衆議院

メインへスキップ



第15号 平成26年5月14日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十六年五月十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      河井 克行君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      田畑  毅君    津島  淳君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      丹羽 秀樹君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    長島 昭久君

      松本 剛明君    阪口 直人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      青柳陽一郎君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        三ッ矢憲生君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  檜垣 重臣君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中野  節君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 荻野  徹君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    高橋 清孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新美  潤君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北野  充君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   山田  彰君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    三好 真理君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           島村  淳君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  星野 一昭君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          大村 哲臣君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   政府参考人

   (原子力規制庁放射線防護対策部長)        黒木 慶英君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  伊藤 盛夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     津島  淳君

  木原 誠二君     田畑  毅君

  渡海紀三朗君     丹羽 秀樹君

  小川 淳也君     長島 昭久君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑  毅君     木原 誠二君

  津島  淳君     あべ 俊子君

  丹羽 秀樹君     渡海紀三朗君

  長島 昭久君     小川 淳也君

    ―――――――――――――

五月十四日

 投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 核物質の防護に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件(条約第三号)

 刑を言い渡された者の移送に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 核物質の防護に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件、刑を言い渡された者の移送に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官新美潤君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官下川眞樹太君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長北野充君、北米局長冨田浩司君、中南米局長山田彰君、中東アフリカ局長上村司君、領事局長三好真理君、内閣官房内閣参事官檜垣重臣君、内閣法制局第一部長近藤正春君、内閣府大臣官房審議官中野節君、警察庁長官官房審議官荻野徹君、警備局長高橋清孝君、国土交通省航空局安全部長島村淳君、環境省自然環境局長星野一昭君、原子力規制庁長官官房審議官大村哲臣君、原子力規制部長櫻田道夫君、放射線防護対策部長黒木慶英君、防衛省経理装備局長伊藤盛夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 おはようございます。自民党の薗浦健太郎でございます。

 きょうは、ゴールデンウイークが明けて最初の外務委員会ということで、条約の審議をするわけでございますが、このゴールデンウイーク中、総理も含めて大勢の閣僚が海外を訪問なさって、いろいろな方々にお会いをされました。総理のいわゆる外遊の成果等々については、テレビ、新聞等でかなりつまびらかに報道されておるところでございますが、閣僚のとなるとなかなかそうはいかない。

 改めて、外務大臣、このゴールデンウイーク中の外遊の成果、意義等々についてどのように自己評価をされておられるのかというのをまず最初のこの再開委員会でお伺いしたいと思っていますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 ゴールデンウイークの最中、私は、デンマーク、カメルーン、そしてフランスを訪問させていただきました。

 まず、四月二十九日から五月二日までデンマークを訪問させていただきましたが、デンマークへの日本の外務大臣の訪問は二十九年ぶりということでありました。前回は安倍晋太郎外務大臣が訪問して以来ということであります。

 デンマークは、言うまでもなく海洋国家であり、我が国と戦略的価値観を共有する国であります。

 そして、ことし三月にデンマークの首相が我が国を訪問しております。その際に、成長とイノベーションのための戦略的パートナーシップを両国間で確認しているわけですが、これをしっかりとフォローアップしていく、連携を強化していく、こういったことを確認した次第でありました。

 あわせて、デンマークはグリーンランドを領有しておりますので、北極に関する問題に関しまして大変重要な国であります。近年、北極に関しましては、温暖化によりまして、新たな資源開発とか新たな航路の開拓ですとか、世界じゅうが注目をしているわけですが、その中にありまして、このたび、日本、デンマーク、そしてグリーンランド自治州、この三者会談を初めて行いまして、北極に関する問題、そして捕鯨に関する問題、こういった問題につきまして三者で意思疎通を図るということを行い、日本の存在感を示すことができたと感じております。

 そして、その後、カメルーンを訪問させていただきましたが、これは五月三日から五日まででありました。カメルーン訪問は、日本の外務大臣としては歴史上初めてということでありました。

 その際に、第一回TICAD5閣僚会合を共同議長という形で開催させていただきました。アフリカ各国五十二カ国が参加し、そのうち三十七カ国が閣僚級の出席という会議をカメルーンで開催した次第です。

 昨年六月に、TICAD5を横浜で開催しました。その際に、日本としましては、五年分のアフリカに対する貢献を約束したわけですが、その約束のうち、一年目で既に四分の一を実施したということを報告するなど、各国から高い評価を得ることができました。各国からは、TICADプロセスの開催頻度を上げてもらいたいなど、積極的な意見が相次ぐという状況でありまして、TICADプロセスに対する手応えを感じた次第であります。

 そして、この会議とあわせて、今状況が懸念されております南スーダン情勢に関しまして、南スーダンの外務大臣を初め周辺各国の閣僚級を集めて会合を開き、日本としての考え方、貢献を説明し、何よりも自主的な取り組みを求める、こういったことを行いました。その直後に南スーダンにおきまして停戦合意が行われるということで、我々の働きかけも意義があったのではないか、こんなことも感じた次第であります。

 そして、三番目の訪問国として、五月六日から七日にかけてフランスを訪問させていただきました。

 このフランス訪問におきましては、OECDの閣僚理事会に議長国として出席をいたしました。議長として閣僚理事会をリードしたわけであります。日本経済の復活を安倍総理の出席等を通じてしっかりとアピールすることができたと感じておりますし、そして、今回初めて、OECDと東南アジア諸国を結びつけるということで、東南アジア地域プログラムという新たなプログラムを日本が議長国として立ち上げるという成果も上げることができました。OECDそして国際社会において日本の存在感をしっかり示すことができたと感じております。

 あわせて、フランスにおきましては、ファビウス・フランス外相との間で、五回目になりますが、外相会談を行わせていただきました。ウクライナ情勢そして気候変動問題を中心に意見交換を行った次第であります。

 こうした三カ国の訪問を通じまして、改めて我が国の積極的平和主義に対する理解をしっかり得ることができたと感じておりますし、北極問題を初めとする国際的な課題においても日本の積極的な姿勢を示すことができたと感じている次第であります。

薗浦委員 ありがとうございました。

 やはり同じ相手と何度も会って信頼関係をつくった上で物事を進めていくというのは非常に大事なことだと思いますし、それがおできになられているというふうに理解をしておりますので、今後ともぜひ頑張っていただきたいと思います。

 それでは、条約の質問に入るわけでございますけれども、主に日米の重大犯罪防止協定についてお伺いをしたいと思います。

 今、米国が査免プログラムを持っている国というのは三十七の国、地域でありますが、協定を結ぶのは日本が最後になりました。交渉の過程でいろいろな懸念が出てきて外務省としても大変苦労したということはいろいろな形で聞いてはおりますけれども、これが最後になった理由について、ちょっと端的にお答えをいただきたい。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定は、日本とアメリカの査証免除制度のもとで、安全な国際渡航を一層容易にしつつ、両国国民の安全を強化するため、テロなどの重大な犯罪に係る情報を交換する枠組みを設定するものでございます。

 我が国にとりまして、この協定はこれまで締結した国際約束に例を見ないもので、特に個人情報の保護などの観点から、日米間で詳細な議論を積み重ねてまいりました。このため、交渉妥結までには若干時間を要しましたが、個人情報の保護等により配慮した適切な内容の協定をまとめることができたと思っております。

薗浦委員 ありがとうございます。

 この中に、双方の国が持っている指紋情報を自動照会するという中身があります。向こうが本当に重大犯罪について照会してきているのかどうかというのは我が方で判断できるのかという懸念がまずこの中にあります。濫用防止協定みたいなものがきちんと整備されているのか、また、本当に重大な犯罪について照会してきているのか、そこの担保についてどのように考えていらっしゃるのか、また、どういう協定を結ばれていらっしゃるのかということをこの場で御説明いただきたいと思います。

三好政府参考人 お答えいたします。

 この協定は、法的な義務として四条の3というのがございまして、自動照会を行うことができる場合を限定いたしております。すなわち、「特定の状況から判断して、ある個人が重大な犯罪を実行するか又は実行したかについて調査する理由がある場合」ということでございます。したがいまして、重大な犯罪の具体的な疑いがない場合に照会を行うということは、協定上、そもそも認められておりません。

 また、自動照会の結果、適合する指紋情報がある場合には、アメリカから追加的な情報の要請をしてくるわけでございますが、例えば、殺人事件の捜査のためといったような目的が通報されます。このため、追加的な情報を提供する前に、重大な犯罪に該当するかどうかを確認することができます。

 さらに、適合する指紋情報があるにもかかわらず、つまりヒットしたにもかかわらず、追加的な情報を要請してこない、そういったような場合には、自動照会の目的について説明を求めることができるよう、これは日米間の協定のみに入れたものでございますが、独自の仕組みを設けております。

 そのような工夫をいたしておりまして、適切な運用を確保していきたいと思っております。

薗浦委員 ありがとうございます。

 今、目的を聞くことができるという話がありましたけれども、聞くことができるというところは、きちっと運用を担保しないと、必ず聞くというような形にしていかないと、なかなか個人情報保護に関する懸念をクリアできないのかなという部分もありますので、今後、運用をきちっとしていただきたいと思います。

 もう一つは、指紋が自動的に照会できるという話になると、一般の人たちが思うのは、スピード違反で指紋をとられたとか、交通違反のいわゆる軽微な違反、犯罪等々で、警察庁が持っているデータベースがアメリカに行くんじゃないか、普通の人たちはぱっとそういうふうなことを考えるんじゃないかなというふうに思いますけれども、他国の条約と比べて、犯罪の範囲とか、それから、どういう人が照会の対象なのかということについて、今、一般の人たちが持つであろうそういう懸念に答える形で、今の質問についてここで明らかにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定上、あくまでも重大な犯罪ということでございます。特に日米の協定につきましては、アメリカがほかの国と結んでいる協定に比べまして、かなり限定的にいたしております。

 具体的に申しますと、重大な犯罪は、死刑、無期または長期三年以上の拘禁刑に当たる犯罪、また、長期三年未満でも、一年超えの拘禁刑に当たる犯罪について、附属書1というところで具体的な犯罪の類型を限定いたしております。

 御指摘のありました交通違反とかスピード違反といったものにつきましては、反則金を払って済むような犯罪についてはこれには含まれておりませんので、一般人の方には影響がないということでございます。

薗浦委員 ちょっと、普通の人が聞いていたら今のはわからないですよ。もう少し、要は、普通に家庭の生活をしている人には影響がないんだというのをはっきりわかるように、説明できるように、きょうはこの場ではちょっと、これ以上突っ込みたいけれども、なかなか時間もないのであれですが、これをきちっと国民に説明できるように、ちゃんと協定を説明できるようにしていただくということをこの場でお約束いただけませんか。

三好政府参考人 御指摘の点も踏まえまして、一般の通常の生活をしていらっしゃる方には影響はない協定だということをここで申し上げたいと思います。

薗浦委員 指紋情報の提供、個人情報保護との関係があるんですが、その情報の範囲、我々が提供する指紋情報の範囲と持っている指紋情報が違う。つまり、相手方に指紋情報として提供するものの範囲というのはきちんと明確になっているんだということをもう一度御答弁いただきたいんですが、いかがですか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 指紋の範囲につきましては、我が国は、被疑者から直接採取した指紋情報に限定して米国に利用可能とすることにいたしております。

 また、アメリカが特定された個人に関する自動照会を行う場合には、米国に利用可能とする指紋の範囲を、有罪判決確定者、一定の逮捕者、指名手配被疑者のものにさらに限定いたしております。

 なお、アメリカがほかの国との間で結んでおりますPCSC協定におきましては、このような限定はないと承知いたしております。

薗浦委員 よくわかりました。

 プラスアルファでちょっと、最後にPCSCで一問だけお伺いしたいんですが、この話がどんどん積み上がっていくと、アメリカにも日本国民の指紋情報が蓄積をしていくということになると思うんです。そうすると、持っている指紋情報とか犯罪経歴等々を向こうが蓄積して、我が国の国民がそれを理由としてアメリカに入国することができなくなるんじゃないかという懸念も考えられますけれども、そのことについての対処方針というのは決まっておられますか。そこへの懸念に対する回答というのはございますか。

三好政府参考人 お答えいたします。

 協定は、八条の9というところで、二次照会において通報される要請の目的等のために、二次情報の回答は必要な限りにおいて保管するという協定がございまして、捜査などが終わり次第削除されるということになっております。ですから、やみくもに蓄積されるおそれはないということでございます。

 いずれにしましても、この協定は、アメリカの入国審査に追加的な要件を課すものではございません。したがいまして、これまでアメリカに適正に入国することができた方が、この協定によって入国できなくなるというようなことはございません。

薗浦委員 追加的要件を課すことがないということを断言していただきましたので、このあたりにしたいと思います。

 ちょっと最後に、これはきょう、どうしても聞きたかったので、与党は人数が多いのでなかなか順番が回ってこないので、これを聞きたかった、シリアの話であります。

 シリアから日本に留学で来られている方が大体百人ぐらいいらっしゃいますけれども、今、非常に困難な状況にあります。実は私、先日、シリアから日本に留学されて大学で勉強されている方々に四名ほどお会いをさせていただきました。いろいろな話を伺いました。

 外務大臣、今、シリアの情勢についてどういうふうに御理解をされておられますか。

上村政府参考人 簡潔にお答え申し上げます。

 シリアにつきましては、二〇一一年三月に情勢が悪化して以降、今、全土で死者十五万人以上とも言われております。それから、六百五十万人以上の国内避難民が発生して、周辺国には二百四十万人以上の難民が流出しておりまして、極めて深刻な状況にございます。

 また、本年一月のシリアに関するジュネーブ2会合の枠組みのもとで開始されましたシリア政府と反体制派の直接対話、これは現在中断しておりまして、状況改善の見通しは極めて厳しいと認識しております。

薗浦委員 情勢分析はわかりました。

 彼らと話をしていると、例えば、今、シリアからヨルダンとかトルコとかエジプトに逃げている人たちが家族としてそこにいる。ところが、彼らを呼び寄せようとすると、シリア国内から日本への渡航じゃないから法務省は認めてくれない、だから家族を呼ぶことすらできない。本国からのスカラーシップ、奨学金は当然とめられている。勉強しに来ているはずなのに、ビザの期限も危ない、ましてやパスポートの期限も危ない。大使館も機能していない。生活も苦しい。では、働こうかと思ったら、働く支援もない。

 今申し上げたようなことは、外務省、それから法務省、厚労省、文科省、多岐にわたる話であって、彼ら自身が正直いろいろな省庁にお願いに行っているんだけれども、基本的に余り相手にしてくれない、たらい回しにされるという現実がそこにある。

 この話は、日本の国際的な信用問題にもかかわる話なので、外務省が音頭をとって支援策を取りまとめて、少なくとも、今、日本にいるシリア人留学生が本国に戻る日が来たとき、また、国際機関で働く日が来たときに、あのとき日本は大変温かい支援をしてくれて我々が勉強できた、そのおかげで今、こういうことになっているんだと彼らが言えるように、外務省が音頭をとって支援策を取りまとめるべきだということを思っておりますけれども、大臣、ちょっとそこだけ最後に御答弁いただけますか。

岸田国務大臣 まず、シリアの情勢につきましては、私も、一月、スイスで開催されましたジュネーブ2会議に出席をさせていただきましたが、その後、ますます状況は悪化していると認識をしています。

 そして、今委員から御指摘がありましたシリアの留学生の方々の問題につきましても、こうしたシリアの情勢悪化によって生じた問題であると認識をしています。よって、外務省としまして、可能な限り支援は行わなければならないと考えます。

 そして、こうした御指摘の問題につきましては、多くの省庁にまたがる問題であると考えています。外務省の所管する事項で申し上げるならば、査証、ビザの申請について、今、在シリア大使館は一時閉館を行っていますので、査証の発行につきまして、周辺国、トルコ、レバノン、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、こうしたさまざまな公館、十公館で査証申請を受けつけるなど、さまざまな便宜を図っていかなければならないと考えています。

 ただ、留学生の方々の問題は、学費であれば文科省、あるいは在留資格であれば法務省、就職支援であれば文科省、厚労省、経済産業省、医療費であれば厚労省、さらには難民認定ということになりますと法務省と、本当に多くの省庁にまたがります。ぜひ、外務省としましても、この問題の深刻さ、そして重要性を認識して、何ができるか、こういった省庁と一度検討していきたいと考えます。

薗浦委員 ぜひ前向きにやっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 公明党の岡本三成です。質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、核物質防護条約についてお伺いいたします。

 これは、原子力施設をテロから守るために必要不可欠な条約だというふうに理解しておりますけれども、この条約が採択されましたのが平成十七年七月でありまして、今回国会に提出するまで九年の時間を要していますけれども、何ゆえにこのような大切な条約が、提出されるまで九年もかかっているかという状況を御説明いただければと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 この改正につきましては、現行核物質防護条約の締約国の三分の二が締結をした段階で発効する、このような規定ぶりになっております。IAEAの最新の情報によりますと、現行条約の締約国が百四十八カ国ということになってございますので、九十九カ国の締結後に発効するということでございまして、これまでに七十五カ国が締結をしております。すなわち、この改正、まだ未発効でございまして、あと二十四カ国の締結を待って発効するという状況でございます。

 我が国といたしましても、この改正が非常に重要であるという点を十分に認識いたしまして、先ほど申し上げました他国の締結状況それから発効の見通しというものを踏まえながら、締結に向けた作業を進めてきたところでございます。

 改正の締結に当たりましては、特に、この改正の中で新たに犯罪化というものが義務づけられた行為につきまして、既存の国内制度との整合性、必要な立法の範囲というものを慎重に検討する必要がございました。この検討の中で、いずれの国内法によって対応するかということについて一定の時間を要したというところでございます。

 今般、放射線発散処罰法に必要な改正を加えることが適当である、そのような結論が得られたことを受けまして、この条約の改正と放射線発散処罰法の改正案をあわせて国会に提出させていただいた、このような経緯でございます。

