衆議院

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第2号 平成19年10月24日(水曜日)

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平成十九年十月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      赤澤 亮正君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    小里 泰弘君

      金子 恭之君    亀井善太郎君

      北村 茂男君    斉藤斗志二君

      谷川 弥一君    土屋 正忠君

      中川 泰宏君    永岡 桂子君

      丹羽 秀樹君    西川 公也君

      西銘恒三郎君    平田 耕一君

      福井  照君    藤井 勇治君

      水野 賢一君    森  英介君

      安井潤一郎君    渡部  篤君

      石川 知裕君    小川 淳也君

      大串 博志君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    神風 英男君

      高井 美穂君    仲野 博子君

      横山 北斗君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   会計検査院事務総局次長  増田 峯明君

   会計検査院事務総局第四局長            鵜飼  誠君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            岡島 正明君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (林野庁長官)      辻  健治君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     西銘恒三郎君

  小里 泰弘君     藤井 勇治君

  小野 次郎君     安井潤一郎君

  近江屋信広君     土屋 正忠君

  高井 美穂君     小川 淳也君

同日

 辞任         補欠選任

  土屋 正忠君     近江屋信広君

  西銘恒三郎君     今津  寛君

  藤井 勇治君     小里 泰弘君

  安井潤一郎君     小野 次郎君

  小川 淳也君     高井 美穂君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省総合食料局長岡島正明君、生産局長内藤邦男君、経営局長高橋博君、農村振興局長中條康朗君、林野庁長官辻健治君及び水産庁長官山田修路君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局次長増田峯明君、会計検査院事務総局第四局長鵜飼誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤基彦君。

近藤(基)委員 おはようございます。自由民主党の近藤基彦でございます。

 先日の若林農林水産大臣の所信表明について、幾つか御質問させていただきたいと思います。

 まず初めに、農林水産行政に取り組む大臣の姿勢について御質問をさせていただきたいと思います。

 我が国の農林水産業をめぐる状況は、従事者の減少あるいは高齢化、あるいはグローバル化の進展、耕作放棄地の増加やWTO農業交渉への対応など、内外にさまざまな難問が山積しております。

 こうした中で、先般、福田総理は、所信表明演説において、「地方と都会がともに支え合う共生の考え方のもと、」「食料の安定供給は、今も将来も極めて重要なことであり、安全、安心な食を生み出す日本の農林水産業が活力を持ち続けることが必要」とのお考えを示されました。

 また、先日の若林大臣の所信表明でも、「みずからが先頭に立って、攻めの姿勢で農林水産行政の抱える課題に取り組んでいくとともに、政策の実施に際しては、現場に出向いて生産者や消費者の声をしっかりと受けとめることなどにより、国民の信頼と支持が得られる政策を推進していく」と決意を示されたところであります。

 私も、自民党農政の政策責任者の一人として、国民に対し、安全、安心な食料を供給する農林水産業、そして地域を支えている農林水産業を将来にわたって発展させていくため、政府と一体となって各般の施策の展開に取り組んでいるところであります。

 大臣のお言葉をおかりすれば、先発投手として農林水産行政の責任者となられたわけでありますけれども、これからどのように農林水産行政を進めていかれるのか、大臣のお考えをわかりやすく御説明していただきたいと思います。

若林国務大臣 近藤委員が今御指摘いただきましたように、先般の所信の演説の中におきまして、農林水産行政をどのように展開していくかということにつきまして、私の基本的な姿勢を申し上げたところでございます。

 その中で申し上げておりますけれども、我が国の農林漁業は、国民に食料を供給するのみならず、環境の保全や、あるいは地域の文化、伝統を支えるといった多面的な機能を持っております。また、近年はバイオマスの利活用といった新たな取り組みも注目をされておりまして、二十一世紀の戦略産業として、農林漁業は大きな未来があると考えているところでございます。

 しかしながら、農山漁村では、御指摘にありましたように、従事者の減少やら高齢化などによりまして、生産構造は脆弱化しておりますし、農山漁村として地域の活力の低下が懸念されているところでございます。これに的確に対応していくことが今や待ったなしの課題であると認識をいたしているところでございます。

 このため、攻めの農政を基本にしまして、頑張っている担い手を支援することによりまして、農林漁業の体質の強化を促していくということが重要だと考えております。また、都市と農山漁村の交流の促進、農村環境を保全する地域ぐるみの活動を支援する農地、水、環境保全向上対策などによりまして、農山漁村の活性化を実現していきたいと考えているところでございます。

 この二つを車の両輪として施策を推進していくことで、地域の農林漁業を力強いものに変革していくとともに、農山漁村に明るさを取り戻していきたいと考えているところでございます。

近藤(基)委員 ありがとうございました。

 農林水産行政を進めるに当たっては、現場の声に真摯に耳を傾けながら、地域に密着した施策を展開されますよう、大臣にお願いをしておきたいと思います。

 続きまして、生産者の関心が今非常に高い米価についてお聞きをしたいと思います。

 平成十九年産についても生産量が需要量を上回る状況と見込まれており、近年の米価下落傾向の中で、本年産についても対前年比での米価の下落が予測される事態となっております。

 このように米価の下落傾向が続く中で、米づくりに携わる農家の方々からは、将来の経営の見通しが立たない、品目横断的経営安定対策の収入減少緩和対策だけでは今後の経営に不安を生じるといった声が多く聞かれます。また、こうした状況を踏まえて、米価の下落傾向を食いとめるために、政府や農業団体として何らかの対応をしてほしいといった要望も多数耳にしているところであります。

 米価の下落傾向が続き、生産者が今後の経営について不安感を抱いている現状について、大臣の御認識と、こうした状況にどのように対応していかれるおつもりなのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 委員が御指摘になられましたように、本年産米の価格が下落の傾向を続けております。生産者にとっては、このことは大変不安でございますし、将来の経営の見通しを立てるに当たりましても大変危惧している事情は、私も十分受けとめているつもりでおります。

 十九年産米の価格水準について申しますと、これまでの米の価格センターの入札取引の価格は、前年同期と比較しますと、主な銘柄で見ましても、七%から一一%安という水準になっております。

 これは、十九年産米の作況は九九であったにもかかわらず、作付面積が目標を上回ったために、生産量が生産目標を超えると見込まれていること、二つ目としては、主たる売り手である全農が概算金の取り扱いを見直しまして、集荷段階では七千円程度の内金を支払う方式としたというようなことが心理的にも影響していると思われること、三つ目としては、どうしても過当競争に陥りがちな流通業界の構造が基本的にあること、そして四つ目として、消費者の米の購入動向として低価格米への志向が強まっていることなどが背景にあるものと考えております。

 この米価の低下に対しまして、先ほど申し上げましたように、作付面積が目標を上回ったために、生産量が生産目標を超えるという見込みがあるところから、これに政府が下支えのような形で買い入れをすべきじゃないかというような御意見が出ていることも承知いたしておりますが、このことにつきましては、委員御承知のとおり、食管法から食糧法に変わりました、現在の食糧法では、不作の場合に備えての備蓄を一定量保有する、そのために、この備蓄を回転備蓄という形で運営していくということを基本にしておりまして、この基本を超えて米価を支えるために米の買い入れをするということは、食糧法上は認められておらないといったような事情がございます。

 その意味では、政府が直接買い入れによってこれを支えるということを正面から施策としてとるということは困難でございますけれども、それらの米の需給状況をにらみながらの備蓄の運営というようなことについて、その運用の範囲内において何らかの効果的な対応がありますれば、そのことも考慮に入れて、これから市場の動向を注視してまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、水田農業を営んでおります生産者の方々の経営の安定に支障を来さないということが最も重要な課題でございまして、生産調整を初めとした米政策について、先ほども委員お話しになりました現場の御意見というものを真摯に受けとめながら、食糧法の枠組みを踏まえながら、実は私を本部長といたします農政改革三対策緊急検討本部を過日立ち上げたところでございまして、この対策検討本部におきまして、幅広い視点で検討をして取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

近藤(基)委員 今、大変厳しい状況になっておりますので、政府としても、この米政策について最大限御努力をいただきたいと思います。我々自民党としても、生産者の皆様や現場の関係者と一体となって取り組みに努めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 引き続きまして、WTOについてお伺いをしたいと思います。

 WTOのドーハ・ラウンド交渉については、現在、モダリティー合意に向けて精力的に交渉が進められているところであります。若林大臣は、今月十九日から二十一日にジュネーブに行かれ、WTOのラミー事務局長やファルコナー農業交渉グループ議長らと会談をしたとお聞きしております。改めて日本の立場を強く伝えていただいたことと思っております。

 これまで強力な働きかけにより、七月に示されたモダリティー案では、上限関税に関する記述が盛り込まれていないなど、一定の成果を上げているとは思いますが、引き続き、上限関税の不適用あるいは米を初めとした重要品目の十分な数と柔軟な取り扱いの確保など、我が国として譲れない点を粘り強くかち取っていかねばならないと思っております。

 今後の交渉次第では、我が国農業、農村に大変大きな影響を及ぼす可能性もあります。WTO農業交渉の今後の見通しと対処方針について、大臣にお尋ねしたいと思います。

若林国務大臣 私は、十八日の夜出発いたしまして、ジュネーブに行ってまいりました。一泊四日の弾丸出張でございましたが、受けとめ側のジュネーブ、WTOの体制が、大変配慮をいただきまして、一日でございましたけれども、ラミー事務局長とファルコナー農業議長とステファンソンNAMAの議長などと、主要な方と直接お会いをして、かねて我が国が主張をしておりました主張を確認し、そのことをぜひ、これからの大詰めを迎えております交渉の中において、特に、ファルコナー議長あるいはまたステファンソン議長らが、今モダリティーの議長案の改定を検討している状況でございますので、その中に我々の主張が織り込まれるようにということを強く主張してきたところでございます。

 現在、ファルコナー農業交渉議長は、この七月に提示しましたモダリティー案について、集中的な高級事務レベルにおきます技術的な検討あるいは構造的な課題についての検討を進めておりまして、十一月中旬にはモダリティー案の改訂版が提示されるということが見込まれているところでございます。

 私は、このモダリティー案の改訂版が提示される前に、食料輸入国としての我が国の立場ということを改めて主張したところでございますが、委員が御指摘のように、上限関税というものは受け入れられないということ、そしてまた、センシティブな重要品目は十分確保しなければならないということ、そして、その運用に当たっても弾力的な運用が認められるものでなければならないというようなことを申し上げてきたところでございます。

 それぞれ、まだ交渉過程でございますので、議長として、これについて議長の考えは述べるに至っておりませんけれども、我が国の主張は理解している、わかっているという姿勢で対談を進めたわけでございました。

 いずれにしましても、このWTO農業交渉に当たっては、我が国の農業がさまざまな多面的な機能を有しているということを踏まえまして、経営体質の強化に向けた国内農業の構造改革の進みぐあいというものも留意しながら、多様な農業の共存が可能となるようなバランスのとれた貿易ルールの確立を目指して、これからの交渉に全力を挙げていく考え方で臨んでおります。

近藤(基)委員 ありがとうございました。

 守るべきものはしっかり守るとの方針を堅持していただいて、日本として最大限の利益が得られるよう、引き続き政府・与党一体となって取り組んでいく覚悟ではありますが、我々とすれば、できれば野党の皆さん方ともタッグを組んで、日本の国益を守るために全力を挙げていきたいと願っておるところでありますが、大臣には引き続きリーダーシップをとって最大限の努力をしていただきたいと思っております。

 続きまして、森林吸収源対策についてお伺いしたいと思います。

 京都議定書の目標達成については、国内排出量が、基準となる九〇年に比べ、既に七、八%も増加する中にあって、森林による吸収三・八%を達成することはますます重要になってきていると思っております。

 このような中、平成十九年度においては、森林吸収源対策について、平成十八年度補正とあわせて、二十三万ヘクタールに相当する追加的な間伐が措置されたところであります。また、本年二月の関係閣僚会合決定を受け、政府では美しい森林づくり推進国民運動に取り組んでおり、間伐の推進や多様な主体の参画による森林づくりといった取り組みを進めていると承知しております。

 このような取り組みを通じて間伐などの森林整備を進めていくという方針は理解できますけれども、しかしながら、実際に森林整備を進めていくためには幾つかの課題があると思われます。

 まず、予算措置については、平成十九年度は今申し上げたような措置がされたところではありますけれども、京都議定書の第一約束期間は今後六年間、平成二十四年までとなっており、引き続き安定的な財源の確保が必要だと思われます。加えて、森林整備に係る費用に関して、森林所有者や大変厳しい財政状況にある地方公共団体の負担も軽減をしていく必要があるだろうと思います。

 森林吸収源対策を進めていくには、これらの課題にどのように対応していくのか、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 地球温暖化対策は、まさに地球的な規模において人類共通の課題でございまして、この課題に対して、世界全体がこの対策に責任を持って当たらなければならない状況になっているのは委員御承知のとおりでございます。

 全体の地球温暖化対策につきましては、安倍内閣のときに、ハイリゲンダム・サミットに対して、我が国は、クールアース50、美しい星50の提案をいたしまして、二〇五〇年までにCO2の排出量をおおよそ半減するということを目標として提案し、ハイリゲンダム・サミットでは、日本の提案も含めまして真剣に検討する、そういう方向が出されたわけでございます。それらの方向を受けまして、来年は洞爺湖サミットが日本が議長のもとで行われるわけでございまして、洞爺湖サミットにおきましても温暖化対策というのは主要な課題になるものと見込まれているところでございます。

 それだけに、議長国日本としては、京都議定書で約束をしております六%の削減約束というのは、間違いなく実行できる、間違いなくこれを達成するんだということが世界に向かって言えなければ、議長国としてのイニシアチブを発揮することができないわけでございます。その六%達成の中において、森林の吸収源対策は三・八%もの大きな役割を担っているわけでございますから、世界に向かって約束をした日本の削減の義務を果たすためには、森林吸収源対策としての森林整備というのは何としても実現しなければならない課題でございます。

 そのために、間伐などの森林整備に係ります安定的な財源の確保に加えまして、地方の負担、個人負担、これらの軽減措置を図ることが課題でございます。

 近年、林業をめぐる情勢を見ますと、長期的な価格低迷など、厳しい状況にあるものの、国産材利用の回復など、明るい兆しも見られているこのごろでございます。

 このため、この機会をとらえまして、森林施業の集約化を図るとともに、作業道などの路網と高性能林業機械の一体的な組み合わせによります林業生産コストの低減などを推進しまして、間伐の収益性を高めることによりまして、実質的に個人負担の軽減につながるような施策を推進しているところでございます。

 十九年度につきましては、補正措置もございまして、当初予定をした森林整備量が確保できるわけでございまして、このことについては近藤委員に大変お力をいただきましたことをこの席をかりまして感謝申し上げたいと思いますが、問題は、いよいよ来年から始まります本格的な実施でございます。

 平成二十年度の予算につきましては、政府においては幾つかの重点要求項目、そしてこれらに対する配慮事項という中に、地球温暖化対策というのが五項目の一つに入りまして、これが特別枠の要求ができるようにされております。農林水産省としてはその特別枠の限度いっぱいこれを概算要求に盛り込んでいるところでございまして、平成十九年度予算で措置した定額での助成方式などの継続に加えまして、個人や地方の負担を求めずに民間事業体による森林整備への意欲というものを最大限活用するという新しい施策を取り入れて、この負担問題に対応した要求を行っているところでございます。

