衆議院

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第5号 平成25年11月13日(水曜日)

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平成二十五年十一月十三日(水曜日)

    午前九時二十分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 松本 剛明君

   理事 上田  勇君

      石原 宏高君    大西 英男君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    島田 佳和君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      藤丸  敏君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    簗  和生君

      小川 淳也君    後藤  斎君

      長島 昭久君    阪口 直人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      杉本かずみ君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        岸  信夫君

   外務副大臣        三ッ矢憲生君

   厚生労働副大臣      佐藤 茂樹君

   総務大臣政務官      松本 文明君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   文部科学大臣政務官    冨岡  勉君

   厚生労働大臣政務官    赤石 清美君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  北崎 秀一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 岩渕  豊君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 佐々木克樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長谷川浩一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       岡村 善文君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    上村  司君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           後藤  収君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十三日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     大西 英男君

  河井 克行君     簗  和生君

  玄葉光一郎君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     藤丸  敏君

  簗  和生君     河井 克行君

  後藤  斎君     玄葉光一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     あべ 俊子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び障害者の権利に関する条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長谷川浩一君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官下川眞樹太君、総合外交政策局長平松賢司君、中東アフリカ局アフリカ部長岡村善文君、領事局長上村司君、内閣官房内閣審議官北崎秀一君、内閣府大臣官房審議官岩渕豊君、大臣官房審議官佐々木克樹君、経済産業省大臣官房審議官後藤収君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東郷哲也君。

東郷委員 自民党の東郷哲也でございます。

 まずは冒頭、先般のフィリピンの、台風ヨランダにおける、レイテ島で甚大な被害をもたらしましたことに、お亡くなりになられました方に対して心からお悔やみと、そしてお見舞いを申し上げたいと思います。今もなお救援に当たっておられます現地におきまして、また、日本政府の支援の要請を冒頭させていただきたいと存じます。

 まず、社会保障に関する日本国とハンガリーとの間の協定について。

 これは、八月二十三日、ブダペストにおいて、岸田文雄外務大臣とハンガリー外務大臣との間で署名されたものであります。

 内容としては、現在、日本の企業等からハンガリーに一時的に派遣される被用者は、原則として日・ハンガリー両国の年金制度及び医療保険制度へ加入することとなるため、社会保険料の二重払いの問題が生じておりますが、本協定は、この問題を解決し、五年以内の期間を予定して派遣される被用者等は、原則として派遣元国の年金制度及び医療保険制度にのみ加入すればよいことになるというものであります。また、両国で保険期間を通算してそれぞれの国における年金の受給権を確立できるということでございますが、今後、この協定により企業及び駐在員等の負担が軽減されることから、日本、ハンガリー両国の経済交流及び人的交流が一層促進されることが期待されるもので、国会としてもこの協定締結の承認をぜひ行うべきであると考えております。

 こうした社会保障協定は、ハンガリーのほかに、現在、十六カ国との間で署名しているが、経済のグローバル化の進展に伴い、我が国の対外直接投資は拡大しており、海外在留邦人もアジアを中心に増加しているものであり、このような状況の中で、企業の国際的な事業活動を支える法的基盤整備の一環として社会保障協定の締結を一層推進することが、人的交流や経済交流のさらなる促進という観点からも大変重要になってくるものであると考えております。

 これまで欧米先進国を中心に協定締結が進められてまいりましたが、今後は、世界の工場さらには消費市場として多くの企業を引きつけているアジアを中心とする新興国とこの協定締結が重要になってくるのではないかな、こんなふうに考えておりますが、これら諸国の中において、従来、社会保障が未成熟であるとか、あるいは外国人にのみ適用されてきた、こういった中で、経済の発展に伴い制度整備が進んだ結果、今述べてきたような二重負担等の問題が生じつつあります。

 そうした中で、政府として、こうした問題意識から、現在政府間交渉を進めているフィリピン、中国などアジア諸国のほかに、既に申し入れ等が寄せられているポルトガル、フィンランド、メキシコ、トルコ等の間で速やかに交渉を開始し、早期締結を目指していくべきではないか、こういうふうに思っております。

 そうした中で、とりわけ中国については、米国に次いで長期滞在者も多く、我が国の企業も大きな負担となっておりますが、中国との政府交渉を今後どのように進めていくのか、御答弁を願いたいと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、近年、国際社会で影響力を増している特に新興国、中でもアジア諸国との人的、経済的交流を推進する観点から、この社会保障協定の締結は有益なツールの一つであるというふうに考えております。

 一方で、これも委員から一部御指摘がございましたが、社会保障制度は各国によって大分違っておりまして、東南アジアだけ見てみましても、例えばインドネシアですと外国人に年金等の加入義務がないとか、あるいはマレーシアについては外国人は対象外であるとか、いろいろ制度が異なっております。

 我々としては、今把握しておりますのは、韓国、フィリピン、それからインド、この三カ国を除きまして、欧米諸国との間で相当数の社会保障協定を締結している国は存在していないというふうに承知しておるところでございます。

 ただ、我が国としては、アジアを中心とする新興国との間で、社会保障制度の成熟度、これは制度もいろいろ変わっていくと思いますので、我が国にとってのニーズ等を見きわめながら、社会保障協定の締結の可能性について検討していきたいというふうに思っているところでございます。

 その中で、中国につきましては、平成二十二年十月に中国の社会保険法が公布されたことを受けまして、平成二十三年の十月から政府間交渉を開始しておるところでございまして、これまで三度にわたって交渉を重ねてきております。我々としてもこの中国との関係は早く決着を見たいというふうに思っているわけでございますけれども、なかなか時間的余裕もない、それと、先方が複数の国と並行してこの関係の協議を行っているということもあって、なかなか時間がとれていないというのが実態でございます。

 また、それ以外にも、これまで申し入れがあった国につきまして、私どもとしては、一つは、相手国の社会保障制度における一般的な社会保険料の水準、それから二番目に、相手国における在留邦人及び進出日系企業の具体的な社会保険料の負担額、さらに、我が国の経済界からの具体的な要望の有無、また、我が国と相手国との二国間関係、さらに、我が国と相手国との社会保障制度の類似性、そういった点をもろもろ総合的に考慮した上で、優先度が高いと判断されるものから順次締結交渉を行っていく所存でございます。

東郷委員 副大臣、御答弁ありがとうございました。

 中国は、経済交流としては日本と大変密接な関係にありますので、ぜひ、人口も多いことでありますし、こういった中で、しっかりと締結に向けて交渉を進めていっていただきたいと思います。

 続きまして、障害者の皆様の環境をめぐって、障害者に対する差別の撤廃、根絶が長年の課題となっておりましたが、障害者差別解消法などの成立によって、我が国においても障害者権利条約の実施に先立つ国内法の整備が一通り終わり、これから次の批准へとステップしていくわけであります。

 条約の一番大事なポイントは、締約国に合理的配慮を義務づけたことではないかと思います。この合理的配慮というのは、端的に表現すれば、障害者が必要とする支援は社会が準備すべきだという点にあります。

 例えば、車椅子の人の就職先にエレベーターを設置するのは、障害者側ではなくて会社側が設置するというようなミッションでありますけれども、本条約で、第二条、合理的配慮の否定が障害者差別に当たると定義した上で、今回、教育と雇用分野で配慮義務を明示的に課しております。

 そうした中、こうした理念の実現には相当のコストもかかるということが予測されますから、財政上の課題も多々あるのではないかなと思います。

 こうした中で、国内の障害者施設の関係予算の概要はどのようになっているのか、また、本条約を批准した後、障害者の権利の実現のために外務省としてはこれからどのような取り組みをしていくのか、所見をお聞かせください。

岩渕政府参考人 内閣府が把握している平成二十五年度の関係省庁の障害者施策予算については、障害者の生活支援、保健医療、教育、雇用等多岐にわたっておりまして、障害者施策関係の額を特定できるもののみの合計で一兆四千五百三億円となっております。

平松政府参考人 先生から外務省としての取り組みについて御質問がございますので、簡単にお答え申し上げます。

 本条約の締結につきましては、国会の御承認をいただいた後、可能な限り速やかに締結の手続を進めたいと考えております。

 本条約の締結後は、関係省庁とも緊密に連携いたしまして、障害者権利委員会に対する国別報告の作成や、同委員会の提案、勧告への対応など、本条約の効果的な実施に努めてまいりたいと思っております。その際には、当然のことですけれども、障害者の方々と緊密に意見交換をしていきたいと思いますし、障害者の皆様の権利実現、向上に努めたいと思っております。

 また、条約の三十二条に定められておりますけれども、国際協力のための措置というのがございます。これにつきましては、我々はこれまでも、国連の障害者に関する決議、行事等に積極的に参加をしておりますし、無償協力、技術協力等の支援も行ってきております。また、市民社会と連携して、日本NGO連携無償資金協力、草の根・人間の安全保障無償資金協力等を通じまして障害者関連の事業を実施してきておりますので、引き続きこれらの取り組みを継続してまいりたいというふうに考えております。

 以上です。

東郷委員 御答弁ありがとうございました。

 こうしたバリアフリー、ノーマライゼーションの社会を実現するよう、速やかに取り組んでいっていただきたいと思います。

 次に、アフリカについて少し質問させていただきたいと思います。

 ことし六月に横浜で行われましたTICADでは、私も、AU議連の一員として、アフリカ各国の首脳や大臣、国会議員らと意見交換をする貴重な機会をいただきました。その後もアフリカとの交流に取り組んでまいりましたが、先月、西アフリカのトーゴ共和国を訪問し、ニャシンベ大統領に安倍総理の親書をお届けしたほか、首相や国民会議の議長らと、アフリカの抱えるさまざまな問題について意見交換をしてまいりました。

 そこで、このTICAD5、躍動のアフリカと手を携えてをテーマに大成功裏に終わりましたけれども、今後、政府として、アフリカの成長のために、民間からの投資拡大を含めて五年間で三・二兆円の包括的支援をしていくことを表明されておりましたが、具体的に今後どうしていくのか。

 そして一方で、ことし一月にアルジェリアのテロ事件によって日系企業が攻撃を受け、邦人が十人亡くなるという、大変まだ記憶に新しいことでございます。そして、最近では九月に、治安面で比較的安定していると言われていたケニアの首都のナイロビで銃の乱射事件があって、こちらの方は、犯人グループ、実行犯を含めて約七十人の方が亡くなった、こういった事件が起こっております。

 日本の企業がアフリカに進出していく上でも、とりわけ北アフリカの治安の安定化というのは必要不可欠なものとなってくると思いますが、日系企業が進出する際、こうした問題について具体的にどう考えているのか、まずお答えをいただきたいと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 アフリカに関心を寄せていただきまして、本当にありがとうございます。

 TICAD5については、委員御指摘いただきましたように、安倍総理から、我が国の支援策として、今後五年間でODA約一兆四千億を含む最大三・二兆円の官民の取り組みでアフリカの成長を支援するということを表明したわけでございます。

 具体的な支援策としましては、官民連携を通じた貿易・投資を促進していくという観点から、インフラ整備のための約六千五百億円の公的資金の投入、それから安倍イニシアチブを含む三万人の産業人材育成を打ち出したところでございますが、そのほか、十カ所の戦略的マスタープランの策定、十カ国に対する投資アドバイザーの派遣等を実施することとしております。また、人間の安全保障を推進するための保健、農業及び教育分野への支援、あるいは平和と安定のための支援等、幅広い分野における支援措置を実施していくこととしておるところでございます。

 それから、治安の関係の御質問も頂戴いたしました。

 先般のアルジェリアでの事件を受けまして、外務省としては、海外に展開する日本企業や邦人の安全確保に対し、より一層の注意を払って取り組んでおるところでございます。

 これまでも、治安、テロ情報に関するスポット情報、広域情報の外務省及び在外公館ホームページへの掲載でございますとか、在外公館の在留邦人向けお知らせメールの発出、外務本省での海外安全官民協力会議、在外公館での安全対策連絡協議会、在外邦人・企業向けセミナーの実施により、在留邦人への情報提供を行ってきておるところでございます。

 さらに、アルジェリア事件後の政府検証委員会、与党・在外邦人に関するPT、有識者懇談会の各提言を踏まえまして、このような取り組みをさらに強化して、迅速かつきめ細やかに日本企業や在留邦人への情報発信、情報共有を行っているところでございます。特に、中東、北アフリカ地域進出企業を対象とした官民集中セミナーをこれまで三回開催しておりまして、官民連携体制を強化しておるところでございます。

 何といいましても、当該国における治安の安定といいますか、これが日本企業の進出にとりまして前提条件になるわけでございますので、私どもはこれを大変重視しておりまして、今後とも、これらの提言、外務大臣のもとに置かれた外務省対策チームによる検討も踏まえまして、より一層日本企業や邦人の安全確保のために取り組んでまいりたい、このように考えておる次第でございます。

東郷委員 時間が余りございませんので、簡潔に申し上げます。

 今、御答弁いただきました。まず、日系企業が出ていくに当たっては、治安が安定して安全じゃなければ出ていけないですよ。そうした中で、西アフリカ、特にサヘル地域を経由して、中南米諸国から麻薬の密輸ルートになっているというのが現状であります。そうした中、その資金がテロリストに渡っている、こうした問題に根源的に政府として対策を立てていかなければならない。そういう意味において、こうしたテロリストに対する、麻薬が資金源になっているような課題について、どのような対策を考えているのか。

 そしてもう一つ、アフリカの支援全体の中で、今、このTICAD以降、日本が戦略外交と位置づけて、安倍総理が来年早々にもアフリカへ訪問するのではないかということを表明しております。そうした中で、中国がアフリカに対して積極支援を進めております。ただ、そうした中で、今、アフリカ全体で在留中国人が百万人いる中で、日本はまだわずか数万人です。毎年、中国の首脳が出ていっている。

 そうした中で、小泉総理以来、安倍総理が訪問するという予定をしているわけですけれども、日本は、このアフリカ、確かにODAとかJICAとか、高い評価を現地では受けておりますけれども、中国の外交と比べると随分出おくれている感もあります。遠かったせいもあるかもしれない、治安の面でまだまだ日系企業が出ていく環境が整っていない、そういった問題もあるかもしれませんが、今、政府のアフリカに対する現状の認識と、今後、人道支援とは別に、どのように戦略外交を展開していくのか、お考えを伺いたいと思います。

三ッ矢副大臣 二問御質問いただきました。

 一つは、西アフリカ・サヘル地域、中南米の麻薬組織から資金が流れているんじゃないかという話でございますが、国際テロ対策の基本としましては、まずは、テロリストに資金あるいは武器等の実行手段を与えないということ、それから各国がテロへの対処能力を高めるということ、それから脆弱な国に対しては国際社会が支援するということが基本原則であろうかと思います。

