衆議院

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第9号 平成18年4月20日(木曜日)

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平成十八年四月二十日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 二田 孝治君 理事 松野 博一君

   理事 黄川田 徹君 理事 山田 正彦君

   理事 西  博義君

      赤澤 亮正君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    今津  寛君

      小野 次郎君    金子 恭之君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      斉藤斗志二君    谷川 弥一君

      中川 泰宏君    長島 忠美君

      並木 正芳君    丹羽 秀樹君

      西村 康稔君    鳩山 邦夫君

      広津 素子君    福井  照君

      御法川信英君    渡部  篤君

      大畠 章宏君    岡本 充功君

      川内 博史君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    篠原  孝君

      神風 英男君    鈴木 克昌君

      仲野 博子君    松木 謙公君

      森本 哲生君    柚木 道義君

      丸谷 佳織君    菅野 哲雄君

      古川 禎久君    森山  裕君

    …………………………………

   議員           山田 正彦君

   議員           篠原  孝君

   農林水産大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 木寺 昌人君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       松本 義幸君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          小西 孝藏君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (林野庁長官)      川村秀三郎君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     安次富 修君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     神風 英男君

同月十九日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     赤澤 亮正君

同月二十日

 辞任         補欠選任

  中川 泰宏君     長島 忠美君

  渡部  篤君     広津 素子君

  岡本 充功君     柚木 道義君

  佐々木隆博君     川内 博史君

  神風 英男君     篠原  孝君

  森本 哲生君     鈴木 克昌君

  山岡 賢次君     大畠 章宏君

同日

 辞任         補欠選任

  長島 忠美君     中川 泰宏君

  広津 素子君     渡部  篤君

  大畠 章宏君     山岡 賢次君

  川内 博史君     佐々木隆博君

  篠原  孝君     神風 英男君

  鈴木 克昌君     森本 哲生君

  柚木 道義君     岡本 充功君

    ―――――――――――――

四月十八日

 アメリカ産牛肉輸入再開の見直しと牛肉の原産国表示を求めることに関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一六二〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 公聴会開会承認要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 この際、各案審査のため、去る十八日から十九日までの二日間、宮崎県及び北海道に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。第一班岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 第一班として宮崎県に派遣された委員を代表して、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、稲葉大和委員長を団長として、黄川田徹君、山田正彦君、西博義君、安次富修君、伊藤忠彦君、小野次郎君、中川泰宏君、森山裕君及び私、岡本芳郎であります。

 このほか、現地参加議員として、古川禎久君が出席されました。

 会議は、昨十九日午前九時より宮崎市内のワールドコンベンションセンター・サミットにおいて開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の四法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、綾町長・宮崎県町村会会長前田穰君、国富町飼料用稲生産振興会会長笹森義幸君、農事組合法人夢ファームたろぼう代表理事組合長大浦義孝君及び串間市農業委員会会長末海重俊君の四名でありました。

 意見陳述者の陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。

 まず、前田穰君からは、複合経営が多い宮崎県農業の実情を踏まえ、経営所得安定対策とともに品目別対策を充実すべきこと、単一経営、大規模化を志向する北海道とは異なる基準を設ける必要があること、経営所得安定対策の運用面において、個人情報保護法と整合性を図り、事務手続を簡略にする必要があること等の意見が述べられました。

 次に、笹森義幸君からは、食料生産及び環境保護の視点から農業者を保護する政策が必要であること、米国産牛肉輸入再開の際には日本のルールを遵守させること、粗飼料を自給するために耕畜連携を推進する必要があること等の意見が述べられました。

 次に、大浦義孝君からは、農事組合法人夢ファームたろぼうを設立した理由と法人化後の経緯、長期的視点に立って圃場整備を進める必要があること及びそのコスト負担のあり方に配慮が必要であること等の意見が述べられました。

 最後に、末海重俊君からは、経営所得安定対策により耕作放棄地が発生する懸念があり、その対策を講ずべきこと、兼業農家によって支えられてきた産地の維持が困難になるおそれがあること、経営所得安定対策に関して農業者にさらなる周知徹底を図り、理解を得る必要があること等の意見が述べられました。

 次いで、各委員から、高齢化が進行する農村での後継者育成、圃場整備を進めるに当たっての集落内での負担のあり方、すべての販売農家に直接支払いをするという案についての見解、畜産農家の自給飼料確保策、地方自治体における経営所得安定対策への取り組み方針、青年が新規就農するに当たっての問題点、三位一体改革が進行していく中での地方自治体のあり方、集落営農における共同販売と農協との関係など多岐にわたる質疑が行われました。

 なお、会議終了後、東諸県郡綾町を訪問し、綾豚会自家配合飼料工場、松井農園等町内農業を視察いたしました。

 以上が第一班の概要であります。

 会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。速記録は本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 今回の会議の開催等に当たりましては、地元の関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

稲葉委員長 次に、第二班松野博一君。

松野(博)委員 第二班として北海道に派遣された委員を代表して、団長にかわり私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、二田孝治理事を団長として、梶山弘志君、金子恭之君、近藤基彦君、御法川信英君、仲野博子君、松木謙公君、丸谷佳織君、菅野哲雄君及び私、松野博一であります。

 会議は、昨十九日午前九時より帯広市内の北海道ホテルにおいて開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の四法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、北海道農業会議副会長吉田義弘君、全十勝地区農民連盟委員長山田富士雄君、全国農協青年組織協議会副会長平和男君及び北海道農民連盟書記長白川祥二君の四名でありました。

 意見陳述者の陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。

 まず、吉田義弘君からは、担い手の経営安定の観点から生産条件格差是正対策について十分な支援水準を確保すること、生産条件格差是正対策に係る交付金について所得税の特例措置を検討すること、過去の生産実績に基づく支払いが農地の流動化を阻害することのないよう特段の措置を講ずること等の意見が述べられました。

 次に、山田富士雄君からは、意欲ある担い手の経営安定を図り、食料自給率の向上につなげるため、毎年の生産量、品質に基づく支払いに係る予算の充実を図ること、また、過去の生産実績に基づく支払いについて新規作付等に対する別途の支援策を講ずるとともに、条件不利地に対する一定の配慮を行うべきこと等の意見が述べられました。

 次に、平和男君からは、認定農業者制度の運用改善を図り、真に意欲と能力のある担い手の育成に資する制度とすること、毎年の生産量、品質に基づく支払いについて生産者の努力が報われる制度設計とすること、採種農家に対する支援措置を講ずること、収入変動影響緩和対策について農業災害補償制度との関係を整理すること等の意見が述べられました。

 最後に、白川祥二君からは、農業における食料の安定供給と多面的機能の二重の役割が発揮できる施策が求められており、特に、環境直接支払いの導入が急務であること、農地・水・環境保全向上対策に係る支援単価を引き上げるとともに、地方公共団体からの助成を義務化しないこと等の意見が述べられました。

 次いで、各委員から、品目横断的経営安定対策の対象を一定の経営規模以上の農業者等に限定することに対する評価、食料自給率に対する考え方及びその向上のための方策、農業が有する多面的機能を評価する施策の必要性、食料自給率向上のため国産農産物消費に対する国民の理解を深める必要性、真に意欲と能力のある担い手の判断基準、食料自給率目標値の実需面から見た妥当性、品目横断的経営安定対策の導入が農地の流動化を阻害する可能性、農地・水・環境保全向上対策の制度設計のあり方など多岐にわたる質疑が行われました。

 なお、会議終了後、日本甜菜製糖株式会社芽室製糖所及び実際に現地で畑作を営んでおられる梶澤幸治氏の農場を視察いたしました。

 以上が第二班の概要であります。

 会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。速記録は本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 今回の会議の開催等に当たりましては、地元の関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

稲葉委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

稲葉委員長 次に、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 各案につきまして、議長に対し、公聴会開会の承認要求を行うこととし、公聴会は来る五月十一日木曜日開会し、公述人の選定等は委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 引き続き、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、大臣官房統計部長小西孝藏君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長中川坦君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、林野庁長官川村秀三郎君、水産庁長官小林芳雄君、外務省大臣官房審議官木寺昌人君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長松本義幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自由民主党の岡本芳郎でございます。

 本日は、まず、民主党案について質問いたしたいと思います。

 民主党さんも随分農業を前向きに考えていただいておりまして、その点については評価するところでございますが、いろいろ数字の話を聞いておりますと、どうもすっきりこないところがありますので、少々確認したいと思います。

 特に、将来目標の六〇%に関しまして、民主党案では、三月十七日の本会議での民主党の岡本議員の発言では、過去最大の作付面積で過去最大の単収、合計で二一%の自給率増となるから六〇%になるという説明がございました。また、四月十二日の委員会では、山田議員から、小麦、大豆、菜種だけでなく、畜産物や魚介類を含めて六〇%を達成すると言っておられます。

 発言の内容が大分食い違っておるのではないかと思いますので、どちらが正しいのか、はっきりしていただきたいと思います。

山田議員 岡本委員の質問について答えさせていただきます。

 私どもの法案において、岡本議員が、過去最大の作付面積に対して過去最大の単収でいけば六〇%達成可能だ、そういう話をしております。確かにそういう意味では、小麦だけで七百八十万トンとなって、総需要の六百三十万トンを上回るんじゃないか、そういう御指摘があったんじゃないかと思いますが、私どもの方は、まず自給率五〇%を必ず達成すること、それができた後、六〇%が目標であります。そんな中で、一つの目安として過去最大作付面積に対する過去最大の単収を本会議で述べただけでありまして、現実的には、例えば魚介類にしましても、かつて一〇〇%以上あったものが今五五%と、非常に自給率が下がってきている。

 これは、一つは、資源がかなり減ってきているということがあって、資源回復事業を徹底させるとか、あるいは、非常に輸入魚の価格が安いということもあって、国内で生産を取りやめているということもありますから、だから、思い切った政策を展開することによってさらに魚介類の自給率を上げることができ、畜産物についても、これから十年たち、さらに二十年の間にはさらに自給率を十分上げることが可能であると。

 そういうことで、岡本議員の発言の趣旨はあくまで目安でありまして、私ども、自給率五〇%をまず達成する、その次にあとの一〇%、六〇%の達成が目標であります。そういう意味で、決して、岡本議員の本会議での答弁と私どもの答弁と、そう食い違っているものではございません。

岡本(芳)委員 自給率を法律で書く以上、これは、五〇%の目標であれ六〇%の目標であれ、ぴしっとした積算が必要だと私は思います。十年後の五〇、あるいは将来目標の六〇につきまして、どういう積算でやったのか、まず教えていただきたいと思います。

 特に、やはり品目ごとに積み上げなければなりません。また、需要と供給はぴしっと合っているのか、さらには農地面積がちゃんとあるのか、あるいは、裏作を利用する場合には、作付時期との関係、こういったものはどういうふうになっているのか、私は具体的な数値が欲しいと思うんです。

 これは、この審査中にぜひこの委員会に提出願いたいと思いますが、いかがでございますか。

篠原議員 お答えいたします。

 一〇〇%完全なものというのはなかなかできにくいんだろうと思いますけれども、岡本委員御指摘のとおり、法律に書く以上はきちんとしなければならないという指摘は、そのとおりでございます。我々もそれなりに計算してあります。

 五〇%の方で申し上げますと、今四〇%なわけですけれども、まず米でございますけれども、米は、余ったりしているということで、これは需要量に見合う生産を行うということで、面積でいいますと百三十から百四十万ヘクタール、この程度を想定しております。

 小麦ですけれども、小麦以下は、目安というか、計算上可能であると。どういうふうに考えたかといいますと、過去、我々はそれなりの自給率を達成していた。この二、三十年で急激に減ったわけです。過去の生産量というのは、潜在的な能力として日本農業もいまだ持ち続けているということを想定いたしまして、まず麦は、これは小麦だけではないんですが、麦全体で四百十万トンもつくっていたことがあるわけです。それを小麦ですべてつくったらどうなるか。四百万トンぐらいになるわけです。五十万ヘクタール程度使えるのではないか。これには、今岡本委員の御指摘のとおりの部分があります。裏作で使うという耕地利用率の問題があります。

 ただ、その場合も、小麦の場合ですと、関東平野以西は麦をつくって米ができる。しかし、北陸、福井とか石川とか新潟、あのあたりは無理です。だから、東北は当然無理です。ですけれども、西日本の田んぼはほとんど、麦をつくったり、あるいは菜種をつくった後、米ができる。

 我々は、耕地利用率を高める、今は一〇〇%を切っていますが、もちろん三十八万ヘクタールの不耕作地があったりするから当然ですけれども、なるべく耕地利用率を高める、少ない農地を有効活用する、それが農地の維持にも向いているということで、二毛作を推奨するということを考えております。

 大豆は五十二万トン、二十万ヘクタール、それから菜種は三十二万トン、六万ヘクタール、雑穀は、いろいろあるわけですけれども、代表的なもので申し上げますと、それで自給率の向上につながるという例で申し上げますと、ソバですけれども五万トンで七万ヘクタール、それから飼料作物は四百四十万トンで九十万ヘクタールから百万ヘクタールということで、この程度は可能ではないかということで計算いたしました。

 これは生産の方の目安でございまして、需要の方になりますと、結構かけ離れる部分があるのではないかと正直のところ思っております。

 例えば、麦四百万トンを現状で考えますと、そんなに国産の小麦が使われているのかというと、使われておりません。今六百万トンぐらい小麦がありますけれども、日本めん用とかいうのは国産の小麦がたくさん使われておりますけれども、パン用の小麦などは一%ぐらいしか国産は使われておりません。しかし、それも国産の小麦を使っていただく。あるいは、そのもっと前のことを申し上げますと、それぞれの地域に合ったパン用の小麦を開発してというのを、それは農林水産省の研究所挙げて取り組んでいるはずですから、それを活用して、なるべく国産の小麦を使っていただくというようなことでやっていけばいいのではないかと思っております。

 御要望がございましたので、その数値をいずれこの委員会に提出したいと思っております。

岡本(芳)委員 ぜひ、その積み上げの数字を教えていただきたいと思います。

 ただ、今言われた中でも、昔は六百万ヘクタール以上の農地があったんですよね。今は四百七十四、将来はもっと減るわけでございますが、そういう条件下での最大面積だとか最大収量とかいうのは非常におかしいと思いますし、あるいは、西日本の方で、裏作で麦、そして表で米、これはちょっと今無理なんですよね。

 今、西日本はほとんどが早場米です。四月、今ごろに大体田植えは終わっておるんですよ。そうしなければ米の時期がおくれるわけです。おくれたら台風でやられちゃうんです。そればかりか、米が終わった後、冬の野菜が本番なんです。野菜で金もうけして農家は成り立っておるんですよ。野菜をやるためには、八月ぐらいにはもう刈り取っておかなければだめなんですよね。

 そういうことを考えると、そういうふうな小麦の面積を確保することは非常に厳しいのではないかと思います。これは、また後ほど数字を見てから議論したいと思います。

 次に、直接支払いの額、これも一兆円ということを法律で書くことになっておりますが、おおむね一兆円となっていますね。三月十七日の本会議では、篠原議員が、一兆円はきちんとした数字ではない、三兆円ある農林事業のうち一兆円を充てると言いました。さらに、四月五日の委員会では、菅議員が、一兆円で足りない場合、もっとふやすことも選択肢としていると。こういうふうに、言うたびごとに数字がいいかげんなわけでございます。こういうものをこれまた法律に書くというのは余りにも無責任であると思うわけでございますが、どう御答弁いただけますか。

山田議員 実際に、実現するために少なくとも一兆円は必要であって、そのための予算として一兆円を私どもは法案に明記したわけですが、例えば、我々のシステム、米とか麦とか大豆、特に米の場合に、WTOでもしも関税が下げられた場合に、そういったものに対してそれだけのお金を入れなきゃいけなくなってくる、そういったことを考えると一兆円では足りなくなってきます。

 今の状況を前提として、一兆円、これを麦、大豆、菜種等々に割り振っていけば自給率を一〇%高めることは可能であり、そのための予算である、そう考えておりますが、今申し上げましたように、少なからずとも、今WTOのいろいろな会議もなされておりますが、そんな中で不安定な要素というのはいろいろと考えられますので、そこで、一兆円の金額も変わっていく、一兆円、もっとそれ以上に上げなきゃいけなくなるということがあり得る、それが篠原議員の答弁であり、菅さんの答弁であり、その辺の金額が動いていく可能性があるということの答弁だ、そう考えていただければと思います。

岡本(芳)委員 そういうことなら、法律でわざわざ一兆円と書くのは余りにも激し過ぎるんじゃないかと思いますね。これは、単なるアドバルーンかパフォーマンスみたいな感じにしか受け取れないと私は思います。

 さらに、次の質問に入りますが、一兆円の財源につきまして、これも民主党さんの説明によりますと、農業土木事業予算一兆三千億円から五千億円、民主党が予定している地方への一括交付金十八兆円のうちから五千億を充てるとしております。

 ところが、平成十八年度の農業農村整備事業予算、これは民主党さんの言われる農業土木事業予算でございますが、今、約七千六百億円しかありません。ここから五千億円回しちゃいますと、残り二千六百億円しかないわけですね。このお金でどうして、農業水利施設、先輩の農家の方々が営々として築かれてきた農業水利施設、こういうものが今更新時期に来ております、これも更新もできなくなります、水は届きません、それで農業はできるんでしょうか。

 さらに、きのう山田議員もお聞きになったと思いますが、やはり圃場整備をして、それを契機に集団化する、それで効率を上げる、これがこれから必要なんですが、そういう予算もなくなってしまいます。これでは、農業の構造改革なんか、とてもじゃないができないわけでございますが、その点、山田議員はどのようにお考えでございましょうか。

 また、圃場整備の整備率は、前に山田議員は七〇%とおっしゃいましたけれども、現状の整備率は六〇ということでございますので、よろしくお願いします。

山田議員 財源についての御質問でございますが、よく岡本委員も調べていただきたいと思います。

 例えば、平成十七年度ですけれども、農業用予算の公共事業、これは一兆三千億をちょっと切っているかと思います。その全体一兆三千億の中に、それは農業予算だけでなく、漁業予算、漁港予算とか林野予算とか、いろいろなものも含まれているかと思います。その中で、実際の農業土木というのが七千六百億とか、その辺であるということはお聞きはしておりますが、その中で、実際に継続的な工事、補修工事とか、あるいは水利を通させるための工事、あるいは新規事業もあるかと思います。あるいは国営かんがい事業等も継続事業でありますが。

 我々、精査すると、必要でない事業、そういったことも十分あり得る。そういったものを削除し、あるいは、本当に必要なもの、水利の、先ほど岡本委員が申しておりました、大事な農地を継続、維持し、そしてかつ、どうしても必要な新しい農地の造成等々、そういったもの、それにだけ入れていけば、私どもは、その五千億の調達は十分可能であり、あるいは、もう一つ、転作奨励等々に含めておった稲作の三千億等々ですね、それについては、私どもも、それも含めて、その五千億の中に入れることができるんじゃないか、そういう検討もしておりますので、現実的な財源の措置には十分対応できると考えております。

岡本(芳)委員 大分、今までの話と違うようでございますが。

 もう一回はっきり言っておきますが、七千六百億円のうち約六千億円というのが、かん排の予算それから圃場整備、そして防災関係の予算なんですよ、六千億が。残り千六百億円しかないわけですよ。そういう点、本当にこれは、この農業土木事業と言われる予算を十分によく見ていただいて発言していただきたいと思います。

 公共事業、悪い悪いと言いましても、ちゃんとした効果を発揮したものしか今やっておりませんので、それは誤解のないようによろしくお願いいたしたいと思います。

 民主党さんは以上で終わりたいと思いますが、何かございますか。

山田議員 財源について、我々は政府ではありませんが、過去の予算等から見て、これは必要である事業、これはそうでないのではないかという検証を重ねて、その上で無駄な公共事業を排して、本当に農業土木にとって必要なもの、これを第一義に考えていきますし、先ほど申し上げましたように、米とか麦とか大豆の、個別に今までやっている経営安定対策費二千億、そういったものも当然その五千億の中に入りますので……(岡本(芳)委員「今までなかったじゃないですか」と呼ぶ)はい。財源としては可能でございます。

岡本(芳)委員 記録に残りますので、そのように理解させていただきます。

 次に、農水大臣にお伺いしたいわけでございますが、今回、品目横断的対策とあわせて、農地・水・環境保全対策が新しく出てきておりますが、私は、この事業は本当にすばらしいと物すごく評価しておるところでございます。

 農家の運営は、いわゆる担い手だけでは続きません。やはりその集落全体での活動があって初めて農村としての効果を発揮するわけでございます。そういう点から、この事業は本当に必要な事業であると思いますが、内容が内容だけに、これからの予算折衝等においては非常に厳しいことが予想されます。ぜひ大臣に十分な力を発揮していただきたいと思うところでございますので、その意気込みのほどを聞かせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

中川国務大臣 おはようございます。

 今、岡本委員から御指摘ありましたように、今回の法案は、一つは産業政策としての品目別経営安定対策、もう一つは農地、水、環境のための政策という、車の両輪ということを何回も申し上げておりますが、これは、言うまでもなく基本法の中で、あくまでも生産サイドだけではなくて、国民各分野、もちろん国、自治体も含めて役割というものをみんなで果たしていこうということによって、食料供給はもとより、国土の大部分を占めます農地あるいは山といったものをみんなで守っていこうと。これは生産サイドにプラスになることは言うまでもありませんけれども、産業政策としても環境に十分配慮をする、とりわけ、農業におきましては、自然あるいは水、土地あるいは面的な整備というものが極めて大事であるということでございます。

 アンケートによりますと、きちっと水管理等をしていかなければ将来大変不安だという意見、あるいは、そのためには農業者以外の人たちとの協力が必要であるということが、圧倒的にそういう意見が多いわけでありますので、国民的なコンセンサスもあるというふうに考えております。

 そういう意味で、単に、生産サイドあるいは農業者サイドだけではなくて、農業者以外の方々にも御理解と御協力、あるいは共同作業をしていただきながら、農地、水あるいは環境の整備をしていこうということが、今回の車の両輪の大きな一つの車輪でございまして、そういう意味で、セットとして、この政策を推し進めていくことが、国民全体にとっても、また国家にとっても極めて大事であるというふうに考えております。

岡本(芳)委員 ありがとうございます。

 ただ、実施面においていろいろと細かいこともあろうかと思いますが、事務局より具体的な内容について御説明願いたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策は、二つの内容を有しております。

 第一に、地域ぐるみで農地、農業用水等の適切な保全とあわせまして、施設の長寿命化や環境の保全にも取り組む共同活動と言っておりますが、これが一つ目でございます。

 それから第二番目に、地域の中で、まとまって化学肥料や化学合成農薬の使用を原則五割以上低減する先進的な営農活動、これが二つ目でございます。

 これらを協定に位置づけまして、多様な主体の参画を得て、総合的、一体的に実施する活動に支援するという考え方でございます。

 具体的な仕組みといたしましては、まず、集落単位あるいは水系単位などで、地域の実情に応じて共同活動の範囲を決めていただきます。

 次に、農業者のみならず、今大臣からもお話がありましたように、地域住民等の多様な主体の参画も得た活動組織を設立する。

 第三に、資源の適切な保全に加えまして、施設の長寿命化あるいは生態系の保全、景観保全といった環境保全活動などの活動計画を策定した上で、市町村と協定を締結する。

 第四番目に、この協定に位置づけられた活動を行った場合に、活動区域の農振農用地区域の農地面積に応じて支援交付金を交付するということでございます。

 さらに、営農活動への支援としまして、こうした地域において、相当程度のまとまりを持って化学肥料、化学合成農薬の大幅な使用低減等を協定に位置づけて取り組んだ場合には、実施面積に応じて支援交付金が交付される、こういう仕組みになっております。

岡本(芳)委員 この農地・水・環境保全向上対策、今お話がございましたが、地域の共同作業に対し支援するということになっております。ところが、今実施しております中山間地域等直接支払い制度、これも、この交付金の半分は地域の共同作業に使うことになっております。これは両方が行くことになるわけでございますが、その場合に、かなり現場で混乱を招くのではないかということが心配されます。両方とも大変重要な仕事でございますので、そのような指導方針について局長さんの方から御意見を聞きたいと思います。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からお話がありましたように、中山間の直接支払い制度では、この交付金の一部を共同活動に充てるように指導しているところでございます。

 本来の考え方といたしましては、農地・水・環境保全向上対策は、地域を単位として、共同活動への支援を通じて、農地、農業用水等の社会共通資本という資源を将来にわたって適切に保全管理していくということですし、中山間等の直接支払い制度は、個々の農家に対して平地との農業生産条件の格差を補正するという考え方ですので、両政策のねらいというのは異なるわけですが、先生、先ほどおっしゃいましたように、一部活動が重複することがございます。今回の施策の導入に当たりましては、これらの両政策が並立し得るようにしていく必要があるということでございますが、今申し上げました一部の重複につきまして、両政策の実施に当たって考えていく必要があるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、現在、十八年度にモデル事業を実施しておりますので、その状況も踏まえながら、この両方の施策が並立し得るように、今後、調整も含めて検討していきたいというふうに考えております。

岡本(芳)委員 ありがとうございました。

 ただ、心配するのは、この事業も相当地方負担があると思います。今、地方財政が非常に厳しいわけでございまして、本対策を実施する上での地財対策を十分しっかりとやるように要望しておきます。

 最後に、品目横断的経営安定対策について一つ質問いたします。

 本対策は、何といっても、相手が米、麦、大豆、てん菜、でん粉用バレイショということになっておるわけでございますが、昨日の現地公聴会でもそうでありましたが、西日本の方は米以外はほとんどないんですね。そういう特殊なところ、これは、四国、九州、皆そうなのでございますが、そういうところは、果樹、野菜の複合経営で行っておるわけでございまして、そういうところでのこの事業、品目横断的の対策ということになりますと、所得特例というのによるしかないと思われますが、その要件なりあるいはメリット、どんなメリットがあるのかというのを、時間がないので簡単に御説明願いたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 経営規模は小さくても、有機栽培あるいは複合経営などによりまして相当水準の所得を確保されている場合については、基本的な要件の規模に達していなくても対象にすることが適当だと考えて所得特例を設けているところでございます。

 具体的には、市町村が定められております基本構想の目標所得、これの過半の農業所得を確保している、これは農業として確保していただければ、それは野菜であれ果樹であれ畜産であれ結構でございますけれども、その目標所得の過半の農業所得が確保されておりまして、かつ対象品目である米、麦、大豆からの収入あるいは所得、あるいは経営規模、経営面積でございますね、それが全体のおおむね三分の一以上であるという経営については、本対策の対象とすることができるというふうに措置しているところでございます。

 この対策は、いわゆるゲタとナラシでできているわけでございますが、麦、大豆等をつくっておられない地域におきましては、米に対するナラシがこの制度から対象になるということでございます。このナラシにつきましては、従来実施しておりました政策に比べまして政府の負担額が全体の四分の三になるとか、所要の制度改善を講じてきておりますので、米の価格安定に大きく寄与するものと考えております。

岡本(芳)委員 時間が参りました。ありがとうございました。終わります。

稲葉委員長 次に、大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 私は、今回、政府の方から三法案が提出され、民主党の方からも一つの基本法が提出されておりますので、この四法案について質問をし、政府の基本的な考え方、あるいは民主党の基本的な考え方についてお伺いをさせていただきます。

 質問に先立ちまして、私は一つのある本の中でこのような文を目にしましたので、ちょっと御披露しながら、この基本的な考え方が大事だなと思いながらも、現在かなりの部分で農業も水産業も非常に疲弊しているというこの現実をどうやって回復させるかということが大事だと思いますので、ちょっとこの本の一部を紹介させていただきます。これは、「国家の品格」という本を書いた藤原さんのもう一つの書、「祖国とは国語」という本の中であります。

  地球上の人間のほとんどは、利害得失ばかりを考えている。これは生存をかけた生物としての本能でもあり、仕方ないことである。人間としてのスケールは、この本能からどれほど離れられるかでほぼ決まる。脳の九割を利害得失で占められるのは止むを得ないとして、残りの一割の内容でスケールが決まる。ここまで利害得失では救われない。

  ここを美しい情緒で埋めるのである。日本の官僚は省庁の利益ばかりを考える、と言われている。これをもっとも考慮した人がもっとも出世するからである。利害得失である。もし官僚の脳の一割に、もののあわれが濃厚にあれば、その判断は時に利害を離れることもありうる。

  たとえば日本の農業を考える時、経済的には外国から安い農産物を自由に輸入することが最善としても、すぐにそう決断しないかも知れない。農業の疲弊は田園の疲弊であり、美しい自然の喪失である。もののあわれは、四季の変化にめぐまれた日本の繊細で美しい自然により育くまれるから、この情緒も衰退するだろう。世界に誇るこの情緒は日本文化の淵源であり、経済上の理由で大きく傷つけてよいものだろうか、と反問するに違いない。こう考えることができるだけで、経済一直線の人に比べスケールの差は歴然である。時には美しい情緒を優先した判断を下すこともあるだろう。

  これら情緒は我が国の有する普遍的価値でもある。普遍的価値を創出した国だけが、世界から尊敬される。経済的繁栄をいくら達成したところで、羨望や嫉妬の対象とはなっても尊敬されることはありえない。

こういう文言でありまして、私も最近の日本の国の形を見ていますと、経済的に何とか世界に追いつき、そして立ち直らなければということが優先されていまして、この情緒とか、いわゆる田園風景から生まれる環境で、日本人がどれほど大きな影響を受けながら育ってきたかという、その郷土あるいはふるさとの恩恵というのですか、そういうものをどうも忘れがちなのではないかと私は思います。

 きょう、ちょうど自民党の梶山先生も理事でおられますが、梶山静六先生は、愛郷無限という言葉を残されました。この愛郷無限という言葉は、今日本の政治の中でどれほど尊重されているのか。ほとんど愛郷無限なんという言葉はなくなってしまった、私はそう思うんです。ふるさとというもの、あるいは農業、水産業のそういう環境の中で、日本人が大きく影響を受けながら今日を築いてきた、このことは私はもう一度考え直さなければならないと考えているところであります。

 さて、そういうところで、きょう久しぶりに私は農林水産委員会で質問をさせていただきますので、いろいろと農業をやっている人とか水産業の人からアンケートをとらせていただきました。

 このアンケートの内容は、幾つかあるんですが、一つは、外国産、外国から輸入される野菜等も、肉と同じように農薬使用基準というものに準じた使用基準を確保してほしいというお話ですとか、あるいは、地産地消の拠点となる直売所を充実させてほしいとか、あるいは、若者に魅力ある農業の発展を期待したいので、そういう意味で努力をしてほしいとか、非常に切実な御意見もございます。

 農薬問題、農薬の残留について、外国産農薬の基準というのがよくわからないと。やはり、我々農家として、国民が食べるものは安心して食べられるものにするためにも、外国産の輸入農産物の農薬残留の基準というものを明らかにしてほしいとか、地産地消という意味でも、直売所の整理とか後継者の問題についての御意見が大変多くございますので、こういうこともちょっと御披瀝をさせていただきます。

 さて、そういう中で今回質問をさせていただきますが、まず、このことについては、政府の方と民主党の方から両方御意見をいただきたいんですが、今いろいろと申し上げましたが、これまで、戦後六十年間の日本の農業政策において何が欠けていたんだと。平成十一年に食料・農業・農村基本法というものを制定しましたが、大臣、今、これまでの日本の六十年間を振り返ってみて、日本の農業政策において欠けていたもの、あるいは、何が問題で今回さまざまな法改正ということになったのか、その基本的な御認識を中川さんと民主党の提出者にもお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 今、大畠委員が冒頭申されたことは、ある意味では、これは人間の悩みの根源だろうと思いますね。

 中国の古典でいえば、衣食足りて礼節を知るとか、国破れて山河ありとか、もう二千年も三千年も前から賢人たちはこういうことに悩んでずっと来て、今の我々にとっても非常に重たい言葉であろうと。また、近世ヨーロッパでも、ホッブズの「リバイアサン」という本なんかもまさにそれを問うているわけでありますし、また、合理性だけでいいのかということになりますと、二百年ほど前のイギリスでの、マルサスとリカードとの人口と食料、経済合理性との大論争みたいなものもありましたし、そういう中で、日本においても、御指摘の物の哀れ、平家物語でも方丈記でも、あるいは本居宣長でも、先人たちがそういうものに悩み、そして、いろいろな教訓を残してきているわけで、「国家の品格」、私も大変いい本だなと思っておりますけれども、現在において問われている問題だろうというふうに思います。

 日本は、農耕あるいは漁業を中心にしてやってきた国家でありますけれども、何回か江戸時代以降においても飢饉があって、一番近いところでいえば、平成五年には大凶作があって、国民的パニックがあったわけであります。そういう中で、我々は、特に明治以降は、農村部が大変疲弊をして、そして近代国家の中で、ある意味では、人材といいましょうか、人間の供給源であると同時に、疲弊したときには最も最初に年寄りも苦しんでいくという、ある意味ではバッファーみたいな側面があったわけであります。

 したがって、戦後、日本が復興のときには、まず国民に対する食料の確保というものが国家の復興の最大の政策の一つであったわけでございまして、したがって、肥料とか電力とかそういったものに傾斜生産をしていくという方策をとったわけであります。

 そうしていく中で、都市と農村との格差がますます広がっていったという中で、昭和三十六年に農業基本法というものが制定されたわけでありますけれども、これは農業と工業、あるいは、特に最近ではIT関係は瞬時にして世界を駆けめぐるわけでありますけれども、生産活動とその効果において時間差がある。ITであれば一瞬、あるいは工業製品でも数カ月あるいは数日。ところが、農業は基本的に一年に一回、日本の場合にはおおむね一年に一回、こういう時間差と生産性の差、それから、農村部の農業者と都市部のそれ以外の二次産業、三次産業との間の所得格差、こういうものを是正していこうというのが農業基本法の趣旨であったわけでありますけれども、それだけでは、ただ生産だけして後は知らないよということになりますと、前回もここの委員会で申し上げたんですが、米の過剰問題とか、あるいはまた、他方、必ずしも消費者の支持を得ないことによることも原因で、輸入品の方がいいのではないかというような消費者の志向等もあって、これだけでは日本の食料政策、ひいては国民全体の政策にこたえることができないということがあったわけであります。

 そうしている中で自給率もどんどん下がってくるという中で、国民全体で食料政策を考えていこうということが原点になりまして、九八年、九九年、大変長時間この委員会でも御議論をいただいてできたのが新しい基本法なわけであります。これはもう法律に書いてあるとおり、単に生産サイドだけではなくて、食品産業であるとか消費者であるとか、それぞれのセクターでみんなで食料というものを考えていこう、また、国民共通の財産である農業、農村というものを考えていこうということで、みんなで、つまり、川上と川下、川下から川上という共生の関係で、みんなでこの大事な問題に取り組んでいこう、歴史の教訓をまつまでもなく、我々の生命あるいは子孫に対する責任という観点からも、みんなで考えて努力をしていこうという趣旨でできた法律が新しい基本法であるというふうに理解をしております。

山田議員 大変大きな問題でありますが、ちょうど私、三十年少し前、田舎で、五島で牛、豚を飼っているころ、アメリカのニクソン政権のときに大豆を七十日間禁輸したんですが、その禁輸のときに、えさが倍に上がりまして牛の値段が半分に下がるという、日本では豆腐パニック、それが起こったことがありました。そのとき、イギリスの自給率が三七%、ドイツが六五%ぐらいしかなかったんです。それからドイツもイギリスも、自給率を徹底して達成するために、それこそ国を挙げて、今や九七%とか八〇%近い自給率にいたしました。

 ところが、その間、日本はどうしていたかと申し上げますと、いわゆる高度経済成長時代を迎えて、テレビや自動車を売る、そして農産物を買う、これが日本の生きる道だ、そういう方向を続けてまいったんじゃないか、そう思います。

 そういうことで、本来ならば、本当に食料安全保障、食の安全というものを大事に日本の農政そのものがすべきであったのに、産業、通商政策、これに国民すべてが踊ってしまって、気がついてみると大変な農業事情、食料事情になって、そして、農漁村は疲弊し、今日に至ったのではないか。

 確かに、中川大臣が申されましたように、食料・農業・農村基本計画等々において、これから農業を大事にしなければならないということに至りましたものの、例えば、この五年間で自給率はどうなったか。そして、この五年間で農業や漁業はさらにその生産は落ち込み、疲弊してきているというのが現状でありまして、このままでは日本の農業と漁業は、下手をするとつぶれていくんじゃないか。そうすると、日本の食料、日本の形というものはどうなるだろうかと私は大変心配しております。

 そんな折、我々は、本当に自給率を上げるためにどうしたらいいのか、食の安全を守るためにどうしたらいいのか、そういう趣旨で今回、基本法を出させていただきました。

大畠委員 中川大臣も、そして山田提出者も、御認識は一致なんだと思うんですね。基本的に、過去の日本の戦後の六十年間の経済成長、とにかく戦後の復興をして、何とか国民が皆食える国をつくろうということで頑張ったことは事実です。その経済成長の陰に、食料や日本国内での食料政策というのがどうも一歩二歩後退して、経済優先という形で今日に来て現在の状況になっているんじゃないか、私もそういう認識を持っています。もちろん、先ほどちょっと読み上げさせていただきました藤原先生も、「経済的には外国から安い農産物を自由に輸入することが最善としても、」そういうくだりがありますが、大体そういう認識なんだろうと思うんです。

 そこで、そういう状況の中で、今回、農業の担い手に対する直接所得補償制度、あるいは、政府の方では品目横断的経営安定策というものを打ち出されました。これは私は当然だろうと思うんです。なぜこれまでこういうことをやらなかったのか。では、アメリカはどうなんだ、経済大国のアメリカはどうかというと、アメリカもやっているし、フランスもやっているんですね。

 なぜ日本だけが今日までおくれてしまったのかという感じすらするわけでありますが、もちろん、WTOに抵触しないように青の政策とか緑の政策ということでありますが、政府の、今回の品目横断的経営安定策をここに来て導入するという決断をした背景と基本的な考え方、それから、民主党の提出者にも、直接所得補償制度というものを導入しようとする法律案になっていますが、その背景と基本的な考え方について、お二人からお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 先ほど申し上げましたように、九八年、九九年に大転換をいたしまして、その法律が文字どおり基本法としてあって、五年に一遍基本計画を見直してということでございまして、ある意味では、その基本法の目的が前提にあるわけであります。

 そういう中で、今御指摘のように、WTO等の国際情勢もございますし、いよいよこれから、やる気と能力のある農業者あるいは農業集団が文字どおり主体となって、消費者に買ってもらえるような、喜んでもらえるような、あるいは食育に明記されておりますように、感謝されるような農産物をつくっていく。これは消費者サイドにとってもプラスになりますし、結果として農業側にとってももうかる。

 私は、大いにもうけていただきたいということが今回の法案の裏側に当然セットとしてあるというふうに思っているわけでありまして、やる気と能力があってこの施策を進めていったけれども、物は売れるけれどももうからないということでは、これは全く趣旨に反すると思っております。

 そういう意味で、消費者あっての生産者、生産者あっての消費者ということで、そういう形で支えていただく。基本法にありますように、国内生産を基本としての、その基本の部分を担っていただけるような生産サイドになってもらいたい。車の両輪として、先ほどの農地・水・環境対策はセットであるわけでありますけれども、そういう形で役割を果たしていただきたいという、ある意味では第二計画段階というか、いよいよ実行段階、生産サイドの方の実行段階に入ってきたというふうに認識をしております。

山田議員 先ほど話しましたように、我が国は、テレビや自動車を売って経済成長を図り、農産物を諸外国から買うという政策を続ける一方、では、イギリスやドイツやヨーロッパはどうして自給率を上げたか。それを私ども、詳細に検討させていただきました。そんなときに、イギリスがどうやったか。イギリスの農家に対して七〇%から超える、いわゆる支持価格制度、農産物に対して。ヨーロッパ、フランスにおいても、そういった支持価格制度からデカップリング、WTOの枠内で許される限りの所得補償、いわゆる直接支払いをしてきた。

 日本は、直接支払いというものは全くというほどなされていなかった。日本においては、中山間地域の所得補償、これが二百億ぐらいですから、直接的な直接支払いは農家所得の〇・二%ぐらいしかなかったんじゃないか。そんなことで、これではどうしようもない。我々は、二年前から、直接支払いを必ずやらなければ、日本の農業、自給率は上がらないし、日本の農業そのものはつぶれてしまう、そういうことからその主張をしてきたわけですが、政府は、構造改革に反するから直接支払いはしない、そう言ってきておったものの、今回、初めて品目横断的な直接支払いを導入してきた。

 しかしながら、その内容は、全く私は期待できないものである。そういうことから、我々は、大胆な直接支払いを、そういう考え方のもとに今回、基本法として提出いたしました。

大畠委員 今、山田提出者もお話あったように、どうも私は、日本の農業あるいは食料政策というのが、日本の大きな経済成長の陰で、どちらかというと軽視されがちな状況にあったんじゃないかと思うんですね。当然、アメリカでさえ直接所得補償制度というのを導入している中で、なぜ日本だけがやらなかったのか。私は、非常にそこら辺は、フランスもそうでありますが、日本のこの点での政策というのは一歩も二歩も十歩もおくれていたと。しかし、今回、政府の方がとりあえずそこに一歩踏み込んだ、山田提出者が言われるように、不十分ではあるけれども一歩踏み込んだということは評価したいと思うんです。

 そこでもう一つ、私は、経済産業委員会を中心に活動してきましたので、そういう意味からも懸念しているのは、中国とインドの経済的な大発展ですね。非常に大きな成長を遂げていますが、中国とかインドとか、そういうアジア諸国の経済成長に伴って食料事情も大きく世界的に変化するわけであります。

 そういう意味では、これから、アジアあるいは世界の経済成長に伴って日本の食料事情というのは一体どんなことになってくるのか、そんなことを考えると、果たして今のような、大臣には恐縮でありますが、貧弱な日本の食料政策では、実は、戦争状態になったときに、外国から食物が輸入されないときに、どんな対策をとるかと農林水産省がパンフレットをつくっているんですね。国民一人頭二千キロカロリーは保障しますという話なんです。

 しかし、あれはあれとして、非常のときに備えて考えておくことは重要だと思うんですが、果たして、アジアのこれからの変貌、二〇三〇年ぐらいを考えると、はるかに日本の経済力を凌駕して世界のトップに躍り出るんじゃないかというような話まで出ておりますが、そんなときの日本の食料確保策というのはどうあるのか、あるいは、日本の自給率、政府の方は四五%とおっしゃっておられますが、具体的にどうやってその四五とか五〇というものを達成するのか。ここら辺について、政府、大臣と山田提出者にお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 大畠委員とは、経済産業委員会でも随分議論をさせていただきましたけれども、去年、おととし、石油の値段がじりじり上がってまいりまして、随分議論というか、やりとりをさせていただきました。ついにきのう、WTIも、また北海もドバイも史上最高をつけたということでありまして、逼迫した状況の中で、今後二十五年、三十年の間に、需要の六割がインドを含めたアジア、その大宗がインドと中国になるわけでございまして、エネルギーも大変、食料も大変、そして、私が心配しておりますのは、もっと大変なのは水の問題だろう、食料の根源であります水の需要、需給のアンバランスというものが大変だと思っているわけでございますが、ここは農林水産委員会でございますので、日本の食料と世界との関係においては、御指摘のとおり、決して楽観できる状況にないというふうに思っております。

 先ほども申し上げたように、また山田提出者の方からもお話があったように、今は買うことができるという状況にあるわけであります。二百年前の理屈でいけばリカードの論理になるわけでありますが、マルサスは、いやいや、人口の増加というのはそういうものじゃないぞ、必ず食料危機が来るぞという指摘でありまして、歴史はそちらの方の、危機というものを何回も経験しているわけであります。そういう中で、生産サイドの方の問題、あるいはまた、仮に生産サイドが生産できても、輸送の問題、地政学的リスクでありますとか、いろいろな問題があるわけであります。

 そういうことで、端的に申し上げますけれども、どんどんどんどん人口がふえていく、あるいはまた、中国、インドのように経済発展をしていけば、水も、あるいは特に動物性たんぱくにおけるえさの問題においても、需要側には限界がある。文字どおり、算術的な増加か減少しかないわけですけれども、人口は幾何級数的にふえていくという根本的なミスマッチがあるわけであります。

 そういう中で、日本としては、先ほども申し上げましたが、国内生産を基本としてということで、国内生産を基本としてといっても、何といっても、自給率の話が先ほどから出ておりますけれども、消費者に好まれるものを生産しなければならない。先ほど篠原提出者の方からも、パンはほとんどがこれはもう国産の小麦では限界があるという問題が象徴的だと思います。そういう意味で、消費者に好まれるものをできるだけプロ的な、やる気と能力のある農業者がつくることによって、これは〇・一ポイントずつでもいいから上げていく。

 そのために、今回の基本法に基づく経営安定対策あるいは中長期的な視野も含めた水管理対策等々の環境対策が両々相まちまして、消費者とともに自給率を上げていく努力、地産地消、食育その他も含めまして、子供のころからの食生活も含めまして、総合的にやっていくことによって、我々は、それは五〇%、六〇%、あるいは、新聞報道でありますけれども、民主党の小沢党首は一〇〇%を目指すんだという報道に接しましたけれども、一〇〇%どころか、一二〇、一四〇と、フランスやアメリカのようになればいいんでしょう。

 世界に八億の飢餓人口がいるわけですから、できればそういう人たちに食料を、輸出というよりは援助も含めてやりたいと思っておりますけれども、この四〇という数字はいかにも低過ぎるわけでありますので、私どもは、着実に目標を設定して、毎年〇・一ポイントずつでも〇・五ポイントずつでもいいから、上げる努力を国民全体でやっていくことが、大畠委員御指摘のように、万が一とか、あるいは世界の食料事情に貢献するという観点も含めて必要だということで、大変難しいと思いますけれども、努力をしていかなければならないというふうに思っております。

山田議員 中川大臣もおっしゃいましたように、世界の食料危機、特にアメリカで、この前視察に行ってまいりましたが、小麦の大生産地等々においては地下水がかなり下がってきている、中国においては黄河の利水に失敗して、そして世界全体で日本の農地面積以上のものが毎年砂漠化していっている。先般、一昨年ですか、オーストラリアは干ばつで小麦の輸入国に転落した、一時的でありましたが。そういったことを考えますと、地球の温暖化、そういったことから、世界の食料危機は間近なんじゃないか、そういう感じすらいたします。

 そんなときに、日本で自給率四〇%、これを、かつてドイツとかイギリスが一〇〇%近くまで上げるようにする具体的な政策を行った、かけ声だけではない。では、具体的にどうしたらいいかというと、やはりそれに対してお金を投ずること。例えば、三、四年前ですが、麦と大豆、それに対して反当たり七万三千円ぐらいの奨励金を出したときに、十年の目標が、二年でその増産が達成できた。それ以後はそれをやめたようですが、そういったお金を投ずれば実際に自給率を上げることができる。

 日本の遊休農地だけで三十八万ヘクタールもあるわけです。それに対して、私どもは、もう農業の公共事業とかあるいは無駄なかんがい事業とかといったもの、道路とか港湾とか橋とか、そういったものよりも、むしろ、麦を四百万トン増産するために、あるいは大豆を五十万トン増産するために、菜種をもう一度三十万トンこの十年間で増産するために、毎年一兆円、具体的に直接支払いをやっていく、そして必ず十年間で一〇%の自給率アップを達成する、それが今こそ必要である。

 そういう意味で、私ども民主党は、かけ声だけでなく、具体的に食料自給率、増産のためのいわゆる基本法を今回提案させていただきました。

大畠委員 ありがとうございました。

 今、政府、提出者、大臣や山田さんからもお話がございましたが、日本の農業というのは、単に経済論理を優先してやればいいというものではない。これからの世界の流れというもの、あるいは環境の変化というものを考えたときに、これはまさに安全保障の一環としてかなり力を入れないと、これからの日本の未来を考えたときには乗り越えられないんじゃないか、そんな危機すら感じますので、今、山田提出者からも、また中川大臣からもお話がありましたが、ぜひ力を入れてこの農業再生に向けて努力をしていただきたいということを要望しておきます。

 次に、漁業問題について質問をさせていただきます。

 この漁業問題についてもアンケートをとらせていただきました。熱心な御意見もいろいろとございました。ここに、一人の方から御意見をいただいているんですが、「全国の漁業就業者は年間約一万人の減少をし続け、水産物の自給率は五三%まで落ち込む反面、輸入水産物は繁栄し、その一方で水産業の衰退には一向に歯止めがかからない水産業の現状を探るときに、獲る側だけの一面をみるだけではなく、大きな切り口でみるのもひとつの妥当性があるのではないだろうか。」「特に水産業に対しての国民からの支持基盤は極めて少なく、全国漁業者数二十三万人の弱小産業の」状況に至ってしまっている。「自由主義経済体制の中での水産業であるが、この様な観点からすれば、輸入水産物が漁業経営に甚大な影響を与えているにも関わらず、水産物以外に優るものも見当たらず、従って輸入水産物が原油についで量では第二位であることも」、輸入という意味での「第二位であることもうなずける。」「鉱物資源のない日本は、自動車産業を筆頭に輸出に頼らなければ国存亡の危機に至るわけであり、一方、グローバルWTO体制の中での保護主義政策の強化等はできるはずもない。」もっと漁業の実態について目を向けていただきたいというのがこの方の一つの御意見でもございました。

 さらに、オイルといいますか油の値段が高騰して非常に困っているというお話、それから、こういうことで漁業用資材にまでオイルの高騰が波及しており、廃業者が続出するんじゃないかと言われている、それから、魚の値段が安過ぎて、とってもとっても、魚をとる者にとっては収入が上がらない、そして、とったもので売り渡したものの価格の三倍から五倍で魚屋さんで売られている現状を見ると、とっている者としては非常にやるせない、こういうふうな御意見も寄せられております。

 もちろん、漁業経営の安定化のためには、漁業者の意識改革、それから漁協と行政の関係強化、あるいは漁協に公務員の優秀な人も少し派遣して、漁協の中の活性化にも協力していただけないかという話もございます。それから、漁協の体力が落ちているため、今後、将来に対しては不安を持っている。後継ぎ問題についても、後継ぎを自分の子供に継がせたいと思っているけれども、実際には継がせられないという考えが多くなってきており、それほど、漁業、魚をとっている、実際に作業をする者としては危機的意識を持っている。国はもう少し水産に目を向けてほしい、農業に比べて漁業に対する目の向け方が少ないのじゃないかという御指摘もいただいております。

