衆議院

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第2号 平成19年2月21日(水曜日)

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平成十九年二月二十一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西川 公也君

   理事 岩永 峯一君 理事 金子 恭之君

   理事 近藤 基彦君 理事 谷川 弥一君

   理事 並木 正芳君 理事 篠原  孝君

   理事 松木 謙公君 理事 西  博義君

      赤城 徳彦君    赤澤 亮正君

      新井 悦二君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    今津  寛君

      浮島 敏男君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    岡本 芳郎君

      北村 茂男君    斉藤斗志二君

      中川 泰宏君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    鳩山 邦夫君

      広津 素子君    福井  照君

      福田 良彦君    古川 禎久君

      御法川信英君    森山  裕君

      渡部  篤君    岡本 充功君

      黄川田 徹君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    高山 智司君

      仲野 博子君    福田 昭夫君

      山田 正彦君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       松岡 利勝君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   農林水産副大臣      山本  拓君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   農林水産大臣政務官    永岡 桂子君

   農林水産大臣政務官    福井  照君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         齊藤  登君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮坂  亘君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  山田 修路君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           高橋 賢二君

   政府参考人

   (林野庁長官)      辻  健治君

   政府参考人

   (水産庁長官)      白須 敏朗君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      舟木  隆君

   参考人

   (食品安全委員会委員長) 見上  彪君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十一日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     新井 悦二君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     浮島 敏男君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として食品安全委員会委員長見上彪君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官佐藤正典君、総合食料局長岡島正明君、消費・安全局長町田勝弘君、生産局長山田修路君、経営局長高橋博君、農村振興局長中條康朗君、農林水産技術会議事務局長高橋賢二君、林野庁長官辻健治君、水産庁長官白須敏朗君、内閣府食品安全委員会事務局長齊藤登君、総務省自治行政局選挙部長久元喜造君、厚生労働省大臣官房審議官宮坂亘君及び資源エネルギー庁電力・ガス事業部長舟木隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。

岩永委員 皆さん、おはようございます。

 きのう松岡大臣の所信表明がございまして、与党の先発として幾つか質問させていただきたい、このように思います。

 まず、大臣にお聞きする前に、きょうは、最近の経済財政諮問会議におきまして、農業等をめぐる議論が大変活発にされておるわけでございます。そこで、内閣府の副大臣にお越しをいただきまして幾つかお話をお聞きしたい、このように思うわけでございます。

 経済財政諮問会議は、昨年の十一月にグローバル化改革専門調査会というのが設置されまして、さらにこの調査会の中で、EPA・農業ワーキンググループを設置して、本年一月から、スピード感ある、中長期的なEPA戦略や、国境措置に依存しない、競争力のある農業の確立等々についての議論がされているわけでございます。

 私は、どういうことが議論されているのかなと思って、二月七日の主な議論を実は見てまいりました。しかし、驚くや否や、私どもが進めている農業政策とはほど遠く、むしろ、どういう根拠でお話をされているのか、本当に不思議な部分がたくさんございました。

 例えば、関税撤廃、FTAルールについては、貿易額で九〇%以上というのが日本の基準だ、しかし、これを再検討せい、こういうようなことを言っている。また、国境措置を撤廃して直接所得補償を導入することが適当だとか、それから、直接所得補償に置きかえることで、幾らコストがかかっているかを透明化することが重要、これはわかるわけでございますが、直接補償の財源については公共事業費を振りかえよ、こういうようなことも言っているわけでございます。それから、米の十七タリフラインをすべて除外する必要があるのかどうか疑問だと。これは我々は必死で十七を守っているわけでございますので、ここらあたりにも疑問を感じているわけでございます。

 また、日豪EPAに伴う影響については、農業のデメリットばかりが強調されているけれども、我が国として製造業等も含めた総合的な視点での検証が必要、こういう話でございますが、当然、そうはしておるものの、オーストラリアとのEPAの中で、農業が受けるダメージというのは大変大きなものがあるわけでございますので、我々は体を張って、この日豪EPAには反対しているわけでありますが、それらに対しても言及しているわけでございます。

 また、食料安全保障については、食料の安定供給のためには国外からの安定供給を確保する。だから、自給率向上の目標ばかりを掲げていても安全保障にはつながらない、こんな話も出ているわけでございます。

 それから、関税をかけているわけでございますけれども、消費者等が大きな負担を強いられている、関税を撤廃せいというような話まで出ているわけでございまして、本当に大変な議論がされております。食品企業が割高になる原料農産物を購入させられるため、食品企業が海外に移転するかもしれない、こういうようなことで、このような海外移転が生じることは好ましくない、ここらあたりは大変大事な部分だと思うわけでございます。

 農業の多面的機能についても、農業の多面的機能の発揮については、国境措置以外の手段で確保すべきだ、外交的なツールにならないのではないか。これは、外交上物すごく大事な部分として、日本が訴えているところでございます。

 農政改革についても多くの議論がされているわけでございますが、私自身、このワーキンググループの委員の先生方の会合において、農業、農政について意見が表明されている、このことに対する議論がこれから何らかの形で集約される、このように思っておるわけです。

 しかし、こういう議論の中で、政府の施策に反映させていく可能性があるんだったら大変厳しいな、このように思っているわけでございますが、きょうは大村副大臣に、この委員の先生方の発言は一体どのような権限に基づいて、農業、農政について行われているのか、お聞きをしたいと思います。

大村副大臣 おはようございます。内閣府副大臣の大村でございます。御質問をいただきました。

 きょうは、松岡大臣の所信に対する質疑ということでございますが、その前に御質問いただきまして大変光栄でございますが、お答えをさせていただければというふうに思います。

 今御質問いただきました、EPA・農業ワーキンググループは、経済財政諮問会議のもとに昨年十一月に設置をされた、これは委員御指摘のとおりでございます。これは、我が国の潜在成長率を高めていくためには、グローバル化のメリットを最大限活用する、そういった体制をつくっていく必要があるという趣旨に基づいて、政令であります経済財政諮問会議令に基づきまして、このグローバル化改革専門調査会というのが設置をされました。これも含めて三つ、調査会が設置をされております。

 そのグローバル化改革専門調査会におきましては、EPA、FTA、農業の問題と、金融資本市場の問題、二つについて議論をしようということになっております。

 その専門調査会のもとで、このEPA・農業ワーキンググループを設置して、議論を進めているわけでございます。

 このワーキンググループには、経済財政諮問会議の専門委員の方に加えまして、特定の専門事項につきまして学識経験を有する方をメンバーといたしまして、EPAを進めていくこと、そして、競争力ある農業を確立していくという観点から御議論を賜っているということでございます。

岩永委員 そのことはわかっているわけでございますが、この委員の方々の議論を行うに当たりまして、農業、農政についての十分な知見というものを有されているのかどうか、このことについて、副大臣はどうお思いですか。

大村副大臣 委員の先生方は全部で八名、このワーキンググループ、メンバーにお願いをいたしておるわけでございますが、そこにおきましては、例えば経済関係の方、そして産業界の方ももちろんおられますけれども、その中に農業の専門の方も入っていただきまして、そういった観点からも十分御議論をいただいているというところでございます。

 ちなみに、先ほど岩永委員御指摘をいただきました二月の七日につきましては、これは第二回のワーキンググループでございまして、その際には、EPAについて関係各省から現状の報告をいただいて、そして自由討議をしていただいたというふうに聞いております。

 ちなみに、第三回はきのうやりまして、私もきのう初めて参加をさせていただきましたが、きのうは、北海道、群馬、そして石川県ですか、三人の農業生産法人、現場で農業を全面的にやっておられる方にお越しをいただきまして、農地制度とか農業の経営のこととか、そういったことを十分御議論いただいております。

 次は、農水省の方から現状の農業政策、農業改革について御説明をいただいて、御議論を賜るということになっておりまして、そういう意味では、岩永委員御指摘のように、農業の実態、現場を踏まえた議論をしっかりと積み重ねていきたいというふうに思っております。

岩永委員 いずれにいたしましても、これの集約が政策に反映されるわけでございますし、今のような議論ですと、日本農業の先行きが心配される発言が大変多うございますので、大村副大臣におかれましても、御発言をいただく以上、十分な勉強、知見を持って御対応いただきますように、ひとつ御指導を賜りたい、このように思う次第でございます。

 松岡大臣、御苦労さんでございます。

 今私自身が質問いたしましたこのワーキンググループでなされている議論について、大臣はどのように受けとめておられるのかということをお聞きしたいと思います。あわせて、大変大きな課題になっております日豪EPAに対する決意を、ひとつこの際あわせてお聞きをしたい、このように思います。

松岡国務大臣 岩永先生の御質問にお答えいたします。

 まず、今大村副大臣から御答弁がございましたこのワーキングチームの先生方の発言について、岩永先生御懸念でございますが、どのように受けとめているか、こういうことでございます。

 もとより、今大変な国際化、グローバル化という中で、そういう状況の中で日本の農業もどのように対応していくか、そしてまた発展を目指していくか、これは今そういうスタンスにあることは間違いがない、こう思っております。

 そこで、私も経済財政諮問会議で、その委員の先生方と昨年ちょうどお話をする機会がございまして、そこで議論になったわけでありますが、日本の農業は国境措置に頼らない、そういう農業を目指すべきだ、先生方からこういう御発言がございまして、そこで、いろいろ議論をいたしました。

 誤解もあったり、また、いろいろ思い違い、こういったことはやはりあるんだろう、こう思った次第でありまして、そのためにも、正しい国際的な中での、例えば関税というものは、日本だけが関税措置を設けているのではなくて、アメリカにおいてもEUにおいても、みんな高い関税を張って国内を守っている。これはもうどこもそういったことはやっておるわけであります。

 また、それから一方、貿易につきましても、何か日本だけが輸入に反対しているような、決してそうじゃなくて、逆でありまして、日本が一番輸入を多く受け入れているわけであります、カロリーベースで六割を輸入しているわけでありますから。したがって、そういった実情。逆に、日本の方からは、まだ輸出ができないような、そういう逆国境措置になっている状況、事情等、こういったことも十分私は御説明を申し上げたわけでございます。

 そういう上に立って、日本の農業としては、攻めるべきはしっかり攻めながら、また一方において、守るものはこれは断固としてしっかり守っていく、こういったようなことについても御理解を求めて、議論をいたした次第でございます。

 いずれにいたしましても、貿易的な側面とか、それだけでは律し切れないのは、特に、国土が狭く、地形が急峻な日本にありましては、農業が国民生活の安全や安心という面で、これは森林も含めてでありますが、果たす役割というのは極めて大きい、こういう観点に立って議論をしていただくことが非常に重要である。こういったことで、我々といたしましても、この経済財政諮問会議の農業をめぐる議論に対しましては、積極的に参加をし関与をしながら、正しい御理解と、そしてまた正しい議論の結論が導かれていきますように、積極的に対応してまいりたい、このように思っております。

岩永委員 日豪の決意は、これはまた後で結構でございます。

 それでは、時間が五、六分しかないわけでございますが、大臣所信について質問に移りたい、このように思います。

 私は、平成十九年度の農林水産予算について、大変枝ぶりがいいということで評価をしております。

 と申し上げますのは、一番大事なのは農政改革三対策でございますが、これについては積極的な予算がとられているということでございますし、特に、担い手支援対策についても、今回新たに百七十六億が計上されている。

 それから、農山漁村の活性化プロジェクト支援交付金、これも、都市と農村の共生・対流を見込んだ、新たに農村への都市からの移住というものを含めて三百四十一億が見込まれている。また、再チャレンジについても百十二億が見込まれている。

 それから、一番注目すべき大きな予算は、これは十八年度補正と合わせて、森林吸収源対策の追加整備、これが何と七百六十五億。これは自由民主党の中でプロジェクトをつくっていただいて、大変積極的に御対応いただいた形が出ているわけでございまして、大変いい予算になってきた、このように思っているわけでございます。主要先進国の中で最低の水準になっている食料自給率の向上に向けて、さらなる取り組みの強化を願いたい、このように要望を申し上げる次第でございます。

 その中で、特に、きょうは農山漁村の活性化についてお話をさせていただきたい、このように思っています。

 この間の宮崎の知事選、私は一週間ほど寝泊まりで選挙応援に行っておったわけでございますが、高千穂から大臣の熊本へ出る山間をずっと走って空港へ行ったわけでございます。松岡大臣も大変な農業地域をお抱えになっている、中山間地域をお抱えになっている。むしろ、棚田とはほど遠い、猫の額のような農地を、石垣を積んで、一生懸命に耕しておられる。しかし、放棄地がほとんど見られなくて、すべてそこに耕作がされている現状を見たときに、その歴史の重さというのを感じるとともに、なおかつ、今でもこうして額に汗しながら一生懸命に地域農業を守っていこうとする努力については、私は本当に敬意を表したわけでございます。

 しかしながら、今、農山漁村というのは、都市と比べて、格差が縮小せず、むしろ拡大しているというような嫌いがあるのではないかというような気持ちを持つものでございます。

 そういうような状況の中から、安倍総理がさきの施政方針演説の中で、地方の活力なくして国の活力はあり得ない、こういうことで、魅力ある地方の創出に取り組むことを表明されたのでございまして、大変私は時宜を得たものであろう、このように思いますが、中でも、この農水省が取り持つ政策の重さというのをひしひしと感じている次第でございます。

 だから、私は、魅力ある地方、そして美しい国づくりのために、農山漁村こそ本当に元気にならなきゃならぬ、このように思っておるわけでございますが、その中で、農水省で農山漁村活性化プロジェクトチームと銘打って、そして都市と農村の共生・対流を考えているわけでございますけれども、大臣におかれましては、その部分をどのように政策的に展開していこうとされておられるのか。地域を活性化させるための大臣としてのインパクトある政策は何なのか、お聞きをしたいと思います。

松岡国務大臣 もう時間もありませんので、簡潔にお答えいたします。

 まず、その前に、オーストラリアとのEPAでございますが、これはもう前々から、再三この場でも、またいろいろな場でも申し上げておりますとおりでございまして、衆参両院におきます農林水産委員会の御決議がございます。これを体しまして、もちろんそれだけではなく、いろいろな関係者の皆様方の御意思を体しまして、私どもしっかりとこれは守り抜いてまいりたい。そういう交渉を徹底して、タフな交渉になると思いますが、これはしっかりとやり抜いてまいりたい、このように思っております。そのために、必要な前提として、段階的削減、また再協議、除外といった大きな枠組みをつくっての交渉でございますので、先生方の御支援もいただきながら、しっかりと守り抜いてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それから農山漁村、どうやってこれを活性化していくかということでございますが、地域再生が大きな大きな課題であり、また目標でございます。安倍内閣は総力を挙げてこれに取り組む、こういうことでございまして、私どももその中の大きな分野を担っていく、こういう心構えで農山漁村活性化法案を出させていただいて、そしてこれを成立させていただいて、それをもとにしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、いろいろな各般の政策を総合的に組み合わせて活性化を図っていかなきゃならぬと思っておりますが、今申し上げました活性化法をもとにいたしまして、とにかくにぎわいある農村を復活させる、にぎわい村づくり、こういうような理念で、団塊世代の方々が退職をされる、そういった方々が農村に来られる、そしてそこに定住をされる、そのお世話をしながら、また就農支援もしながら、そういう取り組みをしていく。

 そしてまた、一方では滞在型、都会に住み、農村にも滞在しながら、そして農村の活性化にも貢献をしていただく、こういった方々に対してもいろいろな支援を、もう時間がありませんので申し上げませんが、申し上げていく。

 とにかく活性化をしっかりとやっていこうということで法律も出すわけでありますので、予算もつけておりますので、しっかり取り組んで実現をしてまいりたいと思っております。

岩永委員 時間が参りました。

 農地政策改革、それから農協改革、それから森林吸収源対策、美しい森林づくり等々通告をしておったわけでございますが、二十分の時間の中で消化できませんので、これをもって終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西川委員長 大村副大臣、ありがとうございました。

 次に、伊藤忠彦君。

伊藤(忠)委員 おはようございます。自由民主党の伊藤忠彦でございます。岩永先生に続きまして、御質問をさせていただきます。

 まず、質問に入る前に、過日、二月十六日に米国産牛肉の混載問題があったところでございます。このことにつきましては、政府に改めて的確な対応を早急にしていただけるように強く御要望を申し上げておきたいと存じます。

 さて、質問に入らせていただきますが、攻めの農業と言えば松岡大臣と言われるほどに、松岡大臣の名前は、私は昨年だったと強く記憶をしておりますが、まずはあの中国に日本の米を売り込んでいただいた、成功した、そのことはもう本当に名前がとどろいた出来事だったと思います。私は、ある意味で我が国の農政史に特筆すべき出来事だったというふうに思っております。この松岡農政が、米を売り込んだだけで終わるわけじゃなくて、攻めと同時に守ることも大事でございます。きょうは、私は、特に畜産に重点を置きまして、大臣所信の中から幾つかお聞きをいたしたいと存じます。

 私の地元の愛知県知多半島は、大臣も御承知のように、園芸とともに畜産が大変盛んなところでございます。その実態も踏まえつつ、今後の豪州を初めとする国際交渉と、家畜排せつ物の処理に絞ってお伺いをさせていただきたいと存じます。

 まず、WTOの交渉、EPA、FTAの交渉について、もう既に岩永先生がお聞きになっておられますけれども、申すまでもなく、日本の畜産業の中でも、特に乳価の低迷というのは大きな課題でございます。私のいる知多半島も、二万頭を超える牛が、元気に乳搾りに、黒毛牛の肉になり、一生懸命飼育をされて、今か遅しと出荷を待つ、そういうところでございますけれども、いよいよ三月の十一日からオーストラリアのハワード首相もお見えになるということでございます。

 私どもは、まず豪州とのEPA、FTAについては大変な心配をいたしております。大臣所信の中では、特に、守るべきものはしっかり守るとの方針のもと、政府一体となって全力で交渉に当たるというふうに書いてございますけれども、ぜひこの豪州とのEPA交渉に当たり、乳製品に関する大臣の認識と決意、さらにまた、今後WTO交渉に当たって、畜産に関して想定される論点とそれに対する方針について、まずお伺いをさせていただきたいと存じます。

松岡国務大臣 伊藤先生、冒頭に大変御評価をいただきまして、ありがとうございました。

 今の先生の御指摘でございますが、全くそのとおりだと思っております。といいますのは、今先生が酪農関係、乳製品について御指摘がございました。日本とオーストラリア、ニュージーランドといったところを比べますと、これはもう大変な、一言で言いますと大人と子供的な、まだ格差といいますか差がございまして、そういう状況の中で、これを自由化してしまえばどうなるか。これはもう本当に大変な大問題でございます。それは重々認識をいたしておりまして、特にオーストラリアとニュージーランドというのは、世界の酪農、畜産の中でも、まさにトップである。アメリカよりもはるかに、内容的に、生産性といいますか、そういったものが高くて、非常に強力な力を持っておる。

 したがいまして、私どもは、日本の酪農を守っていく、また日本の畜産を守っていく、ひいては日本の農業全体をしっかりと守っていくためには、今回のEPA交渉に当たりましては、先ほどから申し上げておりますような、そういう腹構えでもってしっかりと日本の酪農、畜産、農業全体を守っていく、今こういう決意でおります。

 そして、この前も、知多半島に伊藤さんという酪農家の方がおられまして、御存じかどうか、随分しっかりやっておられる方でありますが、わざわざお訪ねいただきまして、いろいろなお話もお伺いをいたしました。伊藤先生がきょうこうやって御質問、御発言されていることは非常に知多の皆様方も心強いんだろうと思いますが、我々もそういった方々の気持ちにこたえるようにしっかりやってまいりたいと思っております。

 それから、WTOでどういうことが論点になるか、こういうことでございますが、当然日本は輸入国であり、それから輸出国との関係でいろいろせめぎ合っておるわけでありますが、これはどの品目にかかわらず、関税をどの水準で守るか、これが一番の論点でございます。そしてもう一方で、やはり輸出というものをどうやって獲得していくか、そこに需給バランスを求めていくか、こういうことだろうと思っております。

 今、中国・上海に対して、去年の十一月から、初めてチルドで、それ以外のLL、ロングライフでは行っておりましたが、チルドでもって初めて明治乳業が上海に進出をした。これがどれくらい大きな展開を見せていただけるか、非常に期待もいたしておるところであります。

 出すものは出しながら、入ってくるものに対してはしっかりとガードをしながら、そして国内の需給バランスをとっていく、そのことが、需要がふえ、そして供給もそれにつれてふえることが経営の発展につながると思いますので、しっかりそうした方向が目指せるようなWTO交渉をやっていきたい、こう思っております。

伊藤(忠)委員 ただいま大臣から大変力強い御意思を表明していただきました。大臣のもとには私たち日本国の畜産農家すべてがかかっておりますので、何とぞ、ひとつ守るべきところはしっかりと本当にお守りをいただきますように、重ねてお願いを申し上げておきたいと存じます。

 さて、何といっても、家畜の問題の話をいたしますと、排せつ物の処理問題というのは切っても切れない課題でございます。

 そこで、この家畜の排せつ物の問題について申し上げていきたいと思いますが、今大臣からお話がございましたとおり、畜産業というのは、いろいろな交渉事の中で、国際的にも厳しい条件下にございます。それは私のいる知多半島の畜産農家においても同様でございますが、一方で、大臣おっしゃったとおり、知多半島の農家だけ取り上げましても、消費者に喜ばれて、そして安全で安心なものをどうしたら安いコストで生産するかということも、一生懸命取り組んでおります。ついこの間も、知多牛というブランドを立ち上げるために、今までにない八十数軒の肉牛の農家が集まって、一つのブランドで頑張ろうというあかしを立ててくれたところでございます。

 その低コスト生産を目指す中で、これからの排せつ物問題を、いかに低コストで環境に優しく処理をするかということがまことに大きな課題になってくると思います。

 昨年の十二月に、農水省から、家畜排せつ物施行状況調査結果というものが公表をされました。これによれば、ほぼ畜産農家は大変な御尽力をいただいて、かなりの割合で進んでいる、よくやっておるという結果が出てきております。

 畜産農家は、私ども知多半島でも約二万頭の牛を飼っておりますので、その出てくる量たるや相当なものでございます。毎日毎日でございます。排せつ物のかなりの部分が堆肥化をされて、地元の野菜などの高品質な品物の生産に大きく寄与しているというのが今やっていることでございますけれども、なかなかこれが、それだけで、ああ、よかったという話にならないわけでございます。

 例えば、知多半島は半島でございまして、馬の背の状態になっておりますので、この馬の背の上の部分にある畑にどっと入れますと、これが雨が降ってざあっと流れますと、今度は伊勢湾岸に流れ出るわけでございます。そうすると、この海域で漁業をやっている人たちは今何に困っているかというと、随分海が変わってしまったというふうに言われております。

 漁業とのマッチングも含めて考えると、やり過ぎるということがまた大変な問題にもなってくるわけでございます。つまりは、でき過ぎるものをやり過ぎるという悪循環にも陥っているということがあるわけで、これも含めて考えると、堆肥だけではどうしても済まない状況があるのかなという気がいたしているんです。

 そこで注目をされているのが、大臣もよく御承知のとおり、牛の排せつ物を発酵させて、そこからメタンガスをとって発電をするという施設であります。これこそは、大臣所信にもあるバイオマスの利活用、農業の新境地の開拓を目指した積極的な挑戦だというふうにとらえてもいいのではないかというふうに思っております。

 私どもの知多半島も、来年度の四月から、この畜産ふん尿処理に関するプロジェクトとして、ふん尿を燃焼して発電をして、その熱源を使って産地園芸にぜひそれを使って、灰が再利用で堆肥に使われる。灰になれば量が減りますので、それは適度な量になってくるんじゃないかという意味で、非常に丸の多い流れじゃないかということで、我々も導入検討を一生懸命いたしておりますが、全国の導入状況はいかな状況にあるのか。

 また、各地にはさまざまな例があると思います。うまくいったところもあれば、苦戦をしているところもある。そういう成功するための条件というのはどんなものがあるのか、どんなことをしなければいけないのかということについて、あわせてお伺いをしたいと存じます。よろしくお願いします。

松岡国務大臣 先生がおっしゃっていることは、非常に重要な、大変これから大事なことを御指摘をいただいていると思っております。

 といいますのは、地球温暖化の問題、そういったことを基本的な背景といたしまして、そしてCO2を減らしていく、そのためにはクリーンなエネルギーを化石燃料にかわって少しでも多く使っていくようにしていく、これが大事でございまして、きょうは鳩山邦夫先生がおられますが、私ども自民党でもう長く、私も緑のエネルギー革命推進議員連盟、こういうことでつくって、最初、初代は江藤隆美先生が会長で、今は鳩山邦夫先生が会長で、島村先生にもよく御参加をいただきながら、これをやっておるわけであります。

 そういったような中で、今先生御指摘の点につきましては、もう時間がありませんから簡潔に申し上げますが、私ども、これを大きな方向として取り組んでまいりたい、こう思っております。

 そこで、まずバイオマスのエネルギー、これによって将来どのような目標を目指すか。今ガソリンで六千万キロリットルが輸送用の燃料として使われております。これの一割程度を、木材も含めた農林産物、こういったものをもとにして、ひとつ生産できるような大きな方向を目指していこうと。もとよりブッシュ大統領が、ことしの一般教書ではまた加速させまして、とにかくこのバイオ燃料でもって、石油にかわるエネルギーとしてこれを大きく位置づけていく、こういう方向を目指しておりますし、もう世界的な大きな流れであります。

 そこで、このふん尿を利用した発電でありますが、私も、今から三年ぐらい前になりますか、ドイツの方に視察に行ってまいりまして、もうドイツは二〇〇〇年に再生可能エネルギー供給法という法律をつくって、そして畜産廃棄物をもとにして、そこに灰をまぜたりトウモロコシをまぜたりして、そしてまたインセンティブをいろいろ与えまして、そして畜産廃棄物から発電をして、それを電力会社が買う。売電をする。非常に小さくなっていきますから、残った液体を今度は肥料として、最後は農家に、農地に還元をする。こういうシステムで、すばらしい一つのシステムだな、こう思ったわけであります。

 まさに、今まで困っておったものが環境にも貢献をし、農地にも地力を上げる上でも貢献をし、そして農家の畜産経営にも大きな貢献をしていく、こういう一石三鳥みたいな話が現実に実行されておりまして、私どもの日本におきましても、そういう大きな方向を目指しながら、そういったことができる条件整備をこれからいよいよやっていかなきゃならないし、またそれが必要な時代だ、このように思っております。

 今先生がおっしゃいました、全国でも、メタンだけでも四十四カ所やっておりますし、それ以外も含めますと約八十カ所近いそういった事例がございます。

 そういった中で、今知多でもおやりになるということでございますが、私ども最大限のお手伝いも申し上げながら、畜産農家の皆様方が困っておったものが困らずに、そして大きな価値をまた環境的な面も含めまして生み出していく、こういった方向に行くような方向を目指して、農林水産省としても全力を挙げて、そういう大きな方向を目指していこう、こう思っておりますので、またいろいろと御指導もお力添えもお願いを申し上げたいと思います。

伊藤(忠)委員 私の方からは、まさに大臣のおっしゃった農業の新境地の開拓を目指した積極的な挑戦の中に、ぜひこの家畜排せつ物についてのさまざまな低コストな技術開発というものも入れていただきたいということをお願い申し上げておきたいと思います。

 そして、私がいる知多半島、二万数千頭も牛を飼っているあの地域で、実は排せつ物の香りのしない知多半島を目指そうというのを私たちのテーマにしようじゃないかと言って首長さんたちと話をしているんです。それは、やはり技術開発だと思います。

