衆議院

メインへスキップ



第5号 平成17年3月29日(火曜日)

会議録本文へ
平成十七年三月二十九日(火曜日)

    午後二時三十九分開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 楢崎 欣弥君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      岡本 芳郎君    加藤 勝信君

      梶山 弘志君    上川 陽子君

      川上 義博君    木村 太郎君

      城内  実君    北村 直人君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      田中 英夫君    西村 明宏君

      西村 康稔君    原田 令嗣君

      森  英介君    山下 貴史君

      一川 保夫君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    岸本  健君

      小平 忠正君    鮫島 宗明君

      神風 英男君    仲野 博子君

      堀込 征雄君    松木 謙公君

      山内おさむ君    大口 善徳君

      高橋千鶴子君    山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房長) 小林 芳雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       坂野 雅敏君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            村上 秀徳君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  白須 敏朗君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   政府参考人

   (林野庁長官)      前田 直登君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十九日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     西村 明宏君

  川上 義博君     山下 貴史君

  原田 令嗣君     加藤 勝信君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     原田 令嗣君

  西村 明宏君     金子 恭之君

  山下 貴史君     川上 義博君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 水産資源保護法及び持続的養殖生産確保法の一部を改正する法律案(内閣提出第四一号)

同月二十五日

 食料自給率の抜本的向上に関する請願(山本喜代宏君紹介)(第五六七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第六六〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第六六一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六六二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六六三号)

 同(志位和夫君紹介)(第六六四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六六五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六六六号)

 同(山口富男君紹介)(第六六七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長小林芳雄君、大臣官房技術総括審議官坂野雅敏君、総合食料局長村上秀徳君、生産局長白須敏朗君、経営局長須賀田菊仁君、農村振興局長川村秀三郎君及び林野庁長官前田直登君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城内実君。

城内委員 自由民主党の城内実でございます。

 まず、きょう、島村大臣、そして岩永副大臣、大口大臣政務官がいらっしゃっておりますが、先般、食料・農業・農村基本計画が無事策定されました。御尽力に敬意と感謝を申し上げたいと思います。攻めの農政、そしてまた、担い手にとりまして明るい未来のある農政を、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

 本日、私の方からは、違法伐採の問題について質問させていただきたいと思います。

 違法伐採につきましては、これまで松岡利勝先生が違法伐採検討チームの座長を長年やってこられましたし、また、松岡代議士御自身が二月二日に総理に対しまして質問をいたしました。私もたまたまその日予算委員会におりまして、この違法伐採の問題の話をじっくり聞きまして、大変感銘を受けました。

 やはり何といっても、環境を守るという観点から、そしてまた、森林の問題についても、これは非常に重要な問題であると思います。私は農林水産委員会の委員であると同時に環境委員会の委員でございます。そしてまた、外務省に十四年間おりましたけれども、外交面からもこれは非常に重要な問題でございますので、きょう農林水産委員会における初質問にあえて違法伐採の問題を取り上げさせていただくことにいたしました。

 違法伐採については、これはNGOの調査の結果でございますので、どれだけ数字に信憑性があるかわかりませんけれども、大体、南方材の五割から七割、そしてまた北洋材の二割から三割が違法に伐採された木材であるというふうに言われておるところでございます。そうしますと、このままいきますと世界の森林はどんどん違法伐採によって荒れていく、地球から森林がなくなってくる、こういうことでございます。

 こういった現状を踏まえまして、ぜひ今の状況についてお聞かせいただきたいというふうに思います。

前田政府参考人 ただいま先生からお話がございましたけれども、この違法伐採、一般的にはそれぞれの国の法令に反して行われる伐採、これを指すというように考えられておりまして、違法伐採が多いと考えられている地域といたしましては、東南アジア、ロシア、アフリカ、ブラジル、そういったところが挙げられます。

 これら違法伐採の実態の把握、難しい状況にあるわけではありますが、例えばインドネシアですと、英国とインドネシア両政府の合同調査によりますと、生産されます木材の五〇%以上が違法伐採木材であるというような報告がなされております。また、ロシアの方におきましては、生産される木材の二〇%が違法に伐採されているというような環境NGOの報告もございます。

 私どもも今後とも、二国間協力あるいは地域間協力、こういったことを通じまして違法伐採の実態把握に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

城内委員 今前田長官から、インドネシアの木材の五割近くが違法伐採と、これはとんでもない数でございます。ぜひとも、実態調査をすると同時に、こういった国々に対して働きかけていただきたいというふうに思います。

 実は、私が聞くところによりますと、イギリスとかEUにおきましては、かなりいろいろな形で国内に規制をかけているというふうに伺っております。例えばイギリスにおきますと、木材に関する政府調達の際には合法的な木材に限定する、すなわち違法伐採された木材は一切使ってはだめですよ、そのようになっておりますし、さらに、合法的な木材であっても厳しい条件を課しておりまして、持続可能な森林経営がなされているところからの木材でなければだめですよと、そういう厳しい制約をみずから英国政府は課しているわけでございますけれども、この点について、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。

前田政府参考人 ただいまお話がございましたけれども、英国におきましては、政府調達の中で政府が購入いたします木材及び木製品、これは紙も含んでおりますが、それから違法なものを排除するという政府調達の取り組みを進めているというふうに承知いたしております。

 具体的には、二〇〇〇年、平成十二年でありますが、すべての政府機関が持続可能かつ合法なところから供給された木材及び木製品を購入するよう積極的に努めることを義務化するといった旨の表明がなされるとともに、二〇〇四年、平成十六年でありますが、政府調達におきます木材の調達方法の指針、通称アドバイス・ノートというふうに言われているんですが、これが策定されまして、現在これに基づき運用されているというように承知いたしております。

城内委員 それでは、EUについてお聞きしたいと思います。

 EUにおいても違法伐採対策がかなり進んでいるということでありまして、例えば、EUと木材生産国が政府間協定を締結する、そして、その政府間協定を締結した木材生産国は、EUへ木材を輸出する際には、この木材は合法的に伐採された木材ですよという合法性の証明書を添付するようEU各国に義務づけているというふうに伺っております。また、EUはそういった木材生産国に対しまして合法性の証明をするようなシステムづくりの支援もしているというふうに伺っておるところでございますが、この点についてもより詳しく承知したいと思います。

前田政府参考人 EUにおきます違法伐採対策でありますけれども、実はEUにおきましては、現在域内に輸入される木材、これから違法伐採木材を排除するという貿易措置の実施に向けた検討が進められているというように承知いたしております。

 具体的には、今お話がございましたけれども、EUと木材生産国との間で自主的な二国間協定、これを締結いたしまして、当該生産国から輸入される木材、これに合法性を証明する書類の添付を義務づける、それと同時に、生産国に対しましては、本制度の実施、これに必要な協力を行うということを検討しているというような状況にあるというように承知いたしております。

城内委員 今お話を伺いましたけれども、我が国としても、イギリスあるいはEUのように、例えば政府調達に際して合法的な木材に限定するとか、EUが目指しているように、政府間協定を締結して合法性の証明システムを支援するとか、こういったことをぜひ我が国としても進めるべきだと思いますが、この点について我が国の状況はいかがでしょうか。

島村国務大臣 違法伐採問題を取り上げられた城内委員のお考えに、まず心から賛意を表します。非常に大事なことだと考えております。

 違法伐採問題は、地球規模での環境保全、持続可能な森林経営の推進にとって極めて重要な課題であることは言をまちません。このため、我が国としては違法に伐採された木材は使用しないという基本的な考え方に基づいて従来より取り組んできたところであります。

 具体的には、二国間協力、地域間協力、そして多国間協力を通じて違法伐採木材を排除するための技術開発や情報交換などに取り組んでおります。また、違法伐採問題についてはこれまでもG8サミットにおいて取り上げられてきたところでありますが、今後とも、関係省庁と連携を図りつつ積極的に取り組み、これらのことをきちんと対応していきたい、こう考えます。

城内委員 大臣の御答弁、ありがとうございます。

 違法伐採問題につきましては、大臣がおっしゃったとおりに、サミットプロセスにおきまして、二〇〇三年のフランスのエビアン・サミットにおきましても、小泉総理大臣から、違法伐採対策のための国際的取り組みが重要である、そういう発言がなされまして、それが議長サマリーに反映された経緯がございます。また、二〇〇四年七月の、昨年のアメリカにおけるサミットにおきましても、この問題が取り上げられた。そしてまた、大臣がおっしゃるように、ことしのサミット、これはイギリスで行われますけれども、グレンイーグルズ・サミットに向けても、ぜひともこの違法伐採の問題について、首脳レベルで何らかの形ではっきりと盛り込んでいただきたい、かように思う次第でございます。

 その点について、もう一度、大臣からぜひ前向きな御答弁をいただきたいと思います。

島村国務大臣 至極当然な御提案でありまして、私もこれは改めて総理とも協議をいたしますが、これは、国の姿勢として、海外にきちんと我々は知らしめる姿勢をむしろこちらが先んじて示すぐらいの姿勢が大事なんだろうと思います。かつては南方材その他について、日本が加害者であるようなうわさを聞いて、私は大変心を痛めた時期がございます。今、責任者でございますから、ぜひ、あなたのお考えどおり、私も努力をしたいと思います。

城内委員 島村大臣、ありがとうございました。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。次は、地域材の利用促進についてでございます。

 私はいろいろな委員会、例えば昨年の予算委員会の国土交通分科会、そしてまた昨年の決算行政監視委員会、そしてまたことしの環境委員会におきまして、もう三度になりますけれども、地域材の利用、特に間伐材の利用、これを質問してまいりました。これはもう何度も質問させていただきたいと思いますけれども。

 今、外国産材が八割以上入ってきて、日本の地域材が二割弱と、大変な状況でございます。私は、これは、やはり何といっても、緊急の状況であると同時に、中長期的に意識改革をしていかなきゃいけないと思います。きょういらっしゃっている西川京子先生が木育と。これは何かというと、知育、体育、徳育、そして今、四つ目に食育と言われておりますが、西川京子先生が提唱されておる木育という、第五番目に木育、これをぜひ子供たちに小さいころから身につけさせる。要するに、木は温かいよ、優しいよと。

 例えば、金属の中で生活している子供がいるとしたら、多分攻撃的な子供に育つと思います。ところが、内装材に地域材を使って、温かい環境をつくると、協調性のある子供に育成する、これは何か生物学的にもそのように証明されているというふうに伺っておりますけれども、この木育をぜひ進めていただきたいと思います。したがいまして、農水省のみならず、関係の文部科学省等々、連携していただきたいというふうに思います。

 そしてもう一点は、やはり何といっても地域材の利用促進については、まず隗より始めろということで、農林水産省さんは大分進んでいると思いますけれども、まず中央官庁で地域材、間伐材を使った内装にするとか床にするとか、あるいは、公共施設、学校の廊下、床、机、いす、こういったものにできるだけ、ガットの問題はあるかと思いますけれども、地域材を使うようにやっていただきたいと思いますけれども、こういった点についてお伺いしたいと思います。

