衆議院

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第11号 平成22年4月9日(金曜日)

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平成二十二年四月九日(金曜日)

    午前十時十分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 宗男君

   理事 木内 孝胤君 理事 小宮山泰子君

   理事 空本 誠喜君 理事 中野  譲君

   理事 和田 隆志君 理事 小野寺五典君

   理事 平沢 勝栄君 理事 赤松 正雄君

      打越あかし君    吉良 州司君

      齋藤  勁君    阪口 直人君

      末松 義規君    菅川  洋君

      武正 公一君    中津川博郷君

      中野渡詔子君    西村智奈美君

      萩原  仁君    浜本  宏君

      早川久美子君    平岡 秀夫君

      松宮  勲君    横粂 勝仁君

      岩屋  毅君    北村 茂男君

      高村 正彦君    齋藤  健君

      古川 禎久君    笠井  亮君

      服部 良一君

    …………………………………

   外務大臣         岡田 克也君

   内閣府副大臣       古川 元久君

   外務副大臣        武正 公一君

   外務大臣政務官      吉良 州司君

   外務大臣政務官      西村智奈美君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局次長)     大森 泰人君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 杉江  潤君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     打越あかし君

  早川久美子君     中野渡詔子君

  河井 克行君     北村 茂男君

  河野 太郎君     齋藤  健君

同日

 辞任         補欠選任

  打越あかし君     菅川  洋君

  中野渡詔子君     早川久美子君

  北村 茂男君     河井 克行君

  齋藤  健君     河野 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  菅川  洋君     大山 昌宏君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第五号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とマレイシア政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とルクセンブルグ大公国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第八号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とマレイシア政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とルクセンブルグ大公国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として金融庁証券取引等監視委員会事務局次長大森泰人君、国税庁長官官房審議官杉江潤君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。早川久美子君。

早川委員 おはようございます。民主党の早川久美子でございます。よろしくお願いいたします。

 さて、我が国の経済は、二〇〇八年九月以降に発生をいたしました世界の金融危機を背景に景気低迷が久しく続いておりまして、一部の業界では回復の兆しがあるというものの、多くの国民はそれを実感していないのが現状ではないでしょうか。

 しかしながら、多くの国民の皆様方の期待を背負い、私たち民主党政権が誕生いたしました。不況を克服することはもちろん最重要課題でございまして、そのための第一歩は、財源の確保でございます。事業仕分けによる無駄の削減も必要でございますが、一方で税収の確保も大変重要な課題でございます。

 とりわけ、タックスヘイブンに対する規制強化は、二〇〇九年、昨年の四月に開催されましたG20首脳会談によって、タックスヘイブンを含む非協力的な国・地域に対する措置を実施し、制裁を行う用意もあり、銀行機密の時代は終わったと高らかに宣言をされました。その結果、今回審議にかかっておりますシンガポール、マレーシア、ベルギー及びルクセンブルクはいずれもブラックリストあるいはグレーリストに掲載されるという不名誉な結果を受けて、今回のこの条約改正に至ったものであると理解をいたしております。

 最初に、租税条約全般について御質問をさせていただきたいと思います。

 二重課税の防止の国内法による外国税額控除によって果たし得ると思われますが、なぜ租税条約を締結する必要性があるのか、まずはその必要性と意義についてお尋ねをいたします。

武正副大臣 お答えをいたします。

 今、租税条約は、四十七の租税条約を我が国は締結しておりまして、その適用対象国は五十八カ国でございます。

 我が国の税法では、租税条約の有無にかかわらず、我が国の居住者が外国で所得税または法人税を納付した場合、一定の要件のもとに、その納付分の一定部分を我が国の租税の額から控除することが認められております。しかしながら、国際的な二重課税を排除するためには、このような国内法の規定のみでは十分ではないことから、次のとおり、租税条約を締結する意義がございます。

 まず第一に、企業等の所得に対する課税は、企業の居住地、本店所在地等のみならず、所得の源泉地、投資先の国などでも行われるわけでありますので、両国で居住者の判定基準が異なる場合には、いわゆる双方居住者とされ、両国で居住者として課税される可能性があります。租税条約では、居住者に係る条項において居住者の判定基準を規定し、二重課税の発生を抑制している、これが第一の目的であります。

 第二の目的は、我が国の国内法で我が国に源泉のある所得には外国税額控除を認めないので、仮に同一の所得について、我が国において我が国に源泉のある所得と認定され、他方で外国においてはその国の源泉と認定された場合、同じく二重課税が生じ、かつ救済されない。租税条約では、所得の類型ごと、不動産所得、事業利得などに居住地国課税と源泉地国課税のルールを定めまして、二重課税の発生を抑制しております。

 三点目としましては、ある所得について外国のみに源泉があるとされる場合であっても、我が国の外国税額控除の額は、外国での納税対象の所得、外国を源泉とするものが仮に我が国で課税されたとすれば納税するであろう額を上限としております、所得税法九十五条あるいは法人税法六十九条ということでありますので、相手国の課する税率が我が国の税率より高ければ、二重課税を完全に解消することができない。租税条約では、投資所得について、源泉地国における課税の限度税率または免税を規定することにより、税率の差異による二重課税の発生を抑制しております。

早川委員 ありがとうございます。

 例年、通常国会では二本から三本の租税条約が審議されていると認識をしております。しかし、今回の国会では、今回のシンガポール、マレーシア、ベルギー、ルクセンブルク、また加えてバミューダ、クウェートと、条約だけでも六本提出されております。本国会に提出される条約に占める租税条約の比率が今回は大変高くございますが、その理由をまずはお聞かせいただきたいと思います。

 そして、あわせて、本国会に提出される租税条約は、相手国と地域の税務当局との間の情報交換を主眼としたものが多いと思いますが、その背景もあわせてお聞かせください。

武正副大臣 まず、租税条約の比率が高い理由いかんということでありますが、政府としては、二国間条約の締結、改正に関する交渉が妥結した場合には、その後、可能な限り早期に署名を行い、直近の国会に提出することを基本としております。

 昨年から今回提出の五件、バミューダ、シンガポール、マレーシア、ベルギー及びルクセンブルクのように、特に情報交換に主眼を置いた条約の締結または改正に係る交渉が急速に進展をしております。

 その背景は、先ほど委員が御指摘になりましたように、昨年四月二日、G20の首脳宣言でタックスヘイブンの回避と、それから、租税条約に関する政策の見直しについても、同日に、金融システムの強化に関する宣言、首脳宣言附属文書ということで発出をされたというのが背景にある。こうした金融危機に端を発する世界経済減速の中で、租税に関する透明性の向上を目指す国際的な機運が高まったことがあります。

 こうした背景を踏まえまして、今後も租税条約の新規締結または改正に取り組みつつ、特に租税に関する透明性の確保に消極的と見られる国・地域との情報交換の枠組みの新設、強化にも努めていく考えであります。

 二点目の御質問で、特に今回の改正等の及ぼす影響ということでありますが、租税条約は、国境を越える経済活動に関する課税権を調整することにより、二重課税の回避、脱税の防止を目的としております。

 その締結の結果として税収に及ぼす影響の有無や、その内容を具体的に示すことは困難でありますが、いずれにせよ、今国会で承認をお願いしている租税条約の新規締結または改正は、我が国の税収の増減等に対処することを目的としたものではなく、両国間での二重課税の排除、両国間の投資交流の促進、国際的脱税及び租税回避の防止等を目指したものでありまして、こうした取り組みが我が国経済社会の活性化、両国間の経済交流の促進または公正な課税の確保に資することを期待しております。

早川委員 年に三回の締結にとどまらず、今回の通常国会のように、今後も国会への提出本数をふやしていただきたいと要望をさせていただきます。

 次に、今般の租税条約の新規締結または改正が我が国の税収に対して及ぼす影響をお聞かせいただきたいと思います。

 また、我が国の財源の確保という観点から租税条約の締結、改正を進めていくことはできるのかどうか、お聞かせください。

武正副大臣 今の御質問でございますが、先ほどお答えしたとおりでございまして、具体的にどのぐらい税収がふえるのかということを明示的にお示しすることは困難でありますけれども、こうしたことを取り組むことによって公正な課税の確保に資することを期待しております。

早川委員 済みません、あわせて答弁いただきまして、ありがとうございます。

 租税条約の締結や改正によって我が国の税収がふえるとか減るとかということ、それを判断しづらいということは、今の御答弁で理解をいたしました。ただ、租税条約を締結または改正することによって我が国と相手国のさらなる投資交流や経済交流が活発になった、その結果、我が国の税収の増加をもたらすことになるということを期待しているところでございます。

 先ほど御答弁いただきましたとおり、我が国はこれまで五十八カ国との間で租税条約を締結しているとのことですが、アフリカや中南米といったいわゆる開発途上国との間では、条約が締結できていない国も多くあるようです。そういった国との間でも租税条約の締結に努めていただきたいと思いますが、この辺、いかがでしょうか。

武正副大臣 今、アフリカとは二カ国、中南米も二カ国ということになっておりまして、やはり、新興国のみならず、そうした両地域のみならず、これから日本との経済的な連携あるいは貿易・投資その他、より活発化するであろう地域でありますので、今御指摘のそうした地域との条約交渉、これも今進めているところの国もございますが、さらにそうしたものを取り組んでいきたいというふうに思っております。

早川委員 ありがとうございます。

 経済取引がグローバル化をしている現在において、外国における情報を適切に利用することにより、各国税務当局は適切な課税が実現できることになります。その意味で、租税条約に基づく情報交換はますます重要となってきておりますが、今回対象となっておりますシンガポール、マレーシア、ベルギー及びルクセンブルクとの各租税条約改正議定書では、情報交換規定に関しまして、具体的にどのような点が改正をされて、またその効果の見込まれるのはどういう点なのか、また今回、改正の意義は何なのかということをお聞かせください。

武正副大臣 お答えいたします。

 今回の四条約の改正に共通する改正点は以下のとおりでありまして、まずは、情報交換の対象となる租税を、条約の対象税目に限らず、すべての種類の租税に拡大をした点であります。

 二点目といたしましては、情報の提供を要請する場合には、当該相手国が課税目的がない場合でも情報を入手できる、そうしたことが今回盛り込まれております。自己の課税目的がないことのみを理由に情報提供を拒否することはできないという規定が盛り込まれていることでございます。

 また、三点目として、一方の締約国は、銀行等が有する情報であっても、今まで、どちらかというと銀行の情報は開示されないようなこともあったということを聞いておりますけれども、それを理由に情報提供を拒否することはできないという規定が追加されております。

 こうした結果、我が国の居住者が相手国内の銀行に預金を有していると疑われる場合に、当該居住者の所得税額の決定のために、相手国内にあるこの者の銀行口座の有無及び預金残高について情報を得ることができるようになりまして、脱税や租税回避行為を一層効果的に防止することが期待されております。

早川委員 シンガポール、マレーシア、ベルギー及びルクセンブルクとの各租税条約改正議定書では、情報交換の対象は条約の対象となる税目に限定されないことが新たに規定されます。従来、情報交換の対象となっていなかった税目の情報交換も可能となってまいりました。

 先ほどお答えをいただいたこととちょっと重複してしまうのかもしれませんが、改めてお聞きします。今後、どのような税目の情報交換が想定されているのか、お聞かせください。

武正副大臣 お答えいたします。

 今回の改正によりまして情報交換の対象をすべての種類の租税に拡大したことは先ほど申し述べたとおりでありまして、具体的に申し述べれば、シンガポールにおいては、これまでは、日本においては所得税、法人税及び住民税、シンガポールにおいては所得税が協定の対象税目となっておりました。それが今回の改正によって、すべての税目、例えば相続税や贈与税にも拡大することになります。

 対象税目の拡大によりまして、これまで所得税等のみを対象とする情報交換では捕捉できなかった経済活動や資金移動についても相手国から情報を得ることが可能となりまして、脱税及び租税回避行為の防止に資することが期待されております。

早川委員 対象税目の拡大に伴い、具体的なメリット、今お聞かせをいただきました。

 最新のOECDモデル租税条約の情報交換規定に準拠していない、アメリカ、インド、韓国などの租税条約では、同様の規定は盛り込まれておらず、対象税目が限定されておりますが、これらの租税条約について改正を行う予定があるのか、お聞かせください。

武正副大臣 お答えいたします。

 現行のOECDモデル条約と同様の情報交換規定を設けた例として五件ありまして、日英、日仏、日豪、日・ブルネイ、日・カザフスタンということで、二〇〇六年から五件、こうした情報交換規定を設けた例がございます。

 今御指摘の米国、インド、韓国ということでありますけれども、このOECDモデル条約の情報交換規定、二〇〇五年に改定されたものでありまして、それ以降のさっきの五件はそれが含まれている。それ以外の条約について、現在のところ、条約の規定ゆえに情報交換が実質的に阻害されている例は特段ないということでありますので、情報交換規定に限って急ぎ改正を要するようなものは見当たらないということですから、先ほどの三カ国についても同様ということであります。日米は二〇〇四年、日印は二〇〇六年、日韓租税条約については一九九九年、それぞれ現行条約または改正議定書が締結されておりますが、直ちに改正を行わなければならないとは認識していないということであります。

 いずれにせよ、国際的な脱税及び租税回避行為を防止するためには、租税に関する実効的な情報交換ネットワークを整備拡充することが重要でありまして、今後とも、必要に応じて、より広い範囲にわたる改正を行う機会に今回の四件と同様の改正を行うことを、可能性も含めまして、適切に対応していく考えであります。

早川委員 ありがとうございます。

 今までの御答弁で、これまで、シンガポール、マレーシア、ベルギー及びルクセンブルクとの間では、所得に対する租税についてのみ情報交換をしていただきましたが、今後は、相続税などほかの税目についても情報交換をしていただけるということで、今まで摘発されてこなかった形態の脱税または租税回避行為の摘発につながっていくと期待をいたしております。

 また、今回の条約の締結、改正により、脱税防止のための法制度が充実することになりますので、これを機に、課税当局は納税者のコンプライアンスを一層図っていただいて、努めていただければと思います。

