衆議院

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第11号 平成15年5月21日(水曜日)

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平成十五年五月二十一日(水曜日)
    午前九時五分開議
 出席委員
   委員長 池田 元久君
   理事 今村 雅弘君 理事 蓮実  進君
   理事 水野 賢一君 理事 森  英介君
   理事 首藤 信彦君 理事 土肥 隆一君
   理事 丸谷 佳織君 理事 藤島 正之君
      伊藤 公介君    植竹 繁雄君
      小池百合子君    高村 正彦君
      下地 幹郎君    新藤 義孝君
      武部  勤君    土屋 品子君
      中本 太衛君    松宮  勲君
      宮澤 洋一君    木下  厚君
      今野  東君    中野 寛成君
      鳩山由紀夫君    白保 台一君
      松本 善明君    東門美津子君
      鹿野 道彦君    柿澤 弘治君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   外務大臣政務官      土屋 品子君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局国
   際社会協力部長)     石川  薫君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   政府参考人
   (経済産業省貿易経済協力
   局貿易管理部長)     細川 昌彦君
   外務委員会専門員     辻本  甫君
    ―――――――――――――
五月十九日
 アメリカのイラクへの攻撃反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇六三号)
 同(木島日出夫君紹介)(第二〇六四号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二〇六五号)
 イラク攻撃への加担反対に関する請願(木島日出夫君紹介)(第二〇六六号)
 戦争支持の撤回に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇六七号)
 アメリカのイラク侵略戦争と日本の支持・協力反対に関する請願(川田悦子君紹介)(第二一一三号)
 同(金田誠一君紹介)(第二一三二号)
 同(赤嶺政賢君紹介)(第二一八四号)
 国連憲章に反するイラクへの武力攻撃反対に関する請願(小沢和秋君紹介)(第二一四六号)
 同(木島日出夫君紹介)(第二一四七号)
 同(児玉健次君紹介)(第二一四八号)
 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一四九号)
 同(志位和夫君紹介)(第二一五〇号)
 イラクへの武力攻撃・戦争協力反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一八二号)
 イラク攻撃反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第二一八三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――
池田委員長 これより会議を開きます。
 国際情勢に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、同じくアジア大洋州局長薮中三十二君、同じく北米局長海老原紳君、同じく中東アフリカ局長安藤裕康君、同じく経済協力局長古田肇君、厚生労働省健康局長高原亮治君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長細川昌彦君、それぞれの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議はございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
池田委員長 御異議はないと認めます。よって、そのように決定いたしました。
    ―――――――――――――
池田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織さん。
丸谷委員 おはようございます。
 まず、イラクについてお伺いをしたいと思います。
 フセイン政権が崩壊をしましてから一カ月が過ぎようとしているわけなんですけれども、現在のイラクの状況は、治安の面ですとかあるいは暫定統治機構の面ですとか、人々の生活に密着した、また実際に必要な安定性というのはまだまだ得られていないというのが現状であろうと思います。
 実際の報道によりますと、水道ですとかあるいは電気など生活インフラの面では回復したものの、まだまだ治安の面では不安が残るという話も聞くわけですが、そういった中で、どこの国よりも早く茂木副大臣が現地入りをされたことに大変敬意を表します。
 風のうわさによりますと、あれだけ危険な状況の中で、警護官もなしによく副大臣が来たと、現地では非常に驚きの声が大きかったというお話も現地から伝わってくるわけなんです。
 まず、副大臣が実際に御自分の目で見られた現在のバグダッドの現状ですね、治安の面など、聞かせていただきたいと思います。
茂木副大臣 丸谷委員御指摘のとおり、まだバグダッドの治安状況、完全には回復をしていない。いろいろな治安の問題、これが大きい。
 向こうでブレマー大使、ちょうど私が会う前日の夜着任をいたしまして、私が外国の政府関係者として会った最初の人間になったわけですが、やはり治安の回復、これが一番大きな課題である、こういう話をしておりました。これは国連のダ・シルバ調整官が全く同じでありまして、会う人会う人が、やはり治安がトッププライオリティーなんだ、最優先課題なんだ、こういう話をしておりました。
 それから、ライフラインにつきましても、電力等々にはまだ大きな問題が残っている、上下水道の問題もある、こういうふうに考えております。
 今後のイラクの復興、これを考えると、私が先日、国会のお許しも得まして現地を訪問させていただいて、一番強く感じたことは、イラクの復興というのは単に戦後の復旧ではない。その前の失われた二十年、フセイン政権のもとで民生部門に十分な投資をしてこなかった、そのために、電力にしても通信にしても病院の施設にしても学校の施設にしても、全部が老朽化をしている。この失われた二十年を回復する、このことが一番大きな課題である、こういうことを感じて戻ってまいりました。
丸谷委員 トッププライオリティーが治安の回復で、その次にライフラインの回復、とともに、本当にゼロからあるいはマイナスから人々の生活に必要なものを築いていかなければいけないという大変大きな課題を抱えているこのイラクは、単なる戦後の復興ではないという副大臣のお言葉に非常に感銘を受けた次第なんですけれども、それでは、実際に日本がどういった形で復興支援をしていけるのか、あるいは、十二日に着任したばかりのブレマー文民行政官を含め、多くの関係者と協議されたと思うんですけれども、我が国に求められている復興支援の具体的なニーズというものはどのようにお考えになっているでしょうか。
茂木副大臣 イラクの復興はまさにこれから始まるということでありまして、一言で申し上げると、あらゆる分野にニーズが存在をする、こういうふうに考えております。
 例えばどういうことか。委員御指摘の生活関連のニーズということでありましても、例えば、私は病院を一つ視察してまいりました。これは、かつて日本が円借案件で向こうで建設をした病院でありまして、行ってみますと、いろいろなレントゲンの器材であったりとか、エレベーター、発電機、厨房の施設、全部日本製であります。そういうものについては、やはり設計図も持っている、またそういう技術的なノウハウもある、こういう日本が復旧に対して前向きに取り組むということは大変重要だ、こんなふうに考えておりまして、そのお話をORHAの関係者それから国連の関係者ともさせていただきまして、大変前向きな評価を得た、こういうふうに考えております。
 今後、例えばUNDPであったりとか、また、学校の復旧ということになってくるとユニセフ等々、国連機関とも協力をしながら、早急な復旧に取り組んでいきたい、こう考えております。
 同時に、現地におきましては、やはり雇用の問題、これが大変大きな課題になっております。御案内のとおり、例えば、日本は、アフガニスタンにおきましても、REAPといった形で、簡単な道路の舗装、復旧とか、そういうことにつきまして、現地の方を使ってといいますか、UNDPとともに、それが雇用の創出プログラムにつながる、こういう経験もあります。同じようなプログラムがイラクにおいても実施をできるんではないかな、簡単な工事であったりとか、簡単な復旧について、国連機関と協調しながら、その復旧をしながら、同時に現地の雇用を確保する、こういうプログラムも大変重要ではないかな、こんなふうに今は考えております。
丸谷委員 先日、新聞の中に、帝京大学の志方教授という方がイラクの復興について寄稿されていまして、それを読むと非常にわかりやすいなと自分では思ったんですけれども、復興作業は三階建てであると。一階部分は国家レベルの安全保障の枠組み、二階の部分が民主的な行政レベルの自治の枠組み、そして三階部分として、きめ細やかな市民レベルの生活支援の枠組みという、ただ、この三階を下から積み上げていくというよりは、同時並行的にやっていかなければいけないという趣旨のお考えを載せていらっしゃいまして、非常に私もそのとおりだと思いました。
 では、ここの部分、国家レベルの枠組み、行政レベルの枠組み、市民レベルの枠組みで、どのようにそれぞれ日本がかかわって支援をしていくことができるのだろうと考えたときに、例えば、一階部分の国家レベルの安全保障の枠組みの中、といいますと、実質ORHAが中心になって復興作業あるいは治安の維持というのを行っていくものと思われます。
 この際には、この二階部分、民主的な行政レベルの支援、病院であったり学校であったり、そういった復興、あるいは三階部分のきめ細やかな市民レベルの生活支援、NGOであったり、そういったところに日本がかかわって支援を行う以上、この一階の国家レベルの安保枠組み、ORHAにもやはり日本としても連絡幹部を出していかなければ、この二階、三階というところの連携がとれないので、うまく機能しないだろうという危惧もあるわけなんですね。
 例えば、日本の貢献のあり方として、中東諸国とも連携をしながら支援していく方針を政府は固めたという報道がありましたけれども、では、外務大臣にお伺いをさせていただきますが、現在、イラクの復興に当たって、こういったORHAを中心とした支援、そして中東諸国との連携をとった支援という二本立てでやっていくお考えなのでしょうか。
川口国務大臣 支援の枠組み、いろいろな分類の仕方はあるだろうと思いますけれども、今委員がおっしゃったようなORHAを通じてということが一つですね。これは、既に三人の外務省の職員に、私から出張命令を出して行ってもらっているということをやっております。三人それぞれ、現地で非常に高い評価を得ているということでございます。
 それからもう一つ、委員がおっしゃった現地のNGOを通ずるということも動いている。NGO、広い意味でのNGO等でございますけれども。
 それからさらに、先ほど委員がおっしゃったような中東諸国と一緒にやっていくということがありますが、これも動いていまして、先般、私はヨルダンに行きましたときに、ヨルダンのハシミテ財団と一緒に、これは医療の問題でイラクの中で活動をしていく、このハシミテ財団の活動を日本は支援するということでやりましょうということをお話をいたしました。
 それから、国際機関経由、先ほど茂木副大臣がおっしゃった、例えば学校ですとか、それからアフガニスタンでやっているREAPに匹敵するような、そういうことであれば、既にユニセフとかレッドクロスについては支援をするということを発表していますけれども、例えばそういうことについては国際機関を通じて、それからさらに、二国間でというのもあるだろうと思います。
 こういった形で、いろいろな場面でそれにふさわしいやり方で、それからふさわしい状況においてやっていきたいというふうに考えています。
 いずれにしても、全体として、イラクに対して日本がどの程度の支援を行うかということは、事態の進展にもよりますし、その状況で考えていくということであって、今から全部物語が展開できるわけではないというふうに思います。
 それから、政治的なかかわり合い方として、今イラクはIIAといいますか、暫定行政機構を立ち上げようという努力がタウンミーティングの形で行われていますけれども、我が国としては、やはりでき上がってからということではなくて、それができる過程についてもできる支援をしていく、あるいはそれにかかわっていくということが重要ではないかと思っています。
丸谷委員 今の大臣の御答弁の中で、例えば現在できることをまずやっていき、また状況に応じてそれぞれの支援の仕方というのは考えていくなり、変わっていくというのは当然あるんだろうと思うんですけれども、例えば現在できることといえば、PKO協力法ですとかあるいは国際緊急援助隊派遣法によってできることは当然ありますし、それをやっていくべきだと思います。
 ただ、やはり今後の問題に関して、ORHAに直接的な支援を行う、あるいは人を派遣する。また、人というと、どうしても今考えられるのは、自己完結型で行動ができる、また医療ですとか輸送ですとか、そういった部分で活動ができる自衛隊の派遣というのが一番現実的なものと私には思えるわけなんですけれども、やはりこういった形での国家レベルの安全保障の枠組みを維持するために、日本のかかわり方として、自衛隊の派遣をする際には、新規立法あるいは特措法等の必要性というものがどうしても出てくると思うんですけれども、この点についてのお考えは今のところいかがでしょうか。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、イラク全体でどのような形の支援がどのような局面で必要になるかというのは、物事の流れを見ながら、それから一方で国連の決議が今動いておりますので、ORHAあるいはIIAあるいは国連の決議にある当局と言われるもの、そのあたりがどのような形で関連を持ちながら、あるいはどのような権限関係を持つかということについても、今はっきり見えているわけではありませんので、そういったことを注視したいと思います。
 それで、おっしゃった自衛隊の派遣ということでございますけれども、これについては、前から申し上げていますように、日本としてどういう支援ができるかということを政府としては全体を検討中でございまして、何らかの結論が今出ているということではございません。
丸谷委員 今大臣の方から決議案のお話がございましたけれども、実際に、我が国のイラク問題に対する一貫した態度というのは、やはり国際的な枠組みで、あるいは国際的な協力を得てイラク問題を解決していくんだというのが、我が国としての一貫した立場だったと思います。
 そういった観点から見まして、今回、九日にイギリス、スペインとアメリカが提出をし、十五日に修正案が提出されたこの決議案は、軍事物資を除く経済制裁の全面解除、そしてIAFの新設等を提案しているものの、本格的な新政府の樹立と復興支援に国連がどのようにかかわっていくのかというのが明確にはされていないように思います。
 その意味から、今回の米英の決議案の内容というのは、我が国が主張してきた国際的な協力を得て、また理解を得てという主張と十分合致するものと大臣はお考えになるでしょうか。
川口国務大臣 国連の決議案については、今私どもが把握をしているところでは、先ほどの議論でさらに修正が、小さな修正だと思いますけれども、現地時間の二十一日の時点で出されて、恐らく二十二日の時点で投票にかかるということになるだろうと思います。
 それで、ここでは、今まで特別調整官と言っていたのを、特別代表という、より権限の大きい国連の代表を出すということになっていまして、アナン事務総長も、決まればすぐに任命をするということを言っていらっしゃるようでございます。ということで、我が国がずっと考えていました、あるいは言ってまいりました国連の十分な役割というのが、ここではそのような形で出てきているのではないかというふうに思っています。
 いずれにしても、この決議案の採択の結果、どういう結果になるかわかりませんが、多分、二十二日に投票と言っているところを見ますと、割にいい雰囲気ではないんだろうかというふうに考えます。そういった形で国際社会が協調をし、国連がある役割、バイタルなロールということを決議案は言っていますが、ということになることを歓迎しております。
丸谷委員 大臣も先ほどおっしゃいましたけれども、暫定統治機構の設立にも我が国として関与していけるような意向もあるというお話もございました。
 実際には、五月下旬にも設立されるであろうと言われていました暫定統治機構が、今の段階では、茂木副大臣とブレマー文民行政官の話の中でも、恐らく六月中旬以降にずれ込むであろうというお話であったと思います。それほど民族対立とかあるいは宗教的な対立というのが根深い地域でもありますし、逆に、そういった民族的な対立それから宗教的な対立というのは、権力闘争と違いまして、決して力で抑え込むことができない性質のものでしょうから、やはり、より公正な立場で、また公平な意見を言っていけるような立場にある国、それから国連というところが前面に立って、統治機構の設立にぜひ尽力をしていただきたいと思います。
 続いて、SARSの質問をさせていただきたいと思うんです。
 SARSに感染しています台湾人医師の方が来日をして、国内を旅行していたことを受けまして、一番重要である水際でSARSを防止するということの難しさが明らかになったと言えます。幸い、二次感染によるパニックには至っていないわけですけれども、今後、政府は、地方自治体ともよく連携をとっていただいて、また、第一報が厚生省に入ってから大臣に上がるまで非常に時間がかかった。こういったことを厳しく省内でも踏まえていただいて、さらなる体制をとっていただきたいと願うものであります。
 急激に感染が拡大しています台湾からの旅客に対しまして、現在、関西空港ではどのような対処をしているんでしょうか。体温測定だけでは、例えば解熱剤を飲んだり、あるいは発病前に日本に来た感染者を発見するのは困難とも言われていますけれども、そういった意味において、台湾当局との連携は現在どのようにとっているのか、この二点についてお伺いをします。
高原政府参考人 水際作戦といたしましては、ただいま委員御指摘もございましたように、機内で問診票を配付し、体温を含む健康状態を確認する。それから、発熱、せき、呼吸困難の有症者については、健康相談室で医師により診察を実施しております。また、当該地域からの入国者全員に対しまして、十日間外出を控えるなどの留意事項を記載した健康カードを配付しております。また、お話にもございましたが、主要空港におきまして、サーモグラフィーによる発熱者のスクリーニングを実施しております。
