衆議院

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第6号 平成16年3月17日(水曜日)

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平成十六年三月十七日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      木村 太郎君    北村 直人君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      佐藤  勉君    谷  公一君

      玉沢徳一郎君    津島 恭一君

      永岡 洋治君    西村 康稔君

      野呂田芳成君    二田 孝治君

      稲見 哲男君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    梶原 康弘君

      金田 誠一君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    篠原  孝君

      神風 英男君    仲野 博子君

      楢崎 欣弥君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    西  博義君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       遠藤  明君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (環境省環境管理局水環境部長)          吉田 徳久君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  西村 康稔君     谷  公一君

  金田 誠一君     稲見 哲男君

  篠原  孝君     梶原 康弘君

同日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     西村 康稔君

  稲見 哲男君     金田 誠一君

  梶原 康弘君     篠原  孝君

    ―――――――――――――

三月十六日

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 植物防疫法の一部を改正する法律案(内閣提出第二五号)

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、植物防疫法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長小林芳雄君、消費・安全局長中川坦君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長遠藤明君及び環境省環境管理局水環境部長吉田徳久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島恭一君。

津島(恭)委員 自由民主党の津島恭一でございます。きょうは、植物防疫法の一部を改正する法律案に関連し、植物防疫事業に関連して質問をさせていただきたいと思います。

 その前に、昨年、我が青森県は、非常に冷夏、そしてまた冷害に遭いました。稲作を初めとする畑作も大変な被害に遭いました。そしてまた、秋には台風が参りまして、リンゴの落果、あるいは漁港が非常にめちゃくちゃになったという惨たんたる状況の中で、大臣を初め皆様に大変な御指導をいただき、青森県民も本当に助かったということを、まず初めに大臣初め皆様に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、早速質問を始めさせていただきたいと思います。

 我が国の農業生産を発展させるためには、生産基盤の整備等を推進するとともに、病害虫による農作物の被害を防止し、農業生産の安全を図ることが基本であると考えております。特に最近は、鳥インフルエンザを初めコイヘルペス、こういったものが我が国でも発生をしております。家畜や魚類の防疫体制の強化の必要性が求められているさなかだと思うのであります。植物防疫でも、新たな重要な病害虫の発生が懸念され、その体制を強化する必要があると考えていますが、今回の改正が植物防疫体制の弱体化につながるのではないかといった心配もあろうかと思うのであります。

 そこで、植物防疫法では、輸出入植物を検疫して病害虫の我が国への侵入を防止し、国内検疫を行って病害虫の蔓延を防止するとともに、優秀な種苗を確保、保全するとともに、緊急防除を行って特殊な病害虫を根絶するか、またはその蔓延を防止することとしております。さらに、我が国に存在する一般的な病害虫については、国及び県において発生予察事業を行い、発生状況等に関する情報を提供し、これに基づいて防除が適切にかつ円滑に実施されるよう措置されていると思います。

 そこで、まず初めに、これまでに植物防疫事業が果たしてきた役割について農林省はどのように評価しているのか、大臣にお尋ねをしたいと思います。

亀井国務大臣 お答えをいたします。

 今冒頭、昨年、東北地方、青森県、岩手県等々、米の冷害、また、この問題につきまして先生にいろいろと御指導いただきましたことに、心からお礼と感謝を申し上げる次第でございます。そういう中で、病害虫の問題等につきましても、いもち病の問題等につきましても、いち早くいろいろとお話もちょうだいしたことを思い出すわけでもございます。

 今お話しの植物防疫事業、これは、御承知のとおり、昭和二十五年に制定された法律でございます。これは、国内におきます病害虫の発生予察及びその防除、あるいは輸出入植物及び国内植物の検疫等を実施することによりまして、病害虫の侵入及び蔓延を防止し、我が国の農業生産の安定と発展のために重要な役割を果たしてきた、このように認識をいたしております。

 例えば、水際におきます輸入植物検査で検疫有害動植物が発見された場合には、消毒または廃棄の措置を講ずることによりまして、海外からの病害虫の侵入を適切に防止をするとともに、海外から新たに重要病害虫が侵入した場合などには、緊急防除によりまして適切に防除が行われたところであります。

 また、国内におきます病害虫の防除につきましても、戦後の食料難の時代から高度成長期を経て現在に至るまで、安定的な食料生産の確保に大きく貢献してきたもの、このように認識をいたしております。

 特に、沖縄県等で発生していたウリミバエ及びミカンコミバエの防除につきましては、これらの根絶に成功し、沖縄県等での農業生産の振興に大きく寄与するとともに、我が国のその他の地域における農業生産を守ったという非常に重要なものであったと考えております。

 このような植物防疫事業は、これまで我が国の農業生産を支える上で不可欠な役割を果たしてきたもの、このように考えております。

津島(恭)委員 今の大臣のお話からも、植物防疫というのが非常に大切だということ、そしてまた、評価もいただいているということがよくわかった次第であります。

 そこで、県の植物防疫事業に対して、植物防疫法に基づきこれまで国が都道府県に対して、病害虫防除所等の職員設置費、そしてまた国の発生予察事業への協力経費、そして病害虫防除所の運営経費を交付金として措置してきたというわけでありますが、このうち、病害虫防除所等の職員設置費については、平成十六年度政府予算案において国と地方に関する三位一体改革の一環として交付金の対象から除外することとされ、これにより植物防疫法の一部が改正されるということに今回なったわけであろうかと思います。

 そこで、この三位一体の改革は、官から民へ、国から地方への考えのもと、地方の権限と責任を大幅に拡大し、地方分権の理念に沿って国の関与を縮小し、税源移譲その他により地方税の充実を図ることで、歳入歳出両面での地方の自由度を高めるものと理解をしております。これにより、受益と負担の関係を明確化し、地方がみずからの支出をみずからの権限、責任、財源で賄う割合をふやし、真に住民に必要な行政サービスを地方みずからの責任で、自主的そしてまた効率的に選択する幅を拡大することと理解をしております。

 このように定められた国庫補助負担金等整理合理化方針において、人件費補助に係る補助金、交付金等については、原則として一般財源化を図ることとされたわけでありますが、この原則に基づいて病害虫防除所等の職員設置費を交付金の対象から除外することについて、この理由について副大臣にお伺いをしたいのであります。

金田副大臣 御指摘のとおりでございまして、昨年の六月の閣議決定に基づきまして、三位一体の改革ということが閣議決定されたわけでございます。その中に国庫補助負担金等整理合理化方針というのが示されておりまして、こういった人件費等についてはできるだけ一般財源化を図って、地方の行政の裁量の枠を拡大していこうという方針にのっとって、この病害虫防除所の職員の人件費等についても一般財源化を図ることとさせていただいたものでございます。

津島(恭)委員 ありがとうございました。

 情勢の変化を踏まえて、病害虫防除所等の職員設置費を交付金の対象経費から除外したということでありますが、その一方で、国の発生予察事業への協力経費と病害虫防除所の運営経費は引き続き交付金として手当てする。このことから、今回の措置は、国と地方の役割分担の明確化を一層図ったものと理解をしております。職員設置費を一般財源化することにより都道府県の植物防疫事業に支障が生じては何も意味がないのではないか、このように考えているわけでありますが、そこで、職員設置費を一般財源化することにより、都道府県の植物防疫事業に支障が生じる心配がないのかどうか、もう一度副大臣にそのことを御確認したいと思います。

金田副大臣 職員設置費につきまして一五%国が交付金を支払っていたわけでございますが、その部分については、一般財源化というようなことで、所得譲与税等によって、そしてまた交付税等によって措置されておりますので、人件費等については運用上全く問題がないというふうに考えさせていただいております。

 また、発生予察事業、それから防除所の運営に要する経費、こういったものについては引き続き交付金の対象として維持することにしておりますので、病害虫防除所の運営には支障がないというふうに考えているところでございます。

津島(恭)委員 支障がないという副大臣の御答弁をいただきました。

 そこで、先ほどもちょっと申しましたが、私どもの地元の青森県の例を見ても、昨年は、水稲は、非常な冷夏、そして冷害により、特に私どもの地元の津軽の作況指数は七一でありました。そしてまた、青森県全体では五三という非常に惨たんたる状況であったわけでありますが、夏の低温の影響が主たる要因と思われますが、水稲の最大の病害でありますいもち病も発生したと聞いております。

 また、我が県のリンゴでは、モモシンクイガ、これは昔はハリトオシと地元では呼んでおりましたが、これの幼虫がリンゴに被害を加えるということがありますと、リンゴがでこぼこになりまして、その商品価値が全くなくなる、こういったこともありました。また、リンゴ斑点落葉病が、葉に感染すれば早期の落葉の原因となりますし、またリンゴに感染すればそのリンゴに斑点を生じ、これもまた商品価値がなくなります。

 このような病害虫の防除を農家の方々がまた適時適切に実施する上で、病害虫の発生予察情報として、現在の病害虫の発生状況や防除のタイミング、そしてまた防除方法を、ホームページやテレホン情報としてタイムリーに提供してくれたり、どの病害虫による病気かわからないような場合、これを適切に診断、判断してくれる県の病害虫防除所は、農家の皆さんにとって非常に頼りになる機関であると考えております。地方の自主性を高めることも無論重要でありますが、植物防疫事業においては国の役割は非常に大きいもの、こう考えているところであります。

 そこで、引き続き交付金の対象経費とした国の発生予察事業に協力する経費についてですが、国の発生予察事業への都道府県の協力状況はどのようになっているのか、ひとつ事務局の方でお答えを願いたいと思います。

中川政府参考人 植物防疫法によりますと、農林水産大臣は、国内に広く分布をし、また急激に蔓延して農作物に重大な損害を与えるおそれがある病害虫につきまして、指定有害動植物として指定をするということになっておりまして、現在、この指定の状況でありますけれども、有害動物が五十五種類、それから有害植物が三十種類、合わせて八十五種類が指定をされております。

 国の方は、この指定有害動植物の発生予察事業を行うというふうになっておりますけれども、その際に、都道府県におきましては、農林水産大臣が定める計画に従いまして、指定有害動植物の発生予察事業に協力をするということとされているわけでございます。各都道府県では、この計画に基づきまして、一都道府県平均にいたしますと、大体四十七の指定有害動植物につきまして発生予察事業を実施している、そういう状況にございます。

津島(恭)委員 ありがとうございました。

 次に、私は、この発生予察事業は大変重要であり、これが適切に実施できなくてはまさに適切な防除指導ができなくなると考えております。そこで、この発生予察事業に対する副大臣の見解をもう一度確認をしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

金田副大臣 まさに御指摘のとおりでありまして、この発生予察事業を国を挙げてと、病害虫防除所の職員等々からいろいろな、作物の生育状況だとか病害虫の発生に大きく影響を与えます気象の状況だとか、そういったデータを解析しまして、いわば天気予報の病害虫版というのを予報という形で出しているわけでございます。それぞれに指定した病害虫について、この時期が危ないよとか大量発生するおそれがあるよというような情報を、あらかじめ県を通じて農家の皆さん方に通知したりしているわけでございます。

 各県のそういった情報も全国から農林水産省に集めて、そういったことについても運営管理しているところでございまして、この発生予察事業を完全に行うことが、農家の皆さん方に大変重要な役割を担っているというふうに認識しております。

津島(恭)委員 今、副大臣からも大変丁寧にまた御答弁をいただきました。この発生予察事業は大変重要である、こういう御答弁をいただきまして、農林省におきましても、国の発生予察事業に対する交付金を引き続き維持していただきますように、強くお願いをするものでございます。

 次に、水際での植物検疫に話を移したいと思います。

 国の機関である植物防疫所が実施する水際での植物検疫は、我が国への新たな病害虫の侵入を防止する上で極めて重要であると考えますが、近年の農作物の輸入の増大や多様化を踏まえれば、新たな病害虫が我が国に侵入するリスクはますます高まっているのではないかと考えられます。これに適切に対応するためには、植物防疫所の体制の整備が不可欠と考えております。

 そこで、植物検疫体制の充実強化に対する大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

亀井国務大臣 農産物の輸入検疫の検査体制、これは、水際での植物検疫が大変重要なことであるわけであります。そういう面で、植物防疫官を適切に配置するなどの検査体制の整備に努めなければならないわけであります。

 植物の病害虫の侵入、蔓延防止を図って今日まで来ておりますが、平成十六年におきましては、この植物防疫官の増員十二名を行います。全国七十三カ所に八百四十九名の配置をすることといたしまして、今後ともこの検査体制の充実に万全を期してまいりたい。植物防疫官も、平成十二年の七百八十二名から、十六年八百四十九名と、このように配置をし、体制を強化し充実してしっかりやってまいりたい、こう思っております。

津島(恭)委員 今の大臣からの御答弁、本当にありがたいものであると思うのでありますが、引き続き水際での防疫体制、検疫体制の強化をさらにお願い申し上げる次第であります。

 そこで、この水際での措置に関連して、米国産リンゴの火傷病に対する検疫措置についてお伺いをいたしたいと思います。

 米国産リンゴの火傷病に対する我が国の検疫措置がWTO協定、特にSPS協定と整合していないとしてアメリカから要請されたWTOパネルについては、上級委員会までの申し立てを行ったものの、米国の主張を支持したWTOパネルの判断が支持される勧告が出され、非常に残念な結果になった。これは、我々、特にまたリンゴ生産地にとりまして非常に残念だな、こう思うわけでありますが、さらに、この勧告を本年六月三十日までに実施することで米国との合意があり、三月四日には第一回の日米技術協議が行われたと聞いておりますが、この三月四日の協議の結果がどのようなものであったのか、このことをお聞きしたいと思います。

中川政府参考人 三月四日のこの米国との技術協議の中身でございますけれども、先生おっしゃいましたように、本年の六月三十日には勧告実施の期限というものが設定をされているわけでありまして、今回の協議におきましては、日米双方からそれぞれこの問題についての考え方を述べ合ったということでございます。今回は結論を得るに至っておりませんで、また改めて協議を続行していくということになったわけであります。

 私どもの基本的な対応といたしましては、この協議の中で、SPS協定に整合し、火傷病の侵入を防ぐ十分な措置を確保していくということが何より大事でありますので、そういった基本的なスタンスに立ってこれからも日米協議を続けていきたいというふうに思っております。

津島(恭)委員 今の話であれですが、この火傷病というのは本当にもう大変な問題でありますので、これの侵入を絶対に阻止するというために引き続き十分な措置が確保される必要があると考えますので、農林省にはどうぞひとつ粘り強い交渉をされることを強く要望したいと思うのであります。

 さらに、この検疫措置がどのようになるのか、現時点ではよくわかりませんが、これはまたあってはならないことだと私どもは強く申し上げたいのでありますが、万が一にも火傷病が侵入した場合、リンゴ生産農家は本当に大きな打撃を受けることになります。万が一に備えた万全の措置が求められているわけであります。

 そこで、リンゴの産地、津軽といえば、これはリンゴと桜であります。そしてまた、青森県におきましては、過去には太宰治、あるいは棟方志功といった有名な芸術家もこれは輩出しております。今、津軽を代表する政治家というのは木村太郎さん、あるいはまた津島恭一という声も一部にはあるようであると思うのでありますが、そこで、我がふるさと津軽の先輩代議士であります木村政務官にお尋ねをしたいのでありますが、万が一火傷病が我が国に侵入した場合、国の責任で防除を実施すべきと考えております。これについての御見解をお尋ねしたいと思います。

