしても何とか賄い得る、こういうことだと思います。

 ですから、私は、正直にこの法案の提出理由を言った方がいいと思うんですね。我々に配られている趣旨説明の紙には、判事の員数を三十二人増加する目的として「民事訴訟事件及び家庭事件の適正かつ迅速な処理を図るため、」というふうに書かれておりますけれども、むしろここは、判事の員数を三十二人ふやすことによって、今後見込まれる判事補から判事への昇格に対応できるようにするためと言った方がよっぽどすっきりしますし、先ほど若狭委員もおっしゃっていましたけれども、私も、裁判官の独立というのを保持するためには、安易に最高裁が、この人は昇格とかこの人は留任とか、そういうことを判断しないよう、ちゃんと判事補から判事に上がれるぐらいの定員は確保するんだといったことを説明していただいた方がよっぽど説得力があると考えています。

 ですから、建前としてはここに書いてあるとおりかもしれませんが、実際のといいますか本音のところは、判事補からちゃんと判事に上がれるようにするためだというのが今回の立法目的ではないかと思うんですが、この点、いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほど答弁いたしましたように、本年の三十二人の増員が認めていただけなければ、判事の現在見込みが最大値になった場合には、その約三十名程度の判事の有資格者の法律定員が不足するという事態が生じるということは、委員が御指摘のとおりでございます。最高裁といたしましては、そのような充員可能性を踏まえまして毎年の増員数を決定しているところでございます。

 ただ、繰り返しになって恐縮ではございますが、裁判所といたしましては、あくまでも裁判官の繁忙状況や事件動向を踏まえて、計画的増員ということの中で事件の適正処理のための人的体制の充実を図っていきたいということが目的でございまして、定員不足の事態を回避すること自体がその増員の目的ということでは考えていないということを御理解いただければというふうに思います。

階委員 目的は今おっしゃったようなことを言わざるを得ないのかもしれませんけれども、私は、もっとすっきりとした説明をするのであれば、要するに、判事補から判事にはきっちり昇格していただいて、みんな独立性を保ってしっかりとした仕事をできるようにする、ただし、判事に上がったからにはちゃんと成果を上げなくてはいけない、その成果として、裁判の迅速化法に定める目標、あるいはその目標をブレークダウンした最高裁が定める目標をちゃんと実行していくんだ、こう言われた方が、私たちは腹にすとんと落ちるなというふうに思います。

 そこで、今申し上げました迅速化の目標なんです。

 裁判の迅速化に関する法律の二条一項ということで、「裁判の迅速化は、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、」というのが法律の文言です。

 しかしながら、最高裁では別途、争いのある対席判決の審理期間を十二カ月程度にするといったようなことを会議の場で説明したりしているということです。

 この争いのある対席判決の審理期間を十二カ月程度にするというのが、裁判の迅速化に関する法律に言う「二年以内のできるだけ短い期間」ということなのかどうか、この点についてお答えください。

中村最高裁判所長官代理者 迅速化法は、手続が公正かつ適正に実施されることを確保しつつ、第一審の訴訟手続については二年以内のできるだけ短い期間にこれを終局させるということを目標にしております。これは、全ての事件について二年以内ということを目標にしているところでございます。裁判所といたしましては、可能な限りこの目標を実現することに努めるということになっておりまして、これは迅速化法で努力目標として規定されているという理解でございます。

 その上で、裁判所が自律的判断のもとにその具体的な目標を設定しているというところでございまして、今委員が御指摘になった目標というのは、そういう趣旨で裁判所が自律的に立てた目標ということでございます。

階委員 自律的な目標ということですけれども、法律の文言だけ見ると「二年以内のできるだけ短い期間内」と言っていますから、理論上は一カ月とか半年とか、幾らでも短くできるわけですが、それをやっていくと、裁判官の数は幾らふやしても足りないということになるわけです。ですから、おのずと最終ゴールといいますか、ここまでやったらもう目標は達成できた、二年以内のできるだけ短い期間内というのは達成できたというふうにしなくちゃいけないと思うんですね。

 そこで、その最終ゴール、着地点というのを確認したいんですけれども、今、自律的な目標とおっしゃったところの、争いのある対席判決の審理期間を十二カ月程度にするというのが最終目標ということでよろしいですか。

中村最高裁判所長官代理者 この目標といいますのは、司法制度改革の当時、こちらの方で御説明させていただいたものでございます。当然、当時の制度でありますとか事件状況を踏まえての目標ということでございます。

 当然、状況が大きく変わりますと、その目標というところについてまた変更が生じてくるということになりますが、現時点におきましては、今申し上げております目標について、それに少しでも近づくよう努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。

階委員 我々、法案を審議する上で、目標があるならばそれをちゃんと達成してもらう、そして、いつまでに達成してもらうかということも明言してもらわなくちゃいけないと思っています。目標自体がずれていく、揺れ動くということであると、そもそも私たちとしては法案を審議する前提を欠くような気がしますし、また、時期が明確にならないと、絵に描いた餅にすぎないということにもなるわけです。

 まず、十二カ月という目標について、いつまでに達成するおつもりなのかということもお聞かせください。

中村最高裁判所長官代理者 裁判所の方で設定いたしました目標を実現するためにということで、合議率一〇%を達成するということで、平成二十四年の定員法の審議の際には、そのために増員というのが四百人規模で必要であるというふうにお答えさせていただいたところでございます。

 その後、増員というのを毎年お認めいただいているところでございますが、トータルの数にはまだ達していないというところ、これは、先ほど申し上げましたように、充員見込みも踏まえつつということで、段階的、計画的に行っているところでございます。

 そのような人的体制の整備というものを実現し、審理運営上の工夫ということもしていって目標というものを達成していくということになろうかと思います。

 ただ、具体的にいつまでにということを明確に説明するということは、なかなか困難な点があるというふうに思います。

 また、一〇%だけではなくて、平均審理期間を十二カ月にするという目標がございます。これにつきましては、裁判所だけの努力ではなかなか実現しがたいところがございます。当事者の問題でありますとか、いろいろな法的整備、制度上の問題ということもございます。

 そういうこともございますので、なかなか具体的な、いつまでにやりますということを明確に言うことは難しいということは御理解いただきたいと思います。

階委員 国会でこういうやりとりをしていますけれども、法律上は「二年以内のできるだけ短い期間内にこれを終局させ、」という非常に漠たる目標にとどまっていて、かつ、それは努力目標なんですね。もうちょっと明確な目標にすべきだし、かつ、その達成期限も法律上定めるべきだと思っています。

 こういう立法のあり方について、私は、法務大臣、一応所管ですから法務大臣に聞けばいいのか、最高裁に聞けばいいのか、ちょっとどちらに聞いたらいいのかわかりませんけれども、しかるべき方から御答弁をお願いしたいんですが。

中村最高裁判所長官代理者 最高裁としての考え方ということで答弁させていただきます。

 今申し上げました合議率でありますとか平均審理期間ということになりますと、個々の審理のやり方、そういうところに大きく影響してくるところでございます。そういう意味で、個々具体的に細かくその目標を定めるということにつきましては、なかなか裁判、職権行使の独立という観点からも難しい面があるというふうに考えている次第でございます。

階委員 そうであれば、話はもとに戻りますけれども、そういう、曖昧で、達成するかしないかもはっきりしないような目標を実現するために増員するんだということは、やはりおかしいと思いますよ。そうではなくて、判事補から判事にきちんと上がれるようにするんだということを目的にすべきだということをまず申し上げます。

 その上で、先ほど、裁判官四百人増員という話も出ていました。平成二十四年のこの法案の質疑の際に四百人規模の増員が必要という話が出たと思うんですが、この考えには変わりがないのかどうか、その点についてまずお答えください。

中村最高裁判所長官代理者 御説明させていただいた点につきましては、今後の事件動向という変動要素はございますが、これを目標としているということについては変わりがないところでございます。

階委員 この四百人というのがなぜ必要かということについて、先ほども御説明があったかと思うんですが、合議率を一〇%にするとか、争いのある対席判決の審理期間を十二カ月にするとか、そういうことのために四百人ふやしていく必要があるんだということでした。

 ところが、資料の二枚目をごらんになっていただきたいんですが、実際、平成二十四年のこの法案の質疑で四百人という数字が出て以来、裁判官の数というのはふやしていますよね。ふやしている中で、合議率とか審理期間というのはどうなっているか。

 平成二十五年、二十六年、二十七年と、合議率はさすがに少しずつは上がってきていますけれども、目標の一〇%にはまだ遠く及ばない。それから、審理期間については、二十五年、二十六年と、むしろ逆に延びて、二十七年は二十カ月を超えている。ちなみに、平成十二年との比較で見ましても、ほぼ変わらないような状況なんですね。

 結局、増員をすることと目標達成というのが、目標達成というのは、さっきの審理期間の話とか合議率の話なんですけれども、目標達成と増員が余りリンクしていないといいますか、因果関係がないようにも思えるんですけれども、この点についてはどうお考えになりますか。

中村最高裁判所長官代理者 近時の統計につきましては、今委員が御指摘のとおりでございます。

 この原因につきましては、裁判所の方もいろいろ考えているところでございますが、やはり一番大きなところというのは、個々の事件というのが、根深い、複雑困難化というのが進んでいるのではないかというふうに思います。そういう意味で、一件一件の負担が重くなっているというところで、裁判官としても努力しているとは思いますが、その結果というものは、なかなか、平均審理期間の短縮は実現していないということでございます。

 ただ、長期的に見ますと、先ほど御指摘ありましたけれども、平成十二年と比較すると、過払い金の事件がふえた前の平成二十一年当時までは順調に平均審理期間も短縮しておりますし、また、直近についても、医療関係訴訟事件などでは、平成十二年の平均審理期間が三十五・六カ月だったものが、二十三・三カ月というふうに減っています。また、二年を超える長期未済事件についても、平成十二年には一万二千件を超えていたところ、平成二十六年には八千件余りということで、徐々にではありますけれども、実績は出てきている。

