衆議院

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第19号 平成15年7月10日(木曜日)

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平成十五年七月十日(木曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 小平 忠正君
   理事 稲葉 大和君 理事 金田 英行君
   理事 二田 孝治君 理事 松下 忠洋君
   理事 鮫島 宗明君 理事 楢崎 欣弥君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      青山  丘君    荒巻 隆三君
      石田 真敏君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      熊谷 市雄君    小泉 龍司君
      近藤 基彦君    七条  明君
      高木  毅君    西川 京子君
      宮本 一三君    後藤  斎君
      今田 保典君    齋藤  淳君
      津川 祥吾君    筒井 信隆君
      堀込 征雄君    吉田 公一君
      江田 康幸君    藤井 裕久君
      中林よし子君    松本 善明君
      菅野 哲雄君    山口わか子君
      佐藤 敬夫君
    …………………………………
   農林水産大臣政務官    熊谷 市雄君
   参考人
   (全国農業協同組合中央会
   会長)          宮田  勇君
   参考人
   (全国森林組合連合会代表
   理事会長)        飯塚 昌男君
   参考人
   (全国漁業協同組合連合会
   代表理事会長)
   (全国水産物輸入対策協議
   会会長)         植村 正治君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月九日
 辞任         補欠選任
  七条  明君     佐藤  勉君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     七条  明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
小平委員長 これより会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 本日は、本件調査のため、参考人として、全国農業協同組合中央会会長宮田勇君、全国森林組合連合会代表理事会長飯塚昌男君、全国漁業協同組合連合会代表理事会長・全国水産物輸入対策協議会会長植村正治君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、宮田参考人、飯塚参考人、植村参考人の順に、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 それでは、宮田参考人にお願いいたします。
宮田参考人 全国農業協同組合中央会の会長の宮田でございます。本日は、このような席を設けていただきまして、厚くお礼を申し上げます。ありがとうございます。
 WTO農業交渉は、九月に開催されます閣僚会議が大きな山場になると伝えられておりますが、その内容いかんでは、我が国の食料、農業、そして農村の将来を大きく左右することになり、全国の農業関係者は大いなる関心と不安を抱えております。
 農業交渉の日本提案自体は、御承知のように、我々生産者だけの意向を反映したものではなく、経済界さらには消費者団体など幅広い意見を踏まえて策定されたものであり、閣議了解のもとでWTOに提出をされたものであります。
 これまでの農業交渉におきまして、政府は、日本提案の実現に向けて力強い交渉を行っていただいておりますが、三月に出されましたハービンソン議長提案の内容は、輸入国の主張に全く耳を傾けず、輸出国の主張に偏重した内容であると言わざるを得ません。我々は、その議長提案が今後の土台になりはしないかと大いに危惧をいたしております。
 結論から申し上げれば、議長提案は、全く受け入れられない内容であるということであります。そして、今後の交渉の土台とすべきではなく、撤回していただかなければならない内容であるというのが、我々農業者そして農業団体の統一した考え方であります。
 こうした機会をちょうだいいたしましたので、改めて、農業交渉議長提案を踏まえた私どもの考えを申し上げたいと存じます。
 まず第一に、多様な農業の共存という基本理念の実現をぜひ貫いていただきたいということであります。
 農業交渉の結果によって、輸出国の利益が優先され、輸入国の農業が衰退をしたり崩壊したりするようなルールは、我々といたしましては断じて認められないということであります。そのためにも、農業の多面的機能や食料安全保障といった、いわゆる非貿易的関心事項が十分に反映されるモダリティーをぜひ確立していただかなければなりません。
 第二に、個別問題に関する問題点について申し上げたいと存じます。
 その一点目は、関税についてであります。
 関税は少しずつ削減すべきであり、削減の方式は、農業の多面的機能といった非貿易的関心事項を十分踏まえた場合、品目ごとに削減幅を柔軟にできるよう、前回と同様ウルグアイ・ラウンド方式でなければならないという考えであります。
 しかし、現在の議長提案は、関税の水準ごとに三つのランクを設け、高関税の品目ほど削減率を大きくした提案を行っております。ウルグアイ・ラウンドで関税化した米、小麦、でん粉、乳製品、雑豆などは、我が国の重要品目であります。こうした重要品目について大幅に関税を引き下げることは、まさに我が国農業に壊滅的な打撃をもたらすことになります。
 二点目は、輸入数量の問題であります。
 全国の農家が強い関心を持っておりますミニマムアクセスについて、我々の要求は、ミニマムアクセス制度の是正、見直しであり、同時に、国家貿易制度の堅持によって総合的な国境措置を維持するということであります。この点に関しましても、議長提案は、輸出国の要望を踏まえた、数量の拡大提案となっております。
 我が国の食料自給率が著しく低い現状、さらには新しい基本法で自給率向上目標を設定している中で、議長提案にあるような関税の大幅引き下げやミニマムアクセスの大幅拡大を許すような事態になれば、何のための自給率向上目標なのか、全く意味を待たないのであります。
 さらには、特別セーフガードの廃止も提案されておりますが、議長提案は、ことごとく輸出国に有利な、そして偏った内容と言わざるを得ないのであります。
 我々JAグループは、議長提案に反対し、世界の多様な農業の共存に向け、現在、国際的な農業団体との連携、さらには国内における理解と協力を求める運動を展開いたしております。
 特に、国際的な運動といたしましては、アジア地域の九カ国の農業団体と定期的に会議を開催し、WTOの問題や食料安全保障の問題などに関して共同声明を取りまとめ、要請活動を行うなどの活動を行っております。さらに、アジアだけではなく、EUやカナダなどの農業団体ともハービンソン議長提案に反対する連携の輪を広げており、今月下旬にカナダで開催されます非公式閣僚会議に合わせ、農業団体の会議も企画をいたしております。
 また、国内におきましては、消費者団体や労働団体、経済団体とともにフォーラム組織を結成し、WTOや我が国の食と農への理解を深める取り組みを行っており、特に、九月の閣僚会議までに全県でWTOに関するシンポジウムの開催を行うこととしております。
 以上、我々の取り組みを含めまして考えを述べさせていただきましたが、冒頭申し上げましたように、ハービンソン議長提案では、我が国農業は壊滅的なダメージを受けることは必至であります。そして、今後の交渉において、期限を守ることだけが優先される余り、我が国に対して譲歩を求める圧力がアメリカなどから強まることが当然予想されます。しかし、正当な主張は堂々としていただき、我が国の食料、農業、そして農村の将来に禍根を残さないようにしていかねばなりません。我々も、組織の総力を挙げて運動を展開していく覚悟であります。
 我々のこうした思いをしっかりと受けとめていただき、政府そして国会におかれましても断固たる決意で交渉していただきますよう、改めて強くお願いを申し上げまして、私の意見とさせていただきます。
 ありがとうございます。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 次に、飯塚参考人にお願いいたします。
飯塚参考人 全国森林組合連合会の飯塚昌男でございます。このような場で我々の意見を聞いていただく機会を与えていただきましたことを、心から御礼を申し上げる次第であります。
 現在行われているWTO新ラウンド交渉において、林産物については、鉱工業製品と同じ非農産品市場アクセス交渉グループで議論が行われております。
 昨年十二月に日本政府が提案しております「持続可能な開発と林水産物貿易に関する日本提案」においては、地球規模の環境問題の解決への貢献、有限天然資源の持続的利用を基本哲学とする、持続可能な森林経営に資する貿易の実現に向けた提案が出され、林産物については特別の配慮が必要とされております。私たち団体も、この提案を歓迎し、強く支持し、世論に訴えておるところでございます。
 言うまでもなく、森林は、林産物の供給はもとより、国土の保全、水源の涵養、自然環境や生活環境、生物多様性の保全、保健文化機能など、さまざまな公益的機能を有するとともに、さらに近年では、二酸化炭素の吸収、貯蔵源として、地球温暖化防止機能にも一層の期待が寄せられておるところでございます。
 また、環境問題への関心が高まっている中、適切に管理すれば再生が可能である有限天然資源としての森林や、人と環境に優しい木材を生かした循環型社会の実現が強く求められているのは、御案内のとおりでございます。
 このように、森林・林業・林産業に対する期待はますます高まっているのにもかかわらず、これをめぐる状況は大変厳しゅうございます。
 日本の森林面積は、二千五百万ヘクタールのうち、約四割の一千万ヘクタールは人工林が占めている。これは多くの林家の努力の結果であり、林産供給の中核的な森林となっておりますが、人工林の約七割は三十五年生以下の若い森林で、今後とも間伐を中心とする手入れが強く必要な現況に置かれております。
 一方、外材の輸入を見ると、昭和三十六年に輸入の自由化に踏み切った後、その後の数次にわたるガット・ラウンド交渉等により林産物の関税が引き下げられていく中で、外材の輸入量は年々増加をし、昭和四十一年には木材供給量の約三分の一でありましたけれども、平成十一年には八割を超えるまでに増加をしてしまいました。
 一方、輸入量の増加は長年にわたり国産材の需要と価格の低迷を招くとともに、人件費を初めとする経営コストが増加したことから、林業の採算性が大幅に低下しており、林業生産活動が停滞をしております。このため、必要な間伐や保育等のおくれた人工林が増加するとともに、伐採後の植林が行われない森林が見られるようになってしまいました。林産物の供給はもとより、森林の有する公益的機能の発揮に支障を及ぼすことが大きく危惧をされているところでございます。
 私ども森林組合は、森林所有者の協同組織として、所有者からの委託により、民有林の新植の約九割、間伐の約七割を実現し、地域における森林管理の担い手としての役割を果たしております。しかしながら、外材の流入により市場競争は激化するとともに、森林所有者の経営意欲が減退し、事業量も減少する、さらに担い手の高齢化などにより大変厳しい状況下に置かれております。
 その結果、適切な森林管理がなされずに森林の荒廃が進み、自然災害の起きやすい気候と地形を有する我が国では、災害の多発や保水力の低下を招くことになってしまいました。さらに、地球温暖化防止の観点からは、京都議定書において我が国が約束をした二酸化炭素の削減目標の六%のうち、森林の吸収によって三・九%を確保するという目標の達成にも大変心配をしておるところでございます。
 現在行われておる新ラウンド交渉の結果として、これ以上の大幅な関税の引き下げあるいは関税撤廃が行われるという状況になれば、林業活動意欲はさらに低下し、我が国の森林・林業・林産業は決定的なダメージを受ける結果になってしまいます。
 一方、世界の森林に目を向けますと、世界の森林面積は大きく減少しています。世界の森林面積は、陸地の三割に相当する三十九億ヘクタールでありますが、農地への転用や、その他、再生能力を超えた過放牧、薪炭材の過剰採取、不適切な商業伐採等により、過去十年間に我が国の国土面積の約二・五倍に相当する九千四百万ヘクタールが減少したと言われており、また、森林の劣化も進んでおります。
 森林の減少、劣化は、木材の不足、洪水の発生など、それぞれの国に大きな影響を与えるだけではなく、地球温暖化や生物多様性の減少といった地球規模での問題にもなっております。そのため、持続可能な森林経営の推進が平成四年の地球サミット以降世界的な課題となっており、昨年のヨハネスブルグで開催されたWSSDにおいても、持続可能な森林経営を達成することが持続的な開発に向けた不可欠な目標である、このことを改めて確認されておるところでございます。
 現在、貿易の対象となっておる林産物は世界の木材生産量の二割を占めており、日本は世界の木材貿易量の一五%を占めております。持続可能な森林経営が確立されないまま木材貿易の自由化が進むと、木材輸出のための伐採に歯どめがかからなくなるなど、世界の森林の減少、劣化に拍車をかけることとなり、地球規模の環境問題の解決を一層困難にさせております。
 WTOの非農産品市場アクセスの交渉において、林産物を分野別関税撤廃の対象にせよと主張しておる国があると聞いておりますが、地球規模の環境問題の観点からも、断固拒否すべきものと考えております。森林・林業・林産業の活性化をし、豊かな森林資源を未来に引き継いでいくためにも、現在行われておるWTO新ラウンド交渉において、林産物の関税に対する特別な配慮の確保を、国会並びに政府に強く求めておるところでございます。
