衆議院

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第8号 平成20年4月8日(火曜日)

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平成二十年四月八日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      赤澤 亮正君    伊藤 忠彦君

      今津  寛君    浮島 敏男君

      小里 泰弘君    小野 次郎君

      近江屋信広君    金子 恭之君

      亀井善太郎君    北村 茂男君

      斉藤斗志二君    柴山 昌彦君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      西川 公也君    西本 勝子君

      原田 憲治君    平田 耕一君

      福井  照君    馬渡 龍治君

      水野 賢一君    森  英介君

      安井潤一郎君    若宮 健嗣君

      石川 知裕君    大串 博志君

      小平 忠正君    佐々木隆博君

      篠原  孝君    神風 英男君

      高井 美穂君    仲野 博子君

      横山 北斗君    井上 義久君

      菅野 哲雄君

    …………………………………

   参議院議員        平野 達男君

   参議院議員        高橋 千秋君

   参議院議員        舟山 康江君

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (国土交通省北海道局長) 品川  守君

   参考人

   (東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻教授)           鈴木 宣弘君

   参考人

   (東京農工大学名誉教授) 梶井  功君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     西本 勝子君

  亀井善太郎君     柴山 昌彦君

  渡部  篤君     原田 憲治君

  大串 博志君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     浮島 敏男君

  西本 勝子君     若宮 健嗣君

  原田 憲治君     馬渡 龍治君

  篠原  孝君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     亀井善太郎君

  馬渡 龍治君     渡部  篤君

  若宮 健嗣君     安井潤一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     飯島 夕雁君

    ―――――――――――――

四月七日

 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案(内閣提出第三八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業者戸別所得補償法案(参議院提出、第百六十八回国会参法第六号)

 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案(内閣提出第三八号)


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 第百六十八回国会、参議院提出、農業者戸別所得補償法案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻教授鈴木宣弘君及び東京農工大学名誉教授梶井功君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、鈴木参考人、梶井参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、鈴木参考人、お願いいたします。

鈴木参考人 ただいま御紹介いただきました東京大学の鈴木と申します。よろしくお願い申し上げます。

 ペーパーをお配りしておりますので、そちらの方も見ながらお話しさせていただきます。

 「国民の理解を得られる農業政策」というタイトルで書いてございますペーパーをごらんください。本日私が一番強調したい点が、まさにこの国民の理解を得られるという部分でございます。

 最初にポイントのみを要約して申し上げますと、御案内のとおり、今、農業、農村が大変疲弊しておりまして、これに活力を取り戻すということがまず大きな課題としてございます。それともう一つは、食料自給率のこれ以上の低下に歯どめをかける、それによって国民への食料の安定供給を確保するという二つの大きな課題があるわけでございますが、この課題を国民が納得できる政策根拠を示して実現するということが非常に重要だと思います。

 そのために必要な施策として、そこに四つほどポイントを挙げております。一つ目が、農業経営者が将来の経営計画の立てられるセーフティーネットを提供するということ、それから二つ目に、集団的な強制力に依存する生産段階の調整から販売段階の調整にできる限りシフトするということ、それから三つ目としまして、産業政策と社会政策とを組み合わせる形で、結果的に多様な農家を支援するということ、それから四つ目に、これに関連しますが、社会政策の根拠としましては、多面的機能というのを漠然とした形でお題目のように言うのでは通じませんので、そうではなくて、農業、農村の多様な価値を国民が具体的に納得できる形の指標で示して、社会政策の根拠に国民の賛同を得られるようにするということでございます。

 さて、農村現場の実態は、御案内のとおり、米価の急速な下落やえさ価格の高騰、燃料価格の高騰にもかかわらず、なかなか生産物の価格が上がらないというような状況で、農村現場では悲鳴が聞こえてくるような、大変な農業、農村危機がささやかれております。

 兼業農家は豊かだと言われていましたが、こちらの方も、御案内のとおり、地方の労働市場が縮小しまして、兼業農家にとっては農業収入と農外収入の両方の減少のダブルパンチで非常に疲弊しているということで、農村地域の購買力が急速に失われて、地方都市の商店街のシャッター街化も加速されるというような形で、地方経済全体に暗雲が広がっているという状況でございます。

 こうした中で、即応する形で、現場の窮状を打開するためにスピーディーにいろいろな施策が講じられてきたことは高く評価されるところでありまして、これにより小康を得ているという状態かと思います。ただし、これらの多くの施策は、あくまで緊急的な支援策の位置づけのものも多く、一時的な措置であることも認識しておかなければなりません。

 これまでとられてきた我が国の政策の特質としましては、WTO、世界貿易機関のルールで定められた削減対象の政策というのを非常に厳しく受けとめまして、世界に先駆けて、米の政府価格や酪農の保証価格等、価格支持制度を廃止してまいりました。その精神は、価格は市場が決めるものであって、経営に対する支援は収入変動リスクの緩和を基本とする、こういう形で行われてきたわけでございます。ただ、この考え方における一つの懸念は、価格が趨勢的に下落基調になった場合に、所得低下に歯どめがかかるかどうかという点でございました。

 こうした中で、今、米価等の下落が激しくなっているという状況も受けまして、民主党さんから出されました戸別所得補償法案というものは、農業所得低下へのセーフティーネットを強化する意味で大変注目される制度で、その姿勢には敬意を表したいと思います。

 ただし、最大の問題点として私が考えますのは、一般国民からのばらまきという批判にこたえられない、過保護農政という、これは誤解なんでございますけれども、こういう点を払拭できないということにあるかと思います。

 農業の担い手は多様であって、多様な理由から支援を講ずる必要性があることは間違いないわけでございますが、そうした施策の根拠がきちんとわかるようになっておらない状態で、農家が困っているから一律に支援するというように受けとめられかねない政策というのは、国民の支持を得られないのではないかということでございます。

 それで、国民が賛同できる政策理由の明確化ということが重要だと考えるわけでして、この点でいいますと、農業、農村には多面的機能があるからとよく言われますが、これが十分具体的な指標になっていなければ、国民にはむしろ保護の言いわけのように受け取られてしまうということがございます。

 例えば、ヨーロッパ、北イタリアにも水田地帯がございますが、ここでは、稲作農家に対して三つの機能をきちんと指標化して、その三つの機能といいますのは、水質浄化機能、それからオタマジャクシや赤トンボが生息できるという生物多様性の維持、それから、日本でもよく言われることは言われますが、ダムとしての洪水防止機能、そういうものをそれぞれ評価して、米価には反映されていない便益に対して、これはみんながお金を集めて支払うべきであるという考え方で直接支払いが成立しているわけでございます。こうした具体的な指標化を通じて、その価値を国民によく理解してもらう、補助金の根拠を明確にするということが必要なわけでございます。

 このような多面的機能というのは、農家の経営規模の大小を問わず発揮される、あるいは、棚田の景観とか洪水防止機能でわかりますように、むしろ条件不利な地域の小規模農家の方が評価が大きい場合もありますので、小規模農家や中山間地域の支援の大きな根拠になるわけでございます。

 そうした点から考えますと、現行の農業施策体系というのは、どうも強い農業の育成という点が強調され過ぎた嫌いがあって、大きな誤解を招いていたと思われますが、実際には、産業政策と社会政策の組み合わせで多様な農業を支援するという考え方はきちんと整理されておるわけでございます。中山間地直接支払い制度とか、農地、水、環境保全向上対策のように、規模を問わない、あるいは条件不利地域に重点を置いた社会政策的な支援というのが、規模要件を導入した産業政策的な品目横断的経営安定対策と車の両輪と言われるゆえんでございます。

 したがいまして、産業政策としての品目横断的経営安定対策は規模要件を勘案するが、規模を問わず小規模層には別の理由によって支援の拡充を行うという形で施策根拠の仕分けを明確にすることが、結果的には、多様な農家全体に支援が行われつつ、その根拠が国民に納得されるということになるかと思います。

 先ほどイタリアの稲作への支援の例を挙げましたが、環境や景観を理由にした支払いは、ヨーロッパでは御案内のとおり非常に充実しておりまして、フランスの農家所得の八割がこうした直接支払いによって賄われているというような状況もございます。日本も、ヨーロッパに定着しつつあるこういうふうな価値観を国民によく理解していただいて、早急に、農地、水、環境保全対策のような対策の検証をして、これを充実するということが必要であろうかと思います。

 それともう一点は、生産調整への過度の負担をどう考えるかという点でございます。

 戸別所得補償法案では、市町村を含む行政の役割を重視した生産調整への明確な回帰を前提にしておりますが、強制感の伴う生産調整には限界感が強いことは無視できない事実だと考えます。しかも、同法案では、米のみならず、麦、大豆、飼料穀物等にも生産数量枠の設定を広げるという形で、従来以上に強制感のある生産調整の強化が前提となっております。

 生産調整のメリットを拡充して、参加、不参加は個人の選択に任されるというのであればよろしいかと思うんですが、これまでも、実際には、さまざまな集団的な強制力によって何とか生産調整は実施されてきたというのが実態でございます。

 そういう中で、現場の市町村職員等の負担が大きくなり過ぎて、農家の皆さんも大変だし、現場の行政ももたないということで今の流れができてきたわけでございますので、その流れを再度市町村等の役割強化という形に戻すことは至難のわざに思えます。つまり、米価下落の歯どめを生産調整の強化に過度に依存することは現実的ではないし、ましてやそれを他作物まで広げるということになると、かなり困難を極めるのではないかということが考えられます。

 しかしながら、それでは生産調整が緩むことを前提にせざるを得ないということも頭に置きますと、それでも米価下落に対処できる、あるいは農家の再生産が可能になるような補てんシステムというものをやはり考えておかなきゃいけないのではないか。その場合に、現在の制度体系でそれが十分可能かどうかをよく検証する必要があると思われます。

 収入変動緩和対策、いわゆるナラシにつきましては、減収幅が大きくなった場合にも対応可能な形の補完措置がとられましたので、今はそれが十分な機能を果たすかが注目されると思います。

 それから、今回は緊急的に備蓄の積み増しという形で買い上げも行われましたが、このあたりをもう少しシステム化して、過剰時の隔離機能を拡充するというようなことも可能性としては考えられるのではないか。つまり、生産段階での調整に大きく依存せずに、販売段階での調整機能を強化する必要があろうかと思います。

 これは一つの例ですが、アメリカのローンレート制度というのがございます。一俵幾らかというのは、仮置きの価格をそこでは示しておりますが、米を担保にした質入れの短期融資で、現物を戻して市場で売ってもいいし、質流れさせてしまってもいいという形のシステムですけれども、この質流れ分につきましては、えさ米とかバイオ燃料米とか援助米、米粉とか、そういう形で主食用市場から完全に切り離すという仕組みでございます。何らかの価格水準がここで設定されておりますれば、大規模層にとって、あるいはその他の担い手にとってもそうですが、その価格を目安にして経営計画を立てられるということがございます。実は、この考え方自体は現行の集荷円滑化対策に反映されておりまして、現行の手取りはいろいろ合わせまして七千円程度でございますので、これをベースにして、こういう制度を拡充するかどうかということも検討の余地があるのではないかと思います。

 現在、生産調整を含む米政策には約四千億円ぐらいが投入されております。このうちの一千億円というのは、私が試算しました市町村段階でのもろもろの推進費用が約一千億円かかるということを組み込んで、全体で四千億円ということなんですが、この四千億円をえさ米やバイオ燃料米、援助米、米粉としての処理費に活用するとしますれば、かなりのことができるように考えられます。

 援助米につきましては、八億五千万人の世界の栄養不足人口に日本が貢献するという国際貢献の立場からODAとか外務省予算で見ることもできますし、バイオ燃料につきましては、エネルギー自給率向上の観点から経産省予算、あるいは、不測の事態に備えた米備蓄につきましても、こういう国際需給の逼迫等を受けまして、国民のコンセンサスが得られましたら、フィンランドのような一年分とはいかないまでも、国防予算でこういうことを拡充するというような可能性もあるんではないか。

 以上はほんの一例にすぎませんが、生産調整の緩みを前提としても、生産者が、価格がどこまで下がるかわからない、経営計画が立てられないというような状況にならないように、ことしの秋に向けて現行制度体系の検証を急ぎ、必要な拡充が望まれるのではないかというふうに考えております。

 それと、もう一点申し上げたいのは、コスト削減の限界と消費者の支援という点でございますが、日本農業につきまして、非常に限られた土地条件のもとではございますが、国民に対して可能な限り低コストで食料を供給するという努力は最大限行うべきではありますけれども、念頭に置いておかなきゃいけないことは、幾ら日本農業が規模拡大してコストダウンしましても、例えばオーストラリアの農業とコスト競争で勝てるわけがない。我が国の分散錯圃は容易に解決できるものではございません。私もオーストラリアの西部の穀倉地帯を見てまいりましたが、五千八百ヘクタールの一戸当たりの耕地面積を二・五人ぐらいで経営しているのが、これが平均より少し大きいだけだというような状態でございますので、強くなれば勝てるという世界ではございません。

 そういうことを考えますと、日本の場合には、消費者から、少々高くても日本のものを買いたい、皆さんがつくったものを信頼して買いたい、そういうふうな支援を受けられるような農業、そういう環境にも人にも動物にも優しい資源循環型の農業に徹して、それを消費者がしっかり受けとめてくれるような信頼関係を築かなければ、これからもたなくなるというふうに考えるわけです。

 その場合に、日本の消費者というのは、欧米に比べて生産者との一体感が薄い、農業、農村に対してやや思いやりが薄いように思われます。この大きな理由の一つは、高関税で世界に閉鎖されて補助金漬けの日本農業というような日本農業過保護論が世論形成された。これは全く誤った情報でございますが、こういうことは、日本農業、農村を攻撃することで利益を得られる人々によって意図的な批判が行われ、しかし、国民がそれを信じてしまっているということでございます。これは、我々関係者の共同責任であると思います。

 若干申し上げますと、例えば、関税が高いというのは全くの間違いでございます。関税が高かったら、我々の体のエネルギーの六一%もが海外に依存して、こんなに輸入食料があふれるわけがない。関税が低いから、これだけの自給率の低下があったわけです。もし補助金漬けであれば、このように農業、農村は疲弊しておりません。日本の国内の農業保護額は、今やアメリカやEUよりもはるかに小さい数字になっております。

 このような誤りを正し、正確な情報を国民に伝えるとともに、さらなる自由化を含む規制緩和で一部の産業の短期的利益や安い食料と引きかえに我々国民が多くのものを失うということ、これをきちんと説明して、ばらまきという批判は排除し、必要な農業政策をきちんと理解を得て行うことができなかったら、日本の将来に取り返しのつかない禍根を残すことになりかねない、そういう過渡期に来ておると思います。

 そういう意味でも、消費者、国民の皆さんに納得してもらえる根拠に基づいた施策体系、そういうものをきちんと示すことが農業、農村を守る一番大事な視点だというふうに考えております。

 以上でございます。(拍手)

宮腰委員長 ありがとうございました。

 次に、梶井参考人、お願いいたします。

梶井参考人 梶井でございます。

 委員長が忌憚のない意見をということでございましたので、私は、この民主党の出された法案に即しまして、遠慮のない意見を申し上げてみたい、こう思っております。

 お手元に「年頭所感」という変なのをお配りしてあるかと思います。これを後でお読みいただければと思うんですけれども、今、日本の農政が最大のポイントを置いて取り組まなきゃいけない課題というのは、今お配りしましたものの冒頭に、国際的な穀物需給が大変な状況になっているということを書いておきましたけれども、この状況の中で、食料自給力をいかに強化するか、食料自給率をいかに引き上げていくか、ここのところにやはり農政の最大の力点を置いて取り組むべきではなかろうかというふうに私は思っております。その点について今の農政はちょっと頼りないところもございますので、そういう課題にこたえるという意味でいいますと、今回の民主党の出されました農業者戸別所得補償法案は、まさにその課題にこたえるという意味で私大変高く評価しております。

 その趣旨を、お配りしましたものの九ページあたりからちょっと書いているんですけれども、この戸別所得補償法案第一条「目的」で、これも改めて私が読み上げるまでもなく皆さん御存じのところですが、「食料の国内生産の確保及び農業者の経営の安定を図り、もって食料自給率の向上並びに地域社会の維持及び活性化その他の農業の有する多面的機能の確保に資することを目的とする。」ここで、今の最大の日本農政の課題にこたえるためにやるんだということが明確に書かれている。その点で、まず第一に私がこの法案に賛意を表する次第なんです。

 そのために一体何をやるかということで、第三条で、主要農産物の種類ごとに国、都道府県及び市町村、行政の方で生産数量の目標を設定するんだということがはっきり書かれております。この中には今問題になっております米の生産調整の目標なんかも当然入るんだと思うんですけれども、私は、この点が非常に大事な点だと思うんですね。

 そして、国、都道府県及び市町村は、前項の生産数量の目標を設定したときは、遅滞なくこれを公表し、そしてその達成に努めなきゃいけないということが第三項の方に書かれております。

 この点が非常に大事なところでありまして、今、生産調整というのは非常に大事な課題として取り組まれているんですけれども、この生産調整について一体こういうふうな政策目的というものが明示されてきたのか、これが非常大事な点だと思うんですね。その点に関しまして、私、最近の農政で大変な政策目的の認識の変化が起きたんじゃなかろうか、こう思っております。

 といいますのは、昨年暮れ以来、これは自民党の先生方の大変な御努力があったと思うんですけれども、品目横断的経営安定対策なり、あるいは米政策改革のあり方について大変大きな見直しが行われております。見直しが行われている中で、私、農水省のおつくりになりました平成二十年度の農林水産予算の説明を拝見しまして、大変びっくりしました。昨年の八月ごろに出された概算要求の説明書と物すごくさま変わりしておりましたですね。これはもちろん先生方もお気づきになっていらっしゃるかと思うんですけれども、概算要求の段階で農水省がおつくりになった予算の説明では、米政策改革の目的というのは需給調整、需給調整は何のためにやるんだということは、これは望ましい米づくりのためにやるんだ。望ましい米づくりというのは、農業者、農業者団体が市場の状況を敏感に感じ取って、それに応じた米づくりをやっていく、それをつくり上げる。そのために、農業者、農業者団体主体の需給調整システムとして生産調整に取り組むんだということが書かれておりました。

 米政策改革大綱以来そういう考え方が強調されてきていたんですけれども、今回新しく出されました平成二十年度の農林水産予算の米政策改革の説明のところには、その言葉は一つもありませんでした、完全に消えていました。完全に消えていて何が出てきたかといいましたら、食料自給率の引き上げです。米の生産調整の徹底、そして同時に、その生産調整の枠組みの中で、飼料米なりエタノール米なり、そういう非主食用米の生産というのを拡充するんだ、食料自給力の強化、食料自給率の引き上げ、これが米政策改革の目的に入っていました。これは大変大きなさま変わりでありまして、大変歓迎すべき変化だというふうに私は思いました。その点でいいますと、民主党のこの案の第一条、第二条で言っていることが明らかに予算の説明の変化としてあらわれているというふうに思いました。

 このお渡ししましたものを書いた段階では、その変化というのを私はまだよく認識しておりませんでした。校正の段階で初めてその変化というのがわかりまして、後書きに書いておいたんですが、しかし、その前に、自民党の先生方の方で、昨年の暮れ、十月以降見直しについて随分御議論されて、出されているいろいろな改革の方向を漏れ承りますと、どうも民主党の案に随分近づいているような感じがいたしました。

 この一番最後の十一ページの上の方、校正に入ってというのは、これは後で書いたんですが、その前のところは、これは随分近づいてきている。それで、どうもこの近づいた中身からいいますと、戸別所得補償法案の実質を自民党も否定しがたくなっているということではなかろうか。そういった意味で、実態認識といいますか、とるべき政策の方向の認識というのが随分近寄ってきているんじゃなかろうかという印象を、私、米政策改革の変化なんかを見まして持ちました。

 そういう点からいいますと、あれがいかぬ、これが変だという形でけなし合うんじゃなくて、この法案のいいところをぜひ取り上げて、それを法律としてやっていただく、実体化していただく、それをお願いしておきたいと思うんです。参考人の意見としては変な意見ですけれども、まず冒頭そのことを申し上げておきたい。修正すべきところもそれはあるでしょうけれども。

 それに関連しまして、非常に大事な点は、第三条のこの書き方に関しましては、生産調整という問題は国の政策として取り組むんだ、これを明確に示している点が非常に大事な点だと私は思うんですね。

 その点は、これは古い話になって恐縮ですけれども、この生産調整政策というのは、水田総合利用対策として初めて本格化しなきゃいかぬというときに、当時の鈴木農水相、私どもは善幸さん、善幸さんと言っていたものですが、鈴木先生がその当時農林大臣でございました。これは記者発表の言葉だったと思いますけれども、生産調整というのは総合食料政策の一環としてやるんだ、日本で今自給率の低い作物の生産に生産をシフトさせて、全体として自給率を引き上げていく、そういう総合食料政策の一環として、自給率引き上げの一環としてやるんだということを大変強調されておられました。ただ単に米価調整のためにやるんじゃないよということを鈴木善幸大臣は大変強調されていたんですね。

 私は、米の生産調整政策というものが持つ意味は、今そこに凝縮されていると思うんです。それを改めて民主党のこの案が政策の正面に据えたということは、大変歓迎すべきことであるというふうに認識しております。