 ただ、この間で、やはり、二十一年以降数年間にわたる急激な事件増というところで、その減少といったところについて、なかなか十分なところは出てきておりませんし、また、近時の個々の事件の困難化というところで、まだその目標が達成できるまで遅々とした進みしかできていないというところは、御指摘のとおりだと思います。

 裁判所といたしましては、そういう状況を踏まえて、今後とも、審理期間の短縮、適正迅速な裁判の実現に向けて努力していきたいというふうに考えているところでございます。

階委員 今言ったようなお話があるから、先ほど若狭委員がおっしゃったような、もっと極端に数をふやすべきではないかという話も出てくるんだと。それはそれで理解しますけれども、現実はむしろ、ふやすどころか、新任の判事補の数が減ってきている。これが非常に問題だと私は思っています。

 判事補の欠員、過去五年間、欠員というのは、定員に対して実員が幾らで、定員が幾ら余っているか。余っている部分を欠員といいますけれども、この欠員が幾らか、五年間の数字を、数字だけで結構ですので、端的にお答えください。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 ここ数年間でございますが、判事補の採用数の増減というのがございまして……(階委員「数字だけで結構です。資料はあるから、早く答えてください」と呼ぶ)過去五年間、十二月一日現在の欠員の状況でございますけれども、百三十六人から百八十三人の間で推移しているところでございます。

階委員 済みません、そういうことを聞きたかったのではなくて、資料の一枚目なんですけれども、欠員という欄がありまして、判事補のところ、確かに百三十六とか百三十七とか百五十二とか百六十八とか百八十三という数字になっております、過去五年間。ところが、ここから、その年の任官者、新しく判事補になった方が入りますので、その分を差し引きますと、実質的な欠員という数字になります。そこがこの表でいいますと一番右のA引くBというところ、過去五年を見ますと、三十七、四十五、五十四、六十七、九十二と、年を追ってふえてきているわけですね。

 年を追ってふえてきている、欠員がふえてきていることは問題ではないか。実は、この委員会で過去にも私などが取り上げまして、附帯決議というものも行っています。どういう附帯決議だったかということなんですが、これは平成二十五年の三月二十六日のこの委員会の附帯決議です。

  政府及び最高裁判所は、本法の施行に当たり、下級裁判所の判事補の欠員が増加傾向にあることを踏まえ、法曹養成制度の在り方に関する検討結果に基づき適切に対処することに加え、下級裁判所における適正迅速な裁判を可能とするため、判事及び判事補の定員の充員に努めること。

という決議です。

 その決議がなされた後、当時谷垣法務大臣も、政府としても最高裁判所と連携をとりながら取り組んでいくというお答えではありました。

 ところが、今申し上げたとおり、それ以降も、欠員は減るどころか、もっとふえている。これは非常に国会に対する私は冒涜ではないかと思っております。同じことを昨年も言いました。昨年の段階でも同じことを言ったのに、またことし、去年よりも大幅に欠員がふえている。なぜこういう欠員がふえているのか。また、欠員がふえるのであれば、こういう法案を出す機会に、定員が余っていますということで、判事はふやしても判事補は減らす、こういうことをやればいいと思うんですね。

 質問は二つです。まず、なぜ欠員がふえているのか。それからもう一つ、欠員がふえているのであれば、なぜ判事補の定員を減らさないのか。この点についてお答えください。

堀田最高裁判所長官代理者 まず、欠員がふえているのはなぜかという方の御質問についてお答え申し上げます。

 裁判所といたしましては、できる限りの充員に努めているところでございますが、裁判官にふさわしい資質、能力を備えている者を採用するということが必須でありますところ、弁護士として活躍する分野が広がっているといった事情に加えまして、優秀な修習生につきましては渉外事務所等の法律事務所と競合するといった事情もございますので、裁判官としてふさわしい資質、能力を備えた人であっても、裁判官への任官を希望する人が大きく増加するという状況には必ずしもなっていないところでございます。こうした諸事情が相まって、結果として採用数が減少しているというところでございます。

 今後とも、司法における需要も勘案しつつ、裁判官にふさわしい人を採用し、裁判の運営に必要な体制を確保できるよう努力してまいりたいと考えておるところでございます。

中村最高裁判所長官代理者 後段の質問に対してお答えさせていただきます。

 判事補の定員の欠員が拡大しているというのは、御指摘のとおりでございます。

 ここ十年を見ましても、判事補の採用数は、多いときは百十八人、少ないときが九十一人とかなり変動がございますし、出向等による出入りの数には変動があるため、充員の正確な見込みを立てることにはおのずと限界があり、ある程度の欠員を抱えておく必要があると考えているところでございます。

 毎年の欠員が生じていることのみをもって、現時点において判事補の定員の減少は必要ないというふうに考えたところでございますが、先ほど答弁させていただきましたように、今後とも、できる限り充員を図っていきますとともに、今後の事件動向や充員の見込み等を踏まえて、判事補の定員のあり方については検討してまいりたいというふうに考えております。

階委員 先ほど読み上げました平成二十五年の附帯決議、法務大臣にもお尋ねします。

 後段の、後段のというのは、附帯決議の後段に言う欠員の充員に努める、これは裁判所の所管なのかもしれません。ただ、附帯決議の前段では、「政府及び最高裁判所は、」「下級裁判所の判事補の欠員が増加傾向にあることを踏まえ、法曹養成制度の在り方に関する検討結果に基づき適切に対処する」というくだりもあるんですね。昨年、法曹養成制度の検討結果というのが出まして、千五百人を下回らないようにしようというような法曹養成の人口についての提言などもありました。

 そういったことを考えますと、先ほどの欠員の数字の次に、三枚目の資料です、「司法修習終了者の進路別人数の推移」ということで、過去十何年かにわたっての裁判官を歩んだ人の人数などがずっと書かれております。

 これを見ていただくと、直近では九十一人が新たに裁判官になられた。平成二十七年。ただし、その九十一人というのは、司法修習終了者全体で千七百六十六人いて、その五・二%だったわけですね。他方で、その前とかを見てみますと、ちなみに、例えば、私などは五十六期ということで、平成十五年に弁護士になったんですが、この年は、全体で一千五人いて、百一人、一〇%の方が裁判官を選んでいるわけですね。こういうふうに、どんどん比率が低下している。かつ、千七百六十六人が、今度はもっと減るだろう。昨年の提言があって、千五百人を下回らないようにしようということですからね。

 だとすれば、私は、この九十一人という数字もだんだん減ってくる中で、今の定員は、今現在の採用数でもってしても余りがふえてきているわけですね。欠員がふえてきている。ということは、これから先、欠員が充足されるどころか、もっと欠員がふえる方向にも行きかねない。そういう中で、やはりここは、判事補の定員を法律で必要に応じて減らす。

 これは別に、一回減らしたからといって、次の年ふやせないというわけではないですからね。毎年増減があるのは、過去にもそうでした。だから、何も余らせておく必要はないんです。しかも附帯決議がある。附帯決議で、検討結果を踏まえて適切に対処すると言っているわけです。これは、政府の責務でもあるということで附帯決議しております。

 ですから、法務大臣にお伺いしますけれども、今言ったような判事補の欠員の動向、今後の法曹養成の仕組みなども踏まえて、ぜひここは判事補の定員というものを減少させるべきだというふうに考えます。後ろから紙が出ましたけれども、見なくて結構です。政治家としての答弁をお願いします。

岩城国務大臣 まず附帯決議のお話、それから判事補の定員の問題ですね、それにおただしがありましたので、お答えをさせていただきたいと存じます。

 先ほども裁判所から答弁がありましたとおり、御指摘の附帯決議、その趣旨を踏まえまして、できる限りの定員の充員に努めているものと承知しておりますが、判事補の採用に当たっては、裁判官にふさわしい資質、能力を備えた人材を採用するという観点が不可欠であり、結果として現在の採用数で推移しているもの、そのように承知をしております。

 そして、判事補の定員につきましては、判事補の採用数の変動に対応できるよう、ある程度の欠員を抱えておく必要があることなどを考慮いたしますと、毎年欠員が生じていることのみをもって必ずしもその定員の減少を図らなければならないものではない、そのように認識をしております。

階委員 全く誠意のない答弁ですね。

 まず、一定の定員、空き枠を確保しておかなくちゃいけないというお話がありました。

 ただ、私のきょうの資料の一ページ目を見てください。今、ふやそうとしている判事の方ですけれども、判事の方の欠員というのは三十八ですよ、直近で見ますと。一枚目の資料の左側の方に、判事の欠員のところは三十八です。他方で、判事補の方は九十二ですよ。この両者を比較してみても、明らかに判事補の欠員の数は余り過ぎている、欠員が多過ぎるということです。

 かつ、さっきも言いました、これは一回減らしたらもとに戻せないということはないんですよ。私は、こういう審議をする場で、これからの法曹人口の推移とかも、先ほど言ったように昨年の提言をもとに減ってくるわけですから、そうであれば判事補の定員も実態に合ったものに速やかに変えるべきだ、そう思いますが、もう一回答弁をお願いします。

岩城国務大臣 先ほどもお答えいたしましたとおり、裁判所におきましては、この附帯決議を踏まえまして、司法における需要も勘案しつつ、裁判官にふさわしい人を採用し、裁判の運営に必要な体制を確保できるよう定員の充員に努めていくこと、そのように期待をしております。

階委員 充員されるどころか、むしろ附帯決議以降、欠員が拡大してきているわけですよ。そこを問題視しているわけです。欠員が拡大してきているのであれば、過大になっている定員を減らすべきではないか。

 確かに、多少のバッファーといいますか、ある程度の空き枠は必要でしょう。ただ、判事の方は三十八人しか空き枠がなくて、それで十分だと言っているのに、なぜ、こっちは九十二人で、なおこのぐらい空き枠は必要だと言えるんでしょうか、その理由をお答えください。