前田政府参考人 確かに、先生おっしゃられますように、文化の問題もありますし、また一方で、地域材の利用を促進していきますことは、森林を健全に育成して、国土の保全あるいは地球温暖化防止、こういった各種の機能を発揮させる、さらには林業の活性化にもつながっていくという意味で、大変重要な問題というふうに私どもも考えております。

 このため私どもも、木材利用の普及啓発ですとか、あるいは公共施設への地域材利用の促進、あるいは木材バイオマス利用、こういったものに努めてきているところでございます。特に、今、先生からもお話がございましたけれども、隗より始めよということで、実は、平成十五年八月でありましたけれども、農林水産省といたしまして、木材利用拡大行動計画、これを策定いたしました。

 これは、まずみずからが積極的に木材を使っていくんだということで、農林水産省関係のいろんな補助事業あるいは公共事業、そういったところで可能なところは基本的に木材を入れていくんだ。さらに、庁舎内部につきましても、今、農林水産省の中では、腰壁とかそういったものを木材にする、あるいは林野庁の中でも、事務机は全部木材に切りかえる、ドアも木材にしていく、そういった形で取り組んでいるところでございますし、また事務用品でも、封筒なんかは間伐材からつくったものを使う、そういった形で取り組んできているところでございます。

 そういった形の中で、各省庁の方にも積極的に要請しているというような状況でございます。さらに、十七年度からも、こういったものにさらに力を入れて取り組んでいきたいというように考えている次第でございます。

城内委員 私も、林野庁の皆さんと同じように間伐材入りの名刺を使うようにいたしました。ぜひとも、中央官庁、そしてさらには地方自治体、公共施設等に地域材を使うように啓蒙していただきたいというふうに思っておるところでございます。私も微力ながら応援したいと思っております。

 最後の質問に移ります。

 地域材の利用促進のためには、何といっても、住宅建設分野で地域材を使う、こういうシステムがないとなかなか、役所だけ地域材を使っても、一般の、普通の方々が建てる家に地域材を使わないと、木材の消費も伸びませんし、このままいくと、さっき申しましたように、どんどんどんどん外材に押されてしまう、そういう状況になって、また山が荒れると環境の問題にも波及する、そういう悪循環が生じるわけでございます。建築基準法あるいは品確法のいろんな問題があるかとは思いますけれども、できるだけ地域材が使えるような環境づくりをしていただきたい。

 そして、特に顔の見える形で、今では野菜でも果物でも、例えばどこどこのだれがつくったトマトだよと。この材木はこの人が手塩にかけて代々つくった木材ですよと、そういうような形で、ブランド化をするとか工夫をしていただいて、地域材を住宅分野により多く使うように、そういった施策を進めていただきたいと思いますが、現状についてお聞きしたいと思います。

岩永副大臣 城内先生のお考え、もう全く同感でございます。

 御承知のとおり、今、日本の山は泣いている、悲鳴を上げている、このように私は思っております。こうして災害が起こるのも、また、太陽が根元に差し込まない、そういうことで土砂崩れが激しくなる等々、本当に山からくる大きな弊害というのは大変多い。これは、林家の皆さん方が、山で経済性が成り立たない、だから外材にどんどんどんどん押されて、そして国産材が価格的に低迷している、こういう問題が今の山が悲鳴を上げている原因ではなかろうか、このように思っております、

 先生、先ほどおっしゃったように、確かに、隗より始めよ、公共事業が大事でございます。しかしながら、公共事業で幾ら精いっぱい使っても、その利用というのはわずかなものでございまして、根本的に住宅にどんどんどんどん国産材、地域材を使っていただかなきゃ、その広がりを持たないわけでございますし、林家の経済性を促進することにはならない、このように思っておりますので、私も、住宅建設への利用の促進というのはとりわけ大事だ、このように思っております。

 ただ、そのことのために、森林所有者から住宅生産者までの関係者が一体となった地域材を使った家づくりをやる、こういう体系というものをどのようにしてつくっていくかということがやはり大変大事でございますので、地域材を低コストで、そして安定的に供給できる、そういう体制づくりが大事だ、このように思っているわけでございます。

 先般も、うちの島村大臣を中心に、各住宅メーカーの皆さん方にお越しをいただきました。例えば、住友林業の社長だとか、積水ハウスの社長だとか、ダイア建設の社長だとか、大和ハウスの社長だとか、もうともかく大手住宅メーカーの社長全部に寄ってもらいましたし、また専務にもお越しをいただきました。我々副大臣、政務官も一緒にお願いをしたわけでございますけれども、あなた方が地域材を使ってくれない限り日本の住宅に国産材が使用されない、そして、ほとんどあなた方はやっていないじゃないか、在来住宅の一部、田舎の大工さんだとか建設業者が使っているにすぎないというようなことで、本当に口角泡を飛ばしながら、真剣に真剣にお願いをいたしたところでございます。

 こういう取り組みは初めてでございましたので、これから毎年毎年こういうことをやってくれ、そして、我々も目が覚めたというようなお話をいただきましたので、これから、大臣以下、地域材を推進するように、大手住宅供給者に対してお願いをしていこう、このように思っております。

 また、うちの農水省も、消費者に向けた働きかけや、フェアやセミナーなどを開催していかなきゃならぬと思いますし、特に今、地域の自治体が、滋賀県でございますが、地域材を使ったら、百本ただで柱を提供しましょうとか、安い金利で融資をしましょうとかいうことで、大変積極的に地方公共団体が単独事業として対応をいただいているところでございますし、また総務省の方でも地方財政措置も講じていただいておりますので、ひとつ先生方と一緒になりながら、地域材を日本の住宅の柱にしていく、そういう事業を推進していきたい、このように思っておりますので、よろしく御支援をお願いしたいと思います。

城内委員 岩永副大臣、ありがとうございました。住宅供給者に対する地域材利用促進の取り組み、ぜひとも続けていただきたいと思います。

 時間がございませんので、以上をもちまして私の質問を終わらせていただきます。

山岡委員長 次に、山下貴史君。

山下委員 自民党の山下貴史でございます。きょうは、先輩、同僚議員の御配慮をいただきまして当農林水産委員会で質問をさせていただきます。

 私が取り上げたいなと思いましたのは、もう既に当委員会でも何度も議論されていることかと思いますが、米の価格問題についてでございます。

 私の地元もそうでございますが、大変水田、米農業地帯が広がっております。平成十六年の米の値段、これはもう御案内のように、大変厳しい状況が続いております。一番直近のセンター価格で見ましても、全銘柄平均でも、二月が一万五千二百四十三円、これは、データを突き合わせてみましたが、入札制度が始まって以来のほとんど一番低値に来ているのではないか、こう思います。また、北海道の代表的な銘柄でございますきらら三九七に至りましては一万二千六百円ということでございまして、これはもう本当に、いろいろな農家の手取りベースで見ると、一万円が消えてしまうという状況でございます。これは、再生産を維持するのに極めて厳しい水準にまで落ちていると私は思うんでございますが、まず、政府に、今の平成十六年産の米の価格水準について、低いと思っていらっしゃるのかどうなのか、その認識をお伺いしたいと思います。

村上政府参考人 今委員御指摘のとおり、コメ価格センターにおける指標価格の動向、二月で、六十キログラム当たり一万五千二百四十三円ということで、十四年産の同時期に比べますと五百三十七円低くなっているという状況でございます。

 これにつきましてはいろいろな見方があるかというふうに思いますけれども、こうした水準にある要因といたしましては、不作であった十五年産米を高値で手当てした卸売業者の在庫の処理が継続中であるということ、そういうことで十六年産米に対する引き合いが依然として低いということがあるかと思います。

 それから、他方、米の販売ルートがかなり多様化してきております。全国出荷団体以外の集荷業者による販売とか、産地から需要者に対する直接販売というようなものが活発に行われているという状況でございます。そういう意味で、出来秋以降、ことしにかけまして、前倒しでの供給が行われているということがあろうかというふうに思っております。

 これについてどういうふうに考えるかということでございますが、今申し上げましたように、ことしの特殊な事情もあるということと、それから多様な販売、販売についてもう完全に自由化されたということがありまして、全国集荷団体を通さないような取引ということで別の価格形成をされている場合がございますので、必ずしもコメ価格センターの価格だけで農家の手取りというものを判断するのもどうかな、その辺、我々もよく分析していきたいというふうに思っているところでございます。

山下委員 今、最後におっしゃったことはそのとおりなんですが、今のセンター価格、入札価格については、データで見る限り、この制度が始まって以来の低い水準になっているというのは、私は事実だと思います。

 今、去年の十六年の作況は九八ということでございましたから、九八ですと、ごく通常の価格形成が本来行われるべきであったにもかかわらず、こういう低価格状況に至っている。いろいろ今局長が要因をおっしゃいました。ただ、言われたことはそのとおりだと思いますが、もう一つ、それに加えて、こういう意見があるのであえて問題提起をさせていただこうと思います。

 平成十五年が不作でございました。大変その価格が高い水準にまで上がってきたときに、例えば平成十五年の十月から翌年の三月まで、その半年間で、政府が備蓄しておりましたお米、これを六カ月間で、私の、だれが計算しても同じだと思いますが、九十万トン以上売却をいたしております。半年で九十万トンということ。

 これが作況が九〇だったわけでございますから、生産のショート部分が、一割だとすれば、八十万トンか九十万トンぐらい。半年間で九十万トン以上政府米を主食用として売却してしまった。そのことが業者の在庫の積み増しにも一定の影響を及ぼしたという見方も私は聞いておりますけれども、こうした点についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

村上政府参考人 委員御指摘のとおり、十五年産の作況が九〇と、著しい不作ということで、主食用等の生産量が大幅に減少いたしまして、計画に比較しますと、九十一万トンぐらいショートするという見通しでございました。

 御指摘のとおり、卸売業者からの需要に応じて、政府米を前の年よりも九十万トン程度多く販売した、これは平成十五年七月から六月までの数字で前年と比較した場合の対比でございます。十月以降の半年でいきますと、恐らく五十万トン程度ではないかなというふうに思いますけれども。

 こういう販売をしたことでございますけれども、十五年産のような不作を受けた場合に、出来秋以降、かなり高い価格になっておった状況で、政府米を売り控えるということになりますと、市場において品薄感、それから消費者価格の高騰をあおるというようなことで、適正流通に支障を来すことや、それから、高くなるということで米離れを加速させかねない、そういうおそれもあったというふうに考えておりまして、備蓄運営の観点からは適当な措置ではなかったかというふうに思っているところでございます。

山下委員 ただ、一点だけ。平成十五年十月から半年で九十万トン。五十万トンではないんです。半年で九十万トン売り出しております。

 それはそれとして、政府の御認識も、やはり価格水準は低い、こういうふうに思っていただけていると思いますが、こうした低価格水準となれば、これはやはり放置はできない問題だろう、こう私は思います。

 こういう考え方に沿って、政府として、この低価格状態を打破、改善するために、これまでにどういう対策をとってこられたか、あるいはまた、これからとっていこうというお考えがあるかどうか、その辺を御説明いただきたいと思います。

村上政府参考人 委員御案内のとおり、現在の米政策改革でございますけれども、需給事情、品質評価を適切に反映した価格形成が行われて、そうした情報が農業者それから産地に適切に伝達されるということで、農業者が市場を通じて需要の動向を鋭敏に把握しながら主体的判断で米生産をしていく、売れる米づくりを行うという基本的な考え方があるわけでございます。