 さらに、今回の台湾人医師の入国事例を踏まえまして、台湾、香港、中国からの入国者については、入国前十日以内にSARSの疑いのある人とどういうふうに接触したのかというふうなことを聞きまして、接触の可能性がある者に対しましては、日本国内における滞在期間中の連絡先の申告と、入国後十日間の体温測定の報告を求め、署名をしていただいて、検疫所で預かっております。そういたしまして、入国後の健康監視の強化を図っております。
 御指摘のとおり、この感染症には潜伏期間がございまして、その期間後の対策、国内で発病するような事案に対してどう対応していかなければならないか、大変重要な課題であると考えております。地方自治体、各関係省庁と連携の上、適切かつ最大限の努力を払ってまいりたいと考えております。
丸谷委員 台湾当局との連携はどのようになっていますか。
石川政府参考人 失礼いたしました。
 外交当局につきまして補足させていただきますと、台湾からの観光客を含む渡航者による我が国国内への感染拡大の防止につきましては、交流協会を通じまして、種々意見交換あるいは情報交換、また、今般のことにつきましては台湾側から遺憾の意等が表明されております。
 いずれにいたしましても、外務省といたしましては、今後とも、SARSの感染拡大を防止するため、あるいは先ほど委員が御指摘になったような入国の例といったことも防ぐために、まず関係者、例えば台湾側との連絡を密に行っていく、そういったことも踏まえながら処理していきたい。また、そうした過程の中で、関係省庁とも密接に協議を続行させていきたい、このように思っております。
丸谷委員 これは外務省にぜひお願いなんですけれども、九・一一の同時多発テロ、またSARSを受けて、航空業界ですとか旅行業界は、国内でも大変な被害を受けています。実際に倒産した旅行代理店もありますけれども、実際に感染をしていない日本に来ることをやめる、あるいはサッカーの試合に来ることをやめるとか、風評被害というのがいろいろなところで広がっています。
 在外公館ですとか海外広報部において、特に欧州地域に向けまして、現在の日本の安全性等を十分にPRしていただかないと、経済的にも非常に困りますし、北海道なんかは、特に台湾、香港、中国からのお客様、観光客が年間三十二万人ほどいらっしゃっているんですが、五月にはほとんどゼロに近い状態ということですね。こういった状況も含めまして、海外に対するPRをぜひお願いしたいと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
茂木副大臣 先日、SARSに対します関係の閣僚会議がございまして、たまたま川口大臣が海外出張中でありまして、私が代理で出席をさせていただいたんですが、坂口厚生労働大臣初め関係閣僚が集まった席で、扇大臣の方から、旅行業界等々の状況に対しましても詳しい報告も受けているところであります。
 もちろん、リスクというのは未然に防いでいかなきゃならない。そのための連絡体制であったりとか危険情報等々につきましては、少し前倒しでやっていきたい。
 ただ、委員御指摘のように、風評被害が広がる、こういうことはあってはなりませんので、きちんとした連絡体制であったりとか広報体制、外務省のホームページはもちろんでありますが、在外の公館等々も通じまして徹底をしてまいりたいと思っております。
丸谷委員 ありがとうございます。
 時間もなくなってまいりましたので、五月の五日から七日、インドネシア政府とユニセフ主催で行われました子供に関する第六回東アジア・太平洋会議に参加をさせていただきましたので、この点について質問させていただきたいと思います。
 児童の商業的性的搾取やエイズなどの問題に各国はどのように取り組んできているのか、あるいは地域との連携、NGOとの連携をどう図っていくべきなのかを協議してまいりました。日本からは、外務省の人権人道課の課長が、残念ながらインドネシア大使がちょっと体調を崩されまして、代読という形で、日本政府の取り組みを発表されましたし、また私の方からは、一議員としてですけれども、子供にふさわしい世界を築くためにということでスピーチをさせていただき、日本の取り組みに関しましては、各国から大きな反響があったものだと思っております。
 期待の声にこたえるためには、まだまだやっていかなければいけない努力もたくさんあるわけなんですけれども、例えば、ことしの六月に外務省とユニセフが協力して行います母子保健に関するセミナー等は、国際機関との連携という意味で非常に重要なセミナーだと思いますし、また有効なものになると思っております。
 経済状況が日本においては思わしくないという中、国際機関への拠出金というのは減額される傾向にありますし、また、その基準は、マルチよりバイへという形の方向性での拠出の仕方になってきておりますが、今後、ユニセフ等国際機関との連携をいかに図っていくかが重要であると思います。
 児童の問題の優先順位が高いであろうこの外務省において、予算にもどのように反映をさせていくつもりなのか、この点についてお伺いします。
石川政府参考人 子供についてのプライオリティーを高くあるべしという御指摘をいただきました。私どもも、基本的にそのように考えさせていただいております。
 委員御指摘いただきました第六回東アジア・太平洋諸国閣僚会議、また、それに先立ちまして、例えばことしの二月には、御承知のとおり、ユニセフとの共催で、児童のトラフィッキングに関するシンポジウム、これは東南アジアのNGOの方たちとの連携ということを主なテーマとして開かせていただいたわけでございますけれども、そういった子供に関する具体的な外交の強化ということをやらせていただいていることは御承知のとおりかと存じます。
 引き続き、予算についてでございますけれども、今年度予算につきましても、国会の御承認をいただきまして、例えばユニセフ等につきましては、重点的な国際機関として、この厳しい予算状況の中で昨年と同額の予算を承認させていただきました。
 行政府サイドとしては、御指摘のように、ユニセフのような機関につきましては、引き続き努力を重ね、納税者の皆様、あるいはしかるべき筋の御理解をいただきながら頑張っていきたい、このように考えております。
丸谷委員 ありがとうございました。引き続き、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 というのは、やはり、子供だけが、直接、政治に参加することができず、投票権も持てず、いかなる政治的な圧力団体にもなり得ず、児童の問題という、その当事者である児童が声を上げることができないという以上、やはり私たち大人の責任で対処をしていかなければいけないと思いますし、また政治家が果たすべき役割も多いという思いで、私も今後も引き続き頑張らせていただきたいと思います。
 では、最後に、インドネシアに行った際に、近くのスマトラ島の問題が最近起こってきていますので、一問だけ質問させていただきたいと思います。
 スマトラ島の独立派のゲリラのGAMが七六年に独立宣言を行って以来続いてきましたインドネシア政府との内戦を終わらせるために、外務省が設定をしました交渉については評価をさせていただきます。残念ながら、交渉は決裂をし、十九日、メガワティ大統領の軍事非常事態宣言を経まして、アチェ北部の地区で、国軍とGAMの地上部隊が本格的な交戦を始めて、これが六カ月以上も続くのではないかという話も出ているわけなんですが、住民が巻き添えになること、あるいは天然ガスを依存する日本に与える影響も大きいことから、一刻も早くこの事態を収拾していく必要があると思いますが、政府は、どのような調停活動をインドネシア政府あるいはGAMとの間で行っていくおつもりなのか、この点についてお伺いします。
川口国務大臣 アチェの問題につきましては、我が国としては、今までさまざまな支援をしてきておりまして、例えば、ついこの間の週末も、日本で場所を提供してということでやっておりましたけれども、この目下の問題の解決につながることなくこういう形になっているということは、我が国としては、平和的な解決に向けての支援を行ってきましたので、非常に残念でございます。我が国は、今後の推移については引き続き注視をしてまいりたいと考えています。
 インドネシアが安定をしているということは、ここは我が国にとっても非常に重要な地域ですから、我が国にとって重要なことでございまして、アチェの問題についての基本的な考え方というのは、領土の一体性という中で平和的な解決ができるように支援をしていくということでございます。引き続き、側面的な支援を行っていきたいと考えていますし、また両当事者、政府とGAMとの間の話し合いの道を今後とも探っていきたいと我が国としては考えております。
丸谷委員 以上です。ありがとうございました。
池田委員長 次に、木下厚君。
木下委員 民主党の木下厚でございます。
 きょうもまた、北朝鮮問題について議論をさせていただきたいと思うんですが、本題に入る前に、ちょっと大臣と副大臣にお伺いしたいんですが、極めてプライベートなことですので、お答えいただけなければそれで結構でございますが、大臣はお子さんはいらっしゃいますか。
川口国務大臣 おります。
木下委員 茂木副大臣、いかがでございますか。
茂木副大臣 三歳になります男の子がおります。
木下委員 実は、私も今中学三年の男の子を抱えています。
 といいますのは、実は、横田めぐみさんが拉致されたのがちょうど十三歳でございます。それから実に二十四年間、北朝鮮に不法に拉致をされていた、そしてそのほか十三人の北朝鮮が認めている拉致の被害者の皆さん、そのうち八名お亡くなりになって、五名お帰りになったということでございます。
 帰ってこられまして、その二十四年間にわたる苦しみ、この十三名の方、まだ安否等はっきりわかりませんが、それにしても、何となく、はっきり居どころがわかったということで、安心されて日本へ帰られた五名の方、やっと日本の土を踏んだと思ったら、今度は自分たちの大事なお子さんが北朝鮮に不法に拘束されている。私も子を持つ親として、本当に胸の痛む思いがします。
 二十四年間苦しんできた、その上にさらに、これまで八カ月間にわたって自分の大事なお子さんが北朝鮮に不法に拘束されている。二重の苦しみを与えているのではないか、私はそんな思いがいたします。
 そうした思いがあるにもかかわらず、昨年九月十七日の小泉さんの訪朝による日朝首脳会談、それ以後、約八カ月たちます。この拉致問題について何ら解決していない。これはまさに、私は、日本の主権を侵害され、そして、北朝鮮による国家犯罪を、それは努力したとおっしゃるかもしれない、しかし、国民には、外務大臣を含め政府あるいは外務省、どれだけ努力をしているのか、どれだけ強いメッセージを北朝鮮に発したのか、多くの国民の皆さんはわかっていないんです。
 私は、その点で、もう一度この日朝平壌宣言を読み返していただきたい。要するに、日朝平壌宣言では、再三これも指摘されてきた、拉致問題という言葉は一つも含まれていない。ましてや、今大きな問題になっている核、ミサイル問題、これについても、まさに小泉さんは知っていたわけです。交渉するとき、核を保有しているというのを知っていながら、こんないいかげんな日朝平壌宣言にぬくぬくと署名してきた。それに対して、八カ月たっても何ら解決していない。うその平壌宣言に署名してきたんですよ。その点、大臣、どう思いますか。
川口国務大臣 横田さんを初め、委員がおっしゃられました五人のここに戻っていらっしゃる方、あるいは日本にいるその家族の方、あるいは現地にいる家族の方、あるいは日本が拉致をされたであろうと言っている人、あるいはそれ以外の可能性のある人、すべてのことについて、委員がおっしゃったように、本当に、家族を持っている人であれば、その気持ちというのは痛いほど、みんなそういう同じ気持ちを持っていると思います。
 私は、初めて横田さん御夫妻にお会いをしたときに、横田さんの奥様からお書きになった本をいただきました。それを読ませていただいて、本当に、非常にお気持ちいかばかりかと、私自身、涙が出るのを抑えることができませんでしたけれども、そういう中で、外務省として、これについてうまく結果を出すことができていないということは、私としては非常に残念です。
 それの努力について、外務省のやっていることが見えないということを、これは委員だけではなくていろいろな方がおっしゃいますが、これは外交が、外交をやっている担当者としては非常に厳しいところで、すべてのやっていることが外に見えるということがいい、それが有効であるかどうか、それが結論に、いい結果につながるかどうか、これはまた別問題でございます。
 きのう、総理も国会でおっしゃっていらっしゃいましたけれども、これは、いろいろな手段、方法、これが有効である必要がある。そういう観点から外交は考えていかなければならないというのは、私どもとしてもやっていることを、これをやっています、あれをやっています、みんなお話をすることができたらば、それは非常に私としても、それはそれでいいことであろうかと思いますけれども、それができないということが外交の持つ性格であると私は思っております。
 いずれにしても、何といいましても、これについて昨年の十一月以降、表で会合が開かれていないということも事実でございまして、それを、北朝鮮側がそれに乗ってこないという理由もまた、拉致の問題をめぐることからきているわけでございまして、外務省としては、この問題について一日も早くいい結果を出すことができるように最大限の努力をし続けるということしかないし、それをやるということで努力を全員でしているところでございます。
木下委員 いや、私自身も、外交のイロハは知っていますよ。そんなすべてを表にしろなんて言っていない。少なくとも、北朝鮮から、ミサイルを発射するぞとか、あるいは東京を火の海にするぞとおどされながら、なぜ北朝鮮に対してもっと強烈なメッセージを大臣みずから発しないんですか。
 もちろん、余り刺激をしない方がいい、常に言われているのはそこですね。冷静に判断しなきゃいけない、それはそのとおりだと思う。しかし、やはり北朝鮮に対して、我が国は主権を侵害されている、そんなおどしには屈しないという、そうした強い、強力なメッセージを北朝鮮に発するぐらいの、それは総理みずから、あるいは大臣みずからテレビに出てでもやはり発しないと、国民は今、いらいらが本当に募っているわけです。やはりもっと強く国民に訴え、そして、政治はこう考えている、そういうことを国民に訴え、あるいは北朝鮮にメッセージを送る。
 私は、まさに外務大臣あるいは外務省の最大の仕事というのは、やはり国家主権を守るということ、それから国民の生命財産を守るということ、国民の人権を守るということ、これが最大の仕事だと思うんです。ところが、どうですか。十三人だけじゃなくて二百人近い人たちが北朝鮮に拉致されていると言われているわけですね。それに対しては、余りにも僕は対応がお粗末ではないか、そんな思いがするんですが、大臣、所見をひとつ。
川口国務大臣 北朝鮮の問題への対応については、国民の皆様の中にさまざまな御意見があるということは、私も、それから外務省もよく承知をしております。
 その中で、先ほど申しましたように、やはり外交というのは、その手段としてとることについては有効でなければならない。委員がおっしゃった、国の主権を守る、あるいは国民の生命財産を守る、これはみんなそれぞれ非常に重要な外交の目標であります。それをやるために外務省としては頑張っているということです。
 それを、実際にそれぞれのケースに当てはめて、どういうような方法につなげていくかということについては、それはやはり有効であるということが私は大事であると思います。外務省としては、いろいろな状況において、何が適切であるか、何が有効であるかということを考えて行動をしているということでございます。
 委員がおっしゃったように、外交において、恫喝に屈してはいけない、これは当然のことです。そういったことはもちろんきちんと踏まえた上で、外務省としては、この問題についての基本的な考え方、北朝鮮についての基本的な解決の考え方、これは、日朝平壌宣言に従って、平和的に、そして包括的に問題を解決していくということでございまして、その具体的なやり方については、それぞれの状況に応じ、外務省として適切な手段をとっている、そういうことで御理解をいただきたいと思います。
木下委員 それは、いいですよ、平和的に話し合いで解決するんなら、それは望むところです。しかし、八カ月たっても何ら進展していない。
 少なくとも、例えば、拉致はテロである、あるいは北朝鮮をテロ国家と、それを認めることさえ、いまだ、まあ、ようやく最近、拉致はテロに近いものであるとか、テロ国家のようなものであるとか、何かわけがわからないことを言っている。テロ国家なのかどうか、これはそういう規定がないとかいろいろ言っているようですが、これは規定があろうがなかろうが、大臣がきちんとメッセージを出せば、こんなことははっきりすることですよ。
 拉致はテロである、北朝鮮はテロ国家である、そうはっきり日本の意思表示をすることによって、やはり北朝鮮に対して、それはまた北朝鮮は恫喝してくるかもしれないですよ、しかし、日本の対応として、きちんとやはりメッセージを送る、これが私は必要ではないかと思うんです。拉致はテロであるということは認めたようなんですが、北朝鮮がテロ国家であるかどうか、ずばり、もう一度お聞きしておきたいと思うんです。
川口国務大臣 北朝鮮に対しては、メッセージはきちんと送っているつもりです。これは、この問題について日本がどう考えているかということは、小泉総理がピョンヤンでお話しになられたときも、厳しい抗議をしていらっしゃるわけで、きちんとメッセージは送れていると思います。
 それで、委員のおっしゃったことについて、私は、ずっと国会で申し上げていることは、普通に言えば、拉致というのは、人間の生命、安全にかかわることでありますから、そういった行為でありますから、これは、普通に言えば、こういう行為というのはテロと言いますということを申し上げているわけです。
 それから、北朝鮮がテロ国家であるかどうかということについては、これは、こういった行為をする国家という意味では、ですから、テロと普通に考えられる行動を、行為をする国家という意味では、テロの行為をする国家であるということは言えるでしょうねということは申し上げています。
 ただ、繰り返しますが、我が国としてテロ国家という指定をするという制度は持っていないということです。
木下委員 前置きにいろいろ、普通に言えばとか、そんなこと言わなくていいんです。テロ国家ならテロ国家、それは、そういう規定がなくてもテロ国家であると言えばいいんです、拉致はテロであると。普通に言えばなんて、そんなこと言うからおかしくなっちゃうので、そんなことわかっていますよ、普通に言わなくたってどう言ったってテロ国家には変わりない、拉致がテロに変わりないんだから、ずばり言えばいいんです。まあ、それはそれとして。
 この二十三日に、小泉首相がアメリカへ行って日米首脳会談が行われますが、この中で、北朝鮮問題について、小泉首相はブッシュ大統領にどのような協力要請というか話し合いが行われるのか、その具体的な内容がわかったら教えていただきたいんです。
