衆議院

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第13号 平成20年5月14日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十年五月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 谷口 和史君

      愛知 和男君    伊藤信太郎君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    木村 隆秀君

      塩崎 恭久君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      御法川信英君    山内 康一君

      山口 泰明君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    野田 佳彦君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      渡辺  周君    上田  勇君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   法務副大臣        河井 克行君

   外務副大臣        小野寺五典君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   外務大臣政務官      中山 泰秀君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   環境大臣政務官      並木 正芳君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   林  景一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松富 重夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田辺 靖雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   中根  猛君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 川北  力君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局次長)           平尾 豊徳君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    佐藤 憲雄君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  山下  潤君

   政府参考人

   (水産庁漁港漁場整備部長)            橋本  牧君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           佐々木伸彦君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            城野  功君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 白石 順一君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 伊藤 盛夫君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  鉢呂 吉雄君     渡辺  周君

同日

 辞任         補欠選任

  渡辺  周君     鉢呂 吉雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件、千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長林景一君、大臣官房審議官梅本和義君、大臣官房審議官松富重夫君、大臣官房審議官田辺靖雄君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官小原雅博君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長中根猛君、領事局長谷崎泰明君、財務省大臣官房審議官川北力君、農林水産省総合食料局次長平尾豊徳君、水産庁漁政部長佐藤憲雄君、資源管理部長山下潤君、漁港漁場整備部長橋本牧君、経済産業省大臣官房審議官佐々木伸彦君、海上保安庁警備救難部長城野功君、環境省大臣官房審議官白石順一君、防衛省地方協力局次長伊藤盛夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田佳彦君。

野田(佳)委員 おはようございます。民主党の野田佳彦でございます。

 質問に先立ちまして、ミャンマーの大型サイクロンで多くの方が犠牲になりました、加えて、中国の四川省を中心としたマグニチュード七・八のこれまた大きな地震によって多くの方が犠牲になっておられます、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 さて、きょうは四条約が案件になっておりますけれども、私は、その中で主にマグロの問題を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 せんだって一般質疑で鯨の問題を取り上げたら、武正理事から今度はマグロをやれという御下命がございました。しっかり一時間質疑をしたいと思いますが、その前に、やはりちょっと鯨にはこだわりがありますので、イントロは鯨から入っていきたいというふうに思っております。

 先週の木曜日、五月八日、高村大臣とオーストラリアのスミス外相との会談がありました。そこでいろいろ二国間の関係についてお話が交わされたと思いますけれども、調査捕鯨についても議論があったというふうに承知をしております。

 どういう議論が行われたのかをお尋ねしたいと思うんですが、きょう、資料の一として、ことしに入ってからの調査捕鯨活動中に発生した妨害事案というのを一応一覧表で提示させていただいております。

 特にオーストラリアは、シーシェパードが寄港したりとか、あるいは、特に(1)のときの、一月十五日に発生した、活動家二名が第二勇新丸に乗り込んできた、そのときには逮捕の可能性も十分あったんですが、最終的にはオーストラリア政府に引き渡しをしたりとかということがございました。

 オーストラリアというのはもともと反捕鯨国ではありますけれども、こういう妨害活動については、それを助長することなく、きっちりとやはり対応してほしいと思うわけでございます。

 そういう意味で、どういう日豪外相会談の議論があったのかをぜひ御説明いただきたいと思います。

高村国務大臣 八日に行われた日豪外相会談では、捕鯨問題に関する互いの立場が異なることを前提に、捕鯨問題が良好な二国間関係を阻害すべきでなく、外交的解決を目指す努力をしていくこと、また本件については引き続き二国間及び国際捕鯨委員会の場で議論を行っていくことで一致をいたしました。

 私からは、問題の解決に向けて科学的議論が必要である旨指摘をいたしました。それぞれの国に国民感情というものがありまして、それはそれぞれの国の文化に根差しているんですが、どちらかの文化が文化をどちらかの国に押しつけるということではなくて、科学的根拠に基づくことであれば幾らでも耳を傾けますよと私の方から申し上げて、科学的基盤に立って外交的解決をいたしましょう、こういうことを言いました。

 それから、シーシェパード船舶についてでありますが、スミス豪外相からは、捜査は継続中である、日本の協力も引き続き得たい、こういう説明があったところでございます。

野田(佳)委員 昨年の暮れだったですか、オーストラリアで新政権ができまして、ラッド政権になりました。ラッド政権の勝利というのは、基本的には、もともとオーストラリアは反捕鯨でありますが、その立場を鮮明に出したということが一因だと言われておりますので、今までのオーストラリア政権以上に反捕鯨の立場をいろいろな場面で出してくる可能性があると思います。

 外務大臣がおっしゃられたとおり、やはり科学的見地からしっかりと主張をしていく。鯨はやはり海の生態系の最上位に位置しておりまして、鯨がとる魚の量というのは人類の一年間に食べる量よりはるかにたくさんの魚をとるわけでございます。その生態系が崩れることは我々も魚を食べられなくなるという可能性があるわけですから、そのことをよく踏まえて御主張していただければと思います。

 オーストラリアの皆さんにとっては鯨を食べることは信じられないかもしれませんが、我々にとってはカンガルーを食べるのもびっくりするような話ですので、これはやはりお互いのことをよくわかるということが大事だと思います。特に、科学的な主張をこれからも随時やっていただきたいというふうに思います。

 加えてですが、四月の十六日に、ここでいうと資料の一の(4)、(5)、三月三日と三月七日に発生をしました事件と関連しますけれども、我が国の調査捕鯨船の日新丸の実況見分を海上保安庁がやられたということでございました。

 当然のことながら、特に三月の三日の事案では負傷者も出たということでありますから、傷害罪であるとか威力業務妨害罪という法律の適用を念頭に厳正に捜査に取り組まれていると思います。捜査方針の御説明というといろいろ機微にかかわることがあって御説明ができないのかもしれませんが、この実況見分を踏まえて、改めて捜査の決意というものを海上保安庁にお尋ねをしたいと思います。

城野政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁におきましては、委員御指摘のとおり、四月十六日に日新丸等の実況見分あるいは関係者の事情聴取を行うなど、捜査を進めているところでございます。

 一般的に申し上げれば、犯罪を立件するためには被疑者及び犯罪事実を特定すべく捜査を進める必要がございます。今回の事件のように、被疑者が国外に存在するというような場合におきましては、被疑者の特定とか、あるいは被疑者の引き渡しにつきまして、関係国の十分な協力を得ることが必要であるといったような難しい側面もございますけれども、海上保安庁としましては、本件に関しまして、事案を立件すべく今後とも引き続き鋭意捜査を続けてまいりたいというふうに考えてございます。

野田(佳)委員 一度起こった事案に対して甘い対応ですと足元を見られるというふうに思いますし、当然のことながら、また来年もシーシェパード等の団体がこの種の海賊行為、テロ行為的なことを起こす可能性は十分にあります。したがいまして、しっかり立件をして、厳正に対応していただきたいと改めて強く要請をさせていただきたいと思います。

 ということで、鯨は終わりまして、ではいよいよ本題のマグロに行きたいと思うんです。

 資料の二に、まぐろ類の地域漁業管理機関という図を出させていただいております。マグロはもう御案内のとおり世界じゅうを回遊しているわけですが、きょうの審議の案件は全米熱帯まぐろ類委員会にかかわることであります。とはいいながら、マグロ漁業全般の問題がやはり本質的な問題だろうと思いますので、そのことを念頭に質問をさせていただきたいと思います。

 日本のマグロ漁業は、遠洋、近海とあり、また、刺身生産用のはえ縄漁業、缶詰原料と言われるまき網漁とありますけれども、特に近年は遠洋漁業の漁船隻数が大幅に減少している。ピーク時には千二百隻あったものが、今は大体四百隻ほどですか、三分の一ぐらいに減ってしまっているというふうに承知をしています。

 言うまでもなく、いろいろな原因があると思います。特に最近は原油の高騰が大変大きな要因だと思いますが、これだけ多くの隻数が減少しているその理由を政府はどのようにとらえていらっしゃるか、まずお尋ねしたいと思います。

山下政府参考人 お答えいたします。

 我が国遠洋漁業の中で代表的な漁業としまして遠洋マグロはえ縄漁業がございますが、その許可隻数につきまして、平成十四年には五百二十五隻でございましたが、現在、平成十九年では四百二十隻に減少しているところでございます。

 その理由といたしましては、大西洋でのクロマグロや東部太平洋のメバチマグロなど、一部のマグロ資源の悪化や、その他のマグロ類におきましても、おおむね資源が満限まで利用されているということで漁獲の減少、さらには燃油価格の高騰、蓄養マグロなどの輸入品との競合、消費の鈍化等によります魚価の低迷、伸び悩みなどによりまして経営状況が悪化したことがその理由であると考えているところでございます。

野田(佳)委員 いろいろ理由を述べられましたけれども、特に最近はやはり原油の高騰が一番大きな原因だろうと思います。超低温マグロ漁船では燃料を一日三キロリットルも消費するということでありますから、恐らく今はコストの約半分ぐらいが燃料ということだろうというふうに思っております。

 一方で、今御説明があったように、魚価が全く上がっていないということでございますので、いわゆるマグロ漁業の経営に携わる皆さんにとっては大変苦しいお立場だろう、もはや限界に近づいているんではないかというふうに思うわけであります。

 一方、今日、水産物の買い負けという、外国との水産物購入競争で日本のバイヤーが後手を踏んでいる状況も発生しているというふうに聞いておりまして、何といってもやはり日本人はマグロ、特に刺身は大好きでありますから、食卓からマグロが遠ざかっていくという状況は、日本の食文化を考えた上でも大変危機的な状況だろうと思います。

 基本的には、いろいろなルートがあるかもしれませんが、日本の漁師が、そして日本の漁船がしっかりとマグロをとって、そして食卓に届くという状況をつくることが一番理想だと思うんです。その意味で、日本の遠洋漁業を政府としてはどうしていこうと考えているのか、遠洋漁業経営を守っていくためにどのような対策を講じておられるのか、お尋ねをさせていただきたいと思います。

山下政府参考人 お答えいたします。

 我が国国民の需要が旺盛なマグロ類などの安定供給を確保するため、今後とも遠洋マグロはえ縄漁業を初めとする遠洋漁業の維持に努めていく必要があるというふうに考えてございます。

 そのため、マグロを初めとする有限天然資源でございます水産資源につきましては科学的根拠に基づいた資源管理の徹底が不可欠でありまして、我が国としましては、責任ある漁業国として、地域漁業管理機関や関係国と協調しながら、持続的な利用を図ることとしてございます。

 また、十九年度から開始された漁船漁業構造改革総合対策事業や、昨年度補正予算で措置されました水産業燃油高騰緊急対策事業を活用しながら、省エネ及びコスト削減によります経営の安定を図りまして、世界的なマグロ資源や市場の動向に対応できる国際競争力のあるマグロ漁業を確立してまいりたいというふうに考えているところでございます。

野田(佳)委員 そのマグロ漁業の維持ないしは発展ということを考えたときに、避けて通れないのは船員の問題だと思うんです。

 残念ながら、この遠洋マグロ漁船の日本人船舶職員の平均年齢というのはどんどん高齢化していて、今は五十歳を超えているということだそうでありまして、早急に対策を講じなければ日本の船員がいなくなっていくという状況が生まれてきそうであります。これは漁船だけではなくて、外航商船も既に日本の船籍が九十隻というふうに減っている中で、恐らく外航船を指揮できる日本人船員というのは、海上自衛隊とか海上保安庁とかという官公庁の船舶しかいなくなっていくような可能性もあります。

 特に漁船においては、魚を釣る際や魚の処理をする際のノウハウや技術の伝承も重要でございまして、魚を愛してきた民族である日本のこの分野における優位性というのは、諸外国から多くの研修生が来ていることでも明らかなように、大変重要な技術を持っているわけであります。これが一度失われると、復活をさせる可能性というのは大変厳しくなるわけでございますので、その意味からも、船員の養成と後継者の確保、これは大変重要な課題だと考えます。今のマグロ漁船の船員の半分ぐらいは、日本船籍でも多分インドネシアの方が乗っているような状況だと思うんですね。

 そういうことも含めまして、日本人の船員の養成、確保を政府としてはどのようにお考えなのかをお尋ねしたいと思います。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 遠洋漁業就業者の減少や高齢化が進む中で、新規就業者を確保し養成していくことは極めて重要なことであると考えているところでございます。

 このため、遠洋漁業を含みます漁業への新規就業を促進する観点から、漁業就業先についての情報提供、就業準備のための講習会や漁業就業についての情報交換のためのフェアの開催、漁業現場での体験、研修の実施等によりまして、都会の若者等が経験ゼロからでも漁業に就業できるよう、各段階に応じた支援措置を講じているところでございます。

 また、今年度からは、水産高校等の卒業生の漁業への就業率を高めるため、地域の漁業、水産業界と連携した実習等を実施することによりまして人材育成を図ることとしているほか、遠洋漁船員の漁業技術向上を図るため、海技免許に関する通信講座ですとか短期講習の開催等に対する支援を行うこととしているところでございます。

 このような対策を着実に進めることによりまして、遠洋漁業を担う船員の確保と養成を図っていく所存でございます。

野田(佳)委員 マグロ漁船全体は今減少の傾向にあるということなんですけれども、その中で隻数をふやしている、そういう漁船勢力があるということでございます。

 それは、外国人オーナーが便宜的に日本の法人経営者を装って、日本の漁業者として漁業許可を取得して経営をしている漁船ということでございます。国際的に管理され、日本の漁獲枠がきっちりと決められた中において、実は他国の、いわゆる外資と言っていいんでしょうか、外資が入って、日本の漁業者に成り済ましているということで、実態としては日本の漁獲枠を奪っていっているということになると思うんです。

 先ほど、四百二十隻とおっしゃいましたか、そのうちどれぐらいかはわかりませんが、恐らく四分の一ぐらいはそんな可能性があるんではないかなというふうに思います。この傾向というのは明らかに日本の国益に反するのではないかと思いますが、政府の御認識をお尋ねしたいと思います。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の漁業許可制度におきましては、仮に外国資本が一部関与しているという場合におきましても、漁業者が我が国法令に定められました必要な条件を満たしている場合には許可を発給することとされております。

 いずれにしましても、許可を受けた漁業者に対しましては、衛星船位測定送信機、VMSによります操業位置の監視や、水産庁の監督官によります水揚げ検査等によりまして、厳しい管理を行っているところでございます。

 今後とも、すべての漁業者が我が国の規制を遵守して適正に操業するよう、管理を徹底してまいりたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 マグロは、高度回遊性魚類として、ほとんどすべての海域で海域ごとの資源管理が先ほどの図のように行われているわけでありますけれども、その資源管理の実行手段として有効とされているのが公海上での洋上臨検でございます。この公海上での洋上臨検について、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 これについては、UNIAというんですか、正式に言うと長いんですが、千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約及び分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源及び高度回遊性魚類資源の保存及び管理に関する千九百八十二年十二月十日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定という大変長い協定でありますけれども、この協定を日本も平成十八年に批准をいたしました。このことによって、言ってみれば、公海上で旗国の同意を得ることなく各国艦船によって臨検がされるということを日本も了承しているということだろうと思うんです。

 特に日本が一番活発にマグロをとっているのは、さっき言った図では中西部太平洋まぐろ類委員会のところだと思うんです。この海域だけを見ても、例えば他国の洋上臨検、そのための条約事務局に登録されている艦船、ニュージーランドが六隻、フランス三隻、アメリカ十八隻、軍艦と見間違うような警備艇が用意をされていて、我が国漁船と遭遇した場合、言語などのコミュニケーション能力の問題などもあって、偶発的にどういう問題が起こるかということを考えると大変心配な状況でございます。

 日本漁船が他国より臨検を受けた場合の対応、非常時の体制、先ほどの協定の批准以降、政府としては、これは外務省、水産庁含めて、どのような体制をとられているのか、お尋ねをしたいと思います。

田辺政府参考人 御指摘の中西部太平洋マグロ類条約でございますけれども、この条約におきましては、公海において漁船に乗船検査を行う場合には取り締まり船の旗国は漁船の旗国に対して乗船検査の開始を通報し、乗船検査の結果を報告するという旨が規定されております。現時点では、この通報や報告は外交ルートを通じて行うことが想定されております。私ども外務省としても、これにしっかり対応していきたいと考えております。

 我が国漁船が外国取り締まり船に乗船検査を受ける際には、操業活動が不当に妨害されることがないよう、迅速な連絡体制を確立することが重要であろうと考えております。

 外務省といたしましては、在外公館を通じた速やかな連絡を徹底するとともに、外国取り締まり船当局と日本の水産庁との直接の連絡体制を構築することも視野に入れまして、水産庁と緊密に連携し、迅速かつ適切に対応できるよう、体制を整備していく考えでございます。

山下政府参考人 水産庁といたしましては、ただいま御指摘の新たな制度の導入によります混乱等を回避するため、WCPFC水域で操業いたしますカツオ・マグロ漁船及び関係業界に対しまして、乗船検査が開始されることに加えて、具体的な保存管理措置の周知徹底に努めているところでございます。

 さらに、関係業界とも協議いたしまして、乗船検査を受けた場合には、速やかにその情報が水産庁に伝達されるための連絡体制を構築いたしまして、円滑な対応に努めることとしているところでございます。

野田(佳)委員 もう少し連絡連携体制について御説明をいただきたいと思うんですけれども、他国から臨検を受けた場合は、所属漁業団体などに電話などで通報がなされて、その後、水産庁へ連絡があり、そのための電話番号などはもちろん作成されていると思いますが、水産庁から外務省、またその出先の駐在公館への連携方法とか、その辺はもう完全にネットワークはつくられて、例えば機動的な練習とかというのはもうやられているというふうに認識してよろしいわけですか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の問題につきましては、関係業界と、緊密なものとなるよう、その連絡体制等の構築を今急いでいるという段階でございます。

野田(佳)委員 では、まだしっかりできているというわけではないということですね、平成十八年に批准をされてから。今急いでいると。では、本当に急いだ方がいいと思いますので、もう何年かたっていますので、早急な体制整備をお願いしたいというふうに思います。

 大体、こういう洋上臨検を行うような艦船の保有国というのは我が国にとって資源確保については競合関係にあるということだと思います。そうすると、臨検から拿捕に至るとか、痛くもない腹を探られるだけではなくて、相手国政府の管轄下に置かれて、違反とも言えない違反を殊さら問題にされて、多額の罰金を強制されるという事例もあるというふうに聞いております。

 例えば、チャゴス諸島においては、サメのひれを切っただけで拿捕されたという事例もあったようでございまして、中には数億円の罰金を要求されるということもある。これは、間違いなく漁業経営に大変大きな影響があるわけでございます。明確な違反があれば、これはもう仕方がないかもしれませんが、先ほど申し上げたような、痛くもない腹を探られたりとかということのないようにしなければならないだろうと思います。

 やはり、日本の漁業者が誇りを持って遠洋に出て漁業活動ができるようにするためにいろいろと努力が必要だと思いますが、先ほどの臨検への対応だけではなくて、海上においてはいろいろな危険があります。最近は海賊行為などもいろいろな海域で目立ってきているようでございますので、日本の二百海里水域外において漁船、漁船員の安全が確保されるように政府はどういう取り組みをされているのか、お尋ねをしたいと思います。

田辺政府参考人 他国による乗船検査が適切に実施されるということは、日本の漁船の操業の安全にとりまして大変重要な課題であると認識しております。

 そこで、関係省庁、すなわち外務省、水産庁及び海上保安庁の間で緊密に連携して対応していくというふうに考えております。

 なお、国連公海漁業協定に基づく乗船検査におきましては、検査官は、漁獲操業の妨げとなったり、船上の漁獲物の品質に悪影響を与えたりするような行動を避け、また、漁船に対する不当な妨げとならないような方法で検査を行うことが義務づけられているということでございますので、公海上において操業を行う日本漁船が他国によって根拠なく不当に乗船検査を受けるということは想定されません。

 しかし、万が一、同協定に定める義務に違反する形で日本漁船の操業を妨害するような乗船検査が行われた場合には、検査を行った国に対して直ちに厳重に抗議し、再発防止等適切な対応を求めていく考えでございます。

山下政府参考人 水産庁といたしましては、乗船検査を受けた際の適切な対応に加えまして、漁船の海難防止及び安全操業の確保につきまして、関係省庁及び大日本水産会等の関係団体と連携を図りながら、漁業関係者に対する指導及び普及啓発活動を行い、事故発生防止に努めているところでございます。

 また、関係機関より海賊情報等を入手した際には、速やかに関係業界を通じまして我が国漁業者に対し注意喚起の情報提供を行い、安全確保に努めてきているところでございます。

野田(佳)委員 オーストラリア、地中海、メキシコを中心として、マグロを蓄養し日本へ輸出する事業が行われております。これは、オーストラリアのミナミマグロや地中海及びメキシコのクロマグロなど、日本市場において高値で取引されている、そういう魚種を小型のまき網漁船で捕獲して専用の生けすで肥育させ輸出する技術というふうに承知をしていますが、狭い生けすの中で集中的にえさを与えて、全身がとろのような状態になって、日本の回転ずしでは大変受けているということであります。

 問題なのは、ミナミマグロについてはCCSBT、みなみまぐろ保存委員会、地中海のクロマグロについてはICCAT、大西洋まぐろ類保存国際委員会がその資源の管理を行って漁獲の枠を設定しているわけですが、蓄養に関しては、実際に輸出するマグロに対し、どれだけのマグロを漁獲して、生けすの中でどれだけのマグロが死んでいるのかというのが明確になっていないわけです。これらの輸出国は、魚体がどれだけ肥育したかという増肉係数を意図的に過大なものにして、本来許された漁獲枠に比して過大な出荷量を日本市場向けに行っているという傾向もあると聞いております。

 もちろん、我が国としても、これらの行為に声を上げていることと思いますけれども、かつて、ICCAT、大西洋海域において漁獲枠を大幅に超過して漁獲を行った台湾漁船に対して日本が資源管理の観点から非難の声を上げたところ、逆に日本に対して、世界で唯一の刺身市場国として各国から買う側の人間が悪いと非難を浴びた経過もあったということでございます。

 この際、これらの魚を輸入している市場国の責任として、輸入について、資源保護の観点から何らかの措置を考えているのか、お尋ねしたいと思います。

山下政府参考人 お答えいたします。

 水産庁といたしましては、各海域ごとに設けられております地域漁業管理機関を通じまして、関係国と協力しながら、違法、無報告、無規制、いわゆるIUU漁業の排除など、マグロの国際的な資源化に取り組んできているところでございます。

 具体的には、このIUU漁船に対しまして、統計証明制度の実施によりまして、船籍、漁獲海域及び漁獲量等の実態を把握するとともに、IUU漁船の船籍国として地域漁業管理機関で特定された国に対する輸入禁止措置、正規に許可された漁船、蓄養場をリスト化いたしまして、これら以外からの漁獲物を国際取引の場から排除する、いわゆるポジティブリスト対策等を実施してきております。

 加えまして、マグロの種類、海域を偽った輸入を未然に防止するため、我が国への陸揚げ時に、一部を抽出いたしましてDNA分析を行うほか、漁獲枠を超えた過剰な輸入が確認された場合には、各地域漁業管理機関を通じ適切な是正措置を講じているところでございます。

 また、昨年一月には、我が国がリーダーシップをとりまして、五つの地域漁業管理機関の事務局及び加盟国が一堂に会する初めての合同会議を神戸で開催いたしまして、そこで策定されました行動方針の中に、統計証明制度の改善、正規許可船リストやIUU漁船リストの一元化等のIUU漁業対策が盛り込まれておりまして、地域漁業管理機関の連帯によります対応の強化にも努めているところでございます。

 我が国は、世界最大のマグロの漁業国、消費国でありますので、今後とも、有限天然資源でございますマグロ資源を持続的に利用できるよう、各国と協調しつつ、国際的枠組みのもとでの資源管理の徹底に努めてまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 もう少し、マグロの蓄養に絡めての質問をさせていただきたいと思います。特に、メキシコにおけるクロマグロの蓄養。

 メキシコは、国際資源管理の空白地帯でございまして、この空白地帯でクロマグロの蓄養が盛んに行われている。このクロマグロをどんどん捕獲し蓄養しているその群れは、今日本でも話題になっている大間のマグロというんですか、大変おいしいらしいですね、食べたことないんですけれども、そのマグロと同一の群れであるということらしいんです、回遊しているわけですから。

 ということは、メキシコの蓄養が、要はこの日本近海でのマグロ漁にも大変大きな影響があるということなんですが、このことについて、政府としてはどのような対策をとられているのか、お尋ねをしたいと思います。

山下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の、太平洋クロマグロの資源につきましては、関係国の研究者による組織でございますISC、北太平洋におけるまぐろ類等に関する国際科学委員会におきまして、メキシコ周辺のクロマグロは我が国周辺から回遊したものであるとされておりまして、当該組織におきまして、回遊域全体にわたった資源評価が行われているところでございます。

 現在のところ、メキシコ沿岸を含む東部太平洋を管理しておりますIATTCではクロマグロに関する資源管理措置はとられておりませんが、クロマグロの回遊域の大部分を管理いたします中西部太平洋、すなわちWCPFCにおきましては、自主的に漁獲圧を増大させないことが合意をされておりまして、このISCの資源評価に基づいて今後さらなる保存管理措置が検討されることとなっているところでございます。

 水産庁といたしましては、まずは我が国周辺水域を管理いたしますWCPFCを通じたクロマグロ資源の適切な資源管理の実現に努めるとともに、WCPFCとIATTCとの協力を通じまして、メキシコを含む太平洋のすべてのクロマグロ漁業国を包含いたしました実効的な資源管理の実現を目指してまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 マグロを中心に多少細かいことを含めていっぱいお聞きをしてきたわけでありますが、お話をさせていただく中で、大臣も、今のマグロを含めて大変深刻な状況であることは御理解をいただけたのではないかと思います。

 そこで、日本の外交上、今後の我が国の漁業権益を確保する上で、外交当局としてどういう戦略を持っているのかをここでお尋ねさせていただきたいと思います。

高村国務大臣 日本人にとって、水産物は貴重な食料資源でありまして、世界的に需要が高まりつつある中で、我が国の漁業権益を確保し、水産物の安定供給を確保することは、我が国にとって極めて重要な外交課題であると認識をしているところでございます。

 他方におきまして、過剰漁獲が世界的に懸念されている中、漁業資源を枯渇させることのないように、科学的根拠に基づく適切な保存管理を通じて持続可能な利用を確保していくことが、我が国食料安全保障上も、我が国水産業の健全な発展のためにも重要と考えております。

 政府としては、このような認識のもと、全米熱帯まぐろ類委員会を初めとする地域漁業管理機関を通じた国際的な漁業資源管理に、責任ある漁業国として、引き続き積極的に関与していきたいと考えているところでございます。

野田(佳)委員 戦略的な対応として、一つは、他国の排他的経済水域への入漁とかそこにおける漁獲枠の確保など、あらゆる手段を駆使して、日本人の大切な食料となる水産資源の確保、ODAやその他の援助を含めて対応した方がいいのではないかと思うんですが、大体これまでは、他国の二百海里水域内では、ほとんど民間と相手国政府との間で漁業協定を締結し、政府としては、その後にODAや水産無償援助などの側面支援を行うというような形態が多かったように思います。

 ちなみに、きょう、資料の四で世界地図をかかせていただいておりまして、大変見にくいんですけれども、黒く丸をつけているところがありますが、この黒く丸をつけているところは、こういう国々のEEZ内で日本の漁船が入漁を認められているということでございます。

 例えば、アフリカの方を見ますと、モロッコには十五隻日本の漁船が入っている、それからモーリタニアに九隻、セーシェル三十九、モザンビーク五十一、タンザニア三十、モーリシャス二十六、こういうふうに一々読み上げていくとなんですが、もうすぐTICAD4もありますので、多分参加国とも重なると思うんです。

 やはり、こういう国で漁が認められている。マグロもとれる。南太平洋の国々も多いわけです。こういうところと、やはりしっかりODAを絡めながら、国と国の関係を強化していくというアイデアも必要だと思うんですけれども、そういうODAを含めて、どういう対策を考えていらっしゃるかを改めて大臣にお聞きしたいと思います。

高村国務大臣 我が国は、水産分野につきまして、開発途上国の水産業の振興に貢献するとともに、漁業面における友好協力関係を維持発展させる観点から、一九七三年より水産無償を実施しているところでございます。

 水産無償は、漁港等の漁業生産基盤や水産物流通・加工施設等の整備に必要な資金を供与するもので、ひいては我が国の水産資源の確保に寄与するものと考えているところでございます。平成十九年度には六カ国に対し、総額約四十六億円を供与いたしました。

 今後とも、我が国として、ODAの戦略的活用に努めてまいります。その際、委員が今指摘されたこと等も参考にさせていただきたいと思います。

野田(佳)委員 大変大きな枠の話は今大臣とお話をさせていただきましたけれども、また、今度は少し個別具体の話に入っていきたいと思います。

 それぞれの資源管理機構において、漁獲枠の改定が今後行われていくと思います。もちろん、日本は日本の今までの漁獲枠を維持するべく努力をするということだと思いますけれども、資源保護の観点から、各国協調のもとで漁獲量を削減することもあり得るだろうと思うんです。これは、いかんともしがたいだろうと思います。その際、漁業者について、当然のことながら収入の低下などがもたらされると思われます。

 そこで、それぞれ科学的な根拠で資源量を推定されて漁獲制限が行われるということはしようがないと思いますけれども、その際に、その資源維持に協力する漁業者が生産調整などの実施をしたり、あるいは廃業とか休業をせざるを得ない場合、そのための補償はあるのかないのか、どういう対策を講じていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。

山下政府参考人 お答えいたします。

 我が国遠洋マグロ漁業は、全世界を操業区域として許可されてございます。したがいまして、これまで、いずれかの海域におきまして資源管理の強化が行われた場合には他の海域に漁場を移すということにより対応してきた場合が多うございます。

 他方、現在、漁船漁業構造改革総合対策事業がございまして、これにより、新たな操業形態の導入支援ですとか、あるいは減船の際に一定の補償を行うなどの措置が設けられてございまして、今後、これらの事業の活用についても検討を進めているところでございます。

 さらに、現在、我が国遠洋マグロはえ縄漁船が余り利用しておりませんインド洋等での漁場調査を実施することとしております。これによりまして、新規漁場の開拓を図るとともに、二国間の漁業交渉を積極的に展開いたしまして、これらの水域の外国の排他的経済水域等におけます漁場確保に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

野田(佳)委員 漁場確保ということはわかりましたけれども、私の質問は、最悪の場合、廃業とか休業とかをせざるを得なくなった場合、そういうときの補償があるのかないのかという質問でございますので、その点のお答えを改めて要求したいと思います。

山下政府参考人 ただいまお答え申し上げました中で、漁船漁業構造改革総合対策事業によりまして、減船の際に一定の補償を行うなどの措置を設けてございます。こういったことで、今後、これらの事業の活用について検討を進めてまいるというふうに考えているところでございます。

野田(佳)委員 この後ちょっと台湾の休漁の話もしようと思っているんですが、その前に。

 日本の漁船が休漁せざるを得ない、だけれども、休漁することが資金繰り上できない、それでやむなく廃業に至るということの方が可能性としては大きいのではないかと思うんです。廃業に至るまでに、せめて休漁させる何らかの方策というのがあり得るのかどうか、その点はいかがでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 遠洋マグロ漁業経営を取り巻く状況というものは、燃油の高騰等によりまして一層厳しい状況にあることは十分認識しているところでございます。

 御指摘のとおり、休漁させることが直ちに廃業につながるというような場合に、直接これに対応することは極めて難しいということでございますが、今後の地域漁業管理機関などでの資源管理のあり方につきましての議論がどうなっていくか、必ずしも明らかでない点もございます。

 そういった現時点で、先ほどお答え申し上げました漁船漁業構造改革総合対策事業ですとか、昨年度の補正予算で措置されました水産業燃油高騰緊急対策事業等を活用するなど、遠洋マグロ漁業の支援策を現在検討しているところでございます。

野田(佳)委員 今、少し触れたんですけれども、今月の初めの報道で、台湾が遠洋マグロ漁休漁を検討という記事が出ていました。日本に輸出している台湾、非常にこの輸出は多いわけですけれども、休漁にならざるを得ない最大の理由というのは、やはり燃料重油の価格高騰ということなんですね。これは台湾の漁業組合のお話ということで報道が出ていますけれども、台湾が保有する四百隻のうち七十隻が休漁をする、六月ぐらいから始まるだろう、自主的な休漁を含めると、その漁船数は百隻を超えるのではないかというような内容の報道でございました。

 日本の食卓に台湾から輸出されてきたマグロというのは相当入ってきていると思うし、実態は、さっき日本船籍の中へも外資が随分入ってきているのではないかというお話がありましたが、その日本船籍の中でも実は台湾の持っている船というのがあるんだろう。そうすると、台湾の本体がこうやって大量に休漁をするということは、日本の船も休漁をするケースが出てくるだろう。中国のマグロ船も世界で四番目ほどの隻数ですが、実は中国にも台湾は相当入っているはずでありますので、台湾本体がこういう形で、燃料重油の価格高騰を理由にマグロ漁船の大変大幅な休漁をするということは、日本、中国の船も同様の動きが多分連動して出てくるだろうと思います。

 ということは、ことしはマグロが余り入ってこないのではないかという心配をします。そういう意味で、きのうはしっかりマグロを食べてこの準備をしてきたんですけれども、この台湾の休漁というのはどういう影響があるか、お尋ねをしたいと思います。

小野寺副大臣 実は、台湾だけではなくて、日本の漁船も相当今自主的な休漁を行っております。私の家の目の前にもたくさんの日本のマグロ漁船が係留をされて、これは実は燃料高で出漁ができないという状況になっております。台湾の問題も同じような状況にあると思いますが、今、このマグロの供給の問題というのは重要な課題かと思っています。

 この燃油対策、政府としてもいろいろな制度を出しておりますが、ぜひ委員の方でもしっかりと御意見を出していただき、支えていただければありがたいというふうに思っています。

野田(佳)委員 小野寺副大臣にとってはまさにこういう水産の問題は専門でございますので、私のアイデアというよりも、御自身のリーダーシップでどんどんしっかりとした対応策を講じられた方がいいだろうというふうに思う次第であります。

 そこで、きょうの案件であります全米熱帯まぐろ類委員会の強化についてでありますけれども、このIATTCの機能強化については、二〇〇三年六月、条約の採択をしました。しかし、国会の承認を得ようという動きがなぜかその後なかったんですよね。これは五年もずっとほっておいた。少し妙な感覚があるんですが、なぜこんなに国会承認を求めるのに時間を要したのか、その理由をお尋ねしたいと思います。

小野寺副大臣 この条約、強化というのは大変重要な問題だと思っております。こうした取り組みの中で、この条約の発効の要件ということがございまして、その発効要件について、実は、加盟国の数が一定の要件になっておりますが、あと二カ国で発効の時点になりました。

 このような状況の中で、そろそろこの条約、発効する可能性が高まったということで、日本も発効時点から締約国になろうということで今回提案させていただいている中でございます。ようやくこれが実効ある形に動く状況が出てきたということで、日本が今この条約を締結しようとしているところだと思っております。

野田(佳)委員 今の答えは、発効の可能性を見きわめていたというお答えですね。

 本当にマグロの最大の消費国でありますので、見きわめるというやり方よりも、もう少し能動的な取り組みがあってしかるべきではなかったのかと思いますが、その点はいかがですか。

