衆議院

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第17号 平成26年5月21日(水曜日)

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平成二十六年五月二十一日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    八木 哲也君

      小川 淳也君    玄葉光一郎君

      松本 剛明君    阪口 直人君

      村上 政俊君    岡本 三成君

      青柳陽一郎君    笠井  亮君

      小宮山泰子君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        三ッ矢憲生君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 行成君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水嶋 光一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       岡村 善文君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    三好 真理君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 甲斐 正彰君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     八木 哲也君

  玉城デニー君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     河井 克行君

  小宮山泰子君     玉城デニー君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官広瀬行成君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官水嶋光一君、大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官正木靖君、大臣官房参事官大菅岳史君、中東アフリカ局長上村司君、中東アフリカ局アフリカ部長岡村善文君、領事局長三好真理君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長新村和哉君、国土交通省航空局次長甲斐正彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 おはようございます。自由民主党の鈴木馨祐でございます。

 きょうは、日本とサウジアラビア、日本とモザンビーク、そして日本とミャンマー、この三本の投資協定、そして日本とミャンマーとの間の航空協定ということで、四本の条約の審議でございますので、こうした点を中心に質疑をさせていただきたいと思います。

 まず、日本という国は島国でございまして、そういった意味では、人と物と金の移動をどうやってしっかりと確保するのか、あるいはこうしたところのコストをどうやって下げることができるのか、これがやはりこれからの日本経済の発展にとっては一番大事な点であろうと思います。

 そういった中で、この航空協定については、人の移動というもの、これはまさに島国にあっては非常に大事な点でございますので、そういった中で、それぞれの国においてそれぞれの航空会社がしっかりといろいろな形で輸送を担っていく、その可能性というものを広げていくということは、まさに国益にかなっていくことであろうと思います。そういった中で、この航空協定、今回、日本との行き来が非常にふえているミャンマーとの間ということでございますので、しっかりとこれは進めていかなくてはいけない点であろうと思います。

 そして、サウジアラビアは、言わずもがな、日本のエネルギーの大きな輸入先でもありますし、その関係で、日本のさまざまな会社も進出をしている。そして、モザンビークについても、最大級のガス田が発見をされた。これは、商社を中心に、これからどんどんといろいろな形での関係が深まっていく国でございます。さらにはミャンマーについても、今、ASEANの中でも非常に投資がふえている国でございます。

 そういった国々の中で日本の企業がしっかりと活動していくことができるような基盤をどうやってつくっていくことができるのか、これはまさに喫緊の課題でございまして、むしろこれは、ほかの国も含めてさらに一層加速していかなくてはいけない案件でございますので、この四点については我が党としてもしっかりと賛成をしていきたいということをまず明確に申し上げた上で、質疑をさせていただきたいと思っております。

 こう申しましたのも、投資協定が特にそうなんですけれども、一番大事なのは、恐らくは、協定があるのはあるとして、それを、執行であったりとかあるいは運用のところでどうやって実際にその実効性というものを担保していくことができるのか、これが一番大事な点であろうと思います。そうした中で、過去のいろいろな投資協定を検証していくことも必要なのかなというふうに思っています。

 というのは、協定の中身というものがきちんと守られているのか、協定の中身というものが、それに基づいて相手国政府の中で運用がきっちりとなされているのか、この点は常々検証していって、例えば、新しい協定がある場合には、先方の政府にその厳格な運用を求めていく。あるいは、過去の相手に対しても、実際の運用というところで疑問が持たれるようなケースがあるのであれば、これは政府としてもしっかりと対応を進めていかなくてはならない点が多くあるのだろうというふうに思っております。

 そういった中で、なぜこういったことを申し上げているかというと、一点、非常に気になる点がございまして、ことしの四月十九日、中国の浙江省におきまして、日本の商船三井が運用している鉄鉱石の運搬船、バオスティール・エモーションの差し押さえの案件というものが実は生じているわけであります。これはなぜ起こったかというと、一九三六年、これは戦前のことになるんですけれども、商船三井の前身の会社が中国の民間から徴用した、その徴用中に沈没をしたということで、一連のいろいろな訴訟が中国でも起こった。日本でも起こった。ただ、当然これは、日本においては、日中の条約の中で、戦後の処理という中で済んでいる、そういった見解もあろうかと思います。

 ここについて、まず、政府として、今回の中国における商船三井の差し押さえの事件についての見解というもの、外務大臣もあちこちでこうしたことを、公式の場でもおっしゃっているかと思いますけれども、改めてその点についてお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の案件ですが、四月十九日、株式会社商船三井は、上海海事法院から、中国浙江省の港に停泊中の同社の船舶を差し押さえる旨の通告を受け、上海海事法院と協議を重ねた結果、四月二十四日、差し押さえが解除となり、同船は出港したという案件であります。

 差し押さえが解除されたとはいえ、国交正常化以来四十年以上の月日がたっています。そして、今日まで日中間の経済的な相互依存が深化しているにもかかわらず、七十年以上前の事案に起因する事柄で突如として現在の日本企業の資産を差し押さえる、こういった対応につきましては、中国でビジネスを展開する日本企業全般に対し萎縮効果を生むことになりかねない、そういった観点から、我が国としては憂慮している、これが我が国の立場であります。

 今後とも、中国でビジネスを展開する日本企業が安心して活動できる環境を整えるよう、中国側に強く働きかけていかなければならないと考えています。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 何で私はこの件を申し上げたかというと、実は、日本と中国との間でも、一九八八年に署名され、八九年に告示されている日中投資保護協定というものが実際に存在しているところであります。

 その中で、例えばその五条においては、「いずれの一方の締約国の国民及び会社の投資財産及び収益も、他方の締約国の領域内において、不断の保護及び保障を受ける。」という条項もあったりとか、あるいはその十一条においては、「いずれか一方の締約国の国民又は会社による他方の締約国の領域内における投資に関する当該国民又は会社と当該他方の締約国との間の紛争は、可能な限り、紛争の当事者間の友好的な協議により解決される。」そういった文言もある。そういった協定が実際に二国間で発効しているところであります。

 今大臣もおっしゃっていましたけれども、今回の経緯の中で、果たしてこれが、こうした投資協定の中のそれぞれの条項という中で、本当に整合するような事案なのか。当然、今回は、差し押さえということで公的な機関の執行でもございますので、ここはやはり、民民というよりは、国と国の関係ということもきっちりと考えていかなくてはいけない案件だと思いますけれども、この点について、今回の商船三井の案件と日中投資保護協定の整合性についてはどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

三ッ矢副大臣 お答えをしたいと思います。

 今議員から御指摘ありましたように、この日中の投資協定、理論的に申し上げれば、まず、この船が日中投資協定上の投資財産に該当するかどうか。これは、協定をよく読んでみますと、投資の時点でということになっておりますが、その時点というのがいつなのかというのは、実はこれが余りはっきりしていない。船をつくったときなのか、入港したときなのか、そこはちょっとまだ解釈の分かれるところがございます。

 他方で、この差し押さえが、関連する民事訴訟の経緯や中国の国内法令の通常の運用に照らして著しく合理性を欠いていた、つまり、協定上、不断の保護、保障の義務があるわけですけれども、そこに抵触しているのではないかという疑義はあるわけですね。

 したがって、理論的に申し上げれば、違反だという指摘を我々が行える可能性は排除されない、このように考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 特に、投資協定の対象、相手国というのは、日本と違ういろいろな価値観の国も当然そこにはあるわけでして、今後、さまざまな形で投資協定、投資保護協定があったにしても、実際の運用の中でその協定に沿った形の解決がされているのか、極めて疑問が持たれるようなケースというのは、当然これからも起きる可能性というものはあるんだろうと思います。

 そういった中で、仮に今回の具体的なケースでもいいですし、あるいは一般的なケースということのお答えでも構わないんですけれども、実際に投資協定の文言に反するような行為があったと思われた場合に、日本政府としてどういった対応をとることができるのかについてお答えをいただければと思います。

岸田国務大臣 一般論として申し上げるならば、日本が締結している投資協定の相手国が協定に違反する場合、政府としましては、我が国投資家に対し、相手国の政府に主張すべき内容等について助言を行うということになります。また、必要な場合には政府としても相手国政府に働きかけるなど、紛争解決のために積極的に関与する、これが我が国の方針であります。

 さらに、協定の解釈または適用に関する問題に関し、締約国間の協議を申し入れ、そのような協議でも解決に至らない場合、国家間の仲裁に付託することも可能であると考えております。日中投資協定においても、「協定の解釈又は適用に関する両締約国間の紛争で外交交渉によっても満足な調整に至らなかったものは、仲裁委員会に決定のため付託」することができる、これは第十三条2で定められております。

 したがって、仮に中国政府が日中投資協定に違反した場合には、まずは、我が国政府として中国側に協議を要請して交渉を行うこととなります。その上で、国家間の仲裁に付託することは選択肢の一つとなり得る、このように考えております。

鈴木(馨)委員 実際に投資協定を結ばれた中で、どういった運用が相手国政府の中でしっかりとされるか、これは極めて大事なことでありますし、そこに疑義が生じた場合には、やはり政府としても、個々の民間企業の活動を安心して行っていただけるように、そこの点についてはきちっと後押しをしていくということが極めて大事であろうと思いますので、これは、これからいろいろな国との間で投資協定が結ばれていくと思いますけれども、ぜひ、そういった運用、執行の部分についても、きっちりとした注視、フォローアップというものをお願いしたいと思っております。

 もう一点、投資協定ということで申し上げれば、やはり、地政学的に考える、例えばどこの国と投資協定を結んでいくのか、これは当然、経済的な問題でもありますけれども、同時に、さまざまな、地政学的であったり、あるいは国際政治の観点からもこうした点を考えていくことは必要なんだろうと思います。

 特に今、中国が台頭してくる中で、周辺国は極めていろいろな不安を感じている中でもありますし、そうした不安を感じている国に日本としてどうやってきっちりとサポート、コミットをしていくかということは、逆に、その相手国が、中国は非常に大きな国ですから、中国側に吸い寄せられないようにする、この観点からも大事な点であろうと思うんです。

 そういった中で、一点お伺いをしたいのは台湾の問題でございまして、私も先日、先方の総統ともお会いをする機会がありましたけれども、かねがね台湾の方からは、日台の間でのEPAについてもしっかりと検討を進めていただきたい、こういった要望も実際に出てきている案件でございます。

 そういった中で、日本と台湾との間、これは租税条約あるいはEPAの問題、まだまだ進めていかなきゃいけない点があろうと思いますけれども、その点について、一点、最後に御見解をお伺いいたしまして、質問を終わりたいと思います。

岸田国務大臣 まず、台湾は、我が国にとりまして、緊密な経済関係あるいは人的往来を有する重要なパートナーであると認識をしています。その台湾との間でさまざまな分野の実務協力を着実に進展させていく、このことは大変重要だと認識をしております。

 こうした観点から、台湾との間におきましては、日台双方の民間窓口機関であります公益財団法人交流協会そして亜東関係協会、この二つの団体との間の民間取り決めを積み上げることによって、経済連携の強化を進めているのが実情であります。

 台湾との間における二重課税の回避、これは日本企業等の関心も高い分野だと認識をしております。このため、交流協会と亜東関係協会の間で、昨年末から、日台間の二重課税の回避等を目的とした枠組みに関する協議が行われております。

 また、経済連携の方ですが、台湾との関係に関する我が国の基本的立場を踏まえつつ、幅広い経済関係を視野に入れながら、そのあり方につきましてぜひ検討を進めていきたいと考えております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 時間となりましたので、質問を終了させていただきます。

鈴木委員長 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 時間の限りもございますので、早速質問に入らせていただきます。

 条約について質問する前に、まず、日朝協議についてお伺いをしたいというふうに思います。

 二十六日からスウェーデンで日朝政府間協議が再開されることが決定いたしました。ここでは、拉致問題のほか、ミサイルそれから核開発等の懸案について論議されるものと承知をしておりますが、特に拉致問題について進展が見られることが期待されております。

 一部報道では、北朝鮮が拉致の再調査に応ずれば制裁措置の一部を解除する方針ともありました。そもそも、協議が始まる前からこういったことが報道されるのは、いささか先走りであるというふうには思います。その上で、こうしたことが検討されている、あるいは事実とすれば、いずれにしてもいささか時期尚早ではないかというふうに感じるところであります。

 単に調査を再開するということではなくて、確かな進展が見られるといった確証が得られるということでなければ、制裁を解除するというのは、国民の理解も得られるものではないし、妥当ではないというふうに考えておりますけれども、この点について、大臣、いかがお考えでしょうか。

岸田国務大臣 五月二十六日から二十八日にかけて、ストックホルムにおいて第三回目の日朝政府間協議を開催し、三月末の前回協議を踏まえながら、双方が関心を有する事項について幅広く協議する予定であります。

 御指摘の拉致問題ですが、日本国政府の基本的な立場に基づいて、そして前回までの協議も踏まえつつ、北朝鮮側から前向きな対応を引き出すべく、粘り強く協議していきたいと考えております。

 そして、御指摘のように、これから引き続き協議を行うわけでありますから、今の段階でこの協議の内容を予断するようなことを申し上げることは適切ではないと考えておりますが、いずれにせよ、北朝鮮側から前向きな対応を引き出すべく、そして、諸懸案を解決するため最も効果的な方法をとる、これは従来からの我が国の方針でありますが、この方針に基づいて粘り強くしっかりと協議を続けていきたいと考えております。

上田委員 いずれにしても、非常に長く膠着した状態を打開できる糸口になり得るというふうにも思います。しっかりこの機会を捉えて、懸案はもう山積みでありますので、ぜひ成果を残すように、外務省においての協議に期待をしているものでございます。

 次に、投資協定の締結についてお伺いをいたします。

 我が国では、これは経済連携協定も含めてでありますが、投資協定の署名件数は三十三件、これは諸外国に比べて極端に少ないというのが事実であります。主要諸国では、ほとんどが百件以上のそうした投資協定が結ばれているところであります。

 こうした、我が国において非常に少ないという理由はどこにあるのかというのをお伺いするとともに、今、安倍内閣で進めています成長戦略、日本再興戦略では、投資協定、租税条約の締結、改正を強く進めていくというふうに書かれているわけでありますけれども、これに基づいて、今後の投資協定についての取り組みの方針を伺いたいというふうに思います。

 特に、経済界からも非常に要望の強いところ、例えば、二〇一三年四月に経団連の提言もございましたけれども、そこに例示されているような国々、ブラジル、南アフリカなどの新興諸国もございますし、それからアラブ首長国連邦やバーレーン等の中東諸国、いずれも我が国との経済関係においては非常に重要な地域であるというふうに思っております。

 こうしたこれからの投資協定、今、交渉が進められているものもあるというふうに理解をしております。現状、それから今後の見通し並びに方針を伺えればというふうに思います。

三ッ矢副大臣 委員御指摘のとおり、確かに、投資協定締結の数は、諸外国、特に先進諸外国と比べまして日本は少のうございます。

 この理由でありますけれども、例えば英国とかフランスは百本以上締結しているわけでありますけれども、こういった国は、旧植民地との歴史的つながりが古いということで、古くから直接投資の実績のあるアフリカ、中南米諸国を中心に、交渉が比較的容易な保護型の投資協定を多数締結してきております。

 これに対しまして、我が国は、どちらかといいますと、民間の海外投資が活発化してきましたのは一九七〇年代の後半以降だと思いますが、対外投資、直接投資の歴史が比較的浅いということもあろうかと思います。同時にまた、交渉に比較的時間のかかる自由化型の投資協定を追求してきたという経緯もございまして、現時点では確かに他の先進国に比べて数は少ない、これが実情であろうというふうに思っております。

