衆議院

メインへスキップ



第16号 平成14年6月11日(火曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月十一日(火曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 原田 義昭君
   理事 佐藤謙一郎君 理事 鮫島 宗明君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      後藤田正純君    七条  明君
      中本 太衛君    西川 京子君
      浜田 靖一君    林 省之介君
      宮腰 光寛君   吉田六左エ門君
      井上 和雄君    小平 忠正君
      後藤 茂之君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    楢崎 欣弥君
      堀込 征雄君    山内  功君
      江田 康幸君    高橋 嘉信君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十一日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     林 省之介君
  高木  毅君     中本 太衛君
  川内 博史君     井上 和雄君
  後藤  斎君     後藤 茂之君
同日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     高木  毅君
  林 省之介君     小西  理君
  井上 和雄君     川内 博史君
  後藤 茂之君     後藤  斎君
    ―――――――――――――
六月七日
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(阿部知子君紹介)(第三九七六号)
 同(植田至紀君紹介)(第三九七七号)
 同(金子哲夫君紹介)(第三九七八号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第三九七九号)
 同(日森文尋君紹介)(第三九八〇号)
 同(山内惠子君紹介)(第三九八一号)
 同(金子哲夫君紹介)(第四一〇一号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第四一〇二号)
 同(穀田恵二君紹介)(第四一〇三号)
 同(今野東君紹介)(第四一〇四号)
 同(中林よし子君紹介)(第四一〇五号)
 同(日森文尋君紹介)(第四一〇六号)
 同(山内惠子君紹介)(第四一〇七号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第四三〇〇号)
 諫早湾干拓事業の工事中止と再見直しに関する請願(仙谷由人君紹介)(第四一〇八号)
同月十日
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第四四五二号)
 同(堀込征雄君紹介)(第四四五三号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第四六三九号)
 同(山口富男君紹介)(第四六四〇号)
 同(山花郁夫君紹介)(第四六四一号)
同月十一日
 BSE緊急措置法の成立に関する請願(加藤公一君紹介)(第四七八〇号)
 同(藤木洋子君紹介)(第四七八一号)
 同(山口富男君紹介)(第四七八二号)
 同(枝野幸男君紹介)(第四九五九号)
 同(大谷信盛君紹介)(第四九六〇号)
 同(菅野哲雄君紹介)(第四九六一号)
 同(五島正規君紹介)(第四九六二号)
 同(重野安正君紹介)(第四九六三号)
 同(達増拓也君紹介)(第四九六四号)
 諫早湾干拓事業の工事中止と再見直しに関する請願(枝野幸男君紹介)(第五一一一号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)(参議院送付)
 水産業協同組合法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)(参議院送付)
 漁業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)(参議院送付)
 遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案、漁業災害補償法の一部を改正する法律案及び遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として水産庁長官木下寛之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 きょう、まだ大臣がお見えでありませんので、副大臣にお聞きしたいと思っております。
 BSEの法案が先般通ったんですが、副大臣に随分いろいろと御尽力いただいて、その中で、きのうちょっとお話を聞いて気になることが一つありました。
 中小企業、いわゆる零細企業の流通業者、小売業者等々に対して、必要な措置といいますか、当然、無担保無保証、超低利の融資、千二百五十万の融資の案件ですが、これについて十分その対応をしていただくとお話をしておったんですが、どうやら、お話を聞いたところでは、昨年度の三月、だから、BSEが九月に発生して以来の決算書、いわゆる直前の決算書をつけろということが条件らしいんですね。副大臣は御存じかどうかなんですが。
 となりますと、直前の決算書を融資の、いわゆる無担保無保証、超低利融資の条件として出させるということになると、昨年九月以来、もう三割、四割売り上げが減って、小売、焼き肉業者というのは大変な状況でしたから、当然厳しい決算で、それだと融資できない、ほとんどが融資不可能だというようなお話で、非常に今窓口が困っているという話をきのう連絡を受けたんです。
 副大臣、直前の決算書じゃなくて、九月発生以前の前の決算書、これで融資を申し込んでいただきたい、そういう配慮はいかがなものかと。
遠藤副大臣 BSEに関連して、中小零細流通業者が大変苦衷の渦の中におるということも承知しておりますし、金融窓口業務において、いろいろその機関によっては条件をつけておりまして、さまざまなようであります。先々週も中小企業庁次長と話をしまして、金融の窓口で統一できるように、この融資制度を立ち上げたそもそもがBSEによって苦衷に追い込まれた業者の救済、支援であるという趣旨に沿った対応であってほしいということを強く求めたところでございます。
 委員おっしゃることはまことにもっともでございますから、直ちに確認をし、かつそのような方向で支援が行えるかどうか、あるいは行えるようにさせていきたいと思いますので、よろしく御指導願いたいと思います。
山田(正)委員 ということは、BSEについては、それこそ政府もその責任を感じているということで何度も陳謝しておりますし、その意味で、損害をかけた中小零細企業に対して、今言ったように、直前の決算書じゃなく九月以前、BSE発生以前の決算書をもとにした配慮をするということでよろしいですか、副大臣。
遠藤副大臣 そのように金融機関に徹底されるように中小企業庁と協議をしたい、こういうことを申し上げました。
山田(正)委員 ぜひそういう方向でお願いしたい、そう思います。
 それでは、きょう、水産の問題についていろいろお聞きしたいと思っておりますが、私の地元というのは、壱岐、対馬、五島とか、いわゆる漁業者、特に零細の沿岸漁業者の多いところなんですが、昨年、対馬のイカ釣り漁業者が二人続けて万関橋から飛び込み自殺いたしました。
 というのは、イカ釣り漁業が食べていけなくなった、いわゆる経営上借金を抱えて、ほとんどのイカ釣り業者は三千万から五千万ぐらいの負債を抱えておりますから、その支払いができなくなってやむを得ず自殺するに至ったという大変深刻な状況なんですが、なぜこのような状況に至っているかということなんです。
 これは、ひとえに魚価が低迷している、イカも、少し回復したようですが、キロ八十円ぐらいで非常に低迷してきているということにあるわけですが、なぜこのように魚価が低迷しているか。その理由はどこにあると副大臣はお考えでしょうか。
宮腰大臣政務官 今、山田先生の方から大変深刻なお話をお聞きいたしまして、まさに大変な状況にあるというふうに思っております。
 特に、イカの価格の動向につきましては、平成十一年以降、我が国の周辺水域の生鮮スルメイカの豊漁及び海外イカ釣り漁業の好調によりまして、生産量が、平成十年の約三十九万トンから、平成十二年の六十二万トン、平成十三年の五十二万トンと増大をしてきていることを背景にいたしまして、生鮮の産地市場価格で、平成十年には一キログラム当たり三百二円であったものが、平成十三年には同じく一キログラム当たり百二十四円と、半分以下に価格が低下をしてきているという状況にあります。
 なお、この間の輸入量は年間十万トン前後で、ほぼ横ばいで推移をしてきていたところでございます。
 しかしながら、平成十三年以降、海外イカ釣り漁業における漁獲量の減少等によりまして国内在庫量が減少をいたしまして、この結果として昨年十二月以降の価格は上向いてまいりまして、本年四月現在で一キログラム当たり四百二十四円ということで、最近のイカの価格につきましては上昇に転じているというふうな状況にございます。
山田(正)委員 最近持ち直したということは聞いているんですが、一般に、魚価、魚の価格の低迷というか、非常にこの十年来大きく下がってきている。この十年来大きく下がってきたのは、大きくは輸入の魚によるものだということはだれしもが認めていることと思います。当然、いわゆる魚価の安定ということの政策をどういうふうに水産庁、農水省はとっていくのか。
 例えば、野菜の価格の場合だったら、先般この委員会でもいろいろ審議いたしました。野菜については、過去九年間の平均価格と市場実勢価格との差額、その差額の九割までを、登録して掛金を積み立てた場合には補償して支払いがなされている。したがって、いかに野菜の価格が下がろうとも、ほとんどの野菜農家にとっては実質的にはそう打撃はない。
 ところが、魚価の場合の安定制度というのは、一体どのようなものがまずとられているのか。魚価安定対策の概要だけ、ひとつ簡単に副大臣、話していただけますか。
宮腰大臣政務官 魚価の安定を初めとする漁業経営の安定化を図る観点から、水産物につきましては、水産物調整保管事業と漁業共済事業等を実施してきているところでございます。
 調整保管事業につきましては、主要な水産物ごとに過去の水揚げ量や価格をもとに当該年の最低買い取り価格を定めまして、魚価が最低買い取り価格を下回るおそれがある場合に最低買い取り価格以上の価格で生産者団体がこれを買い取り、保管をし、財団法人の魚価安定基金が買い取り代金の借入金利及び保管経費の一部について助成をするものであります。
 それから、漁業共済制度につきましては、先生御存じのとおりでございますけれども、過去の漁獲金額の平均を補償水準、共済限度額といたしまして、契約期間中の漁獲金額がこの補償水準を下回った場合の損失を補てんすることとしておりますけれども、この漁業共済制度につきましては、自然災害等に限定をされた共済制度ではなくて、漁獲共済では不測の原因による漁獲金額の減収にも対応しているため、結果として一定の漁業収入が確保されているところでございます。