 そこで、特にこのアンケート結果の中から二つの課題があるので、これについては政府の方にお伺いしますが、まずクラゲ対策。このクラゲ対策は本当に困っているというのです。クラゲ対策にもっと力を入れてほしい、みんなが競ってクラゲをとるような形のクラゲの利用方法は何か考えられないのか、こういうふうなお話が一つ。それから、オイルの値上がりがひどくて、三十円だったのが七十二、三円まで上がっちゃっていますから、倍以上に。したがって、オイルを使って魚をとると、漁獲の売価よりもオイルの値段の方が気になってしまって、途中でやめて引き揚げてくるというのが実態だと。

 だから、このクラゲ対策とオイルの値上がり対策、これはもう何遍もこの委員会でも出ているかもしれませんが、改めてこれについてお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 二点御指摘いただきました。

 まず、大型クラゲ対策であります。

 クラゲ対策としましては、防除対策とかそれから原因究明、いろいろな課題がございますが、その中でも、今お話ありました、これを有効活用できないか、これも一つの課題でございまして、この点について、食品とかいろいろな加工原料素材として活用の道はないかという、こういった研究も進めております。

 具体的には、今、独立行政法人水産総合研究センターを中心に、関係県の食品開発部門の研究所などと連携いたしまして、大型クラゲを食品加工に利用する際の原料としての特性の解明とか、それからあと、化粧品、医薬品、こういった機能成分を活用する技術の開発、こういったものが一つの課題であります。

 これまでの成果としまして、中華料理用に塩クラゲという形で加工するわけですが、そういうものの製造技術の開発を今進めておりますし、それからコラーゲン、この機能性、こういうものをどういうふうに使うかというようなことを進めております。結局、クラゲの特徴から、これから課題になっています一つの問題は、大型クラゲの九五%が水分でありますが、これをどうやってコストを安く除去していくか、こういったことが一つのネックになっておりますし、それから、いろいろな意味でコスト軽減、新製品の開発をする際の課題がありますので、それも鋭意研究を進めていきたいと思っています。

 また、このほか、鳥取県なんかで大型クラゲを農業用の肥料として使う、こういったような取り組みもございまして、さまざまな角度でいろいろなところで努力をいただいていることで、私どもも引き続き頑張っていきたいと思っているところであります。

 それから、引き続きましての燃油対策であります。

 先ほど大臣からもお答えがございましたように、また燃油の高騰状況で、私ども非常に頭を痛めておりますが、補正予算で、先ほどのクラゲ対策と燃油対策を含めて五十一億円の基金がございまして、まずこれをベースに今事業を進めているところであります。

 一つは、漁協系統が燃油供給していますので、それを効率化して、できるだけコストダウンしていきたい。それから、漁業現場で漁業者の皆さんに省エネ型漁業に転換していってもらう、そのための支援が中心になっておりますが、例えて言いますと、漁協系統のタンク、これは非常にあちらこちらに散らばっているところもありますので、それを集約化するということでのコスト削減、こういった取り組みが出てきております。

 それから、漁業者グループにおきましても、例えば共同探索船を使う、これは漁船漁業ですけれども、そういったものをこういうふうに効率化していくというふうな取り組みが出ております。

 それから、沿岸漁業におきましても、ガソリンエンジンの場合には、資源エネルギー庁の方の新エネルギー・産業技術総合開発機構がございますが、そちらの補助がありまして、そこでツーサイクルエンジンをフォーサイクルに変えるとか、これは最近八十二件の応募があったりしまして、こういう形でこういった対策を着実に進めていきたいと思っているところであります。

大畠委員 クラゲを食べろという話も今出ましたけれども、あの大量のクラゲはもうとてもじゃないけれども食べ切れないわけでありまして、私は、一つのアイデアですよ、これはやはりお金を投入して研究者を募って集中的にやらなきゃいけない。私もこの質問をするに当たっていろいろ聞いたら、五十一億円をそういうものに使っているんだというけれども、本当にクラゲ対策で五十一億円かと言ったら、そうじゃなくて、十五億円で再利用、本当に十五億円で再利用をやっているのと言ったら、だんだんだんだん細っていくわけですね。

 だから、こういうところは、大臣、集中的に、あれだけ報道もされているぐらい、直径一メーターぐらいのクラゲがふわふわふわふわして、魚をとったって、クラゲをとっているのか魚をとっているのかわからないぐらいになっていますから、こういうときは、大臣の懐の財布で五十億円ぐらい投入するから、集中的に、東京大学だろうが水産庁だろうが、全部クラゲに関する専門家は集まれ、そういうことで、半年でもいいですよ、十人とか二十人、半年、クラゲだけ考えろ、クラゲの再利用を考えろと。例えばダイエット食品なんというのは私は何かいいんじゃないかという感じもするんですよ、これは当てずっぽうでありますが。

 例えばそういうふうに、国民が求めているものでクラゲの再利用ができるもの、そういうものを、とにかく見つかるまではおまえたちはこの部屋から出るなというぐらい言って、二十人ぐらい博士クラスを投入して集中的にやれば、このクラゲの再利用なんか私は見つかるんじゃないかと。ただ、やる気がないから、とにかく全体的に何となくやってこいというから、ではクラゲを食べようとか、そんなの私だって考えつきますよね。しかし、そんなものじゃだめなんです、あれだけの大量。それで、とっても、捨てるものだから、また海がごちゃごちゃになっちゃうので、もうみんなが競ってクラゲをとろうぐらいの話になるような有効利用方法を国が率先して、これは行政しかできないんです。

 大臣、どうですか。クラゲの再利用問題について集中して小泉政権を挙げてやる、郵政事業と同じぐらいに一生懸命やるぐらいの答弁はありませんか。

中川国務大臣 確かに大畠委員おっしゃるように、去年のクラゲは、これはもう津軽海峡から太平洋、茨城の方まで来たかどうかわかりませんけれども……(大畠委員「来ています」と呼ぶ)来ていますか。ということで、日本じゅうの大問題であります。

 そういう意味で、集中してやっておりますけれども、そういうことで、一つポイントは、発生の原因あるいは発生地域、これは東シナ海の中国の沿岸で発生しているという説も有力でございますので、発生源対策ということで日中韓の共同研究ということも日本は提案をしているわけでございます。

 そういう原因から含めまして、おっしゃるとおりの、何十キロもあるもので、ほとんど水ですから、こういうものを、ことしまた発生するかどうか、しないようにするための今緊急対策をやっておりますけれども、抜本対策も、ある意味ではこれは日本だけではできない問題もございますので、徹底的にやっていく、あるいはまた専門家の御意見、広い御意見も聞きながらやっていくということで、できるまで閉じ込めてやれというぐらいの気持ちで取り組んでいきたい。

 これは、漁業者はもとよりでございますけれども、日本全体にとっての、ある意味では海洋国家日本にとっての大きな問題でございますので、お気持ちをしっかり受けとめて、緊急対策、抜本対策を含めてやっていきたいというふうに考えております。

大畠委員 ぜひ、中川大臣のパワーをもってすればこれは見つかると思うんですよ。

 それで、中国は、今のところ政府間の話し合いができていないから、中国に何とかしてくれと言ってもこれは無理で、これは流れてくるところで有効利用を考える。

 私もリサイクルをやってきたんですが、紙だってそうなんですね。紙、ペットボトル、空き缶、空き瓶、それから発泡スチロールもそうなんですが、最初のころはうまく回らなかったんです。再利用の商品を考えついて、今は全国の教科書も全部リサイクルペーパーを使うようになりましたが、最初のころはPTAの人が、子供がつばをつけてこうやるから、再利用の紙じゃ不衛生だからだめだと言っていたんですよ。しかし、今ではみんな理解が広がって利用するようになって、今じゃ古紙が足らなくて新聞紙を何か失敬する人も出てきているという話ですから、再利用する道をどうやってつくるかが私はかぎだと思いますので、ぜひ力を入れてやっていただきたいということを要請しておきます。

 それから次に、政府の方と民主党の提出者にお伺いしますが、先ほどお話しした、とって売り渡した魚が店先で三倍、五倍で売られているのを見るとがっかりしちゃう、この問題についてお伺いしたいと思うんです。

 漁連と仲買組合と加工組合という関係があるんですね。なかなかここのところが、昔からあるものですから、その仕組みを変えることが難しいんですが、実際に魚をとっている漁業者の収入を確保して、消費者も新鮮な魚をより安く購入できるような流通の仕組みそのものを再検討してくれませんかという意見がありますが、これについて、政府側と民主党の提出者にお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 先般の委員会でも先生から御指摘いただきました流通の問題であります。

 確かに、水産の流通は非常に多段階である、それから、非常に多種類で多様な魚を多様な流通でやっているものですから、どうしてもコストがかかる、そういう仕組みがあるんですけれども、その中で、いろいろな側面で、コスト縮減それから消費者との関係、もっと顔の見える関係、それがひいては漁業者の所得向上につながる、そういう問題意識で考えていかなくちゃいけないと思っております。

 今、水産基本法の見直しに入っていまして、そういったことを、今の施策あるいは現状の検証というようなことから議論しておりますが、例えて言いますれば、産地市場、この問題が一つございます。産地市場は、今、漁協合併もこれから進めなくてはいけないので、それと裏腹の関係で小さいのがあちらこちらにあるわけですけれども、そういうものを統合していく、これが一つの産地から出すときの効率化のポイントであります。

 そのときには、物理的にこういうふうに集めて効率化する、そういった取り組みもありますし、それから、最近はIT化でありますので、物理的な話だけじゃなくてITという形ですね。それは、要するに、市場が統合されてそこで競争原理が働く、そういった手法もありますので、今お話ありました、市場というような形の物理的な側面、それからITとかそういった情報化、それからさらには流通の仕組み、システム、こういったものをやはり総合的に見直していかなくちゃいけないと思っております。

 それから、一方では、そういった市場流通のほか、例えば最近は産直がありますし、それから現地で例えば漁協の女性部の皆さんがみずから売るとか、それから大手スーパーとかとの直接取引とか、さまざまな形態が出ていますので、これは先般御説明を申し上げましたけれども、そういったところに対するいろいろな支援ということも含めてやっていきたいと思っているところでございます。

山田議員 大変難しい質問でございまして、生産者が自分でなぜ値段を決め切れないかと。

 私もかつて、牛、豚を飼っておりまして、何で小売で高いのに我々が売る豚とか牛は安いのかと大変頭にきまして、自分で肉屋をやってみまして、最後、牛丼屋までやったんです。ところが、肉屋をやっても大変なんですね。結局、自分のところでつくった牛は、もうどこでもいいから、熊本の川尻の家畜市場でもいいから売ってくれ、それぞれの肉屋は、どこでもいいから仕入れして売ってくれと。そうやったら、やっととんとんになったというみずからの体験もありまして、いかに第一次産業の流通が難しいかと。そういう意味では、大変本当に古くて新しく、難しいものだと思っております。

 ただ、最近、小さなことでありますが言えることは、農協あたりが、消費地でかなり農協直販の、例えば生産地の消費でもいいですが、私の田舎、大村あたりでも、どんどん農協がお店を出して、そこに自分でつくった、農家がつくった野菜を出してきている。そういうところが随分ふえて、はやっております。それと同じように、あるいは漁協青年部あたりで、とれてきたものを直販するという形がもっともっと出てきていいんじゃないかと思っております。

 できるだけ自分でつくったものを自分で値段を決めて売るようなシステムが、少しずつですが農業ではかなり浸透してきましたので、漁業でもぜひそういった方向を行政として指導していければいいんじゃないか、そう考えております。

大畠委員 一つ、確かに今は何か買い手市場になっちゃっているんですね、言われるままに売るしかないということで。オイルの値段は上がるし、とった魚は安く買いたたかれるし、では、みんなで、おれたち、やめた、みんな買う人が海に出てとったらいいんじゃないかというような感情すら出てくるんですね。要するに、リスクを負いながら、しけのときはまさに船底一枚下はもう地獄なわけですよ、そういうリスクを背負いながら魚をとっているにもかかわらず、そういう状況から脱せられないということで、非常に悩みながらやっているんですね。だから、後継者さえもうなかなか出てこなくなってきている。

 ですから、ここのところの仕組みを、まあ難しいんだと思うんです。漁連の人に聞いても、そういうところまで手を入れたら大変ですと。だけれども、流通業者のために魚をとっているわけじゃないんですね。安くて新鮮でおいしいものを消費者に食べてもらいたいと思ってとっているんだけれども、どうもそこのところが、現在の既存の仕組みの中ではその思いが遂げられない、そして後継者難にさいなまれているというのが現状ですから、難しいことは承知しながらも、農業の改革と同様に漁業面での流通の改革にもぜひ取り組んでいただきたいということを要請しておきます。

 次に、現在の漁業対策予算は二千六百三十五億円ということでありますが、港や護岸対策としての予算が千五百九十九億円、漁業対策としては千三十六億円が使用されているんですが、これは昔からずっと大体変わらないんですね。二千億円は大体港とか護岸工事、それから漁業対策が一千億円。二千億対一千億という割合がほとんど変わらない。ただし、今回、四百億ぐらい下げたという話なんですが、もうそろそろ、戦後六十年たって、この二対一という割合は切りかえて、一対二、いわゆる港整備とか護岸工事対策は一千億程度にして、実際に魚をとっている漁業者対策に二千億ぐらいを投入してもらいたい、そこら辺が本末転倒じゃないかという意見があるわけであります。

 もちろん、海底の清掃とか海の森の生成や、この千五百九十九億円のお金でもそれができるというんだけれども、実際、漁業をやっている人の話を聞くと、そこまで予算がおりてきていないと言うんですね。県が悪いのか、国はそれに使えるお金としてやっているんだと言うんだけれども、県が上げてこないからというような話も聞くんですが、実際にやりたいと思っても、そういう予算が現場ではついていないということですから、これは国が県を指導するのか、あるいは関係団体の方から意見が上がってきていないと言うんだけれども、どうも私は、旅順と同じように、司令部の方針と現場の戦闘地での状況が異なっているんじゃないかと。ここのところは、上の方は下が悪いんだと言っているし、下の方は上が悪いと言っているんだけれども、どうもそこら辺が、私は何かよくわからないんですね。

 これは現場の漁業者の人の意見なんですが、ここら辺、中川大臣、そろそろ切りかえようと。要するに、実際に魚をとっている人に対する直接所得補償なんかも含めて、農業と同じようにそこに少しお金を入れるべきじゃないかという要求も出ているんですが、この問題について、政府とそれから民主党の法案提出者にお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 日本は、かつては世界一の漁獲量を誇っていた、また魚が主要なたんぱく源の地域が多かったわけでありまして、そういう意味では魚文化の国でもあると思いますけれども、先ほど大畠委員御指摘になったように、日本の漁業関係、非常に厳しい部分も多いわけでございます。そういう中で、やはり日本は、一方では排他的経済水域の面積は世界で六番目という、ある意味では今でも海洋国家、水産国家であるし、あるべきだと私は思っております。

 そういう中で、いわゆるハードとソフト、時代の要請にこたえられるようなハードとソフト、両面必要なわけであります。もちろん、漁港を整備する、あるいは漁港関連施設を整備するということは、これは非常に大事なことだと思いますし、また、流通等も含めたソフトも大事だと思いますが、限られた予算の中でございますので、地元の御要望も多々あると思いますし、また、国の漁業政策、今、基本計画の見直しをやっておりますが、いずれにいたしましても、硬直的な予算、最初から一対二とか何対何というふうに、まず大枠の配分ありきという時代ではないと思いますので、緊急あるいは優先順位をつけて柔軟にやっていくことが必要だろうというふうに理解しております。

山田議員 私も、大畠議員の申すとおり、全く同感でありますが、漁港予算は予算として、必要な漁港とか港湾もあることはあるんですけれども、それはそれで、本当に無駄なものがないかどうか精査して、むしろ水産予算の重点を漁業者の所得安定対策に今や思い切って投ずるべきだと考えております。

 そういう意味で、私どもは、漁業者が一番困っているのは、魚価が輸入魚によってどんどん下がってきているということですから、油代は高い、いわゆる不安定な経営にあるわけですから、それに対して、今初めて農業で取り入れております品目横断的な直接支払い、それと同じような考え方で、いわゆるナラシの部分と言われている価格安定的な部分、そういった経営安定的な部分、それに対して私どもは直接支払いをやろうじゃないか、そういうことで基本法案を一つまとめました。

 それからもう一つは資源回復なんですが、今どんどん漁業資源が乏しくなってまいりました。乱獲して、そしていろいろな形で、海の森とか藻場造成とか種苗の放流とか、大事なときですが、そういったものに対する直接支払い、あるいは、漁村集落は、自主的にそういう海の掃除、いわゆるいそ洗いとか、あるいは藻場造成、あるいは種苗の放流、そういったものに対して、漁村集落に対する直接支払い、そういったものに、限られた水産予算を思い切ってシフトを変える、そういう形での漁業水産政策を今回の基本法に盛り込みました。

大畠委員 時間が来ましたので、これで質問を終わりますが、ぜひ中川大臣にも、また民主党の提出者にも共通して、現場で一生懸命黙々と頑張っているそういう人の声を聞きながら、国の施策をやっていただきたいということを要請しまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 こうして機会をいただいて質問させていただけることを、まずお礼申し上げたいというふうに思います。

 私は、今政府から提出をされております担い手経営安定新法、それから民主党から提出をいただいております法案、この双方について質問させていただきたいというふうに思っておるわけでありますが、今回質問させていただくに当たって、農業の現場の皆さんや農協の関係者、いろいろな方々から御意見を聞いてきました。

 特に、政府から出されておる案について、本当にこれで日本の農業は守れるのか、とりわけ、農村社会といいますか、農村体系というのが維持できるのか、強いて言えば、農村が崩壊すればもっと大きな日本の社会が崩壊していく、そういうふうな状況になってしまうんではないかというような、さまざまな意見が実はあったわけであります。

 ちょっとそういった例を申し上げて、御質問に入っていきたいというふうに思うんです。

 人間の体が細胞でできているのと同様に、農村は集落で構成されており、集落は個々の農家によって成り立っている有機体だ、また、農村は、農業生産活動の場であるとともに、農家の生活の場だ、そのために、農業の持続的な発展は農村集落がきちんと維持されてこそ初めて実現されるものではないかという意見や、今般政府は担い手に施策を集中、そして重点化するという政策転換に取り組もうとされておるけれども、これが生産現場の担い手づくりを果たして鼓舞するきっかけとなっていくのか、それとも、高いハードルを課すことによって農家の意欲をそいでしまうのか、どちらに向かうことになるのか、まさに今回の政府案というのは、農業、農村を瀬戸際に立たせるものであり、大きなリスクをはらんだものだというふうに危惧しておるという意見もありました。

 それから、我が国の農業は家族経営が根本であり、その発展の上に集落営農がある、集落営農が成熟していけば法人化する組織も出てくることから、現場では、最初から経営規模や経理の一元化などといった条件をつけることには反対だ、こういう声もありました。また、担い手組織を育成しても、面積要件をクリアできないという声も上がりました。

 最後になりますが、政策転換を図るときには、現場の実態を十分踏まえ、農業者の理解と納得を得ながら取り組む必要がある、地域農業の成り立ちを無視し、市場原理に基づく効率性一辺倒の政策にしてしまうと、各地域で取り組まれてきた担い手育成の芽を摘み、農村社会の崩壊をもたらしかねない、地域の実情に合った担い手の育成、農業集落の維持発展が最重要課題である、こういう意見がありました。

 そういうことで、これらの認識に立って私も順次御質問をさせていただきたい、このように思うわけでございます。

 まず最初に、認定農業者制度の評価、検証ということで政府にお伺いをしてまいりたいと思いますが、品目横断的経営安定対策、いわゆる日本型直接支払いの加入者に対して、一定の経営規模要件を満たす認定農業者が掲げられておるわけであります。しかしながら、主業農家に占める認定農業者の割合は五割に満たず、地域によって制度への取り組みにばらつきがあるというふうに指摘をされておるわけであります。

 そこで、まず、こうした認定農業者制度の現状をどのように見てみえるのか、個々の農業者の経営改善にどのような役割を果たしてきたとお考えになっているのか、御答弁をいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 認定農業者制度につきましては、育成すべき農業経営を地域段階で明確にいたしまして、それに対する支援を重点化していく制度として地域に定着してきております一方、よく似た経営を営む農業者でありましても、住む県、市町村によりまして認定の仕方にばらつきがあるのではないか、あるいは認定後の経営改善状況の把握が十分に行われていないのではないかといった問題点が従前から指摘されておりますことは承知をいたしております。

 このため、我が省といたしましても、有識者などから成ります第三者機関を設置し、そういった部外の人の意見を聞くことなどによりまして、この認定手続の透明性を確保したり認定のばらつきを解消していく、また、定期的に経営改善の取り組み状況を把握することによりまして、計画達成に向けた的確な指導助言を行うことなどを含めた運用改善のための指導を行ってきているところでございます。

 また、この認定農業者制度につきましては、農業者みずからが規模拡大や生産性の向上などの経営改善に計画的に取り組もうということでございまして、それを市町村が認定するわけでございますけれども、みずから経営改善のための計画をつくるということによりまして、みずからの経営の現状と課題を把握し、今後の経営発展の道筋が明確化できる、また、そういった認定農業者になられた方が地域農業の担い手として認知されまして、周辺の小規模な、あるいは兼業農家などから農地や労働力の提供を受けることによりまして規模拡大やコスト削減を図ることができる、さらに、国からも経営発展に向けた各種支援を受けることができるというようなことによりまして、農業者の経営改善の実効性を高める役割を果たしてきていると考えております。

鈴木(克)委員 まさに、心の入っていない、通り一遍の答弁だと思うんですよ。それが本当にそうなんですかということを私は申し上げたいわけですよ。先ほども言いました現場の実態というものを、本当に十分に踏まえて農業者の理解と納得を得ながら進めておるのかどうか、ここが私は申し上げたい点でありまして、現状は、正直言って、非常に問題はあるし、今御答弁にあったような状況とはかなり乖離しておるということをはっきり申し上げておきたいというふうに思います。

 続いて、もう一度実態の認識についてお伺いするわけでありますが、今も一部おっしゃいましたシェアの低さですよね。地域により取り組みの開きがある、こういうことなんですが、今も答弁の中にあったように、確かに、農業者がつくったいわゆる経営改善計画を各市町村が認定する、そして、いわゆる基本構想の目標所得と農業経営改善計画の目標所得、こういうものを出させておるということでありますけれども、かなりそこに、現実は乖離が生じておるのではないかということなんですよね。

 結局、これは、認定農業者制度というのが目的どおり運用されていないということになるわけでありまして、この実態をどのように分析されており、どのように今お考えになっておるのか、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、市町村が定めております基本構想の目標所得額と、認定農業者個々がそれぞれの農業経営改善計画に記載しております目標所得額に乖離が生じている事例が見受けられることは、私どもも承知をいたしております。

 これは、仕組みの上では、この農業者の目標所得額につきましては農業経営改善計画に記載することにいたしておりますけれども、計画の認定に当たりましては、その当該目標所得額そのものが認定の基準になるのではなく、計画に記載されました農業経営の規模ですとか生産方式ですとか、経営管理の方法あるいは農業従事の態様といったさまざまなファクターが、基本構想で定めております効率的かつ安定的な農業経営の指標と同水準以上になっているかどうかで判断することといたしております。

 しかしながら、個々の農業者の経営改善計画と基本構想の目標所得額が大きく乖離することは、これは適当ではございませんので、農林水産省としまして、市町村に対しましても、基本構想の効率的かつ安定的な農業経営の指標というものが目標所得額を達成できる水準として適切に設定されているのかどうかをしっかり点検してほしい、さらに、農業者が目標所得額の記載を含めましてこの農業経営改善計画を作成するに当たりまして、関係機関による適切な支援を行うように指導しているところでございます。

鈴木(克)委員 くどくなりますけれども、私は、現況はかなり乖離もあるし、問題を含んでおるということを厳しく指摘させていただきたいと思います。

 そこで、民主党案の提出者にお伺いをするわけでありますが、今お聞きのような議論を踏まえて、認定農業者制度が果たしてきた役割と今後の展開についてはどのようにお考えになっておるのか。また、民主党の法案では、直接支払いの対象者は、販売に供する目的で主要農産物を計画的に生産する農業者としておるわけでありまして、認定農業者であることは支給対象の要件とはしない、こういうふうになっておるわけでありますけれども、その理由についても明らかにしていただきたいと思います。

篠原議員 まず、認定農業者制度の評価でございますけれども、農業経営改善計画をつくって意欲的に農業に取り組む人たちを引っ張り上げる、そういった制度としての役割は十分に果たしてきたのではないかと思っております。

 次に、直接支払いの対象としてどうするかということですけれども、これはやはりよくないと思っております。引っ張り上げるのだったらいいんですが、べたに、あなたは立派な農家だ、あなたはそうじゃないんだと、よく最近格差社会が生じているというのに使われる勝ち組、負け組ですね、あなたは担い手、あなたは非担い手、これはだれがどういう基準で選ぶのか。その基準が、認定農業者かどうか、四ヘクタール持っているかどうか。四ヘクタール持っているかどうかなんというのは、国会議員を体重別に評価しているようなものだと思います。

 それから、あなたは担い手か、あなたは非担い手かというのも、何か客観的な基準がちゃんとあって、さっき言いましたように、引っ張り上げるのだったらいいんですが、一生懸命やっている農家を四ヘクタールとか認定農業者、そういう余り客観性がない基準だけで切るというのは、鈴木委員が御指摘になった日本の農村の現状を見た場合、ゆゆしき問題を抱えているんじゃないかと思っております。

 大規模農家だけでもっているわけじゃありません。認定農業者だけで農村がもっているわけじゃありません。兼業農家もいます。高齢専業農家もいます。小さな小さな農家もいます。いろいろな農家で成り立っているわけです。この人たちの協力がなかったら、農村あるいは日本社会は成り立たないんじゃないかと思っております。

 ですから、そういった人たちの、仮に小さくとも一生懸命つくる、あるいは、消費者グループの皆さんが、遊休農地がいっぱいある、これは何とかしなくちゃ、みんなで耕そうじゃないかといってやっている人たちでも私はいいんじゃないかと思っております。その中から、将来、もっともっとひとり立ちして大規模農家になっていこうとする人たちが生まれればいいのであって、そうした芽を摘む必要は絶対ないんじゃないかと思っております。

鈴木(克)委員 基本的なお考えはわかりました。

 続いて、民主党の提出者にお伺いをするわけでありますが、今お話がありました、民主党案では、経営規模が零細な農家であっても、計画的に生産する販売農家であれば直接支払いの対象となるというふうになっておって、集落営農の組織化は求めていないというふうに理解をするわけであります。

 そこで、民主党の政策の中で、集落営農はどのように位置づけられておるのか、また、集落営農の、政府案にあるような経理の一元化についてはどうあるべきかということについて、お考えを聞かせていただきたいと思います。

篠原議員 集落営農というのを特別に取り出して、直接支払いの対象とするかしないかということは考えておりません。

 そもそも集落営農というのを、私は政府案の方の定義というのはきちんと理解しているわけではありませんけれども、共同作業というので始まったり請負で始まったり、一部分だけを、例えば稲作でいったら、田植えと稲刈りだけはちゃんと請け負うとか、いろいろな形態があるんじゃないかと思っております。それはそれでいいことじゃないかと思っております。

 例えば、集落営農で一番典型的に見られるのは、私の知る限りでは、もう若手がほとんどいなくなってしまった中山間地域、超過疎地ですね。そういったところは、お年寄りばかりなのでとてもやっていけない。そこに立派な農業青年がいて、では自分がみんなやってやる、ではやってくれということで成り立っていった集落営農がいっぱいあるんじゃないかと思います。そういったところでは、ごくまれに経理の一元化が行われるだろうと思います。

 では、違って、都市近郊では兼業農家がたくさんいる。けれども、男手の必要な、あるいは農業機械をちゃんといじったりする人が少ないということで共同作業が行われている。しかし、手間がいっぱいあって、先ほど岡本委員からありましたけれども、二毛作で野菜をつくっているというような農家、これは兼業農家が非常に多いんじゃないかと思います。そういったところで一元経理を求めても、とても実現するはずがないんじゃないかと思っております。そういう意味では、経理の一元化という要件は、私は農村の実情にそぐわないのではないかと思っております。

 そういう意味では、やはり原点に戻って、農村集落がいろいろな人たちで成り立っている、多様性があるわけです。国際交渉では、日本は、農業は多様性があるんだ、だからそれぞれの国の多様な農業の存在を認めなくちゃいけないんだと言っておるわけです。それは日本国内でも同じです。認定農業者だとか経理を一元化した集落営農だけでもつわけじゃありませんから、多様な農家が存在する、それを前提に置いて、意欲的な農家をバックアップするという形で直接支払いしようということで、我々は法案を作成いたしました。

鈴木(克)委員 やはりこの際、政府案、民主党案というものを現実の農業の形態そして現実の農村の実態、そういうものときちっと照らし合わせていかないと、我々は本当に今回のこの法案に対して大きな誤りを犯してしまうのではないのか、このことを私は強く申し上げておきたいというふうに思います。

 少し先に進めさせていただきますが、農林統計について、この際政府にお伺いをしていきたいというふうに思うんです。

 農家数や農地面積やそして農業経営の動向について、農林統計がきちんと実施されて、そして把握をされておるということであります。まさに、我が国の農林統計というのは、ある意味では世界に冠たるものではないのかな、このように思っておるわけです。しかしながら、この農林統計を公務員削減の標的ということで、四月十五日の某新聞の記事によりますと、農林水産統計表は創設百二十年を迎えた歴史あるものだけれども、果たして百三十年を迎えることができるかというようなことで書かれてありました。

 確かに、行政の無駄というのは省いていかなきゃならないというのは当然のことではありますけれども、しかし、国民の食料の安定供給を図るという意味において、この農林統計というのは、私は、基礎的データを得る上において最も大事な部分ではないのかな、このように実は思っておるわけであります。したがって、これをおろそかにするというのは、まさにやみ夜に全く羅針盤もないまま飛行機や車を走らせるのと同じような状況になるんじゃないのかなということで、有効な農業政策を構築することは絶対に難しいというふうに思います。

 したがって、農林統計業務の今後のあり方ということについて、そしてまた今後これにどのような方針で臨まれていくのかということをお示しいただきたいと思います。

小西政府参考人 お答えいたします。

 農林水産統計は、委員御指摘のとおり、国民の食料の安定供給、また農業の構造改革など、農林水産行政の諸施策を実施する上での基礎となるデータを提供するという大変重要な役割を果たしております。特に、現在、省を挙げて取り組んでいる品目横断的経営安定対策などを柱とする農政改革の具体化に際しても大きな役割を果たしているところでございます。

 一方、行政改革の流れの中で、骨太二〇〇四などによりまして農林水産統計組織のスリム化が求められてきたことから、統計調査業務を抜本的に見直し、できる限りアウトソーシングを図る観点に立ちまして、生産統計また流通統計の分野を中心に、職員調査から調査員調査あるいは郵送調査への移行を進めることにいたしまして、平成十七年度以降五年間で約千百人の縮減を目指すなど、組織の合理化にも取り組んでいるところでございます。

 今後につきましては、昨年十二月に閣議決定いたしました行政改革の重要方針において、重点項目の一つに農林統計分野が挙げられたことを踏まえるとともに、担い手の明確化などを内容といたしました農政改革の進捗に合わせて、現行のスリム化計画に加えてさらなる合理化を行うために、現在、業務内容を精査しているところでございます。

 このように、農林水産統計につきましては、さらに改革すべきところは改革しながら、政策的なニーズに対応した現行の体系と調査精度などを極力維持しながら、農政改革を含め農林水産行政の推進に積極的に貢献していく所存でございます。

鈴木(克)委員 もう一度確認をしておきますが、私もアウトソーシングがいけないとかスリム化がいけないということを言っておるわけじゃないんです。間違いなくこの伝統ある農林統計が今後もきちっとした形で続けられるんだ、こういうことに理解をしていいのか、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

小西政府参考人 先ほど申しましたように、農林水産統計の果たしている大変大きな使命、役割がございますので、我々はそれをしっかりと受けとめて、これからもその責任を果たすように、しっかり守るべきところは守り、また改革するところは改革していきたいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 わかりました。ぜひひとつ、やみ夜に羅針盤がなくて操縦するようなことのないようにきちっと対処をしていただきたい、このことをお願い申し上げておきます。

 続いて、もう一度また、地域社会、農村社会の崩壊といいますか、冒頭私が申し上げましたいろいろな方の心配の点に戻らさせていただいて御質問させていただきたいと思います。

 今回の政府による農政改革の眼目といいますか、それは担い手への施策の集中化、重点化ということだというふうに理解をしておるわけですね。各種制約に対応した特例要件を設定する、こういうようなことになっておりますが、特例要件によってどの程度の農家、農地がカバーされるのかということが明らかにされておるわけではない、このように私は思っております。

 政府案のこの制度の組み立て、そして基本的な考え方というのは、構造改革の加速化というにしきの御旗のもとに、担い手以外の小規模農家を施策の対象から除外をするもののように私には思えてなりません。これは、裏返して言えば、その背景には大規模化、効率化を追求しようという発想があるのだと思うんですね。

 そもそも、先ほどから申し上げておるように、農業生産というのは一部の大規模農家やいわゆる担い手のみによって取り組まれておるのではないんだ、先ほどお話がありましたけれども、高齢農家や小規模な兼業農家も含めた農村地域社会が健全に維持されることによって初めて実現されるものだ、私はこのように思っておるわけです。

 そこで、経営の規模の大小で施策の対象者を絞り込もうとする発想は、農村地域に極めてドライな考え方を持ち込んでいくということで、これまで農業集落ではぐくまれてきた人的なつながりとかいろいろなものが、いわゆる地域社会が崩壊していってしまうのではないか、こういうようなことを指摘される方もあるわけであります。

 政府側にお尋ねしますが、そういうような意見、懸念に対してどのようにお答えになるのか、その見解をお示しいただきたいと思います。

中川国務大臣 先ほどからお聞きしていますと、認定農業者以外は排除するとか、このままでは農村集落が崩壊する、そのことはもちろん私としても絶対に避けなければいけないというふうに思っているわけでございますが、現時点で認定農家、あるいはまた今後定められる特例要件に該当していくところがまだまだ少ないということは、私も、もっと多くなってもらいたいということで目標も掲げているわけであります。

 しかし、これは決して排除するものではなくて、ぜひ入ってきてくださいということで今懸命な努力を我々としてはしているわけであります。御地元の愛知県においても、規模の大きい農家もあれば、また小規模であっても極めて高収益の経営の方々もいらっしゃいます。いろいろな農家が認定農家にこれからなることによってますますメリットがありますよ、先ほど申し上げたように、いいものをつくって消費者に受け入れられて、そして経営感覚を持っていけば、もっともっといい経営、つまり、端的に言えばもうかる農業ができますよ、だから、スタートしたからこれでもう門戸を閉ざすんじゃなくて、どんどんこれからも入ってきてください、しかし、十九年度からスタートする前に、どうぞスタート時点でそういう対象者になってくださいということを盛んに今努力しているところであります。

 もちろん、全国津々浦々御理解をいただいているかどうかということについては、私もまだ必要なことがいっぱいあると思います。一つは面積要件、一つは集落営農、集落が一つの細胞なんだという冒頭の御指摘、全く私もそのとおりだと思います。それを前提にして集落単位でひとつ、やる気と能力があるということは当然経営感覚が問われる、必要になってくるわけでありますから、そういう意味で、経理あるいはまた資材の共用、効率的な経営というものが前提になってくるわけでございますので、排除的に御理解されるのではなくて、これからもどんどんどんどんそういう農家が日本の農業の基本になっていくんだという前提で、前向きあるいは幅広にこの制度を御理解いただき、ぜひまた、御地元においても御理解いただけるように努力をしていただければ大変ありがたいなというふうに思っております。

鈴木(克)委員 大臣、そのようにおっしゃっていただいたわけでありますが、冒頭申し上げましたような意見がたくさんあるというのは、やはり現実との乖離がまだまだあるということでありますので、その辺のところを本当に現地、現場、そして地元の声、現地の声というものを吸い上げるさらなる努力をしていただく必要があるのではないかな、このように私は思うわけでございます。

 民主党案の提出者にお伺いをするわけでありますが、今、農村地域社会崩壊への懸念というのが私はあるんだというふうに言ったわけでありますが、それについてどのようにお考えになっておるのか、また、その農村地域社会の維持、発展という考え方が民主党案にどのように盛り込まれておるのか、その辺のところをお示しいただきたいと思います。

篠原議員 我々の法案は、農業全体を活性化することによって農村全体を活力あるものにするということを目的としております。ですから、直接支払いの対象もまじめに農業に取り組む人たち全員ということで、販売農家全員ということにしております。

 農業集落に対して支援をしていこうということも考えておりまして、その根拠は我が国が国際社会でずっと主張し続けてまいりました多面的機能の発揮に求めております。多面的な農業は、ほかの産業と違うんだ、環境も維持している、それからコミュニティーの維持にも役立っているんだ、だから、ほかの産業と比べて違う保護があってもいいんだ、その根拠としてマルチファンクショナリティー、多面的機能というのがあったわけです。ですから、我が国は、WTOの交渉の場でも多面的機能という言葉が宣言文に入っているかどうかということをずっと気にしてきたわけです。ところが、今回のこの法案の中には、残念ながら、政府案には余り取り込まれていないわけです。

 それに対して、我々は、多面的機能の発揮というのを農業集落全体に対する直接支払いの根拠にしております。なぜかといいますと、農村コミュニティーがきちんとしていなかったら多面的機能を発揮できないわけです。四ヘクタール以上の農家だけで多面的機能を発揮できるか。農地は四ヘクタール以上の農家だけが耕しているわけじゃないわけです。

 ですから、直接支払いの対象から仮に外されるとすると、人によりけりですけれども、それで営農意欲を失い、水路の管理なんかにももう参加しない、それから、もうつくるのをやめたという耕作放棄地がふえる、自給率も低下するという悪循環に陥るのじゃないかと思っております。

 ですから、全体を底上げするということ、それは農業それから農村集落ということで考えております。

鈴木(克)委員 確かに、御指摘のように、農村集落そして農業を守っていくという意味において、私は、やはり規模の拡大とか合理化とか市場性原理だけではない部分というものをきちっと織り込んでいただきたい、このように思っております。

 さて、話はちょっと変わりますが、私は、この四月の十五日に地元で、林業の実態を見たいということで地下足袋を履いて、設楽町の、前の津具村というところになりますが、そこへ行ってまいりました。そこで現地の状況をいろいろと、細かく言うと時間がありませんのであれですが、意見をお伺いしたところ、いわゆる林業については、需要の拡大だとか、それからマージンの問題だとか、境界線の問題だとか、森林簿の問題だとか、それからシカの害を防ぐヘキサチューブ、そういうような意見や現場の実態を見てきたわけであります。

 そこで、順番にお聞きをしていきたいと思うんです。

 今週の十八日に森林・林業白書が閣議決定されて、その中の、「トピックス」の冒頭に、地域材利用の意義を広め、利用拡大につなげるために木づかい運動を展開している、こういう一文が実はありました。そこでまず、こうした国民運動としての取り組みが国産材の利用拡大に向けどのような効果をもたらしているのか、また、国産材の利用を拡大するために、学校や校舎、そして共同施設の木造化などに積極的に取り組むことが重要だというふうに思うんですが、現在のその実施状況、木づかい運動とそれから実施状況、この二点を御答弁いただきたいと思います。

川村政府参考人 お答えを申し上げます。

 林業の活性化を図る、そしてまたそれによって森林の再生を図っていくということは極めて重要でございまして、そのためにも、木材をいかに利用していただくかということが大切だと思っております。そして、この木材の利用拡大には、やはり、消費者といいますか国民の方々の木に対する理解、森林に対する理解、こういうものを正しいものにしていかなくちゃいけないというのがまずございます。

 一つは、山を守るためには木は切らない方がいいのではないかというような誤解をされている方もいらっしゃるわけでございまして、特に人工林は木を使うことによって山を育てていくんだということでございます。

 そういうことで、この木づかい運動でございますが、まさにそういった国民の方々の地域材の利用に対する理解、あるいは意義というものを直接消費者に訴えていきたいということで、十七年度から始めているものでございます。十月を木づかい推進月間というようなことにしまして、シンポジウムでありますとか、いろいろなマスメディアを通じた広報活動、こういうものに取り組んでおるところでございます。

 そしてまた、木材の利用を実際にその身近なところで進めていくという上では、委員の御指摘がございましたように、学校などの公共施設、こういうところに木材を使っていくということが、児童を初めあるいは地域住民あるいは広く国民の木材に対する親しみ、理解、こういうものを深める上で重要であると考えておるわけでございます。私どもも、各省と連携をいたしまして、できるだけ各省の事業の中でも使っていただくという取り組みをさせていただいております。

 委員からお尋ねのありました学校、これも子供との関係では理解を深める上で非常に有効ということで、連携をして進めさせていただいておりまして、特に、これは文科省ですけれども、学校の中でもエコスクールなんかへの支援をさせていただいたり、またそれ以外の施設、厚生労働省とも遊具施設等の利用に木材を使っていただくといったようなことでの取り組みをしているところでございます。

鈴木(克)委員 やはりまず、他の省庁に木を使えと言う以上、農水省が本当に率先して木を使っていくということを示さないと、私は他の省庁もなかなか動かないんじゃないかなというふうに思います。そういう観点からいっても、まだまだいわゆる木に対する需要拡大についての取り組みが甘いんじゃないのかな、私はこのことを指摘させていただきます。

 次に、森林整備地域活動支援交付金についてお伺いをしていきますが、これも実際、十五日に山へ入って地元の皆さんから、関係者から伺ったわけでありますが、この制度が十八年度までということになっておるやに聞いております。

 現在、この制度設計について検討されておるというふうに聞いておりますが、検討会においては、十九年度以降も制度を継続することを前提として、農業と同様、林業の担い手となり得る林家や森林組合などに対して施業、経営を集約化することを柱に据えると基本的方向が示されたというふうに聞いております。我が国の森林・林業の現況を見れば、制度のさらなる充実強化が必要だ、このように思いますが、十九年度以降の制度のあり方について、現時点における考え方をお示しいただきたいと思います。

川村政府参考人 お尋ねの森林整備地域活動支援交付金でございますが、十四年度から開始をいたしまして、御指摘のとおり十八年度で終了するということになっております。ただ、十九年度以降どうするかということにつきましては、学識経験者によります検討会を設置いたしまして検討している最中でございます。

 これまで、この交付金ができたことによりまして、地元での、特に不在村森林所有者でありますとか小規模の森林所有者との話し合いのきっかけになったとか、それからまた、森林組合との対話が進んで森林の長期施業委託の契約もふえたとか、あるいは事業も理解をしていただいて事業量もふえたといったような効果も出ております。

 今後、私どもとしても、十九年度以降に向けまして、やはり、森林の有します多面的機能が十分に発揮される、また整備が一層進むというようなことで、特に小規模の方々の森林組合等への施業委託が促進されるような仕組みがとれないかどうかという観点からも、今その見直しをしている最中でございます。

鈴木(克)委員 補助金とか助成金とか支援金というのは基本的にはやはり見直していくべきということの時代背景はよくわかりますが、私は、やはり、本当に森林を守っていく上においては、こういう実際に山主が喜ぶ制度というものはなくしてもらってはいけない、このように思っておりますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。

 最後の質問になるわけでありますが、野生鳥獣による被害ということで、これは、私、分科会でも中川大臣にお尋ねをしたわけであります。実際に今回山へ入って、ヘキサチューブというのをかぶせた現場を見て回りました。数はよくわかりませんけれども、何百本か植林をした中で一本だけ木が残っておって、あとはヘキサチューブを施工しても全部それが被害に遭っておったという現場を見まして、本当に、山の関係者もこれが実態なんですよということで示してもらいました。

 私も田舎へ戻りますと、本当に、鳥獣を保護するのか人を保護するのかどちらなんだというぐらい大変な鳥獣害被害があるわけでありますが、いずれにしても、このカモシカ対策も含めて鳥獣害被害、そして、とりわけこのヘキサチューブについてはかなりコストもかかるわけでありますが、こういった被害防止のためにどんな施策を今やろうとしておるのか、そしてまたそれはどういった効果があるのか、その辺のところの見解をお示しいただきたいと思います。

川村政府参考人 野生鳥獣によります森林被害でございますが、お尋ねのように、シカあるいはクマなどによりまして、年間で約七千から八千ヘクタールの被害が出ておりまして、特にシカによる被害というものが多くて、約五割以上を占めているということでございます。

 この野生鳥獣による森林被害、これは非常に深刻でございますので、我々としましても、関係省庁ともよく連携をしましていろいろな対策を講じているところでございます。今お尋ねにありました食害を防止するチューブ、ヘキサチューブと言っておりますが、これも含めまして、例えば、防護さくを設置する、動物の嫌がる忌避剤、これを使う、いろいろな防除、捕獲技術の開発、あるいは広域的な駆除活動とか監視体制といったようなこと、また、根本的にはえさの問題とかもありますので、野生鳥獣のえさ場としての広葉樹林等の造成、こういったものも視野に入れてやっているところでございます。

 ただ、なかなか森林の状況、地形等、さまざまでございますし、シカなんかはかなりジャンプ力もあるということで防護さくをつくっても跳び越えてしまうということがございます。そういう意味で、ヘキサチューブはかなり期待されておるわけでございますが、非常にコストも高いということ、それから、今も御指摘されたように、地域によっては必ずしも十分に機能しないというところもありますので、今後、引き続き有効な対策というものを真剣に検討してまいらなくちゃいけないというふうに思っております。

鈴木(克)委員 最後に、私、この新聞記事を御紹介申し上げて、これは御答弁は要りませんけれども、質問を終わりたいというふうに思います。

 これは、私の地元の豊根村というところで、三百四十五町歩、三百四十五ヘクタールの優良林が五千万円で売りに出ておる、これは一平米当たり十四円なんですよね。これは、最初、管財人から三億で出されたんですが、だれも買い手がなくて、だんだんだんだん下がっていって、結局、五千万になったわけです。何とかこれを買いたいということで、村で予算化したんですが、結果的に断念したんですね。なぜかというと、相続税なんです、相続税が二億かかるということですね。これではとても村は手が出せないということで、結果的には、優良林がばらばらになってしまって、今本当に荒れておるという実態なんです。

 こういうことも含めて、本当に山の問題というのはたくさんあるわけですよね。ぜひ、現場の声に真摯に耳を傾けていただいて、本当に、我が国の森林・林業をどういうふうに守っていけばいいのかということをしっかりと考えていくことを私どももやらなきゃいけないというふうに思います。

 最後に、舒明天皇が、「うまし国そ あきづ島 大和の国は」というふうに歌われております。それから、過疎や都市化の波で失われる農山村の景観もうまし国の将来に向けて真剣に考えるべき課題だ、こういう一文もありました。本当に、ぜひひとつ、いろいろな意味で、日本の農業、農村、そして森林・林業、そういったものを守っていくために、我々もさらなる努力をさせていただく、このことをお誓い申し上げて、私の質問を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 また、委員長や与野党の理事の先生方に御許可をいただきまして発言の機会を本委員会でいただいたことに感謝を申し上げます。

 本日は、まず、民主党の農政改革基本法案について何点かお尋ねをさせていただきたい。その後、食の安心と安全という観点で、現実の問題である米国産牛肉の問題の議論を中川大臣とともにさせていただきたいというふうに思います。よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、まず民主党案についてですね。民主党案については、これまで政府案との関係から、主に、国内の農業生産の確保等のための農政の改革に関する方針の部分について議論がなされてきたわけでございます。食料の相当部分を輸入に依存せざるを得ない現状では、我が国において、必要な食料の主たる部分を国内で生産できるようにすることが、究極の目標であり、非常に重要な今後の課題であるというふうに考えます。他方、米国産牛肉の輸入問題に代表されるように、現実に輸入される食料の安全性とこれに対する消費者の安心を確保することが、国民の健全な食生活を保障するという上で緊急かつ重要な課題となっているというのは、与野党ともにあるいは政府を含めて共有の認識であろうというふうに思います。

 こうした輸入食料の安全あるいは安心の確保という観点から、民主党案では、食料の安全性及び消費者の安心の確保のための農政等の改革に関する方針として、加工食品等の原材料原産地の表示及び輸入検疫体制の強化等の二つの規定を置いていらっしゃるわけでございますが、この二つの具体的な内容については後にお伺いをさせていただくとして、まず、民主党案における食の安心、食の安全の確保に係る基本的な哲学、考え方について御説明をいただきたいというふうに思います。

山田議員 最近、遺伝子組み換え食品とか、あるいは残留農薬、いろいろな問題で、ファストフード等もいろいろな問題が指摘されておりますが、日本人のアレルギー症、アトピー症がこの十年で倍ぐらいにふえていますし、花粉症の拡大等々もありまして、食品からくる人への影響、これはかなり大きいものがあるんじゃないか。そんな中で、BSEの問題、川内議員がずっと取り組んでおりますが、そういった輸入食品に基づく非常に危ない食品、食生活、そういったものに対して、やはり我々はきちんとしなきゃならないんじゃないか。

 二つありまして、一つは表示ですね。食品の表示で、加工食品に対して、我々、一年前に、すべての加工食品に原料原産地の表示を義務づけよう、そういう法案も出しましたが、自民党さん多数の反対で否決されてしまいました。そういったこともこれあり、加工食品に対しても原料原産地の表示を必ずすることが消費者に対して食の安全、安心であるということ。

 もう一つは、輸入食品に対して、例えば、日本が牛肉をアメリカに輸出する場合、きのう地方公聴会で宮崎に行きましたら、指定された加工工場があるわけですが、そこでは五億円かけて改装させられたと。アメリカの検査官の言いなりに加工工場を、言いなりの改装というのですか、ラインの設備からすべて五億かけて直させられた、そしてアメリカに初めて輸出できると。

 そういうふうに日本もやっているわけですから、日本が承認する施設から牛肉を日本の承認する方法で加工処理したものだけを入れる、検査官を常時アメリカとかあるいは輸入先国に派遣しておく。そういうことの建前から、今度の基本法に、そういう輸入先国に対する検疫官、検査官の派遣、そういったものを基本的に条項に盛り込むことにいたしました。

川内委員 大変すばらしい考え方であるというふうに思います。

 そこで、具体的にちょっとお伺いをしたいんですが、民主党案のこの第二十二条で、加工食品と外食の原材料の原産地表示についての規定を設けるということが書いてあるわけでございます。その理由については今御説明があったというふうに思いますが、具体的にどのようにその原産地表示を義務づけられていくのかということについて教えていただきたいというふうに思います。

山田議員 まず、例えば主要加工食品ですが、インスタントラーメンとかいろいろあります。そんな中に、すべての原材料について表示する、原料原産地すべてを表示するということは大変難しい面も出てまいります。

