衆議院

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第18号 平成28年5月18日(水曜日)

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平成二十八年五月十八日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      あかま二郎君    小田原 潔君

      大塚  拓君    奥野 信亮君

      加藤 鮎子君    勝沼 栄明君

      門  博文君    上川 陽子君

      今野 智博君    笹川 博義君

      田所 嘉徳君    高橋ひなこ君

      武井 俊輔君    武村 展英君

      辻  清人君    冨樫 博之君

      古田 圭一君    細田 健一君

      宮川 典子君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    山田 賢司君

      若狭  勝君    緒方林太郎君

      中根 康浩君    大口 善徳君

      吉田 宣弘君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    木下 智彦君

      上西小百合君    鈴木 貴子君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   総務大臣政務官      輿水 恵一君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平木 正洋君

   最高裁判所事務総局家庭局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  田中 勝也君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房独立公文書管理監)        佐藤 隆文君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房成年後見制度利用促進担当室長)  中島  誠君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 河合  潔君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 露木 康浩君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 斉藤  実君

   政府参考人

   (個人情報保護委員会事務局長)          其田 真理君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          萩本  修君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    林  眞琴君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小川 新二君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    片岡  弘君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    藤井 康弘君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     武井 俊輔君

  辻  清人君     武村 展英君

  藤原  崇君     細田 健一君

  宮路 拓馬君     加藤 鮎子君

  若狭  勝君     小田原 潔君

  階   猛君     中根 康浩君

  山井 和則君     緒方林太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     山田 賢司君

  加藤 鮎子君     宮路 拓馬君

  武井 俊輔君     勝沼 栄明君

  武村 展英君     辻  清人君

  細田 健一君     高橋ひなこ君

  緒方林太郎君     山井 和則君

  中根 康浩君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     門  博文君

  高橋ひなこ君     藤原  崇君

  山田 賢司君     若狭  勝君

    ―――――――――――――

五月十八日

 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案(参議院提出、参法第六号)

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

同月十六日

 国籍選択制度の廃止に関する請願(玉城デニー君紹介)(第一八三七号)

 同(辻元清美君紹介)(第一八六九号)

 同(小川淳也君紹介)(第一九一八号)

 もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(玉城デニー君紹介)(第一八三八号)

 同(辻元清美君紹介)(第一八七〇号)

 同(小川淳也君紹介)(第一九一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 民法の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官田中勝也君、内閣府大臣官房独立公文書管理監佐藤隆文君、内閣府大臣官房成年後見制度利用促進担当室長中島誠君、警察庁長官官房審議官河合潔君、警察庁長官官房審議官露木康浩君、警察庁長官官房審議官斉藤実君、個人情報保護委員会事務局長其田真理君、法務省大臣官房審議官高嶋智光君、法務省大臣官房司法法制部長萩本修君、法務省民事局長小川秀樹君、法務省刑事局長林眞琴君、法務省矯正局長小川新二君、法務省保護局長片岡弘君、外務省大臣官房審議官水嶋光一君、外務省大臣官房参事官飯島俊郎君、厚生労働省大臣官房審議官堀江裕君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長藤井康弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局刑事局長平木正洋君及び家庭局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘でございます。本日も質疑時間を与えていただきましたこと、委員長、委員会理事、委員各位に心から感謝を申し上げたいと思います。

 早速ですが、質疑に入らせていただきます。先般の熊本地震に関連した質問をさせていただきたいと思っております。

 私も、発災後、四月十七日それから五月四日と、二回にわたり熊本の被災地に入らせていただきました。現地の惨状は極めて凄惨でありまして、発災直後に入った十七日は、水もない、食料もないという非常に厳しい状況でございました。あれから一カ月たった今であってもまだ、車に寝泊まりをしたりとか避難所生活をされたりしている被災者がいることに、私は胸を痛めている次第でございます。

 加えて、この惨劇の中で非常に困っている被災者の財産を狙う本当に極悪な犯罪が発生していることに、私は深い憤りを覚えてなりません。これから数点質問をさせていただきますけれども、私は、この怒りを持って今回この質問に臨ませていただいております。

 当局にお聞きをさせていただきたいと思います。

 今、熊本地震における窃盗被害の現状認識、どのような犯罪が発生して、また被害額はどのくらいなのか、そういった悪さをした人間はどのぐらい捕まっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

河合政府参考人 お答えいたします。

 昨日五月十七日までに、熊本地震の被災地の家屋への空き巣や避難所における置き引きなどの窃盗事件として計四十七件を認知しております。このうち、空き巣被害は三十件でございます。また、窃盗事件の被害額は、合計約一千三百万円相当でございます。

 検挙につきましては、熊本県警察において、窃盗等の被疑者として五件、五人を検挙しております。なお、認知件数四十七件における検挙件数の割合は一〇・六%であります。

吉田(宣)委員 四十七件も発生している。また、被害額は一千三百万。

 私は、発災後、さまざまな街頭で、有志の依頼を受けて募金活動をさせていただきました。たくさんの方が我が身のことのように募金に応じてくださいました。ただ、一千三百万も募金を集めるというのは相当大変な作業でございまして、これを本当に人が弱っているときに奪い去っていくということは到底許されないし、いまだ犯人も五人しか捕まっていないということに関しては、当局に対しては、ぜひ対応していただいて厳罰に処してほしい、私はそのように思っております。

 ただ一方で、まだ被災状況というのは継続をしております。こういった厳しい状況の中で、こういった悪さをする人間というのは決して許されないし、また、させてはいけないと思います。

 そういった意味において、防犯の強化というのは徹底して私は求めさせていただきたいと思いますが、その状況についてお聞かせをいただければと思います。

河合政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、被災地における空き巣等の対策として、熊本県警察だけでなく、他の都道府県警察から派遣された応援部隊も含めて、まず、住宅地区も含めた被災地域における警戒パトロールの強化、避難所等におけるチラシの配布、ホームページやメール、ツイッター等による貴重品の適切な管理、保管の呼びかけ等の被害防止のための積極的な注意喚起、そして被疑者の早期検挙に向けた取り締まりの強化などの取り組みを講じております。

 引き続き、空き巣等への対策も含め、被災地域の治安確保のための取り組みを進めてまいります。

吉田(宣)委員 ぜひよろしくお願いします。こういった悪さをする人間が思いとどまるような厳しい警戒態勢をしいていただくよう強く求めます。

 また、このことは、先般の補正予算の審議に当たった本会議においても、我が党の石田政調会長から、許せない、私はそういう思いであります、災害時の窃盗犯罪に対する罰則強化を求める声も寄せられております、被災者の方々が二次避難所等で安心して暮らせるためにも防犯の体制の強化が必要でありますというふうに訴えられておりますし、また、それに対する安倍首相の答弁においても、警戒パトロールの強化等による防犯対策、こういうようなものにはしっかり取り組んでいく、そういった決意が述べられておるところでございますので、どうかよろしくお願いいたします。

 もう一点、これに関連して質問をさせていただきますが、今回の熊本地震における窃盗犯に対しては、私は今、本当に怒りを込めて質問をさせていただいておりますけれども、この心というか心情というのは国民の多くの方がやはりお持ちではないのだろうかと思いますし、私は、絶対に許してはならないというふうに思っております。

 被災者に対する窃盗犯罪を許さない、抑止するという観点からは、例えば、窃盗罪の法定刑を引き上げてみたりとか、また、特別刑法を新たに創設してみたりとかいうふうな立法措置も検討されていいのではないのかなというふうに私は考えておりますが、当局の見解をお伺いさせていただければと思います。

林政府参考人 委員御指摘のとおり、震災によりさまざまな困難を強いられている被災者の方々を狙った窃盗犯につきましては、その犯情において極めて悪質な犯罪でございまして、厳正に対処すべきものと考えております。

 この点につきまして、現行刑法における窃盗罪は、十年以下の懲役という重い刑を科し得るものとなっております。これに加えましてさらに法定刑を引き上げることにつきましては、まず一つには、具体的にどのような行為を切り出してその検討の対象とするのか、また、ただいま申し上げました十年以下の懲役という現行法の法定刑では賄えないような状況が生じているかどうか、あるいは、引き上げるとした場合にどの程度の引き上げを必要とするのか、こういったことにつきまして、多角的な観点から、その要否を含めた慎重な検討が必要であろうと考えられます。

 いずれにいたしましても、検察当局におきましては、こうした、被災者の方々の窮状につけ込むなどして悪質と認められる事案につきましては、現行法の範囲内において厳正に対処するものと承知しております。

吉田(宣)委員 今御説明いただいたとおり、十年以下の懲役、重い懲役が法定されているというふうなことでありまして、量刑の範囲内でこれを行うということも私は十分理解できるところでございますけれども、一方で、避難者を狙った空き巣被害で、ただでさえ体力的にも精神的にも極めて弱り切っている被災者が自分の大切な財産を奪われた、そういったときのいわゆる心に与える打撃というのは、私ははかり知れないことだと思っております。そういったことによって、例えば体調が物すごく悪くなったりとか、そういった、いわゆる体の生理的機能も害するようなことにもつながってくる可能性も高いというふうに私は思っております。

 その点、傷害罪の構成要件というのは、私は、人体の生理的機能を害するような行為だというふうに承知をしておりますが、結局、それに類するようなことでもあるんじゃないのか。傷害罪の法定期間は十五年が上限でございますけれども、そういったことも加味していいのではないかというふうに私は思っております。

 時間がないので、次の質問に入らせていただきます。

 今般衆議院を通過した総合法律支援法が成立をすれば、災害被災地では法テラスでの無料法律相談が実施できるようになるというふうに私は承知をさせていただいております。この法律の成立後、速やかに熊本地震の被災者が利用できるようになるのかについてお聞かせいただければと思います。

萩本政府参考人 総合法律支援法の改正法案が新設することとしている大規模災害の被災者に対する無料の法律相談制度ですが、これが適用できるかどうかは、まず、この改正法案が規定している大規模災害に熊本地震が当たるかどうかが問題になるところです。

 この改正法案が対象としている災害は、「著しく異常かつ激甚な非常災害であって、その被災地において法律相談を円滑に実施することが特に必要と認められるもの」でございます。これは、死者、負傷者、避難者などの被災者が多数に上り、住宅の損壊など甚大な被害が生じ、交通やライフラインが広範囲にわたって途絶するなど、地域全体の日常生活が破壊された状態になるような災害を想定したものでございます。

 これを熊本地震について見ますと、熊本地震では、熊本県を中心に、千七百人を超える方が死傷し、約一カ月を経過した時点でもなお一万人を超える方が避難所での避難生活を継続している上、八万棟を超える住宅が損壊し、依然として交通やライフラインが広範囲にわたって途絶している状況にあると承知しております。

 改正法案は、現在、参議院で審議中ですので、踏み込んだことを申し上げるのは適当ではないかとは思いますが、当委員会の附帯決議、災害の指定に際してはその趣旨を没却することがないように留意することという附帯決議を踏まえて考えますと、こうした被害状況に照らして、熊本地震は、改正法案が規定する災害に該当し得るものと考えているところでございます。

吉田(宣)委員 該当し得るということで、ぜひ該当させていただいて、この法律が成立してからでございますけれども、ぜひ無料法律相談というものも熊本で実施をさせていただきたいなと思います。

 では、ちょっと仮定の質問で非常に難しいところがあるのかもしれませんけれども、晴れてこの法案が成立した暁に、熊本地震を対象として無料法律相談を受けられるようになるのは、難しいかもしれませんが、いつごろからになるのか、見通しについてお聞かせいただければと思います。

萩本政府参考人 改正法案は、被災者に対する無料法律相談につきまして、その対象とする災害、対象とする地区及び実施期間を政令で定めることとしております。したがいまして、熊本地震の被災者に改正法案の規定を適用して法テラスによる無料法律相談を実施するためには、施行日政令を制定して当該規定を施行するのみならず、政令により、災害、地区、実施期間を指定する必要がございます。また、法テラスにおいて、業務方法書等各種規定を改正するなどの施行準備も必要になります。

 このように一定の準備期間を要することにはなりますが、改正法案の成立が認められました場合には、被災者の被害回復や生活再建を図るという新制度の趣旨に鑑みまして、熊本地震の被災者が可能な限り早く法テラスの無料法律相談を利用できるよう、法テラスとともに準備を進めてまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 ぜひ頑張っていただいて、できるだけ早い段階で熊本の被災者の方が法テラス、無料法律相談を利用できるように努力をしていただければとお願いをしたいと思います。

 さらに加えます。

 この無料の法律相談、非常に画期的な話だと私は思っておりますけれども、被災者は疲労こんぱいしております。いまだに避難生活が継続していることからも、体力的にも精神的にも、その御苦労はいかばかりかと思うばかりでございます。

 例えば、無料の法律相談ですけれども、法テラスまでわざわざ出向いていくのではなくて、被災者のもとに足を運んで実施する、いわば出張法テラスなども私は考えていいのではないのだろうかというふうに思っておりますが、当局の見解をお聞かせいただければと思います。

萩本政府参考人 法テラスによる無料法律相談援助は、法テラスの事務所で実施するだけではなく、それ以外にも、利用者の居住する場所に法律相談を担当する弁護士等が赴く出張相談、地方公共団体の施設などあらかじめ指定した場所を弁護士等が巡回する巡回相談、そういった方法でも実施しているところでして、東日本大震災の被災者に対しましても、これらの方法を活用し、避難所の被災者のもとを訪れるなどして法律相談を実施してきているところでございます。

 熊本地震の被災者に対しましても、前提が満たされた場合ですけれども、そうした前提が整った場合を想定しまして、法テラスでは、東日本大震災の際の対応と同様に、出張相談、巡回相談を積極的に実施して避難所を訪れるなど、被災者の方々にとって法律相談が利用しやすいものとなるよう検討を行っているものと聞いております。

吉田(宣)委員 ぜひ実施をしていただきたいと思います。

 場所の確保であったりとか、また、これには弁護士会の協力も欠かせないと思いますけれども、そういったところはしっかり取り組んでいただいて、被災者に寄り添った法テラスの運用をしていただければと思います。

 最後に、岩城大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 岩城大臣は、東日本大震災の被災地福島が御地元であるというふうに承知をさせていただいております。そういった意味から、福島のみならず、東日本大震災の被災地におけるさまざまなリーガルサービスについても、その状況を把握していらっしゃるのではないかなというふうに私は思っております。

 そして、熊本地震においても、さまざまなリーガルサービスに対するニーズというものが私は生じていると思いますし、それにはしっかり対応していかなければいけないというふうに思っております。

 そういった意味からも、今回の総合法律支援法については速やかな成立を図っていただきたい。また、出張法テラスなど、そういった実施については、被災者に寄り添った、血の通った運用をぜひお願いしたいと思っております。これは、私は、被災地を知り尽くしておられる岩城大臣であるからこそ強く期待を申し上げるものでございまして、この点に関する岩城大臣の御決意をお聞かせいただければと思います。

岩城国務大臣 五年前の東日本大震災、あのときに私も、被災地の一員としまして、さまざまなことを見、聞き、体験をしてまいりました。そんな中で、やはり被災された皆様方がさまざまな法的問題を抱えていらっしゃいましたけれども、どこに相談に行っていいかわからない、そういった事情もございました。

 そうした中、法テラス震災特例法により実施されています法テラスの無料法律相談、こういったものを利用していただきました。その件数は、年に四万件から五万件に上っております。多くの被災者の方々の被害回復あるいは生活再建の一助となってきたものと考えております。

 そこで、委員御指摘のとおり、今回の熊本地震につきましても、数々の法的問題をお抱えになっていらっしゃる被災者の方々が数多くいらっしゃるものと拝察をいたしております。そこで、この法律案の成立を何としてでもお願いしたいということで努力をさせていただいておりますが、成立いたしましたならば、熊本地震を初めとする大規模災害の被災者が法テラスの無料法律相談を一日も早く利用できるよう、法律の早期施行及び政令による災害の早期指定に向けて尽力をしてまいりたいと考えています。

