衆議院

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第4号 平成21年11月25日(水曜日)

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平成二十一年十一月二十五日(水曜日)

    午前九時二十五分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 宗男君

   理事 木内 孝胤君 理事 小宮山泰子君

   理事 空本 誠喜君 理事 中野  譲君

   理事 和田 隆志君 理事 小野寺五典君

   理事 平沢 勝栄君 理事 赤松 正雄君

      大谷  啓君    大山 昌宏君

      吉良 州司君    齋藤  勁君

      阪口 直人君    末松 義規君

      中津川博郷君    西村智奈美君

      萩原  仁君    浜本  宏君

      早川久美子君    平岡 秀夫君

      松宮  勲君    安倍 晋三君

      岩屋  毅君    河井 克行君

      河野 太郎君    高村 正彦君

      笠井  亮君    服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         岡田 克也君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 中井  洽君

   国土交通副大臣      辻元 清美君

   法務大臣政務官      中村 哲治君

   外務大臣政務官      吉良 州司君

   外務大臣政務官      西村智奈美君

   政府参考人

   (水産庁長官)      町田 勝弘君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十五日

 辞任         補欠選任

  横粂 勝仁君     大谷  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  大谷  啓君     横粂 勝仁君

    ―――――――――――――

十一月二十四日

 沖縄県辺野古への新基地建設の白紙撤回と普天間基地の即時撤去に関する請願(穀田恵二君紹介)(第五五八号)

 同(稲見哲男君紹介)(第五八三号)

 同(齋藤勁君紹介)(第五八四号)

 同(稲見哲男君紹介)(第六八二号)

 辺野古新基地建設計画の撤回、核密約の公表・廃棄と日米地位協定の抜本改定を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五八二号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六七一号)

 同(笠井亮君紹介)(第六七二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六七三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六七四号)

 同(志位和夫君紹介)(第六七五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六七六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六七七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六七八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六七九号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めることに関する請願(小宮山洋子君紹介)(第六八〇号)

 同(仲野博子君紹介)(第六八一号)

同月二十五日

 沖縄県辺野古への新基地建設の白紙撤回と普天間基地の即時撤去に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第七六四号)

 同(服部良一君紹介)(第九六三号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(石毛えい子君紹介)(第七六五号)

 女性差別撤廃条約選択議定書の批准を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第七六六号)

 同(重野安正君紹介)(第七六七号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第七六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 この際、委員会運営につきまして一言申し上げます。

 去る十一月二十日に本委員会で採決されました三条約につきましては、十八日に本委員会に付託され、同日提案理由の説明を聴取し、審議入りをいたしました。

 これらの条約の質疑、採決につきましては、理事会や筆頭理事間における協議により、委員長といたしましては、二十日に質疑及び採決を行うことで与野党間でおおむね合意されていたと認識していたところであります。

 しかしながら、十九日、国会情勢の変化に伴い、理事懇談会に自民党及び公明党の理事の方々の御出席が得られなくなりました。委員長としては、数度にわたり理事懇談会の開会時刻を変更し、理事懇談会を開き、出席も要請いたしましたが、最後まで両党の御出席が得られず、やむを得ず二十日の質疑及び採決を決定したところであります。

 昨日、全党出席のもと開かれた理事懇談会において、各党から、特に自民党、公明党さんから忌憚のない御意見を賜りました。

 委員長といたしましては、これらの御意見を真摯に受けとめ、今後とも公正かつ円満な委員会運営に努めてまいる所存であります。よろしくお願いいたします。(拍手)

     ――――◇―――――

鈴木委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として水産庁長官町田勝弘君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 冒頭、委員長からお話がありましたように、先般、与党のみでの採決ということになりました。これから大切な条約の問題になりますので……(発言する者あり)失礼いたしました。自民、公明欠席のもとでの採決ということになりました。ぜひ、これから慎重な、公平な審議を委員長にはお願いしたいと思っております。

 きょうは、南東大西洋における漁業条約を含め、漁業の問題、特に公海上のマグロ漁業についてのお話について質問させていただきたいと思っております。

 今回の南東大西洋に関する漁業条約でありますが、これは、今管理に協力している日本が実はこの締約国会議に入っていないということで、資源管理について物が言えないという大変不都合な状況になっている。それを解消するために一刻も早くこの条約に加盟するということが必要なものだと思っております。

 我が党としましても、ぜひ、この条約に一日も早く加盟いたしまして、現在の協力的非締約国というようないびつな扱いではなく、しっかり資源管理にも物が言える、そのようなふうになる必要があると思っております。この条約にはぜひ一日も早い締結をお願いしたい、そのように思っております。

 さて、その中で、クロマグロの問題について少し議論を深めたいと思います。

 十八日、その際にもこの問題を取り上げましたが、時間の都合上議論を進められなかった部分がございます。若干、そのことについて補足をさせていただきたいと思います。

 まず、ICCATにおける漁業管理ということでありますが、資源国の責任、これは大切なんですが、逆に、私ども日本は、実はこのマグロの問題、消費国としての大変な大きな責任を負っております。

 先般の質疑の中で長官から説明がございました。ポジティブリスト化をする、それから漁獲証明制度を行う、これによって正規のマグロのみが流通する仕組みをつくっていくという、こういう方法というのはある面では評価をできます。

 ですが、これだけで違法や過剰として漁獲されたものが一切日本に輸入されないということが約束できるのでしょうか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、この違法漁業の根絶、これに向けて努力をしていかなくてはいけないというふうに考えております。

 今、小野寺議員に御指摘をいただいたような漁獲証明制度ですとかポジティブリスト制度、こういったもので今努力をしているところでございまして、一〇〇%根絶に向けて努力をしていきたいというふうに思っております。

小野寺委員 きょうお手元に、手書きで大変恐縮ですが、この東大西洋のクロマグロ、今回のICCAT、CITESで問題になっているクロマグロですが、この資源量の数値がございます。

 例えば、真ん中あたりにトルコという国がありますが、トルコの漁獲枠というのは、丸で囲ってありますが、二〇〇七年が九百十八トン、二〇〇八年が八百八十七トン、二〇〇九年が六百八十三トン、これがトルコの漁獲枠ということになります。

 一ページ開いてみてください。同じように真ん中にトルコの数字があります。これは日本が輸入しているクロマグロの量になります。同じように二〇〇七年を見ますと、右の方に、Fと書いてあって丸してあります二千九百九十四という数字があると思います。これはフィレで輸入しているのが二千九百九十四トンということになります。実は、この年のトルコの漁獲枠は九百十八トンしかないのに、なぜか日本にフィレという形で入ってきているクロマグロはトルコだけでも二千九百九十四トンということで、これは何倍でしょう、三倍、四倍の数値になっております。同じく二〇〇八年にも二千三十八トン、二〇〇九年には二千四百五十三トン。実は漁獲枠の三倍、四倍の数字が日本には輸入量として現実に入ってきている。

 これはなぜかということなんですが、実はこれはジョイントオペレーションというやり方を通常とっております。長官、御存じだと思うんですが。例えばEU、ECの漁船が、アルジェリアの枠でクロマグロの漁獲を認められて、とった魚をトルコの蓄養業者に持っていく、こういう、魚がすごく地域内あるいは漁業者内、漁業種内でぐるぐる回っている、こういうことがあるので、魚は生きたまま地中海の中でいろいろな国へ売られています。その上、蓄養されたり解体されたり、最終的に日本に入ってきている。ですから、数値がぐじゃぐじゃ、ごちゃごちゃになっている。

 このような難しい、例えば魚の重量の仕分けの問題、あるいは蓄養すると魚が大きくなります、成長の問題、解体した後の歩どまりの問題、さまざまな不確実な要因がたくさんありまして、これを書類だけで管轄していくということは、実際上難しいんではないか。ですから、先ほど長官がお話しされたように、漁獲証明制度だけで漁業時の数量のトレースというのは甚だ疑問ではないかというふうに思うんですが、この現在の管理の状況について御意見を伺いたいと思います。

町田政府参考人 この大西洋のクロマグロにつきましては、昨年の六月から、それまでは輸出入のみを管理する統計証明制度だったわけでございますが、これを強化して、漁獲の時点から流通に至るまでのすべての流通実態を一つの文書に記録して、そういった流通の透明性を確保するといった証明制度が導入されたところでございます。

 これに基づくチェック、これは先ほど申し上げたとおりでございますが、それに加えまして、私ども、マグロの種類、また漁獲海域を偽った輸入を防止するというために、我が国への輸入時にDNA検査も抽出して実施しております。輸入申告と異なる結果が確認された場合には、事実関係を調査の上、関係国また関係地域、漁業管理機関に報告をするということで適正な措置を求めていきたいというふうに考えております。

小野寺委員 ただいま長官からDNA検査を行っているということがございました。

 三枚目、最後の資料をちょっと見ていただければと思うんですが、ここに、右側に図がございます。「冷凍まぐろ類の輸入の流れ」という図がありまして、これは水産庁の資料です。初めに船籍国、蓄養国から、輸入業者が入ってきて、輸入業者が事前確認申請をして、輸入業者が輸入申告をして、輸入通関。通関を通った後、日本の国に入った後に、実は水産庁がこのDNA分析を行うということをしています。

 ですから、もう既に日本に入っているんです。日本に入って流通しているものの中からDNAで改めて調査し、トレースしても、結局何ら水際対策にはなっていない。このような実態が私はあるんではないかと思っています。

 それから、もう一つ大きな問題がございます。長官、実はまぐろ検査官という方が清水の事務所にいることを御存じでしょうか。

町田政府参考人 承知しております。

小野寺委員 このまぐろ検査官というのは、当初一名、一昨年には四名、ことしの十月から五名ということで、検査官が大変今ふえているということなんです。ところが、この検査官は、専ら日本の船がとったマグロだけを検査していて、このような輸入にかかわって入ってきたマグロに関しては検査をしていない。自国船だけを検査していて、輸入で入ってきているものについては検査をしていないということを伺っていますが、これは事実でしょうか。

町田政府参考人 清水事務所におけます、まぐろ資源検査官の活動状況でございます。

 これにつきましては、御指摘をいただいたとおり、その業務は国内の漁獲物の検査が中心であるということでございますが、輸入貨物の検査につきましても、先ほど申し上げましたDNA検査の立ち会いのほか、具体的な情報が得られた場合には当然のことながら税関に提供して、そういった連携をしているところでございます。

小野寺委員 日本の漁船がとったマグロは、船まで乗り込んで一匹一匹検査をしている。ですが、このように、例えばトルコのように漁獲枠が八百トンしかないのに日本に入ってきているフィレという形でのマグロだけで二千四百トンもある、何倍にもふえている、こういう異常な状況に関して、実は書面上での検査、それから、ある面では日本に入ってきてもう通関を通った後にDNAの検査をしている。何らこれは水際対策になっていない。このような状況が私は問題だと思っています。

 そして、まぐろ検査官ということで一名から五名に増員しても、実はこの自国船だけの検査という基本姿勢は変わっていない。これでは何のために増員したのか。むしろ私は、今民主党さんがやっている事業仕分けの中で、こういう人員こそしっかりチェックをしていただきたい、そのような思いを強く持っております。

