衆議院

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第4号 平成16年11月30日(火曜日)

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平成十六年十一月三十日(火曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 楢崎 欣弥君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      大野 松茂君    岡本 芳郎君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      上川 陽子君    木村 太郎君

      北村 直人君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    田中 英夫君

      津島 恭一君    西村 康稔君

      馳   浩君    原田 令嗣君

      森  英介君    一川 保夫君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      川内 博史君    岸本  健君

      小平 忠正君    鮫島 宗明君

      神風 英男君    仲野 博子君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      山内おさむ君    赤羽 一嘉君

      大口 善徳君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   議員           鹿野 道彦君

   議員           黄川田 徹君

   議員           鮫島 宗明君

   議員           山田 正彦君

   議員           高橋千鶴子君

   議員           山本喜代宏君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   厚生労働副大臣      西  博義君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  久貝  卓君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       外口  崇君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (水産庁長官)      田原 文夫君

   参考人

   (東京大学大学院農学生命科学研究科教授)     生源寺眞一君

   参考人

   (全国農業協同組合中央会専務理事)        山田 俊男君

   参考人

   (国立国会図書館調査及び立法考査局農林環境課主査)            森田 倫子君

   参考人

   (全国農業協同組合連合会代表理事理事長)     田林  聰君

   参考人

   (食品安全委員会委員長代理)           寺尾 允男君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月三十日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     馳   浩君

  一川 保夫君     川内 博史君

  大口 善徳君     赤羽 一嘉君

同日

 辞任         補欠選任

  馳   浩君     大野 松茂君

  川内 博史君     一川 保夫君

  赤羽 一嘉君     大口 善徳君

    ―――――――――――――

十一月十六日

 食料自給率の抜本的向上に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二一一号)

同月二十九日

 食料自給率の抜本的向上に関する請願(山口富男君紹介)(第六二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 閉会中審査に関する件

 牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案(鹿野道彦君外五名提出、第百五十九回国会衆法第二三号)

 輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案(鹿野道彦君外五名提出、第百五十九回国会衆法第二四号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 本件調査のため、本日、参考人として、東京大学大学院農学生命科学研究科教授生源寺眞一君、全国農業協同組合中央会専務理事山田俊男君、国立国会図書館調査及び立法考査局農林環境課主査森田倫子君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、生源寺参考人、山田参考人、森田参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、生源寺参考人にお願いいたします。

生源寺参考人 東京大学の生源寺でございます。

 食料・農業・農村基本計画の見直しにつきまして、食料・農業・農村政策審議会企画部会におけるこれまでの議論を踏まえて所感を申し上げたい、こう思います。

 まず、基本計画でございますけれども、二つの役割があろうかと思います。一つは、具体的な施策の推進の指針としての役割でございます。例えば、品目ごとに克服すべき課題を提示しております現行基本計画の食料自給率目標は、この意味での具体的な施策の指針である、こう見ることができるわけであります。数値目標も含めて具体的な指針が定められているわけでございますので、その達成状況についても的確に評価がなされる必要があるわけであります。

 基本計画のもう一つの役割でございますが、これは農政改革の羅針盤としての役割であると言うことができるかと思います。食料・農業・農村基本法が一九九九年に制定されたわけでありますが、その時点で、農政の体系が新しい基本法の理念に沿ったものに完全に切りかえられたわけではございません。このため、新しい基本法の理念に即した新しい政策展開の方向を示すこと、これも基本計画の非常に重要な役割であると考えられるわけであります。

 一月にスタートいたしました企画部会では、今申し上げました基本計画の二つの役割といいますか性格のうち、農政改革の方向に関する議論を先行させ、その後、秋以降につきましては、食料自給率の目標を初めとする具体的な施策のあり方についても検討を進めてまいったわけでございます。

 農政改革をめぐる議論は、昨年八月に、当時の亀井農林水産大臣が談話によって提示された改革の課題、主要三課題などと言われておりますけれども、この課題に沿って行われているわけであります。第一に品目横断的政策への転換、第二に担い手・農地制度の見直し、第三に農業環境、資源保全政策の確立であります。

 もっとも、資源保全施策は少々別とすべきかと思いますけれども、今申し上げました課題は、実は、現行の基本計画においても、表現は多少異なりますけれども、「検討を行う。」こういう形で記述が行われていたわけでございます。したがって、特に目新しい課題である、こういうわけではないと考えられます。内外の情勢、予断を許さない、こういう中で、宿題に改めて取り組む決意を示された、これが昨年八月の大臣の談話の趣旨ではないか、こう理解しております。

 次に、八月の中間論点整理、企画部会で整理いたしました中間論点整理の中で打ち出されました新しい施策の基本方向について若干申し上げたいと思います。

 まず、担い手政策、特に経営安定対策についてであります。九九年の新しい基本法は、「効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立する」ことを基本課題として掲げております。このような観点から講じられる施策の全体が担い手政策でありますが、今回は、その重要なパーツとして、新たな経営安定対策の必要性を打ち出しているわけでございます。

 経営安定対策は、農産物特有の価格変動でございますとか、あるいは農産物をめぐる国境措置の組みかえの可能性といった不安定要因を念頭に置いて、担い手の農業経営としての収入に着目し、その安定化を図ろうという施策であります。経営安定対策は、この意味で、いわば競争の最前線で奮闘しようとする、こういった農業者をバックアップする政策であり、内外ともに不透明感の高まっている今日、こうした政策を通じて農業経営の先行き不安を取り除くことの意味は非常に大きいかと思います。

 ただ、幾つか留意すべき点があろうかと思います。二つだけ申し上げたいと思います。

 一つは、この施策は対象を担い手としているわけでございますが、担い手とするという方向で今議論がされているわけでございますけれども、その目的はあくまでも望ましい農業構造の確立にあるのであって、担い手農業、既に担い手とみなされる、こういった農業の成長を促すとともに、特に水田農業については、この新しい経営安定対策を契機として、集落営農の組織化を含めて、担い手をつくり育てていくという視点が大切だと考えられる点でございます。これが第一点でございます。

 それからもう一つは、これは今日の農政全般に言えることでございますけれども、国民の負担によって講じられる経営安定対策の効果、これはやはり、高い生産性を発揮し、多様化する消費者のニーズにこたえる農業の確立を通じて、できるだけ早い方がいいわけでございますけれども、いずれは国民全体に還元される必要があるだろう、こう思うわけであります。つまり、納税者の負担と農業の構造改革、そして消費者の利益のよい循環という視点が非常に大切だろう、こう考えているわけでございます。また、このことを国民の前に率直に提示し理解を得るということも非常に大事だ、こう考えております。

 次に、農地制度について申し上げたいと思います。

 このテーマにつきましては、秋に再開されました企画部会に対しまして、農林水産省としての考え方が示されたところであります。中身は多岐にわたっておりますけれども、担い手に対する農地の利用集積の加速化、不在村所有者の農地を含めた耕作放棄地対策、あるいはリース方式による法人参入特区の全国化への前向きの対応など、現行法の大枠の中で可能な改革、改善はおおむね盛り込まれたという印象を持っております。

 ただし、今回の制度改革を実効あるものとするためには、幾つか課題があるように思います。

 一つは、農地制度を運用する組織、これは制度が複雑になっていることに対応していろいろな組織があるわけでございますけれども、これが的確かつ強力に機能するということであります。

 制度の厳格な運用に自信が持てないから制度改革にも及び腰になるという、いわば、従来、やや本末転倒という状況がこの分野についてはあったかと思いますけれども、ここから脱却する必要がある、こう考えております。

 もう一つは、利用優位の農地制度への移行という観点から、借地型農業の不安定要因をできるだけ除去することでございます。

 これは家族経営あるいは法人経営問わずでございますけれども、特に、地域農業にとって新しい顔となる農外からの参入のケースについてはきめ細かな配慮が必要であるように思われます。また、改革のパーツが、部品が出そろったところで、制度の理念と体系をわかりやすく整理する必要があるかと思います。農地制度は、非常に多くの利害関係者の存在する領域の問題でございます。したがって、制度の過度の複雑化はそれ自体として望ましくない現象である、こう考えております。

 農業環境政策と資源保全政策は、時代の流れの中で重要性を増した課題への対処であります。農業環境政策は、一定の基準に基づいて、すぐれた取り組みを応援し、問題のある農業に改善を促す政策でありますし、資源保全政策は、農村コミュニティーの力を引き出す、こういったことを眼目とする政策であります。いずれも私は適切な方向であるというふうに考えております。

 ただ、新しい政策ジャンルであるだけに、制度の具体像をまだ描き切れていない面もあるわけであります。ほかの新しい政策あるいは既存の政策の強化と足並みをそろえて、いわばワンパッケージで実施に移すことができるよう、関係者に早期の、また万全の準備をお願いしたい、こう考えるところでございます。

 最後に、食料自給率の問題につきまして一言申し上げたいと思います。

 この問題は、現在企画部会でも議論の最中でございますので、私個人の考え方という形で述べさせていただきたいと思います。

 自給率の現状につきましては改めて申し上げるまでもないわけでありますけれども、同時に、自給率の問題は、ただその率が高ければそれだけ安心だといった単純な問題でないことも国民の皆さんによく認識していただく必要があるかと思います。食料自給率は、食料と農業の問題を考えるいわば入り口というべき性格のものだろう、こう考えております。

 二つ申し上げたいと思います。

 極端に低下した食料自給率の数字として、供給熱量自給率の四〇%、あるいは穀物自給率の二八%という数字を挙げることができるわけであります。この二つは共通点がありまして、カロリーあるいは基礎的な食料である穀物に着目しているという点で、いわば食料安全保障をにらんだ自給率である、こう言うことができるかと思います。したがって、この目標水準を掲げて、この自給率について引き上げることを重視しているわけであります。

 ただ、食料安全保障という意味では、自給率に注意を払うだけでなく、同時に、絶対的な自給力の動向に絶えず留意しこれを回復する、こういう観点も極めて重要であると考えられます。農地面積の減少と農業者の高齢化が進む中で、カロリーベースでいえば、今、自給率は何とか四〇%という水準を維持しているわけでございますけれども、その背後で、むしろ絶対的な自給力は低下しているのではないかという懸念がございます。これが第一点でございます。

 もう一つの点でございますけれども、金額ベースの総合自給率という、こういう指標もあるわけでございます。これは最新のデータで、たしか六九%かと思います。いわば七割の水準にあるわけであります。カロリーベースの四割と随分違いがあります。また、違いは、この三十年、四十年の長期の動向を見ますと、徐々に開いてきているわけであります。

 この詳細は省きますけれども、この違い、つまり、カロリーベースの自給率と金額ベースの自給率の違いには、ある意味では日本の農業経営の頑張りが映し出されている、こういうことがあるかと思います。つまり、野菜などのようにカロリーに比べて経済価値の高い、こういう品目ですとか、あるいは高品質で付加価値の高い例えば畜産物、こういった分野の頑張りが金額ベースの自給率をそれなりに高い水準に維持している力である、こういうふうに言うこともできるかと思います。

 したがいまして、経済活動としての食料生産の水準を評価するとすれば、金額ベースの自給率にももっと注意を払うべきだ、こういうふうに思うわけであります。こうした農業経営が活力を持続すること、また成長することは、ひいては人と農地、ちゃんとした技術を持った、また優良な農地を確保することにつながるわけでありますし、それが実は食料安全保障の観点に立った絶対的な食料自給力の確保にも結びつくと考えられるわけであります。

 自給率は、いわば市場経済のただ中に我々はいるわけでございますけれども、そんな中にあって、その市場経済が機能不全に陥った状態に備えを考えるという非常に難しい問題であるわけでありまして、まず、自給率の実態について国民の皆さんによく知っていただく、広く知っていただく、その後、やはり自給率の持ついろいろな側面について考えていただくということも大事ではないか、こう思います。

 以上で、私からの意見表明を終わらせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 次に、山田参考人にお願いいたします。

山田参考人 本日は、こういう形で意見を述べる機会をいただきまして、大変ありがとうございます。御礼を申し上げます。

 JA全中は、農政改革に臨むに当たりまして、五月にJAグループの組織討議の案をまとめまして、七月には基本的な考え方をまとめました。さらに、八月以降には具体的な提案につきまして討議を行って、十一月五日に具体的な政策提案をまとめて取り組んでいるところであります。

 私自身も、食料・農業・農村政策審議会企画部会の臨時委員として積極的に論議に参画してまいりました。しかしながら、議論の中心となる経営安定対策の対象について、極端に担い手を絞り込む方向が出されていることについて、委員である私としても内心じくじたるものがあるわけであります。確かに、一定の要件を備えた集落営農についても担い手とする方向が出されているわけであります。しかし、その要件の設定いかんでは地域の実態から離れてしまうことを心配しているところであります。

 しかし、我々JAグループは、農政改革の必要性は強く認識しておりまして、地域の実態を踏まえた政策展開を真摯に求めているのでありまして、そうした観点で、我々の意見の積み上げを踏まえましたポイントの五点について、お手元に差し上げております資料に沿いまして申し上げたいと存じます。

 まず第一点は、農政転換についてのJAグループの認識についてであります。

 我が国農業は、とりわけ水田農業において、担い手の高齢化と圧倒的な減少という状況にあり、担い手をどう確保するのかというのは、地域に根差す、そこに存在意義のありますJAにとりましても大きな課題であります。

 こうした危機的な状況の中で、地域の将来像として、現在、水田農業ビジョンを策定し、実態に即した担い手づくりの取り組みを展開しております。さらに、国際化の一層の進展に備えて、担い手の確保と、その経営所得を安定させる対策はどうしても必要であり、そのための農政転換は必要であります。

 そうした認識のもとに、JAグループは、担い手づくり取り組み方針を策定し、担い手の育成と農地の利用調整の専任体制を各全国のJAでつくるとともに、担い手のニーズにこたえた事業方式への転換を進めることにしております。

 また、JA、行政、関係団体等が一体となって、担い手づくりや、農地の利用集積を推進するワンフロア化や、組織再編による推進体制の整備を進めることが必要というふうに考えております。

 第二点は、JAグループが目指す農業構造改革の姿についてであります。

 我が国の、雨の多いアジア・モンスーン地域特有の、水田農業を中心とした農地の零細分散所有のもとでは、いかに日本型の農業構造改革を実現するかが最大の課題だと考えております。我が国農業は、アジア・モンスーンの東アジア諸国と同様の構造を持っているのでありまして、決して欧米型にはなり得ないということであります。

 そのためには、農地をどうするか、だれが担うのか、資源保全はどうかという、地域ごとの農業、農村の将来像を描くことが出発点であります。とりわけ、高度経済成長のもとで工場の地方分散、総兼業化が進み、農地の転用需要を背景とする資産保有化がさらに進む中では、農地をどう利用するかが最大の問題になってきております。

 そこで、集落、地域での合意形成のもとに、地域実態に即した多様かつ幅広い担い手へ農地を面的に利用集積していく、この方法しかないと考えます。とりわけ、水田農業において担い手がいない状況では、集落営農づくりは、担い手確保と農地の面的な利用集積を実現する上で最も有効な方法であります。

 といいますのは、例えば新潟県S市の認定農業者の場合、十五ヘクタールの経営面積、これは自作地四ヘクタール、借地十一ヘクタールでありますけれども、何と八十九筆の圃場が点在しているのであって、これでは決して効率的な経営とは言えないわけであります。どうしても意識的に集落で担い手をつくり上げ、意識的に集落の農地の利用をこれら担い手に面的に、団地的に集めていく取り組みが必要なのであります。

 このように、集落、地域を単位に農地を農地として利用する仕組みをつくり、農地の利用集積を進めるためには、地域実態に即した担い手を育成、確保していくことが必要であります。そのため、施策の対象となる担い手としては、地域で特定、明確化された意欲ある者や育成すべき者、さらには法人化前の集落営農や受託組織への参画等、一定の基準のもとで地域の実態に即した担い手を位置づける必要があると考えております。

 第三点は、新たな経営所得安定対策の確立の必要性についてであります。

 国際化の進展に対応した品目横断的な対策は、日本型の直接支払いとして、諸外国との生産条件の格差の是正を図るとともに、価格下落等に対しても担い手の経営所得が安定する仕組みとすることが必要であります。そして、その対象は、一定の基準のもとで地域の実態に即した担い手とするとともに、米の計画生産や、麦、大豆等の良品質、安定供給の確保に資するよう工夫を凝らすことが必要だと考えます。

 といいますのは、農水省が企画部会に提案している認定農業者と特定農業団体のみが対象ということになると、我々が考えますところ、五ないし六万戸程度しか対象にならず、まして規模の要件をさらにそれに加えるということになると、さらに対象が限定されたものになると見ております。

 第四点は、地域資源保全、環境保全型農業への新たな経営支援対策の必要性についてであります。

 担い手のみでは農地、水路、農道などの地域資源保全は困難であり、農村地域政策として、地域資源の維持と多面的機能の発揮に向けた新たな対策を品目横断的経営安定対策とともに措置することが必要であります。絞り込んだ担い手のみを対象にした経営安定対策といった産業政策だけでなく、地域の農家、非農家が共同で取り組む資源保全政策といった農村地域政策をパッケージとして実施することが必要であります。

 第五点は、自給率向上に向けた水田の利活用を図る戦略的な作物対策の必要性についてであります。

 米の計画生産が引き続き必要な中では、需要に即した麦、大豆の生産拡大に加えて、それ以外の作物を水田農業に定着させる対策がどうしても必要であります。水田での飼料作物、稲発酵粗飼料、飼料用米の生産拡大、水田への大家畜導入促進などを直接支払い等で支援する仕組みや、耕畜連携、バイオマスの利活用を進める政策の充実強化が必要であります。審議会は自給率目標の議論を先送りしているため、ややもすると、こうした大事な作物対策の議論がおろそかになっているのではないかと懸念しております。

 以上、五点について申し上げました。ありがとうございました。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 次に、森田参考人にお願いいたします。

森田参考人 国立国会図書館の森田でございます。

 当館では、平成十四年度に、主要国における緊急事態への対処について総合調査を行いました。その一環として、北欧を中心に、緊急時の食料供給確保策について現地調査を実施しています。本日の案件と関連のある事項の外国事情ということで、この調査の結果の概要を御報告いたします。

 お話しするのは、スウェーデン、ノルウェー、フィンランドとスイスについてですが、これらの国は、防衛政策の一環として、緊急時に食料供給を確保するための施策を重視してきたことで知られております。その制度と現状についてお話しします。

 まず、スウェーデンですが、この国の食料自給率は高く、二〇〇一年には八五%です。一九九九年以前は、緊急時への備えとして、農業生産の転換計画を持ち、また、農業者については可能な限り軍務免除としていました。

 加えて、総合防衛に関する議会決議に基づいて備蓄を行っておりました。備蓄物資の所有と管理は農業庁が行い、使用するのは、戦時に生産や輸送が妨げられる危険性がある場合とされておりました。備蓄の目的は、播種、収穫と牛乳生産を保証することでありまして、このために、窒素肥料、農薬及びたんぱく質飼料を備蓄していました。食料の備蓄は、南からの物資に依存している北部地域で行われ、孤立に備えて、加工を要しない食料、具体的には豆類、米、植物性油脂、缶詰肉を一カ月分備蓄しておりました。加えて、戦後も不足が予測される地域には、戦後数カ月分のパン用穀物、砂糖、ドライイースト、植物性油脂が蓄えられていました。

 備蓄の費用は、一九九四年の数値では、管理費が一億クローネ、購入費が一億クローネの計二億クローネ、約三十億円であったとのことです。予算は農業食料漁業省の所管でした。

 備蓄の量は、戦争があるとして、その継続期間や物資の輸入の可能性の程度を考慮して決められていました。冷戦終結により、一九九〇年代半ば以降は、スウェーデンに対する軍事的脅威は存在しなくなり、貿易が全般的に妨げられることはないとの判断になりました。そのため、現在は備蓄は行っておりません。コストの問題や一九九五年のEUへの加盟も備蓄廃止を決めた理由とされます。

 ただし、備蓄は、必要があれば再構築をするということになっておりますし、農業庁の中に食料供給確保のための部署は残っております。

 食料自給率については、今もスウェーデンは高いのですが、現在の考え方では、食料供給の基盤は、自給に置くのではなく、EU内の物資の自由な流通に置くとしております。

 次に、ノルウェーでございます。

 ノルウェーは、山がちで耕地が少なく、食料自給率は五〇%から五五%ほどです。緊急時の物資供給の根拠法は、供給及び民間防衛上の施策に関する法律です。戦争のほか、生産や供給が妨げられるような事態も緊急事態として位置づけられています。食料部門の所管については、計画の調整は貿易産業省が行い、農業食料省と漁業省が所管部門の政策に責任を持つことになっています。

 ノルウェーが冷戦終結以前に想定していた緊急事態というのは、具体的には、危機または戦時に数カ月間孤立、その後も生命維持に不可欠な物資の輸入が困難または不可能となるというものでした。このため、冷戦期には、食料の自給を目指すことが重視されておりました。緊急時のための農業生産の転換計画も策定していました。

 ノルウェーは、一九九四年から欧州経済地域に参加しております。また、冷戦の終結によって、自国が通常の輸入元から切り離される可能性は低くなったと判断するようになりました。食料生産については、自給の率よりも農業生産の潜在力の維持の方を重視するようになりました。現在は、農業生産の潜在力維持のために、農地の保全が重要であることを強調しております。

 備蓄については、二〇〇〇年までは、食用の小麦を六カ月分、飼料用穀物を三カ月分備蓄しておりました。以降は量を減じているようですけれども、北部地域につきましては、リスク分析を行いまして、その結果、十日分の非常用食料が必要であるとしております。ほかに、戦時には北部地域に食料の供給組織を設立することなども提案されているようです。

 次に、フィンランドです。

 フィンランドは、スウェーデンと同時にEUに加盟したのですが、EU加盟後も備蓄の制度を維持していますし、農業生産を自給可能な水準に維持することが必要であると考えています。食料自給率は八割程度あります。

 緊急時における、食料を含む必需物資の確保に関する法律は二つあります。一つは緊急事態準備法で、緊急事態において、我が国の内閣に相当する国家評議会が、物資の輸入、生産、流通、価格等を管理する権限について規定しています。ここでの緊急事態とは、武力攻撃等のほか、必須物資の輸入が困難な事態や、大規模災害などによって、公的機関の通常の権限によって処理ができない場合を言っています。もう一つの法律、供給保障法は、緊急時の物資の供給保障を定めています。備蓄についてもこの法律で規定されています。

 食料の供給を保障するための政策としては、必需食料品を国内生産すること、収穫期一期分の不作をカバーすること、一人一日当たり二千八百キロカロリーの需要を満たすこと、供給保障用に備蓄を行うこと等となっております。

 供給保障に関する事務をとり行うのは、貿易産業省の傘下の国家緊急供給庁という組織です。燃料等を含めて、必須物資全般の備蓄もここが所管しています。食料関係の備蓄の内容は、パン用穀物、穀物種子、牧草種子と生産資材となっております。これらは、消費の一年分に見合う量を備蓄しているということでございます。

 フィンランドでは、燃料等に課徴金というものを課しておりまして、この課徴金は供給保障基金に集められています。備蓄にかかる費用を含め、供給保障に関する事務の費用は、この供給保障基金で賄われています。

 最後に、スイスです。

 スイスの自給率は、六〇%程度です。二〇〇二年六月には、EUとの間の農産物貿易協定が発効しています。

 この国では、一九八〇年に国民投票で、戦時のみならず、平時の経済危機にも備えることとなりました。憲法では、軍事的脅威がある場合などや著しく物資が欠乏し経済活動で対処できない場合、国家は必須物資の供給を確保することとされています。また、国家経済供給法で、物資の供給の保障や備蓄を規定しています。

 スイスにも、必須物資全般の供給確保に関する業務を行う組織があります。国家経済供給機構というもので、連邦経済省傘下の組織です。

 緊急時の食料供給は、一人当たり二千三百キロカロリーを確保することと、食料が平等に分配されることを目標としています。これを可能にする手段として、緊急時に、国家は、供給面では輸入と備蓄食料の放出と国内生産という三つの手段で対処する一方、需要面にも配給や価格統制という手段で介入します。ただし、国家が介入を行うのは、国家的規模の危機に際して、通常の経済活動が機能しないときに限られます。また、最適な手段の選択についての意思決定を支援するため、コンピューターシステムが構築されています。

 食料の備蓄量に関しては、現在は、穀物、砂糖、食用油脂、米、コーヒーが、それぞれ四カ月分のようです。ほかに肥料の備蓄もあります。

 スイスの備蓄物資は、国家ではなく、民間企業が所有しています。備蓄義務のある物資を輸入する企業は、国との間で、一定期間一定量の物資を備蓄する契約を結ばないと、輸入ライセンスが得られません。企業には、備蓄を義務づけられるかわりに、備蓄の量に応じて、有利な利率で銀行から融資を受けられるなどの便宜が与えられます。また、国の融資保証も受けられます。

