衆議院

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第8号 平成16年3月18日(木曜日)

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平成十六年三月十八日(木曜日)

    午後二時三十七分開議

 出席委員

   委員長 米澤  隆君

   理事 岩永 峯一君 理事 谷本 龍哉君

   理事 中谷  元君 理事 渡辺 博道君

   理事 末松 義規君 理事 武正 公一君

   理事 増子 輝彦君 理事 丸谷 佳織君

      小野寺五典君    河井 克行君

      木村  勉君    高村 正彦君

      鈴木 淳司君    田中 和徳君

      土屋 品子君    中西 一善君

      西銘恒三郎君    宮下 一郎君

      山下 貴史君    阿久津幸彦君

      加藤 尚彦君    川内 博史君

      今野  東君    田中眞紀子君

      中野  譲君    前原 誠司君

      松原  仁君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務副大臣        阿部 正俊君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 知念 良博君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局少年課長)           菱川 雄治君

   政府参考人

   (警察庁刑事局暴力団対策部長)          近石 康宏君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            有冨寛一郎君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    房村 精一君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           高島 肇久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部長)     石川  薫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           岩田 悟志君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  松宮  勲君     中西 一善君

  中野  譲君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  中西 一善君     山下 貴史君

  川内 博史君     中野  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  山下 貴史君     松宮  勲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 サイバー犯罪に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

米澤委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房外務報道官高島肇久君、外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、警察庁生活安全局少年課長菱川雄治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 いつも大臣におかれましては本当にお疲れのことと思いますけれども、本日、外務委員会ということで一般質疑をさせていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 その中で、本日、後ほど審議をされます子供の人権二議定書について、当委員会で、私も、大臣に対しましてもあるいは外務省に対して幾度か質問をさせていただいておりますし、また、自分が取り組んできたテーマでもございますので、この点について、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

 我が国は、国際機関の場に出ますと、随分と子供の人権を守ることについてはおくれているという批判を受けてまいりました。

 今まで、年表的に、時系列的に考えていきますと、一九九〇年に児童の権利条約に署名をいたしまして、四年後の九四年にこの条約を批准いたしました。そして、一九九九年には、国内法の整備ができていないという国際的な批判も受けまして、議員立法でございますが、児童買春・ポルノ禁止法の制定をいたしました。

 そして、二〇〇一年には、ユニセフと日本の外務省が主催となりまして、児童の商業的性的搾取に反対する世界会議を横浜で開きました。これには非常に多くのNGOあるいは世界各国から関係の人たちが集まり、そして子供も参加するという、非常に画期的な会議で終わらせることができました。そして、二〇〇二年に国連の子ども特別総会で、ぜひ我が国として、これから議論になります子どもの権利条約に関します二議定書について署名をしていただきたいというお願いを当委員会でもさせていただきました。

 川口外務大臣の方にも、当時、その二〇〇二年の国連の方で日本としてぜひ署名をしていただきたいというお願いをしまして、そして外務大臣、前向きな御答弁をくださいまして、結果的には、五月の国連の特別総会で日本が署名をし、あとは批准を待つだけとなりまして、ようやくといった感があるんですけれども、本年、この国会におきまして、二議定書について承認をして批准していく予定となったこと、大変喜ばしく思います。ようやくここまで来れたのかなという思いでいっぱいでございますけれども、我が国が条約を批准して、そして二議定書を批准したからといって、まだまだここで満足をしてはいけないという思いでいっぱいでございます。

 今国会において、議員立法であります児童の買春そしてポルノを禁止する法の改正も行いたいというふうに思っておりますけれども、この子供の犠牲者を減らすためには、実態を把握していかなければいけないというのがまず大原則であろうと考えております。

 ユニセフが調べたところによりますと、特に被害が多いアジアだけを考えてみましても、アジア地域で性的な搾取をされている子供の数は三十万から四十万に上るとも言われておりますし、また、それ以上に、一年ごとに約百万人の子供たちが新しい犠牲者となっていくという数を、大ざっぱな数だけを見ても、アジア地域で三十万から四十万の子供たちが人身売買や性的搾取をされているという数は、本当に氷山の一角にすぎないというふうに思っております。

 我が国は特に加害者になってはいけないというのが非常に強く思うところでございますけれども、いま一度、改めまして、我が国がこの児童の性的搾取の加害者となったケース、その数について最近の数を挙げていただきたいのと、またあわせて、日本国内で児童の買春の検挙数、この数をまずお伺いしたいと思います。

菱川政府参考人 お答えいたします。

 加害者の数自体はなかなかちょっと把握しづらいものがございますけれども、児童買春、児童ポルノ法の施行以降、これまでに国民の国外犯として検挙した事件数でございますけれども、五件十一名検挙しております。このうち、児童買春事件が三件三名、児童ポルノ事件が二件八名となっております。

 最近の検挙事例をちょっと御紹介いたしますと、昨年の八月、当時都立高校教諭であった四十八歳の男性が、カンボジア王国のプノンペン市内の風俗店において、十六歳のベトナム人の児童二名を買春した、こういった容疑で本年二月に児童買春事件として検挙いたしております。

 次に、国内の検挙状況でございますけれども、法律は平成十一年十一月に施行されたわけでございますけれども、法施行から平成十五年末まで、児童買春事件としては合計で六千四十八件三千九百十四人を検挙しております。また、児童ポルノ事件につきましては、同じく法施行から平成十五年までで合計七百四十三件六百七十一人を検挙しております。

丸谷委員 実際に、国内におきまして、児童買春・ポルノ禁止法が制定されてから、またその後、国会におきまして、いわゆる出会い系サイトの規制法ですとか、いろいろな法整備をしていく中で検挙数というのが出てくる。ですから、本当に、今までこの数がどれだけ過去にあったのかということを考えていくと、やはりもっと加速度をつけて、子供の人権を守る法整備、あるいは子供みずから援助交際という名のもとで体を売っていくこの売春行為をストップさせなければいけないという思いがするわけですけれども。

 今警察庁からお話がありました子供の買春事件、あるいは国外犯の事件の件数、あるいはケース例を聞きまして、これは外交マターではございませんけれども、外務大臣はいかにお感じになったか、また副大臣も政治家としてどのようにお感じになったか、ぜひお伺いさせていただきたいと思います。

川口国務大臣 二つの議定書について国会で今御審議をいただけることになったことにつきまして、丸谷先生は今までずっとこれに携わってこられて、感慨無量な思いをしていらっしゃるというふうに思います。私も、そういう段階になって大変にうれしく思っています。

 児童買春あるいは児童のポルノといったことについて、日本人が国外でそういう加害者になる、それから海外において日本人を当てにそういうことがビジネスになるとその地域の大人が思うということは、私は、日本人として恥ずべきことだというふうに思います。国内においても全く同じことだと思います。

 これは、国外、特に発展途上国において、いろいろ経済的に難しい事情も背景としては忘れてはいけないと思いますけれども、まず、そういうことがビジネスとしてもうかるというふうにならないように、日本の大人が、この場合、特に男性がきちんと意識を持って行動していくということが重要ではないかというふうに思います。

 啓発その他、いろいろ政府としてやらなければいけないことがあると思いますので、そういったことに政府全体として取り組んでいきたいと思います。

逢沢副大臣 先ほど警察庁の方から、海外における検挙件数、また国内における件数、そして検挙された方々の数について報告がございました。まことに心が寒くなるような大変な数字である、率直にそういう印象を受けるわけであります。恐らく、大多数の心ある国民も、このゆゆしき実態にまゆをひそめると同時に、これの根絶に向けてやはり行動を起こすときだ、そういう強い感想をお持ちになるものというふうに思います。

 先ほど委員御指摘のように、根絶に向けてさまざまなシンポジウム、啓発の取り組み等もやってまいりまして、十周年に当たるということで、記念シンポジウムも東京の国連大学で開催をされる。より意味のあるものにしていく必要がございますし、また、そのことを通じて大いに啓発する、恥ずべきこういう数字の根絶に向かって、国民ともども立法府も責任を果たしていかなくてはならない、そのように承知をいたしております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 今までアジア地域におきまして、国外に出かけていって日本人が児童を性的搾取を目的としていわゆる買春をするケース、男性が行うケースがほとんどでございましたけれども、最近のNGOの調べたところによりますと、最近は、時間的にあるいは金銭的に余裕もあるいわゆるOLの方がアジア地域に行って子供たちを買うという現象が報告されています。こういったところを見るにつけ、ますます、本当に我が国としての取り組み方というのは、今副大臣がおっしゃいましたように、啓発にもっともっと力を入れていかなければいけないのではないか、このように感じております。

 そして実際、本年一月、ジュネーブの国連本部で開かれました人権に関する会議におきまして、我が国として第二回の児童の権利に関する条約の実施に関する我が国の報告書を提出し、審査が行われました。

 この審査の中におきましては、我が国としてODAにおいてトップドナーであること、また、そのODAの多くが保健、教育に充てられていることが高く評価をされましたし、あるいは、国際機関への拠出金についての評価というのがありました。

 また、その反面、今後より一層取り組んでいかなければいけないこととしまして、国内法の整備ですとか、あるいは、やはり啓発活動等といった要請がなされたと承知をしております。

 また、一方におきましては、まだまだ日本は、少しずつ前進はしているものの、子供の人権について、あるいは人権感覚というものについては、まだまだおくれている国だというような声も聞かれたという話を聞いております。

 そこで、日本としてできること、ODAや国際機関を通して、大臣がおっしゃいました、貧困をまず撲滅させていくために協力することがまず重要であろうと思いますし、また、国内におきましては、日本人に向けた、あるいは日本国内に住んでいる人たちに向けた、大人に対しても子供に対しても啓発活動というのは非常に重要であり、副大臣がおっしゃいました、三月二十九日に予定されています児童の権利条約批准十周年記念シンポジウム、これには非常に大きく期待するところでございますし、また、私自身もぜひ参加をさせていただきたいというふうに考えております。

 さて、この児童の権利条約批准十周年記念シンポジウムの内容について、ぜひお伺いをさせていただきたいと思います。特にこれは先進国と言われている日本で行うことの意義が大きいのではないかというふうに思いますけれども、何を目指し、どこにゴールを置き、どんな内容で今このシンポジウムを日本で行おうとしていくのか、この点についてお伺いをいたします。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、二十九日月曜日、国連大学におきますシンポジウムの件でございますけれども、私ども外務省とユニセフの共催で開催させていただきます。国会の先生にも御出席いただけるように伺っておりまして、この場をかりて御礼を申し上げたく存じます。

 第一の趣旨は、ことし十周年を迎える児童の権利条約の日本の批准、これを受けまして、改めてこの条約の趣旨、目的、意義それから条約上の規定につきまして広く国民の皆様方に御存じおきいただくような内容にしたい、このように考えております。

 また、児童をめぐりまして、最近、新聞報道等を見ましてもさまざまな問題が生じております。そうしたことから、具体的にどういう取り組みが必要なのか、国内外の有識者あるいは若い方々に人気のあるような、スターという言葉を国会で使ってよろしいんでしょうか、実は、SMAPの草なぎ剛さんに御出場をお願いしておりまして、快くお引き受けいただきました。若い方に子供の権利、児童の権利というものについて御理解いただければ大変ありがたい、そのことを最大のねらいにさせていただいている次第でございます。

丸谷委員 三月二十九日の、児童の権利条約、我が国が批准をして十周年の記念シンポジウム、海外からのお客様も迎えて、講演もあり、あるいは、家庭そして社会、教育の場、国会の場、国が取り組み、法整備の中でということでのいろいろディスカッションもあり、そして何よりも、やはり今、援助交際という名前に置きかえられてしまいがちな児童の売春について、みずからお金を求めるために体を売ってもよしとするこの子供たちの意識喚起、それは法律でもいけないことだということをしっかり知っていただくために、やはり、彼女あるいは彼らが非常に自分と同化して見ていくようなスター、SMAPの草なぎさんが講演をしてくださるということは非常に意味も大きいだろうと思います。また、草なぎさんがいらっしゃるというだけで非常に参加者もふえるのかもしれませんけれども、それだけではなく、しっかりと内容の濃い、本当に本年度の啓発活動の重要な一つとして力を入れて頑張っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 そして次に、もう一つの議定書でございますけれども、子供兵士の禁止について、我が国としてもようやく批准をすることができます。この議定書につきましては特に国内法の整備という必要はなかったものというふうに感じておりますし、また、我が国において子供兵士を利用するということはございません。

 しかしながら、国連の安保理決議の中でも、一九九〇年以降、子供兵士を利用しないようにといった、あるいは子供を保護しようといった決議がなされているのにもかかわらず、本当に残念ながら、現在でも約三十五カ国の国が子供兵士を利用しておりますし、その数は、アジア、アフリカ、中東、中南米、欧州等で約三十万人を超える子供の兵士の数に上るというふうに言われています。十五歳から十八歳が一番多いというふうに言われておりますが、十歳未満もかなりいるという報告を受けております。

 この子供兵士利用禁止、より実効性を高めるために、我が国としても無策ではいけないというふうに感じておりますけれども、例えば国際社会の中での圧力のかけ方としてどんなものが考えられるのか、あるいは我が国としてどのように取り組んでいこうとされるのか、この点についてお伺いをいたします。

石川政府参考人 ただいま委員から御指摘いただきましたとおり、三十万という数字が国際機関等で発表されておりまして、私ども大変心を痛めておるわけでございますけれども、これには、いわゆる国の軍隊のみならず、国の軍隊と異なる武装集団、これが児童兵を採用しまたは敵対行為に使用しているというケースが大変多うございます。

 その問題につきまして、今回、御審議いただくことになっております武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約選択議定書は、その第四条におきまして、国の軍隊と異なる武装集団が、児童兵を採用しまたは敵対行為に使用しないような必要な措置をとるよう求めております。これを各国が協力することによって、我が国としましても反政府勢力へ圧力をかける有効な手段だと考えております。

 また、反政府勢力への圧力としましては、国連の場でいろいろ合意がなされております、紛争当事国への武器禁輸措置でございますとか経済制裁や、あるいは紛争ダイヤモンドの管理などが有効であると考えておりまして、我が国といたしましても、これらの国際的な取り組みにこれまでも参加してまいりましたし、今後も国連の合意に沿って継続して努力してまいりたいと思っております。

丸谷委員 実際にそのような努力をしていただきながら、子供兵士の数を減らす努力を重ねて、実際に子供兵士禁止のこの議定書が、またこの内容が実効性のあるものにしていただきたいと思いますし、また、残念ながら現実に、児童兵士として、あるいは先ほどのテーマでもございますけれども児童買春の被害者となってしまった子供たちに対して、やはり何らかのケアをしていかなければいけないだろうと考えます。

 国際的な支援を必要としている子供たちに対しまして、我が国は、国際機関やあるいはNGOを通して支援しているのかもしれませんけれども、今後さらにこの被害者になった子供たちをケアしていくために我が国としては何ができるのか、この点についても考えていかなければいけません。