 また、この無料法律相談の実施につきましては、これもお話のありましたとおり、避難所等においての実施を検討するなど、被災者の立場に立った、そのニーズに応じた利用しやすい運用がなされるように、法テラスにしっかりと要請をしてまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 私のふるさとは熊本でございます。しっかり取り組んでいただきたくお願いして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で吉田宣弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民進党の逢坂誠二でございます。

 きょうは二十分という短い時間ですけれども、大臣初め皆さんにお世話になります。よろしくお願いいたします。

 きょうは、まず最初に熊本地震の話をさせていただきたいと思うんですが、まず冒頭に、今回被災された皆さんに改めて心からお見舞いを申し上げると同時に、亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げたいと思います。

 今回の熊本地震、私も、被害の状況を見ておりまして、これまでの地震とも随分違っているなというふうにも感じております。私自身も、例えば、北海道で、有珠山の噴火でありますとか、あるいは奥尻島が壊滅的な被害を受けたあの地震の対応でありますとか、幾つかの地震、火山災害の対応をさせていただいたことがありますけれども、それとはまた違った相当な困難さがある。特に、余震が続いているという中では、被害が固定化しないという意味で、被災地の皆さんの不安、あるいは心の揺らぎといいましょうか、それはもう相当大きなものがあるなというふうに思っております。時間の経過とともに被害の大きさというものもどんどんどんどん出てきているというふうにも感じておりますので、我々民進党としても、全力を挙げて、一日も早く復旧復興ができるように力を尽くしてまいりたい、そのように思います。

 さて、そこで、今回、この法務委員会におきましても、当初、議員立法で、義援金の問題についてこの法務委員会でという話があったのは皆さんも御承知かと思いますけれども、義援金については、そのまま被災者の皆さんに給付されるということになりますと、場合によってはそれが差し押さえの対象になるということであります。

 東日本大震災のときは、東日本大震災のときだけに対応できるように特別立法をつくって、義援金が差し押さえの対象にならないようにしたわけであります。今般も議員立法によってそういう対応をしようということで、当初、法務委員会というふうに聞いておりましたけれども、災害対策特別委員会の方でこの問題が議論され、義援金が差し押さえの対象にならないというふうになろうと思っておりますし、我が党も当然それに賛成をして、一日も早く成立させなきゃならないと思っております。

 そこでなんですが、震災が起きるたびにこのように特別立法で、あるいは議員立法でやるというのは、いかにも不安定ではないかなというふうにも思っております。ほかの幾つかの災害に関するお金、例えば生活支援の関連でありますとか、そういったものは恒久法で制定されているわけであります。義援金だけが議員立法でやられているということでありますので、恒久法を考えていくということは非常に大事なことではないかというふうに思います。

 差し押さえについては、例えば生活保護なら生活保護、それぞれの各法でやられている部分と、一般法としては法務省が担当というふうにも伺っておりますけれども、義援金の差し押さえを免れるというようなことを恒久法化することについて、実際の経験も踏まえて岩城大臣はどのようにお考えか、考えを聞かせていただければと思います。

岩城国務大臣 義援金の差し押さえを禁止する一般法を作成することについてはどうかというおただしだと考えております。

 いわゆる義援金等につきましては、一般的に差し押さえを禁止することの是非に関しましては、義援金の交付の目的や交付の仕組み、あるいは金額の多寡など、さまざまな要素を考慮して検討されるべきものでありまして、一律に論じられるものではない、そのように考えております。

 したがいまして、法務省としては、一般論として申し上げますと、いわゆる義援金について、特定の災害の発生に伴う義援金を念頭に置くのではなく、一般的に差し押さえを禁止する措置を講ずることには多くの課題が伴い、必ずしも容易ではない面があるもの、そのように考えております。

逢坂委員 法務省としては割と慎重な姿勢ということのように受けとめたわけでありますけれども、ただ、今回の熊本のようなこと、前回の東日本大震災もそうでありますけれども、そういう状況を考えると、何らかの形で恒久化しておくことがいいのではないか。

 もちろん、これは、法務省として難しいということであれば、議員立法という手もあるんだろうとは思いますし、立法府としては、やはりその都度やっていくというのは被災者の皆さんに相当大きな不安を与えるということにもなりますので、私は、個人的には、何らかの形でこれの恒久化を考えていきたいというふうに思っております。そういう具体的な議論が出た際には、ぜひ法務省の皆さんにもアドバイスをいただければと思いますし、場合によっては法務省が主体的にやるということも選択肢として出てくるのかもしれません。いずれにしても、今のうちから決め打ちをするというのは少し時期が早い気もしますけれども、そういった恒久化を射程に置くべきだろうと、私の思いを述べさせていただきたいと思います。

 それでは次に、実は、この義援金と同時に、震災が起こる都度被災地で問題になっているというふうに認識をしているんですが、生活保護と義援金の関係について、東日本あるいは今回の熊本地震において、何か不都合が生じているケースとか、そういうものがないのかあるのか、そのあたり、厚生労働省の方で実態を把握しておれば教えていただきたいんです。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護制度一般といたしましては、利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することが前提で、収入があった場合には、原則として、その分保護費を減額し、保護の停止、廃止になる場合もありまして、義援金だからといって、一律全額収入認定しないという取り扱いとすることは困難なわけでございます。

 東日本大震災のときにも、取り消しされたりとか停止されたりしたというような場合があって、個々には特にあれでございますけれども、東日本大震災のときに取り扱いを明確化いたしまして、義援金について、住居の補修、生活用品、家具、家電などの生活再建に充てられる場合には、その金額を収入認定しないというふうにしております。そこには、生活用品・家具、家電、生業、教育のためのお金、住んでいる家の補修、建築、配電・上下水道の整備、結婚費用、墓石、仏壇、法事の経費、通院、通所、通学のための保有を容認されました自動車の維持に要する費用ということが比較的かなり広範に記載してございまして、かつ、機械的な取り扱いをしないようにお願いしているところでございます。

 まさに被災者の生活再建が第一なわけでございまして、できましたらば、福祉事務所の方によく相談いただければ、その辺、柔軟に対応していただけるものと思います。

 東日本大震災のときに停止された案件、報道によれば二千件近くあるというようなことも承知してはおりますけれども、それは個々の事情がいろいろあるんだと思います。かなり多額の賠償金が入ってしまって、それが収入認定されるような場合もあるのかもしれません。

 ただ、そういう場合でも、すぐに使用しなくても、自立更生計画というものの中に入れていただいて、こういうふうに使用する予定でございますというようなものを書いていただいて、それを福祉事務所とよく相談いただいた場合には、直ちに使用しない場合でも、持っておいていただいて、かつ、収入認定しないというような取り扱いもしてございますので、まずは、よく福祉事務所と、何か福祉事務所に相談すると、ではそれも認定しましょうねと見られてしまうのかもしれませんけれども、ここは被災者の話だということは、福祉事務所もいろいろな案件があって大変かとは思いますけれども、被災者の方を相手に丁寧にお話をお聞きいただけるものと思いますので、御相談いただけるようにお願いできたらというふうに考えてございます。

逢坂委員 まず、今の話からすれば、東日本大震災あるいは熊本地震、まあ、熊本地震の方は発災後時間がまだそれほどたっていないので、具体的なものはなかなかまだつかめていないのかもしれませんけれども、いずれにしても、生活保護と義援金との関係で、受給者の方にしてみると、何らかの不利益というか、そごというか、不安というか、そういう事例があったということだろうと思います。

 それを解消するために、自立更生計画なるものを福祉事務所と相談してもらいたいということでありますけれども、厚生労働省にぜひお願いしたいんです。

 一つは、自治体の中にそういう制度があって、それをちゃんとやれば収入に認定されないんだ、そういうふうになっているということを、必ずしも多くの自治体のケースワーカーの皆さんとかが知らない場合もあろうと思います。

 それからもう一つは、受け身でいるということではなくて、相談に来たら対応してやろうということであるならば、その制度そのものを受給者の皆さんがわからなければ、ただただ不安の中にいるわけでありますので、こういう制度があるんだということを積極的に周知、PRするといったようなことも必要かと思います。

 それから三点目なんですが、自立更生計画の中で、特別な収入、自立のために充てられる経費があるんだというふうに認定される場合はいいんですけれども、場合によっては、それを上回るという場合もあると思うんですね。そういった場合はどうなるのかといったことも不安を解消してあげなければ、義援金というのは、割と自動的に、私が五千円欲しいよとか五万円欲しいよということにかかわらず被災者のもとへ届けられることが原則でありますので、そういったときに、これはもらっていいのかなと不安になると思うんですね。

 だから、そのあたりの不安を払拭できるように、ぜひ厚生労働省、この点は一生懸命やってもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。

堀江政府参考人 先般も、五月七日ですか、新聞の方に報道されて、義援金について、被災者が受取額の増減を要求できず、全額受け取れるか、受け取れないかの二者選択で、収入扱いなら生活保護が減額されるというような記事もあって、こういう記事自体、目にされた方には大変不安になるんだろうなというふうに思います。

 それで、先ほど申し上げましたように、今直ちに使うものでなくても自立更生計画の方に入れていただければいいんですというようなこと、これは東日本大震災のときに通知の中で明らかにしているわけでございますけれども、今回も、既に自治体の方に周知して、その取り扱いを引き続いてやってくださいというふうに言ってございます。

 それから、二点目といたしまして、先生の方から、受け身だけではなくてということでございますけれども、生活保護を受けている方については毎月のようにケースワーカーの方が訪問いただくことでございますので、義援金はそうすぐに入ってくるようなものでもございませんので、そうした際に相談を聞き出して対応いただくということがあるのではないかというふうに思います。

 そうしたことも含めまして、さっきの三番目が、自立更生計画でその額が上回ると。それは、本当に大きな額が入ってくるような場合というのはあろうかと思いますけれども、それも、住居を失ってそれの自立再建のためというような場合もあろうと思いますので、そうした場合には、比較的額が大きくなっても収入認定されない扱いも可能だと思います。

 被災地のケースワーカーの方も、それは大変な思いをしながら仕事をされているんだと思いますけれども、何といっても被災者である被保護者の方を最優先に、丁寧に対応していただきたいというふうに考えてございます。

逢坂委員 厚生労働省の皆さん、ぜひよろしくお願いします。

 それでは、この質問はこれで終わりますので、厚生労働省さん、どうぞお引き取りいただいて構いません。ありがとうございます。

 それでは、次でありますけれども、お手元に資料を用意させていただきました。日本の報道自由度ランキングというものが先般発表されまして、お手元の資料は、四月二十四日の朝日新聞に掲載された資料であります。

 日本の報道の自由度ランキングを国際NGOが調べているわけですが、二〇一〇年当初は、世界で十一番目、報道の自由度が高い方だった。ところが、二〇一六年になりますと、世界で七十二位ということで、まあ、がががががっと下がってきているわけであります。これは、私は、民主主義国家として非常に残念なことだろうというふうに思うわけです。

 ちょっと時間もございませんので、端的に、まず放送を所管している総務省さんに、なぜこんなにこのランキングが下がるのか、これについてどのように考えているのか、御認識をちょっと総務省の方からお伺いしたいと思います。

輿水大臣政務官 お答え申し上げます。

 御指摘の報道の自由度ランキングにつきましては、その評価手法の詳細を承知していない状況でございまして、コメントにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、表現の自由、報道の自由を尊重すべきということは、言うまでもなく、我が国の放送法におきまして放送事業者の自主自律を基本とする枠組みとなっておりまして、そういった放送事業者がきちっとした形での取り組みをされるものと我々は理解しているところでございまして、今までの政府の方針と何ら最近変わったところもない、そういう認識でございます。

逢坂委員 輿水政務官、こうした調査の手法についても承知していないから特段のコメントをすることはできないんだということでありますけれども、こういう状況になっているということは、これは日本国として恥ずかしいことだと私は思うんですよ。でありますので、中身はいろいろあろうかと思いますけれども、この状況をどうやって打破できるのかということについて後で政治家の言葉として述べていただきたいと思いますので、ちょっとお考えいただけますか。

 それで、岩城法務大臣にお伺いしたいんですが、このランキングについて、こうやって下がっていく理由の一つにやはり特定秘密保護法があるんだろうと。特に、特定秘密の範囲が曖昧である、そして取材の方法によっては記者自身が罪に問われる可能性がある、そうしたことも影響してこういうふうにランキングが下がっているんだという一部報道、これは私がそう思っているということではなくて、そういう報道もあるわけでありますけれども、岩城大臣、この十一位から七十二位に下がっているという現実をどのように捉えられるでしょうか。

岩城国務大臣 お尋ねのランキングにつきましては、民間の組織の順位づけでありまして、どのような基準でどのような判断で行ったかということは承知しておりませんので、直接のお答えは差し控えさせていただきたいと存じます。

 そして、その上で申し上げますと、特定秘密保護法上、特定秘密は、法律に限定列挙した、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の四分野、二十三の事項に関するものに限って指定されておりますし、また、情報保全諮問会議の有識者の意見を踏まえて作成した運用基準では、これを五十五の事項の細目にさらに限定、細分化しております。こういったことから、特定秘密の範囲が不明確になるとは考えておりません。

 なおかつ、特定秘密保護法第二十二条第二項では、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」と規定しております。したがいまして、通常の取材行為は、刑法第三十五条の正当な業務による行為に該当し、処罰対象とはなりません。

 このように、報道の自由等に十分に配慮した運用が確保されているものと認識をしておりますので、私としましても、今後も法律の適正かつ円滑な施行に努めてまいりたいと考えております。

逢坂委員 それは法を所管する側の説明だというふうに思うんですが、それを受けとめる側は必ずしもそう思っていないからこういうランキングにきっとなっているんだと思うわけでありますので、ぜひ、受けとめる側といいましょうか、そちら側の不安がきちっと払拭できるように、これからもきちんとした説明やら運用やらということが必要になるんだと思います。

 そこで、改めて輿水政務官にお伺いしますけれども、今の七十二位という状況、これは中身はよくわからないんだということでありますけれども、私、このままでいいとは思えないんですよ。これを改善していくために、少しでも順位を上げていくために、どんなことをすればいいというふうにお考えなのか。それは、役所としてというよりも、政治家としてどう思っているか、そのあたり、放送を所管する立場としてお話しいただければと思います。

輿水大臣政務官 お答え申し上げます。

 まさに先ほども申し上げましたとおり、今回のランキング、どういった基準でどのようになされているかということは承知していないので、それに対してのコメントはできないんですけれども、まさに日本というのは表現の自由また報道の自由というものが確保されているという中で、我々も、放送法に基づいて放送事業者が自主的、自律的に放送番組をきちっと作成していくという環境がしっかり整っているわけでございますし、その方針を変えているわけでもないということで、そのことをきちっと理解していただきながら、今後も、今までのように引き続きそういった自由を確保しながら適切な放送が行われるように進めていきたい、このように考えております。

逢坂委員 岩城大臣にも聞きたかったんですが、時間が来ましたのでこれでやめますが、まず一つ、NGOがどうやってこれを調査しているかというのは、能動的に調べようと思ったら調べられるんですね。だから、どういう項目でどういう配点基準にしているかということはわかるわけですので、承知していないということは、こういうランキングに対して少し感度が低いのではないかというふうに思います。政治家としてもう少し感度を高くしておくべきではないかということを申し上げたい。

 報道の自由とか表現の自由というのは、我が国はそういう国であるから、報道の自由や表現の自由が守られている国であるからということを前提にして物事を全てしゃべるというのは私は少し危険だと思っておりまして、報道の自由や表現の自由が守られているのか、それが貫かれているのかどうかを不断にチェックしておく姿勢というものが私は必要だと思っております。我が国は法律にそういうふうに書いてあるからとか放送法に書いてあるからということではやはりだめなんだろうと思っておりますので、この点についてはまた別の機会に詳しくやらせていただきたいと思います。

