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第19号 平成14年9月24日(火曜日)

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平成十四年九月二十四日(火曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 佐藤謙一郎君
   理事 鮫島 宗明君 理事 白保 台一君
      相沢 英之君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      小西  理君    後藤田正純君
      左藤  章君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      浜田 靖一君    松島みどり君
      宮腰 光寛君   吉田六左エ門君
      小平 忠正君    後藤  斎君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      楢崎 欣弥君    堀込 征雄君
      山内  功君    江田 康幸君
      高橋 嘉信君    中林よし子君
      松本 善明君    菅野 哲雄君
      山口わか子君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   会計検査院事務総局第四局
   長            重松 博之君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (林野庁長官)      加藤 鐵夫君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
九月二十四日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     松島みどり君
  岩崎 忠夫君     小泉 龍司君
  上川 陽子君     左藤  章君
同日
 辞任         補欠選任
  小泉 龍司君     岩崎 忠夫君
  左藤  章君     上川 陽子君
  松島みどり君     岩倉 博文君
    ―――――――――――――
七月三十一日
 一、農業経営再建特別措置法案(小平忠正君外二名提出、第百五十一回国会衆法第二〇号)
 二、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案(古賀誠君外九名提出、衆法第二三号)
 三、有明海及び八代海の再生に関する臨時措置法案(佐藤謙一郎君外五名提出、衆法第四〇号)
 四、農林水産関係の基本施策に関する件
 五、食料の安定供給に関する件
 六、農林水産業の発展に関する件
 七、農林漁業者の福祉に関する件
 八、農山漁村の振興に関する件
の閉会中審査を本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長須賀田菊仁君、農林水産省農村振興局長太田信介君、食糧庁長官石原葵君及び林野庁長官加藤鐵夫君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第四局長重松博之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 きょうは、短い時間ですが、やまりん事件を中心にお聞きをしたいと思います。
 今の政治の最大の問題点は政官業の癒着構造にある、こう考えております。鈴木宗男問題の本質は、この政官業の癒着問題でございます。鈴木宗男さんが逮捕された直接の理由はやまりん事件でございますが、このやまりんにまさに政官業の癒着構造が典型的にあらわれている、そういう観点から農水省、林野庁にお聞きをしたいと思います。
 まず、やまりん自身結構大手の木材関連業の会社でございますが、なぜ急激に伸びたかというと、国有林の大量盗伐、これでのし上がったわけでございます。前例のない大規模な盗伐行為、それに対して、きょう質問する全体の趣旨を申し上げますと、林野庁、営林署が黙認していたどころか加担をしていた。これが大きな問題でございまして、そして、余り大規模だったものですから、もう隠し通せなくなって行政処分をしたところで鈴木宗男の登場になった。まさに、族議員と官僚と業界の違法な既得権益構造が典型的にあらわれているわけでございます。
 まず、その点の最初の確認として、このやまりんの大量盗伐の中身、前例のない大規模な盗伐行為をずっと繰り返したわけですが、そのうちの明確な点だけ、はっきりした点だけ確認をしたいと思います。
 一つは、九六年にやまりんが約四百本近くの盗伐行為を行った、これは事実ですね。林野庁、お答えください。
加藤政府参考人 今お話あったことにつきましては、事実だと把握しております。
筒井委員 それに続いて、九七年にやはりやまりんが約千本の国有林の盗伐行為を行った、これも事実でございますね。
加藤政府参考人 今お話ございましたことも事実でございますが、その後さらに盗伐事案については発覚をしたということでございます。
筒井委員 前もって言われたので、まとめてあと確認しますが、その後、九七年の十一月ごろに三百本余り、それから九八年に七百本近く、これはいずれもやまりんが盗伐したことは間違いありませんね。
加藤政府参考人 今お話ございました点につきまして、若干まとめてお話をさせていただきたいと思いますけれども……(筒井委員「いや、時間がないからいいですよ。今の事実関係だけ認めてもらえればいいです」と呼ぶ)今言われました数字は、若干丸めたところがございますけれども、事実だと思っております。
筒井委員 これがまさに、やまりんが売却価値のありそうな立木を手当たり次第に伐採して、その地域の森林を長期間にわたり復旧困難な状態に至らしめた、こういう結果を出しているわけでございます。
 その結果について、林野庁は今度の調査結果報告書で、前例のない大規模な盗伐行為だ、盗伐被害の規模に応じた厳正な対処が必要との共通認識を持っているとか、あるいは、林野庁のやまりんに対する行政措置がゆがめられたり、不適正な対応が行われたという事実は認められず、むしろその後も緩むことなく厳正に続けられたと。まさに、林野庁は被害者である、こういう路線で一貫をしておりますが、これは完全にうそですね。そのうその点を具体的に一つ一つ聞いていきたいと思います。
 まず、林野庁からこのやまりんに何人もが天下っております。時期を限定して厳密にお聞きしますが、九八年五月当時に、常務二人、取締役一人、社長室長、これらを含めて五人役員として天下っている。グループ会社を含めると、さらにほかに二人天下っている。こういう天下りの事実は間違いありませんね。
加藤政府参考人 今言われました事実につきましては、大筋間違いございません。
筒井委員 そのうちの一人、営林署長を退職してやまりんの常務取締役に天下った田村功という人ですが、この人は天下った後何をやったかというと、先ほどの大量盗伐行為を常務取締役として指揮しましたね。これを確認してください。
加藤政府参考人 盗伐事案に今言われました者がかかわっていたのも事実でございます。
筒井委員 今、国有林の財政は非常に厳しい状況にある。今どころか、ずっと前から言われていた。その営林署長を退職して天下った人間そのものが大量の盗伐行為を繰り返していた、こんなめちゃくちゃなことがありますか。大臣、どう思いますか。
武部国務大臣 いろいろな盗伐行為があったということを聞いておりますけれども、このことに一部職員が関与したということもございまして、まことに責任感が欠如した、こう思わざるを得ません。まことに遺憾に思います。今後は厳しく正していかなければならない、このように思います。
筒井委員 それだけではない。森林官という役職が林野庁にあります。この森林官というのは司法警察員としての資格も持っておりまして、こういう盗伐行為をまさに取り締まらなければいけない、そういう職務の林野庁の職員でございます。この森林官自身がこの盗伐行為に加担をしましたね。明確に加担をして、有罪判決を受けた森林官が三人いますね。その点、確認してください。
加藤政府参考人 今お話がございましたことにつきましても、事実でございます。
 林野庁といたしましては、これらの者については懲戒免職にいたしたところでございます。
筒井委員 懲戒免職にするのが当たり前ですが、この森林官たちが加担をした方法は、黙認していただけではなくて、極印というのですか、木材を伐採した後の根に押す判こ、判こを押すことによって、これは盗伐根ではありませんということを証明するようですが、この極印をやまりんに貸し与えたり、あるいはみずから押したりして盗伐行為を隠してやった。こういう行為をやったことも間違いありませんね。
加藤政府参考人 今言われましたことも事実でございまして、業者が行った盗伐事実を隠ぺいするために、極印と言っておりますが、極印を業者に貸し与えたというようなこともございますし、またみずから極印を盗伐した根元に打ったという事案もございます。
筒井委員 この森林官たち、営林署の職員たちが接待を受けたりいろいろな贈答を受けたりした。そして、大体、やまりんが盗伐する前に前もって林野庁の職員に、それを黙認してくれるか許してくれるか感触を得てから盗伐行為に入った、こういう事実も間違いありませんね。
加藤政府参考人 そのことにつきましても間違いないというふうに思っております。極めて遺憾であるというふうに思っております。
筒井委員 今、三人の森林官を懲戒免職した、これは認められましたが、それ以外に不適正な職務実施者として森林官が全部で何人処分を受けていますか、やまりん事件に関係して。この、今の三人の懲戒免職を受けた人はいいんですよ。それ以外の、こういう不適正な職務を実施した、こういうことによって森林官が処分を受けていますが、全部で何名受けていますか。
加藤政府参考人 そのほかに一名を懲戒免職にいたしております。
筒井委員 懲戒免職以外に、一つ一つ、では時間がかかるので私の方から確認しますが、減給処分を、森林官四名それから営林署の次長が一名、不適正な職務の実施者として処分を受けていますね。
加藤政府参考人 今言われましたことで間違いございません。
筒井委員 それ以外にもまだあるんですが、細かいことを言っていたらきょうは三十分しか時間がないので。
 署長をやめて天下って、そして盗伐行為を指揮した。それだけではなくて、現職の森林官やあるいは営林署の次長がそういう加担行為を行った。
 さらに、政官業の癒着構造を示すものとして、もう一つお聞きしますが、九六年と九七年に、東北海道造林事業協議会、この会合に、これらの会合は結構あったようですが、ここに林野庁の長官を初めとして幹部が宗男さんと同席している。そして、当時この協議会の会長はやまりんの山田勇雄会長だった、こういう事実、確認してください。
加藤政府参考人 今お話ございました平成八年、平成九年に開催された東北海道造林事業協議会の会合ということにつきましては、帯広営林支局幹部が出席をしていたということは事実でございます。
筒井委員 帯広営林支局長が出席して、そのうちの一回は鈴木宗男さんと同席したということですね。まず、宗男さんとの同席、確認してください。
加藤政府参考人 平成八年と平成九年でございますけれども、平成九年には、今回の聞き取りによりますと、懇親会の席に鈴木議員が出席していたという記憶がある者が複数いたところでございます。
筒井委員 それからもう一点、その関係でお聞きしたいのは、平成九年に都内の料亭で鈴木宗男さんの北海道沖縄開発庁長官就任祝い兼陳情会、これを今の造林事業協議会がセットした、ここに林野庁長官が参加したのではありませんか。これを確認してください。
加藤政府参考人 平成九年十月に鈴木宗男議員の大臣就任祝賀会が都内で行われまして、それにつきましては、当時の林野庁長官が出席したのは事実でございます。
筒井委員 それをセットしたのがやまりんの山田勇雄会長の協議会、先ほどの東北海道造林事業協議会で、その協議会の事務局長は林野庁のOBですね。この点について確認してください。
加藤政府参考人 そのとおりでございます。
筒井委員 この懇親会で、支局長が認めておりますが、林野庁は出席しているんですが飲食代は一切払っておりませんね。
加藤政府参考人 そのことにつきましては、農林水産省の職員倫理規程に禁止されている関係業者との会食に当たるということで、平成十一年一月十八日に処分を行ったところでございます。
筒井委員 いや、私の今の質問は、飲食代を払っておりませんねということです。払っていなかったから、倫理規程に違反するから処分したんですか。
加藤政府参考人 払っておりません。
筒井委員 大体このとき全部で約十人ぐらいの出席でしょう。約十人ぐらいの出席で、そのうち、もちろん鈴木宗男さん本人は出ているし、協議会の人間、山田勇雄会長それから林野庁OB、これはもちろんそうですし、それに林野庁長官、今度のやまりん事件で有名になりました伴次雄業務部長、それから絹川営林支局長、この三人がそろって出席していますね。
加藤政府参考人 祝賀会への出席者につきましては十名弱だというふうに聞いておりますが、その中に、今言われましたように、長官、業務部長、帯広営林支局長、当時の三名が出席をしたというのは事実でございます。
筒井委員 まさに盗伐行為の真っ最中。それに、十人しかいないところへ三人も大幹部が、林野庁が出席していた。そして、飲食代もまさにおごってもらった。後になってから処分したって、この当時、まさに森林官も加担して、営林署の次長を含めて後で処分を受けるような不適正な職務をやって、それで、天下った署長がまさにその全体の盗伐行為を指揮した。ちょっとめちゃくちゃじゃないですか、林野庁。これが、こういう大規模な被害に対して厳正に処分した、厳正に対処したなんて言えますか。まさに加担そのものじゃないですか、林野庁挙げて。
 こんなことをやっていて、今の国有林の会計が大変だからといって税金を使うなんというのは、国民から認められるはずがないでしょう。担当の林野庁として、こんなめちゃくちゃな行為、まさに政、官、この場合は、まず言ったのは官、業の癒着ですが、これに対してどう反省しているんですか。
加藤政府参考人 今問題にされました祝賀会への参加につきましては、政治家からの招待をいただいたということで、農林水産省の職員倫理規程に違反しないのではないかという認識のもとに参加をしたというふうに考えておりますけれども、いずれにしても、政と官、業の問題につきましては厳正に対処していくということが必要ではないかというふうに思っているところでございます。
筒井委員 反省になっていないですよね。先ほどの調査報告書によりますと、林野庁のやまりんに対する行政措置がゆがめられたり、不適正な対応が行われたといった事実は認められず、あるいは、盗伐行為の被害に応じた厳正な対処が必要との共通認識なんてきれいごとばかり言っているけれども、林野庁が被害者じゃなくてまさに加害者そのものじゃないですか、国民に対する。今の言葉では反省の言葉に全然なっていない。ただ、時間の関係で、さらに引き続いて聞きます。
 私、本当に聞きたいのは、この次の点なんですが、余りそういうふうに大量の盗伐を繰り返したものですから、ついに林野庁も黙っていられなくなって、入札参加停止の行政処分をした。国有林の木材の入札にやまりんは参加してはならないという、七カ月の停止処分をした。ここで鈴木宗男さんの出番になったわけでして、鈴木宗男に五百万持って、やまりんの会社とグループ会社、経営者筋がそろってお願いに来た。これが、今度逮捕された事件になっているわけでございます。
 私は、今度の事実関係は、やまりんの行政処分は将来何とか取り戻してほしいという要請が一つあるんだけれども、もう一つは、グループ会社には入札参加を認めてほしい、そういう要請行為をした。それが、実際に鈴木宗男はそう動いて、林野庁がそれに応じた。そして、グループ会社が、当初は辞退させられたんだけれども、後から入札にずっと参加することができた。
 こういう経過になっているわけでございまして、まさに林野庁は鈴木宗男の要求に応じた、この点を今、これから確認をしていきたいと思います。ただ、きょうは時間がないので、途中まででこの点は終わるかもしれませんが、重要な問題なので、きょうは途中まででも聞いておきたいと思います。
