衆議院

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第18号 平成13年6月12日(火曜日)

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平成十三年六月十二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 堀込 征雄君

   理事 木村 太郎君 理事 岸本 光造君

   理事 滝   実君 理事 二田 孝治君

   理事 小平 忠正君 理事 鉢呂 吉雄君

   理事 白保 台一君 理事 一川 保夫君

      相沢 英之君    岩倉 博文君

      岩崎 忠夫君    岩永 峯一君

      金田 英行君    上川 陽子君

      北村 誠吾君    後藤田正純君

      七条  明君    園田 博之君

      高木  毅君    西川 京子君

      浜田 靖一君    菱田 嘉明君

     吉田六左エ門君    古賀 一成君

      後藤 茂之君    佐藤謙一郎君

      城島 正光君    鈴木 康友君

      津川 祥吾君    筒井 信隆君

      永田 寿康君    楢崎 欣弥君

      江田 康幸君    高橋 嘉信君

      赤嶺 政賢君    松本 善明君

      北川れん子君    山口わか子君

      金子 恭之君

    …………………………………

   農林水産副大臣      遠藤 武彦君

   農林水産大臣政務官    岩永 峯一君

   参考人

   (全国森林組合連合会代表

   理事会長)        飯塚 昌男君

   参考人

   (林業経営者)      合原眞知子君

   参考人

   (日本大学生物資源科学部

   森林資源科学科教授)   木平 勇吉君

   参考人

   (熊本県小国町長)    宮崎 暢俊君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十二日

 辞任         補欠選任

  後藤 茂之君     鈴木 康友君

  中林よし子君     赤嶺 政賢君

  菅野 哲雄君     北川れん子君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 康友君     後藤 茂之君

  赤嶺 政賢君     中林よし子君

  北川れん子君     菅野 哲雄君

    ―――――――――――――

六月十二日

 土地改良法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 林業基本法の一部を改正する法律案(内閣提出第七八号)

 林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第八〇号)




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     ――――◇―――――

堀込委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、林業基本法の一部を改正する法律案、林業経営基盤の強化等の促進のための資金の融通に関する暫定措置法の一部を改正する法律案及び森林法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、全国森林組合連合会代表理事会長飯塚昌男君、林業経営者合原眞知子君、日本大学生物資源科学部森林資源科学科教授木平勇吉君及び熊本県小国町長宮崎暢俊君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、飯塚参考人、合原参考人、木平参考人、宮崎参考人の順に、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、飯塚参考人にお願いいたします。

飯塚参考人 このような機会を与えていただきました委員長並びに委員の皆さん方に心から感謝を申し上げながら、問題点につきまして、考え方の一端を申し述べさせていただきたいと思います。

 先生方御案内のとおり、全地球的な規模で、環境を守れ、自然を救え、そして森林の保全が大切だということが叫ばれておるのは御案内のとおりでございます。しかしながら、それと裏腹に、森林・林業、山村は、味わったことのない苦痛と悲惨の中に置かれてもおるわけでございます。

 具体的な問題といたしましては、不在村所有森林がふえておる、あるいはまた伐採跡地の造林が放棄されておる、また植栽後の手入れの不足林分がふえておる、そして国民的な期待とは裏腹に、山村が沈んでいるような現況下に置かれておるところでございます。

 そこで、今上程されております森林・林業基本法につきまして、私どもの知るところでは、一として、森林の有する多面的機能の持続的発揮に向けての森林の適正な整備、二として、森林の多面的機能の高度発揮を支える林業の健全な発展、三として、林業の健全な発展に資するための林産物の利用の促進を三つの大きな柱としているようでございます。

 森林整備水準及び林産物の供給、利用目標の設定を掲げておる。いずれも現下の林業不振の打破、山村振興に不可欠な大事な事項であるだけに、会期も迫っておるという中で、一日も早く、山村、林業を通じて環境を守るという意味からこの法案が可決されるように御期待を申し上げておるところでございます。

 せっかくの機会でございますので、森林組合系統の取り組みと林野三法に関する若干の要望を述べさせていただきたいと思います。

 私ども森林組合系統では、二十一世紀における新たな環境に対応した森林組合運動を、一昨年の十一月に森林組合全国大会において、森林組合活動二十一世紀ビジョンとして決議をさせていただきました。この運動は、一として、森林管理体制の確立とふるさと森林再生運動の展開、二として、地域材需要創出運動による国産材の復権、三として、広域合併の推進と未来志向型組織への脱皮、この三つをうたい上げておるところでございます。

 これらは、二十一世紀の国民的要請に対応した森林機能の維持増進と、地域の風土に適合した環境保全型林業の構築を目指し、新たな基本法の掲げる森林の多様な機能の持続的発揮や持続可能な森林経営の確立に合致するものと考えております。

 さきの三本柱にあるように、林業・木材産業を通じて森林資源の循環的利用を促進していくことにより、将来にわたり森林の多様な機能を持続的に発揮させるための森林の管理、経営を重視していくためには、従来からも取り組んでおる林業構造改善事業の拡充などにより代替材、外材との競争に負けない低コスト、安定供給体制を構築することが不可欠であることは申すまでもございません。長期にわたる木材価格の低迷や国産材需要の減退等に対応するため、次の諸課題を検討していただきたいというふうに考えております。

 一つは、国産材の自給率向上と需要の開発でございます。二割を切った国産材の自給率の向上と需要開発を促進するため、中長期的国産材の自給率の目標を定め、それに対する制度、政策、財政的支援を集中し、乾燥材の供給体制を確立する。

 二として、公共建築、公共事業、内装材利用を初め、バイオマスエネルギー等の新用途の開発を促進すること、工務店、設計者及び最終消費者へのPR、ニーズの把握を促進することでございます。

 なお、地域材の活用と森林資源の循環利用を促進する観点から、外材を含めた木材産業というくくりではなく、山元と大工、工務店を含めた国産材関係者の提携と異業種交流の必要性を強調してまいりたいと思います。

 また、本年十一月にWTOの閣僚会議が予定されているようでありますけれども、シアトルで行われました前回同様に、持続可能な森林経営を阻害しない貿易ルールの確立等を求めてまいりたいと考えております。また、あわせて、違法伐採にかかわる木材の輸入についてでありますけれども、これらについては確固たる信念で対応していただきたい、そのように考えております。

 地域森林管理の整備と担い手の問題でありますけれども、一律にこれを進めるのではなくて、ゾーニングの導入により、期待される森林機能を発揮し得る施業方針を地域条件に応じて確立し、実行することが重要であると考えております。地域において関係者の納得を得るには、だれがどのような方法でそれを進めるかが課題であり、それを現場で担う人材育成と担い手対策、情報の整備を全国ネットで進めることなどが急務と考えられます。

 なお、森林経営や森林整備に関して、競争原理の導入という観点からいろいろな議論がなされておりますけれども、素材生産とか加工、流通とは異なる観点でございますので、長期的な視野に立った地域森林の一体的な整備を考えることが期待されておるところでございます。

 また、森林整備に関する費用負担の問題でありますけれども、伐採、造林、保育、伐採の循環型がストップするような現況下にあり、森林整備や山村の活性化が進まない。そのために、以下の四点をぜひ検討していただきたいと思っております。

 一つは、私ども勝手に森林環境税などと言っておりますけれども、こういった目的税を検討して創設していただけないだろうか。二として、農業における直接支払いの制度が実施されましたけれども、そういった林業型デカップリングも御検討をちょうだいしたい。三として、市町村が地域条件に即して自主性を生かし地域森林管理を行うための支援措置の充実でございます。そのほか、水道料金あるいはまた各種基金、こういったものに対する上乗せで水の源を充実していこうというふうな考え方等もあわせて御検討をいただきたいというふうに考えております。

 そのような問題の中で、森林組合が地域における一層の理解と力強い御支援をちょうだいしながら、今まで以上に汗を流し、また今まで以上に信頼をされてプロの集団として頑張っていくために、この法案を軸にいたしまして森林組合法の改正等を含めて御検討をちょうだいし、立派な山村の整備、森林の整備、そして環境の充実に力いっぱい歩んでいきたいと思っておりますので、どうぞ十二分に御検討をし、この法案が早期成立するようにお願いをしながら、考え方の一端を申し述べさせていただきました。

 ありがとうございました。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、合原参考人にお願いいたします。

合原参考人 大分県から参りました、林業を経営しております合原と申します。初めての席なのでお聞き苦しい点があると思いますが、御容赦ください。

 私は、実際現場で経営をやっているだけの人間でございますので、余り大それたことは提案できないかもしれませんが、諸先生方に林業とか山とか今の山村の現状などがよく御認識いただければ幸いだと思っております。

 私は、昭和五十二年から林業を経営しております。昭和五十二年代は、既に高度成長がかなり加速してまいった日本の経済の中で、私どもはそれなりに経営としてというか林業で、木を切って生活はできておりましたが、極めて危機意識を持っておりました。それは、国産材流通市場に、日本の経済発展のために外材の輸入が少しずつ目に見えて多くなった現状の中で、私どもの、国産材を育林している生活とか経営は成り立つのであろうかという危機感をもう既に二十年以上前から持っておりました。

 その中で、私が経験したことは、昭和五十九年に父が亡くなりまして、相続税というものがかかりました。これは、ある程度の規模で林業経営をやっている経営体にとっては極めて痛手でございます。それはなぜかというと、ストックが一挙に評価されて財産が評価されるわけです。持っているものは出すべきだという戦後の民法の相続の理念からするとそれは当然ではございますが、森林というものは五十年、百年かかって生育していくものであり、順次整備して循環をしていかなければ経営も管理も成り立つ現場ではないのです。極めて金融資本主義的な、すべてペーパーではかる、数字ではかる経済原理のもとに一挙に経営体に税金をかけてくるという理不尽な仕打ちは、山を守れるものではございません。

 その五十九年に、森林だけに対して一億円以上の税金がかかってまいりました。その一億円以上の税金をどうやってキャッシュで払うかというのは、これは極めて山にとって難しい問題でございました。

 私は、その前十年間ぐらい、間伐で一生懸命林業を経営しておりました。なぜ間伐だけかといいますと、それは、戦後、拡大造林という施策が日本の国にはございました。その拡大造林のプロセスの中で、我が家は、もともとは戦前から山を所有しておりましたが、大きな木を切って林業の経営規模を拡大するという、一種の山林、林業のバブルの時期であったとは思います。拡大造林をどんどんしていく、再造林をどんどんしていく、とにかく五十年、六十年で木材を供給しなければならない、それが国民的要請の時代にあって、私どもは必死でそれに励んでまいりました。

 その結果として、やはり昭和五十年代の我が家の山林は、これは極めて専門的な言葉でございますが、齢級構成というか、百年から例えば植えたばかりの一年生の赤ちゃんの木、そういう齢級構成が適切になされている山であれば持続的経営が極めて容易にできるということが一つはございますが、拡大造林をした結果として林齢が不適切。これは日本全体がそうでございましたが。五十年、四十年、まだこれから育てなければならない木がかなり多くなってきた中で、そこにキャッシュとしてすぐ対価を出せという相続税制度というのは、極めて我が家にとっては大変なことでした。

 私が考えましたのは、やはり森は守らなければならないと。森を守るというのはどういうことかというと、林産物の供給というか木材の供給はある程度は日本にとって大事なことだと思いますので、それをやはり我が家でも長く続けるために、維持するためにはどうすればいいかということで、結果的には、私は、相続税を山では払いませんでした。我が家は営々と江戸時代末期から商業をやっておりまして、若干の資本の蓄積がございましたので、例えば株だとか土地だとか、他のもので山の相続税を補ったのが現状でございます。

 しかし、その中でまた、平成三年に台風の被害に遭いました。これは、百年以上の歴史を持っている日田林業の中で最大の被害でございました。

 ちまたではたくさん木を植え過ぎた結果だという話もございますが、瞬間風速六十メーターの風が吹きますと、すべてのものはやはりなぎ倒されていきます。それは電柱でもしかりですし、きちっとした構造を持っていない構築物でもそうでございました。たまたま日田地域は八〇%以上の造林をやっておりましたので、人工造林の地域がより多く壊れていったという現実がございます。それについては、拡大造林の是非というのはやはりあると私は思います。しかし、私どもは、過去にやったことに対してやはり責任を持たなければならない。というよりも、現実にある植えた山に対してどうやっていくかということを日夜問われております。

 台風被害後、今の山の状況といたしましては、例えば獣害、シカの害だとかノウサギの害だとか、そういう害も非常に多くなっております。これはなぜかといいますと、やはり生き物たちは非常に賢いものですから、一度人間が植えた、例えば造林地の新しく植えた杉とかヒノキとかは、広葉樹でも同じなんですが、極めてやわらかいものでございます。それは自然に再生した新芽よりやわらかくて、野生の動物たちも人間が少しずつ文明が発展したのと一緒で、少なくとも、楽なものを手に入れるとその味が忘れられない、そういう習性というのが生き物にございますので、造林地の苗木とか新芽を食べた動物たちはやはりもう一回食べたくなるので、どんどんそういう人工造林地に被害を及ぼしていく。

 そしてまた、山村地域に住んでいる人たちが少なくなっていくのと、自然と共生する生き方というものが山村でも退化していっておりますので、猟をしたりして動物たちをとってそれを利用するということも以前より少なくなる。そのために、どんどん山の中では生き物は繁殖していっております。それはそれで、ある程度循環していけばよいのです。私は九州なので北海道のことを言うのはおかしいんですが、北海道のエゾシカの問題など、今いろいろ日本国じゅうに起こっていると私は思います。

 今回の基本法の改正は、戦後の林業の大きな転換点であると私どもは思っております。むしろ、現状にかんがみると、十年以上遅かったのかもしれません。しかし、昨年十二月に林政大綱が発表されてから基本法の成立までの時間は、私ども林家側にとっては早過ぎた気がします。これからの方向性を私どもはきちんとまだ認識できず、問題点を議論して提案する余裕すらありませんでした。

 もう国産材を日本は必要としないのではないのか。ゾーニングされると、自分の所有の森林が自分たちの好きなように管理運営できないのではないか。林業者のプライドを失わせるような方向に行くのではないか。もう木を切っても植えるのはばかばかしいような気がする。今まで頑張ってきたのに、これ以上もう後継者を必要としないのかもしれない。こういうふうに悲観的な声ばかり、これは憶測に基づいた声なのですが、聞こえてきます。

 林政大綱をよく読んでも漠然としている面やあいまいな面は確かにありますが、すべてさっきのちまたで憶測されているようなことではないと思っております。むしろ、現在の状況の中での可能性を模索していこうという姿勢は明らかに見えていると思います。しかし、私どもは、もう少しきちんとした確実な方向性を希望します。

 第一は、前述した、責任ある森林の継承を保障する相続制度のあり方です。

 第二は、森林の管理運営を行う経営主体を森林組合以外に民間に広げるとしたら、具体的に森林ベンチャーとしてどう育成していくのか。今現在認定事業体という制度があるのですが、極めて不十分なので、どのようなバックアップシステムをしていくのか明らかにしていく。または、民間のニーズに耳を傾けることも必要だと思います。どのような事業体が可能なのかというニーズです。

