衆議院

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第11号 平成17年4月19日(火曜日)

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平成十七年四月十九日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 楢崎 欣弥君

   理事 山田 正彦君 理事 白保 台一君

      石田 真敏君    岡本 芳郎君

      梶山 弘志君    金子 恭之君

      上川 陽子君    川上 義博君

      木村 太郎君    城内  実君

      北村 直人君    後藤 茂之君

      後藤田正純君    田中 英夫君

      津島 恭一君    西村 康稔君

      早川 忠孝君    原田 令嗣君

      森  英介君    青木  愛君

      一川 保夫君    岡本 充功君

      鹿野 道彦君    岸本  健君

      小平 忠正君    鮫島 宗明君

      神風 英男君    辻   惠君

      堀込 征雄君    山内おさむ君

      大口 善徳君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   農林水産副大臣      岩永 峯一君

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  須賀田菊仁君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            川村秀三郎君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 寺田 雅昭君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十九日

 辞任         補欠選任

  木村 太郎君     早川 忠孝君

  仲野 博子君     青木  愛君

  松木 謙公君     辻   惠君

同日

 辞任         補欠選任

  早川 忠孝君     木村 太郎君

  青木  愛君     仲野 博子君

  辻   惠君     松木 謙公君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)

 特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案及び特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長寺田雅昭君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省経営局長須賀田菊仁君及び農村振興局長川村秀三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎欣弥君。

楢崎委員 おはようございます。民主党の楢崎欣弥です。

 ちょっと我が党のギャラリーが少ないようですけれども、きょうは法案についてお伺いしますけれども、まず基本的な面から数点お伺いしたいと思います。

 そこで、言うまでもなく、農地法は、自作農主義による農地拡大、農業生産力の維持向上を目的としているものですね。それで、農地の保有も使用も、自作農そして自作農主体の農業生産法人に限ることにしております。その上に、農地の権利移動と転用も厳しく規制がされています。つまり、農業は産業として発展する構造になかったと私は思うんです。それが、株式会社の参入の緩和、そして農地の貸付信託制度の導入、さらにはまた市民農園としての農地開放を目的とする法案の審議がされること自体、私は農業構造改革の一つの前進だと考えています。

 そして、このことはまた、考えようによっては、自作農による農地の拡大と農業発展という農地法本来の目的が現実的には破綻してきているのではないか、そのことを物語るのではないかと私は考えるんですが、いかがお考えでしょうか。

須賀田政府参考人 お尋ねの農地法の基本的考え方でございます。

 まず、いわゆる自作農主義、みずから農地を所有してそこで耕作する方が、その労働の成果を公正に享受するのが最もふさわしいんだという考え方、農地法の目的規定のところにはございますが、地価が高騰をいたしまして、所有権の移転による規模拡大がままならない、こういう状況があって、昭和四十五年以降、借地による規模拡大という考え方に農地制度全体について改められているわけでございます。

 ただ、現在も農地の権利取得に関しては、農地のすべてを耕作する、必要な農作業に常時従事する、農地を効率的に耕作することができる、余り遠いところで農地を取得してもそれは効率的でないだろう、そういうところをチェックいたしまして、それを権利移動の許可の要件にしております。これは今は耕作者主義というふうに呼ばれております。

 要は、これは、農地の権利移動の際に、農地をきちんと農業の用に供し得る者であるかどうかをチェックした上でその農地の権利取得を認める、こういう考え方でございます。これは、きちんと農業をする主義だとか利用者主体主義だとか、どんな呼ばれ方をしてもいいわけでございます。

 どうも最近、耕作者主義という語感がもう古臭い、守旧的で、何か新規参入を拒んでおるのではないかというふうなとらえ方で非難されることがございまして、これは全く心外でございます。やはり、きちんと農業をする人によって取得をされた、こういう考え方は今後とも継続、踏襲をしていくこととしております。その中で、耕作放棄地がふえておるから、その解消策だとかいう観点から一般企業の参入を緊急措置として認めていく、全体的にはそういう考え方になっているわけでございます。

楢崎委員 久しぶりに須賀田節を聞かせていただいたような感じがしますけれども。

 今言いましたように、産業としては成り立っていない農業ですけれども、私はやはり、最先端産業になり得るのもこれまた農業だと思っているんです。

 農業以外の産業分野では、多様化する食への要求に対する技術とか人材とか組織が存在するのに、それが農業には生かされていない。もちろん、個々の農家がいろいろな経営要素にこたえるのはこれは難しいわけですから、そういう産業分野との連携、これを模索することは当然でしょうし、今の農業の現況を見たときに、それを成功させなくてはいけないと私は思うんですけれども、そういう精神がこの経営基盤強化促進法案に生かされているんでしょうか。

須賀田政府参考人 ただいま先生御指摘の考え方、全く同感でございます。

 農業が企業と結びついて、企業の有するマーケティングでございますとか経営管理、商品開発、それから販売促進、こういったノウハウを活用することができれば、農業もまだまだ発展し安定化するというふうに考えられるところでございます。現実にも、生産面とレストランとか独自の販売ルートを有する外食産業、量販店、こういうところと結びついて発展している例もございます。食品産業等と農業の連携というのは極めて有意義というふうに考えております。

 これまでも、平成十二年に農地法を改正いたしまして、農業生産法人の一類型として株式会社が追加されてございます。それから、平成十五年に農業経営基盤強化促進法を改正いたしまして、農業生産法人の農業関係者以外の構成員からの出資について、認定農業者であれば議決権制限を二分の一まで緩和する、こういう制度改正をこれまで行ってきたわけでございます。

 今回は、いわゆるリース特区制度を全国展開するということで、この制度の活用によりまして、食品関係の企業みずからが製品原料の農産物あるいはみずからのレストランで出す有機野菜を栽培できる、こういったことが可能になっておりまして、こういうことで地域の農業と食品産業の連携の一助になるのではないかというふうに思っております。

 また、予算面でも、農業と食品産業の連携のための諸施設の整備について支援措置を講ずるという措置を講じているところでございます。

楢崎委員 今、社会全体での、自然とか環境とか循環型社会への関心と行動の高まりがありますね。土とか農とか緑、里山、それから自然への関心、欲求が都会生活者に高まっている、また、農業体験教育、それから農村交流、市民菜園などの経験も広がっています。そして、そこにあるのは、経済的な関心よりも、生き方の発見とかそれから自己実現とか、人間としての欲求なんですね。

 今、こうした動きを後押しする政策もまた求められていると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

川村政府参考人 お答えいたします。

 確かに、農業の持ついろいろな機能とか効果、これは種々ございまして、今委員が申されましたように、産業としての面のほかに、農作物の栽培あるいは収穫、こういったものを通じまして、土と触れ合い、人々との交流を深めるということ、あるいは生きがいの発揮といったようなことで大変重要な意義があると考えております。

 民間の研究機関が経年的に実施をしているアンケート調査がありますけれども、やはり都市住民の農業体験あるいは農業交流に関する意識というのは確実に高まっている結果となっております。

 私どもも、昨今、定年帰農とか団塊の世代等いろいろございますけれども、こういった動きを反映いたしまして、今回のこの特定農地貸付け法も、農業者あるいはNPOなど、多様な主体による市民農園の開設を促進するという効果も期待できます。これもぜひお認めをいただきたいと思っておりますし、また、市民農園あるいは体験農園あるいは農林漁業の体験施設、こういったハード施設の整備についてもいろいろな助成措置というものを講じておりますし、また、ソフトの面でも、市民農園利用者への栽培技術、こういったインストラクター的な方も必要でございますが、そういった方を育成する、あるいは小中学生の農業・農村体験の受け入れ、こういったものを促進するといったような形でのソフト支援も行っているところでございます。

 今後とも、こういった状況を踏まえまして、さらに推進をしてまいりたいと思っておるところでございます。

楢崎委員 今回、市民農園実施主体の拡大がうたわれているわけですけれども、特区展開で弊害がなかったのであれば、また、今川村局長が言われましたように、大変な評価をしておるのであれば、特定農地貸付け法で貸付期間が限定されていますね、もう少し弾力的に考えてもいいんじゃないでしょうか。

川村政府参考人 農地の問題というのは、先生も御案内のとおりでございますけれども、いろいろな要請がございまして、始まった当初は非常にうまくいっていることがありましても、時々の事情で状況が変わるということもございます。ごみの不法投棄とか、そういったよからぬことに発展する可能性もありますので、やはり一定の期間を設けながらチェックをしていくということが必要だろうと思っております。

楢崎委員 我が党の鮫島議員が、本会議質問で中山間地の活性化問題を取り上げました。耕地面積や生産額の四割を占める、この不利な条件にある中山間地が、一方で農業が持つ多面的機能の面でも重要な役割を果たしているわけですね。だからこそ、農林水産省もその中山間地の活性化のために直接支払い制度をつくられたと思うわけです。