 まず最初に、九八年の六月に、やまりんに対して、当分の間随意契約を停止する、こういう通告をしましたね。このときはやまりんに対してだけで、グループ会社は対象になっていませんね。この点、確認してください。
加藤政府参考人 そのとおりでございます。
筒井委員 そのときグループ会社を対象にしなかった理由は何ですか。
加藤政府参考人 グループ会社ではありますけれども、これは明らかに別会社でございまして、別会社としての取り扱いをするということで考えているわけでございます。
筒井委員 別会社だからそのときの処分の対象にしなかった、今、そう答えられました。
 その後、その後といっても二日後か、九八年の六月十七日ですから二日後に、グループ会社が入札に参加して、木材の落札をいたしましたね。落札したことに対して、辞退するように林野庁は求めている。そして、グループ会社はその落札を、入札参加を辞退しましたね。この事実、まず確認してください。
加藤政府参考人 このことにつきましては、六月中旬に行われた入札で、関連会社と言われている二社が落札をしたわけでございます。
 当時、農林水産大臣から、当該契約については辞退させるべきではないかという御指示があったところでございまして、林野庁の幹部といたしましては、別会社である会社に辞退を強制するということは困難ではないかということであったわけでございます。
 しかしながら、今、全体としてまだ処分が決まっていない、さらに、入札された落札量については相当多くの量がされているというようなこともあり、自主的にこのことについては辞退をしていただくというようなことでお願いをいたしたところでございます。
筒井委員 当時、島村農水大臣だった。島村大臣が、大体、そんな盗伐行為をやったような会社のグループ会社を入札に参加させるとはけしからぬ、やめさせろ、こういう指示をしたというふうに御本人も言っておりますが、その指示に基づいて、別会社だけれども辞退させた。辞退にグループ会社が応じたのが、九八年六月二十四日ですね。これも確認してください。
加藤政府参考人 そのとおりでございます。
筒井委員 島村大臣が辞退させろと言った理由は、やまりんがそういうことをやっているんだからグループ会社にも参加させちゃいかぬ、こういう理由だったというふうに島村大臣は言っておりますが、今の説明ですと、何か、今言ったのは調査報告書にも出ていますが、落札の量が多かった、それから、処分がまだ決まっていなかった、この二点を挙げておりましたが、そんなのは島村大臣、言っていないでしょう。
 量が多かったなんというのは、辞退させる理由には何もならない、ちゃんと正当な入札であれば。当初は参加させたんだから。それに、落とした数が多いか少ないかは辞退させる理由にならない。
 それから、処分がまだ決まっていなかったこと、これは一体どういう理由で辞退させる理由になるんですか。
加藤政府参考人 今回の事案につきまして、まだその段階で全容が明らかになっていないというようなことがあったわけでございまして、そういう中で処分のあり方というものを考えてきたわけでございます。
 それで、事案に即しまして、できるだけ早く一定の処分をするということで七カ月の処分を行ったわけでございますが、入札の段階ではそういったことが決まっていなかったということもございまして、この問題については自主的に辞退をしていただいたということでございます。
筒井委員 あいまいに答えているけれども、これが、その後、今度は一たん辞退させたのを入札に参加させたんですよ。
 その関係で重要なので確認しますが、まだ処分が決まっていなかったことがどうして辞退させる理由になるんですかという質問なんです。グループ会社も盗伐行為に加担していた可能性があったからですか。ちょっと厳密に答えてください。
加藤政府参考人 五月に実は盗伐をされているんではないかということが発覚をいたしまして、六月の段階だったわけでございます。そういう中でいきますと、まだ事件として全体を把握しているという段階には至っていないということがあったわけでございます。
 そういう中で、関連会社ということを考えますと、辞退していただくということもあり得るのかなと。これはもうあくまで、先ほどから申し上げておりますように、強制的に行ったということよりも、自主的に辞退をしていただいたということでございます。
筒井委員 どうも答えていない。
 大体、二十四日に辞退したんですよ。今さっきもお認めになった。二十五日には、もう処分しているんですよ。二十五日に、明確になったから処分したんでしょう、やまりんに対する。二十四日に、前の日に辞退したんですよ。
 処分が未確定で、何がだから不明確だったんですか。盗伐にグループ会社も参加していた可能性があるからなんですか。それとも、それ以外に何か不明確な点があったからですか。なぜ辞退させたか、この理由をきちんと厳密に答えてください。
加藤政府参考人 入札の段階におきましては、やはり、やまりんに対する処分がきちっと決まっていないということでございまして、そういったものを踏まえて、関連会社についても自主的に辞退をしていただいたということでございます。やまりんの処分が決定をしていなかったということでございます。
筒井委員 だから、決定していなかったことがどうして辞退させる理由になるんですかという質問なんですよ。
 入札に参加させたときは、これは別にいいです。今、それを聞いているんじゃないんです。今、林野庁が辞退させた、辞退させた理由が、その辞退させた日は二十四日ですが、その次の日に処分しているんです。処分が決まらなかったからと先ほどから言っているけれども、処分が決まっていなかったことがどうして辞退させた理由になるんですか。それだけ答えてください。
加藤政府参考人 要は、やまりん事案に対してどうするのかという、一つの確定といいますかけりといいますか、ちょっと言葉は悪いですけれども、そういったものがその段階では決まっていないということでございまして、それを決めて判断をしたということになっていくわけでございます。
筒井委員 全然答えていないんで。
 ただ、二十五日に処分はしましたね、そのときは確定したんですね。処分を発表しましたね、二十五日に。二十五日に発表するということは、前の日にもうわかっていなきゃ二十五日に発表できないでしょう。
加藤政府参考人 二十五日に処分をしたのは事実でございます。
筒井委員 二十五日に処分を発表したんですから、その前にちゃんと中身を確定していなければ発表なんかできないでしょう。前の日に辞退させたんですよ。これ、ちょっとしつこいようだけれども、その後にグループ会社を入札に参加させているんですよ、林野庁は。私は、そこに、その間に何があったかというと、島村大臣が中川大臣にかわったことと、鈴木宗男のところにやまりんが五百万持っていったこと、この二つがその間にあったんですよ。
 だから、なぜこのときに辞退させて、なぜその後にグループ会社の入札を認めたのか。辞退させてその後認めた、全く逆転しているんですよ、林野庁の行動が。だからしつこく聞いているんです。
 このときになぜ辞退させたんですか。もう二十五日に発表して、そんなの前の日にわかっているはずでしょう。だけれども、処分がまだ確定していなかったとさっきから言いわけしている。だったらそれでもいいけれども、処分が確定していなかったらなぜ辞退させる理由になるのか、これをさっきから聞いているんですよ。
加藤政府参考人 辞退をさせたのは二十四日でございますが、入札が行われたのは六月十七日でございまして、その段階でこのことについては論議といいますか、十七日から二十四日までの間で論議をしてきたということでございます。そういう点で、その段階では処分が確定をしていなかったということでございます。
筒井委員 この点、聞きたいんですが、私の時間が終わりましたので、きょうのところはこれで終了したいと思います。
 ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて筒井信隆君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎です。
 きょうは、有明海問題、BSE関連、そして無登録農薬の使用問題をやりますけれども、冒頭、日朝国交正常化交渉に伴う閣僚会議が設置されるようですけれども、大臣はこの日朝にかかわる農水問題のどういう点を重視されますか。
武部国務大臣 九月二十日の閣議で日朝国交正常化交渉に向けての閣僚会議が設置されたわけでございまして、今、農林水産分野の課題についてどういう見解を持っているかという御質問でございますが、これは今後、日朝国交正常化の交渉に向けた動きを見ながら対応していくべきだ、かように思います。
 しかし、一般論として言えることは、同国は九五年から九七年の洪水、あるいは二〇〇〇年、二〇〇一年の干ばつなどによりまして農業が壊滅的な打撃を受けている、農業生産が激減し食料が恒常的に不足している、そういう事態であるということはFAOの情報等により承知しているところでございまして、私どもも人道的な立場からこういったことについて深い関心を持っていくべきであるということはそのとおりだ、このように考えております。
楢崎委員 わかりました。
 それでは、有明海問題について二点ほどお伺いをいたします。
 さきの通常国会では、私たち民主党、そして与党提案の有明海再生問題が継続審議となって、秋の臨時国会に持ち越されたわけです。ところが、そういう立法府の動きを無視するかのごとき行政の姿勢が見られるんですね。前面堤防着工問題もそうでしょう。その背景にあるのが、農水省が言うところの四月十五日の重たい合意にあるのなら、それは、やはり将来世代に大きな禍根を残した平成十四年四月十五日として人々の記憶に残ると思います。
 かねてから有明海再生の影響調査を約束しながら、一方では六年度の完工を強調する、こういう農水省の矛盾する姿勢に国民が納得すると思われますか、どうですか。
武部国務大臣 諫早湾干拓事業につきましては、平成十一年三月の潮受け堤防完成後、台風や洪水時だけでなく、常時の排水不良に対しても防災効果が上がっている。また、そのことによって、地域住民から大変感謝されているというふうに承知しております。
 また、地元自治体や農業関係者を初めとする地域住民から、概成した土地の早期利用を強く要望されているところでございまして、このような中から、本事業は昨年、再評価第三者委員会の意見等を踏まえまして、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守等の観点に立って総合的な検討を行った結果、本年六月には、既に干陸した土地のうち、農地としての整備が進んでいる区域に限り干拓地として整備し、残りは現状のままに保全するということで、前面堤防の位置を変更して、干拓面積を二分の一に縮小するという変更を行ったわけでございます。
 こういうことを背景に、四月十五日に、今委員御指摘のような短期間の開門調査の実施と、平成十八年度に事業を完了させるとの農林水産省の方針について、長崎県知事、有明海の三県漁連の会長、有明海の三県の知事との会談において理解が示されたわけでございます。
 したがいまして、現在、短期の開門調査を含む開門総合調査の実施とあわせて、十八年度中に本事業が完了するよう円滑に工事を実施しているところでございまして、私どもは、この方針というものについて理解を得て進めている、このように認識をしている次第でございます。
楢崎委員 私は、その農水省の姿勢を言っているんですよ、矛盾するんじゃありませんかと。
 いいですか。その諫干工事の設計監理などを受注したコンサルタント各社に、九六年度以降、農水省OB約百八十人が天下っているわけですね。それからまた、工事受注のゼネコン各社、これは工事が始まった八六年以降、自民党長崎県連にした献金が約六億四千万。これは同時期に長崎県連が集めた企業献金の四六%に当たるわけですね。
 干拓工事が立ちどまれない背景に、いわゆるこういう政官業癒着構造が指摘されているんですよ、今。そういう意味において、諫干事業は一体だれのための事業なんだというのが問われていると思うんですが、いかがですか。
武部国務大臣 ただいまも申し上げましたように、我が国の食料の安定供給及び地域の農業振興を図るというその観点から、干拓事業は、私はこれを実現するための有効な事業の一つだ、このように考えております。
 諫早湾干拓事業につきましても、隣の佐賀県と比較いたしまして、現地に参りまして思うのは、平たんな農地の乏しい長崎県における大規模な優良農地の造成ということを地元の皆さん方が求めるというのは、私は理解ができるわけであります。
 また、背後低平地における高潮、洪水及び常時の排水不良に対する防災機能ということを強化してほしいという、また、その目的にかなう事業だ、私はこのように認識をしているわけでございまして、今委員いろいろ御指摘がございましたけれども、諫早湾干拓事業がおっしゃるような特定の企業のためというようなものでは全くない、そのことを御理解いただきたいと思います。
楢崎委員 大臣とは認識を異にするわけですけれども、やはり私たち民主党の有明再生法案が言うように、有明海異変との関連を不透明にしたまま干拓工事を推進すれば、漁業者の反発だけではないですね、国民の疑念に拍車をかけると思います。また、そうならないためにも、ノリ対策第三者委員会が、八月九日ですか、第九回会合で改めて原因究明の必要性を説かれたように、中長期の開門調査、これは強く求められていると思います。そのことを申し述べて、BSE関連に移ります。
 在庫処理に伴う牛肉買い取り制度、いろいろな不祥事件が起こったわけですけれども、日本ハム事件もその一つですね。問題が徐々に明るみになっていくさまは雪印食品と全く同じです。雪印事件の教訓が生かされていません。消費者ももうここまで来ると何を信用していいかわからない。企業の社会的責任というのをどう認識しておられるのか。そういう意味において、この日本ハムが起こした事件というのは非常に重たい。やはり管理職体制の一掃一新、これは当然のことと思います。
 そこで、具体的にお伺いしますけれども、買い上げ事業に伴う総量、これは約一万三千トンと言われていますが、この総量の中の枠といいますか、これをめぐって業界六団体がしのぎを削ったのがこの日本ハム事件の背景にあると思うんですね。業界六団体に対する枠というのはあったんですか、それとも自由申請だったんですか。どうですか。
須賀田政府参考人 先生も御存じのとおり、この牛肉保管、処分事業、昨年の全頭検査を始めました十月十八日より以前の肉を後で短期間のうちに可能な限り市場から隔離するということで始めました。
 事業の参考としては、過去行いました調整保管の例を参考としたわけでございまして、業界六団体が、会員等の保有していた牛肉を売り戻し条件つきで買い上げて、その団体の所有とした上で申請するということでございまして、六団体に対しまして枠を設定したという事実はございません。
 現に、私どもが営業倉庫を中心に聞き取り調査を行いました十月十六日現在で集計した推定の在庫数量、約一万三千トンと推計したところでございます。実際に隔離した数量が一万二千六百二十六トンでございまして、在庫保有の実態を反映しているというふうに考えております。
楢崎委員 じゃ、もし六団体の申請量が総量枠を超えたなら、どうしたんですか。
須賀田政府参考人 ただいま申し上げましたのは、推定をした量を一万三千トンというふうに私どもが推定をしたわけでございまして、実際にその市場にあります量を確定したわけではございませんので、仮に一万三千トンを超えておりましても、それは受け付けた後で現品確認をして補助対象でないものは外すという仕組みもあわせて講じておったわけでございます。
楢崎委員 従来の見解を述べてありますけれども、昨年の十月二十五日、この事業の説明会が業界に対してあったわけですね。もう一度お聞きしますけれども、ここで業界に対する枠の割り当てというのが示されたんじゃないですか。もしくは、業界が枠の割り当てと勘違いするような説明がされたんではないですか。どうですか。
須賀田政府参考人 昨年の十月二十五日に業界への説明会を行っておりますけれども、これは事業の概要でございますとかそのスキーム等について説明をしたわけでございまして、枠の割り当てといったようなものを行った事実はございません。
楢崎委員 そのスキームの説明というのは、それはその前段の十月十九日ごろやられたんじゃないですか。