 さらに、国は、義務備蓄物資の輸入の際などに企業から課徴金を徴収しておりまして、これを保証基金というものに入れているのですが、この基金から企業に対して備蓄維持費が支払われています。一方、企業は、輸入の際に課された課徴金について、価格に転嫁することが認められておりますので、最終的には、これは消費者が負担している形になります。

 スイス当局の計算では、必須物資全体の備蓄維持のコストは、二〇〇二年の数値で約一億スイス・フラン、約九十億円とのことです。なお、スイスでは、備蓄物資は企業の所有物ですので、この数値には物資の購入費は含まれておりませんし、期限後の売買の損益というものも考慮した数値ではありません。

 このように、これらの国々では、緊急時の食料供給確保策は防衛政策の一環ですので、防衛政策の変化、緊急時のシナリオの変化を反映して、その内容や水準も変動し得ます。現在、どのように変化させるのか、あるいはさせないかという点については、国によって異なる判断をしています。

 以上、北欧三国とスイスについてお話ししました。報告を終わります。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島恭一君。

津島(恭)委員 おはようございます。

 私は、自由民主党の津島恭一でございますけれども、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、本日は、参考人各位におかれましては、本当にお忙しい中、こうして御専門の見地からいろいろな貴重な御意見をいただきましたことに対して、本当に厚く御礼を申し上げます。ありがとうございます。

 なお、本日は、時間も限られておりますので、今まさに食料・農業・農村政策審議会企画部会での議論に参画されております生源寺参考人と山田参考人、このお二人を中心といたしまして何点かお尋ねさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、農業そしてまた農村の重要性についてでございますけれども、農村は、国民の皆様への食料の安定供給を初め、国土、自然環境の保全そしてまた良好な景観の育成といった多面的な機能を提供している、こう思うのであります。このような農業、農村を健全な姿で発展させていくことは国の最も重要な役割である、このように考えるところであります。とりわけ、一億二千万人を超える国民の皆様に対しまして将来にわたって安全な食料を安定的に供給する、こういった食料安全保障の問題については、短期的な損得勘定ではなくて、長期的かつ戦略的な視野に立って考える必要がある、こう思うわけであります。

 特に、世界の食料需給については現在は比較的安定している、こういうふうに思うわけでありますが、将来につきましては、いささかいかがなものか。特に、二十一世紀の半ばには現在約六十億人の世界の人口が一・五倍に増大するというような試算、見込みもあるようであります。そしてまた、地球温暖化や砂漠化など、地球規模での変動が耕地面積そしてまた生産量に対して大きな影響をもたらす、そういう懸念があると思うのであります。またもう一つは、中国やアジア諸国の急速な経済発展に伴い、畜産物やその生産に必要な飼料穀物需給の世界的な規模での増大も予想されている、このように考えるところであります。こうした中で、中長期的には食料需給が非常に逼迫する、そういう可能性も指摘をされるのではないでしょうか。

 こうした中で、我が国への海外からの食料供給が今までどおりいかなくなる、そういった不測の事態も想定しながら、国の安全、国民生活の安全を見据えた長期的かつ戦略的な見地に立って、我が国の農業のあり方、これを考えることが国会やあるいは行政府の責任であろう、このように考えるところであります。

 私は、こうした農業や農村の問題は、国や国民生活の安全保障に深くかかわっている、こういうことがもっと国民の皆様に認識されるべき、これは本当に必要だと思っておるところであります。そしてまた、今回のこの基本計画の見直しに当たっても、農業、農村について国の安全保障の観点から検討していただくことが基本であるべきではないか、こう考えているところであります。

 このような意見について、実際に基本計画の検討に携わっておられます生源寺参考人と山田参考人はどのようにお考えでしょうか。御見解をそれぞれお示しいただければありがたいと思います。

 よろしくお願いします。

生源寺参考人 農業、農村の問題あるいは食料供給の問題が、国の安全保障あるいは国の成り立ちそのものにかかわる極めて重要な問題であるという御指摘につきましては、私も全く同感でございます。

 このような飽食の時代ではありますけれども、食料はエネルギーなんかと同様に絶対的な必需品でありますので、これについて、万が一の場合にも、この国に住んでいる人々が何とか安心して暮らしていけるような、こういう体制をつくっておくことが極めて大事だ、こう思います。また、先ほど森田参考人がおっしゃいましたように、その意味では、リアルで具体的なプログラムを持っているということが非常に重要であろう、こういうふうに思っております。

 それからもう一つ、万が一というようなことは、あるいは長期的にも食料の需給が逼迫し日本に十分な食料がやってこないということはあっては困るわけでございますけれども、同時に、私は、これはむしろ短期的にもと申し上げていいかと思いますけれども、かくかくしかじかの食料についてはどんなことがあっても国によって供給できる、こういうことがきちんと担保され、また、そのことが情報として人々の間に行き渡っているということが非常に大事だ、こう思います。つまり、これは一種の保険でありまして、保険に入っていることによって、社会がいわば安定的な意思決定を行い、また落ちついた行動をとることができる、こういう意味でも非常に大事だと思います。これはむしろ社会心理学の領域の問題かもしれません。

 それから、長期的ということになりますと、恐らく、世界の食料の地図についての長期の洞察といいますか見通しということが非常に大事だというふうに思っております。この点はいろいろな角度から考えなければいけないわけでございますけれども、あえて一つだけ申し上げますと、アジア、特に東アジアの国々につきまして、日本と、お米を主食として食べているというような意味での緩やかな共通性もあるということ、また成長のセンターであるということもありまして、実は日本と同じような悩みを抱え込むことになる可能性が高いというふうに思っております。食料安全保障、安全保障というような観点ということもありますので、ここは、東アジア、アジアの国々との食料あるいは食品、農業の交流を今後深めていくということが非常に大事ではないか、こう思っております。

 以上でございます。

山田参考人 津島先生おっしゃいましたとおりでありまして、農業や農村の問題は国や国民生活の安全保障に深くかかわっているということで、国民全体に認識されるべきものというふうにまさに考えるところであります。

 ところで、実態はしかし、我が国のようなアジア・モンスーンの農業について、それでは国民全体の将来像についてのイメージが共通的に共有されているかということになると、大丈夫なのかという不安を持っているところであります。我が国の場合は、これもアジアの国々と同じであります、一人当たり農業者の耕地面積は大変少ないわけでありまして、その点はヨーロッパ、アメリカの農業とは決定的に違うところであります。我が国の場合、農業の構造改革を考える場合は、担い手の問題と、農地の所有といいますか農地の利用の問題とは決して切り離せないわけであります。

 ところが、企画部会の議論におきましても若干そうでありますし、企画部会に対します農林水産省の提案も若干その嫌いがあるわけでありますが、農地の利用をどうするのかという議論を抜きにして、担い手を規模の大きい認定農業者や、それから大変、集落営農を認めるにしても、経営主体として明確である、かつ条件の厳しいものをつけているところがあるのではないかと思っております。地域の実態に基づく多様な担い手を対象とする主張が、ややもするとばらまきとして批判されることは非常に残念であります。まさに国民全体について、農業を理解する、合意するという取り組みを進めていくことが大変必要というふうに理解しております。

津島(恭)委員 今、まさに国民の皆さんに新たな認識を求めながらということ、本当に大切だと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、今回の基本計画見直しの重要なテーマであると思うのでありますが、我が国の農業の競争力をどう高めていくか、このことについて御質問したいと思うのであります。

 我が国の農業、農村は、海外からの農産物輸入の増加や食料自給率の低下など、大変な困難な状況にあると思います。一方でまた、今後ともWTO交渉などのグローバル化の動きは避けて通れないと思うのであります。こうした中で、今後とも日本農業が競争力を持って生き残っていくためには、値段の安い輸入作物にどう対応していくのか、このことを真剣に考える必要があると思うのであります。私は、国内農産物の安全、安心を消費者に強く訴えていくこと、これが一つのキーポイントになる、こう考えております。

 昨今、消費者の食の安全、安心に対する関心は非常に高くなっているわけでありますが、その背景には、食の安全性に対する不信感もあるわけであります。この不信感の源は、農産物や食品の生産や流通のプロセスがよく見えない、こういうことにあると思いますので、特にまた、農協や農業者が運営する野菜の直販所などに都会の消費者の皆さんが非常によく通われる、こういったことが一つの現象になっているのかな、こういう気もしているわけであります。

 また、こうした点では、消費者にとって身近な、国内でつくられている農産物は、輸入品に比べまして非常に有利性があると思うのであります。産地や生産方法、品質などの表示や、トレーサビリティーシステムを通じて消費者の目に見えるようにしていく、このことが、農薬の低減などに取り組む、消費者との直接の接触の機会をふやしていくことなど、コスト面以外での魅力を高め、我が国農産物の安全、安心、品質に対する消費者の信頼を得ていくことこそが日本の農業の進むべき道ではないでしょうか。

 こうした安全、安心、品質を一層高めることで輸入品に対抗していこうとする生産者の取り組みに対して、どのような政策的な対応や応援をしていくことが効果的であるのかということを、まず初めに生源寺参考人にお伺いをいたしたいと思うのであります。

生源寺参考人 日本の消費者、恐らくアジアもそういうところがあるかと思いますけれども、大変肥えた舌と高い鑑識眼を持っておりまして、これが日本の農業の大変な強い味方だというふうに思っております。この中には、もちろん安全、安心の問題も入っているわけであります。

 政策としてどういう応援ができるかということなのでありますけれども、いわばひいきの引き倒しになっては困るわけでありまして、これはやはり、まじめで誠実に取り組む方について、厳正なる第三者といいますか、そういう観点から、例えば認証なんかもそうでありますけれども、この人はこういう形のものをしているということをきちんと情報として提供していくような、こういうことが大事かというふうに思っております。

 それから、直売所等について、細いけれども消費者と生産者が直接結びつく、この道が随分たくさん出てきておりまして、これを応援するということも非常に大事かと思います。

 同時にやはり、現在も、大量の流通、消費、こういうチャネルのもとで消費しておられる方も随分多いわけであります。これは、そのままの形で日本に導入するかどうかは別といたしまして、一つやはり参考になるのは、ヨーロッパのユーレップギャップというふうに普通言われておりますけれども、小売業者の団体といいますか、意思を同じくする方々が農場での農業生産のあり方についていろいろなチェック項目をつくりまして、このチェック項目をクリアしたものだけを店頭に並べる、こういうような動きがございます。

 これは、ある意味では自発的なものでございますけれども、これだけいわば農の現場と食卓の距離が離れているときには、そういう形で、情報でつなぐ。あるいは、安全、安心の問題は、私はいずれ農場における生産環境の健全さということまで話は及んでいくと思いますので、そういった観点からも、一つの例としてヨーロッパのこういった取り組みなんかが参考になるのではないか、こう思っております。

津島(恭)委員 どうもありがとうございました。

 本当は、もう一つ、私は青森の出身でありますものですから、リンゴの輸出に関すること、いわゆるこれからは攻めの農業という部分で、海外に対して農産物を輸出するということについて山田参考人にもいろいろお聞きしたかったのですが、どうも時間がないようであります。

 総理がよく言われているのが、東京で千円のリンゴが北京では二千円で売れている、しかもよく売れている、こういうお話をよくされているのでありますが、まさに、これからの日本の農業は、守るだけではなくて海外に対して攻め入る、こういうことも必要かと思いますので、その点もまた、ひとつ参考人にもいろいろな意味でお力添えをいただきたいなということをお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、鮫島宗明君。

鮫島委員 民主党の鮫島宗明です。

 きょうは、生源寺先生、山田先生、森田先生、お忙しいところありがとうございます。

 民主党の方で特に国会図書館の森田参考人にお越しいただきましたが、どうも今まで余り備蓄に対して真剣に議論されたことが少ないのではないかと思いまして、備蓄の専門的な調査をなさっている方がどこにおられるかと思っていろいろ探したんですが、国会図書館の森田さん以外になかなか見つからなかったものですから、本来、国会図書館の調査員の方々は政策決定の場に直接参画しないことを建前にしていると思いますが、そういう意味では、こういう場に特別お越しいただいて、特段の感謝をしたいと思います。

 私は前から、備蓄の問題は、過剰対策という面と、それから非常時の対策という二つの面があるというふうに思っていまして、ところが、日本の備蓄制度というのは、過剰対策、調整保管という意味合いしかなくて、ほとんど非常時に対してどう対応するかというシナリオを持っていない。

 そのことが気になっていたものですから、実は、二年前のこの委員会で内閣府に聞いたことがあります。ちょうどそのころ、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置、武力攻撃事態法について議論されていたときでしたので、武力攻撃のときを想定しての備蓄をどう考えているのかという質問をしたら、当時の内閣官房内閣審議官の村田政府参考人が、これはちょうど二年前でしたけれども、国民保護法制が決まっていく中で非常時の備蓄の問題については決めたい、考えたいという答弁をいただいたんです。

 では、実際その法律が出てきて、中身がどうかと思って見ましたら、各行政機関の長は、必要な物資、食べ物も含めて備蓄しなければいけませんよという規定が百四十五条であります。国民の保護のための措置に必要な物資及び資材の備蓄というのを規定したところであるんですが、その次の百四十六条で、この備蓄は災害対策基本法に定められた備蓄と兼用してよろしいというふうになっていまして、結局、日本における非常時の備蓄は、災害対策基本法と兼用でやってくださいというふうになっています。ところが、では災害対策基本法でどういう備蓄が行われているかというと、全く都道府県によってばらばら、特に九州地区が手薄いのが目につきます。簡易トイレを一つも置いていないところもありますし、食料の保管量も百倍以上違う。

 そういう状況ですので、備蓄について、特に北欧の諸国がどうなっているかということできょうはお伺いしたわけですが、きょう御紹介いただいたスウェーデン、ノルウェー、フィンランド、スイスなどで、備蓄について、日本と同じように過剰対策という概念というのがこの備蓄の思想の中に入っているんでしょうか。森田参考人にお伺いします。

森田参考人 今回お話ししました緊急事態用の食料の国家備蓄というのは、通常の需給操作に組み入れているものではないようでございます。

 需給操作を行っているのは、EUでいいますと、介入在庫というものになります。供給が需要よりも多くなったときに、申し出によりまして、申し出がありますと、EUはあらかじめ決められた介入価格で小麦やトウモロコシを買い入れるということになっておりまして、これが介入在庫を構成いたします。供給が不足しますと、この介入在庫から売却する、こういうシステムになっております。これは、緊急事態用の国家備蓄とは別システムになっております。

鮫島委員 それが常識だと思いますね。調整保管というか、市場介入して価格を安定させるための備蓄といいますか、それのための保管と、いざというための保管は、当然別のように考えるべきだと思いますが、非常時に、それぞれの国がどういう考えで、あるいはどういう役所の所管で備蓄しているかという情報はなかなかとりにくいんじゃないかと私は思いますが、この備蓄情報というのは簡単に入手できるものなんでしょうか。感想というか実感で結構なんです。

森田参考人 防衛にかかわる問題ですので、公開される情報には限度があるというのが感想でございます。あちらがそれぞれ公開してもよいと判断した情報について出すということであって、例えば備蓄倉庫がどこに具体的に配備されているかなどという情報については、出したくない情報なのだろうなというような感じでございます。

鮫島委員 先ほどスウェーデンの例を御紹介いただいたときに、EUという新たな経済共同体ができ、また、冷戦が終わって緊張が緩和したので冷戦時のような備蓄の体制はしかなくなったと言いますが、むしろ今、世界的に見ると、この東アジアについては北欧以上にある種の緊張要因が存在していると思いますが、例えば韓国の備蓄制度なんかについては調べることができますでしょうか。

森田参考人 残念ながら、備蓄の制度があるということは存じているのですけれども、その具体的内容については、現在、存じ上げておりません。

鮫島委員 そういう意味では、非常時の備蓄というのはある種の国家機密ですから大変調べにくいだろうと思いますが、私が調べた範囲では、韓国は現在およそ百十六万トンを備蓄している。ただ、韓国も、これから国際化に対応して、減反政策とか生産調整とかいろいろなシナリオを発動する時期に入っていますが、それの一環で、二〇〇五年からは公共備蓄制という新たな制度を導入して、現在と同じような約百二十万トン規模の備蓄を続けると。これは調整保管という機能と非常時対応という二つの機能を持たせるようですが、この百十六万トンという数字、韓国の現在の人口は四千七百万人ですから、一億二千万人に換算するとちょうど三百万トンになります。

 私は日本も、民主党はかねてから、過剰対策という意味もあり、また、いざというときの安全のためもあって、最低備蓄は三百万トン持つべきだというのが我が党の主張で、与党の百万トンという主張と大きく食い違っているわけですが。安心してむしろ米がつくれる、必要な量、三百万トンの備蓄量、これは二回転で百五十万トンとしてもいいですが、これを足すだけで本当は大分米の生産調整の縛りが楽になるんじゃないかという思いもあって、私どもはこういう数字を出しているわけです。

 森田さん、ありがとうございました。

 次に、時間も限られていますので、全中の山田参考人に若干きつい質問をいたします。

 多分、きょうが、全農にとって、組合貿易、カナダ産黒豚を鹿児島産の黒豚と偽装して売ったということに対して業務改善命令が農水省から出ていて、十一月三十日までに回答しろ、特に、責任者の処分についてどう考えるのかという指示が来ていると思いますが、きょう、どういう回答の内容になるんでしょうか。

山田参考人 先生おっしゃいますとおり、農水省の経営局長に対します報告は本日行うと伺っております。その際、責任ある役職員について厳正な処分を行うということで伺っております。

 なお、処分内容につきましては全農役員より事前に相談を受けておりまして、内容については承知しておるところであります。

鮫島委員 つまり、具体的な処分を行うということは聞いているけれども、固有名詞にまでは言及しないということだと思います。

 実は、私はやはりこの委員会の中で、ちょうど二年前に、そのときも鶏肉の偽装の問題があって、同じように質問させていただいたことがあります。ところが、ずっとその後も、例えば平成十五年一月十六日はせん茶の製造販売の偽装表示で全農福岡県本部が業務改善命令を出されましたし、十五年七月十七日には精米の不正表示で全農パールライス東日本株式会社がやはり業務改善命令を受けて、そのたびごとに、責任ある役職者の処分というのが指示されていると思いますが、この二件についても、責任ある役職者の処分というのは適正に行われたんでしょうか。

山田参考人 過去、何度かにわたりまして、先生おっしゃいますように、偽装表示の問題を起こしておりまして、同じJAグループの仲間としましても、その点については全く弁解のしようがないわけであります。

 その都度、どういう内容であるか、それから、どこに問題があるのかということを聞いておりまして、責任の追及並びに処分につきましても、その都度それなりの措置がなされたものということで承知しております。

鮫島委員 何度も、とにかくこの二年ぐらいで六回ほど業務改善命令が出されて、そのたびごとに、モラルの回復に努めますとか、これからこういうことをいたしませんと言いながら、いまだにその体質が変わっていない。これは多分もっと根源的な問題が恐らくあるんだろうと思いますが、全農側のいつもの言い方は、やはり全農も競争原理の中にいる以上、それぞれの分野分野で、あるいは全農が出資している会社が営業努力をしないといけない、そのことに走り過ぎて、ついコンプライアンスがなおざりになったというような言いわけをしますが、大体、コンプライアンスというような言い方をして、組合員の方がぴんとくるのかどうか私は疑問に思います。

 全農が出資している、いわゆる全農の子会社、孫会社、関連会社、二百十四社、二年前にありましたが、農協法の第八条で、農業協同組合は営利活動を行ってはいけないというふうに決まっていまして、ところが、全農が出資する二百十四社が営利に走る、そのことで偽装表示が繰り返される。したがって、一つのポイントは、連結子会社、これとの連結決算をしない限りこういうのは断ち切れないのではないかということを二年前に申し上げたら、十五年末までにそれはいたしますという回答を当時の堀役員からいただいているんですが、それはちゃんとできたんでしょうか。

山田参考人 全農とも確認しておりますが、平成十五年から連結決算制度を導入するということにしておりましたが、全農及びその子会社の十五年度決算が確定したのが平成十六年八月でありますので、その時点で連結決算を実施し、かつ、財務諸表、貸借対照表、それから損益計算書、剰余金計算書等につきまして実施しました。

 なお、貸借対照表と連結損益計算書はホームページに掲載するということをやっておりまして、その意味では、先生御指摘いただいたとおり、実施しているところであります。

鮫島委員 済みません。時間がないので、もうあと一問だけにしますが、生源寺先生のお話、それから山田参考人のお話も含めて、担い手問題というのが大変重視されていると思います。

 私は、山田参考人のきょうお配りしたメモとさっきの御発言、あるいは食料・農業・農村基本計画の見直しについての学識経験者等の見解の中で述べられている内容が若干違うような気がしまして、つまり、きょうの担い手ばかりに集中するのはよろしくない、あすの担い手というのをもっと重視すべきじゃないかと言っておられるような気がして、そういう意味では生源寺先生と僕は余り違わないんじゃないかと思っています。

 私どもも、それぞれの政策担当の、自民党で言う部会長はあすの大臣という言い方をしていて、きょうの大臣も大事だけれども、あすの大臣も大事だ。そういう意味では、農業の世界で、きょうの担い手も大事でしょうが、あすの担い手も大事なはず。そのあすの担い手の一つとして、かねてから株式会社の農業参入も認めたらどうかということが議論になっていると思います。

 最後に、生源寺先生、株式会社の農業参入、特区では一部、農地取得は別ですが、農地の利用ということに関しては認められているようですが、その株式会社の農業への参入ということについて生源寺先生はどんなふうにお考えなんでしょうか。

山岡委員長 生源寺参考人。簡単にお願いします。

生源寺参考人 随分神学論争的な議論が続いてきたわけでありますけれども、特に特区の試みもあって、ここのところ、いわばかなり実態に即した議論ができるようになっているというふうに思っております。私自身は、特区の試みを全国化するということに関しては、これは差し支えないのではないか、こういう判断を今持っております。

 これは非常にいろいろな教訓をもたらしておりまして、いわば特区の場合には、それぞれの制度の担い手といいますか、役場等々も含めてでありますけれども、大変緊張感を持って農地制度を運用しているわけであります。それから、地域がいわば主導権といいますかイニシアチブを持って企業の力をかりる、こういうようなこともあるわけであります。また、食品産業、あるいは建設もそうでありますけれども、もともと農業と非常に親和性の高い、こういう産業と農業が結びつくという点でも意味があるだろう、こういうふうに思っております。

 所有権の問題につきましては、いかなる所有権かということもあるわけでありますけれども、私自身は、現在のところ、リースという形でいいだろうと。ただ、問題はリースの場合、安定的な農業経営が可能かどうかということで、私の冒頭の意見表明の中でも申し上げましたけれども、ここは幾つか課題があるのではないか、こう思っております。

鮫島委員 どうも済みません、ちょっと時間を延長しまして。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、白保台一君。

白保委員 きょうは、生源寺参考人、山田参考人、森田参考人、大変お忙しい中に意見陳述を行っていただきまして、ありがとうございます。

 まず、生源寺参考人、山田参考人におかれましては、本年一月から、食料・農業・農村基本計画の見直しに関する同審議会の企画部会において御熱心に御論議をいただいておりまして、大変敬意を表しておるところでございます。また、森田参考人も、先ほどから御意見を述べておられますが、私どもたびたび国会図書館に資料をお願いしたりしてお世話になっておりまして、ありがとうございます。

 私どもも、党の部会などで、朝早くから農水省の皆さん方においでいただいて、毎週毎週、この食料・農業・農村基本計画の企画部会の皆さん方の御議論等も踏まえて勉強させていただいておるところでございますが、聞いておる議員というのは、日本は南北に長いわけでありまして、南北というか北東から南西というか、そういう感じのところですから、それぞれに自分が住んでいるところの農業の形態というのは違いますから、農業に対するイメージというのも随分違うな、そういうような感じを僕らも受けているわけであります。

 先ほどもアジア・モンスーン地帯の気候の米づくりというお話がございましたが、そういう中で、日本は高度経済成長時代からずっと農業の人口というのは減少する傾向にあるわけですね。今はもう、最近ではWTOだとかFTAだとか、そういうことで欧米型の農業経営のスタイルに切りかえていくんじゃないか、日本の多くの零細農家や兼業農家は、そういうふうに言われてもどうなのかなということで、農政不信に対するものもあるんじゃないか、こういうふうな受けとめ方もしております。