岡本委員 続きまして、原子力規制庁にお伺いをいたします。

 我が国の原子力施設のセキュリティー体制が万全かどうかということについて確認をさせていただきたいんですけれども、現在、我が国は、この防護、警察が任に当たっております。二〇〇四年に福井県で初めてその専門部隊、原子力関連施設警戒隊が編成されたというふうに理解しておりますけれども、その他の県では、原子力施設だけを防護するための特別な専門部隊は結成されていないというふうに理解しています。一方で、諸外国の多くは、警察のみならず軍もその防護に当たっているような国もあるということを考えますと、現状の体制が十分かどうかということに対していささか疑問もあります。

 昨年の七月にウィーンで、IAEAの原発テロ対策閣僚級会議が初めて開催をされておりまして、我が国からは、当時の外務副大臣、鈴木委員長が出席をされまして、ここで基調報告、代表演説もしていらっしゃって、我が国の原子力施設の警護のあり方についてある意味コミットしていらっしゃいますけれども、基本的な我が国の対応の現状の確認、加えまして今後の基本方針ということをお答えいただければと思います。

黒木政府参考人 お答えします。

 我が国の原子力発電所等のセキュリティー対策につきましては、既に、原子炉等規制法に基づきまして、事業者に対し、テロリストの侵入を阻止するための種々の防護措置を求めているところでございます。

 セキュリティー対策は二面ございまして、事業者に対する規制と警察による警備、この二面がございます。そのうち、原子力規制委員会においては、まさに事業者に対する規制を担当しておるところでございます。

 これらの措置につきましては、IAEAの核物質防護に関する勧告文書、これはINFCIRC二二五と言われる文書でございますけれども、今これは第五版が出ております。その第五版に基づきまして、具体的には、原子力施設の周辺に立ち入り制限区域、周辺防護区域を設け、フェンス、センサー、監視カメラ等を設置して、警備員による巡視を実施するとか、海水冷却ポンプ等の屋外の重要設備につきまして一定の防護措置を施すとか、あるいは、出入り口における身分証による従業員等の本人確認、金属探知機等による探知の実施、例えば、原子力発電所の重要な部分に爆弾が持ち込まれないとか、そういった観点からでございますけれども、そういった重要設備の周辺で作業する場合には二人以上で行うといったツーマンルールとか、そういったことを我が国の国内規制に取り込んでいるところでございます。

 また、原子力発電所の警備につきましては、警察の銃器対策部隊が二十四時間体制で常駐警備などを実施するとともに、海上保安庁では、全国の原子力関係施設の周辺海域に巡視船艇を常時配備しているところでございます。

 他方、これからの問題でございますけれども、こういった警備体制自体、第三者の目からという形がなかなか難しいものですから、今考えておりますのは、来年春までに、IAEAによる核物質防護専門家らの評価ミッションを受け入れることといたしております。

 こうした国際的な観点からの評価も踏まえて、原子力規制委員会において継続的にセキュリティーの強化に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

岡本委員 今言及されましたIPPAS、IAEAの評価、助言を受けるというのは、ことしの三月の核サミットで安倍総理が表明されたことですので、ぜひ、より早いタイミングでの実現をお願いしたいと思います。

 同様の警備体制についての現状の認識と基本姿勢を警察庁にもお伺いしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、全国の原子力発電所に、サブマシンガンやライフル銃、対爆・対弾仕様の車両等を装備しました銃器対策部隊を常駐させまして、海上保安庁とも連携しつつ、二十四時間体制で警戒に当たっております。さらに、情勢が緊迫したときには、銃器対策部隊を増強、派遣しますほか、高度な制圧能力と機動力を有します特殊部隊SATを迅速に投入することとしております。

 また、原子炉等規制法に基づきまして、原子力規制委員会等と連携して、警察庁職員による原子力発電所への立入検査等を積極的に実施して、事業者による防護体制の強化を促進しているところであります。

 三年前の福島第一原子力発電所の事故によりましてその脆弱性が国内外に明らかになったことを踏まえまして、人的体制の充実、装備資機材の整備拡充、警戒要領の見直し等、テロ対策の強化を図っているところでございます。

 以上です。

岡本委員 関連しまして、原子力規制庁にもう一問お伺いをしたいんですが、先ほどの御答弁で、この安全を確保するために、外部の警察、海上保安庁等の警備に加えまして、事業者へも高い水準を要求しているというふうなお話がありましたけれども、諸外国の基本的な考え方といたしましては、核物質の輸送またはその貯蔵施設等でテロリスト等の活動が行われるときには、多くの場合、内部に犯行を助ける者がいる可能性があるというようなことで、施設従業員のセキュリティーチェックを大変厳しくしています。

 例えばアメリカですと、施設で働く人に対する契約書は二十六ページにも及んでいまして、その内容は、過去の犯罪歴のチェック、またはローンの残高、クレジットカードの使用状況、指紋も採取いたしまして、FBIと情報も共有して、大変厳しい要求を課しているわけですけれども、現状の事業者に対するそのような要求の水準はどのようになっているかということをお答えいただければと思います。

黒木政府参考人 お答えします。

 現行の法制上、そういった個人の信頼性確認につきまして、法令上、事業者に対して一定の作為、不作為を要求するというような仕組みは今のところございません。

岡本委員 条約に加盟した後、それが世界水準となるわけで、当然、IAEAのIPPAS等についても、日本が指摘をされる可能性のある条項ですので、改善を追求しながら、一歩でもより安全な体制をつくれるようなことを御検討いただければと思います。

 続きまして、資源エネルギー庁に質問させていただきたいと思いますけれども、ことし三月の核安全サミットにおきまして、安倍総理が、日本にあります高濃縮のウランとプルトニウムに関しまして米国に返還するということを表明されました。これは、米国からの返還要求があったというふうに報道されていますけれども、さまざまな経緯があるにせよ、現在、我が国には、全体で四十四トンのプルトニウムがありまして、これは長崎型の原爆でいいますと四千個分であります。世界から日本の保有残高の高さに関しまして疑問の目が向けられているのも事実だというふうに思います。

 それで、一昨年、アメリカのNGO団体で核脅威イニシアチブというところがありますけれども、ここが発表いたしました核物質に対する国の管理体制の安全度ランキングというのがありまして、その安全度ランキングに調査をされた国三十二カ国中、日本の順位は第二十三位、先進国最下位であります。その最下位の最大の原因が、プルトニウムの保存量が増大しているからだというふうに指摘をされております。

 核安全サミットのときに、安倍総理は、「もんじゅ」が現在運転停止の状態にもかかわらず、核燃料サイクルの実現見通しがない中で、この核燃料サイクルの維持を世界に表明されましたけれども、このことが実現されますと、プルトニウム蓄積量はさらにふえていくリスクがあるわけで、さらに国際的な懸念が高まる可能性があるわけですけれども、今後、我が国としてプルトニウム保有量の削減に関しましてどのような戦略を持っていらっしゃるかということをお答えいただければと思います。

中野政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府原子力委員会におきまして、平成十五年八月に、「我が国におけるプルトニウム利用の基本的な考え方について」という原子力委員会決定を行っております。ここで、利用目的のないプルトニウム、すなわち余剰プルトニウムを持たないという原則を明示するとともに、プルトニウムを分離する前に電気事業者などがプルトニウム利用計画を公表するということを定めております。これに基づきまして、再処理工場などで新たにプルトニウムの回収が開始される前には、事業者からプルトニウム利用計画が策定、公表されるものと理解しております。

 原子力委員会におきましては、平成十八年から平成二十二年にかけまして、電気事業者の保有するプルトニウム利用計画に関しまして事業者からヒアリングを行った上で、「電気事業者等により公表されたプルトニウム利用計画における利用目的の妥当性について」というものを取りまとめて公表いたしておりまして、今後も同様の対応をとっていく方針でございます。

岡本委員 続きまして、昨今、毎日、新聞紙上をにぎわせております南シナ海での中国とベトナムの艦船の衝突、私は事件だと思っていますけれども、これについて質問させてください。

 五月四日にパラセル諸島におきまして、中国の石油の掘削等に関する工事現場での抗議に対しまして、中国艦船がベトナム艦船に体当たりをしております。報道によりますと、昨日も同様のことが行われております。このことに関しまして、五月十一日のASEAN首脳会議では、全当事者に自制と武力不行使を求めるという宣言を採択されていますし、米国のケリー国務長官もこのことに名指しで言及されておりまして、最も新しい懸念がパラセル諸島における中国の挑戦であることは明らかだと、領有権の争いの解決に向けた行動規範の策定と国際法に基づいた平和的な解決の重要性を訴えられました。

 我が国も、尖閣沖や東シナ海のガス田開発等に関しまして多国間で協力をしながら中国とも対峙していくということが重要だと思いますけれども、外務省といたしまして、ASEAN諸国を初め米国との連携に当たり、今後どのようにこの問題に対処していくかという大臣の所信をお伺いできればと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の件につきましては、我が国として、境界未画定の海域での中国による一方的な掘削活動の着手により地域における緊張が高まっていること、これを深く憂慮しております。関係国が緊張を高める一方的な行動を慎み、関連国際法を遵守し、冷静に対応することを期待したいと思っています。

 そしてその上で、今委員の方からも御指摘がありました南シナ海をめぐる問題について、直近に行われた一連のASEAN会合、首脳会合あるいは外相会合が行われましたが、その会合におきまして、現在の情勢に対する深刻な懸念が表明されました。ASEANとして本件に一体となって対応していく、こういった立場が示されたこと、このことについては高く評価しております。

 我が国としましても、海洋の問題につきまして、昨年の日・ASEAN特別首脳会議、また先月の日米首脳会談においても、ASEAN諸国や米国との間で、国際法に基づく国際秩序の維持の重要性、また紛争の平和的解決や自制的行動の重要性、こういった点については認識を共有しております。

 ぜひ、今後とも、中国が国際的な規範を遵守また共有しながら、地域やグローバルな課題に対してより建設的かつ協調的な役割を果たすよう、ASEANあるいは米国等と連携しつつ、しっかり促していきたいと考えております。

岡本委員 最後に、外務大臣に日韓関係について質問させてください。

 あらゆる場面で、外務大臣御自身、また総理も、我が国にとって最も大切なパートナーは米国だということを言及されます。私もそのとおりだと思います。米国から見ると、今何を日本に最も期待しているかというと、米国から見て同盟国である日本、韓国、この両国の関係を改善してほしいというのが、彼らから見たときの何よりも増して高い優先順位だというふうに思うんですね。

 そこで、日韓関係の改善を考えたときに、やはりいわゆる従軍慰安婦問題は避けては通れない問題だというふうに思っていますけれども、我が政府として、韓国政府また従軍慰安婦の方々が我が国に求めていらっしゃるものを何だとお考えなのかということ、金銭的な補償なのか、それとも名誉の回復なのか、何を求めていらっしゃるというふうに認識していらっしゃるか、お答えください。

岸田国務大臣 まず、慰安婦問題につきましては、安倍総理も、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々に対し非常に心を痛めているという思いを述べておられますが、こうした思いは歴代総理の思いと全く変わりがないと思っています。

 そして、具体的に韓国政府あるいは韓国における元慰安婦の方々が何を求めているのかという御質問ですが、こうした日本に対する要求、例えば韓国挺身隊問題協議会は、七項目にわたる日本政府に対する要求というのを示しているようですが、韓国政府あるいは韓国における元慰安婦の方々の要求については、さまざまな抽象的な表現は用いておられますが、具体的な要求ということについては必ずしも明らかでないと受けとめています。

 我が国としましては、まずは、韓国側に対して、日本側の立場、また、これまで日本としてどのような努力を続けてきたのか、こういったことについてしっかり受けとめてもらいたいということを累次にわたって説明し続けています。ぜひ、韓国側にもこれらをしっかり受けとめていただき、重層的で未来志向の日韓関係を築いていくために、より前向きな姿勢をとっていただくよう強く期待をしているところでございます。

 あす十五日ですが、日韓局長級協議を東京で開催する予定になっております。この協議におきましては、慰安婦問題に限らず、日韓間の諸懸案について協議を行う予定ではありますが、ぜひ今後とも、さまざまなレベルを通じまして、韓国側と緊密な意思疎通を図っていきたいと考えています。

岡本委員 私は、慰安婦の方々は名誉の回復を望んでいらっしゃるというふうに理解しています。実際、アジア基金のときも、報道によりますと、当時生存されていた従軍慰安婦の方の中で、金銭的な補償を受けた方は四分の一以下であります。今回も、何となく日本の中に、金銭的な要求を吹っかけられているのではないかというふうな雰囲気があることを大変危惧しております。

 私、きょう一つだけぜひ申し上げたいのは、現在生存していらっしゃる方は五十五名いらっしゃいます。そして、この五十五名の方が生きていらっしゃる間に解決できなければ、永遠にこのことは世界じゅうから批判される対象になってしまいますので、あと数年のうちに、最後まで解決するような、相手が納得するような、生きていらっしゃる間に納得していただけるような状況をつくり出すことが最も重要だと思っております。

 そのために必要なことは、いわゆる河野談話を引き継ぎますみたいな、昔の方が言ったことに私も同調しますみたいな評論家みたいな言い方ではなくて、アジア基金のときに小泉総理が出されたようなお手紙、実際に、日本国の代表として、私たちはそのような歴史があったことを生涯忘れません、後世にも伝えていきますということを言及して、そういうふうに反省できる国を私たちは誇りに思えるような日本にしていくべきではないかなと思うんですね。

 時間がありませんので、最後にもう一言だけ、大臣から決意をお伺いできればと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほど、安倍総理も、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々に対し非常に心を痛めていると述べておられることを紹介させていただきましたが、私自身も全く同じ思いであります。

 そして、我が国としましては、今日まで、日韓請求権・経済協力協定、こうした協定を通じまして財産請求権の問題は法的に解決済みという立場ではありますが、道義的な見地からさまざまな取り組みを行ってきました。アジア女性基金事業を行い、償い金の支給、あるいは御指摘のおわびの手紙を届けるなど、努力をしてきたところであります。

 ぜひ、こういった取り組みについても理解した上で今後考えていかなければならないと思っていますが、元慰安婦の方々が納得する形でという委員の御指摘がありました。ぜひ、今後とも、韓国政府との間においては、政府間協議等を通じまして、しっかり意思疎通を図っていきたいと考えています。そしてその上で、二十一世紀こそ人権侵害のない世紀にするという我が国の思いをしっかりと伝えながら、未来志向で関係を築いていきたいと考えております。

岡本委員 御期待申し上げます。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 きょうは条約についての質疑ということでありますが、私の方からは、いわゆるPCSC協定、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定について、何点かお伺いをさせていただきたいと思います。

 通告を申し上げたのと質問の順番を少し変えたいと思いますが、先ほど薗浦理事も、この問題についての、ある意味で大変取り扱いはしっかりする必要があるという趣旨での御質問がありました。また、これに関連する法案の内閣委員会での質疑においても、与党自民党の議員の方も、やはりこの取り扱いについては注意を要するのではないかという視点からの質疑がありました。

 私もそのように思い、これについて何点かお伺いしたいと思います。

 先ほどもお話がありましたけれども、まず、この協定に基づいて今後照会されるようになったときに、いわば照会をされる日本の指紋情報というのは誰のどういう情報なのか、警察庁に来ていただいていると思いますので、お願いをしたいと思います。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 協定の仕組みでございますけれども、米国が特定の者を識別しないで照会を行うといった場合につきましては、警察庁が保有する被疑者指紋全てが照合対象ということでございます。

松本(剛)委員 今おっしゃったのは、法の三条一項だと思います。被疑者指紋というのですけれども、もう少し正確にお答えになった方がいいのではないかというふうに思います。

 法律の三条の一項に関連法という規定がありますが、三条の二項の場合について今お答えがなかったんですが、三条の二項の場合はどうなるんでしょうか。

荻野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、照合の対象は警察庁の保有している全ての指紋であるということでございますが、照合の結果、該当するものがあるかないかという回答をする場合でございますけれども、それにつきましては、有罪確定者でありますとか、現在、身柄を拘束されていて、現に被告である者でありますとか、現在、捜査の対象になっているといった、公訴が提起されていて公判中であるといった者、この三条の各号に掲げている方々が対象になっている、それを答えることになるということでございます。

松本(剛)委員 もうちょっと落ちついて、わかるように説明をされないと、聞いている方々はわかりにくいと思いますよ。

 もう一度お聞きをしますが、三条の一項で、特定をして聞いてきた場合というのは、有罪になった人、そして、身体拘束を受けることとなった事件についてということで今お話がありましたが、現在、被告人、そして、いわゆる起訴猶予もしくは微罪処分、ないしは少年法などの、もしくは逮捕状が発せられておりと、法の三条一項二号ですか、これに具体的に書いてあると思います。

 二項の方で、特定をせずに照会をしてきた、つまり、誰だかわからないけれども、どうも現場に指紋があった、この指紋は誰の指紋なのかということで、どうも誰々らしいこの指紋についてそうなのかと聞いてきたのが三条一項で、そうでない場合がこの法三条二項だと思いますが、法の三条の二項の場合は、今のお話だと、警察庁が持っている指紋全てと照合するというお話だったと思いますが、そういう理解でよろしいですか。

荻野政府参考人 御指摘のとおりでございまして、米国が特定の者を識別した場合には一定の者に限りますけれども、特定の者を識別しないで照会があった場合には、警察庁が保有する被疑者指紋全てが照合の対象になるということでございます。

松本(剛)委員 ちなみに、件数をお答えいただくことはできますか。

荻野政府参考人 約一千四十万人分でございます。

松本(剛)委員 それは特定しない場合の対象だと思いますが、特定した場合の対象はどのぐらいか、お答えいただけますか。

荻野政府参考人 三条一項で、特定の者が識別された場合の照合の対象は約三百万人分ということになります。

松本(剛)委員 有罪になった人、身体の拘束を受けることとなったということですから、逮捕されて被告人である人、逮捕されて起訴猶予になった人、逮捕されて微罪処分を受けた人、少年法の対象であった人など、三条一号、二号の各対象は三百万。

 では、少なくとも、有罪になった人でない人、その他、七百四十万いるという理解でいいわけですか。

荻野政府参考人 お尋ねの約七百四十万人分の指紋情報の内訳でございますけれども、主なものとしましては、身柄不拘束の被疑者のうち、起訴猶予処分を受けた者、捜査中、公判中の者、また少年法による保護処分等を受けた者がございまして、さらには起訴猶予以外の理由により不起訴処分を受けた者、無罪判決確定者などがございます。