木村大臣政務官 リンゴと桜というお話でしたが、どちらが桜でどちらがリンゴなのか、後でお話しいただきたいと思います。

 まず、私も政務官になる前から、米国のこのWTOに対しての提訴の時点で、当初から大変懸念をいたしておりました。今、大臣のもとで、政務官という立場からも関係の担当と一緒に、また日米協議ということに入っているわけでありますが、まずは、万が一がないためのこの日米協議を、今御指摘いただいたように、日本側の主張を堂々と述べながら粘り強く交渉をしていくことが大事だと思っております。

 もちろん、その万が一に備えての対応も我々はきちっと踏まえなければならないと思っております。そのために、植物防疫法の十七条から十九条に照らし合わせまして、緊急防除の制度というものを設けておりますので、このことをしっかり踏まえながら万が一にも備えておきたいというふうに思っております。

 なお、国の責任で防除を実施すべきだという御指摘でありますが、これまでも緊急防除については、例えば薬剤費や人件費等の防除にかかる費用については国がその責任を負担しているところでありますので、これらも踏まえて万が一に備えていきたいというふうに思っております。

 以上です。

津島(恭)委員 大変ありがとうございました。特にまた地元の事情に詳しい政務官でありますから、このような措置が講じられることがないことを祈りながら、念には念を入れた対策というものも私は必要だ、こう思っております。

 リンゴ農家に安心感を与える意味で、万が一ということは、これはもちろんあってはならないわけでありますけれども、そのことがあれば、これもまた農家の皆さんは、これからもまたある意味でいうと安心をしながら生産活動に努めることができる、こう考えておりますので、非常にこのこともまた強くお願いをして、ちょうど時間のようでありますので、ひとつ農林省の方でもこれからもいろいろな意味で万全な措置をとられますことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高木委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 毎日、鳥インフルエンザだとかBSEだとかいろいろなことが大変多く起きるこのごろでございます。多分、大臣にしても副大臣にしても政務官にしても、ほとんど寝ないでお仕事をしているというふうに私は思っておりますけれども、そのお忙しい中、植物防疫法の一部を改正する法律案についての質問をさせていただきます。

 まず、大臣にお聞きしたいと思います。植物防疫法の一部を改正する法律案、この法律案は、いわゆる三位一体の改革の一部と考えて間違いはございませんでしょうか。どうぞ。

亀井国務大臣 三位一体の改革、こういう視点でこの法案の改正をお願いしているわけであります。もう御承知のとおり、官から民へ、また、国から地方への考え方のもとに、地方の権限と責任の大幅な拡大、そして国と地方の役割分担に基づく自主、自立の地域社会から成る行政システム、このような構築を目指すものであります。

松木委員 政府は、平成十五年の六月二十七日、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三を閣議決定しました。いわゆる三位一体の改革と言われており、これに植防法が含まれているわけです。

 全国知事会が平成十五年十二月八日に公表した「「三位一体の改革」の推進に関する緊急意見」、この中で、諸状況のもと改革の名に値しないということが明言されています。その部分をちょっと抜粋して読ませていただきます。

 地方自治体の自由度の拡大につながらず、単なる地方への負担転嫁にすぎないもので、到底容認できない。また、行政サービス水準の低下等国民生活への多大な影響が危惧されるなど、「改革」の名に全く値しないものであると評価せざるを得ない。

  こうした改革案は、時代の大きな流れであり、かつ、国と地方を通じた共通の認識ともなっている「地方分権を推進し、地方の自主性、主体性を確立する」という基本的方針に大きく反するものであり、「国と地方の信頼関係」を著しく損なうものでもある。政府の賢明な選択、真摯な努力を希望しているにも拘わらず、かかる地方の意向を無視した改革案となるならば、全国知事会としては、断固とした決意をもって闘っていかなければならない。

こういうふうに明言がされているわけでございます。

 また、民主党として、我が党としても、政府の三位一体の改革には次のような問題があるということで、賛成をしておりません。

 一つは、改革の全体像、将来像をまず示していない。そして、肝心の財源移譲は中途半端にして、補助金と地方交付税の削減を先行させている。本来、国、地方が共同責任を負うべき財政危機の処理を地方に押しつけているばかりである。そして、地方分権型社会の創造や、自主、自立、多様などの理念がないということで、反対をしているわけでございます。

 大臣は小泉内閣の一員でございますので、その中において三位一体の改革というものを、もう一度お聞きしますけれども、どういうふうにお考えになっているでしょうか。よろしくお願いします。

亀井国務大臣 昨年六月に閣議決定された基本方針二〇〇三におきまして、平成十八年度までにおおむね四兆円程度を目途に国庫補助負担金の廃止、縮減の改革を進めるほか、地方交付税の改革、また税源移譲を含む税源配分の見直しを進めることとしておるところでもございます。

 そこで、農水省といたしましては、この三位一体改革の一環として、十六年度予算で国庫補助負担金の見直しに取り組んだところでございまして、今後、農政改革を進めていくこととしておりますが、その場合、我が国の農業は、変化に富んだ、また自然条件や多様な経済条件のもとで営まれておるわけでありまして、その持続的な発展を図るために、国内の各地でその特性を十分踏まえた特色ある農業生産が行われることが重要であるわけであります。こうした観点も踏まえて三位一体の改革に取り組んでいく必要がある、このような認識を持っておるわけであります。

松木委員 せっかく、金田副大臣も私の大先輩でございますので、もしよろしかったら一言。政務官もお忙しいところ来られているんですから、もしよかったらお一言。

金田副大臣 松木先生、確かに、三位一体の改革、これは、地方が地方の個性ある発展を遂げていくために、必要な権限を国から譲与される必要がございます。一気にはなかなかいかないわけでございますけれども、三位一体の改革という形の中で、いろいろな工程、これから進んでまいると思いますが、そういった中で、地方自治の確立のために、これからも引き続き、与党としても取り組んでいきたいというふうに考えております。

 今、御批判がある部分はありますけれども、そういったことも踏まえながら、さらなる改革に努めていかなきゃならないというふうに考えております。

木村大臣政務官 大臣、副大臣が御答弁したとおりだと思いますが、やはり、我が国の農林水産業を取り巻く環境というもの、また、その都度その都度の情勢の変化というものを見きわめながら、その中での省としての取り組みということは基本に据えていく必要があるのではないかなというふうに思っております。

松木委員 財源移譲より財源カットの方が何か多いような、そんな気がしますけれども、現実には非常に地方というものを苦しめているような、そんな気がいたしますけれども、大臣、どう思われますか。

亀井国務大臣 今回の国庫補助負担金の見直しにつきまして、事業の重点化やコストの削減、あるいは執行状況を踏まえた補助金のスリム化等の努力を進めることによりまして、縮減可能な額を見込んだものでありまして、農業の振興に必要な予算額は確保されている、こういう認識にあります。

 地方財政計画におきましても、農業振興にかかわる必要な財源需要を踏まえ、地方の歳出規模が算定されるわけでありまして、さらに、地方の状況を踏まえて地方再生事業債の枠の拡大等の追加的な措置も講じられる、このように承知をしておるわけであります。農水省といたしましても、事業の重点化、効率化等を図りながら、地方自治体とともに地域の実情に応じた必要な農業振興施策の実施に努力をしてまいりたい、このように考えております。

松木委員 ぜひ頑張ってください。

 私の選挙区は北海道十二区で、オホーツク沿岸に面した、日本で一番広い面積がある選挙区になっております。四国と大体同じ広さがあると言われているんですけれども、先日も、ある町長が、三位一体の改革について、非常にこれは地方の切り捨てである、このような改革が実行されるのであれば、それこそむしろ旗を立てて一揆をやってやるぞ、こういう意見もありました。非常に地方は困っている。

 また、三月七日の読売新聞の朝刊に書いてあったんですけれども、「来年度予算案を発表する知事の記者会見では、国への不満が各地で噴き出した。」と書いてありました。都道府県予算編成の指針となる地方財政計画は、地方の財源不足を補う地方交付税と臨時財政対策債を合わせて前年度比一二%、総額で二兆九千億を減らす。交付税をめぐる議論というものがないまま、予想をはるかに上回るカットについて、片山鳥取県知事からは、やみ討ちという言葉がありました。そして、橋本高知県知事、この方からは、行革の努力というのが水の泡になった、そういう怒りの声が上がりました。

 農業、林業、水産業といった地方の基礎の部分を預かる農林水産省として、このような声に対してどう取り組まれますか。

小林政府参考人 今大臣からも御答弁ありましたように、今回のいろいろな、地方との関係がございますが、地方財政措置は、先ほど先生もおっしゃったような財政措置が講じられておりますし、また、私どもとしましては、事業の重点化、それからコスト削減、執行状況を踏まえた補助金のスリム化、こういったことを通じまして縮減可能な額を見込んでいる、そういった作業を進めてきておるところであります。

 したがいまして、今回の削減によりまして都道府県の農林水産行政に直ちに特段の支障が生じないように、そういう形で対応しておりますので、今後の執行に当たりまして、十分そういった点も注意しながら進めていきたいと思っておるところでございます。

松木委員 ぜひ御留意をいただきたいと思います。

 政府は、昨年十二月五日、平成十六年度予算編成の基本方針の閣議決定をされました。その中において、国庫補助負担金については一兆円を目指して廃止、縮減等を行うと聞いております。農林水産省所管の平成十六年度予算において、国庫補助負担金の見直しによる縮減の総額は幾らになりますか。

小林政府参考人 私ども、十六年度、三位一体改革関係の国庫補助金の縮減額ということでございますが、農業委員会、普及事業の交付金の組織のスリム化の関係がございます、こちらは計画的な縮減分ということで二十八億円ございますが、それ以外の国庫補助金につきましても、総額四百四十億円の廃止、縮減などを行うこととしたところでございます。

松木委員 これは、来年なんかはもっとまた削るようなことになるんでしょうか。

小林政府参考人 御案内のように、政府全体として、三年間に向けた国庫補助負担金の見直し、それから三位一体の改革といった方針がありますので、そういった中でまた次年度以降の作業が進められていくものと思っておりますが、具体的な中身につきましては、毎年毎年の予算編成の過程の中で、先ほど申しましたような観点で、特段の支障が生じないように進めていきたいと思っておるところでございます。

松木委員 それでは、この植物防疫法の一部を改正する法律案では幾ら予算を削ることになりますか。

中川政府参考人 従来、都道府県に対しまして交付をしておりました交付金のうち、今回一般財源化を図りますのは病害虫防除所等の職員に要する経費の部分でございますので、年間五・七億円ということでございます。

松木委員 五・七億円ということなんですけれども、ちょっと今内容のところがよく聞こえなかったんですけれども、もう一度。

中川政府参考人 失礼いたしました。

 従来、都道府県に交付しております交付金の内容は大きくは三つに分かれておりまして、その一つは、病害虫防除所の職員に要する経費、人件費でございます。二つ目は、国の発生予察事業に協力するのに要する経費ということでございます。それから三つ目が、病害虫防除所の運営に要する経費。大きくはこの三つから成っておりますが、今回一般財源化を図りますのは、最初に申し上げました職員に要するいわゆる人件費の部分、五・七億円でございます。

松木委員 それでは、四百四十億というのがあるわけですけれども、その中の五・七億円、その他、個別にはそれぞれどのような国庫補助負担金があって、そのうち、具体的に何の部分に対して縮減をして、それぞれ幾らの縮減になるのか、お答えをお願いします。

小林政府参考人 先ほど申しました農業委員会、普及の交付金の二十八億円のほかに、国庫補助負担金で総額四百四十億円というものをまとめてございますが、その内訳でございますけれども、公共関係、こちらで三百十六億円の縮減がございます。

 それから、中山間地域等直接支払交付金、あるいは森林整備地域活動支援交付金、こういったものにつきまして、それぞれ五十一億円、あるいは二十四億円の縮減をすることにしております。

 また、農業共済事業事務費負担金、国に関係します地方向け補助金の部分でございますが、こちらにつきまして四十二億円の縮減。

 それからさらに、今御審議いただいております法案に関係する植物防疫事業交付金、また漁業調整委員会等交付金というものにつきまして、こちらは職員設置費部分の一般財源化ということで、それぞれ五億円あるいは二億円の縮減を図っているところでございます。

松木委員 今回の縮減対象とする国庫補助負担金について、それぞれいろいろとあると思いますけれども、どのような観点から地方分権に資するということで縮減することになさったのか、お聞かせをお願いいたしたいと思います。

小林政府参考人 今回の国庫補助負担金の見直しにつきましては、これまで、知事会を初めとしました地方の皆さんのさまざまな提言等、こういったものがまず背景にあるわけでございます。そういうことも踏まえまして、事業の重点化、コストの削減といった、先ほど申しましたようなことを念頭に置きながら縮減可能な額を整理したというところでございます。

 その際に、地方分権の趣旨ということとの関係でどうかといった点でございますけれども、例えば、今御審議いただいております植物防疫事業交付金、あるいは漁業調整委員会等交付金、こういったものにつきましては職員設置費部分について一般財源化を進めておるところでございますが、この一般財源化される部分につきまして、所得譲与税という形で地方に財源が移譲されるわけでございます。そういう意味では、これからはその支出についての判断が都道府県にゆだねられるわけでございまして、地方の自由度を広げる、こういった効果が期待されます。

 また、先ほど申しました農業共済事業事務費負担金について申し上げますと、こちらは従来から都道府県を経由して交付しておったわけでございますが、これはむしろ共済組合連合会等々に、交付先ですけれども、そちらに直接交付することの方が都道府県の事務負担の軽減につながるということで、これは、実は地方分権改革推進会議からも一昨年答申がございましたけれども、そういったものを踏まえて対応したものでございます。

 いずれにしましても、私どもとしましては、こういった措置を通じまして、今後とも、地方の裁量の拡大とか事務負担の軽減が図られる、そういうことをこれからも進めていきたいというふうに考えておるところでございます。

松木委員 何となく、減らしやすいところを減らしているだけではないかなというような気もしますけれども、私の考えは間違っていますか。

小林政府参考人 出しやすいところということでなくて、むしろ、先ほど申しましたように……(松木委員「減らしやすい」と呼ぶ)失礼、減らしやすいところじゃなくて、やはり地方の方でいろいろ、いろいろな補助事業等について、効率化とかそういった意味での御要望があるもの、また今申しましたように、十六年度予算の執行とか、そういうことを考えたときに、現場での事業の推進に支障が及ばない、そういうところを一つのメルクマールとしてこういった予算を組み立てたということでございます。

松木委員 先ほど述べたとおり、地方分権は単に国から地方へ補助金を削減することではありません。それではただの経費節減ということになってしまいます。分権には結びつかないと全国知事会も言っているわけですが、国庫補助負担金の削減により、自治体の財政が悪化してかえって行政に支障が生じることになれば、これは、地方分権の目的達成ではなく、むしろ分権を阻害することにもなります。どういうふうにお考えになりますか。

小林政府参考人 私ども、先ほど大臣からも御答弁されましたように、結局、農政推進上、国と地方の役割分担をうまく進めながら、また一方で、当然、財源の効率といいますか、そもそも財源の制約もあるわけでございますから、そこをいかにうまく組み立てるかということでございまして、そういった意味では、今度の私どものこの三位一体改革の中で、まず縮減合理化するところは縮減合理化する、ただし、公共事業のように、その際には効率化とかコスト縮減しながら必要な事業を確保していく、そういった工夫も今進めているわけでございまして、そういった、全体として、地方の方の声あるいは地方の実際の事業運営、それに対する国の支援というものが効果的に進められるような形でやっていくことは、当然必要なことだと思っております。