 また、お手元に、林業・木材産業関係者で構成する林産物WTO対策全国協議会が作成いたしました「貿易自由化の拡大は、日本と世界の森林資源を荒廃させる。」というパンフレットを配付、差し上げております。御一覧いただければ幸いでございます。
 以上でございます。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 次に、植村参考人にお願いいたします。
植村参考人 おはようございます。全国漁業協同組合連合会及び水産業団体で構成する全国水産物輸入対策協議会の会長を務めております全漁連の植村でございます。
 日韓、日中新漁業協定あるいは水産基本法、関連する諸法案の成立につきまして大変御尽力をいただきましたことにつきまして、厚く御礼を申し述べさせていただきます。
 私は、長年、国民に良質な動物たんぱく食料を供給するという使命感を持ち、資源有限、漁業無限という言葉をモットーに、日々、漁業と系統の運営に携わった者であります。本日は、漁業者の代表として、WTO水産物交渉に関して意見を申し述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 貿易自由化の世界的な流れの中で、水産貿易も自由化が一層促進され、世界じゅうの漁獲物、養殖生産物の合わせて四割が貿易に供されるに至っております。
 世界の水産物貿易額の実に四分の一に相当する膨大な額の水産物が日本国内市場へ流入し、その結果、我が国では、サケやマグロなど人気のある魚種を中心に、供給過剰から多くの魚種で産地市場価格が低落し、漁業経営を直撃いたしております。
 これまでの間に、我が国漁業の国内生産量は一千二百八十万トンでございましたが、遠洋漁業が海外漁場から撤退し、沖合漁業はマイワシ、サバ等の資源量変動により減少しており、魚価低迷と相まって、平成十三年度の生産金額は最盛期の六割の一兆七千億ちょっとでございます。
 一方、ガット・ウルグアイ・ラウンドを含め、累次の水産物関税引き下げによって、水産物の関税は平均で四・一%にまで下がってまいりました。その結果、平成十三年度には輸入金額が一兆七千億と、国内生産額に匹敵するまでになっております。
 生産体制も影響を受けました。生産の単位である経営体数は減少し続け、この十年間で二三%減少し、漁業就業者数も十年間で二八%も減少いたしました。
 このような逆風の中、漁業関係者は、何とか経営を維持するために必死になって対策を模索しておりますが、減船、廃業等厳しい状況となっており、漁業の先行きに大変不安な思いを持っております。その余波を受け、漁業協同組合の経営も赤字になるものがふえており、さきに延長していただいた合併促進法のもとで、生き残りをかけた漁協合併を進めておるところであります。
 輸出国の側におきましても、既に自由化の推進によって貿易商材である水産物の漁獲に拍車をかけ、現地では、再生産能力を超えた漁獲や、養殖池の拡大等による環境破壊をもたらしております。輸出を目的とした大規模漁業の陰で、多くの小規模漁業や漁村が衰退するなど深刻な問題を引き起こしております。エビ等の輸出ブームの中で、マングローブ等環境上不可欠の木々が伐採され拡大された結果、現在は大変沿岸の環境悪化と相なっておる現状を我々は見るとき、心痛の思いでございます。
 このように、水産物の貿易自由化は、このまま放置すれば、輸入国、輸出国双方に被害を生み出します。こうした弊害を防止し、急激な変化による悪影響を緩和するため、一定の調整手段を確保しておくことは、当然ながら非常に重要なことであると考えております。国際社会は、環境破壊を軽視し貿易優先の視点を変えなければならないと考えております。
 しかしながら、現実のWTO水産物交渉では、五月に提示されたジラール議長のモダリティー要素案が水産物を関税撤廃分野に入れていることに見られるように、水産業に対する配慮は全くありません。水産資源はしっかりと管理しなければ枯渇することがわかっていないのでしょうか。これは、我々にとって絶対に受け入れられません。
 もし我が国において漁業がさらに後退したならば、水産基本計画に掲げる水産物の自給率向上目標をどう達成するのでしょうか。将来、いざ食料不足といった事態になった場合、技術が廃れ、漁業者がいなくなっていては、どうやって国民にたんぱく食料を供給するのでしょうか。荒海での操船や海洋環境を見きわめての漁獲、養殖技術者、担い手育成は容易ではありません。まさにローマは一日にして成らずの思いをしながら、漁業育成、後継者育成に意を用いておるところでございます。
 漁業、漁村が果たしている多面的な役割は、国土の保全、国境監視、環境保全、海難救助、雇用の確保、文化の伝承など多岐にわたって発揮されていることが指摘されております。釣り人、遊漁人口の増大は著しく、都市と漁村の対流、交流に漁協は力を尽くして協力しながら、この資源の回復に力を尽くしているところでございます。
 漁業以外に産業のない条件不利益地域で漁業が崩壊したらどうなるでしょう。海岸美や沿岸資源が荒廃され放題になってまいっておることを極めて憂慮しているところでございます。
 健康と長寿に貢献する地方色豊かな魚食文化は存続できるのでしょうか。貿易のように金額換算できがたい膨大な効用を国家社会にもたらしているのではないでしょうか。
 沖合漁業、沿岸漁業は、もともと半農半漁、林業に生活のベースを据えて、自然環境を守りながら育ってきた産業であります。すなわち、漁は月収、農業収入は年収、林業収入は退職金に匹敵する思いで、一生懸命自然を育てながら共存、共生をしてきた実態がございます。
 ジラール議長の案は、このような漁業の特質と漁村の実態を無視した暴論であります。これをはね返し、日本が昨年十二月にWTOに提案したように、各国とも国内の漁業、漁村の置かれておる状況を勘案し、特別に保護を要するセンシティブ品目に配慮した方式を実現しなければなりません。
 水産業界といたしましても、一体となって、各国の漁業関係者、政府担当部局とお会いし、日本提案の趣旨である有限天然資源の持続的利用と各国の漁業、漁村の維持存続が可能になるようなWTOルールの実現を訴えてまいりました。これには一定の業界における理解を得てはおりますが、日本の国のような協同組合組織がまだ未成熟な世界各国においては、貿易業者が先行、優先をして、問題提起をあいまいにさせておるところでございます。
 このような国際的な実態を勘案しながら、WTOにおきましては、我々日本のルールを極力実現していただくよう、政府御当局、国会の先生方にお願いを申し上げまして、私からの意見陳述といたします。(拍手)
小平委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
小平委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村誠吾君。
北村(誠)委員 おはようございます。自由民主党の北村誠吾でございます。
 我が国の農林水産業を代表されるお三人の参考人の方には、大変御多用の中、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、順次御質問させていただきますが、宮田参考人、飯塚参考人、植村参考人の順でお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。
 まず初めに、宮田参考人にお伺いさせていただきたいと思いますが、WTO農業交渉についてでございます。
 現在続けられております農業交渉は、三月末のモダリティーを確立することができませんで、九月にメキシコのカンクンで開催される第五回WTO閣僚会議に向けて、農業委員会特別会合などの場で議論が行われているというところでございます。
 モダリティーについての我が国の主張は先ほど参考人も申されたところでありますけれども、食料安全保障や国土環境保全などの非貿易的関心事項に配慮して、農政改革の進捗に合わせた漸進的な緩やかな保護の削減方式とすることであると思います。
 しかしながら、交渉の触媒であると位置づけられたハービンソン議長のモダリティー案は、先ほど申されたように、我が国にとって大変厳しいものであり、これを受け入れると今の日本の農業は産業として存在できないほどの影響を受けることは必至であるというふうに思います。さらに、農業が持つ国土保全あるいはその他の多面的機能が喪失すれば、その影響ははかり知れないものがあり、我が国がこの案を到底受け入れることはできないということは明白であると私も認識しております。
 一方、外国を見ますと、自分の国の農業を守ることに最大の国益ということで位置づけており、例えばアメリカは、国内農業を保護するため、二〇〇二年農業法で不足払い制度を復活させるなど、なりふり構わない措置をとる反面、WTO農業交渉では保護の削減を主張しており、言っていることとやっていることがまるで正反対じゃないかというふうに私には思えます。
 こうした中で、EUにおいては、EU共通農業政策、CAP改革が、本年六月二十六日の農相理事会において政治的合意に達したということであります。このことは、今後の農業交渉の新たな展開の兆しであるというふうにも考えられるんじゃないかと思うのであります。
 そこで、宮田参考人にお尋ねをいたします。
 農業団体の皆さんの役割というのは大変重要であり、先ほどの御説明では、全中におかれて、国際的な農業団体との連携、あるいは国内の理解を求める、協力を求める運動を展開しておられるということでありますが、この交渉は、関係者が一丸となって当たらなければ、我々が主張する方向は一歩も進まないと思っております。
 そこで、私ども国会あるいは政府に対しまして、農業団体を代表される立場から、さらに先ほどの御意見より突っ込んで、具体的にこう行動してもらいたい、あるいはこうした活動が有効であるという考えがあれば、この際でございますからぜひ聞かせていただきたい。
 そして、WTO交渉がなかなか進まない中で、二国間の自由貿易協定、例のFTAであります、この動きが我が国の農業あるいは林業、水産業を脅かすという危機意識を私も持っております。
 過ぐる五月三十日に、ちょうどきょうおいでいただいておりますお三方の連名で声明を発表しておられます。これは大変重要であり、FTAのみならず、WTOにも深くかかわる事柄について、既に五月三十日に声明を発して警鐘を鳴らしておられるというふうに思います。ここら辺も含めまして、ぜひ御意見をお聞かせいただきたいと思います。
宮田参考人 二つの点で意見を求められたわけでございます。
 まず第一点でありますけれども、現在のWTOの農業交渉につきましては、多国間で共通したルールづくりを目指す場であると思いますし、日本提案を実現するためには、同じような主張を行う加盟国政府との仲間づくり、多数派の形成が極めて重要であると認識をいたしております。したがいまして、例えば関税につきましては、品目ごとの柔軟性を確保できるウルグアイ・ラウンド方式を採用すべきでありまして、このための仲間づくりが大変重要になってくると思います。
 現在、WTOの加盟国百四十六カ国のうち、過半数の七十六カ国がウルグアイ・ラウンド方式を賛成といいますか支持しているということがあらわれておるわけでありまして、これらをやはり大きくふやしていくということが重要な点であろうと思っています。したがいまして、私は、議員外交によってこれをさらに拡大するための取り組みをひとつお願いしたいと思います。例えば、ウルグアイ・ラウンドを支持する政府間会議を開催するなど、そういった取り組みをぜひお願いしたいと思っております。
 また、そういった対外的な取り組みと同時に、国内における理解と協力を得ることも極めて重要でございます。JAグループにおきましても、多様な国民各層と連携したフォーラムの開催などに取り組んでおりますが、国会、政府におきましても、WTO交渉にかかわる国民の理解促進と合意形成のために、一層の御尽力を特にお願いしたいということを申し上げたいと思っております。
 それから、第二点の、WTOに関連をしたFTAの問題、これも非常に重要な御指摘だと思っております。
 特にそういった関連というのは極めて重要でありまして、今、二国間のFTAの推進のために農業が犠牲になるのもやむを得ない、そういった考え、論調が一部にあるというふうに私ども認識をいたしておりますが、こうした考え方は、いたずらに国内の混乱を招くものであるというふうに思っております。
 我々は、二国間のFTAの交渉を否定するものでは決してございません。それらは、WTO日本提案の基本である各国の多様な農業の共存を実現するものでなければならない、そういう考えでございます。つまり、FTAについては当然WTOにおける日本提案との整合性が必要でございまして、その内容を十分踏まえてFTAの交渉をすることが一番重要であると思っております。
 そのために、自給率が低い現状や品目の特殊性、重要性を十分に検討することが必要でありまして、これは既にFTAの交渉をしている他の国でも実際あることでありますけれども、国内農業に影響が大きい農産物を初めとする重要品目につきましては関税撤廃の例外を設けるべきであるということを私たちは考えておりますので、そういったことでひとつ御理解をいただきたいと思います。
 以上、二つの点にお答えをいたしました。よろしくお願いいたします。
北村(誠)委員 どうもありがとうございました。
 続きまして飯塚参考人に、私の基本的な考え方は、今、宮田参考人にお尋ねするときに大体御理解いただけたんじゃないかと思いますので、ずばり、単刀直入に質問に入らせていただきます。