 次に、我が国は、香港の行政当局との間で、課税権の調整や税に関する情報交換を目的とした租税協定の締結に向けた交渉を行い、ことしの三月に基本合意に至りました。香港は、配当所得が原則非課税であるなどと、従来から税率が低いのですが、日・香港租税協定の締結により、香港に進出をする日本企業にとって具体的なメリットはどこにあるのか、お聞かせください。

武正副大臣 お答えいたします。

 香港との租税協定については、先月末に基本合意に達したところでございます。

 香港の税率は一般に低いとされておりますが、我が国進出企業において、依然として、課税の対象となる居住者の判定基準や所得の源泉地の認定方式の違いにより二重課税が発生する場合があります。今回の基本合意では、所得の類型ごとに、居住地における課税と源泉地における課税を調整するためのルールを定めることで一致をしました。この協定の締結により、二重課税の発生を抑制することが可能となっております。

 参考に、御案内のように、香港の法人税率は一六・五%、我が国は原則三〇%ということでございます。

早川委員 タックスヘイブンと目されている香港との間の租税協定については、税に関する情報交換を実務的なものとすることが大変重要であると思っております。日・香港租税協定には、具体的にどのような内容の情報交換規定が組まれているのか。そしてまた、香港との租税協定の締結については、我が国の産業界から強い要望が出て、これで今回の基本合意に至っております。このほか、どのような国と租税条約締結のために交渉を行っているのでしょうか。

武正副大臣 お答えいたします。

 今回の基本合意では、課税当局間において、国際標準に沿った形で租税に関する法令執行に関する情報交換の内容の規定を設けることで一致しております。この協定を締結することにより、租税に関する国際標準に基づく課税当局間の実効的な情報交換が可能となりまして、先ほど触れましたG20などで重要性が確認されている国際的な脱税及び租税回避行為の防止に資するものと期待されております。

 二点目の御質問でありますが、現在、我が国は、スイス及びオランダとの間で既存の租税条約の改正交渉を行っております。また、アラブ首長国連邦、サウジアラビアまた香港との間で新規締結交渉を行っているところであります。このうち、サウジアラビア及びスイスとの間では平成二十一年六月に、オランダとの間では同年十二月に、先ほど触れましたように香港との間では三月に基本合意に達しておりまして、今、署名に向けた手続を進めております。

早川委員 今御答弁ありましたように、国策として、金融サービス業に重点を置いて、銀行の顧客情報を守るスイス、オランダとの租税条約の改正について基本合意に至ったという御答弁がございました。これはいつ署名を行う御予定があるのか、できる範囲でお聞かせください。

武正副大臣 お答えいたします。

 スイスとの間では昨年六月、オランダとの間では昨年十二月に既存の租税条約の改正について基本合意に達しておりまして、両条約については、現在、条約の署名に向けて我が国と相手国との間で国内手続を進めているところでありまして、できるだけ早期に署名したいと考えております。

早川委員 報道によりますと、日本、アメリカ、ヨーロッパなどの各国政府は、タックスヘイブンを通じた国際的な租税回避及び脱税を交互に監視する方針を定めてまいりました。OECD加盟国と非加盟国の対話の場でございますグローバルフォーラムを拡大して、監視を担う組織を設立して、二〇一〇年、ことしの三月から各国の銀行の顧客情報開示の状況などについて調査を始めることになっております。この進捗状況をお尋ねしたいということと、また、日本はこの取り組みに具体的にどのようにかかわっているのか、お聞かせください。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 いわゆるタックスヘイブン等を利用いたしました国際的な租税回避行為は、御案内のとおり、課税ベースの侵食等の問題を引き起こすものでございます。したがいまして、いかにして国際的な協調をしていくかということが肝要であろうかと承知をいたしております。

 今委員御指摘のグローバルフォーラムにつきましては、既に報道等ございますけれども、実は、みそは、OECDに加盟していない非加盟国もこのグローバルフォーラムには入っているということで、互いに監視し合う、互いにチェックし合うということで、まさにピアレビュー、お互いにということになっております。

 こうしたすべての国・地域における、このグローバルフォーラムによりまして、情報交換の国際基準の実施を目指して、現在、各国・地域の情報交換に関します国内法制さらにはその執行について随時ピアレビューをしていくということになっております。本年三月から本格的な作業に入りまして、二〇一四年前半をめどに作業を完了する予定でございます。

 我が国といたしましても、これまでフォーラムの運営に積極的に関与をいたしておりまして、実は共同副議長も務めておりまして、このグローバルフォーラムへの貢献を通じまして、さらに租税回避防止に向けた国際的な取り組みに積極的に協力してまいる、このように考えております。

早川委員 さらに我が国も積極的に取り組んでいただきたいと思っております。

 最近では、国際的な課税問題のすそ野がどんどん広がってきておりまして、例えば大企業や海外の子会社といった法人のみならず、個人の富裕層にも広がってきております。

 我が国の主要な国税局においては、国際化対応プロジェクトチームを立ち上げまして、租税回避スキームの把握や実態解明に努めるとともに、海外金融資産の保有に関する調査に乗り出しているということでございますが、このプロジェクトチームは具体的にどのような実績を上げているのか、お聞かせください。

古本大臣政務官 実は、日本の国税庁には、東京国税局に三十二名、大阪国税局十七名、名古屋局十名、関東信越局三名、合計六十二名の体制で、平成十四年から立ち上げまして、現在、専門的にこのボーダーレスの租税回避に向けて対応していく体制を整えております。

 例えば、過般、新聞等でも報道になりましたが、スイス系の金融機関大手の日本法人の社員の方々が、これは例えば朝日新聞の報道によれば、海外口座ならばれぬとのことで自社株のストックオプションの、キャッシュアウトをしたのかどうか事実関係はわかりませんが、その海外にあった口座をばれぬならいいというようなことでやった百名余りの方のいわゆる脱税事案、申告漏れ事案というのがありました。

 このような案件につきましても、東京局を中心に陣頭指揮をとって事件の端緒に当たった等々のことも現在鋭意努めておりますが、何分、ボーダーレスの案件は、相手も見えない部分がございまして、さらに税務当局の、この分野につきまして、個人や企業の国境を越えた多様な経済行動を、これは各国の税制の差異や租税条約の違いなどを巧みに利用してくるわけでありますので、国際的な租税回避をいかに抑えていくか、こういうことだと思っております。

 海外に多額の金融資産を保有している方に係る情報の収集、国外送金等の調書などの各種情報の分析、検討等を行ってまいりますが、御案内のとおり、百万円を超える送金の場合は情報が入ってまいりますので、そういった調書を端緒にしたり、あるいは互いに情報を受け取る、租税条約をまさに結べば自動的に入ってくる情報もございます。そういったあらゆるものを総動員して公平な課税に努めてまいる、こういうことでございます。

早川委員 国際ビジネスの実態を適切につかんでそこで課税をするというのは大変御苦労なことでございますけれども、我が国の税収の確保、適正、公正な課税の実現のために引き続き御尽力をいただきたいと思います。

 続きまして、ベルギーのレテルメ首相が先日来日をいたしまして、七日、鳩山総理との間で首脳会談を行われました。鳩山総理から、EUとのEPAが必要と考えており、四月末に日・EU定期首脳協議の場で日・EU・EPA締結に向けて第一歩を踏み出したいと述べられました。

 EU側にしてみれば、日本側には非関税障壁が多いということから、日本とEPAを締結しても、実質的に日本にEU企業が参入することが困難であるということを理由に、この交渉を進めることに大変消極的だという報道もされております。

 日・EU・EPA締結に向けた第一歩を踏み出すために、どのような戦略で取り組んでいくのか、お聞かせください。

岡田国務大臣 EPAの問題でありますが、まず、鳩山内閣として、戦略的に各国・地域とのEPA締結ということに取り組んでいるところでございます。

 当初はなるべくやりやすいところからということで進んできた感がなきにしもあらずでありますが、やはり、今おっしゃったEU、それから韓国、インド、豪州、そういった国々との締結を急ぎたいというふうに考えております。そのほかにも、G20を構成するブラジルとか南アとかそういった国もこれから非常に重要になるだろうというふうに思っております。

 そういう中で、EUとのEPAでありますが、今月末に予定される日・EU首脳会談、東京で行われますが、その場で第一歩を踏み出したい、もしでき得れば共同研究を立ち上げるというところに持っていきたいと思いまして、総理も首相と会われたんですが、私もEUの外相と二日前に会いまして、そのほかフランスとかドイツとか、関係外相とそれぞれこの件について議論をしてきているところであります。

 彼らにとってもメリットがなければならないということで、そういった非関税障壁と言われるものについて、我々の考え方も示して、とにかく共同研究をスタートさせるということにぜひ持っていきたいというふうに考えております。

 韓国は、既に締結をいたしました。例えば、自動車や薄型テレビの関税は、EUは一〇%とか一五%であります。韓国にはそういうものがなくなります。日本は依然としてそれが残るということで、そういう観点からもぜひ締結を行っていきたいというふうに考えているところであります。

早川委員 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、服部良一君。

服部委員 皆さん、おはようございます。

 条約の質疑に入ります前に、きょうの産経新聞を見てちょっとびっくりしましたので、まず、この産経新聞の記事に関しまして、大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 いろいろな報道があるので真実かどうかよくわかりませんけれども、「ホワイトビーチ案断念」ということで、一面トップで産経が報じているわけです。我々も外務委員会として視察でうるま市を訪問したばかりでもありますので、大変重要なニュースだというふうに思います。

 これによりますと、「米軍ホワイトビーチ沖に人工島を建造する計画を断念したことが八日」、ですから昨日ですね、「分かった。」というふうに報道しておるわけなんですけれども、これは事実なんでしょうか。

岡田国務大臣 報道の自由はありますからいろいろ報道されるんだと思いますが、そもそも、何度も御説明しておりますように、今、具体的な案ということを外に向かって我々は言っておりません。関係五閣僚で共通の認識に立ったものはありますが、それが何であるかということは言っておりません。言っておりませんので、仮定に基づく、それが今度は断念ということもあり得ないわけでございまして、これは報道は報道としてお受け取りいただければ結構だと思います。我々は、全くそういったことはコメントいたしません。

服部委員 まだ正式な政府案という形にはなっていないのに政府がこれを否定したというのも確かにおかしな報道ではあるんですけれども、この報道を見ますと、四月二日の沖縄関係閣僚の協議の中で、アメリカ側が、先日私も質問させていただきましたけれども、「「政治的に海兵隊の駐留が持続可能な案」との条件に合致しないと判断。建設に十五〜二十年を要し、費用が一兆円にのぼるとの試算もあることから、二日の首相と平野、岡田両氏ら関係閣僚の協議で「長期的な検討課題」にすぎないと結論づけ、米側にも伝達した。」こういうふうな報道になっているわけですけれども、可能な限り何かつけ加えてしゃべっていただけることはないでしょうか。

岡田国務大臣 ここに私の名前も登場いたしますので、「二日の首相と平野、岡田両氏ら関係閣僚の協議で「長期的な検討課題」にすぎないと結論づけ、米側にも伝達した。」、全くこういう事実はございません。

服部委員 去る四月七日の当委員会で普天間の質疑を大臣とやらせていただきまして、その中で、政権与党として自覚を期待というところだけを切り取られてNHKとかマスコミ等でちょっと報道されてしまいました。

 社民党は、三月八日に平野官房長官に、普天間基地の移設に関して与党として責任ある提案をさせていただいておるつもりでして、沖縄関係閣僚会議として当然情報は共有化していただいているというふうに思いますけれども、ぜひともまた大臣におきましてもお目通しいただき、御検討をお願いしたいなというふうに存じます。

 去る四月一日の毎日の一面で、アメリカの太平洋海兵隊キース司令官と防衛省幹部の会合がアメリカ大使館で行われたという記事がございます。その中で、キース司令官は、在日米海兵隊の任務について、もはや南北の衝突より金正日体制の崩壊の可能性が高い、そのとき、北朝鮮の核兵器を速やかに除去するのが最重要任務だというふうに語ったと報道されております。もしそれが本当ならば、海兵隊は何も沖縄に置く必要はないな、もっと即応態勢に発揮できるところがあるのではないかという感想を実は持ったわけです。

 社民党は、普天間基地につきましては、国外、最低でも県外という鳩山首相の思いに忠実に百数十ページにわたって具体的な提案をさせていただいておりますので、どうぞまた政府におきましても御検討を賜りたいということを一言申し上げておきたいと思います。

 その上で、今回の条約の質問をさせていただきますが、今回の条約の改正は二重課税の回避と脱税の防止ということが主目的ということなんですけれども、基本的にはどちらに重きを置いておられるんでしょうか。

武正副大臣 服部委員にお答えをいたします。

 先ほども触れましたが、G20の首脳宣言、昨年四月二日でございますが、その抜粋でありますけれども読み上げますと、「タックス・ヘイブンを含む非協力的な国・地域に対する措置を実施する。我々は、財政及び金融システムを保護するために制裁を行う用意がある。銀行機密の時代は終わった。我々は、税に関する情報交換の国際基準に反しているとグローバル・フォーラムによって評価された国のリストを本日OECDが発表したことに留意する。」ということでありまして、今般の改正、そのOECDの昨年四月二日のリストの中に盛り込まれておりました四カ国の四条約、情報交換規定の改正ということでありますので、租税に関する情報交換を拡充強化することによって、やはり脱税及び租税回避行為を効果的に防止することを目的としております。

服部委員 そうしますと、今回の改正のポイントといいますか、これは要するに、OECD標準の情報交換規定に改正するという点が一点と、それから、対象税の幅を今まで法人税とか所得税に限定していたものを広げる、この二つが大きな主目的というふうに理解してよろしいんですね。