 さらに、地方負担を軽減するために、森林整備に係る地方財政措置の充実について総務省に要望をいたしているところでございます。

 いずれにしましても、国民の理解を得ながら、安定的な財源の確保を含め、森林吸収源対策の着実な推進に向けて努力をしてまいりたいと考えております。

近藤(基)委員 続きまして、水産業についてお伺いをしたいと思います。

 世界の水産物需要は健康志向を背景として大変増大しており、中国においては、所得水準の上昇に伴って、一人当たりの供給量が三十年前の約五倍と著しく増大しております。そのため、再生可能な食料資源としての水産物の重要性に注目が集まっているところであります。

 一方、我が国の漁業生産量は、昭和五十九年の千二百八十二万トンをピークに減少し続け、ここ数年は四百五十万トン前後の水準で推移しているところであります。食用魚介類の自給率についても、昭和三十九年には一一三%であったものが、平成十八年度には五九%となっております。

 さらに、漁船の老朽化や燃油価格の高騰で大変経営環境が悪化しており、漁業を支える漁村についても活力が低下するなど、地域活性化の観点からも対策が強く求められているところであります。

 このように大変厳しい状況の中、大臣は今後の水産業の発展に向けてどのような施策を展開されようとしているのか、その基本方針をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 御指摘のように、我が国の水産業は、資源状況の悪化とか漁業者の減少、高齢化や漁船の老朽化など、漁業生産構造の脆弱化が進んでおります。加えて、燃油の価格が高騰いたしておりまして厳しい状況にございます。世界的に水産物への需要が高まるという中で、国内の水産物消費が減少するなど、これまでにない情勢の変化があらわれております。

 このような状況を踏まえまして、本年三月に、水産業の中長期的な戦略として、新たな水産基本計画を策定したところでございます。

 新たな水産基本計画においては、低位水準にあります水産資源の回復、管理の推進、漁船漁業や水産物流通システムの構造改革、新たな経営安定対策の導入や新規参入の促進、漁港、漁場、漁村の総合的整備の推進を初めとします水産政策の改革に取り組むことといたしております。

 この水産基本計画に基づきまして、工程管理を適切に行いながら、水産政策の改革を進めているところでございますが、国民に対する水産物の安定供給を図るとともに、これを支える力強い水産業と豊かで活力のある漁村の確立を図ってまいりたいと思います。

近藤(基)委員 最後になりますけれども、今村副大臣がせっかくお見えになっておりますので、副大臣に御質問をさせていただきたいと思います。

 現在、我が国経済は回復基調にあり、雇用状況も改善するなど、都市を中心として社会の活力が増しつつありますけれども、他方、地方では、依然として都市との格差を感じているところであります。特に農山漁村においては、人口の減少や高齢化などにより、地域の活力の低下が大変懸念されておるところであり、農山漁村の活性化を図ることが大変重要な課題となっております。

 福田総理もさきの所信表明演説において、国民生活が成り立つためには、地方と都会がともに支え合う共生の考え方を示され、来月には、政府・自民党において、それぞれ地方の再生、活性化に向けた施策を打ち出していくこととなっております。

 私は、魅力ある地方の再生のためには、特に農山漁村の振興に力を入れるべきであり、農林水産省が率先して農山漁村の活性化を図っていくべきと考えております。農林水産省として、農山漁村の活性化に向けて今後どのように取り組んでいくのか、今村副大臣にお尋ねしたいと思います。

今村副大臣 お答えいたします。

 ただいま御指摘のとおり、魅力ある地方の再生のためには農村、山村、漁村をどうやって元気にしていくかということが大変重要でありまして、これは福田総理もはっきりと明言をしておられるところでございます。

 農林水産省といたしましては、本年制定しました農山漁村活性化法等に基づきまして、例えば、地域の農林水産物の生産、加工、販売等への支援、あるいは都市と農山漁村の交流の推進、それから中山間地域などの条件不利地域への支援といった諸般の施策にも取り組んでいるところでございます。

 そして、本年度は、ここにありますが、農山漁村地域の再生に向けてということで農山漁村への支援による所得の向上といったことも含めて概算要求の中に盛り込んで、これを実現したいというふうに考えております。

 また、今後、これに沿っていろいろなことをやってまいりますが、何よりも現場第一主義ということで、こういう大変条件の厳しいところで頑張っておられる皆さん方がどういうお知恵を今出しておられるのか、あるいはどういうことをやってほしいのかということをしっかり聞いて回るということでございまして、みずほの国・防人応援隊という名前をつけまして、そして全国十カ所近く、ヒアリングといいますか、いろいろなお話を伺いに回っているところでございます。私ももう既に四カ所ほど参りましたが、大変いい話を聞き、しっかりこういった方々のために頑張らなければいけないという決意をまた新たにしているところでございます。

 引き続き、これは農林水産省だけではできないものもございますので、関係各省としっかり連携をとって頑張ってまいりたいというふうに思っているところでございます。

近藤(基)委員 ありがとうございました。

 時間になりましたけれども、地域活性化と一言で申しましても、それぞれの地域によって条件が大変異なりますので、ぜひ現場の実態や実際に農山漁村に住む方々の生の声をこれからもお聞きいただいて、農山漁村に明るさを取り戻すべく、現場に密着した地域活性化策を推進していただきたいと思います。

 本日は、農林水産行政についてのお考えをお伺いして、大変頼もしい答弁をいただくことができたと思いました。難しい問題が山積しておりますが、若林大臣、今村副大臣においては、リーダーシップをこれからも発揮し、この難局を必ずや乗り越えていけるものと確信しておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 これで終わります。

宮腰委員長 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 若林大臣、農水大臣御就任、大変おめでとうございます。また、大変御苦労さまでございます。

 初めてでございますので、大臣に、我が国農政の基本戦略ということについて、まず最初に確認をしておきたいと思います。

 農は国の基というふうに私は認識をしております。農業は、産業的な側面のほかに、食料安全保障や農業の持つ多面的な機能など、単なる経済効率だけでははかり切れない極めて重要な側面を持っているというふうに思います。

 フロリダ大学の名誉教授のジェームス・シンプソン氏、大臣は御存じだと思いますけれども、貿易のとりこ、すなわち食料を輸入に頼るということの問題について非常に警告をされております。経済的効率への偏重や、今申し上げたような貿易のとりこになって、農地を失い、農家を失い、我が国の農業を失うことがあっては、取り返しのつかない事態を引き起こしてしまう。

 我が国の国土の特徴を考えますと、産業効率の側面からは、我が国農業が十分な国際競争力を持つということは私は難しいというふうに思います。しかし、一度失われた農地、これこそが良質な国土だと思いますけれども、それを回復するためには膨大な費用と労力が必要ですし、また、一度衰退した農業技術を復活させるためには長い年月と多大な努力が必要となります。

 先日も私は秋田の大仙市というところに行ってまいりました。長い間、生産調整で一応耕作放棄になっている、そこがいわゆる荒廃田になってしまっているんですね。結局、上流が荒廃すると水路が壊れる、下流の方に水が来ないということで、下流域もまた非常に大変な思いをして耕作をしている、こういう現状があるわけです。

 こういうことを考えますと、我が国の農政の基本戦略、もちろん攻めの姿勢ということは非常に必要だと思いますけれども、やはり基本的には守り、日本の農業を守るんだというのが私は基本戦略でなければいけない、こう思いますけれども、大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 井上委員には、農業のみならず、環境問題から国土保全の問題にわたるまで、幅広く御指導をいただいてまいったことでございます。

 私は、御承知のとおり、学校を出てすぐ農林省に勤めました。二十五年間、農林水産省で勤務をいたしました。その後、行政の中ではどうしても解決できない農林漁業、農山漁村の問題があるということを深く自覚いたしまして、この政治の道に入って約二十五年になるわけでございます。

 通じて農林漁業、農山漁村の問題を中心に取り組んでまいったつもりでございますが、その心は、委員がまさにおっしゃられました、農は国の基というその信念でございます。食料の安定的な供給を図るというのは国家の国民に対する責任でありますが、同時に、委員が御指摘のように、環境でありますとかあるいはまた伝統、文化、そして地域コミュニティーを維持していく、お互いに支え合ってこの日本の国土というものを維持している、そういう大きな役割がある、そういう観点を私は常日ごろ自分の信念として持ち続けてきているわけでございます。

 そういう中で、大変に今、日本の農業、農村は、脆弱な経営体質と、あわせて地域の活力が失われつつあることに私も責任を感じながら、何とかしなきゃいけないという思いでございます。

 そこで、農政の姿勢として、まず基本的には我が国の農業を守るということ、これは私も同じ認識をいたしておりますが、WTO交渉の中にありましても、それぞれの国が多様な農業、その国の多様な農業というものが存在をしていく、共存していくことが世界にとって大事なんだということを基本にWTO交渉にも臨んできたつもりであります。

 しかし、一つ一つの地域あるいは経営者との関係でいいますと、攻撃は最大の防御なりということもございます。それぞれの農業者が意欲を持って頑張ってもらう、そういう担い手を支援していくんだという意味で、やはり一人一人の農業経営者というのは常に攻める姿勢というものが必要なんだというふうに考えておりまして、そういう意味での農業経営の体質強化を促していくということが重要だというふうに認識をいたしております。

 さらに、農山漁村の活性化につきましては、この活性化プロジェクトを支援する交付金を活用して都市と農村との交流を推進する、あるいはまた、農地、水、環境保全向上対策によって地域資源を保全していく、産地づくり交付金を活用した特色のある地域の農業を進めていく、こういった地域重視の考え方に立っておりまして、その意味では、まさに委員がおっしゃっておられます創意工夫を凝らす農業という視点で、農業あるいは農村が持っております潜在力を引き出して、農山漁村に明るさを取り戻していきたい、このように考えております。その意味では、まさに地域に根づいている、創意工夫を凝らした意欲というものを引き出していく必要がある、こう考えております。

井上(義)委員 そこで、具体的な問題に入りたいと思いますけれども、一つは米価の問題でございます。

 ここ近年、米価の下落傾向に歯どめがかかっておりません。とりわけ十九年度産米の価格が非常に下がっておりまして、稲作農家の経営を直撃しております。本年は、農業者、農業団体が主体的に需給調整を担う新しいシステムに移行した初年度です。しかし、現況の米価の下落状況を見ると、この新たなシステムが適切に機能していないのではないかというふうに思わざるを得ない。

 そういう意味で、現在の米価の現状についてどういう認識をされているか、まず確認しておきたいと思います。

若林国務大臣 十九年産米価が低下の傾向にありますこと、そのことについての危機感、問題意識は委員と共有をさせていただいているつもりでございますが、状況を御説明しますと、コメ価格センターの入札取引の価格は、前年同時期に比較しますと、主な銘柄で見まして約七%から一一%の安、下落という水準になっております。

 作況の方は九九ということでほどほどのところであったわけですけれども、作付面積が目標を上回ったということのために生産量が生産目標を超えるというような状況になっております。

 その他、全農が概算金の支払い方法を、取り扱いを見直して集荷段階で七千円程度の内金を払うということにしたことや、あるいはまた、流通業界自身が過当競争の体質があり、そこに陥りがちである。

 そして、何といっても米の消費が減っておりますが、減るだけじゃなくて、消費者の米の購入行動として低価格米への志向が強まっているというようなことが背景にあると考えております。

 米の生産調整の状況で見ますと、委員が御指摘になりましたが、実はことしから仕組みを変えたわけでございますけれども、主食用の稲の作付面積は、平成十六年度以降毎年減少をしてきておりまして、新たな需給調整システムに移行した十九年産につきましても、実はその傾向は変わっていないのであります。必ずしも新たなシステムが機能していないとは言えないと私は考えております。

 しかしながら、米の消費量が年々減少してきておりますために、これに対応できるほど作付面積が減っていない、そのために作付面積が目標をオーバーする県が相当数上がってきております。これは県によって、あるいはまた地域によって非常に差が実はあるわけでございます。

 ですから、今後、需給の均衡を図るためには、すべての都道府県で生産調整の実効性が確保できるように、一層の工夫をしていく必要があると考えているところでございます。

 私としても、水田農業を営む生産者の方々の経営の安定に支障を来さないことが重要でありますので、生産調整を初めとした米政策についても、現場の御意見を真摯に受けとめながら、食糧法の枠組みを踏まえながら、実は私を本部長といたします農政改革三対策緊急検討本部を立ち上げまして、幅広い視点で鋭意検討をしているところでございます。

井上(義)委員 幾つかお聞きしたいこともあるので、大臣、できるだけ簡潔に御答弁いただければ大変ありがたいと思います。

 先ほどの質問にも出ていましたけれども、具体的な対策として関係者から、政府の買い入れ、在庫の積み増しによる需給引き締めという声が上がっています。食糧法上の問題もこれありなんですけれども、ことしは本格的な農政改革の初年度ということもございますから、やはり国として、水田農業再構築に対する強いメッセージを発するということも必要だというふうに思います。

 そういう観点から、この政府買い入れ、在庫積み増しについても検討すべきではないか、このように思いますけれども、大臣、どうでしょうか。

若林国務大臣 委員の御指摘も重要な御指摘だと受けとめておりますが、繰り返し申し上げているところですけれども、法律制度的に言いますと、食糧法におきましては、政府の役割は不作に備えた備蓄運営に限られているということでございますので、その運用には限界があるわけでございます。

 現在の適正備蓄水準は、計画では百万トン程度ということになっております。そして、この六月末時点の在庫量が七十七万トンでありますから、そこには若干のすき間があるんですけれども、さて、これをどういうふうに運用をすれば市況として市場にいい影響が出てくるのかというようなことについては、見通しを判断することがなかなか見きわめにくい状況でございます。

 しかし、重要な問題でございますので、諸般の情勢を総合的に見きわめながら、備蓄運営の範囲内でこれを検討してまいりたい、このように考えております。

井上(義)委員 食糧法の限界ということはよくこちらも理解した上で申し上げているわけでございまして、ぜひ前向きに検討していただきたい、こう思います。

 それから次に、米価下落に対する所得確保対策の強化ということですけれども、今年度から導入されました品目横断対策、これは米の担い手に対する収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策、ナラシが措置されて、過去の平均収入からの減収分の九割が補てんされる仕組みになっています。

 しかしながら、現行のナラシ措置では、米価が一俵当たりの下落幅が千円程度までは政府からの補てんが行われる、ただ、それ以上の下落時には政府からの補てん財源が措置されていない、農家の収入を支えることができないのではないかという問題があるわけでございます。

 センターの入札取引価格は、昨年に比べて既にもう千円程度の米価下落が起こっていて、現行のナラシ制度のままでは、米農家とりわけ将来の水田農業を担う生産者の所得が守られないという懸念があります。

 生産調整に身を削って参加したメリット感がなければ、これは対策の意味がないわけで、一つはこの算定の見直しや柔軟対応が考えられます。それから、喫緊の課題としては、十九年度産米の米価がさらに大幅に下落した場合は、政府の補てん部分を追加で補てんするといったような緊急措置を実施すべきだと思いますけれども、対応をお聞きしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の収入減少影響緩和対策でございますけれども、今対策は、国と対策加入者との間で三対一という負担割合であらかじめ積立金を拠出させていただく、そういうことでございますので、本制度を安定的に運営していくためには、対策加入者の積立金についての負担にも配慮する必要があるということでございます。

 具体的には、このような加入者の積立金負担のバランスにも配慮いたしまして、現行におきましては、これまでの米の十アール当たり収入額の減少額がおおむね全国平均で一〇%の範囲内にとどまっていたこと、あるいは、今回の対策は米の下落対象だけではなくて、品目横断といたしまして他の対象品目も含めた全体としての収入増減を合算、相殺する仕組みであるというような、より安定的なものにしたということもございまして、積み立ての範囲については一〇%の収入減少に対応し得るよう制度設計を行ったところでございます。