 例えば、いわゆる大漁貧乏の場合も漁済制度の対象とされているところでありまして、その意味では野菜の制度よりも進んでいる面もあろうかというふうに考えております。
 水産物と野菜とでは、その商品特性や生産の態様等が異なりますことから、それぞれの特性に応じて制度が講じられているというふうに考えております。
山田(正)委員 まず、財団法人魚価安定基金、これについて、水産物の調整保管事業をやっているということですが、これは実際に機能していると言えるのかどうか。
 例えば、イカ、アジ、サバ、この十年、二十年の価格をずっと見てきますと、三倍になったり四分の一になったり、非常に変動が激しい。変動が激しいということは、いわゆる調整保管、安いときにどんどん買い入れて価格を安定させよう、高くなったら、そのときに放出しようじゃないかという制度だと思うのですが、それは機能していないと言えるのじゃないのか、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 機能していないというふうには言えないと思いますね、価格低迷時に。
 つまり、漁業の場合には、海の状況、海況でありますとか、漁況でありますとか、そういったことに影響されることが多いわけでありますので、しかも冷凍するということが可能でありますので、たくさんとれればこれを保管する、たくさんとれたものは保管する、そういう機能を持てなければ、需給状況によって価格は暴落していく。
 ですから、これは市場に出す量を冷凍保管によってコントロールすることによって、価格の安定が図られる。しかし、それには経費がかかりますね。保管料等の経費がかかるわけであります。そういったものは支援するというようなことでありますので、私は十分機能している、このように考えます。
山田(正)委員 機能しているというのであったら、いわゆる魚価安定基金制度ですから、当然、安くなったときにそれを買い支え、価格が倍になったり半分になったり三分の一になったりということはあり得ないはずなんです。機能していないから、これだけ価格の変動があり、そして安い魚価が生じて漁民は食べられなくなって、失業もできない、失業しても油代にもならないといって、そしてとうとう生活苦で万関橋から飛び込んで死ぬような状況、そういうことになっているのじゃないのか。
 実際、機能していないからこれだけの価格の変動があるんじゃないですか。機能しているんですか、していないんですか。機能しているんだったら、どれだけの量をどれだけ買い支えている、予算はどれくらいあると。具体的に質問通告しているはずなんだけれども。
武部国務大臣 これは市場経済が前提でありますから、完全に価格を一定水準に安定さすなどということまで考えるのは容易ではありません。しかし、一定の需給調整というものは機能している、こう思います。基金は、今事務当局の話ですと三十八億円だそうであります。
山田(正)委員 一体、この魚価安定基金、財団法人には、年間どこからどれくらいのいわゆる収入があって、そしてそのうちどれくらいのお金で買い支えしているのか。その収入というのはどこから入ってきているのか。そして、その買い支えの場合に、市場から買い支えているのか、どういう魚種をどのようにしているのか、具体的に質問通告しておったはずです。
武部国務大臣 予算については、十分基金が確保されているという考え方で、足りなくなった分を毎年予算措置をしている、今年度は五億円を措置しているということでございます。
 それから、買い支えるということでありますが、産地市場で買い支えるという考え方であります。
山田(正)委員 予算は十分確保されるって、魚価安定基金がどれくらいの予算で、資産内容はどれくらいなのか。これだけ価格の変動が激しいということは、予算が三十九億円ぐらいで、それで本当に魚価安定に寄与していると言えるのか。
 単なる名目上、魚価安定制度がこうしてありますよ、いわゆる水産庁の天下りがそこで理事として高い給料をもらっている、そういう程度のものでしかないのかと言っているので、だから具体的にその内容をつまびらかに、大臣に明らかにしていただきたい。
武部国務大臣 細かいことまで私は十二分に承知しておりませんが、三十八億の基金のうち、昨年は十六億円使ったということであります。さらに毎年五億円程度予算措置しているということでございまして、この金額は十分対応でき得る金額だ、こういう認識でやっているということでございます。
山田(正)委員 五億か六億買い支えているということですが、大臣、野菜の基金制度は、先般この委員会で質問したから、どれくらい予算があって、どれくらい毎年買い支えしているか、大体まだ御記憶にあると思う。十分大臣も勉強なさったと思うので、それと比較して、どう思われるか。
武部国務大臣 私は、細かい数字まで覚えたと思うとまた数字を忘れたり、また勉強したり、だんだんわかってきていますが、二百六十億ぐらいじゃないかな、こう思っておりましたが、国の資金造成額は平成十三年六百十五億円、十四年度七百十七億円、事業実施額は二百六十二億円。ちなみに水産物については、資金造成額は平成十三年五億円、十四年度五億円、事業実施額は平成十三年度十六億円ということでございます。
山田(正)委員 大臣、どうやらすぐ御記憶ないということですが、野菜の基金制度は約一千億円、そのうち、ことし、たしか二百五十億ぐらいの野菜農家に対する直接補償、いわゆる不足払い制度は、市場価格と過去九年間の平均価格との差額の支払い額だけで二百数十億になる、野菜の場合。約一千億の制度がある。
 では、魚の場合に、単なる価格安定のための買い支えだけで、年間で五億ぐらいしか使わないということはどういうことなのか。いや、大臣にお聞きしたい。僕はその事情を聞いているので、数字のことを聞いているんじゃないんだ。
武部国務大臣 よく詳しい人に答弁していただくのが一番親切ではないか、こう思いますので、本当は水産庁長官に答弁を求めた方が正確なんだろう、こう思うのでございますが、委員が御指摘されていることは、水産物と野菜と比較して、補給金制度というものが、こんなに金額が違うじゃないか、一体どうしてそんなに違うんだということなんだろうと思うのです。
 先ほどもちょっとお話ししましたように、野菜の場合は、一般に言う保存が困難でありますね。また、作物転換が容易にできます。私どもも、今、地元ではタマネギのことで大変苦労しておりますけれども、十月から三月までは北海道が市場の九割を占めているわけでありますから、何で価格形成、北海道だけでもできないんだ、こういうようなことをよく話をするのですが、野菜というのは作物転換が容易にできる、したがって、価格が低下した翌年は作付が減ってしまう。それから、価格が高騰した翌年は、今度は、これはいいぞというので作付が増加していく、逆に低落するというような悪循環に陥りやすいんですね。
 ですから、生産者に補給金を交付することによって生産、出荷を安定化させるということによりまして、次期作の安定的な確保を図っていく、安定化させなければ悪循環に陥るというようなことで、現在の指定野菜価格安定制度ができていると私は承知しているのです。
 しかし、一方、水産の場合は、一般に冷凍による保存が容易である、これは委員御案内のとおりだと思います。それから生産量は海の状況によって、いわゆる自然要因によって大きく変わる。したがって、生産者に補給金を交付して価格の安定を図ることが需給の均衡に直ちに結びつかない。その上に、魚種、漁法が多岐にわたっております。
 だから、委員御指摘のようなことは、私どももつくづく感ずるのですよ。オホーツクなんかも、アキアジがとれ過ぎて貧乏したり、とれなくて困ったりということはありますが、一経営体が多種多様な魚種を漁獲し、かつ当該魚種も経営体や年ごとによって変化するという特徴を持っているために、野菜のようにあらかじめ国や生産者等が資金を造成した上で保証基準額を決め、実勢価格との差を補給金として交付するということにはなじまないという面があるのではないか、こう思っておりまして、漁業の性格を勘案し、不測の原因による漁獲金額の減少等に対応した制度になっている、このように私は承知しているわけでございます。
山田(正)委員 大臣、長々と説明しましたが、考えてみていただきたい。
 野菜の場合には、価格安定のために計画生産が可能である、転作が可能である、大臣が言ったように。ところが、水産の場合はそうはいかない。イカ釣りならイカ釣り、アジ、サバとか、ヨコワ釣りならヨコワ釣りというふうに、ほぼ決まっている。その中で、毎年、とれたりとれなかったり、大漁になったら当然価格は下がる。となったら、魚ほど価格安定に対して、行政が、政府が野菜以上に力を入れなきゃいけない、それは理の当然ではないのか、大臣、どうですか。簡単に、イエスかノーか、それだけで結構。
武部国務大臣 そういう考え方はそのとおりだと思います。
 しかし、それを価格政策一本でやり得るのかというと、そうはいかない。だから、不漁であったり災害があったりというようなことに対応して、漁業経営の安定化を図るという観点から、水産物調整保管事業と、もう一つ、漁業共済事業等を行って経営の安定を図る、こういうことで臨んでいると私は承知しております。
山田(正)委員 今、大臣率直に、必要だということは認められた。そうであったら、野菜農家に実際に価格補償として、幾らか積み立てはしておりますが、それに対して支払われている同じ形、いわゆる野菜約五十種類の品目について価格安定基金制度がなされておりますが、それとほぼ全く同じような形で、魚に対してそれをやろうと思えばできるのではないのか。
 大臣、それをやれないのかやれるのか、すぐには返事はできないと思うのですが、野菜より、より必要ではないのか、それをする必要が。
武部国務大臣 やれればいいのですけれども、どこまでどのようにしてやるかということになりました場合に、繰り返しになりますけれども、野菜の場合と水産物の場合は、先ほど申し上げましたような理由で違うのですね。
 水産物の場合には、魚種、漁法が多岐にわたっている、一経営体が多種多様な魚種を漁獲している、かつ当該魚種も経営体や年ごとによって変化する、海況や漁況、つまり自然要因によるところが非常に大きいというふうなことで、水産物の保管事業と共済事業ということを車の両輪にして経営の安定を図ろうという仕組みをとっているわけでございます。
山田(正)委員 大臣、先ほどから何度も話しているように、魚価安定基金制度があって、いわゆる買い入れ調整保管があって、それで本当に機能しているんだったら、こんなに、四分の一になったり三倍になったりという価格はあり得ないはずで、これだけ漁民が本当に苦しんでいるということはあり得ないはずで、それからすれば、野菜と同じように、あるいはそれ以上に魚というのは計画的な生産とかそういったものができないわけだから、それに対しての魚価安定制度は当然やるべきではないのかと言っているのです。
 それで、では大臣、必要であるというところまでは大臣言ったんだけれども、魚においては野菜と同じような魚価安定制度がなぜできないのか。なぜ調整保管みたいな、そういう天下りの水産庁の職員が理事等で、ごまかすような、全く事実上機能していないような制度しかつくっていないのか。これは余りにも不平等じゃないのか、野菜農家と漁業者に対して。それをどう考えるのか、なぜできないのか、それを明らかにしてもらいたい。