武正副大臣 お答えいたします。

 あわせて、先ほど触れましたように、これまで銀行等の情報についてなかなか見られなかったというようなところは、それが開示されるということでございます。

服部委員 一部の裕福な組織、個人がタックスヘイブンを利用して課税を逃れているという事態があるわけですけれども、我が国の税収確保の必要性からも、あるいは社会における公平性の確保という観点からも、ぜひとも対策が必要なわけですけれども、現在タックスヘイブンに預けられている日本での課税対象となる資産総額の規模あるいは推定される脱税額の総額というのはわかるんでしょうか。

古本大臣政務官 お答えします。

 残念ながら、課税対象となる資産総額、脱税額については、現在のところ、把握は困難でございます。だからこそ、いわば租税回避されているわけでありまして、ぜひ、条約改定によりまして二十六条の情報交換規定の強化並びにさらなる各国の情報の共有が肝要かと承知をいたしております。

服部委員 衆議院の調査局の資料をちょっと読ませていただいたんですけれども、この十四ページに、「報道によると、二〇〇五年時点の推定ではタックス・ヘイブンに預けられている資産は総額十一兆五千億ドル、脱税額は年間二千五百五十億ドルにのぼるといわれる。」と。これは当然世界全体の数字ということなんですけれども、日本は経済大国という面もありまして、この中で、推定でもいいんですけれども、日本関連というのはどれぐらいあるものなんでしょうか。

古本大臣政務官 お答えします。

 衆議院の資料にはそのように記載がございますが、当局といたしましては把握していないというのが答えでございます。

 さりとて、新聞報道によれば、例えばでありますが、これは日経の平成二十二年二月二十六日付でありますが、民間調査機関によると、タックスヘイブンには年間で約四百五十兆から六百三十兆円の資金が流入、このうち三十兆円程度が税を逃れようと集まっているとされ、日本も七千億円程度に上るという民間調査機関の紹介等はございますが、このことについて、当局としてコミットするだけの情報は把握していないということでございます。

服部委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、こういった金融取引あるいはそういったものを通じた脱税というものが非常に問題であると思いますし、また、そういう背景の中でアメリカの金融危機、その崩壊、そういったものがあって、我々が本当にこつこつと物を生産し価値を生み出していく、そういう本来の経済活動と全然違うさまざまな経済活動の中でこういった脱税が行われている、こういったことに対するさまざまな規制を今後とも強力にやっていただきたいなというふうに思います。

 また、今回の改正等によって情報交換の対象となる税種を拡大するということなんですけれども、そのことによって新たな対象となる税収というものは想定されるんでしょうか。

武正副大臣 先ほども申し上げましたように、具体的に税収額が幾らになるかということは、ここでなかなかお答えが難しいというところでございます。

 ただ、先ほども触れましたように、さまざまなお互いの情報交換によって、所得あるいは資産、さまざまな経済状況についての透明性の確保といったところから今委員御指摘の点についても効果が期待をされるというところだと思います。

服部委員 次に、今回の情報の問題ですけれども、情報交換によって受領する情報というのは、非常に高いレベルのプライバシー情報だというふうに思います。プライバシー保護の観点からも、漏えい等のないように十分な措置が必要であるというふうに思いますけれども、それはどのように担保されるというふうに理解したらよろしいでしょうか。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘のとおり、租税条約に基づきまして、当局間で情報交換を行います。そうなりますと、やがて納税者の秘密にかかわる情報を当然取り扱うことになりますので、納税者の皆様との信頼関係の維持という観点は大変重要になろうかと思います。

 租税条約の情報交換規定は、我が国が受領いたしました情報が我が国の国内法により入手した情報と同様に秘密として取り扱われることを定めております。加えまして、我が国の国内法でも、税務職員の守秘義務違反に対しましては、かねてより国家公務員の規定よりも厳しい罰則を設けておりまして、当然に、外国当局から受領いたしました情報も含めまして、納税者の方々の秘密保持の厳格化には努めてまいりたいというふうに思います。

 御案内のとおり、一般の公務員の守秘義務違反の場合は懲役一年、罰金五十万でありますけれども、税務職員の場合の守秘義務違反は同二年、同百万円ということになっております。今回の法改正でもこれを織り込んでございます。

服部委員 ありがとうございました。

 続きまして、人種差別撤廃委員会による対日審査勧告の公表が三月十六日に行われました。二月二十四、五に行われました人種差別撤廃条約の政府報告の審査を経て、国連人種差別撤廃委員会による総括所見が三月十六日付で公表をされたわけです。

 その公表文を見ますと、大変多岐にわたり、約二十九項目にわたって日本の人権状況に対する懸念と勧告ということが指摘をされているわけですけれども、外務省としてはこの勧告をどのように受けとめておられるでしょうか。

    〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕

武正副大臣 お答えをいたします。

 政府としては、先般の人種差別撤廃委員会による我が国政府報告審査において、条約の実施状況について誠意を持って説明し、委員会からも一定の評価をいただいたと理解しております。

 今般公表された最終見解の中に、肯定的な側面とともに、多岐にわたる事項について懸念事項及び勧告が含まれております。この最終見解は法的拘束力を有するものではありませんが、いずれにせよ、今回示された委員会の最終見解については、関係省庁とも内容を十分検討の上、政府として適切に対処していきたいと考えております。

服部委員 適切に対処していかれるということで、よろしくお願いをしたいと思うんですけれども、この中には、人権の保護に関する法案を採択して、パリ原則にのっとった独立した人権機関を設置することであるとか、あるいは人種優越や憎悪発言の流布を禁止することに対する法的な措置をすること等も含めて勧告がされております。

 今回の審査は、国連の条約機関による、政権交代後初めての対日審査というふうになりました。日本政府が締結している国際人権条約の条約機関からの諸勧告を新政権としてはどのように今、実施していく考えか。もう一歩何か踏み込んだ御見解があればお聞きできればと思いますけれども。

武正副大臣 お答えいたします。

 先ほどお答えしたように、委員会が採択する最終見解は法的拘束力を有するものでないわけでありますが、国会での御議論、関係団体の意見も踏まえつつ、また人権外交という点も、やはりこの委員会などでも、これまでも政府としてもその取り組みについて触れてまいりましたので、先ほど触れましたように、関係省庁とも十分検討の上、政府として適切に対処をしてまいりたいというふうに思います。

    〔小宮山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

服部委員 ありがとうございます。ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。

 時間が中途半端になってしまいましたけれども、先日の密約に関する質問の中でできなかった点がありますので、追加で質問をさせていただきたいんです。

 先日の参考人質疑の中で、四件の密約以外に、砂川事件の密約等々、委員の方からも参考人の方からも指摘がございました。

 まず、砂川事件の密約については、先日、情報開示がされました。それから、米兵犯罪の第一次裁判権を放棄する密約については、これは前回、副大臣の方でその存在を認めるということでした。それ以外に、前回指摘されました、原子力艦船が日本に寄港した場合の空中サンプリング調査に関する密約、それから、核の貯蔵について米国が申し入れてきた場合に好意的に回答するとした密約、それから、基地権を旧安保条約下と同様に続けるとした行政協定第三条における基地の権利に関する密約、それから、旧安保条約の当時、旧行政協定の二十四条に関連して、有事の際に日米が共同作戦を行い、その際に米軍の指揮下に自衛隊が入るとした密約があるということが、前回の当委員会で指摘をされておるわけです。

 これらの密約については、外務省としては認識をされているでしょうか。

岡田国務大臣 まず、委員御指摘の中で、砂川事件に関する日米間での問題であります。当時の外務大臣と米国側とで意見交換が行われたということについては、もちろん、情報公開法規に基づいて四月二日に開示したわけでありますが、その前に、三月九日に関連の情報を開示しておりまして、その中に既に含まれていたものであります。改めて四月二日に同じものを開示したということでございます。

 それから、それ以外のことについては、いろいろ御指摘いただきましたが、なかなか根拠がはっきりしないものがあります。

 まず、空中サンプリング調査に関する、これを密約と言うのかどうか、これにつきましては、米原子力艦船が日本に寄港する際に、日本政府は同艦船から五十メートル以内で空中サンプリングを行わないという合意が一九七一年になされたのではないかという御指摘があることは、承知をしております。本件については、関係のファイルを探しましたが、そうした合意に該当する文書は確認できませんでした。いずれにしても、本件について、適切な形で今後説明責任を果たしていくよう努力をしたいというふうに考えております。

 いずれにしても、現在、寄港中の原子力艦船から五十メートル以内で空中サンプリングを行うこともございますので、御指摘のことが、現在もそういうことが行われているのではないかという御懸念であれば、そういうことはないということでございます。

 その他、いろいろ御指摘いただきましたことについては、必ずしも根拠が判然といたしません。もう少し具体化していただければ資料を探してみるということもできるかもしれませんが、どういう根拠でおっしゃったのかということをもう少し明確にしていただく、特定していただく必要があるのではないか。

 いろいろな御指摘がありますが、我々としては、三十年たったものは原則公開する、そういう考え方に基づいてこれから順次公開をしていく予定であります。

 公開の仕方として、なるべく御関心の高いところから公開していくということも当然念頭に置きますが、個別の公開作業ということをやっていきますと全体の公開作業におくれが出るということもありますので、よほど具体的にお話しされたものはそれは特別扱いで探す努力をしたいと思いますが、基本的には、やはり大きな固まりで、より関心の高いものから順次公開していくというやり方がいいのではないかと私は思っております。

服部委員 引き続き、外務省として、この密約問題の解明に努力をしていただきますようにお願いをいたしまして、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 租税四条約につきまして質問をさせていただきますが、その前に、昨日、一部報道で明らかになりました、十二日に開催します核安全保障サミットで、鳩山首相とオバマ大統領との公式首脳会談が見送られることになったということがございました。

 考えてみますと、前回、気候変動のCOP15におきましても、実は日米首脳会談の見送りということが、これは二度までも行われております。大変異常な事態だと思っています。さらに、私どもが懸念を思いますのは、オバマ大統領は、二日間のサミットの間に、中国、インド、ドイツ、パキスタン、マレーシアなど九カ国の首脳と二国間会談を行う、日本が外されている。

 このような状況について、なぜこうなっているのか、そしてこれが日米外交に与える影響について、お伺いしたいと思います。

岡田国務大臣 限られた時間の中で、どういう形で二国間会談を行っていくかというのは、一つの判断の問題であります。余り、日米間がないからといって、それがさも大変なことのように考える必要はない、もう少し堂々としていればいいというふうに私は思っております。

 現に私は、外務大臣として、先般、国務長官や国防長官と意見交換を行いました。そういうことも含めて、米側として、今、優先順位をつけるとしたらどうかということで判断をされたものだというふうに考えております。それを異常事態と言われることの感覚が、私はよくわかりません。もちろん二国間首脳会談は数多く行った方がいいということは事実ですが、限られた時間の中で、これからも機会はありますから、そういったことで今回は見送られたというふうに思っております。

 しかし、何らかの形で両国首脳が意見を交わす、そういう機会は確保されるものというふうに考えております。

小野寺委員 今、外務大臣は、優先順位を考えて米国が判断をしたというふうにお話をされました。ということは、日本は、少なくとも、中国、インド、ドイツ、パキスタン、マレーシアなど九カ国よりも優先順位が低いというふうにアメリカが判断したから、今回、日本の申し出を断ったということだと思います。

 今回、基地問題を含め、今、日米関係が大変大きな転換期に来ています。また、これはかなり外務大臣も熱心に頑張っていらっしゃいますが、今回のNPRの政策につきましても、実はNPRの政策が発表されるということは、日本の安全保障上大きな転換期、問題にもなる可能性がある。そのようなタイミングの中で、日米安保の、日米の会談が見送られるということは、だれが考えても異常事態。私も外務省で仕事をさせていただきましたが、基本的にこんなことは今までありませんでした。

 大臣の認識がちょっと甘いんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 小野寺さんもわかっていて言っておられるんだと思います、外務省で仕事をされたことがあるわけですから、それなりの判断をしておられるんだと思いますが、まず、先ほど言われましたけれども、日米間というのがほかの二国間をやる国と比べて何かグレードが低いかのような言い方をされましたが、それは、今回、具体的な課題ということで見て、日米間で首脳が会って議論をするというものがほかの国と比べて優先度が低いということであって、別に日米両国間の関係が低いということではありません。そこは若干誤解を招きかねない御発言だったと私は思います。

 そして、今、日米間で考えたときに、大きな課題というのは、もちろん普天間の基地の問題があります。しかし、これはまだ首脳間で議論する、そういう状態でないということは、私は何度も申し上げているところであります。外相間でも突っ込んだ議論をする段階ではございません。

 そのことを考えたときに、その他の課題で今、日米間で急いで議論をしなければいけない大きなことが幾つあるかということを考えて、今回は見送ったということ。それはアメリカの判断だと思います。

 NPRについて、いろいろ御心配もいただきました。

 NPRについて、これが発表される以前、私もかなり意見交換をしておりますし、日米両国間で核政策をめぐるさまざまな問題については深い議論をしておりますので、何ら御心配をいただく必要はございません。

小野寺委員 租税四条約を質問したいと思ってやっているんですが、大臣の答弁が、やはりちょっと気にかかることがございます。

 今、大臣の答弁の中で、日米間、普天間を含めた基地の問題に関して、まだ外務大臣としても突っ込んだ話をしている状況ではないというお話をされました。五月末までに決着するということを総理も何度もお話しされたわけですから、私どもは、少なくともこの時点では外務大臣は突っ込んだ議論をしていただきたい、そう思っておりますので、その点に関しては、私が誤解だったということを後で説明していただければと思います。

 それでは、租税四条約に入りたいと思います。

 租税四条約の中で、私が、この目的ということで、確かにそれは大切だなと。先ほど来ありますが、例えば一部の富裕層、お金を持っている人とか企業とか、そういう方が税逃れをする、これが国と国とがまたがるということでこの租税四条約を結ぶということ、私は大切なことだと思います。ただ、鳩山政権からこのような租税四条約が出てくるというのは、ちょっと何となくブラックジョークかなと思う方もたくさんいらっしゃると思います。そのことを踏まえて、条約について質問をしたいと思います。

