衆議院

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第6号 平成23年12月9日(金曜日)

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平成二十三年十二月九日(金曜日)

    午前九時三十八分開議

 出席委員

   委員長 田中眞紀子君

   理事 浅野 貴博君 理事 市村浩一郎君

   理事 菊田真紀子君 理事 長安  豊君

   理事 村越 祐民君

      相原 史乃君    泉  健太君

      小川 淳也君    大泉ひろこ君

      勝又恒一郎君    斉藤  進君

      斎藤やすのり君    阪口 直人君

      首藤 信彦君    橘  秀徳君

      玉木 朝子君    中津川博郷君

      中野渡詔子君    西村智奈美君

      萩原  仁君    浜本  宏君

      早川久美子君    松本 大輔君

      向山 好一君    本村賢太郎君

      山尾志桜里君    山岡 達丸君

      山口 和之君    山口  壯君

      笠井  亮君

    …………………………………

   外務大臣         玄葉光一郎君

   外務副大臣        山口  壯君

   外務委員会専門員     細矢 隆義君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月九日

 辞任         補欠選任

  小川 淳也君     向山 好一君

  勝又恒一郎君     橘  秀徳君

  首藤 信彦君     泉  健太君

  中津川博郷君     松本 大輔君

  中野  譲君     斉藤  進君

  浜本  宏君     玉木 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  泉  健太君     首藤 信彦君

  斉藤  進君     中野渡詔子君

  橘  秀徳君     山口 和之君

  玉木 朝子君     浜本  宏君

  松本 大輔君     西村智奈美君

  向山 好一君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  中野渡詔子君     斎藤やすのり君

  西村智奈美君     中津川博郷君

  山口 和之君     本村賢太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤やすのり君    中野  譲君

  本村賢太郎君     勝又恒一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 閉会中審査に関する件

 経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)(参議院送付)

 経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の質疑時間に入ります。

 着席してください。

 差しかえの方は手続を正式になさっていますか。(発言する者あり)はい。

    〔委員長退席、長安委員長代理着席〕

    〔長安委員長代理退席、委員長着席〕

    〔委員長退席、菊田委員長代理着席〕

    〔菊田委員長代理退席、委員長着席〕

田中委員長 この際、自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の残余の質疑時間につきましては後刻とし、浅野貴博君の質疑を許します。浅野貴博君。

浅野委員 新党大地の浅野貴博でございます。民主会派の時間三十分の枠をいただきました。

 本来であるならば、与野党そろって、この日本・ペルーEPA、そして日本・メキシコEPA改正議定書の審議がなされるべきでございますが、長安筆頭理事初め、大変理事の皆様御苦労なされ、そして田中委員長、苦渋の決断をなされ、本日の委員会の開会となりました。皆様の御努力によってこの委員会開催となったわけですが、やはり野党欠席の中で審議がなされるというのは不正常な形であると言わざるを得ません。私も理事の一人として、このような形になったことに責任を感じておる次第でございます。

 さはさりながら、我が国が抱えるさまざまな案件について遅滞なく審議を進めることも国会の責務でございますので、いただいた時間の中で堂々と質問に臨みたいと思います。山口副大臣、よろしくお願いいたします。

 日本とペルーのEPAについて、まず質疑をさせていただきたいと思います。

 改めまして、当EPAの意義につきまして、山口副大臣の御説明をいただきたいと思います。

山口副大臣 ペルーについては、豊富な資源あるいは高い経済成長、去年で八・八%でした、そういう意味でも非常に大事であること、それから、安定した自由主義的な経済政策を掲げる主要国の一つとして、我々は、さらなるビジネスチャンスの拡大が期待されるものと思っております。

 また、ペルーは近年、諸外国との経済連携を積極的に展開しています。我が国がペルーとの関係において他国に劣らない貿易環境を確保することが重要であることにかんがみ、ペルーとのEPAの締結交渉を行いました。

 本協定を通じて、両国間の経済関係、ひいては両国関係全体が一層強化されることが期待されております。

浅野委員 当EPAにおいて関税撤廃の対象とならない、いわゆる保護される品目には何がありますでしょうか。並びに、この当EPAにおける自由化率というのは何%になりますでしょうか。