 ただ、委員御指摘もありましたとおり、近年、投資協定の交渉、締結を従来以上に積極的に進めているところでございます。政府としましても、日本再興戦略、これは、国際展開戦略の一環として投資協定の締結推進に取り組むということにしておりまして、これを踏まえて、政府としては、我が国からの投資実績、投資拡大の見通し、あるいは経済界の要望、経済外交の方針との整合性、相手国のニーズや国情等を総合的に勘案し、戦略的に投資協定の締結拡大に取り組んでいるところでございます。

 今後は、通商戦略の再構築に関する経団連からの提言に例示されている国も含めまして、中東、アフリカ、中南米、中央アジア等の資源産出国や地域の拠点国等が投資協定の相手国として重点的な検討対象になると考えております。

 今後とも、海外投資により新興国等の成長を取り込むとともに、日本市場に外国投資を呼び込むとの観点から、投資協定を積極的に締結してまいりたいと考えております。

上田委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 本日議題となっています三つの投資協定、いずれも相手国は、我が国との経済関係が非常に深いし、これから非常に可能性の高い地域であるというふうに受けとめております。そういう意味で、今回、この投資協定が動き出しているということは、非常に評価できる点だというふうに思っております。

 その中で、時間の限りもありますので、ちょっと一点だけ、ミャンマーとの投資協定についてお伺いをしたいというふうに思います。

 ミャンマーは、民政移管後、生産拠点としても非常に注目をされておりますし、また、ミャンマー自体が消費市場としての注目も高まっているところであります。外国企業、日本だけではなくて、非常に盛んに行われている。日本企業も投資意欲が非常に高く、そういう意味で、本協定が締結をされれば、邦人企業の活動をサポートするというふうに評価しております。大変時宜にかなったものだというふうに受けとめております。

 ここで、経済界からは、租税条約についてもぜひ締結をしてほしいという声があるというふうに承知をしております。二重課税の回避、適切な免税措置の適用、また、今後の税負担の透明性などについて懸念があることから、そういう意味では政府間での租税条約を早く締結してもらいたいという要望でございます。

 ミャンマーにおいては、既に、英国、韓国等のアジア諸国との間で条約も締結をしているというふうに伺っているところでありまして、我が国としても速やかな条約の締結に取り組むべきだというふうに考えておりますが、お考えを伺いたいというふうに思います。

三ッ矢副大臣 御指摘のとおり、ミャンマーは、今後の有望な生産拠点、市場として期待されておるところでありまして、日本企業から租税条約の早期解決についての要望が寄せられているところでございます。

 租税条約の締結につきましては、相手国との経済関係や、締結によって生じ得る効果等を総合的に考慮しながら進めてきているところでありますが、実は事務処理等の問題もございまして、大変多くの国からその必要性が出てきておるということもございまして、全てを一度に締結するということはできませんので、順番をつけてやっていかざるを得ないんですが、ミャンマーにつきましては、今申し上げたような観点も踏まえて、優先順位を高くして我々としては取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。

上田委員 ぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 もう一つ、投資というのは、我が国から海外への投資というのもあると同時に、海外から日本に対する、対日、対内投資というのも重要だというふうに考えております。日本再興戦略でも、二〇二〇年における対内直接投資残高を三十五兆円に倍増することを目指すという方針、目標を示されております。

 実態はといいますと、日本の場合には、対内直接投資というのは先進諸国と比べると極端に少ない水準でありまして、対GDP比で見ればほとんど一桁違うというような状況でございます。

 内閣では、今、有識者懇談会を設置する、また、内閣における体制の強化を進める等のさまざまな取り組みをしているところであります。ビジネス環境を改善していく、それが一番重要なことなんだというふうには思うんですが、同時に、我が国の政府から関係国の政府あるいは経済界などに対して働きかけていく、いわゆるトップセールスというのも重要なんじゃないかというふうに考えております。

 大臣は、外国の外務大臣初め首脳ともたびたび会談をする機会があるというふうに思いますけれども、その際にどういうような働きかけを行っているのか、またその成果はどうなのか、今後どういう方針で取り組まれていくのか、御見解を伺えればというふうに思います。

岸田国務大臣 四月四日に、政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議が開かれました。その際に、安倍総理から、対日直接投資をインフラ輸出と並ぶ成長戦略の重要政策と位置づけ、司令塔として対日直接投資推進会議を立ち上げる旨の指示がありました。

 外務省としましても、ただいま委員から御指摘がありましたトップセールスを重視しております。先般の総理及び私の欧州訪問においては、各国首脳との会談、あるいは民間企業との意見交換を通じて、投資の促進を呼びかけたところであります。欧州側からは、投資への意欲が示されました。

 外務省としましては、トップセールス以外においても、在外公館を通じて、ジェトロ事務所との連携の上、具体的な対日投資案件発掘に向けた情報収集、あるいは我が国の規制制度の改善に向けた情報収集、また、在外公館と任国経済界との人脈構築、こういった取り組みを推進していきたいと考えております。こうした取り組みを通じまして、政府一体となりまして、二〇二〇年までに、対日直接投資残高、現在の倍増をぜひ目指していきたいと考えています。

上田委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、非常に重要なこれからの取り組みだというふうに思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 以上でございます。

鈴木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。民主党の渡辺でございます。

 本日の案件でございます投資協定初め四本の案件につきまして、私は特にミャンマーとの航空協定について触れたいわけであります。

 まず最初に、その質問に入ります前に、いよいよ開催が迫りましたワールドカップの現状について、また、大勢の日本人サポーターが訪れると思うわけでありますが、邦人の保護ということについて政府は現状どのように対応しているのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

 先日、外務省が、ホームページ上で、ブラジルでのワールドカップの開催に当たっての幾つかの注意喚起を発表されております。そのことについてちょっと今触れたいわけでございます。

 まず、ちょっとこれは基本的なことなんですが、ブラジルでのワールドカップ、いろいろ報道等で、なかなか現地の工事が、突貫工事が行われているようですが、まだ完成していないというような報道がされて、我々も大変心配するんですが、その点については日本政府はどんなふうに把握をしていらっしゃるか。

 六月十二日ですから、もうあと二十日でございまして、今、果たして現状がどうなっているのかということについて把握をしていればお答えいただきたいと思います。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、試合が始まりますけれども、日本の予選が、六月の十四日にレシフェ、また六月の十九日にナタル、そして六月の二十四日にクイアバというところで実施をされますけれども、ワールドカップ開催中は多くの邦人や選手団がブラジルを訪問することが予想されるところから、情報収集の強化、また在留邦人や邦人渡航者への適切な情報発信を行っているところであります。

 また、先ほどお話をしましたナタル、クイアバというのは在外公館が所在しませんので、臨時事務所を立ち上げ……(渡辺(周)委員「いや、違う。だから、スタジアムができているのかできていないのかと聞いている」と呼ぶ)はい。スタジアム、最後の質問のところですけれども……(渡辺(周)委員「だから、ちゃんと質問しますから、聞いたことに答えてください」と呼ぶ)はい。

 スタジアムについては注視をしているところであります。この前、私もちょっと出張しているときに、飛行場なんかもまだターミナルが工事中で、鋭意努力をされているような状況でありました。

渡辺(周)委員 ですから、今どんな状況ですかと聞いているんですけれども、だれか答えられる人はいないですか。

岸田国務大臣 御指摘のように、スタジアムも多くがまだ建設中の状況にあるという情報を我が国としましては得ております。そういった状況で、ブラジル政府としましても対応に全力を注いでいる、こういった状況を把握しております。

渡辺(周)委員 開催には間に合うんでしょうか。

岸田国務大臣 建設工事は現在も続いていると承知しておりますが、ブラジル政府としましては、開催までに完成させるべく、全力で取り組んでいると承知をしております。

渡辺(周)委員 非常に状況が心もとないところで、先日は、サッカーの神様のペレが、報道の中でみずからコメントを寄せて、非常に恥ずべき状況だというようなことを言っていました。

 そうはいっても、予定どおり開催されるとなれば、今お話があったような日程で試合が行われるんですけれども、大体どれぐらいの邦人が行かれると外務省は見込んでいますか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 概算で恐縮でございますが、第一試合七千名程度、第二試合七千名程度、第三試合につきましては四千名程度と承知いたしております。

渡辺(周)委員 これは、日本から行かれる方の数ということでよろしいですか。はい。うなずいていらっしゃるので、それで。

 七千名の方が行かれる。先ほど御答弁にありましたけれども、幾つかの都市では極めて治安が悪化しているんだということが外務省の海外安全ホームページに、「二〇一四年FIFAサッカーワールドカップ・ブラジル大会開催に伴う注意喚起」ということで、二回にわたって、五月の十二日と十九日ですから、つい先日、その二というのを出されています。

 この七千人の方々が行かれる先々で、どのような対応で日本国政府としては邦人保護に当たるのか、その取り組みは今どうなっていますか。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 現地におきましては、在ブラジル大使のもとに、二〇一四年FIFAワールドカップ緊急即応体制を構築しております。それと同時に、ブラジル各総領事館、ブラジル日系人会、ブラジル邦人団体とも緊密に連携して邦人観光客の安全確保に努めております。

 なかんずく、第一試合が行われるレシフェにおいては駐在官事務所がございますが、その後のナタル、クイアバには在外公館がございませんことから、近く、試合会場近くに臨時事務所を設けまして、邦人保護、領事事務、スタジアム内の邦人対応等の業務を行う予定にいたしております。

 いずれにいたしましても、外務省といたしましては、引き続き情報収集に努め、邦人保護には万全の体制で臨んでいく所存でございます。

渡辺(周)委員 それは何人体制で臨まれるんですか。今現状はどのような体制でやっていて、今回七千名の方々が来るわけですね、何人ぐらいの体制で、外務省の職員の方々の数だけで補えるのか、それとも、近隣国からも応援を呼ぶのか、あるいは、今、日系の組織があるというふうに言いましたけれども、どんなふうに連携をしてやるのかということについて、今どうなっているのか。

 今、いずれにしても何とか万全を尽くしてと言うんですけれども、実は、この国では、御存じのとおり、サッカーのワールドカップに巨額の予算が使われているということで反対のデモが起きる、開催そのものに反対しているんじゃなくて、これだけのお金を使うのであれば、例えば医療や社会保障にもっと使うべきではないかという主張をされて、ここで今デモが起きているということは報道されているわけです。

 中には、コートジボワール戦が行われるペルナンブコ州のレシフェというところでは、十三日から三日間、五〇%の賃上げを求めて警察官がストを実施した。治安維持に当たるはずの警察官がストライキをやるということで、警察官にスト権が与えられているのには驚くんですが、それはよそのお国のことですから、我々がいかんともしがたいわけでありますが。

 サルバドルというところでも、十五日から警察のストライキがあって、この影響でストライキ期間中に治安が悪化して、ストは十七日に終結したそうですが、この間に略奪だとか殺人事件が多発して、少なくとも三十九件の殺人事件が起きて、これは誤解のないように申し上げますが、日本が戦うところではない都市の話ですが、収束のために政府が軍の部隊五千人を派遣する事態に発展した。とても国際大会があと一カ月後に開かれるという状況において起こるようなことではないと思うんですけれども、治安を取り締まるはずの警察がストライキをやるような状況だ。

 いわゆる一般的な市民によるストライキというものがあって、安全な大会の運営というものが大丈夫なんだろうかと危ぶむ指摘もあるわけでして、その中に日本人が、今お話があったように、多ければ七千人、少なくとも四千人が行くと見込まれているわけであります。

 しかも、例えば熱狂的な相手方サポーターと日本から行く方々が、どのような試合結果になるかは神のみぞ知るですけれども、結果によって、非常に高揚したサポーターの熱狂というものがあって、その中で、しかも犯罪が多発する、あるいは日本に比べれば格段に治安状況が悪い中で、どのような体制で本当に日本として邦人保護に万全を尽くしているのか。

 それを具体的にもうちょっと、先ほどお話がありましたけれども、何人体制で臨むとか、例えばスタジアムの中にも邦人に対応できるようなセクションを設けるのかどうか、そういうことについてはどう本当に万全を期しているのか、もう少し詳しく御答弁をいただきたいと思います。

三好政府参考人 議員御指摘のとおり、世界から注目の高まるワールドカップが近づくにつれまして、今後も同種のストライキあるいはデモが断続的に発生するという見方もございます。

 外務省といたしましては、今後も情報収集に努めて、邦人の安全確保に万全を期する所存でございます。

 具体的には、ブラジルには大使館、それから四つの総領事館、二つの出張駐在官事務所がございます。この中で、在外公館のないところの開催地につきましては、十数名の体制を組みまして、臨時事務所を試合会場近くに設ける予定にいたしております。その臨時事務所におきましては、邦人保護業務、領事事務、あるいは議員御指摘のスタジアム内の邦人対応といったことについても、関連情報収集等、業務を行ってまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 ですから、何人ぐらいの体制で臨むんですかと言っているんです。

三好政府参考人 各所十数名ずつと思っております。

 それでも人不足という御指摘はあるかと思いますが、先ほど申し上げましたように、ブラジルには大きな日系人社会がございますので、日系人会とか邦人団体とも緊密に連携してまいりたいと思っております。

渡辺(周)委員 緊密に連携というのは、何かお手伝いをしていただくということですか。

三好政府参考人 そういうことでございます。

渡辺(周)委員 具体的にどうやって現地にいる方々の御協力を得られるのか、どういう効果が見られるのか。

 それは、私どもも、南米の日系人社会の方々のお話を聞く機会もありました。これはやはり日本にとっての財産であるということをおっしゃる方々もいるんですね。たしか国会の中でもそういう議論があったように聞いておりますが、そうした日系人社会の方々に、やはり日本から来る方々の、大使館、領事館それから臨時出張所の人員だけでは対応できない部分について補ってもらいたいということで、今、具体的にどういうふうな段取りをしてやるのか、その点についてもう一回、再度明確に答弁をいただいて、行かれる方々の心のつかえが少しでもとれるような形でしっかりとお答えをいただきたいと思います。

三好政府参考人 議員御指摘のとおり、日系人社会は私どもにとっても宝だと思っております。日本語ができる方もかなりおられますので、そういった方々は、場合によっては通訳、あるいは交通の要衝等でいろいろな案内をしていただく、そういったことを考えております。

渡辺(周)委員 何で私がここまで言うかというと、外務省の海外安全ホームページというのに、読むと結構怖くなるような、行きたくなくなるようなことがいっぱい書いてあるんですね。「ブラジルは世界的に見ても非常に高い頻度で一般犯罪が発生して」います、「麻薬に絡む組織的な犯罪も多発しています。これらの犯罪の手口は凶悪で、多くの犯行にけん銃等の銃器が使用され、抵抗すると危害を加えられるおそれがあります。」それから、強盗だとか短時間誘拐だとか、ここまで読むと、とても怖くなるような、海外安全ホームページにいろいろ書いてあるんですよ。

 これは、たくさんの若者も行くでしょう。この大会を楽しみにして行かれる中で、やはりここまで書く以上は、日本政府としてできる限りの万全な対応を、まさに大使館挙げて、日本国政府挙げて、あるいは日系人社会の方々と対応しています、私はそれぐらい書いた方がいいと思います。注意喚起ばかり書いてあって、何かとにかく行くなと言わんばかりの文言なんです。

 その辺、どうですか。やはり情報を提供するにしても、そうした形で、もうちょっと行く方々に少しは安心を与えられるような物の書き方をして、私はその対応も当然すべきだと思いますけれども、いかがですか。