川口国務大臣 これは、両首脳がまさにお二人でお話しになることについて、事前に私が、こういう話をすることになっていますということを申し上げる話ではないと思います。そういうことでありますが、基本的な考え方としては、これは、先ほど申しましたように、日本としては北朝鮮との問題は平和的に、そして包括的に解決をしていくという考え方を持っているわけです。それから、それをする上で各国との連携、これが大事であるということを言っているわけです。
 当然に、私どもとして、それで小泉総理も同じ考えでいらっしゃいますけれども、二国間の会談で北朝鮮の問題というのは重要なテーマであるわけです。このテーマの中で、これについて我が国としては、あるいは外務省といたしましては、両者の話し合いの中からこの問題の解決に向けての方向性が見出せるようなものであればいいというふうに思っております。政府としては、これについては、この間米韓の会談がございましたので、その会談の内容について検討を加え、現在さらに首脳会談でどういうことをお話しいただきたいかという観点で検討を続けているところでございます。
木下委員 日米首脳会談でどういう話し合いになるか、それはわかりませんけれども、少なくとも小泉さんが行くわけですよ。北朝鮮問題について、やはり、日本はこう考えているからアメリカがこういうふうな協力をお願いしますというようなはっきりした目的を持って行かないわけですか。それを言えないですか。おっしゃってください。どういう協力要請をするつもりですか。
川口国務大臣 ですから、先ほど申しましたように、日本としては、基本的な考え方として、この問題については平和的に、そして包括的に、各国と連携をしながら解決していく問題であるというふうに思っているということでございます。
 特に大きな問題としては、核の問題及び拉致の問題というのがあるわけですけれども、この点についての日本の考え方についてはもう既に米国側はよく知っているということですけれども、それを首脳の口から直接に首脳に伝えていただくということに大きな意味があるということでございまして、こういった日本の考え方についてはきちんと総理の口からブッシュ大統領にお伝えいただけると思いますし、そういった中でいい解決の方向性が出てくるということを我々としては期待、希望をしているわけです。
木下委員 よくわからない答弁ですけれどもね。
 それと、福田官房長官が十九日の記者会見で、北朝鮮への送金停止や貿易停止などの経済制裁について、日本と米国との間で合意があれば現行で実施が可能との新見解を正式に表明しましたが、これは日本政府が従来主張してきた、経済制裁については国連決議が必要という従来の見解から路線転換をするつもりなのか、またこの新見解は、これまでの国連重視という路線から日米同盟重視という形にこれも政策を転換されるのか、福田官房長官のこの見解について、外務大臣はどうお考えなのか、よろしくお願いします。
茂木副大臣 交渉のアプローチ、対話につきましては多国間協議で進めていく、こういう方針が変わっているわけではありません。
 そこの中で、先ほど来委員御指摘いただいております厳しいメッセージといいますか措置、こういうことを考えた場合に、いろいろなオプションがあるんだと思います。例えば我が国独自でやれるような麻薬、覚せい剤の摘発の問題、それから大量破壊兵器に関するキャッチオール規制、これを厳しくする、現在やっておるわけでありますけれども、そういったこと、我が国独自でやれること。それから何カ国かとの協調のもとでやるもの、そして国際社会全体としてとる措置。
 そこの中で、送金の停止の問題であったりとか貿易停止の問題につきまして外為法上どうなるか、そういうことを整理した結果につきまして官房長官の方から見解を述べさせていただいた、こういう形でありまして、考えてみると、一国でやれること、二国でやれること、そういうオプションがふえてくる、このことにつきましては今後交渉を進める上でも有益である、こんなふうに私は考えております。
木下委員 そうすると、この問題については、小泉さんが訪米したときブッシュさんに、二国間でもいいから経済制裁をやる覚悟があるかということを要求するとかそういう考えはないんですか。あくまでも、十九日に発表したということは、小泉さんの訪米への地ならし、これではないですか。どうなんですか、その辺は。
茂木副大臣 先ほど大臣の方からも御答弁申し上げましたように、まさに首脳レベルの会談でありますから、そこの中で核の問題、そしてミサイルの問題を含め大量破壊兵器、安全保障の問題、そしてまた拉致の問題等々の重要性につきまして日米の首脳間で完全に意見が一致をする、そしてまた、今後のアプローチにつきましても、対話とそれから厳しい措置、それをどう組み合わせていくか、こういうアプローチにつきましても一致をする、こういうことが北に対しても非常に重要なメッセージだ、こういうふうに考えておりますが、具体的なやりとりがどうなるか、これにつきましてはまさに首脳間で話し合われるものだと理解をいたしております。
木下委員 その点はよくわかりますが、これは外務大臣としては、こういった考えは強く支持しますかしませんか、そこだけお答えください。
川口国務大臣 こういった考えとおっしゃったそのこういったというのはいろいろなものを含み得るので、どの部分かちょっとはっきりいたしませんが。
木下委員 要するに、もしできることならば、日米両国間における送金停止あるいは貿易停止、これを福田官房長官は十九日、正式に表明したわけですが、これについて外務大臣としては、この福田官房長官の新見解を支持できるのか、できないのか、強く支持するのか、その辺を明快に答えてください。
川口国務大臣 福田官房長官が会見でおっしゃったものは、これは外為法の解釈、これについて、特にそれを変更したということではなくて、考え方の整理をしたということをおっしゃられた、その整理をしたことをおっしゃられたわけですね。
 したがって、それは我が国として外為法の運用について何かの政策転換をしたということではないわけですということが外為法の関連ですけれども、御質問が、北朝鮮に対して送金停止をするということについて、私は今の時点で賛成をするかということが御質問でございましたら、その点については、最近ずっと申し上げていますように、現在、平和的な解決の努力がなされている中で経済制裁をするということは考えていないということは申し上げたとおりです。
 ただこれは、北朝鮮が行っている、例えば麻薬を輸出しているとかいろいろなことがありますけれども、そういったことについて我が国は今まで規制をしているわけでして、そういった規制をきちんとしていくということは、当然、我が国として、主権国家としてやっていかなければいけない問題であろうと思います。それから、国際社会において、送金停止をしよう、そういうことを今言っている国は現時点ではないということです。
 ただ、今後いろいろな事態の変化があって、そういうことで我が国として異なる政策をとる必要があるという事態があった場合には、その場合は、国際社会と一緒に調整をし、あるいは関係各省と外務省としては御相談をして、その時点で必要な政策をとっていく、そういうことを考えております。
木下委員 どうも大臣の話を聞いていると、何でも平和的に話し合いでと。それはそれで結構ですよ。また、単独でやっても効果がないとかと。効果はもちろん必要ですよ、必要ですけれども、しかし少なくとも、日本から強いメッセージを発するためには、それは例えば、アメリカが同調するんなら、二国間で解釈を広げて、経済制裁、送金停止、そのぐらいのことをやはりやるべきではないか、そう私は思うんですが、その覚悟がないんですか。
 平和的な話し合いだと。相手はテロ国家ですよ。本来、アメリカはずっと言ってきた、テロ国家とは話し合いをしないと。しかし、何とか話し合いでと思っていても、テロ国家と話し合いで解決がつくわけないんです。そこを覚悟して、やる覚悟があるか、そこを問うているわけですよ。
 そんなきれいごとを言わないでくださいよ。二百人が拉致されている。テポドンが日本に向かって、標的にしてねらっている。そういう国に対して、それは水面下で話し合い、いいですよ、しかし、表向きはやはりきちんとした対応をとる、その覚悟があるのかどうか、そこを問うているんです。
川口国務大臣 先ほど申しましたように、経済制裁については、現時点で外交的な努力が行われている中で行うということについては我が国としては考えておりません。そして、国際場裏でもそれを考えている国は一つもないというふうに承知をしております。
 ただ、先ほど申し上げましたのは、例えば、いろいろ今後の進展があると思いますけれども、そういった事態が進展をするような状況、悪い方向でということですが、それがあれば、それはその時点で、我が国としていかなる政策をとることが適切であるかということを考え、関係各省とも御相談をし、我が国として必要なことをやっていく、そういうことでございます。
木下委員 この論議を九月十七日以来、外務委員会だけでも延々とやってきた、同じ答弁ですよ。あなた、もう責任をとってやめなさいよ。こんな答弁、幾ら何時間かけてやったって、切りがないですよ。そうじゃないですか。進展が何もないじゃないですか。
 日本に帰られた家族の皆さん、本当に訴えているんですよ。その気持ちが少しでもわかったら、もっと前向きな答弁をして、メッセージを送って、必死さを見せてください。そんな無味乾燥な答弁を九月十七日から延々と繰り返しているじゃないですか。こんな議論を幾らしたってしようがないですよ。少しでも前向きな答弁をして、みんなが一致してこの問題を解決しようという熱意が外務省にもあなたにも感じられない。やはりできれば一刻も早く責任をとって、私は、あなたがやめればあるいは解決がつくかもしれない。ぜひそれを期待しております。
 それから、時間がないので、イラク問題をちょっと伺いたいんですが、茂木副大臣、せっかくイラクへ行って来られたので、現地を見て、日本の人道支援に対してどんなニーズがあったのか、そこをちょっと簡単に教えていただきたいと思うんです。
茂木副大臣 時間の関係で簡単に申し上げますが、先週、バクダッドの方に行ってまいりまして、一つは、非常に治安の状況が悪い。それからもう一つは、単に戦争によって壊れたそういう復旧以上に、その前の二十年間、電力にしても病院にしてもいろいろな施設にしても、老朽化が進んでいる、この失われた二十年を回復する、このことがまさにイラクの今後の復興の一番重要な課題だと思っております。
 日本がかつて円借によりましてつくりました病院もあります。電力の施設もあります。それから、これまで日本がユニセフ等々と一緒にやってきたバック・ツー・スクール、教育の関係のプログラムもあります。日本として貢献できる分野は相当多い、こういうことを感じてまいりました。
木下委員 例えばその中で、もう文民だけの派遣では、治安維持あるいは復興というものは非常に難しいと思うんですね。そうなると、いずれ、治安維持の後方支援として、あるいはそういった復興に対してやはり人的貢献をしていかなきゃいけないと思うんですね。そのためには、例えば医務官を派遣するとか、あるいは道路その他の破壊した施設の復興、これもやはり自衛隊でなきゃなかなかできないと思うんです。
 そういった意味で、現行のPKO法ではなかなか難しいということなんですが、例えば国連の決議があれば自衛隊を派遣できるのか、あるいは、今政府内でも新法を検討中というようなきょうの新聞がありましたが、その辺に関して御見解を伺いたいと思うんです。
茂木副大臣 まず、ニーズがある分野とない分野というのをきちんと見きわめる必要があると思っております。例えば道路でありますけれども、私はヨルダンの国境からバグダッドまで五百五十キロ走りました。そこの中で修復が必要な距離は、距離にして十メートルです。それからお医者さんにつきましては、イラクに十分なお医者さんがいます。問題はむしろ、給料の未払いであったりとか交通手段であったりとかいう形で、お医者さんが病院に通勤できる状況になっていない、こういうことを改善するということが必要なんだと思っております。
 その上で、では、おっしゃったような、日本としての今後の貢献でありますけれども、まず現行法の中でできることをすべてやる、その上でさらなるニーズがあったら検討していく、こういう段階であると思っております。
木下委員 時間ですので終わりにさせていただきますが、ちょっと前回やったフィリピンのODA問題を時間がなくてできませんので、また次回にやらせていただきます。どうもありがとうございました。
池田委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 今同僚議員の方から、イラクの問題、北朝鮮の問題について触れられたわけですが、私も同じように、そうした問題について質問をしたいと思います。
 まず、イラク復興の取り組みなんですけれども、茂木副大臣、あなたは先ほどから失われた二十年ということをおっしゃいましたね。二十年前といったら、何ですか、一九八〇年代からということですね。冗談じゃないですよ。例えば医療水準、イラクの医療水準というのは中東の中において最も高くて、すべての重病患者がイラクの病院へ患者を急送して治してもらう、それぐらい医療水準が高かった。
 最近公開された、ミニシアターでしかやっていませんけれども、「酔っぱらった馬の時間」という映画がありました。それは、イランの貧しいクルド難民が、障害を抱えた兄を何とかイラクまで、今の段階で経済制裁が行われているイラクへ入り込んで、そこでロバを売って、その費用でイラクでその障害を抱えたお兄さんを治そうという悲しい、悲しい映画なんですけれども、今のこの時点でもイラクの医療水準というのは中東の中においてははるかに高い。
 そして、もう一つ指摘して、これからも恐らく失われた二十年ということを言われるかもしれないから、注意してほしいんですけれども、全然失われた二十年じゃないんですよ。失われた十二年なんです。要するに、湾岸戦争の前までは、イラクというのは物すごい豊かなところだったんですよ。そして、医療に関して特にその言葉を、私は、失われた二十年ということを言ってほしくないのは、電力は二十年で失われていった、病院が二十年で疲弊していった。だれの責任なんですか。こんなものは、世界でそんなことを言ったら恥ずかしいですよ。
 なぜならば、その二十年前に電力施設をつくったのは、あるいは病院をつくり、そこへ医療品を納めていたのは、それはまさにジャパンなんですよ。日本は、湾岸戦争の直後から、アメリカにおもんばかってイラクの電力会社やイラクの電力施設に対して部品を供給しなかった。ほかのいろいろな国は供給しているけれども、日本は供給しなかった。ああいう巨大施設というものはみんな一つ一つつくりますから、トランス一つだって一つずつつくるんです。そういうところへ日本の部品が入らないために、イラクの電力状況というのはどんどん悪化していった。そこで、ほかのところから買おうとしても、やはり外国のスペックは違って、JIS規格と違ったり、いろいろ規格が違って、結局それがイラクの電力事情をどんどん悪くしていった。
 イラクの病院に関しても、医療品がない。御存じですか、イラクから何度も何度も日本に対して、厚生省に対しても外務省に対しても、必要な製品を送ってほしいと。特に、最近の日本の医療技術、そうしたものに対してのニーズというものは物すごく高かったのに、それをすべて拒否してきた。外務省のそのページをめくってください。中東課にも厚生省にも、そうしたイラクの大使館から出された要請が山のように積み重なっているじゃないですか。
 イラクがもし今悲惨な状態にあるとしたら、それの責任というのは日本にあるのであって、それを軽々しく、失われた二十年、こんなことで表現してほしくない。それはあなたにはっきり言っておきますよ。その言葉を使うことは本当に注意していただきたい、そういうふうに思います。
 さて、ちょっと前置きが長くなりましたが……
池田委員長 茂木外務副大臣。
首藤委員 いや、結構です。(茂木副大臣「勝手に誹謗しておいて、それで」と呼ぶ)じゃ、どうぞ。
茂木副大臣 私は、先ほど来一言も、イラクのお医者さんの水準が低い、こういうお話を申し上げたつもりはまずございません。(首藤委員「病院のことを言っているんです」と呼ぶ)
 病院につきまして、十二年とおっしゃいますけれども、例えば私が訪問させていただいた病院も、できましたのが一九八二年、それ以来器械の更新等々が行われていないために、レントゲンの施設につきましても現在稼働中のものは全体の二割、こういう話でありました。現地で担当者の人ともお話をさせていただきましたけれども、日本の供給体制というよりも、むしろ、この二十年間、民生部門に十分な投資を行ってこなかったイラクの政府、こういうことに対する問題点の指摘があった、このように考えております。
 御案内のとおり、電力につきましては、むしろ御指摘の発電の施設より配電そして変電、こちらの方に大きな問題がある、このように現地を見てきた感触として思っております。そこの部分につきましては、むしろ日本よりもほかの国がいろいろな施設を供給してきた、その更新が行われていない、そういうのが現状である、このように考えております。
首藤委員 別に質問したわけではありませんけれども、コメントを言いたければそれは結構でございますが、質問は、現地に行かれたということですが、ORHAで、日本も職員を派遣しております。具体的には日本の派遣職員はどのような役割を担っていて、どこで活動されておられるのか、それはいかがでしょうか。
茂木副大臣 アメリカの復興人道支援局、ORHAへの協力に関しましては、日本から政府関係者三名を長期出張の形で派遣をしております。
 これは、ORHA側と密接に連携をしながら日本としてどういう協力が必要なのか、こういう仕事をするための派遣ということでありまして、奥参事官の方は、ORHAの、かつてはガーナー局長でありましたが、これからはブレマー大使ということにもなってくるかと思うんですが、そしてクロス次長等々と話し合いながら、政治プロセスの問題を含めて、より大きな問題につきまして協議をしておりますし、井ノ上参事官につきましては各国間の調整、これがORHAの間で必要でありますので、その窓口として機能しております。
 また、根井、もともと経済産業省の大臣官房政策企画官、彼につきましては、専門分野がエネルギーということでありますが、これまで中東室長という経験もありますので、そういった経験も踏まえながら、さまざまな産業分野も含めた日本としての貢献策がどうなのか、こういうことにつきましてORHAの関係者と鋭意意見交換をさせていただいている、こういう状況であります。
首藤委員 大体のことはわかりますけれども、一体、ORHAの事務所の中に部屋を持っておられるのか、あるいは大使館から通っておられるのか、その辺はいかがでしょうか。
茂木副大臣 バグダッドの状況、今いろいろな形で、大使館も立ち上げたばかり、こういうこともございます。もちろん、私が現地に行きましたときは大使館の方で仕事を一緒にした、こういう形でありますが、ORHAの方にも通い、また、ORHAだけではなくて、大統領宮殿の中にさまざまな事務所等々がありますので、その部屋も利用しながら必要な活動を行っている、こういう状況であります。