武部国務大臣 これはもう何度も申し上げますけれども、水産物の場合には調整保管、これはもうどこの漁村に行きましても水産物流通加工センターというのがありますよ。それは漁業者がそれを特に望んでいるわけなんですね。とれたものをやはり冷凍保管しないとすぐ鮮度が落ちてしまうというふうなことから、どうしても冷蔵庫、保管庫が必要になってくるわけでありますし、地域の小さな中小水産加工場も、自分でそういった冷凍保管施設など持てないというふうなことについては、国が支援してそういうものをつくって、本当に大漁のときにはもう大変なぐらいとれるわけでありますから。
 昔はもう網走なんていったら、魚臭くてしようがなかったんですよ。駅に着いた途端に魚のにおいですよ。なぜか。そんな冷蔵保管なんかないからですよ。魚の処理に困っているわけですよ。野積みになっているわけですよ。こういうような長年の経験から、水産物については保管事業というものを産地においても強い求めがあったと思うんです。
 しかし、台風災害でありますとか、また、不漁が続いて出稼ぎに行かなければならぬというような、年によっては、海況の変化、資源の変化でそういうことに追い込まれる。これについては共済制度があって、国庫補助として平成十三年度には七十七億円、国が金を出しているわけでありますので、やはり野菜と水産物等の特徴に応じた対応策というものがあってしかるべきではないか、このように思うのです。
山田(正)委員 大臣も北海道で、漁業のことは幾らか見聞きしているということのようですが、大臣、EUの魚価安定政策について、私の方で資料も各委員にも配っているとおりなんですが、いわゆるEUではどうして漁業者の価格安定を図っているか。
 大臣、十分勉強していただいてくれと話しておいたので、私も昨年、実はブリュッセルで、EU漁業総局の課長さんにお会いしていろいろお話を聞いてまいりました。EUがいかに漁業者に対して価格安定制度を活用しているかということ。
 どんどん魚がとれたときに、いわゆる市場価格、これは欧州委員会で毎年過去三年間の平均市場価格を指標価格として定め、そして、その指標価格よりも一割ぐらい下がるのかな、回収価格を定めて、いわゆる市場価格より九〇%以内で、それに品質係数を掛けて全部回収する、下がった場合。
 大臣、EUはそういう制度をとっている。当然知っておられたと思うが、いかがですか。
武部国務大臣 EUにおきましては、欧州委員会が指定する水産物ということですから、全部じゃないのかもしれませんが、一時的な過剰漁獲による魚価の低下時に、当該水産物を生産者団体が市場から回収することにより魚価の安定を図る回収制度があるということは私も聞きました。
 この具体的な仕組みとしては、生産者団体傘下の漁業者によって水揚げされた指定水産物の市場価格が欧州委員会の設定する回収価格を下回った場合において、生産者団体は漁業者に補償金を支払って当該水産物を市場から回収する、そういう仕組みと承知しております。この場合、生産者団体は、補償金の支払いにつき、欧州委員会から助成を受けることができることになっているということでございます。
 実際の運用状況を見ますと、魚種ごとに定められた回収価格は市場実勢価格を大幅に下回っているものも多く、助成の対象となる回収量は年間漁獲量のおおむね一〇%を限度としているということでございますし、かつ回収量が多くなるにつれて助成率が逓減するということになっているそうでございます。
 本制度の活用状況は予算額に比べて低い状況になっておりますが、その背景にはこうした事情があるのではないか、このように考えられます。
山田(正)委員 欧州では、いわゆる市場価格、その一割下がった価格、それに品質係数を掛けて、それで買い取るんだという制度があるということを大臣は知っておられたか、知っていなかったか。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
武部国務大臣 私は詳しく知りませんでした。今はわかっていますよ。(山田(正)委員「今はわかりましたか」と呼ぶ)先生からの通告がありまして、早速勉強いたしまして、もう少しこれは勉強したいなと思っておりますけれども、最近までは知りませんでした。
山田(正)委員 大臣、そう率直に言ってくれればこっちもそれ以上追及しようとは思わなくなる。
 大臣、今言ったように、欧州においては、特に魚については五十種類の品目、これは僕が調べてきたんだ、五十種類の品目において、大量にとれたりなんなりしたときには、言ったように、市場価格の約九〇%に品質係数を掛けたもので回収するようにしている、これは。
 ところが、驚いたことに、その回収した魚をどうするか。大臣、御存じか。知らないか、回収した魚の処分。これはちょっと質問は通告しておったんだけれども、もし勉強なさってお答えなさるのだったら大臣からお答えいただきたい。
武部国務大臣 全部廃棄だそうであります。
山田(正)委員 そこなんですが、いわゆる調整保管して、ちょっとだけ名目上買って、サバとかアジとかイカとか、安くなったらそれを冷凍したものを出しますよというのとEUは違う、これは。一たん回収した魚は全部焼却廃棄処分にする、市場に出さない。私はスーリーさんという課長さんからそのお話を聞いて驚いたんだけれども、それくらい徹底していわゆる魚価の安定制度に、EUは漁民のためにやっている。大臣、そこまでやっている。
 では、大臣、そのために必要な予算はどれくらいで、そのお金は実際どこが拠出しているのか、それは御承知か、お勉強なさっているかどうか。
武部国務大臣 予算額は、二〇〇二年で十八億円、二〇〇一年が十八億円、二〇〇〇年が十三億円、一九九九年は二十四億円、一九九八年は四十億円。実績は、一九九八年は十五億円という数字になりますが、委員、五十ということでありますけれども、私が今事務当局から聞いたのでは、生鮮、冷蔵等の二十六品目というふうに聞いておりますが、私の方が間違いでしょうか。もう少しまた調べてみたいと思います。参考までに、私が聞いているのは二十六品目ということです。
山田(正)委員 私の記憶では五十品目と思っていたんですが、二十六品目であったら、いわゆる回収価格制度に適用しているのは二十六品目かもしれません、それはね。
 いずれにしたって、それだけの魚についてきちんとした対応をEUではやってきている。予算措置も欧州委員会そのもので、いわゆる政府が金を拠出している。
 そういう状況で、買い入れは各国の漁業協同組合とか公社とかいろいろあるようですが、そういったことを考えれば、当然、大臣、日本もそういう制度というものをこれからひとつ、先ほど大臣は水産庁長官に答弁させていただきたいような話だったけれども、政治家が水産庁を主導して、いわゆる魚価安定制度、そういったものを実質実のあるものに今していかなければいけないのじゃないのか。大臣、どうお考えですか。
武部国務大臣 水産庁長官のことについては、詳しい数字等については長官に答弁させた方が正確ではないかということで申し上げたわけでありまして、やはり私が水産行政においても最高責任者であるという自覚を持ってやっておりますので、誤解を与えたことは訂正させていただきます。
 私も産地にいますけれども、日本のような国は全国一律の政策が果たしていいのかなという感じがいたしますね。したがって、これは国や水産庁がすべての政策を国主体でやるということよりも、産地には産地のいろいろな対応策というものを考えているんじゃないかと思います。単純にEUと日本を比較して、向こうの方が手厚いということにはならないのではないのかな、かように思います。
 やはり、調整保管、単なる調整保管といいましても、水産物流通センターのようなものはどこも求めているわけでありますし、我が国のように四面を海に囲まれているところにおきましては、魚種、漁法等も相当多様なんだろう、こう思うのですね。
 そういう意味では、多様なやり方を手厚く国が支援し、それぞれの地域の実態に応じた、価格安定対策を含めた水産物の流通対策ということを考えていかなければならないのではないか、こう思いますし、やはり一番大事なのは漁業者の経営の安定なんだろうということを考えますと、共済制度というのは、私、やはり我が国においては非常に重要であろうと。もちろん、こちらの方をしっかりみんながこれに加わって機能をしていく、より充実させていくということが大事ではないのかなというふうに考えているところでございます。
山田(正)委員 今大臣は聞き捨てならないことを言ったんですが、日本の方が手厚く漁業者に対してやっているのではないかと。どういうところがEUと比べて日本の方が手厚く魚価安定並びに漁業者に対して助成しているんですか。
武部国務大臣 欧州は価格支持政策をとっているんでしょうか。調整保管とかそういうこともやっているんでしょうか。私はその実態がわかりませんから一様に比較できないとは思いますが、しかし、今、回収の仕組みも全体の漁獲量の一〇%程度だということのようですね、魚種も二十六品目というようなことでありますから。
 私は、日本の方が手厚いということは言い過ぎかもしれませんが、日本には日本のやり方、特に北海道と沖縄と九州とそれぞれ違うんじゃないかなということを考えますときに、地域が求める、生産者が求める、そういうことに手厚くした方がいいのではないかと。だから、さまざまな対策、政策というものを組み合わせてやることの方が大事ではないのかなということを申し上げたわけでございます。
山田(正)委員 大臣はよくEUの回収価格安定制度がわかっていないようで、もう一回説明しておきます。
 いわゆる過去三年間の平均価格、市場価格、各魚について、二十六品目であれ五十品目であれ、だからその魚について欧州委員会で毎年指標価格を設定する。それよりも市場価格が一割下がったときに、その品質係数を掛けて、それを全部回収する。回収したのが結果として一〇%ぐらいですということはあり得るかもしれない、回収したのが、量として。いわゆる価格安定のための回収制度だから、理論的に言ったら一割より下がることは魚価はあり得ないということなんです、理論的に言えば。
 ただ、もちろん品質が悪かったり小さかったり魚においてはいろいろありますから、その品質係数を掛けるから、実際の指標価格の一割下げで全部買うんじゃなく、それよりもさらに六割とか七割とかという形で買われる、品質次第によっては。それは当然あり得るわけなので、それが結果として価格安定のために一〇%、結果として量が一〇%であったということはあり得ると言っているわけです。そこまでEUではいわゆる魚価安定に対して配慮している、そこまでの政策を手厚くやっている、いわゆる漁業者がさらに継続して生産に従事できるように。
 ところが日本はどうか、大臣。調整保管事業をやっておりますと。調整保管は、単に市場からほんの一部、五億か六億、イカとかアジとかサバとかというものを買い入れて、それがちょっと安くなったらまた放出する、それをやっていて魚価安定基金制度です、それはできております、そんなことで漁業者に対する価格安定制度ができていると言えるのか。政治家として、いわゆる農水大臣としてどう思うかと聞いているわけです。
武部国務大臣 ちょっと長くなりますが、ちょっと最後まで聞いていただきたいと思うんです。
 EUの回収制度は、私も少し、先生からそういうお話がありますのでしっかり勉強してみたいと思いますが、EUの近年の漁業生産量は六百万トン台だそうでありまして、我が国の場合とおおむね同じ程度であろうと思います。
 EUの回収制度の実施に要した実績額を邦貨換算で見ますと、一九九八年が約十六億円、予算額に対する実績率は四〇%、一九九九年が約十億円、実績率四〇%、二〇〇〇年が約九億円、実績率六八%となっているわけでございます。
