衆議院

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第13号 平成13年5月23日(水曜日)

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平成十三年五月二十三日(水曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君

      金田 英行君    上川 陽子君

      北村 誠吾君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    菱田 嘉明君

     吉田六左エ門君    岩國 哲人君

      古賀 一成君    後藤 茂之君

      佐藤謙一郎君    城島 正光君

      津川 祥吾君    筒井 信隆君

      永田 寿康君    楢崎 欣弥君

      江田 康幸君    黄川田 徹君

      高橋 嘉信君    中林よし子君

      松本 善明君    菅野 哲雄君

      山口わか子君    金子 恭之君

      藤波 孝生君

    …………………………………

   農林水産大臣       武部  勤君

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   環境副大臣        風間  昶君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議

   官)           田中壮一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長

   )            木下 寛之君

   政府参考人

   (林野庁長官)      中須 勇雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次

   長)           丸山  博君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  谷野龍一郎君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長

   )            中川 雅治君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  七条  明君     原田昇左右君

同月二十二日

 辞任         補欠選任

  原田昇左右君     七条  明君

同月二十三日

 辞任         補欠選任

  佐藤謙一郎君     岩國 哲人君

  高橋 嘉信君     黄川田 徹君

同日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     佐藤謙一郎君

  黄川田 徹君     高橋 嘉信君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水産基本法案(内閣提出第七五号)

 漁業法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)

 海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七七号)




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水産基本法案、漁業法等の一部を改正する法律案及び海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省農村振興局長木下寛之君、林野庁長官中須勇雄君、水産庁長官渡辺好明君、文部科学省大臣官房審議官田中壮一郎君、厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君、国土交通省総合政策局次長丸山博君、国土交通省海事局長谷野龍一郎君、海上保安庁長官縄野克彦君及び環境省総合環境政策局長中川雅治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

堀込委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 おはようございます。民主党の鉢呂吉雄でございます。

 まずは、武部農林水産大臣を初め、それぞれの副大臣、政務官、きょうは環境省から風間副大臣にも答弁席に来ていただきました。また、就任に当たって、大変おめでとうございました。小泉内閣の構造改革、そのもとにぜひ御活躍をお祈り申し上げるところでございます。

 衆参で予算委員会がございましたので、その関係で、きょうは水産基本法の審議でありますけれども、大臣に御質問をいたしたい、このように思います。

 まず、道路特定財源の使途の見直しについて、きのうも小泉大臣は思い切ってこれをやるんだということを表明されておりまして、農水省も農道等の道路の関係がございますので、武部大臣としてこの小泉方針についてどのように考えるのか、まずこの点からお聞きいたします。

武部国務大臣 私も、予算委員会で小泉総理の答弁も聞いておりますし、塩川財務大臣のお話なども聞いております。

 先生御指摘の件は、農免農道整備事業等のいわゆる揮発油税のことだ、かように存じますが、この点につきましては、道路特定財源の具体的な見直し内容が明らかになった段階で検討してまいりたい、かように考えております。

鉢呂委員 塩川財務大臣は、公共事業全般の配分の見直しをする、このように昨日答弁をされております。

 農水省も公共事業、全体の一割程度でありますけれども、持っておるところでありまして、民主党、我が党の考え方を申し上げますと、我が党も公共事業について、今の固定的な状態をやはり変えていかなければならないということで、今我が党で検討しておりますのは、農水省所管も、現状、今年度、十三年度の予算を五割程度、五年後に削減する。

 全部で五割程度削減するというのは非常に思い切った方法でありますけれども、そのかわり重点化事項というものをつくりまして、きのうも武部農水大臣は予算委員会で御答弁されております、私と大体同じ、民主党と同じ考えでありましたけれども。

 いわゆる農業経営の直接所得補償、これは公共事業とは言えませんけれども、そういうもの。あるいは、直接所得補償的な意味合いも含めて、有機農業を奨励するための施策。あるいは、民主党は緑のダムということを言っておるわけでありますけれども、いわゆる森林・林業の整備に重点化していくというようなことで、これに五千億をつけ加えて、五年後には農水省の予算を三割程度減らす必要があるだろう。

 これは私ども農業地帯にいる者としては大変厳しいことでありますけれども、やはりそのことは必要でないだろうか。余りにも、農水省のこの二十年間を見ても、部門ごとのシェアが違っていません。旧構造改善局の土地改良というものが非常に大きなシェアを占めておる。まあ必要性もあるのでしょうけれども、しかし、今の時点に立って農林省関係の予算を見直すという姿勢が大切だというふうに私どもも考えております。

 そういう意味で、大臣として、公共事業のシェアの配分というのはもう間近に来るわけでありますから、八月の概算要求に向けてどういった方向をとるのか、やはり基本的な考えを聞かせていただきたい。

武部国務大臣 私どもは就任以来、農林水産業の構造改革、それから農山漁村の新たなる可能性を切り開いていくということを申し上げております。

 構造改革という観点で申し上げますと、やはり、自給率四五%というこの十年間の基本計画に沿って、自給率貢献派といいますか、そのための担い手とか経営体とかというものをどうしていくか、ここに重点を置いて集中的に投資をしていくということが必要だと思います。そのための公共事業、農林水産公共ということも、足腰の強い、生産性の高い、効率のいい基盤をつくっていくという意味においてはまさに先行投資だ、こう思っております。

 それから、新たなる農山漁村を切り開いていくということは、先般予算委員会でも申し上げましたように、既存の農村集落というものを、もう高齢社会になって若い人もいなくなってきているというときに、山のてっぺんに一人で住んでいるというようなことは、これはもう生命の安全ということを考えただけでも大変ですから、そういう意味では、集落の再編のようなこともぜひ必要であろうと思いますし、都市と農山漁村の関係というものは相対立するものではない、共生、対流、融合というふうな、そういう関係にあるべきだ、私はこう思っております。

 そういう意味でも、新しい農山漁村のコミュニティーづくりということにもチャレンジしていかなければならない。そういう意味では、当然今までの予算配分ということは、徹底して事業も見直し、また新たなるものへの重点配分ということも必要になってくるというふうに考えておりますが、農林水産省としては、もうかなりこれまでの公共事業も見直しまして、この見直しの結果、事業費で約二千六十二億円削減する、削減効果が出てくるというところまでやっております。

 また、新しい基本法、食料・農業・農村の基本法の制定に基づいて政策転換も試みておりますし、林業にありましても、またこの委員会で今御論議いただいております水産にありましても、新しい基本法に基づいて大胆な政策転換をしていこうという前提で御審議をいただいておりますし、我々はそういう考えでこれから予算についても重点的に集中的に考えていかなければならない。そういう意味では、構造改革を前提に、当然予算の配分についても変わってくる、このように考えている次第でございます。

鉢呂委員 武部大臣、改革断行、構造改革断行、その言葉よしでありますけれども、だんだん農水省の官僚に巻かれないように注意をした方がいいと思うのです。これまでもやってきたというのは全くうそでありまして、これは大臣の気迫でやり抜かなかったら、田中眞紀子さんの二の舞になっては困りますので、よろしくお願い申し上げたいと思っております。

 これは限られた予算の中でやるという形で大転換をしなければなりませんから、その中で何が重点化か。今の大臣のその答弁では、相当もう、今までと同じような従来型の予算配分に陥りがちでありますから、もう一踏ん張り、気迫を込めて、政治家三人が出ておるわけでありますから、頑張ってもらわなければならない、今受けた印象ではこう思います。

 大臣は、農水省の、農林水産の構造改革断行、前回の大臣の所信表明に対する質疑を聞いていまして、最初は、うちの小平委員に対する質疑では、いわゆる集中化して、専業的な農業経営に特化してこれからの構造改革をやっていくのだと。しかし、だんだん後半になってくると、ばらまき的な、わからないような論調になったというふうに、私は一日ずっと聞いておりまして聞こえましたから、やはり何が効果をあらわして最終的に日本の農業や林業、水産を変えていくのかという形で所期の目的を達成していただきたい、こういうふうに思います。

 そこで、大臣の所信表明を見させていただきまして、構造改革断行と並んで、やはり自然環境の保全等に伴う循環型社会の実現というものを大きな柱にしているというふうに私は見させていただきました。

 ちょうど日曜日、私、地元に帰りましたら、武部大臣と同じ地元でありますから、北海道新聞に、日曜日にちょうど読者の欄がありまして、「風力発電を拒む大臣発言に失望」と。これは何だろうなと思って、私、実は最初の発言の新聞を見ていなかったのです、ロシアに行っていた関係もありまして。

 そうしますと、武部大臣は、風力発電は動かないと巨大な廃棄物になるから、やはり原発の方がいいというようなコメントを地元でされたようでありまして、その横に、ちょうど日曜日に、大臣のお隣の選挙区の別海町で、大きな家畜ふん尿対策として、バイオガス、ふん尿を発酵させて、一千頭の乳牛から約二百三十世帯の電力をつくるというのが、これは旧北海道開発庁の所管もあって、ようやく完成したというようなことが出ておりました。

 私は、二十一世紀はやはり、大臣も所信表明で述べているように循環型の社会、環境をこの地球上でとうとびながら人間が生きていくということだろうと思っておりまして、この二つの地元の発言なり事例を考えながら、大臣としての環境に対する考え方をお聞きいたしたいと思います。

武部国務大臣 道新の記事は、私の話したことを正確に書いておりません。私が申し上げましたのは、私は自然エネルギー賛成派です、こういうことを申し上げたわけです。ただ、風力発電なども、後先のこともちゃんと考えていただかなければいけませんよと。

 これはどういうことかというと、野鳥の会などは反対していますね。巨大な風力発電がだっと並び立たせられたときに、本当に野鳥の生態系も変わってくるという問題も当然あります。それから、新たなるエネルギーが次から次へと開発されたときに、風力発電を必要としないという事態になったときに、これは巨大な廃棄物になってしまいませんか。だれがどのように取り除いていくのか。

 例を挙げて、例えば今別海の地名が出ましたから申し上げますと、酪農地帯ではかつてのブロック形のサイロがそのまま残っていますよね。これは地元の人間からすれば、本当に寂しい象徴なんです。都市の人たちがたまたま訪れたときには、ノスタルジアといいますか、ある意味では北海道の大原野といいますか、そういったところの過去に思いをめぐらせて、感傷的になるといいますか、それはいい感傷になるのかもしれません。

 しかし、地元の者からすれば、そういったものをだれも取り除いてくれませんねと。そういうことにならないように十分配慮して、風力発電や他のエネルギー、自然エネルギーについても考えていかなければならないのではないかということを申し上げたわけです。

 原子力が一番というのは、地球温暖化の問題などを考えたときに――日の丸・君が代も当初は随分反対が多かったし、自衛隊も認めなかったという、そういう時代もあったわけですけれども、今はそれは当たり前になっておりますし、憲法論議も十年前とは全然違いますね。そういう意味で、安全性の問題などがきちっと確立されたときには、原子力エネルギーが一番クリーンだという時代になるかもしれませんね。

 いずれにしても、自然エネルギー、結構ですけれども、そういった後先のことも考えてやらなければならぬということを申し上げたので、私は斜里出身ですから、知床半島に風力発電がずらっと並ぶのは反対ですと言ったのです。知床半島は何もないのが一番いいということは、子供から住んでいる者にとっては、そのままの姿が一番いいということを、例を挙げて私は申し上げたわけでございます。

 なお、今家畜のふん尿等、メタンガスを燃やすことによって電力を起こす、これは私、正直に申し上げまして、このことに先頭になって取り組んできた事業です。これは別海町と湧別町でやっておりますけれども、湧別の場合には、二百頭の牛を飼うことによって一日一万円の電力収入になるという事業計画なわけでありまして、これから新たなる、そういう廃棄物なども利用して、バイオマスによるエネルギー、そしてリサイクル、リユース、リデュースというような循環型社会の目指すべき方向でそういったものが再利用されていくということは非常に大事なことだと思いまして、そういうことにつきましては、農林水産省といたしましても積極的に取り組んでいく必要がある、かように考えている次第でございます。

鉢呂委員 そこで、水産基本法関係法案の審議に入らせていただきます。

 私はきょうは、審議も相当進んでおりますから、民主党のこの法案に対する特に修正の項目を中心に大臣に見解をお願いいたしますし、また与野党が、立法府でありますから、基本的にはよりよい法案をつくっていく。これまでは、どちらかというと、農水省が出された法案について少しでも修正すれば、局長や課長の出世に影響するかどうかわかりませんけれども、修正に対しては非常に後ろ向きでした。しかし、農業基本法でも三つの修正をさせていただきまして、これはやはり、立法府の権威といいますか、その存在価値を示したと思います。

 私はきょう、七、八点の修正をすべき項目について大臣に御提示をいたしますので、ぜひ大臣の指導性、また与党の皆さんの謙虚な、前向きな取り組みで、会期も非常に迫っておりますから、なかなか他の法案の関係もありますけれども、基本法でありますから、修正すべきところは修正するという考えでぜひお聞き取りをいただきたいものだというふうに思っております。

 まず、水産業というのは、大臣も御案内のとおりでありまして、いわゆる環境や生態系にある面では依存する産業だというふうに思います。これは異存がないと思います。今回、水産基本法の中身、水産基本法は基本理念でありますから抽象的な文言でありますけれども、そこにこれから二十一世紀の水産業のあり方をきちんと明示すべきものであるというふうに思います。しかし、必ずしも環境あるいは生態系に非常に深くかかわっておるということをきちんと明示しておらないのではないかというふうに私ども思っておるところでございます。

 そういう点で、まずこの「目的」は非常に抽象的であります。国民生活とか日本の経済に寄与するというようなことでありますけれども、基本理念のところにこの水産業の持つ環境とのかかわりについてきちんと明示をすべきである。

 大臣、必ずしも条文をそれぞれ読んでいらっしゃらないと思いますけれども、第二条の第二項に、いわゆる水産動植物の増殖、養殖、大臣の地元のホタテなんかの養殖について、「環境との調和に配慮しつつ」というような表現で記されております。あくまでも漁業の増養殖の一つの必要性として環境との調和が必要なんだという言い方であります。

 私どもは、やはり独立の条文を起こすぐらいの気持ちで、例えば、水産資源が生態系の構成要素で限りあるものであり、その持続的な利用を確保するため海洋及び内水面の環境の保全を図らなければならないというような形で独立条文を起こすことが必要でないか、このように考えておるわけであります。

 大臣、この場で、それはいいですよというようなことでなくてもよろしいですから、このような考え方について御所見をいただきたいと思います。

武部国務大臣 細かい条文のことは詳しく承知しておりませんが、およそ基本的な考え方を申し上げますと、先般の農林水産委員会でも議論がございましたけれども、私は、環境との調和ということが一番広い包括的な意味があるのではないか、このように思っております。例えば環境保全ということに限定しますと、これは全く現状に手をつけないというような考え方が基本になってくるのじゃないのかな、かように思うのです。

 一例を挙げますと、私のふるさとの知床半島で、漁師が原始河川の中に小型ブルを入れて河道整備したことによっておとがめを受けたことがあるのです。どうしてそんなことを漁業者がやるかというと、その近くに漁場があるわけですね。大雨が降った後のことです。そして、大雨が降りますと、流木が山から流れてきます。その流木が漁場に激突したら本当に命にかかわる問題になる。ですから、川が荒れないように河道を整備した。しかし、それは許されないことをやったといっておとがめを受けるというのは、私は非常に疑問に思いました。

 つまり、環境を保全するということも環境との調和という中には含まれるわけですね。あるいは、環境を修復する、復元する、改良するということも調和という言葉の中に全部含まれるのじゃないかと思いまして、私はむしろ、先ほど申し上げましたような事例などを考えましても、やはり環境と調和するという漁業の営み方、生活の営み方ということが一番いいのじゃないか、こういう考えでございます。

鉢呂委員 大臣、ちょっと手短に、地元の実例を挙げますと長くなりますので。

 それと、今、環境の保全か環境の調和か、そういう文言のことでなくて、いわゆる理念のところに環境と水産業とのかかわりをきちんと明記すべきであるということについて御所見をいただきたかったわけであります。

 そこで、一々水産庁長官に出ていただければ明瞭ですけれども、きょうは指名しておりませんから私の方で説明しますけれども、環境省と水産庁の協議の中でも、この第一条の「目的」の中に、国民生活の安定向上のためにこの水産基本法をつくるんだという目的がありまして、この「国民生活の安定向上」の中に環境の保全という文言的な理念というものが含まれるんだというふうに水産庁は環境省に回答をしております。

 そういう意味では環境保全と水産業のかかわりというものを水産庁も認めておるわけでありまして、私は、そういう意味からすれば、明示をしないで含まれるというようなことであれば、やはりきちっと明示をして、基本法の一つの大きな柱にしていただきたい。

 といいますのは、今、関係法も含めて、この法案の流れは、これまでの水産業の課題は、資源がだんだん枯渇してくる、その枯渇した大きな原因は過剰にとり過ぎる、このぐらいしか生息していないのにとり過ぎて枯渇をしていく、したがって、それを資源管理していこう。ある面では、このぐらいの量しかいないんだから、計画的にこういう量をとっていこうという計画性を持たせようということで、水産庁のこの法案の大きな柱になっておるわけであります。

 しかし、大臣、もう一つ大きなことは、そういう資源管理と同時に、そういう魚がすむ環境、いわゆる藻場ですとか、いろいろな魚がすむ環境をきちんとしておくということももう一つ大事なことなんです。

 これはほかの環境全体のことに関係することでもありますから、水産庁としてもなかなかやりにくい面があるということなんですけれども、やはり基本法ですから、環境保全という意味合いをきちんとこの基本法の大きな柱として明示することが大事だというふうに私は考えますから、ぜひこれは大臣の方でも検討していただきたいし、また与野党挙げて、この辺の修正は立法府で行うというぐらいの形が必要だというふうに思います。

 これは、役所は環境省ですとかいろいろなところのかかわりがありますから、そこでいろいろ精査をする中でなかなか入れられないという面があるのだろうというふうに私は推測いたしますから、きちっと理念のところに環境保全と水産業とのかかわりというものを明示する必要がある。大臣が前向きな答弁ができるかどうか、それだけでいいですから、御答弁願いたいと思います。

武部国務大臣 私は極めて前向きな答弁をしていると思っております。

 事例を挙げると長くなるから申し上げないようにしたいと思いますけれども、環境保全という意味は、先生、どのようにお考えなのでしょうか。環境を変えないということ、黙っていても、上流から水が流れてくる、そして、畑の土に含まれる化学肥料だとか農薬なども含んだそういった土砂がサロマ湖あたりにも入ってくる、これをそのままにしておくと死の海になってしまう。

 したがって、すべてのものが環境を重視して、望ましい環境を考えた公共事業なりあるいは農業基盤整備なり、あるいはそういった海水面、内水面の利用とかということを考えなきゃならない。そういう意味では、保全というよりもやはり調和ということの方が幅広い、重い意味があるのではないか、私はこう思っておりまして、当然その中には望ましい環境を保全するということも含まれている、こう理解しているのでございますが、御理解いただけないでしょうか。

鉢呂委員 ちょっと問題提起を御理解いただけないようでありますけれども、今そのことを問題にしておるのではなくて、水産業と環境とのかかわりについて、この法案は十七条で書いてありますけれども、それは個別のところの条文でありまして、大前提の理念のところに明記されておらないということは、きちっとやはり明示をすべきであるということをお聞きしておるわけであります。そこは、今後また与野党で協議をしていきますから、大臣もぜひ前向きにかかわっていただきたいと思います。

 後先逆になりますけれども、今大臣の言われた「環境との調和に配慮」ということと環境の保全に配慮しつつという、これは基本法の第二条、第十六条、第二十六条に三カ所明記をされております。きょう、環境省の風間副大臣が来ておりますので、この言葉の意味といいますか、どのようなことであるのか、まず御答弁願いたいと思います。

風間副大臣 今鉢呂先生からの御指摘のありました水産基本法の第二条、十六条、二十六条にまさしく「環境との調和に配慮」しつつという言葉、文言がございます。

 その前に、環境省としても、水産業だけじゃなくて、農業、林業、あらゆる産業に対しまして環境への配慮が織り込めるような、そういうことが必要だということで、各省庁の施策に反映をしていただけるような努力を今しているところでございます。

 今お尋ねのありました件でありますけれども、率直に言って、法律的に厳密に環境の保全という言葉と環境との調和と立て分けているつもりはございません。ただ、ニュアンス的には、環境の保全というのは環境をいい状態に保つことだということでありますけれども、環境との調和というのは事業のあり方そのものを環境に調和して行うという違いかなというふうに私は理解しているところでございます。

 いずれにしましても、環境省としては、社会経済活動が十分に営まれるように、とりわけ日本の農林水産、特にこの水産、貴重なたんぱく資源、日本人の胃袋をきちっと保っていくためにも、各段階、各施策に持続可能な社会が形成されるようにしていきたいというふうに思っているところでございます。

鉢呂委員 事前に私も環境省と随分この点について、これは単に文言の違いでなくて重要なものを含んでおるということで、協議をさせていただきました。

 環境の保全という意味は、今副大臣言われましたように、環境を良好な状態に保っていくこと。それから、環境との調和という意味は、文章的には調和が入るのですけれども、二十六条は、いわゆる漁港とか漁場を整備するということについて「環境との調和に配慮しつつ、」と。ですから、漁港の整備という事業について環境との調和ということであります。これは、そういう事業等のあり方そのものを環境に調和したものにしていくという意味合いだそうです。

 今情報公開の時代ですから、環境省と水産庁の協議の中身について全部見させていただきました。やはりお役所ですから、大変詳しい協議を経て、合意事項もつくっております。ただし、この環境の保全と環境との調和という文言については、環境省は水産庁と協議をしておらないというふうに述べておりますから、この点についてまだきちっとしたすり合わせをしておらない。今副大臣言われましたように、ニュアンスの違い程度というような感じで受け取っておったようであります。

 しかし、今文言で言いましたけれども、非常に違いがあるのです。大臣は今、環境との調和でいいのではないかと。その意味合いは、環境を全然手をつけずにそのままにしておくということは不可能であります。したがって、そういう意味では調和ということが正しいのだ。その言葉だけ見ればそのとおりであります。しかし、文言的には環境の保全に配慮しつつと配慮という言葉が入ります。環境の保全に配慮しつつという意味合いも、全く環境に手をつけないという意味合いではありません。これは、やむを得ず環境に影響を与えるようなことをやらざるを得ないという意味合いです。

 大臣も運輸とか商工関係に詳しいわけでありますけれども、漁港と同じような形で、港湾法という法律が旧運輸省の所管であるわけであります。この港湾法では、「環境の保全に配慮しつつ、港湾の秩序ある整備」を図ることということが第一条の「目的」に明記をされておりまして、この種の、国土交通省にも河川法とかさまざまな法律がありますけれども、環境の保全に配慮しつつという法律条文でほぼ統一をされております。

 変わったのは、一昨年成立をした農水省所管の農業基本法。私は、そのときも、この環境保全と環境との調和の違いについてこの場で随分指摘をさせていただきましたけれども、やはりこれは環境の保全に配慮しつつというのが妥当であるというふうに思うわけでありまして、この点も修正をぜひしていただきたい、このように考えるわけであります。

 大臣は同じ答弁しかしないと思いますから、なかなか、答弁を求めても問題あるのですけれども、私の言わんとしたことについては御理解されているのかどうか、御答弁願いたいと思います。

武部国務大臣 言わんとすることは十二分に理解できます。今度の基本法は、水産物の安定供給ということが一つの大きなねらいになっていると思うのですね。そのためには、水産資源の保存管理と並んで、先生御指摘のように、漁場環境を望ましい形に、姿に保全するということは当然だ、このように思っております。

 しかし、資源を守り、資源を育て、資源に見合った漁業活動を行っていくということが重要でありますから、保全だけじゃないと思うのですね。先ほども言いましたように、環境の修復あるいは復元、改良、さまざまな課題があるのではないかと私は思います。そういう意味で、私は、ちょっと保全というと狭く感ずるような気がいたします。ですから、環境との調和ということで、かなりさまざまな範囲にわたりまして、課題にわたりまして対応できる、それが一番大事だと思うのです。

 例えて言いますと、オホーツク海も、オッタートロールの略奪漁業で海底がならされちゃって、魚礁がなくなっちゃった。それは、魚礁をなくさない操業方法ということも考えなければならぬのです。こうなると、やはり調和という意味の方が、どうあるべきかということを正確に言いあらわしているのじゃないかな、こう思います。当然、保全は入ってくると思います。そのことは同感です。

鉢呂委員 この法案をつくる際のもとになります水産基本政策大綱というのを、一昨年の十二月に水産庁は当時の玉沢農水大臣名で出しておりまして、「水産基盤の整備」、要するに、漁港、漁場の整備という欄がありまして、三つの基本方向を指し示しております。その2も「資源の回復を図るための水産資源の生息環境となる漁場等の積極的な保全・創造」ということで、漁場環境の積極的な保全、創造という形を使っておるわけでありまして、その大綱と同等の法律条文にすべきである。

 水産庁もこれを使ってはおるわけでありまして、「環境との調和に配慮しつつ、」という、配慮がなければ大臣の言われるとおりです。この調和と配慮というのは、同じような文言を二つ使って、環境に対する意味合いを非常に弱くしておるというところでありまして、そこはやはり大臣、きちっとした姿勢で臨んでいただきたいなというふうに考えております。

 それでは、時間がなくなりますから、次のところに移りたいと思います。

 そこで、先ほども言いましたけれども、この基本法等に流れておる精神は、資源の管理については非常に熱心に書き込んであります。しかし同時に、いわゆる環境保全、環境調和でもいいのですけれども、環境問題に対しては非常に弱い。先ほどの水産政策大綱でも、この法律ができた場合には、いわゆる漁場環境保全方針というものをつくるということを述べておるにすぎないわけであります。もちろん、水産基本法に基づく基本計画についても、漁場環境保全についてのことを述べるという形をとっておりますけれども、いかにも干潟、海浜、藻場の復元、回復というものについての水産庁の考えは弱い。

 私は、閣法といいますか、個別法になりますけれども、この漁場環境保全に関する法律をきちっと整備をして新たなものにしていく必要があるのではないか。そういう意味では、この法律化の一定の方向を大臣から明示をしてほしい。――資料は見なくてもよろしいです。きょうは十人質問しますから大臣もなかなか大変ですから、そんなお役人がつくった資料で答弁しなくても、私はそんな言質はとりません。大丈夫です。

 基本的に、そういう漁場環境の保全に関する、調和でもいいです、高度成長以降、琵琶湖に相当する大変大きな埋め立てが行われ、その二倍の漁業権についてなくなってしまったのですね。大変な日本の島国としての環境、海岸線の、漁場としての良好なところを失ったわけであります。これは、有明海の中もそういうことで今大変な問題になっておるわけでありまして、もう一度そういう魚がすみやすい環境をつくり出すということが、資源の量的な管理と同時に、もう一方の大きな柱としてあるのではないか。そこのところについて、大臣の率直なお考えを聞かせていただければよろしいかと思います。

武部国務大臣 先生のお考えが、この水産基本法で基本的なものをきちっと打ち立てているのじゃないかと思っております。あと具体的には、今後さまざまな政策展開で、当然環境を修復したりあるいは新たな創造をしたり、そういったことをやっていかなければならない、政策課題としては当然だ、かように存じます。

鉢呂委員 次に移ります。

 内閣改造前の谷津農水大臣のときでありますけれども、水産業、漁村におけるいわゆる多面的な機能について論議になりました。まだ国民の理解が不十分なので、多面的機能の普及に努めるというような条文でこの法案は成り立っておるわけでありますけれども、谷津農水大臣もこの多面的機能の重要さについては、大変熱っぽくここで御答弁されました。

 そうであれば、やはりきちんとこの条文を、国民に普及する、理解を求める段階だというような表現ではなくて、こういう多面的機能がある、農業基本法にも林業基本法にもそのことは基本理念として明記されているわけでありますから、そのように修正をする必要がある。改造前のこの論議で、各与野党の委員の皆さんからそういう質問や意見が出ました。あるいは、この法案をつくる段階の与党の事前の論議でもこのことが非常に大きな論議になったというふうに私は聞いております。

 基本法でありますから、まだ理解が足りないからということではなくて、近い将来を見据えて、むしろ国民に理解を求めるためにも基本法にそのことを明記すべきである、私はこのように考えますけれども、大臣の御所見をいただきたいと思います。

武部国務大臣 基本法に明記する必要があるかどうかということについていえば、私は、この基本法に十二分にそういう意図が盛り込まれている、かように思います。あとは、先ほども御答弁申し上げましたように、さまざまな政策課題に対してどのような政策を実行していくかということだろうと思うのですね。基本法は基本的な法律ですから、ここに全部盛り込むということの必要性があるかどうかということについては、いささか私は疑問といいますか、考える余地が残っているのじゃないのかなというふうに思います。

 修正案については与野党でいろいろと御協議があるだろう、こう思いますので、これ以上立ち入ったことは申し上げる考えはありませんけれども、この基本法を通していただくことで一つの大きな方向づけがなされるのではないか。当然、国民的合意のもとにやらなきゃならぬことはやっていかなきゃならぬ、あるいは現代的な課題ということは時代時代によってどんどん変わってくるわけでありますから、それはその時代に応じてワーカブルな政策、施策展開ということをやっていくということは当然必要になることは言うまでもない、かように思います。

鉢呂委員 この法案にはきちっと明記をされておらないのです。国民に対する理解を求める、普及活動を行うという程度のことであります。例えばことし発行した水産白書においても、水産、漁村の多面的機能について具体的に明記をされております。

 国境監視機能なんというのは一番大きな課題でして、この長い海岸線に漁村という集落がなくなれば、本当に国境に何かあったときどういう形になるんだと。小平理事も言っておりますように、スイス等では中山間は国境が陸地でつながっていますから、そこに人が存在することによって国境を監視する。北欧は海岸線ですから、漁業者がいることによっておのずから一つの国境監視になるというような意味合いがある。

 その他、さまざまな海難があったときに、だれかが遭難したときに、そこにきちっと海難救助を、今無償でやっている状態ですけれども、遊漁等の海に親しむ国民が大変多いのですけれども、そういう海難救助の仕事とかそういう意味合いがあるわけであります。

 これはもう大臣、水産庁などが、WTOのこれからの林業と水産物の交渉の我が国の基本的な考えを打ち出しております。その中にも、対外的に、外に向かっては、主張のポイントというところで、漁業、漁村の有する多面的機能に配慮すべきである、水産物の貿易に関して、水産物の市場アクセスにおいても、漁業、漁村の多面的機能に配慮するということを外国に向かっては熱心に皆さん訴えておるのです。

 ただ、国内は何も対策もしていなければ、まだ国民も知らないのだ、だからここには書き込めないのだ、そんなことを対外的に言ったって、大臣、何ぼ大臣がこれから対外交渉を、十一月に閣僚会議があっても、日本が、水産の多面的機能があるのです、では日本ではどういう政策を講じているのですかと言ったら、いや、それは何もないですということでは、外に向かっては頭から考えたようなことを言っても、対内的に具体的な施策がなければ何の力にもならないわけですね。ここはやはりきちんと明記をすべきである。

 大臣は、これが書いてあるようなことも言いつつ、これからまたどうだとかという、もう少し大臣の指導性が出なかったらいいものになりませんよ。再度御答弁願います。

武部国務大臣 水産政策については、法律、基本法また実施法、そしてこういう委員会や国会における論議、そういったものを踏まえて着実に実施されていくべきものだ、かように思います。

 水産基本法案の中にも、先生はもっと明確にさまざまな事例を挙げて具体的に法文化せよということなのかもしれませんが、この法案の三十二条には、「水産業及び漁村の有する水産物の供給の機能以外の多面にわたる機能に関する情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。」こういうふうに書き込んであるわけですね。ですから、私は、このことで十分だ、かように思うのです。

 あとは、具体的な問題、さまざまございます、それをどのように実施、実行していくかということで、それは年々歳々いろいろな案件が出てくる、こう思いますので、私は、この水産基本法の原案が先生がおっしゃっているようなことを明記していないというふうには理解しておらないのであります。

 きょうの先生の議論を踏まえて、私もなるほどとも思いますし、これは今後の行政推進の上でしっかりやっていかなきゃならぬということをさらに新たにさせていただいた次第でございますので、修正する必要は特別ないのではないか、このように思うのですが、いかがなんでしょうか。

鉢呂委員 大臣、この三十二条は、国民の理解と関心を深めるため、その機能に関する、その機能というのは多面的機能に関する情報の提供その他の施策を講ずるものとするということで、あくまでも国民の理解を得るための情報提供等だということで、大臣はまだ新しいですからそんなに今の答弁どうだということは言いませんけれども、そういうことにはなっていないのです。多面的な機能についての何らかの施策を講ずるという文言ではなくて、国民の理解を深めるための情報提供という段階にとどまっておるわけでありまして、そこをやはりきちんとすべきである。

 我が党の筒井さんの質問に対して、谷津農水大臣、水産庁長官も、漁業、漁村の多面的機能というのは、そのもの自体が多面的機能ということでなくて、物理的なものではなくて、それに付随するといいますか、漁村を構成するとか、そういうことに伴う役割だと。そのことは認めてもいいわけであります。

 しかし、厳然として漁業、漁村というものがいろいろな役割を果たしておるということについて、やはり条文として明記をするということが私は大事だ。対外的にいっても、大臣が大きく出るためには、やはりそういう法律の裏打ちがあるということでもって言っているわけであります。御理解を願いたいと思います。