小野寺副大臣 条約につきましては、その条約の目的の意義というのは大変重要だと思っております。ただ、国際的な各国の足並みということを見ながら考えていくこともまた大事な要件かと思っておりますので、そういう意味では、各国の状況を見ながら、とにかく発効時の当初の締約国になるということを見据えながら、状況を見て判断をしております。

野田(佳)委員 次は、各国の見きわめの問題と絡む話なんですが、資料の三にそれぞれの地域漁業管理機関の加盟国の一覧を掲げさせていただいております。

 きょうの議論の焦点であるIATTCは加盟国十六カ国、ICCATが四十四カ国プラス一機関、CCSBT四カ国、IOTC二十六カ国プラス一機関、WCPFC二十一カ国プラス三地域というふうになっているんですが、ここでやはり気になるのは、最近マグロ類の漁獲量を増加させている中国、そしてさっき話題になりました台湾なんです。ケースによっては地域漁業管理機関に入っているところもありますよね、中国や台湾が。だけれども、残念ながら、きょう話題のIATTCには入っていないんです。

 発効の可能性を見きわめてきたというお話でございましたが、漁獲量をふやしている中国、台湾、影響力のあるこの国々が入っていないというのは、本当にこの条約の機能強化につながるのかどうか。むしろ我が国が主導的に両国に入るように、加盟するように働きかけをするということもあり得るんじゃないかと思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

田辺政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、この地域漁業管理機関の中に、特に台湾について参加が認められているものがある一方で、台湾の参加が認められていないものもあるわけでございますけれども、この条約におきましては、漁業主体、フィッシングエンティティーと言っておりますけれども、漁業主体がこの条約に加盟をするということが認められております。したがいまして、台湾はこの条約に加盟することが可能なわけでございます。

 我が国といたしましては、東太平洋における長期的なマグロ類資源の保存及び持続的な利用を効果的に確保するという目的のために、特に大きな漁獲量を有するような国や地域はこれに入っているべきであろうというふうに考えておりまして、今後、そのような目的に照らしまして適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

野田(佳)委員 やはり、言ってみればマグロをとる有力な国が入らないというのはその条約の機能強化とは言えないというふうに思いますので、働きかけを通じて、中国、台湾、こうした国々がしっかりとIATTCにも早期に加盟をして、お互いにルールに基づいて頑張っていこうという関係であってほしいと思いますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 もう一つは、この国会でいただいた条約の資料を見ますと、IATTCで特別会合が去年から何回も何回も行われて、ことしも行われているんですが、合意がずっと得られていないようなんですね。特別会合があった、あったという資料なんですが、一体何が問題で、そしてなぜ合意に至っていないのか、その最大の問題は何なのか、そして日本としてはどういう取り組みをしているのか、ぜひお答えをいただきたいと思います。

田辺政府参考人 昨年六月に行われましたIATTC年次会合、それから昨年十月及び本年三月に行われたIATTC特別会合では、本年以降のメバチ、キハダの保存管理措置の強化に向けた議論が行われました。しかしながら、これら魚種のまき網漁業に対する管理措置の強化等について関係国間で合意が得られず、本年六月の年次会合、パナマで行われるわけでございますが、ここで再度議論することになりました。

 我が国といたしましては、関係国と協力いたしまして、適切な保存管理措置につき合意できるよう、引き続き努力してまいりたいと考えております。

小野寺副大臣 ちょっと補足させていただきますと、魚の資源管理では、本来、大きな魚体を選択的にとれるはえ縄、いわゆる釣りでとるという方が恐らく資源管理には有効だと思います。まき網になりますと、いわゆる一族郎党一網打尽ということになりますので、小さな魚もとってしまう。

 ところが、日本はまき網については資源管理で問題があると言っておりますが、関係各国の中でまき網主体の漁業をやっている国が多いということで、むしろ資源管理を考えた場合、日本からこの点は強く言っていくことが大事だというふうに思っています。

野田(佳)委員 大変わかりやすいお答えでした。

 その主張をぜひ通そうと、今御努力をされているということですよね。そうじゃない、まだ理解されない国が何カ国もあるわけですか。六月にまた年次会合ということですが、見通しはいかがなんでしょう。御主張は物すごく私は納得しますが、六月に合意形成できるのかどうか、ちょっと再度お答えいただければと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれにいたしましても、本年以降の保存管理措置が早期に採択される必要があるというふうに考えておりますので、六月に開催される年次会合におきまして、関係国と協力しつつ、適切な保存管理措置が合意されるよう、最大限努力してまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 そういう答えしかないんでしょうけれども、最大限の努力をして、ぜひそろそろ合意形成ができるように願いたいと思います。

 質疑時間がまだ多少残っておりますけれども、もう質問項目はありません。さっぱりしました。何かありますか。

小野寺副大臣 大変重要な御指摘をいただきました。

 漁船員につきましては、実は、マグロの操業形態、今洋上では一年以上操業しなきゃいけない、船からおりられないという状況があります。日本の今の雇用環境では、人材の確保というのはなかなか難しいのかなと思っております。

 また、今燃油の問題がございます。国の中には、実は国内の価格と国外の価格と違う価格制度をとっている場合があります。例えば、同じような原油でも安く供給できる国であれば漁業が残れるということになりますので、こういうことも考える必要があると思います。

 大きな問題は、実は、日本の漁船自体が今性能がどんどん落ちております。漁船員だけではなくて、漁業技術、そしてまた漁船についても国際的に本当に今優秀な技術水準にあるかどうかというのはかなり精査しなきゃいけない。

 多くの問題がございますので、これからもぜひ御指摘をよろしくお願いしたいと思っております。

野田(佳)委員 ありがとうございました。終わります。

平沢委員長 次に、山内康一君。

山内委員 自民党の山内康一です。

 最初に、国際物品売買に関する国際連合条約についてお尋ねします。

 まず、この条約の意義と、そして、日本にとって、特に日本の経済界にとっての具体的なメリットについてお尋ねします。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 国際物品売買契約に関します国際連合条約、今御指摘の条約でございますが、これは国際物品売買契約についての統一法を設けることによりまして国際取引の発展を促進することを目的として作成されたものでございます。現在、我が国の主要貿易相手国を含みます七十カ国がこの条約の締約国となっておりまして、この条約が国際的な物品売買契約に関する国際的な標準ルールになっていると認識しております。

 この条約を我が国が締結することには、主として次のような意義があると考えております。

 第一に、日本企業が外国企業との契約交渉の際に共通の法的基盤としてこの条約を利用することができるようになるということで、契約交渉が円滑化するという効果が期待できるというのが第一点目でございます。

 第二に、この条約を適用した裁判例は数多く公表されておりまして、契約に関する紛争が生じた場合でも、裁判の結果の予想が容易になるということなどによりまして、当事者間で紛争の自主的な解決が促進されるというような効果も考えられるところでございます。

 さらに、第三点目でございますけれども、契約に関する紛争が裁判となった場合に、統一法でありますこの条約が適用されることによりまして、いずれの国の法が適用されるかという問題、不安定な状態がなくなり、紛争の処理が容易になるというふうに考えられます。

 以上、三点申し上げましたけれども、この条約の締結によりまして、国際取引が円滑化し、貿易の促進につながるものと考えております。したがいまして、貿易立国として多数の国々と取引を行う我が国にとりまして、この条約を締結することには重要な意義があるというふうに考えております。

山内委員 その意義とメリットについては大変よくわかるんですが、この条約が発効して二十年近くたって、今の段階になって締結するというその事情と背景についてお尋ねします。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 一九八八年にこのいわゆるウィーン売買条約というものが発効いたしました。それを受けまして、政府としても、この条約の締結について検討を行った次第でございます。しかし、当時の締約国はまだ多くなく、この条約が今後国際的な物品売買契約に関する国際的な標準ルールとなるか否かが不明確であったという事情がございます。

 また、この条約の解釈に関する予見可能性という点でありますけれども、それも必ずしも高くなかったということもございまして、当時経済界は締結に積極的でなかったという事情がございます。

 その後、この条約の締約国数は順調に増加してまいりまして、物品売買契約に関する国際的な標準ルールとしての実用性が増大してまいりました。

 また、裁判例及び仲裁判断の蓄積によりましてこの条約の解釈に関する予見可能性も高まり、経済界からも締結について肯定的な評価を得られるようになってきたという事情がございます。

 このため、我が国企業の国際取引を円滑化しその法的安定性を高めるといったような観点から、今回この条約を締結することといたしたものでございます。

山内委員 事情は、背景とメリットはよくわかるんですが、何か考えられるデメリットとかリスク、あるいはほかの条約加盟国でこれまでに何か問題等起こっていないか、もしあればお尋ねします。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 先ほどちょっと御答弁いたしましたけれども、この条約の締結によりまして我が国企業が行う国際取引の円滑化などが期待されるところでございますが、その内容が我が国の民法、商法と一部異なることがございますので、貿易実務に支障が生じるのではないかといった問題意識を一部において持たれ得るところと推察いたします。

 ただ、この点に関しましては、当事者が契約においてこの条約に書いてあることと異なる形で定めた内容や当事者間の慣行というものはこの条約の規定より優先されるということにされておりますために、これまでの貿易実務に変更を強いるものではございません。

 また、政府としては、この条約が発効するまでの期間中に、この点を含めまして条約の内容が正しく理解されるようにするために、広く国民に対する周知を徹底する予定でございます。

山内委員 それでは、二つ目の案件の、全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約についてお尋ねします。もう既に野田先生から相当具体的なお尋ねがありましたので、質問の順番を入れかえて、幾つか飛ばして質問させていただきたいと思います。

 マグロに関してはこの委員会を初めとして五つのマグロ関連の委員会がありますけれども、こういった委員会への日本人の職員の派遣あるいは日本人がどういうポストについているかについてお尋ねしたいと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員会がございますが、その中で、みなみまぐろ保存委員会、大西洋まぐろ類保存委員会及び中西部太平洋まぐろ類委員会には、それぞれ一名の邦人職員が派遣されております。インド洋まぐろ類委員会及び全米熱帯まぐろ類委員会には邦人職員はおりません。

 邦人職員がいるところでは、みなみまぐろ保存委員会では日本人一人、事務局次長というポストについております。大西洋まぐろ類保存委員会におきましては、日本人職員一人、事業調整官という職にございます。中西部太平洋まぐろ類委員会におきましては、日本人が一人、信託基金調整官としておるところでございます。

山内委員 では、人とあわせてお金についてもお尋ねしたいと思います。

 この全米熱帯まぐろ類委員会には、日本政府は、ここ数年どれぐらいの分担金あるいは任意の拠出金があれば出しているんでしょうか。

田辺政府参考人 本委員会の運営経費として各国が分担金を支払っているところでございますけれども、日本は毎年、約四千万円から五千万円、ドルにいたしますと大体四十万ドルから五十万ドルを分担金として負担しておるところでございます。

山内委員 このマグロ関係の国際機関に限らず国際機関一般について言えることだと思うんですけれども、日本の国益を守るためにも、あるいは日本が国際社会に貢献していくためにも、もっといろいろな国際機関に日本人の職員をたくさん出していくということ、あるいは外務省所管以外の国際機関、世銀とかいろいろな国際機関を合わせると恐らく数千億単位で日本の税金が分担金なり拠出金で出ていると思います。そういった意味で、オール・ジャパンの観点で最適な対国際機関戦略みたいなものを組み立てていく必要があるのかなと思います。

 それに当たって、例えばこのマグロに関しては外務省と水産庁との連携が大変重要になってくると思いますが、外務省と農水省なり、あるいはほかの経産省でも国土交通省でも何でもいいので、そういう他の省庁とどういうふうに連携を図っているのか、特に人の面でお尋ねしたいと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 国際機関で活躍する日本人は、我が国の国際貢献の顔であるとともに、国際社会において我が国の考え方を実現していく際にも重要な役割を担っているところで、これはまさに委員御指摘のとおりでございます。

 外務省といたしましても、まさにオール・ジャパンとして関係省庁や民間とも十分に連携をしながら、日本人の国際機関への送り込みを強化する必要性というものを強く認識している次第でございます。

 例えば、今、水産庁の例についても言及がございましたが、関係省庁からの出向者を初めとする中堅職員の派遣に際しましては、当該省庁と連携をしつつ、在外公館において選考状況のフォローアップや国際機関人事担当への働きかけといった送り込みの支援を行ってきておるところでございます。

 また、重要度の高い国際機関の幹部ポストへの邦人送り込みにつきましては、これは特に選挙なんかで決まるトップということについて、国際機関等における各種選挙に関する省内の意思決定メカニズムとして、昨年三月に外務大臣を委員長とする常設の選挙対策委員会というものを設置しております。

 この選挙対策委員会におきましては、選挙対策に関する外務省としての基本方針、立候補する選挙の選定等を行うとともに、関係府省庁より立候補に関する情報を集約し、他府省庁からの選挙支援要請への協力というようなことを総合的に判断して決定していくというようなことをしているところでございます。

 このように、国際機関等の幹部ポストの選挙を初めとする重要な選挙につきましては、この選挙対策委員会が中心となり、関係府省庁とも連携しながら、オール・ジャパンとしての取り組みを進めていくということで進めておる次第でございます。

山内委員 以前に比べると大分体制ができてきたのかなと思うんですが、同時に、外務省が毎年出している国際機関に対する拠出金の報告書、これを見ると、あらゆる省庁が関連の国際機関にお金と人を出している。農水省がFAOとか、あるいはフィリピンの稲研究所とか、あるいはこのマグロでいうと水産庁からも人が行かれていると思います。

 こういった縦割りの省庁の壁を越えて、オール・ジャパンで国際機関戦略をつくっていくということがこれから戦略的に重要だと思うんですけれども、それを外務省がやるのか、あるいは官邸に置かれている海外経済協力会議のような省庁横断的なもっと上のレベルでやるのか、どういう形が望ましいのかわかりませんが、そういった特定の省庁にこだわらずに、日本としての国際機関戦略を具体的につくっていく、そういう動きとか、あるいはプランとか、あるいは五カ年計画で国際機関のトップを五〇%ふやすとか邦人職員を三〇%ふやすとか、そういう具体的なプランみたいなものは何かおありでしょうか。

 それを、まず事務方に聞いて、その後もしよろしければ小野寺副大臣にもお考えをお聞かせいただければと思います。

梅本政府参考人 お答え申し上げます。

 国際機関につきましては、国際機関も千差万別でございますし、また私どもが国際機関に人を送り込む際のレベルもまたいろいろなものがございます。

 そういうこともございまして、今現在、何か具体的にこういう目標というようなものがあるわけではございませんが、やはり私ども全体として質、量ともにこれを拡充していこうということで、まさにオール・ジャパンとして関係府省庁との連携を密にし、必要があればまさに先生御指摘のようにオール・ジャパンで取り組むということで、政治レベルの関与も深く得ながら関係府省庁ともよく調整をして進めていく、何か具体的な目標、具体的なシステムというのがあるわけではございませんが、よく政府内で連携をして、有機的に、日本全体としての活動がこの邦人の送り込みに生きてくるようにしていきたいというふうに思っておるところでございます。

小野寺副大臣 大変重要な御指摘だと思っております。やはり何らかの目標ということも必要だと思っております。

 また、選挙に関しましては、きょう御経験の方もいらっしゃいますが、私ども、この対策本部におきまして、外務省のみならず各省庁から上がってきている幹部ポストの一覧表がありまして、それを見ながら、どのような形でこの一年間いわゆる選挙運動をするかということ、それから、各国を回ったときには常に重点となる選挙運動の活動を二国間会談でもさせていただくような取り組みをさせていただいております。

 また、国際機関のいろいろなレベルの職員がありますが、きょうは山中先生いらっしゃいますが、例えば平和構築の分野でも大変重要な人材が今出ておりまして、そのような方が活躍することによって、ぜひ邦人職員の方の活躍ということも重要かと思っております。

 私ごとになりますが、先日、スーダン・ダルフールに行かせていただきましたが、そこで前面に立って活躍されているのは日本出身の国際機関の職員であったということを大変誇らしく思っておりました。

山内委員 ぜひ、選挙対策については選挙に強い小野寺副大臣を中心に、しっかりとした体制をつくっていただきたいと思います。

 私はJICAにいたときに、やはり外務省のラインのJICAがマニラで建設関係のプロジェクトをやっていて、そのすぐ近くで建設省関係の財団がODA資金を使って同じようなことをやっていて、お互いに連絡が全然なされていなかった。

 そういうケースが非常に多いし、今でも多いんじゃないかと思いますので、ぜひともオール・ジャパンの視点で、例えば海外向けの途上国の農業援助政策について農水省と外務省でやっていく、あるいは医療政策、医療分野の国際援助に関しては外務省と厚生労働省で連携しながらやっていく、そういった省庁の縦割りの壁を越えたような対国際機関戦略が必要かなというふうに思います。

 特に、国際機関については金額が大きい割にはブラックボックスになっていて、お金の使い道がなかなかフォローできない部分が多いと思いますので、より透明度の高い援助をするためにも、まずは目標設定、それからその評価をきちんとやっていくということが必要ではないかと思います。

 以上、意見を申し述べまして、マグロについては終わりたいと思います。

 続きまして、租税条約について、日豪租税条約、日・パキスタン租税条約、その両方を一括してお尋ねします。

 これまでイギリスやインド、フランス、フィリピン等々改正が進められてまいりましたが、このタイミングでなぜオーストラリアとパキスタン、この二つの国が選ばれて今回条約を結ぶことになったのか、その背景についてお尋ねします。

    〔委員長退席、山中委員長代理着席〕

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の日豪租税条約及び日・パキスタン租税条約は、それぞれ一九七〇年及び一九五九年に、これは六一年に一部改正がございますが、発効いたしました古い条約でございます。近年、両国との緊密な経済関係が発展しておりまして、こうした現状にこの現行の条約が必ずしも合致しなくなってきたという事情がございます。

 特に御指摘させていただきたいのは、豪州及びパキスタンが近年締結いたしました先進国との租税条約におきまして、いわゆる投資所得、この中には配当、利子、使用料が含まれますが、投資所得の源泉地国課税の限度税率が明記され、かつ、現行の我が国との条約と比べて低く設定されております。

 こうした状況の中で、我が国と我が国の企業の競争力をどういうふうに確保していくかという観点、それから我が国と豪州、パキスタンとの投資交流をどう促進していくかというような観点から、改正につきまして日本の経済界から強い要望がございました。

 具体的には、日豪につきましては、二〇〇六年に全豪日本商工会議所連合会から出された日豪租税条約の早期改定を求める要望書というものが、国内の経済団体等を通じまして我が国の政府に提出されております。

 また、日・パキスタンにつきましては、二〇〇一年以降、日・パ経済委員会及びパキスタン・日本経済フォーラムが両国政府に対しまして条約改正についての陳情を行っております。また、二〇〇四年の十一月には、カラチ日本商工会が在パキスタンの日本大使あてに書簡で、日・パ租税条約の改正を要請しております。

 こうした状況を受けまして、パキスタンとの間では二〇〇七年二月から、オーストラリアとの間では二〇〇七年一月からそれぞれ正式交渉を開始し、合意に至った次第でございます。

 新条約におきましては、投資所得の源泉地国課税の限度税率を明確化し、あるいは減免した内容にしておりまして、この両条約によりまして、我が国企業が他の先進国に劣らない競争条件のもとで活動し、もって両国との経済関係が一層緊密になるということを期待しております。

山内委員 では、ちょっと事前の通告をしていなかったんですけれども、ミャンマーのサイクロン、中国の地震等、災害に関して、日本政府としても援助を行っていくということで、それについて質問させていただきたいと思います。

 特に細かい数字はお尋ねしませんので、基本的な考え方を小野寺副大臣にお答えいただければと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 ミャンマーにつきましては、サイクロンによりまして大変な被害が出ております。これにつきましては、既に資金援助を発表しておりますし、第一陣、物資の供与でございますが、これもヤンゴンの方に到着しております。現地の方にこれを搬送するということがなかなか困難な状況もございますが、引き続き日本としてもしっかり支援をしていきたいと思っています。人の受け入れにつきましては、まだミャンマー政府の方から受け入れるということがございませんので、まだこれについては派遣ができておりません。

 また、中国の地震につきましても、既に日本政府として資金援助を表明しております。緊急無償でございますが、これにつきましても、国際機関あるいは中国政府との間で調整をいたしまして、速やかにこうした支援が届くように努力をしていきたいと思います。人の支援につきましても、先方から要請がございましたら、これに積極的に対応していきたい、そういうふうに考えております。

小野寺副大臣 この中国の問題、そしてミャンマーの問題、大変重要な課題かと思っております。

 今、中国側の方には、先ほどお話がありました五億円の支援についてお話をさせていただいております。きのうの夜、また中国側の方から話がありまして、今の状況ではなかなか、交通機関等が寸断されている状況ですので、私どもが検討させていただいております国際緊急援助隊あるいは総務大臣がお話しされました消防関係のレスキュー、そのような人の派遣というのは、今準備をしつつ、いつでも出られる状況にありますが、先方側の受け入れが決まればすぐに派遣したいと思っております。また、シンガポールにありますJICAの倉庫の方には、援助物資がいつでも出せるような状況になっておりますので、相手国政府と協議しながら、いつでも対応できることが、今、私ども進めさせていただいているところでございます。

    〔山中委員長代理退席、委員長着席〕

山内委員 緊急援助のやり方について、基本的な考え方についてお聞きしたいと思うんです。

 よく日本政府が緊急援助をやると、何千万円援助しますというような発表がまず最初に来て、金額を中心にプレスにも発表するし、大体、金額が大きければいいかなというふうに一般の方は思いがちだと思うんですけれども、日本政府の緊急援助のやり方というのは、見ていてコストパフォーマンスが非常に悪いなというのを感じるわけです。

 例えば、私がNGOで緊急援助に携わってきたときには、テントを供与します、テントというのは、大体、赤十字とかユニセフとか、国際標準スペックが決まっていまして、そういう国際標準スペックは、七、八年前で百五十ドルから百六十ドルで一世帯用のちっちゃいテントが買えるわけですね。そのときに、たしかJICAは、今手元に資料がないんですが、同じようなテントを国産のすごくスペックのいいもので、十何万か、十四、五万かけてやっていた。

 ということは、テントの値段で、大ざっぱに言って十倍値段の開きがあるわけですから、日本政府が三千万円分テントを上げましたといっても、ユニセフか赤十字だったら三百万円分のテントにしかならないということでありまして、そういった意味では、実際には、金額も大事ですけれども、もっと大事なのは、何人の人たちを助けることができたのか、何世帯の人たちに援助物資を届けることができるのか、その方がもっと大事なんじゃないかなと思います。

 それで、恐らく日本の納税者も、何ぼ出したかというよりも、何人の人が助かったかの方が知りたいんじゃないかと思うんですね。ですから、今後そういう費用対効果の面も考えながら、あるいはそれを広報するときにも、我々の税金を使ってどれだけの人たちが助かったか、そっちに重きを置いてプロジェクトを組み立てる、あるいは考えていくということが必要ではないかと思います。

 それについて、副大臣のお考えを。

小野寺副大臣 今回のこと以外にも、難民支援を含め、いろいろな活動をしております。その金額はもとより、やはりどれだけの方がそれによって救われたかということは、私ども、日本の国民の皆様にも広く知っていただき、なお多くの支援をいただける環境をつくるということも大切かと思います。

 重要な御指摘、ありがとうございます。

山内委員 あと、ぜひこれを機会に緊急援助の体制を見直していただきたいと思うのは備蓄倉庫です。

 国際的な援助機関の中で、備蓄倉庫を充実させようとしているところはそんなに多くないと思うんですね。今は、むしろ事前に企業と話をつけておいて、いざというときにすぐ供給してもらえるような契約にしておけば、わざわざ備蓄倉庫をキープして、そこを日通とかに管理を頼んでというと、すごく維持管理費が高くつくので、そういう備蓄倉庫というのは、実はスピードだけを考えると、決して悪い、間違った考え方ではないんですけれども、費用対効果を考えると、意外と人気のないやり方になってきている。そういうやり方も見直すことによって、同じ金額でももっと有効に、もっと多くの人たちを助けられるということもあると思います。

 それから、日本は、何かあると、すぐ日本から物を送るか、あるいは備蓄倉庫から物を送るという発想に行きがちなんですが、実際には現地で調達した方がよほど安い場合もございますし、あるいは現地で買えば、何よりも税関の手続、通関も要らないし、現地にお金が落ちるから多少は現地の経済も潤う、そういう点もあると思います。

 インドみたいな大きい国であれば、ある一カ所で大きな災害が起きても、ほかの土地は全く平和なわけですから、銀行口座に振り込んで、現地に既にいるJICA事務所の職員が調達して配る、そういうやり方も今後はオプションとして考えていくことが必要ではないかと思います。

 何でもかんでも日本から送る、しかも、日本から送る物資というのは、非常に物がいいかわりにコスト高になって、ユニットコストが高い。そういうやり方を、一度ゼロベースで考え直していくことによって、同じ金額でもっと多くの人たちを助けることができるし、もっと相手国から感謝される、そういう体制がつくれると思いますが、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それについて、御見解をお願いします。

小原政府参考人 緊急援助につきましては、これは本当にいろいろな課題もあると思いますが、タイムリーに必要としているものを確実に届けるというような配付の問題もございますし、そうした必要な物資を、事態が起きてから調達するのではなくて、事前にある程度そういうものを蓄えておいて、そういうことが起きたときには速やかに出せるように、そういったいろいろなことを考えていかなければならないと思っております。

 ただいま委員の方から御指摘がありましたコストの問題等々、我々常にそういった点にも配慮しながら、効率的あるいは効果的なよりよい援助ができるようにということで、その検討をしておりますので、ただいま賜りました意見も踏まえまして、引き続き効果的、効率的な援助ができるように、我々としても最大限の努力をしていきたいと思っております。

 ありがとうございました。

山内委員 実は、備蓄倉庫があった方が速いかというと、意外とそうでもないケースもあります。

 私事で恐縮ですが、二〇〇一年にインドで大きな地震があったときに、僕はNGOの一員として現地に入りまして、現地に到着して七十二時間以内に八百張り分のテントを隣国のパキスタンから持ち込んで配ることができました。そのときにJICAの皆さんは、一週間後ぐらいにテントを運んできて、結局相当後になったんですけれども、それは国と国との間のことなので、いろいろ文書のやりとりとか通関の手続とか、あるいはいろいろな手続に手間取ったのかもしれませんが、結果的には、備蓄が一切なかった我々のNGOの方が、備蓄していたJICAよりも速くテントを運び込むことができましたし、恐らく、スピードはまず勝ったし、費用対効果も、百五十ドルのテントと十万円のテントですから、明らかにまさっていたと思います。

 それから、我々は現地のNGOと一緒に被災者の町まで行って、トラックで届けることをやりました。政府間援助の場合は、大体、相手国の政府か、相手国の赤十字に渡してセレモニーをやって終わりというパターンが非常に多いわけですね。きめ細やかな援助という意味でも、NGOがやった方が、そのときに限って言えば絶対によかったと僕は思います。

 そういった意味で、緊急援助においてもっとNGOの活用をやっていただきたいし、その方が恐らく小回りがきいて柔軟に対応ができて、そして、相手国の被災者から見ると、JICAで来ようが、日本のNGOで来ようが、ユニセフで来ようが、ああ、日本人が来て助けてくれた、ここが大事だと思うんですね。そのときにNGOの活用ということを、既にジャパン・プラットフォーム、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン等に大分お金を出していただいているということで安心しておりますが、これからより一層そういったNGOの活用ということを考えていただくことは、日本の外務省にとっても、日本の国益にとってもかなうことではないかと思うので、ぜひともより積極的な活用をお願いしたいと思います。

小野寺副大臣 重要な御指摘だと思っています。

 今の備蓄倉庫の問題、例えば食料を長い間備蓄しますと当然賞味期限もございますし、あるいは今テントの問題もございました。何が一番緊急に、そしてまた効率よくこういう緊急時に支援できるかということをもう一度私ども精査したいというふうに思っております。

 また、NGOの活用につきましても、日本の顔が見える、そのような援助のためにも大変重要な役割を果たしていただいていると思っておりますので、なお一層私どもは推進するように努力していきたいと思っております。

山内委員 通告のない質問が多くて大変失礼いたしました。

 どうもありがとうございました。以上で質問を終わります。

平沢委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、議題となっております条約以外にも何点か通告はさせていただいておりますが、まず、きょう議題となっております条約につきまして何点か御質問させていただきます。もう既に他の委員からも質問のあった内容と若干重複する部分もありますが、ひとつお許しをいただければというふうに思います。

 まず、国際物品売買契約条約につきまして御質問させていただきます。

 今、経済は非常にグローバル化が急速に進んでいて、二〇〇六年の統計を見ますと、世界の輸出輸入とも、約十二兆ドルという巨額に達し、引き続きふえているという現状にあります。それだけ法制度や文化、言語、商習慣、そういったものが異なる者同士の取引がふえているということでありまして、取引の安定を目指した統一的な法制度を定めたこの条約の重要性というのは、極めて重要だというふうに理解をしております。

 さらに、今後、特に途上国の貿易額も増加しますと、新しいプレーヤーが入ってくるわけでありますから、その重要性というのはさらに高まってくるんではないのかなというふうに考えておりますので、本条約に我が国として今回加盟しようとすることは理解できるんです。

 ただ、先ほどもちょっと質問にありましたけれども、我が国は世界でも有数の貿易国でありまして、素朴な疑問として、なぜ、条約が発効してから二十年を経過した今日、そしてもう既にほとんどの主要国が加盟しているときになって、我が国が今から入ろうとしているのか。また、今回条約に加盟することによって、我が国の事業者の国際取引の環境がどのような面で改善をされるというふうに認識をしているのか、まずお考えを伺いたいというふうに思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの答弁とちょっと似通った御答弁になろうかと思いますけれども、我が国におきましては、この条約の発効直後、すなわち一九八八年に発効したわけでございますけれども、締結に向けた検討を行ったわけでございます。

 ただ、その段階では、当時の締約国、たしか三十カ国だったと思いますが、条約が今後国際的な物品売買契約に関する国際的な標準ルールになるかどうかという点での確信が持てなかったというのが第一点、一番大きい点だったと思います。

 またさらに、この条約の解釈に関します予見可能性もまだ高くなかったということもございまして、当時、当然のことながら経済界あるいは法曹界とも相談していたわけでありますけれども、当時の経済界は締結に積極的でなかったという事情がございます。

 その後、まさに委員の御指摘にありましたとおり、数多くの国がこの条約の締約国になりまして、主要な経済貿易相手国というのもかなりこの条約の締約国になったという事情もございます。そしてまた、国際的な物品売買契約に関します標準ルールとしての実用性が増大してきたという判断に至った次第であります。

 さらにつけ加えさせていただきますと、裁判例ですとか仲裁判断の蓄積も出てまいりまして、この条約の解釈に関する予見可能性も高まったということで、また、関係者ともいろいろ連絡調整した結果、やはり経済界からも締結について肯定的な評価を得られるようになったということでございます。そのため、我が国の企業の国際取引を円滑化し、その法的安定性を高めるといった観点から、今般この条約を締結することとしたものでございます。

 それで、この条約を締結することによってどういう利点があるかという点の御質問もございました。これもちょっと繰り返しになるかもしれませんけれども、我が国の企業は、外国企業との契約交渉の際に、共通の法的基盤としてこの条約を利用することができるということですので、契約交渉を円滑化するという効果が期待できるのではなかろうかという点が一点でございます。

 それから第二点目が、この条約を適用した裁判例が数多く公表されておりまして、契約に関する紛争が生じた場合でも、裁判の結果の予想が容易となるということなどによりまして、当事者間での紛争の自主的な解決が促進されるのではないかというふうに考えております。

 また、第三点目でございますが、契約に関する紛争が裁判となった場合に、統一法であるこの条約が適用されるということになりまして、これまでですと、どちらの国の法律が適用されるかわからないといった不安定な状況があったわけですけれども、これによりまして紛争の処理が容易になるという点が考えられるというふうに考えております。

上田委員 説明はわかったんですけれども、我が国は貿易立国を標榜しているのに、どうも、何か官民ともに様子見をしていて後手後手に回ってしまったんじゃないかというような印象の御説明でありました。

 むしろ、我が国は、非常に世界有数の貿易国であるし製品の輸出が多い国でありますから、こういった制度、ルールを、我が国のイニシアチブでつくることというのが国益にかなうことであるんじゃないか。特に、これから経済のグローバル化がさらに進んでいけば、こういうルールとか基準とか、そこでどれだけイニシアチブをとれるかというのが国際競争力そのものにかかわってくることではないかなというふうに思っておりますので、ちょっとそのことだけ申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、今度は、全米熱帯まぐろ類委員会強化条約について御質問いたします。

 この条約、今、世界的に需要がふえておりますし、マグロ類の資源保護と持続可能な利用を確保するための全米熱帯まぐろ類委員会の役割や機能を強化するという趣旨は私も賛同いたします。マグロの最大の消費国であり、また漁業国であります我が国としても重要な条約だろうというふうに考えます。

 ただ、しかし、この委員会というのが本当に機能しているのかということになると、ちょっと疑問を感じる面がありまして、その中でも、特別会合が昨年二月から何回か開かれておるんですけれども、一年以上たった今でも、本年以降の保存管理措置について合意に至っていないということでございます。

 そうした合意に至らない理由というのはどの辺にあるのか、また今後の見通しについて、御見解を伺いたいというふうに思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昨年来、全米熱帯まぐろ類委員会の年次会合ですとか特別会合で、累次にわたりまして、本年以降のメバチ、キハダの保存管理措置の強化に向けた議論が行われておりますが、現在までのところ合意が得られておりません。

 それで、これの議論の論点でございますけれども、まき網漁業に対する管理措置の強化ということが議論の対象になっておりまして、この点につきまして関係国の間で合意が得られていない状況でございます。

 我が国の場合には、漁船ははえ縄漁船で、メバチを対象としたはえ縄漁業であるということでございますので、直接議論の対象となっているというわけではございませんけれども、我が国といたしましても早急な合意が必要であろうというふうに考えておりまして、次回、六月に年次会合で再度議論することになっておりますけれども、関係国と協力をいたしまして、この適切な保存管理措置につきまして合意できるように最大限努力をしてまいりたいと考えております。

上田委員 わかりました。ひとつ鋭意協議を進めていただきたいというふうに思います。

 次に、租税条約のうち日豪租税条約についてお伺いをいたします。

 オーストラリアは我が国にとっても非常に重要な貿易・投資のパートナーでありますので、配当や使用料に対する源泉地国の限度税率の引き下げなど、今回の改定は相互の投資を一層促進するという意味に大変資するものであるというふうに理解をしております。

 その中で、一点だけ質問させていただきますが、我が国は、同じような先進国でありますアメリカやイギリスとも租税条約を締結しております。日米、日英の条約との比較におきまして、配当に対する免税規定が適用される受益者の株式要件が今回の条約の場合は厳しくなっております。日豪条約では持ち株割合が八〇%以上となっているのに対して、日米、日英の条約ではそれぞれ五〇%以上ということになっております。

 今回のこうした措置では、免除を受けられる法人というのがかなり限定をされるのではないか、投資促進効果が十分上がらないのではないかという懸念が持たれますけれども、なぜこうした米国や英国との間の条約に比べての差をつけたのか、その経緯、またそれによる影響を御説明いただければというふうに思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 確かに委員御指摘のとおり、日豪租税条約における適用要件と、それから日英、日米との関係での適用要件については差がございます。

 豪州が近年締結いたしました先進国との租税条約において、配当などの源泉地国課税の限度税率が我が国との現行条約に比べて低く設定されているということがございまして、その分我が国の企業はそのような先進国の企業に比べて競争で不利な状況に置かれていたわけでございます。そこで、このような状況に対応すべく、新条約においては配当などの源泉地国課税の限度税率を引き下げるように交渉した結果、豪州が他の先進国と締結しました条約の限度税率と同率以下の水準で明記することを確保したわけでございます。