 我が国の水産物調整保管事業の実績は、一九九八年が約十二億円、実績率二六%、一九九九年が約十億円で実績率二二%、二〇〇〇年が約十一億円で実績率三〇%、二〇〇一年が約十六億円で実績率四二%。
 こういうふうにして見てみますと、実績額の面で調整保管事業はEUの回収価格制度を近年上回っている状況にあると言えるのではないか、こう思うんですね。
 また、回収数量の実績を見ますと、EUの場合は、一九九八年が約二万八千トン、一九九九年が約四万九千トン、二〇〇〇年が約一万七千トンであるのに対しまして、調整保管事業の場合は、一九九八年が約八万七千トン、一九九九年が約八万一千トン、二〇〇〇年が約七万一千トンと、EUより多い状況でございます。
 さらに、回収価格の水準と調整保管事業を発動する基準価格との比較で見ますと、例えば二〇〇一年のサバについては回収価格がキロ二十三円でありました。これは大西洋のサバですね。調整保管事業では、キロ百十二円と高い水準に設定されております。これは価格については一概に比較できない面もあるのかもしれません。
 したがって、水産物の価格安定対策として、EUの回収価格制度に比べて調整保管事業が劣るとは言えないのではないか、かように考えるわけでありますが、私もこれはにわか勉強でありますので、山田先生がそれほどまでに強い関心を持ってお述べいただいているわけでございますので、私自身がしっかりもう一度勉強してみたいと思います。
山田(正)委員 大臣、ちょっと私、ほかのことを聞こうと思っていたのに、時間が随分来てしまったんですが、これ以上この問題でするつもりはありませんが、いわゆるEUの回収価格制度というもの、これと日本の調整保管とは制度そのものが全く違って、EUは直接、漁業者そのものから漁業組合等々を通じて買い入れしているという事情があるということ、それも同時に調べていただきたい。
 それからもう一つ、EUでは、指標価格をもとに参考価格制度というのがまだ現存していて、そして輸入価格に対して参考価格を下回るようであったら、いわゆる輸入をストップする。また、量においても、それぞれの魚種において量が決まっておって、それを超えて入るようだったら、クオータ制がとられておって、輸入をやはりそこで制限する、そういういわゆる輸入価格についても十分な措置がとられている。このことも、まあきょうは時間がないので聞きませんが、いわゆる価格安定制度に加えて、輸入の問題についてもそれなりの厳しい規制がとられていて、漁業者が生産に安心して従事できるようになされているという事情、これは十分調べていただきたい、そう思います。
 そこで、次の質問に移りたいと思いますが、実は大臣に質問通告しておったんですが、魚価が低迷しているのと同時に、今日本では非常に漁獲量がどんどん減ってきている。いわゆる資源が減ってきた、これはどこにあるのか、その理由ですね。
 それについて、実はお隣の中国で、二百海里の面積が日本の四分の一しかない、ところが、今中国は、日本の約七倍、四千二百万トンの漁獲量を上げるようになった。それは内水面も幾らかありますが、海面だけでも日本の四倍は少なくとも水揚げするようになってしまった。
 どうして中国はどんどん水産漁獲高がふえていき、かつ日本は減ってきた、いわゆる六百万トンにまで減ってきた、その理由なんですが、実は、時間がないので私の方から話しますが、これについて大臣に資料としてお配りし、ぜひ読んでいただきたいと、いわゆる北海道大学の水産学博士、境一郎氏の昆布についての朝日新聞に載った論文があります。
 これによりますと、中国は、ちょうど海面の水揚げ高、これが、昆布の養殖、もう南の台湾海峡まで昆布の養殖を、もともと中国には天然のものはなかったものを、北海道の昆布の種糸をもとにして養殖を始めたようですが、今やその昆布の養殖が二倍になったら海面漁獲高が二倍になり、三倍になったら三倍に、四倍になったら四倍になったというふうに、非常に資源の回復に大きく役立った、そういう論文があるわけです。
 大臣、日本は逆に、いわゆる魚礁、コンクリート魚礁を次々に投げ入れて、そして護岸工事を、コンクリートでどんどん固めていった。いわゆるいそ焼けが進んでいくような状況をどんどんつくっていって、それで資源がますます少なくなってしまった。逆に、中国では、まさに昆布の増養殖を図ることによって、生きた魚礁、いわゆる魚の産卵場そして揺籃場、それを大々的につくっていった。この効果は大きいと思われるが、大臣、ぜひ論文を読んでいただきたいと前もって渡しておいたと思うのですが、読まれたかどうかわかりませんが、どう思われるか。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
武部国務大臣 これは読ませていただきました。
 私は、特に昆布の森ということについては、これは読ませていただきましたけれども、長崎も昆布とれるんですか、五島列島も。
山田(正)委員 台湾海峡まで今昆布養殖できていますから、向こう、南の海でも、鹿児島までは十分、昆布は三、四メートルまで成長できます。
武部国務大臣 いや、なぜこんなことを私が尋ねるかというと、我々北国ですから、沖縄の人たちも昆布を食べますけれども、ほとんど根室や日高昆布なんですね。昆布がとれるんだったら、昆布の養殖、これは今は簡単にできる状態になりましたから、南の国でもやればいいのになと思っていたんですが、これは海流の関係だとか海温の関係だとかで難しいのかというふうに私は思っていました。
 これは、このことに注目してもう少し勉強したいと思いますが、私はやはり、豊かな海づくりということは、これまでのさまざまな漁法も含め、あるいは魚礁のあり方も含め、深い反省点に立ってやらなくちゃいけないと思っています。
 例えば、海岸保全事業なんかは、これは海の沿岸の静穏度を高めることをやれば瞬く間に魚礁ができるんですよ。それで、昆布等の生息や、そこに魚族資源が卵を産んだりすることができる。海ほど耕せば変わるところはない、こういう一つの考え方を持っております。
 今までは、天然の魚礁も、オッタートロールあたりに全部平らにされて、でこぼこ、海の中にある魚礁や山が真っ平らにされてしまっているというような、そういう漁法はこれからはやはり避けていかなきゃならぬ、こう思いまして、そういう意味では大変大事なことだと、海の中の森づくり。遠藤副大臣は、森と海は命のふるさと、こう絶えず言っておりますけれども、私は、やはり海というのはこれから非常に大事なところだと。
 そのために、公共事業というとすぐ悪者扱いされますけれども、自然再生型の事業あるいは環境創造型の事業、資源増大型の事業というものはたくさんあるわけでありまして、佐藤謙一郎先生にも現地を視察いただきまして、漁民がどういう努力をしながら豊かな海づくりをしているかということについても、ぜひ御理解をいただくようにお願いしたい、こう思っております。
 ただ、この昆布のことについては、私は、南の海で本当にこんなにとれるのかと。それから、中国のこの実績ですけれども、もしこれが事実だとすれば大変なことだな、すごい勢いで中国というものは漁業の生産拡大をしているんだな、それは那辺にあるのだろうということと、もう一つは、本当にこの数字というのは耳を疑うような数字でもありますので、事務当局にも、きちっとどういう背景があるのか、そういったものも調査して、我が国としても参考にすべきは参考にする必要があるということを申し上げております。
山田(正)委員 大臣、南の海の方で昆布がとれるのかということですが、私の地元の長崎県で、島原の方ではもう三十年来昆布の養殖をやっておりますが、四十トンほどとっております。それで、昆布は、私も昔から注目はしておったんですが、十分生産可能であります。
 ただ、そうすることによって、今話したように、今の水産予算で、魚礁等を、コンクリート魚礁を幾らほうり投げても砂に埋もれてしまったり、ほとんど効果がないと僕は思っております。それよりも、生きた意味で、海の中の昆布の森づくりをと。
 ことしもまた、沿整事業というか、漁港漁場整備事業でかなりのお金を大臣使われるわけですが、単なる公共事業として土建業者をもうけさせるだけではなく、いわゆる本当に生きた意味で、漁業者にとって資源回復につながるようなもの、これを大臣、このごろ農水省ではかなりきつくいろいろな行政の指導に当たっておられると聞いておりますので、ひとつぜひ水産庁も大臣の一声でそういう方向でやっていただければと、そう思います。
 また、六月六日の読売新聞に、森林整備に一兆円必要、京都議定書を達成するためにと。いわゆるCO2、炭酸ガスを固定化するために、三百四十万トンの炭素を固定化するために、毎年国の林野事業予算約二千八百億円を四割以上上積みして、約十年間で一兆円は京都議定書を達成するためには必要であるという記事が載っております。これは、私、大臣にも資料としてお配りしたと思いますし、委員の皆さん方にもお配りしたと思います。
 この昆布の森は、非常にこれはおもしろいと思うのは、いわゆる熱帯雨林の倍CO2を吸収する、そう言われておりますが、境博士の説によると、北海道ぐらいの面積に仮に昆布をつくったとしたら、それだけでいわゆる京都議定書に言うCO2の不足分を補うことができるのではないか、そういう論もあるわけで、ぜひCO2対策、温暖化対策、それについてもこの昆布の森構想ということは真剣にとらえていただければと、そう思います。
 資源回復事業計画についてもいろいろ聞きたかったのですが、ちょっと時間が来てしまいました。どうか大臣、副大臣とも、ひとつ水産行政においても、単なる農業だけではなく、いつも水産はどこかにほうりやられておって大変日の当たらないところなんですが、ひとつ思い切って、魚価安定制度から今言ったいわゆる資源回復のための昆布の森構想まで真剣に考えて、大してお金がかかるわけじゃありませんし、ひとつ具体的にやっていただければ、それこそ名大臣、名副大臣と言われるんじゃないか、そう思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 終わります。
鉢呂委員長 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党・市民連合の菅野哲雄でございます。
 水産関連四法案について、大臣の所信をお聞きしてまいりたいというふうに思っております。
 まず初めに、今日の水産業、漁業を取り巻く状況というのは、今、山田委員も質問しておりますけれども、私は非常に厳しいものがあるというふうに思っております。
 それで、水産基本法がつくられて、水産基本計画が三月に計画を立てられてそれを実行に移していく今日の段階だということなんですけれども、基本的にこの四法案でもって解決する課題ではないというふうに私は思うんですが、今日、農水大臣として、一つは、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案を提出されております。この法律案を提出せざるを得なかった今日の水産業という部分をどのように大臣として評価なされているのか、考えておられるのか、まずお聞きしておきたいというふうに思います。
武部国務大臣 漁業を取り巻く環境の厳しさということは、菅野先生も浜育ちだろうと思いますので、よく御承知いただいていると思いますが、今、周辺水域の資源状態というものは非常に悪化しております。それが原因になりまして漁業生産量も減少しておりますし、一方、漁村を取り巻く環境は、担い手が減少し、高齢化が進行している。