 林産物に関する関税は、どんな考え方で設定されるべきであるというふうにお考えであるか。先ほどちょっと述べられたようでありますが、せっかくですから、この際、もう少し突っ込んでお話をいただきたいと思いますし、林産物の関税がゼロになる、あるいはさらに引き下げられるというふうなことが行われたときに、先ほどの、多面的機能の発揮、あるいは林業の持続的な発展、あるいは森林・林業基本法の理念というものの実現についてどんな影響があるかということについて、もう少し、よければ具体的にお聞かせをいただきたいと思います。
飯塚参考人 昭和三十六年に門戸を開き、貿易がいわゆる自由化をされました。そして自来、だんだん関税率が引き下がってきた結果として、申し上げたとおり、現在では八二%が外材で占められてしまっておる。
 いろいろな政策の影響を受けて、土地政策で、土地を手に入れることで精いっぱいだという中で、住宅をつくるにしても安かろう悪かろうの外材で我慢しなくてはならないんじゃないだろうか、そんな考え方が先行した結果だと予測しておりますけれども、非常に残念な結果を招いておる。その結果が山村の崩壊につながり、あるいはまた林業振興が進まない、そろばんに合わないからやらない、放置林が生まれてしまう。そういうことで今日の山村振興が大変大きなダメージを受けていることは、御案内のとおりであります。
 今日まで下がってきた事柄は、外国の状況と日本の置かれた立場を考えると後退もある程度はやむを得ない状況下にあると思いますけれども、これ以上後退することは、山村が崩壊し、あるいはまた放置林がふえる、手入れの行き届かない林分が多くなるに従って、多面的機能の発揮というものが求めにくい状況下に置かれてしまいます。したがって、国民が求める澄んだ空気、あるいは水資源、国土の保全、教育の場所の提供等々が滅んでしまう。さらにもっと大きな問題は、京都議定書で日本が世界に約束をした、CO2の固定を六%、そのうちの三・九%を森林がやりますという約束も守れない状況下に置かれると思われます。
 したがって、これ以上の関税率の引き下げ、あるいはまたゼロ・ゼロみたいな一方的な要望に対しては、ぜひ先生方の御努力によって阻止をしていただきたい、現状維持で進んでいただくようにお願いをしたい。もっと言えば、関税を上げていただくようにやっていただければ、これにこした喜びはございません。
 以上でございます。
北村(誠)委員 どうもありがとうございました。
 それでは、植村参考人にお尋ねをいたします。
 今回のジラール議長案は、水産物と同様に関税撤廃の品目として挙げられたものの中に、皮革あるいはその他の鉱工業製品も含まれております。これらは経済産業省の所管であり、今後は農水省と経産省が連携をとって当たっていく必要があるというふうに私は考えます。
 このジラール議長提案について、先ほど聞かせていただいたと思いますが、まず評価について確認をしておきたいと思いますので、さらに具体的な意見があれば追加の意見をお聞かせいただきたいと思いますし、鉱工業分野との連携について、今後どのように交渉の中で連携して取り組んでいくかというような考えがあればお示しをいただきたいというふうにお願いします。宮田参考人……(発言する者あり)失礼しました、植村参考人です。
植村参考人 まず、非農産品交渉にかかわる外国の反応、あるいはジラール提案にかかわる評価などなどについてでございますので、順不同になりますが、答弁してまいりたいと思います。
 私は非農産品交渉にかかわる外国の反応を見てまいりましたが、我々も、一九九九年にはケベック、そして横浜、ソウル、セブ等々において毎年、柔軟性のある貿易ルールの策定、節度ある貿易の確立が地域産業に不可欠の要素を持っている、こういうことで、いろいろ国際会議においての決議をしてまいりました。この点においては、生産者である団体におきましては同一の考え方をいたしております。
 しかし、先ほども申し上げましたとおり、貿易業者の立場にある方々の声が強い国においては生産者の声が反映されておりませんし、組織としてそこまでのウエートを持っておらない国々が多いわけでございます。しかし、我々はそういう国々も訪問いたして、友好国づくりに一生懸命努力をした結果、それぞれ多くの賛同を得ております。地域産業として、漁業のあるべき姿として、貿易関税ゼロは絶対反対であるという考え方でございます。
 それから、漁業経営が不振の原因は、やはり輸入水産物が、先ほど申し上げましたとおり我が国生産額に輸入量がほぼ匹敵する状況となっておりまして、そういう中で、我が国の生産した魚価が低落をいたしてきたわけでございます。昨今においては、前年対比において三〇%からの低落を見ておる魚種もございます。このような結果は、資源管理型漁業の推進を根幹としてまいりました水産基本法を根底から揺さぶるものでございます。このことは容易に想定できるものだというふうに考えます。
 また、ジラール議長のモダリティー要素案に対する評価については、ジラール議長案は、ドーハ閣僚宣言の総則にある持続可能な開発を無視したものである。幾らたたき台であるといいましても、一たんペーパーとして出されたこの要素案が今後のモダリティー決定に重要な役割を果たす可能性は大きいものと思っております。我々業界は、死力を尽くしてこれに反対をいたさなければならないということで、漁業者の緊急集会も開催いたしております。
 WTOのルールは輸出国と輸入国に公正なものでなければならない中で、このような提案をなされておるということは、漁業の実態、漁村のあり方について余りにも無知な点があるのではないかというふうに思うほどでございまして、これらの与える漁業に対する影響は極めて重大な要素となることでありましょう。そのような認識をいたしております。
 以上。
北村(誠)委員 植村参考人、大変失礼いたしました。私、上がっておりまして、申しわけございません。また、宮田参考人にも御迷惑かけまして申しわけありませんでした。
 今、お答えを総括的、包括的にいただきましたので、十分わかったつもりになりました。
 それで、実は、きょう十一時過ぎには我が農林水産大臣もアメリカ、カナダへ向けて出発するということでありまして、お三方の参考人が申された趣旨と、そして大事な大事なポイントというものを押さえて、特に、アメリカ、カナダといろいろな場面で残念ながらこのWTO交渉等では衝突することが多いということでありますから、ここで農水大臣の仕事ぶりを大いに注視したいと思うわけであります。
 ぜひ、お三方におかれましては、先ほど述べられましたそれぞれの大変苦しい事情というのもありましょうけれども、ともどもに手をつないで、本当に国益に沿う、将来の国民のために、ぜひそれぞれの分野で御活躍をいただきたいと思います。
 特に植村参考人申されましたように、昨日はWTO危機突破全国漁民緊急集会ということで、デモ行進を行われ、私どももそれとエールを交換したわけでありますけれども、今後とも、ともどもに頑張ってまいりたいと思いますので、健康に留意されて、御活躍のほどをお願い申し上げ、私の質問を終わります。
 以上です。
小平委員長 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 宮田参考人にお聞きしたいと思っておりますが、先ほどのお話で、農業団体とかあるいは消費者に向けても、広く今度のハービンソン提案によって農業も打撃を受けるんだという主張に理解を求めていきたいというお話でしたが、一つ、宮田参考人に。
 実は、アメリカにおいては、あらゆる穀物、米においてもいわゆる目標価格を設定して、一トン二百四十ドルぐらいだと思いましたが、実際、市場価格がその半分以下、百二十ドルぐらい下がっても、それを支持価格、いわゆる不足払いを税金でやっている。そして、農家にはそれだけの所得補償をしながら、どんどん市場が安くなったものを日本に買え買えと大変理不尽な主張をしている。
 私、今度の貿易自由化のいわゆるJAのいろいろなパンフレットを見ますが、アメリカとかEUとかカナダがどれだけ農業を保護しているのか、所得補償しているのか、それに対して、農業団体はどこまでそれを農民に、例えば私が地元に帰って農民にそんな話をしても、EUでもあらゆる作物に支持価格を、三年間の市場価格の一割下がったところで支持価格を設けて買い支えているじゃないか、そういう話をすると、みんなびっくりする。
 農業団体会長も、当然宮田参考人もそれを承知の上だと思うんですが、こうしてアメリカは安いものを、日本に米を売り込もうとしているんだという主張を、いわゆる全国の農民に大きな大々的な宣伝をなぜやらないのか、僕は不思議でならない。いかがですか。
宮田参考人 今御指摘のとおり、農業の補助金、アメリカあたりはそういった面では非常に重厚な政策をとっていることも我々よく存じております。
 農業補助金を削減するということはウルグアイ・ラウンド以降の方向であるにもかかわらず、逆に一例ちょっとデータを挙げれば、我が国は、一九九五年から一九九九年、ちょっと早いわけでありますけれども、農業補助金は、当時三兆五千七十五億円が、今七千四百七十八億円ということで、非常にそういった線に沿ってきているわけでありまして、一方、アメリカは、当時は六十二億一千四百万ドルが、現在は本当にかなりふえまして、百三億九千二百万ドルというような形の中で重厚な農業補助金をやっているわけであります。そんな中で、非常に輸出の品目を下げて国内の農業所得の維持をしておるということがありますので、非常にそういった面では健全な農業貿易ルールから大きく逸脱をしているということは、私もよく御指摘のとおりだと思っております。
 そういった中の実態を我が国の農業者を初めとして国民全体にどう知らしめるかということでありますけれども、この問題につきまして、私ども、WTOの今の問題の国内へのアピールの点では、そういった非常に理不尽なアメリカの貿易政策をとっているということは、そのときそのときで十分PRするように努めております。しかしながら、御指摘のとおり、なかなか国民全体の一般の理解の中には効果があらわれていないという御指摘がございますけれども、そういった面は、まだまだ、そういった対策、アピールを強めた中で、実態をやはり国民全体に知らしめることを取り組みを強めていきたいと考えております。
 現実的にはやはり、そういったことも非常に、我々、世界の農業団体と絶えずいろいろな話し合いをしておる中でも大きな問題になっておるわけでありまして、十分、御指摘のとおりでございますので、これからも一層また、国内世論、国内認識を深める場面でそういったこともメーンとして、従来もやっておりますけれども、より強く申し上げていきたいと思っております。
山田(正)委員 アメリカの、いわゆる農家に対する直接所得払いとか緊急農家支援とか価格支持政策等々で実は四百二十一億ドルですから、実際には日本円に換算して五兆円近いものをやっている、そういったこと。米のさっきの話も、私が組合長さん方と話しても、ほとんど知らない。アメリカはこうして米を安くしてやっているんだということを、ぜひそれは周知徹底して、まず農民自身に、本当にアメリカやEUがどういうふうにして農家を保護しているか、食料を守っているかということ、それを知らしめていただきたいと思います。
 それから、日本の場合に、これからWTOの中ではなかなか厳しい状況。今ですら、今度の新食糧法では米は野菜化を始めたわけだと私は思っているわけですが、さらに転作奨励金等々を五百億ぐらい減らされるわけです。そんな中で、どういうふうにしたらいいかというと、所得補償政策、これしかないのじゃないか。
 いわゆる日本の所得補償総助成量が、WTOで認められている枠というのは三兆九千億円もある。今、WTO交渉をいろいろやっているんですが、WTO交渉の中で、AMS、国内の助成、いわゆる農家に対する直接固定払いとかあるいは支持価格とかそういったもので認められている枠。各国が、アメリカもイギリスもどこも認めている枠が、三兆九千億もあるわけです。
 それで、その枠内で、全部とは言わないけれども、日本はわずかなものしか農家に直接所得補償していない。しかも今度、転作奨励金をさらに減らされていく等々なると、その辺を宮田参考人、ぜひ強く主張して、日本もいわゆる所得補償、助成、それをどんどんやらなきゃいけないんだ、そういった声を私は農業団体から聞いたことがない。ぜひ、その点をどう思われるか。
宮田参考人 各国の所得補償政策を見ますと、特定の品目や生産量、価格などに連動した補助金、いわゆる黄色の政策、AMSや、生産等に連動しない緑の政策など、さまざまな形態があると認識をいたしておるところでもあります。我々といたしましては、我が国の持続可能な農業の発展や農業の多面的機能発揮のために、十分な所得が確保されますことが第一であると考えておりまして、そのために、所得補償政策は有効な手段の一つと考えておるところでもあります。
 一方、WTO上では、御指摘のとおり、我が国が許容されるAMS額の相当部分を主張していないというような、八〇%を主張していないという現状にありますが、この中で、御指摘のとおりでありますけれども、貿易相手国から非難されないような所得補償政策を仕組むことがぜひ必要であるという点は考えておるところであります。
 それで、そのためにも、日本提案にありますように、収入保険の補てん率の改正など、あるいはまた現行の国内支持ルールの見直しもまたあわせて必要ではないかと考えておりますので、そういうことでお答えをさせていただきたいと思います。
山田(正)委員 海外に非難されないようにとおっしゃいましたが、WTOの各国合意の中で、三兆九千億は日本は国内助成していいですよとAMS枠が堂々と認められているんですから、何も各国から海外貿易云々で非難されることは何にもないのです、これは。自信を持ってそういう主張をやっていただかなければ困る、そう思います。
 もう一つですが、共産党の中林議員がかねてから主張してきたことですけれども、ミニマムアクセス、先ほど話をしておりましたので、このミニマムアクセスの枠を穀物枠として、小麦とか等々一緒にできる、これはこの委員会で中林議員も質問しておりますが、これはできる。できないことはない。そういう主張をやれば、米のかわりに小麦を入れるということだって可能なわけです。そういった主張も農業団体としてぜひやっていただきたい。
 次に、私の時間もそんなにありませんので、植村参考人にお聞きしたいのですが、水産の問題です。