 これは大分県竹田市の九重野地区というところがありまして、この地域は、この制度を利用してふるさとの活性化を図っている地域でもあるわけですけれども、この直接支払い制度、今後五年間は継続されますけれども、そういう時限的にすること自体、私は間違いではないかと思うんです。ずっと続けるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

川村政府参考人 中山間の直接支払い制度でございますけれども、これは今委員のお話もございましたとおり、新しい農業・農村基本法ができましたときに歩調を合わせましてスタートをしてございます。五年間が終わりまして、第三者的な委員会におきまして十分検証していただきました。非常に集落の活動が活性化する等いろいろな効果を上げております。

 ただ、五年間の中で、やはりその取り組みにばらつきが見られるとか、ちょっとそういった活動を行う方々が少なくて、よりこれを広く求めなくちゃいけないといったようなこと、安定的な農業生産活動というものも、できる限りその地域を守っていくためには必要であるといったようなことで、この十七年度から、次期対策ということで改善を加えながら、また五年間ということでスタートするわけでございます。

 非常にこういった形で大変な効果を上げているということはありますが、やはりいろいろな諸条件の変化、あるいはさらに五年間の検証をしながらさらなる改善はないかといったような見地からも、一定の期限を設けましてレビューをしながらやっていくということが適当ではないかというふうに思っているところでございます。

楢崎委員 私は、ある報道で知ったんですけれども、皆さん方の大先輩で、生涯を農林行政に尽くされました旧農林省官僚の石黒忠篤さんという方が、山村を守ることによって下流の田畑が守られ、そして農業が持続されるという思いで、新人官僚の方を山村の営林署に送って鍛えられたわけですね。まさに、中山間地の果たす役割を大切にしろと言っておられるんだと思います。

 そこで、中山間地の活性化持続対策について、直接支払い制度以外での施策というのは考えられないんでしょうか。

川村政府参考人 中山間の振興を図っていく上で、中山間地域の直接支払いは非常に大きな力になると思っておりますが、これ以外にも、例えば、やはり中山間の冷涼な気候でありますとか、その地形的な特質を生かした農業生産、付加価値を高めた農業生産、そういったものを振興していく、こういうことも非常に重要であろうと思いますし、そのための中山間地域らしい基盤の整備、こういったものも必要であろうということで、そういう中山間地域向けの基盤整備ということも実施をしてございます。

 また、特に中山間地域は鳥獣害の被害というものも非常に深刻な問題になっておりますので、こういうものをいかにまた防止していくかということも非常に重要なことであろうということで、鳥獣害対策にもいろいろな事業で取り組んでおると。

 こういったことで、各般の施策を相まちまして対策を講じていきたいというふうに思っておるところでございます。

楢崎委員 先ほど申し上げました石黒忠篤さんという方の生きざまをもう一度検証されて、中山間地のさらなる改善策を模索していただきたい、このように思います。

 株式会社の参入問題についてお伺いします。

 私は、二〇〇一年の農地法の一部改正の審議に携わりましたけれども、当時は、株式会社の参入が結果的に農地の荒廃を招くのではないかという心配をしました。それがゆえに参入規制を厳しく求めたわけですけれども、結局、その後も農地は荒廃の一途をたどっているのではないかというふうに思います。つまり、農家の高齢化率は五六%に達して、耕作放棄地は東京都の面積の一・五倍、三十四万ヘクタールに当たるわけですね。

 これは、基本計画のときも論議されましたけれども、後継者は育っていない、今後も昭和一けた世代の離農が進むと考えられている、国際的には農産物の自由化が求められている、また、その自由化は避けられない。これが、今日、日本農業が直面している厳しい現実だと思いますけれども、この現状認識については共有できますか。

須賀田政府参考人 現在、耕作放棄地がふえつつある現状は私どもも認識をしております。その原因は、やはり高齢化と労力不足、これが一番大きな原因でございまして、基幹的農業従事者のうち実に五四%が六十五歳以上ということで、遺憾ながら耕作放棄地化が進んでおるという現状にございます。この問題と高齢化の問題は、表裏一体でございます。

 私ども、今回の改正で、まず、高齢農業者の持っておられる農地を有効活用したいということで、一つは、高齢者みずからが参加する集落営農といったものの組織化、法人化を図りたい。もう一つは、担い手にお出しいただくということで、農地保有合理化法人、仲介的機能を果たしております農地保有合理化法人の機能強化等を通じて、個別相対の利用権集積を進めていきたいという道。それから、耕作放棄地対策をきちんとしたいということで、一つはリース特区で一般企業の参入といった道、それから、耕作放棄地を強制的に解消していくような道と、二つの改正を予定いたしまして、何としてでも今の動向に歯どめをかけたいというふうに思っている次第でございます。

楢崎委員 岩永副大臣、何か発言をしたそうでしたけれども、では、岩永副大臣は日本農業の弱点は何だと考えられますか。

岩永副大臣 根本的には、土地がない、そして今の状況の中では担い手がどんどん高齢化をしてきている、そういうような状況の中で、土地をいかに効率的に有効に利用していくか、そして、それを利用する担い手が、やはり、具体的に経済性を求めて、他産業以上の大きな所得を上げ得る強い担い手になる。この二つの要素が、たちまち大きな課題として、これから克服していかなきゃならない、これが今の日本の農業の中で早急にやらなきゃならぬことだ、私はこのように思っておるし、逆にそのことが弱点でもある、このように思っております。

楢崎委員 同感です。簡単に言えば、経営規模が小さくて効率が悪いということであろうと思います。

 では、経営規模が拡大すれば農業を守れるかといえば、もちろんそれだけではないのであって、先ほども言いましたように、あと十年もすれば高齢化で農業人口の半分が一気に減る事態を迎えると言われております。つまり、新たな担い手を育てる問題があるわけですね。ですから、認定農業者を大切にすることも当然ですけれども、脱サラ、Uターン組、それから、定年を迎える団塊の世代の就農を促すような仕組みをつくることもまた必要であろうと思います。

 実は、私の地元福岡市の民間の人材派遣業者が、地元JA、この場合はJA糸島になりますけれども、ここと連携して、人手が不足している農家とか農業法人に、今言いましたような方々を派遣する事業を始めたんですね。農業への人材派遣事業というのは、今のところまだ例がないと言いますし、模索している地区はありますけれども、これはぜひ注目をしていただきたいと思います。

 それと、農業の現状を考えたときに、やはり、企業の参入が、遊休農地の活用とか、それから担い手不足解消の一翼を担うことはこれはもう間違いがない。そういう意味では、これは農林水産省の御努力もあってのことですけれども、試行錯誤はありながらも、そういう意味では、既に日本農業再生の胎動は始まっていると私は思っています。

 それは、まず、二〇〇一年の農地法改正では、先ほども言いましたように、株式会社でも農業生産法人を設立すれば参加が認められた。しかし、先ほど言いましたように、本来の目的と違う使用がされる心配があったから、法人設立には、株式の譲渡を制限して役員の過半数がその農業従事者でなければならないなどの参入規制、簡単に参入できない仕組みをつくったわけですね。

 そして、二〇〇三年に導入した特区では、農地のリースを一般の会社にも認めて、今回はそれを全国展開に踏み切るわけですけれども、その二〇〇三年の特区導入に対して、弊害は認められなかったということですけれども、具体的にはどのような総括がなされての全国展開なんでしょうか。

須賀田政府参考人 私ども一番心配をいたしましたのは、参入企業がもうからないということで耕作放棄をするんじゃないか、それから、地元の集落で、協調して防除するだとか水利を管理するだとか、それを怠るのではないか、あるいは農業団体等が、担い手へ集積しようとした土地を奪ってしまうんじゃないか、そういう面の混乱があるんじゃないかということを懸念したわけでございます。

 しかし、私どもが調べますと、そういう混乱というものはなかったと。むしろ、地元の市町村の方が、耕作放棄地解消に役立った、雇用機会が与えられたということで、歓迎をするということでございました。そういう判断を踏まえて全国展開ということに踏み切ったわけでございます。

 ただ、農業経営的に見ると、参入された六十八法人のうち農産物の収穫をしたのが四十二法人にすぎない、収益も、なかなか教えていただけませんけれども、そう上がっていないのではないかということで、農業経営の安定にはいま少し期日を見て見きわめていく必要があろうかなというふうに考えております。

楢崎委員 須賀田局長は、先週の質疑でも、株式会社参入についての懸念的なことを言われました。

 参考のためにお伺いしますけれども、その懸念というのは、農林水産省自体が心配しているんでしょうか、それとも、農業団体が心配しているんでしょうか。

須賀田政府参考人 私が申し上げました懸念でございます。

 農地といいますのは、農業の用に供せられて初めてその効用を発揮する、一たん壊廃をいたしますとその再生に膨大な投資を要する、こういうものでございますので、きちんと農業の用に供し得る者によって取得してほしいという基本的考え方がございます。

 昨今の、企業買収だとか企業価値を毀損するおそれがあるだとか、そういう紛争が見られますけれども、株式会社といいますのは、基本的に株式が自由に譲渡されます。したがいまして、その株主の支配次第では経営の方針が変わる可能性がございます。