 しかしながら、こういう中でございますが、今般、米の価格センターの入札取引価格が低水準でスタートをしたということでございます。

 委員御指摘の点でございますけれども、これは担い手の経営安定上極めて重要なことであるというふうに私どもも認識しておるわけでございますけれども、本対策の発動につきましては、来年三月までの取引価格の推移というものを見きわめる必要があるということでございまして、現時点で直ちにこれについての言及ができないということについては御理解いただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、この問題につきましては、米の価格が上昇に転ずるというようなことがあれば、御指摘のような問題という事態が発生するわけではございません。したがって、私ども政府サイドといたしましては、米価のさらなる引き下げを見通しているかのような誤解を市場になるべく与えないようにしなきゃいかぬ、そういったことを十二分に配慮しながら、今後の価格の推移をきちんと見てまいりたいというふうに思っております。

 以上でございます。

井上(義)委員 そういうことはよくわかっているわけですよ。だから、国の強い姿勢を示して、やはり担い手に大丈夫だという安心感を与える必要があるんですよ。そういうことを含めて、いざとなったらやりますよ、こういうメッセージをぜひ発していただきたい、そういう観点から、もう一回、大臣、このことについて。

若林国務大臣 何としても米生産農家、とりわけ米に中心を置いた米地帯の専業的な農業者の経営が成り立たなければ大変なことになるという認識を持っておりまして、それらの米の生産農家の農家経営というものに打撃を与えないような措置は何としても講じていかなきゃならない、こう思っております。

井上(義)委員 次に、産地づくり交付金の件なんですけれども、米の消費が年々減少していく。稲作農家としては、米以外の作物への作付転換、いわゆる生産調整の拡大が余儀なくされているわけでございます。国はこうした生産調整の取り組みを支援するために産地づくり交付金を手当てしているわけですけれども、この対策は平成十九年から二十一年度の三カ年の総額が固定されているために、今後、例えば確実に転作の拡大部分が増加をする、あるいは生産調整に協力していない農家が転作に取り組んだ場合であっても、産地づくり交付金がふえないということで、逆に生産者個々に対する支援水準が目減りするという問題があるわけです。

 これでは、生産調整の取り組みを支援する効果は十分と言えないんじゃないか。結果として、米の過剰生産と米価下落によって、水田農業の担い手を育成していくという本来の政策目的が達せられないんじゃないかという懸念があります。

 生産調整の実効性を高めるために、米価と農家の所得を守るために、産地づくり交付金は予算を含めて抜本的に拡充すべきじゃないか。このように思いますけれども、この点、どうでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、産地づくり交付金でございますけれども、これは地域の創意工夫によりまして使途及び単価が設定できるという仕組みになっております。国の予算は原則として単年度予算でございますが、この交付金は、対策開始の前年に対策期間である三年間一定額の予算を確保し、また対策期間中は当該年の交付金に残余が出ても翌年度に繰り越して活用できる、そういった工夫をしております。これは三年分の交付金を地域が主体性を生かしまして無駄なく計画的に活用できるよう、できる限りの配慮、工夫を行っているところでございまして、これらの利点を生かしまして効果的に活用していただきたいというふうに考えているところでございます。

 さらに、これに加えまして、本年度からは、産地づくり交付金の加算措置であります新需給調整システム定着交付金のうち百億円につきましては、各地域における生産調整の実施状況を踏まえて毎年配分し直すことによりまして、地域の需給調整の取り組みへのインセンティブとなるよう配慮しているところでございます。

 国といたしましても、生産調整の実効性確保に向けまして、産地づくり交付金の活用等によりまして、地域の創意工夫あるすぐれた取り組みが促進されるよう支援してまいりたいと考えております。

井上(義)委員 制度の解説はしてもらわなくて結構なのです、総額が足りなくなったらどうするんですかということを申し上げているので。

 確かに、三年度、通算で使えるようになった、今回、米の調整のための新対策ということで繰り入れができるということはわかっているんですけれども、本当にこれから生産調整をふやさなきゃいかぬ。あるいは、協力されていない方、今一三%ぐらいいらっしゃるわけですけれども、協力をしていただくというときに、やはり総額をふやさないと個々の農家の手取りが減るということになりかねないわけですから、そこのところを十分配慮して、この交付金についても弾力的に考えたらいかがですか、考えるべきじゃないですかということを申し上げているので、もう一回ちょっと。制度の説明は結構ですから。

若林国務大臣 時間が限られている意味で、委員のおっしゃることはよくわかります。

 今局長が御説明をいたしました中で、ことしからは産地づくり交付金の加算措置として百億、新需給調整システム分として百億積み増しておりまして、この運用というのに弾力的な運用が可能になっております。

 そこで、各地域の生産調整の実施状況を念頭に置きながら、年配分を見直すことによりまして、需給調整の取り組みのインセンティブになるようにしていきたい。特に、生産調整の実効性の確保に向けまして、この産地づくり交付金の新しいシステムのものも創意工夫を凝らして新たに取り組みができるような対応を心がけたい、こう思っております。

井上(義)委員 それから、やはり米消費の拡大ということが非常に重要だと思います。輸出が始まりましたけれども、極めて量も少ないですし、この輸出拡大で米消費の拡大の多くは望めないわけでございます。積極的な米消費拡大の施策を展開すべきだと思います。

 それともう一点は、やはり水田が水田として活用できるということを考えますと、いわゆる飼料米とかバイオ米とか、今いろいろなところで実験的な取り組みがされています。私は、これが水田が水田として活用される一番最良の方法じゃないか、このように思っておるわけでございまして、ここは国を挙げて積極的に取り組むべきだと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

今村副大臣 お答えさせていただきます。

 ただいま委員が申されましたように、輸出と並びまして米の消費拡大、本当にこれから力をもっともっと入れなきゃいけない部門でございます。

 御案内かと思いますが、昔は、日本人は米二俵を食べておりました。今一俵ということで、これを一日当たりにしますと、百六十八グラム、牛乳瓶一合分あるかないかということでございます。これをあと一口余計に食べる。一口というと、口の大きい人も小さい人もいるかと思いますが、大体一口が七・二グラムということになっております。四%から五%、あと一口食べることによって、三十五万トンぐらい消費がふえるということになるわけでございます。

 そのためにいろいろなキャンペーンをやりますが、特に和食のすばらしさといいますか、これは日本人が長寿であるという一つの非常に大きな要素にもなっております。そういったことをしっかりとこれから宣伝する。和食には、何といってもお米が欠かせないものであります。それからもう一つは、何といっても小さいころに覚えた食の味ということは非常に大事でありますから、学校給食あるいは保育園、幼稚園等において、この拡大をぜひ図っていきたいなというふうに考えております。

 そういったことをテーマにしながら、六月にもキャンペーンをやりましたが、十一月からは、官民挙げて「朝ごはんキャンペーン」ということを、テレビのCM等を通してやってまいりたいというふうに思っているところでございます。また、よろしくお願いいたします。

 それからもう一つ、飼料米あるいはバイオエタノール等々の話がございました。これも、昨今の飼料価格の高騰等々を含めまして、これはぜひ力を入れたいし、そしてまた、バイオエタノールにつきましても、御案内のようにCO2対策として今後大きな役割を果たすということで、力を入れて、今それなりの計画を練っているところでございます。

 以上でございます。

井上(義)委員 時間が大分迫ってきましたので、品目横断的経営安定対策、これについて種々お伺いをしようと思っていたんですけれども、時間がないので絞ってお尋ねしたいと思います。

 この品目横断的経営安定対策、将来にわたって担い手を確保して農業を維持していくという意味で、私は、非常に重要な施策であり、基本的な方向は正しいというふうに思っています。

 ただ、現場を回って一番皆さん御指摘されるのは、私は、具体的な施策の展開についてはいろいろあるんです。きょうお伺いしようと思ったら、きょう時間がありませんので。

 二つなんですね。

 一つは、どうも農政に対するこれまでの積み重ねに対する不信感、猫の目農政とかとよく言われていますけれども、また変わるんじゃないか、また変わるんじゃないか、そういう不信感が結構根強い。ここはしっかりとしたメッセージを発するべきだというふうに私は思います。

 それから二つ目は、やはり小さい農家の切り捨てじゃないのかと。小規模の農家が多い、あるいは兼業農家が多い、実はそういう皆さんが地域の農業を支えて、地域を支えている。そういう小さな農家の切り捨てじゃないかという御批判がやはり皆さんあるわけでございまして、これにきちっとこたえていくということが、私はこの施策をきちっと成功させるための非常に大きなポイントだ、このように思うわけですけれども、この点について確認しておきたいと思います。

若林国務大臣 委員がお話しいただきましたように、この品目横断的な今回の対策、私はそれぞれ御批判もあることは承知いたしておりますけれども、この新しい対策は農政改革というふうに私は考えているところでございまして、そういう意味で、この方向性というものは何としても維持していかなければいけない。

 そういうことは、実は、この八月から、御用聞き農政と称して、うちの幹部が四十四道府県に、現場に行っていろいろ話を聞いてきました。さまざまな意見を出されておりまして、それらを承ってきたわけですが、そういう意見の中でも、基本は、やはりこの方向性をここで変えれば、先ほど委員がお話しになりました猫の目農政と言われるような不信感がさらに広がって、現時点でも多くの農家や集落が積極的に取り組んできている状況にありますので、かえって現場に混乱を引き起こすおそれがある、その基本はしっかり守ってもらいたいという意見が、共通してかなり多く出されていたと受けとめております。

 しかしながら、委員がお話しになりましたような、小規模の農家を切り捨てるのではないかといったような意味での批判、これはいろいろな要素があると思いますが、やはり小規模の農家といっても、果樹や野菜をやりながら、規模は小さいけれども高付加価値の農業をやっている人も中におります。それからまた、畜産や何かをやりながら、土地利用型の部分が規模が小さいという人もいるわけでございます。しかし、兼業農家で、いわば片手間で農業をやりながら、米はつくりやすいからつくっているという人もいっぱいいるわけですね。

 それぞれいろいろなタイプがあるわけでございますが、それぞれのタイプにおいて、この小規模農家の位置づけというのを明確にして、それらの地域社会の中で納得のいくような対策を講じなければ、切り捨てという意味での批判は絶えないと思うんですね。こういう批判には真正面からしっかりとおこたえをしていく、相談に乗っていく、説得をするというような姿勢で、小規模農家への対応もこの際しっかりとやっていきたい、このように考えております。

井上(義)委員 これで終わりますけれども、品目横断、これを実施していく場合の、例えば事務的な手続の問題ですとか、さまざまな課題があります。そういったことについてはまた別の機会にきちっとお話をしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上でございます。どうもありがとうございました。

宮腰委員長 次に、筒井信隆君。

筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。

 民主党は、先日、農業者戸別補償法案を国会に提出いたしました。これとの比較をしながら、今の品目横断的経営安定対策を中心に、政府の農政について質問をしていきたいと思います。

 この経営安定対策、基本が間違い、原則が間違いだと考えております。この基本というのは、先ほどから出ておりますように、四町歩以上、二十ヘクタール以上、これに限定しているところが間違いだ、こう言えるだろうと思います。

 どうしてこれに限定するんですか。意欲のある農家というのは、決して四町歩以上、二十町歩以上に限定されない、それ以外でもいろいろな形で一生懸命取り組んでおられる農家はある。

 そして、ただ、必ず言われるでしょうけれども、例外規定があるんだと。確かに例外規定はあります、一部地域において。しかし、農村集落というのは、すべての地域において、小規模農家も水管理等々一緒になって参加して初めて維持されている。それらをこの原則から、基本から切り捨てているところが農村集落の崩壊につながる。

 これは、だから、先ほど猫の目農政という話が井上先生からありましたが、もう既に矛盾が出ていて、必ずこれは訂正せざるを得ない。だから、戦後最大の農政の抜本改革だと言われましたが、今それをさらに抜本見直しをする、こういう声が上がっているんですから、これこそ猫の目農政で、これはもともとのそういう政策、基本、原則にあるんです。

 大規模、効率化ばかり目指したってだめなんです。やはり小規模であっても、例えば一次産業の農業においても、安全で安心な付加価値の高い米をつくったりする、こういう努力をしている農家はある。さらには加工にまで進出して、第二次産業まで進出をして、そこで一生懸命経営安定の努力をしている農家もある。さらには、産直とかあるいは直売所という形でもって、三次産業、流通にまで進出をして経営安定の努力をしている農家もある。これらは規模にかかわらないで支援すべきじゃないですか。

 それを、基本として四町歩以上、二十町歩以上でなければ原則だめなんだというところに、この経営安定対策の間違いがある。だから、民主党は、すべての販売農家を対象にして所得補償をする、こういう方針を出しているわけでございます。

 だから、大臣にまずお聞きしたいのは、基本として、原則として、何で二十ヘクタールあるいは四町歩以上、規模の効率だけに限定しているんですか。その合理性を説明してください。

若林国務大臣 実は、幾つかの点で誤解があると思うんですけれども、集落営農二十ヘクタール、あるいは個人経営四ヘクタール、何かこれがひとり歩きしてしまったように思うんですね。

 これはいろいろな例外がある、こう申し上げましたが、それはかなりきめ細かく定めておりまして、中山間地、全体の四割の農地面積を占めていますが、中山間地については半分でいいというふうになっているんですね。さらに、集約的な農業をやっているような経営については、これはこの面積にかかわらないでかなり特例を設けるというような道も開いておりますし、それぞれ集落内で農地が非常に少ないような地域にあっては、それに見合った一定の割合まで下げることができるといったようなことをやっているわけですよ。だから、そういうことを捨象して、原則といいながらも、四ヘクタール以下は切り捨てるんだ、二十ヘクタールなきゃだめなんだということで、余りにもそれを言われ過ぎたということが一つ。

 それからもう一つは、この品目横断の対策というのは、実は土地利用型の農業についての課題として出しているわけでありまして、日本の農業というのは、委員も御承知のとおりでございますが、農業総産出でいいますと、もう既に米よりも野菜の方が総産出額の割合は大きくなっておりますし、あと、果樹、花卉、酪農、肥育牛、豚といったような部門につきましては、実は、主農業者、農業を主として経営している人たちが供給している割合は、全体で七〇%から九〇%ぐらいは、そういう人たちが生産、供給しているんですね。

 そういう意味で、何か水田農業が確かに立ちおくれておりまして、水田農業の場合は、主業農家が約四割でございます、準主業農家が四分の一、二四%なんですけれども。この水田農業の部分をどうするかというところで提起をしているところであります。

 そして、民主党は、食料・農業・農村基本法には賛成をいただいております。その食料・農業・農村基本法の二十一条に、望ましい農業構造を確立するんだという条文がありまして、ここで、国は、効率的、安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するために、営農の類型及び地域の特性に応じて、農業生産基盤の整備の推進を初めとする諸施策を講ずるんだということを書いているんですね。

 そういう意味では、効率的、安定的な農業経営を育成する、そして、その経営によって相当部分の供給が担われることによって、日本の食料供給の役割としての農業の効率性というものを確保していくんだと基本法に書いてあるわけです。その筋に沿って、この品目横断は水田農業に着目をして講じているわけでありまして、野菜とか果樹とか畜産とかその他の部分については、それぞれごとに既に施策を講じているところでございます。

 だから、そういうことを十分御理解いただきたいと思います。

筒井委員 私は、そんな例外規定がないなんて何も言っていないので、そんなのはわかっているんですから、それを聞いているんじゃないんです。

 基本、原則は大規模である、面積要件を四町歩以上、二十町歩以上、明確に出しているので、これはひとり歩きも何もないでしょうが。それを前提条件として出しているんですから。