 今回のジラール案ですと、魚、魚製品は無関税、関税撤廃、いろいろ調べてみるとどうやらそういう方向でまとまる可能性が非常に高いのじゃないか。そうなると、今ですら、水産というのはもう林業に次いで農業以上に危機的状況にあるわけなんです。こうなったら、恐らく漁師、農家の半分も残らなくなるんじゃないか。
 ところが一方、韓国は、日本のタイに対しても七〇%、アワビに至っては一九〇%関税をかけ、中国はすべての日本からの魚の製品に三八・四%の関税をかけている。日本はそれがゼロになってしまっている。
 そうすると、今ですら水産物が四百万トン近くどっと入ってきているのが、どんなことになるのか。かつて十年前の魚価の半分しかしない今の状況、そう考えますと、私は、大変今回のこの案は危惧している、大変心配しているわけなんですが、どうしたらいいのかということで、簡単でいいのですが、一言だけで結構ですが、植村参考人としてはどう考えますか。
植村参考人 まさに関税撤廃というものが、いかに、漁業という特殊な産業、そして資源管理型漁業を徹底しなければ今の状態でも資源が枯渇をしていくということが明白な中で、水産基本法がつくられていっている。その根底は、先ほども申し上げたように資源管理型漁業である。それが、魚種に関係なく、商社の、貿易業者の思いでどんどん入ってきた場合、日本の生産されたものが、価格は別にして、高度利用が、安定利用がなされるかどうか、どっちが利用されていくかという段階で、全く不定見な中でこの産業が勝つのか負けるのかという問題が出てきたら、漁業という特殊な産業が決して成り立たないであろう。
 浜が、そういうことによって漁家経営が賄われなくなった段階で放棄されるような事態ができたら、冒頭申し上げたように、今度は必要だというときに漁業者が復活するのか。それは三年や五年の中では復活しないわけですから、荒海と闘う力あるいは根性、そして資源を不確定要素の中で培っていくという技術、能力、こういうものが一時的に放棄されると復活は非常に困難である、こういうふうに見ております。
 それから、今のジラール提案なるものは、先ほど申し上げたとおり、関税が現在ですら四・一%という状況にあって、後がないような状況の中で、IQの問題も、いささかではございますが、この日本的産業であるノリ等に見られるように、一部関税が高い位置にある、こういう内容になっており、その生産量がある程度保護されておるという状況ですが、もうほかは、平均の四・一ですから、ずっと下がっておりますので、これ以上問題を、逼迫してまいりますと、全く日本の漁業は、冒頭申し上げたように、いわゆる漁業管理ができない状況になるんだという危機的な状況を我々は想定いたしております。
山田(正)委員 このジラール提案の中でも、韓国、中国は発展途上国だということで従来どおり高い関税のままで維持され、日本だけはそういう形になる。これをぜひ、漁民にもその旨をはっきり知らせていただきたい。
 もう一つ。EUにおいては、魚介類二十六品目について、過去五年間の平均価格を指標価格として設定し、それより一割下がったら全部買い支えて、そしてそれを全部焼却処分している。市場を安定させている。日本は、そういう魚価安定制度というものは全く、まあ一部には保管のものがありますが、それは五億ぐらいで、全然機能していない。
 ところが、農産物においては、野菜において八十品目、八十以上の品目において安定基金制度がなされて、今、野菜農家の五七%はその下がった価格の八割を補てんされるようになっています。植村参考人、漁業だけがそういうものはない。これは、漁業団体全体として、野菜と同じような魚価安定基金制度というのをぜひひとつ取り上げて、大運動を展開していただきたい。
 WTOは厳しい、特に漁業は厳しい。農業はまだ主張が通るかもしれない。漁業は恐らく私は厳しいんじゃないかと思っています。それをぜひ考えていただきたい、そう思います。
 最後に一つ、飯塚参考人。
 林業は、昭和三十六年の自由化以来、大変厳しい状況にあります。しかし、将来何とかするのは、いわゆる環境保全補償、環境保全対策といった名目で、私は、ことしの四月から稼働している能代のバイオマス発電、ああいったものを国家的事業として展開していく、間伐林の伐採等々と考えているのと、それともう一つは、この農水委員会でも外務副大臣を呼んでやったんですが、ODA予算で間伐材を直接出すということは可能である。今まで外務省は不可能だ何だ言っていたんですが、法律上全く問題ない、これは外務副大臣も認めましたので、そういう運動を展開していただいて。
 私の持ち時間もなくなりましたが、一言、将来の展望について話していただければと思います。
飯塚参考人 お話しのとおり、国産材のシェアを少しでも拡大することが我々の大きな務めのことだと思っております。
 その中の一つといたしまして、いかに外材に負けないコストで国産材を提供できるかというふうなことがあります。二番目には、需要拡大を研究開発をして推し進めることがございます。そして三番目に、おっしゃられたようなバイオマス発電を中心とする、エネルギーとして、新鮮な、清潔なエネルギー源としての木材利用というふうなことも、林野庁もまた私どもも、先ほど申し上げた三つの観点から強く本年度の目標、努力目標として設定をして、歩み始めておるところでございます。
 御指摘の線に沿って、さらに努力をしてやっていきたいと思いますので、よろしく御指導いただくようにお願い申し上げます。
山田(正)委員 参考人の皆様方に、本当にきょうは御苦労さまでございました。ありがとうございました。
小平委員長 次に、白保台一君。
白保委員 公明党の白保台一でございます。
 きょうは、植村参考人、飯塚参考人、宮田参考人、大変御苦労さまでございます。
 考え方については先ほどるる参考人の皆さん方からお伺いいたしました。みんな違いがあるわけじゃありませんで、みんなが一緒になって、一丸となってこの厳しい中を切り抜けていこう、そういう立場であることには間違いないわけであります。しかし、大変厳しい状況ですから、お互いが確認し合っていかなきゃならない、そういったことがあるのかな、こういうことで、きょうは皆さんお忙しい中をおいでいただいた、こういうふうに思っております。
 また、WTOの交渉というのをやってまいりましたが、どうしてもそれぞれの意見の違いというものが各国あって、なかなかまとまらない。そういうことで、九月までにそれぞれの立場を超えてお互いがやっていこうよ、こういうふうなことを、議長は何とか取りまとめていこうというふうな形になっておるわけでございますけれども、しかし、そうはいっても、日本の言っている品目ごとの柔軟性を確保できる関税方式というのが、これは半数以上の支持を得ているんだろう、こういうふうに思います。
 したがって、私たちはこれからもしっかりとお互いが連携をし合いながらやっていくことが必要であろう、こういうふうに思っております。
 そこで、宮田会長に今後の取り組みの問題についてもまずお伺いをしたい、こういうふうに思っておるわけでございますけれども、まず、取り組みについて、団体としての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
宮田参考人 今後の取り組みにつきましては、一つには、やはり我々と同じ主張をする国をどうふやしていくか、お互いの国際的なこういった取り組み、一つは、国内的にどう国民の総力を一方にまとめていくかということだと思っています。
 後の二点目でありますけれども、国内的な取り組みについては、先ほど申し上げましたように、今まで各県の全部フォーラムを立ち上げましたし、これから九月のカンクンの閣僚会議に向けましてなお一層集中的に、フォーラムの開催、それから、我々の考えをより国民が理解してくれる、そういった取り組みをもっともっとやはり数をふやした中で、そういった意識の高まりを強くするようなことを積極的にやっていきたいと思っております。
 いずれにしましても、国際的には、今回のハービンソンの議長案というのは極めて輸出国の利益のみに偏重しておるわけでありまして、また、非貿易関心事項への配慮が一切なされていない、極めて問題のある内容でありまして、我々といたしましても、このハービンソン議長案を今後の交渉のベースにしないような取り組みを、いわゆる議長案を撤回する取り組み、そういったものを当面は最大の課題として取り組んでまいっておりますし、まいるつもりでおります、これからも強く。
 私もこの問題につきましては、ハービンソン議長に今年の三月二十四日に会いまして、直接、現行のモダリティー案は認められないとはっきり申し上げまして、現実的で柔軟なモダリティー案の策定を強く求めてきたところでもあります。そういったことを初めとして、我が国やEUに、現行のハービンソン案を拒否する加盟国政府を支援するために、主張を同じくする各国農業団体の連携をこれから特に強化していきたいと思っております。
 現在は、アジアとの農業団体の連携強化ということで、今スリランカでアジアの農業団体の会合をやっておりますので、それにも全中から代表団を派遣して強くアピールしておりますし、また、七月の末でありますけれども、カナダでの非公式の閣僚会議が開かれる際に、カナダの農業団体から、ぜひ我々も来てもらいたいと。そういった会議の中で我々の主張を強くアピールしていきたいということで、私を初め代表団を派遣することにしております。
 カナダはケアンズ・グループでありますけれども、農業団体の主張は我々と考え方を一つにしておりまして、昨年以来ずっと同一的な行動をとっておりますので、カナダに行ってカナダの農業団体を中心にしてやることはそういった面では非常に影響力が発揮できるんじゃないかと思っていまして、ぜひ、そういうことで行って取り組みをしてまいりたいと思っています。
 また、カンクンでの九月の閣僚会議におきましても、我々、政府を支援する考えの中で、全中としても私を初め代表団を派遣いたしまして、そういったところで、各国の農業団体も来るわけでありますから、特に各国の農業団体お互いがそういった考えを一にするところが政府へのお互いの影響力を行使するという点からも、より強く外国の農業団体との連携を深めることで頑張っていきたいと考えております。
白保委員 きょう七月十日は納豆の日なんだそうです。日本の非常に大事な食文化の一つですけれども、お米の消費をどうするかということで、私たちは米粉による消費拡大とかいったこともいろいろと取り組んでやってきているわけでございますが、やはり我が国のお米というものはきっちりと守っていかなきゃならない、そういうことを強く考えるわけでございます。
 そこで、先ほどもお話がございましたが、日本農業の多面的機能や食料安全保障といった、我が国も主張する非貿易的関心事項が反映されたモダリティーの確立についてどういうお考えをお持ちなのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
宮田参考人 我が国にとりまして重要な非貿易的関心事項につきましては、国内農業生産を通じまして農業の多面的機能の維持、さらにまた食料安全保障の確立ということが挙げられるわけでありまして、特に非貿易的関心事項の多面的機能につきましては非常に重要な問題であります。特に、日本の自然条件、そういったものの中での稲作が果たす機能は非常に大きなものがあるわけであります。
 具体的に、関税については、柔軟性のあるウルグアイ・ラウンド方式による漸進的な削減を我々は求めているわけでありまして、そういったことは、やはりアクセス数量、国内支持などにつきましても、我が国の特殊な個別品目の事情を踏まえて、現実的に柔軟性のあるモダリティーの確立ということを強く求めておるわけであります。
 特に、今言いましたように、やはりこういったことがなければ、一つは、単なる農業生産のみならず、日本の国の自然とか環境、災害保全、そういったいろいろな大きな影響力がある米作を中心にした日本農業でありますから、そういったものを維持するという大きな観点からも、よりそういった面を強く我々の主張として強調してまいりたいと思っております。
白保委員 宮田参考人にもっとお聞きしたいと思いますが、時間が余りないので、飯塚参考人にもお伺いしたい、こう思っております。
 森林・林業の問題等について若干お聞きしたいと思いますが、担い手の問題があると思うんです。非常に厳しい状況の中で、将来的に担い手の問題等が大変厳しい状況にあろうかと思っておりますが、端的に、担い手育成の取り組みについてお聞かせいただきたいと思います。
飯塚参考人 担い手の問題は我々に最も頭の痛い問題でございます。
 御案内のとおり、現在働いておるグリーンキーパーの皆さんの平均年齢も、六十五歳以上が二五%というほど非常に高うございます。また、京都議定書に基づく多面的機能の発揮、あるいはまた木材生産、こういったことを考えても、担い手がいない限りはできない。
 そういう悩みを国会の先生方、政府にお訴えをさせていただく中で、本年度から緑の雇用制度というふうなことで、一年間いろいろな面倒を見ながら熟練した者を養成していこうじゃないかと、二千四百名の方を教育して農村、山村に定着をさせたいというお考えをとっていただきました。我々は大変喜んで、十分彼らに、認識も新たに、あるいは技術も新たにしていただいて山に入っていただく、そういうことは大変喜んでおるところであります。
 その反面、木材価格が非常に安うございまして、昭和四十年に一立方の木材を売却すると約十二人の働く方を雇えたんですけれども、きょう現在では一立方では〇・六人しか雇えない状況下に置かれております。したがって、人は欲しいんだけれども、十分な待遇ができるかどうか、この辺が悩みであり、またどう打開していくか、我々に課せられた大きな使命でございます。
 以上でございます。
白保委員 今、飯塚参考人からお話がございましたように、まさに十四年度補正で九十五億、そして二千四百人ということで、我々も一生懸命頑張って大きな成果を上げることができた、こういうふうに思っております。
