衆議院

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第9号 平成21年4月24日(金曜日)

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平成二十一年四月二十四日(金曜日)

    午後二時三分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      鈴木 馨祐君    中山 泰秀君

      永岡 桂子君    西村 康稔君

      平口  洋君    馬渡 龍治君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      池田 元久君    逢坂 誠二君

      下条 みつ君    田中眞紀子君

      松原  仁君    丸谷 佳織君

      笠井  亮君    辻元 清美君

      保坂 展人君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            板東久美子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 堀江 良一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石井 正文君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 兼原 信克君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房広報文化交流部長)        門司健次郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            別所 浩郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  木寺 昌人君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡延  忠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           北村  彰君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  辻元 清美君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  保坂 展人君     辻元 清美君

同月二十四日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     平口  洋君

  西村 康稔君     菅原 一秀君

  御法川信英君     安井潤一郎君

  山口 泰明君     馬渡 龍治君

  篠原  孝君     下条 みつ君

  鉢呂 吉雄君     逢坂 誠二君

  辻元 清美君     保坂 展人君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     西村 康稔君

  平口  洋君     佐藤ゆかり君

  馬渡 龍治君     山口 泰明君

  安井潤一郎君     永岡 桂子君

  逢坂 誠二君     鉢呂 吉雄君

  下条 みつ君     篠原  孝君

  保坂 展人君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     篠田 陽介君

  永岡 桂子君     御法川信英君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

同月十五日

 七・一八沖縄県議会決議を尊重し、辺野古新基地建設の断念を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第一八一九号)

 核兵器のない世界の実現に関する請願(石井郁子君紹介)(第一九五三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九五四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九五五号)

 グアム移転協定に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九五六号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九五七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九五八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九五九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九六〇号)

同月二十四日

 七・一八沖縄県議会決議を尊重し、辺野古新基地建設の断念を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二〇四二号)

 同(保坂展人君紹介)(第二一二二号)

 グアム移転協定に反対することに関する請願(石井郁子君紹介)(第二〇四三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇四四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二〇四五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二〇四六号)

 中国及び中国周辺地域における人権弾圧問題等の解決に向けて、日本国政府からの働きかけを強化することに関する請願(吉田泉君紹介)(第二〇七九号)

 同(西村真悟君紹介)(第二〇九二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君、大臣官房審議官堀江良一君、大臣官房審議官石川和秀君、大臣官房参事官石井正文君、大臣官房参事官兼原信克君、大臣官房参事官香川剛広君、大臣官房広報文化交流部長門司健次郎君、総合外交政策局長別所浩郎君、中東アフリカ局長鈴木敏郎君、国際協力局長木寺昌人君、内閣府男女共同参画局長板東久美子君、厚生労働省大臣官房審議官渡延忠君、大臣官房審議官北村彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健四郎君。

松浪(健四郎)委員 自由民主党の松浪健四郎でございます。

 四月の五日に北朝鮮のテポドン2が発射されました。我々からすれば大変な衝撃であったわけですが、ここのところ新聞を読んでいますと、悲しいかな、もはやそれらについての言及はございません。もしかしたならば、日本人は熱しやすくて冷めやすい、そういう国民性、これを感じるわけであります。

 このほど、石川県の県議会が議会で、抗議をする決議をされました。それは「北朝鮮によるミサイル発射に対する抗議」でございまして、石川県議会の木本利夫議長名で出ておりますけれども、この議長声明を朗読させていただきます。

  北朝鮮は、わが国をはじめ、国際社会からの度重なる中止要請を無視して、四月五日、ミサイル発射を強行した。

  今回の北朝鮮の行動は、周辺住民はもとより、全国民に不安と恐怖を与えた暴挙であり、強い憤りを禁じ得ない。また、わが国の安全保障に対する重大で直接的な脅威、更には国際社会の平和を大きく損なう挑発行為である。

  さらに、本県の漁業関係者の多くは日本海で操業を行っており、近海での安全操業が脅かされることに強い怒りを抱いているところであり、このような北朝鮮の暴挙は到底容認できない。

  政府においては、二度とこのような行為を繰り返すことのないよう北朝鮮に対して、追加経済制裁の発動など、あらゆる措置を講ずることを強く要請する。

という内容でございます。

 既に政府は、追加制裁、その措置について発表されました。しかし、地方の議会にあってもこのように憤りの声があって、地方の人々も大変な不安を抱いておられるということがよくわかるわけであります。既に全国議長会でもこのような声明が出されております。

 この石川県議会が決議された内容等について、まず、大臣の感想をお聞かせいただきたいと存じます。

中曽根国務大臣 ただいま委員から、石川県議会議長声明なるものをお聞きいたしました。

 御案内のとおり、今回の北朝鮮のミサイル発射につきましては、これは地域の安定、平和を損なうものであり、また、緊張を高めるものであるからということで、各国とも協力をしながら自制を強く促してきたわけでありますが、それにもかかわらず、北朝鮮はミサイル発射を強行したわけでございます。まさにこの議長声明にありますように、強い憤りを禁じ得ないとお話しでございますが、そのとおりであろうと思います。

 我が国は、ことしから安保理の非常任理事国になりました。早速、安保理の開催を要求し、御案内のとおり、国連安保理の議長声明を出し、また、北朝鮮に対する我が国独自の措置も行っているところでございます。

 議長声明にもありますけれども、今後、北朝鮮がこれを尊重して守るように働きかけを行いますとともに、懸案であります拉致と核とミサイルの問題、これらの包括的な解決のために我々として全力で取り組んでいき、そして、このような御不安を国民の皆さんにお与えすることのないように、外務省としても一生懸命やっていきたいと思っております。

松浪(健四郎)委員 とにかく、北朝鮮に対して、これからもいろいろと考えていかなければなりませんけれども、政府としても確固たる対応をお願いしておきたい、そして、全国民に納得のできるような行動をとっていただきたい、このようにお願いをしておきたいと存じます。

 それでは、きょうはアフガニスタン及びその周辺諸国のことについてお尋ねをしたい、こういうふうに思います。

 アフガニスタンは、言うまでもなく大変な状況下にあるわけですけれども、一番問題になっておりますのは、たくさんありますけれども、まず国際的に重視しなければならないのは麻薬だ、こういうふうに思っております。そして、世界の麻薬のほとんどと言っていいぐらい、それがアフガニスタンでつくられておる、こういうふうにもうわさされておるわけであります。

 しかし、うれしいことに、微減とはいえ、ここ二年間ぐらいケシの栽培が減ってきておるというふうにお聞きしております。なぜケシの栽培が減ってきたのか、どうして減ったのかというようなことをまずお尋ねしたいと存じます。

香川政府参考人 お答えいたします。

 今先生おっしゃられましたように、世界のケシの生産の九〇%と言われるほどがアフガンで生産されているものだというふうに言われております。

 これにつきましては、最近、御指摘のように、ここ二、三年の間、ISAFという多国籍軍、支援に取り組んでおりますPRTの努力、それから各国の農業支援とかそういったものによりまして、一部ケシの生産が通常の商品作物に転換しているという成果も見えてきておりますので、若干減ってきている傾向にあるというふうに承知しております。

松浪(健四郎)委員 とにかく、ケシの栽培が減るということが大変重要であります。

 我が国は、アフガン支援については、教育であるとか医療、女性の地位向上、地雷除去、そして都市と都市を結ぶ道路建設、これらを熱心にやってまいりました。そして、これからは農業に力を入れていかなきゃいけない。農業の支援をちゃんと行って、そしてアフガンの人々が食べることができるように、そういう支援をしようということであるわけですね。その中に、このケシの栽培をやめさせようというようなこと、これは残念ながら含まれておりませんでした。

 この方法は、農業の支援を盛んにすることによってケシの栽培を減らすことができるのではないか、こういうふうに言われるわけでありますけれども、残念ながらアフガニスタンの地形は複雑怪奇であります。我々が見える、そこでももちろんケシが栽培されている地域もありますけれども、ほとんどは、険しい山と山の谷合いの農地でケシが栽培される。また、警察官、軍隊、これらが入っていかないようなところでケシが栽培されるというようなことが普通である、こういうふうに私は認識しております。

 そこで、アフガン政府は、イラクでもアメリカがやったように、民間の治安部隊を発足させればうまくいく、こういうふうに考えておられるようであります。特に、このほど就任をされましたアトマル大臣は、このケシの栽培を何とかやめさせなきゃいけないというようなことで大変熱心であります。

 大体、各国政府の協力もあって、軍隊の数が徐々にふえてまいりました。ところが、警察官がなかなかうまくいかない。イラクでは、民間の治安部隊を警察官に切りかえるというような方法でまあまあ成功しつつある。こういうふうに、アフガンもイラクをテキストにして、この民間治安部隊を発足させ、もう既にさせているとも聞いておりますけれども、これらを徐々に警察官に転じさせようというふうにしておるのか。そのことをお尋ねすることと、我が国政府は、この半年間、警察官の給料を負担するというふうに発表もされております。正確には、日本が出すことによって多くの国々もお金を出し合って、そしてそのお金で賄うというふうに言われております。

 私がお尋ねしたいのは、アフガニスタンはその治安部隊を警察官に転じさせようというふうに考えているのか、そして、転じさせた場合、そういう転じた人たちのその給料、これらも日本が支援していくのかということでございます。

香川政府参考人 お答えいたします。

 今御質問の、警察官がまだ足りなくて、ふやしていこうということを、現在アトマル内務大臣を中心に計画しているというふうに承知しています。一部報道では、今八万人おる警察官を一万五千人増員するという計画が発表されております。それで、その一万五千人の新たな警察官につきましては、今御指摘がありましたような、一部、それぞれ部族とかその地方の要員をリクルートする形でふやしていこうという計画であるというふうに聞いております。

 御案内のように、日本政府から、その八万人の現在の警察官の給与の半年分に当たる、そういう貢献を補正予算で手当てするということで、支援するということを約束しておりますけれども、これがまたふえていくことになりますので、また引き続き支援の方は考えていきたいというふうに思っております。

中曽根国務大臣 アフガニスタンに対する支援につきましてはもう委員が十分御承知で、海上の補給支援活動に加えまして、車の両輪という形で人道復興支援活動をいろいろやっておりますが、その中でも、治安の改善の分野におきまして、我が国は警察支援も、我が国自体が行っているところでございます。

 さらに、御案内のとおり、ことし八月、大統領選挙があるわけでございまして、その選挙の環境整備のためというものもありまして、治安分野の支援に約三億ドルを拠出したということで、これはアフガニスタンの全警察官八万人の半年分の給与に相当する、そういう警察支援も、我が国独自の活動として、支援として行っているところでございます。

 なお、ケシのお話がありましたけれども、農業支援の一環として、このたび、韓国政府と日韓首脳会談、日韓外相会談におきまして、共同してアフガニスタンの農業支援をしようということになりまして、今考えておりますのが、ケシの栽培、これを大豆の畑に転換する。貴重なたんぱく源でもありますし、そういう形でケシの栽培がまた少しでも減るようにということを考えているところでございます。

松浪(健四郎)委員 とにかく、治安の悪い国ですから、治安を改善するために我が国も最大の協力をされるようにお願いをしておきたい、このように思います。

 そこで、オバマ政権は、アフガニスタンの安定化、この目的のために現在三万四千人の兵をアフガンに送っておるわけですけれども、これを二年間で六万人にしようというわけであります。

 イラクで安定化のために増派で成功したような印象を受けておりますけれども、アフガンにオバマ政権が増派することによって、果たして治安が好転するのかどうか。あるいは、治安、その安定化のためにアメリカが何をしようと考えているのか。私は私なりの思いがあるんですけれども、まず、政府側は、この増派についてどのように考えているのか、お尋ねしたいと存じます。

香川政府参考人 お答えいたします。

 先般、アメリカ政府は、アフガンに対する政策を発表いたしました。そこでは、治安面で、軍を増派して治安をさらに安定化させる、それと両輪として、民間の支援というものに取り組んでいって、アフガン国民に対する支援を通じて、より安定した状況を認識してもらうような、そういう協力をしていこう、そういう両輪でやっていこうというふうに政策を発表しておりまして、今先生おっしゃいました治安軍の増派というのは、そういう民間支援を進めていく上でも重要な要素になるというふうに考えております。

松浪(健四郎)委員 増派をするということは、アルカイダ、タリバンの掃討、これを当然視野に入れておる、こういうふうに思います。そして、アフガンとパキスタン国境にある、厳密にはパキスタン領でありますけれども、トライバルエリア、既にここにアメリカは無人飛行で飛ばして、そしてアルカイダやタリバンを攻撃するというような作戦をとっておられます。まあまあそれは成果を上げているのか。しかし、まだまだアフガン国内においてはタリバンがあちらこちらを暗躍し、また支配し、そしてその数を減らしていない、こういう実情にあります。

 そこで、私は、アメリカは本気になってこのトライバルエリアを掃討しようというふうに考えているのではないのか、こう思っております。ところが、これはパキスタン領ですから、それをやればやるほどパキスタン国民は反米へ反米へとなびいてしまう。そして、その過激集団がパキスタン国内にどんどん出てきて結局パキスタンの治安を乱すことになる、こういうふうな一面も考えられます。そして、アメリカもそのことについては大変苦慮しているんだろう、こう思っております。

 そこで、先日、十七日ですか、我が国政府が音頭をとって、東京でパキスタン・フレンズ東京閣僚会合それから支援国会合を開催されました。四十億ドル集まればいい、我が国とアメリカが十億ドルずつ負担しようということであったけれども、うれしいことに予想以上の五十億ドルが集まったということで、表面上会議は成功したかに映ります。

 けれども、最近の報道を見ておりますと、パキスタンの国内、とりわけこのトライバルエリアのイスラム過激集団、タリバンの行動を見ておりますと、パキスタンがだんだん危険になってきておる、こういうような印象を受けます。

 そこで、パキスタン・フレンズ東京閣僚会合及び支援国会合、これについての感想を大臣にお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 今委員がお話しになられましたように、この四月の十七日に、我が国と世銀が共催をいたしまして、パキスタンのフレンズ会合に続きまして、午後、支援国会合を開催いたしました。この会合にはG8を含む三十一の国と十八の国際機関が参加をいたしまして、また、韓国、イラン、オーストラリア、アラブ首長国連邦からは外相等が出席をしたところでございます。

 会合では私が共同議長を務めまして、また記者会見にも臨んだわけでありますが、この会議におきましては、委員のお話にありましたように、今パキスタンが直面しております経済的な課題あるいは短期的な開発ニーズについて議論が行われまして、会議の結果、支援要請額の当初の四十億ドル目標、これをはるかに超える五十億ドル以上の支援表明があったところでございます。

 これはやはり、パキスタンのザルダリ大統領もみずから各国に支援を訴え、そしてみずから、自国の再建と申しますか、それに対する決意を表明したこと等、あるいは各国がパキスタンの支援の必要性というものを深く認識したためと思いますけれども、そういう形で国際社会が一致団結してパキスタン民主政府を政治的にも経済的にも支えていくということが明確に確認された、これは大きな成果であった、そういうふうに私は思っているところでございます。

 我が国といたしましても、今委員がおっしゃいましたように、今後も、アフガニスタンとの特に国境地域を初めとして、パキスタンの問題にも、支援につきましてもしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

松浪(健四郎)委員 そこでザルダリ大統領はいろいろなことをお約束されたわけであります。だけれども、大統領は、トライバルエリアにあるスワートの地域にイスラム法の導入を条件に政府との和平協定に応じた、こういう報道があります。ということは、一つの国に二つの法律を持ち込むことになる、約束を片方が破れば混乱する、そういう状況が今パキスタンにあるんだろう。しかも、それは首都イスラマバードのかなり近いところまでそういうような問題が生じておるということに私は懸念をするものであります。

 それで、パキスタン・フレンズ閣僚会合で大統領はこう言っているんですね。過激主義の拡散を阻止し、自国が直面する政治的、経済的、安全保障面での課題に対処するためにパキスタン政府がとる措置を説明された。同大統領は、パキスタン政府と国際社会は、テロ、武装勢力及び過激主義と対決し、撲滅する上での確固たるパートナーであり続けることを強調された。

 テロ、武装勢力及び過激主義と対決すると言いながら、実は対決せずにその地域でもって協定を結んでおる。ある意味では事なかれ主義、そしてこれは国際社会に対してうそをついておることになるのではないのか。