山口副大臣 今お尋ねの、関税撤廃の対象とならないものは何かということです。

 それは、我々日本側の除外品目として、米、麦、牛肉、雑豆、砂糖、でん粉、それから一部の皮革、履物関連品目等が挙げられます。全体で九千三十品目、そのうち即時撤廃または段階的撤廃としなかったものは千九十品目ということで、自由化率は八七・〇%になります。

浅野委員 これは質問通告をしておりませんでしたが、政府はしきりに、このEPAも、そして与野党間で大変な議論を巻き起こしましたTPPに関し、質の高い経済連携という用語を使われておりました。当EPA、自由化率にして約八七%、質の高い経済連携に該当すると山口副大臣はお考えでしょうか。

山口副大臣 今、八七%ということを申し上げました。諸外国といろいろこのEPAを比べてみましたときに、私たち、十三のEPAを既に結んでいますけれども、現実には我々の八〇%台後半よりも大体高いところが多いようです。

 ちなみに、今、TPPのことを浅野議員から言及がありました。これは、どれほどその中で例外が認められるかどうかというのは、我々はまだ、実は交渉に入っていないから確たることは言えませんけれども、断片的な情報の中で出てくるのは、例えばアメリカがどういうことを言っているかということについて、例えばアメリカは二国間で、米豪の二国間のFTAを既に結んでいます。その中で、アメリカとしては百八品目の例外品目を既に持っている中で、例えば砂糖ですね、その中で、TPPでもそれをちょっと例外にしてくれというようなことも言っているやに伝わってきます。彼らは全体で一万品目持っていますから、そのうちの百八品目ということは約一%。ということは、一%が彼らの主張なのかどうかということが、今我々の推測です。

 私たちは九千品目持っていますから、その一%ということは九十品目、そういう意味では、この九十品目というものが、ひょっとしたら一つの基準になるかもしれない、そういうふうに考えています。そういう意味では、九十品目ということは、九九%の自由化率という形にその場合にはなるかと思います。

浅野委員 今回承認がなされれば、日本とペルーのEPAが発効するわけでございますが、今、我が国としてTPP交渉参加の前段階としての事前協議を始める、そういう段階にあると承知しております。

 言うまでもなく、ペルーは、現在TPP交渉を進めております九カ国の中の一カ国でございます。仮に、我が国が今後TPPの交渉に参加をし、TPPという枠組みに入った場合に、そもそもTPPは例外なき関税の撤廃、即時、段階的は別にせよ、すべての品目にかかる関税をなくすのがTPPの基本原則だと承知をしておりますが、TPPに我が国が参加した場合に、この八七%、一三%を保護した日・ペルーのEPAというものは、どのような取り扱いになるんでしょうか。この日・ペルーEPAとTPPの整合性というものは、どのようにとられるのでしょうか。

山口副大臣 TPPは今現在もちろん交渉中ですし、また、我が国が交渉に参加していない現時点で予断するということは非常に困難ですけれども、仮に我が国が参加する場合に、既存の二国間EPAとの協定の関係ということについては、これら諸国との間で協議を行うということになるのではないかと推察しています。

 いろいろな説があるようですけれども、例えば、二国間のものはスタンドするんだということも最初言われていましたけれども、でも、現実には、九九%なり非常に高い自由化率を目指すとなれば、それぞれの国においてやはり協議をして、できるだけ、どれをとってどれを外すかということが行われることになると思います。

浅野委員 日・ペルーEPAにおいて自由化の対象外とされた一三%の約千九十品目ですか、済みません、これも質問通告をしておりませんでしたが、なぜ関税撤廃の対象とならなかったのでしょうか。

山口副大臣 今まで、農産物を中心にとよく言われていますけれども、九百四十品目については、そういう自由化の対象になっていないわけですね。それで、このペルーの中では、この千余りの、自由化から少し外したということですけれども、それは、それぞれ九百四十品目を守りながら、そしてペルーとの関係で、さらに交渉した結果としてこういう形になりました。

