衆議院

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第12号 平成21年5月27日(水曜日)

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平成二十一年五月二十七日(水曜日)

    午後零時二十六分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      逢沢 一郎君    秋葉 賢也君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      越智 隆雄君    木原  稔君

      柴山 昌彦君    鈴木 馨祐君

      中山 泰秀君    西村 康稔君

      西本 勝子君    原田 義昭君

      藤田 幹雄君    馬渡 龍治君

      矢野 隆司君    山内 康一君

      山口 泰明君    池田 元久君

      篠原  孝君    田中眞紀子君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

      辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   農林水産大臣政務官    江藤  拓君

   国土交通大臣政務官    岡田 直樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 知原 信良君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    梅本 和義君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    鈴木 庸一君

   政府参考人

   (当面の重要な外交問題に関し、関係国政府等と交渉するための日本政府代表) 谷内正太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         村木 太郎君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小風  茂君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局農村政策部長)       飯高  悟君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     上田 英志君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           後藤 芳一君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石井喜三郎君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 関口 幸一君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     西本 勝子君

  鈴木 馨祐君     矢野 隆司君

  西村 康稔君     越智 隆雄君

  御法川信英君     藤田 幹雄君

  山口 泰明君     馬渡 龍治君

同日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     西村 康稔君

  西本 勝子君     篠田 陽介君

  藤田 幹雄君     秋葉 賢也君

  馬渡 龍治君     山口 泰明君

  矢野 隆司君     鈴木 馨祐君

同日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     御法川信英君

    ―――――――――――――

五月二十五日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(亀井静香君紹介)(第二五二七号)

 同(中川秀直君紹介)(第二五二八号)

 同(岸田文雄君紹介)(第二五三九号)

 同(平口洋君紹介)(第二五六二号)

同月二十七日

 核兵器禁止条約の早期締結に関する請願(松本大輔君紹介)(第二六七三号)

 同(三谷光男君紹介)(第二六七四号)

 同(寺田稔君紹介)(第二八五九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 日本国とスイス連邦との間の自由な貿易及び経済上の連携に関する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 航空業務に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会条約第三号)


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     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、日本国とスイス連邦との間の自由な貿易及び経済上の連携に関する協定の締結について承認を求めるの件及び第百七十回国会提出、航空業務に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官廣木重之君、大臣官房審議官知原信良君、大臣官房審議官北野充君、大臣官房参事官小原雅博君、北米局長梅本和義君、経済局長鈴木庸一君、当面の重要な外交問題に関し、関係国政府等と交渉するための日本政府代表谷内正太郎君、厚生労働省大臣官房総括審議官村木太郎君、農林水産省大臣官房審議官小風茂君、農村振興局農村政策部長飯高悟君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長上田英志君、製造産業局次長後藤芳一君、国土交通省大臣官房審議官石井喜三郎君、航空局次長関口幸一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 きょうは、議題になりました三つの協定、条約につきまして質問させていただきたいと思います。

 実は私も、今の外交の重要案件であります北朝鮮の核実験の問題、あるいは三・五島問題というのがあるのかないのか、ないとおっしゃっていますけれども、といった重要な外交案件を質問させていただきたいんですけれども、我が党のエースのこの問題のプロの松原さん、まだ来てないですよね、いつでもこの問題ばかりやっていますけれども、彼に譲りまして、それから三・五島問題は武正さんが準備されておりますので、私はまじめにこの三つの条約について質問させていただきたいと思います。

 まず、サウジとの航空協定についてでございますけれども、これは何かえらい長くかかっているんですね。我が国としては五十七番目の協定だと。それから、今も四十カ国ぐらいが申し込みがあると。どうも日本は渋っているような感じがするんですけれどもね。今まで結構関係が深い、それから、資源問題を考えても、石油ということで結びつきも強いはずなんです。それが、なぜ今まで協定ができなかったんでしょうか。どこに原因があるんでしょうか。

知原政府参考人 サウジアラビアとの航空協定でございますが、我が国は一九七〇年代からサウジとの間で随時航空協定に関する協議を行ってまいりましたが、乗り入れ地点等に関しまして両国の間で折り合いがつかなかった経緯がございます。

 その後、乗り入れ地点等の調整にめどが立ちまして、また、サウジから我が国への就航実績も重ねられましたこともありまして、航空協定の締結に向け、二〇〇六年の十一月に第一回目の正式交渉を行いまして、二〇〇八年八月の署名に至った、そういう経緯でございます。

篠原委員 今は触れられませんでしたけれども、一九八八年ですか、千代田区のサウジ航空の事務所が爆破されたりして、テロの関係があったりして日本は少々腰が引けていたのかもしれません。しかし、それは別の話であって、いろいろな関係ある国とはさっさと協定を結んでいく。この後に触れますけれども、EPA、FTAは何でも応じているはずですから、航空協定もさっさとやっていくのが筋じゃないかと思います。

 しかし、現実にペイするのか、エコノミカリーフィージブルかどうかというのはまた問題で、余り行き来がありそうでないんじゃないかなと。サウジアラビアへの、おり立っている人たちを見ると、やはりイスラム教徒が圧倒的に多いんですね。日本はそういう人はそんなに多くありませんし、先ほどの最初の質問と全く逆になるんですけれども、一体採算が合うのかなという気もしないではないんですが、この点について、国交省はどのように見込んでおられるんでしょうか。

関口政府参考人 現在の日本とサウジアラビア間の旅客流動でございますけれども、二〇〇七年の統計でございますが、約一万五千人ということでございます。

 ただ、これにつきましては、今後定期路線が開設されますれば、さらなる培養効果、あるいは第三国との間における乗り継ぎ需要なども期待されるのではないかというふうに考えております。

篠原委員 航空需要というのは、何かいろいろ予測できないわけですよね。それで、在留邦人、サウジアラビアにいる日本人の数も意外と多くないんですね、千人ちょっと。サウジアラビア人で日本におられる方が五百人未満ということで、そんなに往来が多くない。

 こういうのはどういうふうに許可して何本運航させるかというのは、いろいろ議論があるんでしょうけれども、何かオープンスカイ政策、オープンスカイ協定というので、便数や何か全然ノーズロで、何本とか言わない仕組みもあるようでございますが、この場合、サウジアラビアのところは、見込みですけれども、一日何便行ったり来たりするとか、一週間に何便ぐらいの予定になっておるんでしょうか。

関口政府参考人 今何便かということでございますけれども、これにつきましては、サウジアラビア側の要望を具体的にまだ承知しておりませんので、私どもとしても現時点で確たるものを申し上げることは難しいというふうに考えております。

篠原委員 そういうのも需要と供給の関係がありますので、やってみたけれどもがらがらでまたストップと。またストップというのは、行政許可でもってやっていてとまったりしているわけですね。そういうことを二度、三度繰り返さない方が私はいいんじゃないかと思います。そういうところはぜひ、規制するというわけじゃないですけれども、うまくリードするという形で、ぴしっとうまくおさまって、みんな幸せになるような形でやっていただくのが一番いいんじゃないかと思います。

 それから今度、さっき三十カ国から四十カ国が日本と航空協定を結んで日本に定期便を設けたいといって申し込みがある、それになかなか応じられないと。私は珍しいことだと思います。

 その拒否する理由として、成田が手狭、羽田もいろいろ手狭で、国内線がいっぱい使っていますしね。その理由の一つとして、成田が手狭でだめだというのはどの程度影響しておるんでしょうか。つまり、日本にちゃんとしたでっかい空港があれば、今申し込んでいる三十カ国以上の国々とさっさと航空協定を結んで定期便を就航していけるような状態になるんでしょうか。成田の問題、成田が手狭という問題は、どの程度この航空交渉に影響を与えているんでしょうか。

関口政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、現在各国から成田空港への乗り入れがたくさん要望ございますけれども、これにつきましては、御指摘のように空港容量が非常に制約されているということで、各国からの乗り入れ増便に十分な対応ができてこなかったということでございます。

 ただ、現在、成田空港につきましては、地元の方々の理解も得ながら、平行滑走路、現在二千百八十メートルでございますけれども、これを二千五百メートルに延長するという工事を中心にした、いわゆる北伸事業を推進しておりまして、来年の三月の時点で恐らくこれが、現在の二十万回の発着回数がさらに二十二万回程度にはふやせるのではないかというふうに考えております。

 さらに、現在、成田につきましては、ことしの一月でございますけれども、国と千葉県、それから空港周辺の九市町、成田空港会社のいわゆる四者によりまして、この二十二万回をさらに容量拡大できるのではないかということで、その検討に着手することが合意されたところでございまして、これに基づきまして、発着容量を三十万回程度にふやすということについての検討を加速するということとしております。

 また、羽田空港につきましても、来年の四本目の滑走路ができますれば国際線をふやしていくというようなことで、いずれにしましても、首都圏の国際線の容量をふやしていくということについては、全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。

篠原委員 全力を挙げていくのは当然ですけれども、聞いていてよくわからないんですね。成田、羽田が手狭だということがネックになっているんですか、いないんですか。

 なぜかというと、サウジアラビアと交渉した経過を聞いてもいいんですけれども、サウジアラビアだって成田を希望していたんじゃないかと思いますけれども、そうじゃないんですね。乗り入れ地や何かで折り合いがつかなかったという答弁がありましたけれども、関空あるいは中部国際空港になっていて、成田でもない、羽田でもないんですね。

 やはり僕は相当ネックになっていると思うんですが、そこはどうなんですか。イエスなんですか、ノーなんですか。

関口政府参考人 確かに、かつてサウジアラビアとの交渉の中で成田に乗り入れたいという希望があったということは承知しております。ただ、現時点におきましては、具体的な要望というのは聞いておりませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、恐らく潜在的にはそういった要望は考えられるというふうに思っております。

篠原委員 では、成田が二十二万回から三十万回になる、羽田もちゃんと広がる、そういった場合は、サウジアラビアが要望すればちゃんと成田に来れるようになるんですか。

関口政府参考人 これは今後の交渉によると思いますが、サウジアラビアからそういった交渉の申し出があり、私どもも、そうなりましたらば当然交渉のテーブルに着くことになりますので、その中で定まってくるというふうに考えております。

篠原委員 私の正直な気持ちとしては、余り東京ばかりに集中するのはよくないと思っているんです。日本の国策の間違いでして、何でも東京に集中していると、ほっといたら、経済の合理性を考えたら、人も金も情報もこういう交通網もみんな東京中心になってしまう。国の安全保障とかそういうことを考えても、国土の均衡ある発展という観点からも、分散していた方がいいと思うんです。だけれども、先に来た国が全部成田で、後から来た国が全部関空や中部国際空港だというのは、それはちょっとかわいそうだと思うんですね。だから、そこのところの兼ね合いなんです。

 次の質問ですけれども、ちょっと済みませんが、資料を捜したんですけれども見つからなかったんですが、私は、やはり大局的な見地に立って交通行政をやらなければいけないんじゃないかと思うんです。

 私が役人になったばかりのころ、本を読みあさりました。皆さんお忘れかもしれません、小泉チルドレンのお若い方は余りご存じないかもしれません。糸川英夫さんという大ベストセラーを書いておられた評論家がおられました。私はあの人のとっぴな発想の、こんなの本当かなと思っては、疑問を感じながら読んでおりました。その中にあったんです、このハブ空港についての問題ですね。

 ちょっと御紹介させていただきますと、私がしゃべるよりいいので、あの本を全部読み直したんですが、あの本の中じゃなかったんです。「逆転の発想」という、続、新、続々、新々とかいって五、六冊あるんですけれども、その中にどういうくだりがあったかですよ。やはりすごいんですよ、天才なんですね、世の中を見渡せるんです。

 まず、私の出身母体のところの恥をさらすようなことになりますけれども、八郎潟の干拓という問題があったんです。これに大反対されていたんです。糸川英夫さんは、ロケットを秋田で打ち上げていたんですね。そこから種子島に移ったんです。そのときに糸川さんは、何でこんな八郎潟のようないいところを埋め立てるんだと。面積当たりの魚の生産量は一番高いんです。汽水湖という、淡水と海水がまざり合って一番栄養分に富んでいるんです。だから、いろいろな魚が一番とれるんです。

 もっと大事なのは、米が足りなかったんです。皆さん、今、米が足りない時代なんて日本にあったのかと思っておられるかもしれませんけれども、戦後しばらくは、米はビルマやタイから輸入せざるを得なかったんです。米つくり日本一というのを朝日新聞がバックアップしてやっていて、増産増産でやってきて余るわけですけれども、そのときは足りないときなんですけれども、糸川さんはどうおっしゃったかというと、本に書いておられます。食生活が洋風化していって、いずれ米は余るようになる、余るようになるような米をつくるためにわざわざこんなところを干拓するなんて、とんでもない愚かなことであると。しかし、だれも耳を傾けませんでした。私も実は、何をこのおじさんは変なことを言っているんだ、農業もわかりもしないくせにと。私は農林水産省にもう入省していましたので、よく覚えているんです。ですけれども、すぐ、大潟村の干拓が終わった時点から米は余り始めて、さんざんもめるわけです。

 もう一つ、このハブ空港についても、こういうすばらしい提言をされているんです。そのときに、たしか秋田県の知事は小畑知事です。そんなことを糸川さんはおっしゃるけれども、秋田県はそれでは浮かばれない、どうやって秋田県の振興を図っていったらいいんでしょうかという小畑知事の反論に対して、糸川さんはどうおっしゃったかというと、自然を壊すのはよくない、エコロジストなんです、しかし、余り使われていない丘がある、農地にもならない、森林地帯ではあるけれども、そこを平らにして、日本の大玄関ハブ空港をつくったら、ハブとは言っておられません、空港をつくったらいいと。

 なぜかというと、糸川さんは海外にも行っておられましたけれども、その当時、羽田しかありませんでした。羽田におり立つと、タイかフィリピンか、こんなことを言っちゃ悪いんですけれども、ごみごみした景色で、そういうところにおり立ったのと同じ雰囲気であると。第一印象というのは大事なんだ、羽田が玄関空港としては恥ずかしいと。日本の景色の代表は、やはりペリーが来たときに、緑、緑、緑なす島と言った、緑なんだ、田園風景だと。秋田に世界じゅうからおり立ってもらって、そこから、ここからまた大事なんです、新幹線もまだできていなかったころです、今に秋田と東京を一時間もかからずに結ぶ高速鉄道ができる、それで日本の原風景である田園風景をたっぷり見させて東京に送り届ける、そして、近代都市の東京と、非常にきれいな原風景の日本の農村、これが日本の強みだということを印象づければいいんだ、そういうことを書いておられたんですね。

 私は、さすがだなと思いました。米の本ので印象に残っているんですけれども、そっちの方もあったんです。それをちょっとコピーして皆さんにお配りしようとしたんですが、間に合わなかったので、この次の次ぐらいに捜し出しておきますから。僕は感心したんです。そういう長期的観点に立たなければいけないんですが、もうそこで間違ったわけです。東京の近くじゃなくちゃいけないというので成田になって、すったもんだして、いまだもって満足な機能というのは果たせていないんです。

 省庁再編、今、厚生労働省を分割するとかまたいいかげんなことになっているわけですね。国土交通省をつくるときに、大国土省というのもあったわけです。農林水産省の当時の構造改善局と建設省の河川局を一緒にしてとかあったんですが、やはり交通体系としてきちんと一本化して、日本の交通体系をきちんとすべきだということで国土交通省になったんです。ところが、どうも、海の交通体系、陸、それから鉄道、みんなばらばらなような気がするんですね。

 私は、この際、十四兆円も使って補正予算を組んでいる、首都機能の移転というのをさんざん言われましたけれども、これはしりすぼみになっています、これはでか過ぎますもの。しかし、こんながたがたしているんだったら、思い切って空港を地方の、糸川さんはもうおられませんけれども、糸川さんの遺志を継いで、今から裏日本の秋田県にそういうハブ空港をつくったっていいような気がするんですけれども、政治家としての御見解を岡田政務官にお伺いしたいと思います。

岡田大臣政務官 私は、裏日本の石川県の参議院議員でございまして、金沢が地元であります。金沢の近くに、八郎潟を先ほど先生おっしゃいましたけれども、河北潟という湖がございまして、大変きれいな潟でありました。しかしながら、食糧増産の時代にこれを半分干拓いたしまして、米の増産をしようとしたわけでありますけれども、埋め立てが終わった直後に減反政策ということで、いわば国策に翻弄されたという感じもいたします。

 今、大変休耕地が多いということで、この活用はいつも地元としても頭を痛めておるところであります。私も以前、いっそのことここに空港を持ってくることができないか、そして、本当に広いところでありますから、十分なキャパを持った立派な空港ができるのにな、こういうことを考えたこともございますし、先ほど先生が御引用になりました糸川さんの御本を改めて読んでみたいなという気持ちを今強くいたしておった次第でございます。

 私も、篠原先生同様、大変危機感というものを抱いておりまして、韓国へ行けば仁川空港、大変大きくて、また、中国の北京あるいは上海の新しい空港、こういうものを見ますと、そのスケールの大きさに圧倒される思いがいたしますし、これらの空港がアジアのハブ空港になっていくのかな、こう思うときに、日本の成田、厳しいなという思いは先生と全く同じなのであります。既に、仁川とかあるいは上海の浦東でしょうか、こういった空港は成田以上に貨物を集めておるということで、やはり日本がアジアのハブ空港となるべき空港の整備を急がなくてはいけない、全力を挙げなくちゃいけないというのは、先生とまことに考え方を同じにしているところであります。

