衆議院

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第9号 平成20年4月15日(火曜日)

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平成二十年四月十五日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 宮腰 光寛君

   理事 岩永 峯一君 理事 江藤  拓君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤  錬君

   理事 七条  明君 理事 筒井 信隆君

   理事 細野 豪志君 理事 西  博義君

      赤澤 亮正君    伊藤 忠彦君

      飯島 夕雁君    稲田 朋美君

      今津  寛君    小里 泰弘君

      小野 次郎君    近江屋信広君

      金子 恭之君    亀井善太郎君

      亀岡 偉民君    北村 茂男君

      斉藤斗志二君    関  芳弘君

      谷川 弥一君    中川 泰宏君

      永岡 桂子君    丹羽 秀樹君

      萩原 誠司君    平田 耕一君

      福井  照君    馬渡 龍治君

      水野 賢一君    森  英介君

      山内 康一君   山本ともひろ君

      石川 知裕君    大串 博志君

      川内 博史君    小平 忠正君

      佐々木隆博君    篠原  孝君

      神風 英男君    高井 美穂君

      仲野 博子君    横山 北斗君

      井上 義久君    菅野 哲雄君

    …………………………………

   農林水産大臣       若林 正俊君

   農林水産副大臣      今村 雅弘君

   農林水産大臣政務官    谷川 弥一君

   政府参考人

   (内閣府食品安全委員会事務局長)         栗本まさ子君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官)          岩瀬 公一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       藤崎 清道君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         伊藤 健一君

   政府参考人

   (農林水産省総合食料局長)            町田 勝弘君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           佐藤 正典君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  内藤 邦男君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            中條 康朗君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           竹谷 廣之君

   政府参考人

   (林野庁長官)      井出 道雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      山田 修路君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 谷津龍太郎君

   農林水産委員会専門員   渡辺 力夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  小里 泰弘君     山内 康一君

  金子 恭之君     関  芳弘君

  北村 茂男君     萩原 誠司君

  西川 公也君     稲田 朋美君

  渡部  篤君     亀岡 偉民君

  石川 知裕君     川内 博史君

  小平 忠正君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     山本ともひろ君

  亀岡 偉民君     馬渡 龍治君

  関  芳弘君     金子 恭之君

  萩原 誠司君     北村 茂男君

  山内 康一君     小里 泰弘君

  川内 博史君     石川 知裕君

  篠原  孝君     小平 忠正君

同日

 辞任         補欠選任

  馬渡 龍治君     渡部  篤君

  山本ともひろ君    西川 公也君

    ―――――――――――――

四月十四日

 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案(内閣提出第四一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案(内閣提出第三八号)

 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案(内閣提出第四一号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

宮腰委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省農村振興局長中條康朗君、林野庁長官井出道雄君及び環境省大臣官房審議官谷津龍太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上義久君。

井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。

 きょうは、法案の前に、まず初めに我が国の森林・林業の現況について、大臣にお伺いしたいというふうに思います。

 我が国の森林面積は、およそ二千五百万ヘクタールで、国土の三分の二を占めております。戦後の拡大造林によりまして、昭和二十五年から四十六年にかけて毎年三十万ヘクタール以上が植林をされたために、人工林は過去四十年間で三〇%増加し、平成十七年で千三十五万ヘクタール、全森林面積の四〇%というふうになっております。戦後、大変厳しい経済状況の中で、これだけの造林をしてきた。そういう意味では、私どもは先人のこれまでの努力に対して敬意を表さなければいけない、このように思う次第でございます。

 また、森林蓄積は、この四十年間で二・三倍となりまして、平成十七年で約二十五・五億立方メートルまで積み上がっております。この森林蓄積の増加の背景には、一つは、戦後の拡大造林で植林した立木が成長しているということと、それからもう一点、これは非常に残念なことなんですけれども、昭和四十年代後半以降の輸入材の供給増加による伐採量の減少があります。

 利用期に着目をいたしますと、平成十七年では四十年生前後をピークとする分布になっており、十年後には十齢級以上の人工林が約六〇%を占め、まさに我が国の森林資源は利用期を迎えることとなります。

 一方、国際的な概況でございますけれども、我が国が大きく依存しております外材は、途上国の森林減少で深刻な問題となっております。途上国の森林減少は毎年千二百九十万ヘクタール、植林等を除外した純減七百三十万ヘクタールで、これに由来する温室効果ガス排出量は世界の排出量の二割に至っております。京都議定書ではこの問題は対象外とされておりますけれども、次期枠組みでは極めて重要な国際問題となるというふうに予想されます。このことを考えますと、国産材に対するニーズは今後ますます高くなるのではないかというふうに思っております。

 健全で良好な森林は、二酸化炭素の吸収効果以外にも、土壌の侵食、流出防止効果、あるいは洪水緩和効果、水資源貯留効果、水質浄化効果などの自然としてのさまざまな公益的機能、約七十五兆円の効用がある、このようにも言われているわけであります。

 また、森林の保養効果とかレクリエーション活用などのほかに、現在課題となっております農山漁村の活性化、それから過疎地における集落機能の維持、こうした対策にも森林整備や林業振興が重要なテーマであるというふうに思われます。

 その一方で、平成十九年に内閣府が実施をした世論調査によりますと、森林に期待する役割としては、温暖化防止が第一位を占め、災害防止、水資源涵養、大気浄化・騒音緩和というふうに続いておりまして、木材生産、林産物生産は八位、九位で、森林に対する国民のニーズも非常に多様化をしている。

 そこで、大臣にお尋ねいたしますけれども、こうした我が国の森林・林業を取り巻く現況について、まず基本的認識をどのようにお持ちか。そして、国民のニーズの変化に対応して、今後どのような林業政策を考えているのか。我が国森林・林業に対する基本認識と今後の取り組みについて、まずお伺いしたいというふうに思います。

若林国務大臣 ただいま委員がお述べになりました、我が国の森林・林業、そして農山漁村の中に占めております役割、また国民全体の期待、いろいろとお話しいただきまして、私もお伺いしまして、全くそのとおりだというふうに感じております。

 委員がおっしゃられましたように、森林は、木材の供給だとか二酸化炭素の吸収をしているということのほかに、国土の保全や水源の涵養などさまざまな公益的機能を有しておりまして、いわば緑の社会資本というような位置づけとして森林が多くの公益的機能を発揮しておるわけでありまして、国民の期待も高まっているものと認識しております。

 このような中で、我が国の森林につきましては、委員が御指摘のように、利用可能な資源蓄積が非常に充実してきておりまして、その恩恵を長期にわたって広く国民が享受できるよう適切な整備を進めていくことが必要になってきたと思うのでございます。

 先人のたゆまぬ努力の結果としましてこのような状況が生まれているわけでございまして、いよいよ国産材時代が本格化してくるというふうに考えているわけでございます。このような国産化時代に、問題は、これをどう有効に活用し利用していくかという、その利用のシステムをしっかりしておかなければならない、こう思っているわけでございます。

 平成十八年九月に閣議決定をされました森林・林業基本計画におきましては、多様で健全な森林の整備保全ということと、国産材の利用拡大を軸とした林業・木材産業の再生を図るということとしておりまして、美しい森林づくり推進国民運動などの展開を通じまして、国民各層の理解と協力を得ながら各般の施策を総合的に推進してまいることが私の責務である、このように考えております。

井上(義)委員 そこで、本法律案は、直接的には京都議定書の第一約束期間、二〇〇八年から二〇一二年における温室効果ガスの削減目標、対基準年一九九〇年比で六%削減でございますけれども、その達成に向けて、千三百万炭素トン程度、対基準年比で三・八%を森林による吸収量で確保することを目的に提出をされております。

 まず、環境省に。

 先般、三月二十八日に、改定京都議定書目標達成計画が閣議決定をされました。報告書では、京都議定書の六%削減目標は達成できるというふうにしておりますけれども、追加対策を含めた目標達成計画の実効性それから目標達成見通し、これについてどのように見込んでいるのか。あわせて、目標達成計画における森林吸収の位置づけについてもぜひ説明をお願いしたいというふうに思います。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の改定計画におきましては、自主行動計画の強化、省エネのトップランナー基準の強化、自動車燃費のさらなる改善、また国民運動などの追加対策を含め、あらゆる分野の削減対策を盛り込んで、国内の排出量を基準年比で〇・八から一・八%削減し得ると見込んでおります。

 これに加えまして、お尋ねの森林吸収の位置づけについては、二〇〇七年度から六年間にわたりまして、毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐等を行うことによりまして、基準年比三・八%分の吸収量を確保すると見込んでおります。

 さらに加えまして、京都メカニズムを活用することによって、六%削減目標を確実に達成することとしております。

 また、これまで年一回行っていた計画の進捗状況の点検でございますが、これを半年に一度にするとともに、二〇〇九年度には総合的な評価、見直しを実施して、必要な対策の追加、強化を行うことにより、目標達成をより確実にしていきたいと考えております。

井上(義)委員 京都議定書目標達成には森林吸収の目標達成が不可欠であるというふうに思います。特に、今回の第一約束期間では、諸外国に比して我が国が認められた算入上限は破格の扱いとなっていることを考えますと、森林吸収目標は是が非でも達成しなければいけない、このように思います。

 農水省として、国際約束である温室効果ガス削減目標、なかんずく森林吸収の目標達成にどう取り組むのか。これまでの対策の経緯、あわせて、今回特措法で期待をされる効果について、農水省の取り組みと見通しをお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 京都議定書に基づきます森林吸収目標であります一千三百万炭素トンの確保というのは極めて重要であると認識しております。

 これまでの水準で森林整備をやっていきますと、この千三百万炭素トンには百十万炭素トン不足すると見込まれておりますので、平成十九年度から平成二十四年度までの六年間で、毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐が必要でございます。

 このため、平成十九年度、平成二十年度につきましては、それぞれ補正予算とあわせまして、追加的な森林整備に必要な予算を確保してまいったところでございます。

 また、本法案におきましては、追加的な間伐等を地方債の対象とすることによりまして地方公共団体の負担を軽減あるいは平準化するとともに、市町村の創意工夫を生かすための法定交付金を創設することなどを通じまして、間伐の着実な推進を図ることといたしております。

 今後とも、こういった取り組みを通じまして、森林吸収目標の達成に向け、全力を挙げて取り組んでまいるつもりでございます。

井上(義)委員 次に、産業としての林業の可能性ということについて、何点かお伺いしたいというふうに思います。

 冒頭でもお話をしましたけれども、我が国の森林資源は充実期にあり、しかも、今後の森林をめぐる世界情勢を予測いたしますと、多様で健全な森林づくりを推進すると同時に、産業としての我が国の林業の再生をどう行うのか。私は、国策としていよいよ本格的に行うときが来ているというふうに思っております。また、我が国の国土政策の上でも、地方再生とか、それから山村の集落機能の維持ということが非常に要請されている時期でもあるわけです。

 先ほどもお話が出ました地球温暖化、温室効果ガス削減という地球環境問題が、我が国の森林・林業の再生を求めているわけですけれども、輸入材に依存してきたここ四十年の間に、我が国林業の基盤は弱体化しているということは現実であるというふうに思います。林業再生には、木材産業の川上から川下まで、生産から消費までの総合的な政策の展開が必要であるというふうに思います。

 先日も、岩手県の川井村というところに行きましたけれども、第三セクターで株式会社ウッティかわいという企業を設立いたしておりまして、構造用の集成材工場で国産材の利用は日本一と、成功している一つの例だというふうに思います。ですから、やり方によっては大きな可能性を秘めているというのが私は林業ではないかというふうに思います。

 そこで、農水大臣に、産業としての林業という観点から、我が国林業を取り巻く今の状況をどのように認識しておられるのか。また、林業再生のための総合的な対策として、森林の集約化や素材生産の機械化とコストダウン、流通の合理化、製材の工場の再編、合板技術など新たな用途の開発等々、課題は山積しているわけでございますけれども、どのようなビジョンを持ち、どのような具体策を実施されようとしているのか、大臣の御見解をお承りたいというふうに思います。

若林国務大臣 我が国の森林・林業、その関連する木材産業は、長い間、低迷、停滞期を体験いたしました。それは、やはり外材が非常に安く手に入るというような状況がありまして、木材価格が下落をしてきたということから、国内材が市場になかなか出ていかないという状況があったことが主たる原因でありますが、同時に、林業従事者が山元で減少をしてくる、そして林業従事者の高齢化が進行をしていく、両方の面から大変苦しい状況が続いてきたわけでございます。

 一方、委員が御指摘のように、利用可能な国内の森林資源は充実をしてまいっておりますし、国際的な木材需給も大きな変化を見せてきておりますから、外材も価格が上がってくるというような兆候が見られます。国産材に対する需要の高まりもそれにつれて出てきておりまして、その意味では、ようやく明るい兆しが見えるようになったというふうに認識をいたしております。

 このために、このような状況を生かして、多様で健全な森林づくりを進めるというために、林業・木材産業というものを産業として再生を図っていくことが、今非常に重要だというふうに認識いたしております。

 幾つかの点を申し上げますと、委員もおっしゃられました、山元におきます森林施業の集約化、そして林道などの路網と高性能林業機械を組み合わせまして林業生産のコストを下げることができるという状況をつくっていくこと。二つ目は、緑の雇用対策などによります林業従事者の確保、育成。三つ目は、市場のニーズに対応しました品質、性能の確かな木材製品、そして委員もおっしゃられました、今まで外材を利用しておりました合板などにつきまして、国産材が利用できるような技術革新が進んでおりまして、そのような意味での国産材の需要の拡大に対応した安定的な供給体制を整備するというようなこと。そして最後には、木質バイオマスなど木材の総合的な利用の促進というような施策をまさに総合的に展開していくことが必要な状況になってきている、このように考えているところでございます。

 山村地域の活性化とあわせまして、産業としての林業の確立ということを目指して努力してまいりたい、このように考えております。

    〔委員長退席、七条委員長代理着席〕

井上(義)委員 業として成り立って、初めて森林の整備というのは進むというふうに私は思っておりますので、国策として林業振興にしっかり取り組んでいきたいというふうに思います。

 そこで、今回の特別措置法についてでありますけれども、今回の法律は、京都議定書の目標達成、森林吸収目標千三百万炭素トン達成に向けて、平成十九年度からの六年間で、現状の年間三十五万ヘクタールの間伐に加えて、毎年約二十万ヘクタールの追加的な間伐を行い、合計三百三十万ヘクタールの間伐を行うということを目標にしているわけです。

 こうした特別措置につきまして、林業の現場では、林業というのは植生とか生育、間伐、除伐、下刈り、伐採と五十年から百年の歳月を要する事業で、連続性、継続性のない施策は、効果がないばかりか、林業振興を阻害することになりかねないという意見もあるわけです。

 森林整備に関しては、森林・林業基本計画に示された長伐期施業の推進と、今回の特別措置法で行われる森林吸収源対策としての短期的施策の政策的な整合性をどう考えているのか、この点について、簡潔にお答えいただければと思います。

今村副大臣 まず結論から申しますが、この点はしっかりと整合性をとっておりますし、むしろ、一年早く取り組みを進めるということでやっております。

 今お話に出ました森林・林業基本計画、これは京都議定書の目標達成の計画に即してつくったものでございまして、これを受けまして、十五年間の森林整備目標を立てた全国森林計画というのがございます。

 年間五十五万ヘクタールをやるという話でございますが、京都議定書の約束期間が、実は平成二十年から平成二十四年ということになっておりますが、今回の達成に向けましては、むしろ一年早く前倒しで、平成十九年度から毎年五十五万ヘクタール、合計三百三十万ヘクタールの間伐を実施するということに取り組んでいるわけでございまして、そのために、十八年度の補正から二十年度の予算まで千三百十億の予算もつぎ込んでしっかりと取り組んでいるところでございます。

井上(義)委員 質問の趣旨は、要するに、林業というのは五十年、百年タームの施策が必要だということで、今回、特に時限立法というわけではありませんけれども、こういう短期的、集中的に間伐をやるということと林業政策全体の整合性がないと、短期的な施策の繰り返しでは、現場で林業を実際に生業としてやっている人たちの信頼を得られない。ですから、そういう長期的な視点と今回の対策の整合性をしっかりとってくださいねということを申し上げたので、ぜひその辺はよろしくお願いしたいというふうに思います。

