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第4号 平成14年11月7日(木曜日)

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平成十四年十一月七日(木曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      青山  丘君    荒巻 隆三君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      近藤 基彦君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      宮腰 光寛君    川内 博史君
      後藤  斎君    佐藤謙一郎君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君
      山内  功君    江田 康幸君
      高橋 嘉信君    小沢 和秋君
      中林よし子君    菅野 哲雄君
      山口わか子君
    …………………………………
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   参考人
   (福井県立大学名誉教授) 中村  充君
   参考人
   (元長崎県小長井町漁業協
   同組合組合長理事)    森  文義君
   参考人
   (諫早市長)       吉次 邦夫君
   参考人
   (愛知大学経済学部教授) 宮入 興一君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月一日
 辞任         補欠選任
  宮腰 光寛君     荒巻 隆三君
同月七日
 辞任         補欠選任
  宮本 一三君     宮腰 光寛君
  松本 善明君     小沢 和秋君
同日
 辞任         補欠選任
  宮腰 光寛君     宮本 一三君
  小沢 和秋君     松本 善明君
    ―――――――――――――
十一月七日
 農水産業協同組合貯金保険法及び農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 農林水産関係の基本施策に関する件(有明海及び八代海の再生に関する問題)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 議事に入るに先立ちまして、ただいまタジキスタン共和国上下両院議員団御一行が当委員会の傍聴にお見えになっております。御紹介申し上げます。
    〔起立、拍手〕
    ―――――――――――――
小平委員長 農林水産関係の基本施策に関する件、特に有明海及び八代海の再生に関する問題について調査を進めます。
 本日は、本件調査のため、参考人として、福井県立大学名誉教授中村充君、元長崎県小長井町漁業協同組合組合長理事森文義君、諫早市長吉次邦夫君、愛知大学経済学部教授宮入興一君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考とさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、中村参考人、森参考人、吉次参考人、宮入参考人の順に、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 それでは、中村参考人にお願いいたします。
中村参考人 中村でございます。
 今回、有明海及び八代海の再生法律が検討されますことに対して、賛意を表しますと同時に、早くこの法律が成立することを期待してやみません。
 私、専門は、海の生物の環境工学でありまして、この視点から若干の所見を申し上げたいと思います。
 さきに事務局の方から御送付いただきました、第百五十五回国会の資料がございます。これに対する考察について述べたいと思います。
 まず、委員の先生方、熟知していらっしゃると思いますけれども、有明海の自然環境ということを見ますと、まず有明海がありまして、その湾口に早崎の瀬戸がございます。そして、橘湾に流れまして、橘湾の前面には対馬暖流が北上しております。そして、これまでの、ここに記載されております調査結果等から考えましても、対馬暖流の強弱、言いかえますと、これはすぐ直前で親潮から分流したものでございまして、大きく言いますと、黒潮の強弱といったことまで有明海の海況に影響を与えるということを御認識いただきたいと思います。
 有明海の最も特徴的な自然特性を申し上げますと、有明海の潮汐です。干満差及び有明海の持つ干潟の大きさ、これはいずれも日本一でございます。湾の面積に対しまして干潟がどのくらいあるかということを、干潟率という形で表現してみますと、有明海が一二・二%、伊勢湾が八%、三河湾が二・六%、東京湾は一・六%、大阪湾はもう一%以下でございます。
 干潟の発達というのは、ただいま申し上げました潮汐の干満差の大きさ、それから陸域から海に運ばれてまいります土砂の量によって決まります。洪水等によって流れてまいりました土砂は、まず砂は河口付近に堆積します。泥分は沖合に運び出されます。しかしそれが、日常的な海の作用、例えば波によりまして、河口の砂は海岸沿いに運ばれますし、沖合に出ました泥は潮汐作用によって干潟の上に運ばれます。
 有明海の場合には、過去の記録からいいますと、一年間に十センチ近い干潟の発達ということもあったようでございまして、干潟が十分に発達いたしますと、これは、治水上、洪水やはんらん、利水上、新田開発というようなことで、干拓が行われてきた、これが有明海沿岸の土地の歴史であります。こういった必然的な陸域化の状態があるわけでありますが、最近はちょっと、陸域化に深いところまであるのは若干異なっておりますが。
 次に、海の浄化力について触れてみたいと思います。海の浄化力、今まで我々は、不用意に水に流すということで、海に負荷を与えてきたわけでございますが、海の自然浄化力を超えますと著しい障害が出てまいります。
 海の浄化力の一番顕著なところは、干潟、浅場という好気性環境で、藻場も含まれると思いますが。今、これは国立研究所あるいは第三者委員会と称するところで、海の浄化力について詳細に御検討なさっていらっしゃいますので、それについて、その結果を期待するものではありますが、私が今までやってまいりました、大まかな干潟の浄化力について申し述べますと、例えば、好気性環境、溶存酸素が七ミリグラム・パー・リッター以上あるという条件下においてではありますが、一平方キロメートルの干潟のバクテリア、これは酸素を消費して有機物を分解するわけでありますが、これが、一平方キロメートル、一日当たり一・一四トンであります。それだけの酸素を消費して有機物を分解いたします。これを概算しますと、この干潟の浄化機能は二万四千人の人口の下水処理場に匹敵する、大まかではありますが、そういう試算もできるわけでございます。
 また、干潟の上には二枚貝、アサリ、ハマグリ、その他二枚貝が生息いたしますが、仮に一平方メートルの干潟に二百個のアサリがすんでいるということにしますと、その一平方メートルの干潟のアサリは、呼吸とえさを食べるという立場から、ろ水をいたします。ろ水して懸濁物をきれいにするわけですが、その能力は、一日四立方メートル程度です。といいますと、これは都市人口一人当たり四百リッターぐらい使うようでございますので、十人分を一平方メートルの干潟のアサリがきれいにしてくれる。そういうことで、干潟の自然浄化能力ということは大変大きゅうございます。
 ちょっと時間の配分を間違っているようでございますが、その湾の自然浄化力の指標を干潟率という形で表現いたしますと、有明海ですと、現状二百七平方キロメートルの干潟が千七百平方キロメートルの湾の中にありまして、一二・二%でございます。それに対しまして、現在問題になっております干潟の消失でございますが、一九八九年から一九九二年の調査で一三・七平方キロメートルの消失。それと、今回問題になっております諫早干拓内での干潟の消失が一五・五平方キロメートルでありまして、両方合わせまして、干潟の消失率は一・七%でございます。諫早干拓内でいいますと、〇・九%の消失率ということになります。
 貧酸素水塊の発生ということも最近出てきたようでございます。これは大きなる警鐘でありまして、貧酸素水塊の発生ということは、嫌気性バクテリア以外は生息できない、貝はもちろんのこと、生物全体が生息できないわけであります。ただ、これが一時的に出るというと、貝のようなものは体内に蓄積されておりますグリコーゲンによって死亡を免れますけれども、長く貧酸素の状態に置かれますと、これは当然死亡いたします。こういったことは、対策をする必要があると思います。
 ちょっと時間が少し足りないようでございますが、自然現象その他現象を見る場合に、より詳細にいろいろと見ていく場合と、それから全体を眺めてマクロな評価をするということが必要でございまして、細かい解析的なものは、現在第三者委員会等で行われておりますので、その結果に期待いたしますが、私は、むしろ巨視的な立場から今申し上げたわけでございます。
 以上述べましたように、対馬海流の強弱から始まって、湾の特性、対馬海流の湾口の潮位が若干高まっているようでございますが、湾口の潮位が高まりますと、有明海の共振周期を通じまして、有明海の湾奥の干満差が小さくなります。これは一%以下でございますが、いろいろな問題、今の干潟の減少率にしましても一・七%、一%前後の、いろいろな現象が絡まり合いまして、しかも、その内容は、地形、海象、気象、それに生物やあるいは人為作用ということが重なり合って、複雑に出ております。その一つ一つを抽出して、現象に対する寄与率を調べるということは大変なことでございまして、委員会の先生方には大変御苦労なことだというふうに私は考えております。
 こういう状態の中におきましては、むしろ、今緊急に要請されるのは対策でございまして、ぜひその対策に力を入れていただきたい。これは諫早に限らず、全体的な問題でございますが、海を汚さないということと、きれいにするということ、これは別でございます。汚さないということは、下水処理場で負荷を少なくするということでありまして、きれいにするというのは、自然浄化力を向上させることです。例えば、干潟を造成するといったようなことです。今の日本の行政からいいますと、技術的な問題もありますが、汚さない方への投資は非常に大きくなってきておりますが、それに比べまして、きれいにする、浄化力を向上させるという方向に向けての投資が非常に少ない。その辺のことをぜひ御勘案いただければありがたいと思います。
 では、具体的に有明海の場合、あるいは八代海の場合、自然浄化力を向上させるためのどういう工法があろうかということになりますと、若干申し上げますと、例えば、先ほど申し上げました干拓地、埋立地、その前面は、最近はちょっと深くやってしまっております。その前面を浅場傾斜にいたしまして、自然の発達力をまたつけてやるというようなことも必要でございましょう。あるいは、貧酸素水塊の発生しやすいところには、密度流作澪とかあるいは湧昇流構造物による上下の混合であるとか、いろいろな工法が、既に確立した工法もございます。それを積極的に検討いたしまして、今の問題に対処していただきたいと思います。
 国の研究所あるいは第三者委員会の調査中ではございますが、私は、むしろそれをマクロな立場からもう一度見る必要があるんではなかろうかというようなことで、御意見を申し上げました。あとは、もしございましたら、質問の中で補足させていただきたいと思います。
 ありがとうございました。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 次に、森参考人にお願いいたします。
森参考人 私は、諫早湾で漁業を営んでおりました。過去形で申し上げます。現在は無職という状況で三年ほど過ごしておりますけれども、ここに傍聴にいらっしゃっている自然保護NGOあたりともいろいろ活動した経緯もあります。もちろん、漁民として、諫早干拓工事が着工と同時に、大変な事態が起きたということで、海上デモあたりをやりまして、工事に支障を来すような行動もやってまいりました。現在は、国を相手取っての訴訟ということもやっておりますけれども、これはひとえに今起きている有明海の異常を何としてももとの形に戻したいなという希望からでございますけれども、きょうこうして、この何日か後に有明海再生法というのが採決される、いろいろあったけれども採決されるということでございましたので、有明海が救われる法案ができるということで漁民として喜んでおる次第でございます。
 あれだけ荒れた、漁民の口からそれぞれ勝手なことが被害という状況で報告をされておりますから、皆さんの耳元にもかなりの情報は入っておると思いますので、有明海漁民の声は皆様のもとにも届いていると確信をした上でお話をしたいと思います。
 私は、堤防のすぐ外側で多少の影響を受けるということで、諫早市民の生命財産ということと、長年長崎県の悲願であります広大な農地ということのために、当事者として賛成だ反対だの決をとらされたわけでございます。
 長い歴史は、私、二十四年生まれですけれども、二十四年の時代から大干拓が構想されたわけでして、その後三十年、四十年の間にいろいろな状況が変わりまして、生まれたときから高校卒業するまでに、この海がどうなるかということで方向が決められなかったのは、千三百人の漁民すべてがそういう事態に振り回されまして、最終的には、環境の悪化もありましたけれども、漁業にいろいろな支障を来し始めた。
 今後、この法案のもとに有明海が再生をされるという事業が始まりますけれども、少なくとも諫早干拓堤防締め切り前から、私たちは諫早湾の漁民として諫早湾の再生の事業を、十年ぐらいで私の組合でほぼ十億近くの振興策をしていただいております。
 漁場に浅瀬をつくる、砂をまくという事業と、アサリの稚貝の放流をやっております。もちろん、沖合には、潜水のタイラギの漁場に砂をまくという行為もここ三年ほどやっておりますけれども、実態は、私ももともと漁協の組合長をやっておりましたので、組合員の生活というものは、自分のことですから非常に、ここで申し上げるのはなんですけれども、お金をたくさん使っている割にまず生活ができていないという実態が、まずこれは余り行政の方からも届いてはこないと思いますけれども、生活ができていない、漁業によって収入が得られないという状態が諫早湾の漁民にはあるということだけは知っていただきたい。強く言う弱く言うは別として、そういう実態である。
 実を言うと私も、昨日ですけれども、一言で言えば漁民というのは今廃業状態、すべて今までそろえてきた財産が価値のないものになる、漁業に使えないという状態があるというふうに認識をしていただければ、これは漁民側の声ですけれども、実際として、漁民を代表して、そういう状態にあることをお知りおきいただきたいと思います。
 諫早湾の締め切りで何がこれまで起きたかといいますと、私たちは、職業は私タイラギをとる潜水器漁業ですから、皆さんたちの目にとまらない、海底をはいずり回るような形をしましてタイラギをとるんですけれども、その資源たるものは、皆さんに想像のできる範囲じゃないと思います。
 しかし、目に見えないところでどういうことが起きているかということは、やはり毎日生活の糧としてやっている私たちの話じゃないと、私も生物学者でもないわけですけれども、狩猟学といいますか、海洋狩猟学からいけば、私もプロじゃないかと思っております。
 諫早湾には、皆さん、サケとかああいう魚が川に産卵に上るというように、諫早湾全体が大きな川である、中国にある揚子江ほどじゃないにしても川である。その川の源泉になるのは、諫早は今、堤防の内部に入る川が大小二十六本ありますけれども、その中で大体十三本ぐらいが少し大き目の川で、それぞれの川に小さい干潟がくっついた、そして、諫早の干潟と言われるものは、その十三本、二十六本の総合した干潟がまとまった形だと。
 長良川の大堰でも問題になりましたけれども、水の流れをせきとめたことによって、下流の方が漁場としてなくなったということのようです。諫早湾は、本明川を初め大小二十六本の川の流れを沖合で仕切ったとてつもない大きな大堰だというふうに私は思っているわけでございます。あれだけの川の数を仕切ったわけですから、有明海全体が漁民全体何割残れるかというぐらいに疲弊する状態が今後発生することは予想されますし、小長井漁協、また諫早湾の漁民は、漁業というものを、豊かな漁業だったわけですけれども、今廃業状態にあるということでございます。
 私も、四県回りまして多数の漁民の声を聞きますけれども、漁業という職業はとったものが勝ちという世界ですから、人にわからないようにして漁業収入を得るというのを技術としますので、非常に団結する力が弱うございます。そのために、宝の海を返せというキャッチフレーズでやっておりますけれども、悪く言えば、下手すると漁業者そのものも、乱獲なり海を荒らすということも多少あります。