 ただ、その国際ハブ空港の立地に関して言えば、世界的に見て、やはり首都圏でありますとか、あるいはそれと匹敵するような、あるいはそれをしのぐような、例えば北京に対する上海のような、そういう大都市圏に立地されることが多いようでありまして、先ほど申しました仁川もソウルと近い。やはりハブ空港となりますと、乗り継ぎだけではなかなか成り立たない。やはり後背地にそうした大きな経済圏を持って、基礎的な航空需要というものが必要であろう、こういうふうに思うわけであります。

 成田、羽田という二つの首都圏の空港、特に成田に関しましては、もう御存じのとおり、歴史的に苦難の道をたどってきて、なかなか制約が大きいわけでありますけれども、今、成田、羽田の拡張と、そして空港容量の増大ということを進めてまいる、このことがまずは重要なことであろうと思います。

 ただ、先ほど先生が大局的な見地からとおっしゃいましたこと、また、大胆な発想、特に我々地方の者としては非常にうれしいような気持ちもいたしましたことを申し添えさせていただきたいと思います。

篠原委員 正直な気持ちを発露していただきまして、ありがとうございました。

 今、糸川さんに花を持たせて秋田と言いましたけれども、それは石川県だって私はいいんだろうと思うんです。リニアモーターカーはちょうどいいことに山梨から長野に行くようになっていますから、そこまで行ったんだったらついでに石川まで行って、そういうことを考えても僕はいいんじゃないかと。

 もう一つ、それで、首都圏で経済的な集積地みたいなものの近くじゃなくちゃいけないというのもおっしゃいましたけれども、それは発想を転換していただければいいんじゃないか。逆に、集まり過ぎちゃってぐちゃぐちゃになっているところじゃなくて、人口がずっと減り始めて二十年、三十年たっている裏日本と呼ばれている地域、そこをハブ空港をもとに活性化していく、まさにリードする、そういった発想も私は必要ではないかと思っております。

 では、サウジの航空協定についてはこのぐらいに詰めまして、EPA、FTA、もうこれは幾つ目かわかりません。これについては資料をちょっと用意してきましたので、見てください。これは私がいつも好きな分類表でございます。日本はそこそこ形は整ってきましたけれども、ちょっと見ていただきたいんです、ほかの国と比べて。

 立派なのはEUです。EUは、やはりEPA、FTA、こういうようなものは、近くの皆さんと仲よくしていきましょうというのでやっているんですね。それで、そうじゃないのは地中海沿岸国というのに分けました。私が勝手にこっちが多いようになるようにわざと分けたんです。近くです、地中海沿岸で、EUのすぐ近くの国。遠い国というのは、EPA、FTAの先進国のメキシコ、チリ、これは日本もやっていますけれども、横並びでですね。南アフリカ、アフリカなどでは一番の先進国ですね、エジプトとかそういうのはありますけれども。こうやって哲学があるんです。

 カナダも、イスラエルとEFTAのところはありますけれども、やはりアメリカ大陸でもって仲よくしていきましょうと。韓国も、韓国は途中からほかの国もやっていますけれども、シンガポール、ASEANという感じで思想があるんです。

 日本の場合はどうだったかというと、日本は年次を入れてあります。一番最初、シンガポール。ずっと飛んで、メキシコ、チリ。そして、ここはいいと思います。私はこれはマルだと思います。東南アジアの国々。そして今度は、ヨーロッパ、欧米先進国として初というスイス。そしてオーストラリアとかやっている。航空協定はそれぞれ申し込みがあったりした国同士でやっていけばいいんですけれども、日本のEPA、FTA、これはそれぞれ、日本の国のことを考えてどこを中心にやっていくというのはあってもいいような気がするんですが、どうも基準が明確じゃない。

 そして、韓国は意欲的に、これは署名しただけで、国会ではすったもんだしてさっぱり通っていませんけれども、韓国のところに米国と書いてあります。しかし、韓国は意欲的に米国とのFTAを結んでやっていこうというようなことをしているわけですね。日本は何か中途半端で、余りあつれきのないところばかりちょこちょこっとやって格好をつけているというような気がするんですけれども、これについて、ちゃんとした哲学、基準というのはあるんでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

中曽根国務大臣 米国やEUとのEPAそれからFTAにつきましては、大変米国も大きい国でありますし、EUも広うございます。これは将来の課題として検討を進めていく、そういう方針でございます。また、日米、日・EUの経済関係のさらなる発展をまず促すような、そういう基盤を整えていくということも大事だと思っておりますが、民間で行われております議論を踏まえつつ、これらの国、地域に対しましては引き続いて真剣に検討を進め、そして可能なものから準備を進めていく、米国やEUとともに準備を進めていくという考えが基本的な考え方でございます。

 韓国とのEPAにつきましては、昨年の四月の日韓首脳会談で首脳同士で一致をされたことを受けまして、同年の六月と十二月、交渉再開に向けた検討それから環境醸成のための実務協議を開始したところでございます。その後、ことし二月の日韓外相会談におきまして、日韓EPA交渉の再開に向けて、実務協議のレベルを審議官レベルに格上げといいますか、レベルを上げまして検討を加速することで一致をしておりまして、私も韓国の外務大臣と会談を行うときなど、審議官レベルで交渉が促進できるように私からも話をしているわけでありますが、今、外交ルートを通じて、ここにつきましては日程を調整中というところでございます。引き続いて、日韓におきましては早期再開に向けて努力をしていく考えでございます。

 それから、中国とのEPAにつきましては、これはやはり将来的には、日本にとりまして、これを締結する一つの可能性になり得る、そういうふうに考えておりまして、昨年十二月の日中韓三カ国の首脳会議で研究を継続させることとなりました日中韓のFTA、この三カ国のFTA、これも含めましてさらなる検討というものを進めていく考えでございます。そのためにも、まずは中国がWTO上の義務を着実に履行することが前提といいますか、重要であると考えております。

 今後のEPA全体の取り組み方につきましては、これは、我が国にとりまして有益な国際環境の形成、それから我が国全体としての経済利益の確保、また相手国それから地域の状況、あるいはEPA実現の可能性、そのような視点を総合的に勘案しながら対応を検討していく、そういう考えでございます。

篠原委員 まことに済みません。手前みそになりますけれども、二枚目の資料を見ていただきたいんです。糸川さんの違うのを捜していたんですけれども、なかったので、しようがない、これを皆さんに見ていただこうと思います。

 これは、八七と書いてありますので今から二十二年前、糸川さんと私が大型対談、大型というのは勝手にこの雑誌社が言っているわけですね。三和総研の研究誌の巻頭の対談集で、二十ページぐらいですか、やった。何で糸川さんと私が対談したか、伊藤副大臣は興味をお持ちだろうと思いますね。私の本を読んだある研究者が、私の考えていることと糸川さんの考えていることがどうも似ている、ロケット博士と農林水産省の中堅役人、なぜこの二人の意見が一致するのか、ぜひ対談してほしいといって対談したのがこれなんです。

 見てください。EPA、FTAと全然反対なんです。「「自立型」経済の発想」ということで、私は、「農的小日本主義の勧め」、そういう本を書いたんです。それの話を中心に言っていくわけですけれども、その中の抜粋です。真ん中、一ページ目の下の段の線を引っ張っているもの。「貿易を抑え「自立型」経済に直していくべきだ」、これは私の意見です。そして次は、そのときにいきなりアメリカだ、オーストラリアじゃなくて、近くのパートナーといいますか、そういうことをやっていくべきだ。そういう点ではASEANとか東南アジアというのはマルなんです。あっちゃこっちゃやるべきじゃない。

 次の二ページ目。糸川さんも全く同じ考えで、サブタイトルを見てください、「自由貿易・国際化は多元連立不等式!?」。僕は数学は苦手なんで、こんなことを言われてもよくわからないんですが、だめだと言うんです。そして二段目、「多元連立方程式の解というのは一つしかない」と。その次の、二段目の右から二つ目の、「いまの国際化、自由貿易の破綻の終結の一つは金融恐慌です。」、今のサブプライムローン問題、ここでは詳しく述べられていませんけれども、糸川さんはこれを予測しています、何十年も前に。そして、自立していくんだ、鎖国経済みたいなことを考えていった方がいいんだ、そして、太陽エネルギーを使えばいいんだと。二十二年前に、森林は大変なカーボンの資源だということで、私や糸川さんがバイオテクノロジーをもってやっていけばいいんだということを言っているわけです。

 僕は、猫もしゃくしも、またここで言わせていただきますと、入れ食いEPA、ダボハゼFTAとか失礼な言い方かもしれませんけれども、何でもいいという。やはりこれを国策として見直していくべきだと私は思います。中でやるべきものはがっちり守ってやっていくということ、これも一緒に考えていただきたいと思います。

 担当の外務大臣にこれについての見解をちょっとお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。

中曽根国務大臣 委員の、もう二十二年前の糸川さんとの対談を今お聞きいたしまして、またもう少しじっくりいろいろお考えをお聞きしたいな、そういうふうに思っているところでございますが、EPA、FTAの取り組み方、この基本につきましては先ほど申し上げたとおりであります。

 しかし、委員おっしゃいますように、やはり、まず近隣諸国との関係、それのまた、特に経済における密接な関係は非常に大事でありますから、御案内のとおり東南アジア中心でスタートしておりますが、その他の地域につきましても、一つの大きな戦略を持ってやはりこういうものも取り組むことが必要だと思っておりまして、今すぐどうこうということをここで申し上げられませんけれども、今の委員のそのようなお考えも参考にしながら、今後の取り組み方につきましてはいろいろ議論していきたい、そういうふうに思っております。

三原委員長代理 次に、松原仁君。

松原委員 この三つの条約でありますが、今同僚議員である篠原さんからるる詳しい議論がなされました。私も、こういったそれぞれの国との協定、基本的にどんどん進めるべきだというふうに思っておりまして、恐らく我が党としても前向きにこの検討をするというふうに理解をしております。

 あわせて質問をしていきたいわけでありますが、今回、北朝鮮による核実験が行われたわけでありまして、その北朝鮮の核実験、予告もしくは予兆報道などがあったけれども、今回の核実験を事前に外務大臣は把握をしておられたのかどうか、お伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮の核実験といいますか核開発、これらの関連の動向につきましては、平素から当然のことながら我が国としても情報収集また分析に努めているところでございますが、またさらに、関係国との情報の交換、共有、そういうものにも努めて、さまざまな情報にもまた接しておりますけれども、今委員からお尋ねありました件につきましては、インテリジェンスにかかわることでもありまして、また相手国との関係もありまして、差し控えたいと思います。

 その上で、あえて申し上げれば、委員も御承知と思いますが、四月二十九日の北朝鮮の外務省のスポークスマン、これの声明におきまして、北朝鮮は国連の安保理が直ちに謝罪しない場合には核実験を実施する旨の立場を表明しているわけでございます。核実験を行うということは国連の安保理決議違反でありますから、我々としては、これはもちろんあってはならないことでありますし、決議は守ってもらいたいということで、このような行為がないことを望んでおるわけでありますが、このような情報には接しておりました。

 北朝鮮がこうした立場を表明しましたことも踏まえまして、北朝鮮が緊張を高めるようなそういう行為を控えるよう外交努力を重ねる一方、あらゆる事態に備えて、米国を初めとする関係国と緊密に連携はしてきたところでございます。

松原委員 北朝鮮が安保理決議に対して反発をし、安保理に対して反発をして核実験をやるという意思を表明したというのは、はったりで言う場合もあるし、実際に今回はやったわけでありますから、だから、そういう情報は情報として、北朝鮮が実際これをやるということは、報道ベースではどうも米中には事前通告があったというふうな話もあるわけですが、日本は少なくともこのことに関して、だから、北朝鮮がやるぞということではなくて、いや、大臣、そんなペーパーを見なくてもいいんですよ、北朝鮮がやるぞというんじゃなくて、今回はまさにこのときに打つぞと、報道ベースですが、今言ったように、アメリカや中国には事前通告があったと言われている、それがあったかなかったか。なかったと私は思うんだけれども、なかったならばなかった、こうおっしゃっていただければ結構です。(中曽根国務大臣「アメリカや中国に対して」と呼ぶ)あったと言われているわけです、報道ベースですが。お答えいただきたい。

中曽根国務大臣 北朝鮮から米国や中国に通告があったかどうかということ、これは、日米間では先ほど申し上げましたように日ごろから緊密に連絡をとり合っておりますけれども、米国と北朝鮮のやりとり、これにつきましては、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 だから、聞いていることは、一般論的に北朝鮮が言っていることではなくて、この日にやるぞと直前にあったのかなかったのかということを聞いているわけであります。だから、日本側に対しての通告はなかった、当たり前ですが、なかったわけですね。

中曽根国務大臣 北朝鮮から我が国への通告はございませんでした。

松原委員 そして、その辺の情報交換も今なかったという話でありました。

 次に、北朝鮮はその後、ショートレンジミサイルを撃ったというふうに言われております。これはどんなふうな状況だったのか、何発撃ったのか、お伺いいたしたい。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 我々、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、さまざまな情報につきまして関係各国と交換し、分析をしておりますが、ただいまの御質問、短距離ミサイルを撃ったのではないかという点につきましては、これはインテリジェンスにかかわることでございますので、この場での発言は差し控えさせていただきます。

松原委員 インテリジェンスにかかわることといったって、それは報道でなされているんですよ。報道でなされていることを、だから、外務省としては、そのことに対して、五発と言われているけれども、二発と三発ですか、こういう話に関して、それはもうマスコミの報道で流れているんだから、わかっていることは言ってもらわなきゃ。ちょっと教えてください。

中曽根国務大臣 別に答弁を避けるためにこう申し上げているのではなくて、報道は報道でいろいろなところから取材をして、そういうものもよくあります。

 しかし、二国間で情報の共有、情報の交換、こういうものを行う場合には、それなりの節度とかそういうものを持ちながらお互いにやっているわけでありまして、信頼というものも大事でありますし、そういうところからこういうやりとりについては公表しないというような形のものがあるわけで、そういう点はぜひ御理解いただきたいと思います。

松原委員 公表するとかしないとかというよりは、だから、情報ソースを明らかにしなくてもいいんですよ。実際、日本がそれを把握しているかどうかという問題はありますが、ミサイルを撃ったかどうか明らかにできませんと日本が言っているようじゃ、これは話にならないと思うんですよ。ミサイルを撃っている、それが何発なのかは確認してとか、まあいろいろな議論はあるでしょう。やはりそこは、どういうミサイルをどこに向かって撃ったのかとか、ある程度の情報を外務委員会で言ってもらわなかったら、議論進まないですよ。ちょっと、きちっと答弁してください。

中曽根国務大臣 ミサイルの発射、あるいは核実験についてもそうですけれども、核実験については気象庁の方でそれを感知しているわけであります。ただ、これが実験だったのか、成功したのか等、検証とか分析に時間もかかります。ミサイルにつきましても報道もありました。しかし、それが本当に何発なのか、どれぐらいなのかということは、政府としてはやはり確認もきちっとする必要がありますし、今申し上げましたような、ある意味ではインテリジェンスという点もあるわけでございまして、撃ったんだからこれはしっかりと答弁すべきだ、そういうことでございますが、これにつきましても、まずしっかりとした事実確認とか検証が必要であるということです。

松原委員 では、今答弁できる範囲でミサイルについて答弁してください。

小原政府参考人 ただいま大臣からも申し上げましたが、例えば弾道ミサイルの発射でありますとかあるいは今回の核実験でありますとか、日本の安全に直接の脅威を与えるといったような軍事活動につきましては、これは我々、できる限り情報公開していくというのは当然でございます。

 他方で、北朝鮮がいろいろな軍事活動をしております。その活動の一環として、そうした日本に直接の脅威を与えないといったような活動につきまして、それにつきましては我々いろいろなところから情報を入手しておりますが、それにつきまして日本がどこまで知っているかということについては、これを外に出すことについては、これは相手国との信頼関係等もございますし、この点、インテリジェンスの観点からお答えを差し控えさせていただいているということでございます。

松原委員 ちょっとこれは、こんな基本的な部分で、だから、言えるところまででいいから言ってくださいよと言っているんだから。こんな、撃ったかどうかわからないような話をされたんじゃ、議論進まないよ。それぐらいは言ってくださいよ。

 ちょっと委員長、さすがにこれじゃ質疑にならないよ。みんな知っているんだから。仮委員長だけれども、お願いしますよ。

三原委員長代理 速記をとめて。

    〔速記中止〕

三原委員長代理 速記を起こして。

 小原参事官。

小原政府参考人 失礼いたしました。

 三年前のミサイル発射につきまして御指摘ございましたが、三年前の場合は弾道が長かったということでございますが、今回の場合は百三十キロということで、短距離でございます。(松原委員「知っているじゃないか」と呼ぶ)いや、そういう報道がございます。そういう報道がございますので、そういったこともございますので、以上のような説明を、御答弁をさせていただいた次第でございます。

松原委員 今百三十キロと言ったんだ、彼は、百三十キロと。今回は百三十キロと言っているんだから。余り日本語としておかしなことを言っちゃいけないよ。わかりません、言えませんと言って、今回は百三十キロで短いと言っているんだから。そんなばかな答弁あるかよ。もう少し言ったらどうなの、もう少しまじめに。百三十キロ飛んだのはわかっていますぐらい言ったらどうなの。おかしいよ、これは。