三好政府参考人 海外邦人安全ホームページをごらんいただいて、非常にありがたいと思っております。

 御指摘のとおり、日本人に注意を喚起するという意味でかなり厳しい書きぶりになっている点もあると思いますので、ちょっと見直したいと思います。

渡辺(周)委員 いや、つけ加えてもいいんですよ。別に、事実は事実として、書き直せとは言いません、事実をたくさん書いてあって。ただ、そのためにも、渡航される日本人のために、我々はこんな体制で、例えば、今答弁にあったような、大使館挙げて、あるいは日系人社会と協力をして、会場内や会場外においても対応できるようにして、例えば日の丸のついた腕章をしているとかステッカーを張っているとか、こういうところにあって、何かあれば御相談くださいとか、もうちょっと丁寧な書きぶりをしていただきたいなというふうに思います。

 その点について、どうですか。治安の悪いところに七千名も邦人が行くということをある程度予見しているわけですから、やはりしっかりとしたサポート体制をとるということについて、大臣の御決意を聞かせていただければと思います。

岸田国務大臣 まず、サッカーのワールドカップは世界じゅうから注目を集めている行事であり、我が国からも多くの日本人が現地に行くということ、このことにつきまして、政府としましても、しっかり認識した上で対応を考えていかなければならないと思っています。

 そして、まず、ホームページにおいての書きぶりについて御指摘をいただきました。

 まず、現地に行かれる方は、みずからがみずからの安全を守っていただくよう最大限努力をしていただく、これは基本でありますので、現地の情報につきましては冷静に、しっかりと現実を伝える、こういった点は重要だと存じます。ですから、ブラジルにおける状況につきましては冷静にホームページ等で情報提供はしなければならないと思っています。

 それに加えて、政府としまして、邦人あるいは邦人企業の安全を守るということ、これは大変重要な役割であります。政府として、どのような役割を果たしていくべきなのか、より具体的に、わかりやすく説明し、情報提供をしていく、こういった点もあわせて大事だと存じます。

 この両方をしっかり念頭に、政府としましての情報提供のあり方については引き続き不断の検討を続けていきたいと考えます。

渡辺(周)委員 例えば、渡航を企画されている旅行会社もあるでしょうし、当然、向こうの受け入れ側の代理店等もあるでしょうから、ぜひ綿密に連携して、日本人がよもやの被害に遭うことのないように、万全を期していただきたいと思います。

 何より、四年前には、やはりここも治安が悪いと言われていた南アフリカでワールドカップが開かれた際の経験や対応が何かの形で蓄積されていると私は思いますので、ぜひ邦人保護には全力を挙げていただきたいということをお願いしたいと思います。

 時間がなくなりましたので、ちょっと航空協定のことにつきまして急ぎ質問をしたいと思います。

 今回のミャンマーとの航空協定の中において、ミャンマーという国は、御案内のとおり、今大変急速に発展をしている国でございます。だからこそ、あわせて投資協定も、経済界の強い後押し、あるいは専門家によれば、この国は半世紀にもわたって実質的に国を閉ざしてきた、そういう国に対して、今までは期待先行ということもあったけれども、今の政権が任期の後半になって、どういう形でインフラ整備を進め、投資を含めて拡大をして、二〇一五年のASEAN経済共同体の実現にミャンマーという国がしっかりと組み込まれていくかということにおいての、今、日本としてのさまざまな関心が高まり、また、官民挙げてミャンマーに対しての強い関心が持たれているわけであります。

 その中で、この航空協定についてなんですけれども、こうした国々の、一般論で結構でございますが、日本とミャンマーの人件費を比較した場合、大変大きな差がある、コストの軽減ということになった場合には、日本の航空会社というのは、これからのアジアの競争力というものがどうなっていくのだろうかということも思いますが、反面で、パイロットや乗員、整備員というものの質ということ、それから安全性にそれが影響を与えることはあるのかないのか。

 何よりも、世界が航空自由化に向かう中で、どうやってこうした国々の安全を先進国並みに担保していけるのかということについて、今、現状をどのように御認識していらっしゃるかということを伺いたいと思います。

甲斐政府参考人 お答えいたします。

 今般の指定航空企業数の制限の撤廃ということにつきましては、日・ミャンマー間のニーズの高まりで、複数の航空企業の乗り入れの需要が高まったということがありまして、あわせてオープンスカイといったものも含めて、合意しております。

 これによりまして、航空会社の経営判断に基づく競争の促進が図られまして、運賃、サービスなどの面で利用者利便の向上が図られると考えております。

 まず、先生御指摘の、我が国航空会社の国際競争力という点につきましては、我が国の航空会社が有します優位性、運航定時性、安全性といったもの、あるいは質の高い旅客サービスといったものを利用しながら、厳しい国際競争の中で諸外国の航空企業と伍していけるだけのコスト構造を身につけることが課題であると考えております。

 我が国におきましては、LCCの参入が進みまして、厳しい市場で切磋琢磨しているところでございますけれども、国土交通省といたしましては、航空機燃料税を三割ほど軽減する措置をことしから三年ほど延長させていただきましたし、また、我が国航空会社が拠点を置く首都圏空港の発着枠拡大といったことなどを検討することを通じまして、我が国航空会社の国際競争力の強化を促してまいりたいと思っております。

 また、外国の航空会社が我が国に乗り入れる場合には、各企業ごとに、我が国の航空法に基づきまして、運航する路線、主要航空機、整備の施設、運航管理施設等を審査いたしまして、当該航空会社において運航の安全性が確保されているといったことを確認した上で事業許可を行います。

 また、企業の乗り入れ後も、我が国の空港におきまして、航空機に対します立入検査、ランプインスペクションと呼んでおりますが、これを実施いたしまして、各航空会社の運航の安全の確保を継続的に監視することといたしております。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 相手国の安全基準の判別について、我が国としてはどういうふうにこれを担保しているのかということをもう一回伺いたいと思います。

 先日、某ローコストキャリアの会社が、パイロットのやりくりがつかないということで運休を発表されましたけれども、そんなことがあるのかと。あるいは、大勢の外国人のパイロットが応募してきているという中で、我々が持っている安全性への責任とか、これは、積み重ねてきたものと、また、それをどこまで共有していただいているかどうかということについて非常に不安があったりしたわけですけれども、こういう点について、ミャンマーに限らずですけれども、今後のこうした取り組みについてどうお考えか、最後にそれを伺いたいと思います。

甲斐政府参考人 お答えいたします。

 ミャンマーに限りませず、外国航空会社が日本に乗り入れてくる場合には、その安全監督といったものは、国際基準上、第一義的には当該航空会社の所属国の航空当局の責任になりますけれども、私どもといたしましては、乗り入れ時における安全関係の審査といったものを通しまして、今先生がおっしゃった、乗員の体制でありますとか運航の継続性といった点について審査をさせていただきたいと思っております。

渡辺(周)委員 終わります。

鈴木委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 先ほどの渡辺委員の御指摘、大変興味深くお聞きしておりました。ホームページの書き方は難しいと思います。

 ただ、自分自身の経験で、非常にお恥ずかしながら、そんなに前のことじゃないんですけれども、初めてアメリカを訪れたときは、ちょうど銃の乱射事件とかも大きく報道されたり、あるいは銃規制に反対する声が強いという報道などを見て、そこらじゅうにいる人はみんな銃を持っているんじゃないかという強迫観念のもとに訪れたことを思い出します。

 翻って、大変テロに苦しんでいる国とかそういう地域であっても、そこには九九・九九%日常の平穏な暮らしがあり、そこでとうとい暮らしが営まれているということもあわせて、これは難しいと思いますが、伝えていく必要があるのかなということを感じながらお聞きしておりました。ちょっと冒頭、触れさせていただきたいと思います。

 投資協定についてお聞きします。

 上田委員の御指摘にもございましたが、日本国の取り組みは、これだけ貿易立国、また国内の総人口が減少していく中にあって、非常に取り組みがおくれているというふうに感じます。

 先ほど、多国間条約にこだわった、あるいは自由化協定にこだわったというような御答弁もございましたが、二国間で、ドイツが百三十六国、中国が百二十八国、スイスが百十八国、イギリスが百四国、フランス百二国、韓国九十国に比べますと、日本は三十三国、いかにも立ちおくれ、二周、三周おくれだと思います。

 大臣、これまでの戦略が間違っていたんですか、今後、どうされるんですか。

岸田国務大臣 投資協定の締結については、今日までの我が国の取り組み、先ほども答弁の中で少し御紹介をさせていただいたとおりであります。アジアの国々を中心にこれまで三十本、我が国としましては協定を締結しております。他国との比較において数が少ない、これはもう御指摘のとおりだと思っています。

 その理由については、先ほども答弁の中にありましたように、欧米諸国との歴史的な違いもあると存じます。また、ただいま中国の御指摘もありました。中国との比較を考えますと、先進国である我が国は、従来、日本企業の進出支援、こういった観点から、開発途上国と重点的に投資協定を締結してきた。

 一方、中国、さらには韓国も当てはまるかと思いますが、こういった国々は、我が国に比べて開発途上の段階が長かったということから、自国への外資誘致の観点から、あるいは先進国の求めに応じて、早い時期から先進国との投資協定も締結してきた、こういった事情の違いもあります。こういったことから、数の上において差がついているというのが現状であります。

 しかし、今日までの歩みはともかくとして、これからが重要だと認識をしております。これから未来に向けては、我が国としまして、海外投資による新興国の成長を取り込む、あわせて、日本市場に外国投資を呼び込む、こういった観点を重視しまして、ぜひ積極的に締結を進めていきたいと考えております。

小川委員 大臣、これまではともかくとしてというお言葉に、やはり日本外交の弱さがあるような気がしますよね。

 今の御答弁の中でも、中国、韓国は早くから途上国に焦点を当ててきた。一方、日本は先進国サロンの一角でしたから、何となくそこに甘んじて、戦略性なり貪欲さなりを欠いてきた、あるいは将来に対する展望を甘く見てきたということを、むしろ総括し、反省すべきじゃありませんか。そういう緊張感といいますか切迫感が感じられない答弁だったというふうに感じます。その点、指摘をしたいと思います。

 関連して、きょうのサウジアラビアとの協定が一つの内容でありますが、日本にとっては原油の輸入先としては最大の相手国であり、いただいた資料によりますと、これは一二年現在ですが、既に九十三社ですか、在留邦人も七百八十人、石油を初めとした多方面の資源関連に投資が進んでいるにもかかわらず、中東でいえば、隣国エジプトなんかとの間では七〇年代に既に投資協定が締結されているというふうに言われておりますが、なぜこの二〇一四年現在までかかったのか。しかも、交渉は二〇〇〇年にスタートしたにもかかわらず、十四年の歳月をかけてようやくここにたどり着いた。

 しかも、もう少し申し上げますと、日本が現在進めようとしている、参入後の保護に加えて、参入段階、投資段階、投資財産の形成段階で保護をするという自由化型の協定にも至れなかった。資料によりますと、最近結んだ二十五カ国のうち、二十カ国は自由化型だ、参入前の権利をも保護しようとするものであったにもかかわらず、サウジとの間ではそれにも至れなかった。

 この辺の背景、なぜこんなに遅い時期になったのか、なぜこんなに交渉から時間がかかったのか、そして、日本が目指すべき自由化型の投資協定を結ぶことがなぜできなかったのか、その辺について触れていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほどの答弁で、投資協定の締結について、今日までの歩みについて反省が足りないのではないかという御指摘がありました。

 御指摘はしっかり受けとめたいとは思いますが、申し上げたかったのは、要は、時代は大きく変化している、絶えず変化するスピードについていくべく我が国の対応もしっかり考えていかなければいけない、こういったことを申し上げた次第であります。その時々において最善を尽くすべく努力をしていく、こういった姿勢が重要だと考えます。

 その上で、ただいまの質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、時間がかかった、おくれた、このことについての理由でありますが、サウジアラビアとの交渉、一九九七年において交渉開始を打診いたしました。その後、交渉会合を開催したわけですが、結果としまして、両国の考えが余りに隔たりが大きかったため、交渉を一旦中止するということになりました。この中止が六年間にも及ぶという時期がありました。

 そして、二〇〇六年に交渉を再開するということになったわけですが、当初、この協定の作成に当たっては、自由化型、これを作成する方向で交渉を進めたわけでありますが、この自由化型の要素を含めるということについてサウジアラビア側の国内調整が難航したということがありました。このため、さらに時間を要するということになり、そして二〇〇八年に実質合意が果たされたわけですが、署名に向けたサウジアラビア側の国内手続の過程で改めて両国間の文言調整が必要になり、そこでまた時間がかかるというような過程もありました。

 そういったことから、一九九七年から考えますと十七年間を要したということでありました。

 そして、結果として、自由化型でなくして保護型の形態をとった、このことについて御質問がありました。

 今申し上げましたように、当初は自由化型を作成するべく交渉を進めたわけでありますが、サウジアラビアに自由化型の投資協定を締結した経験が当時なかった、こういった事情もあり、サウジアラビア側の国内調整がつかなかった、これが現実でありました。

 我が国としましては自由化型を追求したわけではありますが、近年、我が国企業のサウジアラビア進出は大変加速しております、やはりこういった企業に対して早期に適切な法的保護が必要だという現実があります、こういった現実もありますので、結果としまして、まずは保護型の投資協定を締結する、こういったことで、少しでも日本企業を保護するべくしっかりとした体制をつくらなければいけない、こういった判断に基づいて、今回、保護型の協定締結を目指したというのが実情であります。

小川委員 ありがとうございます。

 大臣、重ねてで恐縮ですが、時代は変化している、時々最善を尽くす、それはそのとおりだと思います。しかし、先ほどの御答弁で、中国と韓国は早くから途上国を視野に入れていたというその戦略性からしますと、時代を追いかけるというよりも、先を走らなければならないんじゃないですかというのが私の側の主張であり、そこは、先進国であり大国であることにある意味甘んじていられたのが今までの日本、しかし、これからの日本はそうはいられないという危機感がベースにあるべきだという主張であります。そのこともぜひ酌んでいただきたいと思います。

 その上で、サウジ、やはり違和感が強いです。先ほど申し上げたように、これだけ貿易の上では依存度の高い相手であり、その関係上、日系企業、日本人もたくさんいるにもかかわらず、この二十一世紀初頭、二〇一四年まで待たなければならなかったということに関しては極めて違和感が強いですし、なおかつ、協定の内容そのものに、今おっしゃったような、日本側が望む形には残念ながらならなかったという点において課題が多いということは、もちろんこれは反対をするものではありませんが、きょう確認をしておきたいと思います。

 関連して、もう一本はミャンマーであります。

 恐らく、東南アジアの中でもこれは最後のフロンティアじゃないですかね。航空協定も同時に改定されるようでありますが、いただいた資料ですと、日本からミャンマーに訪れた人は、〇八年が一万人、現在五万人、大変急上昇しております。この辺から見ましても、一刻も早く急ぐべき相手方の一国なんでしょう。そういう意味では、交渉からわずか一年で妥結に至るということで、先ほどのサウジとの例からいえば非常に先進的だと思います。うまくいっているということなんだろうと思います。

 二点お伺いします。

 そうはいっても、軍事政権あるいはアウン・サン・スー・チーさんの問題を含めて、非常に政治的に閉鎖性が強いという印象をいまだ拭えません。総選挙を経て民主化の道をたどっているというふうにお聞きしていますが、そういう意味で、政治的な安定性、また政治的に開かれているのかどうか、あるいは国際的なスタンダード、人権行政を含めて、こういった点において現在のミャンマーの政治情勢をどう評価するか、これが一点。

 それからもう一つは、こちらは自由化型の投資協定を結んだというふうにお聞きしておりますが、極めて重要な、外国人の投資に際しては全てがライセンス制度であるという留保が残ったままになっている。これは、事実上、大変重大な参入規制であり、自由化型だという名目を極めてないがしろにしかねない、実質の伴わない、中身の担保されないものになる可能性があると思います。