浅野委員 我が国の国益を考えて、先ほど副大臣がおっしゃった米、麦、牛肉、雑豆、でん粉等の品目が保護の対象となったのだと思います。

 我が国の国益のためにTPPを進めるという言い方を野田総理もされておりますが、一方で、国益を考えて保護した品目をまた自由化の対象にしてしまうTPPというものが、どうも私には、我が国がこれまで結んできた二国間EPAとの整合性がとれるとは思えません。

 その中で、さらに質問を進めますが、一昨年の衆院選挙そして昨年の参院選挙、民主党のマニフェストとして、我が国の農業政策、特に貿易政策について、どのような目標を掲げておられましたでしょうか。

山口副大臣 二〇〇九年、私たちが戦った総選挙においてのマニフェストの書きっぷりについては、マニフェストの政策各論という、後ろでもって、「アジア・太平洋諸国をはじめとして、世界の国々との投資・労働や知的財産など広い分野を含む経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の交渉を積極的に推進する。その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。」という形でもって記述されています。

浅野委員 この両マニフェストの中で、TPPという文言が一度でも使われたことはありましたでしょうか。

山口副大臣 私もマニフェストを、もちろんずっとよく見ていますけれども、経済連携協定あるいは自由貿易協定という言及であって、TPPという言葉は、このときは使われていません。

浅野委員 今、副大臣に御説明いただきましたマニフェストの内容、私も質問主意書を出させていただいたので、その文言を、答弁書の中身を今持っておるんですが、アジア太平洋諸国を初めとして世界の国々との投資、貿易を活発化させる交渉を積極的に推進する、これは大いに必要なことだと思っております。その後段が非常に重要であって、「その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。」この文言が非常に重要だと思っております。ここの文言と、すべての関税をなくすという原則であり、また、農業にかかわらず、さまざまな日本の国内の、世界に誇るルールをも変えなくてはならないかもしれないTPPに入ること、この民主党が掲げた目標とマニフェストとTPP、どのような整合性がとれるんでしょうか。御説明をいただきます。

山口副大臣 御指摘の点、これは我々も去年、党でもってPTでいろいろ議論させていただいて、また最近もいろいろやりました。

 その中で、去年の十一月にまとめたいわゆる基本方針、包括的経済連携に関する基本方針、その中でもはっきり、我々民主党として、そしてその後の閣議でまとまった基本方針の中ではっきり書いたわけですけれども、まず、食と農林漁業の再生についてきちっとやっていく、その中で、バイもやるし、それから、アメリカとの関係ではTPPということになるかもしれないというようなことが書かれたわけです。

 それで、我々はその中で、三月の十一日に地震、津波、大きな原発の事故もありました。そういう中で、本当は六月に基本方針をまとめて、そして、それをまたしっかり熟成させて十月に行動計画をつくってということを考えていたわけですけれども、その間、ほぼ事実上停止したような格好で夏を迎えて、そして十月に、ある意味で相当ハイペースで、基本方針及び行動計画ということで、十月二十五日に、食と農林漁業の再生に関する基本方針・行動計画をまとめたわけです。

 そういう意味で、私は車の両輪だと思っています。一つには、この経済連携を進めていくことによって、世界の人、物、金、これを活用していく。だけれども、そのことによって食と農林漁業の再生というものができるだけ両立するようにという手当てをどう行うかということが、これからの我々の方向だと思っております。

浅野委員 私は、民主党所属の議員ではなく、民主党会派に所属をしている議員ですので、この間、TPPに関する議論を一歩離れた形で見させていただきまして、私も意見を述べさせていただきましたが、やはり民意を問う選挙において一言も言及がなされなかったこと、その後閣議決定をなされたということを今副大臣もおっしゃいましたけれども、選挙で国民の皆様に、これはどうですかと一度も聞かなかったことを、しかも昨年の参院選は七月に行われました、そのわずか三カ月後です。その後に急に持ってくるというやり方は、やはり、きょうここにいらっしゃる多くの民主党所属の議員の先生御自身も疑問に感じている方がいらっしゃると思いますし、国民の皆さんはなおさら、何で民主党は急にそんなことをやり始めるんだろうという疑問を感じていることと思います。

