衆議院

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第6号 平成13年3月28日(水曜日)

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平成十三年三月二十八日(水曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 土肥 隆一君

   理事 小島 敏男君 理事 河野 太郎君

   理事 下村 博文君 理事 鈴木 宗男君

   理事 安住  淳君 理事 桑原  豊君

   理事 上田  勇君 理事 土田 龍司君

      池田 行彦君    佐藤 静雄君

      坂本 剛二君    桜田 義孝君

      下地 幹郎君    虎島 和夫君

      中本 太衛君    野田 聖子君

      林  幹雄君    平沢 勝栄君

      水野 賢一君    宮澤 洋一君

      望月 義夫君    伊藤 英成君

      木下  厚君    首藤 信彦君

      中野 寛成君    細野 豪志君

      前田 雄吉君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

      柿澤 弘治君

    …………………………………

   外務大臣         河野 洋平君

   外務大臣政務官      桜田 義孝君

   外務大臣政務官      望月 義夫君

   外務大臣政務官      丸谷 佳織君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    東郷 和彦君

   外務委員会専門員     黒川 祐次君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  虎島 和夫君     林  幹雄君

  原田 義昭君     佐藤 静雄君

  平沢 勝栄君     坂本 剛二君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤 静雄君     原田 義昭君

  坂本 剛二君     平沢 勝栄君

  林  幹雄君     虎島 和夫君

    ―――――――――――――

三月二十八日

 国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際情勢に関する件




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     ――――◇―――――

土肥委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、委員首藤信彦君の質疑に際し、外務省欧州局長東郷和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土肥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定しました。

    ―――――――――――――

土肥委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小島敏男君。

小島委員 お許しがいただけましたので、質問させていただきます。

 訪米、訪ロについて伺いたいと思うのですけれども、時間が非常に短いということでありまして、私が米国に対する、またはロシアに対する考え方を少し述べさせていただき、そして質問事項のみという形になりますけれども、外務大臣には、二十五分ということですから、時計を見ながら答弁の方をよろしくお願いしたいと思います。

 この問題につきましては、昨日衆議院で、また一昨日参議院の方で総理から報告がなされ、それぞれ質疑が行われたところでありますけれども、私が聞いていまして、非常に常識とかけ離れていることを言っているなということで、私自身も少し腹立たしさを感じているわけであります。

 きのうの衆議院の質疑等につきましては、とうとう森総理が腹を立てられたということでありまして、私自身も、それも理解をできないわけでないという点もあります。死に体とか花道論とか、または外国に行かなかった方がよかったのではないかというような発言をしている方がおりまして、そういうのは私から言わせれば、そういう人に対してなぜ質問をするのかということに疑問を感じるくらいですね。首長にしても私たち議員にしても、やめるということがわかっていても任期中は命がけでやるというのは当たり前のことなんですから、そういうことから考えますと、総理がロシアに行かれたときに、お父さんの面影を本当に思い浮かべながら、そして一生懸命交渉をして、そのことについて、花道だ、行かない方がいいなんてことは、私は、やはり言うべきでない。

 日米にしろ日ロにしろ、野党の皆さんにも言いたいのですけれども、こういう点はよかった、こういう点は直すべきだとか、こういう点はもう少し突っ込んだらどうだ、それが日本の国家国民のために、国益につながることであるというふうな考え方でないと。ただ森さんに対していろいろと発言をされることに対しては、私は余りいい気持ちがしていません。

 しかも、外務大臣がここにおりますけれども、外務大臣も、外務省の不祥事のことでおやめになったらどうかということを何回も言われているのですね。そばにいて私も、河野外務大臣が何したんだろうと。河野外務大臣は歴代の外務大臣の中でも三年という長きにわたっていますし、外交というのは人間対人間のつながりである。だから、初めて行った人が名刺交換をするような、そんな外交で実が上がるわけはありません。ですから、外務大臣はやはり日本の代表として、正々堂々とやっていただきたいと思うのです。

 日本に対してロシア人がどんな感じを持っているかというイメージについてロシアの方にアンケートをとると、好きな国の上位に、五カ国の中にいつも入るというんですね。日本が好きだ。これは勤勉性だとか、近くにある国であるということ等、そういうことからして、ロシア人は日本人に対して非常に好感を持っている。しかし、日本人に対してロシアのアンケートをとると、悪い国ということで全然相手にしてくれないということですね。そういう温度差がある中で、外務大臣としてロシアに行かれていろいろな方々にお会いしているということに対しては、私も非常に大変なことだなと思います。

 そこで、今ロシアの関係についてのお話をしたわけでありますけれども、まず最初に、三月二十五日、ロシアのイルクーツクで行われた森首相とプーチン大統領の日ロ会談については、森首相が政治生命をかけて行った今回の日ロ首脳会談の最大の成果は一体何だったのだろうか。また、ちまたに言われている問題として、二〇〇〇年という区切りをしながらできなかった、今回はその期限を全然設けられなかった、恐らく相当な努力をされたと思うのですけれども、その期限が求められなかったことについても思いのうちを明かしていただきたいと思います。

 それから、ロシアのことを続けて申し上げますけれども、二番目の問題として、イルクーツクの声明では、一九九三年の日ロ関係に関する東京宣言に基づき、択捉、国後、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより、平和条約を締結し、もって両国間の関係を完全に正常化するため、今後の交渉を促進することで合意したとされておりますけれども、政府は、今後どのような方針のもとに交渉を続けていくつもりなのか、この点。

 それから、ロシアの問題についてはもう一点、経済の問題についてお伺いしたいと思いますけれども、ロシア経済を支えているのは何といっても油であります。原油の輸出はロシア外資収入の一五%を占めておりまして、石油製品と天然ガスを加えると四〇%にも達します。しかしながら、二〇〇三年ロシア経済危機説というのがありまして、その理由として、二〇〇三年に設備の老朽化が限界に達する、特に電力については、ロシア国内にある八〇%の発電所が二〇〇三年に設計寿命を迎えるということでありますし、また、その年に対外債務が連邦財政の五〇%以上に達するというようなことが書かれているわけであります。

 しかしながら、日本のロシアに対する投資の現状というのはどうかといいますと、世界の国々の中で十九番目という極端に、ロシアに対する投資状況というのはあるということですね。近い国の割には世界で十九番目というようなことが言われております。

 そこで、今回の首脳会談では日ロ間の経済関係についてどのような協議が行われたのか、また、今後、経済協力と領土交渉のバランスについて政府はどのように感じておられるのかをお伺いしたいと思います。

 訪米の関係については一点ですから、つけ加えて言わせていただきますと、昨日の委員会の質問に河野外務大臣が答弁をされていたことの中に、まだまだアジアの関係についての人事が固まっていないんだというようなことで、これからその人事が固まって、いわゆる日米の関係が確固たるものになるんだというような御説明があったわけであります。

 そこで、私としては、そういう人事の関係とあわせて、これからのいわゆる日米関係を構築していただきたいと思います。

 一点だけ質問したいのは、実習船えひめ丸と米国原潜との衝突事故、この問題について、新華社とか英国の新聞等は、この問題で日米関係が非常に悪くなるのではないかというようなことを懸念されている記事が載っているわけでありますけれども、この衝突事故が日米関係に与える影響。

 そして、昨日来も補償の問題が衆議院でも出ておりましたけれども、補償の関係ということになりますと、海外に今日本人が大変出かけておりますけれども、バスの事故、航空事故、列車事故、たくさんの事故があります。そのとき、日本人的な感覚で、一人何億円出るんだろうというような感じを持つんですけれども、やはり外国と日本の差というのは非常に大きいということであります。ですから、非常にスズメの涙という形の、向こうの国内にすればそれが当たり前のことなんですけれども、そういう補償問題があるわけであります。

 えひめ丸の関係についても、いよいよ補償問題に話が入っているというような話もありますけれども、アメリカの場合は物価水準からいっても日本とそんな大差がないけれども、私が心配しているのは、我が国と米国では法体系が異なるということでありまして、補償制度についてもかなりの差があるのではないかと。

 政府は今まで補償問題という一くくりで話をしていますけれども、補償をする場合の日本の法体系とアメリカの法体系とはどんなところにどんな差があって、私たちが非常に理解に苦しむ点もあるんだというようなことがあれば、お知らせをいただきたいと思います。

 全部質問を並べて言いましたけれども、答弁の方、よろしくお願いいたします。

河野国務大臣 大変多岐にわたって御質問をいただきましたので、できるだけ漏れないように御答弁を申し上げたいと思いますが、もし漏れておりますようでしたら、後ほどまた御指摘をいただきたいと思います。

 まず、ロシアについて申し上げたいと思いますが、ロシア問題を考えますときに一番最初に考えなければならないのは、あのように大きな国土の国ですから、ロシアという国は、ヨーロッパの国でもあるしアジア太平洋の国でもあるという両面を持っているということを我々は考えなければならないと思うんです。

 ヨーロッパに向いたロシアというものは、ヨーロッパとの関係、これは、NATOとの関係を初めとしてさまざまな問題についていろいろと積極的に政治的な話し合いが進んでおりますし、あるいはNATOの問題を含める安全保障の問題についても非常に積極的な話がされておりますが、一方、アジアに顔を持つロシア、アジア太平洋の国ロシアという面を考えますと、中国との関係あるいは北朝鮮との関係、そういったものが非常に長く続いてきております。その一方で、その海軍力で、アメリカの海軍とロシアの海軍との関係、こういったことでもつばぜり合いがあったりという状況もあるわけです。

 しかし、やはり何といってもモスクワが政治の中心で、この政治の中心は主としてやはりヨーロッパを向いていると考えざるを得ないわけですね。ということになると、アジア太平洋側のロシアというものは政治的にはなかなか、ロシアの国内でも影響力というものは、政治的な影響力を極東のロシアが持っているかというと、これもそれほど大きくないし、また、モスクワに中心を置くロシアが極東に向けてどれだけの政治的な配慮を行っているかということになると、これまたヨーロッパに向いているロシアに比べればやはり少ないということは言えるのではないかと思うんです。

 それは、さらに経済の問題からいいましても、極東における経済というものは、政治的な庇護、恩恵、そういったものはなかなかないということもございますから、ロシアの極東地域というものを我々がどう見るかということは非常に大事なものだと。つまり、我々がロシアと一口で言ってしまっても、ロシアというあれだけ大きな国ですから、なかなか一言でくくれるというものではないということをまず最初に認識をする必要があると思います。

 それから、イルクーツクでの首脳会談は、これはもう小島議員よく御承知のとおり、森総理の父君のお墓があそこにある。これは長い歴史的ないきさつがあって、その当時は日ソ関係といいましょうか、その時代から日ソ関係に非常に思いをいたしていた日本海沿岸のある地方自治体の方々が、日ソの交流を一生懸命やるべきだということから大変な努力をされて、その結果、亡くなられた森総理の御先代が現地の人たちからも非常に慕われて、理解をされて向こうにもお墓ができた。まさにそれは日ソ、今で言う日ロのかけ橋の役割を果たされた貴重な方の努力の跡です。

 そういうものがイルクーツクにあるということをプーチン大統領が知って、森総理に対してプーチン大統領の方から、ぜひロシアへおいでください、そして、そのときにはイルクーツクでお目にかかりましょう、そうすれば、あなたはお墓参りもできるじゃありませんかということを言われて、イルクーツク会談というものが実現をしたわけですね。

 それは、プーチン大統領の森総理に対する配慮、個人的な人間関係を大事にしていこうという配慮もあったと思いますし、それからもう一つは、モスクワという政治都市から離れたところでやってみようという気持ちもプーチンさんにあったんじゃないかと思います。

 今度は、イルクーツク会談の前に、プーチン大統領がテレビでインタビューに答えてかなり踏み込んだことを言われましたが、プーチン大統領はプーチン大統領として、日ロ関係というものを非常に重要視して、日ロ関係でさらに踏み込んでいきたいという思いから、踏み込むためにロシアの国内向けにもいろいろなことを言ってみる、そして、しかもモスクワでだけ言うんじゃなくて、地方都市にも出ていって日ロ首脳会談というものをやってみせることによって、ロシア各地で日ロ間の重要性というものをアピールしようという気持ちもあったのではないか、そういう意味では、非常に意味のあるイルクーツク会談だったというふうに私は理解をしているわけです。それは、会談の中身もさることながら、イルクーツクでその会談を行ったということ自体にも意味があったというふうに思います。

 その最大の成果は何かという御質問がございましたけれども、昨年の十二月ぎりぎりまで、我々は、クラスノヤルスク合意というものがある以上、ロシアを、表現は余り適切でないかもわかりませんけれども、追い込んでいって、クラスノヤルスク合意で二〇〇〇年にはもう結論を出そうじゃないか、そういうふうに我々の先輩が決めたんだから、そうしようじゃないかと言って、期限を切ってそこに追い込んでいくことによって何か合意点が導き出せないかという気持ちもあってやった。しかし結局、努力は相当双方でしましたけれども、結論は出なかったわけです。

 しかし、関係者、例えば北海道の方々を初めとして関係者は、やはり二〇〇〇年に結論が出るかもしれないというので一生懸命見ていてくださった方がいるわけですから、そうした方々に対して、努力はしたけれどもここまでしかできなかった、ここまではいったんだけれども、言い方によってはここまでしかできなかったということを、両国の国民にやはり報告をする。それは事務方が報告するのではなくて、両国の首脳がお互いに両国国民に報告をする。しかも、首脳の合意によって、双方とも、ここまではできた、あるいはここまではできたけれども完成はしなかったと、合意に基づいて双方の国民に報告をするということが大事だということで、それができた。そして、ここまではできましたということと同時に、したがってこれからこういうふうにやりますということを国民に、皆さんに言うということが非常に大事だというふうに、私どもは、二〇〇〇年ぎりぎりまで作業をした人間として、そう思っていたわけです。

 実を言いますと、大事なところは、これまでにできたもの、それから、これからどうやるかということ、これらを首脳の合意によって報告をする。と同時に、でき得べくんば期限をつけて、二〇〇〇年にはできなかったけれども、次のターゲットといいますか期限は、ここを期限にしてやろうと思うんだということまで言えれば一番いいなと思って、一生懸命努力をしました。努力をしましたけれども、正直申し上げて、何月何日とかあるいは何年という数字で言えるような期限については合意ができませんでした。これは正直申し上げて、努力をしたけれども合意はできなかった。

 しかし、その前段の、ここまではやりました、これからこういうことをやりますということについては、五六年の日ソ共同宣言が平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書であるということを確認した、これはやはり大変重要なことだと私は思うのです。そこまではできました。

 さて今度は、その上で、これからは九三年の東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約の締結を目指すのですということを再確認する。これができたということは、やはり最大の成果だというふうに思っているわけです。期限については、残念ながら合意ができませんでした。

 そして最後に、首脳同士の話し合いで、あり得べき最も早い時点に平和条約の締結をやろうねという、何年という数字では期限が切れなかったけれども、あり得べき最も早い時点でやろうという合意はできたということでございます。

 それから経済の問題は、今井ミッションを政府がオーソライズして派遣をするということで、今井ミッションを派遣するということに合意したということでございます。

 えひめ丸の問題につきましては、日米双方のこの問題解決のために取り組む姿勢というものをお互いがきちっと理解をして評価をして取り組むということになっておりまして、補償の問題については、これが極めて重要だということを首脳の会談でも、特に総理はこれについて言及をしておられる、アメリカ側もできるだけのことをいたしますということを言っておられるということでございます。