葉梨委員長 要求しているのは最高裁じゃないですか。まず最高裁。(階委員「いえいえ、法務大臣です」と呼ぶ)では、岩城大臣。

岩城国務大臣 あくまでも裁判所の方で自律的に計画を立て、総合的な判断をもって対応していただきたい、そのように期待をしております。

葉梨委員長 ちょっと、まず最高裁から答えさせましょうよ。

階委員 ゼロベースから聞いているんじゃないんですよ。二十五年の附帯決議で、法曹養成に関する検討結果が出たら定員について対応するということがあったわけですよ。「法曹養成制度の在り方に関する検討結果に基づき適切に対処する」ということを政府にも責務として課しているわけですよ。ということだから法務大臣に聞いているんです。だから政府の責務でもあるわけですよ、適切に対処することは。

 今の、判事補について欠員がどんどんふえていく中で定員を放置している。これで適切に対処していると言えるんですか、決議違反じゃないですか、お答えください。

葉梨委員長 まず最高裁、ちょっと答えてください。それから法務大臣にも答えていただきますので。(階委員「では端的に」と呼ぶ)

中村最高裁判所長官代理者 最高裁といたしましては、先ほど答弁いたしましたように、現状の時点において判事補の定員の減少は必要がないというふうに考えております。

 ただ、判事補の定員のあり方について、今後の事件動向、充員の見込み等を踏まえて検討はしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

岩城国務大臣 御指摘の点は、裁判所の機構、さらには組織にかかわることでありますので、こういった定員につきましては裁判所において自律的に判断されるべきものである、そのように考えております。

 したがいまして、裁判所におきまして、長期的推移、こういったものを見て判断する必要があるものと思っております。

階委員 いや、この附帯決議は、私、当時、野党の筆頭理事でした。多分、吉野先生が与党の筆頭理事で、この文言は調整してつくったものなんですよ。ですから、今、政府は関係ないみたいなお話をされましたけれども、政府も責任があるんです、この欠員について。法曹養成制度の検討結果が出たわけですから、適切に対処する責任があるんです。

 だから、私が指摘したことを踏まえて、判事補の欠員を放置するのではなくて、判事補の定員を減少させる、そういう措置をとるべきだと私は考えますが、法務大臣、もう一度お願いします。

岩城国務大臣 お答えいたします。

 裁判官の定員につきましては、司法を担う裁判所の組織機構にかかわる重要事項であります。その上、裁判官の増員等につきましては、裁判所において、事件の動向、事件処理の推移等を踏まえまして慎重に検討を行い、さらに財務当局とも十分に協議の上で決定しているもの、そのように承知をしております。

 そういった観点から、この点につきまして、やはり裁判所の方でしっかりと将来的な推移等を見据えながら判断していくもの、そのように承知をしております。

階委員 明らかにこの附帯決議の文言には反することをおっしゃっていますが、附帯決議を無視するということでいいんですか、大臣。

岩城国務大臣 そのようなことではなく、あくまでもこの点は裁判所の組織機構にかかわる問題でありますから、裁判所自体が自律的に判断をしていくということだと基本的には考えております。

階委員 だったら、なぜ政府はという主語があるんですか。ここは無視していることになりませんか。政府はという主語はないのと同じじゃないですか。なぜそこを無視するんですか。「政府及び最高裁判所は、」ということで、政府と最高裁判所は並列した主語になっていますよ。主体性を持って対応しなくてはいけないと思います。

 大臣、これは無視していることになります。いかがですか。無視していいんですか。

岩城国務大臣 あくまでも裁判所の組織機構にかかわる問題でありますので、裁判所が主体的に、総合的に判断をし、政府はそれに従いまして裁判所に協力をしていく、そういう立場であります。

階委員 答弁になっていないです。繰り返しになっている。主語が政府になっているのに、最高裁判所だけが対応するように言っています。

葉梨委員長 これは、まず法曹養成の話も入っているから、政府はというのも入っているわけで。それで最高裁の……

階委員 ちょっととめてください。

葉梨委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

葉梨委員長 速記を起こしてください。

 それでは、岩城大臣、御答弁をお願いします。

岩城国務大臣 附帯決議を踏まえてのおただしでありましたけれども、私ども法務省といたしましては、法曹養成制度のあり方に関する検討、こういったものにかかわっておりますし、その点につきましてはしっかりと責任を持って対応していかなければいけないと考えておりますけれども、裁判所の定員あるいは減員するかどうか、これにつきましては、あくまでも裁判所自体が主体的に判断をしていくべきものだろうと考えております。

階委員 納得いきません。

 「法曹養成制度の在り方に関する検討結果に基づき適切に対処する」、ここまでが述語になっていますから、「適切に対処する」の主語に政府がなっているわけですから、政府も対処しなくちゃいけないんです。ところが、最高裁判所がやるべきことだということで、それは関係ないというお答えになっている。

 私は、この点は、絶対、附帯決議を無視していると思いますので、もし今のような答弁を繰り返されるのであれば、私は大変な問題だと思っています。

 後で、文書で、この点について明確な説明、弁明をお願いしたいと思います。

 委員長、お取り計らい願えますでしょうか。

葉梨委員長 後刻、理事会で協議いたします。

階委員 時間もだんだん迫ってきましたので、最後にもう一つ、これまでの政府の方針を変えてきているのではないかということについてお尋ねします。

 裁判官出身の方が、訟務検事ということで、国が当事者となる訴訟の代理人ということをする場合がある。ところが、よく考えてみますと、訟務検事に裁判官がなるということは、その方はずっと訟務検事でいるわけではなくて、またもとに戻ってきて裁判官の席に座るわけですね。そうすると、審判だった人が野球チーム、巨人の選手になって、巨人で戦った後にまた審判になる、その人が巨人と阪神の試合の審判をする、こういうことと同じような話なわけです。

 ですから、訟務検事については裁判官出身はなるべくならない方がいいということで、過去にそういう議論をこの委員会でもしました。滝法務大臣、我々の政権のときでしたけれども、そのときに、「いわゆる訟務分野については、これはもう減らしていこう、こういう基本原則には変わりありません。」というお答えだったんだけれども、昨年、ちょっとここがふえてきていたので、上川法務大臣にも私は昨年聞きました。そこで、上川法務大臣も、「趣旨につきましては、その方向性のもとで進めてまいりたい」というお答えでした。

 ですから、私は、この訟務検事というのは減っていくものなんだろうというふうに思ってきましたけれども、資料の四枚目です。裁判官と検察官の人事交流ということで、平成十八年以降、判事から訟務検事になった人、あるいは訟務検事になった人が判事に戻ってきた人、ちょっと見にくいんですけれども、うち訟務検事という、うち書きのところをちょっと両方見比べながらお話を聞いていただきたいんですが、うち訟務検事、差し引きしますと、プラスであれば、よりたくさんの人が行った、マイナスであれば、逆に訟務検事が戻ってきて訟務検事は減ったということになるわけですね。

 ずっと見ていきますと、平成十八年、平成十九年はプラス二でした。その後、差し引きゼロという期間が三年ぐらい続きまして、その後は、私どもの政権になりまして、マイナス三、マイナス三、マイナス三というような感じで来ていました。平成二十四年は私どもの政権ではないんですけれども、平成二十四年以降もマイナス三、マイナス三というふうに来ました。

 ところが、二十六年マイナス一、二十七年はプラス四です。先ほど確認した政府の方針に反している、そういうふうに思うんですけれども、この状況について法務大臣の御所見をお伺いします。

岩城国務大臣 御提示の資料は、その年の一年間に裁判官から訟務検事に転じた人数であると思われます。

 それで、これによりますと、平成二十七年に訟務検事に転じた裁判官二十三名と裁判官に戻られた訟務検事の数、十九名は差し引き四名であり、この四名が訟務検事として増加したことになるものと思います。

 ただし、この四名を含む五名が予防司法の機能強化に伴う新たな業務に従事している者などになっておりまして、それらの者は当事者として対応するものではなく、その意味では、当事者的立場で活動する裁判官出身の検事の数は増加していないというより、一名減少している、このように言えるものと考えております。

 そこで、御指摘の方針は、上川大臣からもお話があったということがありますが、そのことにつきましては、国の代理人として当事者的な立場で活動する訟務検事の数に占める裁判官出身者の数の割合が余り多くなるのは問題である、先生からも御指摘ありましたが、以前からそういった議論がありましたので、そういったものを踏まえたものでありまして、こういった、だんだん数を減らしていくという、その方針自体に変わりはないことを御理解いただきたいと存じます。

階委員 方針自体に変わりはないという明言をいただきました。

 ただちょっと、先ほどの数字、訟務検事という肩書だけれども、当事者の代理人にはなっていないという数字があるんだということだったんですが、その数字は私、事前にちょっと把握できていなかったもので、今後は訟務検事の中で当事者の代理人になっている人がどれぐらいいるのかということもちゃんとわかるように、その数字が大事なので、我々はそこをウオッチしていきたいと思います。そこもちゃんと発表するようにしていただくことをお願い申し上げます。

 では、最後、その点だけ。

葉梨委員長 では、簡潔にお願いします、時間が過ぎておりますので。

岩城国務大臣 そういった詳しい内容に触れました資料を提出させるようにいたしますので、御理解いただきたいと思います。

階委員 以上で終わります。

葉梨委員長 以上で階猛君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いいたします。

 早速、定員法の関係から伺っていきたいんですが、私は主に政府の定員の合理化計画、政府の方で総人件費を減らさなければいけない、そこに対して最高裁の方でも協力をされている。

 過去を振り返ってみますと、これまでも議論ありましたように、判事に関して言えば増員が、ここ十年を見ますと、三十名から多いときは六十五名の増員があって、判事補は、平成二十二年に二十人の減員がありましたが、それを最後に増減もない。