 そして、十一月十一日、野田総理は記者会見において、TPP交渉参加ではなく、それに向けた事前協議を始めるということをおっしゃいました。

 この事前協議、私なりに理解するならば、例えばTPPという枠組みに入ることが結婚だとするならば、交渉参加は婚約である、その前段階のおつき合い、交際を始めるものとして事前協議というものがあるのかなという理解をしておるんですが、これはつまり、交渉参加ありきではなく、事前協議の結果、これはだめだとなれば、我が国として交渉に入らないという選択肢をとることもあり得る、婚約ありきではない、そういう理解でよろしいでしょうか。

山口副大臣 先ほど浅野議員から、TPPがマニフェストにも書いていないという御指摘をいただき、また、そのことを私も確認したわけですけれども、現実にはこうだと思うんです。

 TPPという概念自体は、我々総選挙を戦ったときには、ある意味で我々も知らなかったわけですね。アメリカ自身の中でも、もちろんそういう議論はあったにせよ、オバマさんが総選挙の後、二〇〇九年の十一月か十二月か、サントリーホールで講演を行われたときに初めて言われたというのが我々の認識です。その中で、彼らも九十日間の議会との時間を経て、そして入っていくと。

 他方、だからそういう意味で、二〇一〇年の春ぐらいからアメリカの交渉というのはずっと来たわけですから、それで我々の場合、それを受けて、では、アメリカとFTAということがマニフェストには書かれてあるわけですね。書きっぷりについて総選挙の前に少し修正もありました。書かれていた。

 では、二国間のFTAをアメリカが受け入れるかというところになると、今現実にアメリカはTPPという格好で意識を集中させて、二国間の新しいFTAというのは申しわけないけれどもやりませんと。韓国は最初からやっていたから間に合ったけれども、日本の場合、TPPという格好で議論をするかしないかというところが現実だと思うんです。

 その上で、今、浅野議員からいろいろな比喩もありましたけれども、私自身は、総理の言われたとおり、交渉参加に向けて関係国と協議する、ここに尽きていると思うんです。それをどういうふうにとるかというのは、いろいろな解釈があったにせよ、そこでもってきちっと議論していく、議論というか、協議していくということに尽きると思います。現実には、どういう国からどういう話が来るかどうかというのは全くわかりません。そういう意味で、私自身は、事前にいろいろと仮定のお話を今余り確定的にするべきではないかなというふうに思っています。

浅野委員 それでは、事前協議の場において、そしてその後、交渉に参加した場合において、我が国としてさまざまな品目がございます。そして、農業にかかわらず、いろいろなルール、仕組みがあります。これだけは絶対守るんだと守るべきものの優先順位をつけて、最低限ここまでは守る、それが聞き入れられなければ我が国として国益を考えてTPPに入ることはしない、そのような方針、戦略というものをお示しいただけますでしょうか。

山口副大臣 今、浅野議員のおっしゃっておられることは、私も基本的には共有しているつもりなんです。というのは、慎重に進めなければいけない、絶対に前のめりになってはいけないというふうに私自身も思っていますし、玄葉大臣ともよくそのことは打ち合わせして、また外務省のスタッフの人ともよくそれは打ち合わせをしております。

 その中で、では、どういうふうな戦略でもってやるべきか。浅野議員は多分、きちっとした戦略を持って、前もってそういうことをはっきりさせて、ボトムラインをしっかり、はっきりさせてやった方がいいという御趣旨だと受けとめますけれども、先ほど申し上げたように、例えばの仮定ですけれども、一%というものがあるとすれば、では九十品目、どういうふうにその九十品目をまとめるかということが、これからひょっとしたら大事になるかもしれないと思っているんです。