 そして、その面積要件の例外は、一部地域についてあります。

 具体的に確認しますが、その一部地域において例外はありますが、その例外規定の地域じゃないところでは、たとえどんなに、先ほど言ったような付加価値を高める努力、あるいは加工にまで進出する努力、あるいは流通まで進出している努力、こういう努力をしている農家も、経営安定対策の支援の対象になりませんね。

若林国務大臣 今委員がおっしゃられたような形の農業というのは、水田の米農業ではないんですよね。野菜とか果樹とかその他の農業が主であると私はまず思うんです、そこは。(発言する者あり)であると思うんです、その加工とかそれらについてやっておりますのは。

 それと、先ほど基本法を引きましたけれども、今、そういう基本法の精神といいますか、それにのっとってその施策を推進しているわけでありますが、にもかかわらず、地域ぐるみでなければできないような土地基盤あるいは技術改良あるいはまた災害対策といったようなものについては別に規模の差を設けているわけじゃありませんで、何か農業政策のすべてをこの品目横断対策だけで集約してやっているんだというふうに御理解をいただくと、全体がミスリードしてしまうと私は思うんです。

筒井委員 ほかのところはまた聞きますが、米でもありますよ。それで、経営安定対策で、さらに、戦後最大の農政改革だと農水省自身が言っていることでしょうが。それが面積要件だけを、それに限定して、基本は、原則は四町歩以上だと言っているところを問題にしているんです。

 もう一度聞きます。さっき全然私の質問に答えていない。

 米だってありますよ。その四町歩以上、二十町歩以上の例外規定は一部地域にあります。その一部地域を外れたところで、例えば減農薬、有機農業、こういう農業自身で努力をしているところがある。あるいは、産直とか直売所という形でもって流通分野に進出しているところがある。あるいは、米をもちとかいろいろな形で加工して、そして努力しているところがある。一部地域、例外の規定を除いたところでは、どんなにそういう努力をした農家もこの経営安定対策の対象外ですね。その点だけ確認です。

若林国務大臣 実は、市町村が目標農業所得というのを決めております。その市町村の定める目標農業所得の二分の一を超える農業所得を確保している、そしてまた米、麦、大豆などの対象品目の売り上げ、所得、規模のいずれかが経営全体のおおむね三分の一であるといったような要件の中で、経営規模の小さな農家についても参加できるような道を開いているわけでありまして、有機農業というお話がございましたが、そういう高付加価値の農業に取り組んでおり、そして市町村が定めている目標農業所得の二分の一を超える農業所得を全体として上げているというような場合などについては、これを対象にすることの道を開いているところでございます。

筒井委員 例外が全部に広がる、全地域になるならば、それは例外じゃなくなるんですよ。もしそうならば、大体四町歩以上という限定をやめてくださいよ。

 こっちが聞いているのは、そんなことを聞いているんじゃないんです。もし四町歩以上、二十町歩以上をやめるんだったらいいですよ。私はしつこく聞きますから、これからもそうですが、ちょっとそのときにずらした答え方をすればそれで終わりと思わないでください。

 今私が聞いているのは、何回も聞きますから、一部地域、例外地域はこれはある、だけれども、それは全国じゃないでしょう、全国だったら、それは例外じゃなくなるんだから。その一部地域を除いたところで、先ほど言ったような努力をいろいろな形でやっている農家はある。それは経営安定対策の対象外でしょうと聞いているんです。

若林国務大臣 先ほど私が申し上げました、市町村が定めている目標農業所得の二分の一以上、それを超える農業所得を確保するといったような条件のものは、地域を限定してではありません。つまり、四ヘクタールであるけれども、四ヘクタールなくてもこういうような農家は対象にすることができますよということで定められております。

筒井委員 そうすると、あなたは今実態と違うことを言っているけれども、有機農業の努力をしたり、あるいは産直、直売所、流通分野まで努力をしたり、加工に関しても努力をしている、そういう農業者については、四町歩以下であろうが二十町歩以下であろうが全部支援する、これが経営安定対策の中身ですか。

若林国務大臣 全部支援するということじゃありませんが、地域限定をしておりませんから、今申し上げたような要件に該当すれば、四ヘクタールを適用している地域であっても、それに満たない小規模の農家も同じように参加することができるということであります。

筒井委員 自民党の農業基本政策小委員会というのは御存じだと思いますが、そこで、十月十九日の会合で、規模ではなく、やる気のある農業者を支援する政策にしないといけない、こういう農政改革の抜本的な見直しを求める声が大勢を占めた、こういう事実は知っていますか。

若林国務大臣 私はその議論に参加していませんし、その結果はまだ聞いておりません。

筒井委員 こういう意見、今言った限りではどうですか。規模ではなく、やる気のある農業者を支援する政策にしないといけない。今の農政改革の抜本的見直しをすべきではないですか。

若林国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、我々は、食料・農業・農村基本法に従って政策の展開をしているわけでございまして、食料・農業・農村基本法の定める政策目標に沿ったものについて政策を強化していくという考え方でございまして、その限りでいろいろな、今、意欲があり、そして付加価値の高い農業をやっているというような人について、それを対象に加えるような工夫はいろいろやっていきますけれども、定めた、個別の経営でいえば原則四ヘクタールとか、集団の営農については二十ヘクタール、いろいろな特例を設けておりますが、そういう考え方については変えるつもりはありません。

筒井委員 それから、特に米なんかそうですが、諸外国との生産条件の格差、こういう問題点は、価格の点では出ないとしても、生産費と市場価格との差額、特に標準的なものとして考えた場合に、生産費の方が上回る、こういう場合があると思うんです。特に今そうなんですが、それについては何の措置もしないでいいという考えですか、ナラシだけでいいという考えですか、その点、ちょっとお答えください。

若林国務大臣 御承知のように、米については、安価な輸入品が流通することがないような国境措置を講じております。したがって、輸入米と国産米が直接競合することによって生ずる生産条件の格差、不利になるという事態は生じないように国境措置を講じているということでございます。

 近年の米価の下落による農家所得の低下は大問題でありますが、これらについては、国内における供給と需要との需給が、供給過剰状態によって生まれてきているもの、こう考えているわけでございまして、効果的な措置を講ずることによって需給のバランスを保てば、生産過剰による米価下落というのは抑えられる、このように考えているわけでございます。

 そういう意味で、麦とか大豆とかで生じておりますものとは違うわけでありますから、それらと同じような形で、いわゆるゲタをかませるということは考えなかったわけでございます。

筒井委員 先ほど、ナラシで、井上先生の方から一俵一千円じゃ全然問題にならないと言いましたが、内外価格差がたとえないとしても、生産費と市場価格との差が出た場合に、きちんとそれは米に関しても補てんをしなければいけない。こういう考えに立って、民主党の所得補償法案は、標準的な生産費と市場価格との差額を基本として補てんをする、こういう立場に立った中身でございまして、まさに、今農家はそれこそを求めているんじゃないですか。

若林国務大臣 民主党の法案につきまして、どのような制度設計になっておりますか、その詳細がまだ明らかにされておりません。私の方も承知しておりませんので、比較してのお話は差し控えたいと思いますけれども、やはり農業も、計画経済、統制経済ではございませんから、生産者の意欲によって、努力によって、農業経営が発展もし、あるいはまた衰退もしていく、それぞれのそういう経営の状況があると考えております。

 そういう中にありまして、所得の変動、この変動の要因は、豊作であるとか不作であるとか、予定した供給量をオーバーした場合とか、いろいろな要素があるわけでございますが、そういうことによって来る不利益というものを、どの範囲でどの程度の助成、救済制度を設けるかというのは制度設計の問題でありまして、この品目横断対策における一割という水準は、今までの米価の変動幅を見ますと、おおむね一割以内でおさまっていること、さらに、今度の政策は、大豆とか麦とか、他の所得と共通に計算をして、単品ではなくて他の所得も含めて一割、そういう線を引いているということで、おおむねこの所得でいえば、例外は出てくるかもしれませんが、大体一割という水準で対応できるものと考えて設計しているものでございます。

筒井委員 それでは対応できないから、今自民党の中からでさえ、いろいろな声が上がっているんじゃないですか。

 さっきの自民党の中の委員会で、米に内外価格差はないが、国内の要因で生産費を賄えない場合どうするのか、こういう声が上がって、米に関してもゲタ対策を求めるという声が上がった、この事実は御存じですか。

若林国務大臣 聞いておりません。

筒井委員 農水大臣は政府ですが……

宮腰委員長 委員長の了承をもらって発言してください。

筒井委員 済みません。(発言する者あり)はい、わかりました。

 農水大臣は政府ですが、そういう自民党の中でどういう声があるんだというのは、余り関心がないんですか。

若林国務大臣 実は、自民党の中での議論は、まさに自民党の中で行われている議論でございまして、政府側、農林水産省の職員は、それに参加する場合もありますし、しない場合もあります。今回のこの問題については、我々は参加をしておりません。むしろ、遠慮していただいた方がいいというようなお話もあったと承知しております。

筒井委員 農水省が指導した今までの農政、農政改革が農家の実情や農家の意識と離れているから、自民党でさえもう農水省を外して議論せざるを得なくなってきた、こういう状況だというふうに理解していませんか。

若林国務大臣 どういうような意図を持って我々が呼ばれていないのかということについては、承知いたしておりません。

筒井委員 内外価格差がなくても、国内要因からそういう生産費と市場価格との差額を何とかしなきゃいかぬ。自民党の場合は、今の経営安定対策を前提にしていますから、これ自体間違いなんですが、しかし、その中で、ゲタ対策を主張している。民主党の場合は、もう初めから所得補償法案、この基本を、標準的な生産費と標準的な市場価格との差額を基本として考える。

 やり方はどうであれ、この生産費と市場価格との差額を、特に生産費の方が上がっている場合、上の場合、これはやはり補てんをする、支援をする、大臣、この必要性を感じませんか。

若林国務大臣 私は、それぞれの経営者が、置かれた条件の中で、生産に工夫を凝らし、努力をしているわけでございまして、すべての、すべてといいましょうか、一般的に言って、生産費を下回った所得しかない場合は差額を補てんしろというようなことは、我が農政として考えていくつもりはありません。

筒井委員 それは考えていないということを明確に言われたので、それははっきりさせておきます。

 それから、民主党の所得補償法案の中で、いろいろな曲解に基づく批判があるものですから、それについて申し上げておきますが、前の通常国会のときに基本法を出した。そのときに、生産調整廃止という条項があった。そして、今回はその条項がない。これは一体どういう矛盾なんだというふうな何か批判があるようでございますが、前の基本法のときには、生産調整の廃止という条項と同時に、国、都道府県、市町村、生産者が協議をして計画生産、生産数量の目標を設定する、この両方ともあったんです。

 そして、そのときには、生産調整の廃止というのは、今政府がやっている生産調整というのは、これは、水田で米をつくらないことに対して金を出すんでしょう。今の産地づくり交付金はそうですが、しかし、そういうものは廃止する。米をつくらないことに対して金を出すというのは廃止する、そういう意味なんです。そして、民主党のは、生産数量の目標を設定して、その目標に従って米をつくった場合に、それに対して所得補償するんですよ。

 だから、そういう点で全然矛盾はないんですが、そういうふうな曲解、誤解に基づく批判があるから、今回はそのうちの一方を削ったんですよ。生産数量の目標設定というのは前の基本法案でもあったんです。

 そして、現在、米価が本当に下がっておりますが、これを生産目標をはっきり設定して、民主党の場合ですよ、生産目標に、その計画生産に参加した、参加する農家にのみ所得補償する、これを明確にしているわけですよ。(発言する者あり)いや、ずっともう法律は出しているの。もう法律は出しているし、そのことをわけわからないうちに自民党も農水大臣も批判をしているから、前もって言っているんですよ。

 生産数量の目標に参加をした農家にのみ所得補償する、こういう方向ではっきりしているんです。

 今の米価下落の原因、先ほどから幾つか挙がっております。もちろん消費量の減少もあるでしょう。しかし、政府の生産調整に対する考え方、このあいまいさ、中途半端さ、これもその一つの原因だと考えませんか、大臣。

若林国務大臣 いろいろと委員がおっしゃられましたが、まず、民主党の提出された法案については、ひとつこの委員会の場で十分その設計、詳細について御説明をいただいて、それで与野党でその問題について十分なる討議をお願いしたいと思います。私の方はそういう状況でないとお話し申し上げられません。

 そして、私の方では今、民主党案がどうということではなくて、実は、ずっと政府が行政を通じて米の生産調整のために各市町村まで目標をおろしまして、そしてそれは市町村の段階で農家に結んでいたわけでございますが、三十有余年、この制度を、何とかその需要に合わせた形で生産調整をできないか、三十年を超えてこの努力をしてまいりました。しかし、どうしてもうまくいかない。

 それはやはり、銘柄別、地域別、そして経営者の規模別、もういろいろな差がありまして、米生産に対する取り組みの状態がそれぞれ、地域により、そして経営状況によってみんな違ってきておるものですから、それを、行政側が規制するという意味合いで目標を定めても、抵抗が多くてうまくいかない、実行上もうまくいかないということがあった反省の上に立って、十九年産から、むしろ生産者及び生産者団体が主体になって、そしてそれを行政がサポートするという形で、生産調整を地域で決めて進めてもらいたいということで、このことは、生産者諸団体も含め、かなりの討議、論議の結果、この十九年産からそのように仕組みを変えたわけであります。

 その意味で、国から県、県から市町村、市町村から農業者に、どのような作物をどのぐらいつくっていくんだというようなことを定めるということはなかなか困難ではないかなというふうに思っておりますが、それをどのように定めようとされるかについては、法案の提出者の方からそのことについてさらに詳細に御説明を承りたい、このように思っているところでございます。

筒井委員 国、都道府県、市町村が関与する形を民主党は法案の中に出しています。しかし、今大臣は、ことしからまさに生産者団体に任せたと。(若林国務大臣「任せたとは言っていない」と呼ぶ)まあ、それをサポートすると。これは責任放棄で、中途半端なんですよ。もしやるなら、もっと徹底してやらなきゃいかぬのです。やらなきゃ、もっと自由にさせればいいんですよ。中途半端過ぎる。これも今の米価引き下げの、米価が下がっている原因の一つと考えませんか。

若林国務大臣 今お話しいたしましたように、三十年来の、何とか行政側がすべて背負った形で生産調整を実行していくという努力を重ねてきましたが、いろいろな弊害があり、うまくいかないということから、生産者及び生産者団体とも十分協議した中で、主体は、やはり売れるルートを持っている、そして売れる見込みを持っている、そういうような生産者の意欲というもの、また販売の見込みというものも反映した形でなければ生産調整は難しいということから、農業者及び農業団体が中心になりながら、関係者が寄って市町村協議会を定めて、そこで決めていく。国は、あるいは県、市町村は、行政としてそれをサポートするという形にことしから切りかえたわけでございます。

 おっしゃられるように、その結果としてうまくいっていないじゃないかというような御指摘がございます。これは、実際どの地域において、どういう銘柄において、どういうところで食い違っているかということについて、今、詳細調査をしているところでございますが、一部の都道府県あるいは一部の地域においてこれがうまく作動しなかったということはわかっているわけでございます。

 全体の状況をよく把握した上で、さらに行政側のサポートの仕方について工夫を凝らす余地があれば、また工夫を凝らすような努力をしなきゃいけないと思っていますけれども、今のような形でこの調整が進むようにしていきたい、こう思っております。

筒井委員 民主党の法案の説明をしながら、そちらに対する質問をしたいものですから、まだ全然説明が終わっていないんです。

 それと、自民党の方から何か、民主党の所得補償法案について、ばらまきだ、こういう批判を、わけわからないと言いながらしているんです。中身がわからないと言いながら、ばらまきだと批判している。これほど自己矛盾はないんだよね。