 そういう意味で、事業面でも構成面でも業務執行面でも、ちゃんと農業の継続というものが確保されているような形態のもの、それは株式譲渡制限がある株式会社に限るわけでございますけれども、そういう者に限って農地の権利取得を認めるという基本的考え方に立っているわけでございます。

 リースの特区の方は、これは耕作放棄地解消のための緊急措置として講じているという、原則と例外の考え方に立っているわけでございます。

楢崎委員 懸念しているのが農林水産省か農業団体かということについては答えられませんでしたけれども、私は全国展開には賛成なんです。今局長言われましたように、今の現状を見たときに、一般企業が農業ビジネスとして参入して遊休農地を活用しようとすることは、これは活性化につながっていくわけですから、有効な手段であると私は思います。

 となれば、農地のリース方式では、企業にとっては積極的な設備投資がやりにくいのではないかと思うんですよ。いかがお考えでしょうか。

須賀田政府参考人 一般論で申し上げますと、企業が設備投資をするかしないか、その企業の投資マインドが喚起をされるケースといいますのは、その事業が安定的に収益を生じて、将来にわたってその収益の継続やあるいは増大が見込まれる場合に投資をする、これが一般的な原則でございます。そういうような観点から見ますと、リース方式であろうが所有権取得方式であろうが関係はないというわけでございます。

 むしろ、私ども伺っておりますのは、リース方式にいたしますと、バランスシート、損益計算上、営業損益の中に地代がコストとして計上できますので、むしろコスト意識はリース方式の方が醸成されるのではないかというふうなことを経営の関係者から伺ったことがございます。

 ただ、現時点のリース特区に参入した企業に目を移してみますと、先ほど申し上げましたけれども、農業経営の安定という点から見ますと、まだ試行錯誤といった状況でございまして、先生言われるように、設備投資をどんとして農業経営の安定を図っていくには、まだ企業にとって収益の見きわめがついていない状況ではないかということでございまして、いま少しそういう面の見きわめの時間が必要なのではないか。決して、リース方式だから設備投資しないというわけではないというふうに考えております。

楢崎委員 私は、どうも緩和策を小出しにしているように見えるものですから、やはり取得を認めることも一方で検討していただきたい、このように思うわけです。私は、農家や農業団体が心配する、また農林水産省が心配する懸念事項については、転用規制それから耕作義務規制などの措置をとればいいと思いますし、不正使用については刑事罰を科すことで対応できると思うんです。

 そこで、大臣にお伺いをしたいと思います。

 国内的にも国際的にも、この今の農業の現状を考えたときに、やはり今こそ大胆な発想の転換が求められているのではないか、一般企業の参入は、これは時代の要請ではないかと思うんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。

島村国務大臣 お答えいたします。

 我が国経済が長期にわたり低迷している中、経営の不振や雇用情勢の悪化という事態に直面する建設業界などが、農業分野へ参入しようという流れがあることは承知をしております。

 私は、所信表明の中で、攻めの農政へ転換する、すなわち、生産者の意欲的な取り組みを後押しすると申し上げました。食料供給のためのかけがえのない公共財ともいうべき農地は、きちんと農業の用に供し得る者が権利を取得すべきであるとの基本的な考え方を変えるつもりはございませんが、特に現在、全国の二百九十万戸に及ぶ農家の方々の理解と協力を得て、構造改革を進めようとしているところであります。

 農政の責任者といたしまして、率直に申し上げますが、多数の農家の方々に対して構造改革を進める一方で、一般企業の農業参入を全く自由に認めるような政策をとることはできません。一般企業の農業参入は、このような基本的な考え方のもと、耕作放棄地の発生防止や解消という観点から対処すべきものと考えておる次第であります。

楢崎委員 先ほど言いましたように、心配される弊害除去のシステム、これをつくればいいわけですから、今大臣も言われましたように、やはり多様な経営主体が農地を利用できる制度を推進するべきだ、このように考えます。

 最後になりますけれども、農地の貸付信託制度についてお伺いをいたします。

 これはまた、生かされていない農地の活用を目的とするものですから私も賛成ですけれども、二点お伺いしたいと思いますが、農地保有合理化法人、これは貸出先に生産品目の指導とかはやるんでしょうか。

 というのは、当然、耕作意欲が高い第三者が借りるわけですから、農地は生き返るでしょうし、生産性も上がるでしょう。また、借りた方も利益を上げなくてはいけないわけですから、付加価値の高い農産品を生産しようとすると思います。そのときに、その当該地域内の生産バランスとかに問題が出てくるのではないかという心配をするんですが、その点についてはいかがでしょうか。

須賀田政府参考人 農地保有合理化法人は、農地の仲介機能を行う仕事をしておりまして、仲介先の担い手の作付等の経営指導までは行っておりません。農地保有合理化法人が、どのような作物を作付すべきかというようなことは行っておりません。

 ただ、地域において、例えば産地ブランド化を進めているような地域、あるいは地域として生産の調整を行っているような地域がございます。何をつくって、どのような作付体系にすべきかというのは、やはりJAなり市町村なりのお仕事ではないかというふうに思っております。

楢崎委員 今回の法案について、まだ知恵を出し合う余地はあると思います。

 終わります。

山岡委員長 次に、神風英男君。

神風委員 おはようございます。民主党の神風英男でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 今回の新たな食料・農業・農村基本計画においては、恐らく基本的なコンセプトというのは、地域の中で担い手を明確化して、その担い手に農政の光というか、農政を重点的あるいは集中的に施していこうということであろうと思うわけですが、実は、私自身も二十年前に今から同じようなことを考えたことがございます。

 ちょうど二十年前、日本でも米の自由化というのが非常に議論がございました。その当時に、日本の中での大規模稲作経営者といわれるような農家を回りながら、ちょっと話を伺ったことがございまして、そのときに彼らが一様に口にしていたのは、これから日本の農業をいかにして競争力を高めて、産業として自立できる農業政策というものを展開していくのかということでございます。そうした話を伺いながら、私自身も考えたのが、簡単に言えば、プロ農家とホビー農家あるいはリース農家というような形で、農家をある程度峻別して、農政への光をプロ農家に集中をさせて、そのプロ農家によって、自立できる、あるいは競争力の高い日本の農業をつくっていくべきではないかというふうに思ったことがございまして、学生でしたから非常につたない内容の論文ではありましたけれども、今回の基本計画を読むたびに、中身的には、本質的な議論は同じだなというのを非常に思うことがございます。

 そういう意味で、当時、二十年前にそれが実現できていれば、日本の農政、農業というのも今相当違った姿になっていたのではないかなという気がするわけでございまして、二十年前と比べても、実態としては恐らくほとんど何も変わっていないというのが現状ではないかなという気がしております。

 なぜ、当時そういった改革ができなかったのか。これから十年後を見たときに、本当に今回の基本計画というものが実現をできるのかというのは、私自身は今の時点では非常に疑いを強くしている面がございまして、この段階に至っては、ある意味ではもう遅きに失した感があるのではないか。そういう意味で、民主党では直接支払い制度というのを大胆に導入しているわけですけれども、民主党の再生プランというような方向性の方が、これからの実効性というのは高いのではないだろうか。中山間地の直接支払い制度を見ても、その実効性が高いということはわかるわけですから、そちらの方向に行く方が、私自身はこれからの農政にとっては重要なのではないかなと思う気がしているわけでございます。

 そういう点で、農水省、ある意味では失われた二十年、いや、もっと言えば、昭和三十六年の農業基本法から失われてしまったと言ってもいいのかもしれませんが、そうした農政の失政というか失策をどう認識されて、どう反省されているのか。そしてまた、この基本計画を同じような延長線上でこれから進めていくのか、あるいは、民主党の再生プランのような形で、農家の自発性に基づいた農政を展開していくのかという大変大きな岐路に、今、日本の農業政策自体が立っているのであろうと思うわけですが、その点についての御認識を大臣にお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 お答え申し上げます。

 担い手に対する農地の利用集積については、これまで、集団的土地利用調整や認定農業者制度などによりまして努力をいたし、一定の成果は実は上げておると思います。しかしながら、担い手に農地利用の約六割程度の集積がされるという予定に対して、平成二十二年目標であったのに対して、平成十六年三月現在で全体の四八%の集積にとどまっております。

 その理由としては、資産的土地保有など農家を取り巻く社会経済情勢がありますが、政策面では、価格政策が幅広い農業者を対象としてきたために、農地を担い手に集積できなかったことが大きいと考えております。

 この点について、新たな基本計画におきましては、高齢化の進展により、土地利用型農業を中心に経営の規模拡大の動きは遅く、生産構造の脆弱化が進行していると評価した上で、現在、品目別に講じられている経営安定対策を見直しまして、施策の対象となる担い手を明確にした上で、その経営の安定を図る対策に転換するとしておるところであります。