 例えば、米でいえば三十四品目というふうに数えられているんですね。それから、小麦であれば四十三品目というふうに数えられているんです。それから、牛肉でいえば五十一品目。私の地元は、実は皮革が日本一大きいところなんです。それが五十五品目。では、米と小麦だと、三十四プラス四十三は七十七、これだったら九十に入るかもしれないなと。ところが、牛肉の五十一を入れたらはみ出るし、ましてや皮革を入れたらもっとはみ出るし、では、どこをどうとるのかというのが、これから国内調整がすごく大変だと思うんです。では、三十四品目の米のうち、全部入れるのか、あるいはこことここかなとか、いろいろな議論があると思います。

 そういう意味で、これからの国内調整を経て、我々、基本的な方針をしっかり持ちながら、そういう交渉に臨みたいと思っています。

浅野委員 今、山口副大臣から具体的な品目の種類も挙げてお話をいただきましたけれども、はっきり言って、そのようなお話をもっと政府が国民に、国民の代表たる我々にもっと示してくだされば、TPPに対する不安というものも解消できていくと思うんです。

 私は、仮にTPPにどんな戦略を持ったとしても、一%の品目が自由化の対象から外されたとしても、そもそもこのものには乗れないと思っておりますので、慎重でもなく、反対でもなく、大反対のスタンスをとるものなんですが、情報も提示しない中に、前のめりになってはいけないと今副大臣がおっしゃいましたけれども、少なくとも前のめりになっていないと認識している国民はいないと思います。回りくどい言い方になってしまいましたが。

 私の質問主意書に対する答弁書でも、先ほど副大臣にお聞きしたような、どんな方針、戦略を持って臨むのかという質問に対する答弁は、交渉に入っていないから確たる方針、戦略を示せないという答弁なんです。もちろん、交渉に入って、その場で初めてわかることもあると思うんです。やってみなきゃわからないこともあると思います。刻一刻と情勢は変わります。

 ただ、最低限、先ほど副大臣がおっしゃったような、では、これだけある中でどれを守るか、どれを自由化とするか、そのような細かな方針、戦略を示さない中で進むことはやはりあってはならないと思っております。交渉に入っていないから方針、戦略もないというのは全く逆であって、現段階で最低限決められることがあるのであれば、これだけのこういう方針を持って臨みます、戦略を持って臨みます、今我々はこれだけ考えております、だからTPPの交渉に入らせてくださいと国民に説明するのが筋だと思っております。

 我々政治家も、政治家になりたい、胸に議員バッジをつけたい、だけれども具体的な公約、政策、自分自身の考えはありません、だけれども政治家になりたいんですと言っても、票を入れてくれる有権者はいないと思います。ですから、くれぐれも、順番をしっかりとして、お間違いのないように進んでいただきたいと思います。まあ、私は交渉参加も反対なんですけれども。

 私は釧路市の生まれで、実家は今酪農をしております。私の実家に限らず、地域の皆様、大変今不安に感じているんです。ただ、国際貿易というものに反対している人は一人もおりません。私の実家も、さまざまな機械を海外から輸入して経営をしております。農家こそ自由貿易の恩恵を受けて経営ができております。

 一次産業に、農家に限りません、漁業の方もいます。一次産業、地域に、北海道に住む人間の素直な気持ちとしては、我々は何でもかんでも国に守ってくれと言う気はない、さまざまな補助金をいただいて、もしかしたら他の産業よりも優遇されている部分があったかもしれない、それは自覚をしております。さらなる経営努力が必要だ、自分の身を切る覚悟も必要だ、それは自覚をしております。ただ、最低限、我々が努力をして、頑張っていける土台までは奪わないでほしい。これが一次産業に従事されている方々の偽らざる思いだと思います。そのことを山口副大臣には、生意気を申すようですが、しっかりと受けとめていただき、今後の交渉方針にぜひとも生かしていただきたいと思います。