 そこで、生源寺参考人、そして山田参考人にお尋ねしたいと思いますが、今後の農政改革で大きなポイントである担い手ですね、この担い手に対する直接支払い制度の導入についてはまだまだ議論があるところだ、こういうふうに思います。一応、効率的かつ安定的な農業経営に取り組む農業者が担い手ということですが、年収五百三十万だとかあるいはまた四ヘクタールだとか、そういう細かい例示が出てくると、例えば私などは沖縄ですから、地元の離島の農家なんか、こういった人たちを見ていますと、これは意欲を失ってしまうんじゃないのかな。あるいはまた、その島の伝統的な文化をどう継承していくのかだとか、国土保全はどうなるのかとか、こういったことも含めていろいろと考えていかざるを得ないというふうに思うわけです。

 また、山田参考人は、幅広い多様な担い手を支援すべきだとの主張を展開されておりますし、先ほども非常にまとめられたポイントをしっかりと意見を述べていただいたわけでございますが、日本の農業構造の改革がなされるために、担い手たる農業者を考える上でどのような観点が最も重要だ、このようにお考えになっておるのか。

 まず生源寺参考人、そしてまた山田参考人と、順番にお答えをお願いしたいと思います。

生源寺参考人 南北といいますか、非常に多様な農業があるということでありますので、これは品目も違えば、恐らく地域によっては個別の担い手もあれば集落営農型の担い手もあるということで、私自身は、将来行き着く先というのは、望ましい姿というのは比較的似通ったものになるのではないかと思いますけれども、そのルートが違う、こういうことかなというふうに思っております。

 それから、担い手あるいは経営安定対策の対象につきましては、役所から例示が出ていて、これは一つの重要な参考事項として議論を進めているわけでありますけれども、特に単純に面積で割り切るというようなことがいいかどうかということ、日本の場合には小さな面積で収益性の高いものをつくるということで価値の高い農業を行っているという面がありますので、余り画一的にする必要はないのではないかと私自身は思っております。

 ただ、全く、自分が手を挙げた方がすべて担い手である、こういう形にしていいかどうかということに関しては、やすきに流れるということがなきにしもあらずということもありますので、ここはやはり少し考える必要があると思いますし、私も申し上げましたけれども、やはり国民に利益がきちんと還元される、したがって、そういう支援を受けることについても農業者が胸を張ってそれに応じることができるような、そういう政策にしていく必要があるというふうに思っております。

 それから、パッケージでということは、山田参考人もおっしゃいましたけれども、地域資源の保全策もそうでありますけれども、農村政策あるいは農業環境政策、それぞれの目的があるわけでございますので、すべての農家の方に行き渡る政策ももちろんございます、あるいは農家以外の方も含めてということもあるわけでございます。それから、農業に家計の多くを依存している方については、そういう意味では非常に価格の振れに対しては弱いわけでありますので、そこに応援する。こういうような形で、政策ごとに対象をきちんと切り分けていく。ただ、全体としてはこれからの農業、農村にとってバランスのよい政策が必要だ、こういうふうに思っております。

 それから、私自身、欧米型というのか、あるいは極端に言いますと新大陸型といいますか、こういった農業に日本の農村がなるということに関しては、それが仮に純技術的にできることであるとしても、望ましいことではないと思っております。

山田参考人 将来の我が国の農業像についてのイメージがどうも共通していないのではないかということを、津島先生へのお話の中でも私申し上げたところであります。それがどうしてもあるものですから、それでは育成すべき担い手をどう選ぼうかというときも、大変厳しい内容になってしまっているのではないかというふうに思っております。

 白保先生が今おっしゃいましたように、四ヘクタールだったり、それから五百三十万円を実現するという絵のつくり方にしてもそうでありますが、実は、四ヘクタールの基準についてでありますが、現在実行しております米政策改革の中で担い手経営安定対策の要件がまさにその四ヘクタールであります。さらに、集落営農については二十ヘクタール規模ということになっておりますけれども、実際的にそれを実現できているのは、何と三万人ないしは集落営農では二百程度にしかすぎないわけであります。

 もちろん、この点について、我々の努力がもっと必要だということはよく承知しておるわけでありますが、しかし、それにしても三万人と二百というのは極端に少ないというふうに思っておりまして、そういう面では、それぞれ地域実態があるわけですから、地域の中で担い手をやはり特定していく、それを支えていくというスタート台にぜひしていただきたいというふうに考えております。

白保委員 御意見を伺うところですから私が余り意見を言ってもいけないのですが、やはりそれぞれの地域がしっかりと意欲を持ってやっていけるような方法というのは必要であろう、こういうふうに常々思っておるわけでございます。

 生源寺参考人にお尋ねいたしますが、現行の基本計画の中心的なテーマは、食料自給率の向上ということだったと思います。ここ三十年ほどの間に四〇%にまで低下した日本の食料自給率は、新しい基本計画による農業構造改革で大きく改善されるというようにお考えなのかどうかということ。また、もう少し話はそれますが、中国が物すごいスピードで経済的に発展しています。それが将来食料輸入国に転じるような場合に、我が国への影響というのはどのようなものがあるとお考えなのか。この二つをお答えいただければと思います。

生源寺参考人 第一点目でございますけれども、農業の構造改革の焦点は、結局水田農業でございます。水田農業につきまして、構造改革がきちんと進捗し、担い手がきちんとした形で耕作するということになれば、現在平たん部でも広がっている耕作放棄地等の解消というようなことを通じて、食料の自給力といいますか率といいますか、こういった点での改善といいますか、そういう道が開けていく、こういうふうに考えております。そのためにも、農業の構造をきちんと改革するということが大事だ、こういうふうに思っております。

 もう一つの中国の問題でございますけれども、これは、私どもの国の十倍のオーダーの人がいるわけでありますので、その動向については非常に注意深く見守っていく必要があるか、こういうふうに思っております。

 ただ、これはなかなか複雑でございまして、日本にとって、特に沿岸部等につきましては、日本の農産物の大変よいお客さんになっていく、こういう可能性があるわけでございます。逆に、世界の全体の流れでいいますと、穀物の輸入に関しては競合する形で生じてくるということがありますので、一概にこうだということはなかなか言いにくい面があるかと思います。こういう側面、ああいう側面、これをきちんと見きわめながらそれに準備をしておくということが非常に大事かと思います。

白保委員 さて、山田参考人にお尋ねいたしますが、都市農業についてお伺いしたいと思います。

 都市住民の最近の傾向としまして、特に安全で安心な食品を食べたい、あるいは新鮮な農産物を食べたいというニーズがあります。都市直近の農業、いわゆる都市農業が注目されつつあるわけですね。都市農業には、いやしの空間だとか、あるいは景観だとか環境保全という多面的機能もまた期待をされているわけであります。また、市民農園や定年後や週末の農業という、農地に対するニーズも強くあります。

 先般も、私も三多摩の方へ行って都市農業に関係する方とお話し合いもしてきたわけですが、そういった中で、担い手に農地を集積して国際競争に強い農家を育てていこうとする農業構造改革とは、若干この都市農業というのは次元も方向性も違うものであるかもしれませんが、この分野について山田参考人はどのようなお考えをお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。

山田参考人 白保先生御指摘のとおりでありまして、都市農業はまさに消費者との一番の接点であるわけでありますから、そういう面では、それなりにしっかりやっているというふうに受けとめてはおります。しかし、遊休地をやはり出していたりするといかぬわけでありますし、さらにまた、セイタカアワダチソウが繁茂しているみたいな話は絶対いけないというふうに思っておりまして、そうした取り組みをさらにしっかりやっていきたいというふうに思っておるところであります。

 また、実は我々JAグループ、三つの共生ということで、消費者との共生、次世代との共生、アジアとの共生というのを打ち出して取り組んでいるわけでありますが、消費者との共生やそれから次世代との共生と関連しまして、先生御指摘のありました市民農園や学童農園それから食育等の取り組み、そういうのを都市農業の一環としてもきっちり推進していけるというふうにしたいと思います。

 ただ、残念ながら、都市農業につきましては、宅地並みというみなし課税が適用されていたり、要は高度経済成長期の農地の転用や宅地化路線がそのまままだ引き続き政策として踏襲されている部分があるのではないかというふうに受けとめておりまして、そういう点についての改善もぜひ必要というふうに受けとめております。

白保委員 時間もあと一分になりましたので、今の都市農業の問題について、最後に出てまいりました、今の最後の部分はやはりきっちりと何らかの方策をとっていかないと、これだけ多くの都市農業に対するニーズがあるにもかかわらず、非常に整理がなされていないという部分もありますので、私どももそのことについてはしっかりと検討し、また改善をしていかなきゃならない、こういうことだけを申し上げて、きょうは三人の参考人の皆さん方、大変御苦労さまでございました。森田さんには質問ございませんでしたが、またいろいろと資料の面でお世話になると思います。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、大変忙しい中、御三人の参考人の皆さんの出席をいただき、また貴重な御意見を拝聴させていただきました。本当にありがとうございました。

 きょうは、限られた時間ですので、JAの山田参考人を中心に、担い手問題に重点を置いて伺いたいと思っております。

 JAグループから、ことし九月に発表された新たな基本計画の策定に向けた討議検討資料をいただいております。また、先日も、十一月に発表された具体策、そしてきょうも資料をいただきました。その中で言われているのが、多様かつ幅広い担い手の確保という提案でございますが、先ほど来担い手に対しての意見がいろいろ言われているわけですけれども、政府案との、政府が今基本計画の見直しの中で提起をしている担い手との具体的な違いについて、ぜひまず伺っておきたいと思います。

山田参考人 国の方は、将来の我が国の農業を担う層として構造改革の展望等を出しておるわけでありまして、その一環として提案されているのが五百三十万円の所得であったり、それを担うことのできる例えば都府県の一年二作のところでは十ヘクタール、さらに集落営農であれば四十ヘクタールという、単なる割り算でありますが、そうしたおよその規模を打ち出しているわけであります。それに向かうための一つの育成すべき担い手として、四ヘクタールの考え方が米政策改革の取り組みの中で出されているところであります。

 こうした四ヘクタールの基準にしましても、地域の実態を踏まえますと大変厳しいというふうに考えておりまして、上から四ヘクタールであるとか十ヘクタールであるとかという基準が出てくるのではなくて、地域の中でこの担い手に担ってもらおう、それから地域の中で手を挙げてもらって意欲のある人に担ってもらおう、さらに集落営農等に参加、参画していこう、そうした意欲とか参画、それを基準にする取り組みにしていけないか、こんなふうに考えているところであります。

高橋委員 ありがとうございます。

 我々も今、上からではなく地域から出てくる担い手ということに着目して、全国的な調査や提案などをまとめているところであります。

 そこに行く前に、まず、さっきお話がありました所得の目安の考え方ですよね。政府は、他産業並みの労働時間で他産業の従事者と遜色のない所得を確保するということで、効率的かつ安定的な農業経営を図っていけば五百三十万くらいの所得になるというふうなことを一つの目安として提起をしているわけです。

 ただ、これは、例えば現行でいうと米価一万六千円がベースになっていると言われているんですけれども、現実には、関税の引き下げによる影響など、一層の下落が予想されるのではないか。そういう中で、こうした所得を維持するということをどう見るかということなんですね。つまりは、どんどん下がっていってもしようがないよという立場か、あるいは強力に担い手に集中する中で十分可能なのだというふうに見ているのか。農協から見て、この他産業並みの所得の維持という考え方、どのようにそれができると思っているのか、御意見をぜひ伺いたいと思います。

山田参考人 二点あろうかというふうに考えております。

 第一点は、将来地域の中で農業を担っていこうとする担い手は、やはりどうしても所得が必要であります。所得なしには到底担っていけないわけでありまして、そういう意味では、五百三十万円という金額も、一つの大きな目安といいますか基準であろうかというふうに思います。そうした農業経営をつくるためには、一つは、そうした担い手に農地をしっかり集めていく、農地の利用を集めていくということでありまして、その集め方として、我々は、集落における利用の集積が一番大事、その具体化としての集落営農を打ち出しているところであります。

 第二点は、そういいましても、先生御指摘のように、米価も変動があります。計画生産がうまくいかなければ直ちに価格が下がっていくということでありますし、麦についても大豆につきましても、豊凶によりまして大きな変動があります。そうした部分につきまして、内外価格差を補てんする、もう一つは価格全体の変動を緩和する、そうした直接支払いといいますか補てんの仕組みが必要ということでありまして、その補てんの仕組みのあり方を企画部会で検討し、詰めていただけるものというふうに期待しております。

高橋委員 ありがとうございます。

 この補てんのあり方というのが今後の論点になってくるかなと思うんですけれども、中山間直接支払い制度が、来年度も継続に向けて農水省としても概算要求をしているところでありますが、全国から大きな要望もあって、歓迎されていると思っております。

 この点でも、先ほどお話しくださった、地域から出て担い手になろうという取り組み、集落の取り組みなど、いろいろな取り組みが直接支払い制度を生かして全国で始まっていると思うんですが、JAとしてこの中山間直接支払い制度のメリットを挙げるとすればどのようなことが考えられるか、御紹介いただきたいと思います。

山田参考人 この仕組みで一番いいというふうに思いますのは、過疎化している集落の中で、集落の話し合いの回数が、直接支払いの協定締結前に比べまして、締結後話し合いが飛躍的に進んでいるということであります。この結果としまして、例えば耕作放棄地の発生を防止するとか、それから全体で農道や水路等の資源管理をやるとかという形の取り組みが具体化してきておるところでありまして、この中山間地直接支払い制度の意義は大変大きいということでとらえております。

高橋委員 ありがとうございます。

 それで、この点については意義が大変大きいということで同じ気持ちでいつもおるんですけれども、例えば政府の財政審などにおいても、中山間直接支払い制度においても例えば担い手の明確化だとか絞り込みの要件ということが今話題になってきているわけですけれども、その点についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

山田参考人 制度の中で十分な議論を行った上で見直しが必要だという部分は、国民全体の負担で実施しておる事業でもありますから、必要な見直しは行っていいだろうというふうに思っておりますが、今議論されております将来の担い手をそのまま中山間地に適用するなんということは到底不可能なわけでありますから、中山間地、平場、作物、それから地域によりまして基準が当然多様に設定されてしかるべきだ、そうした地域の自主性を生かす直接支払いの仕組みをどうしても維持していただきたい、こんなふうに考えています。

高橋委員 ありがとうございます。

 一方、規模拡大を進めてきた農家の側からも、いわゆるプロ農家あるいは担い手農家と称される方たちなんでしょうけれども、それ自体が大変だという声も随分出ております。

 先日は長野の方に行ってまいりましたけれども、確かに規模は一定の拡大をしたんですけれども、引き受けた土地が地域的にちょっとばらばらということもこれありということがあるんですけれども、それだけではなくて、耕作機械が非常に高いことや、農薬や肥料やさまざまな資材費などを合わせるとやはり立ち行かなくなっていくのが現実なんだと、そういう規模拡大で逆に出てくる弊害などが指摘もされておりました。

 こうした点で、大規模農家によっての、規模拡大を進めたことによってのデメリットというのもまた認めることがあると思いますけれども、どのようなことがあるというふうにお考えか、伺いたいと思います。

山田参考人 我々も、法人化し、かつ大規模化した農家から悲鳴のような形で、経営が維持できない、負債がかさんできているという声を聞くところであります。

 一番課題になりますのは、農地を一元的、団地的に利用できる仕組み、そして、そのことによってコストを引き下げることが可能になるわけだし、さらに必要な規模拡大が可能になるということでありますから、担い手に対して農地をもっと安く、そして利用しやすく集積できる仕組み、これがやはりどうしても必要になっていくというふうに思っております。

 それから二点目につきましては、米の政策改革の中で担い手経営安定対策の取り組みができておるわけでありますが、先ほど申し上げましたように、認定農家で三万戸、さらに集落型経営体で約二百でしかないわけでありまして、この仕組みの魅力が果たして十分あるのか、そうした担い手の経営を支えるだけの仕組みになっているのかということについて、我々としても問題意識があります。今議論しております直接支払いの仕組みが、より充実したものとして、かつ地域の実態に合う形で実現していくこと、それが早急に今求められるというふうに考えております。

高橋委員 ありがとうございます。大変貴重な御意見をいただいたと思います。

 私は、今、中山間での取り組み、また大規模農家でもいろいろな悲鳴が上がっているというお言葉がありましたけれども、困難を抱えているということが紹介されたと思うんですね。そうしたことを加味して、やはり一定規模を拡大して頑張ってやっていきたいという人もいる、同時に、集落で力を合わせて、条件不利地であっても頑張る人もいる、そうした方たちが全体として日本の生産力を支え、自給率を高めていく、そういう方向に向かっていくことが望ましいのではないのかなと思っているんです。

 最後に一言伺いたいと思うんですが、やはり日本の生産力あるいは土地、この圧倒的部分を支えているのが兼業農家であり零細農家であると思うんです。これらの農家が支援の対象からもし完全に外れていくとすれば、現行生産力が維持、拡充できるだろうか、あるいは規模拡大や土地の集積が進んでいけば、むしろ条件不利地が残り、耕作放棄地が残るという懸念があるんですけれども、これに対する御意見を伺いたいと思います。

山田参考人 先生おっしゃいますように、そうした兼業農家や零細農家が対象から外れるということになった場合には、やはり間違いなく耕作放棄地が発生しやすくなったりする心配があります。ですから、こうした兼業農家やそれから零細農家が喜んで、かつ意欲的に集落営農に参加したり、さらに受託組織に参加したりする中で、引き続き村の農業経営を、村全体の農業経営、集落全体の経営を維持していくという観点での政策が何としてでも必要というふうに考えております。

高橋委員 終わります。どうもありがとうございました。

山岡委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 参考人の皆さんには、お忙しいところ貴重な時間を割いていただきまして、ありがとうございます。

 まず最初に生源寺先生にお伺いします。

 基本計画の見直しということで五年間の農政の総括というのがあったと思うんですが、それを昨年の主要三課題ということで提起されたわけですが、この間の経過を見ますと、五年間の中で、依然として自給率は低下を続けている、あるいは耕作放棄地もふえている、そして農家の高齢化もどんどん進んでいるというふうな現状ですね。根本的な解決がされていないわけですよ。そうした中で、今のWTOあるいはFTAということでのグローバル化にどう対応していくのかということのみが先行して、この大規模化あるいは効率化ということが、これだけが何か先行しているような議論に私は感じるんです。

 そういう意味で、この五年間の農政の評価といいますか、そうした点、そして、今回の中間取りまとめが出ましたけれども、先ほど先生が言われました自給力ということで、農家の戸数とか面積とか、そういうふうな要件が大事だと指摘されましたけれども、そうした自給力の問題も含めて、この取りまとめがどういう方向性を持っていくのか、そうした点についてお伺いします。

生源寺参考人 第一点目でございますけれども、特に、大臣の主要三課題の提示されましたのが昨年の八月という、国際的にもかなりデリケートな時期であったということもありまして、グローバル化への対応という面が前面に出た、こういう面もあったかと思いますけれども、少なくとも私の気持ちといたしましては、国境措置がどういう形になろうが、実は日本の農業の危機というのはいわば内部において深刻であって、そのために打つべき手を早く打つ。もちろん、国境措置の組みかえの可能性ということもございますので、これは交渉事で確たることは言えないわけでございますけれども、どんなことがあってもこういう措置は準備をしておく。こういうことによっていわば先行き不安を払拭する、こういうことも含めて早く打つべき手を打つ必要がある、こういう中で現在見直しをしている。本来、第一回目の基本計画のときにもう少し新しい基本法に沿った施策の具体化を全面的に行うことができればよかったということかもしれません。

 それから、二番目の点でございますけれども、今後自給率の目標につきましては、これは法定されているということもあります、また非常に大事なことでありますので、品目別に、少なくともこの五年間の状況を検証しながら目標を三月末をめどに定めていく、こういうことになろうかと思います。その中では、例えば日本の農地を広く使うとすれば、えさの問題、これは環境の問題も含めてでございますけれども、こういったこと等について具体的に詰めていくことになろうかと思います。

 なお、農業の構造改革というのは、要は農業に意欲を持ってやる人にきちんとした舞台を提供するという意味でありますから、実はそれが一番の自給力の向上の手だてであって、私ども、今議員はこの五年間というふうにおっしゃいました、それもあるわけでございますけれども、私があえて申し上げるならば、この三十年間の農業、農村の変化がある意味では行き着くところまで行き着きつつあって、ここは、いわば起死回生、いい意味での開き直りも必要な時期に来ている、こんなふうに感じております。

山本(喜)委員 確かに三十年間の中での農業の深刻な危機の状況ということは私もわかるわけでございますが、ただ、日本の農業の特殊性、ヨーロッパ、欧米並みにはなり得ないという現状があるわけでございます。特に中山間地、日本の農地は約七割というふうに言われております。そうした中で、担い手も含めていろいろ問題がありますし、単純な規模拡大ということにもいかないと思います。

 そして、これを株式会社ということで展開していくという方向も出されておりますが、しかしながら、先ほど来、四十万戸の農家に日本の農地の六割を集約していくということがこの基本計画のときに前提にあったわけですが、そうしたことが果たして今の改革で実行可能なのかどうか、それとも四十万戸に六割ということも見直しがされていくのかどうか、そうした点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

生源寺参考人 構造展望あるいは経営展望はこの基本計画の重要な部分でございますので、今回、基本計画を変更、見直しをするということでありますので、もし必要があれば企画部会の議論を踏まえて、これについても変更すべきだ、こういう意見を申し上げるということはあるかと思います。

山本(喜)委員 次に、JAの山田参考人にお伺いするわけでございますけれども、先ほど来、担い手の問題がいろいろ出されております。私が心配するのは、私も中山間地で農業をしておりますが、先ほど来言われている三万戸とか、水田における今の現状、私も集落営農をやっていてことしもコンバインに乗りましたが、三十五軒の農家から委託を受けても十六ヘクタールにしかならないというふうな現状があるわけです。そうした中で担い手の絞り込みということが言われていますが、果たしてこれで中山間地の農業をどのように展望しているのか。

 それから、資源ですね、多面的機能ということで、これがやはり中山間地が一番ここで言われていることだと思うんですよ。そうした意味で、家族農業あるいは兼業農家、こうした方々を含めて集落が維持されている。そして、水路の管理とかあるいは農道の管理とかを含めて、集落全体でやっているわけです。そうした中で、担い手の絞り込みということが上から機械的に示されていくということで、果たしてこの多面的機能の維持ということが可能と考えているのかどうか。

 こうした点、山田先生と、生源寺先生にもひとつよろしくお願いします。

山田参考人 先生御心配されますとおり、とりわけ中山間地におきまして集落の規模が大変小さいわけであります。そこへ、十ヘクタールであるとか四ヘクタールであるとか、集落営農でやっても二十ヘクタールであるとかという基準を適用しても、全く実態に合わないことは明らかであります。全国の水田集落、十二万ありますが、そのうち、水田面積が十ヘクタール未満の集落は五万一千あるわけでありまして、全体の四三%がそういう面では十ヘクタール未満の集落であるわけであります。

 そうした意味合いからいたしましても、集落の実態、地域の実態に合った要件が設定されるべきだというふうに考えておりまして、そういう面では、地域の話し合いの中で、これを対象にしていこう、この人を対象にしていこうという取り組みが何としても必要だというふうに考えています。

生源寺参考人 二〇〇〇年度から始まった中山間地域の直接支払い制度につきましても、これは目的が、農地をあるいは資源をきちんと面的に保全するということでありますので、当然のことながら、ヨーロッパなんかとは違いまして、小規模農家も含めて対象にしている、こういうことでございます。したがいまして、かなり地域によって、あるいは政策の目的によってその中身が変わってくるということは当然あっていいだろうというふうに思っております。私も、中山間地域の直接支払いが継続されるということに関しましては、大変結構なことだ、こういうふうに考えております。

 それから、委員、絞り込みというふうにおっしゃったわけでございますけれども、私は必ずしもそういうふうには見ておりませんで、今、山田委員も、ある程度地域性を重視しながらも要件を設定というふうに申されたわけでございますけれども、ある要件を設定した場合に、その要件を満たすような形で、この方について農地を集中しようではないか、こういったような地域の話し合いが行われ、まあ一年ですぐできるかどうかは別といたしまして、そういう形でこの制度をきっかけにしっかりした中心的な担い手を育てていくということがこの制度の一番の眼目だろう、こういうふうに思っております。

 それから、ある規模を基準として、その規模以上の農家の方のシェアが非常に小さいということは、水田農業に関しては確かにそのとおりでございます。これは、基準を多少小さくしても同じようなことがあるわけでございまして、これはまさに、三十年、四十年の農業の構造の変化の行き着いた先、こういう言い方ができるかと思います。