 国際的な管理機関、これは本当に資源の管理をこれから世界じゅう求められるんですが、逆に日本は、約八割近くのクロマグロを輸入している消費国ですから、消費国としての責任を今後問われる。その場合に、自国の漁船には厳しく、他国には書類だけで、こういうことは絶対に許せない。また、先ほどお示しした資料を何度も言って恐縮ですが、漁獲枠が八百トンしかない国の日本に入ってきているフィレだけの量でも二千四百トンとか二千九百トンとか四倍にも五倍にもふえている、こういう状況は私はおかしいんではないか、そのように思いますので、ぜひこのような対策をしっかりとっていただきたい、そう思っております。

 さて、今回日本は漁獲枠の削減ということになりましたが、これは経済的対策がとても大切です。特に、今回の枠削減の中で二十億以上の水揚げが失われて、一方、地域経済は減船を受け入れなければいけない。これは国際的な減船ですから、いや応なしに地域経済はこの減船を受け入れなければいけないということになります。資源が回復するまで、今回、経済的措置によって、ぜひ最終的にはこの漁船の母集団を維持すべきだ、このようにもお話をさせていただきました。

 遠洋航海をする場合に、一隻、二隻では実は漁場の情報は入らないんです。必ず十隻、二十隻単位で操業することによって、それぞれ日本船の間で漁場の情報が入り、それが漁獲につながるということですので、ぜひ、これ以上減らさないということが大切だと思っております。

 長官からは、業界の話も聞いて経営安定に努めたい、そのようなお話もありました。ただ、心配なことがございます。先日の事業仕分けの中で、漁船漁業構造改革総合対策基金、これは漁船漁業の支援のために大切な予算ですが、三百七十億円。それからもう一つ、昨年、一昨年と燃油が急騰いたしました。そのときの対策として燃油高騰緊急対策基金、これもつくりました。八十一億円です。この両方が国庫返納という裁定を受けました。

 私ども地域に漁業者を抱える多くの議員にとっては、この問題、大変心配する問題ですが、今回、このような状況を受けましてどのような対策が考えられるか、具体的に聞かせていただければと思います。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の大西洋クロマグロ、これの枠の削減に伴う経営への影響をどういうふうに対応していくかということについてでございます。

 大西洋クロマグロ、またミナミマグロもそうでございますが、漁獲する我が国の遠洋マグロはえ縄漁船は、一年を通じまして、大西洋クロマグロ、またミナミマグロだけを漁獲しているわけではございません。それ以外の、これら大西洋クロマグロ、またミナミマグロの漁期以外は、御案内のとおり、メバチまたキハダを漁獲しているわけでございます。

 このため、今回、東大西洋のクロマグロ等の漁獲枠の削減によりまして、直ちに事業継続が困難になるということはないのではないかというふうに考えられますが、ICCATまたCCSBT、ミナミマグロにおきまして決定された漁獲枠削減の動きを受ける漁業者への支援策、こういったことについては、二十二年度概算要求に盛り込んでいるところでございます。

 今、その具体的な仕組み等を検討しているところでございますので、関係業界の意見も伺いながら、経営安定に努めてまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 今長官から、直ちに影響が出るわけではないというお話がありましたが、そんなことはないんです。もう直ちに影響が出ているんです。

 例えばこのクロマグロ、大西洋の漁場ということ、ここでもし操業ができなくなるということは、実は、マグロ漁船というのはそれぞれ一つの船だけではなくて、幾つかの船を運営して経営体を維持していることもございます。そういう中で、この一つの柱が欠けるということは、漁船漁業経営全体に大きな影響が出てきます。ですから、決して、一つの海域でのクロマグロの問題ということだけではなくて、そういう一つ一つの積み重ねが、実は漁業自体、大きなボディーブローのようにきいてくる。

 特に今回の問題は、幾つかの漁船漁業経営体では直接死活問題につながる、そのような問題ですので、済みません、再度この対応について、しっかり対応する意見を聞かせていただければと思います。

町田政府参考人 私ども、この事業継続が困難になる、すなわちこれは減船でございます、こういった事態はぜひとも避けたいというふうに考えております。

 影響を受けるということは、これは間違いないことでございますので、その影響を緩和する経営安定対策といったことにつきましては、関係業界の皆さんの意見もよく聞きながら詰めていきたいというふうに考えております。

小野寺委員 政府・与党であります民主党のマニフェストの中には、農業だけではなく漁業にも所得補償制度を導入ということが公約としてうたわれております。特に、今回のクロマグロの国際的な資源に関する削減、漁獲枠削減ということは、今長官、減船にはつなげないというお話をされましたが、ただ、結局、経営体が相当厳しくなってまいります。ですから、ぜひ、こういうときこそこの所得補償制度、こういうものをしっかり対応していただきたい、そのように思っております。

 私ども、この漁業の問題、特にクロマグロの国際的な資源削減の問題に関しての手当てというもの、これは漁船漁業者だけではなくて、地域に関してもしっかり対応していただきたい、そのように思っております。

 そして、この問題が今後、ワシントン条約、そしてCITESの管理のもとで行われるということになりましたら、それこそマグロ自体が、もう既に、資源として利用してはいけないという魚種になる可能性もございます。そういうことではない、このような公海上の漁業資源というのは人類の共通の利益、財産であるということでしっかり頑張っていただきたいと思っております。

 御存じのとおり、我が国の漁船が大西洋に進出しましたのは一九五六年です。五十年以上、多くの海の男たちが事故や海難、そして多くの犠牲者を伴いながら開拓してきて守ってきた。これは、日本がつくった漁場、漁業資源でもあります。ぜひ今回、諸外国の資源管理がうまくいかないということで日本の漁船漁業者がいわばとばっちりを食うような、そういう状況にならないように、国際的な場でしっかり議論をしていただき、そしてまた、このような結果に決まってしまった場合の地域や漁業者への支援、そのことをしっかりしていただきたいと思いますが、最後に長官の意欲を伺いたいと思います。

町田政府参考人 小野寺議員から御指摘をいただいたとおり、我が国は世界最大のクロマグロの消費国でもありますし、漁業国でもございます。こうした我が国の立場を踏まえて、今後とも、有限な天然資源でございますマグロ資源を持続的に利用できるように、各国と協調して国際的な枠組みの中で、ICCAT等、地域漁業管理機関の枠組みの中で資源管理の徹底に寄与してまいりたいというふうに考えております。

小野寺委員 ありがとうございます。ぜひともしっかりした対応をお願いしたいと思います。

 それでは、時間が多少ございますので、外交案件、前回の質問の中で質問できなかった部分についてお伺いしたいと思います。

 まず、日米間の核の持ち込みに対する密約の問題、このことについてお伺いをしたいんですが、これは外務大臣が冒頭の所信的な発言の中にも盛り込まれたように、大変重要に考えていらっしゃると思います。差し支えない範囲で、現在の調査状況なり、教えていただければと思います。

岡田国務大臣 いわゆる核密約の問題は、私が就任しました当日に、薮中事務次官あてに大臣命令を発しまして、調査を開始いたしました。十一月いっぱいをかけて内部的な調査を終える、そういうスケジュールで作業を進めてまいりまして、間もなく十一月末になるわけですが、調査は順調に進んでおります。

 私も中間報告を受けておりますけれども、内部的な調査は、膨大なファイルに十五人の専門スタッフが目を通して検証作業を行っております。十五名というのは、外務省内の職員だけではなくて、外部から、外部からというのは、在外の大使館からも一時的に東京に戻ってもらって、十五人体制で行っているということでございます。いずれも、日米関係に今までかかわった経験のある、そういう職員が担当しております。

 そして、ちょうど昨日になりますけれども、当初からお約束しておりましたように、これは中で調査するだけではなくて、第三者の目で検証しなければならない問題であるということで、昨日付をもって検証委員会を立ち上げたところでございます。正式には有識者委員会ですね。有識者委員会を立ち上げたところでございます。北岡東大教授初め、いずれも、外交あるいはこういった密約問題について非常に実績のある、そういった人を選んで、この有識者委員会を立ち上げました。スタートは金曜日です。金曜日に第一回を開催する予定でございます。この有識者の皆さんにも検証をしっかりしていただきたいと思っています。

 例えば、そういった今までの書類について、いつでもこの有識者の方には、大げさに言うと二十四時間体制で、自分の時間のあいているときに外務省に来ていただいて、必要なファイルについてみずから目を通すことができる、そういう体制を整えて徹底的に見ていただき、一月の半ばぐらいをめどにその結論を出していただきたい、検証結果について報告をまとめていただきたい、こういうふうに考えているところでございます。その報告は、単なる密約の問題だけではなくて、今後、情報公開というものを外務省としてどう考えていくべきかということも含む、そういった一つの提言をいただきたいというふうに考えているところです。

小野寺委員 確かに、この問題というのはむしろ、アメリカ側で幾つかの情報の公開があって、それが逆に日本側はどうなのかということですので、やはりこういう情報公開文書についての、特にこういう機密文書の日米間の取り決め、考え方というのは大切かと思っております。

 ちょっと基本的なことをお伺いしたいと思います。

 この密約という言葉で何か少しおどろおどろしいようなイメージがあるんですが、大臣は、こういう安全保障上での密約というか、表に出さない形での水面下の合意、このようなものは必要か必要ではないか、ちょっと答えにくいかもしれませんが、お考えを聞かせていただければと思います。

岡田国務大臣 なるべくない方がいいとは思いますが、しかし、外交交渉の上で直ちに出すことができない、そういうものは必要悪としてやむを得ない場合がある、そういうふうに私は考えております。

 ただ問題は、それが三十年も四十年もたっても、いつまでも出てこない。もちろん、三十年、四十年たっても出してはならないものもあるかもしれません。しかし、本当に出せないものかどうかということについて、やはり客観的に一定の基準に基づいて判断をする。外務当局の恣意によってとにかく出さない、そういうことがあってはならないというふうに思っております。

 それから、この今調査をしております四件の密約については、いずれもかなり前の話であります。にもかかわらず、時の総理や外務大臣が、歴代そういうものはないということを断言してまいりました。今委員おっしゃったように、アメリカの資料によってはあるのではないか、そういう疑い濃厚の問題であります。こういう状態を放置いたしますと、やはり外交に対する国民の信頼が失われる、そういうふうに私は思います。したがって、この四件に関してはやはり徹底的に表に出す、それがあるかないかということを私は今申し上げませんが、もしあるのであれば徹底的に表に出すということが重要であるというふうに思っております。

 同時に、先ほどちょっと言い忘れましたけれども、有識者委員会の皆さんには、当時の時代背景、どういう状況の中でこういった問題が発生したのかということも含めてしっかりと検証していただきたい、そういうふうに考えているところです。

小野寺委員 確かに、私も政府側にいたときにこの問題を確認したら、ないというふうな答弁がありましたので、もし出てきたら私もだまされたんだなというふうに思わざるを得ないと思っております。

 ただ、この問題の大変複雑なところは、では、例えばいわゆる密約という問題があったという形で明らかになった、それがお互いに共通認識としてなった場合、その先のこれからの安全保障の問題、これをどうするかということだと思います。