 この点について、外務省の見解をお伺いいたします。

石川政府参考人 これまで我が国は、フィリピンですとかラオスあるいはコソボといったような各地におきまして、被害を受けた児童の社会復帰に関する国際的な支援につきまして、さまざまな形で取り組んでまいりました。

 例えば、人身売買や児童兵の防止、そして被害児童の社会復帰のために、ただいま委員から御指摘いただきました国際機関の中で大変積極的に活動しておりますユニセフ、あるいはそのほかの国際機関による活動に対しまして、人間の安全保障基金を通じて各種の支援を行ってまいりました。

 また、我が国といたしましても、人々が直接裨益する案件に対しまして、無償資金協力、あるいはその中でも草の根・人間の安全保障という協力、こういったものを通じた二国間の協力を行ってまいっております。

 今後とも、児童の社会復帰に役立つ案件があれば支援してまいりたいと考えております。

丸谷委員 児童買春あるいは性的搾取を防ぐ面、そして子供兵士を根絶する面でも努力をしていただきながら、実際に、現在被害者となっている子供たちのためのケアというものもあわせて考えていっていただきたいと思いますので、今後も情熱を持ってぜひ取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 では、続きまして、次のテーマに移らせていただきます。日ロ関係についてお伺いをさせていただきます。

 三月十四日にロシアの方で行われました大統領選におきまして、予想どおりと言っていいのか、プーチン大統領が圧勝をされました。選挙戦の前には全閣僚を罷免しまして、そして、報道によりますと、カシヤノフ首相や旧エリツィン大統領の側近グループを排除し、みずからの足元を固めた閣僚体制をつくられたというような流れの中で、客観的に考えますと、プーチン大統領の二期目は、非常に足元が固まった、権力的にも強い、あるいは何か大きな決断ができるような政権になったのではないかと非常に期待をするところでございますけれども、今回の大統領選を終えまして、プーチン大統領の圧倒的な再選と、そして新政権を、外務省としてはどのように分析されていらっしゃるのか、この点についてお伺いをいたします。

川口国務大臣 三月十四日の選挙は、今委員がおっしゃったような結果でございまして、この結果として、プーチン大統領の基盤がさらに強化をされたということだと思います。そうした強力になった基盤をベースに、プーチン大統領が日ロ関係の進展についてさらにリーダーシップを発揮していただくということを日本としては期待いたしています。

 特に、領土問題があるわけでして、これは日ロ行動計画の中に一つの柱として書いてありますけれども、プーチン大統領みずからが、自分はこの問題を沼に埋めるつもりはないということをおっしゃり、私に対しても、自分たちの世代でこの問題を解決しなければいけないということをおっしゃっていらっしゃいまして、領土問題を意識し、解決をしたいという気持ちをお持ちでいらっしゃるというふうに私は思っています。

 したがいまして、これをさらに、この機会をとらえて、我が国として、領土問題の解決のために、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するということが我が国の方針ですけれども、その方針にのっとって交渉を鋭意やっていきたいと思っています。

 私も、ことしの前半にもロシアに行きたい、交渉のために行きたいと思っておりまして、昨晩、新しいラブロフ外務大臣とこの話をしまして、その日程の調整を今後していきましょうという話もいたしました。鋭意努力をいたしたいと思っています。

丸谷委員 新聞報道を読んでおりますと、今度日本に新しく着任をされますロシアの新大使、ロシュコフ大使と日本の記者団との懇談の中では、一九五六年の日ソ共同宣言を有効としながらも、一九九八年の川奈提案については、これは実際にはロシアとしても受け入れていないし、これからも受け入れることはないのだといった発言もされていらっしゃいます。

 その中で、プーチンの新政権が足元を固めたとはいえ、若干気になりますところは、昨年の下院選挙では強硬派と言われています極右政党が今躍進をしているので、その中で現実的な領土問題解決に対して一歩を踏み出すのは、今までの流れをくみながら新しい方策を探して、領土問題の解決を動かそうとしているのかなという感じをいたします。

 その流れの中で、我が国として、領土交渉に臨むに当たって、二島、段階的な返還を求めていくのか、あるいは四島の帰属を解決しながら、そして返還を求めていくのか、こういった方針がなかなか旧島民の皆さんにも伝わってきていないのかなという気がいたします。

 大臣も出席をされました、二月七日に行われました北方領土返還要求全国大会、これには私も公明党代表として出させていただきましたけれども、大臣もお聞きになったとおり、旧島民の方、非常にお年を召されている。本当に自分たちが生きている間に返還への大きな転換期を見たいという思いで強い要望を、大臣もそのじかの声をお聞きになったと思いますけれども、最後に、新しい展開を迎えるであろうこの領土問題交渉について、我が国として、領土交渉、明確な方針を示していただきたいと思います。

川口国務大臣 私も、先般千島連盟の方ともお会いをいたしましたし、それから何回かにわたって今までお会いしていますけれども、どういう状況で一九四五年の八月に島から脱出をするに至ったかという話も聞いております。

 国境線が画定をされていないという状況に今あるわけでございます。四島の帰属の問題を解決して、そして平和条約を結ぶというのが我が国の一貫した、変わらない方針であるということでございます。

丸谷委員 以上で質問を終わらせていただきますけれども、これから四月には次官級会議があり、また外務大臣も訪ロをされ、そしてプーチン大統領も早いうちには訪日をしていただけるのではないかというふうに考えておりますし、森元総理を中心としました賢人会議も開かれます。こういったときを考えながら、ぜひ、領土問題に新しい一歩を踏み出せるよう最大限の努力をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

米澤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。委員長や理事の先生方のお許しをいただきまして、私、委員会のメンバーではないんですが、きょうはドミニカの移民の問題について質疑をさせていただきたいと思います。

 委員の先生方の中には、このドミニカの移民の問題といっても、何のことだとおっしゃる方もいらっしゃるかと思いまして、お許しをいただいて、お手元に資料をお配りさせていただいておりますので、そちらをごらんいただきたいというふうに思います。

 ドミニカ移民問題というのを簡単に解説した文章が、この資料の右上のところにございます。「高度成長が始まる前の一九五〇年代半ば、政府は、中米カリブ海に浮かぶ島国ドミニカに移民を送り出した。しかし、大規模開拓農を夢見た移民たちの期待は、政府からは知らされることのなかった現地の悪条件に裏切られ、五年後には「集団帰国」という戦後の移民史上、前代未聞の悲劇となった。公開された外交文書には、いい加減な事前調査のまま、移民送出の日程消化だけを優先させようとした政府の姿勢が具体的に記されている。」というふうに書いてございます。この文脈に沿って質問をさせていただきます。

 まず、昭和三十一年の八月の公文書でございますけれども、当時の在ドミニカ共和国の吉田公使が、移住船の中で、船の中で、移民の方たちに訓辞をした講話の記録がございます。その記録によると、募集要項には土地を三百タレア、これは十八ヘクタールですが、三百タレア無償譲渡するとあるけれども、実は三百タレアまでのことだ、十八ヘクタールまでということだ、だから十八ヘクタール全部を渡すわけではない、勘違いするなよということを言い、そしてまた、無償譲渡すると書いてあるけれども、これは所有権ではなくて、単なる耕作する権利を与えるだけだということを、船の中で、講話で述べていらっしゃいます。

 移住者の方たちが、日本を出て、船に乗って、もう後戻りできないという状況になってから初めて、いや、実は土地についてはこういうことだったんだということをお話しされているという記録でありますが、これについて、間違いはありませんか。

鹿取政府参考人 今、先生が御指摘になったのは、昭和三十一年の八月三日の吉田在ドミニカ共和国公使からの公信であると思います。そのような講話の記録がございます。

川内委員 船の中で移住の条件が違うということを話しているということは間違いないという、今、領事移住部長の御答弁であります。

 それでは、船に乗る前に、募集要項と現実の条件が違うということを、どこかでだれかが話したという記録がありますか。

鹿取政府参考人 この問題については、昭和三十七年の国会でも議論がございました。当時も……(川内委員「記録があるかないかだけ聞いているんですよ、時間がないから」と呼ぶ)当時のやりとり、簡単に一言だけで申し上げますと、やはり、募集要項以外のことを説明したかどうか、こういう質問がございまして、それに対して、国会では、当時、昭和三十七年でございましたけれども、三十七年時点では、どこまで口頭で説明したか……(川内委員「だから、記録があるかどうかを聞いているんです」と呼ぶ)記録はございません。

川内委員 船に乗る前に、募集要項と現実の条件が違うということを話したという記録はないということを、今、領事移住部長が御答弁になられました。

 それでは、先日、参議院の予算委員会で、尾辻先生の方から、このドミニカ問題について予算委員会で質疑をされた記録がございます。この三月十日、参議院予算委員会の開かれた夕方ですね、外務省は、外務報道官高島さんが、ドミニカ問題についてこの会見で言及をされています。この会見でドミニカ問題に高島報道官が言及をされた経緯をお答えいただきたいというふうに思います。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 その日は、実は、外務省では、外務報道官が記者会見をする日に当たっておりました。外務省では、その日その日によって、大臣、副大臣、また次官、かわるがわる記者会見をしておりますけれども、その日の主な、多分、記者団からの質問に出るであろうと思われる事項については、事前に打ち合わせを関係の部局といたして、答えをするという準備をいたします。

 十日の場合は、たまたま午前中、参議院の予算委員会の模様がテレビに映されておりまして、私はそのテレビ中継を見ながら準備をしておったのでございますけれども、尾辻先生の質疑に続いて、舛添先生が、尾辻先生と外務省側とのやりとりについて言及をされました。これに対して、小泉総理大臣の方から、外務省に対する厳しい御発言がございました。この問題は必ずや記者団から質問が出るだろうと予想をいたしましたので、関係の部局であります領事移住部の担当者と十分打ち合わせをした上で記者会見に臨んで、この問題について発言をしたものでございます。

川内委員 今、報道官から、領事移住部の担当者と打ち合わせをして会見に臨んだという御答弁がございました。

 それでは、参議院の予算委員会で、尾辻議員、そしてまた舛添議員の質問に答えて、ドミニカ問題について小泉総理が何と答えているか、答弁しているか。「過去のこととはいえ、外務省として多々反省すべきことがあったと。今後、このような不手際を認め、移住者に対してどのような対応ができるか。また、ドミニカとの間にどのような友好関係を維持発展させていくことができるか。そういう中でしかるべき対応を考えたいと思います。」というふうに総理は答弁をしていらっしゃいます。

 この答弁を受けての報道官の会見であったはずでございますけれども、実は、報道官は、担当者と打ち合わせをした、逆を言えば、担当者としか打ち合わせをせずこの会見に臨んでいるわけであります。

 この中で、報道官は、総理の発言は「外務省としては重い発言だと思っています。」というふうにおっしゃっていらっしゃいますが、外務省として重い発言だというふうに言うのはどういう意味なのか、重い発言というのはどういう意味かということをお答えいただきたいと思います。

高島政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、私は、この総理の発言、また、それに伴う舛添議員のさらなる御質問、そのほかをずっと拝聴いたしながら、この事態を大変に深刻なものと受けとめました。

 やはり総理大臣が、外務省が過去に行ったことについて、多々反省すべき点があると述べられたということ、また、しかるべき対応をとるべきだというふうに御発言になったこと、これを受けて、領事移住部と密なる打ち合わせをして、領事移住部も、しかるべき者との打ち合わせをした上で、最終的に、判断として、私の考えとして、これは大変重い発言であった、この発言を受けて外務省としてきちんとした対応をする必要があるということを痛感いたしましたので、そのように発言をさせていただきました。

川内委員 高島報道官は、今、自分としてはきちんと対応したということでありますが、この総理の答弁を受けて、では、会見の前に領事移住部長は高島報道官と何らかの打ち合わせをしましたか。したか、しないかだけ言ってください。

鹿取政府参考人 私は、直接は行っておりません。

川内委員 川口外務大臣は、総理の発言を受けて、この日の夕方の記者会見でドミニカのことを聞かれるであろうということは十分に予想されていたわけでありますけれども、高島報道官に川口大臣は何か指示をされましたか。したか、しないかだけ言ってください。

川口国務大臣 その日、私はずっと仕事をしておりまして、高島報道官の記者会見がある日であるという認識も持っておりませんでした。

川内委員 では、お聞きします。

 総理がドミニカ問題について国会の中で発言をされた記録が過去にありますか、移住部長。

鹿取政府参考人 私が調べた限り、今回が初めてであると思います。

川内委員 内閣総理大臣が、国の最高の責任者が国会の中で初めてこのドミニカ問題について発言をした、しかも、不手際が多々あったと、不手際を認めたという答弁でありますが、しかし、それを受けて外務省は、外務省として記者会見に臨むのに、何らの、ただ単なる担当者と報道官が打ち合わせをしただけで会見に臨んだということで、では、よろしいですね。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 担当者と私は打ち合わせをいたしましたけれども、その担当者というのは、まず、政策立案の責任者でもございますし、また、領事移住部長とは日ごろからこの問題について話し合っている者でございますし、領事移住部長は、このドミニカ問題について大臣と密接なる打ち合わせをしております。そうした流れと、それから、私自身がかねてから持っておりましたドミニカ問題についての基礎知識、そうしたものを総合して発言をさせていただきました。

川内委員 では、今の高島報道官の御答弁によれば、総理が不手際があったということを認めたとしても、従来の外務省の方針には何ら変わりがない、総理のおっしゃることは外務省の方針とは関係ないということですね。川口大臣、どうですか。

川口国務大臣 外務省としては、当然、これはもう、この問題も含めほかの問題もすべてそうですけれども、総理の御発言というのは、これをきちんと体しまして対応をしているわけでございます。そのことと、このドミニカ問題については、現在、先生も御案内のように、裁判が行われて、係争中であるわけでございますので、この問題についての判断は、これは裁判所にゆだねるということが適切であるというふうに考えております。

川内委員 関係ないことを答えないでください。裁判のことなんか私まだ一言も言っていませんよ。

 総理の発言が、初めてこのドミニカ問題について国会の中で発言をされたにもかかわらず、外務省は全く方針を変えないんですねということを聞いているんですよ。変えるか変えないかだけ。

川口国務大臣 先ほどの繰り返しになって恐縮ですけれども、総理の御発言、御指示ということについては、これは、この問題も含め、すべて私どもはそれを体しまして対応をするということでございます。具体的に、その内容が何か。これは一般的な御指示でございますので、我々としてはそれを体して今後対応していきたいと思っているわけです。

川内委員 だから、総理の発言を体して外務省は考えるというのであれば、報道官は今までの方針をお話しされたわけですよ、総理の発言を体して外務省としては対応をとると今川口大臣がおっしゃったんだから、では方針は変更されるということでいいですね。

川口国務大臣 そのお答えも先ほど申し上げさせていただいたわけでございますけれども、今、国を相手取って争われている事柄、これについての判断、これは今裁判所にお任せをしているということでございますので、そこにゆだねるということが適切であると考えておりますけれども、総理の御指示、これは一般的な御指示でございますので、具体的にそのドミニカの問題についてはさまざまな側面、さまざまな部分があるわけでございまして、これについてこうせよという御指示ということではなかったわけでございますので、一般的にこれを体して対応させていただくというふうに申し上げているわけでございます。