松本(剛)委員 起訴猶予というのは刑訴法二百四十八条で、三条の一項二号のロではないんですか。今、七百四十万の方に起訴猶予をお話しされましたけれども、どちらでしょう。

荻野政府参考人 身柄不拘束の被疑者のうち起訴猶予処分を受けた者についてお答えいたしました。

松本(剛)委員 三百万は身柄拘束の場合に限られているということですけれども、逆に言うと、逮捕されなかった人でなおかつ起訴猶予もしくは不起訴になった人が七百四十万の主なものであるということなのかもしれません。

 その後、例えば、起訴猶予、不起訴とあるかと思いますが、明らかに犯罪を犯しているとは思われないということで不起訴になった、さらに言えば、身柄を拘束された場合、されない場合、ともにかもしれませんが、確定判決で無罪が出たが、被疑者として指紋は採取をされている、そういう方も七百四十万の中に入っていますか。

荻野政府参考人 御指摘のとおりでございます。

松本(剛)委員 入っているということでいいわけですね。

 前提として、私どもも、やはり重大な犯罪は防止をする必要がある、したがって、捜査の協力をする必要はある、そのことを前提にこのことの議論に参画をしてまいりましたし、本件についてもやはり進めるべき協定だという理解をしております。

 しかし、その上で、指紋という情報は極めて個人情報かつ重要な情報であるわけであります。したがって、先ほども、当委員会での質疑でも、いわば普通に暮らしている人に影響はない、こういう御答弁がありました。

 制度をつくるときに、問題なのは、明らかに何らかの法で処断をされるべき人が処断をされるということは、それはそれでいいわけです。そして、処断をされるべきでない人は、法に触れることもなく普通に暮らしていることができる、それはそれでいいわけですが、刑事訴訟法なども細かい手続を定めているのも、本来処断されるべき人でない人が何らかの法のはざまに迷い込んだときに、きちっと保護されて救われるというのがまさに法治国家のいわば心髄というか、一番大事なところだと思います。

 ですから、この指紋の情報に関しても、今あえて無罪のこともお聞きをいたしました。いわば、何らかの事情で、今警察庁のデータベースの中に、本来なら指紋をとられるような立場でなかった人の指紋も全くゼロとは言えないと私は思うんです、少なくとも、確定判決無罪になった人も入っているわけですから。

 その取り扱いが、まず、警察庁において無罪の人の指紋をずっと保管すべきかどうかという議論もしていただくべきだと私は思いますが、同時に、これが、他国から照会を受けたときに、今のお話だと照合の対象になっているわけですね。出ていってどういうことになるのかということも考えておかなければいけないのが制度をつくるときに大事なことではないか。

 したがって、この協定を見ましても、協定の方の条文にかわりますが、協定十四条にも協議をするといったようなことがあります。

 内閣委員会の質疑の中で、無罪の方の指紋の情報の提供が、照合して、いわばヒットしたというのでしょうか、該当したということで、しかし、この人が確定判決無罪だということがわかっている、その方の情報を提供するのかしないのかということについて、慎重な取り扱いが求められると思うという答弁を政府はたしかされていると思いますが、無罪の方であれば、出すべきでないと考えていると政府としてはやはり整理をすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

三好政府参考人 お答えいたします。

 議員の御指摘、非常に重要なポイントだと思っております。

 一方で、この協定にかける場合には、協定四条にございますが、あくまでも重大な犯罪を犯した具体的な疑いがある場合に照会をかけてくるということになっておりまして、例えば、米国がテロの容疑者の身元を割り出す、そのために現場に残された指紋による照会を行ってくるような場合、その個人が過去の別の事件について無罪判決を受けたことのみをもってその照会の対象から一律に除外することは、この協定の目的に照らして、必ずしも適当ではないのではないかというふうに思われます。

松本(剛)委員 大変重要なことを今おっしゃったということを、多分、自民党の方もびっくりされているのではないかと思います。

 法治国家ですから、無罪になったということをやはり相当重く受けとめていただきたい。無罪だろうが、たまたまとれた指紋は米国に提供するんだと今おっしゃったに等しいんですよ。

 それから、私はあえて十四条の協議の規定も申し上げました。取り扱いについてはかなり厳しい交渉もしてきたというふうに伺っております。その気持ちはわかりますが、引き続き協議ができる協定にもなっているわけです。

 ですから、先ほど警察庁にも申し上げましたし、内閣委員会では警察庁の方が答えられて、少なくとも慎重な取り扱いをするとおっしゃいました。今は、当然、無罪だからといって外す必要はないとまで踏み込んでおっしゃいました。もう一度、慎重に戻って、さらにその先に戻るべきだと思います。

 通告をしていませんので、今ここで大臣に答弁は求めませんけれども、ぜひ大臣もこの問題意識を持っていただいて。

 繰り返し申し上げますが、制度をつくるときに、本来処断すべき人を追っかけなければいけないことは我々は否定しません。しかし、制度の間で、そういう形で入った人が、いやいや、だけれども、たまたま警察庁に指紋があるんだから当然出しますよ、この人は無罪になったらしいですけれども。これではやはり法治国家としていかがなものかと言われるかと思いますけれども、もう一度御答弁されますか。

三好政府参考人 お答えいたします。

 私、ちょっと舌足らずで、申しわけございませんでした。

 私が申し上げたのは一次照会、つまり、指紋があるかないかという照会のところは、無罪確定者につきましても、相手を特定してこないでアメリカが照会してきた場合は、あるかないかをお答えする。

 先般、内閣委員会で議論になりましたのは二次照会のところでございまして、指紋があったという場合のお答えにつきましては慎重に対応する、こういうことでございます。

松本(剛)委員 私も、質疑を聞いていて御理解をいただけていると思いますけれども、法文、条約は全部読みました。一次照会、二次照会も承知をしております。

 しかし、繰り返して申し上げますが、三条の二項で、相手を特定せずに指紋の照会があるということは、まさに今おっしゃったように、現場に残っている指紋とかそういったものになる。しかし、捜査をしていく過程で、最終的には絞り込まれるかもしれませんが、現場に残っている指紋がすなわち犯人の指紋だと特定されない段階でも、重大な犯罪の現場に残っている指紋に対しては当然照会が来るだろうと思います。そのときに、無罪が確定している人まで、どうもこの人は日本では該当しますと答えてしまう。

 ですから、いずれにせよ、このたてつけを見ても、一次で該当していると言ったら二次が来るんですよ。

 ですから、一次か二次か、では、一次は答えちゃうけれども、二次なら慎重にしますということではなくて、無罪の人についてどう対応するのかということを、少なくとも、私は、内閣委員会で、警察庁の局長だったかと思いますけれども、お答えになったときに、何らかの対応が必要だなと思われたから、慎重に対応することが求められますという答弁があったんだと理解をしておりますし、極めて良心的な官僚の答弁だと思います。

 お役所としてそれ以上踏み込むことができないのかもしれませんけれども、国会で問題提起があったことを踏まえ、また、慎重に対応すべきだと考えていることを踏まえ、せめてこの対応については、政府内で検討の上、必要があれば米国とも協議をするということを考えていただきたいと思いますので、少なくとも、この対応については、必要な検討は行わなければいけないということはおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

三好政府参考人 議員御指摘のとおり、十四条に協議についての事項もございますので、運用していく過程で、日米の協議も念頭に置いて慎重に対処してまいりたいと思います。

松本(剛)委員 協議の前に、まず政府の腹を固めてください。無罪とか、そういう方についてどういうふうに対応するのか。政府のお考えを、これは警察庁とも協議をしていただく必要があると思いますけれども、対応が必要だと思います。

 もう一つ、これも先ほどの委員質疑でも議論があったんですが、必要な限りにおいて保管をされるということで、ずっと保管をされる心配はない、このこともずっと議論されてまいりました。

 協定八条の9で「必要な限りにおいて」というふうになっていますが、この八条の9は、五条の1の目的、つまり、当該通知された捜査の目的に加えて、八条の5も引っ張ってきているんですね。八条の5では、これは、「同条1の規定に基づいて通報した目的」、これが捜査の目的ということになると思いますけれども、これに加えて、「次の目的のために利用することができる。」「重大な犯罪の捜査」「自国の公共の安全に対する重大な脅威の防止」「出入国管理に関する目的」。結構広いと思います。この置き方いかんによっては、この「必要な限り」というのは相当長い期間が想定をされることになるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

三好政府参考人 お答えいたします。

 八条の5につきましては、例えばテロに関与している具体的な疑いのある人物が入国しようとしている際に照会を行い、その結果、提供された情報を利用して入国管理当局が退去強制処分を行うことなどを可能にするものでございます。

 ただ、この退去強制処分、私は具体的に出入国の目的のところを例にいたしておりますが、退去強制処分といった目的が達成されれば、提供された情報は削除されなければならない。すなわち、八条9に規定されているように、この協定に基づき提供された情報は、当初の要請の目的のために必要な限りにおいて保管するということになっております。

 したがいまして、将来、出入国管理のために利用するかもしれないということで、提供された情報を蓄積するようなことは協定上認められておりませんし、この点は協定の交渉におきましても米側と認識を共有いたしております。

松本(剛)委員 最初に申し上げましたように、こういう制度を組み立てるときは、やはり、どういうはざまに入ってくるのか、そんなケースはめったにないというようなケースを考えるのが制度をつくるときの考え方だというふうに思います。

 先ほども遺留指紋の話がありましたが、犯行現場に幾つか遺留指紋があった、当該犯行にかかわった人の遺留指紋もあるかもしれませんが、テレビや映画の見過ぎかもしれませんけれども、本当に大ごとをなす人は逆に指紋を残さないんじゃないかという気もしなくもありませんが、それはちょっと別にして、何らかの形で残っていたかもしれませんが、かかわりのある人のもあるかもしれませんが、ない人のもあるかもしれません。たまたまない人のが日本で無罪の判決を受けた人の指紋でヒットをした。これは少なくとも、入国管理ですからね、入国拒否と処分が決定したわけではない。しかし、ブラックリストに載せておく必要がある。

 今おっしゃったように、すぐ来ればすぐ判明するかもしれませんが、ずっと、このようにブラックリストの人間は、来たときは問題を起こす可能性があるといったときに、ブラックリストから落ちる可能性はないですよね。今おっしゃったように、一度入ってきて、そこでよくも悪くも処断されれば別ですけれども。何らかのことでその方が、全く何も知らずに、自分の極めて大事な用事で米国へ行こうと思ったら、ブラックリストにひっかかった。自分では全く覚えがない。

 今のこの御説明を聞いている限り、その方の指紋が保管をされている機関から外れるという説明は全くないということになってしまうんですけれども、いかがでしょうか。

三好政府参考人 お答えいたします。

 捜査が終われば、そこで削除されるということでございますので、将来の目的に備えて蓄積される、ブラックリストにずっと載ったままという状況はないということでございます。

松本(剛)委員 その指紋のその人間が当該事案にかかわっていないということが証明をされない限り、捜査は続くんですよ。その方が入国をするかどうかということをチェックする必要があるという状況も、関連して続くんですよ。

 ですから、局長に繰り返して申し上げますけれども、制度を組み立てていくときに、そういうマイナスの場合というんでしょうか、逆の側から見たときに何が起こるのかということをきちっと潰して制度をつくるのが法治国家のあり方ではないんですか。

 本当に悪い人が、指紋を残して、日米間できちっと情報提供ができて、速やかに捕まる、それはぜひそうしていただきたいし、そうなったらいい。しかし、今申し上げたように、例えば無罪の方の指紋も警察庁に残っているとか、何らかの事情で制度の予定したとおりに必ずしも動いていないと言うべきなのか、そういう制度のはざまに入った人たちをどういうふうにきちっと保護をするのかということを考えて制度をつくることが大事なんじゃないですかということを申し上げております。

 この点についても、先ほども、他国に対しては日本は随分相手を限定したんだというお話がありました。しかし、これは、米国側からはそれは要請がたくさんあるのかもしれませんし、捜査当局は概してたくさん情報を欲しい、それはそうだろうと思いますよ。しかし、我が国も法治国家ですから。

 また、聞くところによると、米国側の照合対象指紋はかなり膨大な数になるということもちょっとお聞きをいたしました。しかし、数じゃないんですよ。こういったものは、向こうがたくさんあるからうちもたくさん出さなきゃいけないとかという話じゃないはずなんですよ。

 だから、まず対象をどうするかということ。それから、保管のあり方についても、今お話があったように、かなり交渉の中では議論になったという説明もレクではお聞きをいたしました。しかし、最後に生きるのは条文ですから。ほかの条約のように、これに交換公文であるとか合意の議定書であるとか、そういうものが残るならいいですけれども、今、これはないですよね。ですから、そういうことはやはりきちっと詰めてやっていただきたいということを強く御要請申し上げたいと思います。

 私は聞きたいことがほかにあるんですけれども、そういう意味では、相当要請を申し上げなければいけないことがあるということを申し上げて、ひとつ、次の問題に引き続き移らせていただきたいと思います。

 総理の訪欧についてお聞きをしたいと思ったのですが、もうこれはお願いだけしておきます。

 総理の訪欧そのものは、もちろん外務大臣もですが、積極的に閣僚が海外に出ていただくことは、ぜひしていただきたいと私も思っております。

 その上で、やはり、これはほかの閣僚にも、逆に、総理、外務大臣が指導いただいたらと思いますが、我が国の閣僚が出ていくわけですから、少なくとも、どういったことを目的に行くのかということ、そして、目的に対してどう達成されようとしているのかという視点でお願いをしたいと思っております。

 今回の総理の訪欧であれば、具体的には、私自身は、欧州を歴訪されるのであれば、ぜひやはり欧州の対中武器輸出規制、最近は動きが少し静かになっていますけれども、これは極めて重要な問題だという認識を首脳間で共有をするということ。それから、日・EU・EPA、これはもう大臣もよく御案内だと思いますけれども、これは我々も限られたカードをうまく使わなければ交渉できない極めて難しい交渉ですから、やはり政治レベルでの状況が必要なので、この二つをどこまで達成できるかというのが私は今回の訪欧だというふうに思っております。

 それなりに御尽力はいただいているようですけれども、もう一歩踏み込んでいただけたらよかったのではないかなと、私が聞く限りでは思った感想だけ申し上げて、大臣、申しわけありません、ちょっと、一番聞きたいところを最後に聞かせていただきたいと思っております。

 もう時間が限られていますので、国際法上の自衛権について、簡単に二つだけ、まとめてお聞きをさせていただきたいと思います。

 自衛権の行使ということで、具体的な例としては、アフガニスタンの対テロ戦争、イラク戦争、それから、少しさかのぼって湾岸戦争があります。いずれも、いわゆる多国籍軍と言われているものが行動しておりますが、これが、国際法上、国際社会においては自衛権の行使というふうに説明をされているのか、安保理決議があって、それを踏まえたものはどう説明されているのかについて、三つの点についてポイントを御説明いただきたいと思っております。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、二〇〇一年の九月十一日以降の、例のテロ攻撃を受けて行われました不朽の自由作戦であります。この米英等の活動は、国連憲章第五十一条の個別的あるいは集団的自衛権を行使するものとして開始されたものと考えております。

 ただ、このアフガニスタンのケースは、二〇〇一年の十二月にはアフガニスタンの暫定政府ができております。したがいまして、その暫定政府成立後は、アフガニスタン領域内で行われております不朽の自由作戦下の米英などの活動、あるいは安保理決議一三八六で治安を担当するためにできました国際治安支援部隊、ISAF、この活動は、国際法上は、基本的には領域国であるアフガニスタンの同意に基づいて、本来、同国の警察などが任務の一環として行うべき治安の回復、維持のための活動の一部を補完的に行っているものと観念をしております。

 このように観念される活動は、国際法上は国連憲章第二条4で禁止されております武力の行使にはそもそも当たらず、したがって、自衛権の行使に当たること、あるいは安保理の決定に基づくことといった理由を違法性の阻却として論じる必要はないものと考えております。

 さて、もう一つ、一九九一年の湾岸戦争のことでございますが、これに対しては、いわゆる一九九一年一月の湾岸戦争、それから二〇〇三年三月の米英等による対イラク武力行使、これは、国際の平和と安全を回復するために国連憲章第七章のもとで採択されました武力の行使を容認する安保理決議に基づく措置であると考えております。

 以上です。

松本(剛)委員 確認をしたいと思いますが、武力の行使は禁止をされている、しかし、自衛権の行使はその例外として認められている。

 今お話があった武力の行使を容認する安保理の決議というのは、自衛権の問題ではなくて、そもそも禁止されている武力の行使でないということが安保理決議で確認されているというふうに考えたらいいんですか。

新美政府参考人 今、中近東局長から個別の例について御説明いたしましたが、委員御指摘されましたように、一般に、国際法そして国連憲章においては武力の行使というのは違法化されているわけでございますが、その前提で、二つの例外として集団的安全保障の場合あるいは自衛権の場合というのがありまして、それぞれ、今説明ありましたように、両方の場合があるわけでございますが、そういう場合については違法性が阻却される。

 したがって、国際法上合法である、不法ではないということでございます。

松本(剛)委員 今の御説明、つまり、自衛権の場合と集団安全保障の場合と、この集団安全保障については安保理の決議がある場合、したがって、今の例えば湾岸戦争で、四十二条に基づいて武力の行使が認められたといった場合は、自衛権の問題ではないというのが国際社会における国際法上の考え方だという理解でよろしいんでしょうか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のように、その個別の事案について、それがもし、国際法上、国連憲章で言う集団的安全保障上の位置づけがされるということであれば、それは、法理的には集団的自衛権あるいは自衛権の問題ではなく、集団的安全保障というカテゴリーで整理されるということになると思います。

松本(剛)委員 ここから先は、国際法ではなくて我が方の問題になると思いますが、しかし、国際社会では、個別、集団を問わず、自衛権の問題ではないという活動に参加をした場合に、我が国では自衛権に当たるか当たらないかということが議論されているという構図になっているのかなと理解をいたしますが、これは今、国際法を担当している外務省に聞いても、お答えをする立場ではないと思いますので、追ってまた別にお聞きをしたいと思います。