 お米の場合、主業農家のシェアが三割強、さらに自給的な農家の方もおられるということになりますと、もともと小さいことはある意味ではやむを得ないところがあるわけでございまして、経営安定化対策につきまして、そこを何とか広げよう、このきっかけにしようというのがこの政策の趣旨だろう、こういうふうに考えております。

山本(喜)委員 最後に、山田先生にお伺いしますが、先ほどのお話で、水田での飼料作物あるいは稲発酵粗飼料、そうした飼料米、これについても今話がされておるというふうに聞いていますが、それは具体的なものになっているんでしょうか、お伺いします。

山田参考人 これまでの生産調整の取り組みの一環として、とりわけここ最近時の産地づくり交付金の取り組みの中で、ホールクロップサイレージは大家畜のいる南九州で飛躍的に拡大しているところであります。今、南九州はそうでありますが、それでは、より一般的に水田のある関東、北陸、東北でそれが進んでいるかというと、大変微々たるものでしかないわけであります。引き続き、米の計画生産が何としてでも必要であります。そうでないと、計画生産をちゃんとやっていかないと、外国から米が来る前に日本の米価は徹底して下がってしまって、もうどうにもならないということになりかねないと心配をしているところであります。

 そうしますと、米の計画生産をちゃんとやっていくという面でも、さらに、水田を計画的に有効に活用するという場面におきましても、水田におきます飼料作物の導入、とりわけ大家畜に必要なホールクロップサイレージ等の取り組みを大々的に実施する。そうした、水田に大家畜を導入する、その導入に対して直接支払いを行うという仕組みの検討が必要ではないかというのが、JAグループとしての具体的な要請の一つでもありますので、ぜひこの政策の実現と、それともう一点は、JAグループみずからも、そうした計画生産なり取り組みをしっかりやっていきたいというふうに考えております。

山本(喜)委員 貴重な御意見、大変ありがとうございました。これで終わります。

山岡委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。

 この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十三分開議

山岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 第百五十九回国会、鹿野道彦君外五名提出、牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案及び第百五十九回国会、鹿野道彦君外五名提出、輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案の両案を一括して議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。鹿野道彦君。

    ―――――――――――――

 牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案

 輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鹿野議員 ただいま議題となりました牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案及び輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案につきまして、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表しまして、提案の理由及び主な内容を御説明申し上げます。

 近年、BSEや鳥インフルエンザ、輸入野菜の残留農薬、食品の偽装表示事件など、食の安全を揺るがす問題が発生し、国民の食の安全に対する不安、不信が高まっています。

 BSEについては、平成十三年九月、我が国で初めて発生して以来、全頭検査と特定危険部位の除去という二重の措置により、国産牛肉の安全性の確保と国民の不安の解消が図られてきたところであります。こうした中、食品安全委員会においては、これまでのBSE対策の検証を行うとともに、農林水産省及び厚生労働省においては全頭検査の見直しを進めております。また、その一方で、米国産牛肉の輸入再開交渉が行われ、十月には、一定の枠組みのもとで牛肉貿易を再開する基本的な合意が行われました。

 しかし、これまでの経過を見ると、全頭検査などの国内BSE対策の見直しは、米国からの圧力によるものではないかと受けとめざるを得ないのであります。政府は、米国産牛肉の輸入に当たっては、我が国と同等の措置を要求すると明言してきましたが、その我が国が行っている全頭検査体制自体を見直そうとしています。こうした政府の対応は、牛肉の安全と安心を求める消費者の信頼を大きく損ない、輸入牛肉に対する不安を増大させるものであります。拙速な輸入再開は新たな牛肉離れを引き起こしかねません。

 昨年、生産履歴の表示を義務づける牛肉トレーサビリティー法が制定されました。しかし、この法律は、国産牛肉のみを対象にしており、我が国の牛肉の消費量の六割を占める輸入牛肉は対象となっておりません。また、食品安全基本法においては、国産、輸入品を問わず、食品の安全性の確保が図られるよう、国の内外における食品供給行程の各段階において適切な措置がとられるべきことが明定されているところであります。

 我々は、こうした状況を踏まえ、輸入牛肉の安全と安心を確保するため、国産牛肉と同等の安全性の確保と消費者に対する適切な情報の提供がなされるべきであると考え、これら二法律案を提案することとした次第であります。

 次に、法律案の主なる内容について御説明申し上げます。

 まず、牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案は、我が国への牛肉輸出国について、BSEのステータス評価を行い、BSE検査の証明を求めようとするものであります。

 第一に、農林水産大臣及び厚生労働大臣は、我が国への牛肉輸出国について、BSEの発生するおそれの程度の評価を行うとともに、BSEの発生するおそれが相当程度あると認められる国及び既に発生している国を政令で指定するものとしております。

 第二に、指定された国から輸入される牛肉等について、国産牛と同等のBSE検査及び特定危険部位の処理が行われたことの証明を求めるものとしております。

 次に、輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案は、輸入牛肉についてのトレーサビリティー制度を設けるものであります。

 第一に、指定された国等から牛肉を輸入する事業者は、輸入牛肉台帳を作成し、個体識別符号等を記録、保存しなければならないものとしております。

 第二に、販売業者及び特定料理提供業者は、輸出国名、個体識別符号等を表示しなければならないものとしております。ただし、輸出国がトレーサビリティー制度を有していない等の場合には、その旨の表示をしなければならないものとしております。

 以上が、二法律案の提案の理由及び主な内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

山岡委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君及び外務省経済局長佐々江賢一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西川京子さん。

西川(京)委員 ただいまBSEに関する野党提出の二法の説明を聞かせていただきました。

 平成十三年の我が国初のBSEが確認されて以来、屠畜場等における特定危険部位の除去やBSE全頭検査など、国内では世界に誇る安全なシステムというものが構築されたと私は思っております。

 昨年十二月にアメリカでBSEが確認されて以来、米国産牛に関しては、今、輸入禁止措置が続けられております。すなわち、安全と確認されない限り輸入解除はしないというのが現状でございます。アメリカ側と日本の農水省側とのさまざまな交渉が行われました。そして、私が今申し上げました安全と確認されない限り輸入解禁にはしないということが、お互いの国の統一見解として恐らく一致を見たはずでございます。

 今回、今御説明いただきました野党法案の中で、今まで日本が行ってまいりました安全対策と一体どこがどう違うのか、今回の提案者の方にごく簡潔にお話しいただけたらなと思いますけれども、提案者の方、では鮫島先生、お願いいたします。

鮫島議員 今までとどう変わるのかということですが、全頭検査だった部分が、これからは二十カ月以下のものについては省略してもよい、二十一カ月以上のものにだけ義務づけるというのが今回のアメリカとの交渉に際して変更があった点です。

西川(京)委員 済みません、そのことではなくて、今現在日本が措置している制度と皆様が御提案になった今回の法案との違いをもう一度明確に御説明をお願いします。

鮫島議員 ちょっと質問の趣旨とずれるかもしれませんが、今は、十二月一日から日本のものについてはトレーサビリティーが徹底しますが、海外からのものについては、それについては今のところ全く義務化されていないという現状を踏まえてこういう法案を提案させていただいております。

西川(京)委員 私が、本当にまだ勉強不足で恐縮でございますけれども、ちょっと読ませていただいた中で、今政府がとっている政策と今回皆様が出された法案との明確な違いというのが、要するに、今各国で、牛肉を輸出している国では一つのサーベイランス検査というのが行われているわけですけれども、BSEが発生した時点で本当に全頭検査に近いものをやるわけですが、それを皆さんは今回、BSEが発生するおそれのある国というのを決めて、指定国という感じで決めて、その国に対して日本の国内措置と同じような政策を要求するというふうに私は思ったんですが、違うんでしょうか。

山田議員 そのとおりで、BSEが発生している国、そしてBSEの発生国と同じようなリスクのある国、これを指定国として、そういう国は日本と同じ、内外無差別、いわゆる食品安全基本法で、日本と同等の条件でなければ安全上入れられない、そういう趣旨でこのトレーサビリティー法案をつくったわけです。

 先ほどの質問に重ねてお答えしますと、例えば、この十二月一日から日本でトレーサビリティー法が施行されて、だれが、どこで生まれてどのような肥育をした牛かというのが明らかになりますが、このままもし二十カ月齢以下の牛がアメリカから入ってくるとなると、日本の場合、トレーサビリティーが施行されますと一割から二割方コストがかかるわけです、ところが、さらに安く、何の表示もされないままに入ってくる。こんな不合理なことはない、そういう趣旨でこの法案を提出したわけです。

 以上です。

西川(京)委員 ありがとうございます。

 今回、最初の、BSE発生国及び未発生国のうち発生のおそれのある国を政令で指定するという、この部分について私はちょっと疑問があるんですが、ここで、おそれのある国という判断は、一体どこが何を基準に決めるんでしょうか。

鮫島議員 ちょっと日本語の表現で誤解されることがあるかもしれませんが、おそれのある国は発生した国も含みます。

 そして、このステータス評価のやり方ですが、既にOIEがこれまでもある基準に沿ってやってきましたし、EUもステータス評価をやっています。一般的に言うと、BSEの発生状況、あるいはサーベイランスがどういうような密度で行われているか、それから汚染肉骨粉の流通がかつてどう行われたか、今それについての規制がどう行われているか等々のことに基づいてステータス評価を行うのが国際常識ですが、我が国の場合は、食品安全委員会が専門家チームを編成して、このような国際的な判断を参考にしながらステータス評価を行うものと心得ております。

西川(京)委員 我が国も前はそうだったわけですけれども、結局、BSEが発生する前の我が国も、やはりサーベイランス検査だけをやっていたわけですね。それで、現在、世界のどこの国においても、発生していない国がスクリーニング検査までしているということは例はないわけですね。

 その辺のところの精査をどうするかという問題だと私は思うんですが、今回、アメリカと日本の話し合いの中で、二十カ月齢以下の検査については一応アメリカに要求しないというような話、ただし、国内では三年間、各県レベルできちんと全頭検査をしていくということになりました。ただ、ではその二十カ月齢というのがどこできちんと判断できるんだという問題が疑問として残るわけでございますから、もちろん、この問題がきちんと解決されない限りは輸入解禁ということは私もないと思っております。

 そういう中で、全頭検査という、世界に誇ると言っていいんでしょうか、世界一厳しいこの安全、安心のシステムは私はやはり大事だとは思っております。そういう中で、発生していない国にまでそれを要求するというのはやはり少々問題があるのではないかなというのが私の正直申し上げる印象でございますけれども、特に今回、このサーベイランスシステムについては、実際これは安全を保証する制度ではないという認識を私は持っておりますが、このことに関して農林水産省の方の御見解をお聞きしたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 サーベイランスというもの自体の目的は、それぞれの国でBSEがどれぐらい蔓延しているか、浸潤しているか、あるいはBSEの対策がどの程度効果があるかということを確認するための調査であるというふうに理解しております。

西川(京)委員 今回、このサーベイランスシステムというのは、もし発生した場合に、きちんとその経緯をたどってきちんと発生源を突きとめるなりなんなり、あるいは消費者に対する一つのメッセージとしてきちんとこのシステムというのがあるわけですが、直接安全を保証するシステムではないということは確かだと思うんですね。ですからその辺を、未発生国にまでそれを全部きちんと要求するというのは、今のWTOのシステムの方向の中では少々議論の余地があるなという思いがあります。

 今回、WTOの今の現状なりなんなり、その辺のところをちょっと外務省の方から一言聞かせていただきたいと思います。

佐々江政府参考人 今回のこの法案とWTOの協定との関係、特に先生の御趣旨は、どういうふうに整合性があるかという趣旨の御質問であるというふうに理解をしております。

 この件につきましては、これまでもこの委員会で取り上げられておりますし、また、政府の方からもいろいろな形で見解も申し上げていると思いますけれども、基本的には、人、動物あるいは植物の生命あるいは健康を保護するために必要な衛生植物検疫措置をとることができるということにWTO協定上なっております。これはSPS協定ということでございますが、その際の基本的な考えというのは、人等の生命あるいは健康を保護するために必要な限度においてとられているか、あるいは科学的な原則に基づいて措置がとられているかといったことが判断の基準になるわけでございます。

 政府としましては、この点につきましては、食品衛生法等によりまして十分な安全確保措置をとっているという考え方でございまして、追加的に輸入牛肉等の安全確保を理由にして個体識別番号に関する表示等を要求するような場合には、こういう条項に照らして、科学的根拠あるいは必要性が十分であるかどうかということでほかの国からWTO上の問題を提起される可能性があるというふうに考えております。

西川(京)委員 ありがとうございます。

 WTOでこういうふうに決まっているから、これが唯一絶対無二の変わらないものだとは私も思いません。その中で、日本の牛肉は世界一安全で安心で、またおいしい牛肉だという制度を私たちは今つくり上げたし、持っていると思います。一方で、国民全体の需要を賄うにはいかんせん量が足らない。そういう中で、安全な国からの牛肉の輸入ということにどうしても頼らざるを得ないという現実があります。

 そういう中で、牛肉の我が国への輸出国に対して日本の世界一安全な規律を守ってもらうということが大切であるという、そのことは私も言をまたない思いを持っているつもりでございます。また一方で、その安全を担保するシステムには、今外務省の方でもおっしゃいましたが、WTOの基準の中で必要な限度あるいは科学的基準という言葉が出てまいりましたが、合理的なあるいは客観性を持ったものでなければならないということもまた大切なことだと思います。

 今現在の国際基準を今後ともより安全で安心な、しかも合理的な客観性を持ち得る基準にしていくために、私たちはやはり、これが一つの食料問題、かなり大きな外交問題だと私は思うんですね。今、世界の農林水産分野というのは、消費者の安全、安心ということが第一義的に一番大事だということはもう言をまたないわけでございますけれども、それとともに、また国益と国益をぶつけ合う大きな外交問題でもあると私は思っております。そういう中で、本当に客観性を持った、なおかつ本当に安全な安心なシステム、その基準を、国際基準をどうしていくかということ、そういうことに関して日本という国はもうちょっときちんと対応し、発信し、能動的にしていかなければいけない、そういう思いを持っております。そのことを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 十五分間ですので端的にお答えを願いたいと思いますが、まず、BSE発生のおそれがあるというのを日本国内の政令で定めるというのは、それはいいと思うんですよ。しかし、その日本国内で定めたことを、それは鮫島さんが言われるように発生国はいいとして、未発生国に対して日本国内がここは発生のおそれのある国だと指定して、そこに対して、ちょっと僕は後で質問するけれども、野党の皆さんは全頭検査を求めるとか、ましてや全頭にトレーサビリティーを求めるというのは、私はこれは明らかにちょっと行き過ぎなんじゃないかと。

 というのは、WTO協定の中でSPS協定というのはよく御存じだと思うけれども、まず、トレーサビリティーは科学的に安全性が定量的に高まるというふうに、こういったことを対外的に説明できる、そういう認識なのかどうかを聞かせてください。

山田議員 今赤羽委員の質問と、それから西川委員の質問にもお答えしておかなければと思っておりますが、食品安全基本法の中にいわゆる国の内外無差別というのがあるわけです。そして、アメリカのいわゆる……(赤羽委員「いやちょっと、そんなことは聞いていない。トレーサビリティーについてだけ」と呼ぶ)わかっている。だから、未発生国についてトレーサビリティーを適用するのは行き過ぎじゃないかという話、その質問に答えます。いいですか。

 未発生国というのも二つあるわけです。一つは全くの清浄国、もう一つは発生国と同じようにリスクがある国。このリスクがある国というのは、例えばメキシコ。これは、アメリカとかカナダとかメキシコというのは、生きた牛の、肉骨粉をずっと流通してきておりました。EUは、レベル3として、同じようなハイリスク国として評価しています。そういう国に対して、日本も、食品安全委員会でリスク評価をして、そこに対しては発生国と同様にいわゆるトレーサビリティー、個体識別、そういったものを国内と同様に内外無差別だから求めるのは当然のことだ、これは。

 先ほど話したように、もう一つ、未発生国の中でも清浄国があるわけです。例えば、清浄国においてもオーストラリアみたいにいわゆる個体識別をやっているところもあります。そういう個体識別をやっている国は、納入業者に対してそういう個体識別を表示させることは何ら差別ではないわけです。

 問題は、未発生国、清浄国の中で個体識別をやっていない国に対していわゆるトレーサビリティーを義務づけることは、これは確かに行き過ぎかと思います。それに対してはそこまで求めているわけではない。こちらが求めているのは、その牛肉に対してはただトレーサビリティーをしていないという表示をしてくださいというのがこの法案の趣旨なわけです。

 それから、さらに私、説明しておきますが、いわゆるSPS協定、これに違反するおそれがあるんじゃないかというお話でしたが、SPS協定は、佐々江局長は間違って考えておられる。これはSPS協定そのものを読んでいただければいいんですが、正当な理由がある場合はこれは認められる、当然のことながら。それから、TBT協定、私ども持ってきておりますが、この中には、「恣意的若しくは不当な差別の手段となるような態様で又は国際貿易に対する偽装した制限となるような態様で」、そういった場合にはいわゆる必要以上の制限に当たるとなっている。だから、SPS協定、TBT協定、だれが読んでも、素直に読んで、これが違反だとはだれも思わない。

 しかも、ちょっと、もうちょっと……

赤羽委員 いや、農水省に確認したいんですけれども、シンプルに言うと、トレーサビリティーというのは定量的に安全性を高めるものではないわけですよ、私の認識では。ですから、そのことについて、国内で日本がおそれのあるということを指定してそれを求めることはWTO協定にひっかかるのではないんですかという質問なんですから、ちょっとそれについて役所の方の、政府の方の答弁を求めたいと思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生お尋ねの牛肉トレーサビリティー制度、その制度自体でありますけれども、これは、感染牛が発見された場合にそれと一緒に育った牛、いわゆる同居牛などを速やかに特定する、そういうことによりまして国内でのBSEの蔓延防止措置を的確に行うための基礎になるものというふうに考えております。また、消費者にも情報提供を行うということがその目的でございます。したがいまして、トレーサビリティーシステム自体が牛肉の安全性を直接保証するものではないというふうに私どもも考えております。

 それから、WTOとの関係でございますけれども、こういった安全性と直接の関係のない措置を輸入条件として義務づけるとした場合には、先ほども外務省から答弁がありましたけれども、国際協定、いわゆるSPS協定に抵触するおそれがあるのではないかというふうに考えておりまして、その義務づけを行うということについては慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

赤羽委員 それに加えて、実際の輸入をやっている業者についても、こんなことを決めたら、僕は大変なフリクションが起こるというふうに思っています。それはコメントしておきたいと思います。

 先ほど、この法案説明の中で、我が国が行っている全頭検査自体を見直そうとしています、こういうくだりがありました。これは、九月九日の食品安全委員会の中間とりまとめの中で、これはもうまさに釈迦に説法ですけれども、検出限界以下の牛を検査対象から除外しても、現在の特定危険部位の除去措置を変更しなければ、リスクは増加しない、こういった中間とりまとめがあったわけです。そのリスクについても、いろいろな想定がありますが、一億二千万分の〇・一人とかというような報告もあったわけですよ。

 だから、恐らく、これは別にアメリカから言われたからじゃなくて、この二年半の間に三百五十万頭に及ぶ全頭検査ということをやって、極めて世界でも例を見ないというか、日本だけのこういうシステムを行って、知見を集めて出てきた結論というか一つの報告だと思うんです。私は、これは尊重しなければいけない。

 加えて、二十一カ月と二十三カ月の月齢が出ていますけれども、これは世界で非常に例の少ない、極めてレアケースであるという中間とりまとめも出ているわけです。ここについては、今、感染性があるかないかという試験もされている。極めてここはどう考えるかというのを着目しなきゃいけないというのもこの中間とりまとめの報告の中身だと思うんですよ。私はそういうふうに読んでいる。

 しかし、民主党は、こういった報告が出ても全頭検査をやるという立場なのか、この中間とりまとめについて評価というのはどうなのか、どういう前提でこの新しい野党の法案が出されているのか、ちょっとそこを確認させていただけませんか。

鮫島議員 私どもも、中間とりまとめについては真摯な立場でその内容を尊重する立場です。

 ただ、今のように、プリオンたんぱくの量が微量であったことを十分考慮すべきであるという記述もありますが、この中間とりまとめの中にはたくさんの、とはいえというような形で、極めて、一ミリグラムで感染するとか、あるいはまだBSEそのものの病気としての特性についての科学的な解明が不十分だとか、さまざまな記述もあります。

 もちろん大いに参考に考慮すべき事実であることは確かだとは思いますが、まず、BSEのどういう管理の仕方が一番適正かについては、日本は全頭検査と特定危険部位の除去という二本立てでやってきたわけですが、例えば、今、食品安全委員会に対して厚生労働省、農林水産省から諮問が出ていますが、まだ答申が出ていません。そこで専門家がどういう検討をしているかというと、まず、日本における屠畜方法、今でも七割の屠畜場でピッシングという方法がとられている、この問題をどうするかとか、あるいは危険部位の除去についても、精密なマニュアルで全国均一じゃない、これをどうするかとか、そういう問題も含めて私どもは慎重に対応すべきだと思っていまして、内容を尊重していることはやぶさかではありません。

赤羽委員 鮫島先生、よくわかった上で御答弁されているんだと思うんですけれども、それはそうなんですよ、もちろん。全貌が明らかにされていない、だから一〇〇%安全というのはあり得ないということは言っているわけです。

 民主党のホームページにも、国民の食への不安、不信が高まっているという指摘があって、安全性を高めなきゃいけないと。私も全くそうなんだけれども、だからこそ、食品の安全性というのはリーズナブルに、リーズナブルな形で安全性というものを認識しなきゃいけない。可能性が十二億分の一以下だというようなところでも、一がある限り危ないと言っていることが本当に食の安全を守ることなのかどうなのかということは、私はちょっと疑問を呈さざるを得ない。

 まして、例えばきのうの読売新聞の報道で、牛の全頭検査のアンケートをした、正確に理解しているのは、全問正解は八%しかいなかった。確かにこの程度だと思うんですよ。だから、そういった状況の中で、消費者の声というのは大事だとはいいながら、本当に僕は、正しい食育というか正しい理解をさせていくということは、行政としては非常に大事なんじゃないかというふうに思うわけであります。

 ですから、私は、食品安全委員会の中間とりまとめというのは非常に大事で、確率は極めて、ほぼゼロに近い形だというふうに読みますし、二十一カ月、二十三カ月というのは、感染性を今試験中であるし、種の間のバリアというのも存在するということも報告されているし、こういったことを勘案しながら、牛肉という世界じゅうで食べている優良な動物たんぱく源の食べ物をどう提供していけるのかいけないのかということをやはり判断していく必要があるのではないか。

 そこをやたらに、分子に一が残っているからといって、世界じゅうにトレーサビリティーを求めるようなことをやるということは、私はちょっと、正直申し上げて違うのではないか、こう思うわけです。そんなに危険だというのであれば、ちょっと脱線して、格調が高くない質問をしますけれども、例えば皆さんアメリカへ行かれて、では今牛肉を食べないんですか。この前お二人行かれたと聞いているけれども、どうですか。こういうことなんだと思いますよ。では、ちょっと、食べているのか食べていないのか。

山田議員 アメリカへ行って、私もちょっと牛肉は食べてみました。ところが、アメリカのプルシナー教授、セーファー助教授、アメリカでBSE、いわゆる異常プリオンを発見してノーベル賞をもらったグループ、この先生方は、アメリカでは一切牛肉は食べない、そして、日本では牛肉を喜んで食べましたと。それくらいのところです。

 そして、EUは数年も前からアメリカの牛肉を一切輸入していません。成長ホルモンを使っているから輸入していないと言っていて、これは当然、パネルにかけられてクロになりましたけれども、それでも輸入していない。

 輸入するか輸入しないかというのは、その国、主権国がどういう安全かということを判断して、そして我が国にとっても、確率で言うんじゃなく、万が一という場合も考えながら、食の安全、安心という意味でトレーサビリティー法案もつくり、そしてそれを、内外ともにというふうになっているわけですから、当然、アメリカに対してそれを求めることはごく当たり前のことです。

赤羽委員 それではちょっと、では社民党の方、アメリカへ行って牛肉を今食べませんか。ちょっと幾つか、全員に聞きたいところなんだけれども……(発言する者あり)いや、ちょっと、まあ聞いているんだから。