 これによりまして、我が国企業は他の先進国に劣らない競争条件のもとで活動できることになるため、相互の投資促進に貢献することが期待されるというふうに考えております。

 今言いましたアメリカとイギリスとの間では、もちろん日米、日英の関係でございますけれども、豪州との関係ではほかの先進国に比べてより有利な条件で締結できたということでございます。

上田委員 わかりました。

 オーストラリアはこれからやはり日本の経済のパートナーとして非常に重要な位置の国でありますので、この条約締結を契機といたしましてさらに貿易や投資が促進されることを大いに期待するものでございます。

 条約の内容につきましては、質問を以上とさせていただきますが、最近の重要な問題の一つが、中国四川省で発生をいたしました地震への対応でございます。

 十二日の夕方発生をいたしました地震、その被害の模様というのはもう報道等でも随分いろいろと伝わっておりまして、非常に甚大なものであるということははっきりいたしております。ただ、報道等でも現地の被害状況が必ずしも正確に細かく伝わっていないという部分もあるんではないかというふうに感じておりますし、特に、日本企業も相当あそこには進出をしている、邦人もかなり住んでいるわけでありますが、日本企業やまた邦人の安全なども含めて政府として被害の状況をどのように把握をしているのか、簡潔に御報告をいただければというふうに思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 十二日午後に中国の四川省におきまして発生しました地震でございますが、現時点で震災の内容は完全に把握できておりません。これまでに中国側でいろいろな発表がございます。

 中国民政部というところが発表している数字でございますが、一番新しいもので十三日、昨日の十五時現在でございますが、四川省だけで死者数が一万一千六百八人、全体では一万一千九百二十一人に達して、今後も被害がさらに拡大していくというようなことでございます。

 これまでのところ、今般の震災によって日本人が被害に遭ったとの情報には接しておりませんが、日本政府といたしましては、在中国日本国大使館及び在重慶の日本国総領事館を通じまして地震被害の状況の確認に努めるとともに、邦人被害の有無につきまして、邦人企業、団体及び旅行関係団体等を通じまして安否の確認を行ってきているところでございます。

 在留邦人につきましては、現在までに、四川省の在留邦人の約三百人のうち、その七割を超える二百二十人と連絡がとれ、無事を確認しております。また、在中国日本国大使館より現地の日系企業の団体に対しまして、四川省に事業所を有する企業関係者の安否を照会しておりますが、これまでのところ人的被害の報告にも接しておりません。また、JICA等の関係者につきましては全員の無事を確認しております。邦人旅行者につきましては、本邦及び現地において、旅行関係団体に対しまして、重慶市及び四川省における邦人旅行者の被害について照会をしておりますが、これまでのところ被害についての報告は受けておりません。

 なお、在中国日本国大使館からは、中国の外交部の領事司に対しまして、今般の地震で邦人被害の情報に接した場合には直ちに我が方に通報してくれるようにということで要請しているところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 中国政府も政府挙げて被災者の救助に取り組んでいるようでありますけれども、報道等では、やはり災害の規模が非常に大きいということと、交通網などにも被害が出ているので、必ずしも順調に進んでいない部分もあるというようなことも言われております。

 我が国としても、これは人道的な観点からも、中国側とよく協議をして、可能な限りの支援を行っていかなければならないのではないかというふうに考えております。

 今後の政府としての取り組みを、ひとつ高村大臣にお伺いしたいというふうに思います。

高村国務大臣 中国四川省における地震により甚大な被害が発生したことを受けまして、福田総理から胡錦濤国家主席及び温家宝総理に対して、また、私から戴秉国国務委員及びヨウケツチ外交部長に対してお見舞いの意を表明するとともに、できるだけの支援をする準備がある旨をお伝えいたしました。

 これを踏まえ、中国に対する緊急援助の可能性について中国側及び関係部局間で調整を進めてきたところでありますが、昨夕、中国に対する当面の支援として、総額五億円相当の資金援助及び援助物資の供与を行うことを決定したところでございます。詳細につきましては、今後中国側の意向や国際機関の動きも踏まえつつ調整していくことになりますが、我が国としては、被害がこれ以上拡大しないこと、一日も早い被災地の復旧を心から願っており、できるだけの支援をしていく考えでございます。

 人的援助については、我が国としていつでも派遣できるよう準備を進めてきたところでありますが、中国側の受け入れ体制が現在のところ整わないということで派遣には至っていないということでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 非常に大規模な災害で、受け入れ側の体制の問題もこれからよく話し合っていただかねばいけないというふうに思うんですが、やはり隣国のことでもあり、できる限りの支援を行っていくべきだろうというふうに思っておりますので、またぜひ機動的に対応していただければというふうにお願いをいたします。

 次に、アフリカ開発会議、TICADについてお伺いをしたいというふうに思います。

 今月の二十八日から、私の地元でもあります横浜市でTICAD4が開催をされ、アフリカ各国の首脳やまた国際機関などの役職員が多数来日する予定となっております。非常に大きな国際会議でありますので、ぜひ成功させていかなければいけないというふうに考えております。

 アフリカは、全体を見れば、年率五%程度の経済成長も達成をしておりますし、また、それぞれの国によってはさまざまな国内の政治問題等は抱えておりますけれども、全体としては、安定性も昔に比べればかなり改善をしているのではないかというふうに思います。また、非常に多様な資源の宝庫でもありまして、我が国だけではなくて世界経済の発展のためにも、アフリカの安定と成長というのは極めて重要なファクターになってきているというふうに認識をいたしております。

 しかし、アフリカというのはどうしても、日本から見れば、やはり遠い国でありますし、経済的な関係や歴史的なかかわりというのも少ないことから、余り関心が高まってこないというのが残念ながら現実ではないかというふうに思っております。

 そうした中で、我が国が九三年からTICADの第一回の会合を開いて、そしてまた五年ごとにこういうフォーラムを持ってきて、特に、九〇年代というのは、国際社会の中でアフリカへの関心がどっちかというとちょっと低くなってきたときに我が国がこういう取り組みをしたということは、非常に大きな成果だったというふうに思っております。

 そこで、今回は第四回でありますけれども、これまでのTICADの意義や、また、過去三回の会合を含めて、ここまで達成されてきました成果と我が国とのかかわりにつきまして、大臣から御所見を伺えればというふうに思います。

小野寺副大臣 委員御指摘ありましたように、このTICAD、第一回目は一九九三年です。当時、冷戦終結後でありまして、国際社会、アフリカに関する関心が大変薄い時代でございました。その中で、日本は、アフリカ開発に対する関心を高めるという意味、その意味でこのTICADを続けてきております。

 また、TICADは、アフリカ開発におけますアフリカ諸国自身の自主性、オーナーシップと国際社会によるパートナーシップの重要性を国際社会に浸透させたという意義があると思います。

 さらに、TICADプロセスは、日本とアジア諸国との開発協力に基づくアジアの開発経験をアフリカにも活用するという観点から、アジア・アフリカ協力を推進しておりまして、パートナーシップの拡大についても成功していると自負をしております。

上田委員 間もなくこの第四回目の会議が開催されるわけでありますけれども、今回のTICAD4は「元気なアフリカを目指して」という基本コンセプトのもとで開かれることになります。ここでは、今回四回目ということでありますので、やはり我が国がリーダーシップを発揮して、具体的な成果、形に残る成果をやはり少しずつ残していく必要があるんだろうというふうに考えております。

 また、アフリカ諸国も、ここまでの日本のそういうリーダーシップに対しては非常に評価をしていますけれども、これからいよいよ具体的な成果について期待がさらに高まっているのではないかというふうに思います。

 そこで、今回のTICAD4においてどのような成果を達成するのを目指しているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

小野寺副大臣 二十八日から開催しますTICAD4ですが、これは「元気なアフリカを目指して」という基本メッセージのもとに、成長の加速化、人間の安全保障の確立、環境・気候変動問題への対処を重点項目としまして、アフリカ開発のために、我が国を含む国際社会の知恵と資金を結集したいと思っております。

 具体的な成果をまとめたものとしましては、次の文書を取りまとめることを想定しております。

 横浜宣言によって、今後のアフリカ開発の取り組み、方向性に関する政治的意思を表明しまして、横浜行動計画において、今後五年間に得られる具体的な取り組みを示し、そして、TICADフォローアップ・メカニズムの設置におきまして、TICADの貢献策、イニシアチブの着実なフォローを行う枠組みを構築することを目指しております。

 また、TICAD4の議論の成果を集約する議長サマリーを作成する予定としております。

上田委員 ありがとうございます。

 私も、このTICAD4、地元で開催されるということもありますし、アフリカに対する国際的な注目が非常に集まっているときでありますので、ぜひ成功させていかなければいけないというふうに考えております。

 そういう意味で、先月、超党派の議連で、アフリカ各国の駐日大使の方々、代表の方々をお招きいたしまして、いろいろとこのTICAD4に対する期待、それからまた意見も伺いました。その大使の方々から、日本の取り組みに対する期待が非常に高いということと、特にその中でも、民間レベルでの貿易や投資の促進を要望する声が非常に強かったというふうに我々感じました。これまで政府からいろいろな支援、技術支援や無償協力等がありましたけれども、いよいよこれから自立をしていくという意味からも、そういう貿易や投資という形での協力が重要だという御意見であったというふうに思います。

 これは、日本も、このTICADのプロセスの中では、やはりアフリカを自立させていく、自立的な発展が重要なんだというのを最初から基本的なコンセプトとして持っておりますので、その方向に大体沿ってきたものになっているのじゃないかというふうに思っております。

 政府も、そうしたことはよく認識をしていただいているようでありまして、昨年の十二月には日本アフリカ交流年協力推進協議会を開きまして、その第一回会合で、民間からも意見を提起してもらっております。

 外務省のホームページを見させていただきますと、大体三つの分野について合計九項目の提案がなされておりまして、特にその中でも、民間の方から、やはりアフリカというのが天然資源確保等の観点からも非常に重要であるとか、今は旧宗主国やアジアの新興国も政府対政府の交渉を非常に前面に持ち出してきているので、日本の政府ももっと積極的に官民一体となって取り組んでほしいというような要望であるとか、また、ODAについても、民間のプロジェクトとの連携を図っていってもらいたいというような話だとか、プロセスの簡略化に対する要望であるとか、官民対話の機会をふやしてもらいたいというような、さまざまな要望が出されております。

 やはり、これらの要望というのは、これから民間に積極的にかかわりを持っていってもらって貿易や投資を促進していくという意味では非常に重要な御意見だというふうに感じておりますし、今回、そういう意味では、このTICAD4で、特にアフリカからも今、経済が随分安定して成長してきている中で、やはりアフリカにおいても民間セクター、そういう産業分野の成長が非常に期待されているということから考えると、我が国の民間がかかわりを持ちやすいような環境をつくっていくということが重要だろうというふうに思っております。

 そこで、今御紹介をさせていただきましたような民間から出ている要望について、政府としてどういう対応をされているのか、またこれからの改善策等も含めて、現状をお伺いできればというふうに思っております。

松富政府参考人 お答えいたします。

 提言の中では、官民が協力した形での対アフリカ戦略の構築、民間のアフリカへの直接投資促進のための政府資金の活用、ODA予算の反転、拡充、アフリカ投資環境整備支援、官民ミッションのアフリカ派遣、日本の経験や技術の活用等について、民間の視点に立った建設的な意見が表明されているものと受けとめております。

 政府といたしましては、同提言を真摯に受けとめて、アフリカ開発における官民連携の重要性を十分に認識しつつ、アフリカ諸国の期待にこたえる形で我が国企業のアフリカ進出を後押しし、かつ、我が国企業の持つ高い技術や知見をアフリカにも移転していくべく、オール・ジャパンの体制で取り組んでいく考えでございます。

上田委員 ひとつよろしくお願いしたいというふうに思います。

 我が国の経済にとっても非常に重要なことであります。また、アフリカの自立的な経済成長を促していくという意味でも非常に重要な取り組みだというふうに思っておりますので、今まではどちらかというと政府主導だったんだと思いますが、これからひとつ官民が協力をして、また一体となって問題に取り組んでいくことが我が国の国益にもかなうものだというふうに思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 どうか、今度のこのTICAD4、ひとつ成功させていくために、また政府挙げての取り組みをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 それでは、順次質問をさせていただきます。

 本日のこの外務委員会の案件は四つの条約でございますけれども、一番に我が党の野田委員からマグロについての質問がございました。そして、この後、順次、我が党の委員から質問がございますので、重複を避けまして、私はウィーン条約について、まず冒頭お尋ねをしたいと思います。そしてその後、それ以外の通告したテーマにつきまして、せっかくの外務委員会の質疑の機会でございますので、質問をさせていただきます。

 もう既に他の委員からも御指摘がございましたけれども、ウィーン条約についてでございます。このウィーン条約が、もう一九八〇年代に発効して、世界の重立った国が加盟している中で、発効から二十年がたっております。今回、重ねての質問になりますけれども、正式に加盟するに至ったその理由は何なのか。

 もっと言いますと、今まで二十年間、このウィーン条約について、締結をしなくても特に不都合はなかったということで、貿易相手国との特約を中心にして貿易をしてきた、その上で、特にこのウィーン条約を締結するというメリットはなかったというふうに判断されていたのかどうか、まずその点について伺いたいと思います。

小野寺副大臣 一九八八年、ウィーン売買条約が発効いたしましたが、それを受けまして、政府としても、この条約の締結について検討を行いました。しかし、当時の締約国の数はまだ少なく、この条約が今後国際的な物品売買契約に関する国際的な標準ルールとなるか否かが不明確でありました。また、この条約の解釈に関する予見可能性も必ずしも高くはありませんでした。このため、当時、経済界は締結に積極的ではありませんでした。

 その後、この条約の締約国数は順調に増加しまして、物品売買契約に関する国際的な標準ルールとしての実用性が増大しました。また、裁判例及び仲裁判断の蓄積によりこの条約の解釈に関する予見可能性も高まり、経済界からも締結について肯定的な評価を得られるようになりました。

 このため、我が国企業の国際取引を円滑化し、その法的安定性を高めるという観点から、今回この条約を締結することとしたものであります。

渡辺(周)委員 私も、一九八八年に発効したこのウィーン売買条約の加盟国を調べました。この締約国が、当初は、一九八八年、アルゼンチン、エジプト、フランス、イタリア、アフリカのレソト王国、それから中華人民共和国、シリア、アメリカ合衆国、ザンビア、旧ユーゴスラビアというところからスタートいたしまして、現在は七十カ国になるわけでございまして、今まで主要な先進国家として加盟していなかったのは、日本とそれからイギリス、英国でございます。

 その中で、今副大臣からありましたように、日本における状況の中では、イギリスにおいては自国法とこのウィーン条約の優位性をめぐる競合関係があって、いろいろと学会の中でも意見が分かれていた。そして、我が国においては、今お話があったような、判例蓄積が少なくて非常に予見可能性が低い、その適用範囲も限定的であって有用性が低かったということで、日本にしてみると、アメリカの統一商事法典やイギリス法の方が実質的な統一売買法としての機能を果たしていて、これで十分だというふうに考えていたんだろうというようなことを、識者の方が指摘をしているわけでございます。

 しかし、今、CISG、このウィーン条約、別名が、コントラクツ・フォー・ザ・インターナショナル・セール・オブ・グッズということで、CISGとも呼ばれているわけでございますけれども、二十年たって判例が蓄積をしてきた、そしてまた、今後幾つかの国家が加盟してくる中で、日本が今後引き続き貿易大国として活動していく上には、一つには、日本の言葉、日本語というのは世界共通語ではない、世界共通語ではないから、日本の法律、日本法を、これから今後貿易取引が拡大していく、また今後さまざまな国と取引をする中で、日本語の法概念を英訳してもなかなか伝わりにくいんじゃないかということも考慮されたのかなというふうに思います。

 さて、その中で、お尋ねをしたいのですが、一つには、日本が今回加盟をする、締約国になるということで、今まだアジアの中では、当初加盟していた中華人民共和国、中国と、それからシンガポールの二カ国にしかすぎないわけでありますが、今後、例えば、インドでありますとかタイでありますとか、アジアの国々、あるいはインドネシア、ベトナム等々、アジアが多いわけですが、今後アジアに対して与える影響というのはどうかなということにつきましてはどんなお考えを持っているか、お答えをいただければというふうに思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 確かに委員御指摘のとおり、アジア諸国の中でまだこの締約国になっている数は少のうございます。もともと、この条約につきましては、御説明しておりますとおり、これは売買契約に関します国際的な標準ルールというものをみんなで同一のものをつくりましょうということでできた条約でございますので、できるだけ多くの国がこの条約の加盟国になるということが我が国にとってもいいことだと思います。ただ、各国の状況につきまして、一々どの国がどう判断しているかという点についての情報は今持ち合わせておりません。

渡辺(周)委員 これは、先ほど申し上げました、一九九五年にシンガポールが批准をしたという中で、ある学者さんはこう書かれているんですけれども、当時、日本も加盟するのではないかということでシンガポールも加盟をしたというようなことがありまして、アジアに対する日本の影響力はやはり大変強い中で、今後アジア各国が今回の日本の加盟によってどうなってくるかということをお尋ねしたわけであります。

 その点についてもうちょっと踏み込んだ、何か、こうではないかなという見通しなり、あるいは、もちろん働きかけをするというのは、これは内政に干渉する部分もありますから、なかなかお答えにくいのかなと思いますけれども、これがこうしたアジアの国々に対して与える影響についてどんなふうに今認識していらっしゃるか、もう一回お答えいただけますか。

猪俣政府参考人 委員御指摘のとおりで、我が国は当然、アジア諸国との関係での貿易関係もあるいは経済関係も緊密化しております。したがいまして、日本がこの条約の締約国となりまして、この統一ルールというものを基準に考えて個々の民間企業ですとかが契約を結ぶ際に準用していくということが前提になりますと、相手方のアジア諸国の国々も、やはりこの条約についての有用性というものを判断してくる可能性は多々あろうかと思います。

 そういうこともございますので、我が国の加盟によりまして各国の加盟の促進につながる可能性はあると思っておりますし、そういうことで、なるべくこの統一ルールというものが国際標準としてまさに確立していくということは、非常に大事なことだと思っております。

渡辺(周)委員 といいますのは、私も東南アジアの幾つかの邦人企業の現地工場なんかへ何回か足を運びまして、ベトナムでありますとか、あるいはタイでありますとか、いろいろな国の日本から行っている企業の工場等を見てきたことがございます。これは、多分ここにいらっしゃる議員の皆さん、特に東南アジアなんかへ行かれて現地法人の、日本法人の企業なんかへ行かれると、なかなか皆さん、そこの責任者の方々とお話をすると、大変に御苦労されているんですね。

 一つには、法ということに対しての認識が非常に低いということ。そして、行政当局もまだまだ途上にあること。そうした、法による支配といいましょうか、法による一つの秩序がまだできていないし、まだまだ法自体が備わっていない国もあるわけでございます。その例を挙げると切りがありませんので、ここでは申し上げませんけれども。

 そういう中で、今後、やはり法による一つの統一基準ということに対して、今回日本が加盟をしたということで、ぜひともまたいい影響力をアジア各国に、おくればせながら、二十年間日本も参加を見合わせていたくせに、ここへ来て突然リーダーシップを発揮しろというのは虫のいい話かもしれませんけれども、今後はこの問題について取り組んでいただきたいと思うわけでございます。

 あと二点ほど質問しますけれども、今後の日本の国内法への影響ということに対してはいかがなのかなと思います。

 海外では、このCISG、ウィーン売買条約が国内法にも影響を与えて、単に国際売買についての統一法という域を超えた影響力を持ち始めているというような指摘もございます。そんな中で、今後、日本の国内法への影響が出る可能性ということについてはどのように御認識をしているのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

小野寺副大臣 諸外国におきましては、この条約の締結後、契約法制の見直しに際しては、国際的な物品売買契約に関する国際的な標準ルールであるというこの条約の規定内容も参照されるものと承知をしております。

 例えばドイツにおきましては、民法典の債務法の部分が改正されまして、債務法現代化法として公布され、二〇〇二年一月一日に発効いたしました。このようなこともございます。

 今後、仮に我が国において関連の国内法の見直しが行われる場合には、外国法制の研究調査とともに、この条約の規定内容も参照されることとなると考えております。

渡辺(周)委員 ぜひこの点についての周知も、日本の企業に対して、していただきたいというふうに思いますし、また、この点についてはいろいろと商取引の学会なんかもございまして、そういう識者の方々からもこれまでも幾つかの意見が寄せられていますので、また、ぜひ今後、将来的にはこの条約の中で我が国としてもやはりいい方に行っていただきたいなというふうに思うわけでございますが、今回の条約のように、まだ加盟を検討している条約というのがあるのかなということについても伺いたいわけなんです。

 といいますのは、このウィーン条約もそうですけれども、初期の段階から我が国が主体的に関与することによってその後の国益に影響を与えたのではないかということについても、いろいろと検討されているわけでございます。我が国として、今もし条約に、国際国家の一員としてリーダーシップを発揮するのであれば、やはり当然参加する中で影響力を発揮したい、してほしいというわけでございますけれども、この点について、何か今現在検討しているような類似の条約等がありましたら教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 我が国として締結が必要であり、かつ可能でありながら、締結をちゅうちょしている条約というのは特段ない、こういうふうに思っております。

 政府としては、作成された多数国間の条約のうち、締結の必要性が認められるものについて、実施のための国内法制のあり方を含めた個別の検討を行った上で、可能なものから積極的に締結してきているわけであります。

 国際社会の種々の分野において作成される条約の内容はさまざまでありますので、条約締結の可否についての判断に際しては、なかなか単一的な原則を設けることはなじまないのではないかと思いますが、今後とも、締結のための取り組みを積極的に進めていく所存でございます。

 国民生活に直結したり国際的な標準となったりするようなルールづくりに際しては、我が国の立場を適切な形で反映させるよう、また国際社会における法の支配の確立に資するよう、交渉の初期段階から積極的に関与することが重要であると認識をしております。

 例えば、環境分野など気候変動問題への対処に当たって、我が国は二〇一三年以降の実効的な枠組みの構築のための国際的な議論に初期の段階から積極的に取り組んでいるところでありますが、今後ともこのような取り組みに努めてまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 それでは、この質問の結びに伺いますが、このウィーン売買条約の、今後日本が締結をして、おくればせながら参加をし、ここで、虫のいい話と言いましたけれども、今後中心的な役割を担うに当たって、例えば、今後いろいろとこの判例の蓄積も出てくれば、さまざまな改定審議も出てくると思いますが、その中で、今後、世界の中の貿易大国である我が国がどのような発言力を確保していくことができるのかということにつきまして結びに伺って、次の質問に移りたいと思います。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 今現在この条約についての改正交渉というのは行われているわけではございませんけれども、将来にわたりまして、仮に、やはり現状とそぐわなくなってきているというような状況が出てくるような場合に、当然のことながら、それは積極的に我が国は貿易立国として参画していくということであろうと思っております。

渡辺(周)委員 それでは、このウィーン売買条約についての質問は終わらせていただきます。

 さて、それでは残りの時間の中で、きょうは、内閣官房からも来ていただいていますので、拉致問題についてちょっと触れさせていただきたいと思います。

 五月十二日付の私ども地元の静岡新聞、ですから、共同通信が配信をしたニュースだということですが、一面で報道されていました。二〇〇四年の初めにひそかに訪朝した内閣府の事務官井上義行氏、後の安倍晋三総理の政務秘書官でございますけれども、井上義行氏が北朝鮮に訪朝をした際に、北朝鮮当局から、政府認定の拉致被害者、当時は十五人でございましたけれども、以外に複数の拉致被害者の存在を示唆した、「拉致被害者「ほかに複数」」、こういう形で報道がされました。

 このときには、「北朝鮮側は、複数の拉致被害者に関する安否情報を伝える意向を示したという。」ということは、実は、安否情報の提供の意向があるということは、それ以外にも、政府が認定している以外にも、当時の十五人、後に追加認定されましたけれども、この北朝鮮への訪朝ということについて、井上事務官という方は、この新聞報道によれば、私用という形で、「関係者によると、井上氏は〇三年暮れから〇四年一月にかけ、私用を装うなどして複数回にわたって北朝鮮を訪問し、当局者と拉致問題について交渉を重ねた。」と。当時の内閣府の拉致被害者・家族支援室の事務官ですから、この方が私用で、相手国に行くことが私用とはとても思えないわけでありますけれども、報道にはそう書かれております。

 その点について、この井上事務官の訪朝ということはあったのかどうか、お答えいただけますでしょうか。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のような事実は承知しておりません。内閣官房、内閣府としてそのような派遣をしたことはないと承知しているところでございます。

渡辺(周)委員 それは、承知をしていないのであって、ありませんという答えではないですよね。

 もう一回伺いますけれども、当然、もし行くとなれば私用だ、しかし、北朝鮮に私用で行く理由というのはまず見当たらないですよね。アメリカやEUに行くのと違って私用というのはあり得ないわけでございまして、この事務官がもしこの報道のとおりでないとするならば、これは誤報だということですか。今のお答えですと、そういうことですか。今のお答えですと、この新聞が配信した記事は誤報であるということでよろしいんでしょうか。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣官房、内閣府としてそのような派遣をしたことはない、そのような事実はないものと承知しております。したがいまして、そのようにとっていただいて結構でございます。

渡辺(周)委員 では、誤報だということで今とっていいわけですね。

 では、それに対して、そのことについても私は今受けとめるわけでございますけれども、となると、この後の報道の中に、拉致被害者がほかに複数いて、そして、この新聞の記事の中には、「協議内容は当時、自民党幹事長だった安倍氏や首相官邸、外務省にも概略が報告された。協議は政府間交渉に移行させるため合意点を確認する文書を作成する段階まで進んだ」云々、しかし、その後、二〇〇四年の二月に「一部報道で井上氏の訪朝が明らかになった後、北朝鮮側が打ち切った。」ここまで書いてあるんですが、ということは、外務省、首相官邸、当然内閣官房、それから外務省にも概略が報告されたということもなかったということでよろしいですか。ということになりますね。

小原政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのような事実はないものと承知しております。

渡辺(周)委員 ないものと承知していますじゃなくて、ないと言っていただけますか。

小原政府参考人 これは、平成十六年の二月の十八日の外務委員会でも、内閣官房の職員が北朝鮮を一月に訪問したという事実はないということで理解をしていいかという御質問がございまして、それに対して当時の細田内閣官房副長官から、「そのような事実は承知しておりません。内閣官房としてそのような派遣をした覚えもございません。」という答弁をしております。また、当時の外務省の参考人にも同じ質問がございまして、それに対する答えも要するに同じでございますので、引き続きその御質問でございますが、我々としては、お尋ねのような事実はないということで承知しております。

渡辺(周)委員 派遣したこともなければ、本人が姿をくらまして極秘に行ったという、承知していようがしていまいが、内閣府の要請で行った行かないは別にして、行ったという事実もないということでよろしいですか。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 再々の御質問でございますが、先ほど来御答弁申し上げておりますように、内閣官房、内閣府として、そのような政府の意思として派遣した事実はございません。

渡辺(周)委員 今の答えですと、政府の意思として派遣した事実はないけれども、本人の意思として行った可能性はあるのかなと。行ったということについては否定はしていないわけです。行ったかもしれないということについては否定されていないわけですね。

 つまり、内閣府の仕事としては行っていないけれども、本当にひょっとしたら行ったのかもしれないということについては今あいまいなままですけれども、今の答弁で、私自身の受けとめ方としては、内閣官房としては行っていないけれども、行ったか行かないかについてはお答えはされなかったわけで、行ったという事実、つまり日本を出国して北朝鮮に入国したということについては否定はされなかったというふうに受けとめました。

 その中でもう一つ伺いますと、これだけ読みますと、北朝鮮側が、実はほかに複数拉致被害者がいるということを前提に何らかの協議をしようとしたということで、私たちは当然望みを持つわけです。当然、まだ特定失踪者の段階の方、北朝鮮に拉致されたという、つまり、拉致認定ではないけれども、やはりそうなのかなというふうに思うわけでございます。

 この人たちの安否を含めてということは、当然、安否ですから、生きていらっしゃる方がこの中でいる、ひょっとしたら、我々が思いも及ばなかった方が北朝鮮の中でいらっしゃるのかなということで、私たちはこういう望みを持ったわけなんですけれども、この点について、今実際に、この新聞報道のことについてはこれ以上は多分お答えされないんだろうと思いますので、今後、今の福田内閣の中でこの北朝鮮問題、北朝鮮問題といっても拉致問題ですね、拉致問題に対して福田内閣の姿勢が見えないんです。福田内閣になって拉致問題に対する停滞感、閉塞感を非常に感じるわけでありますけれども、今、現状はこの拉致問題についてどのように取り組んでいるのか、その点についてお答えをいただけますでしょうか。

高村国務大臣 政府としては、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算して国交正常化を実現するとの方針を実現すべく、最大限の努力を行っていく考えであります。

 拉致問題を含む日朝関係につきましては、昨年十月三日の六者会合成果文書において、日朝双方が、平壌宣言に従って、早期に国交を正常化するため、誠実に努力すること、また、精力的な協議を通じ、具体的な行動を実施していくことが約束されましたが、北朝鮮が具体的行動をとっていないのみならず、我が国との協議に応じる姿勢を示していないことから、残念ながら、具体的な進展は得られておりません。

 政府としては、今後、六者会合での合意も踏まえ、北朝鮮が拉致問題を含め日朝関係の改善に向けた具体的な行動をとることを期待しており、引き続き、米国を初めとする関係国と緊密に連携しつつ対応していく考えでございます。

渡辺(周)委員 外務大臣、期待するんじゃなくてこちらからアクションを起こさなければいけないわけでありまして、持ち時間もありませんからまた改めて伺いますが、外務大臣は、ほかに複数いるというふうに認識していますか。

 つまり、今具体的な進展と言われましたけれども、北朝鮮にいる新たな拉致被害者の情報を北朝鮮が例えば何らかの形で公表する用意がある、安否を伝える用意があるといった場合には、これは進展というふうにとらえるかどうか。その前提となります、ほかにも北朝鮮には複数いるんじゃないか、今出ている、日本政府が認定をしている拉致被害者のみならずいるのではないか、その辺については今どういう御認識を持っていらっしゃるか、大臣に伺いたいと思います。

高村国務大臣 確定的なことはわかりません。ただ、いるかもしれない、そう思っています。

渡辺(周)委員 それは、大臣の何らかの事実に基づく、ファクトに基づく御認識なのか、それとも、今ここで質問されたからそうお答えになられたのか、どちらか伺いたいのです。

 やはり今、この北朝鮮の問題、日本では、拉致被害者とは認定されていないけれども特定失踪者がいる、またそれ以外にも北朝鮮に拉致されたという可能性を否定し切れない方々がいるわけであります。その点について、外務省は当然内閣府と連携して情報収集をしているんだろうと思いますけれども、今おっしゃられた、いるかもしれないということにつきまして、それはどういう根拠からそうおっしゃったのか。できればもうちょっとしっかりとした御答弁をいただけますでしょうか。

高村国務大臣 ファクトに基づいて確実なことは申し上げられない、こういうことを言っているわけであります。いろいろな状況から見て、いるかもしれない、そうは思っております。

 それ以上のことを申し上げるつもりはございません。

渡辺(周)委員 申し上げるというのは、よく私お尋ねするんですが、わからなくてキャン・ノットなのか、わかっているけれども言うことのできないウイル・ノットなのか。まあ、その点については、今ここでこれ以上聞いても同じ答えに終始されると思いますので申し上げませんけれども、このことについては、非常に我々は、この報道が事実であるとするならば期待をする。

 何らかの交渉が、井上事務官が行ったときにあったのかな、それは政府の要請によって行ったわけではないけれども、行ったかもしれないという事実については否定はされておられなかったわけですから、ひょっとしたらこういうことがあったんだろうというふうに思います。もしこれが誤報ならば、私はこの新聞社を訴えるべきだと思いますけれども、そこまで正式に否定されない、抗議されていないところを見ると、何らかの形で肯定をされたのかな、沈黙という形で肯定されたのかなというふうに思うわけでございます。

 それともう一点この問題につきまして伺いたいのは、やはりこれも新聞報道ですが、先週の読売新聞に、横田さん夫妻が孫娘と韓国で面会をするという案、政府が韓国政府に対して、いわゆる南北離散家族の再会事業で横田夫妻とキム・ヘギョンちゃん、お孫さんを会わせるという案を、李政権に対して仲介要請をしたというふうにございます。日韓関係筋によると、拉致問題担当の中山補佐官が先月二十五日、ソウルを訪問した際に韓国政府高官に要請したと。

 それによりますと、韓国と北朝鮮は、年数回の南北離散家族再会事業で、韓国人拉致被害者と韓国内の肉親との対面の場を設けている。中山補佐官は、同事業の場をかり、横田さん夫妻とめぐみさんの元夫、金英男氏とキム・ヘギョンちゃんと面会させる案を提示したというふうにあるわけですが、この報道は事実でしょうか。

小野寺副大臣 政府としましては、御指摘のように、南北離散家族再会事業の場で横田夫妻とキム・ヘギョンさんを会わせるとの案を決定したという事実はございません。

 また、この新聞報道に書かれております中山補佐官からは、読売新聞のこの記事につきまして、五月九日付で、その内容は事実とは違うということの正式な申し入れがあったというふうに承知をしております。

渡辺(周)委員 申し入れをしたということですか。副大臣、今の申し入れをされたというのは、この新聞社に対して、このような事実はないということで訂正なりなんなりを求めるような申し入れをしたということでよろしいですか。

河内政府参考人 読売新聞編集局に中山補佐官名で申し入れをしております。

渡辺(周)委員 その中身は、このような報道された事実はないということですか。

河内政府参考人 さようでございます。

渡辺(周)委員 この二つの新聞報道で、まあ新聞社というところはスクープをすることが当然、社の使命でございますから、私も新聞社の記者を駆け出しだけやったことがございますのでわかりますけれども。

 ただ、北朝鮮に関しての報道というのはやはり我々が一番知りたいこと。一番やはり動きを見せて、先ほど申し上げたように、福田内閣になりまして大変停滞感、閉塞感が漂う中で、何らかのアクションを起こさなきゃいけないと私も常々思っている中で、こういう報道があったりすると何かの動きになるのかなと思うわけでありますけれども、残念ながら、今の御答弁では、二つとも事実とは違うということで否定されました。そういうことはなかったということでございました。

 しかし、この問題については、我が国のこうしたこの国会の委員会での質疑も北朝鮮当局は当然ウオッチしているわけでございまして、当然この国会での質疑の模様なんかも北朝鮮はすべてにおいて入手しているでしょうから、やはり我々の国として、変わらず、毅然とした態度を示している。あきらめムードのようなものが見えてしまったら彼らの思うつぼでございますから、我々は今後あらゆる手を考えながらこの拉致問題の解決に取り組んでいかなければいけないということをまさに申し上げたいわけでございます。

 拉致問題の話をしますと、よく拉致問題を初めとする北朝鮮との諸懸案みたいな話になって、核問題だとか六カ国協議だとか、話は大体拡散しちゃいます。そうしますと、拉致問題とほかのことが一緒にされると、色あせていくんですね。ですから、私たちは、引き続き拉致問題というのが最重要課題であるということについての認識をここでやはり持たなければいけないということを改めて申しまして、最後の質問に移らせていただきます。

 それでは、この拉致問題についての質問は終わりまして、もう時間がありませんので、端的にお答えいただければと思います。

 中国の地震についても、先ほど公明党の委員からも質問がございました。自民党の委員だったでしょうか、質問がございましたけれども、邦人の安否について現在どのようになっているのか。そして、日本の現地入り、人的支援についてはどのような準備をしているのか。また、相手国に対しての、当然中国に対して、そういう準備があるということはもう伝えているのでしょうか。その点について、端的にお答えいただけますか。