 その二点、ちょっと論じていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、ミャンマーの実情でありますが、ミャンマーにおきましては、二〇一一年の民政移管以降、テイン・セイン大統領のもと、民主化、法の支配の強化、国民和解あるいは経済改革、こうした諸改革が進められております。政治面でも、例えば、二〇一一年以降、政治犯の釈放を随時行っているほか、海外在住の民主化活動家の帰国の呼びかけ、あるいは事前検閲制度の廃止等の措置を実施してきております。

 こうしたミャンマーの改革努力は、我が国としましてもしっかりと支援をしていかなければならないと認識をしております。

 そして、今回、日・ミャンマー投資協定の中身について御質問がありました。

 外資に対する営業ライセンス制度を留保している、この点についてですが、まず、ミャンマーの会社法第二十七条A第一項という条項の中に、いかなる外国企業もミャンマー連邦政府の営業許可を必要とする、こういった規定があります。ミャンマーの国内法にこういった規定があるわけですが、この規定をそのままの形で投資協定の留保表に記載するということは、自由化型の協定の保障する参入の自由化に大きな障害になる、こういったおそれがあります。

 そこで、この日・ミャンマー投資協定の留保表において、ミャンマーの会社法の規定の運用の実態を踏まえて、営業許可申請後、二十四時間以内に許可が付与される点、これを明記する、この点を確保した次第であります。

 これによって、営業の許認可が恣意的に遅延されないこと、このことを法的拘束力を持つ形で担保することが実現できたというのがこの協定の意味合いであります。

小川委員 ありがとうございます。

 私どもは現在お尋ねをする側の立場ですので、心配な点あるいは至らなかったと思われる点を申し上げる立場であります。実際に交渉の場に臨んでおられる方々には、ちょっと私どもからは想像を上回る御苦労なり、御苦心なり、あるいは知恵の働かせどころなりというものがあろうと思いますので、そういうことに対しては十分敬意を払いたいと思います。

 そういう意味では、今おっしゃったように、いろいろな知恵を相手国ごとに働かせて何とか協定の締結にこぎつけていくという努力はこれからも奨励されるべきことなんでしょう。ただし、まだ三十カ国余りという大変おくれた事態、状況にあるということを前提にすれば、どの国とどういう協定を結んだかは、今後拡大するに当たって、次なる交渉国から足元を見られかねないということもまたあるわけでありまして、そういったことも含めて頭に置きながら、引き続き、十分いろいろな角度から鋭意努力を進めていただきたいと思います。

 これはもう指摘にとどめますが、もう一国のモザンビークとの間では、これはいただいた資料を見ますと、先ほどの話に戻りますが、早くから途上国を射程に置いていた中国、韓国との関係でいえば、日本は、アフリカ諸国はまだ真っ白ですよね。

 恐らく、東南アジアだってそんなに何年も成長の時代は続かないと思いますよ。そして、地球上最後の成長のチャンスはアフリカということに恐らくなるんでしょう。

 であれば、この真っ白なアフリカ諸国、今回モザンビーク一国でありますが、大変貪欲な姿勢で交渉を進めていく必要があると思います。その点、時間の関係で指摘にとどめます。

 最後に、ちょっと大臣に胸をおかりしてお聞きしたいと思います。

 先ほど鈴木委員が、商船三井の船舶の中国からの差し押さえに関して御指摘になられました。日中韓の投資協定が最近になって発効されたというふうにお聞きしています。御存じのとおり、日中、日韓との間には、戦前戦中の強制徴用、強制雇用の問題をめぐって訴訟に発展しています。

 私の理解では、人道的には私もいろいろ思うところがあります、この方々の抱えておられる無念なお気持ちなりがもし晴らせるのであれば、何とか官民挙げてこれはその方向に協力できたらという人道的な思いは私にもあります。

 しかし一方で、国際法的観点からいえば、日韓基本条約に伴う請求権協定、それから日中平和友好条約に伴う両国間の合意を前提にすれば、少なくとも法的には個々の損害賠償請求権はお互い放棄し、なかったことになるという取り扱いを前提に日本企業は当該相手国との間で企業活動をしているということになるんじゃないかと思います。

 それからいいますと、後からはしごを外される形でこういう法的な損害、法的請求に直面するということは極めて遺憾な重大な事態であり、私が申し上げたいのは、投資協定の中身にもよると思いますが、国際仲裁、ISD条項を発動して、きちんとした仲裁を求めていく、あるいはその活路を研究するという日本政府の姿勢が中国、韓国に対する牽制効果を持つのではないかという気がいたしますが、一連の私の提案、問題意識に対してどうお考えになるのか、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 日中、日韓の関係ですが、まず、中国との関係におきましては、日中間の請求権の問題、これは、日中共同声明発出後、存在しないというのが我が国の立場であり、中国側も日中共同声明を遵守するという立場、これは変わりがないと承知をしております。

 強制連行、強制労働に関する訴えですが、類似の事案を誘発することにもなりかねないと影響を深刻に懸念しておりますが、引き続き関心を持って注視をしていかなければならないと思っています。

 また、日韓の間ですが、財産、請求権の問題、これは日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みであるというのが我が国の立場であり、そして、韓国政府も、我が国同様、この日韓請求権・経済協力協定で解決済みという立場、これは今までも表明しておられました。

 ですから、日韓の間にある旧民間人徴用工問題、これはあくまでも韓国政府自身が解決すべき問題であると考える、これが我が国の基本的な立場であります。

 その上で、投資協定との関係の御指摘がありました。中国と韓国とは、それぞれ、日中投資協定、そして日韓投資協定を既に締結しておりますし、今月十七日には日中韓投資協定が発効しております。

 中韓両国は、これらの協定に基づいて、我が国投資家の投資財産に対して十分な保護、保障及び公正、衡平な待遇を与える、こうした義務を負っていると考えております。

 我が国としましては、こうした協定も踏まえながら、中韓両国に対して、我が国の投資家の投資財産が不当に侵害されることがないように、適切に対応していきたいと考えております。

小川委員 歴史問題、歴史認識を含めて、私は衝突を回避すべきは回避すべきだと思います。しかし、法的にきちんとすり合わすべきはすり合わすべきで、現政権には、そこのめり張りに、力点の置き方に若干アンバランスがあるんじゃないか、私はそういう感想を持ちます。

 加えて、きょうとにかく申し上げたかったのは、もはや日本は先進国の大国という地位、位置に甘んじていられる時代は終わったという認識がこれら全ての始まりではないかと思います。そのことを重ねて指摘させていただき、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 まず初めに、投資協定が三つかかっていますけれども、ミャンマーの投資協定についてお伺いをいたします。

 昨年、外務委員会の海外調査で、私も調査班に入れていただいて、前委員長の河井委員、原田理事と一緒に南アジアを回って、ミャンマーにも行ってまいりました。そこで、いろいろ現地の状況を大使館を通じて、また、ミャンマーの要人との交流もさせていただきました。やはり発展している国でありますし、非常に親日的な国で、限りない可能性を感じたところでもありますけれども、首都が最大の都市ヤンゴンからネピドーに移っていて、でも、各国大使館はネピドーに行かずにヤンゴンにとどまっている、日本大使館もそうですけれども。ミャンマー政府はぜひ首都に移してくれと言ってはいるらしいんですが、行きましたけれども、ほとんど何もないような状況ですし、非常に難しいなと思ったんです。

 いろいろと状況を把握してまいりましたが、一つには、来年、大統領選挙がミャンマーにおいて行われるということで、各国とも、積極的に投資をしながらも、経済交流しながらも、やはり来年の大統領選挙の様子をうかがっているというようなスタンスも少し見受けられました。

 私、行ったときに、たまたま知り合いの他の国の役人が行っていたものですから、それはASEANの国でありますけれども、そのミャンマーではない他のASEANの国の役人とちょっと夜お会いして話し合いをさせてもらうと、やはりその国も大統領選挙の行方を占っているというようなことを言っておりました。

 こうした背景がありながら、また一方では、工業団地なんかも、最初、国際入札で行われる予定が、日本に対する信頼、技術の高さということで、行わずに、近年、ミャンマー政府も日本企業のJVと随契で契約を取り交わして、なおかつ、その周辺整備は日本のODAで行われるんですけれども、行ってみて、あれっと思ったのは、日本はほかの先進国におくれているのかなと思っていたんです、ミャンマーに対する投資が。しかし、逆に、基礎的なインフラ整備は日本にやらせておいて、その上前の民民の部分を活発化させようというのがほかの先進国のスタンスだなという状況を把握できたというのが実際のところであります。

 さはさりながら、同じアジアの国、また、日本に対してもとりわけ心証がいい国でもありますので、また、ミャンマーの民主化を支援するという意味においても、ミャンマーの国の経済発展が政情安定につながるということは言うまでもないところではあります。

 さはさりながら、まだまだ不安定なところはありますし、民間の投資格付会社の近年の状況でいえば、十点満点でいえばミャンマーはいまだ三点台にとどまっているというのもまた一方の現状であります。

 こうしたカントリーリスクを、来年の選挙も踏まえて、しかしながら、積極的に経済交流をしなければいけないという状況下、また、各国との状況も踏まえた上で、今後の日本とミャンマーとの経済発展についての対応をお伺いいたします。

三ッ矢副大臣 私も、実は二年ほど前にミャンマーを訪ねたことがございます。委員から御指摘のあったさまざまな点を私も自分で感じてきたところでございますが、政情が安定化すれば経済発展に結びつく、逆に、経済発展が進めばまた政情も安定化していくという側面も、両方の面があろうかと思っております。

 御承知のとおり、ミャンマーでは、二〇一一年の民政移管以降、テイン・セイン大統領のもと、民主化、法の支配の強化、あるいは国民和解、経済改革といった諸改革が進められております。そういう意味で、今後、この国は、非常に有望な生産拠点、市場として期待されているところでございます。

 一方で、政情のことについてちょっと申し上げますと、委員よく御承知だと思いますが、少数民族の問題がまだ全面的には解決しておりません。十六民族あって、十四までは和解にこぎつけた。あとまだ二つ残っているんですね。そういうこともございますし、大統領選挙等を通じて今後この国がどうなっていくのか、我々もしっかり見きわめたいというふうに思っております。

 ちょっとこの投資協定の関係で申し上げますと、一般的な規定に加えまして、ミャンマーに対しては、実は余りほかに例を見ないような項目が一つ入っておりまして、これは、行政手続の迅速化、明確化及び透明性の向上に努める義務という一項目が入っております。もちろんインフラの整備も大事ではありますけれども、やはりミャンマー国内の法整備も非常に重要なことだと思っておりまして、その面についても拍車をかけてもらうように、この協定を通じて我々としても働きかけを強めていきたいというふうに考えておりまして、その結果、投資環境の透明性ですとか、あるいは法的安定性、予見可能性が向上して、我が国からの投資がさらに保護、促進されることになるであろうと強く期待しておるところであります。

小熊委員 まさに、今副大臣の答弁にあったことを期待したわけです。同じ価値観、同じ制度、法の支配という意味では、まさにミャンマー国内の制度整備、法整備が必要であるというふうに思いますし、昨年外務委員会で調査に行ったとき、インドにも行ったんですけれども、インドは地方分権も強い国ですから、州によって法律が違って、それが日本企業が非常に難儀している点でもあったわけでありますけれども、そういう意味では、やはり投資環境また経済交流という意味では、相手の国の国内法、経済関連法というものの整備に日本政府がしっかり関与していくという意味では、非常に重要なことだというふうに思います。

 ミャンマーの現職大統領は、残念ながら健康上の理由で再選は目指さないということにもなって、必ず新しい大統領になるということでありますので、こうした政情を見きわめながら、また、投資促進のためにいろいろな保険なんかも日本が充実をさせているというのも承知をしているところでありますので、日本の企業、また民間交流、経済交流がしっかりと発展できるように、ソフト、ハード両面で日本政府としてしっかりお支えをしていくということをぜひ御期待申し上げます。

 今回のこの協定を充実させていくということがそれに十分な役割を果たしていけるだろうと私も期待しているところでありますので、今後の十分な対応、また、民主化に向かっている、また国民も望んでいる、軍関係者が政治家になっているとはいえ、そういう方々とも交流してまいりましたけれども、かつて軍人であったとしても、やはり民主化は必要なんだということを我々も生の声で聞いておりますので、ぜひ、民主化促進といった側面を支えていく意味でも、ミャンマーの経済が発展していく、そして日本との経済交流が活発になって日本の国益にも資するという意味では、しっかりとこれを進めていくことを御期待申し上げて、次の質問に移ります。

 ナイジェリアの集団誘拐事件についてですが、アフリカにおいてナイジェリアは人口が最大の国でもありますし、今後、日本は残念ながら人口が縮小していく国ですけれども、世界的にはふえていく中で、ナイジェリアも世界有数の人口大国になるという推計も出ているところでありますし、また、いろいろな資源の豊富な国でもありますので、二十一世紀はアフリカ全体が重要な地域になっていっているわけでありますけれども、中でもナイジェリアというのはとりわけ重要な国の一つであります。

 そうした中において、こうした許しがたい事件が起きたということは、これは国際的にも非難を浴びているわけでありますし、この解決に向けては、日本政府も国際社会の中で連携をとって事件解決に向けて支援をしていくべきだというふうに私は考えるところであります。

 そうしたさなか、昨年の十一月二十九日、私、この委員会で、学校施設の軍事利用をしちゃいけないんだ、そのガイドラインがことしの半ばにつくり上げられるときに日本がリーダーシップをとってやるべきだと。昨年の総理の国連演説でも、そうした部分、そういう紛争の下での女性の性的暴力に関しては、憤激という大変強い表現でそれを訴えたという意味は非常に大きかったわけでありますし、言葉を発したのであれば、これを具体的に行動に移すためにも、このガイドライン、しっかり日本がリーダーシップをとるべきだということで、あのときは木原政務官が非常に前向きな答弁をしていただいたということで、よかったなというふうに思っていたところでありますけれども、そうしたさなかに、今、このガイドラインをまさにつくり上げているさなかに起きた非常にゆゆしき事件であります。

 こうしたことが起きないためにも、こういう学校の軍事利用、また、生徒たちがこういう紛争やテロの犠牲者にならないようにということが求められていたわけでありますけれども、こうした事件への取り組みとして、この学校の軍事目的使用に関するガイドラインにしっかり取り組むという昨年の答弁をいただいています。

 再度、これまでの経過と、また、この成案を得ていくに当たってのこれからの取り組みについて、まずお伺いをいたします。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十一月の当委員会におけます委員からの御指摘に対する木原政務官それから岸田外務大臣からの答弁を踏まえまして、私どもも、このガイドラインの基本的な考え方は評価されるべきであるという立場に立って取り組んでまいっております。具体的には、ことし四月二日にスイス・ジュネーブにおきまして、このガイドラインはGCPEAと言われる人権のNGOと国際機関が集まってつくっている連合体がリードしておられますが、GCPEA主催の会合が行われまして、我が国もジュネーブ代表部の代表部員を参加させました。

 この会議におきましては、ガイドラインの詳細についての議論はまだ行われなかったというふうに承知しておりますが、この秋にも再び同様の会合が開催されるものと承知しておりまして、関係国また関係省庁が連携して、きちんと我が国としての立場を固めてまいりたい、また貢献してまいりたいと考えております。

小熊委員 このガイドライン、実際、言葉だけではだめなのであって、このガイドラインをつくることによって、こうしたナイジェリアの集団誘拐事件をどのように解決に結びつけられるのか、また、防止に努められるのかということを意識してこのガイドラインには取り組んでおられますか。この具体的なケースを見てですね。

山田政府参考人 このガイドラインにつきましては、まだ内容が確定されたわけではございませんが、基本的な対象は、武力紛争の当事者、武装部隊ということになっております。この場合、まだ確定した解釈を承知しているわけではございませんが、基本的には、要するに国際的な武力紛争でございますので、各国の軍隊による使用ということを念頭に置いてつくったガイドラインではないかというふうに考えております。