 それで、価格についての影響を緩和するためには、別途、十六年産米から、稲作所得基盤確保対策や、それから、その上乗せ措置として担い手経営対策を実施しているということで、そういう基本的な全体の枠組みがあるということでございます。

 そういう中で、政府としましては、昨年十一月から、それから本年の三月に策定いたしました基本指針におきまして、備蓄米の買い入れ・売り渡し数量を含む年間の需給見通しにおきまして、来年六月までの需給がほぼ均衡するという見通しの前提に立ちまして、それを示すと同時に、特に十六年産につきましては、地域ごとに作況に大きなばらつきがあるということから、産地、銘柄ごとに需給、価格を見る必要があるということと、それから、産地、銘柄ごとの需要を踏まえた販売戦略を構築することが重要であるということを指摘し、示してきたところでございます。

 こういう中で、先ほど申し上げましたけれども、十六年産米の流通の特徴としては、単位農協による消費者や外食事業者への直販など、コメ価格センターを通じた取引以外の多様な取引ルートを通じて、創意工夫をしながら所得を確保する機会を広げているというふうに思っているわけです。

 ただ、コメ価格センターの取引を含めまして、全国出荷団体と卸売業者を通じた広域の米流通につきましては、出来秋に販売を集中するということが弊害を生じますので、年間を通じて平準化した形で米を販売するということが需給と価格の安定のために重要であるというふうに考えまして、政府として、このような、年間を通じた安定供給の取り組みに対する支援措置もあわせて講じているところでございます。

山下委員 ありがとうございました。

 きょう配付されております新しい食料・農業・農村基本計画でも、前回の基本計画にはなかった部分として、それぞれの作目ごとの生産者や関係者が取り組むべき課題のような欄が整理されてございます。その中で、米についてももちろん記述があるわけでございまして、いろいろ、価格に敏感な経営とか、そういう表現を用いられておりますが、やはり基本計画の中でも、効率的で安定的な担い手、経営が米生産の主要な部分を担うような生産構造をつくっていく、こういう課題が述べられていると私は理解をしております。

 そこで、そういう生産構造を改めていこうという政策的な目標を念頭に置いたときに、出足はつまずいてしまったわけでございますが、平成十六年から始まっております新たな米政策、この新たな米政策というのは、今申し上げた望ましい米の生産構造を実現していくための手段として、方法として十分機能を発揮する仕組みになっている、このように思われるかどうかだけ、ちょっと教えていただきたいと思います。

村上政府参考人 今委員御指摘のとおり、基本計画の生産努力目標の中で、米については、「市場シグナルに鋭敏な担い手が相当程度を占める水田農業構造を確立する」ということがうたわれているわけでございますけれども、まさにこの基本計画にうたわれる方向に沿った形で米政策改革は進めているというふうに認識しているところでございます。

 この米政策改革のもとで、具体的に申しますと、水田農業ビジョンの作成を通じまして、地域ごとの担い手を明確化し、その育成を図るということ、それから、従来の生産調整は減反面積の一律配分ということになりがちで、水田農業の構造改善を阻害する面がなきにしもあらずということがあったと思います。

 そういうことで、新しい米政策改革のもとでは、需要に応じた生産を推進することによりまして、売れる米づくりを進める意欲と創意工夫のある担い手が経営を発展させる道を開くという必要性があるというふうに思っているわけでございます。

 そういう中で、米の価格につきまして御心配で、その影響ということを御懸念だというふうに思うわけでございますけれども、需要に応じた生産を通じて価格の安定を図るというのが基本でございますけれども、米政策改革のもとでは、豊作による過剰分を区分出荷する集荷円滑化対策ということを通じて、昨年は発効いたしませんでしたけれども、米価の安定を図る措置を講じているということと、それから、米価下落による稲作収入の減少の影響が大きい一定規模以上の水田経営を行っている担い手を対象として、上乗せの収入安定を図る対策として担い手経営安定対策を講じているということで、そういう意味で、全体的に基本計画に掲げているような課題に沿った形で進めていっているものというふうに考えております。

山下委員 おっしゃるとおりの面もありますけれども、しかし、今の価格制度あるいはまた価格水準といったことがたびたび起こるとすると、伸ばすべき担い手経営が先に倒れてしまうようなことになりかねない。そういう面も残念ながら今の米政策は持っているかなと、私はそのような認識を持っております。

 そこで、再々申し上げておりますように、私は、今の米価水準というのは非常に厳しい、本当に厳しくて、関係者はこれからの販売価格が少しでも上向くように大変な努力をしておられるわけでございますが、そこで今、政府備蓄米の販売についてちょっとお伺いをしたい、こう思います。

 ことしに入りましてから販売方法が変わって、毎週一回入札というふうな売り方になったということでございます。いろいろな考え方に基づいて販売数量やら、あるいは予定落札価格のようなものを決めておられるのだと思います。ただ、最近の落札価格で見ますと、もちろん古いお米でございますけれども、主食用として売り出されているお米が一俵七千円台なんでございます。七千円というのは、これはもう本当に、主食用として使うお米としては、かなり、かなりというか相当安い。こういうお米が、一方で政府から出てくる。産地の生産者団体はより高く売りたいと思っているときに、こういう七千円台のような政府米の放出というのは本当にいかがなものか、こう私は思います。たとえ売り出される量が一月二千トンか三千トン、その程度だとは思いますけれども、しかし、姿勢の問題として、これはいかがなものか、こう思います。

 量的にもわずかな売り出しなわけでございますから、これから何とか値段を上げて売っていきたい産地のためにも、こういう古い、安い政府備蓄米の放出というのは、やはり中止あるいは控えるべきでなかろうか、こう考えますが、考えを示していただきたいと思います。

村上政府参考人 政府備蓄米の運営につきましては、米政策改革大綱に基づきまして、これは長い間の備蓄についての経験を踏まえてのことでございますけれども、需要に応じた売れる米づくりを推進するという観点から、十六年四月以降、入札方式を基本として、回転備蓄という形で実施してきているわけでございます。

 現在、政府備蓄米の販売数量につきましては、米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針におきまして、回転備蓄を円滑に運営するということを基本にいたしまして、その全体の需給状況やそれから年産構成の適正化という観点も必要でございますので、そういう観点から設定しているところでございます。具体的には、十六年産米について、昨年六月末の在庫水準が六十万トンということになりましたので、四十万トンを買い入れて十万トンを販売するということでそれを実施しているところでございまして、今申し上げました趣旨からいいまして、やはり回転備蓄の思想の中で、ある程度、一定程度の販売はしていかざるを得ないというふうに考えております。

山下委員 時間がなくなりましたので、もうそのことについてはこれ以上議論しません。

 最後に、大臣に簡単にお伺いいたしたいと思いますが、今の質問と関連をいたしますが、やはり備蓄は備蓄で大事な制度でございます。生産がショートしたときに、国民の皆様方に供給の不安を持たせないように、政府が一定程度ちゃんと持っている、それを供給して責務を果たす大事な制度でございます。これはだれも否定なさらないと思います。

 ただ、その備蓄米が、回転備蓄という考え方も、これは正しいと思いますが、やはり売り出すときの価格が、通常の市況で米の値段が決まるときの価格形成に悪影響を及ぼすような売却というのは正しくない、私はこう思うんでございます。

 今、残念ながら明確な販売のルールというのが政府にもないんでないかな、こう思います。やはり、米の価格が歴年の平均的な価格水準を上回って、高値で取引されているようなときは、粛々と売り出すことがいいと思いますが、そうでない、今回のように低迷しているようなときは、売り出しを抑制するなり、悪影響を避けるためのルールを検討していくことが大切でなかろうかと思いますが、最後に大臣にそのことを伺って、終わりにしたいと思います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 米政策改革大綱のもとで、需要に応じた売れる米づくりを推進するという観点から、政府米の備蓄については百万トンをいわば適正備蓄水準として、入札により買い入れ、売り渡しを実施することとしております。このため、売り渡しについては十六年四月から、また買い入れについても十六年産米から、それぞれ入札方式を基本とした仕組みとしておるところであります。

 これにより、政府備蓄米として売れる産地銘柄を買い入れ、市場実勢価格で販売することを通じ、年産構成を適正化するともに、安定的かつ効率的な備蓄運営を図ることとしております。

 このような考えのもとで、政府備蓄米の販売については市場の実勢を踏まえて実施してまいりたいと存じますが、さすがに農林水産省御出身の山下委員、核心をついているように思いますので、この上ともに我々は十分その意を用い、あなたの御提言に真摯に耳を傾けて、これからの買い入れのルール等にさらに検討を加えたい、こう思います。

山下委員 大臣、大変ありがとうございました。終わります。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、白保台一君。

白保委員 限られた時間で質問をいたしますが、きょう配付されましたこの新しい食料・農業・農村基本計画、これに関連して何点か確認の意味も含めてお聞きしたい、こういうふうに思います。

 ここに至るまでの間に、私どもの党の部会にも何度も足を運んでいただいて、役所の皆さん方に説明もいただきましたし、議論の経過も伺っておりますし、また、昨年来、私どもの党代表が農業フォーラム等を全国で行って、去年の四月に提言を行いました。また、今回もこれらに基づいて九項目の提案もいたしておりますし、そういったこともありますから、余り細かくぎりぎりという話にはならないで、確認の意味も含めてお聞きしたいな、こういうふうに思っております。

 最初に、食料自給率の問題です。

 この問題については、この目標達成には、年間にカロリーベースでいくと〇・四二ポイント、そしてまた生産額ベースでいくと〇・六ポイント、これを引き上げていかなきゃならない。容易じゃないと思うんです。大変なことだと思う。

 それで、カロリーベースの食料自給率を一%上げるには、新たな国内生産量やあるいは消費拡大量を具体的にどういうふうに考えておられるのかということが一つ。そして、そのためまた、地産地消というものも非常に大事になってくるんだろう、こう思います。新計画を通してどういう取り組みをなされるのか。地産地消についても、これは強化していかなきゃなりませんが。この点について、まず二つ、お聞きしたいと思います。大臣。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 新たな基本計画では、食料自給率の向上に向けて、地域の消費者ニーズに即応した農業生産と、生産された農産物を地域で消費しようとする活動を通じて、農業者と消費者を結びつける地産地消の全国展開を促進することといたしました。

 また、基本計画を踏まえ、地域における地産地消の実践的な計画を策定し、それに基づき、地元消費者のニーズを把握するための交流活動や、あるいは地場産農産物の普及活動などを農業者団体や食品産業など関係者の主体的な取り組みとして促進することとしております。

 これらの取り組みを通じ、食料自給率向上の観点からも、地域の農業者と消費者を結びつける地産地消を積極的に推進してまいる所存であります。

村上政府参考人 食料自給率を一%向上させるために例えばどういう生産拡大をすればいいか、あるいは消費面でのどのような取り組みが必要かという御質問でございますけれども、一%を向上させるための試算を、計算をいたしますと、これはあくまで品目を特定した単純な試算でございますけれども、平成十五年度の一人当たり総供給熱量を前提としまして、一%向上させようとすれば、全国民が現在よりも米を一年間に二・七キログラム、一日二回御飯食としまして、一食につき御飯を一口多く食べる。それから、他方で、その熱量分を輸入された畜産物や油脂類の消費を減らすというようなことが必要になるわけでございます。