 まじめに答弁させてよ、委員長、これ。冗談じゃないよ、百三十キロと言っているんだから。

三原委員長代理 小原参事官、百三十キロは君の意見か、それともマスメディアなのか。それを明確にしなきゃだめだよ。

小原政府参考人 失礼いたしました。

 ただいま申し上げましたのは、そうした報道がなされているということでございます。

 我々として、そこを確認して申し上げることは、これはインテリジェンスの関係から先ほどのような答弁をさせていただきましたということでございます。

松原委員 質問を続けるけれども、インテリジェンスを言うんだったら、それは外務大臣、スパイ防止法ぐらいつくらなかったら話にならないよ。

 ちょっとそれは置いておいて、次に行きます。

 今回は、中ロは制裁強化に難色を示し、六者協の再開を期待していると報道でいろいろと言われておりますが、ここで私はお伺いしたいわけでありますが、平成十八年七月にミサイルが発射され、十月に核が実験された。あのときの経緯は、私の記憶によれば、国連の決議が上がり、やがて米朝協議が始まり、六者協になり、そして、言われるところの重油百万トンというものが北朝鮮に拠出され、三年間でワンサイクル終わって、すごろくじゃないけれども上がりになって、またここで核とミサイルが五月で行われた。小型化されて破壊力もよくなっている。

 平成十八年の核とミサイルが行われてからこの三年間、北朝鮮は、時間稼ぎはするわ、重油百万トンは得られるわと。重油百万トンというのは、国際社会でこういうような動きになってきたんだけれども、これは全くもって北朝鮮にはこういったほほ笑み外交は通用しないということは、前から我々は何回もだまされてきている、クリントンさんの枠組み合意でもということを言ってきたけれども、今回も同じなのであります。

 この重油百万トンに関して、日本は今どういう立場なのか、これからどうしようとしているのか、お伺いしたい。

中曽根国務大臣 重油の問題につきましては、日本は他の関係国とまた異なりまして、拉致問題がございますので、これが解決するまでは、日本は北朝鮮に重油を供給するその枠の中には入っておりません。

松原委員 それはわかった上で、重油に関しても、関係国が北朝鮮にこれを出すのに対して、外務省はその議論において反対であるということを表明するべきだと私は外務委員会で何回も言ってきた。

 今この重油百万トンはどれぐらい実行されているんですか、実務的に。

小原政府参考人 申しわけありません。ただいま手持ちで資料を持っておりませんので、後刻御報告いたします。

松原委員 これは、通告しなくたって、この辺は全部把握しておかなきゃだめですよ。それは大臣も含めて。北朝鮮に対して我々はそういったものを出すなという行動をするべきであって、しかし、それが今十分に出尽くしていないのであれば、もちろんこれはストップですよね。ああいう国なんだから、出すべきじゃない。出したところで、それは今の金正日の先軍体制を強化するものにしかならない。

 今回、六者協が云々かんぬんということを中国、ロシアは言っているけれども、この来た道はいつか来た道で、同じすごろくの回転で、北朝鮮はその時間稼ぎの中でどんどんと核の小型化、そして破壊力の強化というものをやっていて、私は、もうこれは六者協でもう一回回すとか、こういう議論にならないというふうなことをはっきりと申し上げておきたい。

 この際、大臣の認識として、北朝鮮には融和的なことは、しても、こうやって時間稼ぎと、向こうがとるものをとってしまって終わってしまうんだということだと思うんですね。だから、北朝鮮には融和的態度をとるべきではないという大臣の決意を、ちょっと今これは所感として、所見としてお伺いしたい。

中曽根国務大臣 過去の例を今委員が挙げられまして、また同じようなことの繰り返しになるのではないかという、そんなような御心配もされました。私も、そういうような懸念といいますか、そういうことにならないようにしなければと、そういう気持ちでおります。

 今回は、過去のいきさつも踏まえて、過日の弾道ミサイルの発射も踏まえて、これは中国、ロシアも初めといたしまして、それぞれコメントを出しておりますけれども、断固許されるべきではないということで、国連安保理を中心に、強いメッセージ、強い対応をとるということが今共通の考え方になっているわけであります。前回の繰り返しにならないようにするのは当然のことでありますが、今考えられる最善の北朝鮮に対する対応、これを今、これから、ニューヨーク中心で考えているところでございます。

 御案内のように、相手が、先方があのような国でありますから大変難しいところもありますけれども、その時点その時点で最善の策をとっていくということしかないのではないかと思っています。

松原委員 テロ支援国家指定をアメリカは解除したわけであります。

 率直に申し上げて、当時の福田政権が、事実上、日本側において、北朝鮮に対する強硬な姿勢から若干方向転換をした、私は大反対しましたが。あれは政府・与党、特に福田政権がやったわけでありますが、そのことを受けてというふうに言っていいかどうか、アメリカはテロ支援国家指定を解除した。

 これは、例えば拉致の問題でいけば家族会や救う会も言っておりますが、私は、この状況は再指定をするべきだと。しかも、イランとか中近東に北朝鮮の核の技術者が今どんどん行っていますよ。核拡散の動きを北朝鮮がしていることを考えても、これはテロ支援国家そのものですよ。この指定をアメリカに対してきちっと日本は同盟国として要請するかどうか。政府の公式な流れできちっとそれをするべきだと思いますが、中曽根大臣の見解をいただきたい。

中曽根国務大臣 テロ支援国家指定解除のことにつきましてはいろいろな御意見があります。

 昨年の米朝直接協議の際も、私どもとしては、非核化のための文書化をしっかりすべきだということを強く米側にも当時申し入れたいきさつもありますが、御案内のような指定解除になりました。このことにつきましては、これは米国が判断をされ行ったことでありますし、今後どうするかということについても、これは米国がまずは考えることだと思います。

 今は、六カ国あるいは安保理が今回の核実験に対してどうするかということで協議を始めているところでございますので、こちらの方で、我々としてはしっかりとした強いメッセージを出すべきだ、それに全力を挙げる、また積極的にやっていくということだと思います。

松原委員 テロ支援国家指定を、再指定をアメリカに求めることも含め、この間言った中で、フランク・ジャヌージあたりが、日本がきちっと北朝鮮に対してやっているのかという話になる。

 そこで、私は、例えば日本は二十四品目の豪華品等は北朝鮮に出さないとか、十五団体一個人の、いわゆるミサイル関係のものは出さないとか、輸出に対して規制をしておりますが、全面の輸出禁止をするべきではないか。また、人の出入りも、北朝鮮の国会議員に関しては再入国はさせないと言っているけれども、この間質問したように、ロケット兄弟等はこれは出入りを自由にしていて、この技術を持ったりしている。

 こういった部分の全面的な輸出の禁止、また人の出入りの禁止。少なくともフランク・ジャヌージあたりは、日本は輸出を全面禁止していないじゃないかというようなニュアンスを我々に言ったわけです、この連休中に我々が行って話をしたときに。この辺に関しては考えるべきだと思うけれども、大臣の率直な意見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 今、全面禁止等、今後のいわゆる制裁措置につきましては、党でも、あるいは各党においていろいろな御議論があることは承知をいたしております。

 北朝鮮措置のあり方については、政府としてはこれまでも不断の検討を行っておるわけでありますけれども、実際の対応につきましては、先ほども申し上げましたけれども、まずは安保理等における国際社会の動き、これを踏まえて総合的に判断をすることであろうと思います。

 いろいろな制裁あるいは対北朝鮮措置というものが考えられるわけでありますが、これは国際的に協調してやらなければ効果がありません。また、我が国独自のものもあろうかと思いますので、現在ニューヨークで行われつつあります協議を見守りながら、そして我が国として何を主張し、我が国独自で何ができるかというものを慎重に考えていきたいと思います。

松原委員 それはジャヌージが言っていたのもそうなんですよ、日本がまず本気でやっている姿勢を見せろと。日本が自分自身でやることで、それは追加制裁というのはまだまだたくさんできるんですよ。基本的に、輸出は二十四品目、これしか抑制していないんですよ。全面禁止をする、人の出入りも全面禁止をする、そこまで日本が決意を固めれば、それはアメリカに対しても、同盟国なんだから、テロ支援国家の再指定をやれ、頼みます、こういう話になるんですよ。まず、日本が隗より始めよで強硬な姿勢を貫かなければ、私は国際社会、安保理だってそこまで同調するとは思えないんですよ。

 今回は明らかに日朝平壌宣言にこれだけ違反している。これだけ違反をしていながら、日朝平壌宣言について、すぐにやめろとは言わないけれども、これはおかしい、日朝平壌宣言の再検討をしますよぐらいのプレゼンス、アピールというのは私は必要だと思うんですが、これについては、大臣、いかがですか。

中曽根国務大臣 先ほど委員がおっしゃった対北朝鮮の国連における、安保理における制裁ですが、私も、今回は強く打ち出すべきだ、そういうふうに思っております。何をどうするとは私、この場では申し上げませんが、外務省におきましても、今回はそのような対応をすべきだということは、私の大臣としての考えとして、これは内部ですが、述べているところであります。

 また、平壌宣言のことでございますが、これは明らかに平壌宣言に違反するものでございます。一方、この宣言は、拉致とか核とかミサイル、もうこれは委員十分御承知のとおり、諸懸案を包括的に解決して、さらに、不幸な過去を清算して国交正常化を図る、これが北東アジア地域の平和と安定にとっても重要であるという基本原則、さらに、拉致の問題などにつきましては最重要課題でございますので、そういう意味では、このような事態、今回の事態はありますけれども、やはり日朝両首脳が署名をした政治的にも大変重みのある文書でありますので、政府としては、これを破棄する、そういう考えはございません。

 日朝平壌宣言をとにかく全体として履行することがこれは一番大事でありまして、昨年の夏に合意をされながら拉致の問題も一向に進んでいないということは、大変遺憾なことでありますし、我々もさらなる努力を必要としますけれども、平壌宣言につきましては今申し上げたとおりでございます。

松原委員 時間がないのでこれで終わりにしますが、北朝鮮がこれだけ日朝平壌宣言違反を続けてきて、何度もやっている、平成十八年、二十一年、何度もやっていて、この日朝平壌宣言は破棄しませんと言っちゃったら、北朝鮮は、ああ、何をやっても平気だということになるんですよ。破棄をするつもりがなくても、破棄する可能性があるぐらい言わなきゃしようがないじゃないですか、外交交渉として。その可能性すら示唆しないというのでは、これは何をやってもいいよという話になる。

 国際社会にしてもアメリカにしても、日本がその部分で自分自身が泥をかぶらないでというか、隗より始めよでやらないというところにやはり一番問題を感じるんです。ここまで北朝鮮がやってきたら、さすがに輸出の全面禁止、これをやるだろうなと。例えば、日朝平壌宣言の破棄も含めて、検討するという姿勢だけでも見せるだろうなと。いや、しませんというんだったら、では、私は最後に質問したい。

 国連安保理の実効性。もう六者協議の議論じゃないですよ、これは。六者協でやる議論じゃないですよ、これはもはや。国連安保理での勝負ですよ。そこは今うなずいているからそうだと思うけれども、国連安保理で実効性を持たせるために、日本がそういったみずからの制裁の強烈な追加の強化をしないで、どうやって実効性を持たせるのか、お伺いしたい。

中曽根国務大臣 やはり北朝鮮に対する制裁措置というものは、これは委員おっしゃいましたように、実効性が上がらなければ意味がないわけでありまして、現在の措置及びそれがどういうふうに効果を上げているかということは、委員が一番よく御承知のことだと思います。

 日本は、先ほど申し上げましたように、北朝鮮のこのような核の開発や弾道ミサイルの開発によって一番脅威を、脅威といいますか、そういうようなことを受けるおそれのあるところでありますから、まさに先頭に立ってこの問題をリードしなければならないのは言うまでもございません。

 しかし、安保理また国連全体で、国際社会の共通した強い意見として北朝鮮に迫る、そして措置をつくる、これを確実に実行するような、検証の方法等も含めて、今はそれをしっかりやるということが一番大事なのではないかと思っております。

松原委員 北朝鮮が権利はないが事実上核保有国だという議論があったということは、この間報告しました。アメリカの元政府高官が言っている。北朝鮮が核保有国であって、それが事実上許容されるとなれば、私は日米安全保障条約も大きな転換点を迎えることになると思っております。これはもう質問じゃないです。私は率直に申し上げて。この点で日米の連携をきちっとするならば、今言ったテロ支援国家再指定を含めてやらなければ、あれが日米安全保障条約のターニングポイントだったなということに今回の北朝鮮の核実験がなるということを予言させてもらって、私の質問を終わります。

 以上です。ありがとうございました。

三原委員長代理 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 この委員会にかかっております協定について幾つか質問させていただきますが、その前に、私の方からも北朝鮮の核実験の問題について、私の思いといいましょうか考えと、大臣の思いといいましょうか決意をお聞かせいただきたいと思うんです。

 松原委員も幾つか今質問をされました。松原委員と私と必ずしも、スタンスというか方法論というか、全く一緒ではないというふうに思っています。ただ、この北朝鮮とか朝鮮半島の問題は、アジアに残る大きな、平和と発展にとっては非常に大きな課題だ、このことをきちっと解決しなくちゃいけない。つまり、解決の方法では少しニュアンスが違うということなんです。でも、解決をしなくてはならないという問題としては、非常に大きな問題だと思っています。

 ですから、私は私として、残されたこの課題をどう解決するかということに腐心をしてまいりました。

 しかし、そういう中で、今回、私は、もともと一つ、一番ベースにしなくちゃいけないということは、やはり北朝鮮は本当に理解しがたい国家、体制だと思います。ただ、そこでやはり普通の人々が生きている、普通の市民が生きている。そしてまた、そのさまざまな手法が、今申し上げたように、日本の、またアジア、世界の平和と安全ということに対しては非常に脅威、課題となってきている。しかし、そのことを何とか解決していきたいという思いで来た。この中で申し上げますと、今回の核実験というのは本当に国際社会への脅威であり、大きな挑戦だと思うんですね。

 私は、さっき申し上げたように、いろいろと手法は違うけれども、これを何とか解決しようと思ってきた。ところが、今回の実験はやはり緊張を強化させる、ここにある緊張もさらに強化させるということだったと思いますし、私はこの外務委員会でも何回も、中曽根大臣にも私の思い、お願いと申しましょうか、日本もやはり平和的な手段で平和をつくるためにぜひリーダーシップを発揮していただきたい、こういう思いを伝えてまいりました。

 そういう中で、オバマ大統領がプラハでも宣言をされた。アメリカが先頭に立って核軍縮を進めていこう、そういうメッセージ。それにぜひ日本もリーダーシップを発揮してこたえていただきたい、そういう思い。しかしながら、そのことに逆行するかのような今回の実験。まさしく、大臣もおっしゃられたように、国連の安保理の決議に全く違反をしていると思いますし、私どもの日本は唯一の被爆国、まして、隣にある、隣国の唯一の被爆国としての日本、その日本の国会議員としてはまさしく耐えられない、こういう思いであるわけであります。

 そういう意味で、私は、今回の問題、では本当に軍事的な方法で解決できると私は思いません。しかし、このことを実質的に本当に解決をしていくためには、アメリカあるいは中国その他の国との協調が本当に必要だと思うんです。そういう意味で、本当に実質的にこの不安定を解決するためにどうしていくべきか、そして、その中での決意をお聞かせいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 北朝鮮の問題というのは、北東アジアのみならず、アジア全体、そして国際社会全体にかかわる大変大きな問題でございます。先ほども申し上げましたけれども、北朝鮮のこのような行為、あるいは核開発等の、また核実験等は、これは我が国の国民の生命財産にも大きく影響することでありますので、言うまでもありませんが、我が国が国際社会の中で先頭に立って、このような行為を起こさせない、やらせない、そういう努力をするということはもう当然のことでございます。

 そういう中で、安保理での決議の協議が行われておりますが、国際社会が一致して北朝鮮に対する措置をとっていくと同時に、やはりそれだけではこれは、物事はなかなか解決しないと思います。よく言われますけれども、対話と圧力と言いますけれども、やはりいろいろな方法を模索しながら、例えば米朝にしましても、あるいは中国と北朝鮮にしましても、先日はロシアのラブロフ外務大臣が北朝鮮も訪問したようでございますけれども、いろいろな形で北朝鮮に対して働きかけをしていくということが大事でありまして、今は、核実験直後でございますから、このような違反行為に対して国際社会が毅然とした強いメッセージを出すということが一番大事だと私は思いますが、長期的には、いろいろな形でまた、この六カ国をやはり中心にして戦略を持って取り組んでいくということが大事ではないかと思っております。

近藤(昭)委員 ぜひ、核の問題、先ほども申し上げましたけれども、オバマ新大統領が、今までのアメリカからはかなりの方向転換だと思うんです。かなりの決意、大きな決意を持って核軍縮に向かっていくわけであります。そういう中では、私は、日本も大きな決断を、日本の今までの核に対する政策という意味でいうと大きな変換の決断をしなくてはならないときがあると思います。ただ、そういう決断をしても、この核の問題というのは北朝鮮との関係の中でも決然と進んでいかなくてはならない。しっかりと大いなる覚悟を持ってやっていただきたい、こういう思いであります。