 その一方で、裁判官以外の裁判所の職員が、大分人数が減少している。特に顕著なのがきょう伺いたい技能労務職員なんですが、きょう提出されている法案が成立をいたしますと七十一名減ります。昨年も七十一名、その前は六十五、六十六、九十五、六十五、十年間さかのぼってみますとかなり、九百人近い減員になっておりまして、本法案が成立をしますと、技能労務職員というものの定員は六百二十六になる。そうすると、十年でこれは半分以下になったという理解かなと思いますが、果たしてそれで本当に、実際、現場としてまず大丈夫なのかというところを最高裁に伺います。

中村最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 数字につきましては、委員の御指摘のとおりでございます。

 技能労務職員の関係につきましては、この定員が減少しているという中で、その分の業務を外部委託あるいは機械による整備というようなところで代替しているところでございまして、現実のこのような具体的業務について支障を来していることが現時点で生じているということではないというふうに考えております。

井出委員 技能労務職員というのは、例えば、電話交換であったり庁舎の清掃、警備、あと運転手さんなんかも含まれているとありますけれども、そのほかにも技能労務職員がやっている仕事があるのか、また、この十年で九百人近い減員になっておりますが、具体的にどの業務の技能労務職員が削減になっているのかを教えていただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 まず、技能労務の業務の内訳でございますけれども、先ほど御指摘がありました電話交換、運転、清掃、それから警備といったものがございますし、また、そのほかに機器等の操作や保守といった庁舎管理の業務、これはちょっと古い言葉で恐縮ですが、電工、汽缶士という職種がごく少数ではございますがあるということでございます。

 この削減の内訳ということでございますが、毎年、その削減の数につきましては、定年等の退職に際し、裁判所の事務への支障の有無を考慮しつつ、外注化による合理化等が可能かを判断して、後任を不補充とした上で、問題が発生していない状態が継続していることを確認して行ってきているところでございます。

 二十八年で申し上げますと、電話交換業務については十一人分、自動車運転業務については十七人分、清掃関係業務については十九人分、警備等に関する庁舎管理等の業務について二十一人分、その他、機器の操作、保守といった庁舎管理業務について三人分、合計七十一人について削減ということを考えている次第でございます。

井出委員 きょう、資料を一枚配付させていただいております。これは衆議院の調査局法務調査室の方で最高裁の資料をもとに作成していただいている資料なんですが、見ていただきたいのは上から三つ目、裁判官以外の職員の年齢階層・男女別在職状況。この二十歳から二十九歳のところ、男性が一千七十二名、女性が一千六百二十名。三十代も、男性二千七百三十九、女性二千五百七十。四、五十代を見ますと、男性に限って言えば、四千五百二十名、四千二百三十八名というようなことになっておりまして、定年で補充をしないということでこういう年齢のばらつきが出てきているのかなと思うんですが、まず、若い二十代、三十代の総数が、特に男性に限って見ますと、四十代、五十代と比べて少なくなってきている。

 このデータをちょっと見ていたときに、技能労務職員のお仕事はいろいろあって、定年を迎えるところで減員をされているとおっしゃられたんですが、実際にこれまで男性職員が負ってきた業務、そこが、職員でなくて外注ですとか機械ですとか、そういうものに結果としてなっているんじゃないかなと思うんです。

 そうしますと、この技能労務職員の中で、運転ですとか警備ですとかいろいろありますけれども、男性が負わなければいけない仕事というのはどの分野があるのかというところを教えていただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 今、手元にそれぞれの業務について男女比がどうなっているかというような資料は持ち合わせておりませんし、また、男女でなければならないというところの業務があるわけではないと思います。

 ただ、実際問題といたしましては、例えば電話交換といった業務については女性の方が多いように思いますし、運転手については逆に男性が多いというような実態にあろうかと思います。

井出委員 一つ伺いたいのが警備の関係なんですが、警備員は、女性の方もいらっしゃると思いますけれども、恐らく、一般的、常識的に考えれば男性の方が多いんじゃないか。そこがこの十年ぐらいの間に外注とかに変わってきているんじゃないかなと思うんですが、その辺は私の認識でよろしいかどうか、教えてください。

中村最高裁判所長官代理者 従前、守衛と言っていた者につきましては、現実的には男性が多かったように思います。

 今、外注ということで、ガードマンというような形で契約したり、あるいは機械警備ということをしております。ガードマンの関係でいいますと、ガードマン会社が派遣してくる方という中には、かなり実際は女性が含まれているというのが現状だと思います。

井出委員 裁判所の警備、裁判所というところは、いろいろな方がいい意味においても悪い意味においてもいらっしゃいますし、時折ニュースでトラブルがあるようなことも聞きますから、警備の必要性というものは大変あると思うんです。

 この十年間、技能労務職員を減らしてきて、外注等を、今、会社に委託してガードマンという話もありましたが、その体制ですとか人数といったところは変化が生じてきているのか、警備体制について教えてください。

笠井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、裁判所におきましては、さまざまな利害の相対立する事件等を日常的に扱っております。その中で、適切に裁判を実施していくとともに、来庁する国民が安全かつ安心して裁判所を利用できるということ、そのために庁舎内の安全を確保するということ、これは裁判所の重要な責務であるというふうに考えているところでございます。

 そのために、日常的に、庁舎敷地内への入構、あるいは庁舎内への入庁、法廷内への入退出、法廷での審理、そういった場面におきまして、事案に応じまして適切な警備体制を整えているというところでございます。

 さらに、事件の内容等によりまして具体的な危険が予測されるという場合もございます。そういう場合につきましては、必要に応じまして、庁舎の出入り口を一部閉鎖したり、庁舎の出入り口あるいは法廷の出入り口で金属探知機等による検査を行うなど、危険の態様、度合いに応じまして警備体制をとっているところでございます。

 さらに、配慮すべき事案におきましては警察官への派遣要請なども行っているところでございますが、そういった警備体制につきましては、構内、庁舎全般の日常的な警備、これは、守衛それから外注の警備員によって業務を行っているという体制でございます。

 また、法廷に関しましては、これは必要に応じまして裁判所の職員を配置させていただいて対応させていただいている、また場合によっては警察官への派遣要請を行う、そういった形で対応させていただいているところでございます。

井出委員 大きな事件、大きな裁判があれば、当然それに応じた特別な体制を組まなきゃいけないと思うんですが、日常の各地方裁判所の警備の体制が、この十年、職員を減らして外注をしていく。そのことによって、例えば人数が一律一割減ったとか、そういう体制の変化があったのかないのかをもう一度教えてください。

笠井最高裁判所長官代理者 体制の関係でございますけれども、守衛につきましては、これは平成二十一年から二十七年の数字でございますけれども、二百九十三人から百九十八人になっているという状況でございます。

 ただ、その分につきましては、外注警備を使うという形で警備業務を行わせていただいているところでございます。当然、外注を行うという前提といたしまして、既存の業務の見直し、あるいは事務の統合による業務の最適化等、業務の合理化等も行っている、そういう前提で外注を行っているというところでございます。

井出委員 今、最後に業務の合理化、効率化というお話がありましたが、そうすると、例えば今お話あった二十一年―二十七年で守衛さんが二百九十三から百九十八に九十五人減っている。ただ、その九十五人分を必ずしも外注で人数を埋めているという状況でもない、そういうことでよろしいですか。

笠井最高裁判所長官代理者 必ずしも守衛が減った人数を、その人数だけ外注に出しているという形ではございません。全体として警備が適切に行われるような範囲で、必要な外注を行っているということでございます。

井出委員 二十一―二十七年の九十五人、職員が減っているという数は、全国の地裁、またその支部ですとかそういうところの場所の数等を勘案すれば、一地裁当たりそんなに大きい数ではないのかなと思うんですが、外注で補充している人数というのは、今わかりますか。

笠井最高裁判所長官代理者 申しわけございません。人数のところまでは承知しておりません。

井出委員 外注で必要に応じて補充をしていただいていると思うんですが、先ほどの合理化、効率化というところをとれば、減らした職員の数以上にふやしたりとか、お話から推測すれば、やはり外注で補充している人数の方が、減らした職員より少ないのかなと思います。

 今、二十一―二十七年の数字が出ましたが、平成二十一年というのは、たしか裁判員裁判が開始になった年だと思います。私は、裁判員裁判が始まることによって、候補者の選任手続ですとか、また対象となる事件で裁判官、一般の方が入られて、来庁、また帰り、審理の途中であれば一般の方との接触というものは法律で認められていないと思うんですけれども、中には、裁判員裁判の方に何か物を、激励したいか抗議したいかわかりませんけれども、そういう方もいらっしゃると思います。

 実際、報道機関は、裁判が終わった後に記者会見で裁判員の役目を終えられた方から感想を聞いて、また、その後、アンケートなどで裁判員のその後の心境とかを伺っているような記事もありますから、そうしますと、実際としては、少なくとも、裁判員に選ばれた方と裁判が終わった後の接触もあるということです。

 裁判員裁判が始まったことによって、私は、裁判所の警備の必要性というものが、もう少し、むしろ逆に体制を拡充しなきゃいけないような状況になっているんじゃないかなと思うんですけれども、そのあたりの御認識は、最高裁、いかがでしょうか。

笠井最高裁判所長官代理者 裁判員裁判開始後においても、これは、要するに裁判所として行う裁判全体について必要な警備を行っていくというところでございますので、これを含めまして、先ほど申し上げましたように、適切に対応させていただいているということになろうかと思います。

井出委員 適切の二文字で片づけられると、その具体のところがわからないのですが。

 候補者を選任するときはかなりの人数の方がいらっしゃって、事件によっては傍聴人が多数来ることもありますから、そうしたことへの対応というものは、各地裁、備えはされているのかと思います。

 ただ、実際、裁判員裁判が始まってみて、余り長期のものは外そうというような法律改正もしたぐらいですから、思った以上に裁判員の方が裁判所に通ってくる日数もありますよね。そういうところで、適切とおっしゃった警備体制の必要性というところはどのように検討されて、議論があるのかなというところを教えていただきたいと思います。

笠井最高裁判所長官代理者 裁判員裁判、先ほど委員が御指摘のような選任手続等々、さまざまな手続もございます。そういった場面につきまして、先ほど申し上げましたように、裁判所の職員も含めて、全体として警備に対応させていただいているというところでございます。