 ですから、私どもが検討した内容では、主要な原材料、では主要な原材料というのはどこまでを言うのかといいますと、例えば長崎チャンポンとかありますが、そのチャンポンの中にいろいろな具が入っています。我々の検討した形では、その材料の中の五分の一程度を占めるもの、これを目安として、加工食品に原料原産地の表示をさせようじゃないかと。

 特に、外食産業においては多々難しいものはあります。しかし、表示の方法では、例えば、外食店の前に一つの掲示板というか、表示を張っておいて、きょうのステーキについてはどこどこからの牛肉を使っています、そういう表示というのは可能じゃないか、牛丼屋さんでもそうですが。

 そういう意味で、細かいことになりますと、我々は基本法ですから、施行令等々になっていくかと思いますが、かなりきっちりとした形での原料原産地の表示を考えたい、我々の法案ではそう考えております。

川内委員 まず、消費者あるいは食べ物を食べる側の方たちに情報としてしっかりしたものを提供していく、それが大前提であろうというふうに私も思います。

 それでは、他方、政府として、今どのような取り組みをされているのかということに関してお伺いをさせていただきますが、政府の加工食品及び外食における原材料の原産地表示についての具体的な取り組みを、昨年のJAS法改正の際の衆参の両院の附帯決議を踏まえた上で、今どのように展開していらっしゃるのかということを教えていただきたいと思います。

中川政府参考人 消費者に食品の情報を正確に伝える観点から、原産地などその食品の品質に関する情報をきちっと正確に、またわかりやすく提供するということは非常に大事な点だというふうに思っております。

 先生今お尋ねの、昨年の六月に衆参両院で附帯決議がなされておりますけれども、それ以降の取り組みということでございますが、一つは、加工食品の原料原産地につきましては、実はその少し前の平成十六年の九月に、食品表示に関する共同会議で、それまでずっと議論をいただきまして、従来は個別に原料原産地をつけるかどうかというふうなことで議論されておりましたのを、この十六年の九月に、加工度が低くてどこの原料を使っているかということが最終的な加工食品の品質に影響が大きい、そういうものについて、基本的に各品目横断的に原料原産地を義務づける、そういう大きな方針が示されまして、告示もいたしました。ただ、これは業者の方も一定の準備が必要でございますから、その表示の義務づけはことしの十月からということになっております。

 さらに、この平成十六年の表示に関する共同会議の検討結果の後も、さらに加工食品の原料原産地のあり方について議論をいただいておりまして、先般四月の三日でございますけれども、新たに報告書を取りまとめていただいたわけでございます。

 この報告書を踏まえまして、具体的にどういう品目をさらに加えるかどうかといった点につきましては、今パブリックコメントを行っているところでございます。五月二日までの予定でございますが、こういったパブリックコメントの結果も踏まえまして、さらに、消費者あるいは生産者それから製造業者等、それぞれ関係の方々からの具体的な意見聴取も行いまして、そして品目をいろいろと決めていきたいというふうに思っております。

 それから、もう一点、外食産業についてのお尋ねもございました。

 昨年、十七年の七月に外食における原産地表示に関するガイドラインというものを策定いたしまして、外食事業団体等とも連携をしながら、原材料の原産地表示を推進しているところでございます。これは、具体的には、関係業界等の方々への説明会などの開催を通じましてその推進を図っているところでありまして、ファミリーレストランなどでは、既にそのメニューの中に、原料原産地が表示をされている、そういったものも広まってきているというふうに私どもは承知をいたしております。また、焼肉の業界も、この四月からそういった取り組みを始められたというふうに承知をいたしております。

川内委員 私は、例えば肉とか魚とか野菜とか、そのものの場合は割と原産地を表示しやすい、しかし、加工食品はなかなか難しい、それは理屈としてはわかります。しかし、加工食品であればこそ、何が使われているのか、どこでつくられたものが使われているのかということに関してしっかりとした情報を、消費者サイドに立てば恐らく必要とするのであろうというふうに思うんですね。

 加工されたものというのは、どこで加工されたんだろう、何が使われているんだろう、どこで生産されたものが使われているんだろうということは、情報としてしっかり、加工食品の方こそ提供していかなければならない側面というのも大いにあるのではないかというふうに思いますので、今後、さらに取り組みを強化していただきたいというふうに思います。

 また、民主党案は、そもそもその加工食品についても、あるいは外食産業についても、法令の中で規定をするというより強化した形をとっているわけでございまして、私は、自分が民主党だから言うわけじゃないですが、民主党案の方がより進んでいるのではないかというふうに感じますし、その方が、実は、日本の農業あるいは食品業界というものの発展にも資する形になるのではないかというふうに考えます。

 それはなぜかというと、日本の農産物というのは、値段で競争をすればアメリカ、中国のものに負けてしまう、しかし、安心、安全な農作物である、あるいは食品であるという点においては、これは小泉総理も本会議などで、あるいは予算委員会などで再三にわたって主張されているとおり、世界じゅうのお金持ちが欲しがる農産物あるいは食品を日本は提供できるんだ、そして、今後はそのような方向にジャパン・ブランドを確立して向かっていくんだということを、政府の方針としてもお示しになっていらっしゃる。

 では、そのジャパン・ブランドを確立するためにはどうすればいいのかということの議論とすれば、ブランドの確立は、海賊品を、海賊版を絶対に許さない、まがいものを市場から駆逐していくということが絶対の条件、第一番目の条件になるわけであります。

 そこで、JAS法というのは、これまでの議論の経過の中で、中川消費・安全局長は私の質問に対して、これはどういう質問かというと、食品の偽装表示は犯罪ですかとお聞きしましたらば、犯罪につながる行為であるが、犯罪ではないというふうに御答弁をされました。すなわち、偽装表示は即犯罪にはならない。

 私は、にせものを絶対に許さない、にせものを市場から締め出していく、そして、安心、安全で品質の高い日本の農作物あるいは食品というものが市場でその価値を確立するためには、JAS法の改正によって、直罰規定、すなわち偽装表示は即犯罪であるというふうにしていかなければならないというふうに考えておりますが、中川大臣の御見解をお示しいただきたい。

 まず、局長から答えますか。

中川政府参考人 前回の私の答弁を引用して御質問されましたので、その私が前回申し上げた趣旨について、もう一度、誤解のないように申し上げたいというふうに思います。

 法律にはそれぞれの目的がございます。JAS法におきましては、その消費者の選択に資するという観点から、適正な、的確な表示がされるということがまずもって大事な点でございます。そういう意味では、不適正な表示があった場合には、まずはすぐにその指示をし、そしてそのことを直ちに公表する、そして、それに従わなかった場合には命令をし、命令に従わなかった場合には、いわゆる刑罰を付する、懲役刑も含めたあるいは罰金刑との併科も含めた、それが準備をされているわけでございます。

 したがいまして、JAS法の世界では、まずはきちっとした、消費者が日々お買いになるそういった商品についての表示が適正になるようにということでございまして、その点ができるだけ速やかに担保されるという趣旨から、今のような、直ちに刑罰までいかない三段階の仕組みがとられているわけでありますが、日々消費者が接する表示という点からしますと、まず指示をし、その社名も公表いたしますから、その点で速やかに不正な表示というのは是正をされるようになっております。

 他方、直罰という形になりますと、これは厳正な司法手続が必要になります。したがって、それまでの間は、その現状がどうとかということではなくて、証拠を固めてきちっとする、その手続が相当時間がかかるということにもなります。そういたしますと、どちらが消費者の方々にとって大事かという点で考えますと、今のJAS法のように、現状、市場において、店先において不適正な表示があれば、それができるだけ速やかに是正をされる、そこのところを追求していくというのがJAS法の世界での目的であろうと思います。

 それから、いろいろ不正なものがあった場合には、JAS法でなくても、不正競争防止法その他で直罰の規定がございます。そちらで、その法律を適用して必要な処罰が準備をされているということで、そこは、役割、法の目的に沿ってそれが適用されていけばいいのではないかというふうに思っております。

中川国務大臣 今、川内委員からジャパン・ブランドのお話がありました。御指摘のとおり、日本としては、日本型食生活に対する人気といいましょうか、そういうものも含めて、また、攻める農業という観点からもジャパン・ブランドを推進していきたいというふうに考えております。

 ただ、同じ表示の問題であっても、JAS法は、今、中川局長から答弁した目的でございますし、ジャパン・ブランドというのは、日本製がいいんだということ、これは、もちろん食品であれば安全、安心という観点もありますけれども、一般論として、ブランドというものでありますから、例えば、自動車とかオートバイとかそういうもの、衣服も含めまして、あらゆるものが海賊品、模倣品としてあるわけでございます。

 これは国際協定でいうと、例えば、知的財産のWIPOでありますとか、種苗法でありますとUPOVでありますとか、そういうものがありますが、国内的にいうと、不正競争防止法であったり商標法であったりということで、いわゆるにせブランドを放逐して、いいものはその権利が守られなければいけない、人気があると同時に、そのいいものに対しての権利が守られなければならないという観点を前提にして、いいジャパン・ブランドを推進していこうというふうに考えておりまして、同じ表示でも、そのJAS法上の問題、安全、安心の問題とは別の次元でのいいものを守っていきたい、そして、推進をしていきたいという意味で今取り組んでいるところでございます。

川内委員 しかし大臣、いいものが何なのかという議論になると、いいものという言葉の定義は難しい部分があろうかというふうに思うのです。

 私は、少なくとも日本の農業をもう一度立ち直らせる、一生懸命に現場で頑張っていらっしゃる農業者の皆さん方の努力というものをしっかりと評価していくためには、大体、偽装表示をするのは中間の流通業者であり、あるいは最終の小売業者であるという場合が多いわけですけれども、そういう方たちの悪さを許してはならない、要するに、もうかればいいんだという彼らのそういう考え方を許してはならないと思うし、そしてまた、しっかりとした表示を直罰規定によって、義務づけることによって、農業生産者の方々の所得もこれは飛躍的に上昇していくことが考えられる。

 今、政府の考え方としては、JAS法は迅速に対応することを旨とするものである、他方、ブランドを守るという点では不正競争防止法などで対応するという御答弁であったわけですが、では、今後偽装表示などがあった場合に、不正競争防止法違反として、農水省としてすべての事例を告発すべきであるというふうに私は思いますが、いかがですか。

中川政府参考人 表示で不正があった場合には、もちろん農林水産省は、JAS法により的確に適切に対応していくということはもとよりでありますけれども、こういったさまざまな情報は、農林水産省だけではなくて公正取引委員会等その他関連の省庁とも、あるいは場合によっては厚生労働省も含めまして情報を共有し、それぞれのしかるべきところで適切に対応するように、政府の中で情報の共有をして的確に対応できるようにということは、日ごろから心がけているところでございます。

川内委員 余りこちらが望む答弁がいただけないところでやりとりをしても時間がもったいのうございますから、次の課題に移らせていただきます。

 また、民主党案に戻らせていただきますけれども、民主党案の第二十三条第一項及び第二項で、「外国から輸入される食料について、国内で生産される食料と同等の安全性を確保するために必要な施策を講ずる」と書いてございます。「外国から輸入される動植物について、家畜の伝染病のまん延又は有害な動植物の付着の防止のために必要な施策を講ずる」というふうに規定されておりますが、必要な施策というのは、具体的にはどのような施策を想定していらっしゃるのかということをお伺いさせていただきます。

山田議員 今、輸入検疫体制というのは非常に貧弱でありまして、この前、成田の検疫所で背骨の入った牛肉が見つかりました。ところが、実際には、内臓も指定されたアメリカの工場からではないところから入っておった。ところが、その当時、農水省も厚労省も、もちろん現場の検査官、動物検疫官も、その事実すら知らなかったという事情がありますので、いかに貧弱であるかということはよくわかると思います。

 そういう意味で、この検疫体制を徹底させるために、今三十一カ所の検疫所でわずか三百人の検査官しかおりませんが、それを倍増あるいは三倍増あるいは十倍、そういう形で徹底して、輸入品目もふえていますし数量もふえておりますが、そういったものの検疫体制をきちんと図るということ、充実させるということ、これが一つ。

 もう一つは、国内と同等の安全基準と申しますのは、例えば、先ほどBSEの牛肉の問題でもありましたが、アメリカの食肉加工工場に日本の検疫官をできるだけ派遣して、そして本当に川上で、輸入先でチェックできる、いわゆる海外に専門の輸入食品の検疫官というものを常時、できれば二、三百人程度派遣しておくような検疫体制の強化、これはぜひ図りたい、具体的にはそう考えている、我々の法案ではそういう検討をさせていただいているところです。

川内委員 続いて、政府側に聞かせていただきますが、今民主党提案者の山田先生の方から、外国から輸入される食料であっても国内で生産される食料と同等の安全性を確保するんだ、そのためにこうするんだという御説明があったわけでございますが、そこで、この米国産牛肉の輸入再開問題についてお尋ねをさせていただきます。

 私は、三月二十三日の本委員会で、中川農水大臣に、ジョハンズさんに直接飼料規制のことを大臣の口から、飼料規制を強化すべきである、交差汚染の可能性が払拭できないということを指摘するべきであるというふうに申し上げましたらば、中川大臣は、「日本としても引き続きアメリカ側に要求をしていかなければならないというふうに考えております。」「ジョハンズさんにも当然言います。」という御答弁をされました。

 その後、四月十三日の夜、ジョハンズ農務長官と中川大臣は電話で会談をされた、そのときに中川大臣は飼料規制についてジョハンズさんに述べられたというふうに新聞で読ませていただきましたけれども、もう少し詳しく、どのようなやりとりをされたのかということを御報告いただきたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のとおり、川内委員からも委員会の場でそういう御指摘がございました。

 私といたしましても、いわゆる牛の肉骨粉を牛以外の鶏とか豚に与えるということは、安全委員会の答申の附帯事項の中にも指摘されているところでございますので、かねてより指摘をしていたところでございますが、先週の木曜日でございますか、夜、ジョハンズ農務長官と電話でいろいろな話をいたしましたけれども、その中で、この牛由来の肉骨粉のえさを牛以外にも与えるということについてはぜひやめていただきたいということを申し上げました。

川内委員 中川大臣の御指摘に対して、ジョハンズ農務長官はどのようにお答えになられましたでしょうか。

中川国務大臣 このえさの問題は、アメリカにおきましてはFDA、アメリカ食品医薬品局ですか、そこの所管なので、自分の担当ではないのでFDAの方にしっかり伝えるというふうにお答えになっておられました。

川内委員 そこで、農水省でも厚労省でも結構ですからお答えをいただきたいんですけれども、中川大臣が直接ジョハンズ農務長官に飼料規制のことを指摘した、ジョハンズさんはそれを受けて、FDAに伝えるというふうにお答えになられた。

 では、FDAでは従前より飼料規制の強化、まあ私からすれば不十分な強化でありますが、パブリックコメントなどもとり、昨年末にそのパブリックコメントの期間は終わっているというふうに思いますが、その後、FDAのこの新飼料規制というものがどのようなことになっているのか、わかる範囲でお答えをいただきたいというふうに思います。

中川政府参考人 今先生おっしゃいましたように、飼料規制の改正案につきましては、昨年の十二月に既にパブリックコメントは締め切られております。その後、私ども照会をいたしましたけれども、現在、FDAにおきまして詳細に検討しているところであるということでございまして、具体的にいつからどういう内容で規制が改正をされるのか、あるいは施行されるのかということについては今現在具体的な情報は得られておりません。

川内委員 中川大臣はジョハンズさんに、輸入再開にとってプラスになるというふうな言い方をされたというふうにも聞いております。そういう意味では、この飼料規制の強化、完全なフィードバン、日本のようなあるいはEUのような完全なフィードバンではないが、今やっている飼料規制よりはSRM、特定危険部位が肉骨粉の中に入らない、これは三十カ月齢以上の牛ですけれども、三十カ月齢以上の牛の特定危険部位がレンダリングの過程に入らないようにするというこのアメリカの新飼料規制、さらには、中川大臣がジョハンズさんに指摘をされた、鶏や豚にも与えてはならないと思いますよという部分についてもしっかりと今後もお取り組みをいただきたいというふうに思います。

 そこで、もう一点中川大臣に、この電話会談はWTOのこともお話しになられたと思うし、WTOでお会いしましょうというようなことだったのではないかなというふうに思うんですけれども、先ほど中川大臣が言及をされた食品安全委員会の「結論への付帯事項」という部分でございますが、きょうお配りしております資料の三枚目についておりますけれども、「二〇〇五年十二月食品安全委員会・食品健康影響評価(最終答申)」の「結論への付帯事項」。一番がSRMの除去ですね。二番が、健康な牛を含む十分なサーベイランスの拡大や継続が必要というふうに食品安全委員会は指摘をしているわけでございますが、アメリカではサーベイランスを縮小するというような報道も出ております。

 そういう意味では、まず、日本は実質的な全頭検査をしているわけですが、米国内におけるサーベイランスの拡大あるいは継続というものは、輸入再開に当たってはもう必須であるということは、飼料規制のことを言われたのだったら、ジョハンズさんにこれもぜひおっしゃっていただきたいというふうに思うんですね。

 というのは、米国側も、中川大臣とも何回か議論をさせていただいたとおり、農務省の監察局の出したレポートの中で、サーベイランスが不十分であるというような指摘がされているわけですから、米国の農務省自体もそのことは知っているはずでありますから、ジョハンズさんに、サーベイランスについてどうするつもりなんだというふうにお聞きをいただいて、縮小するというようなことをおっしゃられたら、それじゃだめだ、サーベイランスについてはしっかりとやっていただかなければ日本側としては困るというようなことをお話し合いいただきたいなと思いますが、大臣の御所見を承りたいと思います。

中川国務大臣 現在、アメリカの牛肉は日米で約束した輸出プログラム違反ということでストップしているわけでございます。原因の徹底的な究明と再発防止のための対策というものでストップして、今、日米で作業をしているところでございますけれども、このサーベイランスにつきましても、附帯事項の中にあるわけでございますから、これについても、次の機会、お会いをするのがジュネーブというふうに予測されますので、お会いするときには、向こうからも多分逆の意味で出てくる話かもしれませんけれども、こちら側からは、先ほどのえさの問題、あるいはまたサーベイランスの問題を含めて、日本側の要望をきちっと伝えたいというふうに考えております。

川内委員 ジョハンズさんにしっかりと条件ではなく要望を伝える、要望という言葉は私はちょっと弱いような気がするんですが、しかしそれは政府の考え方なので、要望をしっかりとお伝えをいただきたいというふうに思います。

 そこで、今、中川大臣の御答弁で若干気になったのは、輸出プログラム違反だから輸入をとめたというふうにおっしゃっていらっしゃるんですが、小泉総理は予算委員会で、「食品安全委員会・食品健康影響評価(最終答申)」の最後の部分にある「重大な事態となれば、一旦輸入を停止することも必要」と書いてあるこの部分を引用して、重大な事態だから輸入を停止しているんだということを再三にわたって述べていらっしゃいます。

 私の理解としても、これは重大な事態だから全部ストップしているんだということであって、家畜衛生条件並びに家畜衛生条件に基づく輸出プログラム違反ということであれば、その施設しか輸入はとめられないというふうに思いますが、ちょっと局長にまず御説明いただいて、大臣、もし答弁を訂正されるなら、ちょっと訂正されておいた方が後々禍根が残らなくていいと思いますが、どうですか。

中川政府参考人 日米間で合意をされました家畜衛生条件上は、日本の査察のとき、あるいはアメリカが独自の査察をしたときにいろいろ違反事例を見つけ、しかもその重大な遵守違反が繰り返されるようなシステム全般に係る問題によりこの衛生条件は停止され得る云々というふうなことが書かれております。そういう意味におきましては、今回の一月の事例につきましては初めての事例でございますから、これを直接ということではございません。この家畜衛生条件に書かれておりますのは、家畜衛生条件自体が停止されるということで、枠組みが消えてしまうということでございます。

 今回の場合は、輸出が再開されてから一月余りのところで起こったということで、そのEVプログラム、輸出証明プログラム自体が本当にどうなのかというところについてきちっと調べる必要があるということで輸入の手続を停止したということでございますので、根っこにあるフレーム、枠組みはそのままにして、とりあえず手続を停止したというのが今回の措置でございます。

 そういうことでありますので、先ほども大臣がお答えされましたけれども、今回のよって来たその原因、それから、将来に向かってこういうことが起こらないという、そういった措置をきちっと確認していくということが非常に大事なことだというふうに私ども思っております。

中川国務大臣 重大なというのは、今、中川局長が答弁したとおりで、リスク管理機関である厚生労働省と農林水産省として、明らかな違反があったのでこの輸入手続をとめた、しかも、該当する二社だけではなくて、即日、全米国からの牛肉をストップしたわけでございますので、そういう意味で、厚生労働大臣と私が、この重大ということではなくて、我々としては、いわゆる一般的に重大な事態が発生したので輸入手続をストップしたという判断に至ったわけであります。

川内委員 政府の意思として輸入をとめたということで理解をさせていただきたいと思います。

 それでは、中川大臣に続けてお伺いします。

 中川大臣もみずから触れておられます昨年十二月の日本政府による現地調査の報告書、これは、概要は私ども国民に向けて明らかにされているわけであります。概要といっても二枚紙の、一言で要約すれば、問題なかったと書いてある簡単なペーパーですが、実際には詳細な調査の資料というのがあるやに聞いておりまして、今、アメリカ側に、それを公開してもよろしいかということで投げているというふうにお聞きをしております。国民の皆さんや国会での議論にも、この現地調査をどのような形で何を見てどういう話をしてきたのかということはしっかりと知らされるべきというふうに考えております。

 これについても早急にアメリカ側から了解をとっていただいて公開をしていただきたいというふうに思いますが、中川大臣の御見解をいただきたいと思います。

中川国務大臣 委員会での川内委員を初め御指摘があることを踏まえまして、二月十七日にアメリカ側にこの報告書を渡して、そして、これは、アメリカの了解をとってと言うと何となく誤解を招きやすいんですけれども、企業秘密等々の問題もございますので、我々が納得のできる部分で、仮にだめなものがあるかどうかということは、アメリカ側の判断を今待っているところでございますけれども、原本は膨大なもの、これを英文に訳す作業がまだ続いているようでございますが、いずれにしても早急に、四月中にきちっとした返事、先方からの返答が来るものというふうに私どもは理解をしております。

川内委員 きょうは、厚労省の松本食品安全部長にもいらしていただいております。

 昨年十月二十八日に提出した私の質問主意書、十一月十八日の答弁書の中で、輸入再開以前に、現地調査を実施することが必要と考えているという部分は、厚生労働省が原案を作成した、これは、農林水産省のこの質問主意書に対する答弁書の作成経過がどうであったかという調査資料にそう書いてありますが、厚労省は、いつごろから輸入再開決定前の現地調査が必要だというふうに考えていらっしゃったのか。一昨年十月の日米局長級会合による日本向け輸出証明プログラムの協議以降、必要と考えていたということで、そういう理解でよろしいのかということを簡潔に、もう五分しか時間がないので、よろしくお願いします。

松本政府参考人 輸入牛肉等の安全性を確保する観点から、昨年十一月の川内議員の質問主意書への答弁書を作成した段階では、日本向けの牛肉輸出プログラムに基づき米国が行う施設認定のプロセスを確認する必要があるとの考えに至っておりましたが、輸入再開に当たっての対応を検討する過程の中の一時点を特定して、いつごろということについてはなかなか困難であると思っております。

川内委員 それでは、松本部長は、先週四月十四日の内閣委員会での私の質問に対して、現地調査につきましては、昨年の十一月ごろから、米側に対しまして、対日輸出施設への調査ができるよう要請してきたところでございますというふうに御答弁をいただいております。

 この昨年の十一月ごろからという部分について、具体的に十一月の何日、どなたがどなたに対してどういう形で要請をされたのかというその具体の内容について御答弁をいただきたいと思います。

松本政府参考人 さきの内閣委員会で、昨年十一月ごろから、米国側に対し、対日輸出施設の調査ができるよう要請したところであるということは御答弁いたしました。

 それで、具体的に要請を行った日時についてはどうかというお尋ねでございますけれども、本年三月二十三日の衆議院農林水産委員会で中川農林水産大臣が答弁されたとおり、昨年の十一月四日でありまして、日米の担当者の打ち合わせ、その場におきまして日本側から米国側に要請を行ったというところであります。

川内委員 それでは、続けて聞かせていただきます。

 大臣、資料一をごらんいただきたいと思いますが、現在、日米間で、米国の食肉処理施設の認定手続やその内容についてまた議論をされているようでございますが、私は以前から、この資料一にございます二〇〇三年十二月二十三日以前の日本向けの約四十カ所の処理施設のリスト、そしてここに書かれている昨年九月現在で牛肉輸出証明プログラムに基づく条件に一致している二十六カ所の施設のリスト、さらにQSAプログラムを展開し続けている十一施設のリストを資料請求しておりますが、いまだに返答をいただいておりません。

 この資料について、いつだれがどのような形で米国側に請求をしていただいているのか、返答はどうなっているのかということについて御説明をいただきたいと思います。

中川政府参考人 先生の御質問でございますけれども、食品安全委員会のプリオン専門調査会の要請に基づきまして出したこの資料の趣旨は、当時、食品安全委員会のプリオン専門調査会での議論の中で、輸入が再開された場合にはどれぐらいの施設から日本向けの食肉輸出がされるだろうかというふうな趣旨での資料要求でございました。その趣旨をアメリカ側に伝えました結果、先生が今お配りになった資料の二ページ目のこの資料だったわけでございます。

 その際の趣旨でありますけれども、日本への輸出をストップさせた平成十五年の十二月二十四日以前には四十施設ありましたよ、それから準備の過程でEVプログラムの書類申請を行った施設が二十六施設あった云々という趣旨で我々は資料を得ておりますので、それが具体的にどこの施設でどうだということについては、食品安全委員会からの資料要求の趣旨からして、私どもは必要とは思いませんでしたので、照会はいたしておらないということでございます。

川内委員 いや、局長、私は私独自の質問として、この二十六カ所、十一カ所、四十カ所のリストを米国側に要求をしていただきたい、要請をしていただきたいということを申し上げて、それは農水省としても要請いたします、回答をもらいますというふうに御返事をいただいていたんですね。それを、要請していないとここで言われても困っちゃうんですけれども、要請して回答をもらいますと、きょう改めてでもいいですから、それは御答弁をしっかりここでしていただきたいと思います。

中川政府参考人 改めてということでございますので、その点は私どもとして、米国側に今先生の御要請の趣旨についてはお伝えをし、そして資料を入手できるよう努力をいたしたいと思います。

川内委員 私の質疑の持ち時間が終わりましたので、ちょっと質問を余してしまったんですが、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

稲葉委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

稲葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、前回の質問で時間の関係上質問をし切れなかった残余の質問、並びに日本の今回の経営安定対策と他国との比較、そしてさらには、今回のこの法案、WTO交渉上の今後の行く末なども含めてお話を伺いたい、また、大臣の御意見を伺いたいというふうに思っております。

 まず最初に、他国との比較の部分からお話をさせていただきたいと思います。

 日本が今回行おうとする直接支払い、この直接支払いというのは、他国にはない部分も含むし、よく似た政策も含まれている。ナラシの部分も同様でありますけれども、ゲタの部分も同様に、恐らくは他国と比較をする中で決めていかれたのかなというふうな認識を持っております。

 今回の政策、そもそもどういうところからこの策を出してこられたのか、何か参考にしたものがあれば、また、それと比較して我が国の方がよりよい、もしくは、メリット、デメリットあると思いますが、それについてお答えをいただければと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の品目横断的経営安定対策のうち、生産条件格差是正対策につきましては、一つは、過去の生産実績に基づく支払いをすることにしておりますが、これは、アメリカやEUにおいて講じられております直接支払い制度ですとか、現行WTO農業協定を参考にしながら、緑の政策となるように仕組んだところでございます。

 他方、我が国におきましては、品質の面で消費者、実需者のニーズに生産サイドが十分に対応し切れておらず、需要に応じた生産の誘導を図る必要があることから、過去の生産実績に基づく支払いを基本とはしつつも、黄の政策であります毎年の生産量、品質に基づく支払いをあわせて講じる、いわゆる日本型直接支払いともいうべき工夫を行ったところでございます。

 また、収入変動影響緩和対策につきましては、これは収入の減少の一定割合を補てんする仕組みでございますが、これは、現行の我が国の米政策改革の一環として措置されております米の担い手経営安定対策等を踏まえて検討したものでございまして、特定の国の制度を参考としたというものではございません。

岡本(充)委員 特定の制度を参考にしたわけではないと最後言われたのは、どこの部分だったかちょっと聞き取れなかったので、もう一回お話しいただけますか。

井出政府参考人 収入変動影響緩和対策、いわゆるナラシの部分についてでございます。

岡本(充)委員 私は、てっきりカナダの政策を、CAISと言われているカナダの政策を参考にしたのかと思いましたが、そういうわけではないという答弁でよろしいわけですね。

 今回、私はいろいろな国の制度も調べました。日本の直接支払いは、経営安定対策は、その対象を一定規模以上の生産者、生産組織に限定をしていて、欧米ではこのように限定をしている国はないわけでありまして、EUにおける高額直接支払いを受けている者への減額だとか、アメリカにおける受領額の上限の設定だとか、こういうことはあるにしても、いわゆる大規模層への制約はあるとしても、この小規模農家に対する制約というのがないように思うわけなんですが、これは多分、政府の答弁としては、土地利用型農業の生産構造の改革が立ちおくれているから、この部分を変えなきゃいけないから、我が国では、小規模農家への今回の政策、制限をしたんだと言われると思う。しかしながら、アメリカにおいては小規模農家も直接支払いの対象となるわけでありまして、アメリカもまだまだ小規模農家があるやに聞いております。

 こういった意味でいえば、決して日本もできないわけではないと思われるんですが、今言われた土地利用型農業の生産構造の改革以外に、小規模農家を制約する何らかの理由があるのでしょうか。今回の制度から除外をする何らかの理由がほかにあるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

井出政府参考人 今委員御指摘のとおり、我が国の土地利用型農業は規模が極めて零細でございまして、アメリカの場合は、平均規模で見ましても、農家の平均耕作規模が二百ヘクタールぐらいあるわけでございますが、我が国は一ヘクタール余りという構造でございますから、そういった中で高齢化あるいは農家人口の大幅な減少が続いている。そういう中で、一定の規模を有しているような、やる気と能力のある農家に光を当てていこう、こういう観点から今回の措置を講じているところでございます。

 やはりアメリカやEUのように、既にでき上がっている農家、ある程度完成されたというか、農業としてちゃんと自立しているという農家群をたくさん擁している国と、我が国のように、そういう農家は極めて限られているという国の違いから出るものであると考えております。

岡本(充)委員 アメリカの直接支払いの実績というところでサマライズした資料があったので、ちょっとそこのところを私読ませていただくと、アメリカの直接支払いについて、各論者いろいろ論じておりますが、零細な農業規模の生産者は、書類を作成し、例えばアメリカの場合でしたら、カウンティーと言われるんでしょうか、郡事務所に提出して支払いを受け取ったとしても、受領額がわずかであり、わざわざ加入手続をとらないケースがかなりあるという結果によって、結果論として小規模がこの制度に入っていないという分析もあります。アメリカの場合は、面積の加入率は九五%、生産者の加入率は七、八割程度にとどまっているというのが現状だというふうに分析をされておりますが、決してこの零細農家等に直接支払いの加入資格を与えていないからではないわけなんですね。

 そういう意味で、制限の仕方として、制度で切るのか、それとも、生産者の方の自主性に任せて受け取りを求めるか求めないかを分類するのか、二つ手だてはあると私は思っています。

 金額によって、今回誘導するわけですね。政策誘導をしていこう、規模拡大をするための政策誘導をする。この金額のいかんによって政策を誘導しようというのであれば、金額の額で誘導するということが可能であるにもかかわらず、あえてそうしないというところに私は大いなる疑問を感じるわけであります。

 答弁を求めても同じだと思いますので、もう少し、このアメリカの直接支払いのいろいろな研究結果、いろいろな分析結果を踏まえて一応確認をしておきたいということをちょっとお聞きしようと思っています。

 まず最初は、直接支払いが生産に与える影響が小さいのではないかという議論があります。それは、デカップリング型の直接支払いが生産とは切り離された形で支払われる。我が国は食料自給率の向上がある意味最も重要な政策目標の一つというふうになっていますから、昨年の新しい食料・農業・農村基本計画における目玉の政策である担い手に対する今回の直接支払いが食料自給率の向上に影響を与えないのではないかというふうなことをおっしゃる方もみえます。これについては、政府としてはどのようにお考えになられるんでしょうか。

中川国務大臣 岡本委員は、各国の例を参考にしていないのかと。まず参考という言葉の認識を共通にしますと、もちろん各国の制度をいろいろ勉強はしているわけですね。そういう中で、こういう形の直接支払いを基本にしてというか、お手本にしてというものではない。なぜならば、生産性の格差による部分のいわゆるプラスの部分とか、米の価格変動の部分というものは日本型独自である。ただし、直接支払いというものは、各国の農業条件の差によっていろいろあるわけです。

 アメリカは、御承知のとおり、九六年農業法あるいは二〇〇〇年農業法、そのときの農業情勢あるいは財政状況その他いろいろな条件によって現在の二〇〇二年農業法が導入されて、現在、仮称ですけれども、いわゆる二〇〇七年農業法というものを作業を進めているわけであります。ドイツの場合には、私も昔勉強したことがありますけれども、いわゆるデカップリング、条件不利地域での生産と、あるいは農業生産刺激と直接関係ないけれども、食料安全保障あるいは国土安全保障という観点から、ドイツ型のデカップリングというものもあるわけであります。それから、イギリスの場合には、午前中御議論がありましたけれども、自給率向上のための刺激策としてのそういう制度もいろいろある。スイスはスイスでああいう山岳地帯ですから。

 いろいろな農業形態があって、それに対してWTO上のいわゆる国内支持政策というものがあるわけでありますから、仮にいわゆる条件不利の格差是正のための部分がWTO上例えば緑である、あるいはいわゆる二階建ての部分が仮に黄色であるとか、いろいろな見方があると思いますけれども、いずれにしてもそれは日本型であって、アメリカ型と違うんだ。

 もう一つアメリカと違うのは、御承知のとおり、生産規模が全く違うわけであります。アメリカにおける零細と日本における大規模、私のところは平均四十ヘクタール、五十ヘクタールありますけれども、ヨーロッパに比べればヨーロッパ並みでありますが、アメリカではいわゆる小規模の方に入っていく。中西部の方の五大湖周辺の農業地帯は私のところとほぼ同規模であって、アメリカでは小規模経営であるということでありますから、日本は日本のやり方で今回やっていく。

 そういう中で、しかし、いわゆる条件をつける。条件は、岡本委員御承知の上でお話しなさっていると思いますけれども、一律に規模要件だけではないということもあるわけでございますので、その上で、やる気と能力のある農業形態に対しての支援策という意味では、自給率の向上、つまり、国内生産がより消費者に好まれるものがふえていくという観点から自給率向上を目指しているというふうに我々は理解して、この法案を御審議いただいているところであります。

岡本(充)委員 大臣から考え方はお聞かせいただきましたけれども、食料自給率の向上につながらないのではないかという私の指摘に対しての答弁がまだいただけていないので、政府参考人で結構ですから、お答えいただきたい。

中川国務大臣 さっき最後のところで申し上げたつもりでありますけれども、規模要件も含めて一定の条件を備えたところ、つまり、一言で申し上げれば、やる気と能力のあるところによりインセンティブを与えることによって消費者に支持される農業生産がふえていけば、文字どおり、基本法に基づく、国内生産を基本としてという趣旨を踏まえた形での農業経営というものになっていき、それが自給率の向上につながっていくというふうに我々は理解しているわけでございます。

岡本(充)委員 大臣が答えられたので、私はてっきり、今回そういうアメリカの情勢を踏まえて、参考にして、各年の生産量、品質に基づく支払い、あえて黄色の政策をつけて食料自給率を向上させるためのものを備えています、こういう答弁が出るのかなというふうに思ったんですね。

 大臣は、やる気と活力のあると言われましたか、農家に、担い手に農業を集約していくんだと。それは結構なことかもしれませんが、前もお話をさせていただきましたけれども、決して小規模な農家がやる気と活力がないわけじゃないんですよ。どうしてもいたし方なく小規模でやっている方もみえる。やる気もある、そして能力もある、活力もある、こういう人でもいたし方なくさまざまな事情で規模拡大ができないところにみえる方もあるということを、例えばうちの地元でいえば、きょうも農協の組合長から午前中、二、三お話を聞いてきました。慌ただしい話でしたけれども聞いてきた。

 言われた話は、正直、規模拡大はなかなか難しいと。後でお話をしようと思っていたけれども、規模拡大は難しいと。今回の法案が通っても、例えば真ん中に宅地があったり、それから耕作放棄地の話もありますが、いろいろな産廃置き場になってしまったようなところがあったり、その周辺に百坪、百五十坪の農地が広がっていたってここはどうしようもない、これも計算上規模拡大の農地としてカウントすることは可能なのかもしれないけれども、たとえこれが集まってきたところで効率的な農業が本当にできるのか、無理だと。今回の法案では農地の集約化も進まない、こういうことをおっしゃってみえました。

 何より心配をされていたのは、米の関税率のことについて心配しているということを重ねて大臣に伝えてくれというお話でありましたから、それは後ほどお話をさせていただきますが、そちらの方には関心は十分おありでありましたけれども、今回の法案で規模拡大が進むとは思えないという話でありました。

 そういった意味で、他国との比較の中で今回の法案が我が国の実情をどれだけとらまえて、そして政策として出されているのか。私は、この部分についてもう少し伺いたいと思います。

 あともう一点私が伺いたいのは、今回の政策をした結果、アメリカでは地代の上昇が起こったという研究結果も出ています。つまり農地の集約をする、集約を例えばするでもいい、もしくは直接支払いをする。そして、支払われるということは、この農地に対しての対価が大きくなるわけですから、アメリカの場合は農地を貸している人にはお金は出ません、日本ももちろんそうですが、そこで責任を負って生産をしている人に対して直接支払いをしている。したがって、農地を貸せばそれだけ収入ができることを予測して、地代が高くなってくる、こういうことが出てくる。結論として、農地を借りて例えば農業をしている人にとっては、実質実入りが多くなるかというと、実入りが多くならないという話もあります。調査によれば、直接支払いの六割ぐらいが地代に消えてしまうという話もあるわけなんです。

 こういったことに対しては、今回の日本の直接支払い、何らかの予防措置なり対策をとっているんでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 今回の制度で、いわゆる生産条件格差是正対策の対象になる麦や大豆を作付けている、あるいは作付けていないということによりまして農地そのものの評価に差が出るんじゃないかということは、現在でも言われております。

 ただ、この格差是正対策というのは、土地にくっついて歩くのではなくて、人に対して支給されますので、どの農地にその権利が上乗せされて動くかということは、これはその権利者とそれを借りる人の相対で決まる問題でございます。

 確かに、支給されることが権利づけられますので、土地の評価として、そういう権利がくっついているということが評価されて若干農地の価格に差が出るということは十分考えられるところだと思いますが、これが、私どもが支給しようとしている額と地代との関係で、今お話のありましたように、アメリカのように六割が吸収されてしまうのかどうかという点については、まだ確たる整理はできておりません。

岡本(充)委員 大臣、お聞きいただいておわかりいただけたと思いますけれども、今局長が答弁されたとおり、ぜひお考えいただきたいのは、この地代の問題をきちっと整理づけて、今後起こるかもしれない地代の上昇、例えば、変な話、一反あれば集落営農になる、あなた貸してください、何々さん貸してください、そうしたら、あなたのところはこれだけ収入が入るということを見越して、ちょっと高目にその農地を貸そうとか、こういうようなことを防ぐことができない。相対取引だとまさに今答弁されましたけれども、相対取引である以上はそういうことを防ぐ手だてはないわけでありまして、結局、政府が払ったお金は、強い担い手をつくるどころか、土地を貸した方が得だった、土地を貸した者が他産業並みの収入を得た、こういう笑い話にならないようにしなければいけないというふうに思っているわけです。

 そして、ナラシの政策はカナダを倣ったわけではないというお話もありましたけれども、例えば日本の米のナラシの政策は、農業者もお金を拠出し、もちろん政府がよりたくさんお金を出しているわけですけれども、その基金の範囲内でナラシのお金が出るというふうになっています。

 例えば、他国の収入変動に対する補償については同じような措置があるところもあるのですが、今回、我が国では、販売収入の変動が経営に及ぼす影響が大きい場合を想定して、補てんという意味でのナラシを考えてみえるやに私には思えます。そういった意味で考えると、大規模な冷害が起こった、大規模な何らかの災害が起こったときに、基金の範囲内で補てんをするということであると、もしかしたら大規模な農家であればあるほど実際に損失をこうむる金額は大きくなる可能性があると私は考えるわけです。

 こういった意味でいうと、逆に大規模農家がより大きな経営的痛手を受けるということになりはしないかという懸念に対しての対策はどのようにとられているのでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員からお話もありましたとおり、価格や収量の変動による農業経営に対する影響につきましては、本来は農業者自身によりまさに経営の中で対処されるべきものではありますけれども、経営規模の大きい担い手ということを考えますと、やはり販売収入の変動が経営に与える影響が大きいと考えられますことから、今回、収入変動影響緩和対策を導入することとしたところでございます。

 ただ、この対策を措置するに当たりましては、やはりみずから経営リスクに対する備えをしていただくということも大事ですし、モラルハザードを防がなきゃならぬということもございますので、収入下落の一定割合、これは一割でございますが、農業者には負担をしていただく、あるいは、補てんは農業者と国による拠出の範囲内とする、ただし、国の拠出割合は全体の四分の三という高率負担にするということにいたしております。

 積立金の限界があるわけでございますが、過去に、大天災、非常に作況が悪い年がございましたけれども、私たちもそういうものをよく調べまして、そういったときには一体どういうことが起こっているかと申しますと、基本的には、米の場合であれば、作況が著しく悪い年には、逆に価格が大幅に上昇いたします。それからもう一つには、農業共済制度がございますから、天災等による災害は、この共済制度の発動によりまして補てん金が支払われます。

 そういったことを前提にして、さらにそれの上乗せとしてナラシの補てん金が出るということでございますので、こういった作況の悪い年における経済実態、あるいは共済制度との連動、そういうことまで考えまして、この程度の個人負担をいただけば制度としてしっかりと大規模農家にも対応できる、こういうふうに考えております。

岡本(充)委員 私は、担い手の負担の部分が問題だ、個人の経営体の負担が問題だと指摘しているわけじゃなく、大規模農家であればあるほど収量が多いわけですから、当然、何らかの天災が起こったときの損害額、実質の金額としても大きくなる。今言われた共済制度もありましょう。もちろん今回のナラシの制度もありましょう。さまざまな形で補てんをしていくと言われても、拠出の金額の範囲ということになると、どうしても上限が出てくる。

 そういったときに、大規模農家ほど実際の損失の金額が大きくなるということは私は事実だと思うんですが、大規模農家、農地の集約化を図ると言っていながら、片や、被害が出た場合には大規模農家の方が被害金額が大きくなるということに、逆になりはしませんかという御質問をさせていただいています。

中川国務大臣 この制度が適用されますと、御指摘のとおり、該当する作物をいっぱいつくっている方が、過去の収入に比べて、大規模災害が起きれば、平均の収入からがくっと減るのは、それはもう当たり前の話でございます。

 大規模の程度にもよりますけれども、例えば私が経験をいたしました平成五年。米でいうと、作況指数が全国で七四、北海道の一部では作況指数四、たしか青森は作況が二〇とかいう数字を記憶しておりますけれども、つまりもうこれはほとんどゼロということですね。あるいは、私の地元の豆ですけれども、これなんかも大変冷害に弱い作物でありますから、大変な不作になった。ただ、豆の場合には、相場物ですから、値段は逆に三倍に上がったとかいう例もあります。

 今回の制度は、大規模農家ほど、大飢饉、大不作に対して、得べかりし平年作に対してのマイナスが大きいことは事実でありますから、現行の共済制度に加えて、いわゆるプラスアルファの部分として九割までをめどとしてやるわけでありますけれども、平成五年のときには、これは大変な不作だ、何十年来の凶作だ、農家は大変だということで、一つは、例えば冬場に工事のお仕事をやっていただいて、それに対して代金を支払って、家計なり来年の営農の収入にするという救農土木ということを我々考えました。

 それから、共済の制度そのもので支払い能力がない場合には、そこはもう政治の世界でありますから、事務方は、法案の審議の場ですから、そういうことは言えないと思いますけれども、本当に日本の農業に、あるいは農家に危機的な状況を与えるぐらいの異常な災害あるいはその他の要因があれば、そこはまさに政治が出てくるんじゃないでしょうか。

 ですから、我々は、この法律の一言一句でもう何も考えないということじゃなくて、緊急的な財政措置その他、あるいはさっきの救農土木のような緊急措置を考えるわけでありますから、本当に厳しい状況になれば、まさにそういうものに対して、来年、再来年、また農業ができるようにしていくということは、当然これは、極端に言えば、法律を超えてでもやっていくのがまさに政治じゃないでしょうか。

 法律そのものを変えるというと時間もかかるし、なかなか簡単にはいきませんけれども、法律の範囲内で特例措置というものも、当然これは危機的な状況になれば考えていくということは、お互い政治家ですから、自然相手、生き物相手ですから、それは私としては、政治家として、これは岡本委員と同じ立場で、法律に書いていないから知らないよということにはならないんだろうというふうに思います。

岡本(充)委員 大臣、他国の場合には、そういったいろいろな要因で収入変動が起こる、そのための措置をいろいろ手厚く措置しているところもあるわけです、法律として、制度として。日本も、天災がある可能性もあるし、また、いろいろな理由で農作物の価格が長期に低迷することもあると思います。そういうときに対しての備えをしておくべきじゃないか。

 例えば、先ほど救農土木と言われましたけれども、アメリカでは、直接支払いの資産効果が農業収入リスク管理に向けられるかどうかという研究をしているグループもあります。これによると、今回のような直接支払いで得られた収入が消費やレジャーに向けられて、残念ながら、いわゆる農業収入リスク管理に向けてさらなる投資をするというような方向には向かないんじゃないかということを指摘している向きもあるのであります。

 制度として、今回の制度を、もとに戻りますけれども、どこの国をまねしたとは言いませんけれども、いろいろな国を参考にする中でやったのであれば、ほかの国で言われている、指摘をされているデメリットだとかよくない点について、考えて工夫をしていただきたかったということをお話しさせていただいたわけでございます。

 時間の関係で、次の質問に移りたいと思います。

 では、今回の政策が実現をしたとなると、構造展望で、今後の農家は集約化されていく、これは前回私が質問をさせていただいたとおりですが、そういう展望をお持ちのようです。日本の農業所得、生産農業所得で結構なんですが、これは年々減ってきているやに思います。一九九〇年が四兆八千百七十二億、それが二〇〇〇年には三兆五千五百六十二億、二〇〇四年はまだ概算なのかもしれませんが、それを下回るのではないかという話を聞いております。

 この生産農業所得は、全体としては、今後この施策によってふえていくんだというふうに理解してよろしいのでしょうか。

中川国務大臣 GDPベースで、そうなるかどうかはわからないと思うんです。

 私の地元の例を出して大変恐縮なんですけれども、二十年前に、私の地元、十勝というところでありますけれども、ここの農家戸数は一万戸を超えておりました。農業粗生産は二千億を切っておりました。二千億になったといって大騒ぎしておりましたけれども、今、農家戸数は六千戸です。しかし、農業粗生産は、売上高は、二千六百億です。

 この中には、押しなべて、さっきの耕作放棄地どころか、農地が足りない、足りない、もっと規模拡大したいといって、農地不足であります。一戸当たりの農家の売り上げは、二千億に対して例えば一万戸、二千六百億に対して六千戸、一戸当たりどのぐらいふえたかということは割り算をすればわかるわけでありますから、私の地元だけの例を挙げて恐縮ですが、そういうやる気と能力で結果が出せるようなところ、愛知県にもそういう農家はいっぱいいらっしゃるのではないか。

 規模の問題じゃないですよ。やる気と能力があって、さっきちょっとお話にあった、品質のいいものをつくっている愛知県の農家を私も知っております。熊本にもあるでしょう。中山間にもあるでしょう。そういう農家もありますので、さてこれから、では、GDPに対して農業粗生産が、昔は十兆円と言われたものが今は九兆前後になっている。しかし、一戸当たりの農家の売り上げがどうなっているか、あるいは経営内容がどうなっているか。

 我々の出している目標としては、五年でコストを二割から三割下げようという目標もあるわけでありますから、単純に全体の粗収入がどうかとか農家の売り上げがどうかということじゃなくて、個々の農家、個々の経営体が強くなれるような施策をやっていきたいというのが今回の目的の大きな一つでございます。

岡本(充)委員 大臣、くしくも個々の農家の話をされましたから、きょうお配りをさせていただいた資料の農林水産統計、こちらの方で少しお伺いをしたいと思います。

 個々の農家の収入がどうなるのかというのは二枚目のところにありますが、二枚目のグラフ、集落営農二十ヘクタール以上は一戸当たりの農業所得が四十三万円、それから個別経営〇・五から一ヘクタール層では八万円、こういうふうな数字が出ています。

 そもそも、私は農林水産省にお話をしたらそういう数字はないと言われましたが、今の日本の農家においての収入が一体どういうふうなものから得られているのか。例えば、農業所得がどうだ、地代がどうだ、いろいろあると思う。一体、どういうような構造なのか。六十五歳以上の方が多いと言われるが、年金の収入もあるでしょう。しかし、今後、この政策ができた場合に、一体農家の所得がどう推移していくのか。土地の、いわゆる供出する側、借り手側、いろいろあると思いますが、どういうふうな変化をするのか、シミュレーションを出しておくべきじゃないか。

 私が危惧しているのは、六十五歳を超える高齢者の方で国民年金しか入っていない方が、土地を貸して、先ほど地代が上がるというふうに私は指摘をさせていただきましたけれども、地代が上がって地代収入がふえれば、それはそれで結構なことかもしれませんが、少ない農地でつくりたい、少なくとも、現金収入はなくても、自分のところのお米ぐらいは何とかこれまで自給自足でやってきた、こういう農家にとって、土地を出すこと、土地を出して、もちろんオペレーターにやってもらうことは効率的にはいいのかもしれないが、その農家として一体どういう収入構造になるのか、これについて検討しておく必要があるのではないかというお話をしましたら、そういう資料はないというふうに言われました。