 それからもう一つ、冒頭、なぜ僕はEPAだとかFTAだとかWTOの話をして排せつ物の話に入ったかと申しますと、今本当に畜産農家がこうして苦しんでおります。しかし、この家畜の排せつ物の問題をやろうと思うと、農家負担が出てまいります。一番苦しんでいる人たちがおって、この人たちの問題があって、農家負担、どうしたら少しでもこれを低減させてあげられるか、低減しなきゃいけない状況にあるということを私は強く申し上げたいから、きょうはこの問題を二つ取り上げたわけでございます。

 私たちの安倍総理は、「美しい国、日本」を実現しようと所信表明でおっしゃったんですけれども、私たちの地元の首長さんと私は、この美しい日本というのを、さっきの繰り返しになりますが、畜産の排せつ物に関して、においのない知多半島を実現しようというのが私の言う「美しい国、日本」なんですけれども、攻めの農業として、一番先頭を走って力強くやっていただいている松岡農林水産大臣に、ぜひ遺憾なくこの件についてお力添えを発揮していただけるように、改めて一言御決意をいただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

松岡国務大臣 もし先生機会がございましたら、ドイツにおける、これは養豚なんですけれども、行った地域は。もうまさに、今まで困っておったものが、今度はみんなで出資して、組合をつくってやる。組合が今度はふん尿をとりに行くわけですよ。もう自分たちで出さなくていい。とりに行く。そしてそれを発電して、売電をして、そして出資に対しては配当がある。また、売ったその利益はこれまた利益として配分がある、肥料は帰ってくる、こういう形で、夢みたいな話なんですね、日本の農家からしますと。だけれども、現実にそれはもうドイツでは実現できておる。

 私もそういった方向を目指したいと思っておりますし、それから、そのための研究、大いなる研究をしっかり研究機関にやってもらうように、我々も予算もつけて頑張りたいと思っております。

 それから、これは宮崎県の都城に、はざま畜産というか、豚を間さんがやっているんですが、ここはやはりにおいがしない。どうやっているんだ、いや、それは自分なりの秘密だとおっしゃっていましたけれども、きなこ豚という名前で物すごい豚、いい豚が売れている。したがって、ちゃんとその技術はあるんだろう。

 また、いろいろなところからいろいろな提案が来ておりますから、そういったことを受けて、やはりにおいのない畜産、こういったものを実現していくことは、本当に畜産農家にとっても地域全体にとっても大きな課題だと思いますので、これだけ技術開発が進んでくれば必ずできる、また、それを目指して我々もしっかり頑張る、こういうことで努力をしたいと思います。

伊藤(忠)委員 ありがとうございました。

西川委員長 次に、御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自由民主党の御法川でございます。

 松岡大臣、山本副大臣におかれましては、本当に連日、予算委員会等で御苦労さまでございます。農林水産委員として若干の質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先日の大臣所信あるいは予算の中にもありましたとおり、ことしから本格的に始まります品目横断的経営安定対策、四月からは米など本格的に加入申請が始まってまいるわけでございますけれども、昨年の九月から秋まき麦の方はもう既に始まっておりまして、そこだけを見ると、まあまあ積極的に皆さん参加をしてくれているなというふうなところが見受けられるわけでございます。

 さて、そうはいいましても、大部分は、やはり米にかかわる農家の方々が四月以降どういう形で取り組んでいただけるかということが最大の眼目ではないかなと私は思っておりますけれども、現在の取り組み状況といいますか、どのような形で取り組みが進んでいるのかということに対してまずは御説明をいただけないかなと思います。

高橋(博)政府参考人 お答えいたします。

 ただいま先生からもお話ございましたように、現在、この品目横断的経営安定対策の加入申請に向けましては、各地域におきまして担い手の育成確保の動きが高まっております。

 既に、お話ございましたとおり、昨年の九月一日から十一月三十日までの間に行われました秋まき麦を作付ける農家で、収入減少影響緩和対策に加入される方の加入申請の状況でございますけれども、認定農業者それから集落営農合わせまして約二万八千件の申請がございました。これらの方々が十九年に作付を予定しております麦の面積でございますけれども、十八年産の麦の面積に対しまして約九割の二十四万四千ヘクタールの水準になっております。

 一方、これとは別に、生産者団体とそれから製粉業者などの実需者との間で十九年産麦について播種前契約というものを行われておりますけれども、この契約数量については、十九年産の場合、既に九十八万トンという形になっております。これは十八年産の数量の水準に比べますと約一〇七%の水準というようなことでございまして、この後、春まき小麦の作付者あるいはこの収入変動緩和対策には加入しないで生産条件不利対策だけ加入されるという方についても、この四月以降若干積み増されると思っております。

 御指摘のお米でございます。

 米につきましては、四月から加入申請でございますので、現段階でこの水準というものをなかなか見通すことは困難でございますけれども、私どもの方で、昨年もちょっとお答えいたしておりますが、一定の前提のもとに現時点で担い手の対象となり得る者の作付面積を推計いたしますと、約五割というような水準がございます。

 これについては、今後、今回の経営安定対策あるいは米需給対策、農地、水、環境保全対策などの農政改革の推進を着実に進めることによりまして、この数字に向けて毎年毎年逐次積み上げていくべく今努力をしております。

 いずれにいたしましても、現在、行政、農業団体が一体となりまして、連携協力の上でこの担い手育成ということを進めておりますので、四月からの加入申請に向けて、最後のと言うのもおかしゅうございますけれども、追い込みをかけて加入促進に努めてまいりたいというふうに思っております。

御法川委員 ありがとうございます。

 私、申し忘れましたけれども、農地、水、緑の対策に関しても、当初は十アール当たりで二千二百円、千百円、千百円ということで、実は地方の方では大変これに関する危惧があったわけでございますが、皆様の御尽力によりまして、実質的には市町村、県合わせて大体一割、こういう負担で済むということで、大変取り組みに対する姿勢が変わってきたのではないかなというふうに思っておりますので、ぜひそちらの方も御支援をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それで、ちょっと私の地元秋田の話になってしまうんで恐縮なんでございますが、先般、安倍総理大臣が、二月の三日に私どもの地元を視察に来ていただきました。これからどんどん時間を見つけて安倍総理が地方を視察するということでございまして、たまたま私どもの地域が最初の場所として選ばれました。その中で、地元の商工業者の方々と懇談をしたり、担い手の農家の視察あるいは農事法人を営まれている方たちとの懇談等、さまざまなところを、時間は若干短かったかなとは思いますが、そういう場所を見ていただいたということで、大変有意義な時間でなかったかなというふうに思っております。

 その中で、安倍総理は農業についてさまざまな形で触れておられました。記者団との懇談の中で、米というのはなかなか大変な時代だけれども、本来大変おいしいお米をつくる力が我々日本人にはある、それを政府として応援していかなくてはならないという話をしていただきました。その後、しかし、条件において、それができない地域もありますから、そういうところに対しても光を当てていきたいと思います、こういう大変力強いお言葉を総理から承ったわけでございますけれども、この内容について、ちょっと御説明をしていただけないかなというふうに思います。

松岡国務大臣 御法川先生、先般総理が秋田に行かれまして、そのときにいろいろな懇談があって、非常に有意義な内容であったと。そしてまた、総理も非常に喜んでおられましたし、また、いろいろな事例を経験することができて、いろいろな意味で、地元の人にとっても勇気づけられた、そういうことだっただろうと思います。

 その中で、今、条件に合わないところもある、そういったところにも光を当てる、これは米づくりを前提に言われたんだろうと思うんですが、私どもとしては、認定農家として、また法人経営として、そういう中で、一定の要件を満たして担い手となっていただく方、個人では無理、法人経営では無理という場合は、集落という単位で大きくまとまっていただく。固まっていただく。そういうことによって、一つの集落でだめなら、さらに範囲を超えたいろいろな形でまとまっていただくこともあり得る、こう思っていまして、いろいろな問題点も指摘されておったんですが、今、高橋局長が申し上げましたように、秋まきの分につきましてはほぼ九〇%の達成率、そしてこれを生産量といいますか生産的な面で見ますと、実需者、これはいわゆる製粉メーカーさんですが、それと、生産者との契約のベースでは一〇七%で、もう既に量的には一〇〇%を上回っておる。

 それと、私は非常に心強く感じましたのは、この秋まきの中で一〇〇%以上を達成した県というのが十県、たしか十県あったんです。一番多いところは一一八%ぐらい達成をいたしておる。本当にこれはそれなりの意識といいますか御理解も進んできたな、こういう心強い思いを持っております。したがって、新しくまた四月から始まりますが、四月といいますか春まきから始まりますが、これに対しましても大きくまた理解が進んで進展することを望んでおります。

 そういう状況の中で、米にしても、どうしても集落営農に入られない方にも、私どもは別途産地づくり、そういった中でできるだけの対応をしていく、こういうような形でそういった取り組みはいたしておりますので、そういった意味も含めて、そこに入られないとしてもそういった形の対応もあります。私どもとしてはそのように受けとめております。

御法川委員 ありがとうございました。

 例えば、やはり中山間地などでは、集落全部合わせても二十ヘクタールには到底満たないようなところというのは秋田でも多々ございます。しかしながら、集落と集落でやるというのは、これはなかなか現実的には、その地域地域の特性もございまして、難しいようなところもありますので、そういう部分も含めてぜひ光を当てていただければなという総理のお言葉を信じて、地元で頑張らせていただきたいなというふうに思っております。

 もう一件、これは松岡大臣の御専門でございますが、林業関係の話でございますけれども、若干の御質問をさせていただきたいと思います。

 今政府としては、美しい森林(もり)づくりということでさまざまな施策を打ち出していただいているわけでございます。その中で、これはかなり長期的な見通しを立ててやる施策だということだと思いますけれども、例えば針葉樹の人工林を針広混交林化していく、そういうこともございまして、こういうのは環境対策、いろいろな点から大変重要な施策でないかなというふうに考えております。

 私の地元の話をまた蒸し出して申しわけございませんが、秋田の場合も、秋田杉といって大変名前は通っているわけでございますが、これが災いしている部分が現実にはございまして、なかなか広葉樹が育っていないという現実がございまして、環境的な問題というのを早急にやっていかなくてはならないんだろうなというふうに思います。

 さまざまな施策をやっていくに当たって、一つ重要なのは、後継者をいかに育てていくか、こういうことではないかなというふうに思います。特に、東北のようなところでは、まだ全体の有効求人倍率も一・〇まではほど遠いというような地域もあるわけでございまして、林業の後継者を育成し、地元に定住させていただけるということになると、これは経済全体の意味でも非常に効果の大きい、いい施策ではないかなと私は考えますけれども、そういった部分についても、どのような取り組みを行っていくおつもりなのか、この辺をお聞かせいただきたいと思います。

辻政府参考人 お答えいたします。

 先生の御指摘のように、美しい森林(もり)づくりを推進していくためには、森林の整備を支える林業の活性化が不可欠ということから、効率的かつ安定的な林業経営の担い手を育成及び確保していくことが重要でございます。

 このため、林業後継者対策といたしまして、林業普及指導事業を活用し、意欲的な林業経営者及びその後継者を対象とした現地検討会や研修等により、新しい林業技術の普及や経営手法等の指導を積極的に推進しているところでございます。

 さらに、平成十九年度からは、団塊世代が一斉退職を迎える状況に対応するため、故郷に戻るUターン者等を対象として、新たに林業経営を開始する場合の支援を行うとしているところでございます。

松岡国務大臣 先ほど秋田でのことにつきまして申し上げましたが、ちょっと具体的に申し上げますと、特例がいろいろございまして、農地が少ない場合の特例としては、面積規模を基本原則のおおむね八割まで緩和するとか、こういったこともございますし、さらに中山間地域の場合には五割まで、こういった形の特例もございますし、それから生産調整組織の場合の特例も設けておりまして、中山間の場合は二十ヘクタール掛ける生産調整率掛ける八分の五、だからかなり緩和されると思うんですね。ただ、四ヘクタールは下限だ、こういうこと。だから、実態的には、四ヘクタール以上あれば、こういった事例に該当すれば、そういう形でこれは対象になりますよということであります。

 さらにあわせて、入られない方でも、先ほど言ったような別途の措置もございますということでありますので、できるだけ皆さんの御努力をいただいて、こういった基準まで達していただけるように、このことをお願いしたいと思います。

御法川委員 ありがとうございました。

 先ほど伊藤先生から、私の前にFTAあるいは家畜のお話等ございました。今農林水産業には本当にさまざまな課題が山積しているところではないかなというふうに思いますけれども、大臣、副大臣におかれましては、ぜひ果敢にそういう問題に取り組んでいただいて、安心、安全が保たれる国民の生活、これをぜひ維持していただきたいなというふうに思っております。

 美しい国、美しい森林(もり)、そしてにおいのない国、こういうことでぜひ頑張っていただければなというふうに思っております。

 ますますの御健闘を御期待して、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

西川委員長 次に、西博義君。

西委員 公明党の西博義でございます。

 時間も三十分ということで限られていますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 初めに、漁業の政策について質問をさせていただきたいと思います。

 報道にもありましたように、一月の二十二日から二十六日の間に、神戸で、五つの地域が集まって、マグロ資源管理機関の合同会議が開かれ、マグロ資源の回復を目指した行動指針が採択されたというふうに言われております。また、二月の十三日には、御存じのように、機能不全に陥っているIWC、国際捕鯨委員会の正常化を求める会合が開かれまして、十五日には反捕鯨国に対話を呼びかける議長報告が採択をされました。いずれも日本における積極的な開催だというふうに思いまして、大変に評価をしているところでございます。

 ところで、国内では、水産政策の基本指針となる二〇〇七年度からの水産基本計画の見直しが現在行われております。漁業者それから漁船ごとに漁獲枠を決める個別漁獲割り当て、IQ制度の導入、それから担い手への集中支援、さらに食用魚介類の自給率を六五%に引き上げる目標を、現行の水産基本計画、二〇一二年から二〇一七年に先送りをする、これは計画を確実にするという意味でのお考えだというふうに思いますが、そういうことが検討をされております。

 日本の水産業を再生させて、世界的に逼迫している魚による食を確保しようということでございますが、生産体制の強化が急がれております。このことにつきまして、少し大きな、ざっくりとした質問でございますが、大臣の御所見をちょうだいしたいと思います。

松岡国務大臣 今、西先生が御指摘になられましたとおりの状況にあると思っております。そういった状況を踏まえまして、また西先生が今御指摘を求められましたように、どうやってそういう中で日本の水産業を再生させ発展させていくか、こういう観点で、二〇〇七年度からはいよいよ新たな水産基本計画を見直す、こういうような作業を進めておりまして、三月には水産基本計画の見直しを発表したい、今このような前提で取り組んでいるところでございます。

 そこで、先生がおっしゃいましたように、漁業者の減少、高齢化、さらには漁船の老朽化、こういった問題が非常にあるわけでございまして、そういう中で、世界的に水産物への需要が高まってきている、こういう状況を生かしてどう発展をさせていくか。

 そこで、今回の水産基本計画におきましては、漁船漁業の構造改革、これを一つの大きな柱にいたしまして進めてまいりたい。今、WTOの方でも、過剰漁獲につながるような政策はだめだ、こういうことになっておりまして、私ども、過剰漁獲につながるような漁船漁業の構造改革はいたしませんが、やはり安全性があって、生産性が高くて、そういうような方向を目指して改革を進めてまいりたいと思っております。

 今おっしゃいましたように、法制度の改革もあわせてそのためには必要ではないか、今回、水産三法、これは私どもで内々呼んでいる言い方でありますが、漁港法それから漁業法、さらに水産業協同組合法、この三つを今回改正させていただきたい、このように実は思っているところであります。

 そして、水産資源の回復を図るとともに、漁船漁業及び水産物の流通システムの構造改革、さらには水産物の今の世界の需要変化をチャンスととらえて、これを大きく生かしていく、そういう意味での輸出の促進、こういったことも進めてまいりたい、このように思っております。

西委員 水産業は言うに及ばず、農業、林業ともに大変重要な時期に差しかかっていると私は認識しております。大臣、さらに積極的な改革に努力いただきますように、お願いをいたします。

 話はかわりますが、昨年の九月末に公明党第六回党大会を開きまして、新しく出発をいたしました。その際、人と地域が輝く人間主義の国づくりという重点政策を発表させていただきました。農林水産業政策に関しましては、これまでの産業政策中心の政策から地域づくりを前面に出したことが特徴になっております。つまり、農山漁村のコミュニティーの再生、生活環境の整備を重要な課題として位置づけをさせていただきました。

 今国会では、農山漁村活性化法案の審議も予定されておりますし、予算としても農山漁村活性化プロジェクト支援交付金が設けられて、農林漁業への就労支援それから定住の促進等の支援が行われております。詳しくはまた法案審査のときに議論をさせていただきたいというふうに思いますが、きょうは、先日、副大臣からお話のありました農林水産予算案に盛り込まれたその他の事業について若干の質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、都市と農村の共生・対流推進対策につきましては、広域連携共生・対流推進交付金、それから広域連携共生・対流整備交付金、こういう二つの交付金の制度がございますが、それぞれについての概要を担当からお願いしたいと思います。

中條政府参考人 お答えいたします。

 広域連携共生・対流等推進交付金につきましては、交流に関する情報発信やマーケティングなど、農村側だけの取り組みでは解決が難しい問題につきまして、都市側と連携して課題を解決していく取り組みを支援いたしまして、都市と農村の共生・対流を一層推進することを目的としております。

 具体的には、従来の都道府県を通じた支援対策では対応できない、都道府県域を越えて都市と農村の多様な主体が連携して行う先導的な取り組み等につきまして、公募方式によりまして国が直接活動を支援する事業でございます。

 公募では、例えば、都会の若者の農村での長期農業等ボランティア活動の全国的拡大、それから体験農園を通じました団塊世代等の農的暮らしの促進などの取り組みの公募を予定しているところでございます。

 次に、広域連携共生・対流等整備交付金につきましては、そのような都道府県域を越えました広域的な取り組みの実現に必要となります施設等の整備に対しまして支援を行いますとともに、都市農業の振興に必要となります施設等の整備への支援を行う事業としているところでございます。

西委員 施設の整備につきましては、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金、それから広域連携共生・対流整備交付金、先ほどの交付金ですね、こういう資金が使えるということになります。この二つの交付金を出す、その支援の対象が異なるのかどうかということが一つ。それから、広域連携共生・対流整備交付金というのは、先ほどお話がありましたように、都道府県を越えた広域的な連携の取り組みに関係するというふうなお話がありましたけれども、もう少しわかりやすいイメージをお話しいただきたいというふうに思います。

中條政府参考人 お答えいたします。

 農山漁村活性化プロジェクト支援交付金につきましては、農山漁村における定住、二地域居住等を通じた地域の活性化に必要となる各種施設の整備に対して支援するものでございまして、国から地方公共団体に交付するものでございます。

 なお、各種農業団体等が事業実施主体になる場合には、地方公共団体を通じて助成されることとなっております。

 次に、御指摘のありました広域連携共生・対流等整備交付金につきましては、先ほど申しましたように、都道府県域を越えました広域的な取り組みの実現に必要となる交流施設等の整備に対しまして支援するものでございまして、国から直接民間団体へ助成するものでございます。

 イメージでございますけれども、広域連携によります交流施設等の整備としましては、例えば、一つは、複数県域にわたり整備した方が効果的な散策道と交流施設等の一体的な整備、あるいは、都市部の商店街と農村の農家組織の連携によります交流情報の受発信等の拠点整備などを考えているところでございます。

西委員 散策道、つまり都道府県をまたがって散策する、そういう道が一つの都道府県だけではなくて広域で使える、こういうふうなイメージでいいのかというふうに思います。

 続きまして、グリーンツーリズムそれからセカンドスクール、これは児童生徒が長期の宿泊農業体験をする、そういう教育でございますが、そういうことを推進し、それから交流拠点の整備を図るというようなことが一つ考えられているのではないかというふうに思います。

 次に、都市農園についてお伺いをしたいと思います。

 公明党の都市農業振興プロジェクトチームは、政府に対してたびたび提言や申し入れを行っておりまして、都市農業の振興に取り組んでまいりました。その取り組みの一つとして、農業体験農園それから児童農園、こういうものの普及を図ってまいりました。

 今年度予算で農業体験農園について支援するというような内容になっておりますが、この内容についてお伺いをしたいと思います。

中條政府参考人 お答えいたします。

 これまで農林水産省としましては、御指摘の体験農園を含め、市民農園の整備を図ってきたところでございますけれども、都市部におきましては、市民農園は依然供給不足の状況になっていると承知をしております。

 このため、平成十九年度予算案におきましては、新たに広域連携共生・対流等対策交付金を創設しまして、体験農園の全国的拡大を進めていくための効果的な取り組み内容の企画を募集し、支援していくこととしたところでございます。

 具体的な企画内容につきまして、農林水産省としましては、一つは、体験農園が農家にとって有望な農業経営の選択肢の一つであることについて全国的な啓発を行うこと、一つは、体験農園の開設、運営についての具体的なノウハウなどの研修を行うこと、もう一つは、これらの研修を実施できる人材の活用と養成を行うことなどなどの取り組みが効果的に実施されることが必要であると考えております。

 また、こうした取り組みは、各方面にわたる対応が必要でありますことから、農家組織、農業団体、それから地方自治体等が連携して取り組むことが効果的であると考えております。

 応募のありました企画のうち、こうした観点から見まして、体験農園の全国的拡大に向けてすぐれた企画内容のものを選定いたしまして支援することによりまして、体験農園の推進を図ってまいりたい、このように考えております。

西委員 私も実は日曜菜園をやっているんですが、そういうレベルのものではなくて、農業者の指導のもとに収益も結構上がるという、もう少し本格的な農業、さらには専門家の農業、こういう段階にあるものだというふうにお聞きをしておりますが、多くの人が参加できるような体制をぜひともお願いしたいと思います。

 今ちょっとお話をいたしましたけれども、都市農業については農村地域とはまた異なった特色を持っている。そのために、法制度それから税制等についての抜本的な考え方というのが必要なときだというふうに考えております。市街化区域内で保全すべき農地とされている生産緑地、これが相続税の納税のために切り売りされざるを得ない、そんな状況もございます。

 都市農地の保全を図る方針をはっきりさせるために、都市農業振興に関する特別措置法、これは仮称でございますが、そういうような法律が必要な時期ではないかというふうに考えておりますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

松岡国務大臣 先生の御指摘、その問題といいますか必要性といいますか、本当に、それはよく私どももわかります。

 といいますのは、やはり都市周辺、都市内の農地というのは、いろいろな意味で大きな役割を果たしていると思っております。まず、都市に近いということの利点を生かして新鮮な野菜を供給できる、こういった意味では、都市にとってもありがたいし、また都市農業の人たちにとっても自分たちの利点を生かした取り組みができる。さらにまた、これはいざ災害というときはオープンスペースになって、非常に大きな役割を果たす。そしてまた、身近に見るということができますから、いろいろな農業体験、交流体験の場にもなる。そしてまた、何より緑ということで、都市の中で大きな潤いや憩いを与える、こういう役割があるんだろう。そういった意味から、私どもも、食料・農業・農村基本計画の中でも、都市農業の振興というのは大きなものとして位置づけております。直販の施設や、または体験の施設や、そういったこともそういう中で取り組みを進めればと思っております。

 問題は、今先生がおっしゃいました都市農業振興法、そういった法律ができないかと。今、生産緑地という法律がございまして、これは先生もう御存じのとおりなんですが、国土交通省の所管になっておりまして、農業的な観点というよりも、いわゆる国土交通省サイドの政策としてこれが生産緑地と位置づけられております。そこでは、税制上の特典として、宅地並み課税ではなくて農地並みの課税ということで緩和措置がなされている。それと、相続税も、終身ですけれども、通常、一般の農地は二十年やればすべて免税、こうなるわけですが、終身という面で、今先生ちょっといろいろお考えになったり問題を御指摘になっているんじゃないかと思いますが、いかんせん国土交通省側のこれは法律なものですから、それにかぶせて、そこに我々が農業サイドからということはなかなかちょっと難しい課題もあるなと思っておりますので、できましたらこれは国会の場なりこういう議会において御議論いただければ、それを受けて私どももどういう対応をするか、こういうことになろうかと思います。

 いずれにしても、先生の問題の御認識は十分私ども理解ができますので、そういった議論を待って我々もどう対応するかということになる、このように思っております。

西委員 ありがとうございます。

 いずれにいたしましても、やはり都市における農業、これはそれぞれの地域の住民の皆さんに十分その価値を理解していただくこと、ただ単に宅地に変えていくのではなくて、そういう農地の、農業の価値を見出していくこと、それから、おっしゃるように、もちろん国会の場でもそういう共通認識を得ていく、そういう流れは必要だというふうに私も思っておりまして、また頑張ってまいりたいというふうに思います。

 続きまして、我が党は、都市の住民が農業に触れる機会をふやすために、体験農園と農産物オーナーの制度の普及に取り組んでまいりました。私は、超党派の棚田振興議員連盟というのをつくっておりまして、棚田を振興するための活動を行っておりますが、棚田では、地域の非農家や地域外の住民にオーナーになっていただいて、そして一定区画の水田を割り当てて、それに対して会費を徴収し、収穫したものをオーナーに手渡すという棚田オーナー制度を採用して取り組んでいるところがたくさんございます。棚田という地域の条件を生かして、非常に厳しい条件でございますが、それを逆手にとって、都市住民の皆さんの参加によって地域の農地を守っていく、こういう仕組みが全国に広まりつつあります。

 大臣は、こうした取り組みをどういうふうに評価されているでしょうか。こうした貴重な資源である棚田を保全する活動に対して、ぜひとも省としても御支援をいただきたいと思いまして、御質問を申し上げます。

松岡国務大臣 これは、私も認識は西先生と全く御一緒でございます。

 といいますのは、私ども、一番最初、ウルグアイ・ラウンドのときに、WTO交渉で、当時はウルグアイ・ラウンド交渉だったんですが、当時はまだガットの世界ですから、その参りましたときも、山本副大臣と私は同期でして、実は国会前で自由化反対で座り込んだ張本人でもございまして、そのとき、ジュネーブに行き、それからアメリカに行き、ヨーロッパを回って訴えましたことは、まさにこの問題だったんですね。

 日本は、国土が狭くて地形が急で、そこで、この国土の保全を図り、水を確保する。こういうことからしますと、日本の水田というのは、まさに大変な役割を果たしている。ただ生産的な役割だけではない。水を守り、そしてまた災害を防ぎ、そして景観といいますか、環境を維持していく。田毎の月の、そういったことも、私どもは、写真も撮りまして、文章もつくりまして、英語にしまして、それをずっと持って回って、交渉をして回った、最初はそういうことをずっとやってきたわけでありますが、何よりこの棚田というものは中山間に多いわけです。先生の近畿なんかも相当多いと思うんですが、例えば東海道なんかも、国道があり、線路がある、鉄道がある、そこに今度は傾斜が来ている。この棚田によって鉄道も線路も水害や災害から守られておる、私はこう思っております。

 したがって、中山間における棚田を守るということは、これは条件が、非常に生産条件的には悪いわけです。だからなかなか生産性が上がらない。だから放棄されていく。しかし、それが放棄されたら、これはもう災害につながるし、水が守れない。こういうことですから、ここをどう守るかというのは、都市地域を含む下流域の安全と、そしていろいろな活動を守っていく基本だ、私はこう思っております。

 したがって、そういう重要性をしっかりと認識をして、棚田を守っていくという先生の今のお取り組みには心から敬意を表する次第でありますし、我々も積極的にそういったことに取り組んで、また先生方と一緒になって、連携をしながら政策を進めてまいりたい、そのような認識でおります。大変すばらしいお取り組みをされているということに、改めて心から敬意を表したいと存じます。

西委員 積極的な評価をいただいて、本当に心から感謝を申し上げます。私どももまた一生懸命に取り組んでまいりたいと思います。

 都市農業の振興の一環として、地産地消の問題でございますが、この推進のために必要な集荷施設と共同利用施設などの整備を今後進めていくということになっております。私は、昨年四月十二日、当委員会で、和歌山県の紀の川市のファーマーズマーケットのことをかなり詳細に紹介をし、党の政策でもファーマーズマーケットの推進をしようということでうたっております。