 それを達成する手段として、生産数量の目標に従って主要農産物を生産する販売農業者に所得を補償するための交付金を交付するということが第四条で書かれております。先ほど鈴木参考人も、これがばらまきというふうにとられないかということを大変心配されておりましたけれども、今、日本国民が最大の課題として直面しなきゃいけない食料自給率の引き上げ、自給力の強化という大目的に従ってやるんだ、これが政策目的にはっきり据えられている、もっと国民は今の食料危機というような問題について認識を深めてもらう必要はありますけれども、それである限りにおいては、私は、どれだけ多数の農業者のところに行こうが、ばらまきなんて言われる筋合いは何もないと思うんですね。

 なお、ついでに申し上げますけれども、私は、ばらまきという言葉は大変不穏当な言葉だと思っております。私はよく学生に、名誉教授になって学生と接する機会は少なくなったんですけれども、たまに来る学生によく言うんですけれども、おまえら広辞苑引いてみろ、広辞苑にはばらまきとは何と出ている。ばらまきという名詞はありませんよね。ばらまくという言葉は出てまいります。ばらまくとは一体何だ。1ぱらぱらまく。これは2の方が非常に大事なあれでありまして、2不特定多数の人に惜しみなく金品を与えることとなっているんです。これがばらまくの意味なんですね。

 私は、今までどんな農政を見ましても、農業者にただで金品を与えるようなことを我が農政はやったことがあるのかしら、ばらまきという言葉をつくった方はその辺のところを大いに反省していただきたいと思います。

 その点に関連しまして、もう一つ私が申し上げたいと思いますのは、附則の第二条で、この所得補償法案が成立したら、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律を廃止すると明確に書かれてあります。これも私は大賛成であります。

 実を言いますと、この農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律が審議されておりました段階で、私、平成十八年六月八日の参議院の農林水産委員会に参考人で出席させていただきまして、この法案に対しては反対だという趣旨を申し上げました。反対とはどういうことかといいますと、この農業の担い手に対する経営安定、いわゆる品目横断的経営安定対策の中身になっているものですけれども、担い手に対象を限定して、担い手を限定してこれに所得補償の道を講ずるというのは、農業構造の改善の進展になるんじゃなくて逆にマイナスになるということを私そのとき申し上げました。

 繰り返しませんけれども、といいますのは、これはそのときも申し上げたんですが、農水省が大変苦労してやっております農業構造動態統計なんかを見れば、あれはセンサスの前年で比べてやっているわけですけれども、五年間の間に、例えば五ヘクタール以上の農家は二〇%は脱落していくんです。しかし、二〇%が脱落する反面で、五ヘクタール以下、二ヘクタール、三ヘクタールの方々は、おれは頑張ってやろうということで規模拡大して五ヘクタール以上になって、そういう上がり下がりの動態の結果として今まで五ヘクタール以上の農家がふえてきていたわけです。農業構造の変化というのはそういう動態を通じて起きるんだ。それなのに、一定の、例えば四ヘクタール以上の農家だけに所得補償をやって幾ら保護しても、米価がいいときでも二〇%おっこちたんです。幾ら保護されても、その中で、例えば家族の働き手が病気になったとかということがあれば規模縮小せざるを得ない。そういう条件は今まで二〇%ぐらいの頻度で起きてきていたわけです。それが今後ないということは保証されない。

 他方で、米価がいい、これだけの所得が確保されるというふうな見通しがあれば、下から意欲を持って上がってくる人たちがいるわけです。むしろそういう下から上がってくる人たちの意欲をなえさせてしまう。この一定規模以上層に施策を限定して行うような政策は、むしろ二ヘクタールあるいは一・五ヘクタールの人たちの意欲をなえさせてしまうんだ、それが非常に問題なんだということを私は申し上げまして、このときから反対しているんですけれども、それを今回、法案の第四条との兼ね合いの中で、第二条でこれは廃止するというふうに明らかに出されましたのは、私は大賛成でございます。

 もう一つ、それに関連しまして、一般的に、これは政令でゆだねられている面もございますけれども、主要農産物について所得補償の施策を講じましても、中山間地なんかの非常に特殊な条件の悪いところについては特別の手当てをやる必要があるということで、現在でもこの中山間地についての直接所得補償は政策としてやられているわけですけれども、これを第八条で特に明記して、その保護というものを書かれている。この点も私、大変時宜に適した法案内容だということで、高く評価する次第なんです。

 ということで、農業者戸別所得補償法案は、いろいろ吟味しなきゃいけない問題点もございます。ございますけれども、その点については諸先生方の方でもいろいろ御審議されるでしょうから、そういう点は詰めていただいて、なるべくこれが成立することを期待したいと思うんです。

 以上です。(拍手)

宮腰委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川泰宏君。

中川(泰)委員 京都四区から出ております、自由民主党、中川泰宏でございます。

 鈴木先生と梶井先生のお話を聞かせていただいて、それぞれの先生方からすばらしいお話をお聞きしたことに感謝を申し上げる次第であります。

 私自身は、農村地で生まれて、農業で大きくなりましたので、少し現実味を帯びてお話が聞きたいなというように思います。

 まず、その話に入る前に、農業政策の中で、今、日本の国で、農業の中で一番生産高が高いのは畜産、その次に野菜、そしてお米であります。そして、今日まで私自身見ておりますと、畜産については今危機にある、これはえさの高騰でありますから、これからみんなでえさ問題をどうするんだということを議論することが大事だと思いますが、畜産はきちっと後継者が残っております。そして、野菜も残っております。

 私は、今日まで公明党さんと自民党が進めてきた農業政策は、畜産と野菜については合っておるんじゃないかなと思いますが、両先生、時間の都合上簡略に、合っておるか合っていないかをお教えいただけますか。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 畜産と野菜についての政策でございますが、おっしゃるとおり、畜産につきましても、大変規模拡大が促進されるような形で、いろいろな政策が充実した形で行われてきた成果が、今の畜産の規模につきましてはEUを追い越すぐらいの規模まで成長した。

 それから、今は確かにえさの高騰で非常に厳しい状況にはなっておりますが、輸入のえさに依存するという問題点はこれから早急に経営体制を改革しなければいけないと思いますが、安い輸入のえさが入手できるという条件のもとでこれまで行われてきた政策や経営の戦略というものは十分に機能してきた。ただ、それは今転換期を迎えているということだと思います。

 それから、野菜につきましては、三%ぐらいの関税しか残っていないということで、最近は輸入物との競争も大変厳しくなってきております。これは政策的には暴落時に価格が下がらないようにする措置等が機能してきたということでございますが、野菜につきましては、基本的には産地の努力による経営展開が非常に有効に行われて今の産地の拡大が行われた、そういうふうに考えております。

 以上です。

梶井参考人 野菜につきましては、私も鈴木参考人と意見はほとんど変わりません。

 畜産のことについて、一言だけつけ加えておきます。

 畜産に関しまして、畜産振興を言いながら、やはり飼料政策の点に関しては若干不十分だったんじゃなかろうか、私はこう思っております。特に濃厚飼料、原料作物の生産なんかには、これはノータッチで来ているわけですね。

 これは随分前ですが、国民食糧会議を三木内閣でおやりになりましたときに、そのときに、私どもは農林行政を考える会という会をつくっておりますが、今でもつくっておりますが、これは農水省の方々がつくっていらっしゃる労働組合、全農林の方々と一緒にやっている研究会ですけれども、そこで、三木内閣でやりました国民食糧会議に、当時の穀物自給率が、たしかあのころはまだ四〇%あったと思うんですが、それでも非常に危機的だということで国民食糧会議が開かれたわけですね。

 その段階で、これは政策のいかんによっては穀物自給率を六〇%に引き上げることが可能であるという提言を行いました。その提言をやったときの最大のポイントは飼料穀物の問題でした。飼料穀物問題について何も手をつけていない。これは非常に問題ではないかということで、飼料穀物についてしかるべき施策を打てばこれは十分可能なんだということをそのときも提案いたしました。しかし、今日までほとんど手をつけられていない。今回、先ほどの米政策改革の中でもって、飼料米なんかの問題もここでようやく手がつけられたということで、一歩前進かなと思っております。

 それからもう一つ、畜産の問題に関して申し上げたいと思いますのは、例えば、草地を大いに活用するというふうなことは大事な点なんですけれども、政策的に言いますと、草地利用権という制度は農地法の中にございます。しかし、草地利用権は草地と林地の共存を図っている制度じゃございませんですよね。草地として……(中川(泰)委員「内容はわかりましたから、短くしてくださいよ」と呼ぶ)わかりました。

 私は、草地利用権と並んで、ぜひ混牧林地の利用権というふうなものを新たに制度化するということを考えるべきじゃなかろうかというふうに思っております。

中川(泰)委員 それぞれ先生方に今お聞きすると、畜産と野菜については政策的にはほぼ順調に進んできたというように認めていただきましたのと、今梶井先生から、飼料の点について、家畜の飼料についてどうかということについては少し問題があったのではないかという指摘を受けましたので、農業というのはいろいろな天候やいろいろな条件で変わりますから、政策も常に変えながら進めていかなくてはいかぬなと私も思うところであります。

 そうした中、今農業政策を進める上に、穀物の自給率を上げなくてはならぬ、私はそう思います。そして、私自身もお米をつくっておる農家の一人でありましたが、ばらまきやばらまきやと言うて、町の先生方からおしかりをずっと受けながら米づくりに励んでまいりました。

 そして、自給率を上げるためには、やはり上げる政策をしなくてはならぬというように思いますが、私は法人化を進めることが非常に大事だと思う一人であります。農家の皆さん方にどんどんお金を渡してあげても、将来、本当に穀物の自給率の向上につながるのかという疑問を持っております。

 これについて、両先生はどうお考えですか。時間の都合があるので、簡略にお答えいただきますようお願いいたします。

鈴木参考人 経営が非常に好転して、それがビジネス感覚で行われるということは重要ですので、法人化の方向というのは一つの重要な方向であると思いますが、必ずしも法人化の方向だけが重要かどうかというふうにいいますと、いろいろな多様な経営があって全体として地域が成り立つというか、そういう視点も重要かと私は考えておりますので、基本的には、今の稲作農家が結果的に全体としてお米の生産で所得が十分得られるような、そういう環境をもう一度つくり、それによって生産がふえ、自給率が高まる。そういう中で、可能な限り、法人化等、そういうビジネスとして、産業として大きくなるような経営も出てくることが望ましいというふうな考えでございます。

梶井参考人 私は、法人化は結構ですけれども、強制すべきではないというふうに思います。

 ですから、今回話したように、集落営農は結構だけれども、五年以内に法人化しなさいとか、そういうふうに強制するのはよくないと思うんです。これはあくまでも農家の、農業者の選択に任せるべき問題でありまして、法人化のメリットというようなものをるる周知させることは非常にいいことですけれども、それを強制するのはよくないと思います。

中川(泰)委員 鈴木先生から非常に的確な御意見をいただきましたことに厚く感謝申し上げます。

 まず一つは、ここの辺はどうなんでしょう。

 私は、南丹市八木町というところで育ったのでありますが、私の地域の農家、京都四区ですが、農家をしておる人の平均年齢、農村地の平均年齢は六十五歳を超しているのではないかなと思うんです。農家のところへ行くと、おまえ、もう百姓はでけへんどとほとんどの人が言います。何ぼ金をもろうてもあかんわ、もう体力が続かぬと。機械を買いかえたら一千六百万から二千万要るやんけ、それは無理やどというように農家の方は言います。そうすると、このままでいくとどうやと言うたら、あと三年から五年やなと言うんです。

 だから、梶井先生が先ほど言われた、確かに強制することはだめだと私も思います。しかしながら、将来、我々の責任、国の責任は、国民にちゃんと自給率を上げることが責任だ、これが大事だと思います。その政策をすることが大事であり、農村地の、限界集落については、農林水産省の予算でするのではなく、厚生省や別の予算でやっていかぬと理解が得られないんじゃないかなというように私は最近考えております。お米代を上げたるわと言うたところで、百姓はできません。

 そこについて両参考人はどうお考えか、お教えいただけますか。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 おっしゃる点、よくわかります。そういう意味で、米価で十分にできない部分につきましては、まさに限界集落等を含めて、農業、農村が存在する意義ということを国民が全体としてどう考えるか、そういう価値をヨーロッパのように日本も理解できるような国民性になるように期待するといいますか、そういうことをみんなで理解してもらうようにしていく。

 それについては、米価に反映できない部分は別途直接支払いで、そういうところを支えるためのお金をきちんとみんなで出しましょうというコンセンサスを得ていけば、言われたように、農林水産省予算も超えるような形で、いろいろな形の社会政策的な支援が得られる。農家の皆さんも、そういうことについて自分たちが責任を持っているんだということをきちんと理解できれば、そういう意味で、一生懸命そこで暮らすことについて、そういう直接支払いについても受け入れられるというような形で、農村地域と国民とのいい関係ができてくる、そういうことが重要ではないかと考えております。

梶井参考人 まさに今、農政だけでもって、限界集落という言葉は余り好きじゃないんですけれども、農政だけで対応し切れないという問題は確かに多々ございます。しかし、ベースといいますか、中心は農業なんです、農林業なんです。林業の方も手当てしなきゃいけませんけれども、農林業、特に中心の農業でちゃんと農家が食っていけるよという条件がなければ、幾ら他省庁の応援があってもだめだと思うんですね。まず、そこのところをはっきりさせる。

 その上で、そこで住む上でのいろいろな諸問題というものを、これは特に環境問題なんかも十分あるわけですから、他省庁の応援を、応援といいますか、一緒になって施策を組んでもらう、これは非常に大事だと思います。

中川(泰)委員 両先生に非常に御理解いただいておりますことに感謝を申し上げる次第であります。

 まず、私は、農業をやっておる今の人たちがここ四、五年でいなくなると思います。特に、限界農村地といいますか、限界集落で農業をされておる人、六十歳、七十歳で、機械を直しながら、必死になって米をつくっておるけれども、でも、おれが死んだら終わりやどという人たちばかりであります。

 そこで、最近、お米はアジアの方じゃ足らない、タイ米も輸出してくれないというように聞いておりますが、僕は小麦やらトウモロコシがどんどん高くなったらお米をいろいろな加工をして食べ始めると思うんですよ。そうすると、ことしの端境期になってくると、僕はお米も上がるのと違うかなというような思いをちょっと持っておるんですね、夢を。考えると、農業政策とは、将来に穀物が残していけますという農業政策をせないかぬと思うんです。お金を上げますから農業を続けてねというのでは、僕はだめだと思うんです。多分、五、六年でなくなりますよ。

 だから、今自民党さん、公明党さんで進めておる農業政策は、ちゃんと地域に農業を残すということを考えながら政策を進めてきておるというように思うんです。そこは、今、お金を上げますよ、所得補償しますよというので、現実の農村地が、農業が両先生は残るとお思いですか。そこはやはり真剣にどうお思いか、お教えいただきたいと思います。

鈴木参考人 おっしゃるように、将来にわたって、農業が、農村が残るような形で発展していくような政策でなければいけない。そういう意味で、産業として強い農業が、核になる農家がたくさん出てくるような、そういうことを支援する政策は非常に重要だと思います。それとともに、地域社会が全体としても豊かに維持されるためには、単純に強い農家だけが点のようにして残っても、また地域は維持できない。

 だから、両面あるわけでして、その点がまさに産業政策としての経営安定対策と、もう一つ、社会政策的な意味での環境等に基づく支払いで多様な農家についても補てんするというこの組み合わせがまさに全体を支える機能であると思いますので、そのセットで、強い農業とさらに多様な農業を一緒に維持できるようにしていくということが大事だなというふうに考えております。

梶井参考人 私は、本当にベースの農業で食っていけるよという条件ができていれば、そこで今若い人たちがいないところでも、ちゃんと後継者というのは知恵を働かせて出てくるんじゃなかろうかということを期待しております。平均年齢六十五歳というふうな状況にしてしまったのは、これはそこの農業じゃ食えなかったからですよ。その点が補償されれば、状況は変わってくるわけですから、その変化の中でどういうふうな対策をとるかということを考えるべきだと思うんです。

 なお、ついでに申し上げますと、例えば集落営農というふうなものも、あれは政策的にやれやれと言ってできたわけじゃなくて、生産調整というものを強化する中で、農家の人たちの知恵で始まったのがああいう集落営農の形ですよね。そういう知恵というものはまだ現実に農家の人たちは持っているのであって、ここで営農をこれだけ頑張ればやっていけるよというような条件をセットしてやれば、その中から知恵は出てくるというふうに思うんです。また、それを同時にカバーする組織というようなものは、農協を初めとして、やはり必要だろうと私は思うんですね。

 そういったところで、もう機械を動かす人もいなくなったよというところにどうやって手助けしていくかという援助の組織というものは、これは地域に全部、農協があるわけですから、農協の人たちなんかもそういうふうな営農指導といいますか、営農の互助組織というようなものをつくり上げていく。これも今までだってつくってきたわけですから。

 私は、ここで営農できる条件というのをつくってやることによって、そういった営農の助成組織というようなものもひとりでにできてくるだろうということを期待しております。

中川(泰)委員 それぞれ、農村地に御理解をいただいておりますことに心から感謝を申し上げます。

 ただ、もう一つお尋ねしたいんですが、農村地、山の中というか本当の純農村地で、最近は祭りもできないという状況なんですよ。そこで、農地、水、環境事業というのが一つできましたよね。これは農村地で物すごくヒットしておるんですな、おい、いいなと。集まれるんですよ。というのは、お金が入ってくるなというのは若い人たちに喜びを与えているんです。僕は成功しているなというように思うております。

 それで、今梶井先生からも、もうかったら何ぼでも集まってくるぞと言われるんやけども、農村地というのは、もうかっても集まってこないんです。僕の家からコンビニまで四キロあるんです。駅まで四キロあるんです。僕の家はまだ都会の方。十キロとか二十キロの人がたくさんいるんですよ。そこへ、若い世代の人たちに帰ってこいと言うても難しいと思いますよ。そこはどうお考えかなと。

 それから、今、農業を始めようかと言うてトラクターを買うたら、三百五十万円から四百万円ですよ、一町歩するようなトラクターで。一馬力十万円と言われていますから。コンバインでも三百万から四百万するんですよ。田植え機も三百万からするんですよ。乾燥機が百五十万ぐらい。もみすり機が百万円ぐらいするんですよ。足していくと、平均、大体一千六百万円ぐらいかかるんです。帰ってきてせいよ、私は不可能やなと。

 そして、僕は農協の役割というのは非常に大事だと思います。でも、田んぼをすいてなと言うたら、やはり農協は二万八千円もらわなあかんねん。田植えをしてなと言うたら、一反一万円もらわなあかんねん。それで、あと、肥料やら苗代やら足したら合わないんです、何ぼしてもろうても。もう草刈りがいけへんのです、息子が行かへんから。

 要するに、農業がきちっとできる組織を、僕も確かに法人とは言いませんから、やはり農業ができる組織をつくっていくことが大事だと。ただ単に所得補償することではないと。

 私は農村地に住んでおってそう思いますが、両先生に簡略に、もうあと時間がないので、お教えいただけますか。

鈴木参考人 先生の言われる、現実の農村の状態からしてそのような組織的なものによって何とか維持していかざるを得ないというか、そういうものが非常に重要であるという点は、私も認識を同じくしております。

梶井参考人 私、先ほど言うのを一つ忘れておりましたけれども、日本の場合には、農業後継者の養成政策というのが皆無だと言っていいと私は思うんですね。

 今共産党の方がいらしたらあれなんですけれども、共産党の農業政策を拝見していましたら、後継者育成のために月十五万円ちょっとつけるというような政策が共産党の政策に出ていましたが、ああいった政策というのは、全然ありませんね。フランスなんかの場合には、これは七〇年代からそういった形での後継者の養成政策といいますか、農業後継者として入る子弟にはかなりの金額の助成をやっております。そういった政策はゼロ。せいぜいあるのは、就農資金の融資ぐらいしか今まではなかった。こういう点がやはり一つは反省されるべきだと思います。

 それから、そういったところへの援農組織といいますか、それをどう強化していくかというのは、先生がおっしゃるように、確かに非常に重要な課題です。農協なんかがなぜそこのところを、農協が随分それをやっておるところもございます。特に、限界集落的な状況になっているところを巡回していって営農を支援するというようなことをやっているところも結構出てきております。そういった組織化というのは私は非常に大事だというふうに思います。

中川(泰)委員 両先生から非常に貴重な御意見を賜りましたことに感謝を申し上げます。また今後も、いろいろなことで教えていただきますように。

 ただ、私自身が思うのには、今までは親から子に農業をつないできました。それも不可能になりました。やはり農業をする組織で農業のやり方を教えていかなかったら、私は日本の農業は守っていけないというように思います。

 これは私の質問ではありませんが、民主党さんの出しておられる政策、僕はこの間、何回も読んだけれども、うわあ、自民党案に物すごう似てきたな、参議院の先議のときと全然違うな、やはり民主党さんにも正常な人はいらっしゃるんやなと最近思うております。

 それから、僕の親しい人で篠原さんという先生の案というのは、衆議院議員をする前からよく知っておって、いつもすごいなと思うてきたんです。やはり民主党さんにも正常な人はいらっしゃるんやなということを感謝申し上げて、私の質問を閉じさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、石川知裕君。

石川委員 民主党の衆議院議員の石川知裕でございます。

 私どもの戸別所得補償法案が似てきたのか、どちらが似てきたのか、それはちょっとわかりませんけれども、きょうは、両先生におかれましては、大変お忙しいところお越しをいただきまして、また貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。

 さて、昨年、戦後農政の大転換ということで、品目横断的経営安定対策が導入をされました。しかしながら、現場の農家からは、この制度に対して少なからず不満の声が寄せられました。昨年の参議院選挙においても、農村地方において私どもの戸別所得補償法案の方に支持が寄せられたのも、現在の政策のままではだめだから、どうか流れを変えてほしいという、国民一人一人の、また、地方で農業を一生懸命やられている方の声が寄せられた結果ではないかと思います。