 そこで、買い上げ申請の期限、十一月六日までに出された業界六団体の申請量というのはどうなっていますか。
須賀田政府参考人 業界六団体ごとの買い上げ申請量でございますが、まず、全国農業協同組合連合会、いわゆる全農でございます、二千六百三トン。全国畜産農業協同組合連合会、いわゆる全畜連でございます、百十四トン。全国開拓農業協同組合連合会、全開連でございます、二百三トン。全国酪農業協同組合連合会、全酪連、百二十二トン。日本ハム・ソーセージ工業協同組合、いわゆるハム・ソー組合でございますが、三千四百十四トン。全国食肉事業協同組合連合会、全肉連でございます、六千百七十トン。合計一万二千六百二十六トンでございます。
楢崎委員 今言われましたように、ハム・ソー組合としては、四千トンの割り当てがこの三千四百十四トンにとどまったという思いがあるらしいんですね。業界それぞれの申請量を総量枠内で動かした、やりとりをしたということはありませんか。
須賀田政府参考人 会員外からも広く集めてほしいということはありましたけれども、そういうやりとりとか、そういうことはございません。
楢崎委員 申請どおりということですか。
 この買い上げ枠という文言がマスコミで流れていたことは、これは事実なんですよね。その枠という数字に振り回された業界の姿、これは言いかえればやはり農水省の説明不足、指導不足につながっていくんじゃないですか。いかがですか。
須賀田政府参考人 先ほど来お答え申し上げておりますとおり、枠をどうのこうのという話はございません。
 ただ、本事業、先ほど来申し上げておりますとおり、後で極めて短期間のうちに既に市場にあります牛肉を隔離するという必要があったということで、事業の要件でございますとか、そういう説明会、実施要領の段階では明確にされていなかったものを、後日、QアンドAというような形で追加的に説明した等々という問題がございまして、そういう意味では、その実施手法、体制、対応が拙速で不十分、不徹底な点があった、そういう御批判は甘んじて受けざるを得ないというふうに思っておりますけれども、枠を設定したとか、そういう話はございません。
楢崎委員 御承知のように、雪印食品から始まったこの牛肉偽装事件、これはいずれも内部か周辺の関係者による通報なんですよね。決して農水省の調査によって判明したものではない。内部通報者の保護問題については後日の機会にやりますけれども、言いかえれば、農水省のチェック機能も働かない、この制度上の不備が問われると思うんですよ。いかがですか。
須賀田政府参考人 先ほど来申し上げましたように、この事業を実施する過程におきまして、その実施手法だとか、その対応が不十分な点があったという批判は甘んじて受けざるを得ず、この点については反省しなければならないと思っておりますけれども、先生が今言われました雪印食品でございますとか日本ハムでございますとか、このような偽装問題は、こういう事業の実施過程とは別次元の、極めて悪質な、本事業を悪用した問題でありまして、私どもの反省とはまた別次元の問題であるというふうに考えております。
 四月二十五日からは、大臣の指示によりまして、全箱開封という厳格な検品を実施することとしておりまして、そのようなこともありまして、今回の悪質な偽装事件も判明したというふうに考えております。
楢崎委員 私も、やはり企業のモラル低下がその根本原因にあることは間違いないと思うんですね。しかし、今局長がいみじくも言われましたように、この事業の不十分、不徹底な実施手法、それとその体制、対応がこの犯罪行為を誘発したことは否めないと思うんです。そういう意味では、農水省の行政責任というのも免れないと思うんですけれども、大臣の見解を求めます。
武部国務大臣 この市場隔離事業、牛肉隔離事業、最初は保管事業ということでスタートしたんですが、これはもう短期間に一気にやらなければならないという事情がありました。したがいまして、今御指摘ありましたように、拙速で不十分、不徹底な点があったということについての批判は甘んじて受けなければならない、このように思います。
 ただ、どうして次から次と発覚してきているんだという点につきましては、全ロット検品、そしてこれもさらに強化して全箱検品へと、もう一箱残らず、数で言いますと九十二万箱、二十五センチの箱の高さですから、これを積み上げますと富士山の七十倍になるようなものを、一箱残らず開いてやっているわけですね。
 だんだん自分のところの検品が近づいてくるということになれば、悪いことをしているところはただごとならない思いになるでしょう。ただ、これまでの検品の結果、六千二百トン余りでありますが、九九・九五%は適正に行われているわけです。いわゆる補助金を交付できない、支給できないというのは〇・〇五%であります。
 あれだけ一気に急いでやった事業でありまして、そういうものがさらに出ているということは、これは残念なことでありますが、なおかつ、偽装表示問題というのは何もやっていなくて出てきているわけじゃないんで、表示一一〇番、これで今月まででもう四千件以上問い合わせがあります。あるいは、ウオッチャー制度、監視体制の強化、もろもろのことがやはり内部告発を誘発しているということも言えるんじゃないか、こう思っております。
 責任の問題でありますけれども、私どもは、この事業について、いろいろ政官業の構造問題もあるのではないか、あるいは、利潤追求が根底にあるからこそこういうことが起こるんじゃないか、企業の倫理にもとる問題だ。
 あるいは行政対応についても、御指摘のとおり甘かったんではないか、業界寄りではなかったのかということが言われておりますので、三十日に第一回目を行いますが、第三者による食肉流通等の問題についての調査検討委員会を設置することにいたしております。
 ここで客観的に、徹底的に解明していただくということで、いろいろな問題が明らかになり、今後の改善策についても御提案いただけるもの、こう思っているわけでございます。問題は、やはりどのようにして問題を解決するかということだ、このように思っております。
 恐らく、委員は、まだ大臣をやっているというのはけしからぬというようなことも言わんとしているんだろう、こう思います。私は、問題解決することが大事だ、こう思って取り組んでおりますので、御理解いただきたいと思います。
楢崎委員 みずからの責任というものをしっかり認識してあるようです。
 そこで、昨年九月十日の一頭目のBSE感染牛が発生して以来、農水省が打ち出したその対策費の総額、これは昨年度実績で千四百四十億ですか、今年度の予算ベースで二千六十七億円、計三千五百七億円、これでいいのですかね。
 そこで、会計検査院の方にお尋ねします。きょうはどうも御苦労さまでした。この七月に、会計検査院は、その対策費の一つ、冷凍補償費ですが、これの実に半分以上、五六・五%が不要支出であったと農水省に是正を求められておるわけですけれども、どういうところが、半分以上ですからね、不要支出であったのか、ちょっと説明していただけますか、簡略に。
重松会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 会計検査院は、本年七月十一日に、牛肉在庫緊急保管対策事業における冷凍格差の助成につきまして、会計検査院法第三十四条の規定に基づきまして、農林水産大臣あての是正処置の要求を行っております。
 その内容について御説明申し上げますと、農林水産省が定めました実施要領では、事業の対象となったすべての牛肉につきまして、保管のために冷凍したことによる商品価値の下落分、いわゆる冷凍格差を一律に助成することとしておりました。
 そこで、冷凍格差の助成がBSEの発生等の関係において適切かどうかという点について検査いたしましたところ、BSEの発生が初めて確認されました九月十日よりも前に冷凍された牛肉が、ただいまお話にございましたように、一部の抽出でございますが、五六・五%ございました。これは、BSE発生により消費の減少が予想されることに対処するために冷凍されたものでないことは明らかでございます。
 このように、BSEの発生に関係なく冷凍された牛肉が相当あると考えられます。一律に冷凍格差を助成することは適切でないと認められましたことから、冷凍時期の合理的確認、判断方法を検討するとともに、適切な検品を行いまして、少なくともBSEの発生が初めて確認された日より前に冷凍された牛肉について冷凍格差の助成が行われることのないよう、是正の処置を要求したものでございます。
楢崎委員 対象外のものが相当数あったということですけれども、これに対して農水省はどう対応されているのですか。
須賀田政府参考人 ただいまの御答弁にもございましたように、私ども、すべての保管牛肉について、冷凍格差分、保管のための凍結による評価損、こういうものを助成することとしていたわけでございます。
 しかしながら、その検品を進める過程で、相当以前に冷凍されたものも見受けられまして、すべての保管牛肉について冷凍格差を助成することは必ずしも適切でないということで、その見直しを行うことといたしまして、BSEの発生が確認されました昨年の九月十日ということを一つの区切りといたしまして、それ以後に冷凍されたと判断される牛肉を対象とするというふうに見直しをいたしまして、現在そのように運営をしているところでございます。
 私どもとしては、会計検査院から是正要求があったことを重く受けとめまして、以上のような見直しを行ったところでございます。
楢崎委員 このところ対策事業のずさんさが浮き彫りになっているわけですけれども、それもまた消費者の信頼を損ねているわけですから、農水省には、やはりチェック機能の強化を一層図っていただきたい。
 同時に、農水省がBSEにきちんと対応しておけば、このような膨大な血税が投入されなくて済んだんですよね。確かに、BSEの根本原因は汚染された肉骨粉にあるのかもしれませんが、しかし、唯我独尊の官僚姿勢が水際防止に失敗したことを考えたときに、我が国でのBSE発生というものは、これは人災だということを強く指摘しておきたい、このように思います。
 無登録農薬使用問題、もう時間がありませんけれども、新たにPCNBという無登録農薬、これは土壌殺菌剤で、毒性のあるダイオキシン類が含まれているということで二〇〇〇年に登録抹消になっていますけれども、これが茨城、長野、石川、群馬で販売されていたことが判明したわけですね。
 大体今日までにどういう種類の無登録農薬がどういう作物に使用されていたのか、あわせて、数字にしてどの程度の都道府県で使用されていたのか、報告を求めます。
須賀田政府参考人 これまで私どもの調査によりまして判明しております無登録農薬、四種類ございます。
 一つがダイホルタン、これは殺菌剤でございます。それからプリクトラン、これはダニ用の殺虫剤でございますけれども、このダイホルタンとプリクトランにつきましては、リンゴ、オウトウ、ニホンナシ、セイヨウナシ、ミカンといった果樹、それからイチゴの苗、スイカ、メロン、ヤマトイモといったような野菜、それから花とか芝、こういうものに使用をされております。
 それからナフサク、これは果実の落下防止等の植物調整剤でございます。これについてはメロン、リンゴ、ミカン、ナシといったものに使用をされております。
 それから、先生言われましたPCNB、これは殺菌剤でございますけれども、白菜、キャベツといったものに使用されておりまして、九月二十日現在で、無登録農薬の販売業者、購入業者が確認されましたのは四十二都道府県、販売者数が百五十、購入農家が二千三百六十九戸ということでございます。
楢崎委員 無認可の食品添加物よりも危険と言われる農薬の恐ろしさが教育されていない、また、そういうことを如実に物語ることも起こっている。つまり、農協職員があっせんするような。
 それで、私は先週当委員会の視察で奈良に行ったんですけれども、奈良県知事からも要望をお聞きしました。やはりこの問題の情報公開、それから教育、それから指導も含めて、またもろもろの問題もありますけれども、消費者保護という観点から徹底した指導を求めておきたい、そのことを申し述べて終わります。
鉢呂委員長 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。
 次に、後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 大臣、ちょうど就任後、農林水産大臣をされて一年と五カ月がたとうとしております。この間、BSEを初めとして中国産の残留農薬の問題、食肉の偽装問題、そして無登録農薬の販売の問題、たくさんの課題を大臣は抱えながら、現在に至っております。
 そんな中、大臣は当委員会の質疑の中でも繰り返し消費者行政に軸足を置いた行政を展開していくんだというお話をされ、本年の四月には食と農の再生プランを出されております。私、この食と農の再生プランを出されたとき、ようやく大臣を初め農林水産省も大きく変わっていくんだなという思いが総じてございました。
 ただ、八月の末、平成十五年度の組織、定員要求の概要ということを農林水産省は省議で決定をされ、その中でも、今触れさせていただいたように、食と農の再生プランに基づいて消費者に軸足を置いた農林水産行政への転換を図るということで今後の農林水産省組織の改革、再編を行うという冒頭の二文字はあるんですが、総じて、現行と再編案というものを見させていただく中で、消費・安全局が食糧庁を改編した中で出てきたにもかかわらず、ほかは全くいじっていない。
 私は、これを、消費者行政に軸足を置いたという意欲も、中の意思も伝わってこないんです。大臣が、この委員会で何度消費者行政に軸足を置いた組織をこれからつくっていくんだと、先ほど楢崎委員からも、BSEは人災だったという指摘もございました。私は、この一年五カ月、大臣といろいろな議論をさせていただいて、大臣であればもっと大胆に、本当に食と農の再生プランに基づいた組織改革を出していただけるのではないかという期待感があったんですが、かなり幻滅をしております。
 もしかしたら、きょうが大臣と最後の御質疑のやりとりになるかもしれませんが、私は、大臣が集大成としてやりかけているものが伝わってこないんです。消費・安全局ができたからといって、リスク管理というものが本当にこれからきちっとできるか。生産局も経営局も、農村振興局も技術会議も、林野庁も水産庁も、少なくともこの字面を拝見させていただいて、リスク管理という観点も含めて、消費者行政を今までの中でやっていくんだというものが全く感じられない。
 大臣、この一年五カ月を振り返って、そしてこの今の改編案というのをどんな評価をなされますか。
武部国務大臣 幻滅を感じさせて申しわけないのでありますが、食と農の再生プランをよく見ていただきたいと思いますし、また、私ども、先生のもとに御説明に上がらせますが、まず、昨年九月のBSE患畜の発生ということに伴いまして、偽装表示の問題でありますとか、いろいろ一連の事件が起こりました。
 そこで、第一に、食品安全行政ということについては、リスク分析に基づくリスク評価とリスク管理の面を分けてリスク評価を独立させようということで、食品安全委員会を設置するということが決定して、今その準備が進められているわけでございます。
 農林水産省といたしましても、食と農を語り合う会というのを、いわば農林水産省版タウンミーティングも、先般、仙台で五回目でございます。あるいは、消費者団体との定例懇談会などは、残念ながら、私が就任するまでは特に一度もありませんでした。
 しかし、そういう定期的な懇談会の場も設けて消費者との対話なども図っているわけでありますし、また、十五年度に向けては、今申し上げましたような、食の安全と安心にかかわる組織の確立ということで、内閣府に食品安全委員会を設けることにあわせまして、今お話ありました消費者行政とリスク管理を担う新局を新設するということにしているわけでございます。また、地方にありましても、食品のリスク管理体制を強化する等の組織改編を要求しているわけでございます。
 さらにまた、来年度の一つの目玉は、トレーサビリティーシステムの導入だ、私はこう思っておりますし、やはりこの食の安全、安心にかかわる問題というのは、いわゆるリスクコミュニケーション、国民一人一人がリスクに立ち向かっていく、そういう体制づくりが必要だと思いまして、いわゆる食育関連活動の推進等の予算を要求いたしまして、消費者の視点を重視した施策を強化するという取り組みをしているわけでございまして、非公共事業の裁量的経費のうちの三分の一は、一千億円以上はこの分野に配分しているわけでありまして、これは昨年の三倍強でございます。