 農林水産省といたしましては、農業の構造改革を進めるため、地域における農業の担い手を明確化し、農業経営に係る各種施策を集中的、重点的に実施していくこととしておるところであります。

神風委員 農水省の方では「平成十七年夏に向けた担い手育成の重点方針」を策定されておりまして、その中で、特定農業団体及び特定農業法人を本年夏を目途に、全国運動を展開し、それぞれ大幅に増加させるということになっているようでございます。現在、その特定農業団体数が百二十団体、そしてまた一方、特定農業法人についても二百二十六法人にとどまっているわけですが、一体、どのくらいこの増加を見込んでおられて、どの程度の農地面積を占めることになると予測をされているのか。

 もうことしの夏にこの結果がわかるわけですから、あと数カ月後にはその結果が出てくる。ある意味では、今後の新しい基本計画の実効性を占う意味で大変重要な指標であると思うわけですが、その点、どうでしょうか。

須賀田政府参考人 集落営農の組織化、法人化をしたねらいといたしまして、私どもが地域で考える担い手創成プロジェクトチーム、農業団体等が全国担い手育成総合支援協議会をつくりまして、連携のもとで取り組んでおるということでございます。この中で、特に、農業団体の全国担い手育成総合支援協議会が十七年度のアクションプログラムというのを作成しております。特定農業団体につきましては、今百二十でございますが、平成十七年度末にはこれを五百にし、二十一年度末には五千に増加させる、特定農業法人につきましては、現在二百二十六でございますけれども、十七年度末に約四百にし、二十一年度末に約三千に増加させるということでございます。

 私どもは、二十七年の目標で集落営農経営を二万から四万というふうに見込んでおりまして、効率的かつ安定的な農業経営が全体の農地の七割から八割を二十七年において占めるということを展望しているところでございます。

神風委員 ぜひそれが実現されることを祈ってやまないわけですが、ちょっと時間がなくなりそうなものですから、幾つか飛ばして質問させていただきます。

 農地の流動化というのが日本の農業にとって大変困難な作業であるわけですけれども、その農地流動化施策の一つである農地保有合理化事業というのが、経営規模の拡大あるいは農地の集団化のために農地保有合理化法人が農地を買い入れたりあるいは借り入れたりということをするわけですが、この制度というのは、実は昭和四十五年にもう発足をされていたわけでございます。ただ、当時、二十年前、私自身が農家のところを回っているときに、そういった話を聞きながらも、こういった制度がもう発足をしていたというのは全く知りませんでした。ある意味では、それがわからないほどに、農地の流動化というのはほとんど進んではいなかったというのが実態であろうかと思うわけですが、今回の改正によってその実効性がどう確保されることになるのか、大臣にお伺いしたいと思います。

島村国務大臣 農地の利用集積を進めるに際しましては、貸し手にとって安心して貸せる、また、借り手にとって安定的に借りられるという農地の仲介機能を強化することが重要であります。

 このような仲介機能を果たす農地保有合理化法人の機能強化を図るため、今回の改正法案では、農業生産法人に農地を仲介する際、あわせて金銭出資を措置することにより、規模拡大に伴い必要となる農業機械などの資本装備の充実が可能となる仕組みや、また一方で、貸付信託を行う事業を創設することにより、都市住民など、地域に不在の方を含む、貸し手が安心して合理化法人に農地の管理を任すことができ、また、借り手も安定的に農地を借りることができる仕組みを新たに設けることとしているところであります。

 このような制度は、現場のニーズを踏まえたものであり、望ましい農業構造の確立に資するものと確信いたしております。

神風委員 農家にとって農地という存在は、恐らく我が子と同じような感覚なのであろうという気がしているわけでして、よほど信頼できる人でないと、正直なところ、農地を貸したくない、人に貸すぐらいであれば、ほうっておいた方がいいというような感覚が非常に強いのではないかなと。また、農村というのが同業者の集まりで形成されているものですから、隣の会計というか、家計まで大体わかるわけですね。そうすると、隣の人に貸すくらいであれば、ほかの町の人に貸したいというような心理が働いているような感じがありまして、ある意味では、人に農地を貸すというのは、恥に近い感覚が農家の中ではあるのではないかなという気がするわけです。

 それぐらい農地の流動化というのはデリケートな仕事なのであろうという気がするわけでして、そうした中で、今回、農地保有合理化法人による貸付信託が創設をされたと。これ自身は、私は多少期待をしているところがございまして、特に、信託期間中に農地保有合理化法人が信託農地の貸付相手を変更する場合でも、農地の出し手の同意を求める必要はないという点が非常に注目できるのではないか。また、これによって、より農地を集団化できる農家に対して、容易にその貸し付けを変更できれば、分散化している農地の集団化というようなものに効果を発揮するのではないかという気がするわけです。ある意味では、隣の人には貸したくないけれどもという、その思いを克服できる一つの有効なシステムになるのではないかという気もするわけですが、これはそういう理解でいいのか、あるいはそういう使い方もされるおつもりなのか、その点、ちょっとお聞かせいただければと思います。

須賀田政府参考人 農地保有合理化法人による貸付信託、農地保有合理化法人からさらに借りる側の立場に立ちますならば、まさに先生おっしゃったように、委託者の同意なく変更ができるだとか、ブロックローテーションだとか集団化に活用できるだとか、そういうメリット、まさにおっしゃったとおりでございます。

 一方で、出し手側にとって、例えば、親から相続して自分は都会で働いている、不在地主になっているといったような場合、やはりもうその集落との結びつきがないということで、安心して貸し付けられる相手が自分では見出せない、あるいは、多少資産保有意識もありますことですから、都合のいいときには返してほしい、こういう意識があるわけでございます。そういう場合に、農地保有合理化法人に貸付信託を行いますと、安心できる相手方でもございます、だから、信託期間が終了すれば確実に返してもらえるということで、出し手にとっても活用の道があるのではないかというふうに思っております。

神風委員 農地保有合理化事業に、農業生産法人に対する現物出資とあわせて今回金銭出資を行う事業が創設されて、経営規模の拡大に伴う機械施設の更新、増設のための資金調達が容易になったと。

 平成十七年度予算においては、農業生産法人経営支援出資事業として七億円が計上をされておって、その財源というのは農業経営基盤強化措置特別会計だと聞いております。

 そこで、その農業経営基盤強化措置特別会計の主要事業の平成十五年度の決算におけるその予算執行率をちょっと見てみますと、農地保有合理化促進対策費というのが九一・七%、これが平成七年から平成十三年の過去の七年間の平均を見ますと六八・九%にすぎない。また、農地保有合理化促進対策資金貸付金は六二・三%という形になっているわけでございまして、あと、これは直接的には関係はないかと思いますが、農業改良資金貸付金はわずか三%しか使われていない。つまり、九七%の九十六億円はまさに不用額という形になっているわけでございますが。

 この特別会計の現状にかんがみて、今回の農地保有合理化法人による金銭出資事業創設の財務状況が果たして適切であるとお考えになっているのかどうか、ちょっとその点をお聞かせいただきたいと思います。あるいはまた、特別会計のもっと有効な活用の仕方があるのではないかという気もするわけですが、その点もあわせてお願いします。

須賀田政府参考人 十七年度の予算は、初年度であるということで、農地保有合理化法人の金銭出資について、モデル性があって波及効果が大きい、規模拡大を志向する法人、こういうものを対象とするということで予算措置を講じたわけでございます。そういうことで、本事業に必要となる資金が十億、うち国費分を七億というふうに見込みまして、農業経営基盤強化措置特別会計、先生今おっしゃられましたけれども、決算剰余金が非常に多くなっているということで、もっと有効利用をすべきである、有効利用をできないのなら一般会計に戻せ、こういう指摘を受けているところでございます。

 私ども、今後、担い手の育成確保ということが大変重要な課題になってくるというふうに思っておりまして、この特別会計の有効活用という観点から、農地保有合理化措置のさらなる効率化ということを目指しまして、いろいろ工夫を凝らしていきたいというふうに思っております。

神風委員 今後、この特別会計の問題は改めてまた深く質疑をしていきたいと思うわけです。

 次に、農地保有合理化法人の実態についてちょっと御説明をいただきたいと思うわけです。

 今回のいろいろな事業を実際に担当される専属の担当職員というか、そういう数とか、あるいはそういった方々の、これはどこまでわかるのかわかりませんけれども、能力というのか、そういうものはどういう体制になっているのだろうかと。ある意味で、今の体制では十分に対応し切れないのではないかという思いがあるわけですが、その点、今の、農地保有合理化法人の現状の体制についてちょっと御説明をいただきたいと思います。

須賀田政府参考人 農地保有合理化法人でございます都道府県農業公社の職員、各都道府県によってまちまちでございますけれども、一公社あたり、平成十五年で七・一人でございます。行政の効率化等の要請もございまして、平成十年は八・四人だったわけでございまして、これが減りつつあるということでございます。ただ、今後、この農地保有合理化法人の役割というのは非常に大きなものがございまして、その体制の強化が必要であるというふうに認識をしております。