 この品目横断政策は市場原理の徹底を図りながら中小規模農家を切り捨てる構造改革路線を柱にしていたので、非担い手農家は制度の対象から外れ、離農が加速をいたしました。しかしながら、今回の政策により支援を集中しようとした一定規模以上の担い手もこの政策を支持しているかというと、私は大変疑問に思います。

 私は、先ほどお名刺を交換させていただきましたが、北海道の十勝地域というところでございます。小麦の作付面積、これは全国の二割が私の地元の十勝でございます。専業農家率は七一%。そして、平均耕作面積は三十八町歩です。前回と言っていいのか、制度名は変わりましたけれども、また後で御質問いたしますけれども、今の品目横断では、北海道は十町歩、本州では四町歩以上ということで規定をされました。しかしながら、その規定をされた十町歩をはるかに上回る平均耕作面積を持っているこの地域でも、やはり不満の声が寄せられました。

 どうしてこの品目横断的経営安定対策がうまく機能をしなかったのか、それぞれ先生方、分析をお聞かせいただければと思います。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 品目横断的経営安定対策につきましては、まず大きな問題点というか誤解が生じたのが、強い農業だけを担い手として育成するという点が強調され過ぎたということがあるかと思います。実際には、規模要件だけでなくて、それを満たしていなくてもいろいろな形で地域の実情に応じて担い手として認定される可能性はあったわけですし、今その点は拡充もされていますけれども、そういう意味では一部分が強調され過ぎて誤解を招いたという点が一つ大きいのではないかというふうに考えております。

 それと、先ほど来申し上げていますように、この政策だけで完結するのではなくて、社会政策的な別の政策がセットになることで政策体系が整っているのであるということが十分に伝わっていなかったということがあるかと思います。

 それともう一つ、これは現実の問題としましては、十勝でも私もお話を聞きましたけれども、過去の面積を基準にして支払われる部分が七割を占めているということで、この部分がWTOの規定により緑の政策にするために生産から切り離すという形でセットせざるを得なかったんですが、この点が大規模農家にとりまして、たくさんつくっても、その分の乾燥調製料とかを払うと、後で三割の部分、その年の生産量に応じて払われる部分をもらってもマイナスになっちゃうものですから、規模を拡大するとか意欲を持って増産していくということについて、そういうふうなインセンティブがなかなか出てこないという可能性があるというか、大規模農家がそれで悩んでおられたのを聞きました。

 この支払い額については、支払いそのものがまだ完結していませんから、その時点で聞きましたので、その後、全部の支払いが行われてからの状況はまた違うかもしれませんが、私が早い段階でお聞きしたときには、過去の面積に基づくという点が、日本にとりましては、生産から切り離すというか生産に影響を与えないような支払いという形で緑の政策にしなきゃいけないということと、今からさらに規模拡大し自給率を高めるようなインセンティブを与えるというある意味矛盾するようなことを両方一遍にやらざるを得なかったという、日本の置かれている状況の苦しさかと思うんですが、そういう点の矛盾といいますか、検討すべき余地があるんじゃないかというふうに思いました。

梶井参考人 法律自体の問題点というのは、先ほども申し上げましたように、一定規模階層以上に施策を絞っても構造改善の加速にはならないんです、かえって減速になるんだという基本的な問題点があるということを私は申し上げたいんです。

 それから、北海道の方の問題に関して言えば、特に小麦に問題が集中しておりますけれども、北海道の小麦は、近年、この十年ばかりの間に、特に十勝なんかを中心にして急速に単収を上げているわけですね。恐らくヨーロッパの小麦の単収と匹敵するぐらいの単収レベルに上がっている。十アールでほぼ七百キロ近い単収になっていると思うんですけれども、近年のその努力はあの算定の仕方の中に全然反映していないんですね。過去実績ということもございますし、面積換算するときの単収のとり方が、たしかあれは共済単収か何かをとったことによって実態とかけ離れているというふうなところが一番大きな問題点なんじゃなかろうかというふうに思っております。

石川委員 先生方、ありがとうございました。

 梶井先生がおっしゃるように、共済単収でとっているために近年一生懸命頑張ってきた部分が全く反映をされていない。北海道でいえば道東地区、また、九州の北部、佐賀県等でもやはり反映されていないという現状があって、不満の声が寄せられました。

 この品目横断的経営安定対策は、制度導入初年度、一年目にして制度上の欠陥を指摘されて、名称を水田経営所得安定対策、北海道では水田・畑作経営所得安定対策へと変更いたしました。そして、先ほど鈴木先生からもお話がありましたように、制度の微修正も行いました。私の地元でも、先ほどお話がありましたように収量が上がったのに収入が上がらなかった、緑、黄色、販売収入、最後まで計算をしてみないとわからない部分もありますけれども、やる気が起きないという声や、規模を拡大しようと思っても実際はなかなかできないという声が多く上がっております。今回の修正でそれらを改善できるのかどうかということをそれぞれ両先生からお聞きしたいと思います。

鈴木参考人 共済単収をとることによって減収が生じたという部分につきましては、共済単収の部分を見直すという方向で、それが今回は緊急措置として不足部分を別途支払うという形で対応されていますけれども、今後につきましては、基準になる単収そのものを見直すということを行えばよろしいわけですので、それは技術的な問題として解決すると思われます。そういう方向になっていると思います。

 ただ、私が先ほど申し上げました、過去の実績に応じて支払うという考え方そのものにつきましては、この基準年をもう一度見直すかどうか、これは、制度上いつ見直しますよとアナウンスしにくい面がございますのでなかなか難しい面もあるかと思うんですが、そのあたりについてはさらに検討が必要かなというふうに考えます。

梶井参考人 今の問題については鈴木参考人が言ったとおりでございます。

 あと、私、見直した点で非常に気になっておりますのは、例えば特例措置に関しまして、今度県知事特認にかわりまして市町村長の特認で対象者をふやすというふうな措置をとりましたけれども、あれを拝見いたしますと、市町村長のときも、市町村長がなぜそういう特認をするかということについて、これは農水省の方に届けて、農水省が審査して、それにパスしたものだけやるんだよということになっておりましたね。この前、農水省のおつくりになった文書を拝見しておりましたら、市町村長特認についても農水省の審査というのが入っております。あの県知事特認というのは一件も特認がなかったそうでございますけれども、それはどうしてか私はよくわかりません。審査が厳しかったのかどうかわかりませんが、せっかくやった市町村長特認もそうなる危険性はないのかなということを、あの文書を見ましたらちょっと心配しておりますが、一体どうなっているんでしょうか。

 それからもう一つ言いますと、私は、特認の枠をああいう形で広げるという形で対象を広げるというふうなことでしたら、ああいう対象限定的な施策というのは本当はやめた方がいいんだというふうに思っております。

石川委員 両先生方、ありがとうございました。

 昨年の我が国の食料自給率がカロリーベースで三九%までに下がっていることがわかり、国民の間にも食料自給率の向上に対して一定の理解が広まっているのではないかと思います。しかしながら、現在の農業政策では自給率の向上は厳しいのではないかというのが私ども民主党の考え方です。

 先ほどの品目横断、今、水田・畑作経営所得安定対策に関して、これは北海道地方で起きている一例を挙げますと、緑ゲタ、今回の改正で固定払いと名称が変更になりましたが、この今の固定払いは実際の作付面積と関連しないため、固定払いの支払いを受けながらほかの作物への転換を行う農家が多くなっております。私も先週、先々週と地元を歩きましたら、昨年まで小麦やビートをつくっていたけれども大変厳しい、タマネギや野菜等に変換をするという農家が少なからず見受けられました。

 このような動きがある中で、自給率の向上という点において現在の水田・畑作経営所得安定対策ではこれから可能かどうか、そして、私ども提出をさせていただいております農業者戸別所得補償法とではどちらが自給率の向上を図れるか、この二点についてそれぞれお答えいただきたいと思います。

鈴木参考人 私は、自給率の向上という観点から、両案とも、これは十分に機能すれば自給率向上には結びつくというふうに考えております。

 民主党さんの案は、とりあえず全体を底上げするということでございますから、それによって増産のインセンティブを与えるという意味で直接的な効果があることは間違いないと思います。

 ただ、問題点は、申し上げましたように国民からは理由がよくわからない状態で全部の人々に補てんをするということについての疑問がずっと出されているかと思いますので、その点はきちんと政策根拠を明確にして国民に納得してもらえるようにしなきゃいけない。そういう意味では、産業として伸びていく、将来的に担う人々をきちんと支援するという部分と全体を底上げする部分というのをきちんと仕分けして、全体を底上げする部分については、自給率の向上といろいろな多面的な価値の具体的なものをきちんと示すことで、理由があるんだという形できちんと国民に納得できる理由を提供できるかどうかということ、その仕分けができているかという点だと思うんですね。

 ですから、同じ形で結果的に全体の農家の皆さんに支援が行われるのであっても、そこが国民に理解できるような形できちんと示すかどうか。そういう意味で、現行の政府の政策体系は、ある一部分だけを伸ばすのではなくて、それ以外の部分についてはセットで支援するという形になっておりますので、それは今の制度でも可能ではないかというふうに思います。

 ただ、先ほども出ました、過去の面積に基づく支払いという点につきましては、結局つくってもつくらなくてもいいというふうなことで自給率の向上に必ずしも結びつかないという問題があるのは事実だと思いますので、その点はWTOに整合するためにはまさに生産を刺激しない政策ということにしなきゃいけない、それで過去の面積になっちゃうわけですが、おっしゃるとおり日本は自給率を上げなきゃいけない、それからもっと規模拡大もして意欲が出てこなきゃいけないということと、そもそも緑の政策にするための条件とが一致しないわけですね、だからそこの矛盾をどう解消するかというのは考えなきゃいけない問題で、重要な御指摘だと思います。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

梶井参考人 私、今の鈴木参考人の最後の方のひっかけでちょっと言いますと、輸入国としての立場をWTOの場なんかでももっともっと主張すべきなんじゃなかろうか。それで、多くの国が輸出制限というようなことをやるような状況の中で、輸入国、しかも先進国の中でも最低の自給率になっている我が国が、自給率引き上げのためにやることがどうして問題なんだということをもっと胸を張って大いに主張していただきたい。

 それを大前提にして申し上げたいんですけれども、私は、今の品目横断的なやり方ではなかなか自給率の引き上げには結びつかないと思っております。それよりは、今回の民主党の提案の方が、これは端的に自給率引き上げというような目標とくっつく、政策目的に挙げているわけですから、はるかに実効性が上がるだろうというふうに思っております。

石川委員 昨年、特に米価の下落によって本当に個々の農家が大変厳しい状況に陥っているわけでありますけれども、今後、産地づくり交付金を含めて今の農政で米価の下落がとまっていくのかどうか。民主党の場合、戸別所得補償法は米も入れております。その点を踏まえて両先生に端的にお答えをいただきたいと思います。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、米価の下落の問題をどう解決するかというのが一番重要な点かと思います。その点につきましては、現行の制度体系におきましても、収入変動緩和対策、ナラシの部分において、この点でかなりの下落があっても補てんが可能なように修正が行われましたので、その点が十分機能するかどうかというのが一つの大きなポイントかと思います。

 それと、申し上げましたように、生産調整に過度に依存するのは難しくなっておりますので、生産調整が完全に行われなくて余剰が生じるような場合にも対応できるような形に考えていかなきゃいけない。そのためには販売面での調整といいますか、いろいろな用途で、お米をつくってもそれをほかの用途で処理できるようにするという部分を拡充する必要があると思います。そういうことをやることによって、現行の体系を拡充する形で対応できるのではないかというふうに私は考えております。

梶井参考人 これは、一つの問題は、生産調整がどういうふうにいくかということも大いに関係するわけですね。その点に関して、こういうことを申し上げるのはなんですけれども、たまたま手元にありますから申し上げます。

 これは岩波の経済学辞典から引っ張りました。生産カルテルのところに書いてある文章ですが、「いわゆる純粋な原子状競争の市場においては企業間の協定の可能性」、つまり生産カルテルの協定のことです、「協定の可能性はきわめて小さく、」「少なくとも協定推進の核となりうる大企業が現われることが、カルテル形成の基本的前提である」。これは岩波の経済学辞典の中に出ている生産カルテルというところを見ていただければおわかりになりますが、その中で、そういう場合、つまり「いわゆる純粋な原子状競争の市場において」、百万戸以上の生産者が生産にタッチしている米なんというのはまさにこの「純粋な原子状競争の市場」と言っていいわけですね、そういったところでは生産者が主体のカルテルなんてできっこないんだというのが経済学的常識だということなんです。常識なんです。そういう場合にカルテルが成立するのは、これは行政カルテル以外にはないんだよというのが経済学の常識です。

 そういう点で言いますと、今回の見直しの中でもこれは政府の方も随分言っておりますが、自民党の見直しの昨年の暮れの提案の中で、行政が積極的にそこに関与していく、行政の関与の強化ということが随分書かれてありました、あそこまで書かれているのなら、農業者、農業者団体主体の需給調整システムというふうなことは本来無理なんだということをはっきり認めて、これは、生産調整というのは国の政策としてやるんだということを明確にすべきだと思うんですね。その点が第一です。それをやらなければ、米の需給のこれをはっきりさせていく、余り供給オーバーになるような事態を起こさせないためには、そのことがまず必要だと思うんですね。それが大前提。

 それから、もう一つ。今回、政府備蓄米が百万トンに上積みされています。これは当然、当分の間は売りに出さないんだということになっておりますけれども、今までの政府のあれは調整保管じゃなくて備蓄米ですよね。備蓄米は回転備蓄ということでやることになっております。一定期間たったら売りに出す。米の劣質という問題もございましょう、売りに出すことになっております。回転備蓄という形でいわば古米が一定市場に出てくるということは、これは必ず米の市場に対しては下へ引っ張るわけです。下へ引っ張ることになるんですね。いつでも古米が百万トンあるということですから、市場は必ず下へ引っ張られるわけです。あの備蓄米、政府の方の備蓄米を一体どういう形で運用するのか、この点が一つの非常に重要な問題になるというふうに私は思います。

 本来、備蓄という点で言いますと、これは回転備蓄というふうなことじゃなくて、備蓄というのはいざというときのための備えなんですから、その備えをとる必要がなくなって古米が出てきたということであれば、いざというときのことまでやらなくて済んだということに感謝して、私はこれは棚上げ備蓄すべきだと思うんです。飼料米なりなんなりで払い下げていく、そういう措置をとるべきだというふうに思うんです。たしか、民主党の先生方の中にはそういう棚上げ備蓄でいくべきだというお考えをお持ちだということを拝見いたしましたけれども、私はその方を支持いたします。

石川委員 本当に梶井先生には、民主党の戸別所得補償の方がこれから食料自給率を上げるためにはいいという、大変力強いお答えをいただきました。

 最後に梶井先生に、ちょうど「小泉「構造改革農政」への危惧」という本を私も拝見いたしました。この百四十一ページに、今のお考えの中で、「高橋是清に学べ」ということが書いてあるので、そのことについて少しお話をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

近藤(基)委員長代理 梶井参考人、時間がありませんので端的に。

梶井参考人 高橋是清の話というのは、戦前の生糸、昭和の農業恐慌で生糸が輸出できなくて、生糸滞貨で横浜で生糸の価格が暴落しました。そのときに、当時の農林省は、生糸の買い上げ会社をつくって、市場から一定程度買い上げて糸価の安定をやろうということをやったわけですね。その糸価安定法を、高橋是清は当時大蔵大臣でございましたが、大蔵大臣のところへ持っていったら、せっかく買い上げて糸価が安定したにもかかわらず、これを糸価が回復したら市場に放出します、いわば回転備蓄ですね、そんなことをやったら上がった生糸の価格がまた下がるじゃないか、何でそんなばかなことをするんだ、買い上げた生糸は糸価が上がったらめでたしめでたしでもって横浜の港へ沈めてしまえということで、糸価が安定したら放出するという農林省原案の糸価安定法の条文を大蔵大臣が消したという話があるんです。そういうことです。

石川委員 ありがとうございました。

近藤(基)委員長代理 次に、井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 鈴木先生、梶井先生には、本日、当委員会にお越しをいただきまして、貴重な意見を賜りまして心から感謝申し上げます。

 初めに、鈴木先生にお伺いいたしますけれども、産業政策と社会政策との組み合わせで多様な農家を支援する、こういう必要な施策としてのお話がございました。

 まさに、品目横断的経営安定対策というのは、将来の担い手を育てるという意味で産業政策として新しい方向に踏み出したわけでございます。あわせて、中山間地の直接支払いでありますとか、あるいは農地、水、環境という社会政策を組み合わせて農業を支える多様な担い手を支援する、また農村社会の活性化を支援するという施策であるわけでございまして、ことしがスタートなんですけれども、先般、加入要件の弾力化等の見直しをやりました。こういう制度ですから、常にそういう見直しをしながら拡充していかなければいけない、こう思っておりますけれども、今のこの農業政策自体について、改めて、先生の評価、また今後改善すべき点はどういう点なのかということをお伺いしておきたいというふうに思います。

鈴木参考人 御質問ありがとうございます。

 今の制度体系につきましては、ただいまお話ございましたように、産業政策と社会政策を組み合わせることで担い手の育成と多様な農家もあわせて支援するという形でバランスをとって農村社会全体を維持していくという意味で、その考え方は非常にいいというふうに考えております。

 ただ、今回、現場で非常に手続が煩雑であるとかあるいは十分に理解がしにくいとかいろいろな点が出てきたのも事実でございますし、それは現場の実情に合うように、全国一律ではなくていろいろと地域地域によっても違うわけですから、そういう形で、現場に合うような形でできる限り調整をしていくということも大事です。

 それから、社会政策の方の農地、水、環境政策につきましては、まだまだ面的な広がりが十分ではないと思われますので、担い手の育成といいますか強い農業の育成の部分が非常に強く前面に出過ぎて、環境政策等によって多様な農家も支援されるんだという部分が弱いと、これは理解を得にくいと思いますので、早急にその後段の部分を拡充するといいますか、これが非常に重要ではないか。そうしないと、農業、農村の疲弊というのはかなり急を要する段階まで来ておりますので、強い農家、担い手を育てるという側面だけではなくて、そちらの社会政策的な面を早急に充実するためにどうすればいいかということを詰める必要があるんじゃないかというふうに考えております。

井上(義)委員 続けて鈴木先生に、民主党の戸別所得補償法案についてどのように受けとめておられるか、お聞きしたいんです。

 ばらまきという批判がありますけれども、これは国民的な理解が得られれば決してばらまきということにはならないわけなんですけれども、今申し上げた産業政策と社会政策を組み合わせていくという基本的な考え方からしますと、この戸別所得補償方式というのはいわゆる産業政策なのか社会政策なのか、そういうことがどうも不明確で、なかなか国民的な理解が得られないんじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、その辺について先生はどういうふうにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、その点が一つの弱点であろうと考えております。

 要するに農村地域全体を支援するという意味では、結果的には同じ目標に向かって政策が行われているのであっても、今は、消費者の皆さん、国民の皆さんがそういうことであれば農業、農村を支援しなきゃいけないなというふうに納得してもらえるような整理ができているかどうかということが大変重要だと思いますので、そういう点で誤解を生むような体系になっている点が弱いのではないかというふうに考えております。

井上(義)委員 梶井先生にお伺いいたしますけれども、政府の今とっている施策は逆に構造改革を後退させるんじゃないか、このような御批判でございました。

 私は現場を回っておりまして、逆に所得補償方式は、正直言いましてこれこそまさに現状を固定化してしまうことになりかねないんじゃないのかと。といいますのは、集落営農なんかを一生懸命取り組んでいる地域でも、一ヘクタールとか一・五ヘクタールとか二ヘクタールとかという、皆さん兼業なんですけれども生産調整には参加をしていただいている。ただ、麦、大豆とかそういうものをつくるということになりますと、結構手間暇もかかりますし、兼業ではなかなかできないということもあって、事実上、生産調整イコールそのまま休耕して荒廃田になっているというケースが結構多いわけです。そういうところに何とか集落営農をつくろうというふうになりますと、どうしてもそういう皆さんがネックになってなかなか進まない。先祖伝来の土地ですから何とか耕し続けたい、耕作し続けたいという気持ちは非常によくわかるわけですけれども、それが将来にわたって一定程度所得補償されるということになりますと、これは現状を固定化してしまうんではないか、そういうおそれを私は非常に持つわけでございますけれども、先生の御所見はいかがでしょうか。

梶井参考人 今まで農業構造がどういうふうに動いてきたかということをお考えいただきたいと思うんですね。

 これは、今のような形で構造改善政策といいますか特定の階層にてこ入れをして担い手をつくっていこうというふうな政策が始まる前から、日本の農業構造自体は一九七〇年代に入ってからかなり動いてきていると私は思うんです。

 動いてきておりますのは、七〇年代のあのときの米価の状況でいいますと、これは明らかに生産費をはるかに超える米価が形成されておりました。そういう状況の中で、多分二ヘクタールなんかのこれから経営規模拡大していこうという意欲を持っている方々の地代形成力が、例えば五十アール、七十アールの方々の農業所得の形成力よりも高かったわけです。そういう条件ができてきました。つまり、規模の小さい方々の所得形成力よりも上層の農家の地代形成力の方が高い、強いというふうな状況のときに農地は動いていくわけですね。実状は貸借でもって動いていったわけです。それがまさに七〇年代の動きであったと思うんです。八〇年代に入りましてもその傾向が続いておりまして、五ヘクタール以上の農家の形成というのが大分顕著になって出てまいりました。そういう条件をつくることがまさに政策の課題だと私は思うんですね。