 しかし、今こうして私たち、三十、四十年近く干拓事業で賛成か反対かということで来たんですけれども、その結果がどういうことかといいますと、非常に人間の関係が壊れてきている、人間環境。そういう方面が今の、例えば行政側と漁業者の意向がなかなか組み合わない。実態と、やってはいけないこととやらなければいかぬことの方向性が、なかなか思ったようにいかない。
 やはり、海は物を生むところでありまして、私たちはそこで発生するものをお金としておりますけれども、今から先、多分たくさんのお金を使って有明海を再生されると思います。しかし、それはあくまでも使うお金であって、消費されていく、得られるお金じゃなくて、使っていかなければいけない、負担していかなければいけないお金である。私たちも本当は、水産たんぱくを供給することを生きがいとしましたし、それによって納税もしてきましたけれども、これからはたくさん、下水にしても、お金を消費して、それを負担していかなければいかぬ。海については、生んでお金が生まれるはずの海がお金を消費していく海になるということがこれから始まる。
 私は、こういう委員会で国の方針が再生法として決まりますけれども、私たちの置かれた状況は、やはりアセスメントはかなり違った結果をあらわしてきたということで、話と違い過ぎる、悪く言えばだまされたという観点に立って、これから何千人かの生活が壊れるかもしれないという危機感を持って、闘うべきところは闘わなければいかぬと思っていきます。
 とにかく、水の流れをとめることによって生まれるものが生まれないという公式は、これは水産学者でなくても、漁業者でなくても、この水の国日本に生まれた限りはだれしもがわかることでありまして、あとは、その周りを取り巻く、進める進めないの側で、人間の関係、環境がいい方に進めるか悪い方に進めるかだけの問題である。
 例えるべきは、やはり水の流れをとめちゃいけないというだれしもが持っている認識のもとから、私は、今後、この諫干の事業を中止ということよりも、あくまでも推進していただきたい。しかしながら、水の流れがもとに戻るような、またお金のかからないような形で、物が生まれる方の投資に形を変える形で進行してもらえればと。
 いつか間違いが、例えば子供でも、進む方向が違えばどこかで、そっちじゃなくてこっちに行きなさいというふうな姿勢をこの事業にも示していただくような、あくまでも中止じゃなくて、本当の意味の生み生まれる海に有明海をしていこうという形に、皆さんの人間環境を超えてそちらの方に進んでいただければ、漁民として未来に希望が持てるんじゃないかと思っております。
 私には専門の知識とかそういうものはございませんけれども、すべてその現場で、人間関係の中で、多数か少数かという中で置かれてきた体験の上の話でございますけれども、余りにも大きいものをなくすという意味で、どうしても黙っておれないという状況で行動しております。
 本日は、こういう重要な委員会にお呼びいただきまして、話をさせていただいたことについては感謝申し上げて、私の話といたします。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 次に、吉次参考人にお願いいたします。
吉次参考人 おはようございます。諫早市長の吉次でございます。
 国会の先生方におかれましては、国政の振興に大変御尽力いただいておりまして、心からお礼を申し上げたいと思います。またこのたびは、有明海、八代海の再生のための特別立法を立案していただきまして御審議を賜っておりまして、地域を代表してお礼を申し上げます。また昨日は朝早くから、委員長先生、理事、委員の先生方、現地を視察していただきまして、重ねてお礼を申し上げたいと思います。
 それでは、地元を代表いたしまして、意見を述べさせていただきます。
 有明海は五メートルを超える干満差がございます。阿蘇山、九重山系の火山灰などの土砂が熊本、福岡県の河川から流れ込み、時計と反対回りの潮流に乗り、有明海の北から西へ回り、諫早湾の奥部へ供給され続けております。年間五センチから十センチのスピードで潟の堆積が進み、干潟が発達し、干潟の方が背後地よりも高くなってきているというような状況でございます。
 このため、諫早湾沿岸地域の河口付近では慢性的な排水不良になり、このため、干潟を堤防で囲むことによりまして、古来から干拓が行われてまいりました。諫早はまさに干潟の歴史であるわけでございます。標高三メーターから二メーター、それからゼロメーターと、約千分の一の勾配でこの干拓地があるわけでございまして、背後地の面積は約三千五百ヘクタールというふうになっております。これは数百年前からでき上がったものでございます。
 干拓地をつくれば、その外側にまた干潟ができるわけでございまして、昨日御視察されておわかりと思いますが、旧堤防のところの外側の干潟とは、旧堤防のところはゼロメーターでございますから、約二メーターから二メーター五十センチぐらいの差があったのがおわかりになったのではなかろうかというふうに思っております。
 それから、地理的あるいは気象条件の問題でございますが、諫早市には、本明川という日本で一番短い、二十一キロメートルの流域の一級河川がございます。急峻で、日本で二番目の急流でございまして、河川勾配は急流域から緩流域となり、中流域がないために、雨が降りますと、一気に市街地へ流下してまいります。
 しかも、長崎県は地理的に非常に集中豪雨が発生しやすく、特に、昭和三十二年の諫早の大水害、昭和五十七年の長崎大水害、そういった洪水の危険性があるわけでございます。
 また、台風の常襲地帯でもございますし、さらに有明海は日本一の干満差で、沿岸は高潮の危険性が高い状況にございます。
 一方、周辺の河川は、流域面積が狭く、水源として不安定でございます。水不足に悩まされ、地下水をくみ上げて利用せざるを得ないことから、地盤沈下も起こっているというふうな状況でございます。
 これまでのたび重なる水害、高潮災害の歴史でございますが、諫早湾沿岸低平地は、河川と海からの影響を受けやすく、特に豪雨と満潮や高潮が重なったときには被害が甚大となり、これまでも幾多の豪雨や高潮に見舞われ、死傷者、家屋等の倒壊、浸水、田畑の流失など多大なる被害をこうむってきたところでございます。
 既存の堤防は四・三九メーターから約五・七一メーターぐらいでございまして、特に、諫早市の小野海岸は、四・三九メーターから四・四七メーターというようなことでございます。したがって、大正三年、昭和二年、台風による高潮によりまして、堤防を越流し、死傷者が出たというふうな記録もございます。また、昭和六十年にもそのような状況があっております。
 また、上からの雨の洪水でございますが、昭和三十二年には、もういつも言われていることでございますが、大洪水がございまして、死者・行方不明者五百三十九名ということでございました。また、つい三年前の平成十一年の七月にも、洪水、最大時間雨量が百一ミリ、日雨量が四百五十七ミリ、短期間に、四、五時間の間にこのような雨が降りまして、内水で浸水したところが七百を超えるような状況でございました。
 また、その年の九月に台風十八号が参りまして、ちょうどこのとき、大潮の満潮と重なり、高潮が発生をいたしております。幸いにして、諫早の場合には潮受け堤防がございましたので、その高潮は食いとめたわけでございまして、もしも潮受け堤防がなければ越流したであろうというふうに言われているわけでございます。そのときは、熊本県の不知火町では、高潮被害によりまして十二名の方が亡くなられたというような状況でございます。
 国営諫早湾干拓事業の着工でございますが、このような事情から、昭和二十年代に、防災機能の強化、農地の造成、水資源の確保を一体的に行う上で最も効率的な手段として、大規模な複式干拓が構想されました。そして、昭和三十年代の国営長崎干拓計画、昭和四十年代の長崎南部地域総合開発計画を経まして、事業規模を構想当初の三分の一に縮小いたしまして、関係漁民の苦渋の選択と御理解を得まして、防災機能の強化と優良農地の造成を目的とした国営諫早湾干拓事業として、ようやく昭和六十一年に着工したような状況でございます。
 潮受け堤防による防災効果の発揮でございますが、平成十一年の三月に、地域住民の念願であった潮受け堤防が完成をいたしました。調整池の水位がマイナス一メートルに管理されていることによりまして、先ほども申し上げましたように、台風時の高潮防止や、洪水時に潮汐の影響を受けることなくスムーズに流れ、湛水の規模や湛水時間が大幅に改善されております。
 また、慢性化している排水不良につきましても、潟土の堆積がなくなったため、以前は地域住民みずからが潟土につかりながら人力により行っておりました排水樋門前面やあるいはみお筋のしゅんせつ作業が不要となりました。潮汐の直接的な影響を受けずに常時の自然排水ができるようになるなど、防災効果が調整池周辺で着実に発揮されているわけでございまして、大変感謝をいたしております。
 今後、河川改修の進捗、排水ポンプの増強などによりまして、防災効果はさらに高まるものと考えております。
 なお、従来は本明川河口から五キロメートル上流まで潮が上がっておりましたが、これが上がってこなくなったというようなことで、長年堆積した潟土のしゅんせつを、平成十一年度に約十二億円をかけまして、二十六万立方メートル実施していただき、洪水防止に貢献をしているようなことでございます。
 次に、干拓地に寄せる期待でございますが、諫早湾干拓事業により造成される農地は、平たんかつ広大で、しかも農業用水に乏しい諫早市にとって貴重な水源が確保された高生産性農地でございまして、本市の担い手農家はもとより、湾岸地域全体の農家にとって、事業の早期完成に寄せる期待は高いものとなっております。
 諫早市を含む干拓地の周辺地域は、バレイショ、タマネギ、ニンジン、ミカンなどの有数の産地で、その品質も高く評価され、営農意欲も高く、県内農業の中核的な地域となっております。干拓地における栽培試験では、既耕地と遜色のない実績を得ていると聞いております。本事業で造成される農地は、まさにこの地域の農業の発展のかぎを握っていると言っても過言ではございません。
 なお、国におきまして設けられた事業再評価委員会の防災機能の十全な発揮、概成しつつある土地の早期の利用、環境への一層の配慮、予定された事業期間の厳守という事業見直し提言に基づく事業規模を縮小する計画変更案につきましても、工事が中断される中で、早期着工、早期完成の観点からやむなく同意をいたしたところでございます。
 次に、短期開門調査の実施と中長期開門調査の反対でございます。
 有明海のノリ不作に端を発した三県漁連の漁業者などによる工事阻止行動により、ほとんどの工事が平成十三年二月から中断し、本年一月になってようやく再開されたものの、防災効果をさらに高めるものと住民が期待をしておりました承水路掘削工事などは再開されなかったというようなことでございました。
 このような中、四月の十五日に、武部前農林水産大臣が有明海沿岸四県の関係者を招集した会議で、事業の平成十八年度完了について、福岡、佐賀、熊本の漁連の協力が得られるようになったことから、地元として苦渋の選択の末、同意をいたしまして、短期開門調査が実施されたところでございます。
 短期の調査といえども、地元としては大きな不安がございます。とても受け入れられるものではございませんでしたが、政府が平成十八年度の事業完成を約束し、三県漁連もこれを認めたので、不満は残るがやむを得ない、短期開門調査を一日でも早く終えて事業の早期完成を願うということでの決断であったわけでございます。
 しかも、短期の開門調査で塩水化した調整池の水は、まだもとの状態に戻っていません。したがって、地元としては、中長期の調査は防災や営農上予想しがたい多くの不安があり、到底受け入れられないところでございます。
 一方、三県漁連は、四月十五日の会議で、事業の平成十八年度完了と短期の開門調査の実施について理解を示しておきながら、しかも、我々地元が苦渋の決断の末、この調査に同意したにもかかわりませず、手のひらを返したような工事への妨害行動や中長期調査の実施を求めるなど、言語道断の行為を繰り返しております。あの四月十五日の合意は何だったのか。このようなことは絶対私は認められません。
 次に、有明海特措法の早期制定でございます。
 有明海の漁業不振は、地元の漁業者の方にとっては深刻な問題でございまして、これに対する水産振興策をとるべきでございます。有明海特措法の早期制定が必要と考えております。
 なお、漁業不振は複合的な原因であるというふうに考えておりまして、特にノリ不作は、気象、海象条件も影響があるわけで、潮受け堤防排水門は開門せず通常の状態で、十二年から十三年は不作でしたが、十三年から十四年にかけては近年にない大豊作でございました。諫早湾干拓があたかも原因であると言われることは心外であるというふうに思っているところでございます。
 次に、有明海の再生と地域住民の生命、暮らしを守るということでございます。
 低平地で暮らす市民は、絶えず水の脅威にさらされ、水との闘いでございます。市民の生命と財産を守るのが私の責務と考えており、これまで何よりも最優先に水対策、防災に取り組んできたところでございます。私自身、昭和三十二年の諫早の大水害では丸々一階が浸水いたしました。辛うじて一命を取りとめた経験から、特に強くそのように思っているところでございます。
 これまで、地元関係者がたび重なる難題に真摯に対応し、本事業の一日も早い完成をと事業の推進に努めてきたことを御理解いただき、平成十八年度を期限として、可能な限り前倒しで諫早湾干拓事業を推進していただきたい、このことが地域の環境や諫早湾海域の早期の安定をもたらし、有明海の再生にもつながるものと考えております。
 この思いは、諫早湾内の四漁協の皆様方も同じでございます。諫早湾干拓事業の計画どおりの完成を要請されていることを十分御理解賜りますようお願いいたします。
 最後に、日本食料の安定供給実現の観点から、この土地の有効利用が早期に実現できるよう、早期の事業完成と有明海特別措置法の早期制定をお願いいたしまして、私の意見といたします。
 ありがとうございました。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 次に、宮入参考人にお願いいたします。
宮入参考人 愛知大学の宮入でございます。
 私、愛知大学に移りましたのは昨年の四月からでございまして、それまでは長崎大学に二十二年おりました。当時は、諫早湾干拓事業の前の事業であります長崎南部総合開発計画というのがございまして、それ以来、この事業につきましては調査や研究をずっと続けてまいった者でございます。
 きょう申し上げたいと思うことは、有明海、八代海、とりわけ有明海の再生にとって何が一体必要であるか、有明海再生へのいわば基本的な視点と再生の道筋について私の意見を述べるということでございます。
 さて、有明海異変と言われ、あるいは有明海再生問題というふうなものを呼び起こしましたのは、一昨年冬の有明海のノリの大凶作でございました。これはいわば有明海異変というふうに呼ばれまして、その主因として諫早湾干拓事業が指摘されたわけであります。
 しかし、有明海異変というのは、単にノリの凶作の問題に尽きるものではありません。といいますのも、かつて宝の海というふうに呼ばれておりました有明海の漁獲高は、二十年以上も前から、徐々にではありますが、実は減り始めていたわけであります。
 とはいえ、諫早湾干拓事業の潮受け堤防着工以後のこの十年余りの漁獲量の急激的な落ち込みというふうなものは、それまでの緩やかな減少傾向とは実は異質なものであったというふうに言っていいかと思います。
 すなわち、ノリを除きます漁船漁業の漁獲高は、実は、潮受け堤防着工前の一九七二年から八九年の約二十年間の年平均ですと、約八・九万トンでございました。ところが、一九九〇年の堤防着工後は、これが約五・五万トン、すなわち、前を一〇〇としますと六割あたりのところまで実は落ち込んだわけであります。さらに、それから七年後の一九九七年でございますが、いわゆるギロチンと言われました潮どめが行われた後、二〇〇一年までは、さらに約二・六万トン、二九%へと、つまり、最近十年ほどの間に以前の三割以下へと実は激減してしまったわけであります。諫早湾の干拓事業が有明海の環境の悪化を促進させるところのいわば決定的な引き金として作用したという可能性は、当然否定できないわけであるというふうに思っております。
 もっとも、有明海の環境悪化のすべての原因が諫早湾干拓事業にあるということもないことも事実であろうというふうに思われます。指摘されておりますように、熊本新港ですとかあるいは筑後大堰の建設、あるいは三池の海底炭鉱の陥没ですとか、あるいは海砂の採取、それから農薬やノリの酸処理など、さまざまな開発行為やあるいは人為的な営みが大きなインパクトを与えてきたということもあると思います。それらの要因は確かに複合して有明海の環境に徐々に影響を与えてきたわけですが、これにいわば決定的な追い打ちをかけたのが諫早湾干拓事業であるというふうに言って差し支えないと思います。