 それで、WTOに関連してお伺いをしたいと思います。
 林産物の関税相互撤廃について、これはまさに反対でありますが、皆さんの主張にもあるように、WTO林産物交渉に関する提案は各国における森林やその管理の状況等を無視したものであり、持続可能な森林経営の推進に重大な支障を来すおそれがある、森林物の輸入国の立場を反映したものとは言えないということで、皆さんも断固たる意思を示しておられます。
 そこで、我々もまさにそのとおりだと思いますが、皆さんの御意見をもう少しお聞かせいただきたいと思います。
飯塚参考人 関税の引き下げについては、先ほど来申し上げているとおり、これ以上の引き下げはどうしても認められない、これが私どものお願いのすべてでございます。
 その中で、外材が無秩序に入ってくる、日本の森林に十分な手入れが行き届かない、その結果、多面的機能の発揮というものも十分でき得ない、そんな中でどのようにして外材が入りにくい環境をつくっていただけるか。それは、今申し上げたように、関税のゼロ・ゼロなんというようなことは絶対だめだ、そしてまた、今以下の関税の引き下げは絶対困るということのほかに、もう一つ頭の痛いことは、外国における違法伐採がございます。
 政府の許可を得ないで勝手に自分の国の山を切って、そして、これはライセンスを得て切った木だよという勝手な言い逃れの中で日本の商社に売り渡す、日本の商社がそれを持ち込んでくる。こういったことは、その国の将来にとってもその国の治安にとっても、またそれをある程度承知で買う日本の国民性、あるいはまたエコノミックアニマルなんという悪口を言われる、日本の立場というものを著しく悪くしておるのが現実でございます。
 したがって、ぜひ当面の課題として、関税の引き下げは絶対だめだということと同時に、違法伐採について皆さん方のさらなる努力を御期待しているところであります。
 以上であります。
白保委員 それでは、最後に植村参考人にお伺いをいたしたいと思います。
 植村参考人におかれましては、昨日は大変御苦労さまでございました。皆さんの非常に熱気の伝わる会場にもちょっと顔を出しましたが、大きな大会であった、このように思っております。
 時間がありませんので端的にお伺いいたしますが、ウルグアイ・ラウンドの結果として、我が国は三三%引き下げられて現在四・一%、こういうふうな形になっておるわけでございますが、ジラール議長のモダリティー要素案が水産物を関税撤廃の対象に位置づけていることは断固容認できない、そういうことでありますけれども、この結果としての影響、もしそのようなことになった場合の影響ということが一つ。
 もう一つ、一般的な補助金と、また補助金問題というのが出てまいりましたが、この問題について皆さんの御意見をお聞かせいただきたい、こういうふうに思います。
植村参考人 関税撤廃による影響は底知れぬ大きな問題を提起する。我々は、環境を守り、資源管理型漁業を水産基本法の基本的理念といたしておりますが、それが根底から崩れる。そういうことで、日本のいわゆる地域産業である漁業の組織そして資源、こういうものが維持できるのかどうかという大きな不安を持っております。ゼロにした場合はそのようなことでございます。
 それから、漁業における補助金の問題でございますが、沿岸漁業の実態は、輸出をもって他の貿易を阻害するような内容のものではない。現に、世界の列国の中、水産国と言われる中でも、日本の水産は自国の国民食料を供給するという立場に立った生い立ちを持っておりまして、現在でも輸出に対して輸入が十九倍になっている。アメリカが三・六倍の輸入で終わっておりますが、あと、二、三から五ぐらいまでの間で日本の十九倍に匹敵するかどうかでございますから、輸出によって日本の漁業を成り立たせておるという次元ではない。
 したがって、輸出貿易を阻害するような補助金ではなくて、むしろ日本の国民食料を自給する、また地域産業を自給する立場の最低要素の補助金であるんだろう。そのことによって環境を保全し、あるいは資源を保護し、ささやかながら、日本の漁村、漁業というものは世界に冠たる地域産業として今成り立っておる。輸入が十九倍にもなっておりますが、そういう内容でありますから、日本の補助金がそのような多くの外国の貿易を阻害するものではない。
 そして、漁港あるいは種苗づくり、そういうものは日本の二十世紀において確立されてきておりまして、そのための補助金というものは二十一世紀にも大いに日本国の漁業資産として役立っていくんだろう、こう思っておりますので、個人の懐に入る補助金ではない。いわゆる二十一世紀の種苗づくりとかあるいは漁業基盤づくりとか、そういうものにこの補助金が使われてきている、こういう現実だと認識をいたしております。
白保委員 時間でございますので終わりますが、宮田参考人、飯塚参考人、植村参考人におかれましては、大変にきょうは貴重な御意見を聞かせていただきましてありがとうございました。終わります。
小平委員長 次に、鮫島宗明君。
鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。
 きょうは、宮田参考人、飯塚参考人、植村参考人、お越しいただいてありがとうございます。私、東京の出身なものですから、個別事情を離れて、客観的な立場でお伺いしたいと思います。
 朝からお話を聞いていると、二つのことが大体まざってやりとりされている。
 一つは何かというと、今の体制の中で、十年前に決まった現在のWTOの体制の中でもいかに大変かというお話がそれぞれ三分野であって、ただでさえ大変なのに、さらに新ラウンドでおかしなことになったらもうやっていけないよ、弱り目にたたり目みたいな話なんだろうと思います。ですから、最初の前半の、今でさえ大変ですと。これは、いろいろな行政の不備等々もあって、じわじわとそれぞれの農業、林業、水産業が衰退しつつある。このことをどうするかという問題が実は大変大きい。
 それから、WTOの中で輸出国側とどう戦うのかというのは、ちょっと別の問題だというふうに私は思うんですね。ですから、そこもちょっと分けて聞きたいと思います。
 先に、外と戦うという話からいきますと、ちょうど十年前と今とでどの辺が一番変わったか。日本を取り巻く情勢、あるいは日本の一次産業を取り巻く情勢、それから世界的な議論がどういうふうに変わってきたかというと、先ほどからお三方もおっしゃっていますが、多面的機能という概念が大変強く意識されてくるようになってきた。その中には環境問題というのも非常に大きくありますし、環境問題は具体的に言えば地球温暖化の問題であり、生物多様性の保護の問題、こういうことが大変強く意識されるようになってきた。
 それからもう一つ、我が国でもそうですが、BSEの発生を契機として、食の安全、安心ということが大変強く言われている。このことは間接的には漁業なんかでもありますし、林業でもあると思いますが、合法とか適法とかということも、ある意味では、この安心、安全、合法というジャンルとしてあるような気がします。
 それからもう一つ、日本の国が十年前に比べると、北朝鮮の問題もあり、世界全体の秩序が混乱する中で、ナショナルセキュリティーというのが多分十年前より今強く意識されているんだろうと思います。
 わかりやすい方から言いますと、例えばナショナルセキュリティーということから言うと、ヨーロッパの国々で直接所得補償ができた最初の考え方は、山岳地帯において、一定の人口が張りついていないと国境監視機能が不十分だ、山を越えて他民族が入ってきたときにそれが見えない、それで一定数の山岳地域の農業が必要だということで直接支払いが始まったと考え方としては思いますが、日本でそれは何かというと、漁業者がやっているわけですね。
 日本は、違法に民族が入ってくるのはみんな船で大体来ますから、ボートピープルや難民を最初に発見して第一報を送ってくるのは、みんな漁業者の方々の発見。ところが、こういう二次的な国防機能に関して、今何の手当ても行われていない。こういうことは、私は、堂々と漁業者の側が主張していい問題だと思います。多分、そういう漁業者の監視がなければ、あの北朝鮮の拉致の被害者ももっと多かったに違いない。恐らく一部は事前に見つかってためらったのもあるのじゃないかと思います。
 そういう意味では、国防という意味では、漁業者は十分主張する論拠を持っています。
 また農業の方でも、備蓄というのが、そういう日本を取り巻く国際環境が若干不安定になる中では、今までの備蓄というのは過剰対策で、あるいは十年に一回の天変不順なときにこれだけなくちゃ不安ですねということでありましたが、ナショナルセキュリティーという観点から日本は実は備蓄制度が何もないわけですね。そういう考え方もこれからは論拠としての正当性を持っていく、いかに世界に通じる正当な主張を積み上げていくかというのがWTOの交渉をしていく上で大変大事だと私は思います。
 その意味で、私は、実は林業の方に一番関心を持っているわけでして、今一応三・九%を森林に吸収してもらうということになっていますが、正当な主張という観点からいうと、本当はこの国会でのやりとりでもう既にばれているんですが、日本の森林が本当に一九九〇年に比べて二〇一〇年、三・九%余計に吸収するんですか、科学的根拠があるんですかというと、本当はないんですよね。
 二〇一〇年の方は、日本の森林全体のCO2の吸収量は科学的に言えば減ります。しかし、九〇年と二〇一〇年を比較しての話なんじゃなくて、九〇年は一応カウントしない。二〇一〇年、どのぐらい吸収しているかということで、使えるんだというので政治的な持ってきた数字が三・九%。
 だけれども、それは賢明な日本国民はわかっていますから、私は、そういうインチキな話に乗るのではなくて、このまま非常に手入れが悪い森林とよく手入れをした森林とで、これだけ成長量、CO2の吸収量が変わるんだという、もうちょっと科学的な主張。
 それから、国際的にナンセンスだと私は思いますが、伐採すると、伐採量イコール排出量というふうに今換算されてしまうんです。例えば、千石の木材を伐採すると、千石分のCO2を排出したというふうに今の京都議定書のルールではカウントされてしまう。これは大体、欧米の連中が、チップにして燃してバイオマス発電とかということを想定しているのでそうなんですが、世界に冠たる木材文化を持っている日本としては、伐採しても、それを木造建築なり家具なり非燃焼的に利用した場合は排出にカウントするのはおかしいじゃないかという主張は、木材文化で世界をリードしている国としては十分できるんじゃないかというふうにも私は思います。
 だから、そういう、今政府が宣伝しているような森林の機能にそのまま乗っかるのか、それともやはりもうちょっと科学的に考えて、手入れをした場合としない場合にどれだけ違うのか、あるいは木材も、山から町までといいますか、川上から川下まで一貫した産業として充実育成していく手法としてどういうのがいいかというような観点からの御主張をもうちょっと聞きたいと思います。
 それから、森林の持っている大変重要な機能、生物多様性の維持も森林が一番大きいと私は思いますけれども、例えば、東南アジアの国々で違法伐採によってオランウータンの生息地が脅かされているというようなものは輸入しない。例えば、漁業の方でも、マグロ船なんかでいわゆる国際ルールに従わない違法なものは日本のマーケットに入れないようにする、あるいは入ってきても買わなきゃいいじゃないかというので、「責任あるまぐろ漁業」という団体があると思いますが、責任ある林業という分野も、ある意味ではあっていいのかもしれない。違法な伐採を行ったようなものは日本の卸業者が買わないというような体制も必要なんではないかというふうに私は思います。
 漁業の方でいえば、例えばエビなんかが、マングローブを次々に崩してエビのための栽培地をつくったようなところでできたエビは入れないとか。
 環境問題がいかに使えるかというのは、輸出国側、ケアンズ・グループ、アメリカ、カナダ、オーストラリア、こういうグループは世界の中で環境問題に後ろを向いているグループなんですね。だから、逆に言えば彼らの一番の弱点、アキレス腱は、この環境問題。京都議定書にすら批准しない、地球温暖化にそっぽを向いている国々、これを徹底的についていくのが一つの戦略ではないかというふうに私は思います。
 その意味では、林業というのは、いろいろな意味で、組み立て方によって環境に後ろを向いているあの国々を攻撃できる大変いいフィールドじゃないかと思うんですが、ひとつ、飯塚参考人、御意見を聞かせていただきたい。
飯塚参考人 元気を出してもっと頑張れというふうな温かい励ましをちょうだいいたしまして、大変ありがたく思っております。
 林業は環境を守るというふうなこと、そして、人間もそうですけれども、ある程度年をとってきますと御飯も少なくなってくるし排せつ物も少ないと同じように、木材、林の社会においても、やはり若い人がたくさん酸素を出してCO2を固定していくというふうな、そういう中で、切る、植える、育てる、そしてまた切っていくという循環型が強く求められてきているのは御案内のとおりであります。そういう中で、森林の持つ多面的機能は、それの成長に合わせながら決められていく、定められていくというふうに考えております。
 また、政府が決めていただきました三・九%の問題についても、政府の基本的な考え方、取り決め、私ども、それに沿って、全力を尽くしてそれができるような体制の中で努力をしたいというふうに考えておるところでございます。
 また、違法伐採についても、我々としては、先ほど来申し上げているとおり、入ってきては困ると言うんですが、実は輸入をしているのは我々じゃなくて、日本を代表するような大変大きな商社が現地に入って買い付けをし、運び込んでくる。そして、その根拠というものがなかなかつかみ得ないために、何か我々がもたもたしているので、それを阻止する意欲、努力がないんじゃないかみたいなお話もありますけれども、ぜひ、国益を考え、そしてふるさとを考える観点に立ち返っていただき、そして、そういう人たちの経済活動の中で、選別をする中で適切な輸入ができるように、私どもは、ぜひそうあってほしいというふうに願っておるところでございます。