 それで、私も林業関係者といろいろ懇談してきましたけれども、これまでも、例えば間伐についてさまざまな助成制度というのはできているんですね。ところが、それが山林所有者に伝わっていない。せっかくの制度が生かされていないという声が非常に強いわけです。

 今回、特定間伐等促進計画の主体となる市町村はもとより、山林所有者に措置内容をどう周知し、そして積極的に取り組んでいただくかということは私は非常に大事だというふうに思いますけれども、そういう政府の施策、制度の山林所有者等への広報についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

井出政府参考人 この新しい法律に基づきます制度、措置の山林所有者等への周知徹底についてのお尋ねでございますが、農林水産省としましては、まず、国の基本方針を速やかに策定しまして、都道府県の基本方針や市町村の促進計画が円滑に作成されますよう、本法案成立後速やかに中央及び各都道府県において説明会を開催するなどして周知徹底を図るつもりでございます。その上で、わかりやすいパンフレットをつくり、全国各地での説明会その他の会議の場で活用しますとともに、新聞広告やホームページも活用しまして、PR活動を大々的に展開して、あらゆる機会を通じて、森林組合や森林所有者等への周知が図られるよう積極的な働きかけを行っていく考えでございます。

井上(義)委員 あと、具体的な問題を何点かお伺いしたいと思います。

 間伐の問題なんですけれども、間伐を行う場合に、各種の助成制度を活用し、そして間伐材を販売しても、なお山林所有者に負担が生じて、なかなか間伐が進まない、そういう要因になっているわけです。もう少し何か負担軽減のための措置はとれないのかという点と、それから、間伐材が適切な価格で取引されれば負担が軽減できるということもあるわけで、間伐材の利用対策も含めて、間伐の費用についてどういうふうに考えているか。

 あわせて、これは東北、北海道などの積雪地域特有の問題だというふうに思いますけれども、事業実施の連絡が現場労務班に伝えられるのが秋になるというんですね。そうすると、これは補正予算ということもあるのかもしれませんけれども、積雪地帯では秋以降は作業できない、もっと早くそれが伝達されないのか、翌年度にまたがって作業できるような措置をしてもらいたい、こういう指摘がありました。この点についてお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 間伐を推進していくためには、御指摘のように、森林所有者の自己負担の軽減を図ることが重要でございます。そのため、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたが、森林施業を集約化し、作業道等の路網や高性能林業機械を組み合わせて間伐材の生産コストを低減していく、あるいは、需要に応じた間伐材を大きなロットで安定供給できる体制を整備しまして、間伐材の利用拡大を図るということが重要だと考えておりまして、そういったことに努力する中で、実質的に森林所有者の自己負担の軽減を図っていきたいと考えております。

 このほか、平成二十年度予算におきましては、森林所有者の自己負担の軽減につながります定額助成方式のモデル事業を構築しましたし、さらに、民間事業体の森林整備への意欲を最大限活用します事後精算方式での損失の一部を補てんする対策も実施することといたしております。こういったさまざまな工夫を凝らしながら、間伐に対する森林所有者の自己負担の軽減に努めていきたいと考えております。(井上(義)委員「もう一点、時期の問題は」と呼ぶ)失礼いたしました。

 間伐の円滑な実施に向けた予算執行につきましては、政府予算の要求段階から各都道府県としっかり打ち合わせをするとか、予算を早期に内示しますとか、さらに、必要に応じましては、繰り越しを含む着実な実施を行っているところでございますけれども、間伐面積を大幅にふやすという観点から、やはり地域の実情や要望にも十分配慮をしまして、きめ細かな対応をしてまいりたいと考えております。

井上(義)委員 それからもう一点、皆伐後に再造林が行われない、いわゆる造林未済地の問題が各地で大きな問題になっております。私の地元、宮城県でも、これは大きな問題になっております。都道府県からの報告によると、平成十七年度末では、全国で約一万七千ヘクタールが造林未済地というふうになっておりまして、東北、北海道、九州で顕著に増加しているということでございます。こうした造林未済地の増加を放置いたしますと、森林の公益機能の低下と森林吸収目標の達成にも悪影響をもたらすとともに、国土保全の観点からも大きな問題だというふうに思うんですね。

 私の地元の宮城県では、県も助成をしておりますし、それから民間でも、このたび関係者がみやぎ森林(もり)づくり支援センターというのを設立いたしまして、助成を始めております。

 こういう造林未済地の偏在を検証するとともに、解消に向けた政府の積極的な取り組みが求められておりますけれども、この点についてお伺いしたいと思います。

井出政府参考人 御指摘のように、人工林を伐採しました後、三年以上経過しても植栽等による更新が完了されていない、いわゆる造林未済地が全国で約一万七千ヘクタールございまして、森林の公益的機能の高度発揮等に支障が生じることが懸念されております。

 このため、林野庁としましては、都道府県等に対しまして、地域ブロック別に会議を開催しまして、伐採あるいは伐採後の造林の届け出制度の適切な運用を徹底しますとか、伐採林齢の引き上げなど、造林未済地の新規発生の抑制に的確に取り組むよう指導助言を行いますとともに、森林整備事業の活用等によりまして、造林未済地の計画的な解消への取り組みに対する支援を行っているところでございます。

 また、本法案に基づきます、市町村に直接交付する新たな交付金につきましても、その中で造林未済地等への植林についても支援をすることができることとしておりますし、また、造林未済地への植林に要する地方負担部分につきましても、本法案に基づき実施する場合には、地方債の対象とすることができることとしたところでございます。

 こういった取り組みを推進しまして、地域の実情に応じまして造林未済地の解消を適切に行っていきたいと考えております。

井上(義)委員 時間が来ましたので質問を終わりますけれども、森林・林業、特に業としての林業という意味では、私は非常に大きなチャンスを迎えているというふうに思います。ぜひ国策として、森林・林業の産業としての育成ということにしっかり取り組んでいただきたいということを改めて求めまして、質問を終わりたいというふうに思います。

 以上でございます。ありがとうございました。

七条委員長代理 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法についてお伺いをさせていただきます。

 最初に、京都議定書にかかわります森林吸収目標について何点かまとめて大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほども論議がありましたので、少しまとめて質問させていただきたいというふうに思いますが、京都議定書の第一約束期間に既に入っているわけでありますが、我が国の温室効果ガスの排出量が一九九〇年に比して六%削減ということであったわけでありますが、二〇〇六年の速報値では既に六・四%ふえているというようなことでございますので、結果として一二・四%削減をしなければならないということになるわけでありますが、このような状況の中で、国際公約を守るためにとりわけ森林による吸収量というものに大変期待をされているわけであります。

 千三百万炭素トン、三・八%というふうに目標を定めて、達成見込みについてのまず大臣の見解。

 それから、十九年度から二十四年度までの六カ年間に合計三百三十万ヘクタールの間伐を実施して吸収目標達成を図るということでありますけれども、今日的な状況の中でこれを達成するためにはさまざまな施策が必要だというふうに思うわけでありますが、その施策について。

 もう一点あわせて、後ほど具体的に伺いたいというふうに思いますが、森林の整備を長期的、計画的に促進していくためには地方の負担、個人の負担の軽減、労働力の確保など大変多くの課題を持っているわけでありますが、これらを全体組み合わせて進めていかなければならないわけでありますけれども、これらを組み合わせて実施していくためには、何といっても財源をしっかり確保していかなければならないということになるわけでありますが、この財源確保についてもあわせてお伺いをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

若林国務大臣 委員が御指摘になりましたように、京都議定書の目標達成というのは容易ならざる状況の中でいよいよ本格実施を迎えた、今こんな環境にあるわけでございます。

 委員がおっしゃられますように、六%削減という国際約束を達成する上で森林吸収というのが千三百万炭素トンというふうに計画されております。これは極めて重要な目標でございまして、これは何としても達成しなければならない、こういう決意でございます。

 この千三百万炭素トンのためには百十万炭素トンが不足する、従来ベースの水準で森林整備が推移した場合には百十万炭素トンが不足するというふうに見込まれているわけでありまして、この目標を達成するためには、二〇〇七年度から二〇一二年度までの六年間に毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐を必要とする。それは、委員が御指摘のように、六年間で合わせて三百三十万ヘクタールの森林整備が必要だということになるわけでございます。

 このため、財源として、平成二十年度に向けては、まず平成十九年度の補正予算におきまして間伐を緊急に行うために必要な経費として二百四十億円を確保するとともに、二十年度の当初予算におきましても民間事業体の森林整備への意欲を最大限活用する新たな試みを導入することも含めまして全体で三百六億円、総額で五百四十六億円を措置いたしまして、二十一万ヘクタールの追加整備に相当する予算を計上しているところでございます。

 また、今御審議いただいております本法案におきましては、地方公共団体の負担の軽減とか、あるいは負担の後年度平準化をするために、追加的な間伐などを地方債の対象とするということを新たに措置することにいたしたところでございまして、これらの取り組みを通じまして、今後とも、森林の吸収源の目標達成に向けて全力を挙げて取り組んでいく決意でございます。

 国際約束であります温室効果ガスの削減目標の達成に向けまして、今後も安定的、継続的に森林吸収源対策を推進する上で財源を確保していかなければならないわけでございまして、引き続き今後とも全力を挙げて取り組む決意でございます。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。

 ふえている状況の中で、全体の目標達成にかかわって森林の吸収量に対する期待が大変大きいというふうに思いますので、ぜひ中心的な役割を森林が担うという意気込みでしっかりと進めていただきますようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 それで、今、大臣から幾つかお話がございましたので、少し具体な話についてお伺いをさせていただきたいというふうに思うんですが、まず、地方債についてでございます。

 本法案においては、今大臣から答弁がありましたように、追加的に実施をする間伐について地方負担分を起債対象にするということが新しい対策として入ってきたわけであります。しかし、都道府県の財政事情が大変厳しいという状況の中で、起債を円滑に行えるような運用が必要になるのではないかというふうに思います。元利償還に対する措置、地方財政を支援する内容など、本法案に基づく地方債の特例がこの法律に基づく間伐にどのような効果をもたらすのか。

 また、公債費比率が一八%を超えているような道県あるいはまた市町村というのが既にあるわけでありますが、こういったところでも問題なく進めることができるのか。

 さらにまた、起債措置は、先ほども少し論議がありましたが、二十四年度までの措置となっているわけでありますが、森林整備を安定的に整備していくということになれば、引き続きこういう措置が行われなければならない、時限的ではなく行われなければならないというふうに思うわけであります。

 そもそも森林というのは緑の社会資本というふうに言っているわけですから、本来であれば、起債対象は初めからあるべきものだというふうに私は思っておりますけれども、このようなことから本法案による特別措置は、二十五年、二〇一三年以降においても継続されるべきではないかというふうなことを考えるわけでありますが、今、三点ほどお伺いをさせていただきましたが、これらについてのお考えを伺います。

井出政府参考人 森林吸収目標を達成するためには、平成二十四年度までの間に毎年二十万ヘクタールの追加的な森林整備が必要でありますが、間伐等の森林整備事業の地方負担分につきましては、これまで地方債の対象となっておりませんので、この負担の増加分を一般財源から全額手当てする必要がございます。これが、地方公共団体が積極的に間伐等に取り組む上での大きな制約となってまいりました。

 このため、今般、この追加的に実施する間伐等の地方負担につきまして、地方債の対象とする特例的な措置を講ずることとしたものでございますが、これによって地方の財源確保と負担の平準化を図ることができると考えております。

 また、その元利償還金の一部は地方交付税で措置されることとなっておりますので、実質的な地方負担の軽減という効果もございます。

 地方公共団体におきましては、厳しい財政事情にあることは承知しておりますが、間伐の重要性にかんがみまして、多くの都道府県が今回の起債措置に関心を示していただいておりまして、有効に活用していただけるものと考えております。その中には公債比率が著しく高いような地方公共団体もございまして、こういうところでは通常以上の困難を伴う面があることも承知しておりますが、こういった地方公共団体におきましても、現在、間伐の重要性にかんがみまして、この制度を積極的に活用しようということで具体的な検討を進めていただいております。

 それから、起債措置を平成二十五年度以降もというお話でございますけれども、私どもは、当たり前の話でございますが、まずはこの制度を生かしまして、この間における森林整備に全力を挙げて取り組むことが大事だと思っております。

 その後の措置のあり方につきましては、ポスト京都議定書における森林吸収源の取り扱いがいかようになるのか、あるいは我が国の森林整備の状況がその時点でどうかといった内外の諸情勢等を見きわめつつ、今後検討していきたいと考えております。

    〔七条委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(隆)委員 この制度が都道府県並びに市町村で非常に関心が高いということは私も新聞等を通じて拝見をしておりますので、とりわけ起債が危険水域に達しているようなところについても、今後検討ということでございましたけれども、ぜひしっかりと対策をしていただきたいなというふうに思うところであります。

 それと、二〇一三年以降の話でありますが、どうも京都議定書といいますか、森林吸収源対策としてこれに取り組まれたことを否定はしませんけれども、それ任せということではなくて、やはり森林というのは緑の社会資本だという観点から、せっかくここで起債措置というものができたわけですから、これについて緑の社会資本整備だという観点でぜひ一三年以降も継続できるように御努力をいただきたいというふうに思います。

 次に、今お話がありました交付金についてお伺いをいたします。

 森林整備においては、実質的には森林組合が間伐を担っているわけであります。この法案においては、市町村が間伐の計画を立てる、間伐の実施を促進するというふうになっていて、その財政支援策として、市町村に国から直接的に交付金を交付するということになっているわけでありますが、従来は都道府県がかなりな役割をここに占めていたというふうに思うわけでありますが、この法案で措置するというふうになっている交付金というものがどういう効果を持つのか、あるいはまた、美しい森林づくり交付金というのがかつてあったわけでありますが、これらに照らしてどうなのかという点。

 あわせて、今申し上げましたように、農水大臣は基本指針を定めなければならない、都道府県は基本方針を定めることができる、市町村は特定間伐等促進計画を作成することができる、こうなっているわけでありますが、それぞれの役割分担ですね、今回、特に市町村に直接交付ということになっているわけで、都道府県の役割、それから実際に現場で間伐を担っている森林組合、それぞれの役割、位置づけについてもあわせてお伺いをさせていただきます。

若林国務大臣 委員が今御指摘になられましたように、間伐などの森林整備につきましては、国が都道府県を通じまして、間伐の推進のため一定の負担を補助事業として実施することによって、実際の実施主体は森林組合あるいは素材生産組合といったような事業主体が行う、これは都道府県の補助事業として実施してきているものでございます。それは非常に大きな効果を上げているわけでございまして、それはそれとして従来どおり力を入れて実施していくという方針でございますけれども、このたび新たにやろうとしていますのは、地域によりましては、小規模の市町村がその森林の実情に応じまして、国の補助によらないでも単独で間伐などの事業を実施してきている、そういう場合もあるんです。それは、大きな事業の実施地域に隣接している地域で、少し離れているけれども市町村としては独自に拾った方がいいというような判断でこれに積極的に取り組んでいるという事例が従来もございました。

 そこで、今回は、この法案を通じまして、国がそういう市町村に対して直接法定交付金を交付することによりまして、市町村が自主財源で実施してきた事業の負担軽減を図ろうというものでございまして、都道府県を通じた補助事業に加えて、地域の森林の実情に通じた市町村が小回りよく自主的な裁量性を生かした事業を進めやすくしようということを考えているものでございます。

 また、この森林整備の実施に当たっては、従来から間伐等の実施は森林組合などの林業事業体が担ってきているのは委員も御承知のとおりでございますが、この交付金の導入後も、事業の内容に応じまして都道府県や市町村それぞれと連携して施業の集約化、協業化を働きかけをしていく、そんな働きかけを強めまして、今後ともその役割を果たしてもらいたい、このように考えているところでございます。

 この森林施業が、従来どおりの伐採、伐採跡地の新植、改植、造林のほかに、まさに今森林の整備としての間伐に焦点を当てて事業の展開を図ろうとしているわけでございますけれども、これは早急に効果が出るわけですね。林齢などからいっても、もう数年たてば立派な伐採期に入るような間伐材もいっぱいあるわけですから、そういう地域についてはやはり路網の整備だとか、路網の整備がないと大型機械が入れません、大型機械が入ることによって施業全体が大変生産性を高めることができる。そういうことにつきましては、施業を行う民間の事業体というようなものも生まれてきておりまして、森林組合はもちろん頑張ってもらわなければいけないわけですけれども、森林組合のほかにも積極的な民間の事業実施主体というものが新たに各地で生まれてくるように、そういう事業体が路網の整備と高性能機械をセットにしました集約的な間伐を推進していく主体になり得るものと期待をしているところでございます。