 私が懸念しておるのは、パキスタンはこの前のフレンズ会合で世界諸国からお金を得たけれども、本気になってパキスタンの治安について、あるいは隣国との協調について考えているのかどうか、これが疑わしい、そのような思いを持っておりますけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 パキスタンの状況は大変厳しいわけでありますし、また、ザルダリ大統領自身も大変難しい立場に置かれていると思いますが、このフレンズ会合そして支援国会合、これでの各国の支援のそういうような意思というものを受けて、しっかりとやっていってもらわなければならないと思います。そして、私どもといたしましても、この五十億ドルという大変な各国の協賛による支援が、話がまとまったわけでありますが、これが効果的に、無駄のないように、そして透明性を持って活用されるように今後注意をしていく必要があるだろうと思っております。

松浪(健四郎)委員 パキスタンの治安の混乱の懸念すべきことは、パキスタンは核を持っておるということであります。これはオバマ大統領も懸念をしておりますし、当然麻生総理も懸念をしておるわけであります。

 近々外務大臣は講演をされる、そしてそれは核についてだというふうにお聞きしておりますけれども、どのような内容であるのか、大臣にお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 来週ですが、核軍縮に関する私の考えというものをまとめて表明をしたいと思っておりますが、その中におきましても、NPTに入っておりませんけれども核を保有しているパキスタン等に対する我が国の考え方も述べるつもりでございます。

 いずれにいたしましても、今、オバマ大統領、あるいは、かつてはシュルツ元国務長官等、最近の核軍縮へ向かっての大きな流れというものも世界的にあるわけでありまして、やはり我が国としても核廃絶、核軍縮に向けて各国と協調して努力をしていかなければならないと思っておりまして、パキスタンのそういう問題につきましても、今後また働きかけをしっかりとやっていきたいと思っております。

松浪(健四郎)委員 パキスタンの核の心配と同時に、アフガン、パキスタンと国境線を接するイランの核の問題、これらも大変心配されますし、そして、イランとアメリカは国交がない、けれども我が国は両国と大変いい関係にあります。しかも、我が国は、ことしイランと交流を始めて八十周年という記念すべき年にも当たっております。

 私は、パキスタンの核がテロ集団に渡ることのないようにきちんと管理をしてもらわなければいけない、と同時に、イランが核開発を進めないように、そして世界の国々と協調をとれるように我が国がイニシアチブをとらなきゃいけない、こう思っております。

 先日のパキスタンの会議にイランのモッタキ外務大臣が久しぶりに訪日されて、そして、会議に出席された上に、経済的支援もするという発表をされました。大変ありがたいことだ、こういうふうに思っておりましたところ、この連休に大臣がイランを訪問するとお聞きしました。その目的についてお尋ねしたいと存じます。

中曽根国務大臣 来月初旬、この連休になりますけれども、イランを訪問する方向で現在最終調整を行っているというところでございます。

 このイランの訪問につきましては、日程等、またいろいろな面でまだ確定しておりませんけれども、これが実現する場合には、やはりイランに対しまして、今委員がおっしゃいましたように、核問題やそれからアフガニスタンを含む地域のいろいろな課題につきまして、イランが国際社会の信頼を回復して、そして地域の安定に重要な役割を担う大国として責任ある対応をとることを求めていく、そういうような考えでございます。

 また、我が国とイランとの外交関係は、お話ありましたように、ことしは八十周年を迎えておるわけでございまして、両国間の伝統的な友好関係、これの強化にも努めたい、そういうふうに思っております。

松浪(健四郎)委員 イラン政府も、またアメリカ政府も、中東の平和と安定、このためにはイランを国際社会の中に引き込まなきゃいけない、その第一歩はやはりイランとアメリカの国交回復であろう、私は常々そう思っております。そして、どうすればうまくいくのだろうか。オバマ大統領は直接イランの首脳と会話をするという約束をされておるわけでありますけれども、いろいろハードルが高いかもしれませんが、いい方向に向かってほしい、こういう願いが強くあります。

 そこで、大臣がイランを訪問されるときにどうしてもお願いしておきたいことは、まず第一に、日本人学生が誘拐をされておりましたけれども、昨年無事釈放され、帰国いたしました。これは報道はされておりませんけれども、イラン政府は大変な犠牲を払った、こういうふうにお聞きしております。そういう意味では、まず、政府を代表してこのお礼を申し述べていただきたいということが一つであります。

 そして二つ目は、このところよく報道されております日系のフリーランスの記者ロクサナ・サベリさん、これはスパイ罪で禁錮八年の実刑判決を言い渡された、こういう報道があります。彼女は、そういうスパイ行為はしていない、こういうふうに言い張っておりますし、ハンストをしてでも抗議するというような報道もございますけれども、私は、やはり日系人であるがゆえに、その真実をただし、そして救済できる、助けることができるならば我が国も協力をすべきだ、こういうふうに思っております。

 そして、せっかくの数年ぶりの大臣の訪問でありますから、その訪問が有意義なものであるように願ってやみません。私はイランで暮らしたこともありますけれども、親日的であります。そして、我が国の文化も古代ペルシャからいろいろな影響を受けております。そういう意味では、同じ文化を持つ珍しいイスラムの国であります。何とかアメリカとの国交回復のために大臣には骨を折っていただきたいということをお願いしますけれども、その辺の覚悟はいかがなものでございましょうか。

中曽根国務大臣 まず、今委員がお話しされました昨年の日本人学生が釈放されたときのことにつきましては、お礼を述べたいと思います。

 また、ロクサナ・サベリさんのことにつきまして、この方につきましては、彼女が米国籍を有する者ということで米国政府が対応されていると承知しておりますが、日系人でもありますので、人道的な観点からも、日本政府としても関心を持って事態の推移を注視しておるところでございますが、さらに、我々としては、そういう事態の推移を見守りながら、どういうような協力ができるかということも検討していきたい、そういうふうに思います。

 また、アメリカとイランとの関係についてお述べになられましたけれども、イランに対しましては、米国との関係につきましてはやはりイラン側からも建設的なステップをとることが大事だ、そういうように働きかけたいと考えておりますが、オバマ米国大統領のもとでイランとの関係改善が進展する、進められるようであれば、我が国としてもふさわしい協力をしていきたいと考えておりまして、米国とは緊密に連絡をとりつつ、協力をとりつつ、またイランとの対話を継続していきたいと思っています。

松浪(健四郎)委員 政府が中東の平和と安定のために積極的に取り組まれておることに敬意を表したいと思いますし、これからもあの地域のために御尽力賜りますように心からお願いを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 まず、四島の問題から質問をさせていただきたいと思います。

 昨日から札幌におきまして、一月より中止をされていますビザなし交流の再開に向けた協議というものが行われております。先日、沖縄北方特別委員会の方でも質問をさせていただきまして、このビザなし交流が五月にも予定をされておりますことから、早期に日本側が望む形で決着をつけるように取り組んでいただきたいというふうにも申し上げましたが、実際に昨日から始まりました協議におきまして、このビザなし渡航に関する交渉状況について、いかがなのかお伺いさせていただきます。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 このたび、大変な問題になりましたいわゆる出入国カードの問題については、二月にサハリンで行われた日ロ首脳会談において、両首脳は、四島交流等は信頼醸成の観点から重要であり、お互いにこれを継続していく意向であることを確認いたしまして、その上で、友好的かつ建設的にこの問題を解決させるべく事務方に至急作業させることで一致したところでございます。

 このような首脳間の合意も踏まえ、本年五月から四島交流等を予定どおり行うことができるよう、早期に調整を完了すべく、現在、ロシア側との間でモスクワあるいは東京においてさまざまなレベルでこの問題の解決に向け、協議をしているところでございます。

 この問題の解決の見通しについては、ロシア側との関係もあることから予断をすることは差し控えますが、今、全力を挙げて解決に向けて、予定どおり行われるようにするところでございます。

丸谷委員 けさの報道によりますと、ロシア政府が北方四島に入域する日本人に出入国カードの提出を求めていた問題で、解決に向けた日ロ両政府の調整案が二十三日明らかになったと。交渉筋によれば、ロシアは日本側から提供される個人情報をもとに出入国カードを作成するが、入域する日本人は、カードへの署名などを含め、出入国カードに一切かかわらないこととする案で調整しているといった報道がございます。

 こういった内容の事実をお伺いさせていただきたいと思います。交渉中ですから、まだ公には御答弁願えないものなんでしょうか。交渉状況はいかがか、もう一度お伺いさせていただきます。

伊藤副大臣 まだその出入国カード問題については、現在、今お答えしたように、精力的に調整をしているところで、ロシア側との間で鋭意協議を進めております。

 現時点でこの御指摘の記事にあるような最終調整案でまとまったという事実はまだございません。

丸谷委員 日本側が求める形で、しっかりとあるべき姿で四島交流を早期に再開するために交渉を急いでいただきたい、また結果を早期にお知らせ願いたいと思います。

 ただ、しかしながら、これも報道ベースで質問させていただくことになるわけでございますけれども、二十三日に札幌市で開くビザなし交流の北方四島交流代表者間協議に出席する北方四島在住のロシア人の方が日本に入国する際に、ビザなし交流が始まって以来初めてビザを発給して日本に入国をさせたといった報道がございます。

 これは説明もお伺いいたしましたけれども、サハリンから入られたというのでビザを発給したということもあり、特別な措置としてのビザの発給だという御説明をしていただいているわけですけれども、このことに触れて、確かに理論上ではそうだと思いますし、また外務省の判断としてそういう判断をされたのかなとは思うんですけれども、ビザなし交流が今中断をしている、その理由というのは、ロシア側が北方四島に入る日本人に対して、外務省に対して、出入国カードを書けと言って、書くことによってそれは日本領でないということにつながってしまうから、日本は島に入らず帰ってきた、このような形で四島交流が中断をしている。

 そして、北方四島に住んでいるロシア人が逆に日本に入るときにビザを発給した、こういった事実が既成事実となって、四島がロシア人のものだという既成事実につながっていくということを非常に私は恐れます。また、既成事実が積み重なっていくことによって、その積み重なりが歴史をも変えてしまうということも決してないわけではありません。

 戦後六十四年たって、北方四島に六十四年間住んでいるロシア人にとっては、この島はロシア人のものだという感覚が根づいているでしょうし、また、逆に言えば、ゼロ歳で四島で生まれた人も日本に帰ってきてもう六十四年、また四島に帰れなくて六十四年ということを考えますと、この既成事実の重なりが四島返還の大きな隔たりとなるおそれがあるということを考えますと、わざわざビザを出してまで日本に急いで入れる必要があったのかどうか。

 これはもっと外交判断が、私は別の選択肢というものがあったのではないかと思いますが、この点については外務省の見解はいかがでしょうか。

伊藤副大臣 委員の御懸念、非常に理解するところであります。

 事実関係、そしてまたそれに対する解釈を申し上げたいと思いますけれども、そもそも四島交流というものは領土問題を解決するための環境整備として重要な役割を果たしているものだと認識しております。そして、今御指摘の代表者間協議は、四島交流の円滑な実施のため、毎年四島交流事業の開始に先立ち、四島側の代表の参加を得て行う必要があるものでございます。この協議は昨二十三日に札幌において開催されました。

 この協議に参加する四島側の代表は、本来であれば、今御指摘のように、四島交流の枠組みにより、四島からビザなしで、査証なしで直接北海道本島を訪問することが適当で、筋でありますけれども、今回、気候条件といいますか、気象条件等のやむを得ざる理由から、サハリン経由で、まさに例外的に来訪せざるを得ないという事情がございました。

 一般論として、サハリンからロシア国籍者が我が国に入国する場合には当然査証が必要となります。今回の場合は、四島住民の訪問ではありますが、サハリン経由で来訪する以上、通常の四島住民の訪問とは扱いが異なるべきこと、そしてまた日時というものが決まっている四島交流代表者間協議への参加という訪問目的にかんがみて、査証を発給するということを決定したものでございます。

 したがって、今回のこの決定は、北方領土問題に対する我が国の法的立場を害するものでも、また原則を曲げるものではないというふうに認識しております。

丸谷委員 法的に害するという意味で質問させていただいたわけではなく、外交判断としてほかの選択肢がなかったのか、外務省の見解をお伺いしたいと思いまして、質問をさせていただきました。

 会議の日程が決まっていたということもあると思いますけれども、それを言うのであれば、逆に、人道支援で四島に入るという日程が決まっていて、わざわざ船に乗って四島の近くまで行ったけれども、入国カードを書かせられそうになったので島に上がらずに帰ってきましたという事実もあるわけですから、何を優先させるのかという、この外交判断の中で優先順位は何だったのかということについて今質問をさせていただいた次第でございます。

 もう一度御答弁をお願いいたします。

伊藤副大臣 委員の御指摘、また質問のポイントはよく理解するところでございます。

 委員の御指摘もよく踏まえて、今回の決定についても、そしてまた今後の政治判断の上でも生かさせていただきたいと思います。

丸谷委員 では、このことに関しましては、ぜひ外務大臣のお考えもお伺いをさせていただきたいと思います。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 参考人からも必要とあれば補足をいたさせますが、今副大臣から御説明いたしましたように、特別な気候条件ということで、まさに例外的な形ということでございました。

 これは北方領土問題に対する我が国の基本的な姿勢が変わるものではない、こういうこともロシア側にもきちっと説明の上、こういうような対応をとらせていただいたということでございます。

丸谷委員 このことも含め、最近、日ロ間において、特に北方四島問題に関する外交的な話題というのは、報道上でもいろいろとにぎやかでございます。本当にそれが前に進むための大きな一歩であるのかどうか。

 また、五月にプーチン首相が来日をし、七月にはサミットが行われる、いろいろな機会で両国の首脳が集える機会がございますし、また、メドベージェフ大統領は、独創的で型にはまらないアプローチで四島問題を解決していこうといった発言もされているということを考えますと、先日、毎日新聞の報道にございました谷内政府代表の三・五島でもいいのではないかといった発言、御本人はそのように発言されていないというふうに、後に報道でまたおっしゃっておりますけれども、かなり真実味を帯びてくるような気もする次第でございます。

 ただ、我が国としましては、やはり四島の帰属の問題というのをしっかりと明確にした上で、早期に元島民の皆様、漁業関係者の皆様が最大限に喜ぶ形で解決をしていく、この線でやはり四島交渉というのをしていただきたいと思います。

 元の外務大臣の方の中には、いろいろな発想で取り組みたいといった趣旨の御発言をされた外務大臣の方もいらっしゃいましたけれども、中曽根外務大臣におかれましては、改めて決意になるかもしれませんが、この四島返還に対する取り組みの決意と、また御自分の代で解決をするといった意気込みも含めてお伺いをさせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 北方四島をめぐりましてさまざまな報道がなされておりますけれども、政府の基本的な考え方、もう再三申し上げておりますけれども、改めて述べさせていただきたいと思います。

 政府としては、この北方四島の帰属の問題をまず解決して、そして平和条約を締結するという基本方針のもとに北方四島の返還を実現していく、そういう考えで今までもやってまいりました。また、その北方四島の我が国への帰属が確認をされれば、実際の返還の時期とか対応につきましては柔軟に対応する、そういう考えでございます。

 二月のサハリンでのメドベージェフ大統領と麻生総理との会談におきまして、麻生総理からメドベージェフ大統領に対しまして、ロシア側に平和条約問題について具体的な進展を図る用意がないのであれば、パートナー関係を構築することにはならない、そういうふうに伝え、北方四島の帰属の問題の最終的解決に向けたロシア側の取り組みの姿勢を強く問いかけをしたところでございます。

 政府といたしましては、五月にもプーチン首相が訪日をいたしますし、今後のいろいろな首脳会談等を含めまして、ロシア側に対して引き続き強い意思を持って交渉を進めていきたい、そういうふうに思っております。

丸谷委員 また、今は外交的には日本がロシア側に俗に言う球を投げているという状況でございますので、五月の首相の来日、またG8サミットという機会を通じて、一歩、二歩この四島問題が前進するように、外務大臣としても全力で取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、北朝鮮の問題について質問をさせていただきます。

 今回の、四月五日、北朝鮮が言うところの人工衛星、つまりは長距離弾道ミサイルの発射の問題を受けて、やはり私も深くいろいろと考えてみる中で、北朝鮮という国に関して、我が国は国交も持っておりませんし、民主主義の価値観ですとか、人道的な価値観、資本主義の価値観というのは一切共有していない国でございますので、国際ルールに基づかない国だということを責め立てることだけでは意味がないわけでございますけれども、今までとはまた違って、一定の国際ルールにのっとって、事前に人工衛星を打ち上げますよということを通告した上で長距離弾道ミサイルを飛ばしました。

 このことに関して、事前通告をしたからということではないものの、国際社会がミサイルの発射をとめることができなかった、事前通告、打ち上げると知りながら、結局はそれを阻止するすべを持たないということが一つ明らかになったことが私は問題なのではないだろうかと考える次第でございます。