首藤委員 これはなぜ質問しているかというと、派遣に対していろいろ役割を考えて、規定して送り出していると思うんですね。ですから、ORHAの中に事務所をお持ちなのか、お持ちでないのか、そこだけでもお答え願いたいと思います。
茂木副大臣 ORHAの中で割り当てられた部屋を持っている、このように承知をいたしております。
首藤委員 それでは、外務大臣、イラク情勢に関してですけれども、最近、アメリカが国連で新決議案を出しているわけですね。そして今、先ほどほかの委員から質問がございましたけれども、この点に関して外務大臣は、二十二日に採決になるんじゃないかと。アメリカの修正というか、修正を何度も繰り返した決議案でありますけれども、だんだん歩み寄ってきて、合意が達成できるのではないか、そういう展望をお持ちだと思うんですね。
 その中でやはり非常に大きな要素としては、今までアメリカの決議案提出に抵抗していたフランス、ロシア、ドイツのうち、ドイツも歩み寄りつつある。それから、最近驚いたことに、イワノフ外相が歩み寄りの発言をしているということでちょっと驚いたわけですね。というのは、イラク復興に関しては、例えばなぜ戦争になったのかといえば、大量破壊兵器があるからだといって、大量破壊兵器は見つかっていないじゃないか、まず国連査察をもう一回やるべきじゃないかという意見を主張していた国がこの決議案に歩み寄っているというのは、非常に不思議な気がするんです。
 一つのヒントは、先日パウエル国務長官がロシアを訪問して、その中から小さなべた記事が出てきたんですが、それは、ロシアのイラク債権に関してはアメリカは認めるというようなちっちゃなべた記事があるわけですね。ですから、イラク復興といっても、そういうきれいごとと同時に、自分たちの巨額な債権が本当に自分たちに戻ってくるのかどうか、あるいはこれは違う政府だからといってチャラにすると言われてしまうのか、そういうことを気にしていると思うんです。そこで、パウエル長官がわざわざロシアに飛んで、恐らくこの問題を中心にして話し合われたのではないかなという気もするわけですが。
 さて、日本の取り組みでございます。日本の債権というものはある意味ではロシアに匹敵する。ロシアの債権の主要なものが軍事援助だと言われていますけれども、本当の意味での民間の債権というのは日本が最大である、こういうふうに考えられるんですね。ですから、この日本の債権に関しては、パリ・クラブであるとか、そういう話はもちろんありますよ。今まで表でやっている部分もありますよ。しかし、肝心かなめの、アメリカという事実上イラクを支配している国家が、国庫からお金を返すのか返さないかというのはかなりアメリカの決断にかかっているわけですね。
 そうすると、日本のように、イラク攻撃に対して地球の中で真っ先に支持声明を早くしたというような、そうした国家の債権というものを果たしてアメリカ側は保証してくれているのかどうか。その辺はいかがですか、外務大臣。
川口国務大臣 いろいろ、仮定に仮定を積み重ねて御質問をいただいているわけでございますけれども、まず、パウエル長官がロシアに行ってそういう保証をしたとかという記事はございましたけれども、政府としては確認をしておりません。
 それから、ロシアもパリ・クラブのメンバーであります。パリ・クラブにおいて四月二十四日に会合をいたしまして、イラクの債務問題に取り組んでいくということがそこで合意をされているわけです。したがいまして、今後、イラクに対する債権の問題はパリ・クラブ等の国際的な枠組みの中で議論をするということになると考えております。
 それから、ロシアは最大の債権国であると言われていますけれども、我が国も非常に大きな債権国であるということは委員が御指摘のとおりでございます。
 それで、アメリカとの関係で、アメリカが、返すかどうかというそれを決めるかどうかということですけれども、先ほど申しましたように、これは国際的な枠組みをつくって、これについて合意をして、その上でやる話ですから、アメリカが単独で何かこの問題について判断をするということが可能であるというふうには私は考えておりません。
 いずれにしても、我が国の債権をめぐる考え方、これについては米国も既によく承知をしていると思います。
首藤委員 だんだんこの国会も終わりになってくるので、外務大臣、外務大臣というよりは外務省に対して、皆さんに意見を言いたいんですが、今のお話の中で、仮定の話だということで、仮定の話をしていること自体が余り意味がないというお話なんですけれども、それからもう一つ、ロシアからの報道に関しては確認していないということでありますけれども、このことは恐らく外務省あるいは官僚答弁としては当然のことだと思うんですね。
 しかし、今私たちは本当に時代の岐路に立って、海図のなき航海をこれからしなきゃいけない。そういうときに、やはり官民が英知を振り絞って、こういう状況になったらこんなことも考えられるんじゃないか、野党はあんなことを言っているけれども、ひょっとしたらあの意見もちょっと採用してやろうか、こういうことを、いろいろな解釈、いろいろな見解をしっかり国政の中に生かしていかなきゃいけない、外交の中に生かしていかなきゃいけないと思うんですね。
 ですから、そうした今までのような、仮定の上の議論であるとか、あるいは、そうした報道は確認されていないと。確認なんかできないですよ、それは密室でやっているんですから。それはパウエルさんとイワノフ外相以外は確認できっこないわけですよね。だから、そんなことを聞いてもどうしようもないですよ。確認ができないといったって、新聞にはしっかりそう書いてあるわけだから、いかにべた記事とはいえ。ですから、そういう論議をしていては意味がないと思うんですね。
 それから、この問題に関しては、パリ・クラブというお話がございました。だから、ロシアもパリ・クラブの一員であるから、当然みんなで、こういう平場で、公開の場で決まっていくだろうと。私はそうは思わないんですね。お金に関しては本当にさじかげんで、例えばアメリカが、アメリカでなくてもORHAでもいいんですが、あるいは新しくできる国連の機関かもしれませんが、石油の、ロシア経由、ロシアへの支払いを一バレル何セント上積みしたり引き下げたり、はっきり言えば、この操作だけでこの累積債権というのは、ロシア側の累積債権ですけれども、これを幾らでも回収できるわけです。
 ですから、表でやっているパリ・クラブでの議論と、夜やっている、あるいは別なところでやっている議論というのは当然またあってしかるべきなわけですね。
 我々にとって重要なことは、この外務委員会にとって重要なことは国益だということです。我々が六千億円と言われる債権をこの苦しい状況の中で何とか回収できるのか、あるいは六千億円という貴重な財産が凍結されたままいつの間にか消えていくのかというのは、やはり国政の最大の関心事であってしかるべきだと思うんですね。
 ですから、その点に関してはアメリカとどのようなお話をされているのか。もしされていないんだったら、そういうことに関しては、小泉総理が行くときにはきちっとアメリカにも、日本の債権回収について、パリ・クラブを超えろとは言わないけれども、パリ・クラブと別とも言わないけれども、新聞に載ってくれとも言わないけれども、この点、きちっと日本の債権が日本に返ってこれるような担保をとっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
川口国務大臣 日本の持っている債権を確保するということが非常に重要であるということは、委員の御指摘のとおりで、我々も、政府としても同じことを考えております。
 私どもの、政府としての考え方、債務の削減問題ですけれども、それについて一般的な形ですが申し上げますと、一つは、イラクは原油がありますので、そういう意味で外貨を獲得する能力は非常に高い国であるということです。それから二番目に、イラクの国としての所得として、世界の中では中所得国ということに分類をされているわけです。そして、これまでの国際的なリスケジュールの話について言いますと、中所得国という国は債務削減の対象とはされていないということです。
 我が国としての方針は、こういったことを踏まえながら、パリ・クラブ等の国際的な話し合いの場では債務の削減問題については慎重に対応していくということが考え方であるわけです。
 その上で、ブッシュ大統領について総理がこの問題についてこういうことを言うべきであるという首藤委員の御意見については、これは御意見として承らせていただくということでございます。
首藤委員 それで結構でございます。
 最後に、このイラク問題に関して茂木副大臣にもう一度お聞きしたいんですが、これから、見てこられていろいろアドバイスをされる、やはり見てこられたことに関して具体的に、今度はそれが可能なのかどうか、どういう資源を投入しなきゃいけないのか、そうしたら調査団を派遣することが必要になると思うんですけれども、その規模とかタイミングについて御説明をお願いしたいと思うんです。
茂木副大臣 調査団につきましては、委員御指摘のように、できるだけ早急に派遣したいと考えております。もちろん、現地の治安情勢がありますので、そういったことも見きわめる必要があると思っておりますけれども、例えば病院であったりとか、先ほど御指摘いただきましたような電力、分野別の調査団、恐らくこういうものも必要であると思っております。
 さらに、今後の大きな課題として、中長期ということでいいますと、通信のシステムなんかも大きいわけですね。配電所を見ましても、単に配電の問題というよりも、配電所と変電所の間がネットワークできちんとつながっていない、こういうコミュニケーションの問題、こういうのも大きいわけでありまして、通信・放送、それから例えば石油の下流分野、いろいろな分野があるわけでありますけれども、そういった分野になってまいりますと、まさに官民一体の調査団、少し大ぶりな調査団、こういうのも必要になってくると思っております。
 まず、当面できることに対してきちっとした調査をするような先遣隊といいますか、分野別の調査団と、もう少し大ぶりな官民合同の調査団、こういうのを考えていきたいと思っております。
首藤委員 そういうことで早急にそれはやっていかなきゃいけないと思います。
 それから、これはコメントですけれども、そういうときにも、やはり日本だとどうしても一、二、三、四、五というプロセスを積み重ねてやるわけですけれども、現実に復旧というのは、一番苦しんでいる瞬間に最大の力を出さなきゃいけない。
 重要なのは、例えば電線を引く、これは物すごい時間、気の遠くなるような地道な努力です。しかし、今、例えば電話なんというのは、ちょっとしたステーションとアンテナがあればそこで携帯電話は使えるわけですね。行って御存じのとおり、世界の紛争地というのは、例えばドイツ・テレコムのシステムというのは僕らでもちっちゃな携帯電話を持って、そこでもどこでもやっているわけですよ。本当に東ティモールの山の中だって聞こえる、アフガニスタンだってそれで使えているわけですよ。
 ですから、そういう意味で、本当に必要ならば、それはそんな大規模な調査団を送らなくたって今すぐできることがあるのであって、そうした民間の努力というのも政府がぜひサポートしていただきたい、そういうふうに思います。
 さて、外務省はいろいろな機能を持っているわけですが、外務省の紛争予防努力というのは、これは大変注視されているわけであります。これは、外務省においても、人間の安全保障という点からも、予防外交という点も非常に積極的に取り組まれていることはよく存じています。そして、最近のいわゆるラウンドテーブルといいますか、紛争当事者を呼んで話をさせるということにおいては、昨日も、今も行われているんですか、パレスチナ問題、昨年十二月に行われたアチェの問題、それからずっと長く続けているスリランカの問題というのがあります。
 しかし、そうした努力というのは大変すばらしいわけですが、先ほど外務大臣が、会場提供している、こういうお話をされましたね。会場の提供をしている、それはそうだと思うんですね。それは、もうまさに正確な表現だと思うんです。だから、結局これは、会場、どんがらを提供しているわけですよ。ここには、日本の英知も、日本のソフトも、日本の経験も十分に入れられていない。
 結果的に、そのパレスチナ和平に関しても、ある考えによっては、タイミングはいいという考え方もありますけれども、現実にロードマップがつくられている一方、自爆テロが次々と起こって非常に難しい状態にある。それから、スリランカにおいてもうまくいっていない。
 それから、アチェにおいては、これはもう私たちは、ちょうど昨年の十二月でしたか、本当にイラクへの攻撃が間近になってきたということでイラク、イラクというふうに言っていたときに、ある日タクシーに乗っていたら急に、アチェのGAMとそれから、アチェのGAMというのは、ゲラカン・アチェ・ムルデカというアチェの独立の運動ですけれども、そのゲラカン・アチェ・ムルデカとインドネシア政府が合意に達したと。
 これは歴史的な合意で、本当に驚くぐらいなインパクトが世界じゅうにはあったわけですが、そうしたものが、実は、今現在、TNI、インドネシア国軍が現実にアチェに対して攻撃をしているというようなことで、やっていることは全然効果を生まないわけですよ。タイミングが悪過ぎるし、また、一体、日本の国民の税金を使ってこんな会場提供して、これがどんなに価値があるのかということが、全然生きてこないわけですよ。
 例えば、オスロ合意というのがあります。それは、オスロで和平の合意ができた、もう世界じゅうに知れ渡って、そこで合意が成ったわけです。しかし、今、アチェ紛争の場合は、東京決裂と言ってもおかしくないぐらい、もう何か、日本が開いたところで問題が要するに分裂していってしまう。
 こうした状況で、単に会場を提供みたいな、そういう形だけでいいのかどうか、本当に紛争予防、解決努力の十分な能力がないまま、ただひたすら会場を提供してこういうことをやっているのは、本当にいいのかどうか。外務省の根幹にかかわる問題であって、外務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 アチェの問題について、先ほど会場提供と言いましたのは、アチェについて行っている我が国の側面的支援、これをシンボリックに申し上げただけでありまして、別にどんがらだけ提供して後は何も知らないと言っているわけではない。これを解決するための努力は当事者、両者が基本的に行うということが、アチェの問題についての我が国の基本的な姿勢であるということを申し上げたかったというだけでございます。
 我が国が平和の定着あるいは紛争の予防、この関係で何をやっているかということについて、これは国あるいはその状況、問題によって異なります。もっと突っ込んでいるところもありますし、いろいろな状況がございます。いずれにしても、東京でアチェの問題が決裂をしたとおっしゃいましたけれども、これは東京でやったから決裂したのではなくて、東京でやった、それでも今回は決裂をしたということであると思います。
 いずれにしても、紛争の予防ということは、当事者の関係あるいはその他いろいろな状況を見ながら、周辺の国の思いその他を見ながら丁寧にやっていくということが重要であって、明石代表のお言葉をかりれば、うまくいく確率というのは基本的に非常に低いということを前提にしてやらなければいけない、これが国連に何十年もいらした明石代表のお気持ちであろうと思いますし、事実であろうと思います。
 我が国としても、日本が何か行えばそれはすべて常に成功していくという甘い幻想を持って紛争の予防の外交をやっているわけでは決してないです。日本がやることが重要であるから最大限の努力をし、いい結果を出そうと思っている、そのために貢献をしたいと思っている、そういうことでございます。
首藤委員 外務大臣がおっしゃることは本当にそのとおりだと思いますね。ぜひその路線で努力していただきたいと思います。
 私がなぜこういう質問をしているかというと、現実が余りにもそれとはかけ離れているということですね。
 今、外務省のそうした紛争解決努力、何回もシンポジウムはやっています。私も出たことはあります。しかし、結局は、外務官僚と、そしてせいぜい外務省にくっついている御用学者、そういう人たちだけで会談なんかやったってだめなんですよ。
 オスロ合意のプロセスを見ればわかるように、さまざまな形での、市民とかNGOとか、中には政府と違う立場をとっている人もいる。そしてまた、イスラエル側に関係しているNGOや市民の方もある。パレスチナ側にコミットしている人たちもいる。あるいはアラブの大義にコミットしている人たちもいる。こうしたいろいろなコミュニティーとまざりながら、オスロ合意というのは成立していくわけなんですよね。
 ですから、そうした大きなフレームワークで取り組まなければ、先ほど、図らずも外務大臣の口から出たように、本当に会場提供で終わってしまうわけですね。ですから、そこのところは外務省としても反省して、長期的な対策をきちっと組み立てていただきたいと思うわけです。
 さて、アチェの合意なんですけれども、この問題は日本ではそれほど大きく報道されていません。またインドネシアが何かやっているなという、かつてのスハルト時代のそんな感じしか持っていないんですが、これはとんでもないことですよね。
 アチェというのは、バンダアチェという町がありますけれども、まさに日本の石油が通る生命線にある。そして、このアチェというのは、日本が長い長い利権を持ち、長い長い石油、天然ガスの発掘の歴史、それから化学製品の製造の歴史を持っているところなんですね。日本にとって、ある意味では生命線に近いようなところで起こっているわけです。
 ですから、そうしたものに対して、もっと日本が本当にコミットしてやることが重要だと思い、なおかつ、ゲラカン・アチェ・ムルデカの人たちもあるいはインドネシア政府の人たちも、同じように日本が何かやってくれると思って、日本でやっているわけですね。だから、そこに関しては、もっと積極的に、今こそ外務省の総力を挙げて解決しないと、これは大きな問題がイラクとか北朝鮮で集中しておりますけれども、足元の大きな問題というものを忘れてはいけないと思うんですね。
 そこでお聞きしたいんですが、この二十六年間続いたアチェ紛争、ここにおいて、十二月に合意した内容は、アチェという今までスハルト政権が中央で奪取していた富というものを、より自治権を持ったアチェの人たちが七〇%ぐらい財政的にも使うことができる。そのかわり、アチェ・ムルデカ、アチェ・ムルデカと言ってアチェが独立だということを主張してきた人たちが完全独立の路線はあきらめる。これで恐らくバランスすると。
 しかし、一方では、問題なのは武装解除だったわけですね。武装解除もその中で進めるということだったんですが、例えば日本政府はこういう問題を進めるのに何か行動はとられたんでしょうか。例えば、武装解除を進めるということに対して監視団を送ったり、あるいはさまざまな国際的な武装解除に関するコンサルタントを入れたり、あるいはその他の、国連を使ってそうした武装解除の手続に入ったり、そうしたことを日本が支援したり、あるいは実態的に行動をされたんでしょうか。いかがでしょう、外務大臣。