谷崎政府参考人 まず初めに、邦人保護につきまして現状を説明させていただきます。

 十二日に、この地震の発生の直後でございますけれども、被災地を管轄する重慶日本国総領事館に連絡本部をつくりました。それで邦人保護をやっておりますが、現在までのところでございますけれども、在留邦人、四川省に約三百名おられますけれども……(渡辺(周)委員「端的に答えてください」と呼ぶ)はい。二百二十人の連絡はとれて、無事を確認しております。他方、まだ八十人の方の連絡はとれておりませんので、これにつきましては、電話連絡等でその安否確認をするとともに、さらに館員、これは北京の日本大使館と総領事館でございますけれども、館員を派遣して確認をするという予定にしております。(渡辺(周)委員「まだ行っていないんですか」と呼ぶ)きょう現地に入ります。その上で安否確認をするということにしております。

 なお、旅行者につきましては、今までのところ邦人の被害者という報告は受けていないというのが現状でございます。

小原政府参考人 人的援助についてでございますが、我が国としていつでも要員を派遣できるよう準備を進めてきたところでございますが、中国側の受け入れ体制が整っていないということでございますので、今のところ派遣には至っておりません。

渡辺(周)委員 今まで人的支援を、日本はまだ中国にしたことはございませんけれども、これだけの大災害において、中国と日本が、この間の日中共同声明等を見ましても、新しいステージに入ったというのであれば、私たちは、日本の国を中国は受け入れるべきだというふうに当然思います。

 そして、あの阪神大震災を初めとする世界じゅうのさまざまな大災害に対して我が国は貢献をしてきたわけですから、それだけのノウハウ、ストックもあるわけですね。そういう中でぜひ積極的に行くことが、私は、日本のやはりすばらしい能力を見せることになるんじゃないかと思いますし、わけのわからぬ反日教育に染まった中国人の日本に対する見る目も変わるんじゃないかなという視点からも、ぜひとも私たちはできるだけ積極的に貢献すべきだろうと思います。

 それで、人的支援の中に、例えば自衛隊を、救助、復興という形で派遣をする準備というのは、我が国はする用意があるんでしょうか。もちろん相手国が受け入れればの話ですけれども、これは非常に画期的なことになろうかと思いますけれども、自衛隊が災害救援なり復興に行くということはあるのでしょうか。その点について、最後に伺います。

小原政府参考人 お答えいたします。

 現在、中国側で、現地の状況も踏まえまして、具体的にいかなるニーズがあるかということで調整をしていると承知しておりまして、その上で、中国側の要望も踏まえまして、日本として、ただいま委員から御指摘のありました点も含めまして、検討するということになると考えております。

渡辺(周)委員 では、もう時間が来ましたので終わりますが、自衛隊は行く準備はできるのでしょうか。外務、いかがですか。

小原政府参考人 国際緊急援助隊の中に自衛隊の部隊もございます。これまでもインドネシアでの津波とか地震、パキスタンでの地震に派遣をしてきておりまして、特に必要があると認められるときには、これまで派遣してきております。現在、防衛省の方ともいろいろな意見交換、情報交換をやっておりまして、これは先ほどの繰り返しになりますが、中国側からの要望がありましたら、それを踏まえて検討するということでございます。

渡辺(周)委員 終わります。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 午前中二十分ということでありますので、全米熱帯まぐろ類委員会について質疑をさせていただきます。

 ただ、冒頭、今、渡辺委員からも質疑があったこの中国への日本の取り組みの点についてちょっと確認をしておきたいんですが、一九八八年から二〇〇七年までの二十年を見ますと、国際緊急援助隊の派遣に関する法律施行以降ということでありますが、対中国では二度ほど人的援助をした例があるというふうに承知をしているんですが、この点についてお答えをいただけますでしょうか。外務省ですかね。わかりませんか。過去二回、人的援助を中国に対してしているということでありますが、お答えいただけないですか。

高村国務大臣 突然の御質問なので、ちょっと私自身はわかりません。政府参考人が認められていないと承知していますので、帰ってしまいました。

武正委員 では、私の方でお伝えをさせていただきますが、きのう外務省さんから資料をいただきまして、洪水災害では一九八九年の八月七日、人的援助、医療チーム二人、それからSARSのときに、二〇〇三年五月九日、同じく人的援助、専門家チーム、五月十一日から十六日までということで四名、六日間出している例があるというふうに外務省さんから報告を受けております。

 ぜひ、大臣、副大臣におかれましては、その御認識の上、私はやはり、こういうときこそ隣国として本当にできることは何でもということで、また現地に、NGOはもちろん、いろいろな日本人もそれぞれもう行っているというふうに聞いておりますので、それこそオール・ジャパンで、ネットワークを張りめぐらして、中国政府としてはそうした対応があるかもしれませんが、ここはもう積極的に、いろいろな角度で人的な派遣を取り組んでいただきたい。過去にも二例あるという御報告ですので、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 既に中国側には人的援助をする用意があるということを伝えてきているわけであります。昨日、現時点で受け入れ体制が整っていないという返事をもらっていますが、これからいろいろあり得ることだと思っております。

 阪神大震災のときにも、いろいろ外国から申し出があったのを全部受け入れているわけじゃなくて、やはり言葉の通訳の、言葉の意思疎通の話とか、いろいろ受け入れ体制も阪神大震災のときもあったわけなので、こういうのは受け入れるべきではないかというような世論があったことも覚えておりますが、受け入れる側と、そしてこちら側、お手伝いしたいという側と、その意思が一致して、お互いに話し合って、そういう中でお手伝いできるところはお手伝いしていく、こういうことだと思っております。

武正委員 報道を見ておりますと、地震の専門家とか、あるいは四川の盆地のそうした構造に詳しい大学の先生などが行ってみるというような形も報じられていますので、政府として中国が受け入れなくても、日本人がいろいろな形で今渡航をして、それぞれの立場で応援をしようというようなことをやっておられるようですので、そうした意味でのネットワークと情報収集と、そうしたものを集約した上での対応をお願いしたいというふうに思います。

 それでは、全米熱帯まぐろ類委員会についての質疑でありますが、きょう、農水省それからまた環境省さん、それぞれ政務官においでいただきまして、ありがとうございます。

 過日、当外務委員会で私の方から、カナダの影の国際開発大臣の言葉を引用して、特に科学的知見について環境省さんの協力をもっと得たらどうなんだろうということを外務副大臣、その前には谷川政務官にお聞きをしたわけであります。そのときは、谷川政務官からは、特に鯨を初め、谷川政務官としての決意もかなり伺ったわけですが、主に今水産庁さんがそうした科学的知見を担当されているというのは承知しておりますので、特にそうした意味で、環境省さんの協力、外務副大臣は、御指摘ありがとうございましたというようなことも言っていただいているんですが、農水省さんとしての御所見を改めて伺いたい。

 というのは、本条約には、科学的知見というのがたくさん、特に条約第七条にいっぱい出てくるものですから、やはりこの科学的知見をしっかりと担保するためには、それこそオール・ジャパンで取り組む必要があると思いますので、環境省さんの力が必要ではないかなと思うんですが、農水省さんとしての御所見を伺いたいと思います。政務官、お願いします。

谷川大臣政務官 正確に御趣旨が理解できないんですが、農水省が科学的根拠に基づいて持続的な利用ができるような取り組みをする上で、どういうことなんですか。意味がよくわからないんですよ。

武正委員 では、まず外務副大臣に。

 この間もそういうような趣旨で伺ったんですけれども、要は、IWCでもそうした科学的知見というものが求められますよね。鯨のときにも、いろいろ科学的な知見で、数量がふえているとか減っているとか、そうしたことをもとに調査捕鯨の頭数を決めていくというような仕組みでありまして、また、今回の全米熱帯まぐろ類委員会についても、この第七条では、科学的知見に基づいたいろいろな調査をしなさいという条約になっているんですね。

 ですから、そのときに、これまで水産庁さんが主にそうしたことを担当しているんですけれども、やはり科学的知見ということですから、環境省さんの協力を得たらどうでしょうというのが質問の趣旨であります。

 では、まず外務省さん、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 鯨もマグロもそうですが、このような天然資源に関する科学的知見というのは、これは資源管理にとって最重要の問題であります。

 日本では、水産庁が主にこういう科学的知見の研究をしておりますが、実は、知見を出すに当たりまして、さまざまな研究者の意見も当然入れております。その研究者には、水産の分野の方もいらっしゃいますが、あるいは資源管理なり環境の分野の方もいらっしゃいます。やはりこのようなオール・ジャパンの考え方を入れるということは重要だと思っております。

 また、私も実はそういう仕事をしたことがございますが、日本の科学者、特に水産分野の研究者というのは、決して産業の立場に立ったわけではなくて、あくまでも科学的、生態的な根拠に立っているというふうに認識をしております。

武正委員 農水政務官、よろしいでしょうか。

谷川大臣政務官 おっしゃるとおり、いろいろな専門家の意見を聞きながら、やはり、なるほどねと納得できるようなことが正しいと思いますので、ぜひ環境省さんの力もかりながら、どこからもクレームが出ないような形できちっとやっていただければいいなと思います。

武正委員 それで、前回も環境省さんにおいでいただこうと思ったんですが、ちょっと時間の関係もあってお呼びできなかったので、きょうは並木政務官がお見えでありますが、環境省も、省になってまだまだ日も浅いというか、いろいろと仕事はどんどんふえるばかりというのが実態だと思うんですね。

 今回のこうした魚類の科学的な、いろいろな環境に与える影響あるいは環境の影響をどのように受けているかというような知見については、お聞きすると、沿岸については一部やっているけれども、このように遠洋については、なかなか環境省さんとしてはこれまで担当しておられないというようなことを伺っております。

 ただ、この間、カナダの開発大臣が来られたときに、魚類に対する環境の与える負荷の話とか、それから、今のように、この後話が出ますまぐろ類委員会にカナダが署名もしてこれから入っていくに当たって、日加でもっと協力できないかというときに、では、例えばどこに産卵をするのか、その地域の確定とか、あるいは海流などを含めて、かなりそうした科学的な積み重ね、議論がこうした会議ではされるんだということを非常に感じたんですね。国内で余り議論されていないような話もそのときに影の大臣から私も聞きまして、そういうことは国内では余り議論されていないなということもあって、残念ながら反論できなかったことを覚えております。

 ですから、そういう意味では、やはり環境省さんに、こうした日本人のたんぱく源として大変貴重な魚類、その保護、そしてまたそれを日本人の食卓に届ける、そのためにやはりいろいろな国際会議で果たすべき役割は大変重いものがあるというふうに思っておりますので、ぜひ環境省さんもこうした分野にかかわっていただければいいのかなというふうに思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

並木大臣政務官 お時間もありますから、余り長いお話は申し上げませんけれども、既に先生も御存じのとおりかと思いますけれども、もともと省庁の設置法の中で、水産資源の保護管理とかについては農林水産省、環境省に関しましては、主に野生鳥獣の保護ということで、魚は直接的に含まれないというような、そういう所掌の中でやってきているわけです。漁業資源については、希少生物というよりも、漁獲量の大きい小さいということで漁業法関連とかそういう問題もありますので、基本的に水産関係ということでやっていただいているというのが現在の状況であります。

 サンゴの白化とか、いわゆる温度が二度ぐらい上がるとサンゴがどんどん死滅していくとか、そういう研究を沿岸部でやったり、地球温暖化の関連の海洋に与える影響とか、そういうものはやっているわけですし、また、最近の養殖等々においては、そういうえさによって近海のあれが汚れてしまうとか、そういう環境関連の問題もあるわけですけれども、直接、漁業に関する資源保護管理等については、現在、むしろ農林水産省関連の独法である水産資源の保護センターですか、そういうところでやらせていただいて、ちょっと行政的には所掌が違っているということなんですけれども、全体的な環境の中での魚類の問題ということになっていけば、お手伝いできるというか、環境省の分野として貢献できるものはしていきたい、そんなふうには思っています。

武正委員 所掌で魚類については農水省さんだというお話でしたけれども、見方を変えれば、地球の気候変動、そうしたものがあって、それが魚類に与える影響という大きなところからスポットを当てていくということであれば、決して所掌に外れるということはないでしょうし、また、沿岸部で、たしかそうした廃棄物などのいろいろな沿岸漁業に与える影響というのを調べておられる、それは担当されているというようなお話を伺っておりますので、やはりそれは、今のような大きなところから見ていくというやり方で、環境省さんの所掌の中で発言できる、あるいはかかわれる範囲というのは必ずあるというふうに思うんですね。

 ですから、やはりまず国際会議に行っていただくというので、一つどのような分野が環境省としてかかわれるのかなと。IWCもそうですし、これから、きょうも同僚委員が示したように、マグロだって五つも委員会があるわけですよね。それぞれやはり、地球全体の気候変動の中で、マグロ類の保存ということを中心に話していますが、当然それは、気候とか環境の影響というものをそれぞれの国を代表する学者さんが話をする。そのときカナダの大臣は、たしかカリフォルニアか何かのそうした方のそういう知見を随分と例に話をされておりました。

 ですから、環境省としても、そうした国際会議にぜひ積極的に、これは外務省なり農水省が中心でやっておられるのかもしれませんが、やはりオール・ジャパンで、環境省の協力も、あるいは環境省もぜひ積極的にかかわっていただきたいというふうに思うんですが、重ねて、なかなかお答えづらいかもしれませんが、どうでしょうか。見方を変えれば、環境省の所掌に妨げられず、できるのではないかという意見なんですが。

小野寺副大臣 このような国際会議になりますと、日本では水産庁が主に担当しておりますが、例えば、相手側が環境省、環境関係の方がこういう場に出てくる場合もあります。

 大事なのは、日本が科学的知見を出すということに関して、決してこれは産業育成ということではなくて、改めてやはり資源の管理ということ、それは環境も踏まえた管理ということをしっかり相手国に理解していただくことが大事だと思いますので、ぜひ、いろいろな知見をあわせまして、相手国から信頼される、そのような環境的データの積み上げということをしていきたいというふうに思っております。

並木大臣政務官 今、小野寺副大臣のお答えがあったとおり、国際的な対応とかで必要なことがあれば、いわゆる魚そのものを保護するというより、魚が生きる海洋の問題とか、そういう環境問題等が関連することがあれば、当然、ああいうサンゴのような固定的な、すぐにぱっと移動できないようなものというのは被害がいろいろ出ていますけれども、魚の場合は、その辺もまだ知見を環境省としてはそれほど持っていないということなんですけれども、必要なものがあれば協力していくということになると思います。

武正委員 農水政務官、いかがですか。最後、一言。特に、このマグロ類も近々また会議があるんですかね、六月、七月ですか。そうしたものも控えておりまして、マグロについても、水産庁としても、農水省としても、やはり日本人は好きですから、このマグロの保存、それから水産庁としても漁業の振興ということも含めて、今度の会議に臨む決意について一言触れていただけますか。

谷川大臣政務官 いずれにしても、いろいろな食に関係あるものも暴騰している兆しもありますし、また、海にいわば生きている水産物というのも、きちっとした管理というのは確立されているわけでもないし、あらゆる方面からそういうことを模索していくべきだと思います。

 今御指摘の環境について、僕が想定してさっき答えたのは、プラスチックなんかのごみが海岸に打ち上げられるんです。それが波でたたかれて行き来するうちに砕けていくんですよね。その粉を魚が食べるというケースが出てきているので、そういうことを想定しながら、いろいろな意味でと言ったわけですので、そういうふうに御理解していただきたいと思います。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

平沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武正公一君。

武正委員 それでは、続いてウィーン売買条約について話を聞かせていただきます。

 もう既に、国会承認を求める政府から、八八年の発効から二十年経過ということで、それについての、先ほどなぜかということはお話があった。この後、同僚委員も同様の質問が出てくると思うんですが、なぜもっと早く国会承認を求められなかったのかというようなことがやはりあろうかと思いますが、これは指摘にとどめさせていただきます。

 そこで、きょうは法務省から河井副大臣もお見えでありますので、国際物品売買契約に関する国際連合条約、法務省さんからも、この条文を見れば、国内法を改正しなくても直接これで国内のいろいろ貿易をされる皆さんも十分理解できるんだというような趣旨で、直接適用というようなお話でありました。

 ただ、例えば第八条、これはもう既に法務省さんにも私も指摘をしているんですけれども、意図という言葉とか、言明、行為、理解、慣行、これは九条になると慣行とか慣習。特に八条を挙げますと、「この条約の適用上、当事者の一方が行った言明その他の行為は、相手方が当該当事者の一方の意図を知り、又は知らないことはあり得なかった場合には、その意図に従って解釈する。」これは貿易をされている関係者が果たして本当に理解できるのかなと。

 あるいは、これは三項ですか、「当事者の意図又は合理的な者が有したであろう理解を決定するに当たっては、関連するすべての状況(交渉、当事者間で確立した慣行、慣習及び当事者の事後の行為を含む。)に妥当な考慮を払う。」ということですね。

 この意図という言葉がこの八条に当たってはやはり中心となっているんですけれども、なかなかなじみがないなということでありまして、法務省さんに聞いたら、いや、これは意思ということだと言うんですが、意思にしても、法律用語として、特に意図についてはなじみがないというふうに認識をするんですが、本当にこのまま直接適用で、二十年間この条約の承認を政府が求めなかった中で、果たして理解できるかどうかということになりますと、どうかなというふうに思うんです。

 法務省さんとして、この条約を、あるいは国内法は改正しなくてもということで臨んでおられるようですが、御所見を伺いたいと思います。

河井副大臣 確かに武正公一委員御指摘のとおり、日本の法律用語と異なる表現が用いられている部分があります。

 今御指摘いただきました、第八条の(1)、当事者の一方の意図、あるいは第八条(2)、一方の行った言明、第八条の(3)、当事者間で確立した慣行といった表現は、日本の民法においてはなじみの薄い言葉遣い、概念であります。といいますのは、この条約自体が法律用語をできるだけ使わないで、国際的な売買取引に携わる者にとって理解しやすい規定ぶりになっている関係上、このような表現になっていると思われます。

 今御指摘いただきました当事者の意図とは、インテントというんですね。アクセントはEの上にあるそうですけれども、INTENTですね。インテントの訳で、当事者の考えていること、今委員おっしゃった意思ということであります。

 当事者の言明とは、ステートメント、これは意思表示というのに近いんでしょうか、当事者の発言や文書に書かれた言葉ということで、いずれも日常用語としては理解することができる。

 また、当事者間で確立した慣行というのは、そもそもこういうふうな言葉遣いは日本の民法にはなかなか見受けられることがない。これは当事者が継続的に取引をする中で確立をしてきた慣行のことを指すというふうに言われておりまして、特に承諾の通知をすることなく契約が成立したものとして商品を出荷することが慣行化していたのであれば、承諾の通知なく契約が成立することがこの当事者間で確立した慣行と言えます。

 こういうことでありまして、一つ一つやはり御指摘のことは当たっていると思います。

 そこで、これからこの条約が効力を日本国において生ずるまでに約一年間の期間がございますので、外務省としっかりと協力をしまして、ゆめゆめ今委員から御指摘をいただいたようなおそれが発生しないように、関係業界、例えば全国銀行協会、日本海運集会所、日本経済団体連合会、日本商工会議所、日本商事仲裁協会、日本損害保険協会、日本弁護士連合会及び日本貿易会といったところの皆様を初め国民各位に周知に努めたいと考えております。

武正委員 これは条文で、例えば第十八条の一項ですけれども、「申込みに対する同意を示す相手方の言明その他の行為は、承諾とする。沈黙又はいかなる行為も行わないことは、それ自体では、承諾とならない。」というのもあるんですね。これがわかりやすい表現なんだということを法務省さんは言っておられるようですが、果たしてこれが本当にすっとみんなが理解できるのかなというところも、ちょっとこれだけ見ても、「沈黙又はいかなる行為も行わないことは、それ自体では、承諾とならない。」ということでありますから、はっきりと意思を表明しろというようなことなのかもしれませんよね。

 割に日本人というのはそこら辺が不得手なところもあるというようなところが指摘をされていますので、こういったところもかなり、今言ったように、一年ですか、徹底していかないと、やはりこの条文がわかりやすい言葉だと、諸外国ではそういうふうに解釈をしても、日本のそうした貿易をされる方々が本当にこれを理解されるのかというところは、いかがなものかなという、大変心配もするものであります。

 外務副大臣、先ほどたしか同僚委員の質問に対して、ドイツが民法典を改正したということを例に挙げておられて、そういうような可能性、要は国内法の改正もあり得るというようなことを言及されたやに私は受けとめたんですが、今法務省は、国内法を改正しないで、この条文を周知徹底を図ることでわかりやすく、大丈夫なんだということです。今の一例は八条と十八条を挙げましたが、そのほかを見ていっても、同じようになじみのない言葉とか、なかなかちょっと理解しづらい言い回しなんかがあるんですが、大丈夫なのかなといったことと、法改正はやはり検討する必要があるのではないかということを改めて確認をしたいと思います。

小野寺副大臣 先ほどの質問の中でお話しさせていただきましたが、基本的には各それぞれ所管の法律に基づいて、各それぞれの担当の方が考えることだとは思いますが、一般的には、ドイツにおきましても、この条約の中で内容について改正すべきところがあったときには変えているという事例はございます。

 ただ、今回、私ども想定しておりますのは、まず現状でこの条約を進めさせていただきまして、その後、各それぞれの法律を改正するような時期に当たりましては、実際の運用の中でそれぞれ問題があれば検討していくことではないかというふうに思っております。

武正委員 民主党の部門会議でも、同様の質問がいろいろと出された折に、当初、この条約を締結、採択するときには日本は主体的にかかわっていたけれども、発効してその承認に至るまでは、先ほどの幾つか述べた理由で、なかなか承認には至っていないということであります。条約を結ぶ時点ではそんなに国もなかったから、ここまでふえたから承認をするんだというようなお話もありますが、やはり条約締結あるいは条約をつくっていく初期の作業に日本がきちっと関与をしていくということは、こうした条文を、その表現なんかも見て、なかなか日本で使いにくい言葉遣いとかあるいは理解しづらいそうした慣行とか、そこら辺を避ける意味があるんじゃないかなというふうに思うのですが、その点はどうですか。

小野寺副大臣 大変重要な御指摘だと思うのです。

 一九六八年に、国連国際商取引法委員会、これが検討に入った時点で、日本の方としては、学識経験者を含め、この作成の中に既に関与をしておりまして、特にこの時点では副議長の立場で検討していたというふうに伺っております。また、その後もずっとこの検討の中には日本政府の担当者が入っておりまして、ただ、御指摘がありましたように、最終的にここに至ったという経緯に関しましては、やはり、産業界を含め、多くの意見を承りながら決めていったという経緯がございます。当初からかかわっていたということはお話しさせていただければと思っております。

武正委員 そうしましたら、河井副大臣、これで結構でございますので、どうぞお引き取りください。ありがとうございました。

 では、小野寺外務副大臣、今、日本人職員もいるというお話でしたが、全体で職員数がこの国連国際商取引法委員会には何人いて、そして日本人は何人いるのか、お答えいただけますでしょうか。

小野寺副大臣 済みません。ちょっと今調べておりますので、わかり次第、またお知らせしたいと思っております。

武正委員 概数で三十名ぐらいの職員数で、ただ、日本人は一人だというのはちょっと聞いているので、もし正確な人数がわかったらお答えをいただきたいと思います。

 そこで、お手元に資料を配らせていただきました。以前、当委員会で、ITUという国際機関、七百五十名の職員のうち日本人が五名ということで、ITUの最大の出資国である日本でありながら、他の同様の出資比率を持った国に比べてそうした職員数が少ないことを取り上げました折に、これは高村外務大臣だったでしょうか、JPOという、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーでしょうか、これを取り上げておられたので、今回、ちょっとそれも含めて調べてみました。

 お手元の資料は、府省庁・法人別派遣状況ということで、十四年度から十八年度まで、人数を見ておきますと、百八十六、百九十九、百六十九、百五十一、百五十一ということで、減っているわけです。特に四枚目は国際機関への派遣人数でありまして、これは七十一、八十、八十五、八十一、八十一ということでありまして、十八年度、八十一の内訳は、国連が四十六、その他の機関が三十五ということであります。これだけ日本の国際社会における重要な地位、それに応じて日本人の職員をふやそうと言っている中で、かえって府省から派遣をされる人数が減っているというのがまず一つ、これでおわかりいただけると思うのですね。

 あわせて、JPOについても話を聞きますと、大体年間四十人ぐらい、この五年間見てまいりますと、三十五、三十六、三十三、三十六、四十。ほとんどその方々は民間からということで、二年の任期で国際機関に派遣をして、そして、その後そこに残る、そうした努力はそれぞれ頑張ってくださいということで、残留状況は約五割というような話も聞いております。

 ただ、実際のところ、その後のフォローというものはなかなか外務省さんもしっかりされていないというようなこともあったり、あるいは、それぞれの省庁が、さっき言ったようなITUなんかは総務省なんでしょうけれども、この間、政務官が来たら、いや、定数の制限があるので、七百五十に対してなかなか総務省からもその五名以上ふやせないんですと政務官も言っておられました。

 また、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律というのを、人事院の要請で、そして総務省が提出してつくっているのですけれども、この第二条は、要請に応じというようなことで、国際機関の要請に応じ派遣をするという法律の仕立てになっておりますし、もちろん、第十一条、復帰した場合に均衡を失することのないようにというのがあるのですが、同意を得なければということもありまして、実際のその派遣期間を見ると、国家公務員の海外への派遣の年数というのはおおむね二年以内。三年以内で大体みんな帰ってくるということもありまして、同僚委員からも、国際機関にはもっと長くいないと本当に日本としての主張ができないだろうと。そういうようなことも考えますと、この法律の課題とか、その定数の問題とか、やはりいろいろと課題が出てくる。

 また、官民人事交流法というのもあるのですけれども、これも民から官、官から民ですけれども、民から官に来て、そこからスルーして国際機関に行くという、そうした法体系にはなっていないことなども含めますと、やはりこの国際機関への日本人、官も民も合わせてもっともっとふやしていく、こういう観点から、もし政府が望むのであれば、やはりそれなりの法体系、制度、この見直しが必要ではないかと思うのです。

 この間、大臣はJPOということを御紹介いただきましたが、JPOでさえ、外務省はその後、その国際機関で働いている方々が、では何年働いているか、何人いるのか、そういったことは十分把握されていないというお話も承っておりますので、やはりこれについては改めて取り組み方を見直す、特段のそうした力を入れていただく必要があるのではないかと思うのですが、今のウィーン売買条約に関する委員会についても、三十名のうちの一人ということもありますので、改めて御所見を伺いたいと思います。

小野寺副大臣 JPOにつきましては、先ほど御指摘がありましたように、三十名から四十名を派遣ということになっています。また、派遣期間を終了した後に国連等の国際機関に正規に就職できる者の割合につきましても、年によって変動はありますが、四〇%から六〇%の間ということであります。

 政府としましても、このJPOを経験した者を含めて、国際機関へ就職した邦人のキャリアアップについては、JPOによる派遣を終了した者などが再度国際機関で勤務を希望する場合には、各種情報の提供や在外公館を通じた国際機関への働きかけなど、積極的に支援していきたいというふうに思っております。

 また、JPOを卒業された方の中では、国際公務員を希望する方もありますし、中には、経験した中で別な分野に行かれる方もいる。それはやはり個々人の進路の選択かというふうに思っております。

武正委員 外務省に聞きますと、最初は二年、それからその後、いろいろ段階に応じて試験があるときに、その御本人から連絡が来ればそれを応援するという枠組みではあるけれども、それはあくまでそれぞれの皆さんの自由意思なので、実は、その後、二年たって就職した後、なかなか情報が集まってきていないということもあるようであります。

 私は、もっともっと外務省が中心となって、関係省庁にもちゃんと連絡をとって、国際機関、それぞれ省庁と関係ありますので、そういったところに行っている日本人、そして、その中でいろいろ御苦労もある、家庭のことあるいは子供のこと、いろいろある、その中で応援するというのをやはり外務省が一元的にやるべきだというふうに思うわけであります。

 この間、外務大臣はこのJPOということを例に挙げておられますので、改めて、外務大臣、いかがでしょうか、この人数などを見て、省庁の派遣人数が減ってきている状況の中で、この国際機関における日本人職員、民間も含めてもっともっとふやすために、政府を挙げて取り組み方を強化していくべき、あわせて、外務省の中でのそういう一元的な機能強化、この二点についての御所見、御決意を外務大臣にお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 国際機関で活躍する日本人は、我が国の国際貢献の顔であるとともに、国際社会において我が国の考え方を実現していく際にも重要な役割を担っております。外務省としては、関係省庁や民間とも十分に連携しながら、日本人の国際機関への送り込みを強化する必要性を認識しているところでございます。

 例えば、関係省庁からの出向者を初めとする中堅職員の派遣等につきましては、当該省庁と連携しつつ、在外公館における選考状況のフォローアップや国際機関人事担当への働きかけといった送り込みの支援を行ってきております。

 また、重要度の高い国際機関の幹部ポストへの邦人の送り込みに関し、外務省は、国際機関等における各種選挙に関する省内の意思決定メカニズムとして、昨年三月に、外務大臣を委員長とする常設の選挙対策委員会を設置いたしました。国際機関等の幹部ポストの選挙を初めとする重要な選挙につきましては、同選挙対策委員会が中心となって、関係府省庁とも連携しながら、オール・ジャパンとしての取り組みを進めていく決意でございます。

 委員の御指摘、正面から受けとめて、一生懸命やっていきたいと思います。

武正委員 お話を伺うと、閣議決定とか、例えば骨太の方針とか、そういったものでも位置づけられていないという話でありますので、私は、ITUの人数だけではありません、いろいろなルール、また今回の条約の言葉遣いを含めて、そしてまた海外で活躍する日本人が多いだけに、あるいは日本の生命線である貿易・投資、やはり日本の国益を守るためにも国際機関で働く日本人をしっかりとサポートする、応援をする、そういう政府としての姿勢を示していくことを強く求めて、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 私の方は、きょう、四つの条約ということでありますが、マグロを除いた三本ということで質問をさせていただきたいと思います。少し重なるところがあると思いますが、流れがございますので、お許しをいただき、その中でいろいろと質問させていただきたいというふうに思います。

 まず、日豪の租税条約ということであります。

 既にそれぞれの委員の方もお聞きになられておりますけれども、一九七〇年に現行の条約が発効した、四十年近くもたっている、そして新たに今回、日豪間で租税条約の批准に向けて審議している。今回新たな租税条約を締結することの必要性、今まで、意義、メリット、あるいは背景があった、いろいろと御説明はいただいておりますが、改めてその必要性ということを特に重点でお教えいただければと思います。

小野寺副大臣 日豪租税条約をこの時期に締結する必要性ということでございますが、現行の日豪租税条約は、一九七〇年に発効しました古い条約であり、両国の緊密な経済関係の現状に必ずしも合致しなくなってしまいました。

 特に、豪州が近年締結しました先進国との租税条約におきましては、投資所得、配当、利子、使用料の源泉地国課税は現行の日豪租税条約と比べて低く設定されておりまして、我が国の企業は、そのような先進国の企業に比べて競争上不利な状況に置かれることとなりました。経済界からも改正について強い要望がありました。

 このような状況に対応すべく、新条約においては、投資所得の源泉地国課税の限度税率を軽減することなどを確保いたしました。これにより、我が国企業が他の先進国に劣らない競争条件のもとで活動し、もって両国の経済関係が一層緊密になることが期待されるということであると思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今御説明をいただいたような必要性が出てきた。そういう中で、少し思うのは、最近、エネルギーが非常に緊張しているというか足りなくなってきている。そういう中で、オーストラリア、豪州というのは、やはりそういった資源の部分で非常に必要性があるのかなと思うんですが、その点はいかがでありましょうか。

小原政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘のありましたとおり、日豪関係、伝統的に非常に緊密な貿易関係を持ってきておりますが、特に最近、国際的にエネルギー資源の価格も高騰しておりまして、需要も非常に逼迫しているという状況の中で、オーストラリアが日本の資源エネルギーの非常に安定的な供給国になっているということがございまして、資源の安定確保ということに向けまして日本企業の資源開発投資への関心も高まっているというふうに承知しておりますので、引き続き、こうした観点からも、この条約、非常に重要だと我々は位置づけておりますので、そうしたことで御理解いただければと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それぞれの国と個別に結んでいく条約、それぞれの国との関係の特徴があると思うんです。そういった観点から、日本の経済発展等に資するように積極的に取り組んでいっていただきたいというふうに思うわけであります。

 そういう中で、先ほど米英と比較してというお話もありましたが、国際的租税回避事案や海外滞納事案に対処するための方策として、日米、日仏租税条約などにおいては徴収共助条項が設けられている。ただ、今回、日豪の租税条約においては徴収共助条項が設けられなかった、こういうわけでありますが、その理由をお知らせいただけますでしょうか。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 徴収共助とは、税務当局間の執行協力の枠組みの一つでございまして、他国の租税債権を当該他国のために徴収するということになりますので、租税債権の徴収において根本的に存在しております執行地という制約を超えるというものでございます。

 税制には各国ごとの違いがございまして、租税条約交渉はそうした各国税制の違いを踏まえた交渉になるわけでございますけれども、とりわけ徴収共助の枠組みにつきましては、納税者の権利保護といったことも関係いたしますので、そうしたことも含めました徴収制度の相違を踏まえて慎重に検討する必要がございます。そのため、OECDのモデル租税条約におきましても、徴収共助に関する規定につきましては、ほかの規定と異なりまして、導入するか否かは両締約国の事情によるべきものというふうにされている、そういう位置づけのものでございます。

 実際に、それぞれの条約におきます執行協力のあり方を見ますと、区々でございます。現行の日豪租税条約にも徴収共助に関する規定は存在いたしておりませんし、我が国やオーストラリアの近年の条約の中にもそうした規定が置いていないものはございます。

 今回の日豪租税条約の交渉におきましては、このような事情を踏まえました上で、情報交換を含めまして条約全体の執行協力のあり方について協議した結果、最終的にはこの規定そのものは置かないこととしたということで合意したものでございます。

近藤(昭)委員 そうすると、今のお話の中にもあったんだと思いますが、両国のそうした関係部局の何らかの必要性があった場合は、それは、当局間の協力は外交ルートを通じるということになるのでありましょうか。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 税務当局間の情報の交換はいろいろな形で進めておりまして、今回の条約の中にもそうした協力規定そのものは盛り込んでおるところでございます。

近藤(昭)委員 条約に触れられている中で、当局間が直接交渉するということの理解でよろしいわけでしょうか。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の条項につきまして、税務当局間の相互協議といったような仕組みを盛り込んでございます。

近藤(昭)委員 先般、日中の刑事共助条約の審議がありましたけれども、刑事司法の分野においても、米国、韓国、中国と条約を結んでいく、人が往来をする中でそういった課題に協力をしていくための条約。そして今回、経済交流が進む中、税務当局間の協力関係も条約的な裏づけが必要だろうということで、こういった条約の締結になっていくんだと思います。

 そういう意味では、今はそれぞれの国によって個別の条項があるということで、今回、オーストラリアとも話し合って徴収共助条項は設けられていない、それぞれの個別の状況によるんだ、こういうことであり、慎重に検討してきたということだと思います。

 ただ、私は、ちょっと素人的かもしれませんが、そうしたものがあった方がいいのではないかなと思うわけであります。そういう意味では、今後の状況を見きわめながら、必要に応じて改正へ向けて、必要に応じてということでありますが、交渉を行うなどの対応も必要になるのではないかなと思うんですが、いかがでありましょうか。先ほどから、差異があるので、決して全く否定したわけではなくて、いろいろと慎重に検討したということでありますが、私は、ぜひ必要に応じて、必要であれば改めて交渉し、改正も前向きにしていくべきではないかと思いますが、いかがでありましょうか。