 先ほど来、どのぐらいの国がどのぐらい抜けているかというお話がございました。質問で実は財務省に聞こうと思いましたが、既に答弁がありましたので、それはちょっと抜かしたいと思うんです。

 きょうお配りした資料がございます。「我が国の対外直接投資」というのが上の方、そして下の方には「税に関する情報交換のOECD基準の実施状況」ということ。下の方の国が、例えば下の方を見ますと、コスタリカ、ウルグアイ、フィリピン、それからマレーシアのラブアン島というのでしょうか、これがいわゆるブラックリストの国。そして、グレーリストは上にある国。

 ですから、今回の四条約を結ぶということで、この中の例えば、ブラックリストのマレーシア、そしてグレーリストのベルギー、シンガポールが入っている、これはそうだなと思います。さらにまだこれだけ実はグレーリスト、ブラックリストがある、これをいち早く埋めなきゃいけないというふうに思うんです。

 上の方の「我が国の対外直接投資」というところを見ていただきたいと思います。

 私も、この数字を見てちょっと違和感を覚えました。アメリカが多分一番多いだろうな、そして次はEUの国、イギリスなのかオランダなのかな、その次、もしかしたらそれに並ぶか上に多分、中国が来るんだろうな、何となくこういう実感を持っていたのですが、この数字を見ると、ケイマン諸島というのが実は第三位に来ています。私どもの近くに、ケイマン諸島出身の会社、企業が大きな仕事をしているという印象が、恐らく実感として余りないと思います。

 さらに、ここには入っておりませんが、例えばスイスとか、これはちょっと卑近な例ですが、「ゴルゴ13」がよく秘密口座を設けているという、何かそんな漫画を読んだことがございますが、実際、そういうところもタックスヘイブンでたくさんあるんだということで感じております。

 こうやって見ると、今回の条約以外に、実は我が国がまだまだ結ばなければいけない、課税逃れを防がなきゃいけない国がたくさんあると思いますが、これらの国に対して今後どのような対応をしていくのか、教えていただければと思います。

武正副大臣 小野寺委員にお答えをいたします。

 まず、今言われましたように、昨年四月二日のOECDのブラックリスト、グレーリストでございますが、この次のリストがことしの四月一日に発表になっております。ブラックリストはなくなりました。グレーリストは、ここは三十八の国・地域でありますが、十七カ国に減っております。ですから、今御指摘のケイマン諸島もグレーリストから除かれております。

 これは、昨年のリストで、国際的に合意された租税の基準にコミットしているが実施が不十分な国・地域またはコミットしていない国・地域として掲載されたうちから、それぞれの国・地域が今回の四条約の改定のような形あるいは国内法の改正等に努めた結果、現在はこのリスト、ブラックリストあるいはグレーリストから外れたということでございます。

 今御指摘の点でありますけれども、今回についてはシンガポール、マレーシア、ベルギー及びルクセンブルクのように条約の改正を行っておりますが、先ほども触れましたように、いわゆる情報交換については、それぞれの国内法ということでの担保もありまして、今差し当たって急に改正を必要とはしていないというふうに考えております。

 ただ、先ほども触れましたように、特に租税に関する透明性の確保に消極的と考えられる国・地域、今このグレーリストでは四月一日現在十七カ国・地域にもなっておりますし、こうしたところに対して情報交換の枠組みの新設、強化に努めていく考えでございます。

小野寺委員 いろいろなところをふさいでいっても、一カ所抜け道があると、その抜け道の国に恐らくまたこのような資金が集中するんだろうと思っています。ぜひ、すべてふさぐ努力が必要だと思っています。

 そしてまた、このような課税の問題で、特に個人、企業が課税逃れをさまざま模索するという背景には、実は日本の法人税率を含めた税率の問題もあるのではないかと思います。

 古本政務官にちょっとお伺いしたいんですが、例えば日本の法人税の実効税率、日本は四〇・六九、アメリカが四〇・七五、イギリスが二八、ドイツが二九、中国が二五となっていますが、一部の優良企業には一○%、マレーシア二五、台湾二五、シンガポール一八、最近日本の企業を追い抜いております韓国が二四、EUの諸国が二三ということで、日本の法人税率がほかと比べて著しく高い。実は、こういう問題が、ここからこれだけのタックスヘイブンの国を探していくということになると思うんです。

 例えば楽天の三木谷さんがおっしゃっていますが、韓国のサムスン電子、これはもう世界一になりましたが、これが日本のシャープ並みに課税されると、税負担だけで二千億ふえる、これは経産省の試算らしいんですが。このように、実は、日本の企業がアンフェアな、もしかしたら別な形での競争を強いられているということもあると思います。

 この法人税率についての考え方、政府の中では一部引き下げの検討ということもありますが、現段階でお考えを聞かせてください。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 御案内のとおり、法人税の実効税率は、委員るる御紹介いただいたことかと承知しておりますけれども、世界的に見て、他方で、いわゆるタックスエクスペンディチャーと言われる租税歳出もあるわけですね。つまり租特です。租特だけで大体六兆から七兆マイナス減税いたしておりますので、この租特の問題もあわせて議論をしていかなければならないというふうに思っています。

 その上で、仮にこういった租特を改廃していくことが国民の皆様の理解、法人企業経営者の方々の御理解もいただけた暁には、すなわち課税ベースが広がりますので、その課税ベースが広がった状況の中で、あるべき税率の姿というものが議論されるんだろうと思います。

 その際に、今おっしゃったような、日系の企業が日々、国際競争にさらされている対象となる国々の税率は、一つのベンチマークにはなるんだろうというふうに思っております。

小野寺委員 日本の企業が、日本でできた企業だということで、世界で活躍をされています。ですが、このような法人税率のアンバランスがある場合に、いつまでもこの企業が日本にとどまっていただける企業かどうかがわからない、そのような状況も現実に起きつつあります。

 この問題については、ぜひ抜本的な見直し、そしてまた考え方を示していただいて、国際的に対抗できるような税率、私は、最終的にこのような考え方が世界じゅうに広がれば、このようなタックスヘイブンという問題も、一つ一つの国の関係以外に、もっと別な多様な措置が出てくるのではないかと思います。

 今回の条約については、どんどん進めていただき、そしてまた、さらにこれから抜け道になりそうな国に関しても、その穴をふさぐ形でこの外務委員会で審議をし、条約も結んでいただきたい、そのように思っております。

 さて、少し時間がございますので、きょう、別の話題を触れさせていただきたいと思っております。

 昨日、米ロの新軍縮条約の署名ということが行われました。核なき世界、これは日本人すべからく感じる、そのような世界だとも思っておりますし、また、岡田大臣も核の先制不使用の問題につきましてもさまざまな意見を出しておりますし、歓迎すべき方向の一つかと思っております。

 ただ、一点心配となりますのは、では、今回の、例えばアメリカが発表しておりますNPRの政策につきまして、これが日本の安全保障に対してどのような問題があるのか、安全保障をしっかり担保しつつ今回の核軍縮が進む見通しになっているのか、教えていただければと思います。

岡田国務大臣 まず、今回の米ロ間での合意というのは、戦略核についての上限を下げるということであります。

 数を減らすというと、確かに、そのことによって抑止力が失われるんじゃないか、そういう議論というのはあるかと思いますが、しかし、もともと余りにも過大な数を両国が持っていたということで、人類を何度でも全滅させることができるような、そういったものが、今回の合意ができたからといって、それで抑止力に直接影響がある、そういうふうに私は理解をしておりません。

小野寺委員 この中で、例えば核トマホークの退役というような、日本に関しては、今までこれをある程度想定し、東アジアの安全保障を考えていたものが退役をされるということ。それにかわるものとして、例えば大陸間弾道弾とか潜水艦発射型とか、さまざま代替措置があると思うんです。

 その中に、今回、このNPRの主要目標の中で、このような核の廃絶とともに、逆に増強しなければいけないものということが書いてあります。ミサイル防衛や改良された通常戦力等、これは拡充をしなきゃいけないということになっていますが、このことについてはどのような考え方をお持ちでしょうか。

岡田国務大臣 その前に、私、先ほど述べましたのは、日ロ間のSTART後継条約、ニューSTARTについてコメントしたところでございます。

 NPRについて御質問いただきましたが、まずトマホークの退役、従来、もうトマホークについては既に外されていたということですが、従来ですと、政策を変えれば再度積むことができた、もうそれがなくなるということでございます。私は、そのこと自身は、実態上、それが日本の安全に影響を及ぼすというふうに基本的には考えておりません。

 しかし、一方で、確かに、ミサイル防衛とかあるいは通常兵器の増強ということもNPRの中では触れられておりまして、そういったことをかみ合わせながら日本全体の平和と安全というものをどう確保していくか、そういう議論をこれから日米間でよく行っていかなければいけないというふうに考えております。

小野寺委員 核の傘がだんだん縮減をする、そして、それにかわるものとしてミサイル防衛あるいは通常戦力を拡充するということ、その理解でよろしいんでしょうか。

    〔委員長退席、小宮山(泰)委員長代理着席〕

岡田国務大臣 ミサイル防衛については、これはさらに増強していくというのがNPRの中でアメリカが述べていることでありますし、日本については、今、防衛大綱の見直しの議論を行っているところでありますので、このミサイル防衛についてどうするかということは、当然大きな議論のテーマであるということは間違いないことでございます。

 結論は、まだ議論しているところですので、余り簡単に申し上げない方がいいと思いますが、従来から、ミサイル防衛については重視していくという方向性は政府として持っているということだと思います。

小野寺委員 ミサイル防衛については、自民党に関しても、また民主党のインデックスを見ても、それは大変重要性を認識していると思います。ただ、連立与党であります社民党さんに関しては、これは宇宙開発、宇宙戦争につながるということで否定的な懸念が出ていますが、この辺の与党間の合意というのは大丈夫なんでしょうか。

岡田国務大臣 ですから、そういうことも含めて、今、大綱の議論を年末までかけて行っていくということですので、まだ連立間で議論を行うというところまで話は進んでおりませんが、そう時間があるわけではございませんので、しっかり議論していきたいというふうに考えております。

小野寺委員 このNPRの見直しということが具体的にもう行われ、日本政府は、鳩山総理も岡田外相も歓迎という形での意見を発表されています。

 ということは、逆に、核の傘が減るということは、その分、そのかわりに、ミサイル防衛なり、あるいは日本の通常兵器、あるいはアメリカが日本に置く通常兵器の拡充なり、何かほかのものを増強していかなければ、東アジアの今の安全保障問題というのは、例えば両岸関係もあります、また北朝鮮との関係もあります、依然として緊張関係があります。ですから、核の傘が薄くなることは、それは世界としては安心すべき、歓迎すべきことかもしれないけれども、事東アジアに関しては、それにかわるものとしてしっかり考えていく。その中では、ミサイル防衛もある、あるいは通常兵器の問題もある。

 ということで考えていくと、例えば今、基地問題についても、現政権の中で、県内なのか県外なのか、さまざまな意見で話がまとまっていない。そして、このミサイル防衛にしても、今後、議論の中で、これを進めるのか、進めないのか、どうするのか、こういうことが議論が定まっていない。こういう段階で、単に、このNPR、よかったね、そういうコメントを出すというのは、私は少し無責任ではないか。基本的には、やはり与党の中で、では、かわる措置は何があるんだ、これはどうするんだということを議論しなきゃいけないと思うんです。

 アメリカが多分考えているのは、日本はミサイル防衛はしっかりしてくれるんだね、ちゃんと今の政権としてしっかり整備するんだね。そしてまた、もう一つ、この域内の、特にこれは沖縄かもしれません、日本にある米軍基地の重要性が、このNPRの見直しの問題によって、むしろ増すということになるんじゃないかと思うんですが、このことについてお考えを聞かせてください。

岡田国務大臣 委員とちょっと認識が私は違うんですが、まず戦術核については、トマホークは退役をいたします。しかし、従来からもう既に取り外されていたわけで、実態としては変わらない。今回退役するということで、より明確にはなりましたが、従来の核の抑止という観点から見て、既に戦術核については取り外された状態であったことと、それが正式に退役するということは延長線上にある話であって、それによって、今回の決定によって、徹底的に核の抑止力が失われたというふうに私は考えておりません。

 それから、戦略核についてでありますが、先ほども言いましたように、余りにも過大な戦略核について、米ロがそれを減らすということを決定したわけでありますが、それで日本に対する核の抑止力が弱まったというふうにも考えていないわけであります。

 そして、アメリカ側も、このNPRの中で、同盟国に対する核兵器を含む拡大抑止のコミットメントを堅持するということも主張しているわけであります。非常に過大であった戦略核の備えが減ったからといって、それで抑止力が決定的に変化が出る、そういうふうに考えているわけではございません。

 ただ、先ほど申し上げましたように、日本を取り巻く環境、朝鮮半島や中国、あるいはロシア、そういった核の問題というのは現にあるわけでありますので、そういったところについてどう対応していくかということについて、今までも日米間で議論はしておりますけれども、さらに、より具体的な議論というものを行っていかなければいけないというふうに思います。

 手前みそで言うわけではありませんが、日米両国政府間での核をめぐる議論というのは、従来は、委員はよく御存じだと思いますが、余り行われてこなかったんじゃないかというふうに私は思います。それがこの数カ月、かなり深い議論を行っているということも申し上げておきたいと思います。

小野寺委員 北朝鮮に関しては、今回のNPRについては明確に、これは核テロリズムということ、危険のある国ということで明確に指定をしています。また、中国は、今、この核の問題についてはむしろ増強しようとしています。確かに、ロシアは、アメリカとの協議は進んでいます。ですが、この東アジア全体、特に日本を取り巻く環境から見たら、核の脅威というのは決して減っているわけではない。

 そして、今、トマホークの問題等お話がありましたが、ある面では、すぐに核で攻撃を受けるような状況にはないかもしれない。ですが、今後、かなりの緊張感が高まり、もしそういう可能性があるときに、実は、取りつけられる兵器が既に今回退役をさせると約束されてしまいました。