 続きまして、きょうは日本・ペルー、日本・メキシコのEPAが主要議題でございますが、北方領土問題について質問することをお許しいただきたいと思います。

 まず冒頭、御礼を申し上げたいと思うんですが、十二月五日、山根副大臣が、十二月六日に無事社会復帰を果たしました我が党の代表、鈴木宗男に関しまして、日本の国益にかなうことであれば、どなたの協力もアドバイスもいただきたいというように思っております、そういう意味で、鈴木宗男元議員についても、今までロシアとの関係が非常に強くあったということは承知をいたしておりますし、いろいろな人脈があるようには聞いております、もしいろいろなアドバイスなりなんなりいただけるのであれば、鈴木元議員のみならず、党派を超えた国益にかなうアドバイスなりをいただければ、どなたにでもいただきたいというような思いでございます、このようなお話をいただきました。それを、ロシアの国営ラジオ放送、ロシアの声というものが、「日本 鈴木宗男氏 釈放」という見出しで、山根副大臣がこのように言っていると大変好意的な報道をしてくださっております。

 言うまでもなく、我が党の鈴木宗男代表は、さまざまな報道が過去になされて、いろいろな権力闘争のわなにはめられた面がありましたけれども、日本とロシアの連携を強化し、それを日本の国益に生かすという思いで活動したという点では、だれにも引けをとらないものであったと私自身考えております。

 そこで、山口副大臣にお聞きをしたいんですが、先日、五日から六日にかけて、ロシアの下院選の結果が出ました。与党の統一ロシアですかが三百十五から二百三十八議席に減らすという大敗を喫したわけでございますけれども、この選挙結果について、外務省として、政府として、どんな見解をお持ちでしょうか。

山口副大臣 ロシアの人たちが選んだその結果について、私が今、それがいいとか悪いとかと言う立場でもないので、その辺は、済みません、答弁を差し控えさせていただければと思います。

浅野委員 この選挙結果について、例えばアメリカのクリントン国務長官は、ドイツのボンで記者会見した際に、選挙管理のあり方に深刻な疑念を抱いていると。アメリカの外務大臣がロシアの国政選挙の結果について疑問を呈したわけでございます。ほかにも、欧州の、ヨーロッパの議会の監視団は、完全に民主的だったとは言えない、そういうコメントを出されております。

 我が国のスタンスとして、公然とその選挙結果に疑問を呈した欧米とは一線を画す、そういうことでよろしいでしょうか。確認を求めます。

山口副大臣 アメリカあるいはOSCE等の欧米諸国あるいは機関が行っている評価については、私も承知しています。

 我が国から派遣した選挙監視団、二人の方に行ってもらったわけです。その方々、お一方は上野俊彦さん、上智大学の先生、それから池上真一郎さん、総務省の選挙課の方に行ってもらったわけです。その報告の中では、監視を行った範囲では全体として投開票は平穏に行われたこと、他方、電子投票システムの使用方法が周知されていない等の技術的な問題もあったとの報告は受けております。日本政府としては、今後とも事態を注視していくという言い方が一番適切だと思います。

浅野委員 では、技術的な問題は見受けられたにせよ、堂々と不正があったんじゃないかという欧米がしている見方とは我が国は違うということですか。再度確認を求めます。

山口副大臣 よくアメリカは、ほかの国の国内的なことにいろいろコメントする傾向があるとは思います。戦後からずっと見ている限り、それは今でもいろいろな意味でしていることはあるわけですけれども、我々日本としては、必ずしもそういう傾向を持たずに今までずっと対応しているし、この件についても、現実にその国の内政について、この監視団の方々も、正直、モスクワ州というところの一部しか見られていないわけですから、余りその一部のことでもって全体を決めつけるというのも非常に難しいところもあると思うので、ここはやはり物の言い方は相当気をつけた方がいいかなと思っています。

浅野委員 わかりました。ありがとうございます。

 時間も迫ってまいりました。では最後に、十一月二十六日、民主党国際局長の任につかれています渡辺浩一郎代議士がモスクワを訪れまして、プーチン首相に、野田総理というよりも野田民主党代表の親書を渡されていると思います。その親書の内容及び親書を手渡しに行かれた目的は何だったのか、簡潔に御説明を願います。