 もちろん、裁判員裁判が行われるということによって警備が必要になるという部分もあろうかと思いますし、そういったものも含めて全体として裁判所として行うべき警備を、守衛、職員さらには外注、あわせて遂行しているということでございます。

井出委員 政府の総人件費の削減計画に最高裁、裁判所が協力するというのは、過去の答弁なんかを見ますと、裁判所も国家機関の一員であるから協力する必要があるという答弁も過去にありましたが、ただ、実際は、減員を続けてきている中で裁判員裁判が始まるとか大きな制度の変更もありまして、確かに国家機関の一員ではあるんですけれども、定員合理化計画というものに最高裁が協力をしなきゃいけない。

 判事、判事補の問題、先ほど議論がありましたけれども、そこのマイナス分をやはり裁判官以外の職員さんの数で協力をしているのかなと。果たしてそれが、私は、裁判員裁判というものが始まって、単に協力を続けるだけでいいのかなという疑問を持っております。

 裁判所が定員の合理化計画に協力をしなければいけないその理由と、それと、協力をするのであれば、職員を減らしました、外注、機械、効率化をしました、やはりそのコストですね。総人件費の、逆に外注したら高くなったなんということがあったら、それは政府としても全く本意じゃないと思うんです。コストの成果が出ているかというところが、今までの議事録を見ると、コストの方で削減協力ができているという答弁が余り明確にいただけていないように思うんです。

 定員合理化計画への協力の必要性とコストの成果について、その二点を教えていただきたいと思います。

中村最高裁判所長官代理者 前段の質問からお答えさせていただきます。

 裁判所の定員合理化計画への協力というのは、先ほど答弁させていただきましたように、それぞれ技能労務職員が行っている業務について、これが問題が発生していないかどうかというのを検証して続けているところでございます。

 他方、外注等が可能な業務については合理化に協力をするとともに、裁判官のみならず、裁判事務を担当する書記官については増員をお願いしているところでございます。そういうところで、できるところについて可能な範囲で協力して、裁判部門の充実を図っているというところでございます。

 先ほど御指摘がありました警備の関係、裁判員を含めた危険が高まっているのではないかという御指摘、これは、裁判員が取り扱うようになって、やはり裁判所に対する来庁者が多くなっているように思います。そういう中で、裁判所は、公開というか誰でも入れる建物であるという反面、やはり来庁者等がふえていくと、危険ということもおのずと抽象的には出てくる。そういったところを含めて警備に支障がないように、そこは万全を尽くしていきたいと思います。

 コストの関係で申し上げますと、これまで外注等によって行ってきたところで、数字的にはなかなか、明確に申し上げるところはあれなんですけれども、さきに定員合理化によって削減された人件費などは、一定のコスト削減の効果が出ていると我々としては承知しているところでございます。

井出委員 毎年の法律改正でありますので、ぜひコストの方もどこかで一度しっかりと数字で検証をしていただければ、そのように思います。

 あと、済みません、残った時間で、ちょっと前回質問させていただいた犯罪白書のことで伺いたいのです。

 本当はちょっと次回、一生懸命と思っていたんですが、犯罪白書の刑法犯認知の件数ですとか検挙数、検挙数などはまさに捜査機関の仕事の結果であって、そういった数字が果たしてどこまで身近な治安を取り巻く数字を反映しているものなのかという問題提起をさせていただきました。

 そのとき政府から、四年に一度、私が思っているような疑問にもちゃんと答えるためにアンケート調査をされているというようなことを答弁いただきまして、それをちょっと私、見てみたんです。

 確かに平成二十四年、二十年、十六年、十二年とやっておりまして、それを読みますと、警察等の公的機関に認知された犯罪件数、刑法犯認知ですとか検挙数、それと、そのアンケート調査によって、警察等に認知されていない犯罪の暗数、これが表裏一体のもので、お互いを相補う形で活用することによって有効な刑事政策を進めることができる。定期的に実施をすることによって初めて経年比較も可能となる。そのようなことが書かれていて、大変興味深いデータもたくさんあるんです。

 きょう、どうしても一点伺いたいのは、ことし、本来であれば四年に一度の調査の年なんですが、ちょっといろいろな事情があってまだ実施に至っていない。これは私、非常に重要な調査だと思いますので、一刻も早くことしも実施することにめどをつけていただきたいと思うんですが、まず参考人の方から御答弁いただきたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 暗数調査でございますが、これはそもそも、もともと平成十二年からやっているものでございますが、これは国際犯罪被害実態調査に参加するという形で始めております。この国際犯罪被害実態調査といいますのは国連の犯罪司法研究所というところが実施しているものなのですが、これに参加するという形でございます。

 ところが、四年に一回行ってきたこの国際犯罪被害実態調査は、二十八年には行われないことになっているようであります。したがいまして、これと統計を一にするという形で、あるいは比較検討するという形での調査は、現在のところは法務総合研究所では考えていないんですが、しかし、委員御指摘のとおり、この暗数の調査というのは刑事政策上大変重要なものでございますので、同様の調査の実施に向けて検討を行ってまいりたいと考えているところでございます。

井出委員 今おっしゃったように、国際犯罪被害実態調査、これまで七十八カ国、三十万人を超える人々が参加をしてきたということも書いてあるんですが、今おっしゃっていただいたように、国際的にその調査がことし行われないからといって、やはり日本の国内ではしっかりとそういう調査をとっていただきたいと思います。

 さっと見た感じ、どうして被害届を出さなかったのかとか、特に性犯罪なんかはよく表に、事件沙汰にならないようなものもあると言われております。そういうものをきちっと数字でとっていくことがこれからのいろいろな立法作業の根拠として非常に大切だと思いますので、通常ですと一月から三月に四年に一度調査をしていたと聞いておりますが、一刻も早く、その時期も余りずれるとまた数字も変わって比較もしにくくなってきますので、やっていただくようお願いして、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について質問をいたします。

 二〇一六年、ことしの一月十八日の日本弁護士連合会の会長声明で、二〇一四年十月から九回にわたって、当連合会及び最高裁判所における地域司法の基盤整備に関する協議を行ってきたことが報告されております。

 私の地元、横浜弁護士会においては、地域司法の基盤整備について、特に相模原支部における合議制実施について、竹森裕子会長声明が発表されております。その中では、このように訴えられております。

 当会は、長年、相模原支部での合議制の取り扱いを求めてきた。管轄地域である相模原市、座間市の各議会においては合議制の実施を求める議会決議を行い、相模原市においては首長が裁判所に要望書を提出するなどしており、合議制の実現は管轄地域住民の声でもあっただけに、今回の結果は極めて残念である。

 近年、民事事件には複雑で困難な事件が増加しており、それらを適正迅速に解決するためには合議体による審理が有効であることは、最高裁判所の「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」や判例タイムスに掲載された「東京地方裁判所民事通常部における新たな合議態勢への取組について」において指摘されている。さらに、寺田逸郎最高裁判所長官は今年の新年のことばにおいて、民事裁判の質を向上させる手段として「合議体による審理を充実させること」をあげている。

と述べられております。

 このように、地方裁判所支部で合議制実施の声が上がっていることについてどのように受けとめておられるか、伺います。

中村最高裁判所長官代理者 現在、地方裁判所の支部二百三庁のうち百四十庁につきましては、支部で合議事件を扱っていないというところでございまして、そのような合議事件を扱っていない支部について今議員御指摘のような要望が出ている、これは承知しているところでございます。

 合議事件を支部で扱うかどうかにつきましては、手続上は最高裁判所規則に基づきまして各裁判所が決めるということになりますが、支部において合議事件を取り扱うかどうかは、体制整備あるいは全国的状況を検討する必要があることから、最高裁においても検討しているという状況にございます。

 最高裁といたしましては、合議を取り扱っていない各支部における事件数の動向、最寄りの合議取り扱い庁へのアクセス等を考慮すれば、合議事件の取り扱いをする支部を増加させる必要は今の時点ではないというふうに考えているところでございます。

畑野委員 ある弁護士の方からいただいた資料によりますと、相模原支部は、本庁までの時間は四十七分、二〇一三年の民事新受件数は五百五十七件となっております。現在、裁判官は六人ということです。

 一方、合議制が行われている横浜地方裁判所管内のほかの支部の状況を伺いますと、川崎は二十七分、千七十五件、小田原、一時間七分、七百九十件、横須賀、四十四分、四百一件。ですから、どのような基準で決まっているのかよくわからないという声があるんですね。

 相模原支部でも合議制を実施してほしい、これは横浜弁護士会相模原支部支部長も、二〇一六年、ことしの二月二十六日に、合議制の実現は住民の声でもあっただけに、今回の協議結果を極めて残念なものと受けとめておりますと報告されて、きのう、三月十五日に相模原市議会議員との懇談会も開催しているんですね。

 その点について、もっと実情をつかむべきじゃないかと思いますが、いかがですか。

中村最高裁判所長官代理者 相模原支部に関する要望、先ほど言われました弁護士会の会長の声明というものも承知しているところでございます。

 相模原支部につきましては、管内人口は少ないわけではございませんし、事件数も決して少ないわけではございません。そういう中で、現時点においては、先ほど申し上げましたように、合議を取り扱う必要性はないというふうに考えておりますが、今後とも、相模原支部における事件数の動向等の実情を注視しつつ、必要な事件処理体制の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。

畑野委員 横浜弁護士会の声明では、さらに、

 当会は、これまでにも増して、相模原支部において合議制が一刻も早く実現するよう、さらに地域住民、自治体、関東弁護士会連合会、日本弁護士連合会と一致協力して、粘り強く取り組む所存である。

と言っているんですね。

 ですから、合議制は、国民にとって極めて重要な事件が扱われるものです。相模原はもとより、一刻も早く全国の合議制実施の要求に応えていただきたいということを強く求めておきます。