川内委員 微妙に論点をすりかえられるんですけれども。

 総理は答弁の中で「不手際を認め、」というふうにおっしゃっていらっしゃるんですね。外務省は、これまで不手際をなかなか認めようとされてこなかったわけですよ。不手際を率直にお認めになられているんですね、総理は。

 そういうことで、これまでの方針を変えるのかということをお尋ねしているわけで、移住政策、今、現在の移住者の皆さんに対する政策は今の延長線上で結構だと思いますけれども、このドミニカ問題に対する外務省のスタンスというのを変えるんですかということを聞いているんですけれどもね。

鹿取政府参考人 ドミニカ問題については、先生よく御承知のとおり、長い経緯がありまして、一九六一年に、閣議決定によって、我々としてはさまざまな措置をとりました。なぜそういう措置に至ったかということは、従来からも御説明しておりますけれども、当時の国際情勢あるいは経済情勢の悪化、こういうものが我々は大きかったと思いますが、同時に、私どもとしてももう少しできることがあった、あるいは不十分な面があったということは、我々もこれまで御説明してきたとおりでございます。

 また、そういう経緯がございまして、一九六一年の閣議決定の際に、帰国される方についてはできるだけ……(川内委員「聞いていないことまで答えるなよ、時間がないのに」と呼ぶ)また、そういう措置をとったわけでございます。

川内委員 一体、何を言っているのかよくわからないんですよ。

 では、外務省としても、不手際があったということを認めるということですね。認めるか認めないかだけ言ってくださいよ。

鹿取政府参考人 私どもとしては、このドミニカの問題について、一九六一年の閣議決定に至った経緯については、これまでも、さまざまな理由があると考えております。そのさまざまな理由の中には、経済情勢の悪化、あるいは国際情勢の悪化、そういうものがあったと思いますが、同時に、やはり、そういういろいろな当時予期せぬ出来事が起こったこと、こういうものをもう少し十分に予知できなかったか、あるいは、当時、先ほど先生がおっしゃいましたけれども、調査の問題についても、それが果たして十分であったか等、問題提起があったことは事実でございます。

 また、過去の答弁においても、外務省としては、十分であったかどうかという点を聞かれれば、それは十分でなかった面もあるかもしれない、当時我々としてはできるだけのことは行いましたけれども、やはり結果を見て、結果として、もう少しできたことはあったかもしらぬ、そういうことはこれまでも答弁しておりますし、そういう面で不十分な面があった等については、これまでも私ども述べております。

川内委員 では、今の御答弁だと、総理はドミニカ問題について不手際があったということを答弁の中で確実にお認めになられたわけですけれども、外務省としては、いろいろおっしゃるけれども、最終的には不手際があったとは認めないということでいいですね。あったかないかだけ言ってください。

鹿取政府参考人 いろいろ不十分な面があったということはこれまでの国会でも答弁しておりますし、また、当時不手際があったということも、これまでの議論で、そういう理解をするのであればそういう面はあったということは言えると思います。

川内委員 いや、そういう理解じゃなくて、もう領事移住部長、ちょっとそこに座っていてよ、もう時間がない。不手際があったんでしょう。

鹿取政府参考人 私どもが今まで御説明しましたとおり、このドミニカの問題について、一九六一年の閣議決定に至った背景、これはさまざまな理由があると思います。それは国際情勢の問題であるとか経済情勢の問題……(川内委員「だから、もうさっきそれは聞いたから」と呼ぶ)また、先ほど我々として御説明しましたように、では、外務省の姿勢が完璧であったのか、こういうことを問われれば、もちろん、完璧であったと我々も言うことは考えておりませんし、当時から、我々としても、こういう経緯に至ったことについては責任を認めたわけでございます。

川内委員 責任があったと。不手際があったので責任があったと。責任を認めたということでいいですか。もうごちゃごちゃ答えないで、一言で答えてください。

米澤委員長 移住部長、簡単にお答えください。

鹿取政府参考人 当時ドミニカに移住された方々が所期の目的を達成せず帰国されたこと、こういうことについて外務省としても責任を感じている、こういうことは申し上げております。

川内委員 それでは、総理発言の中で、外務省として多々反省すべき点があったというのは何を指すのか、不手際とは何を指すのか、しかるべき対応というのはどういう対応なのかということについて、総理発言の後、総理に確認するなりあるいは協議するなりしていますか。しているかしていないかだけ言ってください。

鹿取政府参考人 総理官邸とは常に密接に協議しております。

川内委員 では、お聞きします。外務省として多々反省すべき点があったと総理がおっしゃっているのは何を指すんですか。

鹿取政府参考人 当時の政府の対応、この移住問題についての政府の対応についてはいろいろ議論がございました。例えば調査の問題、また、先ほど先生が申し上げましたように、移住者の方に対して十分情報が提供されたのか、こういう問題も提起されております。こういうような問題提起を踏まえての御発言だったと考えております。

川内委員 御発言だったと考えておりますということは、総理と協議はしていないということでしょう。

鹿取政府参考人 私どもとしては、総理の発言を体しまして、総理の、移住者の方々に対して、また、日ドミニカ関係のために対応をとる必要がある、こういうことを言っておられました。それに対しまして、その御指示を体しまして、我々としては、今、いろいろ考えていきたいと考えているところでございます。

川内委員 総理の発言は重いと言っていながら、全くこれまでと方針を変えることなく言い逃れに終始している外務省の様子を、多分、総理は大変残念にお思いになられるというふうに思います。

 それでは、このことだけをやっていてもしようがないので、参議院予算委員会で尾辻議員が確認をしたことをもう一度何点か確認をさせていただきますが、イエス、ノーでお答えください。

 募集要項が農林省作成の募集要領に基づいて作成をされ、募集要項と募集要領は一字一句違わないということを先日の参議院予算委員会でお認めになられましたけれども、これは認めたということでいいですね。

鹿取政府参考人 仮名遣い等、違うところはございますので、文字どおり一字一句同じであるということではないと思いますが、内容は同じでございます。

川内委員 それでは、この募集要項の作成者が外務省であったか海協連であったかということは争点になっているんですけれども、国会答弁では、外務省は、これは海協連がつくったんだということを盛んに言っています。しかし、これは外務省がつくったというふうに思わせる文書が、公開された外交文書の中にたくさんございます。

 昭和三十一年八月九日付、吉田公使から矢口移住局長あて「万事(ドミニカ政府の)農務省と当館との話合で決定・実行されるものと考えて良いと思います」、「海協連の新聞記事間違っていますから、至急訂正してください」。あるいは、昭和三十一年十月十七日「募集要項作成上必要につき左記事項お調べの上結果至急回電ありたい」、これは外務大臣から吉田公使にあてた電報であります。さらに、昭和三十一年十月二十七日、吉田公使から重光外務大臣にあてて「病虫害対策に関し、我方募集要綱にはドミニカ政府の負担において殺虫対策が講ぜられる旨記されてあるが、」云々。

 これはもう無数に外務省がこの募集要項作成に携わったというふうに公文書で明らかでありますけれども、募集要項の作成者は外務省ですか、海協連ですか。

鹿取政府参考人 募集要項の作成は海協連でございます。

川内委員 募集要項の作成に具体的に主体的に加わったのは外務省でしょう。

鹿取政府参考人 先生よく御承知のとおり、募集要項は、農林省あるいは政府が作成する募集要領に基づいて書かれます。その募集要領を作成するに当たっては、外務省がドミニカ政府から聞いた情報あるいは調査の結果、そういうものを踏まえて募集要領がつくられます。その募集要領に基づいて書かれるのが募集要項でございます。

川内委員 それでは、募集要領でも募集要項でもいいですわ。とにかく、ドミニカ移住に関して、主体的に具体的に情報を集め、そしてその作成に中心的に携わったのは外務省ですね。

鹿取政府参考人 まず、政府が作成します募集要領にはさまざまな情報があります。

 例えばその地域の情報、あるいはどういう形で募集を求めるか、こういう問題は、その地域の情勢は現地の大使館が集めると思います。また、どういう形の移住者を募集したらいいか、こういう問題は、相手国政府との交渉によって決まります。他方、土地の性状でありますとか水の状況、こういうものは、また地元の海協連の事務所あるいは農林省の関係者、こういう方が集めることになります。

 したがって、募集要領というのは、外務省だけではなくて、関係省庁あるいは海協連の事務所、関係者の総合力、関係者のそれぞれの役割に応じて作成されるわけでございます。

川内委員 では、募集要領並びに募集要項の作成に外務省が携わったということは間違いないですね。

鹿取政府参考人 募集要領の作成に外務省も携わっていることは事実でございます。

川内委員 農林省あるいは海協連あるいは相手国政府、いろいろな連絡調整を外務省が中心になってやった、中心という言葉が嫌なら、真ん中に外務省があったということでいいですね。

鹿取政府参考人 外務省が調整して作成したということは事実でございます。

川内委員 それでは、もう時間もないので、結局、もう一つ、尾辻議員からの指摘で確認したいことがあるんです。

 参議院予算委員会の議事録を見ていただきたいんですが、ブラジルの移民の事前調査と比べてドミニカ移民の事前調査の報告書が本当にずさんであったということを尾辻議員は指摘をされているんですけれども、それに対して、鹿取移住部長は、全然関係ないことをお答えになられて、ずさんであるということを否定されていないんです。ブラジルの調査報告書はこんな分厚い報告書で、ドミニカのものはほんの十何ページかの薄い、薄っぺらな報告書です。

 ドミニカの事前調査はずさんであったということはお認めになられますね。

鹿取政府参考人 先ほど申し上げましたように、外務省の調査が完璧であったかという議論は過去にもございまして、それに対して、不十分な面もあったと思われるということは答弁しております。

 しかしながら、政府といたしましては、多数回にわたり調査団を派遣し、ドミニカ政府や現地高官からも情報を入手するなど、当時としてはできる限りの情報収集を行っております。政府としては、政府の調査がずさんだとは考えておりません。

 また、調査報告の話……(川内委員「もういいです、もう時間ですから」と呼ぶ)一言だけ言わせていただければ、あと、今、十五ページの調査報告あるいは短い調査報告と御指摘になりましたが、それ以外にも、近藤技官あるいは中田技官の調査結果をまとめた五十六ページにわたる調査報告がございます。

 また、ブラジルとの比較ということでございますけれども、当時、戦前の昭和六年だったと思いますけれども、確かにブラジルに調査に行って、大きな調査報告が出ております。それは、当時、ブラジルのアマゾナス州政府から百万ヘクタールの原始林、こういうものの無償譲渡を受けるという話がございまして、百万ヘクタールというのは大変な広い面積でございます。この大変な広い面積を調査するに当たって、時間もかかり、また調査の結果も大きなものができたと思いますので、そういうものと簡単にはドミニカの状況は比較はできないかと思います。

米澤委員長 川内君、時間が参りました。

川内委員 はい。

 不十分だったがずさんではなかったということであろうと思いますが、川口大臣、最後にちょっと一言だけ。

 先日の御答弁の中で、ドミニカ移民の中には成功している人もいるとおっしゃっていらっしゃいますが、これは大臣、配分された移住地で農業移民として成功している人は一人もいないんですよ。政府が当初約束した移住地で農業をやって成功している人は一人もいないということを大臣が知っていて、成功している人もいるからいいじゃないかみたいなことをおっしゃられたのであれば、ちょっと罪が重いということを御指摘申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

米澤委員長 次に、サイバー犯罪に関する条約の締結について承認を求めるの件、児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件及び武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官門司健次郎君、外務省総合外交政策局国際社会協力部長石川薫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、警察庁長官官房審議官知念良博君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、警察庁刑事局暴力団対策部長近石康宏君、総務省総合通信基盤局長有冨寛一郎君、法務省民事局長房村精一君、法務省刑事局長樋渡利秋君、経済産業省大臣官房審議官岩田悟志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

米澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

米澤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。私の方は、与えられた時間の中で、サイバー犯罪防止に関する条約について質問させていただきます。

 このサイバー犯罪に関する条約、基本的には、コンピューターが普及して非常に国際的に国境がなくなった感があります。そういった中で、犯罪をきちんと取り締まる、そういう趣旨は、私も非常にそこは意義があると思っております。

 順次質問をさせていただきます。

 まず、コンピューター犯罪ですけれども、実際の被害の実態というのはどういう状況でございますか。お聞きしたいと思います。

伊藤政府参考人 昨年、警察庁の方で、企業、教育機関、行政機関等七百二十三団体に対しまして不正アクセス行為対策等の実態調査を行ったものでございますけれども、これによりますと、過去一年間に情報セキュリティーに関する被害を受けた団体が約六一%に上っております。このうち九二%はコンピューターウイルス感染の被害ということでございますけれども、警察におきましては、昨年は不正アクセス行為等につきまして百四十三件を検挙しておりまして、この検挙件数は一昨年と比べましても四十一件、四〇%強増加しているという状況でございます。

末松委員 これに対して、警察庁の方で百四十三件対応したということですけれども、実際に、対応上、問題点とかそういったことを感じて、何かそれに対する対策を練られたことはありますか。

伊藤政府参考人 問題点ということでございますけれども、これまでは、コンピューターウイルスの作成、供用罪がないといったようなこととか、通信記録の保全要請等の捜査手続の整備が必ずしも十分でないというようなことから、被害実態に応じた対処が困難な場合も生じているところでございます。

末松委員 そうしますと、このサイバー犯罪に関する条約の必要性になるんですけれども、本当に必要だということに結論としてもなるわけですか。

伊藤政府参考人 今回のサイバー犯罪に関します条約で義務化されております刑法あるいは刑事訴訟法等の国内法の整備がなされてまいりますと、こうしたサイバー犯罪により的確に対応できるものと考えております。

末松委員 聞くことが多いので順次聞いていきますけれども、このサイバー犯罪条約について、見ると締約国がまだ四カ国しかないんですね。非常に少な過ぎるんじゃないか。実際に署名国は、アジアの関係の国はまずなくて、ロシアとかもなく、三十七カ国中アジアの国なんというのはないわけですよ。そして締約国は、アルバニア、クロアチア、エストニア、ハンガリーの四カ国だけだ。実際に署名したのは二〇〇一年ですか。

 そうすると、署名国の数が少なくてしかも締約国の数が非常に少ない、この時点で我が国として批准を急ぐ必要というのはあるんでしょうか。もう少し慎重に見た方がいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、IT分野の国家戦略でございますe―Japan計画におきまして、情報セキュリティー対策への取り組み対策の整備を国の基本方針としております。サイバー犯罪条約を締結することは、情報セキュリティーの向上及びこれに対する信頼を確保し、電子商取引の円滑かつ安定的な実施を可能とし、我が国経済の安定的発展に資すると考えております。