 PKOについても確認をさせていただきたいと思いますが、PKOに参加した国が武器を使用することがあります。必ずしも使用しているわけではありませんが、使用することが想定をされる形のPKOというのもあるわけですけれども、各国が武器を使用するというのは、先ほどお話があった、武力行使については違法性が阻却をされていると考えるのか、武力行使にそもそも当たらないと考えられているのか、確認をしたいと思います。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘がございました国連PKOでございますが、これは一般的に、領域国や主要な紛争当事国の同意、そして不偏性、並びに自衛及び任務防衛以外の実力の不行使といったような原則のもとで、国連の安保理等の決議に基づいて行われる非強制的な活動でございます。

 したがいまして、国連PKOのような国内の治安維持型の活動の本質は、領域国の同意に基づきまして、本来であればその国の警察当局等の機関がその任務の一環として行う治安の維持や回復活動をいわば代行する性格のものだと考えております。

 このように観念されますPKOの活動は、国際法上は国連憲章二条四項で禁止される武力の行使には当たらないと考えております。したがって、このような武器使用につきましては、そもそも国際法上は違法な行為ではございませんで、それは、各国も含めて、自衛権の行使とは位置づけていないというふうに理解しております。

松本(剛)委員 先ほどのISAFの御説明も、基本的に同じ御説明であったかというふうに思います。

 我が国でよく議論になる警護などの問題というのも、今のお話を整理して考えれば、いわゆる武力の行使に当たるか当たらないかという議論の対象にはならないというふうに私は理解をいたします。

 その上で、もう一度整理をして申し上げれば、武力の行使は許されない、しかし、例外として自衛権は認められている、その認められている自衛権を我が国としてどこまで認めるのかということが議論になってきているわけでありますけれども、今お話があったように、ISAFもそうでしたし、PKOの武器の使用、警護などの問題は、いわゆる武力の行使にそもそも当たらない、したがって、自衛権の議論の外であるというふうに私は理解をさせていただいたということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 久しぶりに外務委員会に戻ってまいりまして、質疑の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 きょうは三条約の審議ということで、予想どおり、核物質の防護と、今、松本委員からありました重大犯罪の日米条約、この二つに質問が集中しているようでありますが、私はあえて日本とブラジルの条約について質問させていただきたいと思って準備をしてまいりましたが、その前に、いよいよ集団的自衛権に関する安保法制懇の報告書が出る。本来はきのう出るはずだったので、私はきょうの質疑、ボランティアで手を挙げたんですけれども、何か肩透かしを食らって、あしたになりまして、少し残念な気もするのでありますが。

 この報告書が出るということで、けさの朝日新聞、安保法制懇の報告書全文入手、「安保掲げ憲法逸脱」「最高法規を「骨抜き」」、二ページ目は「解釈変更は憲法を壊す」、相当おどろおどろしい見出しが躍っているんですが、まだ政府として憲法解釈を変更すると発表したわけでもないし、あるいは、どういう方向性で変更するかということを決めたわけでもないというふうに承知しています。ただ、総理の私的諮問機関である安保法制懇が報告書を総理にあす出す、本当にその全文が手に入ったのかどうかわかりませんけれども、そういう段階ですね。

 巷間伝えられるところによると、それを受けて、総理が基本的な方向性というものをあす打ち出して、そして、外務大臣も入ってNSCが開かれる、四大臣会合が開かれる、そして、政府としての方向性が定まって、今度は与党協議、きょう上田先生もおられますけれども、与党協議に入っていって、そして、最終的にその与党協議をクリアした段階で恐らく閣議決定をやって、新しい憲法解釈の方向性というものを打ち出すんだろう、このように理解をしております。そして、その方針に基づいて、いろいろな立法作業というものが重ねられていく。

 こういう理解ですが、外務大臣、私の理解は正しいでしょうか。

岸田国務大臣 今後の議論の進め方、安保法制懇の最終報告書が出された後の議論の進め方につきましては、今委員が御指摘になった手順で進んでいくものと私も認識をしております。

長島(昭)委員 まだ安保法制懇の報告書は出ておりませんので、なかなか中身の議論はしにくいと思いますが、きょうは法制局においでをいただいております。第一部長、おいでいただいておりますので伺いたいんですが、朝日新聞は、この法制懇の内容が出ますと、これに従って憲法解釈が仮に変更されると、最高法規を骨抜きにすることになる、解釈変更は憲法を壊すと。

 以前は解釈改憲という言葉を使われていましたね。しかし、改憲というのは手続がちゃんとあるから、憲法改正は改憲の手続に従ってなされる。この辺のところは大分マスコミの皆さんも学習していただいたと思うんですよ。しかし、憲法の解釈の許される幅の中で憲法解釈をこれまでと多少変更するということは、今までもあったし、今後もあり得ると思うんですね。

 法制局にお伺いしたいのは、憲法解釈の変更というのは今後もあり得るのかどうか、そして、どういう場合にそういうことがあり得て、それは直ちに憲法の破壊につながるものなのかどうか、この辺、お答えいただけますか。

近藤政府参考人 お尋ねにお答えをいたしたいと思います。

 ちょっと新聞の報道の方はコメントは差し控えますけれども、憲法の解釈の変更ということでございますけれども、これは従前からも政府がよく引用しております平成十六年六月十八日の島聡衆議院議員に対する政府答弁書でお答えしているということで、

  憲法を始めとする法令の解釈は、当該法令の規定の文言、趣旨等に即しつつ、立案者の意図や立案の背景となる社会情勢等を考慮し、また、議論の積み重ねのあるものについては全体の整合性を保つことにも留意して論理的に確定されるべきものであり、政府による憲法の解釈は、このような考え方に基づき、それぞれ論理的な追求の結果として示されてきたものであって、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然であるとしても、なお、前記のような考え方を離れて政府が自由に憲法の解釈を変更することができるという性質のものではないと考えている。仮に、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをするとすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えられる。

  このようなことを前提に検討を行った結果、従前の解釈を変更することが至当であるとの結論が得られた場合には、これを変更することがおよそ許されないというものではないと考えられるが、いずれにせよ、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきもの

であるということでございます。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 今のお読みいただいたこの平成十六年の答弁書、私も手元に持っておりまして、大事なことは、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮すべきことは当然である、しかし、政府において、憲法解釈を便宜的、意図的に変更するようなことをすれば、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれかねないと考えている、多分この二つがポイントだと思うんです。

 従来から政府は、集団的自衛権の行使は憲法上認められないという答弁を、私の記憶するところによれば、七二年以降ずっと繰り返してこられたというふうに思うんですが、仮にこれを変更することは、ここに書かれているような、政府の憲法解釈を便宜的にあるいは意図的に変更するようなことに当たるんでしょうか。お答えください。

近藤政府参考人 ただいま、御質問の前提として、解釈を変えるというようなことがございましたけれども、先ほど外務大臣からも御答弁ございましたように、今後の手続として、いわゆる安保法制懇の報告書を受けてから政府として検討していくということで、今の段階で憲法を改正するとか解釈を変えるとかいうようなことを決めておるわけではございませんので、やや、そういう仮定の前提に基づく御質問についてはちょっとお答えを差し控えたいと思います。

長島(昭)委員 もちろん、仮定の話には答えられないという御答弁が来るだろうと思っておりましたが、私は法論理的に聞いているんです。

 これまで、集団的自衛権の行使は憲法上認められない、こういう御答弁を繰り返してこられた。それを、仮に、一部でも修正するような、ここにあるように、諸情勢の変化とそれから生ずる新たな要請を考慮して、仮にそれを変更するような場合、これは、ここで言われているような、便宜的、意図的な変更に当たるのかどうか、これだけお答えください。

近藤政府参考人 大変恐縮でございますけれども、先ほどお答えをしました島聡衆議院議員に対する政府答弁書でも、いずれにしても、その当否について、個別具体的に、その内容に応じて考えるべきということでございますので、今お尋ねのような質問について一概にお答えすることは困難だと思います。

長島(昭)委員 今大事なことをおっしゃった、その当否については、個別的、具体的に検討されるべきものであると。恐らくここが、今後変更される可能性を残した今御答弁だろうというふうに私なりに解釈をしましたが、問題なことは、政府の憲法解釈ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれるかどうかというところだと思うんですね。

 これを考えたときに、九条の持つ規範性、その最も本質的なものは何かと私なりに解釈をしたところ、これはやはり、九条の第一項、第二項を読んでみて、私たちが解釈するときに大事なことは何かといったら、例外的に認められる自己保存のための武力の行使については必要最小限度の範囲内にとどまるべきだということなんだろうと思うんです。

 それは、個別的だとか集団的だとかというのは、そこから導き出される法制局なりの、これまでのいろいろな国会答弁のせめぎ合いの中で出てきたロジックであって、最も本質的な規範性、九条の持つ規範性というのは、自衛権行使は必要最小限度の範囲内でなされるべきだ、こういうことだと思うんですが、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 今先生が御披瀝されましたお考え方というのは拝聴いたしましたけれども、政府としては、今おっしゃいましたように、九条の全体の文言の中で、およそ全ての国際関係における武力の行使というのは禁じられているように読めるけれども、いわゆる自衛権発動の三要件が満たされる場合だけ例外的に武力の行使が認められる、こういうのが従来の憲法解釈でございまして、今その憲法解釈には変更はないということだと思います。

長島(昭)委員 これ以上ぎりぎりやってもお答えになっていただけないと思いますので、次に、外務大臣に伺いたいと思いますが、今の点に関連して一点伺いたいんです。

 さっき私申し上げたように、諸情勢の変化というのは憲法解釈上かなり大事な要素だというふうに思うんですね。決定的なのは国際情勢の変化だと思うんです。外務大臣として、国際情勢の変化、あるいは軍事技術の進歩、この二つを勘案したときに、先ほど来お話しいただいているように、現行の政府解釈が定着した七〇年代、八〇年代の情勢、あるいは軍事技術のレベル、こういったものと、今日、やはりかなり大きな変化があるんだろうというふうに思うんです。

 外務大臣なりに、当時、今から二十年、三十年、四十年前に比べて、今日の国際情勢、あるいは軍事技術の進歩に鑑みて、どんなところが大きな変化を及ぼしているというふうに御判断されていますか。

岸田国務大臣 まず、我が国を取り巻く安全保障環境、近年、一層厳しさを増していると認識をしています。加えて、サイバーですとか宇宙ですとか、容易に国境を越えてくる新しい脅威も登場してきております。

 こうした状況の変化を認識し、政府として、国民の生命、財産、自由を守り、そして国としての主権や独立を守るためにどうあるべきなのか、これを不断に検討していく、こういった姿勢は極めて重要な姿勢であると認識をしております。

 そして、こういった認識のもとに、今現在、集団的自衛権と憲法の問題を初め我が国の安全保障の法的基盤について安保法制懇において議論が行われている、このように認識をしております。

長島(昭)委員 今の点は大変大事なので、ぜひ第一部長も、法制局長官を補佐していただく立場として、真摯に、勘案しながら、憲法解釈というものを重ねていっていただきたいというふうに要望したいと思います。

 そこで、大臣に伺いたいんですが、仮に閣議決定がなされて、例えば新しい憲法解釈が示されたとします。それで直ちに集団的自衛権というものは行使できるようになるのでしょうか。

岸田国務大臣 安保法制懇によって議論が行われ、あす最終報告が出されることになります。その報告を受け、政府として、検討の進め方について示した上で、与党・政府で議論を行い、そして政府としての考え方を決定する。そして、もし集団的自衛権等、憲法解釈を変更するとするならば、仮にそうするとするならば、閣議決定を行うということになると想定をされております。

 そして、こうした政府の方針をしっかり明らかにした上で、国会において十二分に御議論をいただかなければならないということであります。そして、こうした議論を行った後、具体的に、集団的自衛権の行使等、憲法解釈の変更が実行されるためには、その後、関連法案をしっかりと国会で御審議いただき、法律の成立がなければなりません。

 そして、集団的自衛権は、あくまでも義務ではなくして権利でありますので、法律が成立したとしても、これを実行するかどうか、それは時の政府の判断ということになります。そして、この政府の判断に基づいて、仮にそうした新たな権利が行使されたとしても、これは国会においてまたしっかりと吟味されていかなければならない、こういったものであると認識をしております。

長島(昭)委員 今、大事なプロセスを丁寧にたどっていただきました。本当に大事な御指摘をいただいたと思います。

 つまり、政府が仮に決定したとしても、これが具体的に自衛隊をして、例えば集団的自衛権の行使、あるいはグレーゾーンのいろいろな部分を含めてこれまでにない活動が付与されて、事実上、実質的に集団的自衛権が行使されるためには、当然のことながら、自衛隊にそれを活動として権限を付与するための立法が必要なんですね。

 今外務大臣は、各種の関連法案の改正というような文脈でおっしゃっておられましたが、たしか自民党は、国家安全保障基本法というものを制定すると、私は参議院のマニフェストを持ってきているんですが、はっきり書かれていますよね。これは、私も全く正論だと思っているんです。

 ですから、野党の有志で安全保障基本法というものをつくって、政府が仮に方針を出したとしても、それをきちっと憲法と憲法解釈とそれから個別法との間を埋めるための、安全保障のための基本法というのが必要じゃないかという観点から、この前、そのアウトラインを発表させていただいたんですけれども、外務大臣として、あるいは自民党の代議士として、国家安全保障基本法あるいは安全保障基本法、こういったものを制定する、そういう御意思は引き続き持っておられますか。

岸田国務大臣 まず、国際情勢等の変化の中にあって、我が国として、安全保障に関する法的基盤がどうあるべきなのか、これを今、安保法制懇において議論を進め、そして、あす報告書が出るわけでありますが、報告書が出たとしても、それを政府として、すぐ丸々これを受け入れるものではありません。その後、政府・与党でしっかり議論をした上で政府の方針を確定するということになります。ですから、まずはその中身をしっかりと確定するのが第一であり、その中身に応じて必要な法整備の具体的なありようが決まってくると考えています。

 ですから、現状においては、基本法というものをつくるかどうか、この点についてはまだ決まってはおりませんし、まだ今の段階では判断は難しいのではないかと思っています。

長島(昭)委員 いずれにしても、内閣が決めて、それでおしまいという話じゃないんですね。それで自動的に集団的自衛権が行使されるというわけではないんですね。必ず立法府がその間に関与して、法律の改正であろうが、今言ったような基本法の策定であろうが、立法府がきちっと議論をした上で個別の具体的な活動に移っていく、この点はぜひ押さえておきたいというふうに思っています。

 その際に欠かせないのが、立法府としての憲法解釈、俗には立法解釈、こういうふうに言われると思いますが、内閣法制局が中心となってやる行政府による行政解釈と、それと並んで、立法府がやる立法を通じての憲法解釈、これも私は極めて大事だと思っています。これまでもずっとやってきました。

 しかし、事九条については、どちらかというと、内閣法制局主導というか、政府解釈が前面に立っていて、何となくそれに立法府も従っていたような嫌いがあると私は思っているんですが、今回、仮に議員立法で安全保障基本法のようなものをつくる際には、我々自身が立法府としての憲法解釈ということをやらなきゃいけないと思っているんです。

 法制局に伺いたいんですが、その際に、内閣法制局として、議院がやる、立法府がやる憲法解釈に、何か影響を与えるようなことがあるんでしょうか、あるいは、我々が憲法解釈を施す際に、これまで積み重ねてきた内閣法制局による政府解釈に拘束されるようなことはあるんでしょうか、お答えください。

近藤政府参考人 ちょっと一般論としてお答えをしたいと思いますけれども、憲法の規定の解釈に密接な関係のあるような内容を含む議員立法と政府との関係ということにつきまして、実は過去にも政府答弁書等でお答えをしております。

 例えば、平成十七年十月二十一日の藤末健三参議院議員に対する政府答弁書などでお答えをしておりますけれども、

 憲法の規定の解釈に密接な関係のある内容を含む法案であれば、成立に至るまでの国会の審議の過程で、当該法案の前提となる憲法の規定の解釈に関し、当該規定の文言、趣旨との整合性、当該規定の立案者の意図、立案の背景となった社会情勢、さらには国会において積み重ねられてきた当該規定の解釈をめぐる議論との関係等について十分な議論が行われ、これらの点につき国民に十分説明された上で当該法律が成立することとなると考えられ、また、その過程で、議院内閣制の下、法律の執行に当たる政府の意見も十分に聴取されることが期待される。

こういうお答えをしておりまして、政府としては、国会が制定した法律については、これを誠実に執行することが当然であると、その質問主意書ではお答えをしております。

長島(昭)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、基本的には拘束されない。逆に言うと、法治主義ですから、立法府がつくった法律に、まさに行政というのは拘束されるわけですよ。それに基づいて行政がなされる。その関係だけ確認した上で、最後に移りたいと思います。

 結局、我々がやる、立法府でやる立法が、では、憲法に適合しているかどうかということを最終的に判断する場所は、これは最高裁なんですね。憲法八十一条に書いてあるとおりなんです。

 これは内閣法制局による政府解釈に左右されるものではないということ、そして、立法府は立法府として、きちっとした、今おっしゃったような、これまでの積み重ねのいろいろな議論はしんしゃくするものの、立法府としての憲法解釈というものをきちっと出すことができる、そして、それが違憲立法かどうかについては最終的には司法に委ねられている、これが我が国の三権分立のあり方であるということを確認して、最後に、外務大臣、申しわけないんですが、日・ブラジルの受刑者移送条約に、残った時間を使っていきたいと思うんです。

 まず、外務大臣、このブラジルとの関係、非常に私は大事になってきているというふうに思っているんです。特にBRICSの一角でもあるし、安倍政権が進めている地球儀を俯瞰する外交、この外交の中で、百六十万人という日系人を擁するブラジルの占める戦略的な位置づけ、これを端的に述べていただきたいと思います。

岸田国務大臣 私も、昨年九月、ブラジルを訪問させていただきました。フィゲイレド外務大臣等と会談を行いましたが、改めて、日本とブラジル、長年の歴史と伝統に培われた特別な信頼関係にあるパートナーであるということを認識いたしました。

 その際に、御指摘の日系人という存在、これは、百年を超える日本人移住の歴史、そして、百六十万人と言われる世界最大の日系社会の存在、これは大変大きいものがあり、これらによって日本とブラジルの関係はしっかり支えられている、こういったものを感じた次第であります。