 次に、地方裁判所支部で労働審判事件を扱う裁判所が限られている問題について伺います。

 労働審判は、裁判所の所管のもとで労働者の訴えを短期で解決する制度でありまして、解雇、雇いどめ、配転、出向、賃金、退職金不払いなど事実関係が明確な事件に有効で、アルバイトやパートも申し立てることができます。

 日弁連声明では、最高裁判所は、日弁連との協議により、労働審判実施支部を拡大すること等を明らかにしたとされております。

 今後、労働審判事件を扱う地方裁判所支部は増加するのでしょうか。

菅野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 労働審判事件につきましては、現在、全国の地裁本庁のほか、東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部において取り扱っております。

 最高裁におきましては、日弁連との意見交換を重ねるなどする中で、労働審判事件取り扱い支部拡大の要望を認識してきたところですが、予想される労働審判事件数や本庁に移動するための所要時間等の利便性を基本としつつ、事務処理体制、労働審判事件の運用状況及び労働審判員の安定的な確保を含めた地域的事情、こうしたものを総合的に勘案しながら検討を行いまして、結論といたしまして、静岡地裁浜松支部、長野地裁松本支部、広島地裁福山支部において、平成二十九年四月から労働審判事件の取り扱いを開始することができるよう準備を開始することといたしました。

 以上でございます。

畑野委員 三つのところで着手をするということでした。

 そして、この労働審判実施の要望については、多くの声が寄せられております。

 例えば、千葉県弁護士会松戸支部は、昨年、二〇一五年十二月十一日、千葉地方裁判所松戸支部において労働審判を実施することを求める決議を採択しました。

 そこでは、千葉県内においては、労働審判を行っている裁判所は千葉地方裁判所本庁のみであるため、支部管轄区域内の労働者や使用者が労働審判を利用するには、本庁がある千葉市まで出向かなければならない。しかし、千葉市までの距離がある支部管轄区域内の労働者や使用者にとっては、千葉市までの移動による時間的、経済的な負担を強いられることにより、本庁までの移動の負担を考えて、労働審判の申し立てを諦めざるを得なかったという事例も報告されている。

 また、二〇一六年、ことしの三月九日、茨城県弁護士会会長声明では、

 土浦支部管内を中心とする県南地域は、現在、人口、事業所数及び個別的労働紛争数において、水戸地方裁判所本庁管内のそれらに匹敵し、あるいは上回る状況にある。このような状況の下、県南地域においては、個別的労働紛争の解決に対する市民の需要をみたすため、その有用な手段である労働審判を実施する必要性は極めて高いところである。

今回の結果について、

 市民のために上記のような活動を継続してきた当会として、遺憾である。

と述べております。

 さらに、二〇一六年一月十八日、釧路弁護士会会長声明は、

  この度の労働審判支部実施の拡大が小規模なものにとどまったことは、遺憾と言わざるを得ない。あらためて最高裁判所に対し、帯広支部及び北見支部その他全国の多くの支部で労働審判が実施されるよう強く求める。

と述べておられます。

 このような弁護士会の要望にどのように応えていかれますか。

菅野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 労働審判事件につきまして、委員から今御指摘いただいたとおり、ただいま申し上げた三支部以外の支部での取り扱いを求める要望があることは認識してございます。

 ただ、ただいま申し上げましたとおり、予想される労働審判事件数、それから本庁に移動するための所要時間等を基本としつつ、事務処理体制、労働審判事件の運用状況、それから労働審判員の安定的な確保といった事情を総合的に勘案して、継続的に検討を行った結果として、さきの三支部での取り扱いができるよう準備を開始することとしたものでございます。

 もっとも、労働審判事件を支部で取り扱うかは、新たに労働審判事件を取り扱うことになるさきの三支部における具体的な運用状況ですとか、あるいはその他の庁の運用状況等によるところだと考えております。

 今後、これらの三支部を初めとする各地における労働審判事件の運用状況等を十分に注視してまいりたいというふうに考えております。

 以上でございます。

畑野委員 横浜弁護士会は、既に二〇〇二年十一月、地域の実情に根差した司法制度をつくるため、「神奈川から始める司法改革 神奈川の司法十の提案」をつくっているんですね。その中で、

 最高裁判所行政局から日本弁護士連合会に対し、同制度を始めるに当たり、地裁本庁に集約していたのは、労働知識に精通した裁判員の確保が必要であったことと、新しい制度のためノウハウの蓄積が必要であったことが大きな理由であったところ、事件数も増え、解決率も高く、ノウハウも蓄積できたことから、二〇一〇年四月から支部でも事務を取り扱う旨の説明があり、まず東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部で取扱いが始まりました。そして、神奈川県では、川崎支部と小田原支部が検討対象となっています。

  しかし、検討対象となっている川崎支部と小田原支部のみならず、横須賀支部、相模原支部でも労働審判の取扱いを開始すべきです。

と既に二〇〇二年から言ってきているんですね。だから、全国でそういう声が上がっている。

 ぜひ、この問題は、地域の実情に沿った司法行政を行うように進めていただきたいということを申し上げておきます。

 次に、裁判所職員の問題について伺います。

 この間、裁判官、書記官が増員されても、実際には三人庁、二人庁が増加しているのが実情です。裁判官、書記官は都市部に集中され、地方における裁判所の人的体制の問題の解決につながるとは言えない状況です。

 現在の二人庁になった経過と現状について伺います。

中村最高裁判所長官代理者 裁判所も国の予算で運営される公的な機関ということで、業務量に見合った人の配置ということを考えていく必要があります。

 これまで書記官、事務官合わせて三人の配置であった独立簡易裁判所につきまして、特に事件の少ない庁につきまして、人員の有効活用の観点から、利用者に対する司法サービスの低下につながるおそれがないかどうか、職員の休暇時や緊急時の応援体制等を的確に組むことができるかどうかといった業務体制の観点も踏まえつつ、事件処理に支障がないよう配慮した上で、二人庁、二人による執務体制をとることとしたものでございます。

 このような二人による執務体制をとっている庁は、全国独立簡裁百八十五庁のうち、昨年四月一日現在で二十八庁でございます。

畑野委員 事件数だけでなく、窓口業務の改善の問題、フレックスタイムの導入に基づく体制など、やはりこれも現場の実態をよくつかんでいただいて、そして抜本的な改善を求めておきたいと思います。

 次に、家事事件についてですが、増加をしております。成年後見関係事件は、二〇〇五年度から二〇一五年度には約五倍と急増しているということで、二〇一四年度報告分では、後見人による不正事案が多発し、総数八百三十一件、被害額は約五十七億円となっております。

 家庭事件も増加していて、子供をめぐる事件の割合が増加している。この点で、人的体制の充実が必要ではないかと思いますが、いかがですか。

中村最高裁判所長官代理者 委員御指摘のとおり、家事事件処理のため、合理的な事務処理体制の構築に努めるとともに、人的体制の充実を図ることが必要であるというふうに考えているところでございます。

 新受事件が増加傾向にあります家事事件につきまして、家事事件手続法の趣旨に沿った適正な手続を実現するとともに、累積的に増加しております成年後見関係事件の処理を適正化していく必要があると考え、家庭事件処理の充実強化のため、今回の増員の関係につきましても、判事及び裁判所書記官の増員をお願いしているところでございます。

畑野委員 そこで、家裁調査官なんですが、最高裁自身が人的体制の充実が必要としてまいりましたが、家裁調査官の増加をしないということについてはいかがでしょうか。抜本的にふやすべきではないでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 家裁調査官の人的体制につきましても、家事事件及び少年事件の動向や事件処理状況に照らして検討しているところでございます。

 ただ、増加傾向にあります後見関係事件につきましては、行動科学の専門家である家裁調査官の関与というのが限定的でありますし、増員をお願いしております判事や裁判所書記官による事件処理を行うことが有効であるというふうに考えておりますし、また、少年事件は一貫して減少している傾向にございます。

 調停事件におきまして、家裁調査官の関与が有用であると考えられます子をめぐる紛争、この事件は増加しているところでございます。

 このような増加傾向を踏まえましても、平成二十八年度において、家裁調査官の現有人員を有効活用することによって家事事件、少年事件の適正迅速な処理が図れるというふうに考えているところでございます。

畑野委員 そうじゃないんですね。

 司法統計によると、子の監護者の指定その他の処分事件、特に面会交流事件は激増しているんですが、面会交流事件については、ほぼ全件家裁調査官が関与している。そして、調停期日に全部立ち会い、その間に調整活動を行ったり、子供の意向や心情について調査活動を行う。さらに、家庭裁判所内において試行的面会交流を行う場合は、観察役と子の引き渡し役、複数の兄弟姉妹の調査などが想定されて、複数の調査官が共同して当たるなど、マンパワーが必要なんです。

 少年事件は減少していると言いましたが、被害者配慮や被害者調査などの対応が必要な事件が少なくないなど、調査官による調査活動の要請が強くございます。さらに、育児休業を取得して、代替要員の補充が原則となっているんですが、調査官による代替要員の確保ができるとは限りません。特に地方の代替要員の確保は困難である。このような実態をつぶさに見ていただくことが必要だと思います。

 最高裁判所第六回裁判の迅速化に係る検証に関する報告書に対する日弁連の意見書では、「家事調停に携わる裁判官、家事調停官、書記官、家裁調査官、調停委員の繁忙度についての調査と分析が不十分である。裁判官の関与の充実について調査と検討はなされているものの、裁判官の手持事件数等、裁判官の繁忙度については具体的に触れられていない。」「調停委員や家裁調査官の員数、選任方法、構成、手持ち件数、繁忙度の調査・検証についても、今回の報告で具体的に明らかとなっていない。現場からは、調停委員の手持ちの件数が多いことや、家裁調査官の手配が困難であることが、期日の進行に影響を及ぼしている場合があるという意見も存在する。家裁調査官の手続関与の割合・程度等からみて、調停事件を適正に運営する上で家裁調査官の人数に不足はないか等の検討も、今後、より具体的に進めていくべきである。」と指摘しています。