猪俣政府参考人 条約について、必要な場合に再交渉すべきじゃないかという御意見でございますけれども、日本それからオーストラリアの間で、両国間でやはりこれは改正した方がいいということになれば、当然そういう動きになろうかと思いますけれども、まさにこれは新しい条約をつくったばかりでございますので、しばらくはこの運用をしていくということが適当だと考えております。

近藤(昭)委員 そうした場合は、例えばそういった必要性等々についてはまた、先ほど、今回の租税条約が必要になってきた、経済界からの要請もあったということだと思うんですが、そういった現場からの、経済界の要請があり、財務省等々にそんな要請というか要望が伝えられて、そしてまた交渉窓口である外務省に、こんなような流れでありましょうか。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 今の委員の御指摘のような流れでよろしいかと思います。

近藤(昭)委員 ぜひ、こうした条約の必要性がある、必要性とはまさしく現場の必要性ということでありましょうから、しっかりと必要に応じて改正に向けて動いていただければと思うわけであります。

 それでは、日本・パキスタン租税条約についてであります。

 これも同じようなことになりますけれども、一九五九年に発効した、そして一九六一年に一部改正をされた、そして五十年近くが経過している、こういうことであり、日本・パキスタン間にこうして新たに租税条約を締結することの必要性を改めてお聞かせいただきたいと思います。

小野寺副大臣 現行の日・パキスタン租税条約は、御指摘ありましたように、一九五九年でありますが、一部改正が一九六一年に発効いたしました古い条約であります。

 同国との経済関係の現状に必ずしも合致しなくなっているということはオーストラリアと同じだと思っております。特に、パキスタンが近年締結しました先進国との租税条約では、投資所得、配当、利子、使用料の源泉地国課税の限度税率が明記され、かつ、我が国との条約に比べて低く設定されている部分があるなど、我が国とパキスタンとの投資交流促進、我が国企業の国際競争力確保の観点から、改正について経済界の強い要望がありました。

 このような状況に対応すべく、新条約におきましては、投資所得の源泉地国課税の限度税率を、パキスタンが他の先進国と締結した条約の限度税率と同率以下の水準で明記することを確保しました。これにより、我が国企業が他の先進国に劣らない競争条件のもとで活動し、もって同国との経済関係が一層緊密になることが期待されると思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それで、パキスタンにも日本の企業が進出していく、現場の要請が、需要が来ているんだと思いますが、ちょっと私の見た資料では、まだ日本からパキスタンに進出している企業は必ずしも多くないな、逆に言うと、パキスタンから日本に、中小企業なのかなと思うんですが、随分進出しているような気がしますが、そういった状況についてはどのように分析というか評価なさっておられますでしょうか。

小原政府参考人 お答えいたします。

 近年、日本とパキスタンの経済関係は緊密化しておりまして、貿易で見ますと、二〇〇一年から二〇〇六年までに貿易額が約三倍になっております。直接投資も、二〇〇一年から二〇〇二年度、これと比べまして、二〇〇五年度から二〇〇六年度にかけまして約九倍近くに伸びております。日本企業の進出状況でございますが、パキスタン国内での需要増加を受けまして、自動車関係を中心に設備投資が増加しております。

 パキスタンへの直接投資、先ほども申しましたように大幅に増加しておりまして、ここ数年、主な投資先は自動車、二輪車分野でございまして、日系企業各社は設備投資を行って着実に生産能力を補強しているということでございまして、今後も進出企業がふえるという見通しを持っております。

近藤(昭)委員 パキスタンから日本に進出しているような企業はどんな状況でしょうか。

小原政府参考人 日本に進出しているパキスタン企業でございますが、零細、個人経営がやはり中心でございまして、約五百二十社ございます。業種といたしましては、中古車関連を含めます自動車関連でございます。それから、食品、外食産業、その他商社というところが中心でございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 それぞれ、分野あるいは規模が違うけれども、かなり日本とパキスタンの経済交流も進んでいるということだと思いますが、そういう中で、今回の日本・パキスタン租税条約においては、技術上の役務に対する料金に関する規定が新たに設けられて、源泉地国の限度税率を一〇%に設定している。これは、日本の企業からパキスタンに対して行われる各種技術支援の報酬、対価に対する実質的な減税措置と考えられる。先ほどもちょっと御説明の中にもありました、日本から自動車関連の企業が進出していっている、こういうような背景があるのかなとは思うんですが、この規定が新たに設けられた経緯及び理由を御説明いただきたいと思います。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 技術上の役務に対する料金につきまして、税制上の取り扱いをちょっと御説明させていただきます。

 この料金は、ある企業が他の企業に対しまして技術者を派遣いたしまして技術指導あるいは支援を行った場合に、派遣先の企業から派遣元の企業に対して支払われる、そういった対価のことでございます。派遣元の企業にとりましては、技術上の役務に関する料金は事業利得の一類型ということになりますので、これまでの我が国の租税条約におきましては、一般的にこれにつきまして特別の規定を設けずに、他の事業利得と同様の取り扱いにしております。すなわち、派遣元の企業が派遣先の国に恒久的施設を有する場合、かつ、当該料金がその施設に帰属する場合に派遣先の国の方で課税することができるという取り扱いでございます。

 一方、パキスタンは、先進国から、委員の御指摘もございましたが、技術指導、支援のために技術者をたくさん受け入れているという状況があるようでございまして、こうした料金につきまして、源泉地国であるパキスタンにおいて課税したいということを租税条約交渉上の基本方針にしているようでございます。すなわち、技術上の役務に対する料金というものを条約上規定いたしまして、この料金を受け取る企業がパキスタンに恒久的施設を有しない場合でも、当該料金に対しまして、一定額を上限といたしましてパキスタンで課税するということを方針としているようでございます。

 この条約におきましては、こうしたパキスタン側の事情も考慮いたしまして、この規定によりまして日本企業の方もこの料金に対するパキスタンの課税関係が明確になりますし、そういう意味で法的安定性にも資する。かつ、パキスタンとほかの先進国の間の条約でも同様の規定が設けられているということから、今回の新しい条約では、これについて規定をするというふうにしたものでございます。

 なお、日本の租税条約の例で見ますと、インドとの間の租税条約では同趣旨の規定を置いてございます。

近藤(昭)委員 御答弁いただいてありがとうございます。

 答弁の中に、今まで少しあいまいだったところが明確化をされたということでありますが、パキスタン側からの要請があって、そういった技術上の役務に対しての課税をパキスタン側でやりたい。そうすると、企業そのものには、明確にはなったが、少し負担は、少しというか、そういう負担についてはどうなんでしょうか。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 日本企業にとりましては、日本企業が日本国に納めます際に、源泉地で課税されましたものにつきましては外国税額控除によりまして二重課税の調整が行われますので、最終的には、負担額は基本的には同じというのが二重課税調整の仕組みでございます。

近藤(昭)委員 二重課税されない、明確になったということで、企業にとってもメリットといいましょうか、便利になったのではないかなというふうに思うんですね。

 それで、やはりこれから日本はますますアジア諸国、まだ日本の技術移転等々が必要な国との交流が多くなってくると思うんです。またあるいは、日本はODAによる技術移転に積極的に取り組んでいるわけでありますけれども、今後、アフリカを中心に、今度TICADもありますけれども、世界に多くの開発途上国がある、そういうところに日本は技術支援をしていくだろう、また必要性があると思うわけであります。

 そういった意味では、政府がやるとともに、民間主体の技術移転が可能な国ではこういったことがどんどんと必要になってくるのではないかなと思うんですが、今後、そうした途上国との租税条約締結においてはこういった点が非常に重要になってくるのではないか。つまり、技術移転に対する、民間の企業が移転してきやすい状況を条約等々でつくっていく必要があるのではないかと思うわけでありますが、いかがでありましょうか。

猪俣政府参考人 ただいまの委員の御質問は、今後租税条約をどういうふうに進めていくかという基本方針に関する御質問と受けとめさせていただきました。

 租税条約は、これまでも累次説明させていただいておりますけれども、国境を越えます経済活動に対する課税権を調整することによりまして国際的な二重課税を回避する、そして、税務当局間の国際協力を推進して脱税を防止するということが主たる目的でございまして、これまで、委員も御案内のとおり、四十五条約、五十六カ国の国々と締結してきております。

 特に、近年になりましては、経済のグローバル化に対応しまして持続可能な成長を実現するためには、国際的な投資交流、あるいは、今おっしゃられました技術交流の促進もかなり重要であるというふうに考えております。

 このような観点から、租税条約におきまして、投資所得に対する源泉地国課税を減免することについて、特に注力している次第でございます。

 交渉相手国につきまして、どういう形でこれまで交渉してきたか、あるいは今後交渉していくかということでございますが、ここには幾つかの要素がございます。

 経済関係を中心とする我が国との二国間関係ですとか相手国の税制、租税条約締結状況、既に我が国が租税条約を締結済みの国につきましては、限度税率の高い条約か否かということ、それから、実際の課税上の問題が生じているのかという点、そのような点をいろいろ踏まえまして、総合的に勘案の上決めていくことにしている次第でございます。

 今御審議いただいております二本の条約に足しましてこれからどうするかということでございますけれども、具体的に言いますと、我が国は今、オランダとの間で租税条約の改正交渉をしております。それから、アラブ首長国連邦ですとかクウェート、アジアではブルネイ、そしてまた中央アジアではカザフスタンとの間での新規締結交渉を行っているところでございまして、今後も租税条約ネットワークというものの充実に努めてまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、政府主導によるもの、そして民間主導による技術移転、日本の国内経済状況等々をかんがみながら積極的に進めていただきたいと思うわけであります。

 また、今ちょっとお触れをいただきましたけれども、今後のこと、日本は四十五条約、五十六カ国でしょうか、租税条約。諸外国を見ると、フランス、イギリスが百カ国以上、中国は八十七カ国、韓国は六十五カ国と租税条約を締結している。この間いろいろ審議をしている条約でも、ヨーロッパ諸国がかなり積極的にやっている中で、まだまだ日本がおくれをとっているという言い方が適正かどうかわかりませんけれども、本数的には少ないというような気がするわけであります。今後、私は、やはり積極的に条約締結に力を入れていっていただきたいというふうに思うわけでありますが、いかがでありましょうか。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御答弁いたしましたとおり、当然、経済関係が緊密になり、相手国における課税の問題、両国における二重課税の回避、それから脱税の防止という点、これは、いずれにしましても経済活動をしている以上重要な要素だと思っております。

 したがいまして、先ほど申し上げました幾つかの要素を勘案しながら、可能な限り多くの国とやりたいと思っておりますけれども、先ほどちょっと冒頭の答弁で申し上げましたけれども、今はオランダとの間での改正交渉、それから数カ国との新規締結交渉を行っているところでございます。

近藤(昭)委員 それぞれの国の税法、商法、それぞれの国の産業構造や経済状況などがあると思いますので、慎重に検討した上、一概にどんどん推進すべきだということではないんだと思いますが、日本にとっても、世界にとっても経済が発展していく、そういう観点から進めていただきたいと思うんですが、大臣、一言いかがでありましょうか。

高村国務大臣 これは、税務当局にとっても大切なことだし、特に経済界にとって二重課税されるということは耐えがたいことでありますから要望も強いわけで、積極的に進めていきたいと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 こうして経済交流が進むわけでありますけれども、日本企業による海外直接投資の特徴としては、生産、販売拠点を海外に移転し、現地で永続的に事業を展開しようとする傾向があると思われます。また、そういう中で、現地法人の税引き後の利益を日本の親会社への配当に向けるよりは再投資に向ける傾向が強いのではないかと思うわけであります。

 ただ、そうすると、財政的な視点から見た場合、日本企業の海外直接投資の拡大は、税源の、税を負担する会社の海外流出を意味するわけですし、現地法人による再投資の拡大は、日本における課税機会の喪失につながるというふうにも思うわけであります。

 先ほど私は積極的にということを申し上げつつも、こういう課題があるのではないかということを申し上げたいわけでありまして、こうした税源、税収確保の観点から、とにかく日本は今非常に財政的に厳しいわけでありますが、そういう事態もまた考えていかなくてはならないと思うわけであります。

 この点について、政府はどのような認識を持っておられるのか、お伺いをしたいというふうに思います。

川北政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国企業の国際的な経済活動につきましては、これが国内、国外を問わず活発に行われまして、それぞれの企業判断に基づいて自由に行われる、それが全体としての経済効率を高めて、我が国、さらに世界の経済発展に資するということが基本的な考え方なんであろうかと思います。

 今、私、大変原理的なことを申し上げましたけれども、もちろん、我が国企業のビヘービアなりが経済のグローバル化の中でさまざまな影響を日本国内に与えているということにつきまして、さまざまなところから御議論があろうかと思います。その点につきまして、私のお答えする範囲をやや超えるかと思いますけれども、税制といたしましては、いずれにいたしましても、そういう自由な経済活動に対しましてできる限り中立な税制を仕組んでいくというのが税制当局に課せられた要請かなというふうに考えている次第でございます。

 なお、御指摘の、税源や税収確保の観点からどうかということでございました。私どももこの点について問題意識はございますが、今若干申し上げましたように、海外進出した部分に対応しまして、その分我が国の経済規模が縮小するということになりますと確かに税源の問題ということになろうかと思いますが、我が国の経済は、そういう対外、対内活動全体を通じまして、こういう自由な経済活動の結果成り立っているところがございますので、その部分だけとらえまして、引っ張り出して何か財政的な影響を云々するというのはなかなか難しいのかなというふうに思っている次第でございます。

近藤(昭)委員 財務省としても、そういった、今お話をいただいたような、税源確保というところでは考えていかなくちゃいけないところもあるだろうけれども、日本の企業が発展をしていくという観点も大事だというお答えだったのではないかなと思うんですが、ただ、今、問題認識で触れていただいたように、非常に税源確保が厳しいというところは経済発展とともに考えていかなくちゃいけない、矛盾しないようで矛盾する難しい問題ではないかなと思うわけです。

 それで、ちょっと最近、こんなような記事を読みました。日本の企業が海外子会社を通じて稼いだ所得を日本に戻さない傾向を強め、海外子会社にためた資金の残高が二〇〇五年度末で約十二兆円まで膨らんだ、これが経済産業省の緊急調査でわかったと、これは五月四日付の読売新聞が報じている。所得が還流しない状況を放置すれば、国内での研究開発、日本の会社が発展していくための研究開発、技術開発や設備投資に十分な資金が回らず、日本の成長力促進に悪影響を及ぼす懸念が強いと。そして、その記事では、甘利経産相はインタビューに答えて、海外所得の国内送金に対する課税を免除する方向で政府・与党内の調整を急ぐ方針を示したということであります。

 この調整をするというもとの方針、これはどのような方針で調整を行うつもりであられるのか、お知らせをいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 海外所得の国内送金に対する課税の免除に対する方針でございますが、中長期的にいいますれば、海外の人口や市場の伸びが我が国の伸びよりも大きくならざるを得ないという状況の中で、成長する海外市場で獲得した果実を国内にどう還流させるか、それを国内のイノベーションにどうつなげていくかという、この好循環を構築することが成長戦略には不可欠であるというふうに考えております。

 そのため、国際展開する我が国企業が、税制に左右されずに、海外子会社の利益を必要なときに必要な金額だけ国内の本社に戻すことが可能となるよう、海外から国内への資金還流促進に資する税制改革につなげるべく、甘利大臣から指示を受けたところでございます。

 今後、当省といたしましては、平成二十一年度税制改正要望として取りまとめをしていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 答弁ありがとうございます。

 それで、ちょっと続いて質問したいんですけれども、その記事の中では、「経産省は、親会社が海外から受け取った所得に対して、日本国内で課税しない制度(国外所得免除制度)への転換を求める方針だ。」と報じている。「経済協力開発機構(OECD)加盟国では、この方式が主流になっている。」ということでありますが、この国外所得免除制度を政府はどのように評価しておられるのか。今もちょっとそういう観点からお話しになったのかもしれませんけれども、どうか。

 ただ、そうすると、この制度は、資金管理を目的に、潜在的税源を犠牲にする面もあるのではないかというふうに思うわけであります。この点についてどう考えられるのか、経産省そして財務省、それぞれお答えをいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 国際的な二重課税を排除する仕組みとしましては、おおむね二つあると承知しております。一つは外国税額控除方式でございまして、これは外国で課税された税額を控除してしまうというものでございます。もう一つは国外所得免除方式でございまして、国外で得た所得を課税対象から除外する。この二つがございますが、我が国は現在、外国税額控除方式を採用しているところでございます。

 現行の外国税額控除方式のもとにおきましても、原則、海外子会社に利益を留保している限りはこれに対する課税ができないものでございますので、もともと課税されていない海外留保利益を無税で国内還流することを可能とするとしても、基本的には増減税については中立的であるというふうに考えております。

 経済のグローバル化が進む中で、国際展開する我が国企業が、先ほど申し上げましたが、税制に左右されずに、海外子会社の利益を必要な時期に必要な額だけ国内の本社に戻すことが可能となるように、海外から国内への資金還流促進に資する税制改革につなげるべく、当省として検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

川北政府参考人 税制当局からお答え申し上げます。

 二重課税排除の仕組みには、今も御答弁ございましたけれども、外国税額控除方式と国外所得免除方式とございまして、国際的には両方とも二重課税排除の手法といたしましては同等のものであるというふうに認知されておりまして、どちらの方法をとるか、あるいはそれをどう組み合わせるかにつきましては、各国の法制にゆだねられておるところでございます。

 我が国は外国税額控除方式をとっておりまして、諸外国ではアメリカ、イギリスが我が国と同じようなやり方、フランス、ドイツ等の欧州諸国につきましては国外所得免除方式を基本的には採用しているところでございます。

 それぞれの方式につきましては、外国税額控除方式には、内国法人が立地拠点を選ぶときに中立になる、国外所得免除方式には、進出先の国で自国企業が現地企業や第三国の企業と同一の競争条件になるという意味での中立、それぞれの特徴が整理されているところでございます。各国におきましては、こうした特徴を踏まえまして、それぞれの制度を選択しております。

 経済産業省から今御説明ございまして、私ども、まだ税制改正の要望について具体的に承っておりませんけれども、私どもといたしましては、こうしたそれぞれの方式の特徴を踏まえまして、どのような二重課税排除の方式が最も効率的であるのかという観点から引き続き研究していきたいというふうに考えておるところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 余り質問時間も残っておりませんので、私の考え方だけ、考え方というか、少し提案だけ聞いていただければと思うんですが、経済産業省、財務省、それぞれのお答えがありました。もちろん、二重課税を防いで、中立的な税制ということは必要でありますし、ただ、どこで課税するかという点等々、税源、財源ということで考えると、幾らか矛盾したというか、課題を抱えるわけであります。そういう意味では、ぜひ、経済産業省、財務省も、こういった問題を共同してといいましょうか、それぞれ課題をとらえつつ取り組んでいただきたいというふうに思うんです。

 それで、余り時間もなくなりましたが、ちょっと簡単にウィーン売買条約について質問したいと思います。

 加入の理由と意義等については既に何人かの方が質問をしておられますので、私の方からは、一つこういう角度からお聞きしたいと思うんですが、いろいろな理由が出てきたところの中には、やはり最近、アジア諸国との貿易がふえてきた。それで、大変に失礼な言い方になるかもしれませんが、そういったところで、法整備の部分でまだ十分でないところもある。そういうところから、こういったウィーン売買条約に加盟をして、そういったトラブルを防いでいこうというところがあるのではないかと思いますが、いかがでありましょうか。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 この経緯についてお話ししますと長くなりますけれども、もともとは、やはり欧州、ヨーロッパにおきましては大陸法系と英米法系の違いがあったりとか、統一的な基準をつくった方がいいということで始まったものでございます。

 したがいまして、確かに、国によって国内法制がなかなかしっかりしていない国があるというのはそのとおりだと思いますので、そういう意味で、国籍が異なる国同士の間の企業間でそういう取引をした場合に統一的な基準ができるということは、やはり法的安定性あるいは取引を行う上でも重要な要素だと思っております。

 したがいまして、今後もなるべくアジアの諸国が入ることは期待されるところでございますけれども、今委員がおっしゃられたような理由からこの条約ができたということでは必ずしもないというふうに認識しております。

近藤(昭)委員 そういう背景ではないけれども、そういうところに資するところもあるのではないかというお答えだったと思います。これからますますアジア諸国との経済交流が盛んになっていく、そういう中でしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 それでは、もう時間がなくなりましたので、最後に一点、既に質問が出ているんですが、高村大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 私も、中国におりました経験がありますから余計に思うんですけれども、中国、今回の四川省の地震も、何年ぶりでしたか、随分とこの間ない、そういう状況、ほとんど地震がない中で無防備であったのではないかと思うわけであります。建物もほとんど鉄筋等々が入っていない、れんがを積み重ねただけの建物が多い、そういう中で、発生した時間、子供たちが学校に行っている時間もあった。また、一部報道では、そういった公共の建物に手抜きの工事があったのではないか、そんなようなことも報道されておるわけであります。

 こうした中、やはり日本は積極的に支援、それは現地が、中国側が受け入れる、受け入れないという要請主義ではありますけれども、要請が必要なわけでありますが、積極的な支援をしていただきたいと思うということ。

 そしてもう一つは、日本は地震が多い国でありますから、ちょっと変な言い方かもしれませんが、日本は地震が多くてこういう問題があるんだ、こういうことに対して、例えば今後のこと、万が一また発生したときに、発生することのおそれのためにこういうことをしていくべきではないか、あるいは、こういう中で日本は地震等々の被害があるときにこういう対応もできるんだという、つまり、ソフトの部分での支援も必要ではないかと思うわけでありますが、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 ちょっと最後のところが聞き取れなかったんですが。

近藤(昭)委員 日本は地震が多い国ということで、日本が今までにあった経験の中から、万が一これから発生したときに被害が少なくなるような例えば建物の建て方、あるいは地震が起きた後の救済の仕方、こういったところで、こういうものができる、あるいはこういうことをやっていった方がいいのではないかというソフトの部分、知識の部分での支援も必要ではないかということです。

高村国務大臣 そういうことは今度の災害についてもあり得ることだと思いますし、それから、中長期的にもそういう知見を中国に伝えていくということは大切なことである、こういうふうに思っております。

近藤(昭)委員 本当に、今なお多くの方が救出を待っているということであります。ぜひ積極的な支援をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 今、近藤議員の最後の質問もありましたが、中国で四川省、大変な地震災害に見舞われております。心からお見舞いを申し上げたいわけでありますが、今邦人がどうなっているかということもいろいろと問題があるわけであります。

 この辺の調査というのは今混沌をきわめている中で進んでいるわけでありますが、今の状況において、日本から行っている邦人の状況、それから、例えば日本から四川省、この場所に進出している企業があるかどうかわかりませんが、そういった被害等に関してわかる情報があれば教えていただきたいと思います。

小原政府参考人 お答えいたします。

 中国四川省におきます在留邦人でございますが、全体で約三百人、それから進出しています日系企業でございますが、百七十社ございます。うち、成都市における在留邦人が二百五十人、日系企業が百四十社ということでございます。これまでもう既に答弁しておりますが、四川省に在留するこの約三百人のうち、その七割を超える二百二十人と連絡がとれ、無事を確認しております。

 引き続き、北京の大使館、重慶にあります総領事館を通じまして、邦人被害の有無につきまして、邦人企業・団体及び旅行関係団体等に連絡をとりつつ、安否確認を行っているところでございます。

松原委員 日本企業が例えばそういうところに工場をつくる、進出する、こういうことが行われているわけでありますが、そういうときに、その地域におけるそういう災害の可能性等に関してアドバイスをするような部署というのは経済産業省にあるのかな。それは外務省にはないですよね。

小原政府参考人 実は外務省も、近年、日本からの海外渡航者が非常にふえておりまして、そういう意味で、領事部を領事局に格上げしまして、領事局を中心に、そうしたいろいろな情報を速やかに海外にいる邦人に伝えるようにということで、そうした体制を強化しております。

 例えば、いろいろなホームページでございますとか、それから、海外におられる方、これは在外公館で在留届を出していただけるように皆さんに働きかけをしておりますが、こうした方々に緊急メールを送って、いろいろな事態、これは自然災害のみならず政治的ないろいろな混乱も含めて、そうした事態を、緊急に邦人の方々に情報を送るという努力を続けております。

松原委員 もちろん、それはそれでやってもらわなきゃいかぬ、こう思いますが、日本の、日系の企業が中国には大挙、さまざまな工場その他で進出しているわけです。そういったときに、例えばここの国はカントリーリスクがあるからというのは、渡航しないようにというものも含め、いろいろなアドバイスというのはあるわけですが、同じように、この地域というのはやはりそういったこともありますよというような、ある種の知恵をつけるというのは、これは外務省になるのか経済産業省になるのか、部門ごとに違うわけでありますが、一応、その地域に関していろいろな情報を持っているのは外務省だろうと思いますので、そういうのも今後はひとつ検討、今までしていないと思うんですよ、必要かなというふうに思います。

 それでは、今回の条約に関して入っていきたいと思います。

 ウィーン売買条約成立の経緯と、その段階においてなぜ日本が批准しなかったのかということをお伺いしたい。

小野寺副大臣 この条約は、国際物品売買契約についての統一法を設けることによって国際取引の発展を促進することを目的としまして、一九六八年に国連国際商取引法委員会が検討に着手し、一九八〇年にウィーンで開催されました国連主催の外交会議において採択され、一九八八年一月一日に発効いたしました。

 現在、我が国の主要貿易相手国を含む七十カ国がこの条約の締約国となっており、この条約は国際的な物品売買契約に関する国際的な標準ルールとなっております。したがって、我が国による本条約の締結により、日本企業が行う国際取引をめぐる予見可能性が高まり、その円滑化が期待をされます。

 なお、我が国におけるこの条約の締結に関しましては、一九八八年の発効直後に検討が行われました。しかし、当時の締約国はまだ多くなく、この条約が国際的な標準ルールとなるか否かが不明確でした。また、この条約の解釈に関する予見可能性も、必ずしも高くありませんでした。このため、当時、経済界は締結に積極的ではありませんでした。

 その後、この条約の締約国数は順調に増加し、実用性が増大しました。また、裁判例等の蓄積により、この条約の解釈に関する予見可能性も高まり、経済界からも締結に関して肯定的な評価を得られるようになりました。

 そのため、我が国企業の国際取引を円滑化し、その法的安定性を高める等の観点から、今回この条約を締結することにしたものです。

松原委員 スタート段階、アメリカは入っていたでしょうか。

猪俣政府参考人 入っておりました。

松原委員 中国は入っていたのか、また、ヨーロッパで入っていた国はどこか、教えていただきたい。

猪俣政府参考人 中国も最初から加盟しておりました。ヨーロッパの諸国は、ちょっと今、資料をもって御答弁させていただきます。

松原委員 後で答えてください。

 なぜ日本が初期の段階から入らなかったのか。今、小野寺副大臣は、経済界からこれに対して若干疑問をまだ禁じ得なかった、こういう答弁でありますが、大変に納得しづらい答弁であります。

 もとより、この条約は、御説明にもあったように、世界における貿易と経済交流の発展に寄与しようではないか、世界の経済が有機的に連携する中で、これを前向きに、アグレッシブにしていこうというのがこの話であって、こういうものが生まれることによってメリットを享受する国は、資源がなく、ローマテリアルを輸入して、それを加工して出す日本が一番メリットがある国であります。

 さて、では、この条約をつくろうとした段階において日本はどういう役割を果たしたのか。積極的につくろうという方向で動いたのか、単に傍観者的に参加したのか、お伺いしたい。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 このいわゆるウィーン売買条約でございますけれども、一九六八年に国連の国際商取引法委員会、UNCITRALというところでございますけれども、これが、新たな統一売買法の検討に着手したわけでございます。その過程で、日本は統一条約の条約草案を作成するための作業部会のメンバーとして議論に参画しているとともに、日本から出席しました道田信一郎教授が総会の副議長として活躍されるということで、当初から日本としても積極的に参画していたということでございます。

松原委員 作業部会のメンバー国は、日本以外、どういう国が入っていましたか。

猪俣政府参考人 今調べた上で、後ほど国名をお伝えしますけれども、二十四カ国でございます。

松原委員 今二十四カ国という数字を聞きましたが、二十四カ国の作業部会に参加している国で、一九八〇年の段階で日本は参加しなかった。入っていない国はあったんでしょうか。その有無だけお伺いしたい。

猪俣政府参考人 当初、八〇年に作成されまして、その段階で入っていたといいますか、締約した国は十カ国でございますので、二十四のうち十以外の国は入っていなかったということだと思います。

松原委員 二十四カ国のうちの十カ国しか入っていなかったと。

 今、日本が、今回これを批准して入るわけですが、この段階では他の二十四カ国はほとんど入っているんですか。事実関係だけお伺いしたい。

猪俣政府参考人 資料で今探しておりますけれども、二十四カ国にイギリスが入っていたかどうか確認しております、英国ですね。もし入っていたとすれば、英国は今でも締結していませんので、ちょっとそこを確認した上で答弁いたしますけれども、その点はまだはっきりしておりません。

松原委員 EUは、一つのくくりがまたそこにありますので、イギリスが入る入らないという議論とEUとの絡みもあろうかと思いますが、私が申し上げたいのは、日本は、国連が事実上バックボーンになってつくられたこのいわゆるウィーン売買条約、これに入ることのメリットが極めて大きかったと思うわけであります。

 私が言いたいのは、さっき小野寺副大臣は、私に対しての答弁でこう言った。このものが本当に世界標準になるのかどうか、たくさんの国が参加するのか、それを見定めないと参加できない、それが、当時における参加しなかった判断の理由の一つであると。私は、それが判断理由であるとしたら、ちょっと違うんじゃないかなと。そのコメントは、小野寺副大臣個人のコメントというよりは外務省がつくったものかもしれませんが、小野寺副大臣はそういうことは言わない人だと私は思っておりますから。

 私が言いたいのは、こういうものをつくって、世界の貿易に関して、それを進める方向での動きというのは、日本にとってはどう考えたって国益上プラスなんですよ、基本的に。それが、作業部会からひな形ができて、それに関して、その条約を批准している国が十分ではありませんとか、どうなるかわかりませんということを、日本が言う話ではないと私は思うんですよ。日本はそれを、世界の標準的な売買のルールをつくるために参加をし、参加したと今言っているんだから参加したんでしょう、みずからも入って、そして実践することによって世界の貿易が前向きに進むことは、基本的に日本にとってはマイナスではないというふうに判断をするのが、私は外務省の王道だと思うんですよ。

 そのころから外務省におられた審議官、いいですよ、答えてください。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 このいわゆるウィーン売買条約はそもそもどういう条約かということでございますけれども、国際物品売買契約の成立と、それから生じます当事者間の権利義務等を規律する統一基準について定めるものだというのは委員の御指摘のとおりなんですが、いわゆる国際私法の関係で、契約を結ぶときに、どっちの国の準拠法に従って物事を進めていくか。もし何か問題が起きたときにどっちの国の法律を適用するかということについて、統一的な基準をつくろうじゃないかということであるわけでございます。

 したがいまして、通常の商取引を行う際に、異なる締約国に営業所を有する企業間で取引をするときに契約を結ぶことになっていて、その契約にどう書くかというのは、まさにこれまでの積み重ねでやってきたんだろうと思います。したがって、この条約はあくまでも国際取引を行う企業が円滑に取引を行うためにどうしたらいいかということを考えたものでございますので、その締結に当たりましては、やはり経済界の意見も十分尊重することが必要だという判断に立っていたというふうに思っております。

松原委員 今の話で、経済界の判断というのが主流であった、こういう話でありますが、その経済界というのは、中身は何ですか。

猪俣政府参考人 いろいろな経済団体がございますけれども、国際的な貿易をやっていた経済団体の組織ですとか、あるいはその当時、国内官庁としまして法務省あるいは経済産業省とも相談した上で、いろいろ国内経済団体からの話を聞いたということでございます。

松原委員 いや、はっきりわからないですね。その経済界の中身をもうちょっと詳しく言ってもらえませんか。

 今回、私も、事務所に来てもらって話を聞きました。確かに、なぜこの段階でこういったものが生まれるのか。僕は、これは入るのはいいと言っているんですよ。ただ、私はきょう、外務省のこういうものに対しての姿勢の問題を問うているんです。姿勢の問題を問うているんです。

 さっき近藤さんの質問で、こういった租税条約、次の課題で少し挙げますが、租税条約に関して中国は八十七カ国とやっていると。韓国は六十五カ国だと。日本は中国に及ばず。韓国にはきっと及んでいるんだろうと期待しておりますが、及んでいないという話もある。まあ、及んでいないんだけれどもね。

 どうしてそういう、前向きじゃないというと日本語としてどうかわからないけれども、何でそういうふうに取り組みが遅いのか。笑い事じゃないよ。何でそういうふうに取り組みが遅いのかということを、私は確認したいわけです。

 経済界が、これに関して反対したと。僕は最近話を聞いてみて、恐らく、世界の貿易を、大企業、例えば一部上場の大変にでかい企業ではなくて、普通の町場の中堅企業も中国に行ったりしてやる、こういうふうな状況になってくると、そこの部分では、独自の契約内容のフォーマットというのはできていないと僕は思うんですよ。だから、そういう部分のフォーマットができていないということであれば、それに関してこういったものが必要だろう。

 しかし、逆に言うならば、そのチャンスは、もしかしたら大企業関係、大企業とかそれなりの輸出入をしている企業と今おっしゃった。輸出入をしている企業に関しては、いや、うちはこのフォーマットでやるから、こういうものができたって特約で全部やりますよ、こういう話かもしれない。しかし、そうじゃない企業が頑張って、頑張ればチャンスは来るんだよ、こういうふうなことを考えるならば、私は、これに関しては早目にやはりつくることのメリットというのはあったと思うんだよね。

 だから、その経済界の中身を教えてくれと言っているんです。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 その当時、まさに経済界が反対したということは、多分反対という言い方ではなかったと思います。ただ、積極的にこれをすべきではないという意味においては消極的だったと聞いております。

 その段階での経済界という意味において、どこであるかということになりますと、最近であれば商工会議所ですとか経団連という組織と協議させていただいておりますが、その八〇年代、どういうところとやったかというのは、ちょっと私は今資料として持ち合わせておりません。

松原委員 僕は、おとといですか、部会に来てもらったときもそれは非常に興味があったので、もうちょっと精緻に答えてほしいと思うんですよ。

 つまり、経済界が余りこれに対して前向きでなかったと。私企業のことだから、その私企業の経済界がこれに対して熱心でなければ、それはしなかったです、こういうふうなことがもっともらしく聞こえるんだけれども、果たしてそうだろうかと私は思っているわけですよ。

 私も実は、国会議員になる前に一度商工会議所に嘱託で勤めていたことがあるからわかるんですが、もちろんそれは、それぞれの地域の業界を代表していますよ。しかし、本当にその声だけでそうなのかといえば、いや、それはもっと深く、国の方で見なきゃいけない。今言ったように、中堅企業が今はそれなりに力をつけてきて、世界に対して、例えば日本の大田区あたりのあるちっちゃな工場が、この部品に関しては世界のシェアの半分、五〇%を超えていますとか、そういうのはありますよ。しかしそれは、今始まったわけじゃなくて、昔からあるんですよ。だから、そういう企業が、では、言わせてもらいますよ。