山口副大臣 民主党の国際局長の渡辺浩一郎衆議院議員が、統一ロシアから我々民主党に党大会への参加招待があったことを受けて、民主党を代表して訪ロされたというふうに承知しています。党の話ですから、私が今ああだこうだと言うのも余り適当じゃないようにも思うんですけれども、渡辺さんから、民主党の国際局長として、党の代表として野田代表の親書を携えてきたということと、それからもう一つは、親書には政党間交流を進めていきたいという意向が書かれているという説明を伺っております。

浅野委員 来年の大統領選挙でプーチン首相が大統領に返り咲くことはほぼ確実視されているというのが、国際的な大勢の見方だと思っております。その意味で、このことについても日本国内でいろいろな見方があると思います。プーチンさんが大統領になれば北方領土の問題が進むんじゃないか、いや、プーチンさんが、だれがなろうが今は進まないんだ、いろいろな見方があります。ただ、私は、ロシアという国を強化する、その過程で日本という国との連携を強化することがロシアの国益にかなう、そういう認識をしておられるであろうプーチン首相が大統領になることは、我が国の抱える領土問題の一つである北方領土問題解決に向けて、一つの良好な環境になり得ると思っております。

 ただ、プーチン大統領誕生だけで北方領土問題が無邪気にそのまま進むとも思っておりません。これは質問通告しておりませんでしたけれども、我が国からのロシアに対する、特にプーチン氏に対する適切な働きかけが必要だと思っております。そういった意味で、我が国のロシアに対するさまざまな働きかけ、広報活動、タイミングをわきまえた、時宜を得たメッセージ、シグナルの発信というものが非常に重要になってくると思いますが、この点に関する副大臣の見解をお聞きして、質問を終えたいと思います。

山口副大臣 プーチンさんは昔、サンクトペテルブルク市の副市長のときに日本に来られて、そのときは私たち、正直、まだ無名の存在のプーチンさんと接したわけですけれども、非常に、この人はひょっとしたら相当大化けするのかなというふうに多くの人が感じて、それ以来、我々は注目してきているわけですね。また、お嬢さんも日本に対して、非常に気持ち、近いものを持っておられるようですし、そういう意味では、私たちももちろん事態の好転というものを願うものですから、そこはいろいろな前向きな気持ちでやっていきたいと思います。

 他方、日本政府として我々がどういうポジションかということについては、最大の懸案であるこの北方領土問題を解決するためにも精力的に取り組む、あるいは、ロシアがアジア太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係の構築に我々は努めていく、こういうラインというのは、だれがなってもそれは変わらないものですから、私たちは今までそうしてきたし、またこれからもそのように持っていきます。

 今、いろいろな意味でメッセージをどういうふうに伝えるかというお話、浅野議員から提案がありました。それは我々、政府と民間というふうに分けることができるとしたら、政府に対しては、もちろん政府間でのやりとりを通じて、この領土問題について、できるだけ静かな環境で交渉しようじゃないかということをやっています。あるいは、それ以外のところに、先ほどラジオ放送の話もありました。私は、そういうメッセージをどういうふうに伝えるかということに関しては、いろいろな機会、いろいろなツールを通じて、ラジオ放送も含めていろいろ考えていけばいいんだと思います。ぜひ、私たちのメッセージがきちっと多くの人に伝わるように考えさせていただければと思います。

浅野委員 ありがとうございます。

 山口副大臣は外交官の出身であられますし、外交交渉の機微の部分というのを十分御承知されていることと思います。TPPの問題、そして北方領土の問題、まさに我が国の国益をかけた、国民生活にかかわる問題でございますので、裂帛の気合いを持って交渉に当たられることを心から期待しております。

 私の質疑に続く人はだれもいないんですが、民主主義のルールでございますので、時間を過ぎましたので、質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

田中委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

田中委員長 速記を起こしてください。

 これより自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の残余の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、長安委員長代理着席〕

    〔長安委員長代理退席、委員長着席〕

田中委員長 これにて自由民主党・無所属の会、公明党、日本共産党、社会民主党・市民連合の質疑時間は終了いたしました。

 長安豊君。

長安委員 動議を提出いたします。

 これにて両件の質疑は終局されることを望みます。

田中委員長 長安豊君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日本・ペルー経済連携協定、日本・メキシコ経済連携協定改正議定書の両案に反対の討論を行います。