 この点について、具体的な調査がないのではありませんか。いかがですか。

中村最高裁判所長官代理者 先ほど答弁申し上げましたとおり、裁判所といたしましては、家事事件、少年事件の動向、あるいは調査命令の数といった事件処理状況を事件統計に基づいて具体的に検討した結果、平成二十八年度については、家裁調査官については現有の人員を有効に活用することによって家庭事件、少年事件の適正な処理が図れると判断したものでありまして、現時点で家裁調査官の人員に不足が生じているというふうには考えていない次第でございます。

畑野委員 ぜひ具体的に実態をつかむ調査をしていただきたいということを申し上げておきます。

 家庭裁判所の調査官の異動の問題について伺います。

 どのような改善が図られているのかと前回も伺いました。仕事と家庭生活の両立のためさまざまな努力を最大限してまいりたいと考えている、そして、職員個々の希望や、育児、介護といった家庭事情等を一層きめ細かく把握するよう努めているというふうにお答えをいただきました。

 ところが、ある調査官のお話を伺ったんですが、介護のために親御さんと同居せざるを得ないのに遠方に転勤になり、やむを得ず新幹線を使って通勤することになった、交通費の自費負担が月二万数千円になってしまうということなんですが、このような事態を生じさせないように対処すべきではありませんか。

堀田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 個別の事例についての答弁は差し控えさせていただきたいと存じますけれども、一般的なこととして申し上げます。

 裁判所職員の人事異動に当たりましては、介護等といった個別具体的な家庭事情にも可能な限り配慮をした異動の実施に努めてきているところでございますが、他方で、人事異動は、適材適所の任用原則にのっとりまして、均質な司法サービスの提供、人材育成、異動負担の公平等の観点からも考慮する必要があるところでございまして、転居を伴うなど必ずしも本人の希望どおりにならない場合も一定程度生じざるを得ないところではございます。

 介護等の事情のある家裁調査官の異動におきましては、一般的に申し上げますけれども、その介護の具体的な事情のほか、転居せずに現住所から通勤した場合の経済的な負担、身体的な負担といったものもつぶさに見て検討の上、適切に異動を実施しているものと認識しております。

畑野委員 後段の最後のところをぜひお願いしたいんです。

 いろいろ声がありまして、子供が小学校に入学した時点で夫婦とも片道一時間半以上かかる庁に異動になったとか、夫婦別居で、この春も異動がなく別居は解消されなかったとか、異動内示が遅いので転入先の保育園の確保ができなかったとか、それから、介護の事情ももちろんたくさんあります。もう本当に続けられないという声も上がっているんですね。

 ですから、なぜこういうことが起こるか、根本はやはり抜本的な増員が必要だというふうに思いますので、そのことを強く求めたいと思います。

 最後に、速記官のことについて伺います。

 再審で無罪となった布川事件の弁護団長は、二審から受任して一審記録を精査した際、前半は要約調書、途中から速記録になった公判調書を読んで、速記録を読むと、検察官が詰まりに詰まって困っているところ、本人たちが威勢よく尋問しているところなどが目に浮かび、それまでの要約調書と比べると、調書が生きていると感じたと述べています。

 事件内容により速記録を作成するかどうかの判断に当たっては、裁判利用者の要望に応える体制も必要ではないでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 委員が要約調書と速記調書というものの比較をされました。要約調書というのは書記官が概要を書く調書でございますので、それと比較いたしますと、速記調書の方が、まさに逐語的にとっているのでそういう感想が出たんだと思います。

 逐語調書という中におきましては、録音反訳方式と速記の調書、両方がございます。一般的に、裁判利用者の要望については真摯に耳を傾ける必要があると考えております。

 ただ、録音反訳方式でありましても、反訳業者が提出した反訳書を裁判所書記官が確認して、必要に応じて校正を行った上で書記官の調書として完成させておりまして、正確性を欠くということはございません。また、反訳書をつくる期間につきましても、最短の場合では音声データを業者が受領したときから四十八時間で完成させるというような迅速性についても、十分な手当てをしているところでございます。

 このように、録音反訳方式と速記とについては、いずれも逐語録需要に対応するものであるところ、この両者について、どちらがすぐれているということはないというふうに考えておりまして、利用者からの要望のみによって速記録を作成するということにはならないというふうに考えております。

畑野委員 ぜひ利用者の要望もつかんでいただいて、反映していただきたいと思うんです。

 なぜかといいますと、二〇〇九年五月二十一日から、一般市民が裁判員として刑事裁判に参加する裁判員制度が開始されたからです。昨年も当委員会で熱心に審議がされたところです。第五十一条で、「裁判官、検察官及び弁護人は、裁判員の負担が過重なものとならないようにしつつ、裁判員がその職責を十分に果たすことができるよう、審理を迅速で分かりやすいものとすることに努めなければならない。」とありました。

 一定の重罪事件につき、一般市民が職業裁判官とともに事実認定や量刑判断を行っている裁判員です。公正、的確な判断を保障するためには、法廷でのやりとりや証言内容が即時に確認できるようにすることが不可欠だと思います。

 裁判員裁判において、速記官が作成する速記録は採用されているのか、これは現状について伺います。

中村最高裁判所長官代理者 具体的にどの程度という数のところは把握しておりませんけれども、裁判員裁判におきましても、他の事件と同様に、逐語録を作成する必要があるものについては、録音反訳方式にするのか、速記録にするのかということを各裁判体において判断されているというふうに承知しているところでございます。

畑野委員 裁判所速記官による速記録は、尋問を実施したその日のうちに文字化された証言、供述調書を作成することが可能なまで進歩しているということです。

 裁判員裁判における尋問の際には、速記官を活用し、訴訟当事者が即時に速記録を閲覧できるようにすべきであるという要望がありますが、いかがでしょうか。

中村最高裁判所長官代理者 裁判員裁判におきましては、記憶が鮮明なうちに連日的な審理が進められるということから、速記録を含めた供述調書を用いて証人等の供述内容を確認するという必要性は低いものと考えています。

 速記官が尋問後即時に速記録を作成するということを御指摘になりましたけれども、そのような速記録を作成できるのは全ての速記官ということではございません。

 一方、尋問の終了後、訴訟当事者には、音声認識システムを用いて認識、録音いたしました音声データ及び文字データを提供しておりまして、いわばその文字データをインデックスとして利用することで、証人の供述等の検索をして確認できるような運用を行っているところでございます。

畑野委員 私は、実際その状況を見ましたけれども、なかなか素早いものだなというふうに思いました。

 二〇〇四年三月十二日、衆議院法務委員会での附帯決議の「裁判所速記官が将来的に不安定な状況に置かれることのないよう十分な配慮をすべきである。」ということについて、どのようにしていくのか伺います。

中村最高裁判所長官代理者 速記官としてその職務を全うすることを希望する者につきましては、その能力を十分に発揮し、速記官としてやりがいを持って執務に臨んでもらうようにする必要があることはもちろんでございまして、最高裁といたしましては、御指摘の附帯決議の趣旨も踏まえ、速記官が不安感を抱くことのないよう、速記官の要望も踏まえつつ、備品の整備、研修の充実といった可能な限りの執務環境の整備を図ってきているところでございます。

 今後とも、処遇に対して不安を抱かず、安心して職務に精励できるように、速記官の執務環境の整備等に努めてまいりたいと考えております。

畑野委員 速記官の皆さんはアメリカから個人輸入している電子速記タイプライターを使っていて、従来よりも軽いタッチで打ち込みができて、キーの深さも調節できる。これに日本語活字への変換ソフト「はやとくん」を接続するだけで、瞬時に活字になる。ほとんどの速記官は、電子速記タイプライター、「はやとくん」のシステムを自費で購入して使っているというので、ぜひ公費で購入することを検討するときじゃないか。現場の声もぜひ聞いていただきたい。

 そして、速記官の養成再開を求めるという弁護士会からの要請も出ているということを紹介し、最後に大臣に伺います。

 司法の独立、国民の裁判を受ける権利、司法サービス充実のために、裁判官及びそれを支える職員の抜本的な増員が必要であると考えますが、岩城法務大臣の御所見を伺います。

葉梨委員長 質疑時間が終了していますので、簡潔に。

岩城国務大臣 まず、裁判官及び裁判官以外の職員の数を含めました裁判所の体制整備、これにつきましては、最高裁判所において適切に検討しているもの、このように考えております。

 そこで、法務省としても、裁判所において判断されるところを踏まえまして、政府において裁判所職員定員法を所管する立場から、引き続き、適切に対応してまいりたいと考えております。

畑野委員 抜本的な増員を求めて、質問を終わります。

葉梨委員長 以上で畑野君枝君の質疑は終了いたしました。

 次に、木下智彦君。

木下委員 おおさか維新の会、木下智彦でございます。本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは裁判所の職員の定員法ということで、一つは職員の数を減らして、裁判官、判事の数をふやしていくというふうな、そういうお話の中で、私の方からは、特に裁判官、判事の不足の対策についてお聞かせいただきたいなというふうに思っているんです。

 まず最初に、では、どうして判事の数をふやさなきゃいけないのか、どういう状態になっているのかということを、根本的に何が問題なのか、起因して対策がなされなきゃならないのかというふうなことを掘り下げていきたいと思います。

 言いながら、時間が短いので、ぱっぱとやらせていただきます。

 まず一つ目は、訴訟の件数の増加というふうに聞いております。その中で、民事訴訟のうち増加が顕著なものというのは、例えばどういうものが増加しているのかということについてお聞かせ願えればと思います。

中村最高裁判所長官代理者 民事事件の中におきましては、建築関係事件、交通損害賠償事件、医事関係事件、労働関係事件、行政事件などの典型的な専門訴訟と、それから、学校内の施設で発生した事故に関する責任をめぐる訴訟など、先例に乏しく、判断に社会的な波及効果のある非典型的な損害賠償請求事件が増加しているところでございまして、これらの類型の事件につきましては、平成十九年と平成二十七年を比較いたしますと、このような複雑困難類型の事件が約一万件以上増加しているというところでございます。