 それに伴う、いわゆる国のかかわりというものをどうするのか。これはそのときの谷津前大臣も、松本善明先生の質問に対して、水産業においても、多面的機能を重視している一つの業種、水産業の人たちが大変な苦境に立っている、そういう面を踏まえてこれを、これをというのは直接所得補償を検討しなければならないのではないかということを今考えておりますということで、検討という形で極めて前向きな谷津大臣のとらえ方の御答弁がございました。

 私は、そういう面ではぜひ検討ということをもう一歩前進させて、でき得れば農業の条件不利対策と同じような形で、去年からですか、いわゆる農山村の条件不利を補正するという意味で中山間の直接所得補償が実行に移されておるわけでありますけれども、それと同等の対策を講ずるべきである、でき得ればこの条文の修正という形をとっておくことが必要である、このように考えますけれども、大臣の御答弁をお願いします。

武部国務大臣 水産政策を推進する上で、国民的な理解と支持というものが不可欠だろうと思います。私は、この直接補償ということに直ちに踏み込む必要性がどの程度あるのかな。

 ただ、それ以外に、例えば水難救助、海難救助、これなんかは、本当に最近はプレジャーボートなどもふえまして、消防団はそれなりの手当をもらっていますけれども、漁民が全部出動するのですよ。それに対しての手当だとか報酬だとか、そういったことが非常に手薄になっている。

 ですから、今多面的な機能という、機能だけじゃありません。これは、水産業じゃなくて、それに携わる人々が昨今かなり幅広い範囲で活躍しているといいますか、海に出なければならない、そういう状況が数々あると思うのです。むしろそういったものを、目の前にある問題解決しなきゃならないことについてきちっとやっていくということが大事じゃないのかな、当然支払うべきそういった手当というようなことについてもっとしっかり対応していくということの方が、そういう事例の方が数々あるのじゃないのかな、私はそういうふうに思います。

 谷津大臣がお話しのとおり、やはり国民的な支持や理解、合意というものがないままに踏み込んだ検討ということは難しい。そういったものが得られるような努力、検討は必要だとは思いますけれども、お話のような、法律にそういったことも明記するということについては否定的にならざるを得ないというふうに思います。

鉢呂委員 いずれにしても、現状、検討であれば、この基本法の附帯条項に検討あるいは何年以内に検討というような法案修正というものが必要になるというふうに私はつけ加えておきたいと思います。

 漁村の振興についてであります。

 これも、農業基本法の場合は、食料・農業・農村基本法というふうに、法律の題名もそういう形になっていました。今回は、水産基本法ということで、漁業者から言わせれば、やはり食料・漁業・水産・漁村基本法にしてほしい、特に漁業という形が入らなかったことについて漁業者としては非常に思いがあるようでありました。特に、私は、法律の題名はやはりきちっと法律の中身を照らし出したものにしていただきたい。

 同時に、漁村の振興についても、この条文は、第三条の第二項に漁村の振興が記載されておるだけでありまして、きちっと単独条項を農業基本法のように設定して、漁村の振興というものを書き出しておくことが必要ではないかというふうに思います。

 時間がありませんから、もう一つ申し上げますけれども、農業基本法では、水産業と林業との連携についても記載をしております。しかし、水産基本法にはその規定がありません。やはり水産業は一番川下の産業でありますから、言ってみれば農業や林業のいい影響、悪い影響そのものを受けるわけであります。あるいは、都市住民の生活排水も含めてさまざまな影響を川下の産業であります水産業は受けるわけでありまして、ここはやはり農林業との関連性、これについての条文というものがなければならないのではないか、私はそういうふうに思います。

 むしろ水産業だからこそ、農業や林業との関連についての記述が私は必要になるというふうに思うわけでありまして、この点について、漁村と農業、林業との連携についての大臣の御答弁をいただいて、終わらせていただきたいと思います。

武部国務大臣 先生も北海道ですから、さまざまな襟裳岬の事例、常呂の漁民あるいは北海道の漁協婦人部が山に木を植えているというような、そういったことも十二分に御承知の上でお話しと思います。

 人間も自然生態系の一員でありますし、自然環境に十分配慮しながら、そのためにお互い国民的な合意のもとに協力し合って事業を進めるということは極めて大事なことだ、このように思っております。そういった課題は、もう既に農林水産省としても政策を実行して、漁協婦人部の皆さん方が木を植えるということについてもさまざまな支援策といいますか奨励策をとっておることでもございます。

 今お話ありましたように、基本法をもっと具体的に農業基本法のように明文化したらどうかということでございますけれども、水産というと、漁業も漁村もあるいは水産加工の問題も漁民生活も全部含まれる、一言で言いあらわしているいい名称だな、私はこのように思いまして、食料・農業・農村基本法というのは長ったらしくて、むしろぴんとこないな、私自身はそんな感覚なんですけれども、先生の御意見は非常に傾聴に値するもの、かように受けとめさせていただきまして、今後ともの御鞭撻、御指導をお願いしたいと思います。

鉢呂委員 これまで修正すべきところを七、八つ、言ってまいりました。委員長にお取り扱いを願いたいのですけれども、ぜひ与野党で、今述べました修正項目について、筆頭理事あるいは委員長のところで汗を流して努力をしていただきたい、このことをぜひ委員長にお願い申し上げるところでございます。

堀込委員長 理事会において、慎重かつ精力的に協議を進めていただくよう、取り扱わせていただきたいと思います。

鉢呂委員 終わります。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党の古賀一成でございます。

 水産基本法に関連してこれで三度目の質問をするような形になりますが、これまでの質疑の中で大変聞きたくても時間がなくて聞き取れなかったこと等々を中心に、きょうは三十分の時間をいただきまして、質問をしたいと思います。

 まず冒頭でございますけれども、今鉢呂議員の方からいわゆる水産基本法に対する民主党の修正案というものが提案をされました。私、当初からこの法律を見たときに思った疑問がございまして、それは何かといいますと、前法のいわゆる沿岸漁業等振興法というのは、理念といいますかターゲットというかあるいは策というか、そういうものがはっきりしておったわけですね。

 これがその後の、三十八年前の立法当時から比べまして、円高になった、輸入が増大した、あるいは本格的な二百海里時代が来た、いろいろな変化の中で水産基本法となったんですが、民主党案は、この水産基本法の体系の中に、幾つかの項目について一歩でも二歩でも具体的にもう少し踏み込んだらどうかという提案、一言で言えばそうなったわけでございますが、大臣の御答弁は、これは基本法だからこの程度にとどめるのはやむなしというような考えでございます。

 この水産基本法が通った後、では具体的に、この具体法としてあるいは一部は実施法として、水産庁として今後そういう法体系をつくっていく予定というか前提があるのかどうかということを、質問通告はしておりませんが、今までの審議の中で、あるいは民主党も対案を出していますから、それとの関連で、この基本法の体系、今後どうなっていくんだということを確認させていただきたいと思うのであります。それは大臣でもどちらでも結構ですが、御答弁をいただきたいと思います。

武部国務大臣 基本法はあくまでも基本法でして、この後、これに沿ってさまざまな政策を展開していくことになろうと思います。

 また、その過程で、どうしても立法措置が必要だ、そういう問題が生ずれば、そういった制度の見直しなども当然考えていかなきゃならぬことになるんだろう、私はこのように考えております。

古賀(一)委員 法律あるいは行政の世界でありますから、当然各年、各省庁がいろいろな法律を出してこられると思うんですが、今回の場合は、いわゆる沿岸漁業というものをしっかり念頭に置いた、その法律にかえて水産基本法というのが立法され、そして、この前も質問で申し上げましたけれども、大変スマートな、広範囲な、さらっとしたきれいな法体系にはなっております。

 でも、今まであった、どろどろとしたとは言いませんけれども、生の漁民の、生の漁村のその姿を対象としたこれまでの法律がなくなって、この水産基本法にとりあえず置きかえられた形になっていますので、沿岸漁業というものに対する水産庁あるいは農林水産大臣としての基本的問題意識というものは、やはりしっかり押さえておかないと、課題山積。

 何度も私の地元の有明海の話をして恐縮でございますが、二十年前、三十年前に比べれば、有明漁民の数、彼らの心意気は大変寂しいものになっている。悩みは年々大きくなり、漁村は疲弊しているという現状があるんですね。

 沿岸漁業こそ、今こそ手を差し伸べる時代じゃないかという気があるものですから、この点について、今度の水産基本法で、日本の沿岸漁業の今後のあり方というものを基本的にどうとらえられておるのか。私は、前回もこれに近い質問をしましたけれども、再度、はっきりともう一度認識をお示しいただきたいと思います。

武部国務大臣 沿岸漁業の重要性というのは、漁業生産量の約四割、漁業生産額の五割以上を占める、さような実態で、極めて重要だ、私はかように思います。また一方で、水産資源の持続的利用の体制、後継者育成、経営体質の強化等解決すべき課題も非常に多い、かような認識をしております。

 したがいまして、こうした課題に対応していくということは極めて重要だ、かように考えておりまして、今先生御指摘のような考え方、私どもも積極的に取り組んでまいりたい、かように思っております。

 いずれにいたしましても、沿岸もさまざまな形態があります。私ども、当初は、岸壁が高くて資材や生産物の積みおろしが大変だ、だから岸壁を低くしろと言われた時代があるんですけれども、それは数年前でしたね、十年もたっていません。ところが、今や船も大型化して、今度は、これじゃ港が狭くて使いづらい、こういうふうに十年と言えない状況に沿岸も変わっているのですね。

 さようなことを考えますと、基本法は基本法として、沿岸振興政策というものは政策としてさらに充実していかなきゃならない。むしろ法律で縛るよりも、柔軟に縦横に対応できる、そういう政策展開が必要じゃないか。私はオホーツク海でありますけれども、オホーツク海から沖縄まで、いろいろな形態があるわけでございますので、立法措置が必要になれば当然考えなきゃならぬと思いますけれども、そういう意味では、水産基本法というのは本当に基本的な方向性を明示する、そういう法律の方が対応は弾力的にやれるのじゃないのかな、こういうような考えを私は基本的に持っている次第でございます。

渡辺政府参考人 大臣から基本的な方向を申し上げましたけれども、この法律案の条文の中でも、主として沿岸漁業の振興を念頭に置いた条文が幾つかございます。例えば、十六条では増養殖の推進が掲げられておりますし、それから、二十一条では小規模経営等の事業の共同化の推進が載っております。それから、大事な話といたしまして、二十三条では担い手である人材の育成確保、そして地域の特性に応じた基盤整備ということで、三十条も沿岸漁業の振興というものを十分念頭に置いている、そういう条文でございます。

古賀(一)委員 私は、今まで沿岸漁業に視点を置いたこれまでの法律でも、後ほど申し上げますけれども、十分水産行政として沿岸漁業を守る、あるいはとりわけ海洋、海の質を守るということについて、漁業関係者はプロジェクトについて反対、海を汚されてたまるかという反対運動を起こしてきた経緯は山ほどあります。しかしながら、私は、水産行政が水産行政の立場からこうあるべきだということを、実は発信していなかったと思うのですね。それが有明海の問題にもあるのですが、後ほど申し上げます。私は、今までの沿岸漁業というあの法律を持ちながらもこれまで十分じゃなかった、それがもっと広いテリトリーの水産基本法となったことに大変危惧を持つのですね。

 それで、質問通告しましたのは、その関連で二つの条文を例示しながらここら辺をただしていきたいと思って、きょう質問に立たせてもらったわけであります。

 一つがいわゆる十七条でございまして、水産動植物の生育環境の保全、改善というくだりがございます。これは、水産基本政策大綱をかつて出されましたが、ここにおいてはこの関連で、一、漁場環境の実態把握をする。二、水域ごとの漁場環境保全方針の策定をします。三、干潟の再生、造成など水産基盤整備の推進を図ります。四、漁場環境保全、整備に係る関係省庁との連携強化を行う。五番目、川上から川下に至る一貫した環境保全のための国民的運動の喚起を行う。これを提言したのですね。今度、これが法律になりますと、水産動植物の生育環境についての保全あるいは改善、こういうふうになっておるわけですが、大綱から比べれば非常に具体性を欠くさらっとした文章になった。

 これはちょっと経緯を聞きたいのですが、これは各省折衝との関連で、当初はもっと具体的な水産行政の側からの提案をしておったのに、各省折衝のプロセスでこんなにさっぱりとした条文になったのか。ちょっと経緯を教えていただければと思うのですが。

渡辺政府参考人 あくまでも基本的な施策の方向ということでございますので、一番太い柱をここに据えました。そして、基本法の世界で申し上げますと、基本計画をつくることになっております。その基本計画には、具体的に何をいつまでにやるかといったようなことがプログラムと同時に示されるわけでございます。

 ですから、今先生が指摘をされました事柄は一つ一つ、多分これからつくられるであろう基本計画に載ってまいりますし、先取りをした施策も既に、漁場環境のモニタリングであるとか漁民の森づくり事業であるとか基盤整備事業における藻場や干潟の再生、そういったものは始まっているわけでございます。

 繰り返しで恐縮ですが、基本的な施策の方向を太い柱として掲げ、その実施計画は基本計画による、具体的な施策は各年の予算による、こういう構成でございます。

古賀(一)委員 それでは、私は具体的な話をしたいと思うのですが、実はきのう、おととい、ダイオキシンに関する超党派の議員連盟がございまして、かつての私の地元、中選挙区時代は私の選挙区でございましたけれども、大牟田という町がありまして、大牟田川という川があります。そこからダイオキシンが出て、有明海を汚した。環境基準は海洋で一ピコグラム・パー・リッターなのでありますが、それが二・四出た。ほかの有明海水域は基準以下であった。

 何かがおかしいということで、それが地元新聞にも載って、実は化学工場の横にある大牟田川という、これは完全に、三十センチぐらいの厚いコンクリートの三面張りでつくられた小河川でございますが、そこの目地の部分からどうもダイオキシンを含んだ油の球、油球がにじみ出ておった。

 これを採取した。何と三十九万ピコグラム・パー・グラムでございました。油球の場合はグラムでピコグラムをはかるのでありましょうけれども、普通はパー・リッターで、希釈された水の場合はパー・リッターでやるのですけれども、比重がどういう関係かはちょっと今私はわかりませんが、そのグラムを単純に水と考えるならば、千倍すればリッターになるわけで、そうしますと三億九千万ピコグラム・パー・リッターというような、もう恐るべき濃度の油球が出ておるのですね。

 それで、これは超党派ですから、自民党の先生もおられましたし、みんな申し上げましたけれども、例えばこれ一つとっても、先ほど言いました、漁業関係の方から、あるいは水産庁として、あるいは漁業調整事務所が所管なのかわかりませんが、要するに水産試験場とか水産行政の立場から、こういう問題について、何とかしろ、改善をしろとか問題だとかそういう発信というのは、実はこのダイオキシンだけじゃなくて、私の地元で問題になっていますいわゆる筑後大堰の有明海に対する影響、あるいは、今回は同じ農林省ですよ、諫早湾干拓事業の、この前も申し上げました基礎の砂地をとった話、あるいは今度の調整池の汚れの話というものを、漁民の人は、たまらぬ、反対だ、漁船を出すぞ、海上デモをやるぞ、こうやってあるのですが、水産行政から発信する、調整を申し込む、そういうことがほとんど見られなかったと私は思うのですね。

 そういう中に実は、この法律上は水産動植物の生育環境の保全、改善を図る、こう書いてあっても、実際はもう漁民が反対闘争するのに任せきりじゃないかという感じが強いのです。私は、実はこれは、漁民とか漁業の生産高の売り上げを上げるとかそういう視点だけではなくて、結局、陸上での経済活動、国民の生活の矛盾というものが最終的に全部流れ込んでくるのは海なんですね。内海である有明海なんというのは、特にそれが激しい。

 それは結局、海のそういう水産動植物の生育環境の保全、改善を図るのだという切り口から問題提起をするということは、漁民、漁業のためじゃなしに、むしろ陸上で行われている人間の反環境的な、汚染をまき散らかすいろいろな活動に対する警鐘の切り口はここにあるわけですよ。それは大変重要な意味を持つ条文なんだけれども、実際はこれまでは発信していなかった、稼働してこなかったというところに、実は有明海の悩みもあるし、いろいろな各漁場での沿岸漁業の危機もあるのではないかと私は思うのです。

 そういう面で、私はこの条文は大変大切だと思うのでありますが、これについて、条文はこう書いてありますけれども、これまでの法律と違って、この水産基本法を機に、水産庁として、今後こういう姿勢で取り組むという方針があるのかどうか、あるいはお覚悟をお持ちの上でつくられたのか。その点をぜひ確認させていただきたいと思います。

渡辺政府参考人 今御指摘がありました十七条、主語は「国は、」であります。したがって、水産庁はとか農林水産省はということではございませんで、政府を挙げてやるということがまずここで明確になっております。

 それから、具体的な動きといたしましても、先生が指摘をされました方向でこれからはやっていくということが大事なことでございます。お話にありましたように、すべての循環のとりあえずの最終到着地は海でございますので、この海の状態をよくして、また新たな循環を開始するというのが私どもの常日ごろ考えていることでございます。

 例えば、今のことに関連をして幾つか事例を挙げさせていただければ、ナホトカ号の油漏れのときの被害者、やはり海岸もああいう状態になりましたけれども、漁業は大きな被害を受けました。瀬戸内海の水島コンビナートのケースもそうでした。有明も同じようにそういうことが想定されるかもしれません。環境ホルモンの問題もそうでございますので、環境省とも連携をいたしまして、積極的にそういう調査委員会には参加をしておりますし、意見も言っております。

 今回は、有明海におきまして、各省庁を巻き込みました本格的な調査をするわけでございますので、その状況を踏まえまして、必要な御意見は申し上げるということにさせていただきたいと思います。

古賀(一)委員 私はもう最近、有明海だけではないのです。至るところで本当に、この自然はとか、この海はだれのものだと思わざるを得ないシーンによく出くわします。

 私は毎週九州に帰りますから、福岡上空を通ります。あそこに、昔はもっと広かった、美しかった博多湾というのは、もう埋め立てに次ぐ埋め立てで、もう本当に小さい博多湾になりつつありまして、あれを見ても本当に、各行政機関があります。港湾局もある。水産庁もある。建設省もある。市役所もありますよ。それは公的権力を持ったところは、やはり国の機関として、国家全体の中から、そういうプロジェクトを考え、推進していく立場であると思うのですよ。

 ところが最近は、もう我が役所、我がセクション、そういう発想だけで、本当は国全体を考えて、その漁業の権限、水産行政の権限を与えられた人たちが、調整もせずに、要するにめいめい埋め立てたりなんかをどんどんやってきた中に、今の自然破壊の問題もあると私は思うのです。

 やはり国家公務員は、我々は国の役人だと。それで、我々行政としてはこうしたい。しかし、これはトータルとして国家のもの、国民のもの。だから、環境省所管、環境省というまた国の機関もある。ここと連携し、場合によっては調整し、場合によっては論争してでも調整をしよう、そういう発想がないところにいろいろな今ぎくしゃくがあると私は思うので、これは質問ではありませんが、強くこの精神を私の方から申し上げたいと思います。

 それで、もうあっという間に時間が過ぎるので驚いておりますが、次に、さかのぼりまして、二条前の十五条についてもう一回聞きたいのですが、有明海海域において、水産資源に関するいわゆる調査研究、こういう調査研究の条文が設けられました。私は、これについても、先ほどの具体的な環境の保全、改善についての発信が足りなかったということとともに、この水産資源に関する調査研究も本当に弱かったのではないか。相手に物を言うためには、やはり調査、データをしっかり集める必要があります。

 これが私は、例の有明海問題一つとっても、前回も聞きましたけれども、本当の意味での役に立つ調査を、長期的に問題意識を持ってやったとは思えない。今後、この点についてはいろいろな、先ほどの生育環境の保全、改善について物を言っていくということを期待したい。そのためにはこの調査というものがベースになるわけでありますが、どれだけの取り組みをしておられたのか。

 ひとつ具体的に聞きますと、例の諫早湾干拓問題に関してはテレビでもやっておりました。あるいは、本も出ておりますが、韓国の始華干拓というのがありますね。安山市、ソウルの三十五キロぐらい南西のところに有名な大干拓地ができた。これがありますけれども、こういうのは水産庁として、この諫早問題が起こって大変になった、あるいはなる前に、隣の国にいい例があるということで、例えば調査に行かれたのでしょうか。これをお聞きしたいと思います。

渡辺政府参考人 もちろん、干拓の問題につきましては、農村振興局に大変な蓄積がございます。始華の干拓の問題につきましても、私ども承知をしております。実際に農村振興局におきまして、現場を訪れ、ビデオも撮っております。それから、各種の情報も入手いたしております。それを、この第三者委員会も含めて農林水産省全体としての蓄積とし、知見として、いろいろなことを検討させていただいております。

古賀(一)委員 それでは、ちょっと具体的に提言しますけれども、今後、こういった海の実態というものをしっかりと把握しなければならぬという事態になってくると思います。私は、海のことは海の男に聞け、こう言いたいわけでありますが、そういう面で、今後、調査を展開していくときに、漁民環境モニターというか、漁師さんたちに、ひとつこういう調査の一翼を頼んで、本当に生きた海洋変化、あるいは海洋だけではなくて海底もありますけれども、そういったものを当然お願いしていいのではないか、それが一番効率的ではないか、私はこう思うのですが、そういう提言についての何か御意見はございませんでしょうか。

渡辺政府参考人 全く賛同いたします。

 数字のデータをもって十分にはわからないという部分もございます。それよりも、海で暮らす方々が実感として持っておられる、そういうことの方が、ある意味で言えば、現状を正しく反映させているというふうなことも時にはあるわけでございます。したがって、漁業者の方々の実感なり、日ごろの思うことを十分にお聞きをし、私どものデータと突き合わせて検討していくというのは大事なことだと思っております。

古賀(一)委員 今のお話で、今後、生の漁民の皆さんの声を聞くというふうにはっきりと受けとめました。ぜひこれは今後実行をしていただきたいと思います。とりわけ、有明海の方は複雑でございまして、ひとつ今回のこれを轍として、こういう新しい行動を起こしてもらいたいと思います。

 もう一点、それに関連しまして、質問通告しておりますけれども、この前も聞きました。何度も聞いておりますが、いわゆる有明海の覆砂事業がありますよね。この方針、方向は聞きましたけれども、これは平成十三年度、あるいはそれ以降、どういう御予定なのか。

 私は、しっかりとした中期的な計画、ことし問題になったから、十三年度だけ、これだけやりますよではなくて、要するに、これだけの残存量が残っている、それは何年までに必ずやります、そういう長期的な計画をしっかり示すことが、これからの有明海の漁民が再び元気を出して、やはり漁業につこうかという、その動機になると思うのです。そういう点を一つ聞きたい。

 もう一点は、これも先ほどの漁民モニターではありませんが、今諫早湾の漁場を去った長崎県の漁師さんを中心に有明海の漁民の皆さんというのはどんどん海から離れていっておるのです。福岡県側もそうです。もう漁業は夢がない、そういう人がたくさん私の知り合いにおります。

 そこで私は、覆砂事業を今後展開されるのでありましょうから、その海を知った漁師さんにも覆砂事業の一翼を担ってもらう。どれだけの雇用対策になるかわかりませんが、私は、そういう発想をやっていい案件だと思いますが、この点について二点、簡潔に方針をお聞かせいただければと思います。

渡辺政府参考人 過去の経験から申しまして、覆砂事業は必ず効果があります。顕著な効果がございます。したがって、これを継続してやることに私どもも今回踏み切ったわけでございます。ただ、机上でプランを立てましても、砂は動いているわけでございますので、これはよく地域、各県、各市町村の御意見を踏まえ、需要量を算定して計画を立てたいと思っております。

 それから、覆砂事業に漁業者をということでありますが、どれほどのことが現実問題として可能か、十分検討させていただきたいと思います。もしそういうことに使えるような状況であれば、それは一つの考え方だろうと思います。

古賀(一)委員 私は、行政はこれまでのトレンドじゃなくて、本当にいろいろな個別の問題が思わず出てきた、ではそれをどう一つ一つ組み込んで解決していこうかという新しい知恵というのは、やはり行政が出すべきですよ。だから、長崎県の漁民の方々は、おかに上がって漁業を捨てて、船も捨てたのに、今度は干拓事業はなくなって、なくなるわけじゃないんでしょうけれども、どうしたらいいんだと。これはもう振り回されたと言っても過言ではないんですね。ぜひこれは真剣に御検討いただきたいと思います。

 最後になりますが、私はこれは詳しく勉強はしておりません、私の机に本がありまして、きのうにわか勉強したぐらいでありますが、私は、諫早湾干拓事業、これは国家賠償法の適用の問題が出てくるのではないかと思っておるんですよ。

 実は、国家賠償法第二条に営造物責任という規定がございます。これは、無過失責任で組み立てられたいわゆる国家賠償の法律なんですね。これは、ここでとやかく詳しく申し上げる時間はもうありませんが、これの一連の今までの防潮堤防の建設、調整池の水の腐敗、あるいは、この前も何度も申し上げましたけれども、いわゆる基礎を築くための有明海の貴重な砂地からの海砂の二百六十万トンの採取、いろいろなことを考えたときに、これは大変な、国家賠償法の適用によって、国家が漁民なりあるいは関連する被害を受けた人に、本当にこの法律体系は無過失責任ですから、賠償しなきゃならぬというぐらいの危険性をはらんだ重要な問題だと私は思っております。

 もう詳しく言う時間はありませんが、私は、それほどの深刻な問題ですよと。漁業者も深刻です。一方、この問題が惹起した、原因者であるこの干拓事業そのものも、実は将来突きつけられる問題かもしれないという、それだけの重要性を持っていることをぜひ腹に置いておいていただきたい、そして今後の対応に万全を期していただきたい、私はこうお願いいたしまして、質問を終わります。

 以上であります。

堀込委員長 次に、後藤茂之君。

後藤(茂)委員 民主党の後藤茂之でございます。

 早速質問に入らせていただきますけれども、水産基本法案は、基本理念として水産物の安定供給の確保と水産業の健全な発展を掲げております。このような基本理念の実現に向けまして、水産資源が持続的に利用できるように、長期的視点に立った水産資源政策を総合的に講ずることが重要であるというふうに考えます。

 これまでもいろいろ答弁がありましたけれども、改めまして長期的視点に立った水産資源政策という観点から、大臣から御答弁をいただきたいと思います。

武部国務大臣 水産業は海の自然環境に大きく依存しているわけでありまして、環境と密接な関係を有する産業であるというふうに考えております。また、水産基本法においては、水産動植物が海洋等の自然界において生育するものでありまして、海洋環境の保全等が水産政策にとっても極めて重要な課題である、かように認識しております。

後藤(茂)委員 古くから、私たちは海、川、湖といった水域の豊かな自然の恵みを享受してきたわけであります。しかし、今急速な生態系の破壊が進んでおります。野生生物の減少、絶滅による生物多様性の危機というのは、人間の生存基盤の危機であると私は思っております。

 本来、水産業は自然と調和した産業であります。水域の自然生態系に依拠して成り立っているものだと私は思っております。水産業が健全に発展していくためには、水域の健全な生態系が回復していくことが欠かせないというふうに考えております。

 今度の水産基本法案におきましても、二条二項に「水産資源が生態系の構成要素であり、限りあるものであることにかんがみ、」そういうくだりはあります。しかし、水産業の健全かつ持続的な発展を図り、安全な水産物の供給を確保していくためにも、水産政策において、環境、自然生態系、生物多様性保全、そうしたものを基本的な柱の一つとしてより明確に位置づけていくべきと考えますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

武部国務大臣 先生のお説、全くそのとおりだと私どもは理解しております。

 したがいまして、水産業は、ひとり農林水産業だけですべて完結できる、そういう産業ではないという認識のもとに、例えば環境省等の連携などもしっかり考え、有明海の問題について先ほど古賀先生からいろいろお話がありましたけれども、宝の海に取り戻すためには政府全体が連携してやっていかなければならない大事な問題だ、かように心得ている次第でございます。

後藤(茂)委員 そういうことで、基本的な柱としてより明確に位置づけていく、どういう形であるかは、例えば理事会等でも御協議いただくわけでありますけれども、少なくとも水産政策を実行していくに当たりまして、そういう視点から取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。

 さて、環境及び生態系の問題については、これは環境省とも大いに関係のある問題だというふうに思っております。これまでの行政の中で環境省とどのような連絡体制をとってこられたのでしょうか。また、今後連携を密にしていく必要があると私は思っておりますけれども、どう取り組んでいくおつもりであるか、大臣のお考えをただしたいと思います。

武部国務大臣 従来から環境省と密接に連携をとりながらその対策に努めてきたところでございますが、具体的には、ナホトカ号油流出事故の際の浅海域への環境影響調査、有明ノリ問題における調査、また内分泌攪乱物質、いわゆる環境ホルモンに関する調査などにおいて環境省と十分連携してまいったところでございます。

 農林水産省のみならず、ただいま申し上げましたように、国としてこれらの問題に取り組む旨を本基本法にも明記している次第でございまして、先生お話しのように、このような観点に立ちまして、環境省ともさらに連携を図り、環境保全の取り組みを推進してまいりたい、かように存じている次第でございます。

 先般も、環境大臣が有明海あるいは諫早干拓事業などを視察された後、直ちに私のところに感想の報告がございました。農水省ともしっかり取り組んでまいりたいと。その際に、大臣は、環境修復型の公共事業というようなこともこれからは重要になってくるのではないかというような、そんな御示唆もいただきまして、私どもも今後の水産庁の政策展開の上で非常に大事な示唆を与えていただいた、このように認識しております。

後藤(茂)委員 今これまでの連携について伺ったところでは、どうしても、個別の案件とか事故だとか、そうしたときに緊急、当面の対応として連携を図っているようにどうも聞こえてなりません。そういう意味では、水産政策の本体において、今後そういう点での十分な国全体としての政策を練っていただくように強く申し上げておきたいと思います。

 さて、これまでいろいろの審議の中で海の関係ばかりでございましたので、私、海を持たない県の出身ということもありまして、内水面漁業について二、三伺いたいと思います。

 内水面漁業、養殖業は、生産量で全体の二%、生産金額で六・五%と、海面漁業に比べれば非常に小さいわけでありますけれども、アユ、ウナギなど中高級の魚介類の生産の場として重要でありますし、国民の健康で豊かな食生活を実現するための一翼を担っているわけであります。しかしながら、その経営規模というのは非常に零細でありまして、組織基盤も大変脆弱であります。

 また、最近は、湖あるいは沼、河川に遊漁者がどんどんふえてまいっておりまして、延べ人数で大体一千三百二十万人とか言われております。中でもアユを対象としている遊漁者は約四百七十八万人と、大変重要な魚種となっているわけであります。近年、国民の余暇時間の増大に伴いまして、遊漁者がますます増大してきているわけであります。

 そこで伺いますけれども、内水面におけるブラックバス釣り遊漁者の増加に伴いまして、在来の水産動物を捕食する外来魚であるブラックバス、ブルーギル等が、これまで生息していなかった水域へ違法に移殖されまして、急速に拡大をいたしております。

 御承知のように、ブルーギルなどは雑食性で、魚ばかりでなく卵をどんどん食べていっちゃうというようなことも指摘されているわけであります。このために、増殖対象である水産資源に被害が出ているという事例が多く聞かれておりますし、漁業者やその他の遊漁者とのトラブルが各地で起きているわけであります。

 駆逐すべきであるとの意見がある一方で、国民のレクリエーションの一端を担っているんだし、また、既に漁業権の対象魚種として増殖が行われている湖もあることでありまして、すみ分けなどしていくべきではないか、いろいろな議論があるわけでございます。

 この点について、政府は今後どのように対応していかれるおつもりなのか、御意見を伺いたいと思います。

武部国務大臣 先生御指摘のように、ブラックバス、ブルーギル等の外来魚の無秩序な拡大を防止するために、水産資源保護法の規定に基づきまして、移殖を制限し、啓発事業の支援を実施しているところでございます。

 都道府県が行う外来魚の駆除に対する支援や、繁殖抑制技術の開発等について水産庁としても施策を展開しておりますが、ただいまお話しのとおり、このようなブラックバス等につきましては、地域によっては内水面の漁業権の対象としたり、地域振興に役立てているという実態もあるわけでございます。したがいまして、今後、広く関係者の意見を聞きながら、さらに有効な管理方策について検討してまいりたいと存じます。

後藤(茂)委員 もう一つ、アユの冷水病についても一言伺いたいと思います。

 アユの河川放流種苗や養殖業におきまして冷水病が大変蔓延をしておりまして、非常にアユが減少する、そういう中で遊漁者まで減少するというような深刻な状況になっております。十年度に設置されましたアユ冷水病対策研究会などにおける研究の成果が今どうなっているのか、もっと具体的な対策を講じるべきではないかというふうに感じますけれども、農水省の見解を伺います。

渡辺政府参考人 二つの点で大変深刻な問題であります。

 一つは、アユの種苗の供給源が琵琶湖ということで、そこがやられますと、日本全体のアユにとって大変なダメージがあるということです。それからもう一つは、やはり決定的な対策、手段がなかなか見つからないというのが現状でございます。

 今御指摘ありましたように、十年に研究会を始めて、十三年度からは協議会を、具体的にどういう対策をするかということを決めて、十三年度の予算の中に一部、検査機器に対する補助であるとか指導というものを盛り込ませていただいているんですが、元気な種苗を温度が十分に上がってから放流するという大原則しか目下のところまだ見つかっていないわけでありますので、もう少し勉強をしたいというふうに思っております。

後藤(茂)委員 ぜひ検討を進めていただいて、具体的に対応していただきたいと思います。

 さて、話題を変えますけれども、水産資源の保護増殖を図っていく上で、単に漁場を整備するだけではなくて、海に流れ込む川の上流にある森林の整備が極めて重要な役割を果たすというふうに思います。これまでも質疑の中で大臣の方からもお話があるわけでありますけれども、海と山とは一見関係ないように見えて、豊かな海づくりを進める上で極めて深い関係にあるわけでございます。