 その原則に立って取り組みを進めているわけでございますが、これは、テロ資金供与防止条約という条約がございまして、基本的には、その条約に基づいて、各国が協力してテロリストに資金が流れないように措置をとるということが基本かと思います。

 今後とも、国際機関と連携しながら、刑事司法、法執行あるいは国境管理等の分野における協力を日本も続けていくということを基本にして対処してまいりたいと思っております。

 それから、中国のアフリカにおけるプレゼンスでございますが、私もアフリカに何回か行きまして、確かに中国のプレゼンスは非常に大きいものがございます。

 日本は、先生御指摘のとおり、どちらかといいますと地道な、インフラ整備ですとか、あるいは人材の育成といった分野を中心に協力を進めてきておるわけでございますが、私どもは、それを基本原則としながら、今後ともアフリカに対する支援を進めていきたい、このように考えておる次第でございます。

東郷委員 御答弁いただきましてありがとうございました。

 もう時間がありませんけれども、これからしっかりとアフリカ支援をしていっていただきたいと思います。日本が果たすべき役割というのは、これからは、国際貢献、いわゆるコントリビューションじゃなくて、オブリゲーション、責務として、きちっと信頼を得るような外交を展開していっていただきたい、そういうふうに思っております。

 強くなければ生きていけません。しかし、強いだけじゃだめなんです。日本が信頼を得るために、優しくなければ生きていく価値がない。そういった中で、外交のあり方というのをしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成です。

 本日もこのような質問の機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。

 まず冒頭に、台風三十号におきましてフィリピンで被災をされた方々に心からお悔やみを申し上げます。もう既に我が国といたしまして金銭的、人的な援助を開始しておりますけれども、当委員会といたしましても、全力で今後フィリピンの支援をしていくことを皆様とともに確認させていただきたいと思います。

 それでは初めに、日本・ハンガリー社会保障協定について質問をさせていただきたいと思います。

 本協定は、申し上げるまでもなく、二国間におきまして、年金の二重払い、そして掛け捨てといった問題を解消するための協定でありまして、私といたしましても基本的に賛成であります。しかしながら、その上で、このような社会保障協定が日本企業の国際的な展開に寄与するようなことにならなければ意味がないというふうに思っておりますので、その観点から何点か質問させていただければと思います。

 まず、我が国が現在こうした社会保障協定を締結している国は十四カ国、そして、署名済みの三カ国を加えましても、十七カ国にとどまっております。主要国の多くが既に五十カ国程度の国と締結をしていることを考えると、余りにも締結数が少ないように感じております。

 日本だけおくれているということに私は大変な危惧を覚えておりますけれども、その理由はどうしてなのか、また、今後、改善、そして締結を加速していくためにどのようなことを検討していらっしゃるかということをお聞かせいただければと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 先ほどの御質問にもございました、世界各国の社会保障制度はさまざまでございます、もう委員よく御承知のとおりだと思いますけれども。特に、我が国の主要貿易相手国の上位に位置する国でありましても、例えば、外国人については社会保障制度の強制加入の対象外とされているとか、協定締結の必要性が必ずしも高くない国も存在しております。また、社会保障協定の締結の必要性が高い国々につきましても、交渉に当たっては、各国それぞれの固有の社会保障制度の違い等を踏まえる必要がございます。

 そのため、まず、交渉開始に先立つ予備的な協議において、互いの社会保障制度についての情報交換等を行う必要がございます。加えて、交渉開始以降も、具体的な条文について署名を行い、各国における国内手続を経る必要があることから、締結に至るまで一定の時間を要するということは御理解をいただきたいと思います。

 他方で、社会保障に関する協力体制の構築は、人的、経済的交流を推進する観点から非常に有益なツールの一つであるというふうに考えておりまして、今後とも、各国の社会保障制度の成熟度や我が国にとってのニーズ等を見きわめつつ、社会保障協定の可能性について協議、検討していく考えでございます。

岡本委員 ありがとうございます。

 御答弁はよく理解できますけれども、一方で、日本は世界に冠たる貿易国家でありますので、諸外国と比べましても我が国企業の経済活動がよりやりやすいような状況を一刻も早くおつくりいただけるような御尽力をお願いできればと思います。

 続きまして、この協定の締結の目的は、狭い意味では、保険料の二重払いですとか掛け捨てを防止していくということなんだというふうに理解していますけれども、広い意味では、日本企業の世界的な活動をサポートしていく上で、つまり、経済連携協定、EPA等と同じ意義があるというふうに思うんですね。

 経済取引の円滑化であったり、またはさまざまな分野にあっての提携、協力関係を推進していくということなんだと思うんですけれども、例えば、今回、このハンガリーとの社会保障協定が結ばれれば、現在ハンガリーに進出している約百十五社の企業、ここに関しては、ある程度、経済的な負担が減ったということで喜ばれると思いますけれども、このハンガリーとの社会保障協定を理由としてハンガリーに進出する企業が大きくふえるかというと、必ずしもそういうような状況まで推し進めるような力はないのではないかなというふうに思います。

 その意味で、この協定をより多くのシナジーをきかせるような取り組みにするために、全体としてEUとのEPAをどのように進めていけるかということをもう一輪の方向で進めていくことが重要だというふうに思っているんですね。

 このEUとのEPA交渉に関しましては、ことし三月に交渉の開始を決定されていまして、四月にブリュッセルで第一回の交渉、六月に東京で第二回の交渉、そして直近では第三回目が十月の終わりにまたブリュッセルで行われていますけれども、この交渉の状況、そして今後の見通しについて教えていただければと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、EUとのEPAの交渉は、私どもにとりましても大変重要なものだというふうに思っておりまして、できるだけ早期にこれは締結をしたいなというふうに考えております。

 今御指摘いただきましたように、ことしの三月に交渉開始に合意しまして、これまで三回にわたりまして交渉会合を開催してきているところでございますが、その中で、物品の貿易、それからサービス貿易、あるいは投資、知的財産権、非関税措置、政府調達等の幅広い分野で有益な議論を行ってきておるところでございます。

 また、実は来週、十九日には、日・EU定期首脳協議が予定されておりまして、こうした機会も活用しながら、包括的かつ高いレベルのEPAを早期に締結すべく、現在、精力的に交渉を進めておるところでございます。

 交渉の現状について、個々の中身については、今交渉中でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これまでのやりとりの中で、センシティブ品目についての配慮を行いつつ、深くかつ高いレベルの協定を目指すということについては、お互い理解を共有しているところでございます。

岡本委員 ありがとうございます。

 経済連携協定の締結は、安倍政権の第三の矢であります民間の投資を喚起する成長戦略のベースになるものだというふうに思いますので、ぜひ加速した交渉をお願いできればと思います。

 続きまして、障害者の権利に関する条約について質問をさせていただきます。

 この条約は、二〇〇一年に国連総会でアドホックの委員会が設置されまして、その後、合計八回の会合を経まして、二〇〇六年に採択をされております。これを受けまして、我が国では二〇〇七年にこの条約に署名をいたしまして、国内法の整備に当たって、我が公明党でも、障害者の権利の確立こそが、非常に重要な、党として取り組む最優先案件だという思いで、先頭を切って走ってきた自負がございます。二〇一一年六月には障害者虐待防止法を議員立法で成立させておりまして、同八月には障害者基本法の改正も行っています。その意味から、ようやくこの条約が締結に向けて本国会で議論をするところまで来たことに関しまして、大変大きな意義を感じておりますし、感慨深く思っております。

 その中で、幾つか、ぜひ指摘をして改善をいただかなければいけないというふうに思っているところがございますので、質問させてください。

 まず、我が国におきましては、昨年の十月に障害者虐待防止法が施行されまして、実は、一昨日、厚労省から、この半年間、施行されて以来、ことしの三月までの半年間にわたる状況をまとめたレポートが報告をされております。

 私、その結果を見て驚いたんですけれども、何と、虐待防止法が施行された後、半年で、障害者で虐待を受けた方が千五百二十四件、被害者の数が千六百九十九人、これは何と毎日十人の障害者の方が虐待を受けたという結果であります。そのうち三人は、不幸なことにもお亡くなりになっていらっしゃいます。

 このような結果を受けて、厚労省はどのように受けとめていらっしゃるか、また、今後どのような改善点を考えていらっしゃるかを御答弁いただければと思います。

佐藤副大臣 岡本委員の御質問にお答えをいたします。

 御指摘のとおり、厚生労働省といたしまして、昨年の十月に施行となりました障害者虐待防止法を受けまして、養護者あるいは施設等職員による障害者虐待の状況等について初めて全国調査を実施いたしまして、一昨日の十一月十一日に公表したところでございます。

 今御指摘のとおり、今回の調査は初めての実施であるため、これまでとどうかという比較はできないんですが、養護者による虐待が千三百十一件、さらに施設従事者等による虐待が八十件というのは、これは半年にしては決して少ない数ではなくて、厚生労働省としても大変重く受けとめているところでございます。

 この調査の目的でございますけれども、大体二つございまして、一つは、今後の対策を進めるための実態把握の観点、もう一つは、家庭内や施設内で潜在化するケースが多い虐待の防止について、なかなか気づかない点が虐待というのはあるんですけれども、そういう虐待の防止について国民の意識啓発をしっかりと進める、そういう観点等からもこの調査というのは大変重要なものと私どもも考えておりまして、今回は半年分の、初めての調査でございましたけれども、この実態調査については、今後とも毎年定期的に実施をしていく考えでございます。

 なお、対策といたしまして、厚生労働省としては、自治体の取り組みをしっかりと支援していこうということで、今年度も、障害者虐待防止対策支援事業費として約四億円、二十五年度予算をつけておりまして、来年度の概算要求でも同様の額を要望しております。

 具体的には、例えば、自治体で、虐待があった障害者への家庭訪問、あるいは二十四時間三百六十五日の相談窓口の整備、さらには障害者福祉施設事業者等に対する研修を自治体で実施される場合にそういう研修の費用の補助をする、あるいは医師や弁護士等による専門的助言を得る体制の確保等についてしっかりと支援をしていこうと。さらに、国としては、自治体の研修をされるリーダー的な存在の研修をしっかりとやろうということで実施をしております。こういう施策をしっかりと支援してまいりたいと思っております。

 障害者の自立及び社会参加にとって、障害者に対する虐待を防止するということは極めて重要でありますことから、今回のこの実態調査の結果を踏まえつつ、引き続き、虐待の早期発見、未然防止が促進されるように、自治体等を支援してまいる所存でございます。

岡本委員 佐藤副大臣、ありがとうございます。

 今副大臣の御答弁にありましたように、今回のアンケートの目的が、実態を調査して今後の改善につなげていくことだということを伺いまして大変安心をいたしましたし、加えまして、大変重要なアンケートですから、今後も毎年続けていかれて、さらに改善をされていくというような御答弁にも共感をいたしました。ありがたいと思います。

 副大臣が今おっしゃった中で、一つ、今回の虐待の数字の中で、何と八十件、百七十六人の被害者の方は福祉施設で虐待を受けていらっしゃいます。実際、障害者の方の中には、多くの方は、家庭内での虐待が多いわけですから、家庭から離す意味で、つまり虐待から守る意味で福祉施設に連れていったらその福祉施設で虐待を受けていらっしゃるという実情がかいま見えてきまして、その数、半年間ということで考えますと、毎日お一人の障害者の方がこの日本のどこかの障害者施設の中で虐待を受けているというふうな数字になってまいりますので、申し上げるまでもなく、福祉施設の場合は御省の監督権限があるわけですから、先ほどおっしゃったようなさまざまな施策を駆使しながら、このようなことがないように、さらなる取り組みをお願いできればというふうに思います。

 続きまして、若干角度を変えまして、災害時の障害者に対する支援のあり方についてお伺いできればというふうに思います。

 内閣府は、災害対策基本法の改正を受けまして、要援護者の名簿作成を市町村に義務づけをされて、そしてガイドラインも示していらっしゃいますけれども、現時点で幾つの市町村、自治体がこの名簿を作成されていて、もしそれが一〇〇%でなければ、いつをめどに全ての自治体にこの作成を指導していく立場かということを教えていただければと思います。

佐々木政府参考人 ただいまお話のございました災害時要援護者につきましては、災対法を改正いたしまして、災対法上の用語としましては、避難行動要支援者という法律上の名前になっております。

 この法律の施行はまだ来年の四月からでございますが、現時点での名簿の整備状況を申し上げますと、七三%、千二百七十八団体で整備が進んでいるということでございます。

 法改正によりまして作成の義務づけをいたしましたので、来年四月以降、全ての市町村でこの名簿が作成されるようにしてまいりたいと思っております。

岡本委員 ありがとうございます。

 まだ四分の三しかでき上がっていないということで、施行まで間もないので、ぜひ、後押しといいますか、積極的な御指導をお願いできればと思います。

 その上で、この名簿が仮に一〇〇%作成されましても、個人情報保護法で、個人情報の外部への提供は、災害が発生したときか、または、事前であれば、その御本人の同意が得られたときに限られています。

 実際には、現場のお声を伺いますと、災害のときにその名簿をもらっても、十分な準備ができていないから十分な支援ができないのではというふうなお声も聞こえますし、また、災害のときにその被害を最小限に食いとめるには事前の防災訓練が必要だということがよく言われておりますけれども、結局のところは、名簿をつくっただけでは事前に十分な準備ができませんので、そう役には立っていないという現状が見受けられると思います。

 訓練をして初めて防災の効果が高まるという現状を考えるときに、こうした問題にどういうふうに対処していかれるおつもりなのかということを御教示いただければと思います。

佐々木政府参考人 名簿自体は作成義務を課せられたんですけれども、実際、関係者との情報共有ということに関しましては、要支援者の方の同意が必要ということになっております。

 したがいまして、ガイドラインをこの八月に出させていただきましたけれども、その中でも、避難行動要支援者本人に郵送あるいは個別訪問を積極的に行っていただいて同意を直接取りつけていただくこと、あるいは、その際に、その趣旨、内容を十分御説明申し上げるといったことをガイドラインとして内容に盛り込みまして、関係市町村の積極的な取り組みを行っていただきたいと思っております。

岡本委員 ありがとうございます。

 これは障害者の方ではないですが、障害者と同様に、高齢者の方も、いざ災害のときにはそのような支援が必要なんだと思うんです。例えば、自治体の中で、東京都中野区のように、独自の条例で、高齢者については本人の同意なしに名簿を外部提供できるような仕組みをつくって、見守り活動や防災訓練に活用されていて、それが大きな効果を出しているというふうなことも聞かれますので、今回、同意を求めるために郵送であったり家庭訪問を実施されているということですけれども、その他の施策等もぜひ御検討いただきながら、多くの方が災害時にも安全に避難できるような道筋をつくっていただければと思います。