 大手企業は特約でできるんですよ、これをやらなくても。大手企業はこれができることによるデメリットはないんですよ、特約優先なんだから。何でつくらなかったんですか。

猪俣政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、この条約といいますのは、要するに、契約の成立に関する部分、それから権利義務について規定するということでつくられているものでございます。

 実際の契約を行うときに何が問題になるかというと、成立の時期をどうするかというのは当然契約で決めるわけでございます。日本の民法でありますれば、契約の受諾の発信のときに成立するということになっておりますけれども、今回つくろうと思っているその条約のもとでは、契約の成立というのは、申し込みに対する受諾の返事をした後、その返信が届いたときということになっているわけで、その点での統一ルールを決めるわけです。

 それがない場合にどうするかというのは、それぞれの国の法律、どっちの法律に準拠するかということにかかわっていますので、それぞれの企業がどういう契約を結ぶかという判断をその時々でできるようになっていまして、もちろん、中小ですと、相手との関係で力が弱いということを念頭に置かれての御議論かもしれませんけれども、それぞれの選択肢というのは、いずれにしましても、契約を結ぶ段階で、今でもありますし、当時もありましたので、その点において、これを結ばなかったからといって不利益をこうむったかどうか、その点私は承知しておりませんけれども、この条約につきましては、その段階ではまだ国際的な標準としての位置づけができていなかったということで、締結をしなかったということでございます。

松原委員 そうすると、二つぐらいまた出てきますよね。

 これをつくることによって、中小の企業は、特約を別途つくればいいんだけれども、不利益をこうむるケースというのはあり得るんですね。

猪俣政府参考人 この条約を締結した後にどういう契約を結ぶかということになりますと、特例を中で決めていない限りにおいてはこの条約に基づいて判断するということになりますので、不利益をこうむるということには特にならないかと思っております。

松原委員 であれば、初めからつくっていいということに結論はなるわけですよ。特約をつくるかこれでやるかというのは選択できるわけですから。

 そういうことを考えると、私は、なぜ今なのかと。当初から日本が全く無関係だったら、それ自体問題だけれども、そうじゃない。最初の段階から、この委員会、ウィーン売買条約の作成に絡んできました、こう言っているわけでしょう。何でこの時期なのかなと。

 これは恐らく、高村大臣はここ数年、大臣をなさっておられますが、一人の大臣がどうだというよりも、役所そのものの体質として、この辺が僕は不十分だったと思うんですよね。だれかが責任をとるような話じゃないんですが、どうも、今、中国が八十七、韓国が六十五と答弁にありましたけれども、日本が五十にいかないぐらいですか、こういう状況も含めて、少なくとも日本の企業はそれなりに奮闘している。しかし国は、企業を盛り上げる奮闘を、これも含めて、十分にしていたんだろうか。

 今、世界が一つのグローバルスタンダード、グローバルスタンダードなんというのは本当にあるのかというと、できるわけですよ。つくったところがメリットがある。それはもう皆さんも御案内のとおり、グローバルスタンダードをつくったところがメリットがある。語学に関して言えば簡単でありまして、英語が世界のグローバルスタンダードになれば、英語をしゃべっている人間は大体一千時間ぐらい人生で得するわけですよ、わからないけれども。能力のある人は二百時間ぐらいかもしれない。私なんかは、一千時間過ぎても追いつかないから、私の人生の五年分ぐらいはかかってしまう。今、発展途上ですよ。

 考えてみれば、胴元になったところはメリットがあるのがグローバルスタンダードですよ。もしくは、それをつくった、だから、我々も日本で、いろいろなところで議論していると、これは外務委員会の内容とは違うかもしれぬけれども、例えば会計基準を中国なんかはもうかなり世界に合わせているんだよね。僕もこの辺専門じゃないけれども、世界に合わせている。日本は全然それが合っていないから、ダブルでやらなきゃいけない。そこで大変な労力が発生するし、その点ですうっと中国の、中国は共産主義であるけれども、世界の基準と同じものを使っているところが貿易か何かであるというのかな。これは物すごいメリットで、その辺も、我が日本の横浜とか東京港が貿易の出荷において上海とかにどんどん負ける理由の一つだ。これはもう高村さんなんかよく御存じだと思うんですよ。そういうのを考えると、やはりグローバルスタンダード。

 グローバルスタンダードにこれがなるかどうかわからないと言っていたけれども、なるつもりでつくったんでしょう、つくるときに。なるつもりで外務省は参加したんでしょう。ちょっと答えてください。

猪俣政府参考人 まず先に、先ほどの答弁でちょっと訂正させていただく点がありますので、答弁させていただきます。

 当初のメンバー、二十四と申しましたが、恐縮でございます、十四カ国でございました。そのうち、未締結なのが八カ国、締結済みが六カ国ということが今わかりましたので、お答えをいたします。

 それから、もちろん当初から国際物品売買契約についての統一法をつくろうということを目指していたわけですから、将来的にこれが国際標準になるだろうということを期待してつくったことは間違いがございません。

 ただ、やはり、どういう形で運用されていくかという点についてはしばらくちょっと様子を見る必要があるという判断がその当時あったというふうに認識しております。

松原委員 つくるというのは法文だけつくるんじゃなくて、その運用に関しても関与しているわけだから、そこが外交力じゃないですか。

 皆さんのお話を聞いているとよくわからないんだけれども、そこを我が国にメリットがあるようにどうするか。メリットがあるというのは、国内的に極めてメリットがあるだけじゃなくて、そのことによって世界の貿易が日本としていろいろとできるということのメリットだから、ほかの国にもメリットがなきゃいけないメリットなんだけれども、それがどうできるかというのをやはり考えなきゃおかしいんじゃないかと私は思うんですよね。そういうことでございます。

 答弁、何かありますか。いいですか。

 それで、国内法との関連については先ほどもお話がありましたが、さっき言ったように、国内的なものもそれに合わせた方が、もうグローバルな時代だからいいという議論もあるし、いや、国内はあえて、例えばアメリカからくる何か経済的な大きなあらしに巻き込まれないように別建てにしておくというのも、これも一つの判断としてあろうかと思っておりますが、やはり私は、こういったもので、これは外務省に設置するかどうかは別でありますが、やはり日本の国内的な法と海外との関係を、どういうふうに日本の企業が海外のそれにくみしやすいようにするか。

 変えられるところと変えられないところがあると思うんですけれども、やはり変えているところが成功しているし、変えているところが、例えば、具体的に言えば、さっき言ったように、貿易の出荷云々だって、東京や神奈川の港を使わないで上海にどんどん行ってしまう。それだけが理由とは言わないけれども、中国が大分膨らんでいるということもあるだろうけれども、しかし、その大きな理由の一つとして、みんな関係者が言うんですよ。そういうことを含めて、国内法とこういったものとの関連性。

 そして、それは外務省になるか内閣府になるかわかりませんが、そういうものに対しての国際的な戦略本部をつくるべきだと私は思うんですよ。ちょっと望洋とした話でありますが、そういったものがやはりないといけないし、そこは積極的にこういうものについても前向きに取り組んで日本の国益を主張する。日本の国益というのは、この場合は世界のそれぞれの国の益になるものが国益になるわけだけれども、そういったものが必要だと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

高村国務大臣 日本のビジネスが世界で大いに活躍するというのは日本の国益だと思いますし、それぞれの国際的にも役に立つことだ、こういうふうに思っております。

 それで、この条約が今まで提出されなかった、遅過ぎるじゃないか、そういう意見は確かにあるんだろう、こう思います。あるんだろうと思いますが、一方で、国内で、はっきり言って産業界から急いでくれという要望は非常に少なかった。租税条約なんかはあるんですよ。あるにもかかわらず、委員が御指摘のように日本は中国や韓国より数の上でおくれている、そういうことはあるんですが。

 日本の場合、やはり、私がそう言うと言い過ぎなんですが、ちゃんとやろうとやり過ぎるところがありまして、完璧なものをつくろう、国内でも完璧にして、その上で、国会に提出した上では、国会対策上優先順位のあるものから出せと国対からは言われますし、そして全員賛成のものであっても審議も非常に綿密にされる。中国なんかとはそこは、国会の、民主主義の要請のあるところとないところでは、そのスピード感というのは、ある意味の民主主義のコストとして、スピード感が違ってくるということは私はあり得る、こういうふうに思っております。

 この問題について、私個人の意見からいえば、もっと早く出してもよかったかな、こういうような感じはいたしますが、この問題で、おくれたことによって我が国の国益が損なわれたということはそれほどない、こういうふうに思っております。

 国内的に言えば、例えば先ほど言いましたように契約の成立がいつになるか、そういう重要な点で国内法と違う、そういうことがあるので、やはり法務省などにもいろいろな意見が当然あった、こういうふうに承知をしておりますし、そういう中で、いろいろ国内で調整する中で、積極的にやれという強い要望がない中でやっとここまで来た、そしてこの委員会で審議をしていただけるまでに至った。遅過ぎたといえば遅過ぎたと言えるかもしれないけれども、そういう中でここまで来たということは、コップの水の半分みたいで、やっと来たんだから、それはそれで評価していただいてもいいのではないか、こういうふうに思っております。

松原委員 大臣の御答弁は尊重して進めたいと思うんですが、一つは、私が指摘したいのは、大臣もおっしゃったように、外務省が、こういったものをつくることが国益なんだと。さっき言ったように、これをつくることによるデメリットがあるんですかと聞いたんですよ。特約をつければないんだから、特約をつければ。

 今、大臣は、産業界からの要請が乏しかったと言うけれども、やはり、政府が認定する産業界は産業界の一部なんです。恐らく当時から、中堅で、いわゆる経団連とかそういうところの発言力はないけれども、しこしこと製品をつくって世界のシェアの三割、四割をとっている企業は町工場でもあったかもしれない。それは言わないですよ。言っても政府は聞いてくれないと思っていたのか、そのこと自体は政治に頼ろうとしなかったと評価するべきかどうかわからないけれども。ニーズがなかったとは私は思わないし、あったとしてデメリットもないというのであれば私はやるべきだったと。非常に簡単なんですよ。

 ニーズを出している大企業は、日経連も経団連も商工会議所も、会長になるところは大手企業ですから。小さな町工場の社長はもちろん無理だし、中堅企業もなかなかなれませんよ。私は商工会議所の嘱託でいたからわかるけれども、例えば商工会議所の品川支部会長とか大田支部会長というのは大企業ですよ、はっきり言って。しかし、私が知っているのは、もっと小さなところで世界のシェアの何%というところもあるんですよ。彼らは商工会議所に入っていても発言なんかしませんよ。

 そういうところの声なき声を、あるんだなというのを体得して国家として動く方が、そこがまた大きな企業に伸びるかもしれない、またはいろいろな可能性が出てくるかもしれない。国益をそんなに損なっていないと今大臣おっしゃっていたけれども、それはわからない。証明できませんが、損なっていたかもしれないし。

 少なくとも、そういう部分で、大企業ではないところの声、商工会議所は中小企業の代表というんだけれども、トップになっているのはみんなでかいところですから。私は中にいて知っていますよ。その辺は、やはりそこは、声なき声を聞いて、信ずるところに従って国益について追求してもらいたいと僕は思うんですよ。

 だから、くどいようだけれども、そもそも特約でできるというんだったらやればいいじゃないかという話ですよ。しかも、この手のものをつくるのは日本が一番中心でやるべきなんですよ。日本の場合、原料はないんだし、輸入と輸出でやっている国なんですから。

 こればかりやっていると、これで何か時間がどんどん、まだ十分ぐらいしかたっていないかと思ったら二十分以上たっているから、次に行きますよ。

 租税条約、では、なぜ三十余年ぶりの見直しか云々というのは飛ばしましょう。

 この中で、いわゆるみなし控除の見直しというのが入っていますね。みなし控除の見直しはどうして今回入ったか、教えてください。

猪俣政府参考人 先ほど、前の方の質疑の中で、財務省の方から外国税額控除制度の説明がたしかあったと思います。

 今、みなし控除の見直しに関する御質問ですけれども、このみなし外国税額控除制度といいますのは、租税条約相手国に投資している自国の居住者が、相手国の租税優遇措置によって減免を受けた場合、その租税の額を、相手国において納付したものとみなして自国の税額から控除することを認めるという制度でございます。この制度は、開発途上国であります条約相手国が経済開発を促進するためにとる外国企業誘致措置などの政策減税、これを我が国の課税権を制約することによって支援するというものでございました。

 よろしいですか。

松原委員 パキスタンはこれでなくなるんですね。(猪俣政府参考人「なくなります」と呼ぶ)

 データを見ると、中国は今入っていますか。

猪俣政府参考人 まだ残っております。

松原委員 なぜ、パキスタンはこれをなくして、中国は残っているのか。中国は、国連安保理常任理事国であり、宇宙衛星も飛ばすし、軍事費は二けたの伸びを示している国家であります。なぜ中国に関しては、事業所得は各事案十年というこれが残って、パキスタンは残らないのか、説明してください。

猪俣政府参考人 委員も恐らく御案内だと思いますが、中国の国内法の改正も最近ございました。

 さらに、この租税条約の関係で日中間でどうするかということを今後交渉する機会には、それについてさらに交渉していきたい、こういうふうに考えております。

松原委員 これは政治決断だと思うんですが、大臣、パキスタンはこれをやめて、中国はやめますか。中国に関してはこのみなし控除をやめますか。聞いてみます。お伺いしたい。

高村国務大臣 租税条約全体の中の考え方でありますから、今後、その問題が起こってくるときは当然この問題を提起する、こういうことであります。

松原委員 提起するということは、見直し、つまり、これをパキスタンと同じようになくすことを含めて提起する、こういうことでよろしいですね。

高村国務大臣 日本は原則的に、この問題についてはみなし税額控除を見直すという方向で考えておりますから、それが中国だとかどこだとかこれだとか、そういうことではなくて、この問題について交渉をする際には、当然見直し、今委員が言った方向の見直しを日本は提起する、こういうことであります。

松原委員 ぜひ見直しを提起していただきたいと思います。

 今回、みなし外国税額控除をしているというのは、中国、スリランカ、ザンビア、ブラジル、タイ、バングラデシュ、ベトナム、フィリピン、パキスタン。やはり中国だけは、大きな国だし、沿海部と内陸ではすさまじい所得格差で、内陸へ行ったらそれは厳しいということはあるけれども、例えばタイよりも下の州もかなりあるけれども、沿海部の州は全部タイよりはるかに上ですよ、所得も含めて。だから、そういったことを考えると、日本の国がどこに進出しているかというエリアを考えたって、そのエリアは明らかに、他の供与国に比べたら全然違う水準のエリアですから。それはやはり今大臣がおっしゃったとおりでお願いしたいと私は思っております。

 先ほど実は大臣がお話しなさった中で、私も一つお伺いしようと思って、私のメーンのテーマだった、それは外務省の所管かどうかわからないけれども、やはり外政というのは物すごく大事だと私は思うんですよ、外交というのは。外務大臣というのは、ある意味では副総理大臣レベルを超える、日本におけるポジションだと私は思っているんですよ。それだけの重責を高村さんは担われていると私は思っております。

 やはり外政は内政を凌駕するというんですかね、外交圧力というのは内部の力より強い。例えば、海外の金融の基準、ルールが入ってくる。国際ルールが入ってきたときに、内政はそれに立ち向かうことができないぐらいに、外の力というのは強いんですよ。なぜ強いかといえば、日本がアメリカのようなモンロー宣言ができない国だから強いわけですよ。であるならば、国内法と国際的なものの関係や、国際社会におけるルールづくりに日本が関与する、えぐい言葉を使うならば、正邪を、正しいか正しくないかを判断する権力がルールづくりにあるとするならば、そこにやはり日本は関与しなきゃいけないと私は思っているんですよ。

 そうなったら、そこの極めて戦略的な部署というのは、これだけ国際社会との関係が深く、国際社会の影響を受けやすい国においては、当然それは必要だと私は思うんですよ。例えば、今言った国内的な税制の問題と国際的な税制の問題の関連性も含めて、どういうふうに強い国内社会をつくるか。

 そういったことで、今韓国や中国にも租税ではおくれをとっている、こういうことでありますが、それは単に結んでいる条約においてだけではなくて、内政との関係においても、これは恐らくおくれをとっているんじゃないかと私は思っているんです。その辺のやはり戦略的なものを、外務省が言い出しっぺでつくるかどうかは別にして、僕は内閣に必要だと思うんですが、そういった問題意識に関しては、大臣はいかがでしょうか。

高村国務大臣 委員がどういうことを想定しているのかよくわかりませんが、例えば外国との交渉については、できるだけ一元的にやるという中で、各内政とのつながりがあって、それぞれ専門があるわけですね。税制についていえば、外務省よりもはるかに財務省の方がよく知っている。そういう中でも、外交交渉においては一元的にやる。そういう中でおのずと戦略的に、今までもやっておりますし、それが足りないと言われればそれまででありますが、さらに委員からそう言われないように戦略性を持って、一元的に外交を展開していきたい、そして内政とつなげていきたい、こういうふうに思っております。

松原委員 足りないと言われればという話ですが、私は足りないとは言わないけれども、もっと前向きに行く余地があるということを申し上げているんです。足りないとはあえて言いたくない、本当は足りないのかもしれないけれども。私は、もっと余地があると。

 それはやはり省庁が一緒になって、例えば海外とのこういった条約をつくる、国内法との関係を練る、同時並行で進める。進められない部分もあるでしょう、国内的に見て、根っこの部分の慣習というのは、それは簡単には移らないかもしれない。しかし、ここは動かせるというものは動かした方が、中国とかみんなそれをやって成功しているわけですよ。だって、企業はそれによって、言うことを聞かざるを得ないんだから、その辺の部分の研究を含めて。

 もう一つは、そういうのを含めて、全体の中でどうやって我々がルールづくりに参加して、日本の国益を主張するかという、それは一省庁ではなく、もっと国家戦略のまさに一番重要な部分だと僕は思うので、ぜひそういったものがやはり一つのくくりとしてあるということが存外重要なんだろうと私は思っておりますので、問題意識は共有していただけると思いますから、ぜひとも御検討いただきたいと思います。

高村国務大臣 理想的なところから比べて、足りているはずはないんですよ。足りているはずはないんだから、理想的なところに近づくようにもっともっとやるというのは、それは当然のこととして、日々努力をしてまいります。

 中国はそれがうまくいっているとおっしゃったけれども、私は、中国とハイレベル対話などをやって、すさまじい縦割りだなと、日本も縦割り社会にいながらそう感じるぐらい、なかなか、どこの国も苦労していることだ、そういうふうに思っております。

松原委員 中国全体がということでなくて、私は冒頭に言ったように、例示として、港における輸出入業者の扱いの部分なんですよ。そこは非常に彼らはうまかった。そこの部分は現実に成功しているわけですよ、他の要素もあるかもしれないけれども。

 しかし、これは戦略的にやらなきゃいけない、やはり都市間競争であり、国家間競争ですから。競争なんですよ。そして、かつてのような自由主義の、アダム・スミスが言ったような、企業が勝手にやっていれば成功する時代じゃなくなった、今は。世界はこれだけお互いに連携をしてきて、その中でいろいろなルールができてきて、昔だったらなかったような知的所有権も、ここ五十年ぐらい、こうやって出てきて、つまり、やっていたことが実は非合法のことをやっているかもしれないぐらいに、いろいろなことで取り決めが世界的にある中においては、国家が、産官学協同というのは、昔は、人によっては何か汚いもののように言っていたけれども、しかし、それは基本の基本だと私は思うんですよ。であるならば、その部分に関して、きちっとした戦略性をつくるべきだということを申し上げているんです。中国に問題があるのは十分わかっていますよ。

 中国のことになったので、あと、何か残りが五分というんですが、この間、胡錦濤さんがやってきた。パンダをレンタルで借りているという話があるんです。これは質問していないので、ちょっと直感的な大臣の印象をお伺いしたい。

 随分評判が悪いんですよ。何か、一年間レンタルで一億円ですか。これは大臣はどう思っていますか、パンダのレンタル。これはよかった、こう思っていますか、ちょっと高いかなと思っているのか、率直な印象を聞かせてほしい。

高村国務大臣 一億円だかどうか、私は存じません。そこまで詰めているのかどうか、レンタル料がかかるのかかからないのか。一般に、今までの例を見ると一億円だったから一億円かかるらしいというマスコミ報道は随分見ましたが、本当にそうだかどうか、私は現時点で存じておりません。

松原委員 私もそのマスコミの話で聞いているんですが、一億円かかるとしたらどうかという話で、みんな怒っているわけですよ。

 まあいいですよ、時間が来たので重要な問題を聞きましょう。

 今回の福田さんと胡錦濤さんの話で、ギョーザ問題とガス田問題は、具体的にどういうアクションプログラムがこれから想定されたのか。

 この間の外務委員会の質問では、これからだというふうなお話だったわけですが、これからだこれからだが一年続いたら、これからじゃないわけだから、今教えていただきたい。

高村国務大臣 先般この委員会で同じことを聞かれて、今教えるわけにはいきませんという趣旨のことを答弁して、委員によって違う答弁はできません。

松原委員 では、いつになったらしゃべれるんですか。

高村国務大臣 解決した時期にしゃべります。

松原委員 やはり国民はギョーザ問題等に関しても非常に関心があるので、解決したときに話しますと言って、その解決したときがいつかわからない。日本の警察は既に……(高村国務大臣「今、ギョーザで聞いたのですか」と呼ぶ)ギョーザとガス田両方、両方ですよ。

 ちょっと時間が来て、篠原さんもここに座っているから、これ以上聞いちゃ申しわけないから……(発言する者あり)済みません。

 ギョーザに関して、これはどういうふうになっているのか。ガス田に関しては、しかし、最低限、首脳同士が会って話をして、具体的なアクションプログラムがありませんというのは、それは通らない話ですよ。そんな話が通るはずないじゃないですか。国民の側は、結局何もなかったんじゃないか、こう思いますよ。だから、高村外務大臣は、総理を補佐し、キャビネットの一員であるお立場から、やはりこの辺の見通しを語ってほしいわけです。ギョーザについてもお伺いします。

高村国務大臣 両首脳が解決のめどがついたと言っているんですから、めどがついたんです。今までみたいに、例えば昨年、確かに、秋までに両首脳に報告できるようにしましょうと、あれは願望でありますが、今度は両首脳みずからが解決のめどがついた、こう言っておられるんですから。そして、現時点で今いろいろ言うことが、決して最後の詰めをすることに役に立たない。役に立たないだけじゃなくてデメリットがあるということで、今言わない、こういうことでありますから、いましばらくお待ちください。

 それからギョーザについては、両首脳が幾ら頑張ったからといって犯人が挙がるわけではない。ただ、両首脳が、さらに捜査協力を強化して挙げよう、そういう方向性を示した。これは最後は警察の捜査でありますから、警察の捜査で犯人が挙がるかどうかということは、両首脳の意思のままになるかどうかというのは、それははっきりわかりません。

 東シナ海のことは、両首脳が解決のめどがついた、こういうことを言っておられる、そこはおのずから違いがあるということです。

松原委員 そうしたら、まず一点目は、両首脳がそうおっしゃった、結構でしょう。この場で言えないという話でありますが、そこも時期が来たらおっしゃっていただけるんだろうなと思って、甘んじましょう。

 大臣は総理から中身を聞いていますね。それだけ確認したい。

高村国務大臣 総理が知っていることと同じだけのことは知っております。

松原委員 それでは、大臣の言葉でめどが立ったとおっしゃってください。

高村国務大臣 両首脳がめどが立ったと言っているのと同様に、私もめどが立ったと思っております。

松原委員 めどが立った、こういうふうに高村さんがおっしゃるんですから、高村さんとこの委員会で何回もやりとりしていますから、それを私も尊重していきたいと思います。

 それから、ギョーザの問題に関しては、日本の警察と向こうの警察との話し合いの中で、今非常に混迷している。これに関しては、合同してやっていきましょう、こういうふうな話でありますが、私は、本来この首脳会談までに一つの結論が出るのが筋だというのは以前の外務委員会でも申し上げたわけでありますが、何か新しい動きというのは当然これによって両首脳の合意から生まれる、こう思ってよろしいんですね、私たちは。

高村国務大臣 両首脳の意向を受けて、捜査当局同士がさらに捜査を強化してもらえるだろう、協力を強化してもらえるだろう、こういうふうに思っております。

松原委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原でございます。

 いつもそうですけれども、民主党の最終バッターで、締めくくり総括質疑をさせていただきます。

 実は、ちょっと最初に二つお願いがございまして、一つは、私に与えられたテーマはマグロ漁業なんですが、野田さんが一時間、非常に微に入り細に入り、捕鯨については議員連盟に入っておられたのは知っていたんですが、マグロ漁業についてもなかなか詳しくて、私が質問させていただこうと思っていた大半が終わっておりますので、通告していない部分も聞かせていただきますけれども、一般的にちゃんと答えていただくので結構でございますから、対応していただきたいと思います。

 それから二つ目は、私の地元の小学校の生徒が国会見学に来ておりまして、これにぶつかったので、ここに傍聴に来ることになっておりますので、それなりに私も持ち上げていただきたいと思っております。緊張した面持ちで傍聴に来ると思いますので、よろしくお願いいたします。

 では、最初に、これは継続した案件なんですけれども、武正さんから、ウィーン売買条約に関係して、言葉がちょっと一般にわかりにくいのがあるんじゃないかというのがありました。そのとおりで、今、日本国政府の中で、いろいろ言葉がわかりにくいもの、あるいは変な言葉を直していこうじゃないかということで、どんどん直ってきています。

 そして、一つ外務省の用語で不思議なのがあって、連合王国というのがあったんですね、連合王国。イギリスの大使館の皆さんは連合王国大使館とか参事官とか、これは、だれも日本人はわかりゃしないんです。

 わかりゃしないだけじゃなくて、私なんかも被害者の一人でして、二十年ぐらい前にEUの事務局に招かれて、一日じゅうややこしい水産物の輸入制度について質問攻めに遭っていたときに、変なことを言い出したんです。イギリスが、輸入の枠の割り当てがないというんです。そんなばかなはずはないわけです、現に輸入しているし。官報を見たってないと言い張るんです。官報に連合王国と書いてあるんです。彼らに言わせると、ベルギーも連合王国だし、こんな用語はおかしいというわけです。一般的におかしいし、僕はその後外務省勤務をさせていただきましたが、そのたびに、こんなへんちくりんな名前は改めろと言っているんです。

 頑迷固陋か伝統墨守か、どっちがいいのか知りませんけれども、全然改められなかったんですが、この間の在外公館法を見たら、英国になっているんですね。外務省も変われば変わるものだなと感心したんですが、どういう経緯でこのように改まったんでしょうか。これは褒めているわけですから、ちゃんと経緯を教えていただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 御指摘は、在外公館名称位置給与法の別表に記載されます在外公館の国名、地名の記載にかかわる変更ということだと思います。

 二〇〇三年に在外公館名称位置給与法の改正を行いましたが、この際、この別表に記載されております国名あるいは地名等の中で、一部わかりにくい、あるいは使いにくいという御指摘がございました。

 そのあたり、確かに国民にわかりやすい表記が望ましいだろうといった観点から、慣用として相当程度定着した表記に改めるということで改正をいたしまして、その中で、正式名称はもちろんグレートブリテン及び北アイルランド連合王国でございますけれども、一般名称として連合王国という呼称を用いておりましたものを、英国に改めたということでございます。

篠原委員 どんどんそういう精神でやっていただきたいと思います。

 それで、どなたがおっしゃって、どういうふうにお考えになったかわかりませんけれども、そちらは変わったんですが、私が二年前の公海漁業協定で御指摘したことについては変わっていないんですね。ですから、しつこくまた資料を提出させていただきました。

 これは非常に具体的なことなんですけれども、またもう一回見ていただきたいのです。ハイリー・ミグラトリーあるいはマイグラトリー・フィッシュ・ストックというのが高度回遊性魚類資源となっている、これはどう考えても、ハイを高いと訳すけれども、広域だ、マグロが回遊しているのが広域なんだ、だから私は直してくださいと。そうしたら、麻生外務大臣がそのとおりだと言われたんですね、これは猪俣審議官は覚えておられると思いますが。

 それから、今度また出てくるんですが、フィッシングエフォート、これは漁獲努力量と書いてあるわけですね。漁獲能力、フィッシングキャパシティーと、アンド・オア・フィッシングエフォート。これも、水産関係の学者先生が最初にエフォートを努力と訳されてしまったわけです。しかし、一般人にはわからないんですね。

 それで、辞書を引きますと、下に書いておきました、活動とか行動というので、フィッシングキャパシティーというのは漁船の大きさとか網の大きさをいうのであって、漁獲努力量というのは言ってみれば積分で、トータルな漁獲能力をいうんですね。ですから、私は、漁獲投入量あるいは活動量というのが一番正しいんじゃないかと思うのです。それを、いつまでたってもこういうわけのわからない業界用語を使っているわけですね。さっきの連合王国と同じですよ。

 資源管理というのは非常に大事なんです。それで、漁獲努力量を下げろと言ったら、何か、努力しちゃいけないのか、怠けて仕事をしろみたいにとられちゃうわけです。そうじゃないんだということを言うためにも、用語はちゃんとしなくちゃいけないんじゃないかと私は思います。

 非常に手前みそになりますけれども、右側の下、ささやかに書いておりますけれども、これを見てください、予算委員会の議事録。例の後期高齢者医療制度というのは平成十八年に法律が通っているのです。一年前の予算委員会で私が一時間質問したときに、このことを指摘したのです。後期高齢者と言う、こんなばかなことがあるか、入試の前期、後期じゃないし、八十五歳以上を末期高齢者と言うのか、こんな名前を使っていたら大変なことになりますよと言ったんですけれども、全然変えずに、今問題になっているわけですね。私は、名前というのは非常に大事なんじゃないかと思います。

 私が指摘しましたこの用語の改正については一体どうなっているのかというのを、一年前にも猪俣審議官に農林水産委員会に出ていただいてお答えいただきましたけれども、私はこれはしつこくしつこくやっていきます。検討状況はどうだったのか。

 私は、連合王国を変えた、これは何十年使われているか知りません。しかし、英国になって、皆さんそれでわかるようになったんじゃないかと思います。そっちよりは問題が少ないかもしれません。それから、後期高齢者医療制度と違って、選挙で敗北する原因になんかならないと思います。

 しかし、これから一般国民もみんな資源管理が大事だというのを理解していただく。漁業者は余り文字なんか見ませんし、言葉なんかよくわかりませんよ、正直言って。しかし、その人たちにわかりやすく説いて資源管理をしていってもらわなくちゃいけない。そのときに、この漁獲努力量、フィッシングエフォートというのはキーワードになるわけです。それをちゃんと正しい日本語にしてやっていくべきだと思いますし、ぜひ変えていただきたいのですが、いかがでしょうか。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 昨年のまさに四月十一日の農林水産委員会でも篠原委員から御指摘がありまして、私からまた答弁をさせていただいたわけですが、条約や国内法におきまして、基本的には同じ内容は同じ用語で表現することが一貫性、安定性を確保する上で重要だということで、これは条約の案文の作成に当たっても同様に考えております。

 このような考え方に立ちまして、条約の日本語訳につきましては、従来、正文テキストにおける個々の文言の意味をできるだけ正確に反映するように、また我が国が既に締結している他の条約や国内法令における用語との整合性などを勘案しつつ、関係省庁と協議の上、内閣法制局審査それから閣議を経て決定することとしていることは御案内のとおりだと思います。

 まさに昨年も御答弁いたしましたが、二〇〇六年五月の外務委員会におけます麻生外務大臣の答弁も受けまして、それ以降、篠原委員が指摘されましたフィッシングエフォーツそれからハイリーマイグラトリーの訳語について、再度いろいろ調べてみたわけであります。

 まず最初に、漁獲努力量という訳語につきまして、これはまさに、委員と私が一緒に二十年ぐらい前にやりました国連海洋法条約、その他漁業関連条約の訳文それから漁業関連の法令において漁獲努力量という用語を用いております。この際にも御指摘していたのは私も記憶しておりますけれども、法令用語の整合性の観点から、やはりフィッシングエフォーツの訳語としては漁獲努力量が適当である、依然として、調べた結果でもそのように考えております。

 また、高度回遊性という訳語につきまして、これは特に当時麻生大臣が、広域の方がいいんじゃないかという篠原委員の指摘に対して、自分もそういう気もするという答弁をされたのは私も承知しております。

 ただ、国連海洋法条約、その他漁業関連条約の訳文におきまして高度回遊性という用語を用いていることも委員御案内のとおりでございます。法令用語の整合性を維持するとの観点から、ハイリーマイグラトリーの訳語としては高度回遊性が適当、すなわちこのハイリーというのは直後に来るマイグラトリーの程度が高いという意味で使われている副詞でありまして、高度との訳が最も適当であるというふうに考えております。

 さらにつけ加えさせていただきますと、条約の訳文の作成に当たりましては、法令用語の整合性を図ることが極めて重要ですけれども、当然、二〇〇六年五月の外務委員会におけるやりとりにもありましたとおり、もちろんできるだけ平易、明快なものとなるように工夫するという点にも十分配慮しつつ、今後とも訳文の作成作業を進めていきたいと考えております。

 以上でございます。

篠原委員 ここで訳語論争ばかりしているわけにいかないのですが、そういう答えがあるだろうと思ってハイウインドの例を書きましたけれども、これは風の程度が高いんですよ。それは強風と言いますし、この前にも書いておきましたけれども、ハイポリッシュといったらよく磨かれたというように、程度の高いのをいうわけですよ。だから、回遊といったら、高い低いじゃなくて、やはり広域なんですよ。さっき議論されましたけれども、大間のマグロがメキシコ沿岸まで行っている。まさに広域回遊魚なんです。だから、それをまさに英語で言っているんです。ですから、日本でも広域回遊魚がぴったしなんですよ。これは、ただ用語の問題です。

 何でこれはしつこく言っているかというと、言わなかったのに猪俣審議官が言われたので言いますけれども、海洋法条約の批准のときに私は主張したんですよ。仮訳だから本訳になる、だからこんな訳は直せと言ったら、仮訳で定着しているからだめだといって直せなかったわけです。そのままになっちゃっているわけです。あのときが最初ですけれども、最初に間違ったわけです。

 僕は、これをずっと追ってきたので、これはよくないなと。本訳にするときに直そうとして、僕は国内法の方に力を注いでいたのでこっちにかかわることができなかったのですが、この担当の若手に、絶対これはこういうふうに訳せよと言ってやっていたんですが、どうも、猪俣さんはそのときに何とか官ですか、何とか課長ですか、押し切られて直らなかったわけですね。

 だけれども、国内法は結構さっさと直しているわけですよ。例えば、後期高齢者医療制度を突然施行日に長寿医療制度というように直しています。法律は変わっていないでしょうけれども、法律も多分変わっていくんだろうと思います。そういう柔軟な姿勢をぜひとっていただきたいと思います。

 それでは、マグロの問題に入ります。

 まず、便宜置籍船というものです。先ほど野田さんが質問されていました。いろいろあるんじゃないかということ。これが問題になっているわけですね、アウトサイダー。

 この問題はなかなか深刻でして、せっかく国際条約をつくったって、どこの船籍かわからない、税金もほとんど払わなくたっていい、操業ルールもほとんど守らなくていい、そういうところがでたらめにとったのをどんどんどんどん日本の商社が買い集めて輸入している、これじゃよくないわけですよ。

 こういうのが改まってきているはずなんですが、本当に改まっているのか。便宜置籍船どころじゃなくて、どこの国かわかりませんけれども、日本人を装って、日本の船のような顔をして、日本の漁獲枠の中でとっている人もいる。それから、依然としてアウトサイダーもいて、そしていかがわしい操業をして、それでもって日本に売りつけているんじゃないか、これはやはりよくないと思うのです。日本は漁業の世界では、今非常にルールを守ってきちんとやっている大国です。