 きょうはありがとうございます。

葉梨委員長 以上で逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民進党、緒方林太郎でございます。

 きょうは、十五分時間をいただきまして、本当にありがとうございます。葉梨委員長にも、本当によろしくお願い申し上げます。そして、岩城大臣とは予算委員会とか内閣委員会では何度も質疑させていただきましたが、法務委員会は初めてということでありまして、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 きょうの私の質問は成年後見制度に関するものでありまして、私、内閣委員会の野党筆頭理事をやっていることから、今国会で議員立法で成年後見の法案が通りました、施行もされております、この法律を通じて成年後見制度の利用促進が進んでいくことを心から願うわけであります。

 まず、内閣府にお伺いをいたしたいと思います。

 今回の議員立法で設けられることになっている閣僚会議、そしてそのもとに成年後見制度利用促進委員会というものができることになっております。この利用促進委員会の構成がどうなるのかというのは、今後の成年後見制度の活用にとってとても重要ではないかというふうに思っております。研究者のみならず、実務者等々を含めた幅広い方がこの成年後見制度利用促進委員会に入るべきだというふうに思いますが、内閣府。

中島政府参考人 御指摘の成年後見制度の利用の促進に関する法律につきましては、先生の御尽力もございまして、本年の四月八日に成立し、先週でございます、五月十三日に施行ということで、同日付で私ども内閣府に担当室も置かれたところでございます。

 御指摘のとおり、この法律に基づきまして、成年後見制度の利用促進を総合的かつ計画的に図っていくということで、基本計画をつくるということになっておりまして、促進会議、そして有識者等から成る促進委員会を置いて御議論いただくということです。

 促進委員会の委員の具体的人選については、法律で、すぐれた識見を有する者のうちから総理大臣が任命するとなってございます。本日の委員からの御指摘も踏まえまして、具体的人選に早速入りたいと思っております。よろしくお願いいたします。

緒方委員 よろしくお願い申し上げます。

 議員立法をいろいろ検討する際に必ず上がってきたテーマとして、不正事案の話、どうしてもこれが上がらざるを得ない。横領であるとか、さまざまな不正事案の話が上がってきておりまして、これは、成年後見を担う司法書士の方々もよく認識をしておられて、司法書士会と別法人で公益社団法人リーガルサポートという組織を設けて、そこで、成年後見をやっておられる司法書士の方々から業務の報告をしてもらうという制度を公益社団法人リーガルサポートで行っているということでして、これが一定のチェック機能を果たしているということであります。まさに、利活用を促進していくという側面がある一方で、横領とか不正事案を防いでいかないとやはり制度全体に対する信頼が高まらないということで、これは私、とてもいい取り組みだというふうに思います。

 しかしながら、この公益社団法人リーガルサポートが若干苦慮しているところがあって、成年後見をやっているそれぞれの方々から業務の報告をしてもらう際に、ちょっと幾つか越えなきゃいけないハードルがあるのではないかということで、いつも指摘を受けているということがありました。きょうはそのことについて質問していきたいと思います。

 幾つかあるんですけれども、まず外務省にお伺いをいたしたいと思います。

 このリーガルサポートが行っているような業務報告制度が障害者権利条約に反するのではないか、障害者権利条約で保障されているところのプライバシーとか、そういったところに反するところがあるのではないかという指摘があるそうでありますけれども、これは、条約との整合性について、外務省、いかがお考えでしょうか。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員ただいま御指摘の成年後見センター・リーガルサポートによります事業報告制度でございますが、障害者の意思決定あるいはプライバシーの尊重に関します障害者権利条約の関連規定に沿ってこの事業報告制度が適切に運用される限りにおいては、同条約の規定との関係で問題を生ずるものではないというふうに考えてございます。

緒方委員 ありがとうございます。

 次に、この報告制度が、障害者権利条約との関係では、きちっとやっている限りにおいては問題ないという話でありましたが、では、今度は業法との関係で大丈夫なのか。

 司法書士法第二十四条で個々の司法書士の方には保秘義務が課されているわけでありまして、それを、同じ司法書士の方がやっている組織で、リーガルサポートという組織であるとはいえ、第三者に対してその情報を報告するということは司法書士法第二十四条の守秘義務の規定に違反するのではないかという指摘があるそうでありますけれども、この法律との整合性の解釈について、法務省。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘ございました司法書士法第二十四条は、司法書士に対し、業務上取り扱った事件についての秘密保持義務を課しておりまして、この二十四条に言います業務といいますのは、司法書士法三条に掲げられている本来的業務を言うと解するのが自然でありまして、成年後見業務のような司法書士以外の者も行うことのできる業務は、これに該当しないと考えられるところでございます。

 したがいまして、司法書士が成年後見人としての業務上知ることのできた事柄については、司法書士法二十四条が規定する秘密保持義務の対象にはならないというふうに考えられますので、その司法書士が、御指摘ありましたリーガルサポートに成年被後見人の預金通帳の原本を提示するなどのことにつきましては、司法書士法に違反するものではないというふうに考えてございます。

緒方委員 ありがとうございました。

 それでは、質問を進めたいと思います。

 この業務報告制度においては、通常は、平時においては、個人の名前をマスキングして、そしてそういう情報をリーガルサポートに提出してチェック機能を果たしているということでありました。

 この個人名をマスキングして番号で把握するような形で業務報告をすることについて、個人情報保護法との関係がどうか。もともと個人情報保護法との関係全体をお伺いしたいわけですけれども、まずお伺いしたいのは、平時に行っている個人名をマスキングした上での業務報告について、これは個人情報保護法との整合性はいかがでしょうか。これは法務省ですか。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 私ども法務省の方で個人情報の保護に関する法律を所管する立場ではございませんので、あくまで一般論としてお答えさせていただきます。

 個人情報の保護に関する法律は、その二十三条におきまして、個人情報取扱事業者は、一定の事由に該当する場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供してはならないということを定めております。

 もっとも、二十三条違反となるためには、司法書士が個人情報取扱事業者に該当することですとか、先ほどお話ありましたリーガルサポートに対して提供する情報が個人データに該当することなどが要件ということになります。このうち、個人情報取扱事業者に該当するためには、取り扱う特定の個人の数が五千人以上であることが必要でありますし、また、個人データに該当するためには、リーガルサポートに提供する情報がデータベースシステムに体系的に整理されて記録されているものである必要がございます。

 したがいまして、一般論として申し上げますと、除外事由に該当するかどうか、あるいはマスキングされているかどうかといったものとは、そういった検討をするまでもなく、成年後見人となっております司法書士が個人情報取扱事業者に該当したり、成年被後見人の預金通帳の写しまたはその原本がデータベースに体系的に整理されて記録されているということは、実際上想定しにくいものというふうに考えております。

 また、私どもといたしましても、現時点において、司法書士による預金通帳のリーガルサポートに対する提示行為が個人情報の保護に関する法律に違反する態様で行われているという事案は把握しておりません。

 司法書士は、国民に最も身近な法律専門家として、成年後見制度の担い手として重要な役割を果たしているものと承知しておりますが、不祥事が生じると国民の信頼を失うことから、不正防止などを充実させていくことが重要でございます。リーガルサポートは、成年後見人の指導監督を行うことを事業の一つとしていることから、その監督機能を発揮することが成年後見制度の円滑な運用に資するものと考えられるところでございます。

 法務省といたしましても、司法書士制度を所管する立場として、その運用を引き続き注視してまいりたいというふうに考えております。

緒方委員 ありがとうございました。

 今、通常で個人名をマスキングして報告しているケースのみならず、不正が生じたときに現在は原本確認をやっているということ、そして昨今の不正事案が生じたことによって、内閣府の公益認定等委員会の方から、平時においてもランダムで原本確認をするようにという指示もされているそうであります。

 その件を含めて今の答弁ということでよろしいですか。もう一度。

小川(秀)政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘のあった点も含めまして、先ほど申し上げましたように、個人情報保護法の適用に当たるということは、一般的には想定しにくいというところでございます。

緒方委員 それでは、現在、個人情報保護法というのは各省庁がそれぞれ担当するということになっておりますが、個人情報保護法を改正されまして、今後は内閣府の方で一元的に所掌していくということになります。

 今の法務省の答弁を踏まえて、今後、改正法が全面施行されるときの内閣府の対応についてお伺いをいたしたいと思います、内閣府。

其田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年九月に成立いたしました個人情報保護法改正法は、公布された日、昨年九月九日から二年以内に政令で定める日に全面施行されることになっておりますが、現時点では未定でございます。ただ、全面施行後におきましても、ただいまの法務省の答弁で示された考え方が大きく変わることはないものと考えております。

 いずれにいたしましても、先生御指摘の点は、基本的には成年後見制度の運用の問題として対応されるものと認識しておりまして、個人情報保護委員会としても、成年後見制度の趣旨を踏まえつつ、個人情報保護法の運用がこれを阻害することのないように、適切に対応してまいりたいと思います。

緒方委員 最後に、岩城大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 今回の議員立法では、二年後には内閣府の組織というのは廃止をされていくわけでありまして、今後、各省、厚生労働省、法務省とかいろいろなところでより利活用が進んでいくべきだというふうに思うわけですが、成年後見制度の活用とか、逆に、その活用の表と裏のところにある公益法人リーガルサポートを通じた不正事案の防止とか、そういったことに関する法務大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。

岩城国務大臣 今後、政府として、成年後見制度の利用促進を本格化させていかなければなりません。

 そんな中で、今、成年後見人の不正事案が問題となっております。国民にこの制度を安心して利用していただくためには、不正防止策を充実させていくことが必要であると考えておりますし、私どももさまざまな手だてを講じてまいらなければいけないと思っております。

 そうした中、司法書士で構成する団体におきましては、この問題について積極的に取り組んでおられるものと承知をしておりますので、今後もサポートしていきたいと考えております。

緒方委員 十五分間、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。質問を終わります。

葉梨委員長 以上で緒方林太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 五月十四日に、神奈川県弁護士会主催の少年法に関するシンポジウムが開かれました。共催は日本弁護士連合会、関東弁護士会連合会です。私もお話を伺いました。討論に参加をしている高校生や大学生からは、少年法について、これまでよく知らなかったという発言もありました。

 そこで、伺います。

 現在、法務省の若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会について、少年法の適用対象年齢についての議論の到達点、そして今後の方向性について伺います。

林政府参考人 お尋ねの若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会でございますが、これにつきましては、先般成立しました公職選挙法等の一部を改正する法律の附則におきまして、国民投票の投票権を有する者の年齢及び選挙権を有する者の年齢が満十八歳以上とされたことを踏まえて、少年法について検討を加え、必要な法制上の措置をとる旨規定されたことや、また、民法の成年年齢を十八歳に引き下げることに向けた具体的な準備が開始されることなどを踏まえまして、若年者に対する刑事法制のあり方全般について検討するために行うこととされたものでございます。

 この勉強会におきましては、多様な分野の実務家、研究者や一般有識者からヒアリングを行いまして、少年法の適用対象年齢を含む、若年者に対する刑事法制のあり方全般に関しまして、検討を行う上での有用な基礎的知見を幅広く得るということを目的として行っているものでございます。

 これにつきましては、平成二十七年十一月二日に一回目のヒアリング及び意見交換を実施して、二十八年三月十八日までの間に八回にわたりまして、弁護士等の実務経験者のほか、関係分野の研究者、犯罪被害者、報道関係者、医師など合計三十六名の者からヒアリングを行って、意見交換を実施しております。

 現在は、これまで実施したヒアリング及び意見交換を踏まえまして、追加のヒアリングの要否等を検討している状況にございます。

 今後とも、この勉強会につきましては、若年者の刑事法制のあり方全般についての有用な基礎的知見を得るために実施しておるものでございますので、その成果につきましては、国民の皆様と共有できるような形で取りまとめを行っていきたいと考えているところでございます。

    〔委員長退席、井野委員長代理着席〕

畑野委員 全般的な議論だというお話でした。

 少年法の適用対象年齢の引き下げありきということではないということを確認したいと思います。

 このヒアリングの結果については、六回まで公開をされている、七回、八回も今後出されるということで、私も法務省にいただきまして、きのう大体読ませていただきました。本当に深い、広い議論が今されているというふうに思います。

 その第一回目のヒアリングで、日弁連子どもの権利委員会幹事の弁護士の方が次のように述べられております。

 議論の前提として、十八歳、十九歳の少年の実情を踏まえなければなりません。十八歳、十九歳の年代は、いまだ心身の発達が未成熟で、可塑性に富んでおり、教育指導と環境の調整によって、大きく変化する可能性があります。

  近時の十八歳、十九歳の状況は、少子化と高学歴化により、高卒で就職する人の占める割合は、一九六一年の六四%から、二〇一五年は一七・八%に減少し、多くの人は親に扶養されているなど、真に自立した社会人になっているのは、ごく僅かです。なかでも非行に走る少年の多くは、資質や生育環境に大きなハンデを抱えております。このことは、日弁連、法務総合研究所、家庭裁判所調査官研修所等々がいろいろな調査を行っており、その結果からも明らかです。

と述べています。

 伺いますけれども、少年法の適用対象年齢の議論をするに当たって、十八歳、十九歳は心身の発達が未成熟であるということをしっかりとつかむことから始めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

林政府参考人 少年法の適用対象年齢を引き下げるかどうかという問題を含むところの、罪を犯した若年者に対する処分でありますとか処遇のあり方を検討する上では、少年非行や若年者による犯罪の現状やその背景等のほかに、成熟度等の若年者の実情を把握するということは重要であることは、委員御指摘のとおりであろうと考えております。

 先ほどの若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会におきましても多数のヒアリングを行っているわけでございますが、これまでに実施したヒアリング及び意見交換においては、この成熟度等の若年者の実情についても複数の方から意見が述べられているところでございます。

畑野委員 そこで、さらに伺いますが、少年事件の全件について家庭裁判所がまずもって判断する、全件送致主義という現行法の少年法の趣旨はどういうところにあるのか、伺います。

林政府参考人 少年法の四十二条では、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があるものと思料するときは、原則としてこれを家庭裁判所に送致しなければならないと定めているところでございます。これは全件送致主義と言われているものでございますけれども、その趣旨につきましては、科学的な調査を行った上で、少年にとって最も適切な措置を行うために、その調査を行う専門スタッフを備えた家庭裁判所に送致させることとしたというような説明がなされていると承知しております。

畑野委員 次に、最高裁判所に伺います。

 家庭裁判所に送られた事件に関する調査官の調査はどのようなものか。それは鑑別所の心身鑑別との関係でどういうものか、伺います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所調査官の調査についてのお尋ねでございますけれども、調査官は、裁判官の命令に基づきまして、心理学等の行動科学に関する専門的な知識と、面接あるいは心理テストなどの技法を活用いたしまして、少年の生活、生育歴、環境等について調査を行いまして、それによって得た情報をもとに、少年はなぜ非行に及んだんだろうか、あるいは、再び非行を行わせないためにはどのような手だてを講じればよいかということを検討しておりまして、このプロセスにおきましては、少年や保護者に対して、非行の要因ですとか被害の結果をもとに反省を促したり、あるいは家族関係について助言をしたりするなど、保護的措置と呼ばれる教育的な働きかけも行っているところでございまして、このような調査と働きかけを踏まえまして、裁判官に少年の処遇についての意見を提出しているというところでございます。

 もう一つお尋ねの、少年鑑別所の心身鑑別との関係でございますけれども、鑑別所の鑑別の方は、主として少年の心身、資質等の状況につきまして、少年鑑別所において、生活に密着する形で心理検査ですとか行動観察を中心に把握をしておられるというふうに承知しておりますけれども、家庭裁判所の調査官の調査では、調査の対象として、少年自身のみならず、家族あるいは学校、就職先、さらには交友関係、また被害者といったものも調査の対象とした上で、その実情といった社会的な要素も多様な方法を用いまして幅広く把握した上で再非行の可能性などを検討しているというところでございます。