 民主党のこの法案では、この所得補償は五階建てになっています。一つは、すべての販売農業者に出す。それから、品質についての努力をしている農家に対して加算をする。それから、規模の拡大努力をしている農家に加算をする。さらには、有機農業等々で環境に資する努力をしている農家に加算をする。さらには、水田で米以外のもの、先ほどこれも井上先生が聞いておりましたが、例えば全農さんが始めている、減反田で多収穫米をつくって、それからエタノールをつくってガソリンにまぜて売るという、例えばこういう主食以外のものをつくる努力をしている農家にこれも加算をする。こういう五階建てになっているわけで、明確に政策誘導を前面に出しているわけです、こういう方向性でやっていきたいということを。全然ばらまきじゃないことをまずはっきりさせておきたいと思います。

 それから、時間がないので、それについて答えはいいです、長くなるから。

 それから、もう一点違うのは、中山間地の直接支払い制度、これは結構評判がいいんですね。ただ、これは予算措置で時限措置なんです。これはよくないですよ、五年ごとに財務省がやめたい、やめたいといって。これに関しては、明確にやはり恒久化すべきだ。だから、この所得補償法案の中にこのことを法律制度として恒久化するものとして入れております。これについては、大臣、どうですか。

若林国務大臣 中山間地域の直接支払い制度、私も農業政策にずっとかかわってきた過程を通じて、ヨーロッパあるいはアメリカで行われました直接支払い制度には重大な関心を持って研究、検討をしてまいりまして、何か日本型の直接支払い制度というものを導入したいという思いでございました。

 ところが、日本型の直接支払い制度を制度設計として仕組むのはなかなか困難がありまして、特に平場、全体について適用することには無理があるということでございましたので、中山間地に絞ってまずは実証的にやってみようということで、ようやく実証がスタートを切ったところでございます。

 そして、五年経過した後で引き続き、引き続きの五年ということでこの制度を続けているわけでありますが、やはり、この制度につきましてどこまで広く、農業者、地域の人には非常に有効に使ってもらっているというふうに評価しているんですけれども、本当に広く国民的に理解を得られるような税金の使い方であるかどうか、施策の効果はどうかといったような観点から、第三者委員会を設けまして制度の内容について検討をしてきているところでございます。

 やはり、これだけの難しい仕組み、評判はいいことはわかっておりますが、批判もあるわけでございまして、そういう批判を受けながら改善を図っていくという意味で、この中身については検証をしながら実施していくというのが現実的ではないかと今考えております。

筒井委員 恒久化すべきかどうかについて答えがないんですが、時間がないから。

 それで、最後に、財源の問題についてお聞きしますが、民主党は、約一兆円、こういう主張をしております。この財源は一体どこから持ってくるんだということを、自民党は、あるいは大臣も、結構批判しております。

 今この経営安定対策だけに限定すれば、約一千七百億円余りですか、大体が。しかし、民主党の所得補償政策に対応するのを大体拾い上げて見てみますと、三千五百億、場合によっては四千億を超える額のものが現在対象になるかなという感じがしております。

 ただ、その項目がもう複雑過ぎる、今の農水省のこの予算は。何十項目にも及ぶんですよ。これじゃ、今大臣が言われた、国民の理解を求めようといったって、農家でさえわからないんだから。これは、もっとわかりやすくすべきですよ。(発言する者あり)ありがとう。

 それでなきゃ、国民の理解を得られるはずがないじゃないですか。どうやって一体説明するんですか。私、何回も聞いたけれども、私は頭が悪いからまだ今でもわからないわね。これは本当にわかりやすく透明化すべきです。

 そして、例えばそれが、さらに詰めなきゃいかぬですが、四千億円ぐらいあるとすれば、それは所得補償法案の方に横滑り。残りは、それでも六千億円足りません。

 これに関して、何か与党の皆さんは、あるいは大臣も、今ある予算を前提にして、そしてそこからあれを削って持ってくる、あれを一千億円、これを一千億円持ってきて、そういう形で財源をちゃんと説明せよという、これは無意味ですよ、民主党が政権をとったときには、予算の枠組みを全部変えるんですから。そんな、全部変えるのに、今の無駄遣いがいっぱいある予算の枠組みを正しいとして、あれを削る、これを削るといったところで、そんなのは無意味です。

 今度、民主党は、国会に独立行政法人、特殊法人廃止法案を出しました。これは、その事業は国にも移したり、あるいは民間に移したり、いろいろなことをやるわけですが、あの法案を実行するだけで財源は二兆八千億円出てくるんですよ。きょうは、この後、そういう無駄遣いの質問をいっぱいやる予定でいます。

 それから、参議院選挙で、民主党がマニフェストで出した、これをこういうふうにやったらこういうふうに財源が出てくるといって一覧表を詳しく出しましたが、あれは十五兆三千億円の財源が出てくるといって出しているんですよ。そういう、予算の枠組み全体を変えるんですから、その中から出してくるもので、今ある予算の枠組みの中から、間違いの予算の枠組みの中から、あれを一千億、これを一千億、こんな形で出せなんという要求自体が間違いなんです。

 このことをはっきり申し上げて、時間が終了したので、私の質問を、最後は質問じゃなかったけれども、終わります。

宮腰委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 若林農水大臣、お久しぶりでございます。二十五年間農水省にお勤めされて、農林水産行政でいえば本当に専門家でありまして、私の本日の質問に対しても、前向きに、そして力強い御答弁を期待いたしたいと思っております。

 先ほど自民党さんの近藤先生の方からも、まずは現場の声を聞くことが大事であるという大変すばらしい御意見がありました。それに対しても、大臣はそのように認識を持っておられるので、私も、実は、きょうこの質問をするに当たって、地元で酪農家の方たち、そしてまた水産の方たちともひざを突き合わせて意見懇談をして、きょうは切実な生の声を訴えさせていただきたいと思っております。

 まずは、日豪EPA交渉について、四月にオーストラリアのキャンベラにおいて第一回の交渉が行われました。八月には第二回目の交渉が東京で行われ、第三回目は十一月にオーストラリアで開催され、今後、実質的な中身について交渉が進む予定と伺っております。

 この交渉において、農産物、特に小麦、砂糖、乳製品などの十四品目の関税が撤廃された場合、畑作物、畜産物の一大産地である私の住む北海道は特に影響が大きいと言われ、今、農家の方たちが大変不安を持って営農されているわけでございます。

 改めて、今後の交渉に対する若林農林水産大臣の御見解を求めたいと思います。

若林国務大臣 日本と豪州との農業の状況というのは、月とスッポンといいますか、大変な構造的な違いがあるわけでございます。そういう意味合いで、この日豪交渉で、仮に農産物、主要な農産物について国境措置がないといったようなことを考えますと、主要な食料基地である北海道はもとよりでございますが、沖縄も含めまして、壊滅的な被害が生ずるだろうというふうに考えているわけでございまして、日本と豪州とのEPA交渉については、慎重な姿勢で臨んでいるわけでございます。

 我が国の農業は、地域の主要な産業として食料を生産、供給しているだけではなくて、自然環境の保全とか、良好な景観の形成でありますとか、文化の伝承、伝統の継承といったような多面的な機能を持っているわけでございます。

 日豪EPAに関する政府間の共同研究報告書におきましては、このような我が国の農業の重要性にかんがみまして、関税の段階的削減のみならず、例外措置であるとか再協議を含む、我が国農業を守る上で必要なすべての柔軟性の選択肢が用いられ得るということを確認いたしているわけでございまして、この本報告書を基礎として交渉が行われるという日豪双方の共通認識のもとで、我が国の農業をめぐる状況及びその重要性について豪州側の理解を得るように議論を行ってきたところでございます。

 今後の交渉に当たっては、引き続き、昨年十二月の本委員会における決議の趣旨、これに即しまして、守るべきものはしっかりと守るという方針のもとで、経営体質の強化に向けた国内農業の構造改善の進みぐあいも留意しながら、日本として最大限の利益が得られるように、今政府一体として交渉をしているところでありますし、一層の努力をしてまいりたいと思っております。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

仲野委員 今大臣から、慎重な姿勢で臨んでおられる、今後も一層努力をしてまいりますという決意をいただいたわけでありますけれども、これから第三回目の交渉、そして大筋合意、署名、発効となった場合に、特に北海道におきますと、大臣、その打撃の額、どれくらいの試算をされているのか。一兆三千七百十六億円という大打撃を北海道が受けるわけであります。これは北海道だけではなくて日本全体が大きな影響をこうむるわけでありますので、この関税撤廃ということを阻止するように、何とか力強い、相手国に足元を見られないような姿勢でぜひ臨んでいただきたいと思います。

 もう一度、大臣、御決意をお願いいたします。

若林国務大臣 日本の農業を守るという方針で、守るべきものはしっかり守っていきたいと考えております。

仲野委員 きょうは時間も余りないものですから、次の質問に入らせていただきます。

 アメリカにおいて、バイオエタノールの需要の急増により、飼料の主原料となるトウモロコシの需給が逼迫し、価格が高騰しております。さらに、このトウモロコシに加え、石油価格の上昇により輸送運賃がまた配合飼料の副原料の小麦及び大豆がそれぞれ高騰し、配合飼料価格は、平成十三年ごろ、一トン当たり三万円台から上昇し、ことしの十月から十二月期には何と五万三千九百円の高い水準で推移しているため、酪農経営に悪影響が及ぶことが大変懸念されているわけでございます。

 まず、今後の飼料価格の見通しについて、農水省の見解を求めたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 配合飼料価格でございますけれども、御案内のとおり、飼料メーカーによる自由な競争のもとで、飼料穀物の国際相場、為替相場、それから海上運賃等の動向を反映して形成され、四半期ごとに価格改定が行われているところでございます。

 この配合飼料価格に影響する要因の最近の動向を見ますと、まず、トウモロコシのシカゴ相場でございますが、一時、一ブッシェル当たり四ドルを超える水準で推移しましたけれども、当年のトウモロコシの作付の大幅増加、それから順調な生育、こういったこともございまして、最近では三ドル台で推移しております。為替相場でございますけれども、一時、一ドル百二十円台で推移しておりましたけれども、八月以降は百十五円前後で推移。それから、海上運賃は、堅調な船舶需要それから原油価格の高騰等がございまして、トン当たり百ドルを超える水準に上昇しております。

 本年十月から十二月期の配合飼料価格は、前期と比べ、約二百九十円引き下げられまして五万四千円前後となりましたけれども、今後の配合飼料価格につきましては、先ほど述べました種々の要因が影響するものでございまして、例えば、作付動向、生育状況、為替相場等を見通すことは難しく、今後の動向を注視していく必要があると考えております。

仲野委員 今こうして飼料価格が高騰している中で、なかなか乳製品への価格の転嫁が難しい状況にあるわけであります。この配合飼料価格の急激な上昇が起きた場合、畜産経営に及ぼす影響を緩和するための制度として、今、農家に対し補てん金を交付する配合飼料価格安定制度があります。飼料の高騰が長期化した場合に、基金は底をついてしまうのではないかと心配する農家の方もおられました。

 まず、この基金の枯渇のおそれはないのか、残高の状況について伺っておきたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 配合飼料価格安定制度によりまして、私ども、配合飼料価格の補てんを行いまして、畜産経営への影響緩和を図っているところでございます。

 この配合飼料価格安定制度の基金残高でございますけれども、これは今後の配合飼料価格の動向いかんによりまして変動するものでございまして、現時点でその見通しをすることはなかなか困難であるわけでございますが、仮に今後も現在の価格水準で推移するとしますと、通常補てん基金は不足を生ずる、あわせまして異常補てん基金も大幅に減少するということが見込まれているわけでございます。これに対しましては、異常補てん基金から通常補てん基金への貸し付け等によりまして、今後の配合飼料価格安定制度の安定的な運用に支障を生じることのないよう対処をしてまいりたいと考えております。

 また、この飼料価格の高騰に対しますつなぎ資金としてございます低利融資である家畜飼料特別支援資金でございますが、これについては十月の十二日付で発動させたところでございます。

 このつなぎ資金の発動につきましては、関係団体を通じまして広く農家に周知するとともに、円滑な貸し付けを行われますよう、金融機関等関係機関と連携をとってまいりたいと思っております。

 このような配合飼料価格の高騰に対処していくためでございますけれども、やはり国産飼料の生産、利用拡大、それから家畜の生産性向上、生産コストの削減ということが非常に重要でございます。こういったことを促進するとともに、生産コストの上昇が小売価格に適切に反映されるよう、加工流通業者、消費者等への理解醸成にも努力してまいりたいと考えております。

仲野委員 今局長からお答えいただきました配合飼料価格安定制度とまた別途に、このたびは、家畜飼料特別支援資金融資事業ということで、この制度が設けられたわけでありますけれども、これについては本当に評価をさせていただきます。

 ただ、やはり、こういった制度を出すときにも、窓口となるJAあるいはその融資を受けられる現場の生産者の方たちに対する周知徹底をきちんと図らせることと同時に、こういった窓口に行った場合、余りにも手続の煩雑さでもって途中で投げ出したくなるような、そうではなくて、現場に、今本当に困っている方たちに心を込めてしっかりと対応させていただくことと、その指導をしっかりと政府としてやっていただきたいことを要望させていただきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 今、北海道では、チーズの製造工場が三カ所、いよいよ来年度から本格的に稼働を開始することでありますが、これによって六十八万トンがチーズ生産へと仕向けられることになりますが、地元では、これによって生乳買い入れの単価が下がることが懸念されております。需要量がふえても利益が上がらないのであれば、酪農家の経営は改善されないことになります。

 ヨーグルトやチーズなどの乳製品の原料用の生乳に対して補助を行う生乳需要構造改革事業が国として行われておりますが、チーズの増産が始まる来年度に向けて、少なくとも所要の予算を確保する必要があると考えますが、どう取り組まれるのか、まずお伺いいたしたいと思います。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生既に御指摘のとおり、十九年度末から、大手乳業三社のチーズ新増設工場が順次稼働することになってございまして、北海道内のチーズ向けの生乳は、三十三万トンから、二十一年度には約六十三万トンへほぼ倍増する見込みでございます。

 このようにチーズ向けの供給を増加させるということは、今後、需要の伸びが見込まれる用途へ供給拡大をしまして、それで乳をできるだけ搾るということが北海道酪農の安定的発展を図ることになるということで、北海道の生産者が討議して選択したものであります。また、それを踏まえまして、乳業もチーズ工場の新増設を決定したものと承知しております。

 国としましても、こういった北海道の生産者の方々を支援するために、チーズ等向け生乳の供給拡大に奨励金を交付する生乳需要構造改革事業を十九年度から二十一年度の三カ年の事業として措置したところでございます。所要の予算の確保に努めていきたいと思っております。

 生産者におかれましては、乳業と連携してチーズ増産への取り組みを着実に進めまして、北海道酪農の基盤強化を図っていただきたいと考えている次第でございます。

仲野委員 私は、この委員会があるたびごとにチーズのことでいろいろ質疑させていただきました。

 事の発端は、チーズが自由化貿易でもって九割が外国から輸入されているということで、本当に私は、九割を輸入に依存しなくても立派に国内でおいしいチーズが生産できるのではないかということで、そのことを応援したい。

 しかし一方では、やはり農家に遜色のない形で、国としてもこういった生乳需要構造改革事業というものをつくって、バランスをしっかりととりながらやっていく、やっていただけると思うんですけれども、今後も力強く、生産者である農家の視点に立って、しっかりとそのことを政府として予算措置していただければということ、このことをお願いしておきます。

