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第16号 平成15年6月5日(木曜日)

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平成十五年六月五日(木曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      青山  丘君    荒巻 隆三君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    岩屋  毅君
      梶山 弘志君    金子 恭之君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小泉 龍司君    近藤 基彦君
      七条  明君    高木  毅君
      谷本 龍哉君    西川 京子君
      宮本 一三君    後藤  斎君
      今田 保典君    齋藤  淳君
      鈴木 康友君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    堀込 征雄君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      佐藤 敬夫君
    …………………………………
   農林水産大臣       亀井 善之君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   厚生労働大臣政務官    渡辺 具能君
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   政府参考人
   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君
   政府参考人
   (財務省関税局長)    田村 義雄君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省農村振興局長
   )            太田 信介君
   政府参考人
   (農林水産技術会議事務局
   長)           石原 一郎君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  相沢 英之君     岩屋  毅君
  北村 誠吾君     谷本 龍哉君
  吉田 公一君     鈴木 康友君
同日
 辞任         補欠選任
  岩屋  毅君     相沢 英之君
  谷本 龍哉君     北村 誠吾君
  鈴木 康友君     吉田 公一君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)
 農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案(内閣提出第五三号)(参議院送付)
 農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第五四号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長須賀田菊仁君、農村振興局長太田信介君、農林水産技術会議事務局長石原一郎君、外務省経済局長佐々江賢一郎君及び財務省関税局長田村義雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。
七条委員 おはようございます。
 農水で久しぶりに質問をさせていただきますが、きょうは種苗法の一部を改正する法律案、この法律案、六十二条等々から成る、附則を入れまして、いろいろな形の法律案としての話でございます。
 この法案を改正する主な目的というか背景というものを調べてみますと、植物の品種の育成者権の侵害が近年非常に増大している。農林省内においても、昨年の九月に知的財産戦略大綱という趣旨で育成者権侵害対策研究会、これは渋谷達紀教授を座長としておやりになられたという経緯があります。それで、国境措置とあるいは罰則の強化というようなことの二つを検討されておられます。
 では、まずこの罰則強化ということについて少し御質問したいと思うわけでありますが、罰則の対象範囲、これは今まで種とか苗、いわゆる種苗から収穫物というところまで権利侵害の拡大をしておられます。しかしこれは、収穫物というのはどの辺までを収穫物というのか。その範囲ですね。例えば加工品も、収穫物を加工したものが入るのか入らないのか、こういうところがあろうかと思いますから、まずこの範囲について、どこまでを指しているのかということだけもう少し具体的に聞いておきたい。
須賀田政府参考人 現行の種苗法、収穫物は育成者権の対象でございますけれども、加工品は対象としていないということ。
 では、収穫物と加工品はどう区別するのかということでございます。植物体に加えられた工作の程度、あるいは植物体の物理的、化学的特性の変化の程度、こういうものを総合的に判断すべきというふうにされております。結局は社会通念に照らして判断されるべきだろうというふうに思っております。判断するときに、例えば、単に切断しただけ、あるいは冷凍しただけ、乾燥しただけ、こういうものは、加工品ではなくて、収穫物の範囲で育成者権を及ぼすべきであろうというふうに考えております。
七条委員 範囲が社会通念的なんということを言ってみましても、現実にはいわゆる育成者権というのが侵されてきた。当然、ここ近年増大をしているということなんですね。だとすると、これらの方々を守ってあげるためにはどうしたらいいかということをきちっとやっておかないと、ただ社会通念上だけで問題になる。先ほどちょっと出てきましたけれども、簡単に野菜を乾燥させただけだとか、あるいはそれらをカットしただけで出してくるような野菜というようなものは、これはできますよね。
 ですから、私は、この加工品の取り扱いというのは、UPOV条約というのが国際条約上あります。その植物の新品種の保護に関する国際条約で、加工品の取り扱いは各国の裁量権に任されていると書いてありますけれども、加工品を罰則の対象にする、これはいわゆるこの日本国で決められるんですよね。ですから、きちっとどこまでだということを範囲を書いておいてやらないと、こういうことではおさまらないんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがですか。
須賀田政府参考人 先生おっしゃいますように、UPOV条約、直接の加工品を育成者権の対象とするか否かは各国の裁量で決められる、要は直接の加工品を育成者権の保護の対象にしてもいいというふうに条約上はなっているわけでございます。
 ただ、実際問題、加工品になりますと、品種識別技術、要するに登録された種苗との同一性の確認というものが、現在においては実用化の段階に至っていないものが多いということで、アメリカでございますとかEUでございますとかも含めまして、現時点では主要国は保護の対象としていないわけでございます。
 私、先ほど社会通念というふうに申し上げました。法律上書くとしても、収穫物は、植物体の全部または一部で種苗を用いることにより得られたものという定義がございますし、加工品は、動産を材料としてこれに工作を加え、その本質は保持させつつ新しい属性を付加し、価値を加えたもの、まあ書けばこういうふうな定義になるわけでございますけれども、実際に品物を見て、では、これが加工品か、これが収穫物かという判断をする際には、やはり一つは識別可能性を念頭に置きながら、社会通念に照らして、その加工度、加工度といいますか加えられた工作度に応じて判断するしかないのかなというふうに思っております。
 単に加熱したものだとか乾燥したものだとか、それはもう収穫物で識別可能でございますので、権利保護の対象にしたいということでございます。
七条委員 社会通念上なんということを言いますけれども、例えば、この種苗法の中で、品種登録制度というのがありますでしょう。品種登録をしたり、品種登録を出願でやるとなって、それで件数が千件とか二千件とかになっている。そういう品種登録をきちっとやっていたら、その品種登録の部分だけのものでいいわけですから、それをきちっとやるということができるかできないか。例えばDNA鑑定をやるということで、最近、DNA鑑定が非常に高度になってきて、技術が進んできたと思うんですけれども、それでやれるものというのもきちっとあるわけだと思います。
 ですから、加工品であっても、社会通念上じゃなくて、やれるものとやれないもの、それが税関の中できちっとした形で国境措置ができるものとできないものというのを分けておいた方がいいんじゃないかな、私はそう思えてしようがないんですね。
須賀田政府参考人 おっしゃるとおりでございます。この種苗法案、成立をしました暁には、例えばこれは収穫物、これは収穫物とは言いがたいというものを、ちょっと境界線にあるものについては種別する作業を直ちに行いたいというふうに思っております。
 例えば、よく問題になりますのが、イグサと畳表の関係とか、そういうものでございます。畳表については、DNAで識別できるようになってきておりますので、法令の許す限りにおいてはこれは権利の対象というふうなことで読みたいというふうに思っておりますけれども、専門的見地から検討を加えて、それは現場で混乱が起こらないようにしていきたいというふうに考えております。
七条委員 社会通念上だけと、おっしゃるとおりだとも言われてどきっとするのでありますが、じゃ、国境で措置をして、そこで水際で対策強化ができるかどうかということを聞いておかなきゃなりません。今回の、本法案の改正が成立するということを前提にしますと、きょうは税関の方の、関税局、来られていると思うんですけれども、財務省ですね、税関でチェックする体制が、この四月から実施をされているいわゆる関税定率法、これで収穫物について輸入禁制品として国境措置としてこれが強化されるのか、どういう検査方法なのかとか、あるいはどの程度の期間とか時間で侵害の有無を判断するかというようなことまで、わかれば教えてほしい。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘になりましたように、関税定率法、このたび改正されまして、定率法の二十一条の輸入禁制品として、種苗法に基づく育成者権の侵害物品が掲げられたわけでございますが、税関におきましては、この輸入差しとめ申し立て制度によりまして、まず、権利者から提供されます国内そして海外での権利関係、そしてその侵害の識別ポイントといいましょうか、外観で判断するための情報、これらをまず権利者から求めまして、そのもとに取り締まりを行って育成者権の侵害疑義物品の発見に努めてまいるというふうに考えております。
 そういう侵害疑義物品を発見した場合には、認定手続を直ちに開始いたしまして、権利者そして輸入者からの意見及び提出される証拠をもとにいたしまして認定を行うこととしておりますが、必要に応じてサンプルを採取いたしまして、関税中央分析所におきましてDNA鑑定を行う、そして侵害物品か否かを速やかに判断することとしておるわけでございます。
 生鮮食品等も多いわけでございますから、できるだけこれは早急に、目下税関におきましては関税中央分析所においてしかDNA鑑定できませんが、農林水産省と連携を図りながら各地域の農業研究センター等にもこれをお願いいたしまして、各地域に入りましてもできるだけ早期に、具体的には、運送時間を含めても何とか三日以内ぐらいでDNA鑑定も含めてできますように進めていきたい、そのように考えておるところでございます。
七条委員 これは時間的なものが恐らく左右するのではないか。税関でどのぐらいの時間とか期間がかかるかによって、侵害されたものであってもきちっと認定するとか、あるいはそれらをきちっとやるために、関税定率法の輸入差しとめの申し立て制度というのがありますけれども、その申し立て制度の中に供託金、いわゆる申し立ての担当の制度がある。
 例えば個人の育成者の場合、この負担が大き過ぎて供託金が払えない、こういうような場合はどうしてやったらいいのか。これはやはり最近増大しているということが出てきますから、こういう問題も国でやっておかなければならない。これの場合は、財政当局がやるのか農林当局がやるのか、どっちがやるんですか、そういう、保護をやってやらなきゃならないような場合は。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 ただいま申し上げましたように、生鮮食品等の場合においては、腐敗等がありまして輸入者に損害を与えるおそれがある場合がございますので、定率法の二十一条の三におきまして権利者に対しましてその損害を賠償するための担保の提供を求めるというのが基本でございまして、基本的には今腐敗するおそれのある貨物が来た場合には、その輸入価格の一二〇%ということを原則として担保を求めるということによりまして、認定手続に入る場合にはそのような手続を行うということが原則になっております。
七条委員 これは田村局長、要は供託金を積まなければならないということになってくる。当然これは生鮮食料品であるから、時間の関係でそういうふうにして早く、供託金を積んで早く出してやる。もしこれが権利を侵害しているということが起こった場合にも、その供託金の中でどうにかしようという形です。あるいはしないということが出てくるということだと思うんですけれども。
 では、そうすると、そういう税関の検査に必要な人員の確保だとか検査技術の確立だとか、侵害認定の手続のマニュアルのようなものの作成とか整備体制というのはできているんでしょうね。当然関税の方ではできていますか。
田村政府参考人 お答え申し上げます。
 育成者権の侵害疑義物品の審査というのは私どもにとってもまさに初めての作業でございますので、そこは農林水産省とも十分連携を図りながら、既にこれまでももう何回となく、まず農林水産省の職員の方々に来ていただいて、各地域におきまして私ども研修を盛んに今やっているところでございますし、また先ほども少し申し上げましたように、農林水産省の監督下にあります種苗管理センターあるいは各地域の農業研究センターと十分連携をとりまして、DNA鑑定なんかも直ちに、迅速に行えるようにというようなことも含みまして、今盛んにその連携強化を図りつつあるし、研修も行っているところでございます。
 できるだけ早急にうまくその作業を進められるように努めてまいりたいと考えております。
七条委員 要は、先ほどから言いましたし今局長も答えておられましたけれども、DNA鑑定をどうするかということになるんだろうと思うんですね。ですから、これが一番迅速にやられるのか、あるいはやる場合の手順がきちっとした形で決まっているのか、先ほどのように時間がかかってしまうようなものについてはどうなるのか、こういうことだと思うんです。ですから、そこを農林省といわゆる財務省当局とがきちっと連係プレーをとらなきゃいけない。このDNA鑑定に対しての連係プレーというのはとれますか。
須賀田政府参考人 まず、税関吏の方にもちゃんとDNA品種識別技術についての知識を身につけていただきたいということで、私の方の種苗管理センターの方へ研修生の受け入れということをしております。
 あと、実際に通関の際には、まず外観でその形質、特性といったものを見まして、まず目視による識別というものをやりまして、それで少し疑問点が起きた場合にDNA識別ということにするわけでございます。私の方に相談の窓口の設置もいたしまして、税関の方から通報があった場合には私の方の技術を生かして直ちに識別に入る、こういう体制を整えたいというふうに考えております。
七条委員 ここにDNAの品種識別技術検討会、これは平成十五年の一月に「技術開発と利用のガイドライン」と書いたもの、こういう分厚い本、借りてまいりました。
 この中を見てみますと、DNAの検定技術というのは今非常に向上していることがわかりますし、この中にはインゲンだとかあるいはイチゴだとか稲のようなものを例を挙げて書いてある。あるいは今、畳というような話もしておりましたけれども、非常にDNA鑑定をきちっとやる、ともかくDNAを抽出するということが一番難しいということになってきますよね。
 これを、どういう処理をする、熱処理をするんだろうと思うんですけれども、どういう処理をしてどういうふうに早くやるかという識別認定の時間、こういうものをきちっと決めておいてやらなければ、いかにガイドラインができてきてもうまく作動をしてこないということが起こってくるんじゃないかと私は思うんですね。
 どういうふうに、そこをきちっとマニュアルをつくっておかなければならないんじゃないかな。
須賀田政府参考人 このDNA鑑定技術、塩基の並べ方の組み合わせでございます。
 ただいま先生がおっしゃいました稲、イチゴ、インゲンマメ等の収穫物については既に実用化をされている、本年度から、ナシ、桃等の果樹とかナス、ネギ等の野菜でも実用化に向けて技術開発に取り組んでいるということでございまして、どのぐらい時間がかかるかということでございます。
