衆議院

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第22号 平成17年7月27日(水曜日)

会議録本文へ
平成十七年七月二十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山岡 賢次君

   理事 今村 雅弘君 理事 西川 京子君

   理事 二田 孝治君 理事 黄川田 徹君

   理事 楢崎 欣弥君 理事 山田 正彦君

   理事 白保 台一君

      赤城 徳彦君    石田 真敏君

      江藤  拓君    大前 繁雄君

      岡本 芳郎君    梶山 弘志君

      上川 陽子君    川上 義博君

      木村 太郎君    北村 直人君

      後藤 茂之君    後藤田正純君

      田中 英夫君    津島 恭一君

      原田 令嗣君    古川 禎久君

      森  英介君    一川 保夫君

      岡本 充功君    鹿野 道彦君

      菊田まきこ君    小平 忠正君

      鮫島 宗明君    神風 英男君

      仲野 博子君    堀込 征雄君

      松木 謙公君    山内おさむ君

      大口 善徳君    高橋千鶴子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   農林水産大臣政務官    大口 善徳君

   参考人

   (主婦連合会参与)    和田 正江君

   参考人

   (社団法人日本フードサービス協会専務理事)    加藤 一隆君

   参考人

   (独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター長)      品川 森一君

   参考人

   (日本獣医畜産大学応用生命科学部動物科学科教授) 木村 信熙君

   農林水産委員会専門員   飯田 祐弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十七日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     大前 繁雄君

  城内  実君     古川 禎久君

  西村 康稔君     江藤  拓君

  岸本  健君     菊田まきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     西村 康稔君

  大前 繁雄君     金子 恭之君

  古川 禎久君     城内  実君

  菊田まきこ君     岸本  健君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

山岡委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 本件調査のため、本日、参考人として主婦連合会参与和田正江君、社団法人日本フードサービス協会専務理事加藤一隆君、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構動物衛生研究所プリオン病研究センター長品川森一君、日本獣医畜産大学応用生命科学部動物科学科教授木村信熙君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査の参考とさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、和田参考人、加藤参考人、品川参考人、木村参考人の順に、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承願います。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、和田参考人にお願いいたします。

和田参考人 ただいま御紹介いただきました主婦連合会の和田でございます。

 私どものBSEに対しての考え方、運動についてお話し申し上げたいと思います。

 平成十三年九月十日、国内で初めてBSEの牛が確認されてから四年近くになり、現在までに二十頭のBSEの患畜が確認されております。一頭目の発生のときには行政の不手際が重なってパニック状態となりましたが、十月十八日以降全頭検査を実施し、最近ではBSEの牛の確認の報道もだんだん小さくなり、消費者も落ちついて消費している現状と言えると思います。

 BSE問題に関する調査検討委員会、これに私も参加いたしましたけれども、この委員会は、一点目にBSEに関するそれまでの行政対応上の問題点、二番目に今後の畜産・食品衛生行政のあり方について検討し、報告書をまとめました。その中で、食品の安全性の確保についてリスク分析をベースにした組織体制の整備を提言し、食品安全基本法が制定され、一昨年の七月に、リスク評価を行う機関として食品安全委員会が設置されました。

 新しい食品安全組織体制において、この二年間さまざまな問題が扱われてまいりましたけれども、BSE問題に対して、リスク分析という私たち消費者にとっては初めての経験ですが、リスク分析をどのように実施していくのか、いわば試金石とも言える問題です。

 平成十五年十二月、アメリカでBSE感染牛が確認され、輸入禁止となり、平成十六年には食品安全委員会がBSE対策の国内措置について検証を行い、九月に中間とりまとめを公表いたしました。アメリカから輸入再開を求める声は大きくなりつつあり、なぜこの時期に国内措置の見直しを実施したのでしょうか。国内措置の見直しと輸入再開は無関係だと何度も行政から説明がありましたけれども、何となく疑問が残っております。

 国内対策の見直しについて、農水省と厚生省は全国で意見交換会を実施し、その後で国内対策の見直しを食品安全委員会に諮問して、次に食品安全委員会は全国五十一カ所で意見の交換会を実施し、本年五月に答申をまとめております。それによりますと、全頭検査をした場合と二十一カ月齢以上を検査した場合に、食肉の汚染度は、いずれにおいても「無視できる」から「非常に低い」という結果になっております。

 しかし、答申は次の二つの批判的な意見を留意すべきと記しております。

 その批判的な意見といいますのは、飼料の問題あるいはSRMの除去、それからピッシングの廃止、そのような対策の強化がこれから実施される予定である、月齢の見直しはこれらの一連の対策の実効性が確認された後に行うのが合理的な判断である。それから二番目に、検査の感度を改良するための技術開発促進が当然であるけれども、二十カ月以下の月齢の牛の検査をやらないということになりますと、今言われております地方自治体、各県がそれぞれ自主的に全頭検査を続けると言っておりますけれども、そこでの検査がなければ若齢牛の検査成績の評価はできなくなる。

 この批判的な意見は、私ども素人が伺いましても至極当然で、もっともな意見と思われます。

 消費者団体は全頭検査だけを求めているというようなことがマスコミでよく言われておりますけれども、私どもは、全頭検査だけ実施していれば安全性は問題ないと言っているわけではありません。プリオンはごく少量で牛から牛へ感染するということですから、答申の批判的な意見に述べられているとおり、飼料の問題、SRMの除去、ピッシングの廃止など、残されている問題を見過ごすわけにはまいりません。

 私たちは、未来永劫にわたって全頭検査を続けるべきだと言っているわけではないんです。将来、今申し上げましたような幾つかの条件が整い清浄国となるなど、専門家の先生方がもうこれで大丈夫だという時期になって見直すときが来るとは思いますが、今はまだその時期ではないというふうに考えております。

 BSE牛の一頭目の発生時のパニックをおさめるために始めた全頭検査とはいえ、つい最近まで、市場に出回っている牛肉は全頭検査を受けたものですから安全ですということを、行政もそれから業界も言い続けてきているんです。それが急に、全頭検査は科学的でない、あるいは全頭検査に使うお金がむだだというようなことを言い始めるのはいかがなものでしょうか。

 ピッシングについては、アメリカ、EUとも廃止しているのに対し、日本では屠場の数で七割、屠畜の頭数で八割がピッシングを実施しています。私どもは、ピッシングを実施している屠場、それから、取りやめた屠場を見学いたしましたが、働く方の安全確保という重大な要件があります。ピッシングの廃止は屠場の広さの問題にかかっているんだという御説明を伺った一方で、人員の配置を工夫すれば何とかできるというような御意見もありました。また、最近廃止した事例集も拝見いたしました。ぜひ、働く方の安全を確保した上で、ピッシングの廃止を急いでほしいと願っております。

 全頭検査のための費用がむだということが言われておりますけれども、検査に要するキットの代金を検査した頭数で割りますと、一頭が、本当に大ざっぱに言って三千三百九十円ぐらいの計算になります。一頭から平均して三百キログラム、三百を少し欠けると思いますけれども、本当に大ざっぱに計算いたしますと、一キログラム約十円強、百グラム一円強のコストで、納税者の立場で見ても納得できる数字であり、むだな支出とは考えておりません。

 多くの消費者が、全頭検査を今見直すべきではないと言っておりますが、この意見が受け入れられない場合には、次の段階として、やむを得ず、アメリカ産牛肉の輸入再開について、日本と同等の安全性の確保を求めることになります。

 問題は、アメリカの牛の二十カ月齢をどのように判別するかということです。

 日本では、トレーサビリティー法によって個体識別番号がつけられておりますし、生年月日を初め、屠畜されるまでの情報がデータベースに記録されております。一方、アメリカでは、一部分の牛は広大な土地で放し飼いになっており、子牛がいつ生まれたのか不明の場合が多いということです。そこで、アメリカでは、牛肉の肉の色、赤い色の程度や軟骨の骨化の進みぐあい、これを目で見て、いわゆる目視で判断する方法を提案してきました。これについて、日本で検討される委員会も私は何回か傍聴させていただきましたが、いろいろ難しい問題があるなと感じました。

 アメリカで、月齢の確認できている牛三千三百三十八頭に後からの追加があって計三千七百七十七頭をA40という基準で判別した、その百九十八頭が十二カ月齢から十七カ月齢になって、統計学的に考えても、二十カ月齢以下の判別の基準として、そのA40というのが基準として適当であるということになりました。

 素人の立場でいろいろな疑問が残っております。例えば、格付検査官による目で見る判別というのが本当に適当なのかどうだろうか。三千七百七十七頭の判別を一度実施した結果から、A40という基準を決めるのが妥当なのかどうか。牛のサンプルを取りかえて、検査官をメンバーチェンジして、こういう検査を数回繰り返して、その結果が同じように出たというところならまだ納得できるのですがということです。報告書にも、サンプルにはいろいろな偏りがあるというようなことも言われております。それから、A40を基準として採用する場合の留意点が述べられておりますけれども、これだけのことを留意しなければならないA40というのが基準として適当なのかどうか、その辺のところ、疑問が残っております。今後、さらに検討が必要と思われます。

 最後に、BSEについてはまだまだ未解明なことがあるように思われます。例えば、当初は二十四カ月の牛はBSEに感染しても発症しないと言われていましたが、その後、日本では、二十一カ月、二十三カ月のBSE牛が確認されております。ぜひ研究を進めていただきたいと思います。

 最後になりますけれども、表示について、ぜひ私ども消費者の選択に資するような適正な表示というものを実施していただきたい。それから、今、国内の牛肉についていろいろ表示がされておりますけれども、これについてのチェックというものもぜひお願いしておきたいと思います。

 私ども消費者団体は、約四十に近い消費者団体が横の連絡会をつくっておりますけれども、そこで先日、アメリカの消費者団体にいろいろ質問事項を出したところで、まだ残念ながら返事が来ておりませんけれども、その辺のところ、一緒に手をつなぎながら、これからもBSEの問題について取り組んでいきたいと考えております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 次に、加藤参考人にお願いいたします。

加藤参考人 私、社団法人日本フードサービス協会の専務理事をしております加藤でございます。焼き肉業界や牛タン業界、あるいは牛丼屋、ステーキハウス等を経営しておりますファミリーレストラン、ファストフードの業界の立場から意見の陳述を申し上げたいと思います。

 また、このような機会を与えていただきましたことも、当委員会に大変敬意を表し、ありがたく御礼申し上げます。

 私どもの外食産業は、この二十年間、社会環境の大きな変化の中で、食の外部化を推進してきたビジネスであります。その中で、日本の消費者が消費する約百万トン近い牛肉の中で、国産牛が約四割強。そして、残りの六割の約半分を持っておりました米国産牛肉の輸入が、一昨年の十二月、BSEの発生によって停止されたわけです。それによって外食産業の企業経営は大きな影響を受けたことは、皆様御承知のとおりであります。

 二〇〇三年の十二月下旬から今日はや十九カ月という長い期間を経過しています。この間、外食産業は、いろいろな経営の問題、あるいは動物たんぱくの供給責任を担う立場から、その経営の変革に努力をしてまいったというのが現状であります。また、このような大きな米国産牛肉のマーケットが一挙にゼロになったことから、国産牛の生産者にもその影響はじわじわと出ているのが今日の現状であります。

 つまり、私どもの業界は、米国産牛肉や豪州産の牛肉、そして国産牛肉、それぞれの牛肉、原料をそれぞれの消費者のニーズに合わせてメニューを開発し、そして牛肉の消費マーケットというものをこの二十年間急速に育て、つくってきたわけです。消費者に利便性と選択の幅を広げ、牛肉メニューの豊かさを提供し、つくってきたわけですが、外食産業の経営の中で米国産牛肉の果たすそのマーケットの役割というのは、高いステーキあるいはすき焼き、しゃぶしゃぶ等の国産牛肉を使用するマーケットや、あるいは豪州産の原料を主に使用するファストフードのハンバーガーのチェーンや、あるいは低価格の焼き肉、そういう業態と原料とのすみ分けのバランスの中で、選択の幅をつくり、そして、牛肉マーケットとして約百万トンという消費のマーケットを急速につくってきたという自負をしております。

 つまり、一つの原料の大きなマーケットが一挙にゼロになりますと、選択の幅が狭められるということは、牛肉のマーケットが急速にシュリンクしていく、そして、かつてのぜいたくな、月に一回か二回ごちそうとして食事をする、そういう牛肉の消費生活というものが変質していくということであります。今、国産牛肉の長期にわたる高どまりの中から、この牛肉の消費も非常に危機的な消費低迷の兆しを見せています。つまり、牛肉のマーケットがシュリンクしていくという状況が見えております。

 そうしますと、やはり米国産牛肉が入ってこないことで、高どまりの価格の中で、経済的な恩恵を受けているという思いをしておられた生産者もあるいは流通業界も、今や、この牛肉のマーケットを広げていく、あるいは維持していくということに関してのそういう心配や危機感を感じているというのが現状であります。

 過日、私どもは、業界団体が集まって、米国産牛肉の一日も早い再開を求めて集会を開きました。もちろん、その前に、今、リスク評価のポイントになっております米国産牛肉の安全性について、米国からその権威ある科学者や実務家を招いて勉強会をし、そして、その後、意見の表明を行ったわけです。その中で仙台の牛タン振興会の経営者が申し述べている意見について、若干ここで御披露したいと思います。

 仙台の牛タン振興会というのは、地域に密着した牛タン専門店、約百店舗で構成される団体でありますけれども、その会長が申し述べるには、仙台の牛タン店は、六割廃業もしくは業態変更、四割の店が辛うじて頑張っています。さらに、現在の仕入れ価格は原価イコール売価となっていることから、売れば売るほど赤字といった状況が続いています。四割の店は、仙台牛タン文化の七十年のともしびを消さないために、やむを得ずうな丼やラーメン等のサイドメニューを導入して、何とかその経営を維持しております。BSE発生以降、国の融資制度を受けましたが、その猶予期間も経て、既に償還が始まった今日、小規模の牛タン店では、奥さんが資産を崩して店を切り盛りしている状況であります。仙台は、夏休み、七夕を控え、これから稼ぎどきの最盛期であります。この時期に名物の牛タンを十分召し上がっていただけない状況は何とも情けない。我々としては、早期輸入ではなくて、あすにでも再開してほしいという気持ちでいっぱいです。このようなメッセージを発表しています。

 また、焼き肉業界は、二万店ほどありましたけれども、この約一年有余の間で約一〇%、二千店が転廃業や倒産に追い込まれたという現状を報告しています。私どもの協会の主力メンバーでありますファミリーレストランや牛丼チェーン、それらについては、皆さん御承知のとおりの状況であります。

 お手元に配付申し上げました資料でごらんいただきたいと思いますが、アメリカ産牛肉の部位別頭数換算及び外食向け頭数の換算表であります。これを持ってまいりましたのは、私ども外食産業が米国産牛肉に大きく依拠している、焼き肉や牛丼チェーンの業態を開発し、そして、その企業あるいはそのビジネスが使用しているアメリカ産牛肉の使用量、これの実態を見ていただきたいからです。

 牛肉の輸入がとまったとき、当時の政府は、米国産牛肉にかえて豪州産や国産の生産がある、数量的にそれで代替できるんだということを説明し、調査団さえ派遣した。皆さん覚えていただいていると思います。しかし、実態はそうではありません。約二十五万トンの米国産牛肉がぽっかり穴をあけた今日、その穴の部分をどれほど豪州産や国産が現実に代替したのでしょうか。