松木委員 全体的に見て、これらの国庫補助負担金の削減により、都道府県における農林水産行政に、植防法も非常に大切なものだというふうに私も思っておりますが、支障が起きないのかどうか。もう一度お聞きします。

中川政府参考人 先ほどお答え申し上げましたように、今回の交付金のうち一般財源化を図りますのは、病害虫防除所の職員に要する経費だけでございます。そのほかに、実際に病害虫防除所で発生予察事業を行います、その際に要する経費ですとか、あるいは運営のための経費というのは、従来どおり交付金として都道府県に交付をするということになっているわけでございまして、そういう意味では、この病害虫防除所の活動において大きな支障は生じないというふうに私どもは思っております。

松木委員 それでは、植防法の観点から見ても特に支障がないというお考えでよろしいんですか。

中川政府参考人 そのように考えております。

 それから、先ほどちょっと申し上げましたことにつけ加えさせていただきますと、この一般財源化を図るものにつきましては、その分につきまして、所得譲与税ということで地方に同じ額が譲与されるということでありますので、この面におきましても、地方公共団体に特段の負担は生じないというふうに思っております。

松木委員 この植防法で、全国で五百九十一名の方が影響を受けると聞いておりますけれども、これは間違いございませんですか。

中川政府参考人 病害虫防除所に勤務いたしております都道府県の職員数は、今先生がおっしゃいましたように、平成十四年度で五百九十一名おります。こういった人たちの人件費の一部が、従来交付金で交付をされていたということでございます。

松木委員 給与の一部がここに行っていたということなんですけれども、この方々の給与カットに何かつながるような、そんな気がするんですけれども、それはどう思われますか。

中川政府参考人 交付金から一般財源に変換をされますというか、交付金から所得譲与税の形で同じ額が都道府県に交付をされるということでありまして、その交付をされた、所得譲与税として地方に譲与された額をどう使うかというところに各都道府県の裁量の余地が出てくるということでございまして、今回のこの措置がすぐに給与のカットになる、そういったことと直接つながるものではないというふうに思っております。

松木委員 直接つながるものではないというか、お金に名前がついているわけじゃないので、それはわからないということなんでしょうけれども、しかし、現実には大体一人頭年間百万ぐらいですか、そのぐらいのお金が補助金として出ていたというふうに考えてよろしいわけですね、これは。

中川政府参考人 五億七千万を五百九十一人ということで割りますと、一人当たり今先生がおっしゃったような額になるかと思います。

松木委員 ぜひ、この方々だけ何か厳しい結果になるような、そういうことにならないように、皆さんの方で指導をしていただくようなことはないんでしょうか。

中川政府参考人 病害虫防除所が行っております日ごろの業務というのは大変重要なものでありまして、これは今回の措置と関係なく、これからも各都道府県においてきっちりとしていただきたいというふうに思っております。そういう意味で、病害虫防除所が行っております植物防疫事業そのものにつきましては、それが適正に行われるように、ふだんから私ども、都道府県の方にもきちっと要請をしていきたいというふうに思っております。

松木委員 所得譲与税で戻るという話なんですけれども、しかし、現場がどうなるかというのはちょっと心配もありますので、できる限り、こういう方々だけ割を食うような、そういうことにならないように、ぜひお気をつけをいただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に行きます。

 地方分権とは、地域住民の自己決定権を拡充することが目的である。これは、大臣、間違いありませんよね。当然ですよね。

亀井国務大臣 地方によりまして、地方のいろいろな考え方に基づきまして、また住民のそのような意思が反映されるということが必要なことだ、こう思います。

松木委員 そのために、自治体において税負担と公共サービスの質、量を決定できる仕組みを整えることが必要であると考えられるわけですけれども、それでは、国庫補助負担金の削減以外に、具体的に地方分権にどのように農林水産省として取り組んでおられるでしょうか。

亀井国務大臣 農水省といたしましては、地域のさまざまな自然条件、社会諸条件、そういう中で農林水産業が営まれるわけでありまして、国と地方が適切な役割分担のもとで、地域の自主性、これが最大限に発揮されるように、相協力して施策を実施していくことが必要であります。

 このような考え方のもとに、これまでも、地方分権の推進をする観点から、例えば農地転用の許可、保安林の指定あるいは解除等の権限の都道府県への移譲、地方公共団体に対する許認可の関与の縮減等、数多くの取り組みも進めてきておるところでもございます。

 さらに、地方分権の推進という視点を踏まえまして、普及事業につきまして、普及職員の一元化と普及センターの必置規制の廃止を内容といたします農業改良助長法の一部改正法案、また農業委員会の設置に係る市町村の裁量の拡大等を内容といたします農業委員会法の一部改正法案を、今国会に提出をしているところでもございます。

 今後とも、地方の自主性を十分尊重しつつ、各基本法の理念が実現されるよう農林水産施策の展開に努めてまいりたい、このように考えております。

松木委員 何となく、地方の負担ばかりがふえてならないような、そんな気がしますので、ぜひそれだけは気をつけていただきたいというふうに思っております。

 農林水産大臣として、今ちょっとお話もしていただいたんですけれども、三位一体の改革を通じた地方分権について、農政とのかかわりで、どのようなビジョンというか、そういうのをお持ちか。もう一度お願いします。

亀井国務大臣 先ほども申し上げましたが、やはり、我が国の農業は変化に富む自然条件や多様な経済条件のもとで営まれておるわけでありまして、その持続的な発展を図るためには、国内の各地でその特性を十分に踏まえた特色ある農業生産、これが行われることが重要、このように考えております。

 そういう面では、平成十六年度の予算におきまして、米政策の改革につきましても、地域みずからが作成する地域水田農業ビジョン、その実現を支援する産地づくり対策、こういうことを創設するなど、各地域の主体的な取り組みを後押しする施策を推進もいたしております。

 また一方、食の安全、安心、こういう国民の関心の高まり、担い手の減少、高齢化や、あるいはWTO等の国際規律の強化などが進む中で、各地域の特色を生かした農業、農村を実現するための地域の取り組みの枠組みとなる農政全般にわたる改革も進めておるわけでもございます。

 このような中で、目指すべき将来像、ビジョンと申しますか、豊かな自然環境や景観を有する農村におきまして、意欲と能力のある担い手が創意工夫をもって農業に挑戦をし、そして消費者は、そのような農村や農業を身近に感じつつ、安全、安心でおいしい食料を合理的な価格で手に入れることができるというような、地方の魅力的な農業、農村の姿を、それぞれ地域の個性を生かしつつ実現していくために、一つの将来像、こんな考え方をぜひ実現してまいりたい、このように考えております。

松木委員 いろいろと答えていただきましたが、どう聞いても私には植物防疫法の一部を改正する法律案とは聞こえないんですね。財政再建のための地方経費節減案とでも申しましょうか、こういうふうにしか私には聞こえないんですけれども、もう一度、どう思われますか。

亀井国務大臣 三位一体の改革、そういう中で、先ほど来いろいろ事務当局からもお答えを申し上げておりますとおり、地方でできる分野、そういう分野で可能なもの、そしてさらに地方の特性、こういうものも生かされるというようなことを目途に進めていく、この植物防疫の面におきましても、そのような考え方が入れられる努力をしてまいりたい、このように考えております。

松木委員 植防法そのものの改正というのの影響というのはひょっとしたら小さいのかもしれないんですね、全国で五・七億円ということですので。しかし、減らしやすいところから減らすというやり方にやはり問題がちょっとあるんじゃないかなというふうに私は思っております。国庫補助負担金の目標一兆円削減というものがあって、そのつじつま合わせというのが植防法の正体ではないかというふうに私は思っております。

 金田副大臣、もしよかったら御所見を。

金田副大臣 地方分権を大幅に進めていかなきゃならない、小泉総理が、官から民へ、そして国から地方へという標語で言い尽くされているわけでございますけれども、この三位一体の改革を少しずつ、そう一気にはまいりませんで、少しずつ前進していかなければならないというふうに思っております。

 今回の植防法の改正でございますが、五・七億円、確かに人件費分について、都道府県職員でございますので、その職員に対する五・七億円、一五%程度でございますが、国から交付していたわけでございます。それをこれからは、都道府県職員なんだから一般財源化して地方が主体的にやっていけるように、そういう交付金に引っ張られることのないように、地方自治体においてこの植防の仕事が万全にできるようにという形で、改革の、ほんのわずかでございますが一歩なんだろうなというふうに認識させていただいております。

松木委員 一歩ということなんですけれども、何となくつじつま合わせの一歩のような気が私はしてなりませんけれども、地方の負担ばかりがふえないようにこれからも御留意をいただきたいと、地方は大変ですので、ぜひお願いしたいと思います。

 私は、今回の総選挙で民主党から突然転勤命令が出まして、北海道十二区というところに実は移ったわけであります。前にいたところは北海道二区でございまして、この北海道十二区と直線でいうと、こっちでいうと東京から名古屋ぐらいまで転勤したようなことになっているんですけれども、札幌のど真ん中で私は選挙をやっていまして、今の選挙区というのは何百倍も広さがある。

 札幌で選挙をやっているときは、東京にも大体一カ月に一度ぐらいは、自分の会社の支社もあるものですから来ていたんです。大体、雰囲気で見ますと、景気がいいのはやはり東京なんですよ。もう東京は、太陽でいえば太陽が熱いという感じだと思います。そして、札幌に来るとちょっと太陽が弱まるという感じなんですね。そして今の新しい十二区というのは、全く仕事もない、まず太陽がない。本当に地方というのは大変なことになっております。

 立派な大臣と副大臣、副大臣は特に私と同じ北海道の方でございますので、私も若いころから随分お世話になっている方でございますので、特に何とかしてもらいたいな、こう思うんですけれども、副大臣の選挙区は特にまたうちと同じようなところではないかなというふうに私は思っております。政務官も青森の方の方というふうに先ほど言っていましたので、それですからよくわかると思うんですけれども、例えば北海道十二区に移り住んでくる人間なんかも多分もう少ないと思うんですけれども、私は選挙ということで移り住んで、たまたま当選させていただいて、就職口を見つけたというのは、ここの北海道十二区じゃ珍しい、ほとんど就職もないというところだと思うんですよ。それで、それに付随して、派生して、秘書を何人か地元採用した。もうそのぐらいのものだと思うんです。

 もう一度言いますけれども、これはどう考えても地方に負担を持っていくようにしか思えないんですよね。もっと違うやり方ということを考えたことはないんですか。役所の方で結構です。

小林政府参考人 今補助金の、国庫補助負担金の削減という形でこういうふうにうたっていますけれども、今先生の問題提起をされた、そういった地方をどういった形で活性化していくかということにつきましては、私どもの政策、すべての手法として、予算、これは非常に大事な手段ですけれども、この予算につきましては、今申し上げました効率化を進めながらそれをできるだけ国と地方の役割分担の中で効率的にやっていく、そういう道筋でしょう。あわせて、ほかの、融資もあればそれから当然いろいろな政策手段がございますので、今農政改革の見直しを進めていますが、そういった中での取り組みとか、また地域再生というようなことでも大きな課題がありますので、そういうところで私どもさまざまな工夫をしながら、このそれぞれの地域に合ったいろいろな活用策というものを、さらに検討して努力していきたいと思っておるところでございます。

松木委員 とにかく、地方に負担をふやすようなことだけはこれからもないようにお願いを申し上げたいというふうに思っております。金田副大臣だったらもうよくおわかりだというふうに思います。

 もう一つお聞きします。

 国民の皆様がこれから農林水産行政に信頼をいただけるかどうか。重要な問題である鳥インフルエンザだとかBSE問題等に対する取り組みには、直接ではありませんが間接的に関係ある検疫に関して、ちょっと質問をしたいというふうに思います。

 昨今、非常に大きな量の貨物が国際間を行き来しているんです。直接そのものばかりではなくて、国際植物防疫条約における運搬機器や木材こん包材などの検疫有害植物の侵入を助長しかねないもの、機械またはコンテナ等に対する検疫の現状の人員の配置についてなんですけれども、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生おっしゃいました精密機械などの外を囲っております木材こん包材につきまして、現在のところ、植物検疫の検疫の対象とはしていないわけでありますけれども、最近、こういった木材こん包材につきましては非常な頻度で再利用されている。従来ですとどこから来たというのがはっきりわかったわけですけれども、それが再利用されるということで、原産地の特定さえも難しい、そういう状況がございます。

 そういったことを踏まえまして、国際貿易に関します木材こん包材の規制の必要性がいろいろと議論をされてきたということで、IPPCの委員会におきましてもこういった木材こん包材の規制のための指針が基準として承認をされております。諸外国におきましても、こういった基準に沿って規制をするという動きがございます。

 私ども日本におきましても、こういった有害動植物の侵入リスクがこの木材こん包材にどれぐらいあるのかといったことを今調べておりまして、必要な措置をこれからとっていきたいというふうにも思っております。

松木委員 それでは、今の状態ではとてもじゃないけれども十分ではないということになりますか。

中川政府参考人 この問題は、近年になっていろいろと指摘をされ、国際的な場でも議論をされるようになった問題でございます。諸外国の動向などもよく注視をしまして、日本におきましても必要な措置というものはこれからとっていきたいというふうに思っております。

松木委員 いずれにしましても、こういうことというのは非常に大切なことですので、やっていないということだったんですけれども、これはもし十分でない場合は、そういうことに対しての人というのはやはりふやすべきだというふうに私は思っています。ぜひそういう方向で考えてもらった方がいいというふうに思いますので、ぜひそれはそうしていただきたいというふうに思います。

 また、有害な植物等が発見されたときの危機管理体制というのはどうなっているのか。過去に、例えばセイヨウタンポポとかセイタカアワダチソウ、ホテイアオイ等の外来種が多大な影響を我が国の生態系に及ぼしたことがありました。この点についてはいかがでしょうか。

中川政府参考人 有害な植物が輸入されます際には、これは植物検疫ということで、見つけますと、消毒をしたり、あるいは廃棄を命ずるということをするわけでありますけれども、こういった件数も最近では相当ふえております。適切に薫蒸したり、あるいは廃棄をしたりということで、全体の年間の検査件数からいきますと、およそ一割強がこの消毒なりの対象になっているという状況にございます。

 こういったことできちっと水際措置を守っていくということも大事でありますし、また、もう一つ、今先生がおっしゃいましたような生態系との関係で見ましても、有害なものを水際で植物検疫という形でチェックをしていくというのも、そういった生態系への悪影響を防止するという意味でも機能しているものというふうに思っております。

松木委員 これからより一層国際間の行き来というのが活発化することがやはり考えられるわけですので、こういうものに対しての農水省さんのお取り組みというのは、やはり人をがっちり配置してでもしっかりやっていくというのが僕は絶対大切なことだなというふうに思っております。ぜひそういうふうにしていただきたいというふうに思っております。

 また、現場でやはり、植防とは直接というわけじゃないんでしょうけれども、現場の営農をされている方々というのがいますよね。そういう方々がいろいろな意味で困ることのないように、そのためにやはり農林水産省というのはどんどん頑張って、行政をしっかりやっていただきたい。ただただ削減していくというのも大切なんでしょうけれども、しかし、強化するところというのは強化していかないと、特に今、国際間というのは非常にボーダーレスになっていますので、何が起きるかわからないということを考えたときに、一部に国がしっかりやっていくところというんですか、そういうところはやはりあるんだというふうに私は思います。そこら辺をもう一度しっかりやっていただきたいというふうに思っておりますので、それについてちょっとお答えを。