 現地においては、信頼できる日本人という言葉が定着しているんだそうでありますが、長年の日系人の努力、苦労、改めて敬意を表したいと思っておりますし、今後とも、両国をつなぐ役割、大変大きいものがあると思っております。

 そして、日系人は、今、世代交代という大きな転換期を迎えています。我が国としましては、そういった時代の変化もしっかり認識しながら、政府として、日本として、しっかり日系人の方々との関係、協力を深めていきたいと考えています。

長島(昭)委員 確かに、地球の裏側でもありますので、血縁というだけではなかなか維持できない、世代交代していくわけですから。ぜひ、具体的な政策を打ち出していただいて、こういった信頼関係をずっと継続できるように努力していただきたいと思います。

 最後に一点だけ、受刑者移送条約ですけれども、受刑者の移送に当たっては、受刑者自身の同意がなければならない、こういう規定になっています。この趣旨について端的にお答えいただきたいと思います。

 よく、受刑者移送というのは、どんどん促進すれば、我が国の刑事施設の収容過剰な状況を緩和できるんじゃないか、こんな意見もありますけれども、この条約に込められた、受刑者の同意を受けなきゃならないという、この点についての趣旨をお述べいただきたいと思います。

石原大臣政務官 そもそも、この条約の趣旨でありますけれども、やはり受刑者の方の更生及び円滑な社会復帰の促進ということが重要であります。ですので、同意をしないで、その受刑者の意に反して移送することは、本来のこの条約の趣旨であります、受刑者の改善とか更生、また円滑な社会復帰の促進に資さないというふうに考えられるのではないかと思います。

 我が国がこれまで締結した、欧州評議会作成の受刑者移送条約も、また日本・タイ受刑者移送条約においても、同様の考えから、受刑者の同意を移送の条件として規定しているところであります。

長島(昭)委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 私は、この四月下旬から五月初めにかけて、中国の延辺朝鮮族自治州という、朝鮮族の方々が住んでいらっしゃる地域、まさに北朝鮮と国境を接した地域に行ってまいりました。目的は、北朝鮮をめぐる諸問題の解決にどのような力になれるかということで、さまざまな情報収集をすることが目的であったんですが、その際に、一九六〇年代に日本から北朝鮮への帰国事業で北朝鮮に渡って、四十年余り現地で大変な苦難の生活をされた後に脱北をされた方に案内をしていただいて、もう七十代の女性なんですが、その方とともに現地の状況をリサーチしてまいりました。こちらの本を書いていらっしゃる方ですね。「日本から「北」に帰った人の物語」という本でございます。読んだ方もいらっしゃるかもしれません。

 彼女は、影の存在でいては人の心の心髄に訴えることはできないということで、北朝鮮に家族がいらっしゃる、四人のお子さんとお孫さんがいらっしゃるにもかかわらず、もうお亡くなりになりましたが、御主人が北朝鮮の方でしたから、国籍は北朝鮮ということなんですね。そういったお子さんがいるにもかかわらず大変に勇気のある発言をされておりますが、私自身は、彼女の安全、また彼女の御家族の安全も配慮しなければいけないということで、同行してくださった方の状況については抑制的に紹介しつつ、きょうは、特に拉致被害者の帰国、さらに、帰国事業で北朝鮮に渡った方々、とりわけ日本国籍を持っていらっしゃる方々の帰国の可能性、そして、国境付近というのは、脱北される方が、人道的配慮が必要な、大変な人権じゅうりんの中で苦しい思いをしていらっしゃいます、そういう方々にどのように働きかけていくのか、そういったテーマで質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初の質問なんですが、一九五九年に始まったいわゆる帰国事業についての評価を伺いたいと思います。

 少しおさらいしてみますと、一九五九年の十二月に、当時日本にいらっしゃった、主には在日の方々、九五%が現在の韓国出身の方ということですが、その方々を北朝鮮に帰国させるという事業が始まりました。トータルで九万三千人程度の方々が帰国をされたわけですが、日本赤十字社と北朝鮮の赤十字会が在日朝鮮人の帰還に関するカルカッタ協定を結び、また、日本赤十字社が帰国希望者の登録やこの事業の運営を行って、赤十字国際委員会が助言という形で関与する、そして日本政府、北朝鮮政府がさまざまな形で関与しながら帰国事業を行っていたわけです。

 当時、日本においては、在日朝鮮人の方々に対する多くの差別があったと思います。そして、一生懸命勉強してもなかなか思いどおりの職につくことができない、そういう状況がある一方で、当時、北朝鮮においては金日成首相を中心にまさに理想の国づくりを行っている、各種メディアなども、地上の楽園というような言葉を使って、北朝鮮に行けば差別のない生活ができる、高等教育を受けることもできる、また、例えば、冷蔵庫をあけると肉と野菜がこぼれ落ちてくる、そういった、社会主義が成功しているというような報道があり、多くの方々が海を渡ったわけでございます。

 ところが、行ってみると、期待していた状況とは正反対であり、一切の人権、自由がない社会。そして、特に日本から来た方々は、現地の方々も嫌がる仕事、例えば、炭鉱で働く、鉱山で大変に苦しい仕事をするというような仕事につく方が大変に多くて、また、日本人ということで、敵性成分というんでしょうかね、後ろ盾になってくれる方もいなくて、現地でも大変な差別を受け、着のみ着のまま、冬にはマイナス四十度にもなるような場所で生活をされた。大変に苦しい思いをされてきたわけでございます。

 特に、一九九〇年の後半からはいわゆる飢餓が生じまして、人口の約一割が亡くなったと言われていますが、同行した方の周りでははるかに高い割合で餓死をされた方がいたと。地上の楽園どころか地上の地獄であった、そういう状況であったと聞いております。

 結果的にこのような状況になったにもかかわらず、日本政府は、正確な情報を提供することなく、結果的に大変多くの方々を不幸にすることに関与してしまったと私は思っているんですが、まず、この帰国事業全体に対する評価、外務大臣はどのように受けとめているか、お聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の帰還事業ですが、政府は、昭和三十四年二月十三日の閣議了解によって、帰還を希望する者の意思確認及び帰還のために必要な仲介を赤十字国際委員会に依頼するとの方針のもとに対応した、こういった経緯があります。

 この帰還事業に対する評価ですが、これは、今現在も議論が行われている日本人配偶者問題も含めた人道上の問題とも関連しており、実際、さまざまな評価がある、これは承知をしています。ですから、当時の状況下で行われたことについての評価、これを今、一概に申し上げるというのは困難ではないかと認識をしております。

 いずれにしましても、政府としましては、人道的な観点から、さまざまな機会を捉えて日本人配偶者問題等についても北朝鮮側に提起をしてきました。ぜひ、今後とも、御親族の希望等もしっかり踏まえながら、北朝鮮側に前向きな対応をしっかり求めていきたいと考えています。

阪口委員 五十年前の状況と現状は確かに違いますから、今大臣がおっしゃった、今、当時の事業を評価する、五十年のギャップを超えての評価というのは非常に難しいことがあることは私も承知しております。

 ただ、日本政府の態度として非常に疑問に思うことが幾つかあるんですね。

 例えば、五九年の十二月から、ピークは一九六〇年そして六一年だったわけですが、どう考えても最初に言われていた状況と現地の状況が違うということは、本当に港におり立った瞬間にわかるわけでありまして、政府として関与した事業であるからには、やはり正確な情報を知らしめる、これから帰国を考えていらっしゃる方の判断材料になるような正確な情報を提供する、そういった義務があったかと思います。

 ただ、それがなされていない、正確な情報を提供する、そういった努力をした形跡が極めて薄いというのは、これはやはり政府の大きな責任であると言えるのではないかと思うんですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 当時、帰還する前に想定していた状況と、現地に行って実際に経験した状況、これが随分違っていたという点は、御指摘のとおりではないかと私は思います。

 それに対しての政府の対応でありますが、政府としましては、帰還事業の結果として、特に日本人配偶者の問題について、政府として実施した安否調査要請あるいは故郷訪問等を踏まえて、二〇一二年の政府間協議の場を含めて北朝鮮に提起をしてきたところであります。

 こういった経緯を踏まえまして、先般、三月末に一年四カ月ぶりに再開されました日朝政府間協議においても、この日本人配偶者の問題、日本側からこれまでの協議等を踏まえて引き続き問題提起し、議論を行ったところであります。

 ぜひ、今後とも、こうした日本人配偶者問題につきましては、日朝政府間協議においても粘り強く協議をしていきたいと考えております。

阪口委員 今、大臣の答弁をお聞きしていて、現在のさまざまな御努力についてお話をしている、私はそのように受けとめたんですが、その質問は後からまたさせていただきたいと思っているんです。

 私が今まず聞いているのは、当時の日本政府の対応について、日本としてしっかりとした評価と分析がされているのかどうか、されていれば、恐らく大臣の答弁に反映されるのではないかと思って質問をさせていただいたんですが、現在の努力については後ほど聞きたいと思っていますので、この帰還事業そのものの評価ということ、また、五十年前のことではありますけれども、さまざまな分析というのがされているのかどうか、この点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 御質問は、帰還事業につきまして、今の政府の対応ではなくして、当時、帰還事業が行われた、そしてその当時の政府のその後の対応がどうだったかという御質問かと受けとめましたが、当時、帰還事業が行われた後、現地の状況について我が国としてどこまで実態を把握できていたのか、そういった点もあるかと存じます。ですから、今の段階でその時点での対応について評価するというのは困難な部分があるのではないかと存じます。

 しかし、今時点で、我が国として、情報収集、分析等を踏まえて北朝鮮の実態を把握できている限りにおいて、我が国として努力をしなければいけない点、これは最大限努力をしていく、こういった方針でしっかり臨んでいきたいと考えています。

阪口委員 今私が問題提起したのは、現在努力をすることは当然である一方で、どうして当時正確な情報を入手することができなかったのか、また、当時、帰国するかどうか、恐らく大変な葛藤があったと思うんですが、そういう方々に正確な情報を提供できなかったのか、その本質的な理由は何なのかということの分析をする必要があると私は考えておりまして、当然、外務省の中では、そういう分析に基づいて現在の問題解決のための努力もあるんだろう、このように思って質問をしたわけです。

 確かに、五十年前のことで、社会情勢、また社会主義に対する考え方が現在と違うこと、これはよく理解しております。それにしても、当時の日本政府の対応に問題はなかったのか、そういう分析というのはされていないということなんでしょうか。これは、大臣、あるいは政府参考人の方でもいいので、お答えいただければと思います。

下川政府参考人 ただいま御質問のありました点に関連いたしまして、大臣の申し上げたことに補足させていただきたいと思います。

 委員から御指摘のございました帰還事業につきましては、先ほど御指摘ありましたように、一九五九年二月十三日の閣議了解に基づいて対処してきたということでございますけれども、その中におきましてやはり基本的な考え方となっておりましたのは、居住地選択の自由という国際通念に基づいて処理されるべきである、そういうことを確認した上で対処したということがあったかと存じます。そういう中で、この事業によって北朝鮮に帰還した在日朝鮮人の方等が九万三千人程度おられたということでございます。

 ただ、委員からも御指摘ございましたように、まさに朝鮮半島出身者である夫や父等に随伴して北朝鮮に渡航した妻、子供の方々というものも、まさにいわゆる内地出身者と言われる方が相当数おられたということでございます。そういう全体的な状況の中で行われた事業でございますので、現時点において、そういう当時の状況のもとで行われたことについて、評価を一概に申し上げることがなかなか難しい面があるということを申し上げているところでございます。

阪口委員 当時は、三年程度たてば帰国できるという、海を渡った方々はそういう思いを持っていらしたと聞いておりますが、実際に帰国した方というのはほとんどいなかったということですね。やはり、正確な情報を提供することと、当初の約束に基づいて、帰国希望者に対しては帰国できるような状況をつくるというのも、当時の日本政府の役割としては必要であったのではないかと思います。

 どちらにしても、私は、五十年という大変に長い月日がたってはいるものの、さまざまな歴史問題にしても、やはり数十年前の問題があって、そのことに今どうやって向き合うかということが国際的にも求められているということがあるかと思います。ですから、政府の対応としては、五十年前だから、随分前だからということで、当時の日本政府の対応から目を背けてはいけないと私は思っております。

 次の質問に移りますが、私と同行してくださった方も、まさに自分の意思で当時の北朝鮮に行ったわけでございます。そういったこともあって、私は、拉致問題に比べると、日本国籍を持った、現在北朝鮮にいらっしゃる方々の帰国問題に対する国民の関心というのは非常に低いということを危惧しているわけでございます。

 まず、そういった方々が今どういう状況に置かれているのか。私と一緒に行った方は、四十三年間、とにかく、日本に帰る、日本に帰って家族の顔を再び見たいということを念じて苦難の生活の中で頑張り続けたとおっしゃっておりますが、現在、日本人妻を初めとする日本国籍者の方々がどういう状況にいるのかということについての正確な情報は、政府としては把握をしているんでしょうか。

岸田国務大臣 日本人配偶者問題につきましては、先般行われました日朝政府間協議、そしてそれに先立っての日朝赤十字会談におきましても、これはもう人道的な問題として、議題として取り上げられたわけであります。

 現時点での現状把握等も含めて、ぜひ、引き続きこの問題について日朝間でしっかり意思疎通を図っていかなければならないと考えています。現状把握も含めて、この問題について引き続きしっかりと取り組んでいきたいと考えています。

阪口委員 これは私と同行してくださった方からいただいた情報なんですが、最初に私が申し上げたように、いわゆる日本国籍を持った方々、日本人妻の方々というのは、大変に厳しい状況にあったことは間違いないと思います。

 一方で、一九九七年から二〇〇〇年にかけて、三回にわたって、私が把握している限りでは合計四十三名の方が一時帰国をされました。残念ながら、現地の情勢について詳細に彼女たちが語るということはなく、大変幸せに暮らしています、このようなことを言わざるを得なかった。これは、家族の方々がいる中で、いたし方ないことだと思います。

 一方で、この日本人妻の方々、日本国籍を持っていらっしゃる方々に対する北朝鮮政府の処遇というのが、以前に比べるとかなり改善をしてきているということも聞いております。要するに、その方々を何らかの交渉カードに使える、このように政府として考えているのではないかと私は予測できるかと思うんです。

 やはりこれは、人道的な問題として、人道的な見地から、帰国を希望する方に対してはその思いが実現できるように、政府として働きかける必要があるかと思います。多くの方々がもう七十代、八十代になっていらっしゃる。千八百人余りの日本人妻の中で、今生きていらっしゃる方は恐らく百名前後ではないかとも言われておりますが、やはりこのことを、拉致問題の解決とともに、政府としては強力に働きかけていく必要があると思います。

 戦略としては、拉致問題というのは、北朝鮮が、これはなかったと拉致問題の存在を認めていないということが今の拉致問題の停滞の一つの大きな要因だと思いますが、彼らも日本国籍者であるわけですから、拉致被害者と、当時、帰国事業、帰還事業で現地に渡った方々、とにかくセットで日本国籍を持っている方を帰国させる、そういう交渉をすることで、場合によっては北朝鮮側のハードルを下げることも可能ではないかと私は思っているんですが、この点について大臣はどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 三月末の日朝政府間協議においても、日本側から、他の日本人にかかわる諸問題とあわせて、日本人配偶者についても、これまでの協議に引き続き提起をし、そして北朝鮮側とさらなる議論を行ったところです。

 こうした問題提起をした上で、北朝鮮側と引き続き政府間協議を続けていくということで一致したわけですので、ぜひ、次回以降におきましても、拉致の問題は当然でありますが、この日本人配偶者の問題についてもしっかり取り上げて、そして、北朝鮮側から前向きな行動を引き出すべく、粘り強く協議をしていきたいと考えます。

阪口委員 粘り強く協議をしていくということですが、今、大臣の答弁の中には、日本としての確固たる戦略があるのかどうかということがちょっと私には伝わらなかったんです。

 先ほど質問をした点なんですが、まず、戦略を立てる上で正確な情報を把握できているのか、あるいは、正確な情報を提供するような働きかけができているのかということをお伺いしたい。

 その上で、北朝鮮にいらっしゃる方というのは、拉致被害者、そして帰国事業、帰還事業で帰った方だけではなくて、戦後、北朝鮮に幽閉されて帰れなくなった残留邦人、言ってみれば北朝鮮残留邦人という方もいらっしゃるわけでございます。こういう方々の情報、これは、国交がない国ではありますが、交渉をする上でまず情報を得ることが重要だと私は思うんですが、どの程度情報を得ているのか、この点はいかがでしょうか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮の中における状況について具体的に把握することにつきましては、種々困難があるのが事実でございます。

 そういったような中におきまして、今委員御指摘の日本人配偶者の問題につきましては、政府としまして、過去に実施しました安否調査の要請、そして故郷訪問、これも先ほど委員から御指摘のありました委員訪問等も踏まえまして、二〇一二年の政府間協議の場を含めて北朝鮮側に提起してまいったところでございます。

 先般の三月末の日朝政府間協議に関しましては大臣から申し上げたとおりでございますが、そういったところを通じた情報収集も含めてこれから取り組んでまいりたいというふうに考えておるところでございます。

阪口委員 国交のない国、また、北朝鮮という国の特殊性を考えると、この情報収集は大変困難であるということは私も承知をしております。一方で、先ほど申し上げたように、日本国籍者に対する待遇が改善しているということは、北朝鮮としては、この問題をある種の外交カードに使いたいという思い、思惑を持っていることのあらわれであるとも思います。そういう意味では、これは、しっかりと先方に要望することによってこの問題の解決につなげていける可能性があると私は思っておりますので、政府としての対応をぜひお願いしたいと強く要望させていただきたいと思います。

 一方で、先ほどの同行していただいた方の場合、現地で北朝鮮の方と結婚されているんですね。北朝鮮の方にとっては、日本の方と結婚するというのは大変に大きなリスクがあったことだと聞いておりますが、そういう方も中にはいらっしゃる。ただ、その場合、お子さんたちは国籍が北朝鮮になるわけですね。ですから、そういう方々が自由に往来できるように働きかけていく、これも重要であると思います。これは先ほど私が問題提起したテーマと通ずるものがあると思いますので、あわせて強く要望していただきたい、このように思います。