 私はその実態も調査をするべきだというふうに考えるわけなんですが、大臣、今後そういう調査をしていただけませんでしょうか。

中川国務大臣 土地の出し手と借り手、あるいは農地の集積、さっき岡本委員がずっと何か前提としては規模というものが中心のお話をされておりますけれども、我々としては、規模拡大も大事ですし、集落営農も大事でありますし、それから、小規模であっても、愛知県のような品質がよい、愛知県も規模が広いところもありますが、とにかく収益の高い農業をやっているところは全国にあるわけでありますから、やる気と能力、つまり経営感覚といいましょうか、もうかるということを目指してやっていく農業に対して、日本の食料政策として、あるいは国土政策、その他多面的な役割として応援をしていこうというのが今回の趣旨でございます。

 そういう意味で、どのぐらいの規模が大体どのぐらいの収益になるかとか、土地のリース代が幾らになるかとか、土地を売ったら幾らになるかというのは、多分、愛知県の三大都市圏と私のところでは生活条件も農地の価格も随分と違うと思いますから、幾つかの例という意味ではできるんでしょうけれども、モデルといいましょうか、かちっとしたものは、文字どおり多様な日本の農業でありますから、その辺は、法案の前提になるようなかちっとしたデータをつくるというのはなかなか難しい。

 しかし、来年のスタートに向けては、午前中も議論がありましたように、認定農家なり、その資格が取れるようにどうぞ入ってきてくださいという努力をする中で、いろいろなケースを説明することができる。例えば、私の地元なんかの代表例を一つ二つ、愛知県の代表例を一つ二つ、あるいは中山間の代表例を一つ二つということはできますけれども、それをモデルということで御理解をいただけるのであれば、それはひとつ今後検討させていただきたいと思います。

岡本(充)委員 それぞれ、各県ごとに農林水産省は統計を出してみえます。そういう意味では、その統計をもとにすれば、どういうような収入形態になっていくのか。私が本当に危惧しているのが、先ほどもお話ししましたように、国民年金だけの収入になってしまう、あと、地代だけの収入になってしまう方。

 農林水産省によれば、集落営農の中でやる仕事はあるだろうから、草刈りをして収入を得てくれというふうな話も聞いておりますけれども、草刈りで得る収入というのは知れているし、常にできるわけでもないし、そういう意味では、収入がどういうふうに推移をしていくというふうに考えているのか、ぜひ、そのデータを、かちっとしたものでなくても結構ですから、どういうイメージになるのか、では、大臣がお話をしていただきましたので、その資料をいただきたいと思います。

中川国務大臣 かちっとしたものではないということは岡本委員もおっしゃいましたけれども、どの程度のものになるかについては、全国に何百万という中で新しい制度を、幾つかの仮定を置いてやりますので、御不満があるかもしれませんけれども、そういうものを幾つかのケースとして出すように今検討させてもらいたいと思います。

岡本(充)委員 さて、この数字、一枚めくっていくと、きょう統計部長も来られていますから、私の好きな統計の話になるので恐縮でございますが、ではこれは一体統計としてどうなのか。まず、サンプル数がかなり少ないですね。どういうところでこのサンプリング調査をされたのか。つまり、対象となったものは、例えばランダムに選ばれたのか、それとも、その中で、そういう方式ではなく、ピックアップを農林水産省側でしてきたのか、そこについてお答えをいただきたいと思います。

小西政府参考人 お答えいたします。

 この調査につきましては、標本調査でございますので、全国のそれぞれの農家、また地域営農、それぞれの分布に応じましてサンプルをとりまして、ここに掲げておりますけれども、集落営農につきましては約百のサンプルをとっておりますが、これは全体的な数としては一定の精度を持っているというふうに理解しております。

岡本(充)委員 無作為抽出かどうかということです。

小西政府参考人 無作為抽出でございます。

岡本(充)委員 いや、農家がたくさんある中で無作為抽出といっても、非常に難しいと思うんですよね、いろいろな経営体があって、いろいろな人があって、それをどういうふうに無作為抽出するかというのは。例えば、農家というものの電話番号があって、その電話番号の中で選ぶというならわかるけれども、どこが農家で、どういう農家がどこにあるか、こういうことを調べていっても、全軒、おうちを把握しているわけでもないでしょうし、そういった中で無作為抽出、理論的に可能ですか。

小西政府参考人 私ども、センサス結果をもとにしてこのサンプルをとっております。そういった意味で、地域の、それぞれ農家の分布を見ながら無作為で抽出しているところでございます。

岡本(充)委員 それでは無作為にならないんじゃないですか。無作為というのは、本当に、例えば選挙のときでもそうですけれども、電話番号をコンピューターで発生させて、ここの家に電話しようと世論調査をする、そういうのが無作為であって、ある一定の分布図に従って、分布図の中でピックアップをしていくという話になってくるとそうならない。まあ、この議論を続けてもしようがない、ちょっと時間の関係もありますから。

 私が指摘をしたいのは、この例えば二番目の表で、経営耕地面積が、皆様、見にくいかもしれない、二と書いてあるところですが、上から二段目、十ヘクタール未満は、耕地面積の平均という意味なんでしょうけれども、八百三十七と書いてある。隣が千五百五十三、その次が三千三百三十七。経営耕地面積が、とりあえず、十ヘクタール未満と十から二十のところは二倍になっているが、その下の方の二十二というところを見てください。例えば、この農業粗収入は、十ヘクタール未満と十から二十の間は、これは四倍ぐらいにはなっているんでしょうかね。さらに、耕地面積がおよそ四倍ふえると収入は十倍ぐらいにふえる、こういうふうになっているんですが、こんなにも農業粗収入が急に単位面積当たり上がるものなんですか。これはちょっと数字として私はおかしいのではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

小西政府参考人 ただいまの資料にありましたように、この十六年の農業経営統計調査によりますと、水田作経営の集落営農の農業粗収益は、水田作付面積が十ヘクタール未満の階層では三百六十二万円、十から二十ヘクタールの階層では四・一倍の千四百七十三万円、また、二十ヘクタール以上の階層では九・五倍の三千四百五十四万円となっております。

 これは、水田作付面積が、十ヘクタール未満の階層の平均では五ヘクタール、十から二十ヘクタールの階層ではその三・〇倍の十五ヘクタール、二十ヘクタール以上の階層では七・二倍の三十六ヘクタールというふうにありますように、基本的には集落営農の水田作付面積規模に大きな差があるということによるものでございます。

 また、これに加えまして、十アール当たりの農業粗収益が、水田作付面積が十ヘクタール未満の階層では七万三千円、十から二十ヘクタールの階層ではその一・四倍の九万九千円、二十ヘクタール以上の階層では一・三倍の九万五千円というふうに異なっていることによるものでございます。

岡本(充)委員 今、部長は水田作付面積で言われたけれども、経営耕地面積で農業粗収入は決まるのだと私は思うので、この数字をここで細かく取り上げて云々かんぬんともうちょっとやりたいけれども、時間の関係で。

 私は何が言いたいかというと、そもそも、この八万円と四十三万円を出すのは結構な話ですが、調べた個数も、ある意味無作為ではない、数も少ない、これは統計学的に有意差があるのかどうかは、私もちょっと検定をしていないからわからないけれども、もちろん集落営農が経営効率が悪くなると言っているわけじゃない、それは経営効率がよくなるのはよくわかるけれども、こんなにも差が出るのかと。調べた個数も、サンプリング調査であり、なおかつ数が少ない中で、今言ったこういうばらつきもある、この数字の中に。これをもとにして四十三万円が八万円になります、こう言われても、私は、この数字の詳細な詰めをしていくと本当にこういう差があるのかどうかということについて疑問を呈しているわけです。

 大臣、ここから先、大臣にちょっとお伺いしたいんです。

 これは、こういう差がある、現時点でも四十三万円、これを信じましょう。例えばこれを信じたとして、四十三万円と八万円の差があるとしたとしても、それでもなおかつ集落営農が進まないこの現状の中で、一体幾ら今回予算規模をつけるかわかりませんけれども、これよりももっと大きな差をつけなければ集落営農は進まないのかもしれない。政府が言うような金額で誘導する、金額だけではないと言われるかもしれないけれども、金額で大規模な土地利用型農業の構造改革をしようと思っているのであれば、これ以上の差をつけなきゃいけないという話になるんじゃないか、逆に、もしこれが真実なら。

 私は、今、これの数字の根拠がおかしいんじゃないかということも指摘させていただいた。大臣としては、私の今の指摘、どのようにお考えになられるか。この数字がちょっと真実性が乏しいのか、それとも、これが本当に真実、真をあらわしているのであれば、これ以上の格差をつけるべきだというふうにお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。

中川国務大臣 さっき選挙の話が出ましたが、あれは統計学、岡本委員、大変造詣が深いようでありますけれども、学問的な根拠もあるようであります。

 他方、この統計部のデータも、何十年にわたっての経験と専門家の判断もある上での統計でございますので、先ほど、私は、多種多様なものがあるから、モデルケースを出せと言っても、なかなかかちっとしたものは出ませんと申し上げたわけでありますけれども、しかし、これはこれで一つの重要なデータであると認識をしております。

 その上で、この集落営農で規模のメリットがこのように顕著にあればあるほど、やはり、集落営農によって、我々が、個々の農家は四ヘクタール、十ヘクタールを満たさなくても、二十ヘクタール以上を目指せば、インセンティブになるというデータであるのではないか。それから、品質がよければさらに粗収入、売り上げが上がっていく、高収益で高いものが売れるということになればメリットがあるということでありますから、このデータはまさに如実にこの集落営農によって耕地面積がふえていけばいくほど粗収入なり所得がふえていく顕著な例として岡本委員がお出しになったのではないかというふうに私は理解したいと思います。

岡本(充)委員 大臣、私が指摘をしたいのは、もし本当にこれだけの顕著な差があっても集落営農が進んでこなかったとするのであれば、これは、農家の方がこの事実を知らないか、つまり農林水産省の周知徹底がなされていないから農家の方が知らなかったか、それとも実際にはこんなに差がないか、もしくは、これだけ差があっても集落営農ができない何らかの要因があるとすれば、今後、変な話、金銭をもっと補助金として積み増したとしても、これ以上の差をつけなければ人々は集落営農に集まってこないという話になる。

 だから、一体このどれなのかというふうに私はお聞きをしておりまして、そういう意味でいうと、どれをとってもこれまでの農林水産省の政策に反省が必要になってくるという点では、大臣はどれとは言いづらいとは思います。私は、そういう意味でこの指摘をさせておいていただいて、また機会があったらこの議論を深めていきたいと思います。

 きょうは、外務省の方にお越しをいただきましたけれども、最後に、WTO交渉、今後に向けてどういう方針でお臨みかお話を伺って、私の質問を終わりたいと思います。

木寺政府参考人 お答え申し上げます。

 本日委員の御質問の、品目横断的経営安定対策の支払いに関連してでございますが、WTO交渉の結果新たに導入されます国内支持のルールに基づく緑、青、黄色のそれぞれいずれに該当するかという点につきましては、委員御指摘のとおり、WTO農業協定上黄色の政策に該当するのではないかと思われる部分がありますが、今後の交渉の結果を踏まえて検討する必要があると考えております。

 しかしながら、我が国は、これまでの農政改革によりまして総合AMSを二〇〇二年には約束水準の一八%にまで削減してきております。その他のAMS主要国のアメリカ、これは七五%、EUは六四%、これらと比較しても大幅に削減してきております。したがいまして、我が国として使用いたしますAMSを今回の交渉の結果として決まる約束レベルの範囲内とすることは十分に可能であり、このために我が国が交渉上不利になることはないと考えております。

 いずれにいたしましても、外務省といたしましては、関係省庁と協力をして、政府一体となって我が国の主張がドーハ・ラウンドの成果に最大限反映されるよう努めてまいる所存でございます。

岡本(充)委員 どうもありがとうございました。終わります。

稲葉委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日議題となっております政府提出三法案及び民主党さんが提出をされました法案につきまして、本当に一生懸命勉強をしてまいりました。その点で、民主党さん提出の議員立法のこの法案、本当にお時間をかけられて大変な御努力をされたなという思いで拝見をしておりました。

 幾ら勉強しても、私の理解不足で、あるいは純粋にわからないところがたくさんございましたので、きょうはその点について、まず、民主党提出の法案についてお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、食料自給率につきまして、十年後五〇%、そして将来的には六〇%とお書きになりました。基本計画であればまだしも、基本法についてこのような数値というのを明確にされることに対して、私自身は違和感を感じたところでございますけれども、この食料自給率を十年後に五〇%、将来は六〇%とあえて明記することで、食料自給率のアップに向けた民主党の意気込みをあらわしているのかなというふうにも読んだ次第でございますけれども、ネクスト大臣になられる農水大臣は、法律の確実な施行、実施に対して非常な努力が必要なのではないかな、十年後に五〇%にならないときには法律違反という形になりまして、どういうふうに責任をおとりになるのかなと素直に読んだところでございますが、この点について、まず意気込みからお伺いをさせていただきます。

篠原議員 意気込みのあり過ぎるネクストキャビネットの大臣はちょっと中座しておりまして、私の方から答えさせていただきます。

 食料・農業・農村基本法で新しい農政をスタートいたしましたけれども、その中で、実質的に効果があるのは何かというのをつらつら考えますと、食料・農業・農村基本計画で四〇%の自給率を四五%にという、あの部分が一番脚光を浴び、法律の実体面として浮かび上がってきたんじゃないかと思っております。

 これにヒントを得まして、今、丸谷さんのおっしゃったとおりでございます、我々は、野党の法案であると、大胆に我々の意思を法律の中に明記しよう、五〇%でもできるのではないかということで、この法案の審議が始まってから何回も同じような答弁をさせていただいておりますけれども、過去の生産実績から、日本の農業にもこの程度の潜在的な生産能力はあるんだ、だからこれを目指していこうということで、政権を奪取後十年間で五〇%にするということを明記いたしました。

 政権をとった後の心配云々ですから、全然とれる見込みも立って、とれる見込みも立っていないなんて言っては悪いんですが、余り立っていないときに、それよりももっと先のことを心配するのはいかがかと思いますけれども、我々は、とりましたらこれに猛進するつもりでございます。

丸谷委員 意気込みを聞かせていただきました。

 自給率に関しましては、やはり需要量との関係というのは無視できないというふうに私自身は考えております。

 例えば、わかりやすい例を挙げさせていただきますと、小麦の場合、民主党案では十年後に五〇%達成するためには生産量を四百万トン、六〇%では七百七十九万トンという御答弁が本委員会でされているところでございます。しかしながら、需要量との関係から考えますと、篠原先生十分に御存じのことでございますけれども、現在の小麦の需要は六百二十七万トン、うち国内産の小麦の需要が八十六万トンであり、山田議員がけさ御答弁されましたように、品質開発を行って用途を多様化したとしても、七百七十九万トンの生産というのは、現在の需要量全体、輸入も含めて全体の六百二十七万トンをはるかに上回る数になってしまいます。

 この小麦に限って質問させていただければ、どのような生活モデルを考えこのような数値を出していらっしゃるのか、この点についてお伺いをさせていただきます。

篠原議員 お答えいたします。

 需要の問題があるのは重々承知しております。ですけれども、まずは生産ということで、過去の潜在能力がどれだけあるかということで、まず五〇%は過去の最大生産量、我々が主として生産振興しようと思っている自給率の減ってしまった作物、それでもって計算いたしました。

 それで、六〇%の方はどうやって計算したかということですけれども、同じ考え方にのっとっております。ちょっと変えましたのは過去の最大栽培面積、この点については午前中に岡本委員から非常に厳しい御指摘がありまして、当たっているんですけれども、都合のいい作物の面積ばかりがっちゃんこしているじゃないか、今や裏作で麦や菜種なんかつくっておれないんだ、野菜をつくっておるんだという御指摘がありました。それは重々承知しております。しかし、あくまで計算上、過去の最大生産量というのと、次に過去の最大栽培面積、それ掛ける、最大単収を掛け合わせる。ですから、あくまで計算上のことでして、六〇%になれるということでございます。

 あと、六百二十七万トンしか小麦の需要がないのに七百万トンになっているのはおかしいじゃないか、それは承知しております。ただ、計算でこういうことが可能である。

 ですけれども、実際六〇%にするには、外国の農産物なんかはなるべく食べずに、私がつくった言葉なんですが、地産地消、地元のものを地元で食べていくというようなことをしていって、そういった意識改革からしていかなきゃならないんですけれども、これはあくまで生産分野の法律でございますので、生産力としてこれだけあるということで考えました。

 それから、今の小麦に絞っての御質問ですけれども、確かに、おっしゃるとおりです、六百二十七万トンしか需要はございません。午前中もお答えいたしましたけれども、パン用に百五十九万トンも使われておるわけですけれども、一万トンぐらいしか国産のは使っていない。しかし、これを仮に百万トン使うようになったら大進歩なわけです。というのがあって、もうだめだというふうに決めてかかっておられる方がたくさんおられるんじゃないかと思いますけれども、国産志向というのは物すごく強いわけです。

 なぜ小麦について国産志向がそのまま進んでいかないかというと、米と違いまして難しいことがありまして、粉にしなくちゃならないわけです。そして、製粉工場がどういうふうになったかというと、外国に頼り切っちゃったので、みんな港、港にしかなくなっちゃったわけです。この前の委員会でちょっと例に出しました喜多方市のラーメンですけれども、一番のネックは、やはり製粉工場が近くにないということなんです。それで、郡山市に持っていかなくちゃならない。そんなことだったら、粉になったのを持ってきてもらった方がずっとコストが安くなりますから。しかし、今、農林水産省は麦をつくれとちょっと言い出したけれども、また麦なんて要らないと言い出すかもしれない。ですから、何十億とかかる製粉工場はなかなかつくれない。

 それに対して、米の場合は、コインでもって精米ができるわけです。その違いがありまして、なかなか難しいので、これは、中川農林水産大臣なんかに頑張っていただいて、製粉工場を各地にきちんとつくってもらったりすると、一挙に需要と生産がマッチしてくるんじゃないかと思います。

 間に製粉メーカーが入っていて、外国の方の高品質のものになれ切っちゃっていて、日本のものを使おうとしないというようなネックがあって、それが需要がふえることの歯どめになってしまっているんじゃないかと思います。やり方によっては幾らでもふえるんじゃないかと思っております。

丸谷委員 御説明ありがとうございました。

 ただいまの御説明の中でもまた私の中でわからない点は、やはり今、国内産麦の用途というのは、主にその特質からうどんであるというふうに承知をしておりまして、小麦の生産量をふやして各地に製粉所を置いたとして、これは生産面からの法律なのでという御説明でございましたけれども、実際に製粉をされて出てきた、うどんになっていく、このうどん、莫大な量を私たちは消費しなければいけないわけで、今までよりもはるかにうどんを食べなければいけないのかなという、需要面から考えると、そういった、やはり食生活モデルというのが自給率の向上にはセットで考えていかなければ整合性がとれないのではないかなというのが私の意見でございます。

 次に移らせていただきまして、米についての考え方が、民主党案を読むとよくわかりませんでしたので、お伺いをさせていただきます。

 まず、民主党案の第十条で、生産調整を廃止するというふうに書かれていらっしゃいます。生産調整を廃止した場合、米価というのは具体的に一体幾らくらいになるというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。例えば、生産調整を廃止したことにより米の増産に農家が走り、また価格が暴落し、そして農家を直撃するといったおそれもあると私は思いますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

篠原議員 生産調整廃止という、これもまた大胆な条文が入っているわけでございますけれども、これも、もう生産調整しなくてよくなるんですよということを皆さんにわかっていただくために、わざと入れました。

 どうしてそれが可能になるかということですけれども、やはり、農家の皆さんは安定した収入を求めます。ですから、今まで米が過剰になってしまったんです。ほかの乱高下するものよりも、ちゃんと価格が一定なものの方がいいと。これは、まじめな農家の行動を反映しているんじゃないかと思っております。ですから、それのビヘービアというか、その行動パターンに乗っかる形で、いやいや、米をつくっていてもそんなにもうかるばかりじゃありませんよ、日本で自給率が減りに減ってしまった麦や大豆をつくった方が収入が多くなりますよという状態にしてやれば、農家は安心して麦や大豆をつくるんじゃないかと思います。

 それで、需給事情を勘案して、例えばですけれども、北海道あたりでは十アール当たり八俵米がとれる、一俵当たり一万五千円だ。計算が苦手なのでよくできないんですが、粗収入で十五、六万、そして、経費がかかりますから、その半分ぐらいの所得にしかならないということでしたら、それで、米よりも有利にしてやればいいわけですから、小麦をつくったら七万円出しますよという形で直接支払いをすれば、米などをつくらずに麦をつくるということになるんじゃないかと思います。そういう形で、麦に、大豆に、菜種に、雑穀にと誘導することによって、米の過剰は生じない、したがって、米価にはそれほど影響を与えないというふうに考えております。

 もちろん、大豊作になるというような場合、例えば北海道は昨年大豊作で、一〇九ですか、ほかの、本州はそうじゃなくて、ちょうど過剰というもので余り悩まずに済みましたけれども、全国ベースで一〇九になどなったら、当然余ってしまいます。そのときは、我々の法案にも書いてありますけれども、備蓄でしのぐなりして、その翌年、今度は米以外の作物をもっと優遇するような形で直接支払いの単価を設定すれば、米の過剰にはならないで済むんじゃないかと思っております。

丸谷委員 今御説明をいただいた論理からすると、生産調整をやめても、お米は生産過剰にはならないので現在の米価を維持する、一万五千円を維持するというお答えだったのかと思いますけれども、やはり、今までこの生産調整が必要となってきた背景を考えますと、そんなに楽観視はできないのではないかなと思います。

 ちょっと今御説明を聞いて、なかなか自分の頭の中でもまだ整理をすることができないんですが、もう一方、米に対しては、第九条で、外国との生産条件の格差の是正を図るために、主要農産物に対して直接支払いをするというふうになっております。この主要農産物については、民主党案の第七条において米というのがこの中に指定をされております。

 そもそも、米に対しても外国との格差を埋めるために直接支払いをしますよという法律になっているわけですけれども、米自体は今高い関税がかかっていますので、この格差というものがそもそも生じないのではないかというふうに考えているところでございますが、先ほど、午前中の山田議員でしたか、御答弁の中では、WTO交渉の中で関税が引き下がるというようなことも考えているというお話がございましたけれども、そのような発想に立って、見通しに立って、ここは米についてこのような設定をされたんでしょうか。

篠原議員 丸谷委員、きちんと御理解いただいているんじゃないかと思っております。今質問の中で言われたとおりでございます。

 我々は、もちろん、上限関税がアメリカの言うように低い上限関税にならずに、センシティブ品目も多く認められてということを望んでおりますけれども、ひょっとしてそうじゃない事態に立ち至るかもしれない。そのときにも、法律改正とかをしなくても、我々も政権をとっていないので、そういうことを言うのは早過ぎるのかもしれませんけれども、それなりに対応できるようにということを考えております。

 そもそも、直接支払いというのは、そういった事態に対応できるものなんですね。今まで価格を高くしていて、価格支持で農家の収入を確保していたものを、つまり、消費者負担で農家を保護していたものを、納税者負担、税金でやるということですから、そういったことも念頭に置いております。

丸谷委員 私は外務委員会にも所属をしておりますけれども、農水委員会でもそうなんですが、WTO交渉における日本の交渉態度というのは弱腰だということを与野党問わず大きな声で各議員おっしゃいます。その中で、米に対する関税が引き下がることも念頭に置きながらというのは、私たち国会議員の立場からしますと、それはないのではないかなという思いでございます。

 私も、こう見えましても主婦でございますので、やはりお金のことが、金目のことがとても気になります。一体幾らもらえるんだ、すべての販売農家に対して一兆円というのは、非常に大きなお金なのか、それとも、よくよく考えてみると少ないお金なのか、何をつくれば幾らもらえるのかという、品目ごとの単価というのを続いて教えていただきたいと思います。

 直接支払いの単価についてはどのように計算をされ、このような法律を出されたんでしょうか。例えば、米十アール当たりについて幾らの支払いを行うようになるのか、この点をまず教えていただきたいと思います。

篠原議員 米と米以外の自給率が下がってしまった作物とは分けて考えました。米は、やはり日本の作物の中では別格官幣大社じゃないかと思っております。違う扱いをしなければいけない。ですから、本来余っている米についてはそんなに手厚くしなくてもいいのかもしれませんけれども、日本の自給率の向上あるいは維持を考えた場合、米を抜きには考えられないということで、米だけは別に考えました。

 米以外の作物について先に申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、一応、外国との生産条件の格差を念頭に置いてありますけれども、日本の農家はその前に米との比較を常に考えるはずです。ですから、米並みのというのが一般的じゃないかと思います。十アール当たり米並みの所得が確保できるというのが、一つ外国との生産条件の格差の前にあるんじゃないかと思います。

 問題の米についてですけれども、余り冷遇するのはよくない、しかし、規模拡大もしていってほしい、品質のいい米をつくってほしいということで、我々はどのように米を扱ったらいいかというのをちょっと考えました。

 例えば、政権を奪取してから、政権をとってからということでやっておりますので、その初年度と、五年後あるいは十年後と、どうなるかということですけれども、初年度から米についてだけは規模別の単価の違いを設けましょう、例えば、十アール当たりでいいますと、五十アール未満は二万五千円、それから五十アールから一ヘクタールは三万円、それから二ヘクタールまでは三万五千円、五ヘクタール以上は四万五千円というふうに出します。

 それで、五年後には、小さな農家は、なるべくやめていただいてというか、ほかの人に貸したりしてもらった方がいいということで、二万五千円のを一万五千円にする。そのかわり、大きな農家はもっと規模を拡大していってもらわなくちゃいけない。例えば、米価がもっと下がってしまったりしている、専業農家ほどそういうときは困りますから、その場合は四万五千円を五万五千円にするとかいう形で、我々がよく言っています規模加算をふやしていく。

 そして八年後には、これはみんな例えばの話ですけれども、五十アール未満はもう直接支払いしない。そして大きな農家にだけする。ただ、そのときは、今度はまた米が余り始めた、そうしたら、そういう需給事情を考えて、五万円にしたのを今度は三万円に減らすとか、こういった操作でもっていろいろ誘導できるんじゃないかと思っております。

丸谷委員 品目ごとの直接支払いの単価の計算の仕方、そういったものをしっかりと明確にしていただかないと、農家の皆さんもイメージだけというか、実態がわかってこないというふうに思いますし、今の御説明だけでは残念ながら十分と言えないのではないかという思いがしてなりません。

 プラス、今の御説明からしますと、直接支払いの一兆円という規模で足りるのかどうかという疑問がわいてまいります。例えば、今回の考え方でいうと、まず、米並みというのがベースにあるという御説明が今ありました。そして、その次にという順序でいいのかどうかわかりませんけれども、外国との格差を埋めるために、それプラス加算方式という形で支払いがされるわけでございます。

 そこで、この加算方式について、面積ですとかあるいは環境ですとか品質によって加算をするということを法律に明記されていらっしゃいますけれども、では、この具体的な加算方式について御説明をしていただきたいと思います。

篠原議員 ちょうど一兆円になるようにとか、一兆円の中でおさめなければいけないということでやりくりするということで、いろいろ計算してみました。

 例えば、表ができていて、これは我々民主党のインターネットの中でも皆さんに公表しているはずですけれども、規模加算、品質加算、それから環境加算とありますけれども、最初は規模の大きな人がそんなにいないだろうから、例えば一兆円のうち二百五十億円ぐらいを充てよう、それをだんだんふやしていく、五百億、六百億と。それから、品質加算も同じようにふやしていくというようなことを考えております。環境の方は、最初は五百億円ぐらいから七百五十億円、一千億というふうに徐々にふやしていく。

 それで、品目別のでいいますと、加算額の方を、今も数字を申し上げたのでおわかりいただけると思いますけれども、大体、加算制度にかかわるのを、二割ぐらいから、最終年度十年目には三割ぐらいにふやしていく、それぞれの単価を減らしながら、加算制度によって規模拡大を誘導し、品質のいいものをつくるように誘導していくということですね。

 これはなぜ考えたかということですけれども、転作奨励補助金がモラルハザードを起こしてしまった。ただつくっていればいいと。つくって、種はまいたけれども、収穫しないというようなことで済んじゃったこともあるわけですね。それはよくないからというので、品質がいい人にしかやりませんよと。

 例えば、品質加算の例で申し上げますと、ある地域の平均の大豆の単収が三百キログラムだとします。それを三百五十、四百キロつくっていると。品質が量ではかられるということ。ところが、百五十キロぐらいだ、それでつくった、つくったと言ってもらっている。やはりこれはよくないので、こういう人たちには、もう極端なことを言うと出さないということも考えていいんじゃないかと思っております。そうやって自給率の向上に資するようにする。

 それで、先ほど、米については、最初から規模の大きな農家と小さな農家で、だんだん大規模農家を優遇するようにしていくということを申し上げましたけれども、ほかの品目については、とりあえず一生懸命つくろうという人に出しますけれども、行く行くは、米と同じようになるべく大きな農家がそれでやっていけるような形ということで、規模加算を多くしていってもいいんじゃないかと思っております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 もう一度、きょういただきました御答弁と、また近いうちに民主党案の方の食料自給率、品目ごとに出されるというお話が午前中ありましたので、それをまた再度しっかりと勉強させていただきまして、わからないことについて次回でもまた質問をさせていただきたいと思います。

 昨日、大臣の地元であります帯広の方に私も地方公聴会に出席をさせていただきまして、非常に貴重な御意見をお伺いしてきたところでございます。

 また、私も地元が北海道でございまして、各地域の農村の皆様から、この政府案に対して、こういった場合はどうなるのかと、非常に細かい例を挙げて質問されるケースが多くございます。

 また、そういったことを聞くにつれ、この政府案が大きな転換期であるということに加え、なかなか大きな転換期であり、大きな転換された政策であるので、農家の皆さんにとってはなじみがないということを大前提にして、きめ細やかな説明がなされているのかどうか、この点について、やはり、各地域、品目ごとでそれぞれの関心も違うでしょうし、計算の方法も違うでしょうし、そういったところを踏まえて、もうちょっときめ細やかな説明を行っていただくことで円滑な導入を図ることができるというふうに考えております。

 これは、本当にお願いでございますけれども、大臣、この点をひとつよろしくお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

中川国務大臣 きのうの地方公聴会で、たまたま委員会の御決定で、私の地元に丸谷委員初め委員の方々に来ていただきましたこと、おくればせながら御礼を申し上げます。

 説明をきちっとしろという御指摘、全くそのとおりでありまして、WTOを片っ方で気にしながら新政策に移るということですから、農家の皆さん、大変関心があり、そしてまた、細かいところがよくわからないということについては、御指摘をしっかり受けとめて、さらにわかっていただきながら、新政策、よかれと思ってやるわけでありますので、御理解いただきながら努力をしていきたいと思います。

 一点だけ、先ほどの篠原提出者とのやりとりの中で、政府は、与党、つまり公明党、自民党の御指導をいただきながらやっておりますが、今回の改正は、WTOの交渉がどうなるかということを前提にして議論はしておりません。したがって、上限関税を七五%、あるいは削減率九〇%というのはアメリカの提案でございますから、七七八%の現行関税を、九〇%をカットして七八%にするなんということを前提にして毛頭政府案は考えておりませんので、現行WTOのルールを前提にして、その上で趣旨を全うさせていただきたいと思いますので、ぜひ御理解のほどをよろしくお願いいたします。

丸谷委員 最後に、これも地元からの声でございますけれども、本日、衆議院の本会議で行革法案が可決をされたところでございます、こういった農政の大転換期だからこそ、農林水産政策を支援する手段としての金融支援、農林水産業にとって、長期かつ低利の融資が必要というふうに考えておりますし、それを望む声が多く届いております。

 今後も、金融改革の中にあっても、農林公庫資金の機能が新政策金融機関にそのまま継承されるべきというふうに考えますけれども、最後にこのことについてお伺いをいたします。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、農林漁業金融公庫によります長期、低利の資金は、担い手の育成など、政策目的を達成するための重要なツールでございまして、今後とも、農業の構造改革を進めていく上で、このような機能が十分に発揮される必要があると農林省としては考えております。

 今回の政策金融改革でも、農林公庫は新しい政策金融機関に統合されることにはなりますけれども、新機関でも、農林水産業者の資金調達支援機能が基本的にそのまま引き継がれることが行政改革推進法案にも明記されております。

 農林水産省といたしましては、統合後も農業の構造改革その他の政策課題に的確に対応した資金の融通が円滑に行われますよう、専門的能力を有した職員を配置するなど、農林水産業者の利便性に資する体制がとられまして、これまで農林公庫が果たしてきた機能が確保されるよう努めてまいりたいと考えております。

丸谷委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 午前中の民主党の大畠委員も質疑しておりましたが、私も、まず初めに、水産業、漁業について質疑を行っていきますので、よろしくお願いします。

 まず初めに、民主党案に。

 民主党案として漁業問題を法案化しました。この法案化するに当たって、現状の漁業を取り巻く状況は、認識は、どのようにとらえているのか、このことをまずお聞きしておきたいというふうに思います。

 また、漁獲限度量の割り当て、漁場環境保全、漁業集落に対する支援、輸入制限等で振興を図るとしていますが、これらは私は、まだ今は不十分と言わなければなりません。早急の課題だというのは共通認識に立っているというふうに思います。ただし、これらの政策を実現していくに当たって、今日、日本における水産業を取り巻く状況というものはまだまだ国民に理解が広まっていない、農業ほど国民全体が深刻にとらえていないんじゃないのかな、私はこういう意識を持っているわけでございます。

 そういうことを考えたときに、国民的に大きな理解を得ていくということが私は大切なことだというふうに思っているんですが、民主党として、この提案者として、その辺をどのように考えておられるのか、お聞きしておきたいと思います。

篠原議員 漁業を今回の法律に入れた理由でございますけれども、皆さんお気づきだと思いますが、農業と漁業を一緒に法律にしている例は、余り私はないんじゃないかと思っております。

 それは、食料自給率の向上という観点から同列に扱わなければいけないんじゃないかという思いからでございます。それからもう一つ、手段として直接支払いを導入する、それは農業も漁業も一緒ではないかということで、漁業も本法律の中に組み込みました。もとになっておるのが、二年ちょっと前につくりました我々の農林漁業再生プランでございます。

 漁業に対する認識でございますけれども、これはもう午前中の議論でもいろいろな方が触れられました。水産資源を見ますと、世界的に危うい状態にある。過剰漁獲によって、あるいは地球環境の変動があるのかもしれません、資源量がどんどん減ってきております。我が国周辺水域でもその傾向は同じじゃないかと思っております。

 日本の自給率を見ますと、かつて、何十年か前、四十年前、五十年前は、輸出の一〇%弱を占めていたわけです。それがいつの間にか輸出などできなくなる、今や自給率が五〇%ちょっと、惨たんたる状況でございます。

 それから、輸入金額でいいますと、もう国内の総漁獲生産額を超えている。デフレ傾向もあります。農産物も低価格で困っておりますけれども、魚価の低迷というのはもっと甚だしいのじゃないかと思います。そこに追い打ちをかけているのは石油価格の高騰です。ですから、漁業はもう、魚価の下落、水揚げ量の減少、それから燃油の高騰等で、三重苦にあって赤字経営続きじゃないかと思っております。

 そういったものを何とかしてやらなくちゃならないという気持ちは同じでございまして、委員御指摘のとおり、我々の政策だけではまだ不十分かと思いますけれども、少なくとも、食料自給率を高める産業として、農業並みにバックアップしていこうという気持ちを法律の中に込めております。

菅野委員 その点では共通すると思うのですが、私の問題意識というのは、この水産業という全体の厳しい状況に置かれている実態というのは、国民の中にまだまだ理解が深まっていないんじゃないのか、そういうふうな状況のときに、新たな政策を導入していこうとするときに、かなりの努力をしなければならない要素というのはあるのじゃないのかなというふうな思いを持っております。

 そこを、先ほど言ったように、民主党として農林漁業再生プランというものをつくったと言いますけれども、その実効性を図るためには、国民的理解を得ていくお互いの努力というのは、私は、農業という全国展開している産業に比べて、水産業というものはもう三倍も四倍も努力が必要なんじゃないのかなという私自身の気持ちは持っているんですけれども、そのことをどう克服していこうとなさっているのか、参考にお聞きしたいという思いなんです。

篠原議員 国民的理解を深めるためには、少数派の漁業は、農業よりもっともっと努力しなければならないんじゃないかという点、まさに御指摘のとおりだと思います。そのためには、まず、こういった農林水産委員会の場で、農業並みに漁業問題について議論をしていただくというのが一つ重要なことではないかと思っております。それから、公聴会、二カ所で開かれましたけれども、私は残念ながら参加させていただいておりませんけれども、こういったことも漁村、漁業地域で開く、それから、全国津々浦々、海辺がいっぱいあるわけでして、そういったところに出かけていくというようなことは必要なんじゃないかと思います。

 幸い、漁業については、私の記憶で、全国的な議論が深まった時期というのがありまして、十年ちょっと前ですけれども、排他的経済水域を設定すると、韓国漁船、中国漁船が、日本の漁業者が我慢しているところへ来て野方図にとり放題だ、これはいかぬというときは、漁業を何とかしなけりゃという国民的な声があったと思います。

 ですから、どういったときに国民的理解が得られるかどうかというのはよくわかりませんけれども、確かに、委員御指摘のとおり、農業に倍加して何倍かの努力が必要だと思っておりますので、これからもあちこちに出かけていって、漁業者の意見を聞くなり、あるいはシンポジウムを開くなりというようなことを続けなければいけないんじゃないかと思っております。

菅野委員 わかりました。

 では次に、政府に対して、今さら申し上げるまでもないんですが、この厳しい漁業、水産業を取り巻く環境であります。このような状況をこのまま放置しておくということは、私は大変な状況になるというふうに思っております。漁業文化というか漁労技術の伝承も危うくなってしまうんじゃないのかなという危機感を持っているわけでございます。

 個々の具体策についてお聞きしていきたいというふうに思っています。

 まず初めに、昨年の十月十九日にも私質問いたしましたが、漁船漁業の燃油高による経営危機という部分は、私は今も続いているというふうに見ております。非常に厳しい状況なんですね。半年以上も経過した今、この取り組み、具体的対応はどのようになっているのか。

 半年間経過いたしました。あれから、私の地元では本当に経営から撤退していく漁業者というものが出ております。今後もこういう状況が続いていくんじゃないのか。その一番の原因というのは、非常に厳しい状況がずっと続いているにもかかわらず、燃油の高騰という部分が大きなインパクトとして働いたということであるというふうに思っておりますし、そう地元でも言われております。

 この今の現状の対応策について、水産庁長官、御答弁願いたいと思います。

小林政府参考人 御指摘ございましたように、そもそも漁業をめぐる状況は、魚価の問題それから資源問題等に加えまして、燃油価格の高騰、これが引き続いておりまして、経営状況を中心に非常に厳しい状況が続いているということで認識をしておるところでございます。

 昨年もいろいろ御議論をいただきました。まず燃油対策について申し上げますと、漁業の種類あるいは地域、そういったところでいろいろな、また実態が違うものですから、例えて言えば県段階あるいは漁業種類ごとに、どういうふうに燃油のコスト縮減対策を持っていくのか、こういったことを工程表づくりという形で議論を進めてもらっております。

 これを進めてもらうと同時に、それに対して国の方からどういう支援をするかと。それを緊急的にやろうというのが先般の補正予算、五十一億円、これは燃油とクラゲ対策で計上させていただきました。これに基づいて、今、一つの対策を進めているということでございます。

 具体的な内容につきましては、一つは、漁協系統、燃油を供給しておりますので、そのコストを下げるという意味でのいわばそのタンクの再配備、こういった事柄中心の事業がございます。それから、漁業者自身の取り組みとしましても、例えば、いろいろな、運搬船とかそういうものを共同化するといったような形でのさまざまな取り組み、そういうものに対する対策を一つやっております。

 それから、十八年度本予算の方でありますけれども、こちらの方では、軸動力利用システムというような、軸動力、エンジンですね、そういうような新しい形での省エネに向けてやっていく、そういう技術開発対策なんかも進めておるところであります。

 それから、さらに、資源エネルギー庁の方でも対策をとってもらっていまして、こちらの方では、いわゆる新エネルギー・産業技術総合開発機構の方での予算ですが、船外機、これをツーサイクルからフォーサイクルにするという形での取り組み、ここでの助成ということ、いろいろなことをそういった漁業実態によって進めているところであります。

 こういった燃油対策に加えましてといいますか、そもそもの今の漁業をめぐる状況を考えたときに、やはり将来的には、今の漁船漁業であれ沿岸漁業であれ、どういった形でコストとか資源とか、そういう厳しい中で、新しい形に持っていけるかということが課題でございまして、これはまさに基本計画の見直しとも絡むわけですが、こちらは基本計画の見直しを進めるのとあわせまして、各漁業種類ごとに、これは業界の皆さんも含めまして、どういう形で持っていくんだというようなことの議論も今進めて、そういうものが出てくるのに応じて、また私どもは政策を考えていくというようなことを、これはまた非常にスピードも求められています。そういうことで、できるだけこれらを早く進めるようにという形で今議論を進めているという状況でございます。

菅野委員 昨年の十月の十九日のときに、当時の岩永農水大臣とこの議論を行いました。そして、その答弁でこう言っているんですね。「漁業災害補償制度で水揚げ金額の減少に着目した損失補てんをするという部分、これを今後どういうようにしていくかということで検討会を今実施しておりますので、この中でのこの部分の見直し。それから、先ほど言いましたように、やはり水産物調整保管事業の水産物の価格変動の緩和をどう図っていくかというような問題。」云々かんぬん、こういう答弁をいただきました。

 これは早急な取り組みを行っていかない限り、どんどんどんどん漁船漁業から遠洋漁業、近海カツオ・マグロ漁業から撤退していくよという中でこの答弁が出てきているんですけれども、このことの具体化というのがどう図られているのか、このこともあわせてお聞きしておきたいというふうに思います。

小林政府参考人 昨年の委員会での御審議のときには、先生御指摘のお話、岩永大臣からもさせていただきました。燃油対策に加えてコスト構造あるいは経営対策というものをどういうふうに考えていくかということで、基本計画の見直しに入りますということとあわせまして、その中の経営対策のいわば政策の一つの柱として漁業災害補償制度、これの活用というものが課題になるという流れの中での御答弁であったと思います。

 それをどういうふうに具体化していくかという、これはまさに今基本計画の見直しの中の一項目であるわけでございますが、例えば昨年でいきますと、漁業災害補償制度をめぐっては、こういった経営対策としてどういうふうに充実するかという議論、そのための予算措置も考えておりましたし、それからもう一つ、特別会計制度の改革の話等々いろいろそれをめぐる状況があったわけでございます。

 そういう意味では、私ども、実務的なレベルでのそういった漁災制度のあり方の検討というのを進めてきましたし、それからそれを、基本計画の見直しとあわせまして、さらにその検討内容を高度化するといいますか、そういう意味でこの三月から、またさらに、新しい検討会をつくって、今申し上げました、今の漁災の一つの機能というのはいわゆる収穫高保険方式、PQ方式ですね、まさに経営に着目した対策であるので、これが今後の経営対策としてどういうふうに活用できるのか、そのためにどうしたらいいのかということを、今急いでさらに検討を進めているという状況でございます。

菅野委員 水産業を取り巻く状況というのは、先ほども言いましたように、本当に一刻の猶予もならない状況になっておるというふうに言わなければなりません。

 そして、この漁船漁業、遠洋カツオ・マグロ漁業を取り巻く状況というのは、私もこの半年間に大きなことが起こっているということは承知しております。そのことに対する対応で追われていたということも、各港、港においてはまだ対応し切れていないという状況も存在しています。このことは、急激な燃油高が引き起こしているという側面も一面ではあるわけでございますから、大臣、水産庁挙げて、この漁船漁業等を含めて本当に早急な対策というものを立ち上げて、つくり上げていただきたいというのが今の強い気持ちなんです。

 これが、検討しています、検討していますという形で推移していく中で、どんどんどんどん漁船漁業から撤退していく、撤退していくというよりも撤退していかざるを得ない状況に追い込まれていっているという状況をぜひ把握して対応をとっていただきたい、強く要望しておきたいというふうに思います。

 燃油高というのは、今後もずっと私は高どまりするんじゃないのかなというふうに思っていますけれども、一方では、この燃油高に対応して魚の値段がどうなのかというと、ずっと魚価安が言われて久しいわけでございます。そして、この低迷が現在も続いている。

 この一つの原因は、輸入水産物がどんどんどんどん大量に入ってきていることにあると思います。特にマグロ類、カジキ類は本当に、成田空港が日本一の漁港だと言われるくらいな状況に今なっているわけでございます。このことにどう制限を加えていくのか、このことが私は大きな議論だというふうに思うんですが、実際は、このことも長い間議論してきていましたけれども、自由貿易体制の中ではまかりならぬというふうに言われて推移してきています。

 少なくとも、私は、国際条約に反して漁獲した水産物に対しては早急に対応して、そういう違法操業で漁獲した魚類は一切日本には持ち込ませないという厳しい対応をとるべきだと考えているんですが、このことに対して、水産庁としての考え方をお示し願いたいというふうに思います。

小林政府参考人 輸入につきまして今先生御指摘ございました。

 例えばマグロでいきますと、資源管理という切り口で、その輸入について各国がそれなりの規制をしていくという、こういった新しい動きが出てきているわけであります。いわゆる地域漁業管理機関、これは、例えば大西洋ではICCATとか、それから最近では中西部太平洋の方でもできましたけれども、大体、世界の海域全体をこれがカバーしてきまして、そういった地域漁業管理機関の中で資源管理のためのそういった輸出入についての規則、規律というものができつつあります。

 例えば、マグロ類の中で、地域漁業管理機関の加盟国の間で許可された漁船とか、それから最近、蓄養マグロも出ているものですから、それの蓄養場、そういったものをリスト化して、そういったところの生産物を国際取引上認める、ポジティブリストと言っていますけれども、そういうものに載ったところから輸入するんですよ、こういったようなことをしてきまして、そういう意味では、WTOといった、そういう貿易そのものを対象にした規律じゃないところの資源管理というところで、こういった新しい国際的な資源管理措置が出てきているわけでございます。

 もちろん、こういったものがこれからどこまで進んでいくかというのは、これからの私どもの努力によりますし、また、国際的な資源ということであれば、今後ともこういった動きが多分国際的にも認めていかれるだろうと思いますので、マグロを中心に、私ども、こういったものの規制、資源管理という観点からは、やはり規制という形でこういうものの充実強化を図っていきたいというふうに考えております。

菅野委員 便宜置籍船と言われて、それへの対応というものも行っているということは理解しているんですが、やはりここも、本当に、相手国があるということも含めて進んでいないのも実情だというふうに思っております。そこが漁獲したものが日本に入ってきて魚価安というものを引き起こしているとすれば、少なくとも、資源管理で、国際条約でとっちゃいけないですよ、それも無視して漁獲しているという状況が存在するわけですから、そこにメスを入れていかなければならないというふうに私は今言っているわけなんですけれども、ぜひこの部分への対応というものが、私は、自由貿易、市場競争一辺倒の政策をとっている限り、非常に難しいとは思うんですけれども、そう言っている間に日本の漁船漁業が危機的な状況に陥っているのが現状ですから、早急な対応をとっていただきたいということを強く申し上げておきたいというふうに思っています。

 今、遠洋漁業あるいは近海カツオ・マグロ漁業等の話をいたしましたけれども、やはりこの沿岸漁業においても後継者対策が早急の課題だと私は思っています。

 民主党案にもありますし、この環境保全対策というものは、農業だけじゃなくて漁業にも、後で質問しますけれども、林業にもしっかりと取り入れていく体制というものが、農林水産省として、農業、林業、水産業一体となって政策をつくり上げていくこと、これが私は大事だというふうに思うんです。

 きょうの政府案の中には、農地・水・環境保全対策として制度化したものがありますけれども、これが漁業集落に対して、沿岸漁業に対して、これと同じ制度をどう取り入れていくのか、このことが私は並行して議論されなければならない大きな課題だと思うんですけれども、この点についての考え方をお示し願いたいと思います。

小林政府参考人 水産業におきます環境、生態系の保全とかいった多面的機能、こういったものに対する評価、十六年八月に日本学術会議の答申もいただきました。そういったものをベースにしまして、私どもは施策の構築を進めておりまして、十七年度から、この多面的機能の重要性を踏まえた対策の一つとして、離島の漁業集落を対象にしたいわゆる交付金制度、これをスタートさせたところであります。

 こちらは、離島の漁業集落におきまして、本土に比べて消費地への出荷とかそういう点で条件不利な地域でございます。そういうところに着目した上で、その離島周辺のさまざまな漁場の生産力の向上とかそういった取り組みをしてもらう、そういうところに対して交付金という形で支援していこう、こういったものからスタートしております。

 それで、これからの議論としまして、離島のほかに漁業集落一般、いわゆる沿岸漁業としての多面的機能というのがもっとあるんじゃないか、これも当然、学術会議の答申でも触れられておりますが、そういったことに対して、私ども、一つは、今御指摘ございましたように、漁業のそういった機能とか重要性についてやはり国民全体で理解をしてもらう、そのための普及啓発といいますか、そういうことも必要でありましょう。

 それから一方では、ことしの予算でありますけれども、現実に漁業者が中心になって行っております藻場、干潟の維持管理等、こういった環境、生態系保全活動について実態を調査して、それをよく評価しながら支援手法をどうしていくかという、まずこういった調査事業の予算もことし組んでおるところでございます。

菅野委員 これからのこの推移を見守っていきたいというふうに思っております。

 林野庁長官が来ていますから、林業政策についても、やはりこの環境保全という視点は大切なことは、私はもう言うまでもないことだというふうに思うんですが、森林整備に対して直接支払いを行っておりますけれども、この現状はどのようになっているのか、御説明願いたいというふうに思います。

川村政府参考人 森林整備地域活動支援交付金でございますけれども、これは森林の現況調査とかあるいは適切な森林施業に不可欠な地域活動を支援する措置を目的にしております。

 そして、その実績でございますが、十七年度の見込みでございますと、百六十三万ヘクタールの森林が対象となっておりまして、総額が百六十三億円。これは一ヘクタール当たりの単価が一万円でございますので、こういう額になってございます。

菅野委員 百六十三億円というから、森林面積、国土の七割を占める面積に対する交付ということにおいては、絶対値として私は少ないなというふうに思うんです。

 それは別にして、やはり対象面積、先日聞いたら、まだ七〇%ぐらいにとどまっているという状況であります。この七〇%ぐらいにとどまっているという現状はどこからきているのかということを考えたときに、長官、要するに、面積要件が存在しているというふうに思います。三十ヘクタールまとまって施業するという状況じゃないと交付にならないというこの面積要件がどうもネックになっているんじゃないのかなというふうに思っております。

 そういう意味では、この面積要件を緩和して、今後とも環境保全という視点から、多くの人が直接支払いを受けるような、そういう体制をとるべきだというふうに思うんですけれども、いかがでございましょうか。