 例えば、米ブッシュ政権、九一年の時代の考え方としては、米軍艦艇から核兵器が撤去されている、もう既に積んでいないということを言っていますが、このこと自体、今も積んでいないと大臣はお考えでしょうか。

岡田国務大臣 私の理解では、戦略核を積んだ潜水艦以外に艦艇で核を積んだものはないというふうに理解をしております。

小野寺委員 ということで、アメリカ側の言い分をもし仮に信用する、もしこれが信用できないということであれば、逆に言えば、日本の非核三原則の問題、それから日米安保条約上、これはアメリカ側に確認をするということが必要なことになります。ですから、今大臣は、この時点ではないというふうに御判断されているので、あえてアメリカ側に確認をしないということでよろしいでしょうか。

岡田国務大臣 今の御質問は、今の米国の艦船にない、そういう意味ですね。(小野寺委員「はい」と呼ぶ)そこは、米国政府がそのように発表しておりますので、間違いはないだろうというふうに考えております。

小野寺委員 その際、もう一つ不安なことがございます。

 確かに、現在、東アジア情勢、あるいは冷戦の終結後、国際的な大きな意味での紛争の問題というのは一つ鎮静化の方向、また局地的ないろいろな問題はございますが、そうありますが、我が国として、例えば北朝鮮の核の開発の問題、あるいは近年不安視されております中国の軍事、軍備の増強、我が国の周辺における安全保障という問題が今後どういう形で揺らぎかねない、そういった場合に、日本は、この時点でもやはりアメリカの核の傘のもとで安全保障の基本をなしております。その際に、アメリカとして、今後万が一そういう周辺事態が起きた場合に、恐らくいろいろなことを想定してくると思います。

 アメリカ政府というのは、NCND政策がございますので、今後本当にこの地域での紛争が起きる可能性が出てきたときに、一体、核を本当に日本に、あるいは日本の基地に持ち込むか持ち込まないか、そういうことを問い合わせても当然返答しない、そういう政策をとっている中で、そういう周辺事態の有事が起きた場合、今回明らかにした密約が一つの方向としてオープンにされた場合に、では、日本政府としては、どうもこの有事の際、日本の基地内に、アメリカの艦艇、艦船の中にひょっとしたらこのようなものが入っている可能性があるということが察知された場合には、事前協議のもとでアメリカ側にそのことを確認される、そのようなことでしょうか。

岡田国務大臣 私は、先ほど一般論ですからお答えしましたが、今密約に関しては調査中であります。ですから、調査の結果が出るまでに一定の仮定に基づいて答弁することは避けたいと思います。私は、とにかく今、しっかりと事実を出すということに専念したいと思います。

 いろいろなことを考えると、結局、無難に無難にということになりがちでありますので、ここはしっかりと事実を出すということです。もちろん、その過程で、今後さまざまな影響が出るということであれば、米国側とも連絡をよくしながら、コミュニケーションをとりながらやっていくことが重要だというふうに思っております。

小野寺委員 この問題の大変深刻なところは、確かに、日本の中での外交機密の問題の扱いの問題、これは今回、密約という形で国民に不安を持たせることはおかしいということでの調査だと思います。

 ただ、この問題の先につながりますのは、例えば日本は、当然、非核三原則を掲げる一方で、米国の核の傘ということで安全保障の根幹になっております。この核の傘の重要性を考えてみますと、例えば、国民の理解を得て、公開の約束によって核搭載艦船の寄港等をはっきり認めるのか。もし核を搭載していたということでそれをはっきり認めた場合には、非核三原則の持ち込ませずということの解釈、このことの変更が必要になります。

 また、アメリカがやっています戦略的なあいまいさということを考えた場合には、事前協議、アメリカから言われてないんだから核の寄港も通過もない、むしろ無理やり思い込む、こういう方針、恐らく大臣はこういうことは踏襲されないんだと思います。そうしますと、これはやはり国民の理解も得にくいのかなと。

 それから、もう一つ想定されるのは、例えば鳩山首相が国連総会で非核三原則を堅持することを誓うとおっしゃいました。そうしますと、非核三原則を徹底した場合、核兵器搭載艦艇の寄港は認めないということになります。しかし、認めないとする中で、アメリカのNCND政策の中で、核兵器の有無というのをアメリカは明らかにしないと思います。そうすると、我が国としては、この核兵器の有無をどのようにして確認していくのか。

 そして、この方針をとった場合さらに大きな問題というのは、米国の核の傘の重要性というのをある面では否定することになります。ですから、この密約問題というのは、確かに、暴いて何かが出て、ああ、こんなことがあったんだねということで、何となく表面的な問題が出ることではなくて、もっと深く水面下にある、日本がこれから安全保障政策の中でどういう立場をとっていくのか、どのスタンスをとっていくのか、非核三原則をどうするのか、そしてアメリカとの日米関係をどうするのか、核の傘というのをどう考えるのか、これはすべてにつながっていきます。

 ですから、今回この問題を明らかにすること、そしてその先に、ぜひ政府としてしっかり、非核三原則、それから安全保障問題、このことをどう整合性をとっていくか、そこまで踏み込んで決断をしていただかないと、今回の検証が一つの単なる歴史上の、こんなことありましたねということだけで終わるほどの簡単な問題ではないと思っておりますが、最後にこの考えについての御意見を賜ります。

岡田国務大臣 委員がおっしゃるように、簡単な問題でないことは十分に理解をしております。

 ただ、だからといって、時の総理が、あるいは閣僚が国民に対して、相当疑わしいことを、アメリカの情報公開などで一部明らかになっているにもかかわらず、ありませんとしらを切り続ける、そのことが日本の政治にいかにマイナスの影響を及ぼすか、私はそこのところはぜひ是正したい、そういう決意でやっている話であります。

小野寺委員 そのパンドラの箱をあけるということ、それも一つの勇気だと思います。ですが、その先に、開いた後に日本の安全保障問題、非核三原則の問題、これをどう決着するのかということも、これは勇気だと思います。勇気ある対応を期待いたします。

 終わります。

鈴木委員長 次に、河野太郎君。

河野委員 自由民主党の河野太郎でございます。

 まず外務省にお伺いをさせていただきますが、郵便条約につきまして、この条約を締結することに政府として何か懸念があったかどうか、もし懸念があったとするならば、それをどうクリアしたか教えていただきたいと思います。

吉良大臣政務官 今回のこの条約改正につきましては、この年末で既存の条約が切れる、効力を失うことになっております。法的根拠を失うことになりますので、国際郵便業務、国際郵便送金業務を行うためにそれにかわる法的根拠が必要だ、そのために今回条約締結するものでございます。

河野委員 この条約締結に当たってどのような懸念、問題点があるのかないのかということを伺っているわけでございます。全くなかったということでよろしいでしょうか。

吉良大臣政務官 結果的に、効力を失った後になりましても、実際、実施機関であります、送金業務につきましては郵便貯金銀行、そして国際郵便業務につきましては郵便事業会社、いずれにしましても、効力を失った後でも、実態的にはこの両者がその業務を遂行することにおいての問題点は生じません。ただし、法的根拠を失うということから今回条約を締結するものであります。

 以上です。

河野委員 わかりました。我々もこの条約を支持したいと思います。ありがとうございます。

 中井大臣にお見えをいただいておりますので、まず大臣に最初にお伺いをしたいと思いますが、沖縄の読谷村のひき逃げ事件がございました。容疑者と思われる米軍軍人の事情聴取がどのように行われているか、現実を教えていただきたいと思います。

中井国務大臣 いろいろと御心配をおかけいたしております。

 お話しの件、お尋ねの件は、容疑者と目されている米兵に出頭要請をいたしまして、十一、十二、十三、出頭要請に応じて取り調べに来たわけでございますが、その後十四日以降取り調べに応じない、こういう状況が続いておりまして、連日、沖縄警察は米軍に対しまして出頭要請に応じるように今交渉を行っている毎日でございます。

河野委員 その米軍軍人はアメリカの基地内で禁足状況にあると聞いておりますが、それは逮捕、拘禁されている状況にあるのか、あるいは基地内で普通に生活をしているのか、状況の把握をしていらっしゃいますでしょうか。

中井国務大臣 監視状況にあると聞いております。

河野委員 今まで、米軍軍人が容疑者となった場合に、日本国政府が、警察なりなんなりの機関が事情聴取の要望をしたときには、米軍がその指定された場所、時間に連れてくるというのが通例であったと思いますが、それに間違いはございませんか。

中井国務大臣 従来そのような形で取り調べが行われていると承知をいたしております。

河野委員 そうすると、これは極めて異例のケース、かつてこんなことはなかったと思うんですが、どうしてこのような事態になってしまったのか、把握をされているでしょうか。

中井国務大臣 極めて異例で、最初三日間は出頭に応じて、残りは応じないというのも、また変わった形でございます。

 取り調べの、あるいは捜査の最中ですから踏み込んで申し上げるのはどうかとは思っておりますが、せっかくのお尋ねでございますので、私なりの事実掌握の状況から申し上げますと、十四日以降弁護士さんがおつきになった、ここらに起因するのではないか、このように考えております。

河野委員 これまで起きた犯罪の容疑者も恐らく弁護士がついていたんだろうと思いますが、こうした事態はなかったんだと思うんですね。

 そうすると、一体全体、弁護士さんがついて事情聴取に応じなくなったわけですけれども、弁護士がついたというのは初めてではないわけですから、弁護士がついて、来なくなったというだけではないんだと思うんですね。それ以外に何か警察の方で把握していらっしゃることはございますか。

中井国務大臣 米軍は日本側の捜査要求に対して極めて協力的であることは間違いありません。今回、この容疑者と目される米軍人には日本人とアメリカ人の弁護士両方がついた、ここらがちょっと従来と違うのかなという認識を持っております。

 しかし、この弁護士を私どもは呼び出しているわけではございませんので、詳しく承知ができないという状況にあります。

河野委員 法務省に伺いたいと思います。

 私が小泉政権の最後に法務省の副大臣をやりましたときに、米軍はそれまで、日本側が指定をした時間、場所に容疑者を必ず連れてくるということが行われておりました。いろいろな事件の取り調べを行うときに、指定された時間に米軍がその容疑者を連れてきて、取り調べが終わればまた基地へ送り返すということで、特に身柄を日本側が持っていなくても捜査には全く支障がないという状況でございましたので、私が法務省の副大臣であったときに、この状況が続くならば身柄の引き渡しは必要ないということを公式に記者会見で申し上げました。

 この状況というのは、指定された場所、時間に米軍が容疑者を連れてきて日本側が取り調べをすることができるというのがそのときの大前提であったわけでございますが、今の中井大臣のお話のように、こちら側が指定をした時間、場所に米軍が容疑者を連れてくることができない、あるいは連れてこないということは、身柄の引き渡しは必要としないというこの前提が崩れていると私は思いますが、法務省はどのように判断をされておりますか。