 今のところ、長くても二、三日ということでございますが、これは、できるだけ早く識別できるような技術開発にさらに一層取り組んでいきたいというふうに思っております。
七条委員 今長くても二、三日ということですけれども、じゃ、その二、三日というものも、いわゆる検査の対象に入れてDNA鑑定をする、収穫物あるいはこれが加工品であってもやるということですね、二、三日の場合は。
須賀田政府参考人 加工品は育成者権の保護の対象じゃございませんので、実は加工品については、私どもは重要な課題だというふうに受けとめておりまして、例えば、イチゴの菓子、ジュース、インゲンマメのあんとか煮豆、かんきつのジュース、こういった加工品のDNA品種識別技術というのを本年度から開発を進めようとしております。それができましたら、その育成者権保護の対象に加工品というものをきちっと位置づけたいというふうに考えております。
七条委員 要は、さっき言いましたように、収穫物の範囲というのは、DNA鑑定が早くできるかできないか、その技術を開発するかできないかによって範囲が決まるということでしょう。そういうことですね、今の言い方だったら。
 ですから、DNA鑑定をきちっとやらせるような技術を確保する、いわゆる迅速で簡便なDNA品種識別技術の確立の支援体制というのはとらなきゃならない。これは農林省だとか財政当局も含めて、これをきちっとやる。識別技術の確立支援体制というのは、できるんでしょうね。これは、やっておかなきゃならないですよ。
須賀田政府参考人 今のところ、私どもの独立行政法人であります試験研究機関の方で、このDNA鑑定技術の開発というものを主としてやっております。そして、うちの方で、公的機関で開発されましたら、その技術を民間にも移転いたしまして、広く分析サービスが提供できるようにしていきたいという体制で臨んでいるところでございます。
七条委員 いや、それが民間にと言うけれども、民間ができていないから、いわゆる民間の鑑定機関の整備の必要性が出てくるし、DNAの鑑定人の育成というのはしておかなきゃならない。
 これは、当然、例えば育成者権の侵害の事実が立証される必要があったとき、いわゆる育成者権者の方が立証をしなければなりませんね。そのときに、外国から入ってきたものを立証するときに、それをお願いしますと言って、やってくれるのか、簡単にそういう民間のところへ持っていって、そういうシステム上やってくれるのかということが一番問題なんです。ですからそういうことを言うわけで、そういうところまできちっと手厚いことがやれてなければならない。
 ですから、これは、DNA鑑定人の育成とか資質の向上とかいうことも、民間の団体、DNAの機関の団体、機関のようなものの整備の必要性も感じますが、そういうものについては、国としてどう考えるんですか。
須賀田政府参考人 先ほど申し上げましたように、今のところは、公的な機関、大学を含めまして、品種識別技術の開発に関する予算を講じまして、技術開発に取り組んでいるということでございます。
 民間機関はどうなっておるかということでございまして、例えば稲については、穀検を含めまして五つぐらいの民間機関が品種識別が可能になっておりまして、分析料金を徴収いたしまして、分析をしているという状況にございます。あと、インゲンマメとかイチゴとかそれぞれ民間の機関が、一つずつではございますけれども育っているということでございます。
 これを、できるだけ広く、多品種に拡大をしていきたいというふうに考えているところでございます。
七条委員 今、インゲンとかイチゴだとか稲とかいうのは、穀検を初めそういうところでできるのは私も聞いていますが、じゃ、それ以外のものはできるのか。
 特にDNAの抽出というところで、それをするのに時間がかかってしまったり、あるいは、なかなかまだ技術が確定していないために識別ができないんじゃないかということがあるんだということを聞いていますから、当然、このガイドラインの中にも、そういうようなことで、これから努力をしていかなきゃならないと書いてあるんです。だから言っているんですよ。もう一遍、そんなことですぐにおりてしまうわけにいかぬですね。
須賀田政府参考人 DNA品種識別技術というのは、この育成者権保護の基礎でございます。今度の法改正で収穫物を罰則の対象にすることができましたのも、DNA識別技術が開発されて、登録された種苗等の同一性が識別できるようになったということが背景にあるわけでございます。
 確かに、先生おっしゃるように、まだ三種類ぐらいの民間DNA分析機関しか育っていないということは、ある意味では情けないことでございますので、今後、できるだけ広く、現時点では努力しますということしか言えないわけでございますけれども、できるだけ多くの品種が民間機関でも分析できるような体制を整えていきたいというふうに考えております。
七条委員 努力するということで了承としておきますが、これはさっきも言いましたけれども、育成者権者、いわゆる権利の侵害の事実を立証するのは、こっちでやらなきゃいけないんですよ。ですから、申し立てをしておかなければ、それで調べてもらえない。そこで、いわゆる関税定率法できちっとやって、とめることができないんですから、それをきちっと民間で受けて、それを立証してやるような機関をつくっておいて育成しておかなければ、これは大変なことになるということだけはわかっておいていただきたい。そういうことがあるからこそ、今度のこの種苗法の改正というのは、意識があってできるんですよ。ですから、それが物すごくポイントにならなければならないことがわかっていなければなりません。
 これは、大臣、そういうふうにお聞きになられて、どうか。大臣がどういうふうに思っておられるか。副大臣も一緒に、できたら御答弁いただいておきたい。
亀井国務大臣 今度の法改正、今御指摘の、いろいろまだまだ検討しなければならないところもありますし、さらに今、いわゆるDNAの問題、技術研究所等々でいろいろ努力をしておるわけであります。これらも、この法の趣旨にのっとり、加工品等々につきましても、DNAの鑑定、いろいろ進んできておるわけでありますが、なお一層そのようなことを進めることができるように、努力をしてまいりたい、こう思っております。
七条委員 では、そういうことでお願いをしておきます。
 きょうは、太田農村振興局長にもおいでいただいています。いわゆる苗とか種を育てていくというのは、土のところになってくるんですね。
 いわゆる種苗法ということの原点は土だ。土をいいものをきちっとやって、その上に種をまく、苗を育てるということをしなければなりませんが、今、地力増進法という法律がありますでしょう。この地力増進法という法律の精神が本当に生かされているかどうか、私はわからないんです。
 特に、構造改善事業で真四角にして、真四角にしたけれども、土を一たんのけておいてまた戻してやる。真四角になって、いわゆる造成事業ができてくるかもわかりませんが、造成事業ができても地力が下がっている。
 こういうことがいっぱいあって、ここには、局と局の間で、土の物の考え方というのは、造成、土地改良区とかいいますけれども、土地改良じゃなくて土を悪くする、地力減退をやっているということがいっぱいあるんですね。だから、土地改良じゃなくて、土をつくるということをやっておかなければならない。
 これをやはり基本に置いておかなければなりませんけれども、じゃ、そういうことができていたのかどうか、そういうことをやっているのかどうかを聞いておきます。
太田政府参考人 先生御指摘のとおり、水田の整備に当たりましては、従来から、長年の営農によって培われてきました地力の高い表土を維持する観点から、表土を一たんはぎ取って、整地後にもとに戻す、あるいは、生産力の低い表土と下の方の良質の土を反転させるような対応はしてきておりますが、それが十分であるかということになりますと、地域地域によって状況は違っておると思います。
 ただ、平成八年度からは、土づくりの重要性にかんがみまして、水田の整備について、地力向上に向けました有機性資材の投入ができるような、そういう工種をつけ加えたところでございまして、畑の整備についても、その二年前に、六年度から同種の工種を導入したということで、地域の状況に応じた整備を可能とするような対応をしてきております。
 今後は、地域特性やニーズに応じてこれら制度の活用をさらに進めていくとともに、事業実施の期間中から関係部局と連携を図りまして、土壌管理を含めた適正な営農体制、こういったことにも配慮しながら努力をしてまいりたいというふうに考えております。
七条委員 これは、いわゆる農村振興局と生産局の間にやはり縦割り行政があって、生産局の方は、地力増進法の所管の局として、何とか地力を増進させるという物の考え方があります。しかし、振興局の方は、造成をするとか、真四角にするとか、できるだけ水はけをよくするとかいう感覚はあるんでしょうけれども、いわゆる地力を増進させるという気持ちがきちっと一致しているか、どちらかといったら希薄じゃないかと私は思えてしようがないんですね。
 ですから、今こういう外国から入ってきたものにDNA鑑定をするということも同じことでして、日本にあるものが安全だとか健康だとかいうことをつくる一番原点というのは土をつくること、肥沃な土をつくる。いわゆる農林省がもっと基本に立って考えなきゃならないのは、土をつくるということを忘れて、ただ生産性を上げるだけのことをやってくる、あるいは外国から入ってくるものより安いものをつくるだけのことを考えていくような農業ではもうだめなんだ。土をつくる原点に返るということをわかっていないような農林省であったら大変なことになりますから、私は土づくりということをもう一遍基本に置くということを考えておいていただきたい。
 これは、大臣が本当にそれをやるかやらぬかだけを聞いておきたいと思います。
亀井国務大臣 まさに農業は土づくりにある、このように私はかねがね思っております。
 私もいろいろの農家の方々を知っておりますし、私の先輩に当たりますけれども、本当にそこでいただくニンジンのおいしさというものは、私は非常に感銘を受けておるわけであります。その親子が土づくりに大変熱心に努力をされている、そして、その地域の先達として、農業のリーダーとして今も活躍をされておられるわけでありますけれども、そのようなことを経験しております。
 そういう面、あるいはまた、我が国の土壌、大変地域的な問題で、温暖多雨な気候、また急峻な場所等々、やはりどうしてもカルシウムであるとか有機物が流れてしまう、こういうようなことがあるわけでありまして、先ほど御指摘の土地改良も、そういう面で我が省の関係でいろいろ進めるわけでありますから、我が省の部局が緊密な連携をとりまして、要は、御指摘のような農業生産の基礎であります土づくりをいたしまして、地力を維持回復して、そして農業生産を上げていく。また、このことは国内の自給率を高めるもとでもある、このようにも考えておりまして、そのような指導をしてまいりたい、こう思っております。
七条委員 もう時間が参りましたから終わらせていただきますけれども、今農業が厳しい、農業が非常に苦しい。特に、こういう種苗法の中で、外国から入ってくるものに対して安全性とか健康とかいうことを考えると、やはり基本になるのは土づくりだということを農林省は肝に銘じて頑張っていただけるようお願いして、私の質問を終わっておきます。
小平委員長 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎欣弥です。
 知的国家戦略に基づいて種苗法を充実させる、この方向性については、我が党も賛意を示したいと思います。
 まず、種苗の品種登録制度、この出願者の割合は、企業が六割、独立行政法人を含む国、都道府県の公的機関が一割、そして個人が三割ということです。
 選挙も近まってまいりましたので、私の地元のことを申し上げさせていただきますけれども、私の地元福岡県では、農家の知的財産権取得に向けた支援体制の構築とその蓄積を進めるという観点から、多分これは他県に先駆けていると思いますが、農産物に絞った知的財産戦略の基本的方向と、その戦略を具体化するための行動計画を立てています。これがその資料なんですけれども、このことについては御承知でしょうか。
須賀田政府参考人 福岡県が、みずから育成者権というものを取得、保護、活用する、あるいは農家が行うそういうものを支援するという目的で、福岡県農産物知的財産戦略というのをおつくりになって、三月十一日に公表されたということは承知をしております。また、当省の職員も、中に入ってお手伝いをさせていただいております。
楢崎委員 それはありがとうございました。
 その中で、例えば違法輸入農産物に関する全国ネットワークの確立、あるいは水際防止対策の強化など農水省に提案しているはずですけれども、それも御承知ですね。
須賀田政府参考人 この戦略の中に、今先生言われましたような内容を含みます国への提案も盛り込まれております。
 これは、実は私ども、昨年の十一月二十日に提案を受けまして、今回の法改正は、この提案の内容も十分踏まえて検討した上で、必要な制度改正を行って、参考にさせていただいております。
楢崎委員 それでは、もろもろの提案事項がこの改正案によって担保されるのか、また、その提案に対する農水省の考え方なりを後ほどお伺いいたします。
 それで、まず、育成者権の保護という観点から入っていきたいと思います。
 育成者権が侵された場合、育成者権者はその損害賠償の請求ができますか。
須賀田政府参考人 育成者権が侵害される、すなわち、育成者権者に無断で種苗だとか収穫物が利用されるといった場合に、育成者権者は侵害者に対して、法律上、損害賠償を請求できるということになっております。
 この損害賠償請求に当たって、一般的には権利者の方から損害額等を明らかにする必要があるんですけれども、この点、種苗法は、一般の不法行為に基づく損害賠償請求の特例を設けておりまして、権利者が侵害行為による侵害者の利益の額を立証すれば、要するに、侵害者がどれだけもうけておるかという利益の額を立証すれば、その利益の額を損害額と推定することができるというような立証を容易にする規定と、それから、侵害者の方が自己に過失がないことを立証しなければ侵害者に過失があると推定するという侵害者の過失推定の規定と両方置きまして、権利者の救済を厚くしているところでございます。
楢崎委員 今までそのような事例はあったんですか。もしありましたら、重立ったもので結構ですから。
須賀田政府参考人 現在係争中のものが数件あると承知をしております。
楢崎委員 改正案が言うように、罰則の対象が拡大されるということは、当然、育成者権者による損害賠償請求の対象も拡大される。例えば、育成者権が侵害される形で種苗が海外に持ち出されて、収穫品として我が国に逆輸入をされた、それが確認された場合、論理上は、育成者権者は当該国もしくは当該者に損害賠償できますね。
須賀田政府参考人 登録品種が無断で持ち出されて、その種苗から生産された収穫物が輸入される、こういうものは育成者権の侵害に当たりまして、育成者権者は、無断で持ち出した者、それから収穫物を輸入した者に対して、それぞれ損害賠償請求は可能でございます。
楢崎委員 平成十三年に、中国から輸入されたインゲンマメ、いわゆる北海道育成品種の雪手亡ですけれども、これはDNA鑑定で判明したわけですけれども、この場合はどのような処置がとられましたか。
須賀田政府参考人 北海道が育成、登録をいたしました雪手亡、これが不正に海外に持ち出されまして、その収穫物が輸入されたということで、育成者権の侵害ということが問題になった事例でございます。
 この場合は、育成者権者でございます北海道が、先生おっしゃられましたように、DNA鑑定と比較栽培ということをいたしまして品種の同一性を証明するとともに、輸入を行った商社の団体に警告を発したわけでございます。その結果、この輸入を行った商社の団体が自主的にDNA鑑定を行いまして、今後権利侵害が起こらないような対策をとるというふうなことで話し合いが進んだというふうに聞いております。
楢崎委員 イチゴの侵害事例に見られますように、育成者権が個人育種家にある場合、これは、外国経由といいますか、外国が相手となれば難しいと思いますけれども、そういう場合、行政としてのサポート体制というものはあるんでしょうか。
須賀田政府参考人 育成者権の利用や侵害への対応というのは、この権者みずからが行うということが基本でございます。
 先ほど先生おっしゃられましたように、個人が三割を占めているということでございまして、そういう権利の主張を行う基盤が個人の場合は比較的脆弱ということでございます。この問題につきまして、私どもは、権利侵害等に対応するためのマニュアルというものを作成し、かつ、種苗課に相談窓口を設置しているところでございます。