川村政府参考人 この交付金制度でございますけれども、平成十四年度から始まっておりまして、五年間の事業でございまして、平成十八年度に一応終わるということになっております。ただ、十九年度以降どうするかにつきましては、今、検討会を開いて、第三者といいますか学識経験者に参加をしていただきまして検討してございます。

 やはり森林の整備が放置されることによって、その森林の公益的な機能等が阻害されてはならないということでございまして、できるだけ小規模な森林所有者が森林組合等への施業委託をやるといったようなことをより促進するようなことが考えられないかということも含めて考えております。

 ただ、委員の御指摘のありました三十ヘクタールという実は団地的なまとまりの基準がございますが、これは森林施業計画と密接にリンクといいますか基礎にしておりまして、これが三十ヘクタールというものを基準にしておりますので、これ自体は、そういった観点からなかなか難しい面もあろうかと思っております。

菅野委員 簡単にできるんだったらば、この委員会で取り上げて質問するわけはございません。本当にこの三十ヘクタールというのが妥当なのかどうかという議論をしっかり行っていただきたい。そして、そのことによって環境保全がなされないというような状況が起こっているのか起こっていないのかも含めて、ここはしっかりと議論していただきたいというふうに思っております。

 いずれ農林水産業というのは、国の基幹の産業、国土の安全を保つ本当に重要な産業だというふうに私は思っております。ここを放置するということは将来に大きな禍根を残すことでございますから、本来は大臣の決意を聞きたいところでございますけれども、時間ですのでそこへは触れません。

 以上で終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次回は、来る二十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十五分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の宮崎県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十八年四月十九日(水)

二、場所

   ワールドコンベンションセンター・サミット

三、意見を聴取した問題

   農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 稲葉 大和君

       安次富 修君   伊藤 忠彦君

       小野 次郎君   岡本 芳郎君

       中川 泰宏君   黄川田 徹君

       山田 正彦君   西  博義君

       森山  裕君

 (2) 現地参加議員

       古川 禎久君

 (3) 意見陳述者

    綾町長・宮崎県町村会会長           前田  穰君

    国富町飼料用稲生産振興会会長         笹森 義幸君

    農事組合法人夢ファームたろぼう代表理事組合長 大浦 義孝君

    串間市農業委員会会長  末海 重俊君

 (4) その他の出席者

    農林水産省大臣官房参事官           都倉 祥夫君

    農林水産省総合食料局食糧部長         皆川 芳嗣君

    農林水産省生産局農産振興課長         竹森 三治君

    農林水産省生産局畜産部長           町田 勝弘君

    農林水産省経営局経営政策課長         柄澤  彰君

    林野庁林政部経営課長  金丸 康夫君

     ――――◇―――――

    午前九時開議

稲葉座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院農林水産委員長であり、今日の派遣委員団団長の稲葉大和でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の審査を行っているところでございます。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当宮崎市におきましてこのような会議を開催させていただきました。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の岡本芳郎君、安次富修君、伊藤忠彦君、小野次郎君、中川泰宏君、民主党・無所属クラブの黄川田徹君、山田正彦君、公明党の西博義君、無所属の森山裕君、以上でございます。

 次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介させていただきます。

 綾町長・宮崎県町村会会長前田穰君、国富町飼料用稲生産振興会会長笹森義幸君、農事組合法人夢ファームたろぼう代表理事組合長大浦義孝君、串間市農業委員会会長末海重俊君、以上四名の方々でございます。

 それでは、前田穰君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

前田穰君 それでは、座ったまま御無礼いたします。

 本日は、宮崎でこのような公聴会を開催いただきまして、本当に光栄至極でございます。心から感謝とお礼を申し上げる次第でございます。

 それでは、早速でございますが、陳述をさせていただきたいと思います。

 昨年十月に国は経営所得対策等大綱を決定されまして、これまで全農家を対象とした品目ごとの価格に着目した対策を行っていただいておったわけでありますが、このたびは担い手に対象者を絞り、経営全般に着目した対策に大きく転換されるもの、このように思っております。

 このことは、戦後農政が一貫して自作農の維持を目指して全農家を対象としてきた対策を、重点化そして集中化するという政策の大転換を意味しているもの、このように認識をいたしておるわけであります。つまり、意欲ある担い手、経営として成り立つ農家の育成に向けた施策である、このように思っているわけであります。

 このような認識のもと、本県や綾町の農業の実態を若干説明させていただいた上で、担い手経営安定新法について意見を述べさせていただきます。

 まず、資料に入る前に、本県農業の歴史を若干説明させていただきます。

 本県は、昭和三十年代までは、台風が秋口になりますと頻繁に上陸いたしまして、いわゆる台風銀座と言われており、その台風被害を回避する生産構造が農政の重要な課題でございました。

 そのため、県では、昭和三十六年に防災営農計画を策定いたしまして、全国でも類を見なかった、台風が来る前に米を収穫する早期水稲の導入に取り組まれ、あわせて、冬季温暖などの特徴を生かした施設野菜や果樹などの生産が振興されるようになってきたわけであります。

 中でも、昭和四十六年から始まった米の生産調整においては、水田を活用した園芸作物の導入や飼料稲の導入にいち早く取り組むなど、暖地営農村づくりや宮崎ブランド確立に向けた県や市町村の振興計画の中で地域の創意工夫を重ねてきた成果として、本県農業の実績として現在に至っておるのでございます。

 このような歴史を踏まえまして、大変僣越でありますが、お手元に資料を配付してございますから、これをごらんいただきますとありがたいと思います。

 まず、一の品目別農業産出額の割合でございますが、平成十六年度の本県の農業産出額は全体で三千百五十三億円でございます。全国では第六位ということになっております。

 その中を見ていただきますと、いわゆる耕種部門が全体の四一・八%で、畜産部門が五五・八%ということになっております。ちなみに、本日の担い手経営安定対策新法の本県で対象と見込まれます米、麦、大豆は七・八%しかなく、現在国で見直しの行われております品目別政策の対象となる野菜や畜産については産出額の六三%、こういうことになっておるわけであります。

 野菜や畜産では、二つ目の品目別生産の状況にありますように、キュウリ、ピーマン、近年では特に増加の著しいマンゴー、あるいは肉用牛、豚で全国トップクラス、こういうことで、全国一を誇っている品目もかなりあるわけでございます。

 次に、三の方を見ていただきますが、本県担い手の現状でございますが、県内では地域間差が幾らかありますが、一番右側の合計の欄を見ていただきますと、主業農家と言われる農家が県全体で一万二千五百五十八戸ということでございます。基幹的農業従事者のうち六十五歳以上の高齢者の割合は五一・六%、過半数を占めておるということでございます。また、県内の認定農業者数は七千四百五十経営体でございまして、主業農家に占める割合は全体の六〇%ということになっております。このことは、逆に言えば、主業農家の四割が認定農業者になっていないということでもございます。

 なお、農業法人は、近年大規模な雇用型農業法人もふえつつございますが、大半は一戸一法人的なもので、新たな担い手として注目を浴びております集落営農も、法人化しているものはまだわずか六法人しかない、こういう状況でございます。これらの担い手の大半は、北海道や東北地方と異なりまして、少ない耕地面積の中で気象条件を生かした肉用牛と米、野菜と米、果樹と米といった複合経営を積極的に展開しておりまして、一ヘクタール規模の経営面積で一千万円の所得を超える経営体が多数存在しておる、こういうことでございます。

 このことは、私ども綾町はもとより宮崎県においても、畜産、施設野菜などを中心に、上位に位置される生産性の高い農業経営が個別経営体を中心に取り組まれた結果でございまして、これらの担い手を今後の集落営農などの核となる担い手として育成することが重要と考えます。

 それでは、綾町の概要について、次のページをちょっとお開きいただきたいと思います。時間の制約がございますから、できるだけ急がせていただきます。

 私たちの綾町におきましては、これまで有機農業の町として関係者一体となって努力をしてきた結果、露地野菜や果樹など特徴のある農産物を有機栽培により生産し、今、全国的に広く認知される産地ということになったと思っておるわけでございます。

 今回も、おかげさまをもちまして、全国市町村の中で第一番目に有機JASの登録認定機関として登録をいただきまして、今後消費者の食の安全に対するニーズがますます高まってくる中で、綾町といたしましては、顔の見える産地づくりに今後も全力で取り組んで、安全、安心の農畜産物の生産の拡大にさらに努めてまいりたい、このように考えております。

 私たちの町においても、高齢化や農業経営体が減少する中で、農作業の受託組織の育成や集落営農を進めなければ地域農業が衰退することがやはり懸念されておるわけでございます。

 その中で、綾町の現状を見ていただきますと、今回、品目横断的経営安定対策の対象品目は、先ほど県全体では七・八%と申し上げましたが、綾町においてはさらに低い四%でございます。品目別政策の対象品目の割合は八八・五%、認定農業者は百二十五人で全体の六三・八%、こういうことでございます。

 私たちの町も県全体とそんなに変わらないわけでありますが、耕地面積が特に少ないために、施設利用型と土地利用型の営農経営体ということになっておりまして、水田転作の品目としては、本町の場合は、施設野菜と肉用牛と土地利用型と稲わら、有機農産物のレタス、ホウレンソウの生産に取り組んでおるわけでございます。

 今回の担い手経営安定新法を見ますと、その対象品目が米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用バレイショということでございますので、本県では米、麦、大豆しか対象になり得ないという思いをいたしておるわけでございます。

 確かに、全国的には、米、麦、大豆などの主力産地は今回の法案で救われますが、これまで説明してきました本県及び綾町の農業の現状を踏まえますと、本県を初めとする西南暖地では、今回の法案と野菜や畜産などの品目別政策の充実強化をセットとして、地域農業の再構築に向けた取り組みを進めていくことが国の食料・農業・農村基本計画の実現に向けて極めて重要であると考えております。

 以上、本県の農業を踏まえた政策全般に係る意見を述べさせていただいたわけでございますが、今回の公聴会の趣旨でございます担い手経営安定新法の実施に当たって特に配慮していただきたい事項について三点、簡潔に申し上げさせていただきたいと思います。

 まず、集落営農組織の要件の弾力的な適用でございます。

 これにつきましては、一点目でございますが、担い手経営安定新法第二条に定義されます対象農業者は、特定農業団体その他の委託を受けて農作業を行う組織と定義されておりまして、その要件は省令で定めるということにされております。省令において、農用地の利用集積目標、農業生産法人化計画の作成等、特定農業団体と同様の要件を満たすことが求められておるわけでございまして、この集落営農組織も要件を満たせば対象となることとなっております。組織の規約や経理の一元化は当然でございますが、ただ、地域の農用地の三分の二以上を集積する目標や農業所得の目標、法人化計画の作成の努力目標が要件として設定されております。

 地域においては、地域農業の担い手の明確化に取り組んでいるところでございますが、実施段階で現在検討されております要件を厳格に適用されますと、せっかくの取り組みが水泡に帰すことが懸念されるということでございまして、このため、今回提出されました法案の趣旨が適切に適用されるよう特段の運用をお願い申し上げたい、言うならば、集落営農組織要件の弾力的な運用を図っていただきたいということでございます。

 二点目でございますが、目標未達成時の地域実態に応じた適切な基準ということでございます。

 これにつきましても、今申し上げましたような努力をしていけば交付金を返還することはないとされておるわけでございますが、本県の場合は複合経営主体の営農を展開している、こういう状況でもございますので、それぞれの地域、特に、単一経営で大規模化の試行をしている北海道はこの要件は容易に達成できると思っておりますが、本県におきましては、地域の実情が、地形条件、あるいはまた施設型農業、そういう面で集約された営農体系でございますから、そこら辺の基準が一律的な基準になりますとなかなかそれを達成することはでき得ない、こういうこともございますから、御理解をいただけたらありがたい。

 最後に、個人情報の活用の関係でございます。

 今、個人情報保護法というのがございまして、これもなかなか難しい面でございますが、地域の担い手を明確化しなきゃならないということがございますので、農業者の農地の情報や所得情報といった、私どもの綾町でいえば農業委員会や青色申告会、税務課などの有する個人情報を活用することが不可欠でございます。

 そういう面で、基本的な資料を確保しながら担い手のリストアップをする場合においては、個人情報保護法というのがどうしても壁になってくる、こういうことでございますから、そういう面では、整合性を図るような形をつくりあげていただけるとありがたい。農業者個々の、それぞれの事前の了解がないとできないという個人情報保護法というものの制約がございますので、例えばJAなどが一括代理申請事務を行うということになりますと、そういう面では個人情報保護法がどうしても壁といいますか課題ということになってまいります。

 確認作業は国が実施されると聞いておりますけれども、交付事務の段階においても混乱を生じるのではないかということで心配をいたしておるわけでございますので、個人情報保護法との整合性を十分とっていただきたい、こういうことをお願いできますならば、事務の手続簡素化ということにも配慮いただければありがたい、このように考えておる次第でございます。

 以上申し上げまして、私の陳述とさせていただきます。ありがとうございました。

稲葉座長 町長さん、どうもありがとうございました。

 次に、笹森義幸君にお願いいたします。

笹森義幸君 こんにちは。ここから西に約三、四十分のところの国富町というところで農業を営んでおります笹森義幸といいます。

 きょうは、農林水産委員会地方公聴会という公の場に参加させていただくことを非常に光栄に思っております。和牛の繁殖と肥育の一貫経営をやっております観点から、私は、特に、将来の日本の食料を賄っている私たちを含めた後継者の問題と、自分の仕事柄、BSEの問題、あと口蹄疫の関係で自給粗飼料体系という形で陳述をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それではまず、後継者対策。自分はこの農業という道を選んで今生活をやっているわけですけれども、自分がこの道を選んだのは十九歳のときでありました。今、和牛の繁殖と肥育牛を二百三十頭ほど家族経営で営んでおります。農業に入りまして約二十四年目に入りますけれども、いろいろな役職をこなしてまいりました。

 自分がこの農業という道を仕事として選んで、家族を支えながら、また宮崎の農業という観点で仕事をしているときに、どうしても今、私たち農業者の置かれている立場、後継者の置かれている立場、やはり一番の大きな問題点というのは、今、国内の自給率が四〇%を切っているということに本当に皆さん注目をしていただきたいと思っているんですね。これだけ自分たちが食する食べ物を外国の方に依存というか任せていいのだろうか。特に昨年、宮崎には台風十四号が大きな被害をもたらしました。

 私は、農協青年部という組織の部長もさせてもらったことがあります。盟友の中には、ピーマン、キュウリ、特に施設園芸、昨年の台風で多大な被害を受け、ここ三、四年、野菜の価格が暴落し、それに台風の被害ということで、私たち青年部が、その台風被害の青年部の盟友を助けようということで、被害の翌日に盟友が寄ってハウスの片づけの手伝いに行きました。

 そのとき、部長の立場上、おまえたち頑張れよと言ってやった方がいいのか、母ちゃんと二人でいっとき農業から離れて生活を立て直した方がいいのじゃないか、私はどっちの言葉を選んでやればよかったのだろうかと今でも思います。本当にハウスの天井まで、ごそとかいろいろな産廃物が散乱しておりまして、いや、これは本当に大変だと。ただ、組織の力、強さも感じました。盟友三十人、四十人集まって、よし、みんなでやろうと。隣のハウスでは家族、親戚四、五人で一生懸命その片づけをされておりました。しかし、私たちはこの仲間の力によって一時間半ぐらいで盟友のハウスを片づけていきました。それから定植にこぎつけ、今ようやく実がなり、ことしはたまたまキュウリの価格はよかったらしいです。しかし、今までの負債を抱えている農家は非常に多いです。

 私たちが農業をやっていて一番やはり不満に思うのは、車とか工業製品とかというのは、皆さん、つくった経費、会社の存続、社員の給料、そういったことを考えて、自分でつくったものに対して値段がつけられると思うんですね。しかし、私たち農家の生産物というのには、自分でお金をつけることはできません。市場に出して幾らですよ、それだけのことなんですね。本当にやはり矛盾というか腹立たしさを感じます。そういった形で、農業後継者がこれから育っていくかということには本当に疑問を感じています。

 しかし、私は、そういった中でもこの道を選んで、後悔もしておりませんし、非常に自分の仕事に自信も持っています。いつか自分の子供たちと一緒にまたこの仕事をやりたい。いつか農家が報われるような時代が来るんじゃないか。私たちは自分で食料をつくっている、都会の人たちは自分で食料をつくることができない。今に農家がよかったと思える時代が来るんじゃないか。

 ぜひ、国会議員の先生方には、本当に、これからの未来を背負う後継者の方が進んで農業に従事できる、農業というのはおもしろいんだよと言えるような対策というか、私は、農家というのは保護されているという言葉をよく耳にします。しかし、私は、ある程度保護されて当たり前だという観点も持っています。

 というのは、農業というのは、食料をつくるだけではなくて、やはり環境保全であるとか、特にダムのかわりをする貯水の意味も持っています。やはりいろいろな観点から農業というものが私は大事だと思っていますから、その点をひとつよろしくお願いいたします。

 そして、自分が和牛の繁殖と肥育ということですので、今一番問題になっているアメリカ産のBSE問題について若干述べさせていただきたいと思います。

 国会議員の先生方、以前日本でBSEが発生したときに、本当に私たち畜産農家がどれだけ苦しかったか、私も当時を振り返ると今でも本当に身震いがします。電話で、BSEが発生したと。正直、わかりませんでしたね、それからどのような影響が出るのか。

 自分は、和牛の繁殖と肥育の経営体を、その都度経営を変えていたものですから、その当時は百三十頭の肉牛を持っていました。繁殖と肥育、和牛というか肉牛を飼うには大きく経営体が分かれます。BSE発生というのは、和牛の繁殖農家にはそれほど大きな影響を与えませんでした。しかし、肉牛農家には多大な損失をもたらしました。私も含めて、出荷しても赤字、置いても赤字、えさ代はかさむばかり。そのとき、本当に一頭でも早くこの牛たちがいなくなってくれればという思いにとらわれました。

 あれから約三年、このような場に今自分が来られたのは本当にすごいことだと思いました。あの当時、一番ひどかったのが、二月のときにキロ五百円という枝肉の単価が出ました。そのとき国から二十二万円という補助金を、自民党の先生方からの協力というか支えをいただきまして、本当に助けていただきました。

 しかし、宮崎は、後ほど口蹄疫の問題に触れますけれども、口蹄疫が発生してしまいました。その当時、口蹄疫が発生したことによって、繁殖農家の子牛を下げちゃいかぬということで、県、経済連、JAが補助金を出して子牛を買い支えるという事業を展開しました。

 うちもその当時、口蹄疫対策ということで、二十頭の素牛を導入しました。四十五万、五十万円という素牛です。その出荷がちょうどBSEの発生と重なってしまったんですね。素牛が五十万に対してキロ五百円ということは、枝肉は四百キロのとき二十万円です。五十万円の素牛で、それから約十八カ月から二十カ月間肥育をしていくわけですけれども、その中でえさ代というのが約三十五万円程度かかります。結局、五十万円の素牛は八十五万円でとんとんなんですね。

 ですから、そのときは、キロ五百円、二十万、国から二十二万もらっても四十二万ぐらいにしかならないんですよね。本当にひどいのは五十万円ぐらいの赤字でした。

 以前、宮崎が、宮崎牛の対米輸出を仕掛けたことがあります。この公聴会があるということで、経済連さんの方に、その当時、アメリカから高崎工場というところに査察に来られました。そして、豚のライン、牛のラインというのを徹底して改築というか、ここをこうしなさい、ここをこうしなさいといった形で、会社というかその工場自体の改築をさせられました。幾らかかったとお思いでしょうか。私もびっくりしました。五億円かかったらしいです。

 それだけやはりアメリカというのは、自分の国にそういった肉を送るということに対して、多くのアメリカ人が査察をし、そういったことをさせておきながら、いざ今度アメリカから日本に入れるときに、今のようなことかと非常にやはり腹が立つと思います。

 私たちは、子牛が生まれて約一週間ぐらいの間には、もう耳標といって個体識別番号を自分でつけています。それから、注射であるとか、えさ、全部記帳して、肉牛を出荷するときには全部、安心、安全を売りにして出荷しております。だから自分が育てた牛には、肉には、本当に自信を持っています。

 しかし、アメリカはそういったことを全くやる気がないみたいですね。歯並びであるとか肉質で年齢がわかるというけれども、私は本当にそういった形で年齢というのがわかるはずがないと思っております。

 ですから、私がやはり一番言いたいのは、私たち畜産農家の代表として、今回アメリカ産の輸入解禁というのは絶対反対ということではありません。日本の消費者の中には、幾ら和牛の肉を食べてくださいと言っても、価格的な問題等もあったりして、やはり外国の肉に頼らざるを得ない消費者であるとか外食産業の方々もいらっしゃいます。しかし、食べるのは日本の消費者でありますから、日本のルールを守っていただきたい。

 以前、牛肉・オレンジで、本当に車とか工業製品の代替品として農家は痛めつけられてきました。今、テレビの報道とかいろいろな新聞等を見ると、ややもすると、また農家が犠牲になるようなことになるのかな、なぜ日本という国はアメリカに対してノーという言葉が言えないのかな、本当に悔しく思います。

 だから、私は本当に反対という立場ではありません。日本に入れるのであれば、ぜひ日本のルールを守っていただきたい。やはり、日本の査察という形か、検査官がアメリカの工場に行って、合格した牛を日本に私は入れていただきたいと思います。

 もう一つは、口蹄疫の対策として、口蹄疫が発生したときに、移動制限措置というのがとられて、うちの地域は発生したところから十キロの地域でした。一番最後まで移動制限が解除されませんでした。

 あれから、私は、まあその以前からだったんですけれども、今二百三十頭の牛を飼っていると言いましたけれども、私の大きな経営の特徴というのは、自給粗飼料は一〇〇%です。三%ぐらいは外国の粗飼料に頼っておりますけれども、九七%は自分で牧草を集草しています。

 この口蹄疫の関係、本当にやはり怖い病気です。今、鳥のインフルエンザ、やはりこれだけ人と物が流通してしまいますと、またあのことが返ってくるのか、また起こるのか、そういった観点から、私たち繁殖農家はやはりみんな九十何%、一〇〇%自給粗飼料体系をとっています。

 ただ、一番問題なのは肥育農家なんですね。肥育農家は、ほとんど一〇〇%外国産の粗飼料を使っていらっしゃいます。その産地も全くわからない、そういったものを粗飼料として、単価的に安いからという観点で輸入されています。

 私は、飼料用稲の生産振興会の会長もやっております。国富町というのは、全国でも飼料用稲の取り組みが一番早くて、今二百三十ヘクタールの飼料用稲を作付しております。私は、そういった自給粗飼料の確保ということを前面に打ち出して、自分たちが食べさせる牧草類は自分たちで確保しようと。この宮崎でも、今、早期水稲の田植えがされ、七月には稲刈りが実施されます。

 しかし、宮崎の畜産農家であっても、まだすき込みというか切り込みわらが非常に多いです。私はこれに対しても非常に悔しい思いをしています。幾ら私たちが頑張って自給粗飼料を確保しようと思っても、このようにすき込まれている稲わらが宮崎を含め全国にたくさんある。やはりそういったものを耕畜連携という形でどんどん普及できるような取り組みができないものか、本当に地方と国が一緒になってこういったことに取り組んでいただけたらなと思っております。

 時間が参りました。短い時間でしたけれども、意見を述べさせていただきました。本当にありがとうございました。

稲葉座長 どうもありがとうございました。

 次に、大浦義孝君にお願いします。

大浦義孝君 こんにちは。こういった機会を与えていただきまして、短い時間でございますけれども、私のいろいろ今まで苦労したことを訴えまして、今後の農政に反映していただければ幸いかなというふうな感じできょうは参ったところでございますから、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 私は、個人的ではございますけれども、ここからちょうど一時間ほど北の方になりますが、都城で集落営農を中心に取り組んでいる一人でございます。私も、中学校を卒業と同時に農業に取り組みまして、今まで五十年近く農業を営んでまいったところでございますが、振り返ってみますと、農業というのはやはり厳しいなということを今つくづく感じておる一人でございます。非常に農業は厳しい厳しいといいます中でも、私は、農業に取り組むのは今がチャンスだというふうにとらえております。ですから、私は、集落営農の法人化について述べさせていただきたいというふうに思います。

 都城は、農業を中心とした地域でございまして、それぞれ皆さんが農業に取り組んでおるわけでございますが、七〇%以上が畜産、そのほかが土地利用型の農業ということでやっております。私のところがちょうど百五十町ございます。百五十ヘクタールあるわけですが、一集落一法人、全員が構成員で、二百二十四名が構成員という形の中で取り組んでおるところでございます。

 資料を差し上げておりますが、これを申し上げますと、夢ファームたろぼう、農業に夢をということで、夢ある農場ということで、太郎坊というのが私の集落の名前でございます。それをとりまして夢ファームたろぼうと命名をして、今取り組んでいるさなかでございます。

 非常に今、農業が厳しい厳しいという中で、非常に視察が多くて、これから法人に取り組もうか、集落営農に取り組もうかということで、必死になっている地域が非常に多いわけでございまして、去年も四十八集落、一千五十名の方が視察に見えております。私も、少しでも手助けができればいいなという形で、今取り組んでおるさなかでございます。

 設立が平成十六年の四月十一日。平成十六年から米政策大綱が変わるということの中で、十五年に一年間かけて協議をして、十六年の四月十一日に法人を立ち上げたところでございます。今考えてみますと、丸二年を今過ぎたところでございますけれども、いち早くこういった法人を立ち上げてよかったなと今反省をしているところでございます。

 二百二十四名が構成員です。今まで組合員と言っていたのですが、これが法人になりますと構成員に変わりまして、二百二十四名が構成員、一集落一法人、そういった形で取り組んでおるところでございます。

 法人になりますと、出資金が伴いまして、出資金は一口六百円、十アール耕作されている方は十口出資をしてくださいよということで、十アール六千円の出資金をいただいて行っているところでございます。出資金の総額が一千十五万四千四百円ということで、この出資金でスタートしようということで行ったところでございます。

 資料に載っているところでございますが、先ほど申しましたように、構成員が二百二十四名ということで、全体の面積が百五十ヘクタールあります。その百五十ヘクタールを中心に、法人で今後運営をしていきますよということで、今行っているところでございます。

 転作となりますと、やはり転作の対象になる作物を植えなきゃならぬということで、大豆、飼料、麦はございません、大豆と飼料が転作対象になる品目でございます。畜産が非常に多いということで、やはり飼料の確保もしなければいかぬということで、飼料の団地、そして大豆の団地、これに取り組みまして、指定して植えつけをする、すべて団地化をするということにしておるところでございます。

 ここは非常に台風の襲来がありまして、去年、おととし、台風で大豆が痛めつけられまして、非常に収量が少なかったということでございますけれども、これはまた、全総済という共済がありますので、共済を掛けて、そして共済金の方で賄うというのが今の行き方でございまして、ことしは三年目になりますので、ことしあたりはいいのかなということで、やはり挑戦をしていこうと今取り組んでおるところでございます。

 私のところに、法人を立ち上げるにはどうするかということでよく質問があります。私のところは非常に組織の歴史というのがありまして、昭和二十七年から、終戦後すぐですけれども、そのときに防除対策協議会というのをつくって、その組織というのが現在までずっと続いておるという強みがあります。ですから、組織的にはどこにも負けない組織であると私は思っておるところでございまして、私も振興会の会長として十六年、地区の皆さんの世話をしておるところでございまして、地区をまとめるにはどうするか、地区の皆さんの協力を得るにはどうするかという質問がよくありますが、やはり会長の、そういった長い歴史といいますか、そういったものがないと地域をまとめるのはなかなか難しいというふうに感じておるところでございます。

 そして、法人を立ち上げて一番大事なことは何か。私は、法人を立ち上げることよりも、継続をすることはなお厳しいというふうにとらえております。ですから、今、加工用のバレイショ、これに取り組んでおります。今、植えつけをして、芽が出て、五月十五日から収穫に入りますが、加工用のバレイショ、これはポテトとの契約です。湖池屋さんというポテトの会社がございますが、そことの契約です。契約で植えつけをする。

 やはり、組織で、法人でやる場合には契約でないと、非常に価格が不安定では取り組めません。ですから、必ず契約ですね。バレイショも契約。大豆も契約です。契約販売で行うというのが、やはり一つの組織を今後継続する一番の要因ではないかなというふうに思います。法人を立ち上げるということも厳しいけれども、やはり継続することはなお厳しいですよということを申し上げております。

 ですから、いかに今後継続していくか。私は、農業は苦しい厳しいといいますけれども、こういうときがチャンスだと思うんです。農業をする人は、こういうときに農業をやるのがチャンスだというふうにとらえております。ですから、今後農業をやりたいという人は、土地は幾らでも利用権設定で今収益することができます。

 ですから、そういった形の中で、今まで農業をしたことがないという人でも、法人と共同で作業をすれば農業ができます。そういった形で私のところにも、定年になった方がどんどん今農業で来ていらっしゃいます。ですから、そういった形で農業を今後続けていく、これがこれからの農業じゃないかなというふうに感じておるところでございます。

 法人化した理由ということがございますが、何で法人化しなければならなかったかということをいつも申し上げます。

 私は平成十六年から立ち上げたんですが、平成十六年から米政策大綱が変わって、交付金その他が変わってきますよということがありまして、どうしても法人化しなきゃならぬということが一つです。

 そしてもう一つは、消費税が三千万から一千万以下に十六年から変わったわけですが、そのときに、どうしても税理面をきちっとしようということで、税理士を入れた中で法人化してきちっとして、税金はするものはする、補助金はもらうものはもらう、こういった形で十六年からどうしても取り組まなきゃいかぬというのが一つあったところです。

 それの大きな要因は、米政策大綱が十六年から変わるということがあった関係上、どうしても十六年から取り組まないと今後の農業は続けていけませんよという形の中で、米政策大綱、こういった一つの柱を持ってどうしても法人化をやろうというのが私の考え方で、法人を立ち上げたところでございます。

 やはり、法人を立ち上げることよりも継続をすることはなお厳しいですよということを私はしょっちゅう申し上げております。そういった形の中で、やはり農業というのは、厳しければ厳しいほど立ち向かっていかないと、今後続けていくことはできませんよということをいつも組合の皆さんに申し上げております。

 そういったことで、これから、法人をもちろんやりますけれども、集落協業経営方式というのを今後取り組もうということで、今段取りをしております。

 いよいよ十九年度からまた厳しくなってきますので、その厳しい大綱には、やはり厳しく我々も対抗していかなきゃならぬというのが今後の農業を続けていく一つの要因じゃないかなというふうに感じておりますから、そういった要因のもとで、組合員の皆さんにも申し上げて、今圃場整備も行っております。

 ですから、政府の方で、コストを下げなさい、コストを下げなさいというのがしょっちゅう新聞あたりにも出てきておりますけれども、今の状況では絶対にコストを下げることはできぬと私は思います。

 コストを下げる要因は何か。圃場整備です。圃場整備をして、大きい圃場をつくって、そして、私のところは用排水は地下です。用排水を地下にして、溝払いも要らない、あぜ払いも要らない、そういったことがコストを下げる一つの要因であろうということで、今、圃場整備を着々と進めております。そういったことで、用排水は地下、地上には水路はありませんよ。そして、畦畔があるから畦畔払いをしなきゃいかぬ、ですから畦畔はもうつくりませんよということで、境界くい、個人個人の圃場の境界は境界くいだけ。そして、一町歩以上、大きいのは二町八反ぐらいになりますが、そういった圃場、これをやらぬ以上はコストを下げることはできぬと私は思うのです。

 ですから、圃場整備をするときに、地域を変えますよ、やはり国、県あたりの、十アール当たり二百五十万ぐらいかかるわけですから、今、十アール七、八十万しかしない圃場に、圃場整備として二百万以上かけて圃場整備をするんですから、これは絶対に後で後悔しないような圃場整備をしなければだめですよということで、今取り組んでおります。お金は有効に利用して、やはり圃場整備をしてよかったな、これであれば三十年、四十年は継続できるというような圃場整備をしておこうということで、今取り組んでおるところです。やはり、非常に厳しい予算の中でこれからも圃場整備をきちっとして、そしてコストを下げるような農業をして、そして後継者に譲るんだという形を私はとっております。

 私も、昭和九年生まれで七十二歳になります。七十二歳にできることは何か、私はいつも申し上げます。地域をまとめる力です。七十歳になって、六十五歳になってできることは何か。これは、地域をまとめる力です。ですから、そういう方々が今後我々の農地を変えて、そして後継者に譲る、こういった形でないと日本の農業は守れぬというふうに私は思います。

 いろいろ外国産のものが入ってくるとかどうとかいいますけれども、なかなかコストを下げることはできない。それは圃場整備、こういったことになりますので、今後とも、これから行われます米の政策大綱にかわる事業が、今後、農家のためになるような形をとっていただきますようにお願いを申し上げたい。

 時間が参ったようでございます。後々また、質問にいろいろ答えていきたいというふうに思いますので、よろしくお願いして、以上で終わりたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

稲葉座長 大浦組合長さん、大変ありがとうございました。

 次に、末海重俊君にお願いいたします。

末海重俊君 ただいま座長より指名をいただきました宮崎県串間市農業委員会会長の末海でございます。

 私は、今日の農政を見まするときに、これでよいものか非常に心配をいたしております。

 それは、私の役職として、認定農業者との意見交換の場合、また家族協定協議会並びに串間市の農政懇話会、それに串間市の中長期総合計画の実施計画を論議する中で、幾ら立派な計画を作成したとしても、現在農業に取り組んでいる農業者の実情は超高齢者であり、五年後は一集落で何名農業者が残るだろうか、いや、十年後はだれが農業をするのかというのが今日の農政の実態ではないかと私は思っております。

 しかし、国において、平成十七年十月に経営所得安定対策等大綱が決定され、その中で串間市に関係する品目横断的経営安定対策が示され、行政やJAでは、市内全集落で制度の説明会や実施に向けての集落座談会を開催中であります。

 このような時期に、国において、衆議院農林水産委員会地方公聴会が宮崎県と北海道の二カ所で行われると聞いております。その中で、宮崎県開催について私が意見陳述者として指名され、大変恐縮いたしております。また、私としては、全く法律には弱く、それにこのような大役は見たことも聞いたこともない者であり、公聴会の趣旨にそぐわない発言もあるやに考えますので、その点、私の意見陳述に対して質疑をされる衆議院議員諸先生方の御理解をお願い申し上げまして、意見を述べさせてもらいたいと思います。

 今回の地方公聴会におきます私の意見を述べさせていただきます。

 まず、串間市の農業の現状を申し上げますと、串間市の平成十六年度の農業粗生産額は百十七億円でございます。その主なものを申し上げますと、食用カンショが三十七億六千万、肉用牛が十八億三千万、米が十二億四千万円でございます。その他、施設野菜、果樹、葉たばこ、茶、水田ゴボウ、オクラ等の露地野菜が栽培されており、土地利用型の複合経営の農業が展開されております。

 また、串間市は、皆さん方御承知のように宮崎県の最南端に位置しておりまして、海岸線の一部では無霜地帯でございます。このような温暖な気象条件を生かし、年間を通じた作物の生産を行いまして、日本の食料基地の一役を担っているところでございます。

 しかし、本市におきましても、全国的に見られますように、少子高齢化の現象や農業従事者高齢化、担い手不足の状況が見られるようになり、平成十七年の農林業センサスによりますと、販売農家の農業従事者は六十五歳以上が全体の約半数に達している状況になっております。

 このような状況の中におきまして、国におきまして昨年十月に経営所得安定対策等大綱を決定いたしまして、これからの施策の中心を、担い手、つまり認定農業者と法人化を目指す集落営農に集中する農政転換を発表されました。

 このような大綱の発表に対して大慌てしたのは、串間市行政だけではなくJAでございます。特に、品目横断的経営安定対策の所得補償対象農家の面積要件でございます。本市の平成十七年度実績によりますと、米をつくった農家一千七百七戸のうち、四ヘクタール以上の作付をした農家は十戸でございます。本市における米作農家の作付面積が一番多いのは一ヘクタール前後でございます。

 その理由といたしましては、本市は皆さん御承知のとおり早期米地帯でございます。また、米の後作に飼料や水田ゴボウ等の露地野菜の栽培が盛んに行われておりますが、水田ゴボウにおきましては、米をつくらないと連作障害が発生いたしまして品質が低下しますので、米作と水田ゴボウは切り離せない関係になっております。また、本市は三十一年前からオクラの産地となっておりますが、オクラも連作のきかない作物となっておりますので、これを解消するのが米作でございます。つまり、米をつくることにより露地作物の連作障害対策を行っているわけでございまして、米づくりができなくなりますと連作障害対策に農薬を使うことになりますので、環境保全型、つまり減農薬農業が崩壊することになります。

 このように、認定農家以外の農家におきましては、この対策の恩恵を受けることができなくなりますので、経営的に非常に苦しくなるとともに、農業離農者が多くなり、耕作放棄地が予想されます。

 次に、集落営農組織についてでございますが、これに対しては全く取り組んでいない状況におきまして、今回の対策決定後に、JAにおきましては全集落座談会を開催いたしまして農家に説明を行いましたが、説明する側も受ける側も全く理解できない状況でございます。

 特に、面積要件が二十ヘクタールという面積でございますので、集落内に二十ヘクタールの水田がない集落がほとんどであります。それに、水田の区画が大正末期の基盤整備のため、五アールから八アールの水田がほとんどでございますので、大型機械の導入ができない現状の中で、農家においてはどのようにすればいいのか全く見当がつかない状況でございます。

 このような状況の中におきまして、JAは区画整理の済んでいる地域におきましてモデル的に集落営農組織育成に取り組んでおりますが、兼業農家や土地持ち非農家の理解が得られないことや、米以外の作物をどうするのかなどの検討課題が山積しており、特にリーダー育成が時間的に余裕がない状況のようでございます。

 また、山間地域におきましては、知事特認により面積緩和があったとしても、農家の経営が成り立たなくなるために相当の耕作放棄地が発生することが予想されますので、何らかの対策が必要だと思っております。

 私は、今回の農政転換である経営所得安定対策等大綱については、昨年十月に決定され、平成十九年度から実施という短い期間内に施策の中心となる担い手を育成しなければならない状況の中で、農家に施策の内容を十分理解してもらうには時間的に無理な状況となっていると認識いたしております。また、施策の内容の明確、正確な情報を農家に伝えることができない現状である。今回の大綱は、戦後日本の農業を支えてきた家族経営農業を大きく変えるものであり、農家の理解を得るためには十分な時間と対策が必要であると私は考えます。

 また、このような状況の中において、本市の農業は各作物の産地化によって確立されてきたが、産地を形成するためには、大規模な農家設立だけではなく、兼業農家を含めた取り組みが行われたからこそ、定時、定量の出荷体制が確立し、安定した経営が行われたものと思います。

 しかし、今回の大綱によると、担い手に集中した施策の展開であり、兼業農家の切り捨てにつながり、産地の維持が難しくなることが予想されると私は思います。また、兼業農家の救済策として集落営農組織の育成を国は考えているが、現実問題として、長年家族経営を行ってきた農家に対して集落営農を推進しても簡単に理解できるものではないと思われる。

 また、米のような作物に対しては集落営農は可能かもしれないが、カンショや水田ゴボウ、オクラなどの露地作物においては、集落営農による経営は、経営感覚にすぐれたリーダーがいない限りできないものと私は思っております。

 以上、私は私なりに現状を直視しながら申し上げましたが、意に沿わない点がございましたら、冒頭申し上げましたように御理解をいただきますようお願い申し上げておきます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

稲葉座長 末海さん、どうもありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

稲葉座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本芳郎君。

岡本(芳)委員 自民党の岡本芳郎でございます。

 本日は、大変お忙しい中、いろいろ多種多様な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。

 お話をずっと聞いておりまして、物すごく進んだところとそうでないところ、いろいろあるというのをよく認識したところでございます。

 私は出身が徳島でございまして、非常に話の内容がよくわかりました。全く徳島も同じような状況でございまして、特に最後の末海さんの御意見が徳島の現状に一番合っておるような気がしております。

 笹森さん、大浦さんのところは、まさにエリート農家の典型のようなところでございまして、私は本当にうらやましいなと思うところでございます。

 そこで、まずお伺いしたいのでございますが、笹森さん、大浦さん、両者とも、耕畜連携での大規模経営であるとか、あるいは法人化、集落営農のすばらしいところであるとか、そういうところでございますが、そこに至るまでには相当失敗もあったんじゃないかなと私は思うんですね。今、末海さんのところが苦労されておるように、なかなかそう進むものではないと思っております。

 そこで、これから集落営農等を進めていく場合に、先人として、こんなことをしたらいいんだとか、こういう失敗は必ず起こるからよく注意してやれとか、そういう御指導する意見がありましたらぜひ教えていただきたいと思います。

 大浦さんと笹森さん、お二方によろしくお願いいたしたいと思います。

大浦義孝君 私のところにもよく視察が見えまして、地域をまとめるにはどうするかとか、法人をつくるにはどうするかとか、そういった意見がよくあります。

 やはり、リーダーをつくらないかぬということですね。リーダーをつくるにはどうするか。リーダーが一人でつくったんじゃだめです。地域の皆さんが、あの人ならひとつお願いしよう、リーダーをあの人にお願いしてみんなで協力しようという体制がとれないと、いかに立派なリーダーができても私はだめだと思うんです。一人の人間の力というのは微々たるものだと私は思うんです。集落の皆さんの力があってこそリーダーが育つ、こういうことでございますから、やはり地域の皆さんで、あの人にひとつお願いしようという、みんなの協力を得てリーダーをつくる、そして、その人の言うことにみんなが協力する、こういった体制ができないと、どういう立派な学者であってもできぬと思うんです。

 ですから、地域をよく把握したリーダーを皆さんがつくる、そしてそのリーダーに協力する、こういった体制ができないと、いかに立派なリーダーでも私はリーダーとは言えぬと思うんです。ですから、そのためには、地域をよく知り尽くした、そういった方を皆さんでひとつお願いして、あの人のためにみんな協力しようという体制をつくる、これが集落営農の一番最初の段階じゃないかなというふうに感じます。

 私も集落営農、農事振興会といいますけれども、そういった役員といいますか、そういったのに入って二十六年です。そして会長が十六年です。もう地域のことはよく存じております。ですから、そういったことでひとつやろうということで私は取り組んだのです。

 ですから、ほかの地域も、リーダーをつくるにはどうするか、どういうリーダーをつくるか。やはり、地域の皆さんが協力して、ひとつAさんにお願いしようや、そしてAさんの言うことにみんなで協力しようという体制がとれないと、どういう立派な学者のリーダーであっても私はまとめることはできぬと思う。

 ですから、そういう方をみんなでつくる、そして、つくってみんなで協力する、こういった体制をつくることが一番大事じゃないかなというふうに感じます。

笹森義幸君 耕畜連携の苦労話というか、私の住む国富町というところは、本当にこの耕畜連携が非常にうまくいったというか、いけた地域だと思っております。

 思い出せば、平成八年だったと思います。転作作物をいろいろ行政と模索しながら、いろいろな作物を国富町でも導入しました。この飼料用稲というのは、たった五キロぐらいの種もみから、先ほど申しましたけれども、二百三十ヘクタール。本当にここまでよく来られたな。一番最初、自分のところから、この種もみから始まりまして、次の年に約一町、それがどんどんどんどんふえていって二百三十ヘクタールという形になりました。

 成功した大きな要因というのは、私は、やはり国富町が葉たばこの生産地帯であったというのが一番大きいと思っております。葉たばこというのは、大体三月に定植をしまして、七月いっぱいぐらいで収穫をするんですけれども、その終わった後に、今までは七月にまた田植えをして十一月に米を収穫されていました。というのは、米の収穫を目的とするんじゃなくて、来年度のたばこの連作障害を防ぐために、その土壌消毒を兼ねて米をつくっていらっしゃったんですね。

 その当時、国富もいろいろな転作作物を導入しましたけれども、何かいいものがないかと。その後、飼料用稲というのができまして、同じ米づくりということもあって、農家が非常に取り組みやすかったということもあります。その当時、葉たばこが大体、反当六十万円前後の収穫というか収入が得られていました。この転作奨励金という形で、今のもののその前のときには、十アール当たり七万三千円の転作奨励金が耕作者の方に行っていたと思っております。

 たばこ農家さんは、たばこをつくり、その裏作に飼料用稲をつくることによって、また収入が得られる。私たちは、その飼料用稲を無償でいただくことによって、堆肥を今度はたばこ農家さんの方に持っていく。ここが本当に耕畜連携のうまくいったところである。今、畜産を取り巻く状況も非常に厳しくなっておりまして、堆肥の野積みができなくなりました。私たちにとっての堆肥というのは、ある意味お荷物なんですけれども、たばこ農家、園芸農家を持つことによって、うちの農家を含めて、国富の畜産農家には全く堆肥の処理に困っていらっしゃる農家はいません。ここらあたりが耕畜連携が非常にうまくいったところ。

 ただ、一番の苦労話としては、最初にこの転作が進んだときに、農家というのは日当たりの悪いところに結局転作をするんですね。都合のいいところには米をつくるんです。私たちが収穫に行くと、機械が入らない、人が歩いてもずぶずぶと入ってしまう。それで、畜産農家、水田農家、代表者三名の方に出ていただいて、そこらあたりを話し合いの中で協議していきました。私たちは、いい場所に植えつけをしていただかないと収穫はできません。だから、行政が入らない農家同士の話し合いの中で、こういった取り組みをしてきました。

 成功した大きな要因というのは、行政、JA、農家がそれぞれ同じ気持ち、同じ思いを持って取り組んできたことがやはり一番大きい。自負するわけじゃありませんけれども、私たちの地域は、行政、JA、農家が一緒に農業をやっているという観点では、本当に先進的なことをやっている地域だと思っております。

 お答えになるかわかりませんけれども、大体それぐらいのところです。よろしくお願いいたします。

岡本(芳)委員 ありがとうございます。

 それから、綾町さんは、これは数字だけ見ても本当にすばらしいと思うんですね。認定農業者が五九・三%、六〇%あるわけですね。こんなのはちょっと普通ではないんじゃないかという気がするんですが、どうしてこんなにうまくいったのか、その点も教えていただきたいと思います。

 また、本当に皆さん、進めていかなきゃこれはどうしようもないわけでございまして、後継者をつくっていかなければ日本の農業はつぶれてしまいます。そういう点で、これから末海さんは指導者としてどういうふうなことをやっていこうと思っているのか、意見をお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それから、大浦さんに、圃場整備を今取り組んでおられるそうでございますが、これも取り組みがかなり遅い方であるというふうに感じております。今、全国六〇%ほどでき上がっております。その中で、こういう大きな集落営農はできておるのに、まだ圃場整備はできていないというのは、何か理由があったのか。そして、その負担金をどういうふうにして持っているのか、その点もお教えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

前田穰君 大変光栄に存じております。

 私たちの町は、七千六百の小さな町ではあるんですが、国、県の御理解、御指導をいただきながら、おかげさまで、現在のところ一行政区一農協という形の中で取り組ませていただいておるところでございます。そういう面で、行政、JAさらには生産者、それこそ三位一体の中で、有機農業の推進に町ぐるみで取り組んでおる、こういう実態の中で、農家との意思の疎通というのが十二分に図られておる。

 こういう面で、認定農家の関係についても、積極的に推進をいたしますとそれなりの対応をいただけるということで、この認定農家の皆さん方が、これから地域農業、特に集落営農体制を確立するためには、先ほどそれぞれの陳述の中にございましたように、こういう農家の皆さん方を地域のリーダーとして、しっかりその核となるべき存在に育てていかなきゃならない、このように私も思っておりますから、行政的な立場からいたしましても、認定農家の経営指導あるいはまた技術指導等々を三位一体という形の中で、JAと我々行政さらには生産者と一緒になった中で、そういう方向づけをいたしておる、こういうことでございます。

 うちの場合は、全体の町ぐるみの中でそういう体制がとれておるという面で、経営指導から技術指導、そういう面を含めた中で、生産から販売、一貫した中での成果を上げるべく有機農業の取り組みをいたしておりまして、青空市場があり、直売所があり、また生協との取引、外食産業との取引、もちろん市場流通の取引、そういう多面的な流通体制の中で農家の経営安定、こういう方向づけを今一生懸命推進いたしております。

 そういう取り組みの中で、おかげさまでこれだけの実績を現在上げておるということで、特にJAS認定等についても、先ほども紹介いたしましたとおりに、一番最初に農水省からおかげさまで認定機関としての認定の登録もいただいた、こういうことでございますから、さらに安全、安心を追求しながら消費者の皆さん方が求めるものを精いっぱい生産していこう、こういう思いの中で生産農家と取り組んでおるところにこういう実態ができ上がった、このようにありがたく思っております。

 以上であります。

末海重俊君 大変難しい質問でございます。

 私の地域を申し上げますが、集落営農の座談会がございましたけれども、全く不可能と思っております。

 串間市は六カ町村の合併でございますが、私は、市木村でございましたが、市木地区でございます。その地域で認定農業者はたった一人しかおりません。耕作面積は百五十町でございますけれども、実面積は百三十町でございます。集落が十六ございますけれども、たった一人しかいない。私たちの集落で集まりがありましたが、三集落集まっても二十町の規模になりません。だから、全体をまとめなければならぬということになりますと相当な時間が必要だ。

 それからもう一つは、大正末期の基盤整備でございますから、六アールから八アールが一番大きい田んぼでございますので、認定農業者の一人の方に四町以上やってくれませんかといったって、六十枚も八十枚も田んぼを預けるということになります。その人は一人しかおりません。

 だから、そういうことを考えますと、おっしゃるように、法律は十九年の四月一日となっておりますから、行政も一生懸命になっておりますけれども、なかなかこの期間内には難しいのではないかと思っております。

 それからもう一つは、十八年度が準備期間というふうになっておりますけれども、さて予算はどうしたんだろうか。やれやれと言いながら、予算は、行政もみんな、農協さんも来ておると思いますけれども、これもないんじゃないか。一方ではやれやれと言いながら、では、みんなただでするんだろうかなと思います。

 私、先進地を視察しておりますと、五十回も六十回も集会をしておる。そういうのを私は熊本県やら福岡県、大分県に行きまして見ています。私はやりたいと思う、やりたいと思いますが、高齢者じゃなくて超高齢者ですね。先ほどもお話がありましたが、私は七十四歳でございますけれども、一番若い方でございます。そのような現実になっておりますから、なかなか私は時間的に無理があるというふうに思っております。

 だから、どうせするんだったら、行政と農協が一緒になって農業公社を立ち上げて、基盤整備と集落営農と並行してやっていただかなければ、基盤整備の話が出ましたが、今ごろ反当二十万、三十万負担する人がだれがおるんでしょうか。やめたいと思う、もうせぬという人がほとんどでございますから、基盤整備と言われても、この負担金すら言葉にも出せない状態でございます。