小島委員 外務大臣は相当詳しくお話をしたいだろうと思うのですけれども、私に与えられた時間が非常に少ないので、まことに申しわけなく思うのです。

 一つだけ聞きたいのは、補償問題というのが具体的にもうテーブルにのってきているわけですよ。私がさっき話したように、日本的な考え方で補償問題は考えていいのか、また、アメリカというのは弁護士さんもたくさんいますし、法律も非常に多岐にわたっているわけですから、日本とこういう点が違うんだ、だから期限的にもこういう形で進めないと、長引かせた場合には、向こうのペースと言っては申しわけないのですけれども、そうなってしまうんだということがわかったら、その点だけでも教えていただきたいと思います。

河野国務大臣 一言だけ申し上げたいと思います。

 この種の事故に伴う補償の手続といたしましては、アメリカにおいては、当事者間の話し合いによる解決という方法と、訴訟による決着という方法があるということでございます。

 当事者の話し合いによる解決という方法をとる場合に、これは海軍の規定等もあって、事故発生から二年以内に解決する必要があるということになっているというふうに私ども承知をしております。

小島委員 時間が参りましたので終わりますけれども、日ロ、日米、これは大変長い時間がかかるわけですので、根気強くやっていただきたいことと、最後の補償問題につきましては、二年以内という期限が出たわけでありますけれども、日本ではそういうことは考えられないこと、アメリカでは相手の方がだれなのか、米政府なのか米海軍なのか、こういう問題も含めて、遺漏なきように今後進めていただきたいということを要望申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。

土肥委員長 次に、上田勇君。

上田(勇)委員 おはようございます。公明党の上田でございます。

 きょうは、日ロ首脳会談、日米首脳会談につきまして何点か御質問させていただきますが、時間も限られておりますので、早速始めたいというふうに思います。

 最初に、日ロ首脳会談につきまして、今回の首脳会談では、先ほど大臣から御答弁もありましたけれども、五六年の日ソ共同宣言の有効性が改めて、共同声明、文書の形で確認されたということは大きな成果であるというふうに私も考えております。ただ、ここの部分について、一部の解釈、特にロシアのメディアなどの解釈では、プーチン大統領が日ソ共同宣言の解釈について専門家による協議が必要だというふうに述べたというのは、これは歯舞、色丹二島返還に必ずしも同意はしていないんだということを暗示しているというようなことも言われていることを聞きました。

 これは日本側の解釈とは異なっているというふうに思うのですけれども、こうした状況、そういった解釈がある中で共同宣言の解釈に関する専門家協議に応じるということになりますと、二島返還を法的に確認したということにはなっていないんだということを認めることにはならないのか、その点ちょっと懸念されるのですが、御見解をお願いいたします。

河野国務大臣 これは、私がこれはこうだということを申し上げるのは十分でないかと思いますが、御理解をいただきたいと思いますことは、イルクーツク声明の中に、一九五六年の日ソ共同宣言が両国間の外交関係の回復後の平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点だということが書かれているわけでございます。この点を今議員は指摘されたわけですが、この共同声明に書かれております文章は、日ロ首脳会談が行われます二日ほど前でしょうか、日本ではたしかNHKが放映したと思いますが、プーチン大統領のインタビューというのがございました。

 このインタビューの中で、プーチン大統領は、五六年宣言に関しては、私はこの宣言が以下述べていることを想起させていただきます、ソ連側、当時はソ連であったが、平和条約の署名を条件に二島を日本側に引き渡すことに同意する、この宣言はソ連邦最高会議によって批准されており、すなわちこの宣言は我々にとって義務的なものだ、繰り返しますが、この宣言は平和条約の署名という条件がかけられています、宣言にはいかなる条件でこれらの島々が引き渡されるのか書かれておらず、これはすべて交渉の対象となるのですということを言っているわけです。

 ここでは、今まさに議員が御指摘になりましたように、五六年の宣言は義務的なものだ、両国の首脳が署名をして両国の最高会議、日本では国会が批准をしているわけですから、これはもう今や義務的なものだ、こうプーチン大統領は言い切っているわけですね。言い切った後で、この宣言には平和条約の署名という条件がついていると。これは九項に、平和条約を締結した後引き渡す、こう書いてあるわけですから、それが条件であることは五六年の宣言で明らかなのですが、そこで、プーチンさんの言っておられる、いかなる条件でこれらの島々が引き渡されるのかはまだ書いていないのだと。つまり、詳細がまだ書いてない、その詳細についてはこれからの交渉だというふうにプーチンさんはインタビューで言っておられるわけです。

 したがって、私は、先ほど申し上げましたように、プーチンさんの理解はそういう理解であるということも我々は否定はしませんが、しかし、とにかく五六年宣言というものは文章で書かれて、ここで両国首脳が確認をしたということは大きくて、しかもそれは九項を含めて義務的なものであるということについては何の疑念もないということだけは確認していいと思うのです。

 専門家が協議をするという話をあの中でちょっとプーチンさんが言ったということになっておりますが、それはいかなるものであるか、つまりいかなる種類の専門家であるかということにまでは言及がされておりません、今の段階では。

 私どもが推測をすることは幾つかございます。例えば、仮に引き渡す場合には、今あそこにいるロシアの人たちがどういう条件で、帰るのか、あそこにずっといることを認めるのかとか、そういうことについて議論をするというのも一つあるのかなとも思いますし、その辺のところについてはまだ正確に双方で確認をされたものは、新たにそういう枠組みをつくって専門家の会議をやろうということが決められたということは承知をしておりませんから。

 私の理解としては、これまでもずっと専門家のレベル、それからハイレベルの協議はやってきたわけです、四島返還について。したがって、そういう専門家あるいはハイレベルの協議というものはこれからも引き続き行われていくというふうに私は理解をしております。

上田(勇)委員 ありがとうございます。

 日本、ロシアの首脳間での基本的なことについての認識のずれはないけれども、具体的な協議のことについてはこれからまだ詰めていかなければいけないという趣旨だというふうに理解をいたしました。

 次に、日ロ間の最大の懸案というのは、やはりこの領土問題、平和条約締結でありますけれども、今回の首脳会談においても一定の成果は得られましたが、具体的にはなかなか、もう何年にもわたって進んでいないというところが現実であります。

 プーチン大統領は、ヨーロッパやアジアを含む非常に多元的な外交を志向されていますし、現実的な政策選択を重視するというふうにも言われております。そうなりますと、こうした課題を解決し、具体的な成果を上げていくためには、やはりロシアにとって日本という国が非常に重要な国なんだ、その協力関係がロシアの外交政策上、戦略上重要で不可欠であるということを認識してもらわなければいけないというふうに思います。

 その一つに、これまで我が国は、日ロ関係の改善、それからこうした領土問題、平和条約の問題の解決に向けた環境づくりという意味で、積極的にさまざまな形での経済協力を行ってまいりました。しかし、ちょっと最初にお話をさせていただいたけれども、二〇〇〇年までに平和条約の締結を目指すという一つの目標があったのですが、それは達成できませんでした。その後、具体的なはっきりとした前進がまだ見られないわけでございます。これまでのこうした我が国の行ってきた経済協力というのが、果たしてどういう効果があったのかということを思わざるを得ないときもあるわけであります。

 そこで、我が国が取り組んできた経済協力、友好促進のためのそうした協力について、いかなる効果があったのかというふうに評価されているのか。また、一部に、そうした課題を解決、交渉を前進させていくためには、こうした経済協力のあり方の見直しも検討すべきではないかというような意見もあるというふうに承知しておりますけれども、こうした点も含めまして、今後の対ロシア外交、具体的な成果を上げていくという意味での外務省としての戦略を伺いたいと思います。

河野国務大臣 対ロ外交については、いろいろな議論がございます。そして、しかもそのさまざまな議論の中には、ソ連時代の対ソ外交当時の考え方をそのまま踏襲していっていいのじゃないかという議論も一方ではあるわけです。まさに今議員がおっしゃった経済の問題などは、かつては政経不可分などといって、政治的に進んだ分だけ経済も進む、政治的に進まなきゃ経済はそれ以上進まないんだというような考え方もあった時代がございました。

 しかし、今我々はそうした考え方を変えまして、ロシアに対しては経済的な関係を思い切って踏み込んでつくっていく。それによって、資本主義経済というものをロシアが認識をする、あるいはそれをとる、あるいは市場経済というものについての理解をロシアが十分することによって、こういう表現は適当でないかもわかりませんが、ロシア自身の体質が変わってくるのではないか。市場経済化が進めば、ロシアという国はさらに国際的にさまざまな分野に関与していくようになる。そして、それがただ単に市場経済化だけではなくて政治的な民主化にもつながり、国際的な責任ある立場の国が果たすべき役割というものについてもっと積極的に取り組んでくるのではないか。そういう考え方もあって経済についても踏み込んでいこうという気持ちを持っているわけです。

 したがって、それは、政治的に進んだ分だけ経済を進めるということではなくて、経済的には自由主義経済あるいは市場経済のパートナーとしてロシアが育っていってほしい、そういう思いもあってロシアとの経済関係については見ているというふうに御理解をいただきたいと思うのです。そのことで我々は、先ほどもちょっと申しましたけれども、ロシアの極東地域の生活環境などももっとよくする、あの極東地域が経済的にもっと繁栄をしていくということを、しかも、日ロ関係においてそういう繁栄が得られたということをロシアの人たちがわかってくれるということも一つのねらいにはあるわけです。そんなことを考えながら、経済政策というものは日ロ関係の協力という意味で重要なものだ、そんな認識を持っております。

上田(勇)委員 もちろん、領土問題、平和条約というのは長年の懸案でありますので、そう簡単に成果が上がるものだということには考えておりませんけれども、今回の首脳会談、一定の成果が上がったわけでありますので、また引き続き実現に向けて御努力いただきますことをお願い申し上げる次第です。

 次に、日米首脳会談の件についてお伺いをいたします。

 今回、この日米首脳会談についてさまざまな批評もあるんですが、私自身は、今非常に世界の経済が不安定な状況にある中で、世界の第一位のアメリカと第二位の日本、この経済規模を持つ両国のトップリーダーがそれぞれの経済の見通しやこれからの政策について話し合って、世界に対してメッセージを送ったということは非常に大きな意義があったものだというふうに考えております。

 その中で、ブッシュ大統領が会談の初めに我が国の経済問題を取り上げたわけでございます。これは日本側の意図とは若干異なったのではないかというふうにも思うんですが、ブッシュ大統領がこのように真っ先に日本の経済問題を取り上げたということ、それはどういうような意図に基づくものだというふうに御認識されているんでしょうか。

河野国務大臣 議員が御指摘になりましたように、これは大した意味のあることではございませんけれども、私どもは、首脳会談などが行われますときに、段取りといいますか話の流れみたいなものは大体想定をして、こういうことから入っていって、こういうところではこの話をしましょうと。特に今度の場合には、首脳会談と昼食をとりながらのワーキングランチという二つ、一部、二部とでもいいましょうか、そんなようなことを最初想定しておりまして、ワーキングランチで経済をやる、第一部の首脳会談ではもっと政治的課題をやろうというふうな想定を実は最初しておったのでございますが、訪米の直前に経済が、アメリカの株価も相当大きな変動を見せましたし日本もそうでございました。そんなこともあって、急遽、これは最初の首脳会談から麻生大臣に同席をしてもらって経済もやれる構えをつくって行ったという状況にございました。

 そこはもうごく自然に、お互いに、首脳同士は、今当面我々が直面している問題で大きい問題は経済だけれども、どうだという話に恐らくなったんだろうと思います。ごく自然に経済の話から首脳会談は入っていった。私は、形を整えて、きちっとアジェンダを決めてやるというよりは、そういう、双方の首脳がごく自然に今抱えている一番の問題というものに率直に入っていけるという会談は、悪い会談ではないと。ただ、私どもは、初めての出会いですからそんなふうにうまくいくだろうかという気持ちは多少ありましたけれども、非常にスムーズに双方が率直に今抱えている問題について言い合った。日本側は日本側で、今抱えている経済問題については自分たちはこんなふうに認識をしているということを言い、ブッシュさんはブッシュさんで、アメリカの問題について、いや、自分たちもこういう問題を抱えて、こういうふうにしようとしているんだということを双方が言い合ったというふうに会談は流れたと聞いております。

上田(勇)委員 もう時間もないんですけれども、今、アメリカの景気も減速をしている、日本の経済も非常に困難な状況にあるという中で、これはやはり世界のナンバーワンとナンバーツーの国の経済なんで、これが世界経済に与える影響というのは極めて大きいわけであります。アメリカ、ブッシュ大統領は、その辺を非常に敏感に感じられていて、今回の首脳会談の最大のテーマが、世界、国際経済やマーケットに対して日本とアメリカがこういう強い意思を持っているんだというメッセージを送ることだというふうに感じていたのではないかというふうに思います。そういう意味で、日本側としては、その辺の意図がアメリカに比べると少し違っていた。ちょっとその辺は残念に思うわけであります。

 いずれにしても、もう時間でございますので、最後に一つだけお伺いをいたします。

 今回の首脳会談、経済の問題に非常に時間がとられたこともあるんですけれども、もう一つ、いわゆる安保の問題について、これは、時間の制約があったということもあって、従来のスタンスからなかなか出た発言はなかったというふうに思います。その中で森総理は、これも今までの議論の範囲内ではありますけれども、有事法制の法制化を視野に入れた検討というのを提案したわけであります。

 このことについて、具体的な方針並びに外務省として考えられているスケジュールについて、時間が来てしまいましたので、最後に簡単にお答えをいただければというふうに思います。

河野国務大臣 有事法制について森総理は今国会冒頭の所信表明演説でも述べておられますが、森総理の頭の中にそうしたことはずっとあるんだろうと思います。

 そこで、有事法制につきましては、首脳会談の席上で、法制化を視野に入れて検討を開始していくということを自分は国会でもそういう演説をしましたという気持ちを披瀝されたというふうに思います。その有事法制は、自衛隊が文民統制下で国家国民の安全を確保するために必要なものであって、平時においてこそ備えておくべきものだというふうに総理は思っておられるようであります。

 具体的な検討内容、スケジュールについては、内閣官房を中心として十分検討していくものというふうに承知をしておりまして、我々外務省としても当然これに協力をしていこうと考えているということだけ申し上げておきたいと思います。

上田(勇)委員 終わります。

土肥委員長 次に、安住淳君。

安住委員 河野大臣、御苦労さまでございます。ざっと見ると、我が野党の席はほとんど埋まっているのに、何かどちらが与党で野党だかわからないという、定足数ぎりぎりの状態というのは私は決して好ましいことだとは思いませんから。いかに最近だらけているかという証明でもあります。

 だらけていることで一言いうと、最初に大臣、通告していませんけれども、私、きょう朝新聞を見てびっくりしたのですけれども、ノルウェーのハラルド五世国王閣下がおいででございますが、きのうの国王の方の御主催であった記念コンサートレセプションに、どうも森総理はドタキャンをした。そしてすし屋で自民党の自分の派閥の人と会食をして、心ここにあらずという証明でしょう。私は、こういうことは全く国益に損するというか、こういう人が総理大臣をやっているというのは全く非常識で、外務省のある方にきょう聞いたら、困ったものですと言っていました。

 この手の話というのは、外務大臣、時間がないので率直な感想をまず聞かせてください。総理の対応というのは適切ですか不適切ですか、国賓として迎えられた人に対する対応として。