佐々木(隆)委員 今大臣から御答弁をいただきましたけれども、そういった小規模の、補助事業に乗らなかったような事業について進めるというのは大変すばらしいことだというふうに僕は思うのです。

 ただ、今大臣も少しおっしゃっておられたように、市町村の場合は財政規模の問題もありますが、都道府県が持っているマンパワーに比べると市町村はマンパワーが不足しているといった問題でありますとか、実施主体や森林組合が持っているノウハウとかそういったものが直接交付することによって途切れてしまってはせっかくのねらいが達成できなくなりますので、ぜひそういった意味でのお取り組みをお願い申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、もう一つの主体であります森林所有者についてお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 この間伐の森林整備については、国が五割、都道府県が二割、そして三割が個人の負担ということになっているわけでありますが、長期的に国産材の需要や価格が低迷しているというような状況の中で、森林所有者が森林を整備するというのはなかなか大変といいますか、意欲が低下をしてきているわけで、結果として適切な間伐が実施されない、伐採跡地に再造林が行われないというような状況になってきているわけであります。つまり、個人の財政負担ということが非常に難しい状況にあるわけであります。

 こうした中でこの事業を推進するためには、やはり森林所有者の負担というものをどのぐらい軽減できるのか、ないのが一番いいわけでありますが、そうはなかなかいかないとしても、できるだけ軽減をするということが必要だというふうに思うのでありますが、この点についてお伺いをいたします。

井出政府参考人 森林所有者の自己負担の軽減ということでございますが、我が国の森林所有者は概して零細でございますから、森林所有者みずからが間伐をやっていくという例は、数百ヘクタール持っていらっしゃるようなごく限られた大規模所有者は別でございますけれども、やはり森林組合とか林業事業体等に森林施業を集約化しまして、まとめて団地化してやっていただくということになろうかと思います。

 その際、先ほど大臣も申しましたように、作業道等の路網をしっかりつけまして、そこに高性能の林業機械を導入していくということで間伐材の生産コストを大幅に低減していく。これは、現実に先駆的な試みとして全国でも数々の森林組合で既に達成しているところもございます。こういった試みを全国的に展開することによりまして間伐の採算性を高めまして、間伐をしても山元にお金が何がしか残る、そういうことを森林所有者に森林組合がしっかり提案することによって納得ずくで参加していただく、そういう仕組みに持っていくことが必要だと考えております。

 先ほども申し上げましたが、このほかにも地域によっていろいろな取り組みがございますので、私どもとしては、平成二十年度におきまして、森林所有者の自己負担の軽減につながりますような定額助成方式のモデル事業をつくっております。これは定額助成ですから、努力すれば残った分は全部自分のものになるということになります。それから、民間事業体の森林整備への意欲を最大限に活用し、事後精算方式で損失の一部を補てんする対策というのも考えました。これは、やろうかどうしようか悩んでいらっしゃる方に、まずはやってみましょう、万が一損失が出ましても、ある一定部分は後からちゃんと補てんしてあげますから心配しないでやりましょうよということなんですが。

 そういうことで、いろいろ知恵を絞りまして、今、森林所有者の自己負担の軽減に努めているところでございます。

佐々木(隆)委員 ぜひそういった方法も含めて御努力をいただきたいというふうに思います。

 次に、国産材の利用促進の方策についてお伺いをいたします。

 間伐材がともすると放置をされることが起きているというようなことを聞いてございます。大切な資源でありますので、こうしたことがないように何らか対策が必要ではないかというふうに思うわけでありますが、今お話がありましたように、我が国の森林というのは、地形が急峻であるとか、所有が小規模であるとか、あるいはまた国産材での安定供給の品質確保の問題でありますとか、技術革新、新たな利用分野の開拓などなど、さまざまな利用促進対策が総合的に実施をされなければならないというふうに思うわけであります。

 こうした国産材の利用促進について政府の今の対策についてどう考えておられるのか、お伺いをすると同時に、もう一つ、私は国民の幅広い理解を得ながら国全体として森林・林業施策を進めるということは何よりも大切だというふうに思うのですが、そうした観点から考えた場合に、この施策のタイトルが「森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案」であって、利用者の視点が欠けているのではないか、あるいは国民の視点がこれは間伐を実施する側の施策かというふうに思われてしまうわけですね、このタイトルを見ると。利用の促進というところがないわけですね、間伐を促進するとだけなっていて。そういった意味からしても、このタイトルのつけ方についてもぜひそういった国民的な視点というものが必要なのではないかということも含めてお伺いをいたします。

井出政府参考人 我が国の森林から出てまいります木材につきましては、ひところは柱とか板にいたしますので曲がりのない、この世界ではいわゆるA材と言っておりますが、そういったものしか利用できないと言われておりました。最近では、合板や集成材に少々曲がっているB材も技術進歩によりまして使われるようになってまいりました。加えまして、外材が非常に手に入りにくくなったり価格が上がったりいたしておりますので、こういった合板、集成材用途にかなりのものが出せるという状況になりました。さらに、それ以下のもの、C材と言っておりますが、こういうものはパルプチップ用とかあるいはバイオマス的な利用というものが考えられると思っております。

 林野庁といたしましては、そういった客観情勢の中で、山元におきましては、先ほど来申し上げております森林組合等による施業の集約化ですとか、低コストの作業システムを開発普及しまして原木の安定供給体制を整備する。それから、やはり需要者のニーズに応じて品質、性能の確かな製品を安定的に供給できる加工流通体制をつくっていく。さらには、住宅や公共施設への木材利用を促進しますし、木質バイオマスといった新たな需要開拓に向けた技術開発についても取り組んでいるところでございます。

 今後とも、そういった各方面の取り組みをしっかりやりまして、国産材の利用促進に取り組んでいきたいと考えております。

 また、この法律の名称でございますが、私どもはそういった間伐材の利用促進といった面が極めて重要であると考えておりますし、そういったものを含めて諸般の取り組みを総合的かつ一体的に推進しているつもりでございます。

 ただ、この法案は、書いてある中身が、法定措置を必要とします地方債の特例と法定交付金の創設を核としてできておりますので、この二つのことは直接的にはいずれも間伐等の森林施業の促進のための措置であるということから、この法案の中身、内容に即しましてこういった名称としているところでございますので、御理解をお願いしたいと思います。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、最後に一問だけお伺いをしたいと思いますが、名は体をあらわす、中身に沿ってタイトルをつけたんだと言えば、それはそれまでのことではありますけれども、しかし、どうしても事業省庁が特に事業者側の視点だけで物事をやっているのではないかということが今とやかく言われている時代ですから、そういった意味では、国民的視点でやっているんだという配慮はぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

 最後にお伺いをいたします。

 いろいろ論議をさせていただいてまいりましたが、我が国の山林というのは急峻な地域が多いわけでありますし、そこで行う作業というのは苦労を伴うわけであります。そういった中で、世代交代、不在地主の増大などで森林の境界がわからなくなってきているというようなことが言われております。森林はその境界をはっきりさせるということが何よりも基本的な情報でありますので、国土交通省の行う国土調査でも四割程度の進捗率だと伺っているわけでありますが、他方で、高齢化をしているということもあって、このままではわかっている人自体がいなくなってしまうというようなことも懸念をされます。さらにまた、それを手入れするあるいは間伐のこの事業を進めようとするたびに、そこの調査から始めなければ作業が始まらないということになるわけでありますので、この所有権といいますか、境界線といいますか、こういったものを早期に国が関与をしてしっかりと定めていかなければ、すべての作業のベースになるものですから、ぜひそのことを進めていただかなければならないというふうに思います。

 その際に、先ほど来、大臣からも長官からも話がありますように、森林の整備を急ぐあるいは木材の生産という両方から考えても、今最も急ぐべきは路網の整備ではないかというふうに私は思います。林野庁の資料でも、我が国の路網密度はヘクタール当たり十六メートルだということでありまして、ドイツは百十八メートルであります。それから、オーストリアは八十七メートルであります。いずれと比較しても相当整備がおくれているわけでありまして、森林・林業基本計画でヘクタール当たり五十メートルという目安を出しているわけでありますから、特にスーパー林道のような林道ではなくて、作業道と言われているようないわゆる本当の手入れができる路網というものを、国の事業もつぎ込んで重点的に整備すべきではないか。

 最後にこの二点、あわせてお伺いをいたします。

井出政府参考人 委員御指摘のように、森林の適切な管理や整備を進めていく上では、森林の境界の明確化というのは重要でございます。

 このため、農林水産省としましても、森林整備事業を実施する際には、事業区域を確定させるための測量なども支援対象として境界の確認を図っておりますし、森林組合が施業の集約化を進める際に行います境界測量の活動に対しましても、今おっしゃいました境界に精通している土地の古老とかそういう方のお力もおかりして境界測量をいたしております。また、森林整備地域活動支援交付金制度というものもありまして、施業の実施区域を明確化するためのくい打ち等の作業に対する助成もするというようなことで、人手や経費の負担の軽減を図りながら境界の明確化を促進してきているところでございます。

 さらには、国交省が地籍調査の関連で実施しております山村境界保全事業とも連携をしまして、森林境界の確認が円滑に進むよう努めているところでありますが、おっしゃられるようにだんだんわかっている人がいなくなる状況にありますので、私どももこれは急いでやらなきゃいかぬと思っております。

 それから、施業を効率的に行うための路網の整備でございますが、我が国では従来は皆伐方式で、大体、ワイヤを張って引っ張り出すというような方式が多かったんですが、最近はちゃんと林道に作業道をつなげて大規模機械を入れて、その機械で切って集材するという方式がだんだん広まってまいりました。そのため、近年では、我が国でも林道よりも作業道の開設延長が三倍から四倍ぐらいにはなってきておりますが、今後とも、施業の効率化を図るために、そういった観点で路網の整備についてはしっかりやっていきたいと考えております。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。激励の御声援もいただきまして、ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、高井美穂君。

高井委員 民主党の高井美穂と申します。

 引き続き、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法について質問をさせていただきたいと思います。

 私は、徳島県の三好市三野町という小さいところの生まれでありまして、家はハッサクを一反少々つくって、エコファーマーをしております、今はもう出荷しておりませんけれども。そして、一町少々の山を父が趣味でやっておりまして、私の生まれた年に植えてくれたヒノキが三十六歳になりましたけれども、それで家を建てるには、大臣も御存じだと思いますけれども、先ほど来話がありました、大変小規模の町でございますので、路網の整備等それから販路の点でもさまざまな問題がありまして、なかなか難しいなと思いながら、今も父等が山の手入れをしているところであります。

 もちろん、この法案に対して、私は賛成でございますし、やはり林業を活性化させる政策というのは、さまざまな点から、国策として取り組んでいただきたいと強く強く思ってはおりますけれども、先ほど来、大臣もほかの委員の皆様方の御質問にも答えておられたとおり、林業がやはり業として大変厳しくなっているという状況の認識等を深く持っていらっしゃるというお話もありました。

 そして、この法案自体が、何か根本的に大きく変えるものではなく、現状を後押しするという形の法案であるのではないかと私は認識をしております。林業者がなぜ立ち行かなくなったのか、木材自給率がここまで下がってしまったか、いろいろな形で検証することも必要だと思いますし、食の安全への関心とともに、家の木材等、住宅への安心、安全ということに対して関心も高まっていますので、これをチャンスにぜひ林業政策を進めていただきたいな、木材自給率を上げるためにも御尽力をいただきたいなというふうに思っているところです。

 早速、一番の、京都議定書の目標達成のための森林吸収源対策として、本法案は一時的に大量の間伐を推進するものと、もともとの趣旨はそうであると理解しております。本来ならば、温室効果ガスの削減は、やはり工場や家庭などからの排出の規制を主体的にまずは行うべきであり、もちろん、吸収源の名目で、森林施業を議定書の目標達成のために集中的に行うのは意義があるというふうには考えておりますけれども、本来ならば、長期的に行うべき森林施業をここで集中的に行うというのは、長いスパンで見たときの森林施業から見て、これは整合性がとれているのかどうか、少々疑問を感じるところであります。

 森林・林業基本計画に示された長期的な視点と森林吸収源対策としての短期的な措置ということの整合性についてどう図っていかれるのか、お答えをいただきたいと思います。

若林国務大臣 森林整備というのは、委員がおっしゃるように長期でございます。植栽をしてから、実際、材としてそれが利用できるようになるまでには、三十六年ではちょっとまだ短い、大体五十年、六十年、百年といったような、そういう長期に考えて山を育てるわけでございます。

 その意味では、全体の我が国の森林の整備の進め方につきましては、森林・林業基本法に基づきまして森林・林業基本計画というのを定め、長期的かつ総合的な政策の方向、目標を決めているわけでございます。

 そして、それに即しまして、農林大臣は、全国森林計画、これは十五年計画になるわけでございますが、これも法律に基づきまして国の森林関連施策の方向づけをして、地域森林計画の規範を定めているわけでございます。それに基づきまして、都道府県知事が、これは十年計画でございます地域森林計画を定める。あるいは、国有林については、地域別の森林計画を森林管理局長が定める、こういう体系になっておるわけですね。

 そして、今度の京都議定書に基づく森林吸収源の達成につきましても、この森林計画の中に位置づけておりまして、それとは別の体系で緊急に、暫定的にやるというようなものではありませんで、やはり、間伐を進めて森林整備されるということは、全部切っちゃうわけじゃありませんで、残す木をちゃんと育てていくという目標を持っているわけでございます。残す木を育てていくためには適正な間伐をしていかなきゃならない。その間伐がおくれてきていたものを、きちっと間伐を進めていくということで位置づけているわけでございます。

 森林・林業基本計画の中におきまして、平成十八年度に策定をしたものでありますけれども、京都議定書の目標達成計画に即した健全な森林の整備を推進するという視点でございまして、吸収源対策の推進という観点からも、間伐を、この基本計画に即して十五年間の森林整備目標を定めた全国森林計画とも整合性を図るものとして定めているわけでございます。

 そのような取り組みを通じて、地球温暖化防止を初めとする森林の持っている多面的な機能の維持増進全体が図られるように定めた、こう考えております。

高井委員 ありがとうございます。

 ぜひ長期的スパンで、おくれている間伐を進めていくという観点は本当に私も大事だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 本法案の目的として、六年間で約三百三十万ヘクタールの間伐が行われて、大量の間伐材が排出されることになります。現状、間伐材は小径で商品価値が低くて、搬出コスト等を考えると、伐採後、間伐材の生産と加工と流通に総合的な連携がなされていかなければそのまま放置される可能性もあるのではないか、切り捨て間伐になってしまうのではないかと少し懸念を持っているところであります。

 木材の生産、加工、流通という一体的な整備を通じた国産材の安定供給体制の整備が不可欠だと思いますけれども、この点について、どのように対応していかれるのか、お答えをお願いします。

井出政府参考人 御指摘のとおり、間伐を促進するためには、間伐材の生産、流通、加工体制の一体的な整備を通じまして、国産材の安定供給体制を構築していくことが不可欠でございます。

 特に、近年では、木材加工技術の向上によりまして、直径の細い間伐材でありましても、合板や集成材などの原木として利用できるようになってきております。こういった需要拡大の動きを間伐材の安定的な販路確保に確実に結びつけていくことが重要であると考えております。

 このため、林野庁といたしましても、間伐材を合板や集成材等の用途に利用する拠点となります工場、施設の整備でありますとか、山元におきましては、森林組合等の事業体によります森林施業の集約化と作業路網、高性能林業機械を組み合わせた低コスト作業システムの開発普及、あるいは、山元の原木供給可能量情報を取りまとめまして、川下の需給情報、つまりどれだけ出せるよ、どれだけ欲しいよという情報をつなぎ合わせることによりまして、需要に応じた間伐材の大きなロットでの供給を進めているところでございます。