 外食産業が使用している米国産牛肉のビジネス、例えば、この一つの事例で申し上げます。

 この頭数換算表で申し上げますが、ともばら、いわゆるばら肉、アメリカの部位名ではショートプレートと言っていますが、この部位は日本では、牛丼チェーンや焼き肉のカルビ、あるいはライスカレーの肉として、非常に日本の消費者がたくさん使用している、好んでいる部位です。これは、輸入通関統計から換算しますと、十三万六千百九十一トンという数字が出てまいります。でも、この重量、数量を牛の頭数に換算しますと、千六百六十万頭という数字であります。皆さん御承知のように、日本の牛肉の年間屠畜数は約百二十万頭です。日本の十数倍の牛が、この焼き肉や牛丼あるいはライスカレーの牛肉として使用されているということであります。

 一方、アメリカの生産からいいますと、海外貿易は一〇%、日本向けの数量は二・五%。これはまさに輸入重量で表現されているわけですけれども。ですから、ごく一部の割合であるから、アメリカで全頭検査をするパッカーを一部選定して、そこにゆだねれば、日本が使用するアメリカ産牛肉は全頭検査して持ってこれるんだ、そのような主張も当時ありました。しかし、部分肉流通であるアメリカではそういうことはできないわけです。

 特に、牛タンは三万二千八百二十五トンで、牛タンは一頭当たり一つ出てまいりますから、その重量から割りますと、二千七百万頭という頭数です。この牛タンは、確かに肉牛以外の牛タンも日本に参りますから、アメリカの肉用牛生産の屠畜数は年間二千七百から二千八百万頭と言われていますけれども、三千五百万頭の全屠畜数からいっても、七割から八割という極めて大きな、ほとんど日本人がアメリカの牛タンを食している。もし、牛タンを安定的に日本に輸入するとするならば、全米の生産者が全頭検査をしなければ持ってこれないということをアメリカに対して要求したということであります。重量比の二・五%分だけの牛を全頭検査すれば、日本の米国産牛肉のユーザー、マーケットは賄えるのではないかということは大きな間違いであるわけです。

 このように、外食産業は、消費者ニーズに合わせて、価格と、それからそのおいしさ、品質、そして、ファストフードやファミリーレストランというその提供方法、そういうビジネスを開発し、そして、食卓の中で全体で約四割の部分を外食が賄っていくというふうなビジネスをつくり上げてきたわけです。そして、国産牛と共存共栄、お互いのマーケットをつくり、そして、一つの焼き肉店においても、高いメニューは国産牛、そして値ごろな安いメニューは米国産や豪州産という形で、一つのお店の中で多くのお客様の選択の幅やニーズを広げ、そして、全体として牛肉の消費やマーケットをつくってきたというのがこの特徴であります。そのことに寄与したのは、まさに、部分肉流通として日本の消費者にこたえることのある、そういうアメリカ貿易であったわけです。

 豪州産は枝肉単位のフルセットの流通でありますから、アメリカ産がとまったからといって、品質の違う豪州産、しかし、あえて品質も我慢しようとしましても、アメリカ産から豪州産には、部分肉流通からフルセットの流通でありますから、一挙に賄うことはできません。また、豪州は、この日本のマーケットの穴にこたえようということはなかなかできなかったというのが現状であります。

 こういう外食産業の中で私どもが一貫して主張してきましたことは、米国産のBSEが発生した二〇〇三年十二月、すぐさま牛肉が停止されたときに、その停止措置については評価をいたしました。しかし、いつまでもこの牛肉停止措置、輸入禁止措置を継続するものではない、一日も早い再開をお願いしたい、そのためには、一定のいわゆる対応措置や原因の究明、そして汚染牛肉の輸入がされていない実態を把握したならば、ただちに輸入再開をお願いしたいということを申し上げました。

 二〇〇一年の日本政府が全頭検査を導入したときも、皆様確認されていますように、消費者の買い控えやパニックを静めるために、消費者の牛肉に対する信頼を確保するために行うんだという形で評価をしました。しかし、この全頭検査というのはまさにパニック対策の方便であったわけでありますから、パニックが終了したならば一日も早くEUのルールである三十カ月以上の検査、科学に基づく対策に戻すべきであったということを主張してまいりました。

 当時の農林水産省の高官も、確かに全頭検査は見直すべき、そういう思いをしていた、しかし、その後二十一、二十三の若齢牛が発見された、したがって、見直しのタイミングをそのとき失ったと。また一年たった、そろそろ見直しを行おうと思った、しかし、米国産の牛肉のBSEが発見された、また見直しのタイミング、チャンスを失ったと。だとするならば、これからは、OIEの来年六月の討議も始まるだろう、それに合わせて国内措置の見直しを行うのが大体の筋かな、そんなお話をされたのを私は覚えています。しかし、そのとき、えっ、あと六カ月も待つのかという思いをしたのが業界でありました。それから思うと、十九カ月、なぜこんなに時間がかかったのでしょうか。

 当時、農林水産省や厚労省のつくったパンフレットや、そして私どもがその協力を得て全国の焼き肉店や牛丼チェーンの店頭に掲示しましたお客様向けのパンフレット、それには、牛肉、牛乳、乳製品はもともと食べて安全ですということをはっきり明記しました。そして、このパンフレットの後ろには一頭の牛の絵がかいてあって、いわゆる危険部位がかいてあり、OIEの言葉が書いてあり、そして、SRMを除去すれば牛肉は食べられます、これは世界の常識、OIEの知見ですということを政府みずからのパンフレットに書いてあったわけです。私どもはそれを全国の消費者に配ったんです。

 また、BSEの検査の目的はサーベイランスであることは世界の常識であります。また世界のルールになっています。安全確保のよすがに全頭検査はならないと。つまり、潜伏期間が平均して約五年、日本の生産の場合は約八割が三年未満で屠畜されますから、大体七割から八割は、たとえ感染牛であっても今の現行の検査であればすり抜けてしまう、陰性になって市場に出荷される。つまり、全頭検査は科学的にも実質的にも無意味なものであるということがよく言われています。

 当時の武部農林水産大臣みずから、全頭検査の導入に当たっては、イギリスの統計データを引用して、約十八万頭の感染牛が発生したイギリスの、BSE先進国の事例でありますけれども、三十カ月以上が九九・九五%なんだ、我が国はその残りの〇・〇五%の安心を確保するために、パニックの対策としてこの全頭検査を導入するんだという丁寧な説明をしているんです。僕は、十九カ月もたってもこの全頭検査の見直しが着実に行われない、これはまさに、その後の政府がこのことについてきちっと説明すべきであったのにしなかったということに大きな責任があるのではないかと思います。

 そして、食品安全委員会が新たに生まれました。大変すばらしいことだと私どもは思います。そして、リスクの評価というものをその食品安全委員会に政府はボールを投げてしまった、そこに説明責任を求めたというところが問題であったと思います。

 もとより、食品安全委員会の使命は、食品のリスクを明確にすることであります。科学、プリオンの構造やそういうことを究明する場所ではありません。あくまでも学問の研究と行政措置としての安全対策とは区分しなければいけません。既にわかっていることで、明らかになっていることでリスク評価ができるわけでありますし、そしてそれを淡々と行うのが食品安全委員会の使命ではないかと私どもは思います。

 しかしながら、その後の食品安全委員会の検証作業や討議は、極めて長期の時間を要しました。特に、二十一カ月、二十三カ月の若齢感染牛の事例に拘泥したことも事実であります。しかし、この二十一、二十三カ月も、科学的な検証をすれば、五百分の一、一千分の一という極少のプリオンの量であったり、あるいは、今日、約四百万頭強の検査牛の中で二頭という若齢牛の事例である。まさに、リスクの有無ではなくて、完全にリスクの量で、定量的な分析の中で食品安全委員会は結論を急いでいただきたいと思います。

 時間が参りました。大変恐縮でありますが、中間とりまとめに対する私どもの見解、そしてその後に、米国産牛肉の評価の問題、私どもは取引を二十数年来米国のパッカーや商社とやっています。そういう中で、米国産牛肉の成育から屠畜、解体、そして部分肉での流通についての安全確保については、まさに消費者に、お客様に安全を確保する、提供する使命から、十分そのことを認識、調査をしております。そういう意味で、私どもは、これから質問に対してお答えする中で、私ども外食産業のBSE対策に関する主張、意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 きょうは、大変時間が短くなりまして、至らぬところがありました。私ども業界が消費者の信頼を確保していくためには、これからは、消費者の選択にゆだねる、そういう中で原産地表示等については積極的に、自主的に取り組んでいくというふうな気持ちを伝えて、この陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 次に、品川参考人にお願いいたします。

品川参考人 動物衛生研究所プリオン病研究センターの品川です。

 私は、皆様のお手元にあります資料をもとに、我が国のBSEの検査、診断についてお話をいたします。

 資料一の図の方をごらんください。

 BSEなどプリオン病の病原体であるプリオンは、宿主の正常なプリオンたんぱくが特異な構造に変化した異常プリオンたんぱく質から構成されております。このようなプリオン病の特殊な事情から、診断上に問題が出てまいります。

 一つは、プリオン自身の遺伝子がないために通常の感染症のように高感度で遺伝子を検出するPCR法というようなものが使えませんし、プリオンが宿主のたんぱくに由来するために抗体がつくられません。このために血清診断を行うということもできません。また、正常なプリオンたんぱくと異常プリオンたんぱく質が混在しておりまして、これを通常の抗体では区別ができないということがあり、酵素処理など特別な処理を行うことによって両者を区別するという診断上の制約があります。

 それでは、次の図をごらんください。この図は、表になっておりますが、各種のBSEの検査の比較を行ったものであります。

 臨床診断法といいますのは、発症していることが条件となります。時間はかかりませんが、診断を行う経験者の個人差が大きく判定に影響してまいります。

 それから、病理組織学診断は、潜伏期や初期の段階では病変がないかごく軽微なために診断ができない、あるいは不確かな場合があります。さらに、他の原因で類似の病変が形成されるというようなこともあります。

 異常プリオンたんぱく質、PrPScを検出する方法は、特異性が高く、潜伏期からの診断も可能です。方法としまして、免疫組織化学と免疫生化学的な方法があります。免疫組織化学は、免疫学的に異常プリオンたんぱく質を組織標本上に褐色沈殿として可視化させます方法で、病変とのかかわりもわかるというような上で有用な方法です。ただ、標準化をするとか感度比較を行うということが免疫生化学検査よりも難しいということがあります。

 ウエスタンブロット法は、使用する抗体、検出用の基質が改良されまして、感度は動物を使うバイオアッセーに次いで高くなりました。さらに、パターンから非特異反応を区別することができます。

 ELISA法は、スクリーニング検査に用いられておりますように、比較的多数の検体を扱え、感度も高いのですが、発色の程度で判定しますので、非特異反応の区別が困難であるという欠点があります。

 バイオアッセーは、実験動物などに脳内接種を行って発症を観察する伝達試験であり、これは時間と経費がかかり、通常の研究では行われておりません。牛と実験動物の間には種の壁がありまして、BSEの場合、マウスを用いますとELISA法とほぼ同じ程度の感度しか得られません。プリオンたんぱく質遺伝子を牛型に改変した遺伝子改変マウスを使った場合、これは感度が高いのですが、それでもなお二百日以上要します。

 その次の図は、我が国で実施されておりますBSEの検査を写真で示したものでありまして、ただいまの説明と重複いたしますので、ごらんになっていただくだけで結構です。説明は省略させていただきます。

 その次の図、これはBSEの検査のための採材部位について示したものであります。

 英国における長年の羊スクレーピーの研究とBSEの研究から、感染個体によるばらつきがほとんどなく、延髄のかんぬき領域に異常プリオンたんぱく質が蓄積するということが明らかにされました。そこでこの領域が使われているのであります。

 右上の図は、牛の頭部を縦割りにした図でして、頭と体を切り離してできる大孔、この部分から延髄を容易に取り出すことができます。下の図は、取り出した延髄の部分の模式図でして、四角く線で囲った部分がありますが、この部分がかんぬき領域です。このかんぬき領域の部分を輪切りにしますと左の図のようになりまして、非常に多くの神経核が存在します。とりわけ迷走神経背側核、孤束核など、四角く枠にくくって大きく書いてありますが、このような部分の神経核に比較的早期からプリオンが蓄積してまいります。このために、検査はこの領域を対象として行われております。

 次の図をごらんください。これはウエスタンブロット法の模式図を示したものです。

 まず、試料の中に混在します正常プリオンたんぱく質を酵素で分解する前処理を行った後に、SDSを主とした変性剤などで溶解しました組織抽出液あるいは組織たんぱく液、こういうようなものをポリアクリルアミドゲルの上に加えまして、電気泳動によってポリアクリルゲル中に分子量の大きさによって分散させます。次いで特殊なPVDF膜に電気的に転写いたしまして、さらにこの膜をたんぱく溶液に浸して、ブロッキングと呼びますが、その後に特異抗体と反応させ、最終的に反応物の所在を抗体に結合させました酵素の反応である光によって知り、特異パターンを得る方法です。

 次の図をごらんください。この図は、ELISA法、プラテリアですが、このものとウエスタンブロット法の感度比較を行ったものです。

 我が国で摘発されましたBSEの二つの症例の脳乳剤を正常の牛の脳乳剤で希釈いたしまして、希釈したものからそれぞれELISA法及びウエスタンブロット法用の試料を作製いたしました。そして、それぞれから異常プリオンたんぱく質が検出される範囲がどこであるかを比較したものです。

 左の方がELISA法の成績でして、四角くくくった図の中の下の方に線があります。この線がカットオフ値と呼ばれるものでして、この線の上の値であれば陽性、線から下は陰性ですが、BSEの検査の場合は、このカットオフ値のマイナス一〇%までを陰性とせずに確認検査を行います。

 そこの四角くくくった中の右下の方に千倍希釈のところがあります。十マイクログラムの脳に相当するところです。この矢印の反対の右の方を見ていきますと、ウエスタンブロットで八マイクログラム、おおよそ同じところになります。ELISA法では陰性ですが、ウエスタンブロット法では明瞭にバンドが確認できますし、さらに、その隣の二マイクログラムのところでも、ウエスタンブロット法では三本のバンドがうっすら観察することができます。

 本実験は感染症研究所の山河博士が行われたものですが、この方法では少なくともELISA法より五十倍以上の感度が得られております。我が国でBSE検査が始まった時点では、ウエスタンブロット法はELISAに比べて十六倍高いという程度でありました。

 次の図をごらんください。繰り返しともなりますが、日本のBSE検査をもう一度まとめました。

 まず、検査の対象となる試料をELISA法でスクリーニングをいたしまして、陽性と陰性で、陰性と判定できないというようなものを選び出します。

 これらのものを免疫組織化学及び病理組織学的、さらにウエスタンブロット法で確認検査を行います。

 検査の判定は、専門家から構成されます委員会が行います。この委員会は、判定以外に、検査にかかわる抗体だとか方法についての改良も検討いたしますし、それらの方法を検査に使用していいかどうかという承認も行っております。

 判定基準としまして、免疫組織化学あるいはウエスタンブロット法のいずれか、あるいは両方で異常プリオンたんぱく質が検出された場合を陽性とします。病理組織所見は参考程度です。

 これらの成績は、スクリーニング検査から確認検査まで、我が国では公表いたしております。

 さらに、検査で重要なことは、一番下のところに書いてありますが、検査精度を保証するということであります。我が国では、このために、免疫組織化学を行う場合には、BSE陽性及び陰性対照の組織切片を同時に反応させます。ウエスタンブロット法の場合には、使用する抗体と反応することがわかっておりますスクレーピー感染マウス脳から作製されました標準試料を希釈しまして同時に解析を行います。対照あるいは標準試料の反応が適切であれば、調べようとする材料、披検試料の判定を行います。これらが満たされない場合は再検査となります。