 そのほか、もう既に御承知と思いますが、食品安全の確保に資するための食品安全基本法を制定すると同時に、農薬取締法や飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律等の改正法案を次期通常国会に提出を検討しているわけでございます。
 また、職員の意識改革、先生は農林水産省の先輩というか、仲間だと言って過言でないんだろうと思います。仲間ということが間違いであれば、いずれにしても、農林水産省は先生は理解者だ、こう思っておりますから、ひとつ御指導いただきたいと思います。
 八回にわたりまして農林水産省の改革ビジョンフォーラムというものにも取り組んで、先般は主婦連の和田会長にも来ていただいているわけでありますし、私は、職員の意識改革を含めまして、これから何をどのようにするかということはここの委員会でもたびたび答弁させていただいている次第でございまして、まだもう少し時間の猶予をいただくならば、だんだん具体的なビジョンが目に見えてくると思いますので、御理解をお願いしたいと思います。
後藤(斎)委員 理解はしているつもりですが、同族ではありませんので、ぜひその辺は、大臣、認識を新たにしていただきたいと思います。
 大臣、今大臣が御答弁になっていただいた中で、リスク評価とリスク管理を分離し、食品安全委員会の設置もしていく、もちろん正しい流れだというふうに思っています。ただ、これも八月末に、大臣もメンバーであります食品安全行政に関する関係閣僚会議でも決まったと思いますが、検討中ということでありますけれども、専門調査会を二百人ほど、事務局は五十五人の体制で、総予算は初年度は二十億円だということであります。
 一方で、これも以前に御指摘をさせてもらっていますが、イギリスが二〇〇〇年に大きな組織改革を、リスク評価、管理を分けた際の、できた食品安全基準庁は、総定員が六百二十八人、予算が百七十二億円。大体人口の規模でいうと半分くらいが日本とイギリスでありますから、それに比べても、大臣、大臣が今お話をされたことと、その意気込みと内容が、だから整合性がないんです。
 だから、仮に新しい組織の中でも、消費・安全局を新設するにしても、生産局や経営局や農村振興局、林野、水産、それぞれの従来の部門でもやはりリスク管理や消費者行政の中身をもっと詰めていくんだということであれば、私はまだ納得はできます。でも、今まで何をやった、これをやったということで、これから見てくれというお話をされましたが、じゃ、これからそれぞれの局や庁の中身はどうされていくんですか。
武部国務大臣 それぞれの局や中身については今検討している最中でありますが、先生も関係の深かった食糧庁を廃止いたしまして、地方にありましては食料消費事務所というようなことで、いわゆる食品安全Gメンというようなことで活躍いただこう、こういうことなども検討しているわけであります。
 今イギリスの例を先生は挙げられましたので、あえて申し上げますと、イギリスは、食品基準庁といって、リスク評価から管理まで一つの体制でやっているわけでございますね。アメリカのFDAもそうかもしれません。フランスなどは独立した機関でリスク評価をやるということになっているわけであります。
 ここのところは、リスク評価は食品安全委員会で行いますが、リスク管理部門については、各省がそこで勧告を受けて、そしてそれに従ってやるということでございまして、それぞれ一長一短あるかもしれませんけれども、イギリスと比較して、イギリスの人数だとか要員と比較して論じられるのはいかがかな、このように思います。しっかり拳々服膺して対応してまいりたいと思います。
後藤(斎)委員 ですから、大臣、そうではなくて、現在の組織についても、地方組織を変えていくという姿勢は、その部分は正しいと思います。ただ、もっと強い意思がないと、つい一カ月前であれば、無登録農薬がどうこうという話もなかった、一年前にもっとさかのぼってみれば、BSEや食品安全行政に農林水産省が軸足を置くなんということは言ってもみなかった。
 従来から御指摘をしているように、三年前にできた食料・農業・農村基本法についても、三つの柱が、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村振興、四つの基本理念でありますけれども、ここについても、食の安全についてという基本的な思想を私は入れていただきたいということを何度かお話をしてきたはずです。ですから、全体に踏み込んで、新しい、省の名前も変わるかどうか知りませんけれども、そういう中で、大臣、対応していただきたいという趣旨なんです。
 例えば、少し内容を見れば、環境についても少し軸足を置くということがこの定員要求にありますが、例えば農村振興局というものだけではなくて、農村振興局の例えば命名にしても、環境というものをもっときちっと入れ込むとか、そういう配慮が、生産についても、安全なものを生産するという思想があるとか、そういうものを私はぜひ大臣がリーダーシップをとってやっていただきたいという趣旨でお話をしているんです。ですから、そういう点について、やっていただけるんでしょうか。
武部国務大臣 組織のあり方についてはいろいろな考え方があると思うんですが、私は、ラインを考えることも大事ですけれども、やはり各局に、テーマごとに取り組んでいく、そういうセクションがあっていいのではないか。環境だとか、時系列的に、そのときの大きな問題についてチームをつくって、現在もそういうことでやっているわけです。バイオマス・ニッポン総合戦略本部というのは各局から全部人材を集めて取り組んでいるように、そういうようなことはこれから多くなると思います。
 そのとおりやってくれるのかという御趣旨の御質問でございますので、これは、ほかの方も、ほかの部局も従来とは違う形で、私は、いわゆるラインとスタッフというような考え方、ラインの中でも、一つの局に特定の課をずっと最初から最後までつくるんじゃなくて、タイムリーに、その都度業務に取り組んでいくというような、チームのような、そういう部局といいますか、そういうものを今構想して取り組んでいるわけでありまして、先生の御意見を受けとめさせていただいて、努力してまいりたいと思います。
後藤(斎)委員 大臣、組織の点については、今本当に目標にしている、国民が望んでいる、そして現場の職員も本当にその仕事にやりがいがある、その三点をぜひメーンに据えて対応していただきたいと思います。
 無登録農薬に移ります。無登録農薬についても、今の組織ともいろいろな形で関連をします。
 まず冒頭、一番初め、七月に山形県で見つかったと言われた無登録農薬の販売が、ちょうどBSEが大きな話題になった一年前から県には通告してあったんだ、県はわかっていて、農林省にはそれが届いていなかったというような報道もございます。農林省として、なぜその実態把握にここまで手間取って、また新たに消費者の方をここまで大きな不安に陥れているんでしょうか。その実態について、農林水産省はどのようにお考えになっているのか、まずお伺いをしたいと思います。
遠藤副大臣 まず、結論から申し上げれば、冒頭委員がおっしゃったとおり、情報の連絡、通報、またそれに対応するそれぞれの関係部局のいわゆる横の連携というものはなく、既に御指摘のとおり、七カ月後に関係する部局に報告があり、しかもそこから国に対する報告は全くなされていなかったといったことで経過したわけですね。七月三十日に逮捕者が出た段階で、農水省としては、無登録農薬に関する情報を提供するとともに、情報の収集にも当たってきたわけであります。
 とりわけ、収穫期を終え、かつまた出荷する時期を待っておる果実が多いわけですから、考え方によってはBSEにまさるとも劣らない大変厳しい問題だと受けとめておるところであります。
 今後とも、情報の漏れや縦割り行政などと言われることがないように、横の連携をとりながら、さらに実態を明確に把握していきたい。そしてまた、無登録農薬使用の実態あるいは有無等について、九月三十日までに各県から報告をいただくということにいたしております。
後藤(斎)委員 その中で、先ほどの組織もちょっと関連をしますが、一部のJA組織、農協がその販売に協力をしていた。それもナフサクについて、以前は一九七六年ぐらいに無登録というか、登録が抹消されたという話を聞いていますが、二十五年間売り続けた農協があった。
 もうマスコミ報道で名前が挙がっているからあえてお話をさせていただくと、JA熊本うき。農協は無登録農薬と認識していた上で販売をしていたと。これは先ほどもお話しした、今農協は経営局の御担当だと思いますが、ですから、私は組織の問題を考えていただくにも、この安全性や消費者の視点というものを私は対応していただきたいと先ほど大臣にお話をしました。
 副大臣、この農協が、本来農協の役割というのは、組合員の利益、そして地域のという、幾つかの農協法に基づいた理念があるはずです。農協が加担をしていたのはこのJA熊本うきだけですか。実態を把握されているでしょうか。
遠藤副大臣 私どもは現在、現段階で把握している農協は九つの農協であります。
後藤(斎)委員 副大臣、では、この九つの農協には農林水産省でどのような指導をなさいましたか。
遠藤副大臣 結果的に食品ということになるわけですから、全農、全中等を通して、各農協に立ち入りの検査をし、かつまた、当省及び都道府県の担当職員等が立ち入りの検査をいたしております。
後藤(斎)委員 ちょっと幾つか質問が前後するかもしれませんが、先ほど副大臣が、九月三十日までに各県に指示をした調査結果がまとまると。八月二十七日時点の生産局の資料を見させていただきますと、山形県で二つの無登録農薬が検出をされ、業者が逮捕をされています。その後、農林省は立入検査を、山形で発見されて以降、全都道府県にこの問題に関する情報を随時提供をしている。
 ただ、実際、立入検査は、現在三十都府県において協力し立入検査を実施しているというふうにありますが、現在では全都道府県でやっているのでしょうか。まず確認をさせてください。
遠藤副大臣 すべての都道府県で行っております。
後藤(斎)委員 先ほどの九の農協で無登録農薬を販売したというのは、この調査の一環で確認をされたんでしょうか。
遠藤副大臣 無登録農薬調査の一環としてあらわれてきたものであります。
後藤(斎)委員 先ほど副大臣もお話をされたように、昨年の九月にBSEであれだけ大臣や副大臣、そして農林水産省の職員の方はもちろんですが、都道府県の方も同じ意識で、二度とBSEは起こしてはいけないし、発見をされて、消費者の方の消費意欲が大きく減退をした。先ほど楢崎委員からも指摘がありましたように、予算規模で三千五百億、経済規模では多分それ以上に損失があったはずなんです。
 それが、なぜ無登録農薬では生かされなかったんでしょうか。なぜ同じような、予防行政とか食の安全と大臣も何度となくこの委員会でも議論をさせてもらっていますけれども、なぜそれが国と県の意思疎通の悪さ、そして食品安全部局と生産部局の意思疎通の悪さ、これは初期動作の、BSEのときにも一番問題だったということをこの当委員会でも大臣や副大臣は何度もお話をされているはずなんです。なぜでしょうか。
遠藤副大臣 再々御指摘いただいているように、組織そのものが疲労していると言わざるを得ませんし、かつまた、時代の変容というよりも、消費者のニーズ、国民的なニーズというものに対する感性が欠けておったがゆえに、行政のあるべき姿というものを十分に認識し切れないで職務をしておった、そう言う以外になかった。
 当然のことながら、ただ単に農林省の改革のみならず、我が国の官僚機構そのものを国民的な視点から、だれのための官僚組織なのかという観点から考えていく、早急に結論を出していかなくちゃならぬというふうに私としては認識をいたしております。
後藤(斎)委員 私、今副大臣がお話をしていただいた点、ぜひ少なくとも組織改革の点でも、農林水産省の責任者、大臣と副大臣が協力をして、官の部分が今まで、もしかしたらこの一年間の反省がやはり十分できていなかった、それは地方行政もしかり、その分やはり私は、これから年末に向けて、もっともっと細かな作業として組織を見直していくときにその視点をぜひ入れていただきたい。
 そして、この無登録農薬の問題について、農水省、今後どういうふうにされていくんでしょうか。簡潔にお答えください。
遠藤副大臣 このたびの事案の反省と実態を把握した上で、法の改正を臨時国会までに間に合わせるようにと事務方に指示をいたしたところでございます。
後藤(斎)委員 時間が余りないので、幾つか御指摘をさせてもらっておりますが、これは農協の問題も、農林省の組織とウエートはそれ以上かもしれませんが、実際の農家の方に一番近い存在として、対応が農協改革ということで求められております。
 昨年、農協法も変わっておりますが、まだまだ大きく変わらなければ、私は、正直言って、農協が真に生産者の方からも、そして消費者の方からも信頼をされない。特に、二年前に、生産資材コストがなかなか農協経由で買うと下がっていない、今でもそんなお話を現場の農家の方からよくお聞きをします。これについて効果が見えない。二〇%削減ということを農協大会の決議で話をしているようなんですが、農林省としてはこの二〇%削減というものについてどのように対応していくのか、大臣、御答弁をお願いしたいと思います。
武部国務大臣 先ほど来の遠藤副大臣との質疑を聞いておりましたのでありますが、やはり意識改革ということが何よりも不可欠だ、このように思いまして、農林水産省の改革については私も先頭に立って努力してまいりたいと思います。
 同時に、我々農林水産省は、改革なければ解体が問われている、それぐらいの厳しい受けとめ方をしているわけでありまして、農協系統組織についても、原点は何だったのかということをしっかり認識を新たにしていただかなければならない、このように思うわけであります。
 生産者からは目に見える成果があらわれていないという声があることは、私もいろいろ回って痛切に感じているわけでございますが、換骨奪胎という言葉を使えば、また厳しい批判が私に向けられるかもしれません。しかし、そのぐらいの考え方で私は農協のあり方というものを見直していく必要がある、こう思いまして、農協のあり方についての研究会を今月二十七日に第一回会合を開催することにしております。
 ここで、今まではどちらかというと行政と農業団体で検討会をやっていたということが大半でありましたけれども、生産者はもとより、消費者、経済界等、国民各界の意見を反映されるような、そういう農協改革のあり方についての研究会にしたい、こう思っておりまして、生産資材のコストの削減についてもこの研究会で十分議論していただきたい、このように思っております。
後藤(斎)委員 最後になるかもしれませんが、農地法についてお尋ねをしたいと思います。
 大臣、食と農の再生プランの工程表を六月に出されておる中でも、構造改革特区の活用も含めた中で、農地法の見直しについて、今の秋を目途に論点整理を行って、通常国会に法案を提出することも視野に入れて検討ということになっております。あわせて、大臣が参加をされております経済財政運営と構造改革に関する基本方針の閣議決定の際にも、同趣旨の問題点が指摘をされています。
 ただ、大臣、この農地法を改正する視点というのは、生産者と消費者の視点というのが私は必要だというふうに思っています。当委員会の農地法の一部を改正する法律案の附帯決議でも、農地については、農地転用のあり方も含めて、総合的かつ一体的な実施を図る観点に立った検討を行うというふうなことが附帯決議として決議をされております。
 あわせて、最近、JA関係の農業委員会やJAの系統から、農地制度の見直しに関する要請、大臣のところにもたくさん行っていらっしゃると思いますが、現場の意見をどう把握するか。そして、附帯決議にもあったように、農地というのは総合的かつ一体的な実施を図る観点というものをやはり私はきちっと位置づけをして考えていかなければいけないと思うんですが、そういう現場の不安がっている声とこの経済特区の問題、どのようにこれから農地法の改正の中で論点整理をされていくのか、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 私ども、食料の安定供給と農業の持続的発展等、農業基本法の基本理念を実現していくために、優良な、限りある資源というものをしっかり確保していくということが大前提でありまして、同時に、その優良農地の有効利用や農業経営の活性化を図ることが極めて重要なわけでありますから、農地制度の見直しに当たりましては、単なる規制緩和等の観点だけで考えていくというものではありません。