 だから、私も絶対、職をかけてでも実現したいという腹は持っておりますけれども、なかなかいまだ進まないというのが実情です。ましてや、これを進めるには、農協さん農協さんと言われますけれども、これはやはり行政、中でも農業委員会、いろいろと制度が絡みますので、合同的に進めるという立体感を持たなければなかなか進まないというふうに私は思っております。

 どうかその点を、公聴会も大事でございますけれども、市町村に来られて、実態を調査しながら、一緒にやらせていただきたいと私は思っております。大変申しわけございません。

大浦義孝君 圃場整備について申し上げたいと思います。

 私の今の圃場整備、五十ヘクタールやっております。ここは二十三年前に総合整備を入れたんです。その総合整備の負担金がまだ少し残っております。総合整備は農道と用排水、これを整備したんです。非常にお金をかけてやったんですけれども、私は、今の農業には沿わないということで、法人を立ち上げて、これから集落営農で対応するには今の圃場じゃだめですということを県に申し上げました。そして、平成十五年に申請をして、十六年に採択になった。十七年に面工事が始まっております。非常なスピード。これはなぜか。やはり一つの法人を立ち上げたということが、一番大きな要因であろうというふうに思います。

 ですから、これで今、省力化をしなさい、コストを下げなさい、こう国の方も申しますが、今の圃場じゃできません、コストを下げることはできないんです。コストを下げるにはどうするか。大きい圃場をつくる、そして大きい機械を入れる、個人では機械を入れない、そういったことでやろうということで今の圃場整備をお願いしたんです。その隣でも平成八年に面工事が終わっております。

 それから、今行っておりますが、負担金はどうするかということになります。負担金は、非農用地を設定します。今度の非農用地がちょうど三ヘクタールです。非農用地を設定して、市に売却、その売却金で負担金に充てる、負担金はゼロです。

 これから圃場整備をするのに一番問題になるのは負担金です。一代では終わりません。二十五年ぐらいの償還、三年据え置きの二十五年となると三十年かかります。ですから、一人で終わりません。負担金が子供の時代まで続きます。そういう圃場整備じゃだめだ。ですから、土地を少しずつ提供して非農用地をつくって、それを売却して、それで負担金に充てる、こういった体制をとろうということで、負担金はゼロということにしております。

 ですから、先ほど申し上げましたように、これからの農業はどうしても、コストを下げる、そして大きな機械を入れる、そして協業化する、こういった道しかないと私は思います。これをやらないとこれからの農業は守れぬ、地域の農地は守れぬというふうに今訴えております。ですから、近くその方向に進みます。

 以上です。

岡本(芳)委員 大変貴重な意見、ありがとうございました。

 終わります。

稲葉座長 次に、山田正彦君。

山田委員 民主党の山田正彦です。

 引き続き大浦さんにお聞きしたいのですが、立派に農業生産法人と集落営農をつくられて頑張っておられます。先ほどから感銘して聞いておりましたが、十六年からつくって、実際、法人として黒字でしょうか、赤字でしょうか、まずそれだけ答えていただければいいのですが。

大浦義孝君 十六年に立ち上げて、ことしで二年目の総会が終わったところです。毎年全員を集めて総会をします。大体十二月が決算です。申告、税理面がありますので今までは三月にしておったのですけれども、法人になって、十二月が決算、総会を二月ということにして、ことしも、今総会が終わったところです。

 おかげをもちまして、法人税その他が四百万ぐらいです。やはり余剰金を出さないと今後の運営に困る、余剰金を出すには税金をしなきゃならぬ、そういうことになりますので、税金はするものはする、そして補助金はもらうものはもらう、こういう形です。ですから、私は、運営そのものは順調というふうに思っております。

山田委員 御立派にやっておられて本当に感服いたします。

 もう一つ大浦さんにお聞きしたいのですが、今度の担い手対策で、集落として、いわゆる品目横断的直接支払い、どれくらい入ってくるか。行政からいろいろお聞きしたこと、あるいは皆さん方でどれくらい予定しておられるでしょうか。

大浦義孝君 平成十九年度、これからどういうふうになってくるのか、非常に私は心配をしております。でも、法人を立ち上げておりますから安心はしております。国の方針に従って私はやっておるというふうに思っております。

 資料を私もらったのですが、民主党の意見では、今までのような、ばらまきと言うといかぬけれども、そういった方向でやっていらっしゃるというのが載っております。自民党の方が、今度の政策大綱というふうに載っておりますが、今までの方向でやっていいのか。いいところもあるかもしれませんけれども、やはり今後は、法人化、集落営農、こういったものを対象にして取り組んでいかないと、私は、日本の農業、農地は守れぬというふうに思っております。

 去年、私のところは、百五十ヘクタールの中の六十五ヘクタールが転作ということになりますから、転作のお金を十アール当たり六万三千円いただいております。

山田委員 政府を信頼して、それでそれだけ今度の品目安定対策でお金がもらえるだろうということのようですが、今回の法案は、末海さんがさっきおっしゃっておりましたように、予算も明示されておりません。どれだけ集落営農に対してやっていくのか大変不明です。

 かつ、今、維持することは大変だと言いましたが、ジャガイモをつくっておられる、契約栽培しておられる。ところが、これから先、経営を一体化して赤字になった場合の赤字はだれが負担するんでしょう。皆さんで平等に負担するんですか。それとも二百二十何戸の主体で平等に負担するのか、あるいは十二人、従事している、実際に給料をもらっているであろう人たちで負担するのか、どちらでしょうか。

大浦義孝君 その辺のところまではよくまだ考えておりませんが、私の経営内容においては、今一番柱になるもの、収益の柱になるもの、これはバレイショです。転作地に全面的にバレイショを植えて、バレイショを契約栽培で出荷するという体制をとっております。

 やはり、法人になりますと、契約でないとだめです、契約栽培。これが一番大きな問題になりますので、契約で出荷をして、行く行くはどうなるのか、十年先、二十年先はどうなるのか、その辺までは考えておりませんけれども、今の状態を継続していけば、私は、今後の農業というのは継続してできるというふうに思っております。

山田委員 加工用のバレイショに力を入れているようですが、ことしから、アメリカから加工用のバレイショ、生鮮ジャガイモが入ることになって、もう入っているんじゃないかと思っております。

 輸入の食品が相変わらずどんどん入ってきていますから、今取り巻く環境はそう簡単ではありませんで、本当にしっかりやっていただかないと、赤字負担も一体だれが負担してどうなっていくのか、そこまで考えて集落営農は取り組んでいただかなければ、これから大変なことになるんじゃないかと思います。

 前田さんにお聞きしたいんですが、品目横断的担い手対策という直接支払いについて、直接支払いは我々民主党が言い始めて、当初は政府も自民党も反対しておられたんですが、今ようやくこういう直接支払いを導入することになって、多くの農民の方々が期待しておったわけです。

 ところが、綾町の場合に、実際に品目横断的直接支払いを受けられるのは四%しかないんですね、しかも四ヘクタールという制限。これについてはどう思われますか。

前田穰君 先ほどちょっと申し上げましたように、今回の担い手新法においては、いろいろな重い悩みがありますことも事実でございます。品目横断的経営安定対策の対象品目というのが、今先生おっしゃいますように、県においても七・八%、綾町においても四%という実態の中にあります。

 ただ、我々は、現在まで、これを水田営農対策として、転作あるいは生産調整等々に積極的に取り組みながら、一方ではこれからの専業農家、主業農家の育成等々を考えますときに、どうしても宮崎県の気象条件なり地形条件等を考えますと、先ほども申し上げましたように、施設型農業と土地利用型農業をどう営農形態の中に組み合わせていくかということが必要になってまいりまして、現在ではこのような割合になってきた、こういうことでございます。

 そういうことで、先ほど陳述でも申し上げましたように、品目横断的な経営安定対策の品目とはまた別に、品目別政策の対象となる野菜や畜産、こういうものの充実強化を今後の担い手対策としてぜひ強化をしていただきますと、現在でもそれぞれ品目ごとには取り組んでいただいておるわけでございますが、先生おっしゃいますように、農家の皆さん方の経営安定ということを考えますと、気象条件その他、外国の輸入というものがどんどん拡大されていく、自由化になっていくという実態から考えますと、どうしてもやはり、デカップリングという言葉がございましたように、所得補償制度的なものをぜひある面では一歩も二歩も前進をいただけると本当にありがたい。

 そうなりますと、農家の皆さん方もそれなりの生産性を上げるための努力が報われていくんだ、公益的機能を有しておる一次産業というものが安定化していきまして、国内自給率を高めることにつながっていきますよ、こういうことで私たちは、品目別政策の対象となる品目を、宮崎県の場合は特に施設園芸農家のキュウリ、ピーマンとかあるいは肉用牛とか、そういうもの等の政策の充実を図っていただけると本当に水田営農というものが確立できるんだ。

 こういう面で、我々は、先駆的にと言うと僣越ではございますけれども、宮崎県として、またそれぞれの市町村としては、水田転作というものを積極的に展開して、結果として現在このようなパーセンテージになった、こういうことでもございますから、今後のお願いというのは、品目政策というものをぜひ充実強化していただけたらということ、そして、先生おっしゃいますように、どうしてもやはり所得補償制度、デカップリングというものを今後視野に入れていただけるとありがたい。今度の品目横断的経営安定対策などでそういう方向を見出していただいたというのは、本当に一歩、二歩前進だということで、大変期待をいたしておるところでもございます。

 以上であります。

山田委員 今申し上げましたように、いわゆるデカップリング、所得補償、アメリカで言う不足払い、日本で、我々が提案したところの直接支払い、これを我々は一兆円の規模でやろうと考えておりますが、先ほど大浦さんが、ばらまきで民主党案はだめだという言い方をしておりましたが、いずれにしてもそういう問題はございます。

 ただ、前田さんに私がお聞きしたいのは、先ほど末海さんがおっしゃっておられました、いわゆる立派な産地づくり、キュウリとか日向夏ミカンとか、いろいろやっておられます。そういった特産物というか産地づくり、各地方は一生懸命取り組んできたわけです。ところが、今度の担い手対策になりますと、四町歩もしくは中山間地域で二・六ヘクタールということになりますと、いわゆる兼業農家が支えてきた産地といったものが、兼業農家は一ヘクタールの農地でも一千万円の収入を上げているところはいっぱいあると先ほど前田さんは言っておられましたが、そういった人たちが、一方はデカップリング、直接支払いがもらえて、一方はもらえないということになりますと、今度の担い手対策は、産地形成そのものが危うくなっていく、そういうおそれはありませんか。

前田穰君 私どもの今までの農業政策の中で、地方の自治体としては、おっしゃいますように、専業農家だけじゃなくて、兼業農家も含めた中での地域農業の振興といいますか、そういう面での取り組み等々をやってまいりました。しかし、今現在、少子高齢社会になってまいりますと、どうしてもやはり、そこに核となる認定農家、そういう集落営農体制というのはもう避けて通れない実態に来ておるのではないかと私は思う。

 そういう面で、本当に核になる認定農家の皆さん方が、将来の集落営農、法人化に向けて、そういうリーダーの人たちが、やはり担い手対策としては、そういう皆さん方の経営安定がないことには担い手になり得ない、あるいはまた集落営農の核となる法人化のリーダーにはなり得ない。私どもとしては、そういう面でのデカップリングというのを重点的、集中的にやっていただくことも一つの方策かな、こういう思いがいたしております。

 しかし、地域農業としては、どうしても兼業農家等々も含んだ中での取り組みという面を考えたときには、集落営農、法人化に向けた、そういうステップアップする形の中で体制的には必要だということでありますが、全体にということになるとなかなか担い手が育ちませんから、集中化、重点化という形での担い手対策という面でのデカップリングという方向が、私としては、核となる担い手をつくるという面ではやはり必要ではないかなという思いも、見解としては持っておるところでございます。

山田委員 よくわかりました。

 私ども民主党としては、担い手をいわゆる四町歩以上とか認定農家に絞らないで、いわゆる販売農家、農産物を計画的に生産する販売農家すべてに直接支払いをして、その中から、構造改革というか、農地を集約している農家とか品質のいい農家、規模加算、品質加算、環境加算というのを考えておりますが、そういった門戸を先に広く広げて、本当に意欲のある、農業で食べたいという方々に広く機会を与えることが大事だ、そう考えている法案を今対案として出しているわけです。

 いずれにしましても、今回、いろいろな問題点はございます。末海さんにも、先ほどのお話ですと、現場は大変混乱している、そういうふうに集落営農をお見受けいたしました。

 一つ、笹森さんにお聞きしたいのです。

 私ども、食料自給率は大変大事で、これをどうやっていったらいいかということに大変苦心惨たんしておったわけですが、畜産物において粗飼料を一〇〇%の自給率でできると。私もかつて畜産をやっておりましたが、本当にこのお話を聞いてびっくりしたんです。

 笹森さん、本当に畜産の自給率を上げるとしたら、粗飼料の自給、これをどこまで達成できるかにかかってくるかと思うのです。それについて、耕畜連携というお話を聞きましたが、それを本当に広げて何とか自給率を八〇%なり九〇%なりにするとしたら、日本の畜産をどうしたらいいか、御意見をお聞かせいただけませんか。

笹森義幸君 粗飼料の自給ということですが、自給ができるかできないか、これは農家の個々の考え方だと私は思うんですね。できるかできないかじゃなくて、するかしないか。結局、自分が畜産をやっている観点で、粗飼料自給という観点からいくと、繁殖牛二十頭以下の農家にはよく言うんですね、二十頭以下の農家は、かまと草刈り機があればいい、ほかの大型機械は要らないんですよと。

 というのは、今、農家も、規模拡大と、勤めに行きながらの兼業農家とに二極化しております。規模が大きくなればなるほど、あぜ草、畝ですね、そこらあたりの野草並びに河川敷の堤防の草とか、利用できる粗飼料はいっぱいあります。さっき話したように、稲わらのすき込みとかそういうのを無償でいただければ、私は、二十頭以下の農家は本当に粗飼料一〇〇%自給は可能だと思っております。ただ、本当にやるかやらないか。

 今宮崎を含めて建設業界なんかで、やはり公共事業の削減によって仕事がない時期がよくあるという話を聞きます。そうしたときに、先ほど言いましたように、農家が農家の粗飼料を自給するというのは、収穫作業がどうしても一緒になるんですね。国富でも、この二百三十ヘクタールの飼料用稲を収穫するに当たっては、私たち畜産農家は自分が契約している耕種農家の刈り取りで手いっぱいです。でも、それをかわりに刈り取ってくれるのはたばこ後継者です。たばこをつくっていらっしゃる後継者の方が農協の受託組織をつくって、そこの機械で収穫をしてくれています。だから、私たちが直接そこの耕種農家の刈り取りに行くことはありません。農協が契約をしている農家の面積が約二十から三十ヘクタールぐらいありますけれども、これはその受託組織が刈り取りをやってくれています。

 だから、農家がそういった収穫をするのじゃなくて、第三者のそういった組織、建設業界でもいいでしょうし、そういった方々が収穫作業をして、それをキロ幾らで畜産農家が買うのもいいでしょう。それに、やはり国、県あたりが助成金という形で、キロ一円でもいいですし二円でもいいです、そういった形で自給をしてくれた農家に対して助成をしていく、そういった形にしていけば、おのずと粗飼料の自給も五〇%から六〇%、七〇%になっていくと私は思います。

 やはり大型の企業化というのは、本当に自分たちが、口蹄疫、こういった病気を防ぎたいと思っておっても、百軒ある農家の中で九十九名の方がそれを守って自給にこだわる、でも一軒の方が外国から粗飼料を入れてそこから病気が発生する。ということは、あとの九十九名の方も同じ迷惑をこうむるという観点で、非常に私は大事だと思っていますので、いろいろまた、先生方もどしどし地方に来ていただいて、そういった意見を聞いてくださればありがたいと思います。

 以上です。

山田委員 私の時間も来てしまいました。

 末海さんに新規農業者の農地参入について最後にお聞きしたかったんですが、どうやら私の持ち時間が終わったようで、終わらせていただきます。

 きょうは本当に貴重な御意見、ありがとうございました。

稲葉座長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 きょうは、四人の皆さん方に大変貴重な御意見をちょうだいいたしました。先進的な御意見もあれば、本当に現実の問題で大変御苦労されているという、私たちにとって本当に参考にさせていただきたい内容でございました。

 早速何点か御質問申し上げたいんですが、実は、先ほど末海さんからお話のあった件でございますが、今回の、特に集落営農等の関係で、ぜひともJAだけではなくて行政がお手伝いをしていただくことが肝要ではないかというお話がありました。

 たまたま前田町長さんにおいでいただいておりますので、もう既に先進的なお取り組みをされていると思うんですが、そんな中で、行政としての今回のこの政策に対する役割といいますか、そのことについて、まず初めにお聞きをしたいと思います。

前田穰君 今回の新法に基づきます取り組みといたしまして、先ほどもちょっと陳述の中で申し上げましたように、重点化、集中化という面では、やはり、現状の方向を考えますときには、これは大転換として、我々としては非常にありがたいと思っておるわけであります。

 ただ、行政の役割としてどのような面での責任を果たしていくのかということでありますが、私たちは、当面は、認定農家の皆さん方、リーダーをどう育てるかという面で、集落営農の核となる人材をどう育成するかということが一番のポイントではないかと思います。

 そういう面で、私たちは、認定農家群をどんどんつくり上げていきながら、集中的に認定農家の皆さん方の育成強化をまず図ろう、そういう方々が経営の確立を目指すことによって、法人化を展開しながら集落営農の担い手としての役割を果たせるような方向づけを、農協と我々行政と生産者と、今度、認定協議会という組織もつくりましたので、そこら辺を重点的、集中的に育成指導というものを積極的に展開していこうと。そういう人材をまずはつくり上げないことには、この新たな今回の担い手対策、新しいこれからの農業振興、自給率確保という面での大きな目標に向かっていくためには、そのことの役割を行政がどう強力に推進するかというのが行政としての大きな役割ではないか、こういう立場で今後努力をしたい、このように思っております。

 それで、補完的には、申し上げますならば、そういう農家の皆さん方が本当に一生懸命やって、結果として努力が報われるようなデカップリング方式というものをまた検討いただけるとありがたいな、これが希望的なお願いでございます。

 そういう方向の中で、行政としてはそういう面での役割を果たしながら、やはり販売、流通をどう強化するか、せっかくいいものをつくっても、それの安定的な供給体制がとれないといけませんので、綾町の場合は安全、安心というのをキーワードにしながら、多面的な流通体制ということで、幅広く、直接外食産業と展開したり、あるいはまた生協と取引をしたり、あるいは市場流通も当然やったり、消費者と直接取引をする、そういう多面的な流通の中で担い手というものをまずは育成し、認定農家を確立して、そういう人を集落営農の担い手につくり上げていきたいということで、今、目標を持って取り組んでおるところでございます。

 以上であります。

西委員 どうもありがとうございました。

 先ほど大浦さんからもお話があったと思うんですが、流通それから価格の安定、先ほど契約農家というお話がございましたけれども、やはり価格に対する維持というのが一つの大きな共通の課題であろうというふうにお見受けいたしました。

 それで、今の町長さんのお話は、まず、一人一人の認定農家を中心とした、確立した農家を育成し、そこを核にして、将来は集落営農も可能な力をつけていくという立場からこれから取り組んでいきたいという御趣旨のようでございました。

 今、認定農業者が百二十五人という大変多くの数がいらっしゃるんですが、その一方で、かなり高齢の皆さんもいらっしゃる。今後の町の農業の後継者のことについてお伺いしたいと思うんです。

 私は、これから先々、認定農業者を育成すると同時に、やはり何らかの形で、法人化をしていくことによって、新しい人たちがそこに参入しやすい環境をつくっていくということが、将来にわたって農業を安定的に継続していくという意味からも大変重要な側面ではなかろうかというふうに思っておりますが、その辺の、将来の担い手に対するお考えについてお聞きをしたいと思います。

前田穰君 基本的には、もうやはり、綾町の実態を見ていただきましてもわかりますように、高齢化というのが、六十五歳以上というのが四七・九%という実態でもあるわけであります。しかし、先ほど話がございましたように、やはり農業というのは、非常に厳しいピンチの中にありますけれども、やりようによっては十分生活の糧となる職業だ、私どもはそう思っていますし、また、それだけ創造力があって、自分が経営者になり得るという立場からすると、一方では魅力のある産業ではないかなという思いもいたしております。

 そういう面で、まずは認定農家の皆さん方が本当の経営安定という実績をつくり上げていただきますと、それなりの担い手というのがまたできてくるんではないか。ですから、先ほどからくどく申し上げますが、担い手農家の皆さん方の経営安定という方策を積極的に、JAと我々行政が一体となってフォローアップしていくという形で、そういう農家の皆さん方をまずは確立する。魅力ある農業の展開ができますと、自然に担い手というのは生まれてくる。

 ですから、よく言われますように、現在でも、経営的な確立がなされておる農家には担い手が育っておるということも事実でございますし、そういう面で、そういう皆さん方が今、私たちの町でも、もう既に法人格的な位置づけになってどんどん担い手を、ある面ではIターンで入ってくる方、そういう方々も受け入れようということで、そういう施設も国、県の事業をいただきながら、そういう面での取り組みをいたしておりますし、農地保有合理化事業の研修等事業というのがございますが、そういうものでIターンで入ってくる皆さん方を受け入れて、一年間、二年間研修をしていただいて独立をしてもらって若者の後継者を育てていく、こういう取り組みも今ようやく実績が上がりつつございます。そういう形の中での後継者を育成していく。

 まずは、現在の農家の皆さん方の後継者をどう確保していくか。それは、農家の皆さん方の経営安定という方策が確立できれば自然に出てきますし、もう一つは、魅力ある産地になりますとよそからIターンで入ってくる皆さん方もございますし、そういう皆さん方の中での後継者対策というものを積極的にアピールしていく、こういう形の中で、現在、我々としては、そういう若者の後継者育成というものを図っております。

 特に、宮崎県はSAP運動というのがあります。農業繁栄のための学修ということでSAP組織というのがあるんですが、若者がそういうSAPの、将来の担い手、後継者として、今活動をやっております。そういう皆さん方が今綾町は徐々にふえておる、こういう実態もございますので、そういう皆さん方が魅力ある農業ができる方向での支援体制を、地方自治の攻めの農政という形の中で積極的に支援して、確立を図って後継者を育成したい、こういう方向で取り組んでおるところでございます。

西委員 ありがとうございます。

 若者は、本当に活気のあるところは、産業いかんにかかわらずやはり集まってくるものだと私自身も確信しておりますので、また頑張っていただきたいと思います。

 若者ということで、先ほど笹森さんにも、大変積極的な、十九歳から本当にリーダーとして長く御活躍いただいてきた内容についてお話を伺いました。

 特に、日本の国内の自給率が四〇%である、我々の生活に、生きていくのに最も大切な食料の多くを外国に依存している、ゆえに、この農業というものに対して積極的な保護を、保護といっていいのかどうかは別にして、保護をしていくのは当然のことであるという力強いお話がありました。私どもも、全くそのとおりだというふうに思っております。

 実は、私は和歌山県の出身でして、宮崎の農業収入の比率を見ますと、米、麦、大豆が少なくて、野菜、果実、私どものところは果樹が大変多いんですが、そのかわり畜産が少ない、こんな構成になっておりまして、米、麦の比率は大変少ないという面では共通しております。野菜、果樹それから花、そういうものを主につくっているところでございますが、多分、中山間地が多いという面でもよく似ているところじゃないかなと思っております。

 数年前から、緑の雇用事業といって、山林の労働をしていただく方にたくさん来ていただいております。たまたま私が山に入って伺いますと、どこから来たのと言うと、宮崎市から来ましたという人がいらっしゃいました。それまでは、お正月もなく、昼、夜、営業で走り回っていましたけれども、山に来て、本当に、家族仲よく、気候のいいところで生き生きと頑張っている姿を目の当たりにいたしました。

 やはり、多くの青年の中には、農業で頑張ってみようという方が実際にはたくさんいらっしゃると思うんです。ところが、なかなかそういうところに具体的にはアプローチできないという側面がございまして、その辺のところにどういう障害があるんだろうかなということが私はずっと気になっておりますが、若者の代表の笹森さん、何かお考えがございましたら、畜産だけにかかわらず、農業という側面から御意見がございましたら、お願いをしたいと思います。

笹森義幸君 和歌山県御出身ということですが、和歌山の方にも畜産の関係で二年ほど前に講演に行かせていただいております。本当に、おっしゃったように、果樹が多くて畜産が非常に少ないところで、ただ、地域的に自分たちが住んでいる町と非常に似ている。畜産をこれからやっていけばまだ十分伸びるんではないでしょうかというお話をして、その中でも、後継者の方がやはりまたうちの農場を訪ねてきてくださっている。

 若干自分の話になりますけれども、私は十九歳から、決しておやじの敷いてくれたレールに乗っかったわけではありません。私は、おやじから譲り受けた牛は二頭です。それから、資金を借り入れて、十九歳のときに四頭の牛を買って、六頭からスタートしました。今はこういった数にして、平成十年に本当に大きな賞もいただきました。やはり私は、自分で自分を褒めるわけではありませんけれども、本当に努力をして、ある意味牛で成功をしたなと思っております。

 自分がこういった立場になって、今一番大事にしたいと思っているのは、二十四年ですけれども、約二十年苦労してここの経営を築いた、私はこれを、隠すんじゃなくて、知りたいという方にはどんどん教えていきたい。何でもそうなんですけれども、特に牛の肥育農家に行くと、やはり飼養管理ですね、えさとかそういったことは秘伝みたいなのがあって、やはりよく隠されるんですね。でも、私は常にオープンです。だから今、毎年、農業大学校の研修生を必ずうちには受け入れて、一カ月間みっちり仕込みます。ただ条件があります。将来絶対農業をやること、それと、やはり牛が好きなこと。だから、自分が二十年かかったことを、おまえの気持ち次第で十年でもできるし、おまえの考えでは五年でもできると。

 畜産といっても本当にいろいろなやり方があって、自分がいろいろなこういった会議に出されたときによく質問されます、もうかっていらっしゃいますかと。もうかっています、やはりそういったことが言えるような農業者にならないといけないと思っております。

 今、自分ももう四十過ぎて、後継者、残念ながら長男坊を交通事故で三年ほど前に亡くしております。ただ、次男と三男をどのように、この同じ農業、この牛の道に持っていこうかなという育て方を今一生懸命考えております。スポーツをさせながら、親子の触れ合い、家の手伝いもさせながら、きのうたまたま家庭訪問だったんですけれども、三男坊が、僕はお父さんと一緒に牛をやりたいと。やはりうれしいですね。

 やはり、いろいろな意味を含めて、農家が、自分たちが食料をつくるという観点から、先ほど前田町長もおっしゃってくださいました、やはり価格安定補償ですね。農家というのは、本当に大きな収入は望まないと私は思うんですよ。十アール当たりの中に種代が幾ら、肥料代が幾ら、ただ、せめて自分たちの生活費だけはいただけないでしょうか、私はそれでいいと思うんですよね。一生懸命やっている農家、そして、お父さんが一生懸命やってもうかっている、そういったところには、自分の周りを含めて、やはり後継者が育っていらっしゃいます。

 やはり、お父さん、お母さんが食事のときに、借金がねという話をされているところで後継者が育つだろうか。私は、後継者ができるできないというのは、その親が本当にもうかっているか、楽しそうに農業をやっているかにやはりかかってくると思います。

 だから、決して私は、農業という職業は悲観することはないと思います。やり方次第ではこんなおもしろい職業はないと思っております。

 以上です。

西委員 大変貴重なお話をありがとうございました。

 何の仕事でもそうだと思うんですが、父親が自信を持って仕事をしているところの子供は、やはりそういうことに興味を持つんではないかなということを感じさせていただきました。

 時間がもうなくなってまいりました。大浦さんにお聞きをしたいんですが、長い戦後からの歴史をずっと継続して、その遺産を引き継いで、新しい農業を展開していこうということで法人化をされたようにお聞きをしました。そういう意味では、いつの時代にも、この太郎坊地域には、いわゆるリーダーというか、そういう立場の人がずっといらっしゃったがゆえにこういうことができたんではないかなというふうに興味深く聞かせていただきました。

 多分、法人化する前は優秀な専業農家の皆さんもいらっしゃったと思いますが、一方では兼業でやっていらっしゃった方も結構いらっしゃるんじゃないかなというふうにお見受けしております。もともと法人化する前はどういう構成割合でおられたのかということと、それから、法人化することによって、兼業の皆さんの仕事の役割といいますか、どういうふうな形でこの法人の中に繰り込まれていらっしゃるのか、この二点について最後にお聞きをしたいと思います。

大浦義孝君 どこもそう簡単にいくものではない。苦労はつきものです。でも、それをいかに乗り越えるかということが一番大事なことであろうというふうに思います。

 私のところは、私は平成二年に農事振興会という形の中で会長を引き受けて、平成三年に、農事振興会ではなくて営農改善組合というのに、私が会長になったと同時に変えました。これは、受託を専門にやろう、大きな機械は個人で買うんではなくて、組合で保有して、今後受託作業をやろうということで、営農改善組合というのをつくったんです。それから機械の導入をどんどんどんどん進めてきて、今の法人になったのはその継続です。

 ですから、別にそう心配もしていなかったし、作業体系そのものは営農改善組合が今度法人に変わった。法人になりますと、今の組合員が構成員になりますよということが変わるということで、そして出資金が伴いますよということでスタートをしたところです。

 やはりこれからは、個人で対応するんじゃなくて、みんなで働いてみんなで収益を分散しようということで今やっております。ですから、私のところは、朝、作業員が来ればタイムカードを打って、そして作業をする、そして毎月十日の日が給料日ということで、毎月給料を支払っております。ですから、年をとって自分でするよりか、土地を提供して、みんなで作業して、そして余剰金はみんなで配当、分けようということで今取り組んでおるところです。

 ですから、今まだ二年目ですから、まだこれからです。私は、立ち上げることよりも継続はなお厳しいですよということをいつも申し上げております。ですから、そういった体制で取り組む。どうしてもこれからは、法人化を進めていかないと農地は守れぬと私は思うんです。ですから、ほかの農地は守れぬでも、太郎坊の農地は守りますよということを今言っておる、後継者を育てながら。

 私も後継者はちゃんとおります。農協に勤務しておったんですけれども、農協をやめて、父ちゃん、私が後をやろうかということを申しました。農業というのは、やれと言ったんじゃだめです、本人がやろうという意欲がないとできるものじゃないと思うんですよ。ですから、それにはやはり親がしっかりして、親の背中を見て育つ子供でないと農業はできぬ、こういうように思います。ですから、農業をするには、農業でつくるものを好きになれ、好きなものをつくってそれが金になればそれが人生では一番いい、そういうふうに申し上げております。

 ですから、農業は苦しいとかなんとかいいますけれども、こういうときがチャンスだと思うんですよ。農業をやるのはこれがチャンスだと。ですから、そういうように申し上げてやっておりますので、私ももう短い人生でありますけれども、できる限り、農業が魅力を持って、後継者を育てて、農地を守る、こういった農業を進めていこうというふうに思っております。

西委員 済みません、末海陳述人には、時間がなくてまことに申しわけございません。たくさん聞きたいことがあったんですが、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉座長 次に、森山裕君。

森山(裕)委員 私は今、無所属におります森山でございます。選挙区は鹿児島五区でございまして、解散までは自民党の畜・酪小委員長を務めておりましたが、郵政民営化反対だったものですから、今は無所属でございます。

 きょうは、四名の陳述人の方々から貴重な御意見をお聞かせいただいて、本当にありがたいことだったと思っております。

 まず、前田町長さん、県の町村会会長のお立場もありますので、ちょっと伺ってみたいと思います。

 三位一体の改革が進められております。交付税改革がどうなっていくのか、私も地方議会に身を置いておりましたから大変気になるところであります。農業政策を進めていかれる上で、三位一体の改革がそれぞれの市町村の現場にどういう影響を与えているのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。

 もう一点は、綾町は私も何回かお邪魔をさせていただいて、いろいろなところを見させていただきました。やはり、農業振興と食の安全運動というものを一体的に進めてこられたところが綾の農業のすばらしさだったんだろうと思いますし、高く評価をされてしかるべきだろうと思います。

 たしか平成の初めだったと思いますけれども、露地野菜に価格補償基金制度ですか、おつくりになったと伺っておりまして、ちょうど私はその後一遍伺って、かなりの基金が積み立てておられるというふうに伺った記憶があります。所得補償という考え方に立ちますと、非常に先進的な政策をとっておられたのかなというふうに思うわけでありますが、そこが今どういうふうになっているかということの二点を、まずお聞かせをいただきたいと思います。

前田穰君 まず、三位一体改革の関係から農政への影響はどうかということの御質問をいただきまして、また、綾町に過分なお言葉をいただきましたことに感謝申し上げたいと思います。

 まず、三位一体改革は、これは我々にとっては特に地方交付税が削減をされるということが一番痛手でございまして、しかし、高度経済成長の時代のように、地方交付税を右肩上がりで、いつまでもそれに大きく依存するということは、もうそのような甘えは許されないということは十分認識をいたしておりますが、権限、財源移譲そして負担金等々のそういう三位一体改革が本当に地方の振興につながるように、あるいは特に農政の振興につながるような形の三位一体改革であってほしいということを願わざるを得ません。

 しかし、国の財政状況から、あるいはまた行財政改革という状況の中において、地方だってそれなりの厳しさを持って受けとめながら取り組んでいくことは、これは当然至極でありますから、そのことについては甘んじることなく、しっかり真摯に受けとめてやっていきたい。

 ただ、地方交付税の見直しにおいては、本当の意味での地域農業、あるいは地域の、やはり全国津々浦々まで国土の均衡ある発展のために欠かせない財源であるということをぜひぜひ御理解をいただきたい。

 このことが際限なく削減されていくならば、恐らく都道府県も市町村も立ち行かないだろう。しかし、我々は決してそのことにすべてを依存するつもりはございませんので、それなりの、行財政改革については最大の努力を、今も血のにじみ出るような取り組みをいたしております。

 そういうことで、農政についてどう影響が出るのかということでありますが、私たちは、もう農業が地域の基幹産業でありますから、これはどうしても重点的、集中的な予算配分というのを展開していかない限り、社会資本というものを、インフラの整備というのを、ある面では道路とかそういうものをある程度おいておいても、これには集中的にやらざるを得ないということで、今まで綾町の先人の皆さん方みんなが町ぐるみで有機農業というのに、毎年ずっと一億円くらいは予算的には確保してまいりました。これは有機農業の推進だけに、綾町が、現在の予算規模では約四十億、高度経済成長時代には五十億でございましたけれども、これは農政全体の予算規模ではございませんが、ただ、その中で、有機農業だけには必ず一億円という予算を絶対的に集中的に実はつけて現在に至っておる。

 そういう中で、一方ではデカップリングということを先ほど山田先生にもお願いしましたし、西先生にもお願いいたしたわけでありますが、綾町は価格補償制度というのを先駆けてやっていこう、有機農業を進めるためには、どうしてもその当時は、まだまだ実は安全、安心ということを先駆けますと、農薬をかけない、あるいは除草剤を使わない、化学肥料を使わないとなると、商品価値的なものからすると、非常に市場流通には乗っからない面もございまして、農家の皆さん方にそのことを推進しましても、なかなか生産性の上がらぬものには取り組んでくれない。だから、行政と農協とタイアップしながら、やはりある程度の価格補償という制度をぎりぎりのところでつくろうじゃないかと。

 しかし、これは自治体だけではできませんので、農協と我々行政、そして生産者も基金造成をいただきまして、この割合は、現在の価格制度からいたしますと、時間の都合がございますから端的に申し上げますが、現在では、五〇%行政でやります、あとの二五、二五、四分の一、四分の一は農協と生産者で基金造成をやっていただく。そして、時給七百円というものをもとにした中での補償基準価格というのを実は設定いたしておるわけでございまして、そういう形の中で、耕種部門と畜産部門と分けた中での価格補償制度というものを確立いたしております。

 ですから、例えばことしはキュウリが価格的には、単価的には非常によかったんですけれども、生産量が上がらなかった。そういうときには、この価格補償制度は発動できないわけです。しかしながら、一方では、所得という面からすると、実は幾ら価格が上がっても生産量が少ないものですから上がっていません。だから、そこのところを埋め合わせないと真のデカップリングにならないというのがまだ、うちの状況でも、財源がそれこそ際限なくあれば別ですけれども、今のところは時給七百円の価格補償という形になっているものですから、そういうときには対象にならないという面で、そこをどう埋めるかというのが、今、綾町の価格補償制度からすると非常に課題になっておる。

 こういうことで、今後、国のそういう制度もいただきながら、今私どもの価格補償は国の補償制度にげたを履かせるという制度でございまして、もちろん単独のものもございますが、そういう形の中での価格補償制度ということで、基金的にはまだ一億円以上の基金が残っておるということで、それを一応運用上今やっておるということでございます。町としては、ことしは一千万とりあえず基金造成費として組んでおるわけでありますが、価格が不安定になればなるほど発動額が多くなるものですから、もうどんどんもとの基金が厳しさを増してきますが、重点的にこの価格補償制度だけは維持したい、こういうことで今、農政の中では取り組んでおる。

 そういう方向の中で、有機農業というものに生産農家が安心して一生懸命生産に打ち込める、生産がないとその流通に乗っかれないということで、まずは生産の安定ということで価格補償制度というものをつくり上げた。

 こういうことで、おかげさまで、生産が安定しますと販路というのがどんどん拡充できるということで、先ほどから繰り返し申し上げますように、今は多面的な流通で、どこでも販売、流通の体制がとれておるということで、生産が安定しているおかげだ、このように思っておるわけでございます。

 ちょっと長くなりましたが、以上のような取り組みをいたしておるということでございます。

森山(裕)委員 大変貴重な御意見をお聞かせいただいて、ありがとうございました。

 笹森さんに伺いたいと思います。

 粗飼料の一〇〇%の自給を目指して本当に御努力をいただいて、敬意を表します。

 国富町というところが葉たばこの大変な生産地であったということと、飼料用稲がうまく組み合わされたというところが一番大きかったのではないかなというふうに私は見ているわけであります。

 笹森さん、もし葉たばこが減産を続けていかなきゃならぬという状況になったときに、このシステムが崩れますか、どうですか。

笹森義幸君 おっしゃるように、本当に葉たばこが、二年ほど前は大体六十万、去年ぐらいから五十万程度ぐらいになって、やはりJTの方もどんどん何か厳しくというか、農家の方もそれだけ面積はふやしているんですけれども、やはり限度があるということで、おっしゃいましたように、葉たばこ農家さんが少なくなっていけば、粗飼料の確保という観点からは若干影響が出るかもしれません。

 ただ、自分としては飼料用稲ばかりに頼っているわけではありませんし、この宮崎は、米も、早期水稲、普通期水稲、たばこプラス水稲といって、三回米つくりがあります。

 ここは気候も温暖なせいもありまして、今ちょうどイタリアンライグラスという飼料があるんですけれども、五月に一回刈り取りをしまして、それからもう一回追肥をやりまして、六月にもう一回刈り取りをします。その後にもう一回別の作物をつくりますから、結局、十アールの中に三回転、粗飼料を確保することになるんですね。ということは、十アールの中で結局三十アールの草がつくれるということになりますから、私自身の経営の中で、たばこ農家さんがなくなるからといって自給率一〇〇%が崩れるということはないし、私たちあたりの繁殖農家にしてみればほとんど影響ないと思っております。

 以上です。

森山(裕)委員 ありがとうございました。

 畜産の方を大変経験を豊富にして頑張っておられるわけでありますが、私の鹿児島県と宮崎県の大きな違いは、種雄牛を、鹿児島県は県有牛もおりますし、民間の種雄牛もおります。宮崎県の場合は県有牛で頑張っておられて、それはそれの特徴があるんだろうというふうに思います。笹森さんは畜産をやっておられて、そのことをどう見ておられるかということを一点お聞かせいただきたいと思います。

 もう一つは、一貫経営をやっておられるわけでありますけれども、一貫経営をなさっておられる一番主な理由は何なのか。繁殖を頑張りたいんだけれども、どうも肉質の情報が戻ってこないので肥育牛までやらなきゃいかぬとおっしゃる方が中にはあるものですから、そういうことが関係しているのかどうか、そこのところを少しお聞かせいただきたいと思います。

笹森義幸君 最初に、種雄牛の問題ですけれども、本当におっしゃいましたように、宮崎は種牛というのは一極集中型です。鹿児島県は、県も持っておるし、各個人の方の方が非常に多いですね。これは大きく、私も賛否両論あると思います。ただ、私は、宮崎で今のこの種雄牛体制というのはやはりよかったのではないかなと思います。

 というのは、今、県外のバイヤーさんを含めて見ますと、私の当地区、宮崎中央家畜市場というのが恐らくことしは全国一の子牛の販売価格の市場になるであろうと思われております、昨年が三番目でしたから。御存じのとおり、安平号という非常に優秀な種牛がおりまして、その産子が、もうどんどん子供が少なくなって、県外から雌牛の導入にかなり入ってこられると思いますから、繁殖雌牛の価格が上がっていく。

 県外の方に話を聞くと、歴史が皆さんあるんですよね。もう二十年、三十年、当市場に通ってくださっている方は、血統の改良というのをみんな知っていらっしゃるんですよね。だから、今、国の事業団であるとか鹿児島の個人の種を私たちの当地域に持ってきても、法外なというか、うちの血統にそぐわないというか、合わないような配合をしても、やはり肉質が不安定になる。やはりその人のえさ、管理でも当然血統は関係していますし、今たまたま鹿児島県産は枝肉重視というような形で、種雄牛も気高系で造成されています。

 今、三等級が二千円もしますから、枝肉を六百キロつくる人の方が経営は黒字経営でしょう。恐らく百十万、百二十万販売されている方がいらっしゃると思います。

 でも、やはり和牛というのは四等級以上が七割を占めなければ私はいけないと思うし、いずれまた輸入が解禁になってくると、やはり三等級以下の肉というのはどんどん価格が落ちてくる。そうなったときに、今三等級で満足していらっしゃる農家の方は、大きな問題がそこに生まれてくると思っております。

 二つ目の、一貫経営というのは、時間が限られた中の紹介だったものですから、私の一貫経営というのは変則的な一貫経営です。

 おっしゃいますように、一貫経営というのは、子牛が生まれて約三年間、肉になるまで、寝かせなければいけないお金も要りますし、私の考えは、今みたいに子牛が高ければ売った方がましだ。ある意味、枝肉が、十月から十二月の一番枝肉相場の高いとき、逆算すれば四月から六月ぐらいに生まれた子牛はあえて枝肉でねらいます。結局、県の共進会という大きな目標があります、グランドチャンピオンというのを自分でとりたいというのが大きな自分の夢でありますから、そのためにそこに該当する牛は全部保留していきます。

 また、逆に、来月、再来月ぐらい、六月ぐらいの梅雨の時期、枝肉単価が非常に下がる牛、逆算すれば、ちょうど当地区では八月ぐらいの子牛の競りになるんですけれども、そういったあたりの子牛は五十万もすれば売った方がよいというような観点から、いろいろな経営体を自分の中で持っております。

 先ほど言われましたように、肉質的な部分からすると、自分の経営としては、お母さんの力、今、育種価ということがよく言われますけれども、お母さんの子供に対する遺伝能力ということを私は非常に重視しております。だから、私は初産の牛はほとんど肥育に回して、三産目が生まれる前にそのお母さん牛の枝肉の成績が出ます。そこで三等級が出ましたら、うちはつぶしていきます。だから、うちの母牛群のレベルは非常に高いです。

 そういった形での変則的な一貫経営をやっているので、ただ、地域としてはそういった情報を、やはりいい牛は地元に残して、県外の農家さんがまたその子牛を買ってもうけていただく。やはり繁殖と肥育というのは敵じゃないんですね。味方でないといけないし、自分は両方やっていますから、自分が育てた牛を買ってくれた肥育農家さんがもうかってくださるような飼育の仕方をやっています。これが私の考える一貫経営です。

 以上です。

森山(裕)委員 時間がなくなって、質問が少し途切れてしまいますが、大浦さんにちょっと伺いたいんですけれども、法人化の場合にはどうしても契約栽培というのが必要だと。そのことはそのとおりだと思いますが、契約栽培、いわゆる共販というのは、農協はどう絡んでいくんですか。そこをちょっと教えてください。

大浦義孝君 農協を通じた販売、購買、全部一緒です。

 それは何が理由かと申しますと、私の法人化は都城農協ですけれども、都城農協も私の構成員です。百五十万の出資金をいただいております。ですから、同じく販売、購買、農協を通じてやろうという契約の中でスタートしましたので、バレイショにしろ、大豆にしろ、米にしろ、全量農協を通じて購買、販売を行うという形です。

森山(裕)委員 ありがとうございました。

 末海さんに最後に伺いたいと思いますが、末海さんの話を聞いておりまして、私は自分の選挙区を回っているような気がいたしました。実は全く同じような問題を抱えておりますが、ここを頑張り抜かなきゃしようがないわけでございますので、何とか政策で補完していく努力を続けなければいけないなというふうに思います。

 末海さんのところは、カンショについても結構多くの生産量を持っておられるところでありますが、余りでん粉用はないようですけれども、しょうちゅう用はどうなんですか。そこをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

末海重俊君 お答えになるかどうかわかりませんが、しょうちゅう用は今ブームでございますから大変期待をされております。その中で、食用カンショの中の寿カンショでも銘柄産地ができまして、しょうちゅうをつくっております。これは大々的に販売しております。

 しかしながら、しょうちゅうメーカーから農業委員会の方にカンショの作付をしたいという、先ほど新規農業の話もちょっと出ましたが、この発言とちょっと場が違いますけれども、大変困った問題がございます。それは、先ほどから集落営農から全部申し上げておりますが、この南那珂地域が一番の被害だと思っておりますが、猿害対策、お猿さんの対策が、これはもうお手上げ状態で、だから、先ほどから言いますように、集落営農だ、認定農業者だ、さあ、しょうちゅうメーカーからのカライモをというふうに申し上げても、進めることができないわけでございます。これはもう何千頭という猿害が周期的に来ますから。だから、ここでは意に沿わない話になりますけれども、私たちはしょうちゅうメーカー、それなりにやはり推進していきたいというふうに思っております。

 それからもう一つは、今度、しょうちゅうかすの肥料化の問題が非常に厄介な問題。前は海中に投棄しておったそうですけれども、そうもいきませんので、このしょうちゅうかすの肥料化の工場誘致というものをやりたいということでやっておりますが、何せ畜産とかしょうちゅうかすの問題が起こりますと、公害の問題が先にいきますものですから、誘致する、しょうちゅう用カンショを増反させるというのも、私たちの方では、私も農業会長ですけれども、今職員が後ろに来ておりますが、なかなか進めることができない状態でございます。

 しかし、銘柄としては、寿カンショも、それから普通のしょうちゅう用も相当な実績を持っておるのが実情でございます。

 答えになったかどうかわかりませんが、御勘弁を願いたいと思っております。

森山(裕)委員 大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

稲葉座長 なお、御紹介が遅くなりましたが、現地参加議員として、無所属、古川禎久君が出席されていますので、御紹介申し上げます。

 以上で質疑者の質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただいた御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに派遣団を代表して厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 これにて散会いたします。

    午前十一時二十六分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の北海道における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成十八年四月十九日(水)

二、場所

   北海道ホテル

三、意見を聴取した問題

   農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出)、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出)、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)及び食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 二田 孝治君

       梶山 弘志君   金子 恭之君

       近藤 基彦君   松野 博一君

       御法川信英君   仲野 博子君

       松木 謙公君   丸谷 佳織君

       菅野 哲雄君

 (2) 意見陳述者

    北海道農業会議副会長  吉田 義弘君

    全十勝地区農民連盟委員長           山田富士雄君

    全国農協青年組織協議会副会長         平  和男君

    北海道農民連盟書記長  白川 祥二君

 (3) その他の出席者

    農林水産委員会専門員  渡辺 力夫君

    農林水産省大臣官房審議官           宮坂  亘君

    農林水産省大臣官房総務課長          佐藤 憲雄君

    農林水産省総合食料局食糧部食糧貿易課長    太田 豊彦君

    農林水産省生産局特産振興課長         松島 浩道君

    農林水産省農村振興局整備部地域整備課長    高嶺  彰君

     ――――◇―――――

    午前九時開議

二田座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院農林水産委員会派遣委員団団長の二田孝治でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。

 皆様御承知のとおり、本委員会におきましては、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の審査を行っているところであります。

 当委員会といたしましては、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を賜るため、当帯広市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。

 なお、お手元に十勝の牛乳をお配りしておりますけれども、当牛乳は、中川農水大臣からの特別の御指示によりまして、普通はこういった飲食物は委員会は慣例によりまして禁じられておりますけれども、この地方でございますので、特別の委員長の判断によりまして、また十勝支庁の御好意によりまして、お手元にお配りいたしましたので、ただいま牛乳の飲用の低迷のときでございますから、皆様、おかわりがございましたら一本でも二本でもひとつ御要望をお願い申し上げたいと思います。

 それでは、まず、会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序につきまして申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、まず、派遣委員を御紹介申し上げます。

 自由民主党の松野博一君、梶山弘志君、金子恭之君、近藤基彦君、御法川信英君、民主党・無所属クラブの仲野博子君、松木謙公君、公明党の丸谷佳織君、社会民主党の菅野哲雄君、以上でございます。

 次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 北海道農業会議副会長吉田義弘君、全十勝地区農民連盟委員長山田富士雄君、全国農協青年組織協議会副会長平和男君、北海道農民連盟書記長白川祥二君、以上四名の方々でございます。

 それでは、吉田義弘君から御意見をお述べいただきたいと存じます。

吉田義弘君 北海道農業会議副会長の吉田義弘でございます。

 衆議院農林水産委員会の先生方には、日ごろから北海道農業の振興、発展に特段の御尽力を賜っておりますことに、厚くお礼を申し上げます。

 私は、地元帯広市の農業委員会の会長も務めてございますが、畑作経営を行う農業者でもあります。今回の品目横断的経営安定対策の対象作物であります小麦、大豆などの生産者でございます。

 本日は、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律ほか関連法案の審査ということで地方公聴会を開催いただいたところでありますが、今回の新法の考え方であります、担い手に対象を絞り、経営全体に着目した対策という基本方向につきましては、農業で生計を立てている主業農家が主体の北海道農業にとって評価できるものであり、基本的に賛成するものであります。