 最後の図をごらんください。先ほども出てまいりましたが、日本で見つかっておりますBSE感染若齢牛の判定について説明を若干いたしたいと思います。

 我が国では、ウエスタンブロット法によって二例の若齢牛がBSE感染陽性というふうに判定されました。これらの症例は免疫組織化学が陰性であり、異常プリオンたんぱく質は少量でした。それで、このような陽性の判定に対して、感染性があるかないか不明であるとか、免疫組織化学が陰性であるなどということから、判定保留、灰色というような意見があるということも仄聞しておりますが、そのような意見は間違っております。

 図左の上下の写真は若齢牛の検査時のものです。ちょっと見づらいかもしれませんが、ELISA乳剤試料というのがあります。これは検査のときにELISA検査を行った残りの試料を示しておりますが、上下いずれの場合もここのところに明瞭に異常プリオンたんぱく質の蓄積を示すバンドが見られ、我が国の診断基準では紛れもなく陽性であります。

 異常プリオンたんぱく質は、プリオン感染あるいはプリオン病の動物あるいは人からしか検出できておりません。しかし、しばらく前まで、異常プリオンたんぱく質は病原体そのものというにはまだ十分の証拠がないという意見などもありました。このようなことが前記の異論の根拠となっているのかもしれません。

 右側に示しましたように、最近、試験管内で正常プリオンたんぱく質あるいは組み換えプリオンたんぱく質を使用しまして異常プリオンたんぱく質をつくり出し、これらが感染性を持つということを二つの研究グループが明らかにしました。すなわち、異常プリオンたんぱく質はプリオン病の病原体そのものであるという証拠が示されたわけであります。これらの研究成績は、異常プリオンたんぱく質が検出されればプリオンの感染陽性という我が国の判定基準の正しさを支持するものでありまして、二頭の若齢牛の判定は間違っていないということを示しているものであります。

 以上で、私の話を終わらせていただきます。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 次に、木村参考人にお願いいたします。

木村参考人 日本獣医畜産大学の木村と申します。よろしくお願いいたします。

 私は、現在大学におりますが、飼料会社で三十二年間、牛のえさを中心にえさの研究、あるいは、そのえさを牛に給与することによってどのような生産性あるいはどのような生産物の質の向上が得られるか、そういった仕事をやってまいりました。

 現在は、動物栄養学ということで、学生たちあるいは自分の研究、そういうことをやっておりますが、動物栄養学といいますのは、主に、家畜の栄養の要求量あるいはそれに見合った飼料の設定、飼養管理、そういったものを扱う分野の学問でございます。飼料は家畜に給与し、それによって人が食料とするものでございますから、飼料というものは食の生産材でございます。飼料というのは、本来、人の食料と競合するものでないものを活用するという側面がございます。そういうことで、食品副産物ですとか食になっていないものをいかに有効に活用するか、栄養分の過不足分をどのように補うか、こういった分野が動物の栄養学でございます。私は、そのような立場から、BSEと飼料との関係について幾つか陳述させていただきます。

 お手元に、畜産システム研究会の会報というものを配付させていただきました。私は、この研究会に所属している立場、あるいは畜産技術士会という制度がございますが、その会員である立場、あるいは動物栄養学をやっている立場からお話をさせていただきます。

 まず、日本のBSEの発生と感染経路になり得た飼料について、考えを含めて陳述させていただきます。

 一般的なお話でございますが、BSEと飼料に関しましては、BSEの原因は、肉骨粉に含まれている患畜由来、BSEにかかった動物由来の異常プリオン、これを経口的に食べるということによって生じる、これはもうはっきりとうたわれております。言いかえますと、この異常プリオンを摂食しない限りは問題がないということになります。

 そういうことから、BSEにつきましては、どういうえさを給与されたのか、そういったことを周辺から調査し、状況を判断していく、こういうことが非常に大事なことでございまして、感染経路というのはそういうふうな手法から積み上げていくものだということになります。そういった手法は、一般的に感染経路の疫学的調査、そういうふうな名前で呼ばれております。

 お手元に表がございますので、ごらんいただけたらと思います。この表は、我が国におけるBSEの確認日、その月齢、誕生場所、誕生日、それから、給与した代用乳のメーカー、AからDで示しておりますが、それを誕生日順に整理して示したものでございます。上から牛の番号が一番から二十番。現在、二十頭発生しております。

 一番から七番までのところで、国の疫学的調査ということで報告がなされました。この表を見ていただきますと、一番から七番まで、先ほどの疫学的調査、どういう共通の飼料があったかというふうなことをチェックしてまいりますと、これは代用乳でございますが、飼料Aというものが共通して給与されていたということがございます。

 これは、日常的な私たちの生活上の感覚ですと、共通のえさとして、一頭目、二頭目、三頭目、四頭目、七頭目まで同じえさが使われていたということは、これが非常に大きく関与していると感じるのは自然なことであるというふうに思っております。この結果につきまして、平成十五年九月のBSE調査報告書では、関連性が薄いと否定的な報告になっております。

 これに対しまして、畜産システム研究会では、昨年発行しました会報なんですが、代用乳使用とBSE発生は関係あるとは言えないというのは本当であろうかということを論文として会員が書いております。そこでは、国の疫学的調査、統計的な処理、少し専門用語でいいますと、カイ自乗検定といいますが、その手法自身が統計学的、学問的に間違っているんだということを明確に指摘しております。お手元に配付しましたこの資料でも、二十ページのあたりにカイ自乗検定の統計的誤りということを再度指摘しております。

 こういう報告の結果、それでは、何が飼料の上で大きな原因と考えられるかということになりますと、結果としまして、ミート・ボーン・ミールが交差汚染によって原因となっていた可能性が強いのではないかというふうな方向に動きまして、その結果、交差汚染を排除するための経路の分離、製造あるいは流通、保存の経路の分離ということが大きく表に出まして、そういう法律が動き出して、ことしの四月から動いているということになっております。この周辺につきましては、やはりこの研究会の会報の中に、飼料会社の経験者である方、技術士の方なんかがその背景なんかを詳しく説明しておりますので、ごらんいただけたら幸いかと思います。

 それから、その後のことですが、もう一度この表をごらんいただけたらと思うのですが、先ほど配付しました表を見ていただきますと、その後、二十頭まで感染牛の確認がなされております。一九九六年前後、このときに生まれた牛、生まれ月で整理しますと、この前後に生まれた牛で確認されたのは二十頭のうち十三頭でございますが、これはやはり同じ代用乳が使われていたということでございますので、七頭で否定的になりましたが、再度これを疫学的に検討するとどうなるのであろうか、正しい方法で再検討する必要があるのではないかというふうに考えております。

 さらに、この表を見ますと、右の方、すなわち二〇〇〇年前後にも生まれた子牛が確認されております。この場合の代用乳の内容を見ますと、同じものであったり、また、違うメーカーのものが出てきたりしております。これをどういうふうに考えるのかというふうなことを検討すべきだと思っております。

 第一世代は、このAという代用乳が非常に濃厚であろう。それから、二〇〇〇年前後、これを第二世代というふうに考えますと、これは事によると、国内で、第一世代の持っていたプリオンが国内原料を汚染して回っているんではないか、そういう疑念も考えられます。そういうことから、きちんとした検討をさらに続けていく必要がある、これをどういうふうに検証するのかという責任があろうかと思います。

 代用乳についてどういうものであるかということについては、この資料の中に幾つか、私の報告では四十七ページからですが、そこに書いております。詳しいところは省略いたしますが、この代用乳の中で危険性が予測される原料とは何であろうかということを考えますと、幾つかの原料が浮かび上がりますが、私の方では三つぐらい考えられるのではないかというふうに思っております。

 一つは、油脂の危険性でございます。油脂は、当初、規制の対象外でございましたが、この中に含まれている沈殿物、これがたんぱく質という可能性が非常に高く、このたんぱく質の中に異常プリオンが紛れ込んでいないかということでございます。ですから、油の中に濃度としてどれだけ含まれているかが問題なのではなく、その有無が問題であるということになります。油というものは、濃度の高いところが使われると、非常に危険性があるということになります。

 それからもう一つは、粉末油脂でございます。これはオランダ製ということも言われておりますし、当初、規制の対象外でございましたが、これは、不溶性不純物は測定のしようがございません。溶けないもので粉末化してあるわけですから、測定のしようがございません。

 それから、もう一つの危険性を思わせるのは、血漿たんぱくという原料でございます。これはアメリカ産の豚由来のものであるということになっておりまして、当初、規制の対象外でございましたけれども、これも共通、代用乳の中に原料として含まれていた。こちらの検証もやっていく必要があるんじゃないかというふうに考えております。

 こういうことから、飼料の安全性のことを考えますと、危険性の排除のための感染経路の確認、これは飼料からやっていくということになります。

 こういう検索をするということは、私たちは犯人捜しをしようということではございません。どれが最も危険性を有しているか、それをどういうふうに排除していくか、あるいは無用な過剰な規制をしている場合にはいかに緩和していくか、そういうことを考えるためにも、きちんとした検索、検討が必要ではないかというふうに考えております。

 そういうことから、全頭検査につきましてもいろいろな意義がございますが、これは少し私の方から考えますと、日本では法の規制、これは飼料に対して世界で最も厳しく、今の状況では、今の飼料規制の中では、まずBSEが発生すると思われないぐらいの大きな規制になっております。ですから、そういった意味での法規制の有効性を確認するためにも、全頭検査を一定期間続けるべきであるというふうに考えております。

 それから、感染経路を解明し得るのは、世界的なレベルで見ましても、全頭検査をしている日本が最もできる技術であります。こういう技術を日本が率先してやるということは非常に大事なことであるというふうに思っております。

 それからもう一つは、安心に対する考え方の問題でございますけれども、一つの安全基準として、感染した牛の肉は食べたくないという考え、あるいは流通させたくない、食べさせたくないという気持ち、これは一つの基準ではないかというふうに考えております。特定の病気の牛に対しては、そういうお肉は食べたくないという感覚も大事にすべきじゃないか。

 さらには、先ほど言いましたような、二次感染が起きていないだろうか、これの確認のためにも検査が必要である。

 それからもう一つ。私は、動物の立場から、人間が安全のために議論、人の安全のための議論が中心なんですが、今度は、人が動物に与えて、その動物をBSEに感染させているという立場から、牛に感染させないのは人間の義務であるということから、BSEを排除するために、その意味で検査を続ける必要がある、こんなことを考えております。

 こういった結果は、日本だけのものではなくて、海外にも情報として共有するために非常に大事なことではないかというふうに考えております。

 以上で陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

山岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山岡委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今村雅弘君。

今村委員 きょうは、参考人の皆様、御苦労さまでございます。また、ありがとうございます。自民党の今村でございますが、時間が限られておりますので、早速御質問をさせていただきます。

 まず、順序が逆で申しわけございませんが、品川先生と木村先生のお話を聞いておりまして感じたのでありますが、だんだんBSEの原因解明、あるいは伝播のメカニズムといいますか、それが少しずつわかってきているような気がするわけでございます。

 そういう中で、実は私は、先般、アメリカの方にもBSEの関係でいろいろ調査等に行ってまいったわけでございます。その中で、アメリカの言い分として非常に印象的だったのは、とにかくおれたちは毎日のように肉を食っているんだと。そして、確かに屠殺の件数も日本よりもはるかに多い。年間三千三百万頭とかいうことでございます。そういう中で、実際BSEが出たのは、本当に、先般も入れて二頭ぐらいだということでありまして、極めて自信を持っているんですね、妙な。妙なと言ったらあれでございますが。

 それに対抗して、やはり危ないんですよ、こういうことをきちっとやらなければいけないんですということについては、やはりそれなりのきちんとした論理立てをしなければいけないわけでありまして、そういう意味で、先ほどお話しされた、品川先生が特に最後の方で申されましたこの検査方法、これはどうでしょうか、今後さらにしっかりとこれを裏づけしていくということができるのか、あるいはそれをやるためにはどういう研究体制といいますか推進体制といいますか、そういったものが必要なのか、その辺についてちょっと先生の御意見を伺いたいと思います。

品川参考人 まことに申しわけありませんが、検査法の、具体的にもう少し質問のところをお教え願えればいいんですが。検査をさらに続けるという、改良するという意味でしょうか。ちょっと十分に私理解できなかったものですから。

今村委員 特に最後に言われた、この資料であります「日本のBSE検査」「BSE感染若齢牛」という中で、ここの中で、私の印象では随分、感染の発見といいますか、そういったものができるなというイメージで私は受けたんですね。その点です。

品川参考人 全く今の検出感度、少なくともウエスタンブロットの方法では、非常に私は検査感度は高いと思います。検査をすればかなり有効に働くのではないかと思います。現に我が国では、九頭は全くBSEということが疑われない、それ以外の何らかの運動器障害とかというものも全くないような牛の中から検出されているわけです。

 それからもう一つ、私は、話の中で、時間がなかったから話さなかったのですが、どのような検査におきましても、BSEだけではなくて、検査というものは必ず限界があります。これは今まで、人の方では、例えば肝炎ウイルスの場合、エイズの場合、それぞれの時期で最大限の努力をしまして、それで感度が高くなったらさらにそのものを使っていくというのが、検査を行っている者の常道ではないかと思います。

今村委員 そうしますと、今後この方式を広めてやっていくということの中で、どういうことが必要になってきますか、検査体制あるいは実施体制として。

品川参考人 我が国ではそのものはもう整っていると思います。ただ、検査対象をいつにするかということに関して、これは八月から二十カ月以下のものは検査をしないという形に変わったというふうに理解しております。

今村委員 ありがとうございます。

 関連でございますが、米国は、歯列の検査でありますとかあるいは腰椎の骨の硬化の度合いといいますか、そういったもので十分いけるということで言っているわけですけれども、この点についてはどういうふうに評価されますか。

品川参考人 私の専門外のところですので、全く素人と考えていただいてよろしいんですが、獣医学をやっている者としてというふうで、かなりいいかげんな答えしかできないんですが。

 生物には個体差というものがあります。ですから、その個体差というものがあるから、ある程度のところはわかるかもしれませんが、厳密なことというのは難しいのではないかなという、これは、私、専門外の人間が言う意見というふうにしておいていただきたいと思います。

今村委員 次に、木村参考人にちょっとお伺いします。

 先ほど資料等を拝見、また御説明の中で、極めて飼料との関連性が深いねということを示唆されているわけでございます。そういう中で、特に第一世代という言い方をされましたが、そしてまたそれが次に飛んで、いわゆる二〇〇〇年前後の第二世代といったことで言われたわけでございますが、この飼料の問題、時期的に非常に符合するねという関連と、それからプリオン形成のメカニズムといいますか、そういったところについてはどうなんでしょうか。これは連携してやっていくということが必要なのかもしれませんが。木村さんのお考えでは、えさを通してプリオンが形成されるよという、そのメカニズムについては、今何か研究されていらっしゃいますか。

木村参考人 えさとプリオンとの関係、子牛との関係について幾つか説明させていただきます。

 私が子牛のミルクに注目しておりますのは、子牛側から見ますと、子牛というものはたんぱく質を取り込む能力を持っているということでございます。これは、母親のミルクの中に含まれている免疫、移行抗体、免疫グロブリンというものはたんぱく質でございます。これをアミノ酸に分解しないで取り込むという能力を持っております。したがいまして、子牛の場合、もしえさの中に異常なプリオンがあった場合は、とにかくたんぱく質を取り込むという能力がございますから、子牛の場合はたんぱく質をそのまま取り込んでしまうということだと思います。ですから、私が気にしておりますのは、その異常なプリオンがどういう経路で牛の口に入るかというところでございます。

