衆議院

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第13号 平成18年5月17日(水曜日)

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平成十八年五月十七日(水曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 稲葉 大和君

   理事 岡本 芳郎君 理事 梶山 弘志君

   理事 原田 令嗣君 理事 二田 孝治君

   理事 松野 博一君 理事 黄川田 徹君

   理事 山田 正彦君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      伊藤 忠彦君    飯島 夕雁君

      今津  寛君    小野 次郎君

      金子 恭之君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    斉藤斗志二君

      鈴木 馨祐君    谷川 弥一君

      中川 泰宏君    永岡 桂子君

      並木 正芳君    丹羽 秀樹君

      西村 康稔君    葉梨 康弘君

      鳩山 邦夫君    福井  照君

      三ッ矢憲生君    御法川信英君

      山内 康一君    渡部  篤君

      石関 貴史君    岡本 充功君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      神風 英男君    仲野 博子君

      松木 謙公君    森本 哲生君

      山岡 賢次君    丸谷 佳織君

      菅野 哲雄君    森山  裕君

    …………………………………

   議員           山田 正彦君

   議員           篠原  孝君

   農林水産大臣       中川 昭一君

   農林水産副大臣      宮腰 光寛君

   農林水産大臣政務官    金子 恭之君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       染  英昭君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           中川  坦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  西川 孝一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  井出 道雄君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            山田 修路君

   政府参考人

   (水産庁長官)      小林 芳雄君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    野澤 隆寛君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総合観光政策審議官)     柴田 耕介君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           桝野 龍二君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     永岡 桂子君

  近藤 基彦君     葉梨 康弘君

  西村 康稔君     鈴木 馨祐君

  山岡 賢次君     石関 貴史君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     西村 康稔君

  永岡 桂子君     山内 康一君

  葉梨 康弘君     三ッ矢憲生君

  石関 貴史君     山岡 賢次君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     近藤 基彦君

  山内 康一君     小野 次郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案(内閣提出第四五号)

 砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案(内閣提出第四六号)

 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案(山田正彦君外四名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

稲葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案及び山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案の各案を一括して議題といたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、大臣官房技術総括審議官染英昭君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長中川坦君、生産局長西川孝一君、経営局長井出道雄君、農村振興局長山田修路君、水産庁長官小林芳雄君、特許庁総務部長野澤隆寛君、国土交通省大臣官房総合観光政策審議官柴田耕介君及び大臣官房審議官桝野龍二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 この際、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣中川昭一君。

中川国務大臣 おはようございます。

 昨日の委員会での山田委員の御質問並びに答弁について発言をさせていただきます。

 所得特例の条文の根拠についてという山田委員からの御指摘についてでございますけれども、答弁をさせていただきます。

 この法律は、第一条におきまして、担い手の経営安定を図り、もって食料の安定供給の確保に資することをその趣旨、目的としていることを受けまして、第二条第二項第一号においては、交付金の交付対象となる農業者として、耕作の業務の規模が対象農産物の効率的な生産を図る上で適切なものとしております。

 このような農業者は、相当規模の経営基盤を有し、対象農産物について低コストで効率的な生産を行っていると認められるため、効率的かつ安定的な農業経営に向けたスタートラインに立っているものと評価できることから、担い手として認めた上で交付金の交付対象とするものであります。

 その際、対象農産物の生産に係る農業形態が一般的に土地利用型農業であることから、耕作の業務の規模としておりますのは、基本的には農地面積を基準とすることとしております。

 しかし一方で、野菜等を含めました複合経営等により相当水準の農業収入等の実績を上げており、対象農産物に係る収入等が占める割合が相当程度のものである者につきましても、効率的かつ安定的な農業経営に向けたスタートラインに立っているものと評価できるところであります。

 このため、この法律におきましては、耕作の業務としては、野菜等を含め、農作物全般を耕作することをあらわすものとして、また、業務の規模といたしましては、農地面積に限らず、所得、収入を含めて判断するものとして規定することとしているものであります。

 以上のことから、農林水産省令におきまして、耕作の業務の規模の基準として、いわゆる所得特例を規定することにつきましては、法律の委任の範囲内であると考えております。

 次に、品目横断的経営安定対策の対象面積及び対象者につきましてでございますけれども、品目横断的経営安定対策の対象面積及び対象者につきましては、一定の前提を置いた場合の現時点における対象面積、対象者の割合がそれぞれ五割程度、三割程度であること、この試算には所得特例を含む各種特例は考慮されていないこと、対策スタート時における対象者は、今後の担い手育成の取り組みの進展度合いにより大きく変わることとの見解を、これまでの当委員会におきまして、四月五日の二田孝治委員、十二日の菅野哲雄委員に対する答弁を初め、一貫して申し上げてきたところでございます。

 昨十六日の農林水産委員会におきましても、山田正彦委員からの御質問に対しましても同様の御答弁を申し上げたところでありますので、御理解をいただきたいと思います。

 収入変動影響緩和対策の生産者の拠出額についての山田委員からの御質問でございますけれども、収入変動影響緩和対策の生産者の拠出額につきまして、平成十三年産から十七年産の全国平均の収入を前提に試算しますと、米については、十アール当たり三千百六十円、小麦につきましては、十アール当たり三百三十円、大豆につきましては、十アール当たり四百四十円となります。

 このうち、米につきましては、現行の稲作所得基盤確保対策及び担い手経営安定対策に比べて生産者の拠出額が軽減されていますが、これは、稲得と担経を合わせた拠出割合が約一対二であったものを一対三として、国の負担割合を引き上げたことなどによるものでございます。

 なお、本対策は十九年産から導入されるものであり、その基準となる収入は、平成十四年産から十八年産の収入をもとにいたしまして都道府県ごとに算定することから、実際の生産者の拠出額は本試算額とは異なることになります。

 以上でございます。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田正彦君。

山田委員 きのう質問いたしましたいわゆる特例についての法律的根拠について、今大臣から見解が示されましたが、その中で、耕作の業務の規模、これで読めるんだという言い方でした。

 大臣、よく考えていただきたいのですが、業務の規模というのは、いわゆる売り上げにおいての規模ですから、売り上げについてはそれを示すことはできると思うのです。これは、私も質問する前に随分検討いたしました、業務の規模で読めるかどうか。

 ところが、いろいろなところからいろいろな見解も聞いたのですが、業務の規模というのは、いわゆる生産農家の売り上げまでは読めるのじゃないか、しかし所得までは読めないだろう、所得特例にこれは持ってきていますから、売り上げまで読めても所得は読めない。

 それで、私もいろいろどういう使われ方をしているかというので、業務の規模について、農業災害補償法施行令で業務の規模が規定されております。その中の第一条の五になりますが、この業務の規模の基準は全部面積になっています。したがって、これから所得まで読むというのはできない、そう考えますが、大臣、どうお考えでしょうか。

中川国務大臣 今、山田委員御指摘のように、耕作の業務の規模ということに関しての定義というか考え方の御質問でございますが、耕作の規模ということであれば、これは面積ということになるのだろうと思いますけれども、業務ということになりますと、いろいろなことが入ってくるのだろうというふうに考えられるわけであります。

 もちろん、法律でございますから厳密に考えなければいけないわけでございますけれども、きのうも、第一条で経営安定ということが目的である、山田委員からは、第一条はあくまでも趣旨というか目的で漠然としたものであると。私も、御趣旨と基本的にはそう変わりはございません。

 しかし、そういう趣旨を前提にいたしまして、第二条で耕作の業務の規模というふうに書いてございますので、いい経営をするということが当然の目的であり、前提でもあるというふうに考えておりますので、そういう意味で、いい経営ということになりますと、土地利用型でございますから規模の大きさというものもあると思いますし、また、売り上げ、収入というよりもまさに所得というものがいい経営として我々が期待しているところでございますので、この法律の趣旨を受けまして、先ほど申し上げましたように、省令において所得特例という形で規定をさせていただいております。

 この趣旨に基づきまして、山田委員からの昨日来の御質問に答えまして国会の場で私が正式に、これは所得も含むものである、したがって所得特例というものが今回の対象になるというふうに答弁をさせていただいておりますので、ぜひともこの趣旨、また法の目的、あるいは民主党案も含めまして、よりよい農業、体質強化のための農業づくりのためにこれからも邁進していきたいと思いますので、御理解のほどをよろしくお願いをいたします。

山田委員 私も法律家でございますが、法律というのは、いわゆる限定的に、何でもそうですが、定義においてそれを拡大解釈というのはできるだけ避けなければならない、それが原則です。

 そういう意味で、業務の規模、規模というとこれは売り上げを指すものであって、所得、収入の中身まで指すものではない、そう考えますので、実際に、最終的にはその法律の解釈を、例えば、大変失礼でございますが、大臣がこう言うんだからこうだということ、これはこの国会の議論の場ではそうはなりません。もし大臣がそう言うのであれば、この法案をこの場で修正する、政府閣法ですから、大臣が出しているわけですから、これは特例として収入を含むんだ、そういう修正をして法案を出されれば審議の対象になりますが、大臣が、みずからこれは大臣がこう言うんだからそう解釈するんだということには相ならないと私は思いますが、大臣。

中川国務大臣 いや、私が申し上げたのは、私がこう言ったんだからこう解釈しろではございませんで、法律家の山田先生の前では大変緊張しながらこういうことは言わなければいけないと思いますが、法律に定義されていることに基づいて省令でより明確に規定をしているという形になっているということを先ほど申し上げたかったわけでございます。

 したがいまして、仮に、そういうふうに読めない、法律上読めないものを省令に落としているということであれば、これは法律上の法的な専門家の間の御判断ということになると思いますけれども、この一条の趣旨、二条の規定に基づいて省令でより具体的に落としてあるということで、所得というものを対象にするというふうに理解をしているわけでございますので、法律家の山田委員でございますから、その点については御理解がいただけるのではないかというふうに思う次第でございます。

山田委員 いずれ、特例でどれだけ救えるかということもこれからの論議になっていきますが、多分恐らく、七割の農業者が、今まで麦とか大豆をつくっていたものが、一切何らの、大豆においては二万七千円とか、麦においては四万、これがもらえなくなってきた場合に、十九年度から国内に農業のパニックが起こるんじゃないか。

 そういった際に、大臣、例えばこの特例はどういうふうになっているかといいますと、市町村の基本構想における目標所得額、この目標所得額がそれぞれ決まっていっているわけですね、各市町村。

 例えば、六百万台、五百万後半というのが多いようですが、六百万台から上ですね。いわゆる一般のいろいろなほかの工業とかあるいは商業とか、そういったものを所得に合わせて所得目標額というのを決めているようですが、その金額を、この所得特例があるんだということで各市町村においてかなり減らしている。今まで、従来どおり、六百五十万、それの半分ですから、あるいは三百二十五万だったら所得で救済されるというところがあるけれども、各市町村がこれは自由にできるわけですから、三百万台にしているところも出てきたわけです。

 大臣は上の方のことは知っているかもしれませんが、下の末端の小さな町村のことまではわからないかもしれない。各町村においては、今度の担い手法案で目標額を三百万台の後半まで落として、一方では百五十万の所得でもらえるところも出てくる、一方では三百二十五万でないともらえないところも出てくる、その半分にして、そういったところの格差が大きくなってきたわけです。

 そうすると、この所得特例は、いわゆる業務の規模に入らない、そういう法解釈ができた場合に、これは大臣、行政不服審査法六条の異議の申し立てがやれる、そして異議の申し立てをやって、一方ではもらえる、一方ではもらえない、かつ、これは法律に反していることだということになったら大変な混乱が生じる。こういう法律なんというのは今まであり得ないことで、このような法案を出すこと自体がおかしい。

 大臣、今からでも遅くない、その辺について明確にすべく、混乱を起こさないように、いわゆる修正をするお考え、それをしなければならないと私は考えていますが、そういうお気持ちはありませんか。

中川国務大臣 今山田委員御指摘のように、不公平が本当に存在するとするならば、それは避けなければならないということは言うまでもないことでございます。

 したがいまして、今回の目標所得、県が定め、そして市町村基本構想の中で定めているわけでありますけれども、それは、例えば私の地元の例は、大変恐縮ですが、耕地面積が五十ヘクタール近くあって、そして所得が四千万を超えるようなところもございます。あるいはまた中山間、小規模でありますけれども、しかし、経営を一生懸命やっている方もいらっしゃいますし、またいろいろな地域で効率的にやっている方もいらっしゃる。都市農業もある。

 それぞれが利点を生かしてやっているわけでありますから、そういう意味で一律に、さっき四千万と言ったのは売り上げでございますけれども、利益がどのぐらいになるかとか利益率がどのぐらいになるかとか、それに対しての投下資本であるとか労働時間であるとか、いろいろなことがそれぞれ日本じゅう違うわけでございます。だから、WTOにおきましても、私どもは多様な農業をやっていく必要があるんだ、国によっても、また地域によってもそういうものを守っていかなければならないんだということを主張しているわけでございます。

 一律に数字、文字どおり、売り上げですとか、あるいは所得ですとか、あるいは経営規模であそことこことは大きい小さいがあるということよりも、むしろ、その地域に住んでいらっしゃる農業に従事する方たちが、せめて他産業並みの所得が得られるようにということの方が実質的に公平になるという方針でこの法律案ができているわけでございます。

 そういう意味で、その地域における他産業並みということになると、東京と御地元の長崎や北海道ではおのずから違ってくるわけでございますから、その中での不均衡をなくすということに主眼を置いたということが趣旨でございますので、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。

山田委員 大臣、これはまさに、今大臣は業務の規模を先ほどから話しておりますが、法律として省令委任事項は違反であるということは、今言ったように、いわゆる所得目標を決めるときに、私が市町村の長であったらこれを例えば百万とか二百万とかに目標を下げることはできるわけです。下げた場合に、一方では六百万としながら百万と定めたら、五十万の所得があれば、いわゆる米とか麦とか大豆にはすべてやるとなったら法の意味をなさないわけです。こういう法律は今までにないことです。そういう意味では、これ以上今ここで議論してもしようがありませんが。

 では、大臣、今の農水省が考えているというか、一般的な目標所得からして、私が調べたところでは、規模基準、四ヘクタール以上とか集落営農とかいろいろありますが、そういったものとかなり重複している。その所得が、例えば一般的な標準で半分にしても三百万以上だとした場合、年間所得が三百万以上としたら、かなりダブっている。だから、農水省としては、それがダブっている部分でどれくらいいるか算定不可能だということで今回出してきていないようです。

 一体、所得特例で三割の農業者しか販売農家が救われないとして、それがどれくらい救われると考えて今この法案を提出しておられるのか。質問の趣旨がわかりますか。特例は農業者の三割しかスタート時において認められないだろう、七割の人は今回この所得の対象外になると言いながら、所得特例は別だ、所得特例で救われる部分がある、その救われる部分をどれくらいと考えてこの法案を施行しようとしているのか。いわゆる法案をつくって出して施行する大臣としての責任として、その辺の概算を出してもらわないとこれ以上審議できない。大臣、いかがですか。

中川国務大臣 三割、五割につきましては、冒頭私から答弁させていただいたとおりでございまして、現時点におけるというか、過去数年間における数字を仮置きして試算を出したわけでございます。これは、二田委員初め当委員会での強い御指摘があったことを踏まえまして、試算として三割、五割と数字を出させていただいたわけでございます。

 そういう中で、それには所得特例部分は入っていないということは以前から答弁をしているところでございますけれども、では、所得特例についての対象農家の面積及び数はどのぐらいになるのかということでございますけれども、これも、結論から申し上げますと、試算が非常に困難だというのが結論でございます。さらに、四ヘクタール、十ヘクタール、あるいは集落営農の二十ヘクタールですと、これは面積が一応の基準としてあるわけでございますから、これを把握することは、面積は把握ができるわけでございまして、その上に仮定の幾つかの数字を置いてああいう形になったわけであります。

 所得の場合には、先ほどから申し上げておりますように、市町村ごとに基本構想の半分以上の農業所得を確保して、そして対象品目の収入、所得または経営規模が全体の農業経営のおおむね三分の一以上である経営ということを考えておりますので、そうしますと、所得額の把握が個々の農家に対して極めて難しい、あるいはまた個々の農業者の対象品目の収入、所得あるいは経営規模がこれまた極めて把握自体が難しい、また年々変動するということで、現時点においては、試算することは三割、五割の試算よりもはるかに難しい。つまり、正確性の担保がより低くなってくるということを、これは山田委員も御理解いただけていることではないかと思います。

 いずれにいたしましても、所得特例によって、面積にこだわらずいい経営をやっているところはできるだけこの対象にしていきたいという気持ちでございます。

山田委員 それについてある程度の概算、どれくらいかということもつかめずにやるということで、私は大変おかしなことだとは思いますが、時間が来ますので。

 次に、大臣、今回そういう形でできるだけ担い手を広く、できるだけ多くその対象にしたいようなことは言っておりますが、メリットがあるからということをきのう私の質問に対して再三言いました。一体、担い手になるメリット、今までの各品目別の麦作経営安定資金とか大豆交付金とか、そういったものが今回担い手になればどういうメリットが具体的にあるのか、それを明確にお答えいただきたい。

中川国務大臣 まず、日本全体といたしましては、これは農家の皆さんには直接実感がないかもしれませんけれども、WTO上の整合性がとれるということは、現時点におきましては、この後どうなるかは、交渉の結果を予断するものでは決してございませんけれども、現にやっている交渉にとって、私にとりましては、こういう法律を今審議しているんだ、あるいは仮に成立したんだということになると、交渉上非常に日本の立場にとってはプラスになるというのが一点であります。それから、日本全体の食料生産にとってもプラスになるということでございます。

 農家にとりましては、担い手という制度は御承知のとおり今までもあったわけでございますけれども、今まで担い手になってメリットが何があるんだろうというと、制度資金の一部を有利に借りられるという程度のメリットしかなかったというのが農家の実感のようでございますけれども、きちっとした計画を立てて、そして認定されれば、それによって所得の補償ができる。

 例えば、共済といいましょうか、きのうも御指摘ありましたが、大災害に遭ったときに最大七割しか補てんできなかったものが九割まで補てんできるとか、あるいはまた、いろいろな内外価格差の状況の中でのいわゆる生産条件格差の部分を国から経営体全体として資金を受けることができるとかいった意味で、安定的に、しかもさらに、これは黄色の部分の話になりますけれども、規模拡大をしていけばそれがよりメリットが大きくなるという意味で、逆に言うと、これがなくなってしまったということの方が意欲がある農家にとってはマイナスになっていく方向だというふうに私は理解をしております。

山田委員 農水省から何回も私は説明を聞いたんですが、いわゆる担い手に対しても今までの麦作経営資金とか大豆の交付金と同じ金額、現行水準でやる、それは大臣、間違いありませんか。間違いないかあるか、それだけお答えいただきたい。

中川国務大臣 水準としては同程度でございます。

山田委員 とすれば、いわゆる天災、災害時に七割が九割になるというメリット以外に、どこにメリットがありますか、具体的には。もう端的に、何秒かで答えていただきたい。私の持ち時間、あと予算を聞かなきゃいけない。

中川国務大臣 担い手というのはいいものをいっぱいつくりたいということでございますから、国から余計にお金をもらおうということ、これはWTO上も、日本の農政からいっても、これはそういう制度ではございません。

 そうではなくて、今までと同じような所得をきちっと補償した上で、さらに施策をいろいろと集中していくという観点から、直接支払い、品目横断による経営安定対策。

 つまり、経営の土台がしっかりできている、これをある程度国が、ある程度でございますけれども補償する、その上で意欲的な経営もさらにやっていただけるようにするというインセンティブという意味も含めまして、私はこれを導入することは対象農家にとってはプラスになることだろうというふうに確信しております。

山田委員 これから担い手に対しては国がいろいろな政策を重点的にやっていきますよと言ったって、それだけで具体的なメリットにはなりません。

 これは、農家にとってみれば、今度麦をつくり、大豆をつくり、てん菜をつくり、それに幾らその直接支払いがあるんですかと、そこですから。そういう意味では、今回の法案は、大臣、担い手になってもメリットがない、担い手にならない七割の人は何ら交付がないということ。

 では、予算です。予算について私がきのう、アメリカにおいてはこれだけ、イギリスにおいては九一・五%といったような資料を見せて、これだけ直接支払いがあるのに日本は一・五%しかない。ところが、現行水準のままでいきますと今大臣ははっきり言ったから、さらに予算額は大幅に下がることになるではありませんか。ところが、きのう大臣は、予算が来年からはね上がると言った。それはどういうことですか。

中川国務大臣 あれはたしか、山田委員からいただいた資料によると、各国の直接支払いの金額ということでございましたので、現行で直接支払いをやっているのは中山間直接支払いだけでございますので、それに今度新たにこの四品目、五品目について直接支払いをやる。金額についてもいろいろ議論がありますけれども、その分が乗っかるということでございます。

山田委員 確かに中山間地域、二百二十億ぐらいでしたか、それだけしか直接支払いやっていませんけれども、そうじゃなくて、今回の品目横断で、いわゆる大豆交付金とか麦作経営安定資金を出さないわけですから。いいですか、出さないから、もらえない人が七割になって、さらに、もらえる人も現行水準のままだとしたら、何の得策も、何のメリットもないし、予算もはね上がるどころか、どんどん半分以下に下がるかもしれないじゃありませんか。予算の要求は一体幾ら考えているんですか、それも明示されていない。