 この二つの点、便宜置籍船、アウトサイダーについては現状どうなっているのでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、漁船で便宜置籍船と言われているものでございますが、外国の例で申し上げますと、トロール漁業等で従来より存在しているということを承知しております。

 それからまた、マグロの中で、アウトサイダーと申しますか、IUU漁業の問題も以前から問題となっておりますけれども、平成十年ごろから、地域漁業管理機関に加盟していない国に船籍を移しまして、当該機関の管理を逃れてマグロの漁獲を行ういわゆる違法、無報告、無規制、IUU漁業が、国際資源管理上大きな問題となったわけでございます。

 その後、地域漁業管理機関でのIUU漁業対策の結果、IUU漁業はかなり減少してきているものと考えておりますが、いまだ根絶するまでには至っていないというふうに認識しているところでございます。

篠原委員 根絶するまでに至っていないというのですけれども、IUU漁業、イリーガル・アンレポーテッド・アンレギュレーテッド・フィッシャリーですかフィッシングですか、それについてはマグロの地域管理機関はどのように対処しているんですか。

 それで、漁業許可の取り消しというのが今度の条約に入っていますけれども、今まで、先行する地域漁業協定でも、本当に許可の取り消しをして、もう操業しちゃいかぬというふうにきちんと履行した例はあるんですか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 資源保存管理のルール違反をした国の問題についてでございますけれども、IATTC強化条約の第十条に設置が規定されております実施状況検討委員会、ここにおきまして適切に対処することとなっております。

 また、漁船に対する許可の見直しについてでございますが、これは旗国の責任において行われるものでございまして、厳しい措置が行われるものというふうに理解をしているところでございます。

 なお、これまで各国において他の先行する条約で漁業許可が取り消された事例があるか否かについては、承知していないところでございます。

篠原委員 多分日本がこのマグロ漁業を世界をまたにかけてやっている国としては一番大きい国で、一番消費する国だと思いますけれども、その日本が、違法操業しているのを今の条約が新しくできて漁業許可の取り消しとかやるんでしょうけれども、ほかのにも同じ規定があるはずです。一つもないんですか、そういう事例が。それは非常に軟弱な規定で、訓示規定みたいなもので、実効性がないような気がするんです。

 では、過去のものはともかく、今回の条約はそこのところがきちんと担保されてやっていくつもりなんでしょうか。例えば日本が言ったら、旗国に任せるけれども、旗国にちゃんと言って漁業許可の取り消しというのをちゃんと迫るつもりなんでしょうか。そういうふうにやっていかないと、実効性がないと思うんですね。

山下政府参考人 ただいまの御指摘の点でございますが、違反が起こった際に、我々のこれまでの経験にも照らしまして、厳しく対応するように関係する機関の方に、あるいは関係国に対して働きかけをしていく。また、我が国としましても、みずからの身をきちんと正していくという意味において、しっかり対応していきたいというふうに考えております。

篠原委員 聞いていると、どうもなまくらなような気がしてしようがないんですね。

 実効性あらしめるにはどうしたらいいかというのは、やはり日本が世界じゅうのマグロをほとんど食い尽くしている。日本が食い尽くしているなんて怒られちゃうかもしれませんけれども、世界の二百万トン近い、百九十七万トンのマグロのうち四分の一ぐらい日本人が食べているはずです。そして、そういういかがわしい操業をしてマグロを漁獲した船あるいは国も、結局、高く買ってくれる日本に向けて来るはずです。

 ですから、そういうことを考えると、違法操業あるいは報告もしない漁業を根絶させたりするのに一番いい手法というのは輸入をしないことじゃないかと思いますけれども、そのことがこの条約や何かにほとんど書かれていないんですね。別の制度があるんだろうと思いますけれども、その辺のところはどうなっているんでしょうか。

山下政府参考人 お答えします。

 ただいま御指摘の問題でございますが、これまでも、各海域ごとに設けられております地域漁業管理機関を通じまして、関係国と協力しながら、ルールに違反した漁業、すなわちIUU漁業の排除など、マグロの国際的な資源管理に取り組んできているところでございます。

 具体的には、これらIUU漁船に対しまして、統計証明制度の実施によりまして船籍、漁獲海域及び漁獲量等の実態を把握するとともに、IUU漁船の船籍国として地域漁業管理機関で特定された国に対しましては、輸入禁止措置をとるということをしております。それからまた、正規に許可された漁船あるいはマグロの蓄養場をリスト化いたしまして、これら以外からの漁獲物を国際取引の場から排除する、いわゆるポジティブリスト対策なども実施してきているところでございます。

 さらに、昨年一月には、我が国がリーダーシップをとりまして、五つの地域漁業管理機関の事務局及び加盟国が一堂に会する初めての合同会議を神戸で開催いたしました。そこで策定されました行動方針の中で、統計証明制度の改善、正規許可船リストやIUU漁船リストの一元化等のIUU漁業対策が盛り込まれておりまして、地域漁業管理機関の連帯による対応の強化にも努めているところでございます。

 御指摘のとおり、我が国は世界最大のマグロの漁業国、輸入国でございます。このことから、今後とも、有限天然資源でございますマグロ資源を持続的に利用できるよう、各国と協調しつつ、国際的枠組みのもとでの規制措置の遵守の徹底に努めてまいりたいと考えております。

篠原委員 では、その点について、同じことですけれども、今までの実績はどうなんですか。これはだめだと突き返して輸入しないといった例はたくさんあるんですか。実際にうまくそれがワークしているかどうか、教えてください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 マグロにつきましては、輸入の際に書類審査をしてございまして、その際に、当然のことながら、ポジティブリストに載っていない漁船からのものであるということがはっきりしておれば、輸入しないということで対応してきたものでございます。

 それからまた、IUU漁船の船籍国として特定された国として幾つかございますけれども、そこからのマグロ類の輸入は行われていないという現実がございます。

篠原委員 それが一番有効なんですけれども、例えば今、BSEが韓国では大問題になっていますね。李明博大統領の支持率を下げる原因にもなっていたりします。

 日本でも同じようにまた不始末をしでかしたんですが、何もしないでいる。それに対して、きのう農林水産委員会で、全会一致で、ぴしっとした対応をしろというふうに決議が行われています。

 ところが、今は、関税とかそんなところじゃなくて、一つは食の安全のために、一つは環境あるいは資源保全のために輸入制限していいことになっているんです、WTO上も。ですから、最大の輸入国としてその権利というか、本当にマグロの漁獲が少なくなって刺身をちゃんと食べられなくなったりしたら困るわけですから、資源管理に一番思いをはせるというか、気にしなけりゃいけないのは日本なわけですから、正々堂々とそういう人たちを懲らしめる。中国を懲らしめるというのは怒られましたが、こういういかがわしいことをしている漁船、漁業国は懲らしめていいのじゃないかと私は思いますね。

 これは本当に実効があって、商社もちゃんと守っているんでしょうか、言うことを聞いて。ぶうたら文句を言って、何か変なことをしている。なぜかというと、ぴしっとしていないと変なことをし出す。例えば、悪い例ですけれども、製紙業界が、再生紙を利用するといって、業界団体全体で使っていなかったというのが発覚するわけですね。そういうのじゃ困るんですね。

 それはやはり水産庁がどんなに嫌われようとぴしっとやるべきだと思うんですが、実際そういうふうに動いているんですか。

山下政府参考人 例えば、具体的に申し上げますと、現在、IUU漁船として各地域機関でリストアップされているものを申し上げますと、大西洋では十七隻、それから東部太平洋では二十四隻、インド洋では二隻がIUU漁船としてリストアップされておりまして、船の名前からすべてホームページで見てとることが可能でございます。

 そういった情報をきちんと我々といたしましてもマグロを輸入する関係者に周知徹底いたしまして、こういった船からの輸入が行われないようにずっと監視をしてきておるところでございます。

篠原委員 その姿勢をちゃんと保っていただきたいと思います。そして、台湾、中国の漁獲量がふえている、日本はそれほどふえていない。先ほど、台湾もさすがに減船をしなくちゃならないという状況になっているという話で、私は仕方がないことだろうと思います。こういったことについては、中国、台湾、ほかの国も同じですけれども、決して軟弱な態度はとらずに、厳しい態度でぜひ臨んでいただきたいと私は思います。

 そのときに、やはり日本は大輸入国ですから、今は各国でも消費がふえてきたりしているのでそこはまたちょっと違ってきているかもしれませんけれども、大消費国として世界のルールを変えられるんです。

 BSEの基準をきちんとすれば、アメリカは守らざるを得ない。アメリカの消費者グループは、私が二年前にジョハンズ農務長官なんかに会いに行ったときにアメリカの消費者グループとも会いましたら、頼むから日本がきちんとした態度をとってくれ、日本がきちんとした態度をとってくれればBSEに関する食品の安全のルールは定着していく、アメリカではとれない、大輸入国の日本がとってくれればアメリカの業界は困ったというので直していくから、ぜひそうしてほしいということを言いました。

 それは全く漁業界についても同じなので、大輸入国としての立場をぜひ駆使していただきたいと私は思います。

 それで、今、環境についての意識が非常に高まってきているわけですね。地産地消、旬産旬消というのは私が唱え出してだんだん広まってきているわけですけれども、そこでできたものをそこで食べる、しゅんのものを食べる、これが一番食べ物の基本である。これは、食べ物だけじゃなくて、いろいろなところの基本になってきているわけです。環境税に関しても、最近の世論調査でいえば、環境税を導入した方がいいという人が初めて、そんなもの要らないという人より上回っているんです。環境の意識が物すごく高まってきているんです。

 ですから、魚についても消費者のいろいろな意識が高まってきているんです。そのときに、消費者に的確な情報を伝えなければいけない。一番いいのは、表示をきちんとすること。そして、どこでいつとれたのかきちんと表示することが大事だと思うんですが、どうもスーパーマーケットに行って見たりしますと、野菜は県名と、外国の場合は国名がきちんと書いてありますが、魚の切り身になると、どこでとれたのかわからなくなって、表示がないんですね。魚の世界の表示は一体どうなっているんでしょうか。

佐藤政府参考人 水産物の表示に関する御質問についてお答えします。

 水産物も含めまして、生鮮食品につきましては、JAS法に基づきまして、平成十二年七月から原産地の表示を義務づけております。水産物の場合につきましては、具体的には、我が国の漁船が漁獲した国産の水産物につきましては生産しました水域名を記載することとしておりますし、また外国の漁船が漁獲しました輸入物につきましてはその原産国を記載するということになってございます。

 また、水域名につきましては、非常にわかりにくいという御指摘もございましたので、平成十五年六月に、生鮮魚介類の生産水域名の表示のガイドライン、こういったものを策定したところでございまして、これに基づいて、生産水域名をわかりやすく適正に表示しているというのが現状でございます。

 このガイドラインにおいては、具体的には、例えば我が国周辺水域の水域名としては、銚子沖ですとかあるいは北陸沖、こういった一般に知られております地名に沖というものをつけて表示しておりますし、また世界の水域名としましては、ニュージーランド沖ですとかあるいはペルー沖ですとか、国の名前に沖をつけた名称、あるいはインド洋ですとか大西洋ですとか、一般的に知られております個別水域名を記載することとしております。こうした形で、消費者に対するわかりやすい表示に努めているというのが現状でございます。

篠原委員 表示を見て購買行動、購買というか、これを買うか買わないか決める人がいっぱいいるんですけれども、私は、魚が一番、どこでとれたいい魚だというのを表示していたら、少々高くても買う確率は高いんじゃないかと思います。

 野菜の場合は、世論調査によりますと、有機農産物、有機農産物と言っているけれども、一・五倍の値段になったらほとんどの人がいいやというふうになってくる、二割か三割ぐらい高いんだったら許せるというふうになっているんですね。

 魚の場合は、グルメの酒飲みのうるさい人に関アジ、関サバというのが、同じアジ、サバでも、僕はよく知りませんけれども、その辺に売っているアジ、サバの十倍ぐらいで平気で売れているんですね。

 こういうのがあって、だから、どこでとれたかというのは非常に大事になってくるんじゃないかと私は思います。ですから、これをぜひ続けていただきたいと思います。

 そして、最後、表を用意いたしましたので、今までずっとマグロ漁業のことを言ってきましたけれども、この漁業というのは、特にマグロ漁業、いろいろなことを教えてくれているので、この表を見ていただきたいと思います。前回は私の訴えをというので申し上げましたが、訴えではありません。これはエデュケーショナルクエスチョンで、ちょっと聞いていただきたいと思います。

 第一次産業、産業と持続的開発、このマグロ漁業は、将来の日本の産業なり我々の生き方がどうあるかというのを非常に教えてくれているんです。

 ちょっと見ていただきたいんですが、循環社会に向かっていかなければいけないとよく言われますけれども、真ん中を見てください。工業、石油化学工業、資源、供給先、環境負荷、循環度合、これを見ていただきたいんですが、おわかりになるとおり、石油は今、一バレル百二十ドルとか百五十ドルと言われています。いずれ、なくなります。二十一世紀の永続性、CO2の規制により縮小して、石油の枯渇により消滅。

 この表のもとは、二十年ぐらい前、某若手新進気鋭の代議士の勉強会に私が提示した資料を順々に改めてきたものでございます。その方は今外務大臣などになっておられるような気がするんですけれども、その資料なんです。そのときに僕が出した資料なんです。それを改めてきたんですね。

 そして、今、石油化学工業は、もう石油は芽がないというので、これはおもしろいんですね、自分たちの飯の種を探そうというので、モンサントが典型ですけれども、種会社を買収して、そしてGMO種子でもって農業というか、これを独占しようとしているんです。目ざといと思います。自分たちがやっているからこそ、石油に依存していたら将来はないというんですね。

 そして、上と下を見ていただきたいんですが、漁業が一番いろいろなことを教えてくれています。捕獲漁業、こういう言葉はありませんけれども、私が勝手につくっているんです、とっている漁業。遠洋漁業と沿岸漁業、どっちが環境に優しいかは皆さんおわかりいただけると思います。遠くに行くと重油を使う、これはやはりだめなんですね。資源の枯渇とかいう循環度合も一緒です。この循環度合のところの二重丸、バツを見ていただくと皆さんおわかりいただけると思います。沿岸漁業の方がいいんです。真ん中にあるのが沖合漁業です。

 次に、養殖業を見てください。養殖業を一緒くたに養殖業と言っていますけれども、えさを与えてやる養殖業、これは上の加工畜産というのと同じなんです。おわかりになりますか。えさをやらないでやる無給餌の養殖業というのは、農業と同じなんです。種をまくだけ、後は勝手に大きくなってくださいと。どういう産業がいいか。

 それから、栽培漁業。サケを放流しています。種だけやって、後はどこかへ行ってでっかくなってきてくれ、これはなかなか便利な漁業なんですね。放牧漁業と名前をつけています。こんな漁業の名前はないんですよ。皆さんにわかっていただくためです。

 この差が一体どういうふうになっているのか。差がどうか。どれが循環度合いが高いか。そうすると、きょうのマグロ漁業、野田さんは資料を出されまして、マグロだけじゃなくて、世界じゅうに遠洋漁業がまだある、こんなにやっていると。しかし、やはりこういった遠洋漁業は、実は余り長続きしない運命にあるんですよ。一番いいのは沿岸漁業なんです。

 ですけれども、トランジショナルピリオドというか、暫定的に、日本はずっと魚に頼ってきたので、とらせてください、そのかわり技術を援助しますと。日本の漁業技術というのは大変なものです。資源を枯渇させないで、そして有効活用をしていくノウハウというのは、日本の沿岸漁業はみんな持っていたんです。遠洋漁業になって、やらずぶったくりになって、世界からシャットアウトされたんですね。

 これは質問通告しておりませんけれども、大臣にお答えいただきたいと思います。

 ODA、金額だけじゃないと山内さんは指摘されましたけれども、金額はそれなりに大きな意味を持ちます。五位に下がってしまった。しかし、これを復活させて一位にしていく、ODAをふやしていく、これはぜひしていただいてもいいんじゃないかと思います。

 そのときに、ぜひこの漁業のサステーナビリティーを、環境に優しい生き方のヒントを与えているのは私は漁業だと思うんです。こういったいろいろなノウハウを日本はみんな持っているんです、養殖からとるのから、あるいは利用の仕方から。ですから、漁業にかかわる援助というのを拡大していただきたいんです。援助には道義的援助とか政治、軍事にかかわるもの、しかし、経済的なメリットを我々に与えていただく、その分技術援助をすると、これは非常に美しいことができるんじゃないかと思います。

 水産庁と外務省が連携してODA、漁業にかかわる援助を拡大していただきたいということをお願いいたしまして、この点についての御見解を外務大臣からお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

高村国務大臣 残念ながら、二十年前にこういう表をいただいたのを覚えておりませんけれども、おっしゃるように、日本のODAというのは、おなかの減っている人に魚を上げるよりも、魚の釣り方を教える、また魚の育て方を教える、そういうことだろう、こう思います。漁業だけに特化するというわけじゃありませんが、漁業の問題も重視してこれからやっていきたいと思っております。

篠原委員 ありがとうございました。

 以上で質問を終わらせていただきます。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、冒頭ですが、ミャンマーにおけるサイクロン大被害に続いて、去る五月十二日に発生した中国四川省での大地震の被害に遭われたすべての被災者、国民の皆さんに心からのお見舞いを申し上げます。一刻も早く被災地の救援と復旧が図られて、被災者の皆さんの生活が再建をされるように願ってやみません。

 そこで、中国の大地震に対する日本政府の対応について、けさほど来やりとりがありましたが、改めて私の方からも高村大臣に伺っておきたいと思います。

 特に、日本には地震の多発国としての経験、技術そして知識の蓄積がございます。こういう問題は、まず初期の段階での人命の救助、救出が非常に重要だと思うんです。そのようなノウハウを生かして、さらには財政的、物的、人的な支援を行っていくということが非常に大事であって、日本政府は、中国政府ともよく相談をしながら可能な最大限の支援を検討すべきだと思います。

 そこで、大臣、日本政府としては現時点でどういう支援を検討し、行っているということになるのか、それから中国政府側から、先ほどもありましたが、具体的な支援の要請というのは現時点、現瞬間で来ているのか、あるいはあるとすればどのような要請で、日本政府としてそれにどう対応しようとされているのか、お答えください。

高村国務大臣 我が国としては、このような重大な被害が発生したことを受けまして、福田総理から胡錦濤主席及び温家宝総理に対して、また私から戴秉国国務委員及びヨウケツチ外交部長にお見舞いの意を表明するとともに、できるだけの支援をする準備がある旨をお伝えしたところでございます。これに対して中国側からは、感謝の意が示されるとともに、我が国からの緊急援助に対する要請がありました。

 日本政府としては、中国に対する当面の支援として、昨日、総額五億円相当の資金援助及び援助物資の、これは資金と物資を合わせて五億円でありますが、供与を行うことを決定した次第であります。

 人的支援もする用意があるということをお伝えしてありますが、当面受け入れ体制ができないので、こういうことを言われております。我が方とすれば、いつでも人的支援もある、そういう体制を維持していきたい、こう思っております。

笠井委員 地震国日本ならではということで、いろいろとやれることがあると思いますので、今大臣も言われましたが、中国側ともよく相談をしながら、政府としての可能な最大限の支援を行うように強く求めておきたいと思います。

 次に、条約に関連しての質疑を幾つか行います。

 まず、いわゆるウィーン売買条約に関してであります。

 この間、日本の国際取引をめぐる環境は著しく変化をしてきている。例えば、中国との貿易だけを見ましても、日本の輸出入の二〇%近くを占めております。また、中国以外のアジア諸国との取引も、同じく日本の輸出入の約二〇%を占める状況にある。

 それで、外務省に伺いたいんです。現時点でアジア諸国、中国、韓国、シンガポール以外の国は本条約の締約国とはなっていないというふうに私は理解しているんですが、ベトナムやタイでは条約締結に向けた準備が進められているとも言われておりますけれども、日本政府としては、アジア諸国による本条約の締結についてどのような見通しというか、どんなふうに見ておられるかということで、可能な範囲で結構ですが、お答えください。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のアジア諸国で締結している国でございますけれども、今お挙げになった中国、韓国、シンガポールに加えて、モンゴルも入っております。一応、今四カ国でございます。(笠井委員「東アジアに限定して」と呼ぶ)失礼しました。

 現時点におきましてこの条約を締結していないアジア諸国のうち、締結する方針を固めた国があるというふうには承知しておりません。

 ただ、国際取引に関して各国の法が異なることは円滑な取引の障害となり得るために、法の国際的な統一を進めることがやはり国際取引の発展につながるものと考えておりますので、特に我が国との取引が今後もますます増大していくであろうアジア諸国との関係では、法の統一の重要性は一層大きいと考えております。

笠井委員 今ありましたアジア諸国でいえばモンゴルを含めて現在四カ国ということですが、とりわけ東アジアという点でいいますと三カ国という現状で、そういう中では、東アジア諸国を見ますと、実に多様な法制度を有している国々だと思うんです。

 本条約締結国が広がれば、国際取引においてそれぞれの国内法を、言い方はあれですけれども、事細かに承知する必要が必ずしもないということになってくるんだろうと思うんです。現在の国際取引の状況を見ますと、大企業だけじゃありません、やはり中小企業も広くかかわるようになってきているのが特徴であります。

 そこで伺いたいのは、本条約の締結によって、大企業とともに中小企業の場合、あるいは必ずしも法務関係の部署が充実していないという企業にとっても、相手国の多様な法体系に個別に事細かに対応するというのが必ずしも必要なくなるという点ではメリットが大きいのではないかというふうに思うんですが、その辺はどのように考えたらよろしいでしょうか。

猪俣政府参考人 この条約は、国際的な物品売買契約に関する標準ルールとして多くの国際取引において活用されていると承知しております。

 そういうことからいたしますと、我が国の本条約の締結によりまして、日本企業が外国企業と契約を交わす際にも、共通の法的基盤として本条約を適用することができるようになると思います。

 そこで、委員の御指摘のとおり、契約内容を詳細に検討することができないような企業にとりましても、本条約の適用によりまして、契約交渉の円滑化、契約をめぐる紛争の解決促進などの大きな利点があるものと考えております。

笠井委員 次に、日本とオーストラリア、日本とパキスタンとの租税条約について質問します。

 両条約の改定によって、両国に進出をする日本の大企業などに対する減税額というのは全体でどれぐらいの規模になるのか。額で幾らかといってもこれはなかなか難しいのかもしれませんが、実際にこの租税条約によってどれぐらいのものになるのかということを頭に入れる上では、何か指標になる、あるいは、例えば仮置きして、こういうことでいえば、こんなことが規模として言えるというようなことはありますでしょうか。

小原政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、非常に困難なことでございます。

 その理由といたしましては、我が国企業の減税額を推計するには、企業の投資行動を具体的に予測する必要がございます。投資行動というものは、もちろんその時々の経済金融情勢を初めといたします投資環境によって大きく左右されるものでございます。

 したがいまして、今回の新しい条約によりまして、日本の進出企業がどういった形でどの程度減税額の恩恵をこうむるのかということを具体的に示すのは非常に難しいと考えております。

 いずれにしましても、両条約の締結は、我が国の税収の増減収等を目的としたものではございません。両国との間で、二重課税をできる限り排除するということを通じまして投資交流を促進させることを目指しているものでございますので、そういうふうに御理解いただければと思います。

笠井委員 今の租税条約の考え方というのは、源泉地国課税を少しずつ減らして居住地国課税に集約していこうという路線で進められていると思います。しかし、財政力が弱い途上国の場合に、源泉地国課税の大幅な軽減には慎重であるというふうに一般的に言われております。さらに、例えばパキスタンについていいますと、同国政府が用意している外国資本に対する独自の優遇税制措置もあります。

 国際課税の観点から、パキスタン政府と租税協定を今回締結するに当たって、どんな点に配慮をして進めたのか、パキスタン側の主張はどうだったのか、そしてその結果どうなったのかということについて説明いただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論としてでございますが、途上国の場合には、委員御指摘のとおり、自国の税収を確保するといった観点から、源泉地国課税の大幅な軽減には慎重な立場をとる傾向がございます。他方、租税条約につきましては、二重課税の排除を通じまして投資交流の促進を図る、そういったことから、中長期的に締約国間の経済を活性化させるということを目的としております。

 パキスタンにつきましては、こうした租税条約の経済上の効果を十分理解しておりまして、源泉地国の限定税率を明記するということで、今回条約を署名したわけでございます。さらに、みなし外国税額控除、これは、ただいまも御指摘ございました、投資の受け入れを促進するために優遇税制をとるといったようなことでございますが、そうした点につきましては、これまでも御議論ございましたが、日本の国内の税制調査会でも、みなし外国税額控除についてはこれを廃止していこうということで議論が進んできていますので、こういった点についても先方は理解をしてくれまして、廃止することに同意をしてくれました。

 我が国に租税条約の早期改定、パキスタンの方から累次にわたって要請がございました。この条約につきましては、既にパキスタン側では、四月二十三日にもう批准も行っております。こうしたことからかんがみまして、パキスタンの方では、本条約の締結に一貫して積極姿勢を示してきたというふうに我々理解しております。

笠井委員 この二つの条約ですが、両国に進出している日本の大企業は、投資の誘致ということで、源泉地国課税の減免で相当の利益を受けます。パキスタンでは、進出している外資に対してさまざまな優遇措置を受けることができる。加えて、日本国内でも大企業優遇税制があって、極めて有利な税制になっている。私は、グローバルに活動する日本の大企業が、居住地国で十分な課税権が行使されていないもとで源泉地国課税を大幅に減税することには問題があるということを指摘しておきたいと思います。

 続いて、全米熱帯まぐろ類委員会の強化の条約についてであります。

 マグロ資源については、世界的な消費拡大と、それに伴う資源の減少も広く指摘をされております。東太平洋ではメバチマグロやキハダマグロが減少傾向にあると報じられてきただけに、今回の条約も含めて、世界の漁場における資源の保存管理は重要な課題だと思います。この視点から質問をします。

 この全米熱帯まぐろ類委員会、IATTCの資源の保存管理措置について、水産庁の資料によれば、二〇〇四年から二〇〇七年の間に、メバチマグロ及びキハダマグロのまき網漁の休漁日数の設定、はえ縄漁の漁獲量制限などを行ってきた。一方で、今後の管理強化について見ますと、昨年六月の年次会合及び十月の特別会合では、合意ができずに、二回続けて先送りになったというふうに聞いております。

 どのようなことが合意できない理由なのか、日本政府としてどのようなことを主張しているのか、管理強化の話し合いについての今後の見通しはどうか、この点について答弁をお願いしたいと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、IATTCの昨年六月の年次会合、昨年十月それから本年三月に行われました特別会合で、本年以降のメバチ、キハダの保存管理措置の強化に向けた議論が行われましたけれども、これら魚種のまき網漁業に対する管理措置の強化などにつきまして関係国間で合意が得られませんで、本年六月の年次会合で再度議論することとなったわけでございます。

 この議論のポイントでございますけれども、まき網漁業は日本のやっていない漁法でございますけれども、まき網漁業に係る保存管理措置を強化するかどうかということでございました。その具体的な方策、例えば委員も御指摘ございましたような休漁期間の延長などにつきまして、まき網漁船を有する一部の国が柔軟性を示さなかったということで、新たな保存管理措置の合意がなされなかったということでございます。

 我が国といたしましては、関係国と協力をいたしまして、適切な保存管理措置につきまして早急に合意をいたしまして、この条約の目的である資源の管理が適切に行われるように最大限努力してまいりたいと思っております。

笠井委員 米州では、かねてから缶詰加工用の材料としてメバチやキハダをとってきた。そのために、IATTCの管轄する水域では、それらの魚種に対する漁獲規制には前向きな一方で、クロマグロの規制は野放しだと指摘をされてきました。

 報道によりますと、メキシコ沖では、先ほどもちょっとありましたが、蓄養ということで、重さ二十キロに満たない幼魚を大量捕獲して、いわゆる生けすで太らせて日本に出荷するという漁法に参入する者がふえて、乱獲による資源減少が心配されているというふうに言われております。蓄養されたクロマグロは、日本を大きな市場として考えられております。

 そこで質問ですが、日本政府は、マグロの蓄養についてはどういう見解であるか、IATTCの管轄する水域における蓄養について、対策の必要性についてどのような認識を持っているか、そしてIATTCにおける蓄養についての協議とあわせて報告をしていただきたいと思います。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 太平洋クロマグロの資源につきましては、関係国の研究者によります組織でございますISC、北太平洋におけるまぐろ類等に関する国際科学委員会という組織におきまして、メキシコ周辺のクロマグロは我が国周辺から回遊したものであるとされております。また、その組織におきまして回遊域全体にわたった資源評価が行われ、資源管理に用いられているものでございます。

 マグロ資源の管理のためには、蓄養を含む包括的な管理が必要であると考えられておりまして、現在のところ、東部太平洋を管理いたしますIATTCではクロマグロに関する資源管理措置はとられていないものでありますが、水産庁といたしましては、中西部太平洋のWCPFCとIATTCとの協力を通じまして、メキシコを含む太平洋のすべてのクロマグロ漁獲国を包含したより実効的な資源管理の実現を目指してまいりたいというふうに考えているところでございます。

笠井委員 世界的に漁業資源の枯渇が心配される中にあって、持続的な資源の利用は、日本の消費者にとっても大変重要な問題であります。蓄養の問題も含めて、適切な対策がとられるように、日本政府としてもIATTC等の場でぜひ努力をしていただきたいと思います。

 この際、魚つながりということで、東京都の中央卸売市場、築地市場の豊洲移転問題にかかわって幾つか質問をしたいと思います。

 築地といいますと、世界に誇る日本の魚河岸であります。徳川家康のころからあった日本橋の魚市場が関東大震災の後に移転をして、今から七十三年前になると思うんですが、築地市場が誕生いたしました。魚の取引量は、毎日平均二千トン以上ということで、世界一の規模だということでありまして、マグロだけでも約三百の仲卸業者が集まっております。その築地が、移転問題によって、今まさに運命の岐路に立たされている状況にあるという問題であります。

 この間、江東区豊洲の移転予定地の土壌や地下水が有害物質で汚染をされているということが明らかになって、大きな問題になっております。特に、東京都が行ってきた詳細調査で、土壌の一部から環境基準の四万三千倍にも上るベンゼンが検出をされて、地下水からも基準の一万倍ものベンゼンが検出されたことが去る五月初めの連休中に一斉に報じられまして、市場関係者、消費者、都民に改めて今衝撃が走っております。これは、全国民的にもそういう衝撃が広がっていると思うんです。

 そこで、農水省に伺いますが、国は、これらベンゼンの重大な検出の事実を把握しているでしょうか。いかがですか。

平尾政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御指摘の、新聞報道の調査結果でございます。これにつきましては、委員御指摘のように、まさに今、東京都が調査をされて、取りまとめをされていると私ども承知しております。

 その報道の内容について、私どもも、報道があったわけでございますから、都の方に確認をいたしました。その結果、調査の詳細な結果については私ども報告を受けておりません。

 ただ、新聞に報道された内容でございます、委員御指摘の、ベンゼンが一部の土壌で四万三千倍、あるいは一部の地下水で一万倍あったことは事実だというふうな報告を受けたわけでございます。

 以上でございます。

笠井委員 環境省に伺いますが、土壌中のベンゼン、それから地下水中のベンゼンの環境基準、つまり、四万三千倍とか一万倍といいますけれども、そもそも環境基準というのはどういうものか、それが基準の四万三千倍とか一万倍というのは一体どんなものだというふうに理解をすればいいのか、説明をしてください。

白石政府参考人 お尋ねのベンゼンの基準でございますけれども、地下水の環境基準、それから土壌の環境基準と二つございます。

 地下水の方の環境基準、飲んだときの健康影響ということで定めておりまして、これは水道の水質基準と同じ値でございます。

 しからば、水道の水質基準はどういう発想、考え方かと申しますと、人がベンゼンを取り込んだ際の発がん性リスクを計算いたしまして、生涯にわたりその値のベンゼンを取り込んだ場合に、取り込まなかった場合と比べて、十万人に一人の割合でがんを発症する人がふえる水準ということで設定されております。この基準と地下水の環境基準は同じでございます。

 また、土壌の環境基準、土壌中に含まれるベンゼンが地下水にしみ出しまして、それを飲んだときというふうな形で定めておりますが、これも同様な数値でございまして、どちらも〇・〇一ミリグラム・パー・リットルというふうな値でございます。

 四万三千倍という御指摘がございましたけれども、どういう形かということまではよくわからないわけでございますけれども、リスクは濃度に応じて高くなると考えられます。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 リスクが濃度に応じて高まるということでありますが、基準の場合を見ても、七十年間水道水を飲み続けると発がん性が十万人に一人という割合でふえる、それが四万三千倍とか一万倍ですから、これははるかにこの危険性が高まる、非常に危険であるということで考えていいんですか。その辺の認識というのは、そういうことでよろしいんですか。

白石政府参考人 基準としては〇・〇一ミリグラム・パー・リットルでございますので、それより高いということは、健康影響上問題がある水準ということになると思います。

笠井委員 非常に問題があるということだと思います。

 我が党はすぐ、八日に、都議団、関係区議団が豊洲の現地も調査いたしました。この四万三千倍ということで出た場所は、水産仲卸売り場の予定区画であります。他の区画でも環境基準を超える有害物質が検出されたことを都は明らかにしております。

 来る五月十九日には、調査結果に基づいてというか、それを公表するということで、都の専門家会議が開かれることになっております。

 この問題では、私も築地の市場を訪問しまして、豊洲の移転予定地での東京都による調査も実際に現地で視察をいたしました。市場関係者や科学者からも意見を聞いてきました。そして、昨年十一月には、質問主意書という形で政府の見解もただしてきました。

 もともと、この予定地というのは東京ガスの工場跡地であります。東京ガス自身による調査によっても、二〇〇一年ですが、ベンゼンが基準の一千倍、それ以外に、シアン、砒素、水銀、六価クロム、鉛などが検出されたということが明らかになった。それ自体重大問題ということで、その後、昨年八月の東京都による追加調査、今回の詳細調査ということで調査をやってきたわけですが、調査を進めるたびに、一千倍どころか、四万三千倍とか一万倍とか、こういう重大な結果が出てくるということで、さらに深刻な汚染の実態が明らかになっております。ですから、これに対する都民、消費者の衝撃や批判も強く大きいということだと思うんです。

 農水省に伺いますが、今回の新たな調査事実の重大性についてはどのように認識をされているでしょうか。

平尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、結果でございます。これはまさに、先ほどお話がございましたように、五月十九日の専門家会議で、その結果を受けて対応方向が検討されると私どもも理解しておりますので、今回の結果自体は私どもまだ評価する知見はございませんけれども、その専門家会議での検討をしっかり踏まえていきたいと思っております。

笠井委員 事実はつかんでいるということで、この四万三千倍ということについては、これは重大だという認識はありますか。

平尾政府参考人 調査結果が基準値を超えているというふうなことでございますから、重大だとは考えております。

笠井委員 これは、国自身の認識として、非常に大きな問題だと思うんです。

 言うまでもありませんが、卸売市場法では、中央卸売市場の整備については、農林水産大臣が卸売市場整備基本方針を定めて、第四条ですが、それに即して中央卸売市場整備計画を定めるというのが第五条です。個々の中央卸売市場開設に当たっては、開設者である地方公共団体が農林水産大臣の認可を受けることが必要というのが第八条。その際に、中央卸売市場整備計画に適合していることなどの認可の基準が第十条で定められていて、地方公共団体の判断だけで中央卸売市場の開設を行うことはできない。

