衆議院

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第9号 平成16年3月31日(水曜日)

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平成十六年三月三十一日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 高木 義明君

   理事 北村 誠吾君 理事 西川 京子君

   理事 松下 忠洋君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 小平 忠正君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      小野寺五典君    大野 松茂君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      木村 太郎君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    佐藤  勉君

      田中 英夫君    玉沢徳一郎君

      津島 恭一君    永岡 洋治君

      西村 康稔君    野呂田芳成君

      二田 孝治君    山際大志郎君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      金田 誠一君    岸本  健君

      楠田 大蔵君    篠原  孝君

      神風 英男君    仲野 博子君

      楢崎 欣弥君    樋高  剛君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      西  博義君    石井 郁子君

      佐々木憲昭君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       亀井 善之君

   農林水産副大臣      金田 英行君

   農林水産大臣政務官    木村 太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 三輪  昭君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 兒玉 和夫君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       遠藤  明君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            太田 信介君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     平井 敏文君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           長谷川榮一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中富 道隆君

   農林水産委員会専門員   和田 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     山際大志郎君

  岡本 充功君     樋高  剛君

  高橋千鶴子君     石井 郁子君

同日

 辞任         補欠選任

  山際大志郎君     金子 恭之君

  樋高  剛君     岡本 充功君

  石井 郁子君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木憲昭君     高橋千鶴子君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業改良助長法の一部を改正する法律案(内閣提出第五〇号)

 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

高木委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長小林芳雄君、大臣官房総括審議官村上秀徳君、総合食料局長須賀田菊仁君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長川村秀三郎君、農村振興局長太田信介君、林野庁長官前田直登君、水産庁長官田原文夫君、外務省大臣官房審議官三輪昭君、大臣官房審議官兒玉和夫君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長遠藤明君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官平井敏文君、大臣官房審議官長谷川榮一君及び大臣官房審議官中富道隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 きょうは、少し水産のことについてお話を初めにお伺いしたいと思います。

 先ごろ、民主党の議員の方からも、どうも水産に対して、非常に政府の、例えば小泉さんの取り組みを含めて、不十分じゃないかというような御指摘がありました。そういうことがないように、ぜひきょうは大臣を含めてしっかり御答弁いただければと思います。

 まず初めに、漁船漁業のことについて少し話を触れたいんですが、御存じのとおり、今漁船漁業というのは大変な構造的な負債に苦しんでおります。例えばマグロ漁業、一隻当たりの抱えている負債が何億にもなるというふうに言われています。ですから、例えば船を五隻経営している経営体ですと、数十億の負債に上ります。なぜこういう負債が発生したか。実はこれは、政府の政策の中でどうも配慮に欠けているところがあるんではないかということが背景にあると思います。きょうは初めにそのことについて少し触れたいと思います。

 例えば遠洋マグロ漁業なんですが、この財務諸表、企業の財務諸表の中には漁業権ということが設定をされています。ですから、銀行は漁業会社にお金を貸すときには、この漁業権ということを踏まえたバランスシートで経営を審査します。この漁業権、実は、絶頂期には一トン当たり二百五十万円で取引をされていました。ですから、通常の漁船であると三百トンです。一隻当たり七億五千万、これが実は漁業権だけでの船の価値ということになります。銀行は、この指標をもとに実はお金を貸していたということになります。一隻当たり七億五千万です。十隻持っていれば七十五億です。小さな経営体が実はこれだけの融資枠をもらって、お金をどんどん借りていた。逆に言えば、銀行がどんどん融資をしたということが背景にあります。

 ところが、ちょうどバブルの崩壊の時期にマッチするんですが、今から十五年ほど前、このマグロの漁業に対しても魚価安という問題が起きてきました。さらに追い打ちをかけたのは輸入水産物の増加、特にマグロあるいはカジキ類の輸入の増加です。この輸入の増加によってますます漁業経営体の経営内容が悪くなりまして、この漁業権というのが現在はどのぐらいの評価を受けているか。一トン当たり十万円です。ですから、二百五十万円が十万円になった。二十五分の一にこの評価が下がったわけです。これだけの下がった評価を、銀行は、では追加の担保を出せと。バブルの崩壊によって、土地の値下がりとか、いろいろなことがありました。でも、世の中に二十五分の一にしか評価されない資産というのが一体あるのか。実は、この漁船漁業の中にはこのような背景があります。

 ですから、今漁業経営体の方々はどういう状況にあるかというと、一隻当たり七億五千万、漁業権だけで実は担保として認めてもらったものが、現在は約三千万円にしかならない。一体、この足りなくなった七億近くの金額をどうしたらいいんだ。では、今までこつこつためていた土地を担保にしようか。でも、御存じのとおり、実は土地も評価が下がっています。ということで、必然的にもう経営が立ち行かなくなっている。しかも、現在、この利子の負担だけで経常的にどうしても赤字にならざるを得ない、そういうような厳しい経営環境にあります。

 この背景としましては、先ほどお話ししましたように、バブルの問題というのもありますが、もう一つ大きな問題としては、輸入水産物の増加ということがあります。この農林水産物の中の水産物輸入というのは、実は大変な量を占めています。金額ベースでは、農林水産物のうちの約半分ぐらい。例えば、カツオ・マグロ類、カジキ類の輸入金額というのは、二〇〇二年ベースで二千四百三十億円です。これに三・五%の関税がかかっています。ですから、実は百億弱の関税収入もあるわけです。ですが、このことに対しては、ほとんど政策、恐らく今までそこの部分がちょうどすき間になっていたかもしれませんが、この輸入水産物に対抗するための何らかの、例えば漁船漁業への経営支援とか、そういうことは余りなされていなかったのが現状ではないかというふうに思っています。

 では、このために今どんなことが起きているかということなんですが、日本はマグロ漁業というのは世界一だと私はずっと感じていたんですが、現段階では、日本のマグロ漁船、これはOPRTに加盟している、いわゆる正規の超低温マグロ漁船の隻数ですが、日本が四百八十隻、そしてまた台湾が約六百隻です。ということで、もう既に台湾が日本を上回っています。

 さらに、もっと衝撃的なことがあります。それは、現在、これだけ負債を抱えていた日本の漁業経営体がマグロ漁業をどうしても手放さなければいけない、そうなったときに、この漁業権の承継がどこで行われているか。現実に起きている話として、外国の資本が日本のマグロ漁業に既に手を伸ばしてきています。私の知り合いでも、オーナーが外国の人とわかりながらも自分たちの船を手放さなければいけない、こういう国益にもかかわるような大きな問題が今現場では起きています。

 ですから、ここでぜひ御検討いただきたいのは、金融面、今までいろいろなことで、産業再生含めて、政府がいろいろな形で手を入れてきました。ですが、特にこの天然資源、しかも日本の資源にかかわる漁船漁業の問題に対して、逆に、産業再生という意味合いからも、この金融支援、そういうことが手厚くできないのか、きょうは初めにそのことからお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 カツオ・マグロ漁業、あるいはまき網漁業など、我が国の中小の漁船漁業、これは漁業生産量の約五割を占めるなど、極めて重要な産業であるわけであります。

 しかしながら、中小の漁船漁業につきましては、いろいろ今御指摘のように、魚価安やあるいは資源の低迷等、近年、経営が悪化をしております。過剰な債務を抱えて、そして経営の継続が困難になっている漁業者が増加をしている、このことは私も認識をしているところでもございます。

 こうした状況に対応いたしまして、昨年十月から、産学官が連携をいたしまして開催しております漁船漁業構造改革推進会議におきまして、新技術の導入あるいはまた漁船漁業の構造改革、これを図るための方策の検討を行っておるところでございまして、本日、三月三十一日にその中間取りまとめを公表いたします。

 今後、この中間取りまとめや各方面の御意見を十分踏まえて、我が国の中小漁船漁業の再生に向けて、具体的な方策につきまして検討を進めてまいりたい、このように考えております。

小野寺委員 確かに、漁船の効率的な船型の問題とか、あるいは資源管理の方法の問題とか、検討すべき課題はたくさんあると思います。この金融支援という問題、これなくしては、逆にもう漁業をやる人がいなくなってしまう、そこまで追い詰められているということを、ぜひ、ともにお力をいただければと思います。

 次の質問にちょっと移りたいんですが、実は、同じように今資源の問題で大きな課題となっていますのが、中西部太平洋におきます大型のまき網船の問題です。

 この大型のまき網船、問題は、最近、台湾資本が二千トン級というすごく大きな船を新造しまして、これがどうもどこかの国に便宜置籍をされて、事実上稼働を始めています。この大きなまき網で日本近海で操業される、カツオとかキハダとかマグロを小さい段階からとってしまうということは、逆に、せっかくそれから大きくなって、ああ大きなマグロになってきたな、これを釣って何とか経営を成り立たせたい、日本の国民においしいマグロを食べていただきたいなと思う、そういうことに関してできなくなってしまう、実は資源を枯渇させてしまう、あるいはこの漁法は日本の国益を本当に脅かしている、こういう問題が今、現実問題として来ております。

 特に状況が悪いのは、この大型まき網船、パヤオという浮き魚礁を使って、本当に無選択にごそっと魚をとってしまう、今、そういう状況になっています。ですから、日本の近海で今一番主力を占めていますメバチマグロの資源にも大変な悪影響を及ぼす、そういう状況にもなっています。

 この対応について、日本が何とかできないのかということなんですが、実は、このまき網に対しての問題として、中西部太平洋のマグロ条約というのが六月に発効することになっています。残念ながら日本はまだオブザーバー的な参加でして、この会議には入っていない。ですから、今後、このまき網の問題を一体どういう場で議論していくのか、そのことについて、ぜひその方針をお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 カツオ・マグロ類の過剰漁獲が資源に及ぼす影響につきましては、国際的に懸念をされておるところでもございます。特に、御指摘の中西部太平洋海域におきます大型まき網漁船、台湾等の増隻によりまして、これは、平成八年に百四十一隻であったものが、平成十五年には二百五隻というように五割も増加しておるわけでありまして、漁獲圧力が著しく増大しておるという状況にあります。

 この水域におきますカツオ・マグロ類の管理につきましては、中西部太平洋マグロ類条約が策定されておりまして、現在、その条約発効に向けた準備会合が開催されているわけであります。この準備会合におきまして、漁獲能力の削減を要請する等の決議が採択されておるわけであります。これとあわせて、特に台湾等につきましては、本年二月に開催されました台湾との協議におきまして、台湾側に自粛を求めたわけであります。

 今後とも、国際会議の場におきまして、大型まき網漁船の漁獲圧力の抑制等適正な管理が行われるよう、積極的に働きかけを行ってまいりたい、このように考えております。

小野寺委員 今行われておりますのは、日本は、一生懸命国内で漁業規制を行って、そしてまた、まき網も釣り船も一生懸命守って頑張っています。ですから、小さい船で何とかとっている。そこに全く日本の制限から外れた航空母艦みたいな台湾の船がどかんと来て、どさっと日本近海でとっていく、こういうことが行われているようでは、日本は余りにも情けない国だと思います。大臣も同じお考えと今お伺いしましたので、ぜひ今後ともこの対策、お願いしたいと思います。

 三点目なんですが、実は日本人、今、食の問題というのが大変な課題となっています。特に食育の問題、これは今回、基本法でも取り上げられるんですが、実はこの食育問題、従前から民間団体が率先して進めていた問題もあります。例えばスローフードという言葉、今、スローライフを初め、この言葉は世の中で非常に使われ始めているんですが、こういう民間団体への支援、これもあわせて、ぜひこの食育基本法の中で農水省として取り組んでいただきたいんですが、そのお考えをちょっとお伺いしたいと思います。

亀井国務大臣 今御指摘のとおり、食生活の多様化、外部化、あるいは食と農との距離が拡大をし、また家庭においての食の教育力が低下をしている、こういうことで、食と農をめぐる諸課題が顕在化しているわけでありまして、国民一人一人がみずから食について考える、そして判断をする能力を養成する食育、この推進が大変重要なことであるわけであります。

 このことにつきましては、いろいろ農水省も取り組んでおりますが、団体が取り組む食育の活動の推進、あるいは地域におきます取り組みとして食育の優良事例を顕彰する食育コンクール、こういうものを実施し、またさらには、民間団体による地域の特性を生かした食育の活動に対しまして支援を行っておるわけでありまして、十五年度は、十七の団体に対しまして一団体当たり百万円を上限とした支援、こういうことも行っておるわけであります。

 今後、いろいろの角度でその推進に努力をしてまいりたい、こう思っております。

小野寺委員 時間がなくなってきました。

 最後の質問なんですが、私も芝浦の食肉市場とか見させていただいて、牛肉の問題です。

 今非常に高い評価を特に国産牛は受けておりまして、ありがたいなと思うんですが、その中で、BSE問題、もしアメリカからの輸入再開になりますと、現在、オーストラリアの牛肉へシフトしまして、さらにこれにアメリカの牛肉が加わるということになると大変なだぶつきになる、今、そういう市況の心配がある、そのことを皆さんもお感じだと思うんですが、その中で、ことし十一月から完全実施される家畜排せつ物処理法の問題、この環境対策について、最後に。

 今、このリース事業、ことしは予算枠を大分拡大していただきました。農家の方は大変喜んでいるんですが、いろいろな問題がありまして、万が一、この十一月までに間に合わない場合、あるいは次年度以降もいろいろな事情でできない場合に、ぜひこのリース事業のさらなる継続支援策ということを踏まえて、お考えを最後にお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。

金田副大臣 十月末までに屋根つき堆肥盤をつくるということで一生懸命に頑張っております。一般会計なんかでも、二倍を超える二百四十億というお金を十六年度で措置させていただきましたし、畜産環境整備機構の方でやっている人気の高い補助つきリース事業、これにつきましても、三百一億円という形で大幅に増加させていただいております。

 では、この予算で全部できたかというと、できておりませんので、十七年度も引き続きやるかどうかについては、その情勢を踏まえながら、後、検討してまいりたいというふうに思っております。

小野寺委員 ありがとうございました。ぜひ前向きに御検討いただければと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、田中英夫君。

田中(英)委員 自由民主党の田中英夫でございます。

 先ほど来、大変話題となっております高病原性鳥インフルエンザの問題につきましては、京都府の丹波町、私の選挙区、地元でございまして、大変皆さんにお気にしていただいたり、また内閣としてもさまざまな対策をとっていただいておるところでございまして、御礼を申し上げながら、一、二点、また御要望もまず最初に申し上げたいというふうに存じます。

 おかげさまで、三月二十二日をもちまして一定の現場鎮圧については終了をしたという段階から、二十一日間に縮めていただけましたその期間、次が四月二十三日ということでありますが、この日を待つということで、新たな発生がしないことを今期待をし、祈っておる、こういう状況であります。一カ月に足らないほどの期間でありましたけれども、改めて、このような大きな課題が出たことに対して、もちろん、地元挙げての努力もありますけれども、国におきましても、亀井大臣を初め内閣の方で、そして自由民主党や与党の鳥インフルエンザの対策本部等々で、さまざまなルールに対する検討等々もいただき、そして進めていただきましたこと、心から御礼を申し上げたいと存じます。家畜伝染病予防法の改定等々も含めて、今後に向けての対策ということもまた頭に置きながらのそれぞれの対策でありまして、そんなことに進んでいただきました。まず御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 つきましては、さはさりとて、まだまだ現実すべてが終わったということではないわけでありまして、何はともあれ、感染ルートをはっきりとさせていくということ、農水省だけの課題ではございませんけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。

 また、現実の問題としては、当面鎮圧をしたとしても、これは規模が大きいもので、京都府等々行政対応になっておるわけでありますけれども、一時的に鎮圧をいたしました鳥のふん等々の今後の最終処理とか、病気にかかりました鳥、その周辺の鳥につきまして、殺処分ということで埋め立てをしたわけでありますけれども、そういうものも、数年たてば、またどのようにこれを最終処理しなければならないのかという課題があるのではないかというふうにも思っております。そんなことについても、今後当然、現場の課題であると同時に、国の課題として出てこようというふうに思っておるわけであります。

 また、それぞれこの間に、一面、みずからを助けるために、一面は鶏に対してそれが蔓延をしないようにという協力、両方の意味合いから、例えば、三十キロ圏内の規制について、それに対応してきた業者等々につきましても、それの補償、補てんや当面の金融措置についてのルールがつくられましたことは、大変ありがたく存じております。

 もちろん、金融現場でありますから、目の前のところでは、例えば、農協関係には全く取引がなかったところが急に借りられるのかという問題もありますし、金融機関から見たら、そうでなくても企業に対する、事業所に対するチェックは非常に厳しいわけでありますけれども、保証が農林関係でついてきたからといって何でも出せるのかというような問題もあったり、さまざまなことはあります。ありますだけに、私は、そのことについてもまたしっかりと、私のところでいいますと、農水省等々と京都府がまた細やかに、そうした現状を把握しながらお願いをしたい。

 このことは、今の現場であります一京都府のことでなくて、そのことについて、ああやって協力をしたり、そのようなことをしたということについて、大変な目に遭ったなどというようなことに後で業者の風評がなりますと、新たなことが起こっては大変でありますけれども、そこにおいては、もう協力せぬ方が得やぞというような話になりますと大変でありますから、また京都府にとってもかないませんし、そういう問題もありますので、実際の今後の運用について細やかにやっていただきたいな、このように思うわけであります。

 いずれにしても、以上、お礼と少し今後も含めた要望でありますけれども、今日まで頑張っていただきました亀井大臣の方で、このあたりにつきまして、現在のお気持ちやそんなことについて何かありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。

亀井国務大臣 今、委員からいろいろ御指摘もちょうだいいたしました。また、京都の発生につきまして、防疫措置が終了するまで、委員にも、地元ということで、地元の町長さんあるいはまた知事さん等もいろいろと連携をおとりいただき、また御指導いただきましたことに深く感謝を申し上げる次第でございます。

 この京都の発生につきましては、発生農場からの通報がなかったということによりまして、二次感染が一例認められた。しかし、その後、関係の皆さん方の御努力によりまして、新たな二次の感染が認められなかったわけでありまして、そこで、この移動制限区域内の第一次の清浄性確認検査で異常が認められなかったことを踏まえまして、京都府から昨日、移動制限区域を発生農場より半径五キロメートルとし、三十キロメートルまでを搬出制限区域に変更することにつきましての協議を受けたところでありまして、専門家の意見をお聞きしまして速やかに回答をしたい、このように考えております。

 なお、第二次清浄性確認検査等を経て異常が認められなければ、早ければ四月中旬にはすべての移動制限を解除できるもの、このように考えております。いずれにせよ、気を緩めることなく、引き続き関係府省と連携をいたしまして、清浄性の確認、蔓延防止のために万全を期してまいりたい、このように考えております。

 なお、今月十六日に取りまとめられました本病に関する緊急総合対策を踏まえまして、家畜伝染病予防法の改正案を国会に提出するなど、対策の一層の推進にさらに努力をしてまいりたい、このように考えております。

田中(英)委員 ありがとうございます。ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 そこで、質問でありますけれども、この鳥インフルエンザ問題の発生を受けまして、農水省としても、食の安心、安全ということについてどんなことが学べたかということについてお聞きをしたいと思っております。

 農業基本法というのがありまして、食料・農業・農村基本法、こういうふうに今変わったわけでありますが、食料という意味においては、一つは安心、安全、今の話でありますし、もう一つはやはり自給率ということがあろうと思います。

 今の質問と重ねて、一つ、自給率の話でありますが、外国からの食料輸入が何らかの要因によりまして困難になったときに、我が国の食料自給率について、現在並みの消費カロリーを維持するためにどんな方策を講じればよいのか。その際には、食料自給率というのは、現在の数字からやや変化をさせていくことができるのか。その辺についても、あわせて食料問題としてお教えいただきたいと思います。

金田副大臣 田中先生には本当に、この鳥インフルエンザの問題では御指導いただきまして、ありがとうございます。何とか対策をとらせていただいております。

 近ごろ、BSEの問題から始まって、コイヘルペス、そしてこのインフルエンザ等々でいろいろな勉強をさせていただいておりますが、何といっても、事前に予知してマニュアルをつくっておくとか、そういった行動基準をしっかりとつくっておくことがこれから大切なんだなというふうに考えさせていただいております。

 それから、二点目の問題でございますが、今の食料自給率、四〇%を切るようなそういった状況の中で、海外で不測の事態が起こったときに国民をちゃんと食べさせていけるのかという御指摘だろうと思っております。輸出国における不作なんかがあるんだろうと思います。

 今の四〇%、食料の輸入が困難な事態が生じたということであっても、一時的であれば、消費面で何ら制約を行う必要がないというふうに考えておりますが、構造的に海外からの供給が困難というふうになった場合は、その程度にもよりますけれども、生産面での対応のみならず、消費面での制約が必要になると考えております。

 今、国民の食料消費は、供給ベースで二千六百キロカロリー、摂取ベースで千九百キロカロリーということでございます。食料輸入がすべて途絶えるような場合にも、国内生産の増大等の措置により、国民一人当たり約二千キロカロリーを確保できるというふうに見込んでございまして、この場合は、すべてを国産で賄うことになるため、食料自給率は一〇〇%になるわけでありますが、いろいろな対応が必要になってくるんだろうというふうに考えております。