河野国務大臣 国賓の答礼行事であったわけです。この答礼行事というのは、国王、王妃両陛下が二十五日においでになりまして、日曜日でございますが、月曜日に朝歓迎行事をやり、昼に昼食会をやり、夜に宮中の晩さん会をやる、そういうスケジュールがございまして、朝の歓迎行事、昼の午さん会、そして夜の宮中晩さん、いずれも総理はもちろん出席をして、国王、王妃両陛下の御歓迎を申し上げていたわけです。その間を縫って参議院は予算を上げるというような、政治的にもかなり厳しい状況の中でこうした歓迎行事がございました。

 昨日は、今おっしゃったように答礼行事でございますから、ノルウェーの国王、王妃両陛下の答礼行事というのは日本の天皇陛下に対する答礼というのが本来の趣旨で、それに対して関係者が陪席をさせていただくということであって、私ども何人かは仲間が呼ばれておりました。実を言いますと、私も昨日は出席をしておりません。私は外交行事がずっとございましてお伺いできないことをあらかじめお伝えしておったわけですが、総理も、ドタキャンとおっしゃいますけれども、そう直前になっておれはやめたというわけではなくて、一定の時間があって、きょうは出席できないということをお伝えしたというふうに私は聞いておりまして、これはまあ、御質問をいただいても、この問題は私が答弁をするのはなかなか難しいので、この程度で御理解を……。

安住委員 実は、なぜドタキャンと言ったか。今、時間がと言いました。私確認しました。一時間前に通告してきたというのですね。通常はこの手の話というのは、前までは外交上は当然御出席なさることを前提にしてやっていて、だから、要するに出席できないから一時間前なんですね。腰が痛いと言って、総裁選かどうか知りませんけれども、自分の派閥の人たちと迎賓館のわずか一キロ先ですしを食べたと。

 外務大臣、これは逆のことを考えましょう。ノルウェーで、我が国の天皇陛下が行かれて、ノルウェーの首相がこういう行動をして報道されたら、国賓行事すべて、努力してやってきたことが台なしになって、この話だけでノルウェー国民に対して我々は非常に不愉快な思いをするのじゃないですか。そういうことを言っているのですよ。それが国益に反するかどうかです。経緯なんか聞いていないので、私は、少なくとも外務省としても、事実関係がもしわかっていれば、河野大臣はやはり行くべきだと言うべきだったんだと思いますよ。

 だから、これはちょっと不適切な対応でないですかということを私は聞いたのです。一言だけ答えてください。

河野国務大臣 総理大臣が今抱えておられる政治的な問題がいかにたくさんあって、いかに重要な問題をたくさん抱えているかということについては、ノルウェー側には十分説明はしてございます。私もきのうの夕刻にはノルウェーの外務大臣と外相会談をやっておりまして、それらの点についてはもう十二分にノルウェー側は承知の上だと思います。日本側のさまざまな都合をぜひノルウェーの皆さんに御理解いただきたいものと心から期待をしております。

安住委員 やはり集中力というか統治能力を失って、そういう人がポストにいることがいかに国益に反するか、私はそうだと思いますよ。よほど本当に御事情があれば――逆に、行かないで裏でどういう人たちと飯を食っていたかということもみんなわかっている話ですからね、これは。こういうことをやって平然としている。そういう点では、私はなかなか理解に苦しむ行為だったと思います。

 本当にノルウェーのハラルド国王には大変失礼なことをした、私たち野党はそう思っています。そう思っていない人たちが与党で総理大臣をやって、そのことを認めない外務大臣がいるということが私は残念でなりません。そのことをまず御指摘申し上げます。

 私は日ロ関係だけ聞きます。また関連で、首藤委員が日米問題と日ロ関係をただしますので。

 私は、今のことで私の質問時間を六分もとられて、森さんに何とかしてくれと言いたいぐらいですが、短い時間でありますけれども、率直に伺います。外務大臣、時間がないので長い答弁は結構ですから、イエスかノーか、答弁してください。

 四島一括返還を今までずっと主張なさってきたという答弁をなさってきた、まず、これは事実ですね。

河野国務大臣 四島一括返還という、つまり一括という言葉を使ったことはここ十数年ないと思います。

安住委員 つまり、私が申し上げたいのは、今回のことで一九五六年のいわば有効性は認めた、これは確かに大臣おっしゃるとおりでございます。しかし、問題は、この共同宣言を見ると、ちょっとはしょりますが、九項のところでこう書いてあります。ソ連は、歯舞諸島及び色丹島を日本に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本とソ連の平和条約締結後に現実に引き渡されるものとする。

 つまり、私が申し上げたいのは、はっきり申し上げて今自民党の中でも二島先行論を含めて政府方針と違う動きがあることは、ロシア側も知っていると思うのですよ。外務大臣も自民党の外交部会へ行っていろいろお話しなさっていることもニュースで聞いている。我々国内にいる者ですら日本側の方針がよくわからないのですよ。

 二島返還でいいということなのか、いや、やはり四島を一括して返還してもらわなければならないのか、プロセスのことは後で聞きますけれども、まず大方針を教えてください。

河野国務大臣 二島でいいなどという考え方はございません。もし二島でいいという考え方があるならば、五六年に合意ができているはずでございます。

安住委員 わかりました。

 ということは、四島の返還を求めているという姿勢には変わりないですね。

河野国務大臣 ございません。

安住委員 そこで、五六年の問題について言及をさせていただきます。

 先ほど小島委員の質問の中にもありましたが、ロシア側は、プーチン大統領は、技術的な検討を要する、会見の中でそういう言葉を使いました。これは、大臣、帰属に関することについての技術的な問題ですか、それとも返還に関するプロセスについての技術的な問題ですか。日本政府はその解釈をどういうふうにとらえていらっしゃいますか。

河野国務大臣 ここは詳細にわたって両方の首脳に共通の認識がまだないと私は思いますが、プーチン大統領が、今議員がおっしゃったような、余り正確じゃありませんけれども、ややそれに近い発言をされたということは、記録にございます。

 そこで、例えば、専門家による協議が必要だというようなことを大統領がおっしゃっておられるわけですが、その専門家による協議というのは、今までもやってきております。四島返還というものを目指して専門家レベルの協議あるいはそれよりハイレベルの協議、これらを今までもやってきているわけで、そうした協議を続けていくということを指すのか、その協議の中でさまざまな議論をしろというのか、あるいは今議員がおっしゃったように、もっと技術的なといいますか、まさに、この問題についてはどうか、この問題についてはどうかということの議論を専門家を集めてやれというのか、そこについては、まだその詳細の議論での合意は私どもは承知をしておりません。

安住委員 もう一度伺いますが、正確に言うと、一致した解読のためにはさらなる両国の専門家の作業が必要であるというふうな日本語訳でいいと思います。そうなると、大臣、私が伺いたいのは、私どもの解釈では、五六年に戻るということは、少なくとも歯舞、色丹の帰属権については解決済みだという認識を私は持っております。これは外務省も多分そうではないかと思うんです。返還をするということはそういうことではないかと思う。

 しかし、よくよく考えてみると、この日ロ交渉にとって一番悩ましいのは、要するに、ロシア側が私たちと同じ言葉で同じ認識を持っていないということではないでしょうか。つまり、歯舞、色丹の帰属については私たちは当然だというふうに思いますけれども、このことは文書で確認するなり認めているというふうな認識をお持ちですか、ロシア側が。

河野国務大臣 ちょっと意味がよく聞き取れませんでした。もう一度お願いします。

安住委員 歯舞、色丹の我が国への帰属の問題についてロシア側は了解しているという認識を持っていらっしゃいますか。

河野国務大臣 それは、五六年宣言に書かれている文言というものを向こうは認めているということでございます。

安住委員 という解釈に立てば、解読のためにさらなる両国の専門家の作業が必要だということは、返還のプロセスについて言及したという解釈を日本側はしているというふうに解釈してよろしいですか。

河野国務大臣 そこで、先ほど私申し上げたんですが、専門家による協議が必要だというプーチン発言というものがそのどの部分を指しているのかについて、もう少し我々としては先方と協議をする必要があると思っています。

安住委員 つまり、残念ながら、大臣の言う話はイエスという話ではないわけですね。ということは、私は、帰属の定義から振り出しに返ってやらざるを得ないところに逆戻りしたという解釈も成り立つような気がするんですよ。それは、五六年の日ソ宣言にいわば戻るわけです。

 空白の何十年とは申しません。これを文書で認めさせたのもいい。しかし、大臣、まずロシア側に正式にどちらに帰属をするものであるかということを認めさせることは極めて重要なんじゃないですか、少なくとも歯舞、色丹。択捉、国後については全く日ソ共同宣言では触れていないわけですからなおのことだと思いますけれども、いかがですか。

河野国務大臣 そこは、先ほど私申し上げましたように、プーチン大統領の認識といいますか考え方は、五六年宣言は、両国にとってこれはもう義務的なものだということの確認はあるわけです。五六年宣言を読めば、今議員が読み上げられたように、その九項にはそう書いてあるわけですね、平和条約締結の後には引き渡されると。歯舞、色丹については引き渡されるということが書いてあるわけですから、この部分について、この九項も含めて五六年宣言は双方にとって義務的なものなんですね。

 ですから、その議論は五六年からここまでの間、一遍は否定的なロシア側の態度もありましたけれども、今度改めてそれは義務的なものだという首脳の確認ができましたから、ここから話は四島返還に向かって進んでいくという認識でよろしいんじゃないでしょうか。

安住委員 であれば、それでは大臣、時間がないのですけれども、これから解決すべき問題を何点かやはり指摘してもらわないと困ります。

 つまり、日ソ平和条約を結ぶ、例えば、これは原点である、出発点であると言うことは、これを正式に言うと、日ソ共同宣言どおりに履行するという話でしょう、お互いが。行動する。ということは、締結後には歯舞、色丹をとりあえず返還する、締結をした後は歯舞、色丹を返還のプロセスに入っていくという認識じゃないですか。つまり、交渉の順番はおのずとこういう話にならざるを得ないんじゃないですか、いかがですか。

河野国務大臣 そこが交渉の非常に難しいところでございまして、私どもは平和条約を結べば二島の返還という具体的な作業にかかるわけですけれども、平和条約が締結されなければその具体的な作業には入れないわけですね。平和条約の締結をすれば、平和条約が締結されるということはすべての問題が解決をされるということを意味するということになれば、もう領土問題はないということに、仮にそういう理解になるとすれば、択捉、国後についてどういう協議をしていけばいいのかということになるわけです。

 我々の目標は、繰り返し申し上げておりますように、四島の返還ですから、四島の返還をロシア側に認めさせる、そこで平和条約の締結をしなけりゃならぬわけです。そうですね。そこが実に難しいところで、例えば、これは全く仮説です、全く仮説ですが、もう二島でいいんだということに仮になれば、そこで平和条約を締結する。その場合に、二島返還の具体的な作業、その具体的作業にもいろいろ問題はきっとあると思います、さっき申し上げたように、住民をどういうふうにするかとか安全保障上の問題をどういうふうにするかとか、いろいろな問題があると思いますが、その作業に入る。

 しかし、そうではなくて、我々の目標は五六年をスタート台にして九三年で確認をした四島の帰属を確定することですから、その目標に向かって、総理の言葉をかりれば、これは車の両輪みたいなものだねと総理はおっしゃる。それは、歯舞、色丹についても考え方もあるけれども、国後、択捉の問題というものを抜きにして考えるわけにはいかないということだと思うんです。

安住委員 いや、私は、交渉事ですから、プライオリティーがあって、何から話をしていくのかということは問題だと思いますよ。つまり、大臣、少なくともクラスノヤルスクに関して言うと、期限を切ったというのはやはり画期的な話だったんですよ。結果的にはそうはならなかったけれども。

 しかし、空白の交渉とは言わないけれども、また延々と、何から始めるのかと。つまり、領土の帰属の問題から始めるのか、それから平和条約の締結のオーソライズしたものから入るのか、今言った返還後の人の扱いから入るのか。逆に言うと、横たわっている問題は何一つ解決してないということなんですよ。だから、五六年の振り出しに逆に戻ったのではないかという危惧さえある。

 そういう中で、私は、はっきり申し上げて与党内が混乱していると思います。この問題に関して申し上げると、しっかりとした外交方針で、我々はやはり四島返還をあくまでも要求すべきだと思います。しかし、二島返還論というのを、例えば野中前幹事長は幹事長当時に、これは会見の席なんかでも、交渉のプロセスかもしれませんが申し上げたことがありまして、我々もそのことを聞いて驚きました。つまり、外務省が認知していないといっても、これは今回の訪問団だって与党三党で行っているわけですよ、同行しているのでしょう。

 そうしたら、外務大臣、あなたは少なくとも外交交渉の責任者である。日本の立場というのは、二島返還先行論というか、四島一括含めて、あなたの言うことを信じたいと私は思いますよ。しかし、我々が見ていると、どうも違うところで違う筋の話が通っているのではないかという危惧がありますが、いかがでございますか。

河野国務大臣 どうも私は口数が少ないものですから、私の思いがなかなか皆さんにおわかりいただけないのですが、まさに今議員がおっしゃったように、外交交渉をやる場合には、やはり外務大臣がその外交交渉の責任者としてその先頭に立ってやるべきものです、あるいは外交交渉の指揮をとるべきものです。そして、最後は最高首脳者が決断をなさるということだと思います。さらに、そこで仮に署名されれば国会での批准という作業が残っているわけですから、与党が理解をしてくれるということがやはり重要なんですね。ですから、政府・与党が一体でこの問題に取り組むということはちっともおかしいことではない。

 繰り返して申し上げますが、政府の方針は四島返還。与党も、政府が、外務省が申し上げている四島返還について、自民党の中にはそれについてのさまざまなアイデアはあります、しかし、四島返還という目標について異論があったり別の意見があるということは、私は全く承知しておりません。それは、全く枠の外側でいろいろな例え話に引用されたり、何かお茶飲み話でいろいろな話があるということは、そこまで私は確認はできませんけれども、少なくとも、党の正式な場面で四島返還以外の議論が今ある、あるいは四島返還を否定するような意見があるということは、私は全く承知しておりません。

安住委員 しかし、我々がそう思っているぐらいですから、ロシアサイドから見たら、だれを相手に話をしていいかわからないという現状があると思うのですね。

 河野大臣、私は、プーチンさんの政治的立場というのは、多分旧ソ連邦時代のかなり強い指導者と同じぐらいの政治的求心力を持っていると。最近の世論調査でも七割だと。そういう人だからこそ一気に解決できるチャンスだということで、プーチン首相は、NHKのインタビューを見ていて、かなり思い切った発言をなさっている。しかし、それを受け入れるあなた方が何ですかということなんですよ。

 それをしっかり受けとめて、本当に一気呵成に解決できるかというと、そういう現状ではない。もう間もなく多分やめるのでしょう、総理も。またきのうノルウェーの国王のときにすっぽかしたり。つまり、こういう姿勢が逆に言うと日ロ交渉にとって大きな足かせになっている。

 だから、河野大臣、ぜひこれは立て直してもらわないと国益に本当に反しますよ。逆に、未来永劫北方四島は返ってこないですよ、あなた方のやっているようなやり方だと。私はそう思います。しっかりとしたプライオリティーを持って、まず帰属の問題を明らかにする、それから交渉の中で平和条約のプロセスをどういうふうにしていくか、国民はそこをわかりやすくやってもらいたいと思っているのじゃないですか。最後にそのことだけ伺って、同僚議員にかわります。