 子牛は、最初に口に入れさせてもらえるのが代用乳、ミルクでございまして、しかも、ミルク中のたんぱく質をそのまま取り込んでしまう力があるということから、代用乳に特に注目すべきだ。これは成長とともに、大人の牛はそれが消失してしてまいります。ですから、大人の牛の三十倍取り込む力が強いという報告もきちんとしたレポートに載っております。そういうことでございます。

今村委員 なるほど、大変わかりやすいお話で。

 私も、これは聞いた話でありますけれども、人間も、母親が例えば、今はありませんが、ジフテリアなんかにかかるとその免疫ができて、そして、その子供にもその抗体といいますか、そういったものができるから、母親も、ある意味では人工乳よりも母乳の方がいいということが言われていることもあるわけでございます。

 逆に、牛の場合は、それと同じようなことでいきますと、まさに汚染されたといいますか、プリオンを持った母親から伝播するんじゃないかということで理解してよろしいんでしょうか。もう一回、よかったらお願いします。

木村参考人 今までのあらゆる検査結果のレポートでは、ミルクに異常たんぱくがあるという事実はございません。そういう意味で、母親のミルク経由という感染はまず考えられないといっていいかと思います。

 それからもう一つ、人と牛との違いは、人は母親の胎内で既に免疫をいただいております。牛は生まれてからミルクで初めて抗体をいただきます。その違いがございます。ですけれども、そのミルクの中に異常なプリオンたんぱく質が出ているという事実は全く報告されておりません。

今村委員 それでは、いわゆるいろいろなものが入った代用乳ということに問題があるという理解でよろしいんですかね。

木村参考人 疫学的な研究をどういう意味に理解するかということでございますが、私の理解では、このようにまず口から入るものであるということ、どういう共通したものが口から入ったということ、そういうことから分析していきますと、あるいはその周辺、先ほどの子牛の状態。

 もう一つ周辺のことを申しますと、なぜホルスタインの雌ばかりなのということもございます。これは、酪農家での代用乳を給与する背景、条件がございます。

 子牛の酪農家の場合は、規模が小さいために、一つの袋に入ったものを全部飲ませるということになります。和牛はほとんど母親のミルクで育てるのが多いわけでございます。それから、乳用の雄子牛も肉になりますが、この場合は百頭、二百頭集団で哺育いたしますので、一ロットでも一日に全部使ってしまう、みんなで分散して飲むということになりますので、やはり発症の仕方が違うのではなかろうか。そういうことをこの実際の発生したものから検索していくべきで、今のは私の想像でございます。その想像と発症したものと非常に合致しているかどうかということで検証していくべきである。

 そういうことからミルク、母親のミルクではなくて、人がつくったミルクの中に汚染源が混入したのではないか。これは不可避であったというふうに思っております。

今村委員 これはどちらの先生に聞けばいいかわかりませんが、先ほどもちょっと触れましたが。そうすると、違うルートからBSEの解明に向けて手がかりができているのではないか。一つは、やはり検査のやり方でチェックしていく。そしてもう一つは、それはもとをたどれば、どうもえさじゃないかということから、それを結ぶのはやはり、仮に木村先生の説を前提としてやっていったときに、そこでどういうふうにプリオンが形成されるかということを解明することが必要だと思うんですが、その辺の、共同研究体制といいますか何といいますか、そういったものについては今どういう状況になっているのか。また、今後どういう体制で進めていってほしいと思っておられるのか。これは、どちらの先生に聞いた方がいいのかちょっとよくわかりませんが、いかがでしょうか。

品川参考人 動物衛生研究所にプリオン病研究センターというものが設置されまして、ここのプリオン病研究センターの中では、非常に基礎的な領域から応用的な領域まで、幅広くテーマを持って研究をしておりまして、現在そこのテーマの中で、正常なプリオンたんぱくがどのように異常に変わっていくか、あるいは、実際牛を使った感染実験も始めておりますが、このような牛に病原性を持ったプリオンを投与しまして、体の中にどのように取り込まれ、どのように広がっていくというような形の方面からの研究を開始しております。

 ただ、御理解願いたいのは、先ほどからも出ておりますように、潜伏期間が五年ということで、昨年になってやっと感染実験が始まりましたので、すぐに成績を出せと言われましても、なかなかちょっと難しいところがあります。そういうような状況であります。

今村委員 我々もできるだけ、そういった研究が進みますように、予算、制度その他、御支援してまいりたいと思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 次に、外食関係ということで加藤参考人にお聞きします。

 先ほど説明をされまして、特に、これは意外と知られていないことなんでしょうが、やはり、薄く広く部分肉を集めて日本の外食産業が成り立ち、そして、言ってみますと、庶民の胃袋を支えているということかと思います。そうしますと、問題は、やはり、薄く広く、特に大量に牛を消費する米国からこれは持ってこざるを得ないんだということになってくると思うんですね。

 それで、どうなんでしょうか、今現在は、この在庫みたいなのはもうほとんどないんでしょうか。あるいは、今後の見込みはどんなぐあいでしょうか。

加藤参考人 全く私どもの流通の中から、つまり仕入れの中からは、米国産牛肉はゼロであります。そういう意味で、豪州産あるいは国産に代替するというところについての困難性は先ほど申し上げたとおりでございます。

今村委員 そうしますと、これは非常に意地悪な質問になるかもしれませんが、ほとんど今在庫がないという中で、しかしそれでも、今でも何とか賄っていけているということになりますと、あえて、危険と思われる、まだ皆さんが安心されていない米国産のものを入れるということについては、そこまでのリスクを冒してやらなくていいんじゃないかというようなことにもなるかと思うんですけれども、その辺はいかがですか。

加藤参考人 私どもはそういう意味で、ビジネス、経営を維持するために、ほかのメニューに代替したり、あるいは業態を変更するということで今しのぎをしているということを申し上げたとおりであります。

 ただ、あえてリスクを冒してまでという話でございますけれども、それについては、私どもは、検査において牛肉の安全は確保されないということを一貫して主張しているわけです。またこれは自分たちの意見として主張している。牛肉が欲しいから主張しているわけではございません。

 御承知のように、昨年の秋の食品安全委員会のレポートでも、検査の限界について明確に言及していますし、それから、SRMの除去において牛肉の安全が確保されることにも触れております。ただ、問題なのは、二十一、二十三という若齢牛の発見や、あるいはその検討のプロセスにおいて、いわゆるプリオン病に関する医学的なあるいは研究的な議論に終始して。

 事は食のリスクの問題であります。ポイントは食のリスクの問題でありながら、また食のリスクはゼロリスクはないわけです。つまり、私どもはゼロリスクのない食品を扱う者としていかに上手にそのリスクとつき合っていくかという中から、科学的な見地によるところの安全の確保と、そしてそれを消費者の方々と、情報を公開し、あるいはコミュニケーションをとり、リスクの限りなくゼロを欲する消費者の皆さんと、それから、リスクを健康の被害というところから確実にゼロリスクとして抑えるように努力をする中で、食の豊かさや情報を提供していくというところがポイントであるということでやっております。

 ですから、あえてリスクを冒すなんということは毛頭考えておりません。私ども外食産業はお客様の支持を失ったら全く経営していけない、その経営の基盤を失う産業であることはもとより承知しております。

今村委員 私の言い方が悪かったのかもしれません。リスクを冒してというのは、要するに、消費者の皆さんがやはりどうも不安だなというふうに思っておられるという意味でのリスクという意味ですから、それはひとつ誤解がないようにお願いいたします。

 それで、今いろいろお話を聞きましたけれども、私も牛丼が大好きで、正直言ってよくいただいていました。そういう中で、これを一つの大衆の食として、安全性がきちっと本当に担保できれば、皆さんそれを待っておられる方もたくさんあると思いますので、その点で、皆さん方の業界として米国の方にも、私さっき言いましたけれども、アメリカはアメリカの何か妙な自信といいますか論理みたいなのがあって、おれたち毎日食っているんだから絶対大丈夫だから買えよということだと思うんですね。それに対して日本は、やはりある意味では、そうはいっても消費者が結局決めるんですから、そこのところの安全性をしっかり担保するやり方を考えてくださいよということを当然要求しなければいけないわけでございますが、業界として、そういうところについては、アメリカの食肉業界等に対してそういうきちっとした働きかけはしておられるんですか。

加藤参考人 BSEによって牛肉がとまったのは一昨年の十二月ですが、すぐその翌月ぐらいから私どもはアメリカに対していろいろな形でコミュニケーションをとり、そして、一日も早く牛肉が日本に来るための条件づくりを話し合ってまいりました。しかし、全頭検査を要求するということでありますけれども、全頭検査はお金がかかるからということでアメリカはやらないわけではありません。やっても意味がないから、無意味だからやらないわけです。ここのところを十分理解していただきたいと思います。

 検査について、その安全が確保されるということであれば私どもも要求しますし、またアメリカも当然やっているわけです。しかし、既に日本国政府自身が検査については限界があることに言及するような形で、既に、BSEの先進国、ヨーロッパの事例に学んで、九九・九五%も三十カ月以上でなければ検出されないという検査について、日本の消費者のいわゆる安心を確保する、パニックをおさめるという当面の方策として導入したということでありますから、私どもは、そういう日本の特殊な要因というものについてアメリカに押しつけることは何かと思っておりました。

 したがって、この間、アメリカに要求していたとき、アメリカは、日本のそういう消費者の、あるいは社会の特殊な要因にかんがみてということで、あえてA40というマチュリティーの確定方法を向こうの方から持ってきたということはあるわけですけれども、これも私どもは、どうにか日本の消費者が納得するような、そういう貿易条件をつくるという中では、あえてアメリカがそういう条件を持ってくるということは、それは仕方がないことだなと思っておりました。そして、このことについても、動物学的、生理学的、あるいは六十数年に及ぶアメリカの食肉の生産、肥育及び解体からいきますと、この確定方法は極めて科学的な方法であるということは、私ども現実にパッカーを訪ねて思っております。

 それを、やはり、日本の生育や屠畜の状況にかんがみて、一頭六秒か七秒の目視の中で確定するのは素人目に見ても非常にずさんで不安定だというふうな判断で片づけてしまうということについては、私どもは、生産、肥育の実態というものあるいは背景というものをもう少し調査し、もう少し知っていただきたいなという思いでございました。そういう意味では、アメリカとの情報交換は、日本の実情については伝えますけれども、検査を要求するということはしなかった事情はそうであります。

 特に、御承知のように、OIEのこの間の議論の中でも、日本は日本の実情を国際社会に訴えましたけれども、しかし、一億人に一人もかからないようなそういう検査について、毎日二万五千人も餓死で亡くなっていく、こういう発展途上国からは、全くそのリスク評価に関する基準というものについては受け入れられないということを私どもは耳にしておりますけれども、そういう意味で、食品のリスクということは、あくまでもゼロリスクがない中でいかに健康被害を防止していくかという観点で、今現在明らかとなっているところ、それから科学的な究明ということは区分して議論し、そして、日本の国内対策、安全対策をお決めいただきたい。それと、そのことは貿易条件の障害となってはならないということが極めて重要だということもぜひ私どもの主張として御理解いただければと思って申し上げました。

今村委員 確かに、安全であるかというのと安心かどうかというのは、あるんですね。ですから、今、ある意味では、やはり安心ということが非常に問題になってきているわけですから。確かにお金が少しかかるかもしれませんが、やはりアメリカの消費者運動の中でも、これについて、本当に大丈夫なのかね、ちゃんとやった方がいいんじゃないのという動きが出てきていることも確かでありますから。ですから、一頭やるのに幾らか、たしか二、三千円じゃないかと思いますが、それを肉全体にばらすと一キロ当たりわずかな額ですから、ぜひそういったものは、ひとつ保険料といいますか安心料だという形で、アメリカもぜひそれをやってくださいよといったことを、ぜひこれはあなた方の業界からも少し、それはそれでしっかり働きかけてもらった方がいいんじゃないかなというふうに思います。

 それから、和田さんにも御質問したかったんですが、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、よろしいですか。我々もできるだけこの安全、安心、それを消費者の皆さんに届ける義務があるなということを常に感じておりますので、その立場で今後とも取り組んでまいることをお誓い申し上げまして、質問にかえさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

山岡委員長 次に、山田正彦君。

山田委員 先ほど質問に立った今村委員と一緒に、山岡委員長も私もアメリカに先般行ってまいりましたが、その中で、きょう品川先生にちょっとお聞きしたいと思うんですが。

 アメリカでは、いわゆる二十一カ月齢、二十三カ月齢の検査結果について、昨年もことしも、アメリカの農務省のペン次官、担当官も、それはおかしいんじゃないか、我々は、その確認というか、それはBSEの感染だとは思っていないというような言い方をされたわけですが、先般、聞いたところによると、民主党の鮫島議員もアメリカに行って、そこに日本のプリオンの専門委員の先生もおられたように聞いていますが、やはりグレーゾーンであるというような言い方をその専門の先生までおっしゃったようです。

 きょう、先生のお話を聞いていますと、間違いなく二十一カ月、二十三カ月齢は感染、いわゆる異常プリオンがあるという御見解だと思いましたが、もう一回それを確認していただきたいのと、もう一つは、もし、二十一カ月齢においては、仮に十九カ月で検査しておったとしたらどういう結果が出たであろうか、先生の推測というか先生の考え、先生自身の個人的な考えで結構ですが、お述べいただければと思います。

品川参考人 二十一カ月、二十三カ月につきましては、先ほども資料を使いまして、さらに最新の科学的なデータでこれは裏づけされたというふうに、我々の診断基準あるいはその診断が裏づけされたというふうに私は理解しておりますが、間違いありません。ですから、こういう言い方はここではどうかと思いますが、インターナショナルなレベルを含めまして、いわゆるプリオンあるいはプリオン病の本当に研究をされている専門家という意味での専門家です、そこの方々との話の中で、このものがグレーだとか怪しいとかという話は一切ありません。

 ですから、私の理解は、そういうことをおっしゃるのは、BSEが出てきまして、日本を含めて世界じゅうでにわかプリオン学者が非常にふえました、多分そういう方ではないかというふうに、非常にこういうことを言うのは不見識なことかもしれませんが、私はそういうふうに思っておりまして、個人的には非常に立腹している次第であります。

山田委員 先生、十九カ月齢。

品川参考人 腹を立てて、答えるのを忘れてしまいました。

 十九カ月に関しては、これはやってみなければわかりませんという言い方しかできません。というのは、検出されました二十一カ月、二十三カ月のプリオンの蓄積量というものは非常に少ないということがありますので、一カ月前の段階ではどの程度まで蓄積していたかということ、これは殺してしまったものを使ってやっておりますので、一カ月さかのぼった段階がどうかということ、これは科学的な蓄積の度合い、カーブというものがまだありませんので、現在のところ、何ともお答えしようがありません。