中川政府参考人 農産物の輸入検疫におきます検査体制の充実ということでございますけれども、これまで植物防疫所に勤務をしております防疫官の人数でありますが、平成十二年は七百八十二名でありました。それが十六年には八百四十九名ということで、輸入貨物などの検査件数の増加に十分対応できますように、こういった植物防疫官、人的配置につきましても必要な拡充を図ってきているところでございます。

 この点につきましては、これからもそういった業務の必要性、業務量等十分勘案をいたしまして、適正な人的資源の確保には努めていきたいというふうに思っております。

松木委員 ありがとうございます。ぜひ頑張ってやっていただきたいと思います。

 それと、これは植防法と全然関係ないといえば関係ないんですけれども、BSEの対策のことなんですけれども、アメリカが、当初計画していた年間四万頭から一気に十倍の四十六万六千頭に、ちゃんと牛の検査をするということを書いている新聞をきのう、私見たんですけれども、これは今どういうふうになっているんでしょうか。

中川政府参考人 先般、ベネマン農務長官が、サーベイランスの充実の一環として検査頭数を大幅にふやすというふうな発表をしたというのは、私どもも承知をいたしております。ただ、具体的に、今までは年間二万頭でありましたけれども、これを大幅にふやすということでありますが、その具体的な対象をどういうふうにするかといったところについて、必ずしもまだ明らかになったというふうには私ども思っておりません。十分な情報がございません。

 数がふえるということは、サーベイランスを強化するという意味では一定の、何といいますか、より充実されたものとは思いますけれども、具体的にその対象がどういうものかというものを見ませんと、私どもとしてはまだ評価をするには不十分だというふうに思っております。加えて申し上げますと、数がふえてもこれは全頭検査ではありませんので、日本がやっております全頭検査というものとは意味合いが違うというふうに思っております。

松木委員 これはぜひ、日本国内は全頭検査をやっているわけですから、こういうことでアメリカの方がぜひ輸入を認めてくれというようなことがあれば、ぜひこれはしっかり拒否をやはりしていただきたいというふうに思っております。

 もう一つ聞きたいことがあったんですけれども、またこれは今度の機会にしますけれども、BSEで日本で人がたくさん死んだような話というのは私は余り聞いたことがなかったんですけれども、ちょっとけさの某週刊誌によると、これはひょっとしたら表に出ていないだけで、かなりそういう人間がいるんじゃないかという記事が実はあります。そんなことをぜひ今度の機会にちょっとゆっくり聞かさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしましても、農林水産行政というのは地方を助けるということだと思うんですよね。ぜひこれは後退はしないように、これからもしっかり活動をしていっていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党・無所属クラブを代表しまして、私、岡本充功が質問させていただきます。

 まず、植物防疫の必要性、これまで行われてこられましたそういった事業の効果、そういったものをぜひ私としては知りたいと思っております。同僚の、今、松木委員が質問しました三位一体の改革の部分についての思いは私も同じでありますけれども、私は、こういった個別な内容について少しお尋ねしていきたいと思っております。

 まず、これまで行われてまいりました病害虫の発生予察事業を含めますいわゆる植物防疫にかかわります一連の事業で、実際に病害虫被害を抑制した、そういった実績もしくはそういった病害虫の具体例等がありましたら、お知らせ願いたいと思うんです。

中川政府参考人 ひとつ、水稲を例にして申し上げますけれども、昨年は大変夏の気温が低く、また天候も不順であったということで、気候の条件からしますと平成五年のときと似たような気象条件にあったわけでございます。

 東北地方を中心に平年以上にいもち病も発生をしたというふうなことが一つの大きな去年の特徴でございまして、こういった気象条件、大変悪かったわけでありますけれども、最近はいもち病に対します予防の効果の高い、育苗箱の中に農薬を施用するということによってその後の葉いもちの発生を防ぐというふうな技術もできておりますし、また、穂いもちの発生が見られるという場合でありましても、先ほど申しました適切な情報を提供することによりまして、早目早目に防除していくということによって被害が最小限に食いとめられるというふうなことがございます。

 昨年のお米の作況指数は九〇でございました。平成五年のときは七四でありました。そういう意味でも、こういった植物防疫の効果というのが出てきているかというふうに思いますが、もう少し、データということで申しますと、適切な防除をした場合としなかった場合で一体どれぐらい影響が違うかということでありますが、水稲の場合ですと、平均でこの差は、収量が落ちるという意味では二七%、それから、適切にやりませんと品質も落ちますので、収益ということでいきますと三四%の減になるというふうなデータもございます。

岡本(充)委員 今局長さんの方から教えていただきましたように、実際に発生被害の減少もしくは被害を食いとめるという意味において、この植物防疫、病害虫の発生予察事業というのが機能しているという話でありますけれども、実際にこの発生予察、予報、幾つかあると思うんですね、警報だとか注意報を含めて。こういったものが多く発出される地域というのは、日本国内で偏りがあるのでしょうか。

中川政府参考人 病害虫の発生の状況といいますのは、地理的な条件、気象の条件、どういう作目を栽培しているかといったようなこと、それからそれぞれの作目がどの程度の面積で栽培されているかといったいろいろな要素によって変わってまいりますし、それから年によっても、これは気象条件ということで変わってまいります。年による変化、それから地域によります格差というものは、当然いろいろとございます。

岡本(充)委員 いわゆる交付金という形で地方に配分をされてきたわけでありますけれども、その配分の大きな決定要因は、農家の戸数だとか作付面積だとか、それから市町村の数という部分で大方が決まってまいりまして、例えば昨年ひどい被害があったからことしもしっかり調べなきゃいかぬ、こういうことだとしても、実際この交付金の配分には影響が余り出ないような現状に今なっているかと私、思っておりまして、そういった意味で、それぞれの各地域に今後交付金を出していくというときに、そういった地域の実際の状況、こういったものをぜひ勘案して配分していっていただきたいなというふうに私は思うんですけれども、それについてお答えいただけますでしょうか。

中川政府参考人 植物防疫事業の交付金の配分につきましては、先生おっしゃいましたように、植物防疫法、それから施行令におきまして配分の具体的な数字というのは決まっております。農家数で四割、面積で二割、それから市町村の数に応じて配分されるのが二割ということで、全体の八割はこういった要素に基づいて配分をするということになっておりますが、残りの二割につきましては、発生予察事業など緊急に行う必要がある場合に備えまして、各都道府県に交付金を交付する際に、こういった緊急の必要性というものも考慮してやっているところでございまして、この部分でもって現場でのニーズに即応した形で交付金を配分するように、これからもそこのところは十分注意をしていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 今、私のお願いが聞いていただける、考慮していただけるものと信じております。

 さて、続いて、同じ植物防疫でも、海外からの輸入農産物に付着しておる、もしくはそういった輸入貨物から日本国内に侵入し得る、こういった病害虫もあるかと思います。検疫所で検疫をしておるとは思うんですけれども、そういった中で、他国からの病害虫の侵入等の被害の状況ということも少しお知らせいただきたいんですが、近年の例をちょっと挙げていただけますでしょうか。

中川政府参考人 近年とおっしゃいましたが、多少古くはなるんですけれども、典型的な例ということで申し上げますが、一九七六年に愛知県で初めて発見されましたイネミズゾウムシという害虫がございます。これは、その後急速に国内に拡大をいたしまして、残念なことですけれども、十二年後の一九八八年には全国に広まったというものがございます。最近の一つの例としては、こういったものがございます。

岡本(充)委員 今おっしゃられましたイネミズゾウムシは、発生予察の対象の指定有害動物に今現実的に指定されているということでありまして、これについても発生予察を行ってみえるとは思います。私も、愛知県、名古屋港の一部を含みます飛島村、弥富町、こういった地域に荷揚げをするところがあるんですけれども、そういった地域から来ております関係上、輸入コンテナ、もしくは木材等にでもこういう有害な虫が付着しているということも十分考え得るというふうに考えておりますので、ぜひとも他国からの侵入という点についても、引き続き十分な検疫体制の努力をお願いしたいと思っております。

 そういった意味で、いろいろな虫について、まさに今研究、そしてまたその内容について考慮がされているとは思うんですけれども、病害虫防除の研究内容という意味において、近年どういった研究がなされているのか、ちょっとお聞かせ願えますでしょうか。

中川政府参考人 技術的にも大変特筆すべきものとしまして、ウリミバエの防除の話がございます。

 これは沖縄でのことでありますけれども、ウリミバエの防除のために不妊虫放飼法、これは、雄のミバエに放射線をかけていわば生殖能力を落としてしまう、なくしてしまうということによりまして、そういった雄をたくさん放出することによって全体としてのミバエの発生を防ぐという画期的な方法でございまして、こういった世界にも例を見ない技術をこのウリミバエの防除のために沖縄で適用いたしまして、根絶に成功したということであります。

 こういった具体的な、しかも画期的な技術につきましては、各試験場での研究成果等を学会誌にも発表いたしまして広くいろいろな方に知っていただくというふうな、そういう活動もされているところでございます。

岡本(充)委員 私もその話、ちょっと知っておりまして、実際にそのウリミバエが根絶できたことで我々がこの本土でニガウリを食べることが最近できるようになった、こういった話を伺いました。

 実際にこのニガウリをつくってみえる農家の方にとっては、私たちがこの東京や私の地元の愛知県でも食べられるという意味において経済効果があったかと思いますけれども、どのような経済効果であったと試算されていますか。

中川政府参考人 ウリミバエが根絶をされたということによりまして、それ以後、将来にわたってこのための防除費が必要なくなるということで、それは時がたつにつれて、経済効果といいますか、コストの節減という面で大変大きな効果があるわけであります。

 これに加えまして、今先生おっしゃいましたように、沖縄では従来、県外にはこういったニガウリですとかあるいはマンゴーといったものは搬出ができなかったわけでありますけれども、ウリミバエが清浄化されたということによりまして、最近の数字で申しますと、マンゴーの県外出荷額が七億一千百万円、また、ニガウリにつきましても約六億円の県外出荷額が統計上把握されております。

 こういったように、それまで出荷もできなかったものが出荷できるようになったということで、大変大きな経済効果があるというふうに思います。

岡本(充)委員 そういった大変画期的な研究をされているということを大変心強く思うわけなんですけれども、関係者の皆様方の大変な御努力もあったと思います。

 そういった中で、残念ながら、例えばこのウリミバエ、近くの国々では実はまだ大きな被害を出している、そういった話も出ています。例えば、沖縄県の石垣島、もしくはさらにもっと西の与那国島からは台湾はかなり近いわけなんですけれども、この台湾ではまだウリミバエの被害があるというふうに私は聞いております。

 例えば、台風でも吹けばこのウリミバエがまた日本に侵入してこないとも限らない、こういったふうに思うわけなんですけれども、こういった例えばウリミバエを根絶する技術、今の、生殖細胞に放射線を当てて子孫ができないようにする方法だというふうに理解しましたけれども、こういった方法は比較的簡単にできるかとは思うんですけれども、こういったものを例えば東南アジアのほかの国々にも指導していく、こういったようなプロジェクトは進んでいるのでしょうか。

中川政府参考人 開発途上国の専門家の方々にこういった問題について技術移転をするといったこと、これも国際協力の一環として実施をしているところでございます。

岡本(充)委員 具体的に、どういったプランでこのプロジェクトは進んでいるんでしょうか。

中川政府参考人 JICAの専門家に対します訓練のコースがいろいろありますけれども、こういった中で、途上国から専門家をこちらに呼びまして、そこでセミナーをする、そういったことで技術移転をするというプログラムがございます。こういったものを活用して、新しい技術の移転に努めているということでございます。

岡本(充)委員 ぜひとも、そういった技術を日本が海外に広めることで――日本の国際協力、日本の海外へのいろいろな支援事業があるとは思います。イラクへの復興支援事業だけが日本の役割ではない、私はそういうふうに思っているところもありますので、ぜひこういった技術の面で日本の指導を各国に広めていっていただけるとありがたいと思っております。

 続きまして、私は発生予察事業についてちょっと幾つか質問をさせていただきたいと思っております、もうちょっと個別具体的ですけれども。

 昭和二十六年にこの事業がスタートしたというふうに私は聞いております。昭和十五年、戦争の前でございますけれども、北日本のいもち病、また西日本のウンカ類の大発生があって大きな被害を日本全土にもたらした、この反省をもとに実際に事業が始まってきたというふうに伺っております。

 そういった中で、現状での発生予察に大きな役割を占めているのではないかと思うのが病害虫防除員、私が愛知県庁などに行って伺いましたら、各市町村にお一人ずつこういった方がいらっしゃるようです。全国で四千二百一名というふうに聞いておりますけれども、この皆様方へ一体どのくらい報酬を、総額でも結構でございます、お支払いされているのでしょうか。

中川政府参考人 全国の病害虫防除所におります病害虫防除員の数でありますが、平成十四年度で四千二百一人ということでございます。

 この人たちの活動に対しまして国の方から交付金が支給をされておりますけれども、その額は、同じ十四年度の実績でいきますと七千九百万円。これは国からの交付金ということで支出をされている部分でございますが、そういうことからいたしますと、一人当たりの支出額は、約二万円弱ということでございます。

岡本(充)委員 そんなところなんだろうと思います。私も、お伺いしました方からの情報ですと、大体三万円、都道府県からのお金も含めてお一人当たり三万円ぐらいのお金が出ているというお話でした。

 この皆様方が実際に、最先端の、農協の方やそれから実際に農家の方などがこの病害虫防除員というのを併任されているわけなんですが、この方々からの情報をもとに、実際に発生予察情報、もしくは警報でも注意報でも結構でございますけれども、出したという具体的な事例がありますでしょうか。

中川政府参考人 発生予察の事業を行います際に、こういった防除員の方々は、実際現場にいらっしゃって、そこでそれぞれの病害虫のことしの発生ぐあいはどうかといったようなこと、そういうことをきちっと圃場で調べていただくというのが主な仕事でございます。

 当然、病害虫防除所の職員の指導監督のもとでこういった防除員の方は作業をされるわけでありまして、こういった人たちの情報をもとにして、病害虫防除所で発生予察のための情報を取りまとめて、それを農家の方々に配付をするというのが日常の活動でございます。

 したがいまして、具体的にどれがというよりも、日常の毎年毎年発生予察情報を発出する上で、具体的な一番現場に近いところで活動していただいているということでございます。

岡本(充)委員 その発生の予察情報、発生予報の一例をちょっと私は見させていただきましたら、地域ごとに、どこそこの地域、例えば東海地方ではこういった虫がことしはふえそうですよ、こういうような予報が多いんですけれども、そういった中でも、各市町村にこうやって現場で情報をお知らせしていただけるような方がいらっしゃるのであれば、こういった方の情報をぜひ十分に生かして、もっときめ細かな情報提供をしていただくこと、これが必要なんじゃないかと思っています。

 特に、この情報が農家の各戸へ伝わるまでの日数また方法については、一考の余地があるのではないかと考えております。ファクスだとか、もしくは農協からの連絡で来るなんという話も私は農家の方から伺いましたけれども、インターネットもあるようですけれども、なかなか十分に伝達されていない実態も私はあると認識しておりますので、この点について、一度考え直していただける、もしくは検討していただけるような余地はあるのでしょうか、ちょっとお答えください。