 北海道から九州までの各地域で、海の漁民と山の林業者が手を携えて森づくりに取り組む動きが今広がりつつあるわけであります。山は海の恋人、すばらしい言葉があります。この考え方のもとに、宮城県の唐桑町の養殖漁民の方々は、カキの森づくりに取り組んでおられます。昭和六十年から始めて、既に一万二千本の広葉樹を植えていると聞いております。その出発点は、畠山重篤さんの著書にも明らかなように、不漁に悩む漁業者の方々が、カキの産地として有名なフランスのロアール川の河口を訪ねられまして、上流での広大な広葉樹の森林が豊かな海づくりに大きな役割を担っている姿を見たからだということでございます。

 また、明治以降の開拓による原生林の伐採によって浜が荒れまして、不漁が続きまして、歌で何もない春とまで歌われた襟裳岬では、サケや昆布漁場回復のために、漁民を初めとする地元の方々が岬の砂漠の緑化に取り組んでいるということも忘れることはできません。

 このような地域の漁業者の方々の取り組みに対しまして、農水省はこれまで水産行政、林政の中でどういう対応を図ってこられたのか、伺いたいと思います。

武部国務大臣 先生御案内のとおり、森、川、海を通じた幅広い環境保全の取り組みをぜひ国民運動的に推進する必要があると私ども思っております。また、本年度から、豊かな漁場づくりのために漁業者が河川流域で行う森づくり活動に支援をしておりまして、漁民の森づくり活動推進事業というのを新規事業で実施しているところでございます。

 私は、農山漁村の新たなる可能性を切り開いてまいりたいということを何度も申し上げておりますが、人間も自然界の一員であります。我々人間が少し増長して、自然の恵みに感謝する気持ちや自然の脅威を恐れる謙虚な気持ちというものを失ったところにさまざまな問題が出ているんじゃないかと思いまして、この漁民の森づくり活動推進事業というものはむしろ国民運動に広げていく必要があると思いまして、このことにつきましては、就任以来私の最も大きな使命の一つ、こう思って取り組んでまいりたいと思います。

後藤(茂)委員 今回、林業基本法の改正法及び森林法の改正法案も出るわけでありますけれども、森林の三区分を行いまして、水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林に分けまして森林整備の方向づけを行うということのようでありますけれども、このような豊かな海につながる森づくりは、今後こうした体系の中でどのような位置づけになっていくんでしょうか。

武部国務大臣 今国会に提出している林業基本法の改正案におきましては、森林の有する国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全等の森林の有する多面的な機能の持続的発揮を基本理念といたしまして、そのための適切な森林の整備、保全を推進していくということにしている次第でございます。

 先生から具体的に御説明ありましたように、水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林に区分分けしているわけでございますけれども、その機能を発揮し得る森林施業の方向を明らかにしてまいりたい、かように存じます。

 例えば、水土保全林においては、伐期の長期化や抜き切り等による複層林の育成により、保水力と土壌保持力がすぐれた高齢級、高蓄積の森林を整備し、森林と人との共生林においては、自然の推移にゆだねた天然林の取り扱い、里山等における広葉樹林の整備や針広混交林化というものを進めてまいりたい、かように考えております。

 このように区分に応じた望ましい森林施業を推進し、森林が有する多面的機能を持続的に発揮し得る基盤整備をしていきたい、かように考えておりまして、この林業基本法の成立にぜひ御協力を賜りたいということをあえてつけ加えさせていただきたいと存じます。よろしくお願いします。

後藤(茂)委員 森林整備に当たりましては、今少しお触れになりましたけれども、特にこうした観点からいきますと、広葉樹の導入を含めた多様な森づくりというのが非常に重要になってくると私は思っております。その推進方策について、もう少し具体的に伺いたいと思います。

武部国務大臣 森林の有する多様な機能の持続的発展を図るため、野生動植物の生息の場を提供する等の面ですぐれた広葉樹林、針広混交林の整備を推進するということは、今お話しのとおり極めて重要だ、かように考えております。

 こうした観点から、広葉樹の導入に一層取り組むこととしておりまして、特に森林と人との共生林を中心に、広葉樹の特性を生かした森林整備を推進してまいりたい。また、その際、郷土樹種の育成、環境保全等の面ですぐれた樹種の導入を進める等、多様な森林整備を進めてまいりたい、かように考えております。

後藤(茂)委員 漁場の整備に関連しましては、魚つき保安林というのがあるわけですが、この魚つき保安林の指定状況について伺いたいと思います。

中須政府参考人 魚つき保安林につきましては、水面にその森林の影が映る、あるいは魚類に養分を供給する、あるいは水質汚濁の防止、こういう観点から、魚類の生息と繁殖に資する森林を対象に指定をしておりまして、平成十一年度末現在で全国で二万九千ヘクタールが指定されている、こういう状況にあります。

 これまではほとんど沿岸域、海岸の森林が対象であったわけでありますが、近年、内水面周辺の河川の両岸とかそういう森林についても漁業関係者による植林活動が全国各地で実施される、そういう必要性が高まっているということを受けまして、平成十三年度からは新たに魚類の生息上重要な内水面周辺の森林をこの魚つき保安林の対象として積極的に取り上げていく、こういう考え方を都道府県に示しておりまして、内水面域の森林についても今後積極的に保安林の指定に取り組んでまいりたい、こう考えております。

後藤(茂)委員 今、内水面の領域での指定にも積極的にというお話もありましたけれども、もちろん、現行のように魚類の繁殖するところの水場だけというのに限るというのでは不十分であります。漁場へのきれいな水や、栄養分、豊かな水の供給の観点から、そういう新しい観点からも河川上流域の森林を幅広く積極的に指定すべきだというふうに私は考えておりますけれども、その点についても御意見をお伺いしたいと思います。

中須政府参考人 漁業ということに限らず自然環境の保全をしていくという意味におきましても、先生御指摘のようなことの重要性というものは私ども踏まえてまいりたいと思います。

 ただ、言うまでもございませんが、河川周辺等の森林というものは、かなりの部分が水源涵養保安林あるいは土砂流出防備保安林ということで指定を受けている。そのことが、あわせて考えてみれば、栄養塩類を川に流していく、海を豊かにしていく、そういうことにもつながっているわけでありまして、そういうことを総合的に勘案しながら進めてまいりたいと思っております。

後藤(茂)委員 それでは、大臣に伺いますけれども、林業と漁業との連携による森林の整備というのは、単なる森づくりにとどまらずに、大変広い視野に立った、環境回復のための事業だというふうに私は思っております。こうしたことを積極的に支援すべきだと考えますので、改めまして大臣の御決意を伺いたいと思います。

武部国務大臣 先生の本当に自然を思う、また見識の高いお考えに感銘をいたしております。

 まさに森と川、海を通じた川上から川下に至る幅広い環境保全の取り組みということは極めて大事でありまして、先般も、九州の有明海周辺の四県の知事さんたちからも、森林施業について、流域についての配慮もお願いしたいというような、そういう御要請もございました。

 また、藻場、干潟の造成と連携した森林整備、今先生お話ありましたように、魚つき保安林の計画的な指定、漁業者が行う植樹活動の支援等、相互に連携した対策の必要性を非常に痛感しておりまして、今後とも、林業と農業あるいは漁業の連携を一層推進してまいりたい、かように決意している次第でございます。

後藤(茂)委員 ぜひ検討をされまして、次々と施策を打っていただきますようにお願いをいたしたいと思います。

 さて、水産基本法に関係しないことでございますけれども、一つお話をしておきたいと思っていることがございます。それは、今政府で検討しておられます農業経営所得安定対策についてでございます。

 政府は、農産物の価格の変動に伴う所得の変動を緩和する仕組みを検討するために、二月に農業経営政策に関する研究会を発足させておられます。そして、本委員会におきましても、前内閣の当時でありますけれども、夏ごろまでに政策大綱を策定するという答弁を行っておられます。

 私は、我が国の農業を担う意欲ある担い手を育成確保していくためには、農業経営所得安定対策の確立がぜひとも必要であると考えます。そして、それをつくるに当たっては、担い手というものにきちんと光を当てていく、政策の整理をしていく、大変なことかもしれませんが、その必要があるというふうに思っているわけでございます。

 その後の農業経営政策に関する研究会の検討がどうなっているのか、それから、夏ごろまでに本当に政策大綱がまとまるのであろうか、まとめていただきたいと思いますが、大臣にこの点、確認をさせていただきます。

武部国務大臣 今後とも、農業者、消費者等の関係者から成る農業経営政策に関する研究会での検討をお願いいたしまして、その意見を踏まえまして、私自身、できれば夏ごろを目途に経営政策大綱を取りまとめるとともに、その後も引き続き研究会を開催して、育成すべき農業経営の経営全体をとらえて、農産物価格の変動に伴う農業収入または所得の変動を緩和する仕組み等について、従来の施策にとらわれることなく、国民的理解が得られることを基本にいたしまして検討を深めていきたい、かように考えております。

 なお、このことについては、今度の所信におきましても、私自身、農林水産業の構造改革ということを明言させていただいております。このことについて、先般来いろいろ御議論がありまして、まだそのことが抽象的で中身がないではないかというような御批判もいただいているところでございますが、この考え方について私自身の考えもまとめて、ただ研究会から出されたものをこっちがうのみにして、それを受けて立つということではなしに、むしろ、積極的に私自身の方から構想を提示して、そして、あわせて御検討いただくというような考えに立っていることをつけ加えさせていただきたいと思います。

後藤(茂)委員 今大臣から大変心強いお言葉をいただきました。もう一度そのくだりを振り返ってみますと、「改革断行内閣と銘打つ小泉内閣の一員として、食料自給率の向上を基本とした食料の安定供給の確保を図るため、農林水産業の構造改革を進める」、大変立派な、大臣としてすばらしい発言だったというふうに受けとめておるわけであります。

 そして、今指摘したような、例えば農業経営所得安定対策等につきましては、合理的な政策をつくり上げるということは相当に勇気の要ることであるというふうに考えておりますけれども、ぜひとも大臣の方から積極的に政策大綱について御発信、御提言をいただきますように、心からお願いを申し上げます。その点、大臣に再確認をさせていただきまして質問を終わります。ありがとうございました。

武部国務大臣 御激励と受けとめまして、総理が言っているように、恐れず、ひるまず、とらわれずチャレンジしてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

堀込委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 おはようございます。民主党の岩國哲人でございます。

 きょうは武部大臣に、水産業のあり方あるいは漁村のあり方について、また海に関する教育について、幾つか質問をさせていただきたいと思っております。

 まず最初に、小泉内閣発足、その所信表明の中で、我々は今水産基本法を議論しているわけですけれども、この水産という言葉が何回使われたのか、漁村という言葉は何回出てきたのか、大臣、覚えていらっしゃいますか。

武部国務大臣 総理の所信表明の二行以外に私は見ていない、かように思います。しかし、その二行の深さというものを私どもの肝に銘じてしっかり対応したい、かように考えております。

岩國委員 大体、水産基本法という、我が国の歴史の中でも非常に大切な水産について、今までの漁業を水産に言葉を変える、私はこれは賛成です、非常に視野を広げていくという観点から、時代の変化に適応したものと評価いたしますけれども、その水産基本法を上程する国会において、所信表明の中で、余りにも軽くはありませんか。水産という言葉が出てきたのはたった一回でしょう。漁村という言葉は何回出ましたか。漁村という言葉は、農山漁村と一くくりにされて、要するに三分の一回登場しただけじゃありませんか。

 武部大臣、これで満足していますか、小泉さんの、こういう農業あるいは水産業、漁村のあり方について、どの程度新しい政権は頭の中に入れておられるのか、こういうことについて。もう一度御答弁をお願いします。

武部国務大臣 僣越な言い方になるのかもしれませんが、小泉総理のこの間の所信表明はかなり短い文章であった、かように認識しております。その中で、特に国民の皆さん方に訴えたい、そういうことを重点的に述べられていた、かように思います。

 私も閣議でいろいろ申し上げました。例えて言うならば、都市再生ということについても、これが都市だけで完結できるものではないでしょうと。そこで私は、都市と農山漁村の調整とか融合とか対流とかというようなことをお話し申し上げまして、小泉総理からは、とにかく重要なことは十二分に承知しているので、農林水産業、農林水産省については君にすべてを任すということで、私としては、たくさん総理が述べられるという以上に、そのことに意を強くしておりまして、農林水産関係については私が全責任を負って対応してまいりたい。

 全体の総理の所信表明の中には、先生御指摘のとおり、非常に文言が少なかったということについては、私は満足しておりません。しかし、それは今後、小泉内閣において農林水産行政がどのように展開されるかということで、国民の皆さん方にも農山漁村の皆さん方にも御理解いただけるもの、このように確信をし、決意をして取り組みたい、こう思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

岩國委員 しゃべればそれだけ大切にしているということには決してなりませんけれども、小泉総理は非常に雄弁で、いろいろなことについてたくさんしゃべっておられます。

 しかし、その短い所信表明の中で、水産は一回、漁村は三分の一回。それでは、今まで歴代の総理大臣、長い方の森さんや橋本さんは、では何回ぐらいしゃべられたのですか。覚えていらっしゃらないでしょう。一行半か二行というのが、最近は、歴代の総理大臣の所信表明の中で、農業、林業、漁業というのは、大体長くて二行、短ければ一行三分の一、その程度の位置づけしかもうないわけです。

 それで、予算だけはふえている。存在感は薄い。そして、武部大臣のこの所信表明でも、これからは国民に対する教育を徹底して、交流を図ってと、その言葉が白々しいではありませんか。小泉大臣が、こうしたことは君に任せる、任せた相手が武部大臣では心もとないということを言っているわけではありません。

 しかし、任せる、任せろはいいけれども、もう少し、これだけ困っている農村、漁村、小さいときから農村、漁村に生まれ育ったことを今でも私は誇りにしておりますが、だからこそ、私は、国の中で、これだけのお金を使いながら、その人たちを元気づけるような水産基本法に本当にこれがなっているのかどうか。その点について十分心して、むしろ、小泉政権の中では、都市政策も大事でしょう、しかし、水産基本法の成立をきっかけに、目をみはるような水産対策あるいは漁村対策がスタートしたと言えるような武部農政をぜひやっていただきたいと私は思います。

 さて、漁村のあり方についてお伺いいたしますけれども、漁業組合の正組合員は、ピークに比べて今はどれぐらいの水準にありますか。二番目に、漁業者と言われる数、ピークに比べて今はどれぐらいの水準にありますか。それから、最近五年間のそうした新規加入者数というのはどれぐらいあるのですか。

 以上三点、簡潔にお答えください。

武部国務大臣 かなり細かい数字や、問題が多岐にわたっておりますので、細かいことは水産庁長官に答弁させたいということをお許しいただきたいと思いますけれども、私も現場をよく知っている者、このように自負しております。ただ、全国いろいろあるんだろうと思うのですね。

 私どものオホーツク海は、以前は最も沿岸漁業が苦しみを味わった地域ですよ。冬は流氷に閉ざされる。しかし、その中で、サケ・マスの増養殖事業からホタテのサロマ湖内の養殖、これは外海放流も実現して、常呂漁協という一単協に例えて言うならば……(岩國委員「もっと簡潔に数字だけ。そういうことはわかっているから質問しているんです」と呼ぶ)これは大事なことですからね。これは百億円以上の、一組合員約一億円ぐらいの預貯金を持つぐらいになっているわけでありまして、今までの政策が悪かったとか、実際に新規に組合員になる、後継者不足だとかという問題は、あるところはあるんでしょうけれども、いいところは全然心配ないということですから、これをどういうふうに全国の漁業、水産の世界で常呂漁協並みの姿にしていくかということが課題だと思います。

 ちょっと余計なことを申し上げたかもしれませんが、あとは水産庁長官に答弁させます。

    〔委員長退席、鉢呂委員長代理着席〕

鉢呂委員長代理 簡潔にお願いします。

渡辺政府参考人 三点御質問がございました。

 まず、漁協の組合員の推移でありますけれども、正組合員でいいますと、昭和四十年が四十八万、現在は三十万を切りまして二十九万というところでございます。准組合員も入れますと、六十一万が四十八万という状況でございます。

 それから、従事者数でありますけれども、昭和二十八年、これは戦後のすぐの時期でありますが、約八十万人、七十九万人おりましたが、現在は、平成十年の数字で二十八万人でございます。

 漁獲量は振れがございまして、イワシの生産量によって動きましたので、昭和三十五年には六百二十万トン。それが、六百六十三万トンが十一年の数字ですが、途中五十九年に千二百八十二万トンという水準を記録しております。

岩國委員 大臣、漁村を大切にしたいというお気持ち、そういった御出身の地の影響も受けていらっしゃると思いますけれども、漁村漁村と一概に言われますけれども、漁村の数は大臣の頭の中に幾つぐらい入っていますか。日本の中で漁村というのは百なのか、千なのか、五百なのか、アバウトな数で結構です。

武部国務大臣 集落も随分変わってまいりましたから一概に言えないと思いますけれども、港もない、前浜からすぐ沖に出るというような五軒、十軒の集落も入れると、数千ぐらいあるんじゃないかな、そんな感じがいたします。

岩國委員 大臣御承知のように、行政区分でいいますと、三千三百市町村ございますね、今、市町村合併を進めようとしていますけれども。その三千三百市町村の中に、漁村と言われる地域、集落、あるいは丸ごと含めまして、三千三百の中の幾つぐらいが漁村と言われる地域を持っておりますか。

武部国務大臣 大体海岸線五キロに一つぐらいというふうに今遠藤副大臣から聞きましたけれども、詳しいことはわかりませんので、もしあれば長官に答弁させます。

岩國委員 それでは、その資料はまた後ほどで結構ですから。

 それから、先ほど、漁獲量が半減しておる、あるいは漁業者の数は三分の一近くに減っておる。過去四十年間に相当激減してきているわけですけれども、武部大臣、その間農水省の職員の数はこの四十年間にどれぐらい減ったのか、それから、その同じ四十年間に水産庁職員は減っておるのか減っていないのか、それを教えてください。

渡辺政府参考人 水産庁の職員は、むしろ少しずつふえておりまして、現状では約二千名、そのうち、本庁に八百名ぐらい、船に乗っておりますのが、海事職と言っていますけれども、五百人ぐらいおります。

岩國委員 農水省全体の職員としては、四十年の間に少し減っていますね。

渡辺政府参考人 農林水産省としては、戦後やはり食料増産をする、検査をする、そういう状況の中で、食糧事務所に大量の人間を抱えておりました。また、営林局も、木材の生産ということで大量に人間を抱えておりましたので、俗な言葉で言いますと、霞が関の定員削減は農林水産省がほとんど引き受けていたというような状況です。

岩國委員 これは、大体四十年の間に、農水省全体としては職員が約半減しておるんですね。二万六千人減っています。しかし、その中で、一つふえているのは水産庁だけです。漁獲高は半減し、漁業者の数は三分の一に減り、お役人だけがふえている。これは少しおかしくありませんか。

 こういった点について、武部大臣は、行政改革という観点から、企業に例えて言えば、社員の数は減っておるわ、売り上げは減っておるわ、役員の数だけは逆にふえておるわ、こんな会社がいつまで続くんですか。何か所感があればおっしゃってください。

武部国務大臣 私は、先ほどお話のありました漁村集落も、今のままではやり切れない、かように思います。同時に、水産庁の職員等がふえたというのは、二百海里時代に入りましてさまざまな多様な問題がふえたということもありましょう。そして、二百海里になりましてから、沿岸、いわゆる排他的経済水域内の四百五十万平方キロ、ここの中で資源を増殖し、資源を管理し、さまざまな漁業形態を進めていかなきゃならぬ、そういう意味では、水産試験研究機関の拡充も必要だった、かように思います。

 しかし、これらも今はかなり民間にゆだねるような方向にありまして、私は、これからまだまだ、集落の再編も含めて、行政の分野でももっと改革といいますか統合していかなきゃならない、そして新しい行政需要に対応するそういうシステムに変えていかなきゃならない、そういう意味では、先生御指摘のように随分おくれているという印象でございます。

岩國委員 行政改革という大きな流れの中で、決して痛みをふやすだけではなくて、農村を含め、漁村も含め、こういった漁業資源の確保という場合には、あくまでもこれは人があっての仕事だと思うのですね。とりわけ漁業においては、水産業においてはそうだと思います。であるからこそ私は、漁村のあり方についてきめの細かい配慮、同時に、小さな役所で大きなサービス、役人の数はできるだけ小さくしても、そういうところに痛みを少なくするような方向で行政改革を断行されることを希望しておきます。

 また、そうした水産業を支える人という観点からは、どれだけ若い人が水産業に入っていっているか。これについては大臣も大変関心を持っていらっしゃると思いますけれども、水産高校を出た高校生は、毎年どれぐらい漁業に従事しておりますか。その数字は、この二十年間、十年間をごらんになって、どういう傾向を示していますか。

武部国務大臣 詳しくはわかりませんが、新規学卒者は六百人程度となっているようであります。新規参入者は、年間わずか千三百人程度、こういうことでございますが、これはわずかな数字ということが本当に言えるのかどうか。これは、かなり共同経営とか企業化しております、そういった会社に新規に就職する人の数はこれに含まれていないんだろう、こう思います。したがいまして、一概に、今先生の御指摘のような、新規学卒者が漁業に入るというようなことが果たして少ないのかどうかということについては、もう少し吟味する必要があるのではないのかな。

 いずれにいたしましても、漁村においても少子高齢社会というものは典型的にあらわれている、かように思いますので、その中で、基本法の示すような日本の水産業、水産物の安定供給というものをいかにスムーズに、円滑にやっていくかということと、水産業の健全な発展をどのように考えていくかというようなことについては、基礎的な問題だ、このように思っておりますので、そのところはしっかり踏まえて政策を展開していかなくちゃならぬ、こういう認識を持っております。

岩國委員 我が国の水産業を、こういった基本法までつくってしっかりと守っていき、育てていこうという決意であれば、水産高校から出た高校生がどれぐらい漁業に従事しているか、この数字は一番大きな判断材料じゃないでしょうか。四十歳になって、どこかそこら辺の丸の内の会社をやめて漁業に帰っていく、こういう人は、農業の場合にはある程度あっても、漁業の場合には比較的少ないと私は思います。間違っているかもしれません。したがって、水産業の場合には、水産高校を卒業した若い人たちがストレートに漁業に入っていく、その数をふやすことが、これは喫緊の課題じゃありませんか。

 その中で、毎年水産高校を卒業している卒業生、水産関係の学科を卒業している人が四千人、三千人、最近では二千三百人。その中で、わずか十人に一人、一割しか漁業に入っていかない。これは水産高校の教育のあり方、採用のあり方、指導のあり方も大いに問題にしなきゃいかぬことじゃないでしょうか。それが一つ。

 それから、高卒が大体六百人入ってきますけれども、そのうち水産関係の学科から二百人しか入っていない。つまり、残り四百人は一般の学科から漁業の方へ入っている。こういう実態を踏まえて、これからの若い漁業者を育成する上でも、水産高校のあり方、水産関係の学科のあり方、指導のあり方について、徹底的な見直しを私は要求したいと思います。これについて大臣のお考えはございますか。

武部国務大臣 水産高校は四十七校あると聞いております。また、農業高校は、驚くなかれ、三百八十を超えていますね。農業は水産以上に、農村に入る数は相対的に低いと思います。

 したがいまして、私は先般、遠山文部科学大臣に、水産高校や農業高校のあり方ということを徹底して変えてもらう必要があるんじゃないですかと。極端な例を言いますと、これは余りいい例ではありませんが、そういう職業高校に入るのは、普通高校に入れないから入るという人もいるんだそうです。ですから、本人が農業に従事したい、漁業に従事したいと意欲と誇りを持って入ったところで、実際にはその意欲や誇りを持てるような内容になっているかどうかということについては、非常に悩んでいるということでありますし、私どもの地元でも、ほとんど今は大卒ですね、大学を卒業した者が、これは非常にいいことだと思います、さまざまな水準が上がっていったから、普通高校から大学に行って、大学を出た者が船に乗っているんです。これはほとんどそうです。

 そういうことはいいんだと思いますけれども、やはり農業高校とか水産高校というのは思い切って見直して、私は、農業高校なんか三百八十が三十ぐらいでいいと思っています。そして、これはもう全部国立にしまして、全寮制にして、三年制じゃなくて五年制にしたらいい。三年で卒業しても結構、さらに勉強したければ五年までいっていいという、工業高専みたいな形になりますかね。それで、さらに勉強したいという者については、東大の農学部であろうが、北大の水産学部であろうが推薦で入れる、そういう仕組みにすることを、先般遠山文部科学大臣に話をした次第でございます。

 我が省には二十五日には竹中経済財政大臣が来て講演をしてもらいますし、その後は環境大臣に来てもらうことになっておりますが、私が文部科学省に行って講演をさせていただきましょうかというようなことをお話ししている次第でございまして、これは先生の御指摘をまつまでもなく、非常に疑問に思っているところでございまして、これは抜本的に正さなきゃならない、かように思っております。

岩國委員 今武部大臣が、将来の教育、水産高校のあり方を中心に、いろいろ自分のお考えをお話しになりました。その一つ一つ、大変意味のあることだ、いい方向だと思いますから、ぜひ、大胆に、早く実行していただきたい、私はそのように思います。

 こうした小さいころからの教育、小学校の教育の中で、中学校の教育の中で、農業に、林業に、水産に親しませるということは非常に大切なことだと思います、水産高校にとどまらず。

 昔は、国語の読み方の一年生のときに、「サイタ サイタ サクラガサイタ」そこから私たちは始まりました。そういう木に対する親しみというのを、一年生最初の一ページから教えられたんです。今の教科書は、何ページ繰っても桜も出てこない、竹も出てこない。国会から桜内先生も竹下先生も去ってしまわれた、それぐらいに、桜も竹も全然教科書の中に出てこないことになってしまった。魚も出てこない。そういうことを学校教育のあり方の中で考えるべきだと私は思います。

 そこで、今度の水産基本法に絡んで、いろいろ、都市と漁村との交流ということが非常にうたわれていますね。農業基本法のときにも、それはうたわれたわけですけれども、そうした都市との交流ということは大変大切なことだと私も賛成でありますけれども、森林・林業基本法案の中でも、そうした都市と山村の交流ということがうたわれております。食料・農業・農村基本法の中でも、都市と農村の交流。そして、今度、水産基本法の中でも、都市と漁村の交流。それぞれに、都市と山村、都市と農村、都市と漁村。全くこれは縦割りの発想なんです。

 武部大臣、一番大切なことは、山村と漁村の交流、山村と農村、農村と漁村、そういう地方の集落あるいは市町村ごとの交流の方が本当はもっと先行しなきゃいかぬのです。交流といえばすぐに大都市。それも大切なことでしょうけれども、もっと山村と漁村の交流を、昔から海彦山彦という物語もあるでしょう。

 武部大臣が北海道の話をされますから、私も出雲の話を少しさせていただきます。

 竹下さんの掛合町からは日本海が見えない、日本海の深さが見えない、青木幹雄先生の大社町からは山の、森の深さが見えない。私は出雲市長時代に海彦・山彦というプロジェクトをつくって、漁村の子供たちには、夏休みになったら山の中へ行って生活させる、山の子供たちには海岸の方へ行って生活させる。そういう交流を、海彦・山彦として今でも続いております。小さいときから、子供たちは、天から降ってくる水が、山を守る木を育てて、それが川になって、自分たちの海へ注いでくるんだ、その山を見に行かせる。海しか知らない子供たちは、その山の大切さというのを自分の目で確かめるでしょう。

 そして、山に育った子供たちは、山に降った水がどういうところに流れていって、そこで大きな海になり、大きなたくさんの魚になる、それを驚きの目で見ています。

 そうした海彦・山彦、これは私が名前をつけたんですけれども、先ほど後藤委員からも質問がありました。山は海の母だとか、山は川の母、こういうことはよく言われますけれども、単に言葉で教えるだけではなくて、足で、目で、それをしっかりと教えておくこと、それが、すそ野の広い、漁村に対する理解だけではなくて、将来の漁業をやってみたい、あるいは林業をやってみたいという若い人を育てることにもなるんではないでしょうか。

 特に、日本は大きな海を持っています。四百五十万平方キロメートル。これは、小学校一学級が十五平方キロメートルの海を持っていることなんです。山の子供たちが海岸へ行って、大きな海を見て、僕たちのクラスだけであの十五平方キロメートルの海を持っているんだと先生がそこで一言教える。子供たちの海を見る目つきが違ってくるでしょう。すばらしい財産を日本が持っているんだということ、私はそういう教育が必要ではないか、そのように思います。都市との交流ということにお金をかけるよりは、もっと手近で身近な山村、漁村、農村同士の交流というのをしっかりと各自治体にも指導していただきたい、そのように思います。

 これはイギリスの例ですけれども、イギリスという国は日本と同じように島国、小さい国です。しかし、どこまで走っていっても緑があって、どこまで走っていっても小さな集落は健全で残っている。次々と十年ごとに消えていく集落なんというのはほとんどありません。なぜか。それは、どんな小さな地域にも三つのものがあるからです。教会がある、郵便局がある、小学校がある。この三つさえあれば集落は守れるんです。

 それを日本は次々と小学校を統合します。残念ながら、毎年毎年、小学校は少なくなり、統合され統合され、小学校が遠くなればなるほど子供の姿は見えなくなる、親が移転する、そして耕作地は放棄される。日本の耕作放棄地をつくっている原因の一つは、こうした小学校の統合にあるのかもしれません。

 私は国土審議会の委員もさせていただいていますけれども、二十一世紀の国土のグランドデザインというのは、小さな集落、漁村と言われようと、山村と言われようと、農村と言われようと、小さな集落をどれだけきちっと守っていけるかどうか、それが国のステータスあるいは国の力をあらわすことになるんではないでしょうか。

 不便なところはどんどん切り捨てて、大きな道路ばかりつくって、大都市ばかりが便利になる。そんな国土のデザインの時代はもう終わったし、終わらせなければならないと思います。すなわち、そういうものこそ大きな自治体にどんどん任せて、小さな地方の自治体がやれない、農村を守る、漁村を守る、山村を守る。私は、国土審議会も、また農水省自身も、そちらに行政の努力の対象を向けていくべきじゃないか、そのように思いますけれども、大臣の所感をお聞かせいただけませんか。

武部国務大臣 全く同感です。ただ、私は、既存の集落も変わらざるを得ない状況にあるんじゃないかと思います。

 例えば、林間学校に都会の子供が行って、便秘になって、早くうちに帰りたがるというような話を聞いたことがあります。これからは、いつでも、どこででも、だれでもが同じような条件下で生活を営み、仕事をすることができる、そういう条件、環境づくりというものが不可欠だと思うんですね。そのことがやはり若い人たちが漁村や農村に帰ってくるという、定着するという大事な要件ではないか、私はこう思います。

 その意味では、既存の集落も、郵便局中心ぐらいに今先生おっしゃいましたけれども、山のてっぺんにいつまでもおれは動かないんだというような、それはふだんはいいでしょうけれども、やはりナショナルミニマムといいますか、一定水準以上の条件というものは、農村の若者もそこで生活するものを求めるわけですから、それを確保するということがまず第一条件じゃないか、こう思います。

 したがって、新しい農山漁村のコミュニティーづくりということが非常に大事なことであり、そのために集落の再編ということも避けて通れないんじゃないか。先ほど申し上げましたように、漁村の数が六千幾つあるということですね。そして、今までは小さな船で仕事ができたけれども、船も大型化してくるということになれば、仕事場はそこに行ってやるのはいいけれども、生活そのものは集落、新しいコミュニティーづくりというものを考えてやらざるを得ないんじゃないか。

 私どもは自然のど真ん中で生活してきていますから、農業と漁業、あるいは林業と漁業というものは、我々のところは一体になっております。ただ、一体になっておりましたけれども、このごろ、酪農家の環境問題が、ふん尿の対策などがやはり海の人々から毛嫌いされるという非常に大きな社会問題にもなってきておりまして、これはゆゆしきことだなと思いますが、先生御指摘のようなことをしっかり念頭に入れて、これからの漁村集落あるいは農山漁村のコミュニティーのあり方ということについてはしっかり考えていかなきゃならない。私は、むしろそういうところに新たなる公共事業というものを持ち込むべきではないか、こんなふうに考えている次第でございます。

岩國委員 文部省の予算、農水省の予算、いろいろ縦割りでやりくりしにくいところはあるかもしれませんけれども、今私が申し上げましたように、農村、漁村、山村を守るという観点からいえば、これは一文部省の行政や予算でやらせて、あるいは自治体がコストということでもって統合させるというふうなことを放置するのではなくて、もっと農水省が前へ出て、農村を守る、山村を守る、漁村を守るために、この小学校がただそこで算数を教えるだけじゃなくて、それ以外のいろいろな意味を持っているんだと、これこそが多面的機能、多面的機能とおっしゃっている多面的機能を発揮する農水省の一つのイニシアチブではないかと私は思いますから、ぜひそういう方向を打ち出していただきたいと思います。

 次に、山村と漁村の交流という点では、先ほど後藤委員からも既に質問が出ておりますけれども、例の漁民の森、これについては島根県の二月の県議会でも質問が出ております。これは全国で既にもう二十九の県が何らかの形で実行しているということでありますけれども、年内に二十九がどれぐらいにふえると見ておられますか。端的にお答えいただけますか。どなたでも結構です。