川口国務大臣 首藤議員は、まさにアチェの問題の重要性というものを非常によく御理解をいただいていて、この地域の重要性を初めさまざまなことを今御質問の中でおっしゃっていただいたわけでして、昨年の十二月以来、我が国としては、これは我が国とEUそしてアメリカ、それから世銀も一緒になってやっている話ですけれども、そこについての重要性を本当に御認識をいただいて、大変にありがたいと思っています。
 それで、今回の決裂というのは、双方の立場、あるいは十二月の合意についてのそもそもの解釈のずれがあったのかもしれませんが、そういうことから出てきているということで、武装解除が進んでいないというのは一つかもしれません。
 同時に、復興のための支援を政府は十分にしていないじゃないかというような意見もあるわけでして、まだ、我が国としては、それぞれの紛争について、それぞれの状況において必要なことをやっていくという態度でおります。我が国だけが、十二月の合意についてのいろいろな違い、あるいはずれがある中で、そこに乗り込んでいっておっしゃったことをやる、そういう段階ではなかったというふうに考えます。
首藤委員 外務大臣のおっしゃるとおりだと思うんです。
 しかし、外務大臣、インドネシアというのは、日本にとって本当に大きな問題を抱えて、先ほどイラクに対する日本の債権が六千億円ぐらいあろうという話をしましたけれども、ある試算によりますと、インドネシアに対する債権は、民間債権も入れて約一兆円に達するんじゃないかというふうに想像されているわけですね。
 アチェというのは、まさにスマトラの端っこの、バンダアチェを中心とする本当に小さい地域でありますけれども、石油を、天然資源を抱えている。しかし、このことはなぜ重要かというと、かつて問題のあった東ティモールはもうかなり危なくなってきているわけですよ。
 実は、くしくも五月二十日というのは、東ティモールの独立一周年記念なんですね。私たちもずっと東ティモールの独立に関与し、グスマン大統領が監獄にいたときから大統領になるまで見守りました。しかし、今、東ティモールも非常に難しい状況になってきている。さらに、我々は、ニュースがないのでわかりませんが、西パプアの状況というのも、やはり同じような問題を抱えているわけですね。このような状況というのは、かなり日本が巨大な利害関係を持っているインドネシアというものは、今のメガワティ政権もそうですが、かなり危機的な状況に近づいてきつつあるということを示しているわけなんですね。
 ですから、こうした問題に関しては、ぜひ注意を喚起して、この問題に対して集中的に、多忙の中でしょうが取り組んでいただきたい、そういうふうに切にお願いしたいと思います。
 さて、最後に、時間もほとんどなくなってきましたので、北朝鮮問題についてお伺いしたいわけです。
 先ほども、私たちの同僚議員が質問していたわけですが、拉致はテロか否かということですね。外務省は拉致はテロだとお認めになったようですが、いかがですか、拉致はテロなんですか。
川口国務大臣 再三再四申し上げていますように、拉致は、普通に言えばテロであるということは申し上げているということです。
首藤委員 外務大臣、それは違いますよ。
 テロリズムというのは、主体は亜国家、国家以下のものがするんです。国家がやるそうした行為はテロとは言わないんです。それはテロリズムじゃない、侵害なんですよ。国家テロだと言うことは、それは違うんですよ。国家テロリズムというのはあります。それは英語で言うと、ステート・スポンサード・テロリズムと言うんですよ。要するに、国家が支援して国家以外のグループがやるテロ、その背後に国家があるからこれを国家テロと言っているわけですよ。
 だから、結局、国家がやるそうした破壊行為は、国家の侵略行為なんですよ。ですから、拉致というのはテロじゃなくて侵略行為なんですよ。大変な問題なんですよ。拉致をテロだと言ったらとんでもないことであって、拉致はテロじゃなくて侵略行為なんですよ。だから、これは本当に国家としてきちっと対応しなきゃいけない問題なんですよ。
 もう一つお聞きしますけれども、経済制裁を考えているということなんですけれども、経済制裁というのは、実は、さっきのテロと同じですが、私たちが新聞を見たりいろいろなところで見たり、雑誌に出たりあるいは口でしゃべったりするテロと、本当のテロというものは違う。それから経済制裁も、経済制裁というものと、今まで国際社会できちっと決まっている経済制裁というものはかなり違うということなんですね。
 経済制裁というものは、今までの定義があるように、ボイコットがあり、エンバーゴというのがあるわけですよ。一九九〇年代、実は私もこれの研究者だったんですけれども、経済制裁というのは大変なことなんですよ。経済制裁を発動して成功した例は、近代社会においてはたった一例しかない。南アフリカの例ですね。ほかは全部結果的に失敗したと言われているんです。ですから、経済制裁というのは、その手続にしろ、やることにしろ、その効果にしろ、大変な問題を抱えているわけですね。
 それに対して、例えば今まで、今北朝鮮というものに関して日本は、先ほど言ったボイコット、エンバーゴ、経済制裁でありますけれども、それに関してもほとんど、きちっとしたまともな手段をとっていない。そういう国が、経済制裁の最終手段というのは財政的な制裁であると言われているんです。そうした準備段階をすべて経ないで、なぜ、送金停止とかそういう財政的な最終手段にかなり、国連憲章第七章に規定されているような経済制裁に日本が踏み込もうとすること、政府はそういう方向を示しているのか。外務大臣として御意見はいかがですか。
川口国務大臣 国会の内外においていろいろな御意見があって御議論をいただいているというのは、本当に民主国家日本にふさわしいことであると私は思っております。
 経済制裁という言葉について、これが今使われているときに、現実問題として非常に幅を持った言葉として使われているということは、そういうことかなというふうに思っておりますが、いずれにしても、我が国として、いわゆるというのをつけてもいいかもしれませんが、現時点で経済制裁を具体的に検討しているということではないということは、今まで再三再四申し上げたということでございます。
首藤委員 外務大臣、だから、経済制裁というのは、国連憲章第六章ではなく第七章に規定されているように、これはかくも重い概念なんですね。しかし、それ以前にも私は、先ほど木下議員、同僚議員が言っていたように、例えば行政的な裁量によって強いメッセージを送る手段は幾らでもあるはずなんですけれども、そうした外交手段、行政的な裁量権に基づく手段をどうしてとっておられないのか。そして、なぜ最終手段になるのか。国連憲章第七章に規定されている経済制裁ということが出てくるところに一歩飛んでしまうのか。そういうところへ飛ばないためには、どういった行政的な任意の裁量権に基づく行動というものが可能なのか。また、そういうことをおとりになろうとしているのか。それはいかがでしょうか。
川口国務大臣 繰り返しになりますけれども、我が国として、今の時点で経済制裁を具体的に検討しているということはないわけです。
 それから、国際社会においても、経済制裁が検討されているということでは全くない。どの国も、それを考えている国はございません。これは申し上げたとおりです。
 官房長官が外為法についておっしゃったのは、これは外為法の解釈について整理をなさったことをおっしゃられたということでございまして、この点について何か我が国が政策の変更を行ったということではない。これも官房長官もおっしゃっていらっしゃるとおりです。
 いずれにしても、一遍に経済制裁に飛んでいるじゃないかということをおっしゃられますけれども、そういう意味で、飛んでいるということは全くないわけでございます。
 我が国としては、この北朝鮮に対しての問題の考え方は、日朝平壌宣言の精神と原則にのっとって、平和的にそして包括的に、核の問題、拉致の問題、その他さまざまな問題を解決していくという考え方に変更はございません。
首藤委員 外務大臣、今おっしゃったことは正確な答弁だと私は思いますね。しかし、現実に日本国民は、日本社会は、そうは思っていないわけですよ。やはり、何か行動をとらなきゃいけない。今言っていることは、結局、非常に官僚的な答弁で、我々は多少官僚社会に近いところにいますから、言っていることはわかります。意味もわかりますよ。その背後にあるいろいろな情報もわかりますよ。しかし、一般の国民はそれではわからないんですよ。なぜ私がさっきあえて拉致とテロの問題について話したかというと、これを伏線にするために、布石を置くために聞いたわけです。
 要するに、今まで外務省がやっているのはもうめちゃくちゃな官僚答弁、一方では、本当にフラストレーションがたまり切っている私たちの社会、私個人もそうですよ、私個人としても不満がたまり切っている。こういうものを本当に行ったり来たりするだけで、本当にあるべきものをきちっと国民に説明し、この問題は何が本当に難しいのかということをきちっと説明する努力は、このイラク攻撃に対してもそうですが、ほとんど真っ当にされていない。政府が、外務省も含めて、説明責任を全うしていないですよ。
 ですから、あるときは物すごい官僚的な答弁、外為法もそうですよ。外為法十六条、それはそのとおりですよ。それで解釈を変えている。それは当たり前ですよ、行政の裁量権ですよ、そんなのは。だから、何だってできるんですよ。一方、国民の方では非常に不満を持って、何か、例えば今まで言われている朝銀の問題や不正送金の問題、パチンコ業からの問題とかいろいろな問題、週刊誌に載っているような問題、こういうものと物すごく乖離があるわけですよ。
 だから、テロの問題だって、これは国家の侵略行為なんだから国家としてきちっと対応するというところが抜けていて、そして、これはテロだと。しかし、テロだとなれば、これは国際法的にも、あるいは国際社会の研究者のところから言えば、それは国家のやっている、これはテロ等じゃなくて、要するに純粋に国家の侵略行為なわけですよ。それは、北朝鮮という国家がどこかのテロリスト、アブ・ニダルとかそういうのを頼んで何かをやれば、それは国家支援テロになるわけですけれども、そうじゃないわけですよね。
 ですから、そうした本当にあるべき姿というのをきちっと外務省が説明しないから、これまた昨年起こった瀋陽の領事館の問題もそうですけれども、領事特権に関するウィーン条約の内容から、これはどういうふうに解決すべきかというのを国民に説明せずに、その辺をぐしゃぐしゃとやっているから、結局国民は、やはり治外法権のところへ入ったといって怒っているんですね。それで、外務省が何かうやむやにしている。
 こういうのではなくて、本当にあるべき姿、そして、何を国民に説明しなきゃいけないかということを外務省はしっかりやっていただかないと、この問題というのはますます混迷をきわめていくだろう。
 そして、経済制裁というものに関しては、これは私も本当に深刻に考えています。それは、口で経済制裁と言うのは、経済がついているから、「経済」で経済がついているから、何かこれぐらいはやっていいんじゃないかという考え方もありますけれども、それは本当に武力行為の最後通牒に等しい行為であるから、それはいろいろな手段をその前に講じておかなきゃいけないということは当然のことなんですね。ですから、そうしたものに関しても、外務省はきちっと説明責任を全うしてやっていただきたい。
 最後に一つだけ、気になるニュースがあるわけですが、それはイラク問題なんですが、イラク問題に関して、あるいはパレスチナの合意に関しても、イランというものが、やはり非常にイランに対するリスクが潜在的に上昇していると言わざるを得ない。特に、パレスチナ問題に関してはテロがとまらない。
 その背景にあるのは、ハマスというグループがあったりするんですが、やはり大きな問題としては、ヒズボラの問題があるわけですね。そして、最近、五月十三日ですか、イランのハタミ大統領は、レバノンに行ってヒズボラを称賛したというニュースがございます。そして、一方では、最近、イランを攻撃するために反イランのグループが、イラクに拠点を持っていたムジャヒディン・ハルクという反イランゲリラがあるわけですが、それに対してアメリカは、それを完全に崩壊させなくて一定の猶予を与えているというような記事もあって、イラン側が緊張しているという情報もあります。
 ということを考えると、この問題というものは、次のステップが考えられるわけですが、そうしたものをどうお考えか、そしてまた、それに対して、中東に関係している日本は、どういう形でこの紛争予防行動に出られるのか、その方向がございましたら、御説明いただきたいと思います。
茂木副大臣 イラクの復興とも関連しまして、イランがどういう言い方をしているか。これは、国連が活発な役割を果たすべきである、こうしつつ、民主的に樹立されたイラク政府と協力する用意がある、こういう表明をしているわけであります。
 委員よく御案内のとおり、我が国は、イランとの間では大変良好な関係を持っておりまして、イランが現実的な対応をとることが、良好な二国間関係を踏まえて、ひいては中東地域全体、そしてさらには中東和平にも資する、こういう観点から、さらにイランに対する働きかけを強めてまいりたいと思っております。
首藤委員 終わります。
池田委員長 次に、藤島正之君。
藤島委員 自由党の藤島正之でございます。
 先ほど、木下委員が、川口外務大臣がかわれば拉致問題は解決するかもしれないというようなことをおっしゃっていましたけれども、川口外務大臣がやめられても、拉致問題はそんなに簡単に解決するような問題かなという気はしますけれども、これまで、与野党問わず、この委員会で質疑していまして、やはり、先ほども首藤委員の方からありましたけれども、議論が枠の中から一歩も出ないという感じがしてしようがない。これは、私だけでなくて、与党の質問にもそうだと思うんです。
 やはり、政府はある意味で説明責任を果たす必要があるんだろうと私は思うんですね。それは、先ほど外務大臣がおっしゃっていたように、今まさに問題になろうとしているものを、今度総理がアメリカへ行って話をしようとするものについて、子細にわたって今外務大臣に話をしてほしいと言っても、これは無理かもわかりませんけれども、だからといって、これまで、決まってしまってから、どうにもならなくなってから、こうだ、さあどうだ、こう開き直られても、国民も困ると思うんですね。
 やはり、国にとって重要なものについて言えば、事前に、こういう方向で政府はいきたいんだ、それに対して国民はどう思うんだと。例えば、イラク戦争の場合でも、イギリスのやり方なんかはある程度そういう面があったと思うんですね。国内の議論は二分といいますか、二分まではいかないかもわかりませんけれども、両方あったわけですけれども、断固アメリカと一緒に行くというのは、最初から言っているわけですね。それで、国民にも反対の世論は多数あっても、それを説得しながら、あの首相の説得している努力の姿というのは大変なものだったと思うんですね、私は非常に感服していたわけです。
 やはり、政府というのは、ある意味でそういうものがあってしかるべきだと思うんです。ずっと黙っていて、決まっていない、決まっていないのままでいって、最後にどんと決まった、もうこれ以外どういう方法があるんですか、こう開き直る。
 こういう政治というのは、私は非常に民主主義の国家としてよろしくないというふうに実は思っているわけでありまして、川口外務大臣にも、そういう点を踏まえて、一歩でも、少しでも国民に対してわかりやすく、そういった面を前もって、若干でも言えるものがあれば説明をして、その際に、批判を受けるんなら批判を受けて、そこで政府として少し方向転換するとかということがあっていいんじゃないか、こんなふうにずっと感じているわけであります。
 きょうは、北朝鮮に対する制裁の問題でありますけれども、前回までも私は、拉致家族の非常に強い意見がある、経済制裁をやるというようなこともやっていかないと、話し合いだけじゃとても前進しないと。まさに全くここのところ前進が見られないわけでありますので。
 そういう意味で、経済制裁をやってほしいということに対して、外務大臣は、現在は考えていない、現在は考えていない、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、先ほど来、ちょっと議論がありますけれども、福田官房長官が十九日に対北朝鮮の送金、貿易の問題で発言しておるわけです。
 ちょっとお伺いしますけれども、この送金の問題と貿易の問題は、全然別々に区切って考えた方がいいのか、あるいは一緒にして考えた方がいいのか、これは茂木副大臣でもいいんですけれども、いかがですか。
茂木副大臣 外為法上は完全に一致はしない、このように考えておりますが、方向的には同時に検討していく問題であると思います。
藤島委員 外為法の輸出の四十八条第三項ですけれども、「経済産業大臣は、」云々で、下の方に「国際収支の均衡の維持並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展に必要な範囲内で、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課することができる。」輸入については、五十二条で「外国貿易及び国民経済の健全な発展を図るため、貨物を輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、輸入の承認を受ける義務を課せられることがある。」こういうふうになっているわけです。
 特に、北朝鮮との関係では、輸出入はかなり多いんですね。大ざっぱに言って四億七千万ドル。内容は、輸入はマツタケや魚介類が中心で、北朝鮮貿易総額のうち二〇%ぐらいがそんなものらしいんですけれども、いずれにしても、中国に次ぐ第二の貿易相手国である、こういうことなんで、これを停止するというようなことは大変大きな意味が実はあると思うんです。もし仮にやった場合、効果について、これは事前通告はしていないんですが、外務省としてはどんなふうに、研究はしているんでしょうけれども、どんなふうに考えますか。
 マツタケとか魚介類などでかなり金額があるわけですね。ですから、私はこの経済制裁というのは大変大きな意味合いがあると思うんですが、これはちょっと事前通告していませんけれども、外務省としては、その辺のことはとうに勉強はされていると思うんですが、どういうふうに考えますかということです。
細川政府参考人 北朝鮮との貿易量の御指摘がございました。経済制裁がされますとそれなりの経済的な意味合いがあろうか、かように理解しております。
藤島委員 全然答弁になっていないんですけれども、事前に通告していないので政府参考人としてはそういう答えになるんでしょうが、本当はさっきのように外務省に聞きたかったんですが、やはりこれは相当影響が大きいんじゃないかなと私は思うんですよね。
 だからこそ、これはどうしてそこまで聞くかというと、外務大臣は従来から、我が国だけでやっても余り効果がないというようなことをずっと答弁されているんですが、私は、我が国だけで単独でやっても相当な効果があるんじゃないかな、こういう観点から実は質問しているんですが、その点はいかがでしょうか。――いや、大変だと思うけれども、今はどう思っているんだというのでもいいんですけれども。どうぞ。
川口国務大臣 例えば貿易について、北朝鮮との貿易を停止した場合にどういう影響が日本にあるかどうかということは、そのときの、例えば国際的な、ほかの国がどうするかということによるところがかなり大きいと思います。