 こういった施策を通じまして、間伐の促進に必要な国産材の安定供給体制の構築に努力をしていきたいと考えております。

高井委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 中山間地区を抱える私の生まれ故郷のようなところからは、やはり農産物も同じで、生産から加工、販売まで一貫して取り組める仕組みが大事である。もちろん林業においても同じように一貫して取り組めるということを後押ししていただきたいという要望が強くございます。小規模の林業家、農家であっても農産物の付加価値を高めて魅力ある農産加工品をつくり出せるシステム、それぞれに皆努力されておりますけれども、ぜひ制度整備の方、お願いしたいというふうに思っています。

 次の質問に移ります。

 先ほど来出ておりました、今回、本法案では、特定間伐等の実施のための交付金を直接市町村へと交付することができるようになります。そして、今までは主として都道府県が中心的役割を果たしてきた、人的問題、規模などの事業を行う能力の観点から都道府県が中心となってきたというふうに思いますけれども、これからは実施主体である市町村をより重視する姿勢へとシフトしていくということになるのでしょうか。さらに加えて、間伐等の森林整備に関して地方債の発行対象というのが認められるようになるわけでございますから、大きな後押しになる施策が本法案に盛り込まれたというふうに考えています。

 ただ、これまで盛り込まれなかった理由、先ほど少しお話がございましたけれども、今回認めるに至った一番の理由というのは何になるでしょうか。

井出政府参考人 地方債の発行対象経費についてでございますが、地方財政法の第五条におきまして、地方公共団体が起債できますのは、公共施設または公用施設の建設事業の際の財源とする場合等に限定されておりまして、従来、私有財産である私有林は、公共施設等に該当しないことから、原則として起債対象外とされてきております。

 しかしながら、今般、京都議定書の森林吸収目標を達成するためには、平成二十四年度までに毎年二十万ヘクタールの追加的な森林整備を行う必要がございまして、国費だけでなくて、地方の財源を確保することが大きな課題となっておりました。

 このため、森林は、先ほど来議論がございますように、私有財産でありましても二酸化炭素の吸収のほか、国土の保全や水源の涵養などの公益的な機能を発揮するものであることに加えまして、このような追加的な森林整備を円滑に進めるためには、地方の財源確保と負担の平準化を図る必要があることなどから、本法案に地方財政法第五条の特例規定を設けまして、追加的な間伐等を起債の対象とするということにしたものでございます。

高井委員 今御説明ありましたように、後押しする施策として追加をするということでございました。

 それでは、今回の森林整備を実施する上での役割分担は今までどおりということでよろしいんでしょうか。例えば、都道府県も財政状況が厳しいところはたくさんあると思いますけれども、市町村ももちろん厳しい。市町村は起債できないけれども、市町村が事業を実施する上で都道府県が財政負担の協力をするかどうかということは都道府県にゆだねられていると思いますけれども、それでもやはり事業遂行上は今までどおりということで問題ないのか、それとも役割分担がもう少し変わるのか、教えていただきたいと思います。

井出政府参考人 間伐等の森林整備につきましては、その大宗は、従来から国が都道府県を通じまして、実施主体は森林組合等にお願いをするということで、間伐等の費用の一部を国、都道府県が負担するという形での補助事業で実施されてきておりますけれども、地域によりましては、市町村が自主的にその地域の実情に応じまして単独で間伐等の事業を小回りのきく事業として実施しているところもございます。

 しかしながら、今般は、こういうふうに間伐等を大幅にふやしていくという中におきまして、都道府県あるいは市町村の負担部分について起債の対象となっていないためになかなか追加的な間伐が円滑にできないのではないかという懸念がございましたので、これらについて新たに地方債の対象とする特例措置を講じまして、負担の平準化を通じて都道府県等の負担の軽減を図ることとしているところでございます。

 一方、法定交付金については、従来、市町村が自主的に単独で行ってきた事業の負担を軽減してさしあげようということで、市町村に直接交付する交付金として創設するものでありまして、従来から大宗を占めています都道府県を通じた補助事業に加えまして、市町村の単独の事業を支援する制度ということでつけ加えたものでございます。

 ですから、その点では、間伐の進め方として従来の仕組みと大きく変わるものではございませんで、それぞれのルートについて財源措置の支援を、一方ではこういった地方債の特例を適用する、あるいは市町村に対する直接交付金を交付するという形で強化をする、そういうことにしているところでございます。

高井委員 先ほど佐々木委員の質問にもございましたけれども、森林の境界線を早く線引きするべく施策を後押ししてほしいという要望が私の地元でもございます。その中の声として、今、境界線に関する調査には県も負担するようになっていると思うんですけれども、県の方が乗り気になってくれなくてなかなか進まないんだという声も聞いたことがあります。

 そういう点からも、市町村が独自に取り組んでいきたいということに対しては直接取り組めるようになるというのは私はすばらしいことだと思っております。森林の現場を熟知して、製材業者と向き合って仕事をしている森林組合の皆さんの声をまさによく聞きながら、連携をして進めていっていただきたいと思っています。この法案の意図する中心の担い手は森林組合等に多分なるのではないかと思いますけれども、現場の声というか、近くにある声をぜひ吸収できる仕組みを持ちながら進めていっていただきたいなと思っています。

 次の質問に移ります。

 第一約束期間終期の平成二十四年度までの実施促進が定められておりますけれども、この法案は時限立法ではないというふうに思っています。まず、そうしなかった理由は何かということと、その後の計画はどのように生かしていかれるのか、お願いいたします。

井出政府参考人 本法案は、京都議定書の第一約束期間の終期であります平成二十四年度までの間における間伐等の実施を促進することを目的としまして、これまでの間の間伐等の実施を促進する期間として特定をいたしておりますが、平成二十五年度以降も、特定間伐等に要する経費の財源とされます地方債につきましては長期間存在し続けるわけでございまして、法律的にはその根拠を残しておく方が望ましいのではないかなどの理由によりまして、平成二十四年度末で法を失効させるというスタイルにはしていないところでございます。

 なお、地球温暖化対策ですとか森林整備の推進につきましては、もちろん中長期的な政策課題でございますから、その後の対策のあり方につきましては、その時点におきます内外の諸情勢を見きわめながらさらに検討をしたいと考えております。

高井委員 わかりました。

 集約化による大規模化、コスト削減という点もすごく大事だと思いますし、先ほど来大臣も御答弁なさっておいでですけれども、何よりも個人が持ち出しで間伐をしなければならない状態、個人負担の軽減というのは私も大変大事だと思っております。先ほど来から御質問の中で御答弁ございましたけれども、個人負担の軽減のために定額助成方式というのがあるというふうにお聞きをいたしました。

 これについて少しお聞きをしたいんですけれども、私が聞いたところによりますと、一ヘクタール当たり約二十五万円というふうに聞きましたが、まず、この額は間違いないでしょうか。

井出政府参考人 そのとおりでございます。

高井委員 一ヘクタール当たり二十五万ということになると、一アール、百平方メートル約二千五百円ということになります。こういう方式を両親が知っているかどうか、私も家で聞いたところ、知っていると。申し込んだかどうかは別にしろ、一アール当たり二千五百円では、元が取れるどころか、とてもじゃないけれども、足が出てしまうというお話もあります。せっかくある定額助成方式、私はこれはすばらしい制度だと思うんですね。ある意味、直接支払い制度で、自由に使っていい、余ったら自分の労務賃金というか、その分としていただいていいという制度だというふうに聞いたんですけれども、もう少し上乗せしてあげないと、今のような状態ではなかなかこれは進まないのではないか。

 せっかくいい制度ができたんですから、ぜひこれに対してもう少し多くの額をつけられるように御検討願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

若林国務大臣 せっかくのお話でございますけれども、委員のふるさとの一ヘクタールといったような規模では、実は、間伐事業はどう考えてもコストに合わないですね。

 間伐を組織的に推進するということでは、やはり森林施業を集約化できなければいけません。そのために、個人は小さい、五ヘクタール、十ヘクタールというような規模でありましても、それを森林組合が取りまとめて一定の規模の事業規模にする、あるいは素材生産組合、あるいは事業実施主体、民間の事業主体もいますが、そういう人たちがやはり小規模の所有林地をまとめて路網を入れたり高性能の機械を使ったりしてやらなければ、コスト的にはもう格段の違いでございますから、やはりこれが一つの事業として進められるようにするためには、何としても森林施業の集約化を図るものではなりませんし、作業道などの路網を整備すると同時に、高性能林業機械を組み合わせて、生産コストを下げていくということでございます。そのことによって初めて、森林所有者の自己負担というものが軽減をされる。私は、過日、群馬県の山村へ行ってまいりましたけれども、そこではむしろ返してあげられる、それは相当大きな規模をまとめてやるからでございます。

 そういう意味で、個人が行う間伐につきまして定額助成方式を適用するというのは、私は困難だと思っております。小規模の個人については困難だと考えております。

高井委員 いや、私は、そればかり進めろと言っているのではございません。両面の政策が必要ではないかというふうなことを申し上げているのであります。

 農業においても、小規模の農家のためにある中山間地直接支払い制度というのがございます。この制度は両面から進めていかないと、今の大変厳しい林業の状況だと、大規模化、大規模化のみでやっていけるわけではないと思いますので、条件不利地域について特段の配慮をということで申し上げておるわけであります。

 近年も耕作放棄地が増加傾向にありますし、「農地政策の展開方向について 農地に関する改革案と工程表」が平成十九年の十一月に農水省から出されています。その二番目の項目に耕作放棄地解消に向けたきめ細やかな取り組みの実施というのがございまして、五年後を目途に耕作放棄地の解消を目指すというふうにございます。その具体策として、農用地区域外の農地での耕作放棄地となったものについて、農地として確保すべきものは農用地区域へ編入することとして、それ以外は、農業利用に最大限努めつつ、山林、原野等として非農業的利用へと誘導するということが示されています。

 本法案における特定間伐等には、耕作放棄地の森林化ということも例示をされておりますけれども、森林化を行うことが想定されるような耕作放棄地そのものが、農業上の利用を断念せざるを得ないような土地、つまり山間地でかつ営農条件の大変厳しい不利な地域であるというふうに思われます。農業者の確保も当然難しいということであります。

 この耕作放棄地の解消ということに当たって、農業利用地域と森林化等の非農業地域とをどうやって区分していくのか、またどうやって進めていくのか、少し疑問を持っているわけでありますが、農政上の目的と林政上の目的とをどういうふうに調和させて、どういうふうに分けていくのか、お考えがあったら教えていただきたいと思います。

中條政府参考人 耕作放棄地の解消に当たりまして、農業利用と森林化等の非農業利用との区分をどのように考えていくのかという御質問と、それから、その進める上でのタイムスケジュールといいますか、その一点ということでよろしゅうございましょうか。

 耕作放棄地の現状は非常にさまざまでございまして、その解消を進めるためには、まず、その実態を的確に把握しまして、その上で、委員御指摘の、農業的利用ができる土地と農業的利用ができない土地に振り分ける必要があろうかというふうに考えております。

 このために、本年度、市町村、農業委員会が管内のすべての耕作放棄地につきまして現地調査を実施いたしまして、国の職員も本調査に参加するなどの支援を行うこととしているところでございます。

 具体的なスケジュールとしましては、基本的に農業委員会が毎年八月、九月に実施しております農地パトロールのときに調査を行いまして、その結果を年内に取りまとめることとしているところでございます。

 また、調査の際に、農業的利用ができる土地と農業的利用ができない土地の振り分けが円滑に行われるように、国が具体的な判断基準を設定することとしております。

 具体的には、例えば、森林の様相を呈しているというような、農地に復元するための物理的な条件整備が著しく困難な土地でありまして、人力または農業用機械では耕起、整地ができない土地、基盤整備の実施等が計画されていない土地などに限りまして非農業的利用を図る土地としまして、それ以外は農業的利用を図る土地としているところでございます。

 農林水産省としましては、この調査結果を踏まえまして、市町村が耕作放棄地解消計画が着実に行えますように指導助言を行ってまいりたい、このように考えております。

高井委員 農業地として利用が難しいところは、林業地としてもなかなか難しいのだろうというふうに思います。だからこそ、不在村や高齢林業者が多い山林など、条件不利地域への御支援をぜひお願いしたいと思います。

 多くの委員の皆さんも、中山間地区の直接支払い制度、農業においては反対をしていらっしゃらないと思いますし、林業においてもある種この視点が必要ではないかという意味で申し上げさせていただきました。農業に対して、まさに条件不利だけれども、多面的機能の点からも、守っていくという点からも、この直接支払い制度の検討をぜひお願いしたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 次に、菅野哲雄君。

菅野委員 社会民主党の菅野哲雄です。

 今回の法案は、農林水産大臣が基本指針、都道府県が基本方針を定め、それに沿って市町村が特定間伐等促進計画を決める仕組みになっています。だれが特定間伐の中心で、国、都道府県、市町村の間の役割分担はどうなっているのか、これを説明していただきたいと思います。また、これまで森林整備について、企画立案、財政の両面で都道府県が中心を担ってきたと思いますが、そのやり方を変えるのだとしたら、その理由をお聞かせ願いたいと思います。

井出政府参考人 本法案におきましては、森林吸収目標を達成するための間伐等の森林施業を着実に実施するための計画制度を設けておりますが、これは、国が策定します基本指針に即しまして、都道府県が基本方針を策定しまして、これに即して地域に最も近い市町村が、実際の間伐等の実施計画を策定することといたしております。

 この市町村の策定する特定間伐等促進計画に基づく間伐等の実行につきましては、通常は森林組合等の林業事業体が担うことになりますが、これに対して国庫補助金が交付される場合には、これに対する都道府県、市町村の負担部分に対しまして、本法案に基づいて起債措置が講じられることとなります。

 さらに、特定間伐等促進計画に基づく間伐等を市町村がみずから実行するなど、市町村の創意工夫に基づく間伐等を助長することが重要でございますので、本法案におきましては国から市町村に直接交付する法定交付金を設けることとしているところでございます。

 このほか、国は都道府県、市町村に対する必要な助言、指導を行うことができることとされておりまして、このような措置を通じまして、国、都道府県、市町村及び事業実施主体が相互に連携をしまして、森林吸収目標の達成に必要な間伐等の着実な実施に取り組むこととしているところでございます。

 すなわち、ベースは、従来、都道府県がイニシアチブをとって企画立案をしていくということは変わっておりません。ただ、二十万ヘクタール、一挙にふやすということになりますと、やはり山元に一番近い行政主体である市町村にもっと積極的に関与していただかないと、山の状況もよく把握していただいて、どこから手をつけるかというようなことも森林組合等と協議する中でしっかりしたプランをつくっていただくことが、この二十万ヘクタールを実行していくには必要ではないか、こういう考えでこういう仕組みにしているところでございます。

菅野委員 これも今、前の人たちで大分議論になったんですが、特定間伐の実施に当たって、都道府県、市町村の双方に起債措置が認められるということであります。自治体はどこも財政難で、今年度の農林予算も、四十七都道府県中三十九都道府県で前年度から予算を削減しています。起債措置の特例を認めても、後年度の財政負担が重くのしかかっていきます。

 法案は、京都議定書の第一約束期間の目標を達成することを目的としていますが、目標達成は議長国としての国際公約に等しく、財政負担も含めて、国の責任がもっと全面に出てしかるべきと私は考えているんです。このことについてどう考えているのか、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 間伐等を毎年二十万ヘクタール、追加的にやっていくことに当たりまして、国が補正予算も含めてかなり思い切った財政措置を講じているということは委員も御承知のとおりだと思いますが、そういう中で、面積増加に伴いまして、どうしても地方にも負担部分が増嵩いたします。御承知のように、また今委員から御指摘がありましたように、地方財政は非常に厳しい状況にございます。その中で、地方自治体としても森林整備はやっていかなきゃならぬというのは、かなり総意としてあると思います。

 そういう苦しい状況の中で、この地方負担部分について地方債の対象となるということになりますれば、一般財源の増嵩ということを防いで、地方公共団体が積極的に間伐に取り組む上で大きな福音になると考えております。御承知のように、元利償還金の一部も後年度は地方交付税で措置されることになっておりますので、実質的にも地方負担の軽減も図られることになります。

 また、先ほどもお答えいたしましたように、特に厳しいところも県によってはございますけれども、そういう中でも、やはり間伐は大事だということで、乏しい財源のやりくりの中で、今回の起債措置については積極的に対応していこうという動きが非常に多く見られていることは、私どもにとっても非常に喜ばしいことでありまして、こういう地方公共団体の動きも私たちも積極的に支援していきたいと思っております。