渡辺政府参考人 今県がとおっしゃいましたけれども、むしろ運動自身は、漁協の婦人部であったり、カキの養殖業者であったり、個人の方々であったりということでありますので、県が旗を振るのは、それは大事なことでありますけれども、私は、これから先どんどんふえてくるような、そういう感じを持っております。もちろん、私どもも、そのために、植林に必要な費用を今年度から予算計上いたしております。

岩國委員 これは県だけでもないし、しかし、水産庁もある程度こういったことに対して、保安林の規定を変えたりしてそれを育成するような方法をおとりになったと私は理解しておりますけれども、予算的なことではなくて、そういう保安林も対象にして、こういった魚つき保安林あるいは漁民の森というものがもっともっと広がることを私は期待しております。

 そうした中で、例えば、宮城県気仙沼のいつもはカキをとっておるような漁民が山へ行ってカキの木を植える、こうなれば大変なユーモアでありますけれども、しかし、ある意味ではこれは夢のあることでもあると私は思います。

 そこで、山の中で魚をつくるという試みが幾つかのところでされているように思いますけれども、例えば大分県ではヒラメを山の中でつくる。これは淡水魚じゃありませんから、相当金もかかるし、失敗も多い。あるいは島根県では、中山間地でウニを養殖する、そういった試みが次々されていますけれども、今現在、こういった海でないところで海の産物をつくろう、大げさに言いますと山の中の水産業、こういうものは今何県ぐらい全国にあるんですか。

渡辺政府参考人 今御指摘がありましたのは、閉鎖循環式による海産魚種の養殖ということでありますが、大分県を初めといたしまして九県で、ヒラメ、トラフグ、カレイ、オコゼ、そういったものが養殖されております。

岩國委員 そうした、夢のあるといいますか、山の中でもそういった水産業が試みられ成果を上げるということは、山村と漁村との交流ということを私は先ほど強調させていただきましたけれども、そういったことも、一つのわかりやすい理解を深めていくこと、そして、こんなに大きな海を持ちながら、なぜ山の中で魚をつくらなきゃいけないのかなという素朴な疑問を小さな子供のうちから持たせること、次の時代にはまたいろいろな発想がその中から生まれてくることにもなるでしょうし、教育効果という点からも非常におもしろいことだと私は思いますから、できることであれば、農水省の予算の中にも、そういったことにもっとめり張りをきかせる、そのような措置もとっていただきたい、そのように思います。

 次に、水産庁の予算についてお伺いいたします。

 水産庁の予算は今年度幾らで、その中で公共事業は幾らですか。

渡辺政府参考人 済みません。ちょっと今手元に十二年度の予算の数字しかございませんけれども、三千五百五十億余です。それで、公共の計で、これは一般公共の中にいろいろなものが入っておりますので、災害復旧も入れまして、公共は二千四百八十億余、非公共は一千七十億余となっております。

岩國委員 要するに、水産庁の予算の六割が公共事業ということですね。

 そして、武部大臣は、公共事業についてこれからどんどん見直しをし削減していくんだという小泉政権の方向の中で、水産庁のこの六割という公共事業、これはどれぐらいに減らしていくお考えですか。

    〔鉢呂委員長代理退席、委員長着席〕

武部国務大臣 私は、水産公共を減らすということは申し上げておりません。

 先生は御存じなんだろうと思いますけれども、昔は、漁港は船が出たり入ったりする、あるいはとってきた魚を積んだりおろしたりする、そういう場でした。しかし、今は違います。漁港そのものが作業所に生まれ変わっております。ですから、漁港と沿岸漁場整備事業、今度は議員立法で法案を提出しよう、そういう動きにございますけれども、いわゆる生産基盤というものの水産業に占める割合は当然多くなるんだろうと思います。

 そのほかにこれから重視しなければならぬのは、先ほど来お話ありますように、技術研究、試験研究、こういったことも大事になってくるだろうと思いますし、その技術研究も、技術の分野も、これからは公共事業で考えてしかるべきではないか、私はそういう考えを持っております。これはやはり先行投資を相当必要とするものでありますし、リスクもかなり大きいものがあるんだろう、私はさように考えます。

 それから、先ほども申し上げましたように、集落の再編、こういったことも今必要に迫られてきているんじゃないかと思います。だれも生まれ育ったところから一定のコミュニティーといいますか、集落に移り住むことを望む人はおりません。しかし、年寄りが多くなって、いざ急病になったというようなときに、やはり医療施設に近いところにいるのと道路なども未整備のところにいるのとでは、これは生命にかかわる問題でありますから必然的に、先ほど申し上げましたように、一定水準以上の整備された、そういったところで仕事をしたり、そこで居住したりというようなことが必要になってくるんじゃないか。

 そういう意味では、農山漁村の新たなる可能性を切り開いていくという中には、公共事業で集落の再編などには相当お金がかかってくるんじゃないのかな、私はかように思っておりまして、予算を減らすというよりもむしろ、そういった面の行政需要といいますか、必要性は強まっているんじゃないのかな、かように思います。

岩國委員 世間一般は、小泉内閣は、相当勇断を振るって公共事業も減らしていくんだ、そういった見直しは行われるんだということのようですけれども、今の武部大臣のお話を伺っていますと、減らすどころかこれから公共事業をどんどんやる、こんな感じに聞こえます。

 それから、技術研究についてまで公共事業という範囲に入ってくるんですか。そこまで入っていると、解釈は広がるわ予算はふやすわ、これはまた、これから公共事業は、では、どこを減らすことになるんですか。水産庁関係の中で減らす公共事業は例えばどういうものがあるんですか、今の大臣のお話だとふえる方向ばかりですから。これは、新聞報道と全然落差の大きさに驚くだけです。どこら辺を減らすお考えですか。

武部国務大臣 それは、道路などはかなり整備されているんじゃないかと思いますね。ただ、道路も、北海道の漁業者や農業者は、高規格道路は早くつくってくれと。やはり物流対策というのは、北海道みたいな遠隔の地は最も優先されるべきことなので、これは一概には言えないと思いますけれども、漁港の整備でありますとか、漁港も、今までは集落のあるところに港をつくっているわけですから、漁港から漁港が見えるようなところ、道南の方に行ったらたくさんありますね。そういうようなことをやってきたということは反省しなければならぬと思います。

 やはり一定水準の、一定の機能を持ったそういう漁港だとか漁場整備だとか集落の整備だとかいうことは必要になってくる、そういう意味で私は申し上げているので、今までのことをやるということではありません。むしろ、今までのことを抜本的に見直さなければならぬということは全く同じでありますし、また減らせるところは減らすのは当然だろう、しかし、ふやすべきところはふやすのも当然だろう、私はこのように思っています。

岩國委員 それでは、水産基本法の審議ですから、水産庁関係の公共事業について。

 今まで行政監察でむだだと指摘されたようなことはありますか。あったとしたら、それは件数で、金額でどういうものがむだと指摘されておるんですか。

 これは、橋本総理の九六年の十一月二十九日の所信表明の中で、「さらには農業農村整備などの公共事業について、各省の枠を超えた連携、建設費用の低減、費用効果分析の活用などを通じ投資効果を高めます。」と。珍しくここは、今の一行時代ではなくて、農業については二行書かれているんですね、農業、水産について。

 この五年前の総理の所信表明の中で約束された、各省の枠を超えた連携、建設費用の低減、費用効果分析、五年たってどれだけ見事にその成果が出ているのか、その辺をお話しいただけますか。

渡辺政府参考人 にわかの御指摘でありますので具体的な話にはなりませんが、まず行政監察等で指摘をされましたのは、やはり漁港の利用率が非常に低いという点であります。それから、それの背景といたしまして、事業が分散をしているために、防波堤その他が短期間に完成をしないというふうなこともたしか指摘されていたというふうに記憶をいたしております。

 それから、コストダウンの問題につきましては、公共事業を所管する霞が関のそれぞれの役所が共通をいたしましてコスト削減計画をつくっております。これは、過去三カ年の間に相当顕著なコストダウンが各省の公共事業それぞれについて図られております。

 それから、費用対効果比につきましては、当然のことながら、公共事業を始める前に事前評価を行い、さらに、その途中で一定期間が経過をした後、再評価という形でやってきております。また、これにあわせまして、今後は事後評価も行って、その総括と他の事業への利用ということも考えております。

岩國委員 今、私の質問に対して、にわかな御質問ですということをおっしゃいましたけれども、きょうは傍聴の方も随分来ていらっしゃいます。まるでにわかでない質問ばかりを我々がここでやっているかのような誤解を与えますので、すべての質問はにわかな質問であるはずなんですから、私のあの質問だけはにわかであって、それ以外のものは全部打ち合わせ済みの質問であるというふうな誤解を与えるような発言は慎んでいただきたい、そのように思います。

 私の質問に対して、昨年の行政監察でむだと指摘されたものはなかったんですね、答弁はありませんでしたけれども。件数はどうだったのか、何がむだだったのか、金額的にどれぐらいのものがむだになったのか。

渡辺政府参考人 昨年の分につきましては、資料が手元にございませんので、後ほど改めて提示をしたいと思います。

岩國委員 それでは、委員長にお願いします。

 資料要求をさせていただきたいと思いますけれども、昨年の行政監察に対して、一割のむだがあると指摘された。そのむだに対して、どのようなものがむだであったのか、そしてそれに対してどのような対応が水産庁としてなされたのか、農水省として、これを本委員会に報告していただきたいと思います。

 それから、五年前に橋本総理が国民に対して約束された費用対効果の分析等々、五年間に農水省はどの程度まじめに取り組んで、それなりの結論を得ておるのかどうか。

 この二つを本委員会に提出していただきたいと思います。よろしゅうございますか。

堀込委員長 岩國委員の御提案につきましては、理事会で協議の上、そういう方向で検討をさせていただきます。

岩國委員 この水産基本法の法律について、これは水産資源を守っていくという観点と、水産資源をこれからさらに能力グレードアップを図っていくという観点から、いろいろな環境面との抵触ということがこれから出てくるんじゃないかと思います。

 守るという観点からいえば、中海は干拓などしないで――中海というのは、島根県、鳥取県の間の中海という汽水湖がございますけれども、干拓事業は実行されることなく、水産資源としていい方向でこれから守られるだろうと私は思います。

 しかし、それはどのように活用が行われるか、これはまた新しい課題として残っておりますけれども、その活用の仕方については、たとえ目的は水産業のためであっても、また新たな環境の問題が出てくるかもしれません。

 こうした環境に関する地元住民の懸念というものが、あの干拓事業を中止させた一つの大きな原動力になっていることを考えますと、この水産基本法についても、環境省からどのような意見、提案あるいは助言があったのか、あるいは全くなかったのか、その点を、大臣御存じでしたら、あるいは担当の局長でも、お答えいただけますか。

中川政府参考人 環境省の場合には、各省庁が法案を提出されるときに、その作成過程でいろいろ注文をつけたり協議をさせていただいておりまして、環境の面における配慮がそれぞれの法案の規定にきちっと盛り込まれているかどうかということをチェックさせていただいているわけでございます。

 水産業というのは水産動植物という自然の恵みによって成り立つ産業でございまして、水産業の振興等に当たりましては、水質の保全、動植物の生育環境の保全等、環境上十分な配慮をすることが重要と考えております。

 この水産基本法案におきましても、そういった面におきまして、案の段階からもちろん御配慮いただいている点もございますが、環境省といたしましては、この立案過程におきまして、当初、第二条の第二項に環境との調和に配慮をしてという文言はなかったわけでございますが、第十六条において「環境との調和に配慮した水産動植物の増殖及び養殖」と規定されていることを踏まえまして、第二条第二項においてもこれを明示するよう環境省から農林水産省に要請いたしまして、現法案のとおり「環境との調和に配慮しつつ、水産動植物の増殖及び養殖が推進されなければならない。」と規定されたところでございます。

 このほか、水産基本法におきましては、第十六条、十七条、二十五条、それから二十六条におきまして、それぞれ水産業にかかわる環境問題を適切に認識した規定が出ておりますので、こういった規定に基づきまして、適切な配慮がなされるということを期待いたしております。

岩國委員 環境省のそういう助言がなければそういう言葉が入らなかったということのようで、環境省が大変適切な助言をされたことは我々も評価しなければならないと思っております。

 逆に、環境省が助言し提案したにもかかわらず入らなかった項目はどういう項目ですか。あるいは、全部入れてもらったんだということであれば、環境省が入れてもらうような助言をその程度しかしなかったのか。それ以上のことを言ったのに、具体的に幾つかの例で結構ですけれども、その法案の中に盛り込まれなかった環境省の意見、助言というのはどういうものだったのか。

中川政府参考人 法案の作成過程におきましてはいろいろやりとりがございましたが、最終的には、両省の間で合意事項という形で、法律の規定においては、明文の、そこまで細かい規定はなされておりませんけれども、両省の間で、法律の解釈あるいはその運用に当たって、こういうことをお願いしたい、そしてそれは了解しましたというようなことをお互いに合意をいたしておりまして、そうした合意を踏まえて、私どもといたしましては環境上の配慮が適切になされていくというように認識いたしております。

岩國委員 私の質問に対して答えていただいてない部分、つまり、どういう点がこの法律に盛り込まれなかった、いや、それは合意事項で全部カバーされたのか、それでさえもカバーされていない点はどういう点があるのかということです。

中川政府参考人 法律の修文につきましては基本的には御理解いただいたということでございますが、一点、第十六条におきまして「国は、環境との調和に配慮した水産動植物の増殖及び養殖の推進を図るため、水産動物の種苗の生産及び」その次に、適正な放流の推進という、適正なということを入れるようにお願いをしたわけでございますが、その点につきましては実現いたしておりませんけれども、そのやりとりの過程で、私どもの主張は十分に御理解をいただいたというように認識いたしております。

岩國委員 先ほど、環境省と農水省との間の合意事項があると。これは書面で残っているはずですね。それは公表されておりますか。もし公表されていないとしたら、本委員会に提出していただきたいんですが、その点は。

中川政府参考人 今のところ公表はされておりませんが、公表を前提に作成したものでございますので、御要求があればいつでもお出しする用意がございます。

岩國委員 それでは、その合意事項なるものも本委員会に早急に提出していただきたい、そのことを要求しておきたいと思います。そうした大事な合意事項がありながら、この委員会で委員が目も通さないでそのまま採決するということは適切ではない、そのように思います。

 予定時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、城島正光君。

城島委員 民主党の城島でございます。質疑が続いておりますが、大臣、もうしばらく御猶予いただきたいと思います。

 まず一点目に、有明海の問題を、私なりの所見を述べさせていただいて、大臣の御見解をいただきたいというふうに思います。

 有明海の問題については、もう既にこの委員会も含めて、先ほども古賀一成代議士も、前回に引き続いて詳細な現状及び問題点を述べられておりますが、現実に今有明海で仕事をしているあるいは暮らしをしている人たちや、あるいは先日の現地でのシンポジウム、あるいはこれまでのいろいろな経緯等を私なりにも調べたり、あるいはヒアリングをさせていただいた。

 結論から申し上げますと、私なりの見解でありますけれども、戦後の我が国の経済あるいは社会の変遷の、ある面では凝縮した縮図みたいな状況が今有明海に起きているのではないかというのが私の印象でございます。

 私自身も、実は生まれたのが有明海沿岸の福岡県の柳川でございました。非常に印象的なのは、諫早湾の今回の潮受け堤防のスタートになる原因を一つつくったと言われている大水害がございました。諫早湾の大水害がありまして、小さいときでありましたけれども、私の自宅の前をひつぎを積んだトラックが毎日行き来したのを今でも鮮明に実は覚えているわけでありまして、非常に心が痛む水害だったなというふうに記憶に鮮明であります。

 そうしたところから私なりの有明海との出会いもあるわけでありますが、そうしたことを含めて、有明海はやはりどんどん変化していった。

 今の状況になるには、そうした今問題になっている堤防の問題もありますが、あそこは有数の農業地帯でありますので、やはりその間の農薬の使用。あるいは、先ほども古賀一成代議士が言っていましたけれども、筑後川における、都市部、特に福岡市等中心の水の供給源としての筑後大堰ができた。あるいは、まさに戦後の日本の、戦中からもそうでありますけれども、エネルギー源の中心であった石炭、あの最大の炭鉱がありましたけれども、その坑道が原因だと思われる海底の沈没がある。あるいは、昨今の生活の変化による、有明海沿岸に約三百万人の人たちが暮らしているわけでありますけれども、そうした部分の生活排水の問題がある。

 いろいろなところがやはりこの有明海に集中してそういう影響が出てきて、私なりの感じでいうと、有明海における面積からいっても二%を占める今度の諫早湾の潮受け堤防、この水門の閉鎖というのがだめ押し的に、今の、宝の海だった海をある面ではかなり瀕死の重傷を負う状況にしたのではないかという感じがしているわけであります。

 そういう点からいうと、先ほどから、午前中も論議になりましたけれども、この有明海をもとのような、いわゆる宝の海というふうに言われるような海に再生をする、蘇生をするということは、単に今回の悲鳴が国に、国会に届いたノリ業者の皆さんのノリの再生にとどまらず、まさに有明海の再生であると同時に日本の再生につながるんじゃないか。やはりそのためには、総合的な技術と政策をもとに、検討を要して、そして新しい二十一世紀の日本を形づくることができることにも通じるし、そういう方向があって初めて有明海は再生できるというふうに思うわけですね。

 そういう点でいうと、ぜひ、有明海の再生に向けての国家プロジェクトみたいなことはやはりつくる価値があるし、つくらねばならないというふうに私は思うのでありますけれども、こうした点を含めた大臣の所見をお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 私も先生と同じような認識で、諫早湾の干拓事業の問題、あるいは有明海におけるノリ不作の問題を懸念しております。

 前にもお話ししましたけれども、余り身近な事例を長々と述べるな、こういうふうにおしかりを受けそうでありますけれども、私も、サロマ湖一つとってみましても、政治家になってからずっと警鐘を乱打してまいりました。

 それは、大雨が降ると、山に木がありませんから保水能力を失っていますから、上流からどっと大水が流れ込んでくる。それから、農薬や金肥を使う、そういう農業が大宗でありますから、これまた表土が弱くなっていますから、そういった畑の土砂も流れ込んでくる。生活排水も流れ込んでくる。そして、漁業者の中には、船で作業をしていて、そして残ったごみくずなどを、本来ならばちゃんと自分のうちへ持っていって処理するということをやっているのかどうかとかですね。

 そんなことからどんどんと、しかも養殖というのは、貝そのものが排せつ物を出しますから。それからえさを、ホタテの場合には、あそこは自然のプランクトンですから問題はありませんけれども、外海でさまざま養殖する場合に、給餌するという場合に、やはり窒素、燐を含むようなものを与えますから、そういうようなことも原因で海の富栄養化という問題も出てくる。

 そういうようなことを考えますと、私はまだ現地に行っておりませんので、予断を持ってあれこれ申し上げることはできませんが、いずれにしても、問題が問題ですから、問題解決の道筋というものをつけていかなきゃならないと思います。

 これは私どもは、現在、第三者委員会においても、明らかに有明海の環境は悪化していると見られる、そういう現状認識をしておりますし、本年度からは、環境省を初め関係省庁との共同の海域環境調査も実施しておりますし、先ほど来いろいろ、古賀先生からもかなり効果があると言われました覆砂、堆積物の除去等の漁場改善対策の実施もしておりますし、アサリの放流などもいろいろやって、環境を修復、創造する施設づくりということに重点を移行させているのが現状でございます。

 有明海の再生に向けた取り組みは、やはり相当さまざまな角度から、今も先生、国家プロジェクトとおっしゃいましたけれども、国家プロジェクトいかんはともかくとして、全省庁挙げて、あれをもう一度宝の海に戻す努力をみんなでしてみよう、そういう計画的な取り組みということが不可欠だろう、私はこのように思いまして、二十六日には現地に参りまして、ささやかな私の体験も通じてしっかり見てまいりたい、こう思っております。

城島委員 今大臣がおっしゃったような観点で、私は、もう本当に同じ趣旨だろうと思うので受けとめますが、総合的なあらゆる知恵を出し合って有明海をよみがえらせるということは、先ほどの繰り返しですけれども、二十一世紀の日本をつくりかえるようなことにつながるんだろうと思いますから、ぜひ御検討いただきたいと思いますし、二十六日ですか、現地へ行かれると。どこを使われるかわかりませんが、佐賀空港をお使いになると、着陸するとき必ず上から一望にその全体像が見えますから、その中で、ぜひ状況をいろいろな観点から見聞きしていただきたいなというふうに思うわけであります。

 もう一点、有明海に関して、先ほどこれもお話が出ていましたけれども、私も、現実に今漁業をやっている人、あるいは既にあきらめて違う仕事に転職した人を含めていろいろな話を聞いてきましたけれども、率直に言って、海の変化というものを、毎日、何十年と海で暮らしている人たちの鋭い感性というのは、やはり何よりも増して一番的確じゃないかという感じがしております。学問的な、学者の意見も確かに重要だと思いますけれども、日々海で暮らしている人の意見あるいはちょっとした見解というのは極めて重要じゃないかなというふうに思っているわけであります。

 そうした人たちが、実は数年、あるいは場合によっては十年ぐらい前から変化に気がつき始めている。特に、この諫早湾の今回の潮受け堤防の水門閉鎖後の顕著な変化というのは、既に彼ら自身がいろいろな場面で言ってきた。それがやっと、日本の中で最大のノリ養殖事業に、あるいはノリの状況に変化が起こって初めてそれが届いた。実は、水門が閉まって以降の大きな変化、あるいはその前からの徐々の変化ということをいろいろな場面で言ってきたんだけれども、残念ながら、それはなかなか国に届かなかったんだということがあるわけであります。

 例えば、赤潮の発生においても、現実に仕事をしていれば赤潮の発生頻度はだんだん高まっているんだけれども、特に水門が閉まった後は、表層だけじゃなくて、もう本当にかなり深いところまで赤潮が一気に発生するようになってきたという変化を如実に最初に感じていた人たちや、あるいは先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、この間、放流や養殖を含めたいろいろな取り組みが現地でもされていますけれども、それもあるところまでいってなかなかうまくいかない、あるいは場合によっては全部死滅するような変化になってきた。

 あるいは、これは漁師だからわかるのだろうと思うのですけれども、二、三年前になって突然、今まではほとんどとれなかったタコが顕著にとれるようになった、これは間違いなく塩分濃度の変化じゃないかというようなことも言っていた。まさに塩分が高くなってきているんだろうという変化も実は指摘をしていたんだということを含めて、最近は、一日漁に出ても四、五千円になればいいぐらいという日が圧倒的に多くなってきて、とてもじゃないけれども、この有明海だけでは暮らせなくなってきている。

 だが一方で、おかに上がってもこれだけの不景気なんで、なかなかそれを支える収入がないということで、そういう面を含めてノリだけではなくて、有明海をなりわいとしている人たちの状況というのは本当に深刻になってきているということだと思うわけであります。

 そういう中で、今回、生活安定緊急特例資金というようなこと、あるいは特例融資制度というのが新設をされているわけでありますが、例えば、特例融資資金、これは月額十万三千円を六カ月間貸し付けるということ、六カ月据え置きの五年以内の返済、無利子である、あるいは特別融資制度を、今までのにプラスして五百万ありますが、今までの資金につけ加えるとトータル一千万になるということであります。

 現地で聞くと、まさしくこれから漁業あるいはノリも今後も復興するのかどうかということに対してやはり不安がある。ですから、なかなか借りたいと思っても返済が本当にできるかということについての不安の中でちゅうちょしている人、あるいは不安の中で借りている人というのがどうも多いんじゃないかという感じがしているわけでありますが、現実にこの両方の融資制度についてどれぐらいの方が受けられているのか、申請されているのか、お尋ねしたいと思います。

渡辺政府参考人 生活安定資金の方は、多分厚生労働省だろうと思います。私の方は、いわゆる無利子融資ということで限度額五百万円の安定資金を準備いたしました。融資枠六十四億円、現在までのところ、四十一億円が貸し付けをされております。

尾嵜政府参考人 恐縮でございますが、融資の件につきましては、事前に御質問いただくということをお聞きしておりませんでしたものですから、私、全く関係のない食品の担当の部長でございまして、担当の職員が参っておりませんので恐縮でございますが、この場でお答えすることができません。御了承をお願い申し上げます。

城島委員 そうですか。昨日、質問事項を通告しておりましたけれども、それでは後ほどどれぐらいの状況かを教えていただきたいと思いますが、長官がお答えになったのは、今までのトータルで四十一億円ですね。

渡辺政府参考人 今回、新たな措置として設けられました無利子資金が、六十四億円の融資枠に対して四十億円余ということでございます。

城島委員 わかりました。

 いずれにしても、有明海の問題、そういったことも含めてぜひ将来の希望が持てるような状況に早くすることを強く要請しておきたいと思います。

 次に、本題の水産基本法の方に進めさせていただきますが、今回のこの水産基本法は、二年前に策定をされました食料・農業・農村基本法と同時に、私自身ずっと読ませていただきましたけれども、一点だけ感想というか問題点を申し上げますと、水産政策あるいは今までの水産行政についての総括というのが非常に弱いなという感じがしておりまして、かなり抜け落ちていると言った方がいいかもしれませんが、どういう総括をされたのかということがないという点は非常に残念なことであります。

 いずれにしても、先ほど岩國代議士もおっしゃっていましたけれども、国の基本そのものは食料の安定ということが基本であるわけでありまして、その供給の主役が農業であり、水産業がその一翼を担っているという点からすると、この基本法は国家全体にとっても極めて重要な法律案であることは間違いないというふうに思います。

 そういう点で、まず一点目に、特に水産資源の持続的利用の確保ということが挙げられているわけであります。確かに、これが最も基本の点だろうというふうに思います。持続的発展、そして持続的利用ということであり、まずはこの持続的利用の前に、利用できるようにするためにも水産資源の回復を図るということは極めて重要な施策であるということだと思います。

 そういう観点に立ったときに、漁獲高が急激に減少しているということでありますが、その理由あるいは背景といった点はどういう点にあるのか、まずお尋ねをしたいというふうに思います。

渡辺政府参考人 漁獲高の減少の理由でありますけれども、基本的に、やはり資源が減少傾向にあるということだろうと思います。私の方で毎年評価をしておりますけれども、日本近海でいいますと、八十一の系群について四十二の魚種の調査を行っておりますけれども、七割方、減少もしくは低位横ばいという感じでございます。

 それから、こういったことの原因といたしまして、先ほど来の説明の中でも藻場の喪失のような話も出ておりましたけれども、やはり漁場環境が悪化をしてきている。それと、さらに加えまして、やはり漁獲努力がやや過剰ではないか、つまり、とり過ぎということが挙げられようかと思います。

城島委員 そういうことを含めた水産資源の持続的利用の確保のための具体的な取り組みの内容について、大臣の御見解を承りたいと思います。

武部国務大臣 今回の漁業法の改正によりまして、新たに広域漁業調整委員会を設置することとしております。これによりまして、従来から行われてきた漁業の種類や管理主体ごとの漁業管理に加えて、対象となる水産資源の分布、回遊の範囲に着目いたしました、より広域的な視点に立った資源の管理を推進していくということが一点でございます。

 また、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律の改正によりまして、従来の漁獲量の管理に加えて、漁獲努力量に関しても総量的な管理制度を創設して、悪化している水産資源の維持回復に努めることとしております。

 これらの措置を総合的に実施することによりまして、水産資源の持続的な利用を図り、水産基本法の理念であります水産物の安定供給の確保、水産業の健全な発展に資していく、このことが基本的な考えでございます。

城島委員 それでは、大臣、どうぞしばらくの間……。

 それでは、質疑を続けさせていただきますが、今お答えになっているわけでありますけれども、魚を取り巻く環境がいろいろな面で悪化をしてきたということが一番大きな漁獲高の減少の原因ではないかということでありますが、先ほどの質疑にもありましたけれども、確かに今までの法律案というのでしょうか、できてからかなり長い間たつわけであります。

 その間の我が国の状況、特に漁業を取り巻く状況を見ていますと、今になってみると、ある面でいうと過剰な港湾の整備みたいなものが強過ぎたんじゃないか、例えばそういう点が考えられるんじゃないか。そういうことを含めて見た公共事業が、本来の趣旨以上の公共投資によって、例えば魚の産卵あるいは生育というものにとってマイナスの環境をつくってきたということが一つの理由としてはあるのではないかというふうに思うわけであります。

 そういうことを含めて見て、例えば、水産業の健全な発展という観点に立って、漁港、あるいは漁場その他の基盤整備というものが今回も取り上げられているわけでありますが、端的に言って、漁港について、先ほどは岩國代議士は漁村ということをおっしゃいましたけれども、漁港そのものは一体どれぐらいの変化をしているのか、まず、昭和三十年代以降の数がどういう変化をしているのかをお尋ねしたいと思います。

渡辺政府参考人 漁港の数でありますけれども、昭和三十年代からということでありますが、途中、四十七年に沖縄の復帰がございましたので、六十港そこで追加をされておりますことを御了解いただきまして、三十七年当時の漁港の数が二千七百五十一港、四十七年に沖縄の復帰で六十港追加されましたので、平成五年にピークを迎えたときには二千九百五十三港であります。現在、平成十三年四月一日現在で二千九百三十一港が漁港の指定を受けております。

城島委員 それでは、今触れましたように、漁港、それから漁場その他の基盤整備というのが挙げられていますが、具体的にはどういうことが検討されているのか、お尋ねします。

渡辺政府参考人 水産業の基盤整備の具体的内容といたしましては、漁船の係留施設、それから防波堤、加工、流通施設、こういったものがまずございます。

 それから、漁場といたしましては、魚礁の設置、増養殖場の造成、それから漁場の保全をするといったようなことを考えておりますけれども、先ほど来の大臣の説明でもございましたように、漁港事業は漁港事業、海岸事業は海岸事業、漁場整備事業は漁場整備事業ということでなくて、それらを一体として、一貫した水産物供給システムというふうな形に組み直していくことがこれから先は大事だろうと思っております。

 加えまして、こういった公共事業もしくはそれに類似するものをやる場合には、常に環境のことを考えて、環境修復型もしくは環境創造型ということに留意する必要があると考えております。

城島委員 港は大変立派になった、しかし魚が一向にとれなくなったというような漁業従事者の声というのは至るところで聞こえるわけでありますが、そうした状況の中で、やはりどこに重点的にお金を投じていくのか、あるいは重点的な政策を置いていくのか。先ほどからも論議になっておりますけれども、いろいろな、例えば魚の調査あるいは育成、その漁場の確保といったようなことを含めた、一点目の持続的利用が可能なような状況をどうつくっていくのかということからすると、漁港の整備以上にそういった点への投資、あるいは重点的な政策が必要じゃないかというふうに思うわけでありまして、そういう点での見直しが必要ではないんでしょうか。

渡辺政府参考人 やはり、不断の見直し、点検が必要だろうと思います。

 今回提案をさせていただいております水産基本法におきましても、第二節の「水産物の安定供給の確保に関する施策」といたしまして、重要施策を幾つか柱を立てております。その中には、日本の貴重な二百海里水域をきちんと資源管理していく、二百海里以外のところでは国際機関に協調する、資源を管理する大前提として、水産資源に関する調査研究を徹底する、そして、日本近海もしくは湾内におきまして、増殖、養殖を推進する、そういったようなことを掲げているわけでございます。

 漁港なり漁場の整備の問題につきましても、これは一昨年の水産基本政策大綱の中に示しているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、漁場開発は沖合へ、そして、沿岸域では漁港と漁場を一体的に整備をする、環境に積極的に調和をさせていく、流通拠点を整備する、そして、おくれている漁村の総合的振興を図るということに基盤整備事業の重点を移していくということでございます。

城島委員 午前中の論議にもなっていましたけれども、そういう点で、非常に重要な取り組みじゃないかなというふうに思っておりますけれども、近年、山が海を豊かにして魚を育てるんだというような認識のもとで、漁業従事者あるいはそういう関連の人たちが例えば植林に取り組むというようなことがいろいろなところで行われているという報告があるわけでありますが、その実態あるいはその因果関係をどういうふうにとらえているのかをお尋ねしたいというふうに思います。

渡辺政府参考人 私の経験で申し上げますと、この手の話が始まりましたのは、国有林と関連をさせた形で始まったえりもの植林活動、それから八〇年代に開始をされました北海道漁婦連といいますか、漁協婦人部の山に木を植えようという運動、これが始まりだと思います。

 そして、大きく取り上げられ始めましたのが気仙沼の唐桑湾だったですか、畠山さんが室根山に木を植えるという運動を始めた、ここら辺が、どちらかというと非常に変わった人たちがやっているんだなというような運動でありました。

 しかし、今日の時点では、地図が本当にいっぱいになりますように、燎原の火のごとくと言ってもいいと思うのですけれども、漁業者たちが山へ上がって木を植えるという活動をいたしております。

 効果でありますけれども、冒頭申し上げましたえりもの緑化につきましては、砂が飛ぶあるいは土砂が流出するという現象が防止をされ始めまして、昭和四十五年ぐらいを始まりといたしまして、昆布や魚介類の水揚げが急速に伸びております。

 それから、北海道漁協婦人部の活動も、昭和六十三年から始まっておりますが、植樹の数が五十万本という状況の中で、サケやホタテの資源がふえているというふうな状況にございます。

城島委員 ということは、少なくともこの因果関係においてはプラスの効果が認められるんじゃないかということだと思いますね。とすると、その漁獲高の回復のために、森林行政あるいは河川行政とこの水産行政とがまさしく一体となった対策ということが今後ますます重要になってきているんじゃないかというふうに思われるんですが、いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 全く御指摘のとおりでございます。漁業は海の自然環境に大きく依存しておりますが、海は最後に水が流れつくところでありますから、やはり循環の始まりの山からすべてを整備していく、そのために漁業者たちも大いに協力をしていくということが大事であろうと思っております。