 では、逆に言えば、どのような形で発射の阻止をすることができるのかということを考えたときに、一つは、やはり国連安全保障理事会を中心とした国連の一致団結した強い意思を示すということ、それから、北朝鮮という国は今までも、九三年には核開発をにおわせて、米朝枠組み合意を引き出して核凍結の見返りに軽水炉と重油を得る、また、二〇〇二年、三年にはウランの濃縮疑惑、そしてNPT脱退宣言をして六者会合を引き出すといったような形で、国際社会に恫喝をして何かを得てきた国でありますから、今回の長距離弾道ミサイルをあえて発射したことによって見返りを期待していると考えることは自然だと思います。

 このことに関して、何一つ見返りを与えない、おどしに対して国際社会が屈しないという態度を示すこと、また制裁をしっかりと実施していくことが重要なのではないかと考える次第でございますけれども、外務大臣のお考えはいかがでございましょうか。

伊藤副大臣 今回の北朝鮮によるミサイル発射に関しては、私自身も、九日からニューヨークの安全保障理事会で、十四の理事国すべてと、大変緊迫した中で、また日本の主張と考えを強く訴えて、議長声明の発出ということがあったわけでありますけれども、委員おっしゃるように、ここ数年といいますか、北朝鮮のいろいろな外交の態度といいますか、対外関係の持ち方というものを見ますと、確かに、恫喝という言葉が適当かどうかわかりませんけれども、非常に、そういうような態度を通じてみずからの国益を追求するというような状況も散見されるわけであります。

 ここで私は、大事なのは、今回は議長声明ということでありますが、そこの中において決議である一七一八の遵守ということを強くうたっているわけであります。そして、この一七一八ということはまさに制裁決議でありまして、かつ、国連憲章七章ということが言及されている決議であります。したがいまして、北朝鮮は、今後、上に何がついているということを北朝鮮が言おうとも、発射自体が一七一八の違反でありますし、そしてまた、核開発のすべてが違反であります。

 そしてまた、北朝鮮のみならず、この一七一八においては、国連加盟国全部が、弾道ミサイル計画あるいは核開発に関する物質や部品あるいは技術、そういったものを北朝鮮に移転、移動してはいけないということになっておりますし、また、そのような制裁をしたことに対して報告することになっているんですね。

 ところが、今回の発射を見てわかるように、残念ながら、二〇〇六年の一七一八ができてから、百九十二の加盟国・団体が、この一七一八の要求するところを全部遵守していたわけではないんですね。七十三の国と一国際団体しかしていなかったと思います。

 したがいまして、今回の議長声明におきましては、このことを今強く訴えておりますし、とりわけ、トルコの委員長のもとにあります制裁委員会において、しっかりと、制裁対象となる種類のもの、また団体というもののリストを、日本は二十四日ですけれども、向こうはまだ二十三だと思いますが、現地時間の二十四日までに出すべく要求しているということでありまして、今作業が鋭意進んでいるところだろうと思います。

 そしてさらに、この議長声明においては、北朝鮮が六者会合に早く戻るということも要求しているわけであります。ここで大事なことは、国際社会が、特に六者会合の構成国が、やはり、ユナイトといいますか、団結してこの事態に対して北朝鮮に対して当たっていく、そして、北朝鮮が国際社会の世論に従って核開発を放棄して、そして今後一切の発射を行わない、そのことを実現していくことが重要だ。そして、その中において日本は、安保理の場もありますし、また六者会合の場もあります、毅然とした態度で向かっていくと同時に、この関係国との緊密な連絡あるいは調整というものをしっかり図っていくということが重要であるというふうに考えております。

丸谷委員 六者協議の再開というのは重要でございます。今回、一説によりますと、ミサイルを発射したことによって北朝鮮が引き出したいものの一つとしては、米朝協議のスタートということも言われております。

 我が国にとっては、やはり、拉致問題も含めて、しっかりと六者会合の場で、北朝鮮を国際社会の中で協議に引き込んでいくということをあくまでも追求していくべきでございまして、これに関しては、やはりアメリカと協調をしっかりととっていく。

 報道によると、けさ、午前中に麻生総理とオバマ大統領が会談されたといった報道もございましたけれども、アメリカの政権がかわって、対北朝鮮政策、新しくなったところでございますけれども、アメリカとの連携というのはしっかりとれているんでしょうか、確認をさせていただきたいと思います。我が国の意思というのは、拉致問題も含めて、六者でやっていこうとしているということは、しっかり連携がとれているのかどうか、この点についてはいかがですか。

伊藤副大臣 国連の安保理で今回の議長声明が発出された翌日、私は、ワシントンにおいて、クリントン国務長官と、短時間ですが、この件について話し合う機会がありました。

 その場においても、今回、強いメッセージが、団結したといいますか、コンセンサスを得た形で発揮したことを、大変、両国として喜ばしいものであることを確認するとともに、それから、これは私だけではありませんけれども、中曽根外務大臣あるいは麻生総理を初め、六者会合が一番大事である、そして、六者会合が先であるけれども、仮に米朝が何らかの会談なり交渉を行うとすれば、それ以前に、日米あるいは日米韓でよく協議、連絡して、ある意味では一枚岩といいますか、その観点から行うということで、米朝会談が行われるということが六者会合の枠が壊れることでもありませんし、また、日米あるいは日米韓の間に亀裂があるということではないというふうに私は認識しております。

中曽根国務大臣 今副大臣から御答弁申し上げましたから申し上げることはないんですが、政府としては、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決には何よりも六者会合が一番適している、これが現実的な枠組みである、そういう考えに変わりはございません。

 また、米国も韓国も、六者会合を通じて諸懸案を解決することが重要であるとの立場を明らかにしておるところでございまして、今委員からもお話ありました、けさ九時半過ぎから、麻生総理とオバマ米国大統領が電話会談を行ったわけでありますが、その中におきましても、両首脳は、適切なタイミングで六者会合を再開できるよう、引き続き緊密に連携していくということで一致したということになっておりまして、今後ともしっかりと緊密な連絡をとってやっていきたいと思います。

丸谷委員 六者会合の早期再開に向けては、やはり議長国である中国と連携を密にしていくことと、また、ロシア側、これも報道でございますが、ラブロフ外務大臣が平壌に行って協議をされたようでございます。その中で六者会合への復帰ということを呼びかけたけれども、なかなか進展はないといった報道もございました。

 一方で、これは制裁と直接リンクするところではございませんけれども、北朝鮮における鉄道に対する協力というのは滞りなく行われるといった事実もあり、いろいろな意味でしっかりと制裁を確実なものにしていくために、どのような交渉、枠組みを使っていくか、六者協議やその枠組みでございますけれども、中ロとも力を合わせて交渉をしていただきたいと思います。

 では、時間がございませんので、最後に一つだけ質問させていただきたいわけでございますけれども、外務省が今日本のポップカルチャーを世界に向けて発信していこうと頑張っているところでございまして、昨年はドラえもんが大使になっていろいろな国を回られました。ことしは、ポップカルチャー発信使という、通称カワイイ大使という、カワイイアンバサダーの皆さんがパリですとかバンコクに行かれるということでございます。

 これは老婆心からの質問だと受けとめていただいていいわけでございますけれども、議員立法で児童ポルノを禁止する法律というのに取り組んでおりまして、それは議員立法であるから政府は関係ないということではなく、外務省の人権人道課も含めて児童の商業的性的搾取に反対する世界会議というのを日本国がホスト国になって行ったり、いろいろな取り組みを一生懸命している中で、国際社会の中での児童ポルノの定義というものが、日本で言うところの定義以上に、児童に見えるものとか成り済ましとかアニメも含めていろいろな議論がなされていく中で、カワイイ大使が非常に短いスカートをはいて各国を回るということに対して、要らぬ批判を受けないように細心の注意を払って活動していただきたいという思いで私はおります。

 決して、ポップカルチャーを否定するための発言ではございませんし、日本が誇るポップカルチャーというのはあり、かわいいという概念が日本独自のものとして各国で今取り上げられておりますけれども、いろいろな意味も含めて、外務省、日本国として、日の丸を背負って外務省が送り出す大使でございますので、本当にいろいろな目線から見て、要らない批判を受けないような、細心の注意を払って、このカワイイ大使の皆様に活躍をしていただきたいと思う次第でございますけれども、この点に対して外務省担当としてどのように考えて取り組んでいかれようとするのか、この点をお伺いさせていただきます。

門司政府参考人 お答えいたします。

 外務省は文化交流を以前から行っておりますけれども、やはり伝統文化、現代文化が中心でございました。日本のありのままの姿を発信するということで、海外で人気の高いポップカルチャーに焦点を当てたわけでございます。

 もうドラえもんですとかカワイイ大使について先生の方から活動の指摘がございましたけれども、まさに文化発信、文化交流は相手国で受け入れられるということが重要でございます。したがいまして、現地の事情、その他のことも十分に踏まえまして、効果的な実施ができるように努めてまいりたいと思っております。

丸谷委員 そのようにしていただきたいと思います。

 税金を使って政府が広めていくべきもの、また、政府が広めなくてもみずから浸透していくもの、それぞれ文化面にはあると思いますので、総合的に判断をして、外交、日本の文化を発信していただきたいとお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 まず冒頭、北京の二十三日の共同通信でありますが、去る二十三日、麻生内閣総理大臣が靖国神社に供物奉納をしたということに対して、外交ルートを通じて日本側に中国外務省は不満を表明したということでありますが、具体的な内容をお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、昨二十三日、中国側から、外交ルートを通じまして、麻生総理が靖国神社に供物といいますか供え物といいますか、これを奉納したことに関しまして、厳重なる関心と不満の表明があったところでございます。

 我が国といたしましては、これに対しまして、本件は、総理の私人としての立場に関するものと理解をしておりまして、政府として見解を申し上げる事柄ではないとの立場を先方に伝えたところでございます。

 いずれにいたしましても、政府としては、首脳間や、それから昨年の共同声明でも確認をいたしておりますとおり、戦略的互恵関係を包括的に推進するために引き続いて努力をしていくということでございます。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

松原委員 今、私人という立場でというふうにおっしゃいましたが、では、それは中国側に対して、私人ですからという弁解的答弁をした、こういうことになるんでしょうか。

中曽根国務大臣 事実をそのままお伝えしたということでございます。

松原委員 私は、その説明すら必要なのかどうか、こういうふうに申し上げたいわけであって、明らかにこのことが、では、私が見ている文章だと、これは歴史問題と絡んでの中国側からの注文だったんですか、そうじゃなくてということですか。これを確認したいと思います。

石川政府参考人 事実関係ですので私の方から御答弁申し上げます。

 二十三日の中国外交部の定例記者会見の一部を抜粋させていただきますと、歴史を正しく認識し対応することが日中関係を健全かつ安定的に発展させる基礎であるということである云々という発言があったようでございます。

松原委員 ということは、これは、ああいう形で麻生さんが供物を出すのは歴史を正しく認識していないと中国が言っているように聞こえますが、その中国に対して、そうではないということを言うべきだと私は思うんですが、いかがですか、外務大臣。

中曽根国務大臣 中国側に対しましては、この件は、先ほど申し上げましたように、総理の私人としての立場に関するものである、そういうふうに理解しておって、政府といたしまして見解を申し上げる、そういう事項ではない旨を伝えているということでございます。

松原委員 私の言っている意味はそういうことではなくて、中国側は歴史認識を正しくするべきだと。これが歴史認識とどう結びつくのか。

 こういうふうな議論を含め、私は、率直に言って、これは限りなく内政干渉に近いことではないかと申し上げたいわけでありますが、大臣、御認識はいかがでしょうか。

中曽根国務大臣 内政干渉とおっしゃいましたけれども、内政干渉とはどういうようなものか、これは文脈によってその意味するところはまた幅があるのではないかと思いますけれども、一国の国内的な事項について他国が批判的な立場を表明すること自体、これが国際法上違法とされる内政干渉に当たるとまでは言えないと思いますが、今回のこの件に関しましての中国側の反応につきましても、私たちは、内政干渉に当たる、そういうふうには思っておりません。

松原委員 今冒頭、外務大臣が言ったところの、表明するのはいいんですよ。中国が遺憾であると言うのはいいんですが、これは日本政府に対して、そういったことを日本側に外交ルートを通じて言ってきた、こういうふうに報道されているがゆえに、そこまで外交ルートを通じて言ってきたのであれば、これは明らかに内政干渉になるだろうと思っているんです。

 事実関係をちょっと教えてください。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣が御答弁申し上げましたとおり、中国側の言い方は、厳重なる関心と不満の表明ということでございます。これに対しましては、繰り返しになりますが、これは総理の私人としての立場に関するものであるので、日本国政府としてこれについてコメントを申し上げるような事項ではないという立場を明らかにしたところでございます。

中曽根国務大臣 先ほど内政干渉は幅が広いと申し上げましたけれども、国際法上違法とされる、そういう内政干渉とはということになりますと、一般に、国際法上、他の国家が自由に処理し得るとされている事項に立ち入って、強制的にその国を自国の意思に従わせようとすることと解されているということでございまして、そういう意味から、私は内政干渉に当たるものではないと考えていると申し上げたところです。

松原委員 ここだけで話をすると北方領土に行かないのでそろそろこの分野の議論は終わりにしますが、中国側から言ってきて、今審議官が言うように、我々はそれに対して言っているわけですよ。だから、コミュニケーションがそこに成り立っているわけですよ。もしそこで、わかりましたと聞けば、完全にこれは内政干渉が成立なんですよ。つまり、断ったけれども、たぐいとしては、日本政府に対して中国の意向を聞きなさいと、それも外交ルートで言ってきたので、私は明らかに一種の内政干渉だと思っているんです。

 実は、我が党の鳩山由紀夫幹事長が一昨年、ダライ・ラマ法王と会ったんですね。このときも、中国の大使館のホームページに、ダライ・ラマは宗教の衣をまといながら反中国分裂活動を行う政治亡命者だ、そして、日本から彼の反中国分裂活動への支持を求めつつ、改善発展しつつある中日関係を妨害する云々かんぬんと書いてあって、ダライ・ラマに会わないように申し入れましたと。

 これは、結果として鳩山さんはダライ・ラマに会ったんですが、これを聞いていたら、政府ではないけれども、これも内政干渉なんですよ。だから、こう言って具体的に注文をつけてくるということは、やはりこれは、そういうふうに、会うのは遺憾だというんじゃなくて、会わないように申し入れたとこれは書いてあるわけですよ。

 非常にそういった意味で、我が国は中国によって内政干渉を既にされつつあるのではないかというふうに思っておりまして、ここは外務省も毅然として国益を、お隣の国ですから仲よくしなきゃいけないんですが、真の友誼というのはやはりそれぞれが毅然とした外交をする中から生まれるというのが根本原則ですから、そこを確認したいと思うんです。

 実は、同じ議論というのは、北方四島でも同じ状況があると私は思っているんですが、幾つか聞いていきたいと思います。

 今、日本は、ビザなし交流は、先ほど丸谷さんの質問にもあったように、一時中断というか、再開がどうなるか、ちょっと見通し等をお伺いいたしたいと思います。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる出入国カード問題につきましては、二月にサハリンで行われた日ロ首脳会談におきまして、両首脳が、四島交流等は信頼醸成の観点から重要であって、お互いにこれを継続していく意向であるということを確認しました。その上で、友好的かつ建設的にこの問題を解決するべく、事務方に至急作業させるということで一致をいたしました。

 この首脳間の合意を踏まえて、本年五月から四島交流を予定どおり行うことができるように、早期に調整を了すべく、現在、ロシア側との間で、モスクワ、東京においてさまざまなレベルでこの問題の解決に向けて協議を行っております。

 しかしながら、この問題の解決の見通しにつきましては、ロシア側との関係から、現在予断することを差し控えさせていただきたいと思っております。

松原委員 ということは、ビザなし交流の四島間の交流は、これから五月で何とか解除するように日本側は頑張る、こういう姿勢で、今は行われていないということですね。

兼原政府参考人 そのとおりでございます。

松原委員 事実を聞きたいんですが、私のところにある資料ですと、ロシアが中国人に観光ビザ免除と。これは、ユジノサハリンスク、七日、「ロシア政府は、中国人の観光ビザを免除する協定の対象に、新たにサハリン州を加える。同州政府は七日、同州が管轄する北方領土も対象に含まれると表明、十五日にも正式に決まる見通し」と。