 その七〇年代なんかの場合には、そういう条件のもとで、所有権で動かすんじゃなくて賃借権で動かさなきゃだめだということで農地法の改正なんかも行われました。政策的な条件というものはそこでそろえていくわけですね。

 ところが、一定規模階層以上に施策を絞っていくということをやったときに一体どういうことになるだろうか。

 特に担い手は、この前つくった法律のあれでいいますと、例えば都府県でいいますと、四ヘクタールというようなところに規模を絞って、そこは担い手として優遇していきましょう、所得補償をやっていきましょう、それ以外の方はしかし所得補償の当てはありませんよ。その状況になってきた二〇〇〇年以降、二十一世紀に入ってからの状況というのは、まさに米価はずっと下がっていって、農産物価格はずっと下がってきている状況の中なんですね。

 片や優遇する、片やそこにほうり出される。しかし、優遇されているような方々の中でも、優遇と言っちゃ悪いですけれども、担い手として認定されたような方々の中でも、私先ほど言いましたように、今まで非常に農産物価格がいい状況のときでも、今まで五ヘクタール以上、多分これは四ヘクタール以上をとっても同じだったんですけれども、二〇%ぐらいは規模縮小をやらざるを得なくなっているんです。

 それは、どんな農家であっても不慮の事故というものもございます。そういったことで二〇%は脱落していっていた。それにかわって、下から上がってきたという方たちによって今までは農業構造が動いてきた。上がる者もあり、落ちる者もあるという動態の中で、上がる者の数の方をうんとふやすというのが本来望ましい構造政策なんですね。

 私は一定の農業所得の確保というものは可能だという、その条件の中で競争は行われないわけじゃないんです、そこで営農意欲を持って頑張るような方々とそうでない方、兼業なんかに行かれるような方々とでは必然的に営農意欲の差は出てくる、その競争の中でもって農業構造は動いていくんだというふうに思っています。それで固定するんじゃなくて、農業所得の一定程度の確保、一人前の営農をやっていればこれだけの所得は確保されますよという条件をつくっていく中で競争は起きていくんです。そこで農業構造は動いていく、それは固定化するんじゃないんだというふうに考えるべきだと思います。

井上(義)委員 農業の後継者問題というのは非常に今大きな課題になっているわけです。先ほども先生お話がございましたけれども、農業で食べていけるということはどういうことを意味するのか、このことについてお伺いしたいと思います。

 これは、ある程度の規模を持っていなければ農業で食べていけない。農業で食べていけなければ、今兼業農家で、かなり高齢者の方が一生懸命頑張っていただいている、だけれども次の世代になったら、その状況ではたとえ兼業であっても参入してくることはなかなか難しいだろう。そうすると、農業で食べていけるという状況を積極的につくり出して、そういう状況を積極的に支援しますよ、あとは社会政策として農村を支えている皆さんを支援していく、こういう政策の組み合わせが、農業で食べていける人を、持続的に農業に参入してくるという条件という意味で私は正しい方向だというふうに思いますけれども、この辺について先生に簡単にお伺いしたいと思います。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

梶井参考人 後の方の問題に関してですけれども、今の兼業農家の方々のところで、本当に今七十代に達しているような方々がおやめになったときに、やれなくなったときに、つぶれちゃうか。必ずしもそうじゃないですね。つまり、兼業農家の方でも定年後帰農という方がこのごろ結構いらっしゃるわけです。そういう形で再生産されていくということもございます。

 それから、社会政策的な見地でというふうなことをおっしゃいますけれども、例えば農地、水、環境対策は社会政策的な見地からだということですけれども、私はそうじゃないと思うんですね。

 端的に言って、一定の担い手に絞って農業施策の方はやりましょうとなったら、日本の農業の現実からいったら水田利用ができなくなっちゃうわけですよ。水路の保全なり、そういった問題というのは今まで集落のみんなで力を合わせて維持管理してきたわけですね。そういったことが、特定の担い手に絞っちゃって、一割の人で水路の維持管理ができますか。できっこないわけです。できっこないから、農地、水、環境対策、用水路の保全なりなんなりというようなものは集落のみんなでやってくださいよというふうな形で、担い手政策の補完政策だというふうに思って、本当に社会政策的な見地から地域の人たちを巻き込んで、地域のいわば存立条件を確保していくための施策としてやるんだということであれば、私は、もっと違った政策が組み立てられるんじゃなかろうかというふうに思っております。

井上(義)委員 それから、食料自給率の向上というのは、私ももちろん大賛成だし、今の日本の農業政策の最大の課題の一つだ。もしかすると、それが唯一の課題だと言ってもいいかもしれません。

 ただ、自給率の向上、いろいろな施策の組み合わせが必要なんですけれども、例えばサプライサイドでいいますと、麦とか大豆とか飼料用作物をどう供給するかということが一番大事なんだろうと思います。

 実は、生産調整というのは、いわゆる米の需給調整であると同時に、ほかの作物をどうやって皆さんにつくっていただくかということが最大の課題だろうと思うんですね。

 現場に行きますと、麦、大豆というのは、もちろん、先生御承知のように、米のように連作がききませんから当然ローテーションしなければいけない。そうすると、一定の規模が必要だ、しかも米に比べて手間暇もかかるということで、小規模の農家は、生産調整には参加をしていただいているんですけれども、そこに麦、大豆を植えるかというと、なかなかそういう動機が生まれてこない。そうすると、そこはやはりある程度集落営農化するとかある程度大規模にならなければできないわけです。今先生がおっしゃるような戸別所得補償方式で小さな農家でも兼業でも支援しますよということになると、そういうところは事実上休耕して荒廃田になっているところが多い。

 そうすると、本当に自給率を上げていくということを考えますと、やはり一定の規模でローテーションしていけるような農地のシステムをつくり上げていかなければ自給率の向上につながってこない。そういう意味では、産業政策としての品目横断的経営安定対策というのは、私は自給率を向上していくための一つの大きな政策であるというふうに思います。

 それから、今回、政策の大きな方向転換で、いわゆる飼料用作物とかバイオ用のお米とか飼料用のお米なんかも生産調整にカウントをするということで、そこを積極的にやっていきましょうと。これは水田を活用するという意味では非常に重要な政策だというふうに私は思っておりますけれども、その二点について先生にお伺いしておきたいと思います。

梶井参考人 これは、私、先生がおっしゃるとおり、非常に大事な点だと思うんですね。今回の新しい見直しの中で、先ほども言いましたけれども、飼料用米でありますとか、あるいはエタノール用米とか非主食用米というところまで手を広げてくるようになった、これは非常に歓迎すべきことだというふうに思います。

 それから、まさに麦、大豆なんかの場合には、これは一定規模でローテーションしていかないと、土地利用の面からいいましても非常に問題が出てくる、確かにおっしゃるとおりです。しかし、それは規模拡大農家だけができるだろうか。

 そういう知恵のために集団転作というふうなものも、特に集団転作の始まりの佐賀なんかのあれを見ますと、まさに農家の知恵としてああいうのを発明したんですね。転作に関しては、ローテーションをやっていくためには、戸別のあれだけじゃだめだ、集落のみんなで土地利用を、作付のあり方を考えて、転作でローテーションしていこうじゃないかという形で集団転作なんかが始まった。そういう経緯からいいましても、麦、大豆というふうなものは、まさに転作政策として、自給率引き上げのための大事な政策としてやるんだということが徹底してやられるようになれば、おのずからそういう対応策を農家の方々はとってくださると私は確信しております。

 なお、転作政策なんかが一時政策的に弱まった時期に、集団転作なんかは随分なくなりました。なくなった中でも、これは前の九〇年センサスですか、そのときにやらせたんですけれども、行政が主導してやった集団転作はなくなったのが多かった、九〇年センサスの段階で。しかし、農協あるいは集落で自発的に始めた集団転作はそのまま残っていますというのが非常に多かったわけです。

 ということがありますので、麦、大豆のつくり方というのは、農家の方々の方がローテーションしてやっていかなきゃだめだというのはわかっていますから、そのローテーションの組み方を一体どういう形で仕上げていくのか。個別の大経営のところで集中してやるようにするのか。というのは、麦、大豆の作付に関しては委託というのが随分ふえていますよね、麦、大豆だけに関しての委託というものは。それから、まさに集団転作みたいな形で、集落営農の中に取り込んだ形で対応していく、そういう知恵を大いに働かせてくれるんじゃなかろうか、そう思っています。

井上(義)委員 時間が来ましたので、大変ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。

 鈴木先生、梶井先生、本当に貴重な意見を披瀝していただきまして、ありがとうございます。

 まさに今日の農業、農村の抱える課題、そのために必要な施策というのが問われているなというふうに思っています。ただ、今日、所得補償をしなければならない農村の現状というものをどうしていくのかというのは、日本において本当に重要な課題だという共通認識に私どもも立っているわけでございます。

 どうしてこうなったんだろうなという経過を見るときに、米をとってみれば、ずっと右肩下がりで米の値段が下がってきて、一向に値上がりする傾向というのは見受けられないというのが、今日の農業、農村を取り巻く状況をもたらしているんだというふうに思っています。そして、そのことによって、生産調整をしっかりやっていこうという形で今取り組んでいるわけでありますけれども、生産調整に参加しない人が四十三万四千人、作付面積で二十五万ヘクタール、一五・二%に達していて、JA系統の集荷率が全体の四割にも満たない、こういう状況になっているわけです。

 鈴木先生でいえば、集団的な強制力に依存する生産調整というものから販売調整にシフトするという、必要な施策というふうに打ち立てられておりますけれども、米の値段の下落傾向にどう歯どめをかけていったらいいのか、この施策というものを考えておられるのであれば意見を披瀝していただきたいというふうに思います。

 同様に梶井先生の方からも、今日のこういう問題についての御意見をお聞かせ願えればというふうに思います。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、今の農業、農村の疲弊というのは深刻でございまして、特に米価の下落が一番の大きな原因であって、これを何とかしなければもたないというのはそれぞれ共通の認識だと思います。

 しかしながら、そのために、生産調整をできる限り強化して米価の下落を抑えようとしておるわけでございますけれども、これは私が申し上げましたとおり、難しいというふうに考えておりますので、生産で調整する部分をできるだけ減らして、そこにかかっている非常な労力と時間のコストをほかに向ける。ほかに向けるということは、米を生産しても、最低限ほかの用途で、今も既に出ていますえさ米とかバイオ燃料米とか援助米、それから米粉とか、そういう用途に回す部分を、ある最低限の価格を提示して、そこで過剰部分を全部主食用から完全に隔離してしまう。

 そうすれば、まず、農家の皆さんは主食用としてできるだけ高く市場で販売して、それでやむを得ない部分をそういう処理の方に回すという選択ができます。しかも、その最低限の価格の部分が目安になりますので、そこがぎりぎりの部分だというふうな形で、そこを見ながら経営計画を立てるというようなことが一つ考えられるんじゃないか。

 ただし、その水準をどうするか。今、集荷円滑化対策というのがそのような考え方で、質入れ、質流しの考え方で、融資の形でそれを行っているわけですけれども、その部分の価格水準というのは低いわけですので、そのあたりを拡充できるのかどうかというのが当面の課題かなと思います。

 いずれにしましても、先生が冒頭言われましたように、この深刻な農業の状態を何とかしなきゃいけないということについては共通の認識ですから、私が申し上げましたように、品目横断でカバーできない部分は早急に何かでやらなきゃいけないわけです。それは、環境を理由にしたような支払いとか、ああいう直接支払いを早急にすることで、米価が下落してもその部分をカバーすることもできるわけですから。

 いずれにしても、急を要する事態で、その認識については皆さん共有されていると思いますので、いろいろなものを総動員してそこを何とかしなきゃいけない。そういう状況ですから、民主党さんのような形の差額補てんという考え方も、一つの考え方としては当然あるわけです。

 ただし、申し上げましたように、理由がきちんと仕分けされていないと国民の支持を得られないということですよね。だから、同じ目標に向けて結果的に類似の支援が行われるのであっても、どういう形で行うかによって国民の理解は変わってきてしまうわけですから、そこをよく考えてもらう必要があるというのが趣旨でございます。

梶井参考人 生産調整の問題というのは、先ほどから繰り返し申し上げますように、これは生産者団体の自主的な取り組みなんかでできるものじゃないんだということをまず明確にする必要があると私は思うんですね。

 その意味で、やはり生産調整不参加者というようなものが出てくるというようなことは、生産者団体の自主的な取り組みでやっている限りにおいては、出てくるのは当たり前なんですね。しかも、売れる米づくりということで勝手に売ることを大いに奨励したわけなんですから。だったらおれの方が高く売れるよということで参加しないという方が出てくるのは私は至極当然だと思うんです、そういうふうにさせてしまったんですから。やはり生産調整というようなものの政策的意味づけというものを明確にして、国の自給率引き上げのための政策として取り組むのであるということを明確にして、そこで参加しない人に対するデメリット措置というのを十分考えるべきだ。これがまず第一です。

 それから、米価の問題なんかについても、従来の生産数量目標のあの参考でやる割り当ての仕方が、売れるところはいいよという形で早目に売るという売り急ぎのこともあったわけですよね。それがいたずらに米価を引き下げたというようなこともあります。

 そういったことがないように、そこのところは、個々の農協なんかが対応していたのでは米屋さんの力には及ばないわけですから、市場の中じゃ負けちゃうわけですから、やはり系統なら系統として統一的な販売体制をとって米価維持のために頑張るということをやるべきだというふうに私は思うんですね。本来、そういう流通上で力を発揮すべき系統組織なんかを、いたずらに生産者団体主体の取り組みなんかに狂奔させることが間違いなんじゃなかろうかというふうに思っております。

菅野委員 梶井先生、食糧管理制度があった時代と、米がすべて市場競争にゆだねられていくという流れの中で、ずっと下落傾向が続いてきている。これにどう歯どめをかけていくのかというのが政府の大きな役割だという認識に私は立っているんですけれども、一方では、私も常に言っているんですけれども、市場経済の中で、自由化の中で、米さえも安売り競争に駆り立てられているという実情が存在するんだというふうに思います。

 そういう中で、どこが行ったらいいのかという議論はありますけれども、再度、販売、流通面の規制というものをしていかなければ米の価格というのは上がっていかないんじゃないのかな、農業、農村の疲弊がずっと継続していくんじゃないのかなというふうに私は思っています。直接支払いをやるにしても、やはり価格というものを上げる力が存在しなければ、国民の理解というものが得られていかないんだというふうに私は思います。その点をどう考えているのか。

 あるいは、もう一つ大きいのは、生産調整、生産調整と言われていますけれども、四割も減反していて、生産意欲が本当に衰退しているというのも今日の農村を取り巻く状況であるというふうに言わなければなりません。世界的に食料争奪戦とも言われる中で、食料自給率が日本は低下している。この自給率を上げていくためにも生産調整の位置づけというものをしっかりしていかなければならないというふうに私は思います。

 民主党の戸別所得補償法案というのは、ある意味では生産調整というのを加味しているわけでありますけれども、一回この生産調整という部分を抜本的に見直すことも必要なんじゃないのかな、これはあくまでも直接支払い的な所得補償というものを行った上でのことなんですが、私は持論としてそう思っているわけです。

 鈴木先生、梶井先生、食料争奪戦の中での日本における生産調整のあり方について、御意見をお伺いしたいと思います。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、世界的にも穀物の需給が逼迫し不足が生じるような懸念がある中で、米にこれだけの生産力がありながら生産を調整しなきゃいけないという現状は考え直す必要があると思います。

 ですから、自給率を上げる場合にも、お米を十分に生産して、それは輸出も含めて、処理については考える。そういう形で、十分な生産力をお米でできる限り発揮するというような考え方に立つ必要が出てきているんじゃないかというふうに私は考えております。

梶井参考人 先生がおっしゃるとおり、私も生産調整の意味づけというのをもう少しはっきり見直すべきだというふうに思います。

 関連して申し上げますと、この際、食糧法の第二条、第四条、第五条ですか、生産者主体の云々、あれは政府の方から離れたような書き方になっていますが、食糧法の改正も同時にお考えいただければというふうに思うんです。この点が、あの食糧法のままにしておきますと依然として問題は残るというふうに思いますので、そこのところはぜひお考えいただきたい。

 それからもう一つ。

 基本法にございます不測の事態の場合にどう対処するか、これについてのマニュアルを農水省の方はおつくりになっていらっしゃる。しかし、その一たん緩急、いざというときにどうするんだ、不測の事態が生じたときにどうするんだというマニュアル、これは国民一般に知らせることになっておりますけれども、つくってあることは私は承知しておりますけれども、あれを一体どれくらい農水省はPRなさっているのか。恐らくあれをつくっているということも御存じない方が結構多いんじゃなかろうかというふうに思います。

 あのマニュアルの中で、本当に米生産の転換をやっていかなきゃいけない、食料を国内でカバーしていかなきゃいけないというときに、やはり頼りにしているのは水田なんですね。だから、水田を保全しながら、しかもなおかつ平時においては需要に合った米しかつくらないで、ほかの水田は自給率向上に必要な他作物の生産に充てる。総合食料自給政策といったときと同じことを今改めて問題にしなきゃいかぬわけですけれども、そういう意味での生産調整の位置づけというものを改めて明確にしていただく、これが大事じゃなかろうかと思います。

菅野委員 私どももずっとこの点を議論してきているわけですけれども、そういう中で、米の備蓄の問題ですね。今百万トンという数量を目標にして備蓄政策がとられていますけれども、食料争奪戦の中で、この百万トン備蓄量というものが適正なのかどうか、この問題も私は議論していかなければならない課題だというふうに思っています。

 先ほど、ずっとローンレートの話を引用しながら鈴木先生お話ししていますけれども、三百万トン、四百万トン、回転備蓄じゃなくて棚上げ備蓄方式をとっていって、それで世界的な食料不足というものに対応していかないと、今も不測の事態が生じたときにどう対応していくのかという問題に対処し切れないというふうに思うんですけれども、この百万トン備蓄という問題点を今日においてどう考えておられるのか、両先生の方からお聞かせ願いたいと思います。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、今の世界の需給逼迫の状況を勘案しますと、日本における穀物の備蓄の量はやや少ないんではないかというふうな見方もできると思います。御紹介しましたように、フィンランド等では、あれは麦ですか、一年分の備蓄を国民のコンセンサスを得てやっておるというような国もあるわけですから、日本ではお米について今国民の理解が得やすい時期ですから、備蓄をもう少し持っておく必要性というのは議論できるんじゃないかというふうに考えております。

 非常に費用がかかるという面がよく言われますが、備蓄の手法については、産業界の方でも非常に安く備蓄をする技術的な提案とかも行われておりまして、その点も少し節約ができる可能性もございますし、これは食料が不足するような事態に備えてやるという意味で、国民のコンセンサスが得られれば、農林水産省予算の枠を超えて十分に対応することも可能だと思います。それと、その分、生産調整を緩和することができますれば、そちらにはかなりの費用がかかっておりますので、それを回すことができます。そういう形で、備蓄については十分見直すといいますか、議論する必要があるんではないかというふうに考えております。

梶井参考人 備蓄はふやすべきだし、まさに回転備蓄じゃなくて棚上げ備蓄にしていく、これがなければ困りますよね。回転備蓄でやったのでは、市場を引っ張るだけの話になってしまいますので、備蓄量をふやすと同時に棚上げ備蓄政策をとる。棚上げ備蓄政策でもって、例えば飼料米ということでも結構ですし、そういうことを考えるべきだというふうに思います。

菅野委員 時間ですので終わりますけれども、この備蓄の考え方は、お金がかかるということでどんどん減らしてきたという経過があると思いますけれども、鈴木先生おっしゃるように、いろいろな手法が考えられるというふうに思います。

 特に、私ども主張してきているのは、全国にカントリーエレベーターというものが多くつくられました。そこの稼働率がどうなっているのかということを考えたときに、これはもみ殻保管できるわけでございますから、そういうあらゆる手法を考えて、安く備蓄できる政策というものを私はとっていくべきだというふうに思っているんですけれども、この安くする方法を、鈴木先生、梶井先生、どう考えておられるか、これを最後にお聞きして、終わりたいと思います。

鈴木参考人 おっしゃるとおり、費用をいかに節約するかという点で、いろいろと技術開発も含めて、議論の余地というか、いろいろ検討する必要があると思います。

 先ほどちょっと申し上げましたように、たしか北海道の産業界の方で、地下を使って大量のお米を安く保管する技術が提案されたりしておったかと思います。詳細は、今申し上げられませんが、そういうふうな形でやるというコンセンサスが得られれば、いろいろなアイデアが実現できると思いますので、そういう点は非常に余地が大きいんじゃないかと思って、賛成でございます。

 一言、備蓄の話も含めて、繰り返しになりますけれども、全体として、先ほど言われたようにお米の値段がどんどん下がってきて、農家が非常に大変な状況にある。農業、農村がもたないという状況はもう共通の認識で、これを何とかしなきゃいかぬということについては、我々真剣に今何かをしなきゃいけない状況であることは間違いないわけで、それをいかに有効に、かつ、国民になるほどと思っていただけるような形で早急にやるかということが非常に重要でございます。強い農業をつくることも大変重要ではございますが、それだけで今もたないのも事実でございますから、いろいろな政策を、いろいろなアイデアを寄せ集めて、何とかこの危機を早急に改善できるように、ぜひお願いしたいと思います。