 予算案では、地産地消特別対策を実施するということになっておりますが、この地産地消における新しい取り組みの促進として、強い農業づくり交付金の中に、地産地消促進特別枠というのを今回新たに設けることになっております。この特別枠を設けた効果、つまりどのようにしてファーマーズマーケットの整備などが促進されていくのかということについて、お伺いをしたいと思います。

 また、地産地消モデルタウン事業についてもお伺いをしたいと思います。全国に三地区、地産地消モデルタウンをつくるということのようですが、この概要についても、ついでに御説明をお願いしたいと思います。

山田政府参考人 地産地消の取り組みについてのお尋ねでございます。

 まず最初に、強い農業づくり交付金についてでございます。

 十八年度までの強い農業づくり交付金におきましては、特に地産地消の推進を直接の目的とした施設の整備については、支援の対象としていなかったところでございます。

 今委員からお話がありましたように、十九年度予算におきましては、地産地消の取り組みを一層促進するという観点で、強い農業づくり交付金、全体で三百四十一億の予算がございますが、このうち五億円を地産地消促進特別枠ということで設定をいたしまして、地産地消の推進を目的とした農産物直売施設や交流施設等の整備について、優先的に交付金を配分するということとしたところでございます。先生のお話がありましたようなファーマーズマーケットなどの整備に大変役立つものと考えております。

 次に、地産地消モデルタウンについてでございます。

 十九年度予算におきまして、委員からお話がありましたように、全国三地区でモデルタウンの整備を考えております。総額では二億八千万円の予算ということでございます。地産地消の活動は、先ほど委員からお話がありましたように、全国各地で行われております。全国の模範となるような地産地消の活動を選定いたしまして、各地域でいろいろな活動をする際の参考としていただきたいというようなことをねらいとしております。

 この事業のポイントは、三つございます。

 第一に、農業関係者だけではなくて、給食の関係者、商工関係者あるいは観光業の関係者など、地域の方々が一丸となって取り組むということが一つ目。

 第二点目として、まず地域においてモデルタウンの構想をつくっていただくということで、広報等のソフト活動をまず実施していただいて、さらに構想の実現に必要な拠点施設の整備についても支援をしていくということでございます。

 三点目として、特に地域の選定に当たっては、公募を行いまして、第三者の選定委員会による公開審査ということで評価をしていただくということで、大変いろいろな方から注目を浴びている施策でございます。

 このような施策を総合的に推進しまして、地産地消の取り組みを推進していきたいと考えております。

西委員 続きまして、最後の質問になろうかと思いますが、農山漁村というのは、生産の場所はもちろんのことなんですが、その場に生活をする、その場所でもございます。そうした意味で、私は、そういう要素をきちっと充実することが次の担い手を確保するためにも大事だというふうに常々主張をしておりますが、教育環境、IT環境の整備を初め、医療、福祉サービスの提供体制を再構築していくなど、やはり生活環境の整備というのがもう一つの重要な要素であるというふうに考えております。

 今回の予算では、安全で住みよい農山漁村づくりの推進ということで八百八十一億円が計上されております。その中に、新たな事業として、国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク構築事業、まことにわかりにくい、これだけでは何なのかわかりにくいんですが、農村防災・災害対応指導体制強化事業、こんな内容のものがございます。

 この事業の概要と、それから、特にこれらの事業によって農村地域にどのようなメリットが生じるのかということを、時間がもう余りありませんけれども、概略を御説明いただきたいと思います。

中條政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、近年、集中豪雨あるいは地震などが多発をしておりまして、その災害を契機としまして、防災あるいは減災に対します国民の関心が非常に高まってきております。

 御指摘の事業でございますけれども、国営造成土地改良施設防災情報ネットワーク構築事業につきましては、農業用のダム等の基幹水利施設において観測されております水位データ、こういったデータを収集、整理いたしまして、これと気象情報等をあわせまして、施設管理者、それから、それに関連します行政機関がインターネット等を活用しましてリアルタイムに情報を共有するシステムを構築するものでございます。

 本システムの構築によりまして、施設管理者は施設のより的確な操作運用が可能となりますし、また関連の市町村等におきましては、迅速かつ的確な防災活動、避難措置、それから災害発生時の速やかな初動態勢への移行が可能になるといった効果が期待できるものと考えております。

 また、もう一つの農村防災・災害対応指導体制強化事業、長い事業名でございますけれども、これにつきましては、防災業務等の経験を持っております農村災害ボランティア、それから農村災害復旧専門技術者、こういった方々が農業用施設の管理者等に技術的指導を行っていく体制を構築するものでございます。この事業を通じまして、施設管理者等が、平時の施設点検、それから災害発生時の応急対応などに際しまして専門的な技術指導を受けやすくなるなどの効果が期待できるものと考えております。

西委員 時間が参りましたが、農村が安心して住める、また住みよい環境づくりのために、今後とも御活躍いただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西川委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。きょうは、次の内閣の農林水産大臣として、初めて質問させていただきます。

 冒頭でございますけれども、私の同期の須賀田菊仁経営局長が一月に残念ながらお亡くなりになりました。多分ここの委員会でも名物局長だったんじゃないかと思います、名物役人でした。まず彼に哀悼の意を表しつつ、真剣に議論をさせていただきたいと思います。

 きょうは、皆様のお手元に資料をお配りしております。

 所信の中でいろいろ松岡大臣の御所見を伺わせていただきましたが、私は、今一番大事、どれが一番、二番とつけるのは失礼かと思いますけれども、農政の大転換期に当たっているということでございますし、それを乗り切るための大政策として品目横断的経営所得安定対策というのが導入されている、この一点に絞りまして質問させていただきたいと思います。

 時間がありましたら、ちょっと後で触れさせていただきたい問題も二、三ございますので、触れさせていただきたいと思います。

 直接支払いという言葉がいつのころからか農政の中に非常に深く組み込まれてまいりました。これはEUが一番最初ですけれども、日本では大分後になって直接支払いという言葉が頻繁に使われるようになりまして、日本の農業政策では、中山間地域に対する直接所得支払いというので初めて導入されました。これは、言ってみれば非常に変則的なものでございまして、本格的な導入というのは今回が初めてじゃないかと思っております。

 これについては、理解されているようでいてなかなか理解されていない面があるんじゃないかと思っております。やはりこれは先人の知恵に学ぶべきだと思います。

 この直接支払い、いろいろな呼び方がありますけれども、一体どのような経緯で導入されたかということについて、松岡大臣、どのように認識されておられますでしょうか。

松岡国務大臣 これは、篠原先生もお詳しいんだと思うんですが、我々もずっと今日まで農政に携わってまいりまして、この歴史につきましては承知をいたしております。

 ヨーロッパにあっては、私もちょうど今から三十年ぐらい前に企画室におりまして、企画室の係長だったんですが、その当時は、フランスなんかでは格差補償制度、こういったようなことで、条件が不利なところ、それから平場との格差を補償する。当時は、山岳地帯で生産をするということは非常に条件が悪い、生産性が悪い。しかし、やはりそこで住んで生産がなされることによって、その地域が管理され維持される。したがって、それは大変大きな役割を果たしておる、その役割に対して格差分の補償を払う、こういう概念だった、こう思っております。しかし、もっともっと、それ以前からこれはあったと思いますが、大体一九五〇年代から、やはりヨーロッパの方にありましてはそういったようなことがなされておった。

 そして、六二年に至ってCAPが導入をされた。このときは市場介入による価格支持、だから、価格でもって農家を守ろう、こういう考え方であります。

 ところが、一方で、農産物の生産がそれによって過剰になってくる。また、それに伴って財政的な負担が過大になってくる。こういったようなことから、八二年に至りましてCAP改革が開始をする、支持価格の引き下げだ、こういったようなことになってくるわけであります。そして、ウルグアイ・ラウンド交渉が八六年から始まる。それで九三年になって一定の整理がつく。

 そういう状況の中で、これはもう価格支持では、やはりこれはいろいろな観点があったと思います、価格支持ということになると財政負担も大きいということもあったと思いますし、何よりもやはり消費者の理解が得られない、価格を押しつけられるわけですから。そういったような意味で、価格支持から直接支払いへ、こういうようなことで、大体この十年前後前ですよね。

 それから、私どももウルグアイ・ラウンド交渉に携わってきて、ウルグアイ・ラウンド交渉が終わって、そして平成十年に、新農業基本法ということで、私は当時、自民党の農業基本政策委員長でありますが、ひとつ新しい農業基本法をつくらなければならないということで、平成十年に私どもは大々的な議論を開始するわけであります。その前後といいますから、大体十年ごろですよね。ほぼ十年前、そのころから、今の新しい農業基本法におきましても、私どもは、価格支持から所得政策へ、こういう言葉を、これは私も使うわけです、価格政策から所得政策へと。

 したがって、EUでは、九二年にマクシャリー改革、こういうことで支持価格を引き下げる、その代償として直接支払いの導入、一方で生産調整の義務づけ、だから、このときはまだ青なんだよね、今でいうブルー政策。だから、EUは最初青で始めた。

 それからずっと進んでまいりまして、アジェンダ二〇〇〇というのがあった。アジェンダ二〇〇〇、ここでまたさらなる改革をやるわけですよ。それで直接支払いを引き上げる、こういうことをやる。

 そして、二〇〇三年からいわゆるまたCAP改革というのをやって、これをデカップリングしていく、そういうような形でありまして、そして二〇〇三年からは、いよいよ現在の緑の直接固定支払い、こういうものに移ってくる、これがEUのいきさつでありました。

 当然、篠原先生はそれを知った上で私にお聞きになっておる、こういうことでございますけれども、そういういきさつでございます。

 そういう中で、WTO農政というのは価格政策から直接支払いという所得政策に移っていっている。したがって、我々としては、あれは平成十二年からでしたか、その第一弾として中山間の所得補償、いわゆるヨーロッパでいうところの条件不利地域への支払い、こういったようなことで、中山間の所得補償というものに十二年から取り組んでいる。

 それはいろいろ議論はあったんですよ。こういうことは名前は出しませんが、北海道の先生方から、北海道は中山間がないんじゃないか、こういう話をしながらも、いや、やはりそれはあるし、必要だというようなことで、大変な大激論、大議論の結果、あの中山間の所得補償政策というものも私どもは導入してきた。

 私は、当時、そのときよく使いました、もうこれはヨーロッパでは随分早くから進んでいる政策なんだ、したがって、車でいうと、ヨーロッパではもう随分乗った車なんだけれども、まだ日本では初めてだと。したがって、そういう意味で、初めて所得政策というものを中山間の所得補償ということで導入をしてきた、それは中山間だけですから。

 それから、当時、私もずっとヨーロッパへ行っていて思っておりましたのは、オーストリアに環境に立脚した支払いがあったんですよ。これを勉強いたしまして、それともう一つは、やはりシラク大統領が非常に農政通の人です。大体欧米というのはそういう人が多いわけですが、シラク大統領がまた新しい農業基本法をつくって、平場の農業もやはりそういう対象にしていくということで、あらゆる地域のあらゆる農業という言葉をフランスは当時使った、そして、それを対象にしていく。もちろん一定の条件があるわけです。一定の条件をしない限りはその対象にならない、国との契約ということにならない。一定の条件が常にあるわけであります。

 そんなような形で今日に至って、我々も、そういう世界の大きな流れ、こういったことを背景としながら、WTO体制という中でまた交渉がどんどん進んでいきます。すると、どうしても途上国というのはお金が、財源がない。したがって、先進国だけ国内的な助成をして、それによって生産がなされて、そのことが自分たちの農産物との競争において不利な条件を与えている、平等じゃない、したがって、補助金をなくせというのが今や途上国の大合唱になっておる。

 それで今、アメリカは黄色の政策の六割を切るという提案を昨年しましたけれども、そんなものじゃだめだといって、まだそんなものでは認められないといって、大きな反発を受けている。これ以上は切れないというので去年は決裂、こういう状況になっているわけですよ。

 そういう状況の中で、私どもといたしましても、国際的には緑にしていく必要がある、そして国内的には大きく農業構造を強固にしていく必要がある。

 こういう国際的、国内的観点から、国際的な規律にも合い、そしてまた、国内の農業の総合力を最大限にしていくためにも改革に踏み切ろうということでやったのが、まず、品目横断という言葉がありますが、それは中身の話でありまして、経営所得安定対策、その中に品目横断というものもある。そして、品目で横断していますから、WTO上、直接支払いをするときは、品目を固定、品目というか特定の生産にかかわっちゃだめなんだ、もうそれは篠原先生御存じのとおりだ。したがって、そういう意味で我々は品目横断ということにもいたしまして、これは今回こういう政策を打ち出した、こういうことであります。

篠原委員 私、質問を三十一問用意しておりますので、一分間の質問に、この後のお答えをいただいているのもあるんですけれども、まあ一時間半ありますが、もう時間が十三分ほど進みましたので。

 大体認識が一致しておるところが大半だと思いますけれども、今大臣の直接支払いについての考え方をお伺いしていますと、ちょっと違ったところがある、その点だけを指摘させていただきたいと思います。

 価格支持、プライスサポートはいけない、それからインカムポリシーに行こうという流れは同じなんですが、なぜそういったことが行われたかという理由ですけれども、今消費者が高いものを買わされているからというのも、それも一つの理由ですけれども、農業生産サイドからいくと、二つ大問題があったわけです。

 一つは、日本でも生まれておりますけれども、価格を安定的に決めていると、その作物に過剰が生じる。日本の米の場合が典型的な例ですね。これはEUも共通だったんですよ。一つ見落としているのが、ここが大事なんです。

 大臣の答弁の中に少しも出てまいりませんでしたけれども、価格支持をしていると、でかい農家にいっぱい不労所得が行ってしまう。これを絶対避けなければいけない。これが一番の眼目なんです。これがあったから、価格支持から所得支持になっているんです。

 なぜ所得支持あるいは直接所得補償と呼ばれるかというと、社会保障と同じなんです。零細な農家に、本当に保護が必要な農家にきちんと補助金が行くようにしようじゃないかというのが直接所得補償導入の一番の理由なんです。これが我が国の直接所得補償の導入について欠けている観点なんです、後々申し上げますけれども。

 ですから、大臣のところで、条件不利地域というのは同じですね、条件不利地域に一番最初に始まったわけです。企画室におられたころというふうにおっしゃいましたが、一九七五年ころから始まっています。

 一九八五年に環境について直接支払いが始まり、マクシャリーの改革が一九九二年、大臣が触れられたとおりで、これは価格を下げたのに対して補償する、コンペンセーションですね。ですけれども、一番の理由の一つとして、でかい農家に行く。

 では、日本の場合、それは何で全然考えられないかというと、百ヘクタール以上の農家なんかいないんです。ところが、フランスの場合は、半分以上というか、百ヘクタール以上の農家が全農地の半分以上を所有しているんです。百ヘクタールなんか持っている農家が小麦ばかりつくっていると、価格を高くしておくと、その百ヘクタールの農家にどんどん補助金が行ってしまうわけです。ですから、それはよくないんじゃないか。

 本当に、フランスの場合でいいますと、南アルプスの近くのところの山岳地帯の農家、こちらこそ必要だ、そこに援助を与えよう、だから、直接所得を補償するというふうになったんです。ここが、後で触れますけれども、日本とヨーロッパの直接所得補償の導入についての考え方の違いなんですね。

 それからもう一つは、アジェンダ二〇〇〇と二〇〇三年のミッドタームレビュー、両方、もう触れられましたように、だんだん緑に近づいている。ですけれども、よく認識していただかなくちゃならないのは、あちらは歴史が古い、そしていろいろやってきた、そして青から緑というふうにしているわけですけれども、我々日本は初めて導入するわけです。

 大臣の言葉をそのままかりれば、あちらはもう昔から車に乗っている、我々は初めて今車に乗るんだ、直接所得補償という車にですね。そのときに一体どうやってやっていくかというのは真剣に考えなくちゃいけないんじゃないかと私は思っております。

 もう一つ、非常にまじめに考えておられるなというのはつくづくわかったわけですけれども、青から緑になっていくというのは、生産刺激的であってはいけない。一番は貿易歪曲的であってはいけない、次に生産刺激的であってはいけないというのがあるんですけれども、貿易歪曲はともかく、生産刺激ということに、日本の役所というのはみんなまじめ過ぎるので、すぐそれにこだわるというんですね。ありとあらゆる補助金で、生産刺激的にならない補助金はないんだろうと思っています。なるべく少なくということで考えればいいんじゃないかと私は思っております。

 それで、基本的な考えはちょっとそごがあるということで今申し上げたのは、これは絶対頭に入れておいていただきたいんです。社会保障的な観点があるんだ、だから補償という言葉を使っているんだということが一つです。

 次にお伺いしたいのは、あちらで、今申し上げたので言いますと、やはり要件があるわけです。最近は環境に非常にこだわり始めたので、クロスコンプライアンスというので、環境に優しい農業形態じゃないと直接支払いはしないというのがあります。それも一つの要件ですけれども、もう一つの要件として、これ以上の農家にはやらないでおこうという面積要件があるわけです。

 これは何回やっても、ヨーロッパでもなかなかうまくいかないんですけれども、大臣もこれは御存じだと思います、あちらでモジュレーションという言葉で使っていますけれども、でかい農家に直接支払いが行かなくたっていいんじゃないか、これ以上の農家には行かなくたっていいんだ。あるいは、もう一つは、日本と同じです、幾ら何でも余りにも小さな農家にやる必要はないじゃないかと。

 これ以上の規模の農家にやるべきだというのはあるはずなんですが、それについてどのように認識されておられますでしょうか。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

松岡国務大臣 まず、篠原先生は農林水産省のときに、どこか研究所におられましたよね。だから、非常に研究家であり、やはり学問的な観点から、学者というのはいろいろな説を主張しますから、私はお聞きしておって、零細農家を対象にというのは、これはあなたの学説だと思う。政策としてはそういうことは絶対あり得ない。

 それはなぜかといいますと、条件不利地域というのは、これは地域政策ですよ。やはりそういう地域は、そこに人が住むことによって、上流にあって大きな役割を果たしておる。したがって、しかし条件が不利だ、これを何とか不利を補ってやらなきゃならぬというので始まった、中山間の日本の所得補償もそういう観点です。

 したがって、政策として、我々はつくった方だから、そういう観点でつくっている。つくった我々が言うんだから、それはもう間違いなくそういう観点でつくった。これが一つです。

 そうすると、ヨーロッパも、一九六〇年、日本でいうと昭和三十五年、この前松木先生ともやりましたけれども、そのときと比べて、現在はフランスは農家数が三七%なんです。イギリスが約五割ちょっと、半分ですよ。日本も大体半分近く減っておる。どこでも世界の趨勢でそうなってきておる。

 そうすると、当然のことながら、ヨーロッパは、減った分の農地が残った農家に集積をして規模拡大が進む、まさにそのとおりになった。

 日本は、土地に対するいろいろな執着もあり、考えも違って、また経済的な土地の価値が違ったりしましてそうならなかったんだけれども、それでも多少動いてきた。

 そういう状況の中で、零細を救おうというのは、それは地域政策として、その地域を守るために、そしてそこで頑張っている人にというのはあったとしても、一般的な平場においても零細を救うために、そのために直接支払いをやった、私は、そういう政策理念は聞いたことはございません。

 したがって、それは、学者として学説でそういうことを言われているならそうかもしれませんけれども、我々の政策理念としての中山間のときにも、そんな議論は一つもいたしておりません。それが一点。

 それと、社会保障とおっしゃった。社会保障というのは、今、これはインドのナート大臣がいつも言うことですよ。インドには失業保険もない、いろいろな社会保障政策がない。したがって、それを、失業者も何も全部農村で受けとめている。インドは、九億のうち、六億一千五百万人の農村の人口がいる。したがって、自由化で農村が崩壊したら、社会保障がないインドにあっては、社会保障全体も崩壊をするのと一緒だ。だから、SPを認めろといって、それがない限りは絶対にこの交渉には応じられない、こう言っている。

 したがって、日本にあって、社会保障政策というのがそのデカップリングと関与をしているかということについては、これは学者の間の議論はいろいろあるとしても、そういう観点で私どもはこの直接支払いというのを政策的にとらえて議論をしたという、それはない。

 これはあくまでも、将来目指しているのは、他産業並みの所得を目指して我々は政策を組み立てている。こういうことでありまして、あとは、補償というなら、共済があったり、いろいろな農業者年金があったり、そしてまた一般の国民年金があったり、そういう補償というのは、そういったことで日本は制度としてしっかりいろいろ成り立っておりますから、この農業政策の中に社会保障政策的なことを入れてということは、私は、概念としてはない、こう思っております。

篠原委員 大臣、それは学説なんかじゃ全然ないんです。定説です。常識なんです。だから、ここが一番違いがあって、大臣にはちゃんと説明している者がいないので、大臣が悪いんじゃないと私は思います。

 直接所得補償、ダイレクト・インカム・サポート、これは援助なんです、援助。わかりますか。今、エイドという言葉が使われています。ダイレクト・インカム・ペイメントと言っていますけれども、ダイレクト・インカム・サポート。ただ、英語はちょっと、サポートというのは本当は補助なんですけれども、サポートというと支持と訳しちゃうからややこしくなっているんですが、援助なんです、補助金なんです。これはみんなにやっていくというものなんです。

 ですから、直接所得補償というので、これは大事な観点、だから、ここからおかしな、もとが間違っているんですよ。直接所得補償というのは、広くあまねく、みんなが所得がないとやっていけないから、それを補償して全部にやってやろうというので、もともと構造政策に向いているんじゃないんです。

 だから、根本の問題をちょっとここで考えてみていただくとよくわかるんです。では、日本で、でっかい農家をバックアップしようと思ったときに、どういう政策が一番いいかというと、構造政策的には価格支持の方がいいかもしれないんです。

 おわかりになりますか。でっかい農家の方がいっぱい補助金を受けられるんです、米の価格を高くしておけば。五ヘクタール、十ヘクタールの方がいっぱい米を生産できますから、そこにいっぱい補助金が行くわけですから、そっちの方がいいんです。

 だから、日本は、構造調整、構造政策をやるには価格支持の方がよかったかもしれないんです。それを、所得政策でもって構造調整というのはもともと無理があるんです。

 ですから、我々民主党の政策のことを議論するあれではありませんけれども、全部に広くあまねくやるとばらまきだという批判がありますけれども、それは、ある面では当たっているんです、全部にやるという点では。もともと、直接所得補償というのは、全部にやるべきものが直接所得補償なんです。そして、なるべく所得が少ない人のところに所得を確保しようというのが直接所得補償であって、先ほども申し上げているとおり、でっかい農家に行き過ぎだ、それはやめるべきだということなんです。

 ですから、これは大臣御存じないですか、EUでいつも議論されるのは、直接支払いをやり始めたけれども、余りでっかい農家に行き過ぎている、これは問題だと。国別でもいろいろ問題になるんですが、さっきイギリスの例を出されました。平均反別でいうと、イギリスが一番でかいんですよ。

 私のこの資料の二ページのところを見ていただくとわかります。一戸当たりの農地面積、二ページのEのところを見ていただきますと、最近フランスやドイツも規模拡大が進んで近づいているんですが、イギリスは五十七ヘクタールです。エンクロージャーという、産業革命のころからあって、都市の労働者にというのでその規模拡大が進んだという歴史的経緯がありまして、イギリスはもともとでかいんです。

 イギリスでよく問題になるのは、直接支払い。ばかでかい農家に行っているというのでいつも例に出されるのは、チャールズ皇太子もいっぱい直接支払いを受けている、これは問題であるというのがよく新聞に載るんです。イギリスの新聞に、一年に一回か二回、必ず載るんです、農業政策の問題点として。

 ですから、EUでは、議論するといつも、大規模農家をちょん切ろう、百ヘクタール以上、あるいは九十ヘクタール以上、乳牛だと何頭以上持っているところには直接支払いはやめようというのがあるんです。

 では、さっき大臣がおっしゃった生産調整。生産調整についても義務づけているんですが、生産調整についても、零細農家について特別な手当があるんですよ。二十ヘクタール未満は、EUの場合、生産調整をしなくても直接支払いを受けられる。それ以上は、直接支払いを受けるには絶対一〇%以上生産調整、転作しなければいけないというルールがあるんです。

 ですから、直接支払いというのは、零細な農家に手厚いようにということで、でっかい農家を切ろう。これに反対するのがイギリスであり、東ドイツと合併したドイツ、ユンカー制度、でっかい地主がありますから、ドイツが反対し、スペインもでっかい農家があるので反対して、なかなか進まない。それがモジュレーションというので、EUでいつも農相理事会をやると問題になるところはここなんです。

 小さい農家に行こうとしたら、でっかい農家も平等に面積支払いをしている。過去の生産実績でやっているので、過去の生産実績が固定してしまっているので、固定してずっとでっかい農家にも行っている、これは問題だから打ち切ろうというのが問題になるぐらいなんです。

 ですから、学説でも何でもなくて、一番最初の直接支払いのそもそもの観点は、所得が得られないところに所得を補償してやろう。だから、中山間地域の直接所得支払いといっても、日本では真っ当なんです。中山間地域はやっていけない、所得が得られない、だから所得を納税者の負担でやってやろうというのが直接支払いの原点なんです。これは学説ですから、これについて、もう一度御答弁いただきたいと思います。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

松岡国務大臣 どうも議論がかみ合わない理由がだんだん私もわかってきたんですけれども、日本の農業構造の事情とヨーロッパの農業構造の事情を全然篠原さんは理解していないなと。そして、やはり、研究に研究を重ねておられるから、自分の説に物すごく入り込んでしまっておられる。我々は大して研究もしていませんから、広く見ていますから、眺めていますから、これはよくわかるんだなと思う。

 例えば、では、所得が少ないところといったら、日本で所得が少ないというのは農業の所得という意味ですか。そうなると、それは兼業農家ですね。一種兼、二種兼とあるけれども、農業の所得が少ないところといったら兼業農家。だとすると、その二種兼農家なんというのは、農業の所得というのは一割か二割か、平均するとそんなものじゃないですか。

 そうすると、では農業の所得が少ないからといってそこに支払いが集中するようにやるということになれば、農外所得でいっぱい取っておられて、そして兼業で農業の分は少ないからとそこに集中をするというような理屈になっていくんですけれども、それは全くおかしい話です。

 確かにイギリスは、それこそ囲い込みで、エンクロージャーをやったあれがあのまま続いているんです、イギリス、特にイングランドは。それは、大農制度ですよ。確かに一番持っているのは、それは王室でしょう、何千ヘクタールとみんな持っているんですから。私もあそこを見に行ったし、何度か行ってよくわかっていますが、大農制度。

 だから、それはみんな専業なんだよ、小さいといったって、二十ヘクタールとか三十ヘクタールとかいったって。だから、我々は、今度の中山間のときも、一戸当たり百万で切っているわけですよ。それ以上行ってはいけない。

 アメリカだって九六年農業法からそれまでの、あなた方が言っているウルグアイ・ラウンドのときには、不足払い、ターゲットプライス、目標価格制度をつくって、その不足を払いますと言った。それは、この不足払い制度というのはウルグアイ・ラウンド以前の話なんです、それをまた今度やろうとされているんだけれども。そういう状況の中で、アメリカだって、当時、九六年農業法でも五万ドルで切っているわけです。それは足切りをしているわけです。

 しかしそれは、兼業農家に対してはどんどん行ってもいい。では、農外収入でもうかって、今度は零細だからということで、三反歩の兼業農家だからということで、そこの所得補償だってどんどん来たら、専業だけでやって苦しんでいるところはどうなりますか。