 こんなようなことから、我が国水産業を取り巻く状況の変化というものに対応して水産業の振興を図るためにはどうすべきか、そういう観点から、昨年、水産基本法を制定したところでございまして、その政策を具体化するために、漁業振興の観点も十分に踏まえて、今回の水産四法案を提出しているものでございます。もとより、先生御指摘のとおり、これですべてオーケーということにはなり得ない、こう承知しております。
 漁協については、水産業をめぐる状況が厳しい中で、漁業者の協同組織として、水産基本法の基本理念であります水産物の安定供給の確保、水産業の健全な発展の実現に向けまして積極的な役割を発揮することが強く期待されているところでございます。
 また、金融自由化の進展ということも非常に大きな背景になっておりまして、ペイオフの解禁等、近年の金融情勢が大きく変化する中で、漁協系統信用事業が今後も水産業の振興、漁村地域の経済発展に的確な役割を果たしていくためには、より効率的、なおかつ健全な事業運営、組織体制を確立することが急務となっているわけでございます。
 このような状況を踏まえまして、水産基本法の基本理念の実現に向けまして、漁協が資源管理や担い手対策などの課題に的確に対応し得るように、事業、業務執行体制の整備を図るということとともに、漁協系統信用事業の健全な運営を確保するということから、漁協等についての制度の見直しを行うこととした次第であります。
菅野委員 私はこの問題をどうして取り上げるのかということなんですが、漁協を取り巻く環境の悪化というものは、今大臣がおっしゃったように、資源や担い手不足、あるいは信用事業の、金融の大幅な環境の変化ということでもってやっていかなきゃならないというところは理解するんです。
 しかし、今日の中小漁業者の経営状態が非常に悪化しているという形で経営が存続できていかないんだというところに今日の大きな問題点があるというふうに思っています。それで、そういう右肩下がりの状況ですから担い手も生まれてこないというのが今日非常に大きな問題点だというふうにとらえなければならないというふうに思っています。一方では、漁協の再編等を行わなければならないという状況があるというのは、結果としてそういう状況になってきている。
 そういう意味で、漁協の財政基盤が弱体化している原因というのは中小漁業者の経営悪化に起因しているんだ、そこをどう支援、対処していくのかということを根本に据えなければ、今後の水産業あるいは漁業の将来というのは明るい展望が開けていかないんじゃないのかなというふうに思うんです。
 このことに農水大臣としてどう対応していかれる考えなのか、ここを明確にしていただきたいというふうに思うんです。
武部国務大臣 問題意識は私どもも同じように共有している、このように認識しておりますが、少し詳しく言いますと、近年、資源状況の悪化等によりまして漁業生産量が減少する中で、漁業者の経営が悪化するとともに、組合員である漁業者の漁業生産活動に事業運営を依存している漁協について、その基盤が弱体化しているというのが実態だろうと思います。
 特に、カツオ・マグロ漁業等の中小漁業者を多く抱える漁協につきましては、これら漁業者への設備投資等に係る貸付額の比率が大変高うございますし、国際的な漁業環境の悪化によりまして減船を余儀なくされているということ等、漁業経営が悪化して債務の償還が滞る、漁協経営にも極めて大きな影響が生じているということでございます。
 このために、カツオ・マグロ漁業等の中小漁業について、価格、経営対策など各般の施策を拡充強化することで漁業経営の改善に努めるということが第一でありますし、第二には、信用事業を信漁連に譲渡するなどいたしまして、信用事業の実施基盤の強化、経営の効率化、合理化、あるいは合併等を通じた組織の再編による漁協の体制整備ということが避けられないということだろうと思うのであります。
 そういったことによりまして、組合員へのサービスを維持強化していくということが必要であると考えておりまして、農林水産省は、この四法の成立を期して、これを一つの大きな力にしてこれらの取り組みについてさらに推進してまいりたい、このように考えているわけでございます。
菅野委員 四法の今回の提出というものは、水産基本法、基本計画、それに基づいて今後のやっていく方向というのを明確に打ち出しているという点では評価しているんです。
 ただ、先ほどから言っているように、大臣の答弁でも不十分だと思うんですが、資源の状況悪化とかそういう問題じゃないと私は思うんです。後でも触れますけれども、日本の水産業、漁船漁業というものをどうしていくのかという視点がやはり、先ほどの山田委員との質疑を聞いていても、まだまだ不十分だというふうに思っています。このまま行って漁協等の再編を進めたとしても、中小漁業経営者が本当に経営を維持できていくのかどうかという点での議論が不足していくと、やはりまた新たな問題点が生じていくというふうに思うんです。
 後でまた議論いたしますけれども、そういう意味では、中小漁業者の体力が本当に衰えている中で、今回、漁業再建整備特別措置法というものが提案されています。これは非常に大事なことなんですが、今体力が落ちた段階でこういう形で整備になったにしても、だれも借りられる状況ではないというところに私は今日的な業界を取り巻く大きな問題点があるというふうに思うんですね。
 今、制度資金を本当にこれまでどおり借りることができるのだろうかという経営者からの率直な声として聞こえてきているんです。そして、ここにスキームがあるんですが、農林漁業信用基金の問題も含めて、この農林漁業信用基金という部分が、保証保険しながらやっていくんですが、ここでの審査が非常に厳しいものになっている。経営状況が悪化しているにもかかわらず、審査基準が厳しいがゆえに借りられなくなっていくんじゃないのかという不安というものが漁業者全体の声として出てきているということなんです。
 大臣、そういうことに対して法律を整備しますけれども、私は貸付基準というのを相当緩和しない限り制度が定着していかないのではないのかなと思うんですが、そのことに対する決意のほどをお聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 近年の漁業生産の低下、金融情勢の変化の中で制度資金の貸し付けが減少してきているのでありますが、融資残高は四千百六十一億円に上っておりまして、制度資金は依然として漁業経営の安定のため重要な役割を果たしているというふうに考えるのでありますけれども、金融支援策の拡充は、効率的かつ安定的な漁業経営を育成していく上で重要な経営対策のための柱となるわけであります。
 したがいまして、漁業再建整備特別措置法の改正におきましても、漁業経営改善計画制度のもとで、農林公庫、漁協系統等金融機関からの経営改善のための設備資金、長期、短期運転資金の融通、農林公庫からの資源回復計画の実施に必要な資金の融通、保証保険のてん補率の引き上げ等の支援を行うこととしたわけであります。
 一方、今先生が御指摘ありましたように、近年の厳しい金融情勢のもとでは、借りたくても借りられないというような状況があるわけでありまして、公的な信用補完措置が不十分であるため金融機関から必要な融資が受けられないとする漁業者がいるということも承知しているわけでございます。
 今後、制度の健全性を確保しつつ、漁業者への資金供給がより一層円滑なものとなるように、漁業部門における公的な信用補完措置である漁業信用保証保険制度のあり方について、私は農林漁業信用基金の独立行政法人化への対応も含めましてしっかり検討してまいりたい、このように考えているわけでございます。
菅野委員 大臣いみじくもおっしゃいましたけれども、借りたくても借りられない。借りられる人はまだいいんです。経営が継続できていっているんです。今日的に、借りたくても借りられないという状況になったときにどうなるんですか。後でも触れますけれども、国の施策として明確な方針を打ち出していきながら漁業経営を再建していくという決意がない限り、私は中小漁業者というのが非常に厳しい状況に追い込まれているというふうに思うんです。
 六月の九日、私の地元新聞で報道されました。「気仙沼を支える近海マグロ船」ということで報道されているんですが、「港挙げて再建策を」という形で報道されています。かつては、近海カツオ、近海マグロ漁船は、気仙沼を基地として漁業体が百隻を抱えていました。今日の状況はどうなっているのかというと、三十隻にまで減って、そしてつい最近、「四隻の船の行方が心配されたが、うち三隻は市内のオーナーが買い取り、乗組員も再び仕事に就くことができた。」と報道されています。それくらい今日の漁業経営というものが追い込まれている。
 そこを再建していくというときに、この融資基準を緩めなければ再建につながっていかないというふうに私は思うんです。私は、その他の部分も要素としてはあるんですけれども、当面、法改正に伴ってその部分は、先ほど十分これから検討していきますという答弁ですけれども、経営実情を踏まえて、ここは支援しなければならないというところには十分手を尽くしますという答弁、考え方を示していただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 中小の漁業者にとりましては、特にマグロ等につきましては莫大な設備投資を行った上で、国際的な漁業環境の悪化に伴いまして減船を余儀なくされたというような状況については、それらに対する対策はとられているわけであります。
 今後のことにつきまして、やはり、農林漁業金融公庫等につきましても、漁業者のためにあるいわゆる政策金融機関として存在しているわけでありますので、信用補完制度等につきましては、漁業経営の効率的な安定化ということが大前提でありますけれども、実態に即して前向きな漁業経営ができるように、さらなる配慮ということを検討する必要がある、私はそう認識しております。
菅野委員 先ほど大臣は、資源状況の悪化、資源状況の悪化ということを盛んに強調されておりますけれども、私は、資源状況の悪化じゃなくて、いかに魚の値段、魚価が安く推移しているかというところに今日の漁業経営が追い込まれている実態があるというふうに思っています。
 委員長に許可を得て委員の皆さんに配付いたしておりますけれども、気仙沼市魚市場における水揚げ高というものを、過去にさかのぼって調べて送っていただきました。気仙沼市の水産課の方から取り寄せて、この表を見て、大臣、水揚げ高数量というのは、ずっとほぼ十二万トン、十三万トン、十五万トンという形で一定で推移しているんです。
 そして、この金額についても、昭和五十五年で二百九十二億ですから、ほぼ三百億達成ということで、昭和五十五年以来三百億前後ということで、ずっと水揚げ金額が同じ、これが状況なんです。これに卸売物価指数を対比させて比較すれば明確になると思うんですが、そこまではやっていません。結局、魚の値段が卸売物価に追いついていっていないということなんですね。ということは、魚の値段が二分の一、三分の一に、今相対的に下がっているという状況だということなんです。
 その隣にマグロ類、カジキ類というのを抜き出して表にしておりますけれども、同じ傾向がこのことからしっかりと見てとれるというふうに思っています。
 ここのマグロ類でいうと、昭和五十四年で一万トン水揚げして八十九億ですから、キロ当たり約九百円していたんですね、大臣。これに卸売物価指数というものを加味していくと、平成十三年に八千百七十一トンに対して五十六億ですから、これくらいマグロの値段、魚の値段が下がってきている。そして、経営努力、経営努力ということを盛んに行ってきました。もう経営努力の限界に来ているというのが浜からの訴えだということなんです。