田中(英)委員 食料の自給率につきましては、いろいろな議論がなされて、十分にシミュレーションもされているのでありますけれども、一般国民の中においては、四〇といえばいつまでたっても四〇という頭が残りますし、そして、どの程度にそれが危ういものであるか、どの程度に当面はいけるものであるか、今お話のあったような、そんなことについてなかなか理解が及ばない。その中で、ぼやっとして、まあいいじゃないかというところで議論がとまってしまうというのが、行政やそういうものにかかわる者以外の普通の状況だろうと思うんですね。そのことをいかに具体的に、あおるという意味ではないですが、知らせていくという方法が一つ要るのではないかと思っております。

 あと二分ほどであります。最後に一つだけ、食料・農業・農村の農村ということについてお聞きをしたいのでありますが、実は、農村の再生を図るということが日本の原風景、こういうことで大事だと思っておりまして、私自身も最近五年間主張しておりまして、都市住民が何とか農村に住んでもらうことができないか、このように思っておったわけであります。

 最初は訪問交流といって来ていただく、そのうち、体験交流といって汗を流していただく、最後は住んでもらう、こういうことでありますが、住もうと思っても、普通に住むと、言うなれば、農村と言われる地方都市の中の市街化の都市部分に住む、こういうことになるわけであります。私は、できれば調整地域と言われる中の農村の中で、しかも、圃場整備をするようなそういうところでなくて、集落の間に、昔は苗代とかいろいろな田んぼがありました。ああいう、集落介在農地と言っておりますが、そこには少なくとも居住用の形を認めたらいいのではないか。これはどちらかというと都市計画上の問題があるのでありますけれども、そんなことを言って、実は構造改革特区に出しました。出しましたけれども、それは結局、農水省の方は、あの当時にはかなり考えていただきましたが、国交省としては、都市計画法の範囲内で、府県とよく相談をして何らかの方法を考えてくれというような答えになって、ちょっと却下された経過があるんですけれども、いまだに集落の密度を高くするということは非常に大切ではないかなと。

 何とか、集落の介在しているその範囲にあるちっちゃな農地についてのみ人が住めるようにし、非農家であってもいい、芸術家であってもいい、音楽家であってもいい、そういう人たちも含めて住めるような、そんな方法をつくったら農村が物すごく活性化するんじゃないか、そして、そんなところへ土地を買いに行く人は、土地が安いですから、要するに、土地のそういう意味の居住用の流動性も起こるし、消費も拡大されるのではないか、結構日本列島の全体の活性化につながるのではないかなどと思っておるのであります。

 農水省一つだけではないのでありますけれども、農水省発でそんなことを少し立案し、考えていただいたらどうかな、こう思っておるのでありますけれども、何かコメントがあれば、お教えいただきたいと思います。

亀井国務大臣 今、委員御指摘のとおり、また、これは長い御経験の中からの御指摘と受けとめて、また私も、都市周辺の農村地域に住まいを持つ者といたしまして、常々考えるところでもございます。

 そういう中で、農村の再生、活性化を図るために、御指摘のように、農村における居住環境の整備、確保について、農業の振興と調和のとれた形で、集落に介在する農地の活用等も図りつつ計画的に進めていくことは大変重要なこと、こう思っております。

 これらのことにつきましては、今後とも、特に国土交通省ともいろいろ進めておるわけでありますが、十分連携をいたしまして、個性ある農村づくりにつきまして、その取り組みを推進してまいりたい、このように考えております。

田中(英)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。

 それでは、終わります。ありがとうございました。

高木委員長 次に、楢崎欣弥君。

楢崎委員 民主党の楢崎です。

 きょう、私は、FTA、そしてWTO問題に絞って質問をいたしますが、この間の大臣そして関係各位の御苦労には敬意を表したいと思います。敬意は表しますけれども、まず、WTOやFTAの農業交渉では、食料安保とか農業の持つ多面的機能の重要性を説く一方で、国内農政にはそうした思想を具現化する施策を持たないで、対症療法的な後追い政策に終始しているのではないか、つまり、基本哲学がないから諸外国との交渉も説得力が欠けるのではないかと私は感じるんですが、大臣、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 食料の安定供給の確保を通じた食料の安全保障、あるいは農業の多面的機能の発揮が図られるためには、まずもって我が国農業そのものが将来にわたって持続的に発展していく必要があるわけでございます。

 そういう中で、農業の持続的な発展を図るためには、食料・農業・農村基本法の理念に基づきまして、農業の法人化の促進であるとか、あるいはまた意欲と能力のある農業経営の育成、また農地の利用集積の促進など、健全な農業経営の確立、このことも努力をしておるわけでありますし、環境との調和に配慮した農業生産の基盤整備、この推進もいたしておるところでありますし、さらには農業に関する技術の開発普及、このような施策を着実に講じてきたわけでありまして、これが対症療法的な農業政策、そういうことには私は当たらないのではなかろうかな、こう思います。

 今度、食料・農業・農村基本計画の見直しにおきましても、食料の安定供給あるいは農業の多面的な機能の発揮、これらが図られるように各般の農政改革に全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 大臣と私では見解の相違する部分もあるわけですけれども、今回、メキシコとの間にFTAが合意された、これが我が国の食料安保と農業にどのような影響を与えるとお考えですか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 メキシコとの交渉、先般、大筋合意ということになったわけでございますけれども、このメキシコとの交渉に当たりましては、農林水産業の多面的機能への配慮、あるいは我が国の食料安全保障の確保、農林水産業における構造改革の努力に悪影響を与えないよう十分留意して交渉に取り組んできたところでございます。

 今回、大筋合意いたしましたけれども、この場合、品目ごとの国内農業における重要性などを勘案いたしまして、必要に応じて、例外品目にしたり、関税割り当て、あるいは関税撤廃への経過期間を設定するということ、それから、二国間セーフガードをいざというときのために確保する、こういうことを確保した上で合意したものでございます。そういう意味で、国内農業への影響は極力回避できたのではないかというふうに考えているところでございます。

楢崎委員 この後がまた続くわけですから、しっかりした検証をまずやっていただきたい。

 今回の合意は、農産品を含む初めてのFTAということで大きくクローズアップされましたけれども、経済産業省では年間四千億円の輸出増が見込まれると試算しているようですけれども、農産品関係についてはどうなりますか。

村上政府参考人 メキシコとのFTAに伴います農産物の輸出の関係でございます。

 現在のところ、日本からメキシコへの農産物の輸出は、加工品を除きますと、種子などわずかでございまして、既に大きな輸出実績がある鉱工業製品とは異なりまして、メキシコ側の関税が撤廃されましても、それにより我が国農産物の対メキシコ輸出が拡大するということに直ちにはつながらないというふうに考えております。

 ただ、農林水産省としましては、このメキシコに限りませず、国産農林水産物の輸出の促進に向けて総合的な支援体制を確立するということが重要と考えておりまして、輸出促進事業といたしまして、諸外国の貿易制度等を調査し、あるいは輸出先国への市場開拓ミッションを派遣する、あるいは海外セミナーなどを活用するというようなことで、国産農林水産物のPR等を強化して輸出促進の取り組みを図っていきたい、そういう民間の取り組みに対する支援もしていきたいというふうに考えているところでございます。

楢崎委員 今言われましたように、メキシコとのFTAで、例えば今すぐに農畜産品が大幅に値下がりする現象が出てくるとか、そういうことはないと思いますので、総体的にお伺いしますけれども、言うまでもなく、FTAの究極的な原則というのは関税撤廃ですよね、それも十年以内ということになっているようですけれども。ですから、貿易自由化と農業保護の両立といいますか、これは日本に限らず各国共通の悩みに今なっているところですね。しかし、もう農業分野もFTAを避けて通ることができない、そういう趨勢ができつつあると思うんです。

 そこで、大臣、このFTAが本格化する時代に、日本農業はどう対応すべきだと考えますか。

亀井国務大臣 経済のグローバル化が進展をする、こういう中で食料の安定供給、これを図っていくためには、やはり国内の農業生産の増大、これを図ることを基本にいたさなければならないわけでありますし、さらには、我が国の面積または我が国の人口、こういうことを考えますときに、やはり輸入を適切に組み合わせていくということが必要であるわけであります。

 そういう点で、やはり今日、食の安全、安心、あるいは農業の多面的な機能の適切な発揮、こういう面で、鳥インフルエンザあるいはBSEの問題、国民の皆さん方も、消費者の関心、これは我が国の食料の自給率等々につきましても大変関心を持っていただいておるわけでもございます。また、我が国の農業、農村に対する国民の期待もますます大きくなっている、このように私は考えております。

 そういう中で、やはり国内農産物が消費者に選択をされるように、意欲と能力のある担い手の育成など、農業の構造改革を進めて、農産物の品質の向上、また低コスト化、これらを図っていく必要があると思います。

 こうした中で、農業も守りから攻めへと転換をしようと。高品質な我が国の農産物の輸出拡大も図っていく必要があるんではなかろうか。東南アジア等々、所得が向上し、輸出ということにつきましてもいろいろ話があるわけでもございます。そういう面で、農業の、守りから攻めへ、こういう転換というものも考えなければならないことがあるんではなかろうかと。

 現在は、来年三月に向かって、新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて、いろいろ御議論をいただいておるところでもございます。そういう中で、我が国の、足腰の強い、そして消費者の需要に即した生産が促進できるような農業構造をぜひ実現してまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 守りから攻めに変えるということは、私も大同感ですね。

 そのことに関してはまた後ほどやりますけれども、もちろんFTAによって日本の農業が荒廃するようなことがあってはならない、それは当然のことですし、今日農業界が取り組んでいます構造改革というものを支援して、またそのスピードを加速させる必要があると私は思います。

 大臣も二月十八日の所信表明で、「我が国の食料安全保障や農林水産業の構造改革の進展ぐあいにも十分配慮しながら、積極的かつ戦略的に対応」すると言われていますけれども、農政上の課題は今後は何だとお思いになりますか。

亀井国務大臣 まず、FTAの交渉に当たりましては、農業分野に関しましては、食料の安全保障や国土の保全、これら多面的機能を踏まえつつ、農業の構造改革に悪影響を及ぼすことのないような対応、このことが重要であるわけであります。

 そこで、FTAの交渉のいかんにかかわらず、我が国農業の構造改革の加速化を図ることが急務、このように考えておりまして、先ほども申し上げましたが、現在、食料・農業・農村基本計画の策定、このことを努力しておるわけでありまして、我が国の農政全般にわたる改革を進めているところであります。

 その中で、具体的に申し上げれば、品目別の価格・経営安定対策から、諸外国の直接支払いも視野に入れて、意欲と能力のある担い手の経営を支援する品目横断的な政策への移行、また、望ましい農業構造、土地利用の実現のために担い手・農地制度の改革、また、環境保全を重視した施策の一層の推進、農地や水等の資源の保全のための政策の確立、この三点につきまして本格的な検討を進めておるわけでありまして、現在、食料・農業・農村審議会の企画部会におきまして具体的な議論をいただいておるわけであります。

 今後、この問題、国民に開かれた透明性のある議論を進めまして、来年三月に新たな基本計画が策定でき、そして、あと中間論点、七月ごろまでにいろいろ中間のおまとめをいただければ、来年の概算要求等にも、あるいは制度改正にも反映していくことができればと。先ほども委員からも御指摘がございましたが、スピード感を持って改革を進めてまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 今回の合意によって、やはり現場の生産者からは不安の声が上がっているんですね。一例を挙げますと、例えば宮崎の養豚業者の方は、ついにダムに穴があいた感じと不安を述べられていますし、今後、中国、韓国からも同様の要求があるのではないかと危機感を持っておられる。

 つまり、関係者にとって、今、コスト削減というのはもう限界に来ているんですね。ですから、関税引き下げで影響を受ける生産者に、経営と所得の安定策を考えなくてはいけない状況も生まれると思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

小林政府参考人 今、大臣からもお答えがございましたように、私ども、今回の農政改革を進めるに当たりましては、FTA等の国際交渉のいかんにかかわりませず、国内農業における構造改革の立ちおくれや農村の高齢化の進行等、こういった情勢を踏まえまして、農業の構造改革の加速化を図る、これが急務であるという認識でまず取り組んでおるところでございます。

 そういった中で、今の御指摘にございました、いろいろな経営安定対策をどうするかという点でございますが、特に諸外国の直接支払い制度等も、こういったものを視野に入れながら、一つは、諸外国との生産性格差が大きい、例えば畑作でありますとか水田作、こういったものを対象とすることが一つのポイントでございます。また、個別品目ごとの価格支持的な政策、これから、担い手に対する品目横断的な政策へ移行することもポイントといたしまして、これは施策を担い手へ集中するということを基本といたしまして、先ほど申しましたような競争力の強化に向けた農政の展開を見定めていく、こういった考え方のもとで検討を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。

楢崎委員 今、内外コスト差に相当する部分を国が負担する直接支払い制度、これは視野に入っていると答弁されました。

 しかし、この制度も工夫をしないと、またばらまきかと言われることにもなりかねませんし、WTOもこの制度は否定的ですので、やはり、私ども民主党が訴えてきた所得補償政策への転換、これを考えるべきときに来ているんではないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

亀井国務大臣 現下の農政をめぐる状況を考えますと、国内的には、構造改革の強力な推進と需要に応じた生産の徹底、このことが喫緊の課題となっておるわけでもございます。また、対外的には、国際規律の強化に伴う対応、この政策体系の構築が求められております。

 そういう中で、現在取り組んでおります食料・農業・農村基本計画の見直しの中で、諸外国の直接支払いの制度も視野に入れつつ、個別品目ごとの価格支持的な政策から担い手に対する品目横断的な政策へ移行することを含めまして、施策を担い手に集中することを基本として検討しておるわけでもございます。

 そういう中で、やはり、農家に対する一律的な所得の補償、これは農家のいわゆる経営努力を阻害しかねないわけであります。また、現状の農業構造を固定してしまう、そのようなことになるわけでありまして、その改革に支障を来すおそれがある、このように考えております。

 具体的な政策展開の時期については、拙速を避けつつ、極力早期に政策転換が図られるよう、先ほど来申し上げておりますとおり、スピード感を持って取り組んでまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 所得補償政策への転換についてはまた別の機会にゆっくりやりたいと思います。

 もう一つ。輸入の多元化といいますか、特に輸入依存度の高いアメリカからアジア諸国へ軸足を変えていくというようなことも必要ではないですか。いかがですか。

須賀田政府参考人 国土条件に制約がございます我が国では、やはり、食料の安定供給を考えます場合に、国内生産に備蓄と輸入を組み合わせていく、こういうことを平素続けざるを得ないということでございます。

 その際に、やはり先生おっしゃるように、短期的な不測の事態といいますか、不作でございますとか港湾ストでございますとか、最近におきましては家畜疾病の発生、こういうことがございました。そういうリスク分散のために、輸入先国を多元化、多角化していく努力というのが大切なことだというふうに認識をしております。

 ただ、実際に輸入を行いますのは商社等の民間の経済活動でございます。私どもとしては、輸入先を多角化するという意味で、そういう農産物ごとの世界におきます需給動向の情報提供でございますとか、あるいは実際に輸出をしている国々の国内の状況でございますとか、こういう情報を提供することによりまして、できる限りの多角化に努めていただきたいというふうに考えております。

 その際、アジア諸国というお話がございました。気候、土壌条件等がございまして、例えば小麦なんかはアジアではできないというようなこともございますけれども、そこのところは、コストのみならず、品質、ロット、契約の安定、継続性、こういうもろもろのことを勘案しながら、できる限りのリスク分散努力をしていくというふうに期待をしているところでございます。

楢崎委員 久しぶりに須賀田局長の答弁スタイルを見ましたけれども、いずれにしましても、自動車や鉄鋼のかわりに農家が犠牲にされたのではないかと思っている人もいるわけですから、当面の対応というものはしっかりやっていただきたい、このことを申し述べておきます。

 きょうは、外務省それから経済産業省にもおいでいただいていますけれども、ありがとうございました。

 今回のFTA交渉ですけれども、その交渉のあり方に課題も残ったのではないでしょうか。つまり、農林水産省それから経済産業省、外務省の縦割り方式の弊害といいますか、この点について感じられたことがあったら答弁をお願いします。これは三省お願いします。

村上政府参考人 メキシコとのFTA交渉でございますけれども、政府代表のもとに、農林水産省、外務省、経済産業省それから財務省が共同議長という形で事務レベルの交渉を進めてきておりました。日夜緊密に連携をし、政府が一体となって交渉を進めてきたというふうに認識しております。

 また、昨年十二月に、二橋内閣官房副長官を議長といたしまして経済連携促進関係省庁連絡会議を設置いたしましたほか、昨日、各国との経済連携に係る包括的な取り組みを政府全体としての緊密な連絡調整のもとに進めていくという趣旨で、小泉総理の指示に基づいて、経済連携促進関係閣僚会議が設置されたところでございます。

 こういう中で、我々としても、政府一体となって今まで進めてきましたけれども、その点、十分留意をして、関係省庁と一層緊密な連携のもとに進めていきたいというふうに思っております。

三輪政府参考人 先般のメキシコとの経済連携交渉におきましては、外務省の山崎国際貿易・経済担当大使が首席代表となり、そのもとで、実務レベルで、外務省、財務省、農水省、経産省が共同議長として、連携して政府一体として交渉に当たってきております。今後、東アジアとの経済連携交渉におきましても、同様に政府が一体となって連携を強化して当たっていきたいと思っております。

 なお、この交渉当事官庁以外、官邸を中心とする連絡体制が強化されておりまして、それは先ほど村上総括審議官から述べたとおりでございますので、割愛させていただきます。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、両参考人からお話がありましたことにつけ加えさせていただくという形で御答弁申し上げますが、このメキシコとの経済連携協定の正式交渉の前に、私ども、外務省、農林水産省、財務省が、共同議長といたしましてメキシコ側と共同研究会というものも発足いたしまして、本交渉に至りまして、一体どういうような問題がかかわりになるのか、どういうような業界あるいは制度、こういったものが交渉の対象になり得るのかということも研究をした歴史がございます。

 こういった過程の中で、それぞれの担当者、分担をする分野について、まず、あり得る問題をすべて出して、そして、その中でどういった問題があるかという現場の認識をもとに、国一体としての対応方針というものを固める過程でさまざまな調整がございましたので、場合によりますと、こういう過程で、こういった政府内におきますいわば自由な意見の調整の過程でいろいろ御批判があったかもしれませんけれども、交渉そのものにつきましては、今お話がございましたように、政府一体としての対処方針をつくりまして臨んでまいりましたし、内閣全体におきます統一のため、調整のための場というものも閣僚レベルまで含めてつくられたわけでございます。

 現在、アジアを中心に残る何カ国かとの交渉が既に始まっておりますけれども、メキシコとの交渉ではなかった新しい分野が入ったり、あるいは、アジアとは長年にわたりまして経済協力も進めてきております。政府のみならず、民間分野でも大変広く深い連携がございますので、これまでに増して、国全体として、政府一体として連携をとるという必要性が高まったことを痛感しておりますので、これまでにも増しまして関係省庁間の連携を密にいたしまして、国益を損ねるということがないように対応してまいりたいと思っております。

楢崎委員 こういうときは気があった答弁になるわけですね。

 これは答弁は要りませんけれども、特に農林水産省と経済産業省の足並みの乱れがメキシコから足元を見られた要因の一つということをある新聞が指摘しておりましたので、ちょっとお聞きしたんですが、これは答弁はいいです。

 それで、今後予定されます韓国との交渉でも、農林水産省は譲歩案を先行させる方式を主張しているということに対して、経済産業省はまず要求案を交換する方式と主張しているようですけれども、ここでも足並みはそろっていないのではないですか。両省、どうですか。

村上政府参考人 韓国とのFTAの交渉につきましては、昨年の十月の日韓首脳会談に際しまして、二〇〇五年内の実質合意を目指して政府間交渉入りをするということで、これまでに二回、交渉が行われてきております。

 日本側の交渉体制としては、藤崎外務審議官が首席交渉官、それから外務省、財務省、農林水産省、経済産業省の四省が、実務者レベル会議の共同議長省として交渉実務を担当いたしております。

 お尋ねの件でございますが、そういう交渉については、各省連携をとり、調整をして対応方針を決めて対応いたしておるところでございます。具体的に、そのリクエスト・オファーのやり方につきましては、現在、各省間の議論の詳細ということになりますので、申しわけございませんが、差し控えさせていただきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、この四省あるいはほかの省庁とも密接に連絡をとり合って、総力を挙げて交渉を円滑に進めていきたいというふうに考えております。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもから先生に御答弁すべき内容は、基本的にはただいま村上総括審議官から御答弁がございましたものと同一でございます。

 韓国は、日本とともに、アジアの中ではOECDに入っております先進国でもございますので、そういう意味で、同じく工業品の世界の中でも、いろいろな品物によりまして、さまざまな関係者もおり、さまざまな関係もございます。彼我の関係もございます。交渉でございますので、戦術、戦略、いろいろある面もございますので、私どもとしては、国全体としてどういうふうにしたら最大に国益を発揮できるかという点から、外務省、財務省、農林水産省を初めとしまして、その他関係をいたします政府一体となりまして、連絡を密接にとり合いながら、力を合わせて交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。