山田委員 もう一つ、アメリカのBSE感染かどうかの判別機関において、プリオンのいわゆる専門家がいない。これは私も随分先方に厳しく言ったんですが、アメリカにはあれだけノーベル賞をもらったプリオンの専門家、学者がいらっしゃって、なぜプリオンの専門家はアメリカの判別機関に入れていないのかと言いましたら、ユルゲンさんとかという方がいらっしゃるんだと言っておりました。しかし、私は、サンフランシスコ大学のセーファー助教授とサンフランシスコでお会いしましたら、ユルゲンさんというのは三年前にプリオンの専門を始めた人じゃないかということで、業界というか学界では専門家としては認められないというような言い方をされたように記憶しているんですが、アメリカの判別機関には専門家がいないのかどうか、それも含めて先生の御見解をお聞かせいただければ。

品川参考人 ユーゲンさんというのは、多分ドクター・ユーゲン・リヒトさんじゃないかと思いますが、エームズ、アイオワのところにいらっしゃる方だと思いますが、あの方は確かにそれ以前はボルナ病の専門家でありまして、私は、それ以外に農務省関係のところにどのような方がいらっしゃるか全く知りませんが、少なくとも、私が理解しておりましたのは、昨年、日米のBSEに関するワーキンググループがありました、このときに出席された方の中にはプリオン病の専門家はいらっしゃらなかったというふうに記憶しております。

山田委員 それでいてアメリカが二十一カ月、二十三カ月齢はおかしいというのは、私はアメリカ自身がおかしいと考えているところです。

 ところで、先生はプリオン調査会の専門委員でもいらっしゃいますが、中間とりまとめ、私は非常に不明朗であった、そう思っております。その中で、たしか二十カ月齢以下のリスクについての、リスクが少ないという、二十カ月齢という数字を出すか出さないかで大分プリオン専門委員の先生方で議論なさったかと思いますが、中間とりまとめの中で二十カ月齢という数字が出てきた。それを、記者会見して、当時の吉川座長が、いわゆる二十カ月齢という数字はもう消します、削除しますとはっきり言っているわけですが、その後の報告においていわゆる二十カ月齢以下についてはリスクが少ないというのを出したわけですが、それについては、先生はどう思われますか。

品川参考人 中間とりまとめのあの部分について、今から考えても非常に残念なんですが、別な用事がありまして、あのときだけ私は初めて欠席したときにこういうことが起きたわけでありますが、科学的に考えまして、二十カ月齢のところに線を引く根拠はないというふうに現在も私は信じております。それでよろしいでしょうか。

山田委員 プリオンの専門家の先生方は皆さんそういうふうに考えておられたように聞いているんですが、結果として二十という数字が出てしまったことについては、先生はどう思われますか。

品川参考人 非常に残念なことだと思います。それが明文化されて残ったということは、私としては非常に残念なことだというふうに思います。

山田委員 先生のお立場では残念だとしか言えないかもしれませんが、座長が削除すると言いながら、出てきたというのは、食品安全委員会の事務局の方でそのような働きかけをした、いわゆる行政の意図、こういったものがあったように先生は考えられませんか。そういうふうに考えたことは――というか、質問がちょっとおかしいからかえましょう。

 先生自身、その後余り出席されなくなったようですが、その点では、そういう専門委員会のあり方について少し不安に思われた、そういったことはありませんでしょうか。

品川参考人 私は、食品安全委員会といいますのは、専門家が純科学的にBSEについて検討いたしまして、その検討されました結果をまとめるというようなこと、その中の範囲内でまとめるのが食品安全委員会で、でき上がったもの、それをリスクマネジメントに使うのが行政の方であろうというふうに理解しておりました。

 そして、そういうような理解のもとに私は食品安全委員会に参加しておりましたのでありますが、どうも、取りまとめ方に違和感を感じるということがありましたもので、それは、中間とりまとめであり、それから、それ以後の審議のことなどもありました結果、現在のような状況になっておるわけであります。

山田委員 先生の思いは私もよくわかるつもりでおりまして、今のプリオン専門調査会の中にも、本当のプリオンの専門家の皆さんというのは数人しかいないかと私は思うんですが、あとは統計学の先生とかいろいろな方々がおられて、そして、プリオンの専門家の先生方は、いわゆる二十カ月以下のアメリカ産の牛肉についてのリスク評価はどうかということについては、そういう諮問のあり方そのもの、二十という数字そのものに対しても大変疑念を持っておられた、そういうふうに理解しているところですが、それ以上先生に聞いて先生を苦しめるような形になっちゃいけませんので、ほかの質問にかえたいと思っております。

 今、アメリカにおいて二十カ月齢以下の牛を検査しないで入れることについて、日本と同等性があるかどうかのリスク評価をしろという諮問の内容なんですが、それについて、先ほど先生がおっしゃいました、日本の場合には、二十一カ月、二十三カ月、あらゆる、検査についてはすべてデータを公開している。アメリカの場合は公開されていない。

 私、サンフランシスコでセーファー助教授とお話ししましたら、アメリカの場合の情報については私は持っていない。日本のデータもいただいているし、イギリスとか、セーファーさんはイギリスの食品安全委員会の委員もしておられますが、外国のデータはいただいているけれども、自分がアメリカにいながらアメリカのデータをもらっていない、もらえない。としたら日本でも、日本の食品安全委員会もないはずだ。そうしたとしたら、リスクの評価はできないんじゃないか、そういうお話があったんですが、品川先生はどう思われましょうか。

品川参考人 私もそのとおりです。要するに、少なくともリスクを評価しようとするのであれば、その国の汚染状況がわからなければならない、飼料の状況などがわからなければならない。特に、BSEがどの程度浸淫しているかというようなことを正確に把握するということが非常に重要になろうと思いますが、それらについての情報というのは非常に乏しいというふうに理解しております。

山田委員 先ほど、フードサービス協会の加藤専務が全頭検査は意味がないとはっきり言われましたが、品川先生、それについてはどう思われますか。

品川参考人 一九九九年に、ヨーロッパのSSC、サイエンティフィック・ステアリング・コミッティーかなんかのところに出ておりますように、BSE、その年、翌年から、EU諸国では、三十カ月以上あるいは国によっては二十四カ月以上の食用の牛については、サーベイランスとは称しておりますが、すべて検査をするということを行っております。

 それはなぜかといいますと、先ほどの一九九九年のところの中にも、人間が食べるもの、フードチェーンの中に感染した動物を入れるということは好ましくないことである、これを排除する必要がある。これは、WHOの考え方もそうなっております。しかし、すべてのものが排除できないなら、これは次善の策として、SRMを除くということである。

 我が国が今まで行ってまいりましたのは、これは最初、二〇〇一年のときに、九月の段階ではEU並みに三十カ月というふうに決まったんですが、その一カ月以内くらいのところで全頭検査ということがあったわけです。これはそれなりの成績が出まして、私は非常によかったと思うわけでありますが。

 要するに、私は、全頭検査というのは意味がある。しかも、どうしてかといいますと、日本で行っておりますように、まず、それぞれの時点時点での科学の最先端の技術をもってして感染畜を排除する。しかし、どのような方法であろうと、これは何も免疫学的な問題だけではなくて、すべての領域と私は理解しておりますが、一〇〇%除くことはできないわけです。一〇〇%除くことができないそのところを補完するというのをSRMの除去で行うというふうに、少なくとも、日本の食肉の安全の確保のために行っているというのはこの方法であろうというふうに思っておるわけです。

山田委員 先生、我々政治家もそうですが、一般消費者にとっても、先生のプリオンに対する学識、見識等については大変畏敬の念を持っておりまして、これから先もプリオン専門調査会において先生の考えをぜひどんどん述べていただければありがたい、日本国民の消費者のためにもそう思っているところです。

 木村先生にお聞きしたいんですが、先ほど加藤専務が、二十カ月齢以下の検査は意味がないと言われましたが、それについて、木村先生、どうお考えでしょうか。

木村参考人 人間の食の安全性、これからいいますと、ゼロリスクの議論になりますと、これは考え方で非常に大きな幅がございます。私は、無意味であるという考えも成り立つというふうに思っています。

 ですが、私の、科学的に、これを排除していこう、存在しないようにしようという考えからいきますと、できる限りの検査を、意味のある一定期間を設定した中できちんとやって状況を確認していく、そのためにも意味がある、それが今度は安全につながっていくというふうに思っておりますので、全頭検査は世界の非常識であるという考え方は私は全く持っておりません。

山田委員 確かに、検査にかかるコストそのものは、一頭当たり三千五百円にしたって、一頭の枝肉が三百五十キロとしたら、わずかに十円もかからないという形になるかと思いますが、そんな中で全頭検査ということは非常に意味がある、私自身はそう考えているわけです。

 木村先生にちょっとお聞きしたいと思いますが、私はアメリカに行って、飼料関係、FDAのヘイブンさんだったと思いますが、局長と、二度目少しやり合ったわけです。その中で、アメリカは牛の肉骨粉を鶏、豚のえさにやっているわけですが、鶏のふんをそのまま牛のえさにやっていますね、先生は飼料の専門家だからよく御存じだと思いますが。それについて、いわゆる交差汚染のおそれというのはかなり今でも続いている。アメリカの議会の会計検査院、GAOに行きましたが、そこの部長にもお会いしましたけれども、はっきりその旨が報告書にも、そしてその旨を自身のお言葉からもいただきましたが、先生自身はそういった交差汚染についてどうお考えでしょうか。

木村参考人 交差汚染といいましたときには二通りあるかと思うんですが、飼料の製造の過程で思わぬ混入があったというときと、それから、今先生がおっしゃったのは鶏のえさを経由した、排せつ物が牛の口から入る、これはある意味では、交差というよりも、わかっていて給与した部類に入るのではないかというふうな気がいたします。日本でも生じましたように、鶏のえさを意図して、わかっていて乳牛に給与したという事実がございます。そういうふうに、その疑念のあるものが口から入るというものには二通りございます。

 これの考え方ですが、やはりこれは危険の確率の問題だと思います、交差汚染が起きたときにどれだけ危険であるかということ。意図しないで混入したときには交差汚染の裏づけというのは非常に困難でございます。それからもう一つは、意図して給与した場合には解明はかなりはっきりいたしております。その給与したものについて徹底的に調査すればいいわけでございます。別の言い方をしますと、鶏のふん経由でプリオンが牛の体内に入って発症するかどうかを疫学的にきちんと調査すればこれはわかることであろう。その意味でも広く検査をすることが大事である。私たちは、えさの中に異常プリオンがまじっているかどうかという技術を持っておりません。ですから、周辺、飼料についてきちんと疫学的な調査をする必要があるというふうに思っております。

 以上でございます。

山田委員 日本では、牛の肉骨粉は千度Cで三十分加熱して、灰にして焼却処分して、もちろん飼料にも肥料にも一切していない、それくらい大変厳しい措置をとっているわけですが、アメリカにおいてはまさに依然としてそういうことがなされ、かつ、GAOの報告にもありましたが、アメリカではラベルに、私もそのラベルを持ってまいりましたが、飼料工場に行って、いただいてまいりましたが、反すう動物にはこのえさを与えてはいけないという表示がなされているだけで、これは私の聞いたところでは、いまだに東海岸においては乳牛に牛の肉骨粉が使われているところもあるやに聞いております。非常に飼料規制については甘い、そういう状態で、まだまだアメリカにおいてはBSE感染対策について十分な措置をとるべきである、そう私も強く申し述べてきたところです。

 一つ、月齢識別について木村先生にお聞きしたいと思うんですが、先生のいわゆるパブリックコメントを読ませていただきました。その中に、月齢識別は、日本にそのような技術は確立されていないというふうに書いてあったかと思います。

 実際、この委員会で沖谷先生に来ていただきまして、月齢識別の委員会の座長だったんですが、私も厳しく申し上げたわけです。私も牛を飼った経験もあり、かつ肉屋もやり、県庁前で牛丼屋もやりましたからよく現実はわかっているつもりでおるんですが、その中で、どんなえさをやるか、そしてまた牛の種類、アメリカではアンガスとかヘレフォードとかいろいろありますが、種類によっても骨化の程度とか肉の質とか色とかというのは違ってくる。私自身、そして山岡委員長も、今そこにいらっしゃる二田さんも実際に見て、これが二十カ月か、二十一カ月齢か、十九カ月齢か、我々の肉眼ではわからないと。

 そういう状況の中で、やはり先生、専門家として、肉の識別について、二十カ月齢、二十一カ月齢の区別がつくものかどうか、その辺、簡単で結構ですからお答えをいただければと思います。

木村参考人 私はアメリカの、枝肉を見て月齢を識別するという、その場面に接しておりませんので、判断は難しいと。私自身、判断できません。

 ただ、今度は生産物の質を追求した飼養管理を指導していた立場からいいますと、こういうことが言えます。品種によって肉の乾きぐあいといいますか成熟の度合いといいますか、これは異なります。また飼育の仕方によって異なります。飼料会社におりましたから、当社のえさを使うとよくなるということは、これはうそになります。

 飼育の方法によって発育のコントロールをすることができます。発育のコントロールをすることによって牛の成熟度は変えることができるのじゃないかというふうに考えております。生産者の用語でいいますと、お肉が枯れるという言い方をします。若い牛の肉は水が多い、ある程度成熟させると枯れたお肉になっておいしいという言い方でございます。ですから、飼養管理技術によって枯れ方は変わるのではないか。ですから、お肉だけを見て月齢を推定するのは極めて困難であるというふうに私は認識いたしております。

山田委員 加藤専務にちょっとお聞きしたいと思うんですが、いろいろな見解で随分熱心に述べられたのは敬意を払うところではございますが、アメリカから牛肉が入ってきて、そして日本の消費者の七割から八割は全頭検査してほしいという気持ちでいるわけです。

 その中で、カナダからの牛肉をアメリカで差しとめたR―CALFという生産者団体、この会長、副会長、顧問弁護士とも私はアメリカでお会いしてまいりましたが、クイックストーンとかゲートウエー、そういうパッカーにおいては全頭検査している。R―CALFの団体はトレーサビリティーができていますから、そのバースデーもわかっていますから、それで全頭検査して、しかも飼料規制も強化した上で我々は日本に出したいと。先般もアメリカ農務省にそういう陳情書を出しております。アメリカの消費者ユニオンも全頭検査を求めております。

 そんな中で、いわゆる検査したものを検査済みであるということで入れていく分については我々も問題ないわけです。きょう、和田さんにも来ていただいておりますが、消費者団体も問題ないと思いますが、そういった方法で入れれば、さっき切々と話しました牛タン業界とか焼き肉業界とかも潤うではありませんか。アメリカの三割はほぼトレーサビリティーもできてきたんじゃないですか。そういうパッカーも幾つもあるわけですから。それについては加藤専務はどうお考えですか。

加藤参考人 先ほど来、私どもが、牛肉の安全性については、SRMの完全に除去された牛であれば牛肉の流通は確保できるということを申し上げましたのは、確かに先生がおっしゃったとおり、アメリカの一部のパッカーで、部分的に検査をして、出荷できる態勢を整えているところもありますし、また、もちろん、既にアメリカ政府も表明しておりますように、ドキュメントに基づいてバースデーのはっきりした牛も何%かあるわけです。ですから、そういう牛を私どもが購入することができる立場にあります。

 しかし、これは、もとより牛肉の安全が確保された牛という条件からいきますと、まさにそういう検査をしたもの、あるいはドキュメントがついたものというのは一つの売り方でありまして、僕は、マーケティング的な、パッカーあるいは生産者の一つの手法として提案されたものであろうと受けとめております。

 つまり、今ここで私ども自身が重要視しておりますのはまさに食肉のリスクの問題であります。そういう視点から、アメリカの対応ということについて、こたえるということになっております。