 また、木材は切ってゼロになるんじゃなくて、切って、運び込んできて、例えば住宅をつくって、柱だとか母屋に持っていきますと、その中でもCO2は固定されて、その家がある限り、その中で固定の能力を高めて、呼吸をしながら、家のある限り社会にも貢献する木材である。
 したがって、都市部の方たちが山へ行って木を植えることじゃなくて、国産材のものをお使いいただき、国産材の家をつくることが、山に対する、あるいは緑に対する大きな貢献をしているんだ、このように声を大にしてPRさせていただいておるところでありますけれども、先生御指摘のように、今、非常に難しい曲がり角に来ておるし、あるいはまた、今後どのようにして充実する国産材を循環型社会の中でうまく活用しながら新しい生命を生み出していく、いわゆる植えた時期が伐採時期に到来したということを前提に、それらが曲がり角に来ており、努力目標の中心をそこに置かなくてはいけないのかな、そんな考えでおるところでございます。
鮫島委員 地球科学、環境問題、もう時間がないので余り詳しい話はやめますが、要するに、地球上に存在している炭素の量は一定で、別に宇宙から飛んでくるわけでも何でもないんですが、それが、固体の状態でいるか、液体の状態でいるか、気体の状態でいるか。長年の、産業革命からのこの二百年の中で、固体であった石炭という形の炭素をガスにしてしまいました、液体であった石油というものをガスにしてしまいましたという、この固体と液体として安定していたのをガスにしてしまったというのが温暖化問題の一番の急所ですから。
 唯一、その逆のルート、ガスになっているものをもう一回固体に戻すというのは森だけでしかできないことですので、固体になったものをもう一回バイオマス燃料にしてしまえばガスになって戻りますが、家具や木造家屋として五十年、六十年置いておけば、これはガスから固体になったものをそのまま固体として維持するわけですから、地球温暖化に対しては大変いいことをしているという文化だと思います。
 時間がないので、食の安全の問題に関係してですが、きのうの農業新聞に「輸入牛肉の履歴義務 こだわる野党」という記事が出ている。
 牛肉のトレーサビリティーで、国産の牛肉について細かい履歴を表示しなければいけません。個体識別番号をつけなければいけない。そうすると、牛一頭につき約千五、六百枚のラベルが要るわけです。これを全部正しく間違いなくやろうとすると、加工、流通の段階で一割方経費がかかります。BSEが発生したんだから、食の安心、安全のためにはしようがないじゃないかという議論もあるわけですが、では、六割、三分の二の輸入牛肉はどうなっているんですか、輸入牛肉は全く自由で表示の義務はありません。そうすると、こっちで経費が一割かかって、輸入牛肉は何も義務がないというと、それは輸出国を利する制度ではないか。せめて国産並みの表示を輸出国にも義務づけるべきだということを我々四野党はずっと主張していたんですが、農業団体は賛成したのか反対したのかよくわかりませんが。
 また我々は改めて、特に、カナダでもついにBSEが発生した。カナダ政府ははっきり言いませんが、どうもあれはアメリカから来た牛らしいということもあると、北米大陸全体がかなり限りなくクロに近い状態になっているわけで、それでも何の表示もしなくて、どうぞと。カナダは発生国だからもう入りませんが、アメリカでもオーストラリアでも、そこだけは無表示でどうぞというのは、幾ら何でもおかしいんじゃないか、消費者側から見てもおかしいというので、来週改めて私たち野党四党で共同提案で、輸入牛肉にも、国内以上のことは要求しませんが、国内と同等のレベルの表示を要求する法案を出したいと思います。
 当然、宮田参考人は、方向としては賛成ですよね。
宮田参考人 消費者に対します安心、安全を図るためにも、より信頼にこたえるためにも、我々JAグループといたしましても、今国会で成立をいたしました牛肉トレーサビリティー法に積極的に対応し、生産履歴の記録などにより一層取り組んでいきたいということをまず冒頭申し上げたいと思っております。
 そういった中で、ただいまの輸入牛肉の問題でありますけれども、これの取り扱いにつきましては、本年五月、カナダにおきましてBSEが発生をしたこと等によりまして、輸入牛肉の安全性について、いわゆる消費者が非常に不安感を持っているということも現実であります。こういったカナダにおけるBSEの発生は、BSEの低リスク国にありましてもBSEが発生する危険性があることを示しているということであります。
 現在、消費者への適切な情報の開示という観点から、輸入牛肉の取り扱いにつきましては、やはり現行では牛肉トレーサビリティーの法は輸入牛肉というのは対象としておりません。したがいまして、流通段階におきまして輸入牛肉が有利であるということは、今の状況では現実であります。
 そういった中で、やはり私どもといたしましても、政府において生産履歴情報の公表を要件とするJAS規格制度の活用などにより輸入業者による任意の取り組みを推進しているという現状にはあるわけでありますけれども、やはり、国産牛肉と同じようなこういった取り組みを進めていくということがやはり大事なことではないかと思っておりますので、そういうことを申し上げたいと思っております。
鮫島委員 基本的に賛成の方向というふうに理解させていただきます。
 これは、心配することはなくて、与党の方も、やはり事ここに至っては輸入牛肉をほっておくわけにいかぬという意見も大変出てきていますので、どうぞ安心して、ぜひ我々のあれに賛成してもらいたいと思います。
 済みません、水産で、一つだけで終わりますが、日本の沿岸漁業については、ある意味では農業政策と似たようなことがあって日本のお役人は得意だということがあるかもしれませんが、狩猟民族的な漁船漁業については全然日本の水産の政策が弱いんじゃないかということもかねてから指摘されているところです。
 例えば減船のやり方が、EUの場合を先に言いますと、ヨーロッパの場合は、二百海里から外で操業するということも減船と認める。ところが日本の場合は、実際の二そうあるうちの一そうをつぶさないと減船じゃない。操業地域を変えることによる減船という措置が日本はとられていないんですが、この点についてだけちょっとお伺いして、私の意見を終わります。
植村参考人 まさに、沿岸漁業においては、先生おっしゃるような内容の中で行っておるものもございますけれども、遠洋のカツオ・マグロ船の例に見られるとおり、総量の規制ということを通じて、二、三年前にカツオ船の減船をしたという実態がございます。
鮫島委員 ありがとうございました。時間ですので、以上で終わります。
小平委員長 次に、中林よし子君。
中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。
 きょう、三人の参考人の方々から御意見を聞かせていただいて、WTO交渉というもの、まあWTOそのものが、すべてのものを貿易自由化の対象にするという、これが大枠でございますけれども、農林水産という、その産物がこの自由化の対象にされてなるものかという思いを改めて強くいたしました。
 日本共産党は、そういう意味では、WTO協定そのものの改定を求める、そういう大波を起こしていかなければならないんではないかという考えを持っているわけですけれども、それは大変大きな仕事でございますので、具体的に三人の方にお聞きしたいというふうに思います。
 まず、宮田参考人なんですけれども、EU提案に日本政府は乗っていきたい、こういう、日本のWTO交渉に当たる基本姿勢としては打ち出しているわけですね。私どもも、EU提案について試算したり、いろいろやってみたんですが、最低でも一五%の関税引き下げ、平均で三六%ということになれば、どうあったって関税の引き下げの道を開くということにつながるわけですけれども、それについて、米はどうなるのか、あるいはほかの農産物への影響はどのようにお考えになっているのか。
 政府がEU提案の関税引き下げ率に同調していくことについてのお考えを、お答えいただければというふうに思います。
宮田参考人 今お話ありましたように、関税につきましては、EU提案等につきまして我々JAグループも賛成をして、同一的な行動といいますか考え方を示しておるわけでありまして、これは我が国、日本政府と同じでございます。
 やはり、アメリカ、ケアンズが主張しております、スイス・フォーミュラによる大幅かつ一律的な引き下げ、これには、もう全然問題外として反対をしているわけでありまして、柔軟性のあるウルグアイ・ラウンド方式を提案しておるわけであります。具体的には、今ありましたように最低一五%、平均三六%の削減を提案しておりまして、これがまとまるのであれば、重要品目への影響は、あることはありますけれども、柔軟性という面ではかなり考えられるのかなというところで、そういった見解を示しておるところであります。
 日本政府は、国内支持、関税の引き下げ、輸出補助金の三分野につきましてEU提案の支持をしておるということはもちろんでありますけれども、そういった中で、私どもは今言ったような考えでありましたし、いずれにしても、関税が下がるということになりますと影響があるわけでありますので、そういったものとあわせて、やはり経営所得安定対策だとかそういった品目別の対策も講じた中で、そういった関税の引き下げに対する国内稲作を初めとする生産物の維持、そういったものの対策もあわせてやっていくということが大事ではないかと思っております。
 以上、お答えさせていただきます。
中林委員 宮田参考人は政府の方ではないので、ここで論争するのはやめますけれども、しかし、先ほど意見陳述の中でも、主要農作物、小麦だとか、でん粉だとか、落花生だとか、それから雑豆だとか、そういうもの全部に対して引き下げが要求されてくるということなんですよ。そうすると、平均三六%ですから、それを超えるものも当然あるだろうということになれば、より一層日本に対する市場開放への道というのはこのEU提案でもやはりあって、国内産業への影響というのは相当出てくるんじゃないかというふうに私は思っています。
 特に、先ほど漁業の問題でも、今回のWTO協定で、途上国あるいは後発途上国で無税で無枠という提起があるということなんですが、このEU提案でも、実は途上国それから後発途上国に対する条項がございまして、途上国に対しては、今の輸入量の五〇%以上無税で提供しよう、それから後発途上国については、無税、無枠で全輸入を提供しよう、こういう条項なんですよね。
 これが取り入れられると、実は、途上国は、中国もあり、タイもあり、韓国もありということになれば、米だけではないですけれども、特に米については大打撃。それから後発途上国は、バングラデシュだとかそういうところが入っていくわけですから、これも米生産が可能なところで、商社などが開発輸入を手がければ、とんでもない安値で入ってくる可能性があるということなんです。
 私どもは、途上国については当然配慮をしなきゃいけない。特に、私は、NGOとして、非政府組織としての農協組織とすれば、むしろ途上国と、どのようにすればそれぞれの国内生産を高めて、それぞれの農業者や国民が喜んでいくのか、そっちの方向で協力し合う方向がいいんじゃないかというふうに思うんですが、このEUの提案している途上国条項、それについてのお考えがあれば聞かせていただきたいというふうに思います。
宮田参考人 途上国の対応でありますけれども、これにつきましては、日本政府はEU提案の支持の表明をしているわけでありますけれども、いずれにしましても、開発途上国につきましては、両国間で立場の違いがあると思っておりますし、途上国に対する特別かつ異なる取り扱いは必要と考えております。しかしながら、EUが提案をする最貧途上国に対する無税、無枠アクセスの提供につきましては、国内的には問題も多いと思います。ただし、すべての国に対する一律的な関税の引き下げよりも、途上国における特恵関税の維持の方が好ましいとの基本政策ではEUとは一致をしておるところであります。
 これにつきましては、とかく開発途上国は関税をゼロに近く下げろというような主張をしておるわけでありまして、こういったことで、アメリカ、ケアンズが言っております大幅な関税引き下げということは、途上国に有利であるのではないかというようなことの主張を強くしておるわけでありますけれども、私どもといたしましては、お互い関税をゼロに近づけるということは、確かに開発途上国としては輸出をしやすいという、一つのハードルが下げられるわけでありますけれども、先進国の中での、輸出を主体とする国あるいはまた多国籍企業、そういった形の中での逆に開発途上国への輸入が非常に急増した中で、開発途上国の農業が壊滅的打撃をこうむっているということは、現実の具体的なことがあるわけであります。
 そんなことからいいましても、やはり、二国間の中でのお互いの開発途上国への特恵関税の待遇、そういった措置を広げていくということが非常に有効ではないかと思っておりますので、そういった面では、我が国の、二〇〇三年においても、それぞれ、一般の特恵関税措置の拡充ですとか、あるいはまたLDCの特恵対象品目の追加等々のそういった面の対策、取り組みの方がより有効であるということで、我々も考えております。
中林委員 EU提案に乗って一緒に、なるべく数が多い方がいい、それから、途上国条項を設けたのも、WTOに加盟している国の多くは途上国だということで、途上国を味方につけるためにはそういう有利になる提案をEUもしているということだと思うんですね。
 ただし、日本とEUの決定的な違いは、多面的機能をお互いに認め合っているという共通の土台はありますけれども、日本は六割の食料輸入国、EUは基本的に穀物は自給、持っているわけですね。一〇〇%を超え輸出国だということであれば、関税の引き下げを提起しても余り国内産業に影響を及ぼさない。それと一体となっていくというのは、やはり日本にとっては大きな不利になるので、自給率向上のためにも、もっと堂々と、本当に食料をきっちりと国内で確保していくという主張こそ政府に求めなければいけないし、NGOとしても頑張っていただければというふうに思います。