楢崎委員 私は、譲歩案か要求案か、そのことを聞いたんですけれども、ここは公の場ですから、また戦術的な面もあるでしょうし、それはいいです。

 きのう、これからのアジア各国とのFTA交渉に向けて、連携促進関係閣僚会議というんですか、開かれたようですけれども、いずれにしましても、司令塔不在とならないように、意見を調整して事に当たっていただきたいと思います。

 韓国の問題について、もう一点だけお伺いします。

 これからアジア諸国との交渉では、人の移動、つまり労働市場の開放が焦点の一つになると思いますけれども、韓国においてはやはり農業分野が大きな焦点になると思うんですね。現に、韓国は、農産物の輸出が日本とのFTAで受益できる数少ない分野と踏んでいるようですけれども、農水省の方はどのように見ておられますか。

村上政府参考人 韓国とのFTA交渉の関係で、農産物の状況でございますけれども、日韓のFTAは、農産品その他の物品の貿易だけでなくて、サービス分野あるいは協力分野、広範な産業分野あるいは行政制度を対象として議論を行っているわけでございます。

 交渉の前段階で行われました日韓のFTA共同研究会におきまして、韓国側からは、全体として、日韓のFTAを進めた場合に、対日貿易赤字を悪化させるのではないかという強い懸念を持ちながらも、農産品については、韓国にとって日本が最大の輸出市場ととらえているという面も指摘されております。他方、韓国側の農産品の関税水準が日本よりもかなり高いということで、必ずしも韓国側が有利とは言い切れないというようなことが、この報告書の中で述べられているような状況でございます。

 いずれにしましても、この農林水産分野につきましては、日韓両国とも、経営規模が小さくて食料自給率が低いというようなことでかなり類似性がございますし、ともに難しい問題を抱えている、センシティブな問題を抱えているということで、日韓のFTA交渉に当たりましては、両国の相互の立場を理解して、それぞれの農業あるいは農林水産業が共存共栄できるというような内容になるように、お互い努力をしていきたいというふうに思っております。

楢崎委員 韓国のみならず、タイ、それからフィリピン、これからも厳しい交渉が予想されますけれども、あくまでも国益を念頭に置いて頑張っていただきたいと思います。

 経済産業省の方はここで結構でございます。ありがとうございました。

 次に、WTO問題に入ります。

 去年九月のカンクン会議では、デルベス議長案、これが合意に至らず決裂をしたわけです。一方では、そのWTOを補完するはずのFTAへの流れが強まっている、これが今日の状況であろうと思います。しかし、私は、各国が共存できる、そういう多元的なルールをWTOにおいて構築することが重要だと思うわけです。

 九四年に合意したウルグアイ・ラウンド、これはその後、途上国からの批判が高まったことによって、二〇〇一年のドーハ会議における新ラウンドからは途上国への配慮が共通の認識となったわけですね。その新ラウンドが、なぜ今もってまとまらないのか。カンクンの会議でも、せめてモダリティーだけは合意させたかったのではないかと思うんですね。

 外務省は、その原因をどのようにとらえてあるのか、お聞かせください。

三輪政府参考人 我が国のようにグローバルに経済活動に従事している国家にとって、WTOないしWTOの前進というのが大変重要であるというのは御指摘のとおりでございます。

 残念ながら、昨年九月、カンクンで開催されました閣僚会議においては所期の成果を上げることができませんでしたけれども、その点については、外務省は以下のように考えております。

 まず、今次、ドーハ開発アジェンダ交渉におきましては、多くの分野、具体的には農業、非農業品市場アクセス、サービス、環境等を含む幅広い交渉が行われており、また、投資、競争といったシンガポール・イシューと呼ばれる新しい分野がつけ加わり、また、途上国からすると、開発問題についても議論が行われるという状況でございまして、このような多岐の分野にわたる交渉の中で、全体のバランスをどういうふうにとっていくかということについて意見の収れんを見なかったというのが交渉を困難にしております原因でございます。

 とりわけ、その中でも、御指摘のとおり、今次交渉が途上国の開発に焦点を当てたものであるにもかかわらず、先進国側が十分途上国に配慮した姿勢をとっていないということで、途上国が批判的な姿勢をとっております。我が国としましては、交渉の成功裏の妥結に向けて、このような途上国の懸念にも配慮して、バランスのとれた受け入れ可能なパッケージを実現できるように尽力していきたいと考えております。

楢崎委員 今言われましたように、先進国、特にアメリカ、EUと途上国との対立の深さがその大きな一つの原因だと私も思いますけれども、言いかえれば、農産物輸出のための補助金がない我が国にとって、アメリカ、EUにその補助金の削減を迫る、つまり途上国を味方に引き入れるチャンスではなかったかと思うんです。その辺についてはいかがですか。

村上政府参考人 カンクンの閣僚会議では、やはり途上国と先進国の対立が非常に深かったというふうに思いますし、農業分野においても先進国と途上国の間で幅広い立場の違いがあったというふうに思います。

 農業分野の途上国の立場といたしまして、ブラジル、インドなどを中心としてG20というグループが形成されましたけれども、こういう国の主張といたしましては、先進国に対しては非常に厳しい規律を課すという一方で、途上国に対しては、その例外を設けるとか、あるいは非常に緩やかな規律を認めるという考え方でございます。

 そういう意味で、委員御指摘のように、輸出補助金それから国内の補助金について、先進国のこういう措置について途上国からの批判が非常に強く、それから、大幅な削減あるいは撤廃という要求があったのは事実でございますが、今申し上げましたように、これらの国の主張といたしまして、我が国にとって関心の深い市場アクセス、それから、国内支持の分野におきましては、例えば、先進国に対しては例外のない上限関税を導入する、先進国のすべての品目について関税割り当てを義務化する、あるいは国内支持につきましては、黄色の政策だけではなくて、青や緑の政策についても大幅な規律強化を主張するというようなことで、我が国にとっては議長案よりさらに非常に厳しい内容のものでありまして、なかなか連携をすることが難しかったということが実情でございます。

 農業交渉では、このように、各国、各グループがさまざまな利害のもとに主張を行っておりまして、我が国としても有利な結果が得られるように、我が国と共通の関心を有しておりますG10、いわゆる十カ国との連携を中心にして、委員御指摘の途上国への働きかけも十分行いながら交渉していきたいというふうに思っております。

楢崎委員 一方、私は、高関税を維持している品目の関税が引き下げられるのを恐れる我が国の消極的な姿勢が、今、先進国、途上国双方に不信感を与えているのではないかという心配をしているところです。これは答弁は要りません。

 これまで、日本の農業の自由化というのは外圧に押される形でしかできなかった。FTAのところでも述べましたように、やはり経営所得安定対策をしっかりやって、先ほど大臣が言われましたように、守りから攻め、やはり先手をとって外に打って出るときを迎えつつあるのではないかな、そういう感じが今私はいたします。

 それから、新たな状況も生まれてきましたね。つまり、WTO一般理事会議長に我が国の大島正太郎さんが就任をされた。これは常設の意思決定機関ですから、新ラウンドにも責任を持たなくてはいけない立場に大島さんはあるわけです。そしてまた、アメリカのゼーリック通商部代表も枠組みづくりの協議に入ることを提案されています。

 その大島議長のもとで、各国が従来の交渉方針を見直す、そしてまた譲歩の姿勢を見せなければいけないと思いますし、日本も当然そうあるべきだと思いますけれども、これは外務省はいかがですか。

三輪政府参考人 委員御指摘のとおり、ジュネーブの大島大使が、この一年間、一般理の議長を務めるということになっております。

 先週、ジュネーブにおいて農業交渉が行われましたけれども、その中で、本年七月末までに枠組み合意形成を目指すということでメンバーの意見が一致しておりまして、ジュネーブにおきましては、現在、ラウンド交渉の再活性化の機運というのが出てきている状況でございます。

 このような状況のもとで、我が国としては、御指摘のとおり、柔軟に対応できるところについては柔軟にということで、各国の意見の収れんに貢献して、交渉の中で我が国の利益が十分確保されるように最大限の努力を払いたいと思っております。

楢崎委員 次に、ここは農林水産委員会ですから、林産物それから水産関係について、カンクンではどのような議論がなされて、我が国は今後どのような方針でどう対応していくのか、まず林産関係から答弁をお願いします。

前田政府参考人 林産物につきましては、非農産品の市場アクセス交渉、こちらにおいて扱われているわけでありますが、カンクンの閣僚会議におきましては、林産物などのいわゆる個別の分野につきましての議論は行われず、非農産品全体の関税削減方式、それから分野別の関税撤廃・調和等の論点につきまして先進国と途上国との間の対立が解けないまま、これらの主要な対立点についての解決が実質的には先送りされたというところでございます。

 現在、交渉の再立ち上げに向けまして議論が行われているわけでございますけれども、我が国といたしましては、一つには、まず分野別の関税撤廃につきまして林産物が対象分野に含まれることがないよう、また関税削減方式につきましては、我が国の森林・林業あるいは木材産業を取り巻く事情に配慮できるよう、引き続き最大限の努力を続けていきたいというふうに考えている次第でございます。

田原政府参考人 お答えいたします。

 水産物関係も、ただいま林野庁長官がお答えいたしましたけれども、WTOにおきましては、いわゆる非農産品グループということでございまして、林産物、水産物、鉱工業製品と同じグループで議論されております。

 したがいまして、先ほど林野庁長官もお答えしましたけれども、分野別関税撤廃問題でございますとか関税削減方式、同じような状況でございまして、先進国と途上国の主張が対立しまして、こういった問題についての合意がなされていない、問題が先送りされている、こういう格好になっております。

 問題は、今後の対応ということでございますけれども、私ども、有限天然資源であります水産物の利用、これにつきましては、韓国でございますとか台湾、割かし日本の立場に近い主張をしている国々ですとか地域がございます。こういった国と連携しながら、引き続き、有限天然資源の持続的な利用の観点ということで、分野別撤廃の分野には入れないということ、あるいは関税削減方式につきましても、我が国の水産物の事情、こういったものに配慮したような形になるように、こういったことで努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。

楢崎委員 いずれにしましても、ウルグアイ・ラウンドでも、四年の予定が七年半ですか、七年以上かかったわけですから、来年一月一日の妥結というのは不可能かもしれませんけれども、その期限にこだわらなくてもいいと私は思います。道筋さえつけば妥協につながる、このように私は思っていますが、最後に大臣の見解をお伺いします。

亀井国務大臣 今次のWTO交渉につきましては、二〇〇五年一月一日、これが期限とされておるわけでありますが、先週もジュネーブで会議が行われて、いわゆる農業交渉の再開がなされたわけであります。七月までに枠組み合意、こういうことを目指すことになっております。

 その後、私も、カンクンの閣僚会議、あるいはまた昨年十二月にはFAOの総会に参りまして、そこでも、あるいはまたそのときにも、途上国含めて七カ国の閣僚とも会談を行いまして、我が国の主張を、また、去る二月、ゼーリック通商代表が日本にお越しになりまして、日本の上限関税の問題、このことも強く申し上げ、我が国の考え方をいろいろなところで強く主張しておるわけでありますし、何としても我が国の主張が反映される結果となるよう、さらに努力をしてまいりたい、このように考えております。

楢崎委員 WTOとFTAを同時に追求することに矛盾はない、このことを申し述べて終わります。

高木委員長 次に、金田誠一君。

金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。

 私は、以前は北海道の比例区の選出でございました。昨年の総選挙で、北海道八区から、前任は鉢呂吉雄さんでございましたけれども、その後継という形で当選をさせていただきました。

 北海道八区は、函館を中心とする道南と呼ばれる地域でございまして、全体が農林漁業で成り立っております。また、前任の鉢呂吉雄さんは、この農林水産委員会のベテラン議員でもあったわけでございます。そうした関係で、今国会から農林水産委員会に所属をさせていただきました。大分以前に短い期間所属をしていたことはございますけれども、その後、大半は厚生労働委員会に籍を置いてまいりましたので、目下猛勉強中ではございますけれども、まだまだ十分に理解できていない、こう思うわけでございます。大臣、副大臣を初め皆様方の御指導のほどよろしくお願いを申し上げる次第でございます。

 本日は、WTO、FTAに代表されるグローバリゼーションの問題点、これを中心に質問をさせていただきます。

 道南の農林漁業の地域を歩きますと、状況は極めて深刻でございます。どういう状況かといえば、とにかく悪くなる一方で、よくなる兆しは何もない。農林漁業は成り立たなくなっている。したがって、農林漁業を基幹産業とするこの地域経済全体が成り立たなくなっているということでございます。

 そして、このことは何も私の地元に限ったことではないと思うわけでございます。北海道はもとより、日本全国に程度の差はあるとしても共通した問題ではないか、私はこのように現状をとらえているわけでございますが、大臣は、この点、どう認識されておりますでしょうか。

亀井国務大臣 我が国の農林漁業、これは、関連産業、関連流通、製造あるいは飲食店等を包括いたしました食品産業全体を考えますと、国内総生産の約一〇%、一割を占めておるわけでありまして、特に北海道、東北、九州、また沖縄におきましては、他の地域と比較をいたしまして、これらの産業が重要な地位を占めておるわけであります。

 厳しい経済状況、またデフレ下における食料品価格の低迷や、あるいはまた企業間競争の激化、こういう中で、農業者あるいは食品産業の双方が安定した経営を持続していくことが、地域の活性化、活力の維持や、豊かで安定した国民生活を実現するために重要なことであります。

 こうした点を踏まえまして、私、就任してちょうど一年になるわけでありますが、農林水産分野におきます構造改革に取り組んでおりまして、食の安全、安心の確保に関する施策の強化や、米政策の抜本改革、緑の雇用等の担い手の確保や育成、あるいは水産資源の管理の推進や流通の効率化など、いわゆる農林水産行政を今展開しておるわけであります。

 御指摘のとおり、非常に厳しい第一次産業、そういう中で、国民の皆さん方に期待される、期待にこたえられる農林水産業の実現に向けての改革を一層加速化することが必要、このように考えておりまして、いろいろな施策を進めて、何とか、厳しい状況下でありますが、その対応をしっかりやってまいりたい、このように考えております。

金田(誠)委員 農林水産委員会に所属をいたしましてから、私も民主党の勉強会で、我が国農林漁業政策について何度か農水省のお役人のレクチャーを受けてまいりました。それを聞きますと、現場の危機感と霞が関の認識にはかなりの落差があるなという思いでございます。

 この間のレクチャーを私なりに整理をいたしますと、一つは、日本政府としては、基本的にWTOとFTAを推進するということ。二つ目として、これと並行して、農業については一部の担い手農家に支援を集中する。私は、これは、結果としてトータルの生産は減少するのではないか、こう思っております。三点目として、林業については、林業基本法を抜本的に見直しをしたということは伺いましたけれども、現場におりますと、とりわけて変わったとも思えないな、こんな感じでございます。四点目、水産業でございますが、これもずっと現状維持で、とりわけて変化がない感じでございまして、そんな思いでレクチャーを聞いてまいりました。WTOとFTAを推進する、一方で国内政策にはほとんど変化がないということになれば、農林漁業は当然衰退をする、当たり前のことだと思います。

 そこで、大臣に伺いたいわけでございますけれども、ここまで衰退をしたら、WTO、FTAをただ単に推進すればいいというものではないのではないか、こういう従来の方針を見直すとともに、国内の農林漁業を持続可能なものに大胆に転換をする、もうそれ以外にないところまで来てしまったのではないか、私はそんな思いをしているわけでございますが、大臣、いかがでございましょう。

亀井国務大臣 大変厳しい状況、そういう中で、先ほど来申し上げておりますとおり、食料・農業・農村基本計画の見直しを審議会に諮問いたしまして、そして農業の構造改革を進める、このことを今基本としていろいろなことを進めておるわけであります。

 やはり、そういう構造改革を進めて、そして担い手、また本当にやる気と意欲のある農業者を支援して、そして国際的規律、こういうこと、FTAやWTOの問題もあるわけでありますが、そういう状況のいかんにかかわらず、我が国の農業をしっかりさせるという努力をしなければならないわけでありまして、私、就任以来、その農政改革を進める努力をいたしておるわけであります。

 また、林業につきましても、森林法の改正等々、地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策、そして森林の整備また国土の保全、こういう視点に立ちまして、緑の雇用であるとか、あるいは担い手を育成して、健全な森林の整備、保全、この努力をしておるわけでありまして、この地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策、これもステップ・バイ・ステップと見直しをし、いろいろの施策をさらに進めてその林業の問題に対応をしなければならない、こう思っておりますし、また、水産資源の管理の徹底、これはやはり科学的な知見に基づきまして、この水産資源の管理の徹底、あるいはまたつくり育てる漁業の推進、こういうようなことに努めることによりまして、いろいろの改革を積極的に進めることによりまして、農林水産業の持続的発展に努めてまいりたい、このように考えております。

金田(誠)委員 御答弁をお聞きいたしますと、大臣、この間、大変な御努力をされているという思いは本当に伝わってまいります。本当に頑張っていらっしゃるということはよくわかります。しかし、現地、現場を歩いてみますと、本当に深刻です。冒頭申し上げましたとおり、悪くなる一方だと。農林漁業全部そうです。よくなる気配がないというのが実態だと思うわけです。

 重ねてお聞きをしたいわけでございますけれども、我が国の食料自給率は四〇%を割り込む状況だと。これはもうさらに低下していくと思います。かつて一〇〇%を超えていた水産物の自給率も五三%、木材の自給率は一八%にまで低下をしている。我が国としては、これ以上は自給率を低下させることはできないという水準をもう既に下回っているという状況だと思うわけですね。にもかかわらず、大臣は本当に御努力されているということはよくわかるんですが、その政策は、現実の問題として自給率の低下に歯どめをかけるものになっていない。それどころか、WTO、FTAということとあわせて考えれば、いよいよこれを低下させる、そういう政策になっているのではないかと思えてならないわけです。

 いま一度、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。

亀井国務大臣 大変厳しいいろいろな課題に直面をしておるわけでありまして、特に、今御指摘の食料自給率の問題、カロリーベースで四〇%まで、こういうところに来ておるわけでありまして、これは、食の外部化であるとか洋風化、あるいはまた、その中でも、米の消費が減少する一方、畜産物、油脂類の消費が増大する、食生活の大きな変化が要因、こう申し上げることもできるわけであります。

 これは、食料自給率の問題、国内生産のみならず、やはり国民の食料消費のあり方にいろいろ左右されるわけでありまして、この面、この食料・農業・農村基本計画の中でも、消費及び生産両面にわたっての課題を解決しなければならない。それは、消費者、生産者あるいは食品産業の事業者等々、関係者が一体になって取り組まなければならないところがございます。また、木材の関係、あるいはまた水産の関係につきましても、その自給率というのは大変厳しい状況にあるわけであります。

 しかし、いろいろの施策を、これは何とか国民の皆さんの御協力をちょうだいして、少々厳しい状況下、なかなか目に見えないところもありますけれども、しかし、これは何としてもその計画を実行する努力を何倍か積み重ねていかなければならない課題、このように認識をし、この時代に合う、特に今日、自給率の問題で、BSEや鳥の問題で国民がまた大変関心をお持ちいただく、このような状況、こういうものは、やはり少しでもそれをうまく活用すると申しますか、国民の理解をさらに深める中で、農林水にわたります振興また改革、これらを進めて、自給率の向上の問題等々にさらなる努力をする必要がある、このように認識をいたしております。

金田(誠)委員 レクチャーを受ける中でも、この自給率の低下ということの説明をする根拠として、食生活の変化ということを再三お聞きいたしました。しかし、本当にそうなんだろうかという実は思いがございます。後で少し触れさせていただきますし、また機会を改めて、この食生活の変化というものがどういう意味なのかということも取り上げさせていただきたいと思います。

 次に、ちょっと角度を変えまして、視点を変えまして質問をさせていただきます。

 WTO、FTAを推進するということは、グローバリゼーションを推進するということでございます。今の日本政府の立場からすれば、これは世界の流れということになるのかもしれません。しかし、私は、そのことが国内の農林漁業を衰退させてきた、加えて、これのみにとどまらず、この行き過ぎたグローバリゼーションがこのほかにもさまざまな問題を引き起こしているというふうに思っております。

 その第一は、自由貿易は貧富の差や南北間格差をより拡大させるということでございます。強い者が自由貿易を利用してさらにその勢力を拡大し、途上国などの経済はその支配下に置かれることになります。食料やエネルギーのみならず、医療、教育、環境などまで、人間の生活に必要なサービスまで商品化が進み、これを多国籍企業が支配をする、こうした状況が一方ではテロを生む土壌にもなっているというふうに思います。さらに、先進諸国の内部においても、我が国における農村部と都市部のように、内なる南北問題というものが発生をしている、こう思うわけでございます。こうした問題が途上国やNGOから厳しく指摘をされたのがシアトルであり、カンクンであったのではないか。

 日本政府としては、WTOやFTAをただ単に推進するということではなくて、この重大なマイナス面についても十分に認識をして、これを是正する方向で政策を転換するということが求められているのではないでしょうか。そういう観点からは、大臣、いかがでしょう。

亀井国務大臣 国際化が急速に進展する状況、我が国もこれに対応する、こういうことは必要なわけでありまして、多国間貿易体制、これを発展させていくということは重要、このように考えております。しかしながら、何といっても農業が国民の生命を支える食料を生産する、また、国土のあるいはまた環境の保全、こういう面で多面的な機能を発揮しておるわけでありまして、我が国は、WTO等国際交渉に当たりましても、多様な農業の共存、この基本理念を持って臨んでおるわけであります。