 特に、この点、先月十月十日に、ジュネーブの国連国際防災戦略事務局が、世界の身体障害者を対象にした自然災害対策に関する初のアンケート調査を発表していらっしゃいます。この調査、日本を含みます百二十六カ国でアンケートを実施したんですけれども、この中で八〇%以上の方々が、災害時には直ちに避難できませんというふうに答えていらっしゃいます。

 この調査内容は、二年後、二〇一五年に仙台におきまして開かれます国連防災会議でも検討されるというふうに伺っておりますけれども、東日本大震災が起こった東北の地で行われますこの国連の会合におきまして、事前のアンケートをもとに問題提起をされた内容につきまして、開催国である我が国が、十分な準備を行って、災害が仮に起こったときでも障害者の方々が安心して避難できるような道筋を事前に示しておくことが最も重要だと思いますので、先ほど御答弁いただいた内容をさらに加速して、一人も残らず障害者の方が、いざというときに安心、安全に避難できるような道筋をつくっていただければということをお願いいたしまして、私の質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 それでは、日・ハンガリー社会保障協定に関連する部分について私は主に質問させていただいて、同じく議題に上がっております障害者の権利に関する条約については、同僚の小川議員に譲りたいと思っております。

 まず、日・ハンガリーの社会保障協定ですが、二〇一五年に我が国の年金受給資格は二十五年から十年に短縮をされる、これについては今回の協定に付随する交換公文で手当てをされているというふうに理解をいたしておりますが、既往の社会保障協定の条約についても対応、手当てが必要になってくると思いますが、このあたりはどういうふうな対応を進める御予定か、伺いたいと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、日本とハンガリーの社会保障協定におきましては、この協定の署名時に、被用者年金一元化法が施行された後の協定の適用についてハンガリー側と交換公文で確認をしておるところでございます。

 過去に署名、締結した協定につきましては、被用者年金一元化法の施行、これは平成二十七年の十月一日施行でございますが、それまでの間に相手国との間で何らかの文書を取り交わすことによりまして、被用者年金一元化法等が施行された後の協定の適用について確認を行う予定でございます。

松本(剛)委員 これから社会保障についてもさまざまな制度改革が進められてくると思いますが、このあたり、やはり丁寧に、必要な対応はしっかりと進めていただきたいと思っております。

 次に、日・ハンガリーの社会保障協定の承認は、ハンガリーの国内法制の事情で急がなければならない、これによって我が国の企業また法人の活動にも実質的な影響が出る、こういうお話を伺っております。これに基づいて、今、我々もここで審議をさせていただいていると理解をしておりますが、先ほど岡本委員からの質疑にもありました、我が国と各国との社会保障協定の締結というのはやはり相当急ぐべきではないかという問題意識は、全く共有するものであります。特に、例えば多くの邦人企業が活動している中国であるとか、国内法制が既に変わっているというふうに理解をいたしております。そういったあたりも含めて、かなり急がねばならない。

 先ほどいろいろな課題があるという御指摘はありましたが、中国等を含めて、まだ早急に急ぐべき国が多々あると思いますが、そのあたりの認識をどうお持ちか、承りたいと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 ハンガリーにつきましては、委員御指摘ございましたように、実は、来年の一月一日から、これはハンガリーの国内法が改正になりまして、外国人も年金等を支払わないといけないということになるわけでございますが、ほかの国につきましても、実は現在、御指摘がございました中国を含めて、ルクセンブルク、スウェーデンそれからフィリピンとの間で今交渉を行っておるところでございます。また、今後、スロバキアとの間で交渉を開始する予定でございます。さらに、オーストリアでございますとかトルコ、それからフィンランドとの間では、交渉に向けた予備的な協議を行っておるところでございます。

 先ほども他の委員の御質問にお答え申し上げましたが、それぞれの国の社会保障制度との関係、それから二国間関係、それから現実に起こっている負担の程度等々を勘案いたしまして、特に進出している企業からの要望、これが一番肝心だと思いますけれども、そういう点を勘案しながら、優先順位の高いところから順次締結に向けて我々は努力していきたい、このように考えておるところでございます。

松本(剛)委員 ぜひ御努力をいただきたいというふうに思います。

 邦人や日系の企業の海外での活動を支援するという意味では、この社会保障協定、それから、この国会でも審議しました投資協定、また租税条約、さらにはEPA、FTAもそうだと思いますが、こういったものを精力的に進めることが必要になってくると思います。

 他方で、これらの協定は、今回のこのハンガリー、そして租税条約もそうですけれども、やはりかなり専門的かつ具体的な条文や協議を進めていかなければいけない。他方で、これにかなりの工数が必要な中で、当然、これに充てられる人員というのは、少なくとも外務省の中では、今の我が国の財政状況、行政状況では、やはり飛躍的に伸びているという状況ではないというふうに思います。そういう意味では、もちろん、交渉、そして交渉の後の条文を策定するにしても、保秘、まさに交渉中の内容をどうやって秘密を保護していくか、そういったような問題もあろうかというふうに思いますが、やはりさまざまな国際的な法律の専門家などの外部の方を活用するということをぜひ検討していただきたいというふうに思っております。

 今も、期限つきじゃなかったかと思いますが、専門家の方を何人か外務省の中で取り入れて、国際法局かもしれませんが、条約の作業に活用されていると思います。人を入れるという形がまず第一段階なのかもしれませんが、本当のきちっとした、お互いの守秘義務をかけたようなことをすることで、場合によってはアウトソーシングもできるのかどうか。これはある意味、政務の御判断も含めて、少し従来とは違う形を進めていかないと、まさに先ほど岡本委員がお話しされたように、極端に言うとちょっと桁が違うレベルでおくれているという問題があるので、飛躍的な体制をとるべきだというふうに思います。

 ぜひそういう御検討を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三ッ矢副大臣 御指摘は大変ありがたく受けとめさせていただきたいと思っております。委員は大臣も御経験されていますので、もう外務省の体制もよく御存じだと思いますけれども、少ない人数で非常に多岐にわたる業務を行っておるところでございまして、特に最近は、経済関係の条約締結、EPAを含め、租税条約、投資条約等々、大変数が多うございます。

 正直申し上げると、外務省の人間が足りないというのは事実でございまして、その点からも、またぜひ応援もお願いしたいと思っておるんですが、その意味で、期限つきの任用、あるいは外部の方のいろいろな形での登用の仕方があろうかと思いますけれども、その点も含めて、ぜひ検討させていただきたいなというふうに思っておるところでございます。

松本(剛)委員 例えば外部に委託するとか、今まで前例のないことをやるときは、やはり政務レベルでの判断がぜひ必要になってくると思いますので、そういったあたりを、大臣も帰国直後から委員会に駆けつけていただきましたけれども、大臣、副大臣の皆さんで御相談いただいて、ぜひ強力な体制をつくって、せっかくこれだけ日系そして邦人の海外での活動を支援しようという流れができてきているわけでありますから、そういう体制をおつくりいただきたいというふうにお願いをしたいと思います。

 今もお話がありましたが、私自身も外務省での勤務を経験させていただいて、これだけ国際的になってくる中で、また外交の課題も、従来の、数十年前の東西の単純な形、そしてG7、G8で大抵のことが、流れが決められた時代から、G20の時代になり、また東西の冷戦の時代も終わってくる中では、外務省の仕事というのが飛躍的にふえてきている中で、定員が飛躍的にふえているかといえば、他に比べれば相対的に配慮されているというふうには承知をしておりますけれども、ニーズに対しては応え切れていないのではないかと思います。

 この定員の問題で、一つ、昨今の話題でちょっと気になっていることがありますので、お聞きをしたいと思います。

 NSCの件ですけれども、NSCを設置するに当たっては、六十人ぐらいという話も巷間伝えられていますが、この定員はどこからか持ってくるというお話なのかどうか、伺いたいと思います。

北崎政府参考人 お答えいたします。

 国家安全保障局は、総理のリーダーシップの発揮を強力にサポートし、平素から、総理の意向を踏まえつつ、国家安全保障政策の企画立案、総合調整に従事する組織でございまして、厳しい財政状況や政府全体の定員管理の観点も踏まえる必要はございますが、しっかりとした組織づくりを行う必要があると考えておりまして、現在検討中でございます。今後、各省庁などとも連携し、国家安全保障局の機能が十分に発揮できる体制を構築してまいりたいと考えております。

松本(剛)委員 まだ決まっていない、どこから持ってくるかは決まっていないということだと理解をいたしました。

 総務省に来ていただいていると思いますが、定員といったものは現在どういう形で決めていかれているのか。全体としては削減していると思いますが、当然、新しい機構をつくられたりしたときの定員というのをどうするか、スクラップ・アンド・ビルドであるのか、また、全体で考えるのか、いろいろあると思いますが、御説明をいただきたいと思います。

松本大臣政務官 先生御承知をいただいているとおりだと思いますが、機構につきましては、やはり肥大化を来さないように、既存組織の合理的な再編成によって措置するということを基本に置いております。

 また、定員については、業務の効率化によって合理化できるところは減らして、その一方で、行政需要が増大している分野については重点的に増員を行っているところであります。

 今後とも、現下の重要課題に適切に対応できる体制を整備する観点から、めり張りのある配置を実現することを基本として取り組んでまいりたい、こう考えております。

松本(剛)委員 恐らく、大臣も副大臣も、今、予算編成に当たって、定員の問題、機構の問題、お取り組みをいただいていると思いますが、私が理解をする中では、各省レベルでスクラップ・アンド・ビルドを求められるものと、案件によっては、定員も今、計画的に削減を進めていっている中で、ある程度、各省に定員削減のオブリゲーションがかぶせられている一方で、内閣全体として重点的に配分する枠をお持ちのはずだというふうに理解をいたしております。

 その意味で、今回のNSCも、他省から見れば、外務、防衛の中でやってくれということになるのではないかというふうに思いますが、私から見れば、どちらの省も、今、大変強化をすべき課題が山積をしている省ではないかというふうに理解をしておりますし、何よりも、対外的にこれだけ総理案件だとおっしゃっているのであれば、ぜひ、全体の枠からそういった定員を持ってくる、こういう仕切りになっていくようにお進めをいただきたい、こういうふうに思います。

 ある意味、通告をしていない部分にはなるかもしれませんけれども、三ッ矢副大臣、ぜひそういうことで御努力をいただきたいという要請をしておきたいと思いますが。

三ッ矢副大臣 激励していただきまして、ありがとうございます。

 我々も、外務省、委員は既によく御承知のとおりでございますが、例えば大使館の数、それから定員は、外務省に対しては多少配慮もしていただいてはおります。けれども、まだまだ足りない。

 例えば、先ほど御質問のございましたスクラップ・アンド・ビルド、これは原則といいますか、余りしゃくし定規にじゃなくて、もう少し柔軟に対応していただきたいし、特にニーズが急速に高まっております経済関係あるいは安全保障関係の分野におきましては、その辺も特別の配慮をしていただく必要があるのではないかなというふうに思っております。

 我々外務省としましても、これからしっかりと働きかけをしてまいりたいと思っておりますし、また、委員各位からも、ぜひ御支援のほどよろしくお願い申し上げたいと思っております。

松本(剛)委員 与党席からも、賛同と見えるお顔が幾つかあったように理解をいたしますので、ぜひこれは、ある意味では、ここは本当に政務レベルでお決めをいただかないと、各省の担当の皆さんはそれぞれ各省を背負っておられますので、物事には限度がありますので、お願いをしたいと思っております。

 そもそも、先ほどからもお話がありました、今、副大臣からも提案がありましたが、在外公館も基本的に相当不足をしているというふうに認識をしております。先ほどの六十人、もし、NSCで六十人、外務省が半分の三十人だとすると、三十人の人数があれば、在外公館が、中堅、中小という言葉がいいのかどうかわかりませんが、新設であれば幾つ開けるかといったときに、二つないし三つはそれだけでも恐らくいけるのではないかというふうに思われます。

 残念ながら、私自身も担当しているときに、つくりたいと思いながらつくり切れなかった課題を今皆さんに逆にお願いをしているわけでありますが、しかし、我が国にとって必要であるという認識は恐らく共有をしていると思いますので、ぜひそのような形で進めていただきたい。

 先ほどからも出ていますが、根本的に足らないんですが、松本政務官もお見えをいただいております、全体としての計画はやはり必要だろうと思いますが、他方では、先ほど申し上げたように、総理が、もしくは内閣がお持ちの配分も含めて、もっともっとこの定数というのも戦略的に大胆に見直すということも政務レベルで御検討いただきたい。閣僚レベルでももちろんそうかもしれませんが、副大臣がお集まりになる、政務官がお集まりになる機会もあるのではないかと思います。そういう中で、これは、各省の立場を背負っている副大臣、政務官ではなくて、我が国の副大臣、政務官として、一度ぜひそういうことを御議論いただくということをお考えいただきたいと思いますが、三ッ矢副大臣からコメントをいただけたらと思います。

三ッ矢副大臣 私も昔、役所で人事の仕事をしておったこともありまして、定員要求とか、それから組織の関係の要求というのは、これは非常に苦労して、一人でもふやそうと思うと非常に大変な作業が要るわけでございます。また、組織につきましても、一つふやそうとすると、どこか一つ潰してこいというようなのが、これは原則といいますか基本方針になっておりまして、風穴をあけると言うとちょっと言葉が悪いかもしれませんが、多分、大変なエネルギーと熱意を持って当たらないと、正直言ってなかなか難しい問題ではあろうかと思います。

 ただ、今御指摘いただきましたように、特に政務のレベルで、いろいろな場で、私ども、外務省の実情、現状を訴え、またその必要性を訴えて、しっかりと必要な人員体制が確保できるように、あらゆる機会を通じて要請してまいりたい、このように考えております。

松本(剛)委員 私も、外務副大臣を経験させていただいたときに、やはり定員、機構、組織の問題についても直接携わり、学ぶことも多々ありましたので、おっしゃったように容易なことではないですけれども、だからこそ、政務がやっていただかなければいけないことではないかと思います。

 松本政務官もせっかくおいでいただいていますから、今私が申し上げたことにもし一言コメントをいただければ。突然で大変申しわけありませんが。

松本大臣政務官 先生おっしゃられるとおりでございまして、ただ、御理解いただけると思うんですけれども、この国全体の機構としてどう管理をするかという、この視点を忘れてしまいますと、どんどんどんどん人員がふえていく。これではいけない。やはり行政改革という強い国民の要望にも一方で応えていかなきゃならない。この国が飛躍をしていくためにどうやっていくかという視点、これをしっかり持って対応してまいりたいと思いますので、ぜひ今後とも御指導いただきますようにお願いをいたします。