 ただ、現在の食料自給率目標は、望ましい食生活、これは炭水化物それから脂肪、たんぱくの構成比が適正なものとしてカロリーを計算して、その上で米の消費を維持したり、それから農業生産面については、需要の見込みに対応した形で、その課題が解決されて品質や生産性の向上を図る、そういう実現可能な最大限のものを見込むという形でやっておりますので、複合的な取り組みによって引き上げていくということでございますので、今申しましたような計算は可能でございますけれども、全体としてはやはり生産面と消費面、特に消費面の食生活の改善、生産面における最大限の努力、これが相まって達成されていくというふうに考えております。

白保委員 そういった意味では、食育というのも非常に重要なことだろう、こういうふうに思うわけであります。計算上はうまくいっても、生活の中にそういったものがなければどうにもならないわけですから、また食育基本法も上がっておりますので、その成立のために頑張っていきたいな、こう思っております。

 そこで、担い手の問題について確認をしておきたいと思います。

 担い手についてはさまざまな議論がなされている。そういった中で、議論の末に、集落営農も対象にされる、こういうような状況になったわけです。これについてはばらまきという批判もありますけれども、それはそれとして、担い手に集落営農が加えられたその経緯と、それからまた、これから一定水準の集落営農の組織体制を拡大する取り組みをすべきじゃないか、こういうふうに思います。その取り組みについて、高齢化していく個別農家がフォローされたり、あるいは個々の認定農業者も育っていくのではないかと思いますので、御所見を伺いたい、このように思います。

    〔委員長退席、楢崎委員長代理着席〕

須賀田政府参考人 集落営農を担い手に位置づけた経緯でございます。

 現在、全国で約八万の水田集落がございますけれども、そのうち、半数におきましてはいわゆる主業農家がいないということでございます。主業農家はいないものの、地域ぐるみで農地や農業用水の利用調整が行われている。こういう実態を踏まえますと、担い手の育成といった場合には、やはり多数の農家の参加し得る形での担い手を考えざるを得ない。米政策改革において一定の集落営農を既に担い手として位置づけているというようなこともございまして、一元的に経理を行い、法人化する計画を有するなどの経営実体を伴っております集落営農を新たな経営対策の対象とするということにしたわけでございます。

 そして、この集落営農を実際に育成する場合、非常に難しい点は、まずそのメリットを示して参画を呼びかけないといけない。そのためには、コーディネートする地域リーダーが要る。先生が言われましたように、ややもすると高齢者とか女性の方々が消極的ということがございます。こういうことで、私どもの予算で、こういう地域リーダーの育成、あるいは集落営農の組織化を図るための計画の作成等を計上しております。そのほかに、農林水産省内に、岩永副大臣を座長といたします、地域で考える担い手創成プロジェクトチームというのを去る二月四日に立ち上げまして、団体と一緒に、この夏を目途といたしまして、全国的な担い手育成・確保運動に取り組んでいるところでございます。

白保委員 そこで女性ですが、農水省の最新の調査では、農業経営に積極的にかかわりたいという女性が四割、報酬をきちんと受け取りたいという意向も六割近くになっている、こういうような状況です。それは若い世代ほどそういうような意向が非常に強い、こういうことです。

 そこで、女性に対する総合的支援策、これについてしっかりと講じていくことが家族農業経営の再生産につながっていく、こういうことで、担い手の安定確保につながるというふうに思いますが、この点について御所見を承りたいと思います。

大口大臣政務官 女性は農業就業人口の約六割を占めておるわけでございまして、農業、農村の担い手として重要な役割を果たしておるということは委員御指摘のとおりでございます。

 このため、新たな基本計画の中でも、女性の農業経営や地域社会への一層の参画を促進することとしております。

 農林水産省においては、新たな基本計画に基づき、家族経営協定の締結の促進などを通じた女性認定農業者の拡大、集落営農の重要な一員として女性グループの参画の促進、研修、交流会の開催、情報提供など女性の経営参画促進のための環境づくりなど、女性農業者に対する各種支援策を積極的に講じてまいる考えでございます。

 また、農協の女性役員、女性農業委員参画目標の設定及び達成に向けた普及啓発等も推進する、こういうことでやってまいりたいと思います。

白保委員 そこで、農地の問題を次にお聞きしたいと思います。

 単純な計算だと思いますけれども、ある人の試算によれば、人間一人が自給自足するために最低四アールの農地が必要だと。日本の人口一億二千万ですから四百八十万ヘクタール、現在の日本の農地は四百七十一万ヘクタール、国民が生きていくためのぎりぎりの農地しかない、こういうような試算をされております。今回も農地の問題がいろいろと議論をされておりましたが、結局、株式会社の問題についても、リース方式による、こういうようになってまいりました。そこで、今回も農地を農地として利用する国土利用。農地利用の規制のあり方は今後の課題にされた、こういうふうに言われています。農地制度の抜本改革というものが構造改革にも非常に大きく資するわけですが、このテーマは今後どういうふうになさるつもりなのか、時間がありませんので、できるだけ短く答弁をお願いします。

岩永副大臣 農地がなければ農業ができないわけでございますので、本当に農地というのは大事にしていかなきゃならぬ、このように思っております。

 ただ、先生、うれしいことに、平成三年に三万五千八百三十の農地転用が平成十五年に一万八千に実は減っているわけでございまして、約半減しております。また、農用地についても七千八百四十一ヘクタールが二千八百五十四、本当に三分の一ぐらいになってきている。

 だから、今国会に提案をいたしております農業振興地域整備計画の変更の際に、地域住民の意見を聞く仕組みというものを創設したいというようなことでございまして、違反転用事案に対しては迅速に対応してまいる考えでございます。

 優良農地の確保の観点から、農業振興地域制度及び農地転用許可制度の一層の適切な運用を図っていきたいし、厳格にしていきたい、このように思っております。

    〔楢崎委員長代理退席、委員長着席〕

白保委員 短く、元気に、わかりやすく答弁いただきまして、ありがとうございます。

 今回の基本計画の中で、私どもも強く主張いたしましたが、工程管理、工程表の導入について申し上げました。工程表の導入については、一つ一つの施策の実効性を高めるために大変いいですし、大事なことだ、こういうふうに思います。

 そこで、工程管理で政策を評価、検討して、必要に応じて施策内容の見直しを行うことになる、こういうように思いますが、この工程表をつぶさに見ていくと、達成目標の内容がちょっとぼやっとしているかな、こういうふうな感じのものも見受けられるものがありますので、施策がきちっと詰められた段階でより具体的な記載に変えるという、こういったことも改定が行われていくのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 御指摘がございましたように、今回の基本計画にあわせまして工程表を公表させていただきました。工程表の中では、施策の推進に関する手順、あるいは実施の時期と手法、それから達成目標などが盛り込まれております。

 この工程表を受けまして、その個々の施策、これを具体的にどうやって実現していくのかというのがこれからのポイントなわけでございまして、例えば、今回の見直しの施策のポイントの一つであります食料自給率目標の達成ということで申しますれば、この工程表を受けまして、政府や農業団体などの関係者から成る協議会を設立したいと思っています。毎年、関係者ごとの取り組み内容とか、その目標を明示いたしまして行動計画を策定する、その行動計画の達成状況の検証を行いながら、その結果についてはまた翌年以降の行動計画に反映させる、こういう一つのローテーションですが、こういった形で毎年の工程管理を進めていきたいと思っております。

 また、これに限らず、各施策につきましては、今御指摘ございましたように、政策評価、これを積極的に活用いたしまして施策の効果などを検証し、当然、必要に応じて内容の見直しを行うなど、これも、翌年以降の施策の改善に反映させていくこととしております。

 いずれにしましても、こういった形で工程表の的確な管理を進めていきたいと思っております。

白保委員 次に、総理もよく言われておりますし、大臣もそんなおつもりでやっておられると思いますが、攻めの農政、こういう言葉が出てまいります。これは、輸出拡大支援、こういったことも掲げられているわけでありますが、二〇〇三年の我が国の農産物輸入額四兆四千億円、輸出は二千億円、世界最大の農産物の輸入国、こういうことはもう事実であります。

 我が国は、狭い国土の上に山間地が多くて、農業生産の要素である農地が圧倒的に少ないという現実もあります。そういった中で、新計画では、世界的な日本食ブームやアジア諸国の経済発展を好機として、我が国の高品質な農産物、食品の輸出の本格化に向けた取り組みを促進する、こういうふうにしているわけでありますが、我が国が輸出に力を入れていこうとする、そのことについて大臣の御所見をお伺いしたい、このように思います。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 農林水産物の輸出拡大は、まず、国内生産の拡大を通じて農林漁業者の所得の向上に寄与するという意義があります。また、それにとどまらず、自分が生産した農林水産物が海外で高い評価を受けることにより、農林漁業者の発想の転換、あるいは勇気と活力にもつながり、農林水産業の活性化が図られるという意義もあると考えております。

 このため、攻めの農政の柱の一つとして、国産農林水産物の輸出促進に全力で取り組んでまいりたい、総理からもよくそういう御指摘がありまして、我々は今一丸となってそのことに取り組もうとしておりますが、現状、今三千億ぐらいです。これを何としても五年間で倍増しようと、大変大胆なもくろみを今やっておりますが、私は、これは一つには、果物もさることながら、長芋とか、あるいは水産物であるスケトウダラとか、最近数字の上ではかなり大きく伸びてきておりますのと同時に、野菜の質が、海外と日本とでは、全く比較にならないぐらいすばらしいわけですから、これの輸送の手段その他について新たな技術の進歩が確保できれば、それなども大きな展開が期待できる、こう思っておりますので、またお知恵を拝借したいと思います。

白保委員 最後の質問になりますが、今回の新しい計画についていろいろな御報告を受けながら、議論しながらやってきた中で、ぎりぎりまで非常に議論が厳しかったのが農業の環境政策、これに非常に厳しいものが出ておりました。

 環境保全を重視した施策展開を掲げておりますけれども、環境への負荷を少なくし、環境と調和をした農業生産方式が当然国際的にも求められているわけでありまして、我が国の消費者も有機農業や減農薬栽培の農産物を志向しているわけであります。

 循環型社会の形成、二酸化炭素の排出量を抑えるという点で有機農業への転換というのは農産物と農業の両方の価値を高めると思いますし、今後、日本の農業全体が環境保全型農業に移行しなければならない、こういう時期が早晩訪れてくるんじゃないのかというふうに思います。

 新基本計画で環境保全型農業の展開を挙げながら、有機農産物の増産や有機農業の農家を増加させる、こういったものが、目標というものが余り定められていないんじゃないかなと思いますが、そのことについてはどのように考えておられるのでしょうか。