河野国務大臣 とにかく大変難しい問題であるということは、戦争以外の方法で領土が、領土といいますかそういうものが移動するということは余り例がないじゃないかということをおっしゃる方もあります。しかし、私は、この問題は日ロ間の平和的な話し合いによって必ず解決しなきゃならぬというかたい信念を持っているわけです。そうはいいながら、大変難しいなるがゆえにもう四十年も四十五年もかかっているわけで、これは別にきのうきょうの総理の態度が悪いからできるとかできないとかというほど簡単なことではないと思うのです。しかし、御注意、御指摘がございました。私どもは、さらに一層緊張をしてこの問題に取り組みたいと思います。

安住委員 大臣、歴史を見ると、やらないといけない時期というのがあって、極めて重要な時期に日本はだらしない政治をやっているということだけ私は御指摘を申し上げて、首藤議員にかわります。

土肥委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 安住議員を引き継ぎまして、イルクーツクにおける日ロ首脳会談についてまずお話を聞かせていただきたいと思います。

 まず最初に、首相の訪ロに対して、日本からは政治家はだれが同行し、どのような役割を果たしたか、外務大臣にお聞かせ願いたい。

河野国務大臣 今回のイルクーツクの首脳会談に同行されました議員は、自民党、公明党、保守党から四人の議員が同行しておられます。

首藤委員 その方の氏名を公開していただきたいと思います。

河野国務大臣 自民党からは鈴木議員、橘議員、公明党の漆原議員、それから保守党の小池議員でございます。

首藤委員 私の先ほどの質問の後半の部分ですけれども、その四人の方がどのような役割を果たされたか、お聞かせ願いたい。

河野国務大臣 この四人の方々は、先ほど私が申し上げましたように、首脳会談に同席をされたわけではなくて、首脳会談が行われたイルクーツクにおられて、この首脳会談について身近にといいますか間近にそれをごらんになって、情報も一番早い情報を得られ、さまざまな疑問があれば恐らくそこで事務当局などに質問をされたと思いますが、そういうことをやることによって、与党の政府の外交に対するバックアップ体制というものをつくってくださるということになったのだろうと思います。

 なお、小人数の会談と全体会合とあったわけですが、その全体会合には鈴木議員は出席をされておられます。

首藤委員 私の質問はおわかりだと思いますが、では、四人は例えばイルクーツクでの首脳会談に観客として見物に行ったのか、あるいは、先ほどの役割の中でおられたということですから、サポートされたということは二元外交をされているのか、あるいはまた、最近の外交の特色と言われるように、政府の首脳がやり、それからいわゆるパーラメンタリアンと言われる国会議員、さまざまな国会議員が外交をする、さらにNGOがやったり市民がやったりする、そういったマルチトラック外交をされていたのか、その辺はいかがですか。

河野国務大臣 イルクーツクにおられた時間はそう長い時間ではない。つまり、総理自身も極めて短い時間しかおられなかったわけで、マルチトラックで動かれたかどうか、仮に動かれたとしても、それほど多くの作業ができたとは、能力は非常にある方ばかりがいらっしゃったわけですが、時間的になかなかそれは難しかったのではないかと思います。

 むしろ、先ほど申し上げましたように、首脳会談のサポートといいますか、そういう態勢という意味で行かれたというふうに私は考えております。

首藤委員 私は別にそういうマルチトラック外交という言葉を使いたいために聞いているわけではないのですね。要するに、このように膠着状態にある領土交渉において、どういう形で将来の合意を目指していくかというところの展望がここにある可能性があるということで聞いたわけです。ですから、確かにこれはネガティブな面もあるかもしれないけれども、それなりにまた可能性もあるということを指摘して、次の質問に行きたいと思います。

 鈴木議員が全体会合の中に同席されたというわけですが、幸いなことに鈴木議員はここで理事をされておるので、いろいろ御意見もあったと思います。あれ、鈴木議員はどうされました。――では、委員長、今回はどちらかというと日ロ問題について質問するということで、当然、ロシアに行かれた方なども関心を持っていただかないと困ると思うのです。ぜひ呼び出していただきたいと思いますが、委員長、いかがですか。

土肥委員長 今呼び出しているそうです。

首藤委員 わかりました。

 それでは、その内容についてお伺いしたいと思います。

 五六年宣言に一度戻る、それを原点とするというプーチン大統領のコミットメント、それからさらに、それだけではなくて、今までの交渉のさまざまな積み上げも評価するという、これは私は大変な進歩であった、そういうふうに思っています。

 そこで問題なのは、では、五六年宣言というのは一体何かということが一つあります。それは先ほど民主党の安住議員からも質問がありましたけれども、これは外務省が配布している「われらの北方領土」という冊子に書いてあることですが、その九条において、平和条約を前提として歯舞、色丹を返還していくということですね。あくまでも平和条約の締結を前提としてということなんですね。しかし、読めばだれしもわかることは、では、あとの二島はどうなるのだ、国後、択捉はどうだ、どこにも書いてないわけです。現在の条約というのは御存じのとおり、列挙主義になっている。要するに、漠然としたことで書いてなかった、列挙していなかったものは対象外なんですよ。

 それからさらに、もっと言わせてもらえば、五六年までの間に、五一年の平和条約にしても、サンフランシスコにおける吉田全権の発言にしても、ずっとこういう経緯があります。例えば、五六年九月二十九日の日本国政府全権委員からソビエト連邦にあてた書簡、ソビエト連邦外務次官から日本政府全権にあてた書簡、いずれも「領土問題を含む平和条約」という言葉が、文言が入っています。ですから、平和条約の締結だけじゃなくて、領土問題を含む平和条約というのが括弧でくくられているわけです。

 ところが、これが五六年の宣言にはない。したがって、プーチン大統領が、五六年の宣言を文字どおり、これが原点だよ、これが基本だよと言ったら、これは要するに、歯舞、色丹しか対象にならないですよということを言っているわけでありますが、外務大臣はどのようにお考えですか。

河野国務大臣 ですから五六年、ですからというのは、私は議員の御主張を肯定したわけではありませんが、今回のイルクーツク声明をお読みいただけばおわかりのとおり、五六年宣言というものを確認をして、そして九三年を踏まえてこれからやっていこう、こう言っているわけです。その九三年には四島の帰属ということが書かれているわけでございまして、それはロシア側の認識としてある、四島の帰属問題が今ここに問題としてあるということを、ロシア側は問題意識を持っているということで私はいいというふうに思っています。

首藤委員 それは、テーマとしては何でも入るということですよ、要するに、残りの二島だろうがほかのことも含めて。だから、平和条約の締結ということは、残りの二島、国後、択捉の領土としての画定や返還というものは全然担保されていない。何にも担保されないところへ戻ってしまったという恐ろしさを示しているわけですね。

 そうでないと言うならば、では、私たちはもう一度、プーチン大統領が言われるように専門家による解釈を考えてみよう、五六年の前後にどういう問題があったかということを真剣に考えて、その当時のさまざまな資料を見て、そしてこの五六年宣言が一体何を意図していたのか、本当に平和条約というものの中に四島、要するに二島以外に、歯舞、色丹以外に国後、択捉も含めているのかどうか、そういう論議でこの平和条約というものは意味されているのかどうかをいろいろ検証してみなければいけない、そういうふうにも思うんですね。それはおっしゃるとおりだと思います。

 そこで、この五六年宣言というものが一体どういうものかということで、原文を外務省からいただきました。これは日本語とロシア語の原文です。技術的な問題点があるので、参考人としての東郷欧州局長に答弁をお願いしたいと思うのですが、これは非常に細かいことで。

 これは日ロ同文、日本語とロシア語と両方とも正だということになっています。しかし、東郷欧州局長にここのところをお聞きしたいのですが、日本語では「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、」日本国の要望、すなわち日本国の利益、こういうふうに書いてあります。

 原文はどうか。これは「プリ エータム サユース サビエスキフ サツィアリスチーチェスキフ、 リスプーブリク イジャ ナフストレッチュ パジェラーニヤム ヤポーニー イ ウチットイバイヤ インチェレスィ ヤポンスカバ ガスダルストバ、」こうなっています。

 何を言わんとしているかというと、「日本国の要望」というのは確かに「パジェラーニヤム・ヤポーニー」となっていますよ。ですから、ここは、この宣言にずっと出てくるように、日本はヤポーニー、ヤポーニャーとして、大文字で始まる日本として定義されている。いいですね。これが「日本国の要望」ですよ。

 それに対して、その後半は何か。これは「インチェレスィ・ヤポンスカバ・ガスダルストバ」なんですよ。これは大文字で始まっていないのです。いいですか。日本国の利益と書いてあるのではなくて、前文が日本国であるならば、後半は「日本の国益」と書いてあるわけですよ。

 この宣言の中でずっと大文字のヤポーニャーで出てきたものが、なぜかここで「ヤポンスカバ・ガスダルストバ」という形で、日本のインタレストだという形になっている。すなわち、ここに込められている内容があるはずなんですね。この問題は一体何を意味しているのか。恐らく長くこの条文に関係された東郷欧州局長の詳細説明をお伺いしたいと思います。

東郷政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生御指摘のように、日ソ共同宣言は、日本語とロ文は同一の資格を持っている正文でございます。したがいまして、日本語の文章から理解することとロシア語の方から理解するものとは、これは少なくとも全く同じ資格を持っておりますので、その前提で御説明したいと思います。

 御質問は、「ナフストレーチュー・パジェラーニヤム・ヤポーニー」という部分が大文字の日本という言葉になり、もう一つの方の「ウチートゥイバヤ・インチェレースィ・ヤポンスカバ・ガスダールストバ」という部分が形容詞としての日本の国家のというロシア語の書き分けになっている。これが、日本語の方の日本国の要望及び日本国の利益、この書き方とロシア側はちょっと変わっているんじゃないか、それはなぜかという御質問かと理解いたしました。

 私がロシア語をこれまで勉強してきた経緯で申し上げますと、この「ナフストレーチュー・パジェラーニヤム・ヤポーニー」という、日本国のというロシア語の理解と、それからその後の「ウチートゥイバヤ・インチェレースィ・ヤポンスカバ・ガスダールストバ」という、この日本国家の利益を考慮してという部分は、ロシア語としては全く同じ意味というふうに解してよろしいのではないかと思います。

 日本語の場合には、同じ言葉を使ったらば、特に条約の正文においては同じ言葉は繰り返すというのが我が条約局の非常に長い伝統でございますが、むしろ、ロシアの案文作成においては、同じ意味であって言葉を使い分けられる場合には別の言葉を使ってもいいというのがロシアのこれまでの長い交渉の中で何度か出てきた立場でございまして、内容においては全く変わりがないというふうに理解してよろしいのではないかと思います。

首藤委員 東郷欧州局長に法律の専門家としてお聞きしているわけでありまして、ロシア語の専門家としてお聞きしているわけではないわけですが。

 要するに、プーチンさんが、これから専門家による解釈をしていこう、検討していこうと言ったら、ここしかないわけですよ。我々は、いや、歯舞、色丹だけじゃないですよ、国後、択捉もあるじゃないですか、それが日本の国益じゃないですかとこれから主張していかなきゃいけないわけですよ。

 ですから、この国益に込められている情報というものは一体どういうものなのか。それとも、例えばただのナショナルインタレスト、だれかが論文を書くように、どこかのところにナショナルインタレストというのを書いているのではなくて、ここに入ってくることの、なぜここに盛り込まれたか、一体どういうような補助資料があるのか、それをお聞きしているんですが、その辺はいかがですか。

東郷政府参考人 御質問の一番のポイントかと思います、一九五六年の日ソ共同宣言の交渉のときに国後、択捉は一体どこにいってしまったのかということにつきましては、先生御指摘の、条文の一つ一つの理解の背後にある最も重要な問題は、このとき日本は、フルシチョフが歯舞、色丹なら返すと言ったことに対して、それではだめだ、国後、択捉、これを含む四島を返さなければだめだ、四島を返すということを言わない限り平和条約はできないということを言ったということでございます。

 したがいまして平和条約ができなくて共同宣言の発出に至った、これが一九五六年の交渉における一番のポイントでございまして、専門家の協議を含めまして、この点を今のプーチン政権にどうやってわからせるかということをこれからさらに議論していくということかと思います。

首藤委員 私の質問を御理解いただけたと思いますけれども、これはもう日本のすべての政治家がやはり全力をかけて取り組まなきゃいけないし、外務省も総力を挙げて取り組まなきゃいけない。私は、素人ながらこの問題を見ていて、ここにも一つのヒントがあるんではないか、ここにも一つの話のきっかけがあるんじゃないか、そういうふうに思っています。この問題で、ともかくこの五六年宣言に戻ればもう二島しか返ってこないということになるわけですよ。

 ですから、全力を挙げて、その当時の資料の洗い直しを含めて、法律の案文の詳細なる分析とか、それから日本の主張をきちんと理論構築していただきたい。それを切に切に外務大臣にもお願いしたい、そういうふうに思います。

 この問題に関してはまた質問させていただく機会もあると思いますが、時間もございませんので、次に、アメリカの問題に移させていただきたいと思います。

 アメリカの問題も、もう既に経済問題に関しては本会議その他で討議されておりますので、ここではアメリカの原潜事故の問題について質問させていただきたいと思います。

 原潜事故と言っておりましたけれども、これは、今アメリカで行われているのは審問委員会というか審問会議なんですけれども、それがやがて軍法会議になるということを考えていくと、これは原潜事故というよりはもうグリーンビル事件だ、こういうふうに理解しているわけです。このグリーンビル事件、日本の多くの識者それから市民もわかるように、これはどうも日米安全保障の一大転換点になっていくだろう、そういうふうに考えています。

 日本の国民の中でもこの問題というのを、要するにみんなよく知っていて、非常に憤りが日本全国に広がっている。やはり、日本の基地問題、今までどっちかというと沖縄とか神奈川とか基地のあるところで比較的まとまっていた問題が、日本国全体に、こんなひどいこと許してはいけないよという雰囲気になっているんだと思うんですね。

 そこで私が言ったのは、この事件というもの、今、歴史の現実が起こっているわけですが、この歴史の証人として、当然のことながらジャーナリストも行くだろう。同時に、我々は、政治家は国民の代表なんですよね。国民の代表として、私たちも、この審問会議に対して、あるいは査問会議でもいいんですが、審問会議、査問会議を傍聴したい、このように私は安全保障委員会の中で要望いたしまして、その可能性について河野外務大臣に質問したわけです。それに対して河野外務大臣は、このように答えられているわけですよ。

 これは日本を代表する地方紙である神奈川新聞の記事ですけれども、私たちは同じ神奈川から来ているので、もう外務大臣も恐らく目を通されていたと思いますけれども、ここに「議員傍聴枠確保を」というふうに大きなキャプションが載っております。そこで書いてあることも、家族やメディアへの配慮はもちろんだが、国会議員についてもこれは考えておかなきゃいけない、このように明言されているわけでありまして、また、安全保障委員会での議事録もそのようになっております。

 私がお聞きしたいのは、いろいろアメリカにも事情があるだろう、それから傍聴席の枠も限界があるだろう。しかし、私が質問し、外務大臣が答えられて検討すると言ったことに対して、日本の政治家はだめだよ、民主党の首藤はだめだよ、そんなことをもすら言われなかったわけですよ。