 第三は、木材資源として国産材を今のまま自由競争の波の中に、市場原理だけで放置しているのが適切かどうかということです。すなわち、木材自給率を長期的に四〇%から五〇%確保すべきかどうか、はっきりしていくべきです。地球的規模では大きな量の森林が消失していっています。

 日本は、大変豊かな自然環境の中で、唯一自前の資源として優良な杉、ヒノキ材の森林をはぐくんでいるのです。アフリカや中国や東南アジア、中近東でたくさんの日本人が緑化活動に従事し、政府もたくさんの資金を提供していることは貴重なことです。私も個人的にはNGOやNPOに資金カンパで協力しております。しかし、八〇%以上の輸入材によって日本の森林や山村が崩壊していきつつある現実との整合性を、私のみならず中学生でもとりにくいおかしな現象だと思っております。

 国民は、できたら国産材で家を建てたいし、日本の森林を健全に守りたいと思っている人が多数です。この自給率についての方向性を明確にしない限り、基本法の改正は多くの林家に支持されないと思います。というよりも、林家はますます死に体になっていくでしょう。山村もしかりです。環境を守ることはコストのかかることです。林業や山村の振興、活性化は、長期的には国民の環境コストを軽減するよい結果になると私はいまだに信じております。

 第四は、山村や林業の振興策に関して、もっと民間サイドに予算的にもバックアップして任せるシステムが必要です。昨今は、行政がお祭りを主導し過ぎてかえって地域が硬直化していくということもあると思います。

 第五は、森林は多様な自然であって、常に森林のあり方を現場で観察し、ともに生きながら、森林とかかわることの必要性をすべての施策の基本に置いていただきたい、林政は必要以上に現場主義でなければならないという認識のもとに、レンジャー的な存在の重要性を評価する行政システムの再構築も必要だと思います。

 私は、現在でも林業という仕事に従事できたことを幸せに思っております。これからの時代は若い人たちももっと入ってくる可能性があると思います。だからこそ、林業に従事する若い人々が夢を持てる施策を行ってほしいと切に願うものでございます。

 七十五兆円の公益的機能を持つ日本の森林に対する財政的措置は、極めて貧困であります。このたびの法改正を機に、水と緑豊かな日本を守るためにも、多大なかつ本当に森林にとって有効な財政的措置をもお願いしたいと思っております。

 済みません、時間が超過いたしました。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、木平参考人にお願いいたします。

木平参考人 私は、日本大学で学生に森林の勉強を教えることを職業としております。現在、森林学科の学生の約五〇%は女子学生です。彼女たち、彼らは、今森林に対して目を輝かせて希望を持っております。それらの夢を実現させるのが私の役目だ、こう考えております。

 私のきょう話す内容について、お手元に資料がございまして、左上をホッチキスでとめた二枚つづりのもので、「林業基本法は、地域とそこに住む人々をいかに重視するか 木平」と書いた資料でございます。それを御参照いただきながらお聞きいただきたいと思います。

 私は、学生に、森林とは樹木がこんもりと茂った広い土地である、こう説明いたします。樹木が大地に根を広げ成長する、そういった森林の姿あるいは仕組みは大昔から変わりません。しかし、私たちの暮らしあるいは考え方は、この林業基本法がつくられた昭和三十九年以来大きく今日まで変わりました。森林の役割への私たちの期待が変わったということです。これにこたえることができるように法律を変えていくことが必要であると考えます。

 申しましたように、森林は大地に根をおろした動かない土地であります。したがいまして、地域と切り離せない対象であります。私は地域とそこに住む人々をいかに重視するか、こういった立場で今回の林業基本法の改正案を考え、私の意見を述べたい、こう思います。最初に改正案の条文に関して私の注目した点をお話しし、最後に検討すべき課題をまとめてみたい、こう考えております。

 私の意見は資料に要約してございますが、まず、この改正案の第一章では、基本理念とその責務ということが記されております。

 まず、森林の多面的な機能の発揮ということが強調されております。これは全く重要な課題であります。その意味は、地域ごとに、そこに住む人々の必要性と価値観により、それぞれの森林にはそれぞれの異なる役割が求められる、すなわち地域性の尊重である、私はこう考えます。決して、一つの森林があらゆる機能を兼ね備えたスーパーマンのような森林をつくることとは考えておりません。例えば、ある森林に、水源林あるいはレクリエーション公園として、あるいは木材生産あるいは自然の保護林というようなことを一度に実現することはできません。しかし、それぞれの役割を持った多くの森林の集合体として、それを森林における多面的な機能であると表現していると思います。

 次に、第三条では、林業の健全な発展を強調しております。

 私は、林業の発展には生産性の向上が欠かせない、こう思います。多面的な機能を実現するために、余りに複雑な構造の森林、あるいは余りに煩雑な作業を現場に押しつけることはできません。山の労働力は少なく、また日本の山の急斜面で作業を行う場合に、余りに複雑、煩雑な仕事を希望することは現実的ではないと考えます。やはり林業というのは生産性の向上ということが基本にあるのではないか、こう思います。

 次に、第四条、第六条では、国と地方公共団体の責務について述べてあります。

 国は、地域ごとの特色と必要性を実現するための方策を進める責任があると考えます。画一的に全国の基準や方針を示すことではないと思います。また地方公共団体は、地域の特色とそこに住む人々の森林への期待を実現する方策を提案することであり、決して、全国の上位計画を現場に割りつける役割ではありません。

 第五条では、国有林の役割について述べてありますが、これは大変重要なことです。

 国有林は、地域の振興あるいは住民生活に具体的に貢献する運営が問われております。地域に密着した、また住民の支持が得られるような、地域ごとに特色のある国有林づくりが望まれます。

 第二章では、森林・林業基本計画について、その基本計画の方針、目標、策定の手法、評価について意見を述べます。

 私は、地域ごとの個性、地域ごとの多様性を支援すること、統一性よりむしろ多様性を実現することを基本方針としたいと思います。全国目標、上位計画を設定するだけではなく、地域ごとの個別森林の目的を実現することが大切です。策定手法としては、審議会の審議あるいは計画案の事前縦覧といった方法に加え、これからは、地域社会とそこに住む人々の合意を形成することが必要であります。また、評価は、それらの受益者、利害関係者によることが必要であり、行政内の自己評価では不十分であると思います。

 第三章では、多面的な機能を発揮させる具体的な施策として、地域の特性に応じた造林、保育、伐採、林道など、地域林業を確立させることが必要だと思います。また、森林資源の調査、森林環境の把握、将来の予測としてのモニタリングあるいはアセスメントを制度化することも欠くことができません。

 また、技術の開発としまして、地域森林技術の確立が必要であると思います。また、流域環境システム、すなわち、森林、河川、農地、都市、海を含めた流域環境と流域社会の問題を解くことが課されております。

 まとめといたしまして、林業基本法の新しい内容として検討すべき課題を四点挙げます。

 第一点は、ボトムアップのシステムです。地域森林と地域社会の個性と必要性とを計画と施策へ反映させる制度と手続の強化です。第二点は、合意形成です。住民の森林管理への発言と参加を通じて地域社会の合意を形成する制度と手続の強化が課題であります。第三は、教育と情報です。森林に対する人々、とりわけ都市の人々の関心の喚起、理解の促進、保全活動への参加の機会を強化すること、自然についての情報、解説、教育の充実が課題だと考えております。最後に、流域一貫のシステムです。さきに申しました森林、河川、農地、都市、海などを含めた流域環境の総合的な保全方策の強化です。

 森林あるいは林業の問題は森林の中で生じたものではありません。森林の中だけでまた解決される問題ではありません。私の考え方は、所在する地域の自然環境、地域の社会の状況に応じて、森林には個性がある、地域性があるということに尽きます。その地域性と人々の考え方に応じることが今林業基本法に求められていると考えます。

 ありがとうございました。

堀込委員長 ありがとうございました。

 次に、宮崎参考人にお願いいたします。

宮崎参考人 おはようございます。熊本県の小国町の町長の宮崎でございます。今回の林業基本法の一部を改正する法律案並びに関連法案の提案に当たりまして、林業の町の町長といたしまして、考え方を述べさせていただきたいと思います。

 まず、熊本県の小国町の資料を皆さん方に差し上げておりますので、その資料をもとに簡単に、林業の置かれております、小国町の状況を見ていただきたいと思います。

 まず一ページに、土地の所有形態ということが一番上に書いてありまして、小国町総面積一万三千七百ヘクタール、そのうち民有林が一万三百二十六ヘクタール、ほとんど、小国町の土地八〇%弱が山林でありまして、人工林率が何と七五%、二百年以上前から植林が行われた地域で、ある意味での林業先進地ということが言えるのではないかと思います。

 それから、二ページに統計の資料を提出しておりますけれども、ちょっと字が小さくて見にくいかもわかりません。一番上、昭和五十四年が左側にありまして、そのときの蓄積量が百五十万九千立方、成長量が六万四千立方、素材生産量が四万二千立方で、昭和五十四年、一番ピーク時の素材平均単価が三万九千円。今度は一番右側を見ていただきますと、平成十年、蓄積量が三百二十九万立方、およそ倍増いたしておりまして、それに伴いまして成長量も十万三千立方、それから年間の素材生産量が何と二万六千七百十六立方というふうに半減いたしております。これは、価格の低迷とやはり需要の大幅な減退によるものです。それに伴いまして素材平均単価が一万五千八百円、半分以下。さらに、このことに加えまして、伐採、搬出等の労働賃金が大幅に上昇しておりますので、ほぼ、平均単価が一万円を切りますと、六十年生の木を全伐した場合でも、プラス・マイナス・ゼロか、あるいは場合によっては赤字、そういうような状況が生まれております。

 それから、少し飛びますけれども、八ページに林業労働力の推移という表が掲げてあります。昭和六十年、一般林業従事者、人員百二十二人、平均年齢五十四歳。このことを受けまして、昭和六十一年に悠木産業株式会社という第三セクターをつくりまして、悠木産業森林整備課というのを設けました。昭和六十一年ですと、人員八名の平均年齢二十四歳、新規就労者が八名に二十四歳という状況で、平成十二年には、悠木産業の社員で林業、森林整備に携わる人員が八名、平均年齢が三十八歳、一般林業従事者は何と四十五名で平均年齢六十一歳、そういう林業労働力の推移になっております。

 新規就労者が林業に携わる場合には、現在、林業機械等を使っての作業になりますので、その研修には、熊本県にはグリーンワーカー制度がありますので、それを活用いたしております。悠木産業の社員教育の中で得られましたことは、とにかく三年間は、一人前の給与を支給するには赤字である、年間三百万ぐらいは、三年間を通して町の助成が必要であるという要望を受けております。

 それでは、簡単なレジュメを二枚差し上げておりますが、これは、林業基本法の改正の中の理念あるいは重要な項目の中で関係のある部分だけを拾って、小国町と関連しながら説明させていただきたいと思います。

 「森林の多面的機能の発揮」という一枚のペーパーですけれども、「国・地方公共団体の責務」ということで、多面的機能を発揮する森林、これは経済性は別問題として、その重要性はわかりますけれども、例えば、国有林野事業には一般会計からの繰り入れが認められております。民有林事業には何もそういうことはないわけで、国有林の管理が独立してできないということであれば、当然民有林におきましても、差はありましても、公益的機能があるから民有林を十分に維持管理していきなさいということを求めるのには、かなり無理があるというふうに思います。

 そのための、農業には中山間地の直接支払い制度ができましたけれども、多面的機能の面からの林業の保全、振興という面からは、やはり農業に適用されました直接支払い制度と同様の制度が求められるのではないかというふうに思います。

 現実的に、共有林等を中心に、これは集落有林等が多いのですけれども、町で買い上げてほしいという要望等が出てきております。これは、森林の公益的機能を維持していく上にも必要ですので、町におきましても、五十ヘクタール以上の山林の買収等を行ってきております。

 そういう状況の中で、下流地域、特に恩恵を多く受けている地域との連携で、水源地域の山林の維持ということで、小国町を中心に、筑後川上流地域森林公有化協議会、大分県二町と熊本県二町、四町村で協議会をつくりまして、特に、筑後川ですので、福岡市等を中心にその公有化を求めていっております。これは国においても検討すべき課題ではないかと思います。

 それから「山村地域における定住の促進」。多くの方々が自然環境の良好な地域を求めて小国等を訪れております。そういう方たちの受け皿としての農山村地域の整備ということで、小国ツーリズム協会がその窓口となり、その実践の九州ツーリズム大学、あるいはまた、子供たちのためのおぐに自然学校等の取り組みをしてきております。

 それから次のペーパーの、「林産物の適切な供給及び利用の確保」という面におきまして、「林業の健全な発展に関する施策」。昭和四十年代前半までは拡大造林が行われたわけですけれども、その拡大造林の折に、民有林関係におきまして、林業家は造林資金あるいは森林担保資金等を借りまして、拡大造林のための土地の購入あるいは育林経費に充ててきております。

 それが償還の時期に当たっているのじゃないかと思いますけれども、そういう拡大造林の時期に植林しました針葉樹は、伐採、搬出しましても収益を得ることはほとんどできないというふうに思います。非常に林家は、特に拡大造林政策に沿った形での林業展開を行った林家は、経営的に成り立たない状況になっているのが現状ではないかと思います。

 これは、国の施策でもありましたし、そのような状況の中での資金的な手当て等が求められるのじゃないかというふうに思っております。今回、そういう面の配慮も法律的には改正案の中になされているというふうに思っております。

 それから、「生産方式の合理化、経営管理の合理化」と「機械の導入等、林業経営基盤の強化」とありますけれども、今、大型の林業機械はほとんど外国で開発された林業機械です。これは、日本のような急峻な地形の山林においては、大型の林業機械を効率的に活用することは非常に難しかったから林業機械が開発されなかったというふうに思っております。

 そういう意味で、いわゆる機械の導入によります、あるいは林道等の基盤整備によりますコストの削減には、日本の林業におきましては大きな限界がある。そういう点を申し上げたいと思います。

 それから、「林産物の供給及び利用の確保に関する施策」としましては、小国町は、資料に差し上げておりますけれども、パンフレットの中では、町独自で、公共建築物は小国の資源であります杉を活用した建築物にしなければならないという取り組みを昭和六十年から始めまして、現在、多くの公共建築物あるいは民間の建築物が小国杉を活用した形でできてきております。これは、自助努力をとにかく林業地みずからが行わなければいけないということと、それから、それによります関連産業の振興を図るということから行ってきました。さらに、それを進めまして、現在、小国型の健康住宅の提案をいたしております。

 また、最近の法律改正を見ておりますと、品確法あるいは建築基準法の改正によりまして、いわゆる国内材がさらに使われないような状況が起こっております。特に柱材、はり材におきまして集成材にかわりましたのは、品確法の関係でありますし、最近、内装材の防火材での改正がありましたけれども、せっかく使われておりました内装材の板材も、そのことによりまして大きな打撃を受けております。国内林業の振興という観点から、建築基準法等が本当に配慮されているかどうかに大きな疑問を持っております。