松本(剛)委員 松本政務官には、お忙しいところありがとうございました。委員長の許可が出れば、私の方はここまでで結構でございます。

 今お話があったように、ただ、実際に難しいのは、つける難しさよりも切る難しさだというふうに思いますが、切る難しさだからこそ、私は、政務が引き受けるべきではないかということでお願いをさせていただいていますので、よろしくお願いをいたします。

 在外の邦人、企業の活動の支援という意味では、在外公館のさまざまな機能を強化するということが広い意味で支援強化につながると思っております。これも私自身が携わってきたことでありますので、ぜひ今後の進捗状況をお聞きしたいと思っているんですが、ことしの国会で、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約が批准をされましたが、その際に、そもそも、婚姻に関する、離婚や子供の養育などの法律的な問題に直面をした在外の邦人自身を、例えば相談体制であるとか、支援をすることが必要であるということが指摘もされてまいりましたし、私どもも、領事館の機能強化の一環として、それは一つの課題ではないかというふうに考えてまいりました。

 現在、こういった体制の整備の進捗状況はどうなっているか、お聞きをしたいと思います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 ハーグ条約の実施に向けまして、外国において離婚訴訟あるいは家庭内暴力等の問題を抱えている邦人が相談しやすくなるよう、在外公館の体制を整備することは極めて重要なことでございます。

 その一環としまして、DVの被害者支援、あるいは緊急用シェルターの運営、カウンセリング、法律相談を含む支援を行っております現地の団体と我が国の在外公館が提携をしまして、日本人向けの活動を強化してきておるところでございます。

 具体的には、これまでの在ニューヨーク総領事館と在ロサンゼルス総領事館の二公館に加えまして、十月一日から、ワシントンの大使館、それから在ボストン総領事館、さらにカナダの在トロント総領事館の三つの公館におきましても、現地団体との提携を開始しまして、邦人向けの窓口を拡充したところでございます。

 また、在外公館職員の能力強化のために、特にケーススタディーや具体的事例への対応方法を習得するための研修、これが非常に重要でございまして、ハーグ条約等に関する研修を累次にわたって実施してきておるところでございます。

 さらに、外務省のホームページ及び海外渡航者向け広報冊子におきましても、子の親権問題に関する項目を新設する作業、これは今進めておるところでございます。

 現状、そういうところでございまして、御理解いただきたいと思います。

松本(剛)委員 先ほどもお話が出ているように、やるべきことに対して必ずしも人員が足りているわけではない部分、ぜひ、こういった課題については、民間の団体などとも連携をしていただいて、実際には海外で活動する邦人などのいろいろな体制が支援できるようにお願いいたしたいと思います。

 私の持ち時間が間もなくでありますので、最後に何点か、予定をしてきたものも含めて、岸田大臣もお見えいただいていますので、御要請、お願いをさせていただいて、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 一つは、先ほど在外公館という話があったんですが、在外公館を新しく増設したときに、現行の制度では、実はやはり、かなりの部分の方を庶務に割り当てなければいけなくなっておりますので、実際の外交をするとか情報を収集するという人員以前に、会計やそういったものの人員にかなりとられる。今の会計法などの制度のもとでは、各国大使館ごとにそういったことをしなければいけないというふうに理解をしていますが、法律の見直しや体制の見直しも含めて、例えばどこかでまとめて領収書の処理をするとか、そういったことで実質の仕事ができるように、ぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 私も民間の金融機関に勤めておりましたが、私が入社したころというのは、いわゆる庶務的なサポートをする、当時は一般職と言っていた方が、営業職一人に一人ぐらい、一対一対応ぐらいでついていました。同じ会社の出身の人間がこの中にもおりますけれども、今やもう、ほとんどそれは、こういったパソコン一台で済まされてきている時代に変わりつつあるというふうに思います。

 せっかくの人員をやはり有用な形に充てていただきたいということで、ぜひ法律の見直しも含めてそういうことをしていただきたいということが一つ。

 それから、これは先ほども話がありましたフィリピンの台風三十号、これは御通告申し上げていませんが、まずは被災された方々にお見舞いを申し上げることが第一でありますが、我が国としても、被災の支援それから邦人の保護という意味では、ぜひ、本省から人を派遣されるなり、現地の対策をまずは一回強化していただくようなことを早急に御検討いただくべきではないかと思っておりますので、この点も御要請をさせていただきたいと思います。

 最後に、私自身が外務大臣をさせていただいて痛感したのは、副総理という肩書であります。我が国は、内閣法上、副総理は一人しかいないということになっているというふうに私は理解をしておりますが、国際的な会議で、副総理兼外務大臣であるか、兼がない外務大臣であるかでは、序列が明らかに違う立場になってきております。外務省の中には名称大使、名称公使というものがあって、名称副総理というものが内閣法上あるのかどうかわかりませんけれども、ぜひちょっと、そのあたりは、中期的な課題として御検討いただいておくのが交渉力を高めるためにも非常にプラスになると思います。

 以上三点、体制強化を全般的に行っていただきたいということを含めて御要請させていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

 大臣、もし一言あれば。

岸田国務大臣 ただいまは、委員も外務大臣を経験され、外交体制の強化の必要性を感じられ、外交体制の強化に前向きな趣旨で御質問いただきましたこと、大変ありがたいことと存じます。私も同じ思いを強くしております。

 そもそも外務省の体制につきましては、従来から、国家承認する国の数の増加ですとか、あるいは他の国の体制との比較等において、外務省の体制強化が随分と指摘をされてきたわけですが、それに加えまして、昨今は、外務省が対応しなければならない課題、経済、安全保障、文化芸術、スポーツなど、ますます幅広くなっております。さらには、宇宙とかサイバーとか、新しい課題もふえてきているわけですが、こうした課題も、これは決して新しい課題ではなくして、主要課題と位置づけられるようになってきました。そして、先ほど来委員から御指摘がありましたように、今、日本経済の復活のために、経済外交を進める在留邦人ですとかあるいは日本企業のサポートをしっかりしていかなければいけない、こうした現実の課題もあります。

 本当に、外交が対応しなければいけないさまざまな課題の多さや重さを感じますときに、しっかりと体制充実を図っていかなければいけない、その中で、御指摘のように効率化も図っていかなければいけない、さまざまな努力が必要かと存じます。

 もちろん、国家一体となってこういった問題は考えていかなければなりませんが、外交を預かる身としましては、しっかりと外交体制の充実に努力をしなければいけないと思いますし、ぜひ、引き続きまして、委員を初めこの委員会の皆様方の御理解と御支援をお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

松本(剛)委員 国のために必要なことはしっかり支援をしたいと思います。

 それでは、終わります。

鈴木委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 障害者権利条約についてお尋ねいたします。

 昨日、民主党におきまして、厚生労働部門と合同で、障害者団体の方々から、ほぼ最終に近いと思いますが、意見聴取をさせていただきました。大変長年の悲願であり、早期批准に向けて、私どもとしても真摯に努力、協力をしたいと思っております。

 大臣、一点、これは〇七年九月の条約署名からこの国会提出まで六年二カ月、余りにも長い期間を要したと思いますが、非常に長期間お待たせした、この点について、大臣、どういうふうに認識をしておられるか、冒頭お聞きします。

岸田国務大臣 まず、この条約につきましては、政府としまして、本条約、障害者の人権、基本的自由を確保する上で大変重要な意義を有しているという認識を持って、起草段階から積極的に参加をしてきました。その結果、御指摘のように、署名についても、条約採択翌年の平成十九年、二〇〇七年に速やかに行った次第であります。

 そして、その後、今日まで随分時間がかかっているのではないか、こういった御指摘でありますが、署名後、本条約の国会審議の準備を進める中にありまして、平成二十一年、二〇〇九年の段階で、まずは、障害者団体の御要望等をしっかり受けとめ、国内法制度を初めとする制度改革、これを進めるべきだという認識のもとに、国内法の整備を進めてきたという経緯がありました。

 その結果、平成二十三年に障害者基本法の改正、そしてその後、障害者総合支援法の成立、そして障害者差別解消法の成立、さらには障害者雇用促進法の改正、学校教育法施行令の改正、こういった作業を行ってきました。

 こうした国内法の改正等を進めるために一定の時間を要した、このように認識をしております。

小川委員 御指摘のとおりだと思います。

 もうちょっと私どもの立場から突っ込んで申し上げれば、当時、障害者自立支援法、ある意味、大変悪名高い法律だったと思います。それを放置したまま格好のいい条約だけ批准したって、国内の体制、状況がついていっていないじゃないかというのは障害者団体の切実な声だった。それをまず押さえたい。

 そして、余りこれは手前みそでもいけないんですけれども、事実なので、改めてこの委員会で押さえさせてください。

 〇七年九月に署名をし、〇八年六月に、当時、自民党政権下で課長会議が設置された。同年十二月に報告書がまとまり、〇九年一月に国会提出の可能性を探ったわけです。しかし、大臣おっしゃったように、断念した。その後なんですよ、政権交代が起きたのは。

 政権交代直後、〇九年十二月に、当時課長会議だったものを閣僚会議に大幅に格上げしました。そして、五年間の集中期間を設けて国内法整備を図ろうという大方針のもと、先ほど大臣おっしゃった、基本法、総合支援法、差別解消法、雇用促進法、三年半で国内法体系の整備を整えたということであります。

 これには、当然、当時の野党自民党、公明党を初めとして、野党各党の理解があってのことでありますが、非常に長期間かかった。このことに対する、ある種、呵責の念を障害者の皆さんに対しては持ちたいと思いますし、その間、いろいろと批判の多い民主党政権ではありましたが、こうした中では一定の成果をおさめつつ今日に至る。事実ですので、ちょっと確認させていただきたいと思います。

 大臣、コメントありますか。

岸田国務大臣 御指摘のように、この条約の署名から今日に至るまでは、民主党初め、さまざまな政党の努力があったものと認識をしております。

 この条約につきましては、採択、署名、そして条約の発効、この段階は自民党政権下でありました。しかし、その後、二十一年十二月、民主党政権下で障がい者制度改革推進本部が設けられ、そして、五年間の集中期間が設定された。そして、民主党政権下で、障害者虐待防止法、障害者基本法、そして障害者総合支援法、こういった法律が成立をいたしました。そしてまた、自民党、公明党の連立政権の時代に戻り、障害者差別解消法、そして障害者雇用促進法がことし成立や改正をした。

 こういった経緯を振り返りますときに、やはり党派を超えて、この問題の重要性を認識して、努力を積み重ねてきた、これが今日につながっているということは認識をいたします。

小川委員 いっぱいいっぱいの御答弁かと思います。ありがとうございました。

 それで、私どもも、余り褒められることは少ないんですけれども、きのう、障害者団体から、よくこれだけ民主党政権下でやってくれたという率直な意見表明がありました。大変ありがたく受けとめつつ、公の場ですけれども、一応事実として確認させていただいたということであります。

 それで、それにもまさって非常に印象的だった声は、この条約批准を終着駅にしてほしくない、これは始発駅だ、ゴールじゃないんだ、スタートだという声、これは非常に印象的でありました。ですから、批准後こそが本番だという認識で、国内法、内外の状況を含めてかと思いますが、取り組みを進めていく必要があると思います。

 特に多かった声について、二点、今後のために、確認のための答弁を求めたいと思います。

 一点目、現行憲法の九十八条は国際法の遵守をうたっております。ということは、この条約批准に伴いまして、今後とも、さらに国内法整備を初めとした環境整備に当たる必要があるでしょう。

 そして、特に障害者の法定雇用率二%の目標値、これは義務づけと考えていいと思いますが、実際には一・六%。それから、この基準に達している会社は半分に満たないんだそうですね。

 こういった世の中の実勢に合わせて、国際条約を批准したということは、その国際基準、国際法を遵守するという憲法の立場からいっても、政府はこれまで以上に精力的に国内環境の整備に力を注ぐということに対して、障害者団体は期待をしています。

 そういう法的な位置づけですけれども、その点、あるいは姿勢、間違いない旨、大臣から御答弁いただきたい。

岸田国務大臣 こうした条約を結ぶことによって我が国の国内体制が充実することにつながる、これは大変重要な視点だと思います。

 こうした条約が批准された後、我が国が国内への体制を充実していく努力を引き続き続けていく、こういった姿勢はぜひ大事にするべきだと私も思います。

小川委員 ありがとうございました。

 もう一点、具体的に。これは、私どもも、詳細はますます党の方でフォローアップしていきたいと思いますが、一つ、障害者団体との間で協議が恐らく継続されるんだと思います。権利条約の日本語訳に関してであります。

 〇七年の仮訳、〇九年以降の公定訳の案、そして公定訳というふうに至っておりますが、特に、特定の生活施設、ア・パティキュラー・リビング・アレンジメントですか、それから意思疎通、コミュニケーションという言葉の意訳、それからインクルージョン、包容、あるいは、その他、個別の支援、情報通信機器、支援機器、女子、これらについては、今後とも、解釈の改善、あるいは公定訳の改善について、法施行に当たって、障害当事者の意見を十分にそんたくして解釈の改善なり公定訳の改善に鋭意努力してほしいという声があります。ぜひこの声には寄り添っていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 この条約の訳でありますが、平成十九年の署名の際に仮訳文を公表して以降、障害者団体の皆様方とは累次意見交換を行ってきました。そして、その意見や国会での議論を可能な限り反映する形でこの現在の訳文を作成した、こういった経緯があります。

 そして、訳文の作成に当たっては、政府としては、本条約が障害者の人権及び基本的自由の実現を確保する上で重要な意義を有していることを十二分に踏まえて、正文テキストの意味が正確に反映されるよう努めてきた次第です。

 そして、それとあわせて、国内の法令、そしてさらには我が国が既に締結している他の条約、こうしたものにおける用語との整合性、これもしっかり確保しなければなりません。今申し上げましたような視点を勘案しながら各省庁とも協議をしてきた、慎重に検討を行ってきた、こういったことでありました。

 そして、現在国会に提出させていただいている訳文についても、いろいろな御意見があること、これは十分承知をしております。ただ、提出に先立って、障害者団体等の方々に対して、御質問に答える形でできる限り丁寧に説明を行うなど、本訳文につきましては、理解が得られるよう努力をしてきた次第であります。

小川委員 ありがとうございました。

 横並びももちろん大事でしょう。それから、これまでの慣例等もあると思います。

 私もこれは実務を経験したことはありませんが、実際、英語の訳文、また他の言語を日本語に訳すというのは、いろいろな背景の違いもあって、実際は難しい作業だと思うんですよね、想像するところに。

 ですから、おっしゃったような文理上論理的な構成とともに、やはり国内においては日本語において執行するということになりますので、その実勢というんですか、実情というんですか、障害当事者のニーズを含めて、こういうものに対してはぜひ真摯に耳を傾けていただく、その姿勢が彼らにとっては一つの救いといいますか、一筋の光明になるのではないかと思います。重ねてお願いしておきたいと思います。