 要するに、検討するということに関して、その検討をしたのかどうか、検討結果がどうなったのか、そして、検討結果はなぜ私のところには来なかったのか。あるいは、ここにいる外務委員会のメンバーにはどうしてその検討結果が来なかったのか。その点に関して、外務大臣の御答弁をお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 傍聴席を確保しろという首藤議員からの御指摘は私も十分記憶をしておりますし、私自身、それについて作業もいたしました。

 当初、非常に具体的に言ってしまえば、日本から国会議員が傍聴席にいた、望月政務官は傍聴席で審問委員会を聞いておられたわけです。ですから、望月議員からもっと正確な御答弁を、今この場ではだめですけれども、何かの機会に聞いていただけばわかると思いますが、当初、傍聴席は相当限定をされていた。しかし、日本側としては、できるだけ関係者、御家族の方々、最初はそう思っておりましたから、御家族の方々には全員傍聴席で査問委員会のやりとりが聞けるようにしてほしいということをアメリカ側に言い、アメリカ側も、傍聴席は限られているけれども、できるだけ日本側の期待というもの、要望というものはわかるから努力をしますと。しかし、その席に入れなければ、別の部屋をつくってでもそこで直接そのやりとりが聞こえるようにという、そこまで先方は、アメリカは考えてくれたわけです。

 結果はどうなっていたかというと、傍聴席は当初考えられていたよりもふえました。そして、しかも日本人の傍聴者には、同時通訳というんですか、同時に日本語でそのやりとりがわかるという仕組みまでつくってくれたわけです。したがって、ハワイにおられた家族の方々は、恐らくほとんど全員が傍聴席に座るかもしくはその間近な部屋でそのやりとりを聞くことができたということは、御報告を申し上げます。

 そこで、議員から、国会議員に傍聴席を配慮しろ、こういうお話でございまして、国会の開会中ということもあって、どれだけの国会議員の方々が現地へ行けるかという問題もございましたけれども、傍聴席はおいでいただければ御案内ができるという状況には確かにあったと私は認識をしておりまして、現に現役の国会議員の方で傍聴席で傍聴をされた方もおられます。

 首藤議員から、私になぜそういうことを報告してくれないのか、こうおっしゃられると、御報告が現実問題できなかったことを申しわけなく思いますが、現地で総領事館その他で手配をして傍聴席に御案内を申し上げた議員の方も実はいらっしゃるということは申し上げておきます。

首藤委員 私は、それは驚いた。恐らくここにおられる方も皆さん驚いたと思うのです。

 これは私的な情報で行くことではない。ハネムーンのついでにハワイに寄って、そうしたら、ああ、あなた、バッジつけていますからいいですよ、ここいいですよ、どうぞ座ってください、枠広がりましたよ、こういう話じゃないのです。安全保障委員会で、私が野党を代表して質問を行って、そしてあなたが、外務大臣がそれに対して、検討する、検討したら外務委員会であれ安全保障委員会で委員に説明するのが当たり前であり、常道ではないですか。そうでなかったら、委員会なんてない方がいいじゃないですか。委員会をやめて自分の派閥だけで、何やら派閥というところだけで、君、どうだ、行ってみないか、土日だけだったら行けるよ、こういう話なんですか。おかしいじゃないですか。

 委員長、私は委員長にお聞きしたい。

 これは、外務委員会に対する軽視じゃないですか。いかがですか、委員長として御意見は。

河野国務大臣 もう少し御説明を申し上げた方が誤解がなかったと思います。

 傍聴に行かれた議員の方は、宇和島選出の国会議員の方が現地に御家族の方々と行っておられて、そして傍聴をされたということだと承知をしております。

 首藤議員の先般の安全保障委員会での私に対します御質問は、この審問委員会の傍聴者として国民の代表である政治家が傍聴することについて機会をつくれ、そのようにアメリカ側に申し入れろ、こういう御質問でございました。

 私からは、国会議員に対して傍聴席が確保できるかどうか努力をしてみますということを、確保できるかどうか、これはすぐに御返事はできませんけれども、私どもは頭に入れておきたいと思います、こう御返事をした次第でございまして、確かに国民を代表する国会議員の人、しかもそれは宇和島選出の方がおられたということで、私は一つの役割を果たせたというふうに思っております。

首藤委員 私は、理性ある河野外相自身はもう十分に反省されておると思いますから、これ以上突っ込みませんけれども、こういうことをやってはいけない。外務大臣にもいろいろ質問し、外務大臣が、なるほど委員はもっともだ、だからそういうことも考えていますというのは、何一つ実現していないのですよ。

 これはまた別な機会で追及しますけれども、これをやはりちょっと反省材料にして、これ以上この件は追及しませんけれども、深刻に受けとめて、この委員、委員会の存在をもうちょっと真剣に考えていただきたいと思いますね。

 先ほどの宇和島の話は、専門的に言えば、それはその地域を代表しているので、プライベートインタレスト、これは議事録には書かないでいいです、プライベートインタレストなんですよ。僕の言っているのは、パブリックインタレスト、安保を含めて日本全体の転換点だから、この問題に関して日本の全体から出ている人たちに声をかけなければいけないということで、主張していたわけですよ。

 では、また本論に戻ります。

 ここへ小沢勇海将補がアドバイザーとして参加しました。国会議員じゃないのですよ、政府代表です。オブザーバーの機能はどうですか、外務大臣。

河野国務大臣 御指摘のように、海上自衛隊の小沢海将補を審問委員会へのアドバイザーとして政府としては派遣いたしました。

 審問委員会冒頭のナスマン委員長の説明によりますと、同海将補は、直接証人への質問は行わないものの、審問委員と協議して証人への質問を提案することはできるというふうにされていたと承知をしています。

 したがって、小沢海将補は証人への直接の質問は行っておりませんが、例えば六日午後の審議において、本件事故の予備的調査に携わったグリフィス少将の証言が行われた際に、ナスマン委員長は、小沢海将補も関心を持っていると述べつつ、緊急浮上の命令伝達過程についての質問を行ったというふうに聞いております。

 これに対しまして、グリフィス少将は、概要以下のとおり応答をしております。

 緊急浮上は艦長が哨戒長に命じることによって行われ、一たん緊急浮上を始めると、大きな浮力のために緊急浮上をとめることはできない、水面上に障害物は何もないであろうとの判断のもとで、艦長は、できるだけ早く港に戻るためもあって、港の方向に転進して緊急浮上を行ったようである、こういうふうにグリフィス少将は述べておられます。

 小沢海将補もこの答弁についての質問に対して提案をされたというふうに聞いています。

首藤委員 恐らく、ここにおられるほかの委員の方は、何のことだかわからないということだと思うのですけれども、こういうことなんですよ。

 議事録を見ていただきたいと思いますけれども、この事件は、アメリカ海軍が引き起こした深刻な事件なんですよ。それに対しては日本政府も証人を、オブザーバーを送るということになっています。オブザーバーの権能は何か。オブザーバーは、審問委員と全く同格でそこに立ち会って、なおかつ質問することができる。議事録をよく見てください。これが、我々が自衛隊の海将補を送り出した、潜水艦の艦長をやり、専門家を送り出した意味じゃないですか。

 私は、では、この方は一体どういう質問をしてくれたのだろうか、日本の国益を代表し、あるいはここで事故の真相究明を求めている御家族の方の意思を反映してどのような質問をしていただけたのかとずっと外務省に聞きました。そして、それは出てこない、どこにもないのです。

 ずっと見ていって、アメリカの七紙をモニターしながら毎日毎日アメリカの査問委員会の議事録をずっと追っていって、最後の最後に出ましたよ。これは最後の審問委員会ですよ。最後の審問委員会でようやく、ホノルル・アドバタイザーの中に審問委員会の議事録の全文が出てきた。その日だけですけれども。私も、一日使ってずっとテレビのモニター画面を見ながらチェックしました。オザワという名前は一度も出てこない。

 そして、きのうの夜十二時まで私は議員会館でただひたすら待っていましたよ。出てこない。なぜ出てこないかと、アメリカへ聞いてきますと。なぜアメリカへ聞くんだ。日本が送り出して、我々の代表として聞いてくる人たちが何を聞いたかというのがどうしてリストとして出てこないのか。そして、直前になって、今そういうお返事をいただいた。これは国民の意思をないがしろにするものではないですか。海将補を送って、一言も発言されないなら、この方の航空運賃は返してもらいたい。そうではないですか。私はもう唖然としてしまいます。

 この問題というのは、真実を究明するのが一番大事なことなのです。一体、これは本当はどうだったのか。真実を解明することが、やがては日米関係の中に信頼関係を生むのです。またごまかしていったら、また出てきますよ。ある日突然、ニューヨーク・タイムズのトップに、実はこうでしたと出てきますよ。私はその可能性を幾つか持っている。まだ全然出てこない事実が幾つかありますよ。そうなれば、また日米関係も、それから日本の基調と言われる安保だって狂ってくるではないですか。

 だからこそ、この問題に関しては、日本の代表をきっちり送って、真実を徹底的に明らかにしなければいけない。そのためにこそ安全保障委員会で主張し、外務委員会でも主張しているわけでしょう。それがどうですか。一言も質問されなかった。何のために行ったのか。はっきり言えば、アメリカに日本の代表を呼んだという、これはアメリカにとって言いわけになるではないですか。ただ言いわけのために私たちは税金を使って人を送ったのか。こんなものはもう許せない。これからはやはりこうした問題がどんどんふえてくると思う。しかし、一つの質問もしないということに関して、私は大変な疑問を感じているわけです。

 ですから、もう一度最初に戻りますが、一つの問題は、この外務委員会にしろ安全保障委員会にしろ、委員会そのものの権威が今疎んじられ、委員会そのものの機能が十分に機能していないのではないか。(発言する者あり)それと関係ないでしょう。不規則発言、やめてください。その話をしているのではないのです。そういう話は幾らでもあるのですよ。

 ですから、こういうことで、少なくともこの場で外務大臣が検討すると言ったり、それから約束されたり、このような方向性を是と考えると言ったことは、それなりに対応していただきたい。これを切に切にお願いします。その点に関してはいかがでしょうか。

河野国務大臣 検討しろ、あるいはこういうことを申し入れろ、こういう御指摘があれば、私は、その御指摘に対して誠実に検討し、あるいは申し入れをするということをこれまでもやってまいりましたし、これから先ももちろんやってまいります。

 これは少しへ理屈と受け取られるかもしれませんけれども、おれたちがこう言ったのだからおれたちにちゃんと返事をしろというときには、ぜひ質問の中で、検討してその結果を返事しろ、こう言っていただければなお正確に御返事を申し上げられるので、その点はどうぞひとつよろしくお願いをいたします。

首藤委員 了解いたしました。そのようにいたしたいと思います。

 一つ、この審問委員会で出てきた点でありますが、この中で、潜望鏡を上げたときにえひめ丸が見えなかったというのがあります。これは、軍事関係の専門家は御存じの方多いと思いますが、潜水艦は、潜望鏡を上げたときに見えなくともいいのです。普通、潜望鏡にはESMというレーダーの感知装置がついていまして、上空からの航空機、あるいは海上を航行する船舶からのレーダー波をとらえるようになっている。すなわち、浮上して潜望鏡深度になって、潜望鏡を上げた瞬間に、海上におけるそうした、はっきり言えば敵機、敵艦が理解できるようになっているのですね。

 この問題に関して、日本の中ではNHKだけが一瞬報道しました。しかし、これは審問委員会の中で大きなテーマとして挙げられているはずです。この部分は幾ら探しても、議事録は私たちは手に入れられないのでわからないので、外務省の情報からお聞きしたいと思います。この点に関してはいかがですか。

河野国務大臣 審問委員会におきますESMについての証言でございますが、審問委員会において、ESMに関し、例えば以下のような証言があったと承知をしております。

 七日の審問委員会において、本件事故の予備的調査に携わったグリフィス少将は、グリーンビルはESMを使用していたが、この海域は陸や空港が近く、商用電波が多いので、その分析のためにはグリーンビルが潜望鏡深度にあった八十秒以上の時間が必要であったろうと証言しています。

 また、NTSBの調査に参加したカイル大佐は、九日の審問委員会におきまして、大西船長によればえひめ丸はレーダー波を発信していたので、ESMが探知していて当然だと思う、しかし、グリーンビルはえひめ丸を聴覚、視覚上でも早期警戒装置でも探知していないという、なぜ探知できなかったのかはわからないというふうに証言をしているのでございます。

 さらに、衝突時のESM担当者は、十三日の審問委員会におきまして、潜望鏡深度において、近くの目標を示す強い電波は探知されなかったと証言をいたしております。

首藤委員 現在、審問委員会が終了したわけですが、これが軍事法廷に発展する、軍事法廷でワドル艦長以下の乗組員が追訴されるか否かに関してはどのような情報を受けておられますでしょうか、外務大臣。

河野国務大臣 えひめ丸衝突事故に関するアメリカ海軍審問委員会が二十日午後、結審したことを受けまして、委員会は非公開で審理をし、事実関係、意見及び勧告が記された報告をファーゴ米太平洋艦隊司令官に提出することとなっています。ファーゴ司令官は、報告の内容を検討し、必要な措置をとることとなっております。

 ファーゴ司令官による措置の内容については、政府としてのコメントは差し控えさせていただきたいと考えます。

 たしか四月十四日ごろに報告を提出するというふうに私は記憶をしておりまして、それからおよそ、これはちょっと正確ではないかもしれませんが、たしか三十日以内でしたでしょうかに結論を出すというようなことになっていたかと思います。しかし、ここはちょっと不正確であるかもしれません。

首藤委員 今そうした追訴が行われるかどうかというのが討議されていると思うのですが、とはいえ、今現状ではえひめ丸が事故に遭遇したような状況というのがずっと続いております。これに関して、例えば原潜の事故再発防止策はどのように進んでおるでしょうか。外務大臣、お願いします。

河野国務大臣 再発防止策につきましては、この調査の結果が出るということは一つの大事なめどでございますが、私どもも再発防止のために、アメリカ側に対して何度か申し入れはいたしております。例えば、ファロン特使が日本へ参りましたときにも、私から直接ファロン特使に対しまして、米軍艦船の我が国への入港につき、改めて安全を徹底するよう指導してほしいということを言いまして、ファロン特使から、再発防止のために必要な措置は必ずとりますという発言がございました。

 また、ファーゴ太平洋艦隊司令官も、審問委員会の結果が出るまでは緊急浮上のデモンストレーションを制限するというようなことを述べておられます。

 二十三日でございますが、ブレア太平洋軍司令官が訪日をされまして、私から改めて原因究明、再発防止を要請するとともに、日本におけるアメリカ潜水艦の安全確認が極めて大切であって、私は、二月二十三日にラムズフェルド国防長官が発出した、軍事機器の操作を民間人に許可することを停止するモラトリアムを行っていくということを言っているわけですが、このことに我々は注目をしていますよということを伝えてございます。

 いずれにしても、政府としては、米側に対して引き続き、再発の防止を含めまして、艦船の航行安全に万全を期すよう求めていかなければならないと思います。

首藤委員 精神論はいいんですよ。具体的にどういうふうにこの時点で変えておられるかということをお聞きしたいんです。

 例えば、最近わかったことは、何もハワイ沖でなくても、湘南の海で、アメリカの原潜、あるいは改良ロサンゼルス級でもいいんですけれども、アメリカ原潜が同じことをやっているということがわかりました。この日本の私たちが住んでいる、河野大臣も住んでおられる目の前で行われているこういう問題に関して、外務省としてはどのような態度をおとりでしょうか。