 以上で陳述を終わらせていただきます。(拍手)

堀込委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

堀込委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。

高木(毅)委員 おはようございます。

 参考人の皆様には、大変お忙しいところ、そしてまた早朝より御出席いただきまして、また貴重なお話をお聞かせいただきまして本当にありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。

 時間も限りがございますので、早速質問に移らせていただきます。

 まず、飯塚さんにお尋ねをしたいというふうに思います。

 森林組合自身の体質強化の取り組みということについてお尋ねしたいと思いますが、先日、私も地元の森林組合の役員の方にお話をお聞かせいただきまして、そのとき印象に残った言葉が、山の仕事はいい仕事だと思ってもらうことが何よりも大切だという話をしておりました。そうしたことに向けまして、今ほどは森林組合さん自身のこれからの取り組み、あるいはまたどのような支援が必要なのかというようなことで、例えば森林環境税あるいは直接支払い制度等々についてお話をいただきました。

 現在でも、新植面積の九割、間伐面積の七割を森林組合さんに頼っているという現状でございます。ところが、ますます期待が高まる一方で、全国の森林組合の約三割が事業損失を計上している、あるいはまた常勤役職員がいない組合が全体の一割を上回るといった、業務の体質や事業執行体制に非常に脆弱なものがあるといった話も聞いているわけでございます。

 このような状況で、今後の森林整備の担い手として大きな期待を持っております森林組合さんの体質強化ということにつきまして、失礼な言い方かもしれませんが、ややもすると心もとないという感じもするわけでございまして、こうしたときの森林組合系統の最高責任者としてのお考えをお聞かせ願いたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

飯塚参考人 森林組合の今後のあり方あるいは大変な様子等についてどういうふうに考えているかというお話がございました。

 確かに、森林組合は、現況になかなか合わなかったり、なじまなかったりというふうな形の中で、弱体化の傾向もございます。足腰の強い森林組合をつくって国民の期待をする公益的機能をさらに求める声におこたえをしなくちゃいけない、あるいはまた、合理的な生産活動によってコストを低く、外材に負けない価格でいわゆる原木が売れる体制をつくらなくちゃいけない、こういったことを中心に、今現在のところ千二百ぐらいあると思いますけれども、合併を推進中でございます。十三年度が終わった段階では六百にしようということを合い言葉に森林組合の全国大会で決議をし、それに向かって現在努力をし、その結果、先ほど申し上げたような国民の期待する、あるいは組合員の期待するような組合づくりをさせていただいておるところでございます。

 また、そのように弱ってしまった原因は何なのだろうかというふうなことでございます。

 先ほど来参考人の皆さんがおっしゃっていらっしゃるように、一つは外材が無秩序に入ってきておる、そして建築工法も従来型と違ってきておること、代替用品等が非常に開発、工夫をされて木材のシェアが奪われてしまった、こういったこと等を踏まえて、いわゆる昔のような価格で木材が販売をされない、したがってお金が山元に流れ込まない。この悪い循環の中で林業をしておるというのが一番大きな原因で山村が弱っておる、あるいはまた森林組合が力を失ってきておる。それが主な理由だというふうに考えております。

 以上でございます。

高木(毅)委員 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして合原さんにお尋ねをしたいと思います。

 いわゆる不在村化が進んでいるという中にありまして、地域の森林整備への林業経営者としての取り組みといったようなことでお尋ねをしたいというふうに思いますけれども、最近、地方では森林所有者の不在村化が進みまして、森林の所有界すらわからないというような状況になっている、いわゆる森林が荒れているという話を聞きます。日田地方は日本でも有数の林業の盛んな地域でございますのでこのようなことは余りないのかもしれませんけれども、また別にこういった状況も出てきているのではないかなというようなことも思います。

 もし仮に、合原さんが経営なさっております森林の周囲でそのような森林が出てきた場合、これを例えば取得して一緒に経営していくとか、あるいはまた森林の作業や林業経営を受託するというような必要も出てくるかというふうに思いますけれども、そうした点からの支援というものも必要ではないかと思いますが、そういった点についてのお考えをお聞かせいただきたいということ。

 それから、先ほど、これからは林業というものに若い人が入ってくる可能性が十分あるという話をお聞かせいただきまして大変心強く思ったわけでありますけれども、合原さんのお考えになるそのあたりのいわゆる裏づけといいますか、なぜこれから若い者が林業に入ってくるかというようなところを少しお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

合原参考人 お答えいたします。

 まず、不在村化という問題については、九州でもたくさんございます。私は、本当を言うと、所有している山林の村や町というのがばらばらでございまして、その町に住んでいない不在村地主でございます。行政の方が使っていらっしゃる不在村化という言葉の概念は私はちょっとつかみにくいんですが、所有管理を放置している地主というのがふえていることは確かでございます。

 例えば、うちの山の周辺で間伐がおくれている林分もたくさんございます。しかし、その林分の所有者を調べて、そしてそのニーズを聞いて、間伐を、私は個人的には一緒にしてあげたい気持ちはたくさんございますが、今の私どもの経営の中ではその余裕はございません。そういうバックアップシステムというか、例えば無利子で長期に、こういうふうにすれば制度資金で優遇するよみたいな極めてきちんとしたシステムがあれば、もしかするとそういう放置山林とか、間伐がおくれている山林の整備が少しは進むかもしれないと思います。しかし、現状では、私どもに他の放置山林を管理する余裕はございません。

 第二に、これは実態的にもそういう若い人たちが入ってきているグループもございます。なぜ若い人たちかというと、私は団塊の世代でございますが、戦後の価値観がやはり二十一世紀に向けてすべての分野で大きく揺らいでおりまして、若い人たちが自分たちの価値観とか夢を見つける方向性が日本の中で大変な状況に置かれていると思っております。そのために、私どもは、やはり森林とか林業経営とかそういうフィールドの仕事を若い人たちに、経済的なものも含めてバックアップして、もし手を差し伸べれば、そういう方向に若い人たちがどんどん参加する可能性はもっと大きいのではないかと思うので、そう言っております。

 以上です。

高木(毅)委員 どうもありがとうございました。

 続いて、木平先生にお伺いしたいというふうに思いますが、先生は林政審議会委員としても今回の林政改正の一端を担っていただいておりまして、そういった観点から、今回の改正の基本的考え方、木材生産主体から森林の多面的機能重視に転換されたということについてのいろいろな時代的な意義づけあるいは意味というものについてお話をお聞かせいただいたというふうに思っております。

 また一方では、先生は市民参加による森づくりというものに非常に熱心に取り組んでいらっしゃるということもお聞きしております。そうした中にありまして、最近、都会の方が実際に森林に入って作業をしたいという、いわゆるボランティア活動を希望するというような具体的な例も各地で見られるようでありますけれども、先生は森林整備という観点からそうした動きというものに対してどのように評価なさっているのかということをお聞かせいただきたいと思います。また、市民参加ということは大変大切なことだと思いますけれども、どのような課題があるか、お聞かせいただきたいと思います。

 それからもう一点、子供たちの森林博士というようなことにつきましても、あわせてその内容等につきましてお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

木平参考人 お答えいたします。

 私は、この市民参加による、あるいは合意形成による森林の保全管理というものは非常に重要だ、こう思っております。

 この場合に、今日本人の約八割が都会に住んでおります。あるいは、意識的には都会人だと思っております。したがいまして、住むところと森林との距離が物理的に相当離れております。したがって、心の中では森林は大切だ、おもしろいというものがあっても、実際には経験が少ないというのが現状です。したがいまして、多くの都会に住んでおられる方々が森林ボランティアに参加されるということが今大変多くなってきました。

 その意義づけといたしまして、これは圧倒的に、ボランティアに参加することによって、作業に参加することによって、森林の実態を知ること、あるいは森林のおもしろさを体験できるということが大事だと思います。その理解を通じて、頭の中の森林ではなくて、具体的にこれから森林の役割というものが理解できるのではないかということで、多くの方、とりわけ若い方の教育という意味に私は森林ボランティアの意義を見出します。

 それから、私はもう一つ、ボランティア参加というものが今実は多いと言ったのですけれども、これから、山へ行って仕事をする、これは作業参加なのですけれども、それと同時に、もう一つ重要なのは、森林をどのように管理していくか、日本の森林をどの方向に向けていくかという計画への参加、これが大変重要だ、こう思います。この点については、若干まだ立ちおくれている、こう考えております。

 それから、最後の御質問の、子供樹木博士という運動を私はやっておりまして、それの生みの親だと言われているのですけれども、これは簡単に申しますと、小学校、中学校が来年から五日制になります。そういった場合に、子供さんあるいは親御さんが一緒に公園とか山へ来られましたら、少しよく知っているインストラクターあるいは少し専門の者が、木の名前を、木にさわりながら、これは何の木だという樹種をお教えします。そして、教えた後、幾つ覚えたかということを実力テストをして、その数に合わせて、あなたは樹木博士何級ですよ、あるいは何段ですよという激励をする、こういう運動です。

 昨年から任意団体として始めまして、現在、昨年だけで約二千人余りの子供さん、親御さんがこれに挑戦されて樹木博士になられた、こういう状況でございます。

 以上です。

高木(毅)委員 どうもありがとうございました。

 それでは、次に宮崎町長にお尋ねをいたします。

 小国町では、今もお話をお聞きしたとおり、悠木の里づくりというようなことで、全国に先駆けて、例えば公共施設を中心に木造化を進めたりということでございますけれども、森林の多面的機能の持続的発揮、そして、それを支える林業の健全な発展のためには、もちろん林産物の利用の促進が図られなければならないわけであります。

 質問として、こうした木の特性を大いに生かして、木の持つ可能性を生かす建造物、あるいはその特性を十分に生かす建造物として今までお建てになったもの以外にもどのようなものが考えられるかというようなことをお聞かせいただきたいなと思います。それから、地域材の需要拡大のために、今後どのような点に配慮して、どのような取り組みを続けていかれるおつもりなのかというところを少しお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

宮崎参考人 お答えをいたしたいと思います。

 悠木の里づくり、皆さん方の手元に「小国町文化の香りを訪ねて」という小さいパンフレットを差し上げておりますけれども、昭和六十年から取り組み始めまして、木造立体トラス構法という新しい構法で大型の建築物をつくりました。

 それから、その構法での最大の建物は小国ドームという町民体育館で、三千二百十五平米。建築基準法では、大型の木造建築物は三千平米以下でなければならないという基準があります。あえて二百十五平米オーバーさせることによって、こういう大型の建築物も実際には現在ではつくれるのだということを証明しようということでつくりました。構造的には、以前に二つの建物をつくっておりましたので、それほど問題ありませんけれども、当然当時の建設大臣の許可をもらってつくった建物です。消防法の関係では、いわゆる低いところの構造材に万一の場合に水をかけるスプリンクラーを設置することによりまして、消防法のクリアをいたしております。

 最近老人保健施設をつくりましたときにも、木造でつくりました。これは、家庭の雰囲気をより出していこうというような気持ちでした。その中では、今度は厚生省基準の準耐火構造という面で、食堂とかそれから料理とかの面で、木造の構造材のよさを出していこうということで構造材を出しましたところが、それは大きい材ですけれども、それでもやはり消防法上前例がないということで、いろいろなやりとりを行いましたけれども、その大きいはり材に防火剤をまいて、その上に化粧材を張るという、私は笑い話と思っておりますけれども、そういうことまで行っております。

 というのは、私たちがいろいろチャレンジしていくことによって、改正していってもらわなければならない面を実践していく、そういう気持ちであります。そういう取り組みからいたしますと、木造建築というのは、今の技術あるいは新しい建築用材を活用すれば、どういうデザインでも、どういう大きさの建物でもつくれるということなんです。

 ただ、それを実際に実践していくかどうか。まずやらなければいけないのは林業地の自治体であり、林業県の県である、あるいは国が関係省庁と連携して取り組んでいけば、日本の木の文化を復活させていくことが可能であるし、それがまた新しい木造建築の文化につながっていくというふうに私は思っております。

 都市部におきましても、例えば店舗の改装デザインの中では、これから新しい店舗の魅力をつくっていくのは木材を使ったショールームそれから店舗ではないかというふうに思っておりますし、そういう状況は都市部でも随分出てきているというふうに思います。そういうことを積極的に関係省庁と連携しながら進めていくようなことではないかというふうに思います。

 それから、住宅に関しましては、小国型健康住宅ということで福岡市と広島市でシンポジウムを行いました折に大きな反響がありまして、実際に都市部の設計事務所なりあるいは工務店から、例えば小国材を活用した形での住宅の提案をし、そして実際に建築していきたいという要望がたくさん出てきておりますし、実際全国的にはそういう新しい形の産直住宅の取り組みをしてきているところがあります。そういう動きを見た形での、いわゆる住宅においての国内材活用を都市部においても展開するということは可能であるというふうに思っております。

 以上です。

高木(毅)委員 余り時間もないのですが、簡単にもう一点、宮崎町長にお伺いしたいのです。

 上下流連携による森林整備というのも随分進めていらっしゃるとお聞きしていますけれども、簡単で結構でございますので、時間もございませんが、その辺を少しお聞かせいただきたいと思います。

宮崎参考人 小国町は筑後川の水源地に当たります。水源の森ボランティア事業という事業の中で、特に福岡市を中心とした市民の方々に小国町においでいただきまして、ちょうど山のすそ野から水がわき出ている場所を中心としました水源の森をつくっていっております。

 それから、そういうことだけではなくして、例えば福岡市民のいわゆる市民の森というものを、小国町とは限りませんけれども筑後川上流の農山村につくることによって、それは福岡市なら福岡市が購入するわけですけれども、その森林の管理を小国町であれば小国町の森林組合なりに任せることによって、安定した職場がつくれる。そしてまたさらには、その森の中に、子供たちの自然学校であったりあるいは文化的な施設、それから高齢者のための保養施設とかそういうことを、いわゆる福岡市なら福岡市のエリアの中だけで市民サービスを考えるのではなくて、そういう上下流の関連の中での市民サービス施設、市民の森をつくっていいんじゃないかという提案もいたしております。

高木(毅)委員 貴重な御意見、本当にどうもありがとうございました。

 以上で終わります。

小平委員長代理 次に、佐藤謙一郎君。

佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。

 きょうは参考人の皆様方の貴重な御意見をいただきました。お忙しい中をお越しいただきましたことに心から感謝を申し上げながら、それぞれの参考人の方々に若干の質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、飯塚参考人にお願いをいたします。

 私、出身が横浜ということで、都市に住んでいて、森林とはおよそ縁のない生活をずっと続けてきたわけですが、何といっても日本は木の文化。まさに神話や伝承で、コノハナノサクヤヒメがイワナガヒメに勝った、まさに木の文明が石の文明に勝った。それ以来、大変我々にとって幸せであったことは、小麦のような森林簒奪型の農業ではなくて、水田を中心とした森林の保水力というものをしっかりと受けとめた、そうした文明ができ上がったわけでありますが、実はそうした森林の保水力に着目をして、私ども民主党ではこの六月の五日に公共事業基本法と一緒に緑のダム論を法制化いたしました。