 時間があれば、後でまた宮田参考人にお聞きします。
 森林の方を先にさせていただきますけれども、私は、森林にしても水産にしても、関税引き下げの中にほうり込まれてしまって、とんでもない事態にまでさせられてしまっている。日本のように、これだけ山林の多い、山林が多いというか山が多い国でありながら、自給率が二割を切っているという状況の中で、関税引き下げはこれ以上断固許されないんだという、それはもう私たちも全面的に支持しますけれども、ここに至った一番の問題は、国産材をいかに利用させていくか、これにかかっているんじゃないかという思いがしているわけですね。
 自給率目標を森林・林業基本法では掲げなかったわけですけれども、少なくとも五割ぐらいにまでいけるような状況をつくる必要があるということで、私はずっとこの委員会では、国産材の利用の中で、小学校、中学校に木造校舎をどう普及させていくかということで提起しているんですが、建築基準法も相当改善されて、木材を使った校舎でも対応できるという方向がかなり打ち出されております。
 しかし、一番おくれているのが大都会なんですね。東京で調べたら、一校しかないという状況なんですよ。もう私、びっくり仰天したんですが、そういう意味では、大都会で木造校舎の普及がどんと進めば、これは全体的にかなり国産材の利用促進になるのではないかというふうに思うんですけれども、国産材利用についてのお考えがあれば、ぜひ陳述をしていただければというふうに思います。
飯塚参考人 日本の国土の六七%がいわゆる森である、森林である。そして、地形が急峻であって、雨が降るとどっと流れ出るような、そういう環境下の日本。そして、戦後、我々の先輩が営々として植林をしてきて、現在、伐採ができる寸前までやってきておるところでございます。
 先ほど来申し上げているとおり、その過程で、日本学術会議の公式発表によりますと、多面的機能に対する森林の効果というのは七十五兆円にもなると。こんなたくさんのお金を提供しているんだから、少しはその辺を理解して、いろいろな形でもっと応援してほしいというのが偽らざる心情でございます。
 今、委員の方から、具体的にもっと国産材の利用をしたらどうだろうかと。そして、現在一八%と先ほど申し上げましたが、そこまで落ち込んでしまったから、山に住む人も仕事をする人も、あるいは再造林する人もいなくなった。委員は五〇%ぐらいいいんじゃないかというふうなことを言っておりましたけれども、全くもって私の夢がそこにございます。ぜひそういう形で実現できるようなそんな政策を、今後ともだんだんやっていっていただければありがたいなというふうに思っております。
 具体的な話になりまして、校舎の問題がございました。
 非木造が火災に強いというふうなこと、あるいはまたコストが、その他非木造のものより高いというふうなこと等もあったと思いますが、残念ながら、なかなかそういう形に向いていないのが実情でありますが、建築基準法あるいは消防法等の改正によりまして、相当、使っても大丈夫だというふうなバックアップ体制もできてきており、特に農村部などでは、近々それらの普及率も高まってきているというふうに伺っております。
 しかし、その背景には、今申し上げたように、ちょっぴり非木造よりもコストが高くなってしまう。どこかでだれかがそれをどういう形で御支援いただけるんだろうかな、そんな期待の中で工夫を重ねておるのが地方の実情のようでございます。
 また、特に私が考えておりますのは、東京の山手線の内側のようなところではなかなか木造が使いにくい環境にありますので、ぜひ内装面に、内装というふうなことに重点を置いて、国産材をたくさん使っていただけるような工夫、努力、そういったものを御期待し、関係方面に御要請をしているところでございます。
中林委員 水産の方でお聞きしたいというふうに思います。
 本当に、WTO、前回ウルグアイ・ラウンドから関税が物すごく引き下がって、お話をお伺いすると、三三%引き下がって、今平均四・一%ぐらいということですからね。この間、水産物の輸入量も急速にふえて、大体、世界のトップに日本がなっているわけですが、断トツの一位で、二位から六位までの国を合計するのに匹敵するだけのものを日本が輸入している。四方八方を海に囲まれた日本で、もう摩訶不思議な現象という状況が実際に起きている。これもやはり、WTO協定の中で非農産物の中に入れられ、関税の引き下げの対象にさせられて、ここまで引き下がっているところに大きな原因がある。
 今回のジラール案というもの、やはり途上国提案というのがあって、無税、無枠というのが出てきているわけですね。これは絶対受け入れられないとおっしゃっているわけですが、後発途上国の中ではやはり受け入れられないという声になっているんだというふうにお伺いしているわけですけれども、日本と途上国などとの連係プレー、これはぜひ共同して進める必要があるというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
植村参考人 答弁をいたす前に、先ほど、私たちの資料、今先生がおっしゃいました輸入輸出の比率を書いた「世界の水産物貿易(国別輸出入額)」の中で、中国のデータがちょっと間違って、ミスプリントになっております。中国のデータは、輸出額が一・六〇六じゃなくて三・六〇六というふうになりますし、また倍率につきましても〇・九ではなくて二・〇、こういうことでございますので、後ほど訂正資料を配付いたしますので、御了承いただきたいと思います。
 いわゆる途上国についての特恵関税ともいうべき関税ゼロに対しては、我々も承知いたしておりまして、このことについてはあえて反対は申し上げておりません。逆に、途上国において関税ゼロになれば、我々と同じ他の輸出国も、同じになるので、我々の優位性はゆがむ、したがって、むしろこのことには、関税ゼロについては反対であるという考え方が最近急速に出てまいりましたので、そちらの方とも関係を密にしながら、この提言をひとつ実現できるようにしております。
 それから、つけ加えまして、実は日本になぜそのように輸入されておるかということについては、御承知のとおり、日本は魚を食べなれたいわゆる魚食民族であるという長い歴史があるので、容易に魚を受け入れられる要素を持っている。こういうことを考えてみますと、二十一世紀は食料難の時代と言われる中で、特に我々は、魚を漁獲する国々に魚食普及を提言いたしております。
 昨年、我々、五十周年の事業として、隣国韓国と中国との首脳会談をいたしまして、やはり自国の生産物を自国で消費する地産地消というものが二十一世紀の食料難を見るとき極めて重要だ、そのことについて意見の交換をいたしております。特に、中国とは数回にわたって話し合いをしまして、実はそれが実現をいたしておりまして、このたびの三月にも、全漁連がODAセミナーの一環として、中国において魚食普及のセミナーを行って、大変歓迎をされております。日本からもしかるべく講師を連れて行ってまいりまして、中国、そういう途上国においても、魚というのは大変な自国の、健康食であるばかりでなくて、やはり自給率向上に役立つということをわかってもらうための運動をこれからも進めてまいりたい、このように思っております。
中林委員 本当に、参考人の皆さんには貴重な御意見ありがとうございました。
 私は、ぜひ、政府とは違うNGOとしての力を存分に発揮していただいた、やはりそういう国際協力、特に途上国とどのように一緒になっていくか、こういうことの研究というのはとても大切ではないかというふうに思っておりますので、そのことを最後に要請申し上げまして、終わります。ありがとうございました。
小平委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 参考人の方々、長時間にわたっての意見陳述、本当に大変ありがとうございますし、御苦労さんでございます。
 私は、出身が宮城県気仙沼でございます。気仙沼というと、国際水産文化都市という、水産業もあって、そして三陸のリアス式海岸、山が海岸線まで押し出ていて、市土の約七割が山という状況です。それから、中山間地域農業も行っていて、一歩踏み出せば、仙台平野の方に行けば広大な穀倉地帯、第一次産業が主産業の地域でございます。
 そういう意味では、WTO交渉について多くの関心を持っていますが、この二〇〇五年一月の一括合意に向けて、ハービンソン議長提案あるいはジラール議長提案なるもので今議論なされておりますけれども、WTO体制の中で日本の国内の第一次産業が現状としてどうなっているのか、このことのしっかりとした総括を行っておくことこそ、今求められていることじゃないのかなというふうに思うんです。このことなしには、国際交渉を行っていっても、なかなか力強い交渉にはなっていかないんじゃないのかというふうに思うんです。
 それで、宮田参考人、飯塚参考人、植村参考人の方々から、私なりに意見を申し述べて、御見解をそれぞれ賜りたいというふうに思うんです。それは、第一次産業における自給率の問題なんですね。
 農業分野においても、カロリーベースでもう四〇%を切っているという実情なんですね。そして、食料・農業・農村基本法では、平成二十二年までに四五%に自給率を上げるという目標を掲げているにもかかわらず、どんどんどんどん自給率が減っている現状なんですね。このことをどうとらえていくのか。
 そして、あるいは木材、林産物においては、先ほどの意見陳述にもございました、二〇%を切っていっている。そうすると、外材の値段にすべて左右されて、国内産業として森林・林業・林産業がもう業として成り立たなくなっている現状なんだ。これは、WTO交渉以前の問題じゃないのかなというふうに私はとらえているんですね。
 そして、水産物においては、先ほどの意見陳述にありましたけれども、国内生産と輸入水産物の量が金額的にはもうフィフティー・フィフティーになっている。一兆七千億という数字が示されましたけれども、そういう現状になっているんですね。魚介類だけとっても、もう六〇%を切っている。ついこの間、昭和五十年代は、逆に言うと自給率が一〇〇%を超えていた時代。それが、一気にここ二十年間でもって自給率が六〇%以下に下がっている現状ですね。
 こういう現状に対して、それぞれ、政府や私ども国会、それから業界団体、一体となって取り組んできているにもかかわらず現状を克服し切れていないという、現状認識はみんな同じに立っているんですけれども、この危機的な状況というものを、業界団体としてこれからどう取り組んでいって、克服していこうとなされているのか。
 非常に困難な課題ではありますけれども、ここに立ち向かっていって、それで、WTOの中で日本をどう位置づけていくのかという、この両面性というものがなければこれからの交渉というのは進展していかないんじゃないのかな、私たちの思うとおりには進んでいかないんじゃないのかなというふうに思うんですが、それぞれ、お三方から御意見をお聞かせ願えればというふうに思っております。
宮田参考人 自給率の向上、二〇一〇年に四五%に上げていくということ、そういった具体的な行動を起こすということと現状のWTOの農業交渉、非常に関連があると思っております。
 自給率を四〇%にするという現状について、二つの問題点が私はあると思っています。
 一つは、我が国の食料安全保障の見地からいいますと、非常にこの四〇%というのは、大変心配といいますか、危険で大きな懸念があることでありまして、この実情につきましては、国民の八割が将来の食料供給に不安を持っており、なお、そういった考えから、国内の農業生産による食料の供給ということを強く望んでおるというような実態にもございます。
 もう一点は、世界全体の食料の安全保障ですね。特に、飢餓と貧困で苦しむ途上国の食料の安全保障にとって、具体的には、世界の人口の二%にすぎない日本が世界で貿易される農産物の一一%を買いあさっているというのが現状であります。その状況で果たしていいのかどうかといったことも、大きな問題点であると思っています。
 そういった観点からも、我々は、我が国の食と農はこれでいいのかどうかといったことを、国民自体の八割がいろいろな懸念を抱いているということを申し上げましたけれども、やはり再度強く国民にその実態を問いかけていく、訴えかけていく、そういった中で食料の自給率の向上を図っていく、関心を高めていくということが一番大事ではないかと思っています。
 そういった中で、国内的にはこの目標の達成のために、やはり御飯を中心とした日本型食生活の普及、いわゆる食農教育を、消費面からの取り組みが必要でありますと同時に、麦、大豆、飼料作物の生産振興など、生産面の取り組みもこれまた大事でありまして、その両面から、やはり具体的、積極的な取り組みが国内的には必要であると私は考えております。
 また、現在行われておりますWTOの農業交渉の中でも、我が国の自給率の向上が達成できるようなこと、そういったものをめどとしたモダリティーの確立ということが重要でございまして、少なくとも、自給率の向上が達成しなくなるような今の状況にやはり強く是正を求めていくということが、より集中的な取り組みが必要でないかと思って、自覚をしておるところであります。
 そういった中で、例えば関税の引き下げ、ミニマムアクセス、国内支持のいずれをとりましても、我が国の重要な生産品目は生産が確保できるような現実的な柔軟性のある貿易ルールの実現ということがぜひ必要であるということを我々としても強く申し上げ、そういった形に向かうように農業団体として最大の努力をしてまいりたいと思っております。
飯塚参考人 業として、なりわいとして存在できないような環境下に追い込まれてしまったではないかというお話のとおりでございます。これ以上後退をしないためにも、国においては林業基本法を改正していただきまして、森と人とのかかわり合いを重点に、施策として新しい認識の中で取り組んでいただいており、我々もそれを全面的に御支援申し上げ、その中で活路を見出していきたいというふうに考えておるところでございます。