中村大臣政務官 法務省の側の立場としては個別具体的事件についてはお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思っておりますけれども、一般論として申し上げれば、今おっしゃったように、こういう形では、まず米軍に要請をして、そして米軍当局を通じて被疑者に要請をしてその出頭を確保してきたということでありまして、これ以降の話の起訴前の引き渡しということになると、これは政府全体での判断が求められることであると考えておりますので、捜査の進捗状況を踏まえて、私たちとしては政府全体で判断していかざるを得ないのかなということを考えております。

河野委員 私が伺っているのは、法務省はかつて、現在の状況が続くならば、つまり、指定された時刻、場所に米軍が容疑者を連れてくるという状況が確保されている限り身柄の引き渡しは必要でないということを法務省が発言をしているわけであります。その大前提が今回のこの読谷村の事件で成立していませんねということを伺っているわけでありまして、別に一般論を聞いているわけでもなければ、個別の事件の捜査の中身を聞いているわけでもありません。きちっと答えてください。

中村大臣政務官 繰り返し申しますけれども、今、元副大臣としておっしゃっていることだと思うんですけれども、起訴前の身柄の引き渡しになりますので、これは政府全体で考えて判断するべきだと考えております。

河野委員 起訴前の引き渡しの話はしていませんよ。起訴前の引き渡しが必要ない、その前提として、指定された場所と時刻に米軍が連れてきて取り調べができるから引き渡しは必要ないということを言っているんであって、きちっと答弁してください。

中井国務大臣 法務省は法務省でお答えをされると思いますが、私ども警察におきましても、いろいろなことを想定しながら今捜査を進めております。米軍はルールにのっとって協力をしているわけでございますから、できる限り出頭に応じさせて、そして、ひき逃げの事実を認めるという中でお話のような状況に持っていきたいと考えていることは事実でございます。

 しかし一方、どうしても出てこないということであるならば、今のままで本当に裁判にたえ得るか、これらを含めて、捜査を厳重に、厳密に、過失の内容について判断をしていきたい。当然、検察側と十分な調整をやって、やっていきたいと考えております。

 日本国民あるいは沖縄県民の方々の思いというのも、十分警察も検察も承知をいたしております。また、日米地位協定というのもございます。これらを踏まえて、戒心を怠らないように十分慎重にやっていきたい。また、私もできる限り早く解明ができるように督促をさせていただきたい。このような現状でございます。

中村大臣政務官 今、国家公安委員長からお話がありましたように、まず捜査機関の方で捜査していただく、警察の方で捜査をしていただく、そのために米軍当局から引き渡しをしていただけるように当局を通じて被疑者に要請をする、そういうことであると認識をしておりまして、そこに関しては、政府全体での取り組み、政治的判断が要ることだと考えておりますので、それ以上の御答弁はできないと考えております。

河野委員 大臣政務官、おわかりになっていらっしゃらないようですから、もう一度申し上げたいと思います。

 日米地位協定では、犯罪を犯した容疑者が先に米軍に確保された場合には、米軍が起訴までその身柄を勾留することになっております。しかし、日本側が捜査をするときに、これまでは、指定された時間、場所にその容疑者を米軍が連れてきて日本側の取り調べに応じさせてきた、そういう現実がございます。そして、その状況が続く限り我々はこれ以上身柄の引き渡しを起訴前に要求することはないということが法務省の見解でございます。そういうことを法務省はこれまで正式に申し上げてまいりました。

 その法務省の見解の大前提は、指定された場所と時間に米軍が容疑者を連れてくるということであったわけでありますが、今回の読谷村の事件では、指定された場所、時間に出頭要請をしても容疑者が出頭しないということになりました。ということは、起訴前の身柄引き渡しは必要ないよと言っていた今までの前提が崩れたわけであります。ということでよろしいですね。(中井国務大臣「委員長」と呼ぶ)失礼、法務省に聞いております。

鈴木委員長 中村大臣政務官、ちょっときちっとすり合わせして答えてくれますか。

中井国務大臣 指名でもないのに出てきて、恐縮でございます。

 河野議員のおっしゃることは、十分理解をいたします。

 日米地位協定におけるいわゆる重大な犯罪という認定をするためには、日本側と米軍側との密接な打ち合わせ、交渉が必要になってくる。その以前の段階で、河野議員のおっしゃるような状況で今日まで協力して対応してきた。米軍は今、出頭拒否をさせているわけでも何でもありません。米軍自体は出頭に応じるように説得をしていると私どもは承知をいたしております。

 したがいまして、こういう状況で、私どもは、前提が変わったと思わずに、米軍にもさらに出頭要請に応じるよう説得をいただきたい、このことを繰り返して要請しますと同時に、一方、捜査の段階で、当人の自供、自白、こういったものが得られなくても、既に当人が車を運転しておったということは認めているわけでございます。その上に立って、いろいろな証拠で、間違いないという形に持っていく。この両面で今、鋭意捜査をし、努力をいたしているところでございます。御協力、御理解のほどお願いいたします。

中村大臣政務官 今、国家公安委員長から申し上げたように、まずは出頭を要請するということが必要であると考えておりまして、そういった取り組みを政府を挙げてさせていただいているというふうに認識しているところであります。

河野委員 国家公安委員長にもう一度お伺いしますが、出頭の要請は引き続きやっているわけですよね。

中井国務大臣 沖縄警察におきまして、連日、出頭要請をやっておりますし、この十七日には、県警幹部が基地の通信の副司令官にも会って、重ねて要請をいたしております。

 全力を挙げて、出頭に応じるよう米軍にも要請を続けていきたい、このように考えています。

河野委員 大臣政務官おっしゃるように出頭の要請は続いていて、それが拒否されているわけですから、少なくとも、法務省が言っていた身柄の引き渡しは必要ないという前提は既に崩れている、そう考えてよろしいですね。

中村大臣政務官 それは地位協定の規定の問題もありますので、総合的な判断は政府全体で考えないといけないものだと考えております。

河野委員 質問の答えになっていないじゃないですか。引き渡しが起訴前に必要ないという前提が、つまり、指定された場所、時刻に米軍が容疑者を連れてきているから起訴前の引き渡しは日本政府としてこれ以上求めませんよという前提が今なされていないわけですから、その前提はまずないですよねということを御確認ください。

中村大臣政務官 先ほど国家公安委員長から申し上げましたように、今、出頭の要請をさせていただいているところでございまして、その前提が崩れているということは、まだその段階に至っていないと言えるのではないかと考えております。

河野委員 国家公安委員長、最後に出頭したのはいつですか。

中井国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、十一、十二、十三、出頭に応じているところでございます。

河野委員 きょうは十一月の二十五日じゃないでしょうか。そうすると、十四日から二十五日まで、たび重なる出頭要請に関しても、基地の副司令官まで出頭要請をしても出頭してこないというのは、指定された場所、時間に米軍は容疑者を連れてくるという前提が崩れたということになりませんか。

中井国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたように、日米地位協定の中で、先生既に十分御承知だと思いますが、重大な事件と認定するかしないかということについては、話し合いを行わなければならない。

 私どもは、もちろん、人命が損なわれた大変残念な事件で、痛ましい事件だと考えております。したがって、そういう地位協定による身柄引き渡し等の交渉を行う前に出頭要請をしたら応じた、これは先生のおっしゃるような好意的な手続という中での一環でありまして、私どもはそれが続くものと考えてスタートをしたわけでございます。

 ところが、先ほど私があえて踏み込んで申し上げましたように、弁護士等が新たに加わった中で出頭に応じない、こういう状況になってまいりました。したがいまして、捜査の段階におきまして、二つの方針のもとで鋭意沖縄警察は捜査をしている。このまま捜査を終えて起訴して身柄を拘束するという状況に立ち入るのか、あるいは当人が出頭要請に応じるのか、これらを含めてまだわかりかねるところがございます。

 先生おっしゃる、前提が崩れたというのは、私どもはまだそこに至っていない、こういう判断をいたしております。

河野委員 十三日まで出頭していて、十四日から出頭しなくなって十日がたちます。

 我々が身柄引き渡しは起訴前に必要ないんだと言ったときには、指定された時刻、場所に米軍は必ず容疑者をこれまでは連れてきたわけでありまして、その長年続いた相互の信頼関係からしてみて、十日間にわたって出頭要請に応じられていないということは、もはや従前の状況にないと考えるのが普通ではないかと思いますが、法務省、いかがですか。

中村大臣政務官 あくまでも個別の事案に対してここで論評することは差し控えたいと考えておりますが……

鈴木委員長 政務官、質問に正確に答えてください。個別の案件云々じゃないんです、これは。事実関係をこの場合言っておりますから。

中村大臣政務官 事実関係に関して、私はここで評価する立場にないと考えております。

河野委員 それは仕事になっていないじゃないですか。きちっと答えられないんだったら、ちゃんとした、副大臣なり大臣を呼んでください。

中村大臣政務官 現に捜査をしているのは警察でございますので、その点に関して、国家公安委員長が事実について申し上げたというふうに考えております。

河野委員 いやいや、出頭に応じてくれるならば起訴前の引き渡しは必要ないと正確に申し上げたのは最初は法務省なわけですから、法務省はその見解の前提となる状況がいまだ続いていると認識しているのかどうかということを聞いているわけで、それに対してまずきちっと答えてください。

中村大臣政務官 繰り返し申し上げることでございますが、この前提を欠くかどうかの事実認識については、今、国家公安委員長が第一義的な捜査機関として見解を述べられたものだと承知をしておりまして、それ以外の認識を私から申し上げることではないと考えております。

河野委員 委員長、警察がそう言っているなら、法務省がそれを踏まえて引き渡しは求めないとか、少なくとも法務省の見解があると思うんですが、全く法務省が答えないというのでは、これ以上委員会はできません。

中村大臣政務官 日米地位協定におきまして、引き渡しというのは、起訴後に引き渡すということが決まっております。起訴前の引き渡しについては、今までの取り組みがありまして、どういう形で起訴前に引き渡しするのかということに関しましては政治的な判断が要りまして、これは政府全体で相手、米当局と交渉しないといけない問題でもございますので、法務省の立場で答えるわけにはいきません。

河野委員 正確に答えさせていただきたいと思います。起訴前の引き渡しを求める求めないの話はしておりません。

 これまで政府は、起訴前の引き渡しは必要がないということを繰り返し言ってまいりました。その前提として、米軍が指定された場所と時間に容疑者を連れてきて、取り調べに何ら支障がないのであって、起訴前の引き渡しはこれ以上必要がないということを言ってきたわけであります。

 今ここで問題になっているのは、その前提が崩れているのではないかということを問うているわけであって、別に日米地位協定がどうのとか起訴前の引き渡しをどうするかということではなくて、起訴前の引き渡しが必要がないという前提がどうなのかということを聞いているのであります。

中井国務大臣 河野先生、法務副大臣の当時の御経験をもとに言われているわけですが、御承知のように、日米地位協定で、殺人、強姦については直ちに身柄を拘束する、その他重大な事犯については協議する、こういう中で、従来、沖縄警察、地元警察が米軍に対して要請したことに対して、米軍が応じてきたことは事実でございます。今回も米軍は応じて、対応をしてくれているわけでございます。

 したがって、米軍がこれを拒否しているとか、そういう判断は現地警察ではいたしておりませんで、私どもは、取り調べ、捜査に当たっている現地沖縄警察の苦労も思い、そして判断を是として、今、見守っているところでございます。