山田委員 よく理解できなかったんですが、リスクといっても、WHOでは、人のフードチェーンの中に感染牛を入れちゃいけないとはっきり、これは採択されておりますから、本来ならスクリーニング、いわゆる食の安全とか安心じゃなく、全頭検査してでき得る限り消費者に安全なものを与える、これが建前だと私は考えております。

 そんな中で一つ、これから先、将来、アメリカから牛肉が入ってくるとしたら、実は、国内の牛肉は、加藤専務も御存じのようにトレーサビリティー、どういう注射を打ったか、薬品を使ったか、どういうえさをやったかまで、もちろん生産者の名前も、今やわかるようになっております。コストがかなり、解体処理、小売段階まで、一割から二割はかかっております。

 そうしますと、アメリカから、輸入牛肉については一切そういう規制がない。これは大変私は、日本は内外平等というならば、六割も入ってきている輸入牛肉について当然そういうトレーサビリティー法案を出すべきだ、そう言っているんですが、自民党の二田先生が、この法案、今出して審議中ですが、これを審議したら否決すると言われるものですから、このまま採択できずに困っているところですが。(発言する者あり)

 それで、もしアメリカから入ってくるとしたら、当然のことながら、日本の牛肉と同じように、検査している検査していない、それくらいについては表示する必要があるんじゃないか。アメリカ産の牛肉である、あるいはオーストラリア産の牛肉である、検査しているか検査していないか。それをひとつ最後に、和田さんと加藤さんに一言ずつ、イエスかノーかお答えいただければ、ちょうど私の質問時間は終わりました。

加藤参考人 私どもは、もし表示をするということになれば、検査している検査していないの表示じゃなくて、安全の確保がSRMの完全除去でありますから、本来ですと、情報提供として、SRMを完全に除去された牛ですという表示をします。

 基本的に、消費者の関心は、アメリカ産の牛肉であるか、あるいは今こういう検査体制をとっている国産牛であるかという区分の表示を要求するんだろうと思います。私どもは、消費者のそういう要求や信頼にこたえるために原産地表示を積極的に、自主的に取り組んでまいります。つまり、アメリカ産の牛肉が入ったとき、この牛肉は、原料はアメリカ産であります、豪州産であります、これは基本的に表示すべき社会的な義務を持っている、責任を持っている、そういう認識を私どもは持っております。

 また、そういう意味で、間もなく農林水産省を中心に、外食産業の原産地表示のガイドラインが策定されることになっておりますけれども、そのテーブルに積極的に私どもは参画して、そして、会員社にその活用について勉強会をし啓蒙していくということになっております。

和田参考人 先ほども表示について、きちんと表示をするような方向でということをお願いいたしましたけれども、今お話が出ましたように、外食産業についての原料の原産国表示、それが徹底していくということが一つ。それから、表示につきましては、国なり地方自治体が何かを決めてそれで表示をさせていくということと、自主的な表示というのの両方があると思うんです。

 その自主的な表示については、今までいろいろ表示の問題に取り組んでまいりましたけれども、ともすると、自分たちの宣伝、セールスポイントになることは、強制されなくても、私たちがお願いしなくても、非常に大きく表示を出すんです。ところが、ぐあいが悪い、なるべく出したくないなという表示は書かないというのが、もうこれは商品を問わず、いつの時代にもそういう様子が見られますので、この輸入肉ないしは国産の肉もそうですけれども、どのような表示が出されていくのかというのを見た上で、国で基準を決めることもあるだろうと思いますし、それから、自主的な表示について、消費者にとって誤認を与えかねないような表示というものについては、公正取引委員会に景表法の立場で問題があればまた問題にしていきたいということを考えております。

 以上でございます。

山田委員 ありがとうございました。

山岡委員長 次に、白保台一君。

白保委員 公明党の白保でございます。

 きょうは、参考人としておいでいただいた皆さん方に感謝申し上げます。

 さて、BSEの問題に関係して、全頭検査の問題で、BSEの発生以来、全頭検査をずっとしてきたわけですが、そういった中で、そのことが食の安全、安心という信頼回復に大きくつながってきた。これは消費者の強い要請によってそういう形になってきたわけであります。

 今回、若齢牛については、これは検査をやめる、こういう方針を打ち出しておるわけですけれども、都道府県によってはそれを引き続き行っていくということを言っているところもあります。

 一方、ヨーロッパでは、これは、フランス、英国、こういうEU各国では、現在も年間に百五十頭以上のBSEが発生しておりますが全頭検査を行っていないという、こういうことを考えた場合に、皆さんがこの全頭検査についてどのようにお考えなのか、改めて参考人の皆さん方お一人お一人に御意見をお聞きしたいと思いますが、お願いいたします。

山岡委員長 それでは、順次、和田参考人からお願いをいたします。

和田参考人 先ほども申し上げましたけれども、全頭検査、将来永久に続けるべきということまでは言っておりませんけれども、今の段階で、特にアメリカの輸入再開というような強い声があり、しかも、アメリカで頭数をふやしたとしても検査の割合というのが一%にすぎない、あるいは、今二頭目が見つかりましたけれども、今まで検査を、日本と同様な厳しい検査をしていればあるいは見つかったBSEがあるのかもしれない、逆に言いますと、見落としていた患畜があるのかもしれないというような状況を考えますと、やはり今全頭検査について見直すとか、二十カ月以下についてはやめるというような時期ではないというふうに考えております。

 全頭検査をやったことによって、いろいろ、ほかの国ではわからなかったような状況というのがきちんと、それだけの年数をかけてわかったということは非常に大きな成果でもあったということが言えると思います。

加藤参考人 全頭検査については、まさに検査神話という言葉があります。日本国政府は、全頭検査を導入することによって当時の消費のパニックを回復させる大変有効な方策であったと私どもも大変評価しています。消費者の信頼を確保することができたということであります。

 しかし、その後、全頭検査こそ牛肉の安全を確保するとか、あるいは、世界に冠たる安全対策ということがもう浸透し、また説明されています。今回の当院の米国の安全性の確保の調査団においても、まさにこの全頭検査を前提としてアメリカの安全の状況というものも調査するというふうなところが見えたのは、そういうことだろうと思います。そういう意味で、私どもは、全頭検査は、この神話を取り除くことによっていかなければこの問題は解決しないという感じを持ちます。

 先ほど来、フードチェーンでリスク牛は取り除かなければいけないというWHOの規約もあるという話がございますが、これは検査を前提とした規約ではございません。あくまでもサーベイランスであります。そこのところを、サーベイランスとそれからスクリーニングという、検査の機能、仕組み、内容について区分して考えなければいけないと思います。

 全頭検査でわかり得た科学的な見知ということは、サーベイランスの検査の結果でも十分わかることでございます。そういう意味で、全頭検査ということは一日も早く見直しをする、三十カ月のラインに持っていくということが、国際的な基準、世界の常識ということになるかと思っております。

品川参考人 私は、現在のところは全頭検査が必要であろうと思います。

 といいますのは、二〇〇一年から我が国のBSE対策というものが実施されてきているわけですが、このようなものが果たして有効に機能しているかどうか、このことを正確に把握するためには全頭検査というのが非常に有効であろう。未来永劫これを続ける必要はありませんし、BSE対策、特にフィードバン、飼料規制というものが正確にきちっと機能しているということが把握されれば、これはその段階で今のこの検査も変わっていく。おまけに、私は、BSEが、少なくとも日本で飼育された牛からは消失するであろうというふうに信じておるものであります。

木村参考人 私の意見も、今、品川先生がおっしゃったのとほとんど同じでございます。

 食の安全に加えまして、私は、日本から、あるいは世界からBSEをどのように排除するかという立場から見ますと、一定期間、制度の機能性、そういったものを確認する必要があると思います。そういう意味で、一定期間の全頭検査というのはぜひとも続行すべきであるというふうに思っております。

白保委員 それぞれのお立場からの御意見をいただきました。

 我が国においては全頭検査によって国産牛に対する消費者の信頼回復がされた、加藤参考人もそういったお話をされておりましたが、これは大きな成果があったところと、こういうふうに思います。

 ただ、アメリカは、全頭検査よりもSRM除去が有効である、こういうふうにしております。また、全頭検査ができるための体制も整っていないというのが現状で、今米国に全頭検査を要求しても、実際のところ、無理ではないか、かなり厳しいんじゃないか、こう思います。そうしたならば、アメリカが我が国と同等の体制をとるためには何が必要なのかな、こういうふうに我々も考えるわけです。

 そこで、先ほど木村参考人が、世界からBSEをなくすのが一つの目標、目的だというようなことをおっしゃられましたが、木村参考人としては何が必要なのかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

木村参考人 この場合は、やはりあらゆる情報の共有であると思っております。

 私は学者の世界におりますけれども、牛のことを知らないで牛を論じている学者が非常にたくさんいらっしゃいます。すべての立場の方、それぞれの断面しか見えません。それを集約して情報として整理して判断するということから、いろいろな立場の人の情報の共有であると思います。

 例えば私のえさの立場でいいますと、えさの給与条件、内容の情報はオープンになっております。ところが、今度はえさのことについてはまだオープンになっていないところが非常にたくさんございます。そういう意味では、やはり、あらゆる業界が情報を共有してこれを突きとめていくという体制がない限りはこれは排除できないのではないか、検査だけ進んでも、その周辺が整わないとそういうことは進んでいかないのじゃないかというふうに思います。

白保委員 先日の報道で、農水省がプリオン専門調査会に提出した分析結果、これによりますと、アメリカの検査制度を日本に当てはめていったならば、BSE感染牛二十頭のうち九頭は検査対象外であり、残り十一頭も米国の基準では何頭見つかったかわからない、推定できない、こういうふうにしております。その中で金子委員が、米国の二例目発見がイギリスでの検査によることから、アメリカの免疫組織化学検査が信頼できない、こういうような指摘もしているわけです。

 これらを勘案すると、米国の中でどれぐらいBSEが広がっているかという基本的な安全評価ができないんじゃないかなという、そういうことを考えるんですが、品川参考人のお立場でお聞きしたいと思います。

品川参考人 私も全くおっしゃるとおりでして、米国のBSEの状況というものが把握できないということは、全くそのとおりだと思います。

 ですから、きょう私がお話しした中でも、例えば、我が国では検査の成績というもの、このものについてオープンにしております。しかし、米国については、それぞれ免疫組織化学から始まってウエスタンのところまでやった、さらに最初のELISA検査ということがありますが、こういうようなそれぞれのデータというものがオープンになっていないということから、出てきた最終的な成績だけを見まして米国の状況を推定するということは非常に困難である、ましてや米国がどうなっているかということを推定するということは困難であろうというふうに思います。

白保委員 先ほども出ましたが、私も派遣団として、政府、業界関係者と直接面談をして感じたことを申し上げますと、輸入再開に向けて強硬に自説を展開する方もいらっしゃいましたし、また、米国のやり方に対して懐疑的な関係者がおられるというのも実感として感じました。

 アメリカ消費者連盟のクリス・ウォルドロップ氏は、FDAが認めるようにフィードバンの遵守率は一〇〇%ではない、交差汚染があるし、会計検査院もFDAのデータは正確でないので使っていない、こういうようなことも発言しておりましたし、また、公益科学センターのケン・ケリー氏も、NCBA、全国肉牛生産者・牛肉協会の会長は、米国はあらゆる措置を講じており、今や何も問題ない、こういうふうにも言っていました。

 ただ、そういったいろいろな主張がある中で、日本の立場で、先ほど今村さんも話がありましたが、消費者の立場、そしてまた加藤参考人のようにそういう立場、そういった関係で米国との関係をつくり上げているのか、それとも、そういった交流がなされているのか、その辺のことをもう一度お教えいただきたいなと思っております。

    〔委員長退席、山田委員長代理着席〕

和田参考人 先ほどもちょっと申し上げましたように、アメリカの消費者団体に今問い合わせているところでございまして、それが集まりますと、相当な意味を持ってくるのではないかと考えております。

 今、私ども消費者団体も、国内だけを見ていて済む時代ではございませんので、それぞれ、EUなりアメリカなり、それからアジアなりというところの消費者団体とは非常に緊密に連絡をとり合っております。

加藤参考人 私どもも、一昨年、牛肉がストップした段階から早速ワシントンに参りまして、アメリカン・ミート・インスティチュートという、全米の食肉の生産者、加工業者、流通業者を束ねた全国組織、最も大きな団体ですけれども、そういうところのいわゆる役員会のメンバーと情報交換をし、自来そのパイプを持っておりますし、また、個別には生産者団体のNCBAとも交流をしております。

 また、私どもはJFというレストラン産業でございますけれども、創立して三十年を迎えますが、その約二十五年間の間、アメリカ・レストラン協会、ナショナル・レストラン・アソシエーションというアメリカの最も大きなユーザー団体、牛肉の調達、生産者との大きなパイプを持っておりますので、そのレストラン協会と連携してやっています。また、そのNRAはインターナショナルコミッティーがありまして、私ども協会もそのメンバーの一人でございまして、カナダやメキシコ、ヨーロッパの方々と、いわゆるユーザーの立場からこのBSE問題について情報交換しています。

 さらに、昨年十二月、あるいはつい一週間前ですが、アメリカの生産者団体あるいはUSDAの安全性に関する権威の方々をお招きして、交流をし、また勉強会をするとか、あるいは、アメリカのSRMの完全除去がいかに行われているかということについて、こちらの要求に応じてスライドやそういうビデオをつくっていただいて、それを消費者や私どものバイヤーの方々に啓蒙するとか、そういうふうな情報交流やそういうことをやってまいりました。

白保委員 先ほども出ていましたが、アメリカの農務省のペン次官の発言した中で、何頭BSEが発生したかではなくして、SRM除去がきちんとされているかが大事だ、OIEのガイドラインに沿って対応していきたいし、日本もそうしてもらいたいという部分がありました。アメリカは、動物に関する国際基準はOIE、こういうふうに言っておりますし、科学ベースのガイドラインである、このように言っておりました。

 このOIE基準に関して、我が国もコメントを出して、その都度反応しているわけですが、客観的に言ってどのような評価がされるものか、木村参考人に御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

木村参考人 残念ながら、私、危険の判断の部分は自分の分野でございませんので、きちんとした答弁ができない状況でございます。

白保委員 品川参考人はいかがですか。

品川参考人 私も同じでありまして、ごくごく限られた専門領域のことであれば答えられますが、それ以外はちょっと難しいと思いますので、失礼します。

白保委員 それでは、プリオンの研究について伺います。

 私どもは詳しいことはよくわかりませんが、健康な人など、また哺乳類の脳には何十億という正常なプリオンが存在していて、スクレーピーにかかったプリオンによる連鎖反応によって、正常なプリオンも感染性のあるスクレーピープリオンに変換してしまう、こういうふうに言われています。

 こういった正常なプリオンたんぱくと異常なプリオンの構造が解明されれば、BSE、狂牛病の対策は大きく進むのでしょう。こういったことは、現在どういうふうに研究が進められているのか、精度が高く簡単な検査方法が今後出てくるのか、この辺について伺います。

品川参考人 実を言いますと、今お尋ねになられた中でも、正常なプリオンというような形の言葉が出ておりまして、これは間違いでありまして、まず最初に、ちょっと私、専門の方から訂正させていただきますが、プリオンといいますのは、すべて異常な、感染性を持ったものを意味しております。

 我々の体あるいは哺乳類の体の細胞の表面には、正常なプリオンたんぱくが存在しております。この正常なプリオンたんぱくと、異常な形になって感染性を持った凝集したプリオン、このプリオンを構成しておりますのが異常な構造を持った異常プリオンたんぱくと呼ばれているものでして、これが会合いたしますと、異常な形を鋳型としまして正常なものが異常に変わっていってしまうということなんです。それで、羊の場合のお話が出ましたが、そこまでのところはわかっておりますが、さらに細かいことが現在なかなかわからないという部分があります。構造自身もわかりません。