 築地市場の豊洲移転は、二〇〇五年三月三十一日に策定された国の第八次中央卸売市場整備計画によって、その中に盛り込まれております。つまり、築地市場の移転では、東京都とともに、まさに国も直接責任にかかわる立場にある。ベンゼンでは、発がん性という問題もありました。極めて重大。

 こうした有害物質が、これだけ高濃度で検出されている。これは法律があるわけですし、そのもとに認可という問題もあります、整備計画もあるわけですから、国としても責任を持って対処すべきではないかと思うんですが、これはどうですか。

平尾政府参考人 お答え申し上げます。

 第八次の整備計画でございます。これは、東京都から話があったときに、土壌汚染を含めましていろいろな対策をきちんとやるという前提で策定されたものでございます。

 そういうことでございまして、この土壌汚染対策を含めまして、食の流通を預かる卸売市場の必要とする内容についてはきちんと東京都の方で責任を持って対応していただけるものというふうに思っております。

笠井委員 東京都が対応すればそれでいいという問題では済まないんです、これは後でもやりますが。

 環境省に伺いますが、環境の保全と健康保持という点でも、国の責任は重いと思います。土壌汚染対策法では、都道府県知事の責任とともに、環境大臣の責任と権限が定められております。環境大臣は、第二十九条では、必要な事項について報告を求めて、立入検査を行うことが認められて、三十一条では、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、関係地方公共団体の長に対して必要な資料の提出及び説明を求めることができる、三十二条では、都道府県知事等に対して必要な指示をすることができるとされております。

 そこで、環境省に質問しますが、環境の保全と人の健康の保持ということで、国は大きな責任を持っております。こうした点からも、国の責任ある対応がこの問題で求められているんじゃないかと思いますが、いかがですか。

白石政府参考人 東京都はまさに今、専門家会議を開いて、いろいろな意見を踏まえて敷地全体の詳細調査を実施中でございます。また、その結果を踏まえて対策を実施していくということで承知しております。

 これらの調査、対策というものは、土壌汚染対策法の適用された場合に求められる水準と比べまして同等以上のものをしていただけるというふうに考えておりまして、環境省は、今後、東京都の対応をきちんと把握しまして、御指摘のように、必要に応じた技術的な助言ということについて努めてまいりたいと思います。

 なお、今法律の条文を引いての御質問がございましたので、ちょっと添えさせていただきますけれども、大臣の権限といいますのは、土壌汚染により人の健康に係る被害を生ずることを防止するために緊急の必要があるというふうなことでございますので、現状におきましては、まだ一般の人が立ち入らない形、あるいはそこでの地下水の飲用がない状態でございますので、東京都が前面に立っていろいろ調査、対策を講じようという段階だというふうに認識しております。

笠井委員 最後に言われたことについていえば、四万三千倍ということで、ある意味緊急の事態と言ってもいいんです。これに基づいて東京都の方は、とにかく二〇一〇年には移転しちゃおうという話まで今進めているところなんですから、そこはそういうことでは済まないんだろうと思うんです。

 しかも、私、なぜこれを外務委員会でやっているかということでいえば、やはり国際的にも築地といえば有名で、日本の世界に対する信頼にもかかわる、日本政府がどういうふうにこの問題に対応するかという問題もかかわってくるわけであります。

 続けますが、政府は、東京都に対して科学的見地に基づいて万全の対策を講じるように求めているというふうに繰り返し言われますが、そもそも、土壌や地下水が汚染されているような用地に卸売市場など食品関連施設を開設する際の安全性を判断する科学的な根拠について、国としての基準やガイドラインなどがあるかという問題であります。

 私、昨年の質問主意書の中でこの問題をただしましたところ、答弁では、ないということでありました。それらについて国としての研究や検討を行ったことがあるかと聞きましたら、それについても確認した限りはないということでしたけれども、農水省、そういうことでよろしいですか。

平尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございます。

笠井委員 そうしますと、幾ら科学的見地に基づいて万全の対策、東京都がとることをきちっと見ていくということを言っても、万全かどうかを判断する根拠が、あるいは基準が、ガイドラインが国の側にはないということであります。つまり、知見も蓄積をされていない。

 であればこそ、一層、何よりもやはり予防的な原則に立って対応しなきゃいけないという問題になってくると思うんです。人の健康や環境の保全については、実際に問題や被害が発生してからでは取り返しがつかないことになります。発生の仕組みや影響の度合いなどについて不明確さがある、科学的に不確実性があるという場合には、予防的に対処するということは当然の考え方だと思います。これは、この間の公害問題などでの教訓でもあります。

 こうした問題に対処する上では、健康被害が生ずるおそれがあるものとして、被害や影響を生じさせない、未然に防止するために予防的な立場、原則に立って対応することが大事だと思うんですけれども、この点、農水省はどう考えていますか。

平尾政府参考人 お答え申し上げます。

 築地市場の移転問題につきましては、食品流通の基盤であります卸売市場の問題でございますから、私ども国としましても重大な関心を持って、またそういう観点からしっかり対応していかなきゃいけないと思っておるわけでございます。

 そういう観点で、この東京都の対応につきましては、かねてから東京都に対しまして、食の安全性それから信頼性というのが、きちんと科学的見地から万全の対策がとられるようにお願いするというふうなこと、それから消費者等に対しましても対策の内容についてしっかり説明をしていただき、その理解を得るように努めていただきたいというふうなことを言っているわけでございます。

 今回、そういう意味では、東京都が専門家会議を開いて、有害物質の専門家、土壌あるいは水の汚染対策の専門家、それから人体の観点からの専門家に参画をいただいて検討されておるわけでございます。そういう意味から、その専門家会議の結果を私どもまずは待ちまして、その結果を受けて、土壌汚染の担当でございます環境省さんとも十分連携をとりまして対応したいと思っております。

笠井委員 豊洲地区で盛り土などの対策が行われたとしても、汚染土壌が存在する限り、汚染土壌の付着、汚染水の吸着など、食の安全について危険性が除去されたとは言えない、そして大地震の際の液状化の危険も科学者からは指摘をされております。

 四万三千倍という事実が報道された後、これは東京都の対応ですが、今、東京都の専門家会議の結果を待ってその後という話でありましたが、東京都の担当者が既に、専門家会議が開かれる前から、この事態が明らかになった後、ある業界紙でありますけれども、談話を出しまして、東京都の新市場建設担当部長が、移転方針そのものを見直す考えは全くないと。東京都がもう既に、専門家会議をやる前から、どんなものが出ても方針は変えませんよということを言っているわけですね。

 政府は、昨年の私の質問主意書への答弁においても、「東京都に対し、食の安全性や信頼が確保されるよう科学的見地に基づく万全の対策を講じるとともに、消費者等に対して対策の内容等について十分な説明を行い、その理解を得るよう求めているところ」と、今答弁あったような、同じ形で言われました。

 しかし、新たな事実が明らかになっても、必要な検討、検証を経る前から、とにかく東京都の側は、少なくとも担当者は、移転ありきということで、それが出たって変更はしませんよと既に言ってしまっているわけですけれども、これはおよそ科学的な態度とか姿勢とは言えないと思うんです。

 これでは都民、消費者、あるいは国民、市場関係者の理解が得られないと思うんですけれども、こういう談話なり発言、コメントというのは、国が求めているものとは明らかに違うということになりませんか。

平尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のコメントにつきまして、申しわけございませんけれども、私ちょっと把握しておりませんので、そのコメントについてのあれは控えさせていただきます。

 いずれにしても、先ほど申しましたように、東京都に対して、きちっと食の安全性の確保、信頼性の確保が科学的見地から担保されるように、またそのことについてしっかり、消費者の皆様も含めて、幅広い関係者の方々に理解を得るようにというのを求めているわけでございますから、そのことはしっかり東京都に対応していただきたいと思っております。

笠井委員 これだけ重大なことを少なくとも把握している、重大だと言われたのに、日刊食料新聞という業界紙ですが、これはそういう意味では業界の方々も承知している中身でありまして、そこにちゃんと東京都の新市場の建設担当部長の話ということが出ているわけで、それも知らないということでは、この問題について本当に深刻に国自身も考えているのかということを私は言わざるを得ないと思うんです。

 築地市場の豊洲移転は、国が第八次中央卸売市場整備計画で定めたものであります。改めて経過を振り返ってみますと、築地移転をめぐって、土壌汚染と食の安全について国自身が十分検討したとは言いがたい、安全性について判断する科学的根拠や知見の蓄積もないわけです。相手にはちゃんとやりなさいと言いながら、自分たちとしては、国はどういう基準、ガイドラインを持っているかというと持っていないわけですから、これは判断しようがないという部分があるわけです。では、対策をとったらそれでいいのか、認可できるのかといえば、判断しようがないわけです。

 この間、食の安全をめぐっては、事件や問題が相次いでおります。国民の関心も高いし、不安も強い。政府は食の安全とか消費者の視点とかしきりに言われるわけですけれども、やはり現に起きている問題にどう対処するかが試金石になります。新たにこれだけ深刻な問題、事実が明らかになった以上、それに正面から向き合うことが大事でありまして、新たな事実、状況が生まれても十分な検討すらされないというのではおかしいということになります。

 農水省に伺いますけれども、築地移転を定めた第八次の国の整備計画については、国としても見直しをする、あるいは白紙に戻して再検討すべきだということも含めて踏み出してやるべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。

平尾政府参考人 委員御指摘の、第八次の整備計画でございます。先ほどの繰り返しになりますけれども、この整備計画の策定の段階では、東京都が土壌汚染対策も含めて安全対策をしっかりやるというふうな前提のもとで諮問をして、審議されたわけでございます。

 そういう意味から、私どもは、東京都がそういう土壌汚染対策につきまして、先ほど環境省様の方からお話がありましたように、土壌汚染防止法で求める対策と同水準以上のものをしっかりとっていただくというふうなことが基本でございますので、今回、検討が進められております専門家会議でしっかり検討をしていただき、その結果を踏まえて対応の報告が私どもにあると思います。その結果を環境省様と一緒に確認して、対応をしていきたいと思っております。

笠井委員 結果次第によっては国としても見直しあるいは再検討ということで、そういうことも含めて考えていくということでよろしいんですか、そこは。

平尾政府参考人 今の段階で予断を持ってなかなか結果について私どもの方からコメントすることができませんので、いずれにせよ、その結果を待って判断をさせていただきたいと思います。

笠井委員 しかし、これは明らかに重大である、このままではいけないなと思った場合については、再検討する、あるいは見直しするということは当然あり得る選択肢であるわけですね。予断を持ってはいけないというのはわかります。それもないんだったら東京都と同じですからね、何があろうと進めるということなんですから。

平尾政府参考人 重ねてでございますけれども、最終的には認可の手続がございます。その段階で認可の基準に合わないということでありましたら、これは当然、問題でございますから認可できません。整備計画自体は、そうすると、また次の課題としてあるわけでございます。ですから、整備計画がどうのこうのというふうなこととは別に、認可をするかどうかということが手続的にはあるかと思います。

 仮に、これはまさに仮でございますけれども、東京都さんの方で今の豊洲を見直されるというふうなことがあれば、それは整備計画を見直さなきゃなりません。私どもの方で申請がない段階で整備計画を見直すというふうなことには、手続的にはならないと思います。

笠井委員 ちょっと一言確認しますが、東京都が見直さない限りは国は整備計画は見直さないんですか。法律的にはそうなっているんですか。

平尾政府参考人 整備計画の具体的な内容につきましては各主体からお話をちょうだいして、それに基づいて整備計画をつくっております。整備計画をつくるときは、委員御案内と思いますけれども、基本方針に基づいて適合するかどうかというのを私どもは審議していただくというふうな手続になっております。

笠井委員 いずれにしても、これなら絶対大丈夫という話では、もともと基準がないわけですから、そうしますと、これは一〇〇%の安全性が担保できないならそういうところへの市場の移転というのはやめる以外ないという話に当然なってくると思うんです。これは何も、委員長も東京選出の議員ですが、東京選出にとどまらず、国民的にも、これはおかしい、そんなところに市場を持っていって、そこから魚が出てきて口に入るとなったら心配でしようがない、不安でしようがないということになります。

 この問題の最後に、大臣に、これは直接の所管は農水と環境ということでありますが、築地は世界最大の水産物卸売市場であります。築地ブランドというのは海外でも有名で、関係者の長年の努力で高い信頼が寄せられている、大臣もよく御承知のとおりです。そして、築地には外国からのお客さんも多いし、築地を通ってきたものを外国の賓客も召し上がるということになります。

 有害物質でこれだけ汚染された土地に食品を扱う市場が移転したということが世界的に広がるとなりますと、これは日本の国際的信頼にもかかわりますし、食の安全に対する日本政府の姿勢が問われてクエスチョンマークが非常につく、本当に不信になるということも当然出てくると思うんです。こういう問題については、いずれにしても、政府、各省庁が連絡をとり合って、慎重の上にも慎重に対応すべきだというふうに思うんです。

 やりとりをお聞きになっての感想で結構ですが、大臣から一言お願いします。

高村国務大臣 魚つながりで外務大臣に感想が求められているんだ、こう思いますけれども、やはりこの問題は、東京都がきちっとした対応をすること、そしてそれに対して農林水産省、環境省がきちっと見ていくこと、それに尽きるんだ、こういうふうに思います。

笠井委員 きちっとした対応をすることが必要だということを言われたと思うんです。私は本当に、これは食の安全それから世界との関係でも大事な問題だと思いますので、政府を挙げてきちっとした対応をとってもらって、きちっと安全性が確保できないんだったら移転も中止するという方向で、国自身も責任があるわけですから、やはりしかるべきところでしかるべき判断をすることが必要だということを強く求めておきたいと思います。

 さて、あとわずかですが時間がございますので、核問題について一言だけ伺っておきます、きょうも政府参考人がお越しになっていますので。

 去る四月二十八日から五月九日までジュネーブで、二〇一〇年のNPT、核兵器不拡散条約運用検討会議の第二回準備会合が開かれたということであります。来るべき二〇一〇年の会議では、私も前回の二〇〇五年についてはニューヨークの国連本部で傍聴いたしましたけれども、あの二〇〇五年の検討会議の失敗を繰り返さずに、不拡散、原子力の平和利用問題とともに、核兵器廃絶に向けて文字どおり前進することが強く求められていると思います。

 今回の準備委員会でもそうした議論が旺盛に行われたと承知しておりますが、その結果を全体としてどういうふうに評価されているか、これは大臣にできればお願いしたいんです、全体的な評価で結構ですから。

小野寺副大臣 二〇一〇年NPT運用検討会議第二回準備会合は、第三回準備会合の日程や議長及び運用検討会議の日程を決定して終了いたしました。また、同準備委員会においては、NPT体制が北朝鮮やイランの核問題等の深刻な挑戦に直面している中で、核軍縮、核不拡散及び原子力の平和的利用の三本柱に関し、実質的な議論が十分に行われたものとして評価をしております。

 最終的な目標は二〇一〇年運用検討会議の成功でありますので、その目標に向けて、我が国として運用検討プロセスに積極的に参加していく考えでございます。

笠井委員 この問題というのは極めて重要な問題になってきていると思いますので、きょうはもう時間がありませんが、引き続き、核兵器をめぐる問題、核兵器廃絶のための日本政府のイニシアチブをどう発揮するかということについて、別の機会にまた質問をさせていただきたいと思います。

 きょうは終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 質問に入ります前に、ミャンマーの大型サイクロン、中国四川大地震の被災者の方々に心からお見舞いを申し上げます。

 また、きょうは高村大臣、小野寺副大臣、長時間御苦労さんでございました。しんがりでございますので、よろしくお願いします。

 最初に、全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約、いわゆるアンティグア条約に関する質問をいたします。

 我が国は、世界でも有数なマグロ消費国であります。本条約は、東太平洋水域におけるマグロ類を中心とする魚類資源の長期的保存及び持続可能な利用を確保する目的に資するものだと理解をしております。

 私は、平成十八年五月二十六日の当委員会において、沖縄近海における台湾漁船の違法操業と取り締まりに関する質問をいたしました。その後、台湾のマグロはえ縄漁船による違法操業の実態はどのようになっているのでしょうか。水産庁、お答えください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、台湾漁船に対しまして我が国排他的経済水域において操業する許可を与えていないことから、我が国排他的経済水域で操業を行う台湾漁船はすべて無許可操業ということになります。特に沖縄周辺海域におきましては、五月から六月までのクロマグロ漁期を中心といたしまして台湾のマグロはえ縄漁船などの無許可操業が見られ、我が国漁業者との漁場競合が発生しておるわけでございます。

 このため、水産庁では、沖縄周辺海域を重点取り締まり海域といたしまして、海上保安庁との連携のもとに取り締まりを強化しており、平成十九年におきましては、六月に台湾はえ縄漁船を拿捕したほか、二百六十九隻に警告を発し、退去指導を行っております。また、台湾側に対しましても、我が国排他的経済水域内で操業することのないよう関係漁業者への指導の徹底を求めているところでございまして、今後とも、このような取り組みを通じて、台湾漁船の違法操業の抑止に努めてまいりたいと考えております。

照屋委員 私が平成十八年五月、当委員会で質問をして問題提起をした後、一時期台湾漁船による違法操業は減っておったようですが、沖縄県や県漁連の調査資料によると、去年あたりからまたふえておるというのですね。

 先ほど水産庁の答弁で警告件数二百六十九件という御答弁でしたが、拿捕の件数をちょっと私聞き漏らしましたが、改めて水産庁、海上保安庁、平成十九年度の台湾のマグロはえ縄漁船による違法操業によって拿捕あるいは警告をした件数をお答えください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十九年におきまして拿捕いたしました台湾漁船の件数は一件でございます。それから、警告指導しました件数は二百六十九件になっております。

城野政府参考人 海上保安庁では、巡視船艇、航空機によりまして、沖縄近海におけます違法操業を行います台湾漁船の監視、取り締まりを行っているところでございます。

 海上保安庁では、平成十九年におきましては台湾漁船の違法操業を検挙した件数はゼロでございますが、平成十八年では二隻、違反件数三件、平成十七年では一隻、違反件数二件でございます。

照屋委員 どうも拿捕や警告件数、沖縄県や県漁連の認識と若干違うようですが、ともあれ水産庁と海上保安庁にお伺いしたいのは、拿捕をした場合、その後の処罰等の手続はどうなるのか、また、水産庁が警告を発した二百六十九件というのはどのような手段、方法で警告を発するのか、そのことについてお答えください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、拿捕した漁船に対する処分の状況でございます。

 我が国排他的経済水域において違法操業、例えば無許可操業を行った者は、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の罰則規定によりまして、一千万円以下の罰金に処することとされております。

 なお、この法律におきまして、国連海洋法条約の規定に従い、担保金の支払いによる違反漁船等の早期釈放も規定されているところでございまして、昨年六月に拿捕した台湾はえ縄漁船につきましても、担保金の支払い、約四百万円でございますが、この支払いにより釈放をいたしたところでございます。

 それから、警告の実際のやり方でございます。これは、中国語で警告し退去を命ずるという内容の文字を警告板に書きまして相手側に示す、あるいは、中国語でここで操業してはならない、退去しろということを相手、台湾漁船に伝えるということで警告、退去の指導をしておるところでございます。

照屋委員 マグロ類の主な漁法は、はえ縄、まき網、一本釣りなどと言われております。沖縄近海における台湾漁船の違法操業、これはそれらのうちどの漁法によるものでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄周辺海域におきまして違法操業を行う台湾漁船の漁法といたしましては、主にはえ縄でございます。

照屋委員 私が目にした資料では、主要漁業国の漁獲高が減少傾向にある中で、唯一、台湾が近年漁獲高を増加させておるようです。もちろん、漁獲高でマグロ漁業の実態がすべてわかるわけじゃありませんが、そこで、台湾のマグロ漁業の動向はどうなっているのか。一方で、台湾は国とは認められていないため、本条約には加入できず、協力的非加盟国と位置づけられているようです。

 台湾の漁獲高増加の要因あるいはマグロ漁業の動向について、政府はどのように分析をしているのでしょうか。また、台湾に対する本条約加盟への働きかけについて、政府の態度をお示しください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、近年の世界の漁業生産量につきましては、これは養殖業を除いておりますが、九千五百万トン前後で推移をいたしておりまして、頭打ちの状況にあります。委員御指摘のとおり、日本を初め主要な漁業国の漁獲量は減少傾向にあるという状況にございます。

 こうした中で、台湾の漁獲量は一九八〇年代以降増加をしてきております。一九九〇年代以降も百万トン前後で推移をしておりますが、この増加の要因につきましては、遠洋のマグロ漁業やイカ釣り漁業の発展等が考えられるところでございます。

 また、全米熱帯まぐろ類委員会に報告されております台湾の東部太平洋におけますマグロ類の漁獲量につきましては、二〇〇二年の三万六千トンをピークにその後は減少傾向にございます。二〇〇六年は一万六千トンというところまで減少してございます。これは、二〇〇四年からメバチマグロの漁獲量規制が導入されたこと、さらに、二〇〇五年から台湾が大規模な遠洋マグロはえ縄漁船の減船を実施した影響によるものと考えております。

田辺政府参考人 後段の方の御質問に対してお答え申し上げます。

 台湾は、本条約におきましては、本条約上、漁業主体、フィッシングエンティティーという形で加盟をすることが可能となっております。台湾は現在、この条約について既に署名を行っておるところでございます。

 委員御指摘のとおり、台湾にこの条約のもとで資源保存管理について取り組みを促すということは大変重要な課題であると認識しておりますので、私ども、そのような方向で働きかけをしてまいりたいと考えております。

照屋委員 先ほどの水産庁の御答弁を拝聴しておりますと、台湾漁船の違法操業で警告を発する場合に何かボードに書いて示す、こういうことをおっしゃっておりました。私は、繰り返しになりますが、沖縄県の、また違法操業がふえている、こういう悩みを語っているわけですから、沖縄近海における台湾漁船の違法取り締まりは、違法漁船の登録番号の確認や、あるいは違法漁船によって漁獲をされたマグロの買い付けをしないようにとの輸入業者への指導など、実効ある対策を講じないといけないのではないか、こう思いますが、どうでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、違法の操業をいたしました台湾漁船の船名あるいは登録番号等についてでございますが、拿捕及び警告指導を行いましたものにつきましては、すべて船名、漁船登録番号等の確認を行っておりまして、これら得られた情報につきましては、その後の指導取り締まり等に活用しておるところでございます。

 それからまた、違反によって漁獲されたマグロ類の日本への輸入の問題でございます。

 水産庁といたしましては、台湾による違法操業の問題に限らず、各海域ごとに設けられております地域漁業管理機関を通じまして、関係国と協力しながら、違法漁業の排除、マグロの国際的な資源管理に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、台湾漁船に限らず、違法に操業を行うIUU漁船に対しまして、統計証明制度の実施によりまして、船籍、漁獲海域及び漁獲量等の実態を把握するとともに、IUU漁船の船籍国として地域漁業管理機関で特定されました国に対する輸入禁止の措置、さらには、正規に許可されました漁船あるいは蓄養場等をリスト化いたしまして、これら以外からの漁獲物を国際取引の場から排除する、いわゆるポジティブリスト対策等を実施しているところでございます。

 加えまして、マグロの種類、海域を偽った輸入を未然に防止するため、我が国への陸揚げ時に一部を抽出いたしましてDNAの分析を行うほか、漁獲枠を超えた過剰な輸入が確認された場合には、各地域漁業管理機関を通じ、適切な是正措置を講じているところでございます。

 いずれにしましても、我が国は世界最大のマグロの漁業国、消費国でありますので、今後とも、マグロ資源を持続的に利用できるよう、各国とも協調しながら、国際的枠組みのもとでの資源管理の徹底に努めてまいりたいと考えております。

照屋委員 違法操業に対する警告を発した場合に違法漁船の登録番号の確認をして、その後の指導に生かしている、こういうことでしたが、どのような方法をもって具体的にその後の指導に生かしておるんでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 違反をした台湾漁船の船名あるいは登録番号を確認して記録することによりまして、何度も何度も違反を重ねる悪質な台湾漁船が明確にわかるわけでございます。こういった悪質な漁船につきましては、拿捕をするということで対応してきておるものでございます。

照屋委員 私は、漁民、沖縄の方言でウミンチュの皆さんからも実情をお伺いしましたが、とにかく台湾漁船の違法操業、網をちょん切ったり、ひどいことをやるものが多いようなので、しっかり取り締まって沖縄のウミンチュの不安を解消してほしいと強く申し上げておきたいと思います。

 次に、水産庁に沖縄県のマグロはえ縄漁業の現状と課題についてお尋ねいたします。

山下政府参考人 お答えいたします。

 沖縄県におきましては、約百五十隻が近海・沿岸マグロはえ縄漁業を営んでおりまして、毎年約九千トンを漁獲しているところでございます。また、その操業は、我が国二百海里水域内のみならず、公海及び太平洋島嶼国の二百海里水域内に操業が及んでいるものと承知をしております。

 一方、近年の経営状況につきましては、燃油の高騰、外国二百海里水域内におけます規制の強化等により、大変厳しいものとなってきております。こうした状況の中、我が国漁業の発展とマグロの安定供給を確保するためには、市場の動向等に対応した国際競争力のあるマグロ漁業を確立することが重要であると考えておるところでございます。

 今後とも、関係漁業者等と十分に意見交換をいたしまして、経営の改善等を推進していく所存でございます。

照屋委員 沖縄は、かつては遠洋マグロ漁業が非常に盛んでありました。現在は遠洋マグロ漁業は衰退をし、沖合や近海でのマグロ漁業が盛んなようであります。

 水産庁は、沖縄の遠洋マグロ漁業衰退の原因についてどのようにお考えでしょうか。先ほどは原油価格の高騰なども一例として挙げておりました。そのほかの要因等についてはどのようにお考えでしょうか。

山下政府参考人 お答えいたします。

 沖縄県のマグロはえ縄漁業の漁獲量につきまして、平成七年から平成十七年にかけまして見てみますと、約八千トンから約九千トンという漁獲量で横ばいの状況にございます。

 一方、南太平洋の太平洋島嶼国の二百海里水域内での操業許可を受けております我が国マグロはえ縄漁船について見ますと、御指摘の燃油の高騰に加えまして、入漁料の上昇、操業条件の強化等により、近年減少傾向にあるものと承知しております。

照屋委員 本条約と関連して、沖縄近海における大型のパヤオ、いわゆる浮き魚巣の設置は、水産資源の保護やマグロ類の持続的漁獲に大きな役割を果たしており、漁民から喜ばれておるということを申し上げたいと思います。

 そこで、国による沖縄近海における大型パヤオ設置による財政支援等の現状について尋ねます。

橋本政府参考人 お答えをいたします。

 沖縄の周辺海域は、黒潮が近接していることから、カツオ、マグロなどの回遊性魚類の好漁場が形成されております。

 したがいまして、沖縄県におきましては、委員御指摘の大型パヤオと呼ばれる浮き魚礁の設置を行うことによりまして、回遊性の魚類を効率的に漁獲するための漁場整備を推進しているところでございます。

 水産庁におきましては、この沖縄県が行う浮き魚礁の設置事業に対しまして、広域漁場整備事業という事業によりまして、整備に要する費用の負担を、一部補助をしているところでございます。

 今後とも、沖縄県の漁業の特性等を踏まえて、浮き魚礁などの効果の高いものに対して積極的に支援をしてまいりたいと考えております。

照屋委員 大型パヤオの設置との関連で、現在沖縄近海に何基大型パヤオを設置しているのか。また、沖縄県からの要望の実態はどうか、漁民を含めて、漁連を含めて。そして、国による今後の設置目標についてお聞かせください。

橋本政府参考人 お答えさせていただきます。

 沖縄県におきまして、水産基盤整備事業を活用して設置している大型のパヤオと呼ばれる浮き魚礁は、現在五十基ございます。

 今後でございますが、沖縄県におきましては、平成十九年度から平成二十三年度を計画の期間といたしまして、沖縄周辺水域の十六の地区に合計四十二基の浮き魚礁を新たに設置する計画を持っております。

 ちなみに、平成二十年度におきましては、今年度でございますが、そのうちの三地区において七基の浮き魚礁を設置する予定であるというふうに承知しております。

照屋委員 いつも当委員会で議論をしておりますが、沖縄県には膨大な米軍基地があって、その事件、事故による被害で県民は苦しんでおるんだから、ぜひ、漁民の強い希望による大型パヤオ、これをたくさん設置できるようにしてください。そうすれば、パヤオでマグロがとれたら、お願いして、あなたにも大臣にも上げるように私が頼んでおきますから。

 ところが、実際にはパヤオ設置のために、強い水産業づくり交付金、あるいは離島漁業再生支援交付金、漁港漁場整備事業補助金、こういった三つの補助金、交付金があるようですが、そのうち強い水産業づくり交付金というのが近年沖縄県には全く交付されていないようですが、それは何か理由があるんでしょうか。

橋本政府参考人 委員の御指摘のとおり、強い水産業づくり交付金という制度がございまして、これは地方公共団体もしくは漁業協同組合が漁業に必要な施設をつくることができる制度でございますが、近年それが申請されていないのは、むしろ、先ほど申し上げました、大規模なパヤオを補助金でつくるために、ほかの制度を活用して実施されているものというふうに考えております。

照屋委員 防衛省に尋ねますが、沖縄近海における訓練水域は何カ所で、合計面積はどうなっているんでしょうか。訓練水域で制限される内容はどのように決められ、制限内容は関係者にどのような方法で通告されるんでしょうか。

伊藤政府参考人 御答弁申し上げます。

 沖縄周辺におきます米軍が使用しております水域は、平成二十年一月一日現在で二十九水域、合計面積は約五万五千平方キロメートルであります。使用主目的に訓練が含まれている水域は、このうち十九水域であります。

 沖縄周辺におきまして、米軍に提供もしくは使用が許されている水域につきましては、沖縄復帰に際しまして、日米合同委員会のもとの施設特別委員会で協議され、昭和四十七年五月十五日の日米合同委員会合意、いわゆる五・一五メモに基づきまして、水域ごとに用途、制限等が決められておりまして、その内容を告示しております。また、近年では、SACO最終報告に基づきます北部訓練場水域につきまして、平成十年十二月十八日に告示をしております。

 さらに、漁業の制限が必要となる水域につきましては、いわゆる漁業操業制限法の規定に基づきまして、漁船の操業を制限する必要のある区域を緯度、経度で示し、二十四水域を告示しておりますし、また、一般の船舶の航行が想定される十九水域につきましては、海上保安庁から水路通報等を行っていると承知をしております。

 さらに、これらの水域におきまして射撃訓練等を実施する場合の関係者への連絡につきましては、現地米軍から沖縄防衛局に対し事前通告がありますが、同局は直ちに関係地方公共団体、関係漁協及び海上保安庁に連絡をし、船舶等の航行安全の確保をしているところでございます。

照屋委員 防衛省にはもっともっと聞きたかったのですが、ちょっと時間がありませんので、次に、国際物品売買契約に関する国際連合条約について質問いたします。

 本条約は、企業間等の国際物品売買契約について、その成立及び契約当事者の権利義務に関する事項を規定するものです。本条約の締結によって、我が国企業の関係する国際取引における法的安定性を高め、もって取引実務を円滑化するとの見地から、有意義であると思っております。むしろ、本条約発効から二十年以上を経過して加入することは、遅きに失したとも言えるのではないでしょうか。

 そこで、何点か尋ねます。

 本条約第二条は、「次の売買については、適用しない。」と規定し、(c)で「強制執行その他法令に基づく売買」となっておりますが、具体的内容を御説明ください。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘のとおり、ウィーン売買条約第二条は、一定の類型の売買契約及び一定の目的物を対象とする売買契約、これは(a)から(f)ということで六つの売買契約の本条約の適用除外ということを規定しておりまして、今御指摘の(c)につきましては、この「強制執行その他法令に基づく売買」という内容の具体的な内容としましては、民事執行法に基づく売買のほか、国税徴収法に基づく滞納処分としてなされる売買、そういうものが含まれるというふうに承知しております。

照屋委員 同じく第二条(f)で、「電気の売買」となっておりますが、これはエネルギーとしての電気を指しているんでしょうね。それから、バッテリーに蓄電された電気も含むのか、お答えください。

猪俣政府参考人 今御指摘のウィーン売買条約第二条(f)にございます、これは物品でない電気の売買についてこの条約が適用されないことを確認するものでございまして、お尋ねの蓄電池の売買はこの条約の適用から除外されていないものと考えられます。

照屋委員 次に、条約第六条はこう定めております。「当事者は、この条約の適用を排除することができるものとし、第十二条の規定に従うことを条件として、この条約のいかなる規定も、その適用を制限し、又はその効力を変更することができる。」。

 条約第十二条は、口頭による契約に関して定めておると理解しますが、この条約第六条の趣旨をわかりやすく御説明ください。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のウィーン売買条約第六条は、当事者がこの条約の適用を排除することや、契約によりましてこの条約と異なる定めをすることを認めているということでございます。その意味は、この条約の規定が任意規定であるということを定めたものでございます。

照屋委員 次に、条約第十八条(2)では、「申込みに対する承諾は、同意の表示が申込者に到達した時にその効力を生ずる。」と定めております。同条(2)における「妥当な考慮を払った合理的な期間内」とはどのように解釈すべきでしょうか。

猪俣政府参考人 今、ウィーン売買条約第十八条二項についての御質問でございます。

 ここにあります「合理的な期間」といいますのは、取引の具体的な状況を考慮して判断されることになろうかと思います。例えば、申込者が通信手段として郵便を用いる場合、あるいはファクスを使う場合、最近であればインターネットもあろうかと思いますけれども、「合理的な期間」は、当然迅速な通信手段でありますファクスですとかインターネットですと短くなりますから、そういうことを考えた上で「合理的な期間」をどう判断するかということだと思いますが、取引内容が煩雑になりますと、当然のことながら、その承諾の可否を検討する時間もかかりますので、当然「合理的な期間」というのは長くなるということでございますが、いずれにしましても、取引の具体的な状況を考慮して判断されることになると思っております。

照屋委員 本条約の大前提として、契約の申し込み、申し込みに対する承諾、その手段というのは電話、ファクスあるいはメール、いろいろ想定されますが、そういう手段、方法については制限はないというふうに理解してよろしいでしょうか。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、第二条の関係のときに御説明するべきだったかもしれませんけれども、第十一条に「売買契約は、書面によって締結し、又は証明することを要しない」ということが原則で書いてございますが、ただ、国によってはやはり書面性を要求する国がございます。その場合には書面によるということになっておりますので、その国に関しては書面、そうでなければ書面に基づかないでもできる、こういうことでございます。

照屋委員 最後にお伺いします。

 条約第七十二条(1)は、契約解除の意思表示のあり方と関連し、「相手方が重大な契約違反を行うであろうことが契約の履行期日前に明白である場合」云々と定めております。この条文は、契約の履行期日前の契約違反を問う条文になっているものと思われますが、具体的にどのような場合を想定しているのか。普通、私の経験で、契約の履行期日前の契約違反というのは余り、わかりにくいというか、私の理解を超えるんですが、最後に、具体的にわかりやすく説明してください。

猪俣政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問にありましたウィーン売買条約第七十二条一項、「相手方が重大な契約違反を行うであろうことが契約の履行期日前に明白である場合」ということについての、具体的にはどういうことかという御質問でございます。

 これは、当事者の一方が契約の解除の意思表示をすることができる場合としては、例えば、この条約に基づいて、物品の引き渡し期日前に工場が焼失しました、火事で焼けました、または、その国において輸出入禁止措置が実施されたということになりますと、当然、売り主が物品を引き渡せないことは明白であるということだろうと思います。このような場合ですとか、あるいは、売買代金の支払い期日前に、外国為替規制による支払い禁止のために買い主が代金を支払えないことなど、このようなことが明白である場合ということで考えております。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

 次回は、来る十六日金曜日午前十時二十分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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