中川政府参考人 発生予察情報は、一般的には、発表の当日に病害虫防除所のホームページに掲載がされておりますし、また、地域の改良普及センターあるいは農協には、これは先生もおっしゃいましたが、ファクス等で迅速に情報提供される。それが地域の農業者の方々に対します指導の面で生かされるということでありますけれども、病害虫防除所から直接農家の方々に対して、今、テレホンサービスですとかあるいはファクスサービス、それからメールも使っておられる農家の方もいらっしゃいます。そういった新しい手段でもって迅速に農家にまで届く、そういったことを都道府県によりましては県での独自の取り組みとしてやっておられるところも最近出てきております。

 こういった新たな取り組みにつきましては、ぜひいろいろと知恵を出して、できるだけ早く現場に届くということが何よりも大事でございますから、そういったような活動をするようにということで指導していきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 今局長おっしゃられましたけれども、実際に農家の営農してみえる方の中には、メールもちょっとできぬ、インターネットを毎日チェックするわけにもいかない、こういった方が多いのも実態です。ぜひともきめ細やかな情報伝達、そしてまた、その伝達に伴う指導、特に防除技術指導についてさらに充実をしていっていただく。

 実際に、虫が出る、虫が出ると言われても、それでどうしたらいいのか、何をどうするのか、こういった部分、それから、そうしないとどうなってしまうのか、こういった部分でしっかりとした情報提供をしないと、ただ虫が出るぞということだけでは、農家の皆様方に対して十分な情報であるとは私は考えておりませんので、ぜひこの防除技術指導ということについてしっかり行っていくということを、一度、一言いただきたいと思います。

中川政府参考人 病害虫防除所の方での主要な業務は、発生予察情報のできるだけ正確なものを迅速に提供するということでありまして、その後、こういった情報をもとにして、具体的に個々の農家の方々に適期の防除を指導するというようなところは、一つは地域農業改良普及センター、あるいは、本来、各農協の営農指導の方々も、農家に対してこういった情報をもとにしてやっていただくということが大変大事なことだというふうに思っております。

岡本(充)委員 ぜひそういった指導をしっかりしていただくことで、こういった病害虫被害をできるだけ少なく抑えていくんだ、こういったこと、ぜひ大臣にも一言決意のほどをお願いしたいと思います。

亀井国務大臣 今局長からお答え申し上げましたが、今回の鳥インフルエンザの問題を含め、いろいろの情報を迅速に伝達するということは大変重要なことでありますし、この病害虫の問題も、今インターネットや、あるいはまた普及センター、農協等、テレホンサービス等々、いろいろ情報の伝達手段もあるわけでありますし、迅速にその対応ができるように努力をいたしてまいりたい、こう思います。

岡本(充)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 さて、その防除指導の一つ、幾つか技術指導の中であるとは思います。私、医師ということもあって、食の安全性ということに対して非常に関心を持っております。もちろん、農薬の問題だけではないとは思いますけれども、今回、防除の一つの手段ともなります農薬の問題について、少し御質問させていただければと思っております。

 実際に、現実的に残留農薬という言葉を大変消費者の方が敏感に、情報を聴取したい、こういうふうに思っておられる現状があるんですけれども、残留農薬に対する検出の調査というのは農林水産省では行っているのでしょうか。モニタリング等でも結構でございます。

中川政府参考人 農林水産省におきましては、これまで国内産の米麦、それから野菜、果実等の農産物につきまして、生産現場におきまして残留農薬の実態調査というのは行っております。

岡本(充)委員 単年度で結構でございますけれども、実際に違反事例はどのくらいあって、それがふえてきている傾向か減ってきている傾向か、そのあたりをお知らせ願えますでしょうか。

中川政府参考人 検査点数は、米麦を合わせますと約二千四百、それから野菜の検査点数が約六百強でございます。合わせて三千点程度のものを毎年やっておりますけれども、残留農薬基準をオーバーしたというものは農水省のこの調査の中では出てきておりません。

岡本(充)委員 同様に、幾つかのほかの省庁の所管でもやってみえるかと思いますけれども、例えば食品衛生法上、残留農薬基準が設けられているのは二百二十九種類の農薬だと私は伺っております。この二百二十九種類の農薬も、今厚生労働省の方で恐らく残留農薬をはかってみえると思いますが、厚生労働省としては同様にどのくらいの違反件数を認知してみえるのでしょうか。

遠藤政府参考人 残留農薬についてでございますけれども、都道府県等が平成十四年度に検査をいたしました結果では、野菜類、果実加工品について三万二千四百十三件の集計を行い、そのうち違反が確認されたものが四十件ございました。

 また、同じく十四年度に、輸入時の検査におきまして二万五千百六十六件の検査を実施し、二百五十八件の残留農薬基準違反が確認をされているところでございます。

岡本(充)委員 今、輸入品の方では特に一%ぐらいは違反事例があるということだったんですけれども、農林水産省としては、この実態、例えば検疫所等で、こういった輸入農産物に対しての残留農薬について、実際、検出等は行っていないんでしょうか。

中川政府参考人 輸入されました食品につきましては、国境のところでは、厚生労働省の検疫所の方でチェックをいたしております。

 農林水産省でやっておりますのは、市中に流通しているものにつきまして一部買い上げまして、それを独立行政法人のセンターの方で検査をしているということがございます。点数等は余り多くはありませんけれども、市中に流通しているものについて、一部そういった残留農薬のチェックはいたしております。

岡本(充)委員 そちらの方でもやはり一%前後の検出なんでしょうか。

中川政府参考人 申しわけありませんが、消費技術センターでの分析結果について今手元にございませんので、また調べまして御報告申し上げます。

岡本(充)委員 この残留農薬の問題は、もう一つ、環境省でも今鋭意取り組みをしていただいているというふうに聞いております。農薬取締法に基づいて、作物残留に係る登録保留基準が二百三十三種類あって、こちらの方は食品衛生法の二百二十九種類と重なりはないというふうに伺っておりますけれども、それでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えをいたします。

 今御指摘のように、残留農薬につきます登録保留基準につきましては、環境省も、作物残留、土壌残留、それから水質汚濁に係る登録保留基準を設定しております。

 今後はもちろん、食の安全の観点から、食品安全委員会を通じて、政府一体が統合的にこの残留基準を定めていくことになりますが、これまでの経過から申しますと、先生今御指摘のとおり、環境省として二百数十種類の登録保留基準を設定してまいっております。

岡本(充)委員 そういった中で、農薬取締法において、生態保全の観点から環境省としてどういった取り組みをされているのか、一例があったら御紹介願えませんでしょうか。

吉田政府参考人 私ども、今申し上げましたように、法律に基づきまして登録保留基準を設定してまいっておりますが、特に今力を入れておりますのが、水産動植物に係る登録保留基準の強化充実でございます。

 これは従来、コイを指標にいたしまして、毒性値に基づきまして、水産動植物を守る代表種として登録保留基準を設定してまいりました。しかしながら、生態系の保全というよりブロードな観点から申し上げますと、水生生物を構成する魚類、甲殻類、藻類といったものをすべて見取った上で、その環境が適切に保全されるように登録保留基準をつくる必要があるということで、昨年の三月に、水域生態系の主たる構成要素でございます今申し上げました魚類、甲殻類、藻類に係るレベルを、リスク評価に基づきまして定める基準の方式に設定がえをいたしました。

 この基準自身は来年の四月から施行されるわけでございますけれども、その円滑な実施のために、現在、試験法の整備等の準備を進めているわけでございまして、今後とも引き続き、農薬による野生生物や生態系への悪影響を防止するために努力をしてまいりたい、かように考えております。

岡本(充)委員 ぜひ、生態系への保全も含めまして、食品の安全性のみならず、環境面での薬物による被害、薬品による被害を少しでも抑えていく、こういった観点で取り組みを行っていっていただきたいと思っております。

 特に、これは三つの省庁に分かれておりまして、それぞれがばらばらということでもいけないという中で、今般、私もちょっとこの前教えていただきましたけれども、平成十八年五月に向けてポジティブリストというリストの作成を今厚生労働省の方で進めてみえるということでございます。平成十八年五月に向けまして、全部で七百種類ぐらい農薬があると言われている中で、今食品衛生法で残留農薬基準が設けられているのが二百二十九種類、それから農薬登録保留基準で二百三十三種類、こういったものに対してはそれなりの基準があっても、実際に無登録の農薬というのは、例えばダイホルタンだとかナフサクだとかプリクトラン、こういったものはまだ実は基準が設定されていない現実もあります。

 そういった意味で、このポジティブリストの作成に向けて、その進捗状況をちょっとお聞かせ願えればと思います。

遠藤政府参考人 昨年五月の食品衛生法の改正により、食品中に残留する農薬等について、いわゆるポジティブリスト制を改正法公布の日から三年以内、平成十八年五月までに施行するということにしているところでございます。

 ポジティブリスト制への移行に当たりましては、現行の食品衛生法に定める残留基準に加えまして、国際基準であるコーデックス基準や農薬取締法に定める登録保留基準、欧米の残留基準を参考に、暫定的な基準などを設定することとしております。

 薬事・食品衛生審議会での審議を経まして、昨年十月末に暫定基準の第一次案を公表し、広く意見を求めましたところ、約二百二十の個人及び団体から意見が寄せられております。今後、この第一次案に対しまして寄せられた意見などを参考とし、薬事・食品衛生審議会において暫定基準案等について引き続き検討を行っていくこととしております。

岡本(充)委員 そういった中で、ちょっと確認をしておきたいことがありますが、実は、農薬ではありませんけれども、食品並びに土壌の薫蒸に使われております青酸化合物や臭化メチル、こういったものに対しましてはどういった扱いになるのでしょうか。

遠藤政府参考人 御指摘の薫蒸剤についてでございますけれども、コーデックス基準などを参考に暫定基準案を作成しているところでございまして、こういったことを通じましてポジティブリスト制の円滑な導入に努めてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 では、確認ですけれども、臭化メチルもこのポジティブリストへの登録を目指している、こういったことでよろしいんでしょうか。

遠藤政府参考人 御指摘のように、臭化メチルにつきましても暫定基準をつくるということでございます。

岡本(充)委員 臭化メチルといいますのは、本当に植物検疫などで、薫蒸するための薫蒸剤として広く使われてきたわけではございますけれども、そういった中でも、今回オゾン層への影響を大きな理由に二〇〇七年に使用禁止予定、特に土壌については使わないという方向になってきているようでありますが、検疫は除外されるという話を聞いております。そういった意味で、臭化メチルが今後検疫では使用し続けられるということになると、ぜひともこれについても、どういった毒性基準を設けるのか、こういったところを検討していただきたいと思っております。

 二〇〇七年に使用禁止されますこの臭化メチル、薫蒸剤のかわりといたしまして、農林水産省としてはどういった代替物質を検討してみえるのでしょうか。

中川政府参考人 臭化メチルにかわりますものといたしまして、二酸化炭素あるいは弗化スルフリルなどの臭化メチルの代替剤の開発をこれまで進めてきておりまして、その一部につきましては実用化のめども立ったというものでございます。まだ引き続き、そのほかの薬剤につきまして、開発に努力をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 ぜひ、人体への影響を十分考慮して代替物質を選定していっていただきたいと思っております。

 また、そういった意味で、残留農薬にかかわります健康被害への調査といったものについては、厚生労働省としては調査を行ってみえるのでしょうか。

遠藤政府参考人 ただいま御質問の健康被害の調査ということですけれども、そのために特別の仕組みを持っているということではございません。もし何か生ずれば、さまざまな情報源を通じて情報を入手するというふうなことになろうかと思います。

岡本(充)委員 現実的に、今、はっきりと因果関係が指摘されているというものはないとは思います。ただ、実際に食品衛生法上の残留農薬基準を設定するときにも、動物実験での実験から類推して、およそ百倍の安全係数を設けて、二オーダー下の数値を安全値としているということで私聞いておりますけれども、マウスで薬物への暴露が、マウスで実験した場合、どんなに長くてもマウスの寿命は二年か三年でございます。それに対して、人間は何十年も生きるわけでございまして、直接的に本当にマウスのデータがすぐ人間に来るのか、人間と直結するのかは、なかなか評価は難しいと思います。

 逆の場合で、例えば医薬品の場合には、マウスで実験して即人間に使ってきくというわけではなくて、そこにワンステップ、知見ということで、人間にどういう影響を及ぼすかということをチェックするわけですけれども、確かに、こういった毒物の場合には人間へ直接投与するということはできませんから、そういった意味でこの評価は難しいだろうとは思いますけれども、ぜひとも健康へどういった影響を及ぼすのかということについて、新しい手法も含めて検討をしていっていただかなければならないのじゃないかと思っています。

 そういった中で、特に健康被害、私、もう一つ大変大きく関心を持っておりますのは、実際に防除をしようと思って農薬を使う農家の方に対する影響に対しては、どのような基準、もしくはどのような指導が行われているのか。農水省でも結構でございます、お答えください。

中川政府参考人 農林水産省の年間の予算の中に農薬危害防止対策費というのがございまして、これは、圃場の現場で農家の方々が農薬を正しく使っていただくように、またその農薬を使う際にいろいろな事故に遭わないようにということで、講習会などを開きまして、そこで正しい使い方といったものを周知徹底する、そういった事業がございます。こういうものを通じまして、現場で農薬が適正に使用されるようにということを周知しているということでございます。

岡本(充)委員 指導徹底をしてみえるということなんですけれども、実際に、農家の方の中にはこういった健康被害、例えば農薬が原因であろうと思われるような末梢神経障害だとか、もしくは、そこまでいかなくても頭痛、めまいといった、非常に自覚的な症状だけかもしれませんけれども、出てみえる方も見えると私は実際に診療をしていて思うわけなんですけれども、こういったことに対して、指導していますからということではなくて、ぜひとも、実際にその被害の調査をしてみるだとか、それから、どういうふうに実際に使用されているかを現場でしっかりと把握をして、こういった実際に農業を営まれている皆様方に健康被害が及ばないように、対策を十分とっていただきたいと思っております。

 そういった観点で、もう一点だけ農薬のことでお聞かせいただきたいのは、農薬を空中散布する、こういったことがございますけれども、この農薬の空中散布に対しては、その地域の住民の皆さん、また、たまたま通りかかった通行人の皆様にも降りかかる可能性があるんですけれども、これに対しての指針というのはどのようになっておりますでしょうか。

中川政府参考人 空中散布によります影響というのは、単に圃場だけではなくて、街路樹などのときにもいろいろな問題になるわけであります。

 ちょっと今手元に通知文書を持っておりませんので、日にちは確かなことを申し上げられませんが、昨年の秋だったと思いますけれども、こういった空中散布、あるいは市街地、住宅地に近いところでのいろいろな薬剤の散布について注意をしていただきたいといった、これは今まで、関係省庁との調整もいろいろありまして、こういった局長の文書を出すということをしておらなかったわけでありますが、昨年の秋に初めて私どもの方から関係の都道府県初め団体に対しまして、注意していただきたいという旨の文書を出し、徹底をしているところでございます。