菅野委員 今回の起債措置というのは、本当に一歩前進した措置であるということは評価しているわけです。ただし、やはり何といっても、今の森林・林業の現状を見たときに、個人負担、あるいは市町村、都道府県が財政的に厳しいという状況の中で、国際公約を果たすという立場であるならば、負担割合等も含めてもっと見直していくべきだということを私は主張しているということです。

 私は、その辺も今後五年間の推移を見ながら検討していただきたいというのは常に話していることであります。特に初回間伐の問題ですね。初回間伐を行わないと、その山自体が死んでしまうという状況になっていくわけですから、この問題等も常に指摘してきておりますけれども、この辺もしっかりと検討を加えていただきたいと私は強く要請しておきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 間伐の実施が京都議定書の目標達成に大きく寄与することは理解できます。一方、皆伐後に植栽を行わない造林未済地の存在が、近年、クローズアップされています。災害対策の観点などからすれば、間伐以上に深刻な問題です。この造林未済地の現状に対する農水省の認識と、今回の法案で造林未済地はどのような位置づけになっているのか。先ほどの答弁では、全国で一万七千ヘクタール存在するという状況があるわけですから、このことを、どう対処していくのか、しっかり答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 造林未済地の問題につきましては、全国に一万七千ヘクタール、平成十八年三月末時点で存在するということで、森林の公益的機能の高度発揮等に支障が生ずるということは懸念をいたしております。

 このため、従来、林野庁としましても、都道府県等に対しまして、伐採及び伐採後の造林の届け出制度を適切に運用してほしい、あるいは伐採林齢の引き上げに取り組んでほしいというようなことで、造林未済地の新規発生の抑制に的確に取り組むよう指導助言を行ってまいりましたし、この森林整備事業の活用等によりまして、造林未済地の計画的な解消への取り組みに対する支援も行っているところでありますが、本法案に基づきましても、市町村に直接交付する新たな交付金の中で、造林未済地等への植林についても支援ができます。また、本法案に基づき実施する場合には、地方負担部分についても地方債の対象とすることができるということになっておりますので、こういった取り組みを総合的に推進しまして、しっかりと造林未済地の解消を図っていきたいと思っております。

菅野委員 長官、この問題は深刻です。後で実態を言いますけれども、伐採した後に、林家にお金が残らないんです。そういう中で、新たに植林を行えというのは、私は国が相当な支援策を打ち出さない限り、進んでいかないという現状があるというふうに思います。都道府県や市町村は、先ほど申し上げたように、体力がなくなっていますから、そのことに力を入れていくという状況にはなっていないということを真剣に受けとめて、一万七千ヘクタール、今の答弁でいえば、後でも議論しますけれども、支援策を講じているというふうにはなっていないということを申し上げておきたいと思っています。

 それから、森林法では、間伐が適切に行われていない森林について、市町村が所有者に勧告を行う要間伐森林制度があります。平成十五年に、この要間伐森林の指定が適正に行われていないという指摘が総務省から農水省にされていると思います。現状はどうなっているのでしょうか。また、この要間伐森林は今回の法案でどのように位置づけられているのか、例えば間伐実施の最優先対象という位置づけなのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。

井出政府参考人 森林法に定められております要間伐森林制度につきましては、間伐をせずに放置いたしますと、最終的には災害の発生などの著しい被害を発生させる危険がある森林を市町村が指定するものでございまして、施業の勧告等の措置が行えることになっております。これは平成十八年度末時点で四万九千ヘクタールが指定をされております。

 一方、本法案におきます特定間伐というのは、これは森林吸収目標達成のために平成二十四年度までに三百三十万ヘクタールの間伐を実施するということを目指すものでございまして、これにより、間伐を対象森林の約八割、奥地のなかなか手の届かないところを除けば、全部間伐をやっていこうということになるわけでございます。

 ですから、全国的にかなり広大な面積について間伐を実施することが必要でございまして、先ほどの森林法の要間伐森林制度とリンクをしているわけではございませんけれども、この要間伐森林になっているようなところは、現時点で間伐が行われていなければ、今回の三百三十万ヘクタールの内数として間伐していくということになると考えております。

菅野委員 この制度をつくっても、十八年度末で四万九千ヘクタールが指定になっているというけれども、それでは、間伐ができるまでに具体的にどういう手続を踏んだのかということを考えれば、私は強権発動はしていないというふうに思っています。なぜこういう四万九千ヘクタールも進んでいないのかというところを直視して、私はしっかりとした対策をとっていただきたいというふうに思っています。

 それで、特定間伐を実施する市町村に対して、十億円の枠内で交付金が交付されます。他方、追加間伐に対して五百三十六億円の予算措置がされていますが、相互の関係はどうなっているんでしょうか。交付金の措置は、五百三十六億円の追加間伐の枠外だとしたら、その額は余りに小さいと思うのですが、どのような基準で算出したのでしょうか。先ほど、大臣の答弁でいうと、平成十九年度補正予算で二百四十億、二十年度で三百六億、合計五百四十六億だというふうに答弁しています。枠外じゃなくて、五百四十六億円の枠内の措置だと私は答弁で理解したんです。そうしたときに、この十億円というものをどのように使っていくのか、そして、この額が直接市町村に交付される金額として妥当なのかどうか、この辺、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 まず最初に、法定交付金の十億円ですが、追加間伐に係る五百四十六億円と言われているものとは別物、枠外でございます。

 この交付金については、先ほどから申し上げておりますように、市町村自身が、あるいは林業事業体等が作業路網を整備したり、所有者では施業が困難な森林等において市町村みずからが施業するといったことに対して助成をしますし、事業費の一割の範囲内で、間伐の実施のために、不在村者等に対して合意形成といった、地域の提案によるソフト事業も可能とするなど、従来と比べて柔軟な仕組みを導入しております。

 こういった地域の自主的な取り組みを支援する措置を行いまして、市町村が自主性、裁量性を生かした森林整備を展開しますことによりまして、各地域における追加的な間伐を円滑に推進する上での、ある意味での呼び水的な効果を発揮させることを期待しているものでございます。

 この十億円という予算額につきましては、本交付金の措置が初年度であるということもございますし、現在、国庫補助によらずに市町村が単独事業として実施をされています間伐の事業規模、そういったものを踏まえて設定したものでございます。当然、次年度以降の予算規模については、事業の執行状況等を見て、希望が多ければ、そういった状況も勘案しながら規模を検討したいと思っております。

菅野委員 わかりました。次に移ります。

 現在、森林環境税のような形で独自課税を行っている都道府県は、平成十九年度までで二十三県、二十年度以降も七県が導入予定だと思います。環境を守るためには、ある程度の負担が必要だと考える国民がふえているわけですが、このような独自課税について、農水省はどのような評価をしているのでしょうか。

 また、県民負担で森林整備を進めている都道府県とそうでない都道府県が混在している現状で、県民負担のない都道府県に手厚い財政措置が国からされるとしたら、いささか公平性を損なうとも感じるわけですが、この点についても、いかがお考えなのか、答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 都道府県におきます森林整備等を目的とする税につきましては、平成十五年度に高知県が初めて森林環境税を導入されて以来、現在までに既に二十九県において導入されました。さらに、一県において導入予定となっております。

 これまで導入された県におきましては、その税収によりまして、全国的な課題である間伐の推進を初めとしまして、県民参加の森林づくり活動の支援ですとか県産材の利用促進など、それぞれの地域ごとの問題意識を反映した事業を展開されております。

 また、このような税の導入過程で、各県において地域の森林の役割を住民の方々に理解していただくことにも努力をされていると聞いております。

 こういった県における取り組みについては、森林吸収源対策を着実に推進する上でも、森林の整備保全が推進されることはもとよりですが、森林の持つ公益的機能の重要性に対する理解の向上ですとか、森林の整備保全を社会全体で支えていこうという意識の醸成につながるものと考えております。

 森林環境税等の独自課税については、住民税に上乗せ課税をして導入されるものでございますから、導入するかどうかは各都道府県の判断でございますが、林野庁としては、各都道府県に対しまして、こういった独自課税による取り組みについて、引き続き適切に情報提供を行うなどによりまして、森林の適切な整備保全の推進に資するよう努めてまいりたいと考えております。

菅野委員 次に移ります。

 先ほどからも議論になっていますけれども、間伐を推進していくためには、そのための環境整備も必要です。まず、作業を円滑に進め、低コスト化を促すためには、林道や作業道、作業路の整備が不可欠です。ところが、日本の場合は、整備水準は極めて低いわけです。今回、特定間伐の実施に当たっては、作業用の路網整備も交付金の交付対象になったと承知しますが、林道や作業道のネットワーク整備は国がもっと本腰になって進めるべきだというふうに思います。今後の施策をどう進めるおつもりなのでしょうか。答弁願いたいと思います。

井出政府参考人 委員御指摘のように、森林内の公道、林道、作業道を合わせました林内路網密度につきましては、ドイツ、オーストリアといった諸外国に比べますと、日本はやはり著しく低位であるということは事実でございます。

 やはり、今後間伐等をしっかり進めていくためには、路網と高性能林業機械を組み合わせた低コストで効率のよい作業システムの整備、普及が重要でございます。

 従来、我が国では林道を中心に整備を進めてきましたけれども、近年では、林道に比べて、面積当たりの密度を高くする必要のある作業道、作業路の開設延長が林道の三倍から四倍程度というふうになってまいっております。このように、作業道、作業路により重点的に投資を行いつつ、その開設の前提となっております森林施業の集約化とあわせまして、鋭意路網の整備を進めているところでございます。

 特に作業道、作業路の場合には、いかにコストを下げるかということで、現在、そういった先駆的な取り組みに当たられている方が全国におられまして、そういった方の指導のもとに、各地域で今低コストの路網整備について取り組みが始まっているところでございます。

 御指摘のように、本法案に基づく新たな国の支援措置としましても、市町村が作業路網を整備するという場合には、この新たな交付金も活用できるということにいたしております。

 おっしゃるように、今後とも、林道と作業道等の適切な組み合わせ、特に作業路、作業道といった、木材の搬出コストを下げるための仕組みを重点的にしっかりと整備していくという必要があると考えております。

菅野委員 次に移ります。林業の担い手についてです。

 幾ら法律を整備しても、林業に従事する担い手を育成しない限り、絵にかいたもちです。先日開かれた林野庁の山村再生に関する研究会でも、人材育成の必要性が多くの方から指摘されたと聞いています。林業就業人口は、昭和六十年の一九八五年から平成十七年の二〇〇五年までの二十年間で、十四万人から四万七千人にまで減りました。この最大の要因はどこにあると考えているんでしょうか。お聞きいたします。

若林国務大臣 このように林業就業者が減少をしてきた背景というのは、木材価格の低迷などによりまして林業自身の産業としての採算性が悪化していく中で、林地の森林所有者が経営意欲を失ってきたということで、いわばそのまま放置せざるを得ないというような気持ちになってきたということが一番の大きな原因でありまして、そういう林業生産活動の停滞というのがあるわけでございますが、あわせて、もう一つ、林業についての手当てとして、どんどんと植林をした時代は過ぎまして、山がだんだんと成熟してきました。そういう意味で、森林資源が成熟してきますと、植林もそうですが、下刈りとかあるいは枝打ちといったいわば労働集約的な、地場で単純に作業ができるような森林施業、従来そういうのが中心で行われてきました森林施業の事業量が少なくなってきたというようなことがあろうかと思います。

 こういう中で、新しい林業の労働力をどう確保するかということについては、委員も大変熱心に取り組んでいただいております緑の雇用におきます新規就労の就業者の確保を図ってきているところでございます。

菅野委員 大臣、確かに緑の雇用担い手育成対策というのが進められています。平成十五年、十六年は新規就業者数がふえましたが、しかし、最近はまた減少傾向にある、こういう状況です。他方、林家一戸当たりの林業所得は平均で四十七万八千円。これでは林業の担い手がふえないのも当然であります。緑の雇用のような対策も必要だとは思います。林業で暮らしていけるような所得保障がない限り、新規就業者もふえないのではないでしょうか。この暮らしていける林業にするための施策を農水省としてしっかり打ち出すべきだというふうに思います。

 地元の例なんですが、一つ例を出しておきたいと思います。

 七・五ヘクタールを四十軒で部分林契約をやって、六十年育成してきて、昨年の暮れに契約を交わしました。七・五ヘクタールで六十年生で一千七百万円という契約です。分収割合が八対二ですから、部分林組合の方に一千三百六十万、市の方に三百四十万。そして、部分林組合として一千二百万を四十戸の林家、農家で分けた。一戸当たり三十万という状況です。六十年育ててきて、そして一戸当たり三十万の収入しか入ってこない。これが今の林業をめぐる現状だ。

 こういうふうに考えたときに、山に手をかけていこうという気になるかどうかという状況に追い込まれていますから、国としてのしっかりとした方針を打ち出していかなければならない時期に今あるんじゃないのかということを私は申し上げているんです。大臣、どうですか。

若林国務大臣 基本的には、既に御答弁申し上げてまいりましたけれども、林業というものが産業としてそれが成り立っていくような条件整備というものが行われていかなければ、林業にかかわる従事者が所得を確保することができないと思うのです。

 林地あるいは立木の所有者というのはさまざまでありますから、そういう林地所有者あるいは森林所有者自身が持っていることによる収益をどのように補償するかというのはなかなか困難でございますけれども、それらを有効に利用していく林業従事者が所得を得ながら、林地所有者が負担をしてきた費用というものが最終的な立木処分によりまして賄っていけるような状況をつくらなければ、産業としての林業は成り立たない。

 そういう意味で、これから産業としての林業をどのように育成していくのか、その環境条件の整備等を図っていかなければならないと考えております。

菅野委員 大臣、今、一例を申し上げました、林業を取り巻く状況というものは、国産材の需要が少しずつふえてきているということで少しは明るい兆しは見えていますけれども、実際には木材価格が上がっていないんです。そういう中で、先ほど申し上げましたように、七・五ヘクタール、一千七百万というのは、これはそれでも高値で買ってもらったと地元の人たちは思っているんです。ただし、一戸当たりにすれば三十万という状況ですから、これが今の地域の実情だということをしっかりとらえて、農業も含めてそうなんですが、第一次産業総体に対して国としての直接支払い的な制度というものをつくって制度化していかない限り、産業として持続していくことは非常に厳しい状況に追い込まれているということを申し上げて、私は質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

宮腰委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮腰委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮腰委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十一分開議

宮腰委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官伊藤健一君、総合食料局長町田勝弘君、消費・安全局長佐藤正典君、生産局長内藤邦男君、農村振興局長中條康朗君、農林水産技術会議事務局長竹谷廣之君、水産庁長官山田修路君、内閣府食品安全委員会事務局長栗本まさ子君、文部科学省科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官岩瀬公一君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長藤崎清道君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮腰委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮腰委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。七条明君。

七条委員 若林大臣の麗しき御尊顔を拝し、恐悦至極に存じます。大臣になってから初めて質問させていただきますが、よろしくお願いいたします。

 時間が三十分ということでございますから、簡単明瞭に御指導いただければ幸いかと思います。

 食料の自給率について、まずお答えをいただきたいと思っております。

 今、食料自給率というのが急速に下がってきています。特に、昭和三十五年ごろの七九%から、去年からことしにかけてまた四〇から三九まで下がってしまったという現象があると思いますが、では、ここまで、三九%まで下がったというのがどういう原因で下がったのか。

 あるいは、これから四五%に向けて、たしか平成二十七年をベースにカロリーベースで四五%までと書いてありますが、これは生産額ベースでいうと七六%ぐらいまで上げなきゃならない。そういう中で、農林省の資料の中には、目標達成は危機的状況だ、こう書いてあるのでありますけれども、これをどういうふうに考えておられるのかということをまずお聞かせをいただいてから、質問に入りたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 食料自給率につきましては、御案内のとおり、平成二十七年度にカロリーベースで四五%まで向上させるという目標を設定して取り組んできておりますけれども、今お話しのとおり、十八年度で三九%ということで、前年度から一ポイントさらに低下をしております。

 このように自給率が低下してきておるわけでありますけれども、長期的な理由といたしましては、やはり消費面におきまして、米の消費量が減少する一方で畜産物や油脂の消費が増加するなど、食生活が大きく変化してきたということが一番大きな要因かと思います。また一方で、生産面におきましては、国内生産が消費者ニーズに必ずしも合致していないという問題ですとか、あるいは耕作放棄地の発生に見られますように、貴重な農地という資源が有効に活用されていない、そういった問題があろうかと思っております。