 そして三年前、マグロ船が二割減船されて、これは資源を保護するということで全国で百三十二隻減船になったのを、気仙沼を基地とする船が六十隻、涙をのんで減船に応じました。そして、二割減船されて、さて、これからよくなるだろうというふうに期待を持って漁業経営者がその後努力してきたということです。
 しかし、大型マグロ船は既に台湾船の隻数の方が多くなっており、これが原因で国際秩序によるトラブルが発生していることに対する行政の対応のなさ、安い人件費でとった外国マグロが国内に無秩序に搬入され、流通価格戦争を引き起こし、これが原因で漁獲経営が赤字操業に追い込まれているのが実情です。今や、個々の企業努力ではどうしようもないのが現状ですということで、漁船漁業者に納入している業者が、新聞に投稿して切実に訴えているというのが今日の状況だというふうに思っています。
 今、大臣から基本的に答弁いただきましたけれども、水産庁として、この状況をどのように打開していくのかというところの明確な方針というものが示されない限り、漁業経営というものが、日本からマグロ漁業というものがなくなっていってしまうんじゃないのか、こういう危機感を持っているということなんですね。この現状をどう認識して、これからの対策をとっていかれようとしているのか、基本的にお聞きしておきたいと思います。
木下政府参考人 今委員御指摘のとおり、マグロ漁業につきましては、国際的な操業規制の強化、それから漁獲量の減少、また、御指摘のような魚価の低迷といった厳しい状況にあるわけでございます。私どもも、マグロ漁業を初め中小漁業の安定を図るためには、将来にわたって収益が安定し、継続的に漁業活動を担い得る漁業経営を育成することが重要というふうに考えているところでございます。
 この観点から、経営対策につきましては、本年から、新たに漁船リース事業等による生産コストの削減を図りたいということで、新たな事業を実施することとしておりますし、また、魚価の安定あるいは適切な資源管理、これは、国内あるいは国際機関等々あるわけでございますけれども、これらの点につきましても、施策の推進に努めていきたいというふうに考えております。
 魚価の安定対策でございますけれども、これまでもマグロにつきまして、価格が低落した場合に、日かつ連等がこれを買い上げ、価格上昇時に放出する、価格の安定を図るための水産物調整保管事業を実施してきたわけでございます。
 本年から、この水産物調整保管事業につきましても拡充強化をし、従来の日かつ連の買い上げ方式に加えまして、受託あるいは洋上保管の導入、また一定期間の条件の中で買い取り期間中の売り渡し等々、従来からのこの水産物調整保管事業の弾力的運用を図りたいというふうに考えているところでございます。
 また、このような経営対策それから価格、調整保管対策に加えまして、基本的には、とれた魚をより高く売るという努力も必要だというふうに思っております。その意味で、多段階で複雑な水産物流通機構の改善なり、水産物のブランド化の推進等によりまして、価格形成力の強化に努めていきたいというふうに考えているところでございます。
 いずれにいたしましても、いろいろな施策を総合的に推進することによりまして、遠洋漁業の中核でございますマグロ漁業につきましては、今後ともその維持に努めていきたいというふうに考えております。
菅野委員 生産コストの削減というところは、もうぎりぎりまで行ってきているというのが実情です、長官。そして今もう一つは、魚価の安定ということで、施策をそこに持っていくということで、これから展開していくということなんですが、先ほどの資料を見ていただきたいと思うんです。
 マグロ類でいくと、平成六年でいくと、キロ当たり約八百円以上していたんですよね。これが七百円台になって、そして今は本当に六百円台という値段で推移しているという状況です。これは全体の価格ですから、クロマグロとかそういう高いマグロがとれたときには、それは一時的に安定するという部分はあるんですが、このマグロ類全体の価格をどう押し上げていくのか、ここが私は非常に重要になっているというふうに思っているんです。
 それでは、なぜこんなにもマグロ類の価格が暴落しているのかという問題点をしっかりととらえなきゃいけないというふうに思っています。これは大臣、ぜひ聞いておいていただきたいんですけれども、国内の第一次産業がグローバル経済の中で国際競争力のあらしにさらされているという状況、これをしっかり見ておかないと、そして、野菜や木材もそうなんですが、外国から輸入がどんどんふえてきて国内価格を押し下げている実態というのを、真剣になって日本国内の産業を維持するという観点から大切なことだというふうに私は思っています。
 ここに、ヨミウリ・ウイークリーということで、センセーショナルに「海賊マグロが上陸している!」というふうに言っています。これを読んでみると全くそのとおりだというふうに思うんですが、便宜置籍船が、日本が減船したにもかかわらず、どんどん漁獲を、違法、無秩序、無規制でもって操業して、これを日本に送り込んでいっていると。日本はマグロにおいては唯一の消費国でありますから、日本でしか消費できないという中で、無秩序にとって、無規制にとって、日本へ送り込んできているという状況だと思います。
 この横文字で言うとFOC漁船やIUU漁業への対応というものをどう行っていくのか、ここが一つの、二割減船を行った、そして、FAOの中で世界全体が資源管理の観点から二割減船していこうじゃないかという合意にもかかわらず、減船を行ったのは日本だけであって、その分はあと無秩序に漁獲されている、こういう国際的な状況を放置しておいて、魚価を、国内制度でもって魚の値段を上げていこうということでは対処し切れないんじゃないのかなと私は思うんですが、長官、いかがですか。
木下政府参考人 私どもも、委員御指摘のとおり、国際的な資源管理措置を損なっている便宜置籍船による違法、無報告、無規制、私どもIUU漁業と呼んでおりますけれども、これを廃絶すべきであるという立場でございます。このような立場から、これまでも、大西洋まぐろ類保存国際委員会、ICCATと呼んでおりますけれども、このような地域の漁業管理機関を通じまして、積極的にIUU漁業を廃絶すべきであるということにつきまして働きかけを行ってきたところでございます。
 ICCATでございますけれども、資源管理措置を損なう漁業活動をしている国からのクロマグロ、それからメバチなどの輸入禁止を既に勧告しております。私ども日本といたしましても、この勧告に従いまして、輸入貿易管理令に基づきまして輸入禁止措置を講じているところでございます。
 また、ICCATではFOC漁船のリストを作成いたしております。このリストに掲載されている漁船の漁獲物の取引自粛を求める決議も行っております。水産庁といたしましては、この決議に従いまして、平成十一年十二月でございますけれども、このようなFOC漁船からの輸入業者に対しまして、前歴がFOC漁船である場合を含めまして、これらの漁獲物の取引を自粛するよう強く要請をいたしておるところでございます。この要請に反しまして取引が行われた場合には、業者名等の関連情報を水産庁のホームページに公表している等の措置をとっているところでございます。
 さらに、FOC漁船そのものをなくすというのがやはり一番重要な点だろうと思います。私ども、FOC漁船、大部分は台湾の漁業者により経営されているというふうに考えておりまして、そういう意味で、日台の業界間で、FOC漁船のスクラップあるいは台湾籍化を行うということについて合意が既に行われておりますので、この合意を着実に実施するよう今後とも努めていきたいというふうに考えております。
菅野委員 このことは参議院の農水委員会でも議論されて、長官の答弁した中身が私の手元にあるんですけれども、FOC漁船が漁獲したマグロ類の輸入量、これを参議院の農水委員会では一万五千トン弱であるというふうに答弁しております。そうすると、日本の国内消費量が、日本の刺身マグロ供給量ということで約五十万トンと見ていいと思うんですが、そのうちの一万五千トンだからというふうに数量を私なりに非常に疑問をもって見たわけですね。
 そして、一方では、水産庁のホームページで、ICCATでもって公表されているFOC漁船の数が、今年度で三百九十七、前年度で三百二という数字で、九十五隻ふえているという状況です。この三百九十七隻が全部操業しているとは限らないとしても、そのうちの二百隻と仮定します。そうすると、マグロ漁船が一隻当たり年間幾らとるのかというと、三百トンとらないと採算が合わないということになったときに、この数字というのが合わないというふうに私は思うんですね。
 このFOC漁船と輸入数量との関係をどう説明なされるんですか。十二年度では二万トン超、それで十三年度では一万五千トン、減ってきているんです、水産庁のきちっとした対応が行われているからそういうふうになってきているんだという参議院での答弁と私は見たんですけれども、私は、そんな状況じゃないというふうに思うんですが、どうなんですか。
木下政府参考人 FOC漁船でございますけれども、私ども、ICCATのFOC漁船のリストに掲げられているものにつきまして輸入量の集計をしているわけでございます。その中で、委員御指摘のとおり、平成十二年には約二万トン、また、平成十三年には約一万五千トンというふうに報告をされているわけでございます。
 この漁船でございますけれども、私ども相当程度重複しているんではないかなというふうに思っておりまして、この中で実際に稼働をいたしておりますFOC漁船は大体三百隻前後だろうというふうに思っております。
菅野委員 長官、実際には三百隻でもいいです。まだ答弁していないと思うんですが、三百隻の船が漁獲する数量、年間どれくらいと思っているんですか。
木下政府参考人 私ども全体について把握をいたしておりませんけれども、三百隻程度というふうに前提をいたしますと、大体四万トン前後でなかろうかなというふうに推測をいたしております。
菅野委員 それでは、四万トンでもいいんです。そうしたときに、それでは、この四万トン漁獲されたものがどこに行っていると水産庁としてとらえているんですか。
木下政府参考人 私どもが集計をいたしております数字、先ほども申し上げたように一万五千トン程度あるわけでございますけれども、これと、三百隻程度と推測しているというふうに申し上げましたけれども、この差につきましては、なかなかその現状につきまして把握いたしておりませんけれども、恐らくは、第三国を経由して貿易取引が行われているのではないかなというふうに推測をいたしております。
菅野委員 私は、先ほど言ったように、日本の魚価の低迷というものにしっかりと対処していくためには、貿易のあり方というところを、水産庁として生産者を育成していくという観点からしっかりとした対応をとってほしいということで今質疑をしているわけです。
 それで、正規の部分で、統計上あらわれてきたのは平成十二年度で二万トン、十三年度では一万五千トンである、この部分をゼロにすればということなんですが、今、長官いみじくも、あらゆるルートを通って日本国内に入ってきているんです、それをどうシャットアウトしていくのかということを、先ほど漁業者の声として新聞の部分を読み上げました。
 要するにこれが、「安い人件費で獲った外国マグロが、国内に無秩序に搬入されて流通価格戦争を引き起こし、これが起因で漁船経営者が赤字操業に追い込まれているのが実情です。」このことに対して何にも政府は手を打っていないということに対して、怒りをぶちまけているんですね。それで二万トンだ、一万五千トンだという形で議論されては、私はたまったものじゃないというふうに思うんです。