 例えば、北朝鮮で最大の貿易国は中国であるわけでして、エネルギーにせよ食糧にせよ、相当程度のものを中国から買っているという話でございますから、そういった国々がどういうような行動をとるかということを同時に考えないと、北朝鮮に対する影響がどれぐらい及ぶかということははっきりは申し上げられないということであると思っています。
藤島委員 川口さんの答弁はそういうことになるんでしょう。ちょっと聞いていることと違うんですが、要するに、結局は答えていないんですよね。私は、我が国一国だけでも大変大きな意味があるんじゃないでしょうかと聞いているのに対して、ぐちゃぐちゃぐちゃと答える。大体いつもそういう答弁ですから、何というか、議論が本当の中身になっていないということを最初に申し上げたわけなんですよね。これ以上言っても多分……(川口国務大臣「正確にお答えをしているんですけれども」と呼ぶ)正確なんですが、聞いていることへの答えにはなっていないということなんですよね。要するに……
池田委員長 委員長の許可をとって発言してください。
 藤島君。
藤島委員 役人的な答弁ならそうなるんですけれども、本当にそういう議論だけやっていたのでは審議が深まっていかないということを申し上げているわけですよ。本音で言ってもらわないといかぬ、こういうことを先ほど来からずっと申し上げているんですよね。
 きょうはもうちょっと技術的なことについて伺います。
 先ほど来、ちょっと話があるんですけれども、本当に、今までは、国連というか、一緒じゃないとだめであった、それを二国間でもいいんだというふうに解釈を変えたのか、あるいは、先ほど外務大臣は、何か整理した、こうおっしゃっていましたけれども、整理したのかどうか、よくわからないんですよね。マスコミでは、新見解、解釈を変えた、こうはっきり言っているんですよね。それは変えたんじゃなくて、従来からそうだったんだ、こうおっしゃるのか、やはり従来は国連等の国際的な制裁の中でこういうことはやるんだということだったのか。
 これは技術的なことなので経済産業省でもいいんですが、要するに、今までの見解を変えたのか、変えなくてももう従来から読めていたのかどうか、ここはどっちかしかないので、そこをはっきりしてください。
細川政府参考人 外為法に基づきます輸出入にかかわります経済制裁でございますけれども、この発動に当たりましては、国際的な協調体制の確保というのが要件であると考えております。
 この国際協調体制の確保という内容でございますが、これまでの制裁の現実というのは、国連の決議があったり、あるいは多国間の合意があったりということでございましたが、仮に、二国間での合意があった場合でございますが、そのような場合でも、当該国とこれを同調しないということになれば我が国の信頼関係が損なわれる、その結果、この法律に書いてございます「外国貿易及び国民経済の健全な発展」を阻害するというふうな状況になりますと、制裁を発動可能、このように考えております。
 これは従来からこのように解釈しておりまして、今回このような考え方を明確にして整理をしたということでございまして、政府見解を変更したり、あるいは新解釈をしたということではございません。
藤島委員 報道で、新見解というか解釈を変えたというのは、この報道が間違っているというふうに明快に言い切っていいわけですね。それをはっきりしてください。
細川政府参考人 先ほど申し上げましたように、これまでの考え方を明確にし、整理をしたものでございまして、政府解釈を変更して、解釈を変えたというものではございません。
藤島委員 要するに、報道で、見解を変えたというのは誤りである、こういうふうに明確に言っているわけですけれども、共管の立場にある外務省、この解釈については外務省は関係ないでいいんですか。
 一部、先ほどちょっと疑問があったので私は外務省の方に聞いたんですけれども、それについて、何か外務省の幹部となっていますか、はっきりしないんですけれども、こういう記事があるんですね。北朝鮮への送金停止について、所管する外務省の総合外交政策局が財務省と協議し、閣議決定や関係する多国間の枠組みが必要としていた送金停止の要件を二カ国以上に解釈変更した。多国間の方が実効性は高いが、要件緩和が北朝鮮へのメッセージになると外務省幹部が言っていると。
 そうすると、この記事は間違いですね。これは外務省、読んでおられると思いますけれども。
茂木副大臣 外務省の総合外交政策局がこの問題を所管しているというのは間違いであります。
藤島委員 それでは、外務省は、この局じゃないというのは、ほかの局が所管しているんですか。
茂木副大臣 もちろん、北朝鮮全体との外交につきましては外務省として担当させていただきますが、外為法につきましては外務省の所管ではございません。
藤島委員 わかりました。それでは、外務省はこの件については何ら関係ないということですね。そこをちょっと。
茂木副大臣 前段で申し上げましたように、交渉全体にかかわる問題ということでは当然関与しますし、六十九条におきます意見陳述権も盛り込まれているということであります。
藤島委員 どうも、都合のいいときだけいろいろ言って、いざとなるとさっと逃げる体質があるみたいな気がするんですね。何かこういうふうにいろいろなコメントはするんですよ。ところが、追及されると、うちは関係ないとさっと逃げる、これは本当に問題だと思うんです。あえてそこの点についてはこれ以上追及しませんけれども。
 その場合、経済産業省、二国間の場合、さっきのようないろいろな条件がついているんですけれども、ここは、例えば論理的に、日米ならいいけれども日韓ならだめとか、あるいは日本とほかの、中国ならだめとかいいとか、そういうことになるのかどうか、そこをちょっと確認的に聞いておきたいと思います。
細川政府参考人 先ほど申し上げましたように、我が国が同調しないことによって相手国との信頼関係の喪失、それが外国貿易及び国民経済の健全な発展の阻害になるかどうかということを判断するわけでございまして、個別具体的な状況に応じて、ケース・バイ・ケースで、その時々の国際情勢なりを総合的に判断して判断していくのか、かように考えております。
藤島委員 その点はわかりました。
 この問題のまとめなんですけれども、要するに、私が昨年からずっと言っていた話が少しずつ現実味を帯びて前へ進んできたかなということで、私自身は少し評価はしているんです。
 ところで、国連と日米関係になると、何となく最近政府が、小泉政権は、アメリカがそういうことだからそうなのか、国連を軽視して、日本はむしろ対米追従にどんどん極端にいっているんじゃないかな、こういうふうに受け取られるんですけれども、この点について外務大臣はどういうふうにお考えなのかどうか。
 例えばこの一点についても、そういうふうに福田官房長官が発言した背景は、要するに、今度アメリカへ行ったときに、一緒になって経済制裁もやれるような考え方ですよということで整理したんだろうと思うんですけれども、その辺についてどういうふうな考え方なのか。
川口国務大臣 私は、そもそも、日米関係の重視と、それから国連の中における我が国の協調とを二つ対峙する概念として位置づけて議論をしていくというところが問題があると思っております。
 そういうことでは決してないわけでして、我が国にとっては、日米同盟は我が国の平和と安全を確保するための基軸であります。また、国連の枠組みの中で協調をしてやっていくということについても、我が国という性格を持った国の平和と安全は、やはり世界が平和であって安全であるということに尽きる、そのことが非常に我が国にとって重要なわけですから、国連の枠組みの中での協調ということも非常に重要であって、二つが異なるものであって、対峙するものであって、どっちかにより大きなウエートをかける、そういう考え方では全くないということです。
藤島委員 まさにそういうことだろうと思うんですね。余りアメリカだけというのでは、日本というのはやはりいかぬだろうと思うんです。
 だから、今おっしゃったように、どっちかがどっちかじゃなくて、両方本当に大事だろうと思うんです。軸足のちょっとしたかけ方の問題になるのかもわかりませんけれども。
 余りアメリカ盲従はまずいんじゃないかな、国民もそういうふうに考えているんじゃないかな、国連は国連としてやはりしっかり大事にしていかないかぬというのが国民の感覚でもあるということを外務大臣は今おっしゃったようなので、官邸の方がちょっと対米追従に走りそうになっちゃいますので、外務大臣、そこを、今のようなスタンスでしっかり官邸を操縦していってもらいたいなというふうに思います。
 それからもう一つ、軍事転用可能部品の北朝鮮への輸出の問題でありますけれども、ことし四月に出ておりますけれども、実際四月の事件はどういうことだったのか、あるいはこれまでこういうことが再三あったのかどうか、その点について経産省の方に伺います。
細川政府参考人 先生御指摘の株式会社明伸の事案でございますが、ことし四月に、経済産業大臣の許可が必要な直流安定化電源、これは大量破壊兵器の開発に使われるおそれがあると我々考えておりますが、これを許可を経ずにタイの企業に輸出を行った、さらにタイより、北朝鮮の懸念調達活動を行っている企業に再輸出する、そういう疑いが持たれました。我々としまして、外為法に基づきます立入調査をし、その後、外為法違反の疑いで刑事告発をした次第でございます。
 他方で、貨物そのものにつきましては、寄港地の香港の当局に協力を要請いたしまして貨物そのものは差し押さえをしたわけでございまして、北朝鮮によるこういう調達活動を未然に阻止した事案というふうに考えております。
 また、他方で、そのほかの案件につきましては、この一年間に、外為法に基づきますキャッチオール規制というのを実施しておりまして、北朝鮮関係で十五件ばかり調達活動を阻止している、そういう実態がございます。
 以上でございます。
藤島委員 四月の事件以外に何件ですか。(細川政府参考人「十五件です」と呼ぶ)いや、キャッチオールの問題じゃなくて、四月のようなケース。
細川政府参考人 御指摘は外為法の不正輸出というふうに理解しますが、刑事罰が科されたものといいますのは過去に十六件ございます。このうち、北朝鮮向けの輸出につきましては三件ございます。
藤島委員 やはり実績としてもかなりあるんですね。
 それで、キャッチオール規制が昨年できたわけですけれども、その前に、こういうケースを摘発するというか見つけるというのはなかなか難しいんだろうと思うんですよね、実際問題。だから、北朝鮮系の商社とかメーカーがみんな絡んでいるわけなので、そこら辺を最初からマークしてやっていかないといかぬじゃないかなという気はするんですけれども。
 その前に、私もある人から聞かれたんですけれども、北朝鮮の兵器は何かほとんどが日本から行った技術だというふうに聞かれて、私はそんなことはないだろうと。一部は使われているのがあるかもしらぬけれども、ほとんどが日本から行った技術だ、こういう話を聞いてびっくりしたんですけれども、その辺は経産省はどういうふうにとらまえていますか。
細川政府参考人 御指摘の、北朝鮮の大量破壊兵器の開発に我が国の製品が使用されているのではないかということにつきましては、先般も報道がございましたが、真偽については具体的に承知しているわけではございません。
 ただ、輸出管理当局でございます経済産業省としましては、このようなことは重大な我が国の安全保障の脅威になる、こういうふうに理解しておりますので、結果として我が国企業が寄与することがあってはならないということで、厳正な対処をするという姿勢で臨んでおるような次第でございます。
藤島委員 外務省は情報を相当いろいろな国からとっているわけですけれども、今の北朝鮮の軍事技術のほとんどが日本製の、汎用のものを転用したりしているのも含めまして、そういう意見についてはどんなふうに考えていますか。私、聞かれたときに答える参考にしたいと思いますので、ぜひお願いします。
川口国務大臣 北朝鮮は非常に不透明な国でございまして、中のことがわかるというのは非常に難しいというふうに思います。
 いろいろなことが言われていますけれども、我が国として具体的に何か確認ができているということでは全くない。今、細川部長が言われたようなことだろうと思います。
藤島委員 要するに全くわからないということですね、はっきり言えば。単純に外務省としては全くその点はわからないと。それはそれでいいんですよ。そういうことでいいんですねということです。
川口国務大臣 ということで結構です。
藤島委員 時間になりましたので終わりますけれども、これは本当にあってはならないことだと思うんです。ただ、非常に難しいんだろうと思うんですね。本当に専用のものならわかるんですが、汎用のものを転用するのについては非常に難しいんだろうと思うんです。そういう意味で、経済産業省も税関も非常に御苦労なことなんですけれども、ある程度企業をマークすることで防げる面もあるんじゃないかと思うんです。
 今後、処罰という問題がいいのかどうかわかりませんけれども、ともかく、一〇〇%なくすということは難しいかもしれませんけれども、十分頑張って、こういうことにならないようにお願いして、質問を終わります。
池田委員長 次に、松本善明君。
松本(善)委員 北朝鮮外交についていろいろ議論がありましたが、私も、現状と打開策、展望などについて、外務大臣ないし外務省の見解を聞きたいと思います。
 まず、核問題からでありますが、北朝鮮が実際に核兵器を持っているかどうかということは、私たちも知り得る立場にありませんけれども、NPTからの脱退宣言とか、報道されております核保有発言などから、核兵器開発の道を進んでおり、核兵器の問題をいわばおどしのカードとして使い、もてあそんでいるということは事実だと思います。これは許しがたいことで、平和的、外交的手段で北朝鮮に核兵器開発計画を放棄させることが必要だと思いますが、この点はいかがお考えですか。
川口国務大臣 北朝鮮が核の開発、保有あるいは移転ということをやるべきではないということが我が国の考え方です。
松本(善)委員 これを平和的、外交的手段で放棄させるということが外交的には非常に重要な課題になっていると思うのでありますが、その点についての御意見を伺いたいと思うのです。
 北朝鮮が核開発計画を進めているということは、南北非核宣言、それから米朝枠組み合意、日朝平壌宣言に反して、核兵器を持たないと今まで言ってきたにもかかわらず、これを翻して持っているということを発言するというようなことが報道されておりますけれども、これらは厳しく非難されなければならないことだと思います。
 私どもは、それにとどまらないで、北朝鮮が核開発を進めるという論理、根本的な考え方そのものが、北朝鮮にとって有害だし、周辺諸国にとっても有害かつ危険なものだということを道理をもって北朝鮮を説得する、これが非常に重要なんじゃないかと思います。
 朝鮮通信によりますと、北朝鮮側の言明は、「ただ物理的抑止力、いかなる先端武器による攻撃も圧倒的に撃退することのできる強力な軍事的抑止力を保有してのみ、戦争を防ぎ国と民族の安全を守ることができるということがイラク戦争の教訓である」というようなことを言っています。
 「物理的抑止力」、核兵器まで持つことが最大の安全保障のかぎだということですけれども、私どもは、北朝鮮にとっての最大の安全保障問題は、北東アジアで周辺諸国とまともな外交関係がない、不正常な関係にある、国際社会の中で孤立した関係にあるということが北朝鮮にとっては安全保障上の最大の問題だ、このことを北朝鮮に理解させるということが外交上の非常に重要な課題だと思っているんですが、外務大臣はいかがお考えですか。
川口国務大臣 北朝鮮が、国際社会において責任ある国である、その国として行動をすることが大事であるということについては、我が国は北朝鮮に再三再四はっきりと伝えてきております。また、そういった国として行動をすることができるように、我が国として平和的、外交的に働きかけを行ってきております。
松本(善)委員 この問題、そういうことになっている原因が、北朝鮮が国際的なルール破りをする。先ほどテロかどうかというようないろいろな議論もございましたけれども、ラングーンのテロ事件とか拉致問題、さまざまな無法行為を繰り返してきた、これはもう明白である。これらを北朝鮮が本気で正して国際社会への復帰を図るという、それこそが北朝鮮の最大の安全保障なんだ。
 「物理的抑止力」とか「強力な軍事的抑止力」というようなことで核兵器の開発をしていくということになりますと、国際的孤立はますます深刻になるし、この地域の平和と安定にとって非常に有害かつ危険な状況になる。本当の善隣友好の関係に北朝鮮が踏み出すことが必要だということを説得する外交こそが、最大の重要な問題ではないか。これを日本政府が行うと同時に、国際社会もそういう努力をする、こういうふうな外交活動、それが必要なのではないかと思いますが、外務大臣はいかがお考えでしょうか。
川口国務大臣 我が国としては、日米韓の連携は非常に重要視をしておりますし、また、近隣の中国、ロシアといった国もこの点については非常に関心を持っているわけでして、こういった国々と連携をし、あるいは国際機関を通ずる働きかけを行い、そして二国間でも働きかけを行い、こういった外交的な努力を通じて国際社会に責任のある一国として国際社会において行動するということが重要であるというふうに考えております。
松本(善)委員 そういういろいろな各国と協調してやっていくということも、もちろん大事なんですが、中身として、北朝鮮がそういう物理的抑止力ということではなくて、本当に国際社会の一員として善隣友好関係を持つ、東アジアの平和で安定な社会の中に戻ってくる、こういうことが北朝鮮にとっては最も大事なんだということを言い、それを説得するということが重要なんではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
川口国務大臣 我が国として、北朝鮮が国際合意を守り、国際社会の責任ある一国として行動するということが重要であるということは、再三再四伝えてきております。
松本(善)委員 私は、核兵器の問題でも、日朝平壌宣言が一番最近の合意なんで、日本政府はやはりこの点で知恵を出し、汗をかく一番大きな責任があるんではないかというふうに思います。
 北朝鮮は、今の体制を認めてほしいというようなことを言っているようですが、国の体制というのはその国の国民が決めることでありますから、その保証を要求するというのは、私は無理筋だと思います。同時に、アメリカを含めて国際社会も、国連憲章で決まっているように、武力でその国の政権を倒すということはもちろん内政干渉、許されない。平和のルールを守る、国連憲章で決められた国際法の原則を守るようにするということが大切だと思いますが、その点は外務大臣、いかがお考えですか。
川口国務大臣 北朝鮮が国際社会の責任ある一国として行動するということは、国際法を守り、そして、先ほども申しましたが、北朝鮮が行った国際的な合意を守り、そういう形で行動することが重要であるということだと思います。
松本(善)委員 私のお聞きしましたのは、同時に、国連憲章で決めております内政不干渉の原則、武力でその政権を倒すというようなことは許されないということをはっきりする、これは一方で大事なことではないかと思いますが、その点はいかがですか。