 ただいま委員から各国の締結状況につき指摘がございました。現状を御報告申し上げますと、発効要件五カ国という要件がございますが、あと一カ国の締結で発効することとなっております。他方におきまして、アメリカ、カナダ、それからフランスなどの欧州各国が、締結に向けて国内法の整備あるいは議会での審議ということを進めているというふうに承知しております。

 したがいまして、我が国といたしましても、この条約を早期に締結し、サイバー犯罪の抑止に向けた世界的な取り組みに我が国として主体的かつ積極的に参加し、イニシアチブを発揮してまいりたい、かように考えている次第でございます。

末松委員 イニシアチブを発揮するのはいいんですけれども、今のお話によると米国とかカナダとか幾つかの国が国内法の成立に向けて頑張っているということなんですけれども、この四カ国に日本ですよね。さらに数カ国やっていますと。そういう話だったら、わずか十カ国内外で、この辺でサイバー犯罪防止条約と叫んでも、実効的に余り意味がないと思うんですけれども、どう思われますか。

石川政府参考人 委員御案内かと存じますけれども、この条約は欧州評議会というところがイニシアチブをとって交渉が進められまして、欧州評議会の非メンバー国といたしましては、アメリカ、カナダ、南アフリカ、そして日本が一緒に条約の作成交渉を行ったという経緯がございます。欧州評議会の各国、これは順次批准あるいは加入をしていくものと予想されております。

 他方、先ほどアジアについてのお尋ねもございました。アジアについて一言御報告させていただきますと、例えば二〇〇二年十月のAPECにおきまして、テロリズムとの闘い及び成長の促進に関するAPEC首脳共同声明というものが出されました。そこにおきまして、サイバー犯罪条約に合致したサイバー犯罪関連の包括的諸法律の制定促進が言明されておると承知しております。

 また、これを踏まえまして、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン等のAPEC各メンバー国は、テロ対策行動計画の一環として、御審議いただいておりますこの条約の趣旨と基準に合致した法整備を鋭意進めており、これはアジア各国の熱意のあらわれであろうか、このように考えております。

末松委員 何か見通しはありますか、アジア各国が何年ぐらいにどのくらいかと。あるいは、そういったことを、ちょっと国会に持ってくるのでも余りに少ない、そういった調査というのは行うべきじゃないかとも思うんですけれども、いかがですか。

石川政府参考人 この条約の加入手続からお答え申し上げたいと思います。

 欧州評議会に加盟していないアジア各国がどうやって入るかということになりますと、日本のようにこの条約の作成交渉の過程から参加しております国を除いては、まずこの条約の効力が発生する必要がございます。これにつきましては、先ほど御報告いたしましたようにあと一カ国で発効するわけでございますけれども、その後に欧州評議会閣僚委員会の招請を受けるという形で加入することができます。したがいまして、具体的に、あるアジアの国がこの条約を締結したいというふうに考えました場合には、欧州評議会との間で調整、交渉が行われていくことになる。

 今、各国の様子はどうかという御指摘がございました。先ほど申しましたASEAN諸国、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン等では、例えばタイにおきましては、米国と共同でサイバー犯罪に関するシンポジウム、セミナーを開く等、中身についての認識を深める、あるいは法整備を進めるということを推進しておりまして、私どもといたしましては、アジア諸国もこの世界的なサイバー犯罪との闘いに鋭意参加していただくように期待している次第でございます。

末松委員 今、石川部長の方から、国際テロリズム、テロについての、ASEANで、そういった言葉、APECですか、その闘いをしているという話がございました。テロについてもこれは主要な関心事になっているんですか。つまり、テロのためにこのサイバー犯罪条約をつくる、そういうふうなことも大きな目的になっているんですか。

石川政府参考人 承知いたします限り、サイバーテロという言葉の定義はこれまで必ずしも確定したものはないと伺っておりますけれども、しかし、それは例えば国家の経済の根幹を揺るがすようなもの、そういった規模そのほかに着目して、いわゆるサイバー犯罪なのか、あるいはこれはもうテロだと認定するのかという判断があるやに仄聞しております。

 この条約は、基本としましては、あくまでサイバー犯罪ということを目途としてやっております。したがいまして、先ほどの、定義があるないという問題はございますけれども、この条約に関する限りは、サイバー犯罪が蔓延しているという世界の現実を踏まえて、それに何とか対処しようということで交渉が始まったものでございます。

末松委員 私が聞いたのは、問題意識として必要だと思うから言っているんですけれども、国際テロリズムというものがあって、そしてサイバーテロを行おうとしているということを外務省も十分情報収集されておられて、それに対して、この観点からもこの条約をしっかりとやっていかなきゃいけないというような認識でいるのかどうか。そこを、大臣はどうですか、そこについてそういう認識をお持ちでこの条約を提出というか、こちらの方に承認を求められてこられているんですか。

川口国務大臣 この条約ですけれども、これはいろいろな行為が類型的に犯罪とされているわけですね。それは、例えばウイルスの製造もありますし、コンピューターシステムの妨害というのもありますし、さらにコンピューターを使った、例えば児童ポルノとかそういった犯罪というのも入っているわけです。広い範囲を含めた犯罪である。したがって、潜在的にはいろいろなものがその対象となり得る。そういった広い視野を持つということは私は重要なことだと思っておりますけれども、いろいろなものが類型として入っているということでございます。

末松委員 テロについてもそういった観点からやってもらいたいと逆に私は思うわけですよ。だから、そういうことをしっかりと、大臣の方はお持ちだと思いますけれども、そこはその観点から、ちょっと大臣の方に再度この点についてお伺いしたいんですが、アジア諸国等を含め、あるいは世界各国に向かって、もし日本がこれに対して批准を行った場合には、きちんと外交努力を行って、みんなこの条約の加盟国になってもらうような決意がおありなのかどうか、そこを確認したいと思います。

川口国務大臣 この条約の効果というのは、多くの国が入れば入るほど実効性が高まるということであると私は思っております。したがって、アジアの国も含め、今後条約に広く入ってもらうように働きかけていくことは大事だというふうに思います。そのためには、まず我が国が批准をして締結をしなければいけないということだと思います。

末松委員 そうすると、かなり大きな思いの中でこの条約を国会に今提出してきたということだということを私も認識をしました。

 ところで、この条約ですけれども、国内法上には担保はされているんですか。何か、話によると九〇%以上の国内法的な要請が既に満たされているというような説明もあったんですけれども、その辺はいかがですか。

門司政府参考人 非常に多岐にわたりますので、簡単に御説明いたします。

 我が国においては、条約上義務づけられている規定のうち、既に国内実施法が存在する部分がもちろんございます。一方、いまだ法整備がなされていない部分につきましては、新たに法改正を行う。また、この条約に、一定の留保などの宣言を行うことを認める規定がございます。したがって、そういう宣言を行うことによって、結果的に、新しい法整備とその宣言によってすべての条約の義務が担保されるということになってございます。

 新たに法改正を行うものとしましては、電波法、有線電気通信法、刑法、刑事訴訟法、国際捜査共助法、不正アクセス禁止法及び児童買春・ポルノ法、こういったものの法改正案がいずれも今国会に提出されていると承知しております。

末松委員 それでは、具体的な内容について、今国内法でカバーされているんだ、あるいはされていない部分は留保できる、そういうような御説明がありましたので、具体的な内容に沿って質問をしていきます。

 例えば、この条約は、外国政府から捜査依頼があった場合、相互援助ということで日本も協力して捜査をしていかなきゃいけない、こういうことが書かれております。この捜査依頼があった場合、コンピューターの犯罪はこれから莫大な量に上っていくんでしょうが、一つ一つ、海外からそういった依頼がなされてきた場合、協力する、しないという判断はどこが実質的に行うんですか。

石川政府参考人 条約上の規定についてお答え申し上げさせていただきますが、この条約に基づく相互援助の要請を受けた締約国は、一つには、この要請が政治犯罪またはこれに関連する犯罪であると自国が認める犯罪に関係する場合、それから二つ目ですが、当該要請の実施により自国の主権、安全、公の秩序その他の重要な利害を害されるおそれがあると自国が認める場合にその要請を拒否することができるほか、三つ目ですが、自国の法令に定める理由に基づいてもこの要請を拒否することができると、二十七条四項、二十五条四項において規定されております。

末松委員 そうすると、手続はどうなるんですか。外務省が最終的にはそれは間に立ってやるんでしょうけれども、実態上は、法務省あるいは警察、そういったものが実際上の判断をしていくんですか。

樋渡政府参考人 本条約は、捜査共助につきまして締約国の法令に定める条件等に従うものとしておりまして、外国から我が国に捜査共助の要請がありました場合には、法務省としまして、国際捜査共助法に従ってその可否を判断することになると思います。

 同法によりますれば、非政治犯罪性、双罰性、証人尋問等の不可欠性などの二条に定める共助の制限事由がなく、かつ法務大臣が相当と認める場合に捜査共助を行うものとされております。

末松委員 そうすると、国際捜査共助法ですか、そこで実際に法務省が独自の判断で、するしないということをやることができる。つまり、その理由を相手国政府に対してしっかりと述べて、依頼を断ることも十分できるという理解ですね。

樋渡政府参考人 何が何でも嫌だからお断りするというようなことは非礼でできないというふうに考えますが、先ほども申し上げましたが、本条約は、締約国に対して、締約国の国内法の範囲内において可能な限りにおいて最大限の援助を行うことを求めるものでありまして、我が国においては、相当性の判断を含めて国際捜査共助法の規定を適用すべきものと承知しております。

 一般論といたしましては、条約に基づく要請でありましても、当該事案の内容、我が国の刑事手続に対する支障の程度、共助に伴う我が国の関係者及び関係機関の負担等の諸般の事情を総合的に判断しまして、事案によっては、相当性を欠くとして捜査共助を拒否することも考えられると思います。

末松委員 ちょっと実態を知りたいんですけれども、今コンピューター犯罪で大体月に何件ぐらいそういった犯罪が、捜査をしているような状況なんですか。大体、答えられる範囲で結構ですから、答えてください。

伊藤政府参考人 国内での捜査ということでございましょうか。

 先ほど申しましたように、昨年、不正アクセスの関係では百四十三件の事件を検挙したわけでございますので、そういった意味で、月平均に直しますと十数件ということになります。これは、外国との関係というわけではなくて、国内で行っておる捜査の数でございます。

末松委員 そうすると、国際的に、この法律が批准されれば、それでネットワークが大きくなれば、いろいろな国からどんどん、コンピューター犯罪に日本が関係しているということで捜査依頼が来るという話なんですけれども、そうなると、警察の捜査能力というのか、それは大丈夫なんでしょうか。

 今、月に十数件やるということが、例えば月に百件とかあるいは三百件とか、いろいろな国からいろいろなことを言ってくる。先ほど法務省の方から、忙しいからだめだよという理由は非礼でできないという話であったかもしれませんけれども、そこは、この条約を履行するには、ある程度のきちんとした対応も、体制もとっていかないといけない、そういうふうに思うんですけれども、警察の捜査能力はどうなんですか。

伊藤政府参考人 外交ルートによりまして、サイバー犯罪に関しまして国際捜査共助要請を受けた数につきましては、過去三年間におきましては平成十四年の一件でございました。しかし、以上のほかに、一般にサイバー犯罪を捜査する上で国際的な協力体制というものは重要でございます。警察といたしましても、外国の関係機関との二十四時間コンタクトポイントを既に設置して、情報の交換を行っているところであります。

 サイバー犯罪条約の締結によりまして、外国関係機関からの要請がこれまで以上に増加することは十分予想されるところでありますけれども、警察としましては、十分に対処できるための所要の体制をとるように努めてまいりたいと考えております。

末松委員 その所要の体制というのは、例えば外国人が日本国内でサイバー犯罪を犯すと、聞き取り等で語学の能力とか、あるいはコンピューターの操作の習熟というんですか、そういう専門性がいろいろとまた必要になってくるんですが、そういった能力は警察庁にあるんですか。あるいは、もし育成するんであれば、育成する体制というものを考えているんですか。

伊藤政府参考人 警察庁におきましては、サイバー犯罪に的確に対処するために、平成十一年四月に警察庁の情報通信局に技術対策課を新設しまして、都道府県警察のサイバー犯罪捜査を技術的に支援する体制を構築したところであります。また、平成十三年四月からは、管区警察局におきましても技術対策課を設置しまして、技術支援体制の強化を図っております。

 また、来年度になりますが、平成十七年度におきましては、警察庁生活安全局にサイバー犯罪を専門的に対処するための情報技術犯罪対策課を設置するとともに、各都道府県の情報通信部に、各都道府県警察を技術的に支援するための情報技術解析課を設置する準備を進めているところであります。

 また、人材の確保についてでございますけれども、都道府県警察におきましては、即戦力となる捜査員の確保のために、民間企業等におきましてシステムエンジニア等としてこれまでコンピューターに関連する経験を持っております人材を中途採用しまして、これらの人材については、さらにサイバー犯罪の予防に必要な知識等に関する広報啓発の実施とか、あるいは相談等を対応しております情報セキュリティーアドバイザー等にも活用しているところであります。

 また、部内の人材育成という観点におきましては、警察庁におきまして、警察庁職員及び都道府県警察の職員に対して専門的な教養を行っているところでありますし、また都道府県警察におきましても、民間企業の研修などによりまして捜査員の知識、技術の向上を図っているところであります。

末松委員 体制についてはいろいろと考えておられるということがわかりました。

 また、条約の分についてお伺いしますけれども、これは、外国は外国で国内法をつくるわけですね、立法措置を行う。そして、日本は日本で、既にほとんどそろっているという話がございましたけれども、国内法の規定で対応する。そこに別に共通の内容がない場合も十分想定されるわけですよ。

 例えば、コンピューターウイルスに対する犯罪が外国では禁錮五年とか十年、そういうふうな罰則規定になっていて、日本ではそれとは違う場合もあるわけですけれども、こういうふうに外国の法律と日本の法律が異なった場合、これは相互援助の関係でどのような扱いになるんでしょうか。そこをお伺いします。

門司政府参考人 条約上の仕組みについて御説明いたします。

 捜査共助につきましては、この条約上、捜査共助の対象となる犯罪の量刑の軽重により異なった取り扱いが求められているわけではございません。「相互援助は、要請を受けた締約国の法令に定める条件又は適用可能な相互援助条約に定める条件に従う。」ということになっております。

 他方、犯罪人の引き渡しの方ですが、これは、この条約に、双方の締約国の法令において、長期一年以上の自由を剥奪する刑またはこれよりも重い刑を科することのできる犯罪について締約国間で引き渡し可能な犯罪とみなすこととし、その上で、犯罪人引き渡しは、請求を受けた締約国の法令に定める条件または適用可能な犯罪人引き渡し要件に定める条件に従うということとなっております。

末松委員 ということは、日本国については、日本国の法令の範囲内でその法令に従ってやれば、何らこの条約の枠組みを阻害するようなことはないという解釈でいいわけですね。