 昨年十月には、植物品種保護戦略フォーラム、これは育成者権者等によって構成されている民間の団体でございますけれども、そういうフォーラムが、育成者権侵害に対してどのような措置がとれるか、あるいは、海外の品種保護の制度がどうなっているか、こういう情報を交換し提供するという業務を始めておりますし、専門の弁護士さんによります法律相談会の開催、こういう活動をそのフォーラムがやっておりまして、そのフォーラムに対して情報の提供、助言、支援というものを私どもは行っておりまして、個人でも権利行使が行い得る環境の整備というものに努めているところでございます。
楢崎委員 そもそも、先ほども話に出ましたけれども、関税定率法の改正によって育成者権侵害物品が輸入禁止製品として取り扱われるようになったわけです。税関における育成者権侵害物品であるとの見きわめとか水際防止対策については先ほど話が出ましたのでもう繰り返しませんが、一つ確認しておきたいのは、加工品の問題ですけれども、識別可能な技術が確立されれば保護の対象になる、こういう理解でいいんですか。
須賀田政府参考人 罰則の適用ということになりますと、やはり刑事政策といいますか、そういう上からは構成要件が非常に明白になっていないといけないということがございますので、DNA鑑定技術というものが加工品についても及ぶというふうになった場合には、まず種苗法を改正して、加工品も育成者権の対象に加えるという法改正をして対処するというのが基本じゃないかというふうに考えております。
楢崎委員 今は、入ってくる方の水際防止のことについて先ほども議論がありましたけれども、登録された種苗を無断で外国に持ち出す、これも当然育成者権を侵すことになるんですけれども、これの水際でのチェックは難しいでしょうね。どうでしょうか。
須賀田政府参考人 出す方、要するに育成者権者の許諾を得ずに輸出する、これは法律上は育成者権の侵害ということで、罰則の適用、あるいは民事上の責任追及というものがなされることになっております。
 ただ、実態上、植物体でございます種苗を、例えばスーツケース等に入れて持ち出すというのを通関の際に発見するというのは技術的に非常に難しいのは事実でございまして、私どもは、やはり、それが収穫物となって、輸入段階で侵害物品を捕捉するということが現実的ではないかというふうに考えております。
 ただ、だからといって、あきらめているというわけではございませんで、例えば、輸入された収穫物を捕まえる、その取扱業者から、その種子を持ち出したのはどういう経過でどういうシステムで持ち出したのかということを把握いたしまして、そういうことを把握した上で輸出問題にも対処するというようなことができるのではないかというふうに検討をしております。
 当面は、捜査機関というところに情報提供だとか品種識別技術を教授する等いたしまして、連携をいたしまして、輸出する者の責任追及というものにも検討を加えていきたいというふうに考えております。
楢崎委員 収穫物が税関でひっかかって、そこからさかのぼっていくということでしょうけれども、今捜査機関の話が出ました。大臣も参議院において捜査機関を念頭に置いた答弁をされておるようですけれども、大臣がイメージされる捜査機関の活用というのはどういうものですか。
亀井国務大臣 品種等々の性質から、大変難しいことであるのではなかろうかと。やはり、それらのものにつきましては、情報の提供、そういうことをしなければ、植物の品種等々のことでございますから、理解をするということはなかなか難しいことじゃなかろうかな、こう思います。
 そういうことで、この問題、いわゆる育成者権が、国ごとに出願、登録すべき、こういうことになっておるわけでありますので、我が国で登録された品種を外国において保護を受けようとした場合、その国において育成者権を取得しなければならない、こういうようなことになるわけでありますので、いろいろの情報提供、そしていろいろの権利を取得する、こういうことをまず最初に考えなければならないわけであります。
 その上に、先ほど来お話し申し上げておりますとおり、技術開発等々によりまして、それらの品種の性質、性格、そういうものが識別できるような努力をしなければならないわけであります。そういうことを踏まえた上で、その捜査の手法におきましていろいろなことがなされていただきたい、このように思うわけであります。
楢崎委員 現実問題として難しい面があることがわかったわけですけれども、やはり法を実効あらしめるためにも水際対策の強化が必要であると思います。
 まず外交を通じて、種苗法のPRそして理解を求めることが重要だと思いますけれども、先ほど言いました地元の福岡県では、その戦略を具体化するための行動計画の一つとして、海外での品種登録等の取得を挙げているんですね。これはUPOV条約に加盟している国が対象なんですけれども、無断栽培や販売などを阻止するために、当該国において品種登録出願を行う、さらに、にせブランドなどの流通、販売を阻止するため、当該国で農産物の商標権を取得するとしておるわけですけれども、これについて大臣、どう評価されますか。
亀井国務大臣 福岡県の農産物知的財産戦略の中におきましても、福岡県産農産物の輸出戦略品目につきまして、無断栽培や販売などを阻止するために海外において品種登録出願を行うよう、いろいろ努力をされております。農作物の国際的な品種保護を図る上でまことに意義深いことではなかろうか、このように私は思います。
 海外における権利取得を支援するために、海外の保護対象植物に関する情報をインターネットに掲載するなど、海外に出願する育成者への情報提供に努める、あるいはまたアジア地域等における品種保護制度の整備を支援していくなど、我が国から海外への品種出願件数は増加の傾向にあるわけでございますので、先ほどもありましたとおり、植物品種保護戦略フォーラムが設立され、このフォーラムにも支援を申し上げ、一層働きかけてまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 ぜひ、支援をしていただきたいと思います。
 一方、福岡県は農水省に、輸入農産物の輸入申告書等への品種名明記を義務づける法整備を提案していますね。一種のトレーサブル的な提案と思うんですけれども、これについて大臣の考えをお聞かせください。
亀井国務大臣 このたびの関税定率法が本年四月一日から施行されたわけでありまして、税関、財務省と農林水産省が一体となってこの育成者権侵害等の水際措置に取り組む、これは先ほど来もお話し申し上げておりますとおり、いろいろの情報提供等々また技術開発等を進めて、いろいろ進めてまいりたい、こう思っております。
 また、輸入申告書へは品名を記載させており、登録品種名の記載を義務づけていないわけでありますが、これは、本来、適正な関税を確保するため等の措置として品名の記載を求めているためであります。
 農水省といたしましては、税関、財務省と連携をいたしまして、輸入される農作物の外観やDNAの特性を手がかりとして、効果的な育成者権の侵害物品の摘発が図られるよう努めてまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 さらに福岡県は、東南アジア各国の品種保護制度の整備促進を提案していますね。これは、近隣の東南アジア各国では種苗法が完備されていないため、当該国での種苗登録による品種保護ができない状況である、このため外交を通じ、各国で種苗法制定や保護品種の拡充を図るよう提案しているものですけれども、これについてはどうお考えですか。
亀井国務大臣 現在、アジア地域におきましては、UPOV、植物新品種保護国際同盟に加盟しておりますのは、我が国のほか、中国そして韓国の二カ国だけであるようであります。
 アジア各国における品種保護制度の整備促進は極めて重要なことであります。そして、このアジア地域におきまして国際的に調和した植物新品種の適切な保護が図られるよう、UPOVを通じまして、品種保護の重要性に関する啓発や制度整備へのアドバイスをしてまいりたい。またあわせて、この保護制度の運用に指導的役割を果たす専門家を養成するために、国際協力事業団による研修等の活動を実施してまいりたい。
 そして、これらによって、中国、韓国が今加盟をしておりますが、近くベトナム、フィリピンの加盟が見込まれておるわけでもございまして、引き続き今後ともアジア各国におきます品種保護制度の整備に対しまして支援をしてまいりたい、こう思っております。
楢崎委員 ぜひお願いしたいと思います。
 そこで一方、国内に目を向けますと、これまでは、農業技術というものは広く公開すべきものという考え方から、排他的権利の設定というのは余り積極的でなかったんですね。つまり、権利意識がそういう意味では希薄だったと思いますけれども、やはりこれだけ国内外において競争率が高まってくれば、農林水産分野においても知的財産権すなわち育成者権というものの認識が高まってくると私は思います。
 そこで、育成者権と自家増殖との関係ですけれども、育成者権保護という観点からはどのようにお考えでしょうか。
須賀田政府参考人 種苗法で、育成者権者の権利が及ばない範囲として、一定の農家の自家増殖というものを規定しているわけでございます。
 これは、農家の自家増殖といったものが従来から農家によりまして慣行として行われてきたということに着目いたしまして、この自家増殖というものを禁止してしまいますと、禁止するというか育成者権者の権利が及ぶということにいたしますと、生産現場が混乱するということが危惧されまして、平成十年の改正の際、措置したわけでございます。
 実は、今回提案申し上げております法案の内容を検討する研究会を私どもはしたわけでございますけれども、その研究会におきまして、育成者権者側の委員から、育成者権のさらなる保護のために、自家増殖に対する制限を強化すべきではないかという意見が出されました。
 実は今、自家増殖の中でも、球根だとか挿し木を利用するいわゆる栄養繁殖植物は自家増殖の対象外ということで、育成者権が及ぶということにされていますけれども、そういう制限の範囲の妥当性というものを検証するという研究会報告になっておりまして、今後、この育成者権の保護とそれから利用側の保護というんですか、その双方の観点からこの問題の検討がされるということになっているところでございます。
楢崎委員 我が国の農業文化との絡みもあるんでしょうけれども、自家増殖の禁止、これは無理でしょうね。何らかの制約も考えられるのではないかと思いますけれども、一番大事なことは、今言われましたように、やはり現場で混乱が起こらない配慮が必要であろうと思います。
 次に、改正案では、法人による権利侵害に対する罰則の強化がうたわれていますけれども、これまでに法人による権利侵害はどんなものがあったのか、もしあれば重立ったものを挙げられますか。
須賀田政府参考人 先ほど御議論ございました、北海道が育成いたしました雪手亡、それから個人で育成しましたイチゴでレッドパール、こういう品種がございます。その収穫物を法人である輸入業者が輸入していたという事例がございまして、現在、この育成者権者の方で、輸入者等に対しまして警告だとか提訴だとかの措置を講じていると聞いております。
楢崎委員 この場合、警告のみに終わったんですか。それとも何か罰則は適用されましたか。雪手亡の場合は先ほど警告ということでしたけれども。
須賀田政府参考人 レッドパールの方は提訴中ということでございます。
 実は、収穫物の侵害に対する罰則は、今回の提案しております法律の中で措置する予定でございます。既に起こりましたこの件は、収穫物に関しましては罰則の適用ができませんので、罰則の問題は生じておりませんでした。
楢崎委員 その罰則ですけれども、この改正案は特許法同様に重要な法案になったと私は思うんですけれども、それにしては、特許法の罰金が一億五千万以下に対して、種苗法は一億円以下となっているわけですけれども、この差がついたのは何か理由があるんですか。
須賀田政府参考人 一般に、罰則の限度をどうするかというには、違法行為の対象となります保護法益というんですか、法益がどの程度尊重されるべきであるか、あるいは、その罰則によって抑止効果、すなわち適法な行為がどの程度期待できるか、それから、違法行為を行った者の責任がどの程度あるか、こういうことを総合的に勘案して決定されるわけでございます。
 実は、知的財産権、種苗法のほかに特許、実用新案、意匠、商標、著作権、こうあるわけでございます。この育成者権の侵害は、これら知的財産権の中で、著作権でございますとか意匠、デザインと同様なものではないかということで、これ並みの一億円ということに決まったということでございます。
楢崎委員 何よりも法の実効性が担保されることが重要なんですけれども、福岡県の行動計画が言うように、品種登録と並行して、その製品に商標権を併用するというか活用する、これが結局育成者権の保護につながるのではないかと思うんですけれども、最後にそのことについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 種苗法におきましては、品種の種苗を譲渡する場合には、その登録品種の名称を使わなければならないということになっているわけでございます。
 この品種名称使用義務というのは種苗のみに課されるものでございまして、収穫物につきましては、その品種の名称とは別の商品名、いわゆる商標を付して流通させることもできるということでございます。
 そういうことでございまして、すぐれた新品種そのものを育成者権で保護するとともに、販売戦略という観点からは、商標権を併用、活用するということが地域農産物のブランドの確立を行う上で有効な手段というふうに考えております。
 先生の御地元の福岡県でも、イチゴのふくおかS二号でございますか、これを、商品名「あまおう」ということで、そういうことが進んでおると聞いておりまして、私どもとしては、地域農産物のブランド化ということで、有効な手段というふうに積極的に位置づけたいというふうに考えております。
楢崎委員 終わります。
小平委員長 次に、後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 大臣、冒頭お尋ねを申し上げたいと思います。
 先ほど土壌の重要性について大臣お話しになっておりましたが、種がなければもちろん実がならないということで、一九六〇年代から七〇年代、多分、種苗法の一番スタートをした前後に種子戦争という言葉があったように私は記憶をしています。たまたま国会図書館でお借りをして、「種子戦争が始まっている」という、これは昭和五十八年の本を読ませていただきましたけれども、やはり日本の種、要するに種苗というものに対する認識と、特に欧米の、いわゆる多国籍という中でいろいろな意味で世界戦略を担っている国との、若干、種に関する、種苗に関する問題意識のあり方というのは当時から少しずつ違ってきたのかなと。
 逆に言えば、ようやく今回の法律改正で、育成者権も含めて収穫物に至るまで、もちろん例外規定は、先ほど生産局長がお話しになられたようにいわゆる自家増殖の部分はある程度配慮をしながら、新しい法律体系にしたということは私自身も評価をできるというふうに思っています。
 ただ、一方で、知的財産権という流れの中で、先ほどもお話がありましたように、著作権であるとかデザインであるとか、そういう中で種苗法というものを入れ込んで、工業所有権とようやく肩をきちっと並べたような感じがします。これも、時代の流れの中でこの種苗法が、ある意味では種屋さん、農家の保護ということから、ようやく世界にこれから種という部分でも日本が物を流していくという部分に来たというふうにも思っています。
 ただ、今までの農林水産行政の中で、この種子というものをある意味では国家戦略という位置づけにしてこなかったのではないかなというのは、冒頭御指摘したようにアメリカ、ヨーロッパではデュポンみたいな世界で有数の企業体も含めて種子というものに参画をし、MアンドAを繰り返し、今、世界で一位二位、多分、タキイさんやサカタさん、日本でも有数な企業の五倍六倍の売り上げを得ているというものを考えたときに、もっと種、種子というものについても国家戦略的な意味合いを持ちながら農林水産行政の下支えをさせる、その役割を果たすべきだと思うんですが、その点について大臣の御見解をお伺いいたします。
    〔委員長退席、鮫島委員長代理着席〕
亀井国務大臣 今委員御指摘のとおり、全く私も同じような意見を持っております。
 種子等は、種苗はまさに農林水産の生産における不可欠の基礎的生産資材であるわけでありまして、優秀な新品種の育成、またその種苗の生産、これは大変重要なことであるわけでありまして、我が国の農業の発展を支える大きな重要な柱である、このように考えます。
 そこでまた、水稲、米や麦の関係につきましては、いろいろこの種子につきましては都道府県による採種体系、これを確立しておるわけでありますし、野菜や果樹、花卉の品種、これは大変世界的に見てすぐれておる、このように思っております。
 この間も申し上げましたが、筑波の研究所等々におきましても、いろいろ農業関係の技術開発のために努力をしております。そういう面でも、種子の問題、種苗の問題というのは大変重要なこととして、さらに我が国の知的財産、私は知的財産の閣僚会議等々におきましても、この種苗の問題、法改正をし、また種子の問題等々につきましても発言をいたしておるわけでありまして、その振興のためにさらなる努力が必要である、このように認識をいたしております。