 それでは、連携協定について幾つか質問をさせていただきたいというように思います。

 まず、ベトナムとの関係でございますけれども、日本・ASEAN包括的経済連携協定というのがございます。これとの関係について質問をしたいと思います。

 ASEANとの包括的EPAが既に発効している、今申し上げた協定でありますが、そういう中で、新たに本協定を締結する意義はどういうことか、大臣、お答えをいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のように、日本・ASEAN包括的経済連携協定というのがございまして、この主な意義というのは、我が国とASEANとの戦略的な関係の強化に加え、日・ASEAN域内全体の生産ネットワークの強化にも資するという点が挙げられるのではないかなと思います。

 これに対して、今回のこの日本・ベトナムのEPA、これは、二国間の経済関係にかんがみ、双方の個別の関心を踏まえた交渉を行った結果、我が国が高い関心を有する多くの品目についてベトナム側の関税というものが撤廃され、より高いレベルの自由化を実現することになったという面で意義があると考えております。

 さらに、日・ベトナムEPAは、日・ベトナム両国の貿易の拡大等を通じて、両国間の投資活動の促進及び経済関係の一層の強化、ひいては戦略的パートナーシップにも発展することが期待されているということで、一言で言うと、両方とも相互補完的な関係があるということであろうかと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今副大臣もおっしゃったような相互的な関係であると。ただ、現場ということで申し上げますと、本協定を締結することによって、さきに結んでいる包括的協定と二つの関税率表が併存する、こういうことになるんだと思います。

 そうすると、その現状の中で、使い手の企業にとって有利で使い勝手がよくなるような使い分け、これをどのように現場としてやっていくのか、そのことに対して、指導といいましょうか指南といいましょうか、そういうことをどのようにやっていかれるつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘がございましたように、二つの協定があるということで、実際、現場では使いにくいという面があろうかと思いますので、私どもとしましては、例えば外務省のホームページを使って広報に努める、あるいは、輸出業者が原産地証明書を申請する際にその窓口となる商工会議所からの情報提供を行う等、情報の提供に努めてまいりたいと思っております。

 また、ベトナム側の通関の際にも我が国企業が過度の負担を負うことがないよう、ベトナムとも密接に連携をしてまいりたいと思っております。

近藤(昭)委員 二つがあるということ、相互関係があるわけでありますが、ぜひ、本来の趣旨であるといいましょうか、それを使う企業にとってきちっと有利といいましょうか使い勝手のいいものにしていただきたいと思うんです。

 それでは、次の質問をさせていただきたいと思います。

 この協定の中に、自然人の移動というのがあります。民間レベルの留学生派遣促進を政府が支援をする、こういうことではないかと思うんですけれども、この協定の中の、日本・ベトナムの経済上の協力における協力事業・計画リスト、この中に、日本の看護学校へのベトナム人留学生派遣促進の支援というのが具体的に記載をされているわけであります。

 この問題については、これまでも、成功例といいましょうか、実例ということで、厚生労働省の認可でありましたけれども、我が国のNPO法人AHPネットワーク協同組合とベトナムの医療省の共同実施により、日本語研修を経て、日本の看護学校や大学に入学し、看護師国家試験に合格して、入管法上の在留資格、医療ということで、看護師として働くベトナム人の看護師がいる、こういうふうに聞いておるわけであります。

 そうすると、今後、まだ、これからその看護師の資格等々の問題については交渉をしていく中で決めていく、こういうふうには聞いているわけでありますけれども、かつてというか、現在こういうような実例がある。そういう中で、こうした民間レベルの事業をどのようにとらえられて支援をされていくおつもりがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘がございました、日本の看護学校へのベトナム人留学生派遣促進の支援についてでございますが、御指摘のように、ベトナム側から、アジアンヒューマンパワー・ネットワーク協同組合の取り組みも念頭に置いて、日本の看護学校へのベトナム人留学生の派遣について資金協力要請がございました。この点につきましては、日・ベトナム間の協力事業・計画リストに言及をしておりまして、我が方も認識しております。

 これを受けまして、現在、ベトナム側で具体的な支援の要請の詳細について検討しているところでございまして、私ども、その具体的なベトナム側の要請を受けて支援の事業については考えていきたいと思っております。これはあくまでベトナム政府を対象とした支援でございまして、個別の事業者を直接支援することは想定しておりません。

 ちなみに、既に締結しておりますEPAの枠組みとは別に、例えばインドネシアですとかマレーシアにつきましては、有償資金協力の枠組みで留学生派遣の支援をしております。類似の事業が可能かと思っております。

近藤(昭)委員 最近、そうした看護師の方が日本に来て仕事をする新しいシステムをつくったということは承知をしておるわけであります。

 今後の交渉ということであると思いますけれども、また民間のレベル、政府との関係であって民間を支援するというわけではないということでありますが、やはり実績としてそういったAHPのような団体がやってきた、そのことはしっかりと取り組んでといいましょうか、ある種の関係を持つ中で推進をしていっていただきたいというふうに思うわけであります。

 その次の質問に参りますけれども、東アジアの包括的経済連携構想ということでお聞きをしたいと思います。

 先ほども中曽根大臣も少し触れられてはいらっしゃったと思うんですけれども、二〇〇六年の四月に経済産業省がグローバル経済戦略を発表した。その中で、我が国は東アジア経済統合を積極的に推進すべく、ASEAN十カ国に日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドを加えた十六カ国での経済連携協定なる東アジア包括的経済連携構想を提唱しているわけであります。

 そういう中で、中国あるいは米国もそれぞれの広域経済連携を提唱しているというわけでありまして、そういう意味では、そうしたところとの関係も視野に入れながら、日本としてはどういう方針で東アジアにおける広域経済連携を考えているのかということをお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 我が国は、多角的な貿易体制を構築するためにWTOのドーハ・ラウンドの早期妥結を目指しているわけでありますが、これを補完する経済連携として、従来のといいますか、今行っております二国間のEPAに加えまして、委員がおっしゃいましたさまざまな広域経済連携構想にも注目をしているところでございます。

 こうした広域経済連携構想につきましては、WTO体制を含めまして、世界経済、貿易に与えるそういう影響なども踏まえつつ、研究また検討に積極的に参加をして貢献を行ってきているところでございます。

 また、二〇一〇年には我が国がAPECの議長国を務めることになるわけでありますけれども、そういうことも念頭にいたしまして、東アジア及びアジア太平洋地域の経済連携のあり方について検討を深めていきたい、そういうふうに思っております。

近藤(昭)委員 米国も中国も、それぞれ自国を中心にと申しましょうか、自国との関係の中で広域経済、でもそれぞれの構想には必ず日本、中国、韓国が入っている。ぜひしっかりとした、本当に実利のある広域経済連携をつくっていただきたいと思うわけです。

 そして、先ほどもちょっと言及があったわけでありますけれども、そうした大きな構想がある中で、少し動いていないのかもしれませんけれども、韓国とのEPAの交渉が中断をしていること、どういう状況、なぜかということと、また、非常に大きな経済的な、また政治的にも大きな存在を占める中国とのEPAのこと、少しお話をいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国とのEPA交渉の現状でございますが、昨年四月二十一日の日韓首脳会談におきまして日韓EPAの重要性につき一致したことを受けまして、昨年六月二十五日及び十二月四日に交渉再開に向けた検討と環境醸成のための実務協議、これは課長級でございますが、開催されました。その後、本年二月の日韓外相会議におきまして、日韓EPA交渉の再開に向けまして実務協議のレベルを審議官級に上げて検討を加速することで一致をいたしました。

 四月二十一日に開催されました日韓経済局長協議におきましても、両国間で日韓EPA交渉再開に向けた検討及び環境醸成の重要性を確認いたしまして、そのための審議官級の実務協議を早期に開催することで一致しております。現在、外交ルートを通じて日程を調整中でございます。

 我が国政府といたしましては、日韓EPA交渉の早期再開に向けて引き続き努力していく考えでございます。

 なお、ただいま同時に御質問ございました難しい点でございますが、EPA交渉中断の原因ということとの絡みでございますが、韓国側からは、我が国の農水産品の関税撤廃が十分なものにならなければならないというような主張があったことがございます。また、韓国側からは、二国間の産業協力にも関心を表明してきております。この点につきましては、先般の日韓首脳会談等でも取り上げられておりまして、そこで部品素材分野におきます協力について検討するということで一致してきております。

近藤(昭)委員 交渉でありますから、さまざま原因があったわけだと思いますけれども、しっかりと広域的な連携というものが、それぞれ個別でいうと痛みがあるところがあるのかもしれませんけれども、全体でいうと大きな利益を生むと思うんです。そういう意味では、しっかりとやっていただきたいと思うわけであります。

 続いて、日本とスイスの経済連携協定について簡単に質問をしたいと思います。

 本協定は、我が国にとって欧米先進諸国との初のEPAということである、我が国とEUとの間のEPAのモデルケースともなり得るのではないかと思います。日本とEU間のEPA締結の今後の可能性と現状について、大臣に少しお伺いをさせていただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 EUとの経済関係、これは貿易や投資のみならず、さまざまな分野で非常に深化したものになっていると認識しております。日・EU定期首脳協議も含めて、重層的に対話を行う枠組みが構築されているわけであります。

 それで、政府といたしましては、日本・EU間のEPAについては将来の課題として検討を進めていく必要があるというふうには考えております。また、日本・EUの経済関係のさらなる発展を促す基盤を整えていく方策については、民間においてもさまざまな議論がございます。こういう議論もよく踏まえながら、引き続き積極的に、かつ真剣に進めていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 そういう中で、順次EUとも、EUを含め各国と交渉していくんだと思うんですが、その交渉相手国・地域を選定というか、次はどこをやろうというような決定に当たってはどういう方針で臨まれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 まずは、保護主義というものを抑えて自由貿易体制の堅持、また推進するということが非常に今重要なわけであります。そのためにも、全体の枠組みでもあるWTOドーハ・ラウンドの早期妥結を目指すとともに、さっきも申し上げましたけれども、これを相互補完するものでもありますので、相手国・地域との経済関係を強化する手段としてEPAをやるということであります。

 それで、どういうことがパラメーターというか相手国を選ぶ基準になるのかという御質問でございます。

 幾つか要素がありますけれども、重要なものを申し上げれば、今後の選定方針でございますけれども、まずは我が国にとって有益な国際環境の形成に資するかどうかという点があるかと思います。それから、我が国全体としての経済利益の確保が図られるかどうかということもあると思います。そしてまた、相手国・地域の状況、あるいは実際、相手国がEPAをどれぐらい実現可能性があるのか、こういった観点も見ていくと思います。

 以上がすべてではありませんけれども、こういった点を中心に総合的に判断していくということになろうかと思います。

近藤(昭)委員 相手国との連携、協定でありますから、相手国の要望といいましょうか、相手国からも呼応してこなくちゃならないということだと思いますけれども、ぜひ積極的に、今おっしゃられたような中で推進をしていただきたいというふうに思います。

 続きまして、航空協定について質問をしたいと思います。

 重複を避けまして、幾つか簡単にお答えをいただきたいと思うんですが、サウジアラビアとの関係の中でいいますと、いっとき行政許可で飛行機が飛んだことがあると思うんです。そういう中で、一般的に行政許可から航空協定に変更するということは、運航に関する法的安定が出るんだというふうには思うんですけれども、そのほかにどんなようなメリットがあるのか、また、航空協定と行政許可とで生じるコスト面での違いなど、具体的にお話しいただければと思います。

関口政府参考人 お答えいたします。

 航空協定の締結によりまして、今委員御指摘のありましたコスト面で申しますと、直接的な大きなメリットがあるというわけではございませんけれども、やはり定期航空の航路を安定的に運営するという基盤が構築できますので、これが法的に整備されるということで、長期的な視点に立った設備投資あるいは要員の確保等、航空企業にとってのメリットがあるというふうに考えております。

近藤(昭)委員 そうした需要がある中で、行政許可から協定になっているのかなというふうに推察するところもあるわけでありますけれども、安定性の必要性がある、そういう中で変わっていくのかなと思うんですけれども。

 ところで、伝統的な二国間航空協定ということで、その有用性という観点から質問をしたいんですが、二〇〇七年に閣議決定されたアジア・ゲートウェイ構想では、従来型の路線や輸送量を原則すべて政府間の航空協定で合意するのではなくて、路線や輸送量制限の撤廃を二国間で合意する航空自由化という概念が取り入れられているということでありますが、政府の政策としては、この航空自由化という概念と二国間協定というのを、どちらをより重視しておられるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

関口政府参考人 今御指摘ございましたとおり、二〇〇七年の五月に策定されましたいわゆるアジア・ゲートウェイ構想に基づきまして、空港容量に制約がございます首都圏空港の関連路線を除きまして、海外との路線及び便数について制約をなくすという航空自由化の方針で現在進めております。

 既に現在まで八つの国あるいは地域との間で合意をされておりまして、引き続き、アジアにおきましても、中国などの主要国、あるいはまた、アジアに限らず、欧米の国々とも、各国の個別事情を踏まえ、また公平、平等の確保などの課題に対処しながら航空自由化を進めてまいりたいと考えております。

 しかし、航空当局間におきまして、二国間の輸送状況あるいは相手国の意向などからこうした合意がなされない場合には、従来どおりの路線、便数を具体的に協定において規定するということで進めていくということになろうかと思います。

 ただ、いずれにいたしましても、この協定の枠組みの中で自由化を推進していくということでございますので、航空自由化ということが一切協定をなくするということではないということは御理解いただきたいと思います。

近藤(昭)委員 航空自由化という、かなりアメリカなんかが進めている概念だというふうに思うんです。ただ、アメリカと違って、先ほどもいろいろちょっと議論があったと思いますが、日本の場合は成田空港の、羽田も含めて、なかなか制限が強い。そういう中では、両国間の関係でありますから、向こうも開くならばこちらもまさしく自由にしていかなくちゃいけない。そういうところでいうと、成田、羽田に制限がある中ではなかなかこれも進むところが難しい。関空あるいは中部国際空港等々も視野に入れながら、そういうところも含めての自由化ということで、相手国が納得をすればということではないかというふうに聞いておるんですけれども、そういう中で、もちろん相手国としては、関空、中部国際空港ではなかなかという中ではという現実の問題が、壁といいましょうか課題がある。そういう中で、政府としても、首都圏、成田、羽田ということについての整備ということでお考えだと思うんです。今回の協定でも、サウジアラビアの指定航空企業が成田へは運航することができないだろうということではないか。そういう中で、今も申し上げました整備ということで、成田空港の平行滑走路二千五百メートル化についての推進、また羽田空港が四本目の滑走路を整備して年間の発着能力を増強する、そして国際定期便の就航を図るというふうに聞いておるわけであります。

 羽田空港にも国際線を入れ、成田と羽田の一体的活用ということだと思うんですけれども、これまで国内線は羽田で国際線は成田という基本的な枠組みがあったというふうに承知をしております。そういう中で、羽田への国際線の乗り入れはどういう基準でこれから進めていかれるのか、また、今後、整備計画に従って両空港の処理能力が向上すれば、アジアのハブ空港を目指して、今もお触れになられた航空自由化の概念をこの両空港の中で活用、実現をしていくおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。

関口政府参考人 お答えいたします。

 まず、羽田空港の国際線の問題でございますけれども、これにつきましては、平成二十年六月二十七日に閣議決定がございまして、いわゆる骨太の方針二〇〇八というのがございますが、この中で、昼間においては、都心に近い羽田空港のアクセス利便性を生かしまして、近距離アジア・ビジネス路線を就航させていく、来年の十月以降のことでございますけれども、こういった方針。また、成田空港の運用が制限されております深夜、早朝の時間帯におきましては、こういった地域に限らず、欧米も含めた世界の主要都市に対する就航を可能とするということでこういった方針が定められておりまして、この方針に基づきまして、現在各国との交渉を進めておるということでございます。これによりまして、現在の成田空港のネットワークに加えまして、特に主要な都市、需要の多い国に対しましては、羽田空港からもダブルのネットワークが整備されるというふうに考えております。

 また、こういった首都圏の空港におきます自由化の問題でございますけれども、これはやはり現在の首都圏の航空需要が十分にまだこの空港で賄い切れていないという状況がございますのでなかなか現状では困難でございますけれども、いずれ今後、この空港の整備によりましてそういった条件が整いますれば、そういった状況も考えられる状況にあろうかと思います。(近藤(昭)委員「ハブ空港化を目指すということ」と呼ぶ)

 ハブ空港化につきましては、先ほど御質問の中でも御指摘ございましたとおり、羽田空港につきましては、来年の十月に四本目の滑走路が完成いたしまして、三十万回から約四十万回にふえる、また成田につきましても来年の三月に二十二万回にふえるということでございますが、さらに地域の方々の御理解も得ながら三十万回を目指してふやしていくというようなことで、このハブ空港化については引き続き努力をしてまいりたいと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。

三原委員長代理 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 きょうは、三条約ということで質疑に立たせていただきたいと思います。

 また、谷内政府代表におかれましては、お忙しいところ、御出席ありがとうございます。

 それでは、政務官がおいででございますので、この日本・スイス経済連携協定をまず伺いたいと思います。

 お手元の資料で、EUの緊急措置の内容、一ページ目、二ページ目ございますけれども、このたび、スイスの方に盆栽等、これを輸出した場合の関税撤廃、これもEPAの中で盛り込まれているということであります。ただしかし、ゴマダラカミキリ、これがヨーロッパで見つかったということで、お手元のような、特に二枚目に書かれておりますような栽培施設の条件というものが付されているわけであります。