河野国務大臣 相模湾といいますか、議員もそうですが、私もそこに住んでいるわけでございますが、そこがそういう区域として指定をされているということについては、それは説明を聞いた記憶がございますけれども、我々が少なくともそこで訓練が行われていることを実際に見たことはなかったものですから、余りこの問題に興味、関心を実は私も持たなかったんですが、今回の事故に際して、確かに相模湾海域が潜水艦の訓練の区域に指定をされているということを確認しているわけです。

 アメリカ側はそこで何をやっているかということについては明らかにしておりませんが、私としては、この水域は極めて多くの、例えば遊漁船、釣り船を初めとして漁船その他たくさんの船がいるわけで、彼らは皆そこでつまり生計を立てる、なりわいを立てている人たちでございますから、そうした人たちのことは十分に考えてもらわなければ困るわけで、日米合同委員会その他でこの問題については問題提起をするように私は指示をいたしましたが、既に日米合同委員会では問題提起をしたということでございます。

首藤委員 多少は危機管理問題をやった者から言うと、危機というものは、次から次へと同時に起こったり、同じようなものが次々と起こったりするんです。不思議なものなんです、これは説明できないところはありますが。本当に同じようなことがほっとまた出てきたりするわけですよ。ですから、起こったらその対応をきちっとしなきゃいけない、可能な限り始めなきゃいけないということです。例えば、今そういうふうにおっしゃられましたけれども、これからだんだん会合してやっていこうということですけれども、そういう対応は甘いと言わざるを得ない。やはりこういう事件が起こったときにこそ、最大の力を発揮して再発防止に取り組んでいただきたいと思うんですね。

 これは決してアメリカだけの問題ではなくて、既に指摘されたいろいろなことがあります。例えば、実習船が白くて見えなかった。実習船が例えばピンクであったり、いろいろ色を変えていたりしていたらもうちょっと見えやすかったんじゃないかというような批判や指摘もございます。そういうことを考えると、今の時点でも、向こうだけでなくてこちら側でも改善すべきところは幾つもあるんではないか。今までインドネシアや太平洋の南部へ行っていた実習船が、一挙に、集中的にハワイ沖に二十隻ぐらい来ていると言っていますけれども、そういうことに関しても警告を発し、対応を考えていくことが必要だと思うんですが、その辺に対してはいかがお考えですか。

河野国務大臣 実習船の問題は、私どももその安全にとりわけ意を用いる必要があるというふうに思います。所管でございます文部省あるいはその他の関係者に会って話をする機会をつくりまして、そうしたことも一つの問題提起として提案をしてみたいと思います。

首藤委員 だんだん時間がなくなってまいりましたけれども、私は、この問題に関しても、我々も含めて、いろいろなことをもっとやっていかなきゃいけなかったんではないかな、そういうふうに考える次第です。

 例えば、アメリカの記事をずっとモニターしてやはり気になるのは、我々が、水産高校の実習船、かわいそうな、本当にひどい目に遭った若者たちという視点でとらえているのに対し、向こうは必ずフィッシングボート、トロール船、こういうふうに書いてあるわけですね。私は、やはり、私たちが心を痛めているのと同じようにアメリカの市民も痛めてほしい。原潜がぶつけたのが、単なる、そこへ魚をとりに行って、アメリカの海域の中でごっそり魚をとってくるトロール船ではなくて、それは若者が、要するに学校と同じで、海の上の学校なんだ、これはスクールシップなんだということをもっともっと外交努力として言っていただきたい、そういうふうに思うんですね。

 駐米大使が、これは要するに日本ではそうした学校のようにとらえられているということを発言されたことも知っていますけれども、やはり私は、総力を挙げて、私たちが痛んだと同じようにアメリカ側の人たちも心を痛んでもらわないと、今度、沖縄のさまざまな問題、基地が抱えるさまざまな問題というものを解決するときに、イコールフッティングで、同じような立場で問題が理解できないということで、この問題に関しては外務省の広報努力をもっともっとやっていただきたい。

 この問題は我々の記憶からだんだん去っていくと言う人もおりますが、そうではなくて、この問題を本当に貴重な実例として私たちはいろいろ研究していかなきゃいけないのであり、むしろ集中的にこの辺のタスクフォースを組んで、この問題は一体何だったのか、これをどういうふうに対応していくのかということを真剣に考えていただきたいということをコメントとして述べさせていただいて、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

土肥委員長 次に、土田龍司君。

土田委員 きょうは、国際情勢に関する一般質疑ということでございますが、今外務省が抱える問題で一番大きいのはやはり機密費だと思うんです。日米、日ロ続いてやりましたけれども、後ほどロシアとの問題、アメリカとの問題、質問いたしますが、少しだけこの機密費の問題に入りたいと思います。

 冒頭、自民党の小島理事から、野党は何もしていない外務大臣に対してやめろとは何事だという御指摘がありましたけれども、何もやっていないから悪いんです。森総理もそうです。森さんが何やったんだと、何もやっていないから悪いんです。外務大臣に対しましても、今度の機密費の問題に徹底して究明しようという姿勢が見えない、国民から見えてこない。だから新たな人がやったらいいんじゃないですかと言っているんです。

 三年何カ月も大臣やっておられますと、やはり外務省の職員に対して情も移りますし、あるいは随分便宜も図ってもらったかもしれませんけれども、新たな人が新たな気持ちで外務省を立て直す意味で、その意味でかわってもらった方がいいんじゃないですか、その方がしっかりした追及ができるんじゃないだろうかというふうに私たちはいまだに思っておりまして、何をやっていたんだというんじゃなくて、何もやっていないからだめなんです。もっとしっかりした追及をしなきゃならない、そういった姿勢を見せなきゃならないということを申し上げたいと思います。

 これまでも質問で何回か、上納があったんじゃないかという質問が出ました。外務大臣は、その言葉に対して、笑っていらっしゃいますし、上納だというのは何だというようなことをおっしゃっていますけれども、どうも、我々が言う上納と外務大臣が考えておられる上納と意味が違うのかもしれませんけれども、広辞苑で調べてみましたらば、上納とは「政府へ物や金を納めること。」これを上納というんだそうです。

 政府に物や金を納めることを上納だということでございまして、ということになると、どんな形をとろうと、外務省から内閣官房へ資金の動きがあれば、それは上納というわけでございまして、政府がやっていないという上納とは一体どういったイメージを、外務大臣がにやにや笑いながら答弁をされるその上納とはどういったイメージなのか、これをまず聞いてみたいと思います。

 そして、あらかじめ予算をもって国会の議決を経た場合は、財務大臣の許可を得て移しかえることができるとか、財務大臣の承認がなければ移しかえることができないとか、そういった財政法に違反するような移しかえはなかったという意味で上納はないとおっしゃっているのか、その辺のことを御答弁ください。

河野国務大臣 私は、上納問題というのは、正直、議員のように広辞苑まで引いて、正確な意味を確認した上で御質問をされている方はそう多くないと思うのですね。週刊誌とか新聞とかそういう報道機関が、何か上納という言葉を持ってきて、上納、上納と言うものですから、何か上納問題という問題があるように見えて、そして最近では、上納といえば、みんなが何となく一つのイメージというか何かをお互いに頭に描いて、あるだろう、ありませんというようなやり方をしているだけで、それが一体何かということを正確にやりとりをしているということは余りないのだろうと思うのです。

 ただ、私は、官邸が官邸以外の役所から金を集めて、そして官邸が使う、それをあたかも官邸、政府に上納をした、あるいは米を届けたというのとダブらせてそういうふうに言っておられる、そういう意味での上納というのはございません。外務省は外務省で、御承認をいただいて認められた予算は、外務省が予算要求をいたしますときに考えていたその目的に向かってきちんと使います。報償費についても、目的があるわけですから、その目的に向かってきちんと使います。それは、外務省の、最終的には外務大臣の責任であり、あるいは外務省のそれぞれのつかさつかさの上司がきちっと決められた手続で決裁をして使っているのであって、それを、何か金をまとめて官邸に届けて、官邸が、よしよしと、その金を自分のものとして使うというようなやりとりはございませんということを申し上げているわけです。

土田委員 大臣がおっしゃる意味での上納というのは大体わかりましたし、それで私もいいと思うのですね。

 そこで、今回の松尾事件なんですが、内閣官房が宿泊費の差額を外務省職員のために報償費から使用していた、実質的には内閣官房から外務省へ報償費の支出は流れていたわけです。しかし、政府の答弁では、これは報償費としての適切な支出であったと言っているのですね。いわゆる支出であれば、報償費が他の省庁へ流れてもおかしくないという理屈になるわけでございまして、財政法には接触をしないということになるわけですね。それならば、逆の意味で、宿泊費の差額の支出と逆で、何らかの支出の形をとって外務省の報償費が内閣官房へ渡されても財政法には違反しないということになるわけです。

 そこで、ちゃんと問いたいんですけれども、外務省の報償費が支出として、内閣官房あるいは官房長官以下の職員に資金が流れたということはありませんか。上納という意味でなくてもいいですよ。ないとおっしゃっているんですが、支出という形で流れてないか。

河野国務大臣 ちょっと土田議員の頭の整理に私と違うところがございます。それは、今回の松尾元室長によります事件で、内閣官房の金が外務省に入って云々というふうにおっしゃいますけれども、実はそうではないと私は申し上げたいわけです。

 それはつまり、総理の外国訪問という一つの出来事がありまして、その総理の外国訪問のために何人かの随員を連れて総理は行かれるわけですね。その随員が行かれるときに、どういう議題で議論するかという内容についてももちろん外務省はお手伝いをするわけですけれども、それと同時に、ホテルを予約したり車列をつくったりという、いわゆるロジスティックスと言われる部分について外務省はお手伝いをするわけです。ホテルを予約し、車や何かを全部手配し、そして、そこまで本当は期待されていたかどうかというのは問題がありますけれども、最後はホテル代の支払いまでやって、総理一行はだあっと訪問をして議論をしてだあっと帰ってくるということのその中で、そのロジスティックスの部分について、官邸にかわって支払いをしたり、そうした作業をするという役を果たしていたのであって、それは官邸が支出したお金は本来ならば直接ホテルに払うべきものであったかもしれない。しかし、それをあらかじめ松尾室長が受け取って、ホテルの支払いをかわりにやってきたということなんですね。

 ですから、官邸が外務省に対して何億という金を渡して、外務省がそれをいただいて、そして外務省がさらに何をやった、そういう整理ではないのでございます。ですから、要人外国訪問支援室は、あくまでも総理の外国訪問に限って、言ってみればそのお手伝いをするという役割でございまして、そこで、官邸からの指示で、今度ここへ行くぞ、ホテルその他の準備をしてくれ、こう言われれば、ホテルの見積もりをとり、そして予約をし、支払うお金はお預かりをして持っていって支払ってくる、そういうことでございます。

 したがって、そういうことを私は申し上げているので、それと全く裏返しの意味の、上納と呼ばなくても、そういう作業があるかと聞かれれば、私は、そういうことは、つまり上納と言えるようなたちのものはありませんということを申し上げております。

土田委員 その辺はよく理解できているんです。そういった形で支出をされていたということは理解できていますけれども、やはりこの問題が出てくる一番の原因というのは、使い道を明らかにしないということなんですね。この報償費の使い道は一切明らかにしない、できないでもいいのですが。

 それならば、使い道を明らかにしなくてもいいのですが、あらかじめ支出してはいけないもの、これには使っちゃいけない、これはもう少し明確にできないものですか。言っている意味はおわかりでしょうけれども。

河野国務大臣 それはあくまでも公費でございますから、公のことに使われるのでなければならないということだと思います。

土田委員 もう少し鮮明にできませんかね。大臣あるいは外務省の職員がみんな公費で仕事するわけですが、これには使っていいということだけでなくて、もう少し列挙できませんか、こういうものには使ってはいけないと。

河野国務大臣 それはもうどなたが考えられても、常識的に私的に使うということは認められないものであろうというふうに思います。あくまでも公のために使う、公の仕事が円滑に進むために使われるというものである必要があるというふうに思います。

土田委員 五分前になりましたので、ロシアの問題をどうしてもやはり一応聞いておきたいわけですが、これまで何回もいろいろな方が質問されました。

 今の日本政府のやり方を見ていますと、やはりクラスノヤルスク合意を非常に過大評価していらっしゃるのじゃないかという気がするのですね。実際に二〇〇〇年までに合意を達成しなきゃならないということで、ちょっと焦りがあったのじゃないか。やはりロシア側から少しそこにつけ入れられたような気が私はするのですね。どうも今回の共同声明におきましても、五六年の日ソ共同声明まで戻ったじゃないかという議論が何回もありました。私もそういう感じがするのです。またもう一回さあどうするのかという感じがするわけでございまして、もう一回外務大臣、この辺のことについての真意と、あるいはロシア側の真意と、ちょっとお話し願いたいと思いますが。

河野国務大臣 ちょっと私にロシア側の真意を説明しろと言われてもなかなか難しいのでございますが。私は、五六年に戻ったじゃないかという御指摘がございまして、確かに五六年を、ここをスタートにするよということを確認しましたから、何だ、また五六年のところから始まるのか、こういう意味で五六年に戻ったのじゃないかというふうに感じられた方もあると思います。

 しかし、この五六年の当時の日ソ共同宣言というものは、その後、一度はロシア側によって、もうあれは考えが違うのだということで、非常に否定的にソ連側が言った時期があるのです。それは御承知だと思いますが、日米安保条約なんということをやっているなら、米軍がいなくなるまで領土なんて返すわけないというような話があったり、五六年宣言といえどもソ連側が否定的になったことがあったわけですが、そうしたことを、今回初めてと言っていいでしょう、ロシアの最高首脳が文章で五六年宣言はロシアにとっても義務的なものだということを確認したという意味はやはりあると私は思いますし、議員も恐らくそれはお認めいただけるだろうと思うのです。五六年を両首脳が確認をして、そしてさらに九三年宣言を踏まえて、つまり、四島の帰属を決めて平和条約を結ぼうという九三年の両国首脳の合意に向かっていこうということを確認したという意味で、このイルクーツク声明というものは意味があるというふうに私は思っています。

 ただそこで、議員が、クラスノヤルスク合意というものを少し過大評価していたのではないかという意味のことをおっしゃったのですが、これは実は考え方だと思います。そういう見方もあると思いますが、私は実はそう思っておりませんが、要は、期限を切って交渉しないとずるずるいっちゃうのじゃないかということもありますから、期限を切ってそこまでに結論を出そうねというのは、考え方として、一つのやり方だと思います。ただし、その場合に、時間切れでそこで終わりよと言われたときには、その交渉はどちらが有利な状況になっているかということの問題もありますから、期限を切るということは、意味があると同時に、また逆の意味をもたらすこともあるいはあるかもしれません。

 しかし、今度のイルクーツク合意の場合には、双方が議論をして、努力をして、結局合意できなかった場合には、合意できませんでした、ここまでしか合意できませんでした、この次からはさらにこういう方向にいきますということを両首脳が確認できたわけですから、クラスノヤルスク合意による被害といいますか害があったかと言われれば、私は、そんなことは全くなくて、むしろ、二〇〇〇年までにやれることは努力してやろうといって、相当やりました、相当できたというふうに私は思っております。