 WTO農業交渉におきまして、今回の交渉の根拠となっておりますWTO農業協定やドーハの閣僚宣言、ここにおきましても、非貿易的関心事項、このことに配慮すべきことが明記されておるわけでありまして、我が国としても、食料の安全保障、農業の多面的な機能、こういう非貿易的関心事項に十分配慮して、柔軟で継続性のあるバランスのとれたルールの確立がされるよう、今いろいろな分野で主張しておるわけであります。

 また、FTAの交渉につきましても、WTOを補完するもの、二国間の、あるいはまた地域で交渉を進めているわけでありますが、WTOと同じように、多様な農業の共存、この基本的な考え方とあわせて、国内農業の構造改革に悪影響を及ぼすことのないようなことを留意しつつ進めておるわけであります。

 こういう観点で、国際交渉におきましては、守るべきものは守る、そして、国内におきましては、スピード感を持って農政改革、また国境措置に過度に依存することのない足腰の強い農業を確立していくことが重要、このような認識を持ちまして、またこのことが重要、このように思い、いろいろのことを、国際問題、WTO、FTAの面におきましても機会あるごとに主張し、我が国の立場を実現するための努力をいたしておるところでもございます。

金田(誠)委員 基本的な考え方は共通するのかなという思いで聞かせていただきました。

 しかし、結果として、そういう思いで交渉に臨んだとしても、でき上がったシステムの中で貧富の差が拡大をして、南北間格差が拡大をしている。決して公正とは言えない状況がつくり上げられている。そうした中で、途上国の農民などは極めて深刻な事態に置かれている。これもまた事実だと思うわけでございます。後ほどまた、具体的にそれではどういう対策があるかということで提案をさせていただきたい、こう思います。

 次に、グローバリゼーションの第二の問題点ということで挙げさせていただきたいのは、今日の病気の蔓延ということについてでございます。

 BSEを初め口蹄疫、あるいは鳥インフルエンザ等々、これらが蔓延するのは、グローバリズムの行き過ぎによる経済性のみの追求と価格競争の大変な激化という共通の背景があるように私には思えてなりません。

 こうした中で、牛にしても鶏にしても、生き物としての本来の飼われ方をされていない。肉骨粉を食べさせられたり、そんな状態です。不自然なえさを与えられ、抗生物質やホルモン剤が多用されております。穀物、野菜、果実、これも同様に、化学肥料と農薬漬けで栽培され、そういう形で流通をしているわけであります。ここに来て、これに加えて遺伝子組み換え、もう世も末という感じでございます。ここまで自然の摂理に逆らえば、自然からしっぺ返しを受けて当然ではないでしょうか。

 そこで、大臣に質問をさせていただきますが、経済性ということは非常に重要な要素だとは思います。非常に重要です。しかし、それは生命や健康を犠牲にしてまでそれに優先するものではない、これは当たり前なことだと思うわけでございます。今日の病気の蔓延を契機にして、畜産はもとより、農業も漁業も、自然の摂理を重視する方向に転換するとともに、そのためには、イコール自給率を向上させるということが求められていると思うわけでございますが、このさまざまなえたいの知れない病気の蔓延という観点から、大臣、いかがでございますか。

亀井国務大臣 今委員御指摘の問題、その一つは、やはり農林水産業、これは先ほどもお話がありましたが、鶏も本当に太陽を見ないで卵を産んでいる、あるいは養豚業も、本当に太陽をシャットアウトされたあの室内で養豚業が行われている、こういうふうなことで、まさに、工業などほかの産業と異なり、委員からもお話しのとおり、本来、これは自然に順応する形で自然に働きかけ、あるいはまた循環を促進する、そういう中でまたその恵みを享受するという生産活動、これが基本である、このように思います。そういう面で、農林水産業の持続的な発展を図るために、その有する自然循環機能を生かしていくことがまず重要なこと、こういう認識を持っております。

 そういう面で、食の安全、安心、良好な生活環境を求める国民の農林水産業への期待というものは大変大きなものがあるわけでありまして、この安全、安心の農林水産物の生産、このために、良好な生産環境、これが必要なわけでありまして、環境保全と、そして食の安全、安心とは相互に関係する、このように思っております。

 そういう中で、昨年十二月、環境保全、こういうことを重視する農林水産業への移行を目指す農林水産環境政策の基本方針、これを取りまとめたところでありまして、今後、国民各界各層の意見を反映した政策づくりを進めまして、農林水産環境政策を着実に実施してまいりたい、このように考えております。

金田(誠)委員 これまた、物の考え方としては本当に共通をするなという思いで聞かせていただきました。

 大臣、我々世代になりますと、子供のころは、その辺で鶏がえさをついばんでいて、その辺に卵を産んでという、本当に自然の中で育ったわけですから、どうもおかしい、今のやり方はという頭がやはりあるんだと思うんです。しかし、一方ではグローバリゼーションがどんどん進む、価格競争、そのためにはどんどんコストを下げなきゃならない、そんな悠長なことがもう成り立っていかないという構造になっている。物は考えるけれども、それを実現させるための仕組み、構造、これを整えなければならない。

 先ほど来の質問で、大臣の構造改革というのは、どうも効率化、経済性、それを念頭に入れて構造改革という話なのかなと思いながら実は聞いておりましたんですが、思いはそうではないということが今、御答弁でわかりました。基本方針も取りまとめられたということでございますから、それらも勉強させていただいて、きょうのところは総論の話になりますけれども、今後また機会を見て具体的な各論の話もさせていただきたいな、こう思っているところでございます。

 そういう立場で質問を続けさせていただきますが、自然の摂理にかなった農業、漁業に転換するには、私は、行き過ぎのグローバリズムを是正するということが必要だと思っております。このことを称して、NGOなどの文書を読みますと、グローバリゼーションに対するローカリゼーション、ローカルですね、そういう言葉も出てまいります。考えてみれば、我が国においても、古来、身土不二とか地産地消という言葉があった。これが旧来の我が国の物の考え方でもあったんだなということを今しみじみ考えているところでございます。

 そこで、同じような質問になって恐縮ですが、二点質問させていただきます。

 ここに至っては、いま一度そうした方向性が求められているということで、そのためには、自由貿易と市場原理のみにゆだねるのではなくて、政治による適切なコントロール、これが必要だ、こう思うわけでございますが、私、この昨年の基本方針というのを残念ながら目を通しておりませんので、申しわけございません、それを読めばもう一目瞭然なのかもしれませんが、政治による適切なコントロールという観点から、具体的に多少聞かせていただければありがたい、これが一つ。

 もう一つは、仄聞いたしますと、食育基本法というものが今与党によって策定されようとしているということでございます。まだ私、その中身を見ていないんですけれども、最低でも自然の摂理との適合、あるいは身土不二、あるいは地産地消というような観点がこの食育の基本には必要と考えるわけでございますが、この二点、簡単に御答弁いただければというふうに思います。

亀井国務大臣 一つは、食の安全、安心、こういう面での、昨年六月に食の安全・安心のための政策大綱を策定して、生産者と消費者、この対話を通じまして、いわゆる地元消費者のニーズを把握するための交流活動であるとか、地場農産物のサポーターの組織化、あるいは消費者による地場農産物の普及、こういう面で、地産地消、この活動を推進し、いろいろ、グローバリゼーション、そういう中で、やはり地産地消を積極的に推進してまいりたい、このようにも考えておるところでございます。

 また、御指摘の食育基本法の問題でございますけれども、これは議員提案によりまして国会に提出をされた、このことは承知をいたしております。その中に、今委員御指摘の自然の摂理との適合、また身土不二、あるいは地産地消、こういう言葉は用いられておらないようでありますが、その考え方は盛り込んであるのではなかろうか、このように私も承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、食は人の命をはぐくみ、また国民の心身の健康を支えていく上で基本であるわけでありまして、食生活を通じての食文化の形成、あるいは文化面でも極めて重要な役割を果たすわけであります。農林水産省といたしましても、この身土不二や地産地消等の観点を踏まえまして、引き続き食育の推進に取り組んでまいりたい、このように考えております。

金田(誠)委員 ありがとうございます。いずれまた、今度は具体の問題で聞かせていただきたいな、こう思うところでございます。

 次に、グローバリゼーションの三つ目の問題点として、指摘だけさせていただきたいと思います。それは、地球環境に及ぼす影響ということでございます。

 グローバリゼーションによる農林漁業の構造変化、これが地球温暖化あるいは砂漠化などにつながっていると思うわけでございます。WTOあるいはFTAの交渉に当たっては、こうした観点も十分に踏まえていただきたい。この点は強く要請しておきたいと思います。答弁は今回は要りません。

 さて、以上のような問題点をはらんでいるWTO、この交渉が、農業委員会特別会合というのでしょうか、先日ジュネーブで開催をされたと伺っております。また、FTAについては、メキシコとの交渉が大筋合意に達し、引き続いて韓国、ASEAN諸国との交渉が本格化するということでございます。以下、WTO、FTAについて具体的な質問をさせていただきたいと思います。

 一昨日、WTO特別会合の結果概要というものを担当の方からちょうだいいたしました。我が国を含むG10というのでしょうか、グループ10というのでしょうか、この発言として、アからエまで四項目記載をされておりました。昨年九月のデルベス議長案をベースにして、これは微調整を求める内容のように思われました。しかし、これまでに申し上げてきた私の立場からすれば、この程度の微調整を求めるという態様では到底納得できるものではございません。WTO交渉に臨む我が国の方針としては、WTO交渉そのものに対する根本的な改革、これを盛り込んで、次のような立場を明確にすべきであるというふうに考えます。また、このことは多くのNGOが主張しているところでもあります。

 それは四点ございます。まず一点は、WTO交渉のプロセスを民主的なものに改める。グリーンルーム会合や非公式閣僚会議に象徴される閉鎖的な決定プロセスを改めるということであります。二点目は、途上国における農地改革の実現に向け協力を行い、多国籍企業や大地主の支配から農民を解放する政策を我が国が提案するということでございます。三点目は、グローバリズムではなくローカリズムを重視し、各国や地域社会の伝統的な農業、食料、食生活、これを尊重するシステムを支援する。そして四点目は、企業による大規模な工業的農業ではなくて、分権的農業こそが効率的で生産的であることを明確にして対応する。以上四点でございます。

 WTO交渉に臨むに当たっては、我が国はこうした点を基本方針として、途上国を含め幅広く各国に働きかける必要があると思います。今後のWTO交渉において日本政府提案が世界の人々に受け入れられるためには、各国代表との外交的駆け引きに終始することなく、この四項目のような、人々の暮らしに根差した、農業によって生きるためのシステムを提案する必要があります。また、こうした提案が説得力を持つためには、一方で我が国内の農業生産のシステムを持続可能なものに大胆に転換をしていく、この必要があると思います。こうした考え方について、いかがでございましょう。

亀井国務大臣 今委員から四項目の御指摘がございました。

 このWTO交渉は、これは政府間の交渉でありまして、その性格から申し上げて、すべてオープンにするということは困難なことではなかろうかと思います。各種の説明会や、あるいはホームページ等を通じまして、積極的に国民に対しましての情報の提供、あるいはまた意見の交換、このことにはいろいろ私ども努力をしておるわけであります。本省あるいはまた地方農政局におきましても、WTO並びにFTAの説明会、もう相当回を重ねて各地域で行ってもおります。

 また、今次ラウンドで、途上国の発展への配慮、これは重要な課題、こう認識をしております。このため、我が国といたしましては、途上国に対する特別な配慮を行う、さらに、途上国が交渉に積極的に参加することができるように、人材育成だとか研修、これらにも努めております。

 さらに、各国の農業や食生活は多種多様であるわけでありまして、これらが共存できるような貿易ルールを確立することが、我が国が交渉に臨む上でも最も基本的な考え方である、このようにも思います。我が国といたしましても、このような考え方に沿ってこれまで具体的な交渉提案を行ってきたところでありますが、本年七月の枠組み合意に向けまして、関心を共有するG10とも連携を図りながら、引き続き我が国の主張が反映できるように、このために全力で取り組んでまいりたい、こう思っております。

 また、WTOなどの国際規律の強化等の中で、我が国の農業を健全な形で維持発展させるためには、農政改革を進めていくこととしておるわけでありまして、現在、来年三月の新たな食料・農業・農村基本計画の策定に向けて検討を進めているところであります。

金田(誠)委員 現在までのWTO交渉は、自由化、効率化、経済性というものを中心にして動いてきた。そこには先進諸国の力の優位、あるいは多国籍企業の優位性というものを中心にして動いてきたと思うわけであります。

 一方で、それに対する途上国側からの反発があった。結果、どうなってきたかというと、それこそ、繰り返すようですが、貧富の差の拡大、南北間格差の拡大。途上国においては、農産物の輸出は仮に伸びたとしても、それを支配しているのは大地主であったり、あるいは多国籍企業であったりと、そこに住んでいる現地の国民、農民の利益にはつながらないという結果を招いてきたのではないのか。そういうゆがんだWTO交渉のあり方が、先進国である我が国においても、都市と農村の落差、そして冒頭に申し上げた農林漁業が成り立たないという状況として投影されているという構造ではなかったのかというふうに思うわけでございます。

 そこの中で、私どもの国としても、かつて農地改革を経験してきた、そして大臣おっしゃるように、地産地消、身土不二という観点も十分に踏まえている、それをこのWTO交渉に生かす。経済性、効率性のみで動くのではなくて、もう一つ、公正という観点を、このWTO交渉の中に我が国が率先してリーダーシップを発揮すべきだ。申し上げたかったことはそういうことで、具体化すると四項目ということを申し上げたところですが、この考え方について、大臣、一言で結構ですが、いかがでしょう。

亀井国務大臣 今お示しになった四項目、いろいろの点からの御指摘をちょうだいいたしております。

 しかし、百四十五カ国になりますか、この交渉、そして、閣僚会議に参りましても、それぞれ各国から発言があるわけであります。それらを、やはり何といっても考え方を共通する国々が連携をとり、その対応をしていかないと、なかなか実現性が厳しいところでもあるわけであります。

 そういう面では、いろいろのお考え、これは承りましたが、全体としてこれを実現するというのは、それぞれの国、それぞれの発議があるわけでありますので非常に難しい問題に遭遇をするわけであります。今御指摘になりましたような問題というのは、それぞれ個々の問題としては理解もできる点もあるわけでありますが、全体としてこれを実現するというのは、非常に厳しい課題に直面するのではなかろうか、こう思います。

金田(誠)委員 また引き続き議論させていただきたいと思います。

 私の地元は、その昔、滋賀県人の皆様が多く入植されて、交易でも栄えた町で、滋賀県の各町と姉妹都市というものも結構多いわけなんです。その滋賀の商人のスローガンといいますか、信条といいますか、それをよく聞かされる機会があるんですよ。売り手よし、買い手よし、世間様よしと。WTOも商売ですよね、言うなれば。売り手よし、買い手よし、世間様よし、私はこの基本がやはり共通するものではないのかなと。今の場合は、どうも強いところはいいけれども弱いところはよくならない、世間様もこれはかなりよくならないという状況だと思いますから、ぜひひとつ、そういう観点を御検討いただければありがたいなということを申し上げたいと思います。

 次に、WTO非農産物交渉分野のジラール議長が出した昨年五月の提案に、自動車部品など七分野の関税をゼロにしようという内容があって、その中に水産物が盛り込まれていたということについて質問をいたします。

 水産物は、言うまでもなく、有限の天然資源ということでございます。それが、完全自由化されたら、外貨稼ぎのために乱獲に走る国が出てくる。とりわけ途上国においては、漁業は有力な輸出産業であり、資源の保護よりも開発が優先される傾向が強い。その結果、資源は枯渇し、さらにまた、我が国漁業が甚大な影響を受けることは必至だということでございます。

 我が国は、世界の水産物貿易量の四分の一を受け入れる輸入大国であり、世界の漁業の存続と安定供給につながるルールづくりに向けて議論をリードする責務があると思います。このことについて、我が国政府としてどのように対応されるか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

亀井国務大臣 WTOにおきまして、水産物が対象となっております非農産品市場アクセス交渉におきまして、前議長のジラール議長よりカンクン閣僚会議前に、水産物の関税撤廃や、平均関税率の低い我が国にとりまして不利な関税削減方式が提案をされ、我が国はこれに強く反対をした次第であります。

 カンクン閣僚会議におきましては、いわゆるデルベス議長テキストが提示されました。そこで、分野別関税撤廃、関税削減方式等の主要な論点について、先進国、途上国の両陣営の主張が対立をし、問題が先送りとなった形となっております。

 我が国としては、今後とも、台湾あるいは韓国等の立場の近い関係国、地域と連携をいたしまして、有限天然資源であります水産資源の持続的な利用の観点から、分野別関税撤廃につきましては、水産物が対象に含まれることのないよう、また関税削減方式につきましても、我が国の水産物の事情に配慮できるように、引き続き最大限の努力をしてまいりたい、このように考えております。

金田(誠)委員 水産物が工業製品と一括に扱われること自体がもう問題だと思うわけでございまして、その枠組みの変更なども本当にできないものかとつくづく思います。よろしくお願いをしたいと思います。

 最後でございますが、FTAについて一点だけ質問させていただきます。

 質問の前段では、グローバリゼーションの問題点を指摘したわけでございますけれども、FTAもWTOと同様の問題を含んでいるわけでございます。先日、大筋合意に達したメキシコとのFTAも、豚肉の関税制度などきめ細かな対応がなされているとは思います。本当に皆さん御苦労されたという思いだと思うんです。しかし、そうは思いますけれども、結果はやはり微調整なわけですね。大原則は大原則で貫かれているとも思うわけでございます。グローバリゼーションという本質は変わっていないということを強く指摘せざるを得ないと思うわけでございます。

 いずれにしても、シンガポール、メキシコとFTAが締結をされて、現在は韓国、タイ、マレーシア、フィリピンとの交渉が行われております。この先も、台湾やインドネシアとの間でも予定をされているわけでございます。アジア地域では、まさにFTAラッシュが起きようとしているという状況でございます。

 そこで、問題は、WTOであれば、建前上は全参加国の総意で貿易ルールが決まる。そのため、その交渉過程はある程度は明らかにされる。結構密室もありますけれども、ある程度は明らかにされる。このことによって、途上国がまとまって抵抗したり、NGOなどが意見を反映することもある程度可能であったと思うわけでございます。ところが、FTAは、二国間の政府による交渉のため、その過程は非公開で内容はほとんど表に出てきません。

 今後、日本の経済界からは、農林漁業を犠牲にしても交渉の妥結を求める声が強まることは当然予想される中で、FTAラッシュが起きようとしている、こういうことでございます。従来のような交渉の進め方では、たとえ大臣であっても責任が持てなくなるような、そんな状況になるのではないかと強く危惧をいたしているわけでございます。

 我が国の対処方針をまず明確にした上で、交渉の過程を公開し、国民や国会の意思が反映される仕組みをつくる、このことが何としても必要だ。今までのシンガポール、メキシコはまあ前哨戦、これから本番でございますから、このシンガポール、メキシコの状況を見ても、結果が出るまで何も表に出てこないということであっては、本当に責任を持てないと思うんです。ぜひひとつ、この交渉過程がオープンになって、意見反映ができるという仕組みをつくっていただきたい。何としてもこれはつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょう。

亀井国務大臣 FTAの関係につきましては、今日の交渉に入る以前、それぞれ産学官におきます研究会をそれぞれの国といろいろ重ねてきております。

 このFTAの交渉につきましては、最近の動向を踏まえまして、各国との交渉状況や我が国の基本的な考え方、こういうことにつきましては、消費者、経済界、あるいは農業者、マスコミ関係者等各界各層の方々に対して、説明会あるいはまた意見交換会を開催もしております。これは、本年一月、二月に、農水省におきましては九回、あるいは地方農政局におきましては百四十三回の説明会や意見交換会等も行ってきております。三月には、WTOとあわせて、全国各ブロックで説明会や意見の交換会を行うというようなことにもいたしております。

 今後とも、交渉の状況、こういうことにつきましては、適時的確に国民の皆さんにお伝えをし、国民的な議論、こういうことも大いに行いながら、我が国の主張が実現すべく交渉に臨んでまいりたい、このように考えております。

金田(誠)委員 WTOがシアトル、カンクンとああいう状況、途上国なりNGOの声が相当強いものになってきている。一昔前と変わってきているわけですね。そういう中で、WTOを迂回してFTAというものが出てきているという状況もあるわけですよ。

 したがって、これはもうただごとではないわけですよ。なかなか面倒なわけですよ。こういうFTAという仕組みを利用して、日本経団連は日本経団連なりのさまざまな対応をまた考えておられるわけですよ。これは甘くないというふうに思います。これを、きちんとした国民合意が、国民の意思が反映される、これは相手国の国民の意思も当然重要なわけでございます。そういう仕組みをつくることがFTA交渉にこれから求められる。今までは前哨戦、これからが本番。