 なぜなれば、諫早湾干拓事業は、工事と潮どめ後のいわば潮汐、潮流というふうなものを弱め、かつ広大な干潟、二千九百ヘクタールとも言われておりますが、その浄化機能を失わせる、こういうことによって有明海の環境に重大なインパクトを及ぼしたからであります。諫早湾の干拓事業、三千五百ヘクタールは山手線の内側の約六割に相当いたします。干潟の面積は山手線の内側の約四割に相当いたします。いわば、こういう広大な干潟を一気に壊したということが非常に大きなインパクトを与えたわけです。
 その被害は、しかし、最初は目に見えませんでした。なぜならば、最初は、いわば底生生物といいますか、海の底にいるところの生物たちにまずあらわれたわけです。そして、それはやがてそれを食しますところの魚介類にあらわれ、そして最後に海面近くのノリに、ノリの凶作という形で実は現象させたわけであります。
 有明海異変の本質をこのようにしてとらえますと、有明海再生への基本的な視点というふうなものは、こうした有明海の環境の悪化をもたらしてきた諫早湾干拓事業を初めとする公共事業のような開発行為、あるいは人為的な営みというふうなものに対する深い洞察と厳しい反省を根源に持つものでなければならないというふうに言っていいだろうと思います。
 有明海の異変と諫早湾干拓事業との関係につきましては、御案内の農水省のノリの第三者委員会が昨年十二月に公表いたしました見解の中で極めて有力な仮説を提示しておられます。
 そのポイントは二つあると思います。一つは、諫早湾干拓事業は非常に重要な環境要因である流動及び負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定されるという点であります。したがって、第二に、開門調査はその影響の検証に役立つと考えられるので、開門はできるだけ長く、大きくすることが望ましい。この二点であります。第一点目のところで、流動及び負荷というふうな言葉は聞きなれない言葉なのですが、流動というのは、要するに、潮汐、潮流というふうなものの減少ということであります。
 有明海は、湾奥で実は六メートルにも達する日本最大の干満差を持っております。有明海というのは、長いひょうたんのような、縦横ですと一対五ぐらいでありまして、それが早崎の瀬戸のところでわずか四・数キロメートルのところで、一カ所でしか実は外海とつながっておりません。そして、その周辺のところは、都市と農山村のところで人々の営みが行われています。したがって、自然に対する負荷は非常に高いのです。にもかかわらず、これまで赤潮等々が発生しにくかったところの非常に大きな理由は、実は、この非常に大きな干満差と、それから周辺にあります浄化機能を持つところの干潟にあった、こういうふうに言っていいと思います。
 それを実は壊したということによって、特に潮汐の減少というのは、結局のところ、海底のところまで酸素が行き渡りませんからこれが貧酸素水塊という形のことをもたらす。それが底生生物を死滅させる。底生生物の死滅は、その分解にまた酸素を要します。そして、貧酸素水塊が発生をいたしますと、窒素とか燐とかというふうなものが海底からさらに出てまいります。これは実は赤潮の原因になります。
 さらに、浄化機能の破壊というふうなものがございますが、これは当然のことながら、これまで浄化してきたところのそういった海に対するところの負荷物がきちんと浄化されないわけですから、これも赤潮の原因になります。しかも、調整池の汚れた排水がそこにつけ加わる。
 こういうふうなことでもって流動と負荷に対する非常に大きなマイナスのインパクトを与えたというのが第三者委員会の見解でございます。だからこそ開門は長く、大きくということだったんですが、実際に行われているのは、長く、大きくではなくて、短く、小さくということでしたので、これで果たして実際にそういった検討が可能なのかどうかということは非常に疑問なところでございます。
 有明海再生を引き起こしましたのが有明海の環境の異変であり、有明海の異変の根本原因というふうなものが、諫早湾干拓事業を初めとするところの公共事業などの開発行為やあるいは人為的な営みにある以上、有明海再生のためには、こうした公共事業やいわば人為的な営為にこそ真っ先にメスが入れられなければならないというのは当然であると思われます。
 言うなれば、有明海全体はかなり重篤な病に実は冒されている。ということであれば、それは根本から治癒することが大切であります。対症療法だけでは、例えば覆砂をするとかというふうなこともありますが、そういう局所的な対症療法だけでは到底今やそれに対する対応はできないというところまで来ているわけであります。
 そういたしますと、有明海再生のための立脚点と道筋という点からいいますと、私は次の三点が重要だと考えています。
 第一は、ノリの委員会の見解が想定しましたように、有明海の異変とは、有明海の生態系の構造的な変化に諫早湾干拓が追い打ちをかけ、いわば最後のとどめを刺そうとしている疑いが濃厚であるということであります。とすれば、何よりも真っ先にしなければならないことは、諫早湾干拓事業を中止するか、あるいは、少なくとも中長期の開門調査を行い、それの間は事業を凍結することが大事だということであります。
 農水省は、調査と事業とは別だというふうな言い方をしております。しかしこれは、例えて言えば、肺がんの疑いの極めて濃い患者さんに対して、検査とあなたの吸っている喫煙とは別物ですから、まあ、それがわかる間はどんどんたばこを吸いなさい、吸っても構いませんよというふうに言っているのと同じことであります。しかし、原因がわかったときに患者が死んでしまっていてはどうしようもないわけであります。今やそういった事態であると私は考えております。
 こういう最も肝心な点を欠いた有明海の再生法というふうなものであるとすれば、これは無意味、無内容と言っても過言ではないというふうに考えております。仏つくって魂入らずというふうな言葉もありますが、法案はつくったが魂が入っていないということは実は非常に重要な点であります。これが第一の点であります。
 第二に、こういう点から申しますと、単に諫早の干拓事業だけではなしに、有明海の環境の悪化をもたらす、将来にわたる他の埋め立てや開発などに対する規制や禁止など、こういったものも必要であるというふうに言っていいと思います。
 これについては既に先行事例があります、いわゆる瀬戸内法でございますが。瀬戸内法の中には、埋め立て等々に対するところの緩い規制はございます。しかし、この規制が緩いために、実際にはなかなか埋め立てはとまらず、開発がとまらないわけです。学ぶならばそういう教訓にこそ学んで、新しくつくるところの有明海の再生法はそういったものを十分取り入れるべきであるというふうに私は考えております。
 同時に、ノリの委員会が指摘しておりますように、既設の筑後大堰とかあるいは熊本新港などのいわばマイナスのストック要因というふうなものに対する対策も再生事業の中にきちんと位置づける。つまり、過去の負の遺産を取り除くというふうなことも含めて、そういったものを位置づけるということが大事ではないか。これが二点目でございます。
 第三点目に、その上で、漁港、漁場の整備やあるいは下水道整備など、これはそれ自身として必要なことであるかもしれませんが、そういう言うなれば従来型の公共事業、これに補助率をちょっとばかりかさ上げしてそれを行わせるというふうなことではなくて、有明海全体の環境保全と環境の再生のために、いわば川の上流から、そして中流、そして河口、さらには海域に至るところの総合的な水循環と水系一貫の管理システムを構築して、干潟や藻場を再生し、あるいは森林をきちんと保全していく。そしてそれを、住民の参加や情報の公開というふうなことを大切にしながら行っていくということが、まさに環境の世紀である二十一世紀に向けて展開すべきいわば有明海の再生法になるというふうに考えております。
 きょう申し上げたかったことは、本質的な対策を無視ないし軽視したところの法案というふうなものは、有明海の本当の意味での再生に役立たないだけではなくて、問題のいわば本質をあいまいにして、真に必要な対策をおくらせるというふうな懸念が強いということであります。
 私は、せっかく有明海再生法というふうなものをつくるのであれば、本当の意味で、将来世代にわたって、私たちの今の世代が自信を持って、これだったら有明海は本当に再生できるんです、こういうふうなものにしていただきたいというふうに考えているわけでございます。
 一応、私の方の陳述はこれにて終わりにいたします。ありがとうございました。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。
北村(誠)委員 自由民主党の北村誠吾でございます。
 参考人の皆様方には、御多忙のところ、遠路お運びをいただきまして、ありがとうございます。限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきます。
 まず、中村参考人にお尋ねをさせていただきますが、先ほど、時間が短くて、参考人の所見が十分に述べていただけなかったのではないかなという私なりの感じを受けたわけでありますけれども、特に、参考人がおっしゃられた中で、自然の浄化力を高める、このための投資が極めて少ないという御発言がございました。
 その自然の浄化力を高めていく、このために、具体的な方策として、貧酸素水塊の発生しやすい海域に、密度流作澪工という工法あるいは湧昇流工というお話もいただきました。私、全く素人でありまして、この密度流作澪ということはどういったことであるのか、また、自然浄化力を高めていくために、さらに具体的な対策というものにつきまして、先生のお立場からいま少しお話をいただければと思うのでありますが、よろしくお願いします。
中村参考人 環境をきれいにする、浄化力を増大するというのは、いろいろな工夫があろうかと思いますが、今申し上げました密度流作澪工というのは、普通干潟ではみおがありまして、作澪という形で行われております。それに対して、深い海の中では、そういう表層流じゃなくて、下の方に密度の重い、ここでどのくらいの成層というか、あるかわかりませんが、密度流というのは、上の水、上層の水と下層の水との間にある重さの違いによって発生する重力を利用するわけでございまして、密度の差ですから、重力は千分の一くらいの大きさでございますが、ただ、それでも緩やかに流すことはできるわけでございまして、下の方の水をよどませない工法でございます。
 それから、湧昇流工というのは、現在水産庁で開発されつつあるわけでございますが、これは流速が必要でございますので、どこでもというわけにはまいりません。環境に応じてということになろうかと思います。
 それから、潮汐という形で、往復運動、水が上げ潮で奥に入り、下げ潮で出るというような往復潮流の場に、残渣流という専門的な言葉がございますが、上げ潮と下げ潮の流れの履歴を変える、そういった工法もございます。
 いろいろ海況に応じて工夫があろうかと思いますので、そういった面での投資ということが今は必要なのではなかろうか、むしろ、緊急の対策としてはそちらに焦点が置かれるべきじゃないかと考えております。
 以上です。
北村(誠)委員 ありがとうございます。
 中村参考人の御発言は、ともかくこの再生法によって、具体的に、できることから自然浄化力を高め、そして有明海全体を眺めて再生を図っていくというこの法律に期待するという御発言であったかと思い、大変心強く思っております。ありがとうございました。
 それから、森参考人にお尋ねをさせていただきますが、森参考人の御発言を承りまして、いろいろ経過、事情あるけれども、ともかく有明海全体がよくなるというふうなことで、この法律の成立ということを喜んでいるというふうに冒頭お聞きしたように思います。
 しかも、諫早湾干拓事業が中止でなく、進められる中で、大きく考えて、水の流れをとめない、諫早に注ぐ数多くの河川の機能、役割というものを大事に認識をして、そしてそれをうまく調整をしていってこの諫早湾干拓事業を推進し、さらに漁場の回復というものを図る。
 そして、漁民の生活は今後漁民自身の営みによって成り立つ。決して、いろいろな意味でお金をつぎ込む。あるいは、漁業、漁民の本来の営みによって稼ぎ出される、みずから自立して、漁業、操業あるいは就労によって稼がれる働きによってみずから漁民の生計を立てていくことができる、そういう諫早湾干拓事業になることを望む、そしてそのためのこの法律の役割と目的、この法律が成立することを望むというふうにお聞きしたわけでありますが、大体そのように理解して誤りではありませんか。よろしゅうございますか。
森参考人 多少は皮肉が入っております。あれだけ壊れたわけですから、お金をかけて再生、形を変えるにはお金がかかりますから、当然そういう法のもとに、負担を軽くしてやらないで再生することはないだろう。
 それと、水の流れといいますのは、ごく本来の自然の姿に戻すという形がない限り、人間で、今先生の話にもありますように、作澪でみおをつくるとかいうことをしましても、やはり本来の有明海の潮流、潮汐に合った海底の地形があります。やはり本明川の流れに沿った、そういう、あそこにあるそれぞれの干潟の機能を生かしたものでない限り、お金を湯水のごとく使う事業になりかねない。
 私が事業を継続してほしいというのは、これは国としてできるかどうかわかりませんけれども、中止されるということは、私たちにとっては、あの堤防がそのまま横たわるのか、では有明海はもう死んでしまうんだということの認識の上で、続けてもらいたいというのが、制度としてできるかできないかわかりませんけれども、堤防を切ってつくりかえしていただきたい。本明川の流れに沿った干潟も、多少の干潟、全部じゃないにしても、その機能のない限り有明海は戻らない。
 私は、この法律が成立したことを、そういうお金もなければ再生できないわけですから、必要ですから、それは喜んでおります。しかし、基本的なものは、半分以上は皮肉で言っているわけです。
 私は漁民として、こういう状態だということを、有明海漁民としてそこら辺に座り込みまして少々言いましたけれども、かといって、今この法案の中に、諫早湾の堤防ができたことにどうだという話を挟む余地はない。ただ、もう法案は成立させられる。だったら、それは確かにお金が必要ですから、法案もできたことは素直に喜びます。しかし、基本的には、堤防ある限り有明海はこのまま死んでいく海と、私は海底から知る専門の人間として、このままでは有明海に限らず橘湾まで死んでいく。漁業者の実態がどうあるかということを、本当に皆さんの中に映っているんだろうか。
 私は、確かに事業をたくさん大きくしていましたものですから、きのうの時点までは破産宣告、自己破産の受理をしてもらった人間だったわけです。それぐらい小長井漁協そのものを、諫早湾の漁民の生活のためと市長も言われます。しかし、市長さんは、一市四町、五町、六町の推進委員の委員ですけれども、漁業者が毎朝漁業として船で出ている姿が諫早湾では見えないんですよ。
 私は、穏やかに、今まで闘争みたいに大声を張り上げてきた時代はもう終わりました。あきらめました。しかし、実態としては、諫早湾の漁民に限りません。有明海全体の漁民は、ノリは別です、ノリは私たちから見れば栽培ですから、農耕みたいなものですよ。海底にいるのは、有明海にしかいない貝類がたくさんいます。それこそわき出るぐらいの量がいました。
 この諫早湾が主因じゃない、これが原因じゃないと言いますけれども、それぞれ、新港も上がります。大堰も上がります。それは、すべて行政が、これをつくったって大して影響はないと。熊本の新港だってそうですよ。大牟田の埋め立てだってそうです。筑後川の大堰だって、多少の影響だ、大して有明海に影響はないと。新港によって日本一のアサリの産地は、熊本はなくなりました。大堰によって、柳川地区はアサリの稚貝の物すごく発生するところだったんです。それは、名古屋、千葉方面までの種苗のすべてを賄っておりました。それでもはくところがなくて、缶詰にやっておりました。それぞれの行政が、その地域、その県によって、これをやりたい、しかし、漁業には大して影響はないだろうということでやられたことが、すべて、今にしてみれば、諫干じゃないと。新港もあるじゃないか、大堰もあるじゃないかということは、あれも影響しただろう、これも影響しただろうと。
 もちろん、私が一番責めたいのは、海を守らなければいかぬ、海の恩恵を受ける人間が海をおのずと汚す酸を使っていることに対しては、私はひどい憤りを持っています。私は貝類業者ですから。海を守らなければいかぬ漁業者が、一番の自然保護団体でなければいけない漁業者が、自分たちから薬品を使う。
 これはノリに限りませんよ。フグだって、タイだって、狂牛病と一緒で、いつか、こういう魚はこういう薬品を使っているんだとぽんと新聞に載せられたら、一遍に全部、日本の漁業というのは養殖漁業がほとんどなんです、今。自然にとってくるものなんというのは、浅瀬もなくなった、流れもなくなった、埋め立てられたということで、本当の狩猟民族みたいな漁業そのものはもう物すごく廃れているんです。