 これは今どうなっているでしょうか。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 今確認いたしましたところ、サハリン州の中に北方四島を入れて、その話が委員御指摘のように動いていると確認されておりません。サハリン州の会社がそういう交流の枠組みに入ったということでございまして、北方四島について、御指摘のような第三国が入っていくということについての事実があったかは確認されておりません。

松原委員 いや、だから、私は聞いていることに答えてもらえばいいので。

 中国人の観光ビザを免除する協定をし、十五日というのは四月十五日だと思うんだよね、正式に見通しと書いてあるんだけれども、日本の観光ビザとは違いますが、日本がノービザでは入れない。これは、文章を見ると、二週間ノービザで中国人観光客は北方四島へ行けるという話になっているんですよ。

 このことについて、北方四島は日本の領土だと我々は言っているんだから、極めて注意深くこういう発言を見なきゃいけないので、どうなっているかと確認しているんです。お伺いしたい。

兼原政府参考人 混乱いたしまして、まことに申しわけございませんでした。

 中ロのビザなしの枠組みの中で、中国の人はこれまでサハリン州に入れたわけでございます。今回の新しい合意は、サハリン州にある幾つかの会社がその枠組みの中に入ってきたということでございます。

松原委員 だから、私はこの文章のとおりのことを聞いているんですよ。中国人が観光ビザを免除されて、サハリン州の、同州が管轄する北方領土まで含まれると表明したということで、このことは事実として把握しているんですかと。会社がどうのこうのじゃないんですよ。この記事の中身を、北方四島は日本の固有の領土だと言っているんだから、ちゃんと確認しているんでしょうね、事実関係はどうなんですかと聞いているんです。そんな難しいことは聞いていないですよ。お伺いしたい。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

兼原政府参考人 申しわけございません。

 これまでにも中ロのビザなし交流の枠組みの中にサハリン州は入っておりました。今回新しくサハリン州が入ったというのは、それは間違いでございます。これまでも入っておりました。

松原委員 では、従来から北方四島にはビザなしで中国人観光客が行けた、こういうことですね。確認。聞いていますか、今の質問。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 従来の枠組みで、韓国人、中国人が北方四島に入域することは、それは中ロの枠組みの中では理論上は可能であろうと思います。

松原委員 ということは、中国、韓国の人は、韓国のことは私は質問していなかったけれども、中国の観光客がビザなしで北方四島に行けるんですね、理論上は。ちょっと時間がないから。答えてください。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと今、韓国は、申しわけございません、わかりませんけれども、中ロに関しましては、それは理論上は可能でございます。

 ただ、それは、日本国としては受け入れがたいことでございます。

松原委員 最後の末尾が聞こえなかったんだけれども、日本は、今実際は、入国カードを書かなきゃいけないというのでビザなし交流ができない。中国は、ビザなし交流をしてどんどん入っている。もちろんそれは、入国カードを書くんだろうけれども。そういう理解でいいんですか。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 それは理論上は、お答え申し上げましたように、中ロに関しましては、中ロ間では可能でございます。

 ただ、北方四島は現在ロシアに不法に占拠されておりますために、お尋ねの事実の詳細を把握することは事実上できない状況にございます。

 いずれにせよ、このような状況におきまして第三国の国民等が、あたかも北方四島に対するロシア連邦の管轄権を前提にしたかのごとき形で我が国固有の領土である北方四島に入域することは、北方領土問題に関する我が方の立場とは相入れないという認識をしております。

松原委員 もう時間がないから、すぐ答えてくださいよ。

 そうしたら、このことに関しては外務省はどういう抗議をしてきたのか、具体的な中身を教えてください。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 このような事例が明らかになりましたときに、そのごとに先方政府に対して申し入れはしてきております。

松原委員 きょうは時間がないので、これに関しては、この中ロのビザなし交流、ビザなしの観光について、どういうふうにロシア側に日本の外務省が抗議をしてきたか、これは理事会に資料を出していただきたいと思います。時間がないから、それを委員長、お願いします。

河野委員長 質問でやってください。

松原委員 では、ちゃんと答えてちょうだいよ、時間がないんだから。

兼原政府参考人 事例が明らかになるごとに申し入れをしてきておりますけれども、具体的にどのような申し入れをしたかということにつきましては、先方の関係から、お答えすることを差し控えさせていただきたいと思います。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 もう一度、兼原大臣官房参事官。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 兼原大臣官房参事官。

兼原政府参考人 日本国政府の方が何を言っているかということを申し上げます。

 日本国政府としては、第三国等の国民が、あたかも北方四島に対するロシア連邦の管轄権を前提にしたかのごとき形で我が国固有の領土である北方四島に入域することは、北方領土に関する我が国の立場と相入れないということを申し入れております。

 先方の反応につきましては、先方政府との関係がございますので、差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 何かよくわからないんだけれども、そうすると、それは、いつ抗議を、どういうルートで申し入れたんですか。何回申し入れているんですか。

兼原政府参考人 事例が発覚いたしますごとに申し入れておりますが、いつ、どういうふうにしたかということにつきましては、外交のやりとりでございますので、内容を明らかにすることを差し控えさせていただきたいと思います。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 外務大臣。

中曽根国務大臣 はっきりしないで大変申しわけございませんが、政府として日ごろから、当然のことなんですが、必要な情報収集は行っておりまして、仮に今のような事例が判明した場合には申し入れを行うなど、適切に今までも対応してきております。

 ただし、その詳細とか時期とか、そういうことについてはちょっと申し上げられません。

松原委員 主たる質問をする時間がなくなってきたので、これはその前のところでいろいろ、どうなっているのかと確認をしたかったんですよ。北方四島はいやしくも日本の領土だと言っていてこの状況というのは、ロシアの北方担当の人が見たら笑っちゃいますよ。お願いしますよ、もっとしっかりと対応するように。国民の負託を得ている行政だし、外務省なんだから。

 きょうは、実は三・五島論を聞こうと思っていたんですよ、時間は十分ぐらいしか残っていないんだけれども。

 谷内さんが、前の事務次官が言った三・五島論というのは、これは正式な発言ではないようにも言われております。しかし、恐らく言ったんでしょう。このことがロシア国内において報道されている。どういうふうに報道されているか、お伺いしたい。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 谷内政府代表の北方領土に関する発言につきましては、ロシアでは四月十七日付の邦字紙の記事を引用する形で、複数の通信社、新聞社が報じております。イタル・タス通信社あるいはイズベスチヤ新聞社等が報道しております。

 具体的には、これらの報道におきましては、四月十七日付の邦字紙に掲載された谷内政府代表のインタビュー記事の引用に加えて、河村官房長官やそれから中曽根外務大臣の本件に関する発言等を引用して、北方四島が我が国、日本国に帰属をする、それを確定して平和条約を締結するという日本政府の基本方針に変更はないという旨が主に報じられております。

松原委員 いや、三・五島論が報道されているんじゃないんですか。三・五島という話は全くないのに、ニュース性を持ってそれぞれ報道されているんですか。お伺いしたい。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたとおり、四月十七日付の邦字紙に掲載された谷内政府代表のインタビュー記事が引用されております。それに加えて、今申し上げた、河村官房長官及び中曽根大臣のお立場が同時に報道されております。

松原委員 後の部分は聞いていないんですよ。最初のことが問題だから、きょう質問しているんじゃないですか。

 最初の部分に関しては、どういうコメントがロシアのマスメディアでなされているんですか。私は、日本が極めて軟化をしてきたというようなコメントが当然、まあそこまで読み込んでいないのかもしれぬけれども、あると思うんだけれども、どうなんですか。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 多数ございますので、一つだけ御紹介申し上げます。イタル・タス通信でございます。

 十七日付の毎日新聞に掲載された、総理に近い外交顧問であると考えられている前外務次官の谷内政府代表に対するインタビューが問題を呼び起こした。谷内政府代表は、引用でございますが、東京がすべての北方領土の返還要求から遠ざかるかもしれない、私は、個人的に三・五島で合意することも可能であろうと思う、北方四島が日ロ関係のつまずきの石となることは望ましくないと述べた、河村官房長官は直ちにインタビューで提案された案に政府が同意する可能性を断固として否定した、外務大臣も同様の声明を行ったというふうに書いてございます。

松原委員 では、論評なしですべてのロシアの報道はなされている、こういう理解でいいんですか。それとも、これに対して、いよいよ日本も軟化してきた、現実的になったみたいな、そういう報道なんですか。そこをお伺いしたい。

兼原政府参考人 お答えを申し上げます。

 私どもが把握しております限り、イタル・タス通信、リア・ノーボスチ通信、イズベスチヤ紙、コメルサント紙、コムソモリスカヤ・プラウダ紙等ございますけれども、今のような出方をしております。

松原委員 論評は恐らくあると思うんだけれども、まあいいですよ。

 そうしたらば、二つの違った議論が載っているわけですよ、官房長官、外務大臣と谷内さんと。これは二元外交のような、外交はしていないと言うかもしれぬけれども、印象を与える。少なくともロシアの報道機関に全部それが、すごいですよ、これだけ出るということは。谷内さんの発言がなけりゃそんなに出ませんよ、はっきり言って。中曽根外務大臣が四島を戻せと言ったって出ませんよ。中曽根外務大臣が三・五島だと言ったらでかく出るでしょう。わかりますか、三・五という数字があるからロシアの報道機関にこれだけ出ているんですよ。

 これは二元外交の一種だと私は思うんですが、中曽根外務大臣としてはこのことについてどうお考えなんですか。

中曽根国務大臣 谷内政府代表のこの発言につきましては、直ちに我が方の局長から電話をし、また私も電話で本人に確認をして、委員ももう御承知のとおり、これは三・五島返還でもいいのではないかと考えているといった発言はしていないと。それからもう一点は、全体の発言の流れの中で誤解を与え得るものがあったかもしれず、結果として関係者に誤解を与えてしまったことは遺憾であるとの説明があったわけで、これについてもロシア側は承知しているんじゃないか、私はそういうふうに思っておりますし、官房長官も私も、従来からの政府の方針というもの、これを発言いたしております。

 ロシア側がどう感じるかというのは先方のことなので、あるいは報道の仕方というものも詳細は承知しておりませんが、私たちは、本人が誤解を与えたかもしれないということと、我々が従来の政府の方針をしっかりとまた表明しているということでございますので、そういう意味では、ロシア側が今回のこの発言によりまして我が国の立場について誤解をするということはないのではないか、そういうふうに思っています。

松原委員 本当に時間がなくなってきて困るんだけれども、だったらば谷内さんは、谷内さんのそのインタビュー記事が間違いであったというならば、そのインタビュー記事を掲載した新聞を告発しなきゃいけませんよね。

 私は、外交というのは極めて厳しいものだと思うんですよ。今、谷内さんは外務省とはどういう関係があるんですか。

中曽根国務大臣 政府代表という立場でございます。

松原委員 私は、率直に言って、政府代表としてこのままいるのか、今回の責任をとって政府代表を政府としてやめさせるのか、中曽根大臣、どうなんですか。

 そこはつまり、谷内さんが報道機関を、おれのインタビューを間違えてあんたは載っけたなと告発すればいいですよ。そこで告発もなく、いや、きょうこの段階で告発していればいいですよ、告発もなく、しかも政府代表の立場があるとしたらば、この谷内発言に対してそれを否定したことにならないですよ、そんな口頭で官房長官が違う、外務大臣が違うと言ったって。そこは、冷たいようで厳しいようだけれども、そういう姿勢を見せなかったらば二元外交のそしりは免れませんよ。いかがですか、大臣。

中曽根国務大臣 新聞社との関係、これは記事が本当に正しいのか正しくないのか、そして本人はこれを、誤解を与えたかもしれないということで、先ほど申し上げましたように、三・五島でいいかもしれないというようなことは言っていないということをはっきり言っているわけでありまして、新聞社との正確なやりとりというものは私も承知しておりませんけれども、外務公務員ということでありまして、基本的には私の指揮監督下にあるということで、このような多くの方に誤解を与えたということは大変重大な問題であるということで、私からは厳重に注意をしたということでございます。

松原委員 五月にプーチンさんが日本にやってくる前に、交渉というのは落としどころというのはあるのかどうかわかりません、初めから三・五島なんて話が伝わっていたら、これは交渉にならないですよ。違いますか。

 私は、少なくともこのことで、謝ったからいいだろうとかそういうふうな情緒的なことではない、けじめというものを、だから、それはいいですよ、マスメディアが間違った報道をしたならば、それに対して告発をするのはけじめですよ。もしマスメディアが間違った報道をしていないとするならば、政府代表としての立場に対してけじめをつけるべきでしょう。

 この私の意見に対して、中曽根さん、所感をおっしゃってください。

中曽根国務大臣 新聞社に対しましては、どちらが正しいかということになるとこれはお互いの意見があると思いますが、既に今回のインタビューに関する谷内政府代表のそういう説明ぶりとともに我が国の基本的な政府の方針を伝えているわけでありまして、私どもからこれ以上毎日新聞社に対して申し入れを行うことは考えていないところでございます。

 先ほど申し上げましたけれども、これからプーチン首相も来日いたします、また北方領土の交渉もこれから行っていくわけでありますが、我が国の立場につきましては我々は何ら変わっていないわけでありまして、交渉において、二元外交といいますか、そういうような誤解を与えるということはない、そういうふうに思っています。

松原委員 こういった緊張感のない外交をやっていたら、これはロシアとの外交で敗北しますよ。北方四島は解決できませんよ。それは身内であろうとどうであろうと、けじめをつけなかったら、相手に対してのインパクトなんかありませんよ。それは大臣にはっきり申し上げたい。

 そもそも、今回、プーチンさんがやってきて、日本には大きなチャンスボールが来ているんですよ。これも全部質問で通告していますが、時間がないから私が言いますよ。ロシアは、経済的に今原油の値段が落ちて、そして、北方というこの極東のところまでの資金援助が従来のように来なくなっている状況というのは情報で聞いていますよ。だからこそ我々は、北方四島の人たちもやはり日本政府の方が場合によったら頼りになるんじゃないかという心情を持つ可能性があるときに、今がチャンスなんですよ。

 今がチャンスで、プーチンさんがやってくるときに、こういう相手の前で自己失点をやるようなことはしてほしくないし、失点をしたならば、なあなあではなくてきちっとけじめをつけて、日本政府は緊張感を持って真剣にやっているぞということをやらなかったらだめだと私は思うんです。

 最後に一点だけお伺いしたい。

 私は北方領土関係者なんかから聞いて、北方四島の話が進んだときというのは、基本的に首脳会談を十時間近くやったときだ、三十分、四十分、一時間のアリバイ的な北方四島の議論ではなくて、腹を割って十時間議論すれば、それは相手も理解すると。事実関係をもって理解をさせるまでに、つまり、向こうの関係者から大統領が聞いている、もしくは首相が聞いている話ではなくて、歴史の正当なる事実を得々と説明し、十時間ぐらい議論しなかったらあり得ないという議論がある。

 本気で解決するのなら、時間をとってほしいんですよ、ほかの要素もあるかもしれないけれども。今回は、プーチンさんと麻生さんはどれぐらいの時間、会談を予定しているのか、北方四島というこのイシューに関してだけ、それをぜひお伺いしたい。その時間の長さが極めて重要です、教えてください。簡単にね。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 日程はまだ調整中でございますので、決まっておりません。

松原委員 やる気があるのかということなんです。

中曽根国務大臣 日程を調整中なのは事実でございますから、それはそれで御理解いただきたいと思いますが、今松原委員がおっしゃいましたように、短時間で解決できるものでもないと私も思いますし、それは十時間でも二十時間でも、できることならば政治家同士が本当に気持ちをぶつけ合って、おっしゃいましたように、過去の経緯からきちっと話をしてやれるということが一番理想的なものだとは思っておるところでございます。

 首脳同士忙しいというのはこれは言いわけにはなりませんけれども、現実の会談の中でどれぐらいの時間をとれるか、それは今後、総理も十分心得てこの問題は対応されることと思っております。

松原委員 時間が終わったからやめますが、よろしいですか、プーチンさんが長い時間、北方四島で話したいなんて言わないですよ。我々が言うんですよ、総理同士で。向こうからはそんな時間はとりたくないと言うかもしれない。しかし、八時間はこれだけでやろうじゃないか、次に積み残さないようにしようではないか、クラスノヤルスクの二〇〇〇年が十年おくれているけれども、やろうじゃないか、この意気込みですよ。

 緊張感がないというのは大変遺憾でありますが、来る以上は、私も日本国民の一人ですから、中曽根外務大臣、麻生さんが全力で解決するように期待しております。

 以上であります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 私の方からも、北方領土に関する幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 この委員会でも何回も質問させていただいておりますが、そのたびに自分の立場というかポジションということでお話をさせていただいておりますけれども、愛知にも北方領土返還要求の愛知実行委員会というのがありまして、私はその委員長を務めておるということであります。