中川国務大臣 きのういただいた資料は、直接支払いの資料を前提の御質問であったと思いますので、直接支払いとしては新たにこういう制度ができます、その場合には、中山間支払いに加えまして、これはあくまでも現時点での予想数字、これもあくまでも確定ではございませんけれども、当委員会でも既に答弁をさせていただいておりますが、条件格差是正のための直接支払い額は千七、八百億ぐらいになるのかな、あるいはまた格差変動支払いについては百数十億円ぐらいになるのかな、しかし、これも、どんどん対象農家がふえていけば、当然これは制限は加えておりませんので、ある意味では、これは財務省的に言うととんでもない話かもしれませんけれども、対象農家に対する支払いがどんどんふえる。つまり、日本の農業の足腰が強くなるということを農政サイドとしてはむしろ期待したいぐらいでございますので、その程度のものが乗っかっていくということは、これはもう既に当委員会でも何回も答弁をさせていただいているところでございます。

山田委員 今、千七百かあるいは八百億円かなというお話でしたが、今までのいわゆる麦作経営安定資金とか、あるいは大豆交付金とか、てん菜とかジャガイモ、品目別。今回、担い手の対象になる部分についての予算は、大臣、現行の水準でいくと言うんですから、今まで幾らだったんでしょうか。

中川国務大臣 いや、ですから、現行制度で支払いしているのが千七、八百億でございまして、今のまま同じように仮にスライドをすればという現時点での数字でございますから、では、制度が発足した後どうなるのかということにつきましては、一つは、先ほど冒頭お答えしたように、所得特例が全然入っておりません。それから、それについての根拠になる数値もまだ決まっておりません。そういうものもございますし、それから、認定農家、対象農家の数とか対象集落営農の数とかによっても違ってまいります。

 今の制度の中でこれにほぼ類似するものが千七、八百億であるということで、先ほども申し上げたように、大いにこれが政策遂行という観点からふえていくということは、我々にとってはそういう農政が進められるという意味でも、ある意味では期待すらしたいというふうに思っているところでございます。

山田委員 現行水準でいって、しかもスタート時に麦作とかてん菜とか云々含めて三割しか、多分、特例がどれくらいあるかわからないとは言っていますものの、耕地面積の五割しかということになると、予算規模はどう考えても、もうすぐに概算要求しなきゃならないんですが、減らざるを得ないだろう、そう考えています。

 私はきのうから大臣に種々質問させていただきましたが、今回の法案というのは、本当は、自給率を向上するというのではなくて、どう考えても実際にはそれだけ支給が減っていくわけですから、歳出削減を考えている。

 そして、いわゆる今農家は、私地元を歩いてみますと、もうこれを機会に、金が四万ももらえない、二万七千円ももらえないんじゃ、麦もつくらない、対象にならないようだったら、大豆もつくらない。そしてもう、さらに耕作放棄、この際農業をやめる、そういう農家がかなり出てきているようです。

 こうなったことで、逆に、今の大臣、今の農水省の考え方は、いわゆる今回の法案で耕作放棄地をさらに倍増させる、まさに今回の法案は、いわゆる農業をついえる、いわゆるつぶす、そういう形としか思えません。

 私は、きょうは三十分皆さんから時間をいただいて質問させていただきましたが、三十分の時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 どうか、そういう意味では、大臣、これを今後どうしたらいいかというのは、ことしから来年、来年までにやればいいだろうとは言っていますものの、ことしの秋小麦から始まるわけですから、ことしの秋までに何とかしなきゃいけない、概算要求も八月までには出さなきゃいけない、そういう大事な時期で、今回の質問で、まだまだ何もほとんどできていない、概算要求の額をここで明示できないという形では、非常に不本意な法案であるということを最後に言って、私の質問を終わらせていただきます。

稲葉委員長 次に、松木謙公君。

松木委員 民主党の松木謙公でございます。

 山田先生も大分熱くなられていましたけれども、本日は、農政の大改革と称せられる今回の政府提出の法案、その対案として提出された民主党案の総括審議ということでこの場に立たさせていただいているわけですけれども、大変私は光栄に思っております。

 その中で、地元の案件も一つありまして、農村地帯というのはやはり鉄道というのも大変必要なんですけれども、ふるさと銀河線、中川大臣もよく知っていると思うんです。本当は、心の底では中川大臣もこのふるさと銀河線がなくなるということに心が痛んでいるんじゃないかなというように私は思っているんです。

 一八八〇年に北海道開拓のために二両の蒸気機関車が輸入されたんですね。それはアメリカから輸入されたんですけれども、それが義経号と弁慶号。いかにも日本人らしい名前ですけれども、北海道において鉄道は、開拓の推進と国土防衛、こういう観点からも大きな役割を果たしてきました。それは当然大臣もよく御存じだというふうに思います。

 機関車は採掘した石炭を運んで、人も運ぶし、そしてとれた農作物も当然運ぶわけですけれども、そこで村ができて、人がいる。大地を耕して、そして先人たちの一滴一滴の汗が沃野をつくってきたわけですけれども、鉄道は地域の活性化にも大いに貢献してまいったわけです。

 北海道における鉄道とは、内地の人、内地というのは皆さんわからないと思いますけれども、北海道の人間というのはよく内地の人という言い方をするんですけれども、その人たちに決してわからないとは言わないけれども、非常に北海道というのは広大な土地で、やはり鉄道というのは非常に大きな位置づけをいつでも持っているわけでございます。

 この私の地元でこの四月にふるさと銀河線の廃止が決定してしまったんですけれども、鉄道の廃線は農村地帯の過疎化の進行に拍車をかけるのではないかという危惧を私はしております。寒冷で広大という北海道の独特の中で、鉄道の廃線により地域が再び荒れ野に戻ってしまう、そういうような気がして、断じてこれを座視することはできない。鉄道のない町というのはこれからどうやって人が定着して、そして今農業の経営安定対策とか担い手のことをやっているわけですけれども、そういう鉄道もないようなところは、農村地域の経営安定化対策にもやはり大いに関係してくるというふうに私は思っているわけですね。

 まず、北海道開拓に鉄道が果たしてきた役割、これをどのように考えているか。そして、農林業の振興の観点から、鉄道事業をどのように評価するのか、これにお答えをいただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 松木委員のところも私のところもお隣の選挙区であり、それを結んでいたのが先月廃止になりましたふるさと銀河線ということで、私も大変寂しく思っているところでございます。

 経営上の問題があったり、また、行く行くは松木委員のところと私のところが自動車専用道路で結ばれるとか、いろいろな夢もございますけれども、しかし、通学あるいは通院されている方々にとっては、バス代替というのは、二、三日前にも聞きましたけれども、やはりスタートしていろいろ御苦労されているという話も聞いております。

 鉄道が果たす役割というのは、これはもう近代国家にとっては極めて大事なものであって、アメリカの開拓において鉄道の果たした役割、あるいはまた、これは戦前の余りいい歴史ではないのかもしれませんけれども、当時のソ連あるいはまた中国東北部、中国の開拓のために鉄道というものが、ある意味では極めて戦略的で、満州鉄道、あるいはまたそれに対して日本、ロシア、中国、あるいはアメリカの鉄道王のハリマンまでが中国での鉄道建設に大変な関心を持っていた。まさに鉄道は国家そのものであり、今後もその重要性は極めて大きい。大量に、そして比較的省エネルギーで運べるということでございます。

 そういう意味では、北海道は特に、松木謙公議員と同じ言葉を使いますと、内地の皆さん方の歴史に比べると、先住民の方々の生活を除けば開拓の歴史は短いわけでございますけれども、そういう中で、鉄道の果たしてきた役割は極めて大きいですし、また残っている基幹鉄道もますます今後重要になっていくというふうに考えております。

松木委員 第三セクターである北海道ちほく高原鉄道株式会社、これは今、清算、鉄路の排除、とってしまうんですね、などの財産処分を行おうとしているんですけれども、ふるさと銀河線の廃止によって、生活、交通の足がなくなって、公衆の利便がかなり私は失われるというふうに思っておりますけれども、大臣もそれはやはりそうだよなというふうにお考えかどうか、お答えをいただきたいと思います。

中川国務大臣 ですから、つい最近も地元の関係者の皆さん方のお話を聞くと、特になくなってバス代替になった直後であるということも含めまして、寂しさもあり、また実質的にもいろいろな不便を現時点で感じているというような御発言が随分多かったということを承知しております。

松木委員 鉄道のレールを撤去した場合、鉄道事業を再開するには大変な労力と費用を要することになってしまいます。

 それで、JR北海道においては、鉄路は鉄道車両、道路はバスとして動く、そういうものが実は今考えられていまして、これはデュアル・モード・ビークルというシステムなんですけれども、実用化に向けた取り組みがなされています。

 今後、やはり高齢者の人口比率が高まることも予想されていますよね。そうであれば、やはり交通弱者ということを考えますと、この鉄路を残してデュアル・モード・ビークルというものを走らせることもいいんじゃないかなというふうに私は思っているんですけれども、このデュアル・モード・ビークルのモデル線区としてここを置いておくということも可能性としてはないのかなというふうにも思っております。

 現在のこのデュアル・モード・ビークルの開発状況というのをちょっと御説明いただきたいというふうに思います。

 それと、もう一つ委員の皆さんに言っておきますと、要するに、鉄路も走れて、そしてタイヤもついて普通の道も走るというのがデュアル・モード・ビークルというものなんですね。では、よろしくお願いします。

桝野政府参考人 お答えいたします。

 先生おっしゃるように、デュアル・モード・ビークルというのは、基本的にはバスの車体を鉄道を走れるように改造いたしますものですから、鉄道も道路も走れる、そういうような交通機関として、比較的輸送量の小さなところに導入しようということで進めておるものでございまして、地域交通ネットワークの維持や公共交通の活性化に資する新しい地域の足として期待されているものでございます。現在は、十七年七月、昨年七月にJR北海道が実用化車、プロトタイプ車と言うらしいんですが、それを完成いたしまして、各種性能、走行試験を行っております。

 JR北海道におきましては、十八年度中にも、長期の走行ができるような、安定的な走行ができるというのを確認しつつ、開発を終えていきたいという意気込みを持っておりまして、私ども国土交通省としても、可能な限り早期にこれが実用化できるように、制度面や技術面など対応につきましてバックアップしてまいりたいと考えておるところでございます。

松木委員 これはぜひ中川大臣、答えなくていいですけれども、地元のことですし、私も一生懸命、かばん持ちでも何でもやりますから、本当に実現したいなと私は思っているんですよ。あのまま銀河線がなくなるというのは寂しいですから、本当に、答えなくていいですから、ぜひそういうお気持ちを持っていていただいて、いつでも何でも私はやりますから、野党から言っていいこともいっぱいありますから、ぜひそういうことを頭の中に入れておいていただきたいというふうに思います。

 ビジット・ジャパン施策の重要性の指摘がなされる中で、大自然の中を走る地方鉄道はそれだけでやはり重要な観光資源になるというふうに思っております。また、鉄道の発展している我が国においては、鉄道を活用して外国人の観光客を移動させることも十分想定されているわけです。隣国、中国、海外渡航者数は既に年間三千万人というふうに言われております。今後も増加することが見込まれているわけですけれども、そういう意味では北海道にもいっぱい来てくれるというふうに思っております。中国からの観光客を呼び寄せていく上での観光資源、観光手段としての可能性について、ぜひ、観光推進、その立場からこの鉄道のことをちょっとお話をいただきたい。

 そして、これは中国だけじゃないですね。例えば台湾もそうですし、台湾の方というのは雪を見て非常に喜ぶ方々も多いし、そして、韓国の方々もいるでしょうし。そして、今、拉致問題ですっかり仲の悪くなっている北朝鮮、これだって、ずっとそうじゃなくて、拉致問題が本当の意味で、中川大臣は一生懸命前から拉致問題をやっていますけれども、解決がついて、そしてまともな国になったら、この北朝鮮からも将来は観光客が北海道にもいっぱい来る、東京にも来るでしょう、そういうふうにも思いますので、そこら辺のことも含めてお答えをいただきたいというふうに思います。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 ビジット・ジャパン・キャンペーンにつきましては、二〇一〇年までに、外国人旅行者、これを一千万人にしたいという目的に向けまして、日本の観光魅力や魅力的な旅行商品などを造成いたしまして、外国人観光客誘致のために施策を官民一体で進めているところでございます。北海道にも大変御協力をいただいて、北海道は大変大きな伸びを達成していただいているというふうに認識しております。

 訪日外国人旅行者の誘致に当たって、中国市場、もちろん重要でございまして、中国市場につきましては、特に重点市場の一つといたしまして施策を積極的に展開しております。特に、ことしにつきましては、日中観光交流年というような形で、日中各地でさまざまな事業を展開しているところでございます。

 外国人にとって魅力ある観光資源としての鉄道ということの活用についてでございますけれども、我が国を訪れる例えば中国人観光客につきましては、日本の先端技術のイメージに合致する新幹線、こういうものに対する人気が大変高うございますし、また、一般的ではございますが、北海道では、富良野・美瑛の風光明媚な観光地をトロッコ車両で低速走行する富良野・美瑛ノロッコ号が、ゆっくり走るトロッコという意味のようでございますが、先ほど先生から御指摘がございました台湾とか韓国などからの観光客にも大変人気があるというふうに承知しております。

 このような状況にありますことから、鉄道につきましても、その独自性や周りの景観、自然環境との組み合わせ、また何らかの形で体験型の施設とするなどによりまして、魅力を高める工夫によりまして、今後、外国人の観光客にとっても観光資源としての可能性は十分あるものというふうに考えております。

 以上でございます。

松木委員 そうであるならば、このふるさと銀河線なんというのは、どうですか、個人的な意見でも結構ですよ、残しておいた方がいいな、三十一億もかけて今すぐ取ることはないな、こういうふうに思いませんか。答えづらかったらいいですよ。

柴田政府参考人 一般論でございますが、廃線になった鉄道の観光への活用ということでございますが、これにつきましては、やはり、その線路とか敷地をどのような活用するかということを、所有者を中心といたしまして地元の方々、そういう方々が十分にお話し合いをしていただきまして、その中で考えていただくことであるかなというふうに思っております。

 ただ、これを観光資源として活用する場合には、先ほどちょっと例で申し上げましたが、トロッコに活用するような事例とか、また、鉄道の跡地をオープンスペースとしていろいろなイベントに活用する、いろいろなことが考えられるかと思います。

 ちょっと現場の状況について十分承知しておらないので、先生がおっしゃる線をどういうふうに活用すべきかということについては皆さんでよく話し合っていただいて、その中でまた御相談に乗れる部分もあるのかな、こういうふうに考えております。

松木委員 今、お答えの中で、現場をまだ知らないのでという話がありました。ぜひ出張して行ってくださいよ。このままいったら、黙っていたら、六月ぐらいからもう撤去作業をやるという話なんですよね。やはり知恵というのを出してもらいたい。別にプレッシャーをかける必要はないですから。行って、どうするの、何か、そのまま外してしまうような話も聞いているけれども、いろいろなことに利用できるんじゃないかという示唆とか、そういうことも含めてぜひやっていただきたいなというふうに思います。

 多分、中川大臣も同じことを今思っていますよ。そんなことで、答えづらいでしょうから、これ以上は言いませんけれども、ふるさと銀河線、本当に大切なんですよ、ぜひお考えをいただきたいというふうに思っております。

 それでは、こちらの方はこれで終了させていただいて、今回の政府提出の農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案、それと、民主党提出の食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案、これを含む四法案に関する審議、ずっとここのところやってきたわけでございます、三十時間。

 そして、四月十九日には、それぞれ宮崎そして北海道、こういうところで地方公聴会というのも開きました。そして、現場の話も一生懸命聞こうということで、これはもう与党、野党じゃないですね、とにかく一生懸命やってきたわけであります。

 そして、やはりどうしても私は北海道のことになってしまうんですけれども、北海道というのは日本の国土の五分の二ぐらいたしか占めているはずですね。東京から約千二百キロ離れた北の大地で、現在、東京が二十五度ぐらい、ちょっときょうは低いですかね、二十度としても、ただ、私の選挙区、中川大臣の選挙区もそうですけれども、十度とか、もっと寒いときは五度とか四度とかということもあるんですけれども、随分差がありまして、距離も気候も全く違った場所で、永田町や霞が関の机の上で考えて議論されたものから非常にかけ離れたことになってしまうわけですよね。

 それで、四月十九日に、委員派遣の際、北海道で農業者の意見をたくさん聞いたということなんですけれども、この中で、いろいろな非常に有意義な話が私はあったと思っているんです。その中から、幾つかちょっとお話をしたいと思っているんですけれども、大体、陳述者の方々、それぞれの口から出てきた言葉というのは、やはり不安なんですよね。どうなるんだろうなという言葉が随分出てきたんだというふうに思います。やはり、経営安定対策への不安、後継者育成への不安、担い手認定への不安、農地確保への不安など、さまざまな不安がつきまとっているという感じでありました。

 新しいことを始める場合に、このような不安というのは当然つきものであるとも理解できるわけですけれども、ただ、この不安が、単に根拠のない不安なのか、あるいは、これまでの農林水産行政の中で農業を営まれてきて、その行政とのかかわりの中で、決められた政策が功を奏するのかというやはり経験上からの不安などもたくさんあるというふうに思っております。戦後農政の大転換ともいうべき新たな経営安定対策によって、担い手の経営が逆に不安定になるようなことがあっては絶対にいけないわけですよね。

 北海道は我が国の一番の食料の生産基地なんですけれども、北海道の農家に新経営安定対策についての意見を求めますと、口々に将来の不安ということを言う方が多いんですね。政府にもこういう話は届いているとは思うんですけれども、生産条件格差是正対策による支援水準の十分な確保を図るべきではないかなというふうに思っているんです。

 すなわち、現行の品目別価格対策を廃止するんですね。廃止するんですから、その水準を下回らないことはもとより、できれば別枠の予算をとってでも農家の支援に万全を期すべきではないかというふうに私は思っております。そこら辺をお答え願います。

中川国務大臣 農家の皆さんは常に自然、生き物を相手にしておりますから、朝起きたときの天気あるいは気温等々はもう当然、まずそこから始まって、特に搾乳農家なんというのは一年三百六十五日、松木委員や私の地元のようなところはマイナス十度、二十度のところでやっているわけでございます。そういう中で、自分たちの経営が将来に対して不安があるとするならば、その不安を何としても軽減あるいは除去できるようにするのが私は農政だというふうに思っております。

 そういう中で、戦後の農政を短くお話しいたしますけれども、見てみますと、どんどん自給率が下がってくるとか、あるいはまた輸入品がふえてくるとか、あるいは農家の将来展望が見えないということで、昭和三十六年にできました農業基本法を、今から七年ほど前に、食料・農業・農村基本法ということで、日本の農業、食料政策は、単に生産サイドだけではなくて、中間段階それから消費者も含めて、みんなで自給率の向上、あるいはおいしい、顔の見える、例えば北見のタマネギであるとか牛乳であるとかということによって、生産サイドに対しても頑張ってもらいたいということでやってきているわけであります。

 しかし、それでも、高齢化とかあるいはまた人口減少とかいった中で、経営に展望が持てない、いい経営をやろうとしても、あるいはまた規模を拡大しても展望が見えないということに対しては、これは何としても、やっていけるはずの人をやっていけるようにしなければならないということの、今大転換というお言葉を使いましたけれども、とにかく基本法に基づく趣旨を進めていくことが必要であり、そのために今いろいろと基本計画とか大綱とかをつくり、この法律等を御審議いただいて、この法律によって、やる気と能力のある経営をしている方々の意欲をまさに農業経営という経済行為の結果として生み出せるようにしていこうということでございます。

 特に私の地元や松木委員の御地元は私は意欲がある経営者は多いというふうに確信をしておりますので、これはやはり、御議論でもありましたけれども、よくわからないとか内容が見えないとかいうのは、公聴会に出席の方々からも、農政の専門家の方々ですらあったわけでありますから、今後よく御理解をいただいて、そして松木委員の御地元の人たちに、こんなメリットがあるんですよということをぜひとも御理解をいただくということが、北見、網走農業、あるいはまた日本の農業、そして国民に対していい農産物を北見、網走から供給できるんだ、売れるんだということになると思います。ぜひ、松木委員におかれましても、御地元で政治を代表して、この法案の目的、メリットについてぜひとも一人でも多くの方に御理解をいただくように、いろいろとリーダーシップを発揮していただければ大変ありがたいなというふうに思っております。

松木委員 担い手に対して農地の利用集積を図って、農地の遊休化防止と効率的な土地利用を図ること、これが経営安定対策の根幹というふうに言われておりますけれども、担い手新法が農地遊休化の引き金になることが逆にあるということがあってはなりませんよね。