 ですから、今までは、感染性を持ったプリオンのものですが、これを、例えば、高精度に解析するNMRというような方法があるわけですが、このような方法で解析するための試料がつくれないというようなことがありました。ですから、これのための試料を、これは非放射性同位元素で標識したたんぱくを使う必要があるという制約があってできなかったんですが、こういうようなものを試験管の中でつくっていきましょうという研究も私どもの研究室ではやっておりますし、それから、培養細胞系で調べましょう、それから、感染した動物の中でも調べましょうという多方面な形で、プリオンの構造、あるいはプリオンが複製していくのにはどうなるかというような研究を、現在鋭意進めている段階であります。

白保委員 研究ですから、積み重ねていかなきゃならない、大変に時間とまた試料が必要なんだろう、こういうふうに思います。

 そこで、もう時間も余りありませんので、最後に加藤参考人にお聞きしたいと思います。

 加藤参考人の冒頭の御意見の中で、業界の皆さん方としては大変御苦労をなさっているということが随分と述べられました。ああ、そうかなというふうに我々も考えました。業界と消費者というのは対立するものじゃなくして、お互いが安心してやっていけるということでなければいけないわけであります。

 そういった意味では、最後に言われたことで、いつまでも輸入停止というのではなくして一定の対応措置が必要というふうに言われたんですが、消費者がこれは安全だ、安心だというふうに言えて、業界の皆さん方もちゃんとやっていける、そういう、一定の対応措置というふうに言われたんですが、一定の対応措置というのをどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

加藤参考人 一定の措置と申しますのは、私どもは行政にお願いをしたいんですが、検査神話とまで言われてしまった食肉の安全性、全頭検査神話を、一日も早く丁寧な科学的な説明によって払拭していただきたいと。

 それによって、アメリカの牛肉が入ってきた場合には、消費者の信頼を確保するために、この牛肉はアメリカ産でありますというような形の原産地表示を明確にして、消費者の信頼にこたえるということが、最も正しい、消費者の、限りなく安全を求める、安心を求める、その希求と、それから、私ども、限りないゼロリスクを確保した中で、安全を確保した中での食肉の供給ということのすき間を埋めることができるのではないかと、そう思っております。

 もとより食品のリスクはゼロではないわけでございまして、まだまだ大きなリスクを持っているいろいろな食材を私どもは扱っております。そして、それに対する科学的な究明ということはまだありません。また、牛肉一つとっても、SRMの完全除去に関するコストをかけることの方がもっと非常に重要でありまして、全頭検査の方ではないわけです。そういうことを含めて、リスクと上手に消費者との間でつき合いながら、実質安全というものを確保していく、そしてそれを提供していくことが私どもの責務であろうと思っています。そういう中でこそ、豊かな選択肢のある食文化、食卓をつくっていくことができるんじゃないかと思っております。

白保委員 時間が参りましたので、終わります。きょうは、皆さん、大変にありがとうございました。

山田委員長代理 次に、高橋千鶴子君。

高橋委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、お忙しい中、参加をいただいて、貴重な御意見をいただきましたこと、本当にありがとうございます。

 最初に、和田さんにお伺いをしたいと思うんですけれども、BSEの日本での発生を通して、食の安全、安心という言葉が定着し、農水省は消費者の視点ということを強調するようになりました。私は、生産者の思いと消費者が連帯をして、全頭検査を初めとする安全、安心の体制を日本がつくってきたということは非常に重要に思っております。同時に、これを後退させてはならないというふうに思っております。

 先ほど和田さんが、全頭検査が私たちは万能だと言っているのではないということ、それから、未来永劫やれと言っているのでもないとおっしゃいました。私はこれは大変同感であります。私も繰り返し述べてきたところなんです。何か輸入再開を急ぐ方たちは、消費者の反応がすぐ過剰であるとかよく知らずに物を言っている、そういう見方をしているというふうに思うんですね。しかし、私は、今、和田さんがお話しされたように、万能ではないし未来永劫ではない、しかし、今の段階ではまだこの体制をしっかりやっていって、その中で、本当に納得できるし、安全、安心だと言えるときが必ず来るという視点に立つことが大事だし、そこに本当の意味でこたえていくことがこの問題を解決する糸口になるんだ、このように思っているんですね。

 そこで、消費者が求めている情報公開とは何なんだろうか、あるいは、この間の行政は消費者の視点を本当に取り入れてきたんだろうかということに疑問を感じるわけです。

 食品安全委員会がリスクコミュニケーションを全国で開催しました。傍聴も全面的に認められましたし、意見も聞く、情報も提供してきたというけれども、しかし、その一方で、安全委員会から座長代理として参加をされた金子先生が、日本の検査、食品安全委員会の今やっている検査と米国の輸入再開とは違うものなんだと言っていたのに、結局リンクしたんじゃないかという意見が述べられたり、あるいは、安全委員会のリスクコミュニケーションに参加をされた消費者の代表から圧倒的に反対の意見が多かった、一部の業界の方が何度も手を挙げたりして賛成の論を述べたりする、そういう状況だったにもかかわらず、どうもそれが取り入れられていないんじゃないかという意見なども聞かれておりました。

 その点で、率直に、この間の行政と消費者の視点という点でどうだったのかということを、御意見を伺いたいと思うんですけれども。

和田参考人 確かに、非常に回数多く、リスクコミュニケーションあるいはパブリックコメントというような形で、消費者だけではなく一般の意見を聞くチャンスというのはあるようになってまいりました。それから、情報公開についても、いろいろな審議会がオープンになり、そこでの資料が一般に渡されるようになってから、ちょっとはっきりいたしませんけれども、十五、六年、やっとというところだと思うんですね。それまでは一切非公開だったというようなことから思いますと、やはりいろいろな情報が出るようにはなってきた。それから、私たちからすれば、消費者の意見を言う機会はふえたということは言えると思いますけれども、それが本当に政策決定の場でどのように生かされていくのかということには疑問を感じることがたくさんあります。

 それから、審議会なり、いろいろな名前の会合がありますので審議会だけには限りませんけれども、そのメンバー構成を見ますと、初めから結論は出ているということを感じることが、これは以前からそうですけれども、最近になってやっと公募の委員が何人か入っている委員会もできたという程度ですけれども、やはり徹底的に政府の案に対して反対をするというようなメンバーは、なかなかその委員会の中には入らない。だけれども、とにかくやはり、問題を指摘したりなんかするメンバーがいなければこれはちょっとひどいんじゃないかということで何人か入れられているというような感じを持ちまして、私も過去から幾つかに参加しておりますけれども、正直なところ、そういう場に入ることが本当に正しいんだろうかということを、自分自身も、それから会の中でもよく話をいたします。

 今のところ、会合も公開されておりますので、そこでどういう発言をしていくかということは一般にオープンになってまいりましたので、大体参加してはおりますけれども、お尋ねのお答えになるかどうかわかりませんが、チャンスはできたし、いろいろな形は整ってきたけれども、本当にそれぞれの場合の意見が生かされているかどうかということには、まだまだこれからだという感じが強くしております。

 以上でございます。

    〔山田委員長代理退席、委員長着席〕

高橋委員 ありがとうございます。

 今の率直な御意見、初めから結論ありきではないかという指摘は本当に重く受けとめるべきだと思うんですね、行政の側でも。前の参考人質疑のときにも、やはり安全委員会の委員からもそうした指摘がございました。やはり、そうではないんだ、いろいろな立場の方たちが自由に話し合う、そして自由に意見を述べてそれをちゃんと受けとめるという姿勢を本当に求めていきたいと思いますし、和田さんにおかれましては、そういう立場でこれからも大いに発言をされていただきたいと思います。時間があれば、もう一度伺いたいと思うんです。

 そこで、今度、品川先生にぜひ伺いたいと思うんですけれども、そういう点で、品川先生も随分今の食品安全委員会のあり方に御意見をお持ちだと思っております。

 まず一つ、話を進める上でもう一度確認になるんですけれども、若い牛ほど感染しやすいということが学界の中でも随分言われているかと思うんですね。しかし、プリオンが少量過ぎて検出できない、いわゆる検出限界ということが言われて、検出できないんだから検査をしても無意味だ、もっと言われているのは、アメリカの学者と日本の学者が例えば討論などをして、一部の学者ですけれども、検出できないのに検査をやったら、逆に、感染しているかもしれないのに陰性ですよと宣言しちゃう、これはいかがなものか、そういうような議論までされているんですね。

 私は非常にここに違和感を感じます。仮に、今検査で検出できないとしても、そういう限界も含んでいるんだということをきちんと周知した上で全体の体制をちゃんとやっていくんだよとメッセージがされていることが大事だと思うし、同時に、先生は今、プリオンの専門家で、原因の究明やプリオン検出の高度化を研究されていると思うんですね。生体牛の問題やあるいは蓄積の過程、いわゆる脳にたどり着くまでのいろいろな過程なども研究されていると思うんです。そういう過程からいっても検出限界を下げることは可能であるし、その途上を今断ち切るべきではないと思っているんですけれども、その点についての先生の御意見を伺いたいと思います。

品川参考人 全般的でして、私がどのように何を答えたらいいか、ちょっとよくわかりませんが、ひたすら一生懸命プリオンの研究をやっているとしか言いようがないんです。何に答えたらいいのか、ちょっと困りましたね。(高橋委員「検出限界を下げること」と呼ぶ)

 プリオン検出の限界ということに限ってお話をいたしますと、これは先ほど何度も繰り返しておりますが、プリオンだけではなくて、医学領域の病気の検査でもありますが、すべて限界があるわけです。日本の場合は、プリオンの場合、限界がありますから、そこのところを補完するためにSRMを除いている。検査をしないでSRMを除くということが一つありますが、これはSRMを除けば一〇〇%体からプリオンがなくなるというのは間違っておりまして、SRM以外のところにもプリオンが存在するということがわかってきました。

 そうしますと、検査を行って検出できない程度の、これが陰性であるような牛のSRM以外のところに存在するかもしれないプリオンの量というのは非常に少ないわけです。ですから、検査で検出できないような個体のSRMを除いてしまって、さらに残っているものというのは非常に少ないであろう。

 これは、現在の科学レベルで最大限の努力をしているということであるわけでありまして、現在のところ、少なくとも日本の食肉の安全というのはこのようにして確保しているというふうにしかお答えすることができません。

高橋委員 それで私が求めたことには答えになっていると思うんですね。やはり、SRM除去だけでいいということに対して、検査の側から見てお互いに限界があるという点での証明だったのかなと思っております。

 それで、先ほど山田委員の方から、二十一カ月、二十三カ月の、先ほど先生が間違いないとおっしゃったあの検査の問題ですけれども、アメリカはそれがちょっとおかしいというふうな発言をされたということに対して、にわかプリオン学者が出てきたという指摘もありました。

 私自身も一緒にアメリカに行った人間でありますけれども、そこで、にわか専門学者というのは、実は日本にもいたと思うんですね。この二十一カ月、二十三カ月はBSEとはちょっと違うかもしれないというのは、別にアメリカで聞いたわけではなくて、私は日本の農水省や厚生労働省の説明の中で聞きました。同じではないと思う、そういう疑いがあるからまだわからないと。

 私は、日本の中にまずそういうのがあって、一緒じゃないというふうにしてしまって、そのことが今回の、つまり、彼らの行政の意図が中間とりまとめにおける線引きに大きく左右したと言わざるを得ないと思うんですが、その点、先生、いかがでしょうか。

品川参考人 最後の二十一、二十三カ月あるいは二十カ月の線引きに云々ということに関しては、私はわかりません。

高橋委員 要するに、日本においても二十一カ月、二十三カ月はBSEじゃないかもしれないよという議論があった、それが線引きに影響したんじゃないかということです。

品川参考人 日本において、二十一カ月、二十三カ月というのは、私が座長をしております牛海綿状脳症の診断に係る委員会でこれは判定を行ったわけでありまして、どなたからも異論はありませんでした。

 ただ、違いますのは、二十三カ月の症例については、電気泳動によるウエスタンブロットのパターン、このものが従来のものと違う非定型的な形のものであろうと。たまたま同じ年に、これはドイツ、フランス、ベルギーだったかな、イタリアというような、ちょっと国ははっきり覚えていませんが、かなり幾つかの国から同じように従来のBSEのウエスタンブロットとパターンの違うものが見つかってきたという報告がされております。

 ですから、そこの中の一つではあっても、BSEでないということとは全く関係がありません。

高橋委員 わかりました。

 私自身は、行政の中でそういう説明をしていた人がいたということをまず教えておきたいと思うんですね。そういう意味で、ずっと議論されている食品安全委員会の議論が、最後の段階で座長一任後に一文が設けられたということに深く関与しているのではないかということを指摘をしたかったわけなんです。

 今言ったように、二十一カ月、二十三カ月に対して異論を挟む人がもしいなかったんだとすれば、二十一カ月まではとにかくわかったと。だけれども、そこで線を引くという、つまり、二十と二十一カ月にどれほどの違いがあるのかと思うんですね。そこで線を引くということにも、むしろ異論があったというか、それが大勢ではなかったと思いますが、いかがでしょうか。

品川参考人 きょうも二回くらい言いましたが、その最後のところに私は初めて欠席をしてしまった段階でこういうことが起きたわけであります。ただし、後ほど聞くところによりますと、おっしゃられるとおり、これは異論があったと思いますし、先ほど私も答えましたように、二十一カ月、二十三カ月で検出できているものが、二十カ月のところで線を引くということに関して、何ら科学的な根拠はないというふうに言い切れると思います。

高橋委員 ありがとうございます。

 線引きについて、やはり科学的根拠がないと言われたと思います。

 その後、中間とりまとめが出されてから、私も委員会で何度も安全委員長など参考人に来ていただいてこの問題を質問をいたしました。そういう科学的根拠がないという意見の方がむしろ多かったし、また、それが最後まで慎重にすべきであるということが議論されていたにもかかわらず、結果として、あのときの中間とりまとめがもう既に結論になっていたというか、線引きを決定的にしたということは否めない事実だと思うし、また、先般の参考人質疑の中で、山内教授が、行政にある意味で利用されたということもお認めになりました。

 こういうことを含めて、先生は最近、委員会に出席をされておられないわけですけれども、やはり科学者としての自由な議論が行政によってねじ曲げられたという側面を考えていらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。

品川参考人 いや、困った質問ですが。

 先ほど言いましたように、私は、食品安全委員会というのは純科学的に結論を出す、それだけの委員会であって、その出てきたものに関して行政が利用して、言ってみれば、リスクマネジメントの方に利用していくんであろう、リスクマネジメントを実施するんであろうという理解でいたのでありますが、どうも取りまとめのところがなかなか私の考えていたものと違って、リスクマネジメントに踏み込んだような取りまとめが行われていたというようなことはあると私は感じております。

高橋委員 ありがとうございます。

 木村先生に伺いたいと思います。

 先ほど表を示して、代用乳の可能性について、この間発生した牛と同じ代用乳を使っているということは見て歴然のことでございますし、また、飼料規制が始まってからも発生していることなどを見ても、非常に注目すべき議論ではないのかなと思っております。木村先生や広島大学の三谷先生などが、この研究会報の中で、その点で非常に多岐にわたって研究されているということも、私は大変貴重な御意見だと思って興味を持って伺っておりました。