白須政府参考人 ただいまの有機農業の関係でございます。

 委員も御案内のとおり、有機農業は、土づくりを基礎といたしまして、化学肥料あるいは農薬を使用しないということを基本とする農業でございます。お話のとおり、やはり環境保全を重視する農業生産の一つの形態だということで、また、消費者の安全、安心の要請にもこたえるというものでございます。私ども、推進をしておるわけでございまして、また、新たな基本計画におきましても、有機農業に関する経営の展望も示されているところでございます。

 ただ、委員も御案内のとおり、我が国は、欧米諸国などと比べますと、夏に高温多湿になるといったようなこともございまして、病害虫の発生が多いということで、また雑草の生育も大変旺盛でございます。したがいまして、有機農業を行う上で、自然条件に恵まれているということはなかなか言いがたい状況にあるわけでございますので、やはり、有機農業を推進していきます上では農業者の主体的な取り組みを支援してまいりたいということでございまして、これまでもいろいろな形で、技術の開発普及でございますとか、表示の適正化、あるいは技術導入、消費者との連携といったようなことで支援をやっているわけでございますが、今、委員からもお話がございましたように、新たな基本計画におきましては、こういった有機農業はまさに環境保全を重視する農業生産の一つの形態でございますので、その中におきまして、環境保全が特に必要な地域におきまして、農業生産活動に伴います環境への負荷の大幅な低減、そういうことを図ります先進的な取り組みに対しまして今後支援を導入するということで、十九年度からの導入に向けまして、環境負荷の低減効果に関します評価あるいは検証手法、こういった手法の確立につきましての調査を十七年度から実施させていただきたいというふうに考えている次第でございます。

白保委員 終わります。

山岡委員長 次に、鹿野道彦君。

鹿野委員 冒頭にちょっと委員長にお聞きしますが、実は、昨日、食品安全委員会のプリオン調査会の考え方が出されたんですけれども、その結果について、委員長に対して具体的な報告がありましたですか。

山岡委員長 いえ、ありません。

鹿野委員 大臣、この食品安全委員会というのは内閣府だ、こういうふうな考え方も理屈からするならあるでしょうけれども、これだけBSEの問題が大きな関心事になっておる、そして、この委員会としても決議をしよう、こういうような動きになっておる、こういうときに、もう既に昨日の結果というのはマスコミには説明されている、しかし、肝心の委員会のメンバーには、委員長すら、そういう報告というふうなものについてなされていないということはいかがなものかな。嫌みで言っているんじゃないんですよ。本当に、みんなで、この委員会が中心となって、国会が食の安全に取り組んでいく、こういう姿勢からするならば、当然それだけの配慮があってよろしいのじゃないか、こう思いますので、どうですか、大臣。

島村国務大臣 なるほど、おっしゃられてみればそのとおりですから、今後の参考にしたいと思います。

鹿野委員 もう少し誠意ある答えを出してもらいたいですよ、本当に。しっかりとひとつ、今後の取り組みについて、大切なことですから、声を大きくして答えてもらいたい。大臣、日ごろ、我々最初のときは随分もう大きい声でばかり言っていたけれども、何か大臣の答弁になると声が小さくなるのでは、これはだめですよ。大臣、大きい声でひとつ答弁をしてください。

島村国務大臣 今後の参考にいたしたい、こう思います。

鹿野委員 そこで、基本計画につきまして、二十五日でしたか、閣議決定されました。

 これまた冒頭にお聞きしますけれども、大臣は、昨年大臣就任以来、全国農村地域を回られて、現場を視察され、あるいは生の声を聞かれたというふうなことはありましたですか。

島村国務大臣 全国を回るというわけにはいきませんが、私は可能な限りいろいろ歩くということに努めておる人間でありまして、かつて、二十二年前の政務次官当時から、一番歩いたのではないかと、終わった後にそう言われた人間です。

 そういう意味では、今回は、委員御承知のように、災害が多発いたしましたし、ふだん私たちが予測しない不慮のことがありましたのと、同時に内閣は、今、改革、改革、改革でありまして、年じゅう私どもはその会議に出席をしなきゃいけないものですから、物理的に全国を回るという余裕がなかったので、それほどに回っているわけではございません。

鹿野委員 いろいろ弁明をなされましたけれども、基本的にそういうふうな機会を物理的にもとることができなかった、こういうふうなことであります。

 そこで、この基本計画というふうなものは、だれに向かって、どこに向かって出されたか、このようなことについて、妙な質問をするな、こういうふうに思われるかもしれませんけれども、素朴な気持ちとして、大臣、一言でよろしいですから、だれに向かってこの基本計画、こうしますよということを出されたか。

島村国務大臣 広くは国民に対してであります。しかし、何といっても、直接的には生産者であり、あるいは食を扱う、そういう関係者が対象になっている、こう考えます。

鹿野委員 全くそのとおりだ。そのとおりです。共通の認識です。

 そこで、それならばということになるんです。

 それならば、結局、この基本方針で農政に取り組んでいくんですということならば、国民に対して、ということは国民の理解を得る必要があるわけです、生産者の、あるいは消費者の人の、いろいろな形で。いろいろな啓発活動の中で、総合的に、ああ、こんなようなことをやっていくんだなというふうなことをまず理解していただかなきゃならない。そして、そのことによって協力も必要になってくるわけです。そうすると、この打ち出し方はやはり知恵を出さなきゃいかぬと私は思うんですよ。

 これは農林水産調査室で早速まとめられました。非常に、本当に迅速にやられたなと思っております。それから、これがそのポイントということで、これはインターネットなんです。もちろんその間に農林水産省から正式なものをもらいましたけれども、ただ、だらだら書いてあるだけなんですね。なかなか理解しにくいですよ。

 ですから、基本的に、大臣、あるいは副大臣も政務官も中心として、こういう方向づけをしていくんですというふうなことのポイントだけでも、いわゆる憲法でいえば前文的なものを打ち出して、そして農林水産省として、政府としての覚悟のほどを出されたらいかがかな、こう思うんですが、どうでしょうか。

島村国務大臣 実は、前回の基本計画、平成十二年三月策定のものでございますが、ちょうど私が大臣を終えた後にこれが完成をいたしましたけれども、その後も新しい展開に向けていろいろな取り組みがあったやには聞いております。

 具体的なことは承知いたしておりませんが、今度の新しい計画は、前回の反省に立って、いろいろ予定どおり、見込みどおりにいかなかった面も非常にある。例えば自給率を初め、いろいろある。これらについてどのように取り組むかということについては、我々は今、地方農政局その他に対してかなりその趣旨を徹底して、末端の皆さんに不安を与えないように、また同時に理解と協力が得られるように努力をしているところであります。

 その意味では、今度の農政改革については、何か、従前の農業に携わっていた方たちが、例えば零細な方は捨てられるのではないかとか、自分たちの農業に……(鹿野委員「後でそういうことは聞きますから」と呼ぶ)はい、わかりました。それでは。

鹿野委員 私はなぜこういうことを冒頭に申し上げますかというと、先ほど、だれに対してこの打ち出し方をするんですかと、こういうことなんです。これは国民なんです。しかし、生産をやっていただいている人、その実態を踏まえて、そして消費者の人にもそういう生産の状況というものを理解してもらわなきゃならない。農の重要性というものも、ともに共通の認識でいかないと、真っ当な農政というのは推進することができない、こういう考えなんです。

 そうすると、例えば、先ほどお話がございましたけれども、女性が実態として六割、担っていただいている、こういうことなんですね。そうすると、女性の方々に対して、本当に頑張ってもらっているなという、こういう感謝の気持ちを、そして同時に、これからも頑張ってもらわなきゃならない、これは基本計画にとっても非常に大事なポイントですよね。それが、もうわずか、第三章の何行かで、参画促進なんというようなことでは、本当にメッセージが伝わりませんよ、現場の農業を営んでいる人たちに対して。

 やはり、もっと実のある、心の入った、農の基本というものを農家の人たちに、その思いというふうなものをどうやって生かしていただくかという努力等々、新たな形で、今までの単なる延長ということでなしに、新たに展開をしていかなきゃならないなと、こんな思いをいたしているものですから、私はそのことを率直に大臣に申し上げるんです。

 副大臣なんか、どうですか、あなた、滋賀県ですから、もう現場をよくわかっているでしょう。

岩永副大臣 鹿野先生、今回の基本法の……(鹿野委員「簡単でいいよ、簡単で」と呼ぶ)はい。基本法の中で、きちっと農水省が反省しなきゃならない、現況というものを把握しなきゃならないこと、そして四〇%の自給率でしかないという、これはやはり農民の皆さん方に、生産者の皆さん方にきちっとわかっていただかなきゃいけない。その中で、どういうふうな自給率の設定、それから安全、安心の食料の供給、それから、担い手に即した、結局生産者が所得的に安定するかというようなもの、そういうふうな部分をやはりきちっと、これから、我々は説明していくことが大事だ、このように思っておりますので、きめ細かに、この基本法は新たな方法で説明してまいりたいし、普及してまいりたいと思っております。

鹿野委員 私ども民主党は、自画自賛するわけじゃありませんけれども、いわゆる農業の再生プランにおいて女性の支援策というものを柱として大きく打ち立てたんです。やはりそのことが、その担っていただいている女性の人の何らかの形で励ましになる、そういう意味で私は申し上げているわけであって、その点は理解を。私が野党という立場だから、大臣なり副大臣が、こんなもの、私の言うことをなかなか聞けないなんという、そんな小さな気持ちじゃなしに、やっぱりそうだなというときには、そうだなくらいの気持ちで答弁してください。

 では、次に入ります。

 そこで、この基本計画、三十六年に基本法がつくられて、四十年たって、平成十一年にいわゆる新しい食料・農業・農村基本法というものがつくられました。五年間。そして見直し。その五年間におけるところの評価なり反省というものはどういうことでしょうか。

島村国務大臣 平成十二年の基本計画では、初の基本計画として、食料・農業・農村について施策の基本方針を定めたところであります。その後、食の安全に対する信頼が揺らいでいること、あるいは食料自給率が依然として四〇%で横ばいとなっていること、あるいは農業の生産構造の脆弱化や農村の活力の低下が進行していることなどの課題が生じておりまして、新たな政策が必要であるという認識に立っているところであります。

 このため、新たな基本計画におきましては、これまでの取り組みの検証を行った上で、新たな食料自給率目標を設定し、その向上に取り組むこと、食の安全と消費者の信頼を確保すること、担い手の経営に着目した経営安定対策への転換や担い手への農地の利用集積の促進に取り組むこと、環境保全を重視した施策を推進すること、農産物の輸出を後押しし、攻めの農政を展開することなど、改革の方向づけを行ったところであり、これらに基づき、我々は政策改革を進めてまいります。

鹿野委員 大臣、私が申し上げたいのは、あの五年前、平成十一年に基本法をつくるときに、いわゆる国内生産の向上、国内生産の増大、国内の生産体制というふうなものの増大、そして自給率の向上、そして国会に報告、これをわざわざ委員会において、国会において修正したんですよ。そこを大事にしなきゃいかぬですよということなんです。

 実態としてどうですか、この五年間。まさしく農業従事者の減少でしょう、高齢化でしょう、農地の壊廃でしょう、農村社会の活力の減退でしょう。いわゆる努力目標に対してほど遠い。これが現実じゃないですか。そうやって国会で修正したようなことに対して、真剣に反省をして、そして新しいスタートをするんだ、そういう考え方に立つことが大事じゃないかな、こういう意味で私は申し上げたわけです。