 ということは、有事と言うことは失礼かもしれませんが、有事のときの頼りになる日本の核、日本ではないとしても、日米間で、近いところで使える核兵器につきましては今回退役をするということになる。これは、ある面では核の傘が少し弱まってしまう、そのように普通は考えられます。そして、アメリカも考えているんです。

 だから、アメリカの今回の政策の中では、きちっと、ミサイル防衛や改良された通常戦力による地域的安全保障の拡充ということが明確に入っている。アメリカが日本に言っているのは、核は減らすけれども、かわりに、日本よ、しっかりとミサイル防衛をしてくれ、そしてこの地域の通常戦力もしっかり拡充してくれ、こういうことが来ているわけです。

 ところが、それを受けている日本は、今、ミサイル防衛についても、閣内、政権与党の間で、確かに民主党は、これは必要だと。でも、社民党は、これは否定的。この話も煮詰まっていない。それから、この地域の通常戦力及び地域の安全保障の拡充のために不可欠な基地問題についても、現在、与党内でまとまっていない。何もまとまっていない。

 こういう状況の中で、核の傘がどんどんなくなっていく。それを私は、日本国民の一人として大変心配する。そして、そういう声はあちこちから聞こえてきます。これにぜひ対応するようにしていただきたいと思うんですが、大臣、もう一度お話を伺います。

岡田国務大臣 読み方はいろいろあると思いますが、もちろん、北朝鮮あるいは中国、ロシアの核の問題というのはありますから、それは我が国としても中国やロシアとも対話をしていかなければいけないし、そして、どういうふうに対応していくかということについて、日米間の話し合いも当然必要であります。

 ただ、基本的には、それは戦略核によって核の傘というのは提供されていて、そこで抑止力というのは働いている、それが私の認識であります。余り核の傘が弱まったというふうに私は考えておりません。

 それから、もう一つ申し上げたいことは、今回のNPRで、やはり、核の役割を低減させる、あるいは数を減らすということが明確に出されたということの評価、そこもきちんとしないと、日本にとって大変だ、大変だということですが、しかし、核の役割を低減し、核を持っていない国には核は使わない、アメリカが今回改めてそのことを明確にしたわけです。そのことをほかの核保有国にも広げていくということで、世界の核の脅威からの安全度というのは、これは飛躍的に増していくわけであります。あるいは、核の数全体が減ることで、偶発的な事故によって核爆発が起こる、そういう脅威も減るわけであります。そういうところについてもきちんと評価をしていかないと、そういうところは何も触れずに、ただ日本に対して大変なことが起きる、そういう発想は私のとるところではありません。

小野寺委員 よく聞いてください。冒頭で、私は、この全体の動きについては歓迎するところ、そういうふうにお話をしました。そして、では、この私たちの近所、東アジアを見たら、北朝鮮は今回さらに危ない国ということで指定をされています。中国は核を増強しています。両岸関係だって、どうなるかわかりません。ロシアだって、確かにアメリカとの核の軍縮をしていますが、世界で一番核の密度が濃いのは我が日本の周辺です。

 ですから、この問題については、世界的には歓迎、だけれども、我が日本の安全保障にとっては、しっかり埋めるところは埋めなきゃいけない。そして、アメリカも、日本に言っているのは、日本さん、ちゃんとミサイル防衛してくださいよ、日本の通常兵力を含めたこの地域の安全保障、しっかりしてくださいよ。ところが、それにこたえるべく今の政権は、政権内で、MDに関してもまだ不統一、基地に関しても不統一、だから心配をしてお話をさせていただいています。(岡田国務大臣「委員長」と呼ぶ)

 ちょっと次の質問に、あと、時間がありませんので、最後に、次の問題で両方一緒に答えてください。

小宮山(泰)委員長代理 簡潔にお願いします。

小野寺委員 最後になりますが、先ほど来、社民党の質問にもございましたが、ホワイトビーチ案が断念されたということが具体的に書いてあります。二日、平野さんと岡田外務大臣が関係閣僚の協議の中で、長期的な検討課題にする、このホワイトビーチ案について断念という方向を決めたというような報道がありました。

 私は、大変残念なのは、実は、一日には平野官房長官が沖縄の知事に対してこのホワイトビーチ案を説明しています。そして、その翌日には断念をする。これはますます沖縄の世論、知事に対しても不信感を与えることだと思いますが、この報道は事実でしょうか。

岡田国務大臣 先ほど服部委員のときに申し上げましたその記事、今お触れになったところ、それは全く事実に反するということをはっきりと申し上げておきたいと思います。

 新聞の報道はいろいろありますが、国会という場ですから、やはりそれは新聞が報じているというだけではなくて、もう少し根拠を持ってお互いに議論していく、そのことがやはりこういった場での審議をより深いものにするんじゃないかというふうに私は考えております。

 それから、委員は外務副大臣の御経験もあります。私は非常に不思議に思うんですが、中国の核の問題について、今まで日中間できちんと議論したことがあるんだろうかと。私は余り思い当たらないんですね、過去の記録を見てみても。そういう問題についても両国政府間で議論を行わなければいけない、そういう課題であると私は思っております。

小宮山(泰)委員長代理 小野寺君。時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

小野寺委員 二日、これは九時十一分と十七時五十三分、二度、この日の首相動向を見ると、岡田外相は首相とお話をされています。そのときにはこの基地の問題は一切触れなかったということでしょうか。

岡田国務大臣 どういうテーマで会っているかということは申し上げる必要はないと思います。総理とはしょっちゅう顔を合わせて意思疎通を図っているところでございます。

 ただ、あの新聞記事は、全くこれは事実に反するということは申し上げておきたいと思います。

小野寺委員 時間が参りましたので終わりますが、租税条約の質問でございます。ぜひしっかりと日本の税収が上がるように頑張っていただきたいと思います。

 終わります。

小宮山(泰)委員長代理 次に、古川禎久君。

古川(禎)委員 自由民主党、古川禎久です。

 七日に政変のありましたキルギスです。

 事実上、政権が崩壊したとも報じられておるわけですけれども、外務大臣、邦人の安否、それから我が国からの投資の保全につきまして、その状況について御報告をお願いします。

岡田国務大臣 御指摘のように、キルギスで、最近の原油価格上昇による生活困窮などによる国民の不満の高まりの中、四月七日、首都ビシュケクにおいて、野党勢力など反政府デモ隊と治安部隊との間で衝突があり、これまで、七十名以上の犠牲者、それから一千名を超える負傷者が発生をしております。

 このため、現地時間七日正午に、情報収集と邦人保護に万全を期すため、現地では、丸尾駐キルギス大使を本部長とする対策本部を設置したところでございます。

 現地には約百三十名の邦人が長期滞在しておりますけれども、これまでのところ、邦人が被害に遭ったという情報はございません。また、これまで、キルギス在住の邦人等について、治安情勢と安全対策に関する情報を提供するとともに、治安悪化に備えた注意喚起を行ってきているところでございます。

 また、キルギスへの我が国の投資は、中小企業が数社、たしか三社だったと思いますが、進出しているところでございますが、右企業の財産等の保全については、緊急対策本部が緊密に連絡して、万全を期しているところでございます。

 八日には野党側党首を首班とする臨時政府が発足したというふうに聞いておりますが、事態の今後の推移は予断を許さず、我が国としても、一刻も早く事態が収拾し、民主主義と憲法秩序が回復されることを期待しているところでございます。

古川(禎)委員 対応において遺漏なきをお願いいたします。

 さて、今度の租税条約の改正についてですけれども、タックスヘイブンへの規制強化という世界的な動きが背景にあるものと理解しております。一昨年の金融危機を教訓にするならば、私は、世界的に活動する経済主体に対して、その影響力に見合う規制ないし経済規律が求められていると考えております。その観点から幾つか御質問をさせていただきます。

 一昨年の金融危機で明らかになりましたように、巨大化した投資資金は、人々の人生を破壊する力を持っております。投機マネーが世界をばっこしまして、額に汗をしてまじめに生きる人たちを食い物にするさまというのは実に浅ましく、壮大なる不祥事だと私は感じております。まさに人類の英知が試されている場面だとも言えると思うんですが、そのためには、やはり金融資本、投資ファンドも適切に監督されるべきである、監督されなければならないと考えております。

 今回の改正議定書におきましては、銀行秘密だからといって情報提供を拒めないということとはなっておりますけれども、投資ファンドについては規定がありません。人々の日々の勤労の成果にはしっかり課税をされながら、こうした巨額資本が、事実上、租税回避の状態にある、野放し状態にあるという現実は、やはりこれは社会正義にもとるんだ、こう思っております。

 現在、欧州連合、EUでは、ファンド規制について議論がいよいよ最終局面を迎えております。特に、EUの域外への規制をめぐって、シティーを抱えております英国と、そして規制積極論のドイツ、フランスの対立があるというふうに聞いておりますが、いずれにしましても、リーマン・ショック後の一つの節目になるだろう、今後、我が国がEU各国と結んでいる租税条約にもいろいろな影響が出てくるだろうと思うんですが、見通しについてお尋ねをいたします。

 大臣、一国の外相という以前に、ぜひ、政治家として、資本主義の暴走、こういうことに対してのお考えをお聞かせください。

小宮山(泰)委員長代理 武正副大臣。(古川(禎)委員「大臣、大臣」と呼ぶ)まず、武正副大臣。

武正副大臣 古川委員にお答えをいたします。

 今の、特にファンドに対する規制という御質問でございますが、今般の租税条約の情報交換規定の改正については、いずれも国際的脱税、租税回避行為の防止に向けまして、情報交換ネットワークの拡大を図るものであります。

 EUにおけるファンド規制の動きについては、いわゆるヘッジファンドなどの投資事業体に対して情報開示等を義務づけるなどの規制強化を検討していると承知をしております。ことしの三月十六日のEU財務相理事会で採択されるはずでありました代替投資ファンドマネジャー指令案については、さらに数週間の調整が必要として議論を延期されまして、六月末までの合意を目指していると聞いております。

 仮にそのような規制強化が実現する場合には、今回の租税条約の改正とも相まって、ファンドに関係する情報についての交換を通じまして、EU諸国との間の適正公平な課税の確保に向けた協力が一層促進されることを期待しております。

岡田国務大臣 少し総論的に申し上げたいと思いますが、私も、やはり投資マネー、もちろん、それは資本主義ですから非常に有用な部分もあるんですが、それが余りにも短期的になって、投機的になるということは、さまざまな弊害もあるというふうに思っております。そういうことに対して、もう少し透明性を高める、あるいは投機的なことについては一定の規制を考えていくということは、流れとしては私は正しい流れであるというふうに考えております。

 いろいろな議論がありますが、例えば課税の問題なども、そういった投機的なマネーに対して課税をする、そしてそれをむしろ貧困とか人類が抱えるさまざまな問題に使っていく、そういう議論も、例えばフランスなどを中心に国際社会の場でも行われておりますが、そういったことに対しても日本としても積極的にかかわっていく、そのことが必要だというふうに思っております。

古川(禎)委員 ありがとうございます。

 人類史的なこういう場面において、いわば日本の文明観というものも問われているような場面だと私は思いますので、ぜひ、今御答弁いただいたように、前向きに、意欲的に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 さて、租税条約ですが、本年三月の末現在で五十八カ国と結ばれております。このうち、中近東地域では、イスラエル、エジプト、トルコの三カ国のみ、アフリカ地域に至っては、南アフリカ、ザンビアの二カ国のみの締結でございます。けれども、アラブ首長国連邦はあのドバイも構成員でありますし、サウジアラビアでは、先日、日本企業がイスラム保険などを販売する合弁会社を設立しました。また、アフリカ諸国についても、鉱物資源のみならず、農業や水道事業、電力事業、新しい分野で、今後、我が国とも経済関係を深めていくものと予想されております。

 これらの国々との合理的な租税関係を幅広く積極的につくっていくべきではないかと考えておりますが、いかがでしょうか。

武正副大臣 委員御指摘の、今、中近東そしてまたアフリカ、租税条約の締結状況、中近東三カ国、アフリカ二カ国、先ほども触れましたように、中南米も二カ国ということで、やはりそうした新興経済地域、そしてまたこれから特に日本が経済的にもより連携を強めようという地域に対して、租税条約締結を急ぐべきであろうということでございます。

 中近東については、今、クウェートとは二〇一〇年二月署名をしまして、三月国会提出、アラブ首長国連邦については二〇〇六年十一月交渉開始、サウジアラビアについては二〇〇八年十月交渉開始、二〇〇九年の六月には基本合意ということでございます。アフリカ地域についても、今の御指摘でありますけれども、今、にわかに御紹介できる例はありませんけれども、例えば投資協定については、過日、アンゴラと投資協定の交渉開始というようなこともございますし、そうした租税条約の締結交渉は引き続き進めていくということであります。

 今触れました投資協定、あるいは社会保障協定、あるいはまた、先ほど大臣からも触れましたが、EPA、FTAについても、新興国であるブラジルあるいは南アフリカというような形で、こうした経済関係の条約の締結、これをやはり急いでいくということが大事かというふうに思います。

古川(禎)委員 鋭意進めていただくようにお願いいたします。

 古川副大臣、お出かけいただいてありがとうございました。

 我が国の法人税率、先ほどもありましたが、我が国の法人税率が高いということがよく言われております。古川副大臣は、去る二月二十六日、都内で講演された際に、できるだけ下げられるのであれば下げられる方向を目指していきたいと述べておられます。富を生み出す企業を元気にするためには、基本的に、私もこれはよい方向だというふうに思っております。

 副大臣は、内閣におきましても、中長期の経済政策を立案する国家戦略室長も兼ねておられるとのことですが、我が国企業の発展を考えますときに、国内税制のみならず、世界における経済規律のあり方も同時に見据えながら戦略を練っていただきたいということをきょうは申し上げたいというふうに思っております。