 これ以上後退しないためには、今、私、二つの考え方で努力をしたいと思っております。
 どこの国においても、その国の緑は国民にとって大変重要な財産であり、生きる糧であると思っております。したがって、その国の独自性、必要性というものを十分尊重すると同時に、それらの国々の人たちも、自分の国の緑を守ろうという意欲は高まってきておると聞いております。また、そうさせなければいけない。この間もインドネシアの大統領と日本との間でも何かそういうことが強く約束され、そして自分の国の緑を守ろう、そういう中での協定がなされたというふうに承っており、特に後進国の各国に向かって、そういう観点からも日本政府として強く訴えていただきたい。
 また、あわせて、WTOにおきましても、無秩序な外材の入りにくい環境をつくっていただく。したがって、これ以上の関税の引き下げは絶対だめ、こういうことを強く申し上げたい。
 もう一つの観点は、先ほどの委員さんにも申し上げましたけれども、国内における需要の拡大を期待する。
 残念ながら、昭和三十六年段階を見ると、敗戦のさなかに植えた木が成長しない、利用できない環境下にあったから外材の輸入もやむを得なかった。しかし、現在は皆さん方のおかげで伐採できる寸前まで来ておる。その木をいかに有効に使うか。これは、多面的な機能の活用と同時に、産業としても大きく期待をしておるところでございます。
 したがって、それらの国産材がいかに使われるか、そして御指摘のあった清潔なエネルギーの活用なんかもその一つでございますけれども、国産材の使いやすい環境をつくる。
 例えば、コストにおいても負けない国産材、あるいはまた強度においても負けない国産材、あるいは健康を持続、向上させるためにも国産材は欠かせないものである、そういう御認識と同時に、多面的機能を果たさせていただいておる森林に対する国民の気持ちの一環として、国産材を使うということが緑の造成につながるという認識とあわせお持ちいただく中で、国産材の需要拡大というその二点に絞って本年度は特に頑張っていきたいというふうに考えておるところでございます。
植村参考人 まさにウルグアイ・ラウンドにおける三三%の大幅な関税引き下げというのは、これは悔やんでも悔やみ切れない思いがいたしております。
 日本の漁業を再生させるということでございます。
 このウルグアイ・ラウンドの三三%の大幅な引き下げの後に、日本の沿岸海域における外国漁船の操業がまた可能であるような状況にあった。それは、日韓、日中漁業協定がようやく三年ぐらい前から締結をされて、その後に水産基本法が制定されたわけです。まさに資源の回復ということが前提にあります。先ほど申し上げたように、資源管理型の徹底ということでございますし、またいわゆる浜の金融という問題が、大変大きな制約の中でこれは機能するのかどうかという問題などもございます。
 いろいろな問題を我々整理しながらこれからの漁業の再構築に邁進しようとするとき、WTOの関税ゼロということは余りにも皮肉なことにつながる。漁業者の息の根をとめるような思いで、これに対して反対してまいりたい、こういうことでございます。
 よろしくお願いいたします。
菅野委員 今日の状況というのは非常に厳しいものがあって、そして農業も、第一次産業全体なんですが、なりわいとしてどう維持していくのかという起点、そういう時期に来ているというふうに思います。
 特に担い手という観点からすれば、担い手をつくっていく。ちょうど私の年代というのは戦後生まれで、そしてまだ山村地域においては、農家の長男に生まれたら、後はあんたが引き継ぐんだよという形の年代で、この産業を維持してきたんです。それでは私たちの年代の次の世代の子供たちはということを考えたときに、こんな厳しい状況だったらば、あんたはうちを継がなくてもいいよという形で、サラリーマンになっていくというのが現状なんですよね、この業界全体、第一次産業界全体が。
 そういうふうに考えたときに、あと十年、二十年という単位で考えていかなきゃならない。その間に産業として維持発展できるような体制に持っていかなきゃならないという危機的な状況に来ていると思うんです、二十年先を見越したときに。そういうとき、私は、この全体の流れをもって、この第一次産業総体に所得補償というものを入れていかなければ、産業として維持できないところに来ているんだ。そして、WTOの中では、多面的機能ということをどう維持発展させていくのかというのは、これは世界的潮流にまで持っていくことができたというふうに思っています。このことに対して日本の果たした役割というのは大きかったというふうに思うんです。
 そういうふうに考えたときに、国民理解をどう得ていくのかという側面はあると思うんですけれども、私は、業界としても私たちとしても、いろいろな機会を通じてこの危機的な状況を国民の中に訴えていって、そして第一次産業全体をどう守っていくのか、あるいは後世につないでいくのかという議論をぜひ行っていただきたいというふうに思うんですが、宮田参考人、飯塚参考人、植村参考人、時間がありませんから端的にでいいですから、この考えについての御見解をお聞きしておきたいと思います。
宮田参考人 お話ありましたように非常に今農業を取り巻く情勢は厳しい中で、担い手、将来的展望、非常に危機感を抱いているというのが農村の現状であります。そういった中で、やはり今担い手となるべき人が他産業に流出をし、なかなか家を継がない、あるいは新規参入もなかなか具体的には大きな効果をもたらす面には行かないというのが現状であります。
 そういった中で、やはり今の農業の将来を、将来的視点をとらえた中で、将来性を見出す、それはやはり具体的な政策とそれを補っていく所得対策であると思っていますし、もう一つは、今日的に議論になっておりますWTOの農業交渉、この結果いかんが大きく将来の日本農業を左右する点だと思っております。
 やはり国内農業、産業育成をするということ、そういった面からいいますと、今回のハービンソンの案というのは、全くこれは我々は受け入れられないということでありまして、どうしても国内の農業を維持発展させるためには、やはり我々が主張しているような柔軟性かつ漸進的な削減方式をとった中でやっていくということが一番の条件であります。そういった中で、国内農業をどう構築していくかという政策、そういったものをきっちりやはり国が示していくということが大事であろうと思っていますので、そんなことを強く望みたいし、我々もそういった気持ちの中でまた頑張っていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
小平委員長 飯塚参考人。時間が来ましたので簡潔にお願いいたします。
飯塚参考人 わかりました。
 PRをどんどんやれと。確かに、我々はPRが下手だと言われておりますので、新しい認識に立って、国民世論の形成ができるような、そして多くの方々から協賛をしていただけるような体制づくりに頑張っていきたいというふうに考えております。
 また、具体的には、七万人ほどグリーンキーパーの皆さんがいらっしゃいますけれども、高齢化である。また、そういうものに配慮して、緑の雇用制度を創設していただきました。これらをうまく活用しながら、将来につながる林業の担い手として彼らをうまくリードしていきたい、そんな気持ちでいっぱいでおるところでございます。
 時間の関係で、失礼をさせていただきます。
植村参考人 漁業に対する理解をいただくということは非常に重要でございますので、国民的な理解を得るために、やはり都市の方々に漁村においでいただく、いわゆる都市と漁村の交流、対流対策を進めております。現実、東京からのツアーを編成いたしまして、はるかかなたの漁村に御案内をする、こういう事業などを通して、今後、国民食料として極めて重要な立場にある漁村を理解していただく対策をとってまいりたい。また、現在進めております。
菅野委員 後世に、子供や孫の代にこの業を引き継いでいくというのは、私たちに与えられた大きな任務であるというふうに思っております。ぜひ一体となって、この第一次産業の振興、発展に努めて、私どもも努めますし、業界としても精いっぱい努めていただきたいことを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
小平委員長 次に、佐藤敬夫君。
佐藤(敬)委員 保守新党の佐藤敬夫でございます。
 この後、本会議がございまして、与えられました二十分という時間を消化するのは少し無理だと思います。
 もう既に、皆さんの御質問の中で、それぞれの思いを十分お聞かせいただいたわけですが、再度御三人に、短くて結構であります、参考人の一つ大きな締めくくりとして、一九九三年のウルグアイ・ラウンド合意、そのことにおける結果について、皆さんが三業界団体のリーダーとして、この十年、どんな評価をし、そしてまた、最後に、今、ハービンソン議長やジラール議長の案が提案をされていて、これは継続して議論されているわけですけれども、このことについて、それぞれが、妥協できるのか、妥協できないとすればどういう決意を持って、本当に胸のうちを聞かせていただきたい。
 短い言葉で結構です。抽象的な言葉は要りません。本当にどうするのかという決意を短くお聞かせいただきたいと思います。まず宮田さんの方から。
宮田参考人 ウルグアイ・ラウンドの結果につきましては、今回のラウンドでもハービンソンの案は非常に輸出国偏重というようなことでありますけれども、過去のウルグアイ・ラウンド農業合意も同じだと私は認識をいたしております。我が国のような輸入国にとりましては極めて不利なルールであったと思っています。
 参考のために、現在、どのような影響があったかということを数字でちょっと申し上げたいと思います。
 貿易の農産物の我が国への輸入の問題でありますけれども、合意前から比べまして、非常に、貿易の農業の収支が二〇%もマイナスになった。それだけ輸入超過が著しくなったということがあらわれております。また、我が国の農産物の販売価格でありますけれども、これも、一九九八年を一〇〇とした場合、今の価格水準は、米では八三・八%、野菜では七四・七%、果物が七七・五%、畜産物が九八・五%で、総合いたしますと八四・八%というように、価格が下がって、はっきりとこの影響が出ておるということでございます。
 したがいまして、我が国の農業生産が、ウルグアイ・ラウンド以降、縮小をし、農家の所得も減っておるということが現実にあらわれておるわけでありますので、私は、影響が現在でも非常に大きいというように認識をいたしております。そういうことでございます。
 でありますから、今回のラウンドにおきましても、ハービンソン案については非常に偏っておるということで、やはり公平公正なルールの確立ということを強く求めておるわけでございます。いずれにしましても、今のハービンソンの案は絶対反対で、受け入れられないということを端的に申し上げて、終わりたいと思います。
飯塚参考人 ウルグアイ・ラウンドにおいて製材品を中心に非常に大きく後退した、これが引き金になって、先ほど申し上げた、なりわいにならないようなところまで追い込まれたというのが実情でございます。とりわけ、ケアンズ・グループの、いわゆる売り込み側の意向が強くて、日本側の意向というものが十分反映されないうらみが強うございます。
 具体的に申し上げますと、日本で使う木材の量というのは年間約一億立方と言われておりますが、一年間で日本の木材が太る量がちょうど一億立方なんです。したがって、人様のお世話にならなくても自分の国で間に合いますよ、間に合うものを買うことはないじゃないか、こういうことを声を大にして言いたいと思っております。
 以上でございます。
植村参考人 これ以上の関税引き下げは、漁業の特殊性の否定でございます。魚食民族、魚食、国民食料としての漁業を守るという立場から、国の意思決定の段階で決して譲歩してはいけない、このことをお願い申し上げます。
 以上です。
佐藤(敬)委員 長い時間でそれぞれ十分な御説明があって、委員の皆さんもそれぞれ十分な理解をしているわけであります。
 ただ、先ほど鮫島委員からお話ありましたように、やはりこれまでの私どもの相手との交渉の仕組みというのは、アメリカやケアンズ・グループの自由貿易と、我が国の多面的機能論で対抗してきたわけですね。
 しかし、これからの新しい時代というのは、やはり論争において真っ正面から勝利をしていく、こういうことが日本の交渉の現場に必要なんだろうと思うんです。これまでのように、二つの、自由貿易と多面的機能論というかみ合わせがほとんどできていかないという状況になったら、舞台をどう変えるのかといったら、やはり健康と、例えば環境という堂々たるルールの中から、そういう二十一世紀のキーになる言葉みたいなものを生み出して、この中で新しい商品経済ルールを決めていく、こういう論戦を挑んでいくという姿勢が、例えば農業団体が各国と議論するときでも、林業の皆さんが各国と議論するときでも、漁業団体が各国と議論するときでも、私は、もうそういう大きな舞台回しを必要として、外との言葉での戦いというのが物すごい大事な時代になってきているんじゃないか。
 政府の皆さんも本当に御苦労されておるし、議員の皆さんもWTOの舞台へ行ってそれぞれ議論しているわけです。しかし、結果、かみ合っていないということは事実なんですよね。我が国が世界に向かって、やはり新しい論点というものを、論争を起こし、それを、新しい舞台づくりをしていくという覚悟が必要なんじゃないかなと。そうしないと、いつまでたってもかみ合わない議論で、みんな胸の中にわだかまりを持って、ただ時間だけが経過していくということになるんじゃないか。
 皆さんの御意見と御主張を聞いて、そういうことを自分の気持ちとして皆さんにお伝え申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
小平委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十一分散会


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