 私ども、予算措置といたしまして、専門の職員に対する活動費等を総計二億一千六百五十四万、一県当たり平均四百六十万円の助成をしております。

 私ども、農地保有合理化事業の活発化という観点から、この専門の職員だけではなくて、農業委員会とか普及員とか、これも効率化のために減らされておるわけでございますけれども、連携を強化して、質的向上を主体として、適切な活動促進を図っていきたいというふうに思っている次第でございます。

神風委員 今局長がおっしゃったように、本当に今回の法律案によって農地保有合理化法人の役割というのは、相当重いというか、重要なものになっていくと思うわけでございまして、今回の法案の成否というのも農地保有合理化法人の肩にかかっていると言ってもいいのではないかなという気がするわけでございます。

 ですから、現状の体制で、本当にどこが最終的な責任を負う体制になっているのかということがよくわからないわけですし、貸付信託であるとか金銭出資という、非常に、本当にデリケートな業務をこれから農村の社会の中で実施していくわけですから、現状の体制ではなかなか厳しいものがあるのではないか。

 今、局長の方も農業委員会とおっしゃっておりましたが、そうした農業委員会あるいは農業会議とか普及センターとか、そういったものを一体化できるような、あるいは、相当強力に連携をとりながら、一元管理していくような、そういったセンターみたいなものがこれからは必要になっていくのではないか、プロパーの職員も相当必要になるのではないかという気がするわけですが、その点、もし何かあれば、お願いします。

須賀田政府参考人 農地保有合理化法人の行います業務と、農業委員会が行います業務。

 農業委員会は市町村の行政委員会でございます。農地保有合理化法人は都道府県に重点を置いているわけでございまして、両者の業務というのは、担い手の育成、確保、農地の利用集積、耕作放棄地の解消等、重なっているわけでございます。したがいまして、農業委員会の県組織であります農業会議と農地保有合理化法人が密接な連携を県段階でとって、市町村の手足といたしまして農業委員会を活用するという考え方に立って、連携を強化していきたいということでございます。

 また、農協も最近は農地保有合理化措置に熱心でございますので、農協にも営農指導員等がございます、こことの連携というのも図っていきたいというふうに考えている次第でございます。

神風委員 日本とは状況が全く違うんだとは思いますが、フランスでは、SAFERという土地整備農村建設会社というのが存在していて、農地保有合理化事業を担当されている。それで、その結果、一九六〇年から一九九七年にかけて、平均的な農家の規模が十七ヘクタールから四十二ヘクタールへと約二・五倍に拡大をして、この期間の全農地面積の減少も六%にとどまっているという話を聞いたことがございます。

 これは、日本の農村の状況とフランスでは本当に全く違うんだとは思いますが、そういったものもぜひ参考にしていただきながら、そういった事業を力強く進めていただければありがたいなという思いがするところでございます。

 あと、ちょっと米政策改革についてお伺いしたいと思うんです。

 地域水田農業ビジョンの担い手を明確化する中で、集落営農の組織化を理由に、これまで地域内の農地の利用集積を進めてきた認定農業者に対して農地の返還を求める動きもあると聞くわけですが、これでは本来的に農業構造改革の趣旨に全く沿わないという気がするわけですけれども、地域の中での認定農業者と集落営農組織との関係、どのように整理をされているのか、お伺いをしたいと思います。

須賀田政府参考人 先生おっしゃられますように、特に大規模農家の方々から、米政策改革の実施の過程で、集落営農経営というものを私どもは位置づけたものですから、今まで貸してくれていた農家が集落営農の方に走って我々の経営に支障が生じているという苦情が私どもの方にも寄せられまして、本年におきましては、この集落営農と認定農業者の間の土地利用調整というのをできる限りあつれきの生じないようにしたいというふうに思っております。

 具体的に申しますと、私どもも、できることであれば、認定農業者がおられましたら、その認定農業者を核とする集落営農ができたらというふうに思っておりまして、まずは認定農業者が集落営農の核にならないかということを模索したいというふうに思っております。

 そうでなくて、やはりどうしても認定農業者と集落営農を別々に、独立して経営発展を考えざるを得ないというようなところでは、私ども、滋賀県でその例を見たわけでございますけれども、地域のリーダーなりJAなりが間に入りまして、両者の間の土地利用を調整する。今まで認定農業者が経営していた農地を集落営農がどうしても必要であるというなら、そちらに移すかわりに代替地をあっせんする、こういうような調整をして、両者の間の農用地の利用関係を調整し、円滑に進むようにしたいというふうに、現在その指導をしているところでございます。

神風委員 冒頭に申し上げました、以前私が訪問した大規模稲作経営者の方から聞いたお話ですが、地域によっては、生産調整に参加をしないと担い手としてはなかなか認めていただけなくて、認定農業者にもなれないというような話を何度か聞いたことがございますが、その実態について何か調査をしたようなことはあるんでしょうか。あるいは、現状はどうなっているか、教えていただければと思います。

須賀田政府参考人 これはいろいろ議論があったわけでございますが、認定農業者といいますのは市町村が認定をするわけでございますが、農用地の効率的かつ総合的な利用を図るために適切なものであることというのが認定の要件になっております。生産調整も我々の政策、認定農家制度も我々の政策でございますので、両者の政策にやはり整合性が要るだろうということで、現在、認定農家を申請する方々が申請の際の農業経営改善計画に生産調整を全く考慮してないというような経営改善計画を出された場合には、これを拒否する、認定しないという運用をしているわけでございます。

 また、認定するときには生産調整を守りますといって認定された農家が、地域でブロックローテーションによる生産調整に際して、これに参加しないというような状況がありましたら、やはり地域の農業を乱すということになりますので、そういう状況が著しい場合には、認定を取り消すというようなことも考えていくという方針でおります。

神風委員 あと、今回の法律案で、農用地利用規程の規定事項として認定農業者に対する農地利用集積目標を定めようとしているわけですが、これは具体的にどのように定められるお考えなんでしょうか。

須賀田政府参考人 農用地利用規程は、農地利用改善であって、すなわち集落が自分のところの農業の将来はだれに託すべきか、どのような組織に託すべきかを決めるわけでございます。そこで、そこの集落が、認定農業者がそこにおられて、これに自分の集落の農業の将来を託そう、こういうふうに考えられました場合には、五年後の目標を立てまして、そこへいろいろな農地利用の集積を地域の合意によって進めていこうというためにこの規定を置いたわけでございます。

 したがいまして、具体的に当たりましては、地域で十分話し合いをしていただきまして、その自分の集落の農業の将来を託す認定農業者をまず明確にしていただく。そして、五年後、その人に、どれだけの利用権を設定し農作業受託面積をどれだけにするかということを目標を立てていただいて、後は集落ぐるみでその目標達成のために努力をしていただく、こういうことをねらいにしたものでございます。

神風委員 次に、耕作放棄地対策について伺いたいんですが、ちょっと唐突な質問で恐縮なんですけれども、農水省の中の職員さん、あるいは今回の新しい新たな基本計画の作成者の中に、農家出身というのはどのぐらいいらっしゃるんでしょうか。雑駁な感想というか、そういった数字で結構なんですが。

須賀田政府参考人 ちょっとわかりませんけれども、私どもが入ったときが全部で十四人おりまして、そのうちの農家出身がたしか三人、篠原先生も含めまして三人だと思いましたので、恐らく二、三割といったところではないかというふうに思っております。

神風委員 随分多いんで安心しました。農家の心理というのは農家出身でないとなかなかわからないなというのを強く感じることがありまして、ある意味で、農水省には農家出身のクオータ制みたいなものを導入してもいいんではないかなというのを個人的には思うわけですが。

 現在、担い手の高齢化によって遊休農地が増加をしている。平成十二年には実に三十四万ヘクタールが遊休農地になっていまして、全国農業会議所の調べによりますと、耕作放棄地の発生要因として、複数回答での調査の結果、高齢化あるいは労働力不足によるというものが八八%、また一方、農地の受け手がいないというのは二六・五%にすぎないわけでございます。

 この開きが何を意味しているのかということを想像しますと、たとえ自分が高齢になって、自分では耕作できなくなっても、他人には貸したくない、他人に貸すくらいであれば、もう耕作放棄地のままほうっておいた方がいいんだというような農家の心理というのが相当あるんではないかなということを私自身は想像するわけですが、そういったものを克服しないと、この政策も実効性が担保できないんではないかなという気がするわけです。

 それで、現行制度では、遊休農地に関する対策として農業経営基盤強化促進法に基づく措置が行われており、農業委員会による指導というのは一定の実績があるわけですけれども、市町村長の勧告の実績というのは特に平成八年以降ゼロという状態になっているわけですが、この理由はどういったところにあるんでしょうか。

須賀田政府参考人 こう言っては何なんですけれども、基本的には事前の指導で解決を図る、勧告まではいかないということでございます。

 ただ、全体的にそういう指導体制が奏功をしているか、効果を持っているかというと、耕作放棄地がふえておりますので、それだけではなかなか効果が出ているとは言いがたい状況でございます。