 これら二つの関係でございますけれども、いずれも実施されるというような事案におきましては、少年の再非行の防止、ひいては少年の健全な育成という目的のために、お互いが相互に補い合うような関係に立っているのではないかというふうに考えているところでございます。

    〔井野委員長代理退席、委員長着席〕

畑野委員 きょうは短い時間なので、最後に少年法の成果について伺います。

 全件送致主義、調査官の調査と鑑別所の鑑別、保護的措置、少年院待遇など、現行少年法のシステムについてどのように評価をされていらっしゃるのか。有効に機能し、再犯防止効果を上げているのではないかと思いますが、岩城法務大臣の御認識をお伺いします。

岩城国務大臣 現行の制度におきましては、少年の健全な育成を期し、非行のある少年の性格の矯正及び環境の調整を行うために、少年の被疑事件は全て家庭裁判所に送致させ、家庭裁判所の調査官による科学的な調査や少年鑑別所における鑑別を踏まえて処分を決定するものとしております。

 処遇に際しましても、例えば、少年院におきましては、個々の在院者の性格、年齢、経歴、心身の状況及び発達の程度、非行の状況等を踏まえた、その特性に応じた処遇を実施するなどして取り組んでおります。このような現行制度につきましては、再非行の防止と立ち直りに一定の機能を果たしているもの、そのように認識をしております。

 もっとも、少年法の適用対象年齢を含む、若年者に対する処分や処遇のあり方につきましては、現在、公職選挙法等の一部を改正する法律附則の趣旨や民法の成年年齢についての検討状況等を踏まえ、先ほど来議論がありました、若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会において検討が行われているところでありまして、その成果や国民の御意見等を踏まえながら適切に検討してまいりたいと考えております。

畑野委員 引き続き深めてまいりたいと思います。

 以上で質問を終わります。

葉梨委員長 以上で畑野君枝君の質疑は終了いたしました。

 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 薬物使用等の罪を犯した者に対して刑の一部を執行猶予とし、社会内処遇で更生保護を行う制度、刑の一部執行猶予制度がいよいよ六月一日から始まります。

 これに先立って、昨年十一月には、薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン、以下、ガイドラインと呼ばせていただきますけれども、これが法務省の保護局、矯正局、そして厚労省の社会・援護局障害保健福祉部の間で作成され、いよいよことしの四月から施行されているということであります。いわゆる薬物依存のある出所者、支援対象者に対してこれまでよりも長い期間保護観察を行うということになりますので、保護観察所は、地域の医療機関、精神保健福祉センターとの連携を強めることとなっているわけであります。

 くしくも昨日、覚せい剤取締法違反の罪に問われた元プロ野球選手、有名スター選手ですけれども、この被告人の初公判が行われました。被告人は起訴内容について全面的に認めるとともに謝罪をしたということがテレビ等でも報じられております。また、覚醒剤を使ってしまった理由については、こう述べておられます。日ごろのストレスやプレッシャー、不安の解決方法がなくなり、膝の故障もあってか、そのころから薬物に負けたと思いますと。

 覚醒剤などの規制薬物を乱用することは、犯罪行為であると同時に薬物の依存症、やめたくてもやめられない、病気であるというふうに思うわけであります。昨年九月四日に当法務委員会において、私の質問に対しても、厚生労働省が、薬物依存は精神疾患であるとの認識を示しておられます。罰を与えるだけでは治療は進みません。

 プロ野球選手であろうとタレントであろうとあるいは歌手であろうと、誰であれ、薬物依存に侵された人も、地域に帰ると、自宅に戻れば、一人の生活者、国民です。治療が必要な人たちであることを社会的な認識にしないと、いつまでも犯罪者のレッテルを張られたまま、適切な社会内処遇ができないということになってはいけないと思います。

 アルコール依存症と違って、薬物依存の治療には診療報酬が支払われないということを、私、昨年九月の質疑でも取り上げさせていただいたんですが、その後、改善されたのでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 薬物依存症の治療につきましては、厚生労働科学研究におきまして、一定の標準化された方法により集団で認知行動療法を実施した際には有意な治療効果があるという知見をいただいております。

 こうした研究成果を踏まえまして、ことしの四月、平成二十八年度診療報酬改定では、入院中以外の薬物依存症の患者さんに、標準化された集団療法によって、患者みずからが薬物使用をコントロールする手法などを身につけていただくための指導を実施した場合に算定できる点数を、依存症集団療法として新設したところでございます。

清水委員 診療報酬が新設されたということは、本当に大きな前進だというふうに思うんですね。やはり医療機関に積極的につなげていくということも進むんだろうと思うんです。

 ただ、薬物依存から抜け出すためには、今申し上げられました認知行動療法のプログラム等の実施をしている状況がどうなのかということについても同時に見ていかなければなりません。

 資料の一枚目をごらんください。これは全国に四十六カ所の医療機関、保健行政機関を記した表でございます。つまり、SMARPPと呼ばれる認知行動療法プログラムなどを実施している機関、施設ですね。一応二十七都道府県ということなんですけれども、これを見ていただきますと、岩手県には一カ所あるんですが、隣接する青森県、秋田県にはないんですよね。例えば、出所者の帰住先が青森、秋田の場合、医療機関に結びつけなければならないにもかかわらず、このような依存症を克服するための認知行動療法プログラムを受ける実施機関がそばにないということは、やはり問題だというふうに思うんです。

 これをどう拡充していくのか、この辺の認識について、厚労省さん、お答えいただけますか。

藤井政府参考人 お答え申し上げます。

 薬物依存症に効果がございます集団での認知行動療法を実施しております医療機関、先生御指摘のこの資料にございますように、全国で今二十カ所、それからまた、保健行政機関で二十六カ所というところが厚生労働科学研究の報告によりまして数字になってございまして、私ども、やはり当然のことでありますが、一層の普及が必要だと考えております。

 これまでも、私どもといたしましては、薬物依存症患者が早期に適切な支援を受けられますように、全国五カ所の医療機関を依存症治療の拠点機関として位置づけまして、依存症に関する専門的な相談治療あるいは回復支援等を試行的に実施してきたところでございます。

 それに加えまして、先ほど保険局の方から答弁申し上げましたように、平成二十八年度の診療報酬改定におきまして薬物依存症に対する集団療法の評価が新設されたところでございまして、これによりまして、また一層の普及拡大が期待されるところでもございます。

 こうした診療報酬の新設、あるいは、私どもの試行事業の成果をこれから全国に普及させていくというようなことなどによりまして、治療が必要な方々が治療回復プログラムを全国の医療機関で受けられるように、努力をしてまいりたいと考えております。

清水委員 集団療法に対する診療報酬が認められたということは、やはり大きなインセンティブだと思うんですよね、治療機関にとっても。今まではボランティアのようにしなければならなかったものを診療報酬が加算されるようになった、うちの医療機関でもこうしたことをやっていこうということを拡大していく展望が開けたということですから、ぜひ努力していただきたいんですね。

 といいますのは、やはり保護観察官の方は、出所した依存症の支援対象者をいかに医療機関に結びつけるかということで本当に御苦労されているということでありますので、これは強く要望しておきたいというふうに思います。

 次に、保護観察官とペアを組んで保護観察を行っておられる保護司の皆さん、全国で四万八千人近い方々が活躍をされておられるというわけなんですね。

 例えば仮釈放の場合は、改悛の情が刑務所内で見られる、非常に反省もしている、生活態度もすばらしいということで、仮釈放を経て、薬物依存の治療等あるいは社会内処遇にかかるわけですが、今回の制度のもとでは、変な話、改悛の情が見られているかどうかということは余り、余りというか、これは要件にならないですね。満期に来れば一部執行猶予、これは量刑を言い渡されるときに執行猶予期間も同時に定められるわけですから、もっと言えば、懲罰を繰り返し受けているような受刑者だって一部執行猶予が実行されるわけですよね。保護司の方々にすれば、今まで改悛の情を得て仮釈になった人たちと、今度の制度をもって、また特別の対応が必要な支援対象者との間で、さまざまな矛盾や困難さを来すのではないかというふうに私は思うんですね。

 それで、法務省として、全国の保護司の皆さんに、この制度の周知徹底であるとか、あるいは、お一人お一人の方々に、刑の一部執行猶予制度によって出所される支援対象者への対応のマニュアルだとか心構えだとか、そうしたことを研修する、こういうことはされているんでしょうか。

片岡政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘ありましたとおり、刑の一部の執行猶予制度の趣旨につきまして、保護司に対してその周知を図るということは極めて重要なことと考えております。

 これまで、保護司に対しまして、保護観察所が行う地域別研修等でその趣旨を伝えてきましたし、また、全国の保護司に向けた研修資料を配付するなどして、繰り返し制度趣旨について説明してきたところですが、特に、先ほどから御指摘あります薬物事犯者につきましては、一部執行猶予制度のもとでは保護観察対象者の数が増加するということが見込まれます。

 ただ、刑の一部執行猶予制度、本年六月一日以降施行になって、言い渡しが始まるわけですが、実際に対象者が出所してくるのは、実刑部分の期間が過ぎた後、およそ一年以上先といいますか、まだ一年ぐらいの期間はありますので、その間に、より実践的な研修、特に具体的な事例を取り上げた保護観察処遇のあり方という実践的な研修の充実に努めてまいりたいと思っております。

清水委員 出所される方は、断薬、薬を断つ意志を持って出てこられるわけで、やはり、その維持向上を支援するための保護司の方々への支援、研修の徹底等についてもよろしくお願いしたいと思います。

 日本で初めての民間運営薬物依存者リハビリ施設、ダルクというものがございます。ここは、支援対象者の受け入れだけではなくて、例えば謝礼金が減額される中で、矯正施設内での奉仕活動などにも取り組んでおられますし、地域では薬物依存者への偏見の克服のためにボランティア活動などにもいそしんでおられるというお話を、この間聞かせていただいてまいりました。

 要望としては、刑務官の方にも薬物依存のプログラムの理解をさらに深めてほしいと。何となく根性論で、おまえの意志が弱いから薬物をやめられへんのじゃみたいなところがあるんですよね。しかし、これは病気ですから、やはりこうしたプログラムについても刑務官の方はしっかりと理解をしてほしいというようなことをおっしゃっておられました。

 伺いたいのは、出所する際、この支援対象者の中には、例えば向精神薬、精神安定剤ですね、それから睡眠導入剤、頭痛薬、せきどめ等々、多量の薬を処方してもらって出所しているという方がおられるんですね。保護観察処分が付された出所者の場合は、医療情報も含めて刑務情報が保護観察所に引き継がれることになっている。ですから、その保護観察所から必要に応じて本人や家族やダルクなどの支援団体に伝えられるということもある。

 しかし、聞くところによると、保護観察が付されない満期出所者の場合は、こうした刑務情報が保護観察所には伝わらないというふうに伺いました。本人自身もどのような薬を飲んでいたのかということがよくわからないとか、どのような薬を服用してきたのかという情報がわからないと、支援団体の方々もどのようにサポートしていいのかよくわからないというような悩みもありまして、ぜひそうした方々への対応について考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

小川(新)政府参考人 お答えいたします。

 矯正施設に在院中の医療情報の提供につきましては、紹介状の交付という制度がありまして、矯正施設の医師等におきまして、被収容者が釈放後も引き続き医療機関等の診療その他のため医療情報の提供が必要と認められると判断した場合には、被収容者に対しまして、釈放前に紹介状の受領の希望の有無を確認しておりまして、受領の希望があれば、釈放時に紹介状を交付するということをしております。ということですので、この紹介状の交付を活用していただくというのが一つの方法であると考えております。

 また、この紹介状は、医療機関や医師への医療情報の提供ということを念頭に置いておりますので、医療機関の診療と関係なしに交付するということは想定しておりませんけれども、被収容者本人の要望がありましたら、本人に対して診療や投薬の内容について口頭で説明することは可能でございます。

 したがいまして、釈放された後に本人が例えば家族と一緒に釈放前の施設に来られる、そして、収容中に受けていた診療や投薬の内容について聞きたい、説明を求められるということがあった場合には、矯正施設の医師等におきまして医療上必要な範囲で回答することが可能でございます。

 また、その場合に、説明内容を聞きまして、やはりこれは医療機関で診療等を受けたいということなんだということが確認できた場合には紹介状を交付するということも可能でございますので、そういった方法で対応することは可能でございます。

清水委員 薬局などで薬を買って間に合うという場合もありますので、ぜひ伝えていただけるようにお願いします。

 最高裁に一点お伺いします。

 今回の制度では、刑務中にどこまで更生が認められるのか、将来未確定な部分も推測して、一部執行猶予の判決だとか、保護観察期間は一年から五年について宣告するわけですよね。非常に困難さを伴うと思うんですが、この制度に対する最高裁の認識をお聞かせいただけるでしょうか。

平木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 刑の一部執行猶予制度が施行された際には、将来の再犯のおそれなどの点も含めて、両当事者から刑の一部執行猶予を意識した主張、立証が行われるものと思っておりますが、いずれにしましても、事件を担当する裁判官が、個々の具体的な事件におきまして、当事者の意見も聞いた上で、犯情の軽重、犯人の境遇等の事情を考慮し、再犯を防ぐために必要であるか等の要件につきまして、慎重かつ適切に判断することとなるものと思っております。

清水委員 ぜひ裁判所においても慎重な判断を求めたいと思うんですね。

 大臣、もともとこの刑の一部執行猶予制度というのは、矯正施設の過剰収容、もう満員で入れることができない、これを解消しなければならないということに端を発して、しかし、いつの間にか、この法案の性格は、薬物事犯者の社会内処遇による更生と、まるで技能移転を名目にした労働者確保の実習制度みたいなふうにも感じざるを得ないんですけれども。

 この制度が始まりますと、長期の保護観察がふえます。保護観察が必要な支援対象者も累積されていくわけで、現在の保護観察所の体制について、今のままではいろいろ不安と懸念の声が上がっておりますので、ぜひ最後に、このことに対する岩城大臣自身の認識と、増員も含めて、決意の方をお願いいたします。

岩城国務大臣 委員御指摘のとおり、刑の一部の執行猶予制度の施行に伴いまして、保護観察対象者が大幅に増加する、また、保護観察期間も長期化することなどから、保護観察所の業務負担は増加することが見込まれます。

 そこで、職員体制についてでありますが、平成二十八年度予算におきまして、刑の一部の執行猶予制度への対応も含む再犯防止対策、社会復帰支援等の充実強化等のために、地方更生保護委員会及び保護観察所の保護観察官四十三名の増員措置がなされております。

 刑の一部の執行猶予の言い渡しを受けた対象者が実際に刑務所から出所し保護観察に移行するのは、来月一日の同制度施行後に出された判決について、その実刑部分の期間が過ぎた後となりますが、いずれにしましても、保護観察対象者の増加に備え、法務省としては、今後とも、必要な保護観察処遇体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

清水委員 ぜひ努力していただくことを求めまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で清水忠史君の質疑は終了いたしました。

 次に、木下智彦君。

木下委員 おおさか維新の会、木下智彦でございます。本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、朝一番で公明党の吉田議員がお話しされておりましたが、熊本の地震に関する犯罪についてということで十五分間お話をさせていただきたいと思います。

 私、実は大阪で、阪神大震災の際に、大阪の中でも一番被害の多かった地域に近いところに住んでおりました。私の家も、屋根がちょっと、はりがずれたりとか相当しまして、当時は母親と住んでいたんですけれども、相当難儀をした覚えがあります。

 それから、東日本大震災のときは、ちょうど東京で働いておりまして、地上二十六階の会議室で会議をしているときに地震がありまして、また相当大変な思いをした。

 当然、そのときも含めてボランティアに行って、今回も熊本へボランティアに行ってまいりました。その当時はまだ地震発災直後だったこともあって、熊本で泊まることができず、博多で泊まりまして、自分でレンタカーを借りまして、一人で高速に乗って行って、炊き出しをしたりとか、地元のボランティアの方々といろいろな情報交換をして帰ってきたんですね。