 今の大臣の、基本的には大臣もそう考えておられると思うんですけれども、ぜひひとつ、根性を据えて、WTOではなかなかまとまらないからFTAになっているという状況をきちんとやはり踏まえていただいて、根性を据えて、公開の仕組みをつくる中で適正な方向を見出していただきたい。さっきは、四項目、WTOについての我が国の対応として申し上げましたけれども、これは、WTOに限らずFTAについても、直接そのこと、FTAはまた別ですから、全く同じではないにしても、その観点は私は共通するものだと思います。そういう観点を踏まえて、公開という原則を踏まえて対応していただきたいと強く御要請申し上げたいと思います。

 きょうは初めての質問で、総論部分に終始しまして、大臣ばかり答弁を求めまして、本当に申しわけございませんでした。感謝を申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

高木委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 私も農林水産委員会では初めて質問させていただきます。質問の前に、一言、大臣にごあいさつ申し上げたいと思います。

 私、大臣の就任を知ったのは、昨年、ちょうど一年前でございます。京都の水フォーラムに出席しておりまして、その報告ということで、ローマ、FAOに行ってくれということで行っておりまして、その朗報を受け取りました。

 帰ってきて感激したことがございます。大臣が農林水産省に登庁されて、真っ先に私ともう一人の後輩の名前を挙げて、篠原ともう一人ですけれども、どこにいるんだというふうにお聞きになった。二十数年前、大臣の地元の農業者の会合に行ってお話をし、その後、酒を酌み交わして、その後もいろいろおつき合いがあったわけですけれども、それをちゃんと覚えていただいておりまして、真っ先に名前を挙げていただいたということを深く感謝しております。

 そういった大臣のもと、なるべく農林水産省に長くいて、下で貢献したかったわけですけれども、諸般の事情といっても大した事情じゃありませんでして、こちら側の民主党の幹部から、どうしても選挙に出ろ、民主党で農政を担当してくれという甘い言葉に誘われまして、選挙に出まして、まあ、こうやって当選できて、質問できるとは夢にも思っておりませんでした。

 もう一つ、大臣には本当にお礼を申し上げなければならないことがございます。どうやって大臣に打ち明けたらいいかと悩んでおりましたけれども、そんな心配はございませんでした。ほかのちょっとした、先輩たちからは嫌みをさんざん言われましたけれども、大臣からは、三十分間ほど大臣室で、選挙の大変なこと、それから、政治家としての心得の一端を、まだなっていなかったんですけれども、当選を予想されていたのかもしれませんけれども、いただきまして、感激しております。おかげをもちまして、こうやって質問できることになったことを本当に喜んでおります。

 それから、ついでに、初めての質問でございますので、その後ろにおられます、今は参考人と呼ばれておりますかつての同僚の皆様方にも一言ごあいさつ申し上げたいと思います。

 同僚の皆様方からは、農林水産行政はよく御存じなので、ほかの委員会で御活躍をという非常にいいアドバイスをいただきまして、私も本当にそう思ったんですが、民主党幹部は、やはりそれは許していただけませんでして、農林水産委員会にぜひ所属しろと。それから、農林漁業再生プランの作成とかいうので、きのうも実は、鹿野大臣、今おられませんけれども、うちの方の皆さんと九時半まで議論しておりました。

 しかし、こういった、立場は違いますけれども、農林水産業の発展、農山漁村の活性化、安全でおいしい食料を提供したいという気持ちは全く同じでございますので、この農林水産委員会での議論を通じ、立派な政策を立案し、きちんとした法律を通し、もちろん、その法律には与党、政府原案もありますけれども、我々民主党の法案も一緒に議論していただいて、そして立派な農林水産行政の推進に貢献したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、まず、きょうですけれども、同僚の議員、大所高所の質問をさんざんしていただいておりますので、FTAを中心に御質問させていただきたいと思います。

 FTAですけれども、つい二、三年前まではこれはほとんど話題にならなかったかと思います。それを突然、いつのころからかわかりません、伊藤元重教授によりますと、一九九〇年代の中ごろからだとおっしゃっていますけれども、私はつい最近だと思います。何かにつかれたようにFTA、FTAと言っているわけです。FTAにあらずば人にあらずみたいな感じでございまして、きのうもFTAの関係閣僚会議が設置された。それから、民間にもFTAを推進するという会議が開かれた。しかし、国民の声として、FTAを推進すべきだという声が一体どこにあるのか。地域経済の活性化とか農林水産業の再生とか、そういったことはよく聞くわけですけれども、FTAなどというのは一般国民には余り知られていないと思う。一体、これをなぜこんなに急ぐのか、この点について、外務省からもおいでいただいておりますので、まずお聞かせ願いたいと思います。

三輪政府参考人 我が国は、貿易の自由化を内容とするFTAというよりも、これにとどまらず、投資、人の移動、知的財産権や競争政策でのルールづくり、さまざまな分野での協力を含む、経済のより広い範囲を対象とした包括的な協定である経済連携協定、EPAを推進しております。

 EPAは、相手国との幅広い経済関係強化に大きく資するとともに、これを通じまして我が国の経済活性化にも資するものと考えております。これについては、先ほども委員御指摘のとおり、経済界をも含めて、国民各方面におきまして、EPAにつきさまざまな議論が活発に行われるようになってきております。

 我々としては、こうした国民的な議論も踏まえて、現在、メキシコのみならず、韓国、タイ、フィリピン、マレーシアとの経済連携協定交渉を進めておるところでございます。

 近年、東アジア地域におきましても経済連携の動きが活発化しておりまして、我が国としても、協定締結がおくれることにより我が国の国益が損なわれることのないように、引き続き経済連携協定交渉を推進していきたいと考えております。

篠原委員 今、国民の声というふうにありましたけれども、国民の声としてはそんなにないんじゃないかと思います。

 何か、政府に先立って、もう民間で推進しようということで、百人委員会とかいうのができておりまして、アグネス・チャンとか、私はファンの一人ですから別に構わないんですけれども、こういう方にFTAの推進云々なんて言われても仕方がないんじゃないかと思います。

 それどころじゃありません。また変な動きもあります。まず、去年、APECの会合で小泉総理は、別に農業がだめだとか言っているわけじゃないのに、農業鎖国だと。いかにも農業、あるいは農林水産省を悪者にするような発言をされているわけです。それで、国益を損なうと。では、国益というのは一体何だといったら、出てきたのが数字でございまして、四千億円損していると。

 どういう根拠でこの四千億円というのは出てきたんでしょうか。経済産業省からもおいでいただいているはずですので、根拠、一体どこでだれがつくった数字か、教えていただきたいと思います。

中富政府参考人 メキシコは、アメリカ、カナダとNAFTAの自由貿易協定を結び、またEUとのFTAを締結しております。それぞれ、NAFTAが発効いたしましたのが九四年、それから、EUとの協定が発効いたしましたのが二〇〇〇年でございますけれども、これらの国の企業に比較をいたしまして、我が国の企業は平均で一六%の関税負担、また、政府調達における不利益な取り扱いなどによりまして、メキシコ市場において競争上不利な立場に置かれ、不利益が顕在化してきております。

 両国間にFTAが存在しないことによる不利益につきましては、日墨EPA交渉に先立って行われました産官学共同研究会において分析が行われたところでございます。その研究会では、NAFTA発効時、一九九四年におきますメキシコへの輸出に占める日本のシェア、これは六・一%でございますが、その数字がその後も維持されたと仮定した場合の推定輸出額を一九九九年時点で計算いたしまして、同年の実際の輸出額との差額である約四千億円を輸出機会の逸失額として試算したものと認識しております。

    〔委員長退席、小平委員長代理着席〕

篠原委員 その四千億円というのが多いのか少ないのかというのは、けたが違ったりして国民一般にはわからないと思います。

 しかし、いろいろな文章で見ますと、一九九四年にシェアが六・一%あった。それが、二〇〇〇年あるいは二〇〇一年には四・〇%、三・八%に激減したと言っているわけです。シェアが六・一から四・八が激減かと。農林水産関係の数字でいいますと、イワシがかつて四百万トンとれたのが五万トンになったというのを激減というのであって、六・一%が四・〇とか三・八というのは激減じゃないわけですね。

 先ほど、経済連携、EPAという言葉が出てまいりました。経済連携、経済連携と言うのは、これは悪いことではないと思いますけれども、それは、後で触れますけれども、身近な国とのことじゃないかと思います。それを、アメリカとカナダとメキシコとNAFTAを結んだ。近くの国で仲よくやっているのに、日本がしゃしゃり出る必要はないと思う。日本は、もしきちんとやるんだったらアジアを優先すべきだと。メキシコでちょっと損したからといって、がたがた言うことは全くないんじゃないかと思います。

 しかし、それをけちって、四千億円が損だからやるとかいって、いろいろなプロパガンダを通じて、FTAがなければ日本はつぶれてしまうというような宣伝をしてやっている。私は、こういった状況というのは甚だいかぬ状況だと思っております。

 昔、まだ農業総生産額がGDPでもっともっと多くを占めていたころに、農産物をある程度犠牲にして輸入自由化をしてまいりました。しかし、GDPの二%を切った農業について、これ以上自由化していくなんということはもう考えてはならないんじゃないかと思っております。

 片方では、四千億円の損失ということを言っているわけですけれども、今度、いろいろ御努力いただきましたけれども、農産物についても自由貿易協定の中に入りました。メキシコは、日本の足元を見て法外な要求をしてきたはずです。合意の数字、あれこれ申し上げません。五年後に何万トンとか何千トンとかいう数字が羅列されております。

 ですから、今度、工業サイドは四千億円利益を得ると言っているわけですね。では、それに対して、農産物はどのくらい輸入がふえて、一体どのくらい困るのか。農産物の輸入、五年後で、何年後でもいいわけですけれども、一体どのぐらいふえるのかという数字、農林水産省側というか農業側は算定したのでしょうか。

村上政府参考人 メキシコとの今回の大筋合意におきましては、品目ごとの国内農業における重要性などを勘案しまして、必要に応じて例外品目、関税割り当て、経過期間などを設定して、国内農業への影響を極力回避したということでございます。

 輸入量がどれくらいふえるかということでございますけれども、輸入量の増加というのは、為替レートの動向あるいは他の国の輸入動向等を勘案する必要がございまして、個別品目の具体的な輸入増加量を見通すというのはなかなか困難であるというふうに思っております。

 ただ、今申し上げましたような形で検討した、あるいは対処した中で、大筋合意によりましてメキシコからの農畜産物の輸入量が急増するというふうには考えていない状況でございます。

篠原委員 やはり農業サイド、農林水産省サイドは人がいいんですね。四千億円もうけると言ったらメキシコ側は農業についてこだわったわけですから、あちらからすると輸出増を期待しているわけですよ。それで何百億輸入されるというふうに算定すべきなんですね。

 それどころじゃありません。いい言質をとったわけです。四千億円というのは利益か、輸出量ということなんでしょうけれども、この数字はそのままいただいて、四千億ももうけるんだったら、輸出がふえるんだったら、そのうちの一%、例えば四十億、農業に回せというようなことも言ってもいいんじゃないかと思います。

 これから、私は余りそんなことまではする必要はないとは思いますけれども、近隣諸国とFTAを結んでいく。これは、メキシコのように遠くの国、それで五百三十六億円の輸入しかない。ASEANとか全部含めますと、近隣の諸国、中国を除いて一兆円は超えますね。そういった国々とは規模が違うわけです。そうしたときに、やはりメキシコを口火としてということをFTAの推進派は言っております。それならば、我が方のサイド、つまり、我が方というのは農林水産関係のサイドは、このメキシコを奇貨としてというか、メキシコを見本にして、これだけ被害を受けたりこれだけ大変なんだから、その分は利益を得る方の部分を、そのお金を持って、それで農林水産業の活性化に使うという考え方をとってもいいんじゃないでしょうか。

 その一つの方法として、例えば、今の一%の四十億、これは税金とか云々あってそんなにないというふうな言いわけがすぐ出てくるでしょうけれども、四十億を、オレンジ果汁とか豚肉とかそういったところの輸入増で困る農家に直接補償をしたりする、そのやり方というのは考えられないのでしょうか。これは大臣に御答弁いただきたいと思います。

亀井国務大臣 そういう資金を充当する、こういうことにつきましては、個別にこれを、利益をどうということはなかなか難しいところもございます。

 しかし、これから、メキシコに限らずFTAの問題、そういう面では農業の問題として総合的にいろいろな施策を進める。そういう中では、これはいわゆるFTAのメリット、こういうものを使用するということではなく、国の方の予算措置として、農業の問題、またそれらの支援という面では総合的に考えるようなことはしていかなければならないことではなかろうか、こう思います。

篠原委員 まだ始まったばかりです。しかし、早目に検討をいただきたいと思います。

 それで、検討するに当たってですけれども、我々日本の国だけで考えても仕方ないことだろうと思います。FTAについては、例えばメキシコは、FTAに狂ったようでして三十も結んでおると聞いております。それで、隣の韓国も、どうしてそういうことをするのかわかりませんけれども、チリと結んでおると。

 それで、韓国の場合は、チリと自由貿易協定を結んだ後、簡単に結べると思ったら、そうじゃなくて農業に大影響があった。韓国の農民は日本の農民のように従順じゃないですから、大騒ぎをする。国会を見てもよくわかると思いますけれども、暴れまくるわけですね。それで、何とかしろということでいろいろな措置が講じられたはずです。どういった措置が講じられたんでしょうか。

村上政府参考人 私の方からお答えさせていただきます。

 チリと韓国とのFTAが締結されまして、国会で批准されるに当たりまして、かなり国内でさまざまな議論があったのは今委員がおっしゃったとおりでございます。その際に、FTAの履行に当たりまして基金を造成して、農漁業者等に対し所得補てん直接支払い金の支給を含みます、そういう支援を行う特別法を制定したというところでございます。その原資につきましては、大部分を政府が拠出するものとなるということだというふうに聞いているところでございます。

篠原委員 数字だとかなんかは答弁ありませんでしたけれども、七年間で千二百億円の基金ということですね。なかなかの金額だと思います。

 こういった仕組みをつくる。ただ、私は、仕組みをつくったから、安心して自由貿易協定をどんどん結んでいって、農産物を輸入していいということを言っているわけではありません。むしろ逆です。FTA、FTAと言っていますけれども、すべて自由化しなければいけないというわけじゃないはずですね。

 ガット二十四条に書いてあるわけです、自由貿易協定。十年以内に原則全部自由化すべきだというふうに言っております。今、世界には二百近く自由貿易協定が存在するそうですけれども、いっぱい例外があるんじゃないかと思います。多分、農産物が相当例外になっているんじゃないかと思います。

 このFTAの例外について、一体どうなっているかということを教えていただきたいと思います。

三輪政府参考人 種々の例外がございます。既存のFTAには、当事国にとってセンシティブな品目について、関税撤廃の例外、具体的には除外品目や再協議品目を設けている例がございます。

 具体的に、NAFTAにおいては米加、カナダ、メキシコの間で乳製品等が関税撤廃から除外されておりますし、先般妥結されました米豪FTAにおいても、米国が砂糖等の関税を撤廃から除外しております。

篠原委員 では、ついでにちょっとお願いしたいんですが、それは、一体どの程度なら許されて、どのくらい、何年とかいうのは一体どうなっておるんでしょうか。発展途上国が入っている場合は例外が相当ルーズに認められるということを伺っておりますけれども、今伺いますと、アメリカ、カナダ等の間でも例外品目がいっぱいあると。それはいつまで、再協議とか、何年後にまた議論するとか、あるいはもう完全に除外とかいうのは、そういうのはどういうふうになっておって、今、一般的なルールとしてはどうなっておるんでしょうか。

村上政府参考人 FTAにつきましてのWTO上の原則といたしまして、ガット二十四条に規定がございまして、構成国家の実質上すべての貿易について関税などを撤廃するということになっております。これについては解釈了解がございまして、先進国については十年間で撤廃をするという了解がございます。実質上すべての貿易について、その具体的な基準、貿易量の何%であればいいのかということについては、国際的な基準はないという状況でございます。

 途上国につきましては、これらにつきまして緩和されておりまして、十年などにつきましても、ある程度長い期間をとってもいい。それから、実質上すべてということについても、かなり緩やかな適用が実際に行われているという状況でございます。

 先進国間の協定では、基本的には十年内に関税撤廃をするということでございますけれども、先ほど外務省の三輪審議官からもありましたように、例えば五年後、あるいはWTO交渉後に再協議をするとか、それから、ごくまれでございますけれども、例外扱いをするというようなものもございます。

 ただ、先進国の場合は、今申し上げましたようにガット二十四条の規定がございまして、実質上すべてということがございますので、例外とか、あるいは特別扱いするについても、ある程度の限界がある、おのずとそういう限界があるというふうに考えております。

篠原委員 一般的なのは承知しておるわけですが、NAFTAは一九九四年でしたね。十年たっているわけですね。アメリカは乳製品とかピーナツとか、カナダは乳製品それから家禽の肉、卵とかいうのを例外にしておるんですけれども、十年たちましたけれども、ほかの国のことですけれども、これは十年たったので、WTOから警告を受けたりとか、そういうことはあるんでしょうか。二国間に完全に任されておるんでしょうか。

 三輪審議官にお答えいただきたいと思います。

三輪政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、WTOのガット二十四条で、実質的にすべてのということが規定されております。それとの関係でWTOの方で今審議されております。

篠原委員 はい、わかりました。多分、きちんとお答えいただいていませんけれども、WTOの議論の過程でそれを明らかにするということだろうと思います。

 なぜ私がこれをしつこく聞いているかといいますと、メキシコのように、やってしまったのはしようがないわけですけれども、これから大所が待っているわけです。その場合にきちんと対応していただきたいという願いがあるからです。

 東南アジア諸国ともうFTAの交渉が始まっております。いろいろな国がありますけれども、タイ、フィリピン、マレーシア、こういった国が俎上に上っていますが、それに韓国もあります。インドネシア、台湾というのもあります。一体、これらの国にどういった農林水産物でのセンシティブな品目があるのか、一体、それぞれどの程度大きな影響があるかということについて、どのように今準備をしておられるのか、お伺いしたいと思います。

村上政府参考人 東南アジア諸国、タイ、フィリピン、マレーシアの政府間交渉が始まっているわけでございます。この各国との関係では、メキシコの場合と違いまして、例えばタイなどにつきましては、農産物の貿易に占める割合が非常に多うございます。またその中で、我が国にとって、国内農業と非常に競合し困難が予想される品目もたくさんございます。例えば米、鶏肉、でん粉、砂糖など、あるいは水産品などもあり得るかと思います。

 こういうものにつきまして、まだ具体的に政府間交渉の中で議論をされているわけではございませんけれども、その前の段階の産官学の研究会の中で、そういうそれぞれの分野につきまして、これは単に我が国の農産物だけではなくて、先方のいろいろな難しい問題についても意見交換をしてきたという経緯がございます。

 貿易の状況についても我々は調査をし、また先方の生産の状況、それから流通の状況、品質、いろいろな問題についても情報を収集して対応をしていきたいと。それで、そういう中で、戦略的に最も適した、その国々、各国それぞれ事情が違いますので、そういう事情をよく分析して対応していきたいというふうに思っているところでございます。

篠原委員 影響の度合いというか、皆さんが多分考えられている以上だと思います。

 我が国は、皆さん御存じのとおり、世界一の農産物の純輸入国です。七兆円、ドルにしますと三百四十億ドルぐらいですか、輸入しています。そのうちの七分の一ぐらい、私がちょっと計算しましたら、今交渉しております四カ国で八千億ぐらい。それから、インドネシア、台湾まで含めると一兆二、三千億円になります。それから、今お答えにありましたように、タイなどは一番過激なケアンズ・グループの一員です。タクシン首相はEPA、FTAに非常に熱心です。それから、またぞろ先ほどの四千億円じゃないですけれども、タイと自由貿易協定を結んだら、その経済的効果は一兆円だとかいう、これまたどうやって計算するのかわかりませんけれども、そういった数字が、内閣府の研究者から、あるいは民間の研究者からぽろぽろ出ております。

 しかし、タイとの関係を見てみましたら、我々が一番真剣に考えておりますというか、センシティブな米、米の内外価格差、いつもタイが出てきますけれども、生産費でも二十五、六分の一、価格でも十分の一ぐらいだ。それから、今鳥インフルエンザでいろいろごちゃごちゃしておりますけれども、古くから骨なしチキンという問題がありました。鶏肉の場合も、二倍か三倍の内外価格差がある。それで、でん粉、砂糖と続くわけです。これは一筋縄ではいかないんじゃないかと私は思います。準備万端整えていただきたいと思います。すべてを自由化する必要もないんだろうと思います。もしルールがそうなっている、そうだということだったら、そのルールづくりには積極的に参加して、できるものだけやる、できないものはしなくていいんだという対応をしていただきたいと思います。

 我が国は、もう結果の数字が輸入増で出ておりますけれども、世界一だということ。関税も、高い高いと思われているかもしれませんけれども、農産物全体は一二%です。EUは二〇%です。アメリカは、農産物輸出国であるにもかかわらず、日本の半分ぐらいの六%です、平均関税ですけれどもね。結果としてこれだけ輸入している国は、これ以上輸入しなくたっていいという理屈は成り立つんではないかと思います。そういった交渉姿勢をぜひ持っていただきたいと思います。