城島委員 また同時に、一部の河川の整備事業ということで、環境に配慮した工法が使用されているという部分がありますが、海岸線とか港湾あるいは漁港、こういったところの整備についても、例えばそういう環境に配慮した工法ということにおいて、最初に問題提起したような魚の生育にとっていい環境という面での環境ですけれども、そうした工法を広げていくという考えがあるのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

渡辺政府参考人 この問題は、ひとり水産庁だけではなくて、こういった公共事業あるいは開発を行う関係府省全部に共通する問題であります。私たちもそういう点で国土交通省などとよく話し合いをするわけですし、国土交通省あたりのすばらしい成果もちょうだいをしているわけでございます。

 漁港では自然調和型漁港づくりというふうなことをやっておりますが、人工リーフをつくるとか、あるいは海水を交流させるような護岸にしていく。海岸事業でいえば、関係者の護岸にして、そこにそれぞれ藻がつくようにして藻場を形成させるというふうなことを実施しております。これは私のところの事業ではないのですが、例えば関西空港の護岸は関係者護岸になっておりまして、あの地域の漁業者の方々にお聞きすると、大変いい漁場になっているということでございます。

城島委員 こうした点もこれからの持続的利用を確保する環境ということにおいても重要なテーマだと思いますので、ぜひ積極的に取り入れていっていただきたいというふうに思います。

 また、これは有明海の中でもあったことでありますけれども、例えば学校教育においてもそうだと思いますが、有明海に入っている矢部川という一つの川があるわけであります。その上流の小学生と有明海の沿岸のところの小学生との交流というのがずっと、有明海がおかしくなってきたなというときから始まっているそうでありますけれども、まさにお互いの交流の中で、有明海の幸も山からの贈り物というテーマでずっと交流をしているようであります。

 その中で、その川の上流にいる児童の作文でこういうのがあります。「矢部川から有明海までつながっているから、と中と中で何十人、何百人の人がその川をよごしてはいけないと思いました。今までは平気で空きかんやゴミなんかすてていました。でも有明海の海によごれなんかたまると、今では生きていられる魚や貝がすめなくなります。また、魚や貝をとる有明海の人たちにも大へんめいわくになります」ということがわかりましたという作文が発表されておりますけれども、こうした学校教育においても、やはりある面では非常に重要な側面を持ったこの山あるいは環境といったテーマは取り上げることができるんじゃないかというふうに思っております。ぜひそうしたことも含めた対応を考えていただければというふうに思います。

 次に、海難の事故についてお尋ねをしたいというふうに思います。海上保安庁、よろしいでしょうか。

 漁業従事者の安全について現状をちょっとお尋ねしたいわけでありますが、昔から漁師は板子一枚下は地獄と、大変危険な仕事だというようなことがよく言われているわけであります。つい最近発表されました十二年度の農林水産業新規就業者等実態調査の中でも、特に漁業への新規就業者のいろいろなアンケートを見ておりましたら、就業するときの不安という中に、特に、雇われた形でこの漁業についた人の四人に一人は、就業をするときの不安が、海難事故や海中転落などの危険性ということを挙げていらっしゃいます。二五・七%ということであるわけでありまして、確かにこういった点が特に新しく仕事につこうとするときの不安ではないかなというふうに思うわけでありますが、その災害の発生状況について御報告をいただきたいというふうに思います。

縄野政府参考人 海上保安庁で統計をとっております漁船としての海難についての推移を御説明申し上げます。

 昭和三十四年以降でございますが、いわゆる転覆、衝突等の漁船の海難に伴う死亡・行方不明者数は、大ざっぱに申し上げますと、昭和三十年代は年平均五百十六人、昭和四十年代では年平均三百四十七人、五十年代では二百一人、昭和六十年以降は、くくって申し上げますと、年平均百二十八名ということになっております。

 季節的には、当然のことながら、やや冬場に多いということ。それから、他の船舶との比較で申し上げますと、やはり他の船舶は衝突が多いわけでありますが、漁船の場合には転覆が圧倒的に多いというような傾向が見られるわけでございます。

 これは、ただ、いわゆる転覆や衝突等に伴う死亡・行方不明についての数字でございます。単なる作業中に海中転落の数字は、過去に統計がなかったものですから、比較のために含まれておりませんので、よろしくお願いしたいと思います。

城島委員 ということは、十年タームで見ると、確実に減ってきているということのようであります。

 今ちょっと気がつきましたけれども、長官の胸に青い羽根がありますが、これはやはり何かそういうのに関連した羽根ですか。ちょっと余計なことかもしれませんが、お尋ねいたします。

縄野政府参考人 恐縮でございます。

 これは余り知られていないのでございますが、昭和二十五年から始めておりまして、漁船を中心とする、海で遭難した方々を救助活動するためのボランティアの方々、これも大半が漁業関係者の方でございますが、そのボランティアの方々の費用を支援するための募金でございます。

 水産庁あるいは全漁連初め関係の方々の御支援を得て、毎年、特に夏に向けてやっておるものでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

城島委員 昭和二十五年からですか。全く知らなくてちょっと申しわけないんですけれども、広める努力をしたらいいかと思いますね、大臣。大臣もぜひ。されていますか。――わかりました。青い羽根運動でしょうか。承りました。

 それからもう一点、特に漁船の海難、特に死亡事故について、実は私も何人かの人にちょっと聞いたんですけれども、これはなかなか難しいかもしれませんが、一体いつまで、今度のえひめ丸じゃありませんが、捜索をしてくれるのか。家族からすると、やはり本当に、実際、遺体なら遺体が見つかるまでぜひやってほしいというような強い意向があるんだけれども、どうもそれが、冷たくあしらわれるわけではありませんが、そういうケースが多いというようなことを現実に聞いたわけであります。

 漁船の海難については、捜査をいつごろまで、どういう判断で行うのか、そしてまた捜査終了後の対応というのは一体どういうことになっているのか、お尋ねしたいと思います。

縄野政府参考人 私どもとしましても、えひめ丸事故のときの対応と比較しての御指摘もございまして、大変つらいことをお話ししなければなりませんが、漁船に限らず、通常のパトロールではない専従捜索をいつ終わらせるかということにつきましては、海難発生時の状況でありますとか、生存されているかどうかという可能性をその都度判断いたしまして、決定しておるところでございます。

 ただ、専従捜索を終了しましても、不幸にしてまだ行方不明の方がおられる場合につきましては、海上保安庁の方から航行警報を出しまして、付近に他の船舶が、貨物船なり漁船が通航するわけでございますので、そういう船舶に対して引き続き情報提供を要請するとともに、巡視船艇とか航空機による通常のパトロールによりまして捜索は引き続き行うということに努めておるところでございます。

城島委員 あわせて、漁船における船員の労働災害の発生状況、この推移、それから現状についてお尋ねしたいと思います。

谷野政府参考人 御説明をさせていただきます。

 漁船における船員災害の発生状況の推移と現状でございますが、船員の労働災害につきましては、関係の方々の大変長年の御努力により、長期的には着実に低下傾向を示しております。

 船員法に基づきます船員災害の報告の対象となっております漁船に乗り組んでいる船員の方々、統計的には対象の船員の方々四万四千人ということでございますが、この方々千人当たりの死傷災害の発生率を見ますと、昭和四十二年の千人に対して四十八・三人から、平成十一年度には二十四・六人に減少いたしております。約二分の一に減少したというところでございます。

 しかし、平成十一年、実数を見てみますと、死傷災害の方は千人を超えておりますし、職務上死亡なさった方は四十三人ということで、まだまだ船員全体と比較しましても漁船の方の船員災害というのは多うございます。

 ちなみに、林業あるいは鉱業などと並んで高い発生率になっておりますので、もっとこれを減少させる努力をしなければいけないと認識をいたしております。

城島委員 先ほどの死亡事故と同様に、労働災害発生が、昭和四十二年比で、最近でいうと約半減している。大変結構だと思いますが、それにしてもほかの分野に比べると高い発生率だというふうに思いますので、この労働災害防止のための取り組みというのはどういうことがなされているのか、お尋ねしたいと思います。

谷野政府参考人 御説明させていただきます。

 国土交通省といたしましては、海上保安庁におけるさまざまな安全対策に加えまして、漁船そのもののハードの安全基準の策定、それからこれを担保するための検査行政、これらとあわせまして、船員災害防止活動の促進に関する法律に基づきまして、船員中央労働委員会の御意見を聞きながら船員災害防止実施計画というのを策定いたして、対策を推進しているところでございます。

 先般策定をいたしました平成十三年度の船員災害防止実施計画におきましても、漁船を含む船員災害防止活動の強化を図るために、幾つかの新規の対策を盛り込んだところでございます。

 特に、漁船の死傷災害の発生率が高いことにかんがみまして、漁船の操業形態に合わせて安全操業ができるような安全上の措置でありますとか、あるいはそれぞれ漁船の上でお仕事をなさるときの責任分担等の明確化を図るなど、そういった対策を促進するとともに、安全管理マニュアルというものを作成、普及することについても積極的に検討していきたい、こういうふうに考えているところでございます。

 いずれにしましても、漁船における船員災害の防止につきましては、関係者一丸となった取り組みというのは不可欠だと認識をいたしておりまして、私どもの省庁といたしましても、この実施計画の実行につきましては、農林水産省を初め関係行政機関、それから全日海や船員災害防止協会等の民間団体とよく連携しながら着実に対策を進めていきたい、こういうふうに考えております。

城島委員 それでは次に、今回の基本法で重要な点のもう一つは、消費者の視点を重視するということが入ったことだというふうに思います、第八条だと思いますけれども。生産者をきちっと守っていく、これは非常に大事なことでありますが、同時に、新鮮で安全な食料、食品を求めている消費者の要求にもきっちりとこたえるのが大事じゃないかということであると思います。

 そうしたものがこの中に入ったということは大変評価できる点でありますけれども、具体的な検討というか、まさに魂を入れていくのはこれからだというふうに思うわけであります。

 昨今は、特に食の安全ということについて大変高い関心が一層いろいろな面で広がってきているわけであります。

 少なくとも、我々消費者という立場からすると、例えば水産物についても、市場に出回っているのは極端に言うと三食三食食べても基本的には安全だ、安心だというものがお店や市場に出ているという確信のもとに生活をしたいものだというのが国民皆さんの要望だというふうに思うわけであります。

 水産物でいうと、本当に世界のいろいろなところから輸入も含めて来るわけでありますが、最近、特にダイオキシンあるいは一般的に言う環境ホルモンの影響についての不安が多いわけであります。

 かつて「奪われし未来」という本だったと思いますが、何と我々の想像を超えて、あのカナダのイヌイットの人たちが、どちらかというと免疫機能が低下しているんじゃないかと。それは、食物連鎖の中でいうとまさに鯨類とかあるいはアザラシだったでしょうか、それを食べることによってそういう影響が出てきているということが一つ推測として言われているわけであります。

 そういうふうに水産物の場合、特に、後ほど時間があれば鯨の問題も触れたいと思うわけでありますが、どうしても生物の生態系からいうと、環境汚染をされているものがあるとすればそれを上位にいる生物がどんどん食べながら蓄積していく、最終的にそれを人間が食べるということになるわけなので、今や世界各地から水産物が輸入されている日本の状況を考えますと、こうした安全面における対応策あるいは情報提供、チェックが極めて重要だというふうに思うわけであります。

 この辺についての対応あるいはチェック体制あるいは情報提供、この辺についての御見解を承りたいというふうに思います。

渡辺政府参考人 昔、消費者行政をやっておりましたときに、安全でないものは食品と呼ばないんだということを消費者の代表から聞いたことがあります。また、消費者は据えぜんでという言葉もございました。一方で、私たちが担当しております水産物の加工業というのは九九・九%が中小企業なんです。それで、新しいきちんとしたやり方を受け入れるまでになかなか時間がかかるということでございます。

 食品は、新鮮で良質で安全でということでありますので、まず一般的な衛生管理を徹底するほかに、HACCP方式をいろいろな形で支援をして、できるだけたくさん取り入れていってもらいたいというふうに考えておりまして、マニュアルづくりであるとか講習会をやるとか、そういったこともやっております。

 点検は、流通の拠点であります市場などで、いろいろなものを基準に従ってチェックをするという方式になっております。また、消費者は選択の機会をきちんと提供されるということでございますので、この際、強化をされましたいわゆるJAS法に基づきまして食品の表示をきちんとしていく、最近では、特に原産地表示、あるいはとれた海域がどこであるかというふうなことも表示をするようになってきております。生鮮水産物については十二年の七月から、水産加工品については本年の四月から品質表示の義務づけがなされております。この対象になる品目を次第にふやしていきたいと思っております。

尾嵜政府参考人 厚生労働省では、厚生科学研究等によりまして食品中の有害物質に関する調査研究を行っておりますが、得られた結果については公表をさせていただいているところでございます。

 それで、御質問の食品中のダイオキシンの関係でございますが、毎年全国十六カ所におきまして平均的な食生活における摂取量調査等を実施しておりまして、その中で個別の水産品、魚介類三十種、水産加工品二十二種につきましてダイオキシンによります汚染状況を調査いたしております。

 平成十一年度の調査結果によりますと、水産食品を含みます食品を通じたダイオキシン類の一日の平均摂取量は、決められております耐容一日摂取量を下回っておるという状況でございまして、現時点では食品衛生法上の問題はないというふうに考えておるところでございます。

 また、内分泌攪乱物質、環境ホルモンの関係の御質問でございますが、これにつきましては、先生御存じのとおり、まだ科学的に未解明な点が多いわけでございまして、現在、厚生労働省といたしましては、内分泌攪乱作用の有無を評価するためのスクリーニング方法の開発等に取り組んでいるところでございまして、今後、こういった作用を疑わせるような物質について個別に評価を進めていくという考えでございます。

 なお、こういった調査結果あるいは研究結果につきましては公開をしておるとともに、厚生労働省のホームページにおきまして掲載をし、情報の提供に努めておるという状況でございます。

城島委員 ぜひ消費者にとって安心できる状況を今後もしっかりとつくっていただきたいというふうに思います。

 次に、捕鯨についてちょっと意見と御見解をいただきたいと思いますが、魚の資源の状況からすると、どうも鯨は約一千万頭いる。鯨が食べる魚の量が少なく見積もっても二億五千万トンから五億トン、人が世界でとる魚の量が九千万トン。とてもじゃないけれども、鯨の方が魚を余計食べているという状況のようでありまして、そういう観点からしても、捕鯨の再開ということが道理にかなっているんではないかというふうに私も思うわけであります。

 最近、やっとそういう状況だということが少しずつ国内でも認識が広がってきているというふうに思いますが、来年はIWCの総会が下関で行われるということでありまして、この二年ぐらいのIWC総会の報告書を読みますと、少しずつ海外においても日本の科学的かつ理性的、合理的な調査結果、あるいは主張に賛同する国がふえてきているようでありますけれども、来年の下関総会に向けて、再開に向けた努力、あるいは見通しについて何かございましたら、お尋ねしたいというふうに思います。

武部国務大臣 先生御指摘のとおりでございまして、我が国は、従来から資源的に問題がない鯨種については持続的な利用が認められるべきだとの立場をとってまいりました。

 IWCにおいても、我が国の立場に対する理解が徐々に浸透してきている、こういう認識にあります。FAOの水産委員会も、漁業と鯨類の競合の調査の必要性については合意しておりまして、持続的捕鯨の実現を目指して今後とも努力してまいりたいというふうに思います。

 IWC総会の場においても、しっかり我が国の主張を貫いてまいりたいというふうに思っておりますので、御協力、御支援をお願いしたいと思います。

城島委員 最後にもう一つ、今回の水産基本法において私なりに重要な点だと思うのは、第十九条であります。必要な場合、水産物の輸入の制限をするという観点です。生産者を守るためにも、また消費者を守るためにも、水産資源の適切な保存管理を図らねばならないと思います。この十九条にそういう表現があるわけでありまして、これは天然物だということにおいて一定の理解をするわけでありますが、端的に、具体的にお伺いしたいと思います。

 ウナギさらにワカメについてのセーフガードの要請があるようでありますけれども、どういう御見解かを承りたいと思います。

武部国務大臣 ウナギについては、輸入が増加する一方、国内産ウナギの価格は、一昨年秋以降、約半値に下がった状態が続いている、また、ワカメについても、輸入が増加する一方、三陸産ワカメの価格は昨年急落しておりまして、生産者は極めて深刻な状況にある、かような認識であります。

 こうした状況を踏まえまして、三月十四日に農林水産大臣から、財務大臣及び経済産業大臣に対してセーフガードに係る調査開始要請を行っておりまして、現在、これら二品目の調査開始の可否について、三省間で協議、検討をしているという段階でございます。

 セーフガードの発動に当たりましては、国内産業の構造調整が前提となっておりますことから、国際的な競争力の強化の観点からも、セーフガードの発動のいかんにかかわらず、構造調整の推進が急務と認識しておりまして、農林水産省といたしましても、その認識に立った対応を十分にやってまいりたい、かように思っている次第でございます。

 いずれにいたしましても、農林水産省としては、早期に政府調査を開始できるよう最大限努力してまいりたい、かように存じます。

城島委員 終わります。

堀込委員長 次に、津川祥吾君。

津川委員 民主党の津川祥吾でございます。

 大臣におかれましては、きょうも朝十時から長丁場の委員会で、きょうの私どもの民主党だけで私で六人目の質問でございますから、大変お疲れかとは思いますが、なるべく元気に質問させていただきたいと思います。また、細かい数値ですとかあるいは資料を改めて確認されなくても結構な質問をなるべく中心にさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、水産基本法でございますが、この特徴の一つが、私の見解ですが、その基本理念の中に環境に対する記述が含まれているということがまず一つ挙げられるのかなというふうに考えております。

 二十一世紀に入って、環境の世紀だというようなこともよく言われております。国内においても、あるいは世界においても、これからの政策に関しては環境に対する配慮がない政策はとれない、すべての政策において環境に対する配慮、そういったものが含まれなければならないというふうに言われております。

 また、大臣は、先週来の委員会の中でも、本日もおっしゃっておりましたが、人間が自然に対して感謝をして、あるいは自然の驚異に対して謙虚であることが基本である、あるいはまた、こういったことを忘れるということが大きな問題ではないかということをおっしゃっておられますから、当然十分認識をされていると思いますが、この水産業と環境というものの関係についてどのように認識をされているのか、改めてお尋ねをいたしたいと思います。

 本日の十時からの私どもの鉢呂委員からの質問のときには、なるべく具体例を入れないでというお話がございましたが、私の質問にはぜひ具体的な例も大いに入れていただいて結構ですので、水産業と環境の関係についてどのような認識を持たれているか、お伺いいたします。

武部国務大臣 ありがとうございます。御配慮を感謝します。できるだけ手短にお答えしたいと思っておりますけれども。

 まず、水産業と環境という視点で考えなければならないのは、資源を守り、資源を育て、資源に見合った操業秩序の確立をするということを前提にいたしまして、持続的に資源を利用、活用できるということが第一に大切なことだ、かように私は思います。

 そういう意味では、略奪漁業、こう言われましたオッタートロールなどが沿岸に近いところでがらがらかけ回して、そして、海底が運動場のように平らになってしまった、魚礁も全くなくなってしまったというような操業方法そのものが、自然の恵みに感謝する気持ちとか自然の驚異を恐れる謙虚な気持ちというものを忘れている一例だ、かように思います。

 そして、やはり生産されたものが安定的に、安全に消費者に提供されるということが次に大事だと思います。そういう意味では、加工、流通体制ということにつきましても、先ほど長官の御説明にもありましたけれども、日本の加工業はもうほとんどが零細中小企業ばかりでございます。

 それから、安全ということになれば、やはりHACCPの問題もありまして、私ども昨今、選挙運動で、選挙のときに加工場に行っても、HACCPを導入している工場には入れませんね。これはちょっと冷たいな、こういう感じがするんですけれども、そうでないところは、我々、よく知っている加工場のおばちゃんたちと一生懸命握手するんだけれども、果たして手を洗って加工場で仕事を再開するのかななんということを考えますと、やはりこういうことも我々反省しなきゃならぬな、このように思うのでございます。

 そのように、第二義的には、とれたものを安定的に、安全に供給されるというような意味で、そういった生産現場の環境問題ということもあるんだろうとは思います。

 食品安全の上からいえば、先ほど厚生労働省からのお答えにもありましたように、また長官からお話がありましたように、消費者の皆さん方に、これはどこでどのようにとれているのか、どのように加工されているのか、そういう情報がしっかり伝えられるということも大事だ、かように思っております。

 いずれにいたしましても、環境が悪くなっているということはもう言うまでもないことですので、そこで、この基本法にありますように、環境との調和に配慮するというのは、単に保全するだけじゃなくて、環境を回復させたり修復させたり、あるいは改良したり復元したり、そういうようなことを当然考えていかなきゃならない。

 例えば、サロマ湖の場合に、汚れてしまいましたから、潮通しをよくするために、従来の湖口をまた漁港整備事業で広げて潮通しをよくしようというのは、これは環境保全ということから考えるとそういうことは許されるのかなという感じがしますけれども、環境を復元する、修復するということになればこれは許される話でありますし、それをしなければサロマ湖は死の海になってしまうかもしれないという意味で、環境と調和という意味は、非常に幅広い、次元の高い、そういう意味がある、私はこう思っている次第で、御理解をいただきたい、かように思います。

津川委員 ありがとうございます。

 午前中もありましたとおり、環境の保全なのか、あるいは調和なのかというところ、言葉の問題もございますが、今の大臣の認識のように、ただ単に現状を維持するだけではなくて、復元、回復させることも重要だというような認識でありますし、また、そのことがこの基本法の基本理念のところにもし含まれているということであれば、そこは高く評価をしたいというふうに思います。

 しかし、ちょっと話は変わりますが、私、この基本法を多少勉強させていただいて、あるいは先週来の質疑を見させていただいて、少しわかりにくいなと感じる部分があるんですが、それは、国がこの水産政策あるいは水産業というものに対してどこまでの役割を果たすべきかということであります。

 この中で、四条にももちろん入れられてありますが、例えば、国とかあるいは地方自治体が計画を立てる、それを実行するということにもなるのかもしれませんが、ただ、計画というのはあくまでも、言ってみれば理想でしかないわけでありまして、現実、結果がどうなるかというと、環境という話もありましたが、自然ですとかあるいはマーケットというものによって決定をされるということだと思います。この計画とその結果の差を埋めるためにはよほど慎重に、自然ですとかあるいはマーケットの動向あるいはそういったものの背景をよく見なければならないということだと思います。

 ただ、これまでの大臣のお話では、計画というものは随分言っていただけるんですが、マーケットに対するスタンスというものがなかなかよくわかりません。先ほど消費者というお話も出てまいりましたが、マーケットと国の役割についてどのようにお考えなのか。例えば、目標を立てて実際に価格も計画どおりやるということであれば本当に自由主義経済なのかなというような疑問が若干あるものですから、そこのところをちょっと、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

武部国務大臣 マーケットメカニズムの原則というものは、これは大原則だと思います。また、漁業者自身の自助努力ということも、ただ魚を沖へ行ってとってくればいいというようなことではない、こういうふうに思います。

 それに加えて、先ほども言いましたように、水産物の安定供給ということになれば加工、流通の面も、冷凍庫、冷蔵庫、こういったものの整備によって、価格が暴落したからせっかくとれたものを捨ててしまうというようなばかなことをしないで、これを保管したりあるいは加工したりというようなことで最大限活用していくということだと思います。

 そこで、国の果たすべき役割でございますが、これはやはり、国際交渉など国の直接関与しなければならないそういう責務、国際的な枠組みへの協力、操業に関する外国との協議等、あるいは全国的規模で指定漁業の許可や災害等による損失の補てん、こういったことも国の責任だろうと思います。とりわけ、リスクが大きいなど、国の直接的、積極的関与が求められるものとしては、水産資源の探査、基礎的な試験研究、こういったものは国の主体的な役割として期待されているのではないか、かように思います。

津川委員 もちろん今大臣がおっしゃったような国の役割も非常に重要なんですが、基本はやはり水産業者自身の主体的な努力ということになろうかと思いますし、いろいろな漁業者の方と直接お話をしても、例えば国に何かしてくれというよりも自分たちで何とかしなきゃという意思が非常に強いなというのを感じるものですから、そこのところをこの委員会の議論の中でも確認させていただきたいなと思って御質問させていただきました。

 ちょっと内容に入らさせていただきますが、この基本法の基本理念というのが二つ挙げられているかと思いますが、一つが水産物の安定的な供給の確保ということであります。

 そこで、中身で、十一条になりますが、自給率について若干質問をさせていただきます。

 自給率については、先週、私どもの永田委員の方からもちょっと質問させていただきましたのでその続きになりますが、なぜ自給率の目標を決めることになっているのか、あるいは、この目標は当然これから設定されるということのようでありますが、その数値を設定する際の根拠を何に求めるのか、その辺のところを御答弁いただければと思います。

渡辺政府参考人 まず、基本理念として、今先生がおっしゃられた水産物の安定供給の確保というのが掲げられているわけでございます。この基本理念を実現していくためわかりやすい目標は何かということを考えたときに、やはり自給率の目標というのが一番端的でわかりやすいのではないだろうかというふうに考えたわけでございます。

 もちろん、先週来の議論でもございましたように、農産物とは性格が違っておりますから、ただ高ければいいということではない。高いことだけを求めますとかえって安定供給を阻害する、持続的生産が不可能になるということでありますので、そこら辺を加味して、それぞれ漁業生産なり消費に関する指針として関係業者が取り組むべき課題を幾つか挙げていく中で自給率が一番わかりやすいのではないかなというふうに思っております。

 その場合、食料の方でありますとカロリーベースというやり方があったわけでありますけれども、水産物の世界では、食用水産物と藻類とに分けるのかもしれませんが、国内消費仕向け量の中で国内生産量がどれぐらいの地位を占めているか。数式でいいますと、国内生産量割る国内消費仕向け量、在庫の調整はありますが、国内消費仕向け量の中には輸入が入ってきて輸出が除かれる、そんなことになると思います。

 それは必ずやるとして、どうブレークダウンして情報提供するかということについてはもう少しいろいろ考えたいと思っております。

津川委員 長官、今私は数式を伺ったんじゃなくて、その数式で出てくる数字、六〇なり七〇なりという数字になるんでしょうけれども、その数字、七〇なら七〇を目標とするとするならば、なぜそれが目標になるのか、その根拠を教えていただきたいんです。

渡辺政府参考人 法律が成立をいたしますと基本計画を立てます。その中で目標を掲げるわけでありますが、現状は、食用魚介類で五五%になっております。

 私どもが今考えておりますのは、我が国の周辺水域における資源が回復をして、この資源状態でこれだけとっていくならば持続的な生産が可能であるということを想定した上で実現可能な水準の自給率を出していきたいと思っております。たまたま食料自給率の中に水産物が入っておりますが、それは二十二年度でとりあえず六六%ということになっております。

津川委員 今のお話ですと、持続的に安定供給ができる水準、あるいは別な言い方をしますと資源確保をできる水準の中でなるべく高いところということになるのかなというふうに思いますが、しかし、今長官自身が高ければよいというものではないというふうにおっしゃいました。

 十一条の三項の自給率の目標のところに「その向上を図ることを旨とし、」というふうに書いてあるんですが、これはどういうことなのかなと。つまり、高ければ高い方がいいというわけではない。なぜならば、余り高過ぎると安定供給に対して弊害が出てしまうというお話であります。

 日本の二百海里なら二百海里の中でとれる資源量というものがこのぐらいである、安定供給できるレベルがこのぐらいであるということが出ているにもかかわらず自給率を上げようとするとどうなるかというと、需要を減らさなきゃならないわけですね。それでもよろしいんでしょうか。

渡辺政府参考人 二つあると思います。一つは、今の自給率が、科学的な根拠に基づいて資源管理をきちんとやり、持続的生産が可能な中での最大生産量という状況になっていない、今の自給率が低過ぎるんだという点がございます。それから二つ目には、今、需要を減らすというふうにおっしゃいましたが、需要をシフトするというふうに考えてもいいのではないかなと思っているわけであります。

 これには消費者の役割というのも書いてありまして、望ましい健康的な食生活に切りかえることによって日本の二百海里水域内の水産物が消費をされ、輸入が国産のものに置きかわっていくというふうなことも考えられるわけでありますので、一方的に生産サイドだけの事情ではなくて、消費者の食生活に対する認識の改善、あるいはそういう食生活に対する私たちの啓蒙普及というものも含まれるということでございます。

津川委員 今のお答えは間違っているんじゃないかと思うんです――笑われましたけれども。

 現状が低いから上げなければならないというのであるならば、適切な数値にまで自給率を達成させるのが目的であって、向上させるのが目的じゃないんじゃないですか。達成してしまったら、これはもう向上させる目的がないわけですから。これは基本法に書くのはおかしいと思います。

 それから、消費者の話をされましたが、この数式でいくと、私はそれは逆だと思います。

 需要を下げなければならないと言いましたけれども、国産の水産物の自給率を上げるということは、何の需要を下げるかというと、輸入水産物の需要を下げるんですよ。ということは、肉を食えという話ですよ。だって、国産の水産物はこれ以上ふえないわけですから。輸入品ではなくて国産の水産物を食べてくださいという話にはならぬわけですよ。

 国産の水産物に関してはもう限界の量まで行っているわけですから、それをふやしてしまったら、これは資源を食いつぶしてしまう話になるわけですね。安定的供給に反するわけですよ。お答えいただけますか。

渡辺政府参考人 この間来お答えを申し上げているんですけれども、我が国は、四百五十万平方キロメートルという世界第六位の排他的水域を持っている。そして、三大漁場の一つである。つまり、可能性が非常に高いわけですね。そこにおける漁業生産を、今は悪いけれども、資源管理をすればいい状態に持ってきて、そして高い状態での生産が可能になる時期がやがてやってくる。

 つまり、きょうからあしたに自給率を上げようと言っているわけではなくて、十年後なりにおける自給率というのを目標としてこれは想定していますから。そうなりますと、例えば今でいいますと、イワシが輸出までして一〇二%という状況にありますが、総じて、アジ、サバ類は高く、それ以外のものは低い。特にエビ類は六%というふうな状況ですから。ここら辺の関係をシフトさせるということが、これから先、二百海里内の資源水準を回復し、高いレベルに持ってくるということができると思います。

 それから、この基本法の中にはもう一つ重要なことが書いてありまして、増養殖の推進ということで、栽培漁業の分野でも、国内漁業生産を拡大させる可能性と余地があるというふうに置いているわけでございます。

武部国務大臣 食料自給率の問題というのは、これは水産物だけで考えられないものだと思いますね。新しい農業基本法では、自給率四五%、五〇%、この十年間で基本計画で四五%、こうするわけでありますけれども、これはなかなか容易じゃありません。

 なぜ容易でないかといいますと、特に食生活が変わってまいりまして、若い人たちの間には特に肉類の消費がふえているわけですね。しかし、肉は穀物に換算しますと米の七倍のカロリーを要する、こういうことでありますから、国策として、国の基本政策として、食生活のバランスの観点からだけではなくて、いわゆる食料の自給率という観点からも、肉の消費が伸びたからといって、これにこたえるだけの自給率として寄与するだけのものはそんなに容易でない。

 魚介類の場合には、四面海に囲まれている日本でありますから、排他的経済水域四百五十万平方キロ、この中で資源をふやしていくというのは可能である。

 そういうことも考え合わせて、六六%が絶対必要だとか適当だとかというふうに私個人的には思いませんけれども、努力目標というものを持って、やはり漁業生産者の方々にも目安を立てて協力してもらう。あるいはまた、経営の近代化とか合理化とか、経営努力をやってもらう。その目安として、私はこういう自給率の目標を立てるということは極めて大事なことではないのかな。

 嗜好だけでいいますと、この間永田委員のお話もありましたけれども、そんなことを言ったって、自由に輸入できる時代に、エビだとかマグロだとかそっちの方にみんな行っちゃいますよと。だけれども、エビ、マグロはともかくといたしまして、バランスのとれた食生活。

 農林水産省の使命というのは、国民の健康の基礎になる安全な食料の安定供給ということでございますので、やはり水産物についてもこの基本法に示すような数値を一つの目安にして目標を立てて考えていくということは大事なことだ、私はこのように評価している次第でございまして、先生の質問に直接かかわりがあるかどうかは別にしまして、ちょっと私の考えているところを申し上げさせていただいた次第です。

津川委員 わざわざ大臣にも御見解をいただきまして、ありがとうございます。

 ただ、食料全体の自給率という話になると確かにそういった話もあるのかもしれませんが、水産物の自給率の話をしたときには、先ほど長官の話ですと、エビは食わずにイワシを食えという話ではもちろんないと思うんですけれども、この法律を、基本法をそのまま読めば、目指すものは一〇〇%なんですよ。一〇〇%じゃないものに関しては輸入をする、つまり、国内で調達できないものに関しては輸入をするという話だと思うんですね。

 ただ、実際、そうじゃなくて、最初から皆さんおっしゃっていますけれども、資源の問題があるから一〇〇にはならぬ。それが何%ぐらいであろうから、それをまず設定する。それが技術革新を経てもっと高められるということであれば、確かにそれは一つ重要なことかもしれませんが、そこのところまで、つまり本当に限りなく上を目指すのか、環境との調和を重んずるのか、それはどちらなんでしょうか。

渡辺政府参考人 もちろん、自給率を考えますときに、望ましい健康的な食生活ということをPRし、それが定着した上で、消費者の需要というものが反映されて、国産と輸入に対してそういう消費の要望が出てくるということでございます。