 しかし同時に、当人を取り調べなければ立件できないか、起訴できないかということに関しては、沖縄地方検察と十分相談の上に、どういう証拠、どういう情況証拠等をそろえればいいのか、万々一裁判のときに証拠不十分なんということになれば、これはとんでもない事件に発展いたします。慎重の上にも慎重に捜査をいたしている、これが現状であります。ぜひ御理解と御協力のほどをお願いいたします。

河野委員 今までは確実に取り調べができていた。しかし、ここで取り調べができなくなれば、これがあしき前例となって、恐らく平成七年合意のヘーナスクライムに当てはまらないものについてはこれから出頭しないということになりかねないというふうに私は危惧しております。

 そういうことを考えれば、今までは起訴前の引き渡しを要請しないということでやってまいりましたけれども、本当にこれは容疑者が出頭しなくなれば起訴前の引き渡しということも考えざるを得なくなるのではないかと思いますが、まずこの案件について、平成七年合意のヘーナスクライムあるいは重大な事件として米軍にこれ以上の対応をするように求める考えが外務省にあるでしょうか。

岡田国務大臣 今、委員の御議論を聞いていまして、委員御指摘の、米軍がきちんと連れてくることによって事情聴取ができる、そういう条件が満たされている限り引き渡しを求めない、では、そういう条件が満たされない場合に必ず引き渡しを求めるのかというと、必ずしもそれは、逆は必ずしも真ならずであります。

 そこで、今おっしゃった平成七年の日米合同委員会の合意に次は行くということになります。引き渡しを求めるということになれば、この日米合同委員会の合意、つまり「殺人又は強姦という凶悪な犯罪の特定の場合」に関しては、日本が求めた場合に「好意的な考慮を払う。」それから「日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について同国が合同委員会において提示することがある特別の見解を十分に考慮する。」これが合意であります。これに該当するかどうか、あるいはこの規定に基づいて起訴前引き渡しを求めるかどうかという判断になるわけでございます。

河野委員 外務省はその案件が当てはまるものだと考えていらっしゃるかどうかをお聞かせいただきたいと思います。

岡田国務大臣 現時点で個別の案件について、今、私の判断はまだしておりませんけれども、ただ、この「考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合」というのは、かなり限定した言い方であります。その前にあるのは「殺人」「強姦」ということであります。そういう意味では、これは慎重に考えないと、求めてもしかし引き渡しが実現しないということにもなりかねない、そういう問題である。

 したがって、現時点で米軍といいますか、米国政府は全面的に協力するということを言っているわけでありますので、さらに今の努力を続けるというのは一つの判断かと思っております。

中井国務大臣 余り取り調べ中の事件に立ち入って御答弁を申し上げるのもなにかと思いますが、お尋ね、たびたびでございますので、あえて申し上げます。

 三日間の出頭に応じた上での取り調べの中で、マスコミ等はいろいろと報じておりますが、当人もかなりこの事件のことについて供述をいたしております。全く供述を拒否しているわけでもなければ、黙秘をしているわけでもございません。それかといって、全面的に自供が得られて事件解決に大きく前進しているということでもないという状況の中で、先ほども申し上げたように、弁護士がふえたりいたしまして、突然出頭拒否になってきた、こういう状況にあります。米軍側も困惑をしていることは承知をいたしておりまして、今も協力的に説得に当たってくれていると私どもは沖縄警察から聞いております。

 そういう状況の中で、沖縄警察と米軍との友好関係等もございますから、これらの上でなるべくスムーズに捜査に協力、出頭要請に応じてもらう、事件解決に向かって前進をする、こういう状況を私どもは早く実現できるように祈っているところであります。

河野委員 米軍のプライベートなセスナ機がサトウキビ畑に不時着をしたという事件がございましたが、そのときの米軍の対応は、必ずしも警察が満足いくような対応を当初とりませんでした。金武町の流弾の事件に至っては、米軍側の回答は、事件の起きた日と違う日付のことを回答してきた。これも警察の納得のいくところではありませんでした。警察の納得のいくところがないという以上に、これは沖縄の県民の皆さんの納得も得られないような対応でしかありません。

 今回のひき逃げ事件、特に相手側が亡くなられているという事件でありますが、今回はたまたま最初に三日間事情聴取をすることができましたが、このままこの容疑者がそれで逃げ切れば、次から米軍のこうした事件の容疑者は全く最初から事情聴取に応じなくなるということすら考えられるというふうに思います。

 我々としては、このまま手をこまねいていて、米軍が何か事件を起こしても、出頭を拒否する、米軍は一生懸命説得をするけれども、本人が出頭を拒否すれば日本側は全く取り調べをすることすらできないという状況になれば、これは基地周辺の住民の皆様から大変な反発が出るのは間違いのないことでありますし、この状況を放置すれば日米同盟の信頼関係にもひびが入るということになります。

 政府として、この件につきまして、まだ十日だからいいんだということがあるかもしれませんが、これが一カ月たち、二カ月たち、そういう状況にはまだないとは言えなくなってきたときに、これから先どのように対応するつもりなのか、お答えをいただきたいと思います。

中井国務大臣 御心配の点、本当に痛いほど承知をいたしております。また、きょうの国会での質疑の状況は沖縄にも伝えまして、捜査を急ぐように督促をしてまいりたいし、また、米軍関係者にも警察から十分伝えてまいりたい、このように考えております。

 お話のありました金武町の流弾事件につきましては、つい二十四日だったと思いますが、二回目の基地の立入調査を実行することができました。初めは日にちを沖縄警察の調べと違うことを言っておりました米軍も、そこの点についてはこだわらない、こういう言い方に変わってまいりました。

 先生おしかりをいただきますように、遅々として進まない点もございますし、もどかしいところもございますが、とにかく一歩一歩証拠を固めてそれぞれの事件できちっと解明をしていく、この努力を警察挙げてやってまいりたい、そして、米軍にも協力要請を引き続きやっていきたいと考えております。

岡田国務大臣 先ほど申し上げましたように、この問題に対して、私とルース大使との間で、あるいはクリントン長官との間で、全面的に協力をする、そういう話になっておりますので、状況が膠着状態に陥るようであれば、もう一度そのことをしっかり確認をして協力を求めたいというふうに考えております。

河野委員 日米の関係の将来を考えたときに、極めて大きな影響が出かねない事件だと思っておりますので、しっかりとアメリカと交渉をし、対応していただきたいと思っておりますし、全面的に我々もそれをサポートしてまいりたいと思っております。

 中井大臣、中村大臣政務官、ありがとうございました。結構でございます。

 お忙しい中、辻元国土交通副大臣にお出かけをいただきまして、ありがとうございます。辻元副大臣には、私が外務委員長を務めておりましたときに大変お世話になりまして、特に、沖縄へ一緒に行って辺野古の海を見せていただきまして、本当にありがとうございます。

 そのときに、辺野古の海は絶対に守らなければいけないんだということを、あの座り込みをしていたテントの長老を初め沖縄の皆様に熱弁を振るっていらっしゃったわけでございますが、政府の一員として辺野古問題に影響力を行使できる立場になられたわけでありますが、辺野古の海を絶対守るんだという決意を再び政府の一員として述べていただきたいと思います。

辻元副大臣 河野委員が外務委員長でいらっしゃったときに、一緒に辺野古に参りました。そして、船に乗って海を一緒に拝見しました。その折に、辺野古地区のおじいさんやおばあさんがたくさん出てきてくださって、万歳三唱をして迎えてくださいました。それは、自民党の国会議員の方が初めて辺野古にいらっしゃったということで、涙を流して、おじいちゃん、おばあちゃんがその浜辺で迎えられたということがありまして、私も一緒に同行いたしました。私は、あの海を守りたいという気持ちは変わっておりません。そして今、政権交代をして、国土交通副大臣として仕事をしております。

 そんな中で、先般、普天間移設問題をめぐりまして、外務大臣や防衛大臣、関係閣僚の皆さんがさまざまな御発言をされております。そういうことに対しまして、特に自民党の皆様から御批判もございます。それは、閣内で一致してから発言をするように、それぞれの、内閣に所属する者がばらばらと発言すると国益を損なうと。先般も参議院の外交防衛委員会で、自民党の委員の方から強くその御指摘がありました。私は、ごもっともだと思います。

 ですから、私は、国土交通副大臣として、その所管についてはしっかり発言してまいりたいと思いますけれども、閣内で、政府・与党の中での議論は活発に行ってまいりたいと思いますけれども、所管外のことを私がああだこうだと申し上げる立場にないというように今思っております。

河野委員 連立政権の福島党首は、辺野古移設に反対だということをはっきりおっしゃっております。社民党から政府に入られている副大臣として、万が一辺野古に移設するということになった場合に、どのような態度あるいは政治行動をとられるのか、あらかじめお伺いをしたいと思います。

辻元副大臣 今、連立政権になって、福島党首の発言は、党首としての発言だと思います。その中で、今後この取り扱いがどうなるか。それは、各省がそれぞれのお立場で解決策を議論する。そしてさらには、連立政権ですので、基本政策閣僚委員会などで三党で協議していくことになると思います。そのときに党として主張することは主張し、最終的にどのような結果になるかは今予想ができません。ですから、今お答えできません。

河野委員 どのようになるかは確かにわからないと思いますが、仮に辺野古移転ということになったときには、社民党として、それを受け入れるということでよろしいんですね。

辻元副大臣 今まだ社民党の中でそのような議論はいたしておりませんので、今お答えできないということです。

河野委員 野党のときには辺野古の海を守らにゃいかぬと言っていた社民党が、与党になったときには議論をしていないからよくわからぬというのは、与党になったら辺野古の海より何が一体重要になったんでしょうか。

辻元副大臣 正直申し上げまして、それは非常に悩ましいところです。

 今は連立政権の時代になっております。それから、政権交代が起こったということ、これも戦後、まあ、いわゆる村山政権もありましたけれども、選挙で公約を掲げ政権交代したということも初めてです。

 ですから、まず連立政権のことを申し上げますと、例えば自社さ政権の折も、例えばですよ、村山談話というのをつくりました。あの折も、自民党だけではなかなかできなかったと思います。その組み合わせで一つのものを生み出しています。その折には自民党の中に大反対をされた方も、この外務委員会の中にもいらっしゃるでしょう。しかし、連立政権というのは、それぞれの政党が主張し合って、ベストは無理かもしれないけれどもベターを生み続けるというようなメカニズムだと思うんですね。ですから、それぞれの政党がいろいろな思いを持って。

 しかし、私たちも、自民党と最後はたもとを分かって、連立を離脱いたしました。それはそれ相応の理由があるからなんです。しかし、あらかじめそれを想定して、今協議中または交渉中のことについて、こうであったらこうだというようなことをそれぞれ政権にいるときにあらかじめ想定して行動を規定しないと思います。