 今後、施策の具体化に当たりましては、担い手が意欲を持って営農に取り組めるよう、以下の五点につきまして十分な御配慮をお願い申し上げたいと思います。

 まず第一点は、生産条件格差是正対策による支援水準の十分な確保についてであります。この点は、申し上げるまでもないかと思いますが、戦後農政の大転換によって、担い手の経営が不安定になるようなことであってはならないと思うのであります。いわゆるゲタ対策の支援水準につきましては、少なくとも、現行の品目別価格対策と遜色のない支援水準とするなど、担い手の経営安定にとって必要かつ十分な所得が確保できるものとするよう要望をいたしたいと思います。

 二点目は、過去の生産実績に基づく面積支払い、いわゆる緑ゲタと農地流動化との関係についてであります。結論から申し上げますと、面積支払いの仕組みが、今後の農地流動化に支障を来さないよう、十分な配慮をお願い申し上げたいと考えております。

 私ども農業委員会系統組織の最大の仕事は、農地流動化対策、つまり、担い手に対して農地の利用集積を図り、農地の遊休化防止と効率的な土地利用を実現することにあります。そこで、生産条件格差是正対策の面積支払い、緑ゲタが農地と結びついた受給権のような性格を持ってしまうことになりますと、過去に、つまり、過去にと申しますのは、基準期間となります平成十六年から十八年までの三カ年ということでございますが、この三年間に、品目横断的経営安定対策の対象作物の生産実績を持たない農地の売買、貸借に際して、農地価格の下落や小作料水準の低下などが懸念されるところであります。

 また、過去の生産実績を持たない農地が売りに出された場合、農業委員会があっせんを行いましても、引き受ける担い手があらわれず、あっせん不成立となる事態も想定されるところであります。そうした事態が続いてしまいますと、農地の遊休化にもつながりかねないわけでありまして、構造改革を進めるという新法の趣旨にも反するのではないかと心配をいたしているところでございます。

 したがいまして、面積支払いの導入によって、農地の流動化を阻害し、その遊休化につながることのないよう、特段の措置を講ずることを要望いたしたいと考えております。

 私ども北海道農業会議では、「かけがえのない農地と担い手を守り活かす運動」を展開中であり、農地はかけがえのない公共財であるという考え方を基本に、農地の利用集積、遊休農地の解消と遊休化防止に取り組んでおります。農地は一たび遊休化してしまいますと、もとの優良農地に復元するには多大な費用と時間を要します。農地や水の資源を良好な状態で守り、次の世代に引き継いでいくことが、現役世代、我々の責務であります。今回の担い手新法が農地遊休化の引き金になってしまうことがあってはならないと思う次第であります。

 次に、三点目でございますが、いわゆるゲタ対策に係る税制上の取り扱いでございます。

 品目横断的経営安定対策の対象作物となります畑作四品につきましては、当該年の生産量と品質に基づく支払い、いわゆる黄色ゲタと、過去の生産実績に基づく支払い、いわゆる緑ゲタの両方で生産条件の格差を是正することとされております。

 したがいまして、生産条件格差是正対策に係る交付金がそのまま所得税の対象となってしまいますと、生産条件格差の是正が不十分なものとなり、せっかくの政策効果が薄れてしまうこととなるわけでありまして、そうした実情を十分に御配慮いただき、交付金に係る税制上の取り扱いにつきまして、特例措置の御検討をお願い申し上げたいと考えております。

 四つ目は、贈与税納税猶予制度に係る法人化特例の期間延長についてであります。この問題は、今回の担い手新法に直接かかわる問題ではございませんが、関連制度として御要請申し上げたいと思います。

 平成十七年度税制改正で、私どもがかねてから要望いたしておりました、贈与税納税猶予制度に係る法人化特例が措置されたところでありまして、この点につきましては、衷心よりお礼を申し上げる次第でございます。

 ただ、本特例の適用期間は、平成十七年四月から平成二十年三月末までの三カ年とされております。一方、品目横断的経営安定対策の対象とする集落営農は、五年以内に法人化することを要件の一つといたしております。しかし、集落営農の参加者に贈与税納税猶予制度の適用を受けている農業者がいる場合、平成二十年三月までに法人化しなければならないということになりますれば、実質的にはもうあと二年にも満たないことになります。

 最近、北海道では法人化に対する関心が非常に高まっております。現在、北海道の農業生産法人の数はおよそ二千三百に上っておりますが、この三、四年の間に年間約百法人ずつが増加している状況でございます。今回の品目横断的経営安定対策への対応を考えますと、法人化への志向は一層強まってまいるものと考えております。

 一方で、北海道では特に昭和五十年代を中心に、農業後継者の育成確保のため、農地等の生前一括贈与に係る贈与税納税猶予制度の活用が非常に多かったわけでございまして、そのことが結果的に現在、法人化の障害の一つにもなってきております。担い手を支援する施策として、ぜひとも本特例の期間延長をお願い申し上げる次第でございます。

 最後に、五点目でありますが、農業委員会などの関係機関への支援であります。

 品目横断的経営安定対策の事務につきましては、国の機関であります農林水産省農政事務所が中心的に実施することとなるようでございますが、私ども農業委員会は、対象者の加入要件となります面積規模について農地基本台帳で確認することとなります。

 私どもといたしましては、もちろん、農地基本台帳に誤りがあってはならないということで、農業委員会の総会での許可案件であります農地の権利移動や農地転用等に伴う補正はもちろんでありますが、住民基本台帳や固定資産税課税台帳との照合などを定期的に行うなど、点検、確認に努めているところであります。

 今後、品目横断的経営安定対策に係る事務の円滑な推進を図るため、農村現場で重要な役割を担う農業委員会の体制強化が不可欠であると思います。農業委員会などの関係機関に対するさらなる御支援をお願い申し上げたいと思います。

 あともう一点申し上げたいと思いますけれども、当然のことを申し上げるようでありますが、農業という職業は、米や野菜、果物や家畜など多くの命に囲まれて働き、その成果を消費者に届ける、おいしさがみんなの笑顔をつくり、そして健康や命を支える、これほど魅力にあふれた職業は、この世にそうたくさんはないと私は思っております。しかし、どんなに農業がすばらしい仕事であっても、農業経営が成り立たないとか農業で食べていけないということになれば、若い人が見向きもしなくなるのは当然であります。

 十勝の農家、約七千戸ございますが、ここ五年ほどの間に七百人ほどの農業後継者が育ちました。彼らの夢や情熱を断ち切ることのないような制度にしていただきたいと思うのであります。

 以上、農業委員会系統組織という立場から、さまざまなお願いを申し上げましたが、今回の品目横断的経営安定対策が、真に担い手を守る長期的な制度として確立されますようお願いを申し上げ、意見といたします。

 本日は、このような場を与えていただき、大変ありがとうございました。

二田座長 ありがとうございました。

 次に、山田富士雄君にお願い申し上げます。

山田富士雄君 ただいま御紹介ありました山田富士雄でございます。

 全十勝農民連盟の委員長をやっております。地元帯広大正農協の委員長もやっておりまして、農民運動十六年目、あるいは十七年目に入ったところでございます。

 いろいろな観点で私自身も四十年間農業に携わってまいりました。まさしく、畜力からトラクターへという変革の中で、変動の中の四十年間の農業の中で、今回の政策ほど大きな転換を余儀なくされることはないのではないかなというような思いで、今、いろいろなことを各地区の総会の中においても提言して、皆さんの反応を見ているところでございます。

 今回、昨年の十月に経営所得安定対策大綱、WTO農業協定上の黄色の政策であります価格支持政策を廃止し、農業所得の減少も、直接支払いで、緑の政策として、担い手に、あるいは主業農家にそれを集中させてこの政策が行われるということで、ある意味で希望を持ってこの政策の内容を検討させていただきました。

 もともと言われていることでございますけれども、価格は市場で、所得は政策でというような、価格補償政策から所得補償政策へというようなことで、ある意味で我々が望んでいた一つの方向性でもありました。ただ、現実性の中で、いろいろな今のところの内容を検討してみる限りにおいては、現場との乖離はかなりあるのかなと。それと、北海道十勝農業がこれまで培ってきた農業に対する取り組み方、その取り組み方すらも、ひょっとしたら否定されるようなことがこの中に大きく盛り込まれているというような気がしてなりません。

 御案内のとおり、大豆、麦、てん菜、バレイショというような土地利用型作物、そして面積支払いを受けられないほかの対象作物、そして農業経営というのは成り立っているわけでございまして、今回の大きな矛盾点を感じることの一つには、基本計画の中では自給率を上げるというようなことが当然うたわれているわけでございまして、四五%あるいは五〇%というような食料自給率の目標に向かっての今回の政策の整合性が見受けられないということもありますし、特に十勝は、今まで自給率を上げるために頑張って、麦、てん菜、大豆、あるいはでん原バレイショの生産に多大な努力をし、そして土地生産性を上げてまいりました。

 てん菜におけることの一端を申しますと、三トンぐらいの収量が、六トン、六トン以上と、倍以上になり、価格が下がったにもかかわらず農業粗収入が上がっていく。麦においても、四俵、五俵という収量のものが十俵ぐらいをとれるような技術、あるいは品種改良に伴うものから確立をしてまいりました。ただし、それらのものについては、今回の自給率目標の中では、どちらかというと下がるというような状況にございますし、これらについては、生産現場として本当に希望あるものなのかどうかという疑問を持たざるを得ないという状況にございます。

 また、今回のもう一方の柱といたしまして、農地・水・環境保全向上対策というようなことで、新たな政策が盛り込まれました。これは、品目横断的な対策と車の両輪というようなことで組まれているかと思いますけれども、自動車というよりは自転車に近く、いつこけるのかな、そんなような心配で現場は今のところ見ているところでございます。ただ、十八年度、十勝地方においても、鹿追町がそのモデル地域ということで、その動向を見守りながら、取り組みについては積極的にいきたいなというふうに思っております。

 今回、いずれにいたしましても、政府の提案されました法案の中で大きな柱となる品目横断的な対策、農地・水・環境保全対策については大幅な見直し、修正が必要であると私自身思っておりますし、修正をすることによって、農業、農村が、新たな食料の供給、安全、安心、自給率の向上、多面的機能、国土保全、農村社会の維持といったような二重の役割を十分に発揮するような政策を確立していただきたいものだということで、具体的な政策について意見を述べさせていただきます。

 まず、一点目でございますけれども、品目横断的な経営対策につきましては、具体的な仕組み、主業農家が将来にわたり安定的な経営が維持できるというようなことで、再生産可能な所得水準を確保できる仕組みということになっております。

 特に、生産条件格差是正対策における支援水準につきましては、面積支払いに変わっても各作物の再生産を可能とする支払い水準にすることが重要である、このことによって初めて自給率向上にもつながるのではないかというふうに思っております。この生産費のとり方等につきましても後で述べさせていただきます。

 また、一方の緑の政策といたしましては、面積支払いのほか、黄色の政策である生産量や品質に応じた支払いということも行うとしていますが、黄色の政策部分につきましては、現行予算の枠内での執行ということになるかというふうに思っております。

 今の国の考え方では、単に現行予算を面積支払いと数量支払いに区分して、農家への支払いを変えるだけにすぎないというふうに思わざるを得ません。これでは、農家間に大きな不公平感を生じることはもとより、面積支払いという緑の政策の変更によって生じた農家間の不公平感を是正させるためには、やはり数量・品質支払いについての別枠予算を設けるべきではないかというふうに提案する次第でございます。所得は政策でという公約を果たすことにつながるのではないかというふうに思います。

 二点目は、新規就農者や規模拡大の農家が、新たな品目横断的な政策の中で、事実上作付できないということであります。

 このことにつきましては、最近のデータのとり方等の中にもあるわけでございまして、要するに、農家の個人実績については、十六年、十七年、十八年と、過去三年間の実績をもって緑のゲタをつくるということでございます。したがって、このことにつきましては、まだ検討中ではございますけれども、特に、この三年間の間に面積を拡大した人については、別の措置をとらないことには、逆に、十九年度においては、要するに経営の縮小というようなゲタになりかねないのかなということも大変危惧するところでございますし、また一方、十九年以降、前任者の吉田さんもお話をしたわけでございますけれども、面積をふやした方に対しての担保が何もないと。そういう政府管掌作物四品目をつくっている方については、その面積の移行は可能なんですけれども、逆に、酪農家のように畑作物の実績のないもの、品目横断的な作物に属さないものをつくった方の土地を引き受けた場合については、麦あるいはてん菜、大豆、でん粉芋の作付をしてもゲタがなしということでは、当然、理想的な輪作体系を形成することができないということになりますと、規模拡大における大きな障害になるのではないかということもございますし、一点、てん菜だけのことを言わせてもらいますと、てん菜においては交付金対象数量ということでございまして、こうなってきますと、十六年については、実は千円という、要するに、農家が調整金の赤字を埋めるために後で拠出したお金があります、それらもマイナスすると。あるいは、十七年度においては、上限キャップということで、過去の実績の中でとれた量までの生産がなされていない。当然、十八年も、砂糖でいえば六十四万七千トンという交付金対象額の数量分しか対象にならないということになったら、ここ三年間の経営努力というのは実際問題としてはカウントされないのではないか、そういうことも危惧している次第でございます。

 それらは一例ではございますけれども、大きな矛盾点の中でこのゲタがつくられるとしたら、そして、そのゲタがなおかつ、今の段階としてはどの段階で見直すかということが明確になっておりません。また、これを明確にすることによって黄色の政策になるということなのだとするならば、違う方向の中でやはり記述をきちんとつくるべきではないか。

 ということは、十九年から、本当に意欲ある農家が生産を伸ばしたものについては、それをどこかでカウントする仕掛け、あるいは別枠でそれを奨励する施策を持っていかないと、意欲ある農家が残ったにもかかわらず、意欲が減退してしまうのではないか、そういうことが、我々にも、あちらこちらで聞こえてくる声でございます。

 それらに対して、今度の政策の中で、本当に担い手に集積して、生産力が上がり、自給率が上がるというような大きな柱があるとしたら、それが具体的に見えてこないという現状の中で、それが見えてくるような政策に何とか修正をしていただきたいということを願わざるを得ないというふうに思っております。そんなことで、二点目でございます。

 あと、三点目ですけれども、これはまた、条件不利地帯に対しての配慮がどうなるのかということだというふうに思っております。

 平均的な数字でいきますと、町の平均、あるいは道、あるいは国の平均的な数字が一つの基礎数字になります。そして個人のデータがそこに入ってきます。個人のデータの中には、百軒の農家がありましたら百軒それぞれの経営の特徴がございます。そして条件の格差がございます。当然、湿地帯、あるいは乾燥地、もともと条件のいいところでやっている方、そして条件が悪くて経費をたくさんかけないと収量が上がらないところ、それらについての見直しというのがどこで図られるのか。それと、その三年間のデータの中には地域的な災害等もあります。それらの、三年間の地域的あるいは個人的な災害や何かについても、もしそれが三年ないし五年というゲタを引きずるとしたら、大変なハンディを背負って、三年ないし五年、もっと先まで営農しなきゃいけないということに関しては、極めて理不尽だと言わざるを得ないし、逆に、私はよく例として言うんですけれども、ちょうどお父さんから後継者にかわった、お父さんがたまたま立派な農家の方だったらいいんですけれども、その地域としては平均以下の農家だった、息子さんがやることによって平均以上の収量を上げるようになった、ところが、お父さんのその低いゲタの中で農業をやっている限りではなかなか努力が報われない。果たして、そんなことで、本当の意欲ある農家が残った、あるいは後継者が安心して意欲を持って農業ができるということにつながるのかということについても、今回の政策そのものについては大変危惧するものでございます。

 そんなようなこと、あるいは傾斜地、あるいはいろいろな条件格差、これをどう個人的なデータの中で修正できるかというのが、これは、もしこれから、ことしの七月、八月にかけて、個人の数字、そして、十八年が入らないと、地域の数字は最終的に決定しないわけなんですけれども、それらが出てきた段階で初めて何で自分の数字がこんななのだろう、こんな数字しか出ないんだろうかという大きな不安に駆られる農家が数多く出るのではないかというふうに思わざるを得ません。

 最後でございますけれども、また、今回のこの内容につきましては、要するに必要な財源の確保がどうなのかということだというふうに思っております。これにつきましては、現行の予算の中で枠が組まれていると言わざるを得ないというふうに思っております。

 一例を申し上げますと、てん菜でございます。てん菜につきましては、今まで、最低生産者価格が決まりまして、それによって、言い方がどうかわかりませんけれども、青天井でもって農家に支払われたという、今その調整金会計が六百億あると言われていますけれども、少なくとも、生産者の努力が量をとることによって報われた。だけれども、今度の政策の中で、生産調整がその中で織り込まれております。そうなってくると、てん菜における交付金の対象数量というのは六十四万トンに限られるということになったら、当然、今までより、農家の手取りといいますかゲタが低くなるということは、紛れもないということになるかと思います。

 そういうことにもなりますし、それと、何と言っても、十勝、二万戸あった農家が今七千戸だということで、約三分の一になりました。精鋭が残っている三分の一と私は自負しております。ただし、それは、いい意味での競争の中で今日優秀な農家が残ったということでございますし、これらが、今後、こういういい意味での競争の原理がそがれるのではないか、今度の政策において。これは確かに、政策上の一つの協定、黄色の政策がだめだということになればそうですけれども、競争の原理がそこに働かないということですから、それは当然と言われれば当然かもしれません。だけれども、現場としては、それをなくして農業生産の向上はないし、今、国が目指している農地の有効利用、そして食料自給率を上げるためには、一体全体どういう政策が必要なのか。そして、今度の基本計画と、前段も言いましたけれども、例えばの話ですが、この経営安定、所得補償政策、これが畑全体にゲタができるとしたら、例えば、それに飼料用穀物をつくることによって飼料用穀物の自給率が上がる、そしてゲタができることによって所得性も高くなるということになれば、当然、自給率向上にも貢献できるし、農家の所得も、違った意味で安定するというふうに思われます。

 ただし、今回は、いずれにいたしましても、畑作、北海道におければ四品でございますし、米を入れたとしても五品の中で組まれる政策でございます。ただし、北海道の十勝農業、その四品、五品だけではなくて、多くの作物の中でこの四品、五品が入っているということでございますし、それら総合的な、要するにトータルでの本当の所得の安定がこれで図られるかということについて、極めて疑問と言わざるを得ません。それは、今言ったように、予算の総額等を考えても、これが、全体的に今までよりこれだけ多くの予算を使うんですよ、そして担い手に集積するんですよということなんですけれども、実際問題、シミュレーションの中では、担い手に集積されるようなことには基本的には今のところはなっていないというふうに思わざるを得ません。

 そんなことで、私の時間も大体来ましたので、以上のことを公述いたしまして、今回の政策が、本当の意味で、後継者に安心して農業が任せられるようなものにしていただきたいということを切に願うものでございます。

 以上です。

二田座長 ありがとうございました。

 次に、平和男君にお願いいたします。

平和男君 改めて、おはようございます。

 全国農協青年部協議会副会長を務めているという御紹介でしたが、平成十六年、十七年と道青協、北海道農協青年部協議会の会長を務めております。十勝管内は北西部に位置します新得町というところで畑作野菜農家をしております平でございます。よろしくお願いいたします。

 まずもって、委員の皆様には、日ごろ国政あるいは農政に御尽力されておりますことに敬意を表しますとともに、生産現場に携わる私たち生産者のメッセンジャーとして力強く取り組んでおりますことに感謝を申し上げますとともに、激励を送るものでございます。

 さて、本日、かかる農政改革関連法案に関し地方公聴会が開催されるに当たり、我が国の食料基地北海道の中にあって、さらに農業王国と言われているこの十勝の生産現場に皆さんが来られたわけですが、その十勝の生産現場の担い手あるいは農協青年部を代表しまして陳述することとなりました。品目横断的支援対策のまさに対象品目を生産する当事者として、あるいは、JA青年部という担い手の立場としてこの機会を与えていただいたことに、まずもって感謝をいたすところであります。

 本日、皆さんのお手元に三種類の参考資料を用意させていただきました。お配りしたものの中に「農園の仕事とみんなの食」という参考資料がございます。私自身、体験農園あるいは観光農園や教育ボランティアの受け入れ農園として、生産者の立場から本道農業、特に畑作農家を語るときの自己発信する機会をみずからが得ておりました。

 平成十六年四月の食料・農業・農村基本計画を審議する企画部会の有識者ヒアリングの段でお配りしたものをアレンジメントしたものでございます。当時、委員の皆さんから大変わかりやすいという評価を受けたものでございまして、見ていただければ、例えば、輪作のこと、土づくりというのはどんなことをしているんだ、あるいは、防除は、草取りは、そして食と農のことについて、大変恐縮なんですけれども、小学生レベルという資料でございます。

 おせっかいかなと思いましたが、皆さん、昨日来られたときに、帯広もようやく白いところはなくなったわけですけれども、私のところなんかはまだ畑は真っ白で、本当であれば、現地のオンシーズンに、まさにあと一週間、二週間、一カ月後に本作小麦を収穫する直前、あるいはバレイショの花が咲いているとき、てん菜の畦間がふさがっている、そういう時期にお越しいただければ、見るべき目をもってして見るものがあろうかということでありましたが、そんな資料をぜひごらんになっていただいて、ああ、畑作農家というのはこういうことだったのかということを理解していただける材料にしてもらえればなと思いました。恐らくこの国の食料庫を担う当地区十勝の過去から、あるいは緊張感のある産地の取り組みから、淘汰を繰り返して、いかにして現在の姿になってきたか、確立してきたか、さらには、当地区にとってこの農業構造改革がどうあるべきかを理解する非常に貴重な機会になるはずだというふうに考えます。

 こういった現場のラブコールを、つまりは生産者の声なき声を皆さんはどういうふうに受けとめていただけるか、まさにこの農政転換の羅針盤と推進力を担う大きなアイドルギアであることを公聴会に期待するものであります。

 さて、今回の農政改革関連法案に関しては、我々北海道のような主業農家、我々が言うところの農業で生計を立てているいわゆるプロ農家にとって、将来にわたり意欲を持って営農を持続発展し、能力のある者、努力した者を公正、正当に評価する制度であるべき、そういうことを主張してまいりました。

 結果、昨年十月に決定されました経営所得安定対策等大綱も、また、それ以降の政策議論においても、これまで地域農業の構造改革を先駆的に推進し、産地の生産責任、供給責任を果たしてきた本道農業の実態に即した方向性がなされたものと理解し、評価するものであります。

 また、品目横断の当該地区に当たるこの十勝においても、各種会議、研修会などを通じて内容の説明を受けてきたところでありましたが、いまだ制度は磨かれておらず、制度の転換期を迎えるに当たり現場では非常に大きなストレスを抱えるところであります。

 今回は、特に農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案を中心に、その課題と要望に関し述べさせていただきたいと存じます。大きく四点でございました。

 一つ目は、担い手の育成でございます。

 担い手の要件については、JAグループは平成十六年に組織討議がされたところでありますが、特に認定農業者制度について、その運用の改善が求められていたはずであります。

 さらに、認定農業者であればだれでもよいということではなくて、どんな認定農業者ならよいかが事の真理であったはずでありますが、実態は、特に現状では、とりあえず申請書を出してくださいというもので、そもそも、達成目標年度の平成二十三年は、今々の段階で制度設計が不透明な点からいって、経営改善計画の特に数字の部分がシミュレーションできません。それでも適当に書いて出せというのであれば出せないことはないんだけれども、果たしてそれが真に意欲と能力のある担い手の育成にかなう政策転換か、国民の負託を裏切ることにならないだろうかということを強く考えるわけであります。

 二つ目として、生産条件格差是正対策についてです。

 繰り返しになるかもしれませんが、支援水準について、担い手の営農意欲を支え、経営の安定や再生産の確保を図る上でも、少なくとも現行の水準を確保することが必要であると考えます。少なくともと言いましたが、今の現行水準ですら結構いっぱいいっぱいで大変なわけであって、それを余り多く言うこともかなわないわけでありますが、少なくとも現行の手取り水準を確保していただきたい。

 また、面積支払い、いわゆる緑についてですが、これまでの対策支払い実績を適切に反映させる観点から、特に原料型作物と言われている過去の生産実績については、てん菜の糖度、でん粉原料用バレイショのライマン価など一定程度の品質を加味されるものであるべきだと考えます。

 さらに、当該年の生産、品質に基づく数量支払い、いわゆる黄色ですが、品質向上、増収に取り組んだ生産者の努力が最大限報われ、生産意欲、営農意欲を喚起させるために、品質格差の項目やめり張りのある格差水準が設定されるべきだと考えます。

 また、これらの割合、つまり緑と黄色の割合について、WTO規律上の理由や、仮に後づけの理由であったとしても、生産者にとってまさに正たる理由、つまり整合性のある理論的な設定でなければ能動的にこの政策転換の意義を共有できないことを関係者は理解するべきだと思います。

 さらに、一枚物の資料で、皆さんのところに参考資料を用意してきました。「過去の生産実績に関する問題点」をお配りしてあります。資料の方から説明させていただきます。

 集落または近隣の同業者が、新制度以降、農地の権利移動を行う場合、その形態や規模、あるいは生産実績により、担い手に営農資源があるべき姿で継承されず、またその集積を阻害することが懸念されています。このことについて、別途対策を講じる必要があるのではないか。

 この場合、農地の出し手との間で過去実績を円滑に調整する仕組みが必要であります。現場の不安をいたずらに助長するような政策議論のレスポンスではいけないのは当然として、今こうしている間にも、整々粛々と現場は平成十九年産、平成二十年産、もっと言うと平成二十一年産の準備に向けてやっております。つまり、これが輪作農法なのであって、この転換期にあるフラストレーションを意欲と能力ある担い手のみに集中することがあってはならないというふうに考えます。

 少し細かい字で恐縮なんですけれども、畑作農家A、酪農家B、それから畑作農家C、酪農家Dというふうに書いてございます。酪農家Bと畑作農家Cの間に波線が打ってありますが、これは物理的な距離、つまり少し遠隔地にあるんだというふうに理解をしていただければと思います。

 酪農家Bと畑作農家Cが品目横断に移行した後に離農した場合、以下の問題が発生する心配がある、生産現場は大きな不安を抱えていますよというポンチ絵であります。酪農家Bの離農農地は隣接する畑作農家Aが購入することが望ましいんだけれども、Bに過去の生産実績がないことから農地の買い手がいなくなる、つまり畑作Aにしてみたら、酪農家Bさんのおじさんのところは芋もビートも小麦も大豆もつくっていないから買ってもしようがないよというような経営判断をされてしまっては、農地の利用集積が阻害されたりあるいは遊休農地が発生するというような懸念があるということでございます。

 さらにその下、Bの農地をAが購入する場合、過去の生産実績がないことから、Aはコスト割れを起こしてしまう。担い手であるAの経営がさらに悪化し、Bの農地価格が大幅に下落したり資産価値が低下することが懸念されています。

 最後に、一番下の段になりますが、畑作農家Aが飛び地であるCの農地を購入し、酪農家DがBの農地を購入し、圃場が分散してしまうような場合、この場合は、農地の効率的な利用に支障を生じ、さらに経営コストが上昇してしまうというような問題がるる生じてくるのではないかといったことに関連する対策をしっかり打たなければならないのではないかという意見でございます。

 また、その下になりますが、種子生産農家における問題点として資料を同時に載せてございます。

 特に小麦、大豆種子供給生産者にとって、主食販売農家に転換したときに、いわゆる生産実績がない、あるいは需給状況や作況により採種面積が変動した場合、過去の生産実績が減少するなど、採種農家の経営の不安定化が、結果として産地の安定的な生産にとって好ましくない状況を生み出す、そういうことから、この部分に対するケアも必要なのではないかということであります。

 三つ目です。収入変動緩和対策についてです。

 農業災害補償制度との整合性について、いわゆる合算を相殺するものであるというふうに言われておりますが、というのであれば、対象品目においてすべて災害収入PQが導入されるべきであると考えます。さらに、農業災害補償制度とは本来目的が異なるものであることから、発動の対象や条件について農業災害時と混同することのないよう明確に整理されるべきだというふうに思います。

 四つ目は、環境保全向上対策であります。

 当地区は、畑作それから草地が対象になっておりますが、農業者の取り組みが評価された結果として支援されるという理論誘導がなされていない。結果として、期待される施策対効果が何なのか、特に本道畑作、本道酪農においてこのイメージがわかないでいることは、残念なことであります。

 さらに、地方公共団体、行政の財政負担が足かせになっており現場の意欲を阻害する、そういった事実も一方であるわけでありまして、地方行政のマネジメントや感度を磨く誘導策を講じなくてはならないのではないでしょうか。

 最後になりました。提出してあります参考資料に、道青協が平成十六年に作成いたしました「基本農業政策確立に向けた提言」についてでございます。

 この提言書は、平成十四年からの道青協各作目別政策検討委員会の討議内容をベースに、新食料・農業・農村基本計画の策定に向けて議論をし、提言したものでございます。

 この提言書は、単にシステマチックのみを議論したものではなく、農業青年、担い手の思いとして、先人たちの意思を連綿と次代につなぐ、この時代に生きる我々の使命と、それによって流されるこのたくましい大地に落ちる我々の汗が、いつの日か必ず報われることができる、そんな制度設計あるいは構造改革でなくてはならないというふうに主張をしたものでございます。

 一番最後のページをお開きください。七ページ、地域農業振興に係るJA青年部の主張を載せてございます。

 「豊かな農村は、単に生産基盤が強化され充実しているのみを言うのではない。基礎体力のある生産環境、経営環境を基とし、地域の期待に応え、社会に貢献する活力ある人材から、潤いのある文化を育み、憩いと癒しを提供する「人に優しい空間」こそが豊かな郷土、農村と言えるのである。」以上、JA青年部、担い手の立場から、思いやお願いを申し上げました。私にとっても、この立場でこうして皆様と邂逅することは非常に貴重なことでありました。皆様とのこうした出会いが、新たな可能性を創造し、日本農業の創革にかなう原動力になりますことを御祈念し、また期待し、土くれの農人の魂の叫びを決意にかえまして、私の意見といたします。

 ありがとうございました。

二田座長 ありがとうございました。

 次に、白川祥二君にお願いいたします。

白川祥二君 北海道農民連盟の書記長の白川と申します。

 私は、千歳空港から三十キロほど外れた空知の由仁町というところで、米十二・二ヘクタール、タマネギ三・七ヘクタール、そのほかに畑の秋まき小麦を四十アールほど作付しております。家族は、両親、また息子夫婦、孫二人と計八人で、まさしく純農村地帯の家族経営を行っております。

 そんな中で、北海道の水田農業が置かれている厳しい経営環境を踏まえ、経営所得安定対策について意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、北海道農民連盟といたしましては、平成五年のウルグアイ・ラウンド合意以降、国内農業、農村の持続的発展に資するため、WTO協定で認められている緑の政策に基づく多面的機能に対する直接支払いなどの所得補償政策を強く求めてきた経過がございます。

 そんな中で、今回の経営所得安定対策に関する総論といたしまして、まず、EUでは、価格支持政策見直しの代償として、所得補償政策と、農村の衰退を防ぐ農村活性化事業、いわゆるLEADER事業をスタートさせ、現在はそれをまたパワーアップさせた、二〇〇〇年からLEADERプラス事業へと、まさしく農村活性化対策を展開しているところでございます。

 我が国では、食管制度を初めとする価格支持政策を全廃し、価格形成を市場原理にゆだねてきました。しかし、EUのような所得補償政策は講じないまま、中山間地等直接支払い政策にとどめ、現在に至っているということであります。

 そんな中で、北海道の水田農業地帯では、米の消費減、またそれによる生産調整面積の拡大、MA米の大量在庫、また府県の米生産計画不参加の中で、これらの状況をトータルの観点から無視した政府備蓄米の市場供給、そういうもので、結果的には生産現場を無視した買い手市場が起き、労賃抜きの生産費をも賄えない低米価により、稲作地帯を中心に農家の経営破綻が相次いでいます。

 平成十六年から始まりました米政策改革大綱に基づく米改革でありますけれども、これについては、今回の担い手の定義、北海道については基本十ヘクタール、そういうものを導入させ、また需給調整機能も備えたということで、私もこのときには、どうにかなるのかな、担い手になっていいのかな、そういうことで、十六年のときに、息子夫婦がUターンして自分の農家を継いだわけです。そして、そのときに土地を購入し、規模拡大をしております。

 しかしながら、この米改革においてのセーフティーネット、また需給調整機能、それは残念ながら機能不全ということであります。そんな中で、担い手農家になるためにそれぞれ規模拡大した農家、米農家ほどダメージが大きく、離農と営農意欲減少により農地の集積はそこでとまっている状態であります。また、現農業生産者も、後継者に農業を継げということがなかなか言いづらく、今、後継者不足を招いており、農家戸数の激減、耕作放棄地の増加など、農地の維持管理も困難な状況を生じ、農村地域社会の崩壊が進んでいるところであります。

 市場原理に基づく農産物の価格形成は、安く供給される消費者には所得移転、逆に農業者は所得減少という結果を招いています。しかし、農家の所得減少を価格支持政策によって補てんする道は閉ざされております。

 今回の経営所得安定対策等大綱では、価格引き下げによる所得減少分を緑の政策で補完する価格補償から所得補償への移行は不十分で、農家の所得確保の視点は欠落したままであります。

 このため、経営所得安定対策では、農業が果たす食料の安定供給と多面的機能の二重の役割が発揮できる施策を強く求めます。特に、農業が果たしている多面的機能に対する環境等直接支払い政策の本格導入が急務と思います。あわせて、具体的仕組みが検討されている品目横断的経営安定対策や農地・水・環境保全向上対策についても、現行の仕組みのままでは受け入れることは困難なくらい不十分であり、より一層の改善を強く求めます。

 品目横断的経営安定対策についてでありますけれども、平成九年度以降、米価が大幅に下落し続ける中で、農産物の価格は市場で、所得は政策でと言われ続けてきましたが、具体化されずにきょうまで先送りされてきました。しかも、今回の品目横断的直接支払いにおいても、価格政策見直しに伴う所得減少を補うことはできません。このままでは、稲作地帯を中心に農業、農村が衰退するのは明白で、農業、農村の担い手である農家の所得確保が図られ、農業、農村の再生と活性化が図られる制度を一日も早く確立することを切望します。

 今回の対策では、米については高関税を理由に生産条件格差是正対策の対象から除外されています。担い手が生産費を賄えない今次の米価暴落は、WTO協定に基づく価格支持制度の廃止やミニマムアクセス米が大きな要因であり、米も生産条件格差是正対策の対象にすべきと思います。仮にできないのであれば、別途の直接支払いや価格変動影響緩和対策など実効性の高い経営安定対策を講じるべきと思います。

 生産条件格差是正対策では、過去の生産実績を超えた作付面積には直接支払いが行われず、実質的に麦、大豆などの新規作付は困難となり、さらに、米の生産調整面積の拡大がなされた場合、転作の受け皿がなくなり、生産調整の達成が困難さを増すのと、他作物への玉突き現象を起こさせ、道内農業の混乱と疲弊を招く危険が予想されます。

 国民の主食である米の需給と価格安定のためにも、生産調整面積の拡大に伴う新たな対象作物を作付した場合などについては、別途の支援対策を講じるべきと考えます。

 収入変動緩和対策についてであります。農産物が年々低下を続ける中で、過去五年の最高、最低を除く三年平均を採用しても、現在の米の担い手経営安定対策と同様に機能を発揮することはできません。担い手育成のためのセーフティーネットが何ら機能せずに、担い手農家が経営悪化に陥り、失望感を抱いているのが現実であります。

 農産物販売収入の下落による経営への打撃を緩和し、担い手を確保するためには、生産者が切望する再生産可能な基準収入を設定する最低保証制度を設けることが重要と考えます。

 さらに、基準収入を都道府県単位で設定する仕組みですが、東北六県を超える広さを持つ本道において、北海道一本の基準収入は統計学での考え方であり、担い手の経営安定に軸足を移すというならば、地域設定範囲はできるだけ小さくすることが必要です。畑作地帯、水田地帯、さらに、道南、道央、道北、道東と、作物別ごとの十アール収量及び各年の天候、気象を考慮した、制度の実効性確保を図る地帯地域別設定が必要と考えます。

 また、制度設計を超えた価格下落が生じた場合には、まさしく米改革で起きた、制度設計を超えた段階において、これの機能を見直しておれば、今このような水田地帯においての疲弊がなかったというふうに思います。すなわち、制度設計を超えた場合には、速やかに設計を見直して補てん金の満額支払いをする措置を講ずることが必要と思います。また、積立金が経営安定に必要な所要額が積み上がった場合には、生産者拠出の低減や無事戻しを行える仕組みとすることが必要と考えます。

 農地・水・環境保全向上対策についてでありますけれども、現在、交渉が続けられているWTO交渉のドーハ・ラウンド開始以降、国際的な農政の潮流は、価格支持に対する農業者の権利を公共財の産出に結びつけた直接支払い制度へと移行していると言われております。

 我が国の農政手法も、食料の供給だけでなく、多面的機能の発揮に軸足を置くものに改めなければなりません。新たな基本法の、食料の安定供給と多面的機能の発揮の理念に即し、これまで無償で提供してきた多面的機能の有償化を図り、農業者の所得補償と経営を安定させることが重要です。具体的手法としては、多面的機能に対する対価として、適切に維持管理されている全農地を対象にした直接支払いなどの方法が考えられます。

 今回示された農地・水・環境保全向上対策では、支援水準も低く、農業者の期待にこたえる仕組みとは言えません。制度の拡充強化を強く求めるところであります。

 地域資源保全施策については、地域の主体性に基づく多様で幅広な取り組みを支援できる仕組みとするとともに、支援額については、地域資源保全活動を積極的に誘発するため、支援単価を引き上げることなどが必要と考えられます。

 また、地方公共団体の財政悪化に伴い、地方公共団体の財政負担が大きな問題となっております。北海道においては、中山間地等直接支払い政策の希望事業予算の減額、また対象地域の不拡大、そして野菜生産農業者にとって唯一の安定対策である野菜価格安定制度の拡充強化も、道財源不足から、交付予約数量拡大の三年間凍結と、まさしく北海道農業の危機に直面しているのが現状です。

 このため、農地・水・環境保全向上対策は、国の助成額は固定支払いとし、地方公共団体の助成は義務化しないこと、また、地方公共団体が支出した助成額は、その全額を地方交付金として金額を明示して交付することが考えられます。

 環境保全向上対策については、環境保全型農業の積極的な推進を図るため、地域資源保全向上対策と別の対策として仕組み、全額国費助成で対策を講じるべきです。地域共同の取り組みとは別に、個人でエコ農法に取り組んでいる農業者に対して直接支払いを導入することが、より環境に優しい農業の効果ある施策と考えます。

 慣行農法から減肥・減農薬栽培や有機農業などに取り組む農家に対し、持続農業法を改正して、同法の中に耕作面積に対する直接支払いを盛り込む手法などを考えるべきだというふうに思います。

 農林水産委員会の皆さんとも御議論いただきながら、本当の意味での担い手農家が明るさの見える、また農村が活性化するような経営安定対策になるようよろしくお願い申し上げ、意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。

二田座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

二田座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。

 きょうは帯広での地方公聴会ということで、四人の陳述者の皆様には、本当に貴重な意見を賜りましてありがとうございました。

 今まさに農政の大転換ということで経営安定化対策法が国会の方で審議をされている中で、こういう形で、現場の、農業を営まれている方々からの御意見を伺えたということは本当に貴重な時間だったと思いますし、私は、実は秋田三区というところから選出されておりまして、どちらかというと米に重点を置いた農業政策に対する農家の皆さんの関心が高いわけでございますけれども、そういう意味では、この北海道の、また別の特色のある御意見を聞かせていただいたかなというふうに思っておるところでございます。

 今回の法案に関して、さまざまな御意見あるいは御心配があるということで、これは実は私の地元でも同様でございます。やはり、新しい政策に対する不安、期待もあるんでしょうけれども、不安もこれはあるというのが正直なところではないかなと思います。

 きょう四人の皆様の御意見を伺っていて思いましたのは、私の地元とやはりかなり違うなと思うところは、一つは、直接支払いの対象農家の要件というのが、認定農業者の場合では四ヘクタール、集落営農の場合は十、北海道の場合は二十ということですけれども、この件についての問い合わせ、あるいは不安、不満、これが非常に多うございまして、これは何とかならないかという意見が実は当初一番多かったわけでございますが、きょうはそういう部分についての御意見あるいは御不満等は、とりたててなかったように見受けられました。

 そこで、直接これにつながってくる件で、ひとつ皆さんに御意見を伺いたいと思いますけれども、今回のこの経営安定化対策の大きな特色の一つは、直接支払いをする対象農家を限定した、いわゆる担い手あるいは集落営農をやっている方々に限って補助をしていくという、ここはやはり今までの農政とは全く違う部分ではないかなと私は考えております。

 この点について皆様はどのようにお考えか、まずは四人の皆様に、お一方ずつお伺いをしたいと思います。

吉田義弘君 今御法川先生から、この対象農家の要件といいますか、北海道では、個人経営十ヘクタール、それから集落営農では二十ヘクタールということでありますけれども、ただ、私ども、この今開催地であります十勝あるいは網走あたりを中心にして考えますと、特に、面積要件については、もちろん不満といいますか心配もされるわけでありますけれども、比較的少ないんですね。ただ、先ほど話もありましたように、北海道も非常に広うございまして、道南方面でありますとか、それから札幌中心の道央方面ですね、そういったところに関しましては、現在の農家の中で、このままでは三〇%、四〇%しか対象にならない、集落営農などによってその対象になるような手だてを今考えている、そういう非常にせっぱ詰まった問題も抱えている地域もあるということも御承知いただきたいなと考えております。

山田富士雄君 御案内のとおり、北海道は十ヘクタールですけれども、私ども、認定のところで心配していました。一部、なかなか認定基準に入らないという方も実際問題いたんですけれども、それで、先般も、北海道全体の中で、例えばてん菜がつくれなくなるというか、要するにてん菜をつくっている方で認定農家から外れている方が実際問題いらっしゃるのですかといって、全農段階の会議でちょっと問い合わせをした経緯がございます。その中で、いや、てん菜の農家というのは大体全部入っているのではないかというようなことでしたので、確かに点ではあるんですけれども、大枠の中では、それに対する不満というのは、我々も結構あちこちでいろいろなお話や何かもさせていただきますけれども、余り聞かれないというのが現実でございます。

 いずれにいたしましても、そういう中においても、私の中でも言いましたけれども、ですから余計北海道においては担い手に集積するということと、一定の枠の中でも、それによって意欲ある農家が所得につながるんだということがぴんとこないというのが、そこにも一面あるというふうに御理解願いたいと思います。

 以上です。

平和男君 そもそも、限定したことについてはむしろ能動的に受けとめているということでありまして、さらに言うと、補助だとかあるいは支援というお言葉を使われると、先ほどもお話ししましたけれども、私たちのやっていることを正当、公平に評価した結果としてこういうものが支払われる、その制度であるべきだということであって、十勝の私らの生産者の目線からいうところの零細農家やあるいは兼業農家が必要ないんだとか要らないんだとかということは決してないんですが、そのことが正しく今まで評価されていなかったじゃないかということの裏返しだということで理解していただければと思います。

白川祥二君 私は、どちらかというと水田地帯でございます。北海道においても、転作率五一、二%という状況でございます。

 今、水田地帯においても、はっきり言って二極分化ということであります。なぜかというと、水田も生産調整をする上でやはりコストを下げていかなきゃならぬ。過去の米政策の中においては団地加算をしていかなきゃならぬ。そういうところからおのずと、転作をするところ、それと米にシフトするところ、それとあわせて、転作をするにしても、結局、どちらかというと畑にしやすいようなところを選んで選んでいくという。今水田が残っているところは、はっきり言って劣悪な環境がほとんどだと思います。

 そんな中で、今後、この水田のところでは集約栽培、要するに花卉園芸だとか野菜だとかそういうところにおいては、もう規模拡大そのものが考えられていないということでございます。ですから、すべての、これからの規模拡大が仮にあるとするとき、では、そういう農家の方は、はっきり言って手は出さない。そして、その方々というのは、やはり水稲と花とか、水稲と野菜とか、そういう組み合わせになるということです。そういうところで大きな問題がある。

 それと、今先生言ったように、限定した直接支払いについてということでありますけれども、はっきり言って、この限定した部分については、ある意味では、担い手という定義の部分については、私どもの北海道としてはいいのではないかと思いますけれども、ただ、残念なことに、やはり農地に対する多面的機能、これがきちっと評価されていないのと、要するに農村維持です、これが一番、それに対する政策が私たち農家には見えてこない。そういうことですから、この経営安定対策と農村対策、農地対策、そういうものをきちっと組み入れなければ、やはり皆さん、全員の農業者の方の理解は得られないのじゃないのかなということでございます。よろしくお願いします。

御法川委員 四人の皆さん、ありがとうございました。

 現在、秋田県、去年ですけれども、自分のところとの比較ばかりで申しわけないんですが、今、素の段階で、いわゆるこの認定、担い手の四ヘクタール、あるいは二十という、これにはまる人がどれだけいたんだと。去年の段階では、もう一〇%を切る、八%ぐらいの人しか対象農家になっていなかったということで、今、県あるいはJAさんなんかと一緒になって、できるだけ多く対象になるようにという取り組みをしているというのが秋田県。秋田県も決して小さい県ではございません、米もかなりつくっているわけですけれども、本州ではそういうところにしてもそういう状況だということで、やはり、地域の大きさとかいろいろな条件の差が、今回のこの法案に対してもさまざまな意見というか見方がされているんだろうなというふうに感じております。

 それで、一つ、ちょっと視点を変えた話をさせていただきたいと思います。

 今回の法案の中で、与党案の方では、平成二十七年度に食料自給率を四五%まで上げよう、上げるんだということになっております。民主党さんの方が出している対案では、十年で五〇%、将来は六〇%ということが書いてありますが、私は、個人的に言わせてもらいますと、これはどちらにも不満でございまして、やはり食料自給率は高ければ高いほどいいんだろうなというふうに思っております。

 ヨーロッパあたりのいわゆる先進国と言われる国の中で、大体七、八割、一〇〇%を超す国もたくさんあるという中で、日本が四五%あるいは五〇%に達するところでもうきゅうきゅうとしているというこの事態が、今の日本の農業の問題点をある意味ではあぶり出しているのかなというふうにも感じておりますけれども、そういう中で、四人の方々に大きな話を、なかなかできるかどうかはわかりませんけれども、この食料自給率というものに関してどのようなお考えをお持ちであるか、あるいはこれの向上のためにどういうお考えを持っていらっしゃるのか、お聞かせを願いたいというふうに思います。

吉田義弘君 食料自給率の問題でありますけれども、今先生仰せのとおり、現在四〇%、何年間にもわたってこういう四〇%ラインを維持しているといいますか、これ以上上がっていないという状況にありまして、将来的には四五%、そういう目標でありますけれども、個人的な考えも含めまして、なかなかこれは難しいといいますか、よほど真剣に取り組まなければ、なかなか四五%は困難といいますか、難しいのではないかと。

 一つは、有効な農地利用であります。

 今、全国的にも四百七十万ヘクタール程度の日本の農地でありますけれども、これがどんどん減っていく、あるいは遊休化されていくと、実際にはその四百七十万ヘクタールがなかなか機能しないわけでありまして、とにかく現在の農地を有効に利用する、それから、そこで働く担い手をしっかりと育てていく、この二つの柱を政策の柱に据えてやっていただくということが、四五%に少しでも近づける道ではないかと考えております。

山田富士雄君 私は、このことに関してはちょっと乱暴な意見が一つございまして、一つは、平成十八年からですか、要するに、日本の人口が当初の予想より早く減っていくというようなことになりました。まさしく少子高齢化の中で、当然、日本全体における食料の消費量が減っていくということは紛れもないと思います。ですから、私が言っていることは、政策が何もなくても、農業が何とかやっていれば黙っておっても食料自給率は上がると。別にこれは、五%ぐらいならあと十年もたたないうちに、五年ぐらいでひょっとしたら上がるのではないかというような、こういう乱暴な発言をしております。それは一定の、今の現状維持ということです。

 ただ、政策として、今言うように、まさしく先進国の中でほぼ最低に近い食料自給率ということをどう考えるかということだと思います。これに関しましては、本当に、私は、農業政策ではなくて食料政策でやはりきちんとすべきだということで、あちらこちらでいつもそんな話をさせていただいております。

 そんなことで、このことについてはまさしく政策で、どこに自給率を上げられるか。経営安定対策は、先ほどもちょっと述べさせていただきましたけれども、まさしく今回の中で自給率を上げるというような方向性が、はっきり言ってないんですね。これについては十九年から真剣に考えるというようなことになっているみたいですけれども、だとするならば、やはりここにそこをリンクしていくのが当然ではないか。

 具体的な数字がありますよね、要するに、四五にするための。その中には、飼料用穀物だとかあるいは乳製品や何かでも自給率が上がるとなっているんですね。

 私、先ほど言いましたように、小麦だとか砂糖については、はっきり言って現状より低いというような状況にありますし、一番私たちが危惧しているのは、やはり大豆だと思います。大豆は四、五%という自給率でございます。七五%が油でございますので、油の部分はともかくとして、少なくとも二五%の半分ぐらい、だとするならば、やはり一〇%ぐらいは大豆というのは国内で自給するという姿勢があってしかるべきではないか。

 ということになってくると、経営安定対策の中でもし仕組めるとしたら、大豆をつくった場合については特別枠のゲタをつくるぐらいの政策的なものがなければ、やはり本当の自給率に向かっての希望というのが出てこないのではないか、そんなような自給率に関しての考えを持っていますので、よろしくお願いいたします。

平和男君 たしか穀物の自給率は二七%ぐらいだというふうに聞いていました。主要国でたしか百二十何番目、北朝鮮より低い。では、果たして本当に北朝鮮のあの方たちより日本人は貧しいでしょうか。あるいは別な観点で言うと、本当に豊かでしょうかということを考えると、カロリーベースの自給率という数字にそんなにとらわれないというか、それに振り回されない、真に賢い消費者教育あるいは国民教育が必要なんだと思います。

 提言書の五ページから載ってございますので、大変恐縮なんですが、再度見ていただければと思います。「カロリーベースの自給率向上の観点から輸出促進や、自給飼料生産の振興など考え得る有効な施策を積極的に講じ生産者の自発的な取り組みを誘導する」ことが必要だと。また、六ページ上段です。現存の生産能力を低下させることなく、豊かな食をすべての国民に共有できることを産地の供給責任のもと、生産振興が図られていることが結果として食料自給率の向上に寄与しているんだ、こういった理論誘導が必要だというふうに考えています。