 それから、向上を図るということの最終目標が一〇〇ではないかということなんですが、これは食料・農業・農村基本法の方も同じなんですが、やはりいいことを元気の出るような方向でということになりますと、表現ぶりは、今が低いんだからということを反映して、こういう「向上を図ることを旨とし、」と。具体的に食料・農業・農村基本計画の中での自給率も当面四五%、いずれは五〇%ということで、一〇〇を目指しているわけではないわけでございます。

 農業の場合でいいますと、農地の制限がありますし、それから耕地利用率の制限があります。水産でいえば、二百海里水域という制限がありますし、そこでの漁獲努力量に一定の枠がはめられるわけでありますので、そういう面からの供給の制約と需要の制約がございます。その中で向上を図ることを旨としてということでございます。

津川委員 今のお答えの中に出てきたんですが、漁獲努力量、これの目標を設定するのは大変結構だと思うんです。しかし、国民の皆さんに、健康的な食生活はこうですから、皆さんこうしてくださいとやるんですか。それは消費者が決めることですよ。農林水産省が幾ら何でも決めることじゃないと思うんですね。

 消費者の方々がどういった性向を持つかによって、需要は大きく変動してしまうわけですよ。エビが食いたいといったら、やはりエビになっちゃうわけですし、それで日本でもし養殖できるようになっても、日本でとれないものがやはり食べたいというふうに、消費性向がそっちに行ってしまうと、自給率は下がっちゃうわけですよ。

 しかし、変な言い方ですけれども、それに一々つき合って自給率の向上というものをやって、果たして本当に環境に対する配慮があるのか。

 そうじゃなくて、むしろ環境に対する配慮をしながら漁業を続けるのであるならば、漁獲努力量というものをそれぞれ設定して、それ以上はとらない、あるいはそれ以内におさめる。それがまたさらに高められるような技術革新があれば、確かにそういった目標を変えていくということは可能でしょうけれども、水産物に関しての話だけさせていただきますが、自給率というものはちょっとなじまないんじゃないかというふうに私は思います。

 また、資源が不十分な中でそれを根拠に目標の量を設定する、あるいはそうじゃなくて、資源が十分だけれども価格の問題で一〇〇%にならない、実際にはこちらの方が大きいと思うのですが、こういうことであるならば、漁獲量をもっと限界いっぱいまで上げて値段を下げてしまえ、それで輸入品に対抗してしまえ、こういうやり方はあるかもしれません。

 それに対して、漁業者の方に直接補償をするというやり方をすれば、ダンピングと言われるかもしれませんが、確かに自給率を上げることは可能かもしれません。いずれにしても、自給率を一つのメルクマールにするというのは、私はナンセンスなんじゃないのかというふうに思います。

 もし輸入の不安定さというものをおっしゃるのならば、今おっしゃっていませんが、この二つの問題、価格調整のためにやるのか、あるいは資源を食いつぶすような形でやってしまうのかというような、いずれかの問題を犠牲にしなければならないのではないかというふうに思います。

 ちょっと御答弁いただく中で議論がかみ合わないものですから、長官にもう一度答弁をいただければありがたいのですけれども、いかがでしょうか。

渡辺政府参考人 恐らく、一番かみ合わないところは消費の部分だろうと思うのですね。私も、消費を強制するということはあり得ないと思います。ただ、では政府として、国として、今の消費の状態をほうっておいていいのかと。もちろん、消費だって消費者によって最終的には決められるわけですが、そういった消費を誘導する政策もあるわけですね、輸入だとか加工だとか外食だとかやっている方々というのは。

 だから、私たちがやらなきゃいけないのは、消費者に対する水産物の栄養特性なり健康上の問題をきちんとPR、浸透、定着させることだと思うのです。DHAの話にしてもEPAの話にしても、新聞やテレビで騒がれるときには一時的に随分そういうものが売れますけれども、また静まってしまうというふうな状況ですから。それと、先ほど来の話の中では出てきませんでしたけれども、食べ残しの問題一つとっても大変膨大な量です。

 ですから、消費はできるだけそういうふうな啓蒙、PR、定着というところからいって、それで生産の方は、今先生がおっしゃったように、きちんと資源が回っていくような状態にすべく漁獲努力量というものをきちっとやっていく、恐らくこういうやり方をやっていけば環境に対してもいい効果が出るんだろうと私は思います。

津川委員 この基本法が若干奇妙に見えるのは、国産というものを基本にして不足分を輸入でというふうに言っている部分だと私は思うのです。先ほども話がありましたが、国が勝手に輸入するか否かを決められるわけではありませんから、もちろん、一時的にはセーフガード等々ありますけれども。この部分は、ただこの法文があるだけだとすると、非常にむなしい、空文でしかないのかというふうに思います。

 輸入水産物に対していかに対抗するか、非常に難しい問題ですけれども、この難問に対処し切れなければ、この法律のここの部分に関しては大きな問題が残ってしまうのではないかなというふうに思います。

 ですから、やはり魚種によって輸入品との事情というものがそれぞれ違うと思います。先ほどのワカメの話ですとかあるいはウナギの話等々もありますが、そうじゃないものもあるわけですから、それぞれの魚種でやはり目標、漁獲努力量ですか、そういったものも設定する方がより効果的ではないかというふうに思います。

 それと、自給率の向上、先ほども申し上げましたが、それと同じことになるかと思うのですが、二条の三項にも、「我が国の漁業生産の増大を図ることを基本とし、」というふうに書いておりますが、これは今足りないから増大させるということなんでしょうか、これがある一定量まで行ったらこの法律を改正するのでしょうか、お伺いします。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

武部国務大臣 今、先生と長官の話を聞いていて、現場で感じていることを一つ参考までに申し上げますと、魚族資源というのは海を耕すことによってあっという間にふえるのです。オホーツク海でスケソウがいなくなりました。紋別、網走あたりの加工場はみんなそれでした。ところが、今は、その資源がなくなって、ほとんどカニに変わってきたり、ホタテに変わってきたりしているのです。ところが、畑を耕すぐらいの努力をいたしますと、海はあっという間に資源がふえるのです。

 先ほど鯨の話がありました。マッコウクジラでは二百万頭と言われているわけです。一時、鯨の資源が枯渇して大問題になったわけですね。それが今はあっという間に鯨の資源もふえてきている。だから、そこのところなんです。

 ですから、自給率といいますか、あるいは魚種別の漁獲目標というものの目安は、これはとる人たちだけの問題ではないと思うのです。これは耕す者の一つの目安でもある。つまり、環境との調和ということが、自給率を明確に示すことによって、どのような操業秩序にしていくか、あるいは環境修復に力を入れていくか、そして資源を守っていくかというようなことの裏づけになるのが、自給率という形で一つの目標を設定しているんだと思いますけれども、私は魚種別の目標であってもいいと思うのです、具体的に。

 ですから、この基本法と同時に、水産庁の政策の中で、やはり需要と供給の関係で今足りないものは何か、ふやすべきものは何か、とるべきものは何をどの程度かというようなことは、今後当然考えていかなきゃならない、このように思うわけでありますが、そういう目で資源の持続的な利用確保のために資源の適切な保存管理と水産動植物の増養殖というものをここできちっと規定しているわけでございます。

 適切な答弁かどうかわかりませんけれども、ちょっと感ずるところを申し上げました。

津川委員 今、大臣がお話しになられたとおり、十一条の二項の四号に「前三号に掲げるもののほか、」三号には自給率の目標を立てて計画を立てるというような話なんですが、そのほかに云々、いろいろ必要な事項ということがありますから、そのほかのところに含まれているのかなとは思うのですが、例えば自給率よりもむしろ漁獲努力量ですか、そちらの方こそ私は明記するべきではないかなというふうに感じたものですから、そういうふうに質問させていただきました。

 次に、冒頭お話をさせていただきました環境についてであります。

 きょうも朝から環境についていろいろ御質問させていただいているとおりですが、二条及び十六条、二十六条で、環境との調和に配慮しつつというようなことになっております。

 大臣、この環境との調和に配慮するということを具体的にというと、先ほどのサロマ湖の話になるのかと思います。それはそれでも結構なんですが、問題は、鉢呂委員からもあったかもしれませんが、十七条の方にむしろ私は重要な項目があるのかなと。「生育環境の保全及び改善を図る」。例えば十六条になりますと、「増殖及び養殖の推進を図るため、」というところにかかっているわけですね、環境との調和に配慮した云々が。

 だから、養殖、増殖に関して何かをするときに、あるいは港を整備するときに環境との調和に配慮するというのも確かにそうなんですが、実はそれ以上に、やはり水産資源全体の問題をとらえたときには、私たちが港をつくるとか養殖をするとかいうときではないときも、常に環境の変化に漁獲量というのが非常に大きく影響されている。ですから、むしろ十七条に書かれているものの方が基本理念に入ってもいいんじゃないのかなというふうに私は感じるわけですが、その辺、大臣、いかがでしょうか。

武部国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私は、環境との調和に配慮するというこの意味は、かなり広い範囲を包含したものだ、このように思っております。今、資源が十二分にある、海洋性動植物が十二分にあるところ、ここは、やはりあるがままの姿というものを守っていくということが基本になると思います。

 しかし、雑草などは、これは自然生態系の中でやはり弱肉強食みたいなものがありますから、黙って手をかけない方が資源は永続的にとれるのかと思っていたら、それじゃ、雑草が生えてきますと、昆布もとれなくなっちゃうんです。だから、八尺なんかでひっかけて、そして、海を耕すといいますか、雑草駆除もやらなきゃならないんです。

 たまたまオホーツク海などで何で資源が守られているかというのは、流氷なんです。この流氷は、あれは真水が溶けていきますから、プランクトンの発生に大きな影響を与えています。同時に、この流氷は、接岸いたしますと雑草駆除の機能を働かせているわけですね。ですから、自然に雑草を駆除してくれているんですよ。

 だけれども、見方によっては、雑草からすれば、流氷によって自分たちは死滅させられているんですね。だけれども、そのことによって、他の昆布だとか魚族資源というものは拡大していると思うんです。そこのところを、雑草の命ということを考えてみれば、流氷も罪なことをしているなというふうにとれなくもないんです。

 だけれども、やはり一つは自然生態系全体のこと、それから水産物の安定供給、そういったことを考えたときに、現状を守るということも、それから逆に、悪い現状を回復したり修復したり復元したりというようなことも必要だと私は思いますし、これらを含めて、環境との調和に配慮するという、これは非常に謙虚な言葉であり、次元の高い文言だ、このように私は思っているんですが、いかがでしょうか。

津川委員 別に私は、流氷が環境を破壊しているとは思いません。また、この十七条に書かれている保全の話ですが、これは別に雑草を抜いちゃいけないと書いているわけじゃないですね。「保全及び改善を図る」と書いているんですよ。ですから、雑草を抜いてもいいんですよ。

 それから、私が言っているのは、保全という言葉を使うか調和という言葉を使うかということではなくて、この二条の基本理念のところの「環境との調和に配慮しつつ、」が何にひっかかるかという話なんですが、これは、増殖及び養殖が推進されなければならないにひっかかるんじゃないですか。

 だから、増殖及び養殖を推進するときには配慮をしなきゃいけないのは、それは確かにそうなんですが、それよりもっと広い範囲で、環境に対する、別に配慮でもいいですよ、というくだりが必要ではないか。それは、あえて読もうと思えば、その前に、「水産資源の適切な保存及び管理」というところにそれが含まれていると言えば言えなくもないんですが、そこにもっと明記をしていただいてもいいのではないかなということでございます。

 今、流氷のお話がありましたが、環境といいましょうか、あるいは自然というものの認識が大臣と私でちょっと違う部分があるんですが、台風があります。台風をどういうふうに思うかということです。

 台風は、まさに自然の脅威です。ただ、雨をもたらしてくれます。例えば、海でいえば、漁場を攪拌してくれるという効果もございます。確かに、養殖なんかしている場合には、大きな台風が来れば台風そのものはマイナスかもしれませんが、環境を保全するという意味では、自然の脅威というのは非常に私はプラスに働いている。それを、別に台風は環境の保全に対して刃向かっているということではなくて、それはまさに環境そのものであり、自然そのものだと思うんです。

 ですから、そういったものに対して大臣がおっしゃるように謙虚になるのであるならば、むしろそこのところに基本を置いて、養殖はもちろん、環境に対してそれなりの負荷をかけるかもしれないけれども、基本はやはり環境を保全することだ、あるいは調和することでも結構ですけれども、そちらが重要で、それプラス、養殖なりなんなりをするときには、多少確かに負荷をかけるかもしれないけれども、それは最低限に抑えなければならない、そういう二段構えというのでしょうか、そういう形になっていなければならないのではないかなというふうに感じております。

 大臣、いかがでしょうか。

武部国務大臣 全く同感ですね。吉野川の上流、可動堰の視察に行ったときに、私も上の方まで行きました。ところどころ遊水地があります。ここは築堤をしております。しかし、昔の人は考えたなと思うのは、竹林があるわけですね。この竹林が流木や土石を押さえて、しかし、田んぼには上流からの養分を含んだ水が流れるようになっているわけですね。つまり、洪水や台風のおかげも考えながら、自分はここで多少我慢することによっていい作ができると、自分たちは水屋に上がって水が引くのを待っているわけです。

 したがって、先生がおっしゃるように、人と自然との共生といいますか、人も自然界の一員である、そういうことに感謝し、謙虚に受けとめていくというようなことが今後不可欠になっているんだろうと思います。そういう意味では、先生が御指摘されていることは全く私も同感です。

津川委員 ありがとうございます。ただ、同感していただけるのだとしたら、修正をしていただきたいなというふうに思うわけでありますが。

 次に移らせていただきますが、水産基本法になって、いわゆる漁業だけではなくて水産加工業あるいは水産流通業も発展をさせることが重要であるということがこの中に含まれているわけですが、なかなかそう簡単なことではないと思います。水産加工業及び水産流通業をどのように発展させるのか、具体案というものがあればお示しをいただければと思います。

渡辺政府参考人 流通の方から申し上げますと、大体千弱の産地市場がございます。魚の水揚げ量というのはこのところ減ってきておりますので、どこの市場も一市場当たりの取扱量が減って、非常に苦しい状況にあります。市場経由率もだんだんに下がってきて、今七一、二%でしょうか。

 そんな状況でございますので、流通の面で近代化、経営の強化をするためには、ある程度やはり市場を統合していくというふうなことがこれから先は必要だろうと思いますし、その統合後の市場が、それぞれの地域なり漁業に応じて、特色のあるタイプでなければいけないと思います。純然たる大きな、水揚げをとって、そのまま消費市場に流すものから、むしろ、近隣に大きな都市があるところは、消費者がそこに直接買いに来られるような、あるいはいろいろなものを楽しめるような施設をつくるとか、そういった面で、これから先は流通面ではその種の統合問題、特色を出す問題が大きな課題になると思います。

 それから、問題は加工業でありまして、一万四、五千の加工業者がいますが、先ほど来お話しいたしておりますように、九九%が中小企業、これは小規模経営だけをとりますと七五%ということで、非常に経営体質が脆弱でございます。

 そうなりますと、先ほど来御指摘がございました、新鮮、安全、良質な食品を供給できるかどうかということについて、必ずしも十分な体制になっておりませんので、この点でも新しい技術を開発するとか、先ほど申し上げたHACCPをもっと徹底的にやるなりして、この加工業の技術なり安全面なり、そういった面で力をつけていくというふうな方向を目指したいと思っております。

津川委員 今のをちょっと確認させていただきたいんですが、加工業の話はわかりました。流通業の話なんですが、市場の統合というお話をされましたが、私が間違っていたら教えていただきたいんですが、イメージでは、幾つかある市場を一つに統合してしまうということなんでしょうか。そうだとすると、場所によっては市場がなくなるということになるのか。ちょっと教えていただけますでしょうか。

渡辺政府参考人 釈迦に説法になりますけれども、市場は、例えばカツオでいえば、春先の沖縄沖から始まって、ずっと上昇して三陸沖でまた反転して下がってくるわけですね。その都度、産地市場があって、そこで一回ずつ換金をしては新しい漁具やえさを買い、そういう状況でございましたけれども、船の方も大きくなってきました、漁法も変わってきました、資金調達も変わってきましたので、そういうふうに近いところに、三つなら三つ、四つなら四つ市場が連続してある必要性があるかどうかという問題もありますので、そういったときには例えば三つを二つにするとか、そういうふうな形で市場を漁労なり漁獲の動向に合わせて再編成し直していく。そしてその再編成をした近隣の、今は三つを二つと言いましたけれども、二つの市場がそれぞれ同じような市場じゃこれまた話になりませんので、例えば仙台に近い何とか港は消費者参加型、産直型、加工型、レストラン型というふうにして、もう一つ北の方の港はむしろ大量に入ったものを消費市場に流すというふうなイメージでちょっと考えております。

津川委員 今の例の話でいきますと、三つあるのを二つにして、二つをすみ分ける。二つをすみ分けるのはいいんですけれども、三つを二つにしたとき一つなくなるんじゃないですか。それは、例えばある一つの漁村の市場がなくなるということじゃないんでしょうかね。違ったら教えてください。

渡辺政府参考人 冒頭、産地市場の数を千弱と申し上げましたけれども、これも次第次第に減っているのです。そういう中で、何となく消えていくのではなくて、もう少し、例えばのれんとかそういうものはあるわけですから、まだ営業がそういう状態にならないうちに卸さんなり仲卸さんたちがみずからの生きる道を目指してむしろ積極的に統合していくということで、どれかをなくして捨ててしまうというようなイメージじゃなくて、より機能の高い近代化をした市場を目指して統合強化をするというイメージを今持っております。

津川委員 前向きなイメージを持つのは大変いいことだと思いますが、ただ、実際には各市場あるいは漁村の立場から見ると、統合というのは、ある意味で非常に戦々恐々とする部分があるかと思います。

 そこで、漁村の振興というものに直接的なもので何かアイデアなり方策があれば教えていただきたいと思います。

武部国務大臣 漁村の振興ということになれば、一つは、漁港でありますとか作業施設でありますとか加工場でありますとか、それを支える担い手、人々、そういったことが一体的に整備されるということがやはり大事だと思います。同時に、いつでもどこでもだれでもが同じような条件下で生活できる、生活を享受できるということも今日的な課題として不可欠だと思います。

 現状はどうかといいますと、網を入れるところに住宅があって、そして十分整備された船着き場などないような状況の中でいわゆる漁村集落というものがそのまま残っているというようなことが、農業と同じように、そういう劣悪な環境のもとにはなかなか嫁さんも来ないとか、魚をとるのは趣味じゃありませんから、仕事ですから、しかし、仕事以外にいろいろな余暇を生かしたいというのがあります。

 やはりインターネットの時代になりますと、今子供でもパソコンを駆使するような時代になっていて、そういった情報通信基盤というものもしっかり整っていなきゃならないということになれば、新しいコミュニティーというものがそこに形成される。そして、いつでもどこでもだれでもが同じような生活条件下で生活もできるし、仕事も、生産から加工、流通、そういったものが一体的に進められる、そういうことが私は大事じゃないのかな。

 漁村といいましても、昔の漁村じゃないですね。新しい、近代的なコミュニティーという姿にしていかなくちゃいけない、私はこのように思います。

津川委員 きのう実は委員会で焼津の方に視察に来ていただいたわけで、私はその隣の藤枝市に住んでおるわけですが、例えば焼津なんかも水産が余りうまくいかなくて大変になっている。水産だけじゃなくて、町自体に活力がなくなってきている。その一つの例として、新造船が全くされない。漁船のエンジンをつくっているあるメーカーがありまして、本当にもう将来がないという話をされているんです。

 そこで、私、一つ提案をさせていただければなと思うんですが、きょうは国土交通省さんにも来ていただいていると思いますが、これは環境に若干関係しますが、漁船のエンジンの排出ガスの規制は現状どうなっているか、御報告いただきたいと思います。

丸山政府参考人 御説明申し上げます。

 漁船を初めとしまして、船舶から例えば窒素酸化物ですとか硫黄酸化物が出るわけでございますけれども、このようなガスにつきましては、その排出を削減することによって大気汚染を防止するという観点から、平成九年に海洋汚染防止条約の九七年議定書というものが国際海事機関によって採択されております。

 この条約の中身でございますが、船舶のエンジンの排ガスの基準を定める、その基準が担保されているかどうか船舶検査でしっかり見るというものを内容としておるところでございますけれども、残念ながら、現在までのところ批准しておる国がわずか三カ国しかないということで、発効要件を満たしていない。したがいまして、発効にはいま少し時間がかかるという状況でございます。

 ただ、国土交通省といたしましては、先ほど申し上げました窒素酸化物、硫黄酸化物につきましては酸性雨などの環境汚染の一因になるということでございまして、これを削減するということが大事であるということから、三つの取り組みを今行っておるところでございます。

 一つは、条約の早期発効に向けた働きかけを各国にしていくということで、これは鋭意やっております。

 二つ目は、条約の基準に適合したエンジン、既にもうできておるわけでございますけれども、それをなるべく搭載するようにという奨励をしていくということでございます。

 それから三つ目は、これは漁船と直接関係はないんでございますけれども、内航船で、私どもスーパーエコシップと申しておりますけれども、これは従来の船に比べますと窒素酸化物の排出量が例えば十分の一になるような、そういう技術開発の実用化を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、国土交通省としては、漁船を含みます船舶の排出ガスの対策に今後とも積極的に取り組んでいきたいと思っております。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

津川委員 ありがとうございました。

 今のお話のとおり、条約は採択されたけれどもまだ批准している国が少なくて、実際には発効していない。例えば、こういう技術を日本が先行して、車のときと同じように、排ガス基準は日本の技術が最も進んでいるんだ、日本の漁船は世界の中で最も環境に優しい漁船なんだといって海外に売っちゃうとか、こういうことでもやれば、例えば焼津に限らず、漁村なり、漁村とは言わないかもしれませんけれども、漁業の町の活性化にかなりつながるんじゃないか。世界がまだやっていないことですから、日本がこういったことで世界をリードしていけばまた一つの活路があるんじゃないかなというふうに思いますので、ちょっと一つ提案だけさせていただきます。

 最後になりますが、大臣が所信表明の中で、「常に現場の声に耳を傾け、」というお話をされております。大変大事なことだと思います。私も全くそのとおりだと思うんですが、私が思う理由は、一つには、現場というのがどんどん変化をしていく、それをやはり適切に、スピーディーにキャッチするには、やはり現場の声を常に聞いていなきゃいけない。それから、私どもが例えば国会の中でいろいろ議論していてもなかなか新しい打開策が見つからないというときも、やはり現場の方というのは案外こういうアイデアというのは持っていたりします。やはり現場の方が何を求めているかというのをしっかりとらえるということもその政策をつくっていく上で非常に重要じゃないかなと思うわけです。

 最後に一つ、これは農水省の方で統計をとられたアンケートですけれども、漁業者の中で漁業に対して望む支援対策は何か、トップになったのが、五一・九%が漁場の環境や資源の保護、その次が低利融資等資金の援助で三七・四%ですから、かなり差があります。やはり環境の問題というのがまさに現場においてもまず一番に出てくる要望であるということを最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

武部国務大臣 今先生御指摘のように、漁場づくり、そして資源づくり、それと並んで人的資源といいますか、人づくり、このことが非常に大事だ、私も現場をよく浜歩きはいたしますが、そのことを痛切に感じております。

 同時に、なぜ現場を歩くかということについては、やはりきちっと政治家が正直に、うそを言わずに、新しい流れといいますか、情報をきちっと伝えることです。現状を何とか維持したいというのがこれは人の常ですね、人情ですよ。しかし、将来展望をした場合に、こういうあり方があるんだ、そういう方向にみんな向かっていこうよということを正直に勇気を持って言うということも、これは現場を大事にするという意味では大事じゃないか、このように思いますね。ありがとうございます。

津川委員 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 自由党の一川保夫でございます。

 大分時間も経過しておりますので大臣もお疲れだと思いますけれども、基本的なところを幾つか、大臣もしくは農水省の幹部の皆さん方にお尋ねしたいと思います。

 大臣、五月十六日に、この委員会において実質所信表明的なごあいさつを経て、その後、質疑の中でいろいろ大臣のお話を聞かせていただきましたけれども、私の率直な印象としまして、大臣、これまでの自分自身の経験の中から、この農林水産行政というものを何とかしたいという一つの信念なり意欲に燃えたそういう御答弁があったような気もいたします。ただ、具体的にこれからどういう施策を展開するかというのは一つの決め手でもございますので、ぜひそういうお気持ちで御検討をお願い申し上げたいというふうに心からお祈りを申し上げたいと思います。

 そこで、私は、今回のこの水産基本法に関連するもろもろの法改正等、こういったことを考える場合に、最近の水産業を取り巻く情勢というのは非常に悩ましいなと。これは農業もそうですけれども、つくりたいものがつくれない、つくれば余る、水産関係も、そこにある魚をとりたいけれども、とれば資源が枯渇するとか、いろいろな面で難しい課題をますます深めてしまうという状況の中で、御存じのとおり、それを担う担い手がだんだん高齢化を来してしまうという中で、経済的にもだんだん活力がなくなってしまうという一つの背景の中でのこういった法律の審議でございます。

 大臣の基本的なお考えをまずお聞きしたいのは、今回この小泉内閣は、もう御案内のとおり、構造改革を断行するということで、大臣もごあいさつの中では、農林水産業の中でも構造改革をやっていくんだというような力強いごあいさつがあったというふうに思っております。

 農林水産業の持つ役割とか、あるいは農山漁村の持つ役割というのはそう変わるものではございませんし、そういったものをしっかりと生かしながら、そこでその産業に従事する人がもちろん意欲が持てるようなそういう産業にすべきだというふうに思いますし、またそこの農山漁村に生活している方々が自信と誇りが持てるような状況に、明るい展望を見出してくれれば、私は、所得とか経済的なものが多少低くても、やはり国民生活全体の中で重要な役割を自分たちが担っているんだという誇りが持てれば、まだまだこういう農林水産業という一次産業は、日本のこういった経済社会全体というものを見た場合に非常に魅力ある部分だというふうに私は思います。

 そういったことで、大臣にぜひお伺いしたいのは、この水産政策につきましても、大臣は所信の中で抜本的な施策の見直しを図っていきたいというようなこともおっしゃっていると思いますけれども、こういった水産業の構造改革ということ、水産行政の構造改革をやるということは大臣としては基本的にはどういうふうな方向に持っていこうとしておられるのか、そのあたりをまずお聞かせ願いたいと思います。

武部国務大臣 水産業の構造改革ということで一番大事なことは、継続性のあること、持続性のあることが大事だと思います。それは、資源の面でいえば、資源をしっかり管理し、今までのようにとれるだけとるという形から、資源を管理し、守り育てる漁業に切りかえることによって、資源がなくなったから、とれなくなったからやめるというような心配はなくなるわけですね。

 同時に、安定供給、やはりとる立場じゃなくて、これを消費していただける、消費をする消費者の皆さん方、国民の皆さん方のニーズというものを十二分に考えた水産物供給ということが大事だと思うんです。それがなされなければ、持続的に、継続的に水産業を続けていくということは非常に難しくなる、かように思うんです。

 それからもう一つは、今までは、農業にしてもそうですけれども、漁業にしても後継者のことでそんなに心配しませんでした。必ず息子が後を継いでくれる、こういうふうにじいさんもおやじさんも思い込んでいるわけですね。ところが、今日のように、世界が狭くなり、高度情報通信時代に入ってまいりますと、先ほど来申し上げておりますように、いつでもどこでもだれでも同じ条件を求める、これは漁村においてもどこにおいても同じだと思うんです。やはり一番今心配しているのは後継者のことじゃないかと思うんですね。後継者を自分の息子に求めるという時代ではなくなっているんじゃないでしょうか。それができればこんな幸せなことはないかもしれません。

 そういう意味で、私は、農業においても漁業においても、共同経営とか法人化とか、そういったことがどうしても避けられない状況になっているんじゃないか、かように思います。

 同時に、やはり、とるのはうまいけれども、経営面において非常に高度な情報、知識を必要とする時代になってまいりましたから、経営能力というふうなことも当然必要になってくるわけでございます。

 そういったものを総合的に考えて、継続性のある水産業あるいは漁業、持続性のある水産業、漁業ということを考えていかなければ、私は、水産基本法に求めるような水産物の安定供給でありますとか水産業の健全な発展というのは難しいのではないのかな、そういう意味で、こういう基本法を制定するということは一つの理念といいますか、そういうことを明確にする意味で非常に大事だと思います。

 ただ、一つ私感想を言わせていただければ、法律はつくったけれども水産庁自体に具体的なイメージというものがどの程度あるのか。特に大事なのは、本省は、ある程度毎晩徹夜してやってきたんだからいろいろな議論をしているでしょう。大事なのは、先ほど現場の理論ということを申し上げましたけれども、現場で漁民と加工業者と接している府県でありますとか、あるいは水産試験場も含め、普及員も含めて、現場の人たちにこのことをしっかり理解してもらう必要があるんじゃないのかな、その辺のところがどうもまだぴんときていないのじゃないかということを私は感じます。

 したがいまして、これからは、水産行政を預かる立場から、末端まで、現場まできちっと明確に意思が伝わるように、また、現場の事情や意思が伝わってくるような――そういうことが仏つくっても魂入れずというようなことになってしまう一つの大きな問題だ、こう思っておりますので、そこにやはり私どもは着眼していかなきゃならない、かように考えております。

一川委員 今回、この基本法というのは、今大臣の方からみずから、これから本当の末端までこの理念が浸透して具体的な施策が展開するように持っていきたい、そういうお話でございました。我々もそのあたりが最も今心配している面でもございますので、ぜひそういう方向で行政を担当していただきたいと思います。

 今の話題に関連するわけですけれども、大臣御存じのとおり、食料・農業・農村基本法という基本法がもう既に制定されております。今回はこの水産基本法、それからこの後に控えているのは森林・林業基本法という、農林水産省の基本的な施策はこの基本法が大体みんなカバーしちゃうという、大臣、就任期間中に恐らくそうなっちゃうわけです。基本法があれば、もう大体ある程度方向づけしたらそれでいいじゃないか、そういう心配を確かに我々も持っておりますので、ぜひその基本法の理念というものをしっかり具体的な政策の中に生かす。それも、一々東京まで陳情に来なくても現場の意見、いろいろな創意工夫が余り時間をかけないで現場で実現できる、そういう流れにぜひしていただきたいというふうに私は強く希望しておきたいと思います。

 そこで、先ほどもちょっと触れましたように、最近、魚に関する水産資源が大変厳しくなってきているという状況の中で、私自身も日本海に位置するところに生活しておりますけれども、日本海といえども、今、日韓、日中漁業協定という一つの縛りもありますし、いろいろな面で厳しい状況に置かれてきているわけでございます。

 そうかといってやはり、今の水産資源というものをしっかりとこれから守り、それを回復していくという一つの大きな課題があることは間違いないわけでございますので、しばらくの間といいますか、漁業者あるいは関係する皆さん方にとっては、とりたい魚も若干我慢しながら漁船の数を減らすとか、場合によっては休漁せざるを得ないような状態に協力をしてもらわなければならないという、どっちかというとちょっと後ろ向きな政策になるわけです。お米でいえば減反政策かもしれませんけれども、そういう流れに今入ってくるわけでございますが、水産に関係する方々は、その必要性、総論的なものは皆さん大体理解できると思うんです。

 しかし、現実問題、漁業経営としては非常に深刻な局面に立たされるわけですね。資源を管理しなければならないという一つの課題と、片や自分の経営というものに対する一つの取り組み、そういったものの板挟みにこれから入っていくわけですけれども、それに対して、当然ながらいろいろな財政的な支援というものを皆さん方は期待するわけですが、こういうものに対する何か具体的な対策といいますか基本的な考え方、今何か大臣はお持ちでしょうか。

武部国務大臣 やはり、資源回復のための計画的かつ総合的な取り組みということが不可欠でありますし、本年度から、資源回復を図るための計画作成に取り組んでおります。

 平成十四年度からこれを実施するという考えに立っているわけでありますが、この計画に沿って行われる減船、休漁等の措置については、短期的には漁業経営に著しい影響を及ぼす場合もあり得ると思います。しかし、中長期的には、資源状態の回復により漁業経営の改善に資するということでもございますので、資源回復を図るための計画に基づく減船、休漁等の実施にあわせまして、漁業経営に与える著しい影響を緩和するための施策はしっかり講じていかなければならない、かようなことを検討してまいりたいと思います。

一川委員 こういったことに対するいろいろな具体的な要望的なものは、それぞれの地域から当然また大臣のところにも聞こえてくるかと思いますけれども、先ほど言いましたように、余り画一的な制度でもってああしろ、こうしろと言うんじゃなくて、できるだけ弾力性のある対策をぜひ講じていただきたいというふうに思っている次第です。

 そこで、今ちょっと大臣も触れられましたけれども、私もはっきりまだわからないんですけれども、これからの水産資源を回復するために、こういった新しい基本法をつくったり、もろもろの関連する法案を改正するわけですけれども、じゃ、具体的に資源を回復する対策というのはどういうことをやろうとしておられるのか。そこを御説明していただけますか。

武部国務大臣 ただいま一部申し上げましたけれども、減船、休漁等を含む漁獲努力量の削減や、資源の積極的培養、漁場環境の保全など、そういったことを計画的に講じていくということでございます。

 この資源回復措置の検討とその的確な実施のために、今国会において、漁業法の改正により設置される広域漁業調整委員会や海洋生物資源保存管理法の改正により創設される漁獲努力量管理制度などを積極的に活用してまいる、かようなことでございます。