 それで思い出すんですけれども、地震に乗じた犯罪、これはやはり許されるべきものではないと思うんですね。

 きょうは、警察庁からも来ていただいています。先ほども件数があったんですけれども、もう一度、いろいろな統計情報というんですか、件数を教えていただきたいんです。窃盗に関するもの、それから詐欺等に関するもの、その他のものについて、数字をもう一度ちょっとお話しいただければと思います。

露木政府参考人 主なところを申し上げたいと思います。

 昨日までの状況でございますけれども、熊本地震の被災地の家屋への空き巣でありますとか避難所における置き引きなどの窃盗事件として四十七件の発生を認知しておりまして、このうち、五件、五人を検挙いたしております。

 また、熊本地震に便乗した詐欺事件として三件の発生を認知いたしておりまして、このうち、一件、一人を検挙いたしております。

 このほか、熊本県少年保護育成条例違反の発生を一件認知し、検挙しているところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 それで、内容を報道ベースで見てみたんです。皆さんも御存じのものもあるかと思うんですけれども、発災直後、四月の十六日の土曜日から十七日の昼までにかけて、熊本市を中心に空き巣や事務所荒らしがあったとの一一〇番通報が二十件あったと、これは毎日新聞が書いているんです。この件数が確かかどうかということはありますけれども、発災直後です。

 それ以外に、朝日新聞さんが書かれているのは、四月十六日未明、停電で暗闇に包まれた熊本市中央区の住宅街、近くの公園に避難した女性が自分の所有するアパートへ毛布をとりに行こうと思ったら、二階の窓から青白いライトの光が漏れ、動くのに気がついた、本震から約二時間半後のことだったというんです。空き室、物置にしている部屋だったので、おかしいと思って階段を駆け上がったら、小太りの男が立っていた。部屋からは、もう一人、若い男。問いただすと、助けてという声がしたので中に入ったんです云々。こういう話があるんです。いろいろと押し問答が続いて、二人は警察官に引き渡されたと。

 この二人を見てみると、福岡県大牟田市に住む会社員、三十歳と二十一歳の男だったというんです。本震から二時間半でそういう人間が来ている。こういう状態なんですね。

 ほかにもいろいろあります。痴漢があっただとか、いろいろある。これも、地震があってすぐにそういうことをする人間がいるんだということなんです。

 私、それで思い出したんです。先ほど言いました阪神大震災のとき、まず最初にあったのが、私のいとこが、本当に一番被害の大きかった兵庫県神戸市に住んでおりまして、盛山先生も御出身のところですけれども、歩いて行ったんですね、水を抱えて、ここにあざができるぐらい。そうしたら、ずっと歩いているときに、道の端に、皆さん、亡くなられた方を毛布に包んで、順番に並んでいるんです。ずらっと並んでいるんです。

 本当に悲惨な状況だったんですけれども、それとあわせて、何かおかしい人がいるなと思っていたんです。何がおかしかったかというと、自動販売機を移動したりしている人がいたんですね。見たんです、私も。何をしているんだろうと。私はそのときはそう思わなかったんですけれども、後で知ったのは、潰れた自動販売機を、道なんかもうがたがたなんですけれども、車で来て全部持っていっちゃう。つり銭を全部取っちゃう。自動販売機が置いてあったはずのところにないというふうな状況がたくさんあったと私は記憶しているんですね。

 地震のとき、災害があったときにこういうふうなことをする人たちは、やはり厳罰に処するべきだと思うんです。

 先ほど、警察庁の方からお話がありました。例えば窃盗なんかであれば十年以下の懲役刑もあり得るというふうに言われていた。ただ、これは、情状を裁判所で判断して量刑が決まっていくことになるんだという理解なんですね。

 ですから、そこの中でどうこうするというふうな話はあるんですけれども、では、その中で、やはり速やかに、こういう人たちは、その範囲内であったとしても、私は、やはりその最高刑に近いものに処していくような、そういう取り決め、法律的なものであるか何なのかということはあるんですけれども、ぜひともこれを検討していただきたいと思うんです。

 恐らく、吉田委員も話されていたのは、発災直後から与党内でそういうワーキンググループみたいなのがつくられて、立法措置をとっていこうというふうなことを検討されていたと聞いております。まだどういうふうな状況になっているかということは、詳しいところはわからないんですけれども、やはり理念としてそういうことを考えていくべきだというふうに私は思っているんです。

 大臣、そういった点を踏まえて、こういうものに対してどういうふうな対処をされるというふうに考えられているかということを、今の御心情も含めてお答えいただけますでしょうか。

岩城国務大臣 委員のお話の中で、本震の二時間半後にもうそういった行為に及んでいるという事例をお伺いしまして、私、正直言って驚いているところであります。

 被災者の方々が空き巣等の犯罪被害を心配することなく安心して避難できることは、生命身体等の安全を確保するために大切なことであると認識をしております。震災によりさまざまな困難を強いられている被害者の方々を狙って行われる犯罪、これは悪質と言うほかなく、厳正に対処すべきものである、そのように認識をしております。

 この点、例えば現行刑法における窃盗罪は、十年以下の懲役という重い刑を科し得るものとなっております。これに加えましてさらに法定刑を引き上げることについてのおただし、御指摘だったと思いますけれども、具体的にどのような行為を切り出して検討の対象とするのか、それから、ただいま申し上げました十年以下の懲役という現行法の法定刑では賄えないような状況が生じているのか、それに加えまして、引き上げるとしてもどの程度の引き上げが必要なのかなどの多角的な観点から、その要否を含めた慎重な検討が必要である、そのように現在は考えております。

 いずれにいたしましても、検察当局におきましては、被災者の方々の窮状につけ込むなどした悪質と認められるこういった事案につきましては、現行法の範囲内において厳正に対処するもの、そのように承知をしております。

木下委員 私の言ったこととちょっとあれなんですね、違うと言うとあれなんですけれども。

 できれば量刑を引き上げていくことも考えるべしということは、これはあります。ただ、逆に、今の現行法の中でも、その最高に値する、例えば十年だったら十年、こういうところでこういうことをした人は有無を言わさず十年なんだぐらいの、そういうやり方というのはあるんじゃないかなと。ただ、その状況もあります。だから、そういうことも考えるべきなのかなということなんです。

 ただ、言われていることはわかります。例えば、窃盗事件が起きました。留守にしていました、その留守にしているところを空き巣に入られました。これが、普通の地域で、普通の地域と言ったらあれですが、例えば震災被害のなかったような地域、私どもの今の現状の大阪だったりとかして、そこで、家の鍵をあけていた、あけていて勝手に空き巣が入ったというふうになると、やはり侵入された側にも、これは裁判上ですけれども、裁判上ではある程度落ち度があるというふうに認められて、量刑に影響があるわけですよね。熊本であったとしても、罹災していない家屋に窃盗が入った場合、しかも、例えば鍵があいていた、それをどう判断するか。地域を指定するのか、どういう状況を指定するのかということで、これは変わってくると思うんです。

 もうちょっと言うと、詐欺事件なんかの場合はもっと難しいと思うんです。なぜならば、熊本だけではなくて、熊本で地震があったから義援金を集めているんですというふうになれば、これは北海道でもあり得ますし、東京でもあり得ますし、そういうことをして詐欺をする人たちもあります。これも震災に乗じて行われた犯罪ですから、こういったものをどう切り分けていくか。

 これは、朝、警察庁の方から答弁があった、どのような切り方をするのか、どの程度の引き上げを考えるのか、こういうことにつながってくるんだろうと思うんです。ですから、そういうことがなかなか難しいことはわかります。

 ただ、私、きょう話を聞いていて、もともと通告の中では引き上げも考えるべきだと思っていたんですけれども、今、答弁を聞いていて思ったんですけれども、現行の中でもやりようがあると思うんです。例えば、最高刑に処するような形にする、もしくは、最高刑にするというふうに書けなかったとしても、厳罰に処するような理念を法制化するだけで、現行法の中で重大な量刑が極めて科しやすくなるわけですね。

 私、与党内で協議されていた中でも多分こういう話はあったんだろうなと思うんですけれども、これをすぐにでもまとめ上げるべきだと思います。これは、立法事実がある、ないというふうなところでいうと、相当な立法事実がある。インターネットなんかで聞かれている方はあれだと思うんですけれども、法律をつくるだけの状況、事実というのがもう既にある、切迫するような事実があるというふうに私は思います。

 ですから、きょうも先ほど、この裏でやっていた災害対策特別委員会で、衆議院で、逢坂先生が言われていた、破産などされている方の義援金が差し押さえられないようにするという法律、これが全会一致で採決されておりました。

 やはりこれは、早期にやっていかなければいけない。でも、もう時間がないんですね。今国会はもう終わってしまうという状況の中で、これをどうやってまとめるかといったところで、私の方から、今みたいなことも検討していって、これは議員立法でもあれかもしれませんし、場合によっては閣法として出していただくこともこれまた重々検討していただいて、時間がないのであれば、これは委員長にもお願いしたいんですけれども、そういうことが出てくることを私どもも協力させていただきます。ですから、もしも会期がない中でそういうふうになった場合は、閉会中審査も含めて頭の中に入れておいていただきたいなと思うんです。ぜひともよろしくお願いいたします。

 最後に、大臣、そういうことを私は考えているんですけれども、方向として、そういうことをしんしゃくしていただいて、今後、内部で御検討いただきたいと思うんですけれども、御検討いただけますでしょうか。

岩城国務大臣 平成二十六年の司法統計年報によりますと、地裁、簡裁の第一審における窃盗罪による懲役刑の科刑状況ですが、全体で一万五千九百十五人のうち、七年を超えて十年以下というのが六人なんですね。それから、五年を超えて七年以下というのが三十九人と、そういった分布になっております。

 そんなことも踏まえまして、とりあえず現行法の範囲内において厳正に対処しているものと承知をしておりますけれども、先ほども申し上げましたとおりさまざまな課題がありますので、多角的に検討していくべき課題だと思っております。

木下委員 ぜひとも、これは歯どめをかける意味でも、厳正に対処する、それから、前向きに今の私の提案を検討していただきますように再度お願いして、終了いたします。ありがとうございます。

葉梨委員長 以上で木下智彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、鈴木貴子君。

鈴木(貴)委員 約四カ月ぶりにこの発言席に立たせていただきます。こうして質問の時間をいただきましたことを、まず、自民党の先生方はもとより、各会派の先生、そしてまた委員長に心から感謝を申し上げさせていただきます。ありがとうございます。

 それでは、限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 先ほど来、それぞれの先生、熊本地震におけるさまざまな法務行政のあり方について質疑が出てまいりました。私も、今なお余震に、そしてまた不安に苦しんでいらっしゃる皆様に心からのお見舞いを申し上げるとともに、きょうは、これまでとちょっと違った新たな視点で、地震と法務行政、我々に一体何ができるのか、そしてまたしていくべきなのかを議論させていただきたいと思っております。

 災害時における刑務所等のいわゆる矯正施設への被収容者の安否確認の手段、すべについて質問させていただきます。

 質問に入らせていただく前に、皆さんも報道などでもう既に御承知かと思いますが、地震が発災してすぐに、刑務職員の皆さんが施設を地元の皆さんに開放し、場所だけではなくて、食料、水、そしてまた入浴施設など、また、医官の皆さんも、方々で、現場、庁内を逆に回り歩いて心のケアなどにもさまざま努めていただいたということ、この場をかりて私からも、現地の刑務官の皆さん方初め矯正施設の皆さんに感謝を申し上げたいと思っております。

 そこで、これは事務方にお尋ねをしたいんですけれども、三・一一、東日本大震災が発生したときには、被収容者の皆さんが、家族であるとか弁護士の皆さんに、自身の安否確認、手紙によって連絡をすることが許されたというように伺っておりますが、今回の熊本地震で、被収容者の皆さんはどのように御家族などに安否連絡をとることができたのでしょうか。

小川(新)政府参考人 お答えいたします。

 刑事施設に収容されております被収容者が親族等と意思疎通を行う方法としましては、一般的な話でございますけれども、刑事収容施設法上、面会と信書の発受による方法がございます。今般の熊本の地震のような大規模災害が発生した場合におきまして、被収容者が親族等にみずからの安否等を伝える方法としましては、現実的には信書を発信する方法が考えられるところでございます。

 この信書の発信につきましては、刑事施設におきましては、多数の被収容者に公平に発信の機会を与えなければいけないということもございますので、発信できる信書の通数を一定の範囲に制限するであるとか、あるいは発信の日や時間帯を特定の日に制限するといった管理運営上の制限が設けられているところでございます。

 ただ、大規模災害発生時におきましては、各刑事施設の長の裁量によりまして、災害の規模、程度等を踏まえつつ、人道上の観点から、対応可能な範囲で、これの制限を課すことなく発信を許すなどの配慮を行ってきているところでございます。

 今回の被災地域に所在します熊本刑務所及び京町拘置支所におきましても、こういった配慮がなされたものと承知しております。具体的には、熊本刑務所におきましては、家族宛ての自己の安否を伝える信書について通数外での発信を認めておりますし、また、京町拘置支所におきましては、申請によりまして、通数外発信及び電報発信を柔軟に認める取り扱いをしております。

 当局としましても、今回の熊本地震を一つの契機といたしまして、各種の協議会の場あるいは職員研修の場等を活用しまして、大規模災害発生時における配慮のあり方等について改めて周知徹底をしてまいりたいと考えております。

鈴木(貴)委員 今回、熊本の二つの施設でもそのように通達を出すことができたということなんですが、これを聞いた理由は、今、答弁の中にもありましたけれども、被収容者の皆さんというのは、実は、手紙を出す回数、また便箋の枚数まで決まっているわけであります。

 というところで、今回、一つ提起をさせていただきたいのは、こういった災害が起こったときの自己の安否連絡というものは、こういった規定の枠組みとは別枠で、特別枠でしっかりと連絡することを担保するということが必要なのではないのかなと思っております。

 今、答弁の中にもあったように、施設長の裁量によって人道的な観点からも配慮がなされたというようにありますが、この施設長の裁量というのも、これまた時に弊害になるということだと思っております。施設長の判断ではなくて、ここはしっかりと制度として災害時のルールを決めないといけないと思うんです、例えば震度五以上であるとか四以上であるとか。

 何らかの制度設計をした中で、そういった場合には、規定ではなく災害の特別枠で信書を出すことができるというように明文化もしくはしっかりと通達するということを、ぜひとも前向きに検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小川(新)政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、大規模災害のときには、それぞれの状況に応じまして裁量的な判断を行っているわけでございますけれども、これまでの実績の積み上げがございますので、そういったことを踏まえまして、各種協議会の場、職員研修等を活用しまして情報共有をし、どういうふうな配慮をすべきなのかについて職員間でも周知徹底を図っていきたいというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 大規模災害、例えば政府の方で大規模災害指定だとか、そういうのを待っていると時に時間がかかるということもあると思いますので、ぜひとも現場からも声を上げて前向きな検討を引き続き推し進めていただきたい、このように思います。

 続いて、私がこの場に立たせていただくと、毎度、取り調べの可視化の問題を質問させていただいております。期待に応えて、今回ももちろんこの問題を質問させていただきたいと思っております。

 まず、報道ベースで私知ったんですけれども、警察、そしてまた検察、それぞれ新しい取り調べ可視化の機材を導入するという報道がありました。

 この刑訴法の中で八十時間近くかけてあれだけ審議をしてきたにもかかわらず、ようやく新型の、かつ小型のカメラが出てきたというのをテレビのニュースで知ったというのは非常に残念だったなと思っているんですけれども、ぜひ、この新型の導入予定、もしくはもう既に導入されていらっしゃるのかもしれませんが、大きさですとか、端的に機材の特徴を警察、検察それぞれから答弁を願います。

露木政府参考人 まず、警察の方からお答えをいたします。

 平成二十七年度、昨年度末の時点でございますけれども、全国において整備された録音、録画のための機材約千八百五十台のうち、委員お尋ねの新型のものは九百台弱でございまして、現時点では約半数ぐらいという状況でございます。