 だから、それこそ逆で、では、兼業農家の所得をずっと守っていくんだ。例えば三反しかなければ、米が八俵とれて、三、八、二十四、二十四俵だ。日本の平均は仮に五十俵だとしたら、残りの二十六俵分を、兼業農家の零細ということで、では、そちらに補助金は、直接支払いはシフトするのか。

 だから、篠原さんが言っていることは、何か一生懸命研究してきたことを自説として論じられるには非常にいいと思うんだけれども、政策論としてやっていくときは、それは国際的にもそんな論理は通りませんよ。だって、どこだって、どこも構造改革を今進めている。構造改革、例えば北海道の釧路なんかの専業農家の方が困っているわけです。だから、そういったことをどうするか。

 今、勤労者所得と農外所得も含めた農家所得というのはどっちが高いか、先生御存じでしょう。だから、そういったことも考えたときに、兼業農家も含めた、では、三反歩だから、二反歩だからと、そんなところに、私だって三反か四反持っているんですよ、おまえのところは零細だから所得をうんとやるなんと言ったら、これはみんな怒りますよ。

 だから、それはそういうことであって、ひとつ、もっと実のある本当の政策論を篠原先生とはやりたいな、こう思っています。

篠原委員 大臣、そういう、質問者に対して、私が何か言うんだったらいいんですけれども、逆のような言葉遣いはやめてください、こうやってちゃんとまじめに議論をしようとしているときに。

 大臣が今間違っておられるのは、兼業農家を出されましたけれども、兼業農家云々と言っているじゃないんです。大臣は今、補償といったら社会保障と同じように考えておられるからで、社会保障、兼業の農外収入なんというのは捨象してください。

 どういう農家にというのは、では、一ヘクタールと二ヘクタールと四ヘクタールと十ヘクタールとあったら、その兼業収入のことを言っているんじゃないんです。一ヘクタールだとか二ヘクタールで一生懸命やって、これから一生懸命農業をやっていこうとしている農家をバックアップするために考えた政策なんです。だから、根本が理解されておられないんです。

 学説なんかじゃ全然ないんです。世界の常識なんです。直接所得補償というのは、OECDで三年も四年も議論をして、そしてやろう。それで、ふえ過ぎて、世界じゅうが過剰に苦しんでいる。

 それで、なぜ日本が一番直接所得支持の導入がおくれたかというと、理由があるんです。なぜかというと、日本の場合は、ばかでかい農家がいないから、でっかい農家の育成には価格支持の方がよかったりする面もあるから、だから導入がおくれていたんです。

 しかし、そうは言っていられないし、WTOで緑、緑と言われているので、仕方なしに入れようじゃないかということで入れ始めているんです。ですから、これは、議論があったというのは、こんなやり方でいいのかというような議論があったはずなんです。これは世界の常識ですよ。

 事務方もここのところを忘れているとしたらとんでもない話で、直接支払いの一番の理由は二つなんですよ。価格支持をしていると過剰が生まれる、そうすると大農家にばかり不労所得が行ってしまう、だからやめようと。さっき、アメリカも五万ドル以上は行かないようにする。ヨーロッパにもあるんです、でかい農家が。それは価格支持ではなかったんです。直接支払いには、だから、でかい農家に行く補助金はぶった切ろう、その分、本当に所得が必要な人、やっていけない人、だから中山間地域なんです。

 一番最初に日本が、全く同じ経緯なんです、ヨーロッパで一番最初に直接支払いが導入されたのは条件不利地域です。一九七五年です。我が国は二〇〇〇年に中山間地域に対する直接支払い、歴史的には同じ経緯なんです。小さな農家の方に行くようにしているんです。これはもう、学説、学説と言っておられますけれども、定説ですから、常識ですから、常識外れの農政はやらないようにしてくださいよ。

 僕はこういうことは言いたくないんですからね。余りに僕のを学説だ、自説だとおっしゃるから言われるのであって、これが世界の常識です。

 ですから、WTOに言って、通報してどうなるかはわかりません。後で触れる問題ですけれども、今おっしゃるのでもう申し上げますけれども、小さな農家にやらない、でっかい農家にだけやるという直接支払いというのは、これは直接支払いかといって、OECD、WTOの事務局あるいはほかの加盟国から質問攻めになるだろうと思います。

 でかい農家に行かないようにというのが今の大臣のお言葉でしたら、五万ドルを切られている。ヨーロッパの場合は、二十ヘクタールということでセットアサイド、転作があるかどうかというものの区切りになっているんです。

 ですから、直接所得支払いというのは、所得が足りなくなった人たちを援助するためにやるんだという。だけれども、僕は、それはヨーロッパで導入された手法であって、日本の場合は、直接支払いのやり方を構造調整にも用いたっていいと思います。その点では農林水産省の考え方と一緒なんです。ですけれども、そのやり方が一体、今のようなドラスチックなやり方でいいかどうかという問題なんです。

 では、大臣に、この次に伺います。

 端的に答えていただきたいんです。日本の直接支払いは一体どういう性格のものか。

 先ほど申し上げましたが、大臣もずっとレビューをされて、条件不利地域に対して直接支払いをやっているというふうにおっしゃいました。ちょっと抜けていたのは、環境の支払いです。間に環境の支払いがあるんです。そして、一九九二年にマクシャリーの、価格を下げる、それに対して補償をしなければいけないというので始まった。

 三種類あるんです。条件不利地域に対するものと、環境を守っているというのは、これは農林水産省、日本が国際交渉でずっと言ってきた多面的機能ですね、多面的機能に対する支払い、それと価格を下げたことに対する補償的な支払い、この三つあるわけです。それで、中山間地域に対する直接支払いは、圧倒的に条件不利地域に対する直接支払いに近いわけです。

 では、今回導入されている品目横断的な経営安定対策、これは一体どれに近いんでしょうか。

松岡国務大臣 なるべく端的に答えますが、篠原先生とは昔から私も相当な仲ですから、もし私の言い方で失礼な点があったら、それはお許しいただきたいと思います。

 それはそれとして、先ほどおっしゃったように、直接支払いの原因というか理由になったのは二つだ、それは私も先ほどから言っているとおり。

 これは、まず最初は条件不利から始まった。イギリスでもスコットランドでもそうだし、フランスでもEU、ヨーロッパもそうだし、それはそのとおりです。それは私もずっと申し上げている。

 あわせて、今度は価格支持から直接支払い、所得をどう補償するか。価格で支えていたものを、それではやはりいろいろ問題が多過ぎる、こういったこともあって、それはいわゆる所得補償という形に変わってきた。これはまさにそのとおりで、そこは変わっていない。

 ただ、問題は、それをどういうふうに適用したりとらえたりしていくかというところでちょっと、大分これは差があって、そこは、だから私は、農林水産省というのはずっと私ももう二十年近くつき合っていますから、政治家になってからも。それ以前からも、ずっと私もその中に、企画室にもおりましたし、一員でおりましたから、そういう意味において、私は、ちょっと従来の農林水産省、今日までの農林水産省の所得政策と、今篠原先生が言っておられることは合わないな、こう思っておるものですから、学説という言い方が悪ければ、これは自説だ、こう思うんですが、そういうような意味でそう申し上げて、そのことが言い方が失礼だったというのはお許しいただきたいと思います。

 そこで、では最後に、三つのうちのタイプはどれか。残念ながら、どれにも当たっていないんですよ。

 これは、アメリカの九六年農業法でやったものも、過去の実績、面積があります、作物がありますね。この過去の実績に対して作物ごとの単価を決めて、そして面積を掛ける。そういうことで直接支払い、だから、何も価格との差だとか、そんなことは一つもやっていない。

 過去の所得の実績に対しての一定割合を補償する、それはEUの緑の直接固定支払いも全くそのとおりですよ。だから、生産だとか価格だとかにリンクされた途端にこれはWTOはもう絶対アウトですから、そういう意味では、私どもは価格補てん政策でもないし、今回七割を緑の政策にしました。その七割を緑の政策にした中で、過去の支払い実績をもとにした、まさに、価格補てんではございません、直接所得補償の支払いであります。

 そういう観点でありますから、今おっしゃった三つのタイプじゃない。EUとも合致しておりますし、アメリカとも合致いたしておりますし、まさに価格補てんじゃない。過去の所得実績に基づいた支払いである、こういうことであります。

篠原委員 大臣、三つのどれでもないというのはあり得ないんですね。これは、三つの性格、全部持っていたりするんですよ。こういうのじゃないと直接支払いに結びつかないんですよ。

 後で申し上げますけれども、そういう認識でしたら、私が思うに、類推するに、やはり価格補償的な支払い、価格補償的な性格が強いんだろうと思います。条件不利地域には中山間地域所得支払いが残っているし、それから水と農地と環境対策が始まった、あれが環境の部分だろう、世界じゅう同じ方向に行っているんだろうと私は思います。

 なぜそうするかというと、やはり直接支払いにはいろいろな理由があるんですよね。今、この三つの代表的なもので申し上げましたけれども、入っていませんでしたけれども、天候や気候で変動して、それで所得が減ったりするのを補てんするというのもこれに入るわけです。

 この性格の違いがやはり、直接支払いというのは何かということについての認識が大きく違っているというところが同じやり方でもちょっとずつ違ってきちゃっている一番の原因じゃないかと思っております。

 これに時間を割いているとほかの具体的な質問ができなくなりますのでやめますけれども、もう一度、直接支払いの概念についてきちんと整理をしていただけたらと思います。

 それで、日本は、ほかの国と違ってでかい農家に支払う。今大臣のお答えの中に具体的な数字がなかったので申し上げますと、受給要件というのは、EUはきちんとしたものを決めておりません。各国に相当裁量権があります。

 ばらばらですけれども、フランスの場合でいいますと、直接支払いを受ける要件を、やはり余り小さいのには行かないようになっているんです。それで、どれだけの農家以上に行っているかというと、面積要件でいうと、〇・三ヘクタール以上の農家でなければ受給要件がないと言っているんです。三十アールです。

 フランスのようにでかい、大臣がおっしゃいました、四十五ヘクタールですよ、フランスの平均は。それを〇・三ヘクタール以上です。これを受給要件にしているんです。そして、五年間は農業をやること、いろいろあるんです。ヘクタール要件でいうと、平均反別が四十五ヘクタールの中で〇・三ヘクタールです。それを直接支払いの対象農家にしているんです。日本の四ヘクタールといかに違うかということなんですね。

 それで、日本は、私も農林水産省におりました、農林水産省の悲願は大規模専業農家の育成です。私も、これはこっちの方がいいと思います。しかし、なかなかうまくいかなかった。そして、我々の先輩たちからずっとこの悲願が続いているわけですよ。

 それで、どういう言葉が使われたかというと、一番最初、自立経営農家というのが農業基本法の中で使われました。それから、昭和四十年代後半あたりぐらいから中核農家というのが使われました。それで、食料・農業・農村基本法で担い手という概念が出てきて、効率的かつ安定的な経営体ということで、他産業従事者と同等の年間労働時間で遜色のない生涯所得を得られるというもの、これで担い手という言葉が生まれて、そして認定農業者に至っているわけですね。

 こういった部分、この系譜というのは非常によくわかるんですが、この自立経営農家、中核的農家、明確な言葉はなかったですが、効率的かつ安定的な経営体、こういった過去の担い手に着目した政策というのは一体成功してきたと言えるんでしょうか。規模は拡大してきたか。中核的農家がふえてきたかどうか。

松岡国務大臣 今の点ですが、それと先ほどの点で、これはぜひちょっと篠原先生も十分御理解いただいて御訂正をいただいておいた方がいいと思いますのは、条件不利地域があり、環境支払いがある。先生、価格補てんがあるとおっしゃった。そうじゃないんですね。

 これは、先生も民主党の次の農林水産大臣ですね。そうすると、いろいろな外国へ行く。そして、我々は三つのタイプでやっておりますと言われて、価格補てんと出されたら、日本はWTO上やっちゃいけないことをやっているのかということになりますから、絶対、所得補償ならいいんです、だから、我々は過去の所得、過去の実績所得をもとにその支払いをしているわけでありますから、これはあくまでも価格補てんじゃない、所得補てんという言葉ならまだ私も納得がいく、こういうことでありますから、そういうことでお願いしたい。

 それと、自立経営があり中核農家があり、それで、それは効果を上げてきたのか。それは、目的としたところ、目標としたところまで上がったか上がらないかということは、いろいろ物によってはあったと思います。

 しかし、私は、規模拡大してもなかなか進まなかったとはいうものの、イギリスがこの同じ、日本との比較で、昭和三十五年に対して、大体二・五倍規模拡大しています。フランスがほぼ二倍。それからすると、我が北海道は四・六倍拡大しているんですよ、そして全国平均で一・四倍ですから。

 これはもう北海道なんかは、あのヨーロッパのあれだけ広いフランスや、イングランドなんかどこを見たって農地ばかり、そういうところと比較しても、やはり北海道の四・六倍というのは規模拡大が進んだな。そして、これだけ中山間で谷が多く山が多い我々のところも、全体で一・四倍になったということはやはりそれなりに進んだな。

 それから、何よりも選択的拡大ということを目指してきました。昭和三十年当時は、米と麦、米麦で半分以上の生産。それが今や、酪農、果樹、野菜、こういったことでもって六割以上の生産、まさに選択的拡大は本当に進んできた。

 あわせまして、では、これをちょっと品目別に見ていきますと、水稲はもちろんあれですが、乳用牛が昭和三十五年に対して三十倍の規模になっています。肉用牛は二十六倍の規模になっている。養豚に至っては四百五十六倍。採卵鶏、卵に至っては千二百四十二倍。ブロイラーに至っても四十五倍。そのほか、たばこ等を見ましても、これは本当にそういう担い手といいますか、中核的なところに規模拡大がこれだけ経営的には大きく進んできた。

 私は、これは政策の効果だろう。それは篠原先生だって農林省にいたんだから、それは効果がなかったなんてやはり自分でも思いたくないし、事実、こういう事実を見れば、これは実感できるじゃないですか。

 以上であります。

篠原委員 私は松岡大臣と違って日々反省して生きる人間でございますから、間違いは間違い、だめなことはだめだと思います。

 今の答え、みんな畜産なんです。畜産は、大インテグレーションで、もうでかくなり過ぎるぐらいでかくなっているんです。さっき伊藤委員が質問されました、知多半島、ふん尿だらけになっているということを端的におっしゃりたかったんだろうと思います。大規模が進み過ぎた問題も生じているんです。だから、これはまた解決していかなくちゃならない問題だろうと思います。

 しかし、ほかの畑作なんかでは進んでいないんですね。だから、僕は、ここに今いられる皆さん、中核的農家がふえた、自立経営農家がふえた、規模拡大が進んで日本農業万全などとは思っていられないと思うんです。やはりうまくいかなかったんです。だから、うまくいかなかったのをなじっているわけじゃ全然ないんです。ただ、うまくいかなかったのはなぜかというのをよく考えなくちゃいけないんじゃないかと私は思います。

 また言葉をかえて、認定農業者といって、そこに重点的に補助金をやろうとしている。これは私ははっきり言って余り賢明じゃないと思っているんです。全体を底上げした上で、今底上げ底上げと言っているけれども、一部だけ底上げするんじゃない、底上げというのは何ですか、全体を上げるんです。農政も底上げ戦略に乗らなくちゃいけないんじゃないですか。農業、農村、小さい農家も含めて全体を底上げして、その中から立派な農家が僕は育っていけばいいんだろうと思います。

 ですから、私は認定農業者をいっぱいつくらなくちゃいけないと思います。中核的農家をつくらなくちゃいけないのと同じです。だからといって、ほかの人たちのところに目を配らないという、僕は捨てるなんという言葉は使いたくないです、目を配らないような政策というのはよくないので、やはり弱者の方に向けた政策というのは大事なので、どこの国でもそちらの方に目が行っているんです。

 意欲的な人たちは、ほっておいてもそっちの方に行く、向くんです、規制さえなければ。だから、我々農政というのは、どちらかというと条件が不利な人、うまくやってもいかないような人のところへ向けていかなくちゃいけないんですが、今、大臣、うまくいっているという畜産の例だけ言われましたけれども、こんなところで数字を申し上げてもしようがないですが、自立経営農家というのは数字でいうとそんなにふえていないんです。

 平成九年ぐらいまで、この言葉はもうやめちゃいましたけれども、全体の八・六%、農業基本法ができた一九五一年は、私は数字を調べました、八・六%だったのを、同じ統計でやると、一九九七年、それ以降はもうこういう定義を面倒くさくなってやっていないんですが、五・〇%に三・六ポイント下がっています。中核的農家は、一九七五年ぐらいからこれでもって統計数値を使い始めました。一九七五年、今から三十年ほど前は百二十五万戸でした。そして、この考え方をやめて、もうこの後統計がなくなっているんですが、二十五年後の二〇〇〇年には三十五万戸で、二十五年間で四分の一に減っています。認定農業者を新しくやり始めて、平成七年から始まって、今、二〇〇六年で、この品目横断的経営所得安定対策がありますから、二十二万戸にふえています。

 これはいいことだと思うんです。僕は、この認定農業者の制度をよくないと言っているわけじゃないんです。これはこれで僕はいいことだと思います。しかし、こればかりというのでは日本農業全体の底上げにならないんだ。やはり底上げ戦略をしていただかなければならないんじゃないかと私は思うんです。

 品目横断的な所得経営安定対策、この一番問題点というのは、先ほどから申し上げていますけれども、これは、所得がくまなく零細な人たちにも行って生活がやっていけるようという考え方でできているんです。だから、これを手下として構造調整に使うというのは、私は無理があるんだろうと思うんです。

 それで、もう金科玉条になっているんですけれども、四ヘクタール、もちろん地域によってこれは柔軟に対応していいんだ、当然現場からそういう声が出ますからそうなります。集落営農も二十ヘクタール。一元経理、五年以内に生産法人にしろとか、これは目標としてわからないではないんですが、では、四ヘクタール、二十ヘクタールというもの、一体どういう根拠があるのかというのをお聞きしたいんです。

 先に申し上げておきますと、これは触れていただかなくていいですけれども、僕に答弁の機会がないので言っておきます。

 民主党の政策が一兆円の直接所得支払い、小沢さんが戸別所得補償とおっしゃるので、そういうふうに名前は変えていますけれども、根拠があるかというと、正直言って明確な根拠はないというのをここでも、本会議の答弁いたしました、農林予算、大まかな三兆円のうち一兆円ぐらい使っていいんだという、そのぐらいでやっていきましょうというだけなんです。

 しかし、四ヘクタール、二十ヘクタールになると、農家に対して、これだといって、まあ言ってみれば押しつけるわけですから、非常に大事な数値なんです。やはりきちんとした根拠がなければいけないんです。四ヘクタールなら一体やっていけるのか。二十ヘクタールというのはどうなのか。一集落で平均二十ヘクタールだからこういうふうにしたのか。僕はよくわからなかったんです。

 昨年の通常国会で、そこの隣で答弁席に座っておりまして、質問の機会が一度もなかったんです。この点についてきちんと質問される方が余りおられなかったので、ここでぜひお伺いいたします。

松岡国務大臣 正直に一兆円の根拠は実はないんだとおっしゃって、まあ一兆円ぐらいあった方がいい、こんなことが根拠だとおっしゃった。それはそれで考え方ですから、私もそれはそれで。

 ただ、これは、足しますと、我々のところは、今回いわゆる経営所得安定対策、トータルとして四千百三十億、これは我々党でも整理をして、これは年度をまたがったりしますから、今、十九年度予算としては三千八百億を措置いたしておりますけれども、これは例の三百億の農地、水、環境を除いた、ほとんど所得につながっていくものですよ。だから、そのような品目横断という形だけでとらえて千七百億というとらえ方をされている、それは間違っている。(篠原委員「金額については聞いています」と呼ぶ)はい。

 それから、既にほかにもいっぱいありますから、全部足すと、こちらも一兆円近い額になるんだろうと思うんです。だから、一兆円というものが新たにされるのか積み増しされるのか、よくわからないんですけれども、それも含めて、では、四ヘクタールや十ヘクタール、二十ヘクタールの根拠は何か。これは一言で言うと、将来、他産業並みの所得が獲得できる、そういう経営基盤としてとらえている、こういうことであります。

 あと、具体的な積算根拠まで、私は篠原先生みたいに、何というか研究的なことをしたことないからわからないので、そっちの方はこちらの方に答えさせたいと思います。一言で言うと、そういうとらえ方なんですね。

高橋(博)政府参考人 本品目横断的経営安定対策の施策対象の原則要件、規模要件でございます四ヘクタールあるいは十ヘクタールでございますけれども、基本的には、今大臣から申し述べましたとおり、他産業並みの所得を確保し得る農業経営。私ども、基本的に、今回基本計画を策定いたしました際に、農業経営の将来展望というのをつくっておりますけれども、その中で見通しております所得、他産業並みの所得を確保し得る経営体、幾つかモデルを提供しておりますけれども、これのおおむね半分程度というふうな考え方でおります。

 この半分程度というのは、一つは、いきなり他産業並みの経営体という形の要件にしてしまいますと、これはもうあくまでもそのハードルの高さというものが非常に大きくなるということでございますので、なかなか規模拡大の意欲ということをそぐことになりかねない。逆に、これをさらに引き下げてしまうということになりますと、実際、他産業並みの所得に届けるための方途ということがなかなか見込めないということでございますので、現状でこの程度、二分の一ということでこのスタートを始めたということでございます。

篠原委員 まあ聞いてみてもあやふやな根拠ですね。だから、四ヘクタールでできるかというと、大臣の先ほどの頭、米、いいですか、ちょうどすぐ計算できますよ、四ヘクタールで。一反歩、十アール当たり十俵とれて、かつての、ずっと二万円時代で来ました、二万円。二万円でやっても粗収入が八百万にしかならないんですね。八百万にもなっているというのか、八百万にしかならないか、どっちだかわかりませんけれども、これでやっていけるのか。だけれども、では、三・五ヘクタールや二ヘクタールでなぜだめなのかというのがあるんですよ。

 だから、こういう面積要件というのは、さっきフランスの例で申し上げました、受給要件が三十アールですよ、〇・三ヘクタール以上あればいい。平均が四十五ヘクタールなのに〇・三ヘクタールというのでいったら、非常に大きな面積なんですね。

 この二ページを見ていただきたい。二ページの表、日本とアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、韓国のところの一戸当たり農地面積、見てください。一・八ヘクタール。

 大臣は先ほど、北海道で規模拡大するんだ、北海道で格差があったと。北海道では進んでいるんです。だけれども、本州はいろいろしがらみがあって、そんな簡単に農地を手放しませんから、ふえていかないんです。ですけれども、やってやろうと思っている農家が幾らでもいるんです。そういう農家を排除してはならないと考えているんです。

 僕は、でっかい農家を重点的にバックアップするというのには賛成です。それはやっていただくべきことだと思うんです。だからといって、小さな農家を全く対象から外すというのは行き過ぎているんじゃないかと思うんです。(発言する者あり)今、福田さんから御異議がありました。

 我々の農政の柱、いろいろ担い手を育成するのも大事です。あっちもこっちもあるんです。ですが、担い手育成と同時に、やはり食料の自給率も高めていかなくちゃいけないというのがあるんですね。それを言ったら、四ヘクタール以上とか二十ヘクタール以上の集落営農に限って対象とするだけで、それだけを農政の対象にして、一体自給率の向上というのはできるんでしょうかというのが、これが疑問なんです。

 松岡大臣、ずっと国際交渉なんかにも参加されてこられて、日本国政府が主張する言葉にも変遷があります。十年前、十五年前は、フードセキュリティー、明けても暮れても食料安全保障です。この文言がいろいろな宣言文に入っていれば、人が安心して帰ってくる。松岡さんの一声で入った会合もいっぱいあったはずです。このことをどうやって今の農政に反映させているのか、これが非常に疑問なわけです。

 担い手も大事です。これは認めます。担い手に集中するのはいけないと言っているんじゃないんです。集中はしてもいい。だけれども、そこから漏れる人たちのこともやはり考えていくべきじゃないかというのが一つあるんです。これについても答えてください。

 それから、自給率、そういうでっかい農家だけやっていて、それで大丈夫なんですか、上がらないんじゃないですかというこの二つについてお答えいただきたいと思います。

松岡国務大臣 そこの言葉が、とらえ方で見解が大きく分かれているんですけれども、私どもは、今回の政策は小農切り捨てではなくて小農切り上げだと私はずっと申し上げている。

 逆に言いますと、では、八十歳の方がいる、七十歳の方がいる。三反歩やっている。この人たちは、今のままだったら、もうそれはみんな言いますよ。おれがこれで動けなくなったら、これはおれの後はだれももう、息子も東京、都会へ行っていて帰ってこないし、また、三反ぐらいじゃ、帰って後継げと言ったって、それは所得も無理だし、帰ってこない。自分は年金もらいながら、まあこれくらいでやっていれば、何とかそれはそれなりに生産はできる。しかし、自分が元気がなくなってできなくなったら、もうこれは後だれもやらない。そういうのがずっと幾つも零細で割ったら、これはだれもやらないです。

 だから、我々は、そういったところもやはり大きくまとまって、固まって、集落営農という形になることによって、一人でやれる人はいい、それは法人でやれる人はいい。しかし、そうやってこのままいってしまって担い手がいなくなってしまったら、だれもやらない。そういったところも必ずこれはやれるようにしていく。そして、だれでもが担い手たり得る、なり得る、それは集落営農という一つのくくりによってそれがなり得る、だから、みんなだれでも担い手になり得る。三反歩のままでは絶対担い手になれませんから、認定農家にはなれませんから、法人経営にもなれませんから、だから、そういう形で大きくまとまることによってみんながなり得る。

 そして、それだけまとまっていれば、集落という形で例えば十ヘクタールとか二十ヘクタールとまとまっていれば、企業が、わかりました、では、作業は私がやりましょう、一つの経営体としてやりましょう。そうすると、仮に息子が、いや、それだけまとまっているんなら新しく新規就農して、それだけの規模があるんならこれは経営としても成り立つな、帰って担い手になってもいいな、また、新しく新規参入で学校を出た人が、おれも農業を目指してやってもいいなと、受け皿がある。そういったことを目指しているわけでありまして、ですから私どもは、切り上げだし、底上げだ、こう言っているわけであります。

 それから、自給率の問題が出ました。したがって、そういうことによって、将来は三反歩のままだったらとてもこれは、その生産は放棄されてしまう、そういったことがまとまることによって、これが大きな形になっていれば必ずそこも生産はつながっていく、なされていく。ですから、それこそがまさに自給率を守っていく、高めていく道である。

 そしてもう一つ、自給力を高めるためには、それはもう篠原先生よく御存じのことと思いますが、分母と分子ですから、国内で生産されたものが消費されて自給率が上がるわけで、その消費は、国外であろうと国内であろうと消費されたものは自給率になっていきます。したがって、アメリカなんか二〇〇%とか、こう言っているわけですよ。二〇〇%もあったら、国内は一〇〇%で賄うわけだから、あとの一〇〇を超えた分は全部輸出ですよ。だから、二〇〇%なんという自給率というかそれが出てくるわけであって、したがって、日本人の胃袋だけでは、これはとてもじゃないが、やはり消費は減っていく、需要は減っていく。

 したがって、私は、日本農業の勝負はどこにあるか、物のよさだ。大きさとか生産性の高さとかいうんじゃなかなか勝負にならない。だから物のよさで勝負していく。そういうことで輸出もしていけば自給率も上がっていく、こういう考え方なんです。ぜひ御理解いただきたい。

篠原委員 大臣が力んで、小農切り上げだ、どうやって切り上げていくのかわかりませんが、全体の底上げだとおっしゃっていますけれども、これは多分、集落座談会で幾らそう説明しても、なかなか理解いただけない点じゃないかと僕は思います。

 集落営農というのも、私は反対しているわけじゃないんです。うまくいけばいいと思っております。どういうところであれがうまくいっているかというと、あちこち行っておるのでそれはもうわかるんです。最近はちょっと余り行っていないんですが、あちこち講演を頼まれまして土日に行ったりしておりましたからわかるんです。