山本(喜)議員 私はアメリカに行ったことはありませんので。

赤羽委員 ですから、輸入禁止ということは、安全性が担保できないから輸入禁止されている。それはしかし、僕は相当現実離れしているのではないかということを言っているわけですよ、この質問を通して。私は、危ないものとかなんとかという、こういった安全論というのはおのずと限界があることであって、そこについてはどれだけの網をかけていくかということが妥当な考え方であるというふうに私なりの意見を言っておきたいと思います。

 ですから、一方では、ちょっとあれなんですけれども、今回のこの輸入禁止措置によって、焼き肉屋さんなんか町の中ではばたばた倒れているわけですよ。優良なたんぱく源というのは、安い牛肉は食べられなくなっている。和牛だって値段が上がっている。そういう状況の中で、私は、それは安全性を侵せとまでは言いませんけれども、相当リーズナブルな態度で今回の問題について取り組まなければいけないと思うのが政治家として当たり前なのではないか、こう思うんですが、その点についてはどうお考えですか。

鮫島議員 済みません、ちょっと、トレーサビリティー法案の趣旨なんですが、これは確かに赤羽さんおっしゃるように……

山岡委員長 時間が過ぎていますので、簡潔に。

鮫島議員 安全の確保という意味ではBSE特別措置法なり家畜伝染病予防法。これはむしろ、消費者に対する情報の提供、日本でやっている以上、海外の肉についても同じ情報の提供をするのが筋だろうというのが一番のポイントです。

 それから、今の全体のマーケットの話ですが、世界全体から見ると、アメリカから日本に出していた分、韓国に出していた分、三十五万トンぐらいアメリカ国内でだぶついて、それが玉突きになって、オーストラリアの方の輸出余力、ニュージーランドもありますので、本当は日本のマーケットがそれに合わせてフルセットでの売り方について対応できる形をとれば、世界全体の需給としてはタイトになるわけではないし、日本としての量的確保はめどがつくんですが、日本の態度が決まっていないものですから、オーストラリア、ニュージーランド側もどう対応していいかわからない。フィードロットについて、今の段階でどこまで投資していいかわからない。

 そういうことで、不安が先行してマーケットがタイトになり、特に焼き肉屋さんは、牛食文化というのは二つの文化から成り立っていて、和食を基礎に置いたすき焼き、しゃぶしゃぶ文化と、それから輸入肉を基礎に置いた牛丼、ハンバーガー文化と、この二つの文化で牛食文化が成り立っていますが、それを縦にくし刺ししているのが焼き肉屋さんの文化。そこのところが打撃を受けているのは確かですが、やはり日本の政府が和食から輸入肉までどこまでくし刺しにして、どこまで日本の政府が腰を据えて供給体制をとるか、そのことにかかっている。世界全体のマーケットは私はタイトではないというふうに思っています。

赤羽委員 異論もありますけれども、質疑時間を終了いたしましたので終わりたいと思いますが、私は、この法律はやはり制定されるべきでない、こうはっきり申し上げて終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山岡委員長 次に、午前に引き続き、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として全国農業協同組合連合会代表理事理事長田林聰君及び食品安全委員会委員長代理寺尾允男君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官伊藤健一君、総合食料局長村上秀徳君、消費・安全局長中川坦君、生産局長白須敏朗君、経営局長須賀田菊仁君、水産庁長官田原文夫君、内閣官房内閣参事官久貝卓君、警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、外務省経済局長佐々江賢一郎君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長外口崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小平忠正君。

小平委員 民主党の小平忠正です。

 島村大臣、そして岩永副大臣、また大口政務官、遅まきながら御就任おめでとうございます。現下の農政全般、厳しい状況にありますので、ぜひ御奮闘をまず心から御期待申し上げます。

 さて、今ほどは、BSE事件発生以来、トレーサビリティーのことは議論がありましたが、私は、きょうは時間が十分にあれば、大臣を初め政府当局に現下の厳しいこの状況のもとでの農林水産行政をお聞きしたいのでありますが、時間がございません。特に、今政府は、食料・農業・農村基本計画、この見直しの大詰めに向かって作業を展開されております。近々その作業の結果が出てくると思いますが、同時に、あわせて米の政策大綱、これも進められておる。そういう中で、この問題を中心にもっともっと突っ込んだ議論をすべきでありますが、残念ながら我が国はことしは台風銀座になってしまい、各地で大変な被害に遭われた。しかも、終盤には新潟であの大きな地震まで発生した。農林水産行政を預かる皆さんとしては、大変御苦労さんですし、また、今日までの御労苦に対し、私は敬意を表する次第であります。

 まさにそういう状況の中で、私は、四十五分という時間でありますので、時間があれば少しくまた農政についての質問をいたしますけれども、まず最初に、非常に細目にわたりますが、細かい問題、数字を挙げながら質問いたしますが、御理解いただきたいと思います。

 まず最初に、私は大臣に聞きたいのでありますが、今申し上げたように、今我が国はそういう方向の中で、米づくりの本来あるべき姿を目指して、米政策の抜本的改革を図るべくこの作業に入っておられますね。特に、需給調整はネガからポジへ、数量配分ですね、さらに地域水田農業ビジョンの策定に始まる担い手の明確化、産地づくり対策、さらには集荷円滑化対策、稲作所得基盤確保対策、さらには担い手経営安定対策、こういう助成体系も新たにつくったと、この変わり目の年度に自信を持って意気揚々とスタートをされたように伺っております。

 そういう中で、この改革が本年スタートをしたのでありますが、今申し上げたように、地震、台風等のこともあり、少しく焦点がそっちに移っておるという点もありますが、しかし、こういう状況を含める中において、ことしは特に、担い手にとって価格下落時に新たな施策として期待された今私が申し上げた施策が初年度から全然機能していない、こういうことが明らかになってまいりました。

 特に、少しく実例を申し上げますと、十月の十四日でしたか、農業新聞にも出ておりますが、今回の稲作所得基盤確保対策、これにおいては九十九万人加入している、契約数量も四百七万トンと、昨年までの稲経に匹敵する、さらには、担い手経営安定対策についても、稲経の担い手コースの実績約十二万ヘクタール、これを上回っている、こういうことを政府は言い、この政策が、国の拠出が稲得より手厚いこと、稲経と違って収入減を補てんするところが加入増になった、このように自画自賛しておるようですね。

 さて、そういう状況の中で、ちょうど一月前でしたか、この十月十四日の一月前ですよ、九月の中ほどでしたけれども、最初の米の仮渡金、これが六十キロ当たり一万円、こういう記事も出ていましたね。農家の手取りは最安値、こういう記事も出ておりました。これも事実であります。仮渡金が過去六年間で最も低く、価格下落時の補てん制度が変更されて従来よりも補てん金額が減る、結論的に稲作農家がこれまで以上に厳しい状況に置かれそうだ、このようにも論評がありました。

 さらに、今年度からスタートしました担い手経営安定対策、これによる補てんも、六十キロ当たり一万円を下回らなければ発動されない、こういう試算がはっきりわかりました。これはまさしく、今回の制度改正は稲作農家にさらに追い打ちをかける状況になったと私は受けとめております。

 米政策大綱により平成二十二年までに実現を目指す米づくりの本来あるべき姿に描かれた、効率的かつ安定的な農家経営が相当部分を占める生産構造の確立を実現するための第一歩として政府が今年度からスタートさせたはずのこの政策が、農家経営の危機的状況を救済することなく、これを放置することがあるなれば、私はあってはならないと思いますけれども、まず、こういう状況の中で、政府が目指す効率的かつ安定的な農家経営、これはいかなるものであるか、これについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 まず最初に、御指摘がありましたように、ことしは台風あるいは地震、いろいろな問題があって、通常以上の大変な荷物を背負った、そういう心からの御同情を寄せられましたけれども、私も全く同感でありまして、この国は、国土小国、資源小国に加えて、七割は急峻な山で、しかも資源がゼロ、かてて加えて七つの地震帯がはい、しかも台風の常襲地帯。条件的には大変厳しいわけですが、ことしはそのことが、一遍にその原点を思い知らされるように、台風が何遍も襲来し、しかも大型のもので、そして地震ということですが、地震は新潟にとどまらず、ついせんだっては先生のお地元の北海道も、全域がやられるといったようなことがありまして、大変に同情しているところであります。

 さて、今、農業従事者の減少や高齢化などを背景に、農業の生産構造の脆弱化について憂慮される御質問がありましたけれども、何と申しましても、食料の安定供給の確保や地域の経済社会の維持発展に重大な支障を生ずることがあってはならないわけでありますから、私どもは、農業でいわば他産業並みの所得を確保し得る経営によって農業生産の相当部分を担う強靱な農業構造を構築したい、こう考えているところであります。

 このため、農業で他産業並みの所得を確保し得る経営や、それを目指して経営改善に取り組む経営を担い手として位置づけた上で、これに対して各種施策を集中的、重点的に実施することにより、力強い農業構造を実現していきたいと基本的には考えております。

 そういう中ではありますが、例えば寒冷の地域にある北海道とかあるいは台風の常襲地帯の沖縄とか、特殊な地域の条件を持つ部分もございますので、これを全国的な視野でとらえて、それぞれに政治の温かい知恵を添えながらこれからの運営を行っていきたい、こう考えております。

小平委員 大臣のお言葉を聞いていますと、農水省が展開する施策によって農業生産者はバラ色の未来が控えている、こういうふうに言葉では感じますけれども、今までに何度、大臣初め政府のこういう発言を聞いてきたことか。見事に裏切られてきたわけですね。

 私は、これについては反論する時間がもし後であればまた質問しますけれども、先ほど申し上げましたように、きょうは細目にわたってちょっと質問いたします。

 そこで、ポイントは、今回政府が打ち出しています米の政策改革大綱、これによって出ております稲作所得基盤確保対策、担い手経営安定対策、これらを軸に質問いたしますので、これは実務的になるので、局長は二人見えていますね。大臣は、大所高所から我が国農政の方向を決める最高責任者です。したがって、はっきり言って農政の細かいところまでは承知されていないでしょう。ですから、私が今申し上げることも、この数値までは多分御承知ないと思います。しかし、肝心なところは、局長を初め農水省幹部から進言を受けて、島村大臣の農政の方向に向かっての大きなアドバイスがあると思うんですね。そういう意味で私今質問しますので、よくお聞きになって、この矛盾点、不備な点をぜひ打開していただきたいと思いますので、よく聞いていただきたいと思います。

 さて、試算表というのがお手元に行っていますね。議員諸兄もまた政府も行っていますね、試算表一、二。これは私の、農民組織のいろいろと試算した、そういう数値をもとに当方でつくりまして、今お手元に配りました。これをもとに質問いたしますので、よろしいですね。

 まず、担い手の育成がおくれて生産構造が脆弱であるとの現状認識から、稲作農家のうちでも米価下落による稲作収入の減少の影響が大きい担い手を対象に、稲作所得基盤確保対策、いわゆる稲得に整合的に上乗せをして、稲作収入の安定を図るという目的で担い手経営安定対策ができたはずであります。ところが、これが機能しないという状況が初年度から起きてしまっている、これが大臣、今私が申したことであります。

 そこで、具体的に、先ほど紹介しました農業新聞の記事にありました、米価が一万円を切らなければ担い手経営安定対策が発動しないという、この部分をここで検証してみます。よろしいですか。試算表一をごらんください。

 この試算は、北海道における稲得の六十キロ当たりの基準価格は、最近三カ年の平均一万五千六百八十八円、これが基準価格ですね。担い手経営安定対策の基準収入は十アール当たり十一万九千四百二十円、こうなっています。単年度単収を十月十五日、一番最後の、現在の作況における予想収量では五百十八キログラムと試算しております。

 そこで、基準価格は直近三カ年平均で算出をしており、不作によって高騰した十五年産の価格が含まれておりますので、各年産の平均に比べて基準価格が高くなっておることも事実ですね。十六年産の北海道銘柄については米価格センターの入札価格がおおむね一万三千円前後で取引をされていることから、当年産価格の欄の一万三千円のところをごらんいただきますと、よろしいですね、稲得の計算上の補てん金は千六百四十四円となっております。しかし、横に目を移してもらいますと、これでは、一万三千円では担い手経営安定対策の補てんはありません。

 では、当年産価格が幾らになれば担い手経営安定対策が発動されるかというと、一万円米価で初めて実質的な発動となり、十アール当たり二千六百七十円の補てん金が出ることになります。生産者の拠出は、これも算出ルールによって十アール当たり千百七十円ですから、実際の補てんは、これを引きますと十アール当たり千五百円になりますね。北海道の場合、水田経営規模要件は十ヘクタール以上が言われていますので、経営面積十ヘクタールでも、十町歩ですよ、わずか十五万円にしかならない。ということは一町一万五千円、一反に千五百円ですね。この補てん、それは基準になりません、これはいわゆる二階部分の補てんですから。

 では、一階部分である稲得に目を転じますと、これによる補てんはどうなっているかといえば、もう一度当年産価格の欄の一万円のところを見ていただきたいと思います。稲得の計算上の補てん金は三千百四十四円でありますが、北海道では産地づくり対策との資金融通の関係で七百八十円、これは一・五%の拠出ですからね。しかし、通常二・五%の場合であっても千八十円しかありません。これは、今回の対策が今年度から三年間の制度であり、補てんは生産者ごとの資金残高の範囲内にされていることから生じることでありますが、試算表を見ていただければおわかりのとおり、補てん金は、通常二・五%の場合で当年産価格一万四千円で千八十円、北海道は一万四千七百円で七百八十円に張りつき、米価がそれよりどんなに下落してもそれ以上の補てんはない。これが計算に基づく試算の結果であります。

 ところが、担い手経営安定対策の計算式における補てん単価は、基準収入と当年産収入との差の九割から稲得補てん額等を控除した額とされており、当年産価格一万円米価とした場合はこの計算上の補てん金額三千百四十四円という金額で計算されてしまうのであります。

 となると、この結果、担い手経営安定対策がぎりぎり発動される一万円米価における実際の農家収入を見てみると、十アール当たりの当年産稲作収入が八万六千三百三十円、稲得による補てんが通常二・五%で九千三百二十四円、北海道では六千七百三十四円、担い手経営安定対策による補てんが二千六百七十円でありますから、合計収入は、前三カ年単純平均である基準収入から十アール当たり通常で一八%減の九万八千三百二十四円、北海道では実に二〇%減の九万五千七百三十四円となってしまいます。

 また一方、担い手経営安定対策が発動されない限界点である米価一万八百円で見てみると、担い手経営安定対策の計算式における稲得補てん額は十アール当たり二万三千六百五十五円として計算され、当年産収入九万三千二百四十円と実際の稲得補てん額、通常で九千三百二十四円の合計額十万二千五百六十四円と計算上の補てん額十一万六千八百九十五円との間には、実に十アール当たり一万四千三百三十一円もの差が生じるのであります。そして、当然、規模の大きな担い手ほどこの影響を強く受けることになります。

 これまでの検証で、米価が一万八百円にまで下がって、実際の稲得補てん額と計算上の補てん額との差が一万四千三百三十一円という金額に達して、担い手経営安定対策が発動されないということが明白になり、担い手経営安定対策が稲得の上乗せ対策として実際には機能しない。つまり、政策目的である稲作収入の安定を図るということにはなっていない、このことが明らかになりました。大臣、その点、よろしいですね。

 そこで、米価が市場に出されて以後、低迷する米価に押しつぶされそうになりながらも必死に農家経営を維持してきた稲作の主業農家は、この試算が示す現状に愕然としているのが現状であります。今まさに、担い手とされた中核農家は、政府、農水省が指し示す米づくりの本来あるべき姿に描かれた効率的かつ安定的な農家経営、他産業並みの所得、労働時間という美しい絵とは、まるっきりこの現実の大きな違い、落差に完全につぶされております。

 我が国の農業情勢は、敗戦から立ち上がって、かつては厳しい状況にありましたが、しかし、当時は将来に向かって夢がありました、近代化という方向に向かって。そして、食管制度もあり、その方向は期待が持てた。私は、ある意味においては今こそが戦後の農政で最大の危機に直面している、これをうまく乗り切らなければ、いかに新しい基本計画の話をしても、あるいは政府が言う日本型直接支払い、これが進んでいっても、肝心の主業農家が存在しなくてはすべて絵にかいたもちで、もっと言葉を言うならば、農水省の存在意義もないと思う。

 こういうことを申し上げて、まず、きょうは須賀田、村上両局長、これについて御見解を聞きたいと思います。

須賀田政府参考人 米政策改革の趣旨は、先生も御承知のとおりでございまして、要は、一言で言いますと売れる米づくり、市場の動向をどのように反映していくか、これに主眼を置いているわけでございます。そして、稲作所得の確保対策、その上に担い手経営安定対策がございます。それは、基準年を直近三カ年ととる、そして市場の動向をそのまま反映して市場の動向に応じた米づくりを推進していただく、こういうことで仕組んでおるわけでございます。

 担い手経営安定対策で申し上げますと、北海道の場合は、十四年が作況九一、十五年が作況七三ということで非常に収量が低かった、その割には価格が上がらなかったというふうに言えると思うわけでございます。そういう仕組みのもとで先生言われたような状況になっておりますので、私どもとしては、その制度の範囲内でやれる、改善すべきものは地元と協議しながら改善しようと思うわけでございます。

 基本的には、市場の動向を反映したような米づくりを進めていただきたいというふうに思っている次第でございます。

村上政府参考人 稲作所得基盤確保対策それから担い手経営安定対策、いずれも、基準期間それから収量等のとり方については同一にするということにしているわけでございます。稲作所得基盤確保対策につきましては、基本的な枠組みを政府の方で示しまして、その中で地域の実情に応じて変更するということを都道府県単位で判断して実施するという仕組みになっているわけでございます。

 北海道におきましては、今後三年間にわたって対策を行うに当たりまして、稲得の資金造成について生産者と国の拠出単価を基準価格の二・五%から一・五%に変更されるということで、国の拠出の差額の一%を産地づくり対策に融通する、その関係で生産者の拠出は一・五%に軽減するということ、それから基準年のとり方については直近三カ年平均ということでおとりになった。こういう実施方針で申請が上がってまいりまして、北海道、行政、系統等を含めた総意として現在の仕組みがとられたところでございます。

 先生御指摘のように、稲得基盤確保対策につきまして、現在の価格形成センターにおける北海道の米の価格は一万三千円程度でございますけれども、今申し上げましたような造成されております基金の範囲内で行うということでございますので、先ほど先生がおっしゃいました価格以下になりますと、補てん額は七百八十円ということになるわけでございます。

小平委員 今お二人のお話を聞いて、こういうふうに制度がなっている、だから年度途中だから変えられない、そういうふうに受け取れる答弁ですよね。

 では、ちょっと質問を変えて言いますね。

 そういう制度になった経緯、今、北海道は一・五%にして一%は産地づくり、そう言われたよね、村上局長。これは、私が承知しているのでは、北海道の水田農業推進協議会、この協議でこの実施方針が承認されたわけでしょう。それで決まったわけですよね。そのことは十分政府とすり合わせはされたと思うんですけれども、その経緯をちょっと説明してください。

村上政府参考人 この稲得それから担い手経営安定対策の設計の仕方につきましては、一昨年十二月の大綱を踏まえまして、その仕組みを県それから各団体を通じて協議して現在の方式に定めたところでございます。

 その方式、基本的な枠組みを踏まえまして本年の四月に北海道において申請がなされまして、北海道水田農業推進協議会から、先ほど申しましたような、拠出につきまして二・五%から一・五%に変更して産地づくり対策に回すという設計が四月に申請をされてきたところでございます。四月の十四日に我が方は正式の文書で受け取りまして、それについて検討をし、了承したということでございます。

小平委員 そこは私も聞いております。であるから、道や北農中央会、農業団体が上京してこれについての今の厳しい状況を訴えると、今何を言ってきているんだ、そういう冷たい返事だったというふうに聞いていますね。こういう場では言っちゃいかぬかもしれませんけれども、このばかたれ、今さら何だと。

 でも、私は言いたい。あなた方は、農水省の所管の局長、役人として、官僚として、地方のそういう農業団体、推進協議会がつくる案なり、それを受けて、あなた方が承認しなきゃ、これは前に進みませんよね。そのためにあなた方が存在するわけでしょう。そのために税金を使って皆さんの給料を払っているわけだ。そこに皆さんの存在価値があるわけだよ。

 今の話だと、そういうふうに北海道が決めてきたから、今さら年度途中で何も変更できないと。一応そういうルールだからね。でも、それだったら、結局どこが割を食うの。割を食うのは、政府がそれを承認し、それをつくってきた道や北農中央会、農業団体は何ら痛みがないじゃないですか。実害を受けるのは、ただ決められてそれに従ってきた農民じゃないんですか。今私が前段、数字をもって細かく細目にわたり皆さんにお話しした経緯はここにあるんですよ、こういう状況になってしまったと。天下の役人が、そして農業団体が、そのつくった案がこうなってしまった、その結果がこうだ。では、それについて救済しよう、そういうお考えにならないんですか。重ねて問います。

村上政府参考人 先生御指摘の北海道の現在の状況について我々もよく承知しておりますし、その状況についてはつぶさにお話を伺っているところでございます。

 ただ、この稲得の確保対策、担い手経営安定対策につきまして、三年間の対策ということで、基準価格の算定方法については、例えば前年産価格や直近二年平均とするなど、直近三年よりも長い期間を超えない範囲で都道府県段階で変更できる仕組みとなっております。

 安定的に事業を実施していくということで、この設計については原則として三年間は変更しないということでございますけれども、米穀の需給事情の大幅な変化など本事業の実施上やむを得ない事情がございます場合に、地方農政局長等が承認した場合には対策期間中の変更が可能となっているわけでございます。

 ただ、十六年産も含めまして、年度途中で変更するということになりますと、あらかじめ一定額の拠出を国と生産者で行って米価下落に備えるという制度でございますので、その当年、実際に入った年の価格を見て補てんを出しやすいルールに変更するということになりますと、これは言葉はいかがかと思いますがモラルハザード、あるいは国の税金の使い方として若干問題があるのではないかというふうに思っております。

 十七年産以降の取り扱いについて、先ほど申しました特段の事情がある場合については、その理由などについて十分お聞きしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

小平委員 来年度、十七年度から修正、変更をすること、そんなことは当然ですよ、こんなことを私が言わなくても。この状況を見たら、こんなことは指摘されなくても、みずから修正、変更するのは当然だ。そのために君らがいるんだ。

 今回、稲得の予算は五百三十七億ですか。そうでしょう。担い手経営安定対策は百十五億。実際は、ことしはこれは機能していないんだ。九州はありますよ。あれだけのひどい作況で、八十何%ですか、台風のひどい被害を受けて。だけれども、あれは台風被害でしょう。これは、こんな制度がなくたって、もう激甚指定でもって当然十二分に救済されなきゃならないあの厳しい九州の現実ですよね。

 でも、一般的な、言うなれば農政のミスというか不手際によって起きたことに対して、制度がこうだからできないと。では、来年度は、五百三十七億の稲得の予算要求、百十五億の担い手経営安定対策の要求、こんなもの要らないんだな。私は、今まで財務省、かつての大蔵省に向かっても、こういういろいろな制度は大事だと、場合によっては理解のない人からは族議員と言われながらも、この予算要求には協力してきた。でも、こんな使わない予算を、百億以上もの金が眠っているんだったら、来年から要らないですね、こんなもの。

 あなたたちは、自分たちの世界で何かミスが起きたら、例えば前の凶作のときの、不作のときのあの緊急輸入だとか、あるいはBSEが発生してああいう不祥事が起きたら、そういうときは自分たちの財産まで売り払って、倉庫を処分するとか、これは国民の財産だけれども、農水省はみずからの、そういうものまで売り払ってお金を捻出し、そしてそういうものを補てんに当てたら、住専から見たらこんなものは微々たる金額でしょう。何か知恵を絞れないのか。ただしゃくし定規に、できません、できません。

 大臣、後でまとめてお聞きしますので、では、ちょっと話をもう少し続けて申し上げます。

 あなたは今、村上局長あるいは須賀田局長の言葉をかりて、そういう年度途中の変更は難しいということを言われた。では、私は申し上げるけれども、この制度の大枠にはさわらないとすれば、問題は、基準価格と基準収入の設定のあり方、これであろうと思うんです。基準価格については、原則上、上位三銘柄の加重平均価格の直近三カ年ですね。それで、北海道の場合はああいう状況になっている。従来の稲経においても、補てん基準価格の算定期間は五年間で三度も修正されていますよね。稲経においても今回の稲得においても、各年ごとの米価や豊凶等の収益の変化によって基準価格も補てん価格もやはり大きく変動したわけでしょう。ですから、農家所得の安定というのは非常に困難な状況ですね。