 今回の生産条件格差是正対策の面積支払い、いわゆる緑のゲタが農地と結びついた受給権的性格を持つと、基準期間の三年間に、品目横断的な経営安定対策の対象作物の生産実績を持たない農地の売買、貸借に際して、農地価格の下落やそういうものが懸念されるんだというふうに私は思うんですね。また、このような過去の生産実績を持たない農地が売りに出されても、引き受ける相手があらわれなければ農地の遊休化に結局つながっていく可能性もあるわけですね。面積支払いの仕組みが農地流動化の支障にならないように私はすべきではないかなというふうに思っていますけれども、ここら辺はどういうふうにお考えでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 松木委員が御指摘になられたようなことは、私どもも、例えば北海道に参ったときに、稲作地帯、畑作地帯問わず、お話を伺っているところでございます。

 御承知のように、今回の品目横断的経営安定対策におきましては、過去の生産実績に基づく支払いというのが、農業構造の改革を推進し、農地の流動化によって農業者の経営規模の拡大意欲を阻害しないように、その制度の中におきましては、農地の権利移動が伴う場合には、個々の農業者単位に設定されている過去の生産実績を農業者間で移動することが可能になるような仕組みを考えているところでございますが、過去の生産実績のない方から農地を取得して規模拡大した場合につきましては、これは過去の生産実績に基づく支払いが対応できませんので、毎年の生産量、品質に基づく支払いのみでの対応が基本となります。

 ただ、担い手によりまして、主要食糧の安定供給といった政策目的に沿ったものである場合につきましては、これは本制度とは別に、十九年度の予算の概算要求における対応も含めまして、しかるべき対応を検討しているところでございまして、こういう措置を講ずることによりまして、農地の流動化が逆流しないように努力をしてまいりたいと思っております。

松木委員 それでは次へ行きますけれども、生産条件格差是正に係る交付金に対する税制上の取り扱い、何回もこういう話があったんですけれども、せっかく交付金を受けても、これに対して所得税が課税されることになれば、生産条件格差の是正が不十分になってしまうのではないか、特例措置をぜひ設けるべきではないかというふうに思いますけれども、ここら辺の御見解はいかがでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 生産条件格差是正対策の交付金につきましては、原則的にはその交付を受けた人の益金または事業所得に算入されまして、これを含め法人税または所得税が課税されることになります。

 他方、この交付金が担い手の農業経営の安定を図るために交付されるものであるとの趣旨を踏まえれば、その政策効果が減殺されることのないようにすることが極めて重要でございます。

 いずれにいたしましても、その課税の取り扱いにつきましては、来るべき平成十九年度の税制改正要望に向けまして、関係者の意見も聞きながらさらに検討をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

松木委員 時間も余りないのですけれども、農地・水・環境保全向上対策については、品目横断対策と車の両輪というふれ込みでありますが、それは少々バランスを欠いているのではないかという危惧を抱いております。

 トラクターのように力強い輪じゃなくて、自転車の細いタイヤがありますよね、あんな頼りのない水準ではないかという声もありますし、前タイヤだけ太くて、後ろはこんなにちっちゃくなっているんじゃないかという、申しわけ程度のものではないかということを言う人もいるぐらいです。

 農地・水・環境保全向上対策は、食料の供給だけでなくて、多面的機能の発揮に軸足を置くもの、これに改めなければならないという意見もあるわけですね。地方財政が悪化する中、本当に品目横断政策との両輪としての位置づけが実現するのか疑問の声が非常に上がっているわけでございます。自給率向上や農村社会の維持のためにも、対策の充実を図るべきだというふうに当然思うわけですけれども、ここら辺はどうなんでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお話がありました農地・水・環境保全向上対策、品目横断的経営安定対策と車の両輪ということでございます。

 これにつきましては、先生御案内のとおり、地域において農地、水、環境の良好な保全、それから質的向上を図るという観点で、共同活動と言っている施設の保全と長寿命化を図っていく、あるいは環境保全に取り組むものと、それから、営農活動と言っております化学肥料、化学合成農薬の使用を低減する先進的な活動を促進するというようなことで考えておりまして、さらに内容的にもステップアップするような取り組みも支援をしていくということで、施策の目的に必要な内容を盛り込んでいるというふうに考えております。

 さらに、支援の水準についてもお話がございましたが、これにつきましては、水路、農道等の資源の保全管理に必要な作業の量を全国調査をもとに算定したものを根拠にいたしまして、一定の水準を決めております。これでモデル事業を実施しております。

 いずれにいたしましても、十九年度から本格実施をいたしますので、本年実施をしておりますモデル的な支援の状況を検証いたしまして検討していくということを考えております。

松木委員 それでは、次は、民主党の方に質問させていただきます。

 本会議の質問のときも私言ったんですけれども、農業の農という字は、日本書紀の中ではこれをなりわいと読むんですね。日本の国においては古来より農業が最も重要な生業であったというわけですけれども、食料自給ということについてはこれまで幾度となく数字の論議をしてまいりました。

 私は、やはり食料を可能な限り自国で賄うのが基本だというふうに思うわけですね。自給率というのはカロリーベースで、いろいろな話がありますけれども、要するに本当のことというのは、やはり口に入るもの、嗜好品はいろいろとありますよ、でも、なるべく自分たちで食べる。そうであればつくる。そうであれば、今回みたいにアメリカでどんな肉が出ようと日本の国の肉を食べていればいいわけですからね。そういうことを目標にするのが究極であろうというふうに思っています。

 民主党としても農業再生プランの中で自給率向上の計画をつくっておりますけれども、その数字の根拠というのを、達成に向けた考え方を、もうこの論議も最終盤を迎えていますので、もう一度皆さんに御披露していただきたいと思います。

山田議員 民主党としては、自給率を絶対に上げるということ、これはどうしても五〇%に十年間で上げるということを目標としておりますので、そのために、まず国で、自給率に資する農産物、例えばカロリーの高い菜種とか、あるいは大豆、そして小麦、そういったものを中心にして定め、あるいは地域振興作物、北海道においてはてん菜とかいろいろなものもあるかと思います、あるいは、場合によっては野菜とか酪農とかも入ってくるかと思いますが、そういったものを、地方から上げてきたものを国で定めて、それに対して生産数量目標を定める。その生産数量目標を定めたものに対して直接支払い、これは販売農家であれば、計画的に生産する販売農家においてはすべてを対象にして、そこに対して、いわゆる米並みの、皆さんどこでも米をつくるという形になるわけですが、米並みの収入を確保するということを大前提といたしております。

 それについて、では、耕地面積は大丈夫か、あるいは予算において大丈夫かといろいろ聞かれます。私ども、この基本法を提案するに当たっては、細かく、耕地面積から、あるいはどれくらいの金額を反当たりやったら、意欲といいますか、そういった形で生産できるか、そういったことも含めてすべて試算いたしました。これはあくまで試算ですので、時の状況によって変わってまいりますが、そういう試算を目標にして、概算ですが、一兆円は必要である。中山間地域の所得補償は現在二百二十億だと記憶しておりますが、それからすれば、本当に、先ほど中川農水大臣がおっしゃっておりました各国の直接支払いの所得に占める割合からしたって、我々は、政府が言ったように現行水準ではなく、それこそ飛躍的な直接支払いの金額、一兆円という形で具体的に自給率を達成する、そういう考えでおります。

松木委員 よくわかりました。

 先ほど山田委員の方から中川大臣に、今回のこの基本計画というか、こういうのは歳出削減になっているんじゃないかというお話がありましたね。そして、私、食というのはやはり一番大切だというふうに思うわけです。それは今回のBSEのことでもそうですけれども、アメリカの肉がすべて悪いとは言いません。しかし、食の文化も大分違うんですよね。

 ですから、やはり私は、自分たちの口に入るもの、さっきも言いましたけれども、やはり自分たちでつくるべきだ。それは、全部つくったってカロリーベースでいけば一〇〇%という自給率にはならないわけでしょう。それでも、そういうことを目標にしてやっていかなきゃいけない。例えば嗜好品、そういうのは別ですよ。そういうのは別ですけれども、ふだん我々が口にするものというのはなるべく日本でつくっていくということが究極の目的じゃないかなというふうに私は思っております。そのためにいろいろなことを審議しているというふうに私は信じております。

 そして、各、大臣、副大臣、政務官もそのためには一生懸命やってくれる人だというふうに、私は、ある意味では信頼もしています。与党と野党、立場は違えど、この農業というのは本当に私は大切だというふうに思っておりますので、ぜひ今回のこと、これをやったら食料の自給率が落ちることがあったらこれは失敗なんですよ。そういうことがあってはいけない。これは当然、皆さんの方の法案では、四〇が四五%になると言っております。これがもし達成できなかったときに、また、これは大変なことなんですけれども、そうならないように最大限の努力をやはりしなきゃいけないと思いますね。

 我々は今野党です。残念ながら我々の意見が全部通るわけじゃないんですね。しかし、我々の山田委員が一生懸命今回の法案づくりをしました。ぜひそのエキスも考えて、これから農林水産行政というのを行っていっていただきたいというふうに私は思っております。

 ぜひ、最後に、ちょっと時間をオーバーしちゃったんですけれども、一言ずつで結構ですから、自給率は絶対落ちないで頑張る、はいと言っていただきたいですね。大臣、副大臣、そして私の友である政務官もいますから、ぜひお願いします。

中川国務大臣 もうお気持ちは全く同じでございまして、ただ、売れるものをつくらないと買ってもらえないということもありますので、生産サイドが消費者サイドのニーズ、実需者サイドのニーズをきちっと把握していけば、これはもう日本の農産物は、まあ価格の問題もあるかもしれませんけれども、今や、顔の見える、安全、安心な国産のものに対する期待は、ウルグアイ・ラウンドの交渉当時と随分変わってきておりますので、その期待にこたえなければならない、こたえることができれば私は自給率は確実に上昇していくというふうに確信をしております。

宮腰副大臣 後継者ができるぐらいの意欲と能力のある経営体がしっかりと頑張って、自給率が間違いなく向上できるように頑張っていきたいというふうに思っております。

金子大臣政務官 今、大臣、副大臣からお話がありましたように、私も一緒になって頑張っていきたいと思いますので、松木委員の御指導もよろしくお願いいたします。

松木委員 時間が参りました。これで終了させていただきますけれども、大臣、山田委員と篠原委員が一生懸命つくりました、ぜひそのエキスをしっかりどこかに入れていただきたい、それをお願い申し上げまして、終了させていただきます。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 この農政改革のテーマでずっと論議をさせていただいたわけでありますが、テーマがほとんど絞られてきておりますので、そういった意味では私の質問もかなり重複するというふうに思いますけれども、その点、御勘弁をいただきたいというふうに思います。あわせて、ちょっと時間がありませんので、通告が若干変更になることもお許しをいただきたいというふうに思います。

 最初に、理事会の了承を得て資料を配付させていただいております。これは、私が自分でつくったものでありますけれども、一枚目は、今の政府案と民主党案を比較した表であります、単純に項目ごとに比較したものですが。二枚目のところにちょっとイメージ図みたいなものをつくらせていただきました。

 先日来論議になっております、車の両輪とか、表裏一体とかという表現になっていますので、農家個々に、要するに受益者というか、農家側から見たときにどうもわかりづらいんですね。一つ一つに自分は入るのか、当てはまるのか当てはまらないのかということになりますので、農家サイドから見た場合にというイメージをしながらこのチャートを書かせていただきました。

 一番最初に、農政改革の中で、まずテーマは対象農家の戸数と対象面積と予算だと思うんですね。対象農家について約三割というふうに言われているわけであります。百九十五万戸、約二百万戸の販売農家の三割ということになれば五十万戸強ということになるわけであります。これはあくまでもイメージですけれども、左の政府案の方を見ると、三割ということは、そこに全く絞り込まれてしまって、先ほど来山田委員の質問にもありましたけれども、結果、全く今までの政府のいろいろな支援の対象の外に行ってしまう人たちが、まだ稲作の場合は残りますけれども、畑の場合には全く残らなくなってしまうわけで、七割の農家は対象から外れるということで、これで日本の農業がやっていけるのかということになるわけであります。

 きのう大臣も答えておられました。北海道で五割、九割という話がありましたけれども、私も調べてみましたら、私の地元の付近では、大体認定農家が五二%ぐらい、五一・九%。北海道全体でどのぐらいあるかといいますと、販売農家に比較してですが、五七・三%でありました。大体五〇%を超えておりますけれども、これは三月末見込み数というのがあるんだそうでありますが、その見込み数であります。販売農家に対して五七%ですけれども、では、主業農家に対してどのぐらいあるかというと、主業農家でさえ七七・七%だというんですね。

 主業農家は本来一〇〇%でなければいけないわけで、それは、今までの認定農家、先ほど来お話がありますように、メリットがあるかないかということもあって、認定農家にあえて申請しなくてもいいんではないかという人たちがいたことも事実です。しかし、ここに来て、認定率をアップしようということで、各町村が一生懸命取り組んでいます。取り組んでいた結果として、今のところこういう状況なわけですね。

 結果として、三割に絞り込まれて、右側の畑のところですが、畜産と野菜、果樹は今回対象外ですからあえて影で書かせていただきましたけれども、全く対象にならない人たちが出てくる。こういうようなことで、農業と農村を本当に守っていけるかということからいうと、私は非常に危惧しているわけでありますが、この点についてお伺いをいたします。

中川国務大臣 私の地元の認定農業者は、つい先日調べましたら八三%、ほとんどが主業農家でありますけれども、佐々木委員のところが七〇%ちょっとということだそうです。

 何で、担い手、認定農家にならなかったのか、あるいはなる必要がなかったのかという理由もあるんだろうと思います。先ほどもお答えいたしましたが、例えばスーパーL資金なんか必要ないといえば別に認定農家にならなくてもいいというような、ポジティブの意識ではなくてネガティブでやる必要はないというところもあるんだろうと思います。だから、なった方がメリットがありますよということで、制度がスタートするまでの間にぜひ入っていただくような努力を、我々も、自治体も、また団体もしなければいけない、まだその余地は残っているんだろうと思います。

 それから、この佐々木委員の図を前提にしてお答えさせていただきますが、まさに、今御指摘あったように、畜産とかあるいは果樹、野菜はもともと外のものであります。先ほどから三割、五割は所得特例が入っておりませんよというふうに申し上げておりますけれども、もともとそれ以外にも畜産、野菜、果樹、その他、五品目以外のところは外ですから、それを分母にしながら全農家で、全面積でやって三割、五割ということでありますから、今回外れちゃって三割、五割ではないということにぜひ御理解をいただきたいのであります。

 ただ、ではどのぐらいなんだと言われると、センサスにそういうデータがないものですから出ないんですけれども、例えば、きのうも私は申し上げました、今御指摘がありましたが、麦でいうと全国の五割をつくっている北海道では九割が対象になるとか、あるいは麦で上位十県でやっていきますと九〇%が対象になるとかということになるわけでございますから、分母は全部の農家でありますから、何となく対象が三割、五割ということですけれども、そもそも対象にならないところも含めて三割、五割だということをぜひとも御理解いただきたいと思いますし、何度も申し上げますが、三割、五割はあくまでも仮定に基づいた数字であるというふうに思っているところでございます。

 いずれにいたしましても、それによって、この対象になった方は、制度施行の暁には、それを大いに活用していただき、さらに経営感覚あるいはまた営農技術の向上を目指していただいて、消費者あるいは実需者に好んでいただけるような製品をつくっていただいて、生産サイドもプラスになる、あるいはまた消費、加工サイドもプラスになるという形で、力強い日本の農業、食料政策を本格的にスタートしたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 大臣、親切にお答えいただくのは結構なんですけれども、時間が余りありませんので、ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 確かに、分母は違うと私も思います、自分でこの図をつくっていてそう感じたんですけれども。ただ、しかし、分母が小さくなったからといって対象にならない人たちが出てきていいということにはならないわけで、できるだけ多くの人たちをどう救うかということが必要だというふうに思っております。

 実は、これは北海道のデータですけれども、この中の法人の数、認定農家の見込み数が二万九千七百八十一戸なんですけれども、このうち法人が千三百四十四だというんですね、四・五%なんですよ。きのうあたりからの答弁で、一割以上を目指していくんだという話がありますけれども、北海道でこういう状態ですから、全国に広げていったときには、やはりかなりスタート時点の状況というのは厳しいものがあるというふうに思わなきゃいけないと思うんです。

 それで、この図に基づいて民主党の方にお尋ねをしたいわけでありますが、今の認定農家ということは民主党の場合は余り考えていなくて、家族農業というのが主体になっているというふうに思うんですけれども、今回の基本法もそうですけれども、日本のモデルにしたのはドイツの農業法だというふうに承知をしているわけでありますが、そのことも含めて、認定農家というか対象農家の考え方についてお伺いをしたいというふうに思います。

篠原議員 世界じゅうどこでも農業というのは家族農業中心で行われております。ですから、我々は同じように考えまして、家族農業をバックアップする、普通の農家をバックアップするという考え方で法案をつくっております。

 これはどうしてかといいますと、理想的には、政府案の言葉をかりれば集落営農というのもあるわけです。ですけれども、これはなかなか難しくて、失敗しているわけですね。例えば、その代表的なのは、もう崩壊しておりますけれども、ソ連の時代のコルホーズ、ソホーズです。国営農場と共同農場。そこは生産性が上がらず、小さな自留地、自分の土地を耕して、そちらの方からほとんどの野菜や何かが供給されているという事態になっているわけです。

 それから、アメリカの農業も、実は、大きいですけれども家族農業です。中西部はほとんど家族農場です。企業的な農業が行われているのはごく一部です。どこかというと、カリフォルニアのレタス畑、フロリダのオレンジ畑等です。そういったところでは、今、大問題が生じているわけです。新聞報道されておりますけれども、アメリカで移民法を改正する、厳しくするというのに対して、もう何万人の、ワシントンDCでも、それからカリフォルニアでも大きなデモが行われております。これはちょっといびつな農業でして、しかし、多分、この移民法が厳しく適用されるとなると、企業的な農業というのはカリフォルニアでもフロリダでも成り立たなくなります。

 それから、余計なことかもしれませんけれども、今問題になっているBSEの関係ですけれども、食肉加工処理工場もほとんどが移民の皆さんが働いているわけですね。ですから、新聞報道によりますと、カーギル社は五月一日にはもう工場を閉鎖した。そういう人たちが皆デモに出るんですね。今話題のクリークストーン社ですけれども、そこも三分の二がヒスパニック系なので、同じように閉鎖したというような新聞報道がなされております。

 ですから、ちょっと余計なことまで触れましたけれども、世界じゅう皆家族農業中心ですので、我々も家族農業をまず一番にバックアップしようということで法案を作成いたしました。

佐々木(隆)委員 私も、農業というのは、後でまた触れたいと思いますが、農業だけではなくて、大臣にもきのうあたりもそんな答弁をいただいておりましたけれども、農業と農村という両方のファクターが同時並行で進んでいるところだというふうに思うんですね。

 今回のところで、スタート時点の三割はいろいろな努力をしながらということの先ほど来のお話もあるんですけれども、集落営農を先ほどもちょっと触れましたけれども、私は、今回の政府案にどうしても無理があると思うのは、経理の一元化というふうになっているんですね。経理を一元化するということは、いわゆる将来の法人に向かっていくためにそういう表現になったのかもしれないんですが、そこまでのやはり集落営農というのは極めて難しいと思うんですね。ここで一定程度認定する人たちをふやしていくというのはかなり無理があるんだというふうに思うんです。そういった意味からも家族経営ということを私は中心に考えるべきだというふうに思っているわけでありますけれども、改めてお考えを伺います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 佐々木委員のお住まいであります北海道のように、非常に規模の大きな農家が多数存在されている地域もございますが、一方、目を転じますと、西日本を中心に、水田集落の約半数におきましては、既に家族農業経営として発展し得る主業農家が全く存在しておらないわけでございまして、こういったところでは、多数の小規模農家あるいは兼業農家なども参画する形で集落営農としての発展を考えざるを得ない状況にあると考えております。

 また、東北地方等の主業農家がある程度存在する場合でありましても、地域内の農用地の一体的かつ合理的な利用体制を構築するために、この担い手が中心メンバーになりまして集落営農の組織化を進めることが適当な場合もあると考えております。

 こういったことで、北陸、近畿、中国地方を中心に、現実に経理の一元化まで進んでいる集落営農、そのことによりまして、個々人でやっていたときよりもかなり収益性の高い農業を実現されている集落営農というものは現に多数存在しているわけでございます。

 地域性がございますので、その地域地域に合った形をそれぞれの地域の方々が選択するということで、選択肢を広げるという意味で、今回、集落営農も対象にしているところでございます。

佐々木(隆)委員 対象にするということは、それはそれで全く否定するものではないんです。

 今、北海道以外のところの小規模のという話がありましたが、小規模のところほど私は難しいと思うんです。農業ということが主業になっているところであれば、それは集団を組みやすいんですよ。いろいろな兼業農家みたいなところの人たちを、そこに集団を組んで、しかも経理を一元化しろというわけですから、これの方がはるかに実は難しいんだと思います。

 それと、もう一つ言えば、北陸などを中心にそれは進んでいると。なぜ、私は今回のこの集落が難しいかというと、今まで、例えば法人化されていたりしているところは、そういう意識のある人たちが集まったんです。そしてできたんです。それはそれで否定しないんですけれども、政府が、この地域でまとまりなさい、要するに、意識と関係なく、地域でまとまりなさいというような指導をしても、これは決してうまくいかないというふうに思うんですね。