 こういった状況を踏まえまして、これまで検証をしながら施策の推進に最大限努力をしてきたわけでありますけれども、昨年下がったという状況を踏まえまして、特に重点的な項目として幾つか取り上げていこうということで、具体的には、米粉の利用の推進を含みます米の消費拡大、それから飼料自給率の向上、油脂類の過剰摂取の抑制ですとか、特に最近では、加工、業務用に野菜などを中心にどのように対応していくかといったことも取り組む必要があるというふうに考えております。こういったことを進めながら、食育の一層の推進、また国民運動を展開するための戦略的広報の推進といったようなことで、消費者、生産者あるいは食品産業事業者など一体となって、国民運動的に向上に取り組んでいきたいというふうに考えております。

七条委員 今御答弁いただいた六つの項目に集中をしてやっている。あるいは米の粉を利用して米の消費拡大をやりたい、あるいは食育の一層の推進だとか、国民運動の展開をして戦略的な広報の推進をやっていくんだということ。確かに、我が国の食料自給率ということで、平成二十年の二月に出た、平成十八年度の食料自給率のレポートを読ませていただいたら、そう書いてあります。

 確かにこう書いてありますけれども、では、ここに言う食育の一層の推進という表現の中で、あるいは戦略的な広報の推進という形の中で考えてみましたときに、食育基本法の中に確かに、第七(なな)条と言わずに七(しち)条ですけれども、七条で食料の自給率向上に資する、こう書いてある。

 ところが、この食育基本法にはそこまでは書かれていても、いわゆる食料の自給率を上げるという表現で出てきているものがほとんどないんですね。どっちかと言えば、食育というのは、食事のバランスをとって三度三度規則正しく食べなさいよ、栄養のバランスをとるんですよというのが本来であって、学校でもそれを基本的に教えてきたんですが、食料の自給率を上げるという感覚がやはり少ないような気がします。

 そしてもう一つ、このガイドブックの一番最後に、和食、洋食、中華と書いて、和食も洋食も中華もカロリーはほぼ二千百から二百弱ぐらいで、一番和食がカロリーでは少ないけれども、これを食料の自給率で見たら、和食が六三%だ、洋食が二八%だ、そして中華が三三%の食料の自給率になるんだ、和食が圧倒的にいいんだよとここに書いてあるんですね。

 ところが、これは子供対象用に書いてあるものですからいろいろ絵をかいてこうして書いてあるんだろうと思うんですが、では、和食が本当に食料自給率の一番いいものだということをするっと言ってこうして広報活動をしたのならば、実にびっくりすることが起こっていたのが、ここにあるジュニアの農業白書、これは子供用に書いた農業白書なんです。

 二〇〇五年、二〇〇六年、二〇〇七年の子供農業白書をとってみました。食育基本法ができたときの二〇〇五年の直後に書いた、これは大臣、もう見て知っていただいていると思いますけれども、この農林水産白書の中には、食事バランスとして、主食の欄に米と書かずに、御飯とパンとめんが主食だと書いてあるんですね。当時、私は随分自民党の部会の中で大きな声で言って、変えてもらったからこっちに変わってきたんです。

 しかしながら、広報の中での食育というのは、農林省が主食が御飯だと書くのならわかります、米だと書くのならわかります。パンもめんも主食だと書いてしまっているんですね。

 どういうことかといったら、当時は、WTOの農業交渉をやっていると、米が主食です、米だけが主食ですと言っておきながら、パンもめんも主食ですと書いてしまったような、こういう広報活動をやってしまった時期があったわけで、これが今の広報活動にまだ生きているんですね。改められたのはこれだけなんです。こっちでは改められましたけれども、生きている。

 はっきり言うと、農林水産省は、生産者サイドに立って物を考えて、生産者サイドに立って物を考えるだけではなくして、つくるお手伝いはする。ただし、農家や生産者に対して、売る手伝い、売ってさしあげるような手伝いをするという感覚がない。消費者サイドに立って物が考えられないんじゃないかと私には思えてしようがない、これが一つの面ではないかと思います。

 売るお手伝いができない状況の中で、いわゆる自給率が上がってくるわけがない。米がどんどん下がってきましたよとさっき報告されたし、米が下がってくるのは、当たり前の話ですけれども、食べなくなったんですよ、いわゆる食生活が変わったんですよと。ならば、米を食べさせるとか、食料の自給率を上げるために地産地消をやらせるとかいうことをやってきたことは事実ですけれども、一番やらなければならないのは穀物の自給率を上げることじゃないかと思うんですね。

 穀物の自給率は三九%どころか二〇%台でしょう。穀物というのは、米も穀物でしょうが、これを粉にすることで上げるというのはそう簡単じゃない。がしかし、パンの原料、めんの原料、ラーメンの原料のようなものの自給率を上げてやるということをやるのが本来なんですよ。これが一番早く自給率を四五%に持ってこれる一番近道なのに、ここのところが、やはりパンとめんというところで何をやるかということが欠けているんじゃないだろうかと私には思えてしようがない。大臣、どう思いますか。

若林国務大臣 委員が御指摘になられたことを伺いながら、やはり食料自給率を上げるには、今委員が御指摘のように、日本古来の風土の中で大事にされてきた水田、そしてまた水田で育成をしてきた稲、米、これを中心とした食生活というのが、いわゆる日本型食生活として日本の風土に適合し、そしてまた食の文化と言われるような一つの大きな文化を形成しているんだ、そういう認識というものが基本になければいけないと思います。その意味で、食育の中心として日本型の食生活ということをしっかりと中心に据えなければいけないと思います。

 同時に、さらにつけ加えて申し上げれば、食の教育の中で、今度は学校給食法の改正の中でも示唆されていますけれども、やはり口に入れる食べ物、特にお米を中心とした日本型食生活には、生産から流通、そしてその関係の販売に至るまでの多くの人たちのおかげをこうむっているんだという意味での、例えば感謝の気持ちとか、そういうような心情的なものも含めまして、地産地消、地域の生産者、そしてまたそれを流通させる流通の皆さん方が大変努力しているんだというようなことも含めました教育というものが必要なんだなというふうに思いますし、やはり農林水産省自身が、今言ったような原点というものをしっかりと据えて広報に当たっていかなきゃいかぬ、このように思います。

七条委員 大臣の言われるのは実にごもっともだと思いますし、それが本来でなければならないと思うんです。

 今、食料の自給率が落ちてきた理由の中に何があるかというと、世界の人口がどんどんふえている。日本は減っていますけれども、もう六十五億、六億になってきて、毎年毎年ふえていく。一方で、地球の温暖化がいろいろ進んできて、気候変動で穀物がつくりにくくなってきた。もう一つは、原油高になって、それをバイオエタノールのような形で使ってしまうために、日本には入ってきにくくなる。

 穀物の自給率が一番日本にとって食料危機、いわゆる食料安保という形の中で、食料自給率を上げるときには、まず基本にしなきゃいけないのが穀物の自給率だと私は思うんですけれども、六つの観点の中に書いてあることが少な過ぎるんじゃないか。食料自給率の基本は穀物自給率を上げることだと私は思いますね。そこがやはり欠けているんじゃないか、感覚が違うんじゃないか、広報活動にもそこが一番必要じゃないかと思いますが、もう一遍。

若林国務大臣 穀物の自給率を上げること、委員の御指摘、ごもっともだと思います。

 ただ、えさ穀物というものは、穀物自身としての自給率を上げるというわけにはなかなかいかない。あるいは、油、食油などの油原料の大豆でありますとか、あるいはトウモロコシでありますとか、そういう搾油の原料、油脂穀物というのもなかなか国内では難しい。その意味では、やはり中心になるのは米なんだろうと思います。

 そういう意味で、穀物自給率という言葉は使っておりません。むしろ、そのまま食するという意味で米の消費の拡大というのを中心に据えた、このように御理解いただきたいと思います。

七条委員 農林省は生産者団体や農家のつくるお手伝いはしてきたと思います。しかし、つくったものを売るお手伝いというのはタブーだと思ってきたんじゃないかと思えてしようがないんですね。ですから、その証拠をいっぱい言ってみたいと思うんです。

 まず、生産調整、特に米の生産調整、これは昭和四十五、六年ぐらいから始めてもう三十五年か六年になりますよね。がしかし、その生産調整というのは数量管理型な手法であって、数量を管理する手法であって、そろそろ限界が来ているんじゃないか。今後、米の生産調整そのものが、販売に主眼を置いたり、より消費者の視点に立って、米をどんどん食べてもらうということをやりながら生産調整をするということに変えていかなければならない部分がたくさんあるんじゃないか。

 今、まじめにこつこつ農家がやってもばかを見るとか、あるいは現場で農業団体や市町村等の職員の負担が大きくなり過ぎたとか、米価の下落のしわ寄せが生産調整の強化に過度に依存をしてしまって、もう制度疲労を起こしているんじゃないかとか、ましてや、先ほど言いましたように、数量管理型手法ではもう限界があるし、西日本と東日本は気候が違いますから、どんどん生産調整をやっても米だけしかできないような畑や田んぼがいっぱいあって、西日本、東日本の温度差も出てきた。

 ましてや、民主党さんが言われるように、麦やら大豆やら飼料作物まで生産調整をしていったら、これはもう無理としか言いようがないために、そろそろ生産調整を見直していく時期だと私は思えるんですね。その辺はどうでしょうか。

若林国務大臣 私どもの世代というのは食糧難時代で育ったわけですね。そういうことから振り返ってみますと、生産者そしてまたそれを応援する農林省の姿勢というのは、委員がおっしゃられたように、増産、つくることに非常に力を入れてきた。しかし、つくれば売れるという時代は終わったんだという認識をしっかり持たなければならないでしょう。そして、売れるものをつくっていくということでしょう。売れるものは何かといえば消費者の需要であります。ただ、消費者の需要をそのままうのみにするということではなくて、その中には食育という視点も入れた消費者行政というものにしっかりとかかわっていかなければいけない、私はそのように思うんです。

 そういう意味で、売れるものをつくるんだという視点で生産調整も大きく転換をするように踏み込んでいる、私はそう思うんですね。ですから、それぞれの生産現場において、あるいはまたその現場に近い生産者組織であります単協、JAにおいて、その需要に応じた自分のところの産地銘柄というものをしっかり安定的に売れる、その評価を聞きながらそれを売っていくという努力を前提にして生産調整を組みかえていくというのが、今の生産調整の考え方だというふうに思います。

 しかしながら、なかなか急にそういう需要を拡大しながら需要と結びつくということが難しいものですから、現実の問題としていいますと、やはり需給のギャップというのがなかなか解消できないわけですね。

 五%、一〇%の生産、需給の調整ギャップができて供給が大きくなると価格は暴落しますから、その意味で、その影響は全体の生産者に及ぶという意味で、価格の暴落をここでケアしながら生産調整を進めるという意味で、今までの面積ではありませんけれども、生産目標数量というものを、生産者団体が主体になりながら、行政と一緒になって生産の量的調整をしなければ価格が維持できない、そういう現実に対応する、そういう両にらみの状況になっている、こう理解をしております。

七条委員 私が生産調整をそろそろ見直すべきじゃないかと言ったら、農水省の方からは私の方に答弁書をよこしていただいたんです。五、六項目ありますけれども、局長、これをそのまま読んでみてください。

町田政府参考人 読ませていただきます。

 我が国では、食生活の変化等によって主食用米の消費が減少し、全水田面積のうち約六割で主食用米需要が賄える状況です。このため、米については、需要と価格の安定を図るため生産調整を実施しています。

 仮に、生産調整を廃止した場合には、過剰な生産により膨大な余剰米を発生させ、米の価格の大幅な低下を招くものと考えており、需要に応じた生産を行うことを基本に、引き続き生産調整を実施することは必要と考えています。

 その際、需要に応じた米づくりを進めるため、販売実績に即して、都道府県別の生産目標数量の算定を行っているところです。

 一方で、穀物の需給は、中国などの経済発展、農作物のエネルギー利用の進展、地球温暖化に伴う異常気象の頻発により、大きく変化してきており、価格も高騰しています。

 また、水田は、連作障害のないすぐれた生産装置であり、この水田機能を維持していくことは極めて重要と考えています。

 このため、約四割の水田を十分に活用して、自給率の向上につなげていくことが大切であり、これまで推進してきた麦、大豆などの生産に加え、飼料用米やパン、めん原料用の米を低コストで生産し、確実に流通、消費するシステムをつくり上げていくことが必要であると考えています。

 以上であります。

七条委員 大臣は随分と頑張って前向きに答弁していただきましたけれども、現実的には今の六項目が恐らく農林省の中での見解なんだろう、生産調整は、まだ少し時期的には時期尚早だという意味も含めて、そうなんだろうと思います。続けたいと。

 私は生産調整を今すぐ廃止しろと言っているのではなくて、先ほど言いましたように、食料の、いわゆる穀物の自給率を上げていくということを考えながら生産調整をするということをやはり頭に置いておかなきゃならないということと、もう一つは、売るお手伝いをする、先ほど言いましたつくる手伝いではなくて、売る手伝いをしながら生産調整をどうしていくかということも考えなければだめだということになるんだろうと思うんですね。

 先ほどの中に、水田は連作障害のないすぐれた生産装置である、こう言われたでしょう。私は昔、水張り転作というのをやれと言って、農業の基本は土づくりだよ、土をつくって、土の中から、いわゆる連作障害になるようなものを、水田で水を張っておくだけでそれが殺菌できるんだよ、管理転作を草ぼうぼうにしておくというよりも、ちゃんと水を張っておく方がまだましだという話をしたことがあって、それをやっていただきました。

 でも、今、土づくりで、安全な食品づくりが、消費者サイドに立って野菜や米を出荷しているかどうかということについて、消費者サイドに立っていない、できていないという証明をしてみたいんですが、いわゆる農薬や化学肥料の過度の使用に頼らないような形で土づくりが本当にできているのか。

 いわゆる地力増進法という法律がありますけれども、この地力増進法について、どういう形で利用してきたかということを、局長、答弁してみてくれませんか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 地力増進法の仕組みでございますけれども、御案内のとおり、地力増進地域を指定しまして、そこにおける地域の土壌を細密調査し、改善目標、営農技術指導を呈示しまして、そこで改善を行う。

 改善の具体的なやり方といたしましては、土壌の物理性、化学性の改善を図るという観点から、心土肥培、石れき除去、浅層排水、こういったことを行ってきて不良土壌の改善を図ってきているところでございます。現在、こういった地域の指定を受けている面積は累計で全国で約八十万ヘクタールとなっております。

 以上でございます。

七条委員 地力増進法というのは、土を肥沃にしよう、地力を増進させようという法律ですよね。にもかかわらず、今までの構造改善事業、特に圃場整備事業というのは、真四角にして農耕機を入りやすくした、水はけをよくして、そしてその地域を、いわゆる土地造成をする、土地改良をするということをやってきましたけれども、本当に肥沃なよく肥えた地力の強い土をのけておいて、そして真四角になったらまた戻してしまう。その間に乾いてしまって、地力が下がってしまって、地力を上げるために化学肥料や農薬をいっぱい入れなきゃいけなくなって、生産してしまうんですよ。こういうやり方というのは、消費者サイドから考えたら、本当におかしないわゆる土づくりであり、地力増進法なんですね。

 もう一つ言いましょう。

 消費者は今、本当においしいお米を食べたいと思います。それならつくってほしいと思っているんでしょうけれども、お米が一番おいしい状況になるのは、自然でゆっくり乾燥させた、なるにかけて、はぜにかけてゆっくり乾燥させた、昔ながらのお米なんです。これは農家の方はみんな知っています。

 がしかし、それをゆっくりじっくりやらないで、強制に温度をかける。四十二度までで終わりなさいというのを、四十三度、四度かけて、次の人が来たら困るからと早く乾燥させてしまう。乾燥させ過ぎることによって、胴割れが早く来たり、あるいは回りの脂肪が酸化して不飽和脂肪酸になったり、古米臭というにおいが出てきて、ジメチルサルファイド、メチル基を二つ含んだ硫黄がいっぱい発生してしまっているのに、むしろ、ゆっくりじっくり乾燥させないで、早く乾燥機を使う方に補助金はいっぱい出してきた。