岡本(充)委員 環境省としては、何か対策はとられていますでしょうか。

吉田政府参考人 お尋ねの農薬の空中散布のことでございます。

 農薬の空中散布につきましては、周辺の住民の方々の健康被害を防止するという観点から、常々私ども重要な課題であると認識しておりましたが、平成九年の十二月に、比較的使用量も多うございますし、毒性についての科学的知見が明らかになっております十の農薬につきまして、気中、大気中の意味でございますが、気中の濃度評価値というものを設定いたしております。したがって、航空防除を行う際におきましては、その実施する主体が今申し上げました気中濃度評価値を上回らないように配慮をしていただく、こういうお願いをしてまいっております。

 さらに、今局長からお話もございましたように、十五年の三月の改正農取法に基づきまして、さらに航空防除に対する安全対策が強化されてきているということでございますが、私どもとしても、この気中濃度評価値というものが適正に維持、保持されるように、引き続きウオッチしていきたいと思っております。

岡本(充)委員 実際にウオッチをされている、評価をされているということで、その評価を上回るような事例というのは出ておるんでしょうか、それとも、きちっと基準の中でおさまっているんでしょうか。

吉田政府参考人 私ども環境省がこれまで把握をしてまいりました限りにおいては、気中濃度評価値を上回った事例は承知しておりません。

岡本(充)委員 今お話がありましたけれども、各省庁にまたがっている問題ではございますが、ぜひとも連携をとって、残留農薬の問題、そしてまた、健康への被害というのは、食べる人もそうですし、実際に営農をされている方も被害を受ける可能性がありますので、十分対策をとっていただきたいと思っております。

 私も、自分の選挙区で医者をやっていて思うわけなんですけれども、本当に長年の蓄積をもって、恐らくこれはそういった化学薬品等の影響ではないかな、それもあくまで類推しかできないんですけれども、そういったことじゃないかというふうな事例を何遍か見ます。例えばそういった事例を少しでも減らしていくためにも、こういった取り組みをぜひやっていっていただきたいと思っております。

 そういう意味で、総合病害虫管理、IPMというそうですけれども、これへの取り組み、こういった取り組みについては、ぜひとも推し進めていっていただきたいと思っております。生物的な防除、いわゆる天敵を入れて、農薬じゃなくて天敵を入れることで防除をしようとか、それから、物理的に、粘着のこういう物質を置いて、そこに虫がくっつくことで防除をするとか、あと、耕作機を回すことで耕種的な防除をする、それでもう一つが、今お話しさせていただきました農薬などの化学的な防除だ。こういうものを上手に組み合わせていくことで、農薬以外の方法での防除ということに対しても十分ぜひ研究をしていっていただきたいと思っておりますが、それに対しまして、今、農林水産省はどういった取り組みをしてみえるのでしょうか。

中川政府参考人 先生今おっしゃいましたような、化学合成農薬に頼るだけではなくていろいろな手法を組み合わせて、できるだけ環境の負荷を軽減するような、そういったやり方を進めるということは、大変大事なことだというふうに思っております。

 こういった面で、総合的な病害虫管理推進事業といった補助事業も私ども用意しております。各都道府県におきます総合的な病害虫管理技術の確立のために、こういった補助事業も活用しながら推進をしているところでございます。

岡本(充)委員 これまでの議論、今の答弁等で、農水省としても、こういった化学的な防除のみに依存しない、そこから少しずつそのほかのものも組み合わせていく、こういった取り組みをしていっていただけるというふうに私理解しております。

 こういったこれまでの一連の議論、大臣もお聞きになったかと思いますけれども、食の安全性、特に残留農薬に関する、それからまた農家の営農されている方への健康被害も含めまして、今後の取り組む方針、また決意等ありましたら、お聞かせ願いたいと思います。

亀井国務大臣 農薬につきましては、その登録に際しまして、一つ、農作物への残留農薬によります人への健康影響を及ぼすことのないよう、農薬検査所で検査を行い、その安全性を確認して登録を行う。それとあわせて、食品安全委員会、そういう面でのリスク管理、これを私ども担うわけであります。

 そういう面で、農薬取締法の改正の問題等々、その使用基準の問題等々に十分意を尽くしていく必要があると思いますし、国民の健康や食の安全、安心、この関心は非常に高いわけでありまして、そういう面で、関係府省あるいはまた都道府県と十分連携をいたしまして、農薬の安全かつ適正な使用、この徹底に十分留意をして対応してまいりたい、このように考えております。

岡本(充)委員 決意のほどを聞かせていただけたと思っております。ぜひそういった方向でお願いしたいと思います。

 そういった中で、私、幾つかもう少しお聞かせいただきたいところがあるんですが、実は今、この植物検疫のことと絡めて、いわゆる植物検疫のあり方に対して、SPS協定、こういう協定があり、農産物の輸入に対して一つの指針ともなるこの協定だと思うんですけれども、これを一つ踏まえて農産物の輸入の交渉などに当たってみえるかと思います。

 今、FTAの交渉が、新聞報道によりますとメキシコとの合意も近いというふうな中、いよいよ今度は農作物を主要な輸出品とするアジアの各国、こういった国々との交渉が控えているわけでございますが、こういった交渉に臨む気構えをまずちょっと大臣にお聞かせ願いたいと思います。

亀井国務大臣 日本とメキシコとのFTA交渉に際しましても、メキシコ側から植物検疫措置の緩和を要求されたわけでありますが、我が国といたしましては、植物検疫措置を貿易促進の観点から取り扱うことは不適当である、こういうことを説明し、要求を拒否した次第であります。

 植物検疫措置につきましては、今後も、その解決のためには、個別案件ごとに、やはりWTOのSPS協定に即しまして、両国の専門家同士の科学的根拠に基づきます技術的な検討が不可欠である、私はこのように思います。

 また、SPS協定に規定されている輸出国あるいは輸入国の権利及び義務の変更、あるいは協定上の義務を超えるもの、また権利を侵害するものは受け入れることができないことでありますので、まずこの方針で臨んでまいりたい。我が国の植物検疫がFTA交渉によって揺らぐことがないように十分対応してまいりたい、このように考えております。

岡本(充)委員 今の大臣の気構え、はっきり聞かせていただきました。

 なかなか難しい交渉が続くとは思いますけれども、実は、そういった中で、SPS協定の中の一つで、自国の植物検疫の保護水準を達成できることが証明される場合には、異なる措置であっても同等のものと認めること、こういった条文があるわけなんですけれども、こういった条文に基づいて、先ほどちょっと質問もありましたリンゴの火傷病の件でございますけれども、火傷病の件のWTOの上級委員会の報告が採択されたということなんでしょうか。

中川政府参考人 WTOのパネル、それからその後の上級委員会での審議でありますけれども、日本から主張しておりました防疫措置、アメリカからリンゴを輸入するに際しての検疫措置につきまして、残念ながら、日本の主張というのは認められなかったということでございます。SPS協定上も、日本のとっている措置というのは不整合であるというふうな判断が示されたということであります。

岡本(充)委員 そういった中で、今後は、FTA交渉等でこの検疫の部分で合意に至らないときは、非関税障壁という指弾をされること、おそれはないのでしょうか。

中川政府参考人 日本がとっている措置についての正当性については、その相手国と十分協議をし、こちらの考え方を科学的な根拠を示しながら理解をしてもらうように最大限の努力をするというのが私どもの基本的スタンスでございます。

岡本(充)委員 そういった意味で、今交渉の最中でございますからはっきりとはなかなかおっしゃれないとは思います。

 しかし、ぜひともこういった部分で、今の検疫の問題が非関税障壁という指弾がされることのないように、その結果として、こちらの望まぬ方向での交渉の進展のないように留意をしていただきたいというふうに強く望んでおります。

 最後に、実はちょっと私の地元などでも、愛知県の稲沢市というところでは、苗木をつくっておるんですけれども、温州ミカンなど、ミカンの苗木をつくっております。

 ミカンなどは、日本の農作物は国際的に大分高く評価もされているようです。これまで日本は、どちらかというと、農作物の輸入の方に主眼が、輸入交渉に対して主眼が置かれてまいりましたけれども、攻めの体制というか、日本の農作物を輸出する、こういった輸出促進に向けた総合的な支援も行っていただく中で、この検疫体制というものをぜひもう一度磨き上げていっていただきたいと思っておりますので、最後に一言、輸出の支援に向けましたお考えを大臣からお聞かせ願えればと思います。

亀井国務大臣 農産物の輸出につきましても、今回、今年度予算にその予算措置をし、また、我が省におきましても、その組織をつくりまして対応することにいたしております。

 また、各都道府県におきましても、そのいわゆる協議会等々もおつくりをいただきまして、今の委員御指摘の農産物の輸出、またある面では、種苗の問題等々につきましても十分意を注いで対応してまいりたい、このように考えております。

岡本(充)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 公明党の白保です。

 法案の質問に入る前に一言申し上げたいと思いますが、鳥インフルエンザの対策につきまして、昨日、政府は関係閣僚の会議を開いて決定をいたしました。私どもも、去る五日の夕刻、官房長官の方に、私どもも対策本部をつくっておりまして、冬柴幹事長を本部長として、私、事務局長を仰せつかっておりますが、数項目にわたって申し入れを行いました。昨日、それを各省庁の皆さん方から説明を受けまして、私どもが要請をいたしましたことがほぼ網羅されておりますので、対策本部長の方からも、敬意を表する、こういうお話がございました。

 ただ、あとは、地元を回っておりますと、焼き鳥屋さんとかあるいはまた鶏肉店の皆さん方とか、そういった人たちの打撃も結構大きなものになっています。私どもの京都府本部で調査を行いまして、かなり詳細に調査を行った結果として、川下の方での被害も結構、風評被害等を含めてございますので、BSEのときにもそういった対策を行いましたから、今、農水省は調査中ということだと思いますけれども、その調査を詳細に行った上で、それらに対する対策も講じなければならないのかなと思っております。

 と同時に、防疫体制ですね。ワクチンの開発だとかいろいろな問題等も含めて、今後の問題としてまだ残っておりますので、なお一層のお取り組みを要請しておきたい、このように思います。

 さて、先ほどから、この法案の審議に当たって、一番冒頭にも大臣から、植物防疫の成功例として沖縄のウリミバエの根絶の問題が挙げられましたし、中川局長からもそういったお話がございました。これは私も、県会議員の当時この問題がありまして、農水省が非常に大きな取り組み等をやって、県の農業試験場もやって、成果としては大きな成果が上がりました。ですから、そういう面では、植物防疫にしっかりと取り組んで成功させると、農家の、また地域経済におけるところの効果というものは極めて大きな効果を上げる、こういうふうに思っています。

 実はこれは、私ども沖縄県では、東南アジアが一番近いわけですから、そういった面では、かなりいろいろな形でもって入ってきたりなどすることがあります。そういう中で、根絶事業というのは、ウリミバエに限って言えば、延べ三十一万人以上が動員されて、九十二億円の事業費がかかりました。ミカンコミバエでは同じく十一万人、二十五億円。この成功をおさめたことに対して私は地元の出身として敬意を表したい、こういうふうに思っています。

 研究者などの試算によりますと、ウリミバエ根絶のコストベネフィット分析によって、沖縄県では年間で二十億から三十五億の利益が得られている。また、別の研究機関では、移動禁止解除分、移動制限解除分と直接被害解消分の合計で七十六億三千万、こういうふうに推定もされているわけでございまして、これは非常に大きな効果を上げたと思っております。

 ただ、根絶した後も一回、入ったんじゃないかということで大きな騒ぎになりました。しかし、これは事なきを得て落ちついたわけでございますが、侵入経路として、台湾やその他近くに、東南アジアが近いわけですから、台風とかあるいは気流に乗って来たりなんかいたします。ですから、飛来で来るんじゃないかとか、あるいは果実についてくるんじゃないかとか、いろいろなことが言われているわけでございますけれども、これらのことについて、周辺諸国と近い関係もありますので、一層の周知徹底を今後もしていかなきゃならないんじゃないか、こういうふうに思っていますが、まず最初に大臣の見解をお願いします。

亀井国務大臣 冒頭、御発言のありました鳥インフルエンザの問題につきましては、対策を充実し、その目的が達成できますように、さらなる努力をしてまいりたい、このように考えております。

 委員御指摘のミバエ類の根絶、ミカンコミバエが十八年間の歳月と約五十億円の防除費用を投じまして昭和六十一年に、ウリミバエが二十二年間の歳月と約二百四億円の防除費用を投じて平成五年にそれぞれ達成されたわけであります。

 この害虫の根絶によりまして、沖縄県では、ウリ類やかんきつ類を消毒することなく県外に出荷をするということが可能になりまして、その経済効果は、御指摘のとおり大きなものと認識をいたしております。

 しかしながら、沖縄県はこれらミバエの発生国との隣接でありまして、これらミバエ類の再侵入の危険性がありまして、この再侵入を防止することが重要であります。このため、早期発見のためのトラップ調査とか寄主植物調査によります侵入警戒調査また予防的な防除を継続的に実施をいたしておるところでもございます。

 今後とも、このミカンコミバエやウリミバエの再侵入防止に向けまして、沖縄県と十分連携しながら、万全の措置を講じてまいりたい、このように考えております。

白保委員 それに関連して私、申し上げたいんですが、例えば台湾などは、動植物防疫検疫局、バフィックと言うんでしょうか、BAPHIQというのがあります。そういったところとも情報を共有していく、同じような地域にありますから、そういう面では、情報を共有していくということが非常に大事だろう。どこどこにはどういう害虫がいるとか、そういった情報共有が大変大事だ、こういうふうに思っております。

 この辺について、近隣国との連携、こういったものが必要だと思いますが、今後の取り組みについてお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

木村大臣政務官 白保委員御指摘のことは大変重要なことだと思っております。特にミバエ類の侵入源となり得る可能性のある近隣諸国との情報収集、そして共有化をするということは、大変大事なことだと思っております。

 最近でも、ベトナムへ日本の方から植物検疫専門家を派遣しまして、ミバエの標本を入手し、また情報を共有する、交換するということもさせていただきましたし、あるいは、今台湾のお話をされましたが、APECが台湾で主催されましたミバエ類の侵入に関するシンポジウムへ我が国からも専門家を派遣させていただいたり、また、昨年は日本で、つくばでありますが、国際的なセミナーを開催し、中国、台湾、韓国など近隣諸国も十一カ国が参加していただいております。

 こういったことを通じて、これからも、日本としても、農水省としても、積極的に、国際機関とも連携しながら、情報収集そして共有化ということにも努めてまいりたいと思います。

白保委員 ぜひ今後とも取り組みをよろしくお願いしたいと思います。

 次に、実は、先ほどもゾウムシの話がございましたが、アリモドキゾウムシとイモゾウムシの根絶実証事業、これが一九九六年以来、私どもの久米島で行われております。私も現場の方を、何回か行って見ておるわけでございますが、この事業は沖縄県が、農水省の補助によって両種のゾウムシの不妊虫放飼法による根絶を目指しているわけであります。この事業が成功いたしますと、不妊虫放飼法によるハエ類以外の広域的な害虫根絶事業では世界初の快挙というふうに言われている、非常に重要な実証事業を行っているわけであります。これは、今、順調に進んで、根絶が確認される見込みであります。しかし、モニタリングの方法の確立が非常に難しかったり、防除効果が停滞したりして、課題も残されているというふうに聞いております。

 両ゾウムシ類が根絶された場合のメリットは非常に大きいんだろう、こういうふうに思うわけでありますが、最大のメリットというのは何かというと、殺虫剤を多用せずに、地球環境に優しい手法でもってやることができる、根絶可能ということを実証するわけでありますから、非常に大事な実証事業だな、こういうふうに思っているわけでございます。