門司政府参考人 先ほどからも答弁が行われておりますけれども、条約の二十五条におきまして、捜査の共助は要請を受けた締約国の国内法に定める条件に従うということとされております。現在、我が国の国際捜査共助法におきましては、共助の拒否事由に該当しない場合であっても、法務大臣が相当性を判断し、相当と決める場合にその要請に応じることとされております。したがって、相手国からの具体的な要請の内容に応じまして適切な対応がとられるということとなると承知しております。

末松委員 ちょっとテーマを変えまして、この条約によって、例えば人権が侵害されたり、あるいは通信の秘密が侵されたり、そういうふうな点にこの条約はどういう配慮が払われているのか。これが重要でございますので、質問させていただきます。

 我が国の通信傍受法、いわゆる盗聴法について、民主党は、捜査機関の盗聴を安易に認めるべきではないという立場から、通信傍受法の考え方に反対をし、その法案の廃案について私ども提出をしてきました。

 盗聴法では、もしそういうような犯罪が起こった場合に、実際に警察等が盗聴するという場合に、管理者、電話についてはNTTの職員ですか、が立ち会いのもとで、裁判官の令状をとって盗聴を認めているということですけれども、この条約では、そういった常時、常時というか必要があるときに盗聴あるいは通信の傍受、これを行うというのは、プロバイダーの立ち会いのもとでリアルタイムで傍受を認める、こういうことになるんでしょうか。

門司政府参考人 傍受のお話でございますけれども、条約の二十一条でございます。この条約は、国内の権限ある当局に対して、コンピューターシステムによって伝達される自国の領域内における特定の通信に係る通信内容について、技術的手段を用いることにより、リアルタイムで収集し、または記録する権限を与えること、すなわち権限ある当局自身ですね。それから次が、その当局が、インターネットサービスプロバイダーの既存の技術的能力の範囲内で、当該当局の通信内容の収集、記録に当たり、これに協力、支援させること。すなわち、当局がプロバイダーに支援、協力をお願いすることと定めております。さらに、この上で、インターネットサービスプロバイダーに対しては、こういった権限の行使の事実を秘密のものとして取り扱うよう義務づけること、こういったことが条約の規定で定められております。

末松委員 そうすると、この条約をそのまま日本において適用した場合に、例えば、そういったプロバイダーの立ち会いのもとで、そういう通信傍受が裁判官の令状をとれば可能という形で実際に適用されることになるんですか。これは国内官庁あるいは法務省の方はどうなんですか。

樋渡政府参考人 まず、大前提といたしまして、今回の条約に基づく我が国の法整備では、通信傍受については何らの改正を行うものではございません。

 コンピューターシステムによりまして伝達される通信内容の傍受は、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律に基づいて行われるものでございまして、同法に列挙された薬物犯罪、銃刀犯罪、集団密航または組織的な殺人について高度の嫌疑がある場合において、これらの犯罪の実行に関連する通信が行われる蓋然性があり、他の方法によっては事案を解明することが著しく困難であると認められるときに、傍受すべき通信が行われる蓋然性のある特定の通信手段に限り、裁判官の発する令状により行うことができるというものでございます。

末松委員 となりますと、国内で犯罪が起こったときに、今の別表三ですか、にある麻薬とかあるいは銃器法違反とか、そういったものに対して、別にこれは条約がなくたって今でも取り締まっているわけですね。それは、コンピューター関連で証拠を集めようと思った場合には、それはやっているんですね、国内法で、通信傍受法で。

知念政府参考人 国内での通信傍受法の適用事例でございますが、平成十二年以降、四件と承知をしております。

末松委員 コンピューターの関係でやっているのですか、コンピューター。

知念政府参考人 対象の事件は、いずれも薬物の密売事件でございます。

末松委員 ちょっと、私の質問を聞いてくださいよ。電話の盗聴というんじゃなくて、コンピューター、サイバーの犯罪のようなケースであったら、サイバーの犯罪について、実際にリアルタイムで、裁判官の令状のもとで、プロバイダー立ち会いのもとでやることになるんですか。つまり、この限定が、日本人で、国内で犯罪が起こった場合にその法律が適用されているわけですよね。ちょっとこれはサイバー条約とは別に考えて、今そこの適用されているのかどうかということを、あるいは適用されるのかということを聞きたいんですよ。

樋渡政府参考人 通信傍受法に基づきます通信傍受に関しましては、毎年国会にその施行状況について御報告をさせていただいておりまして、先ほど警察庁で御回答されましたように、過去四件でございますが、いずれも電話による傍聴でございます。(末松委員「いや、コンピューターの方」と呼ぶ)それで、コンピューターシステムを使っての傍受というものがなかなか機能的にどうなのか、それは除きまして、そういうコンピューターシステムによる傍聴というものが可能でありますれば、先ほどの要件で、裁判所の令状をとった上ででき得るものと考えます。

末松委員 では、既存の国内法でそれは可能だということが、というか、そういう形になるだろうと。それはどういう通信形態かどうかによるというのが今の法務省の回答でありました。

 そうすると、この条約に関して、その共助、相互援助の関係で、相互協力といったことで海外からどんどん引き合いが出てきた、そういった場合に、この条約の関連ですよね、そういったときに、今の通信傍受、それをやるということになるんですか。

樋渡政府参考人 御指摘の場合に適用される国際捜査共助法によりますれば、外国の捜査機関からの要請を受けて通信傍受を行うことはできません。

末松委員 それは国際捜査共助法の第八条に書いていますけれども、その八条の中に、外国についてできないとは書いていないんですよ。どう答えますか。

樋渡政府参考人 御指摘の国際捜査共助法八条は、共助に必要な証拠の収集に関する処分につき定めておりますところ、同条は、取り調べ、鑑定嘱託、実況見分、任意提出の要求、捜査関係事項照会、差し押さえ、捜索、検証を列挙しておりまして、通信傍受はこれに含まれておりません。

末松委員 ということは、コンピューターでなくても、電話でもそれはできないし、コンピューターについてもそれはできないということで、そういう理解でいいですね。改めてお伺いします。

樋渡政府参考人 現行の国際捜査共助法にのっとる限りできません。

末松委員 くどいようですけれども、例えば、この日本の外務省なら外務省のコンピューターのシステムを壊そうということで、日本で、例えば外国人がいてコンピューター犯罪をやったということを外国から指摘をされて、そこで外国の捜査機関がぜひ彼らを盗聴させてほしいというような依頼があったときには、それは日本としてはお断りする以外にない、法的にないからそれはできないんだということで断るしかない、これが回答ですね。

門司政府参考人 まず、外務省の方から条約の規定について説明させていただきます。

 三十四条に、「通信内容の傍受に関する相互援助」という規定がございます。これは、「締約国は、自国に適用される条約及び国内法によって認められている範囲内で、コンピュータ・システムによって伝達される特定の通信の通信内容をリアルタイムで収集し又は記録することについて、相互に援助を提供する。」ということでございますから、外国から要請があった場合には、まさに自国の国内法によって認められる範囲内でやるということになっております。

末松委員 そこを最初に言ってもらえば話はスムーズにいったんですけれども。わかりました。では、次に移らせていただきます。

 IT産業は、この条約を締結することによって過大な負担を負うんじゃないかという懸念があります。特に、プロバイダーに過大な負担がかかるんじゃないか、この点についてはいかがですか。これは経産省ですか。

岩田政府参考人 IT産業への過大な負担という点についてのお尋ねでございますけれども、サイバー犯罪につきまして適切な取り締まり、あるいは捜査手続の迅速、円滑な実施というのは、産業界自身もいわばサイバー犯罪の被害者となり得る可能性がございますので、非常に重要でございます。ただ、他方で、委員御指摘のとおり、民間事業者、産業界への過大な負担というものは回避をしていくというのが必要であろうというのが我々の認識でございます。

末松委員 わかりました。

 あと、共謀罪というのがありまして、共謀してやる。この罪がこの条約と関係があって、これが問題であるという指摘もなされたことがあるんですが、これは、共謀罪というのは私自身この条約に余り関係ないような気もするんですが、そこは明確に、関係あるのかないのか、答えてください。

石川政府参考人 関係ございません。

末松委員 あと、未遂犯も処罰するということでございますけれども、これについて整理はどうなっていますか。

樋渡政府参考人 電子計算機損壊等業務妨害罪につきましては、今日、コンピューターネットワークの発達によりまして、遠隔から容易に行うことができ、また広範囲に被害を及ぼし得るものとなっており、電子計算機の損壊等の攻撃が加えられ、それによって実際に動作阻害といったものが発生する前でありましても、これを処罰する必要性が高いことなどから未遂罪を設けようとしたものでございます。

 サイバー犯罪条約との関係につきましては、条約は留保を認めつつ、システムの妨害の未遂の処罰を締約国に求めておりますところ、電子計算機損壊等業務妨害罪の未遂罪を設けるのは、この要請に沿ったものでございます。

末松委員 わかりました。

 では、次々に、ちょっと時間もなくなってきたので進めますが、この条約は国家犯罪は対象にされていないんですよ、全く。

 外務大臣、質問にもあったんですけれども、ECHELONというのを御存じですか。

川口国務大臣 報道ではいろいろECHELONについて聞きますけれども、我々として、その存在については把握をいたしておりません。

末松委員 どういうふうに報道で認識していますか。

川口国務大臣 報道で私が聞いていますのは、幾つかの国、主要な国が一緒にいろいろなシステムを使って通信の傍受を行っているという趣旨の報道を聞いております。

末松委員 一般に、いろいろと本なんかを読んでみますと、通信、特にコンピューター、電話からいろいろと盗聴あるいは傍受しているということが言われているわけです。これは外国のインテリジェンス機関がかかわっているというふうに言われていますけれども、国家が、こういったインテリジェンスというものを通じて、この条約を使って、例えば、インターネットあるいはサイバーの犯罪があるということを申し立てながら、日本なら日本に圧力をかけて、そしてターゲットとなるプロバイダーにも圧力をかけて、そして情報をとっていく、そういうふうな危険性もやはりそれは考えなきゃいけないと思うんですね。

 そういったことで企業情報あるいは個人のプライバシーあるいは国家の機密がどんどん奪い取られていくのであれば、非常にそこは問題だと思うんですが、そういう危険性について、政府の認識はどうですか。

石川政府参考人 委員の御質問がECHELONということからのお尋ねでございました。

 大臣から申し上げましたように、我が国としてそのECHELONの存在について把握してはいないということは申し上げているとおりでございますので、あえて一般論でお答えさせていただければと思います。

 一般論として申し上げさせていただきますと、この条約は、サイバー犯罪に効果的に対処するとの観点から、刑事分野における各国の法制度をできる限り調和させ、また刑事分野における各国間の協力を推し進めようとするものでございまして、そもそも、国家による犯罪と申しましょうか、そういったものを前提として各国の行動を規制しようとする条約ではございません。

 他方におきまして、この条約により禁止される行為につきましては、国家自体が処罰の対象となるものではありませんけれども、犯行を行った個人については、仮にその行為がある締約国の公的立場にある者によりなされた場合であっても、この条約の規定に従い、犯罪として取り締まられることになります。

 この条約との関係で念のため申し上げたく存じますのは、国家が憲法上の人権保障の原則や国際的な人権条約に反して他国に圧力を加えたり違法行為を行うといったことについては、この条約は想定していないというふうに考えております。

末松委員 日本も、第二次世界大戦中は、暗号解読なんて日本はされていないと、軍部も、ということを想定していたわけですよ。それで極楽トンボをやっていたんですけれども、そういったことをやはり政府の方としてもきちんと見る目がなきゃいけない。

 そういった目で見ますと、この条約は、欧州評議会が、締結された場所でもあり、欧州評議会の事務局が本来の事務局的な役割を担っているわけですよね。なぜ国連のような中立的な機関じゃなくて欧州評議会なんですかということについても、多少、インテリジェンスの国家機密の保護とかあるいは企業秘密の保護とかいうところの観点から考えれば、ちょっと大丈夫なのかなという気がするんですけれども、そういうふうに気を回すのは過剰な気の回しという判断ですか。

石川政府参考人 欧州評議会でこの条約が作成されたことは、委員御指摘のとおりでございます。

 欧州評議会というところは、御案内と存じますけれども、人権、民主主義制度の建設強化のほか、司法、行政、文化、スポーツ、教育、マスコミ、社会政策など幅広い活動を行ってきておりまして、これまで百九十本余りに及ぶ多国間条約を作成するなど、幅広い分野でのルールづくりを行ってきております。そうした豊富な経験から、サイバー犯罪という新しい分野における多国間条約をつくる土壌があったんだというふうに考えられます。

 また、欧州評議会の多くの加盟国におきましては、コンピューターネットワークが著しく発展しており、または発展しつつあることから、サイバー犯罪に効果的に対処する必要性が強く認識されてきたということがございます。この欧州評議会の加盟国は四十数カ国ございまして、新しい時代の要求にこたえた多国間条約を迅速に作成することが、百九十を超える加盟国を抱える国連とはその面で違ったのかなというふうに考えられる次第でございます。

 なお、欧州評議会が、作成したということの実績もございまして、今後、事務局としての機能も果たすことになっていく、かように考えております。

末松委員 そういう実績があるということですけれども、きちんと、そういった問題意識そのものは失わないようにやっていただきたいと思います。

 ちょっと、残された時間で、まだ拾っていない論点について質問します。

 例えば、暗号解読とかパスワードの解読とか、そういった、日本人でもマニアの人たちがいたりするんですね。これは個人的な楽しみでやっている人たちなんですけれども、こういう人がアクセスして、暗号解読して、やった。これはもうそのことだけで罰せられることになるんでしょうか。

有冨政府参考人 いわゆる趣味というレベルで暗号解読をして復元をするというようなことについて、これは、漏らしたり、あるいは窃用をする目的がないという限りにおいては処罰されません。ただ、趣味で復元した内容であっても、それを他人に漏らしたり窃用をすれば、それは処罰対象になるということでございます。

末松委員 あと、次々に、ちょっと残された時間で論点を拾いますが、企業秘密とかあるいは人権の侵害とか、例えば捜査機関が過って犯人と見立てた人が犯人じゃなかった、そういったこともあるわけです。そういう権利を侵害されて訴えてきた人々に、異議申し立てとかそういった救済システムというのは、この条約あるいは国内法との関係で整備はされているんですか。

門司政府参考人 人権への配慮それから補償の問題ですが、条約につきましては、まず前文で、基本的人権の尊重、個人情報の保護についての権利、そういったものに留意することを述べております。また、条約の本文でも、捜査または刑事訴訟のための権限及び手続の設定、実施及び適用について、そうした権限及び手続に人権その他の正当な利益が損なわれないよう保障するため、自由権規約その他適用される人権条約に基づく権利及び自由の保障、保護を規定しております。そして、比例原則を含む条件及び保障措置を国内法で定め、その遵守を確保することを条約の特定の規定で義務づけておるということでございます。

 ただ、違法な捜査により損害をこうむった者に対する補償に関する具体的な規定は、この中に含まれておりません。それは各国の法制度にゆだねられるということでございます。

末松委員 では、日本の場合はどうですか。

樋渡政府参考人 仮に違法な逮捕や捜索、差し押さえが行われました場合には、直ちに身柄を釈放し、また押収された物を返還する必要があることは当然でございますが、違法な強制処分によりこうむった損害につきましては、国家賠償法所定の要件を満たすとき、すなわち「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、」国または公共団体により賠償がなされることとなります。