 なお、この新型機材の導入につきましては、狭い取り調べ室でも支障が生じないよう小型化を図る、録音、録画の実施の都度必要となっていた設置作業の負担を軽減するため固定とするなどの趣旨で行ったものでございます。

 具体的な仕様でございますけれども、取り調べ室の天井に埋め込まれたカメラ、マイクによって録音、録画を行い、別室に設置された機器により、複数の記録媒体、DVD等でございますけれども、こちらへの記録を行う、こういうものでございます。

林政府参考人 検察庁におきまして、ことし、平成二十八年三月に新しい機材を整備しましたが、その特徴について申し上げますと、一つには、各取り調べ室に備えつけるほかに、搬出も比較的容易になるように、小型化した仕様となっております。

 具体的に申し上げますと、旧型の基本的な機材の構成は、アナログ方式のカメラが二台、レコーダー二台、パソコン一台、マイク、音声ミキサー、こういったもので構成されておったわけでございますが、新型の基本構成は、デジタル方式のカメラ一台、パソコン一台、マイク、音声ミキサーとなっております。

 このように、カメラ台数を一台に減らしたほかに、レコーダーを不要としておりますので、重量につきましては、従来のものは四十七キロほどございましたが、今度の新型機材につきましては、約十三キロに軽量化して、スーツケースなどで持ち運びが可能となっております。

鈴木(貴)委員 刑訴法のときにあれだけ小型化を求めて、まさにこういったスプリンクラー式というか、今回警察が導入した天井埋め込み型なんかも何度となく提言したにもかかわらず、予算的にも難しい、技術的にも難しいといろいろあったにもかかわらず、これだけ既に導入されているというところが非常におもしろいなと思ってはいるんです。

 そして、今回、警察が、小型化、天井に固定で導入したというのは、一つは、圧迫感というものを軽減するという意味では非常に大事だと思っております。

 しかしながら、一方で、持ち運びは不可能であるということなんですね。ということは、例えば任意の取り調べ、自宅であったり会議室であったりというときには、それはもちろん、天井に埋め込まれているわけですから、それをもとにして取り調べの録音、録画ができなかったというような理屈の一つにも使われかねないのではないか。そしてまた、天井に埋め込んだというのであれば、あくまでもその方を取り調べ室に、身体をまさに拘束している事案でありますから、全過程の可視化というものが今まで以上に求められるべきだと思っているんですが、それに関しての警察のお考えというのはどのようなものでしょうか。

露木政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、固定式のものは、現在、半数ぐらいがそうなっているということでございまして、残りについては、昔ながらの可搬型のものとなっております。

 さらに、今後でございますけれども、委員おっしゃるとおり、特定の警察署で同時に多数の取り調べを行う場合などもございますし、庁舎外において取り調べを行うという場合にも機動的に対応できるようにする必要がございますので、一定数については移動式の機材も引き続き整備していくことが必要であると考えております。その移動式の機材につきましても、カメラやマイクを小型化するなど、委員の御指摘にもかなった新しい仕様の機材の整備を進めていきたいというふうに考えております。

鈴木(貴)委員 続いて、検察にお尋ねをしたいんですけれども、検察の場合には、逆に、小型にしてポータブルという点では、施設外というか、自宅であるとかその他の場所でも可視化を進めていく気があるのかなと私は前向きに受けとめさせていただいて、期待をしているところであります。

 全過程の可視化の必要性というのが今回また明らかになったと思うんですけれども、先月、無期懲役の判決が出ました栃木県今市市のいわゆる小一女児殺害事件、これは裁判員裁判だったので取り調べの可視化が一部されているわけなんですけれども、実に七時間以上にわたって取り調べの様子が再生されるという非常に特殊な裁判だったというふうに伺っております。そして、補充裁判員を務めた方が、その感想として、情況証拠のみだったら判断できなかった、最初の自白が抜けていて、やるならやるで録音、録画は全部徹底してやるべきだと最後に注文をつけられたそうであります。

 そもそも取り調べの録音、録画というのは、適正な取り調べをしよう、自分たちのこれまでの、証拠の改ざんであるとか不当な取り調べ、こういうものが明るみになり、また冤罪なんかも出てきた中で、みずからの内省というか反省を受けての取り調べの録音、録画の機運だったと思うんです。

 しかしながら、例えば今回も、あくまでも自白部分の可視化はされていなくて、自白後の様子だけが録音、録画されていて、そこが七時間に及んで再生されている。ということは、不当な取り調べのチェックであるはずの録音、録画が、立証の材料として、検察側のある種の武器の一つとして今捉えられているのではないかという懸念を持っているのです。

 林刑事局長、もしかしたら、私のそういった懸念というのは不必要だよというお考えかもしれませんが、であるならば、こういった不必要な懸念を生まないためにも、全過程の可視化というものに今まで以上にスピードアップして取り組むべきだと思いますが、改めて、この栃木・今市事件の反省も踏まえてどのようにお考えでしょうか。

林政府参考人 今委員御指摘の今市の事件で、取り調べについてどの範囲で録音、録画がなされたか、あるいはされた記録媒体がどの範囲で公判廷で証拠として出されたか、この辺については具体的な事件でございますので言及はいたしませんが、いずれにいたしましても、今回、対象事件について録音、録画というものが法律案で義務づけられるということにつきましては、その前提としまして、録音、録画には、被疑者の供述の任意性等の的確な立証に資するという点と、取り調べの適正な実施に資する、この二つの有用性があるということが法律的にも認められた上でこういった義務づけがなされるわけでございます。

 それを踏まえまして、その制度の趣旨で、検察におきましては、現在も、試行段階におきましても、具体的な対象事件を超えて、立証上必要であるという部分については幅広く録音、録画を行っておりますし、また、被疑者のみならず参考人についても、録音、録画が必要であると考えられるものについては、現在も取り組んでいるわけでございます。

 そのような形で、録音、録画の有用性を認識した上で、積極的にこの録音、録画の取り組みを行っていくものと承知しております。

鈴木(貴)委員 今、林刑事局長は、法でもそのように出ているというふうにお話をされておりましたが、そもそもこの刑訴法の議論の前に、林刑事局長がまさに中核となってまとめられました「検察の理念」がありますよね。「検察の理念」というのは、まさに制度というか可視化議論のそもそもの趣旨であると思うんです。

 例えば、「検察の理念」の中に、独善に陥ることなく、内省しつつ行動するという文言もまさに書かれていたかと思います。もしくは、常に有罪そのものを目的とし、より重い処分を成果とみなす姿勢になってはならないとも書かれてあります。

 実際にしかるべき内省をして、かつ行動して結果が伴っていたら、こういった冤罪の問題であるとか不当な取り調べを受けたんだというようなことが再三再四にわたって裁判で議論になるはずはないと思うんです。

 しかしながら、裁判で、不当な取り調べを受けた、髪の毛をつかまれた、暴言を吐かれた、こういったことが継続的に今でも続いているというのは、まさに「検察の理念」の趣旨に反するのではないかと思いますが、どのようにお考えでしょうか。検察は、独善に陥ることなく、十分に内省しつつ行動しているとお考えでしょうか。

林政府参考人 「検察の理念」におきましては、特に、検察官が公益の代表であるということを強く打ち出す中身として、あたかも常に有罪そのものを目的とするものではない、あるいは独善に陥らない、あるいは、被疑者、被告人等の主張に耳を傾け、積極、消極を問わず十分な証拠の収集、把握に努め、冷静かつ多角的にその評価を行う、このようなことを掲げておるわけでございまして、現在、検察においては、この「検察の理念」というものに基づいて捜査、公判活動を行っていると承知しております。

鈴木(貴)委員 もう時間も来ますので、最後に大臣に、今のやりとりなどを聞いた上での御見解を伺いたい、法務大臣としての姿勢を伺いたいと思うんです。

 今、林刑事局長は、「検察の理念」も公益の代表者としての前提というか立場でまとめたとありますが、私、それは間違っていると思うんです。公益の代表者である検察が公益の代表者たる仕事をしていなかったがゆえに、「検察の理念」をまとめる必要があったのではないでしょうか。

 そういった観点から考えても、今の発言一つをとっても、十分な内省、反省というものはされていないと私は受けとめておりますが、法務大臣、どのような御見解、そしてまた、所管の大臣としてどのような指導、教育、指揮をされていかれる御予定か、御見解を最後に伺わせていただきたいと思います。

岩城国務大臣 取り調べの録音、録画制度についていろいろと御指摘いただき、問題提起もいただいたものと受けとめております。

 局長の方からいろいろと答弁をさせていただきましたが、この録音、録画制度につきましては、被疑者の供述の任意性等の的確な立証に資する、また、取り調べの適正な実施に資するという有用性がございます。真犯人の適正迅速な処罰とともに、誤判の防止にも資するものと考えております。

 そして、これまでさまざまな経緯等もございました。例えば、捜査機関は、既に相当の期間、裁判員制度対象事件等において、運用による取り調べの録音、録画を実施してきており、録音、録画は捜査実務に次第に定着してきております。

 こういったことを踏まえながら、この制度をよりよいものにすべく、これからも努力をしていきたいと考えております。

鈴木(貴)委員 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で鈴木貴子君の質疑は終了いたしました。

 次に、井出庸生君。

井出委員 民進党、信州長野の井出庸生です。本日もよろしくお願いをいたします。

 今、鈴木委員からも質問がありました取り調べの可視化、参議院の方で刑事訴訟法の議論も大詰めだと伺っております。そういう中で、私、参議院でこの法律が成立をすれば、いよいよこの法律を世の中に送り出すということになるんですが、その上で、参議院の議論なども踏まえて、改めて衆議院でも確認をしておきたい点をきょうは伺っていきたいと思います。

 きょう一番確認をしたいのは、裁判員裁判事件を対象に、それについては録音、録画が全過程義務づけとなる。この全ての過程の義務づけというものが、一体どこまでの解釈なのか。

 まず、日弁連の弁護士さんから一部意見が出ているというところで伺っていきます。

 何か犯罪を犯して起訴をされた、その方を起訴勾留しているときに、裁判員裁判対象、可視化対象事件のもう一つの犯罪にかかわっている疑いが強い。そういうときに、起訴勾留の中で取り調べというものがスタートをしていくと思います。

 その被疑者が新たな裁判員裁判対象事件で逮捕、起訴されて裁判に至るときには、起訴勾留段階での取り調べというものも極めて重要だと思いますが、そこが録音、録画の義務づけの対象となっているのかいないのか、再度ここで確認したいと思います。お願いします。

林政府参考人 法律案におきまして、録音、録画記録の証拠調べ請求義務が課される取り調べにつきましては、逮捕または勾留されている被疑者の取り調べと規定しております。また、録音、録画義務が課される取り調べについても、逮捕もしくは勾留されている被疑者を取り調べるときとなっております。

 したがいまして、この法律案の録音、録画制度で義務づけられているのは、文言上、起訴前に勾留されている被疑者を取り調べる場合を対象としておりまして、起訴後に勾留されている被告人を取り調べることが任意の取り調べとしてありますけれども、これにつきましては、勾留されている被疑者ではない以上、対象とはなっておりません。

 このことは、この法律案の立案に先立ちまして、法制審議会において、特別部会でも、いろいろな議論、また答申の記載から、その点については明らかでございまして、法律案の中で、起訴後の勾留、起訴されてから勾留されている被告人について、何らかの対象事件について任意で取り調べを行う場合、これは今回の録音、録画義務の対象外でございます。

井出委員 今、逮捕または勾留されている被疑者が取り調べの録音、録画の義務対象である、そういうお話があって、もう一度その文言の面で伺いたいんですが、起訴後の勾留と、逮捕または勾留の勾留というものは、勾留の目的も違うのかもしれませんが、身分が拘束をされている、そういう意味では全く同じ状態にあるのではないか。

 この逮捕または勾留されている被疑者という勾留を、その勾留の頭に(起訴)、そういう読み込みもあってもいいのではないかと率直に伺いたいのですが、いかがでしょうか。

林政府参考人 法律の立案の際の法制技術的な文言の使い方という点で申し上げますと、あえて、逮捕または勾留されている者の取り調べということではなくて、それを被疑者の取り調べというふうに規定しておりますので、今回ここで想定されるのは、起訴後勾留された被告人を含まない趣旨でございます。

 実質的な、そのように立案した理由としましては、委員御指摘のとおり、まず、勾留の目的が全く異なっております。起訴前の被疑者としての勾留は、法定の勾留期間内に、被疑者の逃亡、罪証隠滅を防止した状態で捜査機関が必要な捜査を行うためのもの、こういうものであるのに対しまして、起訴後の被告人としての勾留は、被告人の公判廷への出頭確保など、公判の遂行を確保するためのものでございます。

 したがいまして、起訴後の勾留中の被告人に対する余罪の取り調べ等につきましては、これはある意味例外的な取り調べでございまして、ここの点については、被告人に取り調べ受忍義務というものは課されていないということにつきましては共通の理解がございますので、そういったものの法的な性格は、例えば、勾留されていない在宅の被疑者の取り調べに近いという考え方から、今回、この起訴後の勾留中の被告人の取り調べにつきましては、録音、録画義務の対象の外に置いたものでございます。

井出委員 在宅の取り調べの録音、録画についても後ほど伺っていきますが、今御答弁された、起訴勾留のときに、法律上は被告人に取り調べの受忍義務というものはない、ですから、その拒否ができるのかと思うんです。

 在宅の被疑者の取り調べ、こういったものと形が近いとおっしゃいましたが、形が近いとわざわざおっしゃるということは、一緒ではないという御自覚が十分あるのかなと思いますし、実際、世間一般、在宅で取り調べる任意の取り調べと起訴勾留の中の取り調べでありますと、素人の感覚で大変恐縮なんですが、起訴後の勾留、拘置所なり留置場にいる取り調べの方が、受忍義務が課されない、拒否をするという実態は余りないのではないかというのが率直な疑問なんですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

林政府参考人 起訴後勾留中の被告人を調べる場合、先ほど、被告人に取り調べ受忍義務がないという点で、在宅の被疑者の取り調べに近いと申し上げました。

 もちろん、この取り調べを拒否し得るかどうかとか取り調べの受忍義務という点でよく言われますのは、それでも実際には拒否できないんじゃないかとか、そのようなことは、在宅の被疑者についても、例えば、任意同行がなされて、逮捕、勾留に至る前の段階ではなかなか拒否はできないんじゃないかとか、こういった実質面でのいろいろな御指摘また批判等があることは承知しております。

 いずれにしましても、法的な意味で、今回、法的に録音、録画義務の範囲を、これは法律でございますので確定しなくてはならないというときに、その考え方といたしましては、少なくとも起訴後の勾留中の被告人に対する取り調べは、取り調べの受忍義務がないという点については共通した法的な理解がございますので、その意味において、それは在宅の被疑者の取り調べに近い、その受忍義務の点では同様であるという理解に立ちまして、このような法律案としたものでございます。

井出委員 法律をつくる、制度をつくる上で線引きが必要である、そういうことでこういう法律のつくり方をしたというお話だったんですが、そうは申しましても、起訴勾留中に、次の大きい事件の立件に至る初動の捜査というものは大事だと思いますし、私は、そもそも起訴勾留中じゃなくても、ある被疑者が、一つ裁判員裁判の対象になりそうな事件の犯罪の疑いがある、その任意の取り調べも非常に大事かなと思って、きょう伺っていきたいんです。

 大きい事件を起こしますと、今ちょっと局長がおっしゃいましたように、新聞、テレビで、例の何とか事件で、きょう、どこどこの三十代の男、警察は強制捜査に乗り出す方針ですみたいなニュースが流れたり、取り調べを開始しましたというような、そのころはもう取り調べは開始されていると思うんですね。