 だから、そこは、やはり集落というものを余りカウントの上で過剰に考えるということは、私は、スタート時点からいろいろな形をふやしていくという対策の中にこれにウエートを置いて考えるというのは、やはり非常に危険だというふうに思っていますし、先ほど来申し上げているように、家族経営というものを私は中心に考えていくべきではないかというふうに思っています。

 時間がありませんので、次に対象面積について幾つかお伺いをしたいと思うんです。

 昨日来の論議でもありますように、経営耕地面積の約半分ぐらいが対象ということになっているわけであります。先ほども山田委員との論議の中でありましたけれども、今までは品目ごとの支援だったわけですね、麦は麦、大豆は大豆ということで。ですから、対象外の七割、今回、七割対象外になったとしても、みんながそのものをつくれば何らかの支援があったわけです。ところが、今度は、三割の人たちに寄せてしまうことによって、結果として七割の人は何ら対象にならないわけですね。

 先ほど山田委員は、結果としてそれは予算が下がるんではないかというふうにおっしゃったんですが、結局、対象農家が三割になるわけですから、その分、政府の支援が下がるというふうに考えるのか、あるいは、今まであった分を全部三割のところへ積んでしまうということに、多分そっちの方だと思うんですけれども、そこに全部積んでしまうということになるわけですね。結果として、七割の、とりわけ畑作農家の七割の方々というのは対象外になってしまうわけですから、この人たちが、先ほども山田委員からも懸念が出されましたけれども、遊休になってしまう危険性が私はやはりあると思うんですね。

 今までは、大豆をつくれば大豆の交付金があり、麦をつくれば麦の奨励金があったわけですけれども、今度はそれがなくなるわけですから、そういった意味で、そういう懸念があるんですが、これについてはどう対応していこうとされているのか、お伺いをいたします。

井出政府参考人 まず第一に、農家数で三割、面積で五割と言っておりますが、これは、何度も大臣も答弁しておりますように、一定の前提を置いた現時点における試算でございまして、また、水田と畑作と分けた場合に、全く水田でも畑作でも同じ比率になるということも考えられません。先ほど来委員もおっしゃっておりますように、北海道のような畑作地帯では、非常に認定農家の比率が高くて、面積的にも九割程度はもうカバーされるんじゃないかという試算も出ておりますから、畑作地帯で大幅に、この対象にならなくて農地が遊休化したりするということは私はまずないと一般論として思っております。

 それから、水田地帯におきましても、本対策の対象にならない場合でありましても、この対策の対象以外の野菜でありますとかそういったものの作付を行う方もおりますし、また米づくりの場合には、現在のシステムでも二階建ての担い手経営安定対策に入っていらっしゃる方は非常に少なくて、私どもは新しいナラシにぜひ入ってくださいと今言っておりますが、米についてだけ言えば、その新しいナラシに入らなくても米づくりを進めるという方もいらっしゃるというふうに考えておりますので、一概にこの対象外になっている農地が遊休化に進むというふうには考えておりません。

 一方、このまま放置いたしますと、農業従事者の減少とか高齢化がさらに進行いたしまして、こういったところからぼろぼろと耕作放棄地が出てくるということで、そちらの方がより現実的な問題として懸念が大きいのではないかと考えております。

 そういったこともありまして、今回この担い手対策を講ずることにより担い手の人たちに農地の有効利用あるいは規模拡大の努力をしていただけるように、施策を集中化、重点化する中で農地の遊休化あるいは耕作放棄地の増大を防ごう、こういう趣旨でございます。

佐々木(隆)委員 今回の対策が全体にそうなんですけれども、農政の大転換の一番大きなところは、本当は新しい基本法の食料、農業、農村という三つのファクターをどうするかということだったと思うんですね。結局、今の答弁は農業のところへ戻っちゃっているんですよ。

 要するに、北海道といったって大臣のところと私のところでは大分違いますから、一概には言えないんですけれども、面積で九割とか七割とかいっても、戸数が三割、五割になってはやはりだめなんですよ、農村という地域は。そこで今度集落が成り立たなくなっていくわけですよね。だから、農業というのはだれかがずっとやるかもしれない、しかし、農村は間違いなくつぶれていくんですよ、そういう政策をやっていると。

 だから、私は、戸数というものもきちっと、全部を残せとは言いませんけれども、一定程度のものはきちっと確保していく。そのためには、もうちょっと規模のラインというものを下げて全体の集落というものを一定程度守っていくということをやらないと、私自身の住んでいるところも今危ないわけですけれども、農村はどんどんそんな状態になっていく。そのことを危惧するものですから、面積が集積されればそれでいいんだという発想はぜひやはり脱皮していただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 民主党の方にお伺いいたしますが、民主党は、これまた全耕地面積を三百四十三・八にすると二百万としているんですけれども、これも私は全耕地面積とすべきだったのではないかというふうに思うんですが、ここをお伺いいたします。

篠原議員 多面的機能の発揮だけを理由として直接支払いにするならば、全耕地面積にすべきだと思います。

 しかし、多面的機能というものを当然配慮しているわけですけれども、それに加えて、自給率の向上に資するという大命題がございます。そうしたことを考えた場合、やはり自給的農家やあるいはホビー農家、そういったような人たちじゃなくて、ほかの人たちのためと自分たちが食べる分以上につくっている販売農家にやはり限定すべきではないかという考え方をとりました。

 ですから、二百万ヘクタールというのも、あくまでもいろいろな前提条件を考えた上での数字でございまして、我々の法案にのっとって自給率の向上に貢献しようと麦、大豆、菜種というのをどんどんつくっていただければ、それに応じて対象面積がふえるわけです。二百万ヘクタールというのは、今現在の我々が念頭に置いている自給率の向上に資する作物の栽培面積を想定し、かつ販売農家ということを想定すると、最低考えても二百万ヘクタールになるということでして、我々の政策を実施することによって皆さんがこれに参加していただければ、この数字はどんどんふえていくのではないかと思っております。

佐々木(隆)委員 私は、いずれも農地はイコール国土ですから、国土という視点を持って、できるだけ今ある農地が有効利用されるということが必要だというふうに思っておりますので、そのことを申し上げておきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、次に移らせていただきます。

 次は、予算についてであります。

 先ほど大臣もお答えになっておりましたが、予算規模が大体千七百億ぐらいから千八百億ぐらいではないか。結局、先ほど来お話がありますが、現行の支援水準であります、売買差益とか抱き合わせとか交付金とか調整金とかあるわけですが、それを寄せ集めたと言ってはちょっと表現が悪いかもしれませんけれども、という感を、まあ大臣もさっきその額と同等だとおっしゃっておられたんです。

 戦後農政の大転換といった基本法に基づく今回の計画のもう一つの大きな意味は、いわゆる品目ごとで消費者負担型であった農産物価格というものを、そこは市場に任せて財政負担型に変えていこうというところがもう一つ大きな転換点だったと思うんですね。そういった意味からいうと、結局、予算規模が変わらないということでは財政支援型に変わったとは言えないわけでありますけれども、そのことについて、今後のことも含めてぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。

中川国務大臣 先ほどの三割、五割と同じように、この千七百億というのがまた所与の数字のように理解されると、我々としては誤解をお与えしかねない。

 千七百億というのは、現在の本対策の対象品目の四品目に対して講じられている金額でございます。したがって、もちろん個々の農家に対しては過去払いで、これが前提になっていくわけでございますけれども、総額としては、これはあくまでも、目安としては現行ではこのぐらいのものを払っていますよということでございます。

 では、これを上限とするのかとか、あるいは別途とるのかとかいういろいろ御議論がありますけれども、ですから、これはまず要件を決めまして、それに対してやっていくということでございます。したがいまして、これに先ほどの所得特例が入ってきたり中山間地域特例が入ってきたりということになりますので、さっきから申し上げているとおり、私は、政策遂行の結果として予算が、所要経費がふえるということは、私の立場からは大いに歓迎したいというふうに思っているところでございます。

 それから、これは所得対策に変わったのかということでありますけれども、これはいわゆる構造政策の推進の一環であることは間違いございません。その中で、品目別の個別支払いから、WTOにより整合的な品目横断の所得経営安定対策という方式に変えたわけでございます。

佐々木(隆)委員 私はこのチャートの真ん中に「参考」で書かせていただきましたけれども、ピンク色のところにあります小麦、大豆、甘味、でん粉で二千三百五十三億。しかし、これには今回の対策の対象から外れているサトウキビとかカンショがありますので、その分を引くと、大体千七百億ぐらいということになるわけであります。今、上限で千七百億ではなくて、やはり千七百億は下限だと思うんですけれども、現実にここはやっているわけですから、ぜひ、そういった意味でも、せっかく転換したにしてはめり張りがもう少し欲しかったというふうに私は思っております。

 もう一つは、三割の人たちに集中させたという、大臣の言葉をかりればやる気と能力のある人に集中するということになるんですが、私は、やる気と能力のある人は、政府のこうした支援が必要なのではないんだと思うんですね。政府が支援をしなければいけないのは、できるだけ広い農家に一定程度の競争条件をどうやってつくるか、いわゆる全体のゲタですが、それをどうつくるか。やる気と能力のある人は、むしろ融資政策だと思うんですよ。

 今も農業の融資制度というのはありますけれども、例えばゼロ%、経済産業大臣もやっておられたから、商業なんかにはゼロ%資金という資金もあるわけですけれども、そういう資金をつくっていくことによって、農家は個人で借りられるわけですから、例えば自分の土地の直したいところは自分で直すというようなことができることになるわけでありまして、ぜひそういったことも含めて、まず全体をどうするかということと、やる気と能力のある人はむしろ融資政策にすべきでないかというふうに私は思っております。その点も質問したかったんですが、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、申し上げておきたいというふうに思います。

 最後に、農地・水対策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 農地・水対策で、これは地域対策というふうに言われているわけでありますが、この要綱を見ると、結果として資源管理になってしまったのではないか。地域全体が農村という村をどう守っていくかというつくりからいうと、条件がいろいろあり過ぎてそのことにならないのではないかということと、地域住民参加ということと、補助金をもらうんですから仕方ないんですが、これまた何か経理する組織をつくらなきゃいけない、片方で先ほど言った集落営農みたいなところにまた組織をつくらなきゃいけない、こういう集団と集団がどんどん重なり合っていくというような極めて複雑な形になっていくわけなんですけれども、そういった意味での現場の混乱などを含めて、共同活動支援事業についてお伺いしたいと思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策、これは、品目横断的経営安定対策が産業政策という面がある一方で、地域振興政策ということでございます。

 これにつきましては、地域を振興していくというのはもちろんいろいろな観点があるわけでございますが、この対策におきましては、農村の現状が、高齢化あるいは混住化の進行によって集落機能が非常に低下してきている、あるいは低下するおそれがある、その結果、社会共通の資本と言われます農地や農業用水等の資源の適切な保全管理が進まないというような状況を踏まえて、それに対応する対策として施策を構築していこうということでございます。したがいまして、農地とか農業用水等の管理のための対策になっているのではないかというお話がありましたけれども、現状におきまして、そのところが極めて憂慮すべき状態であるということを踏まえて、そこにある程度重点を置いた対策としているということでございます。

 それからもう一つ、集落がいろいろな組織をつくって、非常に重層的にできて混乱しないかというお話でございますが、農地・水・環境保全対策については、できるだけ自由な組織をつくれるようにしていこうということでございまして、一つは集落でも結構ですし、あるいは水系でも結構ですし、あるいは事業実施地区を単位とするということでも構いませんので、そういう意味で、柔軟な形で遂行できるようにしたいと考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 実は、ちょっと時間がなくなってきて、質問があと一問ぐらいしかできませんのでやめますけれども、きのう山田委員が出された欧米の直接支払いなんですけれども、特にヨーロッパは直接支払いのこの種の地域対策みたいなものが農村開発というくくられ方をしていて、農村の人たちが、それこそ子供まで参加して自由に農村開発をしていくというような形で出しているわけですね。私は、公共事業は本来農村開発のためにあるわけですから、そういった意味でいうと、実は公共事業のすべてがここに入ってきていいんだと思うんですよ。わずか四百億程度が見込まれているようなのでありますけれども、これも、何か農業新聞によりますと、農家が負担している資源保全の費用は二千三百億ぐらいだと言われておりまして、それの三割で七百億で、それの半分を地方に渡せばちょうど四百億ぐらいになるのでそういう計算をしたのかなというふうに思ったんですけれども、むしろそういう形で発想を変えていく必要があるのではないかというふうに思います。

 もう一点、もう一つわからないのが先進的営農の取り組みなんですけれども、共同活動支援と一体的にやるというふうになっているんですけれども、これは循環型農業のようなことを目指しているわけですよね。循環型農業というのは、いわゆる有機農業のようなものを目指す人たちというのは、極めて先進的な方々なわけですよ。ですから、本来であれば、この三割の上に積まれるべき人たちだと思うんです。それが、今答弁があったように、地域で広く取り組みたいという人たちの中に先進的な取り組みを取り込むというのは、これはどう考えてもミスマッチだと私は思うんですね。ここはやはり、先進的な営農の人たちにインセンティブをつけるというなら、ぜひ見直しをすべきではないか、ことしモデルで走るわけですから、その辺も十分にチェックをしていただきたいというふうに思います。

 最後に、大臣にお伺いしたいというふうに思います。

 今回は、先ほども申し上げましたように、食料・農業・農村という、農村ということが一つの大きなテーマだったし、その対策が新たに打たれたということでは、私は非常に評価をしております。そういった中で、きのう大臣も、農村というのは農業だけではなくていい伝統もあるんだという答弁をされていたわけでありますが、身土不二というのは一里四方のものを食べるという意味で、身と土は一緒ということですし、フランスのグルメという言葉は、美食と訳した人がいますけれども、あれは間違いで、生産者のわかる食べ物という意味なんだそうでありまして、そういった意味では、田舎のよさというものを今回どううたっていくかということが、本当は、農村対策を今回打ち出した一つの大きな意味だというふうに私は思うんですね。

 先ほども申し上げましたように、農業は、株式会社がやってもだれかがやるんです。しかし、農村は農民でなきゃ守れない。私のところも、かつて百戸ぐらいの集落だったのが、今は五十戸ぐらいになっているわけで、村落の存続自体が危ないというような状況にあるわけですけれども、集落を守っていくというのが今回の基本法の精神だとするならば、いわゆる一番下にある支援対策、地域対策が非常に弱いという印象を持っているんですけれども、最後にそのことを大臣にお伺いしたいというふうに思います。

中川国務大臣 佐々木委員御指摘のように、農村あるいは集落というものは、北海道以外の地域では、過去何百年以上にわたって営々として先人たちが守ってきた地域でありますから、そこにはおのずから歴史と文化があるわけでございます。田植えの時期には豊作を祈り、収穫の時期には豊作を感謝しというお祭りは、全国至るところでやっているわけでございます。そして、現代的な意味でいいますと、食料・農業・農村基本法という法律、あくまでも食料があって、そして農業と農村、これは文字どおり三位一体、密接不可分だという前提でございます。

 したがいまして、今回も、車の両輪という形で経営安定対策と農地・水・環境対策ということでありまして、これも文字どおり車の両輪であり、農地、水、環境も一体である。そして、そういう状況の中であれば、やはりほかのところから、そういうところで自然あるいは文化等々に触れたいという人たちが大いに来るというふうにも期待しております。

 そして、農村人口はどんどん高齢化、あるいは人口減少という観点でありますけれども、耕作放棄地をふやすどころか減らしていかなければならない、あるいは新規就農もどんどん受け入れなければならないということも当然念頭に置いた、そういう農業、農村集落というもののあるべき姿にしていきたいというふうに考えております。

 そういう意味で、今回の車の両輪の法案が一体となって、単に生産活動だけではなくて、そこに住んでいる人たちの生活、あるいは、外から体験をしよう、学ぼう、とりわけ子供たちに私どもは期待をしたいと思いますけれども、大いに自然に触れ合って食べ物をよく知っていただく、身土不二あるいは地産地消という言葉を文字どおり日本の子供たちに体験をしてもらおうというふうに考えておりまして、そういう観点から、この環境対策と経営の強化対策とが一体となって多面的な機能が発揮できるようにしたいというふうに考えております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。

稲葉委員長 次に、森本哲生君。

森本委員 民主党・無所属クラブの森本哲生でございます。

 きょうは、予定しておりました時間が一時間というようなことで通告をいたしましたので、恐らく半分の参考人の方が大変申しわけない結果になりますので、大変申しわけございませんが、お許しをいただきますようにおわびを申し上げます。そしてまた、きょうは国土交通委員会の答弁に回っておりまして、行ったり来たりで大変失礼をいたしておりますので、その点についてもお許しをいただきとうございます。

 今、佐々木同僚議員の質問でお話がありました。少し順番を変えて、続きまして、集落営農というふうなことで、地域振興に果たす役割ということの考え方の中で少し質問をさせていただきます。

 当委員会でもしばしば議論になりました集落営農の問題でございますが、経営安定対策が予定されていることから集落営農を始めるといったような、いわば狭い観点で担い手づくりが始まったという側面も否定できないのではないかというふうに思っております。

 水利調整ということが原点にあって、農地の維持管理、集落、地域の特産物の活用を初め農業従事者の個々の利益増進のために補完的な役割を果たしていく、さらに、人と人との密接な関係の中で、地域住民の暮らしや資源、環境の保全、自治機能の遂行など、集落営農の役割はもっと積極的にとらえていくべきというふうに考えております。このような観点に立って私は考えるのでございますが、いかがでございましょうか。お伺いいたします。

井出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、集落営農には、まさに委員がおっしゃいましたように本当に多面的な側面がございます。私どもも、今回の品目横断的経営安定対策の対象として集落営農組織をするという観点からは、こういった地域ぐるみで農地の利用調整や機械の共同利用を行って、地域の営農の維持に重要な役割を果たしているということを評価したわけでございます。

 また、環境面、資源の面でいえば、集落営農組織を中心としまして地域住民など多様な主体が参画した地域ぐるみでの共同活動が、農地や農業用水の資源あるいは環境の適切な保全向上につながっている場合もあると考えまして、これまた車の両輪と言っておりますが、農地・水・環境対策の対象としても考えているわけでございます。

 こういったことも考えますと、一方では経営主体としての位置づけ、一方では共同活動の主体としての活動組織としての位置づけ、その他、委員もおっしゃられましたようにいろいろな機能を持っておるわけでございますが、こういったものをまさに総合して、集落営農の機能の育成強化を多角的に図っていくことがやはり大事だと私どもも思っております。

森本委員 それでは、多角的な農業の経営、その地域づくりをやっていくために今検討されておるところがありましたら、少し具体的にお話しいただけたら、これは通告しておりませんので、明確なお答えがなかなか難しいと思うんですが、いかがでございますか。

西川政府参考人 地域で営農をするということを想定した場合に、例えば、水田利用ということを考えますと、やはり稲以外の作物を植えるということは、いかにして水管理をよくするか。いい麦、いい大豆をつくるためには、やはり集団的な土地利用というのが基本になるというふうに思いますから、そういった面では地域ぐるみの取り組み。あるいは、環境保全に対応する営農ということにつきましても、これは一人だけではやはり限界があって、フェロモントラップで化学農薬を減らそうとすれば、そこは一定程度のまとまりというのがこれは不可欠になる。

 それと、土地、水利用、これは今回いろいろな方々の参画を求めますけれども、そういうことはやはり地域に農業外の、集落外の人たちが来てくれる、そこできちんとした営農がすばらしい景観のもとで行われておれば、そこのファンにもなってくれるし、そこでつくられるものについても、例えば地産地消という格好でもできるだろうといったことで、これは地域でしっかりした物づくり、いい物づくりをするためにも、やはりしっかりと一定のまとまりがある取り組みというのが我が国の今後の農業を発展するためにも不可欠ではないだろうかというふうに考えているところでございます。

森本委員 通告なしで大臣に質問をもう少しさせていただきたいと思っておったんですけれども、ちょっと今タイミングが悪くて出られたんですけれども、確かに、今おっしゃられたことについては、ある面では農業の域にとどまっておるという感じがするんです。

 今、佐々木委員も言われたように、やはり地域がこれから大変な時代に向かっていくという現実を踏まえて、崩壊という言葉を使われたのかなと思っておるんですけれども、そうした中で、先ほど大臣も言われました、子供たちということも言われました。ですから、後から来る子供たちをどう育てていくのか。

 私は、ある面では、徴兵制というのは、これはかつての日本のやられた例でございますが、自然の中で、たとえ一週間でも、徴農制とか徴林制とか、農を、林をやはり子供たちに体験させるということが、このことをやっていけば、日本の文部科学省、それと農業、一体となってやはり地域づくりを考えていかないと、今の段階で、今回の法律案ではこれで仕方ないと思うんですよ、しかし、本当に地域づくりを考えていく場合には、いろいろなグループ、省が一緒になって地域再生を果たさない限り、大変、非常に難しい問題だというふうに私は今考えておるわけでございます。