 また、逮捕、勾留されました者が、後日、犯人でないことが判明し、不起訴処分となった場合には被疑者補償規程に基づき、無罪判決を受けました場合には刑事補償法に基づき、それぞれの要件を満たすときは身柄拘束に対する補償が行われることとなっております。

末松委員 多分最後の質問になるかと思いますけれども、裁判管轄権についてお伺いします。

 この条約を見ると、裁判管轄で、犯罪が行われた属地主義というんですか、それとあと属人主義というのもあって、なかなかわかりにくいんですよね。ちょっと私の方で例を言いますので、どこが裁判管轄権があるのかということについて言っていただきたいと思います。

 例えば、これは事例ですけれども、これは事前に質問で言っていますので、そこは問題ないと思いますけれども。

 例えば、犯罪の主体が日本人で、場所がカナダで、その犯罪のターゲット、例えばアメリカの国防総省にコンピューターウイルスをかけて、ハッキングを行った、そしてメキシコに逃亡したとしましょう。そういった場合に、どの国が裁判管轄権を、プライオリティーというのか、持つことになるのか。そこはどうなりますか、今の例でいけば。

門司政府参考人 条約における裁判権の設定の問題でございますが、条約は、裁判権を設定しなければならない場合、また裁判権を設定できる場合とありますけれども、非常に簡単に言いますと、まず自国の領域で行われる場合については、当然、もちろん、条約に定める犯罪が自国の領域で行われる場合については裁判権を設定する必要がございます。また、さらに、条約の規定に従って、これは犯罪の法定刑が長期一年以上の拘禁刑である場合でございますけれども、自国民の引き渡しをしないときには、自国民が自国の領域外で犯した場合でも裁判権を設定する。

 したがって、自国の領域の場合、あるいは犯罪を、ちょっと省略しますけれども、自国民が海外で行った犯罪、これについて裁判権の設定が義務づけられております。

 御設問、設定の仮説の例ですけれども、個々具体的な状況によるとは思いますけれども、その例を条約の規定に照らして当てはめてみますと、第二条のいわゆる「違法なアクセス」という行為に当たると思います。

 まず、日本については、不正アクセス禁止法の法定刑が長期一年以上の拘禁刑に該当しますので、日本が原則として自国民の引き渡しを認めておりませんから、自国民の国外犯を、規定を設定するということになっています。したがって、日本は裁判管轄権を有します。

 また、カナダにつきましては、コンピューターの操作をそこで行っておりますので、犯罪が自国の領域内で、カナダの領域内で行われた場合に当たります。また、アメリカにつきましては……(末松委員「裁判管轄権はあるわけですか」と呼ぶ)したがって、自国の領域内でありますから、各国ともそこで裁判管轄権を設定しなければならないということになります。

 また、アメリカにつきましては、違法なアクセスの被害が発生した場所でありまして、これも犯罪が自国の領域内、つまりアメリカで行われたということで、裁判権の設定ということがございます。

 したがって、その三つの国、どこも裁判権を持っております。

 他方、メキシコにつきましては、自国の領域外で自国民以外の人が犯罪行為を行ったことになりますので、条約上は裁判権を設定しなければならない義務というものは負っておりません。メキシコの国内法において、条約とは関係なしに、こういう場合にも裁判管轄権を持つということをしている場合を除いては、メキシコは管轄権を有してはおりません。

 このように、複数の国の裁判管轄権が競合する場合ですけれども、競合し、かつ各国が裁判権を主張した場合には、「訴追のために最も適した裁判権を有する国を決定するために協議する。」という規定が第二十二条にございます。したがって、この条約は、特段の優先順位を定めているものではないというふうに考えられます。

    〔委員長退席、武正委員長代理着席〕

末松委員 時間がなくなりましたのでこの辺で終わらせていただきますが、この条約、いろいろと精査をして、コンピューター犯罪を防止するという時代の要請にはこの条約はかなっていると思いますが、慎重な取り扱い、そして犯罪の防止に最大限のまた役割を果たされると祈念しまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

武正委員長代理 次に、増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 大臣、お疲れのようですが、大丈夫ですか。もう少しですから頑張ってください。

 実は、今回のこの児童ポルノあるいは売買、買春等に関する条約議定書のことや、あるいは武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の議定書について、質問をまずさせていただきたいと思います。

 実は、私、この条約の議定書を読んでおりましたら、大変驚くやらびっくりするやら、ちょっと戸惑ったところが一点ございますので、この辺をまず大臣にお伺いしたいと思うんです。

 実は、この文章の中に、ずっといろいろなことが書いてございます、その中に、「児童の売買、児童買春及び児童ポルノに対する消費需要を減少させるためには、公衆の意識を向上させるための努力が必要であることを確信」と書いてございますけれども、この「消費需要を減少させる」というのは一体どういうことなんでしょうか。ここのところをまず最初にお聞きしたいと思うんですが。

石川政府参考人 お答えさせていただきます。

 ただいま御指摘いただきました前文の、該当段落の一つ前の段落におきまして、「児童の売買、児童買春及び児童ポルノの撲滅」ということを掲げておりまして、児童の売買、児童買春、児童ポルノを根絶すべき犯罪行為と位置づけておると考えられます。

 ただいま委員が御指摘になりました段落につきましては、その次の段落にあるわけですけれども、今の撲滅ということを前提としつつ、公衆の意識の向上や世界的な連携等を通じて、児童の売買等に関する需要を少しでも減少させることにより、児童の売買等の根絶を図ろうとする趣旨とある、このように考えております。

増子委員 ここに書いていることは、「消費需要を減少させる」と書いてございますね。「消費需要を減少」という、この「消費需要」というのはどういう意味を指すんですか。その前のことの、根絶させるということとはまた別に、これは消費の、消費に値することなんですか。この言葉の、「消費需要を減少させる」、この児童の売買及び買春、児童ポルノは消費なんですか。

 これは、極めて私納得がいかないんですけれども。ここに大きな、まず私は問題があるんじゃないかなというふうに思っているんですが、何か文脈の関係で、私の読み取りが間違っているんでしょうか。

石川政府参考人 英語ではたしかここのところはコンシューマーディマンドとなっておったと記憶しておりまして、それを「消費需要」というふうにここで訳させていただいているわけでございますけれども、これはよく麻薬犯罪なんかでもありますけれども……(増子委員「短くていいです」と呼ぶ)失礼いたしました。児童の売買あるいは児童の買春、児童ポルノという、言葉は非常に悪うございますけれども、買い手といいますか、そちらの意識をしっかり高めるということが何よりも大事だという問題意識を持っている、かように存じております。

増子委員 ちょっと答えになっていないと思います。

 それでは、女性の立場から、外務大臣、この「消費需要を減少させる」ということは、まさにこの消費、コンシューマーという訳ということにあったとしても、女性の立場から、まさに今多くの社会問題、貧困、人権、あらゆる問題から、実は女性の性的な迫害を受ける人とか犠牲になる人とか、被害者がたくさんおられるわけですけれども、児童の中にあっても、女子の児童に対する問題が極めて大きいわけであります。ここで「消費需要を減少させる」という言葉を、女性として、外務大臣の立場として、どのように感じておられますか。

川口国務大臣 ちょっと文章の全文を見るということが必要かと思いますけれども……(増子委員「見ていないんですか」と呼ぶ)私は、これはコンシューマーディマンドということで言っているということですが、この買春、ポルノといったことは、これは……(増子委員「ちょっと短くて結構ですから、自分の感情を話してください」と呼ぶ)本来人間の、特に未来ある子供の人権、一生の生き方にかかわることだと思うんです。こういうことがあるというのは何ともやりきれないことであると思います。

 それで、今これは条約を和訳したということでございますので、そういったことが普通の感覚からいうと何となくすとんと落ちないという気持ちは私もよくわかります。ただ、これを人権問題とか、そういう観点からとらえていないということではないというふうに私は思っております。

増子委員 大臣、条約をよく読んでみなければわからないという御発言はちょっと問題じゃないですか。これはこの条約の議定書、これは大臣が趣旨説明をされたんでしょう。そして、これを国会で審議をするというんでしょう。それを、責任ある大臣がですよ、読んでいないという話、皆さん、納得できますか、与党の皆さん。できないでしょう。(発言する者あり)いや、さっきおっしゃったでしょう。よく読んでみなければ、よく読んでみなければということは、読んでいない。

 それともう一つ、私が聞いているのは、女性の立場から、この問題について「消費需要を減少させる」という言葉遣いが、翻訳をするにしても何にしても、こういう言葉がこの日本語で訳されている条約の議定書にふさわしい言葉かどうかということを聞き及んでいるわけですから、ぜひ端的にお答えください。

川口国務大臣 私が一番最初に申し上げた趣旨というのは、この言葉一つを見るということではなくて、全体のコンテクスト、それでとらえるということが必要だということで申し上げているわけです。

 それで、先ほど申しましたように、これは人権にかかわること、特に子供については未来にかかわることということですから、何となくイメージとして物という印象がある言葉で使われる、言葉を使われるということについては、普通の語感でいうと若干違和感がある。私もそういう意味では違和感があります、ありますけれども、全体のコンテクストで、先ほど申し上げたことは、考えたときに、人権、そういったことを捨象して語っているわけではないということを申し上げたわけです。

増子委員 いずれにしても、私外務大臣からそのような解釈というか、話を聞くことは非常に残念でございます。女性の立場は極めて弱いんですよ。

 昔、実は売春ということは、生活に困って、もうどうしようもないという状況の中で、隠れるように、生活を支え、家族を支えるということで実はこういう行為がかつては行われたわけです。現代は、まさに援交とか小遣い稼ぎだとか、そういった形の中で国内で簡単に実は性行為が行われるという問題が極めて大きな社会問題になっている。その結果、性感染症が蔓延をしている。日本でも十代の子供たちの性感染症の蔓延の状況は、私たちが考える以上にひどいものがあります。そのほとんどの被害者は女性、子供の、女の子なんですよ。

 ですから、そういう意味で、これを国際的な条約の議定書として、しっかりと日本もやっていこうという形の中であれば、児童売買あるいは買春、児童ポルノ、これらのものをまさに根絶するということだけの言葉でやっていくことが極めて私は大事だと思っているんです。

 実は、外務省の委託を受けまして、ここに立派な冊子があるんですよ。これは、NPO法人の十代の性行動の危機を考え行動する会という、略称ACTSという実はNPO法人があるんです。これは外務省から委託を受けまして、東南アジアの各国のいろいろなそういう性感染症の問題や人身売買や児童ポルノや、児童のいわゆる買春、売春等のことがきめ細かく調査されている。御存じですか、これがあることを。なければ後でこれを差し上げますが、こういった中に詳しく実は書いてあるんです。

 私は、今回のこの児童買春、売買あるいは児童ポルノの問題については、遅きに失した感があるのではないかというほど実はこの問題については以前から強い関心を持っておりましたから、今回のこの条約の議定書、よかったなと実は思っているわけであります。これをやはり徹底的にやっていきませんと、この国の存在が危ういんです。人類そのものが危うくなってしまうということが実はあるんです。

 ですから、ぜひそこのところは、女性大臣として川口大臣にももっと、お子さんもお持ちになっているんでしょうから、多分大きくはなっておられると思いますけれども、この問題についてもっともっと深刻に真剣に、ましてやこの条約議定書の中に、文脈の一つをとらえて言うなとは言うかもしれませんが、私はここに消費需要の減少という言葉は使うべきではない、これは断固抗議をするということで私は申し上げておきたいと思っております。

 時間がございませんので、ちょっといろいろとお話を伺いたいことがございますので、次に進めさせていただきます。

 実は、海外に行きましていろいろな買春行為をする方々が後を絶たないわけであります。これは全く日本の恥なんですね。特に企業ぐるみでということが最近非常に多くなってきているということもございます。

 そういう意味で、この条約の中に、実は三条の4において、法人の責任を問うということがあるんです。自国の刑罰が適用されるかどうかということが、実は私はどうしても読めないんです。こういった児童の売買あるいは買春、児童ポルノ等について、法人が、先般も中国に行って企業ぐるみで数百人の方々が買春をしたという報道がなされました。まことに恥ずかしい限りでございまして、こういったことを実は行った場合に、個々の人間の責任とは別に、三条の4において法人の責任を問うことになっているが、自国内の刑罰が適用されるんでしょうか。ここのところをお答えを願いたいと思います。

    〔武正委員長代理退席、委員長着席〕

樋渡政府参考人 御指摘の三条の4におきましては、同条1で定める児童売買に係る行為等に関して、適当な場合には、締約国の法的原則に従って、法人の刑事上、民事上または行政上の責任を確立するための措置をとることとされております。

 現行法における児童売買に係る行為等についての法人の刑事上の責任について申し上げますれば、児童福祉法において、児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的を持ってこれを自己の支配下に置く行為等について、法人の代表者、従業者等がその法人の業務に関して犯した場合には、行為者を罰するほか、その法人についても罰金刑を科することとされており、また児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律におきましては、児童買春の周旋、児童ポルノの頒布等について、同様に法人についても罰金刑を科することとされておるところでございます。

増子委員 わかりました。

 やはり、日本はこの辺のところはきちんとやらないと、旅の恥はかき捨てではありませんけれども、まさに日本のそういうモラルが問われているわけでありますから、私どもは率先してこの問題を徹底的にやはりやっていかなきゃいけないと思っております。

 あわせて、最近、暴力団が非常に風俗産業あるいは麻薬等に手を広げ、資金源としているということが多々あるというふうに私も聞いておるわけでありますけれども、女性や児童の性的被害者が増加している原因として、児童ポルノが日本で製造され、それが広く海外に輸出され、特に東南アジア等において非常に広くこれが配布されているんですね。これが暴力団の資金源になっている点ということについて、警察庁の方でこのことについての実態をどのように把握しているか、お答えをいただきたいと思います。

近石政府参考人 暴力団の資金源活動は、覚せい剤の密売、賭博等のいわゆる伝統的な資金獲得活動に加えまして、最近では、債権の回収や企業活動等を利用して資金獲得を図るなど、著しく巧妙化、多様化しているところであります。

 一方、暴力団員等の性風俗産業への関与状況を見ますと、児童ポルノを海外輸出したといった事案は現在のところ我々として把握してはおりませんけれども、国内にあっては、顧客にダイレクトメールを送りつけ、児童ポルノ、わいせつ図画等の受注、発送を行うとともに、代金を架空名義の郵便口座等に振り込ませた事案等が見られるところであり、性風俗産業が暴力団組織の資金源の一部となっていると考えております。

 警察といたしましては、このような暴力団の性風俗産業をめぐる資金獲得活動に対処するため、違法事案の検挙の徹底、組織的犯罪処罰法の活用等を通じた不法収益の剥脱等を通じて暴力団の資金源の封圧に努めてまいる所存であります。