 そしてさらに、政権交代が起こりました。これは、外交案件の継続性とそれから各党の公約をどうしていくのかという、これも初めてのことじゃないでしょうか。アメリカでも、クリントン政権からブッシュになってオバマ政権になりました。オバマさんは、イラクからの撤退を公約にして選挙を戦われた。そして撤退ということになっています。というように、政権がかわったときに、この外交案件をどう取り扱っていくかという、今大きな、ある意味、率直に申し上げますと、試行錯誤と見えるかもしれないけれども、私は、日本の政治にとって今、産みの苦しみだ、そういう時期だ、新しいステージに入るための一つの、外交とそして連立政権とそれぞれの公約、政権交代、こういうことに直面している、その中でしっかりと対応していくということはどういうことだろうと思いながら、今国土交通副大臣ですから、所管外ですから、その仕事をしっかり果たしながら過ごしております。

河野委員 そうすると、社民党として、県内移設というふうに決まった場合にはそれを受け入れる可能性があるというふうに考えてよろしいですか。

辻元副大臣 ですから、何回も申し上げておりますように、あらかじめこうであればこうだということを想定して、今議論をしている最中です、他国とも交渉している最中です、それは申し上げないというのが私は正しいとるべき道だと思っております。

河野委員 私は、社民党は県内移設には絶対反対の立場をとっているというふうに思っておりましたが、今の副大臣のお話を聞いていると、必ずしもそうではないんだな、違っていたら後で御答弁をいただきたいと思いますが。社民党は、総選挙であっても県外移設ということを訴えてきた。つまり、県内に普天間基地を移設することには徹頭徹尾反対という立場をとられ、もし連立政権が県内移設ということで決めた場合には社民党は離脱されるのか、そう思っておりましたが、必ずしもそうではない。そうなるかもしらぬけれども、一〇〇%そうなるわけではないんだなというふうに私は思ったわけでございます。

 もう一つお伺いをしたいのは、副大臣は辺野古の環境アセスについて、例えば砂利の問題が入っていないではないかというようなことをおっしゃいました。政府の一員として、例えば砂利の問題を入れた環境アセスが必要なのではないかというお立場に変わりはないでしょうか。また、滑走路をつくるわけですから、当然に国土交通省としても政府の中で必要なことは発言をされていかなければならないというふうに思っておりますが、辺野古の問題の環境アセスについてどのように感じていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。

辻元副大臣 今、最初に申し上げたところに戻るんですけれども、所管外のことについてはお答えしません。

 これは、前原国土交通大臣もそうなんです。前原さんも実は、この普天間の問題、ライフワークのようにかかわってこられた方なんです。そして今、沖縄北方担当大臣もされております。しかし、そのような立場でも、所管の大臣たちが今交渉中であるから、自分は所管外として発言を差し控えるというような答弁を記者会見でもしております。

 ですから、申し上げましたように、私も国土交通副大臣として働かせていただいて、精いっぱい頑張ってまいりたいと思っていますが、発言はいたしません。

河野委員 ぜひ福島党首にも、同じように、所管外であるならば普天間の基地の問題について発言をしないというように、党の中でお伝えをいただきたい。政府として物が決まったときに社民党が連立政権を離脱されるかどうか、それは社民党の問題でありますが、少なくとも、担当の大臣がかかわっていらっしゃるときに、担当外の方が、大臣として、あれがいい、これがいいということはおっしゃるべきではないというふうに思っておりますので、ぜひ福島党首にお伝えをいただきたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたが、岡田大臣にこの普天間の問題で少しお尋ねをさせていただきたいと思います。

 大臣がおっしゃっておりました嘉手納統合という問題につきましては、米軍の中で固定翼と回転翼が共存して運用することはできないという説明をよく米軍がするわけでありますが、実は、国民新党の下地代議士がかつて調査をされて、米軍基地で固定翼と回転翼が共存している基地は確かにあるようでございます。嘉手納の統合を主張されている大臣として、この回転翼と固定翼が一緒にいては運用ができないんだという米軍の説明がありますが、この問題については大臣として何らかの解決ができる、そういうめどがおありかどうかをまずはお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 まず、嘉手納統合の案というのは、私がそれを決めつけているわけではなくて、今検証作業を行っている中で、かつて出てきた、何度も出てきた案ですから、果たしてどこがだめだったのかということを検証しているということであります。私は嘉手納案にとことんこだわっているわけではないということはまず申し上げておきたいと思います。

 そして、御質問ですけれども、これは、私自身まだはっきりとした確信が持てない状況にあります。

 確かに、米国側から説明を求めると、運用上の困難さということを強調されます。しかし、そうではない例もあるやに聞いております。実際に、特に有事の際に、緊急事態の際に空港がどのぐらいの込みぐあいになるのかということによっても変わってくる問題かというふうに思っておりまして、なおよく検証していかなければいけない問題であるというふうに思っております。

河野委員 もう一つ、嘉手納統合案についてお伺いをしたいと思います。

 嘉手納統合の場合には、沖縄の嘉手納にあるF15をグアム島に幾らか下げなければならないというふうに思いますが、岡田大臣のおっしゃっている嘉手納統合案というのは、F15をグアム島に一部引き下げるということを含んでいらっしゃるのかどうか、お伺いをしたいと思います。

岡田国務大臣 F15をグアムに移すのか、その他の場所に移すのかということは、私は具体的にまだ検討しておりません。

 ただ、嘉手納の基地を訪問した折に、関係の町長さん、市長さんとお話をしたときにも申し上げました。それ以外にも申し上げているんですが、嘉手納統合という場合の前提は、全体としての騒音の負荷が今よりも減らなければだめだ、そうでないと案にならないということは申し上げておりますので、どこに移すかは別にして、委員御指摘のようなことが実現しないと統合は難しいというふうに考えております。

河野委員 私も、嘉手納に統合する場合には、全体として騒音が下がらなければこれは意味がないし、現地に受け入れていただくことはできないだろうと思っております。

 そうすると、F15をどこかに移さなければいけないわけであります。国内のどこかに移すというのは非常に難しいということを考えれば、グアム島なりどこかほかの場所なりに移さなければならないと思うわけでありますが、F15が沖縄からいなくなるということは日本の安全保障上特に問題はないと大臣はお考えになっていらっしゃるのかどうか、そこをお伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 ですから、どの程度移すのかという問題も当然あるわけです。全部移すのか、あるいは一部移すのかという問題もあります。そのことによって変わると思いますし、それが緊急事態にどういうふうに展開するのかという問題もあると思います。

 ですから、一概にお答えすることは非常に難しいんですが、しかし、日本の抑止力というものに重大な影響を及ぼすようなそういうことはできない、それは当然の前提だと思います。

河野委員 嘉手納の統合をしたときに、米軍がよく言うのは、有事のときに対応できないという話がありますが、少なくとも、この戦後数十年の中で有事と呼ばれていた期間は非常に短いだろうと思います。そうすると、ふだん、平時の状況と、有事になったときにはここをこういうふうにしましょうということを切りかえるようなことをしながら、むしろ、平時は嘉手納に統合をするということができるならば、全体として騒音を下げながら嘉手納に統合していくということを考えて、ただし有事の場合には付近にあるこういう施設を提供しますよ、有事の場合にはこういうふうになりますよということを附帯条件としてつけて、しかし平時は嘉手納に統合するということがあっても、私はそれは選択肢としてあり得るだろうというふうに思っておりますので、平時、有事、すべて同じ状況の中で、同じ施設の中で平時も有事も対応しなければいけないということにはならないのではないかなと思っております。

 大臣がなぜ嘉手納でなくて辺野古になったのかということを調査されているということでございますが、例えば、その調査をした結果、辺野古に決まった経緯が不透明であったり、あるいはもっと有力な代替案があったにもかかわらず違う案になっていたりということがもしあれば、そこまでさかのぼって交渉をやり直す、必ずそうするというわけではありませんが、そういうことも視野に入っているというふうに考えてもよろしいでしょうか。

岡田国務大臣 ここはかなり慎重に私は物を言っているわけですが、今行っているのは検証作業です。なぜ今の案になったのかということを検証している、あるいはほかの案がどうしてだめだったのかということを検証している、そういう段階であります。したがって、その検証の結果を見なければ、その先のことは申し上げるべきではないと思います。

河野委員 それはそのとおりだと思いますが、検証をしました、検証の結果にかかわらず今のコースでいきますというのでは検証作業の意味がないわけですから、当然、検証するということは、検証結果によってはコースが変わることもあり得るというふうに思ってよろしいでしょうか。

岡田国務大臣 ここの答え方は非常に難しい、率直にそう思います。

 この場でしたか、ほかの委員会でしたか、以前に、論理的に可能性はないのかと何度も聞かれて、論理的には可能性がないとは言えないと答えたところ、大臣は積極的である、意図があるというふうに答弁したというふうに書かれてしまいました。

 日本のメディアの伝え方の現状も踏まえますと、今の委員の御質問に対しては、申しわけありませんが、今の段階、先ほど以上の答えはございません。

河野委員 それでやむを得ないだろうなというふうに思いますが、少なくとも、今の普天間の基地問題、これを何らかの形でやはり早期に解決をしなければ日米同盟に大きなひびが入りかねないというふうに私は非常に危惧しております。そこは、辺野古であろうか、あるいは嘉手納に統合するのか、私はもうこの二つのどちらかしか選択肢としてないんだろうな、辺野古で若干沖合に出す出さないという微調整はあるかもしれませんが、辺野古でやるか嘉手納に統合するか、どちらかしかないんだろうというふうに思っておりますので、そこは大臣に慎重に御検討いただいて、日本の国としてきちんと一本になってそれをサポートできるような体制をしっかりつくっていかなければ日米両国間の関係が正常に戻せないのではないかというふうに思っておりますので、そこは大臣にきちんとお決めをいただいて、その内容をしっかり公表していただければ、我々としてもしっかりそれを支えてまいりたいというふうに思っております。

 ただ、その中にあって、やはり先般の読谷村の事件というのは私は非常に危惧をしております。これまでも、金武町の流弾の事件その他で米軍がきちっと対応してくれなかった、あるいはセスナの墜落の事件のときも米軍の対応にかなり疑義がありました。直接現場で対応した方が全く政治的な配慮をされずに、米軍として、ルールどおりとして突っ張ったということがございました。

 こういうことを考えると、この読谷村の問題というのは、日米安保条約の根幹にもかかわりかねない、国民から日米安保に対して、あるいは米軍の基地、あるいは米軍の軍人さんが国内にいらっしゃることに対して非常に強い反対意見が出かねない、その小さな最初の一歩になりかねないというふうに思っておりますので、ぜひこれは、もう既に十日たっております。十日で状況に変化がないんだという先ほどの国家公安委員長の答弁でございましたが、十日出頭に応じないということは、やはり事態として異常事態になっていると考えざるを得ないというふうに思っております。ぜひ、先延ばしをすることなく、この問題にも、きちんと外務省として米国と対応しながら、問題解決を早期に図っていただきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

岡田国務大臣 まず、普天間の移転の問題は、迅速に、できるだけ早くということが日米で合意されております。これは、内閣全体として最終的に意思決定をしなければいけない問題。鳩山総理も、自分が最後は決めるとおっしゃっております。迅速に、できるだけ早く結論が出るように、外務大臣として最大限努力をしたいと考えております。