 例えば、郵便局が統合されていきます。今度、JAの統合が各地で始まるというようなことも聞かせていただいておるときに、どれが地域の核となっていくんだということが、非常に不安に思ってみえる方は多いというふうに思っております。ですから、いろいろな予算の中で、少なくとも核になる営農が、集落営農がそうした大きな考え方の中でこれからも動いていかない限り、日本の農山村の再生はないというふうに思っておるんです。北海道ですらそういう考え方でございますから、それは山間部を持つ地域では当然の考え方だと思っておりますので、そのあたりの議論が、タイミングよく来ていただきましたので、これは簡単に、後、質問も多くありますので、大臣から御意見をいただければありがたいというふうに思っております。

中川国務大臣 私は、今の森本委員の御指摘、全く同感でございまして、私は東京の学校で育ったんですけれども、潮干狩りに行ったり芋掘りに行ったり、ただしそれは日帰りなんですね。ですから、とった芋やアサリ等を持って帰って、これはこれで大変満足感があるんですけれども、やはり何日か山や海や畑、農地で暮らすということは非常に大事だと思います。現に私のところでもやっておりますし、全国でも、数日間、夏休みを利用して学校単位で行っているという実例もあるようであります。

 そういう意味で、徴農という言葉、徴林という言葉が果たして、一部の方には抵抗があるかもしれませんけれども、もっと森本先生にいい言葉を考えていただいた上で、やっていく必要があると私は思いますし、また、現にそれに似たようなことは、一部でありますけれども進めております。

 それから、集落の核は何だといえば、やはり農村においては農産、農業でありますし、林産、水産はそれぞれ水産物、林産物であります。ただつくって売るだけじゃなくて、最近は、もちろん顔の見えるように売る努力をするということでありますけれども、やはり地産地消ということで、しかもそれは、そこでとれた農産物という材料ではなくて、少し付加価値をつけて。

 例えば先日、私、地元で酪農家のところに行ったら、そこで若奥さんがつくった自家製のアイスクリームを食べてくださいと。つくったばかりですから、もう本当においしかったですね。そういうことで、地産地消の農産物ももちろんおいしいんですけれども、それにちょっと付加価値をつけてお料理にして、そこで食べてもらうということをやれば、子供にとっては、本物を知る、本物を覚える、また来たい、あるいは場合によってはつくりたいということになりますし、味覚というのは八歳から十歳で決まるそうでありますから、その間に、できるだけ本物、あるいは本物ができる場所、そして本物に触れるということも、私は、教育の観点からも重要でありますし、また、受け入れ側の地域、あるいは農業者、水産業者、林業者にとってもプラスになるのではないかというふうに考えております。

森本委員 ありがとうございました。

 くどいようでございますが、農林水産省だけで地域再生というのは、やはりこれを核として広げていただくような、そうしたことを全庁的にやっていただけることを希望しまして、次に移らせていただきます。

 三重の養殖のマダイの低迷というようなことでひとつお伺いをさせていただきます。

 かなり世代には意識の違いがあるように思いますが、最近は若い消費者を中心に、骨があって食べにくいとか、料理方法がわからない、料理は私も全くわからないんですけれども、大変敬遠をされておる。市場価格も最近では非常に低迷ぎみであります。

 ただ、このマダイは、最近、十年、十五年、低迷しておったのが、少し単価が上がってまいりまして、何とか生活できる程度まで来ておるんじゃないかということを最近では言われておるわけでございますが、資料を見ますと、平成三年から十二年ごろまで一万一千トンで維持していた生産量が、何と十六年で七千トンになってしまった。最近では、量的にはある程度確保されておるんだけれども、ピーク時に比べると三分の一ぐらいまで急激に生産額の方で減ってしまったというような極めて大変な状況が続いておるわけでございます。しかも、六十歳以上が五〇%、六十五歳以上が三〇%というような、これは既に委員会等でもいろいろお話をされておるわけでございますが、そういう厳しい中で、漁業振興、それが、地域経済の低迷というようなことの中でどのような対応をされようとしておるのか、この点につきましてお伺いをいたします。

小林政府参考人 マダイの生産状況等でございます。

 今、三重県の数字で御指摘いただきました。全国的に見ましても同様の状況でございまして、平成十六年、養殖マダイの生産量は八万トンということで、我が国のマダイ生産量の八割以上が養殖で生産されています。そういう意味では、この養殖業が、こういったお魚の安定的な供給の確保とか、それから地域の振興、加工を含めた、そういった意味で非常に大きなウエートを占めておるところでございます。

 一方で、水産物の価格全体について言えますけれども、養殖マダイの魚価も低迷いたしておりました。平成十三年、そのときには生産額七百十六億円、これは全国ベースですけれども、十六年には五百七億円と、こういったように経営の方もなかなか厳しい状況にあるということでございますが、そういった中で、いろいろな取り組みを生産現場等でも進めておるところでございます。

 一つは、地域の特性に即したブランド化、こういったことで、まさに今いろいろなお話がございました、地域の中で地産地消を含めてそういった活動をしていくということとか、それからあと、協業化等によりまして生産性を高める、こういった対策も進めています。それからさらに、需要に見合った生産体制の整備ということで、こういった形でのいわば競争力を高めることとあわせまして、もう一つ、最近の、国民、消費者の皆さんの食の安全、安心に対する強い関心でございまして、これに対しましては、マダイに限らず養殖水産物全般の課題でございますけれども、食品としての安全性の確保ということについて重点的な取り組みをしております。この中で、例えて言いますれば、消費者に信頼される養殖実現のための生けす網などの養殖資機材、こういったものの安全対策を含めて、いろいろな取り組みを進めているという状況でございます。

森本委員 三重県では、自主衛生管理型漁業の推進とか、三重GFPというようなことの中でいろいろ取り組みがなされておるようでございますが、育てる漁業というのが、資源が非常に枯渇してくる中で大事な役割を担っていくんだろうというふうに思わせていただいておりますので、どうぞ、先ほど触れられました安全な養殖ということを十分PRもされながら今後進めていただきますようにお願いもさせていただきます。

 そしてもう一つが、非常にこれは難しい課題だというふうに思っておるんですけれども、水産物のトレーサビリティーでございます。

 現在は、事業者による自主的取り組みが始まっておりますが、消費者に提供される情報が、生産履歴情報の記録やその開示にとどまり、流通情報が乏しいのではないかと思っております。つまり、生産者の名前、漁場情報、稚魚の履歴とか養殖履歴、投薬履歴、加工履歴という情報は、稚魚の導入から出荷までの、言うたら魚の導入から出荷までの情報でございまして、魚ですから、当然にその後の流通がありますので、この点の情報も適正に開示されるべきであるというふうに思っておりますが、ある面では難しい問題でもあるというふうに理解はしています。

 また、せっかく作成された生産履歴が小売店では活用されない、つまり消費者の目に届かないという問題があります。私たちも、ふだんタイの刺身を買い求めてスーパーや生協の市場に行きますと、ほとんど切り身で、パックで詰められております。私も、単身赴任になりましてから買い物をするというようなことが身についたわけでございますが、パックをよく見ますと、小さな字でいろいろ書いてあります。品名のほか、原産地、国、外国の場合もありますし、養殖、解凍区分などの義務的表示は当然としまして、生産者名あるいは漁場、漁協の名称まで、しかし、名称まで表示している例はほとんどございません。

 まして、刺身盛り合わせには表示義務すらありませんからなおさら、これは当然のことでございますが、これまで申し上げたように、養殖マダイに限らず、水産物のトレーサビリティーが重要であるということと、しかも築地の市場などの卸売市場も貫くものとして考えなければならないことは政府とも共通認識を持てるのではないかという気がいたしておりますが、この点、国として独自に取り組むべきことは何なのか、将来的な課題についてどのような認識を持っておられるのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

中川政府参考人 トレーサビリティーシステムを含めた幅広い御質問でございます。

 まず、トレーサビリティーシステムそのものは、食品の流通経路情報を活用いたしまして、食品の流通について遡及あるいは追跡ができるようにするシステムでございますから、このシステムの第一のねらいは、例えば、食品について事故が起こったような場合に、それがどこでつくられ、どういう経路で流れてきたのか、流通してきたのかということを的確に把握して必要な措置を迅速にとれる、そういうことを第一の目的にするものでございます。

 ただ、最近はIT技術がいろいろ発達してまいりましたので、ユビキタス食の安全・安心システムの開発というふうなことで、単に流通経路を特定していくということだけではなくて、生産過程での情報などをあわせて消費者の方々、流通の川下の方々に伝達をしていく、そういうねらいも含めた新しいシステム開発、これに対しまして、国の方からは助成措置などを講じているところでございます。こういった生産者あるいは流通業界での自主的な取り組みを財政的に支援していくというのが私どもの今の姿勢でございます。

 それから、先生、流通過程での特色を消費者に伝えるための、それも課題ではないかとおっしゃいましたが、これは昨年、JAS法の改正を行いまして、流通に特色があるものについては、その特色をきちっと規定して、そしてJAS規格としてそれを制定することが可能になるような、そういう法律改正もしていただきました。例えば氷温流通といったようなものなどでございますけれども、水産分野の流通で活用いただけるものというふうに思っております。

 これから規格づくりなどを私ども鋭意行いまして、そういったニーズにこたえられるようにしていきたいというふうに思っております。

森本委員 ありがとうございました。

 確かに、安心して食べられるような、そうした仕組みをしっかりとつくっていただくこと、私どものお茶とか米とか、そういう農産物に比べて、魚はいろいろ泳いでいきますので、その辺はなかなか難しい問題もあるというふうに認識はいたしておりますが、できるだけほかの産品と近寄ったところへ努力をしていただくことをお願いして、時間もございませんので、次へ移らせていただきます。

 次に、品種登録とか農薬登録及び肥料銘柄登録の民間開放についての問題でございます。

 前回の質疑でも一部取り上げましたが、三月三十一日に閣議決定されました規制改革・民間開放推進三カ年計画の再改定についてでございますが、先日、内閣府に最新の情報を確認いたしました。農水省とのやりとりは、二〇〇四年十月二十二日の官製市場民間開放委員会第十四回官業民営化等ワーキンググループを最後になされているということですが、先ほどの閣議決定で、今年度末までには措置をとるということになっております。改めて当日の議事録を読ませていただきました。

 ところで、種苗法が定める品種登録についてでございますが、現在は独立行政法人種苗管理センターが実施をいたしております。これはいわゆる消極的規制に属するものと理解をいたしております。種苗法第十五条は、現地調査、栽培試験を関係行政機関、学校その他適当と認める者に依頼することができると規定をしているわけでございます。学校その他適当と認める者には大学の農学部などさまざまな機関が想定されるわけですが、農水省は今のところ、基本的な考え方は変わっていないということでよろしいでしょうか、お伺いいたします。

西川政府参考人 品種登録の民間開放ということで、規制改革・民間開放推進三カ年計画で、「栽培試験の委託等、品種登録業務の民間開放を推進する。」というふうにされているわけでございます。これにつきましては、十八年度から公募によりまして民間開放を開始したというところでございます。

 この出願品種の審査はやはり適正に行わなければなりませんので、特徴がしっかりと把握できる、そういう能力を有していることが基本的には重要でございますけれども、そういった面で、今までも一部は都道府県の試験場などに委託をしておったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、十八年度においては、一部公募によりまして募集をした。そうしましたところ、大学なり専門学校等四機関から応募がございまして、それに対しまして、四機関に対しまして、二十七の出願品種につきましての栽培試験につきまして委託を進めているというところでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 そうしますと、一部民間開放の動きがあったということは、独立行政法人でなくても品種登録は可能であるという認識に傾いたということでよろしいですか。

西川政府参考人 品種登録というのではなくて、品種を登録する際の、新しい品種かどうかということを比較して明らかにしなきゃいけない、そのために栽培試験というものがあるわけでございまして、その部分について民間委託というところでございます。

森本委員 そうすると、さらに農薬の登録、肥料の銘柄登録についても総合的な政策判断という言い回しをされておるわけでございますが、登録、検査、処分というフローには他事考慮、すなわち行政法学上、法律に基づかない行政裁量の逸脱ということが当然問題となり得るわけでございますが、他事考慮の行政処分という認識があるのかないのか、御答弁よろしくお願いします。

西川政府参考人 肥料や農薬につきましては、これらに安全性の上で問題があります場合には、食品を通じまして直接人の健康にも影響を及ぼすものでございますので、こういった肥料や農薬の安全性の確保というのは国の果たすべき重要な責務の一つだというふうに思っておりますので、登録時の立入検査あるいは行政処分等につきましては厳正かつ適切に実施をする必要があるということでございます。

 したがいまして、今、先生の御質問の中にありました総合的な配慮ということからいたしますと、単に科学的な知見に基づくだけではなくて、いろいろと、業の振興ですとかあるいは安全性の確保というような面におきまして総合的に判断をしていく必要があるというふうに思っております。

 他方で民間開放との兼ね合いがございますけれども、この民間開放につきましては、肥料、農薬の安全性の検査に直接影響を及ぼさない、そういった周辺の業務につきまして民間開放していくことが適切であるというふうに考えておりまして、これは十八年度から実施をしていくことにいたしているところでございます。

森本委員 それでは、大臣、この消極的規制の改革ということで、今後の重要なテストケースになるというふうに理解してよろしいのでございますか。

中川政府参考人 私どもの基本的な考え方は、今申し上げましたように、肥料や農薬の登録の際に重視しなければいけない一番大事な点、そこはやはり国が責任を持ってやっていく必要があるかというふうに思っておりますけれども、他方で、民間でできるところ、効率的な実施という面で民間に開放した方がいいという部分につきましては、そういったところを見きわめて、そして計画の中で民間開放を実施していきたいというふうに思っております。

森本委員 大臣も同じ見解でよろしいのでございますね。

中川国務大臣 民間委託できるところは民間委託するという方向で進めたいと思いますけれども、やはり国がやらなければいけないところはきちっとやっていくということが大事だと思います。

森本委員 ありがとうございます。

 もう最後の質問です。大分残りまして、本当に申しわけなく、おわびを申し上げます。

 ちょっと資料を渡させていただいたIT化の問題でございます。

 農水省は、今年度からIT活用型営農成果重視事業、低コスト植物工場成果重視事業を新規に始めておられます。資料といたしましては五月一日付の日経新聞の記事を配付させていただいておりますが、前者のIT活用型営農成果重視事業というのは、生育情報、土壌情報など各種の営農情報をコンピューターで一括管理して、環境負荷、経営コストの低減を図るものと説明されておるわけでございます。後者の低コスト植物工場成果重視事業というのは、台風にも耐え得るような耐候性ハウスの実現、授粉作業が要らない単為結果性品種の開発などさまざまな目標設定がなされているところでございます。

 IT化を進めれば、当然に生産性が向上いたしますが、品種格差、それと経営格差といった負の部分も無視できないのではないかというように思っております。現在は実験が始まったばかりでございますので、将来の見通しについてどのようにお考えになっておられるのか、まず政府見解をお尋ねします。

西川政府参考人 今、将来見通しというお尋ねでございますけれども、農業生産におけるITの活用、これは作物の生育状況あるいは生育環境をセンサーで感知して、それを情報処理することによりまして、最適な生育条件を最小のコストで実現することが可能となるといった、そういったよさがございまして、今後の農業技術の発展を図る上で極めて有効ではないだろうかというふうに考えておりますし、やはり農業は、最先端のさまざまな技術を現場技術として組み立てていく、その中で有効に利用して農業生産を行うというのが基本だろうというふうに考えておりますので、今後とも、こういった技術開発成果を積極的に農業現場に導入する、そのための国として実証的なところを取り組んでいきたい、そういうふうに考えているところでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 費用対効果の面もありますが、モデル事業としてでもまたおろしていただくことを要望させていただきます。

 それでは、民主党の中では農業経営のIT化はどのような政策的位置づけになっておるのか、よろしくお願いします。

篠原議員 IT化自体については何も規定はございません。しかし、直接支払いというのは、当然、農業経営がうまくいくようにということで、農業者の経営の判断でお使いくださいということでございますから、直接支払いで得たものをIT化に使っていただいて経営の合理化等に活用していただくのは、我々の法案の望むところでございます。

森本委員 ありがとうございました。

 ちょっと中途半端になったところもあるわけでございますが、また次回、質問をさせていただくということで、きょうはこれで終了させていただきます。

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社民党の菅野哲雄でございます。

 この間、多くの議論を行ってきておりますし、北海道や宮崎に出かけて地方公聴会、そして中央公聴会、そして参考人等を呼んで多くの問題点が指摘されたというふうに私は思っております。これらのことで明らかになった点を数点拾い上げて、政府に対して質問していきたいというふうに思っています。

 一つは、品目横断的経営安定対策、この施策を徹底していくならば、担い手と非担い手の二極分化が進むということが懸念されるというふうに私は思っております。その結果として、非担い手となった人たちが離農していく、そういう状況が生まれてくるのではないか、このことも指摘されておりますし、このような状況が起こることによって、日本の農業というのは将来的にどうなっていくんだろうかなという多くの疑問も持っております。この非担い手が離農しないような施策というのを政府としてしっかり打ち立てるべきだというふうに私は思っております。

 この間の議論の中で、品目横断的経営安定対策と車の両輪と言われている農地・水・環境保全向上対策というものが示されているわけでございますけれども、私も質問いたしましたが、これから平成十八年度においてモデル事業として展開して、十九年度から施策として展開していくという段階でありますから、地域の人たちは、農地・水・環境保全向上対策がどういうものかというのがまだしっかりと理解されていないし、このことが浸透していかない中で、後でも述べますけれども、集落営農といっても大変な状況なんだというふうに言われております。

 この農地・水・環境保全向上対策の制度設計を一面ではしっかりとしなければならないというふうに思うんですけれども、この十八年度モデル事業、十九年度に向けての決意というか取り組みのほどをお聞きしておきたいというふうに思っています。

山田政府参考人 お答えいたします。

 品目横断的経営安定対策と車の両輪と言われております農地・水・環境保全向上対策の設計についての御質問でございます。

 先生御案内のとおり、農村の現状を見ますと、高齢化、混住化の進行によりまして集落機能が非常に低下しているという点から、やはり農業者だけでは農地や農業用水といった資源が管理できないということで、先生お話がありましたように、今年度、全国約六百地区でモデル事業を実施いたしております。予算成立後速やかに立ち上げをしておりまして、もうかなりの地域で現実に活動が始まっているところでございます。

 今お話がありましたように、十九年度に向けてこの十八年度のモデル事業の状況を検証いたしまして、しっかりした中身にしていきたいと考えておりますけれども、十九年度予算要求などもありますので、できるだけ早くこの十八年度の状況を把握いたしまして、十九年度に向けて検討していきたいというふうに考えております。

菅野委員 一年のモデル事業で新規に十九年度からやっていく、そういう流れになっているわけですけれども、地域に浸透するまでに本当に私は多くの努力が必要だというふうに思っています。ぜひそのことはしっかりと行っていただきたいというふうに思うんですが、地方公聴会で、北海道で公述人が述べられているんですけれども、制度設計では、国と地方公共団体が一対一で、それで二階建ての制度設計になっています。この持つ利点と欠点というものが私は披瀝されたというふうに思うんですけれども、北海道でいえば、地方財政が赤字になって、国の制度はあるんだけれども、裏負担の一の部分を負担し切れないで制度を活用することはできなかったということが言われております。これは、今日の地方財政危機と言われている中で、全国で起こる現象だと私は思っているんですけれども、十九年度からの制度設計においてこの部分をどう考えていくのか、今、現時点での考え方を示していただきたいというふうに思っています。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策についての地方負担の問題でございますが、先生御案内のとおり、農地、水、環境の保全またその向上というのは、国ももちろん受益をいたしますが、地方なり農業者の方々も利益を受けるということでございまして、やはりそれぞれが適切に負担をしていくというのが基本ではないかと考えております。御案内のとおり、地方におきましても、地域農業の持続的な発展ですとか、あるいはその地域の農地や農業用水が持つ多面的機能が、地域住民の方がそれを享受するというようなこともございます。

 モデル支援におきましても、今先生からお話がありましたように、地方の負担を求めておりまして、その状況を踏まえて、またその実効性を検証するということにしておりますが、先ほど申しましたような考え方からしますと、十九年度から実施をする、本格的に導入をする施策におきましても、国の支援とあわせまして地方に応分の負担をしていただくというのがやはり適当ではないかというふうに考えております。

 十九年度からの施策の検討をこれから進めていくわけですけれども、地方にとっても負担しやすいものとなるような視点から、モデル支援の検討なり実施状況を踏まえまして、例えば地方の裁量を尊重するような枠組みといったものも検討して、地方の負担について理解が得られるようにしていきたいというふうに考えております。

菅野委員 制度設計においては、私は、地方の負担を求めていく、水田であれば二千二百円が四千四百円になるんですから、そういう意味での利点というのはあるというふうに思っております。ただし、二千二百円の地方の裏負担が存在しなければ国の二千二百円の支援も受けられないという状況が生ずるおそれがある。今局長答弁のように、地方で理解を得られるような取り組みということも考えていくというんですが、私は、そうじゃなくて、地方の裏負担がなくても国の支援を得られるんだ、地方の負担は求めていきます、それでも、地域によっては国の二千二百円でしっかりとやっていくよという状況もつくり得るというふうに思うんですけれども、そういう柔軟な対応というものをしっかりと制度設計の中でつくっていただきたいというふうに思っております。