 全部網羅するわけにいきませんが、ちょっと公式に議事録に残させてください。

 紛争解決の仕組みがなお脆弱であるのではないかという問題意識、それから、差別の定義が曖昧だという問題意識、さらには、成年後見制度が余りにも全面的に人権を制約していないかという問題意識、さらには、精神障害者の強制入院という制度も、これも人権の観点からどうかという問題意識、そして、児童の場合のいわゆるインクルーシブ教育、一般児童とともに、同様の教育環境でさまざまなよい影響を受ける、そうした教育環境が必要ではないかという問題意識、さらには、国内の障害者政策委員会の活性化、最後に、国連の障害者権利委員会に障害当事者の日本人委員を実現してほしい、こういった意見が多々寄せられております。

 これは批准後の具体的な課題だと思いますので、きょうは答弁を求めませんが、こういった課題がまだまだ山積する中を障害者施策を進めていくということについて、共通の認識をぜひお願いしたいと思います。

 それで、私自身、この間ちょっと気になったことで、改めてお尋ねしたいのが、障害者権利委員会が恐らく当事者なんだと思うんですが、きょうは、委員長のお許しをいただいて、一枚、これは外務省作成資料の写しであります、委員の皆様のお手元に配付をさせていただきました。

 今回の障害者権利条約の批准に当たって、いわゆる個人通報制度、権利が侵されている、形式的に差別のあるなしを踏み越えて、今回は、合理的な配慮がなされているかどうか、つまり、実質的に差別を解消する努力が行われているかどうか、差別のない世の中を実質化する努力が払われているかどうかという観点に立つところに大きな意義があると思いますが、そうでない場合、個人が、国民が国際機関に対して直接通報する、救済を求める権利を日本政府は批准していない、選択議定書の批准に至っていない。

 しかし、この資料をよく見ると、G8諸国と中国、韓国の状況を整理いただきました、特に目立つのは、ドイツ、フランス、イギリス、それから、やや国内的には人権の観点からいろいろな問題も抱えているのではないかと想像しますが、ロシア、そして、お隣韓国。この個人通報制度まで含めて、より障害者の権利あるいは人権によって立った条約批准の姿勢をとっている。ところが、ごらんのとおり、日本政府はあらゆる人権規約についてこの個人通報制度を認めていない。

 この問題意識との関係で教えてください。

 日本政府は、人間の安全保障という観点を打ち出したはずです、国際社会に先駆けて。これは、紛争の問題であれ、テロであれ、貧困であれ、病気であれ、感染症であれ、あらゆる生存を脅かす課題に、これまでは国家主権の不可侵、内政不干渉を建前としてきた国際社会の壁を乗り越えて、そして、国際社会が連帯をして、地球市民、地球に生きる市民の実質的な生存環境を安全で快適なものにしていこうという一つの思想を打ち出したんだと思います。

 民主党は、二月に党綱領を十五年ぶりに改定したんです。松本理事、元外務大臣の強力なリーダーシップのもと、党綱領の中にこの人間の安全保障という概念を盛り込んだんですよ、これは大事なことだと。これは恐らく公党で初めてだと思います。

 こういった立派なことを言っている日本政府が、一方で個人通報制度を受け入れずに極めて制約的な態度をとっている。これはなぜですか。思い切ってできませんか。大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の個人通報制度ですが、人権関係の諸条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨からは、まず注目すべき制度だとは認識をします。

 ただ、この個人通報制度につきましては、我が国の司法制度ですとか立法制度との関連の問題の有無、あるいは、実施体制等の検討課題があると認識をしております。

 例えば、我が国の国内において、司法から一定の判断が下される、死刑ですとかあるいは国外退去、こうした決定が下された後に、委員会の方から違う内容の勧告が行われた場合に、我が国としてどう対応するのか、こういった問題について我が国は答えをまだ持っておりません。こうした点等について、ぜひ引き続き真剣に検討はしていきたいとは思っております。

 そして、現在、個人通報制度関係省庁研究会、こうした研究会が開催され、検討を行っているところであります。

 我が国の現状の対応の実情につきましては、以上でございます。

小川委員 問題意識は共有していただいていると思いますが、まず、日本は非常におくれているという状況に対する真摯な認識が必要だと思います。

 そして、早く結論を出さなきゃいけない。格好いいことを言っているわけですから、人間の安全保障なんて。人権については極めてセンシティブな感覚を持ち、国内環境を整えた国だということを世界に対して発信していく責任があると思いますよ、あわせて。そのことは重ねて指摘をしたいと思います。

 関連して、もう一つ、今回の条約批准に当たって、児童権利条約と同等、留保、適用除外はしませんが、解釈宣言を行いますということを言っている。

 児童の権利に関して私が思い出すのは、〇九年、カルデロン・ノリコさん。十三歳で日本に対する大変な愛着とそして日本で過ごしたいという思いを抱えた一人の少女の命運を、人権問題とそして国内の出入国管理という機構上の要請、国家統治上の要請とのせめぎ合いの中で、十三歳の女の子をひとり日本社会の中に残して、両親に強制退去を命じたという大きな事件がありました。これは、おられる委員の皆様の間でもまさに判断が分かれるところかもしれません。

 しかし、人権条約、人権協約について、申し上げたとおり、やはり先進的な立場に立ち、いろいろな課題を国際社会の模範となる形で解決していくという姿勢を示すに当たっては、私はこれは、児童権利条約もそうですが、今回の障害者権利条約、具体的に想像すると、もしカルデロン・ノリコさんが重い障害なんかを持っていた場合、余計に両親と一緒にいる必要性は高いはずですよね。

 こういったことも含めて、大臣、いかがですか。今後、先ほどの個人通報制度とあわせてでありますが、より人権を重視する観点からの法体系あるいは国内の運用、さまざま改善努力をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、同条約におきます解釈宣言の話ですが、御指摘のように、御審議いただいているこの条約には、「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。」という児童権利条約の関連規定と同趣旨の規定が置かれておりますが、我が国は児童権利条約の締結に際しまして、その規定が出入国管理法に基づく退去強制の結果として児童が父母から分離される場合に適用されるものではないという解釈宣言を行っております。

 ですから、児童権利条約の締結の際の考え方に基づいて、今回の障害者権利条約につきましても同じ解釈宣言を行うことが適当である、このように考えております。

 考え方としては以上申し上げたとおりでありますが、こうしたさまざまな議論につきましては、引き続き注視はしていきたいと思っています。

小川委員 現時点ではそういうお答えだと思いますが、やはり日本の状況は明らかにおくれている。そして、本当はこの国はどういう国なんだということが問われてくる、そうしたことにかかわる問題だと思います。

 ぜひ、より人権を重視する立場に立った、国際的にも信頼に値する、そして人道上の見地を持った、徳性を備えた国だというメッセージが私は対外的にも国内的にも必要だと思います。

 改めてそのことは御指摘をし、最後に、きょう、文科省、厚労省さん、お越しいただきました。お忙しい中、ありがとうございました。

 将来の話です。もちろん、今回、障害者の方の日常の暮らし、これが焦点ですが、せっかくですので、二〇二〇年、パラリンピックをやられますよね。どうもロンドンではパラリンピック大会に相当国民の動員に成功したというような成功事例もあると事務的にはお聞きしました。それから、誘致に当たって、走り幅跳びの選手の佐藤真海さんですか、非常にすばらしい活躍をされたことは私たちの記憶に新しい。

 ぜひ障害者の皆さんが夢や希望を持てるような、障害者にとっての祭典、パラリンピックをいかなる工夫と努力のもとに行っていく決意であるか、これが一点。

 そして、出生後の障害者の権利については、今回の条約そして国内法整備は極めて大きな一つの進歩だと思いますが、私、ちょっと気になりますのは、最近のDNA鑑定も含めて、あるいは羊水検査、血液検査、出生前診断が非常に世の中で大きな兆候を示しつつあります。

 この出生前、場合によっては出生後、障害を負って生まれてくる潜在的な可能性は高いんだと思うんですよね。この辺は、実情把握も、あるいは堕胎、中絶含めたその後の展開も、あるいはこれに係る法整備も全くおくれているのではないかという気がします。

 非常に重たい課題と夢のある課題、二点、ちょっと同時にお聞きし、それぞれ文科省、厚労省から御答弁をいただいて、質問を終えたいと思います。

冨岡大臣政務官 小川委員の質問にお答えいたします。

 委員御指摘のように、ロンドン・パラリンピックでは、世界各国から百六十四カ国、そして四千二百三十七人の選手を集めまして、大変成功したと聞いております。

 それを分析してみますと、例えば、両足が義足のランナー、印象深かったんですけれども、その方がオリンピックとパラリンピック両方に出られたということで、観客が八万人以上集まったと言われております。また、オリンピック、パラリンピックが終わった翌日、市内パレードをして、沿道には百万人以上が参加したというふうに聞いております。こういったパラリンピックにしては、参加者が大変多かったというふうに聞いております。

 これを分析しますと、パラリンピック発祥の地、ロンドンで、選手の演技力、競技力が非常に高いということ、それから、パラリンピックの映像がメディアに多く露出したこと、さらには、パラリンピック選手が小中学校を訪れ、自身の経験を語るなどの取り組みが行われたこと、また、英国人に障害者スポーツを含めたスポーツを余暇として楽しむ文化が根づいていたことが挙げられると思っております。

 したがいまして、私たちとしては、東京パラリンピックでは、こういったみずからの障害と向き合いながら無限の可能性に挑戦する選手の姿が国民に大きな夢と感動、勇気を与えるものであるということを認識しまして、例えばロンドン・パラリンピックでは、金五個、メダル十六個、残念ながら、世界では二十四位にしか届いておりません、一方、例えば中国では、金が九十五、トータル二百三十一個と大変盛んな国もあるわけなので、そういった国に追いつくような政策を今後とっていきたいと考えております。

赤石大臣政務官 小川委員にお答えいたします。

 委員指摘のとおり、この出生前診断は非常に倫理上問題がありまして、私も実は、二十年ほど前に羊水の血液検査を研究的に始めておりまして、そのときにやはり障害者団体等からかなり大きな反発がありまして、そのときは実施に至りませんでした。しかし、現在、アメリカで新しい血液による出生前診断というものが開発されて、それが至るようになってきております。

 いずれにしても、この検査は社会的に認められないとなかなか普及できない問題であるし、しかも一〇〇%確実なものではないということがあって、多分、この出生前診断とそれから終末期医療、これはこれからもやはりグローバルに、どのようにフィッティングさせていくかということが非常に重要な課題だと思っております。

 基本的には、厚生労働省としては、障害者基本法に定めている理念にのっとって、障害の有無によって分け隔てることのない共生社会を実現することが重要との認識でこれからも取り組んでいきたいと思っております。

 よろしくどうぞお願いします。

小川委員 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 きょうは、フィリピンで発生した台風三十号の被害、日本政府としてどのような支援を行っていくかについて、そして、アメリカによる無人機の問題、これは今世界的に大変大きな問題になっています、この問題に対する日本政府の基本的な考え、そして今後の取り組み、さらに、前回積み残したトルコへの原発輸出についてお伺いをしたいと思います。

 一時間、大変長い時間でございますが、出張帰りの大臣に、ぜひおつき合いをいただきたいと思います。

 さて、まずフィリピンで発生した台風についてですが、私、今さまざまな方面から情報収集をしているところではありますが、死者が恐らく一万人を超えてくるのではないかということ、そして、現地において略奪などが発生しており、支援活動は相当困難が予想されるというような状況を聞いております。

 まず、日本政府の情報収集についてなんですけれども、どのようにして行っているのか、そして、その情報をどのように今後の支援活動に生かしていくのか、この点について大臣の認識そしてお考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 今回のフィリピンにおける台風被害の深刻度は、国際社会においても大変大きな衝撃を与えています。

 私もけさ帰国をいたしましたが、インドで行われましたASEM外相会議におきましても、ちょうどフィリピンのこの被害の報道と重なったものですから、各国ともこの問題に対して深い関心を寄せ、そして支援を行わなければいけない、一同にこうした議論を展開しておりました。

 そして、御指摘のように、この深刻な事態に対しまして、情報収集の重要性、大変重要だと存じます。

 我が国は、今日まで緊急援助の実績を積み上げており、今回のフィリピンの台風被害につきましても、こうした経験を踏まえて迅速に対応をしております。例えば、台風が上陸する前日に、国連等援助機関と調整するため、JICAから一名を国連災害評価調整チームに派遣しまして、災害が発生した翌日には現地入りをしております。

 そして、今後具体的な支援活動を進めていくに当たりまして、情報収集はますます大事になってくると認識をしております。これまで、在フィリピン大使館を通じまして、フィリピン政府と緊密に情報交換を行い、これを踏まえてしっかりと支援策を決定していきたいと考えております。

阪口委員 国際的な援助活動を行う、その上で非常に重要だと思うこと、より早く展開をすること、そして、いかに現場のニーズに応える活動をするかということだと思います。

 その上で、現地の政府と連携をして情報収集をする、これは基本だと思いますが、同時に、やはり独自の情報収集の力を持っていかなくてはいけない。

 今、NSCを設置するということで、情報をいかに首相官邸が中心になって活用していくかという体制の強化が図られていくんだと思いますが、この一次情報をいかに収集をして分析をしていくか、特に、こういった災害時の迅速かつ効果的な対応を行う際に大変に求められてくると思っております。

 ぜひ、例えば地域研究者であるとか現地で展開をしているNGO、また、さまざまなそういった現地のコミュニティーのネットワークの中から情報収集をする、そういった方向も今後打ち出していく必要があるのではないかと思います。

 この点について、特に、情報収集力を全般的に強化する、インテリジェンス能力を高めていくという点から、大臣のお考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 我が国の情報収集能力を向上させなければならないという問題意識、大変重要であると私も思っております。

 御指摘のように、まず我が国自身の情報収集能力を上げるべく、体制や人員の整備等を考えていかなければいけないわけですが、それとあわせて、国際機関、NGO、そして現地政府、関係者と緊密な連携体制を構築していかなければなりません。

 平素からの情報収集もあわせて、迅速にこうした関係者との情報交換、情報収集が可能になるような体制をつくっておく、こういった点も大切にしていきたいと考えています。

阪口委員 日本政府は、医師や看護師ら二十五人の国際緊急援助隊を派遣ということで、もう本日にはレイテ島最大都市のタクロバンの医療施設に展開をしている、あるいは、する予定であると聞いております。私は、こういった最大都市における医療活動は大変に重要であると同時に、より現場に入っていく、そういった支援も求められていると思います。