 読谷村のひき逃げ事件に関しては、委員の御指摘はしっかりと受けとめて、間違いのない対応をしていきたいというふうに考えております。

河野委員 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうの委員会は、冒頭で鈴木委員長の方からの御発言がありましたように、残念な経緯で採決が行われてしまい、こういう形で、先般参加できなかった三条約についての質疑をこうやって補充的にさせていただいている、こういうことでございます。

 先ほどの委員長のごあいさつを聞きながら、私は、先般、岡田大臣にも冒頭で政権交代の意義ということを申し上げさせていただきましたけれども、正直、今回の国会の運営のありようというのは多くの国民を失望させたのではないか。新しい政権に交代をして、これは過去の私どもも参画をした政権がやったことと同じことと申し上げるつもりはありません。厳密に言うと、よりもっとひどいことをなさったと思っておるんですけれども、形態的には、国民から見ると、やはり同じようなことをやっているなという印象を与えたということは、民主党政権にとって、社民、国民新党を加えた政権にとって大変に不幸なことだったのではないかなという感じはいたします。

 先ほどの委員長のごあいさつを、聞き耳を立てて、正確に聞こうと思って聞きました。言葉じりをとらえるわけではありませんが、忌憚のない意見を承り、真摯に受けとめ、今後とも、こうおっしゃっている。今後は、こう言ってほしかったなという気もするんですけれども。

 やはり第一弾としての全体状況の国会の運営の仕方が、もちろん先ほど委員長の御発言に国会情勢の変化というものを生み出したということがあるわけですけれども、そういう大状況の中でも、個別の意思というものを非常に強く持っておられると私は見ている鈴木委員長におかれましては、大状況がどうあろうとも踏ん張る委員長であってほしいな、そういう場面では筆頭理事だけではなくて私の意見も聞いてほしいな、こういうふうな思いがいたしますということを冒頭に述べさせていただきます。

 ところで、私の方からは、大臣にもずっと座っていただいて恐縮なんですけれども、万国郵便連合にまつわる議定書の問題、それから南東大西洋漁業条約に関する質問を中心に、もし時間があれば、先ほど来自由民主党の仲間の皆さんが質問された中でちょっと大臣に確認しようかなと思うこともあるので、そういう質問をしたい、こんなふうに思います。

 まず第一点目は、万国郵便連合憲章の第八追加議定書ほかの件でございます。

 先ほど委員長の御発言にまつわることを私の考えとして申し上げさせていただきましたけれども、この万国郵便連合憲章、先ほど河野委員の質問の中に、問題点、課題はあったのかなかったのかという御指摘もありましたが、私は、ここでちょっと角度を変えて、この議定書が仮にこの国会で成立しなかった、先ほど来のような国会の不幸な状態の中で成立ができなかったといった場合における国民生活に及ぼす具体的な実害というのはあったのかどうか、この点についてお聞きをいたしたいと思います。

吉良大臣政務官 先ほど河野委員に対する答えでも申し上げましたけれども、今回この条約を承認しなければ、現在、郵便為替法それから郵便振替法において規定されている、「条約に別段の定のある場合には、その規定による。」という、この法的根拠が失われることになります。それゆえ、法的根拠を持った業務の実施ということでこの条約を締結したい、このようにいたしているわけでございますけれども、実態的には、先ほども申し上げましたように、総務省の監督のもとで、郵便事業株式会社、郵便貯金銀行が、国際ルール、すなわち今回新たに締約されるルールにのっとった形で実態上の業務は遂行していくということになります。

赤松(正)委員 法的な根拠はなくなる、ですから法的根拠なしに行うということにはなるんでしょうけれども、ここに、今回の改正点の主なポイントとしての到着料の引き上げであるとかあるいは疑わしい取引の通知義務の追加とか、こういった今回のこの改正に伴う部分が実際に発動しなくなるということはない、慣性上というか、そのままやるということだろうと思うんですね。

 そういう点でも、私が言いたいのは、冒頭にまたこだわるわけですけれども、今回政府が出された条約だとかあるいはさまざまな法案にはそれぞれ個別の性格というものがあるわけで、これを一括して何が何でもこのときまでにという行き方は、政権交代されてからは余りとられない方がいいんじゃないのかと。それぞれ個別に、だから、この条約は法的根拠がなくなる、しかし、国民生活に影響はないからどうでもいいんだというようなことを言うつもりはありませんけれども、細かく、実際どういう形で国民生活に実害が及ぶのかというようなことも踏まえて、横並び、一括というふうなことは余りされない方がいいんじゃないか、そんなふうな感じを抱きます。

 今、民主党の皆さんは、事業仕分けということで大変に国民の関心を呼び、そして、予算にまつわるさまざまな情報の公開という部分でかなり得点を稼いでおられる。先般も私の友人が、あの民主党がやっているのはすごい、だれが考えたのかと言うから、これは構想日本の何々という方がやったんだよという話をしたんですが。民主党がやったどうこうという、だれがどうこうで、いつ提起したのかということを余りどうこう言うつもりはありませんけれども、国民の関心というのは非常に強くて、事業仕分けを最初に政党として提起したのは公明党だなんということを言っても、そんなことだれも知らない、こう言われてしまって愕然としたわけでありますが、そういうテーマに続いてくるのは国会改革という問題だろうなと思っております。

 そういう点で、皮肉に見ると、今回あえてこういうされ方をされたのは、ついにやはり国会改革が必要だということを言うためにわざとやったんじゃないのかなという感じもしないではないということを申し上げさせていただいて、万国郵便連合憲章についての質問は終わります。

 次に、南東大西洋の漁業条約の問題に移ります。

 まず、これは先日の民主党の平岡さんの質問に対する答弁の中で、二〇〇三年の本条約発効後、今まで締結をしないで、今になって締結する理由として、二〇〇七年十月の年次総会の決定がその背景にあると武正副大臣は述べておられます。武正さんはきょうお越しになっていないので、連携はとっておられると思いますが、要するに、二〇〇七年十月から、今二〇〇九年十一月ですから二〇〇八年があるわけで、二〇〇八年にどうして締結をしなかったのかということでございます。

 本年度、二十一年度の予算で、もう既にことしの予算編成の中で南東大西洋漁業機関分担金として三百三十八万円が計上されているということで、二十年の時点では入る準備ができていたはずであります。なぜ遅くなったのか、この点をお聞きしたいと思います。

吉良大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のとおり、二〇〇七年十月の決定を踏まえて、その後、締結に向けた実作業を行ってまいりました。しかし、昨年末に、この条約の附属書が二〇〇一年四月の条約採択時のものから変更されているということが判明いたしました。それで、現時点で有効な附属書を含む条約テキストの入手のために、この条約の寄託者である国連食糧農業機構、FAOなどとやりとりを重ねた結果、最終的な条約テキストが本年九月に確定をいたしました。したがって、前回の国会まで条約提出ができなかった、条約審議のお願いができなかった、こういう事情でございます。

赤松(正)委員 おくれた第一義的な責任というのは、この条約のテキストをしっかりつくっていく流れの中で不手際が先方の方にあった、こういうふうな意味だろうと思います。

 ただ、私どもは、今回のこの審議に当たりまして、南東大西洋における漁業資源の、この仕事にかかわっている大洋エーアンドエフ株式会社、ほとんどこの会社のみが操業をしておられるようですけれども、そこにいろいろ取材をしてまいりました。そういう観点から申し上げますと、いろいろと現場における不満、問題意識というものを持っておられるということを私どもなりに掌握をいたしました。今まで非加盟国となってきた、先般の民主党の皆さんとの議論、主に平岡さんですけれども、それも聞かせていただいてある程度掌握しております。

 言ってみれば準加盟国的な扱いという格好でいろいろなことが済んできたということなんでしょうけれども、そういうことで、加盟国にならないで非加盟国になってきた。つまり、さっきはなぜこの一年おくれたのかということを聞きましたけれども、それ以前にさかのぼって、このおくれてきた理由というのはどのように外務省は考えておられるのかをお聞きしたいと思います。

吉良大臣政務官 この条約においては、SEAFOが決定している保存管理措置を遵守することによって例外的に操業が認められてきた、いわば日本の操業者にとっては、今申し上げましたように、この保存管理措置を守ることによって実際的には操業がずっと可能であった、こういうことが原因だというように了解しております。

赤松(正)委員 それは私の質問の答えになっていない。何でそういうふうになってきたのかということ、その結果としておくれたのかを聞いたわけであります。

 恐らくそれ以上は答えが返ってこないんじゃないかと思うので、こっちが掌握していることについて多少申し上げますと、条約を決めるための国際会議への日本の参加というものが非常に遅いということ、これは今回のこの南東大西洋漁業条約だけではなくて、ある意味で、こうした漁業の仕事に従事しておられる現場の皆さんの横の意見、全体と関係あるんだろうと思うんですけれども、そういうことの主張があって、後から参加すると日本の主張がなかなか反映されないということがあって、やはり一番最初の方からなるべくそういうルールには参画した方がいい、そういう意思が、先ほど申し上げた大洋エーアンドエフにはある。ただ一方で、その辺が、外務省あるいは水産庁との間で意思の疎通というものが欠かれていたんではないのか。外務省や水産庁、政府の方は、そうした現場の操業者の意見というものを余り聞かないで、大体現状、流れに任せていた、そういう側面があったんではないかな、そんなふうに私は思っております。

 ところで、そういったことを踏まえて、特に、この条約審議に当たって現場の意見を聞きましたところ、さっきも言った件、国際会議の日本の参加が遅い、資源保護を主張するアングロサクソン系の国々で先にルールが決められてしまって、後から参加する日本の主張が反映されないものになってしまうという指摘がありました。これについては、今回のこの条約についてはアングロサクソンは直接関係ないじゃないかという反論が返ってくるかと思いますけれども、しかし、では、そのほかのものも含めて、そういう指摘に対してどういう考え方を持っているか。

 さらに、今回は、第一回のSEAFO、南東大西洋漁業機関設立準備会合から、一回目からずっと外務省、日本国は参加をしてきているわけですけれども、この条約は我が国の主張が反映されたものになっているのかどうか。そういった点について外務省の見解、つまり、我が国の主張が正確に反映してきている、こんなふうな認識を持っておられるのかどうかをお聞きしたいと思います。

吉良大臣政務官 委員御指摘のように、条約が成立した当初から加入できればより意見を反映させられるというのは、一般論としてはそのとおりだというふうに思っておりますが、今御指摘のあった、時間的におくれて加入することによる不利益はないのかということにつきましては、我が国が重視している漁業資源の保存、あと利用という双方のバランスがとれた内容となっているということで、現時点ではおくれて参入することによる不利益を承知はしておりません。

赤松(正)委員 現場サイドでは、細かいことですけれども、こういうふうな不満があるんですね。

 例えば、本条約の十四条三項に、オブザーバー、監視員乗船措置が入っているけれども、これは国連の漁業協定に準ずる形で規定されている。これを厳格に実施した場合、他国による監視員が乗船することによって、監視員との言葉のコミュニケーションや乗船される側の精神的な負担、さらには監視員への経費の負担といったような、日本の船舶の操業に過剰な負担を強いるおそれがある、こういう指摘をしているわけですけれども、この条約に加盟した場合、この規定、今申し上げたようなことはどういった形で実施されていくのか、そのあたりについてお願いしたいと思います。