 そこで、一つ、林野庁の統計ですけれども、今二千七百近くある日本全体のダムの総貯水量が二百二億トン、それに対して、二千五百万ヘクタールある日本の森林の総貯水量は千八百九十四億トンある、実にダムの九倍も保水力を維持している、そういうことであります。そんなことも含めて、今五百二十八ダムがまだ建設中でありますけれども、そういうダムを安易につくるよりも、森林の保水力に着目をしたそうした新しい文化をつくっていこうと私どもは考えておりますが、そうした考え方についてどういうお考えをお持ちかということが一点。

 それからもう一つ、私どもは、直接支払いというもの、林業のデカップリングに大変大きく力を入れていこうとしているところでございますが、残念ながら、農業の中山間地の直接支払い、三百三十億円、あれは都市納税者にほとんど説明をしないままに予算措置でそっとこそくに導入をしてしまいました。これは私は将来必ず禍根を残すであろうと考えておりますので、林業デカップリングについては、やはり森林の多面的機能とか公益的機能、これを都市納税者に言っても一体何のことかわからないと思うんですね、そうしたことをきっちりと説明をしながら、それを法律の中に入れ込んで、森林の持っているそうした価値というものを形であらわしていく、そういうことを考えていきたいと思っておりますが、そうした考え方についても御意見を。

 さらには、もう一つ、担い手。私ども、これをそこに住む人たちに現金給付でお渡しするのがいいのか、それとも、今百五十万ヘクタールぐらい早急に間伐をしなければいけないそうした山があるわけですけれども、現実に私ども試算しますと、二千二百五十億円、ダム一つ分、例えば川辺川ダムですとか、あるいは細川内ダム一個分で十分に、とりあえず百五十万ヘクタールの間伐というようなもの、あるいはツタ切りのようなものができるとするならば、それを現金給付よりも、雇用に結びつけて、実際に働いていただける方々にお渡しをする、その制度、どちらがいいんだろうかということで悩んでいるわけですが、その三点についてお聞かせください。

飯塚参考人 お答えをいたします。

 山梨県道志村にゴルフ場をつくるときに、横浜の皆さんが、環境の問題、水資源の問題で困るということで、神奈川県を通じて、水道用水に一立方一円を乗っけて、そしてそのお金で緑を守り、清流を守り、水資源を守った、大変立派な横浜御出身の先生にお答えできてうれしゅうございます。

 そういう中で、木の文化あるいは緑のダムについての御質問がございました。

 基本的には、私は、森林組合という立場で申し上げますと、やはり鉄やコンクリートでつくったダムよりも、森林を守ることが、安い投資で、しかもいわゆるダム以上に大きな保水能力を持ち、治水、利水の面からも非常に有益な方法だというふうに考えております。しかし、国全体の考え方の中で、ダムの問題等についてもいろいろな御論議があるし、また建設省というサイドでそれを尤とすべきだという考え方の中で現在まで進んできたことだと思っておりますけれども、私個人としては、また森林組合としては、今申し上げたような方向がベターであるというふうに考えております。

 二番目の、直接支払いの問題でございますけれども、農業サイドでは、ウルグアイ・ラウンドの問題でそういったものが予算化されて、実施されているように伺っておりますけれども、私ども勝手な言い方をすれば、農地よりもさらに条件が悪い中で、しかも公益的機能の発揮は農地よりも六倍も七倍もある中で頑張っている、そして、山がしっかりするから下流の畑や農地や、あるいはまたその下の工場や住宅が守られているんだ、そういう観点に立ってぜひそういった制度を導入していただくようにお願いをしておるところでございます。

 三番目の、担い手に対するいわゆる支払いの問題は何がいいのかというお話でございましたが、一番問題は、やはり緑の担い手、私どもグリーンキーパーと言っておりますけれども、近ごろは地元の方と同じくらいの方がいわゆる都市部からやってきまして、定着をして頑張っていらっしゃいます。しかもまた、能率も体力も考え方も地元の者以上にしっかりとした考え方を持って定着をして頑張っていらっしゃいますが、そういった方々に頑張っていただくためのお支えというふうに理解をしております。

 私どもといたしましては、そういった方々の支援については、個人に差し上げるのではなくして、森林組合の中でのグリーンキーパーの皆さん、あるいはまたその町村における緑を守る一人として、森林組合もしくは市町村にお与えをいただくならば、その組織を十分知っておる、あるいは管理しておるという立場で、一番有効に使わせていただけるのではなかろうか、そんなふうに考えております。

 以上でございます。

佐藤(謙)委員 どうもありがとうございます。

 ダム建設でいえば、恐らく飯塚参考人のおられる群馬には八ツ場ダム、これは長良川河口堰、川辺川、徳山ダム、苫田ダムあるいは思川南摩ダム、そうした、今つくるべきかどうかの全国的な議論がありますけれども、一番大きな問題にこれからなっていくダムが八ツ場ダムだろうと思いますが、どうかその反対運動にも積極的に御参加をいただければと思います。

 次に、合原参考人にお願いをしたいと思います。

 先ほどからストックにかかる相続税の問題、大変重要な指摘だと思いますし、これは私ども政治家が一生懸命これからも努力をしていかなければいけないことだと思っております。そのときに、商業をやっておられたと。いろいろと事業をやっておいでのようでございますが、例えば、森林を利用したエコツーリズムですとか、あるいはバイオマスを駆使した新しい展開ですとか、ネオルーラリズムというのですか、二十世紀は農村を都市化したけれども、二十一世紀は確実に都市が農村化していく時代、農的なものにあこがれていく時代になると思います。

 これから、もしも都市から日田にそういう若者が入っていくようなときに、そうした新しい、森林ベンチャーというお話がありましたけれども、もっと広い意味で、これから明るい展望を開いていくとするならば、どういう政策が国として必要であるかということを、何かお考えであれば、お示しいただきたいと思います。

合原参考人 お答えします。

 それは非常に難しい問題だと思います。

 私は極めてビジネスが下手な人間なんですね。物事をビジネスライクに考えるといろいろな困難にぶち当たりまして、例えばエコツーリズムにしても、小国町長の宮崎さんというか、行政というか、政府のお金とかいろいろなものは、行政とか森林組合とか、すべて枠組みの中に流れていくのです。私ども民間がこういうことをやるのをバックアップしている窓口は、現在のところ何もございません。

 私は一つだけ私の森林で、ビジネスとしてやるととても大変なので自分自身では遊びだと言っておりますが、将来的には、いろいろな方が出入りできる構造物だとか、一応温泉を掘ったりとかして、その地元はちっちゃな集落でございまして、既にそれは町の振興策で、部落全体が農家民宿、だから多分農業関係の施策だと思うんですが、農家民宿で地元の人たちが三人ぐらいで共同でやっておりまして、これが四、五年たちまして、とても活性化しております。

 先ほど申しましたように、今までのいわゆる開発型の保養地、リゾートではない、手づくりのものを求めていらっしゃる都会の方も非常に多いという現実を私は目にしておりますので、やりたい人たちには、窓口でそういうものをきちっと審査して、チェックして、それがオーケーであれば、こういうことができるよというものを、エコツーリズム、バイオマスもしかりでございますが、これもこれからの問題で、極めて難しく、多くの問題を含んでいると思いますが、そういうことができるシステムが何かあれば、それに挑戦する人たちはもっと多くなってくると思います。

 お答えにならないで申しわけなかったですが。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

佐藤(謙)委員 同じ質問を小国町長の宮崎参考人に。

 バイオマスですとか、そうした新しい展開を地方自治体という立場からお示しをいただきたいのと、あわせて、第三セクターの運営の問題で、また何か私ども国が考えていかなければいけない問題があれば、御指摘いただければと思います。

宮崎参考人 答弁させていただきます。

 バイオマスの活用におきまして、やはり一番大規模なものには発電があります。実際、環境問題におきましての、例えば製材から出ます廃材、建築から出ます廃材等は焼却できなくなりますし、また間伐材等の切り捨て、山放置が大量に出てきております。

 そういう木材資源あるいは植物資源を活用しましての、いわゆる環境に負荷をかけないエネルギー、電力をつくり出すということでのバイオマス、これは北欧が実際に事業化いたしておりまして、その視察等にも出かけておりますけれども、最終的には、その建設それから運営を行っていくためには、例えば環境税等を課しまして、その税収からの支援がないと実際に建設、運営はできないという結論になりまして、国においてそういう支援策が生まれない限りは、地方単独あるいは補助事業を受けても難しいだろう、そういう結論になっております。

 そのほか、畜産関係等のふん尿処理等の関係においての肥料としての利用、そういう方面も検討されるのじゃないかというふうに思っております。

 林業関係の第三セクター、これは都市の若者を含めて公募をいたしますと、非常に希望者はあります。ただ、非常にきつい仕事、作業ですし、あるいはまた危険もありますので、採用しました社員がそのまま続いていくというわけではありませんけれども、現在では、自然の大切さ、あるいは自然に関連した仕事をする、そういうことに対する誇り、あるいはまたあこがれを持っている若者たちはたくさんいます。そういう若者にどうしたら林業の仕事に携わってもらえるかといいますと、やはり給与、福利厚生を含めた充実。それから、悠木産業という第三セクターをつくりまして感じましたことは、やはり仲間ができると、仕事の楽しさ、あるいは継続していくことの喜びというのが生まれるのかなというふうに思っております。

 ただ、先ほど申しましたように、実際に一人前といいますか林業の仕事を十分にこなせるようになりますまでには最低三年はかかります。その間、例えば第三セクターだけでそういう養成をしていくということは、会社も赤字経営をするわけにはいきませんので、やはりその間の支援というものがどうしても求められるというふうに思います。

佐藤(謙)委員 バイオマスについては、この国会で自然エネルギー発電促進法というものを私どもは出そうと思っておりますが、その中核は電促税をそちらに入れていく、そうした骨格になっているところでございます。

 それでは、時間がなくなって恐縮ですが、木平参考人には、市民参加がキーワードということで、いろいろと御熱心に御活動ということでありましたが、先ほど御質問がありましたので。私は循環型社会というものの中で、特にゼロエミッションは森林を軸に構築していくべきだと考えているわけでありますけれども、先ほどの流域一貫、そうした発想の中で、その辺についてもう少し詳しく御説明をいただければということ。

 それから、環境基本法との関係で。環境基本計画の見直しが昨年行われたわけでありますけれども、アメリカあたりでは、連邦環境政策法とか環境アセスメントが森林の保全に非常に有効に機能しているというふうに聞いております。日本に、もしも森林が生産資源と同時に環境資源として息づいていくとするならば、どういうことをこれから私どもは努力していったらいいのか。時あたかも、生物多様性国家戦略も今見直しが進められているところでございますので、野生生物の保護という観点も含めて、時間が余りありませんが、ちょっと御示唆をいただければと思います。

木平参考人 循環型社会ということで、私は先ほど流域の一貫という言葉を述べました。これの意味は、水は高いところから下へ流れるということは当然なんですけれども、そうしますと、水を中心にして、一番上流の森林地帯に雨が降る、それが河川を通じて農地を潤し、そして都会へ流れ、やがて海へ流れていく。その間に、多くのいい水を供給すると同時に、またいろいろな悪いものも運んでいくということが起こっております。

 したがいまして、森林サイドが水をいかほど多く供給した、あるいは浄化した、そういう説明だけでは、その流域の環境というものの問題はほとんど解決しないわけです。山から流れてきた水が農地でどのように利用されているか。それは十分必要なのか、あるいは余っているのか。それから、その途中で流れ出してきた土は、ある場合には栄養になりますし、ある場合には害になります。そういったものがどういうふうなメカニズムになっているか。そして、それを都会の人が上水として利用する場合に、十分美しい水が飲めるかどうか、そういった、水を中心にしてそこにエネルギーと物質が循環しているわけです。その循環が順調で滞りないときに、一つの流域として安定した環境があり、そこに落ちついた生活ができると思うわけです。それが、今日必ずしもそうでないというところが多く出てきております。

 したがいまして、私は、環境を一つのシステムとして、林業という産業、農業の産業、あるいは都会、海洋というものの産業が別々に、あるいは法律として別々の立場で考えるのじゃなくて、それが総合化されるということがなければならない、そういった思想を流域一貫という言葉で表現いたしました。こういう思想は、日本には古来から、言葉としてはなかったんですけれども実態としてはあったわけです。江戸時代から既に、山村から田舎、町というものが一体となっていたわけです。しかし、高度成長以降にそのバランスが壊れてきたというのが事実です。

 それに対して、今御質問の、アメリカなんかを中心にして、モニタリングあるいは環境アセスメントという思想が出てきまして、それぞれの場所においてどのようなことが行われているか、そして、それが結果としてどのような影響を及ぼすか、このアセスメント。それから、現在行っていることが将来どのような影響を与えるか、こういったアセスメント。形式的なアセスメントではなくて、実際に起こり得るという非常に確率の高いアセスメントをこれからやらなきゃならないということで、この点は、確かにアメリカのアセスメントというものは考え方としては十分学ぶべきことがあるんじゃないか、こう思っております。

 以上です。

佐藤(謙)委員 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 参考人の皆様には、本日は、大変お忙しいところ、また貴重な御意見を伺いましてありがとうございます。時間が限られておりますので、早速質問に入らせていただきます。

 まず、山村振興について宮崎参考人にお聞きしたいと思っております。

 本案では、山村の振興につきまして幾つかの施策が掲げられておりますが、林産物の安定供給はもとより、国土保全、環境保全等の見地から山村地域は重要な役割を果たしております。また、近年、余暇を楽しむ場として山村地域に対する期待が高まりを見せております。しかし、現在、過疎化、高齢化の進展、それから主要産業である林業の低迷によって山村の活力はもう低下してしまっている。しかし、森林の多面的、公益的機能の維持には適切な森林経営の確保が重要であり、山村の活性化が重要でございます。

 私の地元、熊本の小国町町長であられます宮崎参考人は、町づくりを通して山村振興をまさに進められております。例えば、紹介もありましたように、小国町の悠木の里づくりは、地域の資源を生かした木造建築の地域デザインづくりを柱に人材育成の事業、各種シンポジウムやイベントの開催、各大学が中心となって実践しているコミュニティープラン推進事業など、多く従来の山村の発想を超えた取り組みを行っておられます。

 農業、林業、商工業、観光業が一体となった取り組みが求められて、自然環境と実体験、そこに暮らす人との触れ合いなど、ツーリズムという概念も導入されているわけでございます。まさに山村振興の具体的なモデルケースとして非常に高く評価できるものと私はかねがね思っておりました。

 そこでお聞きしたいのでございますが、本案に掲げております定住の促進など、山村振興のためにどこに重点を置いてそれを進めていくべきか、それに関して御意見をお伺いできればと思います。