 今、飼料の高騰、あるいは農畜産物価格が上がらない、そんな中で、経営が厳しい、大変な状況にあるということで、離農する農家も少なくありません。

 地元からは、中長期かつ低利な資金として、農業近代化資金、スーパーL資金などの農業制度資金について、経営の改善に必要な支援策として期待する声が多くあります。農家の需要額を満たす融資枠の確保や農家が使いやすくなるための制度の拡充を求める要望をいただいております。農水省の見解をこのことについて求めたいと思います。

高橋政府参考人 担い手農業者の経営改善のための支援策といたしまして、農業経営に必要な長期、低利の前向きの資金を融通する、いわゆるスーパーL資金あるいは農業近代化資金につきまして、今回の農政改革の推進に当たりまして、十九年度から二十一年度までの三年間を集中改革期間といたしまして、この期間内に認定農業者が借り受けられる資金について、無利子で融通するという措置を講じておるところでございます。

 この資金の融資枠につきましては、直近の三年間の単年度貸付実績をもとに、この無利子化措置に係る需要増加ということを加味した融資枠を措置しているところでございまして、これについての積極的な活用を関係機関に働きかけているところでございます。

 その際、本資金につきまして、いわゆる借り受け者からの借り入れ相談については、日ごろ取引のございます農協あるいは銀行等の民間金融機関あるいは農林漁業金融公庫に相談をいただけますと、この融資機関相互においてきちんと連絡をとり合う、Lそれから近代化資金の相互の資金融通ということをきちんと相談するということで、窓口におけます適切な対応、丁寧な対応に心がけてまいりたいと思っております。

仲野委員 こういった制度があっても、窓口に相談に行くとなかなか使えないような状況にあるということで、何とか政府に対してこの予算の確保、そして窓口への対応をしっかりとやっていただきたいことを要望しておきたいと思います。

 次の質問ですけれども、今北海道は、飼養頭数も非常に大きい、設備の規模が大きいということで、気候が本州と異なることから排せつ物の処理が進みにくく、家畜排せつ物の処理問題について伺ってまいりたいと思います。

 そのような状況の中で、排せつ物処理の一つの方法として、排せつ物を嫌気性発酵させることにより生じたメタンをエネルギー源として利用するバイオマスがあります。道内においてももう既に数カ所取り組まれておりますけれども、このバイオマスはエネルギー源として今注目されていること、また、二酸化炭素の削減のみならず、温室効果ガスであるメタンも燃焼により減少することにより、地球温暖化にも二重に資するものであります。さらに、発酵により脱臭が進むため悪臭対策にもなります。農地への還元がより適切に行われることから、水質の汚染が防止されるなど、周辺環境対策面でも利点が多くあり、このバイオマス製造プラントの整備についてどのように考えているのか。

 一方では、大変このプラントの整備には初期投資の負担が大きく、整備の促進には国の支援が必要だとの意見を多く酪農家の方からいただきました。どのように取り組んでおられるのか、農水大臣にお伺いいたしたいと思います。

若林国務大臣 私は、この間まで環境大臣をやっておりまして、地球温暖化対策、さらには、総合的な環境保全のためにいろいろな努力をしてきたわけでございます。

 そういうことも踏まえてお答えを申し上げますと、家畜の排せつ物の処理については、まず、堆肥化をする、堆肥にしていくという利用が第一義的に努力されてきたわけでございますが、御指摘のようなメタン発酵によるエネルギー利用につきましても、資源の有効活用あるいは地球温暖化防止の観点から大変重要な対策だと考えておりまして、地域バイオマス利活用交付金だとか、あるいは畜産環境総合整備事業、これは公共事業ですけれども、それらによって施設整備等の支援を積極的に推進しているところでございます。私も、現地で既にこれを有効に、メタン発酵をして、発酵したメタンガスから発電をして自分の電力に使用しているというような酪農家をお訪ねしたこともございます。

 このメタン発酵を利用した家畜排せつ物のエネルギーの利用につきましては、生産農場での施設の維持経費、光熱費、先ほど言いましたような電気にしましてその節減が可能になっておりますし、閉ざされた施設、密閉施設内で処理するために、委員がお話しのように、悪臭が外部に漏れないというようなメリットがある一方で、実は、メタン発酵施設の整備費が大変割高になっております。メタンガスを抽出した液状残渣の処理、最後の残渣処理、利用が必要になってまいります。これをどのような形で処理するかといったような課題もありますことから、これらの課題解決に向けた検討を今あわせ行っているところでございます。

 今後とも、メタン発酵施設の整備については、地域の実情に応じてこれを積極的に推進していきたい、こう考えております。

仲野委員 大臣は環境大臣もやられて、非常に環境に対してもすばらしい御見識を持たれている方ですので、こういった意味で、環境対策の観点からもぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 最後の質問に入らせていただきますけれども、最後に、漁業経営安定対策について質問させていただきます。

 来年度から、現行の漁業共済制度の経営安定機能に上乗せした形で、新しい漁業経営安定対策を導入する予定であると伺っております。収入の変動による漁業経営への影響を緩和する制度を導入することについて、これは評価させていただきますが、問題はその詳細な対策の内容でありまして、そしてまた対象となる漁業者について、どういった方たちが対象になるのか、まずお伺いしたいと思います。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

山田政府参考人 ただいま、新たな漁業経営安定対策についての御質問がございました。

 新たな漁業経営安定対策につきましては、今委員が御指摘ありましたように、二十年度から導入するということで、現在その仕組み等を検討しております。

 検討している仕組みとしましては、四つほど簡単にポイントを申し上げますと、効率的かつ安定的な漁業経営を目指して、積極的、計画的に経営改善に取り組む漁業者を対象とする。

 それから二番目としまして、大きな災害にも対応できるよう現行の漁業共済に上乗せした形とするということ。

 三番目に、収入の減少が生じた場合に、漁業者の拠出と国費の助成による積み立てを原資としまして、その一部を補てんする、損害の一部を補てんするということでございます。

 四番目に、漁業共済団体が全国に展開する組織や収入の把握などのノウハウを活用した形とするということでございます。

 対象となる具体的な要件につきましては今後検討していくこととしておりますけれども、沿岸の漁業者等につきましても、この要件を満たしていただければ対象となるということでございます。

仲野委員 今北海道も、特に沿岸漁業者の方たちが非常に多いということで、私の選挙区であります釧路、根室の漁業の町は昆布の方たちが非常に多いということで、こういった昆布の漁業者の方たちも対象となるのか、ここを一つ確認させていただきたいと思います。

山田政府参考人 ただいまお尋ねがありました昆布などの沿岸漁業者の方が対象になるかということでございます。

 この加入の要件につきましては、経営改善計画を策定したり、あるいは所得水準、漁業共済への加入、年齢等に関する要件を設けることにしておりますけれども、先生からお話がありました昆布漁の方々など沿岸漁業者についても、こういった要件を満たしていただくということで加入の対象になっていくということでございます。

仲野委員 きょうはちょっと時間がなかったのですけれども、最後に、私たちが生きていくためには欠かせないこの農業、漁業、食を供給するという観点から、農林水産漁業、この一次産業が大変大事な産業ということで、大臣から今後の農林水産漁業に対する執行に当たって決意を一言伺って、終わらせていただきたいと思います。

若林国務大臣 農林水産業は、国民に対して食料を供給しているというのみならず、環境の保全、あるいはまたその地域社会の伝統文化を継承する、さまざまな多面的な機能を有しているわけでありますから、農林漁業そして農林漁業が営まれる農山漁村が活力があるという状態でなければ国自身も正常に運営されていかない、国政上の重要な課題であるというふうに認識いたしております。

 とりわけ北海道は、全国の農業産出額の一二%を占めるという我が国最大の食料供給基地でありまして、そういう意味でも重要な役割を果たしておりますので、今までも土地利用型農業を中心に生産性の高い農業経営が営まれてきた、そしてその実現に努めてきたというふうに認識しておりますし、水産業につきましても、日本の海面漁業、養殖業の約二五%、四分の一を占めている、生産額についても一九%を占めるなど、北海道は農業、水産業ともにそれぞれ全国の第一位と重要な地位を占めているわけでございます。

 このような北海道農業及び漁業の重要な位置づけ、今後もいささかも変わることがないと考えておりますことから、私としても、北海道の農業、漁業がさらに力強く発展することを望み、そしてまた、そのために施策を有効に展開していきたいと考えております。

仲野委員 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 きょうは、大臣への一般質疑の時間をいただきましたので、農林水産業の基本施策に関して議論させていただければと思う次第でございます。

 私、農林水産委員会は初めてでございますけれども、もともとが、かつて財務省に勤めておったものですから、経済とか財政とかそれの方が専門分野でありますし、そういうふうに思われていると思いますけれども、実は、実家は農家でございまして、一人おります姉も兼業農家に嫁ぎまして、佐賀平野で親戚がいっぱい農業をやっております。有明海でノリや漁船漁業をやっている親戚もたくさんおりまして、そういう意味で農林漁業、日本の一次産業をいかに正しく導いていくかというのは非常に重要な論点だと思っておりますので、これからもしっかり、これまでもやってきたつもりでございますし、今後もこの農林漁業水産政策に関してはしっかり取り組んでいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 そういう観点から、きょうは大臣に、税金の無駄遣い、そういう観点から議論させていただければと思います。

 これはどういう意味かと申しますと、先ほど大臣、まさに最後に仲野委員の質問にもお答えになりましたように、農林漁業、日本の一次産業、食を支える極めて重要な産業でございます。であるがゆえに、これをしっかり守っていかなければならない。財政も厳しい折でございますので、限られた資源を有効に使って、効率的に使って最大限の効果が発揮されるようにしていかなければならない、そういう意味からでございます。ですから、予算を削れ、削れ、そういうふうな意味ではございませんで、どういうふうにすればよりよいところに予算を配賦していけるのか、そういう考えでございます。

 農業をやられている方、林業をやられている方、漁業をやられている方のところにできる限りきちんと農業予算が届くような形にしていかなければならない、どこか途中の中間団体のようなところに無駄に費消されてとどまっていたりしてはいけない、そういうふうな非効率がないかという側面の検証をしっかりやっていかなきゃならないというふうに思う次第でございます。そういう観点からの税金の無駄遣いに関する議論でございますので、よろしくお願いいたします。

 さて、まず大臣に冒頭ちょっとお尋ねしたいのは、先般報道にもなりました若林大臣の後援会の幹部の方が、いわゆる補助金を受ける団体、この場合は魚価安定基金でございますけれども、理事長をかつて務めていらっしゃった。理事長を務めていらっしゃった時期に大臣の後援会の幹部もされていた。

 そういう中で、その魚価安定基金という公益法人であり、かつ、補助金を受ける団体、ここから大臣の後援会に対するパーティー券の購入が行われた。これが、いわゆる公務の真正性といいますか公務の公平性、あるいは補助金というものが公正にちゃんと管理されているのかという点において疑問がわくのではないかという点において相当な国民の注目を集めたんだと思います。

 大臣、まず所感をお尋ねしたいんですが、この件、公益法人であり補助金を受けている団体、ここの理事長の方が大臣の後援会の幹部をされていて、しかもパーティー券も買われていた、この件に関して、大臣としてはどのような所見をお持ちなのか、よろしくお願いします。

若林国務大臣 報道されましたパーティー券の購入でございます。

 基本的に、パーティー券はパーティー参加の対価として支払われるものでございまして、寄附とは異なりまして、補助金受給団体による購入は法律上は禁止されておりません。御承知のとおりだと思います。

 しかし、所管大臣として国民の信頼を損なうことがないようにという私の思いから、私の政治団体であります東京正風会の代表者でありました佐竹五六氏がこの魚価安定基金の理事長を務めていた平成十四年二月から十七年六月までの間のパーティー券の購入分については、合計で十一万円でありますが、九月七日に全額返済をしたところでございます。

 ちなみに、十四年は二枚四万円、十五年は二枚四万円、十七年の二月が一万円、四月が一枚で二万円、こういう額でございますが、実は、これは魚価安定基金そのものがパーティー券の負担をしたものではありませんで、魚価安定基金が事務局をしておりますが、漁業共同研究会という研究会を組織いたしておりまして、この研究会がパーティーに参加するということで参加費を負担したというふうに承知いたしております。

大串委員 今の経緯は、大臣、記者会見でも述べられましたね。確かに法律上違法ではございません。違法ではない。

 しかし、私が問題にしたいと思っておりますのは、この全体の構図といいますか、いわゆる補助金を受ける団体の方々、そしてこの魚価安定基金の内容を見てみますと、設立は昭和五十一年でございます。基本財産こそ民間の方々の出捐も得ておりますけれども、その後の事業費に関しましては、ここで行っている事業は、大まかに申しますと、水産業協同組合の方々が、値段の下がる、魚価の下がる時期に大量買い取りをして、それを端境期に放出するという形で価格の平準化を図られるわけですけれども、その水産業協同組合の方々に対して、その買い取りの費用を助成するとか、あるいは買い取りの費用を貸し付けるとか、そういうふうな作業でございます。

 この業務自体は極めて重要な業務でございまして、私自身、そこに異論を挟むつもりは全くありません。大変重要、食の安全、安心を守るという観点からすると、まさにこういうことは政府としてしっかりやっていかなければならない。

 ただし、そこにいささかの問題といいますか、曇りがあるかどうかというと、これは別物でございまして、今こういうふうなことを行っている、極めて公益性、あるいはほとんど公法人と言っておかしくない、そういう法人でございます。先ほど申しましたように、資金関係も、ほとんど公のところから流れてきた資金を使って事業を行っている。

 委員長のお許しをいただきまして資料を配付させていただきましたけれども、資料の二枚目を見ていただきますと、役員名簿を見ておりますと、理事長の方は農林水産省の元構造改善局長を務められていらっしゃる方でございます。ここは、前に大臣の後援会の方がやられていたポストですね。常勤の専務理事の方も農水省から来ていらっしゃいます。さらにもう一人非常勤の理事の方もいらっしゃる。残りの非常勤の理事の方々は、いわゆる水産業協同組合の方々がずらりと並んでいらっしゃる。

 こういう構図で、もう一つ申し上げると、ここにずらりと並んでいらっしゃる水産業協同組合の皆さんは、いわば、この魚価安定基金のスキーム、助成やあるいは買い取り金の貸し付けで、それを受け入れる、そのメリットを得る、そういう方々でいらっしゃるわけですね。

 そういうふうな方々、そして、なお申しますと、先ほど大臣おっしゃいましたですね、これは魚価安定基金がパーティー券を買ったのではなくて、魚価安定基金が主宰をしているといいますか事務局を務めている研究会、研究会をやられていたと聞きました、研究会の方々がパーティーに参加するということでの出捐だったんだということでございました。

 よくよく聞いてみますと、その研究会を構成されていた皆さんは、ここに並んでいらっしゃる大日本、全国水産加工業協同組合連合会の方々や、あるいは北海道漁業協同組合連合会の方々、日本遠洋旋網漁業協同組合の方々、こういう方々が入っていらっしゃる。

 すなわち、補助金を得て、その補助金の恩恵をこうむられる方々の研究会を、魚価安定基金が事務局をつかさどる形で運営をしておる。その事務局を行っているという立場で、この方々がパーティー券を購入するのを、魚価安定基金が、会見でもおっしゃっていましたけれども、領収書は魚価安定基金の名前で切るという形でなさっている。そこに非常な不透明性といいますか、混同といいますか、ある。

 違法ではないので、そこは問題ないんだと思いますけれども、ただ、職務の公正性あるいは補助金の中立性あるいは公正性というものを大いに疑わせる、そういう構図といいますか、風土といいますか、そういうものがあり得るんじゃないか。お一人お一人は善意でいらっしゃっても、この構図自体が大きな問題ではないかというふうに思うんですが、大臣、どうですか。