 したがって、この両ゾウムシに対する実証事業、これの現状と今後の展望を伺いたいと思います。

中川政府参考人 先生おっしゃいましたイモゾウムシ、それからアリモドキゾウムシの根絶につきましては、ウリミバエのときと同じような手法であります不妊虫放飼法ということで、そういう手法を応用してやっております。手法としましては根絶が可能だということが明らかになりまして、久米島で平成十三年度から本格的な根絶事業を実施いたしております。

 これまでのところ、久米島におきます防除の結果、アリモドキゾウムシにつきましては、まだわずかに発生が認められておりますけれども、ほとんど根絶状態に近い状況になっているということでございまして、沖縄県の防除状況を見きわめた上、国によります根絶を確認するための調査を私どもとして実施をしたいというふうに思っております。

 それから、イモゾウムシにつきましては、久米島の一部地域で同じ不妊虫放飼法によります防除を実施いたしておりますけれども、まずはアリモドキゾウムシの根絶状況の方を先に確認をして、その後、このイモゾウムシについての事業を推進することにいたしております。

 今後も、沖縄県全域でのこの二つのゾウムシの根絶に向けまして、引き続きその推進をし続けていきたいというふうに思っております。

白保委員 次にお伺いしたいのは、木製のこん包材に生息するマツノザイセンチュウの入国を阻止するために、一九九九年ごろから、各国とも、針葉樹などの木材の検疫強化を図ってきております。各国は、木材こん包材の植物防疫国際基準であるISPMナンバー十五を検疫規則に採用する動きをとっているわけであります。

 NAFTA三国のカナダ、米国、メキシコで構成するNAPPO、北米植物保護機構も、ISPMナンバー十五を導入するとしながらも、国内事情により本年七月まで延期するとしております。

 WTOでは、一九九五年、SPS、衛生植物検疫措置協定締結に際して、検疫措置が新たな非関税障壁とならないように定め、新たな検疫措置導入に際しては、事前にWTO加盟各国に通報し、各国の意見を求める公示期間を設けることを規定しております。

 そこで、木製こん包材についての各国の規制状況と、我が国の国際基準の導入について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

中川政府参考人 木製こん包材の規制につきましては、これまでにアメリカ、カナダ、メキシコ、韓国、中国、スイス、それからニュージーランド、それとEUという、七カ国と一つの地域でこの国際基準の適用ということを公表しているわけでありますけれども、各国ともその検疫規制の導入は公表いたしておりますけれども、具体的にいつから開始をするかという点につきましてはまだ十分明らかになっていない国も多いわけでございまして、今、私ども、鋭意その関係情報の入手に努めているところでございます。

 諸外国、こういった木材こん包材についての規制を強めるという動きがございますので、我が国といたしましても、我が国ではまだ発生をしておりませんツヤハダゴマダラカミキリという昆虫がいますけれども、こういったものの我が国への侵入防止を徹底するということが大事だというふうに思っておりまして、そういった面から、木材こん包材のリスク評価を実施いたしておりまして、その結果を踏まえまして、できるだけ早く、諸外国におくれることなく、我が国も必要な措置ということでとっていきたいというふうに思っております。

白保委員 次に、消毒方法等に関してお伺いいたしたいと思いますが、輸入検疫時に臭化メチルまたは青酸などの薫蒸処理、こういったことになっているわけですけれども、臭化メチルは、モントリオール議定書でオゾン層破壊物質に指定されて、平成十七年に全廃することが決まっています。ただ、防疫は例外だ、こういうふうに言っているわけでございますが、環境への作用とか食の安全、安心という観点から、できるだけ薬剤に頼らない代替技術の開発が一番いいんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。

 現在、農水省として、我が国としてそういった代替技術について開発あるいは取り組みが行われているのかどうか、あるいは実用化などが考えられるのか、その状況を伺いたいと思います。

中川政府参考人 臭化メチルにつきましては、先生今おっしゃいましたように、モントリオール議定書で平成十七年までに原則全廃ということでございます。

 検疫用途はこの規制から除外をされることになっておりますけれども、できればそれ以外の代替剤の使用ということが望ましいわけでありまして、そういった代替剤の開発を今やっております。二酸化炭素、それから三種混合剤などにつきましてはその実用化のための技術の開発が終わっておりますけれども、そのほか弗化スルフリル、こういった木材用に使いますものですとか、あと五、六品種、五つか六つの薬剤につきまして、現在、最終的な実用化のための技術の開発を行っているところでございます。

 こういった臭化メチルにかわる代替剤の開発というのは大変大事なことであります。民間団体がこういうのを具体的に技術開発を行っておりますが、そういった団体に対します支援措置を通じまして、できるだけ開発を促進していきたいというふうに思います。

白保委員 次に、防疫業務の効率化の問題についてお伺いしたいと思いますが、平成八年の改正で、本委員会で全会一致の附帯決議がついております。「輸入検査件数の増大に対処し、電算化による簡素化・迅速化を図り、併せて、植物防疫官のさらなる質的向上、適正配置を図る等円滑かつ的確な輸入検疫体制の整備に努めること。」というふうに附帯決議がついているわけであります。

 そういった中で、非常に輸入については、量的な増大もあったかもしれませんけれども、今度は質的な増大も行われてきておる。そういう面で、まさに防疫官の仕事が忙殺されて大変じゃないか、このような思いをするわけです。

 そこで、市場開放問題苦情処理対策本部が、昨年三月かに出した「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応」という中で、植物防疫官の業務の効率化を図るとともに、例えば植物防疫官の補助的業務の実施に民間技術者や非常勤職員を活用する等、こういうものが提案されているわけでございますが、その辺についてどのように対応なされているのか、お伺いしたいと思います。

金田副大臣 そのような御指摘があることも事実でございますけれども、この植物防疫官、まさに公権力の行使そのものでございまして、七十九カ所に八百四十九人の植物防疫官を配置して、高度に専門的な知識がないとこの職務を実行できないものですから、国の体制の中で一貫した形でシステムとして運用させていただいております。もし非常勤職員だとかあるいは民間の方々にお手伝いいただくということになりますと、このシステムが壊れやしないかというような危険もございますので、そういった民間を利用するというのはなかなか難しいなというふうに考えてございます。

 植物防疫官を適切に配置して、いろいろな効率化も考えてまいりますけれども、この体制を拡充する中で、そういった対応を措置してまいりたいというふうに考えているところでございます。

白保委員 ですから、先ほど申し上げたように、かなり輸入というものがふえていって、質的、量的な面での対応がもう迫られているわけでございますから、そういう面で、ぜひこの対応についてはしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、先ほども話がございましたが、防除情報ネットについて申し上げたいと思います。

 いろいろな情報がインターネットを通じてそれぞれの農家の方のところにも入っております。しかし、こういう害虫が出たよというふうな情報があっても、うちに帰って開いてこれを見てというような状況では非常に遅いわけでありまして、山形県あたりで始まったようですが、携帯を使ってその情報というものが現場で見て確認できる、こういうような状況があるようです。したがって、これからの防除という問題を考えた場合に、携帯等を活用したそういうことができるような推進を政府としても支援していったらどうかな、こういうふうに思いますが、最後の質問として、いかがでしょうか。

中川政府参考人 携帯電話の利用を初めといたします効率的な情報提供の手法につきましては、幾つかの県で既に取り組みがされておりますし、こういった先進事例の紹介というものは私どもも努めていきたいと思います。

 また、具体的に各都道府県で新たな効率的な情報提供体制の構築をされるということであれば、その技術を確立するために植物防疫事業交付金、今議論をいただいておりますこの交付金を御活用いただくということも可能でありますので、ぜひそういった点でも新たな取り組みを支援したいと思っております。

金田副大臣 先ほどの回答の中で、私、七十九カ所と申し上げましたけれども、十六年度七十三カ所の間違いでございました。訂正させていただきます。

白保委員 終わります。

高木委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 先ほど来お話にありましたが、リンゴの火傷病にかかわる問題について伺いたいと思います。

 火傷病は、もともとはアメリカ合衆国東部にあった風土病と言われており、ニューヨーク近郊のハドソン川流域で初めて発見されて以来、北米全体はもとより、ニュージーランドやイギリス、エジプトなど世界各地で蔓延している病害であります。

 御案内の先生方には恐縮ですが、ぜひ写真を見ていただきたいと思うんですが、一番心配されているのはリンゴですけれども、これは未熟なリンゴについたバクテリアの分泌物ということで、このようになっています。

 遠くから見るとわかると思うんですが、木全体が枯れている様子、それからナシにもうつる。まさにやけどのような状態になるということで火傷病と言われているわけですが、葉っぱにも枝にも、全体に広がる、樹木全体に広がるということ、あるいは今お話ししたようにリンゴだけではなくナシや花などにも影響があるということで、これが侵入すればまさに全国的に重大な損害をもたらす病気だと認識しております。

 平成十四年の五月に、米国産リンゴの火傷病にかかわる日本の植物検疫措置がSPS協定等と整合的でないとしてWTO紛争解決機関にパネルの設置を求めた件で、十五年十一月に上級委員会報告が公表され、同年十二月に確定しました。この勧告を本年六月三十日までに実施することで米国と合意をし、これを受けて三月四日、五日に日米技術協議が行われた。そのことが先ほどの質疑であったわけですけれども、もう少し内容を具体的にお話ししていただきたいと思うんです。何が問題となっているのか、お願いします。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

中川政府参考人 平成六年の八月に米国産リンゴの輸入の解禁をしたわけでありますけれども、その際に、検疫措置としまして、四つの要素といいますか、四つの条件を課したわけでございます。一つは無病園地の指定ということ、二つ目が五百メートルの緩衝地帯の設置、三つ目が年三回の園地検査、それから四点目としまして果実表面の塩素殺菌、こういう四つの要素でありますけれども、こういった複数の要素から構成をされます全体として一つの措置、これが日本がアメリカの輸入リンゴに対して課しております検疫措置ということでございます。

 その中で、五百メートルの緩衝地帯の設置と年三回の園地検査につきまして、パネルで議論されました際に、パネルの委員が火傷病の専門家に意見を求めたわけであります。その意見を聴取したところ、これらの措置、今申し上げた五百メートルの緩衝措置なり年三回の園地検査でありますけれども、こういったものが過剰であるという一致した意見があったということで、これを踏まえまして、パネルあるいはその後の上級委員会でもって我が国の措置が全体として協定に違反をしておるという判断が下されたということでございます。

高橋委員 今、五百メートルの緩衝地帯の問題と年三回の検査ということでありましたので、これまで日本が主張してきた四点全体が否定されたわけではないというふうに確認してよろしいかと思います。

 それで、SPS協定上、WTO加盟国は、人、動物または植物の生命または健康を保護するために必要な衛生植物検疫措置をとることができるとされておりますが、貿易に対する悪影響を最小限とするためのルールとして、国際的な調和だということで、国際基準や指針あるいは勧告がある場合には原則としてそれに基づいた措置をとることとされています。

 ただ、科学的に正当な理由がある場合は、国際基準等よりも厳しい措置を導入することができることを定めていると思います。この科学的に正当な理由とは、例えば、食習慣の違い等により日本人のある食品の摂取量がほかの国とは大いに異なる、自然環境や地理的条件が違う、そうしたことで有害動植物あるいは病気の分布状況が異なる場合などがあるということが当然考慮されていいわけですよね。この点について日本は主張してきたのかどうか、当然だと思いますが、一応確認いたします。

中川政府参考人 パネルの審議の際に、日本は、日本が主張しているいろいろな論文なども根拠に示しながら、日本がアメリカ側に要求している措置の正当性というものについては最大限努力をして主張してきたところでございます。

 ただ、結果としては、残念ながら、そういった日本の主張について十分な配慮が払われない結果になったということでございます。

高橋委員 その残念な結果をどう今後打開していくかという問題ですよね。

 植物防疫所調査研究報告、植防研報と言うそうですが、第三十八号補冊、平成十四年に出されておりますが、火傷病菌のリンゴ成熟果実内汚染に関する野外調査、アメリカとの共同試験を行ったということでのレポートが出されております。

 いわゆる五百メートルの緩衝地帯の問題が正当性があるかという点で、自然発生源と人口的に細菌をつけた園とで比較をして、どの程度分布が見られるかという実験をされて、結果としては明確な結果は得られなかったということなんですけれども、そのレポートの中で、今回実験をやった地域はことしは特に雨量が平均の半分ということで、例年とは違う乾燥状態が続いているということですね。それで、ナシはあるんですけれども、リンゴでの火傷病の発生記録はなく、環境的にも園地の乾燥が激しく、本試験に適した園地とは言いがたいという指摘をして、火傷病の伝染源からどれぐらいの距離を置くとリンゴの果実が火傷病菌に汚染されることがないかを実証するためには、火傷病の多発する地域の複数の園地で反復して試験を実施する必要がある、こういう指摘もされております。

 ですから、日本としても、こうした多発している地域などを複数見て試験研究などをする、そして科学的なデータを得られるという努力が当然求められると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

中川政府参考人 パネルの審議の過程でできるだけいろいろな情報を集めて、それに基づいて日本が主張をしていくということは当然やるべきことだというふうに思っております。ただ、パネル及び上級委員会の判断が既に示されたということでありますし、アメリカとの間で六月の三十日という期限を切って実施をするということについて約束をしたわけであります。

 これから大事なことは、やはり一定の、SPSの協定に整合した形というその中で、アメリカ側からリンゴを輸入するに当たって火傷病が日本に侵入することがないように、そういった措置をこれから二国間の協議の中で実現していくということが大変大事だというふうに思っております。

高橋委員 では、例えばミカンなどの場合、かんきつ潰瘍病の防除のために、輸出するに当たっては厳しいアメリカのチェックを受けていると思いますけれども、どのようになっておりますか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 米国は、かんきつ潰瘍病の侵入を防止するための緩衝地帯として四百メートルという条件を課しております。

高橋委員 今四百メートルというお答えがありました。温州ミカンについても、これは一つの園地でしかアメリカ向けの輸出をしていないということを聞いておりますけれども、やはり病害虫の侵入を禁止するという立場で、アメリカは日本に対して厳しい措置を求めているわけですよね。これはミカンが四百だからリンゴは四百という単純な議論ではなくて、当然、アメリカに対しても、日本はそういう厳しい主張をできるはずだ。

 何かBSEと同じなんですよね。アメリカは日本に対しては厳しい条件を言うけれども、自分たちのはとにかく入れろと。基本的に、日本にとってリンゴというのは別に欲しいものではありませんよね。「ふじ」の産地の青森県にとっても何の必要もないものを、アメリカの強い要求に屈してはならないと思うんですね。その点ではもう一度伺いたいと思いますけれども、どうですか。

中川政府参考人 これは、現在行っております日米間の協議におきまして私ども一番大事な点は、二国間の合意を得るに当たって、その措置によってアメリカからのリンゴの輸入に伴って火傷病が国内に入るということがあってはいけないというふうに思っております。

 したがいまして、そこを十分担保できるような形で二国間の合意を得るようにできるだけの努力をしたいというふうに思います。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

高橋委員 その努力の中身なんですけれども、アメリカ植物病理学会が刊行した「プラントディジーズ」によれば、二十一世紀における火傷病対策が進展してきているとるる紹介した後で、しかし、「火傷病は防除の難しい病害のままである」と指摘をして、ストレプトマイシンを現在散布しているんですが、それがまだ完全ではないこと、それから、ストレプトマイシンの耐性火傷病菌も広い範囲でもう発達してきていて、「これに対する防除剤はない」という指摘をしております。