後藤(斎)委員 今の、大臣、本来であればもう少し具体的に、例えば五年、十年計画という中でこれから対応していただきたいと思うんですが、そのためにも、大臣も今お触れになったように、いわゆる試験研究機関がどういう形で、霞が関の行政の部分と試験研究機関の部分が一体となって、その目標を数字的に明示することは大変難しいと思いますし、まだ世界の種の、種子の現状を見ても、途上国を入れれば多分自家採種という部分がかなり、七割という統計もございますし、逆に言えば、この七割部分がこれからいろいろな世界じゅうの、日本の企業も含めてF1というものにいずれシフトをしていく。古い推計値だというふうにも思いますけれども、今大体五十億ドルくらいある市場がその十倍の、自家採種がいずれF1の部分に変わっていくであろうというときには五百億ドルの市場に最低でもなるだろうというふうなことも言われています。
 冒頭もお話ししたように、種がなければ生産物が育たない、これは当たり前のことでありますが、農林水産省は、その部分の下支えというか、具体的なものとして、試験研究にどのような形で行政とタイアップをしながらやられておるのか、簡潔に御説明をお願いしたいと思います。
石原政府参考人 種苗の開発等に関します行政との関連等についてでございます。
 新しい品種の開発あるいは種苗の育成技術といったことにつきましては、食料・農業・農村基本計画が策定されております、それに基づきまして、試験研究のサイドでは、農林水産研究・技術開発戦略ということで、五年後、十年後、十三年に作成しましたので目標としましては一つは平成十七年度、それから平成二十二年度目標ということになります。その中におきまして、個別の品種ごとに、十七年度までには例えば高リコピンのトマトを開発しようとか、そういう形の育種目標を設定しております。そういう戦略に沿いまして、試験研究を進めているところでございます。
 具体的に申しますと、こういう種苗関係の試験研究につきましては、一つはそういう品種を開発するというのがございます。あるいはまた、これは非常に基礎的な分野になりますけれども、昨年イネゲノムの塩基配列の解読を終了したところでございますけれども、それに基づいて育種の素材となるような重要な形質を解明していくといったような研究ですとか、あるいはDNAのマーカーを用いた育種のスピードアップといったことも含めて研究開発を進めることにしております。
後藤(斎)委員 今局長がお答えをいただいたように、ようやく総合的なという部分で、食料自給率の向上であるとか食の安全、安心の確保、輸入農産物に対抗するような部分ということで、新鮮でおいしいブランド・ニッポン農産物提供のための総合研究という形は出てきたと思うんですが、まだまだ育種という部分にある意味ではウエートが行き過ぎているのかなというふうにも思わざるを得ないです。
 一方で、一九八五年に、今まで個々の研究機関で行われたということでありました遺伝資源研究、この事業をネットワーク化し、農林水産ジーンバンク事業という形で遺伝資源を収集、保存、配布、そして成果を上げるというふうなことで、これは今は独立行政法人になりましたが、農業生物資源研究所が実施主体となってその事業運営をしているというお話をお伺いしています。これは、種という種子の一番のベースになる遺伝資源を、原種に近いものをできるだけたくさんの外国から収集をし、いずれ何らかの形で役立てようという事業だというふうにも認識しております。
 これは、私も以前JICAにいた人間として、当時JICAのプロジェクトとしても、このネットワーク、ジーンバンク事業を下支えしながら遺伝資源の収集を、保存をしたことも記憶しておりますが、現在、このジーンバンク事業、どんな形で対応なされておるのか、簡潔に御説明をお願いしたいと思います。
石原政府参考人 農林水産ジーンバンク事業についてのお尋ねでございます。
 昭和六十年度にスタートしまして、植物資源でその当時は十二万四千点だったわけでございますが、その後収集等に努めまして、平成十四年度末で二十二万五千点になっております。
 保存の機関等につきましては、全国の十四機関三十五カ所でこの二十二万五千点を保存しておるという状況でございます。
後藤(斎)委員 質問通告をしていないのですが、ベースの話で生産局長にちょっとお尋ねをしたいと思います。
 今回の法律の中で品種というときに、品種登録をする際に、「品種」、法律でいえば第二条に規定をされております。「重要な形質に係る特性の全部又は一部によって他の植物体の集合と区別することができ、かつ、その特性の全部を保持しつつ繁殖させることができる一の植物体の集合をいう。」という規定がありまして、「重要な形質」というのが、色とか草丈とか葉の形状が該当する、「特性」は、花の色みたいな、赤いということが特性になる。
 いろいろな注意書きが附属書にあるんですが、先週も、新食糧法のときに前回にもお聞きをしたんですが、今触れられました農業生物資源研究所の、例えば花粉症の症状を緩和する米であるとか、大腸がんなどの予防に効くであろうという例えばイチゴ、このようなものは、今回の品種登録を例えばしようと思ったらできるものなんでしょうか。
須賀田政府参考人 ただいま先生が申されたような特性を保持しながらも安定的に繁殖できる品種というものができましたら、植物の新品種として登録は可能でございます。
 要は、既存の品種と重要な形質において明確に区別できるか、そしてまいた種子からすべて同じような均一なものができていくか、それから安定して、要するに何世代増殖を繰り返しても同じものができるか、こういう区別性、均一性、安定性というようなことが確保されれば、今言われましたような特性を有しておれば、品種登録は可能だというふうに思っております。
後藤(斎)委員 局長、その際に、審査期間が三年間あって、圃場で植えて、それを食べ続けて花粉症に効くかどうかということも例えばイチゴで繰り返しやって、その特性があるかどうかという判断をなさるんですか。
須賀田政府参考人 仮定の御議論でございますので、実際どうやるかということについてはその時点で判断せざるを得ぬと思いますけれども、恐らく、そういう品種を出願される方、登録申請をされる方は、こういうことで花粉症に効くんだという何かデータを添えて申請されるというふうに思います。
 私どもは、そのデータの真実性というんでしょうか、それをチェックさせていただいた上で、現実の栽培試験については、先ほど言った均一性だとか安定性だとかをチェックするということに恐らくなろうかというふうに思っております。恐らく、花粉症に効くかどうかまで実験せぬといかぬというようなことでの出願というのは、ちょっと考えられないと思います。
後藤(斎)委員 となると局長、なぜ、これはこだわりません、ちょっと言うだけでこの質問は終わりますけれども、前回も大臣にも、機能性食品、特に機能性米みたいなものがこれから出てくることは、安全性という問題をきちっとクリアすれば、要するに、食べながらいろいろな病気が本当に治るのかは別としても、少なくともそれにプラスになるということであれば、需要拡大になって、全体、例えば米の生産調整、今よりも違った形のあり方も望まれるのではないかという中で、私も考えて、今回、米であれば農業生物資源研究所がメーンでやられ、イチゴであれば産業技術総合研究所の方がやられているというふうな、具体的な研究開発機関もある中で、いずれ、近い将来、品種登録をきちっとしながら種苗法の枠の中で対応しようということを多分お考えになっていると思うんですね。
 そのときに、これは研究機関と研究者ということであれば、農林省の方でお聞きをしますと、今まで研究機関だけが、特許とか、今回で言えば種苗法のロイヤルティーを受ける権利があったそうですけれども、最近、法律というか内規を改正されて、おおよそ研究所の組織に入るロイヤルティーの部分と研究者に入る部分が半々で、できるだけ研究者の個人的な研究意欲を高めようとする動きがあるということをお聞きしましたが、そうだというふうに理解をしておいてよろしいですか。
石原政府参考人 品種開発等に伴います開発者への報償金のお話だと思いますけれども、特許なり、作物の関係ですと育成者権になるわけですが、特許の職務発明者の特許権の帰属、機関に帰属して報償金を出すというシステムになっておるわけですが、それにつきましては、従来ですと六百万円の限度額があったんですが、頭打ちをなくしまして、一定の率に従って出すと。いわば青天井になるわけですが、そういう意味でのインセンティブの発揮ですとか、あるいは育成者権につきましては、これも、新しい品種を利用していただいて、その利用していただいたものについて、一定の利用率を掛けるということで、に見合っての報償になっておるわけでしたが、そこの一定の利用率の見直しを行いまして、インセンティブが働くような形での改正を行っております。
 したがいまして、そういう意味では、そういういろいろな改正等を通じまして、できる限りインセンティブが働くような形で対応しておりまして、今後ともそういうような形で対応したいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 もう一つ、この種子の問題を考えるときに、実際、タキイさん、サカタさんを含めた大手、カネコさん、雪印さんも含めて四社がかなりのウエートを日本の種子産業の中で占めておられる。一方で、海外に圃場を持ちながら、良好な種を一回海外で生産させ、輸入ということで国内でF1処理をしてというかコーティング処理をして国内の農家の方に販売をするという中で、輸出輸入というものが数字的にどういうふうな意味合いを持つかということはあると思うんですが、いわゆる食料自給率と同じような種子の自給率というものがない中で議論が進められているという感じもして、一方で先ほども御指摘をしました自家採種、自家増殖という部分がもちろん大きなウエートであるということは承知をしておりますが、種ということでいえば、苗も含めてかもしれませんが、自給というものに関してどのような考え方をお持ちなのか。
 農水省の御見解をお伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 種子がどのようなことで国内あるいは海外から供給されているかということでございます。
 稲、麦、大豆、こういったものの種子は、国内使用種子の全量を国内で採種しているという状況でございます。一方で、野菜あるいは飼料作物につきましては、コストの面でございますとか、採種期に雨が多い等の問題がございまして、原種のかけ合わせ等を海外で行っておりまして、それを輸入しているという状況でございます。
 それを自給率という観点からいきますと、稲、麦、大豆は一〇〇%、野菜が一四%、牧草類が〇・四%、こういうふうになっております。ただ、その野菜とか飼料作物につきましても、育種技術、もとになる技術は、担当によりますれば、世界に冠たるものが我が国はあるということでございまして、野菜については我が国で生産される品種の大部分、牧草についても半分が国内で育成された品種ということでございます。
 我々といたしましては、せっかく国内用に育成された品種が、海外で生産に用いられて、そのまま日本に輸入されるというようなことは避けてもらいたいなというふうに思っているところでございます。
後藤(斎)委員 今、局長が答弁をいただいたような、最後の部分で、確かに水際の部分、先ほども同僚議員からもお話がありましたが、どういうふうな形で水際措置を、対応するかという部分だと思いますが、一方で、今、WTOの議論が進みつつございます。
 関税定率法がことしの三月二十八日に成立をして、四月一日から施行されておる中で、知的財産権にかかわる水際措置の強化という部分で、育成者権侵害物品を輸入禁止品に追加、輸入差しとめ申し立て制度の対象とするというふうな規定があった中で、通常であればWTOの貿易禁止措置の追加的付与というのはなかなか認めないというものがある中で、外務省の方に、WTOとのどんな整合性を持ちながらこの定率法が改正されたのか、御説明をお願いしたいと思います。
佐々江政府参考人 WTO協定との整合性についてのお尋ねでございますが、WTOの協定におきましては、ガットの第二十条(d)項というものがございまして、これは一般的な例外を定めた条項であります。この(d)項におきまして、この協定の規定に反しない法令の遵守を確保するために必要な措置を採用すること、また実施することを認めております。
 そして、このような場合、二つを要件として認めているということでございます。すなわち、このような要件とは、まず第一に、同様の条件のもとにある諸国の間において、任意の、もしくは正当と認められない差別待遇の手段となるような方法で適用しないということでございます。それから第二に、国際貿易の偽装された制限となるような方法で適用しないということが定められております。
 この二つの要件、最初の方については、例えば、特定の国を有利あるいは不利にしたりするようなことはいけないということでありますし、二番目の方は、例えば国内を取り締まらないで輸入だけをねらい撃ちにする、これは偽装された制限である、貿易を制限するためにやっているというふうに思われるわけですが、そういうことをやってはいけないということを言っているわけであります。
 したがいまして、こういう条項に照らして今回の措置がどういうものであるかということを判断しなければいけないわけでございますが、まず、そもそも種苗法は、二十条(d)項に言う協定の規定に反しない法令であるということが言えると思います。この二十条(d)項におきましては、協定の規定に反しない法令の例として、特許法、商標法あるいは著作権といった法令が例示として述べられておりまして、こういうものを含むというふうにされておりますので、種苗法もガットの規定に反しない法令であるというふうに解釈されるわけでございます。
 それから、このような種苗法、その条項に従いましては遵守を確保するために必要な措置でなければいけないということになるわけでございますが、今回の一連の改正につきましては、そもそも、育成者権の侵害物品を輸入禁制品に追加するといった改正が行われたということでございまして、これは、育成者の育成者権侵害事例が増大している、こういう状況にかんがみまして、国内における育成者権侵害物品の流通に関する罰則の強化を行う、これと同時に、水際措置をとるということでございます。
 また、この内容も、先ほど申し上げましたようなWTOの加盟国間あるいは国内外で恣意的な差別をしておらないということでございます。
 したがいまして、先ほど述べましたガット二十条(d)項、それから二つの要件を満たしているというふうに考えておりまして、今回の輸入禁制品追加等の水際措置をとることについては、二十条(d)項の一般的例外に当たる、WTO上も許容されるというふうに考えております。
後藤(斎)委員 わかりました。
 二十条(d)項に基づいてということでありますが、農水省の方にちょっとお尋ねをしたいと思います。
 これは、もしかしたら財務省の税関当局との関係もあると思うんですが、国内外の育成者権の侵害事例、輸入品、水際でという部分と国内の部分、どの程度市場に出回っているというふうに認識をまずなされておるでしょうか。
須賀田政府参考人 昨年の十月に、育成者権者を対象にいたしましたアンケートを実施したわけでございます。その結果によりますと、育成者権者の二七%、約三割が、国の内外において権利侵害を受けたことがあると回答をしております。
 さらに、権利侵害を受けたことがあるというふうに回答した者に、その内容について質問をしたわけでございます。これは複数回答でございまして、まず、国内で種苗の無断増殖等が約六割、五七%。それから、国内で種苗の無断増殖と収穫物の販売、こういう権利侵害が約五割、四七%。先生お聞きの、海外で増殖した収穫物の我が国への輸入、販売というのが二五%でございます。三割が権利侵害を受けた、そのうちの二五%、四分の一が海外での侵害を受けたということでございます。
 種苗、収穫物は、育成者権者の許諾を受ければこれは利用可能でございます。実際に許諾を受けているかいないかということが育成者権者でなければ判別できないというようなこともありまして、どの程度市場に出回っているのかということの把握は、実は困難な状況にございます。
後藤(斎)委員 局長、今、確かに判定が難しいというのはわかるんですが、であれば、なぜ、権利の保護の観点からということで、大変、もっと難しくなるであろう収穫物まで罰則規定をやって、その実効性も後でちょっと触れますが、やはり農水省がこの法案の主管をする官庁であるのであれば、どういう形で、アンケート調査、私もここにありますからその内容は承知をしておりますが、アンケート調査でしか権利侵害の実態が把握できないということは、今までの、現行の法律体系の中で、何もしなかったというと大変しかられるかもしれませんが、少なくともそこが不十分だったということはお認めになりますか。