 そして、もう一方では、やはり地方財政が非常に厳しい状況の中での制度設計でございますから、国としても、地方自治体を支援するような、しっかりと地方交付税に組み込んでいく、こういう流れもこの一年間でしっかりつくり上げていただきたいなというふうに思っております。

 私は二つあると思うんですね。交付税にしっかり位置づけるんだ、それと、そうじゃなければ、地方負担なしでも、地域では取り組んでいきますということであればそれも認めるというような流れを私はつくっておくべきだということを強く申し上げておきたいというふうに思っています。

 そして、次に、やはりこの間大きな議論になってきたのは、品目横断的経営安定対策の対象面積の問題です。四ヘクタール、北海道でいえば十ヘクタールという面積要件をどれだけクリアするのかということを先ほどからもずっと議論されておりますけれども、出発時においては農家戸数で三〇%、そして農地面積では五〇%という状況からスタートするわけであります。そして、今後七〇%、八〇%に持っていこうという方針はあるものの、その条件をクリアしていくためには、集落営農組織を地域地域で立ち上げていく、このことだというふうに議論されておりますけれども、参考人の方々、公述人の方々も、この集落営農を立ち上げていくことの難しさというものは、私は訴えておられたというふうに思っています。このような今後の集落営農を推進していく方策というものをどのように考えているのか、この点をお聞きしておきたいというふうに思っています。

 それから、土地利用型農業において幾ら土地を集約していっても、集落営農では採算ベースに乗せることは難しいという意見も披瀝されております。これは現実に地域で農業を営んでいる人たちからの声でありますから、私の経験からいっても、農地を幾ら集約していっても採算ベースに乗せることは難しいというふうに思うんですが、この意見にどう対処なさっていかれるんですか、この点についてもお聞きしておきたいというふうに思っています。

 それからもう一つ、先ほども佐々木委員の方から議論されたんですが、経理の一元化の問題です。本当に、家族経営的農業の中で、農村集落で、そういう農村地域社会が形成されている中で、経理を一元化して、そして集落営農に持っていかなければならないという条件をクリアするということは非常に私は難しい問題が存在するというふうに思うんです。法人化の方向というのは先送りされていますけれども、この経理の一元化に対しても疑問の声が披瀝されておりますけれども、このことをどう考えておられるのか、この件について答弁願いたいというふうに思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 集落営農組織を形成することによりまして、動機としては、集落が崩れていくというか、やる人がいないというので集落を維持しなきゃいかぬというような動機から始まるところも多いかとは聞いております。しかしながら、やはり集団の中で、個々が持っておりました小規模な農業機械から集落単位で二十ヘクタール、三十ヘクタールに対応できるような農業機械にかえたり、あるいは個々の農家が個別にお買いになっていた肥料、農薬等の資材を共同で購入することによってディスカウントされるというようなことで経費が大幅に削減され、労働時間も大幅に減少しているというメリットが現に出ているわけでございます。

 私どもが試算をいたしましても、そういった農業機械費やそういったことについての削減ができれば、個人が水田作一ヘクタールで営農している場合に比べまして、その所得は八万円から四十三万円に増加する、労働時間も六百三十三時間もかけていたものが百二十一時間でできる、こういうような試算もございます。また、現実に集落営農組織としてしっかりやっていらっしゃる地域におきましては、この所得をはるかに超えるような所得を実現されている集落営農も現にございまして、地域のリーダー的存在になっておられるわけでございます。集落営農はどちらかというとなじみがなかった東北地方におきましても、実名を挙げるのはどうかと思いますが、秋田の立花集落とか、現にビデオ等にもなって全国に配布されているような立派な例もございます。

 そういったことで、周りにこういった先進事例とか優良事例がありますと、大体百聞は一見にしかずで、その地域に行っていただいたり、リーダーの方と意見交換をしていただいたり、ノウハウを伝授されるとやれるんじゃないかという気になることが多いようでございますが、周りにそういうものが見当たらないと、紙で書いたものだけ見ている限りは、できそうもないな、こんな面倒くさいことなのかというので、どうもしり込みをされているのではないかと思います。

 それから、経理の一元化につきましても、私も何度も申し上げているんですが、私どもがお願いしておりますのは、具体的には、対象となる農産物、例えば米、麦、大豆につきまして集落営農組織名義の口座をつくってください、対象となる農産物について販売名義を集落営農組織にしてください、販売収入があったら対象農産物についてはその口座に入金してください、この三点が今回集落営農としてこの制度に乗るための最低限の要件なんです、こう申し上げております。

 ところが、私も地方を回りますと、今でも、複式簿記が必要なんだとか、自分の財布をみんな集落の者に見せなきゃいけないんだとか、そういうことを言っておられる方がおりまして、愕然とするわけでございますが、一方では、お訪ねしますと、農家の方がちゃんと雪だるまパンフを持っておみえになりまして、局長、ここにこう書いてあるけれども、これはこういう意味でいいのかいと聞いてくださる方もできてきております。

 そういうことで、私どもも、集落営農というもの、あるいは私どもがこの対策で求めている集落営農というものについて、さらに徹底して普及啓蒙しなきゃいかぬと思っております。

 また、集落の中で全部やれといっても、先ほど言いましたように、なかなか足が前に出ないということもございますので、地域によりましては、JAが自分の持っている営農センターにパソコンや会計経理ソフトを導入しまして、専任スタッフを置いて集落の経理事務を肩がわりするというようなことをやっている地域もございますし、さらに、地域の担い手支援協議会に中小企業診断士や税理士の方に入っていただいて、そういう方にアドバイスをしていただくというようなことも既に着手をされている地域もございます。

 私どもも、十八年度予算でこういう経理についての基礎的な知識の講習等、いろいろ考えておりますけれども、さらに十九年度予算でもその地域での御要望なり御意見を踏まえて、いろいろな、できることは予算措置で頑張って構築したいと考えております。

菅野委員 どこで議論がすれ違うのかなというふうにずっと考えているんですけれども、今局長が例示した点は条件のいい地域なんですね。私はそう思います。集落営農まで持っていって農協が営農指導までやれる体制というのは、今、今日的な農政を取り巻く状況の中では本当に条件のいい地域だというふうに思っています。

 そして、先ほど言ったように、スタート時点では農地面積の五割からスタートするんですけれども、これを七割、八割に持っていこうとするときに、そういう条件の整わないところを集落営農として持っていく、条件不利地域を集落営農としてどう組織していくのか、この議論をやっているわけなんです。いいところの議論をしているんじゃないんです。家族経営的に細々とやっているときに、今回の品目横断的経営安定対策の該当にならない人たちは集落営農をやっていって、そして該当するような地域に持ち上げていかなきゃならない、このときの苦労というのをどう克服していくのかという議論をこの間ずっとやってきているんですけれども、そのことに対しての答弁はされていないんですよね。

 再度、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 委員からは、前回も私が答弁をいたしましたとき、局長が見ているのはいいところばかりだという御指摘がございました。

 実は、委員の御地元、気仙沼地方におきましても、残念ながら私自身は行くことができませんでしたけれども、東北農政局の幹部を派遣いたしまして、現地の方々と意見交換をさせていただきました。ですから、我々はそういう現場実態もしっかり把握しながら、非常にやりにくい地域とか難しい地域があるということも承知しております。その中で、さらにどういうお手伝いができるか、あるいは農協なり、市町村なり、普及員なりにどういうことをやっていただくのが、あるいはそういう人たちにどういう武器を与えるのがよいのかということを真摯に検討いたしまして、さらに十九年度予算で拡充も図っていきたいと思っております。

菅野委員 局長、自治体の首長さんたちも本当に今回の政策に対して疑問を呈して、東北農政局に話し合いに行っている、昨日の地元の新聞でも報道されています。そして、地域としてこのままではいけないんだという思いに立ち至っていることも事実だというふうに思っています。

 そういう意味では、これからしっかりと議論をして取り組んでいかなければならないという状況にあるというのはみんな共通認識だというふうに思うんですが、ただ、そういう意味で、地域の実情を本当にしっかりとらえて、例えば経理の一元化というところも、私は、かなり柔軟な対応というものをしていく必要があるんではないのかなと。集落営農に向かっていかなければならないという方向性はわかっているんだけれども、そこまで至る難しさというのが条件不利地域においては存在するんだということをしっかり踏まえて対応していただきたいというふうに思っています。

 そして、この間の議論の中で、私も十勝に行ってきたんですが、中川大臣の地元で、大臣は、十勝の畑作農業を見ておられるから、そこを私の方はと答弁しているんですが、私は、北海道農業と都府県農業というのは政策面で一緒にできない部分があるんではないのかなと。このことははっきりしてきているというふうに私は思っております。北海道農業というのをしっかりと発展させていかなければならないという命題はあるというふうに思うんですが、一方では、都府県農業というものをしっかりと政策として位置づけていかなければならない。

 この品目横断的経営安定対策では、やはり画一的だというふうに私は思うんです。都府県農業においても都市近郊型農業というものが存在しておりますし、米の単作地帯というのも存在します。そして、何といっても国土の七割を占める中山間地域をどうしていくのか、そういう全国を網羅した施策でなくて、地域地域をどのようにしていくのかという個別の政策というものも必要なんじゃないのかなというふうに私は思っております。特に、中山間地域はもう集落として成り立っていかないという状況を考えたときに、農業という産業政策じゃなくて、先ほども議論になっていましたヨーロッパでは、もう地域政策に切りかえて、地域で、地域の集落が成っていけるような政策というものを展開する必要があるというところまで来ているというふうに私は思っております。

 ぜひ、このこともこれまで議論してまいりましたけれども、農林水産省として、縦割り行政ではなくて、農業、林業、水産業一体のものとして政策提起を行っていく、私は早急の取り組みが必要なんだというふうに思うんですけれども、大臣の決意のほどをお聞かせ願いたいというふうに思います。

中川国務大臣 御指摘のように、日本には多様な農業があるわけでありまして、その多様な農業をそれぞれの地域で生かしていくということが、これはもう現在の我々の農政の最大のポイントだと思います。中山間地域もあります、あるいはまた都市近郊農業もあります、あるいはまた離島等もあります。そして、私のところのように、耕地面積の広い地域があります。

 ただし、私のところは、もちろん地元として誇りに思っておりますけれども、過去においては、米をつくろうとしても全然売れなかったとか、あるいは豆をつくり過ぎて相場の中で大変な損失をこうむったとか、あるいは豆は非常に天候に影響されますので大変な冷害に苦しんだとか、あるいは現時点でも非常にいい経営をやっているところは多いんですけれども、やはり単収というか、高付加価値農業にはなかなか移行しにくい、ある意味では量のメリットで経営をしているというところがあります。

 ですから、それぞれの地域でいろいろな御苦労、あるいはまた長所があるわけでありますから、どうかひとつ地域の知恵あるいはそこの地域の経営者の皆さんの知恵をまずスタートにして、それを後押しさせていただくということでありまして、決して、私は日本の農業を、私の地元を基準にして、このとおりにやれと言うつもりはありません。逆に言うと、菅野委員の御地元のように、手間をかけて一生懸命いいものをつくろうというものを我々の方でやることもできませんので、ぜひそういうオーダーメードのところをやっていく、そしてそれを担うのがプロの経営者としての認定農業者である、あるいはまた集落営農組織であるというふうに考えております。

 また、農林水も一体でございますから、今たまたま林業あるいは漁業についての基本計画の見直しもしているところでございますので、この二つについても、ぜひ、林であれば農や水、あるいは水であれば農や林も十分配慮に入れながら議論を進め、いい施策がとれるように対応したいということで、今事務当局の方には議論をさせるようにしていただいているところでございます。

菅野委員 ぜひ、産業政策としてではなくて地域政策として農村集落を守っていくんだという対応をしっかりしていただきたいと思います。

 最後になりますが、この品目横断的経営安定対策の議論をしている中で、どうしても米政策について具体的な議論というのがなされてこなかった。それはなぜかというと、来年度の予算編成時期までに、これからの米に関してはしっかりと政策として打ち立てていくんだという流れになっているわけですから、それでは、もう今五月ですから、六月、七月という状況にどのような形で対応していかれるのか。多くの方々が、米の政策が見えない中で、品目横断だけがひとり歩きしている中で、農村集落では不安を抱えているというふうに思うんですが、今後の取り組みの方向性について答弁願いたいと思います。

岡島政府参考人 委員御案内のとおり、米につきましては、まず平成二十二年度における米づくりの本来あるべき姿の実現を目指して、需要に即応した米づくりの推進を図るために、需給調整対策でございますとか流通制度の改革など、各般の施策に取り組んでいるところでございます。

 今御質問の、十九年産からの米に対する国の支援策につきまして、まず、方向性といたしましては、昨年の十月に取りまとめました経営所得安定対策等大綱で明らかにしておりますけれども、具体的には、担い手を対象とする品目横断的経営安定対策が導入されることなどを踏まえまして、今ある政策を次のように見直すこととしております。

 すなわち、需給調整メリットとしての米価下落による影響緩和対策であります稲作所得基盤確保対策及び担い手経営安定対策に関しましては、担い手を対象とする対策は品目横断的経営安定対策へ移行する。担い手以外の方に対しましては、米の需要に応じた生産を誘導するため、当面の措置として、産地づくり対策のメニューの一つとして、米価下落の影響を緩和するための対策を行えるように措置することとする。それから、産地づくり対策につきましては、現行対策の実施状況などを踏まえてこれから見直していくということでございます。それから、集荷円滑化対策につきましても、その実効性を確保しながら実施していくということでございます。

 さらに、予算規模とかその制度の詳細につきましては、これから引き続き検討を進めまして、これはまさに予算でございますので、十九年度予算の概算要求の決定時までに決定したいというふうに考えております。

菅野委員 この件に関してはこれからも議論していきたいというふうに思っていますけれども、やはりそのときに四ヘクタールという面積要件がどうなっていくのかというのが地域の人たちの不安なんですよね。だから、それをどう克服していくのかというのは大きな課題だというふうに思うんです、米についても。だから、このことについては、時間が参りましたので、これから引き続き議論してまいりたいというふうに思っています。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、渡部篤君。

渡部(篤)委員 自由民主党の渡部篤でありますが、法案について質問をさせていただきます。

 日本農業には三大不変数字があると言われています。五百五十万戸の農家の戸数、そして耕作面積が六百万ヘクタール、そして農業に従事する人たちが一千四百万人いたのです。明治維新から昭和四十五年まで確実にいたのです。

 しかし、今、平成十七年になれば、農業センサスによれば、農業の経営体として百九十九万、生産販売農家と農業生産法人、それでその数字です。あるいは耕作面積は三百六十八万ヘクタールです。確実に今日本の農業は危機だと思っています。これを何とかするには、私は、経営安定対策と農地・水・環境保全向上対策、この両輪でやらなければならないと思います。人、技術、土地が農業をやるのです。担い手を確保しなければ日本農業の未来はないと私は思っています。

 そこで、この法案について質問をしますが、農家が現在最も関心を持っているのは、WTOの交渉の行方です。特に、米関税の問題、交渉の結果次第ではこの対策に影響が出るのではないかという憶測があります。ある意味では、農家の人たちは様子を見ているのです。これについての御所見をお伺いしたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のとおり、今、WTOの交渉が大詰めといいましょうか、おくれにおくれておりますけれども、鋭意今やっているところでございます。

 そういう中で、農家サイドから見ますと、今度の新しい政策、そしてまた農業の方は日本は守りという立場でございますから、どの程度守り切れるのかということで大変御心配のことだろうというふうに思います。しかし、我々はできるだけ、全力を挙げて守るところは守っていきたいというふうに思っているところでございます。

 そういう中で、この法案がWTOとどういうふうに関係するかということでありますが、結論的に言うと、これはWTOの新しいルールがどうなるかということを全く前提にしたものではございませんで、現行ルールを前提にしてやっております。その典型が例の、緑だ黄色だということになるわけであります。

 諸外国、例えばヨーロッパの場合ですと、共通農業政策、CAPに基づいて、その範囲内で何としても交渉をまとめたいと思っておりますし、アメリカはむしろ新しい農業法というものを今議論が始まっておりますので、アメリカはむしろ新しい農業法の議論と同時並行的にといいましょうか、その農業法、できるであろう農業法を前提にして、どうも交渉に臨んでいるような感じが私はしております。

 各国、それぞれ事情があると思いますけれども、日本は、WTOの成り行きとは関係なく、現行のWTOルールの中で整合性を持たせるということも視野に入れながら、この法案を御審議いただいているところでございます。

渡部(篤)委員 この法案について、具体的な支援の内容が、私から見て、明確にされていないのではないのか、従来の延長線でははっきりした政策転換であることが実感されていないと思います。平たく言えば、農家のメリットが十分に説明されていないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

井出政府参考人 お答えいたします。

 私ども、十月にこの対策の大綱を発表いたしまして以来、この冬の間、いわゆる農閑期の間に、ぜひ集落段階まで話がおりて集落で議論をしていただけるように、準備を急ぎ、説明会もやってまいりました。

 各県で、特に先生のお地元福島県でも、説明会そのものは既に同じ町、同じ地区で何回も繰り返し行われていると承知しておりますが、実態といたしまして、本当に集落段階で、それぞれ本当に農家の方が車座になって話し合いをしてくださったか、そういうところにしっかりした説明をしたかということになりますと、私が知っております範囲内で、そういうことをやってくださったというリーダーの方のお話も聞きましたが、また別の地域では、その集落のリーダーの方の段階にとどまっておりまして、集落構成員全員にはまだその話が行き渡っていないという残念なお話も聞いておりますので、今、残された時間が限られておりますので、徹底したローラー作戦を、行政あるいは農業団体を挙げて実施をいたしているところでございます。

 まず理解をしていただいて、それでないと体が動かないと思っております。

    〔委員長退席、二田委員長代理着席〕

渡部(篤)委員 担い手に施策を集中していく最初の対策としては理解できますが、例えば、土地利用型、四ヘクタール規模の農家が他産業並みの所得を確保していくためには十分ではありません。

 今回の対策に乗って、先が見えないとの指摘もありますが、ここです、担い手として発展していく展望やシナリオが明確になっていないのではないか、農地集積の制度、予算、金融、税制、その他の施策を総合的に示さないと、これまでの認定農業者制度との相違も明らかでなくなるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

井出政府参考人 農林水産省といたしましては、これまでも、認定農業者向けに、スーパーL資金を初めとした低利の政策資金の融資を行うとか、あるいは経営改善に向けた相談、指導、研修、基盤整備、施設整備等の予算措置も講ずる、あるいは農業機械等の割り増し償却などの税制上の特例措置も講じてきたところでございますが、いわゆる認定農業者からは、先ほど大臣も御答弁されましたように、スーパーL資金を借りるときでもないと認定農業者のメリットが感じられないと言われてまいりました。

 今回、この対策を導入すると同時に、さらに担い手に対する諸施策の集中化、重点化を進めるということにいたしておりますので、そういった中で、対象者にとってのメリットが何なのかということを明確にいたしまして、またそのPRもわかりやすくしていきたいと思っております。

渡部(篤)委員 続いて、いわゆるゲタ対策についてでありますが、過去の生産実績に基づく支払いとされておりますが、今後の産地の構造改革の取り組みが反映されていないのではという意見もあります。

 WTO農業交渉の緑の政策に配慮したものと理解しますが、実績を重視する余り、今後の産地における構造改革に水を差すことにならないのかと思いますが、いかがでしょうか。

井出政府参考人 委員御指摘のとおり、新たに導入します品目横断的な経営安定対策を持続的、安定的に運用していくためには、現行のWTO農業協定において削減対象とされておりません緑の政策に該当するものを基本とする必要があると考えております。

 このため、緑の政策になります過去の生産実績に基づく支払いにつきましては、御承知のように、過去の生産実績を農業者間で移動することが可能になるような仕組みを考えておりますが、今御指摘のように、過去の生産実績のない人から農地を取得して規模拡大した場合については、この支払いを受けることができないわけでございます。そうしますと、担い手による食料の安定供給といった政策目的から見まして、どうしてもそういうことに対して助成が必要であるということであれば、本制度とは別に、十九年度の概算要求における対応も含めましてしかるべき対応を検討していきたい、こういうふうに考えております。

渡部(篤)委員 本対策は、現在、現地において県、市町村、JA等の農業関係団体が連携して推進していますが、今後の加入促進手続は国が行うと聞いています。これまでの推進の実態や担い手に対する総合的な施策の観点から、関係機関相互の情報共有も含めて、連携方策について改めて伺いたいと思います。

 加入資格を審査するための農業者の所得の確認や地域協議会の事務局業務など、市町村の事務量は膨大になります。また、国の出先機関の実務処理にも限界がありますので、その負担が市町村に行くことが懸念されますが、その対応についてお聞かせ願いたいと思います。

井出政府参考人 御指摘のとおり、新しい経営安定対策につきましては、農業者が国に交付の申請を直接行うということを考えております。

 ただ、現在担い手運動を進めておりますけれども、やはり地域においては、市町村、JA、あるいは県の普及員、そういった方々が力を合わせて推進をしていくことによりまして、認定農業者の数も、あるいは集落営農組織も育っている現状にございます。この制度がスタートした時点におきましては、そういった担い手運動を通じまして市町村や農協や県の協力体制が構築されつつございますので、そういったところのお力をかりるということもあろうかと思います。