 次ですけれども、再びメキシコの問題に入ります。

 これは経済産業省と外務省、両方に答えていただいてもいいかと思いますけれども、私は、韓国あるいは台湾、フィリピンなどと自由貿易協定を結ぶというのは、そうかなという気もしてくるわけです。なぜかといいますと、東京と福岡の距離と、福岡と上海の距離は大して変わらないんですね。それだったら、近くでとれたものを近くで食べようと。先ほど金田委員が言っておりました地産地消、身土不二、そういうことを考えた場合、北海道から福岡まで持っていくというのを考えたら、では、輸送コスト、輸送すると空気を汚すわけですね、なるべく近くから運んだものでいいんじゃないか、そういう考え方が成り立つと思うんです。

 経済連携、経済連携、それが必要だということを言っています。それはよくわかるんですね、なるべく近くとやったらいいと。EUがそういう理念ででき上がっております。NAFTAもそうです。それから全米に変えよう、全米に広げようとしております。それを、なぜメキシコなのか、こういうとんちんかんなことをなぜするのかということについてお伺いしたいと思います。

三輪政府参考人 本年に入ってから、東アジアの一部の国との経済連携協定交渉というのを始めております。この交渉の持つ重要性につきましては、委員御指摘のとおりでございます。

 他方、我が国の企業は、東アジアのみならず、世界各地において生産拠点を持つなど、グローバルな経済活動を繰り広げておりまして、そういう観点からは、我が国の場合は、単に物理的な距離ということだけで相手国との経済関係というのは理解できないということかと思います。特にメキシコの場合は、実は人口一億、GNPもASEAN10の合計に匹敵する経済規模を持っておりまして、さらには、日本企業にとっては、メキシコを通じて、北米、NAFTA市場及び中南米への市場のゲートウエーという役割も担っております。

 他方、メキシコは、御案内のとおり、NAFTA及びEUとの間でFTAを締結しているために、関税及び政府調達におきまして、我が国の企業が、現にこれらの欧米諸国との関連において競争上不利な条件に置かれております。

 このような状況を背景としまして、経済界からの強い要望もありまして、一昨年の十月、日墨の首相会談におきまして交渉開始を決定し、その後、交渉妥結に鋭意取り組んできたところでございます。

篠原委員 いろいろ答えていただいておりますけれども、やはり、皆さんお聞きになっておわかりだろうと思いますが、理念がないわけですね。

 我々アジアで、EUに対してエイジアンユニオンというのをつくっていくんだ、それはそれで理屈はわかると思うんです。それを、アメリカの方でNAFTAが結ばれた、それで日本が不利益をこうむった、玉突きに遭って慌てて、それだったら、四千億円損だからそれをやるというようなこと、これから次々にこういうことが出てくると思うんです。こういった見苦しい行動は、やはり世界の笑い物になるんじゃないかと私は思います。では、日本がASEAN何かと自由貿易協定を結んで貿易を拡大していくといったときに、アメリカは、不利になるからといって慌てふためいて、何千億円、何兆円損だからといって、ASEANと自由貿易協定を結ぼうとするか。それは、それぞれの近くの国というようなのがあって、それなりの節度があってしかるべきじゃないかと私は思います。

 ここでぐちゃぐちゃ申し上げても仕方がないんですが、自由貿易、自由貿易ということで日本国全体、言っておりますけれども、やはり自由貿易は絶対の善ではないんです。先ほど金田委員がいろいろ違う価値を述べてもらいました。大臣からそういう考え方はわかるというお答えをいただいております。例えば、自由貿易も大事かもしれませんけれども、そんなことをしていたら、地球の自然環境が壊れて、地球の生命全体が危機に陥ってしまうというおそれもあるわけです。ですから、こういうことに危機感を抱く人たちは政治家の中にもいっぱいおられます。ほかの要素があるのかもしれませんけれども、自民党でも環境を考える議員の人たちが勉強会を始めておられるそうです。これは非常にいいことではないかと思います。

 環境のことを考えたりしたら、もう明らかにわかることなんです。輸送に伴う汚染というのは莫大なんです。皆さん、これは京都議定書のところで御存じだと思いますけれども、国際輸送に伴うCO2の汚染は、輸入国にカウントするか輸出国にカウントするかわからなくて、入っていないんです。もちろん、国内輸送に伴うのは入っておるんですが。そういうことを考えると、日本は、自由貿易を遠くとやって、輸送に伴ってCO2を物すごく出しているわけですね。やはり、こういった姿勢というのは問われるべきではないかと思います。それから、こういったことを考えて、もう自由貿易なら何でもいいんだ、ダボハゼのように自由貿易協定をやっていくというようなことは絶対やめていただきたいと思います。

 もし工業製品でそういうことを仮にやるにしても、農産物は違う、食料は違うという姿勢を堅持していただきたい。なぜかといいますと、食べ物というのは腐ったりします。長もちいたしません。こういった自由貿易を推進するときに、この問題は一体どういうふうに議論されているのか。先ほども申し上げました。関税は、もう障壁になっていないんです。実は、関税よりも動物検疫、植物検疫、食品衛生規則、そういったものの方がずっと重要になってきているわけです。もしそんなに自由に何でもやるんだったら、相手国に対して食品の安全のルールも日本と同じようにしていただかなくちゃならないわけです。これはよく言われるエコダンピングですね。日本は厳しい安全のルール、それに対して相手国はルーズな食品衛生規則、こういったことこそ議論していただかなければならないわけです。

 経済連携協定と言っています。人の移動も投資もだ、みんな含めていくと。それはそれで結構だと思います。一つの国のようになっていくということなら、それはそれで結構なんですが、食べ物に関係する部分、食の安全にかかわるルールとかいうことについては、一体、FTAの交渉のときにきちんと議論されているのでしょうか。

    〔小平委員長代理退席、委員長着席〕

村上政府参考人 メキシコの例で申し上げますと、メキシコ側は、安全や検疫、動植物の検疫に関しまして、輸出を促進するという観点から、日本側の措置について緩和をしてほしいというような議論がございました。我が国としては、輸出の促進という観点でこういう問題を扱うべきではなくて、WTO協定に基づきますSPS協定というのがございますけれども、その中で、その原則に基づいて、実務レベルで、科学的な根拠に基づいて、個別案件ごとに適切に対処していく性格のものであるという議論をして、このメキシコ側の要求を退けたところでございます。

 SPS協定の中で、加盟国としては、合理的な範囲内で措置をとる権利が認められておりますし、また、一定の義務が課せられているわけでございますけれども、FTA協定の中でそういう権利義務の問題がおろそかにされるというようなことが絶対ないように、我が方としては対応しているところでございます。

篠原委員 安全性については農林水産省も非常に関心がありますけれども、やはりこれの所管は厚生労働省じゃないかと思います。

 先ほど、日本の役所は縦割りで、ばらばらではないかという同僚議員の指摘に対して、そうじゃないというのがありましたけれども、そのときに気になる部分があるわけですね。四省庁でやっていると。四省庁に一体厚生労働省は入っているのかどうか。どうも、こういったことにぜひ積極的に手を挙げて入っていただきたい。違う部分ですけれども、人の移動というのは非常に大事になってきているわけですよね。

 しかし、我々の生命、安全を考えた場合、自由に行き交うようになったりしたら、安全のルールは、今の鳥インフルエンザとかBSEとかで、もうおわかりだろうと思います。この点についてこそ、きちんとしていただかなきゃならないと。非常に手薄な、数百人にすぎない食品検疫官、国境措置だけではそういうことはできないわけですね。生産している国のルールを責任を持ってきちんとしてもらわなければいけない。日本が大量に輸入するとしたら、相手国の生産状況もちゃんと把握してこなくちゃいけないんじゃないかと思います。

 この点について、農林水産省と厚生省にお答えいただきたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、農林水産省のとっている措置でありますけれども、海外から農産物を輸入する際、農林水産省としましては、家畜伝染病予防法に基づいて、相手国との間で家畜衛生条件というのを結びまして、それに適合した畜産物であれば畜産物の製品を輸入するということになっているわけでございます。当然、こういった相手国の生産状況、今先生おっしゃったような状況につきましても、できる限り把握をしようと思っております。

 例えば、今回、メキシコとの間でFTAの協定が結ばれようとしておりますけれども、このメキシコに対しましても、これまで担当官が何年かおきに行きまして、例えばメキシコから豚肉を輸入するとなりますと、豚肉の屠畜場での処理というのが、メキシコ政府が指定したところで処理されたものだけが輸入をされるということになっておりますけれども、こういった施設について担当官が行って調査をしているというようなこともございます。また、全般的なメキシコにおきます畜産の生産状況につきましても、できる限り情報収集をしているところでございます。

 こういったことは、それぞれ輸入の相手国に対しまして、国内の生産状況につきましても、できるだけ情報収集にはこれからも努めていきたいというふうに思っております。

遠藤政府参考人 輸入食品の安全確保対策につきましては、従来から、検疫所における監視体制の整備及び問題発生時の二国間協議等を通じた、輸出国政府による安全確保の推進などにより対応をしているところでございます。

 このうち、検疫所における監視体制につきましては、輸入時の審査、検査を担う食品衛生監視員につきまして、順次増員を図っており、平成十六年度におきましても十三名の増員を予定しているところでございます。

 また、昨年五月、食品衛生法の改正によりまして、輸入食品の監視制度を一層強化したところでございまして、具体的には、平成十六年度から新たに実施する輸入食品監視指導計画に基づき、モニタリング検査を実施するとともに、検査命令の対象食品の政令指定を廃止し、検査命令をより機動的に実施することを可能にし、また、検疫所のみで実施していたモニタリング検査の試験業務の一部につきまして、登録検査機関への委託を可能にしたということで、今後、さらなる輸入食品の多様化、輸入件数の増加に対応していくことも可能と考えております。

 また、御指摘の、輸出国内での衛生対策につきましても、輸入時の検査で違反となった食品を中心に、二国間協議あるいは現地調査を実施いたしまして、輸出国において必要な衛生対策が講じられるよう対応をしているところでございます。

篠原委員 食べ物は、やはり工業製品と違うんですよね。ですから、SPS絡みのこと、FTAのときには大きな議題の一つとして必ず議論をしていただきたいと思います。これを申し上げているんですけれども、やはりまた話はもとに戻ります。

 自由貿易協定が金科玉条のようにされてしまっているわけですね。一番ひどいというか熱心なのが経済産業省じゃないかと思います。FTAが大事だということで、八十人を超える人たちを動員してやっているということだそうですけれども、これは一体どうなっているのか。WTOとか、ほかの地域経済の活性化とかいっぱいあると思うんですが、事実かどうかということをお答えいただきたいと思います。

中富政府参考人 経済連携協定、EPA推進のために、経済産業省といたしましては、昨年十月に経済連携交渉推進本部を設置いたしまして、各副大臣、大臣政務官を各国別の担当に置くなど、省内体制を強化したところでございます。

 また、今御指摘ございましたように、経済連携交渉に係る戦略の企画立案や交渉に直接臨むスタッフに加えまして、産業実態の調査分析等を通じ、FTAの交渉を支える体制を強化するため、先月、EPA交渉業務に携わる職員の抜本的な拡充を図り、約八十名をEPA業務に充てることとしたところでございます。

 もちろんのことでございますが、他方で、紛争処理システムを含む自由、公正な多国間の通商ルールを定めたWTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化も、我が国にとりまして不可欠の課題でございますし、WTOを担当しているスタッフにつきましても、当然のことながら、必要な体制を組んで積極的に取り組んでいるところでございます。

 今後も、WTO交渉の進展を踏まえながら、交渉に支障が生じることがないように取り組んでまいるつもりでございます。

篠原委員 EPAも大事なのはわかるんですけれども、ちょっとよく考えていただきたいんですね。

 行革のときに名前が変わりました、経済産業省に。通商産業省から経済産業省に変わったわけです。日本の経済全体を広く考えるということですね。何か、そこからすると、ちょっと不当表示の省庁の名前じゃないかと。通商問題ばかりやっているわけですね。また再び通商産業省に戻りたいのかというふうな気になってしまいます。お答えはいただかなくて結構ですから、この点、中川経済産業大臣にしかとお伝えいただきたいと思います。

 時間がなくなりましたので、最後、WTOについてちょっとお伺いしたいと思います。

 金田副大臣、亀井大臣とともにいろいろ御尽力いただいているのを、手にとるようにわかっております。

 WTOについて、今、食料の問題、FTAでも特別に扱うべきだということを申し上げましたけれども、こういったことを、食べ物の安全性とかいろいろ大事にされておられる、NPOのグループにたくさんおります。そこの中の一つに、ふーどアクション21というのがあります。そこの所秀雄さんなどは、十数年前から、食料主権というのがあるんだということを言っている。私はこれはなかなかいい考え方だと思うんですが、こういったことをWTOでも議論していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

金田副大臣 篠原先生とこうやって対峙しながら議論できることを本当に意外に思っておりますが、我々、党内でもいろいろな議論を重ねております。

 工業製品と食料製品とは全く扱いが違うべきだという議論も党内にもあるわけでございます。そして、食料主権という言葉、ふーどアクションの話がありましたけれども、そのほかにも、これは食料の安全保障にかかわるんだ、国民の生存権にかかわる問題なんだ、だからということで、いろいろな、WTOの今の流れをとめようとする、そういった主張がございます。

 しかし、現実問題として、百四十八カ国ものWTOの加盟国との間で、そういった食料主権ということを言って、そして、その食料主権ということは国際ルールの中で優先されるべきだというような、そういったところまで高められていないというのが実態だろうと思います。

 食料について別扱いすべきだという主張は主張としてしておるんですが、WTOの中で我が国の食料自給率は四〇%なんだからと言っても相手にならない。もう少し日本は積極的な、もっと野心的な交渉をすべきではないのかと。日本の国というのは貿易で成り立っている国だからというような話があります。自給率というのはナンセンスだということもオーストラリアの農林大臣にも言われたこともございます。

 しかし、日本は日本として、やはり食料は違うんだということも踏まえて、農業の持つ多面的な機能、それから非貿易的な関心事項、そして、諸外国の農業、各国の農業が共存できるような、そういう貿易ルールにすべきだということを掲げて、篠原先生と同じように、各国の農業が共存できるようなルールにしようじゃないかということを主張しているわけでございます。

 我々の主張がWTOの中でももっともっと理解を得るように、これからも引き続き努力していきたいというふうに考えているところでございます。

篠原委員 最後に一つだけまた質問をさせていただきたいと思います。大事なことと言えば大事なことです。

 これは、私が国会議員になりましてから、いろいろ陳情を受けるわけですけれども、他省庁から受けた陳情でございます。農林水産省の交渉の仕方でございますけれども、一生懸命交渉しておられる。これはわかるんですが、外国に行って閣僚会議というふうになった場合、非常にコンセンサスを大事にするムードが我々のグループにはあります。団体からいっぱい応援団が行く。それから、与党も野党も問わず、国会議員の皆さんもたくさん行かれる。

 それで、実態はどうなっているかというのをちょっと御紹介いたします。余りこういうことを話すのはよくないのかもしれませんけれども、玉沢大臣時代にシアトルに参りました。多面的機能を維持するかどうかということで大議論がございました。それに大挙して行っておりました。

 そのときにどうなったかというと、そのころから三者協議というのをやっておるわけであります。私は、国内では、これはコンセンサスを得るためにきちんとやるべきだと思いますが、外国に行ったときに、ずっと玉沢大臣のおつきをしておりまして、大臣の体力とかにびっくり仰天いたしました。

 どういうことかといいますと、河野外務大臣、そのときの深谷通産大臣は、交渉が終わるとゆっくりされる。ところが、我が玉沢大臣はゆっくりできないわけです。どんな交渉があっても交渉経過を詳細に三者協議の場で説明しなくちゃならない。一生懸命説明されておられるんですが、もう引退なさった某議員などはぐうぐういびきをかいて寝ておられる。それから、行っている団体の皆さんは、何でこんなことをさせられているのかと。

 最もひどかったのは、終わった後の記者会見のときに、ほかの二大臣はゆっくり着がえて、そしてレジュメを見て、レクを受けて、どうやって記者会見をするかと。玉沢大臣は、朝五時から起きて、十二時まで交渉されて、交渉が終わった、着がえる間もなく三者協議で二時間ぐらい説明して、それでそのまま記者会見です。ゆっくりしている間もないわけです。

 そうしたら、最近聞きましたら、これがほかの省庁にもいろいろな事情があって拡大して、外務大臣、通産大臣そろって三者協議の場に出て説明したりしていて次の日の交渉の準備ができない、何をしているんだというようなことがありました。

 今見ますと、亀井農林水産大臣、金田副大臣、それから木村政務官、非常に強力な布陣があるわけです。今、パソコンも携帯電話もファクスもあるわけですから、外国に行ったら交渉団にすべてを任すと。これは御存じだろうと思いますけれども、アメリカはファストトラックというので、議会はいろいろあるんですが、こうして期限を定めて、そうしているわけですから……

高木委員長 質問者、時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。

篠原委員 はい。

 この点、ぜひ大臣だけで交渉をされるようにお願いしておきます。

 大臣、この点について、最後に一言お答えいただきたいと思います。

亀井国務大臣 WTOは、政府間交渉でありまして、閣僚会議あるいはまた事務ベースでの会議、これもございます。ここを中心に行うわけであります。

 しかし、いろいろの情報、国会議員の皆さん方がIPU等々で御出席をいただきまして、それぞれ我が国の主張もしていただく、また、そういう関係の理解を深めることは重要なことでありますし、団体の皆さん方も団体での外交、こういうこともそれなりに必要なことであるわけであります。

 しかし、交渉は政府間交渉でありますので、大臣が責任を持って全うするということが基本でありますので、そのとおりやらなければならない、こう思っております。

篠原委員 どうもありがとうございました。

高木委員長 次に、白保台一君。

白保委員 去る三月十二日に正式に合意をいたしましたメキシコとの自由貿易協定締結については、約一年半という長い時間をかけて交渉を行って、その苦労も大変大きかったと思います。大変御苦労さまでございました。

 メキシコについては、NAFTAやEUとのFTAを締結したために、輸出入が北米や欧州の方へシフトしていった。その結果として、日本は一九九九年に三千九百五十一億円もの利益を逸失したと経済産業省が試算をしているわけであります。その後、不利益解消ということや、あるいはカンクンの問題等を受けて、メキシコとのFTA締結を行ったということは極めて重要となってきておったんだろう、こう思います。

 ただ、その一方で、私も前のときにも金田副大臣にも答弁いただいたんですが、どうも、農水省と経産省あるいは外務省の三省が一致した形でもってやっておられるのかなというような、こんなことも感ずることが間々あってという話を前にもしたことがありますが、そのことをまた、国内調整のやり方が最大の問題点であったなどということをおっしゃる某省の幹部もおられて、司令塔がどこにあるのかなという問題があって、我々は非常に心配をしておるわけです。

 そういった面で、今度はFTAをアジア各国と行うわけでありますが、このFTAの農業交渉、そういったことも、これまでの反省を踏まえて、今後、東アジア諸国との交渉についてどのように臨まれるお考えか、そのことをまずお聞きしたいと思います。

亀井国務大臣 今、委員からも御指摘のとおり、メキシコのFTA交渉、私もその交渉の当事者として二晩徹夜をしたり、あるいはまた、最後の大筋合意まで、今日まで参りました。そういう中で、それなりに、政府一体となってその対応をしてまいりました。

 しかし、これから東アジア各国との問題、やはりこれは何といっても、いろいろ各国の抱える諸事情、これはいろいろあるわけでありますから、できる限り、それらの情報の収集、そしてさらに分析を行う必要があると思いますし、さらには、この交渉に当たりましては、積極的に、かつ戦略、こういうものをしっかり持っていかなければならないわけであります。

 そういう点で、昨年十一月に、私を本部長といたしまして、省内にFTA本部を設置いたしまして、国別にFTAのチームを編成し、それぞれ、メキシコでの経験等を十分生かして、多面的な機能あるいはまた食料の安全保障、構造改革の進展ぐあい、こういうことにも十分留意をしてしっかりした対応をしてまいりたい、このように思っております。

白保委員 これから臨むわけですが、それぞれの各国との農業分野での課題があるだろうと思います。それぞれの課題について、ここで御答弁をいただきたいと思います。

村上政府参考人 メキシコに引き続きまして、現在、韓国、タイ、フィリピン、マレーシアと交渉を行っております。いずれも、一回ないしは二回の交渉が行われただけでございまして、現段階で、個別具体的な品目ないし項目の議論をしている状況にはないわけでございます。

 そういう中で、今後の交渉を予断することはできないわけでございますけれども、農林水産物の関係でまいりますと、各国からの我が国の輸入に占める割合、あるいは潜在的輸出力というようなことから考えますと、韓国では水産物あるいは調製した野菜など、タイについては鶏肉、でん粉、砂糖、米、フィリピンはバナナやパイナップルなどの熱帯果実、マレーシアについては合板というような問題があるかと思います。もちろん、こういう品目に限らず、いろいろな難しい問題が今後議論の中で出てくる可能性があるというふうに考えております。

 それから、農林水産物以外では、韓国との関係では、やはり日本との非関税障壁の問題あるいは経済協力の問題などについて先方がかなり強い関心を持っておりますし、韓国側は、FTAによる対日赤字の拡大、中小企業への影響というようなことを非常に強く懸念しているような状況がございます。