一川委員 そこで、これはどなたに答弁していただくかちょっとはっきりしませんが、従来、資源を管理するという一つの大きな制度としてTAC制度というのがあったわけですね。これも、それなりの水産行政の一つの大きな目玉的な政策としてこれまで取り組んでこられたと思うんです。このTAC制度というのは、今までの成果としてはどういう評価を皆さんは持っておられますか。ある程度成果が上がったというふうに見ていらっしゃるのか、まだまだ不十分だったというふうに見ていられるのか、そのあたりをお願いします。

渡辺政府参考人 TAC制度が運用されて四年がたちました。率直なことを申し上げまして、制度の運用自身はほぼ定着してきたかなというふうに思っておりますが、資源の回復という点では、もうちょっと年数が必要ではないかなと思います。まだ、明確な効果が上がっているかどうか判断はできない状況にございます。

 ただ、私どもは、かつて秋田沖のハタハタの三年休漁の例で見られますように、あの場合には比較的回復が早かったものですから、三年休漁明けには大変資源が豊富になったという事例も見られますので、その程度につきましてはいずれ計測できるだけの効果が上がるというふうに思っております。

一川委員 今の長官のお話では、運用面ではほぼ定着しているけれども、資源の回復ということではまだ十分検証できないというお話でございます。

 そういう段階において、今度新たに漁獲努力量による管理制度を導入するというわけですね。これは一般の人が聞くと余りはっきりわかりませんけれども、今までのやり方が、成果があったかなしかということがまだ十分検証されないこの段階で、なぜまたこの新たな制度を導入していくのか。まあ、それは対象魚種が違うといえば違うかもしれませんけれども。ここのところをもうちょっとわかりやすく御説明していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 今先生からまさに対象魚種が違うという話をされましたけれども、なぜ対象魚種が違うのかということは、推定資源量がかなり客観的に、科学的につかめるもの、これはTACにのるというふうに思っておりまして、推定資源量が必ずしも科学的、客観的にしっかりつかめない、しかし傾向としてはこうだというふうな魚種があるわけでございます。

 そういうものにつきまして、足らざる資料で推定資源量を算出しました場合相当な幅がございますので、実際の漁獲量と資源量が相当食い違う可能性がございます。過剰に漁獲することが生じたり、逆に漁獲の抑制のし過ぎということもございますので、国際的にもこういったルールがあるわけでございますが、むしろこういう場合には、アウトプットではなくてインプットの方を縛っていくということが必要ではないかというふうに考えた次第でございます。

 今俎上に上っておりますのは、例えば九州西地域のトラフグであるとか、北陸から山陰にかけてのアカガレイ、日本海北部のハタハタとかマガレイ、こういうものはどうも推定資源量がきちんと科学的、客観的につかめないので、漁船の数であるとか操業日数であるとか、そういったもので抑えていく方が資源管理がやりやすいというふうに考えた次第でございます。

一川委員 いろいろ試行錯誤されながら、できるだけ資源の管理というものを的確に抑えていこうということだろうと思います。

 私も、TACの制度がスタートして先ほど四年経過するというお話がございましたが、途中で一遍その数字を見させていただきましたけれども、何かこう余りにも数字がかけ離れているような実績等がいろいろと見られるということで、まあこれは海に泳いでいる魚のことですから、それはなかなか簡単に計画どおりいかないとは思いますけれども、一般の漁業者なり、そういう一生懸命努力している皆さん方に、正直者がばかを見るようなことのないような制度をやはりしっかりとつくっておかないと、まじめにしゅんなものをとって、おいしいものを提供しようと思ってやっている漁業者が何となく後でばかを見たというようなことも中にはありますので、そういうことのないように、そのあたりの行政の運営をよろしくお願いしたいと思っております。

 その問題とも関連しますが、これも長官にお尋ねしたいと思いますが、先ほど来のお話のように、だんだん漁獲量を抑えてくる、規制してくる、そういう時代に突入しておりますし、漁船の数もだんだん減らしてくる、そういう一つの大きな流れもあるわけですけれども、こういうことをすれば国内の生産量がだんだん減ってくるだろうということに当然なるわけですね、心配されるというか。片や、輸入量、輸入の水産物というのは、御存じのとおりすごい勢いで伸びてきている。私も具体的な数字はちょっとわかりませんけれども、昭和四十八年当時の量に比べると、もう五倍程度に輸入量がふえてきているというデータもございます。

 こういうふうになってきますと、日本の国内のいろいろな市場がもう輸入水産物で占められてしまうのではないか、そういう心配すら出てくるわけですね。そういうことを考えた場合に、せっかく今資源を回復させるためのいろいろな施策を展開し、努力をし、では近い将来、何年か後に資源がほぼ回復した、これから大いに魚をとって国民の皆さん食べてくださいと言った途端に、何か国民の嗜好が変わってしまっていた、なかなか需要と供給がマッチしないというようなことだって心配になるわけです。

 そういうことを考えますと、やはり並行してその対策を講じておく必要があるのではないかと思いますね。それは魚食に対するいろいろな普及啓蒙活動とか、あるいはまた加工面でのいろいろな対策とかいろいろなことが考えられると思いますけれども、このあたりの問題につきまして、どのような基本的な考え方でしょうか。

渡辺政府参考人 御指摘がありましたように、現在でも国産二兆円、輸入が一兆七千億、そういう状況の中で自給率五五%、こういう状態であります。しばらく我慢の時期が続くわけでありますので、その間にやはり国産の水産物がきちんと消費、定着されていくような加工、流通、あるいは消費の面での対策を打つ必要があるというふうに思っております。

 大事なのは、流通や加工が力をつけて、輸入のものと競争の上で勝てるような状況をつくるということだろうと思っております。例えば生鮮水産物でいえば、商品差別化ということも一つあります。例えば関サバ、関アジなどというのは、同じアジ、サバでも十倍ぐらいの値段が出るというふうなことでもございますし、また、加工や流通の面でも、一定のきちんと消費者に選ばれるような販売上の工夫、加工上の工夫をしていくということが大事です。

 それから、我々行政に特に課されているのは、魚食の持っている消費生活における健康的なメリットについてきちんと啓蒙するということだろうと思います。何といっても、魚食のパイが小さくならないようにするということが肝心でありますので、そういった点にも配慮をしたいと思っておりますし、多様な調理方法、使いやすい魚、高い付加価値の水産加工品というふうな対策を総合的に打っていかないと、失われたマーケットが取り返せない可能性もございますので、そういう面でなお一層努力をしたいと考えております。

一川委員 では、ちょっと今日的な課題の幾つかの中で、最近、海における遊漁者といいますか、釣りを中心としたそういう傾向が非常に強くなってまいりました。そういったマリンレジャーブームという一つの流れの中で遊漁者が大変なふえ方をしているというふうに聞いておりますし、また、そういう方々がとる魚の量もばかにならなくなってきたということです。

 ある魚種に限定して狭い海域を見れば、どっちかというと、漁業者がとるよりもそういう遊魚者がとる漁獲量の方が多いということすら言われている話も聞いたりする時期でございまして、やはりこういう皆さん方に対しても、しっかりと資源管理とか環境保全といったようなことも啓蒙しながら、一つのルールに従っていただく。そういう中で、その地域の漁業者ともちゃんとした話し合いの中で一つの方向づけをして、お互いに共存共栄を図っていくということが非常に大事な時代ではないかなというふうに私は思います。

 特に、一種の衝突事故的なものによるトラブルとか、また、中にはごみを適当にそのあたりに放棄する、そういう遊漁者もいるというふうに聞いておりますけれども、そういうことも含めて、この対策というのも水産行政の中でもだんだん重要視しなければならない状況になりつつあると私は思いますけれども、この問題に対する今後の取り組み方針といいますか、そのあたりをお聞かせ願いたいと思います。

渡辺政府参考人 今回の水産基本法案の特徴の一つは、消費者の役割というのを八条で規定を盛り込ませていただいたこと、そして、第六条の二項に「漁業者以外の者であって、」というくだりを置きまして、漁業を専ら行う者以外の方も水産に関する施策の実施について協力をしなければならないという規定を置いたことでございます。資源管理と環境保全に対して両者が一致協力をして共存を図るということは大事なことであります。

 御指摘がありましたように、例えば太平洋岸でも、相模湾のマダイだと思いますけれども、これは漁業者のとる量よりも釣り人のとる量の方が多いというふうな実態も出てきておりますので、そういう点で、海面利用のあり方、それから漁獲や採捕のあり方、こういうものにつきまして、これから対策を強化すべき時期だと思っております。

 当面は、海面利用協議会におきまして、遊漁者に対する資源管理や環境保全のルールやマナーの啓発活動や調整を行っておりますが、いずれは、非漁業者による漁獲、採捕、あるいは海面、水面の利用のあり方につきまして、制度化も含めて検討いたしたいと考えております。

一川委員 ぜひそのあたりに対して、現状、それぞれの地域で特色があろうかと思いますけれども、しっかりとした対策をお願いしたいと思います。

 それから次に、これも先ほど来若干話題が出ておりましたけれども、要するに、水産業あるいは漁村の持つ役割、それからまた漁業者とか漁業者が関係する諸団体、例えば漁業協同組合とか、そういうところが果たす役割みたいなものがもっと評価されるべきじゃないかという議論が当然あるわけです。こういった基本法のことですから、本当はそういう多面的な機能といいますか、そういう役回りみたいなものをもっとしっかりとした理念としてこの法律でうたったらどうかという意見も当然あるわけですし、私自身もそういう気持ちを持っておりますが、若干条文の中でもそういう記述がございます。

 水産業とか漁村というものは、本来の役回りのほかに、国民に対してそういった健全なレクリエーションの場を提供するとか、あるいはまたそれぞれの海岸線の環境保全というような役回りも当然担っているわけでございます。また一方、漁業者とか関係する漁業協同組合というような皆さん方は、本来の水産食料品の供給という役回りは当然でございますけれども、そのほかにも、例えば海難事故に対する協力体制あるいは密入国者のいろいろな情報提供、そういった一種の我が国の国境警備的な役回りも含めて、私は、こういう漁業者とか関係する諸団体というのは、それなりの役回りを果たしてきておる点がたくさんあるのではないかと思うんです。

 こういうことを考えてみた場合に、こういう方々が果たしている役割というのは相当社会的にも大きなものがあろうかと思いますが、一方においては、では、漁業協同組合といった団体がしっかりとした組織として動いているかといったことを考えてみた場合に、決してそういうものじゃなくて、大変厳しい経営状況にあると私は思うんです。

 そうした場合に、今合併とかそういうことで経営基盤を強化するための政策は動いておりますが、こういった水産基本法の制定というものを契機に、こういう水産関係の団体、漁業協同組合とか漁業者の多面的な役回り、そのあたりをもっと評価しつつ、例えば漁業協同組合の経営の基盤がもっとしっかりと強化されるような対策をもう一工夫されたらどうかなという感じがするわけですけれども、そのあたりの考え方はいかがでしょうか。

遠藤(武)副大臣 委員御承知のように、殊に水産に関しては私はずぶの素人でございますが、漁協の問題は構造改革にかかわる非常に基盤的な問題でございますので、私なりの考えを申し上げたいと思います。

 昭和四十二年というか四十年代の初めから、農協なども含めてこういう団体の合併、組織強化ということを進めてまいっております。四半世紀たって、農協は二八%ほど合併を果たしました。ところが漁協は七五%強で、まだまだ合併は進みません。それは、もともと零細な漁協が多いということもあるでしょうが、やはり入会権的なものもございまして、なかなか権利の競合ということが難しゅうございますね。

 したがって、今度の漁業法や何かでも、合併が進むような、支援できるような形で、まずそこのところを促進させていきたい。とりわけ、山形県のように、一県一漁協であります。ですから、そうしたところを、先生のところは多分信用事業の部分では統一されているんじゃなかろうか。ですから、そういう信用事業とか経済事業とか、部分部分でもいいから組織としての強化がなされるような形で支援をしていく、そしてまたそこの根っこのところの構造改革に手をつけていくという筋道かなと考えておりますので、多分石川県は先生などの御指導によってそういうふうな方向に進んでいると思いますので、さらなる御指導のほどをよろしくお願い申し上げる次第でございます。

一川委員 では、私、最後に大臣に御所見を伺いたいと思いますが、きょうも先ほどの後藤委員だとか岩國委員なんかの話題の中にも出ておりました、水産は水産だけで物事がなかなか解決しない、森林の問題もかかわって、流域全体がしっかりと管理されていないとなかなか豊かな漁場は出てこないというような話題もございまして、私も全く同感でございます。

 大臣もこの委員会でもいろいろな大胆な発言をなされていらっしゃいますけれども、私も石川県の一つの行政として、従来、農、林、水というのは、同じ省庁の中にあっても、あるいは県庁の中の同じ部の中にあっても、割と縦割り的に物事をやっていて、なかなか横の連絡はとれなかったという時代が、今もまだ一部残っておりますけれども。少なくとも、農林水産省という一つの官庁の中でやっておる施策ですから、しかも大臣が一人ですから、私は、やはり農業、林業、水産業というものがお互いにカバーし合って、お互いの施策が相乗的に効果が出るような、そういう新しい政策を生み出していっていただきたいと思うんです。

 特に、農林水産省は今回の中央省庁再編成の中では、名前はそのままそっくり残って、一部、内部では機構改革はされていますけれども、一般の国民からすると、農林水産省は何にも旧態依然で変わっていないじゃないかというふうに当然見られているわけです。ですから、私は、それは自己改革をするしかない、厳しい局面の中で農林水産省がみずから知恵を出して国民の期待にこたえていく、そういう政策を打ち出していただきたいというふうに強く期待するわけでございます。

 そういう中で、先ほど来の話題に出ているように、豊かな漁場づくりというのは、流域全体の農業なり森林管理というものも、そういう視点であらゆる政策をその方向で動かしていくということが非常に大切なことだと思うわけです。一つ例示的な話題として挙げましたけれども、農林水産大臣としまして、今後、農林水産業全体を引っ張っていく最高責任者でございますけれども、この問題も含めて、大臣の新たな決意を聞かせていただければありがたいと思います。

武部国務大臣 我々の地域では、特に北海道は流域ごとに町ができたのですよ。それが分村して今日の市町村域に分かれていったのですけれども、そういう意味でも、森と川と海は親子兄弟のような間柄だ、我々はこう思っております。

 これは農林水産省だけでなくて、市町村合併などもやはり流域ごとにやってもらった方がいいでしょうから、あるいは集落の再編ということも総務省とも絡んでまいります。それから河川ということになれば、国土交通省ともかかわりがあります。それから環境という面では、私は、林野庁なんかは環境省と一緒になった方がよかったのではないのかな、借金を棒引きしてくれるのならその方が、私だったらそっちにくっついた方がいいなと思ったことがあるのですね、今は農林水産大臣ですからそういう考えは持ち得ませんが。

 いずれにしても、国土交通省や環境省、それから総務省、農林水産省というのは、もう一つ合併するぐらいの気持ちで行政の推進をしていく必要が大事ではないか、このように思いますし、長くやらせてもらえれば、私は、農林水産省の中で縦割り行政なんというのは必ずきちっと排除してみせます。いずれにしても、おっしゃることは全く同感でございますので、今後ともの御鞭撻をいただきたいと思います。ありがとうございました。

一川委員 どうもありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。

堀込委員長 次に、黄川田徹君。

黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。

 自由党として質疑を継続させていただきます。

 私は、三陸沿岸の漁業を主とする風光明媚な浜で生まれ育った者であります。私の人生は、これまで海にはぐくまれてきたと言っても過言ではありません。

 昨日の参議院予算委員会にて、総理の所信表明では、農林水産関係はたった二行しか触れられていなかったとの問いかけに対して、農林水産大臣は、所信は、少ない表現ながら内容は大変奥深いものがあると答弁されておりました。

 確かに都市の再生は重要課題でありますが、地域振興のかなめである今回の水産基本法を初めとする水産三法は、食料の安定供給や国土の均衡ある発展等の根幹をなす重要な法案であります。また、追って林業基本法も十分な審議がなされなければなりません。

 そこで、もし農林水産部門に骨太の政策があるのなら、総理の所信表明にこそ、もっとそれなりの表現がなされていたはずであったと私は思うのでありますが、改めて大臣の御見解をお伺いいたします。

武部国務大臣 お話しのとおり、農林水産部門の記述を求めるならば、これはやはり十行ぐらいは必要なんですね。どれを優先するかということになりますと、なかなか難しい問題があります。

 そこで、あの所信表明の中の文言は、一つは、循環型社会の実現ということをうたっておるわけです。先ほど来ずっと議論がありますように、農林水産業はまさに循環型産業の典型と言っても過言ではありません。これは、都市と農山漁村、地方との共生とか融合あるいは対流と、私はこの間の予算委員会でそういうふうに御答弁させていただきましたけれども、そういう間柄にある、このように思います。

 この循環型社会がこれから我々が求めていく新たなる一つの方向だろう、私はかように思っております。循環型社会の担い手が農林水産省である、このように自負しているわけでございます。

 もう一つは、食料の自給率の向上ということでございまして、これも平成二十二年までに四五%という食料自給率目標の達成を図るということに相なっておるわけでありますけれども、そこに向けて、専業農家を初めとする意欲と能力のある農業経営体というものをいかにつくり出していくか、こういうことが産業政策としての農業の一つの大きな目標だと思います。

 そのほかにも、農業は現在、老夫婦が自分の子供や親戚や子供たちに米や野菜を送るのを楽しみにしている、そういう人たちもおります。あるいは二種兼農家、サラリーマンをやりながら休みを利用して耕している人たちもおります。これも結構だと思います。これらを換算いたしますと、国家に財政的にも相当貢献しているのだろうと思います、医療の面でありますとか福祉の面でありますとか。

 さらに、都市に住んでいる人たちも自然界の一員ですから、農村に帰りたいな、自然に帰りたいな、自然とともに生活したいなという人たちはいるはずなんです。そういった人たちがリタイアしてからその夢をかなえようとしているのが現状でありますけれども、私は、現在のサラリーマンの皆さん方が幾らでも畑を借りたり、休みに出かけていったりして園芸をやることは可能なんだろうと思います。しかし、それをサポートする組織体、法人等がないのですね。

 それからもう一つは、私は、専業農家とか、意欲と能力のある経営体と言っておりますけれども、実際今日、生産、流通、加工、これはばらばらになっているのですよ。農業が一番大変な第一次生産部門を請け負っておるわけです。これはほかの、流通でありますとか加工でありますとか、そういったもの、大体四分の一ぐらいしか農家が生産を上げていません、四分の三ぐらいはほかの人たちがやっているのですね。これは、家族経営中心ということにこだわるから、そこにとどまらざるを得ないわけなんです。

 これを法人化してまいりますと、ちょっと人の手をかりたいといえば、それをサポートできる、いわゆる人材派遣もあるわけですし、機械のリースもあるわけですし、かなり幅広い範囲で加工、流通、その他の関連産業部門というものに農家自身が手を出すことができる、私はかように思っております。

 私ども、そういったものを全部書き込みますと相当長い行数になる。したがって、骨格、本当の骨の部分、つまり、循環型社会の実現と食料の自給率向上のために農林水産業の構造改革を進め、農山漁村の新たなる可能性を切り開いてまいりますと。余計なものを入れるよりも、これだけにしておこうということを私の方から閣議で総理に、これで結構です、しかし奥は深いですよということも念を押して、総理からも、そのことは十分ひとつ農林水産大臣、いろいろ構想を明らかにしてほしい、こう言われて、ああいう所信表明になったということでございます。

 いろいろ行数で御心配いただいているかもしれませんが、こういう委員会の場を通じて私どもの考えを明らかにしてまいりたいと思いますので、ぜひ御議論の上、いい知恵を与えていただければありがたいと思います。

黄川田委員 ただいま大臣から具体的なお話を伺いましたが、地方への税財源の移譲などの第二の地方分権を議論することなく、総理は、来年度の予算編成で地方への補助金と交付税の削減の検討や道路特定財源制度の見直しを表明しておりますが、根本的な構造改革なしでの提案であるならば私はこれらに対し反対し、地方が元気になる第一次産業の振興策を強く求めておきたいと思います。

 また、漁協系統は漁業基本法の制定を求めておりましたが、名称が漁業から水産に変わり、だれのための見直しの法律かとの声もあります。漁村の総合的な振興の視点を忘れてならないことを指摘しておきたいとも思います。

 そこで次に、水産物の安定供給と食料の安全保障についてお尋ねいたします。

 水産物は、国民が摂取する全たんぱく質の約二割、動物性たんぱく質の約四割を供給するなど、我が国の食生活において重要な地位を占めており、その安定的な供給は国の責務であります。しかしながら、近年、資源状態の悪化等から我が国の漁獲量は減少を続けており、さらに、世界的な人口問題、環境問題など、将来の水産物の需給及び貿易には不安定な面があります。

 このような中で、国民に将来にわたり水産物を安定的に供給していくため、国は基本的にどのような方策をとっていく考えか、大臣の御見解はいかがでしょうか。

武部国務大臣 我が国は約四百五十万平方キロに及ぶ世界で第六位の排他的経済水域を有しておりまして、この漁場を高度に利用すること、これがまず国民の需要に応じた水産物の安定供給の第一義的な課題だ、このように思っておりますし、これは相当程度可能だろう、このように思っております。

 また、水産資源の持続的な利用を確保しつつ、我が国の漁業生産の増大を図ることを基本として自給率の向上を目指しているわけでありますが、具体的には、周辺水域の水産資源の適切な保存管理、これは第十三条に記しております。水産動植物の増養殖の推進、これは第十六条、水産基盤の整備、第二十六条等の施策を総合的に講じていこうというようなことで今先生から御指摘のありました問題に取り組んでいきたい、かように存じます。

黄川田委員 安全と安心が確保された食料の安定供給は国民的課題であり、資源管理が適切に行われれば、我が国の二百海里は水産物の巨大な貯蔵庫ともなり得るものであります。休漁、減船など漁業者の痛みを伴うわけでありますけれども、つくり育てる漁業の推進をさらに推し進められますことを御期待いたしたいと思います。

 それでは次に、担い手育成と就労環境の改善についてお伺いいたします。

 漁業就業者は、昭和二十八年の約八十万人をピークに大幅に減少してきており、平成十一年には約二十七万人となっております。また、男子就業者のうち六十歳以上の割合は四四%と、高齢化が進んでおります。一方、平成十一年の新規就業者は一千二百八十人にすぎず、就業者の高齢化により、今後就業者数は急速に減少していくと推定されるところであります。

 基本法案第二十三条において、国は、効率的かつ安定的な漁業経営を担うべき人材の育成及び確保を図るため、漁業者の漁業の技術及び経営管理能力の向上、新規漁業就業者に対する漁業の技術及び経営方法の習得等促進、その他必要な施策を講じるものとする、また、漁労の安全の確保、労働条件の改善等、漁業従事者の労働環境の整備に必要な施策を講ずるものとするとしております。

 しかしながら、漁業の担い手対策の実態として、実質的に独立し、三十歳代、四十歳代に達し、漁業経営でも地域漁業においても中核的な存在になっているにもかかわらず、多くの青年漁業者が地元の漁業協同組合の正組合員になっていないことであります。ほとんどの漁協が一世帯一組合員制を採用しているため、若者は自分の父親が引退するまでは漁協の活動や運営について正式な場では意見を全く言えないということもあります。

 私は、担い手育成上、ここに大きな問題の一つがあると思うわけであります。新規就業者の確保及び将来の担い手の育成について、政府の取り組み方針はいかがでしょうか、お伺いいたします。

武部国務大臣 担い手の問題、青年漁業者の問題について先生の御見識の御開陳がありましたが、私どもは同じような認識でございます。

 ただ、漁協が一世帯一組合員制を採用しているとの指摘につきましては、漁協の中に漁業権行使等の関係もございます。慣例的にこのような加入制限が行われているという場合があることは承知しておりますけれども、従来から同一世帯の者が既に組合員であること等を理由として加入を拒むことのないよう指導しているところでもございまして、今後とも、漁協組織の活性化とともに将来の担い手育成の観点からも適切に対処してまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、これからの時代は自主自立、自己責任原則なんですね。すべて、農林水産省でありますとか国から、こうすべきだ、こうしろというようなことでなくて、現場から、漁組自体からの近代化、合理化ということが盛り上がってくるように、若い担い手の皆さん方にも元気を出してもらいたい。その元気を出す意味において、農林水産省としても最大限徹底していきたいというふうに考えております。

黄川田委員 また、担い手の育成上、水産高校の位置づけが重要と思いますが、最近の青少年の意識変化を踏まえ、教育方法はどのような工夫をしておるのでしょうか。

 特に、漁業従事者の担い手育成の観点から、単なる教育カリキュラムの編成問題ではなく、大海に羽ばたき、将来の日本の漁業を担う若者の精神を鍛える方策が大切と考えますが、学校教育法などが改正される中、漁業従事者の担い手育成などの職業教育に文部科学省はどのような方針で対処しているのでしょうか。

 また、加えて、少子化の中、実習船の建造など生き残りが厳しい水産高校は減少傾向にあると思いますが、現在全国で何校あるのか、そして、県によっては、複数校あるところでは統廃合の動きはどのようになっているのか、あわせて文部科学省にお伺いいたします。

 さらに、一方、水産基本法では、人材の育成及び確保について、国民が漁業に対する理解と関心を深めるよう漁業に関する教育を振興するとしておりますが、具体的にどのような施策を行う所存か、文部科学省との連携はどうなっておるのか、お尋ねいたします。

田中政府参考人 水産高等学校についてのお尋ねでございますけれども、水産高校では、我が国の水産業やその関連産業の担い手を育成するという観点から、水産や海洋の各分野におきます生産や流通などに関します知識や技術につきまして、実験や実習を中心として教育を行っておるところでございます。

 多くの水産高校におきましては、実際に漁業や船舶の運航を体験していただくという観点から、実習船を活用した乗船実習などを行っておるところでございまして、このような実習は、必要な知識や技術を習得させるのみならず、集団の一員として必要な協調性や体力、気力の育成といった観点からも大きな成果を上げておるというふうに聞いておるところでございますが、この実習船によります実習以外にも多様な実験、実習を行っておるところでもございますし、カッター等によります訓練、あるいは海洋スポーツを取り入れるといったような試みをやっておる学校もあるやに聞いておるところでございます。

 水産に関する学科を置きます高等学校の数は、現在全国で四十八校、公立が四十七校、私立が一校でございまして、この十年では四校ほど減少しておるところでございます。

 生徒数も、この十年間で約四千人減少しておりまして、平成十二年五月一日現在で約一万二千人となっておるところでございますけれども、高等学校全体の生徒に占める割合としては〇・三%ということで、ほぼ横ばいに推移しておるところでございます。

 また、御指摘のございましたように、各都道府県におきましては、少子化の影響によります生徒数の減少に伴いまして、公立高等学校の統廃合等、その再編整備を検討、推進しているところでございます。水産高校についても、その中で再編等を検討している県もあると承知しておるところでございます。

 文部科学省といたしましては、魅力ある水産高校づくりを進めますために、水産技術の高度化やあるいは海洋環境問題等に対応するための教育内容の改善を図りますとともに、実習船を初めといたします施設設備に対する助成、あるいは研修の実施などによります教員の資質向上等に努めてきておるところでございまして、引き続き、水産高校のみならず、職業教育の充実のために努力してまいりたいと考えておるところでございます。

渡辺政府参考人 文部科学省と農林水産省の連携の点でございます。

 今、水産高校の充実の問題は文部科学省から答弁がございましたが、それより下の中学生、小学生、こういうところにもやはり水産業についての関心を持っていただかなければならないと思っております。

 実は、平成十年に、文部省と農林水産省の政務次官をそれぞれキャップにいたしまして、文部省・農林水産省連携協議会という会議をつくりまして、そこで基本方針を取りまとめております。これに沿って、学校外での体験学習あるいは学校教育の中での水産業に関する学習というのを確認し合っております。

 私たちも、各県で水産の普及員がおりますので、その普及員が子供たちを集めて少年水産教室といったようなものを開催したり、副読本づくりに取りかかったり、そんなこともやっております。

 これからも、そういった点で、次の世代あるいは次の次の世代を担う子供たちの啓蒙なり教育をしたいと思っております。

黄川田委員 農水そして文部には、次代を担う、本当に海を担う若者を育てていただきたいと思います。

 それでは次に、これまでに何度も質疑がありましたけれども、私からも確認の意味でワカメのセーフガードについてお伺いいたしたいと思います。

 岩手から宮城にかけてとれる三陸ワカメの生産量は、平成十二年産でありますが、岩手二万七千六百トン、宮城一万七千三百トン、生の換算で全国のワカメ生産の約七割近くを占めております。中国産などの輸入ワカメの量は、平成十二年二十五万五千トンで、国内生産量約六万六千五百トンの約三・八倍に及んでおります。そのため、三陸産ワカメの入札価格がここ数年で半値近くに暴落しております。ことしは、冷水温でワカメ自体の成長がよくないことに加えて、中国産など輸入品による価格の下落を見越して、岩手県の生産量は昨年より一割ほど下回る二万トン台にとどまりそうであります。

 こうした中、陸前高田市など三陸沿岸の首長は、既に国に対し、緊急輸入制限、セーフガードの早期発動や緊急対策など、関係省庁にそれぞれ陳情を行っております。

 そこで、セーフガード発動の検討状況はいかがでしょうか。また、農林水産大臣の基本的な考え方をここで改めてお聞きいたしたいと思います。

武部国務大臣 先ほどもお答えしたのでありますけれども、三月十四日に、財務、経済産業両大臣に調査開始を要請いたしました。価格の急落による生産者の被害は十分に認識している所存でございます。

 セーフガードの検討に当たりましては、国内産業の構造調整も急務と認識しておりまして、国内産業の国際的な競争力の強化に努めつつ、同時に、早期政府調査の開始に向けて最大限努力してまいりたいと存じます。

黄川田委員 他省庁に負けないように、大臣の力強い対応をよろしくお願い申し上げます。

 そしてまた、岩手県や県漁連は、セーフガードに頼るだけでなく、養殖業者の経営体質強化と国際競争力を高める商品開発を考えるなど、守りから攻めへの転換も図っております。すなわち、今まで少人数かつ手作業で行ってきた刈り取り作業を、大型船を使い共同作業で行うことや、ワカメのしん抜き機の開発など機械化による作業の効率化でコストの削減を図るなど、本格的に取り組み始めております。

 そこで、このような地方での地道な努力に対し、国はどのような支援策を考えているのか、お尋ねいたしたいと思います。

渡辺政府参考人 御指摘の中にあったわけですが、ワカメの生産あるいは一次加工の工程というのはほとんど手作業です。ですから、私たちは、この手作業の工程を省力化、自動化がもう少しできるのじゃないだろうかとか、それから経営体は非常に小規模で零細ですから、これを協業化することによって、まだ合理化なりコスト削減という道はあろうかと思っております。

 実は、つい先日も現地に担当官を要望に応じて派遣をいたしまして、どういうことが現場としては実際に構造調整、構造改革として必要かということをヒアリング、御意見を賜りに行っております。海面養殖業の高度化推進対策事業というふうなものもありますし、間もなく概算要求にもなりますので、そういった局面に現地の声を生かしていきたいと思っております。

黄川田委員 特段の御支援を要望しておきたいと思います。

 それでは次に、養殖漁業と環境問題についてお伺いいたします。

 まずもって養殖漁業は、近年においては、沿岸における漁業生産のうち、数量で四割強、金額では五割弱を占めるなど水産物の安定供給に欠くことのできない重要な生産部門となっております。ところが、その一方で、養殖業に関する消費者の意識調査などによると、養殖業の安全性に不安を抱く声がかなり大きいという結果となっております。養殖業者の方々はそれぞれの現場において養殖生産物の食品としての安全性確保に努力されていると思いますが、消費者の不安はまだまだ払拭されているとは言いがたい状況にあります。

 そこで、こういった消費者の不安を払拭していく観点から、水産加工業では、HACCP方式等による生産管理手法を養殖業にも導入するなど、養殖生産過程における品質管理をより強化する必要があると思います。また、消費者に適切なPRを行うことも重要と思いますが、農林水産省の見解はいかがでしょうか。

岩永大臣政務官 先生の御意図にどうこたえられるか、水産庁でいろいろ調べてまいりました。

 御承知のとおり、養殖業における安全性、それから品質、そして養殖生産管理手法の改善というのは急務でございますし、大変重要な部分だ、このように認識しているところでございます。

 HACCP方式による生産管理については、ブリの養殖等について平成十年からずっとやっておりますし、今そのマニュアルづくりをして、そしてそれをほかの部分でもきちっと対応していく、こういうようにやっております。

 それから、消費者の安全性に対するニーズにこたえるために、平成十三年度から消費者参加型養殖推進モデル事業というのを実施いたします。そしてこれの工程等の情報を公開する、こういうようにしておりまして、十三年度におきましても約二千七百九十三万、それから水産食品品質高度化総合対策事業についても約一億二千万ぐらいで今始めたところでございますので、これを積極的に推進していくように、水産庁に対応するように指導してまいりたい、このように思っております。

黄川田委員 大臣から事細かに答弁をいただきましたので、時間がなくなってしまいました。

 そこで、終わりに三陸沿岸のサケの不漁についてお尋ねいたします。

 三陸沖は世界三大漁場の一つでありますけれども、最近、これまでは順調にアキサケも回帰しておったのですけれども、この二年間といいますか、五、六年前から大変厳しい状況にあります。

 そこで、最近の回帰率の低下の要因は主に何であるのか。難しい問題であり、稚魚に起因する面、あるいは海象に起因する面など、いろいろ考えられると思いますけれども、水産庁の御見解はいかがでしょうか。