川口国務大臣 我が国は、北朝鮮に対してこの問題を平和的に、外交的に解決をしたいということはずっと伝えてきております。北朝鮮も国連のメンバーで、加盟国でございます。我が国も、それから近隣の関係国も国連の加盟国であります。したがいまして、国際法にのっとってすべての国が行動するということであると思います。
松本(善)委員 この点で、お互いに先制攻撃をしない、これは外交交渉上の見返りとかそういうようなことではなくて、交渉の当たり前の前提だと思います。日朝平壌宣言でも、互いに安全を脅かす行動をとらないということを確認しております。日本は、もちろん先制攻撃をしない、他の国が先制攻撃をしても、どんな形であれ支持をしない、参加をしない、他の国にも先制攻撃をさせない、国連憲章を守らせる、そういう方向の外交活動が必要だと思いますが、外務大臣はいかがお考えですか。
川口国務大臣 先制攻撃をとおっしゃられましたけれども、今、北朝鮮に対して先制攻撃をしようと考えている国はないと私は承知をいたしております。
 いずれにしても、すべての国が国際法を守る形で行動するということが重要であると考えております。また、北朝鮮についてはそういうふうにしてほしいと思っておりますし、ほかの近隣の諸国あるいは関係している国々は、国際法を守って行動する国であると考えます。
松本(善)委員 先制攻撃というのが国連憲章違反である、これは明白なんだと思いますし、今の外務大臣の答弁もそれを前提の御答弁だというふうに思います。
 問題は、アメリカのイラク攻撃が明白な先制攻撃で、国連憲章違反ではないか。二十世紀前半に起こった二回の世界大戦の経験から生まれました、国際紛争を平和的に解決する、この原則、これを中心にした国連憲章がアメリカによって破られた。この平和のルールを立て直すということが今の外交上の非常に重要な原則、平和的に解決をする、戦争は原則的に違法なんだという立場を明確にするということが外交上のもう一つの非常に重要な課題ではないかと思いますが、外務大臣のお考えはいかがでしょうか。
川口国務大臣 イラクの問題について松本委員と何回か御議論をさせていただきましたけれども、この点についての考え方は、私は委員とは異なる考え方をいたしておりまして、米国あるいは英国のイラクに対する武力行使は、再三再四御説明をさせていただいていますように、一連の国連決議に基づくものであるというふうに政府として考えております。
 それから、そういう意味で、国連憲章あるいは国際法にのっとって北朝鮮の問題は考えるということですけれども、我々は平和的、外交的に解決をしたいというふうに考えております。この点については、先般、ブッシュ大統領と韓国の盧武鉉大統領との間の会談の後の声明においても、平和的に解決をするということについて確信しているということを言っていると承知しています。
松本(善)委員 この問題についての、アメリカのイラク攻撃についての外務大臣の御見解というのはたびたび伺っておりますので、承知をしております。
 しかし、私はやはり、そのときにも申し上げましたけれども、これは通用しなくなってきているんではないかと。例えば、ネグロポンテ・アメリカ国連大使が、隠された引き金はない、こう言っていたんだけれども、実際には、アメリカ、イギリスがこの隠された引き金を引いたというのがやはり現実ではないか。
 軍事的には、イラク攻撃というのはターキーショット、動きの鈍い七面鳥を撃つようなものだということを海兵隊の人たちが言っていたようでありますけれども、アメリカの勝利はもう初めからわかり切っていた。
 しかし、ネグロポンテ大使の公式発言が信用できない。あるいは、ブッシュ・アメリカ大統領自身が三月十七日の演説で、イラクへの武力攻撃の根拠として、米国は自国の安全保障のために武力を行使する主権を有する、国連の安保理事会が責任を果たさなかったために我々はその任に当たると断定して、国連の役割を否定した。アメリカが独自に責任を果たすとの決意をこういうふうに表明したわけです。これは、国連の役割の公式な否定だと思います。
 今、これについて改めて大臣と議論をしても平行線になろうかと思いますので、質問としてはいたしませんけれども、今、北朝鮮の瀬戸際政策に対して、他方、ピンポイント攻撃の方が早いんじゃないかというような意見も出て、その他いろいろの、先ほど来制裁についての議論がありまして、外務大臣は否定をされておりましたけれども、一番極端な、ピンポイント攻撃の方が早いんじゃないか、こういう意見までアメリカに出始めたと言われています。これはまさに破局のシナリオであります。
 アメリカ全体が、世界全体がそんな方向に進んでいるとは私は思いませんけれども、やはり日本政府は、あくまで平和的に解決をするということを追求すべきです。実際に、九四年の北朝鮮の核危機では、韓国が一兵たりとも動かさないと言って反対をして、結局平和的解決ができました。
 こういう国際的な経験もありますので、この問題ではどうしても平和的な解決、外交的な解決をするんだということをアメリカにも言い、日本もそれを推進し、そして北朝鮮にも説得をする、このことが今非常に重要な外交課題だと思いますが、外務大臣の見解を伺いたいと思います。
川口国務大臣 我が国として、平和的に、外交的に解決をしようということが基本的な考え方であるということは、今まで申し上げたとおりです。
 そして、米国もこの点については、先ほど申しましたように、例えばブッシュ・盧武鉉大統領の会談のときにも平和的な解決に確信を持っているということを言っておりまして、この問題については、今までも日本とアメリカの間では再三再四、話もずっとしてきているわけでございまして、決して日本がアメリカを説得しなければいけない、そういう状況ではないということです。
松本(善)委員 ただ、そこになると、ちょっとまたもとの議論にも戻るかもしれないんです、先ほど、平行線になるかもしれぬから外務大臣との議論をやめるというふうに言いましたけれども。
 といいますのは、イラク戦争のようなことを世界に広げるというようなことを絶対させてはならない。やはり、国連憲章の言う国際紛争は平和的に解決をするという原則を何としてももう一回打ち立てなければならないと私は思うんです。
 ところが、次はシリアだ、あるいは次はイランだ、あるいは北朝鮮だというような議論が実際にあるわけですね。それは絶対にさせてはならない。日本政府は、そういうことに反対だということを明言すべきだ、そういうことにならないための外交努力に全力を傾注すべきだ。
 そうなると、外務大臣は再々、アメリカの行動は国連決議に沿っている、アメリカは国連憲章を守っているんだ、こう言われますけれども、アメリカの方はそうじゃない、実際にそういう勢力もあるわけですよ。名前を挙げてはあれですが、やはりラムズフェルド国防長官とかあるいはそれを支持するグループとかネオコンのグループ、これはもう広く知られているわけです。
 それがアメリカ政府全体の傾向に今すぐなっているとは必ずしも言いません。言いませんが、しかし、アメリカのイラク攻撃は、やはり国連の決議を無視した。なぜあの全会一致の一四四一の決議はできたかといえば、ネグロポンテ国連大使が隠された引き金はないんだと、これをみんな信頼して、すべての国が賛成したんですよ。私は、それが国連の実態だと思う。それをアメリカは裏切った。だから、世界の世論が反戦平和で大きく広がっているし、アメリカの中でも、これを糾弾するという文化人やあるいは政治家がたくさんいる、こういうことになっているのと違いますか。
 外務大臣はあくまで、ブッシュ大統領が国連憲章を守っていると言っているけれども、これはアメリカ自身の考えとも少し違うんじゃないでしょうか。
茂木副大臣 今回のイラクに対します武力行使、松本委員も御指摘のように、ネグロポンテ大使が、三月二十日の開戦のときに、国連に対しまして、これが累次の国連決議に基づき、大量破壊兵器の廃棄を目的として行うものである、こういうふうに明確に公式の書簡を提出している、このように考えております。
 もちろん、国際的な問題を外交的、平和的に解決する、これが基本であることは間違いありません。その一方で、大量破壊兵器の開発であったりとかまた拡散であったり、こういうことは国際社会としても断じて許せない、こういう厳しい対応も同時に必要だと思っております。
松本(善)委員 私も、それはそうなんですよ。大量破壊兵器の拡散は許されるべきでないと思う。私たちの党の代表団も、イラク政府に直接そのことを言いました。厳しく言いました。それは当然なんです。
 だけれども、大量破壊兵器の拡散を許さないといって、それ以上に残虐な攻撃をし、そしてたくさんの民間人が死傷し、そして今なおイラクの秩序は安定しないというようなことは、アメリカの二大紙も報道している。こういうような状況は、私は、軍事的には勝利をしたけれども、政治的、外交的にはアメリカの大敗北だと思っております。
 それで、私は、やはりその点では外務大臣とも茂木副大臣とも見解はなかなか一致をしないと思いますけれども、イラク戦争のようなことを、次はシリアだ、イランだ、北朝鮮だというようなことに広げていくことは絶対に阻止をしなければいけない、こう思いますけれども、その点では、外務大臣や外務省はどう考えているんでしょうか。
茂木副大臣 北朝鮮の問題につきましては、先ほど来外務大臣が答弁させていただいておりますように、平和的、外交的にこの問題を解決する、こういうことで、日本とアメリカの間、また関係国の間でも意見の完全な一致を見ている、このように私は考えております。
 同時に、国際社会に対して、先ほど来申し上げておりますように、大量破壊兵器の開発そして拡散を阻止するための断固たる協調をとっていく、こういうことも同時に重要だと申し上げているわけであります。
松本(善)委員 北朝鮮の問題はもう先ほど議論済みで、私は、外務省はそういう考えでいいと思うんですよ。
 だけれども、問題はやはり、次はシリアだ、イランだというようなことが言われているところなんですよ。大量破壊兵器の問題も、根本的には、核兵器の廃絶ということまで含めた、やはりグローバルの問題としてとらえながら、大量破壊兵器の拡散を防止していくという立場を鮮明にしなければ、これは説得力ないんですよ。
 私は、ここで改めて、やはり日本国憲法の原則を考えないといけない。私と、外務大臣、茂木副大臣、いろいろ考え方は違うけれども、政治の根本原則は憲法でいくんだということについては、これはもうどなたでも認めざるを得ないことだと思う。憲法改正の議論がありますけれども、現行憲法は守っていくというのは当然のことですね。
 しかし、このごろ、大変遺憾だと思いますのは、自衛隊を軍と言えとか、あるいは戦争を公然と肯定するような言論さえ生まれている。極めて遺憾な、そういうことが国会で論議をされること自体が憲法を軽視していることではないかと私は思います。
 我が国の安全保障の根本は、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」人間個人の安全保障というのを盛んに言われますが、人類の安全を守るという広い立場から日本が国連憲章や日本国憲法の精神に基づいて外交活動を展開する、これが日本に対する信頼を高める道である、こういうふうに私は思います。
 有事法制の問題は、衆議院通過をいたしまして、参議院で論議をされていますけれども、有事法制が衆議院有事特別委員会で採決をされた十四日に、韓国の国会議員三十人が日本の議員に対してアピールを出しました。
 有事法制はその影響が日本国内に限定されるものでないがゆえに、本日やむを得ず要請文をお送りすることになりました。
  我が議員たちと大韓民国の国民たちは、有事法制が過去のアジア諸国家と国民たちに大きな痛みを与えた不幸であった戦争の歴史を再演しうるということに対し、深刻な憂慮を持っております。有事法制の通過は直ちにアジアの軍事・安保環境を悪化させる充分な契機になるという点からも、極めて大きな憂慮を持っております。
ということが書かれております。
 私は、これはまだ最初の国際的な反応かもしれませんけれども、そういうふうに考えるアジアの人たちはたくさん出てくるのではないかと思います。この有事法制の成立が与えるアジア諸国に対する影響、アジア外交に対する影響、これをどう考えているか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
川口国務大臣 有事法制について、その通過があったときに、アジアの国々から反発というものはなかった、恐らく北朝鮮を除いてですけれども、反発はなかったというふうに承知をしております。我が国として、この我が国の有事法制について関係の国々にきちんと説明するということは重要なことですので、これについては、前々から行っておりますし、今後ともこの努力は続ける考えでおります。
 そして、有事法制が衆議院を通過したということは、参議院を通過すれば成立をするわけですけれども、我が国のそういった有事に際しての物の考え方あるいは行動の仕方についての透明性を増すという意味で意味がある、これは日本だけではなくて、近隣の諸国にとってより透明性が増すことであると考えております。
 それからさらに、有事法制を持っているということについては、日米安保条約の信頼性を高めるということにつながりまして、そういう意味で、アジア諸国もプラスに評価をする要素であると考えております。
松本(善)委員 時間でありますから終わりますが、私は外務大臣の考えとは真っ正面から違います。
 憲法に反して、日本を戦争をする国にする。ある世論調査でも、八一%が反対だという結果が出ております。国会では、賛成の皆さんの中でも、内心はいろいろの考えを述べている方もいらっしゃいますが、私は、国会で多数でも国民の中では決して多数ではない、やはり、日本国憲法の平和を守り抜くという考え方は国民の多数の意見であると、この問題については厳しく批判をして、質問を終わりたいと思います。
池田委員長 次に、東門美津子さん。
東門委員 社会民主党の東門でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、在韓米軍の再編成の動向について伺いたいと思います。
 今月十四日、アメリカのブッシュ大統領と韓国の盧武鉉大統領の米韓首脳会談が行われました。その中で、在韓米軍の再配置についても話し合われました。同日、発表されました共同声明には、ソウルの中心に位置して在韓米軍司令部がある竜山基地の早い時期の移転などが盛り込まれました。
 この在韓米軍の再配置が東アジアにおける米軍基地の整理縮小につながるのであれば歓迎すべきことですが、北朝鮮との関係が緊迫化している現状において、どのような理由によってこのような再配置が行われるのでしょうか。これは米軍の整理縮小を意味するのでしょうか、それとも機能強化につながるのでしょうか。
 また、韓国での再配置の影響が我が国に及ぶことがないのかなど不透明な部分が多くなっています。外務省は今回の米韓首脳会談における在韓米軍の再配置の動きをどのように分析しているのでしょうか。我が国に、特に沖縄に及ぶ影響があるのか、在韓米軍の再編成の動向についてまずお伺いいたします。
    〔委員長退席、土肥委員長代理着席〕
海老原政府参考人 お答えを申し上げます。
 さきに行われました米韓の首脳会談の後の声明におきまして、今東門委員がおっしゃいましたような在韓米軍の兵力構成につきまして、もう詳しくは申し上げませんけれども、今おっしゃったような趣旨のことが合意されて発表されたということでございます。
 ただ、そこのところでも、朝鮮半島及び北東アジアの政治、経済及び安全保障状況を注意深く考慮しつつという一文が入っておりますように、今委員がおっしゃいましたように、当然朝鮮半島の安全保障状況等も考慮しながら、ただ、在韓米軍の配置というのがかなり長い間基本的には余り変わっていないということが背景にあるようでございまして、このような見直しというか兵力構成の協議をこれから行っていくということになったというふうに理解をしておりまして、我々は注視をいたしております。
 特に委員がおっしゃいましたような、これが在日米軍、特に沖縄における在日米軍の兵力構成に影響を与えるのかどうか、そういう観点からも我々は十分注視していきたいというふうに考えております。
東門委員 今の答弁の中で、在韓米軍が長い間動いていない、ほとんど変わっていない、だからそれの見直しの時期だというふうにおっしゃったと思うんですが、間違いありませんか、今回の再編成に関して。
海老原政府参考人 これは、私が申し上げましたのは、例えばいわゆる三十八度線にあります兵力構成とか、そういうのが基本的には朝鮮戦争の停戦が実現した一九五三年の当時から余り変わっていないというようなことも今回の協議を行う理由の中にはあるというようなことを米側から聞いておりますので、そのことを申し上げたということでございます。
東門委員 今のお話、答弁からですと、沖縄にある米軍基地、やはりしっかりと連動していくなと思います。長い間そのまま広大な米軍基地が置かれて見直されていない、いやむしろ強化されてきたという経緯を持っています。それはやはり外務省として、担当者としてしっかりとそこのところは、今回の在韓米軍の再編成に関して日本側もしっかりと物を言っていただきたい。むしろそれが機能強化にならないように、あるいは日本に、あるいは特に沖縄に影響がないようにということはしっかりと押さえていっていただきたいと思います。
 次に伺いますが、総理が明日から日米首脳会談を行うために訪米されることになっているようです。最近の国内外の情勢を考えますと、主にイラク情勢あるいは北朝鮮情勢、そして日本の構造改革ということで議論が交わされると報道もされているわけですが、沖縄の米軍基地の問題もそれらの問題に劣らず重要な問題です。
 八時間もじっくり話し合われるということですので、ぜひとも今回の日米の首脳会談で、沖縄に関して意義ある議論を行ってほしいと思っていますが、日米首脳会談において米軍基地の問題は議題として取り上げられる予定となっているのでしょうか。大臣、お伺いいたします。
茂木副大臣 二十三日の日米首脳会談でありますが、御指摘のように、北朝鮮の問題そしてイラクの問題を含めた国際情勢、さらに日米関係につきまして、テキサス州のクロフォードといいますブッシュ大統領の牧場でありますから、かなりざっくばらんな形で幅広い意見の交換が行われる、このように承知をいたしておりますし、御指摘のありました日米安保体制の問題につきましても、当然議論がされるものと考えております。
東門委員 お願いをしておきます。時間がかなり限られていますから、答弁はもう短く、聞かれた分だけお答えいただけたらありがたいと思います。
 日米の安保体制ということですから、その中には在沖米軍基地がしっかりと含まれると理解してよろしいですね。
茂木副大臣 前置きいたしましたのは、そういう雰囲気の会議でありますので、かなり細かいと申しますか、個々の問題につきまして、どの点につきましてどこまで突っ込んだ議論がされるかということは、まさに小泉総理とそしてブッシュ大統領の間で話し合われることでありまして、あらかじめ何をどれくらい話す、これにつきましてはなかなか予見を持って申し上げることは困難だと思っております。