 FOC漁船による日本国内への入り込みをどう政府として行っていくのか。これは、ICCATの部分でもあるし、台湾の船籍という部分も国際間の話し合いでやっていかなきゃならないということはわかります。しかし、長官、そのほかにも手だてはあるというふうに思っています。国内に無秩序に入ってきているんですから、秩序ある貿易体制をどう確立するかということが大きな課題だというふうに私は思うんですね。
 それで、やはり日本の輸入商社の関係を水産庁がイニシアチブをとってどう規制していくのかというところに動き出さない限り、私は、日本からマグロ漁業というのがなくなっていくんではないのかなと思うんですけれども、その決意をお聞きしておきたいと思います。
木下政府参考人 私ども、FOC漁船によるIUU漁業を、これは根絶すべきであるというのが基本的な立場でございますし、このような考え方のもとで、これまでも国際機関等を通じて活動をしてきております。さらに、FOC漁船の大半は台湾の漁業者であるというふうに私ども認識をいたしております。その辺を、先ほど来申し上げておるような統計の確認もさることながら、基本的には、このような台湾の漁業者により経営をされているという現状をかんがみますと、このもとを断つことがまず大事だろうというふうに思っております。また、FOC漁船の主要漁獲物でございますメバチでございますけれども、本年七月から統計証明制度をスタートするところでございます。
 このような観点から、貿易面からもモニターをするということでございまして、いずれにいたしましても、あらゆる機会を通じまして、このようなFOC漁船によりますIUU漁業につきましては根絶するということで、最大限の努力を傾注していきたいというふうに考えております。
菅野委員 ことしの五月二十七日から三十日、三十日から三十一日まで、ICCATの「「IUU対策作業部会」及び「統合モニタリング措置作業部会」の結果について」というプレスリリースをいただきました。ここの中でも、長官、やはり、最後にあるんですが、「ICCATの資源管理措置を損なう国に対する貿易制限措置の実施手続は、加及びECより、これを明確に規定する提案がなされたが、十分な検討は行えず、積み残しとなった。」という状況ですね。カナダやEUが明確に規制すべきだということを主張していたんですね。どうしてこういうところに、日本は一体となってやっていけないんでしょうか。
 そしてもう一つは、非常に大きな問題なんですが、先ほどの数量のまやかしという部分が、FOC船の資本関係の詳細な調査を進めている云々となっているんですが、洋上で積みかえて日本に持ってきている実態も明らかになっています。こういうところをしっかりと規制していかない限り、私は、先ほどから申し上げているんですが、魚価の回復というのはあり得ないんではないのかと思うんです。
 ICCATの部分、どうして十分な検討が行われず積み残しになったのか、それから洋上積みかえの問題等も含めて、どう水産庁として考えているのか、お聞きしておきたいと思います。
木下政府参考人 五月の末に行われたICCATの作業部会でございますけれども、一つは、台湾漁船によるFOC漁船の取り組み状況についての議論に相当程度割かれたわけでございますけれども、このほかに、先ほど御指摘の点がございました中で、アメリカなりカナダが、そのような規制を行うに際し、かなり厳密な基準を適用すべしというような意見もありまして、かえって、そのようなFOC漁船についての具体的な輸入規制を図るという観点についてはいろいろ問題があったというふうに認識をいたしております。
 いずれにいたしましても、私ども日本政府といたしましては、FOC漁船の漁獲物、いろいろな形態で入ってくるわけでございますけれども、このようなFOC漁船を排除するという観点から、あらゆる点につきまして努力を重ねていきたいというふうに思っております。
菅野委員 私は、もう一つ大きな問題なんですが、日本の国内産業を本当に維持発展させていくという観点を国民全体が持たなきゃいけないというふうに思っています。そういう意味では、今マグロ全体を取り巻く状況というのを、水産庁が中心となって、関係漁業団体等々も含めて、国民に理解を求めていくというところが非常に重要なポイントでないかというふうに思っています。
 マグロ漁業基地というのが全国どこにでもあるということだったらば全国民が理解するんですが、限定された地域でもって行われているということからなかなか国民的な理解というものが得られていかない、実情が国民全体に知れ渡っていかないという中で、非常に厳しいなというふうに思っています。
 そういう意味では、JAS法の改正が行われました。JAS法の改正が行われて、今食品に対する関心というものが、農水省が中心となって大きく関心を高めたというふうに思っています。そういう意味で、マグロ類についても原産地表示を徹底するということが必要なんだというふうに思っています。
 それが原産地表示という部分で行われているんですが、今の実態がどうなっているのかということで見ると、昨年の九月、日かつ連が行った店頭販売における原産地表示の実態調査によればということで、民間団体が業を煮やして調査しているんですよね。政府が行っているんじゃないんです。それで、輸入メバチが三%、キハダでも六%しか原産地が表示されていない、そういう状況です。それから、輸入された蓄養のミナミマグロが約四四%が表示されていたものの、輸入された蓄養クロマグロは一〇・八%しか表示されていないということ、こういう状況ですね。
 やはり私は、徹底していくということが水産庁としても施策として重要なことではないのかなというふうに思うんですが、これに対して見解をお聞きしておきたいと思います。
木下政府参考人 漁業関係団体が昨年の九月に実施をいたしました調査でございますけれども、委員御指摘のとおり、輸入マグロである旨表示している率が非常に低いという結果になって、非常に残念な結果でございます。
 私ども、このような結果を受けまして、昨年十一月から関係団体を集め、その適正化に取り組んでいるところでございますけれども、委員御指摘のとおり、原産地表示を徹底するということは、水産庁の施策の中でも極めて重要であるというふうに認識をいたしております。大臣からも、水産物の表示につきまして、徹底した調査とその趣旨の徹底を図るよう指示を受けたところでございます。
 私ども、この秋にかけまして、水産庁として、どのような表示実態にあるのかということも含めまして、徹底した調査とそれを踏まえた指導を進めていきたいというふうに考えております。
菅野委員 先ほどからずっと言っているんですが、対応が後手後手になっていく、あらゆる施策の展開を今の時期に徹底して行わない限り、毎年漁業経営から撤退していっている、そういう状況なんですね。このままあと三年、四年推移していったならばどうなるんだろうかという漁業経営者の心配が声として起こっているんです。そのことを、先がこういう状況で明るくなりますよというメッセージを送らない限り、続ける人は難しい状況になってきているというふうに思います。
 そして、先ほど言ったように、漁業再建整備特別措置法なるものを用意いたしました。経営体が弱くなってきているんですね。そうしたときに、制度資金も借りられなくなっていくという状況です。
 大臣、今まで長官といろいろやりとりをやってまいりました。先ほどから答弁を聞いていると、水産業の業は幅広くいろいろな分野があるから対策をとることは大変難しいという答弁をなされて、そういう形で大臣は施策の展開を先送りしているというふうに私は聞こえてならないんですね。
 今言ったように、日本のマグロ類を、マグロも含めて、私はマグロが今非常に危機だというふうに思うんですね。漁船漁業等を含めて、今日の状況、今のやりとりの中で聞いていて、大臣として、今後どのように決意して対策を練っていかれるのか、見解をお聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 我が国の漁業については、魚種、漁法、または経営形態の大小、遠洋、沖合、また沿岸、多種多様な形態があるわけでありますし、その中で、日本民族というのは、やはり魚と米というのは切っても切れない関係にあるんだろう、このように思います。
 そういう意味で、多様な政策展開というものが必要だという意味で私は申し上げたわけでございますが、昨今、食品表示の問題が多発しております。そのことによって、食の安全に対する消費者や国民の信頼が食卓を揺るがすような、そういう大問題になってきているわけでございまして、こういうようなことを考えますと、私は、さまざまな国際法規も含めて法令遵守ということはきちっとしなきゃならぬ、このように思います。このことについては、行政当局として毅然と対応するということを今後徹底指示してまいりたい、このように思います。
 その上で、現在、魚価の低迷等により厳しい経営を余儀なくされている方々に対しましては、今後とも、我が国マグロ漁業につきましても、国際的な操業規則の強化、外国漁船との競争等厳しい状況の中にありましょうが、漁業生産の維持を図るために、ICCAT等の国際漁業管理機関における適正な資源管理の実現、これはもう相当強い決意で求めてまいりたいと思います。
 二国間の漁業交渉を通じた漁場の確保を図るということについても厳正に対処してまいりたいと思いますし、本年度から、洋上保管を含む受託方式の水産物調整保管事業への導入や漁船リース事業の実施等、適正なマグロの魚価の形成や生産コストの削減等による国際競争力の向上のための取り組みも支援しているところでございます。
 いずれにいたしましても、今委員と水産庁長官との質疑を聞いておりまして、この分野ももう一度徹底的に実態を把握する必要がある、そして、毅然とした対応というものが必要だということを強く感じた次第でございまして、我が国の遠洋漁業の主要な柱でありますマグロ漁業につきまして、今後ともその存続のため、最大限の努力を傾注してまいりたい、かように存じます。
菅野委員 大臣、前々農水委員長である宮路先生が、平成八年にまぐろ資源の保存及び管理の強化に関する特別措置法をつくったいきさつというものを一冊の本にまとめて、私、見る機会、こういうのを出しているというのも知らなかったんですが、今回、資料収集している中でこの本を見つけることが、手にすることができました。
 平成八年と六年間経過した今日の状況というのは、一つも変わっていないですね。本当に、この六年間でどういう施策をこれに基づいて展開してきたんだろうかということを疑わざるを得ない。先ほども紹介しましたけれども、政府の無策という声が上がってきてもおかしくないというふうに私は思いました。それくらい、今日的な厳しさがあるということだというふうに思います。平成八年当時も同じ思いでもってこの法律案をつくったんです。それが具体的に施策展開されているのかといったときに、私は結びついていっていないと思います。
 そして、「輸入に関する措置」ということで第六条にうたっているんですね、平成八年度も。平成八年において、マグロ類の輸入を何とかしなければ日本のマグロ漁業というものが先行き成り立っていかないという立場に立っていたというふうに思っています。そして、外務省や通産省とのやりとりのことも紹介されていました。この外務省や通産省との話し合いを、水産庁が、農林水産省がしっかりと行って働きかけていかなければ、私は、先行きの見通しが立たないというふうに思っています。