 いかに食管制度がなくなったといいながらも、国民の主食である、この国は基幹作物は米ですね、この生産の主要部門を担う農家に対する姿勢が、今申し上げたように、価格は市場任せで、価格が低迷しましたね、収量はお天気任せだと。これはとんでもないことですよ。人知の及ばぬところです。農家経営は、今こう決めたから変更はできない、あとは農家個人で何とかせいとなると、重ねて言いますけれども、農水省の存在意義はどこにあるんですか。あなた方は何のために存在しているんですか。

 そこで、私は、現行の制度を生かしながら農家の窮状を訴える道を模索するとするならば、この基準価格の設定のあり方に工夫なり是正をすることはできないのか。例えば、緊急的な措置として稲作所得基盤確保対策の資金造成、これを行って十六年産の補てん金を充当し、それに満額充てる。資金造成ですよ。もう一つは、このような米価の下落においてその機能を発揮できない担い手経営安定対策について、早急に基準収入の見直し、あるいは今言った補てん金の支払いの変更等を図って当年産から適用する。そういうことを含めて、今資金造成ということを申し上げましたけれども、そういうことについての資金の捻出はできないものなのか、これについて御答弁をいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 幾つか御質問がございました。

 稲作確保対策で、後から資金を造成して補てんができないかというお話でございます。これは、ある程度保険的に、事前に、このぐらい低落することに備えて国と農家で一対一で基金を造成して備えましょうということでございますので、それ以上に落ちたということで、後から掛金みたいに出したことにしてというのは、なかなかそこは難しい面があることは御理解を賜りたいと思うんです。

 もう一つの御質問、基準価格なり基準収入なりのとり方をある程度固定的にならないかというような趣旨の御質問と受け取りました。

 実は、先生も御存じのように、稲作経営安定対策時代、固定的に、あるいは過去七年間のうちの五年というような、いわゆる固定的な運用をしたことがございました。このとき何が生じたかといいますと、市場で買いたたかれる、あなた方にはこの制度があるからもっと安くていいじゃないかという買いたたき、モラルハザードが生じたわけでございまして、その反省の上に、今回、市場の動向を感じ取るような、原則直近三カ年という仕組みにしたわけでございます。

 先生はひどいひどいとおっしゃいますけれども、全国で見ますと、担い手経営安定対策百十五億につきましても、二十数県で補てんが行われる予定でございます。したがいまして、私ども、制度の枠組みの中で基準年のとり方等に来年以降工夫を凝らすということが精いっぱいということについて御理解を賜りたいというふうに思います。

小平委員 今、稲得と担い手経営安定対策がかぶさって機能しない、これははっきりしましたよね。でも、こんなことは、今はパソコンを駆使して、昔はそろばんでやった時代ですよ、簡単にそんなことは検証できる時代ですね。あなた方が、米価がこういうことも想定し、あるいは昨年のように高騰した、いろいろなことを想定してそれを突っ込んで、これはちょっと機能せぬな、では、おい、どうよ、農業団体よ、あなたたちはこういうものをつくってきたけれども、これはうまくないよと、そういう指導をすることもあなたたちの役目じゃないのかと言いたいんですよ。

 だから、本当にあなたたちは何の集団なんだ、一体。これ以上言うと言葉がさらにきつくなって、こういう席じゃ言っちゃいけない言葉が出るかもしれないのでやめますけれども、本当に皆さん、これから大きな農政の転換を図るときに、肝心の主業農家がいなくなったらどうするの、これは。

 今自給率という言葉が、これは大きな問題ですけれども、四〇%と言われておる。しかし、これはちょっと意味があって、私は、我が国がちょっと違う面も言わなきゃなと思っているんですよ。それは、米が一〇〇%なわけだ。これは、ある意味においては、無意識の国家の安全保障につながっているんですよね。これがあるから、一概に我が国は自給率四〇%といいながらも、もし一朝有事の際に、何かあってもこれだけ米が、基幹作物がしっかりあることによって国民のパニックは私は起きないと思うんだ。これは、言うなれば無意識の担保ですよ。その根幹の基幹作物が今おかしくなろうとしている。

 あなたたち、ただ机上でもっていろいろなプランづくりをやって、加えて他産業と同等の収入それから労働時間、今までに何度聞かされてきたことか。今回だって、絵にかいたもちになることは、これは必定ですよ。

 そこで、もう言っても切りがないけれども、今、政府は、政府米約四十万トンですか、買い上げしますよね。何かけさの新聞でも、二十五万トンをまずと出ていましたね。こういうことを政府は、一つの方法であるけれども、しっかり進めることによって、言うなれば、市場に対して物理的、心理的にも大きな影響を与えると思うんです。だから、そこはしっかりやっていただきたい。

 また、MA米についても、外務省の佐々江局長、きょうは時間がないので、これはまたいずれ、WTOはこれから本番ですから、我が国のMA米を今後どうするかという問題、いわゆる九〇%を維持してMA米をそのままずるずると圧力に屈して存続するのか、しっかりそこでけじめをつけるのか、これは改めて聞きますけれども、今、とにかくここまで来た以上は、米価の低落を防ぐという方策をしっかり講じてもらいたい。これをあわせて申し上げておきます。

 しかし、話は戻りますけれども、今の稲得、担い手経営安定対策は全然機能していない。大臣、私が今申し上げたことは、制度のルールは、そういうことは私もわかっています。わかっていますが、決めたのはあなた方と道の農業団体です。その犠牲を農民が強いられているんです。これについて、どう救済の道をつくるんですかということを最後にお聞きしておきたいと思います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 担い手経営安定対策と名を打つとおり、やはりこれからの日本の農業というものを担っていただく方にその意思を継続してほしい。そのために、いかなる自然条件等の厳しいものにさらされても、いわば農業が立ち行くような環境をつくるためにはいかにあるべきかということからこういう考えが出てきているわけでありますし、例えば、北海道の例をお引きになりましたが、これも、北海道水田農業推進協議会の皆さんのお知恵をおかりし、いろいろな角度からいろいろ検討した結果、現在のルールができているわけであります。

 そういう意味で、我々は、少なくもルールはルールとして運用せざるを得ませんが、しかし、本対策の制度の枠組みの中で改善できるものをどのようにも改善しなきゃいけない。試行錯誤を繰り返す中によりよいものをつくっていこうという姿勢においては私たちは前向きでありますので、ぜひいろいろまた御提案等もいただいて将来に資していきたい、こう考えます。

小平委員 まだまだ言い足りませんが、持ち時間が終わりましたので終わりますが、とにかく、このままでは、今新しい農政に向かっての転換の入り口でつまずくことは必定ですよ。何とかしてください。最後に重ねて申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 島村大臣が就任をされてから、私、初めて質問させていただきます。前任の亀井大臣、大変ハートでお答えをしていただきました。きょうはぜひ島村大臣も負けないで、気持ちで御答弁をいただきたいと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 本日は、厳しい状況に置かれている私の釧路、根室管内の地元の声を踏まえて、水産問題について質問を何点かさせていただきたいと思います。

 まず、水産物輸入割り当て制度、IQの堅持について伺っていきたいと思っております。

 水産物のIQ制度について、本当に国内において漁業者による資源管理への懸命な努力が続けられる一方で、我が国は大量の水産物が輸入をされて、国産魚の価格が輸入物との競合によって低迷をしている、これらが漁業経営を非常に圧迫している、なかなか後継者が育ちにくい、そういった状況が生じております。国内の漁業がこうした厳しい状況に置かれている中で、このIQ制度が果たしている機能、効果について大臣はどのように認識をされているのか、まず簡潔に御所見を求めたいと思います。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 現在、我が国では、沿岸、沖合漁業の主要魚種について、無秩序な輸入により国内の需給及び我が国が実施している資源管理措置に悪影響が生じないよう、輸入割り当て制度を実施しているところであります。しかし、一方で、本制度を維持しているのは主要国では我が国のみでありまして、国際的にも孤立している厳しい状況にあるわけであります。

 我が国としては引き続き輸入割り当て制度が果たしている機能、役割が維持されるよう努力してまいりたい、こう考えております。

仲野委員 今大臣から、日本だけIQ制度を導入している、これからも維持をしていきたいというお答えをいただきました。

 そこで、日韓FTA交渉において、韓国側が、水産物のIQ制度についてWTOの協定に不整合である、また不適用とすべきとの主張をしているとも伺っております。政府として、今大臣からもお答えいただいたんですが、これらの問題について、国際問題になってきますので、今後どのように対応をされようとしているのか、大臣にお伺いいたします。

島村国務大臣 お答えいたします。

 現在、我が国と韓国との間で行っているFTA交渉におきまして、韓国側は、水産物の輸入割り当て制度はWTO協定に整合していない、韓国に対して適用すべきでないと主張しているところであります。

 一方、我が国といたしましては、本制度が果たしている機能、役割を維持することが必要であると主張しているところでありまして、今後もできる限り品目ごとの柔軟性を確保する方向で交渉に努力していきたい、こう考えております。

仲野委員 確かに、大臣が今後も努力をしていきたいということですので、本当に、今我が国だけのIQ制度ということで、非常に諸外国の目が我が国に厳しいものがある。今後も多分苦しい対応を迫られる、こう思います。ぜひこの制度の存続のために踏ん張ってもらいたい、そのように思っております。

 私の地元の北海道においても、漁業者の多くがこのIQ制度とかかわりを持っており、北海道の沿岸、沖合漁業にとっても極めて重要なものとなっております。

 例えば、北海道が主産地である昆布について見ると、もしIQ制度がなくなれば、韓国等から安い昆布や昆布調製品が輸入をされて、北海道の小規模な昆布漁業者は壊滅的な、死活問題とも言える大変な打撃を受けるわけであります。そうでなくても近年中国から調製品の輸入が増加しており、しかも、これが昆布調製品としてではなくて、魚や肉の調製品として、しかも加工品はIQの中の規制から外れているわけなんですね。そういったことからも、北海道の昆布漁業者は本当に今厳しい状況に、不安な状況にあるというところでございます。

 こうしたことからも、半調製品で輸入をされているということで、このIQ制度の実効性を損ねるこうした調製品の輸入についてどのように認識をされているのか、今後どのように対応していくのか、お伺いをしたいと思います。

田原政府参考人 お答えいたします。

 昆布のIQとの関係でございますけれども、これは、先生御承知のように、現在IQは十七枠ありまして、このうち、昆布と昆布調製品ということでIQということになっておりまして、しかるべき数量調整ということを行っております。

 ただ、問題は、いわゆる昆布巻きといいますか、ほかのものを使いました昆布調製品、これがどう扱われているかということでございますけれども、現在あります、HS条約と言っておりますが、商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約上は、いわゆる調製品のうち動物製品といいますか、肉ですとか魚、こういったものが優先いたしますので、調製品ということで二〇%を超える場合、肉ですとか魚が入るということになりますと、これは昆布の調製品ではなく、その肉の調製品ということで関税分類がなされている、こういうことでございまして、昆布巻き、例えばニシンですとかサケですとかそういったものを含みましたものが、ニシンですとかサケが二〇%を超えるということになりますと、昆布調製品ではなくてその魚の調製品になるということでございまして、IQの対象外ということになるわけでございます。

 したがいまして、我々もこうしたものがどういうふうになっていくかということにつきましては、加工業者等に対しましてその実態の把握に努めているところでございますけれども、そもそもIQにするということ自体は、HS条約上なかなか難しいという点につきましては御理解をいただけたらというふうに思っておる次第でございます。

仲野委員 昆布調製品で二〇%を超えると魚である、そういうことでありますけれども、非常にわかりづらかったのは、やはりこの調製品が中国のものである、または日本のものである、一番消費者にとってわかりやすいのは、こういったところにはっきりとした産地表示義務づけを、しっかりと原産地の表示の義務づけをやっていただきたい。そのお考えがあるのかどうなのか、これはこの場ではっきりとしていただきたいと思います。そろそろ時期ですので。

田原政府参考人 お答えいたします。

 加工品の表示の問題についてのお問い合わせでございますけれども、加工度が低いようなものの加工食品につきましては、ことしの九月から主要な原料の原産国表示、これが義務づけられているところでございます。ただ、昆布巻きということになってまいりますと、加工度が極めて高いというふうなことで、原料原産地の表示はなかなか難しいのではないかというふうなことで、これはパブリックコメント等もこうなっておりまして、そういう意味におきましては、こうしたものについてまで求めるのはなかなか難しいのではないかというのが、率直なところ、私どもの考えでございます。

仲野委員 長官に聞いてもちょっとあれでしょうから、私、大臣にお聞きしたいと思います。

 難しいとかじゃなくて、これはやる気の問題だと思っております。今消費者が本当に食の安全、安心を求めて、今本当に一番求められているところなんです。それで、この原産地表示の義務づけを一番求められているのが、何と昆布巻きなんですよ。そのことを、これはやる気の問題だと思います。今、長官、あなたがお答えになったのは、私から言わせれば、言葉は悪いけれども、やる気がないということです。

 大臣、長官はこのようにお答えになっておりますけれども、大臣はそのようにお答えにならないでしょう。ぜひお願いいたします。

島村国務大臣 どのようにお答えすれば御満足がいただけるかわかりませんが、少なくも加工度が低い加工食品の表示についてことし九月から主要な原料の原産国表示を義務づけているわけでありまして、昆布巻きなどについては、加工度の高い製品であることから、原料原産地表示の義務づけは難しいのではないか、今そういうことでありまして、実は、このことは省内でも議論がありまして、いろいろ検討を加えたところですが、現時点では少し難しい問題が多過ぎるということで、今まだペンディングになっているところであります。

 ただ、おっしゃる御趣旨も私たちはよくわかりますので、これから検討の一つの課題にしていきたい、こう思います。

仲野委員 これから検討していただくということは、前向きに検討していただけるということで、私、理解をしてよろしいでしょうか。そのように理解をさせていただきたいと思います。ぜひ来年通常国会に、もうこれは義務づけいたしますということで、そういったことを大臣にお答えいただくことを私は望みます。

 最後になりますけれども、もう一度大臣に、このIQ制度をこの公的な場、委員会で、きょうは多くの関係者の方たち、地元でインターネットで見ております。この場で、IQ制度を絶対堅持していくんだ、どんな圧力にも負けないんだということを、大臣の決意をお聞きしたいと思います。

島村国務大臣 このIQ制度、御承知のように、WTOの活動が非常に盛んになっておりまして、その土台ともなるEPA、FTA交渉が各国間でどんどん進んでいるところであります。こういう、いわば貿易自由化というのが世界的に叫ばれているときでもありますから、これからますます厳しい環境に立たされていくものと我々は考えております。

 しかし、我が国といたしましては、先ほど委員からも御指摘がありましたように、零細な昆布業者その他が一気呵成に攻め落とされてしまうようなことがあっては大変だ、そのお気持ちはよくわかりますので、我々はあくまでそういうそれぞれの第一線の方々の立場に立って、我々はこのIQ制度というものの維持に努力をしていきたい、こう思います。

仲野委員 本当に、大臣、私の地元の釧路、根室管内は、昆布漁業に従事されている方たちが圧倒的に多い。そして、収入も数百万円、その数百万円の中で一家五人が本当に細々と生活をしている。そして、それで生活ができないから、今度、本州に出稼ぎに行っている。今、不況の中で出稼ぎもないという状況ですので、そういった実態をよく把握していただいて、このIQ制度、努力をしていくんじゃなくて、絶対堅持をしていくということを大臣に申し上げて、この質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

山岡委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

山岡委員長 速記を起こしてください。

 では、引き続き審議を続けます。川内博史君。

川内委員 民主党の川内博史でございます。

 きょうは、委員長、理事の先生方にお許しをいただきまして質問の機会をいただきましたことに、心から感謝を申し上げさせていただきたいというふうに思います。さらには、大変お忙しい中に全農の田林理事長にもお運びをいただいております。心から感謝を申し上げさせていただきます。

 私がきょうテーマにいたしますのは、鹿児島県は黒豚が特産品でありますが、これからジャパン・ブランドとして振興していかなければならないこの黒豚について偽装事件があった、しかも、その偽装事件にアメリカ産あるいはカナダ産の豚肉の輸入がかかわり、その輸入をしていたのが全農の子会社である組合貿易という会社であったということでございます。この件に関して、農水省から業務改善命令が発せられ、きょう、多分この質疑の後、理事長は農水省に対して報告をお持ちになられると思います。

 まず、幾つかの事実を確認させていただきます。

 平成十一年から平成十五年にかけて、全農の子会社である組合貿易は、合計二千トンを超えるアメリカ産、カナダ産の豚肉、そのうち千七百三十二トンがバークシャーの黒豚でありますが、これらを輸入したことをお認めになられますか。

田林参考人 紹介いただきました全農の理事長の田林でございます。

 回答をさせていただく前に、今回、子会社の組合貿易が、今お話にあった、海外から黒豚を輸入して都内の業者に売って、それが現地で偽装に使われたという事実が発覚したことにつきまして、日本の国産の農業を守らなきゃいけない立場の我々の子会社がそうしたことについて実施したことは、大変、私どもの監督不行き届きであり、また子会社の管理が十分でなかったということを反省しております。この席をおかりしまして、今後強く指導していくことを誓って、おわびを申し上げる次第でございます。

 さて、今の御質問でございますけれども、組合貿易が、カナダ、アメリカから二千トンのものを入れていたか、取引をしていたかということですけれども、カナダからは直接輸入をしておりますし、アメリカ産の黒豚は海外から入ってきたものを内貨品として組合貿易が買っております。そういう意味では、直接はアメリカのものは輸入していない。合計で千七百三十二トンの黒豚を、カナダ、アメリカのものを組合貿易が買って取り扱ったということでございます。

 それから、それが現地の鹿児島にどれだけ流れたかということでございますけれども……(川内委員「そこは聞いていませんよ、まだ」と呼ぶ)聞いていないですか、済みませんでした。

川内委員 千七百三十二トンのアメリカ産あるいはカナダ産の豚肉を、組合貿易、子会社が扱ったということをお認めになられました。

 そうすると、それらはすべて都内の食肉商社である株式会社鳥新にほぼ全量を販売され、さらにそれらが鹿児島の有限会社大隅産直センターにほぼ全量を販売され、それらのほぼ全量が鹿児島県産黒豚あるいは国産黒豚と偽装されて販売をされていたことをお認めになられますか。

田林参考人 お答えいたします。

 鹿児島へ持っていった黒豚につきましては、都内の業者を通じて持っていったものでございます。したがいまして、都内の業者から鹿児島の業者にどれだけ入ったかは、私どもは取引先の取引先であるということからはっきりはわかりませんが、推定でございます。推定でございますけれども、都内の業者を通じて現地に行ったものは、先ほど言った数量のうち千五百十六トンであります。これが黒豚の量でございます。しかし、そのほぼ全量が鹿児島の業者に渡ったというふうに思っております。

 それで、どれだけのものが偽装に使われたかということですけれども、これもはっきりはしておりません。しかし、その中の多くの部分が偽装に使われたのではないかと推定をしております。

川内委員 みずからが取り扱った外国産黒豚が鹿児島での偽装黒豚に、海賊黒豚と言っていいと思いますが、海賊黒豚に化けた、ほぼ全量化けたということをお認めになられました。

 ことし七月二十九日と八月二十七日に発表された全農さんの調査結果には、アメリカ産の黒豚の取引やあるいは偽装については全く触れられておりません。これはなぜですか。

田林参考人 事の発端は、組合貿易を退社した人間がこの問題について告発をしたことからこの問題は発生いたしました。それで、私ども調査をいたしましたけれども、私どもの調査結果では、現実には組合貿易はタッチしていないということが判明いたしたわけでございます。

 したがいまして――失礼しました。申しわけございません、もう一度御質問をお願いします。

川内委員 だから、調査結果にアメリカ産の黒豚のことが触れられていないのはなぜかということです。

田林参考人 失礼しました。

 それで、この告発につきましては、カナダ産の黒豚について組合貿易は偽装を行っているというくだりがありまして、私どもの調査が主にカナダ産黒豚に集中をしたということでございまして、アメリカ産の黒豚は、先ほど申し上げましたとおり、国内の商社を経由して私どもが内貨として取り扱ったということで、その調査をカナダ産ほど十分にしなかったという経過はございます。

 しかし、このアメリカ産の豚肉の取引は、組合貿易は帳合い取引をしていたということで、現実には、輸入業者と私どもが売っている相手の業者との間ですべてのことが取り運ばれていたということでございまして、その点について、私どもの調査が不十分であったということで報告をしておりませんでした。

川内委員 今、アメリカ産の黒豚については調査が不十分であったということをおっしゃられました。アメリカ産黒豚については今後さらに調査をされるということを言外におっしゃられたものというふうに理解をしたいと思いますが、この点は後で確認をさせていただきます。

 先ほど、偽装に直接かかわった鹿児島の業者は取引先の取引先であるので、自分たちにはよくわからないということをおっしゃられたが、その取引先の取引先に組合貿易は、合計七十七回、約五億五千万、全く品物の移動を伴わない金銭の貸し付けを行っていたことをお認めになられますか。

田林参考人 組合貿易は商社でございますから、一般的に商社機能を発揮することをしております。その商社機能の一つとしまして、いわゆる商社金融ということで、信用力が低い取引先に対してその信用力を高めるためにサイトの延長や商社金融ということを実施してまいりました。今おっしゃられた、十一年の七月から十三年の十一月まで七十数回に及んで五億五千万の商社金融を実施いたしました。

川内委員 一般的な商社金融であるということをおっしゃられたが、品物の移動を伴わない、ただ伝票だけのお金の流れが一般的な商社金融とはどういうことですか。ほかに事例がありますか。

田林参考人 一般的には、サイトを延長した……(川内委員「ほかに事例があるかと聞いたんですよ。ほかに事例があるかということを聞いたんです」と呼ぶ)

 組合貿易は、こうした金融取引のほかに、サイト延長などによって小規模な業者を支援しているという例はございます。

川内委員 私が聞いたのは、物の移動を伴わない伝票だけのお金のやりとりを取引先の取引先にしている例がありますかということを聞いたんです。

田林参考人 そういう取引は、商社金融はほかにはないと聞いております。

川内委員 取引先の取引先である鹿児島の大隅産直センターに金融をつけた、これはほかに事例のない取引であるということを今お認めになられました。

 農水省の調査でも、架空取引というふうに形容をしております。この架空取引をするような組合貿易、鳥新、そして大隅産直センターという、この三者の関係は非常に深い関係であったと言わざるを得ませんが、この三者の関係が深い関係であった、特別な関係であったということをお認めになられますか。

田林参考人 先ほども申し上げましたとおり、小さい業者を取引によって資金融通をするという格好をとるのは、組合貿易としては妥当なことだったと思っております。そのことが偽装に結びつくほど密接であったというふうには私ども考えておりません。

川内委員 先ほど理事長は、取引先の取引先のことだから自分はよくわからないとおっしゃったんですよ。ところが今回は、取引先の取引先であるその小さい業者を保護することは大事なことだとおっしゃる。一体どういうことですか。全然矛盾しているじゃないですか。ほかに事例がない、ほかにそんな取引をしたことがないようなぐらいに面倒を見ていた大隅産直センター、お金まで貸しているわけです、五億幾ら。非常に深い関係であったということはお認めになられますね。

田林参考人 今申し上げたとおりでございます。それをもって偽装に関連づけるほど密接な関係にあったというふうには考えておりません。

川内委員 私は、偽装に組合貿易がかかわった、あるいは全農がかかわったなんということを申し上げているわけではないんです。真実を明らかにしたいと思っているだけです。

 それでは、次に行きましょう。

 先ほどから子会社がやった、子会社がやったというふうに理事長はおっしゃる。では、その組合貿易の直接の担当常務あるいは担当部長あるいは担当者は、ある組織からの出向者であります。その組織の名前を言ってください。

田林参考人 当初この取引にかかわった出向者は全農からの出向者でございます。後ほどは組合貿易のプロパーの社員でございます。

川内委員 この取引を始めたのが全農からの出向社員であったということを、今重大な事実をおっしゃいました。全農から出向した社員が、本来なら社長の決裁を経なければならない、あるいは社内の稟議の手続をとらなければならない社内手続を無視して、全農の社員同士のみでこの外国産黒豚の取り扱いの実行を始めたということを今理事長がみずから告白をされたわけであります。

 これは、私は子会社の責任にはできないと思いますよ。やはり全農さんが、全農の社員がやったことですから、しっかりと責任をとっていただかなければならないと思いますが、どうですか。

田林参考人 全農は、組合貿易に対して出向させる場合、在籍出向という格好をとっておりまして、全農に籍を置いたまま、その全農の職員は相手側の組合貿易の社員といいますか出向社員にもなって、その会社の指示命令系統の中に入ります。