須賀田政府参考人 育成者権の効力が及ぶ範囲というのは、登録された種苗に及ぶことはもちろんでございますけれども、当然、収穫物に及ばないといけないわけでございます。
 前回の改正の際には、収穫物に対して民事上の権利請求はできるというところまで改正をいたしました。ところが、罰則の適用になりますと、これは、捜査御当局等が登録された品種と収穫物の同一性を識別する技術が確立されていないのでなかなか罰則の適用が難しいということで、前回の改正でここは見送られたわけでございます。本来対象にしなければいけない収穫物についての識別性がDNA鑑定等によりまして実用化してきましたので、今回は前回の積み残しでございました罰則の適用という改正に踏み切ったわけでございます。
 こういう経過をたどりまして、いわば先生言われるなら欠陥でございました部分を埋めたということでございます。
    〔鮫島委員長代理退席、委員長着席〕
後藤(斎)委員 先ほど外務省の方にもお尋ねをした関税定率法の改正、これも、育成者権侵害物品の輸入禁止措置というのは、多分、前回の法律改正のときにも育成者権の明確化、効力の拡大というのを入れましたから、本当はそのときでもよかったのでしょうけれども、なかなか単独だとやりにくいし、知的財産権という大きな網がかかったからとりあえずわっとやろうという気持ちだったのかどうかは別としても、流れでは正しいと思うのです。
 ぜひお願いをしたいのは、これは後で大臣にもまとめてお伺いをしますが、実態について把握をしない中でこれを進められるというのはやはり余り納得できないわけですね。
 特に、先ほど局長が引用されたアンケート調査の中でも、逆に言えば、品種登録で不満なのは何かという一番は、要するに、現行で三・一年、というと三年一カ月ぐらいということですか、かかっておる平均審査期間をもっと短くしてくれ、三年も待ったら新しい品種がどんどん出て自分たちの権利侵害が逆に出てくるんだということだと思うんです。
 現在二十二人の審査官しかいないという部分で、農水省からいただいた、平均審査期間を、平成十七年度ですから再来年までに、〇・一年間短くして、目標を三年にしよう。確かに、種をまいてそれを収穫してその形状とか見られるということで、期間がかかるのはわかるんですが、審査官を例えば増員したり、審査官の資質を向上したりということで、要するに、審査体制を充実強化することでこの審査期間というのは短縮できるものなんでしょうか。そうであれば、ぜひ、その二十二人を増員する、ないし資質の向上も含めて、その充実強化というのをやらなければいけないと思うんですが、いかがでしょうか。
須賀田政府参考人 先生おっしゃいますように、審査期間の短縮というのは知的財産権すべてを通ずる課題になっているわけでございます。正直申しまして、定員の増も図ってきた、それからデータベースの整備も図ってきたということで、平成九年は平均四・一年だったわけでございます。十四年に三・一年というふうに短縮したということでございます。
 今後、出願手続を電子化するとか、まさに先生言われた審査官の審査能力を高める、あるいは栽培試験というものをもっと効率的に行えるような体制を整備するというようなこととともに、定員管理、非常に厳しいんですけれども、定員についても充実を図るべく努力するというようなことで、審査期間を、十七年度の目標が三年と言っていますけれども、さらに短縮するように取り組んでいきたいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 わかりました。ぜひその点は早急に対応をお願いしたいというふうに要請をしておきたいと思います。
 あわせて、先ほどこれも局長のお話にもありましたように、種というのは、ある意味で輸出輸入というのが非常に頻繁に行われているものである。その品種保護ということでは、もう四十年以上前にUPOVができ、できるだけ新品種の育種者の権利保護を国際的に下支えしようというふうな条約も発効されておって、現在は五十二カ国ということで対応なされておりますが、まだまだ入っていない国もたくさんあるわけですね。特に、アジアでいえば中国、韓国が近年加盟国に入り、アジアで三つの重立った国は入っておられるという中でも、日本と農産物貿易で深い関係にあるタイ、インドネシア、台湾も含めて、まだまだ加盟をされていない国がある。
 そういう意味では、それぞれの独自で新しい品種の権利保護みたいな概念がつくってある国であればまだいいんでしょうけれども、なかなかそうでない国もあるという中で、UPOVへの加盟促進ということも、国内の法体系の整備だけでなくて、国際関係全体でそういうふうな促進ということが特に必要だというふうにも思う分野の一つだと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
須賀田政府参考人 先生おっしゃいますように、幾ら我が国で種苗法を整備いたしまして、国内の育成者権の保護に努めましても、これは、一たん海外へ持ち出されて、海外での行為に対しては我が国の法律を適用できないわけでございます。その海外の国でやはり同様の品種保護制度をつくってもらいまして、その国で申請をして、ちゃんとその国の法体系で保護される、こういうことがなければ完璧な育成者権の保護にならないわけでございます。
 そういう意味で、アジアでは、先生言われたように、我が国と中国と韓国、三国しかUPOVに入っていないということでございまして、まず、そのほかの国に対しまして、国内体制を整える必要がございますので、品種保護制度の整備に向けた啓発活動でございますとか審査技術、こういうものの支援を行いますとともに、各国の専門家、特に指導的役割を果たします専門家を養成するために、国際協力事業団による研修、こういうものの活動を実施しているところでございます。
 近くベトナムとフィリピンがUPOVに加盟するというふうなことが見込まれておりまして、先ほど先生言われましたインドでございますとか、そういう未加盟国へも加盟の働きかけをしていきたいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 もう一つ、局長、要するに、今回罰則規定を上げ、私は、ある意味では一億円でいいというふうに、重罰規定もいいと思っていますけれども、例えば対象範囲も収穫物まで拡大をしてということでありますが、今までの訴訟というか、権利侵害があったときの法的措置をとらなかった理由ということで、和解というのはお互いに話し合ってやるからいいんでしょうけれども、手間やコストが合わない、幾らかかるかというのが非常に不透明だということももちろんあると思いますし、相手方がだれだかわからないという、幾つかの理由で法的措置をとらなかったという方が結構たくさんいらっしゃるわけですね。
 今回、刑事罰も含めてやったからいいんだということにはなかなかならないような感じも、一歩その部分では前進はするんでしょうけれども、その辺の部分は、農水省としてその権利侵害に対して何らかの後押しをなさっていくおつもりはあるんでしょうか。
須賀田政府参考人 先生がおっしゃいますように、出願の三割は個人でございますので、個人でございますと、金銭面もさることながらその手続というところで、権利主張というのを行うことが実際問題として、基盤が脆弱であると申しますか、なかなか難しい実態にあることは事実でございます。
 私ども、そういうことに対応して、権利侵害にどのように対応したらいいかというマニュアルというものを作成いたしますとともに、相談窓口というのを本省につくりたいというふうに考えております。そして、民間の方でも、育成者権者の皆様方等が集まった団体ができておりまして、育成者権の侵害に対してどのような措置がとれるんだというような情報を提供するとともに、専門の弁護士さんによる法律相談会というのを開催するということでございますので、そういう民間団体に対して、私どもが持っている情報提供、助言、こういったものに努めることによって権利行使が行いやすい環境というものの整備に努めていきたいというふうに考えております。
後藤(斎)委員 大臣、最後にまとめて幾つかお伺いをしたいと思います。
 先ほどもちょっと御指摘をしましたように、関税定率法が改正され、育成者権侵害物品を輸入禁制品に追加をし、輸入差しとめ申し立て制度の対象とするということで、形は前進はしたと思うんですが、実際、輸入差しとめ申し立て制度についても、供託金制度、先ほど関税局長のお話ですと、当該物品、コンテナなのかどうなのか、形状によって違うと思いますけれども、輸入金額で一二〇%を預けないとそれができない。そして、供託命令も、例えば生鮮に近いものであると、そのスピードというのは、損害賠償が、もしかしたら負けちゃったら困るなということで、なかなか実効性が、できないというケースがこれから多分ふえてくると思うんですね。
 ただ、水際でとめない限り、今回の法律改正をした育成者権の部分が、きちっと実効性がないということも現状だと思うんですね。
 具体的に幾らかかるかというのが、先ほども局長にお尋ねをしましたところ、実態はアンケート調査以外になかなか把握ができていないということもあるんですが、日本種苗協会という社団法人もございますし、これは千数百社、かなりの種子関係者の方がお入りになられている。その方たちでも、輸入までしてどうこうという方は少ないかもしれませんから、例えば、行政もある一定の基金を積むお手伝いをしながら、そして自治体からの品種登録というものもふえている、その割合に応じてかどうかは別としても、私は、この供託金制度、輸入差しとめ申し立て制度がきちっと機能しながら、種子というものがきちっと保護される、この種苗法の改正というものが本当に生きるような形を、大臣も汗をかかれて、私は、そういうものの具体的な方向性を出していくべきだと思うのですが、その点を含めて、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
亀井国務大臣 いろいろ委員の皆さん方から御意見を承り、またこの問題、知的財産の問題、全体としても我が国はまだ非常におくれているところもあるわけでありまして、先ほど局長から答弁いたしましたとおり、相談窓口ですとかいろいろなことをやらなければなりませんし、さらに、税関、財務省と緊密な連携、そしてさらに技術の開発等々、いろいろな課題がございます。
 これらを踏まえて、いわゆる侵害品の識別や申し立て手続、こういうような面で、必要な情報の提供また助言、これは大変必要なことであります。ぜひ税関あるいは財務省とも連絡をとり、さらには、私どもとしても、この制度をスタートするに当たりましていろいろ勉強して、そして、いわゆる権利侵害、こういう方々の申し出というものがいろいろな面でスムーズにいくようなことは検討していかなければならない、こう思っております。
 課題はあると思いますが、充実したものにするために努力をしてまいりたい、こう思っております。
後藤(斎)委員 ぜひ、大臣から最後にあった充実をしていただくという観点で、実効性があるものにしていただくようにお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございます。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 最近、いわゆる商社等が、日本で育種された品種のインゲンとかあるいはイチゴとか、そういったものを海外に持ち出して、海外で安く生産して日本に逆に輸出してくる。日本の生産者にとっては、同じものが安く海外から入ってくるということで、大変打撃を受けるという事態が頻繁に起こりつつあるという実情から、今回の法改正になったのじゃないか、そう思われます。
 中でも、水際で入ってくるものについて、収穫物等について輸入差しとめができる、これは大変画期的なことだ、そう思いますが、生産局長にお伺いしたいのですが、現実には、例えばそれが本当に自分たちが育種したイチゴの品種であるかどうか、そういったものは一般にどのようにして、いわゆる育種権者あるいは生産者は、国内の許諾を得て生産している生産者等は、競合するイチゴとかそういったものに対しどのような形でそれを見分けしているのかどうか、お伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 大変大事な御質問だというふうに思います。
 登録された品種と輸入される収穫物との識別性でございますが、まずは、外観の形質、特性から識別をする。例えばイチゴでございますと、イチゴの形、円錐形か長形か、あるいは色、それから果肉が白っぽいか赤っぽいか、それから果心の色、そういうものを外観からまずチェックいたしまして、結構、特性があるわけでございます。その上で怪しいということになりましたら、DNA鑑定で識別をするという手順を踏むことを考えております。
山田(正)委員 いわゆるイチゴの外観、におい、色、形、そういったものである程度識別できるのじゃないかということなんですが、では、それを生産者が、例えば育種権者がそういう形で自分が育種したものであると判断するのか。あるいは水際で、検疫の場で、病害虫の検疫と同じように、これは種苗法に違反する品種じゃないかという検疫ができるのかどうか。
 いわゆる検疫、輸入する場合に植物検疫に必ず通さなければいけないと思うのですが、これは通さなくてもいいんですかね。通すとしたら、その場で病害虫とかその他の検査があると思うのですが、まず、その辺がどうなされているのか。その場で、そういう検疫の場で、におい、形、色等々から、種苗法違反、侵害の品種じゃないか、収穫物じゃないかということを水際で検疫の係官が判断できるのかどうか、それは無理なのかどうか。その辺を局長にお聞きしたいと思います。
須賀田政府参考人 まず、植物防疫でございます。これは、植物防疫法にも書かれておりますけれども、海外から植物の病害虫が我が国に侵入することを防ぐ、要するに、国内でこれが蔓延して農作物に被害を及ぼすことを防ぐということで、そういう観点から検査をしている、病害虫がついているかどうかという検査をしている。
 この育成者権の保護のための水際措置といいますのは、関税定率法に規定されておりますとおり、税関による取り締まりの対象ということでございまして、私どもは、税関に対しまして、ただいま申し上げましたような、外観から識別するマニュアルでございますとか、相談に応じてDNA鑑定をするでございますとか、そういうものを税関ときちっと連絡調整するということを考えております。
山田(正)委員 間違いなんじゃないか。税関でそういう植物の育種の云々というのを、法律では関税定率法でそうなっていますが、調べる、いわゆる農水省としての植物の検疫は病害虫等々に限られるということは、ちょっとおかしいのじゃないかなと思う。
 農水省の植物検疫の段階で、いわゆる育種の専門家である農水省の係官が、品種について、育種権の侵害種といったもの、収穫物といったものについて、当然知識もあり、専門的であり、そこでやるべきなんじゃないか、そう考えますが、大臣いかがでしょうか。
亀井国務大臣 植物検疫と今回のいわゆる育成者権の問題、これはやはり異なりますので、この育成者権の問題は税関、こういうことが妥当ではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 税関というのは、例えば工業産品から電気製品からあらゆるものの輸入に対して扱っているわけであって、むしろ植物検疫というのは、まさにそれこそイチゴとか雪手亡とかそういったものに病害虫がないかどうか、そういったものを調べている。その過程において、当然、植物あるいは農産物の専門家である農水省の方がそれについての、水際でのマニュアルを作成しながら、専門家を育成しながら、そしてそういったコピー商品の輸入を差しとめするというのは、その方が税関に任せるよりも合理的だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。もう一回。
亀井国務大臣 育成者権の侵害、こういうことでありますので、やはりまずは、その辺はどのような申し立て、侵害の有無、こういうことを考えるわけでありまして、その判断には、どういうような相手あるいはどのような条件、こういうようなことがあり、これは育成者権者でなければ知り得ないいろいろなことがあるんではなかろうか、そういうことから考えますと、やはりこの育成者権の侵害、こういう面では、今回の法改正、こういうような中で、税関並びに財務省との関連の方が好ましいんではなかろうか、こう思います。
山田(正)委員 税関が定率法で輸入を差しどめし、収穫物を没収するというのは、それはそれで結構なんです。ただ、私が言っているのは、税関においてマニュアルを云々つくったって、税関で、水際でやれるわけないじゃないですかと。言ってみれば、植物検疫の場でいわゆる農水産物の、植物の専門家である係官が、その事実があればそれを税関に告発するとか、そういう手続上の前段階の調査が必要なんじゃないか、そう言っているだけなんですよ。いかがですか。