 本当にだれもいなくなった中山間地域の、ひどいところと言っちゃ悪いんですけれども、そういうところは若い農業者がちょっとしかいない、もうあの人に任せるしかないというところは集落営農でうまくいっているんです。ですけれども、中山間じゃない、中間地域、それほど山奥でもないし、そこそこ、もっと何人も残っている、六十になって定年退職したら一生懸命やろうとか思っている人、兼業期間もあって、そういうところへ行くと、私はこの集落営農とかいうのはワークしないんだろうと思います。

 この考え方は、皆さんお気づきになっていませんけれども非常に古い考え方で、うまくいけばいいんです、これこそ学説のたぐいですよね。ソ連でかつてコルホーズ、ソホーズというのがありました、国営農場、共同農場、全く同じ考えです。中国の人民公社。私は、小泉、竹中、ホリエモン路線、こういう過去の自由競争、自由競争というのは嫌いです。仲よくみんなで共同して、和気あいあい生きていった方がいいと思っています。

 ですから、集落営農がいろいろなところでうまくいけば大賛成なんですが、私は、これの要件も、先ほど二十ヘクタールという要件についてはお答えいただけませんでしたが、もうこれはいいですよ。二十ヘクタールという面積要件、これも大きいと思います。五ヘクタールでやっているのもあれば十五ヘクタールのもあります。

 それから、一元経理、今になって緩くてもいい、緩くてもいいと言っていますけれども、今はもう田植えと稲刈りは田植え機とコンバインでやってもらう、水の管理は自分たちがやるけれどもというようなことで、それぞれ地域ごとに違う形態の共同化が進んでいるんです。それを一つの枠で縛ってやるというのは、せっかくうまくいっているものを壊すことにもなってしまうんじゃないかと思っております、だから理想を追求し過ぎて全体を壊しているんだと。

 一つ、ちょっと長っ話になって恐縮ですが、例をお示しいたします。

 古い話なんですが、転作をずっとやってまいりました長野県の宮田村というのは、転作にかかわった人たちなら大体の方は御存じだと思います。長野県の田舎の村です。そこが、転作のお金をみんなでプールして、全体で使って、個々の農家に行かずにいろいろなことにうまく使っていたんです。これは農林水産省から見たら非常にいいやり方なんです、個々にばらばらに行くよりも。当然、ブロックローテーションもやって、数軒の農家がみんな転作を請け負って、そちらの方にお金が行って、転作奨励補助金をほかのいろいろな前向きなものに使うというやり方。

 ここの課長は、よく農林水産省に呼ばれては来るんです。来るたびに僕のところへ来て口説いていくんです。また聞かれた、どうやったらうまくいく、どうやったらうまくいくと。答えは、こんな小さい村だからおれは農家のことはみんなわかっている、みんなと話すからうまくいくので、こんなの全国の農村になんか当てはまるわけがない。そう言っては説明するんだけれども、農林水産省のまじめなお役人は、これを全国に当てはめるにはどうしたらいい、どうしたらいいと聞いているといって嘆いている。

 それは特殊な要件があったからうまくいくんだということですね。やはりもっと地方の実態に合わせたやり方をした方がいいんじゃないかと私は思います。だから、直接支払いを導入するのは賛成なんです。賛成なんですけれども、やり方とかいうのはうんと農家に任せる、地方に任せるやり方がいいんです。

 もう一つ例を申し上げますと、これも僕は教育についてこんなことをやるのは反対なんですが、教育バウチャー制度というのがありますね。あちこちにお金が行くんじゃなくて、教育を受ける子供たちのところへお金をやって、どういう教育を受けるかは勝手に皆さんが考えてやれというのは、これは農業の世界の直接支払いに該当するんですね。農家に直接行って、農業機械にやろうが、基盤整備にしようがどうしようが、皆さんが考えてくださいというやり方です。だから、これはいいことなんだろうと思います。地方分権どころじゃなくて、農民分権、農家に直接行ったりしているんですよね。ところが、どうも基準が厳し過ぎるというのが難点じゃないかと私は思っております。

 それでもう一つ、大臣は国際的なところに非常に携わってこられている。やはり声がでかくて自説を曲げないという点では、国際交渉にこそ向いておられる方じゃないかと思います。(発言する者あり)自説です、ちゃんと自説をとうとうとお述べになる。

 その自説で、大臣が三年、四年ぐらい前まで国際交渉で盛んにおっしゃっていた言葉は何でしょう。多面的機能です。お忘れじゃないと思います、マルチファンクショナリティー、多面的機能、農業は多面的機能を持っているんだと。

 それからもう一つ、ドーハ・ラウンドが始まってからもずっと言っていました、多様な農業の共存だ、アメリカのでっかい農業ばかりが農業じゃないんだ、東南アジアは東南アジアの農業があるんだ、この特徴をちゃんと考えて交渉をやってもらわなくちゃ困ると。

 これはそのまま日本にも当てはまります。北海道のでっかい畜産農家がある、長野の山の中でこんな傾斜地にはいつくばってやっている農家もある、こういう人たちも、いろいろなのがいるんです。多様な農業の共存を許すような農業政策じゃないといけないと思うんですけれども、ここのところは哲学論になるので答えていただく必要はないんですが。

 多面的機能についての評価をちゃんとしていくべきだ、これも大賛成です。これが多面的機能の機能のところで直接支払いに結びついているのは、農村環境、田園風景とかいうのです。こればかりじゃないです。それだけじゃなくて、農村地域社会の維持、伝統文化の維持とかいうのがあるわけです。こういったことについて、一部の農家だけに直接支払いが行っていて、一体、多面的機能は守られるんでしょうか。

 また、これもまた食料安全保障のことをぽかっと忘れておる。いやいや、忘れていないとおっしゃいましたね。しかし、こちらは一部のでっかい農家だけに絞ることによって結構忘れ去られてしまっちゃうんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松岡国務大臣 先生もいろいろ言われましたので、まず、端的に言いまして、集落営農も賛成だ。そして、できているところはできているから、それはそれでいい。しかし、できないところには基準を緩和すべきじゃないか。こういう最初の指摘があったと思うんですけれども、ある一定の水準というのは、これはやはりどうしても、何の場合でもそうですけれども、では、試験でも何でも、できないのに合わせて合格を決めましょう、こういうことになっているかというと、そうはなっていない。やはりある一定の線というのはどうしても必要だ。

 その中で、今度は、先ほども伊藤先生に申し上げたんですが、西先生でしたかね、我々は、やはりいろいろなバリエーションをつくっているわけですよ。例えば、中山間の場合はこれでいい、生産調整組織の場合はこういう生産調整の係数を掛けて、こういう形で面積も緩和しますよ、面積だけじゃ見られないところは経営規模で見ますよという形で。そしてまた、同じ生産調整でも、中山間の場合は四ヘクタールを下限としますけれども、こういう形でいいですよということを、それは幾つものバリエーションを使っておりますから、地域の実情に応じて、そういう形で幾つかある。ただ、ある一定の水準だけは、最低線だけはどうしても超えていただかなきゃならない。その中でも、随分幾つもありますから、もうそれは御存じで言っておられると思うんですが、まずそれが一点。

 それから、国際交渉で声が大きくてもこれはだめなんですよ。英語ですからね。英語ですから、やはりきちんと英語で伝わるから、だから通訳さんの話でありまして、やはりそれは論理の世界だから。我々が日本人の体格でもってちょっと大きな声を出したって、相手はこんなでっかいんですから、それはそんなものでびくともする相手じゃありません、これは論理の世界ですから。

 それはそれとしまして、先ほど言った多面的機能、これは先ほどもお答えいたしましたように、私どもはこれを、もうとにかく多面的機能、日本の場合は、水田というのは、まさに米の生産という機能だけじゃないんだ。この水田によって、水が蓄えられ、水が貯水され、そしてまたダム的な働きによって災害が防がれ、国土全体がそれによって大きく守られ、国民の生活がそれによって支えられているんだ。

 したがって、米を自由化するということは、その一番大事な水田というものが崩壊につながってしまう。だから、絶対反対だ。それはずっとやってきましたし、これは農林省からも人を送り込んで、OECDでも農業土木の人が行って、随分一生懸命頑張って、OECDの中では一応それなりの認められ方をしております。

 ところが、OECDで認められたからといって、では、これをWTOの交渉に持ってきてWTOが認めるかというと、そうじゃないわけですね。いまだに彼ら輸出国が言っているのは、隠れみのに使っている、それは貿易歪曲だ。何といいますか、貿易を阻害する隠れみのに使おうとしているんじゃないか。そんなことはないといって、いろいろなデータをつくって説明してきました。相手のあることだから、なかなかそれを認めて、わかりましたというまではいかない、だけれども、私どもはそうやってやってきた。

 それで、多様な農業の共存、これも日本の一番のポイントとして主張いたしてきております。

 そういう中で、今言ったように、中山間は中山間、そしてまた、さらに中山間の中でも、生産調整の組織の場合はその生産調整というものを利用していただいて、生かしていただいて、中山間は最低四ヘクタールを超えていれば生産調整のそのシステムによって、係数によって、そこまでいい、そういう幅を持ってやっているわけでありますから、私どもは、いろいろなそういう柔軟性、弾力性もこれには持ってやっておる。

 ぜひ、篠原先生はおわかりでやっていただいている。さっき須賀田局長の話が出ましたけれども、それは彼も身命かけてやってきました。だから、多分篠原さんもあのまま役人をやっておられたら、今ごろは一生懸命これを推進されて頑張っておられたんだと思いますけれども、よろしく御理解いただきたいと思います。

篠原委員 やはり多面的機能、大臣、国際的なところでずっと多様な農業、多面的機能とやってきておられますけれども、残念ながら我が国の政策のところにはそれほどに反映されていないんですよね。

 それから、OECDの議論、大臣のおっしゃるとおりで、結構進んでいるんです。

 そもそも直接所得補償というこの考え方も、OECDでやってきたのをぱくっとEUがかみついて、そしてウルグアイ・ラウンドの後半、うまくそれをとって、そして青の政策にしたんです。OECDが世界の農業政策だけじゃなくて、ほかのいろいろな政策を先取りしてやっているんですね。ですから、何年かたつと、OECDの政策がそのままWTOで受けられるんだろうと思います。

 それで、西委員が棚田振興議員連盟とおっしゃいました。私もそこの末席を汚していまして、棚田振興議員連盟に入っております。それはどういうことかというと、多面的機能が大事だと思っているから、棚田を維持していかなくちゃいけない。棚田で同じように四ヘクタールなんてできるはずがないんです。

 そんなに厳しい基準じゃないとおっしゃいましたけれども、北海道を含めても平均反別が一・八ヘクタールしかならないのに、四ヘクタールで切るなんというのは超厳しい条件なんです。だから、やむを得ず、いろいろ柔軟に、いや所得がいっぱいあったらいいとかいって要件を緩和しなくちゃならないんです。こういう政策というのは、やはり簡にして要というか、簡明が一番なんです。

 ですから、余りにも厳しい要件を設け過ぎちゃって、後でぐちゃぐちゃ直しておられるというのもこれは余り得策じゃなくて、一年、二年やってみられて、もうちょっと考え直された方が私はいいんじゃないかと思っております。

 それで、このやり方ですね。先ほど大臣がおっしゃっていたことです。インドでは社会保障政策はないから、農業政策の中に社会保障的なものがいっぱい入っている。(松岡国務大臣「農村部、農村社会」と呼ぶ)農村社会。そうなんです。農村地域社会政策、農政には社会政策的な面がもともとうんと入っているんです。

 それで、日本では、例えば構造改善局というのがありました。今、農村振興局です、名前がそのとおり農村振興局。これはEUで、二〇〇三年、農相理事会の後、大きく変わった。デカップルが一つだ、大臣そういうふうに触れられました。もう一つ、農村振興政策を非常に重視して、そちらの方にお金を移していこう。ですけれども、日本はもともとそれを相当やっていたんですね。構造改善局の予算が一番大きかったのはその例だと思います。

 それから、忘れておられないと思いますが、米価で、米価闘争というのがあったぐらいわんわんやりました。米価を高くしておいたのは、結局、今でいうと年金や社会保障的な役割があったわけです。農村に全部均てん化して、どこでも米をつくっているからというのがあったわけです。

 それを、我々はちょっと急ぎ過ぎちゃって、価格支持というのはやめようという決断はよかったんだろうと思いますけれども、その後、急にそれをやめて、それで四ヘクタールとかいうふうに言い始めてしまったので、今の農村に混乱が生じているような気がするんです。

 なぜこれを申し上げるかといいますと、ここにもう一つ誤解があるんです。EUは価格支持をやめて所得支持にみんな変えたと思っている方が多いんですけれども、実は違うんです。価格は下げたけれども、徐々に下げていって、そして、下げた分、今まで農家は、日本の例でいうと、米一俵当たり二万円だと想定して規模も拡大したし、機械も買った。それが、一万八千円に下がり、一万七千円に下がり、一万五千円に下がった。五、六年で五千円も違っちゃった。これではやっていけない。EUの場合は、それを補償する形でコンペンセーションというのを払ってやった、だからそれほど混乱が生じなかった。

 日本は余りにも急激にやり過ぎてしまった、ここに原因があるような気がするんですけれども、いかがでしょうか。ですから、方向はいいんですけれども、混乱が生じないように徐々にやっていくべきじゃないかと思うんですね。

松岡国務大臣 EUの進め方と日本の進め方がどれくらい急激なのか、徐々になのかということは、これは一概に、私も、ぱっと、よく検討してみないとどう言えるかというのはわからないと思っているんですが、ただ、いずれにしても、EUもかなり改革は急激にやってきていますよね。マクシャリーから始まって、それから二〇〇〇年のアジェンダもあり、そして二〇〇三年もやり、かなりな急激な改革をやってきていますよね。

 先ほどおっしゃったように、価格を下げていった。ところが、やはり彼らがもとにしているのは、二〇〇〇年から二〇〇二年の所得実績なんですね。だから、それをもとにしてやっている。過去の所得実績をもとにしてやっておる。

 したがって、そういった点では、私は、我々も、もうEUも進んでそこまでやってきておる、アメリカもまたやってきておる、そういう中で、途上国からの非常にそういう批判といいますか攻撃も強い、やはり日本もきちんとした改革を早く進めていかなきゃならぬ。こういうことでありまして、逆に言うと、EUや向こうが早くやってきた、こちらの方がおくれておった。同じウルグアイ・ラウンドでもう協定は決まって進んできたのに、こちらの方が取り組みがおくれておったというのは、逆に日本の方がまだゆっくり目で来た、こういうことだろうと思います。

 それから、多面的機能の点ですけれども、これはもうずっとやってきて、IPUの場でもWTOの場でも、本当に我々はこのことは大眼目で主張してまいりました。ただ、なかなかそのことが受け入れてもらえない。OECDというところではこれがある程度の位置づけをしてもらっているけれども、それがなかなか反映してもらえない。こういった点もあって、だから、それも我々また一生懸命、OECDを足場にやっていく、こういう取り組みをいたそうと思っております。

 そして、今お話があった、何といってもやはり柔軟性か弾力性かということ。これは私どもはやはり最大の柔軟性、弾力性を持ってこの改革を進めようと思っております。

 一・八しかないじゃないか、しかし、一・八が二人集まっていただければそれは四ヘクタール近くになるわけですよ。三人集まれば超えるわけですよ。だから、そういったようなことからしても、ぜひこれはクリアして、乗り越えて、お願いをしたい。

 明治維新に例えれば、それはそれまでと身分制度も社会制度も違うから、それは戸惑いもあるし、不安も混乱もあると思います。しかし、それを乗り越えたから後の発展があったわけで、それと同じように、農政史上一度あるか二度あるかだと思いますよ。それくらいの改革ですから、大変御苦労も御迷惑もかけるかもしれませんが、ぜひこれを成し遂げて、そして日本農業の力が最大限に発揮できるような姿にして、そして私は、世界の中でも冠たる日本農業、技術やそういった面ではどこにも負けない、物のよさではどこにも負けないわけでありますから、そのどこにも負けない物のよさがもっともっと強力に発揮できるような日本農業の姿というものを目指して、そして強い日本農業をつくりたい、またそういう結果をできるようにしたい、こう思っております。

篠原委員 大臣の国内政策についての意欲は続けていただきたいと思いますが、国際的な問題で、どうも引っ込み思案だなという気がするんです。

 OECDではやっているけれども、なかなか受け入れられないというのは、これは違うんです。ちゃんと論理的に話し、さっき英語だとおっしゃいましたが、それは、松岡さんは英語は残念ながらそんなに流暢じゃないですから話せませんけれども、あの顔、怒り狂った顔で発言されておられるのは、あれはちゃんと通じていますから。玉沢さんのあの迫力も同じでして、英語じゃないんですけれども、十分相手には通じていますから、そこは安心されていいと思うんです。要は中身、どういう政策を言っていくかなんです。

 先ほどから申し上げているとおり、日本は余りにもまじめ過ぎるんです。例えば、大臣が覚えておられるのでは、日本のAMS。AMSをちょっと見ていただきたいんですけれども、AMSは九ページのところで、三兆九千七百億円の余裕があって、一六%に減っているところ。これは昔からこうじゃなかったんです。一九九八年に稲作経営安定対策を導入して、今まで三兆円を超えていたものが七千六百億になりましたよとWTOに通報してこうなっているんです。

 それで僕は、これはこんなことを言ったって、正直申し上げまして、そんなに大して変えたわけじゃないんです、変えましたけれどもね。変えましたけれども、我々は今まで黄色だったのを緑に変えましたよと言って通報する、それで済むんです。

 それから、アメリカの一九九六年の固定支払いというもの、大臣さっき触れられました。なぜあれを固定支払いにしたかというと、不足払いだったんです。しかし、それは黄色の政策で、まあ青の政策、EUと妥協して両方とも青に調子よくやったわけです。

 そうすると、あのころ、一九九六年は穀物価格が上がっていたんです。上がっていると農家は補助金をもらえないんです。そういう状況だと固定的に過去の生産実績や何かでもらった方がいいから固定支払いにしたんです。国内事情なんです。

 そして、一九九八年に罰が当たるわけです。穀物価格ががたっと下がって、緊急農家支援をして、真っ黄色の補助金をばんとふやさなくちゃならなくなった。

 日本に同じことが完全にできるかどうかはわかりませんけれども、EUもアメリカも国内事情を優先し、後からづけ、後づけですね、マージャンでいうと後づけで理屈をつけて、これは緑だと言ったりしているんです。ですから、日本ももっと大胆になっていいんじゃないかと思うんです。

 ですから、我々は、先ほどの三つのどれでもないというふうに大臣はおっしゃいましたけれども、条件不利地域だ、日本なんか見てみろ、こんな小さい国で、山ばかりだ、谷ばかりだ、すべて条件不利地域と言ってもいいぐらいなんだ。

 環境は、さっき水田の例でおっしゃいました。ヨーロッパなんかは、環境には、どうするかというと、耕さないで草地にした方が環境にいいんです。日本の場合も、根源的には森にした方がいいかもしれませんけれども、自然の一部になっていますから、生物の多様性を維持するためにも水田耕作をしてもらった方がいいのだ、水田耕作をすることが環境を守ることになるのだ、それで食料安全保障もある、もろもろの意味がみんな重なった直接支払いなんだというような主張をしていけばいいのだろうと思うのですね。

 この部分、何回も外国に言っておられます。積極的に日本の事情を説明して主張していけば、松岡大臣のパワーだったら私はできると思うのです。その点についてはいかがでしょうか。

松岡国務大臣 篠原先生はアメリカの九六年農業法の前後の状況はよく御存じだと思うのですが、私の認識では、私もあのころよく知っています、ウルグアイ・ラウンドの協定ができまして、そしてああいう結果になりました。

 その結果、九六年農業法ができたのですが、それまでアメリカも生産調整をしていたのです。生産調整をしていた。これは、生産調整はやめることができた。そしてアメリカは、それはなったからじゃないのです。まさに緑の支払いにするために、それまでのものの平均をとって、九六年に農業法をつくって、緑の直接固定支払いにした。そして生産調整もやめたから生産量が拡大した。拡大した分、今度はその分の、拡大した分の所得もふえたんですね。そしてもう一つは、輸入を、自由化で市場を押し広げたから、その分のそれもきいて値段も上がった。

 だから三つ取りだったんだ、アメリカの農家は。あの後、直接行って聞きましたよ、もうアメリカ農家は本当に好景気に沸いていますと。三つ取りだった。

 ところが、過剰生産につながって、今度はまた暴落して、いわゆるCCPですよ。市場損失支払いというものを、またむちゃくちゃなものを持ってきた。それがアメリカの結果でありまして、それと同じようなことをやれというのは、今アメリカがどれほどそれでたたかれて、世界中から袋だたきになっておるか。

 だから、信号でいうなら、赤なのに、いや、ブルーだブルーだと言っているわけですから、それと同じようなことを日本がやれということは、私は日本はとても無理だと思うし、できないと思うし、また、そういう道はとるべきではないと思います。

 そして、もう一つ答えますと、先ほど農業価格には社会保障制度が入っているとおっしゃいました。私は、これは終戦後はそうだったと思う。それこそ国破れて山河ありで、都会は食う物もなければ住む家もない。それでみんな農村に来た。そういうことの中で、社会保障制度的なものが農村にあった。

 しかし、今はいろいろな制度ができていますから、失業保険もあるし年金もあるし国民健康保険もありますし、そういう中で、農村がその役を担っておると言って、その分を取り込んで価格政策に持っていくというのは、今の状況では、これは日本の社会全体としてちょっと認められるものではないんじゃないか。

 今、私ども、農業者年金も、何年前でしたか、一定の整理をいたしました。これは他の年金並み以下にはしない。あのとき、私らはもう、マスコミでも、何だ、またそういうことで農業保護だといってたたかれましたけれども、今農業者年金だけでも千六百億円前後の、千五百から千六百億円前後の助成をしているわけですよ。さらにそれに加えて、価格の中に社会保障制度的なことを入れていけというのは、これはちょっと無理があるんじゃないかな、そう思います。

 それからもう一つ、民主党の案に対してどうだとお聞きになっておられませんけれども、私どもがどうしても思っておることは、価格と生産にかかわって、その差を補てんすると言った途端にこれは、WTOではもう黄色です。黄色は減らさなきゃならない。減らすのをふやすということになるとどうなのか。

 今六千四百億が二〇〇三年のWTO通報ベースの日本の黄色の額です。だから、一兆円ということになると、プラスオンの一兆六千四百億なのか、いや、六千四百億に三千六百億円足して一兆円にされるのか。これはあすの農業大臣としてどちらかなと、ちょっとここで確かめておきたいと思ったものですから聞くのですが。

篠原委員 松岡委員の御質問にお答えしたいのですが、時間がありませんのでやめまして、一つだけ具体的な質問をさせていただきます。時間がなくなりましたので最後です。

 鳥インフルエンザの関係なんですが、私、大臣と同じ日に、一月十六日に宮崎県の清武町に参りました。そこで大臣も直接お聞きになったかどうか、一ノ瀬町長、おととい大臣と会われておられるはずです。そこで大臣にも直接申し上げられたのかどうかわからないんですが、三つ私は問題点を指摘されまして、どうしても直してほしいと言われた。

 一つは、家畜伝染病予防法の十五条に鳥インフルエンザが入っていない、口蹄疫だとかコレラとかは入っているけれども。だから、通行制限ができない。警察とか何か、病院もあったりするので通行制限してというのを、県もみんな腰を引いていて町長に任せて、しようがないからした。ちゃんと権限を与えてほしいというのが一つ。

 次は、三棟あって、一棟だけで発生した。隣と隣の、その真ん中のものが発生して、両隣が発生していないのに、同じように埋却、焼却処分しなくちゃいけない。それをきちんとやっているんだから、鶏舎が違うんだからいいじゃないかというのが二点目。

 三点目は、ど田舎じゃなくて住宅地もいっぱいある。いろいろペットとして家禽類を飼っている人たちがいる。この人たちのところのはどうするのかと聞かれたりしているけれども、三番目は小さいです、この三つについて改善してほしいという要望がありましたので、お答えいただきたいと思います。

松岡国務大臣 第一の点は、ひとつ篠原先生とも協力しながら、町長さんの御要望というのはよくわかりますので、我々もそういった取り組みを実現できるように、やはりそれが一番早くインフルエンザを撲滅していくというか、そこで封鎖して封じ込めていくという道につながると思うので、それはもう全く一緒です。

 ただ、第二の点は、三つあって、真ん中だけしか出ていないんだから、あとの二つはいいじゃないか。これは、やはり伝染性からいって、もうそこは伝染されている、汚染されているというか、そういった認識。でないと、五キロ、十キロやっているわけですから、それはもう隣の鶏舎はだめというわけにはいかないので、これはちょっと科学的な問題ですから……(篠原委員「埋却、焼却じゃなくて」と呼ぶ)いや、だから、焼却ということになっている、その道を通らぬか通るかという制度的な問題は我々でいいと思うんですよ。しかし、殺処分をどこまでの範囲でするかしないかということは、私は、これは科学的な問題ですから、やはり我々政治家のやりとりで決める問題じゃない、これはBSEにしても鳥インフルエンザにしても、そう思っていますので、これは科学的判断にゆだねたい。そして、今ある基準でやはりこれはやってもらおう。

 三つ目につきましては、本当にペットで飼っている、どうするんだ、そこからまた伝播していくこともありますから、これはちょっと十分検討して、これも科学的な問題と絡むわけですが、十分検討していきたい、こう思っています。

 第一の点は、ひとつ一緒になってぜひ実現に向かいたいと思います。

篠原委員 終わります。

西川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

西川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 民主党の岡本でございます。

 きょうは、多岐にわたる農林水産行政、各般に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず一番最初に、お願いを込めてのお話でありますけれども、過日、二月十五日未明、南氷洋において日新丸が火災を起こしました。きょうは水産庁長官にも急遽お越しを願ったわけでありますけれども、この日新丸の火災、原因等についてはこれから調査だというふうには聞いておりますが、この火災の調査はぜひ精力的に行っていただいて、一人の方が亡くなるという大変な惨事でもありますし、また、いまだにこの船から避難をしてみえる乗組員の方が百人以上みえる、こういう状況でもあります。

 今、日本が沿岸小型捕鯨を進めていきたいという強い願いの中で、IWCで非常に苦戦をしておる状況も大臣御存じのとおりであります。先回のカリブ海で行われましたIWCでは多数に辛うじてなったと聞いておりますけれども、次回のアラスカにおけるIWCでは厳しい要素もあると私は聞いております。

 そういう今の状況を踏まえて、この日新丸の懸案についてきちっとした調査をしていただきたいと思うわけでありますけれども、御答弁を水産庁長官からいただけますでしょうか。

白須政府参考人 ただいまの委員のお話のとおり、二月十五日に、調査捕鯨を実施しております調査母船でございます日新丸の船内後部、工場の後部から出火をいたしたわけでございます。

 これにつきましては、一名の方が遺体で発見されるという大変痛ましいことになっておるわけでございますが、お話しのとおり、現在のところ、まだ出火の原因でございますとか出火場所については特定をされておらないということでございまして、帰国後に海上保安庁の捜査が必要であるというふうなことでございます。

 私どもとしても、このことにつきましては、漁業監督官という水産庁の職員も実はこの母船に乗り組んでおりまして、そこともしっかりと連絡をとりながら指揮をいたしているところでございますが、ただいまお話しのとおり、この原因なりのことにつきましては、帰国後にしっかりと調査をいたしたいというふうに考えております。