 今後のオール・ジャパンの救援活動について、現時点でどのような予定であるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 台風の被害に対する我が国の具体的な対応ですが、人的支援の面では、十一日に派遣を決定した国際緊急援助隊、そして医療チーム、既に、被災地のレイテ島に入り、所要の活動を開始しております。また、十二日には、自衛隊を国際緊急援助隊として派遣することを決定し、既に一部がマニラに到着をしております。これは恐らく先遣隊ということだと思いますが、こうした段階を踏みまして、しっかりと自衛隊の活用も考えていきたいと思っております。

 そして、緊急シェルター、水、衛生分野で一千万ドルの緊急無償資金協力を行うことを表明したほか、ビニールシート、マット等、六千万円相当までの緊急援助物資をフィリピンに供与すること、これを決定しております。

 こうした支援、これを着実に進めなければなりません。決定したことを一刻も早く実施し、そして、被災された方々のもとに実際に届くように、しっかり努力をしていきたいと考えています。

阪口委員 我々日本としては、津波災害を受けた経験、そして、これまで日本には余りなかった、海外から援助を受けた経験という蓄積がございます。近隣のフィリピンに対しては、やはり、日本のプレゼンスをしっかり見せると同時に、本当に必要な支援を行う万全の体制を構築して人道援助を行っていただきたい、まいりたいと思っております。

 さて、アメリカの無人機について問題提起をさせていただきたいと思います。

 実は、私の個人的な経験もこの問題にはかかわっておりまして、二〇〇二年の秋から冬にかけて、ちょうど九・一一のテロが発生し、また、テロとの闘いが行われていた、当時のパキスタンのトライバルエリアにおいて、私は、選挙の監視、調査、そして報告をするという仕事を現地において行っていた経験がございます。

 当時は、オサマ・ビンラディンを初めとするアルカイダの一派が、まさにパキスタンの行政や警察権が及ばないトライバルエリア、部族支配エリアに潜伏をしている、このように言われておりまして、アメリカによる爆撃が行われておりました。大変な数の犠牲者が出ていると同時に、私も、現地で活動する中で、場合によっては攻撃に巻き込まれるリスクもある活動であるということを現地で認識しておりました。

 当時、少しでも現地の社会に入っていくためということで、私も民族衣装を着て、ひげを生やして活動していました。私の顔は、余りひげが似合う、立派なひげを蓄えるそういった顔ではないんですけれども、しかし、少しでも現地になじんで、奥深く入っていこうとすると、そういった攻撃を受けるリスクが生じ得るということ。

 また、よく聞かれたのは、日本政府の基本的な考えはどうなんだということなんですね。要するに、アメリカの側に立つのか、それとも、我々の側に立って、アメリカのこういった攻撃をやめさせる、あるいは何らかの問題提起をする意思があるのかということも聞かれました。

 このような、本当に現地に住んでいる人々、民間人の方々にとっては、突然ミサイルによって攻撃をされる、これは大変に大きなストレスを感じる、人道的な問題であると思います。

 こういった私自身の個人的な経験に基づいて問題提起をさせていただきたいと思うんですが、まず、二〇〇九年、オバマ大統領がノーベル平和賞のスピーチで述べた言葉、短い言葉ですので引用させていただきたいと思います。

 一定の条件が整ったときのみ戦争は正当化される、最後の手段として、また自己防衛のために、適切な武力で遂行され、民間人は可能な限り犠牲にしないという条件である。オバマ大統領は、スピーチの中でこのようなことを述べております。

 ところが、この十月、国連は、米国、英国などの無人機攻撃による各国市民の被害について報告を行いました。まさにパキスタンやアフガニスタンにおいては、二〇〇四年以降、市民四百七十九人以上が死亡したという結果を公表いたしております。そして、全体の死者は二千二百人であるということも述べております。

 そして、この市民の犠牲に対して責任がある国として、経緯を調べて公表する義務を負うと指摘、無人機攻撃の大半を実施している米国に対しては名指しをし、事実関係を明確にするように求めた、このような報道がなされております。

 また、ヒューマン・ライツ・ウオッチやアムネスティ・インターナショナルのような国際人権団体も同様の指摘を行って、この無人機による爆撃、そして、そこに一般人の被害が多数出ているということに対して、国際社会としては真剣に向き合っていかなければいけない、今そういう時期に来ていると思います。

 まず、大臣にお伺いをしたいんですが、この数字、四百七十九人の民間人が巻き添えになっているということについて、これは数字の大小ではないと思いますが、この事実についてどのようにお考え、お感じでしょうか。

岸副大臣 お答えを申し上げます。

 委員の御質問にもございましたとおり、アフガニスタン及びパキスタンにおきましては、テロとの闘いがいまだ続いております。その中で、無辜の民間人の方が多数犠牲になられている、このこと自体は大変痛ましいことだというふうに考えておる次第でございます。

阪口委員 痛ましいことであると思いますという後に、もう少し言葉を期待したんですが、少し官僚的な答弁であったのかなという思いもいたします。

 では、大臣はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 もちろん、今、岸副大臣から答弁させていただきましたように、こうしたテロとの闘い等によってさまざまな地域において民間人の犠牲が出ていること、大変痛ましいことだと思います。

 そして、その実情や背景や理由につきましては、それぞれの地域において、場面において、さまざまなものがあります。やはり我々は、それぞれ個別に具体的に対応を考えていかなければならないと思いますが、基本的に、暴力の停止、そして非人道的な状況の改善、こういったものに対してしっかりと努力をしていく、こうした貢献を行うことは考えていかなければならないと思います。

阪口委員 今、非人道的な状況の改善というお言葉がありましたが、まさに米国の爆撃によって非人道的な状況が生まれているということ、これはやはりしっかり認識をしなければいけないと思います。

 その上で、さらにお聞きしたいんですが、このようなケースにおいて、テロリストを殺害する上で、どうしても民間人の犠牲というもの、これは避けられていないというのが現実だと思います。

 民間人の巻き添え、被害というのは、これはもうやむを得ないものなんでしょうか。テロリストを殺害する、この大義のためにはいたし方ない犠牲であるとお思いでしょうか。あるいは、やはりこういった人道的被害というものは徹底してなくしていくという立場に立つべきだとお考えでしょうか。この点、お答えをいただきたいと思います。

岸副大臣 先ほども委員からもお話ございましたけれども、現地で行われているテロとの闘い、これは我が国もテロとの闘いについては重視をしておるわけでございます。

 その中で、先ほどオバマ大統領のお言葉も引かれました。やはり、民間人がそういった攻撃に巻き込まれるということは極力避けていかなければいけないんだと思います。

 先ほど大変痛ましいという答弁をさせていただいたんですけれども、これは、無人機であろうと、いかなる攻撃であろうと、民間人が巻き込まれるということは極力避けなければいけないことでありますし、事実として犠牲者が出ているということについては大変痛ましいことである、こういうことでございます。

阪口委員 国連は、責任がある国は経緯を調べて公表する義務を負うと指摘して、米国を名指ししているわけですが、基本的に、日本政府としては、国連を支持するのか、あるいは米国を支持するのか、どちらの態度を現状でとっているのか、今後とるのか、この点についてはいかがでしょうか。

岸副大臣 戦闘の方法についてでございますけれども、いわゆる軍事的必要性と、また、文民及び民用物の保護という人道的な要請の、双方の要素を考慮しなくてはならないわけでございます。

 こうした観点に立ちまして、砲爆撃につきましては、軍事目標に限られるべきであるという区別原則等をしっかり考慮する必要があるものと理解をしております。

阪口委員 まずは情報開示をするということが、仮にアメリカがみずからの正当性を国際社会に対して訴える場合においても、これは最低限必要なことだと思うんですが、アメリカ政府は、基本的に、これは秘密作戦であるということを理由に、国連や、そして遺族が求める情報開示には応じず、説明責任を果たしていないということであります。

 一度の無人機攻撃で何人の兵士が殺され、そして何人の民間人が犠牲になったのか、これは判断するのも大変に時間がかかります。何といっても、一万キロ以上離れた米国の本土において、そこで赤外線カメラによる情報をベースに攻撃をオペレーターが行うわけですから、現地における作戦と比べても、みずから検証すること、これ自体も困難が伴うものだと思います。

 しかし、民間人を結果的に殺しておいて、その事実を判明するための努力をしない、これは、これ自体、大変に人道的な問題をはらむものだと思いますが、この点について、どのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の、パキスタンにおける米軍の無人機攻撃ですが、こうした個別の案件において、米国とパキスタンが、これまでどのような経緯を経て、そして、どのような背景のもとに、どんなやりとりをし、あるいは約束等があるのかないのかとか、さまざまな事情について、我が国としては詳細を知る立場にないものですから、その辺を確認できない立場から評価ですとかコメントするのは、ちょっと適切ではないのかもしれないとまず思っております。

 ただし、この無人機の問題は、国際世論の中で、さまざまな議論の中で、今大きく取り上げられようとしています。

 我が国としましては、一般論として、こうして大きな議論が起こりつつあるわけですから、こういった問題について、引き続き大きな関心を持って注視をしていかなければならない、これだけは間違いなく言えるのではないかと思っています。

阪口委員 大臣がいろいろな意味で明快にはお答えしにくい立場であるということは、私もよく理解をいたしております。

 ただ、今大臣が答弁された内容の中に私は誤りがあると思います。

 この十月にパキスタンのシャリフ首相は訪米をして、オバマ大統領との会談の中で、紛争の当事国ではないパキスタンにおける無人機の爆撃は主権侵害であり、これは停止すべきだという表明を出しているんですね。にもかかわらず、米国は攻撃を続けている。これは大変に国際的にも大きな問題だと思います。

 米国がこの攻撃を続けている法的根拠、これはどこにあるんでしょうか。

岸副大臣 米国政府によります無人機による攻撃、これも含めまして、あらゆる米国の軍事行動につきましては、関係法規に従って行われるということが説明されておるわけでございます。

 他方、米国のオペレーションの詳細につきましては、我が方が当事者ではございませんので、その詳細について知り得る立場ではないわけでございます。

 そういう意味で、なかなか確定的なコメントを申し上げる立場にはないということを申し上げさせていただきたいと思います。

阪口委員 先ほど小川委員の問題提起にもありましたが、我々は人間の安全保障を実現する、そのためのリーダーシップをとっていくということを国際社会に対して約束している立場であります。そして、このような人道的な被害をもたらし、また今、国際社会における大きな問題になっているテーマについて、やはり他人事であるという態度は許されないと思います。

 特に被害を受けた方々、これは補償も全くされないんですよね。アメリカが情報をしっかり公開して、誤爆による、また巻き添えによる被害であるということを明確にして、そして補償する、これは起きてはならないことですが、少なくとも補償する、そういった態度を示さない限り、大変な憎しみ、テロの連鎖、これが起こり得ると思います。

 やはり、日本政府としては、この連鎖をとめるための努力をしていく必要があると思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先ほど委員の方からシャリフ首相の発言について紹介がありました。

 十月二十三日の米・パキスタン首脳会談共同記者会見におけるシャリフ首相の発言、私も承知をしております。

 ただ、その発言は承知しておりますが、先ほど言いましたように、これまでの経緯ですとか、背景に何があるとか、これは我々十分把握しておりませんので、我が国の立場から、ちょっと具体的にコメントは差し控えさせていただきたい、こういったことを先ほど申し上げた次第でございます。

 そして、こうした無人機の問題につきましては、先ほど法的根拠の御質問もございましたが、まず、今現在、保有ですとか使用を禁止する条約ですとか国際法は存在しないとは認識しておりますが、一般論としまして、武力紛争における戦闘の方法及び手段、これは国際人道法によって規制をされていると認識をしております。

 無人航空機が武力紛争において使用される場合も、同様に国際人道法の適用を受ける、これは当然のことだと認識をしております。

阪口委員 今、国際人道法について御指摘がありましたが、米国の自由人権協会、これは米国における最も影響力のある人権協会ですが、この団体は、国際人道法は、個人が敵対行為に参加することを阻止する場合を除いては、標的殺害、つまり無人機によって、レーダーで誘導された爆撃によって個人を爆撃する、これは暗殺に近い手法だと思いますが、こういった標的殺害を禁じている。そして、米国が世界のいかなる場所でも疑わしい敵に対する無人機または他の手段による軍事力行使の正当性を主張するなら、他の国が米国内で同様の行為を行うことも正当化される、このように述べております。

 これは、解釈すれば、自分たちの国で他国がこのような行為を正当化するというようなことがあり得ない、あってはいけない以上、アメリカもするなということを米国内の人権団体が表明しているということだと思います。

 この点についてどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の国際人道法についてですが、まず、砲爆撃は軍事目標に限られるべきであるという区別原則、軍事目標主義、こういった考え方は考慮する必要があると考えております。

 いずれにしましても、個別の問題については、先ほど申し上げたとおり、ちょっとコメントは控えたいと存じますが、こうした大きな議論が今国際社会で起こっていることについては、しっかりと留意し、そして注目をし、そして我が国としても今後の対応について考えていかなければならない、このように思っています。

阪口委員 この問題に対する日本政府の今後の方針、これはやはり国際社会の期待に沿うものでなければいけない。そして、その上でのリーダーシップをとっていくということが、私は、日本としての国際社会における存在感の一つの見せ方ではないかと思います。

 女性が教育を受ける権利を主張して、それゆえにタリバンの攻撃を受けたマララ・ユスフザイさん。彼女は、ノーベル平和賞の候補者にもなりましたが、テロリストによって攻撃を受けた立場でありながら、ホワイトハウスにおいて、オバマ大統領に対して、無人機攻撃がテロリズムをあおっている、先ほど申し上げたように、テロの連鎖を生み出しているということを強く訴えました。

 日本政府としては、この問題に真剣に取り組んで、国際社会を引っ張っていく、国際世論をリードしていく、そのような方向性をぜひ打ち出していただきたいと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のマララさんですが、これは十月の十一日ですか、オバマ大統領一家と懇談をされ、そのやりとりの中で無人機攻撃に対する懸念を表明し、そして、罪のない被害者が無人機攻撃で殺されており、パキスタン国民の反発につながっています、こういった指摘をしたということは承知をしております。

 こうしたマララさんの発言も含めて、この問題について、今国際社会で議論が行われていると承知をしております。

 ぜひ、そうした中で、我が国としてどうあるべきなのか、真剣に考えていかなければならないと思っています。

阪口委員 真剣に議論を行っていく上で、基本になる国際法、これを押さえておく必要があると思います。

 先ほど法的根拠ということをお伺いしたんですが、これはちょっと確認をさせていただきたいんですが、一九四九年のジュネーブ諸条約及び追加議定書によると、このようなことが述べられております。

 第一に、戦時に敵意を持った相手を攻撃することは認められているということであります。しかし、無人機攻撃は、敵意や武器の有無の識別が十分ではない可能性が高いこと、これが大きな問題であります。