 それは消費者サイドに立った米づくりかどうか考えていただいたら、現実の姿から見て、本当に自給率を向上させるためには、消費者サイドに立ってもう一度考え直さなきゃならない構造改善事業であったりお米のつくり方であるのではないかと思うんですね。どうでしょうか。大臣、どう思いますか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 米の乾燥調製の話がございましたので、その話からお答えしたいと思います。

 御案内のとおり、大規模化が進んでまいりますと、どうしても省力的、低コストの乾燥調製というものが必要になってくるわけでございます。そういった意味で、共同乾燥施設、カントリーエレベーター等の導入をしておりますが、その際には、当然のことながら、消費者ニーズに対応した良食味米も供給するということが必要になってまいりますので、例えば、カントリーエレベーターの運営の際には、たんぱく含有量等の品質分析体制を整備しまして、その分析結果を圃場における生産にフィードバックするために生産者にお知らせをする。そして、それによって、品質に影響を及ぼすような土壌窒素量の管理等を土づくりを含めた営農手法の改善につなげる。

 あるいは、最近は、地域の選択によるわけでございますけれども、火力を用いず、通風あるいは攪拌による乾燥を行うというカントリーエレベーターの方式、これはビン方式でございますけれども、そういったものも導入が進められているところでございまして、こういった形で、消費者ニーズに合った売れる米づくりというものを、私どもも乾燥調製施設の運営を通じて進めていきたいと考えているところでございます。

中條政府参考人 委員の方から、構造改善事業、恐らく土地改良事業だと思いますけれども、それと土づくりの関係につきまして、お話がございました。

 土地改良事業について申し上げますと、実は、面工事としまして、委員御指摘の圃場整備事業とか、あるいは畑を対象にした畑地帯総合整備事業等々ございます。

 その事業の中で、客土事業とか土壌改良事業とかは非常に重要な要素となっておりまして、基盤整備を行う場合も、必ずこういった土づくりの観点を保ちながらやっておりまして、基盤整備に当たりましては、長年の営農によって培われてきました地力の高い表土を維持、保全するために、表土を一たんはぎ取りまして、整地後にもとに戻したり、下層に良質土がある場合には表土と反転させるような対応を行ってきているところでございます。

 また、これだけではなくて、土づくりの重要性にかんがみまして、普及指導センター等と協力いたしまして、有機性の資材を投入するなど土壌改良も行っているところでございます。

 今後とも、基盤整備の実施を契機としまして、家畜排せつ物を堆肥等として利用いたします耕畜連携の取り組みを推進するなどいたしまして、地域特性やニーズをよく踏まえた上で、関係部局と連携を図りながら、地力増強に力を込めていきたいと思っております。

七条委員 要は、売るお手伝いをするということ、消費者サイドに立って物を考えていかないと、食料自給率はよくなりませんよ。もう危機的状況なんでしょう。もう世界の先進国の中で三九%と一番低いんでしょう。それならば、四五%の目標にするためには、消費者の本当の気持ちになって広報活動もしたり、食育制度もやったりしてくださいね。

 その中で、ギョーザの問題がこの間出てきました。筒井筆頭の顔をちょっと想像しながら、食料の関係の加工食品の原産地表示を民主党さんがやりたい、特に、農水省の外郭団体に食品安全庁をつくりたいというふうなお考えを示されて、法案を出したいと言っておられますが、どんな法案かわからないで今から賛成するわけにはいきませんけれども、しかしながら、長期的な考えで行政を一元化していくというのが本当にできるのか、できないのか。これは農水省、厚生省、内閣府の中でどう考えているかだけ聞いておいて、終わりたいと思いますが、どうですか。

若林国務大臣 食の安全というものを確保して、安全な食料を国民に安定して供給するというのは、まさに農政の基本であり、国政の最も大事なことだというふうに考えておりまして、昨年来、偽装の問題、あるいはまた有害なものの混入があります食物が流通するというようなことで、消費者が大変そのことに不安を覚えております。そのことは重大な問題だというふうに受けとめております。

 そういう中にあって、長期的な課題として考えますと、食の安全確保につきましては、生産、流通の部門を担当いたしておりますという立場から、農林水産省の方は、農林水産物の生産、加工、貯蔵、流通、そして消費の改善を通じて、安全な食料の安定供給を図る対策を推進するということであります。

 一方、人の健康という観点から、厚生労働省では、医療法とか薬事法とか食品衛生法とか健康増進法といったような業務を一元的に担当しているというふうに承知しているわけでございます。

 食の安全分野につきましては、一つのフードチェーンという考え方のもとに、生産現場から食卓まで一貫して対応する必要性が高いということ、施策の企画立案、執行において科学的な知見は不可欠であるということなどを考えますと、一元的な対応を行うことで、より効果的になる部分もあるのではないかというふうにも考えられるわけであります。

 しかしながら、一方で、農林水産省、厚生労働省それぞれの業務から、食品の安全に関する業務のみを切り出して一元化するというような場合には、人の健康や安全な食料の安定供給についても一貫した対応がそれによって本当に可能になるかどうかといったようなこと、いろいろ課題が多いように考えられるわけであります。その意味では、今後の検討課題だと受けとめさせていただきたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十五年の食品安全行政の見直しの際に、先生御案内のとおり、リスク分析手法が導入されまして、食品の安全性に関するリスク評価は食品安全委員会、リスク管理については厚生労働省及び農林水産省が行うこととされたところでございます。

 このうち、厚生労働省は、公衆衛生の向上及び増進を図ることという厚生労働省設置法上の任務に基づきまして、国民の健康の保護を目的として、公衆衛生行政の一貫として、食品衛生に関するリスク管理を実施しているところであります。

 すなわち、食品衛生法の第一条でございますが、目的といたしまして、「食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置を講ずることにより、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もつて国民の健康の保護を図ること」となっておりまして、このうち、平成十五年改正におきましては、具体的には「食品の安全性の確保のために公衆衛生の見地から必要な規制その他の措置」ということが加えられ、また「国民の健康の保護を図ること」も追加されたわけでございます。

 そういう意味で、食品衛生行政を適切かつ確実に実施していくためには、リスク評価機関による客観的かつ中立公正な科学的根拠に基づく評価結果に従い、厚生労働省で実施しております感染症対策、医療対策等の保健衛生行政との有機的な連携及び地方自治体の衛生関係部局との緊密な協力のもとに推進していくことが必要であるというふうに考えております。

 先ほど、若林農林水産大臣がおっしゃられましたように、農林水産省所管の業務の部分と私どもの所管の業務とが、きっちりと連携をとって進めていくことが食の安全にとって大変重要なことではないか、このように考えております。

栗本政府参考人 お答えいたします。

 食品安全委員会は、従来の食品安全行政においてリスク評価とリスク管理が混然一体となっていたことによって生じた行政対応の問題点を踏まえて、厚生労働省や農林水産省といったリスク管理機関から独立した機関として、リスク評価機関として平成十五年七月に設立されております。

 そして、これまで食品安全基本法に基づきまして、中立公正な立場から、科学的知見をもとに食品健康影響評価を着実に実施いたしますとともに、積極的なリスクコミュニケーションに取り組むことによってその役割を果たしてまいりました。

 これからも、独立した機関として、客観的かつ中立公正な立場から、その役割、機能を十全に発揮していくことが重要であると考えております。

七条委員 もう時間が過ぎていますから終わりにしたいと思いますけれども、食品のリスク管理とリスク評価は別にしておかなきゃいけない、独立させておかなきゃいけないと私は思います。

 ですから、食品のリスク管理の部分をどういう形で一元化するかということが本来の基本であって、その部分について、一元化する方向の中でどこまでやれるかということを今後検討していくべきだろうと思って、私の質問を終わらせていただきます。

宮腰委員長 次に、川内博史君。

川内委員 民主党の川内でございます。

 委員長並びに理事の先生方にお許しをいただきまして、発言をさせていただく機会をいただきました。心から感謝を申し上げたいというふうに思います。また、若林大臣、よろしくお願いをいたします。

 まず、本日は、JAS法、日本農林規格法とにがり、豆腐の凝固剤、あるいは食品添加物について、お伺いをさせていただきたいと思います。

 私は、本年三月十九日の内閣委員会において、にがりのことを質問させていただきました。それは私の地元、鹿児島県のトカラ列島の宝島というところで、伝統的製法で極上のにがり、豆腐の凝固剤でございますけれども、その極上のにがりを製造していたわけでございますが、これが厚生労働省所管の食品衛生法のもとで、本年四月一日から新たな規格基準が定められ、食品衛生管理者をさらに新たに置かなければならない、そうしなければ、規格基準以外のものを製造、販売すると食品衛生法違反、罰金並びに懲役という犯罪になってしまう。今までずっとつくられていたものが四月一日から犯罪になるというのは、それはちょっとおかしいんじゃないでしょうかということを内閣委員会で厚生労働省にお尋ねをいたしました。

 そうしたところ、厚生労働省の、きょうも来ていただいております藤崎食品安全部長並びに厚生労働大臣の方で、規格基準の見直しをする、四月一日付の大臣告示で新たな規格基準を決めて、それが周知されるまでの間、従前どおり伝統的製法による極上のにがりの製造、販売というものを継続してもいいですよということになったわけでございまして、この場をかりて、改めて藤崎部長にありがとうございますとお礼を申し上げておきたいというふうに思います。

 ここからがきょうの本題でございます。

 この経緯を私がいろいろ勉強する中で、おしょうゆの製造メーカーの方のブログに行き当たりまして、その方のブログに、JAS法違反による業務改善命令を受けてしまった、二百七十年続くおしょうゆメーカーだったわけですけれども、業務改善命令を農水省から受けたと書いてありました。この業務改善命令等については誠実に対応していく、しかし、その中にあるしょうゆの製造方法に関しては、二百数十年に及ぶ醸造元の伝統的製法であるので、これは認めてほしいということでございます。そういう伝統的製法とは何かというと、にがりをしょうゆの添加物として使ってきたということでございます。

 そこで、農水省さんにいろいろお聞きしたんですけれども、平成十六年九月十三日制定の農林水産省告示によるしょうゆのJAS規格では、食品添加物は次に掲げるもの以外のものを使用してはならないと書いてあって、一から九までの項目に三十五種類くらいの食品添加物の名前が書いてあります。おしょうゆの食品添加物として使ってもいいですよと書いてある三十五の食品添加物の中ににがりがない、だからJAS法違反だ、だから業務改善命令だということになっているわけでございますが、ずっとにがりを使い続けてきたおしょうゆの醸造元にすれば、ほかのことは業務改善命令を受けたのでちゃんとするけれども、にがりを使っていることに関して、それはJAS法違反だと言われると、いや、何で、今までずっとやってきたんだけれどもねというふうに思ってしまうということをブログで私は読みまして、これはにがりのことを私もずっと今までやってきた経緯上、取り上げないといけないなと思って本委員会で取り上げさせていただくわけでございますが、まず、平成十六年の九月のしょうゆのJAS規格で、にがりの使用について認められなかったのはなぜなのかということについて御説明をいただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 平成十六年九月の十三日ということで、委員御指摘のとおりでございますけれども、しょうゆの規格が改正をされまして、この時点で、にがりを使用したものについてJASマークを表示できなくなったところでございます。以前同様、JASマークを付さなければ販売については支障がないわけでございます。

 それから、考え方でございますが、JAS規格において、にがり等の添加物の使用は必要最小限にするというような考え方で当時整理されたというふうに承知をしているところでございます。

川内委員 私が聞いたのは、このときに三十五種類の食品添加物がしょうゆの添加物として使用してもいいですよということになっているわけですが、にがりが入らなかったのは何か理由があるんですかということを聞いているんです。ほかのものが入っているものが三十五種類あるのに、なぜにがりが入らなかったんですかということを聞いているんです。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 当時検討されたときに、にがりを入れないということで整理されたわけでございますが、特に該当されます業者の方からも、正式ににがりを入れてほしいというような要請はなかったようでございます。

 以上でございます。

川内委員 にがりを入れないということで整理したと今御答弁ありましたが、局長さん、にがりについて検討してないでしょう。

 まず、にがりについて、入れるか入れないか検討したかどうか、検討してないというふうに答弁してください。きのう、レクで聞いたとおり、検討してないと。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 当時、にがりについては検討対象にリストアップされていなかったようでございます。

川内委員 だから、なぜかならば、先ほど局長が御答弁されたとおり、要請がなかったからだ、にがりを入れてねということの要請がなかったからだということになろうかと思いますが、では、JAS規格について、しょうゆの規格を見直すからちゃんと皆さん意見を言ってねということがきちんと告知されたのか、周知されたのかということになろうかと思いますが、きょうは時間もないですからそこまでは申し上げませんが、きのう聞いた範囲では、各都道府県の業界団体に周知はしたということでございますが、しょうゆの醸造元というのは日本全国に千社あるそうですが、その千社に対して一社一社はやっていないということで、やはり意見を聞き漏らしたということも、私どもからすれば、にがりを使っているところもあるんだねということを、調査が不足したんじゃないですかということを指摘した上で、藤崎食品安全部長にせっかく来ていただいているので、今までにがりを使用した食品について何か健康被害の報告があったか否かということについて、ちょっと御答弁をいただきたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、特段そのような事案は承知いたしておりません。

川内委員 にがりについて、添加物として使用した場合に、健康被害の報告があったわけではない。それはそうですよね、大臣。ずっと今まで日本人が伝統的に使用してきた自然界に存在する食品添加物、既存添加物という言い方をするそうでありますけれども、それがしょうゆにも使われていた。しかし、平成十六年の検討対象から漏れてしまった。したがって、今JAS法違反になっている。これは私は改善の余地があるのではないかというふうに思います。

 しょうゆの製法の中ににがりを添加物として使用するものが現に存在をする。何社かその醸造元があるらしいです。そのにがりこそが、しょうゆの味わいを奥深いものにし、うまみを引き立てる役割を果たしているということになっているんだろうというふうに思います。

 そこで、農水省に確認をしていただきたいんですが、平成二十一年には、しょうゆの規格の見直し、JAS規格の見直しが行われるということでありますが、前回はちょっと検討対象から漏らしてしまったけれども、にがりをしょうゆ製造の添加物として、JAS規格において使用を認めるという方向で検討をしていただきたいというふうに思いますが、農水省としての御見解を聞かせていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 JAS規格におきましては、先ほど申しましたように、添加物の使用につきましては必要最小限でするという考え方でございますけれども、JAS規格それぞれにつきまして、少なくとも五年ごとに、農林物資の生産や消費の現況等を考慮するということで、消費者あるいは業界のお話を広く伺って見直しを行うこととされております。

 委員御指摘のように、しょうゆにつきましては、平成二十一年度までにしょうゆのJAS規格を見直すこととしておりますけれども、現在、その改正作業に先立ちまして、あらかじめ業界から規格の見直しにつきまして御意見を広く伺っている途中でございます。今後、広く国民の方々から意見を募集するためのパブリックコメント等を実施することとしております。適切な対応をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

川内委員 大臣、ここまでの議論を聞いていただいて、ちょっと御所見をいただきたいと思います。

若林国務大臣 科学的知見に基づきまして、そのことが人体に害がないということが明らかであり、かつ、製造業者の中、一部でありましても、それが長年使われていて、商品としての信頼度があるということであれば、この委員会の議を経て、これを定めるという姿勢でいくのがいいのではないかというふうに思いますね。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、次の問題に移りたいと思います。

 せんだって、厚生労働省が食品安全委員会に対して、体細胞クローン技術を用いて産出された牛及び豚並びにそれらの後代に由来する食品の安全性についてというものを厚労省が食品安全委員会に食品健康影響評価をしてほしいということで諮問をしております。いわゆる体細胞クローン牛を食べてもいいかどうか、安全かどうかということであろうというふうに思いますが、次の問題は、このクローン牛、クローン豚について議論をさせていただきたいと思います。

 まず、農水省に伺いますけれども、そもそもクローン牛、クローン豚とは何か。クローン牛というと、受精卵クローン牛、体細胞クローン牛というのがあるらしいのですけれども、その違いなども含めて、ちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。

竹谷政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘の受精卵クローンあるいは体細胞クローンの技術についてでございますが、まず、受精卵クローン牛についてでございます。