亀井国務大臣 私ども農林水産省といたしましては、特許だとか商標だとか、ほかの知的財産権の侵害物の取り締まり、これを行っておりますのは税関、財務省だと思いますし、したがって、税関、財務省と連携をし、輸入される農産物の外観やDNAの特性などの手がかり、こういうものを、効果的な育成者権侵害物品の取り締まりが行われるように、私どもとも、そして税関あるいは財務省ともいろいろの連携をとっていくことが必要ではなかろうか、こう思うわけであります。
山田(正)委員 どうも、どうお答えいただいているのかわからないんですが。
 では、局長にお聞きしたいと思いますが、先ほど七条委員も聞かれましたが、いわゆる収穫物の範囲、社会通念上等々と言っておりました。実際に、いわゆる加工品の取り扱い、これについては、UPOV条約では各国の裁量で罰則の対象にすることができる、そうなっているようですが、例えば、イチゴについて言った場合に、イチゴジュース、そういったものについては収穫物と言えるんじゃないかと。まあ、言えるのか言えないのか、そういうふうに先ほどの答弁では聞いたんですが、では、イチゴジャムに至ってはどうなるのか、ひとつ具体的に、局長、答弁いただければ。
須賀田政府参考人 先生言われましたUPOVでは、直接の加工品は各国の裁量で育成者権の対象にしていいというふうになっています。世界の状況を見ますと、制度上、加工品まで権利を及ぼしておりますのが韓国と豪州、そのほかの国は及ぼしておりません。韓国も実態的には、識別技術がないものですから、いわゆる空振りになっているというふうに聞いております。
 収穫物と加工品でございます。これは、今、専門家によって種分けを詳しく検討していただいているわけでございますけれども、基準を現時点で申し上げますと、加熱、要するに、せんべいにするとか、いるとか、煮るとか、焼く、こういう加熱をする、薫製等の味つけをする、粉びきする、それから搾汁する、まさにジュースでございますけれども、こういうものは加工品ではないか。原形の本質を色濃くとどめております、単に切断するだとか、冷凍するだとか、乾燥するだとか、あるいは塩蔵する、こういうものは収穫物のままでいいのではないか。
 具体的に今後深く検討していきたいと思いますけれども、例えば、ショートケーキの上に乗っているイチゴ、これは収穫物だろうと思います。それから、生鮮野菜を冷凍したもの、こういうものも収穫物だろうと思うわけでございます。ただ、あんだとかジャムだとかワインだとかジュースになりますと、加工品の範疇じゃないかなというふうに思っております。
山田(正)委員 局長、こだわりますが、イチゴのジュース、搾ったジュースですね、それと、例えばイチゴを煮たジャム、こういったものはDNA鑑定可能なんじゃないですか。
須賀田政府参考人 実は、あんだとかジャムだとかジュースだとかのDNA鑑定の技術は、本年度から技術開発に取り組んでおるところでございまして、まだ実用化をしていないわけでございます。
 私も、基本的には育成者権の対象に加工品も当然加えるべきだというふうには思っておりますけれども、そういう識別技術が実用化していないということ等から見送っておる。それまでの間は、できる限り、法令の許す限り、司法の専門家の先生に対して恥ずかしいんですけれども、法令の解釈の許す限り、識別可能なものは収穫物の範疇に含めて運用ができないかなというふうなことを考えているところでございます。
山田(正)委員 そこはぜひ、そういう対応はとっていただきたいとは思いますが、この立法のやり方なんですが、今度法改正をしたというところで、これは局長も加工物まで入れたいということであれば、まず加工物も入れておいて、韓国でもそれが技術が伴わなくて空振りである、それは技術が確立するまではある程度空振りであっても、DNA鑑定ができなくても、向こうがそれを認めればそれで十分取り締まりもできるわけですから、これは後先になってしまいますが、何も、そこまでの鑑定技術がまだ確立されていないからこの改正ではまだ加工品を入れられなかったというのはおかしいんじゃないか。
 大臣、聞いておられると思いますが、やはりこういった場合は、空振りになろうとなるまいと、これから先、ここ一、二年の間には技術が確立されていくわけですから、当然、法の範囲の中に加工物も含めて、そして本当に水際で、コピー商品というか育種権侵害の商品、農水産物、それについての水際での差しどめ、これを可能にすることが大臣としての責任じゃないか、そう思いますが、いかがですか。
亀井国務大臣 先ほど来御説明申し上げますとおり、加工品の問題は非常に難しいことになるわけでありまして、今回の法改正におきましてはそのように、今委員のお話もそれなりにわかるわけでありますけれども、現状、いろいろのことを考えて、今のこの段階ではやはりこれは除くことの方がよいのではなかろうか、また我々もDNAの問題そのほかいろいろ技術開発等々に努めて今後の対応をする、この方が賢明なことではなかろうか、こう私は考えます。
山田(正)委員 大臣、なかなか御自分の意見をはっきりと言えないようですが、改正案五十六条、局長にお聞きしたいと思いますけれども、この中で、「育成者権又は専用利用権の侵害の行為を組成した種苗を用いることにより得られる収穫物を、育成者権者又は専用利用権者の許諾を得ないで、業として生産し、」と、「業として」と言っているわけです。普通、我々、業としてというと、反復継続してというふうに使われるわけです。そうすると、これは、ただ一回限りでも、その目的をもってすれば業として成るという判例もあることはあるんですが、いわゆる「業として」ということが大変気になるわけなんです。
 例えば、私の地元長崎県ではイチゴをかなり栽培しておりますが、韓国、中国あたりから、イチゴの品種の視察に現地までやってくるということがあります。そして、ハウスに来られる。そのときに、人間ですから、見に来られればそのイチゴを渡しちゃう、苗まで渡すということはないと思うんですが。そういった形で、別にこれをただ渡すだけなんですが、それがそのまま持ち帰られて、品種として向こうで栽培される、これはどうなりますか。
須賀田政府参考人 この種苗法におきます「業として」、これは特許法等もそうなんですけれども、こういう知的財産権に関する法律の「業として」という意味は、個人的、家庭的な利用までは育成者権の効力を及ぼせない、及ぼさないという趣旨でございまして、要するに、ここの「業として」というのは、産業として利用する場合。反復継続ではなくて、産業として利用する場合はこれに当たる。
 種苗法でいいますれば、農業または農業関連産業として利用する場合はこの「業として」に当たるということでございまして、農業、農業関連産業として利用する意思がございましたら、ただの一回でありましても、この「業として」に当たるというふうに解釈をされておるわけでございます。
 したがいまして、先生今言われたイチゴを渡して利用されたというのは、個人的利用でも家庭的な利用でもございませんので、恐らくこの違反に当たるというふうに解釈されます。
山田(正)委員 今、大分県でかんきつ類の訴訟が行われていますが、佐藤の香という品種については、生産者が知らずに視察に来た人に渡してしまった、そのかんきつ類の種を。それが向こうで大がかりに育種栽培されて、輸入されたという事例なんです。
 こういったことが頻繁に起こるときに、向こうの、韓国から視察に来た人は、これは日本の法律で罰することはできないと思うんですけれども、では、知らずにそれを渡した人、その人も罰せられない、例えばイチゴを知らずに渡した人は罰せられない。そうすると、日本の育種されたその物がそのまま向こうで栽培されて野放しにされるということになるんじゃないかと懸念しておりますが、先ほどの局長の答弁では、向こうの視察に来た生産者にイチゴを渡したこと自体が業としてということになるので罰せられるという趣旨だととってもいいんですか。
須賀田政府参考人 まず、育成者権の侵害に当たり得るかどうかという問題につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、当たり得るということでございます。
 そして、実際に罰則が適用されるかどうか、これは、先生、司法の専門家でございますので、私の方からお答えするのも本当に恥ずかしゅうございますけれども、やはり、故意、罪を犯す意思がない行為というのは処罰の対象にはならないわけでございます。また、種苗法には、過失による行為を罰するという規定はないわけでございまして、知らずに渡したという人には罰則を適用するということはできないと思われます。
 それでは、育成者権の保護というのをどうするのかという話になるわけでございます。実際、これは、育成者権者の方がかかる場合には民事上の差しとめ請求ができる、さらに、過失があれば損害賠償もできますし、損害賠償にかわる信用回復措置というのも規定をされておりまして、そういう民事上の差しとめ請求、そういう手段によるべきではないかなというふうに思っております。
山田(正)委員 せっかく刑罰の定めがあって、それがそのまま適用されぬままに海外でそのような形でどんどん日本の育種品種が栽培されていくということは十分あり得ることで、それについては、ひとつ農水省としてもこれからの検討課題としていただきたい、そう思います。
 今、イチゴのレッドパール、これが韓国で約六〇%、それから、章姫が約三〇%、その他、とちおとめ等という日本の品種がかなり栽培されておりますが、当然、これが日本に入ってくる。私ども長崎県でも今、イチゴの栽培業者は韓国からのそういったイチゴについて戦々恐々としておりますが、そういった意味では、十分水際で、農水省としては、そういったものの検疫、専門家を配置して、輸入されてしまっては後の祭りですから、その点、十分にこの種苗法のもとに頑張っていただきたい。
 それを一つ大臣に申し添えて、私、もう時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 先ほどから随分問題になっているわけですけれども、開発輸入による農産物輸入が急増する中で、日本の新品種の種苗が中国や韓国に無断で持ち出されて、その収穫物が日本に輸入されて販売される事例、これが急増して、日本の農業者に深刻な打撃を与えています。
 これまでも例に出されましたけれども、例えばインゲン、北海道が権利者である白インゲンの一種の雪手亡、これは九五年九月に登録されている種苗なんですけれども、中国へ無断で持ち出され、その収穫物が我が国に輸入、販売された。また、イチゴでは、栃木県が権利者であるとちおとめ、これは九六年十一月の登録の種苗なんですが、韓国に無断で持ち出され、その収穫物が我が国に輸入され販売された、これによって、生産者に大打撃を与えました。この種苗無断持ち出しによる海外からの収穫物の規制、これがどうしても必要となっておりました。
 これに対して、現行の種苗法では、種苗について育成者権を侵害した者を刑事上の罰則の対象とはしているけれども、種苗を用いることにより得られる収穫物についての育成者権を侵害した者については、民事上の救済措置はあるものの、刑事上の罰則の対象にならず、種苗についての権利侵害を罰則により抑制する点でこれまでは制度上の不備があったというふうに思います。
 今回の改正は、種苗を用いることにより得られる収穫物についても、育成者権を侵害した者について刑事上の罰則の対象とするもので、当然の改正だ、このように思います。
 しかし、問題なのは、新品種の期間が二十年間ということで、開発後二十年を過ぎた品種は種苗法の保護対象にならなくなります。そのため、保護期間を過ぎた品種による開発輸入を防ぐことができないということになるわけです。例えば、コシヒカリはもう既に保護期間を過ぎている。イチゴの女峰も開発後二十年を過ぎて保護の対象とはなっていないわけです。だから、諸外国での栽培と日本への輸入を規制することができない、こういう問題を含んでいるわけで、農水省としては、これらをどのように受けとめ、どういう対処をしていこうとしているのでしょうか。
須賀田政府参考人 育成者権の保護期間の問題でございます。二十年ということでございます。
 この保護期間といいますのは、育成者権者に独占的に利用させる権利を与えるということでございまして、そういうことで、開発コストの回収だとか新しい品種開発への投資意欲というものを可能にするという趣旨で保護期間を定めているわけでございます。これは、登録された品種を利用する側にとりましては、保護期間を過ぎれば自由に利用できるというメリットもあるわけでございまして、双方のバランスの上に立った、制度上やむを得ない期間というふうに思っているわけでございます。
 では、保護期間を過ぎたものが海外から開発輸入される問題についてどう思っておるかというお話でございます。
 私どもも、国内農業に影響を及ぼすような行為というのはよろしくないと思っておりまして、どういう措置が可能かということでございますけれども、一つは、産地表示ということで外国産と差別化というようなことも可能な場合もあるでございましょうし、それから野菜の種子で一回問題になりましたけれども、例えば日本種苗協会は、開発輸入に結びつくような種子の輸出は行わないとの内部の申し合わせ等を行っておりますので、そういうような団体の自覚と申しますか、そういうものにまって自粛していただく。こういうふうなことで対応するしかないのではないかというふうに思っております。
 できるならば、その保護期間内に新しい品種を開発していただくということが私どもとしては望ましいというふうに考えております。
中林委員 今、私は例にコシヒカリなどを挙げたわけですけれども、農水省からいただいた資料でも、品種登録の有効期間が満了しているものは、小麦でも、カンショでも、バレイショでも、大豆でも、インゲンマメでも、リンゴでも、桃でも、イチゴでもあるわけですよね。お米なども相当数あるということで、私はやはり、特に米をめぐっては今議論もあるわけでございます。開発輸入を食いとめていくためには、コシヒカリと同じ食味で、それで収穫物ということで、日本に入った場合、安ければ入ってくるわけですから、当然それを防ぐ必要が国策としてもあるんじゃないかというふうに思いますね。
 先ほどからUPOV条約の問題が出ているわけですが、EUなどは、国の判断、EUの判断によって五年間延長するということになっているわけなので、品種によって国内産業を守っていくために当然延長が必要なんじゃないか。二十五年ぐらいにやったらどうかというふうに思うんですけれども、その検討はされますか。
須賀田政府参考人 先ほど申し上げましたように、保護期間というのは育成者権者の保護ということもございますけれども、また一方、これを利用する多数の農家がおられますので、その利用者へのメリットということもございますので、今たしか、EUは先生おっしゃったとおりなんですけれども、ほかの国は大体日本と同じような二十年間ということになっております。
 この問題は、国際的潮流、そういうものを加味しながら、育成者権者の保護と利用者のメリットというバランスを考えて、今後検討されるべき問題だというふうに思っております。
中林委員 どうしてそう開発輸入などに対して弱腰なのかというのが、私は払拭し得ないわけですよ。だから、これはやはり、とりわけお米については、国内の、日本が開発したすばらしいコシヒカリなど、しっかり守っていく。そういう対応をぜひやっていただきたい。EUはやはりちゃんとやっているな、権利行使をやっているなというふうに、この点でも思うわけですので、ぜひ延長を求めたいというふうに要請をしておきたいと思います。
 それから、先ほどから加工品の問題が随分議論になりました。やはり、水際で何とかとめたいということでやれば、いろいろな抜け道を考えてくるのはこれまでの常套手段です。だから、加工品だとか調製品というものがその保護対象にならないということになれば、形を変え品を変えて日本への輸出を考えてくるのは当然のことであって、加工度の少ないものについては、やはり直ちに保護対象にするということに取り組むべきだと思います。それから、調製品についてはどのように対処されるのか、その点についてもお答えいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 加工品として加工をして輸入することによって、法の網の目を抜ける行為が行われる懸念があるんじゃないか。その点については私も同感でございます。
 ただ、この問題は、先ほど来申し上げておりますとおり、DNAによります品種識別技術の実用化というものがまだ進められていない状況でございますので、そういう技術開発の状況を踏まえまして、加工品を育成者権の対象とすることについて検討をしていきたいというふうに思っております。
 それから、調製品というのは、単に収穫物の組み合わせということであれば、収穫物で読めるわけでございます。基本的には、先ほど来申し上げますとおり、DNAの識別技術が実用化しているものでございましたら、法の解釈の許す限りにおきまして、収穫物というものの範疇に入れて運用ができないかということで対応をしたいというふうに考えております。