 今回のケースがこれに該当するかどうかについては精査が必要でございますが、いずれにしても、学校というものが戦争に巻き込まれてはいけないという趣旨、こういう基本的考え方については評価し得るものだと思っておりますので、しっかりと参画してまいりたいと考えております。

小熊委員 今、軍隊ということを意識していると言われましたけれども、私の十一月の質疑では、政府軍であれ反政府軍であれ、テロリストであれ、これを防止するためのガイドラインでなきゃいけないということを指摘して、それを受けて木原政務官に答弁してもらったんです。正式な軍隊という後戻りの議論ではなくて、テロリストというところまで対象に入れて対応してくださいと言って、前向きな答弁をいただいているんですよ。バックしないでください。

 テロリストといったことも入れなければ、こういう政情不安定なところで起きる事案ですよ、軍隊同士の、国同士の戦いの中で学校が軍事施設として利用されることを問題視したのではなくて、暴力的な行為によって学校がそういうのに利用されて、生徒たち、とりわけ女子生徒が不利益をこうむるから、こういうガイドラインをつくって対処しなきゃいけないでしょうという指摘で、もう一回、木原政務官に答弁に立ってもらってもいいんだけれども、それも包含した形で取り組むと私は受けたと思うんですが、それを絞ってもらっちゃ困るんですよ。そうしたら、このナイジェリアのこともガイドラインにはまりませんねとなっちゃうし。違いますよね。入れなきゃいけないんですよ、そういうことも含めて。そうじゃないと、現実的な対応じゃないですよ。そんなのは絵に描いた餅で終わりますから。

 もう一度答弁……。

山田政府参考人 現在、手元にありますテキスト、ガイドラインの案に基づいて御説明させていただきましたので、御指摘の御趣旨も体しながら、できるだけ実効的なガイドラインができるように、私どもとしてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

小熊委員 ここはやはり政治のリーダーシップが必要ですから、石原政務官、木原政務官に負けない答弁をちょっと期待したいんです。

 これは国際社会でつくるガイドラインですから、ほかの国とのしっかりとした連携も必要なんですが、日本がリーダーシップを発揮してくださいと。やっていくんだと言われましたが、再度、石原政務官。

 そうですよね、日本政府がしっかり各国と連携しながらも、総理が国連でこの点について指摘して堂々と演説しているわけですから、すばらしい演説をしているわけですから、であれば、日本はとりわけリーダーシップを発揮してやっていくべきだということで、再度確認をしたいんですが、木原さんにかわりますか、どうですか。石原政務官、お願いします。

石原大臣政務官 木原政務官が、「よりよい内容になるように、しっかりと我が国として前向きに関与してまいりたい、」というふうに発言をされておりますけれども、同じような考えであります。

小熊委員 関与していくんですから。様子を見ているんじゃないんですよ、日本は積極的に関与していく。

 そして、ナイジェリアの誘拐事件も、一カ月もたって解決していないんですよ。二度とこういうことが起きちゃいけないし、解決しなければならないし、これはまさに時宜に合ったガイドラインになってくると思いますので、ぜひ実効性のあるものにしなきゃいけないということであれば、今言った政府軍とかそういうことではなくて、テロリストもしくは一部の犯罪集団においてでも、こういう政情不安定な地域でこういう事件が起きないようにということを包含したものでなければいけないというふうに思います。

 ぜひそういった方向性に向けて日本政府も寄与できるように御期待を申し上げて、またこれはガイドラインができた段階で質問させていただきますから、ぜひ緊張感を持って対応していただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 過日、土曜日ですね、総理も福島県入りしていただいて、いろいろ現地を調査していただきました。それは大変ありがたかったと思います。

 その中で、小学館のビッグコミックスピリッツという漫画雑誌に連載されている「美味しんぼ」の件もありました。いまだにこれは風評被害。これは大阪の件も書かれていましたから、我が党の代表の橋下徹大阪市長もいろいろ意見を言わせていただいて、漫画も一つの表現方法でありますから、これは最終的には読者の判断だということで、私も余り規制とかなんとかということは避けたいとは思うんですが、余りにも事実と違うこと、また、世論をミスリードするようなことはあってはならないというふうに思います。

 また一方、おもしろいのが、麻生大臣ほどじゃないんですが、私も漫画はよく読むんですけれども、同じ小学館のビッグコミックという月二回発行される雑誌、麻生大臣が好きな「ゴルゴ13」とかが載っているものです。そこには「そばもん」というそばをテーマにした漫画が連載されていて、ここ三、四回が私の地元の会津編ということで、まさに震災以降の原発事故に対する部分が描かれていて、これは、同じ小学館でありながら、非常に客観的に、冷静にその漫画は表現されています。それはそれで非常にいいなというふうに思います。同じ会社の漫画でもこれだけ違うのかというふうに思いました。

 「美味しんぼ」も私の好きな漫画ではあるんですけれども、今回の件はやはりちょっとどうなんだろうというのがありますが、読者は賢明な判断をするというふうに私は思っていますので、これをどうこうというのはありません。

 また一方で、過日のこの外務委員会で香港の吉野家さんのポスターの件について指摘をさせていただいたら、外務省また農林水産省もあわせて日本の吉野家さんとしっかり対応をとっていただいて、香港にある六十一店舗の、福島県のものは使っていませんから安全ですというようなポスターは全て撤去された。こういう対応をとっていただいたことは、大変ありがたく、迅速な対応に感謝を申し上げる次第であります。

 しかしながら、やはり一方で、関係者、政府も地元自治体もいろいろ努力はしているんですけれども、リスクコミュニケーションにおいては、間違った部分が流布をされてなかなか風評被害が払拭されないというのも現実であるというのは御承知のとおりです。

 そういったさなかで、今、福島県の農産物においてはセシウム検査を非常に多くやっているんですけれども、果実と野菜においては、基準値以上のものが震災以降初めてゼロだったんですね。そういうふうな現状です。

 そういうこともあって、あと、出荷についてのいろいろな、これは迅速化ということも含めて、厚労省が検査対象の品目のガイドライン見直しを三月末に発表して、この品目を減らすんですね。九十八品目から六十五品目に減らすんです。

 これはまた、迅速化とか、もう出ていないんだからいいだろうということで、それが一つの理由になってはいるんですけれども、一方で、この風評被害、まだリスクコミュニケーションがしっかりとれていないという現状においては、これを減らすというのはどうなんだろうというのが福島県内の多くの声であって、福島県としても、厚労省は減らすんですけれども、県としては今までどおりの検査をしていく、基金においてそれを予算化していくんですが、この基金も有限ですから、限りがあるわけですね。数年後には底をつくわけです。

 これは、科学的根拠に立てば減ってきているし、いろいろな市場の流通の迅速化ということであれば、それは検査をやるたびに本当に時間がかかるわけですよ。関係者は農家も含めて大変なんです。そういうのを簡素化していくということにも一定の理解は示すんですが、風評被害という、まだ厳然としてこの問題があるということを考えれば、これはやはり減らせないんですよ。だから、県が対応していく。

 中でも、外務委員会で何でこの質問をするかというと、国際的に輸入規制をかけている国があります。それは、科学的根拠があったりなかったりです。科学的根拠を持っている国でも、福島県また隣県の農産物に関しては、ちゃんと検査したという証明書を出してください、それがあれば大丈夫ですという国も多くあります。有無を言わさず、科学的根拠を示してもだめだという国もあるんですけれども。

 こういう国際的な現状の中で、検査対象を決める省庁が減らす、でも、一方で国際的にはまだそれを求めているとなると、福島県また隣県の生産者が、行政がやらなければ独自にこれを負担していかなければいけないということになるんです。

 農業を攻めの農業に変えると言っているんですよ、日本政府は。しかしながら、国内においては、そのハンディを政府が負わずに、民間もしくは自治体が負っていかなきゃいけないという現状になるんです、品目が減っていくということになれば。

 外務省としても、いろいろな風評被害対策をしてもらっています。さっきの香港吉野家の例も成果の一つだというふうに思います。ただ、この検査ということに関しては全然改善されていないんですね、国において。科学的根拠によっている国もありますけれども、でも、実際は証明書を求めていますから、とりわけ福島県また隣県においては。国によっては関東だって求められているわけですよ。検査対象を狭められたら誰がこの財源を負担するんだということです。これは、ほかの国においても、いいですよ、日本のガイドラインに合わせていいです、検査しなくていいです、それを受け入れますからということならいいですよ。

 こういう差について、このハンディについて、外務省はどういう見解をお持ちですか。答えられる人でいいです。

正木政府参考人 お答えいたします。

 香港の吉野家の件につきましては、先生御案内のとおり、先生の御指摘も受けて、ポスターの差しかえということになったのは御言及のとおりでございます。

 今御質問の、厚労省の新しい検査対象のガイドラインの変更と各国の対応とのそごみたいなものでどうやっていくかという点は、非常に難しい問題だと思いますが、外務省としましては、かねがね申し上げていますように、政府の中で、そういった省庁、機関と緊密に連携しまして、まず、各国のとっている輸入規制措置については引き続き最新の情報収集を行いますとともに、安全管理や出荷制限などの我が国の措置について各国政府などに正確な情報を迅速に伝達し、まさに科学的根拠に基づき輸入規制の緩和及び撤廃を行うように、引き続き粘り強く働きかけを行ってきていますし、これからもしたいと思います。

 また、関係の省庁、厚労省も含めて、各国の措置の内容も含めて相談しながら、できるだけ早くこういった根拠のない風評被害の払拭に努めていきたいと思います。

小熊委員 大事な点は、ほかの国が証明書を求めている。日本全体じゃないですよ。福島県を初め、また隣県に求めているわけですよ。求めていない県もあるわけですよ。この差はどうするんですかということですよ。では、リスクを民間で負っていくということですか。

 これはもう役人じゃなくて政治家、大臣か副大臣か、政務官でもいいんですけれども、どうですかね。そうであればそうだと言い切って、あとは県なり市町村なり農業関係団体とかが予算をつくって対応してください、民間のことですからと言い切るのか。それでも、やはりこれは、原発事故のリスクをそこに負わせるんじゃないんだ、誰が負うんだというのをはっきりしていただきたいんですよ。

 私は、これは、福島県の生産者が、また隣県の生産者が負うべき案件じゃないと思っていますよ。北海道から沖縄まで日本全体に全部証明書を出せという国であれば、別にそれはいいですよ。でも、日本政府は大丈夫だと言っても、ほかの国が、だめだから証明書を出せと言っている、このハンディをどう解消するのかということです。誰がそこのリスクを負うのか、これを明らかにしてくださいということです。

 実際、規制省庁は、検査項目を減らすから予算も減らすわけですから。この検査のお金の部分です。誰が負うべきですか。どう思いますか。国際的なこの状況の中で、日本国内では縮小傾向なんですよ。これはどうしますか、大臣。

岸田国務大臣 外務省としましては、まず外務省の責任として努力しなければならないことは、日本に対する理解、そして風評被害の払拭に努めることによって、海外の対応についてより改善を求めていく、そこで結果を出していく、これがまず大変重要なことだと思います。

 そして、ただいまの委員の御指摘は、海外の対応と国内における検査にそごがあり、そこにおいて負担とかリスクが生じている、これについてどう考えるかという御質問ですが、それについては、まさに我が国における関係省庁の連携にかかわる部分だと存じます。

 外務省としましては、まずは、海外における風評被害の払拭に努めて、結果を出していきたいと思いますし、そしてその現実をしっかりと確認した上で、今の点についても関係省庁としっかり連携し、意思疎通を図り、国として対応すべきことについて考えていく、こういったことに努めていかなければならないのではないかと思います。基本的にそのように考え、御指摘の点につきまして関係省庁と連携をしたいと存じます。

小熊委員 費用負担をどうするかという意味においては、これは永続的にやれという話でもないんです、本当は。だけれども、まだまだ風評被害を払拭できていない以上は、大丈夫なものでも証明書をつけなきゃいけないというのが実際のところです。そういう現実がありますから、そこはやはりいろいろな形で政府が対応をとっていただきたいというふうに私は思いますので、基金であれ直接的であれ、こういった検査体制はまだ少し維持をしていただきたいというふうに思います。

 国際的には科学的根拠のない規制がかけられているというところで、外務省は努力していますけれども、実際、まだそれは厳然としてあるし、渡航制限までしているわけですよ。中国だって、中国の民間航空会社が福島空港に乗り入れしたいと言っていても、政府が渡航規制をしているから来られないというのがあるんですよ。無理くり引っ張ろうとしているんじゃないですよ。中国の会社が、福島空港を利活用したいんだと。でも、福島には中国政府が渡航制限をかけているから。

 そういう点も、これはやはり日本政府としても、外務省としてもどんどん言っていけばいいんですよ、いろいろな交渉の過程の中で。RCEPでも交渉しているわけじゃないですか。そういう中でもやはり言っていかなきゃいけないわけですよ。

 そういったことを含めて、まだまだこの原発事故災害は、完全収束していない、終わっていない災害なんです。現在進行形の災害ですから、そういうことを含めて、また、風評被害という科学的根拠のないいろいろな対応をするというこの世の中、社会のことを外務省としても国際社会の中で目の当たりにしているわけですから、こういった状況を踏まえて適切な対応をとっていただくことを、大臣の答弁のとおり、しっかりそれを形にして、現場サイド、生産者サイドで、福島県、その隣県を含めて、関係者が納得する行動をとっていただくことをお願い申し上げて、次の質問に移ります。

 サイバーテロに関してなんですけれども、今、アメリカは、中国の産業スパイで大変被害を受けて、しっかりとした対応、適切な対応をアメリカ政府もとっているところでありますけれども、これは、アメリカと中国との関係だけではなくて、グローバル社会の中で、また、このITが進展した社会の中では、全世界が抱えるリスクの一つであるというふうに思っています。

 そうしたさなか、今、台湾議会が学生に占拠されている、そのきっかけになった中台サービス協定というものがあって、これは、中国と台湾のことですから、日本が口を出すものでもなくて、中国と台湾で決めていけばいい話なんですけれども、サイバーテロとかIT社会といったことを考えると、この中台サービス協定は日本にとってもいろいろな影響を与えるなということが、いろいろ調べさせてもらった結果、明らかになってきました。

 その中でも、台湾にGMOグローバルサインのデータセンターが置かれているんですね。このGMOグローバルサインというのは、ITの中でのいろいろな成り済まし防止とか、個人認証をしっかりすることに関与している会社でもあって、昨年の参議院選挙の折なんかは、政府・自民党が各議員に、これをちゃんと使って成り済ましとかを防げと、実は推奨していたんですね。

 しかし、考えてみると、今、いろいろな情報がクラウド化していますから、このサービスセンター、情報集積がどこのセンターに置かれているかというのはリスク管理として非常に重要なことですし、グローバル化している以上、日本の国内にあるということだけじゃなくて、こうやって台湾にあるわけです、このGMOのサービスセンターが。中台サービス協定でこれがどういうリスクにさらされるのかというのは、しっかり見ていかなければならない案件だというふうに私は思うんです。

 まして、今回、アメリカの産業スパイの例もあって、これに中国政府が関与していたか関与していないかは別としても、単に犯罪集団がやっていたとしても、サービスセンターが各国にある、日本の情報もそういうところに、海外に置かれている状況もあるということを考えれば、このリスクをどう軽減していくのか、対応していくのかということは、これは日本政府としてはやはり考えておかなきゃいけない、対応しなきゃいけないというふうに思うんですけれども、こうした点についてどうですか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました、中国と台湾が昨年六月に署名しました両岸サービス貿易取り決めに関しましては、同取り決めが発効すれば、台湾側は中国側に対して電信サービス業への投資を認める内容になっているというふうに承知しております。