若林国務大臣 そういう意味を込めまして、魚価安定基金からの支出ではありませんけれども、一般的に外形的に観察をしますと、今おっしゃられたような御指摘もあり得るということを考えまして、私は、そのパーティー券の購入分、十一万円ですけれども、全額を返還、返金したところでございます。

大串委員 事実の確認なんですけれども、大臣、今回、魚価安定基金の方が事務局をつかさどっているということで、魚価安定基金の方の領収書を振り出す形で、この研究会の方々のお金を用いてパーティー券を買われた、そういう問題があるわけでございます。

 ここ、魚価安定基金は農水大臣所管の公益法人でございます。監督大臣として何がしかの指導をされたんでしょうか。

若林国務大臣 指導というのはどういう意味ですか。

大串委員 先ほど申しましたように、これは公益法人で、農水大臣所管の公益法人ですから、民法上、大臣は公益法人に対して監督の権限を持っていらっしゃいます。

 この魚価安定基金、何を業務として行うかというのは定款にきちんと書いてありますね、定款にきちんと書いてある。この定款や業務方法書に照らして、先ほど申し上げました研究会の方々の事務局を務める、これも私は異論を差し挟むつもりはございません。

 ただし、その研究会の方々は、研究会を行うという名義でいろいろな研究会用の費用をプールされていたわけですよね。そのお金の中からパーティー券を購入されている。

 ですから、お金の出元はもともと水産業協同組合の方々であるにもかかわらず、領収書を切ったのはあたかも魚価安定基金であった。しかも、そのときの理事長さんは大臣の後援会の幹部の方であった。

 こういうふうに、これは、考えようによっては、大臣、法律として、パーティー券を買った人はきちんと、パーティー券をだれが買ったかというのは明らかにしなきゃいけないんです。ちゃんと、パーティー券を何万円以上買ったら公開しなきゃならないとか、そういうふうな決まりもございます。(発言する者あり)はい、あります。

 ですから、だれがこのパーティー券を買ったのかというのは、非常に実は法律の根幹として重要なんですね。それを、領収書を切ったのは、事務局をやっているからということで魚価安定基金の方が切られている。これは非常に事務の取り扱いとして問題があったんじゃないかと思うんです。

 これに関して、公益法人に対する監督権限を持つ者として何がしかの指導をなさったかということなんです。

若林国務大臣 今お話がございました、パーティー券の購入について公にするのは二十万円以上ということになっておりまして、二十万未満の場合は別に公表をするような仕組みになっておりませんということを一言申し上げたいと思います。

 なお、この魚価安定基金につきましては、水産庁の漁政部長から、当該基金に対しまして、公益法人としての本来の業務に支障を来すことがないように、万が一にも国民の不信を招くことがないように、適正な業務運営の徹底に努められたいという指導をいたしております。

大串委員 それだけでしょうか。聞くところによりますと、この魚価安定基金の方で、同じような時期に、大臣以外の政治家の方のパーティー券も買われているやに聞いております。その例は確認されたんでしょうか。

 その例を確認された場合に、同じく研究会のお金であったにもかかわらず、魚価安定基金の名前といいますか名目で領収書を振り出しているというような、同じようなことを行っているということは確認されているのかどうか。もし確認されているとしたら、指導を行われたかどうか、その点についてはどうでしょうか。

若林国務大臣 私は、一般論として、先ほど申し上げましたけれども、このパーティー券の購入というのは、いわばパーティー事業に対します参加費でございますから、いわゆる寄附とは性格を異にしておりまして、法律上も禁止をされていないわけですね。そういうような性格でありますから、特に公益法人が業務の運営に支障を来すようなことがあってはならないと思いますが、そういうことでない限りにおいては、それは公益法人の判断に任されているというふうに考えております。

 なお、私は監督者としての農林大臣でございますので、私が農林大臣をしている限りにおいては、補助金交付を受けた団体がパーティー券を購入するというようなことは、私の方で受けないというふうにするつもりでおります。

大串委員 業務が適正に行われているかどうかというところがまさに問題なんです。これは非常に重要な業務をやっている基金でございます、非常に重要。だから、私もぜひ頑張っていただきたいと思います。だから、業務の執行に関しては、いささかの不透明性や疑念を抱かせることがあってはならないという観点から申し上げさせていただいているわけでございます。

 先ほど申し上げましたように、業務を適正に行っていないのならば、公益法人の監督者として指導していただかなければならない。その前提として、例えば、他の政治家の方々のパーティー券を買われたということでございますので、同じく、お金の出どころは研究会だけれども、魚価安定基金の方が名前を自分の名前だというふうに使われて出されている。すなわち、あたかも魚価安定基金の方々がプールしたお金を自分のお金であるかのごとく使っているというような不公正性はなかったか、そこら辺を確認されたのか、確認されているとしたら指導をしなきゃならぬと思いますけれども、どうなんですかということをお尋ねしているんです。いかがでしょうか。

若林国務大臣 私の場合もそうですけれども、私の方が誤認をしたわけでありまして、返済をするときは共同研究会の方に返済をしております。

 他の事例につきましても、研究会名で納入され、そして、研究会がパーティーに参加したということになっているということを確認いたしております。

大串委員 まさにそういうところです。先ほど申し上げましたように、この魚価安定基金、公益法人でございまして、非常に重要な業務を行っていただいている。公的なお金を使って、それをやっていただいている。基本財産については民間の出捐がありますけれども、基本的には公的なお金を使ってやっていただいている。そして、農林水産省の方々がたくさんここに天下りをされている。そういうふうな非常に公共性の高い法人でございますので、いささかもその業務の執行においては国民に不信を抱かせるようなことがあってはならない、そういうことなんだという考えから指摘をさせていただき、質問させていただいたわけでございます。ぜひ、大臣にはしっかり執行のところを見ていただきたいと思います。

 ここで私が申し上げたいのは、公的な業務の信頼といいますか、公正性に対する国民の不信の目を呼び込んではいけないという、それに対して非常に注意して行っていかなければならないという観点でございます。

 この観点からすると、私、非常に不思議に思ったのが、この魚価安定基金、業務は、先ほど申し上げました、漁がたくさん行われるときに値崩れしないように水産業協同組合が大量買い取りします。この買い取り代金を助成する、あるいは貸し付けるということでございますけれども、それを行うための資源、基金の造成に関して、これが本当に適正かということで、総務省の行政評価の方から指摘をされていらっしゃいますね。この指摘の内容と大要について、大臣、御答弁ください。

若林国務大臣 魚価安定基金の基金造成事業につきましては、平成十八年八月に、総務省行政評価局より、調整保管による買い取り規模、金額でございますが、これについて、事業計画と事業実績の乖離を縮小すべきであるという指摘を受けたところであります。

 農林水産省としては、その勧告を受けまして、事業計画と事業実績の乖離を縮小するという観点から、これまでは総漁獲量を勘案して算出しておりましたが、平成十九年度からは最新の買い取り実績を踏まえたものに見直したところでありまして、その結果、調整保管に係る事業計画は、平成十八年度の二十九億円から、平成十九年度は六億円に縮小したところでございます。

大串委員 資料の一ページに今おっしゃった点は書かせていただいております。

 すなわち、私が申し上げたいのは、先ほど、この魚価安定基金、パーティー券を購入する、あるいは理事長さんが大臣の後援会の幹部を務めていらっしゃるという意味において、政治と非常に近い関係を持っているというのを国民の目にあらわすわけでございます。

 ところが、その魚価安定基金に対する補助金の交付等を見てみると、十八年の総務省の行政評価による補助金に関する調査の指摘において、今おっしゃいましたように、魚価安定のための買い取り代金を造成するための基金、これの算出が非常に甘い、毎年二十億弱の国庫からのお金が流れていたわけですけれども、実際に買い取りのために使われていた割合は極めて低い、だから見直しなさいという指摘を受けていらっしゃるわけでございます。

 それに対して対応をとられたということで、事業実績、事業見積もりを今度は低目に抑えて想定されているということですけれども、聞くところによりますと、十八年度まで行っていた仕組みにおいては、今大臣がおっしゃったように、非常に実績が低い、予算を使い切れていないという問題があったので、十九年度からは、新しい事業をつくって、実際国庫から流れているお金は十四億円、前と変わらない程度のお金が流れている。事業の内容を聞きましたけれども、実は、名前は変わっておりますけれども、前年の事業とほとんど変わっておりません。現段階までの十四億円に対する進捗率を聞きましても、現段階で承認されたものが五億強、これがどのぐらい年度内に実際出捐されるかわかりません、そういう答えです。

 大臣、この辺、補助金が、本当にきっちり必要なものが精査されて、ここに行くようになっているのかというところが私は非常に疑問なわけであります。

 さらに、大臣よろしいでしょうか、このように、ここに対する資金の交付は私は非常に甘いんじゃないかというふうな感じを持っておりまして、資料の三ページ、四ページを見ていただきますと、収支計算書そして貸借対照表を見せていただきますと、あれっと思わざるを得ないことが非常に多いわけでございます。

 先ほどおっしゃいましたように、買い取り事業、大体十何億というオーダーで行われています。そういうふうな業務をなされているところなんですが、収支計算書の決算額の一番下、繰越収支を見てみますと、七十六億、約八十億円です。八十億円もの繰り越しが毎年出ているんです。

 次のページを見ていただくと、何でこんなになっているんだろうというふうに思いますと、当然それは貸借対照表上もあらわれます。貸借対照表上で見ると、流動資産、丸で囲っているところを見ていただくと、普通預金が六億、定期預金が五十六億、そして有価証券が二十二億、全部で約八十億以上のたまり金があるんです。この中の一部は、おっしゃるとおり、買い取りを行うための基金のたまり、十数億ある、十八億ぐらいあると聞きました。ですから、その部分がある。

 残りは何かということを考えますと、残りの説明も受けました。買い取りに対する貸し付けですね。水産業協同組合の方々が魚産物を買い取られる、買い取りのためのスキームを持っていらっしゃって、これに対するいわば資金がありますと。

 この資金の造成は、昭和五十一年から昭和五十八年にかけて四十六億円拠出されました。これは政府からですね。民間の拠出はありません。政府が基金をつくったわけですね。これがもととなって、今、水産業協同組合の方々が買い取りをされるということに対する貸し付けの原資とされている。しかし、この事業規模も非常に少ない。

 これは、貸借対照表を見ていただくと、損失貸付金、買取資金貸付金というのが丸の下にありますけれども、残高でいって、損失貸付金が四億、買取資金貸付金が七億、十億程度しかございません。

 なぜこんなにたまり金を持つ必要があるのか。もともとの資金造成、四十六億を五十一年から五十八年において出した。これはそのときなりの理屈があったんだと思いますけれども、今においてもこれだけの資金を、公的から出たお金の資金を持つ必要があるのか。こういう点から見ても、ここに税金のいわば余剰部分があるんじゃないかということなんです。大臣、いかがですか。

若林国務大臣 魚価安定基金は、委員がおっしゃられましたように、漁業者団体が国産の水産物の調整保管事業を行う際に、水産物の買い取り代金の金利や保管料について助成を行うほか、漁業者団体が必要とする買い取り資金等の貸し付けの業務を行っているわけでございます。

 魚価の安定に関する買い取り資金や助成金の規模は、豊漁、不漁や金利の状況等によって大きく膨らむ可能性がありますから、過去の業務の実施状況等も考慮して、魚価安定基金の判断として資産の流動性を高くしているものでありまして、私どもは、この資産流動性の高さを不当なものというふうには考えておりません。

 近年における貸し付けの実績を見ましても、最高貸し付けをしました二〇〇三年は四十九億円の貸し付け、助成実績が同じ年度で十八億円で、合わせて六十七億円ということでございます。

大串委員 今大臣は、過去においても貸付金を四十九億やった年がありますというふうにおっしゃいました。これは大宗が短期の貸し付けです。ですから、返ってきているお金もあるんです。これは、金融的な仕事をやっていますので、貸し付けるお金もあれば、返ってくるお金も、短期ですからくるくる回っているわけです。これだけのストックのお金を持つ必要は、こういうふうな業務を行うところにおいてはないわけであります。

 であるがゆえに、資産の保有状況も、定期預金及び有価証券等、流動性としては一段低いものになっています。本当に流動性が、いつ何どき、大漁、不漁によって必要だということであれば、この定期預金、有価証券においては、より普通預金に近い形で持っていなければならない、こういうふうになります。

 この辺が非常に矛盾しているわけでございまして、こういうところから、大臣、無駄遣いの芽を摘み取っていく可能性は十分にあるんだと私は思います。ここが、先ほど申しましたけれども、いわゆる政治とのつながりとか、そういうことによって、どこだけが補助金を多く受け取っているというような疑念を持たれてはいけないんじゃないかと私は思うんです。

 かつ、繰り返し申します。この基金の業務は極めて重要です。水産業に携わる方々の所得を安定する、生活を安定するという意味で極めて重要です。ですから、適切な財政支出は必要だと私は思います。だから、それを、どこかにたまっているとか、そういうふうな形にしないで、きちんと使えるようにしなければならない。

 そういう観点からの質問なんでありますけれども、大臣、このたまり金について、きちんと見直して、より効率的なところに、農林水産業に関して必要な予算、たくさんあちこちでございます、これをもう一回見直されるつもりはございませんか。

若林国務大臣 先ほどお答えしたとおりでございまして、豊凶の差など、いろいろ考慮した上で事業量が膨らむ可能性があることから、過去の業務実績を勘案して、考慮して定めているものであります。

 なお、その資金運用の方法として、それによって支障があるのかどうか、つまり、定期預金のような、流動性がもっと高いもので運用したらいいのではないかというようなことは、事業のそういう貸し付けなどが生ずるようなことが、どのくらいの頻度で、どういう形で出てくるかということを考慮しながら、経理的な実務としてそのように行われているんだと思いますけれども、委員の御指摘でございますので、水産庁として、魚価安定基金にその状況についてよく聴取をしていきたいと思います。

大串委員 予算の無駄遣いの問題でございます。これは無駄かどうかよく精査していただきたい。これは非常に業務としては重要なんです。業務としては重要だから、一番効率的な、効果的な使い方をしていただきたいというふうに思います。必要な予算は必要なものとして措置していただいていいと私は思っています。ただ、しっかり見るべきものは見直していただきたい、そういう趣旨です。

 先ほど来お話ししましたけれども、要するに、税金の無駄遣いというのは、いろいろなところで、こういう一つ一つの細かいところを見ているとたくさんあります。

 大臣、この間、菅代表代行と予算委員会で議論されたときに、民主党の戸別所得補償政策、一兆円の財源、こんな簡単に出てくるんだろうかというふうな話をおっしゃいました。

 一つお尋ねします。

 私たちは無駄遣いの削減から一兆円の部分は出てき得ると思っていますけれども、大臣はそれが出てこないとおっしゃった趣旨のところには、大臣であれば、農水省予算は、どれだけ無駄を削れて、これだけしか削れないから一兆円は出てこないというふうな分析の上でしゃべっていらっしゃるのかどうか。いかがですか。

若林国務大臣 予算委員会におけるやりとりの御質問がありましたので、一言申し上げますと、あのとき菅委員が、農林省の予算の中から一兆円出るんだということをおっしゃられたんですよ。そこで、農林省の予算、特に公共事業というふうにおっしゃられたんです。

 公共事業は、農業公共は七千億ほどですが、林野、水産も含めて約一兆円あることは承知いたしておりますが、それらの予算のうち、約半分、四割強が補修、保全、そういうお金に使われているんです。古くなった水路だとかサイホンだとか農道だとか、そういうものを補修していく、そういう補修の費用に使われているんですよと。だから、それがそっくり回せる、無駄で、節約できるというふうには直ちにはなりませんよということを私は申し上げたんです。