増子委員 暴力団も大変活動が狭められているという状況もあるようで、あの手この手と資金獲得のためにいろいろなことをやっているようでありますから、特にこの児童売買あるいはポルノ、こういったものについての徹底的な取り締まりをこれからもやっていただきたいと思っております。

 実は、こういったことについて、今回の条約の議定書の中に、自国の刑法または刑罰法規適用が完全に受けられることになっているということで、三条の1に実はあるわけであります。しかし、私は、これは、日本の刑罰につきましては、この児童に関する売買、ポルノあるいは買春等を含めまして、諸外国に比べて非常に実は刑罰が甘いのではないだろうか。この問題は、今回法律が改正されるということで、今議員立法の方でいろいろやっているようでありますけれども、それを踏まえたとしても、極めて実は軽いんですね。

 これは、防止策ということももちろん今後の中で大事なんですけれども、徹底的に根絶するためには、もっともっと私は重い刑罰を科さなければこれは根絶はできないんではないだろうか。少なくとも諸外国並みに、特に東南アジア系は重いんですね、刑罰。ここのところを、自国の刑罰が軽いと思っておりますから、この辺についての見解をお伺いいたしたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 議員立法でいろいろ御審議いただくやに伺っていることについて私どもが申し上げるのもちょっと僣越かと思いまして、手を挙げるのを二の足を踏みましたのでございますけれども、私どもが伺っておるところでは、今回の御審議いただく議員立法の方で、今御指摘のような点も踏まえた改正を御検討いただけるものと承知しておりまして、私どもはそれを見守りたい、このように思っている次第でございます。

増子委員 これはぜひ、私はもっともっと重い刑罰を科することが必要だと思っておりますので、今後とも、私どももさらに法の改正をしながらやっていきたいと思っております。

 児童ポルノの件について、一つお尋ねをしたいと思います。

 児童ポルノの単純所持について、その線引きがちょっと難しい部分があるような気がいたしております。実は、議員、同僚から、こういう場合にはポルノとしての扱いになってしまうのではないだろうかという疑問が呈されました。それについて、今この場ではっきりとお答えをいただきたいということでお聞きをしたいと思います。

 例えば、自分の子供のかわいい盛りの、本当に二、三歳の子供ですけれども、この子供がプールの場所で遊ぶ、あるいは家の家庭用プールで遊んでいるというときに裸の写真を撮った。それはもうかわいい子供ですから、裸、撮ります。それはもう単純所持で、何のポルノの概念も、ポルノにも該当はしないと思います。しかし、それを他人に見せたときに、これがポルノという形の中で実は適用されるんだということを理解して困っているんだという議員、同僚、仲間の話があったわけでありますが、この自分の子供の裸の写真を他人に見せた場合に、どのようなものになるんでしょうか。

門司政府参考人 御質問は、その写真が、この議定書に言う児童ポルノに当たるかどうかということであると思います。

 もちろん、具体的な事案によりますから一概には言えませんけれども、御指摘のような場合は、児童が性的な行為を行っていないということが通常であろうと思われます。また、児童の性的な部位が仮に描写されていたとしても、通常、主として性的な目的のためとは認めないものと考えられますので、その二条で言う定義、これを最初に申し上げるべきでしたけれども、「現実の若しくは擬似のあからさまな性的な行為を行う児童のあらゆる表現又は主として性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現」といった、この児童ポルノの定義に当たらないということで、犯罪化の対象にはならないものと思われます。

 ただ、あくまでも具体的な事例によるとは思います。

増子委員 この線引きが非常に難しいような気がいたしております。今のようなケースは、私は児童ポルノの扱いにはならないと思っておりますので、この辺のところをしっかりと踏まえて、私ども対処していきたいと思っておるわけであります。

 実は、条約の議定書に至るまで、約二年間、署名から期間があったわけであります。私はこの問題を考えたときに、極めて喫緊の課題であったのではないのかなと。約二年間という期間がかかってしまったことにちょっと残念な気がいたしているわけでありますが、今回、この条約議定書が締結されるということは喜ばしいことであります。

 ただ、問題は、何よりも今必要なものは、先ほどお話がありましたとおり、児童の権利に関する条約第二回日本政府報告書に対して、児童の権利委員会からの勧告についてのことがございました。勧告が出ているわけであります。この勧告もかなり多くの数が出ているわけです。これらをどういうふうにして、しっかりと勧告に基づいて具体的にやっていくのか。

 特に、私は、この問題について極めて大事なことは、被害者となった児童の保護あるいは心のケア、リハビリテーションが非常に大事だと思うんです。結果的に実は被害者になってしまった、その心の傷、身体的な痛みというものは非常に実は大きいわけであります。私は、一番これから大事なことは、この根絶、撲滅ということと同時に、それでもなおかつこういうことに、被害に遭ってしまった子供たちのケア、リハビリテーションをどのように具体的にしていくということが必要かと思っているんです。

 そういう意味で、今後我が国としても、これは国内のことも含めながら、ぜひ、今度の条約議定書も含めまして、何としてでもこの心のケア、リハビリテーションについての具体的にいろいろな形を進めていただきたい。その所見をお伺いいたしたいと思います。

石川政府参考人 まず、御指摘いただきました児童の権利委員会からの勧告、そしてケアについてどう考えるのか、この議定書の観点から御報告、お答え申し上げたいと思います。

 勧告につきましては、委員御指摘のとおり大変幅広い勧告が出されました。児童買春、児童ポルノ法の制定を初めとする内外での我が国のさまざまな取り組みに対し肯定的に評価される一方で、先ほど別の機会にお答え申し上げる機会がございましたように、男女の婚姻年齢の同一化、非嫡出子等の児童に対する差別の廃止等々、あるいはこの今御審議いただいております二本の選択議定書の締結など多岐にわたる勧告が行われておりまして、私どもとしては、これは委員会の見解でございまして、真摯に受けとめて、市民社会からの意見も十分酌み取りながら、関係省庁とも一緒に適切に対処していきたい、このように考えておる次第でございます。

 そうした中で、ケアについてこの議定書はどう言っているかということを申し上げますと、この被害児童の保護はこの議定書の重要な柱の一つでございます。例えば、この議定書の第九条の3におきましては、被害者に対して、十分な社会復帰等のためのすべての適当な援助を確保するための措置をとる、かように規定されておりまして、我が国におきましても、この議定書の実施に当たってこの点が重要なことである、かように認識しております。

増子委員 いずれにしても、しっかりとこの条約議定書に基づいて子供たちの権利を守るということをやっていかなければならないと思っております。

 実は、質問を変えさせていただきたいと思います。

 間もなくイラク戦争が始まって一年になります。今、イラクには自衛隊が人道復興支援ということで活動を開始しているわけであります。この自衛隊の今はただひたすら無事と安全を願うことでございますが、しかし反面、アメリカがイラク戦争に、約一年になります、アメリカのイラク戦争に入りましてから。いち早く我が国はこの支持を表明しているわけであります。この最大の大義は、テロ撲滅のための大量破壊兵器をイラクからすべて破棄することであった。しかし、いまだ大量破壊兵器はイラクから見つかりません。

 実は、テロの脅威もあわせて考えてみますと、スペイン・マドリッドでのあの列車爆破事故、極めて忌まわしい実は惨事であります。心から犠牲者の皆さんの御冥福をお祈りするわけであります。

 先日、NHKのテレビで、この一年を振り返ってということでシリーズをやっておったわけでありますけれども、その中で、イラク戦争が一年になって、テロの脅威が増したのか減ったのかというアンケートを実はイギリスやドイツやスペインでとったそうでありますけれども、テロの脅威が増加したというのはイギリスで六七%、減少したというのがわずか九%。ドイツでは七二%が増加をした、減少したのはわずか六%。惨事のあったスペインでは六六%が増加をして八%が減少をした。我が国においても、実はアルカイダの声明の中に名指しで日本をしているわけであります。

 こういった点も含めて、果たしてこのイラク戦争、いまだ大量破壊兵器が見つからない。これに対して、いち早く我が国が支持表明をして、自衛隊まで派遣をしているということ。この大量破壊兵器が見つからないということについての事実、これらについて、今はすっかりその部分は、小泉首相やあるいは関係大臣から言葉がなくなっているわけであります。この大量破壊兵器が見つからない、見つけられないのかわかりませんけれども、これについての考え方、責任はどのような形で所在をするんでしょうか。大臣、お答えを。

川口国務大臣 イラクの武力行使について、大量破壊兵器とのかかわり合い、この武力行使を我が国が支持したということについての正当性については、これはいろいろな場で国連の決議を引いて今までお話をさせていただきました。簡単にそれをもう一度触れさせていただきたいというふうに思います。

 実際にイラクが大量破壊兵器をかつて所有し、そして使ったということがあるわけでございます。それを、国連の決議、安保理の決議に従ってイラクはそれを廃棄していかなければいけないという義務があった。その廃棄をするということについて、それを、きちんとその検証を査察団にさせながらそれをしなければいけないということがあったわけでして、細かくは申しませんけれども、その一連の国連決議にイラクが継続的に重大な違反を犯してきたということ、これが具体的には一四四一という国連決議で決定をされたということであります。それで、あと六八七、六七八という、これも細かいことは、もし必要でしたら申し上げますけれども……(増子委員「必要ありません」と呼ぶ)必要ないですね。一連のそういった決議がありまして、武力行使はそれにのっとったものであるというふうに我が国としては考えているわけでございます。

 それで、大量破壊兵器の問題というのは、これは二十一世紀の世界において非常に大きな問題であるというふうに認識を、我が国としても、ほかの国としてもしているわけでございまして、このことは我が国が置かれたこの地域の状況とも全く無縁ではないということがあるわけでございます。

 いずれにしても、国連決議との関係、そういった我が国の状況、そういったことに照らして、我が国は、国益に照らして、この武力行使は正当であるということを支持したということであるわけでございます。

 したがいまして、これの責任問題ということでおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、我が国の考え方としては、これは、この国連の安保理の決議に従った形で行動をとらなかったイラクに責任があるというのが我が国の考え方であるわけでございます。

増子委員 どうも日本の総理大臣や関係大臣の言葉が軽いような、あるいは無責任のような気が私はいたしているんです。

 アメリカの場合、あるいはイギリスの場合、大量破壊兵器がいまだ見つからないことについての、信用が極めて失墜しているということが国民の世論調査を見ても明らかなわけであります。そして、それぞれの政治的な立場においてこれらの発言をされてきた方々が、ブッシュ大統領にしてもブレア首相にしても、今大変厳しい政治的な状況に置かれているわけであります。

 今、アメリカでは大統領選挙の予備選挙が実は行われております。多分民主党はジョン・ケリーさんになるんでしょう。その中で、スペインで、爆破事件、事故があった後、総選挙が行われました。やはりこの爆破事件、事故はテロによるものだと、スペイン国民は当初の予想を覆して野党に政権をゆだねたわけであります。社会労働党サバテロ党首は、七月一日の時点で国連がイラクにおける中心的役割を引き受けていなければイラクからスペイン軍を撤退させると、実はその中で表明をしているわけであります。

 私は、今度の大統領選挙の中で、もしというか、確率的には、世論調査は今のところ行ったり来たりのようでありますけれども、ジョン・ケリー民主党候補が勝つことによって、彼は多分イラクからアメリカ軍を撤退させるのではないかと言われているわけであります。やはり、もしブッシュ大統領が敗れるとすれば、彼がある意味ではうそをついた、大量破壊兵器が見つからなかった、大量破壊兵器をすべて廃棄することによってテロというものを撲滅するんだという大義が実はなくなってしまうわけでありますね。そうなる可能性も極めてあるわけであります。

 多分、これは仮定のことだから今答えられないということの答弁になるのかもしれませんけれども、もしブッシュ大統領が再選されなくてジョン・ケリー民主党候補が大統領になったら、アメリカ軍が撤退したということであれば、日本はそのときに自衛隊をイラクから撤退させるということの可能性はあるんでしょうか。

川口国務大臣 まず、事実関係といたしまして、そのケリー大統領候補が仮に大統領になったときのことを何とおっしゃっていらっしゃるかということですけれども、イラクまたアフガニスタンにおいて我々には今や任務を完了するという厳粛な責務がある、途中略しますけれども、我々は仕事が完了するまでイラクにとどまらなくてはならないということをケリー大統領候補はおっしゃっていらっしゃいます。したがって、イラクから米軍が撤退をするという考え方を示しているとは承知をいたしておりません。

 それで、我が国の考え方ということでございますけれども、これは国際社会が今イラクを支援するということが必要である、まさにそれをやらなければイラクを破綻国家にするということになりますし、我々の国益に反するという考え方を持っているわけでございまして、我々は車の両輪という言い方をしておりますけれども、資金援助そして自衛隊を含む人的な援助、これをきちんとやっていく、これが国際社会で国連の決議により期待をされている、要請をされていることであって、我が国としてはそれにこたえていくということであります。

増子委員 大統領選挙の結果が注目されるわけであります。その結果によっては、今大臣がおっしゃったケリーさんの言葉というものがどのように変わっていくのか。やはり私は個人的には大きな変化が、まさにケリー・ショックのような形が起きる可能性が極めて高いのではないのかというような気がいたしているわけであります。そういうときに日本がどうするのか。私は、極めて大きな、分岐点といいますか、決断を迫られるときも来るんだろうなというふうに思っているわけであります。

 いずれにしても、私は一日も早い平和というものを願っている者でありますから、やはり世界が平和であること、そして子供たちが安心して暮らせるような社会をつくっていくことが我々の責任だと私は思っております。

 残念ながら、薮中さんにおいでいただいて、北朝鮮問題はちょっと時間がなくて質問できませんでしたけれども、また次回にお願いをしたいと思います。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

米澤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは最初に、サイバー犯罪に関する条約についてお尋ねしたいと思います。

 先ほどの質問でもいろんな角度から問いただされましたけれども、短い時間ではありますが、私も、疑問に思っていること、これらについて聞いていきたいと思います。

 まず最初に、私たち日本共産党は、サイバー犯罪から社会を守るためにコンピューターを利用した犯罪を防止する、そのために国際間の条約を取り決める、こういうことは必要だ、このように考えています。同時に、その場合でも、憲法二十一条で規定された通信の秘密、これは侵してはならない、こういうことを初め、国民の権利をこの条約やそれを担保するための国内法が侵すものになってはならない、このように考えています。

 そこで、実際の条約の中身について伺いますが、コンピューターに関連する犯罪が生じたとき、この条約の第十六条では、当局がデータについて迅速な保全を命令することのできる必要な立法、これを求めています。対象となるデータが「特に滅失しやすく又は改変されやすいと信ずるに足りる理由がある場合」、このように限定しているわけですけれども、この「特に滅失しやすく又は改変されやすいと信ずるに足りる理由」、これはどういうことを指しているんでしょうか。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 十六条は、既に蔵置されたコンピューターデータが、コンピューターというものの性能でございましょうか性格でございましょうか、容易に失われ得るものであることから、このサイバー犯罪の重要な証拠であるコンピューターデータを確保するために規定されたという経緯がございます。