 諫早湾、橘湾、八代海、これから二年ぐらいの間に漁船漁業というのは、もう立派な港ができています。しかし、三年も四年も五年も扱わないロープで港につながれている船を見て回ってください。立派な港の割には、全く動かなくなった漁船がどれだけふえているかということを知っていただきたい。
 私は、この法案が成立することについて喜ばないわけではございません。しかし、それでは救えない、救われないということを知っていただき、本明川の流れを返してもらいたい。本明なくして有明なしということを、それだけの多くの川をつぶした大堰であると。あの大堰がある限り、これからの有明海の漁民は、ますます絶滅危惧種といいますか、そういうことの認識に立っていただきたいと思います。
北村(誠)委員 ありがとうございました。
 確かに、漁民の方々の苦渋というのは大変だと私も見聞しております。そういう中で、森元組合長さんも、若いときからずっと漁協の経営、運営、組合員とともに行動してこられて、大変な御苦労があったというふうに思います。心からおねぎらいを申し上げます。
 さて、吉次参考人にお尋ねをいたします。時間が余りございませんので、端的にお答えをいただければと思います。
 干拓事業が防災効果がないという意見を述べる方があります。さて、地域の住民の干拓事業についての、先ほど御説明もありましたけれども、さらに生の声として市長から住民を代表して、どのように評価をされ、どのような効果があったかということについてお答えをいただきたいと思います。
吉次参考人 潮受け堤防の防災効果でございますが、それは、先ほども意見を述べました中で、平成十一年の大雨のとき、それから十一年の九月の台風ということを申し上げました。特に、十一年の七月のときには大雨が降りました。一時的には河川の水位が高くなりますので、そのときには樋門を閉めまして、中の内水が湛水するわけでございます。しかし、この調整池の中はマイナス一メーターを保っておりますので、流下がずっと早くこの調整池の中に入っていくわけでございます。そのときは、恐らく調整池のマイナス一が標高ゼロメーターぐらいまでにはなったと思いますが。
 そういったことで、湛水はその後流下してしまいますので、湛水は、ポンプとそしてまた自然流下というようなことで、直ちに、一日ぐらいの間に湛水はなくなったと。これが従来でございますれば、一日に二回満潮が参ります。そういったことから、どうしても湛水の流下ができない、スムーズにできないというようなことで、従来でございますれば五日も一週間もかかったというようなこともございました。
 そういったことで、私は、潮受け堤防によりまして背後地の水処理というものが非常にスムーズになった。従来は水役というのがおりまして、大変苦労をいたしていたわけでございますが、そういった状況でございました。私は、この潮受け堤防は十分に本当に地域の住民としては助かっているということを申し上げたいと思います。
 以上でございます。
北村(誠)委員 さらに、でき上がる干拓地のことでありますけれども、農業全般が、農業者が減少する、あるいは高齢化が進んでおるというふうな中で、場所によっては耕作放棄地がふえるなどで、これ以上農地あるいは干拓などをやる必要があるのかというふうな意見を述べられる方もあります。しかし、諫早地域、先ほどおっしゃられましたとおり、大変長崎県の中でも農業が盛んでありまして、島原半島を含めて極めて長崎県下でも有数の農業地帯であります。
 そういう地域でありますので、干拓地に対する農業関係の皆さん方の入植とかあるいは増反のためにこの干拓地を役立てたいとか、そういうふうな意向あるいは傾向というものについて、市長としてどのように把握しておられますか。聞かせていただきたいと思います。
吉次参考人 長崎県は急峻な段々畑といいますか、そういったものが多いわけでございまして、平たんな農地というのは諫早平野のみと言っても過言ではございません。
 そういった中で、私どもは、長崎県での優良な農業用地でございまして、諫早、島原半島、大変農業意欲が高いわけでございまして、実は、この干拓地ができ上がりますと、それに対しまして意欲がある人が、農業、あるいは農業法人、あるいは企業の方からもある程度問い合わせがあるというふうなことも聞いておりまして、恐らく入植あるいは増反というようなことで、これは十分地域の農業のために役立つであろうというふうに私は考えているところでございます。
 以上でございます。
北村(誠)委員 宮入参考人に最後にお尋ねをしたいんですが、参考人の御発言は、基本的に私は非常に大切なことであるというふうに思います、有明海全体を再生していくということのためには。
 私どもは、この立法を提案、提起するに当たって、やはり参考人がおっしゃられるような方向に、着実にできることから一歩ずつ進めていくんだというふうなことでこの法案を提案したという気持ちでございますが、参考人におかれては、この法案、法律の案をごらんになったときに、そのようにやはり見受けられないというふうなことでございましょうか、いかがでございますか。
宮入参考人 先ほど申し上げたように、せっかくつくるのであれば、有明海を再生する、八代海を再生するということであれば、それはやはり根本から直すことが重要なんですね。既に有明海は、ちょっと風邪を引いたという程度ではないわけであります。かなり、相当重篤な患者だというふうに言っていいだろうと思います。これは、既にノリの委員会でもそうですし、それからいろいろな大学等々の調査でもそういうふうなことは既に出ております。
 そういった、いわば重篤なところである以上、これはやはり根本から直していく。せっかく有明海再生法という形であるとするならば、そこのところは基本的に一番重要なところですから、肝心かなめのところが実はないのではないか。局所的あるいは部分的な対症療法という点であるわけで、私とすれば、その点が法案からは到底読み取れなかったということでございます。
北村(誠)委員 参考人の皆さん、どうもありがとうございました。終わります。
小平委員長 次に、佐藤謙一郎君。
佐藤(謙)委員 民主党・無所属クラブの佐藤謙一郎でございます。
 きょうは、お忙しいところを参考人の皆様方お越しをいただいて、貴重な御意見をちょうだいしたことを心から御礼申し上げます。
 私、まず宮入参考人からお願いをしたいと思うのです。
 私ども民主党案、そして与党案、決定的な違いは、先ほどもお話がありましたけれども、諫早干拓の工事と調査とを別物と考えるか、それとも一体として考えるか、これが決定的な違いだろうと思います。そこから私たちは諫早干拓工事の中止、停止ということを盛り込んだ法律を出したわけですけれども、残念ながら、与党案、今までと全く同じ補助金のばらまき、かさ上げによって、補助金をつけることによってとにかく当座をしのごう、そういう法律が今できようとしているわけであります。有明海特需でまたもうけようとしているのではないか、そういう外野からも声も聞こえるわけですけれども。
 これからいろいろと公共事業の問題、私、実はきのう国土交通委員会でも公共事業の問題について一時間ほど質問をしたわけですけれども、宮入先生は費用対効果の日本の権威でいらっしゃるわけですけれども、我々、最初一・〇三から始まって、一・〇一、そして今度は〇・八三、どう考えても、費用対効果から考えれば、こんなばかな工事がそのまま継続するはずがない、こう思われるわけですけれども、農水省は、この第二次変更計画の〇・八三については、土地改良法に、別に法律要件になっていないからという言い方で逃れようとしているわけであります。
 また、費用対効果をやらなくてもよいと書いてあるわけでもないわけですから、もしも国民の疑念を晴らそうと思えば、費用対効果ということを非常に大きなテーマにしていかなければいけない。そしてまた、同時に、これから起こるであろう公共事業のことを考えますと、先生にぜひともその辺の費用対効果についての御見解をいただければと思います。
宮入参考人 先ほどは費用対効果のお話はいたしませんでしたが、費用対効果というふうなものは、当然、公共事業を考える上では大変重要なポイントの一つであります。
 公共事業というふうなものは、言うなれば、民間の企業でありますと、利益を上げるあるいは付加価値を高める、このためにどのくらいのコストがかかるかということははっきり出てまいりますが、公共事業の場合にはそういうわけにはまいりません。事業のいわば効果というふうな形のものというのは簡単に金銭的にあらわすわけにはいかない。
 しかも、そういったものを、公共事業をやるというふうな形のことは、つまり公共部門が事業をやるというのは、いわば外部効果といいますか、内部だけに効果があるのじゃなしに、そういったものは、その周辺ないしは日本全体の人々にプラスを及ぼすという意味から、そういった事業をやるわけであります。
 実は、費用の方も、ただ単に事業費だけではなくて、その事業に伴うところのいわばマイナスの部分、社会的費用とか社会的損失というふうなものがあります。したがって、費用対効果というふうなものは、本来であれば、その費用の中に社会的な費用というふうなものあるいは社会的な損失を入れ込まなければいけません。それから、効果の方にもそういったものを入れ込むということが一つのポイントになるわけであります。そういうふうにして、その事業というふうなものが本当に効率的なものであるかどうか、こういったことをいわば判断するための一つの手法であるということであるわけです。
 今御質問の件でございますが、農水省のいわゆる土地改良法には、当初計画の場合には、法制のいわば要件といたしまして、費用対効果という点で、得られるところの効果が費用というふうなものを上回っていなければいけないという要件がございます。ただし、変更計画の中には、八十七条の三でございましたか、そういったところの要件は必ずしも書かれてはおりませんが、しかし、変更計画の場合でも、費用対効果については、きちんとそれは出すということになっております。
 それはなぜかといいますと、農水省の場合には、それは法定の要件でないから、いわば法律違反をやっていないんだから、仮にそれが法定要件の一・〇を下回っても構わないんだというふうな御見解のように承っておりますが、私は、土地改良法はその点では明らかに不備であるというふうに実は考えております。たとえそれが不備であるということを一応置いておくにしても、一・〇を割るということについては、実は重大な問題を含んでいるというふうに私は考えております。
 二点あると思います。
 一つは、公共事業の財源は、あくまでも最後は、最初は公債を起こしたりして起債でやるかもしれませんが、最終的には実は国民の税金でございます。ということになれば、納税者である国民に対してきちんとその事業が効率的なものであるかというふうな形のことについては説明がつくかどうかという、いわゆるアカウンタビリティーの問題であります。それが説明がつくようなものであるということが当然のことながら望ましいということでございますが、そういった点は、やはりきちんと、特に昨今のような、国も地方も財政の危機といいますか、財政については非常にしんどい状況にあるところにおいては、余計そういったことは必要であるというのが第一点であります。
 それから第二点目は、変更計画というふうなものは、重大な、特に農業におけるところの環境の変化とか、そういったものを踏まえて実は計画が変更されるわけであります。ということになりますれば、当然のことながら、それに伴うところの費用対効果というふうなものは変化するに違いないわけであります。そういうふうなことをきちんと説明できてからこそ、いわば真の公共性を持つところの事業である、公共事業である、こういうふうに言えるんだというふうに思います。
 とりわけ、農水省の費用対効果の場合には、当初計画においてさえも一・〇三という、先ほどのような数字でございました。実は私は、これを検討いたしました。しかし、では本当に一・〇三だろうかという点でいいますと、費用は事業費だけでございます。先ほど申し上げました社会的費用などというものは、例えば干潟の浄化機能をつぶしてしまったというふうなものは入っておりません。効果の方には、結構、考えられるいろいろな効果というのを実は挙げているわけです。費用を小さくして効果を大きくすれば、全体としての投資効率が上がるのは当たり前なのであります。しかし、それでも一・〇三であります。しかも、その費用対効果は、法律には書いてあるのですが、これまでは農水省の中で、いわばひそかにというのかわかりませんが、行われていたわけで、実際にどういう仕組みでどうなされていたのかということは、実は情報の公開が十分にはなされていませんでした。
 私は教師だから言うのではありませんが、あたかも学生が自分で試験問題をつくって、自分で解いて、自分で採点して、合格した合格したと言っているようなものだというふうに申し上げたのですが、それでも、百点を最低点のところで、一・〇三というのは百三点しかとれていない、こういうことであります。ところが、変更計画になったら、これが、百点は最低点で、百一点しかとれていない。今度は、第二次の変更計画では、百点は最低点で、ついに八十三点という、いわば欠点というか赤点になってしまうということをみずから認めざるを得ないような状況になってしまっている。そういうふうないわばすれすれのものであるとすれば、そういった形のものというのは国民には到底説明できない。
 それから、今の費用対効果も、もっと客観的に、農水省の内部で、行政の内部で行うのじゃなしに、もっときちんとオープンにして、そういったものは今後行われていくということが望ましいのではないかというふうに思っております。
 以上でございます。
佐藤(謙)委員 土地改良法の不備、これは我々立法の側に突きつけられた、そんな思いがいたしますし、費用対効果の問題はこれから環境というキーワードをどういうふうに入れていったらいいか、きのうの国土交通省でも、実は入れられていないんだ、そういう説明がありましたけれども、我々議会人がしっかりと受けとめなければいけないものだと考えます。
 次に、吉次参考人に二点、御質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど吉次参考人は、ノリの第三者委員会がいろいろと開門調査を、第一段階としては二カ月、そしてその後半年程度、さらには数年の開門調査が望まれる、そうした報告があったにもかかわらず、四月の十五日に農水省の別館で秘密会議が開かれ、大臣と四県の関係者がそれをほごにするような会議を行ったわけであります。先ほど市長は、これを苦渋の選択というふうに言われておりますし、その合意を破った三県漁連に対して激しい憤りを感じると言われました。
 この諫早干拓の問題は、まさに国民に対するアカウンタビリティー、本当に説明者責任が果たされているか、果たされていないからいろいろな誤解が生じて事の本質がわきに追いやられてしまうというふうに私は考えているわけですけれども。
 第三者委員会は公的な一つの判断、それに対して、夜の十時ごろに始まった秘密会議で決まったことが公的に諮問されて返ってきた答えに対してインフォーマルな形で打ち返すというやり方が民主主義の手続として本当に正しいことなのかどうか、全く我々国民には見えないところで決められたことに三漁連が反対の意思表示をしたことが本当に怒るべきことなのかどうか、その辺が一点。
 それからもう一つ、これは大変つらい話でありますけれども、諫早市長は地元で諫早湾干拓受注企業から千六百四十五万円の献金を受けられていた、そういうような報道がありましたけれども、それに対して、法的に適正に処理されているから別にやましいことはないというような話がありました。
 一方で、先ほど、法律に決まっていないからやっていいという、やってはいけないという議論が宮入先生からありましたけれども、実は、この諫早干拓受注企業に農水省からコンサルタント等に百八十三人の天下りあるいは数十人のゼネコンに対する天下りがありましたけれども、これも今法的に別に定めがあるわけでないわけですが、この天下りについても好ましいことというふうにお考えかどうか。その二点についてお聞かせください。
吉次参考人 まず最初に、中長期の調査の問題でございます。
 確かに、一応この第三者委員会では短期調査あるいは中長期調査の件もうたってあります。ただ、本来でございますれば十二年度で終わっているわけでございます。それが延び延びになりまして十八年度完成というようなことでございます。私どもは、いち早く潮受け堤防、諫早干拓が完成することを願っているわけでございまして、この調整池の中は淡水化して、その水を農業用水として使っていこうというようなことでございます。
 たとえ開門調査であろうとも、今現在でも塩分がまだ残っているというようなことでございまして、雨季の問題、台風の問題あるいは外のノリ漁業の作付の時期の問題とか、いろいろな絡みがあるわけでございまして、私どもは短期調査でさえも苦渋の選択としてのんだわけでございまして、到底この中長期につきましてはのむことができない。また、そういったことで、四月の十五日に農林水産大臣のところで四県の漁連が集まり、また各県の代表が集まってそのようなことで決まったわけでございます。