 また、お話しのとおり、昨年はおかげさまで、昨年度セントキッツのIWCの総会におきまして、捕鯨国サイドといいますか持続的な利用の支持国が、一票差ではございますけれども、決議を行うことができまして、そういう点では一歩進んだというふうに理解をいたしておるわけでございますが、お話しのとおり、ことしはまたアンカレジで五月にあるわけでございます。この点につきましては、ただいまお話しのような小型捕鯨の問題でありますとか、まだまだ懸案はたくさんあるわけでございますので、引き続きまして、私どもとしてはこういった持続的利用の支持に向けて最大限努力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。

岡本(充)委員 つけ加えてお話をさせていただきますと、日本の文化的な捕鯨、またさまざまな意味での調査捕鯨を含めて、IWCの中での意見の相違というのが極めて深刻になっているやに報道もされています。国際的な理解を得る、それがやはりこの日新丸の事件でも表面化をしました。厳しい南氷洋なり北極海なりで漁をし、そこで国際的な理解が得られていないがゆえに残念ながら抗議船とのいろいろなストレスも生じる、こういう状況下での捕鯨を余儀なくされているわけでありまして、この点については、やはり国として、ここも守るところは守る、攻めるところは攻める、そういう農業を、これは水産業ですけれども、大臣にお願いをしたいということで、大臣から改めて決意を伺いたいと思います。

松岡国務大臣 岡本先生の御指摘は、私ども、全くそのとおりだと受けとめております。

 と同時に、今先生にそのような御指摘をいただきましたことは、先生も今お話がございましたような思いでこのことを見ていただいておると思いますし、そしてまた、そのような先生の思いの上に立って、我々にしっかりやれ、こういうことでございますので、ある意味では本当にお力添えだ、ありがたい御支援だと思っておりまして、しっかり先生の今の御趣旨を体しましてやってまいりたい、こう思っております。

 特に、二度とこういったことが起こらないように、我々も外交的な関係やあらゆる関係を通じまして努力をしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

岡本(充)委員 続きまして、少し食の安全に関して議論をしていきたいと思います。

 きょうは、各般、いろいろな関係の責任者の方もお越しでありますけれども、本当であれば内閣委員会でお伺いするべきところであるかもしれませんが、食品安全委員会の委員長もこのたび交代をされました。食品安全委員会の委員長としての御所見なり、そして、これからの山積する課題についてどのように取り組まれるお気持ちか、まずそれをお伺いしたいと思います。

見上参考人 岡本先生がおっしゃられたとおり、十二月二十一日の日なんですけれども、委員会において、委員の互選により、私が委員長ということになりました。

 それで、この委員長というのは大変な重責だと私自身思っていますし、食品安全委員会の重要な役割を果たすために、科学的な知見に基づき、中立公正な立場から食品のリスク評価を適切に行うとともに、リスクコミュニケーション推進に引き続き努力してまいりたいと思います。

 今後とも、岡本先生初めここに御列席の与野党の国会議員の先生方のお力添えをいただきながら、国民が安全な食生活を営めるよう、また国民から信頼していただけるよう、科学的な知見に基づく食品安全行政の確立に貢献していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 以上です。

岡本(充)委員 今話題になっております食品安全行政にかかわる課題というのは多岐にわたっておりますが、その中でも、きょうは鳥インフルエンザの問題とBSEの問題に少し焦点を絞ってお話をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、鳥インフルエンザ対策ですけれども、大臣所信でも松岡大臣はお述べになられておりますが、もう少し子細に鳥インフルエンザに対する大臣の認識というものをまずはお聞かせいただきたいと思うわけですけれども、よろしくお願いします。

松岡国務大臣 この鳥のインフルエンザにつきましては、もう既に報道もされ、そしてまた、皆様方のところにもいろいろと情報も伝わっておると思います。

 まず、今回の発生ということよりも、鳥のインフルエンザに対する認識と先生の御指摘でございますので、先生はお医者さんでもありますから、多分そういった観点も含まれているのかなと受けとめるわけでありますが、まさにこれは鳥がインフルエンザにかかる、こういうことでございます。

 そういたしますと、どうやってこの問題を解決していくか。今のところ、鳥のインフルエンザにつきましては、殺処分が一番直接的な、有効な手段だ、私どもはそう認識をいたしております。

 今、食品安全委員会の見上委員長からもお話ございましたが、これはすぐれて科学的な問題でございますので、私どもは科学的な根拠、判断に基づいてこれには対応してまいろう、こういうふうにまず思っております。

 そういう中で、鳥のインフルエンザの蔓延をどう防ぐかということが一番大きな課題になるわけでありますけれども、この蔓延を防ぐということに当たりましては、先ほど言いましたように、とにかく殺処分をして、その発生した場所で封じ込めてしまう、これを徹底してやろうということでございます。

 ワクチンはどうするかとよく言われるわけでありますけれども、これにつきましては、よほどの事態にならない限り、ワクチンの使用というのは今は考えられない。これは科学的な判断が実はそうなっているというふうに承知をいたしております。

 といいますのは、今、鳥のインフルエンザに使うというふうに言われておりますワクチンは、発症は防ぐけれども感染は防がない。したがいまして、ワクチンを打って、元気なまま、また感染が伝わっていく、こういうことでは、これを根絶するというわけにはいきませんので、私どもは、ワクチンはよほどの事態にならないと使わないということで、とにかく殺処分によってこれを根絶していく、蔓延を防止していく、こういう考え方でございます。

 そして、それから先の話になりますと、これは私どもじゃなくて、鳥と人の関係ということになれば厚生労働省の所管でございますので、きょうは政務官もお見えですから、多分、先生、そういうことでそちらの方に御質問だと思うんですが、とにかく、私どもは今申し上げましたような認識を持って対処してまいりたい、こう思っております。

岡本(充)委員 我が国の国内対策ももちろんなんですけれども、東南アジアにおける施策の必要性というのもあわせて私は指摘をさせていただきたいと思いますし、そもそも残念ながら殺処分をするほどの経済的余力のない国もあるのも事実であります。なかなか、根元的な問題として、世界各国どこでも発生し得るこのウイルス疾患を、日本一国でどうにかするということでもないのも事実でありますけれども、先ほどの捕鯨の問題とも同じですけれども、国同士の交渉、そして取り組み、協力、こういうのも必要だということだと私は考えておるわけです。

 その一方で、きょうは菅原政務官にもお越しをいただいておりますが、これが人に感染をする新型インフルエンザになった場合の認識、その新型インフルエンザに対する認識という点では、政務官はどのようにお考えになられているでしょうか。

菅原大臣政務官 毎年冬を中心として起こり得る通常期のインフルエンザ、この対応についてはこれまで積み重ねをしてきたところでございますが、新型のインフルエンザに関しましては、今お話のございましたように、科学的な知見に基づいて、もう一〇〇%安全という対応というものはまだまだできない状況にあろうかと思っております。

 そうした中で、ワクチンの開発あるいは抗インフルエンザ薬の開発、備蓄等々、総合的に今厚生労働省としても対応を図っているところでございます。

 以上でございます。

岡本(充)委員 毎年冬に流行するインフルエンザの亜型というわけではないということをぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。これは医学的な話になるので厚生労働委員会でまた別途、きょうは同じ時間なものですからできませんでしたけれども、取り上げさせていただきたいと思いますが、通年起こり得る可能性を秘めているのは秘めていますし、また起こる病気も、ウイルス疾患、呼吸器疾患ではなくて、全身に起こる過剰な免疫反応による新しい症状、疾患概念というふうなことも指摘をされているわけであります。そういう意味では、これまでのインフルエンザ対策だけでは、つまり呼吸器感染症というイメージでおっていただくと、これは大変な事態になるということを改めて指摘をさせていただきたいと思います。

 そんな中、国として、今、鳥インフルエンザに関するさまざまな広報、そして周知活動をしておられます。その中で私大変気になるのは、鶏肉や卵から人への感染がないということを、ある、いろいろな政府が関係する広報等で使われているやに聞くわけなんですけれども、もちろん括弧書きで加熱をする方がより安全だという言葉は書いてありますが、例えば生の食肉、特にレバーの刺身などを食べられる方も見えます。また、こういった生の肉から鳥インフルエンザに感染する可能性はゼロではないとは、鳥インフルエンザから人への感染がないわけではないと科学的に思うわけでありますけれども、この点についてはいかようにお考えになられ、今後、広報において、加熱をするということをもう少し広く周知をしていただきたいという私のここでの意見提言については、どのようにお答えいただけますでしょうか。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのとおり、我が国におきましては、高病原性鳥インフルエンザの発生につきましては、家禽や鶏卵の移動制限等の的確な防疫措置が講じられている、こういう状況にあるわけでございます。

 このような状況を踏まえまして、食品安全委員会としては、現在のところ、我が国においては、鶏肉、鶏卵は安全であるという形での見解を示させていただいておるわけでございます。その中で、御指摘のように、加熱の問題もあわせて示しておるところでございます。

 いずれにしましても、鶏肉を未加熱または加熱不十分で食べるということについては食中毒の予防の観点からも推奨できない、このようには考えております。したがいまして、その私どもの出しておる見解の中でも、WHOの見解を引く形でそのことについても触れているところでございます。

 以上でございます。

岡本(充)委員 今お話しになられたのは、食中毒の話も含めてということですけれども、ほかの対策と一緒にするべき話では私はないというふうに思っていまして、より深刻な事態が起こり得る、鳥肉によるサルモネラの食中毒、これももちろん恐ろしい話ではありますけれども、全くその疾患概念が違うんだということを冒頭にお話をさせていただいたのはまさにその点であります。

 そういった中、感染が判明すれば出荷停止、焼却また埋却処分になるわけですが、残念ながら、その検査結果で陽性とわかるまでの肉が市場に出荷してしまう可能性は排除ができないと思っているんですね、肉や卵は。こういった肉や卵に対する対策というのはどのようにお考えなのか、また、最大限どのくらいの量が出荷してしまうことがケースとして想定をされるのか、お答えをいただければと思っています。

町田政府参考人 申しわけありません。私どもの手違いかもしれませんが、私ども通告をいただいてないという認識であったもので、十分なお答えができないかと思うのでございますが、今、食品安全委員会の齊藤事務局長からお話をいただいたように、現在のところ、我が国においては、食肉、鶏卵については安全であるという御見解もいただいておりますので、今回の、あるいは三年前の発生当初を除きまして、そういった回収、そういった措置は講じていないところでございます。

岡本(充)委員 月曜日にファクスで通告をさせていただいておる中に入っておりますので、御確認ください。

 そういう中で、きょうはまた厚生労働省にもお越しをいただいています。新型インフルエンザ対策として気になる点が幾つかあります。

 皆様のお手元にお配りをしておりますインフルエンザウイルス薬の備蓄計画、これは厚生労働省からいただきました。ことしの年度末で政府備蓄分、一千五十万人分を補正予算を含めて確保するというお話は伺っています。都道府県分はいまだその備蓄が六割から七割にとどまるという話も聞いておるわけでありますけれども、これが二千五百万人分に達するのは一体いつになるのかという思いを私は持っております。

 この二千五百万人分が確保できる時期、都道府県分はそれぞれ都道府県が取り組みでありますけれども、これはいつごろまでに備蓄が完了するんでしょうか。

宮坂政府参考人 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄でございますが、国の備蓄分、一千五十万人分につきましては、御指摘のとおり、今回の補正予算で今年度内に、また、都道府県分につきましては、平成十九年度末までにはすべて備蓄を完了するという予定にいたしております。

岡本(充)委員 さて、この二千五百万人分が適切なのかどうかということも少し触れさせていただきたいと思います。

 一枚おめくりください。これも厚生労働省からいただきました。それぞれの人口に占める抗インフルエンザ薬の備蓄の状況でありますが、パーセンテージは、ごらんのとおり日本が一番少なくなっております。米国が二八、カナダが五〇、英国が二四、フランスが二三、日本が二〇、各パーセントであります。

 また、米国などにおいては、国土が広いこともあって、大都市では大変な流行を起こす可能性があるかもしれないけれども、地方の都市では起こらないかもしれない、そういうことも考えられます。

 日本はその点、人口密度がどこでも極めて高いと言っても過言ではない状況の中で二千五百万人分、一説には、医療従事者を含む関係者だけでも一千万人の人口があると言われておりまして、その配偶者も含めて予防的に服用をしたい、パンデミックな流行が起こり予防的に服用したいという人たちが出てきたときに、一千万人の医療関係従事者を含むその配偶者を含めば、二千万人分そこで消費をされてしまう事態になりやしないかと危惧をするわけであります。

 そういう意味で、この二千五百万人分、CDCモデルによる計算式によるんだという話ではありますけれども、果たしてこれで十分であるというふうに考え得るのか。それとも、もう一段の備蓄が必要であるというふうに考えてみえるのか、厚生労働省としての見解をお伺いしたいと思います。

菅原大臣政務官 抗インフルエンザウイルス薬につきましては、一昨年の新型インフルエンザ対策行動計画におきまして、委員が御指摘のとおり、全人口の二五%が新型インフルエンザに罹患をした場合、医療機関を受診するその患者数は約二千五百万人というふうに推定をして、備蓄をしているところでございます。

 そうした中で、今御質問にありましたように、医療従事者あるいは社会機能維持者といった方々にプレパンデミックワクチン、これを優先的に接種するということを考えておりまして、こうした中で、患者用の抗インフルエンザウイルス薬を広く配布することは基本的に考えておりません。

 こうした中で、現段階の推計で二千五百万人の抗インフルエンザウイルス薬を確保して、適正に管理をすることを考えておりまして、必要量の確保が図られるためにも、現在策定を進めております抗インフルエンザ薬に関するガイドライン、このガイドラインにおきまして、常備用及び流通用の抗インフルエンザウイルス薬を指定された医療機関へ集中させることによりまして、適正に管理策を講じてまいりたい、このように考えております。

岡本(充)委員 指定された医療機関に集中をさせるということは、指定されていない医療機関の周辺にお住まいの方はもらえない可能性があるということを示唆しているわけでありますよね。そこのところをお答えいただけますか。

菅原大臣政務官 基本的に、約一千万人いらっしゃる医療従事者並びに社会機能維持者、その中でも医療関係者の方々の今御指摘がございましたけれども、厚生労働省といたしまして、適正に管理をするという目的の中で、この医療機関、集約的にそこに適正配分をすることによって、この二千五百万人分を、万が一のときの患者により広く配布ができるような対策を行ってまいりたい、現在のところはそういう状況にございます。

岡本(充)委員 プレパンデミックワクチンの話もされました。きょうみえます委員の皆様にもぜひお知りをいただきたいわけですけれども、プレパンデミックワクチンを実際に接種できるまでには一カ月の時間がかかる。最初の新型インフルエンザが発生をしたことを私たちが認知をして、そして、そこから爆発的に感染がふえる中で、一カ月間、医療関係者は盾がない中、インフルエンザと闘え、こういう話になるわけですね。

 このときに何が欲しいと思うかといえば、このタミフルが欲しいと思うに決まっているわけです。これを飲みたいと思うはずなんですね。そのときに、この二千万人分がなくなってしまうんじゃないですか、こういうふうに聞いているわけでありまして、これは皆さんもお考えいただいておわかりのとおりだと思います。

 ぜひ、ここはひとつ改めて推計をし直し、必要量を厚生労働省としても検討していただきたい、このように思うわけであります。検討はまずはしていただけますでしょうか。

菅原大臣政務官 ただいまの抗インフルエンザウイルス薬につきましては、新型インフルエンザ対策行動計画に基づきまして、先ほど申し上げましたように、二千五百万人分を目標として、国及び都道府県が備蓄を進めているところでございまして、さらに、追加する備蓄が必要である、このように判断されるような状況にありますれば、その時点で適切に対応していきたい、このように考えております。

岡本(充)委員 ときがたってから、インフルエンザが発生してから慌てて対処をしたいと思っても間に合わないということをここで改めて私は指摘をしておきたいと思います。

 実際に、この抗インフルエンザ薬二千五百万人分を確保し、プレパンデミックワクチンも用意をし、今の日本の対策、ほかにも東南アジアで新型インフルエンザの徴候をキャッチする、そういう取り組みもしているようでありますけれども、こういう各種の取り組みを通じて、厚生労働省は日本のインフルエンザの死者数をどれだけ減らすことができるというふうにお考えになられているのか。最後に、それをちょっとお伺いしたいと思います。

菅原大臣政務官 この新型インフルエンザ対策につきまして、委員御指摘のとおり、大変重要な局面にあろうかと思っております。

 例えば、一九五七年に起こりましたアジア風邪では、それから推定をいたしますと、日本の場合、入院患者数が最大で五十三万人、死亡者数は十七万人と推定されます。あるいは一九一八年のスペイン風邪、これは大変重度な風邪でありましたから、この状況、同じような程度のものが発生をすると、入院患者は約二百万人、死亡者数は六十四万人、こういう推計が出されているわけでございます。

 こうして過去の発生したインフルエンザと新型のインフルエンザの状況、背景、あるいはウイルス等々、今科学的な知見に基づいて最大限の推測をし、そしてまた、それに対応する努力をしていかなければいけないということでございますが、今ここで、それでは何万人を抑制できるかという数字は、正直申しまして、持ち得ておりません。

岡本(充)委員 アジア風邪とスペイン風邪の話をされました。これは、どちらも弱毒株なんですよ。今回懸念されているH5N1というのは強毒株なんですよ。毒性が強いんですね。弱毒株でも六十四万人ですからね。ぜひ委員各位の皆さんにも危機感を持っていただいて、六十四万人が死ぬ、弱毒株でも。これはどういうことかということをぜひお考えいただきたい。皆様の御地元でもどういうことになるのか、どういうパニックが起こるのかということをお考えいただきたい。政府のやっている取り組みで、今の状況で本当にいいのか。これは、私、民主党だから言っているわけじゃない。自由民主党、公明党の委員の皆さん、また、社民党、国民新党、共産党の委員の皆さんを含めて、全政党を挙げて取り組まなければいけない課題だと私は思っているわけです。そういう意味で、きょうはあえて大臣政務官に来ていただいたという意義を御理解の上、省に戻って、ぜひ御検討いただきたいと思うわけです。

 そこで、もう一つ関連する質問になるわけですけれども、そんな中、生活のインフラの問題です。このインフラがきちっと維持されるのか、安定供給が保たれるのかということについて大変危惧をしています。人口の大体二〇%の人が罹患をする可能性がある。もっと言えば、もっと多くの人が罹患をするかもしれない。休業者が二割を超える。三割に迫るような休職者が出た場合、電気、ガス、水道はそれぞれ維持をするに足りる状況になっているんでしょうか。

 私は、ある電力会社の従業員の方に聞いてみたら、例えば原発などは、十二時間交代の二交代制で、五班ぐらい班をつくって回しているという話を聞いています。その中で、人が三割休んで二班使えなくなったら、三班で十二時間交代の勤務を回さなければいけなくなる。これではトラブルの原因にもなりかねない。電気やガスや水道がなくなれば、我々はどうやって、正直なところ、鳥インフルエンザにかからなくても、新型インフルエンザにかからなくても、暮らしていくのかという心配を持つわけであります。

 この点、シミュレーションをしたり、もしくは行政の方で対策を立てるように各事業者に指導をしているのか。電力、ガス、水道それぞれについてお答えをいただきたいと思います。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 電力、ガスを所管しております資源エネルギー庁でございます。

 経済産業省としましては、厚生労働省によりまして、三月にも制定される予定のガイドライン、これを踏まえまして、電力やガス事業者における行動計画の策定、公表に向けて、事業者とともに現在検討しているところでございます。

 具体的には、交代要員の確保ですとか、また電力の場合は各社による電力の融通等もやっておりますので、そういったことのシミュレーション等々につきまして検討してまいりたいと考えております。

宮坂政府参考人 生活インフラのうち水道についてお答え申し上げます。

 新型インフルエンザの流行時におきましても、生活インフラでございます水道水の円滑な供給の確保は極めて重要な課題と考えております。

 このため、各水道事業者におきまして、特に浄水工程におきます施設の運転管理を中心に、業務に従事する職員の感染防止対策の徹底、それから緊急時に業務を代替し得る職員の訓練、さらには、退職者等緊急時に応援が可能な外部の人員の確保等々の多重的な要員の確保体制というのをあらかじめ準備しておくことが必要であると考えております。

 そういったことから、厚労省におきましては、こうした水道事業者がとるべき対応を取りまとめたガイドラインの検討を進めているところでございまして、これを早急に取りまとめて、関係者に周知を図ってまいりたいというふうに考えております。

 以上です。

岡本(充)委員 三月と言っていますが、少しでも早く決めた方がいいと思いますよ。インフルエンザの流行は比較的寒い時期に多いというのも、これまた通年起こるとはいえ、事実でありますから、少しでも早く整備をされることを望むわけであります。

 続いて、BSEの話に話を移させていただきたいと思います。

 現在、国内における牛肉の全頭検査でございますが、今全国で継続中だと私は理解をしております。まず、この理解で正しいのかが一点。

 そしてまた、この全頭検査は、たしか平成十七年の秋から国が一部費用を見て、今継続をしているわけでありますが、三年間の時限措置だったと理解をしております。二十年秋にはこの措置が終了するという算段になるのかと思いますが、夏の概算要求の段階に、そのときに聞くのが適切なのかもしれませんが、現時点で、二十年秋以降、全頭検査の継続を希望する自治体への支援をされていく予定なのかどうか、これをあわせてお聞かせいただきたいと思います。

宮坂政府参考人 お尋ねは二点ございました。

 まず、BSE検査の現状でございますが、国内におきますBSE検査につきましては、平成十三年十月、これは国内で初めてBSEが発生したときでございます。このときに、牛の月齢が必ずしも明確でない、それから国内でBSE感染牛が初めて発見されて、国民の間に強い不安があるということで、全頭検査をその時点で開始したわけでございます。

 その後、平成十六年九月に、食品安全委員会におきまして、科学的な評価が行われまして、BSE対策に対します評価と検証が行われました。その結論を踏まえまして、厚生労働省と農林水産省が食品安全委員会に対しまして、屠畜場におけるBSE検査の対象月齢について諮問を行ったところであります。これに対する、平成十七年五月の食品安全委員会の答申を経まして、平成十七年八月にBSE検査の対象月齢を従来の全頭というものから二十一カ月齢以上とする見直しを行ったところでございます。このように、現在、制度といたしましては、全頭検査を義務づけているというものではございません。

 ただ、議員御指摘のように、現在のところ、食用目的で屠畜をされます二十カ月齢以下の牛につきましては、すべての都道府県によりまして自主的にBSE検査が行われているところでございます。

 二つ目の、今後どうするんだという点でございます。

 この点につきましては、今議員も御指摘になりましたけれども、都道府県等によります自主的に行われております二十カ月齢以下の牛のBSE検査に対します国庫補助につきましては、御指摘のとおり、経過措置として最長三年間を当初から予定いたしまして、その旨を説明してきたところでございます。

 厚生労働省といたしましては、BSE検査の対象月齢を二十一カ月齢以上とした場合であってもリスクは変わらないという食品安全委員会の科学的知見に基づくリスク評価結果が国民に十分に理解されますよう、リスクコミュニケーションに努めてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 リスクコミュニケーションに努めてまいりたいというふうに話をずらされてしまいましたけれども、この二十年秋以降をどうするかということについてはまだ検討中なんでしょうか。それとも、続けていく方針になりそうだということでいいのか、この点に特化して、再度お尋ねします。

宮坂政府参考人 平成二十年の七月以降の件につきましては、リスク管理機関でございます厚生労働省といたしましては、リスク評価機関であります食品安全委員会の科学的知見によりますリスク評価結果を重く受けとめておりまして、国民に対して十分な理解をさらに得るため、今後とも努力をしてまいりたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 要するに、リスク評価に関する情報提供を国民に進めて、二十年の秋以降というか、七月以降は、全頭検査にかかる自主的検査費用分を国が見ないということを言っているように私には聞こえるわけですね。国民の間での牛肉に対するさまざまな不信感、不安感というのは、まだ完全に払拭をされている状況に現時点ではないと私は思っています。

 そういう中で、また、畜産関係の皆様方からしても、安心して食べていただけるのであれば、その検査をすることにやぶさかでないという方も多いやに私は見ているわけでありまして、そういう意味で、きょうは菅原政務官もお越しであります。これもまた、政治家の立場として、実際に有権者の皆様とコミュニケーションを交わしている立場だからこそわかる観点で、この皆さんの思いをしっかり反映していただきたいと思いますが、改めて決意のほどをお聞かせいただきたいと思います。

菅原大臣政務官 平成十三年の九月にBSE問題が我が国において起こって以来、食品安全委員会等といろいろな議論、あるいは国会でも、あるいは一般国民の中でも、関係団体、業者の方々といろいろと議論を重ねてまいりました。

 こうした中で、最長三年間、経過措置として、今般自主的な全頭検査を行っているわけでございまして、この三年間のいわば経過措置が過ぎた後どうするかということについては、今審議官からも御説明申し上げましたように、やはり二十一カ月月齢以上の場合であったとしてもリスクは変わらないという食品安全委員会の科学的知見、今最も新しいリスク評価結果に基づいて、そうした状況を国民にしっかりコミュニケーションしながら議論を重ねてまいりたい、このように現在は考えております。

岡本(充)委員 きょうは食品安全委員会にもお越しをいただいています。今後、報道によると、米国、カナダ以外の十三カ国の牛肉輸入先、それぞれの国のリスク評価をみずから調査として行うやに聞いております。いつごろまでにどういった形でこの調査を行っていく予定であるのか。現時点でわかっている範囲で結構です。お答えをいただけますか。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 米国、カナダ以外からの輸入牛肉等のBSEリスクにつきましては、昨年の六月、食品安全委員会におきましてみずから評価についての議論を行ったところでございまして、それを踏まえまして、プリオン専門調査会で、昨年の八月以降六回にわたりまして、各国の現状の議論、それから評価の考え方とか評価の進め方等につきまして、準備段階の議論を進めてきたところでございます。

 ことしになりまして、二月の十四日に開催されました私どものプリオン専門調査会で、我が国に輸入される牛肉等に係る食品健康影響評価を実施することは妥当であろうというプリオン専門調査会としての一応の見解案が合意されたところでございまして、この内容につきまして食品安全委員会の方に報告がされるという予定となっているというふうに承知しています。

 いずれにいたしましても、食品安全委員会におきましては、プリオン専門調査会の報告を受けまして、これから先どのような形でこれを取り扱っていくか、さらに議論を進めていきたい、そのように考えておるところでございます。

岡本(充)委員 十三カ国と言わずに、米国、カナダについても改めてその評価をするに足りるそういった材料がそろいつつあるのではないかと思うわけなんですが、米国、カナダについて今最新の評価だ、こういうふうに菅原政務官言われましたけれども、それもだんだん年がたつにつれて最新と言えなくなってくる可能性もあるわけであります。そういった意味で、米国、カナダについても検討の対象にするべきではないかと私などは考えるわけなんでありますけれども、委員長の見解をいただきたい。

 あともう一点、あわせて、何遍もお話をさせていただいていますが、平成十七年二月八日にまとめられました牛の月齢判別に関する検討会、この検討会が、A40の肉質判別についての統計学的な信頼性の確保のために、二十一カ月齢以上の牛由来の枝肉を排除するための基準としてのA40の有効性を確認するため、追加的検証または実施後のフォローアップが必要であると言われております。この点について、委員長としては今そのフォローアップがなされているというふうにお考えになられているんでしょうか。どうなんでしょうか。お答えいただけますか。委員長に聞いております。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 A40の月齢判別の関係につきましては、リスク管理機関の方で有効性を確認するための追加的検証、フォローアップが必要ということで、必要なデータの収集が現在行われているというふうに私どもとしても認識しております。その結果が取りまとめられた段階で、私どもとしてはその報告を受け、その内容については必要に応じて検討するということになろうかというふうに思っております。(岡本(充)委員「米国、カナダは。二カ国も入れて追加するべきじゃないか」と呼ぶ)みずから評価につきましては、米国、カナダにつきましては、既に、現時点と申しますか、その時点での評価を行ったところでございます。