木下委員 続けてですけれども、家庭事件の処理のうち多いものというのは例えばどういうものなんですか。

中村最高裁判所長官代理者 家裁で取り扱っている事件につきましては、まず成年後見事件の増加が著しいというところでございます。十年前の平成十八年と比較いたしまして、平成二十七年の後見等開始事件の新受件数は一・三倍、後見監督処分事件及び実質的に専門職後見人に対する監督ということで機能している報酬付与申し立て事件の受件数は約四・四倍ということで、顕著に増加しているところでございます。

 また、個人の権利意識の高揚、家庭の問題解決機能の低下、少子高齢化といった背景を踏まえて、調停事件につきましても、子をめぐる事件など紛争性の高い事件の割合が増加しているところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 そういう意味では、恐らく、複雑化してきているので、しかも件数も相当多いということで、それに対応した判事をふやしていかなきゃいけない。

 そう考えたときに、ちょっと難しいところだと思うんですけれども、それぞれ、それぞれというか一人当たりの判事、裁判官の持つ手持ち件数というのが恐らくふえているんだと思うんです。難しいのかもしれませんけれども、大体一人当たりどれぐらい持っているのかというところと、では、実質的、理想としてはどれぐらいの手持ち件数まで減らしていきたいのか、これがちゃんと目標になってなきゃいけないと思うんですけれども、その辺はどういうふうに考えられているのかということを教えてください。

中村最高裁判所長官代理者 裁判官一人でいろいろな事件をやっておりますので、なかなか手持ち事件というのは難しいんですが、東京地裁の例で申し上げますと、東京地裁で民事訴訟事件、裁判官一人当たり約百八十件の手持ち事件を持っているということでございます。

 これはやはり手持ち事件の数としては多いというふうに認識しておりまして、これを百三十件から百四十件程度までは減らしていきたいというふうに考えているところでございます。

木下委員 今のを聞いていても、百八十件というのはすごいですよね。その後、ちょっと聞いたんですが、百三十、百四十件、それでも私は多いような気がするんですね。私の感覚です。皆さんの感覚がどうなのかわからない。

 理想型というのが何なのかというところが定めづらいんだと思うんです。ただ、これは定めていかなければ、やみくもに、人数だけをふやしたら何とかなるというふうなことでやっていったら、いつまでたっても根本が解決する問題ではないんじゃないかなというふうに思っているので、やはり理想型は何なのかということを突き詰めていただきたいんですね。

 それからもう一つ、そういう形で訴訟の件数が多くて、処理も相当大変だというふうなことになったときに、これらの影響、具体例というのはどういうものがあるんですかね。具体的に、こんなことが起こってしまうから人数をやはりふやさなきゃいけないとか、どうしてなのかという現象面をちゃんと分析する必要があると思いますので、お願いします。

中村最高裁判所長官代理者 まず、民事事件について申し上げますと、先ほど申し上げました複雑困難事件がふえている中で手持ち事件が多いということになりますと、なかなか、一件当たりにかける労力ということが十分でないところになってくるおそれがあります。複雑困難な事件でありますがゆえに、やはり適正に解決していかなければならない。そのためには、やはり経験の異なる三人の裁判官によって、合議によって充実した審理を行って解決していきたいということを考えているところでございまして、その観点で、合議率ということで目標もつくらせていただいているというところでございます。

 また、家庭裁判所の関係でいいますと、成年後見事件の急増で、やはり仕事というのが繁忙過ぎますと、なかなか後見人の不正といったところについても十分目が配れないという可能性も出てまいります。

 また、調停事件につきましては、やはり子供の問題というのは非常に重要な問題でございますし、そのような問題に裁判所職員、裁判官、書記官が十分に力を傾注できるように、人的体制の充実を図っていきたいと考えているところでございます。

木下委員 いろいろお話しいただきました。要するに、一言で言うと質を向上していかなきゃいけないということだと思うんですね。

 この件について毎年改正がなされているので、過去の質疑の内容を調べてみたんですね。

 そうすると、昔は私と同じ党にいた椎名毅さんが言われていたんですけれども、瀬木比呂志さんという方が書かれた「絶望の裁判所」というところで、裁判官が和解の強要をするという人が、結構傾向があるんだと。判決文を書きたくない、こういうことになったりすることも、実際そうなっているのかどうか調べるのは難しいと思うんですけれども、もともとこの方は恐らく裁判官か何かをやられていた方だと思うんですけれども、その方が書かれたところにそういうことが書かれていたり。

 あと、先ほど言われていた合議。合議制に持っていきたいんだというふうに言っていて、複雑かどうか、複雑なものを合議にして判断していくんだということなんですけれども、判事の数が少なければ、先ほど畑野先生が言われていたように、そこに実際、物理的に人数が少なかったら、その判断をする際に、これは裁判官に委ねられているわけですから、合議に本来だったらするべきところが、人数が少ないからならないという可能性だってあるんだと思います。そういうことが一番大きな影響、しかも、あってはならない影響だと思うんです。

 そういう意味では、どんどん数はふやしていかなきゃいけない。ただ、何人ふやすのが理想形なのかということの結論をやはり出さなきゃいけないんじゃないかなということです。

 次に、弁護士とのバランスということをお話しさせていただきたいんですね。

 なぜならば、先ほど言われていた、民事なんかで損害保険に係る訴訟が多い。聞いていると、要は、交通事故なんかのときに弁護士費用特約というのがつくようになってから、その訴訟件数が物すごくふえているということで、しかも、それに対応する弁護士の数がふえたりしている。

 それで、見てみたんですね。司法修習生の終了後の進路別の人数というのをずっと書いてあって、全部読み上げると大変なんですけれども、修習生の終了者の数は、新司法試験導入の二〇〇六年から急激にふえている、おおむね倍以上にふえているとなっているんです。ただ、そのかわり、裁判官を進路に選んでいる方は、ずっとその前からしても大体百人前後。むしろ、最近になってはちょっと減ってきているぐらいという状態。弁護士になる方は、司法試験が変わってから急激に増加して、最近ちょっと低減しているけれどもということなんです。

 これは、考えたら如実にわかるのが、ここはビジネス的な観点を求めていいかどうかというのはありますけれども、弁護士も結局、食うために訴訟をいっぱい受け持たなきゃいけないわけですよね。そういうところで弁護士特約みたいなのが出てきたりということを考えると、明らかにバランスを欠いているんじゃないかなというふうに思っているんです。

 それから、過去の質問、答弁を見ていると、こういうことも言われていて、結局、新司法試験に移行して、全体はふえているけれども、判事補採用はさっき言ったみたいに減っている、何でですかというふうに言ったら、政府側の答弁で何と言ったかというと、判事になってほしい方、その満たしてほしい能力があり、修習生の中でそういう能力を満たしている人は限られているんだというふうに言われている。

 それはどういうことかというと、要は、人数はふえているけれども優秀である人は同じ、限られているということは、修習生の数はふえているんですから、優秀でない人、全体的なパイでいうとそんなに、例えば弁護士になる人でも優秀でない人がたくさんふえてしまった、だけれども訴訟の数がふえているということになるんじゃないかと思うんですけれども、その辺はどう考えればよろしいんですか。

中村最高裁判所長官代理者 まず私の方から、事件数と弁護士の関係についてお答えいたします。

 先ほど御指摘がありましたように、修習生から弁護士になる方がふえているという関係で、弁護士の数というのは、平成十九年に二万三千人程度だったものが、平成二十六年には三万五千人を超えているということで、大きく増加しているところでございます。

 ただ、地裁の一審民事通常事件の新受事件数でいいますと、平成十九年は十八万件台であったところ、二十一年までは増加しておりましたが、その後減少して、平成二十七年はやや増加しておりますが、まだ十四万件ということになっております。

 このように、弁護士数の増加が事件数の増加とは必ずしも結びついているとは言えず、裁判所として、その要因については依然判然としないというところでございます。

木下委員 ぜひ、そういったところも分析をしっかりしていただいて、なぜこういうことを言うかというと、要は、人数だけをやみくもにふやすんじゃなくて、中身を重視していかなきゃいけない。それから、もう一つは質的向上ですね。目標をどうするかということを定めていく必要があるということなんです。

 きょう、大臣の御答弁の回数が少ないので、最後に聞かせていただきたいんですけれども、やはり一番大きなところで根本的にやらなきゃいけないことは、裁判官、判事になりたいと思う人をふやしていかなきゃいけない、あらゆる手だてをつけていろいろなことをやっていかなきゃいけないと私なんかは思っているんです。

 今、司法修習生が給費制から貸与制に変わったということで、日弁連さんなんかは相当いろいろなことを言われていますけれども、難しいかもしれないですけれども、判事になるというような人に対してはそういったところのインセンティブをつけるという検討をしてみたりとか、そこは無理だとしても、何かそういうことをしていかなきゃいけない。

 しっかり目標を定めて、そのための何か手だてというのを考えていかなきゃいけないと思うんですけれども、大臣にお聞かせ願いたいのは、要は、これからも人数だけで調整しようとされているのか、それとも、やはり抜本的対策を積極的に考えようとなされているのか、これはどちらなのかということを最後にお聞かせいただきまして、終わりにしたいと思います。

岩城国務大臣 御指摘のとおり、司法権の担い手であります裁判官の人材確保は極めて重要であります。

 インセンティブのお話もありましたけれども、司法修習生は、進路にかかわらず、法曹三者を統一的に養成するという統一修習を受けることとなっておりますので、裁判官を目指す司法修習生に限って経済的支援を拡充することは、今のような統一修習のもとでは慎重な検討を要するもの、そのように考えております。

 ただ、お話のありましたとおり、要するに、裁判官の人材確保は極めて重要でありますので、いろいろと総合的に、委員の御指摘も踏まえまして検討していくべきものであると考えております。

木下委員 ぜひ、抜本的な改革に手をつけていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で木下智彦君の質疑は終了いたしました。

 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十八日金曜日正午理事会、午後零時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十三分散会


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