 したがって、それは会社の指示に従ってそれらの出向社員は業務をするということになっておりますし、また、会社に対しましては一つの覚書を結んでおりまして、自主経営、自主責任を持って経営しなさいということを言っております。それに沿って独立した一法人として主体的に事業を組合貿易は行っております。

 その組合貿易が今回のこの取引をしたことについて、私どもが最後に、そういう取引は全農の理念に合っていないからやめなさいということを指示した以外、取引の初めからその途中経過に至るまで何の指示もしておりません。独自の経営路線に沿ってこれはやった。なおかつ、その立ち上がりのときには、売買同時取引ということで、在庫は持たない、入ってきた物は相手に売るということが確保されているという前提で物を入れているということで、そこにリスクはないという売買同時取引として部長決裁でやられておりますので、そういう意味で取引がなされている。

 そのことについて、その取引が問題であるとかやるべきではないとか、あるいはそういう取引を危ない取引のようなものも含めてやりなさいとか、そういう指示は一切ありません。

川内委員 それは開き直りというんじゃないですか。組合貿易に行った社員は、組合貿易の指示に従って仕事をするとおっしゃった。しかし、この全農から組合貿易に出向した社員は、出向した者同士で相談をして、社内的な手続を経ず、この外国産黒豚の取り扱いに手をつけたわけであります。組合貿易の社内指示なんというのはだれも出していない、取締役会の決裁もない、社長の決裁もない、どこにも書類がない、そういう中で、全農の社員が組合貿易の看板をかりてやった取引であります。

 今の答弁には、お答えには到底納得をするわけにはいきませんが、時間もあと十分ほどしかございませんので、次の質問に移らせていただきます。

 私は、鹿児島の黒豚の生産者の皆さん、あるいは、今、知的財産戦略本部でもジャパン・ブランドという形で地域特産品をブランド化していこうと、ようやくそういう手がつけられ始めて、日本の農業が生きる道を知的財産と結びつけて考えていくということは大いにやるべきことであるというふうに考えております。そのためにも、こういう鹿児島黒豚の偽装事件等に代表されるようなことというのは根絶をしていかなければなりませんし、あまつさえ、そういうものに、農協法の一条、八条にも出ております、日本の農業従事者の皆さんをしっかりと守っていかなければならない全農並びに全農グループの皆さんが、きょう理事長がおっしゃられたようないろいろな言いわけをしなければならないことは、農民の方たちに大変申しわけない、かわいそうだというふうに思います。

 業務改善命令は今回何回目ですか、理事長。

田林参考人 最初にいただいた業務改善命令から、今回を含めて六回になります。

川内委員 六回も業務改善命令を受けていながら、何一つ改善をされていない。改善されていないだけでなく、事件が発覚すると、いや、それは子会社がやったことだと。全農からの出向社員ですよ。取引先の取引先のことはよく知らないと言いながら、しかしそこには金を貸している。ほかに金を貸している事例はないんですよ。

 アメリカ産の黒豚の取り扱いについては調査が不十分であったとおっしゃられた。なるほど、そうでしょう。私は、この件に関して幾つかの新しい証言をこの二、三日の間に入手いたしました。

 カナダのバークシャーの黒豚の牧場でこの組合貿易との輸入にかかわった、取引にかかわったショーン・イマムラさんという人にメールを書きました。返事が参りました。十一月二十七日に返事が来まして、その中にこんなことが書いてあります。「二〇〇一年十一月十六日、組貿山本氏と一緒に鹿児島(大隅産直)を訪問。大隅産直東氏が当時事務所を持っていた、志布志の横浜冷凍株式会社(ヨコレイ)の冷凍冷蔵施設を訪問。この冷凍冷蔵施設内で、空になった弊社の箱」、弊社の箱というのはカナダの牧場の箱ですね、「弊社の箱が床につぶされた状態で積まれているのを見つける。また、同じ場所に“大隅”あるいは“全農”などと印刷された箱が積まれていた。」

 これはすなわち、カナダから輸入したものをその場所で詰めかえていたということでありましょう。その詰めかえていた横に大隅産直の箱と全農の箱があったということを証言していらっしゃいます。

 さらに、平成十五年の九月十五日付の、組合貿易元常務でいらっしゃる方がこんな文書を残していらっしゃいます。「カナダ産バークは黒豚であり、国内産の供給を上回る需要があって輸入の要望が強く、取引先の要望に応えるために取り組んだもので、当時は全農向けアメリカ産のバークも同時に取り組んでいた。」全農向けアメリカ産のバークも同時に取り組んでいたと。これは、本件にかかわった組合貿易の元常務さんの文書であります。これだけの新しい証言も出ております。

 さらに、私は、今回のこの件に関して、農水省はよくやっていらっしゃると思います。農水省はよくやっていらっしゃると思うが、しかし、いまだ、このアメリカ産、カナダ産の黒豚肉がどういう形で偽装されて、どういうところに販売をされたのかということについてはなぞのままでありますので、さらに詳細な、さらに突っ込んだ調査、事実の確認が必要であるというふうに考えますが、経営局長、いかがですか。

須賀田政府参考人 今先生がおっしゃられました、ヨコレイの倉庫で全農などと印刷された箱が積まれていた。このヨコレイというのは、今回の偽装が、詰めかえが行われた場所でございます。全農の箱が置かれていたというのは、私どもも初めて知った事実でございます。それから、アメリカ産のバークの全農向けというのも初めて知った事実でございます。

 本件に関しては、国民からいささかなりとも疑念を持たれることのないよう、事実関係を調査してきっちり究明したいというふうに思っております。

川内委員 経営局長の力強い御答弁をいただいて、鹿児島の生産者も大変今力強く、涙を流していると思います。

 さらに、農水大臣に、島村大臣にお伺いをいたします。

 先ほど私、参考人の田林理事長に対して大変失礼な態度をとったことは大変申しわけなく思います。それはおわびをいたします。済みません。しかし、私も、二十一世紀は安心、安全の食の時代、しっかりと農業を守っていくためにはこのようなことが金輪際あってはならないんだという思いで必死で質問をさせていただいておることを御理解いただきながら、質問をさせていただきたいと思います。

 農水大臣、今までお聞きをいただいたように、全農の調査や認識は私は非常に不十分だというふうに思いますし、事の真相を国民の皆さん方にしっかりと、こういうことだった、しかしこれからはこういうふうにして、こういう事件がなくなるようにするんだということを説明していかなきゃいかぬと思うんです。

 当業務改善命令に対する全農の報告というものは、私が漏れ承るところによると、関係者の責任のとり方やあるいは真相究明をすべきだということも業務改善命令の中に書いてあります。しかし、真相については、アメリカ産については調査が不十分だということを田林理事長もみずからお認めになられました。私は、農水大臣、きょうこの報告を、わかった、次から頑張れよといって受け取っちゃいかぬと思うんです。一度突き返して、もう一度しっかりやれということをおっしゃっていただかなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。

島村国務大臣 組合貿易の取り扱った米国産、カナダ産豚肉については、当省の調査におきまして、鹿屋市の業者により偽装に用いられたことはもう調査済みであります。

 したがいまして、全農より明白で合理的な反証がない限り、当該事実を認めない報告は客観性を有するものではありませんので、そのようなものを受理する考えはありません。

川内委員 今農水大臣からも、客観性のある報告でなければ受理する考えはないということを御答弁いただきました。

 全農の田林理事長も、そのことをしっかりと踏まえてこの後農水省に行っていただきたいと思いますし、大臣、大臣自身も、この黒豚、二千トンですよ、二千トン。一人百グラムの豚肉を食べるとすれば二千万人分ですから、これはもう巨大な量です。この二千トン余りの、全農によれば千七百三十二トンですから千七百三十二万人分ですが、これが偽装をされたということに関しては徹底的に真相を究明すべきだ。

 大臣からも力強い決意をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

島村国務大臣 まことにおっしゃるとおりでありまして、こういうものをなおざりにしてはいけないので、きちんと真相を究明し、今後こういうことがまた起きないように万全の努力をしていきたい、こう思います。

川内委員 私も、ほかにもいっぱい質問を用意してきておりますが、今大臣から、徹底的にやるという御答弁をいただいたので、それで十分であります。

 私も、さらにこの問題については、私なりの立場で農水省さんに御協力を申し上げ、徹底的にやるということをお誓い申し上げまして、私の質問を、若干早うございますが、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

山岡委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 島村大臣は、黒豚の問題でも大変前向きな決意を示していただいて、我々農水委員会としても大変心強いところですが、これはちょっと前回の質問通告になくて申しわけないんですが、いわゆるアメリカからの輸入牛肉に対して、前々から、大臣、いわゆる日本と内外同等の条件で、例えば、二十カ月齢に日本がなったら二十カ月齢で入れますよ、そういう趣旨に賜っておりましたが、そのとおりお考えに変わりありませんか。

島村国務大臣 変わりありません。

山田委員 国内のBSE対策、蔓延防止対策、一つはもちろん検査ですが、今、日本では全頭検査をやっています。それから、飼料の規制がありますね。そしてもう一つは、いわゆる危険部位の除去ですね。それからもう一つありますか、大臣。トレーサビリティー法案は、BSEの蔓延防止、そのための法律でしょうか。大臣のお考えを。

島村国務大臣 委員もお触れになりましたけれども、私は、国内と同じ措置を輸出する業者の側にも要求をすると。

 これは、先般のアメリカとの協議でも申したところでありまして、その意味では、米国に対して牛肉のトレーサビリティーを求めていくという意味について、今までも国内措置というものについて十分認識をしてもらって、一番最初に私のところに見えたときには、多少、選挙に間に合わせてもらいたいというような甘い考えもあったようですが、途中からすっかり態度が変わりまして、あくまで日本の国内措置に従うという形を言ってきたわけでありますから、これからも我が国の求める措置については可能な限り協力をしてもらうと。我々が納得できるものでなければ当然に輸入に責任が持てませんから、そういう姿勢で臨みたいと考えます。

山田委員 大臣はさすがで、非常に心強く思っております。

 それで、いわゆるBSE蔓延防止策としてトレーサビリティー法案、これも、国内対策としてはそのための法案であるか否か、それだけお答えいただければと思いますが。

島村国務大臣 私どもは、少なくも国際的にも我々の主張が通用するような判断を基本に置いて、これからも我々の主張を貫きますが、民主党の側で準備をされているトレーサビリティー法案、内容を詳しくは存じておりませんが、ただ、そういうことごとについては、当方なりに、いわば国際常識に照らして、とるべき道を選んでいく、こういう基本に立っております。

山田委員 大臣、そのことを聞いているわけじゃないんですが。

 トレーサビリティー法案そのものは何のための法案なのか。先ほど、消費・安全局長も、BSEの蔓延防止のための法案であって、直接食の安全ではないような答弁をなさったわけですが、大臣、そのとおりだと考えてよろしいのかどうか。トレーサビリティー法案がBSE対策措置だと考えていいのかどうか、そこだけをきちんとお答えいただければいいだけなんですが。

島村国務大臣 既にもう局長級の協議を終えて、我々はいろいろな話を進めている段階でありますが、一番詳しい話を、どこまでやっているかを正確に山田委員にお伝えする必要があると思いますから、これは中川局長からお答えをいたさせます。

山田委員 大臣、どうも私の質問に答えていないわけです。

 大臣、いいですか、消費・安全局長は、国内のトレーサビリティー法案はBSE蔓延防止のための法案だ、直接食の安全ではないとはっきり言っているわけで、大臣、そのとおりでいいわけですね。それと違うのか、いいのか、それだけお答えできれば結構です。――ちょっと、消費・安全局長に聞いているわけじゃない。それは参考人としても呼んでいない。大臣が答えていただければいいんです。

島村国務大臣 中川局長と同じであります。

山田委員 では、いわゆる国内のトレーサビリティー法案はBSE蔓延防止のための措置である、ということであれば、内外同等の条件というと、トレーサビリティー法案そのものに大臣も当然賛成なさる、いかがでしょうか。――いや、ちょっと、消費・安全局長、答弁できないよ、大臣に聞いています。

島村国務大臣 私どもは、牛肉を輸入する場合に、その安全をいわば確認をするということでありまして、トレーサビリティーそのものについては求めておりませんので、私がここで違うことを言うことはかえって矛盾を生じますので、御理解をいただきたいと思います。

山田委員 よく聞こえなかったんですが、トレーサビリティー法案は何と言われたわけですか。

 トレーサビリティー法案はBSE対策の国内措置である、そこまではお認めになった、局長と同じだと。では、国の内外ともに同じ条件だから、我々が出しているトレーサビリティー法案には、大臣、当然賛成でしょうと僕は言っているわけです。

島村国務大臣 これは、うかつな答弁をいたしますと、また話にゆがみが生じてもいけないので、私も慎重を期しているわけでありますが。

 牛肉のトレーサビリティー制度、これは、感染牛を発見した際に同居牛を速やかに特定できるなど、国内におけるBSEの蔓延防止措置の基礎となるとともに、消費者に情報提供を行うことを目的としている……

山田委員 それを聞いているわけじゃないです。ですから、反対なのか賛成なのか。

 大臣、トレーサビリティー法案というのは、国内のBSE対策措置である、大臣は先ほどから、同じように、国の内外ともに同じ条件で、そうでなければ禁輸を解除しないと言っておられるわけだ。それを今認められた。そうであったら、国内のトレーサビリティー法案、それを輸入牛肉に対しても同じ条件で求めるとして反対できないんじゃないですか。反対するんですか、反対しないんですかと聞いているわけです。非常に単純明快なんです、大臣。非常に農村、畜産に理解のある大臣に、ひとつ、官僚等の意見を聞かずに、大臣の考えで真っ当にお答えいただければ、これがいわゆる農水大臣の立場であります。

島村国務大臣 大分お励ましが多いですけれども、私どもは、あくまで食の安全、安心というのを終始言い貫いてきているわけでありまして、牛肉輸入においても、今、牛肉の安全性ということに主眼を置いているわけで、トレーサビリティーそのものがいわば安全ということとは直接結びつかないので、我々なりの措置を先方に要求をしている、こういうことであります。

山田委員 大臣、全くわからない。BSE対策措置として、大臣、トレーサビリティーは認められた。

 いいですか、大臣。けさ記者会見されましたね。十時二十三分から十時四十二分、いわゆる本省記者会見室で。大臣、どうですか。「アメリカに対してもトレーサビリティーの義務づけを求めていくということなんですか」という記者会見の質問に対して、大臣、どうお答えになりましたか。

島村国務大臣 ここに速記録がありませんので、正確を期するわけにはいきませんが、少なくも、日本と同じ措置を求めるという基本に立って先方に牛肉の輸出をしてもらう、こういう話をしたところです。

 ただ、その場合に、私たちが、これを無差別に、アメリカの牛肉全部にトレーサビリティーをやってくれ、こういうことが言えるかどうかというと、まだまだ先方にも先方の事情がありますから、我が国が輸入する部分に限る姿勢でおるわけでありまして、その点は念のためにきちんと確認をしてもらいました。

山田委員 大臣、私の手元にけさの記者会見の速記録があるんです。いいですか、大臣は、質問、「アメリカに対してもトレーサビリティーの義務づけを求めていくということなんですか」と聞いたら、「当然ですね」と答えているんです。間違いありませんか。

島村国務大臣 いや、実は、その私の言い方がすべてを包含するというふうにとられるということに気がついたので、我が国に輸出をする肉についての確認をするということに後からきちんと修正をいたしております。

山田委員 大臣ともあろう者が、大臣の見解を述べて、その中で、「当然ですね、それは、まあ、けたが違いますから、いきなりやってくれと言ったって物理的にできない点もあるでしょうから、その辺の確認ができないものについては我々は受け入れないよ、だから、その辺の確認だけはしっかりしてください、だから、アメリカの牛肉といったって」と、大臣はとうとうとトレーサビリティーが必要である、アメリカの牛肉に対しても、そう述べているわけです。いいですか、大臣。大臣はそう考えられて述べたわけでしょう。違うんですか。

島村国務大臣 実は、月齢の確認は必要という意味で私は話をしたわけで、トレーサビリティーまでは必ずしも必要としないということを私があれから戻ってきて言ったら、あなたのお話になったこととちょっと違いますねという指摘を受けたものですから、すぐ報道官を通じて修正をいたしました。先ほど来申し上げているとおりでございます。

山田委員 大臣は、事務局から、事務官から言われたら、ころころと意見を変える。大臣、そういう農水行政でいいんですか。大臣ともあろう者が。お答えください。

島村国務大臣 とおっしゃりたいんでしょうが、私の今までの政治生活をずっとひもといていただければ御理解がいただけますが、ころころ変わる男ではありません。

山田委員 ころころ変わったじゃありませんか。トレーサビリティー法案は当然だと、アメリカに対して求めるのは。これはみんながそう思っていると思いますよ、自民党の先生方も本音は。(発言する者あり)まあ、だれか一人、二人、何人かいるかもしれないけれども、それはおかしい。

 ただ、大臣は、そう考えたのを、それを翻したわけですから、ころころ変わったということで、大臣自身、いつもころころ変わる、不信な大臣だ、そう言えるじゃありませんか、そうなったら。信用できないじゃありませんか、大臣。

島村国務大臣 やはり人間、物を言っても、ちょっと自分の趣旨に反したことや、あるいは自分はそのつもりでなくても違うことを言ってしまう、あるいは相手にその印象を与える、あるいはそういう理解を与える、これはあり得ることです。

 ですから、これを全く私が修正しなかったのであればこれはあれですけれども、私は、即座に修正を指示して、自分が言った趣旨はこういうことだから訂正してほしいということを申したところであります。

山田委員 ころころ見解が変わって申しわけなかった、こういうふうに修正しますと。

 いずれにしたって、大臣たる者は、事務方がいろいろなことを言おうとも、大臣の考えで、政治家の考えで農水行政をやる、事務方がやることではない。これは、これから先、しっかりと責任を持ってやってもらいたい、そういうつもりで私は話しているわけなんです。

 次に質問、時間もなくなりますので変えますが、実は、大臣、メキシコからかなりいろいろな牛肉が入ってきているわけですが――ちょっと質問を変えます。大臣、今の質問を撤回して大臣に伺いますが、大臣、OIE基準、国際獣疫事務局の基準というものがありますね、BSE問題で。そのOIE基準というのは必要最小限度の基準だと考えますが、そのOIE基準を日本国の農水大臣として遵守されるおつもりございますか。――ちょっと大臣、大臣の考えでお答えください。そんな、みっともない、事務方から聞くなんて。

島村国務大臣 基本的には尊重いたしますが、すべてではありません。

山田委員 それでは、メキシコはいわゆるリスク評価、EUのリスク評価はレベル3。アメリカとカナダと、そしてメキシコ、日本は同じリスク評価なんですが、そのメキシコから、大腸、小腸、二百九十七トン、私の資料を見ていただければいいんですが、資料三ですね、入ってきているわけです。そして、SRM、いわゆる危険部位の除去はメキシコは全くやっていない。そういうところから入ってくるものについて、大臣、このままでいいんでしょうか。

島村国務大臣 我が国は、現在、メキシコの牛肉等の輸入を停止する措置は講じておりませんが、国際的にもメキシコに対してBSEを理由に輸入停止をしている国はないと心得ています。

 これは、メキシコでは、一九九六年より国際獣疫事務局、いわゆるOIEの基準を踏まえたBSEサーベイランス検査を実施しておりまして、これまでBSE感染牛が確認されていないことによるものであります。

 EUのBSEリスク評価では、メキシコが米国と同じレベル3となってはおりますが、この評価自体については国際的に認められたものではない、こう承知しているところでありまして、別に、レベル3ということがそのまま正しいということには必ずしもならないと思います。

 なお、BSE未発生国において万が一BSEが発生した場合の混乱を未然に防止するために、厚生労働省と連携して、メキシコを含むすべての国からSRMを輸入しないよう輸入業者を指導しているところであります。

山田委員 大臣、日本で今、焼き肉屋さんでホルモンを食べているんだけれども、大腸、小腸、今まで二百九十七トンも入ってきている。もう一つ見ていただきたいんですが、中国はどれくらいこのところ輸入しているかと聞きましたら、資料二にあるように、四十・五トンと私のところに戻ってきた。ところが、そんなはずはない、いわゆる牛丼屋さんでも、中国から四千トンもことし入れているという話がある、おかしい、もう一回調べてくれと言ったら、次に出てきた資料は、「中国からの牛肉、くず肉及び調製品の輸入量」、同じ日なんですが、これでいくと、やはり小腸、大腸、そういったものを含めて、いわゆる内臓等が二千四百トン入ってきている。

 ところが、大臣、日本は食の安全の見地で食品安全委員会もつくりながら、リスク評価を、中国に対してもメキシコに対しても、これだけのものを入れながら、危険部位を実際に評価しているのかしていないのか、大臣、お答えいただきたい。

島村国務大臣 平成十六年一月から十月における中国からの我が国への牛肉関連品目の輸入量は、牛肉については、水煮したものが四十トン、加熱処理したタン、大腸、小腸……(山田委員「それを聞いているわけじゃないんです。私の質問は聞いていましたか」と呼ぶ)聞いていたつもり……(山田委員「リスク評価をなぜさせていないのかと聞いているわけです」と呼ぶ)

 もう一度お願いします。

山田委員 中国からも危険部位が入ってきているわけです、現に、メキシコからも。ところが、日本国の農水大臣あるいは厚生労働大臣としては、それが安全な、BSEのおそれがないかどうか、いわゆるレベル評価、リスク評価、それを当然やらなければいけないんじゃないのか、その必要はないのか、それで日本国の農水大臣として食の安全、安全と言えるのかと聞いているわけです。

島村国務大臣 我が国に牛肉を輸出している国の家畜衛生の状況については、できる限り詳細な情報を収集することは、食の安全、安心の観点から当然重要であると考えています。

 BSEリスクの評価については、食品安全委員会あるいは厚生労働省とも協議しつつ対応を検討しているところでありまして、我々は、危険を冒したり、それを放置したりしている考えはありません。

山田委員 大臣は放置してきた。大臣の責任は重い、これは。

 実は、私が調べていったら、ことしの五月の二十八日の日経新聞、「牛の腸、輸出入を禁止 BSE基準国際機関改定 二国間合意無ければ」と書いてあります。そして、先ほどOIE基準等について言っていましたが、OIE基準を遵守するか遵守しないかというところで、中川消費・安全局長は、三分ぐらい打ち合わせしたら、必ずしも全部それを云々しない、遵守するものではないと言っていましたが、いわゆるOIEの、ことしの五月二十八日の、これは農水省から出たOIE総会の概要についてというプレスの発表なんですが、その中で、こうありますよ。見ていただきたいんですが、いわゆる特定危険部位、SRMについては、「月齢を六ヶ月から十二ヶ月に引き上げ、全ての月齢の腸全体をSRMと定めた。」と。そして、日経新聞には輸入禁止となっている。

 ところが、ところがですよ、これは五月の時点ですよ、ところが、この十月までの間に小腸、大腸、それこそ中国からもメキシコからもこれだけ入ってきた。大臣、その責任をとらなきゃいけないじゃありませんか。放置していないと言っていましたが、まさに放置してきたではありませんか。大臣、明確にお答えいただきたい。(島村国務大臣「中川局長に」と呼ぶ)中川消費・安全局長は、委員長、参考人で呼んでいない。呼んでいないから、できません。それは質問通告してある。

島村国務大臣 私自身がすべてのことを承知しているわけじゃありませんので、当日いきなり、いわば専門的なことを聞かれてもお答えできないこともあることは御理解いただきたいと思います。

 ただ、少なくも、本年五月に開催されたOIE総会において、牛の腸について、回腸遠位部のみでなく腸全体をSRMとするBSE国際基準の改正が採択されたわけであります。改正の背景については、羊のスクレーピーにおいて腸に感染性が確認されていることや、腸を食する習慣のない国では回腸遠位部のみの摘出を管理することは実際的でないと聞いているところであります。

 なお、牛の回腸遠位部以外の腸にBSE感染性は認められておらず、我が国においては腸を食する習慣もあることから、現時点で規制を見直すことは考えておりません。

山田委員 大臣、せっかく大臣は黒豚であれだけの表明をして、それなりに大臣もよく勉強なさり、大臣自身が考えて食の安全と畜産のことを考えておられると思っておったら、大臣、全く情けないじゃありませんか、これは。放置していないと言いながら、まさに「牛の腸、輸出入を禁止」と日経新聞に大きく載っているんだ、五月二十八日。その間、どんどん入ってきている。これは、ぜひ、本当に大臣は責任をとってもらわなきゃいかぬ。