 では、それはどういうところができたのだと言われるとなかなか困るのですけれども、一つの考え方として、ロシア国民にこの問題を正しく理解してもらうために、と言うと、向こう側は、日本国民にも正しく理解をしてもらいたいから、こう言いますから、双方の国民がこの問題を正しく認識するために、キャンペーンをやるといいますか、広報活動をお互いにやろうじゃないかというような合意をして、そして、それが今始まったところでございます。

 一方の国が一方的にやるのではなくて、両方がお互いに広報活動をやろうというような合意ができたり、あるいは、歴史文書を一つにとじて、先ほども御議論がありましたけれども、ロ文と和文と両方の文章を裏表にしたものをきちっと両方で確認をする、そして一冊の本に資料として残そうという作業をするとか、そういうようなことは進んできているわけで、私は、全く、時間的期限を切るということのよしあしというものは、それぞれの考え方であり、その期限をつけた時間の使い方の問題だというふうに思います。

 ですから、クラスノヤルスク合意というものは、むしろロシア側が非常に困って、この次からはもう期限をつけるのは嫌だなという気分に恐らくロシア側の方はむしろなっていて、日本側の方は、やはり期限をつけてそこへ追い込みたいという気持ちを持っているという感じを私は持っております。

土田委員 終わります。

土肥委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きのうの外務委員会に引き続き、日米首脳会談での沖縄基地問題への政府の対応、そして、そこから見えてくる沖縄基地問題全般に対する政府の対応について、短い時間ではありますが、河野外務大臣にお伺いしていきたいと思います。

 それで、きのうも本会議で我が党の山口議員が森総理に日米首脳会談全般についてお伺いをいたしました。実は、日米首脳会談が始まる直前の三月十六日に、沖縄の稲嶺知事は、福田官房長官、また河野外務大臣初め、米軍の兵力削減を求める、こういうテーマで日米協議を行ってほしいという要請を上京して直接行っていると思います。それで、きのうの森総理の答弁を聞いていましたら、沖縄の負担軽減のために国際情勢の発展を踏まえて引き続き協議をしていく、こういう答弁でありました。

 そこで、具体的な問題として外務大臣に伺いたいのですけれども、沖縄県民が要求している海兵隊の削減について、日本政府としてアメリカ側に要求する意思はあるのかどうか、明確なお答えをお願いしたいと思います。

河野国務大臣 現在、日本政府として在沖縄の兵力の削減をアメリカに求める、直ちに求めるという気持ちはございません。

 これは、繰り返して申し上げておりますように、国際情勢というものを確認する、国際情勢が肯定的に進んで安定した状況になっているということを確認することができれば、そのときに政府として検討をする必要があるというふうに私は思いますが、現時点で直ちに沖縄の米軍兵力の削減を政府としてアメリカに求めるということはございません。

赤嶺委員 結局、沖縄の負担軽減に努める、努力するということを言うのだけれども、国際情勢の進展を踏まえなければいけないということになりますと、今の河野大臣の答弁にあるように、沖縄県民に引き続き我慢を強いるということになってしまうわけですね。現に沖縄で起こっているいろいろな矛盾について、我慢してくれよという態度しか今の日本政府はとり切れてないと思うのです。

 私は、本当に県民の負担軽減を言うのであれば、県民の総意になっています海兵隊の削減について、河野大臣は、県議会の決議はそれはそれとして尊重していきたいという御答弁でありましたが、その後、稲嶺知事も海兵隊の削減を要求するようになっています、そういう県民の総意を、負担を軽減するという政府の態度が本物であるならば、きっぱりとアメリカに要求すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 私は一月末にワシントンへ参りまして、パウエル新国務長官と会談をいたしました。そのパウエル長官との会談の席上、私から率直に沖縄の皆さんの気持ちを伝えました。沖縄県には海兵隊削減の声があります、県議会でも決議がされています、県民の気持ちを重く受けとめる必要がありますということを私はパウエル長官には率直に言いました。しかし、政府としては、先ほども申しましたように、我が国の平和、安全ということを考えれば、国際情勢を無視して、ただ単に在沖縄米軍の兵力の削減を求めるという態度はとっておりません。

 これにつきましては、先ほども申し上げましたように、国際情勢の肯定的な変化と申しますか、そういうものを確認して、それが安定して、そういうものであるとすれば、そのとき我々は初めて検討をすべきものだというふうに考えているわけです。総理の御発言も、沖縄県民の気持ちというものを大事にしておられる。だからこそ、私のような率直な言い方ではございませんけれども、首脳会談における総理の御発言は、沖縄県民の負担に対する配慮が重要ですよ、県民の気持ちを酌む必要がありますよということは、そういう言い方で総理はアメリカの首脳に伝えているわけでございます。そうした発言というものは、今議員がおっしゃいましたように、沖縄県民の気持ちというものを総理は重く受けとめておられるということの証左だというふうに御理解をいただきたいと思います。

赤嶺委員 県民の気持ちを重く受けとめるだけでは沖縄の基地問題は解決しないのですよ。現に、皆さんが重く受けとめているという間にも事件、事故が頻発しております。この一週間の間の事件や事故についても外務大臣も承知していると思うのですね。

 私は、引き続き、沖縄県民の気持ちを、沖縄の人はこういう気持ちですよというぐあいにアメリカに伝えるのではなくて、沖縄県民の気持ちを考えたときに日本政府としても海兵隊の削減は要求していかなきゃいけないと思っている。こういう日本政府の顔が見える外交をぜひやっていただきたい、私はそのように思います。県民をだしに使わないでいただきたいというのが率直な気持ちです。

 それで、きのう、普天間飛行場の移設問題の十五年使用期限についても外務委員会で議論をいたしました。ブッシュ大統領が困難であると述べたことについて、河野外務大臣は、ブッシュ大統領のアジア情勢についての認識を引き合いに出して、クリントン大統領とは違う厳しい見方をしているという御説明もありました。

 そういう中で、稲嶺知事や自由民主党が県民に約束した十五年使用期限問題、これは政府も後押ししているわけですから、私たちはそんな期限をつけて新しい基地をつくるということ自身が大問題だと言ってきたわけですが、皆さんの大公約をやはり国民の前でもう一度検証していきたいというつもりでこの問題を取り上げているのです。

 結局、十五年使用期限も、国際情勢の進展ということに照らしてみれば、先ほどの海兵隊削減と同じように日米間で直ちに結論を出すことは難しい、このように考えているのかなと私は受けとめましたけれども、河野外務大臣の見解を再確認しておきたいと思います。やはり今日では難しいよということであるのかどうか、お答え願います。

河野国務大臣 使用期限の問題につきましては、私どもは平成十一年に閣議決定を行いまして、この閣議決定を踏まえて、政府としては、アメリカとの間で協議をしたり、あるいは国内で準備をするということをいたしているわけでございます。

 政府の認識の中には、今議員がおっしゃいましたように、国際情勢というものが非常に重要な問題、つまり安全保障の問題ですから、国際情勢というものが極めて重要であることは、これは当然のことでございまして、この国際情勢についての認識というものを考えながら準備を進めていかなければならぬ。

 それはなぜかと言えば、沖縄県知事や名護市長からの要請というものを重く受けとめているからでございまして、こうした知事、市長からの要請を重く受けとめた上で準備を進めるということが重要だというふうに考えているわけですが、その準備の中で極めて重要なものは国際情勢の認識だということでございます。

 したがって、これまで累次にわたって御答弁を申し上げておりますのは、この問題は、国際情勢もあって厳しい問題ではありますけれども、しかし、私どもとしては、地元の意見というものを重く受けとめてこの問題に取り組んでおりますということを申し上げているわけです。

赤嶺委員 もう一度伺いますけれども、沖縄県民の気持ちは重く受けとめるけれども、国際情勢や日米安保というものをつかさどっている政府の立場がある以上、今日直ちに結論を出すのは難しい、こういう立場なのですね。結論が直ちに出るのかどうかという、この点です。

河野国務大臣 直ちに出るかどうかという、直ちにというのがいつを指すのか。きょう出るかと言われれば、それはきょう出ますというふうにはなかなか申し上げられないわけでございますが、本来できるだけ早く出すということのために努力をするということでございます。(発言する者あり)

赤嶺委員 ちょっと委員長、時間をとめてください。今定足数を満たしていないそうですから、時間をとめてください。

土肥委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

土肥委員長 記録を起こしてください。

 赤嶺君。

赤嶺委員 それでは、引き続き十五年使用期限問題の議論をしたいと思います。

 外務大臣は、直ちにと言われる範囲がどうなのかよくわからないのでとおっしゃっておりましたが、ただ、直ちにというめどは県民の意識の中にはあるのです、大体いつごろまでというのは。そういうことは外務大臣よくお考えになって、どういう仕事をしなければいけないのかということを見ていただきたいのです。

 今皆さんは、基本計画をいつごろまでにつくるかということでやっていらっしゃいます。代替施設協議会も粛々と進めておられます。ところが、夏までにはつくりたい、あるいは参議院選挙までには普天間基地の移設計画の基本計画をつくりたい、そういう報道も見受けられますけれども、私が問題にしたいのは、この十五年期限問題というのは、沖縄で基地を受け入れた人たちが前提条件にしているということなんですよ。

 当時、基地受け入れを表明した名護の岸本市長は、受託表明の中で、このような前提が確実に実施されるための明確で具体的な方策が明らかにされなければ、移設容認を撤回することを市民の皆様に約束する、ここまで述べておられるわけですね。十五年期限が明確な約束ができない場合には基地受け入れを撤回しますと名護市長が述べているわけですよ。したがって、十五年期限の設定が決着しないもとで、移設工事あるいは移設計画づくり、こういうことだけが粛々と進むようなことがあってはならないと思うのですね。これは移設を受け入れた知事やあるいは名護市長でさえ譲れない問題なんです。

 そういう譲れない問題なんだということを踏まえて、外務大臣は、この十五年使用期限問題、本当に今の国際情勢の進展のもとで、ブッシュ大統領の登場と新たなアジア情勢の認識のもとで結論を出すことができるのかどうか。あるいは、いつまでに出そうと考えておられるのか。私には、絶対出ない結論を、問題を先送りしているというぐあいにしか見えないのですが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 小島委員からの御質問にもございましたけれども、ブッシュ政権は、国務省、国防省ともにまだすべてのスタッフがそろっているわけではないのでございます。国務省は、パウエル国務長官のもとにアーミテージさんも副長官として加わるということが決定をされて、着々とその人事が進んでおりますけれども、国防省も準備に取りかかっておられますが、まだ完全にすべてのスタッフが整ったというわけではありません。

 そういう中で、一方では大変困難だという認識もあれば、一方では、アーミテージ、ナイ・レポートなどという知日家の方々が集まられてつくり上げられたレポートの中には、また別の認識、別の角度からのアプローチについても議論があるわけで、私は、今この時点で、議員がおっしゃるように、これはだめではないかとか、これはできるのではないかとかということを余り確定的、断定的に考えてはむしろいけないので、我々として地元の気持ちも重く受けとめながらこれを取り上げつつ、普天間の移設については引き続き協議をしていくという、これはブッシュさんの認識ですけれども、我々としては少なくとも今の状態ではそういう認識でいい、いいというのは変な言い方ですが、そういう認識だというふうに考えているわけです。

赤嶺委員 つまり、沖縄県民の声を伝えるだけで、そして、ブッシュ大統領の意向を伺ってくる中で日本政府としては明確な姿勢を示し切れない、こういうことだろうと思うのですよ。ですから、そういう日本政府に対して、やはり県民は大いに不信感を抱いている。十五年使用期限問題については、出せない結論を先に送り続けているだけ、矛盾を後回しにしているだけというような認識が率直に言ってある。これは、基地を受け入れている人たちの間でさえも、非常に不安な材料として政府の態度を見ているということを申し上げておきたいと思うのです。

 それで、普天間基地の場合にはこの十五年使用期限の問題にとどまらないで、今度は環境問題が出てきているわけですね。

 特に昨年の十月、アンマンで開かれた世界自然保護会議、百十二の政府機関が出席し、七百三十五のNGOが会員になっている、日本でも環境庁が会員になっているこの自然保護会議で、普天間基地の移設について、このような決議が上げられました。

 この空港建設がこの地域で実行されるとすれば、ジュゴンの重要な休息所及び採食場所になっている辺野古沿岸のサンゴ礁と海草藻場を消滅させる危険があり、小さな地域個体群の生存に対して重大な脅威を与える可能性があることを懸念する。つまり、ジュゴンのすむ海に空港をつくったら、ジュゴンのすむ環境が劣化するおそれがある、あるいは絶滅する危険があるという認識を環境問題の専門家は持ち、世界自然保護会議も今のような決議が上がったわけです。

 それで、皆さんは、環境に留意すると言いながら、本当にたった三カ月間だけ藻場の調査と個体の調査をやりました。ところが、ジュゴンについての日本の専門家の見解は、皆さんが調査に入る前から既に、航空機から目視調査をやって生息数を正確に知るというのは、十分なお金と時間があって実現できたらすばらしいことなんだけれども、今沖縄のジュゴンは五十頭は割っているので、このときに個体調査をやって、それが三十頭だったとか百頭だったとかというのは意味がない。この五十頭と推定されるジュゴンについての保護の対策をきちんとするべきだと。そういうものが全くまた見えてこないわけですね。それから、藻場を移しかえるなんてとんでもない、こういうこともこのジュゴンの専門家は言っているわけです。

 環境問題を見ても、普天間基地の移設については、私らも、実際にあそこに空港をつくったら、あそこに基地をつくったらジュゴンが死滅するということは明白なわけですから、もう普天間基地を名護市に移設するという計画自身が成り立たないものであるということを考えますけれども、いかがでしょうか。

河野国務大臣 ジュゴンの保護は私も重要だという認識を持っております。恐らく沖縄のジュゴンは、種の保護、保存を考える上でやはり相当真剣に、これはもう基地をつくるとつくらないとに限らず、ジュゴンの保護はジュゴンの保護として考えていく必要があるほど重要なものだというふうに思っているんです。

 ただ、ジュゴンの保護については、定説がないといいますか、はっきりとした方法について述べられるだけの知見がまだないというふうに、私の記憶ではそういう認識を持っております。まだジュゴンの生態自身が余りはっきりしていないということをおっしゃる方すらおられます。

 そういう中で、先般の調査で、沖縄の東側、辺野古沿岸地域で五頭のジュゴンが確認をされたということでございまして、その五頭のジュゴンが果たしてあの辺にいるジュゴンの中のどの程度の割合のものなのか、まさか五頭がすべてではないと私は信じますけれども、しかし少なくとも、一定の期間、調査をやった調査団の人たちの調査によれば、あの東側には五頭のジュゴンが確認をされたということでございます。

 ジュゴンが五頭目視された、視認されたということと同時に重要なことは、藻場がどれだけあるかということだと思います。現在の残された藻場が、一体何頭のジュゴンの食欲を満たすだけの藻場があるか。その藻場が今極めて少なくなってしまっている。その藻場が減っている理由は何だ、あるいはその藻場を再生させるための方法は一体どういう方法があるのかということについても考えなければならない。

 私は、自然は保護するものであると同時に、自然はやはりみんなの力で再生をさせたりつくっていく努力というものもまた必要なんだと。いや、人為的につくったものを自然と言うかという御議論はありますけれども、それは、やはり種の保存ということを考えれば、藻場について、人為的にもこの再生のための努力はする必要があるというふうに私は思っているわけで、ジュゴンの保護については私は非常に重要な問題だという認識を持っておりますと同時に、それだけに、ジュゴンの保護について、どうすれば保護ができるかということについて、みんなで考えていく必要があるのではないかと思います。