 そこで、もう時間の関係で次に移ります。

 これ、中身を見ました。いろいろなことがだあっと書いてあります、冒頭にも申し上げましたけれども。いわゆる焦点になっておるところに対しての見直しというようなことでもよかったんじゃないか。全部についての見直しだみたいなことになってくると、一体何のための、五年前の、そういうふうな基本計画だったのかなと、こんな思いをしながら。やはり、ポイントはこれとこれですというくらいの打ち出し方、こういうふうなことも必要であったんではないかなと、こんな思いながら。

 どこが違うのか、今度の新しい基本計画。二つほど、これとこれだというようなことがありましたらば、ちょっとわかりやすく説明してくれませんか。だれでもいいですよ、二つぐらい、これもこれもこれもだというふうなことだと、何が焦点なのかぼやけてしまいますから。須賀田局長でもいいよ。わかりやすく。おれでもわかるように。

須賀田政府参考人 今回の基本計画の見直し、その経緯から申し上げまして、まず、品目横断的な経営政策を導入する、これが一つです。二つ目に、そのために担い手を明確化して政策を集中していくということ。それから、それを補完するために、地域資源の保全管理政策と環境保全政策を打ち出す、これがメーンの議論でございました。

鹿野委員 かなり明確になっておりますね。

 そこで、今こんな形であります、特に品目横断的、それから担い手、こういうふうなことですが、後ほどこれについて質問させていただきますが。

 そこで、こういうふうな新しい計画を打ち出す、そして、今度は工程も具体的に管理しながらやっていくんですよ、こういうことですね、大臣。そして、スピード感を持ってやっていくんだ、こういうふうなことをおっしゃっていますけれども、具体的に、簡単で結構ですけれども、スピード感と工程管理というものをきちっとしながらやっていくんだというふうなことについて、簡単に説明してください。

島村国務大臣 私、農林水産大臣に就任以来、省内にきちっと指示をしていることは、これからの我々のあり方は、迅速、的確ということを旨とするということでやっておりまして、事実、それらについては今までよりはかなりスピードアップをして、その結果につないでくれている、こう考えています。

鹿野委員 私がなぜこのことを大臣に確認したかといいますと、いい悪いは別にして、前の亀井大臣も、この委員会で、スピード感を持ってやります、こういうことだったんですよ。同じようなことを今の大臣も言っているんですね。だから、それは確かに言葉はいいけれども、やはり同じことを繰り返してはならないという意味で確認をしたということですから、どうぞひとつ、スピード感を持って、本当にこの具体的な目標に向かって推進をしていくような努力をしてもらいたいということを申し上げたいと思います。

 そこで、自給率の問題から質問をいたします。

 食料自給率の目標設定というふうなものについて、その意義なりについて見解を示してください。

島村国務大臣 安全、安心はもとよりでありますけれども、食というのはいわば我々の生活の一番の基本的な材でありますから、これを安定的に供給するというのは、当然に国家の責務であります。そういう意味で、この自給率というのは、いわばどこまで自前のものが確保できるかということで、現状はカロリーベースでの計算を行っておりますけれども、少なくも現状は、先進国の中でも極端に低い、四〇%の低水準に甘んじている、そういうことでございます。

 食というのは、要するに、常に安定的に供給されるという保証はないわけでありますから、常にこれらについて十分な配慮をする必要がある。例えば、就任以来、世界各国の気象条件その他には心を配って、世界各国の、特に日本に対する輸出を担っている国々の状況等の把握には、こちらから進んで求めるように指示をいたしておりますし、また同時に、国内におきましても、自給率の確保ということを目標に、いわば本当に能力のある、やる気のある人たちが農業にいそしんでそれぞれの分野で御活躍をいただく中に、農業の活性化を図りつつ、自給率にこれを結びつけていく、そういうことごとも指示しているところであります。

鹿野委員 前のときに、二十二年度にいわゆる四五%の目標設定、それができなかったということで、今度二十七年に先送り、こういうことですね。このことを思いますと、今大臣が言われたとおりに非常に重要なことですという位置づけならば、少なくとも二十二年度にはこの程度くらいは出されてもよろしいんじゃないでしょうか。

島村国務大臣 自給率が大きく下がったということは、御承知のように、我が国の消費者の食の洋風化、これに起因することはよく御存じのとおりであります。そういう意味からいきましても、私たちは、初めてこの基本計画をつくりました段階では、平成九年の米の消費量、六十六・七キログラム・パー・イヤーを予定したところでございますが、平成二十二年においても、これを参考にして、六十六キログラムの米の消費が期待できるという前提のもとで自給率の算定がなされていたわけであります。

 しかしながら、実態はどうかというと、六十一・九キログラムまで減少しまして四・八キログラムの減少になり、しかも、その一方では、我が国で自給率の極端に低い肉とかあるいは油脂類、こういうものにむしろ偏って需要がふえたものですから、結果的にはこの数値を四五%へ持っていくことはとても不可能である、現実的な対応として、新たな検討の中でこれが二十七年に持ち越された、こういうことでございます。

鹿野委員 私、できなかったということを聞いているわけじゃないんです。もっと建設的に、自給率というものの向上に対して、それだけの重要性というふうなものを自覚されるならば、認識されておるならば、少なくとも、二十七年に四五%は先送りされたけれども、二十二年度にはこのくらいのことに持っていきたいというくらいのことを示すというふうなことはやはり筋じゃないかな、一つの具体的な施策というものに結びつくんじゃないかな、こんな思いを持ちながら私は申し上げたんです。

 と同時に、この自給率の問題については、今、絶好の機会なんですよ。なぜかというと、御承知のとおりに、鳥インフルエンザ、BSE問題等々が起きまして、そして、食料というふうなものを生産する、やはり自国でつくっていくことの重要性というものが多くの国民の人たちの重大な関心事になっているんです。だから、七〇%ぐらいの人が、やはり自給率を向上しなきゃならない、こういうふうなことになってきておる。

 こういうときに、農林水産省として、ただ単に二十七年度に四五%にしますよということ、これも大事なことだけれども、では、どういう形でやっていくのか、どういうふうな具体的な施策によって二十七年度までにやるのか、このくらいはやはり示すべきじゃないかな、こう思うんですが、どうですか、副大臣。

岩永副大臣 確かに、先生のおっしゃるとおり、高ければ高いほどいいわけでございまして、自給率が四〇%で低迷している、これは世界的に大変な問題でございます。まして、六十三億の人口が九十億になる、そして日本が限られた土地の中で低迷していると、本当に将来の食の安全保障というのが大変危ぶまれる事態でございます。

 そういうような状況の中で、今回の基本計画の中では、土地と金を集中して自給率を上げていこうと。そして、今までのように、今お話がありましたように、きちっと点検をする、確認をする、そして一つ一つポイントを押さえながら、自給率については反省の上に立って頑張っていきたい、このように思っておりますので……(鹿野委員「官僚に任せた答弁はいいから。政治家同士でお願いします」と呼ぶ)はい。だから、そういうような意味合いで、きちっと、今回は過去の轍を踏まない状況で頑張るつもりでございます。

鹿野委員 過去の轍を踏まないならば、だから、具体的に出したらどうか、こういうことなんですよ。

 私ども民主党は、これはいろいろと御批判があるのは当然です、しかし、五〇%にしますということに対して、麦は幾ら、大豆は幾ら、菜種は幾らという形で具体的に提示する、そのためにこういう施策をやりますということを示しているんですよ。そういう担保がなければ、また同じように、二十七年度四五%なんというふうなことで、言葉だけに終わってしまう。

 やはり本当に、国民としても危惧の念を持ちながら、私自身もかつては農林水産省で、責任ある立場としてこの問題にもいささかなりとも取り組んだ者として、反省の念を持ちながら、今と違った、苦しくともどうしても実行、実現していくんだという一つの気概というものを示すことがやはり大事だな、こんな思いで申し上げておるということだけつけ加えさせていただきたいと思います。

 そこで、ちょっとこれは具体的に聞きたいんですけれども、麦の、今日八十六万トン、それで二十七年度も八十六万トン、大豆は、今、二十二、三万トン、これは二十八万トンかな、ほとんど変わらない。自給率を上げるためには大豆なり麦なんですよ。何でこんな設定の仕方なんですか。

岩永副大臣 先生御承知のとおり、二十二年で八十万トンの目標が、もう十五年で八十六万トンを達成したわけですね。ただ、一番大きな問題は、日本の小麦、大豆の品質が安定供給にたえられていないというようなことでございまして、生産性の向上というのが率直に言っておくれております。

 そして、これからやらなきゃならないのは、品質管理の徹底や出荷単位の大型化など、実需者のニーズに合ったものをきちっとつくっていかなきゃならぬというようなことでございますので、生産規模の拡大はもちろんのこと、多収品種の導入により生産コストを低減していかなきゃならぬ、こういうことでございます。

 努力目標というものを八十六万トンに設定しておりますが、これは近年で最大の目標でございますので、これからは、品質に力を入れて、そして、新たな、みんなが求める麦をつくっていきたい。小麦のたんぱく質のばらつきなんか、世界の標準が七五ですが、今、日本は七〇であるというようなことでございますので、本当に使う範囲が大変限られてきているので、品質に力を入れていきたい、こんな思いを持っております。

鹿野委員 麦については麦作経営安定資金というものを出した、大豆には交付金を出した。だから、農家の人たちもよしやろうということで、二年間でほぼ目標を達成したんですよね。それは、当時そういう政策をやったからなんですよ。かつて、四百万トンも麦が生産されたときもあるんです。かつて、大豆は五十万トン生産されたんです。技術の発展もあるんです。そういう意味では、やはりもっと具体的に、麦なり大豆に対して取り組みをするというふうな姿勢が必要だと思うんです。

 今、副大臣が言われました品質の問題、実はこれは、大きい製粉会社は、確かに輸入したものと国内産でばらつきがあっては困るということで嫌がるんです。ただ、実態は、小さな製粉会社は国内産を欲しがっているんです。ところが、つくる農家側からすると、その施策がいつまで続くかというふうな不安定な状況では、思い切って麦をつくる、あるいは大豆をつくるというふうに決断できない。だから、ずっと生産が維持されるような形の政策がそこについて回らなきゃならぬわけです。そこがポイントなんですよ。だから、具体的に示さなきゃなりませんよということを申し上げております。

 それからもう一つは、例えば、喜多方ラーメンに使いたいんですよ、国内産を。ところが、喜多方の中心には製粉会社がない。だから、郡山まで持っていかなきゃいかぬ、こういうことなんです。北海道においても、麦生産地でありますけれども、網走に製粉所がないんです、なくなっちゃったんです。江別に持っていかなきゃならぬ。しかし、本当に、安定的に麦もつくられる、大豆もつくってもらえるような体制をきちっと打ち出せば、毎年つくるということになれば、必ずまた以前のように製粉工場がそこにつくられるんですよ、生まれてくるんですよ。