 それから、干拓業者からの献金の問題でございますが、これは政治資金規正法に基づいてきちっと私は県の方に届けをいたしているわけでございまして、諫早市の企業の方々から、私の趣旨に賛同していただいて寄附をいただいたものでございます。そういったことで、私は特に諫早湾干拓の企業からいただいているということではなくて、諫早市内の企業の方々からいただいているわけでございまして、たまたまそういった方々が諫早干拓に従事しておられるのではなかろうかというふうに思っているわけでございます。
 後の部分については、私の権限外ではなかろうかというふうに思っております。
佐藤(謙)委員 ありがとうございました。
 時間がないので、次に森参考人に御質問させていただきます。
 本当に苦渋の参考人のお言葉だろうと私は考えました。ただ一つだけ、参考人が言われていることというのは非常に皮肉を込めた逆説的な言い方でありますから、多くの人に誤解を与えるようなことになりはしないかということを僕は懸念をしています。
 森さんがこの運動を通じてやられてきたことは、本当に全人生をかけてやられてきたに違いない。長良川河口堰の赤須賀漁協と同じように、四面楚歌になりながらも小長井漁協の最後の孤塁を守って、御自身の漁業に対する情熱をぶつけてこられる。周りはどんどん攻め落とされて、そして最後の最後になった百人の漁業組合の人たちと本当に正義を貫いても自分たちの思いというものが達成できるかどうかと突きつけられたときに、私は森さんにある種の揺らぎ、責任感の重さがゆえの揺らぎがあったと思います。しかし、それから大変御苦労されながら、市民と漁民とのネットワークをつくってこられる、あるいは自然保護団体との連携というものに力を込めてこられた。
 まさに対症療法で何もできないということは、先ほど小長井漁協にも十億円近いお金が投入されているけれども、それは日々の生活のために費消されるだけで、本当の意味の漁師は漁で飯を食っていきたいんだ、そういうことにはなっていないんだという思い、今回の参考人の御意見ではそうした思いが今度の法案成立を喜んでいるというところで矮小化され、また誤解をされてしまうんじゃないかと思います。
 まだこの法律はでき上がっていません。これから真剣な議論があって、どうなっていくか、参考人の御意見によってまた大きな展開があるかもしれないわけですから、その辺は、もう決まっちゃったから、それじゃやってみろ、補助金のかさ上げで多少漁民の人たちもいい思いをする人たちが出るかもしれない、でもそんなことで本当に物の本質の解決になるのかというのが参考人の本当の気持ちだと私は思いますので、その辺の思いをもう一度お聞かせいただければと思います。
森参考人 場所もわきまえず、議員から御指摘のとおり、多少ひねくれたとらえ方で発言をいたしました。私は、小さい、百人の漁協でございますけれども、特対事業で一割負担によって漁業振興の策ができると、干拓事業が始まりましてから三年ほどは何の事業もしなかったわけです。なぜなら、工事が始まってどんどん環境が悪化していくわけですけれども、何をやるにも何をやったらいいかわからないということで、四年ぐらい何もしなかったと思います。その間、タイラギとか、いろいろな死滅する、壊滅する状態が起きましたものですから、その当時は海上封鎖、輸送をとめるとかそういうことに明け暮れまして、振興策を何かしようなんて考える向きはございませんでした。
 もちろん、私たちは諫早湾で一回も、まだそれまでは補助事業ということをした経験がありませんでした。というのは、補助金に頼ることはおのずと自分たちの力を弱めるということで、すべて自分たちのことでやってきた経緯がありまして、それと逆に、補助事業したくても、どうせここは干拓事業でつぶれるんだからお金を使うわけにいかないということで、諫早は補助事業の対象外になっておりました。
 ただ、着工された後に、これまで何にもやっていないから、特別に一割五分負担の受益者負担によって事業ができる、これが特別対策事業ですけれども、当初は四漁協で八年八億のそういう事業が計画されておりました。
 しかし、四年間ぐらいは全然使わなかったわけですけれども、八年の年月が迫りまして、それから、ちょっと無理があるんじゃないかと思うのが、砂をまいて、種苗を個人的な養殖場に放流をするということは制度的にちょっといけないんじゃないかと思いながらも、漁協の放流ということで、毎年ほぼ一億近くぐらいずつ、私、単協ではその事業に費やしてきたわけですけれども、ところが、沖合ではタイラギが死滅する、もうことしで十年操業をやめておりますけれども。その後は、養殖業のアサリに大変な被害が及びまして、その事業によって種苗を放流しようと。
 それと、いろいろなヘドロがたまるという傾向もありましたので、砂をまこうということで、今現在、有明海の再生に候補として挙がっている耕うん事業、また覆砂事業、それと放流事業ですね、その事業を十年ぐらいやっております。
 その間に使われたお金は、私、単協だけで、百人の人間の単協だけでもう既に十億に近い金額を使っております。これはもう自分の前の海だけの環境を保全するという事業でございます。もちろん、その一部、何億かは、諫早湾の真ん中にタイラギあたりの育成場ということで砂をまいております。
 確かに種苗は、タイラギは発生はします。しかし、海底をはいずり回っているのは、潮流に合わせて、酸素のない水が海底を、十センチ、十五センチの範囲のところをずうっとはいずり回って、満ち潮で上方に上り、引き潮で下がってくる、それがずうっと満ち引きながら佐賀県の方に移動していくわけです、底の方だけですね。
 もちろん上では濁りとしてわかっていますけれども、海の底では酸素のない、これは目に見えないんですね。濁りが佐賀県の方に、今までは逆に佐賀県の方から来ていたんですけれども、水門が、ギロチンが落ちましてから佐賀県の方に流れていくようになりましたので、濁った水が佐賀県の方に、鹿島の沖の方に流れていくことは目に見えます。
 しかし、海底の一番生物の生きられるか生きられないかというのは、海底十センチ、十五センチのところなんですね。そこには酸素がほとんどない。これが満ち潮、下げ潮でずっと何回か海岸に打ち寄せながら、沖合に出ながら、また海岸に打ち上げながらということで、有明海、諫早湾から海底をずうっとはいずり回ってなめ尽くしていくのが佐賀県沖合に行く行為でございます。
 一番下に、本来、土の中に生物がいて、それの上に貝類なり魚類が、エビ類が育つ、その上にまた魚が、中層の魚ということで、ノリは一番海面ですから、プランクトンだけの問題、栄養塩だけの問題で左右されますけれども、海底というのは、生物ですから、酸素のない水に物が生きていけるということは、それが、調査等をやりますと、そのときはかったら、その場所に酸素がない水がないわけですね、酸素は十分あると。あるいは、ずっと移動して回っているわけですので。
 私は、サリンの、ああいう有毒のガス、最近よく言われますガスだって、どこかでガスを発生させたら、それがビルの谷間を漂っていったことによってぼろぼろっと人間が死んだ。恐らくこれは、全く、常に安定することなく移動して回っているわけですから、発生源はちゃんとしております。もちろん、海底に生物がいないことによってそこのバランスが壊れて、嫌気性細菌しかすめない、酸素をとる、消費してしまうということからもありますけれども。
 諫早湾に、堤防工事に使った採砂地があります。七メートル、八メートル掘って、大体三百万立米ぐらい掘ってあるわけですけれども、そこはやはり、全く水の動かない海底層になりまして、それがたまたま、ある時期になりますとぞろっと出ていくという行為が、常にそこからガスみたいにわいて、酸素のない水が移動していく。これが全体、諫早湾、小長井地域から佐賀県にかけてずっと、逆に、時計の方向回りに今移動しているということでございますので。
 最初、議員から言われましたように、再生法については、諫早湾の問題なくして、再生法という金額を積み重ねることについて、正直言って、これで漁業者が救われるということについては、先ほどは皮肉的な問題でございまして、本来、こういう事業だけで、行政に負担をかけるだけの、お金の問題だけで解決できないということだけは、できたことによって喜びはありますけれども、実際、漁業者が救われるものではないということはここで訂正させていただきたいと思います。
佐藤(謙)委員 終わります。
小平委員長 次に、江田康幸君。
江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、参考人の方々、御苦労さまでございます。
 この有明海、これは、きのうも視察に行ってまいりましたけれども、広大な干潟を有しておりまして、タイラギ、アサリ、アゲマキ、地域特有の魚介類が生息する豊かな海でございます。我が国にとりましても貴重な海域でございます。しかし、今議論されておりますように、平成十二年十二月に、ノリ養殖業、かつてない不作に見舞われました。そして、アサリ、タイラギなどの魚介類も約三十年にわたって漁獲量の減少が続いている、そういう環境の悪化が懸念されているところでございます。
 このような有明海及び八代海を豊かな海として再生するために、自民党、公明党、保守党、与党三党で有明海、八代海再生特別措置法案を前国会に提出しまして、その成立を期してきたところでございます。今は、民主党案そして修正案も提出されて、活発な議論が始まろうとしているところでございます。
 本日は、参考人の先生方に御意見をちょうだいして、今後の国会審議に役立てたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
    〔委員長退席、楢崎委員長代理着席〕
 幾つか御質問をさせていただきます。
 有明海を再生する、これが我々の共通の心でございます。そのためには、環境悪化の原因を究明して、総合的な保全、改善を進めることが重要なことは言うまでもありません。この原因究明につきましては、当初より、我が公明党、私どもは、あらゆる可能性を排除せずに、予断を交えずに、徹底して調査すべきとの立場で対応をしてまいりました。その一つに、原因の一つということで諫早湾干拓の影響が挙げられております。
 しかし、その一方では、次のような見解もまたあるのが事実でございます。すなわち、一つは、環境悪化は総合的な原因である可能性が大きく、干拓があたかも原因であるかのごとく言われるのは心外であるという御意見もあります。また、水産資源の減少等は諫早湾干拓事業実施以前から見られる長期的な傾向であり、諫早湾干拓事業が主因であるとの予断に基づく考えは、本当の原因や有効な対策の検討を困難にしてしまうのではないかという意見もございます。
 さらには、タイラギ等二枚貝の水揚げ高の減少傾向は、干拓開始前の一九八〇年代から見られる現象である。また、潮受け堤防工事が進みました平成五年から九年、タイラギの水揚げ高は八百十四トンから三千四百三十二トンと一たん増加しており、干拓の進捗と一致していない、こういうデータもある。
 などなどでございますが、一方では、諫早湾干拓はワン・オブ・ゼムであっても、ほかの総合的な要因、複合的な要因も十分に考えていかなければならないのではないかという御意見がございます。
 そこで、有明海の環境悪化の原因についてどう考えておられるか、また干拓以外の要因についてどう考えておられるか。これを吉次参考人と森参考人にお伺いできればと思いますが、よろしくお願いします。
吉次参考人 この有明海の全体的な汚染と申しますかそういったものは、私も科学者ではございませんが、総合的ないろいろな要因があるのではないかというふうに私も思っております。
 ですから、昨年の一月からノリが不作であるというようなことで、ノリだけとらえてみますと、確かに十二年度は不作でございました。二十五年間の中で最低でございました。しかしながら、十三年は二十五年間で最高の枚数がとれ、また、とれ高におきましても十年と比べて一・八倍ぐらいの金額のとれ高がとれたわけでございます。
 私は、そういったことで、当初あたかも諫早湾干拓が原因であるというような話がございましたが、昨年、第三者委員会の三月に私も出席いたしまして、今直ちに開門ではなくて、今の状態でしばらくそのままにしてやってくださいというようなことで、その結果はそういったことで、ノリは豊作であったわけでございます。そういったことから、ノリの問題につきましては、やはりこれは気象条件と海象条件とか、いろいろな要因があろうかと思います。
 しかし一方、今お話ございましたように、魚介類だとか魚類、そういったものがその前からだんだんとれ高が減ってきたということは、複合的に有明海の中でいろいろな要因で汚染されてきたのではないか。
 例えば、地球温暖化だとか、魚、エイですか、そういったものが入ってきておるので、黒潮が一部入ってきておるのではないかとか、あるいはまた普賢岳の火砕流だとか、また公共事業が、熊本新港それから三池の炭鉱の陥没、あるいはまた筑後川の大堰の問題とか、いろいろなものが言われている。またそれに、家庭雑排水、そういったダイオキシンの問題とかホルモンの問題とか、いろいろな問題があろうかと思いますので、実は、私はこういった自然界の調査というのは、一年二年では、短期ではなかなか難しい。自然界のことでございますから、極端に言いますれば数十年、もう本当に十年も二十年もかかるのではないかな。これは科学者ではございませんのでわかりませんが、そんな気がいたすわけでございます。
 いずれにいたしましても、そうはいっても、やはりこの有明海につきまして、何とか汚染を食いとめる必要がある、むしろ再生をさせなければならない。例えば、諫早でございますれば諫早干拓をやっておるわけでございますが、私自身は、海と川と山、これはつながっております。したがって、私は市長になりまして、六年間でございますが、わずかではございますが、山に広葉樹を植えようというようなことで、毎年二十ヘクタールずつ、現在百二十ヘクタールを植えて、今後もずっと植えていくつもりでございます。
 そういったことで、これを植えることによって諫早市の上水道は、七割は伏流水を使っておりますので、そういったこともございますし、また川そのものもきれいにしなければならない。また、下水道につきましても、今高度処理をやっております、普及率がまだ五五%程度でございますが。そういったことで、水質の改善も今後とも力を入れていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
 以上、私の私見を述べさせていただきました。
森参考人 有明海の問題は、諫早湾はやはり決定的なダメージを与えたと私は断言できます。
 今言われるように、問題はたくさんある、有明海が疲弊したのはたくさんある。もちろん、三十年代から漁獲が減っている。私たちは、しかし、生活の豊かさは豊かさでないというそこら辺で、はっきり、有明海が豊かであったのはこの間までだ、堤防工事が始まるまではすばらしく豊かであった。日本の経済によく似ているんですよね。皮肉なことで、平成元年に着工ということで、平成二年、三年、そのころに試験堤という堤防工事が始まったわけですけれども、それと同時に、来年とれるタイラギというのはもう見えているわけですね、それが全滅した。
 それから、いろいろな想像をしたんですけれども、結局、日本のバブルとよく似ているような感じ。バブルの最盛期に補償金をもらったわけですよ。漁民もみんな浮かれて、お金の使い道もわからぬぐらいのことであったのでしょうけれども、その後資源が死んでしまったということで今度は抗議をするという、世の中の騒然としたのと全く似ていまして、しかし今度は、皮肉な話ですけれども、ギロチンという鉄板がおりた後に、佐賀県、福岡県、熊本県までとんでもないことになり始めた。
 もちろん漁業者は、魚種が違うと、貝類漁業者がそのころも、諫早湾が騒いでいても、佐賀県の人は、隣の人でも、また諫早の小長井のやつが勝手なことを言いよるわいということであって、今度は自分たちに火が移ったときに、自分たちは訴えるけれども、そのときはノリの方はまたよそのことで、そういうふうな事態がありましたよね。
 漁民というのは本当に自分の直接被害になってこないところまでは何も言わないということがありまして、でも、諫早が起きてその後、佐賀、福岡、熊本の順に被害が、堤防工事、ギロチンというところからどんどん下がって、すべての生物において、ノリは去年はとれましたのでノリ以外の海底生物、貝類、二枚貝、それはすべて今においてはゼロにも等しい。もちろん、これにあとエビ、カニ類がそれに追随していっている次第でございます。
江田(康)委員 今いろいろ申していただきましたけれども、私はやはり、この三十年間の間にこういう魚介類の激減が起こり、続いているという結果、そういうものからやはり、予断を許さずにという立場は貫いていこうと思っております。そういう意味で、どのような原因が、また、一つではなくて複合的に起こっているとするならば、それらの原因を特定してそれを排除していくというのが、我々が一番望む有明海の再生のための重要な対処でございます。
 そういう意味で、今、短期開門調査から始まって、なかなか短期開門だけでデータがとれるところではございませんでしょうから、干潟浄化機能調査とか、流動解析調査とか、そういうコンピューター解析も組み合わせながら、なるべく早く原因を特定化するという作業が続いております。