 それが夕方とか夜ぐらいになってくると、テレビのスーパーで、何とか事件で何十歳代の男に逮捕状を請求という文字が出てきて、大体、夜に、深夜ぐらいのニュースに、その大きな事件で逮捕という一報、よくそういうニュースを見てきましたし、私もかかわってきたんですが、法律のたてつけですと、恐らく深夜の逮捕のスーパーが流れるその直前に逮捕状を執行して、弁録、そこから録音、録画が義務づけられていると思うんです。

 任意同行を求めて取り調べをする、逮捕状を請求する、それはもちろん、その後のニュースで、本人が認めたことも一因で逮捕状を請求するような事件もあれば、認めていなくても、もうこれは証拠がかたい、そういう状況もあるかと思うんですが、ニュースを例にちょっとイメージをさせていただきましたけれども、任意同行から逮捕状を執行するまでの間に十分な供述をとる、被疑者の言い分も聞くと思いますし、そこは、事件のいろいろな捜査、供述をとる中で極めて重要な局面ではないか。

 これを果たして、義務がないから逃してしまいます、とりませんというようなことでいいのかどうか、そこをちょっと林さんに伺いたいと思います。

林政府参考人 任意同行での取り調べ、そこから逮捕、勾留に至るという事象があるということは承知しているわけでございますが、実際に、任意同行の取り調べの段階で、その後必ず逮捕に至るのかということは、もちろん事案によって全く異なります。そういった意味におきましても、今回、録音、録画義務の範囲を画するという上では、やはり任意同行段階、いわゆる在宅という立場での取り調べの段階については録音、録画義務はかからないということにしております。

 他方で、例えば任意同行での、任意の取り調べの段階での供述、どのような供述をしたか、そこでももちろん証拠というものがつくられる、供述調書などがとられることはあるわけでございますが、そういったものについて、その証拠の重要性ということを鑑みれば、そこにおいて録音、録画があるかないかということについては、やはりその後の立証という観点でいきますと、それは重要な、録音、録画の記録媒体があるという方が立証は非常に容易になるわけでございますので、そういった観点でやはり必要と考えられるような事案については、運用の中で録音、録画をしておく、あるいは、それが捜査機関あるいは訴追機関にとって、運用としては、方向性としては、そこを行うということは当然あるかと思います。

 しかしながら、義務を課するという範囲の点でいきますと、やはりそれは、今回、在宅の段階の取り調べについては義務からは外れているということでございます。

井出委員 裁判の立証の上で非常に重要な局面であることも予想されるので、運用でそこも記録することもあり得るというようなお話です。

 恐らく、任意同行の段階、裁判員裁判対象事件であれば、ほとんどは検察ではなくて警察の方が取り調べをされると思います。それから、最初に申し上げました起訴勾留中の捜査も、必ずしも検察が取り調べ官となってやるわけではないのかと思いますので、林局長のおっしゃった運用というものが、裁判員裁判のような大きい事件であれば、当然、逮捕前の段階から警察と検察の意識共有、情報共有というものはなされて、連携指示というものも実態としてあると思うんですが、警察においても、今、林局長が言っていただいたような運用でやっていただけるかどうかを伺いたいと思います。

露木政府参考人 私ども警察の取り調べにおける運用についてでございますけれども、検察官とは、特に初動捜査の場面ではやや役割が違うという面もございますので、全く同じというふうに申し上げることはちょっと難しいと思います。

 ただ、例えば殺人事件の被疑者を任意同行して、まず任意で取り調べるというときに、その段階の被疑者の供述の信用性あるいは任意性というものを立証するという上でその録音、録画記録が重要であるという場合には、私どもも当然、公判に向けて捜査をしているわけでございますので、その場面の録音、録画を行うという運用は十分あり得るというふうに考えておりまして、そういう意味では、林局長と同趣旨の考えでおります。

井出委員 同趣旨というお話、大変結構だと思います。いい答弁をしていただいたなと思います。

 そこで、もう一歩突っ込んで林さんに伺いたいのは、やはり重大な事件であれば、任意同行の段階でも記録していくということは十分あり得ると。そのときに、任意同行から逮捕状執行までの間に何かしら犯行を認める、そういう供述は、もし記録できれば裁判に有効かなと思うんです。

 一方で、否認をするケースだってあると思います。ただ、その否認のケースもきちっと記録をしておけば、必ずしも、否認しているからといって、その後の供述の変遷等によって、最初の否認というものの信用性がどうなのか、そういうことで大変重要な判断材料の一つになるかと思います。

 そこで、一つ気になるのは、任意同行から逮捕状執行までの録音、録画というのは義務ではないわけですよ。義務ではない、法律上。ただ、そうはいっても、捜査側と被疑者側の、とるとなったら、犯行を認めようが認めまいが、そこはとると決めたらとっておかないと、とりました、認めましたから裁判に使いますとか、何か余りいい感じの映像じゃないので使いませんとか、それで果たして公判の立証の材料となるのか。

 ここは運用だから柔軟にやる可能性が出てくるのかと思うんですが、私は、任意同行から逮捕状執行までの間のストーリーが、捜査側にとっての見立てをよしとするものであろうとなかろうと、そこは公判上大事だと決めたら、とると決めたらいかなる場合もとっておくというような、そういう運用が必要じゃないかと思いますけれども、そこは林さん、どうでしょうか。

林政府参考人 録音、録画をしておいた方が後の立証のためによろしいというような事態というのはどんな場合があるかということでいえば、例えば任意同行、在宅としての取り調べの段階で犯行を認める供述をしている、例えば供述調書などが作成された、しかしながら、逮捕、勾留してからは否認に転じていて、結局、本人が犯行を認めた自白というものについては任意同行の段階の供述調書しかないというふうな場合となれば、やはりそれは、その任意性を立証するためには、その段階の録音、録画があった方がよろしいわけです。

 そういったことも考えながら録音、録画をするかどうかというのは決定していくんだと思いますが、いかなる場合でも、逮捕、勾留がなされる前の段階の在宅の取り調べも録音、録画をするんだということについては、それは必ず逮捕、勾留がなされるとは限りませんので、そういったものをそういった運用をしていくのは難しいと思います。

 一方で、自白した場合じゃない、例えば否認している場合。確かに、在宅の段階で、最初の取り調べのときに否認をしていました、こういった供述状態だったら余り録音、録画する意味がないのかと申し上げますと、そうではなくて、最初の段階でどのようなことを被疑者が言っていたか、その後どのようにその供述が変わってきたかということは、これはある意味、非常に重要な証拠になる場合がございます、事案によっては。

 そういったことから、否認していたら録音、録画する意味がない、そういうことにはならないと思います。

 いずれにしても、そういった録音、録画の記録媒体が残っているということは、いずれ公判段階で弁護側にも記録媒体は開示されますので、そこは、どんな供述をしていたか、どのような供述態度であったかということは、弁護側からもある意味証拠として使えるわけでございますので、そういった意味において、録音、録画の記録媒体が残っているということが、将来の公判における立証においては重要な要素であろうかと。

 そういったことを考えながら、運用の中で録音、録画をするかしないかということは決めていくんだろうと思います。

井出委員 今、弁護側のお話にもちょっと触れていただきましたが、いずれ公判でそういう録音、録画してあるものが重要な証拠ともなってきているというところは、共通の認識かと思います。

 ですから、私は、冒頭、テレビのニュースに例えて、朝、任意同行で、夕方ぐらいに逮捕状請求というような大きい事件の字幕のスーパーを見ていると、昔は、その人は認めているのかな、否認しているのかなぐらいに思っていたんですが、最近は、可視化しているのかな、していないのかな、そういうことを思うようになりまして、そういう意味でも、捜査の環境、時代というものは変わってきているかと思うんです。

 ですから、任意の部分というのは、運用によって非常に大切な部分であると思います。それは弁護側もというお話があって、今度、被疑者の側で伺いたいんです。

 前に一度、任意の捜査で、被疑者が録音をしたいと。録音をしたいと申し出るケースは余り聞いたことがないんですけれども、警察や検察の方で、録音機器を持っていないか、持っていません、本当にないか、ありません、下着の中に隠していないか、隠していませんと。結果として、どこかに隠してとっておいて、それが裁判で被疑者にとって重要な証拠となるようなケースもあります。

 それは、従前の答弁ですと、例えば警察署に呼んできて任意で捜査している場合は、庁舎の管理権の問題。それから、ではどこか、相手の家に行ったり、どこか別のところでやろうかというときも、任意の捜査を録音するときは、それが捜査以外の、公判以外の目的で使われたら困るので、やはり被疑者側が、またその弁護人が録音したいというものはNGだというようなお話を以前いただいたんです。

 相手側の録音、録画の意図が明確、何らかの形で、いや、実は持っていますとICレコーダーを出した、みずから、向こうから申告をしてきたときに、今までの理屈だと、では、そこでその日の任意の捜査というのはもう諦めざるを得ないのか、録音、録画したいという被疑者の意図が明確になった時点で、もう任意の捜査は成立しないというのが今の考え方でいいのかどうか、そのあたりの見解を教えていただきたいと思います。

林政府参考人 被疑者の取り調べというものは、刑事訴訟法百九十八条によって認められておるわけでございます。それによって、これが任意の調べであっても、法律上の根拠を持って、刑事訴訟法の根拠を持って取り調べというものが認められているわけでございます。したがいまして、取り調べをどのような形で行うのかということについても、当然、取り調べをする側が判断して行うわけでございます。

 その場合に、今度は取り調べを受ける側が、被疑者が、例えば自分での録音、録画、通常の場合は録音かもしれませんが、録音したいと言われたときにそれを許すかどうかというものについては、それは取り調べする側が判断することになります。

 その際には、実際に録音を許した場合には、その内容が刑事手続の外で公開されるおそれがございますので、そういった場合には、やはり関係者の名誉、プライバシーが侵害される、こういったことが考えられますし、また、そもそも捜査の秘密というものがございますので、それが外に公となって罪証隠滅を招くなどがある、こういったことを種々考えながら、録音を認めるか認めないかというものを捜査官側で、取り調べる側で判断していくことになろうかと思います。

 実際上、自分は録音ができないのであれば取り調べには応じないと言われること、それはあり得るかと思います。そもそもそれは任意の調べでございますので、結局そういう形で任意の調べができないという場合はあり得るかと思いますけれども、そういったことが一般的にあるかと言われれば、それは非常に少ないと思いますが、そういった事案がないわけではなかろうかと思います。

井出委員 相手方に録音の意図があると正直に申し出たり、隠しどりしようと思っていたんだけれども、録音機器はありませんかと言われて出したりするケースもあると思いますが、任意の捜査では、私の理解ですと、憲法の三十五条などを見れば、相手のものは押収したりはできないと思うんですね。

 ですから、目の前に録音機を出されても押収までは、多分、やめてくれと、お願いベースの話までしかできないんじゃないかなというのが私の理解なんですけれども。ちょっとさっき、あり得るあり得ないというような御議論が林さんからあったんですけれども、実際に、では相手方に録音を認めて任意の捜査、そういう事例は幾つかあるんですか。

林政府参考人 今委員が御指摘されたような事案があるかどうか、そこは承知しておりません、基本的には。

葉梨委員長 警察にも聞きますか。(井出委員「では、ちょっと警察にも。多くの事例があると思います」と呼ぶ)

露木政府参考人 私どもはそういう事案の報告を受けておりませんので、承知はいたしておりませんけれども、取り調べ官の知らないところで秘密裏に取り調べの状況を録音されたという事例があることは承知をいたしております。

井出委員 相手に録音されると、プライバシーですとか捜査以外のところに使われるという懸念があるので録音はされたくない、ただ、それをもってして、例えば、相手が弁護士を立てているのであれば、どうしても録音したい、そうしたら、では捜査とか公判以外には使うなよ、そういう約束も代理人とだったらできるような気もしますし、録音を認めたくないというところは十分わかるんです。

 かといって、録音をするといってどうしても聞かなかったときに、そういうケースもあり得るというようなお話だったんですけれども、いや、録音されると困るから、きょうの調べはやめましょうというようなことがもし頻発するような実態であれば、それはそれで逆に捜査側にとっても少しデメリットなのではないかなという懸念を持っておりますが、その辺はどうでしょうか。

林政府参考人 少なくとも、先ほどそういった、そもそも任意の取り調べが成立しないという場合があり得ると申し上げましたが、一般的にそういった事態があるとは承知しておりませんで、むしろ、そういったことが頻発していて、捜査側にとって非常にその点が捜査を進める上で障害になっているというような実態の認識は全くございません。

井出委員 例えば、隠しどりをされて、それをいろいろなところで使われる。中には、プライバシーですとか捜査の秘密にかかわる、今御指摘あったような本当にまずいケースになるという可能性、それは否定できないと思うんです。

 例えば、録音、録画をしたいと向こうが言ってきたときに、わかった、ただ、ほかのことに使ってほしくないから俺たちでとる、捜査官の方が録音機か何か出して、これならいいだろう、ちゃんととっているぞ、そういうやり方もあるかと思うんです。

 いずれにせよ、実態を少し把握していただいた方が、私、そこの現場の感覚は変わってきているんじゃないかなと思うんです。ないよね、ないよね、ないよねと確認して、隠しどりを黙認してしまうというのは必ずしもよくない。むしろ、そこまで言うんだったら、では俺たちでとるよとやったり、昔、テープレコーダーの時代だったら、何か物の本に、最初はちょっと雑談をする、テープレコーダーは時間が限られているから、そんなようなことが書いてあるような本もあるらしいんですけれども。

 ただ、いずれにせよ、ちょっと実態を調べて把握していただいて対応していくということが、私、もうそういう時代になってきているんじゃないかなと思いますけれども、どうでしょうか。

林政府参考人 先ほど来からそういった実態は承知していないと申し上げているわけですが、もしそういったことが間々起きているとなってくれば、やはり捜査にとって、ではそれをどのように進めるかということが問題となってくるわけでございますので、そういった事態は、現場でそのようなことが起きているということは必ず伝わってくるものでございます。

 そういった意味において、今、全国において、そういった録音、録画するのかしないのか、するとしたときにどちらがするのか、調べられる側に許していいのかどうかとか、そういったことでトラブルになっているということは、少なくとも、把握していないというよりは、そういった事態が各地で起きているというような事態は、報告等いろいろな情報のルートを通じても聞いておりませんので、そういったことが捜査を今後進めていく上で障害となっているというような認識はございません。

井出委員 では、自分が何か犯罪の疑いをかけられたときがあったとして、例えば現行犯ですとか現行犯に近い状況ですとか、目の前にそういう確たる事実があるですとか、そういうときは捜査に従うのかなと思うんですけれども、いや、俺も十分言いたいことがある、任意でちょっと呼び出されて行くけれども、それはこっちにも言いたいことがあるぞ、そんなような話のときは、やはり録音、録画というものをとっておいてほしいという要望はこれから出てくるんじゃないかな、ふえていくと思います。

 もっと言いますと、去年、刑訴法の議論をやって、検察庁へ視察に行ったときに、取り調べは録音、録画のもとで、私が検事になってから、もうその運用でずっと来ています、そういう世代の方が、たしか女性だったと思いますけれども、検事さんがいらっしゃった。

 ですから、冒頭申し上げました法律、制度ですから、きちっと裁判員裁判対象事件の逮捕状執行からという線を引く必要性はあると思いますけれども、やはり公判の重要性というものを考えれば、そこの実態の運用をこれから議論していく。

 私なんかは、本当に物すごく議論を尽くして、何か警察白書の特集にしてもいいぐらい、これから可視化というものと警察、検察は向き合っていかなきゃいけないんじゃないか、そういう思いを持っているんですけれども、その点についてお願いいたします。

林政府参考人 どのような運用を行う、ルールを定めるかということを離れまして、実際に自分で任意の調べの状況を録音しておきたいんだと言われた場合に、または、それがなければ絶対に調べには応じないんだと言われたときに、その調べが必要不可欠であるというようなことを考えた場合には、恐らく、まずは捜査機関としては、それであれば取り調べを受ける側の録音ではなくて、こちらで録音、録画するのでということで取り調べを行うというような対応はあり得るものと考えております。そうでなければ取り調べが成立しないというような事態になれば、それはそういったことも一つの解決策として考えるんだろうと思います。