 次に、中朝国境地域における脱北者に対する人道支援のあり方について質問させていただきたいと思います。

 私が今回主にリサーチをしたのは、北朝鮮国境の長白という町でございました。中国、北朝鮮、ロシアの国境近くに延吉という町があるんですが、そこから五百キロ近く、国境沿いに西方に行ったところで、中国では長白山、北朝鮮では白頭山と言われる、朝鮮民族にとっての聖なる山と言われている、その山の麓にある町でございます。

 川幅が、狭いところでは本当に数メートルということで、対岸の北朝鮮の人々の生活が手にとるようにわかる地域なんですね。川で洗濯をしていたり、あるいはごみを拾っているような様子がはっきりとわかる。服装や生活ぶり、本当に貧しい生活であるということが一目瞭然でありました。また、夜になると真っ暗になってしまって、電気が通っていないということも私の目にもはっきりとわかりました。こういう状況、大変な貧困と、そして自由がない状況から逃れたいということで、この地域はいわゆる脱北者の方々が特に多い地域でございます。

 ところが、今の政権の中で大変に厳しい措置がとられている。脱北しようとしていらっしゃる方に対する北朝鮮の中でのさまざまなチェック、また、中国においても、私自身も何度もチェックをされた、トランクをあけて調べられたりということもありまして、一旦中国に逃れた方であっても、無事に安全な国に移動することがいかに難しいのかということは、私も想像できました。

 一方で、川幅自体は、渡ること自体は決して困難ではないけれども、脱北が明らかになり、中国で捕らえられた場合、中国と北朝鮮の間には、中朝犯罪者相互引き渡し協定、これは一九六六年に締結されました。また、辺境地域の国家安全と社会秩序維持のための相互協力議定書、一九八六年締結。このようなさまざまな決まりがある。また、一九九七年に刑法を改正するときに、刑法八条、国境管理妨害罪を新設して、中国内の脱北者を手助けする自国民を五年以下の有期懲役に処するようにする、このような大変に厳しい法律がございまして、脱北した方をかくまった中国人に対しても大変に厳しい罰則があるということでございます。

 一方で、中国は、一九八二年に国連の難民協約に加盟をしており、難民や人権問題に直接関係するこうした脱北者の問題には向き合わなければならない立場でもございます。北朝鮮に強制送還された脱北者の方々に、人道的に看過しがたい大変厳しい措置が行われるということを考えたときに、中国が国際社会の一員としてとるべき態度というのは、そういう方々に対して、人道的に国際社会に対して恥ずかしくない措置をとることであると私は思っております。

 まず、この点について大臣はどのようにお考えになっているのか、見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、中国には最も多くの脱北者がいると考えられています。よって、中国の対応は大変重要だと認識をしています。

 中国政府は、この脱北者事案について、国際法及び国内法、そして人道主義の精神に基づき処理をしているという説明はしていると承知をしております。

 他方、北朝鮮における人権に関する国連調査委員会、COIが公表した最終報告書では、帰還者を待ち受ける深刻な人権侵害にもかかわらず、中国は、不法入国した北朝鮮の人々を強制送還する厳格な政策を遂行していること等が報告されている、こういった点も承知をしております。

 我が国としましては、この脱北者問題については、やはり人道的観点から適切に対応していかなければならないと考えております。ですから、やはり中国に対しまして適切な対応をしっかりと働きかけていかなければならないと認識をしています。

阪口委員 この問題に対する我々の取り組み、私は二つポイントがあると思っていまして、まず一つは、日本国籍であろうとなかろうと、人道的な見地から、中国に対して、また北朝鮮に対して、この問題に対する改善を求める、これは国際社会と連携して強力に行っていかなければいけないと思っています。

 一方で、このようにして脱北をされてくる方々の中には日本国籍の方もいらっしゃるわけで、その方々に対する邦人保護の視点も重要でございます。ですから、その方々が日本国籍であるということがわかった時点で、日本政府としては、彼らの生命を保護する義務というものが生じると私は解釈をしております。

 一方で、この点は確認したいんです。読売新聞の報道をベースに質問しているんですが、日本政府は、中国政府の求めに応じて、脱北者の保護については、中国の国内法を尊重し、脱北者を公館外から公館の中に連れ込まないと誓約をしている、つまり、大使館や領事館では保護しないということを中国と合意してしまって、今では、日本の大使館、総領事館経由では日本には行けないという状況が生じている、このように聞いております。

 これは、邦人保護の視点からも、あるいは国際的な人道問題に対する対処の視点からも大変に大きな問題であると私は考えておりますが、この点についての確認と、また、その上でどのような対応をしていくべきなのか、お伺いをしたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの議論にもございましたとおり、中国には最も多くの脱北者がいるものと考えられておりますので、中国との連携は非常に重要であるというふうに認識しております。

 そのような観点から、中国政府との間でも必要なやりとりを行ってきているところでございますが、我が国として、今後中国からの脱北者の保護を行わないといったようなことを約束したということはございません。

 我が国としましては、これまで政府が関知している範囲でも百名を超える脱北者の方を受け入れてきておりまして、今後とも、脱北者事案に関しましては、人道的観点から適切に対処していく考えでございます。

 なお、一般論として申し上げますれば、在外公館は、特権や免除を享受する全ての者は、特権や免除を害されることなく、接受国の法令を尊重する義務を負うということは、領事関係、外交関係に関する条約にも記載されているところでございます。

阪口委員 今の答弁、私が調べた、以前読売新聞に掲載された記事とは若干矛盾するところもありますので、後ほどこの点についてのもう少し詳細な事実確認をさせていただきたいと思います。

 次に、この国境において脱北者をめぐる状況として私が大変に憂慮しているのは、ブローカーの存在なんですね。川幅は決して広いとは言えないものの、渡った瞬間から、今度は北朝鮮に強制送還される恐怖が存在するわけですね。そういったいわば弱みにつけ込んで、ブローカーと言われる方々が脱北者の方々の人権を著しくじゅうりんしていると私は思っています。

 具体的には、脱北をすることができた後に、相場でいうと大体百万円程度のお金を払えと。当然、北朝鮮の方々は払えないわけですから、多くの場合、後払いということになるわけで、そうすると、さまざまな、売春であるとか、あるいは中国の寒村で本当に奴隷的な仕事をさせられるというようなことから逃れることができないという状況になっています。もし言うことを聞かなかったら北朝鮮に強制送還するぞと言われたら、多くは女性、七割、八割が女性で、脱北者は女性の方々が中心なんですが、言うことを聞かざるを得ないという状況なんですね。

 一方で、教会や、人権的な立場で脱北者の方々を支援する、そういった組織もありますが、先ほど申し上げたように、中国の中では脱北者をかくまうということが犯罪になっていますから、彼らの活動というのはいわば地下活動になっているわけでございます。

 一方で、ではこういった状況をどのようにして解決し得るのかということを考えたときに、北朝鮮の内部においても、やはり今、国民を食べさせていけないことにはどうにもならないということは、新しい金正恩体制の中でも認識をされていると思います。要するに、さまざまな経済活動が行われている、しかし、それらがしっかりとした法に基づかない、イリーガルなビジネスになっているがゆえに、このようなブローカーの暗躍が起こっているという状況であると私は受けとめました。

 したがって、日本政府の戦略としては、先ほどから申し上げている日本国籍者、拉致被害者、また北朝鮮に残留を余儀なくされた日本国籍者の方々に対する人道的措置と引きかえに、北朝鮮を国際社会、国際経済の枠組みの中によりよい形で復帰させるようなことをしっかりと交渉する、私は、対話と圧力は両方必要だと思っていますけれども、圧力を加えて北朝鮮を孤立させるだけが有効な戦略ではないのではないか、このように考えるわけでございます。

 この点について、現在、日本としてはどのような戦略を持っているのか、また、大臣として今後どのような方向性で考えていこうとしているのか、この二点、お伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 北朝鮮に対しましては、対話と圧力の方針のもとに、日朝平壌宣言に基づいて、拉致問題、核問題、そしてミサイル開発問題、こうした諸懸案を包括的に解決していく、こういった方針で臨んできました。

 そして、経済制裁につきましては、人、金、物、かなりこの絞り込みが行われ、そして現在の北朝鮮の経済状況を考えますときに、一定の効果が上がっていると認識をしております。

 そして、それに加えまして、一年四カ月ぶりに日朝政府間協議を再開いたしました。対話を再開することによりまして、北朝鮮に具体的な行動をしっかり求めていかなければならないと考えております。そして、北朝鮮に対する措置のあり方については、不断の検討を行い、総合的に判断していかなければならないと考えます。

 こうした対話と圧力を通じて北朝鮮に対峙しているわけですが、北朝鮮の対応あるいは国際社会の反応といったものをしっかり見た上で、拉致、核、ミサイル、こうした諸懸案を包括的に解決するために最も有効な手段は何なのか、こういった観点から引き続き真剣に検討していかなければならない問題であると認識をしております。

阪口委員 まさにこの点については、包括的にトータルで考えていく視点が非常に重要だと思います。

 ただ一方で、北朝鮮と国交がない中で、できることというのは限られていると思うんですね。そういったことを考えると、例えば、議員外交をもって北朝鮮の政策決定者の本音を探るというようなことも私は必要ではないかと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 北朝鮮の社会経済情勢につきましては、まずしっかりと情報収集を行わなければならないと思っております。そういった観点から、我が国独自のさまざまな情報収集努力も続けているわけですが、アメリカあるいは韓国等関係国とも緊密に連携していく、さらには、北朝鮮に公館を設置している国、現在、全部で二十六カ国ありますが、こういった国と情報交換を行うなどして、内部情勢の把握に努めているところであります。

 そして、御指摘の議員外交についてですが、一般論として申し上げるならば、この議員外交というもの、国民の代表である国会議員が、外国政府等に我が国の事情あるいは国民の声を直接説明する、訴えかけていくなど、意味があるものであると認識をしております。

 ただ、北朝鮮に関しましては、対北朝鮮の措置として、我が国から北朝鮮への渡航の自粛を要請させていただいております。ぜひ、こうした方針も踏まえて、適切に対応していくべきことであると認識をしております。

阪口委員 この問題については、北朝鮮の特殊性ということを考えると、私は、あらゆる資源を投入する、オール・ジャパンで向き合っていかなければいけないと思っています。その中で、議員外交の可能性を排除してもいいのかということについては、私自身は疑問に感じております。

 どちらにしても、時間がありません。特に、日本国籍を持った帰国者の方々は本当に高齢化していて、彼ら、彼女たちの切実な思いを考えると、このことに関しては早急に効果的な対策をとっていかなければいけないということ。そして、脱北して日本にいらっしゃる方が今二百人前後いらっしゃるということなんですが、韓国とは違って、日本においては脱北者に対する公的支援がないんですね。NGOなどが細々と支援をしているけれども、それほどの思いをして日本に帰ってきた方々が、今、非常に安心して幸せな生活を送っているかというと、そうではない面もあるということも伺っております。

 この問題については、人道的見地と、そして、とにかく効果的な戦略を持って、ぜひ大臣にはその中心になって頑張っていただきたいですし、私もできる限りの問題提起を今後もしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質問の機会を二十分いただきました。ありがとうございます。通告した内容はほとんど重なってしまったんですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日の三条約の質問に入る前に、まずは、私も南シナ海の情勢について伺いたいと思います。

 中国の南シナ海での事案は、ことしに入ってから、我が国が把握しているだけでもベトナム初め四カ国、九案件に上り、対中国関係で共通の課題を持つと言ってもいい我が国も無視できない状況であると思っております。南シナ海での問題は中国の公船によるもので、まさに安倍総理が日ごろからおっしゃられている、岸田大臣もおっしゃられておりますが、力による現状変更に中国はチャレンジしてきているというふうに思われて、危惧しているところでございます。

 特にベトナムとの間では、五月二日に西沙諸島海域で衝突が発生して以来、連日にわたって衝突を繰り返しているという状況でございまして、ベトナムは基本的にはデモを禁止している国でありますが、そのデモを禁止しているベトナムでも、連日、デモを容認するというか、デモが発生しているというぐらい問題が拡大してきているということも言えると思います。

 南シナ海には領有権が確定していない海域が多く存在しているというのはもう御案内のとおりでありますが、そういう海域では、国際法上、自制的な行動をとるというのが世界の常識であるにもかかわらず、中国はあえて問題を顕在化するような行動をとっているわけでございまして、こうした中国の身勝手とも言える振る舞い、国際法上非常識とも言える行動、そしてさらには、ナインドットラインと呼ばれる、中国が勝手に設定している、領空でも領海でも領土でもなく、領域と言われる主張に対して、まず、こうした状況、そして特に、この領域を主張している中国に対して、外務大臣の御認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、南シナ海をめぐる問題は、地域の平和と安定に直結する問題であります。よって、我が国を含む国際社会全体の関心事項であると認識をしています。

 我が国としましては、御指摘のように、力による一方的な現状変更は認めることはできません。各国が、緊張を高める一方的な行動を慎み、そして法の支配の原則に基づいて行動していくことが、地域における国際秩序形成にとって重要であると認識をしております。

 引き続き、中国が国際的な規範をしっかり遵守するということ、また、地域や、さらにはグローバルな課題により建設的かつ協調的な役割を果たしていくよう、ASEANですとか、米国を初め関係国としっかりと連携して促していかなければならないと考えております。ぜひ、我が国としましても、こうした事態が外交的に、そして法的な手段によってしっかり解決されることを望み、そして働きかけを続けていきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 ちょっと重ねてお伺いしますが、中国が設定したナインドットラインと言われる領域、こういう中国の主張に対して、大臣の御見解もお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、こうした国際秩序にかかわる問題は、国際法に基づいてしっかりと整理されなければなりません。ですから、中国が御指摘のような主張をするとするならば、しっかりとした国際法上の根拠を国際社会に対して示すことが重要であると考えております。ぜひ、中国側がそういった国際法を遵守し、法の支配を尊重する、こういった態度を示すことをしっかり促していきたいと考えます。

青柳委員 ありがとうございます。

 こうした状況で、ちょうどASEANは、十日に外相声明を出し、十一日のネピドー宣言、さらに十二日には首脳会議議長声明を発出しまして、それらでは、南シナ海の平和的解決とDOCの実施、COCの早期妥結を求めたということでございます。

 日本も、この対中国問題で、今御答弁もありましたが、さらにASEAN地域と連携して中国に対峙していくべきだと考えておりますが、この対中国問題、領海の問題で、具体的にASEANとどのように連携していったらいいか、どのように連携していくべきと考えているかについて、今大臣のお考えにあることをもう少しお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘の一連のASEANの会合におきまして現在の情勢につきまして深刻な懸念が表明されたことについては、ASEANが一体となってこの問題に対応していく、こういった立場が示されたと受けとめており、このことは、我が国としましても歓迎したいと思っています。

 我が国としては、境界未画定の海域での中国による一方的な掘削活動の着手により地域における緊張が高まっていること、これを深く憂慮しております。関係国が、緊張を高める一方的な行動を慎み、そして関係国際法を遵守し冷静に対応することを期待したいと思っています。

 そして、我が国は、この海洋の問題につきましては、昨年十二月の日・ASEAN特別首脳会議においても、また先月の日米首脳会談等においても、国際法に基づいた紛争の平和的解決、自制的行動の重要性、こういった考え方は共有をしております。ぜひ、意思疎通、協力を今後とも深めるべく、連携をしていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 中国は力による現状変更に完全にチャレンジしてきていると思いますので、ぜひ引き続きしっかり注視して対応していただければと思います。

 次に、条約の質問に入りたいと思います。

 日米重大犯罪防止対処協定について伺いますが、この内容の質問に入る前に、審議のあり方についても御見解を伺いたいと思います。

 この条約は、四月二十五日の外務委員会で提案理由の説明がなされたわけでありますが、条約を担保する国内法の方は、既に四月十六日の内閣委員会で可決しているわけであります。

 私は新人議員ですが、普通であれば、条約が先にできて、その上で国内法をつくっていくというのが普通だろうと思います。今、圧倒的な巨大与党で、すばらしく与党ペースと言われている国会運営の中で、条約よりも先に国内法ができている、こういう審議のあり方について、大臣はどのようにお考えになりますか。正常だと思われているのか。

 思い切り与党ペースで進んでいるにもかかわらずこういうことになっているのは、普通のことなんでしょうか。私は新人議員として少し違和感を持ちましたので、せっかくの機会ですから、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、政府としましては、条約、そしてそれを実施するために必要な国内法については、同一会期の国会において提出をし、承認及び成立を得るべくお願いをしているところであります。条約もその国内法も同じ国会にそろって提出させていただいているわけですが、会期内の審議日程につきましては、国会でお決めいただくことになっております。各委員会の理事会等において、他の国会提出条約あるいは法案の審議日程等を踏まえつつ検討していただき、御決定いただいているということであります。

 私もかつて国会対策委員長というのをやったことがありますが、過去においても、こういった条約と関連国内法の関係において、条約の審議より国内法案の審議が先行した例もあったということは承知をしております。

青柳委員 過去にこういうことがあるのは承知しておりますが、今は、過去にないぐらい、同じ閣僚が就任されて五百日も取り組んでおられる、しかも、支持率も高位安定しているという内閣ですから、国会運営に緩みがあるんじゃないかと言われないように、引き続きしっかり国会運営に当たっていただきたいと思いますので、申し上げておきたいと思います。

 さて、本条約は、米国の九・一一テロ以降、三十七カ国一地域、全ての査証免除国と協定を結ぶということで合意されて進んできている条約です。これは先ほどの質問でも既に出ておりますが、私からも一応伺っておきます。査証免除国の中で署名が最後になった理由と、ほかの署名国との大きな違いについて端的にお伺いしたいと思います。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 この協定は、我が国がこれまでに締結した国際約束に例を見ないものでございまして、特に個人情報の保護の観点から慎重な検討を要するものでございました。このため、米国との交渉におきましては、個人情報の保護等の観点から、我が国として重視する点について粘り強い交渉を行ってまいったものでございます。