 他方で、同協定は、我が国以外の第三国・地域間で署名された取り決めということもございますので、この取り決めが発効することによりまして台湾の情報通信産業やインフラがどういった影響を受けて、そのことがサイバーセキュリティーにどういう影響を及ぼすかということにつきましては、専門的な検証が必要であろうかというふうに考えております。

 我が国におけるサイバーセキュリティーに関しましては、内閣官房を中心に、平素から政府機関や重要インフラの情報セキュリティーの水準の向上に努めるとともに、政府機関等に対する攻撃の二十四時間体制での監視、官民の情報共有の促進、国の重要な情報を扱う企業に対する対策の強化等の措置を講じているところでございます。

 外務省といたしましても、内閣官房を初めとする関係省庁と連携してこういったサイバーセキュリティー対策の向上に努めるとともに、サイバー問題に関する関係国との協力ということも推進してまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 これは推測の域ではあるんですが、そういうチャンスが生まれているということがやはり明らかになりましたから、いろいろなデータ集積が日本国内だけで行われていればいいんですけれども、先ほど言ったとおりグローバル化していて、情報集積のセンターが海外に置かれているということは、そこでの国のリスクが生じてくるということでありますので、政府・自民党もそれを知っていてそこに預けろと言ったのかわかりませんけれども、去年、安全対策のためにそれを使えと言ったわけですから。

 成り済まし防止とか個人認証で大事だからとやっていながら、データの集積地が台湾にあったということは、ぜひ政府・自民党内でも、言い出しっぺですから、ちょっと検証していただいて、リスクを回避できるような、なければいいんですけれども、指摘させていただいたとおり、他国にあるということはあわせてそのカントリーリスクを背負うわけですから、ぜひそこは今後検証して、対応しなければいけないことがあれば的確な対応をお願いしたいというふうに思います。

 次に移ります。

 先日の委員会で結いの党の青柳委員も指摘した商船三井の件でありますけれども、これはまたいろいろな訴訟がふえてくる。現状、今もう既に抱えている件数とか、それに対して日本政府としてどう対応するのか、まず初めにお聞きいたします。

岸田国務大臣 御指摘の案件については、本件訴訟は、二月二十六日に北京の裁判所に提起されています。政府としましては、関心を持って状況を注視しておりますが、先般、同裁判所において訴状が受理されたことは、中国国内で類似の事案を誘発することにもなりかねず、日中間の戦後処理の枠組みあるいは日中経済関係といったものに影響を与える、こういった点につきまして深刻に懸念せざるを得ないと認識をしております。

 いずれにしましても、さきの大戦にかかわる日中間の請求権の問題については日中共同声明発出後存在していない、これが我が国の立場であり、引き続き関心を持って注視していきたいと存じます。

 その後、同種の案件があるのかどうか、この点につきましては、事務方の方で把握していれば答弁させていただきたいと存じます。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 その後も訴訟を起こそうという動きとかがいろいろと出てきているという報道は承知しておりますが、受理された案件があるというふうには承知しておりません。

小熊委員 ちょっと確認したいんですけれども、日中共同声明また平和友好条約において、戦後賠償はこれで決着しているわけですよね。ただ、個人の賠償をどう考えるか。

 ドイツにおいては、個人の賠償はまた別だという見解もあって、ただ、時効とかがあるからということで、そこは制限があるというふうに私は確認をしているんですけれども、日中間の場合、個人の、民民の部分は整理されているのか、これはまた別物なのか、ドイツの場合と同じように日本政府は考えているのか、それをちょっと確認させてください。

岸田国務大臣 日中間においては、個人の請求権の問題も含めて日中共同声明発出後存在していない、これが我が国の考え方であり、日中共同声明につきましては、中国もこれに対する考え方は変えていないと承知をしています。

小熊委員 というのであれば、商船三井の場合は戦時下になかったということで、ぎりぎりのところで、非常に残念な例ではあったんですが、今ほど言われましたけれども、誘発をしてくる、そういう動きもあるということであります。

 そうした中においても、戦時下での話で個人の賠償請求がいろいろ起きてくるであろうと、また、そういう動きが非常に活発化しているというふうに承知をしているところでありますので、個人の賠償請求権もないんだということはしっかり打ち出していかなければなりませんし、このことで裁判を受理されること自体も、終わっている話なんですから、裁判した結果、これはなしねという話ではなくて、受理した段階においても、日本政府としては中国政府にコメントを言っていかなきゃいけないと思うんです。

 裁判した結果、日本側が負けて請求されたから、それは違うでしょうというのではなくて、受理する、しないという段階において、受理しなかったらそれでいいんですけれども、受理された段階で日本は何らかの行動を起こさなきゃいけないと思うんですが、そういう準備はされていますか、どうですか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の三菱マテリアルの訴訟のケースにおきましても、中国側とはさまざまな形で意思疎通をしているところでございます。

 この受理に関しましては、三月十九日の中国外交部定例記者会見において、外交部の報道官が、中国の法院が法に基づき行った決定であるという言い方をしまして、訴状の受理を事実上認めたものと承知しております。

 他方で、政府から外交ルートを通じて中国側に同じことについての事実関係の確認も行っているところでございますが、中国側からはまだ明確な答えが来ていないということでございます。

 さらに言いますれば、三菱マテリアルから関係省庁に対して情報提供が行われていますが、その中で、三菱マテリアルの方からも、訴状が受理された、すなわち訴状が送達されてきたといったような趣旨の連絡はまだ受けていないところでございます。

 いずれにしましても、こういう早い段階から意思疎通をして、事実関係の確認とか、その際に、我が国の基本的立場を伝達するということを、これまでもやってまいりましたし、これからもやっていきたいというふうに考えております。

小熊委員 受理されたことが確定的になれば、これはしっかり強い対応をとっていただきたいと思いますし、こうした案件が続くのであれば、ある意味、適正なのかどうかわかりませんけれども、国際司法裁判所に、このあり方はおかしいということで、訴えられるのかどうかわかりませんけれども、日中間だけではなくて、しつこいように続くのであれば、しっかりとした国際的な訴え方も私は必要だというふうに思いますよ。

 結局、これは民間賠償ですから、割を食うのは日本の民間ですから、それは日本の経済活動にも大きな影響を与えられますから、国益を損するということでありますし、日本は法の支配、価値観というのを大事にするという意味でも、これは逸脱した中国の対応だというふうに思っていますし、私はやはり、これはある意味政治的な利用で、中国側のそうした動きであって、何の根拠も正義もないというふうに思っています。

 日本政府は、正しい、厳しい、的確な対応、なおかつ、国際的にもしっかり日本の正しさを訴えていく、日中間だけのやりとりではないということが必要だというふうに思いますので、そういう国際社会の中での日本の訴えの仕方もぜひあわせて検討してやっていただくことを求めて、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質疑の機会を十八分いただきました。ありがとうございます。

 早速ですが、質問に移りたいと思います。まず、投資協定の現状認識について、本日もいろいろ議論がありましたけれども、私からも伺っておきたいと思います。

 先ほどもありましたが、我が国の投資協定の現状は、締結済み三十件、本日提出三件、交渉中二十件ということで、我が国の企業活動がグローバル化している中で、国境を越える投資活動に関する障壁を撤廃していく、国際的な投資ルールを構築していく、これが重要であるということは論をまたないことだと思いますが、他国に比べて、まだ本数でいえば少ない。さらに、投資協定、既存のものでも、より質の高い内容に変えていくべきだ、必要に応じて見直しも行うべきだということは、経済界からも要望があるということは大臣も御存じのことだと思います。

 まず、こうした既存の協定の見直しということも含めて、あるいは、先ほど来あるように、現在の本数が他国と比べて少ないんじゃないかということも含めて、我が国の投資協定の現状の認識と今後の方針について、まずは大臣の御見解を伺っておきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、投資協定を結ぶことによりまして、相手国における投資環境の透明性あるいは法的安定性、さらには予見可能性、こういったものが向上いたします。また、我が国からの投資のさらなる保護、促進につながることも期待されます。こういったことから、この投資協定を締結することは、積極的に進めていかなければならないと考えます。

 本数の少なさについては、欧米諸国との歴史の違いですとか、あるいは我が国の先進国としての今日までの立場など、さまざまな理由があるわけですが、結果としまして、地域的にも、アフリカですとか中南米、あるいは中近東、こういった地域との締結が少ないという実情もあります。

 こういった現状を踏まえて、我が国として、我が国の企業の要望等もしっかり把握した上で優先順位をつけ、そして協定締結に向けて積極的に努力をしていきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。今後も、交渉を加速してしっかり取り組んでいただければと思っております。

 現在の投資協定、経済連携協定最大の課題とも言えると思いますが、これはやはりTPP交渉だと思います。国益にかなう交渉をぜひ早期にまとめていただきたいと思っておりますが、岸田大臣はまさに本件でも重要閣僚のお一人だと思っていますので、交渉の後押しをぜひお願いしたいというふうに思っております。

 昨日、シンガポールで開かれていたTPP閣僚会合が共同声明をまとめて閉幕したということでありますが、交渉妥結に向けて一定の成果は当然あったんだと思います。しかし、今後の見通しということについてはさまざまな見方があるということで報道されておりますが、このTPP交渉の見通しについて、きょうの岸田大臣の御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 十九日そして二十日に行われました、甘利大臣が出席したシンガポールにおけるTPP閣僚会合ですが、先日の日米協議の進展も踏まえ、各国間の二国間交渉を加速するとともに、閣僚間で交渉全体の進捗を評価することを狙いとして開催されました。結果としてその目的は達成されたものと認識をしております。

 市場アクセスについては、先月のオバマ大統領と安倍総理の協議を通じ、日米の懸案の解決に向けて道筋が特定されたとされていますが、これを受けまして、各国との二国間交渉が本格的に始まりました。全体会合では、市場アクセスだけではなくして、ルール分野を含め交渉全体について現状評価が行われ、そして、今後の進め方について閣僚間で認識が共有されました。

 今、交渉は最終局面にあるとまず認識をしています。交渉妥結のためには、真に政治的決断が必要な困難な論点を絞り込む、このことが今後の大きな課題であると認識をしております。

青柳委員 ありがとうございます。

 今の大臣の答弁からすると、まさに最終局面という言葉がありましたが、ぜひ早期妥結に向けて引き続き取り組んでいただきたいと思っております。

 次の質問に移りたいと思います。先週も伺いましたが、南シナ海の情勢について伺いたいと思います。

 本件について先週も取り上げておりますが、事態は先週よりもさらに緊迫の度合いが増しているのではないかと思います。特に中国、ベトナムの問題は、五月二日以降現在に至るまで、連日にわたって対峙を続けている、こういう状況であります。さらに、ベトナム国内は、各地でデモが発生している、死者も出ている、日系企業も実被害が出てきている、こういう状況であります。

 一方、国際社会の反応を見ると、米国は、五月七日に国務長官談話を発出し、中国を一方的かつ挑発的と批判しました。さらに、十二日には、ケリー国務長官が王毅外相と電話会談を行い、中国を批判したという報道がなされています。その他の国でも、EU、国連、インド、台湾、イギリス、オーストラリア、フランス、ロシアという国が、本件について、国際法に基づく平和的解決を求める声明あるいは談話というものを発出している状況です。ASEANの対応については、先週この委員会で取り上げたとおりであります。

 私は、この中国の行動、南シナ海での振る舞い、これはまさに、先週も申し上げましたが、力による現状変更への明確なチャレンジであり、国際法に対するチャレンジでもあると思います。

 これに対して我が国の対応は、記者会見で官房長官あるいは岸田大臣が、記者から質問されたことに対して、深い憂慮、強い懸念を表明されてはいますが、逆に言えば、記者会見で記者から聞かれて答えたということにとどまっているというふうにも言えます。

 私は、東シナ海で同様の課題を持つ国として、こうした同様の課題を持つ国ともっと連携を強めていくためにも、談話あるいは声明など、もう一段オフィシャルな形で我が国の意思を示すということが必要なんじゃないかと思います。

 私は、一昨日、ベトナム大使と会談する機会がありました。ベトナム大使も、ぜひ日本ももう一段意思を示してほしい、この問題について協力してほしいという要望がありました。

 この委員会でも何度も取り上げていますが、岸田大臣自身、日越友好議員連盟の幹事長でもあります。ここはぜひ、もう一段オフィシャルな形で、強い立場、決意を具体的な形で示すべきだと私は考えますが、岸田大臣の御決意、お考えをお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、南シナ海をめぐる問題についての我が国の立場ですが、この問題は、中国あるいはベトナム、こういった国にかかわる問題にとどまらず、やはり地域の平和と安定にかかわる、我が国を含む国際社会全体の関心事項であるとまず認識をしています。力による一方的な現状変更は認めることはできないと考えますし、各国が、緊張を高める一方的な行動を慎み、法の支配の原則に基づき行動すること、これが地域における国際秩序形成にとって重要だと考えています。そして、こうした考え方については、御指摘のように、官房長官、そして私、外務大臣も、会見等を通じて対外的に考え方を明らかにしてきているわけです。そして、それにつきましては、外務省のホームページにも掲載させていただいております。

 こういったことで、対外的に我が国の考え方について明確にしているとは考えていますが、御指摘の点を踏まえまして、ぜひ、我が国の立場を適切に対外発信する方法としてさらに考えるべきことがあるかどうか、この点についてはぜひ検討したいと存じます。

青柳委員 やはり検討ということで、もう少し強い意思を示すことは必要だと思いますし、安倍政権自身は、まさに積極的平和主義というのを掲げているわけです。これを世界に説明しているわけです。これはまさに積極的平和主義にも基づいて強い意思をぜひ示していただきたいと思いますが、今の大臣の答弁からは余りそういうことを感じられなかったわけでございます。

 政府がこの問題について消極的であるのであれば、ぜひ、国会として、あるいは外務委員会として、意思を示すべきではないかと思います。外務委員会として決議すべきではないかということを御提案申し上げたいと思いますが、委員長、いかがでしょうか。

鈴木委員長 理事会において後日協議いたします。

青柳委員 ありがとうございます。

 ぜひ御協議を両筆頭にもお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

 次の質問に移りたいと思います。スリランカ情勢についても伺いたいと思います。

 まず、現在のスリランカ情勢、そして、我が国とスリランカの関係、日・スリランカ関係について大臣の現状認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 現状認識ですが、スリランカでは、二〇〇九年に約二十六年に及ぶ内戦が終結しました。現在は、復旧復興、そして人権状況の改善を含む国民和解が課題となっています。

 現在、スリランカ政府は、約三十万人に達した国内避難民の再定住の完了、あるいは地雷の除去等さまざまな取り組みを行っているところですが、引き続き、内戦後の国民和解に向け、多くの課題が存在すると認識をしています。

 我が国は、長年にわたり、スリランカの内戦における和平プロセスに積極的に関与、貢献してきました。また、内戦終了後も、同国の平和構築を一貫して後押しし、国民和解や人権状況の改善に向けたスリランカによる国内的努力にあらゆるレベルで働きかけを行ってきております。

 基本的な考え方として、こうした問題解決に向けて、スリランカがみずから努力することが不可欠であると認識をしております。その上で、我が国として、今後とも、建設的に関与を維持し、そして具体的な進展を図るべく働きかけを行っていきたいと考えています。

青柳委員 今の認識のとおりなんですが、ところが、スリランカは、本年三月の第二十五回国連人権理事会におけるスリランカ人権状況決議で、内戦末期、つまり現政権の人権侵害と、政府の人権に対する取り組みが不十分だということで、人権状況決議が可決されているわけであります。賛成は、米国、英国、フランス、ドイツ、韓国など二十三カ国、反対は十二カ国、棄権十二カ国でした。

 日本は、御案内のとおり、人権に対する取り組みのリーダー国の一つであることは間違いないと思いますが、実は、この決議に賛成しておりません、棄権しているわけであります。この棄権した理由をお聞かせいただきたいと思います。