梶井参考人 備蓄のコストをうんと下げていく、それを開発しなきゃいかぬ、これは確かに大事だと私は思います。しかし、それと同時に、備蓄というのは、食料安全保障というのは、我々国民のための保険なんだということを私は声を大にして言うべきだと思うんですね。今は食料安全保障なんて言いながら、保険を何も掛けていないわけです。それだけの保険料は払わなきゃいけませんよということを一般国民に言うべきだと思うんですね。

 ついでに、七〇年代の石油パニックと、それからアメリカから大豆の輸出禁止を食らったときに、あのときに大変な騒動が起きました。トイレットペーパーもなくなるというようなことで、相当大変なことが起きたわけです。

 あのときに、大阪では米の買い付け騒動が起きかけたんですね。起きかけたときに、大阪府の警察部長ですか、警察の方から食糧庁長官のところに直接電話が入って、米の取りつけ騒ぎが起きそうだという電話が入って、そのときの長官がすぐに大阪府の食糧事務所に、大阪府の食糧事務所にある米を全部米屋の店頭に積め、足りなかったら石川、福井から送らせると緊急電話で手配して、米は大丈夫だというのを見せつけて事なきを得たということを、私は当時の食糧庁長官をやっておられました中野和仁さんから、後でそういう思い出話を聞かされました。

 今そんなことになったら大変だ、食管法もなくなって、農水省もそんな力はないしということを中野さんはおっしゃっていましたけれども、そういうこともあり得るわけです。

 私は、保険のための備蓄というのは非常に大事なんだということを国民の皆さんに十分に理解してもらう、保険料を払ってもらう、これは必要だと思います。

菅野委員 終わります。ありがとうございました。

宮腰委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、休憩いたします。

    午前十一時十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十七分開議

宮腰委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百六十八回国会、参議院提出、農業者戸別所得補償法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長内藤邦男君、経営局長高橋博君及び国土交通省北海道局長品川守君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 冒頭、今月一日、北海道東部、釧路、根室を襲った暴風雪被害について、まず質問させていただきたいと思います。

 このことによって、国道が、交通機関が麻痺したり、その影響によって、主産業の酪農業において生乳の集荷が低下する事態が発生しました。今酪農業が大変厳しい状況にあって、集荷までに時間が長引くことにより、各農家のタンクにおさまり切らない生乳は廃棄せざるを得ないというダブルパンチをこうして受けたわけであります。現実に集荷ができず、生乳を廃棄した農家が出ている中で、多いところでは一回の集乳分二十万円ほどの被害が出たと聞いております。

 こういった集乳の障害となった暴風雪による吹きだまりの交通どめ、そしてまたこの通行どめがもしや冬の物流の障害にならないように、防雪さくなどの対応策があったら多分よかったのではないかという地元の生乳を廃棄せざるを得ない酪農家の声が多かったということを、ここではっきりと報告させていただきたいと思っております。

 このことについての対応を品川局長に聞いていきたいことと、もう一つは、この暴風雪による被害のような、全く想定外の事態によって生乳の集荷ができずにこうむった被害に対して、大臣として、何か対応策が必要と考えますが、御見解を求めたいと思います。

品川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、先日、発達した低気圧によりまして、道東、特に釧路、根室地域におきまして暴風雪が発生いたしまして、四月としては観測史上最大級の降雪量、あるいは最大風速があったところでございます。このため、地吹雪によります視程障害や吹きだまりが発生いたしまして、道東地域の国道では四十四号を初め七路線十区間、道道におきましては六十六路線八十四区間が通行どめとなったところでございます。この交通の寸断によりまして、根室市は約二十二時間、浜中町は二十時間孤立状態になるなど、市民生活や産業活動に影響が出たところでございます。

 委員御指摘の国道四十四号につきましては、釧路市と根室市を結びます道東地域の重要な路線でございます。これまでも、視程障害や吹きだまりの発生状況を踏まえまして、防雪さくの設置等の対策を進めてきているところでございます。

 このたびの暴風雪によりまして、最大では七十キロぐらいの区間につきまして全面交通どめが発生したわけでございますが、これまで把握していた箇所だけではなく、当該区間の全線にわたりまして吹きだまり箇所が多数発生したということなどを踏まえまして、今後、気象状況あるいは吹きだまりの状況などの調査を行いまして、必要な対策に結びつけてまいりたいというふうに考えてございます。

若林国務大臣 ただいま雪害につきましての状況の報告がありました。

 私どもの方も、四月一日の雪害によりまして一部地域で生乳の廃棄が発生したということにつきましてはホクレンから聞いております。詳細については調査中ということでございますけれども、現在、釧路管内では、十三戸の酪農家で十二トン程度の生乳の廃棄が生じたという報告を受けております。このような不測の事態でございまして、このことによって被害を受けられました酪農家の皆さん方がどのようにお困りでありますか、その被害を受けた酪農家の皆さん方には心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 なお、このような不慮の災害に対しましては、農林漁業のセーフティーネット資金といったような制度資金が用意されておりますので、資金繰りなどに支障を来すような場合には農協の方に御相談をいただきたい、こう考えております。

仲野委員 先ほど品川局長からは、これからいろいろ調査をし、前向きに考えていただけるということで、ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

 ただいま大臣からは、セーフティーネット資金等を使ってというお答えでありましたけれども、今こういった資金も、資金繰りも、出す方も大変な状況にありますので、JAの窓口に行って、そういった相談を受けたときに、そういった被害をこうむった農家に対してきちんとした手を差し伸べていただければなということで、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 民主党の農業者戸別所得補償制度について質問させていただきたいんですが、本法案は、標準的な販売価格と生産費との差額を基本とする交付金を交付する対象農産物として、米、麦、大豆その他これら目標の達成に資するものとして政令で定める農作物とされているわけであります。

 北海道では、牧草に比較して高栄養で高収量が期待できる作物であり、トウモロコシサイレージの給与比率を高めることで配合飼料の使用量の低減が図られるデントコーン、青刈りトウモロコシが輸入飼料の代替品として見直されてきておりまして、昨年だけでも三万八千三百ヘクタールから、ことしは四万ヘクタールを超える作付になるとの報道もあり、生産が拡大をしているわけであります。このデントコーンの生産拡大は、国産飼料の生産、利用拡大と自給飼料体制への転換を図る観点から大変重要だと私は考えているわけであります。

 そこで、青刈りトウモロコシなどの飼料作物を作付した場合、農業者戸別所得補償制度の対象となるのか、民主党の法案を提出していただいた先生に答弁をお願いいたします。

舟山参議院議員 お答えいたします。

 この法律では、標準的な生産費が標準的な販売価格を構造的に上回っている作物であって、法の目的に合致したもの、つまりは、食料自給率向上や地域社会の維持発展に重要な役割を持つと思われるものを対象とするものでありまして、飼料作物につきましては、生産費とか販売価格、データをどのようにとるべきなのか精査する必要があるとは思いますけれども、当然に食料自給率向上に重要な作物であることから、十分に対象になり得る、そのように考えております。

仲野委員 ありがとうございました。

 食料自給率の向上の観点からも、この法案で飼料作物をしっかりと位置づけているという、大変すばらしい法案だということを確認できました。

 次に、政府にお尋ねしてまいりたいと思います。

 これまでも政府は、自給飼料基盤に立脚した畜産経営の育成が重要であるとの認識に基づき、これまでも国内飼料の増産等に取り組んできておりますが、飼料作物の作付面積は近年大変減っている傾向が続いておりまして、飼料自給率の向上につながっていないという状況にあるということであります。

 北海道では、生産者がデントコーンの作付に意欲的であることなどから、平成十九年の飼料作物の作付面積の減少傾向に歯どめがかかった状況とされておりますが、自給飼料の増産のためには一層の支援を行う必要があると考えるわけであります。

 本年二月二十日の農林水産委員会において可決された委員会決議においても、飼料の輸入依存体質を転換し、国産飼料に立脚した畜産・酪農を確立する観点から、青刈りトウモロコシなどの高栄養素飼料作物の生産拡大などの対策を推進することとされたところであります。

 また、道東の酪農家からも、このデントコーンなどの青刈りトウモロコシについては、草地更新時における作付の転換や新規に作付する際の助成、あるいは栽培、収穫作業への労力不足を解消するための受託組織でありますコントラクターを活用する際の助成の要望が実際現場の声としてされているわけであります。

 そこで、農林水産委員会におけるこのような決議を踏まえ、この青刈りトウモロコシの生産振興について、どのような目標のもとでどのような具体的振興対策を講じようとしているのか、農水大臣に伺いたいと思います。

若林国務大臣 自給飼料の増産を図っていくということは、酪農経営の安定はもとよりでありますけれども、自給率全体の向上のためにも大変有効なものという認識を持っております。

 そこで、自給飼料の生産につきましては、まずは良質な草地の維持管理、二番目としては、耕畜連携によります水田の飼料作物の生産、また、労働力不足を補完するための作業受託組織、委員がおっしゃられたコントラクターの育成といったようなことも含みます、そういう作業受託組織の育成などを推進してきているところでございます。

 その結果、平成十九年度では、北海道において、寒冷地向けの新品種の普及などによりまして、トウモロコシの作付が拡大してきたこと、また、都府県では、耕畜連携によります稲発酵粗飼料の作付が拡大したことなどによりまして、これまで飼料作物の作付が減少をしてきたことに歯どめがかかった状況、そのようになっております。

 なお、今回新たに、時限的措置でございますけれども、青刈りトウモロコシの作付緊急拡大対策を講ずることにいたしておりまして、牧草地を青刈りトウモロコシへ転換する事業は今まで進めてきたわけでありますが、それに比べまして、新たに青刈りトウモロコシの作付を拡大するというのは、雑木あるいは雑草の処理だとか、前作物の圃場残渣、残根でありますけれども、そういうようなものの処理にかかり増しの経費がかかることを踏まえまして、十アール当たり一万二千円の支援をするということにして、その増産に努めていくことといたしているわけでございます。

仲野委員 今大臣からお答えいただきました青刈りトウモロコシの生産緊急拡大事業が新たな事業として定められたということで、飼料作物以外が作付されている畑だとか耕作放棄地、野草地において、新たにデントコーンを作付ける場合に、取り組み面積に応じて十アール当たり一万二千円を交付することとされております。

 この事業の対象となる農地については、新たに飼料作物を作付ける畑、耕作放棄地、野草地に限定しておりますが、牧草地はこの対象には、今のお答えを聞いていますとこの事業に該当しないのではないでしょうか。改めてお答えをいただきたいと思います。

若林国務大臣 委員がおっしゃられましたように、従来、牧草地、草地として利用をしている土地は対象にいたしておりませんで、これは従来からの高位生産性草地などへの転換促進事業として、その事業対象にいたしてきているものであります。

 このたびの措置は青刈りトウモロコシの緊急拡大事業として行うものでありまして、飼料作物が生産されていない畑地あるいは耕作放棄地を対象にするというものでございます。

仲野委員 北海道の中でも、私の住む釧根地域、特に別海町というところは日本で一番の酪農地帯ということで、大臣もよく承知されていると思います。この新制度に牧草地を、十アール当たり一万二千円の事業になぜ入れてくれなかったのか、この対象にならないということか、私はこのことを指摘させていただきたいと思っております。

 これまで我が国の酪農政策というのは、海外からの価格の安い配合飼料を使った高泌乳牛生産にかじ取りを変えて推進をしてきたわけでございます。今や畜産、酪農農家は、配合飼料価格の上昇、高どまりによる影響で経営が極めて厳しい状況にあって、このため、デントコーンに転換し、配合飼料の使用を減らし、必死に経営を続けようと努力をして、農家は頑張っているわけであります。

 この北海道の別海町など、牧草地が大半を占める牧草地帯が、一律的に、牧草地だから本事業の対象とならないとするこの制度設計は、余りに酪農、畜産における地域の実情を無視し、農業行政を執行している大臣が現場の声を何もわかっていないのではないのかなということを私は強く言わせていただきたいと思っているわけであります。

 国が国産飼料の生産、利用拡大と自給飼料体制への転換をうたっているのであれば、配合飼料の使用を減らしてデントコーンなどの自給飼料の生産、利用を行う農業者に対して、十分な支援を行うべきと考えているわけであります。

 本事業について、対象とする農地を限定せずに、地域の実情に応じて草地を含めた支援を講じていくべきと考えますが、大臣、ここは政治家としての政策判断だと思いますが、改めてお答えいただきたいと思います。

若林国務大臣 委員が御指摘のように、牧草地、草地を造成し、あるいはこれを拡大しまして、草地酪農を、草地畜産を進めるというのが基本でございまして、このためには、これが中心になって、大きな草地造成を公共事業で行っておりますし、また、牧草の更新事業なども対象にしているわけでございまして、今委員がおっしゃられましたように、草地に重点を置きまして全体政策を進めております。

 それとは別に、今回、緊急の対策として、二カ年度に限定をいたしまして行います青刈りトウモロコシなどの緊急対策事業というのは、今までそういう飼料の作物が生産されていない耕作放棄地だとか、そういうようなところにも緊急に拡大しようというための緊急措置でございまして、そのために、費用のかかり増しについて言えば、前処理として植生処理をしなければならない。従来の牧草地、草地については、そういうようなものが草地造成などによって行われてきているところの更新でございますので、助成単価はヘクタール当たり六万円ということで進めてきているものでありますが、このたびの緊急対策は、そういう前処理費用というものがかかり増しとしてかかるということを前提にいたしまして、前処理費用が約五万円弱でございますけれども、その費用を見込み、そして若干の、作業費はほぼ同じでございますけれども、積算で言いますと八万一千六百六十円の作業費を計上いたしまして、全体の事業費としては、従来からの高位生産性草地等への転換促進事業における事業費が十九万二千百八十五円でありますのに、この緊急対策は二十四万三百九十円ということになります。

 そういうことから、この助成単価は十二万円ということで、従来のヘクタール当たり六万円の倍の助成をすることとした、そういう趣旨でございますので、御理解をいただきたいと思います。

仲野委員 緊急対策でこのような制度を新事業として行ったというわけでありますけれども、今、北海道のどこの酪農地帯でも本当に悲鳴を上げているわけであります。別海町もそうでありますし、とにかく釧根で酪農を営んでいる農家の方たちも、何とかしてもらいたいと。そういう切実な声に対して何もしないようでは、全く政府の怠慢というか無策な行政ではないのかなと私は強く指摘をしたいと思っているわけであります。

 きょうは時間がもうないのでありますけれども、そういった意味では、こういった緊急対策として、配合飼料価格安定制度についてもしかりですが、このこととて、どうしようかという政府の強い決意も全くないわけであります。

 そういった意味で、緊急対策として農家に対する直接的な支援を行うべきではないか、あるいはまた直接支払い制度、所得補償制度の導入を、現行制度の検証、見直しに向けた取り組みが今大事ではないのかなということを私はまた改めて大臣に伺いたいと思います。

若林国務大臣 経営に対する助成のシステムとして、我々は、日本列島は北海道から沖縄まで、そしてまた作目についても、酪農、肉牛から、あるいは畑作から、そしてまた水田農業から果樹、そしてサトウキビから、その他非常に多様でございます。

 そういう各地域における多種多様な生産の組み合わせによりまして農業というのは成り立っているということでありますので、我々は、畜産にありましても、酪農、あるいは肥育牛、繁殖牛、そしてまた養豚、養鶏、それぞれの業種に応じてきめ細かな対応を講じ、そして、それらの施策を公平が確保できるような形で組み立てて実施しているところでありまして、今委員が挙げられましたような、民主党が御提案になっております戸別所得補償制度の中で見るというような考え方は、私の方はとらないことにしているのでございます。

仲野委員 大臣、おわかりでしょうか。今、酪農で働いている労働時間は、何と年間で三千時間近くになっているわけであります。出産や病気などにより深夜、早朝作業を強いられるなど、大変な重労働となっており、こうした過重な労働時間を軽減し、これからゆとりある経営を確立していくことが課題になっているのではないのか、私はそのように思っているわけであります。

 こうして、多頭肥育に伴う資本装備の高度化、あるいは家畜ふん尿の処理費用の増加など、現在の酪農経営のあり方を検証し、耕作放棄地の増加の懸念や、食料自給率低下のおそれ、こういった放牧を含めた酪農のあり方など、これから拡大をしていくのか、あるいは放牧をしていくのか、酪農が、その構造を改革している、転換期を迎えている時期に来ているのではないのか、そういうふうに思っているわけであります。そういった意味で、これからの日本の酪農業を存続させていく、つぶさないでいく、しかし、このままでは崩壊をせざるを得ないという大変な状況に来ていると言っても過言ではないと思っております。

 そういった中で、厳しく一生懸命働いている酪農家の皆さん、関係者の方たちは、きょうのこの委員会のやりとりをインターネットでごらんになっております。ぜひ大臣から、これからの酪農業のあるべき姿というものの意見を聞きたいと思っております。よろしくお願いいたします。

若林国務大臣 酪農が、戦後大変厳しい環境の中にありましても、経営の拡大を通じまして、酪農生産の経営の基盤というのは強化、拡充されて今日に至ってきたという経緯を私自身は高く評価しているわけでございます。

 しかし、ヨーロッパなどと比べまして、酪農の歴史はまだ、そういう意味で、北海道のような地域にありましてもわずか半世紀でございますから、飼料の基盤などになお大きな負担がかかってきていることは承知いたしておりますけれども、多頭の飼育で、そしてまた牛の資質の向上、これはもう大変なものでございます。そういう能力のアップ、また生産性の向上といったような努力で、日本の酪農経営は、世界においてもそれなりの経営力を持った経営が育ってきているというふうに考えております。

 しかし、最近の飼料価格の高騰は、その経営を大きく圧迫いたしております。また、生産物であります生乳価格なども、消費者に負担を転嫁し、消費者に負担してもらうということが需給関係からなかなか難しいという状況で、経営に苦労しているということは承知いたしております。

 そこで、酪農経営については、北海道と都府県ではかなり経営の実態が違いますから、それぞれの地域の実態に応じながら、北海道につきましては、酪農の加工原料乳の生産者補給金制度というのを設けて、これによりまして、基礎的な経営の安定の対策を講じてきているわけでございます。

 また、飼料の価格につきましても、二十年度では、配合飼料価格の高騰の状況を踏まえまして、補給金単価のすべての行政価格を引き上げるというようなことを新たに、畜種ごとに各種の緊急対策を講じたところであります。

 また、先ほどお話がありました労働過重が問題になっておりますけれども、ゆとりのある経営を進めるという意味では、酪農ヘルパーの普及とか利用の拡大を推進しているところであります。

 労働が夏場に集中するような飼料生産につきましては、酪農家の労働を軽減するために、飼料生産の外部化が図られるようなコントラクターの育成を図るなど、それぞれきめ細かな経営の対応をしております。

 放牧を推進するということで、面積に応じた奨励金の交付や、放牧地、牧さくの整備の支援なども積極的に推進をしている。

 これらの施策を総合的に講ずることによって、酪農経営の維持発展を進めていきたい、こう考えております。

仲野委員 長々と御答弁いただきました。

 最後に一言。

 大臣、ここに「広瀬のおかあちゃん」という、別海町で新規で農家をやられて八年になるんですけれども、三人の子供を抱えて、こうやって子供をおんぶしながら農作業を続けている写真集があります。後で大臣にお貸ししたいと思います。こうやって、本当にいつのときも家族とともにある酪農、いつのときも家族の真ん中にいるたくましきお母ちゃんの姿が映し出されております。酪農における家族経営の大切さ、心の通った酪農政策を大臣にこれから期待して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 農業者戸別所得補償法案について質問させていただきますが、これと対極にあります品目横断、今は水田・畑作経営所得安定対策という名前になっておりますが、これが一年を経過してきたわけでありますので、今日まで一年間取り組んできた経過、結果について少し検証させていただきながら、戸別所得補償法案についても質問をさせていただきたいというふうに思います。

 最初に、一年を経過して、いわゆる品目横断対策と言われていた対策の品目ごとが一つと、もう一つは地域別の参加者といいますか加入状況について、成功したと思っておられるのかも含めてお伺いをいたします。

高橋政府参考人 水田・畑作経営所得安定対策の実績でございますけれども、手元にございますのは十九年産の加入状況でございます。これにつきましては、認定農業者が六万七千四十五、集落営農組織が五千三百八十六、合計で七万二千四百三十一経営体となっております。

 このような加入者がカバーをいたしました対象品目ごとの作付面積でございますけれども、麦で見ますと約二十五万四千ヘクタール、大豆で約十一万ヘクタール、てん菜、ビートでございますが、六万六千ヘクタール、でん粉原料用バレイショで約二万二千ヘクタールとなっております。これにつきましては、それまでの、十八年産までの品目別で対策を講じておりましたときの対象面積とほぼ同程度の面積というふうに理解しております。

 一方、米でございますけれども、米の方は約四十四万ヘクタールのカバーということでございます。これは、十八年の水稲作付面積で見ますと約四分の一でございますけれども、十八年当時の対策、担い手経営安定対策の加入面積は二十万ヘクタールでございまして、これについては大幅に超えている。それからあと、担い手以外も対象としておりました稲作所得基盤確保対策、こちらの加入面積が七十五万ヘクタールでございますが、これの約六割の水準というふうになっております。

 次に、地域別でございますけれども、北海道におきましては、米を含めましてすべての対象品目で高いカバー率となっております。

 一方、都府県でございますが、麦、大豆につきましては、これまでの品目別の対策面積がほぼカバーされている。これは北海道と同じでございます。

 米につきましては地域別に若干差がございまして、東北、北陸などの米どころでは全国平均を上回っている、これは当然でございますけれども、西日本を初めといたしますその他地域で、一部かなり加入が進んでおる県も幾つかございますが、総体的にはやはり全国平均を下回る結果になっております。