 私は、やはりヨーロッパに参りましても、農村風景というものは非常に見事に整備されております。食と農と美の国づくりに向けて我々は農政を展開してまいりたいというふうにいつも申し上げているわけでありますが、そういう視点で、特区の問題も、また農地法の見直しの問題も、おっしゃるとおり総合的に考えていく必要がある、各界の意見も聞いてまいりたいと思っております。
後藤(斎)委員 最後に、大臣、先ほどの繰り返しに一部なるかもしれませんが、私は、今大臣がお答えになっていただいたような消費者の視点と生産者の視点というものが相反するものでは絶対ないと思うんです。
 どう消費者のニーズをとらまえるか、そして、それを国民全体のニーズにしていくのか。そして、農家の方はもちろんです、行政機関ももちろんです、農協関係者もそうです。その中で、本当にそのニーズにこたえ、そしてその信頼にこたえていくことが、私は、この無登録農薬の問題や行政組織の問題、そして、偽装表示に係るいろいろな問題の視点がその糸口になっていくしか、大臣が四月に出された食と農の再生プランもそうですけれども、その実施なんということはあり得ないと思うんです。
 ですから、私は、冒頭も、先ほど副大臣ともお話をさせていただいた部分で、その部分で、組織がいろいろな部分でかかわっている。そして、その組織が従来のような形ではいけない。ですから、私は、そのいろいろな新しい視点、消費者や国民全体の視点も含めてそういうものにしていただきたい。
 そうでなければ、先ほど大臣もお話をされたように、私は、農林省の再生とかじゃなくて、農林省は解体をしてしまう、その危機感も含めてお話をしているので、最後に、ぜひ大臣、真摯に対応していただけるということを、ぜひ御答弁でお願いしたいと思います。
武部国務大臣 私は、後藤先生の考えも気持ちも志もまた理想もわかるような気がいたします。真摯に受けとめて努力してまいります。
後藤(斎)委員 ありがとうございます。
鉢呂委員長 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。
 次に、高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 私、まず、今国を揺るがしている無登録農薬の使用問題についてお伺いいたします。
 その前に、若干今事件の経緯を整理しますと、山形県における場合でありますが、一九九二年に無登録農薬使用の情報提供があって、その現物を確認して立入検査をしたという報道がありましたけれども、これから見ると、もう十年前からこういった問題は全国に少しずつ広がってきたんだ、この認識が必要ではないかなと思うわけであります。
 そして、昨年の二月、山形県の衛生研究所でダイホルタンを検出している。そして、八月に情報提供があった。立入検査をするが、摘発できなかった。今回の三業者も立ち入りしたんですが、何せ名前が違う。偽名だったために、これは知識不足、立ち入り権限の限界というような点だと思うんですが、この点については後でまた御指摘申し上げますが、このようなことから見逃してしまった。そして、ことし四月の大阪の市場からの検出結果が山形県に報告された。慌てた山形県は警察にお願いをした、こういう経緯だと思うのであります。
 さて、この間、先ほども後藤委員からですか、質問の中にありましたが、農水省に報告し、指示を求めたという報道がなされていますが、いつごろ、そしてどういう内容でどこに、農薬対策室かどこか、質問があって、その答えはどのようにされたのか。大臣はどこまで、まさに国との取っかかり、きっかけの部分ですから、この点大臣はどのように把握されているのか、まずもってお伺いをいたします。
遠藤副大臣 事件発生後、八月三十日、私、海外出張中でございましたが、無登録農薬に関する対策本部を立ち上げさせていただきました。
 そして、まず何よりも第一に、どうしてこのように国に対する報告なり、あるいは委員御指摘のように、大阪の市場から通達されてようやく衛生部局へ届いた、その衛生部局から県の農林部局には連絡が入るのが遅かった。あるいは県内独自で、県庁内部独自で衛生研究所が昨年二月に検出をしておりながら、九カ月間近く、七カ月超ですか、放置されておった。
 逮捕者が出て、私どもの方へ報告がございまして、やはり立入検査を行って、無登録業者の陳述書をきちっととるようにということを指導いたしましたが、当事者が逮捕されている関係上、陳述書がとれなかったせいか、そのことについての報告はまだ私どもの方には来ておりません。
高橋(嘉)委員 たしか事務方は農薬対策室だったと思うんですが、八月七日、記録はないが、そういう問い合わせはあった、しかし適切に答えているという事務方からのお話を私は聞いているんですが、そういった把握はされていないんですか。
遠藤副大臣 今申し上げたような経過で確認をした結果、いわば無登録農薬に関する情報のフォローを適切に行うよう指導をしたところですが、確証を得るための農家への立入検査、これの検査結果報告というものはまだなされていなかった、こういうことです。
高橋(嘉)委員 先ほどから初動の話が出ていますけれども、このあたりが非常に僕は問題だったと思うんですが、BSEと同様に大変な問題であるという御認識の中に、一番最初のところが問題だと思うのであります。
 また、この農薬販売業者四万、そしておよそ七万店舗と言われています。商品数が五千。この農薬の実態調査はどのようにされているかということになりますと、各県の病害虫防除職員、十人ぐらいらしいんですが、それらの人たちが行い、毎年全体の一割弱の立入検査を実施しているという話であります。農薬検査所、すなわち国の関与する部分の立ち入り実施件数はそういった中で去年幾らだったのか。事務方に聞いたところでは、二十件を立入検査していると。大体このあたりでこの実態が浮かび上がってくるな、私はそう思ったのであります。
 そして、十三年の無登録農薬使用における全国での把握している数はどれぐらいあるか。僕はそのとき、摘発ケースはと聞いたんですが、事務方にですけれども、摘発という言葉が妥当かどうかは別にして、把握していたケースは六十六ケースあると。それだけ徐々に全国に広がってきていたという実態を把握していたにもかかわらず、そういう問い合わせがあったのに、しゃくし定規の答えだけをして、みずからは実態調査に赴かず、そして、大体に年間で二十件しか立ち入りしないという。
 どんどんどんどんそういう無登録農薬の実態が明るみに出てきている、そして広がりを見せてきているにもかかわらず、このような状態であった。これについてはどうお考えですか。
遠藤副大臣 検査の詳細といいますか、実態ですが、この検査も同様、いわゆる民間委託などの形をとっているわけですけれども、独立行政法人農薬検査所の従業者数といいますか職員、五十六名であります。本省の生産資材課農薬対策室……(高橋(嘉)委員「六十五名じゃないですか」と呼ぶ)五十六名です。十七名程度でございまして、これは、おっしゃるように、四万事業所、四万店、四万社といいますか、七万店舗等々、実際にやるのはあれですから、県が主体的に行うように進めております。
 また同時に、農薬、いろいろ、摘発という言葉はおかしいですが、指摘をしておる六十六件等については、いわゆる非農耕地用除草剤というようなものも結構含まれておるわけです。それは、いわゆる堤防であるとか道路沿いの雑草であるとか、あるいは駐車場、こうしたものも含まれておって、それがいわば同じところで売られているというところに非常に大きな問題があったなということは今回改めて痛感し、改正しなきゃならぬと思っております。
高橋(嘉)委員 農薬取締法の中には、健康保持とか生活環境を守るという目的があります。そういった中に、農薬対策室とか農薬検査所、員数が少なくて二十件の立ち入りしかできない。しかも、六十六そういう問い合わせが来ている。にもかかわらず、そこも調査しない。これは目的に合っているのか。しからば、農薬対策室とか農薬検査所の役割は何なんでしょうか。
遠藤副大臣 農薬というのは、まず、作物の病害虫なりを駆除したり、あるいは抑制、または成長を促すようなもののためにつくられるわけですが、しかし、その使用に当たっては、人体に対する、あるいは健康に対する安全というものをまず第一に考えていかなくちゃならぬと思っています。
高橋(嘉)委員 ですから、遠藤副大臣、要は、全く実態調査する必要がなかったら、二十件もやる必要はないわけです。それで、その前の年は五十ないし七十ぐらい、六十ぐらいやっているという話です。六十六のそういう話があったら、そういうところに赴くのが普通じゃないですか。そのことだけを聞いているんですよ。
遠藤副大臣 フォローが十分でなかったということは確かであろうと思いますし、今後とも直ちに本省職員が、言うは簡単ですが、対応できるような、検査に行けるような、そういうシステムを構築することが必要だと考えております。
高橋(嘉)委員 逮捕された西日本物産、これは、ダイホルタン十九トン、プリクトラン二トン、計二十一トン、過去三年間という、何かまとめた状況が報告されましたけれども、これは先ほどお話がありました百五十業者の中の一社であります。いずれこれらの点について、全社名の公表のみならず、輸入先、使用目的、販売期間など、全容を開示する必要があると思いますが、どのようにお考えか、大臣からお話をいただきます。
武部国務大臣 今、遠藤副大臣との質疑を通じて、私ども今度、組織、業務の見直しをやる、そういう運びになっておりますので、委員指摘のことにつきましてもしっかり対応させていただきたい、このように思っております。
 現在、すべての農薬販売業者に対しまして、無登録農薬の販売に関する総点検を九月三十日を報告期限として実施していることは、先ほど遠藤副大臣から答弁いたした次第でありますが、あわせて、無登録農薬の販売の疑いがある事案等についても、各都道府県に対しまして農薬販売業者への立入検査を指導し、現在四十四都道府県で実施されているところでございます。
 農林水産省といたしましても、みずから実施する必要があるものについては、情報が入り次第、直ちに立入検査を実施するということについては、遠藤副大臣から御答弁申し上げたとおりでありますが、これまでに十都道県、延べ十三回、販売業者、輸入業者に対し立入検査を実施しておりまして、事実関係及び原因の究明に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。
 これらによりまして無登録農薬の販売が明らかになった者については、今後、関係業者から事情聴取を行い、早急に処分を行い、公表する考えでございます。処分確定前においても、事実関係が確認され、かつ無登録農薬の販売拡大防止等の観点から必要と考えられる場合には、業者名の公表を直ちに行う、こういう考えであります。
高橋(嘉)委員 今までの把握の期限、九月三十日、それはよくわかりました。
 それでは、これから対策という話になりますけれども、無登録農薬及び主成分となるものの大量輸入、これはみんな国内では製造されていないということでありますので、この大量輸入に対する規制、またこれらの問題の誘因とも言える販売業者の届け出制、登録制にはなっていない問題、また罰則の甘さ、さらに立ち入り権限と監督処分権限の一元化、こういった問題も考えられると思うんですが、それらを含めてどのような対応策を現在お考えか、大臣からお話をいただきたいと思います。
武部国務大臣 御案内のとおり、現行農薬取締法は、輸入業者が輸入農薬を国内で販売する際に登録を義務づけることで、無登録農薬の販売を禁止し、その違反に対して罰則を適用する、また営業停止等の行政処分をする等の抑止力によりまして、その流通を防止し得るとの考えに立脚しております。
 しかし、輸入時においては農薬であるか化学品であるかが必ずしも特定できないことから、無登録農薬の輸入の規制は行っていないという現状もあるわけであります。
 今回の事案は、東アジアから製品の形で輸入し、これを販売した事案でございまして、流通の各段階に規制の網をかけることにより、確実に無登録農薬の出回りを抑える必要性を痛感いたしまして、無登録農薬の輸入規制を含めた農薬取締法の見直しの作業を急がせているところでございます。臨時国会を視野に入れて、今作業をしている次第でございます。
高橋(嘉)委員 今回の問題について、生産農家の猛省は求められて当然と言えますけれども、農協の介在、また熾烈な訪問販売を展開する販売業者、こういったところに僕はちょっと視点を当ててみたいと考えてみたんですが、生計を立てるためには、農家はどうしても流通の求め、市場の求めに応じなければなりません。そういった中で、過剰な規格統一や厳しい外観要求、こういった流通業界や販売業界の背景も忘れてはいけないんじゃないかな、それがこういった問題に生産農家を走らせた大きな要因と言えるのでもないかな、私はそう考えるんですが、大臣、その点はどのようにお考えですか。
武部国務大臣 そういう点も考慮に入れて、法整備のあり方について検討をさせている次第でございます。
高橋(嘉)委員 では次に、食肉の偽装問題についてお伺いいたします。
 私は、先ほどからもお話ありましたけれども、この問題点の一番の原因は、回収作業が業界内で行われている、ここで完結している、ここに問題点があると考えております。
 緊急保管対策事業から買い上げ事業に移行した。保管対策事業のときには、市場隔離ですから、また流通の流れ、市場の流れを見て出すかもしれない、安全な肉だから出すかもしれないと。大臣、そのようなはっきりとした買い上げて焼くという処分を、決定は十二月ですから、そうしなかった。そういう発言もされなかった。そのときには在庫証明でいいんですけれども、国が買い上げて焼却する、そして税金でそれを賄うという話になったときには、屠畜証明とか売買契約証明書とか、そういう添付が必要だとは、そういう議論はなかったんでしょうか。私はここが一番の問題点だと思うんですが、いかがですか。
武部国務大臣 この事業を緊急保管事業としてスタートした時点でも、私、事務当局とかなり激論を交わしました。そのときの説明では、今回の場合には、流通している部分肉が主な対象になりますので、在庫証明でやらざるを得ないんだと。屠畜証明というのは、一つの個体にはつきますけれども、個々の部分肉にはつけられないんだというような議論がありまして、私も余りそういうこと詳しくありませんので、それはやむを得ないのかな、こう思いましたが、しかし、一方において買い戻し特約というのをつけておりまして、お話しのとおり、私は、これは、この牛肉というのは安全なものですから、落ちついてくればまた流通させよう、こう考えてスタートした事業であります。
 ただ、今反省しなきゃならない点は何かということについて言うならば、事業が変わった時点、保管事業から処分するという事業に変わった時点で少し時間的な余裕があったんだろう、こう思うんです。そのときにもう一度点検し直すというようなことはできなかったのかということについては、一つの反省点であります。
 いずれにしても、納税者主義、消費者主義ということについて徹底したものがなかったということが安易な対応という批判を受ける結果になっておりますので、今、第三者委員会、三十日から設置いたしますので、そこで客観的にしっかり検証して、今後こういうことのないように、あるいは業界と行政との関係のあり方等々も含めて検討をお願いすることにしているわけでございます。
高橋(嘉)委員 いろいろな意見がありますけれども、真摯に受けとめながら、今後に反映させていただきたいとお願い申し上げます。
 それでは、ここでちょっとお伺いしたいんですが、買い上げ肉の、全肉連が買い上げた千百四十五トン、これは大阪同和食肉協同組合連合会のものでありますが、この千百四十五トンもの大量の牛肉を申請していた。国の買い上げ事業決定の、十二月二十七か八日だったと思いますが、一カ月ほどの間に、大部分を抽出検品で問題なしとされて焼却されています、わずか一カ月ちょっとの間で。