 スイスもEUに準じるということでありますけれども、具体的に今、農水省として、EU担当者と栽培施設の条件について何か協議を進めているのかどうか。例えば、これは二年間、二十四時間こうした施設にそうした盆栽等を入れておかないといけないということでありますが、これの緩和等を協議の中で進めていらっしゃるのかどうか、確認をしたいと思います。

江藤大臣政務官 それでは、お答えさせていただきます。

 非常に御指摘のとおりの問題でございまして、せっかくEPAを結びましても、こういうことであっては減ってしまうことは容易に予想されるわけでありますが、ただ、今回、この対象となりますのが全体の輸出量の一一%という、少ないと言うと言い過ぎかもしれませんが、大きな影響ではないであろうというふうに思っております。

 そして、従前の国内的な対策につきましては、もう多分レクでお聞きになっていらっしゃると思いますので、御説明は申し上げません。もうやりませんが、その後、確かにこのカミキリムシが入ってまいりまして、先生がつくられたこのようなあらゆる対策をやりなさいということになっております。

 まず、一番目に申さなければならないのは、無発生地域において栽培されたものに限るというような条件も付されておるようであります。無発生地域を日本国じゅうにつくるのは無理ですので、これは無理だということを農水省としてはもうはっきり申し上げまして、EU各国もスイスも大体大筋で御了解をいただいているというふうに認識をいたしております。

 その他の条件としまして、国内園地管理、登録、これは今までどおりやってきたことですし、年二回の無発生地域確認、これも今までどおりやってきたことであります。四番の綿密な検査、これもやってまいった従前どおりの対策でありますから、今までのことを続ければいいわけでありますが、先生のペーパーの三番目にあります、アノプロフォーラキネシスですか、これが侵入する可能性のない温室、網室をやりなさいということにつきましては、農家にとってはさらなる設備投資が当然伴うことでありますので、やはり農水省としても非常に困るということは申し上げてまいりました。

 もともとこれが見つかりましたのは、平成十九年の大体三月ぐらいから十一月ぐらいに出荷されたものの中にどうも幼虫がまじっていたらしくて、それが発見されて、十一月になりまして、二十年に対策が発表されたわけでありますけれども、その間も、農水省としましては、こういう厳しい対策はやり過ぎではないかという申し入れもしております。

 それから、やはり技術的な検証が必要でありますので、技術的な検証につきましては、両国間で十分に共同してやりましょうという申し入れもいたしました。これもなかなか受け入れていただけませんので、それでは措置の発動の時期を後ろにずらしてほしいという申し入れを二十年の十月に行いましたが、残念ながらこれも断られてしまいまして、今申し上げましたように、十一月七日に発動してしまったわけでございます。

 さらに申し上げておきますけれども、それであきらめたわけではございませんで、ことしの三月にはブリュッセルに担当官を派遣いたしました。この担当官は、EUの植物検疫の担当者でございます。その人間と農水省の人間が、二年間というものを何とか一年に短縮できないかということで随分話をしましたが、担当者、会った人間とも話しましたけれども、どうもいい感触は得られなかったようでございます。いい報告ができなくて非常に申しわけないと思っております。

 先生の御地元は非常に盆栽等が盛んというふうに聞いております。我々自民党としても、農産物を一兆円輸出したいということを目標に頑張っておるわけでありますから、農家に対する負担増というものはいいことではないと思っております。ですから、網を張らなければならないとか温室をつくらなければならない、これにつきましての設備投資につきましては、御存じの、強い農業づくり交付金、これが対象になりますので、ぜひ先生、御地元の方々と御相談をいただいて御対応いただければ、農林水産省としても対応させていただきたい、そう考えております。

武正委員 話を聞きましたら、例えば、冬の間はそうした温室に置かなくてもいいのではないのか等、そういう交渉もやっておられるということも聞きましたので、ぜひこれについては、また外務省におかれましても、EPAがさらなる輸出振興につながるような対応をお願いしたい。これは要望にとどめておきたいと思います。

 それでは、政務官、ありがとうございました。

 きょうは条約の審議ということで、まず冒頭、一問だけ聞かせていただいたわけですが、政府代表に急遽出席をいただいたこと、感謝を申し上げます。この間、当委員会でも二回、谷内政府代表の三・五島発言を取り上げさせていただき、御出席をお願いしてまいった経緯がありまして、急遽きょう御出席をいただけるということで感謝を申し上げます。

 そこで、お手元の方に資料を配らせていただいております。三ページ目が、既に何度も引用されております、毎日新聞の谷内政府代表のインタビュー記事。特にこの中では、一番下の段、左から十一行目、「私は三・五島でもいいのではないかと考えている。」この発言が誤解を与えた、これは直接言っておられないと参議院の予算委員会でも明言をされております。

 加えて、四ページ目、ファクタの記事。この左側のページの一番上の段、左から五行目以下、「シベリア・パイプラインから百万バレルが極東に供給され、」云々かんぬん、「三・五島の返還でもいいということになるかもしれない」、これについても、参議院の予算委員会で同僚の民主党の委員から質問がありまして、それに対しては、大きな戦略的構図を描いているんだ、これについて直接このとおり言ったかどうかは定かではないというふうに言われているんですが、やはりこの一連の記事を見ておりますと、大きな戦略的構図を、エネルギーとかいろいろな要素を加味しながらも、でも、やはり領土交渉ですから、この三・五島というようなことも返還の選択肢であるというようなことが何となく一連のやりとり、報道からもうかがえるんです。

 改めて、この毎日新聞、ファクタの記事、そして参議院の予算委員会を踏まえて、政府代表から御答弁をお願いしたいと思います。

谷内政府参考人 今回は、衆議院の委員会で初めての説明になりますので、ちょっと基本的なところも言わせていただきたいと思います。

 私は、もちろん、特別職の公務員でございますから、政府の基本方針、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これは当然の前提として考えておる、これがまず大前提でございます。

 他方、北方領土の問題につきましては、これまで諸先輩が物すごいエネルギーをかけて議論をしてこられまして、その問題そのものについては、ほぼ論点をこれまでもう尽くしているというふうに私は思っておるわけでございます。これをさらに続けて、議論はすべきですけれども、それでもって物事の展開が図られるかというと、私は個人的にはそこは疑問がある、こういうふうに思っておるわけでございます。

 私の考え方をあえて申し上げさせていただければ、これは今先生が既に御指摘いただきましたけれども、エネルギー、例えばパイプラインとか、原子力協力とか、あるいはまた環境、これは生態系の問題等々ございます。気候変動の問題もございます。それからまた極東、シベリア開発の問題、これまたたくさんあるわけでございます。さらに、政治的に言えば、アジア太平洋地域へのロシアの統合等々の問題もございまして、こういった問題を大きな構図で考えていく。そして、両国がそこに戦略的利益を見出すということが、議論の過程でそういった構図が浮かび上がってくれば、その中において、領土問題をどうやって解決すればいいのかということに双方が知恵を出して考える。基本的にそういうアプローチをとったらいいのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。

 他方におきまして、今先生から御指摘がありました、問題になっている報道の「私は三・五島でもいいのではないかと考えている。」これは、はっきり言えば、こういった大きな戦略的な構図を描いて、北方領土について知恵を絞って、それでその出口のところをどうするかという話でございますから、この出口のことを初めから言っちゃってこれだと言うのは、一部の方から批判をいただいていますように、決して賢明なやり方ではないので、そこのところは私たちが言っておりますように知恵を絞るべきだ、こういうふうに申し上げておるわけであります。

 それから、先生の方から多分質問が続いて出るでありましょうから、あえて先に言いますけれども、では、三・五島という言葉は使っていないのかとおっしゃられれば、いろいろな、四島とか二島とかゼロ島とかいう流れの中で三・五ということも言っています。ただ、出口としていわゆる三・五島論を言ったのかと言われれば、それは言っておりません、こういうことでございます。

 いずれにしても、私は、このインタビューに応じて、全体の流れの中で誤解を与えるようなことがあったかもしれず、また、関係者にも御迷惑をおかけしたという事実はございますので、そこは反省もし、深く遺憾としている、こういうことでございます。

武正委員 お手元の資料の五ページ、ちょうどこうした外務省のOBの方々が名前を連ねる、その中でもやはり三つの指摘があって、一つが国会の決議、二つ目が交渉のやり方、それから今の情勢判断というようなことで指摘をしているわけですが、この三点については政府代表としてはどのようにお考えになられますか。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

谷内政府参考人 ここの緊急アピールに書いてございますように、「対露領土交渉の基本的立場を崩してはならない」というところは、私もそういうふうに思っております。ただ、個々の論点につきましては、私なりに意見が違う部分もございます。

 ただ、これは今この場でまた申し上げて、新たな論点を今こういった形で提起するというのは余り適当だとは思いませんので、申しわけございませんけれども、私の個人的な意見というのは控えさせていただきます。

武正委員 この間の日ロ交渉を見てまいりますと、お手元の資料六ページ、七ページ、八ページということで、小泉内閣以来の日ロ間の諸文書を見てまいりますと、最初のいわゆる国際約束で見ますと、二十八のうち十七がいわゆる経済関連、そして、次の日ロ間の国際約束で見ますと、六つのうちの四つ、合計三十四のうち二十一がいわゆる経済。これに今谷内さんが言われた生物等も含めてまいりますともっと多くなっていくということでありまして、どこで日ロ間の交渉が転換点があったのかなというふうにかんがみますと、やはり二〇〇一年三月二十五日のイルクーツク声明、ここで初めて、その間余り触れられていなかった、もちろん触れられていましたけれども、五六年宣言が基本的法的文書であるということが位置づけられた、ここが一つ転換点なのかなというふうに考えるわけです。

 私は、やはりその前から進めてきた、エリツィン大統領との東京宣言を原点とする、橋本元総理も画期的な文書であるということで、二〇〇〇年末までの平和条約の締結、こういったことで来たことが、当然、相手がプーチン大統領になったという変化はあっても、ソ連からロシア、そして文書を、いろいろな諸合意を引き継いでいく、こういった中でやはり日ロ間の交渉の対応を変えたというのがそもそもその三・五島の話にも行き着くような問題があったのではないかというふうに考えるんですが、その点はいかがでしょうか。

谷内政府参考人 歴史的なことを振り返って、今先生がおっしゃられたような事実があるのかどうか、この点については、正直に申し上げまして、そのような政策転換をやって今日のいわゆる三・五とかというこの手の議論につながっているんだというふうには私は認識しておりません。

 他方、先生がおっしゃいますように、一九九三年の日ロ関係に関する東京宣言、これは極めて重要な内容を含んでおりますし、これはまた我々としては当然維持していかなくてはいけない基本的なラインだというふうに思っています。その上にいろいろな、今先生御指摘の諸文書、これもでき上がっておるんだ、こういうふうに理解しております。

武正委員 今言ったように、イルクーツク声明で五六年宣言が基本的文書であることを確認というふうにうたってあるわけで、それまで東京宣言、これをまずベースとしてやってきたわけですね。ですから、私は、ここがやはり転換になって、なおかつ、先ほど触れたようなこうした諸文書を見る限り、どうしても領土よりも経済といったことが優先してきたのではないかなというふうに思うんです。

 そこでお伺いしますが、九ページ、十ページ目の東京宣言、これをよく政府が引用して、四島の帰属を確認して平和条約の締結というふうに言われるわけですけれども、この二項目めを見る限り、「両国の間で合意の上作成された諸文書」、そしてその前に「歴史的・法的事実に立脚し、」と。そして「両国の間で合意の上作成された諸文書」、そして「法と正義の原則」、この三つがやはり前提となって交渉をしていくということからすれば、そもそも、日本の固有の領土として一八五五年に、言うまでもない得撫島、そして択捉島の間に国境が画定をしたというのがまず原点でありますので、この「歴史的・法的事実」といった、やはりこの東京宣言にまず立場を立脚して行うというのが日本の立場あるいは日ロ交渉の基本ではないかと考えますが、政府代表の御所見を伺いたいと思います。

谷内政府参考人 私個人の意見ということでお聞きなさっているという前提で申し上げますと、私としましては、先生のおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 ただ、私は、政府代表という肩書ではありますけれども、何といいますか、いわゆる現職ではございませんので、ここはもし差し支えなければ外務大臣の方からお答えいただくべき筋合いの御質問ではないか、こういうふうに思います。

武正委員 改めて、政府代表が、今官邸に部屋もあり、そして総理のもとでさまざまな外交交渉に当たっているというお立場できょうはお話を伺わせていただいたということでございます。

 時間となりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

河野委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 ここまでるる出てまいりましたけれども、私の方からも、今回の北朝鮮の文字どおり国際世論を無視しての核実験の強行、これは、繰り返しになりますけれども、日朝平壌宣言に明確に違反する上、国連決議にも違反をします。これはまさに平和を希求する国際社会に対する重大な挑戦であり、断じて許すことはできません。唯一の被爆国である我が国の責務は、世界の核廃絶に向けての先頭に立って、軍縮、そして不拡散に向けた努力を一層強化していく必要があると思います。

 私も賛同者としてきのう名を連ねました国会決議にもありましたように、北朝鮮による今回の核実験について強く抗議をするとともに、国連安保理での対応はもとより、我が国としても、北朝鮮に対する制裁の強化など断固たる措置を講じるべく、外務大臣におかれましても、きのうの国会決議に基づきしかるべき対応が速やかに行われるよう要請をするものでございます。

 そこで、確認の意味を込めてお伺いをいたしますけれども、そもそも、いろいろな取り組みをしているけれども、いわば考えられないような北朝鮮の行動はとまるところがございませんけれども、なぜこのような行動に北朝鮮は出るのか、この点について我が国は状況をどのように分析しているのか、これは大臣の方にお伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 今回の北朝鮮による核実験、まさに国連の安保理決議一七一八に明確に違反するものであると同時に、今世界的に進めようという機運になっている国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であると考えております。また、北東アジアのみならず、国際社会全体の平和と安定に対する重大な脅威であると認識しております。

 このような北朝鮮の行動は、日本はもとより国際社会としても理解し得るものではなくて、我が国としても、今御質問でありますけれども、その意図や真意というのを云々する立場にはないということをまず申し上げなければならないと思います。

 いずれにいたしましても、北朝鮮による核実験は、北朝鮮が、大量破壊兵器の運搬手段になり得る弾道ミサイル、この能力も増強しているということをあわせて考えれば、我が国の安全に対する重大な脅威でありますし、北東アジア及び国際社会の平和と安全を著しく害するというものとして、断じて容認できるものではありません。

 外務省としては直ちに、北京の大使館ルートを通じて、北朝鮮側に対して断固たる抗議、これを行うとともに、国連において国連の安全保障理事会の会合の開催を要請いたしました。これは開かれました。そして、昨二十六日、日本時間になります、に行われた安全保障理事会の非公式の協議におきまして、安全保障理事国は、今般の北朝鮮による核実験は、安保理決議第一七一八号に明確に違反するものであり、この核実験に対し強い反対と非難を表明し、安保理決議につき直ちに作業を開始することで意見の一致を見たものであります。

 今後の安全保障理事会の議論の結果、これはまさに予断を許しませんけれども、日本といたしましては、一番の関係国といいますか、被害、脅威の及ぶ日本でありますので、米国、韓国、そして議長国であるロシア、また中国とも緊密に協議、連携して、国連の安保理等においてしっかりとした対応をしていくように全力を挙げる所存でございます。

伊藤(渉)委員 今副大臣に答弁いただいたように、確かに、何を考えていらっしゃるのかわからない、そのとおりだと思います。ですからそこを云々はしていかないという考え方もありますけれども、一方で、解決していくためにそこをやはり探り続けるということも重要だし、根本的にその辺の情報戦という意味で我が国はまだまだおくれをとっているのではないかというような印象も私は持っておりまして、ぜひともその点にも私は力を入れていっていただきたい、こういうことをお願いしたいと思います。

 では、きょう審議になります協定を順次聞いていきたいと思います。

 まず、ベトナムとの経済連携協定でございますけれども、我が国とベトナム、近年交流が活発でございます。私も厚生労働省の政務官をさせていただいているとき、二度ほどお伺いをいたしました。

 特に先月、麻生総理が来日中のマイン共産党書記長と、また先週には同じく来日中のズン首相と会談を行うなど、首脳間の交流は極めて活発でございます。これは非常によいことだと思います。特に、本日審議をされる日・ベトナムのEPA、麻生総理とズン首相との会談の中でもありましたように、本協定が早期に国会で承認され、発効することが望ましい、こういう意見で一致をしているところでございます。

 また、中曽根外務大臣におかれましては、昨日までアジア欧州会合外相会合に出席のためベトナムを訪問されるなど、我が国の外交力強化に一層資するものとして大いに評価をさせていただきたいと思います。

 今回の会合の成果について大臣にお伺いをしますとともに、ベトナムのキエム副首相兼外相との会談内容及び成果についてお伺いをいたします。

中曽根国務大臣 今委員からお話がありましたように、ベトナムのハノイで開催されましたASEMの外相会合に出席をしてまいりました。ASEMの会合は、案内のとおりでありますが、アジア、ASEANに加えまして、日本、韓国、中国、そしてEU二十七カ国、さらに国際機関の外相また代表等が集まる会議で、大変重要な会議でございます。私は昨日の早朝帰国いたしまして、橋本副大臣が引き続いて私の退席した後を務めてもらいました。