東門委員 今の御答弁を伺っていますと、多分入っていないんだろうなという気はしないでもありませんが、それをさらに話しても時間のむだですから、そのまま進めます。
 ただ、やはり総理がアメリカに行かれてブッシュ大統領と会談される、私は、沖縄の問題は絶対無視できない、その都度議題として出していい問題だと思います。それくらい真剣に考えていただかなければ、沖縄の基地は皆さんがおっしゃるように負担の軽減もないし、基地の整理縮小なんておぼつかない。
 SACOの最終報告とオウム返しに返ってくるだけではどうしようもないということをわかっていただきたいと思うから何度も聞きますが、本当に真剣に取り組んでいるというお言葉がそのとおりだったら、ぜひその都度出していただきたいと思います。
 次に、米軍機の事件、事故についてお伺いします。
 今月の十三日、米軍嘉手納基地所属のヘリコプター二機が相次いで緊急着陸しました。一機は渡名喜村が管理する住民の急患搬送用ヘリポートに着陸し、修理できないまま結局翌日まで居座りました。もう一機は、渡嘉敷村の無人島、神山島に緊急着陸しましたが、その周辺は釣りやダイビングなどマリンレジャーの名所であり、ヘリが緊急着陸したときも周囲に釣り船あるいはダイビングの船が来ておりました。無人島とはいえ、急にヘリが着陸すれば、危険性は十分あるわけです。
 渡名喜村の急患搬送用ヘリポートに着陸したヘリにつきましては、事前にも事後にも米軍から村に対して何の説明や連絡もありません。村議会は、このような村民に対する配慮がない米軍のやり方に抗議をして、原因究明あるいは再発防止、迅速な通報などを求める抗議決議と意見書を全会一致で可決しておりますが、政府は今回の事件についてどのように認識しておられるのでしょうか。
海老原政府参考人 これも答弁を短くするようにもう事実関係は省かせていただきますけれども、今おっしゃいましたような予防着陸を渡名喜村とそれから神山島で行ったということでございます。
 これは、御存じのように、予防着陸というのは、パイロットがどのような軽微な事柄であっても通常でないことを察知したときにとられる所要の手続ということでございまして、今回も何らかのトラブルというようなものをパイロットが察知をして、判断をして、予防着陸を安全のためにしたということで、そういう説明も米側からは受けております。
 ただ、そうはいいましても、本来施設・区域外にこういう形で着陸をするというようなことは当然想定されていないわけでございまして、我々といたしましては、通報を米側から受けて直ちに、沖縄事務所の赤松副所長から嘉手納飛行場のクレサレク広報局長に対しまして、本航空機の適切な整備というものと再発防止を求めるということを申し入れいたしました。これに対しまして同局長の方から、今回の件を非常に重く受けとめており、今後一層注意をしていくというふうに述べたところでございます。
 政府といたしましては、このようなことはあってはならないことなので、十分我が国の公共の安全に考慮を払った形で訓練を行うということは当然のことでございますので、引き続き米側に対して申し入れをしていきたいというふうに考えております。
東門委員 多分こういう答弁が返ってくるだろうなというのは予測をしておりました。これまでもずっと同じような形で答弁は返ってきましたけれども、その都度、大臣も同じなんです。今北米局長もおっしゃったんですが、事件、事故があるたびに、原因究明あるいは再発防止について申し入れ、米軍にしかるべく対応をとってもらうことがまず大事であるとか、粘り強く米軍に対して対応するよう働きかけていくことが重要である、そして、やはりそういう住民の不安というのはよくわかるのでアメリカにはどんどん言っていくとおっしゃっているんですが、これまで何も功を奏していないというのが沖縄県民の受けている実感です。どんどん頻発しているんですよ。決してとどまっているんじゃないんですよ。
 申し入れはした、働きかけはした、効果は上がっていない、それはどのように受けとめられますか。こういうのはどういうふうにすればいいんでしょう、大臣。
川口国務大臣 申し入れをするということは、私は大事なことであると思います。そして、そういうようなことが起こったときにはやはり常に申し入れていくということでなければいけないと思っています。アメリカ側に対しても、それに対応して何らかの必要な措置をとってもらうということが大事でございます。
 こういったことが一朝一夕に全部が解決をするということではないということについては、委員もよくおわかりいただいていると思います。粘り強くやっていくことが大事だと考えます。
    〔土肥委員長代理退席、委員長着席〕
東門委員 そっくり同じ答弁なんですが、確かに、申し入れは、するなとは言いません、どんどんやっていただきたい。
 フォローはなさっていますか。申し入れました、アメリカからはこういう答弁が返ってきました、それに対して外務省はフォローはしているんでしょうか。私は、事後のフォローというのはとても大事だと思います。
 昨年来、米軍の航空機による事件、事故は本当に多発しているわけですが、米国はどのような再発防止策をとったのか、外務省はそれに対してどのようなフォローをしたのかということ。その再発防止策、それに対してアメリカがどのような対策をとっているというのが外務省に入っているのでしたら、なぜ相変わらず航空機の事件、事故は続くのか。今大臣がおっしゃったように、一朝一夕にして全部なくなるとは私たちも思っておりません。でも、余りにも多過ぎるんですね。
 それに対して、外務省のそういう問い合わせに対してアメリカ側はどのように説明しているのですか、それもお聞かせください。
海老原政府参考人 これは、このような事故あるいは事件というようなものは、当然大変に遺憾なことでございまして、申し入れた上で、必要に応じ、その原因等についてあるいは再発防止策について米側から説明を受けるということを我々としても最大限行っているつもりでございます。
 例えば、一例を申し上げれば、以前起こりました伊江島におきます物資の投下訓練でございますね。あれも、非常に遺憾だということで、ぜひ再発防止策をきちっととってほしいということを我々から申し入れまして、それに対して、ちょっと、四点ばかりあったと思いますが、私全部覚えておりませんけれども、例えば、飛行ルートについては、これは民間の土地というようなものは一切飛ばないということで、たとえこの前のようにひもが絡まって物が予定外のところへ落ちるということがあっても、施設・区域あるいは海の施設・区域、制限水域でございますけれども、ここに落ちるというような予防策をとったというような説明があったというふうに記憶いたしております。
 あとほかにもあったと思いますが、ちょっと覚えておりませんけれども、そのような例のように、我々といたしましても、再発防止というようなものについては、必要に応じてきちっと米側の説明を求めてきているところでございます。
東門委員 北米局長、アメリカ側からこういうことで再発防止策をとっているというのがありましたら、ぜひ出していただきたいと思います。ぜひ知りたいと思います。
 今、伊江島の話が出ましたけれども、けさの新聞にも出ているんですね。多分北米局長のお手元にも届いていると思いますが、今回は、パラシュートの基地外降下、そして農家の畑の上におっこちたということが出ている、訓練中。こういうことが本当にたび重なっているということ、それに対して外務省の姿勢が、いつでもアメリカに申し入れているで終わっているということ、それに怒りを感じるということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、時間がありませんので少し急ぎますが、米軍ヘリの民間空港使用について伺いたいと思います。
 渡名喜村のヘリポートの例でも明らかなように、米国は沖縄県内の民間施設を我が物顔で使っています。それは、外務省の弱腰もあろうかと思います。
 先月二十六日には、普天間基地所属の米海兵隊輸送ヘリ六機と空中給油機一機が、フィリピンとの合同演習に向かう途中、給油のため、宮古空港、これは民間空港ですね、に着陸をして、本日二十一日、きょうになりますが、三度目の日程変更の上やっと、本当に使うかどうかわかりません、本日も、この演習から戻る途中、今度は下地島空港への着陸を申し入れてきているようです。いずれも、沖縄県からの自粛要請あるいは市からの自粛要請を無視したものであり、大変遺憾なことです。
 フィリピンとの合同演習参加のための民間空港使用は、二〇〇〇年以降毎年繰り返されています。昨年も私はこの委員会で同じ質問をしましたが、事態が一向に改善されないというのが本当のところです。
 大臣は、県民感情や県からの自粛要請を無視した今回の米軍ヘリの宮古空港と下地島空港への着陸について、どのように受けとめておられるのでしょうか。
川口国務大臣 まず、下地島の着陸について、これはそういう予定でありましたけれども、台風の影響があって――帰路に使用する計画ですね。(東門委員「はい、そうです」と呼ぶ)そういうことですね。ということですけれども、けさの米軍からの連絡によりまして、きょうじゅうの下地島の使用はなくなったということを聞いております。
 それから、一般的に申しまして、これは、アメリカとの間では、御案内の日米地位協定第五条によりまして、米軍は我が国の飛行場に出入りをする権利を持っているということでございます。そして、使用するに当たっては、米軍が空港管理当局と所要の調整を行うということでございます。
 我が国としては、民間空港を使用しないで済むように、さまざまな検討を行って、そういうことができるだけ少なくなるようにということで考えておりますけれども、そういうことをやった上で、なおかつやはり使用しなければならないということはあるわけでございます。そういう場合には、そういう判断をするということでございます。
 いずれにしても、アメリカ軍は、民間機による空港の利用への影響が最小限にとどめられるように、空港管理当局である沖縄県と所要の調整を行ったものであると今回の宮古島については承知をいたしております。
東門委員 地位協定の五条、わからないわけではないんですが、でも、実際に地域の住民が不安を覚え、それを自粛してほしいと申し入れたことに対して、いや、地位協定上どうしようもないということで終わってしまうのはいかがなものかなという思いがあります。
 しかも、米軍は、行きは宮古空港を使い、帰りは下地島空港を使うということを通告していると思います。きょうの下地島空港への、帰路に使うということはないという通告があったというふうにおっしゃっていましたが……(川口国務大臣「きょうはない」と呼ぶ)きょうはない。でも、いずれあるんでしょうね、多分。ですから、行きと帰りで使用する空港が異なる。
 昨年の合同演習参加の際には、下地島空港だけを使用しているんですね。宮古空港への米軍機の飛来は、一九九四年、それ以来九年ぶりの使用なんですよ。米軍のこのようなやり方は、地元で本当に大きな疑念を生じさせています。
 外務省、今大臣がおっしゃるように、五条で措置することができるからということでは本当は済まないと私は思うんですよ。米軍がどの空港でも使えることを示すためにあえて宮古空港を使い、着陸の実績づくりをしようとしているのではないかという見方、あるいは、米軍は宮古地区の二つの空港の機能を試しているのであり、恒常的に使用される危険があるのではないかという見方も出ております。
 なぜ米軍は、行きと帰りでわざわざ別の民間空港を使用するのか。その理由について、政府は米軍に確認をなさったのでしょうか。まずそれについて外務省の見解を伺いたい。そして、民間空港の恒常的な使用を受け入れられないと米国に強く申し入れるべきではないか。米軍による民間空港利用について、我が国の基本方針を伺いたいと思います。
海老原政府参考人 下地島に、帰り、帰路、着陸をするということにつきましては、まだ予定があるということで、そのように本当になるかどうか、私はまだ承知をいたしておりませんけれども、仮にそういうことになるとすれば、それは、給油という目的、それから軍の運用というようなことをいろいろと総合的に検討した結果、行きについては宮古島が最も問題が少ない、帰りについては下地島が最も問題が少ないというふうに判断したのだろうというふうに考えております。
 そもそも民間空港の使用につきましては、今東門委員がおっしゃいましたように、沖縄県の方から自粛要請が出ているということで、米軍の方も、これはもう必要最小限ということに抑えるということで努力をしてきているというふうに私は理解をいたしております。
 今回の場合は、どうしても訓練のための移動のためにほかの手当てができなかった、それから、このヘリコプターについては、そもそも航続距離が短い上に、空中給油を受ける機能も有していないということから、自粛要請については十分承知はしているけれども、どうしても宮古島の空港を使わざるを得なかった、それで、そのための所要の調整を沖縄県と行ったという説明を米側から受けております。
東門委員 それで、沖縄県は調整を行った結果、了承したということでしょうね。ということですね、局長。
 時間がありませんので、ちょっと移ります。
 普天間飛行場への所属外機の飛来についてですが、米軍機に関しましては、事件、事故だけではなく、騒音も大きな問題であるということは既におわかりだと思います。普天間飛行場におきましては、現在、騒音問題で訴訟も起こされていますが、特に問題なのは、普天間飛行場に所属する飛行機以外の米軍機が飛来しているということです。岩国基地所属のFA18戦闘・攻撃機が訓練のために頻繁に飛来してきており、また、ことし一月に通報装置落下事故を引き起こしたP3C哨戒機も嘉手納基地所属です。
 住宅地の真ん中にある普天間飛行場は、住民の生命財産への危険が最も大きいと認識があったからこそ、平成八年の橋本・モンデール合意で返還が決定されたはずです。それにもかかわらず、期限が過ぎた今でも、返還されるどころか、他の基地の航空機が、それも県外からのものまで飛来して、騒音と危険をまき散らしているのが現状です。
 伊波宜野湾市長は、今月九日の岡崎那覇防衛施設局長との会談で、FA18の普天間飛行場での飛行禁止と住宅上空でのヘリコプターの飛行中止を要請しました。報道によりますと、岡崎局長から明確な答えはなかったということですが、沖縄県民の負担を軽減したいという川口外務大臣のお言葉が偽りでないのであれば、他の基地所属の航空機、それも県外の航空機までもが、最も危険性の大きい普天間飛行場に来て訓練するようなことはなくすようにしてもらいたいと思います。これは大臣の見解を伺います。
川口国務大臣 普天間飛行場の周辺の地域の住民の方々にとって、騒音問題というのが大変に大きな問題であるということについては、私もよく承知をいたしております。
 それで、我が国として、やはりそういった騒音を減らすための努力、それをするということは非常に大事であると思いますので、普天間飛行場等において航空機騒音規制措置、これを米軍と合意をするなど行いまして、騒音の問題については今までも真剣に取り組んできたところでございますし、今後ともこの態度は変更ございません。
 それから、騒音の問題だけではなくて、やはり事故の問題というのも非常に心配な問題であります。これについても、アメリカ側に対して、米軍に対して、この心配の気持ち、これは伝えてきております。これについても引き続き働きかけを行いたいと思っています。
東門委員 時間ですから急いで申し上げますけれども、普天間飛行場の騒音はますますひどくなっているというのが現状であるということを御存じでしょうか。北米局長、それを御存じでしょうか。ぜひ照会してください、どれぐらいひどくなっているか。それはうそではございません。ぜひチェックしていただきたい。
 私が今申し上げたのは、所属外機、いわゆる県外からの飛行機までも飛来してくる、そしてそこでさらに大きな騒音問題になっているということ、それをアメリカ側にぜひ申し入れてほしいということだったのですが、お答えはいただけなかったのだと思います。
 時間がありませんので終わりますけれども、そこで二点だけ申し上げさせてください。
 五月七日の本委員会で、私は、米国が国内、国外で基地を閉鎖する際、閉鎖する基地の代替施設を新たに建設して移転した例があるかどうかの資料をお願いしておりましたが、もし既に調査が済んでいるのであれば、資料を提出していただきたいと思います。これは、北米局長があのとき答えていましたので、北米局長の方にお願いしておきたいと思います。
 もう一点。ことしの一月二十一日から二十四日までの間でしたが、在日米軍士官オリエンテーションプログラムというのが外務省の方で行われました。その参加者、二十人がいたと思いますが、その参加者に同プログラムに対するアンケート調査を行ったと聞いております。
 やはり、そういうプログラムを行ったら、そこに参加した人たちが、そのプログラムがいかに本人にとって有効であったのかどうかということを知っておく必要はあると思います。ですから、そのアンケートの中身を、できましたら英文、日本文、両方で出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
海老原政府参考人 簡単に御答弁申し上げますけれども、まず、前の方の質問につきましては、我が国の例につきましては、ニューサンノーホテルがあるということを委員の方にも御説明を申し上げております。
 在外につきましては、非常に率直に申し上げて、ある米軍基地を閉鎖して、それを代替してという例というようなことは、米側に今照会をしておりますけれども、米側が、そもそもその定義というか、どういうことを期待されているのかというようなこともありまして、そこを説明して、今探してもらっているというようなことでございますので。
 そこは、例えば、ある数が幾つかとか、そういうことであれば非常にわかりやすい話でございますが、ちょっとこちらの質問が、そういうことで、向こうにとっても、すぐぴんとくる、すぐ、ああ、こういう例があるというようなことでないものですから、ちょっと時間がかかっておりますが、引き続き米側に照会をしていきたいというふうに考えております。照会ができ次第、委員に御説明をいたします。
 それから、研修の方でございますけれども、これは委員のおっしゃるとおりでございまして、少しでもプログラムをよくするという観点からアンケートをとっております。
 二日の三者協議会でも、沖縄県の方からも、このプログラムは非常にいいという評価もいただいておりますし、引き続きアンケートをそういう観点からとっていきたいと思いますが、これはちょっとプライバシーの問題もありまして、公表しないという前提でアンケートをとっているものですから、委員の御要望にどういう形でおこたえができるのか、今ちょっと米側とも調整をいたしておりますので、いましばらく時間をいただきたいと思います。
東門委員 どうもありがとうございました。終わります。
池田委員長 これにて本日の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることにいたしまして、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十分散会


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