 済みません、時間の関係がありまして、あわせて一緒にお伺いしたいと思いますが、これは私がこの委員会で再三取り上げているとおり、日本は、同様の問題を、北朝鮮の問題で人権理事会に諮り、可決し、それをさらに安保理で取り上げるということを今やろうとしている。そして、この北朝鮮の人権決議は安倍政権の大きな成果だと言っているわけですから、一方では大きな成果だと言い、一方では人権決議に棄権している、こうしたやり方について、棄権した理由は政府参考人から御答弁いただき、そして、このような今のやり方でいいのかということについては大臣から伺っておきたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣からも御答弁がございましたように、スリランカの人権問題の解決や内戦後の国民和解の実現には、スリランカみずからによる努力が不可欠でございます。

 今回の決議につきましては、我が国としては、この決議がスリランカ自身の取り組みを効果的に引き出すことに資するかどうかという観点から検討を行い、また、我が国からの働きかけに対しまして、スリランカ側からも複数の前向きな措置の実施が約束されたことなども総合的に勘案した結果、棄権することにしたものでございます。

 なお、採決後に我が国として発言の機会をいただきましたので、我が国からスリランカに対して、国際社会と協調しながら、約束した具体的措置を着実に実行するよう促したところでございます。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、この北朝鮮の決議、当然のことながら重視をしております。

 そして、スリランカのケースにつきましては、決議案に関する立場の決定に当たって、我が国からの働きかけに対し、スリランカ側から前向きな措置の実施が約束されたこと等を踏まえて総合的に検討した結果、棄権するということになった次第であります。ですから、まず、これを北朝鮮の人権状況決議の対応と同一視することはできないと思っています。

 先ほど申し上げましたように、スリランカのさまざまな課題解決のためには、スリランカみずからが努力することが不可欠であると思っています。ぜひこういった姿勢でスリランカに対して働きかけを行っていきたいと考えています。

青柳委員 時間が来ましたので終わりますが、スリランカ政府のホームページには、日本の政務官が国連決議を批判していると誤解されかねない文が載っておりますので、こうしたことについても指摘して、終えたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 初めに、日本・ミャンマー航空協定改正議定書に関連して質問いたします。

 一九七二年に発効された現行の協定では、航空安全に関する規定というのは設けられておりませんでした。本改正議定書でありますけれども、ミャンマーとの人的往来、これが急増して定期便のニーズが増大することに対応するために、指定航空企業の複数化を図るというものとなっておりますけれども、今回の協定の改正に当たって、航空安全に関する規定を設ける必要はなかったんでしょうか。いかがですか。

岸田国務大臣 もちろん、航空安全というものは大変重要な視点であります。

 ただ、航空安全あるいは航空の保安につきまして、我が国そしてミャンマーも、国際民間航空機関、ICAOの加盟国であります。よって、ICAOが作成する関連の主要条約、東京条約、ヘーグ条約、モントリオール条約等、多くの条約がありますが、このいずれもミャンマーも締結をしております。よって、既に日本もミャンマーもこの分野における国際的な基準を適用しておりまして、こうした関連条約の規定を遵守する義務を負っているところであります。

 こうした安全運航の確保につきましては、こうした枠組み等を通じましてもしっかりと両国間で緊密に協議をし、しっかり対応していきたいと考えております。

笠井委員 次に、投資協定について伺いますが、今回の三つの協定は、安倍総理が昨年四月と五月、そしてことし一月に相手国を訪問した際に、各国首脳との間でその推進が位置づけられたものであります。

 まず、サウジアラビアとの投資協定ですけれども、これは二〇〇八年五月に実質合意していたわけでありますけれども、二〇一三年の四月の署名までに約五年を要した。その理由というのはどこにあるんでしょうか。

岸田国務大臣 日・サウジアラビア投資協定の交渉、二〇〇六年に開始した当初、投資参入段階からの無差別待遇等を定める自由化型の投資協定を作成する方向で交渉が進められておりました。

 しかしながら、自由化型の要素を含めることについて、サウジアラビア側の国内調整が難航いたしました。このため、二〇〇七年の第四回交渉時に、投資参入後の無差別待遇等について定める、いわゆる保護型の投資協定を作成する方針に変更することとなりました。このようなサウジアラビア側の事情による方針変更により、交渉に時間を要した次第であります。

 それに加えて、二〇〇八年の実質合意以降、署名に向けたサウジアラビア側の国内手続の過程で、改めて両国間での文言調整が必要となりました。こういった事情が、長期間要することになったという理由であります。

笠井委員 この投資協定には、投資財産設立後の投資を保護するために、締約国が自国内で投資活動を行う締約相手国の投資家や投資財産に対して各種義務を定めるわけですけれども、本協定には、特定措置履行要求の禁止、一般的にそういうことはあるんだけれども、本協定について言うと、パフォーマンス要求の禁止条項の規定がないということであります。

 この規定は、締約国が他の締約国に対して、ローカルコンテンツ、現地調達や輸出入の均衡、輸出制限などを求めること、それから不当、差別的な措置を課すことを禁止するものでありますけれども、モザンビークやミャンマーとの協定にはこの規定があるけれども、サウジとの間では定められなかったのはなぜでしょうか。いかがですか。

三ッ矢副大臣 御指摘のパフォーマンス要求の原則禁止に関する規定でございますが、サウジとの関係で申し上げますと、ありていに申し上げますと、サウジアラビア側の過去の投資協定において例がないということで、非常に先方の立場がかたかったということでございまして、結果として、この協定にはこの条項を含めないで合意に至ったという経緯がございます。

 しかし、さはさりながら、実は、WTOの貿易に関連する投資措置に関する協定というのがございまして、これは、今委員が御指摘いただきました現地調達要求等、投資阻害要因になり得る一定の要求の禁止等を義務づけております。したがって、WTO加盟国であるサウジアラビアが負うこれらの義務は、この投資協定により変更されることはございません。引き続きこの点は履行されなければならないということでございまして、この点はこの投資協定においても明確に確認されているところでございます。

 したがって、我々としては、日本企業の投資活動に支障を生ずることはないというふうに考えておるところでございます。

笠井委員 同じく本協定には、国が投資家になした約束の遵守義務、いわゆるアンブレラ条項の定めもないわけですが、この規定は、締約国が他の締約国の投資家の投資財産に関して書面による契約等の約束を行う場合に、その約束の遵守を義務づけるものでありますけれども、サウジアラビアとの間にはない。これも同様な理由なのかどうか。

 それから、それがないということは、サウジアラビアとの間では、インフラプロジェクトや資源開発などに係る許可、投資インセンティブの付与などで締約国が約束に違反した場合、どう対処するのか、あわせてお答えください。

三ッ矢副大臣 アンブレラ条項が欠けておりますことは、先ほど申し上げたのとほぼ同じ理由でございます。

 しかし、これは、サウジアラビアにとって、契約遵守が協定上は義務ではないということを意味するにすぎません。

 この協定では、我が国の投資家は、サウジアラビアにおいて、他国の投資家と差別されることなく裁判を受ける権利を保障しております。したがって、我が国の投資家は、サウジアラビア政府との間で契約不履行の問題を生ずる場合には、サウジアラビアの国内裁判所に提起し、救済を求めることができることになっております。

 それから、裁判で十分な救済を受けられないというケースも考えられるわけでありますけれども、その場合には、政府として、この協定によって設置されます投資作業部会において改善を求めることが可能でございます。それから、我が国の投資家が、裁判を受ける権利に関する無差別待遇義務違反でサウジアラビアを国際仲裁に付託することも可能でございます。

笠井委員 インフラプロジェクトに関連して伺いたいんですが、安倍総理は、昨年四月にサウジアラビアを訪問した際に、本協定の署名とともに、原子力の二国間協力についても政府間協議を開始することで合意したと思うんですけれども、その後の状況というのは今どうなっているでしょうか。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 昨年四月の安倍総理のサウジ訪問の際に、原子力協定を含めた両国間の原子力協力を具体化するための議論を進めていくことが表明されました。

 これを受け、昨年十二月末に、日・サウジアラビア原子力協定の交渉開始で合意し、現在、外交ルートで交渉中であります。

笠井委員 サウジアラビアでは、二〇一〇年の四月に、アブドラ国王原子力・再生エネルギー都市という原子力開発の政府組織が設立をされました。また、昨年九月には、東芝のグループ企業とアメリカの大手電力会社の子会社が、サウジアラビアに対して、原発の新規建設に向けた共同提案を行うことで合意をして、契約を締結したと承知しておりますけれども、このサウジアラビアをめぐる原発建設計画の進捗状況について、政府としてはどのように把握しているでしょうか。

三ッ矢副大臣 委員御指摘のとおり、サウジアラビアは、現在、発電の全てを化石燃料に依存しているわけでございますけれども、今後は、原子力と再生可能エネルギーによる電力供給を進めていく意向と承知しております。

 同国は、二〇一〇年に、原子力と再生可能エネルギーに関する政策を担う政府機関を設立いたしまして、二〇三〇年までに十六基の原子力発電所の導入を計画中であるというふうに承知をしております。

笠井委員 次に、ミャンマーとの投資協定について伺います。

 貿易・投資円滑化ビジネス協議会の資料によりますと、ミャンマーは、投資に関する法制度の未整備ということが指摘をされておりますけれども、この点について、外務省としてはどのように把握しているでしょうか。

岸田国務大臣 ミャンマーが民主化そして市場開放等の改革を進める上では、法の支配の確立、ガバナンスの向上、市場経済に適した法の整備、矛盾した法令が並立する状況の解消、これが喫緊の課題だと認識をしております。

 これらの課題に対し、我が国として、経済関連法等の起草、改正支援、そして、ミャンマー当局の法案作成、審査能力の向上、こういったものに関する技術協力を行っているところであります。

 本日御審議いただいている日・ミャンマー投資協定については、ミャンマーにおける行政手続の透明性を向上させる目的で、関連の規定を設けることといたしました。

 具体的には、我が国の行政手続法の基本的な考え方を踏まえて、申請への対応、許認可基準の設定、そして標準処理期間等について規定を設けているということであります。

 ぜひ、これらの枠組みあるいは協力を通じまして、ミャンマーにおける投資活動の予見性向上に取り組んでいきたいと考えています。

笠井委員 この資料によると、ミャンマーのカチン州というところでは、合弁会社設立内容、法整備の未定によって、ミャンマー投資管理局にて相談をするけれども、ルールがはっきりしない、また、土地借地契約の法的根拠が未定とか、地域的な問題があるということなどが指摘をされております。政府としては、こうした問題にどう対応するのか。

 そのほか、外国企業によるミャンマーへの投資が認められる業種区分が曖昧であること、さらには、外国投資法の運用が不明確であることも指摘をされていますが、その点はどうするのか。具体的な問題ということに対して、どういうふうに対応することになるんでしょうか。

下川政府参考人 ただいま御指摘がありましたカチン州の投資環境でございますが、同州におきましては、長年にわたり、国軍とカチン独立軍との対立が継続いたしまして、現在も戦闘が散発的に発生してきております。そういったようなこともございまして、投資環境が十分に整備されてこなかった要因として考えられております。

 現在、そういう中で、ミャンマーにおきまして、全国規模の停戦合意の早期実現に向けた協議が行われているところでございまして、そういう和平プロセスが進展していきますれば、カチン州を含む少数民族地域においても、安定した投資環境の整備につながるということが期待されるものと考えております。

 我が国といたしましては、ミャンマー政府と少数民族との和解プロセスの進展のための働きかけですとか、紛争で影響を受けた地域を中心とした民生向上のための支援、こういったようなことに取り組んできているところでございまして、そういった活動、支援を通じまして、当事者間の対話を促し、和平の早期実現に向けて引き続き建設的な役割を果たしていきたいというふうに考えているところでございます。

 また、先ほど御指摘のありました個別の投資環境の話につきましては、経済関連法の起草、改正支援や、ミャンマー当局の法案作成、審査能力の向上等に通じますような技術協力を行いまして、法の支配やガバナンスの向上、市場経済に適した法の整備、それから、矛盾した法令の並立する状況の解消といったような改善につなげていきたいというふうに考えているところでございます。

笠井委員 最後に、モザンビーク等の投資協定に関連して伺います。

 政府は、投資促進のためには、投資協定だけではなくて、経済対話とかODAなどを通じた投資環境の整備などを総合的に活用するということを明らかにしてまいりました。

 こうした中で、ことし一月の安倍総理のモザンビーク訪問時に出された共同声明を見ますと、熱帯サバンナ農業開発プログラムであるプロサバンナ事業について、市民、農村社会との緊密な対話を継続し、地域住民の生活向上、小農の貧困削減のために協力するということが確認されていると思うんですけれども、そのことは間違いありませんか。

石原大臣政務官 そのとおりであります。

 本年一月の日・モザンビーク間の共同声明を踏まえて、モザンビーク政府は、プロサバンナ事業の実施に当たり、市民、農業団体との緊密な対話を継続すべく努力しているというふうに承知しております。

笠井委員 このプロサバンナ事業は、日本、ブラジルの協力で進められている大規模農業開発事業でありますけれども、日本の耕地面積の三倍、千四百万ヘクタールに外国投資を導入して、大豆などの一大穀倉地にするという計画であります。

 しかし、これに対してモザンビーク最大の農民組織UNACが反発をするという中で、昨年六月のTICAD5、第五回アフリカ開発会議の安倍総理主催のレセプションでは、事業の停止を求める申し入れというのが当事者から行われたということだと思うんですけれども、これは国会でも質疑がこの間もありましたが、改めて、岸田大臣、こうした声をどう受けとめておられるでしょうか。

岸田国務大臣 まず、本事業につきましては、主体はモザンビーク政府であります。これを日本、ブラジル両国が支援するという形になっています。ですから、御指摘のこの書簡への対応につきましても、モザンビーク政府が中心となって検討してきました。

 我が国としましては、この書簡をぜひ真摯に受けとめなければならないと思っておりますし、可能な限り早く誠意ある回答を行うべきである、こういったことをモザンビーク政府に働きかけを行ってきました。そして、ようやく四月末に、この書簡にはモザンビーク政府として適切に、書簡により回答するべく鋭意調整している、こういった連絡が入ったところであります。

 ぜひこの回答を一日も早く行うべく、引き続き働きかけを行っていきたいと思っています。

笠井委員 ようやく回答をするという話でということで、中身がどうなるかという段階ですから。

 モザンビークの人口の八割は農民で、九九%が家族農業の小農であります。UNACという組織は、モノカルチャー、単作の大規模農業や緑の革命ではなくて、食料主権を可能にする家族農業、特に国家計画の策定の支援を求めているわけで、小農の貧困削減のために協力するというのであれば、書簡に示されたような農民の声に応えるべきだと思うんですが、大臣、この点はどういうふうに考えられるでしょうか。

岸田国務大臣 書簡に対する答えについては、先ほど申し上げた働きかけを行っていますが、答えの中身については、例えば小規模農家を中心とした地域住民への配慮、あるいは丁寧な対話の継続、こういった要素が含まれるように、我が国としてもモザンビーク政府に申し入れています。

 ぜひ、こういった観点からも、誠意ある回答を返さなければならないと我が国は認識をしています。

笠井委員 時間が来ましたので終わりますが、この三協定、いずれも現状ではそれぞれ重大な問題がある中での協定ということで、そうした重大な問題点を含んでいるということを言わざるを得ない、このことを申し上げて、質問を終わります。

鈴木委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。よろしくお願いいたします。

 さて、本日は、日本・サウジアラビア投資協定、日本・モザンビーク投資協定、日本・ミャンマー投資協定、そして日本・ミャンマー航空協定改正議定書の審議をさせていただくことになりました。