 例えばキャプティブ保険のように、タックスヘイブンを利用して事実上の租税回避という実態があるわけですね。もちろん、私は、我が国の各企業、各業種ともに国際的な厳しい競争の中にあるわけですから、何も日本だけがこのキャプティブを規制せよというようなことを申し上げるつもりは全くないんです。ただ、法人税は特にそうですけれども、主として国内で事業を展開している法人からは厳密に徴税されて、一方で、海外でこういう方便があるということになると、これは結果的にバランスを失することになるのではないか。課税の公平、適正が確保されなければ、ひいては我が国企業の発展にとってもよい方向に作用しないというふうに思うわけです。

 このような事態を是正するためには、結局は、国際的な連携、協調の中で解決をしていくしかないわけです。温暖化対策のように、日本だけが清く正しくということでやってみても、これはなかなかうまくいくものではないと私は思うんです。ぜひ、国内の税制のみならず、世界経済の規律のあり方、潮流というものもしっかり見きわめていただきながら、スピーディーでクレバーなデシジョンメーキングを伴うような国家戦略を古川副大臣に期待したいと思っておるんです。

 お感じになるところがあったら、お答えください。

古川副大臣 大学の同級生でもあり、名前も一字しか違わないということで、お互い昔からよく勘違いされたりして、その古川委員にお招きをいただきまして御質問いただきまして、まず感謝を申し上げたいと思います。

 今、御指摘がございましたように、まさに税制というものもグローバルな視点で考えていかなければいけないというのはおっしゃるとおりだと思います。ぜひ、お時間がございましたら、昨年末に政府でまとめました税制調査会の税制改革大綱をお読みいただきたいと思っておりますが、これは、私どもは、現政権におきまして、税制のあり方を抜本的に見直していこうと。

 その見直す視点といたしまして、現行税制もそうなんですけれども、従来は、人や企業というものをその国家が囲い込むことができる、ですから、とにかく中にいる人や企業に対して国が税金をかけたいと思えばかけられるという、いわばそういう囲い込めることを前提の税制が、かつてはどこの国でもとられていた。しかし、御存じのように、今、グローバリゼーションのもとで、本来であればたくさん税金を負担してもらいたい、もらうべきそういう人や企業ほど、税金を納める場所さえも選べるような、そういう時代になっております。

 そういう中で、やはり負担すべき人にきちんと負担してもらえるようにするためには、税制のあり方も今までとは根本的に変えなければいけない。やはり、囲い込めるのではなくて、そういう担税力の大きい人ほど、税金を納める場所さえ選択できるような、今もキャプティブのお話がありましたけれども、タックスヘイブンを利用したり、そういうことができるような、そういう状況の中に適合した税制のあり方を考えていかなきゃいけない。そうした視点で、新しい税制のあり方を考えるに当たっては、税制の仕組みを考えていくべきだということをしっかりと書き込んでありますので、ぜひお読みをいただきたいと思っております。

 同時に、そのときに、今御指摘ありましたが、世界の中には、特に、そういう税制上の、タックスヘイブンのような形をつくって、そして、形だけの企業、例えば、私もかつてアメリカに留学していたときに、休みを利用してケイマン島に行きまして、あそこは日本の企業がたくさんタックスヘイブンで会社をつくっているというので、どこにその会社があるのかといって実は探したことがあります。探しましたら、わかりませんでした。多分、どこかの住所の一角に、もう何百とかいう会社の登録だけされているんじゃないかと思いますが、そういう非常にいびつなことが行われているのも事実であります。そういう意味では、税制についての国際的なハーモナイゼーションというものを実現していかなければいけない。そうした視点も、税制改革の大綱の中では書いてあります。

 今回、ここの場では租税条約の議論がされておるわけでありますが、やはり今の時代、税制については、一国だけでなく、そういう国際的な取り組みの中で、協調体制の中でフェアな競争が行われるような、そういうところを税制の面からもサポートしていくような、そういうあり方をぜひ目指していきたいと思っておりますので、委員におかれましても、またぜひ御支援を賜れればというふうに思っております。

古川(禎)委員 ありがとうございました。

 先ほど外務大臣にも申し上げましたが、人類史的な転換期にある場面だと思っています。ぜひ、今お答えいただきましたように、幅広い視野を持ってお取り組みいただきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、佐々木政務官にお尋ねいたします。

 民主党は、マニフェストにおきまして、「BSE対策としての全頭検査に対する国庫補助を復活し、また輸入牛肉の条件違反があった場合には、輸入の全面禁止等直ちに対応する。」と書かれておりますね。

 昨年の十月、これは今の政権下でありますけれども、米国産輸入牛肉に特定危険部位の混載事例が発見されました。しかしながら、輸入を全面禁止したというような話をついぞ聞かないわけですけれども、これは一体なぜですか。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 混載事案の場合、民主党のマニフェストでは今委員御指摘のように記載をされてございますが、混載事案が確認された場合には原因に応じて対応するということが重要でありまして、原因がシステム全般にわたる問題である場合には、輸入手続の全面停止が必要であるというふうに考えてございます。

 昨年十月の事例でございますが、混載の確認を受けて、厚生労働省及び農林水産省連携のもとで、直ちに当該事案の出荷施設からの輸入手続を停止させていただきました。そして、米国農務省に対しては詳細な調査を要請させていただきました。米国農務省からは調査報告書が提出をされましたので、それを受けて、当該事案の施設の特別査察を実施させていただきました。

 結果として、混載の原因が、システムの問題ではなく、偶発的なものであること、さらに、特に脊柱混載の再発防止を徹底するために、日本向けの製品の処理中は脊柱をすべて除去する等の改善措置が講じられたことを確認したことから、本年一月二十日、当該施設の輸入手続の停止を解除させていただいたところでございます。

 このため、昨年十月の混載事案の対応は、民主党のマニフェストとそごはしないものと考えてございます。

 昨日の日米農相会談においても、赤松大臣からビルサック長官に対して、混載事案の再発防止の徹底を申し入れたところでもございます。

 以上です。

古川(禎)委員 お聞きしますと、原因は偶発的で、システムに起因するものではないから、理由として軽微だから問題ないんだということですね。

 しかし、このマニフェストでは、「条件違反があった場合には、輸入の全面禁止等直ちに対応する。」と、大変強い調子で書かれているわけですね。しかも、今回の混載事例は、特定危険部位、脊柱、SRMが混入している。これは重大な条件違反なんです。それを先ほどのような理由でマニフェストに違反しないという説明は、これは極めて無理があると私は思いますよ。

 そして、このマニフェストの中には、全頭検査に対する国庫補助も復活すると高らかにうたってあるわけだけれども、今度の予算に計上されていないじゃありませんか。つまり、マニフェストというのは、これは全くでたらめだった、うそだったということになりますが、よろしいですね。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 再度になりますが、米国全体の日本向けの輸出プログラム遵守体制に問題があるという場合には輸入手続を停止させていただく、誤積載などケアレスミスによる個別施設の問題は当施設からの輸入手続のみを保留する、そういうふうにしてございますし、また、輸入のチェック体制については厚労省と農水省との共管でもあるということもございます。

古川(禎)委員 答弁になっていません。

 米国ビルサック農務長官、来日されていまして、昨日、赤松農林水産大臣と会談をされた、そして、その場に佐々木政務官も立ち会われましたね。報道によりますと、米国産牛肉の輸入制限問題に関する日米協議を再開することで合意したとされておりますが、これは事実ですか。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 再開をするというようなことの合意はいたしておりません。

古川(禎)委員 では、この報道は間違いということですね。

佐々木大臣政務官 昨日の会談では、大臣も会見で述べておられますように、これからいろいろな条件について引き続き協議をしていこうということの合意をさせていただいたということであって、輸入を再開するなどということの合意はいたしておりません。

古川(禎)委員 何か答弁になっていないんですね。

 話し合いをすることで合意したんでしょう。輸入制限問題に関して話し合いをするんじゃありませんか。ということは、この報道にあるのと同じじゃありませんか。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 長官からは、輸入条件のOIE基準の整合ということで、OIE基準に基づいてというお話はございましたが、赤松大臣からは、科学的知見に基づく食の安全性を確保すること、それから、我が国の消費者に不信感を与える、先ほど御質問がありました混載事案等の再発防止の徹底が必要であることなどを申し上げて、長官とは、日米の間に見解の相違はあるが、率直な意見交換を行うことが重要であるということについて引き続き話し合いをしましょうということを合意したということでございます。

古川(禎)委員 報道にあるとおりだということですね。

 「輸入の全面禁止等直ちに対応する。」と、民主党は、国民との契約だということをこのマニフェストについて言っておられたわけですが、この契約、約束といいますか、マニフェストを破ったばかりか、反対にその協議を再開する合意をしたということは、これは何事ですか。きちんと説明されるべきだと思います。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 具体的な中身については、協議の進め方や意見交換を、事務レベルでの技術的な情報交換を継続するということで、今までどおりですが、今後ともいわゆる事務レベルでの調整をすることで一致をしたということであるし、同時に、食の安全と消費者の信頼ということが大前提でありますから、科学的知見に基づいて対応することが重要ということは大臣の方からも繰り返し申し上げておりまして、そういった意味では、平行線でありましたけれども、話し合いの継続をしていこうということについて合意をしたということでございますので、何ら今までと変わったということではございません。

小宮山(泰)委員長代理 古川委員に申し上げます。

 時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

古川(禎)委員 マニフェストに書かれております国庫補助の復活ですとか、輸入禁止として対応するというようなことは、マニフェストの内容は破棄されているというふうに言わざるを得ません。

 現場は大変不安を抱えております。いわゆる戸別所得補償制度を早ければ二十三年度から導入したいという、これは赤松大臣が記者会見で言っておられるわけですけれども、こういう全く具体性を伴わないままに大きな変更を大臣がおっしゃると、本当に現場は大変不安に満ちております。ぜひ現場に不安を与えないように、改めて、注意をしていただくように、御留意をいただくようにお願いを申し上げて、質問を終わります。

小宮山(泰)委員長代理 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、四つの租税条約、協定に関する質疑でありますが、今日までのこの外務委員会の中で、外務大臣との議論の中で、若干積み残した問題があるんです。これをきょうやるということを事前に言っていないので、全部御記憶にあると思いますが、いきなりやると失礼だと思いますので、後ろに回します。

 積み残しが二つ私としてはあって、議事録を見てくださいという話、それから大臣御自身が後でその本を読んでみますとおっしゃった件、この二つ。それから、いわゆる密約に関しての調査委員会を設けられたことに関しての確認。そして、あと、先ほど小野寺さんと大臣との間でNPRの話がありましたけれども、それについて、日米中の間についてのことをちょっとだけ、確認というか、大臣のお考えを聞かせてもらいたいという、二、三積み残しの問題等があるので、時間の配分からいけば半分半分ぐらいになろうかと思いますが、後半にぜひよろしくお願いをいたします。

 ということで、とりあえず、きょうの本題でありますところの租税条約の改正議定書に関する質問をさせていただきます。今までも何人かの仲間の皆さんから質問があって、若干重なるかもしれませんけれども、通告に従って質問をいたします。

 まず第一点目は、今回の四つの改正議定書のように、今後、オランダやスイスとの租税条約を改正したり、あるいはクウェートやバミューダとの間で新しく租税条約を締結していくということのようですけれども、今後、今国会への提出を予定されているもの以外に、どんな国との締結を考えているのか。

 この条約については経済界からの要望にこたえるものであると思いますけれども、現在、既に締結もしくは国会提出が予定されている国以外で、経済界からの強い要望があるものは何か。

 また、チリ、今地震で苦しんでいる国ですけれども、チリとは経済連携協定、EPAを締結するなど経済的なつながりが強いと思われますけれども、租税条約は締結されていないチリについての見通しはどうか。

 このあたりについて、まず冒頭、お伺いしたいと思います。

武正副大臣 赤松委員にお答えいたします。

 まず、経済界から申しますと、経団連の方からは、二十二年度の税制改正提言でアルゼンチンの名前が挙げられております。

 我が国については、四十七租税条約、五十八カ国ということで、今後の交渉相手についてなんですけれども、三点ほど勘案していきたいということでございます。

 一点目は経済関係を中心とする我が国との二国間関係、二点目が相手国の税制、租税条約締結状況、三点目が実際の課税上の問題が生じているかいないかという点を総合的に勘案していきたいということであります。

 具体的に、今、新規締結交渉については、先ほど言われましたように、三月三十一日、財務省から発表がありました香港と基本合意をいたしましたが、そのほか、アラブ首長国連邦、サウジアラビアとの間で新規締結交渉を行っているところでございます。

 今、チリということで御指摘がございました。

 先ほど触れましたように、中南米とはまだ二カ国ということもございますので、中南米、アフリカあるいは中近東ということで、日本との経済的な結びつきの強いところ、これからそうした成長が見込まれるところについても、やはり先ほどの三点から鋭意締結を進めてまいりたいというふうに考えております。

赤松(正)委員 わかりました。

 二点目ですけれども、この租税条約、協定のメリットという点でありますが、OECDは、去年の四月に、税に関する情報交換のOECD基準の実施状況についての進捗状況をめぐる報告書を公表いたしました。シンガポール、マレーシア、ベルギー、ルクセンブルクはいずれも、その報告書では、OECD基準にコミットしているけれども、実施が不十分な国・地域、いわゆるグレーリストとされた国であります。

 今回の四つの改正議定書は、現行租税条約の税に関する情報交換に係る規定を国際標準であるOECDモデル租税条約に沿った内容に改めるものですけれども、税に関する情報交換のOECD基準の実施が不十分なこれらの国との現行租税条約、協定に基づく情報交換は、これまで具体的にどのような点で実効性に欠けていたのか。

 また、これらの国とそれぞれ租税条約・協定改正議定書を締結して情報交換規定を改正するということは、我が国にとって具体的にどういうメリットがあるのか。

 改めて、この二点について答えていただきたいと思います。

武正副大臣 お答えいたします。

 先ほども触れましたが、現行の条約、協定では、情報交換について一般的な規定は存在するものの、自己の課税目的以外のもの、あるいは銀行等が有する情報であることを理由に、相手国からの情報の提供の要請を拒否することが可能な内容でありました。