赤嶺委員 外務大臣おっしゃったように、ジュゴンに対する知見が日本の場合は非常に弱い。環境省自身がジュゴンに対する知見を持ち合わせていない。持ち合わせていない中で、日本の国内で唯一ジュゴンのえさ場になっている藻場があり、そして、唯一生息が確認されているキャンプ・シュワブの沿岸、東海岸のその地域に米軍基地を新しく建設するというほど無謀な計画はないと思います。ジュゴン保護の知見がない国がジュゴンのすんでいる地域に米軍基地をつくろうというぐらい非常に無謀な話はないと思います。

 今、もう時間がありませんので問いませんけれども、自然の再生だとかいろいろ言っておりましたが、日本での一番のジュゴンに対する知見を持ち合わせ、専門家と言われている三重大学の粕谷先生はこのように述べています。

 それでじゃあ日本のジュゴンを捕まえて、どこか邪魔にならない所に集めてしまえという極論も出てくるかも知れません。私はそれにも反対です。安全なジュゴンの生息地は、日本では本島東岸しか残っていないのです。

沖縄本島の東海岸しか残っていないのです。

 それに、自然保護というものは、ある生物種と他の様々な生物種が互いに影響しあい、関係し合いながら生きていく、そのシステムを保護することです。ジュゴンをどこかに囲ってしまってエサをたっぷりやってこどもを産ませるとすれば、それは新たな家畜を作ることにすぎません。それにジュゴンを飼育下で繁殖させることは、まだどこでも成功しておりません。

このように言うんですね。家畜をつくることにしかならない。

土肥委員長 失礼ですが、もう六分オーバーしていますので、まとめてください。

赤嶺委員 そうですか。どうも失礼いたしました。ちょっと中断があったので、調子も狂ってしまいましたけれども。

 家畜をつくることにしかならないし、繁殖はまだどこでも成功していないというようなお話ですから。

 私は、最後に改めて、十五年使用期限も約束できない、そしてジュゴンの保護も約束できない、そういうところに立ち至った以上、普天間基地の名護市への移設は白紙撤回して、普天間基地の即時無条件返還の立場で、日本政府の顔が見える対米交渉をやっていただきたいということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

土肥委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 引き続いて、沖縄の問題について質問をさせていただきます。

 昨日、沖縄から、普天間基地・那覇軍港の県内移設に反対する県民会議の代表団が、三月十七日に開催されました、米軍による事件を糾弾し、海兵隊の撤退と基地の県内移設に反対する県民集会での決議を携えて上京され、私も同行してアメリカ大使館へ決議文の手交に参りました。

 「平和な沖縄を返してほしい。繰り返される米兵の事件や事故に、県民は我慢の限界にきており、怒りは頂点に達している。」という書き出しで始まる決議文ですが、その中の六点にわたる要請項目の中には海兵隊の即時撤退、そして日米地位協定の抜本的な見直し等があります。

 対応したアメリカ大使館の二等書記官は、日米地位協定は二国間の国際規約であり、その改定に関しては、日本政府から申し出があればいつでも話し合う用意があると述べていました。

 大臣、日本側からぜひ改定を提案し、改定に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

河野国務大臣 地位協定につきましては、繰り返し申し上げておりますように、現在、合同委員会の下部機関で運用の改善について提案をしておりまして、この提案に対する米側の対応というものを見た上で考えたいというふうに思っております。

東門委員 大臣は、二月二十三日の衆議院の予算委員会において、日米地位協定の改定について日米で議論していく意思があるかという問いに対しまして、「これは、問題をもっと精査せねばならないというふうに思っております。」と答弁しておられます。

 大臣は具体的にどのような部分を精査する必要があると考えておられるのか、あるいはまた、どの部分にどのような問題があれば米国に対して地位協定の改定を提案することになるのか、伺いたいと思います。

河野国務大臣 私の認識は、容疑者の引き渡しの問題が一つの非常に重要な私に対する意識を与えております。この容疑者の引き渡しにつきましては、地位協定の運用の改善の中で既に両国で合意をしたものがあるわけですけれども、どうもそれが不十分といいますか不明確といいますか、そういう部分があるように思いますので、その点を確認するということが非常に重要だと思ったからでございます。

 もちろん運用の改善には殺人、強姦というようなことが明示的に書いてございますが、日本の法体系でいえば、放火、特にそこに居住する家に対する放火というものは極めて罪が重いわけでございますけれども、これはどうも日米間で罪に対する重さの受けとめ方が違うようで、そこが合意できずにいるという感じもするものですから、少なくとも日本におけるこの手のものは日本の文化的な背景というものを踏まえて考えなければならぬというふうに私は思っておりまして、この運用の改善に明示的にそうしたことが書けるかどうか、あるいは、そうした問題についての両国の合意ができるかどうか、同じような認識が確認できるかどうか、そういったことが一つの問題。さらには環境の問題などもそうだと思います。

 こうした問題について、私としては日米間で議論をしてみたいというふうに思いまして、まずは日米合同委員会で、今申し上げたようなことについて議論をさせているところでございます。

東門委員 先ほどの赤嶺議員の質問に対して、兵力削減を直ちにアメリカに求めるという気持ちはないと断言されておられました。と同様に、地位協定の改定にもいま一歩踏み込む意思はないということでしょうか。運用の改善でずっといくというふうにとっていいんでしょうか。

河野国務大臣 大事なことは問題の解決だと思っているわけです。ですから、問題を解決するためにどういう方法が一番いいかということが重要だと思っています。

 ですから、私は、運用の改善について議論をして、この問題について納得のいくような状況にならないなら私は日米地位協定も視野に入れて考えますということを繰り返し申し上げているわけで、その私の考え方は全く変わっておりません。

東門委員 それでは、本当に基本的な初歩の質問をさせていただきます。

 県民の負担を重く受けとめるという言葉がよく聞かれますが、大臣の中で、県民の負担、負担というのは何を具体的に意味しているんでしょうか、教えてください。

河野国務大臣 それはいろいろあると思います。精神的な負担もあると思います。それから、物理的な、例えば基地の広さからくる県民の経済活動に対する制約というものがもしあるとすれば、それも沖縄県民の負担になっているだろうというふうに思います。

東門委員 次に、負担の軽減とおっしゃいます。軽減、負担の軽減は具体的にどのようになさるお考えですか、お聞かせください。

河野国務大臣 これはいろいろあると思うんです。

 一つは、経済的なバックアップをすることによって経済的に困難な状況が少しでも解決をするということも負担の軽減の一つであると思いますね。

 基地があるがためになかなか経済的な問題が解決しない、あるいは経済の発展というものを阻害しているという部分があるとすれば、それはやはり、政府があるいは全国民がそうしたことについて、沖縄県民の皆さんだけが担っている、背負っている負担というものを軽減するために理解をして、そこに経済的な援助、支援、あるいは、援助とか支援とか言わなくても、そこで経済活動が積極的に進む、例えばフリーポートをつくるとか、そういった問題。あるいは、沖縄へのアクセスの割引をやるとか、そういったことによって人の行き来をふやす。それが結果として沖縄に経済的な効果をもたらす。それは負担の軽減の一つでもあるというふうに思いますし、あるいは、現在ある基地の面積を減らしていくということも負担の軽減の一つでもあると思います。

東門委員 大臣のおっしゃる負担、そして負担の軽減という御意見を今お伺いしたわけですが、負担には精神的なものもある、それから経済的な制約のことをおっしゃっておられました。それから、負担の軽減に関しては主に経済的な側面からのお話だったと思いますが、それだけだと思いますか。ほかに沖縄県民が多くの負担を抱えていると思うんですよ。そこをぜひお答えいただきたいと思います。

河野国務大臣 恐らく、沖縄の皆さんが感じておられる負担というのは、いろいろあるんだろうと思います。

 思いつくままに幾つか申し上げれば、基地があるがゆえに、例えば騒音による被害というものもあるかもわかりません。あるいは訓練によるさまざまな問題もあるかもしれません。こういった問題についても削減をしていく、今そういう議論がされている、あるいは実行にそれが移されているということだと思います。

東門委員 まさにそのとおりですが、それ以外にも、環境汚染の問題、水質が汚染されている、汚濁の状況がある、自然破壊が現存している、有害な化学物質が検出される。そして、何よりも女性や子供への、一番外務大臣も頭を痛めておられることと思いますが、人権の侵害、人間としての尊厳が侵される、そういう状況が存在している。

 私は、基地の面積を少し小さくする、いや決して要らないとは言いません、大事なことです。しかし、それだとか経済的な側面からだけ沖縄県民の負担ととらえていただくのはとても納得がいきません。沖縄県民が本当に日ごろの生活の中で基地から起因する、派生してくるいろいろな問題についてどういうふうに思って生活しているかということを、政府の皆さん、特に外務大臣は本当にそこに心を向けていただきたいと思います。

 平成十一年の閣議決定を踏まえてとよくおっしゃいます。私、前にもこの質問をいたしましたけれども、それには沖縄県民の意思は反映されておりません。断言しておきます。

 確かに、普天間基地を、学校も周囲にある、本当に市街地のど真ん中にある、危険な地域にあるからこれを返してほしいとお願いはしました、どうにかしてくださいと。しかし、前にも申し上げましたように、県内移設をしてほしいと申し上げたことはないのですよ。

 ただ、閣議決定の中で、それはアメリカとのやりとりがあったことはわかりますが、その中で、なぜ、沖縄県民の負担を――本当の意味での軽減なくして私は軽減にはならないと思います。それを辺野古に移す、そこに新たな危険が生ずる、新たな自然破壊が生ずる、新たな航空機騒音の問題が生ずる、そういうことで本当にいいのでしょうか、大臣、よろしくお願いします。

河野国務大臣 前段おっしゃいましたことは私もよくわかっております。ただ単に経済的な問題とか土地面積の問題だけではない、しかしそれも重要なことだということはお認めいただきたいと思います。と同時に、私は、やはり精神的な問題が非常に大きいと、先ほども最初に申し上げました。それは、沖縄に住んでおられる方々が何か不安を感じながら生活をしておられるということであるとすれば、それはまさに精神的な問題と思ったからでございます。

 後段のお話は、SACOの最終報告をつくりますときにも、どうして沖縄の基地の整理、統合、縮小ということを進めていくかということを議論する中でSACOの最終報告というものの議論が行われたわけでございまして、あのSACOの最終報告が着実に実施されて進んでいけば、少なくとも基地の整理統合というものはできてくる、それによって基地全体の面積的な問題は縮小されていくということは、これは、一つの問題を乗り越えるという意味では、やはり重要な一歩だというふうに思います。

 沖縄には立派な自然があります。大変皮肉なことですけれども、その自然は、訓練基地だったがゆえに残された部分も実はあるわけです。これは誤解をしないでいただきたいのですが、例えばヤンバルクイナにしてもノグチゲラにしても、あそこでああやってあの鳥たちが生き延びている、あの林、あの自然というものが残ったということは、そういう側面もあると思うのですね。それが、仮に返還をされて、そして何か開発をされるということになると、むしろ逆に、それによって自然が分断されていってしまうことになりはしないかということをおっしゃる方すらいらっしゃる。

 だから訓練基地のままでいいなんということを私は決して言うつもりはございませんが、沖縄というあの限られた面積の中で、どうやってそういうものと、両立という言葉もあるいは沖縄の皆さんからいえば非常に愉快でない言葉であるかもしれませんけれども、しかし、沖縄という限られたあの面積の中で、どうやって負担を軽減しながらそうしたことができていくかということについて、私どもは真剣に考えなければならぬというふうに思っています。

東門委員 確かに、大臣がおっしゃられるとおり、負担の軽減の中に、経済的な問題、面積の問題があることは私もよく承知しております。でも、それだけではないと申し上げました。そういうものも軽減していく方向でいかないと、言葉だけでないということを私は信じたいと思います、本当の意味での県民の負担の軽減にはならないと思うのです。

 時間が迫っていますので、もう一つお伺いしたいのは、先ほど兵力の削減をアメリカ側に申し出る気はないとおっしゃったのですが、海兵隊の沖縄への駐留は本当に必要なのかということを大臣にお伺いしたいと思います。

 海兵隊は日本を守るためにいるのではないということはだれでも知っていることです。そういう中で、訓練の六カ月のローテーションで入ってくる海兵隊、なぜ海兵隊が沖縄に駐留しなければいけないのか、本当に必要なのか、そこをぜひお聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 これはどうも私がお答えをするのは十分ではないかもしれません。それはむしろ、先ほどから申し上げているように、国際情勢の認識でございますとか、あるいは日米双方がどういうふうにこの問題について安全保障の視点に立って議論をしているかということが重要ではないかと思うからでございます。

 しかし、日本にとってもアメリカにとっても、双方にとって沖縄の基地の重要性というものを認識し、確認をしている中で、沖縄に海兵隊が一定数いるということについては、我々も、これは日本にいる必要がない、日本にいてはいけないのだということをアメリカに言うという状況には今はないというふうに思っております。

 これは繰り返しで大変恐縮でございますが、日米双方でハイレベルで会談が持たれ、協議が持たれるときに、継続的に、いつでも、そうした議論があるときには、それぞれの地域情勢に対する認識などについてお互いの認識を述べ合うということがあるわけですけれども、そうした認識を述べ合う中で、ここにどういう兵力が必要かということをアメリカ側は考えるわけでございます。私どもにとっては、今そうした国際情勢の認識というものが合意できるということができるだけ早くあればいいなというふうに思っているわけです。その合意というものは、日本の安全にとってどういう状況が一番いいかということの合意を早く見つけたいというふうに思っております。

東門委員 時間がないのがとても残念です。もう少しお聞きしたかったのですが、最後になりますが、今の大臣の御答弁の中、日米のハイレベルでそういう場を持っていくときにとおっしゃっておられますが、先ほどから出ていますが、沖縄県民はこのように言っているよと沖縄県民の思いをただ伝えるだけではなくて、日本政府が、大臣が、政治というものはこうあるべきだということをしっかり発揮していただいて、アメリカ側に具体的にこういう形でやっていきたいということを出すことも大切じゃないかと思います。

 残りの質問は次に回しますけれども、ぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

土肥委員長 次に、本日付託になりました国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣河野洋平君。

    ―――――――――――――

 国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件

 全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)及び国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十四年京都)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 これらの改正文書は、平成六年十月に京都で開催された国際電気通信連合の全権委員会議において採択されたものであります。

 これらの改正文書は、民間の電気通信事業者等の国際電気通信連合の活動への参加を促進し及び拡大させること、他の国際機関との連携を強化すること等を目的とするものであります。

 我が国がこれらの改正文書を締結することは、電気通信の分野における国際協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、これらの改正文書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合憲章(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)及び全権委員会議(千九百九十四年京都)において改正された国際電気通信連合条約(千九百九十二年ジュネーヴ)を改正する文書(全権委員会議(千九百九十八年ミネアポリス)において採択された改正)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明申し上げます。

 これらの改正文書は、平成十年十一月にミネアポリスで開催された国際電気通信連合の全権委員会議において採択されたものであります。

 これらの改正文書は、民間の電気通信事業者等の国際電気通信連合の活動への参加を促進し及び拡大させること、同連合の財政的基盤を強化すること等を目的とするものであります。

 我が国がこれらの改正文書を締結することは、電気通信の分野における国際協力を一層推進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、これらの改正文書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いを申し上げます。

 以上です。

土肥委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。

 次回は、来る四月四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時二分散会




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