 ただ、全体として、過剰な事務量にならないように制度設計にも工夫をいたしまして、市町村の過剰負担ということにならないように努力をしてまいりたいと思っております。

渡部(篤)委員 続いて、農地・水・環境保全向上対策についてお聞きいたしますが、先ほども質問がありましたが、地方の財政が厳しい現状において、本対策の取り組みに、地方の間に格差が生じないよう特別交付税等の地財措置の運用事業をしていただきたい。あるいは、特別交付税等の地財等が困難な場合においては、支援単価や地方負担分について地方に一定の裁量権を与えるなど、弾力的な制度設計をお願いしたいと思います。

 つまり、国が二千二百円、県が千百円、市町村が千百円ということになりますが、財政力の弱い地域は大変困ると思いますが、どうお考えでしょうか、お伺いいたします。

山田政府参考人 お答えいたします。

 農地・水・環境保全向上対策の地方負担の問題でございます。

 一つお話がありました地方財政措置でございます。現在、十八年度に実施をしておりますモデル支援事業につきましては地方財政措置が講じられているところでございまして、十九年度の本格的な導入に向けましても、こういった十八年度の状況を踏まえながら検討していきたいということが一つでございます。

 それからもう一つ、地方の裁量の点について御質問がございました。

 これにつきましても、基本的には、この対策の受益は国のみならず地方も受けるものですから、地方においても応分の負担が必要であると考えております。具体的に、どのように地方に負担していただくか、これについては、地方にとっても負担がしやすいようなものとするように、お話がありました地方の裁量を尊重するような枠組みについても検討していきたいというふうに考えております。

渡部(篤)委員 それから、特別栽培についてですが、支援の対象となるものが、化学肥料、農薬を五〇%低減する栽培を基本としているとありますが、野菜、果樹は化学肥料、農薬を五〇%下げるということは技術的にかなり困難性があると思いますが、どうでしょうか。

西川政府参考人 営農活動への支援につきましては、今、委員お話ございましたように、化学肥料、化学農薬を五割以上低減する先進的な取り組みを支援ということにしておるわけでございますけれども、品目によりましては、現行の化学肥料や化学合成農薬の低減技術では五割低減が技術的に困難なものも想定されるということでございます。こうした品目につきましては、技術的検証や学識経験者等の意見も踏まえた上で、技術的に低減可能な水準、これを考慮して設定していきたいというふうに考えているところでございます。

    〔二田委員長代理退席、委員長着席〕

渡部(篤)委員 日本農業で守るべきものは何か、それはもちろん豊かな自然環境であり、そこに住む人たちの飾らない人情であり、それが農業、農村の宝であると思います。もっと言えば、伝統を引き継いだ農村コミュニティーの力であります。各地区の農業用水路の維持管理活動を支えている共同の力であります。コミュニティーとは地域の個性を映し出す文化の力にほかなりません。今こそこの農業を守らなければならないと思います。

 ただ、私は、今回の法案審議を通じて思ったものは、兼業農家であるとか、あるいは飯米だけを生産している人であるとか、そういう人たちにまで担い手と同じようなことをして果たしていいんだろうか。この法案はやはり国民の多くのコンセンサスを得ていかなければならないと思います。農家を守ると同時に日本の国益だとか食料の問題だと私は思っています。この委員会の議論を聞いていつも思っているのは、国民が果たして農家に対するこういうものについて納得できるかどうか、それをきちんと説明していかなければならないと思います。

 最後に大臣にお伺いいたしますが、今こそ農業を守らなければならない、そして私は会津ですが、もう田植えも終わって、農家の人たちはこの経営安定対策と農地・水・環境の保全向上対策に期待をしています。この文化を守るために、大臣のお考えをお伺いします。

中川国務大臣 まさに農業、農村を守るということは、国民に対して良質の食料を供給する、それによって自給率の向上、あるいは、消費者にとってもそういうものをいただくことによっていろいろなプラスがあるわけでございます。また、つくる方の側も、一生懸命つくることによってプラスがあるということになるわけであります。共存共栄でございます。

 と同時に、農業の生産地域であります農村におきましては古くからの長い歴史があるわけであります。多分、御地元の会津といえば、藩を代表するような、いわゆる雄藩であるわけでございますので、なぜ会津藩がああいうふうに強かったかといえば、米を中心とした農業がしっかりとしていたからだ、そしてそれが営々として伝えられてきたということは、そこにはすばらしい文化が生まれ、そしてまたすばらしい歴史を皆様方はお持ちになっていらっしゃるわけであります。

 そういう意味で、特に、そういうものに対して、より知識、経験のある地元の先輩方、つまりおじいちゃん、おばあちゃんの存在というものも非常に大事だと思いますし、また、中核的なお仕事をされている方たちはまさに生産活動の中心でありますし、また、そういうすばらしい自然あるいは農村で育っていく子供たちというのは心身ともに健全に育っていくということで、ぜひそういう地域を守っていかなければならないと思います。そして、そういうところに、会津のすばらしいところに、日本じゅうあるいは世界じゅうの人が訪ねていくということも、お互いにとってプラスになると確信をしております。

 今のお話で、飯米農家と担い手と区別すべきではないかという御指摘は、私はある意味ではそのとおりだろうというふうに思います。プロとそれから飯米農家とはおのずから施策の力点の置き方が当然違ってくるわけでございますので、しかし、では、飯米農家はやめてもらおう、やめさせていいかというと、それはそれとして、地域全体の重要な構成メンバーでございますので、そこで引き続き暮らしていただきたいというふうに思います。

 そういう意味で、点としての役割というのはそれぞれ違うわけでありますけれども、しかし、面的に、つまり会津地方全体としては、農村に住む人々が一生懸命それぞれのお仕事やいろいろな暮らしをしながら地域をつくっていくということで会津がますます発展をされ、そしてまた日本全体に対していろいろな面でいい影響、いい貢献をされていると思いますので、引き続き御発展を心から御祈念申し上げます。

渡部(篤)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、赤澤亮正君。

赤澤委員 自由民主党の赤澤亮正です。農林水産委員会では初めて質問をさせていただきます。よろしくお願いをいたします。

 さて、我が国農業の構造改革に関する政府提案三法と民主党案についてかなりの審議が重ねられてまいりました。そこで、過去の質疑を念頭に置きまして、まず民主党案の第六条、食料自給率の目標、これの積算について幾つか伺いたいと思います。

 将来目標の六〇%について、民主党から示されました過去最大の作付面積に対して過去最大の単収でいけば達成可能という考え方ですけれども、四月二十日の本委員会の山田議員の答弁ではあくまで目安ということでありました。篠原議員の答弁ではあくまで計算上のこととしておられます。しかしながら、農地面積が過去より現実に減っていること、あるいは単収についても耕地やあるいは気候条件で大幅に変動するということを踏まえると、過去最大の作付面積掛ける過去最大の単収というのは、計算する意味もないし、どうも目安にもならないのではないかというふうに考えます。

 四月二十日の本委員会で篠原議員は、五〇%の目標についてさえ、政権をとれる見込みも余り立っていないときにそれよりももっと先のことを心配するのはいかがかと思いますけれどもという趣旨の答弁をされていますが、法案を提出し、その法案に目標として明記する以上、五〇%のみならず、将来目標六〇%についてもきちんと心配していただかなければならないと思います。法案に明記する以上、目安といっても単なる意気込み以上の何らかの法的意味が当然あるはずであります。しかしながら、過去の答弁ではそこが明らかでない気がいたします。

 さらに、民主党の自給率目標の積算については、そもそも自給率が生産と消費の関係で決まることを無視しているように思えます。大きな問題であると考えます。四月二十日の篠原議員の答弁では、生産については目安とされる一方で、需要の方になりますと、結構かけ離れる部分があるのではないかと正直のところ思っているとされました。しかしながら、法案に自給率目標を明記する以上、その積算としてどのような具体的対策を講じて、需要量を何万トンに拡大することにより提出資料で示された生産量とマッチするという具体的な積算を示していく必要があるのではないかと考えます。

 そこで、まことに恐縮でありますが、時間の関係で幾つかまとめてお伺いをいたします。

 自給率の将来目標六〇%に関して民主党から示されました過去最大の作付面積掛ける過去最大の単収について、四月二十日に山田議員が答弁されたように本当に目安と言えるのか。その際、目安の法的意味についても触れていただければ幸いであります。

 また、民主党提案によれば、自給率向上試算に畜産や魚介類も含めて考えると繰り返し発言をされておられます。既に申し上げましたとおり、自給率は生産と消費の関係で決まると思いますので、この民主党提出資料の自給率向上試算の概要では、現在自給率が五〇%を超えていると思われる魚介類について生産量五百八十八万トンが過去最大生産量並みの千百二十二万トンになることを想定しておられます。これは、本当に、消費との関係で現実に可能なのでしょうか。

 さらに申し上げれば、再三答弁されている畜産については、いまだに数字が提出されていないと理解をしております。畜産の試算は、これは生産量とか需要量、自給率など、どうなっているのか、このあたりについて御説明をいただければと思います。

篠原議員 精緻な御質問をいただき、ありがとうございます。

 答弁でお約束いたしました資料でございますけれども、きょう皆様のお手元にお配りしております。順序が逆になっておりまして、まことに済みません。最後の二枚がお約束した二枚、「自給率向上試算の概要」でございます。それから、後でお触れになるかと思いますけれども、直接支払いの試算でございます。それから、前の方の「耕地利用率」以下は、きょうの赤澤委員の御質問に答えるべく取り出した資料でございまして、このうち、「耕地利用率」、前から三枚はとっくの昔につくったものでございまして、四枚目は各国の単収について、今単収についても触れられましたので、きょうの委員会用につくったものでございます。

 せっかくでございますので、今までずっと、我々の自給率の根拠について尋ねられておりますので、少々時間をとらせていただきまして、説明させていただきます。

 いろいろな御指摘がありました。まず、順序をどこからお答えしたらいいのかわからないんですが、水産の問題について御指摘がありました。

 これは、後ろから二枚目のところを見ていただきたいんですが、そこで、魚介類で千百二十二万トンというふうになっております。この点についても、もっと細かなものを後で赤澤委員にもお届けしたいと思いますけれども、これは、一九八四年、我が国の水産生産額、漁獲量が千二百八十二万トンのときです。政府の場合は、自給率の計算というのは遠洋漁業も含めております。これは一九九五年、気のきいた企画課長がおりまして、その年から自給率の計算を始めたわけですけれども、我が国の漁船が、遠洋漁業、公海あるいはほかの国の二百海里でもとっているというので、それを自給率に換算していますけれども、我々のこの計算は、二百海里時代が到来しているので、我々の二百海里の中だけで考えようということで、そこから遠洋漁業の分を引きました。ただし、公海の漁業があるということで、六十八万トンを足しまして、千百二十二万トンというふうに例えばいたしました。そのように、これは計算を緻密にしております。

 それで、量の方でいいますと、我々の二百海里の中の、今五百八十八万トンしか生産量はございませんけれども、資源量を計算いたしますと、サステーナブルイールド、持続的生産量を確保できるならば、八百万トンほど生産が可能だと。ただ、皆さん、魚釣りに行かれるとおわかりいただけると思いますけれども、ソウダガツオとかいうのがよく釣れるんですが、あれはまずくて、ちょっと食べられないわけです、かつおぶしにはなりますけれども。それから、イトヒキダラというのも、これも相当あるんですが、食用には向いておりません。それから、ハダカイワシとか、ウマヅラハギとか、こういったものをみんな食べたら八百万トンということなので、必ずしも我々の口には入らないんですが、そのように計算しております。

 それから、畜産物については、牛肉なり鶏肉なり豚肉なり、それなりの自給率を確保しておりますけれども、そのもとの飼料作物から、アメリカからほとんど輸入されています、アメリカ、カナダ、そういった国から。ですから、カロリー自給率を考える場合、ややこしくなるわけでして、我々はとりあえず耕種の作物で自給率を計算いたしました。ここのところもやりますと、非常にややこしくなりますので、それは省いております。

 それで、この次に、消費の関係というのは、まことにそのとおりでございまして、何もいいかげんに考えているわけではございませんで、例えば消費のことを言い出すと切りがないわけでして、分母に当たるわけですけれども、これは皆さん、簡単な、いつも言われることですけれども、御飯一杯それぞれ食べるだけで全然違ってくるわけです。ですから、そういったことも考慮に入れなければならないんですが、我々は農業生産のところの今法案をつくっているわけでして、それで、そちらの方は捨象して考えました。

 ですけれども、ぜひ我々はしていかなくちゃいけないことでございますけれども、最近の例で申し上げますと、ウォルト・ディズニーが、御存じだと思いますが、マクドナルドとコカコーラとの提携をこの夏から打ち切る。この二つの食べ物は子供たちの肥満に相当悪影響を及ぼしているという。ですから、それを、商売を度外視して断ち切るという大英断を下しているわけですね。これを我が国に引き写せば、そして自給率の向上ということを考えれば、学校給食に我が国の前から食べている米の給食、完全給食にする、学校給食ぐらいはというようなことをやっていいはずなんです、なかなか行われておりませんけれども。そういったことをやっていけば、幾らでも自給率が向上するんじゃないかと思っております。

 それで、せっかくですので、この表をちょっと簡単に説明させていただきますと、これはそれほどややこしくありません。このもとのデータがあるわけですけれども、それのエキスだけを書いたわけです。二〇〇二年度に計算いたしました。それで、過去の最高生産量というのは、これはおわかりいただけると思います。これで五〇%は達成できると。次が、過去最大の作付面積と最大単収、ここになってくると、少々怪しくなってくるわけです。どうしてかというと、小麦、左側ですが、四種類の麦全部を小麦に換算しているんです。しかし、それをすると多くなり過ぎるので、例えば、米印がありますけれども、百七十八万ヘクタールも小麦をつくるとなると、日本の需要量を超えるわけです、七百七十九万トンを。これは幾ら何でもあり得ないだろうということで、このときは小麦のみにしております、というのが一つあります。

 それから次に、一番前のページに戻っていただきまして、「耕地利用率」のところを見ていただきたいんですが、耕地利用率、今三十八万ヘクタールの遊休農地もございます。ですから、そういうものも換算すると九四・四%になっているわけです、二〇〇二年度で。今はもっとこれよりも下がっているはずです。ですけれども、これを過去最大の耕地利用率でいいますと、一三九%ぐらいなんです。もうちょっと努力して一四二%とか一三〇%にすれば、幾らでも可能だということでございます。

 この細かなのは、後ろにも書いてありますけれども、ちょっとめくっていただきまして、さっきの「各国の単収比較」というのを見ていただきたいんですが、これも意外に、解決の道筋がこれを見ていただくとおわかりいただけるんじゃないかと思います。小麦を見ていただきたいんですが、一番右、二〇〇三年、単収が四百三です、この二〇〇三年で計算すると。それで、世界の平均が二百七十四。ところが、フランスやドイツやイギリスのヨーロッパ諸国は八百とか七百なんです。倍以上なんです。これを見ていただきたいんですが、大豆に至ってはもっとひどくて、世界平均を下回っているんです。イタリア、ブラジル等は日本の倍。菜種もやっと世界平均でして、イギリスやフランスは日本の倍以上。

 ですから、つくばの技術陣は、政府がきちんとやってくれれば幾らでも振興できるという自信をかつて私にほのめかしたことがございます。それから、古くから農政に携わっておられる方は御存じだと思いますけれども、逆七五三計画、七年で五年で三年でとか、それから、五、六年前はZ旗を掲げて、日本に適する小麦の品種を開発するとかいうのをやっておりました。

 ですから、あと一声でございまして、小麦を日本できちんとつくる、大豆をきちんとつくるということをしていったならば、私は自給率の達成はそれほど難しいことではないと思っております。

赤澤委員 精緻な意気込みといいますか、かなり精神論を聞かせていただいたような感じがいたしますけれども、過去の御説明で、農作物ではなかなか五〇%、六〇%という目標が説明できないから、畜産や魚介類というのが出てきたようにも見えるんですが、その魚介類についても、余り今消費のことは考えておられないということであります。それからまた、畜産については、相変わらずやはり数字は出てきていないということではないかと思います。

 ちょっと、これ以上議論してもしようがない感じがいたしますので、次の質問に入りますが、今度は農産物に戻りまして、同じ資料の「自給率向上試算の概要」において、自給率の将来目標を達成するための作付面積、現在より二百二十万ヘクタール以上増加している点についても、ひとつお伺いをいたします。

 過去の答弁でありましたように、たとえ二毛作を推奨するとしても、裏作が可能な関東以西の水田面積というのは、どうも、私がいろいろな関係者に聞いても、約百万ヘクタールであるという現状があります。その倍以上の二百二十万ヘクタールを超える作付面積の増加により初めて可能となる自給率の将来目標というのは、これは現実的ではないと考えますけれども、いかがでしょうか。

篠原議員 今の二ページをごらんください。よくごらんいただきたいんですが、これは赤澤委員おわかりにならないかとは思いますけれども、非常に精緻にできております。きちんとわかる人はわかっていただけるはずなんです。

 耕地面積のところを見てください。きちんと小麦単作地帯と小麦の二毛作地帯と分けております。四百七十四万ヘクタールのときに計算しております。ちょうど半分ぐらいになるんです。

 赤澤委員の御指摘の百万ヘクタールというのは、今、転作をやったりして使われているというので百万ヘクタールでして、右側をずっと見ていっていただきまして、生産量過去最大というところで右を見ていただきますと、百四十二万八千七百ヘクタールというのがあるわけです、田んぼだけでも。それから、田んぼだけではないんです、二毛作ができるのは。畑もできるんです。二百三十四万ヘクタールのところは、二毛作どころじゃなくて、暖かいところ、私の地元の長野県ではそんなにはできませんけれども、西の方では三毛作もできるわけです。

 ところが、先ほど申し上げましたように、耕地利用率ががた減りしていっているわけです。こういうことを考えましたら、幾らでも、生産の面から計算しても、可能になってくるわけでございます。

赤澤委員 作付面積だけではなくて、ほかに、例えば小麦の増産を行うにしても、今、例えばコシヒカリなんかは麦の収穫前に田植えをするとか、そういう状態になっています。本当に二毛作をやっていくためには、作期の競合を避けるために品種を変えなきゃいかぬとか、ほかにもいろいろな前提があります。申しわけございませんけれども、私には余り現実的な試算がなされているようには思えないということだけ申し上げさせていただきたいと思います。

 時間の関係で、民主党案についての質問は以上で終わりにさせていただきまして、引き続きまして、政府案についてお伺いをしたいと思います。

 政府案は、我が国農業の構造改革は待ったなしの段階にあるということを正確に認識して、画期的なものを打ち出してきた、正しい方向に向かっている、我が国農業の明るい将来への確かな一歩であると私は信じるものでありますが、その一方で、大改革には当然、関係者の大きな不安が伴うところでございます。特に、生活がかかっている農家にとっては当然のことであります。

 そこで、私の選挙区であります鳥取県の農業関係者から寄せられた不安の幾つかについて御紹介をいたします。全国共通のものが多いと思います。

 例えば、集落営農の経理の一元化については、三つのポイントだけ満たせばよいということを説明しても、なお困難を伴うという声が多いです。

 厳格に四ヘクタールそれから二十ヘクタールの基準を当てはめると、十六年度末では、約八%の農家、人数ベースで見て約八%しか対象にならない。目標の二十一年末でも三割。これについては、当然、四ヘクタール、二十ヘクタールを知事特認という形で下げて今後対応していくということだと思いますけれども、相変わらず経理の一元化を中心に不安の声があります。また、直接支払いの基準となる十六年から十八年の過去三年の実績についても、新規就農のインセンティブを失わないために、一定期間後、見直しできないかというような声もあります。

 これらの点、いずれも政策の根幹にかかわるものですので、改革の実効を上げ、あるいはWTOルールを重視していく上で譲れないものであることは理解をしております。しかしながら、不安を抱える農業関係者の皆様にいわば惻隠の情を持って、制度開始前の指導助言の徹底でありますとか、新規就農を促す別の観点からの政策の導入に全力で努めるなど、全体として、大改革に伴う関係者の不安を解消することに万全を尽くしていただきたいというふうに政府に要望しておきたいと思います。

 選挙区から寄せられたもう一つの不安について、井出経営局長にお尋ねをいたします。

 大豆交付金について、これまで、出荷時に農協が立てかえで支払っていると理解をしております。平成十九年産以降の大豆について、直接支払いになることで、支払い時期がおくれ、農家の運転資金繰りに支障が生じるおそれはないか、簡潔に御説明をいただきたいと思います。

井出政府参考人 お答えいたします。

 生産条件格差を補正するための交付金の支払い時期につきましては、支払い前に対象者要件の確認や対象品目の生産量等を確定することなどが必要ではございますが、年度内に支払いを行うことを基本に、担い手の営農に支障が生じることのないよう、できる限り早期に支払うよう努めてまいりたいと考えております。

赤澤委員 平成十九年に導入される品目横断的経営安定対策は、まさに待ったなしの我が国の農業構造改革の目玉として、あるいは車の両輪としてまことに画期的なものでありますけれども、同時に、最初の一歩にすぎないとも言えると思います。