 タイとの関係でいきますと、先方の問題といたしましては、鉄鋼、自動車、自動車部品あるいは石油化学製品などの分野が非常にセンシティブな問題であるというふうに産官学研究会の中では指摘されておりますし、さらに人の移動ということで、タイ式マッサージ、看護師、介護士などの問題があるということでございます。それからまた、投資の自由化も潜在的な問題ではないかというふうに思っております。

 フィリピンについては、よく報道などもされておりますけれども、看護師、介護士などの人の移動の問題なども大きな焦点になろうかというふうに思っております。

 マレーシアについては、一つは政府調達の問題がございますし、投資、あるいは国民車である自動車産業の扱いなどが問題になってくるのではないかというふうに考えているところでございます。

白保委員 これからの交渉ですから、いろいろといろいろな交渉がなされていくんだろうと思いますが、タイなどは、私どもの地元の泡盛はタイのお米を使ってやっておりますから、十分輸入しておりますので、そういったこともわかっていただきたいなと思いますし、もう一つは、豚は、豚肉等もありますけれども、我が方、豚肉は長寿のもととして料理にはよく使われている。そしてまた、前に副知事をやりましたけれども、尚弘子さんという農学博士がおりますが、タイの料理等を基本にした沖縄料理の問題を研究して博士号を取られた人もおります。

 非常に関係が深いだけに、あるいはこの辺との交渉というのはバッティングする部分も結構出てくるなということを非常に気にしているところであります。その辺のことも踏まえて、ぜひしっかりとした交渉を行っていただきたい、こういうふうに思います。

 また、実は、WTO、FTAに関して議論をされているわけでございますが、そういった中で、これは昨年二月、外務省が行った経済外交に関する国民の意識調査ということでありますけれども、経済外交に関する意識ということで行いました。

 その際に、経済外交に関する意識調査の中で、WTOドーハ・ラウンド交渉について関心を持っているかとの問いに、関心があるとした人は一七・五%で、関心がないとした人は六三・七%というふうになっていました。関心のない理由としては、ふだんの生活に余り関係がないと思うから、これが三八・六%、理解するのが難しそうだから、二七・五%、十分な情報が得られず、どのようにしているのか知らないからというのが三一・五%というふうに、関心がない、こういうのが多いわけです。しかしながら、関心のある人たちにその分野を聞いてみたら、農業、農産物の貿易が最も多くて三七・三%。自由化を容認する回答が四七%にも上った。

 この時点で、農水省はこれをどのように受けとめ、どういうような分析をなされたか、この点についてまずお聞きしたい。

金田副大臣 外務省が昨年の二月に実施した調査についてのお尋ねでございます。

 御指摘のとおりでございまして、WTOについて関心があると答えた人が一七・五%しかなかったということであります。FTAに関心があると回答した人が二〇・四%。また、貿易の自由化について、農産物の自由化について四七・〇%の人が容認するという回答になっていたということ。まだまだ農林、これからも国民に対する広報や情報提供に努めていかなきゃならないなという思いを強くしたわけでございます。

 しかし、この調査とは別に、総理府でいろいろなアンケート調査等々、世論調査をやっているわけでございますけれども、我が国の将来の食料供給に不安があると答えている人が約八割に上ったという調査もありますし、また、農業の多面的な機能が必要であるという人が約九割にも上ったというようなことでございます。

 国内の農政改革を進めながら、多面的な機能を維持して、そして足腰の強い農業構造を確立していくことが必要だというふうに考えているところでございます。

白保委員 それでは次の問題に行きますが、メキシコとのFTAでは、日本の養豚事業者の強い抵抗もあり、内外価格差を埋める差額関税制度を維持した。先ほども話がありましたが、メキシコの養豚は、砂漠地帯の中で、ふん尿処理にほとんどコストをかけない。日本の半分ほどの生産費で育てた安い豚が流入することを懸念した。対策本部ですか、委員会等もつくってからもかなり頑張ったようでございますが、また、北米自由貿易協定のもとでの米国産の迂回輸入を防ぐための原産地規制を確認した、こういうふうに言われております。メキシコは実は豚肉の純輸入国で、カナダやヨーロッパからもかなり輸入しておりまして、豚肉を輸出している人たちは大規模農家、高級豚肉を生産するアメリカ資本の農家だ、こういうふうに言われているからではないかな、こういうふうに思っております。

 ところで、差額関税制度は、税関での申告の際に、実際よりも高値を装って、そして税逃れをするケースがある、税関では実際の価格が幾らだということはなかなか見分けにくい、不可能だ、こういうふうにも言われているわけですね。そのために、交渉の際、税逃れを前提にした、メキシコの業者ももうけているという実利を指摘したという話も出ているわけですね。この問題点についてはどのように対処がなされたのか、なされるのか、また交渉過程での事実関係はどうであったのかということをお聞きしたいと思います。

村上政府参考人 メキシコとの交渉の中で、豚肉につきましては、先方が、差額関税制度について分岐点価格を引き下げてほしいという非常に強い要請がございました。我が国としては、差額関税制度によって国内の豚肉の農家を守っているという側面から、これを絶対維持するということを基本に交渉を行ったところでございます。

 その差額関税制度の中で、メキシコの輸入はほとんど、九八%ぐらいが従価税部分で輸入が行われているというような実態について情報交換をいたしましたけれども、税逃れというようなことを前提にした議論をしたという事実は全くございません。

白保委員 余り時間がないので、急いで聞きますけれども、韓国とのFTAについて、特に韓国だけということで申しわけないのですけれども、問題点としてお聞きしておきたいのは、植物の新品種保護への取り組みについて大きな懸念を持っているわけですね。

 それは何かというと、韓国は、植物の知的財産権を守る植物新品種保護国際同盟、UPOVに三年前に加盟した。しかしながら、登録対象を全品目に拡大する義務については十年間猶予期間を置いたわけです。そうしますと、完了は二〇〇九年、こういうことになるんだろうと思うんです。

 現在の韓国の法律では、登録できる品目が百ちょっとにとどまっている。したがって、イチゴや花卉類の一部は登録対象となっていない。最近でも、似たようなのが向こうで売られているとか輸入されたとかいうのがありましたけれども、そのたびに種苗法の改正等にも取り組んだり、いろいろやりました。

 新品種が不当に栽培されるおそれがあるんじゃないのかなというその心配があるわけです。また、過去にも新品種の種苗が韓国へ持ち出されたということもありますし、そういったことも含めて、大変大事な、日本の農家が開発をしていく、そういった品種を守るためにはどうすればいいかということで、これはFTAの交渉に当たっては、この辺の部分も踏まえて交渉すべきではないかな、対応策を考えるべきじゃないかな、こう思いますが、いかがでしょうか。

白須政府参考人 ただいまの委員の御指摘でございます。

 お話しのとおり、韓国は、二〇〇二年に植物新品種の保護の枠組みを定めました国際条約を締結したわけでございまして、条約上、二〇一二年までに全植物を保護対象とする義務があるわけでございます。しかしながら、お話しのとおり、現在、まだ百十三の属なり種についてのみ保護対象になっているわけでございまして、したがいまして、確かに植物が限定をされておりまして、例えばイチゴでございますとかそういうふうな、私どもの国内の農業者が関心のあるものについてまだ保護対象になっておらないというふうなことでございます。

 今後の具体的な拡大計画については、今のところ、まだ公式には決定されておらないわけでございますが、いずれにしても、この保護対象植物を拡大しないと、お話しのとおり、韓国で保護されておらない植物について、我が国の育成者が新品種を韓国で登録して、あるいは権利交渉するということができないわけでございます。

 したがいまして、これまで、私どもも、いろいろな機会をとらまえまして、この保護対象植物の早期拡大を図ってきたところでございますが、お話しのとおり、今後、日韓のFTA交渉が進められるわけでございます。したがいまして、そういった知的財産分野の協議の中におきましても、保護対象植物の早期拡大といったところにつきまして、私ども、日本の考え方を十分説明いたしまして、そのFTAの交渉の場も利用しながら、今後とも韓国に働きかけてまいりたいというふうに考えております。

白保委員 日本の農家の皆さん方が開発した品種等を守るためにも、ぜひしっかりとした交渉をお願いしたい、こう思います。

 最後になりますが、先ほど金田副大臣がとうとうと答弁をされておりましたけれども、我が国はWTOの交渉の中で多面的機能を一生懸命言っているわけですね。しかし、私は、それがどれぐらい欧米の人たちに理解をされておるのかということについて、非常な疑問を持っておるわけです。

 ただ、それも必要なんだけれども、もう一つ大事なことは、先ほど話の中に出てまいりましたが、食料安全保障というのは、主権国家の国民として生きる権利です。その権利という問題については、欧米人は意外と理解ができる。依存率がこんなに高いのに、一朝何か事があったときに、一国が立ち行くことができるかできないかという問題のときに、生産を高めていくというその権利、生きていく権利、これについて、これを抑えようなどという話はあり得ないんです。だから、多面的機能も大事な話だけれども、食料安全保障というものは、人間の権利としてもっと押し出していかなきゃならないんじゃないか、そのことがもっと大事だろう、だから二つあわせてやるべきだと。

 これは、私もそう思いますけれども、ちょっとさっき本を読んでおりましたら、シンプソン名誉教授もそういうふうに言っていますよ。欧米の人は理解できる、向こうの価値観でいくならば、向こうの哲学でいくならば。だから、そのことをもっともっとしっかりと言っていかなかったならば、多面的機能でいうと、環境を守るために一生懸命農業をやるからこれは関税率下げないね、だからこれはもっともっと押さなきゃいけないねということになるのなら、一方では、やはり生きる権利というこの部分からしっかりと押していけば、それは容易に理解のできる話なんだというふうに言っていますけれども、私もそのとおりだと思います。

 ぜひ、交渉に当たってのこれからの姿勢について、大臣、最後に。

亀井国務大臣 委員御指摘のとおり、非貿易的関心事項、そういう中で、多面的機能の問題とあわせて、私は、機会あるごとに、我が国は食料の純輸入国、そういう面での食料の安全保障、こういう視点でたびたび主張もしておるわけでありますし、G10のグループ、これは、それぞれそのような認識を共通しておるわけでありまして、それらをさらに関係国、地域、また関係の国々にも主張して頑張ってまいりたい、こう思っております。

白保委員 終わります。

高木委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 日本で鳥インフルエンザが発生したことは、極めて重大なことでございます。この鳥インフルエンザのウイルスが人に感染をし、その過程で、鳥インフルエンザウイルスが突然変異によって人から人へ感染能力を獲得する、そうなった場合には、人類的な被害をもたらすことになるということでありまして、大変危険な要素をはらんだ問題であります。

 亀井農水大臣にお聞きしますけれども、政府としても、最悪の事態を想定した危機管理というものが当然必要だと思うわけですが、そういう認識に立った対応をしているのかどうか、その基本姿勢、まずはここについてお答えをいただきたいと思います。

亀井国務大臣 この鳥インフルエンザの問題、これは、私も現地に行ってまいりまして、その対応をこの目で見てまいりまして、もう大変な状況、こういうことで、総合対策を関係府省で充実する。さらに、現実的な問題としては、厚生労働省と十分連携をしなければなりませんし、私ども、防疫マニュアル、そしてさらに、各都道府県の関係者も招集いたしまして、そして、各都道府県一致して情報の一元化、あるいはまた、私ども農水省におきましても、いわゆる関係者、専門家をリストアップいたしまして、その発生、そういう中での対応ができるような体制というものを確立しておるわけでありまして、万全な体制をしいてまいりたい、こう思っております。

佐々木(憲)委員 その万全な体制という場合、単に通報を待つという姿勢ではなくて、やはり攻勢的で積極的な対応というものが必要だと思うわけです。

 その意味で、このウイルスを封じ込めるためには国民的な協力が要る、その協力を得るということがやはり大事だと思うんですね。そのことによって、協力することによって生じる、例えば養鶏業者などの損害についての補償、これはきちっとやらなければならないと思うんです。つまり、そういう体制ができて初めてしっかりした通報が行われ、かつ国がそれに対して的確に対応できる。したがいまして、この損害への補償というのが危機管理を有効に機能させる前提となる、私はそのように思うわけです。

 そこで、聞きたいわけですが、鳥インフルエンザが発生した際に、移動搬出制限に伴う三十キロ圏内の採卵養鶏業者に対する補償、これが行われるということになったわけですが、その補償基準、これはどのようになっているのか、だれがどのように決めているのか、これをお答えいただきたい。

中川政府参考人 京都を例にとりまして御説明を申し上げたいというふうに思いますけれども、京都の場合ですと、これは養鶏農家の方が移動制限の期間中に自分のところで卵を保管するということになります。そして、いざ移動制限が解けますと、それを販売する。その際に、当然、鶏卵の価値の減少分というのがございます。その部分と、それから、移動制限の期間中に保管をしていた保管の経費、あるいは別の場所に貯蔵していたとしますと、その間の輸送経費といったもの、こういったさまざまなかかり増しの経費。最初の製品であります鶏卵の価値の減少分、それと、今申し上げたようなかかり増しの経費を対象といたしまして、これを都道府県が助成をする際にその二分の一を国が負担をする、今、そういう基本的な仕組みでございます。

佐々木(憲)委員 その鶏卵の価値の減少分の補てんということでありますが、この補償がきめ細かなものになっているのかどうかというのがやはり大事でありまして、例えば、損害額の算定基準というものは主要な市場の卸売価格に基づいているというふうに聞きましたけれども、これは事実ですか。

中川政府参考人 指標としてとりましたのは全農の卸売価格、これは東京ですとか大阪ですとかというようにブロックごとに出ておりますけれども、この卸売価格をとってございます。

佐々木(憲)委員 そうしますと、その卸売価格というのは、卵の質とか種類とか、そういうもので幾つかの複数の基準があるのか、それとも一定の平均的な価格によるのか、それはどのようになっていますか。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 代表的なものとしまして、全農の規格のMというものをとってございます。

佐々木(憲)委員 その全農の規格のMというものは一つの基準にはなると思いますが、今、養鶏業者といいましても、さまざまな業者がございます。最近は二極分化が進んでいるというふうに言われておりまして、全国で十万羽以上の養鶏業者は三百六十戸、大変数が少ないわけです。しかし、これが卵の生産のシェアの五八%、約六割を占めているわけであります。ここでは、低コスト、大量生産というのが特徴であります。今おっしゃった現在の基準では、確かにこの大規模養鶏業者は補償されるかもしれません。

 しかし、実際には、平飼いなどで手間暇かけて大変質が高い卵、したがって単価の高い卵を生産している業者、この数は業者の数としては決して少なくはないわけであります。これらの業者の場合は、こういう一律の基準でやりますと補償が十分ではない、場合によっては半分しか補償されない、こういう状況になるわけであります。やはり、補償という場合は、実態に合わせるということが大事でありまして、そういう実態に合わせたきめ細かな配慮というものが必要だと思うんですね。

 亀井大臣にお聞きしますけれども、やはり、それぞれの農家の、あるいは養鶏業者のこういう実情に対応するきめ細かな対応、配慮というものが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。

中川政府参考人 事実関係を私の方からまず御説明をさせていただきます。

 先ほど申し上げましたように、指標としてとっておりますのは全農の価格であります。これは何かといいますと、いわばデータとして一番公知のものであり、また代表性があるものとしてこの価格をとっているわけであります。

 他方、今先生がおっしゃいましたように、確かに養鶏の形態というのはさまざまでありまして、高付加価値の卵をつくっておられる方もいらっしゃいます。ただ、この卵についての評価というのはさまざまでありまして、多くは取引が市場を経由しておりません、相対取引で行われております。

 したがいまして、幾らでそれが取引されたかというふうなことが必ずしも十分正確につかめませんし、また、そのデータについて、信憑性という言葉はちょっと不適切かもしれません、きちっとしたものであるかどうかといったものについてなかなかデータがとりにくい、適正な価格かどうかという判定が難しいというところがございます。

 税金を使って支援をするというものでありますので、やはりその算定の根拠になるデータは客観的なもの、できるだけ代表性のあるものというところで私どもは算定をさせていただいているということでございます。

亀井国務大臣 やはり補助金等の問題でありますから、適正な価格を参酌しなければならないわけでありまして、市場価格、先ほども局長から答弁いたしましたとおり、全農のMの規格でございますか、そういう面が、これは全国的な中での価格になっておるわけでありますから、やはりそういうものを参酌して適正な補助ということの対応をすることが必要なことじゃなかろうかと思います。

佐々木(憲)委員 適正な対応になっていないと言っているわけですよ。要するに、全農のMというものは、一定の、一番代表的な、大量に出回っている、そういう基準なわけでありまして、それは大量に生産された一般的な卵の価格であります。しかし、実際には、それ以上のコストをかけ、手間暇かけて、それで高い価格の卵を生産して出荷している業者というのはたくさんいるわけですよ。数からいえばそういう業者の方が多いわけです。ですから、そういう業者が救われない状況になっているわけです。それをどう救うのかというのが問われているわけですね。

 きめ細かな対応、適切な対応と言うのであれば、そういう方々の損害を補償するというのが、これは当然なわけであります。それは、データの問題はいろいろ研究すればいいわけであります。例えば過去の取引のデータをきちっと掌握する、客観性を持たせるようにどういう担保が必要かとか、あるいはほかの方法もあるでしょう。卸売市場でのさまざまな取引のデータもあるでしょう。そういう問題も含めて、やはり農家の、業者の実態に合った補償というものが必要だと。

 そういう必要性ということについては、やはりこれはお認めになると思うんですが、いかがですか、大臣の見解。

亀井国務大臣 いや、それは、必要な面があろうかと思いますが、やはり適正な基準というものを設定するには、いろいろの取引の形態等々あると思うんです。そういう面で、適正な補助、こういう面で、先ほど局長から申し上げましたような価値というような対応をしておるわけであります。

佐々木(憲)委員 いや、だから、その対応が画一的で実態に合っていないということでありまして、これは、こういう点については当然研究する、検討するというぐらいは、業者の皆さんは不安を持っているわけですから、今はまだやれていないけれども、検討ぐらいはするということを言っていただけますか。

亀井国務大臣 なかなか難しい問題、数量の問題ですとかいろいろ難しい問題があるわけでありますから、やはり、先ほど申し上げましたとおり、全国レベルで、またMというような基準、それでないと、なかなか個別の問題、いろいろ、これは把握をするというのは非常に難しい問題ではなかろうかと。やはりこれは、適正と申しますか、そういう基準で算定をすることが必要なことだ、私はこう思います。

佐々木(憲)委員 つまり、補償されない方々が生まれてもしようがないというのが大臣の基本的見解だというふうに理解してよろしいですね。

亀井国務大臣 それは、補償はしておるわけでありますから。いわゆる全農のM基準、こういう形で基準を持って、それでその価値の減少分、こういうことを補償しておるわけでありますし、さらには経営のためのいわゆる支援資金等々の、融資等々のこともいたしておるわけでありますから、いろいろな対応はしておるわけであります。

佐々木(憲)委員 いや、だから、補償されないわけですよ、そういう姿勢では。この基本的な一律のデータだけで、それで割り切るということでは、救われない業者がたくさん生まれるということです。

 そういう状況ですと、いろいろな疑いのある、鳥インフルエンザの可能性があるという場合の通報もどうしてもおくれてしまう。この間の経緯を見てもそういう事例があるわけですから。ですから、そういう不安がないようにするというのが、通報して直ちに対応するということがないと被害が広がるわけでありますから、そういう姿勢では具体的な対応にならぬでしょう。

 もう少し親身になった、不安を解消する、万全の体制をとると言っているわけですから、当然そういう方向を検討するのは当たり前じゃないでしょうか。大臣、これを研究するというぐらいはどうですか、念頭に置いて研究してみると。

中川政府参考人 もう一度申し上げますけれども、税金を使って、つまり公的なお金を使って支援をするということでございまして、その根拠としましては、やはりきちっとしたデータに基づきませんと、不祥事その他にもつながりかねないという点を私どもは懸念をしているわけでございます。きちっとした説明のできるデータに基づいて助成をしていくということが、やはりこういった公的な支援をする場合の基本ではないかと思います。

 その際に、多少いろいろな価格面でのきめ細かいところまで見られない部分はあるかと思いますが、それは、何よりも公的な支援をする際の算定根拠として使うデータがどうであるか、それがとれるかとれないかということがやはり一番の判断の材料になるかというふうに私どもは考えて、こういった助成措置の基準を決めたということでございます。

佐々木(憲)委員 どうも納得できないですね。これは、もう少し具体的な実情を調べていただいて、安心してこういう通報を行い、そして蔓延を防ぐ、そこに協力できる体制をぜひつくっていただきたいということを要請しておきたいと思います。

 それから、移動制限区域以外の地域における被害補償の問題でありますが、これは風評被害も含めましてかなり広範な影響があります。

 そこで、具体的な数字をお聞きしますけれども、卵の販売量の減少ですとか価格の低下、これがどうなっているか。昨年の同じ時期に比べまして、ことしの一月、二月、三月、その数字を示していただきたいと思います。

白須政府参考人 お答えいたします。

 鶏卵の卸売価格でございますが、通常、季節変動のパターンがございまして、大体、年末年始の市場休み明けによりまして、流通在庫が、非常に卵が多くなっておりますので、だから、年明けの相場は一時的に供給増ということで最低水準になるわけでございます。その後、一月中旬から徐々に回復傾向を示すというのが毎年のパターンでございます。