神風委員 今回、利用権設定に関する協議が不調の場合、都道府県知事が、協議の対象者からの申請によって利用権設定の調停を行うものとしているわけですが、市町村長の勧告の実績が現状でゼロという状況で都道府県知事の調停というものを設置しても、一体どういう意味があるんだろうか。

 つまり、市町村長からの勧告が相当数あって、それに対して実効性がないということで知事の調停ということを設置するのであれば理解できるんですが、今の状況で知事の調停というものを設置しても何の意味もないと思うんですが、これはどういう趣旨でこういうものを設置されるのか、お考えをお聞かせください。

須賀田政府参考人 耕作放棄地の理由で、高齢化、労働力不足が主たる要因と先ほど先生おっしゃられました。そして、まさに先生おっしゃられましたように、特に高齢農家は、自分の土地を人にゆだねたくない、もう農業は自分一代限りだという意識が強うございます。私ども、集落営農の指導をしている場合も、一番困るのは、高齢農家の方々でございます。

 そういうことで、高齢農家のかたくなな態度を和らげるためにも、やはり農地を持っておられる方には、ちゃんと利用する社会的責務があるんですよ、こういうことを説いて、さらに、おじいさんの子孫にいい形で引き継ぐべきではありませんかということで、私どもは指導をしたいということでございまして、そういう意味で、最終的には都道府県知事の調停、裁定という強制的なことで賃借権が設定されますよ、だからちゃんと利用してください、自分で利用するのが嫌なら、だれかに任せてください、こういう指導をして、ちょうど土地収用と土地の利用の関係のような関係をつくり上げていきたいというふうに考えている次第でございます。

神風委員 時間がなくなりましたので、ちょっと市民農園についてもお伺いしたいと思うわけです。

 最近、いろいろな方あるいは経営者の方とお話をしていますと、これからは農業の時代だとおっしゃる方が本当に多いんですね。全くこれまで農業と接してこられなかった方がそういうことを相当数口にされているわけでして、その潜在的な農業者予備軍というか、そういうものをどうつかんでいくかというのが、これから本当に大きな課題ではないかなと思うわけです。

 同時に、都市的地域における農業については、食料生産という面だけではなくて、レクリエーションであるとか、あるいは景観であるとか、あるいは良好な住環境の整備というか、保全というものにも相当寄与しているわけですが、今後、特に私の住んでおります埼玉、あるいは大臣のいらっしゃる東京でもそうだとは思いますけれども、大規模な災害に対するオープンスペースの機能であるとか、あるいは、特に埼玉あたりはひどいんですが、ヒートアイランド現象というのがございまして、ある調査によると、近くに水田がある地域と市街化地域では、三度から五度ぐらい気温が違うというようなデータがございます。

 そういう面で、こういった新しいこれからの機能について、市民農園をどういう位置づけでお考えになっているのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

島村国務大臣 お答えいたします。

 市民農園は、都市住民の自然志向の高まりなどを背景に年々増加していることは、御高承のとおりであります。また、都市部においては、農業体験の場の提供や災害に備えたオープンスペースの確保の点から、市民農園に対する期待が高まっていることもまた事実であります。このため、新たな基本計画におきましても、市民農園の推進を位置づけたところでありまして、今後、市民農園の開設を一層拡大するために、いわば開設の要件の緩和その他についての検討を進めて、取り組んでいきたいと考えています。

 御参考までに、市民農園数は、平成五年に千三十九農園が、平成十五年には二千九百四農園、いわば二・八倍に増加しているわけで、かなり急速にふえているということを申し上げたいと思います。

神風委員 私の住んでいる埼玉でもよく見かけるんですが、生産緑地内にある農地について相続税の納税猶予制度が適用されて、相続人が農業を原則として二十年間継続した場合には相続税が免除ということになっておりまして、その一方で、市民農園を他人に貸した場合にはそういった猶予が打ち切られてしまう。

 しかし、その実態を見ますと、二十年間の農業の姿というのが、クリを植えたり、あるいは梅であったり、あるいはカキであるとか、そういった樹木が単に植わっている地域が相当多い。恐らく、大臣の地元でもそういう光景は多いんではないかなと思うわけですが、そういう点で、この市民農園のニーズがこれだけ高くて、あるいは農地の活用の仕方として、市民農園の方がはるかに付加価値が強いと考えるわけですが、そこら辺、相当バランスを欠いているんではないかと思うわけですが、今後の、ある意味では決意というか、そういうものを最後にお聞かせいただければと思います。

島村国務大臣 市民農園は御承知の、都市住民などの農業体験の場、あるいはレクリエーションの場、あるいは農業に対する理解を深める場として非常に重要な役割を果たしておるわけですが、このため、今回の特定農地貸付け法の改正によりまして、構造改革特区内に限定されることなく、地方公共団体及び農業協同組合以外の者も市民農園を開設できることとなりまして、多様なニーズに対応した取り組みが期待されるところであります。

 また、予算措置といたしましては、市民農園の区画や農機具置き場の整備、あるいは栽培技術を教える指導員の育成などの支援を行うこととしております。さらに、税制面では、貸し付け方式ではなく、農地所有者がみずから経営を行う農園利用方式の市民農園の場合は、相続税の納税猶予が受けられることとなっております。

神風委員 時間を多少超過してしまいましたが、申しわけありませんでした。

 どうもありがとうございました。

山岡委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 きょうは不覚にも風邪を引いておりまして、ちょっと声が低いかと思いますが、この前のように、大臣、聞こえないということのないように、よく耳を澄まして聞いていただければと、そう思っております。

 ところで、経営基盤強化法の前に、二つ三つBSEの問題に触れておきたいと思います。

 BSEの問題で、アメリカの検査の中で、最初の一頭目は、私のいろんな調べでは、ウエスタンブロット法でやった。二頭目は、ELISA法の後、化学組織反応法ですか、延髄の細胞の切片を顕微鏡で見て、そして異常プリオンがあるかどうか判断する。それを二回やって、一回目の細胞の切片がクロと出た。ところが、二回目にシロと出たので、実際BSEではなかったという確認発表をしたわけですね、ウエスタンブロット法をやらなかった、二頭目は。

 ウエスタンブロット法は、私の聞いているところでは、細胞を全部すりつぶしてやるから、目で見て、あるいは細胞の、いわゆる異常プリオンのない切片を見たりすることがないので、必ずわかる。そういう意味では、意図的に、いわゆるBSEが出ないような検査の方法しかしていないんじゃないか。実は、これを昨年の十二月七日に、プルシナー教授、いわゆるBSE問題でノーベル賞をもらった、お話ししたときに、プルシナー教授は全くそのとおりだと言っておりましたが、大臣でも副大臣でも結構です、いかがでしょうか。

大口大臣政務官 では、私の方からお答えさせていただきます。

 アメリカにおける確認検査法は、免疫組織化学検査が用いられております。検査材料が融解するなど免疫組織化学的検査に適さない、そういう場合に限ってウエスタンブロット法が用いられる、要するに、先生がおっしゃる、すりつぶしてやるというものですね。

 アメリカがこの検査方法を採用するに当たっては、国際獣疫事務局、OIEが定める診断マニュアル等を考慮したと説明を受けておりますが、OIE基準によれば、確定検査の方法といたしまして、ウエスタンブロット法と免疫組織化学的検査とのいずれも用いることができる、こういうふうにもなっております。日本の場合は、これは両方やっておるわけでございますが、アメリカはそういう状況である。

 いずれにしましても、米国産牛肉の輸入再開に当たっては、このような米国におけるBSE検査体制に関する情報についても、食品安全委員会に提出の上、米国産牛肉と国内牛肉の安全性に差があるかどうかについて諮問することとしております。

山田委員 大臣にお聞きしたいんですが、その検査方法についても、かねてから大臣は日本と同等の基準でなければ入れない、これは小泉総理もそう言ってきたわけです。やはり検査方法においても日本と同等でなければならない、そう思われますが、それを大臣自身はどう思われるか、はっきりお答えいただきたい。

島村国務大臣 私どもはOIEの基準にのっとっておりますし、これからも、何かそういうものを発見できないようにするための検査をするということは先行きの責任問題にもなりますから、我々はそういうゆがんだ対応をする考えは毛頭持っておりませんので、御理解いただきたいと思います。

山田委員 大臣、私の質問の答えになっていないと思います。

 日本はいわゆるELISA法をやった後に、ウエスタンブロット法と免疫組織化学反応、両方をやっている。それと同じ、同等の検査基準でなければいけないんじゃないのか、そうでないのか。イエスかノーでお答えいただきたい。

島村国務大臣 専門的なことで、余り詳しくは、私、実はわからないのですが、少なくもOIE基準に基づいてやっているということを私は承知しておりますし、このOIE基準によれば、ウエスタンブロット法と免疫組織化学的検査とのいずれを用いることもできる、要するに同等である。こういうふうに基準が設けられているので、それに従ってやるということでございます。