 ここを個人的指摘を申し上げるわけではありませんが、輸入牛肉割り当て量の件で以前に問題になった方もいらっしゃるところのはずですが、大臣も記憶しておられると思いますけれども、なぜこの一カ月半のうちに抽出検品、そしてすぐに焼却。不自然とは思いませんか。優先的に行われたという見方も報道もされていますけれども、おかしいとは思いませんか。大臣の御見解をお伺いします。
武部国務大臣 当時、一番心配されたことは焼却施設の確保だったわけでございます。営業倉庫を中心に聞き取り調査を行いまして、十月十六日現在で集計した数量から一万三千トンと推計いたしましたことから、一万二千六百二十六トンというのは私は当時の在庫保有の実態を反映したものである、このように考えます。
 また、本事業の検品については、その時点の判定基準に基づき、適正と判定いたしまして、その旨の通知を受けて、焼却施設を確保し、順次焼却を行っていったわけでございまして、大阪府同和食肉協同組合連合会に係る牛肉の検品が実施された平成十四年一月時点においては、消費者の不安を払拭するため早急に焼却すべきであるとの与野党挙げての強い要請にこたえまして、三月の年度末までに全量焼却できるよう関係者に協力を求めていた経緯もございます。
 したがいまして、この大阪府同和食肉事業協同組合連合会に係るものについては、焼却施設を確保できたということが早期に検品の対象となり、順次焼却の対象になったもの、このように承知しております。
高橋(嘉)委員 では、そういった焼却施設を含めてすべての条件、まず一番最初におたくのところを検品するよというその前提条件すべてがそろっていたのはここだったということですか。
武部国務大臣 一月三十一日までに実施した抽出検品については、在庫証明書による確認を行うため、全倉庫二百五十九倉庫、このうち、検品の対象とする倉庫を抽出しまして、当該倉庫に保管されているロットのうち一部を抽出した上で、さらに当該ロットから一定の箱を抽出して検品を実施したというのが実態でございまして、倉庫の選定については、農畜産振興事業団が、総箱数で約半分が検品対象となりまして、事業実施主体ごと及び地域ごとに偏りのないよう配慮しつつ、保管数量の多い倉庫を主体として実施するということになっていたのでございます。
高橋(嘉)委員 一月三十一日までの抽出検品数千四百六十六トン、そして大阪同和さんの、そして愛知同和さんの分を合わせると、実に、この一月三十一日以前の抽出検品の中の割合を見ると、八六%弱なんですね。ほとんどここに抽出検品は集中していた。
 流れとして不自然ではございませんか、もう一度お尋ねしますけれども。
武部国務大臣 一月三十一日までに、既に四十万六千五百八十三箱、三十一倉庫において検品が終わっているわけでありまして、大阪同和食肉事業協同組合連合会のものが突出しているというふうには思いません。
高橋(嘉)委員 いや、僕がもらっている資料によれば、抽出検品、一月三十一日以前、検品数量千四百六十六トン、焼却数量千四百六十六トンとなっていまして、大阪、愛知関係焼却状況、一月三十一日以前、抽出検品八百六十一トン、これは大阪ですが、愛知の方は三百九十四トン、合わせると、焼却した全抽出検品数の中の八五・六%になりますよね。偏っていませんか、おかしいですねと言っているだけですよ。不自然とはお思いになりませんかということです。
武部国務大臣 高橋先生のお手元にある資料は私が今持っているものと同じだ、こう思いますが、要するに、準備ができたものから順次焼却していくわけですね。焼却数量千四百六十六、適判定数量千四百六十六トンということは、私は偏っているというふうには思いませんね。一月三十一日、四十万の中から、順次準備できたものからやる、そのように理解しています。
高橋(嘉)委員 畜産振興事業団と、あれはたしか贈賄事件だったと思うんですが、それも海外牛肉の輸入問題の割り当て量についての話であったと私は記憶していますが、そういったところが何でこういうふうに八〇%以上もの、僕は優先的にと指摘されてもやむを得ないんじゃないかなと。僕は不自然に思います。
 時間もありませんので、もう一点だけお伺いします。全箱検品の方針を三月中旬に内部決定したと言われておりますが、であれば、その段階で全ロット検査のものも焼却をとめて全箱検査にするのが筋ではありませんか。どのようにお考えになりますか。
武部国務大臣 全ロット検品については、雪印食品による偽装事件が発覚したことを受けまして、二月八日から開始したところでございますが、この全ロット検品は、各ロットから一定数の箱を抽出し、一箱でもおかしいものがあれば当該ロットの箱をすべて開封して検査するということになっているわけでございます。民間の商品管理などと比べましても、私は遜色のない水準のものであったのではないか、こう思います。
 しかし、一部報道にも伝えられておりますように、私は事務当局に、一番厳しい抽出検品をするようにというのが、専門家の話では一番じゃなくて二番だ、こういう指摘が明らかになったわけでありまして、私は、二番でも厳しいだろうけれども、これは言ったとおりやっていないのでもう一箱残らず検品するようにという指示をいたしまして、念には念を入れた体制を断行したわけでございます。
 こういったことでございまして、全ロット検品で適正と判断されたものについても、その段階で結果を事業実施主体に通知し、順次焼却手続に入ったものであります。全箱検品への移行に際しても、全ロット検品に基づく判定結果については検品済みとして取り扱うこととしたものでございます。
高橋(嘉)委員 私としては、これだけのいろいろな問題がどんどんどんどん噴出してきているときに、まだ焼いていないものがあったら当然全箱検品にしていく、そして消費者に安心感を持ってもらう、これが普通ではないかな、そう思っております。
 それでは、終了したという話ですが、僕は、一つだけ最後に、済みません。
 食品表示Gメン、先ほど大臣お触れになりましたけれども、食糧庁を廃止して食品表示Gメンの創設を検討していると聞いておりますが、単に今日の食の安全への関心、これの高まりを奇貨とした食糧庁職員の救済策ではないかという指摘もありますが、この点、なぜJAS法と食品衛生法を一本化できないのか、これらを、消費者の質問に答える意味でも大臣の御見解をお聞きして、私の質問を終わります。
武部国務大臣 食糧庁職員は、私は、七月三十一日から、各地方農政局管轄下の食糧事務所の皆さん方と随分対話しました。しかし、振り返って、非常にこれまでしっかりした、不正を許さない、そういう考えが徹底している組織だな、このように思いまして、私は、食品安全Gメンとして、もちろん諸般の研修等も必要だろうとは思いますが、しっかりやってくれるという確信を持っている次第でございます。決して、食糧事務所職員の救済を目的としたものではないことを明言させていただきます。
 JAS法と食品衛生法の一本化の問題でありますが、これは、食品表示制度については、やはり国民にわかりやすいものとしていくことが重要だ、このように思います。私も、事務当局には、厚生労働省と農林水産省が一つの役所になった考え方で、食品の表示制度に関する懇談会の中間取りまとめ、あるいは国民からの御意見を踏まえて、食品表示制度の具体的なあり方についてさらに検討を進めるように、このように指示をしている次第でございます。お考え、よく理解できます。
高橋(嘉)委員 原産地の判別とかあるいは重複した監視体制とかいっぱい問題があると思いますけれども、時間が参りましたので、終わります。
鉢呂委員長 これにて高橋嘉信君の質疑は終了いたしました。
 次に、松本善明君。
松本(善)委員 きょうは、農水省に米の問題について質問をしようと思います。
 WTO農業協定が輸出国の利益偏重をしているという批判は国の内外にございますが、きょうは、現行のWTO協定のもとでできることとできないことをまず事務当局から、食糧庁長官になりましょうか、先に伺って、それから、農水大臣に政策的な問題について伺いたいというふうに思います。
 WTO協定では、農産物の価格保障や不足払い制度に関する財政措置、いわゆる国内支持については、禁止ではなくて、農業協定六条の国内助成に関する約束と、附属書二に示されているように、削減対象の黄の政策、それから削減対象外の緑及び青の三種類に区分をして、削減対象の黄の、イエローの政策については、各国に助成合計量、AMSを定めていると思いますが、我が国の助成合計量、AMSは幾らでしょうか。
石原政府参考人 我が国のAMSの総量でございますけれども、ただいま米につきましてお尋ねがありました。米につきましては、九五年の食糧法の施行、それから九八年の新たな米政策の導入、これらの措置によりまして、半世紀以上続いた全量管理政策を改めて、米流通に市場原理を導入しまして、自由な価格形成による民間流通を主体とする仕組みとしております。
 それからもう一つは、これによりまして、米の政府買い入れは公的備蓄に必要な最小限のものといたしておりまして、市場価格支持を行わなくなっております。したがいまして、WTOへのAMSの通報、これは米の価格支持をゼロと通報しているところでございます。
松本(善)委員 今私の聞いているのは、米の問題で全体聞くんですが、助成合計量の総量は現在どうなっているかということを聞いているんです。
石原政府参考人 失礼しました。
 AMSの総量でございますけれども、米はゼロとなっているわけでございますけれども、総量でいきますと、九九年度で七千四百七十八億円となっております。
松本(善)委員 それは、いわゆる実績値ですね、七千四百七十八億円。日本の持っている削減枠は幾らかということを聞いておるわけです。私が農水省に事前に確かめたところによれば、三兆九千七百二十九億円になっているということだと思いますが、いかがですか。
石原政府参考人 AMSの削減枠ということじゃありませんで、AMSの許容量といいますか、ということになりますと、二〇〇〇年度、これが約束水準になっておりました。これが現在もこのまま生きているということでございますけれども、今先生からお話のありましたように、三兆九千七百二十九億となっております。
松本(善)委員 そうしますと、総枠では三兆九千七百二十九億円あって、そして、米はゼロだが、最近の、直近の実績値は七千四百七十八億円ということになりますと、この枠が余っているものは、実績は七千四百七十八億円ということになると、三兆二千二百五十一億円がWTO協定上も価格支持に使えるという計算になると思いますが、いかがでしょう。
石原政府参考人 ただいま先生からお話ありましたように、あくまで余裕ということからしますと、三兆二千五百億円余の余裕はございます。
松本(善)委員 そうしますと、米の平均価格を一万六千円としまして、政府が米価を六十キロ当たり二万円の価格を支持したという場合に、AMSの実績値はどういうことになるでしょう。
石原政府参考人 ただいま先生お話しになりましたように、米価を六十キロ当たり二万円として価格支持するということになりますと、あくまで生産量、現在約九百万トンでございますので、九百万トンをベースにして考えますと、米のAMSは約二兆六千億ということになります。
松本(善)委員 そうしますと、WTOの制限枠内で、仮に政策転換をして、米の価格を一俵二万円、六十キロ当たり二万円という保障をするとすれば、この制限の枠内で十分できて、六千億円近くが余裕があるということになると思いますが、どうでしょう。
石原政府参考人 今お話ありましたように、AMSの余裕という意味ではそういうことでございます。
 それで、財政負担がその場合どうなるかということになりますが、この財政負担につきましては、政府の買い入れ数量を幾らにするのかとか、それから買い入れから売り渡しまでの期間をどの程度にするのか、要するにこれは保管経費の問題がございます。それから、売り渡し価格を幾らにするのかとか、これはいろいろな前提条件がございまして、なかなか試算は困難でございますけれども、あくまでこれは一定の仮定ということで、九百万トンにつきまして、六十キロ当たり一万六千円の米価と二万円との差額を補てんするということになりますと、ただいま委員からお話ありましたように、計算上は六千億円ということになります。
松本(善)委員 それは価格支持した場合の予算額でしょう、今お答えになったのは。
 それはそれでお聞きしておきますが、私のお聞きしたいのは、WTOの制限枠が三兆九千七百二十九億円、そして一万六千円を六十キロ当たり二万円にした場合のAMSの実績値、要するに、枠がどのぐらい残るか、どのぐらい使わなければならないかということについて伺っているんですが、先ほどのお答えでは、AMSは二兆六千億という話なので、差額が六千億円近くある。十分WTOの枠内で、あくまで協定上のことでありますけれども、二万円の保障をして六千億円ぐらいの余裕があるということではないかということをお聞きいたしました。
石原政府参考人 ただいまお話ありました。
 計算いたしますと、先ほども申し上げましたように、今実績値が七千四百億円でございます。それにAMSが二兆六千億円加わります。そうしますと、三兆三千億円余ということになりますので、それから、あくまで二〇〇〇年度の約束水準から引きますと、約六千億円程度の余裕はあるということになります。
松本(善)委員 そうすると、結論的には、一俵六十キロ当たり二万円の価格支持をやるという場合には、WTOの枠は十分にある。六千億近くの余裕がある。さらに、予算額は九百万トンとして約六千億と。期せずして同じ金額になっていますけれども、別のことですけれども、そういうことが今明らかになったと思います。そうですね。
 それから、予算額でいいますと、来年度の概算要求額が三兆六千億でありますので、予算額としての六千億というのは一六%ぐらいということになるでしょう。
石原政府参考人 どういう計算をされたのかちょっとわかりませんが、今この九百万トンを、これは財政負担ということになりますと六千億円になります。六千億円というのはどの程度の数字かといいますと、現在、生産調整等でもろもろ金を使っておりますけれども、これが約二千九百億円でございますので、それから比べますと、その約倍程度の金がかかるということになります。
松本(善)委員 一応計算上のことで。
 それから、さらに伺いますが、政府は米の価格保障をしませんものですから、地方はなかなか大変なんですね。非常に切実で、秋田県では、国の稲作経営安定対策に上乗せ助成をいたしまして、価格保障をやっております。国の稲作経営安定対策に加入している認定農業者約四千名に対して上乗せ助成をして、六十キロ当たり約一万八千円の米価を保障しております。
 秋田県の予算額でいきますと、二〇〇一年度で約二億一千二百二十五万円。これを全国の都道府県で実施をすれば、どのぐらいの予算額になるでしょうか。
石原政府参考人 稲作経営安定対策、いわゆる稲経でございますけれども、これにつきまして、担い手コースの補てん率を十割に引き上げる、これは、秋田県と同じようにしますと、加入者が増加することが当然予想されます。しかし、それを捨象しまして、あくまで現在の加入状況、これをベースにして計算しますと、二十億円弱ということになります。
松本(善)委員 それから、ミニマムアクセス米のことについてお聞きをします。
 現行のWTO協定を変えなくても削減、廃止をされることができるのではないかという私の意見ですが、EUでは、ミニマムアクセスに求められている割り当て数量を、牛肉や豚肉といった品目ごとではなくて、食肉という大分類で計算することが認められている。したがって、EU内生産に影響の大きい豚肉の輸入量は抑え、一方では、余り影響のない羊の肉をたくさん輸入することで、国内の畜産農家の経営を守っているということです。
 こういうやり方を、米に関して穀物という大分類で計算をいたしますと、小麦や飼料などはほとんど輸入しているわけですから、ミニマムアクセスに求められている割り当て数量を穀物で計算をいたしますと、米の輸入を制限、廃止することができるのではないか。これはもちろん外交上の折衝がありますから、実現ができるかどうかということはまた別問題ですが、WTO協定を変えなくてその交渉というのは可能なのではないかと思いますが、食糧庁長官、どうでしょう。
石原政府参考人 このミニマムアクセスの数量、これを算定する際の品目の単位をどうするかということにつきましては、統一的なルールはなく、各国間の交渉にゆだねられたということでございまして、先ほどおっしゃいましたように、EUにつきましてはそのようなことをしたということでございます。