 そういう意味で、最初から、品質が問題だとかなんとか、そういう既定概念なしに、このごろは、ヤマザキパンをスーパーに買いに行きますと、副大臣、国内産麦一〇〇%とわざわざ書いてあるんでしょう。やはりそういう積極的な、前向きな姿勢が必要だということを私は強調しておきたいんです。もう答弁はよろしい、時間ですから。

 次に、備蓄に入ります。

 米の備蓄百万トン、こういうことですか。これからもそれで、百万トンでいくんですか。

村上政府参考人 お答えいたします。

 米の備蓄の運営でございますけれども、これは、従来からの長い米の備蓄の歴史の中で、かなり多大な財政負担で処理をしてきて、これがまた、在庫があることによって市場に対する価格の圧迫要因になってきたというようなことがございまして、約一年ほど専門家に集まっていただきまして検討していただいて、それで……(鹿野委員「いや、そういう経緯はいいんです。具体的に百万トンか、それでいいのか」と呼ぶ)百万トン程度を適正な備蓄として運営をしていきたいというふうに考えております。

鹿野委員 適正、適正と言うけれども、適正というふうな言葉は余り使うべきじゃないな、なじまないんじゃないかと私は思うんです。

 これは、不作が二年間続けばもう適正でなくなるんでしょう、基本的に。どうですか、局長。

村上政府参考人 今申し上げました備蓄運営研究会におきまして、通常の不作が二年間続いた場合、あるいは十年に一回の不作が起きた場合にも対応できる水準として、百万トン程度が適正であるというふうに結論をいただいて、それに基づいて運営しているところでございます。

鹿野委員 この備蓄というのはどのくらいが適正かというのは、非常に難しいときを迎えているんですね。今、世界が異常気象です。いろいろな生産体制において、今と同じような状況ということでなくなってきているわけです。考えられないような不作に陥っている。米だけではなしに、場合によっては大豆その他についても、本当に危機的状況にあるという認識に立たにゃいかぬわけです。

 だから、我が民主党としては、三百万トン、これを国が備蓄してあらゆる不測事態に備える。そして、いわゆる穀物系のバイオマスにも利用する、あるいはその他のところにも利用する。しかし、少なくとも、備蓄というふうな体制は、国民の食生活の食料安全保障、そして安心できる安全な国民生活のためにも、きちっと基本的な考え方を持って、やはり三百万トンくらいを備蓄しておく必要があるのではないかな。

 特に、これからお米に関しましても、いろいろと問題が提起されておるのは先ほど来からの話のとおりであります。ましてや、FAOにおいて、二〇三〇年には米は国際市場で今の一・四倍も必要になってくる。こういう状況からするならば、今までのように、足らなくなった場合には幾らでも日本の国に入ってくるなんという状況、そんなようなことを考えておったのでは、これは非常に間違ったことになってしまうんですよ。だから、今から、備蓄はどうあるべきかという基本的な理念、次の時代を考えながらしっかりとやはり固めておく必要があるんではないか、こういう意味で申し上げるところであります。

 それでは次に、担い手についてお聞きをいたします。

 今回のこの基本計画、担い手の位置づけ、先ほど須賀田局長からも、担い手の位置づけ、これが目玉ですよ、日ごろ小さい声にしてはえらい大きい声で明確に示されました。担い手というものの概念を聞かせてください。

須賀田政府参考人 私どもが使っておりますのは、他産業並みの所得を上げ得る効率的、安定的な農業経営を目指す経営でございます。

鹿野委員 非常に難しい表現で、他産業並みに所得を上げて効率性を追い求める、こういうことはずっと言われてきていますよね、ずっと。新しい担い手の位置づけということにはならぬのじゃないんですか。私もあなたと同じくらいにずっと農政にかかわってきていますけれども、全く同じようなことじゃないんですか。どうぞ。

須賀田政府参考人 農政の歴史に詳しい先生のことでございますので、改めて申し上げるあれもないんですけれども、構造政策というのは、昭和三十六年の、前の基本法からありました。当初は、製造業並みの所得を上げ得る経営を育成しようということで、自立経営を目指しました。

 これがなかなか育たないということで、たしか昭和四十年代の後半でございましたか、中核農家、これは、基幹男子農業専従者がいる農家ということで、年間百五十日以上働くような男子農業専従者がいる農家だと、持続的に農業をするだろうということで、中核農家ということを目指したことがございます。

 そして、平成五年ごろでしたか、国際化が進展するということで、この中で、今の効率的かつ安定的な農業経営という、生涯所得において他産業並みの所得を上げ得る経営を育成しようじゃないか。これは、やはり農業で人並みの所得を上げ得るという経営であれば、持続的、永続的に農業経営にいそしむであろう、こういう概念でございまして、これを現在も目指しているわけでございます。

鹿野委員 正直、これは本当に難しいんですね。農業の実態、現場というものを踏まえたときに、このくらい難しいものはないなと。私も実は、どう担い手を定義づけていくか、位置づけしていくか、悩み、苦しみ、なかなかそう簡単に結論は出ないものだなと思っております。だから、そのようなことで、今も須賀田局長も苦しみながらの答弁ですから、だんだんわけがわからなくなるようなことであります。

 では、ちょっと具体的にお聞きします。

 担い手と位置づけた、担い手と定義づけた、それ以外の農家の人たちは担い手でないんですか。

岩永副大臣 だから、その部分を集落営農という形で、結局、担い手が同じ効率を上げていただく、土地も金も集中してそこへ集約しよう、こういうことを考えているんです。

鹿野委員 なぜ効率を上げた人たちだけが担い手なんですか。担い手というふうな位置づけが、何で効率性を上げた者だけが担い手ということになるんですか。どうぞ。

岩永副大臣 結局、今まで兼業農家、副業的農家で、すべてに金が、ばらまき農政と言われていた批判があって、それが効率的な対応にならなかったということから、今回の反省点に立って、そして担い手農家に金も土地も集中していこう、そしてまた、一般の方々は集落営農という形の中へ全部お入りをいただいて、そこで土地も品目横断的に、効率的に生かしながら、その集落の中で専業的に農家をしていただく方を集約していこう、こういうようなことでございますので、頑張ってやろうとしている方についてはきちっとすくい上げられる状況になっております。

鹿野委員 それは、今までがうまくいかなかったからといって、勝手な理屈じゃないんでしょうか。

 私も、経営を見ると、専業農家だ、主業農家だ、主要農家だ、それ認定農家だ、担い手集中、そのにしきの御旗は生産性の向上、こういうことですよ。それで、何か経済同友会がこう言っているから、マスコミの論評がこうだから、そうしないとなかなか国民の理解を得ることができない、こればかりで来たんでしょう。実態はうまくいっていないでしょう。担い手集中になっていますか。なっていないでしょう。なっていないから、いかにこの担い手を集中してというところに、担い手を定義づけていくということの難しさを私は感じながら、あなたは担い手ですよ、あなたは担い手でないですよ、このようにだれが定義づけることができるかというくらいの気持ちでいかないと合意形成というのは難しいですよということを私は申し上げるんです。

須賀田政府参考人 考え方でございます。農業も産業でございますので、当然、効率化、合理化を目指すべきでございます。そういう意味で、他産業並みの所得を上げ得るような経営を目指す。これには、個人、法人、集落営農、あります。ここを目指していただきたい。そういう方を経営政策の対象として、残りの方々が持っている資源がそういう方々にできるだけ移転、集積するようにしたい。これがやはり産業政策として避けて通れない道ではないでしょうか。

鹿野委員 農業も産業だ、だからこうしなきゃいかぬ、これはまさにそのとおりですよ。しかし、実効も上がらなきゃだめでしょう。言葉だけに終わってしまったのが今日までじゃないですか。あなたたちが、それは一生懸命やってもらっているということはわかります。しかし、現実、そういう考え方を受けて農業にいそしむのは農家の人たちでしょう。農家の人たちがやはり合意をしなければ思うようにいかないんですということなんですよ。

 だから、私は、担い手というのは、本当に意欲を持って頑張っている人もいるわけですよ、生産性の向上をやりたいといっても、なかなかやれない人もいる。だけれども、ある程度は、販売農家として、担い手として、まず第一段階目は位置づけをして、そして、そのことによって、次の目標に向かってだんだん進んでいただく。我が民主党の農業再生プランにもこのことを明確に打ち出していますけれども。

 私はこれまでの経験、これまでの実態ということからするならば、ばあっとその位置づけを、担い手はこうです、あなたたちは担い手ではありませんみたいなことでは、うまくいかないんではないか、こんな反省の上に立ちながら申し上げているということです。これはいずれにしても、担い手の議論については今後の農林水産委員会で議論されるところであります。

 次に、集落営農についてお聞きをします。

 いわゆる集落営農というものは、担い手に入るか入らないか、こういうようなことの議論であったようでありますけれども、なぜ集落営農というものが今後の農業の構造改革の展望としてそこに出されてきたのか。

岩永副大臣 先生御承知のとおり、地域の土地というのは、減反政策、いろいろな形の中で十分使いこなせていなかった、そして、それぞれ農家も土地を持ち、生産に携わっているけれども、それは十分な土地の効率化が果たせなかった。だから、今回は集落全体の土地を集約して、そこでそれぞれの分担をしながら生産効率を上げていこう、そして所得も上げていこう、持ち分持ち分を分担しながら頑張っていこう。だから、大変長い時間をかけて集落の中で話し合いをしながら、経理も一つにし、そして具体的な政策効果が目に見えるような形で日本農業の底を上げていこうというのが今回の集落営農でございます。

鹿野委員 要するに、今、実態として集落営農はいろいろあるんですよ、お互いに共同作業とかあるんです。これはもう言うまでもありません。

 そこで、今度の基本計画は、まず経理が一元化だ、そうでなきゃだめだ、そして五年後ぐらいに法人化だ、会社にしていかなきゃだめだ、こういうふうなことで枠をはめちゃうわけでしょう。

 そうすると、なぜそういうふうなことにするかというと、私から言うのもあれですけれども、この前いろいろと我が党の部会で聞きましたらば、またここにも書いてありますけれども、全国およそ八万の集落がある。そのうちの半分が本当の専業農家がいない、いわゆる認定農家がいないところだから、やはりそういう中でお互いが、集落営農というふうなものによってしっかりとした形をつくっていかなきゃならぬというようなことの説明もありましたけれども、現実、これを法人化しますと、税の負担はふえるわけですよ。農地を取得すると、これまた税の負担はふえるんですよ。それは容易でないんです、簡単に法人化なんといったって。それは、法人化することによってメリットもあります。でも、そのことによってのデメリットというふうなもの。そうすると、集落営農というもので、法人化でなきゃだめだとか経理の一元化でなきゃというふうなことで枠をはめてしまって、果たしてそう簡単にそこに参加をしてくれる人がいるのかな。

 これは自民党内でも、新聞報道によると、そういうふうなプロ農家的な認定農家だけではとても現場はもたない、だから小規模の農家もその中に入れていかなきゃならぬ、構成員として入れるような形でなきゃいかぬというようなことから、こういうふうな知恵を出したということもあるんではないかということも報道されていますけれども、いわゆる現場といかに乖離があるかというようなことで、果たしてうまくいくんでしょうか。