 まず初めに、本日の委員会が、臨時国会の最終日に、理事会において最終的に与野党の合意もなく開催が強行され、採決の上、本会議に緊急上程までされようとしていることに、厳しく抗議するものです。

 十月二十日に召集された臨時国会の会期は、五十一日間もあったはずであります。政府・与党がそれほど重要な案件というなら、落ちついた状況のもとでしっかりした審議を行う機会は、これまでに幾らもあったではありませんか。

 ところが、会期末のどさくさに、与党内からも異論が出て、採決を欠席する議員が相次ぐような原発輸出のための四つの原子力協定を強行した上、またも、会期末処理のための各委員会が一斉に開かれ、日程が窮屈で、与党の委員すら差しかえや出入りを繰り返さなければならない状況のもとで、どうしてしっかりした審議ができるでしょうか。

 相手国がある、国益を損なうなどと言って、こんなやり方で強行しようとすることこそ、対外的な信用も、国民の利益も損なうものと言わなければなりません。今からでも遅くない、採決、緊急上程の強行はきっぱり断念することを強く求めるものであります。

 国会承認を求められた両協定について言えば、たくさんの問題点があります。

 まず、両協定とTPPとの関係です。

 第一に、ペルーはTPP交渉参加国、メキシコは参加に向けて関心を示した国であります。日本とペルー、日本とメキシコのEPA本文には、それぞれ農林水産分野を含む関税表等の改正規定があります。この改正規定について、日本がTPPに参加した場合、両国との関係で、農林水産分野の除外、再協議対象、関税割り当て、削減品目の取り扱いはどうなるのか、我が国の農林水産分野の貿易政策に大きな悪影響を与えかねない問題なのに、政府、外務省の説明は判然としません。

 第二に、現在TPP交渉に参加している国のうち、日本とEPA協定を締結しているのはベトナム、ブルネイです。これらの国との関係で、日本がTPPに参加した場合、農林水産分野の除外、再協議対象、関税割り当て、削減品目の取り扱いはどうなるのか。さらに、TPPに参加していないが、我が国と二国間EPA協定を締結している国からも、関税撤廃ないし削減要求が出てきて、これに応じる可能性が出てきます。それが現実になるならば、我が国の関税が芋づる式に総崩れになるではありませんか。

 両協定そのものの内容で言うならば、日本・メキシコEPA改正議定書は、日本側のセンシティブ品目である牛肉、豚肉、鶏肉の関税割り当てを大幅に拡大し、関税のさらなる段階的削減措置を盛り込み、貿易輸入自由化圧力を加えていく志向が明瞭であります。

 また、日本・ペルーEPAにおける農林水産分野の譲許では、輸入実績があるHSコードを中心に関税撤廃あるいは段階的関税削減措置をとり、輸入実績のないHSコードは、今まで我が国が締結したEPAの譲許表を参考にしながら同様の措置をとっており、こういうやり方も容認できません。

 東日本大震災の本格的復興に向けて、被災地はもちろんのこと、地方経済の活性化の取り組みと実行が求められている今、政府が、今回の二つのEPAで農林水産分野のセンシティブ品目の関税自由化路線を打ち出し、突き進むことは、到底容認できません。

 以上、反対討論とします。

田中委員長 これにて両件に対する討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより採決に入ります。

 まず、経済上の連携に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、経済上の連携の強化に関する日本国とメキシコ合衆国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

田中委員長 この際、御報告いたします。

 本会期中、当委員会に付託されました請願は七種二十六件であります。各請願の取り扱いにつきましては、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承願います。

 なお、お手元に配付いたしましたとおり、本会期中、当委員会に参考送付されました陳情書は三件、また、地方自治法第九十九条の規定に基づく意見書は十六件であります。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。

 国際情勢に関する件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合の諸件についてお諮りいたします。

 まず、閉会中、委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、派遣委員、派遣期間及び派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時十一分散会


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