 しかし、食品安全委員長代理にお聞きしたい。食品安全委員会は、まさに食の安全のリスク評価をやっている一番大事なところですが、二十カ月齢の、二十カ月齢以上でないのと、そして全国を、リスクコミュニケーションといって、かなり精力をかけて、極端に言うとそれだけにすべてをかけて、何のためか、どこの国の圧力かわからないが、そして一生懸命やってきた。ところが、肝心かなめの、食品安全委員会ができてもう二年になろうとするのに、二年じゃなかったかな、これは正確に言ったら、間違ったら、一年かもしれません、その中で、なぜ、そういう日本が輸入している大腸とか小腸とか、そういう危険部位、そういったものを、輸入国のメキシコとか中国のリスク評価をなぜやっていないのか。

寺尾参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、この点につきましては、食品安全委員会といたしまして、その重要性を十分に認識しております。

 十一月十八日に第七十回の食品安全委員会というものが開かれましたけれども、ここにおきまして、我が国が現在牛肉を輸入しております国におきますBSEの現状とか対策につきまして情報を収集するということを決めました。

 今後、輸入牛肉の管理措置につきまして厚生労働省及び農林水産省から食品健康影響評価の要請がされた場合には、ここで集めました情報その他を含めまして科学的な知見に基づいた評価をやっていきたいと思っております。

 以上でございます。

山田委員 食品安全委員会はまさにむだなことばかりやっていて、いわゆる国内の不満のガス抜きだけやっていて、肝心かなめのことをやっていないことの責任は重い。そして、先ほどの農水大臣の、放置してきた、食の安全に対する、その責任も重い。

 そして、大臣に言っておきたいのは、韓国。韓国はメキシコから、私の調査によると四カ所の工場を指定して、そしてその工場にHACCP、いわゆる衛生基準、当然SRMの除去その他ができたものしか輸入していない。ところが、その中にアメリカからの牛肉が混入してあって、輸入禁止を一カ所の工場からしている。ところが、日本は無差別に、そういう工場の指定もなく何でもかんでもむちゃくちゃに入れてきている。大臣、そのことについてこれからどうするつもりなのか、明確にお答えいただきたい。

 ほかにいろいろ質問したいことはいっぱいありますが、きょうは時間がなくなったので、その点だけを最後にお聞きして終わりたいと思います。

島村国務大臣 私どもは、従前から申し上げているように、我が国に輸入される牛肉につきましては、要するに、我が国の国内措置と同等の措置を求めるということを基本とし、まさに科学的知見に基づく安全、安心という食の輸入を心がけているところでありまして、それ以外の何物でもありません。

 ですから、中国の問題その他についても、委員とは必ずしも意見が一致いたしませんが、少なくも私たちは私たちの責任においてきちんとこれに対応しているという考えにあります。

山田委員 全くそうでない。無責任きわまりない。しかし、時間がなくなったので、これで質問を終わらせていただきます。

山岡委員長 次に、高橋千鶴子さん。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは最初に、厚生労働省に伺います。

 古米や古々米を外見上も食味でも余り変わらなくする炊飯改良剤なるものが外食産業で広く使われているといいます。さらに、外食産業自身が知らないと言われていますが、精米業者の一部の中に精米改良剤というものが使われているようです。精米をする前の古々米に液体を散布すると、白くなり、光沢が増し、においが全くなくなり、新米そっくりになるということであります。

 成分はプロピレングリコール、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどなど、非常に重大なものが入っているかなと思うのでありますけれども、これらの問題について厚労省として承知をしているのか。

 また、当然、食品添加物として、食品衛生法に基づく表示義務違反になると思いますが、まずこの点を確認したいと思います。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 古米を精米する際に用いられる精米改良剤として御指摘のような食品添加物が使用された場合には、これは食品添加物一般のことでもありますけれども、栄養強化の目的で使用されるものや加工助剤やキャリーオーバーを除いては表示義務がありますので、もし表示されていない場合には食品衛生法に違反になります。

 それから、御指摘の、違反があるかどうか承知しているかという御質問でございますけれども、これについては、具体的には承知しておりません。

 したがいまして、適切な表示が十分行われるよう関係業者への注意喚起等を行ってまいりたいと考えております。

高橋委員 まず、食品衛生法違反であるということは明確になったと思います。

 ただ、承知していないというのが、ちょっと本当かなと思いましたけれども、まあ、そういうことにしたとして、きょうは実は、午前の参考人質疑に続いて新食料・農業・農村基本計画の中間論点整理について伺うつもりでありました。この基本計画の重要な観点の一つがこの食の安全、安心の問題だと思うんですね。それにかかわる重大な問題ではないのか。まして、主食である米の問題であります。その米が、消費者もあるいは扱っている業者すら知らない段階で添加物が使われ、新米に化けて市場に出されている。こんなことがあっては絶対にならないと思うんです。

 この点について徹底した調査、指導をされること、また、厚労省がとられた措置について広く広報するべきだと考えますが、その点についてもう一度確認します。

外口政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどお答え申し上げましたように、この件につきましては、実際どの業者がどこでどのような精米改良剤を使っているかという把握が、実際我々が得ている情報でなかなか難しゅうございまして、例えば、サンプリング調査等をしてもその率が少ないとき、では、それがネガティブであればそういう事態がないのかどうかということにもなりますので、まずは私どもの方といたしましては、その表示のあり方等について正確に理解されているか、誤解がないのか、正しいことが行われているか等について、まず、関係業者の方を含め、もちろん自治体もそうですけれども、注意喚起、正しいあり方をしっかりと広報したいと思います。

 それに加えまして、各自治体で適切な指導がなされるよう必要な対応をとってまいりたいと思います。

高橋委員 この点については徹底してお願いします。その後の経過はまた時を見て伺いたいと思います。

 それでは、中間論点整理について伺いたいと思うんですが、午前の質疑の中でも、担い手の問題について随分論議がされておりました。

 私は、今の、例えば米でいうと、農水省の資料でも、主業農家、いわゆる米生産によって生業をなしている主業農家が農業産出額の三七%、その残りの部分は兼業農家や零細農家が支えているという現実があると思います。この上で担い手に土地と施策を集中させる今のやり方を進めていけば、全体として生産力を本当に維持することができるだろうかと。あるいは、耕作放棄地が年々ふえ、平成十二年度で三十四万ヘクタールと言われておりますが、これがさらにふえていくのではないかと思いますが、この点について見解を伺いたいと思います。

須賀田政府参考人 担い手の問題でございます。

 私ども、少子高齢化のもとで担い手が脆弱化している、このままでは日本農業の将来が危ういという危機感を抱いておりまして、どうしても将来に向かって持続的に農業をしていただけるような経営、それは、やはり農業で他産業並みの所得を上げて、その所得で家計を充足し得るような経営が広範に育成されることを目指すべきであろうというふうに思っているわけでございます。

 こういう観点から、中間整理におきましては、一つは認定農業者を基本とし、さらには、認定農業者じゃなくても経営実体を有している集落営農、こういったものを担い手として位置づけていこうというふうにしているわけでございます。

 先生がおっしゃいますように、そういうことになれば小さな農家がどうなるのかというお話でございます。

 私ども、これは概念整理でございますけれども、リタイアを希望されている、あるいは兼業所得で十分家計を充足しておられるような農家は、担い手の方へ農地の出し手になっていただきたい、これは一つの道でございます。そうでなくて、やはり兼業農家でも農業所得がないと家計費を充足できないような農家につきましては、集落営農の中へ参画するという形でみずから担い手になる道もあるわけでございます。

 そういうことで、中核的な従事者とそうでない人たちが地域の資源を適切に管理をする、そういうことによって耕作放棄地の拡大を防ぎ、生産力の維持強化につながるようなそういう構造を描いていきたいというふうに考えている次第でございます。

高橋委員 そうはいっても、国が目指している方向は、担い手に六割の土地をまず集中する、担い手がすべてを耕せるわけではないということはお認めになりますよね。では、その残りの土地をだれが耕すのか。それを放置して、あるいはそれを耕す小規模な農家を全く支援の対象から外して本当に生産力が維持できるのかということなんです。重ねて伺います。

須賀田政府参考人 ただいま先生おっしゃいましたのは、今の構造展望、平成二十二年を展望しております構造展望のお話をされております。

 現在の「農業構造の展望」ができまして以降、集落営農という新たな概念を私どもはつくり上げました。そういうこともございまして、新たに平成二十七年を目標年次とする構造展望を作成すべく努力をしていく必要があると思っておりますけれども、私ども、その中で、やはり集落営農なりあるいは認定農家なりの担い手が相当部分を占め、その周りを自給的、生きがい的に営農活動をされるような方々が取り巻いておる、さらには、認定農家から委託を受けて資源を管理している農家が存する、そういう姿を漠然とではありますけれども描いていきたいというふうに考えているわけでございます。

高橋委員 そこで、私たちもこの集落営農にかなり注目をしておりまして、この間、例えば、かなり有名でありますけれども、群馬県のJA甘楽富岡あるいは長野の佐久平など、耕作不利地あるいは放棄地などを切り開いて頑張っているグループの姿に学んできました。例えば甘楽富岡農協などでは、多品種少量で産直やあるいは量販店へのインショップを展開して、直販部会は千人を超えたそうでありますけれども、非常に生産額をふやしております。高齢者や女性がその中心となり生き生きと活動する中で、医療費自体が減った、そういう効果もあったそうであります。

 こうした地域に果たしている集落営農などの取り組み、社会的役割、貢献を大いに評価して、こういう形態の担い手もある、それはつまり、規模要件や所得要件には合わないかもしれないけれども、地域に果たしている役割をしっかり評価するという考え方もこれありと思いますが、その点、いかがでしょうか。

須賀田政府参考人 私ども、担い手といいますのは、先ほども言いましたように、やはり経営体でございますので、所得の概念でございます。他産業並みの所得を目指す経営でございまして、経営規模だけをチェックポイントにしているわけではございませんで、やはり先生言われたような技術力とか経営能力だとか、こういうものも重要であるというふうに思っております。

 要は、その集落営農なら集落営農の中に中核的な従事者がおられまして、その人が将来に向かってずっと営農をしていけるような所得を確保しているというようなことが、やはり集落営農が経営体として認められる不可欠な要件ではないかというふうに考えている次第でございます。

高橋委員 時間がないですので、一気に今二問聞きますので、先に局長に答えていただいて、後で大臣にお答えをお願いしたいと思うんです。

 今、やはり経営体ですので他産業並みの所得が必要だというふうなお話ですけれども、それをどんなふうにイメージしているかということなんですね。

 品目横断、直接支払いが今回の大きな目玉である、それをやるためにも担い手を限定しなくちゃいけないという考え方があると思うんですけれども、その中で、他産業並みといったら大体所得は五百三十万だろうという、それは一つの目安が示されているわけですね。それはあくまでも現行の米の値段、一万六千円くらいがベースだと言われています。でも、もう生産調整がなくなる、関税はどんどん下がっていくだろう、ゼロもあるというふうに皆さんがお考えになっているのか。もしそうなったときに、米の値段は一体どこまで下がるのかというふうにシミュレーションされていますか。

 もし、そういう上で、価格に歯どめがなくて、市場と争う、売れる米づくりというだけで本当にそれが成り立つのかどうかということをどのようにお考えなのかを、まず局長にお伺いしたいと思うんですね。

 それで、大臣に聞きたいのは、同じことではあるんですけれども、きのう配られた調査室の資料の中に、東大大学院農学生命科学研究科の教授、本間正義氏の意見陳述がございますけれども、この問題について、農家の所得だけを補てんするのであれば二兆円未満の支出で済む、だけれども、多くの農家は国際価格では採算が合わずに所得補償だけを受け取るようになっていくんじゃないか、だったら、この所得補償は期限つきの暫定措置とすべきである、三年ないし五年に限り所得を保証するが、その後は市場競争で勝ち抜かなければ残れない、一時払いではないが、いわば他産業における早期退職手当と同じである、こういう言い方をしています。

 私は、何か妙に納得してしまうような、ここに追い込んでいくのかなというふうな気持ちになってしまうんです。そうではない、しっかりと守っていくんだという立場に立っているのかどうか、伺いたいと思います。

須賀田政府参考人 先生言われました五百三十万円、これは、現在の他産業並みの生涯所得を四十年間農業をすることによって毎年確保するとしたらどのぐらいの所得かということで、五百三十万円を出しました。そして、それは一つのめどでございまして、それを達成する規模はどのぐらいかを出すためのものでございまして、水田作でいえば北海道では二十ヘクタールぐらいだろう、内地の二毛作地帯では十ヘクタールぐらいであると。こういう、それを達成するための規模を目安として出したわけでございます。これは現在の価格で出したわけでございまして、将来どうなるかということを念頭に置いたものではございません。

 そういう規模を目指す、現時点でどの程度の要件を課すかというためにそれを出したわけでございまして、現時点で担い手でどのぐらいの要件を課すかというのは、これから議論をして決めていきたいというふうに思っております。

 そして、市場価格にさらすのかというお話でございます。そういう市場価格の変動が担い手の経営に大きく変動をいたしますので、その経営のセーフティーネットといたしまして、担い手を対象として、直接的な定額払いと、収入が変動した場合の補てんという二つの経営安定対策を講じて担い手の経営の安定というものを図るための政策でございますので、市場原理から担い手を守るための政策でございます。

島村国務大臣 突然の御質問で、どういうことをおっしゃりたいのかわかりませんが、少なくも、私どもは、やる気と能力のある農業の担い手に関しては、これからもきちんといろいろな援護の手を差し伸べて農業を続けていただく、この基本姿勢に立っております。

高橋委員 時間ですので終わります。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本でございます。

 質問通告しておりませんでしたけれども、BSEのことで、きょうは輸入牛肉に対するトレーサビリティーの問題を含めて審議になりましたので、お伺いしたい点があります。

 きょう、北海道で、二十カ月齢の牛がBSEの一次検査で疑陽性となったという知らせが私の事務所にありましたが、この点について御存じでしょうか。

島村国務大臣 実は、まだその話を正確に聞いておりません。

 ただ、今の段階では一次検査でありますし、疑陽性ということですから、当然のことに、これから徹底的に調査をして、事実を的確につかんだ上で対応したい、こう考えます。

山本(喜)委員 二、三日で確認検査ということになるわけでございますが、その結果、もし陽性というようになった場合に、食品安全委員会に諮問した、二十カ月齢以下を検査対象から外すというように諮問した内容、これはどういうふうになっていくのか、お伺いします。

島村国務大臣 先ほども申しましたとおり、まだその情報を的確に入手しておりません。実際、二十カ月なのか何カ月なのか、そういうこともすべて確認の上で我々は対応したいと思います。

山本(喜)委員 情報が政府の方で遅いようでありますけれども、ぜひ明確な対応をお願いしたいということでございます。

 本題に入るわけでございますが、今月、農水省が発表した農林水産分野におけるアジア諸国とのEPA推進、みどりのアジアEPA推進戦略というのを発表しましたが、このことについて、この内容、「我が国を含むアジアにおける食料安全保障や食の安全・安心の確保、農林漁業・食品産業の共存・共栄の実現、農山漁村の発展を図ることとする。」というふうに述べられておりますが、確かに、内閣の方針として、アジア各国との経済連携協定の締結に取り組むということが掲げられている以上、農水省としてもその方向で進むことだとは思います。

 しかし、その前提として、これまでのFTAあるいはWTO、そうした交渉の中で日本の農業がどのような影響を受けてきたのかという検証がまず必要ではないかというふうに思います。

 この間のWTOあるいはFTAの締結の経過の中で日本の農業が受けてきた影響についてどのように認識しているのか、お伺いします。

伊藤(健)政府参考人 お答えいたします。

 昭和三十年代に入りまして、我が国は、国際化の進展の中で、ガットですとかWTO、あるいは二国間協議という場で、いろいろな農業交渉を行ってまいりました。その中で、私どもとしては、あくまでも多様な農業が共存できる、そういうルールをつくっていこうということで全力を尽くしてきたつもりでございます。

 しかしながら、実際の我が国農業は、経済の発展ですとか、あるいはグローバル化の進展、あるいは国民の食生活の変化といったこともございまして、実際には、農業従事者の減少、高齢化ですとか、あるいは農地面積の減少、あるいは構造改革の立ちおくれといったような問題、多くの課題を抱えている状況であることは事実でございます。

 そういうことで、現在、食料・農業・農村基本計画の見直しにつきまして審議会で御議論いただいていると同時に、WTO、EPA交渉におきましても、引き続き多様な農業の共存が可能となるように全力を尽くしているところでございます。

山本(喜)委員 八月に発表された食料・農業・農村政策審議会、この企画部会の中間論点整理、この中に、「我が国は、東アジア諸国等と経済連携の強化に向けた交渉を行っており、そのなかで関税の撤廃等が議論されている。このような交渉の場において、多様な農業の共存という考え方に基づいた我が国の主張を最大限反映させる取組を継続することが重要である。」というふうに述べられております。

 このような考え方は今回のEPA推進戦略にどのように反映されるのか、これについて大臣にお伺いします。

島村国務大臣 お答えいたします。

 EPA交渉につきましては、本年六月に、多様な農業の共存が可能となるよう、農林水産業の多面的機能への配慮、我が国の食料安全保障の確保に十分留意すること等を内容とする基本的方針を定めており、この方針に沿って、守るべきものは守り、譲るべきものは譲る、この姿勢で交渉に臨んでいるところであります。

 今回取りまとめましたみどりのアジアEPA推進戦略は、この基本的方針に基づきつつ、アジア各国とのEPA交渉に積極的に取り組む観点から、食料輸入の安定化・多元化、第二に、安全・安心な食品の輸入の確保、第三に、ニッポン・ブランドの農林水産物・食品の輸出促進等の重要なポイントを掲げたものであり、あくまでも多様な農業の共存という基本的考え方に立つものであります。

山本(喜)委員 もう一度確認したいんですけれども、多様な農業の共存という中で、日本のスタンス、守るべきものは守り、譲るべきものは譲ると。この守るべきものと譲るべきものの中身はどういうものでしょうか。

伊藤(健)政府参考人 お答えいたします。

 守るべきものというのは、代表的な例としましては、我が国の基幹的作物あるいは地域における重要作物、そういったものが考えられます。

山本(喜)委員 では、譲るべきものはどういうものですか。

伊藤(健)政府参考人 そういった基本的考え方の中に立ちまして、相手の国の関心事項、そういったものを十分聞きながら、ぎりぎりのところで我が国が譲ってもいいということをそれぞれの交渉の中で判断していくということでございます。

山本(喜)委員 このEPAの推進戦略で、先ほど大臣は三つのポイントを挙げましたが、その中に、我が国食料輸入の安定化・多元化というのがあります。一部のマスコミなんかによりますと、この点について、全体の食料輸入量をふやさず、輸入先をアジアのEPA締結国に振り向け、米国など一部の輸出国に偏重している輸入先を多元化し、食料安全保障の向上につなげる考えというふうに解説している新聞もあるわけですね。

 この食料輸入の多元化というのは、要するに、ここで言われている食料の輸入総量はふやさないで輸入先を振りかえていくのだというふうな理解でいいのか、この多元化の意味についてお聞かせ願います。

伊藤(健)政府参考人 まず、国民に対しまして食料を安定的に供給するというのは国の基本的な責務ということでございますので、そういう中で、基本的には国内生産を基本にするわけですけれども、適正な備蓄、そして円滑な輸入というものを組み合わせながら食料安全保障を図っていくというのが我が国の基本的方針ということは御案内のとおりでございます。

 その中で、輸入の部分でございますけれども、地理的にも近接しておりますアジア諸国というのは大変大事な輸入先国ではないかというふうに考えております。今御紹介がありました考え方でございますけれども、基本的にはそういう趣旨でございまして、多元化と申しますのは、今回のフィリピンの場合もそうなんでございますけれども、市場アクセスの適度な改善を行いまして、その国の輸出競争力を、えてして偏りがちな輸入先からその輸入先を移転させる、その場合に、当然、世界全体の輸入量全体がふえることは避けるということを考えながら、輸入先をアジアに移転しながら多元化を図っていくということ、そういう趣旨でございます。

山本(喜)委員 今説明の中でも紹介されましたフィリピンの件ですが、きのう、小泉総理とアロヨ大統領とが最終合意ということで、フィリピンとのFTAが決まりましたが、マスコミの論調だと、フィリピンとの交渉で日本が望んだサービス貿易や投資の自由化に大きな成果が得られなかったのは、農産物と労働市場の開放で思い切った譲歩を示せなかったからだというふうな論調もあります。そういう意見があります。この点については農水省はどうお考えでしょうか。

伊藤(健)政府参考人 お答えいたします。

 今先生からお話ありましたように、昨日、ラオスで開かれました小泉総理とアロヨ大統領の会談で、日比のEPA交渉が大筋合意に達したわけでございます。

 この中で、農産物の関税交渉に当たりましては、先ほど大臣が御答弁しましたように、守るべきものは守る、また譲れるものは譲るという考え方で交渉に当たったわけでございます。

 その中で、先ほどから出ておりますみどりのアジアEPA推進戦略、これを踏まえまして、我々としては、フィリピンの農業者に直接裨益できるような知恵を働かせて交渉しようということで当たったわけでございます。その際に、当然フィリピン側の関心にも最大限こたえられるところはこたえるという方針で交渉に当たりまして、フィリピン側もこれを評価して合意に至ったというふうに我々としては理解しております。

 サービス貿易や投資の方の交渉でございますけれども、この交渉結果を全体として評価する立場に我々はないわけでございますけれども、今回の合意全体の内容につきましては、それぞれの分野につきましてそれぞれ最大限の努力をした結果というふうに考えておりますので、今御紹介があったような見解は当たっていないというふうに我々は考えております。

山本(喜)委員 時間がなくなりましたので、最後に一点、担い手の問題に移るわけですけれども、平成十二年三月の基本計画の発表と同時に示された「農業構造の展望」ということでありますが、この中に、効率的かつ安定的な農業経営を家族経営と法人経営合わせて四十万程度、そしてそこに農地の六割を集積していくというふうに展望しています。

 ところが、この間の地域で話し合われた水田農業ビジョン、この担い手は二十七万三千経営体、それから認定農業者は十九万戸、あるいは担い手経営対策に加入している人は三万人という状況。ですから、この「農業構造の展望」で示されている四十万という数字とはかなりかけ離れた中身になっているわけです。

 したがって、この見直しの中で、この数字そのものも見直しを検討していくのかどうか、あるいは、食料自給率の引き上げということにとっても重要な農業経営体四十万戸、これをどのように展望していくのか、お伺いします。

岩永副大臣 お答えいたします。

 四十万の担い手専業化、突出してそれをつくり上げる、そしてもう一つは、御承知のとおり、集落営農、約五万戸ぐらいを今度は集落的経営体として育成していく、こういうことでございます。

 それで、やはり一番大きな目標というのは、他産業並みの所得をきちっと確立してもらう、望ましい農業構造の姿というものをきちっと確立していくことだ、こういうことでございますけれども、ただ、その中で、では具体的に、担い手の中で所得を得させる分野は何かと申しますと、今、食品産業というのは大変大きなウエートを占めてきております。約三分の一、そこに突出して、外食化、中食化が進展している、そういうところに所得を求められるような農業経営。

 だから、ユーザーが要求するものをどう担い手が対応していくかということで、これはロットの大きさだとか安定した価格での農産物の供給だとか、そして食品産業への対応をなし得る担い手育成、安定的、効率的な農作物供給体制をどう確立するか、そういうことがあわせて確立されると自給率の向上にもなるのではないか、このように思っているところでございます。いよいよ中身のそういう部分で考えていきたい、このように思っております。

山本(喜)委員 ちょっと聞いていることと違っているんですけれども、時間ですから、いいです。

     ――――◇―――――

山岡委員長 この際、御報告申し上げます。

 今会期中、本委員会に付託になりました請願は二件であります。両請願の取り扱いにつきましては、理事会等において協議いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承願います。

 なお、お手元に配付いたしておりますとおり、今会期中、本委員会に参考送付されました陳情書は、食料・農業・農村基本計画見直しに関する陳情書外二十一件であります。

 また、本委員会に参考送付されました地方自治法第九十九条の規定に基づく意見書は、食料・農業・農村基本計画見直しに関する意見書外三百件であります。

 念のため御報告申し上げます。

     ――――◇―――――

山岡委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。

 第百五十九回国会、鹿野道彦君外五名提出、牛海綿状脳症対策特別措置法の一部を改正する法律案

 第百五十九回国会、鹿野道彦君外五名提出、輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案

 農林水産関係の基本施策に関する件

 食料の安定供給に関する件

 農林水産業の発展に関する件

 農林漁業者の福祉に関する件

 農山漁村の振興に関する件

以上の各案件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合の諸件についてお諮りいたします。

 まず、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、派遣の目的、派遣委員、派遣期間、派遣地その他所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、人選及び日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会


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