 この会合では、世界経済とか、当然のことながら、現下の情勢から金融問題、あるいは気候変動問題、そして海賊の問題、あるいはそのほかの数多くの、またインフルエンザの問題等、これらが議論されたわけでありますが、これらの問題につきまして、離れておりますアジアと欧州の諸国が同じような認識を得ることができたというのは、また、一緒になって問題の解決に取り組んでいくということは大変意義のあることだと思っております。

 この会議におきまして、私は我が国を代表してスピーチを行ったわけでありますが、私の行いましたセッションでは国際経済のところでしたけれども、私はあえて、一昨日核実験が行われたということを踏まえまして、またこの重要性を踏まえまして、あえてこの問題を提起いたしました、北朝鮮の核実験の問題を。そして、北朝鮮のこの行動に対してはASEMとして強いメッセージを出すべきだと。ちょうど四十カ国の外相が集まっている、この機会を逃すことになってはならないということで、強いメッセージを出すべく働きかけを行いまして、また各国の外相ともバイの会談をたくさん行いましたけれども、それらにおきましてもこのようなお話をいたしました。

 その結果、各国とも当然のことながらこの問題の重要性それから国連の決議違反であるということは認識しておられますので、最終的には議長がこのASEM全体の会議としての議長声明のほかに独立して北朝鮮の核実験に対するメッセージを出すことができて、私はこのようなことを提起してよかったな、そういうふうに思っているところでございます。

 また、この機会に、日本のASEMイニシアチブの一つであります新型インフルエンザ対策事業、これの開始式を、この四十カ国がいる総会の場で行いまして、我が国から、五十万人分のインフルエンザ対策の抗薬とかあるいはそのほかのマスクとか、そういうものの備蓄に関する発表を行い、また贈呈式を行ったところでございます。このような場でそのようなことができましたのは、アジア、欧州各国に、我が国のこの問題に対する貢献といいますか、真剣さといいますか、取り組みがまた理解されたものではないかと思います。

 また、ベトナムのキエム副首相兼外相と会談を行いましたけれども、この会談では、単に二国間の問題のみならず、ことしは日本・メコン友好年ということでございますし、日本とメコン全体の協力の強化、それから北朝鮮問題、そしてさらにミャンマーの問題、こういう問題など、地域情勢や国連の安保理、軍縮等々幅広い分野で率直でまた有意義な意見交換を行うことができたわけであります。まさにアジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ、ベトナムとはそういう形で今協力を進めておりますが、これを具体化させる会談になった、そういうふうに考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 対北朝鮮ということを初めとして、時を逃さない、積極果敢な御行動に敬意を表したいと思います。

 ベトナムですけれども、我が国にとっては九番目に二国間のEPAの署名を行った国でございます。他の署名各国と比べて特徴的なのは、一人当たりのGDPがEPA締結国中で最も低いという点にございます。一般的には、先進国が開発格差のある途上国と自由貿易を行おうとすると、競争性を持つすぐれた商品が市場シェアを占めることになりかねませんので、途上国によっては重要品目の保護や自国産業の早期育成等に迫られるケースが生じてまいります。

 この点を踏まえ、日・ベトナムEPAでは、その前文で両締約国間の開発にかかわる格差を認識することがうたわれております。本協定は、両国間の経済発展のみならず政治的な結びつきをも一層強化をするものでございますので、そこから生じる利益は一方に偏るべきではないと考えます。また、考慮すべき点としては、ベトナム側は今回が初めてのEPA協定でもあることから、我が国は先進国の立場として、またアジア外交の強化等の観点からもベトナム側の要請に対しては可能な限り配慮していくべきだろう、こう考えます。

 そこで、本EPAの前文が協定本文の中で具体的にどのように反映をされているのか、外務省の方にお伺いをいたします。

鈴木政府参考人 お答えいたします。

 今委員から御指摘もございましたように、日越のEPAにおきましては、両国間の経済格差に関する認識を踏まえるということでやっておりまして、本協定のもとでさまざまな分野での協力あるいは情報交換を実施していくことにしております。

 具体的には、EPA協定本体の中に協力に関する章がございまして、その中におきまして、農業、林業、漁業、及び貿易・投資の促進、中小企業、さらに人材管理及び養成、観光、情報通信技術、環境、運輸等の分野におきまして両国政府間が協力することを定めております。具体的には、この章に従いまして、今後、両国間で、協定発効後協議をいたしまして協力案件を詰めていきたいと思っております。

伊藤(渉)委員 余り具体的じゃないので、しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 また、逆のことと言うとあれですけれども、経産省にお伺いします。

 このEPA、日・ベトナム間の経済上の協力における協力事業・計画のリストにおいて、ベトナムの繊維・アパレル産業の競争力強化支援と、日本市場へのアクセスを開拓するベトナム企業支援、これが盛り込まれております。

 繊維・アパレル産業については、ベトナムの輸出統計の中でも、原油に次ぐ第二位を占めております。年々その実績は著しく向上をしている。また、我が国の輸入実績でも一五%近くを占めておりまして、シェアも大きい。

 ベトナムの繊維・アパレル産業の支援強化は、ベトナム国民の生活向上にまず大きく貢献すると思いますけれども、経産省として具体的にどのようなプロジェクトを予定しているのか、お伺いをいたします。

後藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員の御指摘のように、この協定を署名するに当たりまして、繊維に関しまして、ベトナム側の繊維とアパレル、繊維製品でございますけれども、この産業の競争力の強化と、それからベトナム側からの日本市場へのアクセスの強化というようなことが盛り込まれてございます。

 それで、お尋ねの点は、具体的にどのような支援といいますかプロジェクトをしてまいるかということでございますけれども、結論から、まだ具体的に全部が張りついては決まってございません。今後の手順といたしましては、この協定が発効させていただきますと、我が国とベトナムの両国の間におきまして、繊維官民協力対話といったような形で官民で協力をいたしまして、具体的に何を議論していくかということを詰めてまいるということでございます。

 これは例えばの話でございますけれども、既に進んでおりますタイですとかカンボジア、そういうところの例で申しますと、生地の製造でございますとか、縫製の技術向上のための相手国側の官民ミッションの受け入れでございますとか、我が国からのミッションの派遣ですとか、そういうことをしている例がございます。

 こうしたことを、今後の話、先方の要請も踏まえてでございますけれども、双方に裨益するような協力のあり方につきまして今後考えてまいりたいと思っております。

伊藤(渉)委員 そうですね。それでは、まだ具体的なことを聞くには早過ぎたのかもしれません。

 一方で、国内に目を向けますと、これも経産省の方に、局長にお伺いしますが、例えば私の地元の愛知でも、東三河ですとか一宮、これは繊維の町として有名ですけれども、なかなか厳しい状況がございます。今回のベトナムとのEPA、また今後締結されるEPAについて、どう評価をし、我が国の繊維産業への影響というのをどう考えているのか。

 また、国内のこうした産業の支援、例えばイタリアの繊維業界の復権、これは、質のよい製品、そして高付加価値化によって価格競争への対抗策をつけてきたわけですが、こうした貿易自由化の波に対し、どのような手だてを、また、国内産業の育成という意味で講じていくのか。

 背反する話ですが、やはり局長の方にお伺いをいたします。

後藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 まず、二つお尋ねがあろうかと思いまして、評価についてでございます。

 我が国の繊維産業への評価ということでございまして、これは、もともと貿易を振興してまいろうという協定の趣旨でございますから、出もふえれば入りもふえるということでございまして、日本にも入ってくるということはあろうかと思います。一方、出てまいるというのは、今後やはり成長が国際的にも大変期待される市場でございまして、そこは産業の輸出としても期待されるということでございます。

 一方、繊維の産業ということで見ますと、国内に入ってまいっております製品がどこから来ているかというと、九割を超える廉価品、これがほとんど中国でございます。中国とは別にEPAということでやっているわけではなくて、したがって、ちょっとややこしいのでございますが、EPAは大事、中国からはEPAと関係なく入ってきている、こういう諸般のことがございます。

 いずれにせよ、繊維産業を元気にしてまいるにはどうするかということでございます。具体的には、JAPANブランドといったような中小企業庁の施策がございます。地域におります商工会、商工会議所ですとか、委員の地元であります尾張、三河、いずれもこうした大変繊維の伝統的な立地がある地域でございますけれども、例えば、欧州のブランド品に直接中小企業から卸している、ですから品質は大変よろしいんですけれども、利益という点では、どうも日本側が使われてばかりいる。日本独自のブランドということを育ててまいるために、米欧、特に欧州のフランスですとかイタリアといったところで展示会をやりまして、バイヤーとの商談をやりましたり、どのようなマーケティングをしてまいればよろしいか、そういうようなことを進めてまいるというようなことをしてございます。

 あるいは、JB、ジョイント・尾州事業というのがありまして、地元の一宮でございますとか尾西の商工会でございますとか木曽川町商工会というのは、この各地域地域だけじゃなくて、近隣のところと強みを持ち寄りまして国内で展示会をやりますとか、パリ、ミラノ、香港、こういうところの展示会に参加をする。そういうところの支援もしてございます。

 いずれにいたしましても、こうした施策を通じまして、このEPAの締結というのも一つの刺激といたしまして、今後、成長の見込まれるアジアというところにも、その成長を取り込みまして、我が国の繊維産業の活性化に努めてまいりたいと思ってございます。

伊藤(渉)委員 貿易の自由化、国際競争の流れというのは抗しがたいものがあって、これは日本もどんどん力をつけていかなきゃいけないと思います。当然、世界的に見れば小さな国ですし、何か石油が掘れたりするわけでもありませんから、やはりこの国の強みは、そういった技術ですとか、そういうきめ細やかな産業というか、こういうところによって立つところが非常に大きいと思うんです。そう私は信じて、さまざまな取り組みをしているわけです。

 これは通告をしていませんが、例えば繊維産業、欧州に行って展示会とかするとかいうふうにおっしゃっていましたが、その評価というか、やはり日本の製品は一味違うなとか、そういう国際的な評価を現状得ているのか、国も含めてまだまださらなる取り組みを必要としていくのか、その辺の、印象で結構ですから、局長の見られている生の声をお聞かせいただければと思います。

後藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今申させていただきました事業以外にも、感性価値イヤーというのを昨年度から三年間ということでしております。日本には独特の、自然の中に取り込まれて生きているという生活様式ですとか、それが具象化した形になったものですとか、服ですとか衣類ですとか、そういうものがございます。

 これを、昨年の十二月、パリのルーブル美術館の建物の中にありますパリ装飾美術館というところで展示をいたしました。九日間で一万人を超える方々が来られまして、特に欧州の方々というのは、日本の深みといいますか、いろいろな価値を統合して形にしていくようなことというのは大変な評価をいただいております。

 では、これがすぐにそろばんにつながるのかという問題でございます。

 中小企業の場合ですと、いいデザイン、発想があり、いい素材があり、それを商品として展開しまして、顧客の商務といいますか、そういうことができてというのが全部つながらないと、一個欠けるだけでもこれはお金につながらないということがありますし、もったいないことをしている。それで、先ほども申しましたような、物だけを納めて向こうのブランドになっている、こういうことでございました。

 私どもの方としましては、ちょっと足りないところは公的に補って、一回回してみよう、それで実力を評価してみようと。それでやってみましたところ、やはり大変評価を得ております。ですから、実力があることは非常にわかりました。ですから、あと幾つかのところを引き続き補う、あるいはファイナンスを民からやる手だてを考えてまいるということをやっていけば、日本のよさというのは、廉価品と真っ向から価格勝負をするのではなくて、真の強さ、物づくりの強さをこれからも生かしてまいれると思っております。

 ですから、御指摘のように、私どものところも、どこへリソースを投入すればこれからも実力を真に発揮していけるのか、そこのところを引き続き強めてやってまいりたいと思います。実力は十分にあると思っております。

伊藤(渉)委員 文字どおり、国として、やはり我が国の強みを育てていかなければなりませんので、引き続きの取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 次に、東南アジアで多数の死亡者を出しております鳥インフルエンザ、また、先月以降、世界各地で蔓延をしている、我が国でも問題になっている新型インフルエンザなど、これら感染症の拡散防止のため、各国では平時から、検疫を初め水際での防止策強化、これが急務になっています。

 今回の日・ベトナムEPAでは、人や動物または植物の生命または健康を保護するために必要な措置である衛生植物検疫措置の規定が盛り込まれております。これは、我が国が二国間EPAを締結した国の中でも、マレーシア、チリ、メキシコとの間でしか盛り込まれておりません。

 本協定で盛り込まれた経緯についてお伺いをするとともに、ベトナムでの食品衛生管理や動植物検疫の能力向上に向けた我が国の具体的な協力措置について、外務省にお伺いをいたします。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 本件につきましては、EPA交渉の過程で、ベトナム側より、同国の食品衛生管理及び植物検疫の体制が脆弱であるということで、この機能の強化を目指す観点から、協定内に衛生植物検疫措置に関する規定を設けたいという要望がございました。

 この要望を受けまして交渉をした結果、この分野におけます情報の交換、科学的協議及び協力に関する議論等を行うための協議メカニズムというのを協定の中に設けることといたしました。今後は、この協議のメカニズムを使いまして、具体的な協力措置についてベトナム側と議論していくことになります。

 具体的な協力形態の一つとしましては、JICAの技術協力による我が方の専門家派遣ということを予定しております。

伊藤(渉)委員 日・ベトナム、最後の質問を聞きますけれども、先ほど私が申し上げたように、ベトナムに私も行ったことがあります。確かに日本製のオートバイがたくさん走っておりまして、ベトナムでの二輪車、現地生産が累計五百万台、ホンダのバイクですね。ベトナムでは二輪車のことをホンダと呼ぶほど同社のブランドがしっかり根づいているというふうに聞きました。

 一方、近年、これをコピーした中国製の製品が、粗悪と言われますけれども、大量に流入をしている。これがベトナム当局の摘発によって急減はしたものの、ベトナム経済の発展に伴う市場拡大によって、このコピー商品が再び増加傾向にあると聞いております。

 このEPAの締結によって、知的財産分野の保護、これについて具体的にどのような効果を期待しているのか、お伺いをいたします。

鈴木政府参考人 委員の御指摘がございましたコピー商品の急増ということがあるということは私どもも伺っております。

 そういう背景もございまして、本協定におきましては、日本、ベトナム両国が知的財産権の適切かつ効果的な保護を確保するとともに、知的財産権保護制度の効率的かつ透明性のある運用を促進し、侵害、不正使用及び違法な複製への対処、そして、十分かつ効果的な知的財産権を行使するための措置をとるということになっております。

 そして、この協定では、さらに、日本、ベトナム両国が知的財産権の分野において協力をするとともに、協議メカニズムを通じて、知的財産権保護及び知的財産権の権利行使の強化に向けた協議を行うということを規定しております。

 これらの規定を通じまして、コピー商品の流通あるいは知的財産権問題への対処のための日・ベトナム両国の協力体制が強化されたものと認識しております。

伊藤(渉)委員 くれぐれも実効性の上がるように取り組みをしていただければと思います。

 時間がなくなってきたので少し飛ばしまして、最後の質問をお伺いします。サウジアラビアとの航空協定です。

 この航空協定に署名するまでに、既に今、五十五カ国一地域、ここで航空協定が発効しておりますが、他方、我が国への航空協定を希望している国は依然として四十カ国程度ある、こうも聞いています。いまだ多くの国が我が国への乗り入れを希望している状況に対して、政府としてはどのように対処していくのか、お伺いをしたいと思います。

 また、本協定の締結に関しては、両国相互の需要も重視されるべきものでございますけれども、日本からサウジアラビアへの渡航者、平成十八年には約一万人、サウジアラビアからの訪日は約二千人と聞いております。例えば、航空協定を締結していないペルーを見ても、我が国からの渡航者三万人、訪日者数一万五千人と、人数だけ見るとサウジアラビアよりも多い。

 我が国にとってサウジアラビアは極めて重要な国であり、無論軽んずる気は毛頭ございませんけれども、需要という観点から見た場合、それ以外にも協定を結ぶべき国は多いのではないかなと率直に感じますが、そもそも航空協定の交渉相手国はどのような方針で決定をされるのか、また、その方針のもとで現在交渉中の国があればお伺いをしたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ありましたように、航空協定につきましては五十五カ国一地域と締結をしておりまして、これは、我が国が締結をしております各種二国間条約の中で締結国が最も多いカテゴリーのものの一つでございまして、我が国としては航空協定の締結というものを推進していこうということでやっているところでございます。

 今御指摘がありましたように、各国からこれをやりたいという要望を多々いただいているところでございます。

 具体的に今ペルーのお話がございましたけれども、ペルーにつきましては、先方からこの分野における関心表明というものがございましたけれども、先方と話をしてみましたところ、ペルー側におきまして、ペルー側の企業の形態がどのようなものであるのか、それから、日本への就航に関する具体的な考え方というふうなものが具体的な形で示されなかったので、いまだ交渉に至っていないというところでございます。

 今後の取り組みということについて申し上げますと、多くの国が交渉の候補となるところでございますけれども、我が国といたしましては、航空需要の見込みであるだとか、当該国との二国間の関係、それから、相手国の航空企業の安全基準といった点を総合的に考慮した上で交渉を実施していくということでやっているところでございます。