 また、中長期的な開門調査についても、それらを総合的に判断した上で、その後、最終的には行政が決めるというような方向で進んでおりますので、我々としましてはしっかり、科学的な調査、それから皆様方の聞き取り調査も、科学的でないところも、漁民の皆様は非常に専門的でございますので、そういう聞き取り調査も必要かと私は思います。そういうもので対応をしていく必要がある、冷静に考えていく必要があるなと思っております。
 やはり二人にお聞きすると、時間が二倍、三倍とかかりますので、最後の質問になります。
 これもちょっと、やはりお二人にお聞きしないといけないなと思っておりますが、一番重要な、この有明海、八代海再生特別措置法案の評価についてでございます。これに関しましては、中村参考人と宮入参考人、お二人にお伺いしたいと思うのです。
 我々が提出しております本法でございますが、これは、もちろん海域環境の保全、改善と、それだけではございませんで、さらに重要な水産資源の回復による漁業の振興、この二つを目的、基本方針として県が基本計画を立てるというふうになっております。
 この県計画に基づいて、漁場整備事業、これは先ほどから申されておりますように、再生のために、覆砂、それから堆積物の除去、耕うん事業、こういうものに対する事業の補助率をかさ上げしていこう、そしてさらに漁場整備を進めていこうということが一つ。
 また、下水道整備、それから特定地域生活排水処理事業、これは、過疎地におきましては、下水道というよりも合併浄化槽の方が効率的であるということから、この両面で、先ほどから申されておりますように、汚さないという観点から、水質浄化の推進を図るために、要件を緩和しております。
 さらには、アサリ、稚魚の放流の補助率も引き上げて、そしてさらに重要な、森林の保全、整備、環境整備船の建造、それから漁業被害者の救済に至るまで、本法が成立することで、さらに種々の環境対策並びに漁業被害の救済策が進むことになるわけでございます。
 さらには、水質規制としても、これは実質的にはまだデータが出ておりませんので、なかなか即刻規制するというわけにはまいりませんが、水質汚濁防止法等の現行法、また県の条例等で対応をしていき、五年以内に見直す中で、将来的には総量削減も可能としていく、こういうような内容でございます。
 このような有明海、八代海特別措置法案をどのように評価されるかということについて、お二人にお伺いしたいんですが、先ほど宮入参考人は、上流から下流まで、そして干潟とか森林整備まで、そういう対応が必要であるということもおっしゃられました。
 今申し上げましたように、下水道、合併浄化槽の推進はそれにも相当しますし、森林整備、保全も相当するわけでございます。干潟の造成ということに関しても、これは調査を含めながら、必要な干潟を造成、保全していくというような内容、方向にもなるのではないかなと思われます。
 こういうような本法に対しまして、どのように参考人お二人は評価されているか、お伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
中村参考人 御質問にお答えしたいと思います。
 私自身は、有明海についての基本的な問題は、マスタープランがないままに、海です、水は流れます、ここでやったことが隣に影響しないということはありません。したがって、先ほど、山から海までということがございましたけれども、負荷と浄化、そういったことを含めたマスタープランがあって、そして、これからの開発、もうすべて開発やめろというわけには多分いかないと思いますので、そういった形で行われるべきだと思います。
 それから、諫早干拓についていいますと、先ほど申し上げました湾についての干潟率といいましょうか、それは、干拓によって〇・九%減ってしまいます。それでも、これは諫早では〇・九%ですね、全体的にいいますと、まだ一番大きな干潟率を持っております。
 もちろん、干拓地のすぐ最お隣、先ほど組合長のおっしゃられたような小長井とか、そういったところでは、直接の、局所的な影響を受けると思いますけれども、全体のマクロな水質環境という形の中では、これが決定的なのかどうか、そこを調べるのは大変難しいと思いますが、今それを努力されている研究者グループがあるわけでございまして、その意見を尊重しなきゃいけないと思います。
 むしろ、最大の干潟率を持つ有明海として、どういう形、どういうマスタープランの上にやったらば環境が向上するのか。先ほど申し上げました、皆さんおっしゃっておりますように、熊本新港もあるじゃないか、筑後川大堰の流域変更もあるじゃないか、あるいは海への流入土砂の減少など、いろいろあります。それがすべて一%前後あるいは数%の範囲の中で絡まっております。ですから、そういう中でこれだというのは、私は、科学者として、しかも生態系という立場から考えれば、これは至難のわざだというふうに考えております。
 ですから、それよりも、現状で障害が起こっているものを除去するための対策を急ぐべきだということを申し上げているわけでございまして、そういう意味では、この法案が早く成立して有効に機能することを期待いたします。
宮入参考人 お答えしたいと思います。
 先ほど、私、一番最後のところで、川から海までのいわば水循環の一貫体制というふうなお話もいたしました。ただ、その場合に、それはそれで重要なんですが、大事な二つの前提があって、その上でというふうに申し上げたはずでございます。
 といいますのは、一つは、諫早湾の干拓事業というふうなものが、これはノリ委員会の方でもそうですが、いわば、最もあり得べき、あるいはあり得る可能性のある仮説として、諫早湾の干拓事業というふうなものが、諫早湾だけではなしに、有明海に対して重大な影響を与えている、そういったことを一応出しているわけです。それは、潮汐、潮流というふうなものを大きく変化させたということでございますし、もう一つは、浄化機能というふうなものを奪っている、こういうふうなことであったわけであります。
 したがって、まずその点をきちんと有明海の特措法の中に入れ込むべきだというのが重要で、そこのところが、先ほど言った、いわば有明海の再生を言うならば、最も疑わしい部分について、とりあえず中止をするか、あるいは少なくとも徹底的に検証をして、その期間の間は少なくとも凍結をする。
 先ほど申し上げたように、事業と調査とは別物というわけではないと思います。先ほど、肺がんの疑いの非常に強い患者、その人が同時にヘビースモーカーである、しかし、それがわかるまで、たばこはどんどんやっても構いませんよ、こういうことにはならないということが重要で、そこのところが私はまず第一のポイントだと申し上げたというふうに思っています。
 それから、第二のところでは、諫早の干潟だけではなしに、今委員の方から御指摘ございましたように、例えば熊本の新港ですとか、あるいは筑後大堰等々の既存の、いわばこれまでの負の遺産といいますか、そういったものも一定の影響を与えているだろうということは、これは委員会の方からも指摘されておりますから、そういう過去のものについて、同時にきちんと検証もするということであります。
 それからさらに、将来に向かって、いわば有明海に大きな負荷を与えるような開発については、これはきちんと規制をしていくことが重要だというふうに第二番目に申し上げて、その上で、先ほどの第三番目のお話を申し上げたということであろうかというふうに思います。
 今のままいきますと、結局のところ、一番問題とされているところの有明、諫早湾の干拓事業は、いわばどんどん進んでいってしまうというような形になりかねない。できるところからというふうに申しますが、そういういわば局所的なところでというふうなことよりも、もっと根本から直さないことには、有明海の再生はできないところまで今来ているというふうな御認識が実は重要なんではないかということを、るる申し上げているわけでございます。
 以上でございます。
    〔楢崎委員長代理退席、委員長着席〕
江田(康)委員 時間がもう過ぎておりますので、これでやめさせていただきます。
 参考人の先生方、ありがとうございました。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 私は、諫早の隣の大村に今住んでおりまして、状況はかなりわかっているつもりではいるんですが、ひとつ、森参考人に先にお聞きしたいんですが、いわゆるノリの酸処理ですね。この酸処理の実態なんですが、これをどうやって行っていますか。手短に。
森参考人 私もノリ業者ではございませんけれども、希釈するパーセントはよくわかりません。二百倍、三百倍に薄めて、自分たちが乗っている船に海水と酸を入れまして、それに網をつけ込んでいく。そうすると、畑でいえば殺菌みたいな形になりまして、ノリそのものは健全に育ちやすい、いろいろな弊害を受けない、そういう作用ですね。それを適正に持ち帰るというふうな行為が条件としてついているわけですけれども。
山田(正)委員 その酸処理なんですが、船の中に、そういう塩水と酸ですね。その酸の種類なんですが、食用になるような酢酸とか、害のないようなそういったものならいいんだけれども、非常に安い塩酸とかそういったものを使って、そして網をつけますよね。ノリ網というのですか、つけた後、それを出して、その船の中にいっぱい入れた酸処理の海水とまぜたもの、これをそのまま海に流している、垂れ流しているというのが実態ではないんでしょうか。どうでしょうか。
森参考人 一概には言えませんけれども、持ち帰っている人もいますし、指導どおりやっていない人もいるかとは思います。
山田(正)委員 これまでそういう酸処理が野方図になされてきて、県とかそういう指導も、このところ二、三年前から随分厳しくなったようですが、それに対して罰則とかそういった厳しい側面、そういったことで取り締まっているというような話を聞いたことはありますか。
森参考人 取り締まっているという行為は聞いたことはありません。
山田(正)委員 森参考人にお聞きしたいんですが、いわゆるタイラギ漁は、かつて私どもも、よく潜水服のでかいものを着て、森さんのところの組合の皆さん方、海に深く潜ってとっておって、食べさせてもらったこともあるのですが、ああいう結果になってしまった。今、どういう状況なんでしょうか、一言で言って。
森参考人 ここ十年、ゼロでございます。当初は一割ぐらいに落ちましたけれども、今はゼロです。
山田(正)委員 中村参考人と宮入参考人にお聞きしたいんですが、このタイラギ漁はゼロになった。今までとれておった。あの辺の名産であった。私どもも、本当においしいタイラギを食べさせていただきました。それが、いつか口に入らなくなった。この原因は何だとお考えでしょうか。中村参考人からお聞きしたいと思うんですが。
中村参考人 私、貝の専門家でございませんので、十分なお答えができないかと思いますが、ただ、貝は、我々もそうですけれども、特にグリコーゲンというエネルギーを体内に蓄えております。したがって、二日、三日酸素呼吸をしないで、貝を閉じたままでも生息できます。それ以上貧酸素水塊にさらされると、これは死亡してしまいます。
 それと、たしか、昔のことなので、タイラギの増殖場造成に、ちょっと相談を受けたことがあるんですが、これは浮遊幼生が、卵になって、幼生になって浮遊をしています。それが着底するときに、泥場ではだめでございまして、そのために付着基質を設置しようというような計画が昔、まあ私がやっていたころですから、もう三十年ぐらい前になってしまうのかもしれませんが、ございます。
 ですから、そういう生活史ですね。産卵期、浮遊期、それから着底期、着底した後の稚貝の段階、それから成貝の段階。そういう生活史の中のどこかに決定的なダメージが与えられるとゼロになってしまうということでございますので、その生活史の中のどこに影響を与えたのか、それをやはり解明しないといけないのじゃないかと思います。
宮入参考人 私は、今の御質問にはもっと専門が遠いのでございますが、小長井のタイラギについては、認識としてはこう思っております。
 一つは、小長井のタイラギのところが急速にとれなくなり、そして最後はゼロになってしまっている。その過程は、明らかに諫早湾の干拓事業、とりわけ、潮受け堤防の着工と軌を一にしているわけであります。それによって発生するところの、一つは、いわば海底を掘ったりなんなりいたしますし、それから、海底にくいを打ち込んだりいたします。そういうことによるところの、しかも、海底といいますのは、諫早湾のところも、それから有明海もそうでございますが、有明粘土質によるところの浮泥がたまっておりますので、当然、そういったものが二十メートル、三十メートルというふうにたまっている。それがいわば巻き上がるわけでございまして、それがいわばタイラギのところの、砂のところにさらに巻き上がったのが、泥が付着するというふうなことによるのが一点。
 もう一つは、干拓工事でもって潮受け堤防をつくりますときに、海砂、海の砂でございますが、これを海のところから掘るということをいたしたはずであります。そこのところが、実は小長井のところのいわば一番有力な漁場であったということで、ここはいわゆる貧酸素水塊の発生の根源であったわけであります。
 そういった二つの影響が、特に小長井のところのタイラギのいわば絶滅というふうなことについては、極めて大きな形でその要因として作用していたというふうに私は認識しております。
山田(正)委員 どうやら、諫早湾の干拓工事に伴う、いわゆる砂の沖合の採取とか、そういったことで、中村参考人もおっしゃったように、貧酸素、そういう状況下でタイラギが全滅していったのじゃないか、そう思われますが。
 吉次参考人にお聞きしたいのですが、諫早の干拓工事を始めるときに、周辺漁協、例えば小長井その他のタイラギ漁業等に対しても、いわば当時の話で、タイラギが全滅するとか、巻き貝が全滅するとか、そういう予測がなされておったのか、なされていなかったのか。そして、当時、補償も払われたと思うんですが、工事に伴う影響は幾らかあるだろう、その幾らかの影響があるという当時のアセスの報告ではなっていたと思うのですが、それについての単なる補償であって、全滅というところまで考えていなかったんじゃないか。その辺は吉次参考人、いかがお考えですか。
吉次参考人 その辺につきましては、六十一年前の話でございますので、私は明確にはその辺はお答えできません。
 以上です。
山田(正)委員 ともあれ、ムツゴロウ云々とよく言われるんですが、僕は、いつもムツゴロウの話が出るたびに、ムツゴロウより何でタイラギのことで騒いでくれないんだろう、そう思っておったのですが、タイラギ等々で、まさに今、有明海の海はこうなってしまったということですね。
 そうなったときに、今回、有明法案が準備されたわけですが、いわゆる滋賀県の琵琶湖とか瀬戸内海、そこでは総量規制が行われている。有明海は、言ってみれば、酸処理も一つ、あるいは雑排水にしても一つ、あるいは田畑で使われている農薬も一つ、あるいは干拓の事業も一つ、そういった形で、各県がそれぞればらばらに垂れ流ししてきた。あれだけの大きい海に垂れ流してくれば、それぞれ汚れるのは当然ですから、総量規制の必要、これがあるんじゃないかと思うんですが、吉次参考人、いかがでしょうか。
吉次参考人 有明海の各流域あるいは河川、諫早湾は、大方、流域、それから河川の流れ込み、おおよそ三%程度でございます。数字でいえばそういうことでございますが、おっしゃるとおり、やはり各河川から流れ込みが有明海に来るわけでございますので、私は、それぞれの形で水質を改善する、浄化するということはぜひ必要である。
 したがって、私は、今後、公共下水道をもっと進めるとか、農集排だとかあるいは合併浄化槽だとか、そういったことで、水質を浄化していくことが、みんなで力を合わせてやっていくことが一番大事ではなかろうかというふうに思っているところでございます。
山田(正)委員 宮入参考人にお聞きしたいのですが、いわゆる厳しい罰則を設けた総量規制、それぞれの基準、窒素とか燐とか、そういったものの必要性を私は強く考えているわけですが、今回、今度の法案に修正案として総量規制を今提案しているところなんですが、宮入参考人、それについてお考えはいかがでしょうか。
宮入参考人 私は、総量規制については入れるべきであるというふうにはもちろん思います。したがって、当初の案に対して、一定の修正案という形でございましょうか、総量規制が入ったという点については評価しております。
 ただ、先ほど来申し上げましたように、一番重要な点が入っていないというのが私としては何としても残念で、不満であるということでございますが、総量規制は全体としては当然入れるべきであるというふうに思っております。
山田(正)委員 その一番重要な点というのは、もう一度おっしゃっていただけませんですか、この法案においてどうすべきであると。