 今回、我が国としましては、アメリカが第三国との間で署名、締結しつつあったPCSC協定をも参考としつつ、個人情報の保護により配慮した内容とするために、米国と第三国との間の協定には一般に含まれていない要素を盛り込むことを含め、交渉を行ってまいりました。交渉妥結までには時間を要しましたが、日米間でより詳細な議論を積み重ねることによりまして、個人情報の保護等により配慮した適切な内容の協定をまとめることができたと考えております。

 特に、我が国がアメリカとの間の交渉で得た点は、大きく申しまして三点ございます。

 第一点目は重大な犯罪の定義でございまして、大方の第三国との場合は一年を超える拘禁刑ということになっておりますが、我が国は、これをさらに絞りまして、長期三年未満、一年超えの拘禁刑に当たる犯罪、これも類型を絞って該当するということで限定をかけました。

 二点目は、米国に利用可能とする指紋情報の範囲でございます。米国に利用可能とする指紋の範囲から、まず、いわゆる遺留指紋を除きました。さらに、米国が個人を特定して照会してくる場合には、利用可能とする指紋情報を、有罪判決、逮捕歴のある者、指名手配中の者等に限定いたしております。

 加えまして、指紋についての自動照会、第一次照会と呼んでおりますが、これで適合する指紋情報がある場合について、追加的な要請が来ない場合には、どうして第二次照会をかけてこないのかということでアメリカ側に照会できるようにした。

 これが日米間の協定に独自の規定ということでございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 現状、米国との捜査共助件数というのは年間数件程度だということでお伺いしました。本条約発効後、今の御答弁にもありましたけれども、指紋の第一次照会というのは自動回答ですから、これが急激にふえた場合、そして二次照会に至らない場合は、今、理由をきちんと聞くんだということですが、こうしたことについてきちんと運用していただきたいと思います。そのことは、もう時間もなくなってきましたので答弁は求めませんが、私からも指摘をしておきたいと思います。

 次に、日・ブラジル受刑者移送条約についても伺いたいと思います。

 本条約は、受刑者の社会復帰促進のために、受刑者に対して本国で刑に服する機会を与える、改善、更生、円滑な社会復帰を促進するための条約であって、我が国は、二〇〇三年にCE条約に加入し、その締約国六十三カ国との間で受刑者の移送が可能となっている。こうした取り組みについては評価できるものだと思います。今後、日本としては、CE条約未加入国との二国間での締結、あるいはCE条約未加入国へ、加入したらいいんじゃないかという促進など、一層取り組む必要があると考えております。

 こうした観点で見てみると、日本とブラジルは、二〇〇三年の日・ブラジル領事当局間協議から十年以上が経過して条約の署名となったというふうに伺ったわけですが、本条約の趣旨や必要性、そして、我が国は、刑事施設に収容されているブラジル人が本年二月現在でも二百四十三人と、二番目に受刑者の多い国であり、もう少し早期の対応が必要だったのではないかと素直に見れば考えられますけれども、この二〇〇三年の日・ブラジル領事当局間協議から合意までに十年もかかってしまった、この主な理由は何でしょうか。

石原大臣政務官 御説明申し上げます。

 二〇〇三年六月の第一回日・ブラジル領事当局間協議及び二〇〇五年四月の第二回協議が行われた当時、ちょうど我が国は、欧州評議会が作成した受刑者の移送に関する多国間条約である、刑を言い渡された者の移送に関する条約、いわゆるCE条約を締結した直後でございました。このため、協議をしていたんですけれども、二国間の受刑者移送条約の締結については、CE条約に基づくその後の移送実績や成果を見た上で考えていく必要があるということで、経緯を見守っていたところがございます。

 また、日・ブラジル間の受刑者移送に関する議論が、二〇〇七年以降、日・ブラジル司法分野作業部会において議論されることになりました。具体的には、二〇〇七年十月に第一回、二〇〇八年十月に第二回及び二〇一〇年八月に第三回という形で、相互の受刑者制度について意見交換を行い、理解を深めていく、そういうプロセスもあったわけであります。

 こうした経緯を経て、二〇一二年七月に日本・ブラジル受刑者移送条約の締結交渉の開始を決定いたしまして、本年一月の署名に至った次第であります。

 ちなみに、交渉を開始してから締結に至った期間としては、日・ブラジルの場合は一年十カ月でありますけれども、例えば日本とタイの場合は二年八カ月という形になっているところであります。

青柳委員 大分質問通告した内容を残しましたけれども、時間が来ましたので終えたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、日米重大犯罪防止対処協定について質問いたします。

 本協定において、重大犯罪とは、日米の少なくとも一方の国内法令によって、死刑、無期または長期三年以上の拘禁刑に当たる犯罪、それから長期一年を超える拘禁刑に当たる犯罪で、附属書1に明記されたものとあります。そして、この附属書1には三十四の犯罪区分が列記されておりますけれども、例えば、この中の拷問とか、あるいはコンピューター犯罪、それから妨害行為(サボタージュ)ということなどについて言えば、これは日本の法令では何に当たるということになるでしょうか。

石原大臣政務官 附属書1に挙げられた三十四の犯罪類型は、我が国の法令における罪名と一対一に対応するものではございません。附属書1の犯罪類型に該当する具体的な事案が我が国の法令においていかなる罪名に該当するかは、個別具体的な事実関係を踏まえ、個々の事案ごとに判断されることになるわけであります。

 ただ、例えばでありますけれども、あくまでも個々の事案ごとに判断されることになるわけでありますが、例えば、拷問であれば、傷害罪、刑法第二百四条、暴行罪、刑法第二百八条等に該当する可能性もあります。また、コンピューター犯罪であれば、不正指令電磁的記録作成罪、刑法第百六十八条の二、また、不正指令電磁的記録取得罪、刑法第百六十八条の三、また、妨害行為であれば、器物損壊罪、刑法第二百六十一条、建造物損壊罪、刑法二百六十条等に該当する可能性があるというふうに承知をしております。

笠井委員 可能性はあるけれども、一対一対応じゃない。

 協定では、これら三十四の区分に該当する犯罪には、未遂とか共謀、幇助、教唆、予備ということまで含まれておりますけれども、日本では共謀とか予備というのは犯罪として処罰されないんじゃないか。それでも、これによって自動照会ということになっていくのか。そういうことになるわけですか。

石原大臣政務官 これは、笠井委員の言われるとおりでございます。

笠井委員 そうしますと、岸田大臣に伺いたいんですが、本協定では、日本では犯罪に当たらなくても、米国で犯罪に該当すれば、自動照会によって日本から米国に指紋情報などが提供されることになるわけで、これはやはり国民の人権とかプライバシー保護の観点からすると問題じゃないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、この協定は、日米間の査証免除制度のもとで安全な国際渡航を一層容易にしつつ、そして、両国国民の安全を強化するため、テロ等の重大な犯罪に係る情報を交換する枠組みを設定するものであります。

 こうして、国際的な安全な渡航を容易にする、そしてテロ等の重大な犯罪に対応する、これは大変重要な課題であり、だからこそ、我が国に先行して多くの国々がこうした協定を結んできたわけであります。

 そして、その中にあって、我が国としましては、重大な犯罪の範囲、これをしっかりと限定する、あるいは、個人情報保護の観点についてもしっかり配慮する、こういった、特に人権やプライバシーについて配慮する協定を米国との間において結ぶということを今考えているわけであります。

 こうした安全な国際的な渡航、あるいは重大犯罪、テロ等に対する対応、こういったものを実現する中にあって、我が国のこの協定は、他国のさまざまな協定と比較しましても、人権やプライバシーに最も配慮した内容になっていると考えております。

笠井委員 先ほど来議論になった問題を含めて私の質問したことにはお答えにならないんですけれども、やはりそういう重大な問題があるということについては、これは見なきゃいけないということを私は申し上げておきたいと思います。

 次に、核物質防護条約の改正は、防護対象を、締約国の管轄下にある、国内で使用、貯蔵、輸送されている核物質及び原子力施設にも拡大するものとなっております。これに関連して質問したいと思います。

 まず、原子力規制庁、お越しになっていると思うんですが、昨年七月と本年四月の二回にわたって、神奈川県横須賀市の京浜急行久里浜駅近くにある、沸騰水型原発用の燃料を製造する加工事業者グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、GNF―Jから、原子力規制委員会に対して、核燃料物質加工事業変更許可申請というのが出ていると思うんですが、間違いありませんね。

大村政府参考人 お答え申し上げます。

 グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、これの加工事業の変更許可申請は、同社から本年四月十八日に提出をされているところでございます。

笠井委員 これは、東京電力の福島原発事故以降、原発燃料の製造が減少したもとで、工場の最大貯蔵能力を変更するとともに、昨年十二月に施行された加工再処理工場に関する新規制基準に適合させるために、耐震補強など施設の安全性の向上を図るというものであります。

 その新規制基準、加工施設の位置、構造及び設備の基準に関する規則というものの中に、第九条で、外部からの衝撃による損傷の防止について定めて、特に航空機の落下について定めております。

 去る四月二十三日の原子力規制委員会の審査会合では、本件の変更申請が取り上げられて、事業者側から資料が提出されていると思うんですけれども、それを見ますと、施設の特徴について、加工施設周辺の飛行場として、敷地の北北東約三十六キロメートルの位置に羽田空港があり、また、自衛隊基地、米軍の基地が存在しているというふうに記述されていると思うんですが、そういう記述があることについては間違いありませんね。

大村政府参考人 委員御指摘のとおり、そういう記述が説明資料の中にございます。

笠井委員 その上で、事業者側は、基準への適合状況についてこう述べております。

 民間航空機の落下事故評価として羽田空港、自衛隊機の落下事故評価として厚木、館山等の七基地、米軍機の落下事故評価として横田基地と厚木基地を特定し、防護設計が不要であることを確認したというふうに述べております。

 つまり、自社の核燃料施設が、規制基準に適合して、飛行機落下に対して安全であるという評価をみずから下しているわけであります。

 原子力規制庁は、この事業者側の評価、つまり、例えば米軍機の落下について防護設計は不要であるという評価が妥当だというふうに考えているんでしょうか。

大村政府参考人 今お話がありましたように、四月二十三日に開催しました審査会合におきまして、事業者から申請概要を聴取し、それから、申請内容について当方から主要な論点を提示したというところでございます。

 事業者の申請によりますと、今御指摘のございました航空機の落下につきましては、この確率に関する評価基準に基づきまして民間航空機、自衛隊機、それから米軍機等の落下事故を評価するということで、確率が十分に小さいということで防護設計が不要である、これを確認したとの説明を受けたところでございます。

 ただ、いずれにしましても、審査はこれからということでございますので、原子力規制委員会といたしましては、今後、申請内容に基づきまして、これらの科学的、技術的見地から厳正に審査を進めていきたいというふうに考えてございます。

笠井委員 規制委員会の方は、規制基準の中で航空機の落下というのを重視してこの問題も挙げているわけですけれども、今、事業者側からは十分に小さい確率だ、つまり一千万分の一の確率だというふうな話で、それ以下だという話を言っているんだと思うんですけれども、こんな話は、まさに安全神話ということで、今問題になる話だ。

 軍用機が落下をして工場に激突したらひとたまりもないわけで、審査中で、これからということでは済まされない、直ちにこれは大問題だという話になっていくようなことで、どこに安全という保証があるのかということが問われると思うんです。

 軍用機が工場に墜落、激突した場合に、破壊から免れる構造になっているか。これは審査をまつまでもなく、本当に重大問題だということで取り上げなきゃいけないことだと私は思います。

 そこで、国土交通省に伺いますが、一九六九年の七月五日、当時の運輸省は、地方航空局長宛てに、原子力施設付近の上空の飛行はできるだけ避けさせる旨の通達、さらに二〇〇一年十月十六日には、その徹底等、自家用小型航空機運航者に徹底させる旨の通達を発出していると思うんですが、そういう事実の確認と、この飛行規制の対象には米軍機や自衛隊機は含まれているのかどうか、伺いたいと思います。

島村政府参考人 お答えいたします。

 国交省では、今御指摘のございました一九六九年、二〇〇一年に、航空機による原子力関係施設の災害を防止するため、原子力関係施設付近の上空の飛行の回避について民間の航空機の運航者を対象に周知をしております。

 なお、防衛省につきましては、この文書とは別に、機会あるごとに、同じく原子力関係施設付近の上空の飛行の回避について要請をしております。

 また、米軍機について御指摘がございましたが、国交省といたしましては、平成十一年一月十四日の日米合同委員会が公表した文書において同様の趣旨の合意がされているものと承知をしております。

笠井委員 外務省に伺いますが、米軍機の場合の原子力施設付近の上空の飛行制限については、今国交省からありましたが、一九九九年の日米合同委員会で在日米軍による低空飛行訓練について合意をした際に、「在日米軍の航空機は、原子力エネルギー施設や民間空港などの場所を、安全かつ実際的な形で回避し、人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥当な考慮を払う。」という内容の取り決めを合意していると思うんですけれども、それは間違いありませんか。

三ッ矢副大臣 間違いございません。

 九九年の合同委員会の合意でございますが、今委員が読み上げられたとおりの内容になっておりまして、原子力エネルギー施設や民間空港などの場所を、安全かつ実際的な形で回避するということが規定されているところでございます。

笠井委員 しかし、この合意は守られていないというのが実態ではないかという問題があると思うんです。

 昨年六月十九日の本院経済産業委員会での我が党の塩川鉄也議員の質問に対して、防衛省は、日本の原子力施設、発電所や再処理施設の上空を米軍機が都合七件飛行したことを認めていると思うんです。

 神奈川県の核燃料物質加工事業者、GNF―J、この施設上空を、昨年十二月、米軍機が飛行したという近隣住民の目撃情報も私のところに寄せられておりますけれども、防衛省はそうした事実も含めて確認していますか。

若宮大臣政務官 今、笠井委員が御指摘になりました件でございますが、私どものところには、地方自治体や住民の方々から苦情が来ました案件につきまして、私どもの方から問い合わせをさせていただいているところでございまして、六件につきましては確認させていただいているところでございますが、一件につきましてはまだ確認されていないところでございます。

笠井委員 六件プラス一件は確認したんじゃなかったんですか、この答弁には。今のはまた別の話なんですけれども、そこのところをちょっと整理をお願いします。

若宮大臣政務官 失礼いたしました。

 七件につきましては、伊方に関するところまでは確認いたしてございまして、その十二月の件につきましてはまだ確認できていないところでございます。失礼いたしました。

笠井委員 住民からの苦情がなければ米軍機の飛行を確認できないということはどういうことかという問題になってくるので、これは調査して報告してもらいたいと思うんですけれども、いかがですか。

若宮大臣政務官 委員の御指摘につきましては、確認させていただきたいと思っております。

笠井委員 昨年十二月十六日の午後に、この施設の間近にある神奈川三浦市の埋立地で、米海軍厚木基地所属のヘリコプターMH60が不時着に失敗をして横転、大破する、そして乗員二名負傷という事故が発生しました。もう委員各位、それから政府関係者の皆さんも記憶に新しいところだと思うんです。

 ことし二月になって、米海軍は、事故の重大性を三段階で示す評価、この委員会でも何度も問題になってきました、最悪のクラスAであることを明らかにして、三月には後部回転翼が海中に落下していることを公表しております。

 事故当日、間近の核燃料施設の付近で複数の米軍機が低空飛行を繰り返していたという目撃情報がございます。事故対応のための飛行だったのではないかという地元の人の話もあるわけですけれども、これは防衛省か規制庁、どちらでも結構ですが、あの事故時に加工施設付近もしくは上空を米軍機が飛行したという報告は届いておりますでしょうか。

若宮大臣政務官 私どもといたしては、そのような事実は把握いたしてございません。

笠井委員 原子力規制庁に伺いますが、この核燃料施設というのは住宅地の中にあります。そして、周辺住民は米軍機の墜落事故の危険性を訴えております。昨年十二月には実際に間近なところで米海軍のヘリコプター事故が起きていて、住民のおそれは決して杞憂ではないという問題だと思うんです。

 軍用機が核燃料の工場に墜落、衝突したら、周辺に核物質がまき散らされるおそれがあります。その場合に、どういう対応をとって近隣住民の安全を確保することになっているのか。核燃料施設で軍用機が墜落をして、放射性物質が飛散して住民が被曝したら、誰がどう責任をとることになるのか、お答えいただきたいと思います。

大村政府参考人 今御指摘の核燃料施設への航空機の墜落事故でございますけれども、新たな規制基準の中におきましても、こういう意図的な、例えば航空機衝突のテロリズムというようなものにつきましても、施設が大規模に損傷した状況に対応するための措置を要求しているところでございます。

 具体的には、消火活動、重大事故の発生防止、対策実施に必要な情報の把握等の手順書、それの体制、それから、それに必要な資機材等の整備を求めているというところでございます。

笠井委員 意図的なテロの話を今しているわけじゃなくて、米軍機、自衛隊機が意図的にテロをやって、原子力施設をやるわけじゃないですよね。

 今起こっている問題について、では、どういうふうに安全確保ができるのか、それから、実際に軍用機が墜落して、飛散して、住民が被曝したら、誰がどう責任をとるのかという問題について聞いているんですが、どうなんですか。

大村政府参考人 今御指摘の点につきましては、新規制基準におきまして、航空機の墜落事故につきまして確率の評価をするということで、一年当たりの落下の確率が十のマイナス七乗を超えるような場合には防護設計を講じるというようなことで対応を求めるということにしてございます。

笠井委員 確率の話をすると、また安全神話になってくる話なので、十マイナス七乗とかの話じゃなくて、現実にこの施設近傍でそういう事態も起こっているということがあるわけですよね。しかも、国土交通省だって、外務省だって、自衛隊や米軍を含めて、そうした原子力施設上空で飛ばないようにということでのいろいろな合意をしたりとか、あるいはそういうお願いをしたり、通達を出したりしているという状況で、しかも、なおかつそういうことで起こっているということがあるじゃないかということを私は言っているわけです。マイナス七乗だから大丈夫という話なんて、規制庁がそんなことを言い出したら、全く今の現実とかけ離れた話になると思うんですよ。