山田委員 前回の委員会のときに、OIE基準が、五月に例えば三十カ月齢以下のSRMの除去だけで貿易、輸入してもいいというような決議になったとしたらどうなるかという質問に対して、こう答えておられるんです。いわゆるSPS協定においては、日本がその必要性が認められる場合においては日本の基準において当然やるべきだと。

 そうであれば、大臣、ここは大事なところです。日本の基準がいわゆるELISA法と免疫組織化学反応、両方でやるということであったら、前から日本と同等の基準と言っているんだから、ここでOIEの基準であればいいというのはおかしいんじゃないですか、大臣。はっきり答えていただきたい。

島村国務大臣 余り詳しくなくて恐縮でございますが、少なくとも、私どもはOIE基準にのっとっていわば検査をするということでございますし、それで今までもずっとやってきているところでございますし、この御質問に対しても、この両者が同等のものであるというOIE基準によってこの検査の方法について説明されているところでございますから、別に問題がないのではないかと理解しております。

山田委員 全然答えになっていない。

 大臣、もう一回重ねて言いますよ。いわゆるOIE基準があったとしても、SPS協定によって、国内で必要と、合理的理由がある、正当な理由があって必要と認めている検査基準であれば、例えばことしの五月、OIE基準がどうあろうと、その国内基準を守りますということを、はっきり前回の委員会で証言したわけですよ。そして、国内同等の基準でもってじゃないと輸入できない、これは小泉総理大臣も島村農水大臣もそう答えてきておった。

 ところが、今の答えは答えになっていない。答えられない限り、私はこれ以上質問できませんよ。明確に答えていただきたい。

島村国務大臣 私、この問題に専門的に取り組んでいないので、説明が十分とは言えないかもしれませんが、少なくとも、私どもは、食品安全委員会に我々の検査法についてもいろいろお伺いをし、それらに基づいていわば食の安全、安心を確保していきたい、こう考えております。

山田委員 大臣の答弁は私の問いに対して答えていない。したがって、私はこれ以上質問できないと思いますが、委員長、それについての釈明を大臣にさせていただきたい。

山岡委員長 ちょっと速記をとめておいて。

    〔速記中止〕

山岡委員長 速記を始めてください。

 ただいまの山田委員からの質問に対して、答弁をされておりますけれども、十分でない、こういう申し出でございます。別途、この件については理事会において、理事において中身を検討し、改めて進めさせていただきたいと思いますので、次にお進みください。山田君。

山田委員 実は、日経新聞にも一部載って、日本農業新聞にも、カナダでかつての検査官が、アメリカのBSE検査については不正がある、そういうことが報道されておりました。確かに、アメリカにおいては、食肉検査官の協議会議長ペインター氏がまさに書簡を出して、危険部位そのものも肉に供給されているし、三十カ月齢以上の牛についての区別について、なされていない、なされていない部分を、仮に抗議するとしても、それもできないようなシステムになっているという抗議文を出されているわけです。

 さらに、私もけさになってこのカナダ紙に掲載された部分が手に入ったわけなんですが、これがそうです。その中で、ドイマスオ農学博士、獣医、かつての検査官ですが、いわゆる米農務省を告発している。そして、フリードランダーさんというのは、私がアメリカにBSEの調査に行ったときにお会いした人物なんですが、フリードランダー氏がカナダ議会でその旨を証言している。アメリカにおいては、まさにその検査においてはずさんである。

 大臣、農水省として、アメリカの検査方法についての調べ、正確にやっているかどうかということを実際にやられたことがあるかどうか、お聞きしたい。副大臣でも結構です。

島村国務大臣 これらについてはそれぞれ専門の担当の人間が検討しているところでありますから、私自身からのお答えは次にとどめますが、元米農務省食肉検査官が四月十二日、カナダ議会で米国のBSE問題に関連し発言したことについては、その発言内容について現在カナダ及び米国側に照会しております。こういうことでございます。

山田委員 実際に本当に調べに行って、事実関係を明らかに調査、レポート、それくらいのことを、国民に対して農水大臣は責任があると思いますが、この件についてはそれ以上お聞きしません。

 次にお聞きしたいのは、実は、食品安全委員会については、この前一つの結論を出しました。結論を出したときの諮問の内容なんですが、農水省、厚労省の諮問の仕方が、いわゆる二十一カ月齢以上の検査をすることによってのリスク評価、リスクはどうかという諮問の内容になっている。諮問の仕方によって、例えばそういう諮問であれば、当然のことながら、リスクは統計学上非常に少ないという諮問の結果になってしまいかねない。いわゆる食品安全委員会の議事録を全部読んだわけじゃありませんが、私が一部ざっと目を通させていただいた限りにおいては、専門委員、プリオン専門調査委員会の中で数人しか専門委員はいないと思いますが、その専門委員の先生方はほとんどがこの全頭検査をやめることについては消極的であると私は読み取りました。

 その中で、寺田委員長にお聞きしたい。

 仮に、諮問の内容は、二十一カ月齢以下の検査の危険のリスクの評価はどうかというのではなくて、全頭検査をやめるべきか否かという諮問の内容であったら、いわゆる皆さん方の結論というのは違ったんじゃないか。委員長個人の見解としてで結構でございますが、どう思われますか。

寺田参考人 当然のことでございますが、仮定の問題なので、これは私個人の考えといたしまして、例えばそういう諮問が来ましても、専門委員のほとんどの方は全頭検査を続けるべきだという意見ではなかったと思います。二人か三人は、私、全頭検査を続けるべきだという意見の先生方はいらっしゃったと思います。私自身の意見ですが。

山田委員 寺田委員長、議事録を読んだ限り、もう全頭検査はやめていいという積極的な意見は、僕はほとんど見られないと思う。それについてはどうですか。

寺田参考人 先生おっしゃるとおりでございまして、そういう議論はございませんでした、全頭検査をやめていい、あるいは悪いという議論は。

山田委員 全頭検査をこのままやめてもいいという積極的な意見はなかった、ほとんど。ということであれば、全頭検査を、皆さん、例えば二十一カ月、二十三カ月が出たというのは、全頭検査をやったから出たのであって、イギリスでも二十カ月齢は発症までしているわけですから、そうであれば、当然のことながら全頭検査を継続すべきだというのは、私がお会いした専門委員、お話をお聞きした専門委員の先生方はほとんどだと僕は思っている。そうであれば、諮問の内容が全頭検査をやめるべきか否かということであったら、結論が違ったはずだ。これ以上委員長に聞いても、委員長の立場からして答えられないと思うのでそれ以上は聞きません。

 しかし、大臣、ここで問題なのは、この後いずれ、近くに、米国の牛肉輸入について、再開することの是か否かを食品安全委員会に諮問することになる。それは間違いない。そのときの諮問の内容の中で、先般から大臣は、飼料規制は必要としないとか、大変大事な発言をしている。諮問の内容が、例えば、アメリカの牛肉の二十一カ月齢以下を輸入したことについてリスクはどうかということになれば、同じように、統計学上のリスクは低いということになってしまう。そうすると、まさに輸入を前提とした食品安全委員会に対する諮問の内容になってしまう。大臣、それについてはどう考えられるか。

島村国務大臣 米国産牛肉の輸入再開条件については、米国産牛肉が国内産のものと安全性において差がないか食品安全委員会に諮問し、その答申を踏まえて決定することとしております。

 なお、飼料規制の問題ですが、BSE病原体の牛から牛への伝播を防止するためのもので、牛肉そのものの安全性を直接確保するものではありませんし、したがって、飼料規制そのものを諮問事項とはしておりません。輸入再開に当たって考慮に入れるべき事柄であり、必要な情報は食品安全委員会に提供していきたい、こう考えております。

山田委員 牛肉を輸入することについて、安全か否かということについての諮問をする。ということは、飼料規制についても、SRMの除去についても、屠殺方法についても、検査方法についても、同様に安全であるかどうかということは大事な四つの要素であって、それを食品安全委員会に諮問する、大臣はそう答えられたと理解していいと思われるが、それでよろしいかどうか。お答えいただきたい。

島村国務大臣 まさに私が今申し上げたとおりなんでありますが、飼料規制の問題に限れば、BSE病原体の牛から牛への伝播を防止するためのもので、牛肉そのものの安全性を直接確保するものではありませんし、したがって、飼料規制そのものを諮問事項とはしておりません。ただ、輸入再開に当たって考慮に入れるべき事柄ではありますので、必要な情報は食品安全委員会に提供していきたい、こう考えているところであります。

山田委員 どうも、ここに来てまだ、大臣はあいまいだ。

 私が言っているのは、いわゆるSRM除去など四つの方法について、先ほどは牛肉輸入再開について安全か否かという諮問をすると言ったんだから、当然この四つがその中に含まれるか含まれないのか、それを明確に答えていただきたい。含まれないということであるか否か。