 そういったことを全く否定するものではないわけでございます。

井出委員 大臣にも少し伺いたいのですが、この法律が始まりますと、少なくとも、法律の義務として裁判員裁判対象事件の被疑者の逮捕状執行からは法律上記録をしなければいけない、記録を提出しなければいけないということになります。

 ただ、その一方で、今、林刑事局長や露木さんとのやりとりの中で、任意同行のときも、極めて重要な局面であれば録音、録画というものは運用としてあり得るというお話もありましたし、もう少し任意の捜査の段階でも、相手が録音、録画してくれ、でなければ俺は何にも話したくないと、捜査側でちょっと判断をされて、わかった、では俺の方でとる、捜査機関の方でとる、これで文句はないだろう、そういうケースも否定は決してされないと思います。

 そういうことを総合しますと、私は、法律のスタートを機に、可視化の運用というものは大分、昨年の議論の中で義務が狭過ぎるということは何百回も申し上げてきたんですけれども、ただ、我々が思っている以上に実態として広く可視化が進んでいくのではないか、そういう思いが今は強いんですが、その点について大臣のお考えをいただきたいと思います。

岩城国務大臣 先ほど来の議論を興味深く伺っておりました。

 そこで、その運用の問題でありますけれども、近時の実務におきましては、供述の任意性をめぐって争いが生じた場合には、取り調べの録音、録画記録による的確な立証、これが求められるようになっております。そうした状況に鑑みまして、検察当局におきましては、公判立証に責任を負う立場として、そのような的確な立証ができるようにするために、運用による取り調べの録音、録画に積極的に取り組んでいるものと考えております。

 さまざまなケースを想定されて御質問をいただきましたけれども、それらのことにつきましても、そういった運用面で適宜適切に対応していけるようにしていかなければいけないな、そんなふうに感じているところでございます。

井出委員 いずれにいたしましても、犯罪の事実があって、人を取り調べをする。捜査機関の仕事としては、やはり、罪を犯した人をきちっと、法にのっとった捜査をして、裁判でそれに見合った処分が出るところまで持っていくことが一番大切なところだと思いますので、今おっしゃったようなお考えでやっていっていただきたいと思います。

 取り調べの関係は以上でして、残りの時間、特定秘密の関係を、きょう来ていただきましたので伺っていきたいのです。

 四月と五月に、平成二十七年に指定した特定秘密のうち、指定を解除した、そういうケースが警察庁と外務省の中であった。その件について、それぞれの省からわかりやすく簡潔に御説明をいただきたいと思います。

斉藤政府参考人 お答えいたします。

 このたび、当庁におきまして、平成二十七年中に指定をした特定秘密一件につきまして、当該指定に該当する情報が現存せず、今後もこれが出現する可能性がないことが確定をしたため、指定の要件を欠くに至ったことから、特定秘密保護法の規定に従って、平成二十八年四月二十八日にその指定を解除したところでございます。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省は、五月十二日、平成二十七年中に指定をいたしました二件の特定秘密を解除いたしました。

 上記二件につきましては、指定をした特定秘密である情報が記録された行政文書について確認、精査をいたしました結果、平成二十七年末の時点で結果的にゼロ件であったことがわかり、法の解釈、運用について内閣官房とも協議してきた結果、上記二件については指定を解除することが適当との判断に至ったものでございます。

井出委員 外務省の方に伺いたいのですが、その二件というものは、特定秘密というのは、何とかに関する情報というような柱がまずあって、その中に、今おっしゃったような行政文書が幾つかある。平成二十六年はたしか三百八十何件の特定秘密に十八万何がしの行政文書があって、平成二十七年も入れれば、それが四百、五百件近くになって、文書は二十七万近くになっている。

 済みません、それが何かゼロになったとかならないとかというところはもう少しわかりやすく説明をしていただきたいんですけれども、話せる範囲で結構ですが、どういう類いの情報なのかも含めて御説明をいただきたいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 今般解除いたしましたのは、平成二十七年中の国際テロリズムに関する人的情報源及び平成二十七年中に外国の政府等から総合外交政策局に提供のあった情報の二件でございます。

 この指定を解除いたしました二件につきましては、いずれも国際テロ情報収集ユニットの新設に伴い指定したものでございますが、同ユニットが平成二十七年十二月八日に発足し、業務を開始したばかりであり、結果的に平成二十七年中に該当する文書等は存在しなかったことから、こうした措置をとったものでございます。

井出委員 いま一つあれなんですけれども。

 そうしますと、ユニットができて、十二月八日から動き出した。ユニットができることを見込んで何か特定秘密の指定を行ったんだけれども、そこに指定するような情報がなかったのか。なかなか考えにくいんですけれども、情報が、行政文書が、幾つか特定秘密になりそうなものがあったからつくったんだけれども、要件に満たないから特定秘密にならなかったのか。

 私の頭は、特定秘密の件数というのが三百何十件、四百何十件あって、行政文書が十万、二十万とある、だから、少なくとも一件当たりに結構な行政文書が全ての項目においてあるのかなと思っておって、外務省や警察庁の現存せずというケースが、ちょっと、私のこの不勉強な狭い頭の中では、思ってもみなかったところなんですよ。

 だから、端的に聞くと、結果的にゼロ件になったのか、もともとゼロ件かもしれないけれども、そういう特定秘密という指定をつくってあったのか、その辺を教えてください。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、結果的にゼロ件であったことから指定を解除したものでございます。

井出委員 そうすると、では、結果的に、特定秘密の何とかに関する情報という項目の中に、特定秘密の行政文書に入れるものはないのかもしれないけれども、あらかじめそういう項目立てはする、そういう特定秘密指定のあり方というものが、今回、外務省、それと警察庁。そういう仕切りで指定をしてみたものの、一年やってみて、中に詰め込むものはなかった。そういう運用だったということでよろしいか、それぞれに伺いたいと思います。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども答弁いたしましたとおり、今般解除いたしましたのは、平成二十七年中の国際テロリズムに関する人的情報源及び平成二十七年中に外国の政府等から総合外交政策局に提供になった情報の二件でございますが、本件につきましては、繰り返しになって恐縮でございますけれども、いずれも国際テロ情報収集ユニットの新設に伴い指定したものでありましたが、同ユニットは平成二十七年十二月八日に発足し、業務を開始したばかりであり、結果的に該当する文書がなかったということでございます。

斉藤政府参考人 お答えします。

 当庁におきまして解除をした特定秘密は、平成二十七年中に警察の人的情報源またはその候補となった者に関する情報でございます。

 当庁が保有する個別の情報のうち、この特定秘密の要件に該当するものの有無について、特定秘密とする情報は最小限とすべきとの観点から慎重に検討を行った結果、該当する情報が結果的に現存しないということが確定をいたしましたために解除したものでございます。

井出委員 きょう、政府内でいろいろなチェックをしていただく独立公文書管理監の佐藤さんにもまた来ていただいているんですが、佐藤さんの方でこの件を把握されて、何かかかわりがあったのかないのか、そこを御説明いただきたいと思います。

佐藤政府参考人 今回の件でございますけれども、私どもの検証、監察の過程において、平成二十七年中に警察庁が指定した一件、そして外務省が指定した二件について、特定秘密に当たる情報が現存せず、今後もこれが出現する可能性がないことが判明いたしました。

 そこで、本年四月二十五日付で、独立公文書管理監から内閣保全監視委員会委員長に対し、次の二点を意見として提出したところでございます。

 一点目でございますけれども、指定された特定秘密に当たる情報が現存せず、今後もこれが出現する可能性がないことが確定した場合には、速やかに当該特定秘密の指定を解除することでございます。

 二点目でございますけれども、特定秘密に当たる情報が出現する前にあらかじめ特定秘密を指定する場合には、当該特定秘密の出現可能性について慎重に判断すること。

 以上の二点を意見として提出しております。

 これを受け、警察庁及び外務省において、当該指定の解除が行われたものと承知しております。

井出委員 内閣官房の田中さんに来ていただいているので伺いたいんですが、私の頭の中は、五百件近い特定秘密、二十七万件近い行政文書、だから、特定秘密五百件の中にも相当の文書が詰まっていて、ゼロというものはちょっとびっくりしているんですけれども、そういうことがこれからもまずあり得るのか。

 もし、そうであるとしたら、特定秘密の五百件の指定の名前、もしかしたら入るかもしれないけれどもということも、何かきちっと書いていただいた方が運用としてよろしいんじゃないかと思いますが、その二つについて、ちょっと御見解をいただきたいと思います。

田中政府参考人 まず、前提として申し上げますけれども、特定秘密の指定の対象は、個々の文書ではございませんで、情報でございます。特定秘密である情報が記録された文書の件数というのは特定秘密ごとに異なってまいるものでございます。

 該当する情報がないのに特定秘密として指定するということがどうなのかというお尋ねかと思いましたが、該当する情報が存在しない段階であらかじめ指定することができるということにつきましては、この特定秘密保護法の逐条解説におきましても、現存しない情報でも特定秘密の指定の対象となり得る旨が記載をされておりまして、従来からそのような考え方をとっているものと認識をしております。

 ちなみに、現時点では、今回指定を解除いたしました三件の特定秘密以外には、このような形で指定を解除すべき特定秘密は承知しておらないところでございます。

井出委員 今の最後のところなんですけれども、今、平成二十七年で四百七、八十件あって、そのうちの三件が警察と外務省で指定解除なのかなという理解なんですけれども、では、そこも、ほかの件については、一応内閣官房の方で横断的に何か確認をとられたということなんですか。

田中政府参考人 現時点におきまして、特定秘密が記載された文書がない特定秘密があるというふうなことは承知しておらないという意味でございます。

井出委員 よく、衛星画像ですとか、何か海外とのやりとりをする暗号ですとか、防衛省は今まで持っていた、防衛秘密という名称だったか、ちょっと確かではありませんけれども、それがそっくりそのまま特定秘密に移行するというような状況でこの法律がスタートしましたので、逐条解説にあるというお話だったんですけれども、私の頭の中は、もうすっかり、今ある情報を、二十六年までにある情報、二十七年に得た情報、それが項目に分けられているのかなと思っておりました。

 逐条解説の部分で再度確認したいのは、では今後も、もしかしたら、例えば、二〇二〇年にオリンピックがあります。二千十何年からかわかりませんけれども、オリンピックのテロ対策について情報を集めなきゃいかぬ、そういう項目を立てて、結果として、情報を集めたけれども、特定秘密の指定要件には満たなかったから、ゼロで解除になります、そういうようなことがこれから実態としてまた起こっていくのかどうか、そこについて教えてください。

田中政府参考人 将来のことにつきまして断定はできませんが、先ほど独立公文書管理監の方から御答弁ございましたように、御意見をいただいておりまして、特定秘密に当たる情報が出現する前にあらかじめ特定秘密を指定する場合には、当該情報の出現可能性について慎重に判断すること、こういった御意見をいただいておりますので、それを踏まえまして対応してまいりたいというふうに思っております。

井出委員 情報ですから、想定しない情報が来て特定秘密だということもあるでしょうし、想定されるのであれば、その準備を、項目立てをしておくという、そこを、どっちがよくてどっちがだめだということは私自身も今申し上げるような状況ではないんですが、少なくとも、こうしたことがまたこれからも起こり得るということだけははっきりしましたし、我々の方もしっかりそういう意識を持って見ていかなければいけないのかな、そんなケースなのかときょう伺って思いました。

 ちょっと時間が残り少ないんですが、最後に震災対応の関係で小川矯正局長に伺います。

 東日本大震災ですとか熊本の地震のときに、避難所として刑務所の一部を開放したり、食事を提供したり、東日本大震災のときは刑務所に入っている受刑者が義援金を申し出て、相当な、六千万だか七千万ぐらい集まったというような記事も読んだことがあるんです。過去にも、さかのぼって、いろいろな地震とかで、余り地震がひどいと、一回、受刑者も出ていってくれというようなこともあったやに聞いていますけれども、でも八割近くが戻ってきたというような、そういう、刑務所、受刑者がそうした震災の方で何か前向きに果たせる役割というものがあるんだなと思っておりました。

 そこで、この間、安倍総理が熊本に行って学校をごらんになった、学校というものはまさに地域にとって安全の場である、その重要性を改めて認識したというようなお話がありまして、そのことはそっくりそのまま矯正施設、刑務所にも同じことが当てはまるのかなと思いますし、特に矯正施設の耐震化、学校に比べたら大分難儀をしているようですけれども、それだけの震災時の対応というものがなされているのであれば、これからの耐震対策ですとか、そういう予算要求というものをもっと声を大にしてやっていくべきではないかなと感じておりますが、御見解をいただきたいと思います。

小川(新)政府参考人 お答えいたします。

 これまで大規模震災のときにいろいろな対応をしてきているわけでございますけれども、基本としましては、やはり矯正施設におきましては、大震災等の災害が発生した場合に、まず被害を最小限に食いとめる、そして被収容者の収容を確保して逃走等を防止するということが一番大事だと思いますし、国民の安心、安全を確保することにつながるというふうに考えております。

 そのために、施設もしっかり対応しなければいけないわけでございますし、法務省におきましては、法務省防災業務計画というものをつくっておりまして、収容施設においてどういう対応をするのかということも決めておりまして、その中で、非常食とか防災備品についてもきちんと整備をするということも決めております。

 そういったこともありまして今回いろいろな対応ができたというふうに考えておりますので、引き続きそういったことは対応を進めていきたいと考えております。

 また、熊本刑務所は、地域防災協定、自治体との協定につきましてはまだ協議中だったというふうに聞いておりますけれども、幾つかの施設ではそういった協定をつくっているところがありまして、例えば道場であるとかあるいは駐車場であるとか、そういったところを避難場所として提供するというふうな協定を結んでいるところもございますので、これも積極的に進めていきたいというふうに考えております。

 それから、やはり基本になるのは、施設の堅牢性といいますか耐震性ということでございます。

 一生懸命進めているところではございますけれども、まだ現在の昭和五十六年の耐震基準を満たしていない矯正施設が非常に多くございます。現在でも、現行耐震基準以前の施設が八十庁、それから旧耐震基準以前の建物、矯正施設も六十一庁ありまして、合計百四十一庁がまだ耐震強度に不安があるという状況でございますので、委員御指摘のように、さらに声を大にしまして、財政当局の理解を得ながら、現行基準に応じた耐震化等の安全確保を早急に実現するよう、引き続き進めていきたいと考えております。

井出委員 自治体の災害協定の話ですとか、矯正施設の本来の目的とは違うと思うんですけれども、でも、地域の刑務所に対するイメージというものも変わりますし、ぜひ、進めていただけるところ、また、それで耐震化も進むのであれば、なおのことよしだと思いますので。

 私も、先日御案内いただきました矯正展の方、解散・総選挙がなければ必ず行くということをお約束しまして、きょうは質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨委員長 以上で井出庸生君の質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

葉梨委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、民法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。岩城法務大臣。

    ―――――――――――――

 民法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岩城国務大臣 民法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、女性に係る再婚禁止期間を前婚の解消または取り消しの日から六カ月と定める民法の規定のうち百日を超える部分は憲法違反であるとの最高裁判所判決があったことに鑑み、当該期間を百日に改める等の措置を講ずるものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、女性に係る再婚禁止期間を前婚の解消または取り消しの日から起算して百日とするとともに、女性が前婚の解消もしくは取り消しのときに懐胎していなかった場合または女性が前婚の解消もしくは取り消しの後に出産した場合には再婚禁止期間の規定を適用しないものとしております。

 第二に、再婚禁止期間の規定に違反した婚姻は、前婚の解消もしくは取り消しの日から起算して百日を経過し、または女性が再婚後に出産したときは、その取り消しを請求することができないものとしております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。

葉梨委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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