 なお、二十年産の秋まき麦も十九年産秋まき麦に続きまして加入申請が終了しておりますけれども、こちらの比較を見てまいりますと、二十年産におきましては、十九年産に比べて経営体数、作付計画面積ともに若干ふえておりますが、ほぼ同程度の水準というふうに理解しております。

佐々木(隆)委員 今、評価についても伺ったんですけれども、あるところの対談で局長が言われているのは、経営体数でいうと今言った七万二千四百三十一で、三十万人程度ではないかというふうに推計をしておられるわけでありますが、これでいいますと、百九十万分の三十万ということになるんだというふうに思います。それから、品目別のところでは稲得の六割ぐらいということで、これは当初見込みだというようなことをあるところで発言されておられるわけであります。

 経営体という数字が農家戸数とどうかみ合わさるのかということはあるんですが、経営体で見ますと、局長自身が三十万程度と言っておられるとおり、販売農家というものを対象にして考えたときには、加入率として必ずしも高いところにはいないというふうに私は思うわけであります。

 それで、品目横断の中の三本柱と言われておりました成績払い、固定払い、それから収入減少補てん、それぞれの対策について、これも一年を経過した状況の中で、まだ数字としてきちっと出ていないものもありますけれども、評価、並びに、途中で暮れには緊急対策もやっておりますから、改善点などについて大臣にお伺いをいたします。

高橋政府参考人 品目横断的経営安定対策、水田・畑作経営所得安定対策の具体的な交付金でございます固定払い、成績払い、それから収入減少補てんでございますけれども、まず固定払いは、過去の一定期間の対象農産物の生産実績に基づいて固定的に支払われるということで、年々の豊凶変動にかかわらず安定した支払いが受けられるということが非常に大きな点であろうというふうに考えております。

 ただ、固定払いについては、今回の検証の中で、近年急速に単収が向上しております北海道等一部の小麦等産地におきまして、その生産性向上努力が固定払いの面積単価に反映されていないというような意見がございました。

 このため、固定払いそのものとは別の仕組みではございますけれども、前回の見直しにおきまして、小麦等穀物の国際相場が急騰している中で、このような国内の先進的な小麦等産地を対象に、国内の生産体制の一層の強化、小麦等が安定的に生産し得るような集中的支援策を講ずることといたしたところでございます。

 それから、収入減少補てん対策につきましては、御承知のとおりまだ実際の支払いという段階になっていないわけでございますけれども、当初、一〇%の収入減少に対応し得る制度設計としていたわけでございますが、十九年産米につきましては、いわゆる価格センターにおけます価格動向等を踏まえまして、昨年秋以降、農家の間で、一〇%以上の収入減少が生じるのではないかというような不安の声が上がったところでございます。

 このため、十九年産米につきまして、一〇%を超えます収入減少が生じましても補てんが行われる特別な措置を今回講ずることによりまして、このような農家の不安を払拭することといたしたところでございます。

 なお、二十年産以降につきましては、このような積立金不足の事態が生じないような積立金の拠出、そういう手法も導入することとしたところでございます。

 これらも含めまして、固定払い、成績払い、あるいは収入補てんも含めてでございますけれども、支払い時期等の問題がございます。これらがそれぞればらばらであった、あるいは支払いが遅いというような意見もございました。したがいまして、これについては、既に固定払いは昨年の秋の段階で前倒しをしたわけでございますけれども、全体的に農家の資金繰りにも配慮いたしまして、なるべくまとまった額を早期に支払えるよう、これを前倒しするということをいたしました。また、手続につきましても、簡素合理化に努めているところでございます。

 いずれにいたしましても、当初スタートしているところにつきまして、その後の生産現場におけます意見等を踏まえまして、より地域の実態に即したものとなるよう改善を行ったところでございまして、本対策の普及、定着につきましてさらなる一層の努力を進めて、力強い農業構造の構築に努めてまいりたいというふうに思っております。

若林国務大臣 今局長が、固定払い、成績払い、収入減少補てん対策などについて、一年間実施をしてきたことにつきましての評価あるいは改善点の説明をしたところであります。

 全体として、私は、水田・畑作経営所得安定対策については、大変わかりにくいというような現場からの声が上がってきておりまして、これを着実に実施するためにはそういう現場の声をちゃんと聞かないといけないんじゃないか、そういう考え方で、農林水産省は、幹部職員が直接自分で出向いて生産者や関係者の意見を直接聞いてこいということで、いわゆる御用聞き農政というものを展開し、聞いてきたわけであります。その結果、対策の仕組み、加入要件、事務手続等に関しまして、実態に合わない面は率直にこれを見直して改善を図っていくというような措置を講じたところでございます。

 時間の関係がありますので一つ一つ申し上げませんけれども、面積要件につきましては市町村の特認制度を創設するとか、あるいは、一部現地で硬直的な運用がなされておりまして、認定農業者の年齢制限を設けている町村がありましたが、その年齢制限を弾力化するとか、営農組織に対する法人成りの要件につきまして指導をいたしまして、弾力化を図る。

 あるいは、今お話がありました、非常に単収向上が著しい特別の条件にあります地域におきます小麦などにつきましては、別途の仕組みとして緊急対策でこれを救済していくことを考える。

 また、収入減少影響緩和対策につきましては、一〇%、一割を超えての減収についてもこれを吸収できるような形で制度の設計を見直していく。

 また、農家に対します交付金の支払いにつきまして、できるだけ一本化を図り、申請手続の簡素化を図る。

 そういった各種の対策とあわせまして、用語の定義として、ゲタだとか緑ゲタ、ナラシだとかいったようなことを、もっとわかりやすい、地域で御理解いただけるような用語に見直していくといったような形で、できるだけこのことが現場の生産者あるいは指導者の皆さんにわかっていただけるような形で見直しをして、さらにこの普及徹底を図ろうとしているところでございます。

佐々木(隆)委員 結局、制度的にフォローし切れなかったところを緊急対策で補ったということであります。

 ただ、今大臣もわかりづらいというお話がありましたけれども、午前中の参考人との質疑の中でもありましたけれども、例えばいわゆる固定払いなんかは、当該年、昨年なら昨年つくらなくても過去の面積で支払われるという、これは制度的に持っているどうしようもない部分だと思うんです。これで七割補てんされるわけですけれども、こういうことがゆえに、言えば、去年までの実績で面積分はもらって自分は野菜をつくるということが可能になってしまったんですね。結果として、これは玉突きを起こしているんです、現実に。

 こういう制度を持っている国では、国として奨励をしなければならないような作物を調整して、固定払いでやる場合も、例えば野菜だとかそういったものはつくらせないとかという制度をちゃんと持っているわけですね。

 日本の場合はそこをなしにスタートしちゃったものですから、例えば私は北海道ですけれども、北海道の内部でもそういう玉突き現象が起きてきて、結局、この制度にかかわりのないところに行けばその分だけ収入はふえるわけですから、そういう仕組みを使っている人たちが出てきたり、それから、いわゆる黄ゲタでいえば、これは共済金との関係をいずれきちっと整理をしないと、比率という部分がちょっと違いますけれども、共済金と極めて似た制度ですから、ここのところの整理をやはりきちっとしていかなけりゃならないんではないかというふうに思います。

 それから、いわゆるナラシでありますが、これで九割を目的に支払っているわけですね。結果、固定払い、緑ゲタを積んで、黄ゲタを積んで、それにナラシを足したとしても、これは全部過去実績や成績払いで、さらにまたナラシも九割ですから、要するに一〇〇は絶対にいかないという仕組みになるわけですね。過去実績の部分を補っていくわけですから、そしてそれに最後ナラシで九割足すわけですから、一〇〇には絶対到達しないという仕組みになるわけですよ、この制度を幾ら積んでいっても。ここに、この制度が最後に緊急対策をやらなければいけなかったある種の欠陥があるわけですね。そういった根本のところをやはり見直していかなきゃならないというふうに思います。

 きょう、皆さん方のところに資料をお渡しさせていただきました。過去の実績がないというので、なかなか私も集めるのに苦労しましたけれども、正直言って、まだナラシが入っておりませんから、見込みでそれぞれの地域で緊急に資料をつくってもらいました。一番最初は、水田地帯ということで北海道の空知管内というところ、それから後ろの三枚は、畑作地帯ということで十勝管内の、これは青色申告の表から右側の方にちょっと分析をしてもらったという仕組みでつくらせていただきました。

 最初の空知管内で見ますと、これは追加払い見込みということで、例のナラシの部分などを含めて、これを見込みで入れていただきました。入れていただいても、なおかつ、大豆でいえば一俵当たり千百三十七円少なくなる。小麦については、収量もよかったということと、一番下にありますけれども、緊急対策、見直し補てんが入っていますので、少しふえております。てん菜については、これはまだ入っておりませんが、三百二十円程度かということで見込みで計算をしておりますが、千七百円マイナスをしていて、三百二十円入ったとしてもマイナスになるということであります。

 それから、全部は説明しませんけれども、畑の方でいいますと、二枚目の十勝のところでいいますと、小麦でも、これも見直し補てんを入れても若干マイナス。それから、てん菜でいいますと、これは三百二十円足したとしても二千二百円ぐらいがマイナスになるという、少し見込みも入っておりますけれども、私の調べたところによるとこういう状況であります。

 そこで大臣にお伺いしたいんですが、緊急対策を打たれたわけでありますけれども、この国は緊急と暫定と恒久がいろいろ、恒久の方が短かったり暫定の方が長かったりしますから、そういった意味では、今回打った緊急対策の中でどこをどういうふうに恒久的にやっていこうとされているのか、全部ことし一年で終わりなのか、これからずっとやっていくのか。

 それと、実は準備金制度というのがありますが、そのうちの米作農家で見ますと、実は準備金の制度に乗っかれた人たちは四六%ぐらいしかいません。ですから、そういった意味で、米の対策、あるいは先ほど大臣からもお話ありましたが、農家経営というのは基本的にはやはり年内払いであるべきだと思うんです。農家は、一年サイクルで経営を立てていって、そこで実績をつくって、そして次の年の計画をつくってというふうにやっていくわけですから、二年にも三年にもまたいで、これは役所の方は二年、三年にまたごうがどういう影響もありませんけれども、しかし、受けている農家の側にしてみれば、一年一年できちっと一定程度の計画が立たなければ次の年の計画が組めないわけですから、そういった意味では、できるだけ年内に、どうやって生産をしていくのかということが必要だ。そういう幾つかの点において、やはりまだまだ直さなければならない点があるというふうに思います。

 午前中の論議でもありましたけれども、自給目標というものを持っていて、それを達成するためには行政がしっかりかかわらないと達成できないんだという話が午前中の参考人の質疑の中でも随分と論議をされたわけでありますが、そんなことも含めて大臣にお伺いを申し上げます。

高橋政府参考人 幾つかの点、御指摘がございました。

 まず、共済金制度との調整問題につきましては、これは既に制度の中に組み込んでおりまして、基本的には、収入減少が生じた場合に、災害等の場合であれば当然共済制度とダブるわけでございまして、その際には、収入減少分のうち、まず共済制度で補てんをする、その補てんの残につきまして収入減少で行うということで、これについては既に制度内にきちんと組み込んでいるわけでございます。

 それからもう一つ、ナラシ、いわゆる収入変動の話と、固定それから成績払いの話がございましたけれども、これは、収入変動の場合は、基準期間に対しまして収入が減少した場合に対しまして、その減少分の九割を補てんするということでございます。したがいまして、例えば、固定払いあるいは成績払いを通じまして、さらに市場価格によります手取りがあるわけでございますが、価格上昇等によりまして手取りが上昇すれば、この収入減少変動には対応しないという形になる、発動はされませんので、この場合には当然のことながら九割以上の手取りになるわけでございます。

 それから、もう一つ委員から御指摘がございましたお米の準備金制度の関係でございますけれども、これは、委員も御承知のとおり、従来、生産調整につきましては、お米の臨特法案という形で、お米の所得につきまして一時所得扱いをするという所得区分の変更、本来ならば事業所得であるべきものを一時所得に変えるという税目の変更になるものでございますので、従来から全会一致の議員立法で毎年度措置していただいたわけでございますけれども、これにつきましては、国会の中の御議論等もございまして、税目区分の変更という形の対応というのは困難になったということでございます。

 したがいまして、これについては新しい準備金制度という形にいたしまして、さらにその内容につきましても、より経営の高度化に資するような形で、準備期間の延長でございますとかあるいは繰入率等の問題等も含めて拡充をした上で対象にしたものでございまして、実際の適用対象になられるような形態といたしましては、さらに使い勝手がいいようなものにしたところでございます。

 以上でございます。

佐々木(隆)委員 先ほど収入減少のときという話がありましたが、収入がオーバーしたらこの制度そのものが必要ないんです。もともと収入の減少をどうやって補うかという制度ですから、収入オーバーしたところにさらに国が金を突っ込むなんということはもともとあり得ない制度ですから、それはもともとがそういう制度だというふうに思います。

 準備金制度の話をなぜ取り上げたかというと、要するに、準備金に積める農家の方は準備金制度という制度を利用できるからいいんです。しかし、積めない人が半分以上もいるという状況の中で、準備金の制度は活用できない、その人はそのまま農雑収入になっちゃうわけです。

 だから、そういう意味では相当な変更になっちゃっている人たちがかなりいて、そしてその人たちに、昨年の三月十五日までにこれは手を挙げなきゃだめなんですから、では昨年の三月十五日までの間に手を挙げるぐらい説明が十分になされていたかというと、ほとんどその説明は不十分だったと私は思うんですね。三月十五日までに税務署に手を挙げない限りその対象になりませんから、そういった意味での問題が起きてきているということをぜひ認識しておいていただきたいというふうに思います。

 そこで、今、幾つかの問題点について政府と論議をさせていただきました。民主党の戸別所得補償ではこういう問題は発生しないのかということをまず一つ大変心配なところとして答えていただきたいのと、この制度の初年目で起きた米価下落の問題などについて民主党の制度ではどう対応できるのか、それから共済制度とのかかわりというのはやはり一つの課題かというふうに思いますので、それらの点について提案者のお考えを伺います。

高橋参議院議員 お答えしたいと思います。

 先ほど来、質問を聞かせていただいておりまして、資料も提出をしていただいたんですが、私たち提案者三人の県の場合と北海道の場合と規模がかなり違いますので、一概に同じようには言えないかもわかりませんけれども、私どもが提案をさせていただいた農業者戸別所得補償法案というのは、そもそも自給率を向上するためには、今の農家の方々が再生産を持続できるということがまず前提になっております。その意味で、再生産をしていただくためのあるべき所得水準が確保できるための直接支払い制度ということがこれの一番の主眼になっているというふうに思っておりまして、その意味で、標準的な生産費と標準的な販売費の差額を、直近のデータを基準にやっていくということでございます。

 先ほどの御質問の中にもありましたけれども、生産調整の中でも、今かなり行政の手が離れて生産者にゆだねようとしているところに大きな問題点があるというふうに私どもも考えているんですけれども、私たちのこの生産費それから販売費のデータについては、行政も中心となって入っていただいて、それぞれの有識者等も参加をしていただいて、一番新しいデータの中で私たちはその数字を割り出していって、あるべき所得を確保していきたいというふうに思っています。

 それと、共済の問題については、委員のところの北海道では随分大きな問題になったということは存じ上げております。私どもも十勝の方にちょうど十月の末に行かせていただきましたけれども、そのときに大きな問題になっていたのは存じ上げております。

 この共済については、価格を決めるターム、期間が非常に長いわけで、我々の地域のように、本州のほとんどのところは余りそれの差が出ません。しかし、北海道や九州では、ことし大きな問題になったのは、一生懸命努力をしていただいて生産量が、単収が非常に上がった、そういう地域に特に不平等な問題が出ているということで大きな問題になっているのかと思いますけれども、私たちは、先ほど申しましたように、それぞれの方々に参加をしていただいて、行政の方も生産者も参加していただいて直近のデータを照らし合わせるということでございますので、私たちの提案させていただいている農業者戸別所得補償法案の中ではそういう問題は発生しないというふうに考えています。

佐々木(隆)委員 時間がなくなってきましたので、それぞれにもう一問ずつお伺いをしたいというふうに思います。

 一つは、先日も大臣とやりとりをさせていただきましたが、私は、日本の農業にとって家族経営というのは極めて重要だというふうに思っています。前回大臣は、「農業経営体としての認定農業者の行う農業経営というものが、」中は略しますが、「農産物の供給の相当部分を占める」、こういうふうな答弁で、家族農業というものをなかなかイメージできない答弁だったわけであります。

 基本法にも家族経営というのはあります。その直後にできた基本計画にも家族経営というのはあるんです。しかし、今度のこの制度をスタートするに当たって見直した新基本計画からは、家族経営というのが全く消えちゃっている。そこにもう一度家族経営というものをきちっと位置づけるということがやはり必要なのではないかというふうに思います。その点についてのお考えを伺います。

 それと、大臣は、緊急対策を行われるときも、基本は変えない、繰り返しこう言ってきているわけでありますが、その基本とは一体何なのかということについてお伺いをしたいというふうに思います。

 提案者の方には、目的の中にも位置づけられているというふうに私は思っておりますが、私は、農村という集落にとって家族経営と農村政策というのは極めて基本だというふうに思っているわけでありますが、戸別所得補償におけるこれらの位置づけについて、これは提案者の方にお伺いをいたします。

若林国務大臣 まず、家族経営についての位置づけ、認識について申し上げたいと思います。

 委員もお話ございましたように、基本法の二十二条では、我が国の農業経営の相当部分が家族経営で担われているということを踏まえまして、家族農業経営の活性化を図るというふうにしているとともに、他方で農業経営の法人化を推進するために必要な施策も講ずる、こういうふうにいたしているわけでございます。

 そして、平成十七年に閣議決定をしました食料・農業・農村基本計画におきましては、担い手というものにつきまして、農業で他産業並みの生涯所得を上げ得る経営体あるいはこれを目指す経営を担い手と位置づけたわけでございまして、この担い手の中には、当然、家族農業経営や法人経営、集落営農経営などさまざまな農業経営のタイプがあるわけでございますけれども、それぞれの地域の話し合いと合意形成をしながら、地域における担い手を明確にした上で、これらのものを対象とした農業経営に関する各種施策が集中的、重点的に実施されているわけでございます。

 そして、委員がお話しになりました食料・農業・農村基本計画、閣議決定をした新しい基本計画には、御承知のように、農業構造の展望というものを公表いたしております。この農業構造の展望の中におきまして、平成二十七年における望ましい農業構造の姿といたしまして、家族農業経営が三十三万戸から三十七万戸程度になると見込んでいるほか、法人経営は一万戸程度、集落営農経営が二万から四万程度になる、こういうふうに見込んでいるわけでありまして、この新しい食料・農業・農村計画におきます担い手というものの中には、構造展望の中で家族農業経営が三十三万から三十七万戸程度になるという見込みを示しているように、相当大きな位置づけをしているところでございます。

 なお、基本は変えないという基本とは何か、こういうことでございます。

 委員の御質問がまさに基本にかかわることでありますので、どうしても答弁をさせていただきたいと思いますけれども、食料・農業・農村基本計画で定めておりますように、この基本法の二十一条で、望ましい農業構造として、効率的かつ安定的な農業経営を育成して、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を確立するために必要な諸施策を講ずるというふうに法律で定めたわけでございまして、これを受けて、先ほど申し上げましたように、食料・農業・農村基本計画において、農業で他産業並みの生涯所得を上げ得る経営体を担い手というふうに位置づけて積極的に取り組むようにしたわけでございます。

 このたびの水田・畑作経営所得安定対策も、このような基本法とか基本計画を踏まえまして、まずは、WTO交渉の中で国際規律に対応する施策にするということと、国内的には、農業従事者の減少や高齢化によって脆弱化が進んでおります水田の土地利用型農業、米、麦、大豆などの土地利用型農業については、担い手の経営の安定を図ることによって体質を強化する、力強い農業構造を確立するということを目的にしておるわけでございまして、今回の見直しにおいて私が基本は変えないと言っておりますのは、このようなことを指していると御理解いただきたいと思います。

平野参議院議員 私どもは、意欲を持って取り組む農業者を中心とした家族経営こそが基本的にこれからの農業の中心にあるべきだという考え方に立っております。そうした家族経営がたくさんいて集落が成り立つ、これが本来の姿ではないかというふうに思っています。

 ただ、その一方で、この委員会でも何回も申し述べましたけれども、人口減少社会に入ってきている、同時に、基幹的農業従事者の六割以上は六十五歳以上という状況の中で、農地の流動化あるいは生産の組織化といったことも実態に即した形で進めなくちゃならないだろうというふうに思っておりまして、そういった観点も大事ではないかというふうに思います。

 しかし、基本は、今意欲を持って取り組んでいる農業者のある一定の所得を確保することで、その経営を強化することで全体の底上げを図っていくということが基本ではないかというふうに思っています。

 以上です。

佐々木(隆)委員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 農林水産委員会の皆さん、しばらくぶりでございます。ごぶさたいたしております。きょうは質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。私は今農林水産委員ではございませんけれども、いろいろこの施策に携わってまいりました関係上、同僚議員等の御配慮をいただきまして、五十五分ほど時間をいただきました。ただ、心配なのは、十五分ほど長引いておるので、後でちょっと配慮していただきたいと思います。

 まず、冒頭でございますけれども、若林大臣、おくればせながら、大臣就任まことにおめでとうございます。若林さんは、私の郷土の先輩でもありますし、農林水産省の先輩でもありますし、私は、若林さんの後ろ姿を見ていろいろ仕事をしてまいりました。最後、計算が狂って、後ろ姿を見て国会議員になるつもりは全くありませんでした。しかし、なった以上は、そのまま私もいつか農林水産大臣にさせていただきたいと思っております。