 残念ながら、まだ北方領土そのものには足を運んだことはないんですが、北海道の納沙布岬を訪れて、そこから対岸の歯舞、国後を見る、望む、そしてまた、地元の住民の皆さん、あるいは元島民の皆さんといろいろとお話をしてきました。一刻も早い返還を望む、自分たちが生まれ育った、暮らしてきたところに戻りたい、こういう声を聞いてきたわけであります。その経験を踏まえつつ質問させていただきたいと思うんです。

 先ほどから幾つかの問題が出ておりますけれども、私はこういう記事を読んだわけであります。ニュージーランド、またオーストラリアの旅行社が、北方領土の国後、択捉島に上陸するツアーを企画している、こういう報道がある、そしてその際に、ロシアのビザを取得して上陸をするということであるわけであります。これは、現在係争中の日ロ間の領土問題をないがしろにする、我が国の立場に反するのではないか、反すると考えるわけでありますが、外務大臣はいかがな御見解をお持ちでありましょうか。

中曽根国務大臣 日本国民やそれから第三国の国民がロシアのビザを取得して我が国固有の領土である北方四島に入域することなど、あたかも北方四島がロシアの管轄権である、そういうようなことを前提としたかのごとき行為を行うということは、北方領土問題に関する我が国の立場とは相入れない、今委員がおっしゃったように反することでありまして、これは容認できないものでございます。

近藤(昭)委員 まさしく大臣がおっしゃるとおりだと思うんですね。

 そうしますと、このことに対して、ニュージーランドあるいはオーストラリア政府、あるいは当該の旅行社に対して、何らかの申し入れ、あるいは、ここは日本の固有の領土だ、そういうような説明をなさったのかどうかをお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 繰り返しになりますけれども、我が国の国民はもちろんですが、第三国の国民が、この場合はニュージーランドやオーストラリアということになろうかと思いますが、ロシアのビザを取得して我が国の固有の領土である北方四島に入域をするということ、これは、先ほど申し上げましたように、あたかも北方四島に対するロシアの管轄権を前提としたかのごとき行為を行うということであり、容認できない、我が国の政府の立場と相入れないということでありますが、一般論として申し上げれば、このような事案が判明する場合には、領土問題に関する我が国の法的立場を確保すべく、これまでも申し入れを行うなどして適切に対応はしてきております。

近藤(昭)委員 先ほどからも幾つかの答弁があるわけでありますが、個別には、具体的には答えられないけれども、ただそういった日本の立場を主張してきたと。それは、政府に対して大使館を通じてとかあるいは直接とか、あるいは業者そのものに対してとか、そういうようなことはいかがでありましょうか。

中曽根国務大臣 この北方領土の問題につきましては、領土交渉の経緯等を説明する外国語のパンフレットなどを用意してあるわけでありますけれども、在外公館などを通じましていろいろな国々の国民に配布をしていますし、また、我が国の首脳などがインタビューの形で主要国に対しまして領土問題の解決の重要性を訴える発信など、そういう一種の啓発活動もやっております。さまざまな機会をとらえて積極的に実施をしておりまして、海外における北方領土に対する認識はまだまだ低うございますけれども、こういうような我が国の立場というものが広まるようにやっております。

 今後も、そういう活動をさらにやっていきたいと思っておるところでございます。

近藤(昭)委員 そういう活動をしているということがあるんだというのはわかりました。

 ただ、私は、二点申し上げたいと思いますが、一点は、やはりまだまだそういうものが不十分だ、不足をしている、だからこそ、先ほど御紹介させていただいたような、ニュージーランド、オーストラリアの業者がそういったツアーを企画するんだということだと思います。やはり海外で北方領土は日本の固有の領土だということが十分に認知をされていないということの問題点。

 そしてもう一つは、お答えいただきたいのは、先ほど申し上げたのは、個別にはなかなかお答えにくいかもしれないけれども、業者にも直接そうした申し入れというか何らかの説明は行われたんですかということはいかがでありましょう。

中曽根国務大臣 在外公館はたくさんありますので、それぞれの在外公館がどの程度そういう活動を、啓発活動といいますか、各国でやっているかちょっとつかんでおりませんが、実は、私も同じような疑問といいますか、そういうものを感じておりまして、役所の中で、やっていなければそういうところまでやるべきではないかというようなことをちょうどけさ話していたところでございますので、今後のこういう活動といいますか、やり方については、またいろいろ検討していきたい、研究していきたいと思っています。

近藤(昭)委員 大臣、そうしてお話しをいただいたということでありますから、もちろん私は、それぞれの国に対して、その国の政府にというか、直接言う場合もあるでしょうし、在京のそうした大使館等々の関連機関を通してとか、いろいろあると思います。一方で、現実に行っている業者があるわけでありますから、そういったところにもきちっと個別に具体的にいろいろと話をしていくことが非常に重要だと思います。ぜひこのことはきちっと、国際的な認知度を高めるということで頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。

 ところで、逆といいましょうか、今度は、日本の漁業関係者とかあるいは旅行者が個人の資格でロシアのビザを取得して北方領土に上陸をしている、こういう話を聞いたことがあるんですが、このことについて、実態を外務省はどのように把握しておられるのかということをお伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 政府としては、閣議了解に基づいて、四島交流等の枠組みのもとでの訪問を除き北方領土への入域を行わないように国民の理解と協力を要請してきているところでございます。これまで、大方においてその理解と協力が得られているものと認識しております。

 他方、御指摘のような事例があるとすれば、北方領土に関する我が国の立場及び問題の解決を願う国民の総意と相入れず、適当でないと考えるわけであります。特に、北方領土問題が未解決であるために自由に故郷を訪問できず、長い我慢を強いられている元島民の心情を考慮すると、これは本当に適当でないというふうに考えるわけであります。

 したがって、そのような事例が判明する場合には、領土問題に関する我が国の法的立場を確保すべく、関係者に対してしかるべく申し入れを行う等、適切に対応してきておるところでございます。

近藤(昭)委員 副大臣、ありがとうございました。

 今、答弁の中でお聞かせをいただいたように、先ほど冒頭にも私も申し上げましたように、元島民の皆さんが非常に苦渋の思いをして、長いこと待っているというか、いらっしゃるわけでありますし、そういう意味では、日本の固有の領土だから、固有の領土という立場を守ってというか、主張して、耐えていらっしゃるというか、そういう島民の皆さんの気持ちをしっかりと踏まえていただきたいという思いなんです。

 そういう意味で、二つほどお聞かせいただきたいわけです。

 今副大臣がおっしゃった、そういうことがあるとしたらそれは問題である、だからその関係機関にもいろいろと告知をしてというか連絡をしてとおっしゃったわけでありますが、その場合の関係機関というのはどういうところを指していらっしゃるのかということ。

 もう一つは、今の実態をどのように把握していらっしゃるのか。今のお答えの中では、そういうことがあれば、日本の政府の立場に反する、島民の心情に反する、こういうことだったわけでありますが、そういった実態をどのように把握していらっしゃるのか、あるいは、把握していないとすれば、把握するようなおつもりはあるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 国民の北方四島への渡航につきまして、冷戦終了時に問題になりました。一九八九年の九月十九日に閣議で了解をいただきました。そこで、要旨を申し上げますが、ロシアによる北方領土の不法占拠が続いている状況において、ソ連、今はロシアでございますが、の出入国手続に従うなど、ソ連の不法占拠のもとで北方四島、北方領土に入域することは、国民の総意及びそれに基づく政府の政策と相入れない、我が国の多数の遺族が過去十年間にわたって北方領土墓参が中断したことを想起していただきたい、以上から、政府は、国民に対して北方領土への入域を行わないように要請するという閣議了解をしております。

 この後、折に触れまして、こういうことがないかということは常に目を光らせているところでございます。仮にこのような事例が判明しました場合には、今申し上げましたとおり、領土問題に関する我が国の法的立場を確保するべく、これを実際に行う業者の方々を含めて、関係者に対してしかるべき申し入れを行っていく所存でございます。

近藤(昭)委員 ですから、そういうものがあった場合ということでありますから、あった場合にしかるべき対応、そのしかるべき対応はいかなるものかということと、もう一つは、そういった調査をされているのかどうか、するつもりはあるのかどうかということであります。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 必要な情報の収集はしておりますが、どういう仕方をしておるかということにつきましては、内容についてここで申し上げることができないことを御理解いただきたいと思います。

 もしそういう事例がございました場合には、実際にそれを企画している業者も含めて、これまで行かないようにということを説得してきております。

近藤(昭)委員 今のお答えは、そうした業者には注意をするということなのかなと理解するわけであります。

 ただ、もう一つの答えは、ちょっとはっきり、わからないのは、そういった実態があるのかどうかということは調査するのかどうかということであります。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 我々の、外務省としての力が及ぶ限りで必要な情報は集めてございます。ただ、その情報の集め方等につきまして、ここで御開示することは御容赦いただければと思います。

近藤(昭)委員 そういったことで、情報を集めているということでありますけれども、今までにそういった情報はどれぐらいあったかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 過去に、この閣議了解前後でございますけれども、ピースボートという団体が北方四島に上陸を試みようとしたことがございます。そのときには、可能な限り力を尽くして説得いたしましたが、残念ながら強行されることになったことが一度だけございます。

近藤(昭)委員 そうすると、その一件だけだった、情報として来たのは一件だけだったということですか。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 確実なものとして今お答えできるのは、この一件でございます。

近藤(昭)委員 私も、実態を大きく把握しているわけではありませんから。ただ、私が聞いている限りで言うと、そんな一件というようなことではないと思うんですね。そうすると、どういうふうに情報を集めていらっしゃるのかなというふうに思うわけでありますが。

 大臣、総括的でいいので、少しお答えをいただきたいと思うんです。

 私の質問させていただく前にも、何人かの方がこの北方領土の問題で質問されているんです。そういうことでいうと、日本の政府の毅然たる態度、北方四島は我が国の固有の領土だ、四島一括返還にずっと変わりはないんだと。そして、そういう中で誤解というか、何かその立場がないがしろにされているような事案が幾つか出てきている。そのことに対して、今は情報をどれだけ集めていらっしゃるのかな。一件しかないというのは少し、私の想像で言うと、それが実態でないという、私の想像かもしれませんけれども、いろいろなことをきちっとやられているのかなという思いがするわけでありますが、そうしたことをきっちりと実態を調べて、その実態の中では一つ一つきちっと対応していかなくちゃいけないと思うんですが、いかがでありましょうか。

中曽根国務大臣 もう申し上げるまでもありませんが、北方四島は歴史的にも我が国固有の領土でありまして、不法に占拠されているところであります。

 そういう意味で、我が国の国民はもちろんでありますが、第三国の人たちがビザなど発給をしてもらって入域するということは、これは我が国のこの方針と相入れないものでありますし、国益という意味からも大変重大なものでありますので、今後、今委員とのやりとりがありましたけれども、情報の収集等にもさらに力を入れまして、また、そういうような事案というものが事前にわかれば、これをやめさせる、あるいは事後わかった場合には、再度そういうことがないように、しっかりと対応していきたい、そういうふうに思っています。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 そうすると、もう一点だけ、関連して質問させていただきたいと思います。もう既に丸谷委員も質問されていたことであります。

 北方四島在住のロシアの方がこちらに来るときに、いつもならば船で来るところだった、ところが今回、飛行機で来たので、ビザを発給した、こういうことがあった。それに対して、今回は、そういう空路で来たということであるから、一つの、やむを得ないというか、例外的な措置、そんなようなお答えではなかったかと思うんです。

 ただ、私は、それは空路であろうが、天候が悪かったからそういう状況であったといっても、やはりこれは、我が国の立場としては、少し誤解を招くようなことだと思うんです。

 例えば、今後も、こうした天候が悪い、そういうような場合で、空路で来るというとき、このときも北方四島在住のロシアの方にはビザを発給する、こういうことなんでしょうか。

伊藤副大臣 空路で来たからビザを発給したということではなくて、サハリンからロシアの国籍者が入国する場合には、査証というものが必要となるわけです。

 今回、気象条件等によりサハリン経由で来訪する以上、通常の四島住民が直接訪問する場合とはどうしても扱いが異なる。そしてまた、日時が決まっている、しかも、今後の北方領土の返還に対して資する四島交流代表者間会議への参加ということにかんがみて、今回、査証を発給することになりました。これは決して我が国の北方領土に対する法的立場を害するものではありませんし、むしろ、四島交流をしっかり進めるということに資することだと思います。

 そして、今後どうかというお話でございますけれども、今回はまさに例外的な事案であります。ですから、こういう例外的な事案以外で四島住民がサハリンを経由して北海道本島を訪問する必要が生じることは非常にまれだと思いますけれども、仮にそのような事案が発生した場合も、査証の発給の適否については、これまでどおり、訪問の事情や訪問の目的等、さまざまな要素を勘案して慎重に対応するということになると思います。

近藤(昭)委員 私は、サハリンから来たということであった、今副大臣がおっしゃった理由があった、そういうことで特例だったというのが政府の立場、それはわかりましたけれども、やはりこの間、そうした日本の立場を薄めるようなことが多い、毅然と対応していただきたいというふうに思うわけであります。

 それでは、続きまして、簡単にお答えをいただければと思うんですが、既に質問もありましたが、四月十七日のパキスタン・フレンズ東京閣僚会合及び支援国会合のことであります。

 私が特に注目をしているのは、オバマ新大統領が就任をしてから、イラク、そしてイラクに対応する政策、そしてアフガニスタンに対する政策も随分変わってきたなと。アフガニスタンについても、兵員の増強はしたけれども、対話を重視していく、そしてそういう中で、日本に対しても、民生支援を中心に重点を置いて、頑張ってしっかりやってほしいというようなメッセージが来ているようにも思われるわけであります。

 そういう意味で、そういう流れの中で今回行われたこの会合の意義と成果に大変注目をしているわけでありますが、それはいかがでありましたでしょうか。

中曽根国務大臣 テロの撲滅に向けました国際社会の取り組みというものが、今、正念場にあるのではないかと思っておりますけれども、そういう意味では、米国も、イラクからアフガニスタンへ兵員を移して、そちらの治安の維持とか回復にまた力を入れるということでございますが、同時に、そのアフガニスタンと国境を接しておりますパキスタンの治安の維持、回復というものも、またここの安定というものも、地域全体の安定、そして国際社会の安定という意味で非常に重要であるということは、もう言うまでもございません。

 そういう中で、四月十七日に、我が国と世銀が共催をいたしまして、支援国会合を開催したところでございます。この会合には、G8を含む三十一の国と十八の国際機関が参加をし、また韓国、イラン、オーストラリア、アラブ首長国連邦などから外相なども出席をされたわけでありますし、その午前中に行われましたパキスタン・フレンズ会合には、ザルダリ・パキスタン大統領も出席をされたわけでございます。

 この会議におきましては、ザルダリ大統領の経済改革、それから自国のテロ対策、こういうものについて強い政治的な決意というものが表明されたということもありまして、また各国がこのパキスタンの安定の重要性というものも認識をしてのことでございますが、支援国会合では、パキスタンが直面しております経済的な課題とか短期的な開発ニーズ、そういうものについて活発な議論が行われて、そして、会議の結果、御案内のとおり、当初目標といたしました要請額でありました四十億ドルをはるかに超える、五十億ドルという支援の表明があったところでございます。

 今後、パキスタン政府も、こういう国際社会の期待といいますか、そういう支援というものをしっかりと受けとめて、やはり自発的に、自立的に努力をしてもらうということが一番大事でありますし、また我々も、この貴重な浄財といいますか、各国の国民のお金というものの使い道については、これが公平で、また透明で効果的なものであるように、そういうものを注視しながら支援をやっていきたい。そしてさらに、どういう支援が効果があるかというようなことも重要でございますので、今後のフォローアップをしっかりやっていきたい、そういうふうに思っています。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 パキスタンの問題、先ほど申し上げましたように、今までと違った取り組みの仕方をオバマ新政権がしてきた。そういう中で、日本の果たす役割は大きいと思うんです。今、既に大臣も触れられましたように、日本の国民の税金が使われるわけでありますから、適切、有効に、また透明性、もちろんその中では、パキスタンの国民またパキスタンの政府の意向、本当にそこで役に立つ使い方をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、もう余り時間もなくなってまいりましたので、最後、もう一つだけ質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほども、私どもの松原委員が質問をさせていただきましたことに、ちょっと違う角度でありますが、質問をさせていただきたいと思います。