赤嶺委員 そうすると、ほとんどのデータがその規定に入るということになりますね。

石川政府参考人 恐れ入ります、御質問の趣旨でございますが、捜査という切り口から申し上げますと、これは特定の捜査との関係でということでございます。したがって、特定の捜査に関係ないデータは関係ないということでございます。

赤嶺委員 捜査というところから入るとという説明がありましたが、特に滅失しやすくまたは改変されやすいデータ、コンピューターの中のデータというものはそういうたぐいですから、それはそれとして聞いておきたいと思います。

 そこで、十九条において、コンピューターデータの捜索や押収の範囲について規定しているわけですが、例えばコンピューターでメールのやりとりをした場合、幾つかのサーバーを経由するわけです。必要なデータを捜索・押収しようとする場合、広範なサーバーが捜査や保全、提出そして捜索・押収の対象になるのではないかという不安を持つわけですが、また結果として当然関係のないデータも保全、提出、捜索・押収の対象となるのではありませんか。

石川政府参考人 十九条の趣旨は、もう委員御案内と存じますが、念のためちょっと申し上げさせていただきますと、この十九条は、自国の権限のある当局に対し、コンピューターシステム及びその内部に蔵置されたコンピューターデータ並びにコンピューターデータ記憶媒体に関して、自国の領域内において捜索・押収等を行うほか、コンピューターシステムの機能またはデータ保護措置の知識を有する者に捜索・押収に必要な情報の提供を命ずる権限を与えるため、必要な措置をとることを締約国に求めております。それで、捜索・押収等の実施方法として含めるべき捜査手法についても規定しております。

 そこで、御質問の趣旨でございますが、その十九条二項の関連であるやに拝察いたしますが、十九条二項におきましては、権限ある当局がコンピューターシステムを捜索等する場合におきまして、捜索するデータが自国の領域内にある他のコンピューターシステムに蔵置されていると信ずるに足りる理由があり、かつ、当該データに対して当初のシステムから合法的にアクセスが可能であるかまたは当初のシステムで利用可能であるときは、当該他のコンピューターシステムを捜索しまたはこれに類するアクセスを速やかに行うことができるようにすることを求めている条項でございます。

赤嶺委員 次に移ります。

 条約の二十条、二十一条ですが、通信記録のリアルタイムの収集と通信内容の傍受が規定されております。先ほどの質問にもありましたが、我が国の通信傍受法、この通信傍受法と条約二十条、二十一条の関係、これはどのようになっていますか。

門司政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御説明いたしましたけれども、まず二十一条の方から参ります。

 二十一条が「通信内容の傍受」、これは中身の傍受でございます。これは、我が国においては、「自国の国内法に定める範囲の重大な犯罪に関して、」行うということで、通信傍受法に基づいて行うということでございます。したがって、現在ある枠組みを変えるものではございません。通信傍受法第三条の傍受令状により、自国の権限のある当局に対してそういった通信内容の収集、記録の権限を与えているということでございます。

 それから、二十条の方は通信の内容ではなくて通信記録、いわゆる通信の履歴ですね、日時とか期間とか、そういったものについても、検証令状といったものできちっとした手続が整っておりますので、それにのっとって行うということになっております。

赤嶺委員 そういうところから、今回のサイバー犯罪を取り締まる条約、日弁連はこう言っております。取り締まりを急ぐ余り、刑事法の人権保障機能を危うくさせることがあってはならない、このように指摘しているわけですが、政府はこの指摘はどのように受けとめておりますか。

石川政府参考人 この条約におきましても、基本的人権ということについて規定が実はございます。

 サイバー犯罪条約は、その前文におきまして、基本的人権の尊重、個人情報の保護についての権利に留意することを述べております。

 また、条約の第十九条におきまして、捜査または刑事訴訟のための権限及び手続の設定、実施及び適用について、そうした権限及び手続により人権その他の正当な利益が損なわれないよう保障するため、自由権規約その他の適用される人権条約に基づく権利及び自由の保護を規定し、かつ比例原則を含む条件及び保障措置を国内法で定め、その遵守を確保することを義務づけているところでございます。

赤嶺委員 質問を変えます。今度は、武力紛争と児童の権利保護ということで、外務大臣に伺いたいと思います。

 今度の条約でもそうですが、どんな理由の戦争であれ、戦争は将来がある子供たちを含む多くの無辜の市民が犠牲にされます。

 外務省が出しております人権人道課の報告を見たら、「児童兵をめぐる現状」、こういう報告がありまして、「最近の武力紛争は、国内紛争が主であり、犠牲者の大部分(九〇%)が民間人、その半数が児童とされる。一九八七年からの十年間では、二百万人の児童が死亡、六百万人の児童が負傷、百万人以上が孤児になったほか、毎年八千人から一万人の児童が対人地雷により死亡又は負傷しているといわれる。」このような報告書が出ておりました。

 私、この間、パキスタンやアフガニスタンそしてイラク等、戦争の犠牲者を目の当たりにしてきたわけですが、特にパキスタンでは、あのアフガニスタンの戦争でパキスタンに逃げてこられた、クラスター爆弾の犠牲者の母と子供の病院まで、入院しているところまで見舞ってきたわけですが、このクラスター爆弾や劣化ウラン弾の使用がアフガニスタンやイラクでも言われてまいりました。劣化ウラン弾を使用すれば、これはもう放射能汚染、被曝の危険性が生じます。

 外務大臣は、アメリカが起こした戦争でこういうクラスター爆弾だとか劣化ウラン弾が使用されて、とりわけ子供たちが被害を受け、犠牲になって、その子供の未来を奪っている、こういうことについてどのようにお考えですか。

川口国務大臣 クラスター爆弾にせよ、劣化ウラン弾にせよ、地雷その他にせよ、あるいはWMDと言われる武器にせよ、いずれにしても、そういったものを使った武力行使というのは世の中にできるだけない方がいいということであると思います。

 現実に、アフリカの中での国内での紛争、部族間の対立、それからこの間あったような武力行使も含め、アフガニスタンでのさまざまな部族間の対立も含め、世の中に、私もスリランカ、アンゴラその他の場に行きまして、弾丸で穴だらけになった現場というのを随分見ましたけれども、本当にそういうことがなくなっていくように、我が国としても今行っている取り組みを引き続きやっていく必要があるというふうに思っております。

 特に通常兵器、小型武器ですけれども、それをなくそうと、その規制についての取り組み、それからカットオフ条約等の核兵器、WMDそれからミサイル、そういったことを規制することについて、地雷もそうですが、我が国は今まで相当な貢献をしてきているわけでございまして、引き続きこういった努力を続けなければいけないと思っております。

赤嶺委員 私、この数年の体験から、クラスター爆弾や劣化ウラン弾による子供の犠牲、ここに焦点を当てて質問をしたつもりであります。それも、同盟国であるアメリカがそういう兵器を使うことによって子供を犠牲にしている、このことについて外務大臣はどう考えていますかということを聞いたんです。

米澤委員長 質疑時間が終了いたしておりますから、簡単に御答弁ください。

川口国務大臣 非常に残虐性のある兵器、先ほど申し上げたことの前提の上に立って申し上げるわけですけれども、残虐性のある兵器、これについては条約で、使ってはいけないということになっているわけです。委員がおっしゃられたクラスター爆弾あるいは劣化ウラン弾、これはその対象にはなっていないということであります。

 米軍にせよ、英軍にせよ、この間のイラクにつきましては、これは国際人道法にのっとりまして、非戦闘員、そこに対して犠牲が最小限になるように努力をしたというふうに考えております。

赤嶺委員 もう時間が終了いたしましたが、実は私、ついせんだって、バスラの、イラクの病院のお医者さんと話し合う機会がありました。バスラでは、湾岸戦争後本当に劣化ウラン弾の被害が明らかに出ている。がんの死亡者が二十倍、先天性奇形児の出生率は七倍。

 このように、放射能被害あるいは被爆、これによる患者がふえているということを、日本として、唯一の被爆国日本として絶対に無視するわけにはいかないと思うんです。やはり、そういうことに背を向け続けている政府、外務省に対して、本当に怒りを表明しながら、こういう問題でも、被爆国の政府だからこそ国際社会で役割を果たしていく、子供の未来を守っていく立場で努力することを強く要求しまして、質問を終わらせていただきます。

米澤委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門です。

 大臣、本当にお疲れだと思います。あと十分ですから、よろしくお願いいたします。

 本サイバー条約の策定に主導的な役割を担った欧州評議会の有力国やアメリカなど、先進国が批准していないのはなぜなのか、その理由は何だとお考えか、そこからまずお聞かせください。

石川政府参考人 サイバー犯罪条約についてのお尋ねでございましたね。

 アメリカは、昨年の十一月にブッシュ大統領が、上院に対してだったと記憶しておりますが、この批准を促す書簡を送っております。また、例えばフランスでございますけれども、フランス国民議会の外交委員会において一読が終了した、そのような段階だと存じておりまして、各国ともこれを前向きに考えているというふうに私どもは承知しております。

東門委員 前向きに考えているというふうにとらえているとおっしゃるんですが、そういうちゃんとした情報が入っているんですか。いや、聞くところによりますと、なかなかアメリカの方は上院を通過するのは難しいんじゃないかというのもあるものですから、私の情報が正しいというわけではないのですが、外務省としてはしっかりとそこのところは把握しておられるのかということです。済みません、もう一度お願いします。

石川政府参考人 アメリカにつきましては、行政府サイドにおきましては、まさにブッシュ大統領みずからそういう書簡を上院に送ったということから、私どもは判断させていただいておる次第でございます。

東門委員 本条約は途上国の国内法を先進国の利害に合う形で法整備させるための外圧条約であるという批判や、各国とも自国の主権やIT産業が大きく制約されるおそれがあるので慎重であるとの意見もありますが、政府はそのような批判あるいは意見にどのように答えられますか。お聞かせください。

石川政府参考人 お答えさせていただきます。

 グローバル化が大変進んでおる時代、現在におきまして、残念でございますけれども、その負の側面ということを申し上げてしまうと、サイバー犯罪というのは一つの残念な事例であろうと思っております。

 途上国におきまして、先ほど別の委員からの御質問にお答え申し上げる機会がございましたけれども、APEC等の場におきまして、このサイバー条約に沿って国内法をやろうということで、それはまさに途上国自身がいろいろな被害を受けることも残念ながらあるという認識に基づいたものではないか、かように考えさせていただいております。

東門委員 本条約は、近年のコンピューターネットワークの普及に伴って発生しているサイバー犯罪に対処するための世界初の包括的条約であるということはよく理解できます。今後、この分野の事実上のグローバルスタンダードとなることが見込まれているわけです。

 本条約に規定された、不正アクセス、システム妨害、コンピューターを使った偽造、詐欺及び児童ポルノ等の規制は大変意義のあることですが、本条約のもう一つの柱であるコンピューターを利用した犯罪に対する刑事手続の整備については、人権への配慮及び我が国の憲法が保障する通信の秘密との兼ね合いで、その実施については慎重に行う必要があると考えられます。

 本条約の第二十条と第二十一条では、通信記録のリアルタイム収集及び通信内容の傍受が規定されています。二つの規定とも、リアルタイムで情報収集する権限を当局に与えるよう締約国に要請している点で共通していますが、第二十条の通信記録のリアルタイム収集では収集できる内容が通信の発信元、発信先、通信経路等に限られるのに対して、第二十一条の発信内容の傍受では重大な犯罪の場合に限ってその内容まで当局が収集ないし記録することができることとなります。しかし、現実問題として、リアルタイム収集を行っている現場において、通信記録と通信内容とを全く別個のものとして厳格に識別して収集することが可能なのかという懸念の声もあります。

 我が国において、通信記録と通信内容とを区別して収集することが技術的に可能であるのでしょうか。また、それが可能である場合には、実際の収集に当たっては、これらを厳格に区別して収集することを政府としてどのように確保するのか、御説明をお願いしたいと思います。

樋渡政府参考人 通信内容と通信履歴とは完全に区別されておりまして、この保全、差し押さえることにつきまして、具体的には電子メールのヘッダーに記録されている電磁的記録を念頭に置いたものと承知しております。この点、保全要請の対象となる通信履歴の電磁的記録は通信事業者等が業務上記録しているものであることを要しますところ、電子メールのヘッダーに記録されている電磁的記録は電子メールを送信する者が用いるメーラーによって作成、記録されて送信されているものでございまして、通信事業者等が業務上記録しているものではないことから、これに該当しないということでございます。

東門委員 済みません。私も余り詳しくないので、今の御答弁よくわからなかったのですが。私の質問は、我が国において、通信記録と通信内容とを区別して収集することが技術的に可能でしょうかというのが一点。

 もう一点は、もし可能であるならば、実際の収集に当たっては、これらを厳格に区別して収集することを政府としてどのように確保するのかとお伺いしたつもりで、今の御答弁はちょっとよくわからなかったものですから、済みません、もう一度お願いします。

米澤委員長 刑事局長、わかりやすく御説明ください。

樋渡政府参考人 それでは、結論だけを簡潔に申し上げますと、先ほども申し上げましたが、通信内容と通信履歴とは画然と区別されるものでございまして、通信履歴を押さえるということでございます。

米澤委員長 わかりましたか。

東門委員 通信履歴と通信内容とは全く……。ちょっと違いますね。済みません。

樋渡政府参考人 済みません。私も混乱してしまいました。通信履歴と通信記録は同じでございまして、その通信記録と通信内容とは画然と区別されるものでございますから、二つを分けて考えております。

東門委員 本条約の第十六条ですが、各国の当局に対し、コンピューターデータの迅速な保全のために、保全命令またはそれにかわる方法を締約国が確保することを求めています。具体的には、サービスプロバイダーに対し、特定の捜査との関係で、既に記録された過去のデータを削除せずに維持しておくことを求める権限を自国の権限ある当局に認めるよう締約国に義務づけています。

 保全の期間は最長九十日とされていますが、サービスプロバイダーがそれより短い期間を内部規則として設けている場合には、保全が要請されたことにより追加的負担が生じるということになります。民間の会社等に新たに負担を生じさせかねないこのような措置は、たとえ必要であっても必要最小限にすべきであると考えますが、そもそも、なぜ保全期間が九十日と規定されるようになったのか、その理由を御説明ください。

石川政府参考人 条約の交渉過程についての御質問という理解でよろしゅうございますですね。

 審議の過程におきまして、当初はこの十六条に保全要請期間に関する限定は付されておらないという状況がございました。ただ、保全要請を受ける者に過度の負担をかけないためのいわばセーフガードとして保全期間の上限を設けることが適当だ、こういう合意が成立したという交渉の経過がございます。

 なぜ九十日かということについて、詳細な経緯は審議過程からは明らかでございませんけれども、これは、実態的なことをいろいろ勘案して交渉に臨んだ、また、例えば九十日間の保全要請期間の規定を持つアメリカの法典も参照されたというふうに考えております。

東門委員 時間です。終わります。

米澤委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会します。

    午後五時四十五分散会


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