 そして、仮に標的がテロリストであっても、このジュネーブ条約によると、敵対行為を行っている最中でなければ、過去の行いを理由に攻撃はできないということであります。

 また、テロリストへの攻撃は捕獲が難しい場合に認められていますが、その場合でも警告が必要で、それらの手順を踏まない攻撃は裁判によらない処刑であり得るということであります。

 無人機による攻撃は、当時は想定はされていなかったとは思いますが、このような、ジュネーブ条約に明らかに反すると思われる点を多々含んでいるということもございますので、これは繰り返しになりますが、日本政府として、この点において、人道的な見地から国際社会をリードしていく役割を果たしていただきたいと思いますし、そのことによって、平和に貢献をする、人道上の問題に対して果敢に挑戦をする日本という存在感をぜひ出していただきたいと思います。

 特に、この際に、日本が問題提起をする場は国連であると思うんですね。ぜひ、国連総会に対して、無人機攻撃による民間人の犠牲を懸念し、国際人権・人道法に違反することがない国際ルールの確立、そして、主要国による透明性のある調査、すなわち、無人機攻撃を行う国があったとすれば、まずはその国自身が責任を持って調査をするということを認めるべきであると思います。そして、犠牲者が生じてしまった場合、責任を持って補償をする、これも私は必要な態度だと思います。

 このような、国際ルールを確立するための働きかけをぜひ日本として行うべきだと思いますが、重ねて大臣の考えをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ジュネーブ条約との関係においての指摘につきましては、参考にさせていただきたいと存じます。

 そして、その上で、こうした問題に対する国際的な議論、しっかり注視をしていきたいと存じます。その上で、我が国の具体的な対応等についても検討していきたいと考えます。

阪口委員 次に、トルコへの原発の輸出について、私、今回質問するのは三回目なんですが、前回、十分に聞き切れなかったこと、また政府の答弁が十分ではないと私なりに感じたことについて、改めてお伺いをしたいと思います。

 なぜなら、前回の答弁の中には、商業契約がまだ終わっていない、あるいは民間の事業であるがゆえに政府にはわからないというような答弁が多々あったと私は受けとめております。

 しかし、国会においてチェックできる機会というのは、まさに原子力協定への賛否を表明するこの局面だけなんですね。ここから先は、基本的には我々が関与できない、少なくとも意思表示を国会においてするという機会はございません。その中で、にもかかわらず、十分な情報がないままに賛否を判断しなければいけない、これは大変に大きな問題だと思います。

 そういったことを踏まえて、何点かお聞きをしたいと思います。

 さて、三菱重工が中心になって原発の施設、原発のハードをトルコに提供する、この点については私も理解しているんですけれども、この後、この三菱重工、伊藤忠商事、フランスのGDFスエズが、原発事業を運営して、そして国営トルコ電力会社とともに、まさに電力を生み出していく、事業として運営をしていく役割を果たすわけでございます。

 前回も再三確認しようとしたんですが、原発事故が起こったときに、その責任を一義的に負うのは原発の事業者であるということですよね。

 まず最初の質問なんですが、その事業者としての責任の割合というのは、現時点では商業契約の中には定められているんでしょうか。要するに、日本の企業が二社入る中で、どの程度の責任をこの商業契約において日本企業が負担することになっているのか。この点について、政府が把握している状況をまずは教えていただきたいと思います。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今のトルコにおける原発契約でございますけれども、具体的な契約の中身がまだ定まっておりませんので、現段階では不明であるということでございます。

阪口委員 これは皆さんに、答弁者としての大臣に問題提起をしたいんですが、どの程度責任を負うかが決まっていない段階で、どうやって原子力協定に対する賛否の態度を我々が決めることができるんでしょうか。率直な疑問としてお伺いをしたいんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、原子力の安全の重要性につきましては、当然のことながら、十分認識をしております。福島原発事故の経験と教訓、これをしっかり国際社会と共有する、高い水準の原子力安全が実現するよう協力していかなければいけない、我が国の立場はそういう立場だということは認識をしております。

 その中で、協定を結ぶことの意味ですが、これは、協定の中で、原子力安全に対する国際的な関心の高まり等を踏まえて、原子力安全関連条約に関する規定を設けるとともに、要するに、協力の分野として、原子力の安全についての協力ということをこの中に規定しております。

 こうした我が国として行う協力、例えば人材育成ですとか、あるいはシステムの構築ですとか、こうした協力を通じまして相手国における原子力発電施設の安全性確保にしっかり貢献していきたい、このように考えています。

 ですから、今の時点で原子力協定を結ぶ意味は、その点が政府の役割として重要だと考えております。

阪口委員 確かに、まずは原子力協定を締結して、そこから始まるんだというのが政府の立場なのかなと、私は、答弁を聞いていて、あるいは先日からのさまざまな議論の中で感じる次第でございます。

 ただ、先ほど問題提起をしたように、もうここで協定を締結するのか否かという判断をしてしまうと、少なくとも我々は、原発にさまざまな問題があったとしても、国会議員としての態度を表明する機会というのはないわけですね。

 ですから、基本的な協定に対する政府の態度として、さまざまな事情でこの協定を早く結びたいという政府の側の都合はわかりますけれども、しかし、今、原発事故を起こした日本、そして日本を取り巻く状況、海外に対して原発輸出を行うということの意味の大きさを考えると、商業契約の中身がどうなっているかわからない、そして、日本政府が結果としてどのような形で責任を負うのかが明確ではないという段階でこの原子力協定の賛否を問うのは、私は非常に問題があると思っています。

 今、日本政府の責任という点について触れましたが、基本的には、原子力事業を運営する中に日本企業が入っている限りは、もし事故が起こったときに、その責任を日本政府が負う可能性があるというのが私の認識なんですが、その点についてはいかがでしょうか。

 例えば、この責任というのは、企業だけでは負い切れない賠償責任、数兆円以上に及んだ場合に、当然、日本政府がそれを肩がわりするという可能性も生まれ得ると思いますが、この点、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先ほども申し上げましたが、原子力協定というのは、政府間、二つの国の政府の間における協力の枠組みを定めるものです。ですから、具体的なプロジェクト、これはもう民間の話ですので、これは協定の中で内容を定めるものではありません。協定と民間のプロジェクトの関係は、しっかり整理しておかなければならないと存じます。

 そして、その上で、もし事故が発生した場合の責任という御質問をいただきました。

 これは、原子力発電所が所在する国が、原子力損害賠償に関する国際条約、どのような条約を締結しているかということによるわけですが、この原子力損害賠償に関する国際条約を原子力発電所が所在する国が締結している場合にはそれに従い、そして、現状、原子力損害賠償に関する条約、三系統ありますが、ウィーン条約、パリ条約、CSC、どの系統におきましても、原子力発電施設において万が一事故が起こった場合の損害賠償の責任は、当該施設の運用者、原子力事業者が負う、こうした原則になっておりますので、この原則に従って物事が処理されることになると考えます。

阪口委員 事業者が責任を負う、そして、事業者が所属をしている、事業者の国籍にかかわる国が責任を負う可能性、私は、今の答弁を聞く限りにおいても、否定はできないと思います。これはさまざまな道義的責任や、あるいは技術を提供した国として、やはりその修復だとか問題の解決に対する責任というものも生じてくると思います。

 原子力協定と民間の契約の関係、これは私も一〇〇%理解しているんです、もうずっと聞いていますから。

 ただ、原発の輸出という本当に大きな問題において、同時に契約の内容、そして責任の所在、責任の分担、そして政府の責任、ここがやはり明確にならないと、この問題に対する態度の表明が極めて難しい、この認識はぜひ共有をしていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 南カリフォルニアエジソン社が、今回トルコに原発の施設を提供する予定の三菱重工、まさに三菱重工が納入した蒸気発生器から放射性物質を含む水が漏れたということによって、廃炉になりました。

 これは厳格に言うと事故ではないんですね。事故ではないけれども、故障が起こったという事実が明らかになったがゆえに、現地で住民による反対運動などが起こって、トータルの判断で、もうこれ以上原発の事業を続けていけないということで廃炉になったというケースでございます。

 ですから、いわゆる原賠法はここには適用されないということで、蒸気発生器を提供したメーカーであるというだけであるにもかかわらず、三菱重工は四千億円の賠償を求められているというケースが発生をしています。

 三菱重工は、これに対しては不服を唱えて、逆に訴えるというような態度も表明していると私は聞いておりますが、この問題がその後どのような状況になっているのかということについて、まずはお伺いをしたいと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 本件は、先生が言われるように、米国のサザンカリフォルニアエジソン社のサンオノフレ原子力発電所に三菱重工が納入した蒸気発生器から冷却水が漏えいし、結果として、先ほど御説明がいろいろありましたけれども、本年六月に廃炉の決定に至った案件でございます。

 先月、サザンカリフォルニアエジソン社が、三菱重工に、約四十億ドル、先生が言われたように、約四千億円の損害賠償請求を行うために、仲裁申し立てを国際商業会議所に行ったというふうに承知をしているところであります。

阪口委員 日本政府としては、このような問題に対しては、あくまでも民間企業に対する訴訟であるということで、政府として直接かかわりを持つことがあり得るのか、あるいは、これは日本の原発政策にかかわる重大な問題として、政府として何らかのサポートをしていく考えがあるのか、この点についていかがでしょうか。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今まさに外務省石原政務官から御答弁ありましたように、事象としては民民の紛争処理ということでございますので、これ自身に関して政府が関与する部分はございません。そういう意味では、私どもは三菱重工の対応をウオッチしているという状況にあると思います。

阪口委員 わかりました。

 最後に、トルコにおいて原発が建設予定であるシノップ市の状況についてお尋ねをしたいと思います。

 この町は、黒海沿岸の、大変に風光明媚な地とされておりまして、観光収入が町にとっては重要な収入であるとも聞いています。また、パキ・エルギュル市長は、二〇〇九年に、原子力施設がここに設置されるということに対して明確な反対の意見を表明して、反対派として選挙に勝って市長になっております。

 日本としては、こういった状況を理解した上で、この地に日本の技術で原発を建設する、また、日本がその原発事業の一翼を担うということであれば、やはりしっかりとした住民に対する説明責任を負うのではと私は考えているんですが、この点について、日本政府はこれまでどのような対応をしてきたのか、現地の人々に対する意識調査、こういったことも含めて、どのような情報収集と対応をしてきたのかということについて教えていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、トルコ政府としましては、地元への説明、理解を得るためにさまざまな努力を行ってきていると承知をしております。

 EUと同じ方式のストレステストをトルコにおいても自主的に実施する意向を表明するなど、原子力安全強化の流れを踏まえた規制運用を図っていると承知をしております。

 そして、国民の理解を得るために、NGOを初めとするさまざまな団体に対し正確な情報提供を行っているという説明を受けておりますし、また、シノップ原発開発地域におきましても、現状は、地域住民から原発建設についておおむね支持を得られている、こうした報告を受けております。

 いずれにしましても、我が国としましては、トルコ政府から求めがあれば、我が国のこれまでの経験に基づく助言ですとか可能な範囲の協力、これはしっかりとやっていきたいと考えております。

阪口委員 前回の質問でも指摘をしましたが、このシノップは、いわゆる北アナトリア断層、トルコを東西に横切る断層の北部に位置する。実際、シノップの周辺にどのような断層があるのかということについては現在調査中ということであると聞いておりますが、日本政府としては、可能な限りの情報提供と、そして、やはり現地において日本が一翼を担って原発を建設、運営するというのであれば、それにふさわしいさまざまな責任、説明責任をみずから負うという態度も私は必要だと思います。

 日本とトルコというのは友好国でもございます。原発が、日本、トルコの友好関係、信頼関係を失うきっかけ、理由になることがないように、これは今申し上げた現地を含めて、この点について万全の対応をいただきたいと思います。

 最後の質問、そして私からのお願いなんですが、大臣からコメントをいただいて、質問を終えたいと思います。

岸田国務大臣 我が国としましても、原子力の安全につきまして、しっかりトルコ政府に協力をしていかなければならないと思っています。

 求められれば、しっかり助言も行わなければならないと思いますし、また、我が国の持つ経験や教訓、あるいは知見、技術、必要であればしっかりと提供していく、こうした協力を惜しんではならないと考えます。

阪口委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 みんなの党の杉本かずみであります。

 冒頭、各委員がおっしゃっておられますけれども、台風三十号、フィリピン及びベトナム、中国でも犠牲者が出ておられます。犠牲者に謹んで哀悼の意を表し、そして、今被災されている方々にお見舞いを申し上げたく存じますし、今、阪口代議士の質問の中にもありましたとおり、我が国の緊急援助、外務省を挙げて御尽力を賜りたいとお願いを申し上げます。

 大臣は、イラン、インド、ASEMなど、極めて精力的に外交をされ、そしてきょう十時から御出席を賜っているということで、大変僣越な物言いでございますけれども、非常に安定感があって、バランス感覚をお持ちで、一議員として安心して見させていただいている、拝察しているという状況でございますので、ぜひ、さらに御活躍いただいて、北方領土問題、日中関係、日韓関係、こういったことにお力を賜りたいとお願い申し上げますし、また、きょうも、松本元大臣が質問に立たれて岸田大臣とやりとりをしていただいているところを見まして、改めて政権交代の意義というものを感じております。

 るる申し上げました。

 先般、私、一方的に幾つか申し上げた中で、アメリカの秘密の三つのランクの中で、三つ目の一番低いランクのものをクラシファイドか何かと申し上げちゃったんですが、コンフィデンシャルであったという点で、おわび、訂正を申し上げたく存じます。

 それでは、社会保障に関する日本・ハンガリー間の協定について質問させていただこうと思いますが、その前に、この間、一方的に申し上げたことで、大臣の御認識を確認させていただきたい点を一点だけお許しいただきたいと思います。

 価値の共有、あるいは法の支配を初め、自由とか民主主義とかということをおっしゃられますけれども、おっしゃられる法の支配には立憲主義といったものを前提にされておられるかということをあえて確認させていただきたくて、私の解釈では、立憲主義というのは、国家権力に対して憲法により一種制約を与えて、国民の権利を国家権力の恣意的支配から守る、こういう認識をしておりますけれども、そういった認識に立っておられるかどうか、大臣の御認識を改めてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、法の支配の意味するところは、文脈によりまして異なることがありますので、一概にお答えすることは難しいとは思いますが、一般論で申し上げるならば、全ての権力に対する法の優越を認める考え方を指す法の支配と、憲法によって支配者の恣意的な権力を制限しようとする立憲主義、これは密接に関連する概念であると認識をしております。