 麻生総理は、四月二十一日から始まった春季例大祭に真榊を私費で奉納した、こういうことであります。本当に多くの人が命を失ったさきの戦争であります。そういった意味で、戦争で命を失った方々に対して敬意を表することは非常に当然であり、重要なことだと私は思うわけであります。

 ただ、靖国神社のあり方については、さまざまな意見があって、いろいろな意見がある。そういう中で、政教分離の問題あるいはA級戦犯の人たちの合祀の問題、こういうことがやはり言われているときがある。そういう中で、麻生総理は、二〇〇六年の八月に、靖国神社を非宗教法人化して、国立追悼施設にすることを主張されておられるわけであります。

 それは重要な解決策の一つではないかなと私も思うわけでありますけれども、そのことに対してというか、こういった国立追悼施設をつくるような考え方に対して中曽根外務大臣はどのようにお考えになられるか、お聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃいましたように、靖国神社のあり方等につきましては、いろいろな議論がずっとあったわけでございますが、今のお尋ねの麻生総理のこのお考えにつきましては、外務大臣として見解を申し上げることは適切ではない、そういうふうに考えておりますが、一般論として申し上げれば、靖国神社のあり方につきましては、これはまずは宗教法人である靖国神社自体が考えるべきことである、そういうふうに思います。

 また、新たな追悼施設につきましては、この追悼施設というのがどういう形でおつくりになるということなのかよく承知いたしませんが、この宗教法人を一たん宗教法人でなくなる形にして、そしてそれを、そのままその場所をそういう新たな追悼施設にするのか、あるいは別につくるのか、よくわかりませんが、いずれにいたしましても、広くいろいろな方々の議論をいただいた上で結論を得るということが大切だ、そういうふうには思います。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 いろいろな意見がある、そしてまた、これは心の問題にもかかわってきますし、現実問題としては、我が国の問題であるとはいえ、大変に国際環境の中でもいろいろと課題が出てくるというところは側面としてはあるわけでありまして、そういう意味では、中曽根外務大臣のお父様の中曽根元首相も、日中間の関係の中で、このことについては大変に御苦労されたということであります。

 そういうことでは、いろいろな意見があるけれども、そういう中で広く意見を募ってこの問題について取り組んでいくということだと思いますが、大臣御自身は何か方向性のようなもので考えておられることがあるのかどうか、最後にお聞きして、質問を終わりたいと思います。

中曽根国務大臣 私も、小学校、中学校のころは、昭和二十年代ですが、靖国神社のすぐ裏の九段宿舎におりまして、あそこで遊んだりもしておりました。やはり何といいましても、かつての戦争、あるいはそれ以前のいろいろなそういう戦争等でとうとい命をなくした方々があそこに祭られておられるわけでありますから、そういう意味では、そういう方々が、そういう方々というより、みたまが本当に安らかにお眠りいただけるような環境づくりをしなければならないと思っておりまして、どういう方法がいいかは、先ほど申し上げましたように、十分な議論をして、これを方向づけをしていったらいいんじゃないかと思っております。

近藤(昭)委員 きょうはこれで終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。ありがとうございます。

 それでは質疑を行わせていただきますが、お手元の方に、政府代表の谷内前外務事務次官の資料を配らせていただいておりますが、きょうは、このいわゆる北方四島の面積等分論でしょうか、これについての発言ということで、谷内政府代表に本委員会に出席をお願いしたわけでありまして、これは参議院の外防委員会でも同様の出席要請があり、その中で、外務大臣からは、外務大臣の指揮命令のもとにある谷内政府代表である、その出席要請もしているというような話も参議院でもあったわけですが、きょう、なぜ御出席いただけなかったのか、改めて外務省から御説明をいただくのと、同様に、外務大臣からも出席要求を求めていただいたのかどうか、確認をさせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 国会からの出席の要請があるということは、事務方を通じまして谷内政府代表にその旨を伝えさせました。他方、谷内代表は、本日は、お聞きしましたところ、障害者の支援団体や、また大学関係者、あるいは外国人等との複数の重要なアポイントが以前から予定されており、どうしても都合がつかない、そういうことでございましたので、私自身は、急でもありますけれども、谷内政府代表は非常勤であり、また無報酬の政府代表ということで、他の職業を兼務しているということもありまして、あるいはこれを前提として政府代表の職務についてもらっているということもございますので、きょうの国会出席は困難であるという、本人のそういう返事を、事情を理解した次第でございます。

武正委員 そもそも、政府代表というのは非常に聞きなれない名前なんですけれども、これはだれが任命をして、それから、たしか首相官邸にも部屋を持っておられるということで、秘書の方も一人おられるという話なんですけれども、どういう身分ということでよろしいんでしょうか。

中曽根国務大臣 政府代表は、これはもう外務大臣が申し出て、そして内閣によって任命されるものでございます。そして、その任務の内容にかんがみまして、個別の事案について、内閣総理大臣のまた直接の指示を受けるということは十分あり得ることでございまして、そういうところからも、今回の谷内政府代表の場合は、総理官邸の中に仕事場をいただいておるということでございます。

武正委員 内閣が任命をするというふうに言われましたけれども、その前に外務大臣が、ちょっとそこの点をもう一度。

中曽根国務大臣 外務大臣が内閣に申し出て、そして内閣が任命するということでございます。

武正委員 今、この谷内政府代表は、外務大臣が申し出て、内閣が任命をして、実際、このインタビューはワシントンで行われているわけなんですけれども、今ワシントンで、もう帰国をされましたけれども、具体的にどのような任務をされているのか承知をされておられますでしょうか。

中曽根国務大臣 ワシントンにおきましては、この四月の十五日から十七日の間は、第三回日米シーパワーダイアローグへの出席をしていたということでございます。

武正委員 ちょうど間もなくプーチン首相も来日をされるわけですし、同時期に、外務省の局長も今モスクワに行っておられるようで、当然、プーチン首相訪日前という、こういった時期なんですけれども、例えば、ここに新聞記事がありますのでちょっと読み上げますが、

  サハリンでの日露首脳会談では「新たな、独創的で型にはまらないアプローチ」という考えを確認した。日本側が四島、あるいは二島、ロシアがゼロというのでは両国民の納得できる結果は出てこないと思う。エネルギー、環境、北東シベリアの開発といった大きな戦略的構図を作り出し、その中で北方四島の問題を位置づけなければいけない。それが「型にはまらない」アプローチだ。返還後の北方四島は、非軍事的な地域にすることを日露間で合意するという案もありうる。

  私は三・五島でもいいのではないかと考えている。北方四島を両国のつまずきの石にしないという意思が大事だ。二島では全体の七%にすぎない。択捉島の面積がすごく大きく、面積を折半すると三島プラス択捉の二〇〜二五%ぐらいになる。折半すると実質は四島返還になるんですよ。

こういったことをインタビューで述べ、こうして記事が配信をされ、聞くところでは、ロシアの経済有力紙でもこのことが取り上げられているということであります。

 これは、やはり政府の代表でありますから、政府の意思として、こういった三・五島、面積等分論というものを今掲げて、ちょうど領土交渉も行っている、そして、プーチン首相来日に、ちょうど今のこの大事な時期に、こうした考え方を表明しているという理解でよろしいんでしょうか。

中曽根国務大臣 政府代表でありますから、発言は非常に重いものであると私も思っております。

 ただ、この新聞記事のインタビューでの政府代表の発言ということにつきましては、発言がこのとおりであれば、これは政府の方針と違うというところがあるということから、私たちも大変これを重視して、本人にそのような発言をしているのかどうか問い合わせをいたしました。

 本人からは、最初私が電話でアメリカにいる谷内政府代表に、その前に谷崎局長が本人と電話で接触したわけでありますが、二十日に、私に対しましては、三・五島返還でもいいのではないかと考えているといったような発言は行っていないと。しかし、全体の発言の流れの中で誤解を与え得るものがあったかもしれず、結果として関係者に誤解を与えてしまったことは大変遺憾である旨の、そういう説明があったわけであります。

 私も、本当に誤解を与えるようなことがあれば、これは大変重大なことでありますし、谷内代表のこの発言が結果として誤解を与えたと、本人によりますとそういうことでございますので、本人に対しては、誤解を与えたということは、これは重大なことであるからということで、厳重に注意をしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、政府といたしましては、北方四島の帰属の問題を解決して、そして、ロシアとの間で平和条約を締結するという基本方針のもと、北方四島の返還を実現していく、そういう従来からの立場に変わりはないわけでございます。

武正委員 とすると、例えば、北方四島の帰属が日本であることを確認すれば、その後、その返還交渉では、このような面積等分論もあり得るということでしょうか。

中曽根国務大臣 北方四島の日本への帰属でございますから、四島でございますから、その後は、従来から申し上げておりますように、この帰属がはっきりと、これを明確にした後は、時期とかその他の対応ですか、そういうものは柔軟に協議をしていく、進めていくということでございます。

武正委員 北方四島の帰属は日本だと。しかしながら、例えば、返還の仕方は、このように面積等分論で返還をしていくというようなことが、その柔軟なということに含まれるということでしょうか。

中曽根国務大臣 柔軟なというのは、四島の帰属を確定する、それは我が国に確定するということでございますから、面積等分論とかそういうものは、政府は一切そのような見解とか発言とか、そういうものは行っておりません。

武正委員 三年前の当外務委員会での当時の麻生外務大臣の答弁というものが、この間も海賊特でも取り上げられたと思います。もう一度おさらいをしてみたいと思いますが、我が党の前原委員とのやりとりであります。

 いわゆる歯舞、色丹が四島で何%、では三島、国後まで入れたら何%か、大臣、御存じですかということに対して、

  御指摘は正しいと思いますが、半分にしようじゃないかといいますと、択捉島の二五%を残り三島にくっつけますと、ちょうど五〇、五〇ぐらいの比率になります。大体、アバウトそれぐらいの比率だと存じます。

その後またやりとりの中で、

  したがって、半分だった場合というのを頭に入れておりましたので、択捉島の西半分というか、南のところはもらって初めてそれで半分よという話になるんだと存じます。幸いにして、右というか東方、北東の方に人口は集中しておりますので、そこらのところの人口比が圧倒的に多いというのも事実なんですが、いろいろな意味でこれは交渉事ですから、今いろいろ交渉していくに当たって、現実問題を踏まえた上で双方どうするかというところは、十分に腹に含んだ上で交渉に当たらねばならぬと思っております。

その後また、

  前原先生言われるように、いい時期に来ているというのは、私もそう思います。少なくとも、これはいわゆる事務レベルで話がつく話とは思いません。これは政治決着以外に方法はないと思っております。

最後に、

  いずれにいたしましても、プーチン自身にこの問題は解決したい、せねばならぬという意欲というものは、私自身もそう思いますので、時期としてはいい時期になりつつあるのではないかという御指摘は正しいと存じます。

これは三年前の外務委員会のやりとりでありまして、実は、この谷内政府代表、現総理、麻生内閣が任命をした。この谷内政府代表の発言というものは三年前の当時の麻生外務大臣の発言と符合するわけですが、今、政府としては面積等分論ということはないということですが、実は麻生総理が外務大臣当時から温めていた考えと符合するのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか、外務大臣。

中曽根国務大臣 今、前原委員との総理のやりとりを委員が御紹介されましたけれども、私がそれをもう一度繰り返すところもあるかもしれませんが、前原委員がこういうふうにおっしゃっています。

  ただ、一つ私が気になりましたのは、例えば二島先行返還のときもそうだったのでありますが、果たして、そういう議論をされている方々というのは、島の大きさというものをちゃんとわかっておられるのかということなんですね。四島あって、半分は二島じゃないんです。

  御存じであればお答えをいただきたいと思いますけれども、歯舞、色丹が四島のうち何%で、では三島、国後まで入れたら何%か、大臣、御存じですか。

そういうふうに前原委員が、当時は大臣ですか、麻生大臣にそういうふうに御質問されて、麻生大臣は、

  御指摘は正しいと思いますが、半分にしようじゃないかといいますと、択捉島の二五%を残り三島にくっつけますと、ちょうど五〇、五〇ぐらいの比率になります。大体、アバウトそれぐらいの比率だと存じます。

そういうふうにおっしゃっているんですね。

 それで、麻生総理が、今おっしゃったようなといいますか、言われているような解決策に、御指摘の解決策に言及したことはないと承知をしておりますし、この点につきましては、きのうの衆議院の海賊・テロ特別委員会におきまして、麻生総理が、北方領土問題に関する政府の考え方は変わっていないと明確に述べられておられるとおりでございます。

武正委員 この間のやりとりでもこのようなことを言っております。

  御指摘のありましたとおりだと存じますが、基本的には、いわゆるこの話をこのままずっと二島だ、四島だ、ゼロだ、一だというので引っ張ったまま、かれこれ六十年来たわけですが、こういった状況をこのまま放置していくというのが双方にとっていいかといえば、これは何らかの形で解決する方法を考えるべきではないか。これはプライオリティーの一番です。

ということを言っていまして、今回の谷内政府代表のこのインタビュー記事が、総理の考え、三年前からのそうした考えと符合するのではないかということを思いますと、やはりプーチン首相来日前のこの時期に、日本の領土問題に臨む原則をゆがめるものになるのではないかなというふうに危惧をいたします。

 そこで、先ほど四島の帰属を確認して、平和条約の締結という政府の方針を述べられましたが、これはいわゆる日ロ関係に関する東京宣言ということでよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 東京宣言は日ロ間でつくったものでありますが、先ほどから申し上げている点は、これは政府の一貫した我が国の考え方ということでございます。

武正委員 東京宣言ではいわゆる三つの前提があるんですね。「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題について真剣な交渉を行った。」というその後に、「双方は、この問題を歴史的・法的事実に立脚し、」これが第一点目。そして「両国の間で合意の上作成された諸文書」、これが二点目。「及び法と正義の原則を基礎として解決することにより」、三点目。この三点のもとに、「平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し、もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する。」ということであります。

 やはりこの「歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決することにより」というところが四島の帰属に関する問題についての我が国の原則ということをきちっと踏まえますと、このように、三・五島でいいではないかということを政府代表が発言したという報道が流れると、単に、帰属が確認されれば、その後の返還の、例えばスケジュールとか方法とか、これは非常に柔軟なんだというようなことで、しかも、独創的なアプローチということをメドベージェフ大統領が提案し、それについても確認をしたということしの二月の日ロ首脳会談などが流されますと、どうも東京宣言の三つの条件というものがないがしろにされているのではないかというふうに危惧をするわけであります。

 この点については、間もなくプーチン首相訪日でありますので、やはりこの領土問題については、それこそこの東京宣言の三つの原則というものをしっかりと堅持していただくよう、改めて外務大臣、御確認をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 今、委員から、一九九三年の東京宣言について改めて御紹介といいますか御説明いただきましたけれども、今後の交渉におきましても、従来もそうでありますけれども、この四島の帰属の問題、これをはっきりと位置づけをした上で、これも御紹介いただきましたけれども、「歴史的・法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決する」という明確な交渉指針を示した重要な文書であるということでありますので、これに基づいてしっかりとやっていきたいと思っております。

武正委員 ともすると、四島の帰属を確認し、そして平和条約の締結ということで、非常にはしょった説明がこれまで当委員会でもされてきた経緯がありますので、改めて今の三つの点というのをこの際御確認いただいたというふうに考える次第であります。

 そこで、プーチン首相訪日も近いわけでありますが、訪日に当たってどういうことが今予想されている、両国間の交渉あるいは合意、条約等があるのか、また領土問題についてはどのような交渉が行われると予想されるのか、御説明をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 プーチン首相の訪日につきましては五月に行うということで日ロ双方で一致をしておりますけれども、具体的な日程については現在もまだ調整中でございます。

 そこで、訪日のときにはこれは領土問題について当然議論することになると思いますが、四月のロンドン・サミットにおける麻生総理とメドベージェフ大統領との、このときは立ち話でありましたけれども、その際に両首脳の間で、来るプーチン首相の訪日の際には二国間のさまざまな問題について幅広く議論することで一致もしておりまして、そういうことからも、プーチン首相訪日時には領土問題についても当然議論することになる、そういうふうに思います。

武正委員 懸案の日ロ原子力協定については、この際、締結というようなことになるのか、この点、おわかりいただけますでしょうか。

中曽根国務大臣 幅広い議論を行うということになると思いますが、原子力協定についてはまだ鋭意作業中ということでございます。

武正委員 新たな独創的で型にはまらないアプローチということで、ここで、例えば谷内さんは、「エネルギー、環境、北東シベリアの開発といった大きな戦略的構図を作り出し、」というようなことを言っておりますけれども、メドベージェフ大統領とのそうした合意というもの、新たな独創的で型にはまらないアプローチというのはそうした原子力協定も含めたものであるということでよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 新たな独創的で型にはまらないアプローチというのはメドベージェフ大統領がおっしゃった言葉でございまして、ロシア側のこの問題に対する取り組みの姿勢をあらわしたものだ、私はそういうふうに思っております。