宮崎参考人 答弁をさせていただきます。

 ツーリズムという言葉がよく使われますけれども、私たちは、ツーリズムというのは、人々が動くことだけではなくして、国民の心も動いているというふうに感じております。

 といいますのは、経済成長をなし遂げた後の日本人は、非常に多くの失望と戸惑い、それから二十一世紀へ新しい暮らし方を求めている。それがやはり、環境問題との関係で、自然の大切さ、それから緑豊かな中で自然とともに暮らすことの幸せというものを感受できれば、そういう農山村に住みたいという希望を持って旅をしているというふうに思っております。私としましては、そういう国民の希望を実現していくということが国の政策ではないかというふうに思っております。

 その実現のためには、暮らしを成り立たせるための職場の確保であったり、あるいは一定の社会資本の充実、あるいは教育面においての都市志向というものを変えていくという、いろいろな総合的な取り組みが求められるわけですけれども、やはり、その受け皿となります農山村が魅力的な地域として選ばれるような町や村になっていかなきゃいけない。そういうような考え方でおりまして、その取り組みはどうあるべきかということで、その地域が持っております資源を良好な環境を保ちながら生かしていくということではないかというふうに思っております。

 それが小国町でのいわゆる木材資源を使った町づくり、小国杉を活用しました建築物、住宅をつくっていくということは、おのずと小国町の個性をつくり出していくということ、魅力をつくり出していくということであります。

 現在まででも、例えば、ジャージーの酪農牛、これは日本では非常に希少価値のある酪農になっております。非常に畜産低迷の中で、バターとかチーズの加工あるいはまた市販乳の工場建設とか、あるいは販売するためのレストラン、物産館等の建設とを結びつけたことによりまして、ニュージーランド、アメリカ・ジャージーの導入を図ろうというようなことも含めまして、その当時、原乳販売価格が二億円でしたのが、今ではもう四億を超えて非常に珍しいケースだと思っておりますけれども、みずからの力で資源を生かし、あるいはまた職場を安定させていくことができるということを実践したというふうに思っております。

 小国町は、近代医学の父と言われております北里柴三郎博士の出身地で、博士は、自分の体験から、学習と交流ということを強く小国町に博士の遺志として残しております。それを活用しました学びやの里づくり、そういう中での町民の方の研修、町外の方々の研修、交流というものに努めていっております。そこがいわゆるツーリズムの中心的な場所であり、またソフトの事業の展開の場所になっていっております。

 そういう交流の中から、地域資源の活用の中から、小国町を一時的滞在あるいは長期滞在、定住の場所として選んでいる方々がたくさん出てきております。よく言われますように、一番最初は、芸術活動をされるとかの自由な仕事を持たれている方、あるいはリタイアされた方々等が小国町に定住するようになってきております。国民のそういう希望と、受け皿をしっかりつくっていくことによって、さらに定住は進んでいくというふうに思っております。

 それ以上に、先ほど申し上げましたように、国としてやはり、農山村を生活の場として選べるような総合的な施策をぜひ検討していただきたいと思います。

江田委員 ありがとうございます。

 私も医療出身でございまして、北里先生を敬愛する者の一人として、この学習と交流ということを根本としながら、このツーリズムを進めていくということのお話、大変に感慨深いものがございます。

 次でございますが、木材の自給率についてちょっとお伺いしなければならないなと思っております。

 今言われました、山村振興並びに多面的機能を有する森林の保全をしていくためにも、やはりどうしても林業の経営がしっかりしたものにならないと、そういうものも足かせになるばかりで、大変な状況になるわけでございますので、この林業経営を今後、この基本法を改めることによってしっかりしたものにしていかなくてはならないと私は思っている者の一人でございます。

 それで、木材自給率についてちょっとお伺いしたいと思っております。

 本案の十一条で基本計画の策定について掲げておりますが、この中で、林産物の供給及び利用に関する目標を計画事項の中で取り上げることが明記されております。これに関連して、木材自給率の目標を掲げることが非常に重要と私は考えておるのでございますが、林政審議会ではこの点について消極的であると認識しているわけでございます。林政を推進するに当たっての木材自給率の位置づけについてどのように考えるか、お伺いしたいと思っております。

 合原参考人にまずお伺いしたいんですが、参考人は、市民レベルの活動を重視して、行政主導でない民間レベルのネットワークづくりを構築して活動されております。自給率の向上のために、国産材を使う意義を国民に浸透させることを重要視して、林業側は国民の国産材に対するニーズを把握しそれに対応できるようにする必要があると訴えられておりますが、本法案で、参考人の主張する観点を補えるというふうに思われますでしょうか。

合原参考人 お答えします。

 法案の中には明確には、具体的にはまだはっきりと出てきていない、もっとそれを突っ込んで具体的な政策にしていただかなければ不十分ではないかと私は思っております。

江田委員 続けて、飯塚参考人にお伺いいたします。

 ある論調によりますと、木材自給率五〇%を目指す国産材製材業界の問題点につきまして、国産材製材業とほかの産業、例えば農業、鉱業、これを比較した場合に、原料の種類が多くて単一多数の生産が困難である、また、企業の多くが小規模で整備されていない、さらに、海外の製材規模と比較すると、日本は工場の数は多いけれども生産量は少ない、さらに、海外の製材コストに比べると日本は、先ほどもおっしゃられておりますように割高である、国産材製材業というのは工場の数を減らして集約化させることが急務ではないかということが指摘されておりますが、この現状を踏まえて、自給率の向上のために早急に取り組むべき課題というのは何か、これについて教えていただければと思います。

飯塚参考人 木材の自給率について、お願いしておる法律案の中にも、定めなさいというふうなことがありますが、ぜひ、これをおつくりをいただく中で、おいでの先生方に魂も入れていただきたい。

 具体的には何を期待するのだということでございますけれども、その中で、国及び地方公共団体はその年度における使用目標をぜひつくって、そして木材をその年には、自治体としてあるいは国としてこのくらい消費するんだというものを設定していただくならば、木材の流れというものが変わってくるであろう、そういうふうに強く要望をしておるところであります。

 また、要望だけではなくして、私どもといたしましては、例えば、外材に負けないコストでお届けをしなくちゃいけない、あるいはまた品質についても外材に負けない品質のものをつくらなくちゃいけない、あるいはまたロットについても、どうもまとまりがないよ、使おうと思ってもまとまっていないじゃないかという御指摘をちょうだいしておりますので、価格、ロットそして品質について、さらなる研さんを重ね、需要者におこたえしていかなくちゃいけないというふうに考えておるところでございます。

 また、一番の問題、どういう点が欠けておるんだというお話がございました。現在我々は、一番難しい問題は、品確法などができましてその責任が強く求められている中で、しっかりと乾燥したものをまずお届けしなくちゃいけない、それからもう一つは、間伐を中心にした利用目標という中で、集成材を積極的に取り入れて、そして大きいものから小さいものまで対応できる、その基礎づくりをして消費者にお届けをすることが今求められておる急務ではなかろうかというふうに考えております。

 したがって、官民そろって意識の改善、それから政策の導入を強く期待しながら、それに対応していくことが大切なことではなかろうか、こんなふうに考えております。

 なお、参考までに、北関東横断道路という高速道路を今建設中でございますが、その群馬県部分につきまして、五キロメートルにわたって、中目丸太を切断いたしまして消音壁を設置していただきました。コンクリートやアルミに比べて少々値段が高うございますが、環境にもよくマッチするし、騒音の吸収も非常に効果的である、結果を考えると安い投資であったというふうにアンケートや行政当局から聞きまして、大変喜んでおるところでございます。

 以上でございます。

江田委員 時間になってまいりましたので、次に進ませていただきますが、木材需要を促進していくことがまた非常に重要かと思っております。

 先ほども、小国の宮崎参考人のお話でも、地域デザインづくり、小国型健康住宅づくりとか、そういうようなものが紹介されておりました。

 また、先ほどは循環型社会、これは我が党も長年強く主張してきまして、今はもう政府の基本的な施策として、循環型社会へと二十一世紀は向かっております。この循環型社会の中で、例えば構造リフォームというのが最近提案されております。今までのように汚れて傷んだら建てかえるというようなことではなくて、構造自体もリフォームする、こういうような、環境破壊型ではなくて環境循環型に配慮した住宅を考えていくべきだというような案もございます。

 さらには、その需要拡大のために、例えば少子化対策で、今待機児童の解消、全国で三万人の待機児童がおられまして、解消に向けて保育所の完備をしているところでございますが、こういう保育所とか学校とか公共施設とか、そういうようなところは、やはり人に優しい木材が付加価値があるんだというような、そういう需要をみずから上げていくという考え方、また運動というのが必要になってくるかと思うんです。木材需要を促進するためにどのように考えておられるか、そこら辺のところをお聞きできればと思います。

 これは、済みません、最後になりましたが、木平参考人、よろしいでしょうか。

木平参考人 今、循環型社会ということについての御主張がございました。林業あるいは森林問題というのは、まさに循環型社会を実現するべき舞台である、こう考えております。

 先ほどのディスカッションの中に、地元材を使う、あるいは最近では、東京の木で家を建てようとか、自分の町の木で家を建てよう、こういう考え方がございます。私は、これは非常にいいことだと思います。

 なぜ自分の町の木でつくるのか、あるいは、もう少し一般化しまして、国内材でつくって外材じゃないのかということを消費者の方から見ますと、もし同じ品質のもの、同じ値段の材木があった場合に、そのときに、自分の生まれた、自分の町の材木を使えば、それはやがて自分の地域の森林がよりよくなるのだ、あるいは地域の環境がよくなるのだ、だから外国の材よりも地域材、地場材を使った方がいいのだ、こういうような理解が多くの人に行き渡ることによって循環型社会が実現すると思うんです。上から、外材はだめで国内材を使え、こういう強制では決して行き渡らないと思います。

 ということで、外材に市場で負けない量、質、値段というものを消費者に提供できる、そういう状況をつくることがこの基本法の課題ではないか、こういうように思っております。

 以上です。

江田委員 時間が参りましたので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。

堀込委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 私は、自由党の一川保夫と申します。

 本日は、参考人の皆さん方、大変御苦労さまでございます。今までにもいろいろなお話が出ておりますので、私の方から、幾つかポイントを絞ってお話をお聞きしたいと思います。

 まず、四人の先生にちょっとお尋ねしたいわけですけれども、今日、我が国の林業、森林を取り巻く状況は大変厳しいものがあるのは御案内のとおりでございますし、身をもって体験されていると思います。では、なぜこういう状態になったのかということに対して、正直言って、こういう委員会の場でもそんなに過去のことについて根掘り葉掘り総括的なことは余りやっていないわけですけれども、皆さん方の率直なこれまでの経験からの印象としまして、今日、こういう状態になった原因といいますか、どこに問題があったのか。要するに、何か国の施策が間違っていたのか、あるいはいろいろな世の中のこういう経済社会情勢の中でやむを得ないというふうに思っていらっしゃるのか、どこに一番問題があったというふうに思いますか。一つか二つ、何か感想めいたものがございましたら、それぞれの参考人からお話を願いたいと思います。

飯塚参考人 私も、今出てきたような人間ですから、歴史的なこと等については正確ではないかもしれませんけれども、先生御指摘の点については、一つは、朝鮮動乱以降の、いわゆる都市の過密と関連する産業構造が非常に変わってきた。したがって、山村に過疎が生まれ、都市部に過密が生まれた。こういったことが、高齢化社会の到来あるいは山で働く人たちの年齢構成の後退というふうなものに大きくつながったことが一つ。

 二番目は、昭和三十六年だと思いますけれども、いわゆる外材に門戸を開いた。しかも、何ら防波堤を築くことなくどんどん外材の無秩序な輸入を招いた。そして、日本が外材を輸入しやすい為替レートがその背景にあって、もっと端的に言えば、二次製品を外国に売ることによって外国のものを買わざるを得ないような環境下に置かれた山村が大きく疲弊をしてきた、そのように認識をしております。

 以上でございます。

合原参考人 お答えします。

 日本の森林政策の中に資源政策だけしか最初はなかったということが一つの原因であって、やはり長期的な展望というのが林政にはなかった。農業とか漁業、第一次産業は三つございますが、林業は極めて特殊で、国の方針を少なくとも百年単位で決めていただかなければ、目先の経済構造とかいろいろな価値観の変動に森の根本まで覆されるような事態が発生すると思います。今後もそうであると思うので、やはりそこら辺がなかったということが原因だと思います。

木平参考人 多くの原因の中で、私は一つ挙げたいと思います。

 林業というのは、木が大きくなったその材木を販売する、これが基本です。木の成長というものは、戦前であれ現在であれ、全く同じです。ということで、日本の高度経済成長の中でも、木の成長というのは全く変わらないわけです。それが一点。

 それからもう一つ、木材を切り出すあるいは加工するという作業があります。これは、その作業の能率がいかに上がったかと申しますと、一九六〇年ぐらい、高度成長が始まったころから今日にかけて、能率は向上しております。多分三倍ぐらいに上がっていると思いますけれども、これは他の産業と比べてはるかに劣るということで、産業間の構造的な問題というか、宿命的なものがある、これが一つだと思います。

 以上です。

宮崎参考人 答弁させていただきます。

 まず、日本が工業化していく中で、いわゆる林業関係の企業においての自助努力、自助努力も無理な点もありましたけれども、例えば製材加工、それから工務店を含めまして、そういう工業化社会へどんどん進んでいく中での対応ができなかった、これが林業地での一番の問題で、そのために、第一次の製材加工だけは残りましたけれども、流通、販売は、いわゆる都市部の大手の住宅建設のメーカーあるいは輸入住宅メーカーがほとんど主流になっていってしまった、そういう反省があるというふうに思います。

 それから、国の方といたしましては、戦後制定されました建築基準法が、大型の建築物はすべてRC工法でつくっていくという基本的な法律をつくりました。となりますと、当然、公共建築物等はRC工法になっていってしまうわけです。ただ、当時はやむを得なかったのかもわかりませんけれども、木造建築の技術あるいは新しい建材等の建築に対する活用を考えて生産されるようになってきた中で、木造によっても大型の建築物がつくれるというような時代が出てきたにもかかわらず、そのまま建築基準法を含めて動いてきたという点。

 それから、国におきましての、拡大造林を含めましての林業振興は農水省、林野庁を中心に、それから建築関係におきましては建設省あるいは文部省、輸入におきましては通産省、はっきり言いまして、そこらあたりの総合的な国内林業の政策、当然、拡大造林によりましての素材の生産量はふえて、それだけの資源が出てくるということはわかっていたわけなんですけれども、そういう総合的な政策が実行されなかったという点を感じております。

 それから、これはちょっと抽象的な観点になりますけれども、よく私は、今の住宅政策、求められる住宅について、人間が冷蔵庫の中に住むわけでもないしということを冗談で言いますけれども、人が家に住むということは、もともと自然環境の厳しい中で、その身を守る、快適に暮らすためにということで家はつくられていったわけです。そのためには、いわゆる風とか光とか空気とか、そういうものが家の中に自由に入ってくるというのが人間の暮らしにとって非常に大切なことじゃないかと思います。それが、工業製品と同じような住宅が求められ、理想だとされることに大きな疑問を持っております。アメリカあたりでも、いわゆる日曜大工用品がたくさん売れて、日曜日に外壁のペンキ塗りとかを家族一緒にやったりとか、住宅というのは、子供の教育あるいは家族の団らん、そういうような大きな役割があるというふうに思っておりますので、そういう面での住宅への総合的な観点というか役割というものをやはり考えるべきじゃないかというふうに思います。