 その後の状況につきましては、委員お尋ねのとおり、A40その他につきまして、管理機関の側で検討されておるところにつきましては報告を受け、その内容につきましては検討するということでございますが、現時点で直ちに米国、カナダについての再評価という、そういう状況ではないというふうに私どもとしては認識しております。

岡本(充)委員 では、管理機関の方としてA40の有効性を確認するための追加的検証実施後のフォローアップは今どうなっているのか。例えば、この月齢判別に関する検討会というのはもうないわけでありますよね。そういう意味で、これはどういうふうに今まさにフォローアップをしているのか。米国に調べてくれと言っていますではだめですよ。今何頭ぐらいのデータがもう集まっている、今何頭ぐらいの情報が少なくとも来ているんだということについて、明確にお答えをいただけますか。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 A40の基準のフォローアップにつきましては、現在米国側で進められているというところでございます。米国側からは、昨年の一月の米国産牛肉の輸入手続の停止に伴いまして調査を一たん中断せざるを得なかったということですが、昨年七月に輸入手続を再開後、今必要なデータの収集を再開しているということで、データが調い次第、速やかに報告書の取りまとめを行うという説明を受けております。

 私ども、昨年十二月に、アメリカに行きまして対日輸出認定施設の現地査察を実施したわけでございますが、その際にも、米国側に対し、早期に調査の結果を取りまとめるよう要請したところでございまして、今後、機会をとらえまして働きかけ、督促を行ってまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 この牛の月齢判別に関する検討会というのはもう終わってしまったんですよね。これは、どこでその評価をすることになるんですか。それを聞いています。

町田政府参考人 お答え申し上げます。

 この判別検討会は終わったということではございませんで、報告がありましたら、そこでまた私どもの報告をして検証していただくという手順を考えているところでございます。

岡本(充)委員 具体的にそれをいつやるかということについても、まだ決まっていないわけですよね、結局のところ。

 それで、一体いつになればアメリカからデータが来るのか。前回、輸入再開を求めるアメリカは大変迅速にそのデータを集めてきました。もう半年もたっている。しかし、そのデータが一向に集まらない。輸入再開がなされていない状況でありながら、米国はあれだけ迅速に前回は情報を持ってきた。しかし、今回は輸入再開されているからと勘ぐるのは私の勘ぐりだけかもしれませんけれども、いまだにその資料を持ってこない。こういう点について、私はやはり、リスク管理官庁、何をやっているんだという思いを持つわけですね。それをしっかり私はフォローアップをしていただきたいということをかねがねお話しさせていただいています。この点をさらに指摘して、この話は終わりにさせてもらいます。

 もう一点、今回もう一つ指摘をしておきたいのは、二月五日にどうやら衛生証明書に記載されていない牛肉が二箱、四百七十三箱中二箱混入していたとプレスリリースをされておりますけれども、これも今全箱開梱しているからわかった部分もあるのではないか。もっとたくさんな、通関、荷物が出てきてサンプリング調査をした場合、四百七十三箱のうちの二箱に異常があってもすり抜けてしまうんじゃないかという危惧を私なんかは感じるわけでありますが、ぜひ全箱確認をしていくという取り組みも今後ともまた行っていただきたいと思いますし、引き続き、国民の食の安全についての各般の努力をお願いしたいと思うわけでありますが、大臣政務官にお答えをいただきたいと思います。

宮坂政府参考人 御指摘のように、今回、米国農務省発行の衛生証明書に記載されていない貨物につきまして発見されたわけでございますが、輸入業者による船舶確認においても報告をされているところでありまして、仮に倉庫業者による通報がなかったとしても発見することは可能であるというふうに考えております。

 ただ、いずれにしましても、今回の対日輸出条件の遵守というのは米国側が第一義的に責任を負っているものでございまして、農林水産省と連携しながら、米国側に対し、今回の事案にかんがみて対日輸出条件の遵守を一層強めてまいるとともに、あわせて日本側としても、現地査察等を通じてアメリカの遵守状況を検証してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 私は、やはり政治家としての立場として、さっきの話じゃないですけれども、有権者の方と直接接してみえる政務官だからこそお答えいただける答弁だと思っていたわけですね。大変に残念に思うわけであります。きょうはちょっと時間もありますので、農林水産委員会また厚生労働委員会で、この問題は引き続き聞いてまいります。皆様方におかれても、各般の行政推進にお力を尽くしていただきたいと思います。

 さて、続いて、前国会で私は、農業委員へのさまざまな風評というか風説というか、いろいろな話が、歩いていると聞こえてくるという話をしました。この国会で、私は農業委員へのある意味での指導を徹底してほしいというお話をさせてもらったわけですけれども、この指導は全国大会で局長がみずから述べられたにとどまっている中で、最終的に市町村へは、私が見聞きするところによりますと、十分な指導が行われていなかったケースがあるやに私は見ておるわけでありますけれども、その後どのような指導が行われたか、確認はされているのか、お答えをいただきたいと思います。

高橋(博)政府参考人 前国会におきまして御指摘のございました農業委員の職務遂行に関します金品授受の関係でございます。これにつきましては、農業委員会、特別職の地方公務員ということで、職務遂行に当たりまして金品授受すれば収賄罪の成立する場合もあるし、また該当しない場合であっても国民の誤解を招くということで御議論もございました。

 この御議論を受けまして、私どもの方から、全国農業会議所を通じまして、全国の都道府県農業会議すべて、そして都道府県農業会議から各農業委員会に対しまして文書による指導を行ったところでございます。地域によりましては、このような文書指導とあわせまして、農業会議が発行しておりますミニレターなどによる周知徹底、あるいは研修会におけますこのような議論等々の紹介等ということで周知徹底を図っているところでございます。

 私どもが承知している限りにおきましては、各農業委員会まですべてこのような形での指導が行っているというふうに承知しているところでございます。

岡本(充)委員 実際に私が見聞きした話では、そうでないケースがあった。恐らくもうお耳に入っていると思います。そういう事例を改めてなくすように、きちっとした指導をしていただきたいと思うわけであります。時間の関係もありますので、この件については、また私も地元でどういうふうになったか、その後のフォローをさせていただいた上で、次回また取り上げさせていただきます。

 続いて、私のお配りをした紙の最後の二枚でありますけれども、公共事業の話を少しさせていただきたいと思います。

 大臣、ごらんいただきますとおわかりのように、前段が国土交通省の工事の落札率の推移であります。ちょっと種類が違いまして恐縮です。最後の一ページが、平成十七年の農林水産省随意契約上位十件の事業における第一回目の落札を含む落札率の推移を並べさせていただきました。全く同じものでないからフェアではないことは重々承知の上で、この落札率の高さを私は大変危惧しているわけです。

 随意契約のものについては、工事が終了していない、これからもまだ随意契約を結んでいかなければならない事業もあるやに聞いておるわけでありまして、さすがに九九・五を超えるような一回目の落札、また九九を超えるような落札、こういうものについては高過ぎるのではないかというふうな認識を私は持っております。

 どういう方法がいいかは別として、一度、大臣、こういう高い過去の入札、しかももう終わったものではない、これからも随契を結んでいかなければならない事業も残っているわけでありまして、こういう事業については、少しその契約時点での詳細な状況、今から談合があったかなかったかを振り返るというのは非常に厳しいんですが、たまたまこの数字になりましたという割には高過ぎるような気がする。したがって、全く談合がなかったとも言い切れない部分もある。

 当時の資料がどれだけ残っているかは難しいけれども、改めて何らか検討はできないものか、まず前段の検討だけでもしていただけないかというふうにお願いをしたいわけでありますが、いかがな御答弁をいただけますでしょうか。

松岡国務大臣 先生のそういう御指摘の御懸念、気持ちとしては先生がおっしゃっていることについてわかるような気もいたしますが、しかし、具体的な問題というか、例えば、やはりおかしいんじゃないかという、そのような何か具体的な事実関係、こういったことがないものを、例えばどのような権限なり、そういったことに対して疑問を持って、どのような資格、権限で調査をするかということについて、ちょっとにわかに私もお答えをしかねます。先生の気持ちの部分はわかるような気もいたしますが、それを具体的に役所として実行するとなると、にわかにちょっとどのような答えが妥当なのかなと、そういう思いで、それ以上の答えはちょっとできかねるな、こんなような思いでございます。

岡本(充)委員 であるからこそ、私は、どういう方法があるかを含めてちょっとひとつお考えをいただくということを、何も今あると言っているわけでもないし、ないと言っているわけでもない。ただ、これが振り返れないものかということについて、少しお知恵を省内で絞っていただけませんか、こういうお願いであるわけであります。だから、私もにわかにこれをしてくださいと言って明確なものを出しているわけではないということを御理解いただいて、その点についてよろしくお願いします。

 それで、もう一点、ちょっときょうは盛りだくさんなんですが、質問通告がちょっと遅くなってしまったので十分なお答えがいただけないかもしれませんけれども、特定野菜等供給産地育成価格差補給制度について、私、地元の農業者の方から御意見をいただいていたので、これを少しお伝えさせていただいて御検討をいただきたいというふうに思うわけであります。

 指定野菜価格安定制度や野菜需給安定対策などと比べて出荷団体の負担が高い。特に、レンコンやミツバを含むこういう三十三品目については、出荷団体が三分の一の資金を支出しなければいけない、こういう状況になっています。指定野菜価格安定制度の方は出荷団体は二〇%の支出で済むということになっているわけでありまして、それぞれ国民の需給に大きくかかわる野菜である、もしくは必要性が高い野菜であるというような内々のお答えはいただいておりますけれども、この三十三品目も決して国民生活にとって何も縁遠い野菜ではありません。

 こういった野菜、しかも、この補給金は、保証基準額の八〇%から最低基準額の五〇%の部分の八〇%を交付するという形になっているようでありまして、必ずしも全額補給でもありませんし、こういった野菜間でのいわゆる格差を少し是正していくという方向にはならないものかというふうに私も感じるところでございますが、その辺についての御検討は今後どのようにしていただけるのか、少しお答えいただけますでしょうか。

山田政府参考人 野菜の価格安定制度について御質問でございますが、委員が今御指摘されましたように、指定野菜で一定の規模のある産地でつくられているもの、それから指定野菜であってもそれだけの規模がないもの、また、お話がありました三十三の特定野菜についての制度、それぞれ違っておりますが、これは、まさに全国的に流通をする大きなものと、やはり特定の地域、地域特産的なものということが、性格が違うので、国の助成なり地元の負担なりが差が出てきているというのが現在の制度でございます。

 これは、私どもは、それなりに理屈のある差であるというふうに考えておりますので、これをまた適切に運営しながら、それぞれの制度がその役割に従って働くようにしていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 品目の見直し等は今後行っていく、弾力的にそこは見直しもまた行っていくという理解でよろしいのでしょうか。それとも、これはもう固定的なものだというふうに理解するのでしょうか。その点をお答えいただきたい。

山田政府参考人 今申し上げましたように、指定野菜と特定野菜、それから産地の指定産地とそうでないもの、それが絡まった形で品目が構成されております。それぞれについて、いろいろな原則なりルールがございますので、もちろん、そのルールに適応した場合には入ったり入らなかったりということはございますけれども、今の枠組みでやっていくというのが基本的な考え方だというふうに考えております。

岡本(充)委員 用意した質問はほかにもありましたけれども、きょうは時間が参りましたので、ここで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

西川委員長 次に、高山智司君。

高山委員 衆議院の民主党の高山智司でございます。

 農水委員会では初めて質問させていただきますけれども、今回は大臣所信に対する一般質疑ということで、私も大臣所信を聞かせていただきまして、食の安全に対する大臣の深い造詣ですとか、鳥インフルエンザ対策などなど緊急事態に対しても適切に対応していこうという心構え、そしてまた、FTAとかEPAですか、これに対して毅然と、国益を重視した、一体となった活動をされているということで、本当に敬意を表しているところなんです。

 この中に、美しい国づくりに向けての美しい森林(もり)づくり、これがあったので、これもちょっと聞きたいなと思っていたところ、何か屋上屋じゃないか、こういう関係閣僚会議だとか、官邸に今会議が乱立していて、もう司令塔不在の状態になっている。だから、農林水産行政に関しては、松岡大臣は本当に省内からの人望も厚く、一番リーダーシップをとっていただけると思って期待はしているんですけれども、その前提として、何か御党の偉い方から、忠誠心がない、たるんでいる、こんなような発言があって、結構新聞を見ていましたら、何かうちの党もちょっといろいろやったんですけれども、それはかすんじゃって、また忠誠心だということをいろいろ書かれているんですね。

 そこで、まず大臣に伺いたいんですけれども、大臣、忠誠心がないんだというようなこの発言に対して、今どのようなお考えをお持ちですか。

松岡国務大臣 まず、高山先生にお礼を申し上げますが、所信を読んでいただいて、大変いろいろな意味で、今幾つか並べていただきまして、御評価をいただきました。高山先生みたいに、それこそ民主党の若手を代表して中心になってやっておられる方からそのように評価されたことは、非常にありがたく、本当に光栄であります。

 そういう思いを含めて、今、忠誠心があるのかないのかといったようなことがちょっと話題になって、はっきり言いまして、中川幹事長からそういう御指摘があったということでございますが、それは先生もそのように思って言っておられると思うんです。

 これにつきまして、私もきのう記者会見でもそのことを聞かれまして、それは当然のことながら、安倍内閣において、我々はその中の閣僚の立場で誠心誠意を尽くして、忠誠という言葉で言うなら、それはもう最高の忠誠心を持って努力をし働いて、そしてまた、内閣のためはもちろんですが、ひいては国家国民のためにお役に立っていく、そういう働きをしていく、このように思っておりますので、そういう御懸念が示されたということについては、なおなおそのことを体して、心してやってまいりたい、こう思っております。

高山委員 さすがは松岡大臣だなと、やはり国家国民のための忠誠心であってほしい。

 念のためですけれども、この忠誠心というのは、もちろん安倍総理個人に対することもありましょうけれども、大臣の職責というんでしょうか、安倍内閣全体といいますか、そしてひいては国民のための忠誠心だ、このようにお考えということでした。そういう当然その職務に対して非常に思い入れがあり、責任を持たれている松岡大臣に伺いますけれども、柳澤大臣の発言というのがありましたね。またちょっとくどいようでございますけれども、例の問題発言に関して、改めて、どういうところが問題だったというふうに大臣はお考えですか。

松岡国務大臣 そのことにつきましては、安倍総理からも再三にわたりまして、本会議でも、また衆参の委員会でも御発言があったと思いますが、私も総理の御発言のとおりだと思っておりまして、柳澤大臣の発言につきましては、まさに不適切であったということははっきりしていると思っております。

 したがって、柳澤大臣におかれましても、両院において重々陳謝をされ、今後はその陳謝を踏まえてしっかりと職責を果たしてまいりたい、このように申されたと思っております。

 以上であります。

高山委員 いや、松岡大臣が柳澤発言のどの部分が問題だなと思ったのかなと思って、そこをちょっと伺いたかったんですけれども、どこが問題ですか。

松岡国務大臣 私は、柳澤大臣の心の中までとかそのときの状況とかわかりませんから、まさにそれは言葉全体が不適切であった、このように思っております。

高山委員 それは、産む機械という例えの部分を指しているんでしょうか。

松岡国務大臣 それも含めまして、すべてが不適切だった、こう思います。

高山委員 さすが松岡大臣、見識が高いなと思う。私も、全体的にこれは不適切だったなというふうに思っているのですけれども、この点に関しては副大臣にも伺いたいんですけれども、この柳澤発言、どういうところが不適切だったなというふうにお感じですか。

山本(拓)副大臣 御質問していただきまして、ありがとうございます。

 柳澤発言がどう不適切かという話、これは例えが非常に悪かったんだろうというふうに思っておりますし、確かに柳澤大臣の発言は、仄聞いたしますと、御家庭の奥さん、娘さんに袋だたきに遭っているという話もお聞きいたしておりますので、その意味では、特に公的な職種の者が話す場合には、これはだれであれ誤解のないように答える必要があると思っております。

高山委員 確かに、奥さん、子供さんに袋だたきに遭っているということがあるんですけれども、副大臣なんかは実感があるんでしょうか、その点に関しましては、きょうはちょっとまた違うので突っ込みません。

 私、確かに、女性を機械に例えるというのはけしからぬ話だなとは思うんですけれども、その後段の部分ですよね。何か、あとは一人頭頑張ってもらうしかない、こういうような発言をされているんですけれども、私はこちらの方が問題じゃないかというふうに考えておりまして、厚生労働大臣というのは、少子化対策だとかそういうことを一生懸命やらなきゃいけないのに、その人が、いや、あとは本人が頑張ってください、これはちょっとひどいんじゃないのかな。

 例えて言うならば、松岡大臣が、FTAの交渉とかで、これはもう時代の流れなんですよ、あとは農家の皆さんに頑張ってもらうしかないとか、あるいは鳥インフルエンザ対策が起きたときに、これはもうしようがないんだ、あとはまた養鶏業者の人に頑張ってもらうしかないんだとか、もしそんなことを松岡大臣が、よもや言わないと思いますけれども、そういう点を踏まえて、この柳澤発言というのは私は職責の放棄だなというふうにちょっと感じたんですけれども、大臣、この点いかがですか。

松岡国務大臣 先ほども申し上げましたように、私は、やはり全体が不適切だったと思っていますから、そういったことも含めまして不適切であったと思っています。

高山委員 ありがとうございます。

 松岡大臣、やはり非常に見識高く、私も、職責放棄されている方、そういうものも含めて不適切だと思っているので、辞任した方がいいなと心の中では思っていますけれども、これは違う委員会なのでそれ以上やりません。

 大臣もやはり非常に気持ちのいい方ですから、いろいろ今、いわゆる事務所費問題というもの、これは随分問題になっていると思うんですけれども、御自身で正直、本当にここはちょっと問題だったなというふうに反省されている点、あるいはここが問題なんじゃないかなと今改めようかなと考えられている点、こういう点がありましたら教えてください。

松岡国務大臣 今、ここは問題だったなとか、ここは反省だなという点があればということでありますが、中身に対しましては私は一切それはないと聞いております。

 といいますのは、正直に事務所経費として、事務所費というのは、通常事務所を維持していく必要な経費、事務所の維持に通常必要な経費というのが正確なのかもしれませんが、事務所の維持に通常必要な経費ということで、私は、その必要なものが必要に基づいて支払われた、それがすべて整理をされ、計上をし、そして報告をされた、そのように聞いております。

 また、その整理の過程におきましては、所管のところとこれはどうしたらいいんだろうかという相談も十分しながら、整理をして、計上をし、報告をしておる、こういうことでありますから、そのこと自体について反省とか、これはちょっとどうであったかなという点はないと聞いております。

 それはもう決まりが、正直言って、きのう小沢党首が発表されたわけですが、私どもは不動産まで買っていいとかいうのは全然思っていなかったわけですよ、全く事務所費というのは。しかし、法的にそれを問えば、いや問題ありません、こういうことです。

 では、マンションかアパートが建っている、そこに秘書の方が入っておられる。そうすると、それは逆に言うと家賃の分も、今度は家賃は事務所費の負担になるんだろうと思うんです、家賃ということになれば。ただであればですよ。ただであれば、世間一般の通常の形からすれば、事務所費からそれは負担をしたことになるんでしょうし、払っておられれば今度は事務所の収入になるんでしょう。

 そういったことも含めて、そういうようなことの何か足りないところがあったのか、漏れているものがあったのかということとの比較でいえば、きのう見た限りでも、私どもの方は、本当に事務所費として、事務所の維持に通常必要な経費をすべて網羅したものが今報告したものである。

 ただ、主たる事務所が国会にしかないじゃないか、家賃がかからないところだからおかしいんじゃないかと。では、家賃がかかったって、そういったいろいろな支出をされて何億円とかかっておるわけでありますから、仮に国会以外のところに主たる事務所があった人でも、家賃は払っておられるかもしれないけれども、家賃のない私よりももっと多い方もおられるわけですよ。

 だから、高山先生、幾らの事務所費か知りませんが、そういったこととあわせて、主たる事務所が国会にあるとかないとかということじゃなくて、そしてまたもう一つは多い少ないということでもなくて、少なくても、今度はそれはおかしいのがあるのかどうか、それはわかりませんよね。したがって、これは決まりがどういう決まりなのかというのが非常にはっきりしていない。

 したがって、私どもは、私だけとか閣僚だからとかだけ出されて、何かおかしいじゃないか、おかしいじゃないかと、それはやはり平等じゃないんじゃないですか。だから、ある一定の基準を、扱いの基準を決めていただければ、いつでもそれはそれに応じて、従って、公表もいたします。もう用意も、それは当然のことながら、ずっと整理し、計上してきているわけでありますから、用意は整っております、こう申し上げておるわけであります。

高山委員 ありがとうございます。今、大臣から詳細にお話しいただいて、いや、本当に詳しい方だなというふうに思いました。

 総務省の方に念のため伺いたいんですけれども、今の大臣の御説明で何か間違っているところがもしあれば訂正してください。

久元政府参考人 松岡大臣の答弁につきまして、私からコメントする立場にありませんけれども、制度についてのみ申し上げますならば、特段訂正すべき点はなかろう、正しい御答弁だというふうに思います。

高山委員 そうしますと、総務省にもちょっと伺いたいんですけれども、我が党の小沢一郎代表が、きのう、事務所費の問題を公開されました。あれは、いろいろ説明されて、いろいろ記事になっていますけれども、私もそれを読んだ限りでございますが、これは総務省から見て、法律の理解ですとか、そういう点で何か間違えた点ですとか、そういうのはあるんでしょうか。何かあれば教えてください。

久元政府参考人 今直ちに申し上げるべき事柄は特にはございません。

高山委員 ちょっと今よくわからなかったんですけれども、きのうの問題、あれは特に問題なかったんですか、どうなんでしょうか、ちょっと伺いたいんですけれども。

久元政府参考人 私から答弁させていただくべき事柄は特段ないというふうに申し上げたところでございます。

高山委員 あと、松岡大臣が先ほど、しかるべき機関にいろいろ問い合わせてというようなお話があったんですけれども、私なんかも選管にちょっと問い合わせてみてとかということはよくあるんですけれども、総務省の方は、松岡先生のところからいろいろ、こういうケースはちょっとどうなんだ、こういうような問い合わせはありましたか。

久元政府参考人 個別にどこから問い合わせがなされたとかということにつきましては、私ども、一々記録はとっておりませんけれども、政治資金規正法の規定ぶりだとか、また省令、また一般的な解釈などにつきまして、各方面からお問い合わせがあったときには、その都度お答え申し上げているところでございます。

高山委員 大臣に、これは会計責任者とかそういう細かいことですので、わかる範囲でいいんですけれども、大臣も当然、こういう細かいことで違反なんかしたくないと思うので、いろいろ問い合わせをされていると思うんですけれども、大臣の場合はどういうところに問い合わせをしているんですか。

松岡国務大臣 高山先生はどういう作業の整理をされているかわかりませんが、私の方は、会計責任者もおりますし、それから事務所の職員もおりますし、すべて彼らがやっておりまして、私は、収入、支出に詳細にタッチいたしておりません。すべて責任持って事務所で処理をし、ちゃんと記録をし、やっておることであります。

高山委員 いや、私、別に大臣を追及しようというんじゃなくて、この制度の問題点を僕もちょっと疑問に思ったもので、もう一回、総務省に聞きたいんですけれども、そうすると、例えばこういう松岡先生の事案があるよとか、あるいは小沢一郎議員の事案があるよ、あるいは前の佐田玄一郎さんですか、ああいう事案があるよ。こういう場合に、これはどこが問題なのかとか、あるいはこれは違法なのか合法なのかとか、こういうものは総務省に問い合わせすれば答えてもらえるものなんでしょうか。

松岡国務大臣 今、高山先生がどこに問題があるかということでおっしゃった点につきましては、私も正直言って、今回この問題が起きるまでは、自分のところの事務所費がどれくらい、幾らかという数字は本当にわからなかったんですよ。言ってみれば、言われてびっくりして、何で問題になるんだろう、これは法律どおりやっていてどうして問題になるんだろう、こう思ったんですね。

 そうしたら、それは主たる事務所が国会だから家賃が要らない、どうして高いんだ、その論理だったんです。だとすると、では、国会以外に事務所があった人でももっと高い人はいるじゃないか、何でそれは国会にある人だけが問題になるのか、こういう疑問も持ちました。

 あわせまして、不動産の問題も出ましたように、では、何に使ってよくて何に使って悪いと。例示はあるんですね、幾つか、法律上の例示は。だけれども、では、何に使って悪くて何に使ってよい、何に使って悪いという何か禁止的なものがあるのかどうか、こういった点について、これはやはり制度的な問題としてはっきりした方がいい。でないと、やはりそこが不透明だということになる。

 だから、そこはもうこれとこれとはっきりして、使っていいもの悪いものをはっきりして、そしてやはりそこはきちんとする。そのことがやはり不信を招かない一番の私はもとになるのではないか、そういう意味では、気持ちは高山先生と同じですよ。

久元政府参考人 政治資金規正法の目的は、その政治資金の出入りの状況ということを国民の前に明らかにして、これに対する判断は国民にゆだねるということが基本的な理念としてなされているところでありまして、私どももそういう考え方で運用させていただいているところでございます。

 また、先ほど申し上げましたように、具体的な規定のしぶりだとか、また運用の考え方、解釈などにつきましては、各方面からのお問い合わせがたくさんあるところでありまして、私ども、その都度お答えをさせていただいているところでございます。

高山委員 いや、今の選挙部長の言うこともそうだし、大臣のおっしゃること、全く私も同意しておりまして、やはり、何が適切なのか、政治家がどういうことにお金を使ったら適切なのかというのが何かすごくわかりにくいんですよね。

 それで、あるいは総務省に聞いても何だかよくわからないような答えしか返ってこないし、だから、小沢代表が不動産を、事務所を取得するに当たっても登記することができなかったり、あるいは実際、きょういる小野さんがさきの予算委員会で質問していましたけれども、車なんかも登記できないから個人名で買ったりしていますよね。

 結局、今の選挙部長の話ですか、これはやはり国民に明らかにするということが非常に大事だと思うんですけれども、まず、現行法の範囲でも十分明らかになっている部分というのはいろいろあると思うんです。

 例えば、今問題になった不動産ですとかあるいは車、こういった政治活動で使われているものというのはあると思うんですけれども、大臣はどのように処理されていますか、不動産と車、それぞれ登記が問題になりますので。

松岡国務大臣 私は、事務所費というか政治資金団体としての不動産は、たしかないと思っています。これは、厳密にと言われるとちょっと一瞬人間というのは迷うものでして、ないと思っていますが、ないと思っていますという形にしておいてもらいたいと思います、もし、ひょっとしてどこかあったらこれは困るので。まずないと思っています。

 それから、車は、一台かな、所有はありますね。車はありますね。やはり自分の名前で登記しないといけないと思うので、車はそうなっていると思います。

 それと、熊本の車と、私はこっちに、東京に二台あるんですけれども、そのうちの一台は、前は所有していたんですが、私もそこは詳しくないんですが、ある契約でやっていますから、所有になっているかどうか、ちょっとわかりません。(高山委員「ある契約」と呼ぶ)ある契約というのは、リースみたいなところと。その方が楽なんですね、メンテナンスとかいろいろなことが。あるんですよ、そういうのが。

 あるんですよということで、私は中身は詳しく知らないものだから、これも事務所が全部やっていますから、ちょっと詳しく答えられないんですが、たしか所有は一台だろうと思うんです。東京に二台あるうち、まだ前のものは所有のままだったろうと思っています。

高山委員 大臣、それで、今みたいに、車は何台であるとか、そういうこともどんどんつまびらかにしていただきたいんですけれども、大臣は今回、これはちょっとまじめに聞くんですけれども、民主党の、うちの小沢代表が公表されたのを受けて、これはもう自分も、今何か言われている部分、今お話を聞いたらほとんど問題なさそうじゃないですか、松岡大臣も。だから、自分も出してまた議論を一歩進めよう、こういうお考えはありませんか。