 お尋ねがありました、現在取り組んでいるところということで申し上げますと、現在、中華人民共和国マカオ特別行政区との間で航空協定を締結すべく交渉を実施しているところでございます。

伊藤(渉)委員 以上で質問を終わります。

 ありがとうございました。

河野委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今回の北朝鮮による核実験は、国連安保理決議や六カ国協議共同声明にも明確に違反する暴挙であります。北朝鮮のロケット発射を非難した四月の国連安保理議長声明が意に沿わないからといって、世界に明らかにしてきた公約を一方的に破棄することは許されるものではありません。

 今日、世界の中で核兵器廃絶に向かう新たな機運が生まれつつある、このときに行われた今回の核実験は、そうした動きに対する乱暴な挑戦であり、北東アジアの平和と安定への重大な逆流であるということを言わなければなりません。

 我が党は、北朝鮮の行動に対し厳しく抗議するとともに、これ以上の核実験を厳に慎んで、核兵器開発を放棄し、無条件で六カ国協議に復帰することを強く求めるものであります。また、国際社会が一致して対処することが本当に極めて重要であって、政府には、そのための外交的イニシアチブを強く求めておきたいと思います。

 そこで、今回のEPA協定、経済連携協定について質疑したいと思うんですが、これを見ますと、農林水産品の全二千三百五十品目のうち、ベトナムとの協定では千三百六十品目、約五八%、スイスとの協定では千三百三十品目、五六%を関税撤廃するというものであります。農産物輸入の日本の平均関税率は約一二%と言われて、アジア諸国の中でも最も低関税率国であるということが言えると思います。これに対して、スイスの方は五一・一%、日本の約四・三七倍、ベトナムの方は二七・二五%ということで日本の二・三三倍となっております。

 そこで質問しますが、農林水産物の平均関税率がベトナム、スイスよりもはるかに低いという日本が、農林水産分野で大幅に譲許している。これらの品目の関税撤廃をすることによって、日本の農業への影響を含めて、その経済的な影響がどのようになるのか、検討結果等、対応いかんということで、それを伺いたいと思いますが、どうでしょうか。

小風政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のとおり、EPAの交渉に当たりましては、我が国の農林水産業に悪影響を及ぼすことのないよう、対象品目も含めまして、守るべきものは守る、そういう方針で交渉を進めております。

 具体的には、これまで締結しました国とのEPA交渉におきましても同様でございますけれども、我が国の農林水産業にとって重要な品目については、交渉の過程におきまして除外、具体的には、約束を行わない、あるいは再協議、一定年数後にその品目にかかわる関税の扱いについてまた再交渉しましょう、そういうような、品目によって扱いを異なって、関税撤廃の例外措置、そういうようなことを講じてきております。

 それからまた、関税の引き下げあるいは関税割り当てを設定する品目につきましても、国内の農林水産業の影響を見きわめながら、適切な水準になるように対処してきたところでございます。

 EPAの発効後の農林水産物の輸入動向につきましては、国内の需給あるいは他国からの輸入動向、こういうものが影響いたしますので一概には言えない面がございますけれども、現在、特に問題となっている品目があるとは承知しておりません。しかしながら、今後ともEPA締結国からの農林水産物資の輸入動向、こういうものは注視してまいりたいと考えております。

笠井委員 今、要はこの程度の譲許措置ならば国内への影響がないという御答弁だったと思うんですが、この説明というのは、私は疑問だと思うんですね。

 過去にも、対メキシコあるいは対フィリピンのEPAで、豚肉、牛肉、オレンジそれから鶏肉、小型パイナップルの譲許が措置されても影響がないというふうに説明をしてきましたが、結果的に、全体としてやはり輸入圧力になる、そして日本の農業経営に対する悪影響の要因になってきたと思います。今回も、冷凍野菜の段階的撤廃などを含めて軒並み譲許ということになっております。

 我が党は、我が国が諸外国と結ぶFTA、EPAにおいては、農業では相互の国の農業生産が互いに利益になるような内容が目指されるべきだと考えております。今回の二つの協定については、我が国の農業と食料を初め、国民の利益にとって将来重大な悪影響を与えるものとなるとの懸念が払拭できません。また、鉱工業分野でも、下請中小企業の経営にマイナスの影響が出ることが懸念されることから、協定承認には賛成しかねることを表明しておきたいと思います。

 さてそこで、世界では今、食料を市場任せにすることによる害悪が明らかになって、各国の食料主権を保障する貿易ルールの確立を求める流れが急速に広がっております。こうした中で、我が国自身が食料自給率の向上を国政の重要課題に据えて、農業を基幹的な生産部門として位置づける農政に転換をして国内農業の再生を図ることは喫緊の課題だと言うまでもありません。この際、その中でも重要な役割を占めている都市農業について、幾つか聞いていきたいと思います。

 まず農水省、今日、都市農業はどんな役割を果たしていると考えているか、認識しているか、お答えください。

飯高政府参考人 都市部における農業につきましては、消費地に近い、あるいは消費地そのものの中にあるという利点を生かしまして、新鮮な農産物の供給といった生産面での重要な役割があるのは言うまでもありません。

 そのほかに、都市住民ですとか学童に対する身近な農業体験の場を提供する、あるいは、災害に備えたオープンスペースの確保、潤いや安らぎといった緑地空間の提供など、重要な役割を果たしておると認識しております。

笠井委員 まさに多面的機能ということでありますが、都市農業ですべての農家がやはり意欲を持って農業に取り組めるように、地場産の農産物の利用の拡大あるいは価格保障という問題などとともに、農地の維持確保というのは本当に急務であり、必須だと私は思います。

 ところが、都市計画法で市街化区域として位置づけられた全国の農地面積は九万二千八百ヘクタールで、うち一万四千五百八十四ヘクタールが宅地並み課税にならない農地課税で、相続税猶予制度の対象となる生産緑地として登録をされています。残り七万八千二百ヘクタール、都市農業の八四%もの農地が、固定資産税は宅地並み課税で、相続税の猶予制度もありません。全国最大の生産緑地面積、二五%を占めて、それだけ持っている、そして九十万人分の野菜を生産している東京都の場合ですけれども、この東京都の農家の場合も、重い相続税や宅地並みの固定資産税で、税金を払うために働いている、農業生産では払えないと嘆くほど深刻な悩みを抱えております。

 このもとで、都内の市街化区域内農地も、生産緑地制度がスタートした一九九二年から二〇〇五年までの十三年間を見ますと、三一%も減少している。農業の中心的な担い手という点でも、六十五歳以上の方の割合が、一九九一年の三三・四%から二〇〇五年には五二・七%になっている。まさに都市農業を守ることができるかどうか、ぎりぎりの局面にあると言えると思います。

 そこで、農水省、今日、都市農業はそういう存続をかけた事態にある、ある意味危機に瀕している、そういう深刻な現状認識がおありかどうか、その点、いかがでしょうか。

飯高政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、都市農業の持つ多面的機能というのは大変重要であると思います。特に、最近におきまして、人口減少期間というか過程に入りまして、都市の中に農地を残そうという動きが最近非常に急速に高まっておるのは事実だと思っております。

 一方で、農地を農地として農業を継続する形でやっていただく、そういう方々には、私どもも、従来からいろいろな、市民農園の整備でございますとか、直売所を設置するとか、さらには井戸を掘るといったような支援措置を講じております。

 そういう中で、農業をしっかりやっていただく方に今後とも支援を続けてまいりたいと思っております。

笠井委員 そういうことじゃなくて、現状は大変な状況にあるかどうかという認識がまずあるかないか聞いているんです。一言で答えてください。

飯高政府参考人 委員御指摘のように、生産緑地制度という中では、農地はほとんど減っておりません。しっかりと農業は永続されております。

 ただ、一方で、生産緑地以外の農地、これについてはやはり右肩下がりで下がっておりまして、総体として、都市内の農地は漸減といいますか、順次数値が下がっており、都市内の住民に対する新鮮な野菜の供給という意味では大変問題があろうかと思っております。

笠井委員 要は大変だということであります。

 私、参議院議員の時代に農水委員会にも所属したことがありまして、学生時代には農学部で学んだこともあるということで、そのことも含めて、この間、都内の農家を訪ねて畑で話を伺ったり、東京都の農業会議でも実情や意見も伺ってまいりました。我が党の東京都委員会では、この一年ほどの間に、都内の農家や農業関係者、二十六自治体の約三百軒を直接訪ねて、実情や要望、意見をお聞きしてまいりました。

 東京の農家というのは、江戸開府以来四百年、三百年という歴史を持つ農家も少なくなくて、苦しい中でも意欲と誇りを持って頑張っておられて、どこでも熱い思いを語ってくださるわけです。そこで本当に共通して出るのは、農業は国民の命を支えている土台なんだから、もっと国の政治で大事にしないとだめだ、今のままでは後継者もいなくなって、息子に継げと言えない、農業はつぶれてしまう、こういう声があります。市民のいやしとなる緑の環境を提供するだけじゃなくて、温暖化対策にもつながる仕事に誇りを感じている、先祖代々受け継いできた農地を守っていきたい、本当にそういう声が共通して出されます。

 そこで、国土交通省に伺いますが、今、都市農業を守りたい、残してほしいという声は、農業関係者だけじゃなくて、都市住民の中でも非常に強い。東京都の二〇〇五年の都政モニターアンケートでも、八一%が農業や農地を残したいというふうに答えております。

 現在、都市計画法の見直しが社会資本整備審議会の小委員会で議論されていると承知をしております。五月十九日に報告素案ということが出されたようでありますが、その中でも、都市と農地を対立する構図でとらえる視点から脱却し、都市近郊や都市内の農地について、新鮮で安心な地産地消の農産物を提供してくれる農業生産機能を中心に、自然との触れ合い、憩いの場、防災機能等の農地の多面的機能を都市が将来にわたり持続していくために有用なものとして、都市政策の面から積極的に評価し、農地を含めた都市環境のあり方をより広い視点で検討していくべきであるというふうに指摘をされている。私は見ました。ある意味、これまでのことから見ると大転換ということも検討するということだと私は思うんです。

 そこで、都市農業や農地は、町づくりや都市政策という点からも重要で、都市計画法の改定作業の中でも積極的に位置づけて保全を図るべきだと思うんですが、この点、国土交通省はどう考えられていますか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生から御指摘がありましたのは、社会資本整備の小委員会、ここでは、一番大きな視点は、人口が減少してきている、あるいは地球環境問題が深刻化しているということで、今までの都市政策の前提が大きく変わっている、こういう中で、都市計画も含めて、都市政策のこれからの基本的方向をどう見直すべきかという議論をしております。

 御指摘のように、都市から見た農のニーズの高まり、あるいは、都市の農地については、生産機能だけではなく、都市住民から、防災機能あるいは農地に子供たちが触れるといった空間的な機能といった多面的な側面を重要視していくということで、都市サイドから積極的に位置づけるべきという議論がなされております。

 このような指摘を受けて、今後、私どもとしましては、多面的な機能を有する都市の農地のあり方について、都市計画制度についてどのように位置づけていくか、これについてはなかなか都市行政だけでははかり切れない面もございますので、農林水産省を初めとする農業政策、あるいは税制等とも提携しまして検討を進めてまいりたい、かように考えております。

笠井委員 この小委員会の報告素案を見ますと、例えば現在の土地利用計画の線引き制度について、急激な都市化、人口集中という時代背景に大きく依存した制度があるというふうにした上で、開発圧力を制御するという視点のみによらない新たな都市の秩序の提案もなされているという記述がございます。

 この線引き制度について、見直しも検討しているということで理解してよろしいんですか。いかがですか。

石井政府参考人 現在、この委員会の方では、土地利用のあり方について、線引きのみならず、都市計画区域あるいは用途地域のあり方、あるいは都市の農地の位置づけということで、一つに限らず、すべてのところを抜本的に見直そうということで考えております。

笠井委員 のみならずということは、その中に線引き制度についての見直しも含まれているという理解でよろしいですね。

石井政府参考人 現在まだ結論を出したわけではございませんが、そのような検討の俎上の中の一つとしては、この線引きという制度はどうあるべきかという議論もその一つには入ってくる、視野の中には入るだろうということであります。

笠井委員 市街化区域では、農地が将来にわたって保全できる制度になっておりません。東京都の農業会議は、都市農業、農地の位置づけを明確にして、例えば都市農業基本法というようなものをつくって、振興施策も確立してほしいというふうに要望しております。東京都議会でも、一昨年、〇七年の三月ですが、「これまでの「都市農地は宅地の供給源」という考え方を改め、「都市農地と住宅地が共存共栄」できる政策に転換し、現行の農地制度や相続税制度等の改善を行うなど、都市農地の保全のために必要な措置を講じるよう強く要請する。」との意見書を採択しております。

 都市農地を都市計画に位置づけることは重要で、都市計画法の改正に向けて、視野に入れるにとどまらず、速やかな対応、このことも含めて求めておきたいと思います。

 さらに伺いますが、都市農地の保全をめぐって、農地が生産緑地に指定をされていても、例えば作業場だとか農機具の倉庫、あるいは畜舎だとかいう農業用の施設用地だとか、あるいは防風とか堆肥用の落ち葉を利用するための屋敷林にかかる相続税が高額で、農地を売却せざるを得ないという場合も少なくありません。東京都は、今年度の政府予算への要望でも、農業用施設用地や屋敷林等を一体的に保全できるような改善を求めております。農業のためには農地以外にも一定の広さの土地がどうしても必要で、農業用の施設などがなくてはやはり農業はやれないということだと思うんです。

 これは農水省に確認しますが、都市農地の保全を図るためには、農業用の施設用地や屋敷林なども視野に入れて考える必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

飯高政府参考人 ただいま委員のお尋ねの屋敷林あるいは農業用施設用地でございますが、これらは農地ではございませんので、農地法における規制の対象から外れております。一般に、税制上の優遇措置等を考える場合には、やはりそういった権利制限というのが前提になる、それが一般的でございまして、そういう意味では、屋敷林あるいは農業用施設用地というのは、農地法の規制の枠組みの中でこれを対象として考えていくというのはなかなか難しい面がございます。

 ただ、一方で、都市計画の見直し等々がこれから行われる中で、国土交通省を初め関係省庁と連携を図りながら、総合的観点から、ただいま御指摘の点も踏まえまして検討させていただきたいと思います。

笠井委員 都市農業の従事者、関係者や自治体からは、さまざまな切実な要望があります。例えば、生産緑地の指定要件の緩和、現在五百平米でありますけれども、これを三百平米としてほしいという要望が強いです。生産緑地の自治体による買い取り制度についても、自治体の財政難などがあってなかなか機能していない、何とかしてもらいたいと。さらには、市民農園は相続税が猶予されない、猶予となるように関係省庁と検討してほしいなどなど、さまざまございます。

 この点で、まず国交省なんですが、四月二十七日の参議院の決算委員会で金子大臣は、農業政策や農地保全、税制の関係もあるので農水省を初めとして関係の省庁と相談していきたいというふうに答弁をしております。今まさに農地の保全は待ったなしの中で、こういうことに関連するさまざまな問題、具体的に足を踏み出すべき問題がいろいろあると思うんですけれども、今後どのように対応されていくでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 都市農地は、農業活動、営農が行われて初めてその機能が発揮されるということで、よく私どもが扱っております用途地域というところでは、どんな建物を建ててはいけないという建築規制が中心というところで、その意味ではちょっと性格が異なるものであるというふうに考えております。

 そうしますと、具体的にということで、必ずしも国土交通省として結果を得たわけではございませんが、農業をその場でやっていただく担い手がいるかどうかでありますとか、あるいは、農業をやりますと肥料をまいたりあるいは殺虫剤をまいたりということで、周辺の環境との調和といった問題もございます。このような問題について十分に検討していくということで、関係省庁と具体的にこれから検討してまいる予定でございます。

笠井委員 農水省の方はどうでしょうか。都市農業や農地というのは、都市計画、都市政策の上からも重要で、町づくりにとっても重要という議論は、国交省の小委員会とともに、農業関係者も含めて各方面から出されております。これをどう受けとめているか。農水行政を所管する立場から、より積極的な取り組みが必要だと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。

飯高政府参考人 国土交通省で検討されている小委員会での議論は私どもも読ませていただいておりますが、まさに人口減少過程の中で都市農業の持つ多面的機能というのは重要であると思っております。

 ただ、その中で、農地を農地として農業をやる、そういう中でいろいろ振興を図っていくというのが私ども大前提だと思っておりまして、そういうのが将来にわたって永続的に農業がなされる担保、言ってみれば規制というものはどこまでかければ御納得いただくか、そういうコンセンサスの問題もございましょうし、今後、そういった点は関係省庁と十分連携を図りながら対応してまいりたいと思っております。

笠井委員 位置づけて関係省庁ともということですが、都市農地にかかわる制度というのは変わっていなくて、抜本的な対策が講じられているとは言えません。農水省としても、今こそ本腰を入れて取り組みを強化すべきだと思います。都市農業の保全、振興という点では、農業が経営として成り立って、所得が保障されることが必要でありますので、それこそ、そういう中でこそ後継者も生まれるということで、農水行政の役割は極めて大きいということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、最後になりますけれども、中曽根大臣、農業の振興や食料自給率の向上というのは、我が国の外交の角度から考えても極めて重要な問題だと思います。国際的な食料需給の逼迫ということも言われているし、農業は食料生産にとどまらない多面的な機能を持っていると先ほどもお話ありました。大臣は文部科学大臣としての御経験もおありで、子供たちの成長にとっても、身近なところで米や野菜や果物が育つのに接したり、酪農は東京にもありますが、農家の方々が一生懸命働いて丹精込めて育てている姿に触れるというのはかけがえのないことだというふうに思うんです。