 ですから、ナシ類果物産業に対する火傷病の引き続く脅威は、世界じゅうで起こっている最近の流行からも明らかと指摘をしていることや、二〇〇〇年のミシガン南西部における火傷病流行では四千二百万ドル、約五十億円の損失だった、二百四十ヘクタール以上のリンゴ果樹の除去を行った、米国では、火傷病における年間損失、その防除費は毎年一億ドル以上という指摘もされております。

 そういう実態がアメリカでは認識をされているわけですが、日本ではこのことをどう受けとめているのか。日本における植物検疫の予算は、輸入検疫で九十三億円、国内防疫と合わせて百三億円ということでありますが、万が一この侵入を許した場合の損失などを想定していらっしゃるでしょうか、伺います。

中川政府参考人 火傷病を禁止対象の病害に指定をしたのは一九九六年でありますけれども、その際に、この火傷病に対します危険度評価というものを我が国でも実施をいたしております。その際に、病害虫の危険度評価というものは、その病害虫の性質ですとか、あるいは宿主になります植物、あるいは日本の自然環境への適応性、いろいろなものを考慮して評価をしたわけであります。

 万一火傷病が日本に侵入をした場合の根絶防除のための経費につきまして具体的に試算をするということはなかなか難しいわけでありますが、火傷病に類似をしたナシの枝枯れ細菌病というのがございます。これは北海道のごく限られた地域に発生をしたことがありますが、その際に、防除のために一億四千万ほどの防除費用がかかったという例がございます。火傷病は、このナシの枝枯れ細菌病に比べましても、さらに影響が大きいというふうなことが想定をされますので、そういった防除費用についても、今申し上げた数字よりはさらに大きな数字になるというふうに思います。

高橋委員 今、影響の大きいというお話がありましたけれども、そういうことを踏まえて、ぜひ大臣に伺いたいと思います。

 まず、輸入検疫体制の抜本強化、これは、先ほど津島委員の質問の中でも出されておりましたので、ぜひ強く要望しておきます。

 二つ目に、海外への派遣。試験研究体制が日本にないわけですから、日本に発生していないわけですから、当然そうした体制をやっていく必要があると思いますが、いかがか。

 それから三つ目に、国内防除の問題ですね。先ほど来、病害虫防除員の都道府県の配置の問題が言われておりますけれども、平成十年から十四年の間に千二百人削減されております。国の発生予察事業を初めとした防除事業に関する交付金は四十七億円ですが、四十七億円は全体で、かかっているうち二割しか国は交付金の手当てをしていません。あとはもともと都道府県の持ち出しであります。防除事業を一生懸命やろうとすれば、当然持ち出しがふえるという格好にもなります。そういう意味でも、国内防除の体制はもっと強化が求められると思いますが、見解を伺います。

亀井国務大臣 先ほど来、それぞれお話しいただきますとおり、植物防疫の重要性は大変大きなものがあるわけであります。そういう中で、でき得る限りの体制、こういう面で、重要な検疫、防疫の問題に十分意を尽くしてまいりたい、このように考えております。

 また、いろいろ外国の情報を得るとか、関係府省とも十分連携をとり、その対応をしっかりやってまいりたい、このように考えております。

高橋委員 少し具体的じゃなかったなと思うんですが、火傷病の問題について、大臣、生産者の皆さんが大変不安に思っております。各県から、青森県だけじゃなく長野県なども含めて、意見書も上がっております。ですから、それをどう受けとめるかということがまず一つ。

 それから、そういう生産者の皆さんの不安にこたえるためには、きちんと国の決意あるいはこうやっていくんだということを説明もし、意見もいただく、そういう公聴会あるいはそれに匹敵するような機会を設けていただきたいと思いますが、伺います。

亀井国務大臣 今、米国との二国間の協議、またWTOの紛争処理手続に基づくパネル、上級委員会におきます審議の経緯、結果等、適時適切に公表してきたところでもございます。

 しかし、先般のWTOの勧告を踏まえまして、火傷病の植物検疫措置の見直しの具体的な内容につきましては、米国との協議が継続中でありまして、その内容は確定していないわけでありますが、この見直しに当たりましても、従来から生産者を初め関係者への説明や質疑の場を設けるなど、新しい措置の内容及びその技術的な根拠に基づきまして十分説明を行い、そして理解を得るように努めてまいりたい。さらにはまた、適当な時期に生産者への適切な説明も行い、関係者の理解を十分得るような努力をしてまいりたい、このように考えております。

高橋委員 関係者の理解を得るように説明をしていくとおっしゃっていただいたと思うので、そこは確認をしたいと思います。

 最後になりますが、確かに、植物検疫の分野では、検疫の件数もふえ、人員も増員をされて、大変な努力をされているのは承知をしています。

 ただ、一方では、着実に輸入品目がふえております。平成七年の七千品目から比べると、平成十四年は八千品目にもなっている。七〇年代から我が国で発見された病害虫は二十三種だったのが、もう四十二種にもなっている。さっきのウリミバエの話でも、二十二年間にわたって二百四億円、それだけのお金を割いてしまった。そもそも入らなければもっとよかったわけでありまして、輸入大国の日本が安全や安心よりもいわゆる国際貿易を優先させる、そういう国際基準にどうしても合わせてきた、このことがやはり問われていると思うんですね。

 この問題では、やはりそういう立場に立って、しっかり反省するところは反省もして、アメリカにはきっちりと物を言っていくということを確認したいんですが、大臣の決意、お願いいたします。

亀井国務大臣 特に、火傷病の侵入を防ぐためには十分な措置が確保されるということが重要でありますし、その最大限の努力をしてまいりたい。

 また、あわせて、植物検疫の問題、いろいろ防疫員の拡充の問題等々踏まえて、国民の食の安全、安心、こういう視点に立つことが重要なことでありますし、そういう面で最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。

高橋委員 これで終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本喜代宏でございます。

 私は、リンゴの共同防除組合の薬剤担当をやっております。試験場で行われる病害虫防除予察員会議に出まして、試験場の方々からいろいろ御指導をいただいて、そして適切な防除に取り組む。特にリンゴの場合、モニリア病とか黒星病というのは、一たん発生しますと地域に大変な影響を与えるわけであります。そういう意味で、この予察活動というのは大変重要なわけであります。

 また、昨年は、東北の冷害ということで、いもち病も大変発生をいたしました。普及センターの方々からの指導というので、農家は大変助かっているわけでございます。

 そうした状況の中で、この病害虫防除、そうした予察活動というものについて大臣はどういうふうに考えているのか、お伺いします。

亀井国務大臣 この植物防疫事業、これは先ほどもお話し申し上げましたが、昭和二十五年に制定されて、いろいろの事業を法に基づきまして進めております。そういう面で、国内における病害虫の発生の予察及びその防疫、防除、あるいは輸出入の植物あるいは国内植物の検疫、病害虫の侵入及び蔓延防止、これを図ってきておるわけであります。

 いろいろ、病害虫の発生を予測する病害虫の発生予察の事業、これは大変重要なことでありますし、これらを解析いたしまして、天気予報の病害虫版というようなものにもなってきておるわけでありまして、このことが我が国の農産物の安定的な生産、また発展のために重要な役割を果たしてきている、このように思っております。

 また、病害虫の発生、これは年によりまして大変変動するわけでありますが、これらの問題に適時適切にこの予報を提供する、また効果的な防除を推進する、そして病害虫から被害を抑える、こういう点、あるいは病害虫の発生、こういう面での情報がむだな農薬使用などを抑えるということにもいろいろ効果があるわけでありまして、大変重要なことでありますし、昨年の冷害、これらにつきましても、発生予察情報の提供というもので貢献をしてきておるわけであります。あるいは、農薬の面につきましても、農薬の出荷量の低減、こういうことにもこの発生予察事業が貢献をしている、このようにも考えております。

山本(喜)委員 大変重要な植物防疫事業でありますが、今までの交付金九・三億円、これが各都道府県の事業をどの程度カバーしてきたのか、お伺いします。

中川政府参考人 国からの交付金は、約九億三千万強でございます。それに対しまして、全体の都道府県での充当されております予算は、交付金も含めまして約四十七億円ということでありますので、大体二〇%程度ということになります。

山本(喜)委員 二割しかない中で、大変都道府県は苦労して今事業をやっているわけです。それが、実際は今度三・六億円というふうになるわけですね。農家の割合に応じて交付されていたものが今度は人口に応じた交付になるということになれば、非常に人口の少ない農業県ということになると極めて防除体制が厳しくなるのではないか。これに対する影響はどの程度考えておりますか。

中川政府参考人 交付金で交付をしておりました費目のうちの病害虫防除所の職員の部分については一般財源化を図るということで、この五・七億円については所得譲与税でもって都道府県の方には交付される。その所得譲与税が、先生おっしゃいましたように人口比で配分されるので、農業のウエートとは違うのではないかというお尋ねかと思いますけれども、他方で地方交付税がございます。

 地方交付税のベースになります基準財政需要額の中には、この植物防疫に要します費用というのは入っておりますから、たとえ、ある県で所得譲与税が人口割によって、人口によって従来の額に比べて少なくなったとしても、基準財政需要額の方では全体が入っておりますから、その分今度は交付税の方で見られるということになります。

 したがいまして、そういった費目間の変化によりまして、この部分が各都道府県にとって減少するということにはならないというふうに理解をいたしております。

山本(喜)委員 いや、実際は、各地方の財政は大変厳しくなっているわけです。野呂田先生とか二田先生がいる前で非常にしゃべりづらいわけですけれども、例えば、ある県では果樹試験場と農業試験場を統合していくというふうなことで検討に入っているわけですね。これから三位一体ということが進んでいけば、やはりどうしてもこの防除体制というものに影響せざるを得ないのではないか。

 この法案によりますと、「国及び都道府県が行う植物防疫事務の水準を維持しつつ、」とありますが、この維持できるという根拠、ここが果たして担保できるのかどうか、お伺いします。

中川政府参考人 病害虫防除所の職員経費につきましては一般財源化をいたしますけれども、それ以外の経費、すなわち国の発生予察事業に協力するための経費ですとか、あるいは病害虫防除所自体の運営に要する経費というのは、従来どおり交付金として支給をするということにいたしております。

 そういうことからいたしますと、この病害虫防除所のふだんの活動に要する経費というのは従来どおり交付金の対象になるということでございますし、また、これからIT化ですとか、いろいろな新しい技術、あるいは予察のためのシミュレーションモデルの開発といった面で、人にかわって技術なりが代替をするという部分もございますので、全体の病害虫防除所の活動についてレベルを下げるようなことにはならないというふうに私どもは考えております。

山本(喜)委員 時間がないので、次に、リンゴ火傷病について再確認していきたいと思います。

 先ほど来、火傷病については、大変恐ろしい病気ということで言われておりました。一つの例は黒星病ですけれども、これも一九五五年にアメリカから入ったのではないかという疑いが持たれているわけですが、この黒星病の防除、今はリンゴの防除の大半がこの黒星病の防除ということに重点が置かれているわけです。そうした意味で、火傷病の場合には、抗生物質を使うということになると薬剤抵抗性というのがありますから、大変リスクの高い病気なわけです。

 そうした意味で、絶対侵入させてはならないということでありますが、この対策を徹底していただきたいということで、国の体制というものを再確認しておきたいと思います。

木村大臣政務官 先ほど来お答えさせていただきましたが、現時点、アメリカとの協議に入っておりますので、詳しい内容はこの時点では想定することはできませんけれども、ただ、パネルからの判断ということを踏まえますと、やはりSPS協定に整合した上で、かつ、火傷病の侵入を防ぐために十分な措置が講じられる体制というものを我々日本側としては模索し、確立していきたい。もちろん、専門家の意見も聞きながら、そういう方向で対応していきたいというふうに思っております。

山本(喜)委員 防除体制をしっかりしていただきたいということをお願いします。

 最後に、この法案は各地域における防除体制というものを弱体化させるのではないかという危惧がぬぐい切れないわけです。したがいまして、この法案には反対せざるを得ないということを申し上げまして、発言を終わります。

 ありがとうございました。

高木委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党を代表して、植物防疫法の一部を改正する法律案について反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、都道府県の病害虫防除所の職員等の設置費を交付金の対象外にすることは、国の防除事業に対する責任の後退であるからです。都道府県の植物防疫所の業務のうち、国の指定する発生予察事業は全国的、統一的な基準のもとに行われ、食料の安定供給や農業振興の上で極めて重要な部分であります。引き続き国の責任ある関与が重要です。そのためには、その関係経費のみならず、必要な職員等設置費についても現状どおり交付金として措置すべきであり、一般財源化することは適切ではありません。

 反対の第二は、三位一体改革の中で、交付金は当面所得譲与税の一部として手当てされるといいますが、従来どおりの水準の予算額が保障され得るとは言えないからであります。すなわち、全体の所得譲与税は、廃止される補助負担金に比べ大幅に削減されており、しかも人口割で配分されるので、植物防除と関係の深い農村県ほど少なくなります。また、地方交付税全体が大幅に削減されるもとでは、都道府県財政が一層逼迫しております。こうした中での今回の法改正は、植物防除事業、とりわけ発生予察事業にかかわる職員等の予算確保と事業そのものの一層の不安定化を招かざるを得ないものです。

 以上を申し上げまして、反対討論といたします。

高木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高木委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、植物防疫法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高木委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

高木委員長 次に、内閣提出、森林法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。

    ―――――――――――――

 森林法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

亀井国務大臣 森林法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 近年、森林に対する国民の要請は、国民生活の向上や価値観の多様化等を背景としてますます多様化、高度化しており、これに的確にこたえ、森林の多面的機能を持続的に発揮させていくためには、森林の適正な整備及び保全を図っていくことが不可欠であります。

 しかしながら、これを支える林業をめぐる状況を見ますと、採算性の悪化等に伴い、必ずしも適正な森林施業が行われているとは言いがたい状況にあります。

 このような中、特に喫緊の課題となっている地球温暖化防止のための森林吸収源対策の施策の柱をなす健全な森林の整備、保安林の適切な管理保全、国民参加の森林づくり等を推進するため、これに対応する措置を講じることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、要間伐森林制度の改善であります。

 間伐等の施業が適正に行われていないものとして市町村長が指定する要間伐森林について、市町村長がその指定する者と施業の委託について協議するよう勧告できることとするほか、最終的な措置として都道府県知事が行う施業代行の裁定の要件を緩和して、適正な施業が確保されるように措置することとしております。

 第二に、特定保安林制度の恒久化であります。

 保安林の機能を適切に発揮させていくため、森林法において行為規制とあわせて施業確保のための措置を講じることとし、これまで保安林整備臨時措置法において講じられていた機能が低下した特定保安林に係る施業の勧告等の措置を森林法に移行させるとともに、この場合に保安施設事業を実施する際の手続の簡素化の措置等を講ずることとしております。

 第三に、施業実施協定制度の拡充であります。

 国民参加の森林づくりを助長するため、森林ボランティア活動を行う者と森林所有者等とが締結する森林施業の実施に関する協定について市町村長が認可する制度を創設することとしております。

 このほか、林業普及指導事業について普及指導職員の一元化を図る等の措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

高木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明十八日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


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