 その中で、やはり動物に感染させているんだという発言を非常に重く受けとめたわけなんです。要するに、健康かもしれないのにルートがわからないために殺処分をしてしまったというふうな経過もあったわけですし、入り口をふさぐのが一番いいわけですよね。感染させないのが一番いいと。そういう点で、ルートの解明と徹底した飼料の本当の意味での入り口規制ができたらいいなということを望んでおります。

 そういう点で、今の食品安全委員会の報告というのがちょっと不十分なのかなと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

木村参考人 私は、疫学的調査の結果というのは、どなたかからも指摘があったかもしれませんが、技術者の意見が反映されない報告が出る仕組みの中に入り込んでしまったというふうに考えております。

 私たち技術者は、いろいろな技術について議論を闘わせて、その論理の精練化をしなくちゃいけないと思っております。そういう意味で、自分の論理に対して異なった意見があるときは徹底的に議論をするということが必要だと思っています。私たちは、研究会報で技術報告レポートに対して技術者として投げかけをしておりますが、技術の精練の場になっておりません。そういう意味で非常に残念であるということ。

 もう一つは、やはり代用乳の話が薄れて交差汚染の話になったのは、やはり誘導的な結果が先にあったのではないかというふうに、私は委員会でも何でもありませんが、疫学的に考えていこうとすると、どうしてもそのようにとれてくるわけでございます。

 なぜか。代用乳、この表現の仕方もあらかじめつくられた結論に誘導したのではないかなというふうに、えさの場合は、そんなことを感じております。ミート・ボーン・ミールの交差汚染はノーとは言えないという書き方、あるいは代用乳はイエスとは言えないという書き方、結果としてノーとは言えない方が表に出る。これは作文の書き方であると。技術的な議論の結果を要約したものではないんではなかろうかと。

 そういう意味で、技術的な結果の論旨の精練ということを技術者はきちんとやるべきじゃないかなという立場で、こういうような研究会報を出すとか、あるいはともに研究するという立場になっております。

 以上でございます。

高橋委員 ありがとうございました。

 きょう、それぞれからいただいた意見を、また生かしていきたいと思います。ありがとうございました。

山岡委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党の山本です。

 参考人の皆さんには、貴重な御意見、大変ありがとうございます。私で最後ですので、もう少しおつき合いをお願いしたいというふうに思います。

 最初に品川参考人にお伺いしますが、先ほど来の質疑の中で、安全委員会の報告書、学者として、あのような結論になったのは非常に残念だというふうなお話がございましたし、このまとめについても違和感を感じたというようなことをお話しされたと思います。

 今、アメリカ産の牛肉に対するリスク評価というのが何度か議論されていると思うんですが、アメリカ側からは九月ということでいろいろ言われてきております。そうした雑音も耳に入っていると思うんですが、この間の轍を踏まないために、科学者としてやはりきちんと議論していくということになると思うんですが、しかしながら、アメリカの状況が極めて不明確でわからない、リスクの評価のしようがないというふうなお話もございました。

 この点、今後、専門調査会の中でどのように議論を進めていこうとなさっているのか、お伺いします。

品川参考人 私は、現在、プリオン調査会のメンバーでありますが、先ほど来いろいろ申しましたような理由がありまして、昨年の十二月に私は辞表を書きまして、これは寺田委員長の方に受け取っていただくようにお願いしたのでありますが、これはきょう初めて明らかにすることですが、そのときに寺田委員長から、これを受け取れば食品安全委員会が分解するというか非常に困ったことになるから、出席しなくてもよいからこれだけは受け取れないというようなことがありまして、そういうような了解のもとに、私はそれ以後、食品安全委員会には出席しておりません。

 だものですから、今おっしゃられたようなことを、私は、はいというふうに返事することができない状況でおります。

山本(喜)委員 国の食品行政を扱うという中で専門家が辞意を表明するような、こういうような取りまとめのあり方が行われたわけですね。

 今後のアメリカ産牛肉の輸入に際しても、こうした著名な学者の方が参加しない、出席しなくてもいいからこの辞表は受け取れないというふうな状況になっているということだとすれば、今後、本当の学者、専門家が、本当に意見を言って日本の食品行政をきちんと見守っていくというふうに果たしてなるのかどうか、大変疑問なわけですね。

 そこで和田さんにお伺いしますが、こうした政府の極めて恣意的な委員会の結論づけという中での、専門家が辞表を出してしまうというふうなこれまでの経過、こうしたことについて、消費者の立場からどのようにお考えでしょうか。

和田参考人 今までにもいろいろこういう状況があるというようなことは聞いておりましたけれども、きょう、はっきりとそれをわかる形で、本当に残念というか、そういう気持ちでいっぱいです。

 そして、やはり新しい食品安全の組織体制というのがやっとでき上がって、リスク評価をする場というのは、リスク管理からは独立させるんだという考え方ででき上がった食品安全委員会ですから、どのようにしてというのは難しいんですけれども、少なくとも、今の制度ではだめだというようなことではなくて、せっかくとにかくスタートした新しい体制ですから、それを本当のリスク分析ができるように、これは専門家の方にも、それぞれ非常につらいお立場の方が多いんだと思いますけれども、頑張っていただきたいとも思いますし、私たちも、交代交代で随分傍聴には行っておりますので、きょうはこういうことがあった、この間の会ではこういうことがあったというような状況を聞いておりますので、私たちでできる範囲のことをやっていきたいということを感じております。

山本(喜)委員 再度品川先生にお伺いしますが、今後は専門的なことでお伺いしますけれども、異常プリオンの存在する場所、特定危険部位ということでありますが、今研究が進んで、筋肉中のいろいろな細胞あるいは副腎といったところにも存在するということが研究の結果出てきていますが、今後、研究が進むと、さらに蓄積する部位が広がっていくと思うんです。なおかつ、プリオンというのは常に体じゅうをめぐっているわけですから、そうした意味で、今後、SRM除去だけで果たしていいのかということと、そうした今後の研究が進んでいく中でどうした分野に蓄積が出てくるのか、その際の人体に対する影響といったものについてはどのようにお考えでしょうか。

品川参考人 確かに、検出法の感度の状況というようなことを含めまして、今までSRMと言われていた体の組織以外、特に末梢のところにプリオンが蓄積しているということが、これは複数の個体で明らかになってきたことは確かであります。ただ、この量は現在のところ非常に少ないということ、それからもう一つ、人間が牛のプリオンをどれだけ取り込んだら感染するかというこのものは非常に重要なことなんですが、残念ながら、このデータが全くないわけなんです。あるのかもしれませんが、既に末梢のプリオンが、これは筋肉ではなくて筋肉の方まで行っております神経のところに存在しているということです。

 これは既に農林水産省、厚生労働省、食品安全委員会の方に連絡がしてありまして、我々は、言ってみれば研究をする機関で、ある意味で我々は重要と考えましたので、情報を速やかに行政の方にこれは提出してあります。ですから、そこのところで、この問題に対しては各省庁の方が対応されるというふうに考えております。

 それでよろしいでしょうか。

山本(喜)委員 そこで、SRMの除去だけではプリオンを完全に除去するということはやはり不可能だと思うんですね。

 ただ、この間の新聞に、いろいろな全国紙ですけれども、七月十九日に酒井ゆきえさんと小澤義博さんの対談形式で載っておりまして、たとえBSEに感染していても特定危険部位以外の部位は食べても安全であるというようなことで、アメリカ産牛肉は大丈夫なんですよというような宣伝が大きく載っておりました。

 それから、フグの毒と関係させて、日本でもフグの毒で何人か毎年死んでいるんだ、フグだって毒を取れば大丈夫なんだというようなことで言われているんですが、果たして、こうしたフグの毒と一緒にこのプリオンの問題あるいはSRMの除去の問題、これだけで安全だという、同列に論じていいのかどうか。そうした点についてどのようにお考えですか。

品川参考人 結論的に言いますと、最後におっしゃいましたフグの毒との比較のところに行き着くと思いますが、フグの毒だけではなくて一般の毒物といいますのは、どんどん薄めていけば毒性がなくなって、少なくなっていきます。例えば、砒素は毒です。しかし、砒素が含まれていないものはほとんどないと言っていいほど砒素は一般にあります。だけれども、これはそのような少量のものは毒と言っていないわけです。

 しかし、プリオンの場合は、薄めていっても、水に溶けるようなもののごとくどんどん薄まっていくわけではないということが言われております。塊のような形になって、含まれているところのそのプリオンの量は、ある一定の感染性を持った形で、感染性がない大量のもののところに浮いているだけだ。ですから、それをたまたま運悪く取り込めば発症する。言ってみればロシアンルーレットと同じでして、少なくなるということは、当たらない方の分母が非常に大きくなる、だけれども、たまたま運悪く当たってしまえばそれは発症する可能性があるというふうに私は理解しております。そこがフグ毒とそれからプリオンの違いであろうというふうに思います。

山本(喜)委員 ありがとうございます。

 次に、木村先生にお伺いしますけれども、食品安全委員会のまとめで、「おわりに」のところで、「二つの批判的意見に留意すべきである。」ということで言われているのは、輸入配合飼料の影響は不明であるというふうに書かれております。この点については木村先生はどのようにお考えでしょうか。

木村参考人 輸入配合飼料については国によって飼料の規制が異なります。したがいまして、それぞれの国の規制で行われておりますので、それをすべて掌握するということは極めて難しいのではないかというふうに思われます。

 ですから、ただいまは、日本国内で製造するものについての飼料はきちんと規制されているということになろうかと思いますが、もしも配合された製品が入ってきたときにどうなるのであろうかというふうに考えますと、日本とは異なった規制の製品が入るということになりますので、やはり日本の畜産の方から考えますと、規制レベルの異なったものが自由に入るということは、二つの規制があるということになりますので、それはふさわしくないということから、配合されたもの自身が入ることについても同等の規制が必要ではないかというふうに考えております。

 以上です。

山本(喜)委員 配合された飼料についても同等のものが必要だということだとすると、各国、基準がかなり違いますから、大変難しくなると思うんですね。その点の検査といいますか、そういう規制をする方法、これはどのようなものが考えられますか。

木村参考人 それは、やはりそれぞれの国で原料に対する規制がどのようになっているかということを承諾した上で、規制の遵守がどのようにされているかということのチェックであろうかと思います。

 ただ、現実的には、そういったことまで海外までさかのぼって日本がチェックをするということは及びませんので、現実的にはかなり難しいことではないか。

 また、別の言い方をしますと、日本では海外から配合飼料をどんどん入れなくてはいけないという状況は極めて少ないのではないか。日本の飼料産業が存在しておりますので、現実的には輸入が必要であるというふうなことは大きな問題にはならないというふうな気がいたしております。

 以上です。

山本(喜)委員 もう一点お伺いしますけれども、代用乳の問題ですね。

 この代用乳の問題が、原因の一つということで研究は進められているわけです。しかし、現在のところ、肉骨粉ということでの日本国内の規制あるいはアメリカ産の飼料規制ということになっていると思うんですが、この代用乳についての研究はどのように進んでいるのか。与えることによるプリオンの蓄積状況とか、そういったところまで進んでいるのかどうか、お伺いします。

木村参考人 私が代用乳について研究している機関ではございませんので、後で品川先生に海外の部分も込みで御紹介いただけたらと思うんです。

 私の方は、実際に生産現場でどのようにして起こったかということから、代用乳の内容あるいはそれぞれの疑わしい原料の追求、そういうことをすることによって危険なものを排除する手法をとるべきじゃないかと思っています。

 技術的に、代用乳の中の危険なものがどの程度発生するのかといったことは、再現研究の困難性はかなりあるのではないか。先ほどのように、ロシアンルーレットが当たった試験ではクロと出るでしょうし、当たらない場合はそうでないというふうになりますと、やはり母集団をできるだけ大きくして、現場で何が起こっているか、そういうことを疫学的に追求していく手法が、より現実的に可能な手法ではないかというふうに考えております。

 以上です。

山本(喜)委員 今の件について、品川先生、どのようにお考えでしょうか。

品川参考人 申しわけありません。私、飼料のことについて全く素人で、わかりませんので何ともお答えしようがありません。

山本(喜)委員 最後に、加藤さんにお伺いします。

 日本フードサービス協会というところは、日本の国内の減農薬、減化学肥料栽培というのを一生懸命やって、試食検討会とか情報交換、さまざま、食の安全、安心ということでやっておられるようでありますが、日本国内の食肉関連のそうした団体とはこうした取り組みは進んでいるのかどうか。

 それから、アメリカ国内においても全頭検査をするべきだというふうな声も出ているように聞いておりますが、日本のそういう外食産業として、日本国民はこのようなことを望んでいるんだよということをアメリカの食肉業界にもやはりちゃんと言っていくということが大事だと思うんですが、そうした点についてはどのようにお考えでしょうか。

加藤参考人 私どもは、一九八八年の牛肉・オレンジの自由化のときに、食肉生産者が素牛の生産を積極的にしなくなったというような兆候があったときに、生産者のところに直接赴きまして、日本の高級部位であります和牛を積極的にメニューにしているしゃぶしゃぶやステーキ、これは私ども外食産業の大事なマーケットの一つでありますし、食文化であります、これを絶やしてはいけないということで、ぜひ食肉生産を拡大してほしい、アメリカから牛肉が来ても全く怖くないと。

 なぜならば、先ほど来申し上げましたように、食のマーケット、食卓は、アメリカ産のメニュー、豪州産のメニュー、それから国産のメニューというすみ分けと、そういう、お互いに選択の幅を広げる中で牛肉のマーケットは広がるんだということで声をかけました。自来、日本農業と外食産業との親戚づき合いといいますか、いろいろな形で連携をしています。

 その中の一つが、先ほど先生が御紹介されましたJF基準といいますか、減減の、減農薬、減化学肥料の野菜を積極的につくってほしいということでJF基準を定めました。これは、農林水産省が当時推進した基準に合致したものでありまして、それをさらに加えたものがあります。

 そういうことで、野菜やその他の農業産品のみならず、食肉の生産者との間でも、産地見学会やそういう連携なり、そういうことは、私どもの協会の食材を中心とした事業活動の中で非常に大きなテーマになっています。

 また、アメリカの生産者に対しても、私どもの業界のニーズとして、例えば、部分肉流通がこれほどまで進展した、そしてまた、アメリカの部位の表現の中でショートプレートなんかは、日本のユーザー規格に合った形で骨や脂の規格を決めております。そんなことも、十数年前に、当時の畜産振興事業団を通じてそういう規格をアメリカの生産者につくっていただいたんですけれども、そういう形で、非常にマーケットに合った、消費者ニーズに合致した、品質とともに、牛肉を生産することについては常々大きな情報のパイプを持っております。

 今回のBSEによる問題についても、SRMの完全除去というところを徹底することによってこそ安全確保できるという視点から、アメリカの牛肉が、生産においても、あるいは加工においてもずさんさがあるということはよく日本の中で喧伝されますので、その誤解を払拭するための努力をしてほしい、ぜひ、それの啓蒙のビデオや資料をつくってほしい、あるいは日本に来て説明してほしいということで、パイプを持ち、そして先週、そういう勉強会をマスコミの方々をお招きして実施するなど、そういうことをやってきました。

 それが私どもの業界のアメリカの生産者に対する取り組みでありますし、また、日本の農業、とりわけ食肉生産者とは、八八年以来、そういう日本農業と外食産業との親戚づき合い、連携ということでいろいろなことをやっております。

 以上でございます。

山本(喜)委員 どうもありがとうございました。終わります。

山岡委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、来る八月四日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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