宮入参考人 先ほど来申し上げておりますが、一つは、やはり諫早湾の干拓事業というものが最も疑いが濃いというふうなことでもって、これはノリの委員会でもなっているわけですから、したがって、当面のところは、それに対して中止とは仮にいかないとしても、それについては早急にとにかく調査検討をして、その間はその事業は凍結をすることが重要であるということであります。
 第二は、将来に向かっての開発規制、この中には当然のことながら総量規制の問題も入ってまいるというふうに思いますし、それから、いわば過去の負の遺産といいますか、有明海に与えたところの負の影響というふうなものは、それは、熊本新港にいたしましても、それから筑後川にいたしましても、あるいは三池の炭鉱の陥没とかあるいは海砂の採取とか、いろいろあるわけですが、そういったことについてもきちんと対策を立てるという、そこのポイントのところがまず重要で、その上で総量規制等々というふうな問題も同時にかぶせていくというふうなことが、いわば二十一世紀、環境の世紀におけるところの有明海再生にふさわしいというふうに私は思っているわけであります。
 以上でございます。
山田(正)委員 私は、きのう、委員会で、現地、諫早干拓の現場を見てまいりましたが、現場で見る限り、潮受け堤防の仕切りがきちんとなされておって、あと、内部の調整池に既にアシ等もかなり茂っておって、ある程度の落ちつきを示してきている。内側の工事、これは、あと残されているのは、いわば中の堤防ですね、仕切り堤防というのか前堤防というのか、それの工事、これはあそこではもうせざるを得ないんじゃないか、あとは圃場整備だけだな、そういう思いをして帰ったのです。
 むしろ、これから先、確かに総量規制しながら、いわば砂掘りとかいろいろな乱開発、これからこういうことが二度と起こらないように、そういうことについてのたが、それは何とか必要で、それをやるとしたら、この有明法案ではいわゆる総量規制かなと考えたわけなんです。
 それはともあれ、私の持ち時間も少なくなってまいりましたが、こうしてタイラギが本当にいなくなった。ところが、話は変わりますが、北海道の猿払村では、かつて、ホタテ、これを何億粒と地まきして、資源をとり尽くした後それを地まきすることによって、そして何とか、また、さらに輪作、この海域は五年後にとる、この海域はその次の年にとる、その海域はさらに次の年というふうに輪作を重ねながら、あれだけの、ホタテ御殿と言われるほど、一戸当たり二千万とも三千万とも言われる収入を得るようになった。かつて、小長井のタイラギの漁師さんも、あの辺ではうらやむほどの収入があったのを私は覚えております。
 そういう意味で、もう一度、そういう稚貝を大量に今度の有明法案によって放流する、そのためには、例えば、禁漁区、禁漁期間というのを決めながら輪作してやっていくという、これからの再生に向けての具体的な方法、そういったものを、吉次参考人、考えられないでしょうか。
吉次参考人 やはり最近の漁業は非常に全体的に不振でございます。当然、養殖、放流といいますか、貝にいたしましても魚にいたしましても、そういったことは私は必要であろう。そういったことで、今後とも、この有明海の再生につきましては、そういったことを御検討いただければというふうに私も思っております。
 以上です。
山田(正)委員 最後ですが、小長井町と諫早市はどうやら合併しそうですが、今の吉次市長さんが、小長井の前面の共同漁業権も含めて、諫早の方も含めて考えられて、実際、そういう方向でやろうというお気持ちがあるかないか、それだけで結構です。
吉次参考人 合併後どうなるかわかりませんけれども、仮に私がそういった状態にございますれば、それは取り組んでまいりたいというふうには考えております。
山田(正)委員 質問を終わります。参考人、大変ありがとうございました。
小平委員長 次に、小沢和秋君。
小沢(和)委員 日本共産党の小沢和秋でございます。
 私は、九州・沖縄ブロック選出ということで、いわば諫早の問題は地元の問題としてずっと活動してまいりました。そういう立場から、参考人の皆さん方に若干質問をさせていただきたいと思います。
 まず、吉次参考人に何点かお尋ねをしたいと思います。
 それで、先ほどから、地元を代表して、こういうふうにおっしゃっているんですけれども、私は、市長が一般的に地元を代表する立場だということはそのとおりだと思うんですけれども、この問題については、最近の長崎の世論調査などというのを、私きょうは手元に持ってきてはおりませんけれども、私の記憶する範囲でも、反対や、あるいは疑問だというような人たちの声がむしろ圧倒的な多数になってきているんじゃないかと思うんですが、あなたが代表しているというのは、そういう地元の人たちの声を代表しているということなんでしょうか。
吉次参考人 私は、諫早市長といたしまして地元を代表して参っております。確かに、いろいろなアンケートを県の方でとりましたところ、おっしゃるように、よく状況を熟知していないといいますか、そういったこともございまして、もちろん環境的な問題もございましょうが、そういった意味で、干拓に対しての反対の数は多いわけでございますけれども、しかし、地元の諫早市におきまして、私に対して面と向かってこれを反対と言うことはほとんどございません。
 そういったことで、特に低平地に住む市民もございます。それでまた、三十二年の大水害もございます。そういったことから、ぜひやはりこの諫早干拓は早く完成させてくれ、そうすることによって、地域の環境の安定あるいは沿岸の安定につながってくるというようなことでございまして、そういった低平地につきましては、すべてが本当に熱心に、我が身を振り返らず、そういったことで一生懸命やっているようなことでございます。
 以上でございます。
小沢(和)委員 次にお尋ねをしたいのは、この再生特別措置法をつくるというのであれば、私は本当に有効なものをつくらなければならないと思うんです。そのためには、何でこの有明海が、宝の海と言われたのが、今のような惨たんたる状態になってきたかということをしっかり押さえる必要があるんじゃないかと思うんです。そういう立場からお尋ねをしたいと思いますけれども、先ほどから、ノリの不作をとらえて、確かに去年はそうだったけれども、ことしは大変よかったんだ、だから、この諫早の干拓工事がその原因だというのは大変疑問だというような立場を表明された。そして、複合的な原因がある、こういうふうにおっしゃったわけであります。
 しかし、私、確かに複合的な原因があるとは思いますけれども、しかし決定的なのは、やはり諫早の干拓じゃないか。それは先ほども数字も出ましたけれども、この諫早の工事が始まる前までは大体年間に魚介類の収穫量というのは九万トンぐらいあったわけですね。それが工事が始まってからは五万トンぐらいに落ち込み、そして、あそこの締め切りが行われてから以後は二万トン台、そしてつい最近、去年あたりのデータを見るというと一万トン台になっている。これほど工事と魚介類などの減少との関係が明確になっているものはないんじゃないでしょうか。
 私は、とうとうそれがノリまで及んできたというのが今の状態じゃないかと思うんですが、そういう現状、原因がその辺にあるんじゃないかという点についてきっちり押さえないと有効な対策がとれないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう。
吉次参考人 ノリと魚介類とは一緒にできないわけでございますが、ノリは、もう私先ほど申し上げましたように、十二年は最低でございましたが、十三年はとれた。ですから、これは私は、諫早干拓とは直接は関係ないんじゃないかと。あくまでも私は、気象と海象条件でなかろうかと。
 この魚介類の問題でございますが、実はいろいろな統計の中で、五十八、九年ごろでしょうか、ノリの酸処理を始めた。そういったところを起点にいたしまして魚介類が急速に減ってきた、とれ高が減ってきたというような状況もございますので、すべてがこの諫早干拓であるということを、あたかも干拓であるということにつきましては、私は非常に疑問であるし、また、そういったことで、私どもは、諫早干拓についてはこれまでどおり進めていただきたいというお願いをいたしているようなことでございます。
小沢(和)委員 私もさっき、複合的な原因だと私も思っている、しかし、その中で諫早が決定的なのではないかということを言っておるんです。きょうは参考人と余り議論をするつもりではありませんので、次の質問に行きたいんですが、防災効果の問題です。
 それで、あそこに堤防ができてから高潮がなくなった、そして洪水などの被害もなくなってきた、こういうようなお話です。私は、高潮の被害がこれによって防止されるようになったということはそのとおりだと思うんです。しかし、実際にかなりの雨が降ったりしたようなときには、諫早の市内でも、その後も水がついたりしている。
 だから国土交通省も、この堤防だけじゃだめだというので慌てて本明川の拡幅をやったり、私も現地をずっと見せていただきましたけれども、要所要所には樋門をつけたり、あるいは排水ポンプも据えたりしているわけです。こうして市内の洪水被害については防止できるようになった。しかし、低平地の農地についてはまだこれじゃだめだというので、さらに、水路を整備したり大型のポンプを据えたりというようなことをやっている。こういうことがやられたおかげで、今の、洪水の方は最近はなくなってきたということじゃないんでしょうか。
 だから、堤防ができたおかげで、高潮はいいとして、水害の方も防げるようになったというのは、こういう全体の経過を見ると、これはそういうことは言えないんじゃないでしょうか。
吉次参考人 この潮受け堤防は、やはり高潮対策といいますか、それと、この潮受け堤防をつくったことによりまして、中の調整池をマイナス一メーターに保ちます。したがって、間接的には当然洪水対策になるわけでございます。
 実は、先ほど十一年の七月の大雨の際のことを申し上げました。三百四十ミリの大雨が、一時間百一ミリぐらいの大雨が降ったわけです。そのときは、急速に本明川が、水位が上がりました。周辺の土地は、どうしてもゼロメーターでございますから、その本明川の本川に水が流れ込まないというようなことで、やはり内水被害ということで、床上、床下浸水はあったわけでございます。
 そういった現象はございますが、その大雨も、マイナス一メーターに保つことによりまして、急速に流れが速くなって、調整池の方に流れていってしまうというようなことで、一時的には確かに背後地も湛水をいたします。当然、川の方が高いわけでございますから、樋門を閉めますので内水はたまりますが、もうそれも一日かそこらで解消する。従来でございますれば、満潮が一日二回参りますので、どうしても水が引かないというようなことがあったわけでございますが、そういったことで、私は、大雨とこの潮受け堤防、この辺はやはり関連があるわけでございます。
 河川につきましても、当然私ども、今整備をいたしておりまして、半造川というところは拡幅をいたしております。
 また、本明川本川につきましては、これ以上拡幅できませんので、しゅんせつをさせていただきます。これは、国土交通省の方で、二十六万トンを十二億円程度かけてしゅんせつをしていただきまして、水面が約四十センチぐらい下がるであろうというふうに言われているわけでございます。それとまた、あるいはバイパスをつくればいいのでございますが、そういった土地もございませんので、最終的には上流にダムをつくる必要があるかなというようなことで、今現在調査を進めているようなことでございます。
 以上でございます。
小沢(和)委員 次の問題ですけれども、農地として、この干拓が完成すれば役に立つというお話がありました。
 私も、確かにあそこを農地にすれば、そこにいろいろ植えれば収穫があるだろうという可能性は、あそこに行ったらいろいろ試験をやっていますから、それはそう思ったんです。問題は、十アール当たり七十万であれを分けるというわけでしょう。それはたしか東西一緒のときの価格ですからね。私は、西工区だけにするといったらもっとずっと高くなるはずだと思うんですよ。
 そういうような高い農地をわざわざ買い入れて、確かにそれは広々としているから耕作をするには有利かもしれないが、それだけの初期投資をうんとやって、そして、さっきバレイショなんというような名前を挙げられましたけれども、その程度のものを植えて、果たして引き合うのか。私は、あそこで大量にバレイショの栽培でもやったら、日本じゅうのバレイショの値段が暴落したりして、結局、何のためにあそこを干拓したのかといって、またそのとき問題になるんじゃないかというようなことも思うんですよ。
 そういう意味で、実際にあそこを入植して、採算が合うようなものになり得るのか、その点はいかがでしょう。
吉次参考人 この干拓地につきましての農地の問題でございますが、今現在、島原半島あるいは諫早の農業地帯、これはもう長崎県で唯一の非常に農家の多いところで、優秀な農家が多いわけでございます。そういった方々が、今現在いろいろな入植あるいは増植をしようとか、あるいはまた、農業法人とか企業の方からもある程度問い合わせがあっているようなことでございます。やはり、広々とした農地でございますから、そういった省力化をいたしまして、そういったことの中で私は採算がとれるのではないかというふうに思っているわけでございます。また、作物にいたしましても、施設園芸だとか畜産だとか、いろいろなものをかみ合わせながらこれは進めていかなければならないというふうに思っているところでございます。
小沢(和)委員 どうもありがとうございました。
 次に、宮入参考人に一つお尋ねをしたいと思うんです。
 先ほどからのお話の中で、短期の開門調査でも被害が出たと。それで、まして中長期の開門調査などはもう到底考えられないと。だから、とにかくもうそれから先については、類似干潟で実験をやったり、あるいはコンピューターでシミュレーションをやったりするということで片づけて、そして、とにかく一刻も早くあそこの工事を完成させてもらわなければもう地元としては困るんだ、こういうようなお話ですけれども、そういうようなことについて宮入参考人はどうお考えになるでしょうか。
宮入参考人 お答えいたします。
 開門調査についてですが、先ほど、短期の場合でも被害が出たということですが、つまり、二点あると思うんですが、この調査自体は、結局のところ、いわば農水省の事業に伴って行われるわけですから、つまり国の事業ですから、国営の諫早湾の土地改良事業ということで行うわけですから、したがって、それに対するところの補償がきちんとなされるということは、これは当然であります。
 したがって、そういった被害に対しては、十分それに対する手当てを行うということが大事でして、短期についてもあれですし、それから、仮に中期、長期という形になる、こういうふうにするとすれば、それに対してもきちんとした手当を出す、つまり、国によるところの補償を出す、こういったことは当然やらなければならないことではないかというふうに思っております。
 それから、二つ目の点なんですが、農水省の方は、もう短期だけで、しかも、短期といっても、二カ月といったはずが、実際に水門をあけたのは一カ月も満たないというふうな話で、これで大丈夫なのかというふうな話もございましたが、それで得られた成果も全くゼロではないというふうにも専門家の先生方からはお聞きしております。
 ただ、それによって一体何が得られるのかということなんですが、確かに、それによって水質がどういうふうになるかとか、あるいは、流れがどうなるかということの若干のデータは得られると思いますが、しかし、そういったものはかなり限度があるだろうと思います。特に、生態系に与える影響はそこからは出てまいりません。
 そこで、農水省の方は、類似干潟ということで、鹿島沖のあたりのところで調べようということですが、これはまた、例えて言えば、先ほどの話でいえば、いわばがんに侵されているという疑いが濃いから検査しましょう、こういう話なんでございますが、その場合に、要するに、私、忙しいから短い期間で済ませますよというふうな話で、それでは生態系全体に与える影響は、類似干潟で、あなたと似ているような患者さんのデータを使って、結局それでもってはかりましょうと言っているのに等しいわけです、これは。こんなことができるかというふうな話だと思います。
 それからさらに、シミュレーションでやるということですが、シミュレーションというのは、前提になるところの、置くところの条件とか、そういったことによってかなり違ってまいります。シミュレーションで全部できるようになればこんなに簡単なことは実はないわけでございまして、したがって、つまり、新しい何かすばらしい医療機器ができたからそれでもって調べましょうというふうなことでは実は済まないのではないだろうか。やはり、きちんとドックに入って、そしてきちんと検査は適切な検査をするということが重要だというふうに考えております。
小沢(和)委員 中村参考人に次にお尋ねをしたいと思うんです。