島村国務大臣 要は、私が再度にわたって申したように、いわば考慮に入れるべき事項であるので、必要な情報は食品安全委員会に提供していくということでございます。

山田委員 そうすると、アメリカの飼料規制について、安全か否かについての評価の要素としては、それを食品安全委員会に求めないということなのか。イエスかノーで答えていただきたい。その安全の基準の中に飼料規制は入っていないということか。

島村国務大臣 これもお答えしたことでございますが、諮問事項とはいたしません。

山田委員 それでは、アメリカでは会計検査院の中で、フィードバンが全くルーズである。私の調べでもアメリカの東海岸ではまだ牛の肉骨粉を乳牛に食べさせている。そんな中で、いわゆるBSEの蔓延はそのまま継続されているとアメリカ議会の会計検査院がそう言いながらも、飼料規制については、食品安全委員会に、安全の評価として、求めないということでいいわけですね、大臣。

島村国務大臣 これは繰り返し、繰り返し申してきた言葉ですが、あくまで科学的知見に基づいて食の安全、安心を大前提に輸入再開を考えるということでやっているわけでありまして、会計検査院の人のどういうことが、どういう発言があったといっても、これを一つ一つを例に挙げて、それをすべて我々がこれに対して論駁するだけの資料もありませんし、私はただ、アメリカのいわばその筋に対しては、こういうことが一々指摘されて、これに対する我々がその説明に窮するようなことがあっては非常に迷惑である。したがって、その辺の状況についてはきちんと情報等の提供も求めたい、こういうふうに言っているところであります。

山田委員 委員長、私が、食品安全委員会への諮問について、飼料規制を入れるか入れないかと言っているのに、入れないんですねと言っても、それについては答えない。ということは不十分である、質問について。それであったら、私はこれ以上質問できない。

山岡委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

山岡委員長 速記を起こして。

 今、山田委員の質問に対して、大臣側はそれは入れない、こういうふうに答えている、こういうことで進めてもらいたい。山田君。

山田委員 食品安全委員長にお聞きしたい。

 アメリカからの牛肉輸入について安全か否かという諮問について、飼料規制については、アメリカの飼料規制がどんなであろうと、それは諮問事項の中の一つとしては入れないと大臣がはっきり言っている。科学者として、食品安全委員会の委員長として、それで本当にアメリカからの牛肉の輸入再開に対して、安全か安全でないかという評価ができるのかどうか、お答えいただきたい。

寺田参考人 当然ではございますが、現在国内の方の意見を求めているところでありまして、牛肉の日米貿易の再開に関する条件に関しては、予断を持って言うことはできませんが、飼料規制というのは非常に大事なものだというふうに考えておりますし、それから、一方、私どもはリスクの評価をするところでございまして、管理機関から評価を依頼される、だから管理機関と私どもとは御存じのとおり独立の機関でございますから、管理機関にこういう諮問をしてくれとか、そういうことは言うことはできませんが、科学的にきちっと、諮問が来ましたら評価をさせていただきます。

 以上です。

山田委員 そうすると、諮問の仕方がどうであろうとも、寺田委員長、アメリカからの牛肉輸入の再開が食の安全にとって、国民にとって安全であるか安全でないか、飼料も含めて、すべての点で評価するというふうに私どもはとらえていいかどうか、そこをお答えいただきたい。

寺田参考人 当然、安全性につきまして諮問が来た場合には、すべてのバックグラウンドも含めまして評価するのが私どもの役目でございますし、専門調査会がまずそれをいろいろと評価されると思います。

 以上です。

山田委員 安全か否かについて評価すると大臣は先ほど答えたと私は聞いたけれども、その後、飼料は入れないと、こう言った。ということは、もう一回、かつて食品安全委員会に諮問したように、二十一カ月齢以下のアメリカの牛肉の輸入を再開してもその危険度はどうかということになったら、すべての安全についての評価ができなくなるおそれはないのかどうか。委員長、いかがですか。

寺田参考人 当然、安全性に関する必要な資料は、国内対策のときもそうでございましたように、農水省あるいは厚生労働省に資料の提供を求めます。

 それで答えたことになりますか。

山田委員 主たる質問も残っておりますのでこれ以上質問いたしませんが、たとえ農水省あるいは厚労省がどういう形の諮問であろうとも、良心に従って、科学的知見に基づいて、これは末々代まで大変責任ある問題ですから、本当に安全か否か、それを確かと、あらゆる資料をもとにしてその評価をしていただきたい、そう思います。

 最後ですが、大臣、一言。

 来週からランバートさんが日本にやってくる。いわゆるペンさんに次ぐ、ナンバーツーの方だと聞いておりますが、アメリカの食品安全委員会の輸入再開の条件について、いわゆる諮問の内容について具体的に日本の農水省と協議するために来るといううわさがある。大臣、まさかランバートさんと会ってそういう打ち合わせをすることはないでしょうね。あるいは、水面下でだれか副大臣なり政務官なり、あるいは農水省の幹部が会って、そういう話をするということはあるんでしょうか、ないんでしょうか。

島村国務大臣 一切ありません。

山田委員 何か二つぐらいの質問で終わるつもりだったら……。

 経営基盤強化法の問題についてお聞きいたします。経営基盤強化法の中で、かつて、今の島村大臣の、前の……

山岡委員長 山田委員、大臣が、補足の答弁を、BSEですね、したいそうですが、いいですか、今の質問に対して。

山田委員 はい。

島村国務大臣 言葉足らずでまた誤解を生んではいけませんので、誠意を込めてお話しするために再答弁を求めました。

 要は、私自身、今その方が来ることも正式には聞いておりませんし、面会その他についての話も全くありません。私は、本来的に、内輪の話というのはありましょうが、やみ取引みたいなことは一切受け付けない方でございますから、今回もそういうようなことがあるとは思いませんし、私自身の予定の中に全くないことはまず申しましたが、それ以外に、ただ、それぞれ担当者同士がいろいろな話し合いを持つということはあり得ることなので、これがあったときに話が違うと言われるといけませんので、この際きちんと申し添えておきます。

山田委員 私がお聞きしたのは、大臣、いわゆる食品安全委員会に対する諮問の内容についての打ち合わせを――では、大臣とか政務官とか副大臣じゃなく、いわゆる農水省の幹部がするということについてはあり得るということなんですか、今の答えは。それもないのかどうか、そこだけ。

島村国務大臣 いろいろ話し合いは従前から入念にやっていることですから、今回もいろいろなお話があるんだろうとは思いますが、ただ、少なくも私どもの知る範囲においては、具体的に何ら、まだそういう報告もありませんので、自分の知る範囲内において申し上げたところであります。

山田委員 本当に時間がなくなってしまいましたが、最後に経営基盤強化法に対してなんですが、今の島村大臣の前の、亀井農水大臣の時代、我々は、新食料のときに直接支払いを要求したわけです。直接支払いをすべきじゃないかと。ところが、当時、構造改革に反するからしない、自民党側も直接支払いしないという形であった、そう思います。

 しかし、私どもが再生プランの中で直接支払いを打ち出して、そして初めて今直接支払いを、いわゆる所得補償を自民党も考えてきたようですが、その所得補償について、実は自民党は、今度の法改正の中で、認定農家と、そしていわゆる集落に対する役割、第二十三条、認定農業者とその他構成員の役割分担というような評価になっております。いわゆる集落営農に対しての直接支払い、今これが先送りになっているわけですが、五町歩、十町歩とか、いろいろうわさがあっております。そういったもの以外についての、集落営農に対する支払いをするということですが、ところが、これについては、私どもは大変問題であると。もう質問しないで私の意見だけ最後に、あと二、三分しかありませんから、申し述べて終わらせていただきたいと思います。

 集落営農といっても、水田集落だけで八万ある中で、その半分、四万の集落には、主業農家、認定農業者もいないという状況。そんな中で、この法案では、さらにその認定農業者に対する目標、どれだけ農地を取得するかというのを明記しなければならないとか、そういう条項になっております。相変わらず、認定農家、規模集積、それだけを図って、そこにだけ食料の増産を図らせよう、自給率の向上を図らせようという意図が見える。

 ところが、実際には、五町歩であれ十町歩であれ、幾ら農地を集積したとしても、農業そのものは、アメリカ、EUの例をしても、直接支払いをしない限りやっていけない状況にある。アメリカは、平均して百九十七ヘクタールを一戸の農家が耕作しておっても、その所得の四六%は国からの直接支払い。EUにおいても、三十七町歩から五十五町歩、大体、平均四十町歩集積しておったとしても、それでもやっていけなくて、農家の五五%は、その所得は国からの直接支払いで賄われている。そうして、食料安全保障のために自給率を八割から九割、十割と達成している。それが実情である。そこで考えれば、幾ら認定農家あるいはプロ農家、中核農家といいながら、あるいは集落営農といいながら、それでもって、いわゆる直接支払いを大胆にしない限り、認定農家にだけ直接支払いをするような形では、自給率の達成は一切できない。それを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

山岡委員長 次回は、来る二十一日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十九分散会


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