 そこで、最後に大臣に伺いたいんですが、昨年三月三十日十六時三十二分ごろということで、先ほど若宮政務官からも六プラス一と言っていた、四国電力伊方原発の敷地上空を南から北方向に白色の航空機が飛行したというのを四国電力が原子力規制庁に報告している。連絡票ということで出している。そして、防衛省にただしたところ、改めて米側に確認したら、当該機というのは米海軍所属のP3Cであったという回答を得ております、そこまで防衛省も認めているわけですね。

 つまり、大臣、最後に伺いたいんですが、核燃料物質加工事業施設というのは、神奈川だけではなくて、茨城、大阪、岡山、青森、五府県に計五つの加工事業者で七つの事業所が事業認可を受けております。軍用機というのは民間機よりも墜落の危険が高いと言われている。米軍機についても、日米の両政府の取り決めで、安全かつ実際的な形で回避することになっているわけですけれども、しかし、なおかつこういうようなことで、実際、実態は守られていないことがあったりして、しかも、近くで墜落の事態があるということですので、これはぜひ実態を徹底的に調査して、自衛隊機はもちろん、米軍機の原子力施設上空の飛行はやめさせるべきじゃないか、最低限、はっきりこれはやるべきじゃないか、それについて、大臣、どうでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日米安全保障条約において、我が国の安全、さらには極東の平和と安全を守るために米軍の我が国への駐留を認めているのは、軍隊としての機能に属する諸活動を一般的に行うこと、これを前提にしております。そして、一般的に、訓練を行うということ、これは軍隊の機能を維持する上で不可欠な要素であり、日米安全保障条約の目的を達成するために重要であると認識をしております。

 しかしながら、米軍は全く自由に飛行訓練を行ってよいわけではなく、当然のことながら、我が国の公共の安全に妥当な配慮を払って活動すべきであります。よって、先ほど三ッ矢副大臣からも答弁させていただきましたが、一九九九年の日米合同委員会合意において、「妥当な考慮を払う。」こうした規定がされているところであります。

 政府としましては、ぜひ、米側に対しまして合同委員会合意の遵守をしっかり求めていかなければならないと思っておりますし、安全面に最大限の考慮を払う、あるいは地元住民に対する影響を最小限にとどめる、こうした申し入れはしっかり行っていきたいと考えております。

笠井委員 やはり、事は国民の命と安全、住民の生活、命と安全にかかわる問題なので、きちっとした対処をすべきだということを強く求めて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、条約の審査について、重なるところもあるかと思いますが、ぜひ真摯な御答弁をお願いしたいと思います。

 核防護条約について伺います。

 現行条約の我が国における効力の発生となりました一九八八年十一月以降、核テロ等の脅威に対する認識の高まりなどから、ここは、これまでの国際輸送中の核物質から、国内の核物質及び原子力施設へと防護措置の対象拡大が挙げられています。

 改正については、二〇〇五年七月の採択となっているものの、九十九カ国締結後に発効となることから、現在は未発効となっております。ちなみに、現在は七十五カ国が締結をしているということで、資料で報告を受けています。

 原子力規制庁に伺います。

 この防護措置の対象拡大について、国際間では未発効となっている我が国における措置の状況、法整備等はどのようになっているか、確認の意味も含めてお伺いいたします。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 改正核物質防護条約におきましては、国内の核物質及び原子力施設の防護措置の制度を確立し、それを規律するために、法令上の枠組みを定めることが求められております。

 我が国の原子力発電所等のセキュリティー対策につきましては、既に原子炉等規制法に基づきまして、事業者に対し、さまざまな防護措置を求めているところでございます。

 具体的には、原子力施設の周辺に立ち入り制限区域、周辺防護区域を設け、フェンス、センサー、監視カメラ等も設置し、警備員による巡視を実施すること、さらに、海水冷却ポンプ等の屋外の重要な設備、原子炉建屋内の重要な設備を大きな衝撃から守るために、周辺に防護壁を設置すること、さらに、出入り口における身分証による従業員等の本人確認、金属探知機等による探知の実施、重要な設備の周辺で作業する場合には二人以上で行うこと、いわゆるツーマンルールでございますが、こういうことを我が国の国内規制に取り込んでいるところでございます。

 これらの措置は、IAEAの核物質防護に関する勧告文書、最新のものはINFCIRC二二五と言われる文書でございますが、これに基づくものでございます。

 また、原子力発電所の警備につきましては、警察の銃器対策部隊が二十四時間体制で常駐警備などを行うとともに、海上保安庁では、全国の原子力関連施設の周辺海域に巡視船艇を常時配備しているところでございます。

 なお、我が国の核物質や関連施設の防護体制につきましては、来年春までに、IAEAによる核物質防護専門家からの評価ミッションを受け入れることといたしております。

 こうした国際的な観点からの評価も踏まえ、原子力規制委員会において継続的にセキュリティーの強化に取り組んでまいる所存でございます。

 以上でございます。

玉城委員 今、もろもろの対応についてしっかりとられているということで御答弁をいただきました。

 では、警察庁に伺います。

 この防護措置に基づく現場の警備体制の現況についてお伺いいたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、全国の原子力発電所にサブマシンガンやライフル銃、耐爆、耐弾仕様の車両等を装備しました銃器対策部隊を常駐させまして、海上保安庁とも連携しつつ、二十四時間体制で警戒に当たっております。さらに、情勢が緊迫したときには、銃器対策部隊を増強、派遣しますほか、高度な制圧能力と機動力を有します特殊部隊SATを迅速に投入することとしております。

 また、原子炉等規制法に基づき、原子力規制委員会等と連携して、警察庁職員による原子力発電所への立入検査等を積極的に実施して、事業者による防護体制の強化を促進しているところであります。

 さらに、三年前の福島第一原子力発電所の事故によりまして、その脆弱性が国内外に明らかになったことを踏まえまして、人的体制の充実、装備資機材の整備拡充、警戒要領の見直し等、テロ対策の強化を図っているところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 引き続き、規制庁に伺います。

 今回、この核物質の防護に関する条約が発効になった以降、条約発効後の国際間における警備体制等のさらなる強化について国際間で行われる、そういうことがあるか否かについてお伺いいたします。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 この改正が発効し、各国が取り組みを強化することで、核物質及び原子力施設の効果的な防護を世界的規模で達成するとともに、核物質及び原子力施設に関連する犯罪を世界的規模で防止することに結びついていくと思います。こうした意味で、国際的な連携が一層強化されるものというふうに考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 犯罪とすべき行為の拡大についてもお伺いをしたいと思います。

 今回は、この防護措置の対象の拡大に加えて、犯罪とすべき行為の拡大が挙げられておりますが、第三国間の移動を含む法律の権限なしに行う核物質の移動、原子力施設に対する不法な行為等が挙げられています。

 我が国におけるこの対処については、どのようになっておりますでしょうか。

黒木政府参考人 お答えいたします。

 改正核物質防護条約における犯罪とすべき行為の拡大につきましては、核テロによる人の生命、身体及び財産の被害の防止並びに公共の安全を図る観点から、核物質防護条約を担保しておりますいわゆる放射線発散処罰法において措置することといたし、既に今国会において可決されているところでございます。

 改正核物質防護条約を締結するため、国内担保措置として放射線発散処罰法に措置されるのは、一つとして、改正第六条として、特定核燃料物質をみだりに輸出入する行為、当該行為の未遂、当該未遂の予備を処罰することといたします。

 また、第二点として、改正第八条として、原子力施設に対する行為もしくは原子力施設の運転を妨害する行為により人の生命等に害を加えるとの脅迫による強要行為ですけれども、これを処罰するものでございます。

 なお、改正された放射線発散処罰法の施行期日でございますが、改正核物質防護条約が日本国について効力を生ずる日から施行することとされております。

 以上でございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 次に、日本・ブラジル受刑者移送条約についてお伺いいたします。

 我が国と各国との受刑者の移送における現況として、手元に資料がありますが、二〇〇四年から二〇一四年までのこの間の受刑者の移送実績、日本における外国人受刑者数及び海外における日本人受刑者数について少し確認したいと思います。

 今回のブラジルと我が国との現状については、欧州評議会が作成した受刑者移送条約、CE条約に日本は加入しておりますが、ブラジルはCE条約には加入せず、我が国との受刑者移送条約の非締約国ということで、この間の二国間の移送について条約で定めるものであります。

 この間、CE条約について、タイとの二国間受刑者移送条約及びCE条約を含めた人員は千三百二十六人、日本人受刑者は四十三人というふうになっております。

 一方、我が国との受刑者移送条約の非締約国、今回のブラジルが二百四十名ということになっております。これは二〇一三年十二月現在ですが、二〇一四年の現在では、ブラジルは二百四十九名というふうになっておりまして、この非締約国の外国人受刑者は千八百十五名、そして日本人受刑者は八十名いるということですが、非締約国との、日本から外国、外国から日本への送出移送及び受入移送は、いずれもゼロというふうな数字になっております。

 このことを考えますと、今回のブラジルとの移送条約について考えまするに、受刑者の移送実績に関する件について、非締約国との移送問題が看過できないのではないかと思います。日本側から、この移送の検討について、非締約国に対して積極的な働きかけを行うべきではないかというふうに思いますが、その見解を伺います。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 先生から御指摘のありました数字なんですが、全体の数字をまずちょっと簡単に申し上げておきたいと思いますけれども、我が国における外国人受刑者総数、これはことしの三月末現在でございますが、三千百四十一名、そのうちブラジルが二百四十九名でございます。それから、逆に海外における日本人の受刑者数は百二十三名という数になっております。

 これまで我が国がCE条約締約国との間で、我が国が加盟しましたのは二〇〇三年六月でございますけれども、それから本年三月末までに、送出移送が二百五十一名、それから受け入れが六名でございました。御指摘のとおり、非締約国との間では実績がないということでございまして、二国間の条約でこれを決めているところが、既に締約しましたのがタイでございます。

 受刑者の大口の国を申し上げますと、もう御承知だと思いますけれども、韓国、中国、ブラジル、あるいはイランといったところが非常に多いわけでございますけれども、このうち中国とかイランとも二国間条約の締結交渉をやってきておるところでございます。特にイランとの間ではかなり内容が煮詰まってきておりまして、そう遠くない将来、締結に持ち込むことができるのではないかというふうに考えております。

 また、それ以外にも、例えばインドあるいはベトナム等に対して、これは逆にCE条約を締結する可能性を彼らに対して求めているというような状況もございます。

 そういった中で、この問題について、多数国間条約それから二国間条約、両方のツールを使いながら、スムーズに処理できるように我々としても努力しておるところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 この日本・ブラジル受刑者移送条約の意義は、相手国で服役している日本人、ブラジル人受刑者には、本国で服役する機会を与え、社会復帰を促進するということがうたわれております。つまりは、やはり人権を尊重するということに関して、日本はしっかりそのことを世界に対して発信していくということについては、引き続き鋭意努力をぜひお願いしたいというところであります。

 さて、残された時間は、米軍普天間飛行場の辺野古移設の件について防衛省に確認をさせていただきたいと思います。時間の関係上、環境省に対しての重要海域の選定についての質問は後日に回させていただくこともあるかもしれませんが、あらかじめ御了承いただきたいと思います。

 普天間基地の名護市辺野古への移設に関して質問いたします。

 沖縄防衛局から名護市へ提出されていた辺野古漁港の許可申請について、法的根拠の説明のない回答期限五月十二日、事前調整がなされないままでの書類提出などなど、現地自治体名護市といまだきちんとした協議に着いていないというふうに、新聞報道などからそのようなことがうかがえます。

 この件について、まず、これまでの経緯について防衛省の見解を伺います。

伊藤政府参考人 先生、御説明の機会を与えていただいてありがとうございます。

 普天間飛行場代替施設建設事業でございますが、これは、先般の仲井真知事による普天間飛行場代替施設の埋立承認を受けまして、一日も早い事業の完成ということが必要であるということで、沖縄の負担軽減のためにも全力で努力していきたいというふうに考えているところでございます。

 本件につきまして、四月十一日に沖縄防衛局が事業に係る工事等に関係する六件の文書につきまして、名護市と、それから名護市の教育委員会に提出をいたしまして、以降、文書によるやりとりを同市等と行っているところでございます。

 現時点におきまして、このうち、五月十二日付で、埋蔵文化財の有無に係る照会につきましては、名護市教育委員会の方から、キャンプ・シュワブ内において種々の遺跡が確認されている旨の回答文書をいただいております。

 名護市に提出しました五件につきまして、岩礁破砕等の申請に必要な意見書につきましては、後日提出するというふうな文書をいただいております。ほかの四件につきましては、提出した文書の補正を求める旨、名護市から通知をいただいているという状況でございます。

 四月十一日に名護市等に提出しました六件の文書につきまして、回答期限を一カ月後の五月十二日までというふうに記載をいたしましたが、これは先ほどもお話ししましたように、同事業の期間を少しでも短縮したいということで、事業を実施するために必要となる手続についてもできる限り速やかに行いたいという旨をお願いしたというものでございます。

 今後もそういう考えは変わっておりませんけれども、今、名護市から通知文書等をいただいておりますので、その内容に対しまして精査をしておりまして、対応につきましても検討しているところでございます。

玉城委員 次の質問はほとんど今答弁をいただいたことにかぶりますけれども、防衛局申請の六項目に対しては、名護市側から、名護市漁港管理条例の様式に沿った必要書類の再提出、図面の添付等の要求など、四件の申し入れがあると思います。文化財に関しては、埋蔵文化財七件等に対する分布調査の要求を行うべきであるというふうに出ているわけですね。

 ですから、五月十二日までの期限を切ってはあるものの、書類に不備がありますよというふうなことの申し入れをし、あわせて、この五月十二日はどういうふうにして期限を決めたんですかという法的根拠の説明を求めたら、それは根拠はないというふうに後刻説明をしているという状況ですから、私は、とてもこれが正式な協議に乗っているのかということには決して当たらないのではないかというふうに思うわけですね。

 そのことを確認しながら、時間がありませんので一つ質問を飛ばして、法令の遵守についてお伺いしたいと思います。

 今回の辺野古漁港の使用について、防衛局側は、漁港漁場整備法の見解で、その条文の中に、許可は必要ない、地元との協議で足りるという認識を示しているとなっております。そのことを上位法として、それで足りるんだということが報道でも明らかになっているわけですが、一方、名護市の漁港管理条例では、漁港の保全、陸域内における行為の制限等、占用の許可等及びそのほかの条文の箇所においても、許可権限者である市長の許可を得ることが必要であるということが明確に示されています。

 これは、いわゆる地元の権利者、あるいは地元市民、漁業者等々、管理の責任を全うする意味で、市の条例がこの漁港漁場整備法の下位にあるという解釈には当たらないというふうに本員は思うわけですね。ということは、この両方の法律をしっかりと遵守することによって初めて名護市側ともまた協議が成り立っていくのではないかというふうに思います。

 法令の遵守について、防衛省の見解を伺います。

伊藤政府参考人 先生、報道に基づきまして御指摘をいただきまして、説明の機会をいただきましたことは感謝したいと思います。

 本年四月十一日に提出いたしました六件の文書のうち、辺野古漁港に係る占用等に関しまして二件の文書を名護市に提出いたしております。

 本事業におきましては、工事中などの環境の状態を把握する一環としまして、事業実施区域及びその周辺における海域生物等に係る環境調査を行うこととしておりまして、辺野古漁港区域内での当該調査の実施に当たりまして、同漁港区域内の水面の占用を伴う必要があるということで、漁港漁場整備法第三十九条第四項の規定に基づき、当該漁港管理者である名護市長に対しまして、漁港の区域内における行為についての協議書を提出しております。

 また、本事業におきましては、代替施設に使用するブロック等の製作等を行うため、辺野古漁港区域内に作業ヤードを整備することとしておりまして、その整備等に当たり、同漁港に係る防波堤の漁港施設を占用し、当該施設に定着する護岸の工作物の新築を伴うことから、名護市漁港管理条例第十条の規定に基づき、名護市長に対しまして、甲種漁港施設占用等許可申請書を提出しております。

 名護市等への文書の提出に当たりましては、工事等の内容に応じまして、関係法令等の規定に基づき、適切に手続を進めているというふうに考えておりますので、今後とも、本事業に係る工事等の実施に当たっては、関係法令等に従い、適切に進めていく考えでございます。

玉城委員 ということは、改めて簡単に確認させてください。

 この名護市の漁港管理条例も、きちんとその趣旨にのっとって対応していくということに間違いありませんか。

伊藤政府参考人 本事業に係る工事等の実施に当たりましては、関係法令等に従いまして、適切に進めていく考えでございます。

玉城委員 ありがとうございました。

 環境省の重要海域選定については、また後刻質問をさせていただくこととし、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。ニフェーデービタン。

鈴木委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、核物質の防護に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件及び刑を言い渡された者の移送に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の両件について議事を進めます。

 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、核物質の防護に関する条約の改正の受諾について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、刑を言い渡された者の移送に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次に、重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日米重大犯罪防止対処協定に反対の討論を行います。

 本協定は、米国から、同国に渡航する日本人に対するビザ免除を継続する条件として締結を迫られたものでありますが、その内容は、従前の共助条約の範囲を超えるもので、さまざまな問題があります。

 指紋情報の自動照会は、個人情報について制度の異なる外国との間で事実上共有しようというもので、プライバシー保護の観点から重大であります。対象犯罪は重大な犯罪としていますが、附属書にあるように、その犯罪類型は極めて広く、それらの未遂、共謀、幇助、教唆、予備まで含まれています。

 自動照会によって日本から米国に提供される指紋の範囲は、個人が特定されていない指紋の照会の場合には、無罪確定者、さらに嫌疑なしまたは不十分による不起訴、保護処分を受けた少年の指紋まで含まれるというのであります。

 自動照会を行うには、重大な犯罪を実行するか、または実行したかについて調査する理由があることが要件とされていますが、相手国はその要件の当否をチェックできません。

 また、二次照会によって得られた人定、犯歴等の情報は、相手国の同意を得れば、出入国管理や公共の安全に対する重大な脅威の防止など、目的外にも利用できるとされています。

 さらに、本協定には、相手国から要請がない場合であっても、重大な犯罪の防止などを理由として、関連する情報を自発的に提供できるとしていることも看過できません。

 以上、国民の人権、プライバシー保護の観点から多くの重大な問題を含む本協定には反対を表明し、討論とします。

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次回は、来る十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.