 投資協定または航空協定の改正、これらはいずれも、相互に投資環境を整備したり、また航空会社の乗り入れ、今回は会社数をふやすなどを通じて経済的連携が強化され、両国間の友好親善の大変一助になるということが期待されての審議になるかと思っております。

 さて、きょう、ほかの委員の皆様の質問を聞きながらでございましたので、さまざまな議論点があるなということもありましたし、また、ちょっと大臣には申しわけないんですけれども、質問の順番を少々変えさせていただくとともに、大臣の一般的な考え方も、先ほどからの質疑を聞いていて、ぜひお聞きしたいことがありますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初に、私も本会議で触れさせていただきましたけれども、四月中旬、ナイジェリア、イスラム過激組織ボコ・ハラムに連れ去られた女子学生の早期解放を願っているものであります。

 これは、国連安保理事会におきまして、制裁リストに加える動きも出ております。制裁されれば、組織関係者への武器禁輸、資産凍結、海外渡航禁止などの制裁措置が行われるかもしれないということで、二十二日にもこれは決まるのではないかという報道がございました。大臣におきましては、この問題に関して、解決に向けて御尽力をされるという声明も出されました。

 その点に関しまして、国際社会では、特に女性の間では、このような女性の連れ去り、しかも若い学生が売買の対象ということを明言されるようなことは到底許せるものではございません。世界におきましては、マララさんを初め、我々の少女を返してという、ブリング・バック・アワ・ガールズということで、運動も起こっております。

 日本としてどのように対処されているのか、声明を出されました外務大臣の御見解をまずお聞かせいただけないでしょうか。

岸田国務大臣 本件につきましては、強い衝撃と憤りを覚えています。そして、テロ行為を非難し、ナイジェリアの将来を担う女子生徒たちの一刻も早い解放を要求する内容の外務大臣談話を五月九日に発出させていただきました。

 テロ行為の撲滅という観点からも、また、地域の平和と安定という観点からも、さらには、我が国としまして、女性の輝く社会を目指す、こうした女性の活躍に向けて国際貢献も行っていく、こういったことを安倍総理も国連総会の場で演説をしているわけでありますので、こういった観点からも、ぜひ我が国として、引き続き国際社会と連携をし、事件解決のために努力をしていきたいと考えています。

 具体的には、米国、英国などは、専門家をナイジェリアに派遣して捜索活動を支援しているわけですが、我が国として具体的にどう支援するか、これにつきましては、ぜひ現地のニーズ、こういったものをしっかり確認しながら検討していきたいと考えております。

 ぜひ、我が国もこの問題に大きな関心を持ち、しっかりと連携を深めていきたいと考えています。

小宮山委員 ぜひ、大臣のおっしゃるとおり、我が国もきちんと国際社会と連携をし、この問題の対応をさらに深めていただきたいと思いますし、政府といたしましても、この問題をきちんとさらに扱っていただきたいと思います。

 とかく人権問題、また障害者の問題も、なかなか今回、安倍内閣におきましては、発言というものが控え目というんでしょうか、見受けられないことも多々ございます。ソチ・オリンピックのときもそうでした、日本は、パラリンピックのときには副大臣をしっかりと開会式に出されましたけれども。

 こういったさまざまなことを考えていきますと、人権問題というものは国際社会の中では大変重要な観点だと思います。ぜひ、人権問題に対しては、日本政府として、また内閣におきまして、岸田外務大臣のイニシアチブにおきまして、日本の常識は世界の非常識とならないように、もう大分前の竹村健一さんのあれで、そういったようなギャップがないように、特に人権問題では先進国とのギャップがないように発信をしていただきたいと思います。

 さて、それでは、まずは日本・ミャンマー航空協定の改正について先にお聞かせください。

 日本・ミャンマー航空協定の改正では、一九七二年発効の現行協定から、国名の変更、ビルマ連邦からミャンマー連邦共和国、が行われるとともに、指定航空企業の数を、一の航空企業から一または二以上の航空企業へと改めることが主な内容となっております。また同時に、附属書への記述を通じて、指定航空企業の運営路線の拡大も図られることとされます。

 両国間、特にミャンマーにおきましては、日本人は大変近年注目もしているところでもありますし、「ビルマの竪琴」という映画にもありますように、大変、往来もあるし、観光地という意味においても今人気の上がっているところでもあります。近年では、四年間で四から五倍の増加をしたという往来でもあります。

 これから拡大することがさらに考えられるわけですけれども、指定航空企業の数をふやすことは妥当だと考えますが、一または二以上、指定しようと思えばこれは何社でも指定できるという内容に読めると思います。安全性の確保とか、安定した運航継続の観点から問題とならないのか、御見解をお伺いいたします。

岸田国務大臣 御指摘のように、ミャンマーへの日本人渡航者数、四年間で四倍以上、約四万七千人となっています。人的、物的交流が大幅に拡大していますし、これからも拡大が予想されます。

 よって、今回、この協定の改正によって、指定航空企業数の制限を撤廃するということ、これは現状を見ましても適切な対応であると認識をしております。

 一方で、安全性はしっかり確保されなければいけない。当然のことであります。ミャンマーも、国際民間航空機関、ICAOの加盟国であります。ICAOの作成する関連主要条約、航空の安全にかかわるさまざまな条約がありますが、これを全て締結しています。

 ぜひ、この条約に基づいてしっかりと義務を果たしていく、このことによって、航空の安全あるいは航空の保安、こういったものにつきましてしっかりと確保するべく、両国間で緊密に連携をしていきたいと考えています。

小宮山委員 安全の確認はこれによってされているということでありますけれども、実際には、一だったものが二以上になるかもしれないという意味では倍以上であります。

 そういった意味においては、昔の航空業界、各国が一つだけの国際航空会社というような、そんな時代もあったかと思います。その名残かとも思う部分もありますが、逆に、二と限定をしなかったというところはどのような点なんでしょうか。二以上にした理由をお聞かせください。

下川政府参考人 御質問の点でございますが、我が国がこれまで締結してまいりました五十八本の航空協定の中で、現在、指定航空企業の数を明示的に制限しておりますのは、ミャンマーとの航空協定のみという状況になっております。

 今回の改正議定書では、まさにこの点を改め、他の航空協定と同様に、指定航空企業の数の制限を撤廃しようとするものでございます。

 御指摘のような、指定航空企業数を特定の数字内に限定するという考え方につきましては、今回の交渉過程では特に議論にならなかったところでございます。

 いずれにしましても、航空の安全及び航空保安につきましては、指定航空企業の数にかかわらず適切に確保されるべきものというふうに考えておりますので、この協定の枠組みのもとで、両国の当局間でこれまでも緊密に協議を行ってきているところでございますが、今後ともしっかり対応していきたい、そういうふうに考えているところでございます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 では、具体的にどのようにこの安全性というものが確認されるんでしょうか。この一カ月ほどですか、隣国ではございますけれども、交通機関のさまざまな事故もございました。また、いろいろなことを考えますと、この点に関しまして、何社でも指定できる、相手国側で指定航空企業とされた航空会社による運航の安全性などの確保に対してどのように認識をされているのか、国交省に伺いたいと思います。

甲斐政府参考人 お答えいたします。

 我が国に乗り入れを行おうとする外国の航空会社につきまして、相手国からの指定を受けた場合であっても、指定だけでは足りませんで、私ども、航空法に基づきまして、実際、乗り入れがなされるときに、運航する路線、あるいは主要航空機でありますとか機体の整備の施設、それから運航管理施設等、運航の安全にかかわる問題を十分に審査した上で、当該航空会社が運航の安全が確保されていることを確認した上で事業許可を行っております。これはミャンマーだけの話じゃなくて、外国の航空会社一般でございますから、何社入ってこようが、同じ事柄としては審査をさせていただきます。

 それから、加えさせていただきますと、我が国への乗り入れ後も、空港におきまして、航空機の立入検査、ランプインスペクションというものを実施しておりまして、外国航空会社の運航の安全の確保につきましては継続的に監査をする体制を整えております。

 以上でございます。

小宮山委員 安全対策というもの、また、それは人の命を乗せて飛ぶものでもありますので、ぜひ確実に行っていただければと思います。

 さて、本日議題となっております投資協定の審議でございますけれども、これによって、我が党、生活の党としては、EPA、FTAなど自由貿易の推進は大いに議論をし、進めていくべきだと考えておりますけれども、TPPについては、自由貿易と呼ばれる概念とは異なったものであるというふうに認識をしています。しかしながら、この投資協定をすることによって自由な取引が活発になること、また、そういった中において進められるということは大変重要でもあります。

 ただ、今回のものにおきまして、五月十五日ですか、米国のオバマ大統領が決定されたものの中に、議会の方に報告をされたそうですけれども、対ミャンマーの経済制裁の一部継続をされるということがあるようです。これも根本的には、西部ラカイン州というんでしょうか、少数民族が弾圧されたことに由来するということであります。

 こういった問題に関しては、今回の投資協定の中におきましては、ミャンマーも含めてですが、行政手続の迅速化や明確化、透明性の向上を求める義務規定も入れてありますし、また汚職防止の努力義務も入っているということで、きちんとこの点に関しましては日本企業も守っていただきたいと思いますし、この点が入っているということに関しては大変評価をさせていただきたいと思います。

 さて、自由な貿易というものがあることは大変重要なことだと思っております。その中で、日本と経済的な結びつきが高い台湾との租税協定の整備が待ち望まれております。

 日本と台湾との間で、租税協定、日台所得税二重課税回避及び税逃れ防止に関する協定についての協議が持たれたと伺っております。

 漏れ伝わってきたところによりますと、日本と台湾との間で、内容的には大筋納得できるようなところが見えてきたけれども、最後に残った課題として、お互いで交わす取り決めの名称を何と呼ぶかで考えに相違があるとも聞こえてまいりました。

 本日議題となっております三投資協定及び航空協定では、協定としてアグリーメントが用いられております。この部分に関しまして、日本側からはコミットメントではどうかというような提案があったようなことも聞こえてまいります。

 しかし、国ではないですが、香港とは日本もしっかりと日本・香港租税協定を結んでいることもございます。また、台湾とは、日本以外、シンガポール、インドネシア、そして米国も含めて、条約の締結をしているところでもあります。

 また、米国におきまして、現在、米国議会で審議中の原子力平和利用協力協定においてもアグリーメントという言葉が使われるというふうに聞いております。米国でアグリーメントの表記が問題なく使えるのであれば、日本でも同様ではないかということを思うわけでありますが、この点に関しまして、過去には、平成二十四年十一月一日ですが、参議院議員の松田公太議員より提出の質問主意書に対しましての答弁などを鑑みまして、現在どのように外務省としては捉えているのか、お聞かせください。

下川政府参考人 台湾は、きょう議論がございましたように、我が国にとりまして、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーでございます。その台湾との間でさまざまな分野の実務協力を着実に進展させていくことは極めて重要であるというふうに認識しております。

 こうした観点から、台湾との間では、日台双方の民間窓口機関でございます公益財団法人交流協会、これは日本側でございます、そして台湾側、亜東関係協会との間の民間取り決めを積み上げることにより経済連携の強化を進めてきているところでございます。

 台湾との間におきます二重課税の回避につきましては、日本企業等の関心も高い分野でございます。このため、交流協会と亜東関係協会の間で、昨年の末から、日台間の二重課税の回避等を目的とした枠組みに関する協議が行われているところでございます。

 このように、今この中身については両機関の間で話し合いが進められているところでございますので、詳細について現時点で触れるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論で申し上げますれば、英語のアグリーメントないしコンベンションといったような言葉は、国家間の権利義務関係を規定する国際約束の名称としてよく使われる用語でございます。これまでに、台湾との関係を、非政府間の実務関係として、日台双方の窓口機関で取り交わしてきた文書の名称といたしましては、アグリーメントという用語が使われたことはないというふうに承知しているところでございます。

 先ほど米国との関係についても言及がございましたけれども、台湾と第三国ないしは第三国の民間団体との間で取り交わされた文書の名称については、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、先ほど言及もございましたように、答弁書でお答えしました中身といたしましては、政府としましては、台湾との間で、国家間の国際約束である租税条約を締結することは考えていないという見解を示させていただいたところでございまして、この立場につきましては変更はございません。

 いずれにいたしましても、以上申し上げましたような、民間取り決めを積み上げることにより経済連携の強化を図っていくという基本的な考え方に従いまして、これからも両協会の活動を注視すると同時に、政府としても、可能な、必要な限りの支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。

小宮山委員 大変丁寧にお答えいただいてありがとうございます。

 大臣、日本と台湾との二重課税回避、これは相当経済的にも両国に有意なものになるかと思います。これは私は取り決めをするということは大変重要かと思います。最後ではございますけれども、大臣の見解をお聞かせいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、台湾との間で二重課税を回避するということ、これは日本企業の中でも大変関心の高いことであると認識をしています。

 台湾は、経済関係ですとか人的交流ですとか、こうしたものを通じて深い関係にある重要なパートナーだと認識しておりますので、こうした実務協力を推進することは大変有意義である、これは基本的に認識をしています。

 そういった観点から、日台双方の窓口機関の協議をしっかり注視していきたいと思っていますが、我が国としましては、我が国の基本的な立場を踏まえつつ、ぜひ協力をしていきたいと考えています。

小宮山委員 中国政府との国交を樹立している多くの国もアグリーメント、協定を結んでいるところでもございます。ぜひ前向きに、また早急にこの問題が進むことを心から願いまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 ただいま議題となっております各件中、まず、投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の以上三件について議事を進めます。

 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日・サウジアラビア、日・モザンビーク及び日・ミャンマーの三つの投資協定に反対の立場から討論を行います。

 今回の三協定は、第二次安倍政権下で締結した最初の協定であり、安倍政権が経済政策の柱とする成長戦略に基づき、日本の多国籍企業が海外で最大限収益を上げるための投資を促進するため締結した協定であります。

 日本の財界は、国内では法人の減税や労働法制の改悪を、国外では日本の多国籍企業が多額の収益を上げられるような条件整備、投資協定や租税条約の締結を、強く求めています。

 安倍総理を先頭に進めるトップセールスは、こうした財界の強い要請と一体となって、原発や武器を含むさまざまな分野に広がり、就任一年半の間に延べ四十三カ国にも及んでいます。

 とりわけ中東、アジア、アフリカの途上国向けが重視される中で、今回の三協定が結ばれたのであります。

 まず、サウジアラビアとの協定について言えば、安倍総理は、昨年四月に同国を訪問し、世界一安全な原子力発電の技術を提供できるなどと原発輸出を表明しました。今協定は、この原発輸出を進める条件づくりであり、容認できません。

 次に、モザンビークとの協定について言えば、安倍総理は、ことし一月の同国訪問時の共同声明で、日本政府が現地で行うODA事業であるプロサバンナ計画を推進する立場を明らかにしました。今協定は、モザンビークの農民に犠牲を強いる同計画をめぐり、日本の多国籍企業が収益を上げるための条件整備としての性格を持つことは明白であります。

 さらに、ミャンマーとの協定は、投資に関する法制度の未整備が指摘される同国で、その法整備の不十分さを下支えし、地元の元軍閥資本と一体に、日本の多国籍企業によるミャンマー国民への搾取を強める条件づくりにほかなりません。

 今回の協定には、TPPをめぐって重大な問題点が明るみになってきたISDS条項が盛り込まれています。一企業が国家を訴え、一企業が国家の主権を脅かすことについても看過できません。

 以上を表明し、今回の三投資協定への反対討論とします。

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 まず、投資の促進及び保護に関する日本国とサウジアラビア王国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の相互の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とモザンビーク共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国政府とミャンマー連邦共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について議事を進めます。

 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 航空業務に関する日本国政府とビルマ連邦政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

鈴木委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 国の安全保障に関する件について、安全保障委員会に対し連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、安全保障委員長と協議の上決定いたしますので、御了承願います。

 次回は、来る三十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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