吉良大臣政務官 現場の声として、今委員御指摘のように、オブザーバー乗船を認めた場合に現場の負担が増加すると現場の方が言っておられる以上、そのとおりだというふうに思いますけれども、どういう形でその辺の負担を軽減していくのかを含めて、ちょっと現時点では、今後の対処、検討していきたいということにとどめさせていただきたいと思います。

赤松(正)委員 水産庁長官に今の件についてお伺いしたいと思います。

 当初から、このオブザーバー乗船については日本の事業者にとって大変な負担になるということが想定できたはずだというふうな指摘があります。実際、日本も設立準備会合で、このあたりのことは既に一番最初の時点から懸念を表明したというふうなことも聞いておりますけれども、オブザーバー乗船について緩和を求めるといったふうな負担軽減のための積極的な主張はしてきたのか。今、政務官の話ではその辺を検討したいというようなことでしたけれども、事実関係として、水産庁長官、そのあたりについての発言をお願いします。

町田政府参考人 事実関係について御説明をさせていただきます。

 この南東大西洋漁業条約におきましては、オブザーバーに関する規定が二つございます。一つは、議員御指摘いただきました条約の十四条に規定されます保存管理措置の遵守確保のためのオブザーバー。もう一つは、この条約の附属書に規定されます資源評価に必要なデータ収集のための科学オブザーバー。この二つがございます。

 このうち、保存管理措置の遵守確保のためのオブザーバーにつきましては、この準備会合、設立、条約の設立交渉、これは八回ありましたが、すべて出席しておりますが、アメリカなどは、全船にその乗船を義務づけるべきという主張をいたしました。これに対しまして、我が国やECは、漁船側に過度な負担を強いることがないようにということで、対象魚種の資源状況また漁業種類に応じて、この条約に基づき設置される南東大西洋漁業機関の委員会が乗船の率を決定すべきと主張いたしまして、最終的には我が国などの主張が認められたところでございます。

 また、もう一つの、資源評価に必要な情報収集のための科学オブザーバーにつきましても、条約の設立交渉におきまして、我が国は、本条約が対象といたします魚類、メロ、マルズワイ等でございますが、に関連する漁船のみへの乗船に限定するよう主張いたしまして実現したところでございまして、漁船側に過度な負担を強いることのないよう、そういった観点からこの交渉に臨んできたところでございます。

赤松(正)委員 そういうふうな水産庁の見解でありますけれども、現実には、先ほど来申し上げたようなことで現場における不満があるということで、この問題、今回のこの条約にまつわって少し周辺を聞きますと、やはり、外務省当局とそれから現場の操業に参加している人たちとの間で、さっきも言いましたけれども、若干の食い違いというかそういうものはあるのかなという感じはしますので、ぜひ、外務省そして水産庁、また操業者、連携をしっかり密にとってやっていただきたい、こんなふうに思います。

 一つ確認でありますが、やはり、先般の委員会で分担金の話が出ておりました。三百四十万円について民主党の委員の方は、受益者負担の考え方で業者に分担金を負担させるべき、こういう考え方があってもいいんじゃないのか、そういう仕組みを新しくつくるということが検討されてもいいんじゃないかという発言がありました。

 それに対して武正さんは、機関の運営に係る経費を締約国が支払うということで、責任ある漁業国として協力をしていく責務があるという、ちょっと、ぱっと読むにはわかりづらい答弁でありますが、要するに、受益者は国民であるから、業者に負担させないで、これからも国が分担金を払っていくということに変わりはない、新たな仕組みは必要ない、こういうことだと受けとめてよろしいんでしょうか、確認をしたいと思います。

吉良大臣政務官 委員御指摘のとおり、先日、武正副大臣がお答えいたしましたように、利益は、操業者のみならず、一般消費者に対して水産物の安定供給という形で行き渡るということから、現時点では、国がその支払いもする、負担をするということで考えております。

赤松(正)委員 先ほども小野寺委員から出ていましたクロマグロの話ですが、ICCATで、二〇一〇年の漁獲枠を〇九年比三八・六%削減とすることで合意をしたと。これはモナコの動向がかぎを握っているわけで、大西洋クロマグロをワシントン条約の規制対象として国際的な取引を禁止する提案をして、国際的な働きかけをしているのが背景にある、こういうふうに見られるわけですけれども、外務省としてこのモナコの動きに対してどのような対応をしているのか、その点についてお聞きしたいと思います。

吉良大臣政務官 御指摘どおり、ICCAT年次総会で全会一致で採択された内容として、大西洋クロマグロの保存管理措置の強化ということで合意されておりますので、外務省としましては、関係国の理解を求め働きかけを行っていきながら、引き続き、我が国の主張に対してより多くの国の支持を得るべく努めてまいる考えであります。

赤松(正)委員 何となく頼りなさそうな対応で、大丈夫かなという感じがいたしますけれども。

 水産庁長官、今のクロマグロの問題、仮に大西洋クロマグロがワシントン条約による規制対象になった場合、日本においてのさまざまな国民生活に対する悪影響が想定されますけれども、その辺をどのように分析をしているのか、また、具体的な対応方針というものについて聞かせていただきたいと思います。

町田政府参考人 ただいま政務官からも御答弁ございましたように、私ども、ワシントン条約附属書1への掲載回避、これに今全力を挙げるということは当然で、努力を引き続きしていきたいというふうに思っています。

 仮にというお尋ねでございますので、仮に、この大西洋クロマグロがワシントン条約附属書1に記載されて漁獲が禁止された場合どうなるかということなんでございますが、仮に禁止された場合であっても、我が国の遠洋はえ縄漁船、これは一年じゅう、終年、クロマグロのみを漁獲しているわけではございません。そういったことから、直ちに大西洋において我が国の漁船が操業できなくなるものではないというふうには考えてございますが、経営に与える影響は大きいというふうに見込まれますため、関係業界の意見を伺いながら対応を検討することとなると考えております。

 また、流通、消費面での影響でございますが、輸入も含めました我が国のマグロ全体の供給量は四十三万トンでございます。このうち、クロマグロは四万三千トン、約一〇%でございます。さらに、そのうちの半分、二万トン、五%が対象クロマグロ、こういう位置づけでございます。

 高級マグロと言われておりますクロマグロ、またミナミマグロの在庫水準は、近年、増加傾向で推移しております。本年七月末には二万五千トンということで、過去十年で最も高い水準ということでございます。直ちに日本国内のマグロ全体の需要なり価格に大きな影響を与えることはないと考えておりますが、一方、関係業界の中には中長期的には価格の上昇の要因になるという見方もあるわけでございます。

 こうしたクロマグロの国際的な議論の状況、また、流通、消費面の状況、こういったものにつきましては、これまでも節目ごとに関係団体に丁寧に状況を説明してきたところでございますが、引き続き、そういった説明に心がけてまいりたいと思います。

赤松(正)委員 今、水産庁長官のお話を聞いていてふと思ったので聞くんですが、水産庁長官のお顔を見ていて魚のにおいが全くしない人だなと思ったんです。今まで、さっき言った業者とか、あるいはまた今のマグロの問題について、現場の漁業関係者にお会いになったことはあるんでしょうか。

町田政府参考人 カツオ、マグロ、この近代化協会というものがございまして、若手の経営者から成っている会でございます。ここには、先ほど、小野寺議員の御地元の気仙沼の方もございます。そういった方とお話をいたしまして、昨年、大変な減船をしたわけでございます、八十七隻。

 そういった中で、自分たちはできることをやっていく、例えば、流通、消費面で国産のものをPRする、そういった御意見も伺っておりました。国としてもしっかりそうした取り組みを応援してほしいということで、私は、そういった若手の方の声を聞いて大変勇気づけられて、しっかりやらなくてはと思ったところでございます。

赤松(正)委員 しっかり現場を歩いて掌握をしていただきたいと思います。

 この問題で最後の問題ですが、民主党政権のIUU漁業への対応ということを最後に聞きたいんです。

 民主党の政策集、インデックス二〇〇九の中で、「輸入水産物については、国産と同程度の資源管理を行っているもののみを輸入することにより、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の根絶を図ります。」こういうふうに表現されております。従来、IUU漁業の根絶は日本の基本的な考え方であったわけですが、今表現にあった「国産と同程度の資源管理を行っているもののみを輸入」、こういう輸入を規制するところまで主張してこなかったという経緯があるわけです。

 政権がかわって、過去の野党時代のこうしたインデックスに書かれているような政策を、政権をとられてから実行されるのかどうか。つまり、過剰な輸入制限ということになると、貿易上のさまざまな問題を惹起してくる、多国間の貿易を阻害する、こういうことに対する配慮というか目配りをどのように考えておられるのかを聞きたいと思います。

吉良大臣政務官 委員御指摘のように、民主党の政策集、インデックスでは、「輸入水産物については、国産と同程度の資源管理を行っているもののみを輸入すること」というふうに書いていることは事実でございます。

 現時点では、SEAFOの取り組みもそうなんですけれども、IUU漁業の根絶に向けて積極的に取り組む、そして、この条約でもこのことが今回明記されているわけでありますけれども、関係国と協力しながらIUU漁業の根絶に取り組むというのが現時点の方針であります。

 輸入規制まで踏み込むかどうかにつきましては、まだ検討中であります。ちょっと今現在答えられませんので、また、その辺につきましては後日回答させていただきたいと思います。

赤松(正)委員 まだそこまで頭が回らないということなんだろうなということはよくわかりました。

 最後に大臣に、通告はしておりませんけれども、前回も少し沖縄の問題について、あの時点の現状を聞かせていただきましたが、今の時点で、要するに大臣は、嘉手納統合ということにやはり大きく、大きくという表現は適切じゃないかもしれない、最初のころから今日に至るまでの流れの中で、嘉手納統合についての気持ちというのは変わらない、結論をもちろん出しておられないわけですけれども、この時間的経緯の中で自分の思いは変わらない、こういうふうに受けとめてよろしいんでしょうか。それを確認したい。

岡田国務大臣 先ほども答弁いたしましたように、今行っているのは、なぜ今の案になったのか、そして、ほかの案がどうしてだめだったのかという検証作業であります。その検証の一環として嘉手納統合についても何度かこの間出てきた案でありますので、これは日本側からも米側からも出てきた案でありますので、検証を行っているということであります。

 検証の結果については、現在まだ作業中でありますので、私が今ここで一定の方向性を持って言うことは避けたいと思います。

赤松(正)委員 お気持ちはわかりますが、私、政権交代の意義で、前政権と違うことをやるということについては、この間も冒頭申し上げましたように、それはいいんですが、国内政治と相手のある国際政治とはまた違う。一貫して、その検証作業を今続けているところだ、こうおっしゃるんですが、日にちは着実にたっておりますので、しっかりとした検証作業を早急にやって、結論を一日も早く出していただきたい、このように申し上げさせていただいて、質問を終わります。

鈴木委員長 この際、申し上げます。

 去る二十日に本委員会において承認すべきと決しました三条約につきましては、本日の質疑でいずれも全会派賛成でありました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十一分散会


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