 しかしながら、我が国の場合は、そのときに、御案内のとおり、米につきましては関税化を受け入れられなかった。そういう米以外のものと取り扱いが違ったわけですね。そういうこともございまして、現在のような交渉結果となったということでございます。
 それで、これがこれからできるのか、EUと同じようなことができるのかということになりますと、ウルグアイ・ラウンド農業合意では、米につきましては今ミニマムアクセス、それから麦につきましてはカレントアクセスと、そういう扱いが違っております。それで、別々にアクセス機会の提供を義務づけられておりまして、我が国はWTO上譲許した、別々に譲許した、そういう経緯がございますので、これを抜本的に変更するような交渉を行うことは非常に困難であるというふうに考えております。
 また、米につきまして、穀物セクターとしてまとめてアクセス数量を約束する。諸外国と大変な交渉になりますけれども、仮に、代償を幾ら払ってもいいということでやったときに、一つは、今後、麦等につきましては自給率の向上を図っていくことにしております。そういう面で、国内産麦の振興に悪影響を与えるのではないかという問題がございます。
 それから、穀物セクターとしてのアクセス数量の枠が大きくなりますので、当然、米につきましては今七十六万七千トンという限界があるわけでございますけれども、それを超えることも、諸外国からしますと要求できるわけです。そういうことからしますと、諸外国は恐らくこの米について莫大なる輸出拡大要求をしてくると思いますので、我々としては、このような策はとるべきではないのではないか、適当ではないのではないかと考えているところでございます。
松本(善)委員 今おっしゃったのは、それは外交折衝ですから、外国との交渉が非常に困難だとか国内でどういう問題が出るかとかいうことは、後で農水大臣に政策問題として聞こうと思っておりますけれども、WTO協定そのものを変えなくてもできる外交交渉ではないか。政策的なものは一応度外視して、EUも食肉ということでやっているんだから、協定を変えなくても穀物ということでくくることは一応可能ではないかということを聞いているのですが、それは可能でしょう。
石原政府参考人 先ほど最初に申し上げましたように、品目の単位につきましては統一的なルールはございません。各国の交渉に任されているということでございますので、理論上といいますか、それは可能でございます。
松本(善)委員 これを、今まで食糧庁長官から聞いたことをもとにして、農水大臣に伺いたいのでございます。
 農水省の生産調整検討会は、六月に、新たな米政策の中間取りまとめを発表いたしました。この中間取りまとめに対して、今、主食である米の管理責任を放棄するものとして、政府の姿勢に非常に大きな怒りが全国的に上がっております。
 私は、JAの決起集会で、武部農水大臣退陣の緊急決議を行ったところがございますが、その農協、宮城県北部のJAだとか生産者と意見を交換いたしました。市場原理の徹底、現行の稲経対策は廃止をする、減反しながら輸入するというこの中間取りまとめの方向が実施をされたら、日本の稲作農業は存亡の危機にさらされる、こういう怒りや抗議の声が、農民だけではなく農協の中でも渦巻いている。輸入米は削減、廃止、それから価格保障の実施が、全国の稲作農家の切実な声だと思います。
 今、食糧庁長官との質問で明らかになりましたが、WTO協定を改定しなくてもできることだ。私どもはWTO協定を食料輸出国の利益偏重から抜本的に転換しなければならぬと考えておりますけれども、協定を変えなくてもできること、これは予算上の措置だけであります。それをなぜやらないのかということについて、農水大臣の見解を伺いたいと思います。
武部国務大臣 まず、行政には継続性ということもございます。また、外交交渉も同様でありまして、WTO交渉の場におきましては、我が国は日本の提案を主張しているわけでございます。
 今、仮定の話であろうと思いますが、米価を六十キロ二万円で価格支持をするということなど、何らかの価格の下支え的な仕組みをつくるということについては、需要の動向や消費者の評価が生産現場に伝わらなくなる、これらとかかわりなく生産が促進されまして、過剰在庫を招いたり、あるいは我が国の稲作の体質強化を図る上での妨げとなる、私はこのように考えまして、これは問題だ、かように考えております。
 また、稲経、稲作経営安定対策の担い手コースの補てん率を十割に引き上げるということは、私は、共産党はこの考えに、この稲経について賛成ではなかったのではないかな、こう記憶しておりましたが、いずれにいたしましても、十割に引き上げることによりまして、まず第一に、当年産の価格動向が生産者に伝わりません。需要に見合った売れる米づくりの推進の妨げになる、かように思います。
 また、第二に、販売価格を下げても農家の手取りが変わらないわけですね。これを見込んで安売りを行うといういわゆるモラルハザードが生じる可能性があること等の問題があるのではないか、このように考えまして、委員の御提案には賛成できかねる、このように申し上げたいと思います。
松本(善)委員 稲経は、これは現状の、私どもの考えでは、全部補償するという考えだから違いますけれども、現制度としてあって、秋田県でやって、本当に受けている方々は喜んでいる、それで聞いただけのことでございます。
 米は言うまでもなく日本の農業の根幹であります。これがなくなっていくということになりますと、これは農家が困るだけではなく、日本の農村地帯、これは崩壊します。
 昨年、町村長会で、なぜ今、農山村を守ることが大切かというパンフレットをつくって、我々国会議員に配付をいたしました。農水大臣もお読みになっているんではないかと思っています。農村地域、町村というのは、人口は三割ですけれども、国土の七割を占めている。国土の七割が崩壊していく、これはなぜそういう危機に陥っているかといえば、それは農林水産業の衰退であることはもうだれの目にも明らかです。
 今農水大臣は、それは需要との関係その他でできないとおっしゃるけれども、これを、農業がなくなる、あるいは農山村、地域の七割以上が、市でも農村地域の多いところたくさんございますので、七割以上が荒廃するんだ、こういう問題として消費者その他全国民に提起をするならば、私は、それは困るというのが大多数の国民の声ではないかと思います。
 この点については農水大臣はいかがお考えでしょうか。
武部国務大臣 我が国は七割が急峻な山々でございます。極めて平地の少ない、狭い国土を有しております。山が荒れて、台風が来て大雨が降れば海が汚れる、そういう自然の宿命の中で農業を営み、生活を営んでいるわけでありまして、そういう意味では、私は、人と自然の共生、環境を守りつつ自然の恵みを受けていくという、そのことはまさに基本だ、このように思います。
 米について言うならば、毎年需要が大きく減少しておりまして、生産調整面積が過去最高の百一万ヘクタールまで拡大し、もう既に限界感が高まっている、このように思いますし、生産調整面積が拡大する中で、現場の市町村、農協が生産調整に大変なエネルギーを注がざるを得ない、いわば疲弊していると言っても過言でないのではないか、こう思いますし、他の品目に比べまして脆弱な生産構造となっているということも明らかではないでしょうか。
 地域の担い手の育成が大きく立ちおくれていることでありますとか、農村が非常に荒廃しつつあるという問題は、これはしっかり対応していかなければならない。そのための食料・農業・農村基本法だ。その理念に沿って我々は努力していかなきゃならないと思いますが、水田農業の展望を切り開いていくためには、委員先ほどお話しされましたが、生産調整に関する研究会を開催し、本来あるべき姿として、市場を通して需要を感じ取り、売れる米づくりを行っていくということがやはり基本になるべきだ、こういう中間取りまとめについていろいろ今後議論が深められる、かように思います。
 そうした現下の状況を踏まえまして、米政策を思い切って改革し、将来展望を開く必要があるということについては、関係者の方々はおおむね一致しているのでありますから、今回の改革はまさに私は正念場だ、このように認識しておりまして、政策決定の最終責任者である農林水産大臣として、各方面の議論をよく見きわめながら、十一月下旬には米政策の大転換の具体的方向を決断してまいりたい、このように考えている次第でございます。
松本(善)委員 農水大臣は、やはり農村の現場の意見を御存じない。私は、先ほど言いましたように、いろいろ意見を聞く中で、自民党の町会議員さんたちの御意見も伺ってみました。農水大臣の考えとは違いますね。しかし、それは別として、国際問題で聞きましょう。
 アメリカでもアジアでも、価格暴落から農民を守るために、価格保障の充実、復活それから予算の増額が行われております。例えばアメリカでは、一九九六年農業法で廃止した不足払い制度、いわば生産費をもとに決める基準価格とそれから市場価格の差額を全額国費で補てんする制度でありますけれども、これを今年五月に成立した二〇〇二年農業法で復活をさせました。
 そのほか、タイは価格を政府が買い支える制度をつくり、インド、フィリピン、パキスタン、イランなどは支持価格の引き上げを行っております。農産物価格の暴落から農民の苦境を救うことを優先するのが世界の流れになっている。一九八〇年を基準に価格保障予算の推移を見ますと、アメリカは約十倍になっています。EUは約三倍、三・三倍ぐらい、日本は半分弱です。こういう状況であります上に、アメリカのWTO農業交渉に関する新提案は日本農業にとってさらに過酷なものであります。
 私は、このWTO交渉につきましても、日本が権利としてできることは全部やる、そういう状況じゃなければこのWTO交渉でも迫力がない。やることもやっていないんだからもっと下げてもいいだろう。それから、野菜だって、セーフガード、権利であるのにやらない。
 私は、WTO協定上できる農業保護は全部やるということでなければ、これはWTO農業交渉でも日本はつけ込まれて絶対成功しないと思いますが、農水大臣の見解を伺って終わりたいと思います。
武部国務大臣 アメリカの提案はまことに理不尽きわまりないものだと、私どももベネマン農務長官に厳しくそのようなことを申し上げております。
 我が国の主張は、農業の多面的な機能というもの、この点については委員と相通ずるものがあろうと思いますが、このことをしっかり確保していく。ドーハ宣言をもとにいたしまして、私どもも最大限日本の主張が貫かれるようこれまでも大変な努力をしている所存でありますが、これからも厳しい交渉になろうとは思いますが、しっかり我が国の主張を守ってまいりたい、こういう決意でございます。
松本(善)委員 これで終わりますが、農水大臣のアメリカ新提案に対する見解は存じております。存じておりますけれども、WTO協定の、今の協定、現行協定上できることは何でもやるということで農民を守らなければ、これは日本の農林水産業、崩壊していく、そして町村長会が憂えているような状況になると思います。このことを国民全体に、農業なくなっていいのかという問題提起をするならば、私は農水大臣の見解は全国民に支持されないだろうということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
鉢呂委員長 これにて松本善明君の質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 本日の最後の質問になりましたが、農水委員会でこうして武部農水大臣と質疑するのも、下手すると最後になるかもしれません。武部農水大臣の率直な思いを聞かせていただきたいというふうに思っております。
 まず、一連の食品の不正表示の問題でありますけれども、BSEの発症が日本で確認されて以来、食品の不正表示が次々に明るみに出てきました。その件数は、これほど広範に行われていた不正表示がなぜ今までわからなかったのかと疑問を感ずるほどでございます。
 まず、大臣として、この不正表示の問題、この原因をどうとらえているのか、お聞かせ願いたいというふうに思っております。
 また、この国のBSE対策費をだまし取った件は別にして、業界では偽装表示は当たり前のことに行われたという声も聞こえます。そして、政府、農林水産省幹部が食品業界へ天下りしている中で、農林水産省が幾ら偽装表示の実態は知らなかったと言っても、素直には信じられません。
 そういった国民の疑問を、疑念を持たれているようなことに対して、毅然とした態度で、姿勢で今後の食品安全行政に邁進してもらいたいというふうに思っているんですが、この農林水産省と企業の癒着の問題、これを疑われないようにすべきと思うんですが、このことに対する大臣としての決意もお聞かせ願いたいというふうに思っています。
武部国務大臣 BSEが我が国で初めて発生して以来、偽装表示の問題等々、次から次といろいろな事件が発覚いたしました。私は、総じて言うならば、納税者主義、消費者主義ということに対する徹底が業界にも行政側にもなかったのではないか、あるいは、このことについて言うならば、関係者皆そういう一面があったのではないか、このように思います。
 特に、食料不足の時代は食料の量的確保ということが消費者のニーズであり、これに向けて生産者も業界も行政も、共同の目標としていちずにこれを追求してきたんだろう、こう思うんです。しかし、最近の消費者ニーズというのは、安全とか品質とか、あるいは企業の倫理とか企業のイメージとか、そういうことにあるということに気がついていない、わからなければ何をやってもいいという風土が企業の中にあったような、そんな気がしてなりません。
 でありますから、私どもは、消費者に軸足を置いた農林水産省の改革に今取り組みつつあるわけでありますし、農林水産政策もそのことを柱に徹底してまいりたい、こう思っております。
 さらに、一連の偽装事件などを踏まえて私どもが打ってきた手だてというものも、いろいろな事件が明るみになる一つ一つの証左ではないか、このように自負していいと思うのでございます。
 食品表示一一〇番、今日まで四千二百件余り問い合わせがあります。また、ウオッチャー制度、今千六百人、監視体制も千五百人を三千三百人にふやしました。そういったことから、あるいは内部告発ということも誘発、助長しているのではないか、このように思います。
 そういう考え方で、これからの取り組みをどのように進めていくかということについては、四月に食と農の再生プランというものを公表した次第であります。具体的には、食の安全、安心の確保と消費者保護第一のフードシステムの構築というのを中心に掲げているわけでございます。
 第二の質問は……(菅野委員「天下り」と呼ぶ)そういう考え方に立って、私ども、食肉の問題も含めて、今、第三者委員会を三十日に設置して、政官業の構造問題というような指摘もあるわけでありますから、今先生御指摘の天下りの問題等も含めまして客観的な検証を行い、また農林水産省の行政の業務、組織の見直しもやっていこうということについては、御案内のとおりでございます。
菅野委員 今大臣がいみじくも答弁なさっていますけれども、やはり業界全体での企業モラルといいますか、そういうものが非常に今日的に欠如していたと率直に大臣も認めていることであるというふうに思います。私も、そのことが雪印食品や日本ハムの問題を通じて、あるいは、食品業界だけじゃなくて、あらゆる企業にそのことが今問われているというふうに言わなければならないと思っています。今大きな問題になっております電力業界も含めて、そのことが今こそ問われなければならない課題であるというふうに思っています。
 ただ、そこの問題点はとらえているんですが、そのこと、それから次のステップを、政府全体として、少なくとも食品業界における農水省としての次のステップをどう踏んでいくのかということが今問われているというふうに思うんですね。問題点を指摘するまではだれもできることだというふうに思っているんですが、今日的な市場原理、競争原理の徹底の中で、それじゃ行政府として、農水省としてどう指導監督していくのか、このことがしっかりと位置づかっていかなければならない課題だというふうに思っています。
 そういう意味で、今、一方では市場原理、競争原理というものを徹底していく中で、どう指導監督していこうとなされているのか、このことを大臣しっかりと考えていただきたいし、今考えておられることをお聞きしたいと思っています。