 今回の改正によって、先ほどの二点、課税目的のために必要でないこと、それから銀行等が有する情報であることなどを理由に、情報の提供を拒否することができなくなるわけでありますので、両国間での脱税及び租税回避行為の防止に資することが期待をされております。

 また、実際の情報交換については税務当局間で行われていることから、外務省としては、情報交換が条約の規定ゆえに阻害されたような具体例の有無については、承知はしておりません。

赤松(正)委員 今回の改正によって、OECD標準の情報交換規定に改正するということで、銀行秘密に抵触する場合においても情報の提供を拒否することはできないということになるわけですが、特に、国策として、金融サービス業に重点を置いて、銀行の顧客情報を厳格に守るというスタンスを持っているシンガポールやルクセンブルクに対して、実効性はどのように担保されるのかという点についてお聞きしたいと思います。

武正副大臣 お答えいたします。

 今回の四条約の改正について、今、シンガポール、マレーシア、ベルギー、ルクセンブルク、四カ国ということで、OECDモデル条約に沿った内容に改めるものであります。

 その主な改正点で、銀行等に有する情報等を理由に拒否できないことは先ほど述べたとおりでありまして、このような条約上の義務が誠実に遵守されなければならないことは当然でありますが、租税に関する透明性の向上という政策目標は、共有する各国との間での情報交換は実効的に行われていくものと確信をしております。

 今御指摘の、シンガポール、ルクセンブルクということを特に挙げられましたけれども、当然、その条約の改正ということで、誠実に履行されていくというふうに考えております。

赤松(正)委員 実効性が担保されると確信しているという話でありますが、追ってしっかりと見ていきたい、そんなふうに思います。

 次に、今回の各租税条約・協定改正議定書は、営業上、事業上、産業上、商業上もしくは職業上の秘密である場合、情報交換義務が解除される旨、規定してあるわけですけれども、今言ったこの一連の何とか上の秘密という、これについて、具体的にどういうものを指すのかを答えていただきたいのが一点。

 それから、こうした情報交換義務の解除を許容する秘密の範囲というのは、商業行為やあらゆる場面に及ぶことから、我が国と各国との間で認識の違いが生じると、情報交換の円滑な運用に影響を与えると思われるけれども、交渉の段階ですり合わせを行うなどして、税務当局間で解釈は一致しているのかどうか、この点について答弁を願いたいと思います。

武正副大臣 前段についてお答えをいたします。

 営業上等の秘密とは、一般に、経済的重要性を有し、かつ実際に利用可能で、それが使用されれば営業上等の重大な損害を引き起こすものを意味するものと国際的に解釈されておりまして、具体例を挙げますと、ある製品の特殊な製造工程といったものがこれに当たると考えられます。

 しかしながら、租税の賦課徴収に当たっては、通常、このような営業上等の秘密に該当する情報まで入手が必要になることはありません。このため、営業上の秘密等に該当する場合に、情報提供を拒否することが条約上可能であったとしても、実際には両国間での実効的な情報交換の実施が妨げられるものでないと考えております。

杉江政府参考人 お答えします。

 租税条約の解釈につきましては、OECD等の場で共通の解釈というものがガイドライン等で定められておりますので、そういうようなガイドライン等に示されました解釈に沿って、この租税条約の運用を円滑にしていきたいというふうに考えております。

赤松(正)委員 引き続いて国税庁に質問するんですが、我が国の税務当局及び租税条約の締結相手国の税務当局が、情報交換により収集した情報に基づいて正しく取引を把握し、課税の公平性が保たれるということは、納税者にとっても歓迎すべきものですね。だが一方で、税務当局が収集した情報を用いて課税権を濫用する可能性も否定できないと思われるわけですけれども、この点に関して、各租税条約・協定改正議定書を含めて租税条約が、国内税法ではどのように、そのあたりを防ぐための担保がされているのか、お聞きしたいと思います。

杉江政府参考人 お答えいたします。

 国税当局といたしましては、租税条約に基づく情報交換により収集した情報につきましても、他の資料情報と同様に、納税者の適正な課税を実現するという観点から、収集した情報と納税者から提出された申告書等を総合勘案し、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなどして、適正公平な課税の実現に努めているところでございます。

 いずれにしましても、濫用というお話がございましたが、収集した情報の活用に当たりましては、法令にのっとり、適正に取り扱っているところでございます。

赤松(正)委員 では、冒頭申し上げた積み残しの問題、あるいはそのほかの問題に話題を移したいと思います。

 まず、いわゆる密約の問題について、外務大臣が、前回でしたか、どなたかの質問に答えられて、四人でチームを組んでこの問題について当たる、こういうふうにおっしゃっておりました。たしか大臣と副大臣お一人、あと二人、学識者かなという気がしたんですが、差し支えなければ、そのメンバーを教えていただきたいということが一つ。

 それから、この密約問題に関する有識者委員会の報告書の一番最後、補章の部分で、「外交文書の管理と公開について」というところに「失われた関連文書」のくだりがあります。ここで、廃棄ということに関して、旧規程あるいは新規程のくだりで、「廃棄は主管並びに関係課長と協議のうえ文書課長が行い、廃棄処分を行おうとするときは、目録を作成して次官の決裁を経るものとされ、」云々、こうあります。あるいは、「一方、新規程では、」のくだりの中で、「関係局部課長と協議の上、官房長の決裁を経て文書課長が廃棄を決定する。」と。

 この廃棄をめぐる過去の規程あるいは新しい規程、こういうくだりの中で出てくる、いわゆる外務省の中のつかさの名前として、ポジションとして、文書課長が登場するわけでありますけれども、一連の、今日までの参考人あるいは外務大臣等の御発言の流れの中で、大臣は余り発言されたことがないかもしれませんが、私どもが、例えば谷内局長の名前を出したりするわけですけれども、先般言いましたように、東郷さんから後の外務省の中の担当部局という観点の中で、局長だけではなくて、この記述を見れば、総務課長、文書課長が重要な役割を果たしているというか、その人のチェック、目を経ないで廃棄されるということは通常はあり得ない、こういう認識でよろしいんでしょうか。

岡田国務大臣 役所の中の規程は、そういった一定のルールが決まっているわけであります。その規程についても、少し見直した方がいいのではないかというところはございます。現在、検討中です。

 ただ、若干誤解があるかもしれませんが、そこで言う文書というのは、いわゆる原義といいますか、元本なんですね。ですから、コピーではないわけです。東郷局長の赤いファイルが、そこにリストアップされているものが我々の調査の中で全部はなかったということは明らかですが、実は、東郷局長の赤いファイルに入っていたものは、ほとんどコピーであるということであります。コピーの廃棄というのは、これは別に規定は何もございませんので、そこのところ、コピーを廃棄するという問題と、それから原義を廃棄するという問題は、少し質の違う問題だ、そういう前提で議論をした方がいいと思います。

赤松(正)委員 先ほど冒頭で言いました、メンバーについてはいかがですか。

武正副大臣 お答えいたします。

 外交文書の欠落問題に関する調査委員会、委員長が大臣、委員長代理が私、そして波多野澄雄筑波大学教授、宇賀克也東京大学教授の以上四名でございます。

赤松(正)委員 大臣、先ほどの件、いわゆる廃棄処分等をする場合に、文書課長、今は総務課長と言うんでしょうか、その目を通るというのは当然なわけですね。

岡田国務大臣 それはもちろんそうなんですが、そこで言う廃棄処分というのは、元本の話をしているわけですね。しかし、問題になり得るのは、元本だけではなくて、そのコピーということもあるわけですから、元本の廃棄の問題とコピーの廃棄の問題というのは、混同しないように議論した方がいいというふうに思っております。

赤松(正)委員 その点はわかりました。

 次に、積み残しでありますが、一つ目は、私がこの公文書の問題について、松村正義さんという元外務省の役人であった方で、この方が、「法学研究」の中で「日露戦争における日本在外公館の「外国新聞操縦」」という論文を書かれた。この人が一生懸命研究をした。なかなかおもしろい、私そんなに腰を落としてしっかり見たわけではありませんが、日本と中国との関係、日露戦争における日中関係等でなかなかユニークなことを書いておられる、おもしろいことが書かれていたわけですけれども、一番最後に、資料が全く見当たらないというくだりがありました。

 先般、私が質問したときは、朝、急に言ったということで、大臣は、そんなこと急に言われても困る、ただ、今の委員の指摘、論文、私も読ませていただいて、その上で、欠落があるのであれば、早速よく調べてみたい、こうおっしゃっておりますが、お忙しい大臣、いかがでしょうか。

    〔小宮山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

岡田国務大臣 率直に申し上げて、論文そのものはまだ読んでおりません。

 ただ、日露戦争時に日本の外交がどういうことを行ったのかというのは、私、かねてから非常に関心がございます。明石大佐でしたか、革命勢力勃興するロシアの中でさまざまな役割を果たしたということも含めて、当時、非常に体力がない日本がロシアと伍して戦い、勝利をし、そして一定の成果を持っていくところというのは、よく私自身も把握をしたいなと思っている一つの局面でございます。

 ただ、前回、委員の言われたことの中で、これは非常に古い資料でございますので、本省の中にはない。ですから、外交史料館。外交史料館にはなかったというお話でございましたが、改めて、松村氏が著書の中で述べておられる、日露戦争当時、タイやシンガポールに置かれていた日本領事館などによって行われたであろうと推測される外国新聞操縦に関する資料について調査したところ、外交史料館において該当する資料は見当たりませんでした。

 調査の対象といたしましたのは、日露戦争前後の明治三十六年から三十九年までの新聞操縦に関する外務省記録三十一冊及びその時期の来往電簿五十八冊であります。

赤松(正)委員 わかりました。

 大臣、その次に、前回の当外務委員会で、私と大臣との間で少しやりとりをやりました。沖縄のいわゆる普天間基地移転の問題で、私があのとき申し上げたのは、大臣が平沢委員の質問に対してこう答えられたんですね。今、議事録を持ってまいりました。「閣僚間で役割分担をいたしまして、私は対米交渉ということで、沖縄に対しては、あるいは移転先に対しては私は全く関与しておりません」、こうおっしゃっているんですよ。

 私は、それを聞いて、そして一連の今日までの岡田外務大臣のいわゆる地位協定にまつわるお話を聞いていて、それなりに調べました。大臣の頭の中に、あのときもおっしゃっていたけれども、要するに、当面は移転先の問題に決着をつけて、そして大きな課題である地位協定の問題はそれ以降なんだ。聞くところによると、二〇一〇年あるいは一一年以降、そういう大きな日米間のテーマである地位協定には取り組むんだというようなことをおっしゃっている、こういうふうに理解している。

 そういう観点から、私は、あのとき、移転先に関しては全く関与していないというこの言い方に対して、私はこの間申し上げたようなことを言った。要するに、厳密に言えば、沖縄の基地の問題において、外務大臣は仕事をしていないということを私は言ったわけです。非常に大胆な言い方をすれば、そうだということを申し上げました。言ったでしょうと言うと、言っていない、一言も私は言っていないと言われた。どうですか。

岡田国務大臣 ですから、関与していないということの意味、解釈の問題であります。

 つまり、私が申し上げたことは、どういうところに移転すべきかという議論に参加をしていないということは一言も言っていないわけでありまして、それぞれの地元に行って、私が地元に理解を求めるための活動、そういう意味での行動はしていないという意味であります。

 それは明らかに役割分担をしたわけです。去年の十二月までは、むしろ私が沖縄に行って、沖縄の皆さんとの話し合いなどをやってきたわけですけれども、そこはつかさつかさで分担しようということになって、そういったことは、外務大臣ではなくて官房長官やあるいは防衛大臣がやる。そして、逆に言うと、日米の交渉は私がやるということで役割分担をしたわけで、どこにどういうふうに持っていくか、今政府の五閣僚の間で共通の認識があるということを私は申し上げているわけでありますが、そういう議論はもちろん私も参加をしてやっているわけで、しかし、そのことをもとにして、地元に行って、そしてそこで説明をしたり説得をする、そういう役割は私は果たしていない、そういうことでございます。

赤松(正)委員 大臣、もう少し柔軟な姿勢を持ってもらいたいんですよ。原理原則をゆがめろなんて言っていませんよ。要するに、事実として関与していないと明確に言われたんだから、そういう言い方をしたかもしれませんというようなことぐらい言うべきなんですよ。あのときに、私は全く関与していない、言っていないと、私は明確に聞きました。私は最近耳のぐあいが悪いのかなとも一瞬思いましたけれども、言われたんですが、そして、それはちょっと意味合いが違うということを今、言われたよね。そういうふうなことを言ってはいけません。事実として、関与していないと言ったんだ。それは、そういう言葉は使いましたけれども、私の使った意味合いはこうです、そう言うべきなんですよ。

岡田国務大臣 ですから、委員が関与していないのはけしからぬ、そういう意味でおっしゃったから、私は、そういった意味での関与というのはしていないということを申し上げたわけで、中身の話し合いは、もちろん私は入ってやっているわけであります。そういうことすらしていないというニュアンスで委員が言われるから、そういうことはないということを申し上げただけでございます。

赤松(正)委員 でも、平沢委員とやりとりを聞いていて、役割分担で、どこの基地に移転するかについては関与をしていない、こう言われたから、当然、私を初めとして聞いている、その場にはここにいらっしゃる人、あるいはまた議事録を通じて多くの国民が見た場合に、それは誤解を招くから言ったわけです。

 そういう点で、これからやりとり、これからも長い闘いになると思いますけれども、余りしゃくし定規というか、柔軟性のないというか、かたい答弁はちょっといかがかと思うということを申し上げさせていただいて、時間が来ましたので、終わります。

岡田国務大臣 私は、言葉を正確に使うということを常に心がけております。

赤松(正)委員 ぜひそうあってほしいと思います。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 本日の案件であります、日本とシンガポール、マレーシア、ベルギー、ルクセンブルクとの間の四つの租税協定そして条約でありますけれども、これに関連して、るるありましたが、私、最後に質問させていただきます。