一川委員 どうもありがとうございました。

 また我々もそういった御意見を大いに参考にさせていただきたい、そのように思います。

 そこで次に、先ほど木平先生だったですか、森林というか林業というのは、地域性というものを、個性的なものをもっと尊重しなければならないという御意見が相当強く出ていたように思います。そういう中で、これからの施策というのは余り画一的なものはだめですよ、できるだけ地域の自主性を尊重しなさいというような趣旨のお話がございました。

 そこのところで一つお聞きしたいのは、最近、地方分権というようなことも含めて、地域で自主的に創意工夫を凝らす中で、その地域で最終的に方向を決めて物事を実施していくというような、一つの地方分権というような流れがありますけれども、やはり地方分権という一つの流れの中でこれから林業施策も位置づけした方がよろしいというふうにお考えなんでしょうか。

木平参考人 地域分権と森林の施策という問題なんですけれども、日本は小さな国と言われますが、森林というものは極めて大きな国であって、南から北まで自然条件も違います、またそこに住んでおられる人々、あるいはその地域の文化というか生活の様式も違います、考え方も違います。それで、森林の影響というものは、地球的に影響があるんだという面もあるんですけれども、やはり地域の環境に直接響くものだ、私はこう思います。北海道の森林がたとえどんな状態であっても、九州の方はそれを感じることはできません。

 したがいまして、その地域の方が、自分が望ましいという森林の姿、それからそれを実現する取り扱い方、こういう伝統があります。そういうものを伸ばすことが国全体としての森林の多面的な状況を充実させるんだ、こう思っております。したがいまして、それぞれの地域の方、林業家の方は技術を持っています、地域技術、それを伸ばすのが国のこれからの施策じゃないか、こう私は考えております。

一川委員 ありがとうございました。

 では次に、合原さんと飯塚さんにお尋ねしたいわけです。

 私自身も北陸の片田舎で、山も少し持っております。森林組合の仕事にも多少携わっておりますが、やはり先ほどの話題のように、一番何となく気になることは、森林所有者が自分の山を善良に管理していないケースが目立ってきているということです。それは、不在地主的な方も当然いらっしゃるわけですけれども、山の管理そのものに無関心といいますか、余り熱が入らないといいますか、採算がとれないということが前提にあるのかもしれません。

 しかし、今回の基本法でも森林所有者の責務ということもうたわれていますように、これからそういう善良に管理されていない森林をいかにしっかりと管理していくかというところがこれまた一つの大きな課題になりつつあるわけです。そうかといって、そこを強制的に何かをやるということも非常に難しい点もあるわけですけれども。

 私の思いとしてはやはり、ある一定の啓蒙活動、また、一定の期間広告をすることによって、周知徹底を図ることによって、その本人の森林資源、森林の価値を低下させないものであれば、ある程度強制的にその森林を、例えば間伐的なことで管理に入ることもやむを得ないんじゃないかというような感じもいたします。そのあたりに対するお考えも一回ちょっとお聞きしたいと思いますけれども、御両人からお願いしたいと思います。

飯塚参考人 山の管理の問題でございますが、いわゆる不在村地主という方が約二一%ぐらいいらっしゃって、その辺のところがどうも手入れが十分でないというふうに指摘をされております。また、委員御指摘のように、そろばんが合わないから山に関心がない、また、やっても支出と収入のバランスが崩れる、それよりもほかの仕事をやって、しばらく放てきしておこう、そういった関心が強いということが山に対する認識をますます劣化させているのだというふうに考えております。

 したがって、森林法の改正などによって市町村の機能が非常に大きくなってまいりました。市町村と森林組合が一体化して、手入れの十分でないところをどういうふうに手入れさせていただけるだろうか、また、そのことによって公益的機能の発揮が十分にできる体制ができるだろうかということを相談させていただく中で、先ほど来お話のありましたいろいろな政治的あるいは行政的な配慮の中で、市町村に力を持たせる。そして市町村は、それを受けて今申し上げたような点に対する施業の計画を立て、そして森林組合が実行させていただく。それには市町村にぜひ力を持たせていただきたい。端的に言うと、経済的な力を持たせていただくことがこの問題の解決には一番大きなことではなかろうかというふうに考えております。

 以上でございます。

合原参考人 お答えします。

 管理を放棄している山林は、たくさんあります。伐採後に植えつけをしていないところ、それから間伐が異常におくれている、私も目に余ると思っております。一番まずいのは、緊急間伐五カ年計画ができまして今実行の途中なのですが、やはりそういう計画があってすらも実行しようとはしない所有者の方がたくさんいます。それは、私どもは自分のところの山林がよければよいということでは決してございませんで、山林というのは、隣の山林が崩壊していると何らかの形で影響を受けていきます。だから、自分のところだけきれいにしてもだめなわけです。

 だから、それを地域でどういうふうにやっていくかというのがやはり非常に重要かつ緊急な問題で、しかも、予算的にも時間的にも、恐らく五カ年では今の現状、現場から見れば無理だと思うので、やはり十年ぐらい長期的にきちっとやるような計画を、民間に委託してもいいし、森林組合、市町村もともにやらなければ、まず所有者を捜すことからやるという山もたくさんあると思いますので大変な作業だと思いますが、ぜひそれはやらなければならないことだと思っております。

 以上です。

一川委員 私も今ほどの御意見に賛成でございます。本当に今管理が行き届いていない、手入れされていないのが、こういった間伐対策事業がだんだん地方で浸透してまいりますと、そういうものが目立ってまいりますので、また皆さん方の御意見、いろいろなお知恵を拝借しながら、そういうことが円滑に進むように、またいろいろな御指導を心からお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

堀込委員長 次に、松本善明君。

松本(善)委員 日本共産党の松本善明でございます。

 四人の参考人の皆さん方、林業の衰退を心配をし、そして林業の振興のために貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

 各参考人に、共通して伺いたいことがございます。

 改正案は、これまでの林業基本法の目的であり政策目標でありました林業総生産の増大や林産物の需要及び価格の安定という規定を削除いたしました。我が国の林業自給率は二割まで低下をしましたが、一方では国内での蓄積量、成長量は十分にあります。法案に木材の自給率を明記して、国内生産の増大を図る、また国産材を使う運動を展開していくことが必要なんじゃないだろうか。この点、お触れになった参考人もいらっしゃいます。食料・農業・農村基本法にも水産基本法にも自給率の目標が明記をされておりますので、その点はいかがお考えか。

 また、現在では木材価格の低落が再造林費も出ないという事態を招いておりまして、外材輸入の規制と国産材価格の回復が強く求められております。きょうもそういう御意見を伺いました。宮崎県では、木材価格が下落していることから、原木生産者に標準価格を下回った場合にその差額を支給する制度を去年の十月から始めております。基本法から林産物の需要及び価格の安定という規定を削除するのではなくて、国がしっかりと価格対策を位置づけることこそが必要なのではないか、こういうふうに考えますが、各参考人の御意見を伺いたいと思います。

飯塚参考人 自給率の問題でございますが、先ほど来お願いしておるように、国、地方公共団体がまず率先をして一年間の計画の中に地元の材をぜひ使うように目標数値をはっきり打ち出していただきたいというお願いを展開中でございますので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 それから、再造林費の問題でございますが、委員御指摘のとおり、先ほどの参考人の方もおっしゃっておりましたけれども、木を切って売ってもそのお金で再造林ができない、したがって、緑資源公団とか林業公社に後はお任せをするというパターンがほとんどでございます。自力造林が大体二割ぐらいしかないというふうに伺っておりますが、非常に残念な状況下に置かれております。先ほども小国の町長さんなんかと話したんですが、うちの方では一立方一万円を割るかどうかという問題である。一万円を割るというふうな状況になると、森林所有者に一銭もお金がやれない、あるいは還元できないような状況の中で、息子たちに、孫たちに仕事を続けなさいよと言えませんよというふうな悲しいお話もさせていただいた状況下にあります。

 ぜひそういう認識を新たにしていただきまして、緑をつくる過程において、端的に言うと保育の段階までは、たとえ私有林であっても公益的機能の発揮を求める声がこれほど強いならば、ぜひ国もしくは公共団体に今以上のお支えをちょうだいしたいというのが私の意見でございますが、これは勝手な意見、お願いでございますでしょうか。

 もう一つは、国の価格補償の問題でございます。そういう状況下に置かれているものですから、勝手な言い方で恐縮でございます、公益的機能が七十五兆円であるというふうに試算をしておる中で、いま一歩踏み込んで生活の最低水準ができるぐらいのところに着目をしていただきまして、ぜひ公的な資金の導入等によってお支えをしていただきたいというのがお願いの本旨でございます。

合原参考人 自給率は、やはり明確に数字で目標と期限というか、ある程度の見直しは必要です。そういう形で持っていくべきだと思いますが、残念ながら今の国産材の流通市場の現場を見ていますと、一挙に四〇、五〇というのは極めて厳しい。だから、外材との競争と国産材の巻き返しというのをどこら辺に期限を設定するか、量をどういうふうに持っていくか、極めて難しい問題ですが、それはやはり追求というか、きちっと決めていくべきだと私は思います。

 価格対策については、とても大変で自分自身そういうことをやっていただきたいという気持ちはあるのですが、政策的に見て、農業の米の問題だとかをいろいろ考えてみますと、安易な価格対策はかえってまずいのではないかと思っております。例えば、育林事業を全部国家負担にするとか、そういう違う形でそこら辺のバランスをとっていく方がいいかと思っております。これは個人的な見解です。

木平参考人 今までの林業基本法の目的が林業総生産を伸ばしていく、これに対して今回の場合には森林の多面的な機能を重視する、こういう方向転換をする。これをもう少し砕いた言葉で言えば、私たちの日本の森林がより健全な森林を持つ、こういう意味だと思います。健全な森林というのは、おのずとそこで水源の機能もあり、木材機能もあり、環境もいい、こういうことだと思います。

 したがいまして、多面的な機能を持った健全な森林というものを何か数字であらわせるような指標というものがこれからは必要だ、こう思います。そうしますと、健全な森林を持つことによっておのずと木材の生産力も上がってくると思います。

 御指摘のように、日本の森林は今毎年八千万立方程度の成長量がありまして、年々ふえております。したがって、それが市場経済に乗るような状態になればおのずと自給率は上がるのではないか、こう思っております。

宮崎参考人 お答えをさせていただきます。

 三つの質問を通じまして言えますことは、やはりいかに国内材の需要拡大を図っていくかということではないかと思います。

 精神的に国民に対して訴えますのは、日本は木の文化の国でありますので、そういう考え方というものをやはり国民に根づかせていく、小国町でも木の文化の復権という言葉を使ってきましたけれども、そういう点が総合的には求められるんじゃないかと思います。

 それから、自給率を掲げていないというのは、農業以上に自給率を掲げることが難しい面があるんじゃないかというふうに思います。ただ、具体的に自給率の目標設定というものができるところから、例えば公共事業の中での土木あるいは建築とかいう面での目標設定なり、あるいはまた、難しいと思いますけれども、住宅の中での国内材使用率の問題であるとか、具体的にできるところからやはり設定をしていったらどうだろうかというような気持ちでおります。

 それから、再造林いたします場合には、特に小国の場合には、十年間ぐらいはつる、かずらが非常に多い。これは成長のいい林業地ほどつるが多いと思います。これを放置いたしますと全体の山を台なしにしまして、よく放置したらもとの自然の例えば広葉樹林になるんじゃないかとか言われますけれども、かずらがありましたらそんなことは絶対に起こりません。植林からこの十年間が林家が山を新しく育てていく上で一番経費がかかるところで、これがやはり将来にわたって夢が持てないので放置する大きな原因になっているんじゃないかと思います。

 熊本県でも、価格対策に関連いたしましては、三十五年生以下の間伐については一立方当たり四千六百円の助成制度がありまして、これは県と町が二分の一ずつです、こういうような制度が各県ごとに随分とられてきております。そういう面を参考にしていただきまして、国としての検討をしていただけたらと思います。

松本(善)委員 飯塚参考人に伺います。

 森林組合は、民有林の新植の約九割、間伐の約七割を実行するなど、森林整備の中心的な存在になっておりますが、素材生産では約二割に満たないという状態で、また、七割の組合では事業利益を上げているものの、その額は一組合当たり八百万円ぐらいと低額でありまして、三割の組合では一組合当たり五百万円の赤字を出しています。

 森林組合がみずからの森林施業を行う場合の実施能力をどう強化するかということがとても大事なんじゃないかと思うんですが、その点はどのようにお考えになっていましょうか。

飯塚参考人 森林組合は、造林、保育については非常に多くやらせていただいておりますけれども、素材生産がいまいちではないかというお話がございました。

 歴史的に考えてみますと、素材の生産については、地域によって素材生産協同組合という組織がございまして、この人たちが我々の入っていく前はそのほとんどを、彼らの範疇の中にあって仕事をしていらっしゃったという形の中で、現在でも、素材に取り組む組合というのはまだそこまで入り込めない場面がございます。しかし、素材生産協同組合の皆さんも、高齢化とか資本の問題あるいは信頼の問題等々を踏まえまして、森林組合と一緒になって仕事をやってくれ、あるいはやろうじゃないかというふうにだんだん変わってきて、わずかながら森林組合のシェアもふえているように理解をしております。

 それからもう一つ、赤字組合の問題でございます。先ほども申し上げましたけれども、現在、約千二百ぐらいの森林組合になっております。これは、今年度中に六百にしたいということで努力しております。

 その中をのぞいてみますと、いわゆる役場内森林組合と申しておるんですけれども、役場の中の例えば産業課とか経済課の中に職員が一人いて、特に造林を中心にした仕事をやっておる。そういう形の上での森林組合、これは特に都市部に多いんですけれども、そういう組合も実はまだまだたくさんあるわけでございます。したがって、そういう力の余りない組合とその近くの力のある組合を一緒にすることによって足腰の強い森林組合にしたいというので現在計画を進めておるところでございます。

 したがって、一つは、そういう力のないところの組合が余り成績が上がらない。それからもう一つ、逆な方向といたしまして、意欲的に生産活動あるいは造林活動等々を進めておる、そして事業も、素材市場であるとか製材工場あるいはプレカット工場を持つなどの組合が赤字を生み出しているところもございます。これらは、低迷する日本国経済の問題、それから外材との競争に勝ち得ない、要するにそういう中で残念ながら赤字を算出しておる組合もございます。

 その二つの森林組合があるものですから、法律の中で何とか活力を入れていただきたい、こういうお願いをしておるところでございます。

松本(善)委員 合原参考人に伺います。

 環境的な配慮を行う林業経営を国際的に認証していこうという制度として、FSC、森林管理協議会の森林認証制度があります。この制度を利用した森林環境管理施業の取り組みをどういうふうに見ていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。