 そこで、本年一月以降の鶏卵の卸売価格について見ますれば、一月の当初の相場、これは先ほどの全農の東京のMでございますが、一キログラム当たり八十五円で、その後、例年どおり一月中旬から価格は回復はいたしておりまして、三月三十日現在で一キログラム当たり百三十五円ということでございます。

 ただ、これらの価格は、昨年に比べますと二割ないし三割程度低くなっているというのは事実でございますが、これは需要が全体として減少基調にあるわけでございまして、そういう中で需要を上回る生産が続いているといった、そういう需給の乖離を反映して低水準になっておるのではないかというふうに考えているわけでございます。

 それから、消費についてもお話がございました。これは、実は統計上のデータといたしましては、本年一月までの家計の購入数量、全世帯でございますが、これが公表されてございまして、直近の本年一月では、対前年同月比九五%ということで、五%減というふうになっているわけでございます。

佐々木(憲)委員 前年に比べまして価格の上で二、三割下がっていると。これは非常に大変な状況だと思うんです。もちろん、鳥インフルエンザの影響だけではないかもしれない、需給全体のバランスの変化というのがあるかもしれない。しかし、鳥インフルエンザ発生以後の状況を考えますと、大変大きな要素を占めているのではないか、その影響が大きかったのではないかと思うわけです。実際に販売量が九五%という状況ですから、これは一月の時点ですけれども、今の状況は業者にとっては大変深刻な事態だというふうに認識せざるを得ません。

 そこで、大臣にお聞きしますけれども、これは今、融資その他さまざまな手を打たれていると思うんですが、しかし、この影響が極めて甚大であるということであれば、やはりそういう場合の被害補償ということも念頭に置いた対応というものが必要ではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。

亀井国務大臣 移動制限区域外の鶏卵農家に対しましては、いろいろの、いわゆる販売不振あるいは価格低下、この影響を受けておりますことを踏まえまして、低利の運転資金、いわゆる家畜疾病経営維持資金を拡充いたしまして、区域外の養鶏農家も利用可能な資金メニューとして経営維持資金を新たに追加したわけであります。

 そういう中で、鶏や鶏卵の移動制限は、区域外は鶏卵農家で行っていないわけでありますので、補償を行うということは、これは困難な状況であります。

佐々木(憲)委員 先ほどの移動制限区域内の被害補償、損失補償の問題についてもまだきめ細かな状況にはなっていない。しかも、それ以外の地域については補償という発想が出ていない。

 私は、今後、鳥インフルエンザが制圧されて、これがなくなるということを望んでおりますけれども、仮にまた別な形で広がるなんということになりますと、そういう問題を、本当にきちっとした体制をつくらないと、これは不安が広がるばかりでありますので、政府の対応としてもその点をきちっとやっていただくということを要請したいと思います。

 ほかにもいろいろ質問しようと思ったんですが、時間が参りましたので、以上で終わります。

高木委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本でございます。

 きょうは、アジア・アフリカ救援米運動について宣伝をさせていただきます。

 これは、飢餓で苦しむアフリカ諸国に対する救援活動として、一九八四年に、中央労農会議というところの呼びかけでアフリカ飢餓救援米運動として始まりました。現在は、平和フォーラムというNGOが取り組んでおります。これは、食料不足に苦しむ人々への援助ということのほかに、減反している水田を有効活用することによって水田の維持保全、国土と環境を守る運動としても注目されました。

 政府の配慮によりまして、支援先が特定されるような方法をとることを条件に、支援米を作付した水田が米の生産調整の例外措置としてカウントされることになったわけでございます。八五年には、約二十一トンが国連難民高等弁務官事務所を通じてスーダン、ソマリア、ブルキナファソ、チャド、カーボベルテに送られました。その後、運動が多くの都道府県に広がりまして、九五年以降は毎年六十トンから八十トンが送られています。九八年にはカンボジアへの支援も始められまして、WFP、国連世界食糧計画の日本事務所とカンボジア事務所を通じて米が送られまして、戦争などで親を亡くした子供たちの教育施設で活用されています。

 最近では、国内の子供たちあるいは市民が、支援米の田植えとか稲刈りに参加をするというふうになっております。そして、昨年の三月には、この日本の支援米づくりに参加している子供たちのうち、岩手、北海道、熊本の中学生が現地カンボジアを訪ねて交流をしている。そして、名前もアジア・アフリカ支援米運動というふうに変更されて今日に至っているわけです。

 こうした民間の取り組みについて、政府の評価というものについてお伺いしたいと思います。

金田副大臣 アジア・アフリカ救援米運動ということが行われているということは我々も承知してございます。人道的な支援という見地から、労働組合の皆さん方が中心になって全国各地で展開されているというふうに聞いているわけでございます。生産調整の例外という形で、生産面積にカウントしないというような措置も行われているわけでございます。十五年度百二十一トンというような形で、対北朝鮮、タンザニア、いろいろな国に援助米を提供しているということについては高く評価させてはいただいております。

 これとは別に、政府は政府としていろいろな支援制度をやっているわけでございまして、KR援助だとかWFP援助だとかODA予算を活用しながら、政府は政府としてこういった貧しい国々に対する米の援助は行っております。

 また、このたび、タイと日本と、アジアの米備蓄構想ということを今検討して、その緒についておりますけれども、東南アジアの国々、米を主食とする国々に対して、緊急飢餓状態とかあるいは不作だとかという事態に対応できるような、タイと日本が中心になってそういった制度をつくり上げるということにしているところでございます。

山本(喜)委員 大変評価をいただいたわけでございますが、この取り組みは、人道援助ということのほかに、先ほど申しましたように、子供たちの教育あるいは水田の有効利用、そして農業の多面的機能の維持ということで、一石二鳥だけでなくて三鳥にも四鳥にもなっているというふうに思います。

 しかしながら、輸送費が大変でございまして、アフリカのマリに向けた支援米、これは二〇〇三年度四十二トンですが、マリまでは一キログラム当たり百十六円かかるわけです。カンボジアも一キログラム当たり六十円ということで、このほかに、全国各地の収穫地から東京までの輸送費もかかりますが、そこでお願いがあります。大変すばらしい取り組みというふうな評価をいただきましたので、何とか東京から現地までの輸送費ぐらいは政府で援助していただけないものかと。

金田副大臣 NPOの皆さん方がまさに善意で取り組んでおられる活動でございます。評価はいたくさせていただいておりますけれども、それに対して国が助成するということは、今の段階で考えることはちょっとできない状態でございます。

山本(喜)委員 今の日本の農業を守りから攻めに転換をしていくということで、輸出を積極的にやるわけですから、日本の米の宣伝にもなるのではないか。特に、あしたから輸出促進室というものを立ち上げるようでありますから、ぜひこの宣伝費ということでも考えていただけないのかどうか。

金田副大臣 輸出の宣伝費と言われましたけれども、貿易の輸出補助金に該当してWTO違反になるかもしれません。よろしくお願いします。

山本(喜)委員 この件については引き続きお願いをしていきたいと思います。

 次に、もう一つ宣伝があります。

 米粉パンについて宣伝をいたしますが、先週の日曜日、私の地元で米粉を使ったパンやうどんの普及というものを目指す集いが行われました。これは新潟で始まったようでございますが、先日の集いには、農業関係者だけでなくて、製造業者あるいはPTAの関係者と、大変盛況だったわけでございます。

 試食した感想も、パンというよりおもちに近い食感だとか、中に入れる材料次第ではさらにおいしくなるのではないかという、大変評判も上々だったわけでございます。PTAの会長さんからも、輸入の小麦より地元のものは知っている人がつくっているということで安心感があるというふうな感想もいただいておるわけでございます。

 政府でも、自給率の向上に向けて食育というものを推進していくわけですから、この米粉を使ったパンやうどんの普及というものについて全国的に展開をしていただきたいということでございます。

 それから、地産地消ということも盛んに提唱されていますが、地元でとれた野菜なんかを学校給食で使うというだけでなくて、例えば転作の大豆を地元で豆腐などの製品に使うとか、あるいは、地元の宣伝で恐縮ですが、比内地鶏とあきたこまちを使って切りたんぽセットを今全国展開しているわけですが、そうした地域発の産業の育成、奨励ということもぜひ展開していくべきだというふうに思いますが、この点についても政府の見解をお願いします。

須賀田政府参考人 先生お話しの米粉パンでございます。私どももいただきました。もっちり感としっとり感、原料が米でございますので毎日食べても飽きないということで、米の新規の需要開拓分野として大いに期待をしてございます。

 私ども、この開発のために値引きして売却をする、あるいは学校給食で小麦粉のパンを米粉のパンへ切りかえる場合に一定部分を備蓄米から無償で交付する、こういう取り組みで支援を行っているところでございます。年間二、三千トン程度だということでございますので、もっともっと普及したらなというふうに思っております。

 また、これと同様、いわゆる地産地消の問題でございます。

 自給率問題もございまして、私ども、食生活の基本というのは、その土地でとれたものをその土地で消費するんだ、これを基本に国民の皆様方が考えていただければ、自給率の向上の問題にもうんと資するというふうに考えておりまして、これへの取り組みに、直売所の設置でございますとか、そういう形で支援をさせていただいているところでございます。

山本(喜)委員 もう一度お伺いしますけれども、米粉パンの、米粉といいますか、そういうものの普及宣伝というのは実際今行われているわけですか。

須賀田政府参考人 普及宣伝は、一番最初に近畿農政局の管内に近畿米粉食品普及推進協議会、関係者による協議会を立ち上げたのを契機として、今全国のブロックごとに組織化を進めておりまして、この米粉パン等の需要拡大に関係者挙げて取り組んでおるという状況でございます。

山本(喜)委員 ぜひ自給率の向上に向けて、この米粉パンを全国的に展開していただきたいというふうに思います。

 次に、米の中山間地直接支払い制度についてお伺いします。

 中山間地域は我が国農地面積の約四割を占めているということで、しかしながら、傾斜地が多くて非常に生産に不利だということ、ですから、若者が定着しないために高齢化が進行している、ですから、耕作放棄地の問題ということも大変大きな問題になっているわけでございます。

 これを防止するということと農業の多面的機能の維持ということで十二年から取り組まれているわけですけれども、これに対する評価、そして、来年度以降の方策というものについて、政府の考え方をお伺いします。

太田政府参考人 お答え申し上げます。

 中山間地域等直接支払い制度でございますが、先生御指摘のとおり、食料の供給あるいは国土の保全などの多様な役割を果たしておるこの中山間地域等におきまして、耕作放棄地の発生を防止し、多面的機能を確保する観点から実施をいたしております。

 平成十五年度までの見込みによりますと、市町村が策定いたしました基本方針、これに定められた対象農用地の八五%に当たります六十六万二千ヘクタールにおきまして三万四千の協定が締結され、地域の実態に即した多様な集落活動の取り組みなどが見られるところでございます。

 この制度は、平成十二年度に発足し、十六年度までの五年間ということになっておりますが、発足時から五年後に制度の検証及び課題の整理を行うということとされておりまして、そうしたことから、中立的な第三者機関でございます中山間地域等総合対策検討会におきまして、この三月十八日より現行制度の検証を開始したところでございます。

 十七年度以降の対応につきましては、地方公共団体などからの提案にも耳を傾けつつ、本検討会におきます検証などを踏まえまして、検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

山本(喜)委員 この中山間地の直接支払いにも関連しますが、米政策大綱というものの所得補償の考え方についてもお伺いしていきたいと思います。

 今、水田農業ビジョンということで担い手を明確化する話し合いが各地で取り組まれているわけでございます。しかしながら、その中山間地というところではなかなか難しいという声が出されています。

 プロ農家の育成とか大規模化というふうに言われますけれども、大規模になればなるほど米価の下落の影響を受けやすいということ、それから、機械の購入の負担も、例えばコンバインは一台一千万円もするということで、将来の見通しというものが立たないと、なかなか規模拡大に踏み込めないという状況なわけです。

 去年の冷害でも、米がとれなくても借地料とかコンバインの借金は返さなきゃならないということで、大規模農家ほど大変だったというふうに言われています。プロをつくるとか担い手を育成するといっても、現状、耕作者本人の努力だけでは大変厳しい実態にあるわけです。

 今度の大綱でも、稲作経営安定対策というものから稲作所得基盤確保対策というものに変わりましたけれども、これだけでは非常に将来展望を持てるということにはならないわけでございます。したがって、担い手として自立していく方向性を持たせるためにも、価格補てんということだけでなくて、直接支払いによる所得補償制度への転換というものを考えていくべきではないのかということをお伺いします。

川村政府参考人 委員が御指摘ございましたとおり、大規模な農家ほど米価下落によります稲作収入の減少の影響が大きいという実態は認識をいたしております。

 このため、稲作所得基盤確保対策というものが十六年度から実施をされます。これは、生産調整に協力される方すべての対策でございますが、この稲作所得基盤確保対策の上乗せ対策といたしまして、一定規模以上の水田経営を行っておられる担い手の経営安定を図るという観点から、担い手経営安定対策ということを講ずるということでございまして、そういう意味で、担い手に重点化した対策を上乗せしたということで御理解いただきたいと思います。

山本(喜)委員 そうすると、所得補償、直接支払いの所得補償方式への転換ということは、政府は全く考えがないということですか。

川村政府参考人 直接支払いの問題につきましては、今、食料・農業・農村基本計画の見直しをしておりまして、その中で、一つの柱といたしまして、品目的な対策から品目横断的な対策へということの中で、それも視野に入れながら検討しているところでございます。

山本(喜)委員 次に、担い手経営安定対策についてお伺いします。

 この加入要件、中山間地では大変厳しい状況にあります。私も集落営農をやっておりまして、稲刈りを三十五軒から委託を受けていますが、全部合わせても十六ヘクタールにしかならないわけでございます。

 担い手経営安定対策の要件、四ヘクタール以上の認定農家とかあるいは二十ヘクタール以上の集落営農といっても、この中山間地では極めて難しいという現状にありますが、この要件の見直しということについても政府の配慮をお願いしたいと思います。

川村政府参考人 担い手経営安定対策でございますが、この対象者につきましては、先ほども申し上げましたとおり、影響の大きい農家を対象にするという意味で規模要件を設けております。

 そして、構造改革の加速化という観点から、構造展望で目標といたします規模の二分の一というものを基本にしておりますが、今委員も御指摘ありましたとおり、地域におきましてはさまざまな地理的な制限等もありまして、特に中山間地域、こういうところは、今申し上げましたような数字をそのまま適用することにはなかなか困難が伴うということがあります。

 そういうことで、中山間の場合は、特に集落営農にありましては、五割を下限といたしまして特例を設けることが可能ということになっております。また、それ以外につきましても、知事特認ということで、ただいま申されましたような数値につきまして特例を設けるということも可能になっておりますので、十分にその実態に対応した適用ということをお願いしたいと思っているところでございます。

山本(喜)委員 中山間地、多面的機能の維持ということでも大変重要なわけですので、ぜひ政府の配慮をお願いしたいというふうに思います。

 あと、時間がないんですけれども、あと一分ということですので、最後に、BSEの問題ですが、今アメリカの方でいろいろと動きが出ておりますけれども、この動きに対して、日本政府の評価についてお伺いします。

亀井国務大臣 米国の民間業者の報道、こういうことかと思いますが、米国政府から通報を受けているわけではないわけであります。

 そのような報道で私も承知している限りでございますが、検疫の問題、これはあくまでも国家間の問題であります。そういう面で、あくまでも政府が認証するなり、そういうことが当然中に入ることが必要なことと思っておりますし、基本的に、先般来申し上げておりますとおり、日本と同じ、いわゆる屠畜場におきます全頭検査、また特定危険部位の除去、こういうことが基本でございますので、これが達成できるということは重要なことでありますので、これがあくまでも一番の問題であります。

 ただ、この報道が、これはどういうことかよくわかりませんけれども、日本の消費者、日本の食の安全、安心、日本のとっております対応についてやはり考えなければならない、こういうようなことであれば、これはやはり、アメリカもこの日本の対応をしっかり考えていかなければならない、こういうように認識をしておるのかなと。

 このような面では、その情報がはっきりわかりませんけれども、私は、感じとして、日本の対応に従おう、こういうことは歓迎をすると申しますか、日本の立場を尊重するという点では好ましいことではなかろうかな、こう思います。

山本(喜)委員 引き続き、食の安心、安全ということに留意をしていただいて、進めていただきたいというふうにお願いをいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

高木委員長 この際、本日付託になりました内閣提出、農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案、農業改良助長法の一部を改正する法律案及び青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣亀井善之君。

    ―――――――――――――

 農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案

 農業改良助長法の一部を改正する法律案

 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

亀井国務大臣 農業委員会等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 将来にわたる食料の安定供給と農業の持続的発展を図るためには、効率的かつ安定的な農業経営を育成するとともに、このような農業経営を営む者に対する農地の利用の集積を図ることが重要であります。

 そのためには、地域において構造政策を推進する役割を担う農業委員会について、業務の重点化と業務運営の効率化等を促進する必要があります。

 また、近年、地方分権の推進が強く求められている中、農業委員会についても、その設置について市町村の自主性を高めるとともに、地域の実情に応じた組織運営を可能とすることが強く求められております。

 政府といたしましては、このような課題に対応するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、農業委員会の必置基準面積の算定方法の見直しであります。

 農業委員会を置かないことができる市町村に係る農地面積の算定方法について、生産緑地地区以外の市街化区域内の農地面積を算定対象から除外することとしております。

 第二に、農業委員会の業務の重点化であります。

 農業委員会が行う法令に基づく業務以外の業務について、農地及び経営に関する業務に重点化を図ることとしております。

 第三に、選挙委員の下限定数の条例への委任であります。

 選挙による委員の下限定数を廃止し、市町村の条例に委任することとしております。

 このほか、選任による委員の選出方法を見直すとともに、部会設置の弾力化などを図ることとしております。

 続きまして、農業改良助長法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の農業を振興していくためには、技術の開発と普及が基本であります。これまで、農業改良助長法に基づき、試験研究機関で開発された新技術を地域の条件に応じて現場に合った形で農業者に普及することにより、農業政策上のさまざまな課題に対応して、成果を上げてきたところであります。

 しかしながら、近年、食の安全、安心の確保など消費者の視点を重視した生産・流通体制の確立や、経営改善に意欲的な農業の担い手への支援の重点化等が求められている中で、これらの課題に対する普及組織の対応が必ずしも十分でないとの指摘がなされているところであります。

 また、地方分権の推進のため、都道府県の自主性の拡大の観点に立った事業運営が求められているところであります。

 このような状況を踏まえ、農業者の高度で多様なニーズに対応できる普及事業の展開を図るため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、政策課題に対応した高度かつ多様な技術、知識をより的確に農業現場に普及していけるようにするため、普及関係職員を専門技術員と改良普及員の二種類に分けている現行制度を見直し、調査研究と普及指導とを一元的に実施する普及指導員を置くこととしております。

 第二に、都道府県が自主性を発揮し、弾力的、機動的な事業運営ができるよう、地域農業改良普及センターの必置規制を廃止することとしております。また、普及指導を効果的に行うため、都道府県の判断により、普及指導員の活動により得られた知見の集約、専門分野がさまざまな普及指導員の活動の役割分担、進行管理等、普及指導を総合化するための活動を行う普及指導センターを置くことができることとしております。

 第三に、都道府県がみずからの判断で実態に応じた運用が可能となるよう、専門技術員及び改良普及員に支給されている農業改良普及手当の上限を廃止するとともに、その名称を普及指導手当に改めることとしております。

 続きまして、青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 農業、農村における高齢化の進展その他の農業を取り巻く環境の変化の中で、農業の健全な発展と農村の活性化を図るためには、農業を担うべき者を確保していくことが重要な課題となっております。

 このような課題に対応するため、みずから農業経営を行おうとする青年等に対して、無利子の就農支援資金の貸し付け等の措置を講じてきたところであります。これにより、新規就農者数は増加してきておりますが、まだ十分とは言えない状況にあります。

 一方、近年、農業を営む法人や農家に就農し、その一員として農業に取り組もうとする者が増加してきております。また、農業経営の法人化の進展等に伴い農業法人等の人材需要の増大が見込まれる中で、将来の農業を担う者を確保していくためには、農業法人等への就農を目指す者に対する支援も重要となっているところであります。

 このような状況を踏まえ、農業法人等への就農を積極的に促進するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、農業法人等が、新たに就農しようとする青年等をその営む農業に就業させようとする場合に、就農計画を作成し、都道府県知事の認定を受けることができることとしております。

 第二に、都道府県青年農業者等育成センターが、この認定を受けた農業法人等に対し、無利子の就農支援資金を貸し付けることができることとしております。また、この認定を受けた就農計画に基づく施設の設置等につき農業改良資金の貸し付けを受ける場合には、新規就農者の経験不足による収益性の低下リスクを軽減するため、農業改良資金の貸し付けに係る償還期間及び据置期間を延長することとしております。

 第三に、青年等の農業法人等への就農を促進するため、都道府県青年農業者等育成センターの業務として無料の職業紹介事業を、また、さきの認定を受けた農業法人等が行う施設の設置等に関する情報の提供、相談その他の援助を行うことを追加することとしております。

 以上が、これら三法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

高木委員長 これにて各案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

高木委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十七分散会


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