 昨年四月のロンドンの金融サミットでは、海外のタックスヘイブン、租税回避地などを悪用したヘッジファンド、富裕層や多国籍銀行などの課税逃れに対する金融規制と監督の強化がうたわれました。アメリカを中心とした国際的金融緩和政策に対する痛烈な自己反省が求められているんだろうと思います。

 そこで、外務省に伺いますが、ロンドン・サミットのこの議論を日本政府としてはどのように受けとめておられるか。また、今回の議定書締結によって、課税庁相互の情報交換のやりやすさなど、海外での課税逃れ防止効果の見込みというのはどのようになっているでしょうか。お答えください。

武正副大臣 笠井委員にお答えいたします。

 先ほども触れましたが、昨年四月二日のG20の首脳宣言、そしてまた金融システムの強化に関する宣言、こういったものを受けての今回の対応ということでございます。

 ロンドン・サミットにおける首脳、財務大臣プロセスで、国際社会でのいわゆるタックスヘイブンの不透明な資金の流れが問題視され、そしてOECDの会議において、参加各国の情報交換の国内法制、執行の検証を行うことが議論され、今後、税務当局間において、納税者情報の交換について、遵守状況に関する相互審査が開始されると承知しております。

 二点目の御質問でありますが、従来の条約の情報交換規定の内容では、自国の課税目的がない場合や、銀行等が情報を有している場合、相手国からの情報の提供が拒否されることもあり得たわけでありますが、今般の条約改正によりまして、具体的に、我が国に居住する者が相手国内の銀行に預金を有していると疑われる場合、当該居住者の所得税額決定のため、相手国内におけるこの者の銀行口座の有無及び預金残高について問い合わせ、必要な情報の提供を相手国から受けることが可能となります。

 このように、相手国と租税に関する情報交換がより実効的に行われることにより、国際的な脱税及び租税回避行為が防止されることが期待されております。

笠井委員 改めて確認したいと思うんですが、現在、どれぐらいの数の地域や国がタックスヘイブンとみなされているか。また、タックスヘイブンを媒介とした、世界じゅうを徘回する課税回避資金の総額というのは一体どれぐらいあるというふうに認識されているんでしょうか。

武正副大臣 お答えいたします。

 先ほども同趣旨の御質問があったかと思うんですけれども、従来から一般的に、金融サービス等の活動から生ずる所得に対して、無税としているか、または名目的にしか課税していない国・地域、例として挙げれば、バミューダあるいはケイマン諸島などがタックスヘイブンとして位置づけられてまいりました。

 現在のOECD基準によれば、他国との実効的な情報交換の実施、そしてまた、税制及び税務執行についての透明性の向上のいずれも十分に実施していない国・地域が国際的に問題視されております。OECDでは、これらの基準に該当するものとして、昨年の四月二日から減りましたけれども、ことし四月一日現在では十七の国・地域を挙げております。

 また、課税逃れの総額については、民間団体で独自に公表しているものの、政府としては、正確な数値は持ち合わせておりません。

笠井委員 これらのタックスヘイブンを、一体何年ぐらいまでに、どれだけ解消しようということになっていくんでしょうか。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 現在のOECDのリストによりますグレーリストに入っているものが、過般のG20でも話題になりました。これを受けまして、その枠組みをつくっていこうということで、昨年の九月にも確認がとられています。

 したがいまして、少なくとも、このグレーリストに入っている国々と相互に租税条約を結んでいくということは当局としても取り組んでいくわけでありますけれども、何分、相手のある話でありますので、このグレーリストからホワイトリストに上がるためには、与件として十二カ国で条約を互いに締約するという必要がありまして、この十二カ国に我が国が入るかどうかということも、当然、相手が判断される面もございますので、日本の場合はホワイトグループに入っておりますので、そういう意味では、今後の計画全体については、一つの目安として、先ほど早川委員にお答えいたしましたとおり、二〇一四年の前半をめどに作業をしていきたいと思っていますが、このグローバルフォーラムの枠組みが互いにピアレビューするということでありますので、双方で確認し合っていく。何分、相手のあることでございます。

笠井委員 では、財務省に引き続き伺いますが、ことし、アメリカ系のシティバンクとスイス系のクレディ・スイス証券の元幹部らが、所得税法違反、つまり脱税容疑で東京地検に告発されました。元幹部の脱税額は、それぞれ三千万円、一億三千万円と巨額であります。両方の事件の手口も共通して、自社株購入権、ストックオプションを利用して莫大な資金を工面して、海外のプライベートバンクを通じて資金運用していたということでありますが、なぜプライベートバンクを利用した租税回避、脱税という問題が多発するというふうに見ておられますか。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 まず、御指摘のあったクレディ・スイスということでありますけれども、これは報道されているわけでありますけれども、当局といたしましては、個別の案件についてはそれこそ守秘義務がございますので、租税条約に基づいて情報交換を互いにしていく上で、この場でこのクレディ・スイスの個別についてコメントすることは差し控えた上で、そもそも、なぜそういうことが起きるかということでありますが、一つには、やはり、所得を把握されたくないと思っておられる方々がいるんだろうということが一つと、他方で、先ほど御指摘のありました日本の法人税の高さがゆえに、実効税率の高さがゆえに、納税先をみずから選択される方も当然いらっしゃるでしょうし、いろいろな理由から租税回避、つまりはタックスヘイブンというものがツールとして使われているんだろうということがあろうかと思います。

 ただ、こういった案件をよく考えますと、やはり、それぞれ皆さんがみずからの所得をいかに知られたくないかという思いが当然、法人、個人問わずある限り、この問題は引き続くんだろうというふうに思っておりますので、租税条約を結んだ上で、締約、発効させた上で、いかに実のあるものにしていくかということだと思っております。

笠井委員 今、最後のことにかかわりますが、やはり顧客情報の秘匿性という問題もあるんだろうと思うんですが、スイスのプライベートバンクの口座は、口座を番号だけで管理するという、ナンバーアカウントというふうに呼ばれて、顧客情報の秘密保全が図られていることが広く知られているわけです。

 一般論として伺いますけれども、こういうナンバーアカウントと呼ばれる銀行の秘密口座についても、この議定書に定める情報提供の対象にはなるんでしょうか。いかがですか。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 対象になります、という前提です。その上で、やはりこの条約のみそは、これまで、自国の課税目的ではない場合、あるいは銀行秘密と言われるもの、こちらについては情報公開をする義務がなかったんですね、あるいは拒むことができた。このたびの第二十六条の改正によりましてそれを強制力をもって求めることができるということでありますので、効果が期待できるものだというふうに承知をいたしております。

笠井委員 証券取引等監視委員会、お越しいただいていると思うんですが、伺いたいと思いますが、海外のプライベートバンク口座とタックスヘイブンを利用した犯則事件でありますけれども、過去何件、摘発なり告発をしているでしょうか。

大森政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月、シンガポールのプライベートバンク口座を利用した借名のインサイダー取引を東京地検に告発しておりまして、現在のところ、この一件でございます。

笠井委員 証券監視委員会は、上場企業がタックスヘイブンに設立したSPC、特別目的会社、特定目的会社を増資引受先として、そこを経由した増資実行の実態把握の強化に取り組んでいるということでありますが、それでは、増資に関係する犯則事件についてはこれまでに何件を摘発しているでしょうか。

大森政府参考人 海外のSPCを引受先とする第三者割り当て増資につき、金融商品取引法あるいはその前身の証券取引法違反の不公正取引として告発した事案は、残念ながら、現在までのところございません。

笠井委員 とにかく、一件、ゼロ件ということで、国際的な株式売買取引増加に伴う国際課税の適正化という国際的規制・監督強化の要請からしても、今後も大丈夫かと言わざるを得ないことだと思うんです。その点では、やはり取引の調査というのはマンパワーに支えられている問題が大きいと思います。

 そこで伺いたいと思うんですが、アメリカのSEC、証券監視委員会は、職員が三千五百名。インサイダー取引に伴うプライベートバンクとタックスヘイブンを利用した脱税事件の告発も実際やってきていると思うんですけれども、私は、今、国際的要請にこたえるためにも、日本の陣容の強化が求められていると思うんです。証券監視委員会、実際いろいろやられてきていて、大変だな、苦労されていると思うんですが、その点の見解はどのようにお持ちでしょうか。

大森政府参考人 御指摘のとおり、国境を越える案件がますます拡大する中で、海外の当局と連携し的確に対応する上で、私ども監視委員会の人員の増強あるいはノウハウの向上といった必要な体制整備に努めてまいりたいと考えております。

笠井委員 現在、監視委員会は六百七十四名と伺っておりますので、これは本当に大事な課題になっていると私は痛感いたしております。

 財務省に伺いますが、日本の歳入への影響という点でありますけれども、富裕層や多国籍企業等のタックスヘイブンの乱用または課税逃れに近い行為によって一体どれぐらいの税収が失われているというふうに推計されているんでしょうか。

古本大臣政務官 お答えいたします。

 これは、実態が把握できないから租税回避されているわけでありまして、残念ながら、その実態は把握をいたしておりません。

笠井委員 推計数値もない、言えないのは、なかなか問題だと私は思うんです。

 〇七年、企業によるタックスヘイブンの特定外国子会社の留保所得の申告漏れでも四百八十一億円で、個人の海外資産に関連した相続税の申告漏れは三百八億円という数字なんかもありますから、これはきちっと、やはりそういう点では推計は少なくともする必要があると思うんです。

 では、伺い方を変えますが、アメリカでも、税収確保のために、国際課税強化ということで、多国籍企業や富裕層等に対する課税状況の点検と公表を行っております。この視点で日本について伺いたいんですが、単年度ごとで日本の多国籍企業が国外の事業で獲得した利益総額、それに対する法人税総額、実効税率というのは、それぞれどのようになっているでしょうか。

古本大臣政務官 日本の多国籍企業のことを言っておられますか。(笠井委員「そうです」と呼ぶ)日本の多国籍企業の課税権は、それぞれ、源泉地課税になっているところはその当該地で納税をなさる、そして、内国法人法の適用をされるところについては当然に日本の法人税なりが適用されているということでございます。

笠井委員 私、これは事前にもレクをお願いして、この点を伺いますからということで申し上げているので、利益総額、それから法人税総額、実効税率というのが、これは、ないならない、数字がないとかということでもいいんですが。質問通告してあるんですがね。

鈴木委員長 すぐ答えられますか。

古本大臣政務官 失礼いたしました。

 我が国企業の海外子会社が海外で納付している法人税の総額については、把握していないということでございます。

笠井委員 アメリカを見ますと、オバマ大統領が就任した四カ月後に、ホワイトハウスのプレスリリースで、二〇〇四年にアメリカの多国籍企業が国外の事業活動で獲得した七千億ドルの利益に対する連邦税は百六十億ドル、実効税率は二・三%であったと公表しているわけでありまして、アメリカでは公表できる、やっているわけです。

 一方、日本の姿勢というのは、私、率直に申し上げて情けないなと思うんですけれども、そうした数値公表に対する姿勢というのがやはり問われると思うんですけれども、どのように感じていらっしゃいますか。

古本大臣政務官 一つに、仮に日本がそういったタックスヘイブンと言われる租税回避地として選ばれているのであれば、そのような御指摘も一部当たるのではなかろうかと思いますけれども、少なくとも日本についてはそういう実態にはない。

 そういう中で、国際社会の中にあって、G20あるいは先ほどのグローバルフォーラムの枠組み等々をどうやって使っていくかという議論になるわけでありますが、その際に、今、日本としてでき得ることは全力を挙げて取り組んでいる、こういうことでございます。

笠井委員 アメリカでできて日本でできないということのお答えにはなっていないというふうに私は思うんですね。そこはやはりきちっとやっていただきたいと思います。

 きょう質問してまいりましたが、結局、富を持つ者、運用する者に対する課税強化がおくれている。一方では、私もかつて参議院の大蔵委員会、それからその後は財政金融委員会ということでありましたが、そこでも質問をやったことがありますけれども、社会的に弱い中小零細企業経営者やまじめな納税者に対する過酷な徴税攻勢が行われてまいりました。その点では、善良な納税者の権利を守る納税者権利憲章が必要であるということを痛感するわけです。

 民主党も、納税者権利憲章の制定を政策に掲げておられますけれども、その検討状況はどうなっているでしょうか。

古本大臣政務官 平成二十二年度税制改正大綱にも記載をいたしました。閣議決定いたしております。「納税者の税制上の権利を明確にし、税制への信頼確保に資するものとして「納税者権利憲章(仮称)」を早急に制定します。」こういうことを受けて、現在、政府税調の中に納税環境整備に係るPTを設置いたしまして、議論を始めているところでございます。

 委員御指摘の観点で申し上げれば、G7の中で納税者権利憲章を持っていない国は、既にもうドイツと我が国だけになってきているという状況でございますので、これは早急に取りまとめたいということであります。

 なお、その際に、OECD基準によれば、納税者憲章とは、納税者の税務に関する権利義務、これをともにわかりやすい言葉で要約し、かつ説明して、こうした情報を多くの納税者に周知させ、理解させようとする試み、このように定義されておりますので、権利と同時に義務、これをあわせて取り組んでいかなきゃならないというふうに思っております。

笠井委員 最後に、時間になりますので、大臣に一問だけ伺っておきますが、今回の四つの議定書そのものに私どもは賛成でありますが、やはり富を持つ者と持たない者に対する課税当局の対応の不公正さということを私は非常に感じます。

 そこで伺いたいのは、富裕層等が課税逃れを行う、しかも額がとてつもなく大きいということでは、課税の社会的信認が大きく損なわれるというふうに思うんですけれども、その点での大臣の基本認識を伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

岡田国務大臣 納税というのは、一つのルールに基づいて、法律に基づいて行われるものでありますが、そのルールはきちっと守られるべきというのは当然のことだと思います。

笠井委員 終わります。

鈴木委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とシンガポール共和国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とマレイシア政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とベルギー王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、所得に対する租税及びある種の他の租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とルクセンブルグ大公国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次回は、来る十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十一分散会


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