 加えて、最近の来遊数の減少は北海道の太平洋岸においても見られており、水産庁は関係道県の協力のもとに、平成十三年度の新規事業として、太平洋さけ資源回復緊急対策事業を行うとしておりますが、その予算規模であるとか事業内容はどのようなものでしょうか。また、それ以外にどんな支援策がとられているのか、水産庁にお伺いいたします。

渡辺政府参考人 まことに申し上げにくい話ですが、現段階では、不漁の原因が必ずしも特定できません。もちろん、稚魚の健康状態がどうかとか、それから沿岸で減耗しているんではないかとか、あるいは回遊途上で減耗しているんではないかとか、そういうことも考えられるわけでありますけれども。

 いずれにしても、かつて回帰率五・五%あった岩手のサケが、今、回帰率一・六%ということで非常に大きな下落でありますから、北海道のさけ・ます資源管理センターというのが独立行政法人でありますが、これを利用しまして、委託事業として、岩手県から多量の標識稚魚を放流して、海域での幼稚魚の分布状況だとか水温だとかえさ生物の状況等も把握しながら、どの時期に稚魚を放流したらいい状態で帰ってくるかというふうなことを再検討したいということで、太平洋さけ資源回復緊急対策事業を始めたわけでございます。金額といたしましては、平成十三年度で千二百五十四万円という状況になっております。

 なお、これ以外にも、サケ・マス資源の管理推進事業がございますので、これの見直しをいたしまして、必要な調査を進めたいと考えております。

黄川田委員 時間でありますので、以上で終わります。

堀込委員長 次に、中林よし子君。

中林委員 それでは、私は、水産基本法案及び関連改正法案に関して質問をさせていただきます。

 瀬戸内海の漁業生産上の位置づけと、それから水質確保の問題についてまずお伺いしたいと思います。

 世界の閉鎖性水域における単位面積当たりの漁獲量を比較してみますと、一平方キロ当たり、地中海が〇・八トン、バルト海が二・二トン、北海が五・七トンであるのに対して、瀬戸内海は何と二十・六トンと地中海の二十五倍に当たる漁獲量となっており、瀬戸内海は狭い海峡部があって、そこで海水がかきまぜられて栄養分が海面近くに持ち上げられ、また浅瀬が多くて潮流も速いために生物同士が遭遇するチャンスも多くて、食物連鎖がうまくいっている非常に貴重な海だ、このように思うわけですけれども、大臣、この瀬戸内海の世界的に見ての極めて重要な特質について、どのように受けとめられているでしょうか。

武部国務大臣 瀬戸内海は世界でも代表的な閉鎖性水域でありまして、水産資源もお説のとおり大変豊富でございます。小型漁船による多様な漁業とノリ等の養殖も存在しているのでございます。

 これは平成十一年においてでございますが、我が国漁業生産のうち、量で約九%、金額にして約二千二百億円、これは全国の一二%という次第でございますので、大変重要な位置を占めている、かように認識いたしております。

中林委員 私、世界的に見ても、先ほど数字を御披露いたしましたけれども、世界の閉鎖性水域の中でも極めて貴重な水域だということをぜひ大臣にも認識していただきたいというふうに思います。

 この貴重な瀬戸内海をどのように守っていくか、これが非常に重要だというふうに思います。漁場として豊かな海をどう発展させるか、これも今回、基本法を制定するに当たり非常に重要な観点ではないかというふうに思います。

 ところが、瀬戸内海の赤潮の発生件数は、九六年の八十九件から、九七年には百三十五件と急増し、九八年には百五件となっております。特に、この委員会としても調査に伺いましたけれども、九七年の赤潮はヘテロカプサによるもので、広島湾では深刻な打撃をカキ養殖業者に与えました。また、瀬戸内海の窒素、燐濃度は、一九八五年から若干減りながらも、ほぼ横ばい状態で推移しております。抜本的改善になっていないばかりか、富栄養化が進行しておりまして、大変汚れてきていると伺っています。

 それから、埋め立ての方ですけれども、大規模な埋め立てが瀬戸内法ができて以降も続いております。七三年以降の瀬戸内海の埋立免許件数が約四千件で、総面積は実に一万ヘクタールにも上っております。

 これらの水域の環境悪化の中で、水産の専門家はこのように述べています。瀬戸内海の漁獲量と魚種組成の推移から海の変化を例えるなら、一九六〇年ごろまでを富栄養化以前で表層も底層も生物の種類が豊かな多様性の高いマダイの海、それ以降、一九九〇年ごろまでを富栄養化時代で表層の生物量が多いイワシの海、それ以後現在まで、富栄養化により生態系がバランスをやや欠いたクラゲの海、こういうふうに時代区分ができると言っているわけですね。現在のクラゲの海ではクラゲやバクテリアに流れるエネルギーの系が太くなって、魚類生産は細ってくる、こういう警告も発しています。大臣、このような現状をどのように認識をされているのか。

 それからまた、今回の水産基本法案第十七条では、先ほどから随分問題になっておりますが、「国は、水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、水質の保全、水産動植物の繁殖地の保護及び整備その他必要な施策を講ずるものとする。」ということになっているわけですけれども、瀬戸内海について、このように世界的な貴重な海域でございますけれども、どのような施策をお考えになっているでしょうか。

武部国務大臣 瀬戸内海の水質を改善するために、法施行後、環境省を中心に汚濁負荷量の総量規制等、種々の施策が講じられてきたところだと承知しております。

 その結果、法施行時に比べれば、水質の汚濁度をあらわすCODは、産業系については半分以下に減少し、生活系についても、下水道の整備に伴い徐々に減少している。また、年平均の赤潮発生件数についても、頻発期の四割程度に減少している、かように一定の改善がなされたものと認識しております。

 近年は、環境基準の達成率、赤潮の年間発生件数とも横ばい傾向にあり、顕著な改善は見られていない、先生御指摘のとおりでございますが、しかし、特に悪化している状況でもない、かような認識も間違いではないのではないか。

 こうした状況を踏まえまして、環境省においては、さらなる前進に向けて瀬戸内法の運用改善の検討を重ねていると聞いておりまして、必要があれば農林水産省も協力してまいりたい、かように考えている次第でございます。

 なおまた、水産基本法案第十七条の件でございますが、これは、水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、水質の保全、水産動植物の繁殖地の保護及び整備等の施策を講ずる旨を規定しておりまして、具体的施策として、赤潮、油濁等の漁場環境モニタリング事業、漁民の森づくり事業、藻場、干潟の再生、造成等を推進してまいるということでございます。

 今後とも、関係省庁とも連携を図りつつ、瀬戸内海における水産動植物の生育環境の保全及び改善に努めてまいりたいと存じます。

中林委員 現状認識で、赤潮の発生件数あるいはCODなどの数値をとって改善されている、このようにおっしゃいましたけれども、赤潮発生は、若干今減少して横ばい状態ですけれども、決して改善されているというふうには言えないと思います。

 CODは総量規制の中で確かに削減はされました。しかし、赤潮が発生する原因として燐や窒素があります。その他の浄化機能が低下しているということも私は疑いのない事実だというふうに思います。だから、そういう認識でなければ次の施策も有効な手だてが出ないのではないかというふうに思います。

 藻場や干潟の造成の話もされました。これは、やはり藻場や干潟が失われていって、それを再生させなければならない、新たな造成もしなければならない、その観点からされる事業でございます。こういう観点から、決して瀬戸内海の水域が改善されたなどと言える状況ではないということを改めて指摘しておきたいと思います。

 そこで、環境省に来ていただいて、副大臣、ありがとうございます。

 環境省は、第五次水質総量規制を策定して、水質汚濁防止法施行令の一部改正を行って、水質汚濁防止法に基づく汚濁負荷量の総量の削減を図る項目として、窒素また燐の含有量を追加することにしております。指定水域として東京湾、伊勢湾、瀬戸内海を指定しようとされていると伺っているわけで、それは大変結構なことだというふうに思っています。

 しかし、実際の瀬戸内海の状況は極めて厳しいものがあるというふうに私は思います。先ほど指摘した埋め立ての問題でも、瀬戸内法で特定海域に指定されている、特に埋め立ての条件が厳しく課せられた大阪湾においても大規模埋め立てはとまらず、瀬戸内法施行以前の総面積が千八百六十七ヘクタールだったのに対して、成立後、実に二千七百四十八・九ヘクタールと逆にふえているのではないですか。

 瀬戸内法では瀬戸内海における埋め立ては厳に抑制すべきである、こういうふうにうたっているわけですけれども、今のような現状で、法運用が甘過ぎたのではないか、こういう危惧を感じるわけですけれども、環境省のお考えをお聞きしたいと思います。

風間副大臣 御案内のように、瀬戸内法は、瀬戸内海が我が国のみならず世界に比類のない美しい景勝地として認知をされているのは御案内のとおりでございまして、ですから、国民にとってもその恩恵をひとしく享受して、次代の国民にきちっと継承すべきものであることから、瀬戸内海の環境保全を図ることを目的として制定されていることは御承知のとおりだと思います。

 今お話のありました埋め立ての問題でございますけれども、いずれにしましても、まず、先ほど武部農水大臣もお話しされましたように、瀬戸内法施行後、少なくとも五年でCODやあるいは赤潮の年間発生数も減少してきている。相対的に、五十四年からの総量規制後はさらに減少してきている。CODそれから赤潮の発生量も四割程度減少してきているということは事実でございます。

 そして、今お話のありました埋め立てでありますけれども、瀬戸内法十三条第一項の規定によって、埋め立ての免許等については瀬戸内海の特殊性に十分配慮しなければならないとされておりまして、その基本方針として定められたいわゆる埋立ての基本方針に基づいて厳に抑制すべきものとされてきて、その結果、埋立免許面積は抑制されてきているというふうに思います。

 そしてさらに、そのような瀬戸内海の環境保全の重要性にかんがみて、昨年の十二月に瀬戸内海環境保全基本計画を変更して、規制を中心とする保全型施策の充実に加えまして、今度は失われつつある環境の再生、回復をさせるという施策の展開を定めたところでございます。

 今後とも、この新しい基本計画に基づきまして、瀬戸内海の環境保全がさらに適切に図られますよう関係府県また農水省と連携をとって対応してまいりたい、このように思っております。

中林委員 今お答えいただいたんですけれども、しかし私は、環境省にお伺いして、瀬戸内法の施行以前と施行後の特別の指定海域となっている大阪湾についての埋立免許数とそれから面積を出していただきたいと言ったんですが、後はあるんですけれども前のはない、こういうふうにおっしゃいました。

 私は、中国新聞が発表しております「海からの伝言」という瀬戸内海を本当にすばらしく解明した一つの本がありますけれども、ここに出ている数字を拾わせていただきました。環境省からの瀬戸内法施行以後の埋立面積、それとこちらが出している面積は一致するわけですから、その以前の面積も正しいわけですね。

 そうすると、今瀬戸内法は埋め立てについて抑制的に働いたとおっしゃるんですけれども、しかし、全国も同じ時点を比べてみると同じように抑制されている。瀬戸内法があるならば瀬戸内海の埋め立ての方がもっと抑制されるべきだったというふうに思うんですけれども、そうはなっておりません。

 今、産廃などで埋立計画があちこちにあって、環境団体を初め住民から反対運動が起きております。ぜひ環境省に検討していただきたいんですけれども、もう相当埋め立てられて、干潟、藻場などが消失しているわけですから、これ以上の環境悪化を招かないために埋め立て禁止の措置をとるべきだと思いますけれども、それを検討していただけるかどうか、それだけお答えください。

風間副大臣 まず、今先生がお話しされました中国新聞の記事の件でございますが、千八百六十七ヘクタールから二千七百十九ヘクタールにふえているということでデータを出されましたけれども、このデータの算出方法はちょっと不明でございまして、私どもからすれば。したがって、この部分については今中国新聞社に問い合わせ中でございます。何年からの集計なのかということが不明でございます以上は、今問い合わせをさせていただいているところでございます。

 そしてまた、今先生禁止すべきでないかということでございますけれども、いずれにしても、繰り返しになりますが、瀬戸内海の埋め立てにつきましては、瀬戸内法に基づく埋立ての基本方針に示されているとおり厳に抑制すべきであるということでございまして、その部分におきましては、環境への配慮がさらになされていかなければならないというふうに私は思っております。

 どちらにしても、今後とも、新たな瀬戸内海環境保全基本計画と埋立ての基本方針をきちっと適切な運用を図って、瀬戸内海の環境の保全に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

中林委員 第五次水質総量規制を考えようというときに、瀬戸内法の役割について厳密な検討というのは要ると私は思います。だから、その数字は中国新聞に問い合わせるのではなくして、環境省みずからが数字は握っておかなければならない、そういう性格のものだというふうに思いますので、中国新聞に問い合わされるのもいいでしょうけれども、みずから、そのための環境省でしょう。それが新聞社に問い合わせるなどというようなことは多少恥ずかしいのではないかというふうに私は思います。

 そこで、次の問題に移りたいと思います。

 上関原発の問題なんです。これは山口県、地図で瀬戸内海の向かって左側の位置にあるところですけれども、そこに上関原発、発電所の建設問題が持ち上がっております。電源開発基本計画に入れるために経済産業省が水産庁に意見を求め、水産庁も意見を述べたと思いますけれども、どのような意見を述べられたのか、端的にお答えください。

渡辺政府参考人 意見でありますが、地元の関係漁業協同組合等の一部に反対があることから、引き続き事業者側に円満な解決を図るための努力を継続させるよう経済産業省に対し要請をいたしました。

 また、このほか、万一の事故等による漁業への風評被害の対策及び適時適切な情報公開の徹底を図ること、埋め立てによっていそ根資源等の生息基盤の一部が消失するが、藻が着生しやすい護岸基礎構造等により、いそ根資源の生息環境に対する影響緩和対策等を講じるとともに、取放水の影響に留意して監視するよう要請もいたしました。

中林委員 私もいただいたのですけれども、これで小さな意見となっているわけですね。私は、とても小さな意見ではなくて、本当に瀬戸内海の水産業を考えるならば、大きな意見として堂々と経済産業省に意見を言っていただきたかった。言われたのですから、それをよしとしなければなりませんけれども、結論はいただけない。大臣は異議がないというふうにお答えになっているようでございますので、これは私は大いに異議があるということを申し上げておきたいと思います。

 環境省に、もう一問ですけれども、この点についてもお伺いしたいのです。

 中国電力はアセスをいたしました。しかし、このアセスのやり直しを四月十九日に日本生態学会が申し入れております。

 その中身は、中間報告、つまり中電がアセスと言っているものです、この中間報告には動植物のリストが一部しかない上、貴重な巻き貝であるカクメイの仲間について、数種類がすんでいるにもかかわらず種類を決められずカクメイ科と一くくりにするなど、調査精度が極めて低いという。生物種のリストは、その地域にどのような生物がすんでいるかを示すもので、環境影響評価の基礎データになる。しかし、報告書は不十分な検討に基づき、原発建設が各種生物に及ぼす影響は小さいと結論づけている。だからやり直しをしていただきたいということで申し入れております。

 私も現場に行きました。この瀬戸内海の貴重な生態系が中国電力の原発の建設によって失われかねない、そういう問題をはらんでいるというふうに思いました。この生態系が失われる問題を環境省としてどのようにお考えなのか。

 もう一点、対岸の愛媛県側に伊方原発がもう既に運転しております。瀬戸内海の入り口のところに、山口県側、瀬戸内海側に双方でそういう原子力発電所が設置されて、環境上いいのでしょうか。もし一たび事故が起きれば、瀬戸内海全域が汚染されかねない。そういう問題について環境省としてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

風間副大臣 まず、今生態学会からの御指摘のありましたカクメイ科の貝類につきましては、先般、電源開発促進法に基づきまして環境大臣意見を出させていただきました。

 その中で、専門家の意見を聴取しながら事後調査や環境監視調査を実施する、特に環境に配慮する必要が生じた場合には適切な措置を講じる、さらに環境影響の程度が著しいということが明らかになった場合の対応方針や調査結果の公表方法を明らかにして環境影響評価書に記載すべしということを求めたところでございます。

 これらの大臣意見に基づきまして、カクメイ科の貝だけではなくて、ほかの生態系にも、きちっと生態系が保全されていくような適切な措置を事業者が講じるものというふうに理解をしておるところでございます。

 そしてまた、今先生が伊方原発の話を出されましたが、いずれにしましても、まず上関原発につきましては、五月十六日に開催されました総合資源エネルギー調査会電源開発分科会で議決された。環境省はそれに先立ちまして、十一日でございますけれども、五日前に自然環境の保全につきましてきちっと適切な措置を講じるように提出させていただいたところでございます。

 そこから先は、経済産業所管あるいは内閣所管ということになっておりますが、いずれにしましても、上関原発の計画周辺地域というのは大変閉鎖性が高い瀬戸内海であることから、環境省としても、昨年の二月に環境影響評価法に基づいて大臣意見を提出した際に、周辺海域の水温やあるいは水質及び海生生物の適切な監視と、必要に応じた対策を求めたところでございまして、中国電力によってそれが適切に講じられていくようにしたいと思いますし、そうしてもらえるものと理解をしているところでございます。

中林委員 放射能汚染については環境省の所管ではないと言っておられるわけですけれども、私は、このぐらい狭い国土に原子力発電所があり、現に事故も起きているわけですから、環境省としても関心を持ち、大きな役割を発揮していただきたい、このように思います。

 どうもありがとうございます。退席されて結構でございます。

 それでは最後ですけれども、有明の問題についてお伺いをいたします。

 五月十三日に明らかになったことですけれども、海洋学会の沿岸海洋研究部会長を務めた海洋物理の専門家、宇野木氏が、今お配りしておりますけれども、有明海の潮汐を詳細に調べた結果、諫早湾の干拓工事の進行に伴って有明海の潮汐が直線的に減少していることが明らかになりました。それがこのグラフです。

 潮受け堤防着工後、潮汐が一貫して減少していることがわかり、有明海では、大きな潮汐が海水をかきまぜて十分な酸素を供給して、海底の泥を巻き上げて浮泥をつくる特徴があります。栄養物質がこの浮泥に吸着し、貯蔵され、生物の生産に役立っております。栄養過多でも酸素不足にならず、赤潮がほとんど発生しなかったのは、大きな潮汐によるものです。

 その潮汐が減少していることは、有明の環境に今深刻な打撃を与えております。また、潮汐の減少は、有明海全体の潮流の減少を引き起こして、約千ヘクタール以上、それに相当する干潟を喪失させた、このように分析がされております。

 今回のこの結果を見れば、当然、諫早干拓工事が潮汐の減少を招いたことを明らかにした点で、諫早干拓工事が原因だったということを証明しているのではないかというふうに読み取れるわけです。諫早干拓事業を直ちに中止し、水門を開放し、干潟を再生する、これが非常に重要なのではないかというふうに思います。

 当然、こういう研究成果が明らかになった点は、第三者委員会で資料を提供して直ちに検討してもらい、必要があればそれに基づいていよいよ大臣の決断をされるときなのではないか。つまり、干拓工事中止、あるいは水門開放、干潟再生、有明の再生、そういう方向に向かって決断をされるときではないかというふうに思いますので、このグラフ、あるいは第三者委員会で検討していただけるのかどうか、そして大臣の決断、これについてお答えいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 済みません、事実関係だけ。

 潮汐の変化が認められることは、第三回の第三者委員会の委員長取りまとめの中にもございます。また、財団法人日本自然保護協会から提出された報告書の中で、今先生御指摘の点につきましても委員会にかけております。委員会では一つの仮説として受けとめられまして、今回四月から行われております本格調査の中で潮汐の調査もいたしますので、それを経て明らかにするように進めてまいりたいと考えております。

武部国務大臣 御指摘の潮汐減少が仮に起きているといたしましても、現時点ではその原因が明らかではありません。また、その潮汐の減少と今般のノリ不作との関係も明らかではないと存じますので、御質問への答弁は差し控えたいと存じます。

 いずれにいたしましても、潮汐の状況については、必要があれば第三者委員会で検討がなされることもあると考えておりまして、その際には委員会の議論を見守りたいと思います。

 また、諫早湾干拓事業については、長崎県を初めとする地元の強い要望に基づき、高潮、洪水等に対する防災機能の強化及び大規模かつ生産性の高い優良農地の造成を目的として着実に実施していると聞いております。私といたしましては、二十六日に現地を見る予定でございまして、どのような問題があるのか、どういう対策方法があるのかということを検討し、環境にも十分配慮しつつ、しっかりと対応してまいりたいと存じます。

中林委員 こういう新しい潮汐の分析も明らかになり、それから地元では五月十三日に漁連の皆さんが総決起大会を開かれて、宝の海有明海を子々孫々にまで守り伝える責務があるということで、水門の開放、干拓事業の中止、有明海の再生、それを求める三つの要求をされております。私どもも全面支持です。

 私は、本当に第三者委員会というのはいい委員会だと思うんです。そういうところを臨時的にも開いて、科学的な分析で早く地元の皆さんの要望にこたえられるよう、大臣にも、二十六日にいらっしゃることですので特に要望して、質問を終わらせていただきます。

堀込委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 最後になりましたけれども、漁業法等の一部を改正する法律案について若干質問させていただきたいというふうに思います。

 一つは、今回漁業法の改正の大きなことは広域漁業調整委員会を設置したことであるというふうに私はとらえたわけですけれども、広域漁業調整委員会の果たす役割について今考えておられることをお願いしたいというふうに思っています。

 そして、これまで海区漁業調整委員会というもので資源保護等を含めて調整を図ってきたと思うのですが、この海区漁業調整委員会のこれまで果たしてきた役割と今日の実情について、まずどうとらえているのか。

 そして、海区漁業調整委員会の総括のもとに今回広域漁業調整委員会を設けたと思うのですけれども、この広域の漁業調整委員会を設けなければならなかった実情というのがどの辺にあるのか、これについてお答え願いたいと思います。

武部国務大臣 現在、我が国周辺水域の水産資源の状況は総じて悪化している、かように認識しております。今後、水産資源を持続的に利用していくためには、資源状況の変動に対応して、同一の資源を利用している関係漁業で水産資源の利用方法を適切に調整し、水産資源の保護に努めていく必要がある、かように存じます。

 これまでの、都道府県の区域を超えない範囲で設置されております海区漁業調整委員会は、まず第一に、漁業権漁業など小規模な漁業に係る漁業調整がその主たる事務でありまして、都道府県の機関として置かれていることや、委員のほとんどが沿岸漁業者により構成されているというようなことから、都道府県の区域を超えて広域的に分布回遊し、大臣管理漁業と知事管理漁業のいずれもが利用する水産資源の調整には十分対応しがたいというものがあったと思うのでございます。

 このために、新たに国の常設機関として、関係する海区漁業調整委員会の代表者や関係漁業の代表者及び学識経験者により構成されました広域漁業調整委員会を設けるという次第でありまして、調整の結果を関係漁業者に対して指示する権限を有するものでございます。都道府県の区域を超えて広域的に分布回遊する水産資源の管理に適切に対応しなければならない、かような考え方で広域漁業調整委員会を設けようとするものでございます。

菅野委員 今大臣の答弁を聞いていればもっともな発想なんですが、私は少し疑問を呈するものでございます。そういう意味では、海区漁業調整委員会のこれまで資源保護について果たしてきた役割というのは、具体的にどうとらえているんですかということですね。この辺は触れられていないんですけれども、海区漁業調整委員会と広域漁業調整委員会の関係が今後どうなっていくんだろうか、この辺を具体的に頭に描いておかないといけないのではないのかなというふうに思うんです。

 それと同時に、今大臣がおっしゃったように、広域の部分は太平洋、日本海・九州西、瀬戸内海と三つに分かれているんですね。広域的に回遊する資源というのがそれでは具体的に魚種でいえば何なのか、そして、広域漁業調整委員会でどういう調整機構が調整を図らなければならないのか、この部分が具体的でないと、今後の広域漁業調整委員会が具体的に機能していかないんじゃないのかなというふうに思うんです。この点をはっきりさせていただきたいと思うんです。

渡辺政府参考人 済みません、ちょっと丁寧に御説明をさせていただきますと、海区漁業調整委員会というのは、まず都道府県の区域を超えません。北海道は十あります。青森は二つありますが、あとの東北は一県一海区ですね。そして、先生御承知のとおり、最初は漁業紛争の調整から入ったわけです。それが、次第に世の中の資源が少なくなってきて、資源管理にだんだん知見が高まってきたという実績がございます。

 そして、そのときの対象魚種というのは、漁業権漁業の範囲であるとか小型のものについての資源の問題であるとか、そういうものを積み重ねて、今資源管理という手法について、地先の海面であるならば一定程度の知見と手法を持っているということなんです。

 資源管理に委員会が変わってきたということを踏まえまして、広域に回遊する、都道府県の境目を超えるようなものについては広域の調整委員会で資源管理を行っていこうということなんです。その資源管理の過程で強制力を持たせなきゃいけませんので、国の機関ではありますが、それぞれの漁業者に対して指示も出せるというふうにしたいと思っております。

 それから、先生がおっしゃられたように、三つで相当広過ぎるじゃないかという点につきましては、運用の面で、それぞれ部会をつくりまして運用するような方法を考えております。ハタハタであれば、例えば北のハタハタと西のハタハタということで、北陸より北側で部会を設ける、あるいは西側でもう一つ部会を設ける。トラフグも、太平洋の関東以西のトラフグと九州のトラフグというふうに、部会を設けて運用をしたいなと思っております。

菅野委員 今の長官の説明でわかりました。

 ただ、太平洋をとってみれば、北は北海道から南は宮崎までですか、そういう十八道県にまたがって調整委員会をつくられるわけですね。そこが具体的に調整機能、資料を見ると十八人が調整委員会の委員、あと学識経験者、それから関係漁業代表者というふうになっていますけれども、これをまとめていくということは私は至難のわざだと思うんです。そういう意味で、この十八県にまたがる回遊魚という魚種は何があるんだろうかと考えたときに、広域的に調整を果たさなければならない魚種というものはもう皆無じゃないのか、私はそういうふうに疑問に思ったんです。

 それで、部会を設置するということじゃなくて、私は、調整を果たさなければいけないということであれば、もうちょっと細分化した形での広域的な調整委員会を機能させていくことこそ今求められているんじゃないですか。十八県に及ぶ一つの調整委員会というのは私は機能を果たさないと思うんですけれども、これについて考え方を示していただきたいと思います。

渡辺政府参考人 今御説明、また御指摘のありましたように、十八全部を回遊する魚の資源というのはないわけでありますので、例えば東北太平洋のキチジであれば、青森から茨城までということになります。そこを対象とする関係漁業者の集まった部会をこの広域漁業調整委員会の中に設けまして、沖合、沿岸同数と学識経験者というふうな形で運用していく、現実的かつ弾力的な運用で対応したい。

 いずれにしても、ポイントは県の境目を超える、そして国の機関として指示が出せるというところにあるわけでございます。そういうことでございます。

菅野委員 わかりました。というのは、私は率直に言います。この三つに分けて調整委員会を機能させるということは非常に無理があるというふうに思います。そういう意味では、魚種ごとか、あるいはもうちょっと細分化した漁業調整委員会に改編していくことが私は必要になってくるというふうに思いますから、ぜひこれから議論していただきたいなというふうに思います。

 それで、私は、広域漁業調整委員会の議論がちょっと見えなかったものですから、私なりに考えたんですが、カツオ漁を一つ取り上げてみたいと思うんです。

 漁業の種類によって今対立が起こっているんですね。カツオ一本釣り漁業とまき網漁業が、まき網船が物すごく大きくなってきましたから、一網打尽という状況が漁法の中に入ってきた。そういう中では、資源保護という部分で、カツオ一本釣りとまき網の対立という部分をどう調整していくのか。これは今後大きな課題になってくるんではないのかなというふうに思うんですけれども、これは大臣許可のものですから、国としてこれをどう調整していったらいいのか。

 実際に資料を見ますと、許可しているのが、近海カツオ・マグロで二百六十八隻、それから、大型、中型のまき網漁業では二百四十八隻ということで、もう完全に同等、同じ状況の漁業になっているわけなんです。対立構図がどんどん高まっていったら私は大きな問題になると思うんですが、ここの調整をどう図っていこうとなされるのか、お聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 まさに、今先生御指摘ありましたように、例えば指定漁業とか大臣許可ということになりますと、到底、海区漁業調整委員会の手に負えるものではございません。

 これまでも、漁業紛争調整ということで、今おっしゃられたまき網と一本釣りカツオ、それからサバでもまき網とたもすくいというふうなことで紛争がございました。それぞれ民間同士の協議でやっていたわけですけれども、今回はこの漁業調整委員会に一定の行政処分権としての指示を行う権限を持たせまして、実際に協議、調整を行ったものを担保するというふうな方向で対応したいと思っております。

菅野委員 そういう非常に大きな権限をもう一方では与えようとしているわけですね。

 それで、この大きな権限を持つ広域漁業調整委員会に対して、どういうふうな人選をしていくのかなというふうに私なりに考えてみました。そうしたときに、海区代表が十八人ということは、太平洋の部分をとります、各県代表者、各県の海区漁業調整委員会の委員長が入るのかどうか。

 私はこの人数を見たときに、各県代表者、関係漁業代表者、学識経験者、合わせて十名、二十八名という構成が考えられているというふうに資料にあるんですけれども、こういう状況の中で今言ったような調整が行われるのでしょうか、行うことができるんでしょうかという疑問を持つわけなんです。

 民間の漁業団体でさえもなかなか調整がつかないことを、それぞれがそれぞれ競い合って漁獲量を上げて、多くとろうとする中でなかなか調整が図られないのを、こういう組織でもってやっていけるんでしょうかという疑問を持つのですが、考え方をお聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 確かに親委員会といいますか、太平洋広域漁業調整委員会のケースでいえば、海区代表が十八人、こういうことになります。そこに大臣指名ということで学識経験者三名と関係漁業者代表七名、十名を入れて構成をされるわけです。

 実質的な審査はやはり、先ほどキチジの例で申し上げましたけれども、青森、岩手、宮城、それから福島、茨城、この五県の方で構成し、沖合の漁業者と沿岸の漁業者、こういう形でやりますので、これまでのまき網と一本釣り、あるいはまき網とたもすくい、これの調整例を見ましても、とことん話し合いをすれば調整は進むわけでして、それをこの委員会からの指示で担保してやるということに持っていきませんと、角突き合わせたまま終わってしまうということにはできないと思います。

菅野委員 いずれにしても、今回出発するわけですから、今言ったいろいろな問題点等も含めて、しっかりとした体制を資源保護という立場から考えていただきたいというふうに思っています。

 もう一つ、最後になりますけれども、資源保護の観点から、漁業者が一番泣いているのは密漁の問題なんですね。特に三陸地域においてはアワビやウニの密漁というものが大々的に行われている実態です。それで、取り締まろうにもなかなか取り締まれない実情にあるんですね。

 そして、この密漁の実情をどうとらえていて、今後どのような対策を練っていこうとなされているのか、考え方をお聞きしておきたいというふうに思います。

渡辺政府参考人 平成十一年の沿岸海域における漁業関係法令違反の数は千百三十四件ということで、確かに前年に比べて十七件の減ですが、レベルとしては非常に高いと思います。ここはやはり水産庁や都道府県だけではなくて、海上保安庁やあるいは陸上部における警察の協力も得て、しかも県の境目を超えた連係プレーが私は必要だと思います、漁連ももちろん入るわけですが。

 三陸のアワビの例でいいますと、これは私自身が計画書を書いたんですが、平成四年にアワビ密漁撲滅作戦計画というのを立てまして、各都道府県に陸上の調整規則の改正をしてもらいました。所持、販売も禁止。それから、ここの海域から隣に逃げたときに、リレーをして、よその県の取り締まり船と海上保安庁、陸からは警察が追いかけるというふうに、とにかく次から次へつぶしていかなきゃいけないと思うんです。その連係プレーを忘れますと逃げられてしまいますので、そうした点で徹底した対応と、必要に応じ、やはり機器、レーダーとか赤外線とか、そういうものも支援をしていきたいというふうに思っております。しつこくしつこくやることが大事だろうと思います。

菅野委員 この問題を議論するときに、私の地元でも多くの議論がなされているんですね。密漁船の性能がどんどん向上していって、そして海上保安庁の取り締まり船の性能を上回るような船を使って密漁していく。逃げ足が速いということで捕まえ切れないという状況なんです。

 それで、どうしたらということでいろいろな議論になっていますけれども、ぜひ考えていただきたいのは、そういう密漁船が、現場をとらえなければ確かに取り締まりはできないというふうに思うんですが、各港にそういう船が係留されているんですね。係留されているという実情があって、あれは密漁船だとわかっても取り締まることはできないんです。

 やはり私は、密漁対策、密漁防止をやるときには、高性能の船舶を使えないような状況をつくり出していくしかないんじゃないのか、こういう議論が展開されております。ぜひ、そこら辺も考えて真剣になって、漁業資源を守るという立場から密漁対策というものを行っていただきたいな、この考え方に対する見解をお聞きしておきたいと思います。

渡辺政府参考人 二点申し上げます。

 もちろん、これも十分な対策とは言えないわけでありますが、現在、参議院に漁船法の一部を改正する法律案を出しておりまして、違法改造の場合の最大罰金額を三万円から百万円に引き上げるという措置を盛り込んでおります。

 それからもう一つは、当然、改造するときには改造するメーカーといいますか販売店、協力者がいるわけでありますので、そうした者は、むしろ社会的な制裁にゆだねるということで、名前を発表していくというぐらいのことをしてもいいのではないか。つまり、そういう密漁に加担をするところから絶たないと、罰金百万円が本当に効果があるかということになりますと、根絶やしにはならないと考えております。

菅野委員 終わります。

堀込委員長 次回は、明二十四日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会




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