合原参考人 お答えいたします。

 森林認証制度はとてもいい制度だと私は思っております。これは、違う側面から外材輸入を規制する一つの方法論だと思っております。これは三重県の速水林業さんがとっていらっしゃいます、よく存じ上げております。彼は簡単にとれるよというふうにおっしゃったんですが、やはり森林認証制度をとるにも、費用とそれに伴うスタッフ、プロセスというのはかなり厳密にたくさんのものが要るので、一般の現状の平均的林家がすべてそれを取得できるのは、今私は不可能だと思っております。

 であるがゆえに、国内で平均的な林家がとりやすいような森林認証制度というものを確立していただければ、それはそれなりに意味を持っていくのではないかと思っております。

松本(善)委員 宮崎参考人に伺います。

 山村の過疎化、高齢化の中で、森林の手入れをしない所有者、不在村地主、再々議論がされておりますけれども、これが増加をしております。私有林約千三百八十万ヘクタールのうち、約四分の一に当たる約三百三十万ヘクタールが不在村者所有の森林面積になってきた。こうした状況の中で、市町村長が何らかの措置、例えば公有林を含む公的管理に移す制度の創設などをとることが必要になってきたのではないかというふうに思いますが、その点についていかがお考えになりましょうか。

 それから、ちょっともう時間がありませんので、木平参考人にも一緒に伺います。

 改正案からは、現行基本法にあります林業の自然的経済的社会的制約による不利の補正という規定が削除されました。農山村の維持という面からも一層重要になっており、削除すべきではないんじゃないだろうか。また、我が国林業の不利を補正するためにどういう対策が必要と考えておられるか、木平参考人に伺いたいと思います。

宮崎参考人 お答えいたします。

 小国の場合には非常に不在村地主は少ない山林の所有形態になっておりますけれども、基本的には、先ほどからの質問の中にありました中で、やはりその地域の林業の施業形態といいますか、それぞれの地域によりまして、地形条件あるいは気象条件それから土壌、すべて違っておりますので、日本の場合、全国一律に林業の形態を決めて実施していくということには大きな問題があるというふうに思います。

 今申し上げましたような、地域の条件が一番わかっているのはやはり市町村でありますので、市町村が林業の将来に向かって独自の振興計画をつくっていって、それを事業主体となって実施していくということが求められると思います。その総体を国の林業政策にしていくべきだというふうに思います。

 それで、管理におきましては、公的な管理からさらに場合によっては公的な所有を図って、公益的な機能を持つ森林を維持していくということもやはり考えなきゃいけないんじゃないかと思います。

木平参考人 先ほど申しましたように、地域ごとに林業のやり方は非常に異なっております。保育にしろ間伐にしろ、あるいは道の入れ方、機械の使い方、それぞれ違うわけです。その違うというものは意欲的な人が開発していくものだ、そういうものを助長するということが必要ではないか、こういうことで、全国的な規制をできるだけ緩めるという方向が林業の活性化につながる、こういうぐあいに考えております。

 以上です。

松本(善)委員 どうもありがとうございました。終わります。

堀込委員長 次に、山口わか子君。

山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。

 参考人の皆様には、朝早くから大変お忙しいところを、私どものためにここへ来ていろいろ御説明をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、まず最初に、随分今までに皆様方からの御意見を伺いまして、ほとんどダブっているというふうに思うんですけれども、林業の労働力、担い手の問題というのが、特にこれからの林業を支えていく上では大変重要だと思っていますし、このことがやはりきちっと林業基本法の中で生かされていかない限り将来はないというふうに考えております。

 私も山形の方へ視察をさせていただきましたけれども、林業の経営をしていらっしゃる皆様のお話を聞きますと、やはり労働力、山に入って仕事をしたいという方はいらっしゃるのだけれども、なかなか四季を通じて仕事がない、特に冬場の仕事がないということになりますと、では、そのときの生活の手段をどうするのかという問題があって、せっかくその希望があっても林業になかなか従事できない、そういう悩みを訴えておられました。

 やはり何といっても、労働者を確保するためには、そして定着をさせていくためには、通年雇用でなければいけない、あるいは月給制、賃金を保障しなければいけない、普通の労働者と同じように休暇も欲しい、そして年金もちゃんと保障されたい、退職金も欲しいというふうに、せめてその地方の自治体に働く労働者の皆様、特に現場の労働者の皆様と大体同じくらいの条件を保障しなければ、恐らくなり手がないのではないかというふうに思っています。

 その辺で、今回のこの林業基本法にそういう具体的なきちっとした保障を求めていくような、林業基本法はもちろん理念法ですけれども、ただ理念だけ言っていてもどうにもなりませんから、そういう理念のもとに、具体的にそういった担い手の問題をどう訴えていこうとお考えか、飯塚様にお伺いしたいと思います。

飯塚参考人 いわゆる担い手の確保、定住の問題でございますけれども、委員おっしゃられたとおりでございまして、一番比重の大きな問題でございます。私の知る限りにおいて、彼らとお話し合いをさせていただく中で一番希望が高いのは、今おっしゃられた通年雇用の問題でございます。特に雪の深い地域においては、冬は切れてしまうから、林業は好きなのだけれども嫌なのですよねという残念な答えが返ってまいります。

 そういう場合における、私どもでは雨降り対策と言っておるのですけれども、例えば製材工場で働くとか、あるいは、林業構造改善事業等を利用してつくらせていただいた別の工場、いわゆる屋根のあるところで働けるような場面をつくり出して、一年間働いていただきたいというのが私どもの願いでございます。

 なお、参考までに、私どもの合い言葉は、役場の現業職員並みの待遇といいましょうか、退職金やあるいは厚生年金、これは農林年金と今は言っておりますけれども、そういうものの中で、彼らが万一のときとか、あるいはやめた後にも、何とか人並みの生活ができる場面をつくっていかなければならない。これは我々の責任だというふうに理解をしてやっております。

 なお、参考までに、よそから来ていらっしゃる方は、一番が通年雇用であって、二番目が住宅の問題でございます。昔ですと、おれのうちの離れにでも入って頑張ればいいじゃないかというけれども、今の時代ですからそうではなくて、例えば町営住宅、公営住宅みたいなものをあっせんして、そして快適な生活をしていただきたいというのが二番目でございます。三番目は、おかみさんの働く場所を見つけてくれと。そんなことで、役場とか農協さん等にもお願いをしながら、おかみさんの働く場所もあわせてお願いをしておるというのが三番目であり、四番目が、今以上の社会保障の問題。それらが彼らが強く望んでおる四つの大きな項目でございます。

 したがって、この法律の中にもそういった問題をここかしこに押し込んでいただきたい、魂を植えつけていただきたいというのが私どもの願いでございます。

 以上でございます。

山口(わ)委員 ありがとうございました。合原様は女性で林業を経営していらっしゃる、しかも長くやっていらっしゃるということで、私たちは、大変よく頑張っていらっしゃるなということで本当に尊敬を申し上げるわけです。

 林業というのは確かに、先ほどからお話がありましたように、農産物と違いまして、つくってすぐ売れてそれが直接収入になるというわけになかなかいかない。やはり木というのは、植えて育てて、大きくなるのを楽しみにして、そして木を売るという、非常に長い年月の林業の経営があるというふうに思うのです。そういう中で、日本の国は、せっかく長い年月育ててきたのに、外材が入ってきたり、木の価格が下がってしまったりというようなことで、大変な苦労があって今まで続けてこられたということは本当に大変だったというふうに思うのです。

 特に私たち消費者の立場から考えますと、林業に対する理解といいますか、理解というよりはむしろ情報不足と言った方がいいのではないかと思うのですけれども、なかなかそういう情報がないわけです。最近家を建てる人が大変多いのですが、ほとんど住宅産業に頼っている。では一体住宅産業で使っている木はどんな木を使っているのか、果たしてそれが国産なのか外材なのかもわからない。そういう中で、本当は国産材を使いたい、木の家を建てたいという思いがあってもなかなかそういう建築屋さんにお目にかかれないというふうな、消費者の側として見ますと、今のこういう林業の現状と本当に消費者が持っているニーズとがなかなかかみ合わないというところが私はあるのではないかというふうに思うのです。

 もちろん公的支援というのは物すごく私は必要だと思いますし、林業を育てていく上に、あるいは環境をきちっと守っていく上には、大変大事だというふうに思うのです。同時に、そうした運動をこれからどう広げていくか、自給率の向上も含めて、セーフガードもとても重要ですが、そのことをどうやって訴えていくか、そして消費者の皆さんと連携した一つの運動をつくり上げていかないと、恐らくやはり一部の理解に終わってしまう。

 そして、特に私が心配なのは、都会の皆様の理解だと思うのです。地方に森林があるところはもうわかっているわけですけれども、都会の皆様というのは、森林がなくても何か木が降ってくるような気がしていたり、水は山からつくられるなんということを知らなくても、ちゃんと水道をひねれば水が出るというふうに思っているので、なかなかそこら辺の理解ができないと思うのです。そういった意味で、これからともに運動を進めていく方向といいますか、具体策みたいなものがおありだったら、お知らせいただきたいと思います。

合原参考人 お答えいたします。

 先生の言われたとおりに、私どもサイドというのは、長年消費者の顔を見ないでやっていた業界ではなかったかということを反省しましたのが、私ども地元では台風災害の直前でございました。「今、森をめざせ」という催しをやったのが初めてで、それがちょうど十年前でございました。

 都会の人たちは今現在は、やはり森に対する抽象的というか観念的というか、心情的なあこがれはあると思います。しかし、具体的な接点は、先ほど木平先生もおっしゃったような形で、極めてまだ不十分でございます。私ども地元では、日本の杉桧を守る会というものも去年立ち上げまして、これは森林組合、林家、行政、木材協同組合、建築士会、それで、建築士会を通じてさらにエンドユーザーの方にアプローチしようという動きで、今まで業界内だけでいろいろな方策を練っておりましたが、木のよさをどのように伝えようかという運動を微弱ながら始めてまいっております。

 また一つには、女性の交流団体ですが、これは東京でございますが、MORIMORIネットワークというもので、山村地域と都会との交流というものもやっております。こういう運動はとても時間がかかると思いますが、さらにさらに、やはり地道に広げていくべきことだと思っております。

山口(わ)委員 ありがとうございました。

 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 続きまして、木平先生にお伺いしたいのですが、先ほど、女性の皆さんがたくさん森林にかかわっているというお話をお聞きしました。

 実は、私は長野県ですが、長野県にもたくさん山があり森林があるのですけれども、今私が非常に心配しているのは、学校の子供たちに森林を体験させるということがだんだん失われてきてしまったというふうに思うのです。

 今でも、学有林というのがどこの学校にもある、まあ田舎の方にはあると思うのですが、その学有林で、昔は、登って下草刈りをするとかいろいろな、間伐まではいかなくても、山に親しむ行為を通じて山の大切さを学習してきたというふうに思うのです。最近は非常に、カリキュラムに追われてしまうというのか、先生が面倒くさいというのか、よくわかりませんが、学有林の教育活動というのがほとんどなくなってきているという現状にあるわけです。

 実は、私は長野県ですけれども、長野県では、それを非常に心配いたしまして、自治体が予算をつけまして、お金を出して、学校にぜひこの運動を続けてほしいということで、お金がないということが理由なのか、忙しいということが理由なのか、よくわかりませんが、一年やっと今のところやってもらっているのです。

 やはり私は、こういう森林の大切さ、そして環境への重要性というものをどう子供たちに教育していくかということが非常に大切だというふうに思っていますし、そのことは、やはり林業基本法の中でもきちっと位置づけていかなければいけないのではないかなというふうに思っているのです。

 その辺について、教育的な配慮という面で御意見がございましたらお聞かせください。

木平参考人 私も長野県に二十年余り勤めたことがあるのですけれども、おっしゃるように、長野県のように比較的山に近いところでも子供さんはほとんど山に行かないのが現状です。そして、学校においても、かつては学校林、校有林というのがあったのですけれども、そういうところの中で授業を行うという機会は非常に少ないと思います。

 したがいまして、子供さんは言葉の上での森林、環境ということは大変達者なんですけれども、感覚として、体験に基づくものがないということなので、御指摘のように、ぜひ実体験に基づく森林の理解を進めなければならないと思います。

 なぜ、そうなるか。これは現在の小学校、中学校の先生方が実体験がないからだ、こう思います。現在、主に三十歳あるいは四十歳の学校の先生方も、私が接しますと、意外に実体験がない。山へは一度も行ったことがない。そういう方が多いです。

 私は、前の大学におきましては、まず学校の先生方を山へお招きしていろいろな体験をしていただこう。間伐もいい、木を切ることもいい、虫もいいということで、お招きして、その実体験を持って子供さんたちに教えていただきたい。今の学校の先生は教科書で、マニュアルで書いてあったことを環境教育だとして子供さんに伝えられる。これは迫力がありません。そういう意味で、ぜひ学校の先生をまず第一に、そして、その結果として子供さんに森林の大切さを感じていただく機会をつくりたいと思っております。

 したがいまして、この林業基本法の中でも、将来の、これからの学校林の活用あるいは週休二日制に伴う余暇時間の利用として、自然体験というものをぜひ有効に利用されるような対策を進めていただきたい、こう考えております。

山口(わ)委員 ありがとうございました。

 小国町長の宮崎様にも今のことはお願いしていきたいというふうに思っています。

 特に、自治体から見ますと、森林や林業を着実に育成していく、そして環境面でもきちっと配慮していくということは、一つの自治体の財政にとっては大変な問題ではないかというふうに思っているのです。

 実は、長野県知事が、ダムをやめまして造林事業を今年度から始めることにいたしました。そして、県としては珍しいと思うのですが、一挙に造林に二十三億のお金を予算としてつぎ込んで造林を進めたいというふうに言っているわけですけれども、自治体として、公共事業の一環として造林事業を進めるということはなかなか難しい問題がたくさんあるわけです。

 なぜかといいますと、公共事業というのは、どうしても建設、土木関係に集中をしていまして、それが主役になっているわけです。一つの自治体がそういうことを始めるということは、自分の予算でやらなければいけないということがありますので、これからそういう事業を進めるのは非常に大変になってくるわけです。

 先ほどからも言われていましたように、それぞれ地方分権ですから、やはり自分の自治体に合った仕事を自由にできるような公共事業のあり方というのが非常に大切になってくるというふうに思うので、小国町長でいらっしゃいます宮崎様もきっとそういう方向でいろいろ御苦労されているのだと思うのですが、最終的にはお金がないということになるんじゃないかというふうに思っているので、この林業基本法を通じて、林業にもっと予算をつぎ込む、そして自治体が自由に使えるようなことをどういうふうにこれから御要望されていくのかということが一つ。

 それからもう一つ。やはり長野県で、実は、入札をするので、希望の業者を募ったところが、なかなか希望する業者が少なかったわけですね。何でかといいますと、今までずっと林業を余りやってこなかったのに、突然そういう業者選定をやりましても、なかなか参入できない、それだけの人材がそろっていないということがあったと思うのです。林業を育てていくための林業従事者の教育をどういうふうにこれから考えていかれるのか。