 先生は水産関係が専門だというふうに伺っておりますけれども、今度のこの再生特別措置法の中で、海底に砂をまくということが重要な漁業資源を復活させる手段として問題になっているわけです。実際、今既に覆砂が随分やられておりますけれども、私どもが聞いておりますのは、覆砂をして、しばらくはそこにタイラギなどの稚貝が、小さい貝が居ついたりする。ところが、しばらくするというと、ヘドロもまたたまってくる。それで、貝が大きくならなければならない時期には大体消えてしまう。こういうようなことの繰り返しで、もう十年もタイラギは全くとれないというような状態が小長井などでは続いている、こういうふうに聞いているんです。
 実際に、ああいうような有明海で、この覆砂というのが私はどれだけ有効なんだろうかと疑問を持っているんですが、先生、いかがお考えでしょうか。
中村参考人 おっしゃるとおりでございまして、海底の泥がたまるところに覆砂をする、時間がたてばもとのもくあみでございます。ですから、覆砂と同時に、その覆砂したところが持続するような条件をつくらなければいけない。先ほど申し上げましたような密度流作澪工なんというのは、覆砂と同時にやって初めて覆砂の持続効果が出るということです。
 私は、むしろ、今のタイラギの場合でいいますと、例えば、そこに浮遊幼生が沈着しない、親貝があっても流されていってしまうとするならば、そこに流れつくような母貝集団をどこかにつくる必要がありますし、それから、沈着するところが泥で沈着できないということであれば、砂でまくというのもそうですけれども、すぐ泥に埋まらないような付着基質を設置するとか、いろいろな方法があろうかと思うんですね。
 それと同時に、昔の干拓と違いまして、今の埋め立てとか干拓堤防というのは割合深みまでやってしまいます。ですから、前面のスロープをつくりたいですね。前面のスロープをつくって、そうしますと、そこのところは自然に堆積する機能が出てくるわけです。ですから、干潟をつくる機能をまず復元してやりたい。そういう意味では、そういう場所に浅場のスロープをつくる、そんなことは急いだ方がいいんじゃないかと思います。
 以上です。
小沢(和)委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 三時間にもなんなんとしている参考人の方々、多くの意見をお聞かせ願えて本当にありがたく思っております。
 私は、昨年も、ノリ被害が起こったときに福岡の漁業者と懇談を行ってまいりました。そして、ノリ被害の原因等も社民党の調査団としてつかまえてきて、あるいは九州四県の方々と意見交換をしながら今日まで来ているという状況でございます。
 そういう中で、先ほどからずっと議論が起こっておりますけれども、有明海全体を考えたときに、やはり原因というのは複合的である、これはだれしもが認めることだというふうに思うんですね。そういう意味で、しっかりとした調査がなされていかなければならないというふうに考えております。複合的な汚染と一言で言いますけれども、その中に諫干が入っていることも事実だというふうに思っています。それらを総合的に調査し、活動していくということが、私は今日私たちに求められている大きな課題だというふうに思っております。
 私は出身は宮城県の気仙沼でございまして、昭和四十六年ころ、赤潮が発生して、真っ赤な、血ガキという赤いカキがとれるという状況になってしまって、それからずっと、今二十七年、もう三十年近く湾内の浄化に行政挙げて、全体挙げて取り組んできて、今もそのことが継続している。先ほど、中村参考人もお話ししていましたけれども、マクロ的にとらえて、本当に長期的にこの問題解決に対処していかなければならないというふうな思いを持っているものであります。また、三十年たってもう、湾内の浄化、かなりきれいになりました。そして、魚もかつては湾内にも来なかったんですが、今は湾内で釣りもできるような状況まで回復してきている。
 そういう状況を経験していますから、規模は全然違いますけれども、現象としては同じだなというふうに思っています。そういう意味では、これから国、県、あるいは市町村挙げて、関係者が有明海再生に向けてスタートを切ることが本当に今日求められていることだなというふうに思っております。
 それで、宮入参考人、吉次参考人にお聞きしたいんですが、先ほどの意見陳述では、中長期の開門について、吉次参考人は絶対受け入れることはできない、それから宮入参考人はこのことなしには有明海の再生はあり得ないんだと真っ向から対立しています。このことがやはり、今日的な状況をどう見るのかによって、私は今後の対処の仕方というのも違ってくるんだろうなというふうに思っております。
 それで、実は私も現地を見ていませんから、きのう本当に一日かけて現地を見させていただきました。そして、私なりの疑問点も現場で問いただしてまいりました。
 潮受け堤防が今日完成している状況ですね。潮受け堤防が完成しています。工事は潮受け堤防の中で行われています。そして、この潮受け堤防の完成によって、先ほどからもずっと議論がなされておりますけれども、調整池はマイナス一メーターで管理されています。こういう状況なんですね。
 それで、それでは長期の開門調査を行った場合にどういう影響が出るのかということを問いただしました。そうすると、かつては七キロメートルあった湾の幅、それが今は水が通過できるというのは二つあって、その長さというのは二百五十メーターしかない。そうしたときに、五メーターある干満の差、それがマイナス一メーターというふうに考えたとしても、一・五メーターから二メーターくらい潮の満ち引きでなっていったときに、その開口口、そこの流量が、流速が物すごい流速になっていって、開いておくということは現実的には不可能だということを現地では説明を受けました。
 七キロを二百五十メーターに縮めていますから、今までは七キロメーターでゆっくり上がっていったものが、あけるということによって、これこそ有明海全体の環境の変化をもたらすのではないのかなという私自身の思いを持ってきたわけです。
 それからもう一つ聞きました。短期の開門調査のときにはマイナス一・〇からマイナス一・二、二十センチしか海水を入れていない状況でもって短期の開門をやったというふうに聞いております。そうしたときに、開門して長期の調査を行うべきだという論点というのは、現実問題としてあの潮受け堤防を壊すしかないというふうに私は思えてならなかったんですけれども、このことについて、一つは宮入参考人にお聞きしたいんですが、こういう現実を踏まえて、長期の開門調査というものをどのように行っていったらいいのか考え方をお聞きしたいし、吉次参考人には、どうして絶対に認められないという形を主張なさるのか、その点の詳しい点をお聞きしたいというふうに思います。
宮入参考人 中長期の開門の件でございますが、農水の方のノリの第三者委員会の場合でも、まず短期をやり、そして中期をやり、そして長期に移るという形で段階的にやっていく、こういうふうなお話でやるということでございまして、いきなり長期という話ではないというふうに言っていいだろうと思います。
 その場合大事なことは、中期でやる、これは半年ぐらいですが、その間水門自体を完全にあけっ放しでやるかどうかということは、これは別問題でございます。例えばオランダの場合でも、実際にはそういう形で樋門をあけて、そして干潟をよみがえらせる、あるいは淡水化したところの調整池のところに海水を入れるというようなことを既にしております。その場合に大事なことは、やはり今度はそれによるところの一定の自然に対する負荷というのはあるわけであります。したがって、その場合には、簡単に言えば、少しずつ上げて状況を見るということを繰り返して、そして、その中でもってこの程度上げればというふうな形のことをきちんと把握した上でやっていくというような、既にそういったいわば経験がございます。それで、その場合に、水量がどうしても激しくなって洗掘するということであるとすれば、それはそれでもって別の対策を講じるということも恐らくは必要になってくるだろうというふうに思います。
 自然というのはそういった意味では非常に微妙な、デリケートないわば環境なんだというふうに言っていいだろうと思います。したがって、一気に何かばっとあけてしまって、そして海水を通すというふうな形のこと、こんな乱暴な話は私は存在をしないと。既にそういうふうな経験というふうなものが外国でもって行われているわけですから、やはりそういったことも十分踏まえながらやっていくということがその場合には大事であろうというふうに思います。
 以上でございます。
吉次参考人 この短期開門につきましては、今委員の先生がおっしゃったように、マイナス一メーターからマイナス一・二メーター、この範囲内で入れるというふうなことで、これを急速に入れますと、下の浮泥、潟が巻き上がって周辺の漁場にも非常に影響がある。それからまた水門の強度の問題、そういったことから、やんわりとといいますか、そういったことで徐々に海水を出し入れしたというふうなことでございまして、四月の二十四日から五月の二十日までやったわけでございます。しかし、いまだ塩分が取れていないというような状況でございまして、これは半長期的にやりますと、恐らくこの塩分が除去できないだろう。したがって、私たちの目的でございます十八年度完成というのは、これはできないということになるんではないかというふうなことでございます。
 どうしても中の調整池の水を使って、先ほど来から申し上げますように、水も非常に不足しているわけでございますので、そういったことからこの水を農業用水に使おうということもあるわけでございますので、恐らくは半長期的に開門いたしますれば、そういったところにも影響がある。あるいはまた、背後地の水門だとかあるいは旧堤防等にもいろいろな影響が出てきておるようなことでございますので、そういった意味で、私どもは半長期の開門はできないということを主張しているわけでございます。
 以上でございます。
菅野委員 私も、昨日現地を見させていただいて、あそこまで潮受け堤防が完成したという状況になったときには、諫早湾をもとに戻すことは、もう逆戻りすることは不可能なんだなというふうな率直な思いをいたしてきました。そして、その干潟の効用をあの湾でもってこれからも期待して、干潟の効用というものを潮受け堤防の内側に持たせることもほぼ不可能になったなという思いを率直にいたしました。
 それで、中村参考人がおっしゃるように、潮受け堤防の前面に浅瀬をつくって、そういう形で対処していかざるを得ないのかななどという思いをいたしておりますけれども、これはこれからの方策として、総合的な検討を行って、一つ一つの有効な手段というものを多くの方々の知恵を寄せ合って、国、県、市町村寄せ合って対処していくことだなというふうに思いながら来たところでございます。
 そういう意味では、私自身、本当に開門ということの持つ重みというものを肌で感じてきたつもりでありますし、そのことを安易にできないことだなということも率直に思って帰ってきました。
 ただ、そういう意味ではいろいろな議論がありますから、開門すべきだという意見もございますから、それはそれとしながらも、私はこれからもしっかりとした調査検討というのが行われるべきだというふうに思っております。
 気仙沼湾の赤潮の例をやったときに、これは、次に森参考人にお聞きしたいんですが、閉鎖性水域ですから、ちょうど昭和四十六年というのは公害国会で相当議論が起こったころです。それから、対処したときにはヘドロのしゅんせつ事業でした、とりあえずやったのは。
 それで、先ほどから、海に潜って、そして生態系を見てきたということなんですが、それじゃ、有明海総体の海底はどうなっているのかなというふうな率直な思いがしているわけですね。砂だけじゃなくて、生活環境の変化に伴ってヘドロというものがたまっていって、それを除去しなきゃならなかったという経験を持っているわけですけれども、そういうヘドロの状況というのは有明海の中でどういう状況になっているのか。そのことが底生生物にどのような影響を及ぼしているのかなということをお聞きしておきたいというふうに思います。
森参考人 私は、科学者ではございませんけれども、有明海はヘドロというたぐいじゃなくて、浮泥ですけれども、酸素のない水に変わるということは、生物の嫌気性菌、そういうバランスの崩れたときに、本来浮泥で栄養分にもなるものが、ややもすれば、その部分が逆にヘドロという形に名前が変わる。
 有明海は常に流れが、大潮、小潮で物すごい流れの変化があります。それによって、流れるところに流れていってたまるところにたまれば、それがやわらかい潟、ヘドロじゃないです、やわらかい潟として存在する。しかし、そこにはやわらかい潟にしか育たないものが育つ。しかし、物すごく潮流が早い場合は、潟としてはそこに定着できないから、そこは砂分になる、砂の気が物すごい強いものになる。しかし、そこには貝類が定着するということで、ヘドロじゃないんですよ。ところが、酸素の量の変化によってはそれがヘドロに変わる。もちろん、海底十センチ、十五センチのところには全く酸素の存在しない水が常に雲となって海底をはいずり回っている今の有明海の状況だと思います。
菅野委員 海底に、底にたまったものがヘドロ化するというのは、貧酸素水塊が存在するから、酸素を吸収しないから、そういうものに変わっていくという状況だというふうに私も理解しているつもりなんです。
 そういう意味では、それじゃ、もう一つ、やはりここの貧酸素水塊がどういう原因で起こるのかということも、これは非常に徹底した調査を行わなきゃいけない。先ほどの森参考人の話では、堤防に砂を使うために深く掘った層がそれをもたらしているのじゃないのかという話もお聞きいたしました。
 一つの事例かもしれませんけれども、貧酸素水塊がどうして起こるのかということも、私は、非常にこのことも重要なことであって、底生生物の魚介類が生きていくためには、そのことも原因究明しなきゃならない課題だととらえています。このこともやはり国、県、市町村挙げて原因調査というものを行っていかなければ、私は解決につながっていかないというふうに思っておるわけですけれども、今私の意見を申し述べながら、これからも徹底した、私も調査にかかわっていきたいなというふうに思っております。
 最後になりますが、中村参考人にお聞きします。
 そのことだと私も感嘆したんですけれども、マクロ的視点という言葉ですね。マクロ的というのは広域的という点も踏まえなければならないし、長期的にということもあると思うのですけれども、ややもすれば、有明海、八代海全体を考えるときに、せつな的に物事を議論というのが行われているような気が私自身もいたしていますけれども、今日的な議論を聞いていて、どのように思われるか、感想をお聞きしておきたいというふうに思っています。
中村参考人 湾全体のマクロ的なとらえ方。
 マクロ的なとらえ方ですから、局所的にはそれから隔たった条件のところがあるわけです。まずマクロ的にとらえ、しかる後、局所的にやらなければいけないということで、例えば、橘湾ですか、早崎の瀬戸の外側の水位が五センチから十センチぐらい上昇したという観測データがあります。これは観測事実です。そうしますと、有明海の平均水深は二十メートルですから、平均七・五センチ上昇しますと二十・〇七五メートルになりますね。こんな少しの変化、どうでもいいじゃないか、そうじゃないのですね。
 その七・五センチの影響をちょっと計算してみますと、有明海の持つ固有振動周期が約一分短縮します。そうしますと、有明海の湾奥の干満差が一%未満ですが、小さくなります。ですから、やはり四から五センチの干満差の減少が起こるわけです。そうしますと、流速も小さくなってくるわけです。
 もちろん、諫早干拓が行われれば、それだけ諫早湾への流量は減ります。ですけれども、湾奥に対しての影響というのは、むしろそういう湾口水位の上昇の方が大きな影響を持っているかもしれません。ですから、そういう大局的な見方が一方では必要だということです。
 それから、先ほどのように干拓の防潮水門のすぐ近くだったらば、それは局所的な影響等が出るのはもちろん必然でありまして、ですから、大局的な立場と局所的な立場から対策をしなければいけない。諫早干拓そのものについては、市長さんのお話にもありますように、地域住民あるいは関係者の判断の中で、あの中はそういうふうに利用していただくのですけれども、残された海面の対策が重要です。
 それから、もう一つ干潟の効用を言いますと、調査の中に逆に入れていただきたいのは、今まで干潟の上を河口水が出ていくとき、上げ潮、下げ潮で希釈されて、汽水域をつくるのです。ところが、今度の場合は樋門から淡水がもろに出てしまいます。ですから、それがどういう希釈過程をとるのか。
 むしろ、調査の内容に、防潮水門ができた後、調整池水位が上がったときに排出する淡水が、どういうふうに有明海へマクロに影響しているのか、その辺の研究が逆に必要じゃないかなと私は考えております。
菅野委員 どうもありがとうございました。
 以上をもって終わります。
小平委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。ありがとうございます。(拍手)
 次回は、来る十二日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十三分散会


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