 食料の安定供給を実現するとともに、農家の他産業並みの所得を実現していくためには、制度開始当初の経営安定対策の対象となる、例の経営規模、四、十、二十ヘクタールという基準も最終的にはその倍まで引き上げていく、そういう必要があると理解をしております。

 大綱におきましても、制度開始後は、構造改革の進捗状況を定期的に点検し、その結果を踏まえ、望ましい農業構造の実現に向けた見直しを行うものとされています。平成二十七年における「農業構造の展望」の実現までには、なお、かなりの道のりがあると言わざるを得ないと思います。

 そこで最後に、平成二十七年の「農業構造の展望」を実現するための今後の不断の努力について、大臣の御決意を伺いたいと思います。

中川国務大臣 赤澤委員御指摘のとおり、十九年度に制度がスタートしても、これは本当の目標に向かってのスタートであって、決して、ゴール、これでいいんだということではない。これは経営的に見てもそうでありますし、また、日本の農業として、その気持ちの面でも非常に大事だというふうに思っております。

 四とか十とかいうのは、あくまでも土地利用型というところに着目をして基準としたわけでありますけれども、規模拡大によって、さらに効率的、かつ、いいものをつくって収益を上げていただく、あるいはまた集落営農組織で経営効率を上げていく、行く行くは法人化になっていただくという方向性も当然目指さなければいけないと思っております。

 また、中山間地域、あるいはまた午前中、冒頭私から報告をさせていただきましたが、所得特例等々につきましても、効率的あるいはまた高収益の農業をやっているところについてもさらに御努力をしていただくということが必要でございます。

 そういう意味で、全国の中には本当に他産業並みということよりもはるかにいい経営をやっているところもあるわけでございますから、私は、そこはさらに頑張っていただきたいし、また、そこを目標にして多くの人たちも頑張ってもらいたいしというふうに思っておりますので、実際に国会での御審議が成立いたしましたならば、まさに十九年度に向けてこれからやるべきことがたくさんございますけれども、これを十九年度にスタートした後も、あくまでもスタートであって、さらにこの対象者が、高い志と、そしてまた結果的にはもうかる農業を目指して大いに頑張っていただきたいと思いますし、農政としても、それに対してのいろいろな施策を講じていきたいというふうに考えております。

赤澤委員 終わります。ありがとうございました。

稲葉委員長 次に、赤城徳彦君。

赤城委員 自由民主党の赤城徳彦です。

 朝から続けての委員会でお疲れかと思いますが、もう少しですので、おつき合いをいただきたいと思います。

 最初に、民主党提出の法案について、何点か確認のために伺いたいと思いますけれども、後の質問の都合もありますので、できるだけ簡潔にお答えいただければ幸いであります。

 直接支払いの額について、これは数字の確認なんですが、提出された資料には、転作の麦の単価が反当たり四万五千円、こうなっております。これまでの委員会の質疑では、小麦に対して米並みの所得を確保するために七万円を出す、こういうふうな答弁がありますけれども、資料の方にはそれが出ておりません。これはどちらが正しいんでしょうか。

山田議員 これは、あくまでも試算、例えばという形でございまして、私どもの法案は基本法ですから、こういう形でいきますということで、それなりに試算をしたという形のものを出しただけです。したがって、これで固定して、これでやりますということではありませんので、御承知おきいただきたいと思います。

 私どもとして、米は、試算の際の例えばの例としまして、五万円を基本に、そして大規模農家になるほど単価を引き上げる。麦は、十アール当たり四・五万円を基礎に、そして、今言ったように、いわば規模加算とかいろいろな加算を重ねていって、あるいは七万幾らになるんじゃないか。この辺も、あくまで例えばの試算ですから、流動的なものはあるかと思います。大豆については五万五千円。一応そういった形で、規模加算、環境加算等々を含めていきながら、随時弾力的に運用を図っていきたいと考えております。

赤城委員 試算なのでということなので、ちょっと、ふわふわしていてよくわからないんですが、いずれにしても、米並みの所得を確保するために七万円、加算を含めてそのぐらいになる、こういうことだったと思いますけれども、ちなみに、役所に米並みの所得を得るためにはどのぐらい麦に対して足せばいいのかということを聞きましたら、大体七万五千円だ、こういう話でした。七万円とか七万五千円とかいろいろあるとは思いますけれども、では、それだけ補てんしたら米づくりをやめて麦に移行するかというと、また別の要因もあると思うんですね。そういうことはあると思いますが。

 それにしても、この支援の考え方で、四月二十日に篠原議員から、十アール当たりで米並みの所得を確保することが外国との生産条件格差の是正よりも前にあるというふうに言われています。法の九条一項ではこの生産条件の格差を是正するということを目的としておりますので、米並みの所得云々というのは法律には規定されていないですね。この関係はどうなりますか。

篠原議員 最終目的は生産条件格差の是正でございます。ですけれども、それをやりますと相当な額に達してしまうわけですし、いきなりそれを言っても農家の皆さんにはきちんとおわかりいただけないんじゃないかと思います。それよりも前に、国境措置でそれなりに守られておりますので、その分もあります。ですから、国内の中だけで考えて、どっちの作物をつくろうかということを考えた場合、米と比べてどうかということが一つの判断基準になるのではないかと思いまして、皆さんに説明してわかっていただくために、米並みの所得を確保するように直接支払いの金額は決めるんだということをずっと説明してきております。

赤城委員 法律上は生産格差の是正ということで対処するのかなと思いましたけれども、もう一つ大きな疑問があります。

 米に対しても支援をする、こういうことですね。反当たり二万五千円から四万五千円、こうなっておりますが、そうすると、米に対して、さらに有利になるようにその分を上乗せしないと、やはり米の方がいいやと、米に対して支援があるんだから、米づくりに戻っちゃうということになりませんか。その点はどうしますか。

篠原議員 難しい、農政指標のところに立ち至った御指摘、御質問だと思いますけれども、この表、直接支払いの試算の表をごらんいただきたいと思うんですが、我々、自給率がうんと下がってしまった作物をバックアップするために直接支払いということを考えました。しかし、やはり米というのは、皆さんおわかりいただいていると思いますけれども、日本の作物の中では別格官幣大社です。これをないがしろにして自給率ということは考えられないんじゃないかということで、米もちゃんと面倒を見ますよということを示唆しているものでございます。

 ただ、この一番上のところを見ていただきたいんですが、だんだん単価を下げていく。〇・五ヘクタール未満のところを見ていただきたいんですが、政権奪取初年度とX年後、Y年後、何年後になるかわかりませんけれども、〇・五ヘクタール未満の農家はもうゼロでいいのではないか。余ったりしたりしていますし、米の消費量が下がっていってしまうのではないかという懸念がありますので。

 これは一つの例でございまして、今赤城委員の御指摘のとおり、このままだと米がふえてしまう。それは、このX年目、Y年目のところを見ていただきたいんですが、単価を変えることによってどちらかの作物に誘導する。米の方がふえて困っていたら、逆に麦や大豆の方をふやすということで、直接支払いというのはそういう運用ができるわけです。

 例えばの例で申し上げますと、菜種のところを見ていただきたいんですが、菜種のところが一番多い。十アール当たりにすると六万円です。これは一ヘクタールでやっていますから。それが、幾ら六万円やってもふえないということで、例えば六万五千円にふやすというのですね。大豆の転作のところを見ていただきますと、大豆は五万五千円でそれなりにふえてきた、だからもう五万円でいいんだ、Y年目には三万五千円だ、こういう運用が直接支払いではできるわけです。需給状況に応じて単価を変えられるというメリットがあるわけでございます。このような運用により、いろいろなことは解決できるのではないかと思っております。

赤城委員 これは政策として非常に不思議なことになると思うんですよ。足りないものに対して助成して、それを伸ばしていくという趣旨だと思うんですが、いきなり政権奪取時に米に対してこれだけの支援をすれば、これはどう考えても麦に行かない。さっきの数字でいくと七万円から七万五千円ぐらいは足さないといけないのに、米に対してこれだけ支援したら、とてもじゃないけれども麦に行かないでしょう。しかも、麦に対する単価も、これはだんだん下がっていくんですね。米も下がるけれども麦も下がる、これはどこまで行っても、自給率の少ない麦に対して、そちらをつくりましょうという方向には行かないんじゃないか。

 だから、政策的に誘導するのであれば、最初から麦に対してより高い単価を設定して、米よりも麦をつくった方がいいね、こういうふうにするのが本来ではないかなと思うんですが、ちょっと時間がないので先の方に進ませていただきます。

 では、米に対する支援ですね。これも篠原委員の答弁で、上限関税が下げられた場合にも、法律改正をしなくても対応できるように、生産条件格差を是正する直接支払いを米に対しても行う、こういうことで答弁されています。別格だからというお話でしたけれども、これはあくまで法律上の位置づけですので、法律の九条一項にある生産格差を是正するような直接支払いだ、こう理解していいんだと思うんですが、そうだとするならば、どういう外国産米との生産格差を是正するようにこの単価を設定しているのか、あるいは法律上の要件とは全く違う、まさに別格にこれは単価を設定したのか、この法律の条項との関係を教えていただきたいと思います。

篠原議員 政府も出さないような精緻な資料を提出いたしたわけでございますけれども、あくまで直接支払いの試算ということでございまして、赤城委員御指摘のとおり、いろいろなケースが考えられるわけです。今、仮に政府の法案も、上限関税だとか十五品目とか、これの帰趨によって大きく変わってくるわけでございます。それは我々の法案も同じでございます。ですから、我々は今、我々の考えられる時点でどういった方策がいいのかということで、現実的にどういった形でそれを進めていったらいいのか、そして、目安として、では幾らぐらいかと。

 政府の方はなかなか、幾らかというのに対して、まだ十九年度からだということで金額も示しませんね。そして、我々は一兆円と示してあるわけです。ですから、一兆円というのを分けて考えると一体どういうことになるかということで、それはちゃんと示さなければいけないということで相当苦労して示しているわけですから、その点を御理解いただきたいと思います。

赤城委員 御苦労お察しいたします。

 もう一つ大きな疑問があるんですが、米についてはいろいろな状況があるでしょうということでしたね。しかし、この表でいうと、政権奪取初年度にはこういう支援をする、こうなっているんですが、しからば、上限関税が設定されるとか関税が引き下げられるとか、そういうことが起きなかった場合にはこの助成はしなくていい、要するに生産格差が現実化しないわけですから。WTO交渉がうまくいって、そういう事態に至らなかった場合には米に対する支援はしないと理解していいでしょうか。

山田議員 最初に説明しましたように、これはあくまでも試算として出してみたというところで、いろいろな条件によって異なってくるわけです。

 例えば、今WTOの交渉に入ったわけですが、WTO交渉の中で、米の上限関税がどれだけ、このままうまくいくものかどうか、あるいは下げられてくるのかどうか。今回、閣法においては、米が品目に入っているのか入っていないのか、今のところ入っていない。これは品目に米を入れるとしたら、WTOで米の上限関税が下げられた場合、そうした場合に法律の改正をしなければいけないのか、あるいはこの法案でできるのかどうか。この米の問題は大きな最大の関心事です、殊にWTO交渉において。

 だから、このことについて、本来我々は触れたくなかったんですが、今交渉中ですから。しかしながら、篠原議員の試算の中に少し入っているようですので、我々の法案においては、いろいろなこれからの交渉の過程はあると思いますが、その中で、条件、米についても上限関税が下げられたりとか、いろいろな条件が変わってきた場合においては、それ相応、とりあえず直接支払いで対応しなけりゃならない。もちろん、そうなった場合に、その下げ幅にもよりますが、一兆円では足りなくなる。

 小沢代表も今、大胆にやろうじゃないか、そういう話をしておりますので、さらにその金額については大きく変わっていく可能性もあるわけでして、そこはそういう意味で先ほどの篠原議員の答弁を聞いていただければと思っております。

赤城委員 このWTO交渉が今まさにぎりぎりの交渉段階にあるということは、よく御案内のとおりだと思います。そういう中でこの法案が提出され、審議がされているわけでありますけれども、どういう状況になるかわからないから、いかなる場合にも対応できるように用意されているんだと。非常に用意がいいんですけれども、しかし、例えば外国へ行って説明されるときに、我が党は関税が下がってもいいように、上限関税を設定されてもいいようにもう法律で用意しています、こういうことを言ったときに、WTO交渉にどれだけ大きな影響があるのか。当然、政府案にはそういうものは、米は入れていないんだ、こう思うんですけれども、ちょっと大臣はうなずいておられますけれども、そこら辺の考え方があれば教えていただきたいと思います。

中川国務大臣 今、委員もおっしゃったとおりで、もう本当に七月末に向けてモダリティーをつくるためにジュネーブ・ベースで、あるいは私もきのうもインドの大臣とも上限関税反対という電話会談をしたんですけれども、これは国会審議の中で、幾ら野党案といえども政権をねらった政党の案の中で、あたかも上限関税を前提にした議論がされるというのは、交渉上極めて迷惑な話でございます。

赤城委員 まさに大臣も言われたように、これはもう、上限関税を阻止する、米についてしっかり守っていくんだということは与野党を通じて力を合わせて主張していくべきことだ、こう思いますので、ぜひともこの法案については再考をお願いしたいと思います。

 それから、備蓄との関係なんですが、米の生産調整を廃止します、こういうことであります。これは当然、米について大量の余剰が発生するんだと思います。価格も暴落すると見込まれますが。だからこそ、民主党案でも、この麦、大豆に助成をして、米よりも収入が多くなるようにして、米の過剰とか価格の暴落が起きないように、こういうことだと思うんですが、さっき申し上げたように、ちょっと助成が足りないのかな、やはり米の過剰というのは起きるんだろうなと思います、この民主党案では。そうすると、では三百万トンを棚上げ備蓄します、こういうことになるのかなと。

 不思議なことなんですけれども、米にも助成します、生産調整はしません、どうぞつくってください、だから過剰が起きます、過剰は三百万トン棚上げで処理します、麦、大豆にもさらに助成をします、大胆に、一兆円で足りなきゃもっともっとと、こういうことですけれども、これは本当に予算が幾らあっても足りないのではないかと思います。

 それから、ちょっと時間がありません、最後の質問になるかと思うんですが、WTOの緑の政策との関係についてお尋ねしたいと思います。

 過去の生産実績を、昭和三十年、四十年、五十年代など幅広く見ることで、WTO協定上、緑の政策として主張できるのではないか、こういうお話を、これは山田議員から答弁がありました。これは、WTO協定に定める、定められた一定の基準期間としてこういう三十年前とか五十年前の期間を定めるんでしょうか、お尋ねします。

山田議員 WTOの黄色の政策、緑の政策というのは、それぞれのとり方によっていろいろな解釈はできると思いますが、過去の生産実績に対して緑の政策としてやりましょうと。

 例えば政府案でいきますと、麦とか大豆とか、あるいはてん菜もそうなんでしょうが、過去三年間の平均実績に対して出しますよと。ところが、過去三年前につくった人、あるいはこれから新しくつくろうとしても、もちろんその対象にならないわけですね。

 ですから、過去のとり方なんですが、過去のとり方を単に三年間で絞るんじゃなく、過去、僕は二十年でも三十年でも、あるいは四十年でもいいと思うんですが、過去の生産実績に対して、その人が幾らつくっていたじゃなく、その農地、耕地が麦をつくっておったか、過去どれだけつくっておったか、大豆をつくっておったかという形で過去の実績を評価することは、WTO上可能である、私はそう考えているところです。

赤城委員 なるほど、定められた一定の基準期間ですから、何年前はいかぬとか、こういうことは書いてありませんけれども、基準期間があっちこっち動いてはいけないと思うので、三十年前とか五十年前の期間を定めるのであれば、全国その期間になるんでしょうし、あるところは昔の、あるところは最近のというわけにはいかないのではないかなと思うんですね。

 そうすると、三十年前、五十年前にその農地で何がつくられていて、生産者がだれであって、その後所有権がいろいろ変わったり、作付の作物が変わって、それをどうやって把握ができるのかな、もうそういう資料も何もないのではないかと思うんですけれども、それはどうされますか。

山田議員 過去の例えば三十年前、この畑においては麦がつくってあった、大豆がつくってあったということについては、私の方で詳細な調べはしておりませんが、当時の統計資料等によれば、ある程度わかるんじゃないかと。今調べて、確信を持って今言っているわけじゃございません。当時、麦とかそういったものについては、米もそうですが、かなり正確な統計資料というのは残っているはずだ。そして、野菜その他についてもかなり精緻な統計資料は統計局に残っているんじゃないか。

 そういったことをもとにして、基準年を、何年というんじゃなく、ある程度の期間を置いて、十年とか二十年とか、そうして定めることも可能じゃないかと、WTOの解釈上、そう考えておりますが、ただ、この土地はこの年度でいこうとか、この農地、西日本は昭和三十七年度でいこうとか、北海道は平成五年でいこうとか、そういう形はできないとは考えております。

赤城委員 現在の農業者ごとの生産面積を別に法律で定めるとこの民主党提出の法案ではなっていますけれども、これはとても定められないのではないかと思いますが、時間が参りましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

稲葉委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 これより各案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。神風英男君。

神風委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案等三法案に反対、山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案に賛成の立場で討論を行います。

 政府案に反対する第一の理由は、政府案が経営安定対策の目的を食料の安定供給の確保に資するとしつつ、食料自給率目標は四五%としたままであり、全く見直していないことであります。

 世界的な食料供給の不足が予測される中で、食料の相当部分を輸入に依存している我が国において、国民に対する食料の安定供給を確保するため、食料自給率の向上を図ることは国の重大な責務であります。

 これに対し、民主党案は、食料自給率目標を十年後に五〇%、将来的には六〇%として法案に明記し、国民に約束をしております。

 政府案に反対する第二の理由は、経営所得安定対策の対象農業者を担い手とされる一部の農業者に限定し、かつ、経営規模という形式的な要件で対象者を選別するという手法をとっていることであります。

 政府は、施策を集中化、重点化することにより構造改革の加速化や自給率向上に資すると説明していますが、これは、さまざまな農家が有機的に結合した農業、農村現場の実情を無視した暴論であります。

 また、担い手と非担い手とを峻別すれば、農村地域社会が営々とはぐくんできた互助の精神、さまざまな連携の取り組みが失われ、農村地域社会は崩壊の危機に瀕することになります。

 これに対し、民主党案は、大規模農家や小規模、兼業農家の有機的な結合により営まれている農村の実情を踏まえ、計画的に生産する販売農家を直接支払いの対象としています。

 経営規模という形式的要件を課すことなく、計画的に生産することを要件とし、広く販売農家を直接支払いの対象とし、農業全体の底上げを図ることとしております。

 政府案に反対する第三の理由は、米の生産調整を相変わらず継続することを前提としていることであります。

 これでは、実質的には何も変わりません。

 これに対し、民主党案では、米をつくるかつくらないかは、農業者の経営判断にゆだねることとしております。

 民主党案の直接支払いは、国が定める生産数量の目標に従って計画的に生産をした販売農家を対象としており、その単価は、大豆、麦が米より有利になるよう設定し、米から大豆、麦への生産転換を促します。仮に豊作などにより需要を上回る生産がなされた場合には、国が買い上げ、棚上げ方式により備蓄をし、飼料やバイオマスその他の用途へ活用することなどにより、米の需給と価格の安定を図るとともに、地球温暖化の防止や循環型社会の形成にも資することとしております。

 以上が、民主党案に賛成し、政府案に反対する理由であります。

 民主党が政権を獲得した暁には、食料の国内生産と安全性が確保される真の農政改革が実現されることをここに明言しつつ、私の討論といたします。(拍手)

稲葉委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 私は、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案及び他二法案に反対、また、山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案に賛成の立場で討論を行います。

 政府案に反対する理由は、政府案の品目横断的経営所得安定対策が進められていくならば、政策は担い手に集中することになってしまい、担い手と非担い手の二極分化が進んでしまいます。その結果、非担い手の離農という状況が生じることが懸念されます。

 そのようなことになれば、今日まで日本の農業の主体となってきた家族経営的農業が崩壊し、ひいては農村集落自体の崩壊へとつながっていく可能性を含んでいると指摘しなければなりません。

 集落営農組織を立ち上げていく方向も示されておりますが、経理の一元化や法人化に向けた取り組みが義務化される中、条件が不利な地域において集落営農組織を立ち上げていくのは非常に難しいことも明らかになっています。

 地域の実情にそぐわない今回の政策は、農村集落には受け入れられるものではないと言わなければなりません。

 一方、民主党案に対しては、今後の日本農政の進むべき基本的方向を示し、所得補償政策を徹底するとともに、農山漁村集落を維持し、環境保全に取り組む農家にも支援するという、環境保全型農業というものを追求している点で評価できるものと考えます。

 以上、政府案に反対、民主党案に賛成し、討論といたします。(拍手)

稲葉委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

稲葉委員長 これより各案について順次採決に入ります。

 まず、山田正彦君外四名提出、食料の国内生産及び安全性の確保等のための農政等の改革に関する基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲葉委員長 起立少数。よって、本案は否決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲葉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、砂糖の価格調整に関する法律及び独立行政法人農畜産業振興機構法の一部を改正する等の法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲葉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

稲葉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

稲葉委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時四十五分散会


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