 その二つについて、お答えをいただきたいと思います。

宮崎参考人 お答えさせていただきます。

 多分、長野県あたりで取り組まれる造林事業は、公有樹林といいますか、環境林主体というような形になってくるんじゃないかと思います。そういう造林事業におきましては、これはやはり民間独自でおやりなさいというのも無理だろうというふうに思いますので、自治体が取り組んでいくということになると思います。

 林業基本法も、環境林、公益的機能を持つ森林と、経済的機能を発揮する経済林というふうな分け方をいたしておりますけれども、経済林にとりましては、先ほどから申し上げておりますように、やはり需要をいかに拡大していくかということしかないというふうに思っております。

 その地域の林業政策というのは、その担い手であります住民に密接につながり、そしてまた、その地域の地理的条件を十分に知り、良好な将来に向かっての森林の形成を考え、実行できるのは、やはり末端の自治体であるというふうに思います。

 そこがやはり責任を持って、地域行政内の山林の維持管理、そして理想的な山をつくっていく、そういうプランをつくって実行していく。それに対しての政策、財政的な支援を国が行っていくというのがやはり一番望ましいというふうに思いますし、また、地域としての自覚、住民の自覚、それから自治体、行政の自覚も今は十分にあるというふうに思っております。

 それから、林業の担い手ですけれども、これは、私もなかなかできないぐらい非常に厳しい仕事です。夏場の暑い中で、それこそハチとか蛇がおりますし、重い刈り払い機とかを使ってする下刈り作業とか、それから伐採、搬出には大きな危険も伴いますし、なかなか簡単に担い手を育成していくというのは難しいと思います。ただ、唯一の救いというのは、やはり山の大切さというものを感じ、あるいは自然と関係のある仕事をやりたいという人たちは実際たくさんおりますので、そういう人たちの中から技術者を育てていく。熊本県はグリーンワーカー制度というのがありまして、その制度の中で短期間に関連の技術取得ができるようになっております。

 それから、先ほどお話ししましたように、ある一定期間はどうしても、生活がきちっとできるような、仕事に見合った給与を確保することは難しいというふうに思いますので、その間の支援。

 それから、担い手はいろいろな形があってもいいんじゃないかと思います。森林組合が中心であっても、あるいは第三セクターが中心、民間の事業体が中心、それから個人で、一人なりまた家族、子供さんを含めて二、三人でやっていくとか、さまざまな担い手の形態を想定してそれを支援していくということではないかと思います。

山口(わ)委員 どうもありがとうございました。

堀込委員長 次に、金子恭之君。

金子(恭)委員 21世紀クラブの金子恭之でございます。

 本日は、参考人の方々には、大変お忙しい中、貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。

 きょう、宮崎町長にお越しいただいておりますが、宮崎町長の小国町は大分県境の熊本の北東部、私は熊本の南、球磨地方で生まれておりまして、熊本の県南地域も林業・木材産業が非常に盛んな地域でございます。私の父も林業をやっておりまして、私は長男でございまして、そういう意味では父に後継者になれなくて申しわけないなというふうに思っているわけでございますけれども、そういう環境でありますので、今の林業が抱えている状況というのは肌で感じているわけであります。

 まず最初に、飯塚参考人にお伺いいたします。

 うちの父も長いこと森林組合の理事をやらせていただいているわけでございますが、新たな林政において施業の集約化というのは非常に重要なことではないかなというふうに思われます。そういう意味では、今後、森林整備の担い手としての森林組合の役割というのは大きなものだろうというふうに思っているわけであります。

 今、全国の平均で七割の加入者が森林組合にいらっしゃるというふうに聞いておるんでありますが、その中で、今回、員外利用も認められているわけでありまして、造林事業、間伐事業等ございますが、非組合員所有の森林についてもその整備を推進していくお考えはあるのか、そのあたりをお伺いいたします。

飯塚参考人 お父様を通じて森林・林業を肌で感じていらっしゃる先生がおられまして、大変意を強くしておるところでございます。

 お話のあったように、森林組合は地域の組合員の組織でございます。組合員が会費を払ってそして運営をしておるというふうな観点に立つと、森林組合員の持っておる森林というものを重点的に最初に手を加えさせていただきたいというのは当然のことだと思っておりますけれども、しかし、参考人のお話にもあったとおり、山を守る、緑を守るというのは、そこだけを守っただけでは意味が薄いというお話が先ほどございました。したがって、委員お尋ねのように、それ以外の方にも、当然のことながら、大きな受け皿として私どもは受けとめさせていただき、そして御理解をいただき、契約を結んでいただく中でそういった施業をさせていただくことはやぶさかではございません。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、合原参考人にお伺いいたします。

 先ほど宮崎町長の方からもちょっとお話があったんですが、国の強力な指導によって、植林をしなさい、山に手を入れなさいというようなことで、一生懸命に林業を営んでいる方々はこれまで努力をしてこられたわけでありますが、専業に近いほど、また大きな経営体になるほどそれまでの融資、いろいろな負債を抱えているのが現状であると思います。その中で、懇談をする中で、この負債をどうにかしてください、やっと五、六%の金利を今まで払っていた、これから元本を償還していかなきゃいけない中で、今木材を切っても収入にならない、返すことができないんだ、返したくても返せない状況が続いているというのが現状であります。

 そういう中で、これまでも施業転換資金というのはあったわけでありますが、今回新たにこの法律の中で、農林漁業信用基金の無利子資金の融通対象の拡大というのがございます。その中で、伐期の長期化それから森林の複層林化というのがあるわけであります。これについてでございますが、もちろん、四十年生より五十年生、五十年生より六十年生の方が価格は上がるわけでありますが、今後の長いスパンの中で果たしてそれがいいのか。例えば、四十年で切った方がいいのか、それともこれから長伐期化を進めていった方がいいのか、そのあたりについては考えていらっしゃる方も多いかと思います。

 そういう中で、長伐期化のことについて、森林の複層林化について林業経営の立場でお話をお伺いしたいのと、もう一つ、隣に飯塚会長がいらっしゃる中で答えにくい場面があると思いますが、今、造林事業そして間伐事業については、森林組合を通した方が個人でやるよりは補助率が高いということで、非常にお得なわけですね。そういう中で、これまで林業を大規模にやっている方々は、自分のところで作業員を抱えて管理をされているわけでありますね。そういう意味では、そういう林業家の中には森林組合に対して非常に不満を持っていらっしゃる方もいるというふうに聞いているわけでありますが、この二者の関係についてどうお考えか、そしてどうあるべきか、この二点についてお聞かせください。

合原参考人 お答えします。

 長伐期化と複層林についてなんですが、長伐期化は必要なことだと思います。というのは、やはり国産材のこれからの品質向上と供給の安定のためにも必要でありますが、むやみやたらな長伐期化というのは、特に九州地方では挿し木造林でございますので、挿し木造林の杉の品種は二、三百種類ございますが、その中で、やはり人間と同じで寿命が全部違いますので、百年生きるものもあれば百五十年のものもあれば、五十年しか生きない品種もございます。だから、そこら辺は、やはり山に合わせて伐期を所有者並びに管理運営者がきちんと適切に計画していくという必要性があるかと思います。

 それから、複層林という問題ですが、これも、針葉樹の複層林は私もやっておりますが、管理運営が極めて難しい育成方法でございます。だから、複層林にするとすれば、やはり針葉樹の長伐期に合わせた下の広葉樹の天然更新、極めて日本は、特に九州なんかは非常に気候風土も豊かでございますので、あえて広葉樹を植えなくても、というのは、今の広葉樹の造林技術は日本は極めておくれておりまして、適正な樹種を適地に植えられるとは今必ずしも限らない現状でございますので、むしろ天然更新というか、そこに生えてきた、自然に生育した広葉樹を針葉樹の長伐期の森林の中に育成していくという方法が私は個人的には適切だと思っております。

 それと、最後の、森林組合と個人の林家の関係でございますが、森林組合というのは協同組合でございます。もともと林家の、お互いの共同の利益のためにできた組合でございますので、基本的にはそういう方向であらねばならないと思っておりますが、現実的にはやはり国の林業施策の枠組みの中で動いてしまう組織体になってしまったことに個別林家との矛盾が生じていると思います。

 だから、どうしたらいいかというのは、やはり森林組合自体が林家の協同組合だという原点に戻って、森のために厳しく下からボトムアップして意見を反映させていただければ幸いかと思います。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、木平参考人にお伺いいたします。

 先ほど、若い学生さんたちが非常に希望に満ちて勉強されている、女性の方も非常に多いということで、女性が多いことはどういうことなのかなというのが私もちょっと見当がつかないわけでありますが、そういう若い人たちが希望に満ちて勉強していただくのは非常にいいことだなというふうに思ったわけであります。

 先ほどのお話の中で、多面的機能のために複雑な構造の森林、煩雑な作業を現場に押しつけてはならないというお話がありました。今、合原参考人にちょっとお話をお伺いしたのですが、これと複層林化というのはどういう関係になるのか。これは複層林化とは全然違う意味なのか、よくわかりませんが、そのことについてお答えしていただきたい。

 学生さんに対して今後の林業についてお話をされていると思うのですが、これから低コスト化、また高性能機械を使ってやらなければいけないし、木材の価格が上がるようにやっていかなければいけないし、需要も喚起しなければいけないというようなことがあります。その中で、今後の見通し、どういうふうに先生は見ていらっしゃるのか、そのあたりを簡単にお聞かせいただければと思います。

木平参考人 最初に、私は、複雑な構造の森林、あるいは煩雑な作業を押しつけてはならないと先ほど申しました。これは、その一つの例として複層林が含まれております。

 それぞれの地域においては、伝統的に択伐という複雑な作業を行ってきた、それでもって利益を上げてきた林業地もございますし、あるいはもっと単純な皆伐というやり方で利益を上げてきたところもあります。したがいまして、その地域地域の伝統あるいは自然条件に合わせてやるべきだというのが私の理論であって、自然環境が重要であるからということでどのような煩雑な仕事でも現場でやれというのは現実的ではない、こういう意味でございます。

 それから、第二点の、現在森林学科の学生さんの五割が女性である、あるいは、男性の中にも森林学科を希望する人は大変多いのですけれども、やはり環境問題という言葉を胸に秘めてこれを勉強したいという方が多いわけです。したがいまして、環境という言葉の中には、必ずしも伝統的な林業、土木だとか伐出とかそういう荒っぽい世界ではない、新しい森林の世界あるいは林業の世界というものを皆さん若い人は持っているのではないか、こう思います。

 しかし、一たん大学へ入ってきて、あるいはこれから現場の森林の問題を見た場合には、そういう夢だけでは問題は何も解決しないのだ。地域の問題にしろ、あるいは世界的な環境、森林の問題にしろ、まず正確な知識を得る、それから二番目には、知識だけではなくて、日本の林業の難しい問題とか、あるいは世界で起こっている困難な問題を体験する、この二つのことを私は並行してやっております。

 しかし、大学での教育というのは、極めて限られた時間であって、限られた機会しかございません。それで、そういったせっかくのいい機会を勉強されながら、卒業された後林業に関係のないところに行かれる人が現在多いという状況であります。そういうことで、大学で勉強したことが直接森林の管理あるいは林業の向上に結びつくようなこれからの林業界の活発化を私は心から願っております。

 以上です。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 最後に、宮崎参考人にお伺いさせていただきます。

 私が二十年近い前に参議院の先生の秘書になりたてのころに、宮崎町長は一期目の新進気鋭の熊本で一番若い町長でございまして、いろいろ私も御指導いただいたわけで、こういう国会の場で質問させていただくということを非常に幸せに思っております。

 小国町というのは、日本でも有名な林業、木材を通じて町おこしをやっている町でありまして、建築基準法、いろいろある中で、日本初の木造立体トラス構法を使って、ゆうステーションとか林業総合センターとか小国ドームとかいろいろなものをつくっていただいているわけであります。

 公共建築物におきまして、地場産の杉を生かした木造建築に取り組んで、木材の需要拡大に努めていらっしゃる。今各地を回って聞くのは、林業をよくするには、需要をふやすために国が努力をしてくださいというようなことはお聞きするわけでありますが、それを率先して地元の町でやっていただいているということは非常にありがたいことであるし、これからも引き続きそれをやっていただきたいという気持ちでいっぱいであります。

 そういう中で、先ほど資料の中で、林業先進地域の小国町でさえ、高齢化が進み、一般林業従事者も減少し、新規就労者もこの何年かほとんどいないような状況だというふうに見させていただいたわけでありますが、先ほど山口委員からの御質問にありました後継者の問題というのは、非常に大きな問題だろうというふうに思います。

 その中で、労働力と後継者確保のため、第三セクター方式の林業労働力を提供する会社を設立していらっしゃるわけでございますが、そのほかで後継者対策として町独自に行っていらっしゃる支援策というのをお聞かせいただければというふうに思います。

宮崎参考人 お答えをさせていただきます。

 その当時は、大変お世話さまになりました。

 林業地みずからその地域の林業資源を活用していくというのが基本でなければいけないというふうに思っております。それを公共建築物を中心に行ってきた中で、林業関連の企業が元気を出して、例えば小国ウッディという協同組合の新しい製材工場が中堅の製材業をやっていた人たちが集まってつくられておりますけれども、その地域の資源を活用することによって初めてその関連産業が育っていくということもわかりました。

 後継者の問題につきましては、先ほど統計資料の中で見ていただきましたように、将来の予測をしますと、林業後継者がゼロになる可能性、あるいは高齢化して支えられなくなる可能性があるというようなことで、第三セクターを設立いたしました。

 実は、第三セクターを設立しました昭和六十一年当時は、林業関係の第三セクターでも補助事業の適用は受けられないということで、林業関係の機械の導入あるいは運搬のトラック等の導入も、森林組合に購入してもらいまして、それを貸借関係で借りるというような状況でした。平成三年に法律を改正していただきまして、林業関係の第三セクターには補助事業を適用するということ、ここらあたりも、国の方で担い手をいろいろな形で支援していく必要があるということを認めていただいた結果ではないかというふうに思っております。

 第三セクターの中で森林整備の経費の収支をとっていこうとすれば、どうしても林家負担を多くしなければ、いわゆる給与あるいは福利厚生を充実させることはできません。それは現状ではできませんので、町が支援する。あるいは、小国町では地籍調査に四十年くらいかかります。この部分で、第三セクター、林業関係の会社に委託できる部分は実は委託してやっております。総合的に加工とか建築とかを組み込むことによって、全体の第三セクター、林業関係の会社の収支をとっていかざるを得ないのではないかというような努力をいたしております。

 それから、第三セクター以外の個別に町独自でということは、今のところは具体的にはやっておりませんけれども、これからは、いわゆる保安林、あるいはまた緑資源公団等によります分収あるいは保安林整備の中の需要を多く出していくことによって、安定した林業の職場をつくっていくということをもう具体的に取り組み始めております。

金子(恭)委員 どうもありがとうございました。

 時間が来ましたので、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

堀込委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明十三日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会




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