 きょうは、郷土の先輩、役所の先輩に、よく胸をかしていただくというのがありますけれども、耳をかしていただきまして、質問させていただきたいと思っております。

 ただ、きょうはちょっと違った意味もございまして、質問表を資料の一番最後につけてありますけれども、非常に活発な議論が行われたんじゃないかと思っております。今、例によって欠席されておりますけれども、我が民主党農林族の大重鎮の小平さん、非常に自由闊達な議論が行われたということをこの前の質問の中で言っておられましたが、私も、テレビを見ながら、議事録を見ながら、まことにそのとおりだと思っておりました。

 質問等いろいろありまして、特に自民党の皆さんの質問は、的を得た質問でして、感心いたしました。本当はそちらに回って答えたかったんですが、参議院先議されておりますので答えられないので、この機会をかりまして、その質問、疑問についてフォローするようなこともさせていただきながら質問を続けさせていただきたいと思います。

 まず、この民主党の農業者戸別所得補償法案というのは、これは途中で小沢代表が代表になってしまって、ちょっと変わった名前にさせられちゃいましたけれども、中身は同じなんです、直接支払いというのは。これは四年ほど前の一月からずっと我々が手がけてきたものでございます。これは何もとっぴなことではございません。皆さん御存じのとおり、直接支払いというのはEUでも行われてきたことなんですが、それだけじゃなくて、実は我が国の農林水産省にもいろいろなことを考える人がおられまして、それでもう既にきちんとやっておるんです。

 資料の五ページから六ページ、七ページ、八ページをちょっとごらんいただきたいと思います。

 食料・農業・農村基本法ができまして、それに基づきまして都道府県の生産目標というのをつくったんです。思い起こしていただきたいと思います。それで、どうなったかというと、十アール当たり七万三千円出せるようになったんです。そうしたら、日本じゅうの農家は、ああ、それだけ出してくれるんならということで一生懸命つくって、よく見ていただくとわかるんですが、二年目にして十年後の生産目標、作付面積を達成してしまったんです。ところが、なぜかしらやめてしまったんですね。

 例えば麦ですと、九ページあたりのところを見ていただくとわかると思いますけれども、五十七万トンぐらいしかつくっていなかったのに、三年で八十六万トンに、三十万トンも一気にふえたんです。それがなぜこの後、この生産振興政策が途中でとまってしまったんでしょうか。この点についてお聞かせいただきたいのです。お願いいたします。

若林国務大臣 委員が御指摘になりましたように、二〇〇〇年の食料・農業・農村基本計画の策定で、小麦は三年目には五十七万トンから三十万トンほどふえまして、既に当時の目標の八十六万トンになっているということで、急速にその生産が伸びたわけでございます。

 ところが、八十六万トンまで拡大したわけですけれども、その生産物の品質だとか生産性の向上が十分でないために需給とのミスマッチが依然ございまして、そのでき上がった小麦について、これを引き取る製粉ミラー、製粉業者の方が、こういう品質ではこれから引き続き引き取っていけないというような状況が発生をしたわけでございます。

 そのために、二〇〇五年に策定した新しい食料・農業・農村基本計画におきましては、生産を拡大することも大事なんだけれども、やはり売れるものをつくるということに軸足を置いていかないとこれからの安定的な生産拡大が図れないということから、品質だとか生産性の向上によります安定供給の確保ということに軸足を置くことにしたわけでございます。

 この新しい基本計画では、実需者のそういうニーズに応じた麦の種類、あるいは用途別の計画的な生産、また、実需者のニーズを農業者に的確に伝達し、産地単位で品質管理を強化し、加工適性の高い品種を育成、普及するということを加速化した品質の向上、あるいは、担い手の生産規模の拡大、収穫期における雨の害などの軽減により生産コストを下げていく、三割程度下げるということを盛り込みまして、その地域の生産者の組織である農協が中心になりまして産地協議会といったようなものをつくり、地域の実情に応じた麦とか大豆などの計画的な生産、品質、生産性の向上に重点を置いていかなければ、持続的、長期的にこの生産の拡大を図ることができないという考え方でこの修正をしたわけでございます。

篠原委員 余り賢明な修正ではなかったと私は思います。

 五ページをよく見ていただきたいんです。一番上の表ですね。基準年が平成九年、都道府県の目標と第一次食料・農業・農村基本計画の第一次目標、それから第二次の目標とあります。比べてみてください。都道府県の目標の方が多いんです。

 ただ、この目標も、本当はこれよりもっと大きいんですよ。下を見てください、意欲的な県の例が書いてあります。舟山康江さんの地元の山形県などは三十三倍、えらい意欲的過ぎるんじゃないかと思いますけれども。これはみんなここの関係者の県のものを引っ張り出してきた。宮崎県もそうでしょう、大豆などは四倍。福井県、稲田さんのところですけれども、二倍とか四倍とか。小里さんの鹿児島も三倍とか四倍とか。こうやって県がやり出したのです。

 ところが、次のページを見てください、小麦のところ。我が長野県はちょっとシニカルだったんです、我が長野県というか、大臣の地元の長野県でもありますけれども。見てください、二十二年の目標年次は書いてないんです。

 これはなぜかというと、実態を知っているんですよ。農林水産省がまた麦をつくれなんて言い出した、しかし、どうせまたもう要らない、四の五の言って要らないと言うだろうと。このときは農林水産省は強制しなかったんです、自主的に目標数値をつくらせたんです。そうしたら、ぽこぽこあいているでしょう、ちょっとひねくれた県が全然つくらなかったんです、福岡県とか麦の産地であるにもかかわらず。それであるにもかかわらずこの合計の目標値を足すと、国のつくったものよりずっと大きくなっているんです。

 例えば、この麦のところ、一番下を見てください。目標値の合計は九十九万トンです、九十九万五千三百八十三トン。しかし、二十二県がつくっていないんです。これを加えれば百五十万トンぐらいになるんですね。実際、この方向に向かっていたんです。

 次の大豆を見てください、次の七ページ。大豆はもっと現実的です。十アール当たり七万三千円は、米が十俵とれて二万円で売れたって七万三千円手元に残らないかもしれない。それに対して七万三千円ももらえると、これは転作絡みで農家に行ったんですが、これを直接支払いという形で出せばいいということを我々は提案しているわけです。見ていただきたいんですが、十五年の目標をつくらなかった二十二県の合計は、全部足すと十万トンぐらいあるんです。そうすると、目標をつくっているところだけで二十五万トン。そこにこの十万トン足せば、目標は三十五万トンになってしまったりするんです。つまり、意欲的に取り組めば幾らでもこうなるということなんです。

 こういうことからすると、午前中の参考人の御意見を承っておりまして、お二人とも口をそろえて言っておられました、今自給率を高めなければいけないんだ、それが国民の声であるということを言っていました。しかし、政府の政策の中には何かその意欲が感じられないんじゃないかと思うんですよ。例えば、過去の実績に応じてしか配分しないと。しかし、これはさすが政府・自民党もちゃんとこの十二月には直しましたね。過去の実績がなくても出すというのをちゃんとやっています。ここのところはちょっとおかしいと思うんですが、この法律でもって自給率を高めていくということを何かちりばめておられるんでしょうか。若林大臣にお伺いしたいと思います。

若林国務大臣 この法律においてというのは、どの法律ですか。

篠原委員 この法律でなくて、政府の方の法律です。経営所得安定対策の中で。

 それでは、時間がもったいないので、考えていただくことにしまして、同じことを民主党の提案者にお伺いしたいと思います。

 米価が下げどまっていないですよね。そして、小麦の価格が三〇%も上がっている。数日前の農業新聞では、ゼーリック世銀総裁が、東南アジアで七〇%ぐらい米価が上がっていて困っている、何とかしなければいけないというようなことを言っています。こういった世界じゅうで穀物価格が高騰している中で、農業者戸別所得補償法案は自給率の向上というのをうたっています。この役割というのは非常に大事になってきていると思うんですが、民主党の法案の中ではこの点はどのように入れ込んであるんでしょうか。

平野参議院議員 民主党の農業者戸別所得補償法案の中では、自給率の向上というのを大きな柱の一つに位置づけております。

 今、篠原委員から御指摘ありましたけれども、今世界じゅうで穀物価格が高騰を続けておる。国際価格の動向を見ると、米はしばらく上がることはなかったんですが、ここに来てぴょんと上がってきています。インドが輸出禁止措置をとっているとかいろいろな情報も流れてきておりますが、そういう中で自給率を上げなくちゃならないという議論が今ここに来てにわかに大きくなってきたのではないかと思っています。

 ただ、自給率を上げるというときに、今輸入している穀物を国内産でつくろうと思えば、どうしても内外価格差があって、その差分をだれかが負担しなくちゃならない。その負担をするということは、それだけの要するにコストがかかるということです。

 私どもの農業者戸別所得補償法案の中では、それに関連して一兆円という枠組みを設定しているわけですけれども、そういったコストを明示しながら自給率の向上という方策をきっちり示したというふうに思っておりまして、こういう中だからこそ、この農業者戸別所得補償法案というのはもっともっと脚光を浴びていいのではないかというふうに思っております。

篠原委員 これと同じなんです。さっき若林大臣は、麦も大豆もふえた、しかし、質が悪くて実需者の要望に合わなかった、だからもうやめたと。しかし、それではいつまでたっても自給率は向上しないですよね。やはり自給率を向上させるべきだと思うんです。

 この点は一番最後に述べますけれども、余っている米以外の土地利用型作物の生産振興をして自給率を高めようという気持ちは全く同じなんだろうと思います。しかし、その片りんが政府の方の施策のところには余り見受けられないんです。その点はどうなっておるんでしょうか。

若林国務大臣 先ほどのお話でございますけれども、品目横断的経営安定対策、いわゆる今度の水田・畑作経営所得安定対策の基礎となっています法律には、自給率を向上させるという法律上の目標は掲げていないというふうに承知しております。

篠原委員 そうなんですよね。法律自体には全然入っていない。

 この資料の三ページのところを見ていただきたいんですが、背景としては当然私はあるんだろうと思います。三ページのところ、これは私が勝手につくった表ですけれども、左側は農業者戸別所得補償法案です。右側は昨年の担い手経営安定新法。真ん中は昨年の秋、十二月に政府・自民党が一体となっていろいろ改善をされた内容です。この矢印は何かといいますと、民主党の主張が政府・自民党の見直しの方に影響を与えて変わった部分です、これは私の判断ですけれども。よく見ていただくとわかると思います。

 それに対して対立みたいな感じになっているのは、例えば対象農家のところでは四ヘクタール、十ヘクタール以上とか、二十ヘクタール以上の集落営農と言っていたけれども、市町村特認というのを設けて、今までだって二・六ヘクタールぐらいでよかったんですけれども、もっと少なくてもいいようにしたとか、それから支援の内容だと、生産調整実施者にメリット措置。メリット措置というのは、我々の方でいうと、一番下の、米にかわる農産物の生産をした場合は割り増しというか加算するというようなこと。それから、過去の実績なしというのも認める、五十二億円。これは非常に私は柔軟な対応だと思いますよ。いいことだと思います。

 ですけれども、政府の方のやり方は、最終目標は同じなんですけれども、途中の政策判断として間違ったのは、何度も繰り返してきているんですけれども、担い手を絞って政策をしようという、これは私はずっと見てまいりましたが、ここは若林大臣と私の見解が多少異なるかもしれませんけれども、私は規模拡大に反対しているわけじゃないんです。でっかい農家に育ってほしい。だけれども、だからといって小さい農家をほったらかしにしておいてはいけない、全体を底上げしなければならないというふうに思うんですが、いつも農林水産省から出てくる政策は担い手を限定してでっかい農家だけとか若手の農家だけというのが多いんですけれども、そろそろこの政策は改めていただかなければならないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

若林国務大臣 委員も十分御承知だと思いますけれども、我々の政策の基本は食料・農業・農村基本法でございます。食料・農業・農村基本法の二十一条で、効率の高い担い手によって相当部分の生産が賄われなければならない、そういうふうにするんだという構造政策の目標を法律上明確に掲げているわけでございます。

 他のいろいろな作目を見ていきますと、もう時間の関係がありますから、委員十分御承知ですから一つ一つ申しません。畜産でありますとか、あるいは果樹、花の花卉でありますとか、野菜でありますとか、それぞれについてはもうその需要の相当部分をこれらの担い手によって賄えるようになっておりますけれども、何としてもこの水田農業、特に稲作についてはなかなかそのような構造が、規模拡大という形でそのような担い手によって供給が賄われない、こういうことになっているわけでございまして、ここのところの改善を図るということは、私は、やはり日本の農業の体質を強化いたしまして強靱な農業構造を構築していくということはもう待ったなしになっている、こういう認識でございます。

 そのことは、食料・農業・農村基本法を経まして、平成十七年三月に策定をいたしました食料・農業・農村基本計画に基づきまして、この水田、畑作経営につきましてもこのような規模の担い手が形成されていくようにするんだという方向を出したわけでございまして、私はそれだけで日本の農業が成り立っていくというふうに思っているわけではありませんけれども、これらが相当程度、七割なり八割というようなものが他産業と生涯所得が均衡できるような規模の経営によって賄われるという中に、稲作経営も土地利用型農業経営としてこのような経営構造をつくり上げていくことが大事だ、このように考えているところでございます。

篠原委員 そういう点については、余り考え方に相違はないと思うんですね。

 ところで、民主党の法案ですけれども、この中には、政府は担い手担い手と非常に連呼しているんですが、民主党の法案には担い手という言葉なんか一つも出てこないんです。しかし、思いは同じだと思うんですけれども、この法案では、担い手についてどのような方法でもって育成していこう、どうやって日本の農業全体を活性化しようとしておられるんでしょうか。

舟山参議院議員 今大臣から説明いただきましたとおり、食料・農業・農村基本法第二十一条で、効率的かつ安定的な農業経営の育成、そしてそれが相当部分を担う農業構造を確立する、そこの部分は、そういう大きな目標は全く異議はありません。

 しかし、この食料・農業・農村基本法の中では、さらに大前提として四つの基本理念、つまり、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的な発展、農村の振興、まさにこういった目標を達成するためにどうすればいいのかということが問われているんじゃないかというふうに思っています。

 それを達成するために、今、政府では一定規模以上の担い手にすべてを集中させようということになっていますけれども、私たち民主党は、そういった入り口段階で担い手に絞るのではなく、全体を底上げすることによって農業の構造強化を図っていこう、そのような目標を立てているわけであります。

 そして、さらに言えば、この農業の役割というのは、今四つの基本理念の中にもありましたけれども、生産だけではなくさまざまな役割があります。これは一定規模以上の特定の農業者が果たしているわけではなく、広く生産者が、規模いかんにかかわらずすべての生産者がそういった役割を果たしている。そういった意味では、そういった人たちを全体を底上げし支えて、その中からしっかりと足腰の強い農業を育てていこうということでありまして、目的は同じなんですけれども手法が全く違うというふうに思っています。

 今、日本の農業の現状は、農業者を選別できるほどぜいたくな状況にない、一部の農業者だけを育てればすべてがよくなるわけではないというふうに思っています。

篠原委員 よくわかります。ですけれども、やはり責任政党の自民党は柔軟だと思います。西川公也さん、前委員長は、二月二十三日の東洋経済が農業問題をずっと連載したインタビューで、農政不信の最大の原因は認定農業者への支援の偏り過ぎだったんじゃないかと言っておられます。そして、近藤さんなどが汗をかかれたんだろうと思います、自民党の農林部会で。相当民主党の考え方も取り入れて、同じ方向に行きつつあるんじゃないかと私は思います。だから、ほかの何か非常に敵対的な委員会がありますけれども、この委員会は適度に敵対的で、適度に仲よくやっているいい委員会じゃないかと思っております。

 また一つ違う点をちょっと申し上げます。これは相当私の主義の部分に入るわけですけれども。

 循環社会、環境が大事だと言っているわけです。ところが、政府の政策の水田・畑作経営所得安定対策の方に環境に優しい農業とかいったようなことが一体どこに入っているのか。

 午前中の参考人の方の意見の中にも、マルチファンクショナリティー、多面的機能ということで、それをバックアップするような政策がなければならないんだと。きのう資料要求で農林水産省の事務方に試しに聞いてみました。一体どういう政策があるんだと言ったら、当然ですけれども中山間地域の直接支払いと農地、水、環境の保全対策が挙がってまいりました。しかし、これはもっともっと入ってもいいかと思うんですけれども、こういう思想は入っているんでしょうか、入っていないんでしょうか。入っていなかったとしたら、推進されるつもりはあるんでしょうか。

若林国務大臣 まず、委員の思い込みがおありだと思うんですけれども、民主党の法案は戸別の経営の直接支払いを通じた所得の安定を図るということでありましょう。しかし、今の農業、農村が持っている多面的機能も含めて、地域活性化などすべての政策効果をこの法律の中で期待するというのは、私は無理だというふうに思うんです。やはり政策手段としては、幾つかの政策手段をそれぞれ効果的に講ずることによって、それらを結合して目標を上げていく。

 そういう意味でいいますと、この水田・畑作経営安定対策というのは、集落営農組織も含めまして、意欲のある担い手の育成などによって農業経営の体質強化を図るということに力点を置いているわけで、そういう力強い農業構造を構築する、それに取り組むということをねらいとして、いろいろな言葉の使い方がありますけれども、いわば産業政策としての観点からこれを実施するということでございます。

 もちろん、この対策は、直接的には国土や環境の保全などの多面的機能に着目するものではありませんけれども、確かに、本対策によりまして担い手を中心とした力強い農業構造が構築されていけば、ひいては農業の持つ国土や環境の保全などの多面的機能の維持にも資するということにはなるでありましょう。そういうことも考えております。

 しかし、直接的には、委員もおっしゃられました農地、水、環境保全向上対策という中で、地域振興政策として、社会の共通資本であります農地、農業用水等の資源、さらにはこれを基礎として営まれる営農活動を一体として、その質を高めて将来にわたって保全をし、農業、農村の有する多面的機能の発揮を図る。こういう地域振興政策というのを、車の両輪とでもいいますか、それらを組み立てているわけでありまして、さらに加えて、条件不利地域につきましては、中山間地の直接支払い制度というのを組み立てているわけでございます。

 環境に優しい環境保全型の農業というのはいろいろあるわけですけれども、特にこの農地、水、環境保全対策の中では、どのような農業をみんなで共同してつくっていったらいいかという中で環境保全型の農業をそこに位置づけて、これに取り組むというのも共同の農業生産活動を支援する中に加えているというふうに理解をしております。

篠原委員 わかりました。

 我が方の農業者戸別所得補償法案には、この三ページのところを見ていただくとわかるんですが、一番下に環境の保全に資する度合いに応じて加算をするというのがあって、いろいろちりばめればちりばめられるんですが、鈴木教授が言っておりましたけれども、直接支払いをEUでやっているんだ、何も新しいことじゃないんだ、違いは国民がそれを認めているかどうかだと。やはり、国民的な運動をしていかなければならないんじゃないかと思います。

 そのときにヒントになるのが、ここに理事さんたちのお許しをいただきまして持ってきたのが、これは皆さんごらんになったことがあるんじゃないかと思います。これは、きょう届いたんです、私のところに。丸山清明、私の敬愛すべき研究者でございますけれども、中央農業総合研究センターの所長です。ちょっと違うのは、ここに両方とも「地場産品応援の店」と書いてあったんですが、私が片方はこっちを書いてくれとリクエストしまして、読めますかね、「地産地消応援の店」と。まあ、同じなんですが、私はこれは非常にいいことだと思うんです。

 それで、これは、丸山さんは研究者ですけれども飲んべえなんです、飲んでいるうちに気がついて、地元のものをどれだけ使っているか。それで、緑には安全という意味も含まれているわけですね。赤ちょうちんに対して緑ちょうちん。これは飲んべえの発想なんです。若林さんも、その辺にある飲んべえと違って、斗酒なお辞さずという点では丸山清明さんと共通の点がおありになろうかと思います。これを若林さんがこれから行かれる飲み屋に全部つけてもらうとか、こういうことをやっていただけたらと思うんです。

 冗談はさておきまして、こういうのを運動としてやっていったりするのは非常に大事だと思うんです。例えばこれをてこ入れしてやっていくようなことを、法案に直接関係ないんですけれども、これについては自由に意見を言っていただけたらありがたいんですけれども。

若林国務大臣 実は、この丸山清明さんを私も存じ上げておりまして、過日、丸山清明さんのグループの方々と、まさにこの緑ちょうちんのお店で、相当程度、したたかに飲みながら自由闊達な意見交換をしたところでございます。

 その際、丸山さんが、丸山グループの皆さんが強調していますのは、これは自然発生的に始まり、そしてこれが今自主的に展開をしているというところに意味があるんだ、お役所がかかわると、あるいはお役所がこれに対してコミットしますと、要件がどうだとか条件がどうだとかいろいろなうるさいことが出てきて自由な展開がやりにくい、こういうことでございます。

 皆さん、御承知でない方もいらっしゃるかと思いますけれども、この緑ちょうちんというのは、食材の国産使用率が五割以上の飲食店が掲げることができるちょうちんだということで、店で使用する国産食材の割合が高いほど多くの星を入れる。あそこは星が一つついていますが、五割以上というときは星一つとなります。六割以上は星二つ、七割以上が三つ、八割以上が四つ、九割以上になると星五つというふうに。これは全部自主申告で、自分で書いているんですね。本当かな、それは飲み屋に行った者がそれを評価するということでありますけれども、私は三つの星を目標にする、七割以上は国産食材でやるんだといった場合には星三つを入れる、こういうような仕組みになっているわけでございます。