 したがって、数量ベースでの自給率など自給力の向上を総合的に検証するといったような政策環境が導入されるべきだというふうに提言しております。

 以上です。

白川祥二君 私も、この食料自給率については、上げなきゃならぬと。もちろん、今、平君が言ったように、食料自給力というものを考えたときに、一番手っ取り早いのは今の米でございます。日本の食文化の変化によって、結局、米の消費が減っていく、それで違うものをとる、そういうことによって食料自給率がだんだん下がってきた。

 ですから、もう少し、国としても、例えば、米を食べろというのではなくて、米粉の普及だとか、そういう違った視点のものに向けていくべきではないか。また、もしくは、将来のことを考えたときに、エネルギーの問題も含めて、例えば米のエタノールをつくっていくだとか、そういうところにいくべきではないのか。

 たしか、平成六年か九年、ちょっと忘れましたけれども、そこでもたしか農水省さんが研究所に委託しているかと思います。そのときにも、たしか一俵何千円だかの米の価格であれば十分、そのときのガソリン価格がどのぐらいだったかはちょっとわかりませんけれども、そういうような研究の文書も出ているのも実態でありますから、今こそやはりそういうものを普及していって、そして米粉、またそういうものを普及していく、外国産の小麦を食べないで、日本の小麦、そして米粉、そういうものを活用して、自給率、自給力、これを上げるべきだというふうに私は思っております。

御法川委員 ありがとうございました。

 平さんのおっしゃられた自給力という言葉、大変いい言葉だなというふうに思います。

 四人の皆様、本当にきょうはありがとうございます。それぞれのお立場からではございますが、現場に即した率直な意見を聞かせていただきました。今後の法案審議の中でぜひ活用させていただき、またよりよい法案づくりに努めてまいりたいと思います。

 本日は、本当にありがとうございました。

二田座長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 本日は、四人の意見陳述者の皆様、大変御多忙の中ありがとうございました。そしてまた貴重な御意見を賜りまして、心からお礼を申し上げたいと思います。

 私は、隣の釧根、釧路から参りました。今、北海道そして日本の農業が大変厳しい環境にあるということで、それぞれ四人の皆さんからお話をいただきました。きょうは時間が少ないので、要点を絞らせてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、北海道農民連盟書記長の白川祥二さんにお伺いしてまいりたいと思います。

 白川さんは、ただいま意見陳述の中で、農業が果たす食料の安定供給と多面的機能の二重の役割が発揮できる施策を強く求めるとのお話がございました。農業が有する農産物供給機能以外の多面にわたる機能は、日本学術会議の答申では貨幣評価で総額八兆二千二百二十六億円に上ると試算されております。民主党は、提出した法律案において、こうした多面的機能が将来にわたって適切かつ十分に発揮されるようにするため、販売を行う農業者に対する直接支払いの導入、農業集落に対する支援を講ずることを盛り込んでおります。

 そこで、緑豊かな農村の価値の政策への反映のあり方について、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

白川祥二君 仲野先生の今のお話で、民主党さんの案も若干見させていただいております。

 そんな中で、私たち、今農村でどのようなことになっているのか、要するに何を今するのかというと、農村というすばらしい環境というものがだんだんそがれてきている、北海道は特に農業そして観光ということでありますから、余りにも規模拡大を進めていくと、離農が出てくる、そこに農村社会というものが形成されないということであります。それとあわせまして、その景観とか空気だとかそういうものを消費者の方に目で見てもらう、肌で感じてもらう、これもやはり一つの機能ではないのかなという気がします。

 それとあわせまして、先ほど、EUのLEADERプラス事業という、ちょっとそういうことを調べさせていただきました。今何を私は言いたいかというと、例えば、私の近くにおいてもやはり高齢の方が農家をやめていきます。ただ、今の状態においては、昔は、農家をやめた、イコール都会へ行ったんです。ところが今は、都会へ行って住むことができない。ですから、今の農家住宅で住んでいる。でも、その方々はやはり、六十五で仮にリタイアしても、まだまだ五年、十年と働けるわけです。

 ですから、私も、隣のおじさんといっていいのかそういう方々から、できれば白川君のところで例えば夏場だけでも何かちょっと手伝えないのかと言われたんですけれども、なかなかそこの部分については、こちらがやはり経費もかかりますからできないということですから、そのLEADERプラス事業というようなところの部分で、農村の活性化を維持するためには、そういうリタイアする人方にも雇用の場が、例えば農家の雇用の場、そういう促進的なものがあれば、その農村社会というものは形成されるのではないのか、そして環境が守られるのではないのかなということで、先生の質問とちょっと趣旨が変わったかもしれませんが、私はそういうふうに思っています。

仲野委員 私も今、白川祥二さんのお答えに尽きるのではないかな、そのように思っております。ありがとうございました。

 次に、全十勝地区農民連盟委員長であります山田富士雄さんにお伺いしたいと思います。

 政府案の品目横断的経営安定対策においては、酪農、畜産や野菜、果樹についてはその対象とされておりません。北海道は全国の牛乳生産量の半分を賄う酪農地帯でもあり、ここ十勝はもちろん、私の地元の釧根においても酪農が基幹産業となっております。

 北海道酪農については、規模拡大は進展しておりますが、本年度から生乳の減産が行われ、一部では生乳の廃棄が行われるなど心が痛む事態が生じております。十勝管内の芽室町には新たなチーズ工場が建設をされ、生乳の大きな受け皿としてこれに対する期待が高まっているところであり、今後は国産チーズの消費を拡大していく必要があると考えております。しかし一方では、米の減反と同様の事態になるのではないかと心配する向きもあります。

 そこで、こうした酪農が置かれている現状と、これに対する政策のあり方についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山田富士雄君 私は、一応、道における酪農、畜産の方の責任も負っているわけで、三月に急激な調整の中で、酪農家の方については本当に涙をのんで、牛乳廃棄、八百トンぐらい廃棄したわけでございますけれども、実際の数字はそれの二倍、三倍というふうに言われております。

 御案内のとおり、全国八百三十万トンの牛乳の生産量のうち、平成十七年度は三百七十九万トンが北海道で生産されるということで、まさしく半分近くが北海道の酪農基地ということでございます。特に、私は十勝ですけれども、そのうちの約四分の一、約百万トンぐらいの牛乳を十勝が生産しているということでございます。

 北海道の牛乳というのは、御案内のとおり、本州へ約一割、約四十万トンぐらい本州に生のまま輸送しております。それが御案内のとおり、消費の減退から、昨年、前年度対比一六%ぐらい本州送りが減ってしまったということで、それだけでも約七万トンぐらいの北海道における需要の減退ということになるかと思います。

 それらを踏まえて、昨年の暮れからことしの三月にかけて、十勝で約一万トン、あるいは全道で二万トンというような対策で、数字を何とか一〇二%以下ということでおさめたところでございます。

 御案内のとおり、北海道の酪農家、実は随分やめる方もいらっしゃいます。ただし、新規就農あるいはリフレッシュというような新たな酪農振興対策のもとにおいて、メガファームもふえております。それらが少なくなった分をのみ込んできて今日の北海道酪農があるというふうに私は思っております。そして、それらメガファームに対してのいろいろな支援というのは当然だったというふうに思っております。ただ、結果としてこういうふうになった。

 これは、要するに、牛乳の生産に関しましては、御案内のとおり、二十年を目標に十勝に二十万トン規模のチーズ工場をつくります、チーズにおけるところによりますと、やはり外国への依存度が高い。これをもし生乳計算に換算したら、約三百万トンぐらいはチーズに変えることができます。ただし、御案内のとおり、チーズの価格というのは四十円台ということで、一番安い価格で取引されるということでございます。

 そんなことも相まって、平成十七年度につきましては、総合乳価が約二円ぐらい落ちるというような状況にもございますし、これがチーズに傾斜するに従って総合乳価がどんどん下がってくるのではないかということでございます。酪農家の個々のお話を聞いても、せいぜい下がって六十円が限界ではないか、六十円以下になったのではとてもじゃないけれども北海道の酪農はもたないよ、そういうような声が現場から聞こえてまいりました。

 だとするならば、ここにおいてチーズに傾斜するのはいかがなものか。もう一度生乳の栄養価を考えて、もうちょっと飲んでいただくということについてやはり努力が足らなかったのではないか。これはホクレン、乳業メーカー、それぞれ努力をしてまいりました。私も国に向かって言いました。農水の方がいわく、農水省の役人が考える以上にメーカーが考えておって、農水省の役人の出す提案よりは乳業メーカーに一生懸命やってもらった方がいいんじゃないか、こんなような答えが返ってまいりました。まさしくそういう状況だと思います。

 本日、ここに牛乳が出されている。身近なところから我々もいろいろな形で消費の拡大を望んでいるところでございます。ただ一方、消費者団体とのいろいろな懇談の中で、高温殺菌の牛乳でなくて本当の低温殺菌の牛乳、これが本来の牛乳だろうということで、いろいろな団体の中で低温殺菌の牛乳の消費に随分努力をしていただいている。生協等もございますし、それらと連携を密にとって、いかに生乳の消費拡大に努めなければいけないかということでございます。

 そして今、農民組織として何ができるか、そういう問いかけは、十勝の単位組織を回っても随分そういう声が聞かれました。一体何をやっているんだ、一体ホクレンは何をやっているんだ、そういう声も聞かれました。ただ、それぞれの担当者は頑張っているのかなという気がいたしましたけれども、三月ぐらいから急激な動きの中でマスメディアも取り上げていただきましたし、いろいろな形の中で、徐々にではあるけれども、牛乳の消費については若干は伸びているのかなというふうに思っております。

 ちょっと長くなりましたけれども、そんな意味で、我々もまさしく北海道の酪農は、今後やはり大きな課題だと思っております。これは二年間で、例えばこのままの減退が続きますと、まさにさらに第二、第三の、要するに今はAタイプ、Bタイプということで新たな三%減産体制ということで十八年度は取り組みますけれども、十九年も当然取り組まなきゃいけないという状況にございます。

 本当の意味での牛乳の栄養価、あるいは子供たちに、もう一つこういう場ですから言わせていただきますと、国は食育とかなんとかという、そういう目標はいいんです。学校給食における牛乳もいいんです。ただし、夏休みだとか春休みになったときに牛乳の消費が減るというんですね。ということは、家庭に牛乳がないということだと思います。これはどういう現象なのか。私は、やはりその辺からきちんと、これは教育の一環として、あるいは家庭内における学校からのメッセージとして、ふだんから牛乳を飲んでいただく。特に子供の成長には欠かせない栄養源だと思いますので、その辺、こういう委員会の中でございますので、一応縦割りとはいいましても、やはり文部科学省等とも連携をとりながら、その拡大に努めていただきたいというふうに願うものでございます。

 以上です。

仲野委員 ありがとうございました。

 あと吉田様、平様にもお尋ねしたかったんですけれども、私の持ち時間が終了いたしましたので、お二方の皆さん、大変ありがとうございました。

二田座長 次に、松木謙公君。

松木委員 四名の方、本当に御苦労さまでございます。私は、北海道十二区を選挙区にしている松木謙公と申します。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 実は、事前にいろいろと質問をつくってきたんですけれども、御法川先生の話を聞いていて、なるほどなということがちょっとあったものですから、そっちの方にちょっと変えちゃおうかなと思っています。

 食料の自給率という話がありますよね。これは四五%にしようというのが政府の案、そして我々民主党は、五〇%を十年かけて、そして六〇%に持っていこうということを言っているわけでございます。そして、ふだんの委員会で私がこの質問をしたときに、きょうは来られていませんけれども鳩山邦夫先生が、私にやじを飛ばしまして、何を言っておるんだ、もっともっと上げるんだ、こういうお話をいただきまして、怒られたということを今でもよく覚えているんです。

 要するに、カロリーベースでいくと、それはもちろん油を使うだとかいろいろなことがあって、一〇〇%になるわけがない。しかし、御法川先生も言っていることもそうだと思うし、鳩山先生が言っていることもそうだと思うんですけれども、自分の国でつくったものを食べるようにしようということなんじゃないかなというような気がします。

 例えば、今回のBSEの問題、これも、そもそも日本でもし全部食べる分をつくっているのであれば、それはひょっとしたら変なものが入っているかわからないものを、わざわざ食べることもないわけですね。そして、日本とアメリカも食に対しての考え方が随分違うというふうに私は思うんですね。随分と日本人というのは、ある意味でやはりきっちりとしている。アメリカの方は、聞くところによると、何千人も一年間に食中毒で亡くなっているというような話も聞くわけですよね。そんなところのものを何も好きこのんで食べる必要はないというふうに私は思っておりますけれども、そこはそこ、やはりアメリカと日本という同盟関係とかもあってしようがないんだろうなと思うときもありますけれども、私は、外務省の人を呼んだときは、ぜひタフネゴシエーターになって、ちゃんと我々の主張を通すように頑張ってもらいたいということをふだんから言っているわけでございます。

 外国産のものを食べないで済むようにしたいということが一つの願いではないかというふうに、ふと私は思ったわけですけれども、きょう陳述していただいた四名の方々から、この私のちょっとした意見に対してどういうふうに思われるか、お話を聞かせていただきたいと思います。

吉田義弘君 食料自給率を上げるために、国産品、国内で生産された食料をどんどん食べていただく、これは非常にこのことに尽きると私も思います。

 問題は、国内生産されたものと、それから輸入されるものの格差といいますか価格差ですね。私らも、特に野菜農家の方あたりは、外国から入ってくるものが例えば十キロ八百円だとしますね、それから、国内で生産するものが千円だ、こういうことであれば、何とかあと二百円頑張ってみたいな、そういう努力もいたしますし、する気になるんですね。ただ、仮に二百円と千円だとしたら、これはそもそもまるで違うわけでありますから、初めから競争にならない、そういう実態というのが現実にあるんですね。それは、千円でなければ生産できないというさまざまな日本の国内の事情があるわけでありますけれども、そういったところが農業者の現場でどうにもできない、そういう非常に残念なことが現実としてあるんです。そういったところを、何か政策の中で、国産品が消費されるように改めてお願いいたしたいなと考えております。

山田富士雄君 まさしく地産地消を含めた、日本でつくられているものを日本人に食べていただく、まさしく国のそれぞれ文化なのかなと。でも、日本人の食文化というのは、どうしてこれだけ外国にゆだねるようになったのか。一つには、やはり季節のものを季節に食べるという風習がどこかでなくなって、一年じゅう食べたくなってきた。そうなってくると、商社がそれに合わせてオーストラリアの方から輸入してくる。そうすることによってアスパラは一年じゅう食べられるとか、そういう状況。農産物でいえば、北海道でいえば、タマネギや何かにしてもそういう状況になってきている。こういう本来あるべき文化を失って、それが、外国の農産物に頼らざるを得ない、頼って、それをまた食するということが一つの背景にあるかと思います。

 あと、もう一方で、ことしの五月から、ポジティブリストといって、要するに農薬の残留の関係の法案が正式に施行されるということになりました。これに関しましては、生産現場としてはちょっと大変だなという思いもありますけれども、これは、輸入農産物に対して、外国への警告として、一つのメッセージとしてはいいのかなというふうに思っております。

 これはちょっと具体的に言っていいのかどうかわかりませんけれども、中国産の野菜についてはこれによってかなり心配しているということが一方にございます。これは、かなり強い農薬というものを使って日本に輸出しているというようなことが現実としてあるみたいですから、今の段階としては、これは厚生労働省の範疇になって、要するに検査段階で一定の、今度は〇・〇一ppmですかというような日本の正式な基準もできましたので、それらにおける基本的には、まず地産地消と安全、安心はやはり国産品からというようなメッセージとしては一つ違った意味でセールスポイントがふえたのかなというふうに思っております。

 そんなことで、我々も一応生産現場としては、安心、安全、そして地産地消、そして食育。先般も、あるところで食育とは何だろうというようなことも聞かれました。食育についても、本当にもうちょっと理論をきちんと整理して普及すべきではないかというふうに思っております。それによって自給率は上がるのではないかと思っております。

 以上です。

平和男君 松木先生のおっしゃるとおりでありました。

 観光農園、体験農園をやっているという前段のお話、平成六年ぐらいからやっていまして、その当時は地産地消などという言葉は全然まだ普及されておりませんでしたし、もちろん愛食運動なんというのもそこそこにやっと聞こえてきましたが、今やはりそういう活動をやっている生産現場に携わっている者、あるいは学校教育の現場に携わっている方たちが非常に多くなってきて、農協青年部も、そういう意味では、子供農業体験事業を通じまして、まずは現場と生活者、あるいは消費者、あるいは子供を介して学校の先生や親御さんに向けて自己発信する機会というのを持ってきまして、非常に意識やあるいは訴求力は高くなってきました。

 ただ、私は、そういう意味では、今回の品目横断の対象品目は、原料型作物と言われている、いわゆる白物と言われているもので、例えば小麦粉、砂糖、でん粉。真っ白になってしまえば、例えば安くて、安定的に、安心で安全でならば、別に国産のものじゃなくても構わないというような、まだそういう意識がひょっとしたらあるかもしれません。それと生産現場はどう戦っていくのか。戦っていくのかというか、メード・イン・北海道を、メード・イン・ジャパンを、メード・イン・十勝を食べてくださいというのは、やはり消費者、生活者とのコミュニケーションを生産現場といかにとるか、やっていくかということなのかなというふうに思います。

白川祥二君 外国産を食べない、これはなかなか難しいことだなというふうに私は思います。

 ただ、その中で、さきに山田さんも言っていたとおり、ポジティブリストの問題、これがやはり中国あたりがかなり危機感を持っているというふうに聞いております。私もある現場に行ったときに、そこにハエもたからない、鳥もいない、そういう港があった。これはどういうふうにして入ってきているのか、これは検査しているんですかと言ったら、これは一切していませんと。要するに、水際の検査というのは一切していない。ですから、我々が見た感じでは、二年も三年も置いておいても一つも腐らないようなものが堂々と日本の食卓に入っている、これが果たしてどうなのか。その辺の問題がやはり消費者に何も知れ渡っていないのではないか。

 私もそうですけれども、私もいろいろなものを買わせていただきますけれども、やはり消費者というものは、デパートに出ていて値段を比べたら、内容がきちんと表示されていなければ安い方を買うんですよ。ですから、その辺の部分の表示というものをきちんとしていかないと、そして消費者みずからが選択できる、その中にどういうものが入っているんだということができるだけ多くわかるようなものが必要ではないのかなという気がします。

 それと、もう一つ私がちょっと危惧しているところは、日本の農業に対する技術、種苗でも、要するに技術ですね、栽培技術。これが多分、種苗も技術もすべて国費、税金で賄ってここまで技術を向上させてきましたよね。それがいとも簡単に東南アジアに盗まれているといったらいいのか、日本の商社が持っていって、そして日本の商社が安い労賃で国内へ入れてくる。

 これははっきり言って、我々生産現場にとってもすごく矛盾を感じる。我々が何十年もかかってつくり上げた技術がいとも簡単に、一週間ででき上がる。ですから、私も台湾へ行ったときよく言われたことが、今日本で、青森でどんなリンゴが売れているんだとかそんな話を聞いたとき、こういうリンゴが今売れていますねという話をしたら、では今度青森に行って枝を持ってこよう、こういう感じで、それもまたいとも簡単にそういうふうに盗まれている、こういう現実があります。

 ですから、外国産を食べないんじゃなくて、そういう実態というものをきちんとしていかなければならないし、そういう開発、輸入に対する国の姿勢というものもやはりお願いしたいなというのが率直な意見です。

 以上です。

松木委員 ありがとうございました。

 委員長、もうちょっとだけいいですか、せっかく帯広まで来ましたので。

二田座長 時間でございますけれども、では、どうぞ。

松木委員 「直接支払い等における民主党案と政府案の対比」というのを皆さんにお渡ししてありますので、これは後で見ておいてください。それでどっちがいいかよく選定していただきたいというふうに思っております。

 それと、本当に私は思うんですけれども、先ほど、十キロ八百円と千円だったら何とかなるけれども、二百円じゃどうにもならないよというお話がありました。まさにそういうところに私は税金を使っていいと思うんですよね、いろいろな意味で。それで安心して物が食べられるわけですよ。そういうふうにしていくのが我々この農林水産委員会の一番の使命だというふうに思っております。これには自民党さんも、そしてきょうお越しの公明党さんも、そして社民党さん、共産党さんはきょう来ていませんけれども、あと民主党、みんなが一丸となってやはりしっかりした食の安心、安全というのを図るように我々も努力をしていきたいというふうに思っております。

 日本書紀の中に「農」という字があって、これはなりわいと読むらしいんですね。要するに、私のなりわいは何ですという話がありますよね。本当に農業というのは、日本人の魂、そして心の一番のふるさとだというふうに私は思いますので、皆さん方におかれましては、これからも一生懸命農業を頑張っていただきたい。我々も一生懸命それをサポートさせていただきたいと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

二田座長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 本日は、四名の方に貴重な御意見をお伺いいたしまして、本当にどうもありがとうございました。

 私の方からは、本日のテーマでございます農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案ほか政府提出二法案、合わせて三法案、あわせて民主党提出の食料の国内生産及び安全性の確保のための農政等の改革に関する基本法案について、それぞれ皆様からお話をお伺いさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、平副会長からお話をお伺いさせていただきます。

 平副会長の方から、主に担い手という立場で大変重要な御指摘がございました。

 現在、北海道の担い手は、年々その数も減少しておりまして、平成十七年度総農家数五万九千百三十七戸のうち、労働力の高齢化が進んでいるというふうには言われておりますけれども、ほかの地域と比べますと若い担い手の割合が高いというふうに聞いております。そういった事実は、JA青年部の皆様の日ごろの努力、そういったことによって若い後継者の割合が高いということにもつながっているというふうに承知をしております。しかしながら、後継者の補充率については三〇%程度でございまして、北海道農業の発展それから活力の維持という面ではまだまだ不十分だと考えております。

 この担い手の育成について、現状の取り組みについてはまだまだ不安がある等の御発言がございましたけれども、そこのところを今後の政策に生かす面でもう少しお話をお伺いさせていただきたいと思います。

平和男君 後継者問題にまず一つ言及したいんですが、お父さん、農家をやりたいんだと言っても、いや、農家はだめだ、もうからないから、公務員をやれと。後継者をつくらないのはまた一方で農家自身であるというのも、これは正直な話であります。

 比較的そういうコンテンツが薄いのが、例えば北海道東部、道東と言われている、比較的規模拡大が先行した、あるいはそれをもってして構造改革が成功したと言われている十勝、北見、釧路、根室あるいは宗谷、そういった地区なのかなと思いました。

 同時に、それは、隣のおじさんがやめない限り、やめない限りというか、そういった非常に緊張感のある、競争原理を導入して離農を促進するというか、淘汰を促進するという表現は非常によくないんですが、お隣のおじいちゃんがやめることで結果的にそれは規模拡大が進んでいる。生産基盤が強固なものになることで、お父さん、やっぱりおれトラクターに乗るよと。ちなみに、うちの長男も来年の今ごろは帯広農業高校かどこか行っているかもわかりませんが、きょう三者面談なんです。

 つまり、どうやって育てるかというのは、まさに家庭力であったり、あるいは地域の教育力であったり、あるいは生涯学習であったり、あるいは社会教育であったりというコンテンツがたくさんあると思います。決しておじいちゃんやおばあちゃんにめんこめんこされたからといって農家の後継者になるとは限らないわけでありまして、私はそうでもないんですが、きっと家内の頑張る姿を見て、お父さん、農家をやるよと言ってくれるから、まだほっとしている部分もあるんですが、これはなったらなったで大変なことであって、そのアフターケアというか、後継者教育というのは、今、非常に難しい局面というか大事な場面に来ているのではないかなと思いました。

 もう一点は、新規就農者の話です。

 新得にはレディースファームスクールというのがありまして、女性に限ってということなんですが、研修施設があります。定員十三名ぐらいのところを、大体毎年三分の一ぐらいは、私、農家をやりたいんだ、要するに、酪農家をやりたいんだと非常に希望を持って来られて、一億円でも持って来られたらすぐできるんでしょうけれども、お金が要るんだよ、そんな簡単なことにはいかないんだと組合長と町長に言われて、大体二カ月ぐらいしたらしょぼんとしょぼくれちゃうんですが、それでも私やりたいんだ、できれば御縁があったら農協青年部の独身の方と何とかなればというふうに非常に強いアプローチをいただくことがありました。私に家内がいなかったら何とかする話だったんですが、そういうことにもなかなかならない。こういった新規就農者を受け入れる、あるいは受け入れやすい、そういう環境をまたつくっていくのも後継者対策の一翼を担うのかなと思いました。

 ただ、これは小さいコンテンツでやっていてもなかなか成果が上がらないことでありまして、それこそ行政が、地域が、受け入れ農家が、あるいは在来する農業者が、向かっていく方向性をしっかり認識した中で、若者の取り組みというか若年層の取り組みをカバーする、あるいはケアアップするというような体制がこれから必要だし、まさにそれはソフト事業なので、お金的にすぐ評価される、あるいは結果として出ることではないですから。

 やはり人づくり。私たちはよく、人づくり、土づくり、それから愛する郷土づくりというようなコンテンツでやっているんですけれども、まさに、郷土を支え、そしてその土地を耕しというのは、すべからく人づくりに起因するんだと。どんなに立派な農村があっても、どんなに立派な箱物があっても、人がだめならだめなんだ。だから、人づくりは、やはりそういうところは、まさに地域教育であり、あるいは予算をかけてつくらなければいけない一番大事な部分なのではないかなと思います。

 こんな答えでよろしいでしょうか。

丸谷委員 ありがとうございます。

 続けてもう一点、平さんに、今のお話の中からお伺いをしたいと思うんですけれども、北海道農業の特色としまして、新規就農者の中で、Uターン就農者よりも新規学卒就農者の割合というのが非常に高いということは、担い手の傾向性を知る上で非常に重要なことだと思います。それに加えまして、新規就農者の方のモチベーションの違いというものも、実際に担い手育成の面からいろいろな面で地域差があり、また支援の難しいところだと思います。

 本日、平副会長のお話の中で、真に意欲のある担い手か否かという御発言がございました。真に意欲のある担い手に対して当然支援は行われるべきであり、そうした人たちを行政、国は応援していくべきであると思いますけれども、これは判断基準をどこに置くか、だれがどう判断するかということが非常に難しいだろうなというふうに思いながら、また、今そのことについて議論をしているという状況、結果がまだ出ていないという状況を踏まえますと、非常に難しい問題だと思いますけれども、この点について、何か御示唆があればお伺いいたします。

平和男君 正直言って、三十ヘクタールも四十ヘクタールもつくっていたら、なかなか地域貢献だとか社会貢献だとかというコンテンツまで手が回らないというか、おまえ、そんなことをよくこの忙しいのにやるねというのが実は周りの評価であったり、正直なところなんです。それであっても、その農村を守っていくのはそこに住んでいる人なのであって、例えば社会教育の場面であったり、社会体験の場面であったり、農村の振興であったりというのは、やはり農業の後継者が、あるいはそこに住んでいる若者が、あるいは若い奥さんが、もちろん子供が、おじいちゃんもおばあちゃんもそうなんですけれども、そういった方たちが能動的にあるいは有機的に結びついて初めて農村振興が成るというふうに考えます。

 だから、どれをもってして真に意欲があるかないかというのは、本当にそれはシステマチックの話をいうと非常に難しいんですが、例えば農協青年部の部長をやった人とか、それはちょっと手前みそですけれども、そういったコンテンツがないと、皆さんどうでしょうか、地域がどれだけ疲弊しているかというのは、どこにもある問題かもしれませんが。

 北海道の公立の小中学校はたしか二千五十校ぐらいあると思います。この五年間ぐらい、四十校から五十校ぐらいずつ減少していきました。年によってなんですけれども、大体六割から七割ぐらいは、この十勝、北見、釧路、根室と言われている、いわゆる規模拡大が進行した地域の農村部に集中しているわけです。規模拡大が進むというのは、イコール農村が枯れるということなんです。

 ここに来て、もうこの辺が限界なのであって、この生産環境をしっかり守っていき、その文化を守っていくためには、そこでしっかり働いている例えば消防団あるいは農協青年部、そういう地域貢献性にしっかり足を置いて、もちろん自分の経営もしっかりやっているという方のその評価あるいはその努力度をどんな時点で認めていただくか、あるいは評価していただくかというのを現場から投げかけている、そういう主張が過去からのものだったということであります。

 具体的にこうしてくれ、ああしてくれと言うのは非常に難しいんですが。

丸谷委員 ありがとうございました。

 続いて、農業会議の副会長であります吉田さんにお話をお伺いいたします。

 副会長の方から、御発言の中で、ゲタがつく、つかないということによって農地の流動化に影響が及ぶのではないかといった懸念が表明をされました。実際にそういった声をいろいろな方から私もお伺いをしてきたところでございますけれども、この過去の生産実績というのは、政府の説明によりますと、個々の農業者単位につくものであって、農地に張りついているわけではないので、農地の売買あるいは貸借等の権利移動が伴う場合には、農業者間での過去の実績の移動を可能とする仕組みを考えているところだといった説明がございました。

 こういった対策をとることによって、政府提出のこの法律案の副会長が御指摘なさったところが払拭できるものというふうに考えるところでございますけれども、この点について、さらに御意見、御指導があればお伺いをさせていただきます。

吉田義弘君 今までのホームページなどを見させていただいておる限りでは、農地に過去の生産実績がついて、それが、農地の権利が移動したときに、そのまま新しい所有者あるいは権利を取得した方に行く、そういうように私は理解しているわけでありますけれども、そういうことでありますと、先ほど、冒頭お話しさせていただきましたように、過去実績のない農地についてはなかなか受け手を探すのが困難だ、そういうことが非常に心配されるわけであります。できますれば、担い手に何かついていくような、過去実績というものが農地にとどまるのでなしに担い手にうまく移譲されていくようなそういうシステムができれば、農地流動化を担当する現場といたしましても混乱は少ないかな、そういうふうに考えているところであります。

丸谷委員 貴重な御意見、どうもありがとうございました。

 今後の審議に当たりましても、さらにまた制度設計の上でも、今後詳細に検討を重ねて結果を出してまいらなければいけないというふうに考えております。

 続きまして、本日の質疑の中で、食料自給率及び地産地消、食育ということを御発言もいただいておりますので、この点についてお伺いをさせていただきます。

 白川書記長にお伺いをさせていただきます。

 白川書記長の方からは、御自分も麦あるいは米等を由仁町でされているというお話がございました。本日、四人の方々からは、民主党案については特に御意見の表明がなかったわけでございますけれども、例えば白川さんは麦も生産をされている。民主党案において、食料自給率を十年後には五〇%、その後六〇%と持っていく中で、例えば小麦の生産について考えた場合、五〇%に設定をしますと約四百万トンの生産になるという御答弁を以前委員会等でいただいているところでございます。

 実際に今の日本の小麦、主に食べられているものは、うどんに使われているのが一番多いというふうに承知をしておりますけれども、めんを中心に八十六万トンの消費の中で、十年後に五〇%小麦をつくる際に四百万トンということになりますと、需要との関係からどういうふうに考えて整理をしていけるのかなというところでございますが、小麦をつくられているという立場からお考えになって、この自給率と各品目の生産目標ということに関して御意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

白川祥二君 今の食料自給率の問題で、民主党さんの、小麦に限定したかと思いますけれども、その辺については四百万トンというような形だと思います。そのことについては、自分はちょっとまだ詳細はわかっておりませんけれども、ただ、今の日本の国土を考えたときに、果たしてそれができるかどうかは別として、かなり大きなハードルかなという気がします。

 ただ、私としては、やはり小麦は、要するに外国のものに依存しない、国内のものをできるだけ消費、つくる、その生産基盤というものを構築していかなければならぬのと、あわせて、今、パンだとかうどんだとかそういうものに、やはり日本の気候風土に合った米の粉というものをうまく活用できないのか、そういうトータルな中での食料自給率向上ということは考えられるのではないのかなという気がします。

丸谷委員 どうもありがとうございました。

 それでは、山田委員長にお伺いをさせていただきます。

 先ほど山田委員長の御発言の中から、独自の自給率、自給力、あるいは地産地消、食育についての言及がございました。国の方では、食育基本法を法律としてつくりまして、先日、基本計画を立てたところでございます。今後は各都道府県、市町村ごとに取り組んでいただくこの食育運動でございますけれども、食育という言葉は定着をしておりますが、その活動内容ですとかあるいは方向性については、各地域の独自性を生かすという意味もあると思いますけれども、実際には現場、学校あるいはPTAの皆さんも、どういうふうに取り組んでいったらいいのか、ちょっと不透明なところがあると思います。不安を持っている方もいらっしゃるのかもしれません。

 そういった皆様のためにも、ぜひ山田委員長の方から、北海道が取り組める食育、この点についてもう少しお話をお伺いしたいと思います。

山田富士雄君 私は本当に田舎の学校を出ております。全校生徒、小学校と中学校を合わせてわずか百二十名ぐらいの学校で、当然、当時学校には学校の畑というのがあったんですね。学校の畑で要するに農作業体験ができたということでございます。

 そういう意味においては、私の学校は農村の真ん中だったんですけれども、種苗センターといって国の機関の子供たちが約二割ぐらいはその中にいまして、我々は日常茶飯事、ある程度手伝っていることを学校農園で延長線上だったんですけれども、新鮮な意味でそういう子供たちが農作業体験ができたということでは、当時は自然とそういう環境にあったのかなというふうに思っております。

 もう一つは、私の子供がちょうど中学生ぐらいのときに、東京の中学生の子供たちをファームインするという東京都と帯広市の一つの企画がございまして、そのファームインの子供たちを随分何人も受け入れをいたしました。

 それで、子供たちの感想文の中で、当然、北海道にせっかく来ているんですから、観光も入っているんです。ところが、八割、九割の方が、やはり農作業体験のことについてすごい感銘を受けたと、北海道にあるいは日本にこんな生産現場があったということについての驚きというのが感想文に随分書かれていました。そして、少なくとも、そういう子供たちがやがて大人になったときに、我々が北海道産ですよといって例えば本州に送ったものについてはひょっとしたら食べていただけるのではないか、そんな思いもしたわけでございまして、そういうことに関しましては、本当に地域、あるいはこういう言い方はどうかわかりませんけれども、修学旅行だとかそういう中においての、やはり食育教育なんかもどこかに入っていくことによって、より身近なものになる。

 特に、北海道における、日本の食料基地、日本の農地面積のそれこそ約五分の一近くが北海道、百二十万ヘクタールぐらいあるという現状でございますので、そういう中における北海道の果たすべき役割というのは、当然、地元あるいは本州方面に向かってのメッセージ、逆を言ったら、本州方面の方にしてみれば、東京近郊の方にしてみれば、要するに食料生産現場に対しての身近なところからの感覚を持っていただきたいというふうに思っておるところでございます。

 これは私はよく言うんですけれども、持論の中で、要するに、スーパーに外国の品物と日本の品物があったときに、値段が高い安いはあるかもしれないけれども、それが例えば家計に及ぼさない範囲であれば、やはり国産品を買っていただく、そういう心を養うところがどこかに必要なのかな、気持ちを持っていただきたい、そういう考えを持っております。

丸谷委員 以上で質問を終わります。どうもありがとうございました。

二田座長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 最後になりました。社民党の菅野哲雄でございます。貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 私は、今回、皆様方のお手元に、政府案と民主党案という形で、この対照を配らせていただきました。今回は民主党案という形で提出されておりますけれども、二〇〇三年に民主党、当時の自由党、そして共産党、社民党、野党四党で大きな議論を行ったという経過がございます。そのときの議論というのは、食料自給率をどう向上していくのか、意欲のある農業者というものをどう育てていくのか、そして米の生産調整によって生じる遊休地をどう解消していくのかということで議論を行った経過がございます。それを踏まえて今回民主党案として提出してきたというふうに聞いているんです。

 最初に、吉田副委員長、それから、平副会長の方からお聞きしたいんですが、先ほどの意見陳述で、遊休地の問題、今回の品目横断的経営安定対策においてはこの遊休地の解消というのがなされないんじゃないか、そういうおそれが存在するんだというふうに言われました。一部手直しすればということも話されておりますけれども、引き受ける人がなくなるというこの根本的な問題というのは、今回の品目横断的経営所得安定対策、この制度の抱えている根本の問題だというふうに私はとらえているわけでございます。

 そういう意味においては、民主党案としては、そういう問題を生じさせないためにも制度設計を行ったという過去があるわけでございますけれども、これらについてどういう意見、考えを持っておられるのか、お聞きしておきたいと思います。

吉田義弘君 遊休農地に関してでありますけれども、先ほど全国の農地面積が四百七十万ヘクタール程度と申し上げましたけれども、その中で、正確なデータはちょっと私今存じておりませんけれども一割近くはひょっとしたら遊休化しているのではないか、そういう懸念があるわけであります。

 ただ、私どもの今住んでいる十勝、帯広地域は、特に私、帯広市の農業委員会でありますけれども、遊休地というのは実は確認はいたしておりません。といいますのは、やはりその地域の農業がしっかりしていれば、それは生産面、それから担い手面、いろいろありますけれども、しっかりしていれば、日本のこの少ない農地がそんなに遊んでしまうはずがない、私はそういうふうに考えております。

 特に、今回の制度と遊休地の関係でありますけれども、そういう御心配があることは私もそのように思っております。ただ、やはり制度的に、しっかりとこれからやっていこう、頑張っていこうという、担い手にうまく権利が移動するようなシステムが、今ちょっと不十分なんですね。そこら辺を制度的につくっていただくと、農地を出す方も安心して出せる、それから受ける方も、いろいろな制度面で安心して農地を買うなり借りるなりして営農ができる、そういういま一つ不十分なところがあるのかなと考えております。そういった点を解決すれば、農地流動化というのは、農業委員会も一生懸命やっておりますので、うまくいくのかなと考えているところであります。

平和男君 資料の中で、書き方としてちょっとデフォルメしたというか、大きい公約数的な表現にしてしまったわけですが、吉田さんが言われたように、当地区は、そういう意味では、全国から見ても非常にまれな遊休農地の少ない、たしか〇・〇何%ぐらい、多分北陸三県から見たらけたで二つぐらい違うはずです。つまり、しっかり生産意欲と供給責任を持って産地がそれに取り組んできたというあかしなんだと思います。

 制度の改変時期にあって、このフラストレーションやストレスが、間違ってもこんなことにはならないようにしていただきたいというような意見だったというふうに整理していただければなと思います。

 やっていることはやっているので、ペンペン草なんか生やすわけないんだというつもりでは皆さんいるんだけれども、残念ながら、その一線を越えてしまうと、北海道十勝にあっても遊休農地が発生する、あるいは農地の本来あるべき姿として次の担い手に継承できないというのを懸念しているという発言だったということで整理をしていただきたいと思います。

 以上です。

菅野委員 次に、山田さんと平さんにお聞きしますけれども、現場からの具体的問題を指摘していただきまして、本当に参考になりました。ありがとうございます。

 それらの問題点がこれまでどのように議論されてきているのかなという、逆に、私から見れば、今日まで来る段階で十分議論されてきたのかな、これからしっかりとしたものとして定着させていくためには、逆に、問題点を克服するような議論というのは、私どもも含めてしっかりと行っていかなければならないなというふうに思っております。

 それぞれ組織の代表という形で活躍なさっているわけでございますけれども、JAあるいは農業委員会、自治体、農業者が一体となって取り組んでいかなければならない大きな課題だというふうに私は思っています、戦後農政の大転換というふうに言われておりますから。

 それで、これまでの議論の経過と、今後の方向性をどう考えておられるのか、ぜひお聞かせ願いたいというふうに思います。

山田富士雄君 冒頭の意見の中にも述べさせていただきました。

 我々が、当初こういう政策が組まれているということは、当然、運動体の中でかなり情報としては入りましたし、当然、整理して、ある程度要望を申し上げてきたという経緯はございます。ただ、一貫して私たちが言っていたことは、現行における農水予算の中で動くのか、さらにそれにプラスしてこの制度が始まるのかというのが、大きく着目したところでございます。ただ、現実として、いろいろな具体的なものが出てきたときに、例えば、麦でいえば経営安定資金、あるいはてん菜でいえば交付金、あるいはでん原バレイショでいえば抱き合わせ比率分についての補償ということに置きかえられたときに、前段言いましたように、てん菜においては現行の予算より枠が小さくなるということになると総額が減ってしまうということが見えてきた段階で、これは総論的にいったら農家の粗収入は減るよということで、どう見ても希望的なものにはなっていないのかなと。

 もう一方、農地・水・環境保全対策もございますけれども、こう言ってはなんですけれども、畑における六百円、地方合わせて千二百円、水田における北海道では千七百円の、三千四百円ですか、あるいは草地における百円、倍にしても二百円というものもあるんですけれども、これは余りにも、言い方が悪いかもしれないけれども、あるということは評価しますし、今後この方向で所得政策をしなきゃいけないということについても評価いたします、それと、環境問題についても評価いたします、ただ、国が取り組むにしては、余りにも予算が、一けたぐらいは違うのではないかなという思いがしてならないところでございます。

 そんなことで、我々も地元へ行って問題点をいろいろ説明する中で出てくるのは、ところで、我々の努力、先ほどから言っていますけれども、小麦一俵とったら、はっきり言って九千円はプラスになるんですね。今度の制度でいきますと三千円から四千円、黄色の部分の厚さによっても変わりますけれども。そうなってくると、単純な話、小麦一俵生産するために、今までだと五千円かけても値があったんです。ところが、今度の政策でいうと、経費を下げないことには、まず所得が確保されない。損益分岐点みたいなものをシミュレーションでつくったところによりますと、当然、今までですと、量をとることによってかなり所得がふえる。でも、今度の政策によるとその比率が極めて小さくなってしまうということですので、そこにおける今までの努力、そして、前段言いましたように、今後努力することに果たして持続性が持てるのか、そういうことだったんです。

 我々も、本当に、自分としても今七十ヘクタール、農業を経営しておりますけれども、当初始めたころは十八ヘクタール、そして、多くの農民の方が、隣近所でやめられた土地やなんかも引き受けたりなんかして今日に至っております。本当に、痛みの中で私の農業もあるというふうに思っていますし、今後こういう痛みが続くのかということを考えたときに、違った意味での不安感も当然ございますし、ただ、前段言いましたように、競争の原理というのは本当になくなる、それと別対策か何かで何とか支援をしていただかないと、努力する者が報われるという、本来の農民の魂というんですか、農業に対する取り組みがそがれてしまうということが一番危惧しているところでございます。

平和男君 具体的に議論経過のお話をすれば、平成十三年八月の農業構造改革推進のための経営政策の前後あたりで、いわゆる生産者、特にJA青年部の担い手と言われている人たちが、ああ、もうそろそろ僕らの出番なんだなと。お米の次は、いわゆる輪作体系をもととする大規模畑作経営というふうに一行が入った時点で、ああ、もうおれたちの出番だと。ただし、それまでは、昭和六十一年以降、ずっと、いわゆる保証価格が右肩下がりに来ていて、その中でも最大限の農家所得、農業所得を確保しなければいけないということで、現場ではそれできゅうきゅうしていたというのが実は正直な話です。

 ただ、向かっていたところは、いわゆるヨーロッパ、EUの、三圃式、四圃式と言われているあの輪作体系を先生にしていた、あるいは技術輸入していた。ただ、今ここに来て、ビートにしてもジャガイモにしても小麦にしても、あるいは酪農の生産水準にしても、どれをとってしてもEUとそんなに負けていない、むしろ品目によってはトップクラス。その中にあって、政策環境だけがぽつんとひとり取り残されているというか、置いてきぼりを食らっていた、生産現場はその感を否めない。しっかり、それをどういうふうに勉強して何を言っていくかということについては、先ほどの提言書もそうなんですけれども、随分前段でいろいろと頭をひねりながらやってきたという結果の主張が、平成十六年にまとめたあの提言書なんだということです。

 今後のことなんですが、もう本当に山田さんが言われたとおりのことでしかなくて、まさに、努力した生産者がと言われているのは、その平成十三年八月の農業構造改革推進のための経営政策の組織討議で、十勝の農協青年部が実はオリジナルで一番最初に言ったことでした。

 平成十三年、十勝の会長は実は私だったんですが、そのときのオリジナルの文章はこういうことです。より経営努力、より営農努力した生産者こそ、より報われるべき経営政策でなければならない。当たり前のことだったんですが、この当たり前のことがなかなか評価として見えてこなかったということの現場のフラストレーションがそれにつながっていたということをわかっていただければなと思います。

 以上です。

菅野委員 では、農地・水・環境保全向上対策について白川さんにお伺いいたします。

 冒頭では、現行の仕組みというのを否定的にとらえていたわけでございますけれども、実際には、米をつくっている人としてきょう出席して意見を述べられておりますけれども、水田の農地をどう確保していくのかというのは大切なことだというふうに思って、私も興味を持って環境対策というものをずっと議論してまいりました。平場農地と、それから中山間地域農業、農振地域に限って支援していくという制度というふうにとらえているんですけれども、私は、個々の要素というのは、いろいろな問題点は存在していることも承知しております。ただ、白川さんとしては、支援水準の問題、例えば、今で言えば、水田であれば二千二百円というのが安過ぎるという観点からの否定的見解なのか、その点をまず一点お聞きしておきたいと思います。

 ただ、制度は、全農地へという形じゃなくて農振地域に限定していることに対しての問題点を一方では指摘しているのかなというふうに思ったんですけれども、その点も確認しておきたいと思います。

 それから、エコ農業の場合は、私も共通するんですが、エコ農業を振興していこうとするときに、点から面へという形で浸透していくものだというふうに思うんですが、最初から面的な取り組みがなされなければ支援できないんだというところに問題点が存在するというふうに私は思うんですけれども、そこは努力していこうという部分も尊重していきたいというふうに思っていますけれども、エコ農業に対する考え方も一方では披瀝されておりますけれども、その点も再度お聞きしておきたいというふうに思っています。

 そして最後に、ここは、私も同じく大きな問題点だと思うんですけれども、国の支援と地方自治体の支援を合体してしまうと、地方自治体が財政が厳しいからということで、国の制度も適用にならないという矛盾点が生ずるんじゃないのかなと。だから、国は国の支援として、地方自治体は地方自治体としての支援という区分けの仕方をしないと、しっかりとした取り組みになっていかないんじゃないのかなというふうな思いがあるんです。そこも指摘されておりました。

 交付税措置をすべきだという主張にさっき切りかわっていますけれども、私は、交付税措置、今の現状では厳しいという中で、国の施策と地方自治体の施策は分けるべきだというふうに考えているんですが、この点に対する見解というものもお聞きしておきたいというふうに思います。

白川祥二君 農地・水・環境保全向上対策についての水準、まさしく、先ほど言ったように、農村の環境を守るためには、今の担い手経営安定対策を仮に担い手にある程度経営安定対策をよしとした場合、やはりその一方の農村を守るというところでの農地・水・環境保全向上対策、この言葉遣い、この農地・水・環境保全向上対策、これをつくったことは私はすごく評価しております。

 ただ、今、山田さんも言ったように、この財源水準では果たしてどうなのか。畑作も酪農家さんも、水田地帯において、北海道の水田の機能を維持するためには、今、私の方で、一般水利費だけで大体年間十アール当たり七千五百円です。そのほかに、北海道においては、それぞれ圃場整備というものを行っております。小さい集落においてはなかなかそれができない。でも、北海道のようなところは、やはり大型化を目指してきましたから、そこに対する圃場整備の事業費の償還額というのが、多い人では、反当に、十アールあたり一万五千円、今あるんです。それを両方を合わせると最大で二万何ぼなんです。ところが、農水省さんのいろいろなシミュレーション、生産費調査をしたときに、すべてを網羅して統計学にしますから、反、十アール当たり、全部やっても三千円だとか三千五百円だとか、そういう少ない数字でしか出てきていないんです、現実問題としては。ですから、そこに大きな問題があるし、担い手という、要するに米作地帯として頑張らなきゃならぬときには、そういう投資をしている、その水準が維持されていない。

 それとあわせて、今、農村においても、我々も農業用水路、排水路また道路、そういうものもやはり現状の農家で行っております。でも、それだけではもうこれから先賄い切れないというふうに思っておりますので、やはり、農振地区だ、以外だとかそういうことではなくて、全農地を対象にすべきではないかなというふうに思っております。

 それと、先ほど菅野先生がおっしゃったとおり、エコ農法、今回の環境保全の部分についても、農水省さんの着目した点については、私はすごく評価しているし、その面の部分についても評価しております。

 ただ、面に行く間には、より高度のエコ農法に取り組むような方、そこに対してのきちっとしたものを先に着目した中において、その周りが、ああ、それだったら私もやってみよう、私もやってみよう、そういう面に広がるような方が、私は、よりいいのではないのかなという気がします。

 それとあわせて、国の出し方。先ほども野菜の価格安定制度の問題も出しました、中山間の問題も出しました。はっきり言って、国がこういう政策、制度を訴えるのであれば、そういうものは本来は全額国がしていただくのが私は筋だと思っています。でも、そうじゃなくて、地方のやる気ですよというとらえ方で、それぞれ、中山間の問題も、野菜価格安定制度も、地方の負担というものを出して初めて国も出しますよということがありますけれども、現実、我々生産者にとってはそこが一番つらいところなんです。

 ですから、中山間の問題においても、昨年度、道の予算がどうしても、事業を出したら、積み上げたら足りないよということで、三%一律減額ですよということ。それと、慌てて去年手を挙げて、さあ取り組もうかなと思ったとき、中山間、条件不利のところが手を挙げたけれども、もうあなたのところはだめですよということで、結果的に中山間の条件不利対策が受けられないという現実。

 それと、今の野菜価格安定制度も、今まで北海道においても、タマネギだとかそういうある程度大型の野菜の安定制度を構築してきたんですけれども、では、現実にこれから軟弱野菜、葉物野菜、そういうものも順次拡大しようといったやさきに、やはり道の財政が厳しくなってきたということです。ですから、今北海道において、重量野菜はもちろん、軟弱野菜もそうなんですけれども、中国からの輸入攻勢によって、瀕死の状況になってきている状態であります。

 ですから、そこの部分の、足腰の強い農業をつくるためには、やはり野菜価格安定制度だとかそういうものをきちっとしなきゃならぬ。でも、道財政が厳しいばかりに、国はあるんですよと言うんですけれども、道財政が厳しいばかりに、これが、我々生産現場においてはその制度に入れない、こういう矛盾がございます。

 ですから、菅野先生が言ったように、国プラス地方でなくて、本来は国がやるべきことなんですけれども、今回のこういう制度でありますから、これを、差し当たって、国プラス地方にする場合は、やはり、そういう前向きな姿勢をとった地方に対しては、きちんと交付金で明示して出していただければ、その地方もよりやりやすい、また北海道農業の足腰も強くなるのではないのかなという気もします。

 以上です。

菅野委員 どうもありがとうございました。

二田座長 これにて委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、御多忙の中、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心より感謝を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午前十一時二十六分散会


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