武正委員 そのように海賊特でも総理が言ったんですけれども、でも、それに合意をしたのではないんでしょうか。確認をしたのではないんですか。麻生総理もそれについて合意をして、やはり新たな独創的で型にはまらないアプローチということで臨んでいこうということではないんでしょうか。

中曽根国務大臣 これは二月の十八日にサハリンで行われました日ロの首脳会談、ここでのやりとりでありますけれども、麻生総理とメドベージェフ大統領との間で突っ込んだ議論を行いました。

 そして、その結果、両首脳は、もう委員も十分御承知の四点でございますが、一つは、この問題を我々の世代で解決すること、それから二番目は、これまでに達成された諸合意及び諸文書に基づいて作業を行うこと、三番目が今お話がありました、メドベージェフ大統領が指示を出しました新たな独創的で型にはまらないアプローチのもとで作業していくこと、そして四番目が、四島の帰属の問題の最終的な解決につながるよう作業を加速するため追加的に指示を出すことということで一致をしたわけでありまして、先ほど申し上げましたけれども、今委員もおっしゃっておられる新たな独創的で型にはまらないアプローチとはメドベージェフ大統領が指示を出したものでございまして、具体的な提案という性格のものではなくて領土問題の最終的解決に向けた同大統領の取り組みの姿勢を述べたもの、ロシア側の姿勢を述べたもの、そういうふうに理解しております。

 これはこの問題に真摯に取り組もうとする、そういうメドベージェフ大統領の姿勢のあらわれであると認識をしているわけであります。

武正委員 ただ、今のは合意文書ですよね。今の三点目は、そうした独創的で型にはまらないアプローチのもとで作業をしていくことということで合意をしているわけですから、一方的な提案ではない、日本側もそれに同意をした合意文書だというふうに私は思います。

 そこで、ちょっと時間も押してまいりました。財務省政務官、最後、ちょっとお聞きをして恐縮でございますが、アジア開発銀行の総会が連休中でしょうか、あるということであります。

 私は、この間、ASEANプラス3、タイで開かれたわけですが、残念ながら、いろいろな会議が中止になって、総理や財務大臣ですか、外務大臣も、財務大臣は行っていなかったと思うので、外務大臣も急遽帰国をしなければならなかった。やはりこの国際的な金融危機、この中でアジアの果たすべき役割、その中で日本の果たすべき役割は大きいものがある。

 本来は、ASEANプラス3で、総理もそういったメッセージを出すはずだったのが急遽帰国しなければいけなかったという中で、今度のアジア開発銀行総会の持つ意味というのは大変大きいというふうに思うんですが、この総会でどのようなことが予定をされ、合意をするのか。また、今言ったようなアジアにおけるそうした金融の安定化の中で日本が果たすべき役割、これをどのような形でメッセージとして出す予定なのか、御説明をいただきたいと思います。

三ッ矢大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、実は五月の四日にバリ島でアジア開銀の総会がございます。

 アジア各国の経済の状況を今見てみますと、どの国もやはり景気の後退というんでしょうか、顕著に見られておりまして、アジア開銀に対しても融資の申し込みがかなり、殺到とまでは言いませんけれども、ふえてきておるという状況だというふうに聞いております。

 また、実は、アジア開銀に対する増資の問題がございまして、この件に関しては昨年来話がなされてきております。今の状況を踏まえて、特に、実体経済がアジア各国に及ぼしている影響、アジア各国の持続的な経済成長を確保するためにもアジア開銀の果たす役割は非常に大きいというふうに思っておるところでございます。実は、四月の二日に首脳会合の中で、二〇〇%増資をしようじゃないかという話が合意をされておりまして、ADBにおきましても四月の六日の理事会でこの内容が確認され、承認されたところでございます。

 五月の四日の総会におきましては、この中身をまず確認させていただくということになろうかと思いますが、アジア各国の経済成長を持続的に可能にするためにもきちんとした融資がADBを通じて行われる、それがひいては我が国の経済の回復にとっても非常に有効であるというふうに考えておりまして、五月四日の総会におきましては、この点を踏まえて、日本として増資にきちんと応じること、また、アジア開銀並びに加盟国と緊密な協力関係を築いていくことをメッセージとして発していきたいというふうに考えております。

武正委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

河野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 ことしは国連女性差別撤廃条約採択三十年、そして選択議定書採択の十年目という節目の年であります。

 この選択議定書の締約国は、現在、九十六カ国でありますけれども、我が国はまだだということで、G8の中では日本と米国だけ、米国は条約そのものにまだ入っていませんが、そういう状況で、日本の批准を求める声は文字どおり思想信条あるいは党派の違いを超えて広がっており、幅広い女性団体を結集する国際婦人年連絡会や日弁連なども早急な批准を掲げて取り組んで、参議院では請願が十一回も採択されている。ことし七月二十三日には国連女性差別撤廃委員会で日本政府が提出した第六回報告の審査が行われて、批准に踏み出すかどうか、国際的にも注目をされております。

 そこで、まず内閣府に伺います。

 第二次男女共同参画基本計画では、「選択議定書の締結の可能性について、検討を行う。」といふうにしております。七月の審査に向けて批准への積極的な姿勢を示していくことがこれは大きな意義があると思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

板東政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問がございました女子差別撤廃条約選択議定書におきましては、個人通報制度、それから調査制度が定められているところでございまして、特にこの個人通報制度につきましては、女子差別撤廃条約に定める権利を侵害されたというように主張する個人などが通報を行い、そして女子差別撤廃委員会が受理してそれを審査、検討するという制度でございまして、条約の実施の効果的な担保を図るものというふうに考えているところでございます。

 今御質問いただきましたように、男女共同参画基本計画の第二次におきましても、この議定書の締約の可能性について検討を行うというふうにされているところでございまして、御説明をいただきましたように、今九十六カ国が既に批准をしているという状況でございます。

 ことしは、今御説明いただいたように、大変重要な節目の年ということもございまして、国の内外から注目をされているということもあるわけでございます。条約の批准に向けての姿勢というのを示していくということにつきましては、男女共同参画の推進の取り組みの姿勢を内外に示すという意味で意義があるものというふうに考えております。

笠井委員 外務省に伺いますが、選択議定書を批准する国際的意義についてどうとらえているか。また、その批准をめぐってどういう検討を行っているでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども別途の政府委員の方からお話がありましたように、この差別撤廃条約選択議定書に設けられております個人通報制度につきましては、条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨から注目すべき制度ではないかというふうに考えております。

 他方、個人通報を受理した委員会の見解と我が国の裁判所の確定判決の内容が異なる場合など、司法権の独立を含め、我が国の司法制度との関連で問題が生じるおそれがあり慎重に検討すべきであるとの考え方もございます。

 政府といたしましては、政府全体といたしまして、このような状況も踏まえて、個人通報制度の受け入れの是非につき、真剣かつ慎重に検討を進めているところでございます。

 外務省といたしましては、この関連で、個人通報制度関係省庁研究会を過去四十回ほど開催いたしております。最近におきましては、別途、個人通報制度関係省庁研究会というのを立ち上げまして、これまで十二回、関係省庁でいろいろな問題点について検討しているところでございます。

 引き続き、政府全体で真剣かつ慎重に検討をしてまいりたいと思っております。

笠井委員 今お答えがあったんですれども、外務省の答弁で、五年前の二〇〇四年に我が党の参議院議員が連名で質問主意書を出しまして、内閣から答弁書が来ましたけれども、当時も、政府は、注目すべき制度だけれども、司法制度との関連で問題が生ずるおそれがあり慎重に検討すべきとの指摘もあり、真剣かつ慎重に検討と、まさに同じ答弁なんですよ。五年間同じことを言われているわけであります。

 この個人通報制度というのは、締約国が、みずから締約した条約について、その実施をまさに効果的にするために仕組みを設けようというものであります。そして、二〇〇三年の国連の女性差別撤廃委員会の最終見解というのがありましたけれども、このメカニズムについては、司法の独立についてはそれを強化して、司法が女性に対する差別を理解する上での助けとなると確信していると。だから、司法の独立を侵すものじゃないということを言っているわけですね。既に入っているところも、実際そういう問題が起こっているという話は聞いていないということであります。

 まさにそういう点でいいますと、この五年間に真剣かつ慎重な検討が一体どこまで進んだのか。何回やってきましたという数字はありましたけれども、研究会をいつ開いて、どういう構成で、どんな検討をして、事例を収集してケーススタディーを行っているということでありますけれども、どんな事例を検討して、どんな問題が明らかになったか、議定書を批准する上ではどんな課題、論点があるのか、そして七月までにどうするのかということを、少なくとも進捗状況や目安について国民の前に具体的に明らかにするべきじゃないかと思うんですが、その点はどう考えますか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 司法の独立につきまして、私がここでちょっと有権的に申し上げるわけにはいかないということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で、先ほどの若干繰り返しになりますが、別途また詳しくは何らかの形で整理して御説明をいたしたいと思いますが、外務省といたしましては、平成十一年十二月から、外務省、法務省の関係部局、それに最高裁判所からオブザーバーをいただきまして、三名の大学教授を学識者として招きまして、通報制度自身に関する研究会を実施しております。これは、自由権規約委員会における審理を中心に分析、研究いたしまして、それらの論点について検討を行っております。これが、私が先ほど申し上げました計四十回という会合でございます。

 それで、平成十七年十二月にこの研究会を改組いたしまして、さらに関係省庁に広く参加を呼びかけた上で、個人通報制度関係省庁研究会という形で立ち上げまして、十二回の会合を開催しております。

 それぞれの会合で取り上げた題目等につきましては、別途、必要でありましたら御報告をいたしたいと思います。

笠井委員 ですから、枠の話しかわからないんですよ。ずっとこの問題は課題になってきて、言われてきて、慎重かつ真剣にやると言い続けてきて、では、どこがどこまで詰まって、どこが問題、課題が残っていて、どういうふうになっていくのかと、今自民党席からもうなずいている顔がいらっしゃいますけれども、まさにそれが国民の前やかかわっている人たちに明らかになっていない。これで七月が来るわけですから、こういう態度ではだめだと思うんです。

 もともと我が国は、条約の締約国として、その積極的な遵守、実施をうたっているわけでありまして、そうであるなら、選択議定書の批准というのは、人権や女性差別撤廃の国際的な流れ、そういう視野で国内の施策を積極的に検討する機会になるものであります。七月の審査というのは目前でありますから、速やかな批准を目指して努力をする、具体的に一歩踏み出すべきだということを強く求めておきたいと思います。

 そして、この七月の審査とも係りますが、女性差別撤廃に向けた国内の状況について、しっかり検討して取り組みを詰めることが求められていると思います。

 最近、妊娠、出産を理由にした不利益な取り扱いや育児休業の取得などを理由とする解雇などが急増していることが大きな問題になっております。育休切りということまで言われている。

 そこで、厚生労働省に端的に数字を伺いますが、育児休業に係る不利益取り扱い、妊娠、出産等を理由とした解雇等の不利益取り扱いの労働者からの相談件数、直近の二年間でそれぞれ何件でしょうか。端的に数字だけお願いします。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの妊娠、出産、産前産後休業及び育児休業の取得を理由とした解雇その他の不利益取り扱いに関する労働者からの相談件数でございます。

 解雇その他不利益取り扱いに関する相談件数につきましては、妊娠、出産などに関するものが、十九年度千七百十一件だったものが、二十年度につきましては、これは二月末までの集計でございますけれども、千八百六件、育児休業に係るものが、同じく十九年度は八百八十二件だったものが、二十年度は、これも二月末までの集計でございますけれども、千百七件となっているところでございます。

笠井委員 相談件数は、年々大幅にずっと、五年間見てもふえているんです。労働局への相談まで至らないケースも少なくないと思われますので、氷山の一角であります。深刻な状況が広がっている。

 私の地元事務所に寄せられた相談で、こんなケースがございます。日本航空の客室乗務員の女性でありますけれども、昨年十月に第三子を妊娠していることがわかりました。会社に通告すると乗務資格を停止されることになっておりまして、以前はこうした場合は休職か地上勤務を選択できたわけでありますが、昨年四月から会社が認める場合のみ、つまり妊娠確認を通告した時点で地上勤務先にあきがあった場合のみ地上勤務につくことができて、そうでなければ無給の休職が発令されることになりました。

 この方は、地上勤務にたまたまというか、ちょうどそのときにはあきがなくて、現在無給で、配偶者にもほとんど収入がないということで、二人のお子さんを含めて四人家族が貯金を切り崩しながら、生活に困っていらっしゃるとおっしゃっていました。労働局の雇用均等室にも相談をして、労働基準監督署に申告もしておられるということでありますけれども、ほかにもそういう方がたくさんいらっしゃいます。

 厚労省に伺いますけれども、労働基準法の六十五条の三項では、「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。」としております。これは努力規定ではなくて強行規定ということでよろしいですね。そのことだけ端的に答えてください。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法第六十五条第三項でございます、使用者は、妊娠中の女性が請求した場合に他の軽易な業務に転換させなければならないこととされておるところでございます。これは、妊娠中に就業する女性を保護しようとするものでございまして、女性が請求した場合を条件として、他の軽易な作業に転換させるものであるとされているものでございます。

 なお、当該規定につきましては、他の軽易な業務がない場合において、新たに創設して与える義務までを課したものではないというものでございます。

笠井委員 この日本航空の日本人の客室乗務員の方は約七千人おられますけれども、九九%以上が女性であります。その一人一人が、定年が六十歳なんですけれども、六十歳までの人生において結婚もなさる、妊娠もなさる、そして、子供も産み育てるということが当然ある職場であります。安全運航のために、保安要員としても経験とチームワークがどうしても必要だ。使用者はそういうことを承知の上で雇用をしているわけでありまして、この職場で妊娠、出産は当たり前のことであります。

 だからこそ、妊娠したときに当然転換すべき軽易な業務をつくっていなければならない。そうでなければ、安心して働き続けられません。他に転換すべき軽易な業務がないのではなくて、会社側が用意していないのが問題だと思うんです。こういうことが条約締約国として放置されていいのかと私は思います。

 そこで、厚労省、労働基準法のコンメンタールを見ますと、二十六条の、休業手当を支払うべき、使用者の責に帰すべき事由というのがありますが、その第一に使用者の故意ということなどを挙げて、それよりも広いんだということをあえて書いています。

 こういう客室乗務員という業務の場合に、使用者が軽易な業務を用意していないこと自体が使用者の故意ではないか。それを逆に無給の休業とは許されない。二十六条の支払い要件は使用者の故意が第一でありますから、だから、軽易業務がなくて休職だったとしても、せめて休業手当は支払わなければならない、六割の手当を支払って当然だということではないかと思うんです。

 雇用均等局は、労働基準局ともよく協議をして、そういう点での検討をぜひすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法第二十六条におきまして、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合でございますけれども、「使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」とされているところでございます。

 他方、労働基準法六十五条第三項の規定に基づきまして、妊娠中の女性が請求した場合には、使用者は他の軽易な業務に転換させなければならないこととされているところでございますけれども、これは、先ほど申し上げましたとおり、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではないとされているところでございます。

 このため、一般的に申し上げますと、客観的に見て他に転換すべき軽易な業務がない場合で女性がやむを得ず休業する場合につきましては、同法二十六条の使用者の責に帰すべき事由には該当しないため、休業手当の問題は生じないのではないかと考えられるところでございます。

笠井委員 だから、ないのではなくて、新たにつくるんじゃなくて、そもそも用意していなきゃいけない性格の問題だと思うんですよ。この二十六条とそれから六十五条の三項のかかわりで、ぜひそこは、そういう視野から、視点から検討すべきだと。検討しますぐらいちょっと答弁しないと、これ、大変なことになりますよ。一体何のために労働行政があるのかという問題になりますよ。

 もう一回答弁してください。

北村政府参考人 先ほどの個別の事例についての判断につきましては差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的には、軽易な業務がある場合でありましても、当該業務に従事させる労働者が足りており、新たに労働者を従事させる用意がない場合には、転換すべき軽易な業務がないものと考えられるところでございます。