 私も、この緑のちょうちん運動というものを含めまして、民間のこういう自給率向上につながるような取り組みというものを視野に入れながら、一般論として言えば、国民が日本の食を見直して積極的に国産を、今委員がおっしゃっておられます地産地消というのは大事なことであります、環境政策の面から見ても大事でありますが、そういうことに向かって取り組んでいくというような国民運動が必要になってくると思います。

 ちなみに、今、四月七日時点でホームページを引いてみましたら、この緑ちょうちんのお店は全国で七百四十八店に拡大をいたしておりました。破竹の勢いといいましょうか、もう大変な勢いで今このちょうちんがふえてきております。好ましいことだ、喜ばしいことだと高く評価しながら、私も出かけるときには、できるだけというか、まず緑ちょうちんで一杯やりたいものだと思っております。

篠原委員 若林さんのお考え、大臣のお考えは健全かもしれませんね。ちょっと前に、日本政府が日本食のレストランをグレードづけようとしたら、すぐ文句を垂れる人がいた。大体、いいことをやろうとすると小言を垂れるのがいるんですよね。だから、これは自主的というのがいいのかもしれません。ですけれども、気持ちとしては、こういうのをどんどん振興していっていただきたいと思います。

 またまじめな話に戻りますけれども、三ページのところをもう一回見ていただきたいんです。

 いろいろ融合が進んでいるんです。例えば、我々の法案は、二年前の法案は、てん菜とかでん粉原料用バレイショというのは対象作物に入っていなかったんです。ですけれども、それは自民党さんの法律というか政府の法律に入っているので、これはやはり対象に入れようというので入れたんです。お互いにいいとこ取りをしているんですね。

 しかし、一つ、政府の方に、我が方はぎゃあぎゃあ言って入っているのに、入っていないのがあるんですね。菜種なんです。菜種は今大臣がおっしゃった循環の作物とかそういうのになっていたり、景観上はいいですし、非遺伝子組み換え、ノンGMOになりますし、その廃油はディーゼルエンジンの軽油になりますし、こんないいものはないですよ。

 ちょっと手前みそになるんですけれども、私はこれを実践していまして、皆さん忙しくて気がつかれないかもしれませんけれども、菜種がこの周りにあるのを御存じですか。去年までは第一議員会館の土手にあったんです。これは私がひそかに三年前にまきまして、真っ黄色になっていたんです。ファンがいっぱいいたんです。ところが、土手がなくなっちゃったんです、工事で。僕がほっておいたら、このまねをするとすぐだれだかわかると思う、おい、篠原、あの黄色いのどこに行ったのよ、あんたの畑、なくなっちゃったじゃないと。女性ですけれどもね。だれだかおわかりになりますかね。それから、もう一人、あれ、篠原さんの黄色い菜種、どこへ消えたんでしょうかねと言う人がいたんです。

 そういうことをおっしゃる方がいたので、僕は頭にきまして、一計を案じまして、夜中に法律を犯して中央分離帯とあの両側の垣根にまきました。今、菜種が真っ盛りです。しかし、栄養不良で、水不足で、土不足で、私のようなひょろひょろの菜種ばかりです。東京国道事務所長の許可は得ていません。許可を得ようとしたら、一時間四十五分粘られてそんなことはしないでくれと言われましたけれども、難航しております。しかし、菜種は私は非常に大事な作物だと思っているんです。

 それで、もう一つの表を見ていただきたいんです。十四ページ、やればできるというのを。

 小里さんがこの前の質問で、自給率の向上は、非常に意欲的だけれども実現可能性が少ないんじゃないかということをおっしゃいました。我々のはその指摘は当たっているところがあります、意欲的過ぎるところがあります。しかし、やればできると。この緑ちょうちんもそうだと思いますけれども、多分、来年、再来年になってきたら、相当緑ちょうちんがふえるんじゃないかと思います。やる気の問題です。

 十四ページを見てください、「EUの小麦、油糧種子の生産、輸出入状況」。私は、これは薄々わかっていたんですが、きのう資料整理をして、またびっくり仰天しました。

 大豆のところを見てください。一番上、大豆の生産量。ほとんどゼロになったんです、一九六一年。七〇年は三千トン、八〇年は三万二千トン、九〇年は何と二百八万トン。菜種は、一番下を見てください、六一年は五十三万トン、七〇年は百二十五万トン。本当は六一年対比にしたかったのですが、ゼロですから無限倍になるから七〇年対比にして倍数を右側に書きました。八〇年は二百七十四万トン、それが二〇〇四年には千百八十三万トン。

 EUは消えた菜種、大豆、ヒマワリを、小麦の生産が余って輸出補助金をつけて出さなくちゃいけない、しかしそれはよくない、だからほかの作物をつくらなければいけないとして堂々と復活しているんです。ですから、我々も同じようにてこ入れすれば、大豆も菜種も小麦も復活できるんです。これはぜひよく考えていただきたいと思います。

 この点、てこになるのは直接支払いです。この直接支払いについて鈴木教授が強調されておられましたけれども、これを国民に理解していただくための大運動をしていかなければ私はいけないんじゃないかと思います。私どもも中山間地域の直接支払いについてささやかにやっています。しかし、ほかの国はどれだけやっているか。もう何回も資料を出していますけれども、十二ページのところを見てください。

 財源問題で民主党は法外なことを言っている、一兆円なんて何やっているんだ、そんなのはできっこないじゃないかと言っていたんです。そんなことはない、我々は何も目新しいことを言っているわけじゃないんです。EUでやっている、農林水産省も二〇〇〇年の食料・農業・農村基本計画に基づいて七万三千円も出してやり始めた、それを続けてくださいと言っているわけなんです。

 十二ページを見てください。EUの予算のうち五兆円を直接支払いに使っている、全農林水産予算の六五%です。私が答弁に立ったとき、二年前の法案のときもいいかげんに答えました、一兆円なんて別に根拠はないと。本当にそうなんです。三兆円の農林予算のうちの一兆円ぐらいは新しくこういうところに使っていったらいかがですかと言っている。こうやってやればできるんです。直接支払いを国民の理解を得て大々的に進めていくべきだと思います。

 それで、今、政府も始まったんです、これを来年、再来年、飛躍的に拡大していくおつもりはおありになるでしょうか。

若林国務大臣 まず、菜種に対して委員は大変思い入れを持っておられます。議員の仲間でも菜の花議連なんというのをつくりまして、これはバイオディーゼルのもとになるということもありますが、菜の花というのは日本の景観には欠かせなかったものであります。菜の花畑に夕日は落ちてと、懐かしい童謡がございます。これは我らのふるさとに深くかかわった作詞家がつくったわけですけれども。菜種というものが今ようやく各地で広がって目を楽しませていただいているということについては、私もほのぼのとした思いを持っております。

 しかし、これをいわゆる産業として菜種生産というのをとらえましたときに、今、日本におきます菜種生産は、ごく限られた一部の地域において生産をされ、これが油糧原料としてつくられて菜種油、食用油になっているわけでありますけれども、価格の面で油糧原料としての菜種との間に三倍ぐらいの価格差がありまして、これを直接国内で助成をして一定の数量を確保したときに、搾油の企業の方とこれを結びつけて、搾油企業に菜種油を搾ってもらわないといけなくなるわけでありますが、そちらの方と接触をしているわけでございますけれども、特殊な需要に合わせた形の搾油企業はあるんですけれども、大規模に菜種から油を搾るといったような企業は、産業、事業としてなかなか成り立たないということで大変消極的でございます。そんな事情があることを私自身は残念に思っております。

 ただ、先ほど委員がおっしゃられました、EUがほとんど壊滅的、大豆について言えば資料によりますとゼロであった、あるいはヒマワリ、菜種についても壊滅的な生産量でありましたものが非常に大きく生産が回復して伸びてきている、その手段というのは実は直接支払いであったということをおっしゃっておられました。私どももそのことについてはいろいろ調べてみたわけでございますが、一九六一年に、委員の一番詳しいところでございますけれども、ガット交渉の過程で穀物関税の譲許を撤回するための代償として、大豆や菜種といった油糧種子の輸入関税をゼロにしちゃったんですね。そのことを反映しまして、一九六〇年から七〇年代にかけましては、域内生産が低い水準、ゼロを含む大変低い水準になってしまいました。EUは、これではいかぬと、域内における油糧種子の生産を強化するために、域内産の油糧種子を使って油を搾る搾油業者に対して特別の助成を行いました。その助成を行った結果、一九八〇年代以降は生産が増加してきたということでございます。

 ところが、搾油業者に対します支払いは、内外無差別でなきゃいかぬということでガットのパネルで違反とされたことを受けまして、一九九二年の共通農業政策の改革過程で直接支払いが導入されたものであると承知しております。これは、支持価格を引き下げていく、その代償として直接支払いを導入する、生産調整の義務づけを内容とするもので、実は余り難しい生産調整はしていないようですけれども、そういう建前の中でEUにおいて大豆、菜種、ヒマワリといったようなものの生産がふえていった経緯はあるんですけれども、実は必ずしも直接支払いの導入だけが油糧種子の生産を増加させているとは言い切れない点もあることを一言言わせていただきたいと思うんです。

 というのは、大豆とかヒマワリというのは急激に減少しているんですね。同じ直接支払い制度の対象になっていながら、大豆やヒマワリの方はその後急速に減少しています。菜種の方はかなりの拡大をして、二〇〇〇年代になりましてかなりの生産量を維持いたしておりますから、直接支払い方式だけでEUの方の大豆やヒマワリなども伸びているかというと、なかなか伸びない、下がってきているというようなこともあることをつけ加えさせていただいて、やはり生産と消費、需要との間でマッチングをさせていかなければうまくいかないなというふうに考えております。

 菜種が国内でどれだけまとまって生産をし、生産をした油糧種子が搾油として利用できるかということについては、私自身はなお検討をしていかなきゃいけない課題だ、こういうふうに受けとめておりますけれども、実際これを拡大していくということは非常に高いハードルが幾つもあるということを御理解いただきたいと思います。

篠原委員 若林さんが言うのも正しいんです。私は何も直接支払いだけとは言っていません。今は直接支払いですが、前は輸入課徴金をつけたりしてずっと保護してきている、手厚くしているということです。十三ページのところを見ていただければわかると思います、後でよく見ておいてください。EUは一たんだめになったのを復活しているんです。日本もぜひ見習ってやってくださいということなんです。

 なぜこれを申し上げるかというと、農産物は発展途上国が価格を決めちゃっているんです、EUもアメリカも日本も価格競争をしたら負けちゃうんですよ、市場経済に全部任せていたらやっていけない。だから、直接支払いというのを導入したんです。それは十一ページに書いてあります。所得配分は、所得格差と言っていますけれども、所得配分には市場経済は無力なんです。その分をいろいろ理由をつけて、田舎に、農家に、零細な農業者に、頑張っている農業者にやっていかなければいけないんじゃないかと私は思います。今使われている手段が直接支払いなんです。

 私は最後に余計な資料をつけさせていただきましたけれども、一番後ろを見ていただきたい。私は、この議論は本当に感心いたしました。今、農林水産委員会にカムバックしたいと思っております。なぜかというと、我が方の法案に対してこれだけ自民党の主として若手の皆さんが勉強されていろいろ質問をしていただいたんです。ほれぼれいたしました。やはりねじれ国会によって議論が活発化しているんじゃないかと思います。ほかの委員会は、さっき申し上げましたけれども、敵対的になって、何か決まらなくなってだめになっていますけれども、私は、この農林水産委員会は、農業を取り巻く課題については共通認識が本当にたくさんあるんじゃないかと思います。直接支払いは、額は違います、対象もちょっと違いますけれども、目的は一緒なんじゃないかと思います。それでやってまいりました。

 一ページから二ページにかけては、非常に手前みそな私の四年間の歩みを、私が中心になっているんですけれどもね。一つだけ言いわけを、言いわけなんか今ごろしたってしようがないんですけれども、いろいろなビラをつくられましたけれども、もともとのビラは私がつくりました。途中で山岡賢次現国対委員長の発案により、ちょっといかがわしい、品の悪いビラがつくられまして、これがいろいろ皆さんに攻撃されておりましたけれども、仕方ないところもあるんだろうと思います。

 お願いですけれども、この議論はいろいろありました。私が感心するのは鳩山邦夫法務大臣でして、時間がなくなりましたのでお答えいただく必要はありませんけれども、鮮明に覚えています。二年前の採決のとき、鳩山邦夫さんはどうされたかというと、率直な人です、起立採決のとき、民主党案に賛成と言って政府案に起立で賛成されたんです、でかい声で。法務大臣になられても同じような放言をされております。しかし、私は、非常に気持ちのいい方じゃないかと思います。ほとんど話したことがないので、由紀夫さんとしか話したことがありませんけれども、私は、こうやって虚心坦懐に議論して、いいものはいい、悪いものは悪いというふうに認めていけばいいんじゃないかと思っております。

 そして、この年表の一番最後、何か日にちがずれたそうですけれども、あした採決される予定が変わったんですね、もっと先延ばしされるようになったそうでございますけれども、第二、第三の鳩山邦夫さんが生まれることを祈念いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 最初に、大臣に質問いたします。

 政府は、飼料価格の高騰を受けて、飼料用米を活用する事業に対し助成を行う緊急対策事業を決めました。この対策によって、飼料用米の生産と活用がどの程度進んでいくものと想定しているのでしょうか。また、飼料用米の普及に向け、生産価格の補償や、主食用米との価格差補てんなどの措置を検討しているのかどうか、お答え願いたいと思います。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

若林国務大臣 飼料用米につきましては、委員も十分御承知でございますが、輸入トウモロコシ価格が高騰していく中で、国内で生産される飼料用の穀物として期待が寄せられております。また、我が国は、御承知のように、長い歴史を経て水田機能というものを持っておりまして、その水管理のシステムだけとらえても大変な社会資本でございます。歴史的に長い間かかって形成されてきた水管理のシステムでございます。そういう意味では、我が国の水田機能を維持活用するという観点からも重要ではないかというふうに考えているところでございます。

 しかしながら、現時点で見ますと、その生産コストは、輸入トウモロコシの価格よりも大体五倍ないし六倍高いわけでございます。ですから、これを本格的に生産し利用するということにつきましては、生産コストを大幅に低減しなければいけない。また、飼料用の米を利用してつくられる畜産物、鶏肉でありますとか豚肉でありますとか、あるいは酪農についても、そのことによる付加価値がトウモロコシを原料にするよりも高いんだ、そういう消費者側の認識が出てくるように、トウモロコシとの差別化というものも必要になってくると私は考えているわけでございます。

 このために、十九年度の補正予算におきましては、地域水田農業活性化緊急対策というものを活用いたしまして、米の生産調整の一環として低コストの生産技術の確立、定着を促進する。そして、二十年度にあっては、畜産・酪農緊急対策の中で、畜産における利用拡大を図るために、飼料用の米を利用した畜産物の付加価値化や、あるいは給餌、えさとしてそれを給与する方法のモデル実証というものを全国的に展開してみよう、そして、飼料用米の運搬、保管に係る経費の支援でありますとか、飼料用米を利用し活用する場合に必要な装置、機械などの整備も促進しようというふうにしたところでございます。

 今、飼料用米の作付面積につきましては、十八年産は百四ヘクタールでございました。ところが、十九年産は二百八十六ヘクタールと拡大をしてきております。二十年産につきましては、今申し上げましたような緊急の諸対策を講じておりますから、さらに拡大するだろうということを期待いたしておりますけれども、どの程度まで拡大できるかということについては、今予測は困難な状況にあるわけでございます。

 現在、これらの対策について現場への説明を精力的に行っている段階でありまして、面積を見通すことは困難でありますけれども、これらの対策を推進することによりまして、飼料用米の生産及び利用が促進されるように、さらに一層努力したいと思っております。

 そして、最後にお尋ねでございました、飼料用米をつくった場合の価格の是正措置のために、直接的に飼料用米の生産に対して助成措置を講ずるかということでございますが、今の段階ではそのようなことは考えておりません。今申し上げましたような周辺部の環境条件を整えながら、飼料用米が定着するような条件整備を図っていきたい、こう考えているところでございます。

菅野委員 大臣、この問題は一過性でとらえるんじゃなくて、永続的に、継続的にやっていける体制をしっかりと確立して説明に入っていくべきだというふうに私は思っています。

 先ほども篠原さんの議論を聞いていても、EUでの取り組みというのは、単年度の取り組みじゃなくて、長い年月をかけて農業構造を変えていくという流れの中で取り組まれたことだというふうに思っていますので、この点については、これからも機会あるごとに議論してまいりたいというふうに思っています。

 次に、法案提出者にお聞きします。

 耕作地、とりわけ水田を維持していくために、飼料用米あるいはホールクロップサイレージの生産拡大が必要だと私どもは思っているんですけれども、どのように認識しているのか、答弁願いたいと思います。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

平野参議院議員 今御承知のように、トウモロコシ等の価格高騰を受けまして、今たしか、最近のデータでは、ミニマムアクセス米から五十万トンほど飼料米に転換がなされているのではないかと思います。データがちょっと古いので、最近のデータはどれだけかわかりませんが、トン当たり三万から四万ぐらいで取引がされているんじゃないかと思います。こういう状況の中で、やはり飼料米としての需要は確実に上がってきているんだろうと思います。

 あわせて、青刈りをして発酵させて家畜にやるホールクロップサイレージも、まだまだ面積は非常に小さいんですけれども、私が知る限りでは、畜産農家、特に牛、酪農家では期待している農家も結構あります。こういった飼料米、ホールクロップサイレージについては、これからもしっかり振興していく必要があるのではないかというふうに思います。特にも、農家にとっては転作をやる上で非常に条件の悪い、例えば排水が悪いようなところでは、どうしても大豆あるいは麦をつくれと言っても、なかなかできない。

 そういう中で、この多収穫米あるいはホールクロップサイレージであれば、今までの稲作の作付の延長線上で対応できますから、大変期待する向きもあるわけですね。

 ただ、それをしっかり支えるためには、先ほど大臣もちょっと言われましたけれども、やはり価格、いわゆる生産コストとの価格差の問題がかなりございまして、これをどのように補てんするかというのはこれからしっかり詰めなくちゃならない問題だろうという問題意識もあわせて持っております。

 しかし、いずれこの飼料米、ホールクロップサイレージについては、いろいろな観点から、どんどんどんどんこれからしっかりと推進していっていいのではないかというふうに私どもは思っております。

菅野委員 今、法案提出者の方から、位置づけの認識等については披瀝になったんですが、法案の中ではどのような位置づけになっているのか、お聞きしておきたいと思います。

平野参議院議員 正直申し上げまして、これは、いわゆる転作作物として飼料米をどのように位置づけるかというのは、菅野先生から質問をいただきまして改めて気がついたんですが、私どもの議論の中では余り議論されてきていない議論でして、これは私どもちょっとうかつだったなというふうに思っています。

 ただ、私どもの位置づけとすれば、これはやはり米にかわる農産物の生産という中で位置づけるべきものだと思っています。このときに、いわゆる飼料米としての市場の価格と生産費というのはかなり差があります。先ほど言いましたように、トン当たり三万、四万で今取引されている。一方で、主食用の米というのはトン当たり二十万から二十二万ですから、これを全額そっくり埋めるというのはなかなか大変だなと。

 それからもう一つは、私どもは、自給率をしっかり向上させるためには、やはり何としても主食用での大豆あるいは小麦、こういったものの生産振興をもっと図らにゃいかぬということもあります。こういったことを見ながら、転作作物としての飼料米、ホールクロップサイレージ、どのレベルで所得補償するかということについては、今まで米並みの所得補償というふうに言ってきましたけれども、若干違う検討が必要ではないかということを今回菅野先生からこういう御質問をいただいて改めて気づいたところでありまして、ここについては、いろいろな方の意見も聞きながら、これから検討していく必要があるんじゃないかというふうに思っております。

菅野委員 最後に申し述べておきますけれども、米だけを取り上げても、世界的には価格が急騰し、ベトナムやインドといった主要生産国も輸出制限に踏み切っています。このとき、逆に日本は生産調整で生産を縮小し、耕作放棄地を拡大させているのは本末転倒であるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 民主党案には賛成の立場ですが、米の備蓄のあり方、生産調整の必要性、あるいはWTO農業交渉やEPAなどの輸入自由化に対して、どのように対処していくのか、さらに検討が必要です。また、EUのような環境支払いも、国民の理解を得ながら、どのように進めていくのか、真剣な議論が必要に思います。そのようなことを指摘して、質問を終わります。

 以上です。

     ――――◇―――――

宮腰委員長 次に、内閣提出、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣若林正俊君。

    ―――――――――――――

 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

若林国務大臣 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 森林は、国土の保全、地球温暖化の防止等の多面的な機能を有しておりますが、これらの機能の持続的な発揮を確保する上で、また、京都議定書の森林吸収目標を達成する上からも、間伐等の実施を促進することが喫緊の課題となっております。このため、京都議定書の第一約束期間の最終年度である平成二十四年度までの間における森林の間伐等の実施を促進するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、都道府県知事は、農林水産大臣が定めた基本指針に即して、間伐等の実施の促進に関する基本方針を定めることができることとし、また、市町村は、この基本方針に即して、間伐等の実施の促進に関する計画を作成することができることとしております。

 第二に、国は、間伐等の実施の促進に関する計画を作成した市町村に対し、当該計画に基づく間伐等の実施に要する経費に充てるため、予算の範囲内で、交付金を交付することができることとしております。

 第三に、市町村が作成した計画に基づき実施される間伐等に関し地方公共団体が負担する経費について、地方債をもってその財源とすることができることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

宮腰委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五分散会


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