中林委員 DNA鑑定の技術が成立したものから、法の運用で可能な限り対象にしていくんだというお答えでしたけれども、しかし、それは非常にあいまいなことではないのかというふうに思いますね。だから、基本的に加工品は収穫物とみなす、それで、ただしと、ただし書きするぐらいの改正案を提示するのが、本来の保護をしていくということを打ち出すためには、そのぐらいのことは必要なのではないかというふうに私は思います。
 そこで、DNA鑑定の技術開発の問題なんですけれども、一体国はどのくらいそこへ支援をやっていこうとしているのか、あるいはDNAのデータベース、これは、データベース化を国としてちゃんと持ってやっていくのか。だから、支援策とその関与の仕方、これは国が責任を持ってやるのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 DNAの鑑定技術の開発、これは、国みずからと申しますか、独立行政法人試験研究機関、それから公的機関、大学、こういうところで、品種別にDNAの開発ということに対して所要の支援ということを考えて、現在、鋭意取り組んでいるところでございます。加工品につきましても、先ほど来申し上げておりますけれども、今年度から開発に取り組むということにしているところでございます。
 それで、そのDNAのデータでございます。種苗管理センターにおいてDNAのデータの蓄積が徐々に進んでございまして、今後は、登録品種のDNAの保存を行いまして、先ほど来出ておりますけれども、水際の措置でございますとか国内での侵害事例が出たときの対応とかを考えまして、種苗管理センターを中心としたDNAデータベースの構築それから有効利用、こういうことを早急に検討していきたいと考えております。
中林委員 DNA鑑定ができて、それでこれが違反していると直ちに特定できない場合があると思うんですね。やはり現物を見ないとわからないよというようなことが当然あると思うんです。
 大臣、ぜひ、私は、トレーサビリティーをこの種苗法関連でも、DNA鑑定でこれは違うよと言ったものを、相手国が、いや、そんなことはないと言って認めなかった場合、圃場に行けば、見たら、それが同一かどうかということがわかるわけですから、圃場にまでたどり着けるように、種苗法の観点からも海外の開発されている作物についてトレーサビリティーをちゃんとやるべきだ、輸入農産物のトレーサビリティーは必要だと。これをやる考えは、大臣としてあるんじゃないでしょうか。
亀井国務大臣 輸入農産物におきまして、生産者までさかのぼって追跡をし、その品種名を明らかにされていることは、育成者権侵害の有無の判定にとりましては有効な情報である、このように思います。
 このようなことで、私ども農林水産省といたしましては、統一的な方法により、わかりやすく表示されるよう、育成者権者に対しては情報の提供等の支援を行いたい、こう思いますし、また、農産物の輸入に際して、可能な限り品種名を把握する、そして登録品種かどうかを確認することにより、未然に育成者権侵害を防止することが可能となるような、関係者に対する品種登録制度の啓発、指導に努めてまいりたい、こう思っております。
 このトレーサビリティーの問題、これはまた、いろいろの情報の提供、こういう面ではそれなりの意義があるわけでありまして、育成者権者への活用、このことにつきましてはいろいろ検討する必要があるのではなかろうか、こう思います。
中林委員 情報の提供などや表示の問題は次に質問しようと思っていたんですが、先に答弁をいただきましたので、それはもうしませんが、輸入農産物のトレーサビリティーは、食と農の再生プランでも、すべての作物について行っていくという方向性が出ている。種苗法の改正が出た、この観点から見ても、やはりそれは当然必要なことだというふうに私は思います。
 局長、それはどうなんですか、やる考えはあるんですか。
須賀田政府参考人 トレーサビリティー自身は、もう先生御承知のとおり、生産の履歴情報を消費者へ提供する、万が一食品事故が起きた場合に追跡可能、こういうものでございます。こういう観点から提案をされておるわけでございます。
 それで、この育成者権、確かにそういうものができ上がりますと、生産者までさかのぼって追跡ができますし、品種名が明らかにされれば情報を得られるわけでございますので、まず、そういうシステムで育成者権者が活用することが可能になるかということもあわせまして検討をしていきたいというふうに考えております。
中林委員 トレーサビリティーの問題で関連して質問するわけではないんですけれども、カナダで、北米とすれば初めて、BSEが確認をされました。
 この問題は、カナダ、米国間で牛肉生産の相互交流が盛んに行われておりまして、米国国内でもBSE発生が危惧されているということであると思います。カナダからアメリカには、年間三十八万トンの牛肉と百六十八万頭の生体牛が輸出されております。
 五月二十七日のニューヨーク・タイムズは、「カナダの問題―そしてアメリカの問題」と題して、米国とカナダの生きた牛、牛肉製品、飼料は比較的自由に行き来している、カナダのBSE発見は米国が一層厳格な対策を講じる必要性を浮き彫りにしている、こう指摘した記事を掲載しております。
 そこで、カナダと米国の牛肉、肉と牛の生産交流の現状、それをつぶさに明らかにしていただきたい、それが一点です。
 それから、農水省は、アメリカに対して、カナダ生まれの牛を使用した肉製品の日本への輸出停止を要請し、米国経由で日本に輸出される牛肉がカナダ産であるかどうかを確認できるかどうか、これを書簡でもって問い合わせしているということなんですが、書簡の具体的中身とアメリカの回答内容、それを明らかにしていただきたいと思います。
須賀田政府参考人 まず、カナダと米国との畜産の取引関係でございます。
 カナダの統計資料によりますと、カナダから米国へは、年間三十八万トンの牛肉の輸出、それから百六十九万頭の生体牛の輸出、うち成牛は百二十六万頭でございます。一方、米国からカナダへは、年間九万トンの牛肉の輸出、十三万頭の生体牛の輸出が行われているというふうになっております。
 それから、私ども、五月二十一日に、米国産であってもカナダ由来であるということが明らかなものについては輸入停止をしたわけでございます。二十二日に、アメリカの政府当局に対しまして、米国を経由したカナダ由来の牛肉等を日本向けに輸出しないように、こういう措置をとってほしいということを書簡で申し入れたわけでございます。
 この申し入れに対しまして、二十三日に、米国から返事が来たわけでございます。BSEに対するリスク管理に万全を期しているという書簡は受けたんですけれども、我が方からの申し入れに対する具体的な措置についての回答になっていないわけでございまして、申し入れに対する回答は現在のところまではないというふうに私どもは認識しています。
中林委員 カナダ産であるかどうかを確認し、アメリカを通しても輸出してもらわないようにという具体的な中身の要請を行ったにもかかわらず、アメリカからはそれとは全く違うものしか回答がよこされないということは、まことに遺憾だというふうに思うんですね。これは輸入牛肉が危険きわまりないということを改めて証明した話だというふうに思います。
 それは、先ほど局長が、アメリカ、カナダの牛肉あるいは生体牛、これがかなり自由に行き来している、その数字も明らかです。カナダからアメリカに行っているという方が多いわけですが、カナダで大体年間千三百万頭飼育されている、そのうちの百六十八万頭がアメリカに行っているわけですから、一割強なんですよ。
 そういう意味では、今回の牛がまだどこの農場かということが特定されていないというふうに聞いているわけですね。だから、この感染牛が、あるいはアメリカで生まれた可能性だって否定はできないだろう。否定がきっちりできるというならば、それを明らかにしていただきたいと思うんですけれども、そうなった以上、私は、やはりトレーサビリティー制度がアメリカでちゃんとできない限り、輸入は停止すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
須賀田政府参考人 カナダで確認されましたBSE、今、カナダ政府により調査とBSE検査が進められておりますけれども、恐らくカナダ産であろうというところまでは来ているんですけれども、まだ確定はされていないわけでございます。
 アメリカ自体は、OIEの基準によれば清浄国でございますので、清浄国に対して日本への輸出を停止することを要求することは、そういう国際協定上からも困難なわけでございます。
 今後、そのBSEに感染した牛が米国原産の牛であるというようなことが確認されるといったような場合には、米国国内にBSEが存在する可能性が否定できないわけでございますので、そういう場合には、予防措置として米国産牛肉等の輸入を一時停止をいたしまして、種々の情報収集等を行っていくということになろうかと思っております。
中林委員 OIEはアメリカを清浄国としていると言うんですが、カナダは、この発覚まではどうしていたんですか。
須賀田政府参考人 発覚までは清浄国でございました。
中林委員 でしょう、わからないんですよ。だから、その疑いは極めて濃厚だし、カナダから生体の牛が百六十八万頭も年間アメリカに行っている。こういう状況を見れば、同じえさを食べた、そういうことだって当然考えられるし、アメリカから輸入されている牛肉がカナダ産なのかアメリカ産なのか、それを全く、アメリカは全然回答してこないなんて、極めて不誠実だというふうに私は思いますよ。
 貿易障壁、貿易障壁と言うけれども、国民の命、安全を守る立場、そこを堅持していくためには、トレーサビリティーを要求するのは当然のことじゃないですか。それが確認できなければ輸入を停止する、このぐらい強気でやれば、アメリカは、日本はお得意さんなんですよ。お得意さんが、嫌だよ、こういう安全を確認されたものしかだめだよ、このぐらい強気でやる必要が、大臣、あるんじゃないですか。
亀井国務大臣 いろいろ承りました。
 実は、カナダのことにつきましては、局長等々、答弁をし、また、既にこの輸入禁止の問題につきましては御承知のとおりでありまして、実は、きょう午後、私は米国大使に会います。そして、皆さん方からのいろいろのお話を申し上げ、また、国民が安心して受け入れられる牛肉等のみが日本向けに輸出をされるよう、なお一層申し上げて、そして、この間から衆議院あるいはまた参議院での本両委員会のいろいろな御意見、このことを踏まえて大使につぶさにお話を申し上げ、そして安全を確保してまいりたい、こう思っております。
中林委員 強気で、本当にそれが確認できなかったらとめるよ、このぐらい大使に言っておいてください。
 終わります。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 最後の質問者となりました。私が質問すべく用意したのは、ほとんど今議論されているというふうに思いますが、観点を変えて私なりに質問をしていきたいというふうに思っております。
 まず、この法律案は、知的財産戦略大綱に基づいて、国家的な観点からこの種苗法の改正に至ったというふうに理解しておるわけですが、一つの問題点というのは、いかに品種登録制度において審査期間を短縮していくのかということが、これは大きな課題だというふうに思っています。
 資料によれば、最長で十・四年もかかっている。それから、最短で二・三年、平均では三・一年という統計が出ているわけですね。三年もかかっていて、そして、先ほども中林委員から議論されておりますけれども、品種登録から二十年という状況であるわけですね。こういう状況をどう克服していくのかというのが大きな課題だというふうに思っています。
 そして、この登録審査というものは、二十二人体制で行っていると言われておりますけれども、この人員で十分なのかどうか、局長、答弁願いたいと思います。
須賀田政府参考人 品種登録の審査でございます。書面審査だけならばすぐにでもできるわけでございますけれども、植物の品種でございますので、まいた種子から本当に同じものができるのかとか、世代増殖をして本当に安定しておるのかという、どうしても、実際にそれを植えてみて特性を調査する必要がございますので、ある程度審査期間がかからざるを得ないという実態があるということは御理解を賜りたいと思っております。
 ただ、かといって、審査期間というものが、これはもう今三・八年、三・一年というふうに短縮はしてきておりますけれども、欧米よりも長くかかっているようでございますので、なお一層短縮する必要があろうというふうに思っております。
 質的には電子出願とか、あるいは栽培試験をできるだけ効率化するというふうなこともございますけれども、最近、出願件数がふえつつございますし、いわゆる細胞融合等のニューバイオテクノロジー、こういうものもございますので、今後どんどんふえていくのではないかということでございまして、二十二人で足りるかというふうな御質問に対しては、それではなかなか厳しい。全体に厳しく定員管理されておりますけれども、できるだけ確実な審査ができる体制を今後ともとり続けていきたいというふうに思っております。
菅野委員 大臣、先ほど冒頭申し上げましたように、これは国家戦略としての位置づけなんですよね。そして、やはり種子というのを育成者権というものをしっかりと位置づけていこうという状況なんです。国家戦略が打ち出されたときに、体制整備をどう行っていくのかという裏づけがなければ、幾ら法律を出しても、私は法律の有効性、実効性というのが薄らいでいくというふうに思います。
 そういう意味で、今、須賀田局長が、二十二人体制で頑張っていきますと。決意だけでは私はだめだと思うんですね。大臣としての、この実効あらしめるための組織体制というものをどう考えていかれるのか、決意をお聞かせ願いたいと思います。
亀井国務大臣 先ほど来いろいろ御指摘をちょうだいしております。そして、この問題につきましてのいろいろの問題点もちょうだいしたわけであります。そういう面で、審査体制、組織の問題、人員の問題、これはいろいろ枠があるわけでありまして、なかなか厳しい状況下にあります。しかし、国家戦略、知的財産としての使命があるわけでありますので、いろいろそれに対応できるような検討をしていかなければならない、こう思っております。
菅野委員 それと同時に、育成者権者の権利侵害の立証の問題というのも先ほどから議論なされております。そして、この立証を、開発した大手企業であれば、これは立証にたえ得る組織というものを持っていると思うんですが、個人で立証しなければならない、こういう状況があるわけですね。
 先ほども、後でも議論しますけれども、水際対策の問題を考えたときに、供託しなければならないという問題等も含めて、立証に向けて、知的財産戦略大綱が目指している部分だと思うんですけれども、立証を行える政府としての体制整備というものも私は求められていくんだと思うんですが、これらについての考え方をお聞きしておきたいと思います。
亀井国務大臣 御指摘のこの育成者権の侵害、権利者みずからがその権利を守るために行動する、これは基本的なことであります。
 しかし、なかなか権利者からこれをするにはいろいろ難しい問題があるわけでありまして、権利者等からの依頼によりまして侵害立証のための比較栽培、同一品種か否かを確かめるための栽培、こういう面でもなかなか今まで機関がなかった、あるいはまた侵害判定がネックとなって係争事案に至らなかった、こういう例が多いわけでありまして、そこで、今年度から、独法の種苗管理センターにおきまして、その品種の同一性に関する比較栽培、あるいはまたDNAの分析を育成者権者等の依頼に応じて実施するようにいたしまして、育成者権者の支援を図ってまいりたい、こう思っております。
菅野委員 大臣、一般的には今の大臣の答弁でいいと思うんですけれども、個別具体の議論になっていったときに、いろいろな細かい、例えば輸入農産物の育成者権者の育成者権を行使するときに、一二〇%の供託をしなければならないという問題もあるわけですよね。そのときに、このアンケートを見ても、権利侵害がわかってもそのまま放置しておくという実態があるというふうに言われていますね。それをどう克服していくのかというのが、いろいろなことを取り組まなければならないというふうに思っているんです。個別具体のことは申し上げません。ぜひこの法律の趣旨を実効あらしめるための措置というものをしっかりと確立していただきたいと思っています。
 そのためにも、もう一つ大きな問題は、先ほどから議論されていましたけれども、DNA鑑定機関を多くつくること、それとデータ管理を多極的に行っていくということが不可欠であるというふうに思うんですね。現在の組織体制で本当に十分なのかどうかも含めて、このことも私は議論されるべきことだというふうに思っているんですが、これからのこの方向性というものをどう考えているのかお聞きしておきたいと思います。
須賀田政府参考人 品種の同一性の立証の支援ということで、先ほど大臣の御答弁にもございましたように、種苗管理センターが今年度から育成者権を侵害した種苗等を判定するためのDNA分析というのを依頼に応じて実施するという体制は整えました。ただ、それだけでは、先生おっしゃいますように、今後恐らくふえていくであろうこういう侵害事案に適切に対応できないということがございます。