笠井委員 委員長、これはひどい話で、せめて休業で六割ぐらい払わなかったら、大変ですよ。だって、個別の企業といったって、具体的にそういう企業でそういう働き方をしているところがあるわけですよ。その問題を解決できなかったらだめじゃないですか。これぐらいのことを検討できないようでは、六十五条の三項の意味がありません。これは、ちょっともう一回だけ、検討する、研究するぐらいのことは言わなきゃだめですよ。

北村政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のような事案につきまして、個別事案に係るお答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、女性が妊娠、出産、あるいは子育て時におきましても働きやすい職場を、使用者側の負担とそしてまた労働者側の御希望を踏まえながら、労使が協力してつくっていただくことが望ましい、これは当然だというふうに考えております。

 私ども厚生労働省といたしましても、都道府県労働局雇用均等室におきまして労働者からの相談があった場合には、関係部局あるいは関係部署と連携を図りながら、丁寧に対応してまいりたいと考えております。

笠井委員 こういう職場で軽易な業務を用意できなかったということであれば、そもそもそういう会社をやる資格が問われますよ。これでは、子供を産むことができない、妊娠してもしばらく隠しておくという人が出るんじゃないかと実際に職場で声が上がっているというふうに伺っております。働きながら安心して子供を産むということがこれではできないという現状なんですよ。

 だから、今最後に言われた点をしっかり踏まえて、これはせめて休業で六割は払うというぐらいでやらないとだめです。そういう検討をぜひやっていただきたいと思います。

 最後に、大臣、一言、女性差別撤廃条約は、第十一条の中で、締約国は「妊娠中の女子に有害であることが証明されている種類の作業においては、当該女子に対して特別の保護を与える」というふうにしております。

 今の話ですけれども、会社は有害だから乗務資格を停止して乗務を外すということにしているわけで、問題は、無給の休業、休職になった場合に、そういうことを強制されているということなんです。これでは特別の保護にならないというふうに思うんですよ。それを、大臣、この項目も含めて、つまり、この十一条も含めて、差別撤廃条約の二十四条では、この条約の認める権利の完全な実現を達成するためのすべての必要な措置をとる、これをちゃんと約束しているわけですから、このことについてしっかりやる、条約に沿ってしっかりやるという決意を述べていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 まず、お述べになりました十一条の二項でございますが、締約国が、婚姻または母性を理由とする女子に対する差別を防止し、そして、かつ、女子に対して実効的な労働の権利を確保するための適当な措置をとる、そういうことが定められているわけでありますが、我が国といたしましては、この規定に定められた権利等を確保するために、関連法令のもとで適切な措置を実施しているところではございます。

 今お話がありましたけれども、女子に対する差別が、権利の平等の原則、そして人間の尊厳の尊重の原則に反して、社会と家族の繁栄の増進を阻害するものである、そういう考えのもとに、各条約国が男女の完全な平等の達成を目的として、女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃するということを基本理念としているわけでありますが、もう三十年たちますけれども、今日においてもこの理念の重要性というのは変わらないものでございまして、政府といたしましても、この条約の目的の達成に向けて引き続いて取り組んでまいる所存でございます。

笠井委員 先ほど取り上げた例について言いますと、適切な、適当な措置がとられていないということでありますので、その辺は、大臣もぜひ舛添大臣ともよく協議をしてもらって、きちっとこういう方が出ないようにしっかりと、せめて六割は休業補償する、支給するということが実現できるように頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

河野委員長 次に、保坂展人君。

保坂委員 社民党の保坂展人です。

 きのうブリュッセルで開催されたソマリア支援会議ですが、橋本外務副大臣が二十億円を拠出するという表明を行ったと報道がされております。他方、私は一昨日、海賊・テロ特別委員会で審議をしましたが、この平成五年、九〇年代前半、ソマリアの統治が崩壊をした、このときにさまざまなアプローチをしているわけですけれども、二十七億円の分担金というのが外務省所管の決算報告書に出ておりまして、これをどういうふうに使ったのか、こういうふうに聞きましたところ、全く把握をしていない。私は実は、これを文書で、日本は前の年に一億ドル、百二十九億円のソマリア信託基金への拠出をしました、それ以外ありませんか、ここに議事録もつけておきましたが、それ以外ありませんかと聞いて、ありません、この基金のみですと言って、では、この二十七億円は何なのかと言ったら、答えられない。

 まず、総政局長、中身に入る前に、もうちょっと準備をして答弁をしていただきたい。一言謝罪してください。

別所政府参考人 総合外交政策局長でございます。

 今御指摘いただきましたような形で、私の答弁が不十分であった、準備が不足であったという御指摘でございます。それについては、私、この場で申しわけなかったと申し上げたいと思います。

保坂委員 それで、中曽根大臣がこのやりとりを聞いていて、しっかり調べさせます、こう答弁をいただきました。ソマリア、今、海賊の法案はきのう衆議院を通っていきましたけれども、日本はまた新たな出資をする、こういう事態になっています。

 さあ、では二十七億円はどう使われたのかといったら、資料の二枚目につけておきました。こういったペーパーが来たんですね。二十七億九十一万円を流用したというふうに書いてあるが、これはソマリアにおける国連PKOの分担金に支出されたものと思われると。支出されたというんじゃないんですね、思われると。思われるというのは一体何ですか。思われるというのはどういうことですか。確認できない使途不明金とはこういうことですか。

別所政府参考人 ただいまの二十七億九十一万円の話でございますが、平成五年度の外務省所管歳出決算報告書には、国連ソマリア活動等に係る分担金を国連に支出することとなったため、経済協力国際機関分担金という予算科目から二十七億九十一万円を流用した旨が記載されております。

 我が国は、一九九二年に設立された国連ソマリア活動とかその後継の国連PKOに対して分担金を支出しているところでございまして、この二十七億九十一万円の全額ないし多くはこのソマリアにおける国連PKOの分担金に支出されたものとまさに思われるわけでございますが、関連文書の多くが保存期間を経過しているために、これ以上の詳細については残念ながら承知していないということでございます。

保坂委員 委員長、これは信じられますか。我が国がソマリア復興に向けてこれから金を出そうというわけですよ。当然ですよね、協力していく必要がある。だけれども、九〇年代前半に税金から支出したお金が、全部廃棄しました、決算の、いわゆる補助金総覧しかありませんと。そうしたら、我が国の外交というのは、どうなんですか。もう全部廃棄しましたから、さあ幾ら使ったんでしょうねと。では、何で一億ドルを拠出したことはわかるんですか。ソマリア信託基金が答えているんですね。

 これは、総政局長にもう一言聞きますけれども、そうすると、このときに、九〇年代前半にこのソマリアに使ったお金、国連の活動に使ったお金は幾らだったんですか。きちっと答弁できますか。

別所政府参考人 今のお話でございますけれども、九〇年代全体という話について、ちょっと今すぐにはあれでございますけれども、ここにおきます一億ドルというもの以外に、人道復興支援関係の関係、特に人道支援の関係で二千七百万ドルの拠出があったというふうに承知しております。

保坂委員 官房長、来ていただいていますが、これ、そもそも何でわかったかというと、こういうUNICという国連広報センターの口座に一回外務省からの指示で国費が入って、ここから日本円をドルにかえて国連に送るというややこしいことをやっていたわけですね。しかし、これは何のためにやっていたかといえば、運用のためにやっていた、稼ぎ出すためにやっていた。ですから、三百六十億円、その年に国連分担金を予算に計上したけれども、円高なので約二十七億円浮きましたよ、それは流用しましたということですね。では、その中身は何ですかと聞いたら、廃棄しましたので全部わかりません、こういうことになります。他の年にもたくさんありますよ、こういう流用した分というのは。全部わからないんですか、外務省では。項目に書いてあるだけで、中身を何に使ったのかは一切確認できないんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省の支出に関連する文書、これの保存期間というのがございまして、現在の規則によれば五年間の保存ということになっております。これをさらにどの程度保存するのが期間が適切かということにつきましては、保存に伴う負担もしくは物理的制約というのが片っ方にあります。その中で、引き続き業務の必要性というものとのバランスで、現時点では最低五年間の保存期間というのが設定をされているわけでございまして、その保存期間を超えた文書というのは廃棄をされているというのが現状でございますので、残されている文書の中で把握をするというのが現在のところでございます。

保坂委員 私は、これは本当のことを言っているとは到底思えないですね。ソマリアでもどこの国でも、では、ソマリアが復興して新しい政府ができて日本が大使館を開くというときにどうするんですか。幾らをどれだけどういう用途で使ったという、全部五年過ぎてしまっているので全部捨てています、わからないですね、幾ら使ったんでしょうねと。思われると。これしかわからない、こういう姿勢はもうまことに不可解。

 そして、もう一点、では官房長に聞きますが、一体いつからこの国連分担金をこうやって運用して、タイミングを見てその差益をはじき出す、差益が出たら補正で確かに減額したこともありますが、私が調査したように、つまり、いろいろなところに使っているでしょう、流用していますよね。この方式はいつから始めたのかということと、これは外務省設置法とか財政法上の、何か法令上の根拠があるんですか。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 国際機関の分担金、拠出金の支払いというものにつきましては、平成十二年度までの間は外国送金をする、もしくは国内送金をするという二つの選択肢がありました。外国送金につきましては支出官レート、これは予算のことで決めている。それで、国内送金については実勢レートによる支払いを行っているわけでございますが、実勢レートでの送金をいつから始めたということについては記録が残っておりませんので、ここでお答えすることは困難でございます。

保坂委員 では、法令上の根拠は。

河相政府参考人 法令上の根拠ということで、予算の流用に関する法令上の根拠ということは、財政法第……

保坂委員 違いますよ。予算で国連分担金が三百六十億組まれる、それを支出官レートで出すんだったら、それは問題ないわけですよ、三百六十億ドル相当の。しかし、ずっと以前から外務省はFXをやってきたわけですよ。円高基調の時代に、タイミングを見て、ああ、ここだといって送金してきたわけでしょう。銀行の指示を得ていたのか、だれがやったのかわかりませんけれども。その行為の法令上の根拠はあるんですか。あったら言ってください、明確に。

河相政府参考人 国会の承認を得ていただいた予算については、財政法第三十一条等を初めとする関係法令に基づきまして、関係省庁の長が支出に関する事務を管理するということになっておりまして、それに基づいて、過去においては実勢レートで国内口座に送金をしていたということでございます。

保坂委員 本当にひどいね。憲法八十三条の、国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいてこれをしなきゃいかぬのですよ。ソマリアに二十七億円出したなんてどこにも出てこない、これは。国会にも報告されないわけだ。いいですよ、予算の節減をしたというのなら。そうしたら、それは国庫に返納すべきですよ。そして、必要があれば要求すべきでしょう。今しれっとそういうふうに言うけれども、これはおかしい。

 今アフリカ局長に来ていただいていますが、中東アフリカ局長は、当時、大臣官房会計課長だったですね。おとといは、突然の質問だった、思い出せないということだったけれども、会計についても、当時、改革をするという一環で、つまり、こういうわけわからぬUNICの口座を通して送金をするようなやり方はやめて、直接国から国連に送金するという現在のやり方に変わったのではないかというふうにおっしゃいましたが、その事情をもう一回答弁してください。少し思い出してください。

鈴木政府参考人 御質問にお答えさせていただきます。

 先般も海賊対処特委でお答えいたしましたように、全く正直に申し上げて、この辺の経緯のことはよく覚えておりません。

 あそこで私がいろいろ見直し等も行っていましたしといって申し上げたのは、要するに、その一環でやったかどうかということではなくて、もちろん、先生がおっしゃいますように、当時、外務省の改革ということでいろいろなことをやっておりました。例えば調達の見直しであるとか、そういうことをやったわけですけれども、それとあわせまして、これは通常の会計課の仕事として常にあることだと思いますけれども、いろいろな意味でのマネジメントの見直しであるとか、あるいは仕事の効率化の話だとか、そういう措置を際限なくやっておったわけです。

 私が申し上げたかったのは、そういった措置、大きなものも細かいものもあるんですけれども、それらを、もう既に年月がたっているということもあって、大変申しわけないんですけれども、すべてのものについてはっきりと頭に残っているわけじゃない、そういう趣旨で申し上げたことでございます。

保坂委員 では最後に、総政局長、そして大臣にもお考えを聞きたいと思います。

 実は総政局長、私がおととい求めたのは、結局一億ドルの信託基金以外に日本政府がどれだけ使ったんですか、こういうことでしたね。二十七億円はわからない、捨てちゃったと。

 私調べたら、それ以外にも、例えばPKOの分担金で、これは一般会計、平成五年だけです、五十五億円という記載がございます。それから、平成五年一般会計補正予算、これは十二月に組まれていますが、ここには百七十億円、こういう記載があります。それから、国の予備費の支払い調書がございます。そこから閣議決定で、国連のソマリア活動分担金、こういうことで百七十五億。二十七億、五十五億、百七十億、百七十五億を足すと四百三十億なんですよ。

 先ほどのコピー、二十七億判明、詳細はわからないと書いてありますけれども、もっときちっと示してくださいよ。ソマリア復興にこれから二十億出すというわけでしょう。どこから出すんですか。出したことは全部捨ててわからない、そんなことで外交はできるんですか。おかしいですよ、こんなの。国会に対する冒涜ですよ。こんなのは。幾ら出したんですかなんて議員が聞くのは当たり前じゃないですか。きちっと調査をする、そしてこれは一体どういうことなんだと答えてくださいよ。

別所政府参考人 議員がおっしゃったように、国の予算というものについてしっかりとした形で、どういうふうに使うか、まずしっかりと使うことが重要でございますし、その後しっかりとその使われ方がどうなってあったかということを確認すべきであるというのは、私も全くそのとおりだと思います。

 今の点につきましても、しっかりと調べまして御報告するようにいたしたいと思います。

保坂委員 中曽根大臣、調査を指示されました。大臣として非常に誠実に受けとめていただいたと思いますよ、おととい。しかし、答えは、二十七億は分担金に使われたものと思われるというだけのもので、ちょっと調査しただけでも、平成五年の支出だけで、これはダブりがあるかもしれません、二十七億、五十五億、百七十億、百七十五億と、合わせると四百三十億円ですね。これは全部捨てたというのであれば、使途不明金になっちゃいますよ。

 これからソマリア復興に乗り出してこれから日本政府がお金を出すというときに、こんなことではいけないんじゃないですか。きちっとこの委員会に示してください。大臣の決意を伺って、終わります。

中曽根国務大臣 先ほど別所局長からも御答弁いたしましたし、私も一昨日、きちんと調査をしますということを委員にも申し上げました。

 何といいましても、この分担金とか拠出金は国民の税金から出るものでありますから、これがしっかりとしたものでなければならないのは言うまでもありません。そういう意味で、今後もしっかりと管理するように、また私自身もしっかりと監督をしていきたい、そういうふうに思います。

保坂委員 委員長にはぜひ調査をお願いしたいし、先ほど外務省が述べた二千七百万ドルの人道支援活動と、このPKO関係で相当のお金がこの年に出ていますからね。それらがどれだけダブっていて、トータルがどれだけで、日本はソマリアにこれだけ国際活動に出しているんだと報告をしてくださいよ。一つ一つ隠したり捨てたとかという、そんなことはだめですよ。委員長、ぜひ指示をお願いします。

河野委員長 外務省、先ほどの調査を進めて、委員会に御報告をお願いいたします。

保坂委員 終わります。

     ――――◇―――――

河野委員長 次に、クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件及び強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣中曽根弘文君。

    ―――――――――――――

 クラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件

 国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件

 強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

中曽根国務大臣 ただいま議題となりましたクラスター弾に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成二十年五月に採択されたものであります。

 この条約は、クラスター弾の使用、生産、保有、移譲等の禁止及びその廃棄等を義務づけるとともに、国際的な協力の枠組みの構築等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、クラスター弾がもたらす人道上の懸念への対応に向けた国際協力を促進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、国及びその財産の裁判権からの免除に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十六年十二月に採択されたものであります。

 この条約は、国及びその財産に関して他の国の裁判所の裁判権からの免除が認められる具体的範囲等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、この分野における国際的な規則の確立を促進し、及び私人がこの条約の締約国である外国との間で行う取引等の法的安定性を高めること等に資するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、強制失踪(そう)からのすべての者の保護に関する国際条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十八年十二月に採択されたものであります。

 この条約は、拉致を含む強制失踪を犯罪として定め、その処罰の枠組みの確保及び予防に向け締約国がとるべき措置等について規定するものであり、拉致を含む強制失踪が犯罪として処罰されるべきものであることを国際社会において確認するとともに、将来にわたって同様の犯罪が繰り返されることを抑止する意義を有するものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、拉致を含む強制失踪に立ち向かう我が国の強い意思を国際社会に示すとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

河野委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十分散会


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