松岡国務大臣 それは何度も先ほどから申し上げているわけでありまして、伊吹大臣も予算委員会とかいろいろな場でおっしゃっておられますように、これは議員活動としてのお互い平等な、一律な話ですよね。だから、そこで特定の人だけがそれを出すということじゃなくて、各党各会派で基準を決めていただいて、もう法律上はすべて満たしているわけですよ、だからそれを、国会に主たる事務所があるからおかしいんじゃないかということの一事をもって、では、国会に主たる事務所がなくても、外に事務所を持って家賃を払っておっても、家賃を除いてもまだもっと相当高い、そういった人。

 だから、小沢党首の場合は、まさに不動産という、何億という、十億なのか数億なのか知りませんが、何億ということに対してやはり出されたんだろうと思うし、我々は、各党各会派できちんと一定の扱いを定めていただければ、それに従って対応いたします、それはもう既に用意もできております、こう言っているわけですから、早く扱いを決めていただきたいな、こう思っています。そして、私だけじゃなくて、例えば高山先生も御一緒にすれば済む話ですから。

 以上です。

高山委員 そうくるかなと思って、僕も領収書、一円から全部添付してみて、大変でしたけれども、まだ私なんか微々たるものですから、それはできました。

 それで、だからやれと言うんじゃないんですけれども、今のお話ですと、やはり国民に公表して、これはちょっと常識外じゃないかとか、やってもらった方が僕はいいと思うんですね。

 だから、今回、うちの小沢一郎代表が事務所費を出した。そうしたら、三億とか四億で寮をつくった、これはおかしいじゃないかとか、今議論になっていますよね。

 これと同じように、例えば、僕なんか、浦和の事務所は家賃が駐車場込みで二十万ちょっとなんですよね。だけれども、松岡大臣のを割ってみると、家賃がすごい高い気がするんですけれども、例えばそういうのも、ああ、松岡大臣みたいに立派な方だったら、こんな家賃の高いところでもいいとか、あるいは幾ら何でもちょっとそれは高過ぎるとか、そういう議論が法律を超えたところでこれからどんどん巻き起こってくると思うんですね。

 仮にそういう議論が巻き起こってきたときに、大臣は、私としてはこれは正当な支出だと出てきて説明する、そういうおつもりはありますか。

松岡国務大臣 ちょっと今、最後のところが聞き取れなかったんですけれども、当然、扱いが決まって、こういう一つの一定の基準で、取り扱いで、みんなで公表しましょうということになれば、それは説明をし、やることになると思います。

 それと、私は、大体政治家はだんだん年数とともにそういう支出も、収入ももちろん多くなると思いますが、支出も多くなってきていると思います。私も、選挙区事情ももちろん政治家というのはお互いそれぞれあると思うんですけれども、それは活動というのが、やはりいろいろな活動があるわけですよ。

 私の場合、民主党さんとだけ戦っているんじゃないんです。保守系が出ていまして、それはもう熾烈な戦いをしているんですよ。そうしますと、この前も予算委員会でちょっと言ったんですけれども、それはもう本当に、しょっちゅう帰っているわけですよ。あんたは本当に大臣をやっていて、そんなしょっちゅう帰って何をやっているんだと言われるけれども、しょっちゅう帰っている。場合によっては、行って戻って、行って戻ってというのがあるわけですよ。(高山委員「何がですか」と呼ぶ)行って戻って、行って戻って、あるわけですよ、それは。

 そうしますと、それは十七年当時というのはまだ私は閣僚じゃありませんけれども、今は十七年のものがいろいろ問題になっているんです。閣僚じゃありませんけれども、それは本当に大変な行動、活動をやっているわけです。すると、当然、本人がそうであれば、それに付随して、事務所全体も、秘書たちも含めて大変活動量というのは大きくなるわけです。

 したがって、そういったことからして、我々としては、そして、やはり自民党というのは、どちらかというと自分党みたいなところがあって、どうしてもそういったものは全部自分でこなす、そういった意味では、民主党の皆さんなんかは労働組合なんかあってうらやましいなと思うときもありますけれども。だから、そういった意味では、本当に我々は全部自分で、党とは全く一線を画してやっているものですから、一律じゃないんですよ。

 だから、そういった意味で、やはり人によって差があるというのは、ある一定の基準があって公表して、ああ、これは多いじゃないかと言われて、いや、それはこんな中身ですと言えば、一つの説明はつくんだろう、また、御理解をいただけると思っています。

高山委員 何か民主党のこともいろいろ言ってきたので、ちょっと確認しておきたいんですけれども、松岡大臣は、これだけいろいろ問題になったので、会計責任者の方ですとかあるいは顧問弁護士さんとか、そういう方ときちんと相談して、こういう問題がいろいろ起きてから、きっちりやっているんだろうな、何かいろいろな指示を出されたと思うんですけれども、まず、そういう指示をちゃんと出されましたか。

松岡国務大臣 指示というより確認ですね。おお、こんなになっているけれども、おい、どうなっているんだと。と同時に、これはやはり、今おっしゃいましたように、それは弁護士さんも含めて、よく問題をきちんと整理してもらう、問題というか中身を。そしてきちっと、ああ、これは問題ないなと、そういう確認はいたしております。

高山委員 あと、会計帳簿を三年間、何か公表された日から保存しなきゃいけないとかという規定があるそうですけれども、大臣も、きちんと領収書なんかを添付した会計帳簿の方ですね、これは公表しろと言っているんじゃないんですよ、保存はされていますか。

松岡国務大臣 その点については、そのようになされているというふうに聞いております。

高山委員 そうしますと、それは、大臣がいつも自信たっぷりに、公表する準備があるというのは、その会計帳簿を来るべきときが来たら見せていただける、こういう理解でいいんでしょうか。

松岡国務大臣 それは、そういう扱いが決まった時点の話でありますから、決まったその基準に従って対応したいと思っております。

高山委員 ちょっと時間が来ましたので。

 各党各会派で御議論をということですけれども、最大の会派はやはり自民党なんですよね。だから、これは大臣所属の政党でもありますし、率先して示されたらいいかなというふうに思いますけれども、大臣自身が、今の制度そのもの、これはこのままでいいとお考えですか、それとも、何かここをこう細分化した方がいいというふうにお考えですか。どちらですか。

松岡国務大臣 私もこの制度にそんなに詳しく、造詣が深いというわけでもございませんので、これはやはり専門家の方も交えて、まさに専門家の意見、意見といいますか見解も交えて、各党各会派でそれは整理されるべきものであろう、こう思います。

高山委員 やはりこれは専門家を交えてきっちりやらないと、これはもういわゆる政治不信ですよね。自民が悪い、民主が悪いという問題を超えて、ああ、また政治家が何かやっているよ、こういうふうにやはり思われかねないなと私は思うので、大臣、ぜひ、各党会派が集まってその専門家を呼んで審議するとき、そういうときには大臣ももちろん出席していただいて自説を、結構詳しいようですから述べていただいて、また、事例となりますので、例えば不動産取得の例であれば、うちの小沢一郎代表が出したように、多額の事務所費、これは何に使っているのかなと皆やはり疑問に思うわけですよね、そういう例を出していただきたいなということを希望いたしまして、終わります。

西川委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。農水大臣の所信に対して、三点にわたって議論していきたいというふうに思っています。

 大臣の所信表明では、この四月から行われる品目横断的経営所得安定対策、それと同時に、米政策改革推進の対策の見直し、それから農地、水、環境保全対策、これを三本柱として、定着に万全を期してまいりますというのが大臣の決意であるというふうに伺いました。

 そこで、一番目の品目横断的経営安定対策ということで、先ほど民主党の篠原委員がこの点について議論いたしましたけれども、実際にこの四月から具体的政策として展開されていくわけであります。待ったなしの状況だというふうに思います。

 ただ、昨年この議論を行ったときに、私ども一番びっくりしたのは、スタートする時点に当たって、農家戸数で三〇%、農地面積でいうと五〇%だ、だから七割の人は該当しないんだというところが示されたときに、えっと思ったんですね。そこがまだまだ解決していない点だというふうに、解決というか大きな問題点が存在している点だというふうに私は思います。

 それで、この地域においては、四月からスタートするに当たっても、大きな問題点を抱えながら、今、けんけんがくがくの議論をやっているというのが実態だというふうに思っています。

 この四月からスタートするわけでありますから、大臣、この三〇%、面積でいって五〇%、スタート時点でのこの数字というのをどのように今現時点でとらえているのでしょうか。

高橋(博)政府参考人 品目横断的経営安定対策でございますけれども、御指摘のとおり、この四月から本格実施でございます。しかしながら、これにつきまして、既に、昨年九月から十一月までの間に、秋まきの麦を作付けられる農業者で、収入減少影響緩和対策に加入する方を対象とした加入申請の受け付けを行ったところでございます。この状況については、既に閉じてしまっておりまして、認定農業者それから集落営農組織を合わせまして約二万八千件の申請、これらの方々の十九年産の麦の作付計画面積につきましては、十八年産の作付面積全体の九割の二十四万四千ヘクタールとなっております。

 また、麦につきましては、さらに、収入減少影響緩和対策には加入しなくても、生産条件の不利補正対策だけに加入される方、あるいは春まき麦を作付けされる農家という方々は、四月以降の加入申請になるということで、これらの方々の加入もまた見込まれます。

 なお、生産量ベースの関係では、このような加入申請手続とは別に、生産者団体と製粉業者などの実需者との間で播種前契約というものが行われておりますけれども、十九年産麦に関しましては、この契約数量、九十八万トンとなっております。これは、十八年産の契約数量に対しまして一〇七%の水準となっております。

 一方、米のカバー率でございますけれども、これにつきましては、昨年の国会でもお示ししましたが、一定の前提のもとに担い手となり得る者の作付面積を推計しますと、大体五割程度ということになるわけでございます。

 今後、これは四月から始まります品目横断的経営安定対策を初めといたしまして、米政策改革推進対策、あるいは農地、水、環境保全向上対策などの今回の農政改革を総合的に実施することによりまして、毎年毎年、順次この水準に向けて積み上げを図っていくこととしておりますが、ただし、四月からの加入申請ということもあります。

 また、現在、農業団体あるいは行政と連携協力をいたしまして、担い手の育成、確保、加入申請の取り組みを行っておりまして、現時点でこの数字、具体的に幾らになるということを見通すことはいずれにしても困難な状況になっております。ただ、四月に向けます加入申請、引き続き、農業団体、行政機関と連携協力した加入促進、これを努めてまいりたいというふうに思っております。

菅野委員 農家戸数でいって三〇%というのは、やはり私は大きな問題があるというふうに思っています。

 それをいかに広げていくか、拡大していくかというところにこの集落営農というふうに踏んでいるんですが、そこを集落営農化していくことによってこの農家戸数を網羅していくんだということで議論されてきていますけれども、日本において、戦後の日本農政の歩みを見たときに、どうしても土地へのこだわりというのが物すごい強いというのが私はぬぐい去られないということでずっと議論してきたんですね、それで集落営農に持っていくためにも相当なエネルギーを使わなければいけないですよと。

 土地への執着というのは、なぜそうなったのかというのは、大臣、わかっていると思うんですね。戦後、日本の農業が土地の問題でどういう歩みをしてきたかを見れば、まだ戦後六十年しかたっていない中で、これをこの集落的な感覚に持っていこうというのは本当に並大抵じゃないというところがあるんです。

 それで、この集落営農二十ヘクタール、それから大規模農家四ヘクタールという状況を私の選挙区に当てはめてみても、本当に該当するというのはそんなにないんですね。大体、平場農業でも、一農家が持っているというのは一町五反から二町歩というのが宮城の穀倉地帯においてもそんな状況なんです。

 それで、どうやってきたのかというと、農地を借りて、そして大規模農業経営を目指してきて、大体、借りて四十ヘクタール、五十ヘクタールという形でやって、そして大規模農家という形で収入を確保しながら農業経営をやってきているという状況なんです。

 それが、この四ヘクタール、二十ヘクタールという状況のもとで今何が起こっているのかというと、一町五反、一・五ヘクタールの農家が集落営農として二十ヘクタールでまとまっていかない限りこの制度の該当にはならないというときは、貸していた大規模農家から、貸していたのを返してください、そして集落全体でまとまっていく、そういう方向が強まってきているという状況です。

 これは条件のいい地域でそういうことが起こっていますから、今まで四十ヘクタール、五十ヘクタールと農家を集積して農業経営をやってきた人たちから見れば、これは私はどうやっていけばいいんだという状況に今陥っているという現象が起こってきています。

 このことをどう農水省としてとらえているのか、そして、今後このことに対してどのような方向でやっていこうとしているのか、この点をお聞きしておきたいと思います。

高橋(博)政府参考人 大規模な農業者、認定農業者と、あと集落営農組織との間で、今回の対策の実施に伴いまして土地利用調整をどのようにしていくか、そのような中で、一部の地域におきまして、集落営農組織を立ち上げるというその際に、認定農業者が農地の返還を求められることがあるということは、私どもも幾つかの事例は聞いておるところでございます。

 このような個別の土地利用、もちろん法律に反して行われるというような場合には、私ども、きちんと指導をいたしますけれども、当然のことながら、基本的には民間同士の契約関係ということになります。したがいまして、これの円滑な実施ということについては、基本的には、地域の実情に詳しい市町村あるいは農業委員会、関係機関、担い手育成総合支援協議会というようなところで実施をしていただいておるところでございます。

 ただ、農林水産省といたしましても、このような問題を看過しているわけではございませんで、地域の土地利用の円滑な調整という観点から、事案の円滑な解決に向けまして、必要に応じまして、地方農政局あるいは地方農政事務所などの国の出先機関に相談するよう関係部局を指導するとともに、農家の声を直接聞くための相談窓口を農林水産本省及び各地方農政局に開設したところでございます。

 ただ、その状況でございますけれども、今までのところ、本当にまだ数件というような相談状況でございまして、全国的にこのような事例が多いということとは把握しておりません。

 逆に、基本的にこのような形で地域全体として担い手をどうつくり上げていくのかということについては、認定農業者を含めました集落全員、集落組織の立ち上げの際に、認定農業者の方々にも入っていただいた農地利用の調整、このような形を円滑に進めているということも、これは全国各地で非常に多く存在しておりまして、このような円滑に進んでいる事例もうまく御紹介しながら、円滑な解決に向けて努力してまいりたいというふうに思っております。

菅野委員 冒頭申し上げましたように、集落営農というものは、確かに全国的に地域地域で立ち上がってきているという実情はわかります。しかし、本当に全国を網羅してそのことが展開されているのかということを考えたときには、やはり日本の農業というのは家族経営的農業がベースになって今日まで進んできていて、集落営農にという形にはなかなかなっていかない状況も存在するわけです。

 それで、先ほど言ったように、大規模農家というのは、そういう中において本当は土地集積を図っていきたいんだけれども、土地を借りて耕作するという条件のもとで規模拡大をやってきたという流れの中で、一方では二十ヘクタールの条件を満たさなきゃいけないからということで集落営農に行こうという流れのところ、ここに大きな矛盾が存在しているということですから、ぴしっとした調整というものを図っていただきたいというふうに私は思っています。

 そして、もう一つの柱として、農地、水、環境保全向上対策なんですが、大臣、これについて、今地方の財政が非常に逼迫している中で、この制度を定着させていくためには、国としてもしっかりとした対応をとっていかなきゃならないということをずっと申し上げてまいりました。

 そして、現実にスタートしようとしたときに、地方財政が厳しいからといって二の足を踏む都道府県がまず出てきているという現状です。私の宮城においても、最終的に知事は、この申請があった部分は県として全部対応しますということの方針転換になったから今進んでいますけれども、当初、このことの議論をやったときには、各都道府県、まず都道府県が制限を加える、そして市町村が今度は制限を加えるという形で推移してきています。

 それで、きのう、地方財政の交付税はこういう措置をされましたということで、農水省が発した文書をいただきました。ただ、二分の一については普通交付税で、そして市町村では残余は七割、都道府県では残余は五割という形で、やはり地方自治体の持ち出しというものが、政策の展開ですからやむを得ないとしても、出てきているわけであります。

 ただ、この状況を今日、四月からスタートするに当たって、こういう地方の実態というものを全国的にどのようにとらえているのか、それを答弁願いたいと思います。

中條政府参考人 農地、水、環境保全対策についてのお尋ねでございます。

 この対策は、社会資本としての農地、農業用水等の資源、さらにはこれらを基盤として営まれる営農活動を一体として、その質を高めながら将来にわたり保全するものでございまして、地域振興対策として位置づけております。

 本対策の十九年度からの本格実施に向けては、委員御指摘のとおり、これは慎重に対応していく必要があると私ども考えておりまして、まずは平成十七年に全国四百地区を選定いたしまして、そこでの実態調査を実施いたしました。さらに、その結果を踏まえまして、十八年度、今年度でございますが、全国六百地区を選定いたしまして、そこでモデル的に事業を実施してまいりました。そこでかなりの知見を得まして、議員御指摘のとおり、各地域の実情を相当ここで把握できたというふうに私どもは考えております。これを制度設計に織り込んで、十九年度からの本格的な実施を図ろうとしているところでございます。

 具体的には、まず、活動を行う区域でございますけれども、七〇%は、現状、集落を中心に活動されております。これに水系単位等を加えまして、実情にあった形の主体を考えたいと思っておりますし、それから、活動の主体でございますけれども、これはさまざまな主体が考えられます。もちろん農家もございますけれども、ほかに地域住民ですとかNPO、そういったものもこれは可能だろうというふうに思っております。また、活動内容につきましても、一応国は標準的なものを示しますけれども、実際的には各地方ごとに必要に応じてこれは受けとめていただくというようなことも考えております。

 そういうことで、十九年度から各地域の実情に合った形の事業の実施を考えているところでございますが、いずれにしましても、これは十分に地域にPRをし、周知を徹底していく必要があろうかと思っておりまして、県、市町村にお願いをいたしまして、各地域で説明会を開かせていただいておりまして、今までのところ二万回を超える説明会を開催させていただいております。

    〔委員長退席、金子(恭)委員長代理着席〕

菅野委員 都道府県から市町村におりていく場合、どうしても二分の一、四分の一、四分の一という財政負担の状況、これがひっかかってくるというのが一つあるわけです。

 それを、地方交付税で措置しますという形で全国に通達したからそれで定着していくという問題じゃなくて、今地方財政は非常に逼迫していて、新規事業を行うというときに、財政が厳しいからということでストップをかけるということが起こっているわけです。

 それで、その状況があるにもかかわらず、三本柱としてこれを定着していくように努力していきますと大臣の所信で述べているんですけれども、これは非常に、私は本当に難しいところがあるというふうに思います。

 それで、びっくりしたんですけれども、一つの小さな、小さなというか、一つの自治体がこの制度の導入は見送りますと町長が発表したんです。なぜかというと、その報道を見てびっくりしたんですが、これは農振地域対象ですよね。農振地域対象なんです。

 そうすると、小さな町村だと農振地域とそうでない地域が二つ存在する。農振地域にはこの制度を使って入れていく、そうでない地域との差が出てしまう。そうすると、小さな町村でいえば、小さな町単位でいえば、本当にそこには農振地域以外でもこうやって一生懸命ボランティアで環境を守るためにやっている人たちと農振地域の人たちとの分断というのが図られるから、うちとしては導入することはできないんだ、こういう状況も生じてきました。

 私も、そのことを見てびっくりしました、ああ、これなんだと。私はそういう意味で、この農振地域に限定するという問題点がここには存在するのかなというふうに思うんです。

 これは、ある意味では、一つの自治体の全体を考えていくときに、弾力的運用というものも必要なんだというふうに私はそのとき考えたんですけれども、これらについての考え方をお聞きしておきたいと思います。

中條政府参考人 お答えいたします。

 委員御案内のとおり、農地、水につきましては、これは長い歴史によって保全されてきたのが農村の現状でございます。したがいまして、私ども、この対策は、農地、農業用水等を資源としまして、将来にわたって保全することが肝要かというふうに考えておりまして、こういうことから、農振農用地を支援対象としまして、支援交付金の算定をしてきたわけでございます。

 ただ、これも委員御指摘のとおり、地域の共同活動を見てみますと、効果的に実施しようとすれば、当然、農振の白地も取り込んでの活動が地域によっては不可避になります。そういうところにつきましては、私どもとしては、農振白地を含めて対象地域を設定していただきまして共同活動を行うということとして、その場合には、今申しました、交付は農振農用地で交付いたしますけれども、その支払い、使用につきましては、それらの地域を含めた、農振白地を含めた活動に使用してもいいというようなことで、柔軟に対応してまいりたいというふうに考えております。

 いずれにしましても、十九年度から本格的な実施になりますので、いろいろきめの細かい対応をしていきたい、このように考えております。

菅野委員 一つの例なんですが、十九年度から、これから四月から実施するに当たって多くの問題点が出てくるというふうに思っています。これらも含めてこれからしっかり、またいろいろな機会を使って議論していきたいと思います。

 最後ですが、水産業の問題について少し大臣と議論していきたいと思います。

 大臣の所信では、本年三月、水産基本計画を見直してまいります、マグロ資源を初めとした国際的な漁業資源管理、漁船漁業や流通システムの構造改革、そして、輸出の増大で水産業の振興を図っていきますというのが四本柱で提示されているというふうに思います。

 ただ、大臣、私は水産業全体は今この四本柱というところで網羅されていくんだというふうに思うんですが、遠洋マグロはえ縄漁業、これは今非常に厳しい状況に追い込まれています。全国的な経営状況を見ても、収入に対して支出の増大ということで、漁船漁業経営から撤退していく、撤退せざるを得ない状況に追い込まれているというのが今日の状況です。

 私は、今まで培ってきた遠洋マグロはえ縄漁業の漁労文化というものが継承されていかないんじゃないのかなというふうに危惧いたすのですが、大臣、この遠洋マグロ漁業の現状についてどう認識なさっているのか、これをお聞きしておきたいと思います。大臣にお聞きしたいと思います。

    〔金子(恭)委員長代理退席、委員長着席〕

松岡国務大臣 菅野先生御指摘のとおり、非常に今、特に遠洋マグロはえ縄漁業、厳しい状況にあるというように私どもも認識をいたしております。蓄養マグロなどの輸入品との競合による魚価の低迷、さらにまた国際規制の強化、そのことによります漁獲枠が削減される、これはずっとミナミマグロから、いろいろな形でその規制が厳しくなってきておるわけでありますが、そういった中で、経営状況も厳しい、それは非常に私どももそのとおり認識いたしております。

 我が国漁業の発展とマグロの安定供給を確保するためには、引き続き、地域漁業管理機関、五つの機関があるわけでありますが、そこを通じた持続的な資源利用を推進するとともに、国際的な資源管理措置に反した漁獲物の輸入を防止することも必要だ。

 こういったこともしっかりやりながら、また、世界的なマグロ資源や市場の動向に対応して、国際競争力のあるマグロ漁業を確立していく。そのためには、もとより業界の自助努力というのが基本でありますけれども、そのことを基本にしつつ、省エネや生産体制の合理化によるコスト削減、また漁場の確保、付加価値の向上等の視点に立って施策を講じていくことが必要と考えております。

 特にまた、漁場の確保という点については、インド洋等において新たな漁場の開拓、確保ができないか、こういったことも念頭に置きながら取り組んでまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、付加価値の向上等の視点に立って施策を講じていくことが必要でございます。特に、先生先ほど御指摘ございました漁船漁業、これについて、老朽化したり、いろいろな意味でいろいろな問題を抱えております。したがって、今度の水産基本計画におきましても、この漁船漁業の構造改革、こういったことも大きな柱にしてしっかりと対応を取り組んでいきたいと思っております。

 一方で、きょう午前中も西先生の御質問にもお答えしたのでありますが、世界的な魚の需給構造の大きな変化というものも起きておりますので、そういった変化を逆にチャンスと生かしていけるような、これをチャンスととらえて発展していけるような、そういう一面の取り組みもしてまいりたいと思っております。

 菅野先生の御指摘からすると、いやいや、そんなことの前に、もう厳しさの方が先なんだよ、こう思っておられると思いますし、私もそのことは重々、先生の御指摘もしっかりと私ども認識を一緒に共有しながら取り組んでまいりたい、また先生の御指導もいただきたい、このように思っております。

菅野委員 マグロ漁業の経営の厳しさというのがどういう現状かというのは御承知のとおりだと思うんですが、一つは、はえ縄漁業で漁獲率の低下ということで、本当にはえ縄にかかってくるマグロ類が少なくなった。これに対しては資源保護という形で今国際機関等の中で議論されていますから、これは長期的に見れば資源の回復を待つしか状況はないということだと思います。

 それで、もう一つは魚価安なんですね。これは今大臣がおっしゃったように、輸入マグロがどんどん入ってきて、そして、ここに来て若干値上がりしていますけれども、経営を改善するまでの値上がりには至っていないというのが現状なんです。

 それで、それは何かというと、国際的な条約に違反してとった魚を日本に持ってくるということで、ここだけはしっかり水際で入ってこないようにしてくれということを強く言ったにもかかわらず、そのことが実現されていないというところに大きな問題があるというふうに思うんです。

 今大臣が輸入規制ということも検討と言われておりますけれども、この部分をしっかりとした体制でもって日本に入ってこないような状況をつくっていくこと、このことなしには私は経営改善に結びついていかないというふうに思うんです。

 それで、すべての輸入魚を禁止するなどというのは自由貿易体制の中でできないことですけれども、国際条約に違反してとった部分を、この部分だけは絶対に入れないという覚悟を決めて体制を整えていただきたいと私は思うんですが、大臣、どうですか。

白須政府参考人 ただいまの違法な漁獲の防止という点でございます。

 お話しのとおり、私ども、やはり基本は資源の管理ということが大変大事でございますので、ただいま先生お話がございましたが、世界で五つございます地域漁業管理機関、これの集まりも日本がリーダーシップをとりまして先ごろ行ったわけでございますが、まさにその場でも、そういった機関に加盟をいたしておりますそれぞれの国々の許可船でございますとか、あるいは蓄養場による生産物のみを国際取引の対象として認める、そういうポジティブリスト制というのがとられているわけでございます。

 私どもも、この枠組みの中で、乱獲あるいは違法な漁獲というもの、ただいま委員からお話がございましたように、こういうことはあってはならないことでございますので、そこの点はそういった国際的な地域漁業管理機関の中でも、先ごろの会議の中でもしっかりと申し合わせも行いまして、国際的な管理措置に反する漁獲物の輸入の防止の徹底ということに努めているところでございます。

菅野委員 それでもくぐって、あらゆるルートを通じて国内に入ってきているという現実が存在するわけですから、そこだけはもう万難を排して体制をとっていただきたいというふうに思います。

 最後に、燃油高の問題、岩永農水大臣のときにこの問題をやって議論いたしました。それで、ここに、「燃油高騰対策の取組状況」ということで、ことしの一月時点のものはいただきました。

 ただ、大臣、漁業経営の大きな圧迫要因に、この燃油高の問題がございます。それで、平成十六年の三月、キロリットル当たり四万二千五百円、それがことしの一月で七万四百円という状況です。一・六五倍というふうにここに書いてあるんですけれども、こんな中で漁船漁業を経営して維持していけといったって大変な状況になっています。

 農業に対しては経営所得安定対策という部分を念頭に置いて全国展開していこうというときに、私は、水産業に対しても、原価計算をやって原価割れするような状況が生まれたときには、国として対策を、直接所得補償をするような制度をつくっていかなければ、漁労文化というのは後世に伝わっていかないというふうに思っています。

 ぜひこのことだけは強く要望して、答弁は要りません、質問を終わりたいというふうに思います。

西川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三分散会


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