 外交交渉に当たっても、やはりそうした立場、立脚点にしっかり立っていく必要があると私は思うんですが、大臣の立場から、我が国の農業再生の重要性、なかんずく都市農業の振興の意義についてどのようにお考えか、御所見を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどから都市農業の重要性また役割につきましては、いろいろと農水省からも説明があったとおりでありますけれども、農業の果たす役割は、もう委員からもお話ありましたし、非常に多面的な、総合的なものがあります。特に、環境や国土保全、あるいは、もちろん経済的な側面もありますが、社会的側面等あるわけでありまして、私たちとしては、こういう農業が持っている多面的な機能というものを有効に生かしながら、また環境の面やいろいろな面で守っていかなければならないと思っております。

 また、委員お話ありましたけれども、教育とかそういう観点におきましても、農は国のもとといいますけれども、そういう農業の重要性等を子供たちに知らしめるためにも、これもまた重要なことだと思っております。

 国際的には、やはりWTOとかあるいはEPAとか、今御議論いただいておりますけれども、これらの貿易交渉における我が国の交渉力を深める、高める、そのためにも日本の農業を強化する、国際競争力をつけるということがまた同時に大事だ、そういうふうに思っておりまして、生産性の向上等、今農水省を中心にいろいろ農業改革を検討中でございますけれども、外務省といたしましても、こういう農政改革の議論を見守りながら、我が国の農業の国際競争力の強化、そして各国との農業交渉にまた真剣に取り組んでいきたい、そういうふうに思っております。

笠井委員 農業、都市農業は大事だという大臣のお話がありまして、強化するという点でいいますと、ぜひ政府としても、都市農業の従事者、関係者とか関係自治体の皆さんから実情、意見、経験もしっかり聞いていただいて、計画や取り組みに反映させていただきたいと思います。

 安心、安全な食料、それから食料自給率の向上というのは、言うまでもなく国民の切実な願いであります。そのためにも、今こそ関税など国境措置を維持強化して、食料主権を保障する貿易ルールを追求すべきだということを強く述べまして、私の質問を終わります。

河野委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、ベトナム、スイスとの経済連携協定、そしてサウジアラビアとの航空協定の三つの条約の審議でございますけれども、賛成の立場で質問をさせていただきます。特にその中でも、ベトナムを含みますアジアの経済状況、そして安全保障環境ということを中心に質問をいたします。

 まず最初に、今回はベトナムとの経済連携協定ということでございますけれども、今、経済危機ということで、ASEAN諸国、東アジアを含めまして非常に深刻な状況にあると思います。外務大臣としては、どのような状況であるとまず御認識されているのか。そして、その中で、今回ベトナムと経済協力を進めるということの意義をどのようにお考えでしょうか。

伊藤副大臣 委員御指摘のように、アジアを含めた世界の経済が大変深刻という状況の中で、自由貿易及び投資の原則を堅持また推進していく、そして貿易及び投資の拡大を通じた世界の経済の成長を図るということが大変必要であるというふうに考えております。

 そういう観点から、本EPA、我が国とベトナムの間、さらには我が国とASEANとの間の貿易及び投資の拡大に資することを通じて、アジアひいては世界全体の経済危機の克服に一定の貢献を果たすことを期待しております。

辻元委員 そういう中で、政府は、アジア経済倍増計画ということを首相が直接発表をされております。これは何をどういうふうに倍増しようという計画なんでしょうか。

伊藤副大臣 お答え申し上げます。

 アジアは近年、高い経済成長というのを達成してきたわけでございますけれども、現在の世界の経済危機はアジアへも大変深刻な影響を与えております。しかし、アジアには、現在の困難を乗り越えて引き続き成長を続けていく大きな潜在力があると考えております。こういう考えのもと、総理は、本年四月、今委員御指摘のアジア経済倍増に向けた成長構想を発表したわけでございます。

 同構想では、現下の経済金融危機への対応、広域開発の推進などを通じたアジアの成長力の強化、そしてまたセーフティーネットの整備などを通じたアジアの内需拡大などの取り組みを提案しております。我が国は、このアジア各国の取り組みを後押しするために、最大二兆円規模のODA、また貿易金融支援などの支援策を発表したところでございます。

 政府は、首脳レベルを初めとするアジア各国の要人との会合等において本件構想を説明しまして、協力を呼びかけているところでございます。アジア各国からは、日本のイニシアチブを高く評価し、ともに取り組んでいきたいという反応を受けて、ちょっと今直接のお答えが、はっきり数字で申し上げられないのは申しわけありませんが、現在のところはそういうことでございます。

辻元委員 かつて東アジア共同体という話も出ておりまして、アジア版IMFの話も日本の政府の中で議論されたというように承知しているんですけれども、あの話はどうなったんですか。

中曽根国務大臣 東アジア共同体の形成、これは長期的な一つの目標であるわけでありますが、これの具体的なあり方につきましては、今後、関係国間で協議をしていく、そういうことになります。

 我が国といたしましては、将来の東アジア共同体の形成も視野に入れながら、東アジア首脳会議、EASや、それからASEANプラス3、これはASEANと日中韓でございますが、そういうさまざまな地域協力の枠組みを通じまして、貿易や投資や金融や環境また感染症対策など、そういう地域の共通の課題に取り組んでおるところでございます。

 アジアでは、九七年に通貨危機がありました際に、域内の金融市場を安定させるために、委員御承知のとおり、資金を融通し合うチェンマイ・イニシアチブ、こういう協力を進めてきているわけでありますが、ことし末までにこれをさらに強化するということが既に合意をされているところでございます。このような金融面の協力も引き続き積極的に進めていきたいと思っています。

辻元委員 今、強力に進めていくという御答弁でしたので、リーダーシップをとっていただきたいと思うんです。

 今の経済危機を見ますと、日本の産業構造の問題が指摘されております。外需に偏り過ぎた、ですから内需を進めていこう、強くしていこうという中で、経済のグローバリゼーションで、しかし外需というものは避けて通れない。そして一方に、農業の自由化の話もずっとつきまといますけれども、食料自給率を上げていくということも国として力を入れなければならないという中で、経済のグローバル化とそれから各国との経済協力、そして内需を進める、そしてさらには自給率を上げるという、非常に難しいかじ取りが迫られる。その中心に私は外交があると思っております。

 そういう中で、貿易量も、中国そしてASEANに対する貿易量がアメリカとの貿易量を抜いております。そういう中で、ASEANそして東アジアを含めた域内での経済圏をどうつくっていくか。ヨーロッパはヨーロッパで、EUで既に経済の基本である環境基準とか、それから食の安全基準とか、さらにはもう一つ、労働基準まで統一していっている。そして、その中でウイン・ウインの関係でお互い信頼感を構築しながら共存共栄していこうと。日本一国だけで経済危機は乗り切れませんので、特に今まで日本はアメリカの経済頼みというところがありましたけれども、今はもうかなりアジアにシフトしていっているという現状を見て、ASEAN、東アジア地域の、一緒に繁栄していく、その信頼をどう構築していくかということが大事だと思いますので、そういう観点でしっかりリーダーシップをとっていただきたいと思っております。

 ことしの末にまた会議があるといって、これはどういう政権になっているかわからないので、それに向けて頑張ってくださいと言うのはやめます。

 さてそこで、ところがその信頼関係をぶち破るような北朝鮮の核実験が行われたわけですね。これに対して、ではアジア全体でどう取り組んでいくのか。私は、まず近隣諸国、韓国、日本そして中国も含めて、ベトナムだってそうです、遠い地球の裏側の国よりも、近隣諸国が一緒に足並みをそろえてこの問題に取り組んでいくということがとても大事だと思います。

 ですから、六カ国協議をしている国々だけではなくて、言ってみれば東アジア共同体構想の他の国々にも積極的にこの問題に一緒に取り組もうということを外務大臣に働きかけていただきたいと思います。いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃいますように、この北朝鮮の問題は、日本、韓国、中国はもちろんでありますが、さらに六カ国協議という枠組み、そしてアジア地域のまた一緒になった取り組み、また国際社会全体が幅広く協力してやるということが非常に大事だと思います。

 そういう中で、私は先日、ベトナムのハノイで開催されましたASEM外相会議に出席をしてまいりました。ASEMの外相会議は、ASEANと日本と中国と韓国とさらにEUの二十七カ国、約四十カ国と国際機関の長が出席する大変大きな会議であります。

 そこでは国際金融問題や気候変動問題、いろいろ取り扱われたわけでありますけれども、こういう北朝鮮の核実験が行われたという直後でございましたので、私の方からはこの問題をあえて取り上げさせていただいて、全体会議の中で、ASEMが一致団結してこの問題に対して強いメッセージを出すべきだということを提案いたしました。各国も非常に賛同をし、また、それぞれの国々が北朝鮮の行為に対して非難等の発言もありまして、結果といたしましては、ASEMは昨日終了したわけでありますけれども、全体の会議に対する議長声明とはまた別に独立して北朝鮮に対するASEMとしてのメッセージを出すことができました。

 つまり、アジア全体、各国も、この問題を本当に大変危機的な状況であると考えて一致した行動がとれたわけで、そういう意味でも、今後もこれらの国々とともにこの問題に取り組んでいきたいと思っています。

辻元委員 そのときのは政府の方針なんですけれども、先日外務大臣は、世界的核軍縮のための十一の指標という非常に格調の高い演説をされたと私は評価をいたしております。

 その中で、核兵器のない世界の実現は、我が国の悲願であり、この目標を目指して、我が国は積極的な核軍縮に取り組んできましたと。現在、オバマ演説以降、核軍縮の機運も出てきています。さらに世界で持続的なものとしていくべく、大いに貢献していきたいというくだりから始まりまして、十一の提案をされております。

 この方針に沿って働きかけていくという確認でよろしいですか。

中曽根国務大臣 今委員がおっしゃいましたけれども、去る四月の二十七日、核軍縮のための十一の指標、これを発表いたしました。オバマ米国大統領は、四月の五日でしたか、プラハでやはり核兵器のない世界という演説をされ、あるいは、少しさかのぼりますけれども、キッシンジャー元国務長官、シュルツ元国務長官等がやはりこの核軍縮についての意見等もまた発表されているわけでありまして、私は、こういう機会には、やはり世界で唯一の被爆国である日本が主体的に積極的に核軍縮あるいは不拡散に取り組まなければならない、そういう気持ちからこのスピーチをしたわけであります。

 委員がおっしゃいましたけれども、骨子としては、すべての核保有国による核軍縮、それから国際社会全体による措置、そして、これから原子力の平和利用を目指す、そういう国々のための措置という三つの大きな柱に沿って具体的な十一の指標というものを挙げたわけでありますが、今後、この考えを基本といたしまして、核軍縮に向けて取り組んでいきたいと思っております。

 なお、来年早々、日本でこのための国際会議を開催したいと考えております。

辻元委員 さて、私がちょっと懸念していることがあるんです。

 前回の北朝鮮の核実験のときもそうだったんですけれども、浮き足立った対応、勇ましいことを言えば何かしていると勘違いするような外交であってはならぬと思うわけですね。前回も、核保有議論ということはいいんじゃないか、核保有の検討をしたらいいんじゃないかというような発言が国会議員や政府の方から出てきたり。それから、敵基地攻撃論というもの。これは、東アジア共同体と申しましたけれども、前回も、アジアの他の国から、こういう発言が出てすぐに批判がぼおんと出ました、日本に対して。アメリカ自身も、特にこの敵基地攻撃論というものに対しては、日米安保条約の根幹にかかわるということで、さまざまな意見が出たと記憶しております。

 そういう中で、先日も、自民党の役員会で、ある方が、向こうは、北朝鮮のこと、核を保有している、日本も核を保有すると言ってもいいのではないかと述べ、国連脱退にも言及したという報道がなされたり、びっくりしました。これは報道ですから、確認してください、筆頭理事。安倍元総理も、安全保障にかかわる議論は自由であるべきだと核武装論について言ったとか報道されています。

 さて、そこで外務大臣。実は、麻生総理と私、前の核実験の後、大分このことを議論したんです。麻生さんが外務大臣だったんです。ある新聞社が、核武装を検討すべきかどうかでアンケートをとっていまして、そのアンケートに、例えば中川自民党元政調会長とか、安倍さんは当時幹事長でした、安倍当時の幹事長とか、麻生大臣も、外務大臣だったんです、すべきだと丸を打っていたんですよ。

 私は、これは日本の国益を大きく損ねるのではないかと思って、外務大臣にお聞きしました。そうしたら、麻生外務大臣の答弁は、「日本の核政策の変更の議論というのは全くされておりませんが、その当時、核兵器というものの保有について検討すべきか、だんだんだんだん隣がみんな持っていくときに、日本だけ何の検討もされていないというのはいかがなものか。」と答弁されたわけですよ。これは外務大臣だった。今は総理大臣なんですね。ちょっと、私、きょう党首討論には出られませんでしたけれども、聞いてみたいところだったんですね。

 それで、外務大臣にお聞きしたい。この麻生外務大臣時代の発言、どう思われますか。

中曽根国務大臣 それは、予算委員会等で麻生総理に直接お聞きいただいた方がよろしいんじゃないですか。また、私もその発言を直接聞いたわけじゃありませんし、私がここでコメントするのはやはり適当でないと思いますので、そういう機会にぜひお聞きになられたらと思います。

 ただ、麻生総理への御質問ですけれども、今の核武装等の議論が出てきているということについて考えを述べさせていただきますと、これはもういろいろな考え方があろうかと思いますけれども、我が国は非核三原則というものがしっかりとあるわけであります。そしてこれは、歴代の内閣にわたって、明確にこれを維持するということで表明されているわけでありますから、政府としては、今、北朝鮮の問題がいろいろありますけれども、今後これを堅持していくという立場には変わりはございません。

辻元委員 これは中曽根康弘元総理がお書きになった。平成十九年ですから数年前なんですけれども、こう出ております。中曽根元総理は、「私自身は、日本の核武装について「持つべきではない」と一貫して否定してきました。非核三原則というものが厳然として存在し、それを守るのが日本の国策であり、そこは揺るがせてはなりません。もし、核武装をすれば、」この後、これは議論の余地がないということをはっきり外務大臣にお答えいただきたいと思います。NPTから脱退することになるわけですね、持つということになれば。では、脱退するのかどうかという議論をしなくちゃいけないわけですよ。そして、外国との連携で動いている原子力発電にも影響が出るという、これは中曽根元総理の発言なんですよ。ですから、議論するしないという、もう話にならないようなことを私はしっかりここで否定をしていただきたい。それが一点。

 もう一点。しかし、この後こうおっしゃっているわけですね、中曽根元総理は。「でも、もしアメリカの都合やそのほかの理由で、核の傘が動揺したり、疑問になったらどうするのか。つまり、「アメリカの核の傘で日本が守られない事態」になったとき、どう対応するのかという問題があります。そのときは、日本も、非核三原則を再検討せねばなりません。」というようにおっしゃっているわけですよ。

 日本の核武装の可能性について、防衛庁長官のときに、中曽根元総理は、研究させたことがあります、しかし、これは全部燃やしてしまいましたとおっしゃっておりますけれども。

 一つ目は、議論そのものを、これはもう本当に国益を害することだから、今おっしゃったとおり、するのもおかしいでということをはっきり示していただくことが外務大臣として必要だと私は思います。それの方がいいと思います、今の状況で。

 それともう一つ。核の傘論議。このお父様の意見ですね。では、核の傘がなくなるんやったら、日本も核を持つことを検討せないかぬのかという議論。なぜかというと、時代が変わったんですよ。オバマ大統領が出てきまして、核の傘といったら、アメリカそのものも非核に進むと言っているわけですね。だから、核の傘の話も、アメリカそのものも核抑止というものを、前はずっとそれ一辺倒で来ていましたけれども、これからどんどん下げていって、核の傘というものそのものも、アメリカそのものが非核化を目指すと言っているから、私は、事核については、時代が変わった、日本の安全保障、外交も、そういう意味ではパラダイムシフトが必要だと思うんですね。

 この二点についていかがですか。

中曽根国務大臣 父の発言はそれとして、一般論としましては、国の安全保障のあり方というのは、その時々、また時代状況、国際情勢、そういうものを踏まえたさまざまな議論があり得るわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、我が国は非核三原則というものがあり、これを堅持していくという立場は変わらないわけであります。

 なお、法律上も、原子力基本法によりまして、我が国の原子力活動は、これはもう平和目的に限定をされておりますし、さらに、我が国は、先ほどのNPT、核兵器不拡散条約上の非核兵器国として、核兵器の製造とか取得、そういうものを行わない、そういう義務を負っているわけでございまして、こういう点からも、我が国が核兵器を保有することはないということでございます。

辻元委員 終わりますが、経済協力を進めるに当たっても、東アジア共同で、共存共栄で行くということにいたしましても、日本が孤立するような、変な挑発に乗って、そういうような政治であってはならぬということで、この核問題もあわせて取り上げさせていただきました。

 それでは、終わります。

河野委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、経済上の連携に関する日本国とベトナム社会主義共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、日本国とスイス連邦との間の自由な貿易及び経済上の連携に関する協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、航空業務に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十分散会


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