岩永副大臣 先生、今回、平成十七年度は、私たちは日本農業の大転換の年だ、このように思っておりますし、また副大臣や政務官、そして局長、全国に我々出向いていって、そして今、日本農業の現況を訴えながら、生産効率を上げ、そして自給率を上げ、なおかつ攻めの農業をし、そして農業に携わっていただいている方が本当に経済性を高めていくという、基本的な産業としての理念に基づく形というものを理解していただいて、集落営農、また担い手農業というものをきちっと御理解をいただこう、このように思っております。

 確かに、全国それぞれの地域で違います。滋賀県のように米どころもあるわけでございますし、また畜産だとか蔬菜、野菜だとか、そういう産地もあるわけでございます。北海道のような大農家もあるわけでございますので一律にはいかないと思いますけれども、その地域地域に合った集落営農、そして担い手農家の創成というようなものをつくっていきたい。今、JAも農業委員会も我々も一体になってこれを進めようという基本的な腹がそろっておりますので、頑張ってまいります。

鹿野委員 それぞれの地域地域によってということですけれども、副大臣、あなたは我々と同じような地方ですよ。だから、よくわかると思いますけれども、集落というふうなもの、集落営農の論理というものの中には、長い間の村意識とか、それから、年がら年じゅう農林水産省が、効率性だ、効率性だと、財政諮問会議と同じようなことばかり言っていますけれども、効率性で答えが出ない特殊性を持っているのが農業であり農村社会なんですよ。それをわからないようでは日本はおかしくなっちゃうんですよ。企業は、当然もうけなきゃいけません。だから、利益を求めていく。しかし、社会そのものまで何でも効率性だ、効率性だ、こういうふうなことは、間違えますよ、日本の心というものを失うということになってくるんですよ。

 だから私は、副大臣、特に大臣は東京で副大臣は滋賀県というふうなところだ。そういうふうなことならば、やはりそういう特殊性というものを持っている、そのことを考えて、乖離というふうなものがある限り、集落営農に、このような限定的なものになってくれば、もう限られてくるんじゃないか、参加するのが、構成員になるのが。こういうふうな危惧の気持ちを持ちながら申し上げているんです。

 ましてや、「農業構造の展望」を見ますと、要するに、平成二十七年度に百三十万から百四十万の販売農家の人たちがこの集落営農に入っていくということになるんでしょう。そんな簡単なことじゃないですよ。それならば、今までの三十年間に、もうそういうふうなことがなされているんですよ。だから、具体的な施策も、担い手像がどうなのかということについても、秋まで先送りされたということでしょう。

 お聞きすると、党の方の議論もいろいろあるようじゃないですか。むしろ、政府よりも自民党とか民主党とか、そういう政党としての活動をしている方がよっぽど実態を認識しているからなんですよ。よほど日本の国のこれからの農政に対して憂いの気持ちを持っているからそういう議論になるんですよ。

 私は、そういう意味で、これから政治家の副大臣も非常に重要なポイントを握っているんだというふうな自覚に立っていただきたいということで申し上げているわけです。

岩永副大臣 一言だけいいですか。鹿野先生、我々もこの議論をした過程の中で、私は全国の農政局をほとんど歩きました。そして、現場の農家へもずっと行って、我々の考え方の感触もずっと聞いてまいりました。

 確かに難しい部分はあるけれども、逆に、やはり今担い手農政を立ち上げないとだめだという、何か農業者の皆さん方の息吹というのも大変強いものを感じてきておりますので、先生、やらせてください。頑張ります。

鹿野委員 私は法人化というものを否定しているわけじゃないんです。農業生産法人化を進めなきゃいかぬのです。ただ、それをやらなきゃだめだ、たがをはめるというのはいかがかなと思うんですよ。法人化するかしないかは、農家の人の自主性に任せるべきなんです。日本の国の行き方というのも、もう中央が中央集権で、はい、分配をしてやるという行き方は終わったんですよ。分権社会なんです。まさしく地域がその権限と財源によって自分たちがどう生きるかということを判断する、そういう時代なんですよ。そこのところを私は強調するんですよ。だから、相変わらず、こうしてやる、ああしてやるといってメニューを出して、この線に沿って生きてください、やってくださいということではなしに、自主性というものを尊重する、そういうふうな生き方をしてもらいたい、こういうふうなことを……(岩永副大臣「ちょっといいですか」と呼ぶ)はい。

岩永副大臣 先生おっしゃるとおり、農業が地方自治体の中で本当に隅に追いやられたような実態が今あるわけですね。かつては農林課があった、今は産業建設課の隅の方で一、二の人間が減反対策に取り組んでいるような状況なんですよ。だから、私は今、各農政局そして農政事務所を強化しながら、ともかくそれぞれの自治体の真ん中に農業が来て、農業ビジョンをつくり、そして新たな農業生産の意欲を持つ自治体をつくっていく、そういう自治体と集落営農なり担い手農家とが一体になってやってくれるような方法を模索しているわけでございますので、決して、上から農水省がこれをやれと言って、枠の中へはめ込むような方法でやるわけじゃございません。むしろ、下から盛り上がってきたような形の中の新たな体系というのをつくりたい、このように思っております。

鹿野委員 ああだこうだと言っても実態はそういうことなんですよ。だって、ああということなんだから。

 結局、後継者がなかなか出ないなということで悩んでいるわけですけれども、特に若い人たちは、生産性の向上のためにはこうだああだと言って、何か行政がこうやって枠をはめるということに対して、やはりもう魅力のないものになってくるんですよ。魅力がないんです。

 だから、ああだこうだというふうなこと、これも非常に大事ですけれども、むしろこの農家の人たちの自主性というものをおれたちは尊重するというくらいのメッセージを送った方が、私は、一つの大きな新たな展開に結びつくもの、こういうふうに思って申し上げているんです。

 そこで、実質的に、農業構造も、これは今度新しく農業構造の姿というものを出しましたね。五年前には、二十二年の展望として、家族経営三十三万戸から三十七万、法人組織三万から四万、これはどうなったんですか。その評価、検証についてお聞きします。

須賀田政府参考人 二十二年目標の三十三万から三十七万の個別経営、三万から四万の法人共同組織ということでございました。

 確たる統計資料がないわけでございますけれども、現時点で恐らく、他産業並みの所得を上げ得るような経営というのは十万から十三万育っているのではないかというふうに考えております。

鹿野委員 要するに、今の説明のとおりに、うまくいっていないんです。うまくいっていない。

 時間がありませんから、これはまた後の機会にいろいろ議論しますけれども、結局、農家の人たちは乗らなかったんです。なぜ乗らなかったかというと、二つあるんです。一つは、魅力がない、先ほど言った。もっと思い切った具体的な策を講ずればそれに乗るというふうなこともあったかもしれません。もう一つは、選別を嫌がったんですよ。あなたはこうです、こちらはサポーターです、この選別を嫌がったんです。ですから、この実態というものをしっかりと受けとめていかなきゃならぬ、こういうふうなことで申し上げているわけです。ですから、農業構造の展望なんというふうな言葉でなしに、農業構造の目標、こういうふうに打ち出すべきじゃないでしょうか。

須賀田政府参考人 展望と目標でございます。

 私ども、展望という言葉を使っておりますのは、実現可能だ、こういうことで展望という言葉を使っているわけでございます。

鹿野委員 声を珍しく張り上げて言ったんですけれども、実現可能だから展望だと。

 展望といって、今までも何一つ実現していないじゃないですか。だから今度は目標にすべきなんです。そして責任を明確にすべきです、責任を。展望だからしようがないなんというようなことでなく、私は本当に重ねて申し上げますけれども、私もかつて取り組んできた者として、反省の上に立って申し上げているんです。これは重く受けとめていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 たくさん聞きたいことがあるんですけれども、もう時間もなくなりまして、あと二、三分か。

 そこで、冒頭に申し上げましたけれども、品目ごとから品目横断の経営施策ということに切りかえるんでしょう。そうでしょう。これは何のためにするんですか。簡単に、時間がないから。

岩永副大臣 品目別に講じられてきた対策というのは、幅広い農業者を一律に対象とせざるを得ないことから、規模拡大など経営の発展を直接意図したものではないわけです。そして、品質など需要に応じた生産の誘導といった機能も十分に発揮されない面がございますので、このままの状況では我が国の農業には明るい展望が開けず、じり貧状態になるというおそれからきたわけです。

 このために、経営感覚にすぐれて、そして他産業並みの所得を得て、そして意欲と能力のある担い手を対象とした政策に転換して、経営の永続性や発展性を確保できるよう、地域農業の担い手に地域農業の将来を託そう、こういうことで品目横断にしたわけでございますので、目標か目的かわかりませんけれども、ともかく日本農業の新しい大転換でございます。

鹿野委員 審議会におけるところの議事録を見ますと、要するに、全中の山田専務が聞いている、それに対して局長が答えているのは、WTOの問題を出しているんですよ。WTOがこれからいろいろ議論されてくるとどうなのかなというようなことの、そういうふうな一つの考え方を出しているんです。

 しかし、それは何も、堂々と行けばいいんですよ。すなわち、麦にしても大豆にしても、あの麦の経営安定資金、それから大豆の交付金、これは堂々と緑だと言ってきたじゃないですか。だから、自給率向上、食料安全保障というふうな観点に立てば、品目ごとにおいても、胸を張って、堂々と緑の政策だというふうなことを打ち出していく、このくらいの外交戦略というものがやはり必要だということから私は申し上げているわけです。

 それから、最後に、一つ申し上げますが、ちょっと時間オーバーして済みません、委員長。最後、わずかです。

 昨日、冒頭に申し上げたこのプリオンの調査会、これに対して一つの考え方が打ち出されました。今後、農林水産省としてどう対処していくんですか。だれも答えるのがいないというふうなことですけれども、そのくらいのことは、私、質問、あれを提示しなかったんですけれども。

 基本的に、申し上げたいのは、最後ですけれども、全頭検査、危険部位除去、これを明確に我が日本政府は打ち出したんです。そして、この委員会でもその重要性を確認したんです。そのことによって国民の安全、安心が確保されたんですよ。それが、何かわけのわからない、外国からああだこうだと。吉川さんというんですか、あの委員長は、いや、そんな圧力は感じませんと言ったって、人間ですから、間違いなく感じていますよ。

 私は、そういう意味では、全頭検査と危険部位の除去というふうな、この安全、安心の政策を確立した限りは、これでいくんだ、そういうようなことを、今の小泉政権がつくり上げたことでしょう。それならばみんなで、閣僚も、安全委員会に対しても、もっと自信と余裕を持って、本当に安全に対して慎重な、建設的な、ただ、慎重というのは、時間をかけるわけじゃないですけれども、本当に国民に大丈夫ですと思っていただけるような議論をしていただく、審議をしていただく環境をつくることが内閣の役目でしょう。それが、大臣にしても、いろいろな発言で、訂正されましたけれども、決して責めるんじゃなしに、みんなでこの食の安全、安心というものをつくり上げていく、この気持ちをやはりこれからもぜひ、大臣、副大臣、政務官、リーダーシップを発揮していただいて、そして間違いのない我が日本の食の安全と安心を確立すべきじゃないか、このことを意見を申し上げて、終わります。

山岡委員長 次回は、明三十日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.