武部国務大臣 私どもは、市場原理についてもやはり警戒をしていかなきゃならない、このように思っているわけでありまして、やはり消費者保護第一のフードシステムの構築ということを徹底していかなきゃならぬ、こう思っておりますし、そのためには、今まではどちらかというと性善説に立っていた。通常の取引で悪いことはするはずがない、信用を損ねれば商売が成り立たないというふうに、そういう考え方が支配的だったんじゃないか、こう思います、それは私どもの反省も含めて申し上げたいのでありますが。
 やはり消費者の感覚とこのことは相当ずれがあるわけでありまして、消費者ニーズをしっかり考えないで利潤追求という効率主義第一で突っ走った場合に、そのような企業行動は強烈な国民のしっぺ返しを受けるものであるということを関係者は肝に銘じてもらいたいと思います。
 そういう意味で、私も、行政の範囲というのは、公権力を用いるということについては気をつけなくちゃ、十分注意をしなくちゃなりませんが、今後、関係法令の遵守や倫理の維持等を内容とする行動規範の策定、かつその実効性を確保するための一層の行政の対応が必要だ、このように思っております。
 行動規範策定のための手引を六月にまとめまして、関係企業、団体を対象とした講習会等を開催しているわけでありますが、その周知徹底に努めておりますけれども、今後、こういう考え方での取り組みを政府全体として取り組んでいく必要があるのではないか、不正は許さない、消費者を守る、こういう基本に立って進めていく必要があると思います。
菅野委員 私どもは、BSEが日本で発生して以来、大臣、BSEが確認された各地に私も含めて調査活動を行ってきて、この委員会でその調査活動に基づいて政策提言を行ってきました。
 その中で非常に私も今でも脳裏から離れられないのは、BSEが発生した原因として言われているのは、生産者から共通して指摘されていることは、私たちには一切責任はないと。
 例えば、肉骨粉が疑わしいと言われているけれども、生産者には牛に与えられている配合飼料にどういうものが混入しているかわからない、ただ我々は飼料メーカーとの信頼関係の中で配合飼料を使用しているのであって、生産者にBSE発生の責任のないことははっきりしていると。
 ただし、量販店から価格の安い牛乳を求められて、量販店の意向に沿って価格を安くしなければ量販店との取引は停止される、こういう流通になっている、そのためにも飼料メーカーに安い飼料を求めていく姿というのは生産者の中に存在しているんだと言っています。そして、不正表示の問題も含めて、量販店の流通経路に乗らない限り、私たちは生きていけない状況に今陥っているんだという声ですね。
 そして、宮城でもカキの問題で、韓国産のカキを国産と偽って不正表示して流通に乗せていかなければならない実態が起こりました。これは、BSEと構造が似ているんですが、根本的な原因をただしていくときに、生産されていない時期にもカキを流通に乗せていかなければならない構造、こういう流通構造がある限り、量販店との取引が停止されるのを恐れて、そして韓国産を国産と偽って流通に乗せていく姿、こういうものが存在しているということだというふうに思います。
 それで、ぜひ企業モラルの徹底、今も大臣が答弁しているように、行動規範の徹底ということと同時に、食品の流通のあり方、取引の実態、量販店の市場形成のあり方、これらについても徹底した行政としてのメスを入れていかない限り、私はこの不正表示の問題というのは根本的な解決にはつながっていかないというふうに思えるんです。
 それが、市場競争原理の徹底という中で、今大臣もいみじくもおっしゃいましたけれども、行政側が出過ぎてはいけないというふうにあるんですが、このことを行政側として、政府として解決しない限り、根本的な解決にはつながっていかないんではないでしょうか。私はこういうふうに思います。
 このことに対して、大臣、今の流通のあり方、量販店の市場形成のあり方について、大臣の見解とこれからの方向性を示していただきたいというふうに思っています。
武部国務大臣 不正表示の問題については、やはり表示を行った事業者自身に一番の責任があるということは言うまでもありませんが、今般、不正表示を行った企業の社員等から聞き取りをした際に、大半の事案において、その動機として量販店等に対する欠品の回避が挙げられているわけでありまして、いわゆるバイイングパワーを行使して納入業者に不当に不利益を与えているような、いわゆる優越的地位の乱用というような事実があれば、公正取引委員会に直ちに連絡するとともに、十分連携してその是正が図られるように対処しなければならない、このように思います。
 なお、公正取引委員会におきましても、昨年十月より大規模小売業者と納入業者との取引に関する実態調査を行っているところである、このように聞いておりまして、今後とも、公正取引委員会と十分連携をとりながら委員御指摘のような問題を解決していく、いわゆる公正な取引関係が確保されるように農林水産省としても努めてまいりたいと思います。
菅野委員 一連のこの不正表示の問題等含めて、今回起こっている問題の提起している大きさ、問題の提起している中身というものは非常に大きなものがあるというふうに思っています。
 先ほどから言っているように、構造的に起こる部分というのも率直に言って存在しているというふうに私は思っています。そこをどう生産者と消費者とをつないでいくのか、これは農水省としての食品の安全という観点も含めて大きな課題だというふうに思っています。
 ぜひ大臣としてしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っていますが、一方では、食と農の再生プランが農水省から示されています。私は、この食と農の再生プランというものは、農政においても効率化を進めていくという国としての国民に対するメッセージであるというふうに思っています。
 確かに、効率性というものを追求していかなければならないというふうには考えますけれども、それが過剰になっていったときに、今言ったように、この食の安全、安心というものが確保されるのかという観点がないがしろになっていくんではないのかなというふうに思えてならないわけです。
 そういう意味において、今後、食と農の再生プランにおいて、自給率の向上と、四五%という目標値を設定しておりますけれども、この自給率の向上と食の安全、安心という確保をどう行っていくのか、これは大臣、しっかりとして取り組んでいかなければならない課題だというふうに思いますけれども、決意のほどをお聞きしておきたいというふうに思っています。
武部国務大臣 私どもが消費者に軸足を置いて農林水産行政を変えていく、このように申し上げておりますのは、これは消費者の求めるもの、消費者ニーズに合ったものを生産し供給する、そういう体制づくり、これが自給率の向上につながる、こう思いますし、食の安全、安心確保のフードシステムの構築にもつながる、こう考えているわけでございます。
 しかし、これはなかなか生産者にとってもいろいろな負担があります。この食の安全、安心を確保するためのフードシステムの構築というのは、やはりこれを支える農業の構造改革を加速化させていかなきゃならない。ここのところで先生が御心配するんだろう、このように思うわけであります。
 先日、宗谷に行ってまいりまして、酪農家の方々と懇談したのでありますけれども、やはり家族経営ではもう困難だ、こういうことを皆さん言っております。ヘルパーを雇う、コントラクターにお願いするといっても、需給状況はどうなっているかというと、もうヘルパーは一年前から全部決まっちゃっている、こういうことなんですね。
 それをどう克服していくかということでは、法人化を進めていくということが必要だ、こういうことについての賛同も得てきたわけでありますけれども、私どもは、先生が今御懸念されましたような問題を解決しつつ、食の安全、安心の確保と同時に、この農業の構造改革というものを加速化させていくということで相当な支援策を講じてまいりたい、このように考えているわけでございます。
菅野委員 先ほど松本委員の質疑を聞いていて、私もこのままで日本の農業が、あるいは日本の第一次産業が本当に健全発展していくんだろうかという疑念を強くしています。松本委員と同じ考えを持っているんですけれども、本当に国土をしっかりと守っていくために、この第一次産業を国の基幹産業としてしっかり位置づけていかなきゃならないというふうに思うんですね。
 それが、食と農の再生プランでは、四十万農家ということを打ち出しております。本当にそのことを、その四十万農家を基幹として農業を再構築していくんだといって、その他の部分はそれではどうなっていくんだろうかという疑念、疑問を持たざるを得ません。
 それから、大臣先ほど答弁しているように、米政策の見直しの中間報告においては、農地法を改正してまでも企業、株式会社の農業参入を図っていく、これは市場原理の徹底という方向の中で打ち出されてきた政策だというふうに思うんですね。そういう中で、そういう政策が本当に日本の第一次産業全体を持続的にしていく政策なのだろうかという大きな疑問を持っているものであります。
 それで、このことは、食料・農業・農村基本法をつくったときには、ここまでの議論はなされていなかったというふうに私は思っています。ここに来て急に浮上してきた。この食と農の再生プラン、このことをぜひ日本における第一次産業が持続的に発展するという立場でしっかりと位置づけていただきたいというふうに思うんですね。
 そういう意味においては、日本の農業全体の経営体制が本当に効率性の追求だけでいいのかという観点を、大臣、しっかり持っていただきたいというふうに思っています。これは私の意見として申し上げておきたいというふうに思っています。これからも大議論をさせていただきたいというふうに思っています。
 次に、そういう意味では、この一連の食品の不正表示の問題から、BSEの問題が発生して、食の安全行政の推進という問題がクローズアップされてきています。今、来年の四月に向けて、リスク管理部門とリスク評価部門を分離して、そして進めていくということを打ち出されております。その準備に取りかかっていると思うんですが、でき上がってからでの議論は私は遅いというふうに思いながら、今一つの大臣の見解をお聞きしておきたいと思うんです。
 リスク評価部門を分離して内閣府に置くという形は評価いたしますが、それじゃ、このリスク評価部門を担う人たちはどういう人たちで構成していくのかということが問題だというふうに思うんですね。これが、厚生省や農水省からの出向という形になるのか、異動でもって行われるのか、あるいは新たな人たちをそこに配置しながらリスク評価というものを専門的に行わせようとしているのか、これが大きな問題点だというふうに思っています。
 それからもう一つは、リスク管理の部分でやはり農水省や厚生労働省との縦割り行政というのが残ってしまうんではないのかなというふうに思っています。この縦割り行政の弊害というものがBSEの問題で多く指摘されてきました。先ほどのフランス方式、イギリス方式の議論もございましたけれども、私は、この縦割り行政の弊害をどう乗り越えるのか、これがこの今後の進め方を大きく左右してくるというふうに思っているんですが、大臣、リスク評価、この部分についての見解をお聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 食品安全委員会の要員については、当面は厚生労働省や農林水産省から要員を出さなきゃならないと思います。これは、全くこれまでの経緯も知識も情報も、何も持たない者でやり得るはずはないと思います。しかし、当然、独自に年々職員を採用する形になるんだろう、このように思います。そこのところは委員御指摘のような心配や懸念の生じないようにする必要がある、このように思います。
 また、厚生労働省と農林水産省の縦割り行政の問題については、リスク評価、リスク管理ともう一つ、リスクコミュニケーションということが大事なのでありまして、これは食品安全委員会が総合的なマネジメントをすることになるんだろう、こう思いますし、政府にリスクコミュニケーションに係る総理を中心とする一つの本部のようなものができるのじゃないか、このように考えております。
 農林水産省といたしましても、リスク管理部門というものは産業振興部門とは分離するように、これは関係閣僚会議でそういう指摘がありますので、やはりリスク管理の部門とそれから産業振興の部門というのは切り離して強化していく必要があるんだろう、このように思います。
 大体そんなところでよろしいでしょうか。
菅野委員 大臣、本当に、食品安全庁の設置の問題を含めて、リスク管理の問題、これは大臣としてしっかり指導性を発揮していただきたいというふうに思うんです。
 というのは、今日の食品安全行政をめぐっては、厚生省あるいは農林水産省、この縦割りの中でずっと二頭立てで来たというふうに思っています。これに関連するのが各都道府県なんです。実際に行政執行するのは、農水省でも厚生省でもなく各都道府県なんですね。そういうものが混然としているがゆえに、今日までの食品の安全という部分が今日的な問題を引き起こしてきているというふうに思うんです。そこをどう整理していくのかが今問われているというふうに思います。
 私も、極論を言うならば、厚生省や農水省の権限を外して、食品安全庁と都道府県という形、そういう形も極論としてはあるのではないかと思いながらも、そういう意味での今後の食品安全行政の進め方については今大きな議論を巻き起こしていっていただきたいというふうに思っております。これからも、この問題については問題点を指摘していきながら議論をしていきたいというふうに思っています。
 最後になりますが、五頭目のBSEが発生しました。大臣、私もずっと言い続けてきましたけれども、消費者や国全体、BSEに対する理解は深まったんですが、生産農家の不安というのは一向にまだ消えていません。それは、疑似患畜牛の扱いですね。
 これは、疑似患畜牛、全頭殺処分しなければならないという形で、政府はOIE基準を遵守するという形を明言しながら今日まで殺処分してまいりました。私は、BSEのこの問題、プリオン研究所を設立してこれから研究体制に日本が入るという段階においては、この疑似患畜牛の扱いについて政府として、全頭殺処分しないで済む方向というものが、いろいろな方策があると思います。これをぜひ検討していただきたい。そうすれば、農家も安心して経営を、あるいは廃用牛という部分も市場に出す体制が強まってくるんじゃないのかなというふうに思えるわけです。
 大臣、この間多くの議論を行ってまいりました。ただ、このことについては、まだ全頭殺処分という方向性は打ち出されておりますけれども、大臣、今後に向けてこの疑似患畜牛の扱いをどのように考えていかれるのか、決意をお聞かせ願いたいと思います。
武部国務大臣 BSEは、その感染メカニズムも含めまして科学的に解明されていないことが多いわけですね。疑似患畜の範囲についてはいろいろ議論のあるところでありまして、先生も行かれた猿払の若い酪農家の皆さん方、宗谷BSEを考える会からも私のところにいろいろな要望書が来ております。
 その中で、私はこの間、北海道におけるNHKスペシャルをビデオテープで見ました。そのときに私は、偉いな、こう思ったのは、原因究明のために、老経産牛のBSE検査を積極的に進めよう、それを呼びかけよう、一番苦労している彼ら自身がそういう動きを始めたんですね。同時に、疑似患畜の範囲については見直しを求めるという二つです。
 私どもは、死亡牛の全頭検査もこれからやらなきゃいけませんし、我が国としては、合理的でないと言われるかもしれないことまでかなり徹底して今やっているわけです。これだけのことを日本がやっているんだということをやはりOIEにもきちっと話をしてまいりたいと思っておりまして、BSE検査等のサーベイランスによるデータの蓄積を行いながら、専門家の意見も伺いつつ、今後OIEに対して疑似患畜の範囲の見直しを提案していきたい、このように考えておりまして、その際には、御指摘のことも一つの考え方として考慮してまいりたい、このように考えております。
菅野委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。
 本日は、これにて散会いたします。
    午後四時九分散会


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