杉本委員 ありがとうございます。

 冒頭申し上げたとおり、やはり大臣、保守本流、安定感ということで、引き続きそのバランス感覚をお願い申し上げたく存じます。

 それでは、具体的な協定についての質問でございます。

 我が国は貿易立国でありまして、海外での我が国の企業活動も極めて活発というような状況であって、そんな中で、二〇〇〇年よりずっと前からこんなような協定があってしかるべきではないのかなと、ちょっと庶民感覚で質問して大変申しわけないんですけれども。しかし、社会保障協定の発効は、ドイツをスタートに、英国が二番目、そして韓国が三番目、アメリカが四番目、こういう順序で、二〇〇〇年以降に発効しているという状況のようでございます。

 なぜもって、我が国の海外活動が活発だった二十世紀の時代にこういった協定が結ばれずに、二〇〇〇年以降になってから協定締結になっているのか、こういった歴史的背景を教えていただければと存じます。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 我が国は、昭和四十年代から、ドイツ、米国と当局間で意見交換を行ってまいりました。当時、我が国は社会保障協定を締結する経験がなかったことや、我が国や相手国の年金制度の改正が累次に行われてきたことにより、両国が交渉するベースが固まらなかった等の事情がございます。継続的に交渉を行うことが困難な状況だったものですから、その後、我が国としては初めての社会保障協定となるドイツとの間の協定の交渉がまとまったのが一九九八年、それ以降、他の国との間で順次、社会保障協定を締結してきたというような経緯になっております。

杉本委員 ありがとうございます。

 それでは、直近、当委員会を通過し、衆議院を通過したインドとの協定が記憶に新しいわけでございますが、この審議をしているハンガリーとの協定との類似性、相違点等をちょっと改めて教えていただければと思います。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 日本・インド社会保障協定及び日本・ハンガリー社会保障協定は、これまで我が国が締結した社会保障協定の内容を基本的には踏襲したものであります。

 両協定の共通点としては、年金の二重加入の問題と保険料の掛け捨ての問題の両方を内容としている点であります。これは、これまで我が国が締結してきた社会保障協定の多くと同様でございます。

 他方、両協定の主な相違点でございますが、医療保険制度を協定の対象外としているか否かでございます。

 日・ハンガリー社会保障協定は、医療保険制度を対象とし、適用法令の調整を行うことを内容としております。これは、日本からハンガリーに派遣される駐在員等については、強制的に両国の医療保険制度への二重加入となるからでございます。

 他方、日・インド社会保障協定は、医療保険制度を対象としておりません。これは、インドの医療保険制度の強制加入の対象が非常に限定的であるため、我が国との関係で二重加入の問題が発生しない、または発生する可能性が非常に低いということによるものでございます。

 以上でございます。

杉本委員 それでは次に、岡本代議士並びに松本代議士から、我が国の社会保障協定の締結のぐあいが桁違いだとか、スピードが遅い、スピード感をもっと速める必要があるとか、そういったところから、松本元大臣におかれては、人材の問題、あるいはこういったノウハウのアウトソーシング、ノウハウのある方を外から少し登用するとか、そんな議論もあったかと思いますが、そのときは三ッ矢副大臣でいらっしゃったので、岸副大臣がお見えなので、ちょっと質問は重複するかもしれないんですが、改めて伺いたいと思うんです。

 現在、政府間交渉中のルクセンブルク、スウェーデン、中国、フィリピンとのそれぞれの事案において、今、交渉上、交渉の進みという意味で若干障害となっているような問題等が何かありましたら、それぞれの国ごとに御教示を賜りたいと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御承知のとおり、相手国との関係もあり、個別の交渉内容については御説明を差し控えさせていただきたいと思うんですけれども、ただ、過去の全体感みたいな形で、過去、協定を結んだところを見ると、どの国とは言えませんが、やはりヨーロッパの国々に関しては、例えば年金とか医療とか、こういうものを、要するに、自国の、ヨーロッパの国の保険制度に入らなければいけない、その免除の期間をなるべく狭めたい、だけれども、我々は五年ぐらいは欲しい、こういうことでかなり交渉のせめぎ合いがある。また、どの分野まで、どの範囲まで入れるのかどうかというところでせめぎ合いがあるというふうに認識をしているところであります。

杉本委員 重なる質問かもしれないですが、現在、政府の予備協議中というのが、今おっしゃっていただいたヨーロッパの国々だと、スロバキア、オーストリア、あるいはフィンランドがございますし、今、原子力の話が出ましたけれども、トルコ、こういったところも予備協議中でございますが、認識として、政府間交渉の状況と予備協議という状況、この違いも含めて、今、その予備協議の段階での論点などはどんな点があるか、教えていただきたいと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、スロバキア、オーストリア、トルコ、フィンランドとの間で、両国の社会保障制度について理解を深めるべく、予備協議を実施しているところであります。

 予備協議は、やはり両国の社会保障制度への理解を深めるということがかなりの重点になるというふうに考えております。協議の内容については、先ほどの交渉している国々の話と同様でございますけれども、相手国との関係もあり、詳細は説明を差し控えさせていただきたいというふうに思います。

杉本委員 それでは、既に我が国が締結または署名した社会保障協定において、年金期間通算がなされていないケースというのがイギリス、韓国、イタリアにおいてあります。働く人たちの立場、我が国の雇用者あるいは相手側の国の雇用者という側から見ても決して望ましいものではないようにも感じられるんですけれども、こういった点について、これらの国々との締結において年金期間通算がされなかった理由をそれぞれについてまた教えていただきたいと思います。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、英国、韓国、イタリアとの協定のいずれも、二重払いの防止のための適用調整に係る規定は置いてあるものの、保険期間の通算に係る規定は含まれておらず、年金保険期間の通算はなされておりません。

 これらの協定については、交渉当時、先方より、自国の社会保障制度等の国内事情を理由に、通算規定を含めたくないとの主張がなされ、交渉の結果、将来的に保険期間の通算に係る規定を置く可能性を模索することで双方一致したものでございます。

 日本側としましても、通算規定について議論を続けた結果、交渉が長期化するよりも、二重加入の回避に限定した協定を早期に締結する方が日本の国民に益するところが大きいと判断をいたしました。そのため、これらの協定では通算規定を含めないこととしたものでございます。

杉本委員 松本代議士とのやりとりでもあったかもしれないですが、なかなか、我が国の外務省サイドも、非常に要員的な問題等はあると思いますけれども、今お話がある中では、将来的には可能性を模索するというようなことで、今現在は至っていないという理解でございますので、我が国の働く方々、あるいは相手側の働く方々のためにも、既に締結または署名した問題についても努力を引き続きお願いしたいと存じます。

 それでは、ハンガリーなんですけれども、素人的というか庶民感覚的に言って、一体ハンガリーの社会保障の事情というのはどんなになっているのかということを、ちょっと日本の円換算ベースで考えてみたい、知ってみたいと思うので、あえて伺いたいんです。

 このハンガリーの年金、医療、雇用保険、こういったものについて大体幾らぐらいかかっているのか、その大もとである標準的な勤労者の賃金というのはどのくらいのレベルなのか、これを円ベースで、なかなか平均値というのは難しいと思いますけれども、イメージが湧くような形で教えていただけないでしょうか。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 ハンガリーにおける被用者の一人当たりの平均収入総額は二十二万八千百六十フォリント、これは円換算で十万二千円程度でございます。それから、ハンガリー側によりますと、ハンガリーの老齢年金の平均受給額の月額は十万七千百四十フォリントで、日本円に換算すると約四万八千円になります。

 以上でございます。

杉本委員 済みません、医療費とか雇用保険みたいなところの数字というのはございますでしょうか。

長谷川政府参考人 失礼いたしました。

 ハンガリー側によりますと、医療保険及び雇用保険の徴収額の統計はないとのことでございますが、費用負担分の保険料率について申し上げますと、年金保険が総収入月額の一〇%、それから医療保険が総収入月額の七%、雇用保険が一・五%となります。なお、このほかに、雇用者負担分の保険料は、年金保険及び医療保険合わせて二七%でございます。

杉本委員 それでは、これは双方の問題でもあるんですが、掛け捨てされる資金というのが、人数の分が掛け合わされれば額的にそれなりの額になると思うんですけれども、この該当期間に未達となった掛け捨てされるであろう資金というのは両国でいかに取り扱われていくのかを、それぞれの国について教えてください。

長谷川政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省によりますと、日本の年金制度においては、外国人であれば、受給資格期間を満たさない場合、脱退一時金の支給を受けることができます。また、日本人については、国外に移住していた期間は合算対象期間として受給資格期間に算入されるため、保険料の掛け捨ては生じにくい状態でございます。それでも受給資格期間を満たさず、給付に結びつかなかった保険料については、これまでどおり、制度全体で必要な給付の財源となると承知しております。

 他方、ハンガリー側で掛け捨てとなった保険料がどのように取り扱われるかについては、現時点で承知をしておりません。

 いずれにしましても、この日・ハンガリー社会保障協定は、御指摘の掛け捨ての問題にも対応するために締結されるものであるので、本協定が発効すれば、保険料の掛け捨ては生じにくくなるものと考えております。

 以上でございます。

杉本委員 それでは、社会保障からちょっと離れるんですけれども、ことしの八月下旬に、岸田大臣はハンガリー及びウクライナを訪問されたようでございますけれども、その成果等を確認させていただければと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、私は、八月の二十二日から二十七日にかけまして、ハンガリーそしてウクライナを訪問させていただきました。

 この訪問におきまして、一つは、経済外交を推進すること、二つ目として、戦略的な外交を推進するということ、そして三つ目として、原発事故後の協力の推進という点におきまして、成果があったと認識をしております。

 まず、ハンガリーとの間では、まさにこの社会保障協定の署名をその際に行わせていただきました。そして、同国のオルバーン首相から、日本経済再生の取り組みに対して期待感が表明されたということもありました。

 また、ウクライナにおきましては、良好な投資環境の確保という視点から、投資協定の交渉の加速化、こういったことについて合意をいたしましたし、また、ウクライナにおける自動車の輸入税、こうしたWTOとの整合性において疑いのある措置に対しまして中止を求める、こういった働きかけを行わせていただきました。

 あわせて、戦略的な外交の推進ですが、ハンガリーの方は、いわゆるV4と言われる国々、ハンガリー、ポーランド、チェコ、そしてスロバキア、この四カ国、EUにおける最も東側に位置する国々であります。そのV4の議長国がハンガリーであります。一方、ウクライナは、旧ソ連圏の最も西側に位置する国々、東方パートナーシップ諸国と言われる国々の主要国であります。こうした国々との関係を強化することによって、この地域における日本の存在感を高める、こういったことにつながるのではないかと期待をしておるところでございます。

 あわせて、ウクライナとの間におきましては、原発事故後の協力の推進ということで、チェルノブイリ事故を経験したウクライナと、そして福島原発事故を経験した日本、この両国間において進められている原発事故後の協力のさらなる推進ということにおいて合意をさせていただいた。

 これが概要と成果だと認識しております。

杉本委員 ありがとうございます。

 ちょっと質問を飛ばすかもしれないんですが、今月の二十一日から二十三日の予定でオルバーン・ビクトル・ハンガリー首相が来日されるという予定を伺っておりますが、この点について、外務省あるいは外務大臣の狙いなり目標なりがありましたら、ちょっと今伺った内容に近いかもしれないんですが、それを確認することになるのかもしれないですが、何かございましたらお伺いしたいと思います。

岸副大臣 今委員おっしゃられましたとおり、オルバーン外相は、十一月の二十日から二十三日にかけて、公式実務訪問賓客として招待をしているところでございます。

 ハンガリーにつきましては、先ほど大臣からもお話がございましたけれども、V4の議長国でもありますし、また、我が国と基本的価値を共有する伝統的な親日国でもある。また、多くの企業が投資をしている先でもあるという大変重要な国でございます。

 こうしたことを踏まえまして、今回の訪問におきましては、安倍総理との首脳会談におきまして、経済関係や人的交流の深化を含めましてハンガリーとの二国間関係を一層強化し、V4プラス日本の枠組みを一層発展させるとともに、基本的価値を共有するパートナーという観点から、地域及び国際場裏での協力の推進につき合意をしてまいりたいというふうに考えております。

杉本委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたが、障害者の権利条約のことについて伺っておきたいんです。

 言葉というのはなかなか難しくて、合理的配慮というのが障害者権利条約にあり、障害者基本法の中では合理的な配慮というふうにあります。

 ちょっと例を引くと、世界言語というのと世界の言語という意味でも、障害者の関係の書籍によりますと、世界言語というのは手話を含んでいるんですが、手話は世界に百二十六あるそうでございますし、世界の言語というと七千プラスアルファほどあるというような、この意味合いの違いが出てくるようでありますけれども、この合理的配慮と合理的な配慮における差異があるかどうかを確認させていただきたいと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 我が国は、本条約実施のための国内法制度改革の一環として、平成二十三年に障害者基本法を改正し、合理的な配慮をしないことが差別であるという本条約の趣旨を踏まえた規定を盛り込んだところであります。したがって、同法に言う合理的な配慮と条約上の合理的配慮にそごはないものというふうに認識をしております。

杉本委員 わかりました。ありがとうございます。

 この合理的配慮ないし合理的な配慮はイコールであるということなんですが、スロープだとか点字だとか手話だとか、こういったもの以外に具体的にどういったものが挙げられるか、ちょっと枚挙をいただいて、ぜひ認識を深めさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石原大臣政務官 合理的な配慮は、今まさに杉本委員が言われたように、公共交通機関への乗車に当たっての職員等による手助け、筆談、読み上げ等の障害の特性に応じたコミュニケーション手段による対応、段差の解消のための渡し板の提供等というものが具体的な例として挙げられます。

杉本委員 それでは、またちょっと飛ばして恐縮なんですが、提案理由説明のところで、「障害者の権利の実現に向けた我が国の取組が一層強化され、」の「取組が一層強化され、」の部分と、「人権尊重についての国際協力が一層推進されることが期待」、こうあるんですけれども、どのような取り組みが強化されるのか、あるいは、どのような手段や方法で国際協力を一層推進するのか、この点を最後に確認させていただきたいと思います。

岸田国務大臣 本条約が締結されますと、我が国は、国連の障害者の権利に関する委員会に定期的に報告をすることになります。また、同委員会の審査を受けるなど、国際的な監視のもとに置かれることになります。こうしたプロセスを通じまして、国内の諸制度の一層の前進に寄与すること、これがまず期待をされます。

 これまでも、国連の障害者に関する決議、行事等に積極的に対応するなど、無償資金協力、技術協力等の支援を我が国は行っておりますし、また、市民社会と連携して、日本NGO連携無償資金協力、草の根・人間の安全保障無償資金協力等を通じて障害者関連の事業を実施しておりますが、この条約を締結した後には、国内における条約の誠実な実施、そして条約の趣旨を踏まえた国際協力を一層推進していきたいと考えております。

杉本委員 以上で終わります。どうもありがとうございます。

鈴木委員長 次回は、来る十五日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十六分散会


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