 今のお話でありますと、農林予算につきましては、平成八年が三兆六千億という、これがピークのときでありますが、その後、歳出抑制を努めてまいりまして、今年度、平成十九年度は二兆七千億まで削減をして縮小をしてきているわけでございます。

 その過程で、その時々の政策課題に対応するために、効率化、重点化に努めてきているところでありまして、現状において、食料の安定供給、あるいは農林水産業の振興や農山漁村の活性化といった使命を果たす上で、今の農林予算は必要不可欠であり、新しく来年度に目がけて要求も出しておりますが、今の施策の評価、検証を適正に行いながら、無駄のないような形で、めり張りのある予算要求をしているつもりでございまして、今どれだけあるかということについては、お答えすることができません。

大串委員 これで終わらせていただきますけれども、大臣も役人でいらっしゃったからよくわかると思います。予算は細部にかぎが隠されています。例えば、単価一つでも一割増になっていたら、予算全体が一割増になります。細部をよく見ていただいて、魚価安定基金だけ見ただけでもこういうふうな課題があります。ほかのところも細かく見させていただいていますけれども、細かく見れば見るほど、いろいろな問題が私、今見えてきました。また、細かくでございますけれども、一つ一つ具体的に議論させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 数点にわたって大臣の見解をお聞きしてまいりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 先日の若林大臣のごあいさつを拝聴しまして、農林水産行政には、内外にわたる政策課題が山積しているとの指摘、まさにそのとおりだと思います。

 さきの通常国会から今日までの間、松岡、赤城、遠藤という三人の農水大臣が政治と金の問題、あるいは補助金交付団体からの献金受領などによって交代を余儀なくされました。

 ところが、先日の大臣のごあいさつには、政治と金の問題などで農水行政に対する信頼が揺らいでいることへの反省の弁は、残念ながら見当たりませんでした。この間の経緯を率直に反省し、農林水産行政への信頼を取り戻すこと、このことが若林大臣に求められている最大の任務だと思うのですが、これまでの経過をどう認識されているのか、見解をお聞きいたします。

若林国務大臣 私の前任者が三人、大臣をおやめになりました。その事情が政治と金、そういうような問題であったかどうかについて、私はこのことを言及することはできません。それぞれの大臣が、それぞれの政治家としての身の処し方として、全体の状況を判断した上でおやめになったものというふうに考えております。

 しかし、それにしましても、短期間の間に三人も大臣がかわるということは、決して通常の状況でございませんで、いろいろと報道をされ、あるいは指摘をされたという背景、事情を考慮しますと、農林漁業者はもとよりでございますけれども、関係の皆さん方に、農林漁業行政に対する不信というものが受けとめられたことは十分考えられることでありますし、また、農林水産省の行政にかかわっている職員も、そのことによって何か自分自身が気落ちをするといいましょうか、あるいは行政執行に対する意欲といいますか、そういうことにも影響を与えることがあったのではないかというふうに考えられるところでございまして、大変遺憾なことだったと私は思っております。

 そういう意味で、今後、短期に大臣が、いかなる事情であれ、このようにかわるということは、決して好ましいことではないというふうに考えております。

菅野委員 私が問いただしているのは、農林水産行政に対する信頼を若林大臣がどう取り戻していくのか、その決意の披瀝を問いただしているというふうに思うんですが、その決意がなければ信頼を取り戻すということはなかなか大変なことだと私は思っています。

 ぜひ、若林大臣に課せられた任務というのはそのことが重要だということを認識しているというふうに思いますけれども、内外に明らかにしながら、山積している課題を解決するためにも、信頼を取り戻すようしっかり取り組んでいただきたい、このことを申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、政府の農業政策のあり方について質問します。

 ある農業紙の参議院選挙前の農政アンケートで、政府・与党が進める品目横断的経営安定対策への支持はわずか二三%、これに対して、私ども社民党も長年主張してきておりますが、民主党が政策提言した戸別所得補償については五四%の支持がありました。

 若林大臣は就任後、現場の声を聞くとして地方キャラバンに取り組み、十二日に結果が発表されました。面積要件の緩和を求める意見にとどまらず、現在の米価の下落についても、ナラシ対策は米価が大幅に下落した場合は経営の安定につながらないなどの問題点が指摘されています。また、最近では、小麦の収量がふえても、緑ゲタの対策では手取り収入が逆に減るといった問題も出ております。

 私は、参議院選挙の結果、あるいはキャラバンで出された意見などを見れば、今の経営安定対策についてはノーという厳しい意見が突きつけられたものだと思っていますけれども、若林大臣はこの認識をどう持っているんですか。

若林国務大臣 品目横断的経営安定対策につきましては、委員がお話ございましたように、私は八月の時点で指示をいたしました。生産現場の生の声をしっかりと把握してもらいたい。それは、本省の管理者、課長以上の者が、担当であるかどうかにかかわらずチームを編成して現場に出かけていってもらいたい、いわゆる御用聞き農政というものを進めるということを指示いたしました。そして、四十四道府県に行ってまいりまして、それらの状況が、十月五日に一通り調査が終わりましたので、今、その結果を取りまとめて、十二日に公表したところでございます。

 今回のキャラバンにおきましては、品目横断的経営安定対策の仕組み、加入の要件、事務手続、また集落営農の組織化とその運営、米価や生産調整対策を中心とした米対策などについて、現場から率直な御意見が多数出されていると感じているわけでございます。

 他方、しかし、多くの地域からは、今回の政策につきましては、一定の改善はなお必要ではあるが、方向は維持する必要があるという声が相当数多くございます。

 先ほどもそういうお話をいただいておりますけれども、これは今年度四月からスタートを切った新しい対策でありまして、十分その対策を御理解いただくだけの時間的余裕がなかったり、あるいはまた、中間でおります県や市町村の担当者も十分これを理解するところまでいっていなかったりするというようなこともあったように思うのでございます。したがって、方向は維持しながら必要な改善措置は考えていきたい、こういうふうに思っております。

 既に多くの農家や集落がこの問題に取り組んでいるのは御承知のとおりでございまして、現時点でこのような基本方向を変えるということは、かえって現場に混乱を引き起こすことになるというふうに危惧するものでございます。

 今後の対応としましては、省内に私を本部長といたしまして農政改革三対策緊急検討本部を立ち上げまして、この本部において、これら生産現場の声を真摯に受けとめながら、土地利用型農業の体質強化、国際規律、これはWTOでございますが、国際規律にたえ得る政策体系の確立という制度の根幹となる考え方は維持しながら、幅広い視点で検討をし、なるべく早く結論を出し、可能なものから実施していくつもりでおります。

 例えば、過去の生産実績に基づいて支払われるいわゆる緑ゲタと言われるものにつきましては、現場から、年末ぎりぎりにならないと支払われないという不安、不満も多く聞かれたところでありますので、この支払いにつきましては、指示をいたしまして、今月下旬から全国で順次行っていくというふうに改めたところでございます。

菅野委員 大臣、若林大臣が農水大臣に就任後、記者会見でどう述べているかということなんです。政府・与党の農業政策については大変批判があった、これらの批判を謙虚に受けとめる、こういうふうにおっしゃっているんですね。

 その後、大臣の記者会見などでは、今言ったように、経営安定対策の面積基準を見直すなどという考えは持っていないようだし、方向は維持する、そういう中身です。そして、担い手を中心に農地を集約するいわゆる大規模化を進めて、あるいは株式会社の農地取得も解禁する方向で、ずっと今までの政策を遂行、踏襲するという流れというのは今の答弁でも明らかだというふうに思うんです。これは、選挙で示された民意とは違うんじゃないでしょうか。

 そこで、福田総理大臣の談話に盛り込まれた、高齢者や小規模農家の安心を具体化する、こういう対策をとっていくというふうに言われていますけれども、この高齢者や小規模農家の安心を具体化する政策というのはどういう中身を持っているんですか。今の方向では、私は、これは小規模農家の切り捨てだということに対して何らこたえていないというふうに思うんですけれども、大臣の見解をお聞きしておきます。

若林国務大臣 高齢者や小規模の農家が安心して農業に取り組めるような環境をつくり上げていくということを総理はおっしゃったわけでございます。したがいまして、農業・農村全体におきましてきめ細かな支援策が必要になってくるというふうに考えているわけでありまして、力強い農業構造をつくり上げるための産業政策としての政策と、農村全体が活性化をしていくために目指す地域振興政策、この両面で取り組んでいくということになると思います。

 すべてをこの品目横断的対策でカバーしてやることができるというふうには思っておりませんけれども、小規模農家等につきましては、既に委員御承知のとおり、集落営農組織に参加するための支援、この参加について、今の参加の仕組みがハードルが高いということであれば、それらについてもハードルを越えやすいように手当てをしていくとか、また産地づくり交付金につきましては、地域の特色のある水田農業の展開をしていくという意味で、これは規模の制限のない対策でございますので、この規模の制限のない産地づくり交付金への支援というようなことがあると思います。また、野菜とか果樹とか畜産とかいうような農家に対する品目ごとの対策などは、小規模農家等もこれを排除するような形になっておりませんので、それらを総合的に展開してまいりたいと思っているところでございます。

 また、地域対策につきましては、地域振興政策は、委員御承知のとおり、農地、水、環境保全向上についての対策というものを強く打ち出しているわけでございまして、これも規模による差はありません。非農家も含めまして地域づくりに参加してもらうということがねらいでありまして、そういう地域の創意工夫を生かした地域活動についての支援でありますとか、都市と農村の交流の推進でありますとか、中山間地域直接支払い交付金制度の拡充といった条件不利地域の支援の強化といったようなことによりまして、地域振興政策を多様な観点から推進してまいりたい、このように思うのでございます。

 積極的に農家の皆さん方と意思疎通を図る機会を持ちまして、地域の実情に合った事業の実施によりまして、農業者の方々が安心して農業に従事できるような政策の展開に努めてまいりたいと思います。

菅野委員 今の大臣の答弁にもあったんですけれども、農地、水、環境保全向上対策、これは、私はこの制度を発足するに当たってこの委員会でもずっと議論してまいりました。

 この対策に関する費用なんですが、国が二分の一、そして都道府県が四分の一、市町村が四分の一、こういう負担になっています。当時私が主張したんですけれども、地方は財政的に非常に厳しい状況に追い込まれている、こういう制度を設けてもなかなか地域には浸透していかないんじゃないか、こういう指摘をしてまいりました。結果として、国の二百八十六億円に対して、地方は二百二十八億円しか充当できなかったという状況があるんです。

 この農地、水、環境保全向上対策、スタートしたばかりですから、私はまだ評価という形にはならないと思うんですが、大臣、このままでいいんでしょうか。私は、もうちょっと地域に根差した形でしっかりとしたものとしてつくり上げる必要があるんじゃないのかなというふうに思っています、地域政策として。大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。

若林国務大臣 私どもは、農地、水、環境保全対策は、文字どおり、地域密着の中で、地域の現場に即して組み立てられなければ、これは効果が上がらないものと考え、そのような設計をしているところでございます。その限りにおいては、地域の方の選択肢が非常に広い仕組みにしておりますので、地域がこのことについてやりにくいといったようなことがないように心がけているつもりでおります。

 なお、地方負担のお話がございましたが、地方財政負担につきましては、普通交付税と特別交付税を組み合わせることによりまして、地方公共団体の負担実態に応じた手厚い地方財政措置が講じられておりまして、そのことについては、総務省側もよく理解をいただいている、このように考えているところでございます。

 これらの措置が講じられたことによりまして、本年度は約百十六万ヘクタールの農地が対象になっておりまして、活動組織、現場の活動組織ですが、一万七千の活動組織が本対策に取り組んでいるという状況になっております。

 地域によっては地方公共団体の財政事情によって取り組みが進んでいないところもあるようですけれども、農地、水、環境の保全向上を図る取り組みは、国、県、市町村、そして地域がそれぞれ利益を受けるものでありまして、それぞれが役割に応じた負担を行うということが適当な対策だと考えているわけでございます。

 今後とも、さまざまな機会を活用して説明を行い、県、市町村などの理解がより深まるように一層努力してまいりたいと考えております。

菅野委員 時間がないので、次に移ります。

 緑資源機構の廃止問題について伺います。

 これは赤城大臣にも質問したんですが、談合、天下り問題と、機構の五つの事業が果たしている役割の評価は、別問題なのではないでしょうか。

 ところが、緑資源機構は平成十九年度末に廃止です。行政減量・効率化有識者会議が独立行政法人の整理を迫り、政府も年末には整理合理化計画を計画する運びになっていますが、談合事件をきっかけとして、最初から機構の廃止ありきだったのではないですか。

 機構の各事業が果たしてきた役割、さらには、それをどのように継承、発展させていくのか十分に議論されたとは思いません。大臣の緑資源機構についての認識をお聞かせください。

若林国務大臣 委員が、緑資源機構が実施しております各種事業について、それが事業効果として地域の林業あるいは地域社会に非常に効果がある事業をやっているという意味で評価をいただいていることについては、私はそのお気持ちに感謝したいと思います。おっしゃるとおり、その事業自身としてはいい事業をしてきたというふうに考えております。

 しかし、緑資源機構という機構が機構ぐるみで極めて悪質な官製談合を行ったということも、これは否定することのできない事実でございまして、その意味では、このような組織を引き継いで重要な政策を担う機関として存続させるということは、国民の信頼をさらに損なうおそれがあるというふうに判断をして、今年度限りで緑資源機構は廃止するということを決めたわけでございます。

 しかし、緑資源機構の各事業については、個別に必要性を検討いたしておりまして、緑資源の幹線林道事業については、極めて悪質な官製談合が行われてきたとされる事業でありますが、独立行政法人が行う事業としては廃止しますけれども、今後は、地方公共団体において事業の必要性を判断した上で、国の補助事業として実施するというふうにしたものでございます。

 また、他の事業につきましては、事業の透明性、効率性の確保の徹底、事業の見直し等を図りながら、他の法人に継承して実施する事業と残事業の完了をもって廃止する事業とに区分をしたところでございます。

 このような基本方針のもとで、事業の円滑な承継に万全を期すべく、所要の予算要求や組織要求を行っているところでありますが、一つ一つの事業については説明を省かせていただきます。

菅野委員 時間も押し詰まっているんですが、最後に、大臣の見解を、これだけは聞かせておいていただきたいと思うんです。

 赤城大臣は、七百二十人の職員は「これまでまじめに一生懸命大事な役割を果たしてきて働いてこられた皆さん」だという認識を示して、これらの方々の処遇が「ないがしろにされる、そういうことは決してない」と私の質問に答弁されています。

 若林大臣も同じ認識ですか。七百二十人の雇用、生活と談合事件は、それこそ全く別の問題です。職員の方々にはいささかの不安も抱かせない、当該職員あるいは職員団体の意見にしっかりと耳を傾けるとお約束できますか。この点について大臣の見解をお聞きします。

若林国務大臣 緑資源機構の職員の皆さん方は、主として技術者でございます。非常にまじめに技術的な知見に基づいて事業の執行に当たってまいったわけでございまして、そういう得がたき技術を持っておられる人たちでございますので、これらの人たちが、この機構自身が廃止された場合におきましても、その職員が持っておる知識、経験を活用していくべきことは、廃止を決めた第三者委員会においても再三指摘され、そして、委員会の中間取りまとめにそのことが盛り込まれていることでございます。

 このため、関係職員の処遇につきましては、水源林造成事業による受け入れのほか、他の受け入れ先についても幅広く現在検討をしているところでございまして、これについては適切に対処してまいる所存でございます。

菅野委員 終わります。

宮腰委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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