 一つは、データベース化等で、種苗管理センターにおいてデータベース化をいたしまして、いろいろな機関、水際措置のための機関あるいは国内の民間の分析機関、こういうところとつなぐ、こういうことも今後検討していく必要があろう方向の重要な一つだと思っております。
 それから、何よりも、先ほど来出ておりますけれども、民間の分析機関を多数養成、育成をいたしまして、多くの品種についての分析サービスが提供される体制を整える必要があろうかというふうに思っております。先ほど申し上げましたように、現在のところ、民間分析機関としましては、稲とインゲンマメとイチゴと三種類でございます。これを、もっともっと公的機関が開発いたしましたDNA品種識別技術を民間に移転いたしまして、民間で広く分析サービスができる体制を整えていきたいというふうに考えております。
菅野委員 後でも議論したいんですが、この水際対策において税関の体制についても議論したいんですが、税関は東京にあるだけじゃないんですよね。各地方に分散しているんです。そして、DNA鑑定施設というのは、ここに資料がございますけれども、今も稲、インゲン、イチゴしかないし、そして、種苗管理センターにおいて平成十五年から行っていくという、今の答弁でわかるんですが、それでは、水際対策を考えたときに、DNA鑑定が地方にもなければ私は機能していかないと思うんです。一々地方に輸入されたものを、疑いがあるものを全部東京に持ってきてやっていくという形では、この種苗法を実効あらしめる方向には行かないというふうに思うんですね。
 ぜひそういう視点に立って、私は、民間で行うといっても、資本主義の社会ですから、利益につながらないものは民間は受け取らないというのはこれは原則です。やはり公的な部分で関与していかなければならないというふうに思うんです。それで、ぜひそういう点でこの鑑定機関の整備というものを図っていただきたいと思うんですが、局長、再度答弁願います。
須賀田政府参考人 考え方でございますけれども、育成者権の侵害への対応というのは、個人がその利益を侵害されたので損害賠償請求その他を行っていくという、そういうまさに個人の利益に関することでございますので、今後の方向としては、それを公的機関が依頼に応じてどんどん分析サービスするというのではなくて、やはり民間の問題として、民間の分析機関、これはもう料金を取るのはしようがありません、分析機関を広範に育成して、民間活動としてそういうことができるようにするということが目標でございます。
 それまでの間は種苗管理センター等で依頼に応じて行いますけれども、基本的には、個人利益に関することでございますので、そういう方向を目指したいと思っております。
菅野委員 これは育成者権の権利侵害が年間どれくらい起こるかの問題にもかかわってくると思うんです。数が少ないだろうというふうに思うんですが、そういう中で、DNA鑑定というものを依頼したときにどれくらいの費用が、設備投資の費用とか、あるいは一回の検査手数料の問題とか、そういうところを考えたときに、やはり一番根底になるのは、こういう鑑定が相当なウエートを占めるというふうに思うので、そういう意味でのことで申し上げました。ぜひその方向で考えていただきたいというふうに思っています。
 水際対策の強化、これもかなり議論になりました。農水省として、これは財務省の税関の問題だという形で片づけるのではなくて、財務省と農水省がどう連携をとっていくのかということに大きなウエートがかかっているんじゃないのかなと思っています。
 種苗法を財務省の人たち、税関の人たちが本当に理解しているのかという点からすれば、農水省の果たす、農水省の専門家の果たす役割というのは非常に大きいというふうに思うんですけれども、局長、農水省としての水際対策をどう強化していくのか。
北村副大臣 先生が御指摘をしたことは、きょうの委員会の中でも私は大変重要なことだと認識をしております。そういう面では、我が省がやっております植物検疫等々で、専門的な見方、そこを重視していくということは非常に大切なことである。
 その上で、先ほど来答弁を申し上げているとおり、税関等々の職員の教育あるいは研修というものも非常に大切であるというふうに思っております。そういう面で、我が省が、この税関の職員の方々の研修におけるお手伝い、あるいは、情報等々はリアルタイムでしっかりお伝えをしながら、連携をとっていくことが重要である、このように思います。
 その上で、これから、財務省、税関の職員も、場合によっては、私はこれは、個人的な意見と言うとしかられてしまいますが、やはり専門的な知識を持った方を入省させるということが将来にわたっての大きなまた課題ではないのかなという感じもいたします。
 それと同時に、我が省の中にあります専門的な植物検疫の方々、現場では、ある面では、植物の防疫体制の中で、もう長いことやっていれば、どういう箱に入ってきてどういう状況だということが一目で、これはひょっとしたら虫がついているのではないかとか、そのことがわかるぐらい専門的になっている方々が随分いるわけであります。そういう意味からいうと、やはり育成者権に対する専門的な職員というものは、どうしても、これから国家的な、国益を考えたときには必要になってくるのではないのかな、このように私は思っているところでございます。
菅野委員 単に税関の問題という形じゃなくて、農水省としてもしっかりとした体制を築き上げていただきたいというふうに思っています。
 三番目なんですが、収穫物の範囲については議論がありましたから、これは省略いたします。加工品についてなんですね。
 先ほどからずっと議論を聞いておりました。そうすると、DNAの鑑定というものができるような体制になってからというふうに言われていますけれども、私はそうじゃないと思うんですね。育成者権を侵害しているという情報が寄せられたときに、加工品といえども、原材料で検査する体制はあるわけですよね。だから、そういう意味で、加工業者に立ち入って原材料検査するということは種苗法では考えておられないんですか。その点を確認しておきたいと思うんです。
須賀田政府参考人 一般的に、加工品となりますと、例えば、あんでございますとか、ジュース、ジャム、ワイン、こういうふうに形が変わるわけでございます。ワインを見てどのブドウかというのは、表示されていない限りなかなか難しい点がございまして、ここはやはりDNAの技術によって識別をするということが現実的な対応ということでございまして、その実用化というものを待って、加工品についてもこの育成者権者の権利を及ぼしていきたい。それまでの間は、先ほど来申し上げておりますように、法令の許す範囲内で、捕捉可能なものについては収穫物という範疇をできるだけ広げて読む、こういうことで対応をしたいということでございます。
菅野委員 今までの局長のその答弁はずっと理解してきたんです。その域を出ていないんですから、私は改めて質問したんです。種苗法において、育成者権が侵害されているという情報が寄せられたときに、原材料までさかのぼって立証するということは可能なのかどうかということを聞いているんです。
 というのは、業を行っているということなんですよね。加工業を行っていることですから、ずっと原材料は使い続けていくと思うんです。悪いことをしたからということで、それを使ってそれで終わりという形じゃないというふうに思うんですね。育成者権を保護するという立場でそういう体制はとれないのかとれるのかということを聞いているんです。
須賀田政府参考人 一般論で申し上げますと、加工品から何らかの追跡をいたしまして、生産段階まで到達をして、どういう品種からつくられたかを見ていくということが全く不可能かというと、表示その他、人に聞いていくその他がございますので、不可能ではないとは思うわけでございますけれども、ここでの問題は、加工品を育成者権の保護の対象にする、それは罰則によって担保するということでございますので、捜査当局がきちんと対応できる体制を整えなければ、そういう制度化ができない。
 現に、収穫物についても、この前の改正は、そういう識別技術がないということで罰則の対象にしなかったわけでございます。それと同様のことが現時点で加工品についても起こっているということでございますので、制度化というのはそういう識別技術というものの実用化と並行して考えていきたいというふうに考えているところでございます。
 このほかにも、例えば、高次の加工品になりまして、登録した品種に加えて、知的創造活動で、高度の加工品、新たな製造行為と言われるような加工品をつくった場合にも及ぼせるかどうかというような法律的問題もまだ残っているわけでございますので、そういうところのクリアもまた要るのではないかというふうに思っております。
菅野委員 加工品の取り扱いについては、検討の余地がいっぱい残っているというふうに思っておりますから、今言ったことも含めて、ぜひ十分検討していただきたいというふうに思っています。
 最後になります。
 遺伝子組み換え技術が盛んに行われて、バイオ、バイオという形で行われております。そして、今局長がおっしゃったように、品種登録もこれからふえてくるんだろうというふうに言われていますけれども、今、食物への遺伝子組み換え技術というのは、消費者は非常に不安に思っています。
 品種登録を行う場合において、どう遺伝子組み換え作物への対応をしていくのかというのも検討する事項であるというふうに私は思うんですが、食品の安全、安心という立場から、品種登録においての遺伝子組み換え作物をどう考えておられるのか、この点についてお聞きしておきたいと思います。
須賀田政府参考人 今後、遺伝子組み換え技術を活用して品種を育成するということは、考えられないことではございません。品種登録の審査といいますのは、安全性の審査とは別でございますので、種苗法の要件の中の個別性、均一性、安定性を満たせば登録されるということに一応制度上はなるわけでございます。
 ところが、順番からいきますと、まず、遺伝子組み換えの安全性審査、特に環境への影響、あるいはそのものの安全性の審査のために、一般の圃場で栽培して安全性を確認せよ、こういうふうになっているわけでございます。したがいまして、一般の圃場で栽培することの安全性が遺伝子組み換えについてクリアした後でなければ品種の登録申請というのは上がってきませんので、まずは、遺伝子組み換えの安全性の審査が品種登録より先行する、こういう関係になろうかと思っております。
菅野委員 終わりますけれども、私は、食品に結びついていく種子については、品種登録の部分においても十分に検討する課題だというふうに思っております。そういう意味では、ほかに任せるということじゃなくて、厚生労働省に任せるということじゃなくて、農水省としてもしっかりとした体制を築き上げていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
小平委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、種苗法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
小平委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
小平委員長 次に、内閣提出、参議院送付、農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案及び農業災害補償法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。
 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。
    ―――――――――――――
 農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案
 農業災害補償法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
亀井国務大臣 農業経営基盤強化促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 将来にわたる食料の安定供給と農業の持続的発展を図るためには、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を早期に確立することが重要であります。
 そのためには、地域の実情に応じて、効率的かつ安定的な農業経営を広範に育成していくとともに、意欲ある農業の担い手が多様な経営展開を図ることができるようにしていく必要があります。
 また、近年、遊休農地が増加傾向にあり、その解消を図ることが急務となっております。
 政府といたしましては、このような課題に対応して、農業の構造改革を加速するための措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。
 第一に、農業生産法人による多様な経営展開を可能とするための措置であります。
 農業を営み、または営もうとする者の作成する農業経営改善計画について、現行の計画事項に加え、関連事業者等と連携して行う経営改善のための措置を含めることができるようにするとともに、分社化、のれん分け等農業生産法人の多様な経営展開が可能となるよう、このような計画の認定を受けた認定農業者である農業生産法人については、農地法に定める構成員要件について特例措置を講ずることとしております。
 第二に、集落営農組織を担い手として育成するための措置であります。
 地域の農地を面としてまとまって利用し、経営主体としての実体を有する集落営農組織について、地域における農地の利用集積を図るための準則である農用地利用規程に、担い手として定めることができるようにし、その育成を図ることとしております。
 第三に、遊休農地の解消及び利用集積を促進するための措置であります。
 地域農業の振興を図る上で著しく支障があると認められる遊休農地について、その所有者等に農業上の利用に関する計画を届け出させることとし、その計画内容に応じて、認定農業者への集積等その利用増進を図るための措置を講ずることとしております。
 続きまして、農業災害補償法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
 農業災害補償制度につきましては、昭和二十二年の制度創設以来、半世紀以上にわたり、災害によって農業者がこうむる損失を補てんすることにより、農業経営の安定に大きく貢献してまいりました。
 しかしながら、我が国農業をめぐる情勢が大きく変化している中で、意欲ある農業の担い手が創意工夫を生かした農業経営を展開するための条件を整備し、農業の構造改革を推進するためには、担い手となる農業者の経営感覚の醸成に資する等の観点から、農業災害補償制度を見直していくことが必要であります。
 このような課題に対応して、農業者の経営実態に応じた補償の選択、農業生産の実態に即した合理的な補償及び農業共済団体の運営の合理化に資するため、この法律案を提出することとした次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。
 第一に、農業経営の実態に応じた補償の選択に資するための措置であります。
 農作物共済、果樹共済及び畑作物共済の引き受け方式につきましては、現行では、農林水産大臣による地域指定または農業共済組合等による選択等により、地域ごとに単一の方式とするのが原則とされておりますが、農林水産大臣による地域指定を廃止し、農業共済組合等が複数の引き受け方式を共済規程等で定めることができることとしております。また、乳牛の子牛及び胎児を家畜共済の共済目的に追加するとともに、果樹共済に樹園地単位方式を、畑作物共済に一筆単位方式を導入する等の措置を講ずることとしております。
 第二に、農業生産の実態に即した合理的な補償に資するための措置であります。
 農作物共済の災害収入共済方式に品種、栽培方法等による区分を導入するとともに、家畜共済の死亡または廃用に係る共済金に支払い限度を設けることとしております。
 第三に、農業共済団体の運営の合理化に資するための措置であります。
 農業共済団体の選挙権に係る規定を整備するとともに、農業共済団体の自治法規として共済規程または保険規程を導入するほか、書面で行うこととされている共済細目書の提出を電磁的方法によることができることとしております。
 以上が、これら二法律案の提案の理由及び主要な内容であります。
 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
小平委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十七分散会


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