 この六条の適用というのが今日ほど求められている時期はないというふうに思うのですけれども、まぐろ資源の保存及び管理の強化に関する特別措置法について、六年経過した今、長官でもいいです、どう評価なさっているのですか、この法律を。今後どう対処しようと考えているのですか。
木下政府参考人 まぐろ資源の保存及び管理の強化に関する特別措置法の件でございます。
 委員御指摘のとおり、六条には、第五条による要請を行った後、相当の期間を経過してもなお当該要請に係る活動が改善されていないと認められるとき等々におきましては、必要な限度において、外国からのマグロ類輸入を制限することができるというような規定がございます。
 私ども、この規定を受けまして、既にこの法律でやっているところを御紹介いたしますと、ICCATは、資源管理措置を損なう漁業活動をしている国からの輸入禁止措置を勧告している、それを受けまして、私ども、輸入貿易管理令に基づきまして、これらにつきまして輸入禁止措置を講じたところでございます。
 今後とも、このような措置を活用しながら、必要な所要の措置を講じていきたいというふうに考えております。
菅野委員 マグロについて特化した質問をやってまいりました。このことが、水産業界全体あるいは第一次産業全体に共通する今日的な問題点だというふうに思いながら、今私は質問をしてまいりました。ぜひ、日本から第一次産業が、あるいは漁船漁業がなくならないようなしっかりとした対策をとっていただきたい、このことを要望いたしながら、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。
 これをもちまして各案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、原田義昭君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。原田義昭君。
原田(義)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  水産業をめぐる情勢の変化にかんがみ、水産資源を持続的に利用しつつ、将来にわたって国民の需要に即した漁業生産を行うことができるよう、効率的かつ安定的な漁業経営体を育成する必要がある。
  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努め、もって我が国水産業の健全な発展に万全を期すべきである。
      記
 一 漁業経営改善計画に基づく資金の貸付けが有効かつ効率的に機能し、経営改善の実現に資するよう、漁業者に対する適切な経営指導等に努めること。
 二 水産資源回復のため、森と海との一体性等を考慮した環境の保全、藻場の再生等抜本的対策を講ずるとともに、資源回復のための減船、休漁等の取組みに対する資金の貸付けについては、漁業経営の安定が図られるよう、適切に対処すること。
 三 漁業経営等の実態に即した適切な融資が行われるよう、水産金融制度の一層の充実に努めるとともに、漁業経営に必要な資金の円滑な融通を確保するため、中小漁業融資保証保険制度の適切な運営を期すること。
 四 我が国水産業をめぐる情勢の変化と現状を踏まえ、各種水産団体の位置付け・役割を明確にしつつ、これら組織の簡素合理化等その再編整備を行うこと。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
 以上でございます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 次に、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子さん。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案に対して、反対討論を行います。
 反対の第一の理由は、農林中金等が定めた自主ルールが本法施行によって法的権限を持ち、信漁連、漁協に大きな負担を押しつけることになるからです。
 政府は、一般銀行と基本的に同一の、系統金融機関に対する検査マニュアルの見直しをしようとしていません。その一律的な指導により、今後、一層自己資本比率の引き上げ、リストラや融資の制限、不良債権の処理が徹底されることは必至です。そうした経営改善や合併等組織再編ができないところは、信用事業の廃止さえ要求されています。本法が、地域、海域で多様な条件を持つ漁業生産のための信用事業という特性を無視する施策になることを強く危惧するものです。
 第二の理由は、今の漁協に事実上、単独で信用事業を行う資格を奪い、合併や事業譲渡を強制するものだからです。
 漁協系統内でルールや目標を決め、民主的に徹底させることは当然です。しかし、信用事業担当常勤理事の必置、最低出資金の一億円以上、そのほか貯金規模や職員数など、自主ルールで定める信用事業実施要件を上回っている漁協は全国で少数です。したがって、本法によって多くの漁協は無理やり合併や信用事業譲渡を迫られます。自主性を重んずべき漁協系統機関への対応として、大きな問題点であります。
 最後に、これらの施策がペイオフに備えるという理由で合理化されています。しかし、漁業者に負担を押しつけ、信用事業の規模拡大、体制整備によって真に事業の安定が図られるのでしょうか。魚価の安定や経営支援など、政府の政策の転換、漁業者本位の民主的運営こそ重要であることを指摘し、反対討論といたします。
鉢呂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより採決に入ります。
 水産業協同組合法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。白保台一君。
白保委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、水産業協同組合法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    水産業協同組合法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  資源状態の悪化等により経営環境が一段と厳しさを増している中、水産業協同組合については、水産基本法の基本理念の実現に向け、積極的な役割を果たすことが期待されている。
  よって政府は、本法の施行に当たっては、左記事項の実現に努め、その健全な発展に万全を期すべきである。
      記
 一 水産資源の管理・営漁指導をはじめ、水産物の安定供給、漁業の経営改善、漁村の活性化等、漁協等による取組みが円滑かつ適切に行われるよう、地方公共団体とも連携し、事業・組織基盤の強化等各種施策の積極的な推進に努めること。また、漁協の自主性を尊重しつつ、漁協合併が促進されるよう、漁業協同組合合併促進法等関係制度について検討しつつ、国及び地方公共団体の取組みを強化すること。
 二 常勤理事の必置、最低出資金額の引上げに当たっては、漁協系統の組織・事業の実情を十分踏まえ、現場での混乱を来すことのないよう適切に対応すること。
 三 漁協等の経営の健全性を確保するため、破綻未然防止体制の整備及び適正運営の確保について指導するとともに、行政検査の充実・強化及び行政検査と連合会監査との連携の強化を図ること。
 四 漁協系統信用事業の健全性を確保するため、その零細性・脆弱性等の実態を踏まえ、信用事業の整備が迅速かつ機動的に行われるよう指導すること。その場合、組合員に対する利便性の提供が十分確保されるよう指導すること。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
 以上でございます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただきまして、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 次に、漁業災害補償法の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 漁業災害補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鮫島宗明君。
鮫島委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    漁業災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  資源状態の悪化等厳しい漁業情勢の下で、漁業災害補償制度は、事業収支の悪化、加入の伸び悩み等の多くの課題を抱えている。
  よって政府は、漁業経営の安定等のため本制度が果たすべき役割について引き続き検討を深めるとともに、本法の施行に当たっては、左記事項の実現に努め、本制度の健全かつ円滑な運営が確保され、漁業者の経営の安定が図られるよう万全を期すべきである。
      記
 一 本制度への一層の加入促進を図るため、漁業者等に対して今回の改正内容を十分周知するとともに、漁協及び漁業共済団体等の普及推進体制の充実並びに政府・地方公共団体が実施する各種施策と本制度との連携の強化を図ること。
 二 漁業共済組合連合会と漁業共済組合との合併に当たっては、漁業者の利便性が確保されるよう適切な指導を行うこと。
 三 漁業関係の共済・保険事業の運営の現状及び漁業経営の合理化の必要性等にかんがみ、総合的な共済・保険制度の確立に向けて検討すること。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 次に、遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山田正彦君。
山田(正)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    遊漁船業の適正化に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  国民の健全なレクリエーションとしての遊漁の振興と遊漁船業の適正化を推進することは、漁村の活性化を図るとともに、水産業及び漁村の有する多面的機能を発揮する上でも極めて重要である。
  よって、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
      記
 一 遊漁船利用者の安全の確保及び漁場の安定的な利用関係を確立するため、遊漁船業者の意識の啓発と向上及び遊漁船業者の組織化を積極的に推進すること。この場合、国及び都道府県と遊漁船業関係団体が相互に連携して指導する体制を確立すること。
 二 登録都道府県の地先を越える海域での遊漁船の事故及び漁場利用上の紛争等について、国及び関係都道府県が協力して対処する体制を整備すること。
 三 都市と漁村の共生と対流を一層促進するため、都市住民のニーズに十分配慮し、漁村における遊漁関連施設の充実に努めること。
 四 近年のプレジャーボートによる遊漁者の増加に対処し、水産資源の持続的な利用を図る観点から、その実態をさらに把握するとともに、プレジャーボートを含む遊漁・漁業間の漁場利用の調整を図ること。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.