 これは卵子と精子を受精させまして受精卵をつくるわけでございますが、これの発生初期、大体八つぐらいの細胞のときに、その八つの細胞をばらばらにいたしまして、その細胞の一つ一つを他の家畜からとりました未受精卵に移植いたします。これからそれぞれ個体を発生させるという形をとるわけでございます。したがいまして、受精卵クローン牛は、いわば人工的につくりました一卵性の双子とか三つ子といったものに相当する、そういう技術でございます。

 それに対しまして、体細胞クローン牛の方でございますが、体細胞すなわち皮膚でありますとかあるいは筋肉でありますとか、いわゆる親牛のいろいろな部分からとってまいりました体細胞の核の部分を別の家畜からとりました未受精卵の中に移植いたします。これによって体細胞が初期化するということになりまして、そこから個体をつくるという技術でございまして、これは親の遺伝的形質と同じ牛をつくるという技術でございます。これは今、牛で申し上げましたが、豚でありましても同じような形でできるわけでございます。

 要するに受精卵クローンの場合には、受精卵を通常の場合と同様に使うという点、体細胞クローンの場合につきましては、体細胞という本来分化したものを一たん初期化して使うという点に違いはございます。

 いずれにしましても、これらの技術につきましては、農林水産省の研究基本計画あるいは政府全体のライフサイエンスに関する研究開発基本計画がございますが、それらに基づきまして、今研究に取り組んでいるところでございます。

川内委員 研究に取り組んでいるところだということでございます。

 まず、受精卵クローン牛についてお伺いしますが、細胞をばらばらにして人工的に双子、三つ子をつくるということでございますが、細胞をばらばらにするときにどのような技術を使うのか。電気的なショックを与えるとかあるいは化学薬品を使うとか、細胞をメスで切るとか、どうやってやるのか、ちょっと教えてください。

竹谷政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のように、受精卵を大体八細胞期ぐらいになりましたところでばらばらにする、これは薬品を使いましてばらばらにするということでございますし、また、他の家畜の未受精卵に移植をする際には、他の家畜の未受精卵から、まずその未受精卵が持っておりました核を取り除きまして、そこに先ほどの受精卵の細胞を入れるわけでございます。その際に電気的な刺激を与えるという、御指摘のとおりでございます。そういった処理を施しまして、細胞として融合、一体化させまして、それから発育させて個体を得るという技術でございます。

川内委員 いわば自然にできる双子とか三つ子とはちょっと違う。電気的ショックあるいは薬品を使うわけですから、双子や三つ子と同じでありますということとはまたちょっと違うんだろう。要するに、クローン技術を用いて産出された受精卵クローン牛、クローン技術を用いて産出された体細胞クローン牛というふうに説明をしなければならないだろうというふうに思います。

 今、研究段階だということでございましたが、受精卵クローン牛についてはもう既に市場に出回っているのではないでしょうか。市場に出回っているとすれば、何頭ぐらい出回ったのかということについて、頭数も含めて教えてください。

竹谷政府参考人 御説明申し上げます。

 現在、研究に取り組んでいるというふうに申し上げたわけでございますけれども、各研究機関の協力を得まして、受精卵クローン牛につきましては、これまでに四十三の研究機関で取り組んでおりますけれども、半年に一回まとめておりますので、昨年の九月三十日現在の数字で七百十六頭の受精卵クローン牛が生産されております。これは累計でございます。そのうち、食肉処理に出荷されたものが三百十四頭というふうになっております。そういった形でございます。

 体細胞クローン牛につきましては研究段階でございまして、また、出荷というものにつきましては行われておりません。

川内委員 きょうは御婦人方も傍聴にいらしていますけれども、びっくりされていると思いますよ。クローン牛が食肉処理をされて市場に出回っている、出回ったと。農水省は、プレス発表をしていますから、いや、情報は公開していますと言うでしょうけれども、公開されている情報でも、だれも知らない情報というのは山ほどあるわけでございまして、三百十四頭のクローン牛が市場で売られていたと。まだ研究段階ですよ。研究段階にあるものがなぜか食肉市場に回されていたということでございます。これは大変私はショッキングなことだなというふうに思うんです。

 これは表示は付されていたんですか。これはクローン牛ですというふうにして売られたんでしょうか。

竹谷政府参考人 御説明申し上げます。

 この表示の点につきましては、受精卵クローン牛につきましては、平成十二年の三月三十一日に、当時の畜産局長と農林水産技術会議事務局長の連名通知を出しておりまして、受精卵クローン牛の流通、販売に当たりましては、任意の表示ではございますけれども、受精卵クローン牛ないしはCビーフといった表示を行うよう各研究機関に要請しているところでございます。

 そうした結果、表示の状況でございますけれども、通知を出しました平成十二年の三月以降出荷されたものは二百十五頭でございます。この二百十五頭のうち、百二頭につきましては今申し上げました通知に即しまして表示がなされておりますが、百十頭につきましては表示がなされておりません。ただ、これは平成十二年の通知を出した直後にほぼ半数の五十三頭が出荷されたことで、当時徹底していなかったということもございますので、その後、表示の実施状況は相当程度改善されてきているという状況でございます。

川内委員 任意の表示ですから、表示してもしなくてもいい。平成十二年三月三十一日の通知以降、二百十五頭あるけれども、百二頭が表示された、百十頭は表示をされなかったということでございます。

 私は、表示の問題は後でやりますが、そもそも、平成十一年十一月十一日の通知に、受精卵クローン牛については、厚労省も従前から食品としての安全性について問題はないというふうに農水省のプレスリリースの紙に書いてあります。厚労省が安全については問題ないと言っているんだというふうにこのプレスリリースでは言っているんですが、先ほど七条先生もリスク管理と評価は分けなきゃいけないと、私もそう思っています。厚労省や農水省はリスク管理をする役所だ。他方で、リスク評価は独立した組織が科学的知見に基づいてやらなければなりませんねということはみんなの共通の認識だと思うんです。

 では、受精卵クローン牛の安全性について、今まで評価されたことがあるんでしょうか。厚労省は、平成十一年当時、受精卵クローン牛については食品としての安全性に問題はないとする評価を厚労省として下していたんでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 受精卵クローン牛由来の食品につきましては、平成十一年度の厚生科学特別研究、表題が「クローン技術を利用した動物性食品の安全性について」というものでございますが、その中間報告書におきまして、受精卵クローン牛に特有な、食品としての安全性を懸念する科学的根拠はないというふうにされておりましたので、そのような認識は持っておりました。

川内委員 今御説明された中間報告は、厚生労働省としての研究を中間報告として取りまとめたものではない。すなわち、厚生労働省が科学研究費補助金をつけて、たくさんの研究を大学の先生やら研究機関にしていただくわけでございますが、科研費補助金の中の一つの研究であるということでよろしいですね。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生科学研究の報告書として、そのような内容であったということでございます。私どもも、その内容について、そういうことであるかというふうに認識はしておった、こういうことでございます。

川内委員 なかなか回りくどくてよくわからないんですが、では、厚生労働省として、受精卵クローン牛は安全ですよ、食べても全然問題ないですよというような文書を当時発出していらっしゃったでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省としては、食品衛生行政に関する通知でありますとか、あるいは疑義解釈等の公文書において、受精卵クローン家畜由来食品の安全性に関する見解をお示ししたことは特段ないというふうに認識しております。

川内委員 厚生労働省として、正式な文書の中で、受精卵クローン牛は安全だよ、食べてもいいよということは言っていない。しかし、農水省はプレスリリースにおいて、厚生労働省も従前から食品としての安全性について問題はないとして、その出荷を認めていると文書に書いて、受精卵クローン牛について既に三百十四頭が市場に出回っているということであります。

 私は、受精卵クローン牛の安全性について、しっかりと食品安全委員会に諮問すべきだというふうに思います。なぜかならば、だれも今まで評価していないからだということです。体細胞クローン牛は今回諮問されたわけですね。受精卵クローン牛は、何だかよくわけがわからない中で、何かずるずると出荷されている。これは非常にゆゆしき問題だ。

 クローン牛やクローン豚には死産や病死が多いとか、老化が速いとか言われている。また、そういう研究の報告もあると聞いております。一般の、普通の、自然に由来する牛や豚と比べて、死産や病死、あるいは老化が速い。何をもって老化が速いというふうに、牛さんが、この牛は老化が速いなとどうやって見分けるのか、私にはよくわからないんですが、さまざまな研究の成果がありますけれども、一般の牛、豚と比べて受精卵クローン牛、体細胞クローン牛はどの程度死産や病死が多いのか、老化が速いのかということについて、もし今おわかりであれば教えていただきたいと思います。

竹谷政府参考人 御説明申し上げます。

 体細胞クローン牛につきまして、あるいは受精卵クローン牛と通常の牛を比較いたしまして、死産とかあるいは出産直後に死亡した数字というものでございますが、これはデータ的なものでございますけれども、体細胞クローン牛につきましては三二%程度、それから受精卵クローン牛につきましては一四%程度、これは一般のホルスタインの牛でございますが、大体五%程度といった数字になっております。

 体細胞クローン牛なり受精卵クローン牛は、出産時におきまして比較的大きな子牛の形で出てくる場合が多いので、そういったことなどを反映しての結果かというふうに考えている次第でございます。

川内委員 今、その理由まで御説明いただいたわけですけれども、比較的大きな体で出てくるから死産や病死の率が高いのだというのは、明確に科学的知見として断言できる知見ですか。そうじゃないかなというぐらいの話でしょう。そこは、いやしくも農林水産技術会議の事務局長さんですから、そうじゃないかなぐらいのことをこんな委員会の場で、体がでかいからなかなかお産が難しくて死産なんですよ、そんなあいまいな説明じゃだめですよ。そうだ、そうなんだというのであれば、そう言い切ってください。そうでなければ、原因についてはまだ解明されておらないということをおっしゃっていただきたい。

竹谷政府参考人 御指摘の点につきまして御説明申し上げます。

 体細胞クローン牛あるいは受精卵クローン牛の子牛につきましては、一般の通常の牛に比べまして体重が多いという形で生まれてくるものが多いというデータはございます。そういう事実関係はある、そういう傾向を申し上げたわけでございます。

 そうしたことが一因ではないかというような研究報告書の指摘はございますが、なお、研究をいろいろ要する点があろうことは御指摘のとおりだと思います。

川内委員 原因については、なぜ死産が多いのか、病死が多いのか、老化が速いのかということについてはまだ解明をすべき点が残されている。すなわち、クローン技術という、自然発生的に生まれてくる牛や豚とやはり違うわけですから、そこはさらに研究を進めていかなければならないというふうに思います。

 それにしても、体細胞クローン牛の安全性について食品安全委員会に諮問すると。しかし、農水大臣、そもそも体細胞クローン牛の肉を食べた人は今まで多分一人もいないんですよ。それなのに、食品としての安全性をどうやって評価するのかなと私は不思議でならないんですが、受精卵クローン牛は既に市場に出回っているということで、しかし、安全性についての評価をされたことはない。

 私は、受精卵クローン牛について、その安全性の評価をこの時点でいま一度しっかりとすべきであるというふうに思いますが、これは厚労省になりますか、お答えいただけますか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど農林水産省の方から御説明がございましたが、受精卵クローン技術につきましては、受精卵を分割して遺伝的に同一な家畜を多数生産する技術であるということでございます。したがって、これによって産出される家畜は、自然界に発生する一卵性の双子、三つ子と同様のものである。

 先生おっしゃられるように、途中過程の技術的な手が加わっているということはあるのかと思いますが、平成十一年、先ほどの研究の当時でございますが、当時の科学的知見では、食品安全上問題があるという特段の指摘がございませんでしたし、当時として特段の安全性評価を行う必要はないというふうに判断をいたしております。

 この間に、その後の科学的知見の蓄積もございまして、十一年当時の研究をさらに進めまして、平成十四年に厚生科学研究のまた新たな報告書が取りまとめられたわけでございますが、そういうような新しい知見、また今日に至るまででございますが、特段変わることはないということから、食品安全委員会に対して食品健康影響評価を依頼することは現時点では考えていないということでございます。

川内委員 現時点では諮問することは考えていないということでありますが、藤崎さん、技術会議の事務局長さんも、病死や死産のことについて、受精卵クローン牛も、一般の牛と比べてその率は統計的に高いですよということをおっしゃられた。そして、その原因についてもまだまだ解明をしなければならない部分があるということもお認めになられた。

 したがって、そもそも受精卵クローン牛も、先ほど御説明があったとおり、自然にできる双子や三つ子とは違う。薬品を使って細胞をばらばらにし、そしてまた核移植をするときには電気的な技術を用いている、そういうクローン技術を用いて産出されたものであるから、その安全性についてはしっかりと私は確認をしていかなければならないと思います。しかし、今のところは諮問はしないということです。

 であれば、これは消費者の安全のためには、せめて表示ぐらいつけてよと。これは市場に出回っているわけですから、せめて表示ぐらいは、これはクローン牛ですよ、薬品を使って細胞をばらばらにして、電気的な技術を使って核移植をして生まれた牛ですよというぐらいは消費者の選択にしていかないと、私はそれはとてもとても消費者の皆さんの理解を得られるとは思わないんですけれども、どうですか。ほら、うんうんとうなずいていらっしゃるでしょう。やはりそこはしっかりやっていただきたいと思うんです。

 では、表示を分けるにはどうしたらいいのかということを、技術的なことですけれども、さまざまな法律の条文に牛とか豚とかいう用語が出てきます。そのさまざまな法律の条文に出てくる牛とか豚は、クローン技術を用いて産出されたクローン牛やクローン豚というものを含んでいるのか含んでいないのかというと、そもそもこういう法律ができたときは、自然発生的に生まれてくる家畜としての牛や豚しか想定をしていなくて、クローン技術を用いて産出された牛や豚は想定していないというふうに思いますが、どうでしょうか。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 牛、豚について、法律上明記されているものはあるわけでございますけれども、定義は行われておりません。これは定義するまでもなく明らかということと我々は解しております。(川内委員「もう一回はっきり」と呼ぶ)定義するまでもなく明らかであるということから、定義が行われていない。

 クローン技術で産出されました牛、豚でございますけれども、これも牛、豚からできたものである以上、牛、豚に該当すると考えております。そのため、クローン牛、クローン豚も、農水省の所管する法律においては、牛、豚として取り扱っているところでございます。

 なお、制定当時想定していなかったではないかという点がございましたけれども、例えば、私ども、平成十四年あるいは十五年と法律もつくっておりまして、その中では牛という言葉も使っております。平成十四年、十五年でございますから、クローン技術については、当然それは承知した上での作成でございます。

 以上でございます。

川内委員 今委員長が、そんなことでいいのかと首をひねりました。筆頭、これはおかしいですよ。

 だって、表示をしっかり分けるためには、自然に生まれた牛とクローン牛は違うものだよ、自然に生まれている豚とクローン豚は違うものだよということを位置づけていかないと、法律的にも表示を別々にできないんですよ。

 だから私は、牛、豚が、そもそも自然に由来する牛、豚を想定しているのであって、クローン技術によって産出されたものは想定していないでしょうと聞いたら、当然に含まれると言うから、それはびっくりしますよ。そんな当然に含まれるなどということを、農水大臣、そんな珍妙な解釈を、農水省を所管する大臣として、あるいは農水省御出身の大臣として、許しておいていいんですか。その解釈は、いや、それは事務方の間違いだ、クローン牛やクローン豚は違うくくりとして、表示はまた別物にしていかなければならないねというふうにお思いにならないですか。大臣、どうですか。

若林国務大臣 一般論として申し上げれば、今局長が答弁いたしましたように、牛とか豚とか法律上の用語として規定をしているものの中には、クローンの牛、豚も含まれると私も思っております。

 そして、そういう前提で、実は、クローンの牛が産出した後において、国会での審議を経た法律の中でも、特段、牛と書いてあるものから、その概念にクローン牛を除いているとは理解をしないで議論が行われ、法律が制定されている、こういうことだと理解をしております。

川内委員 では、なぜ体細胞クローン牛については諮問するんですか。法律に書いてある牛、豚がクローン技術を用いて産出されたものも当然にして含むというのであれば、クローン技術を用いて産出された牛、豚は、そもそも法律上、最初から安全だ、どうぞ売ってくださいねということになるんじゃないですか。安全性を評価する必要はないということになるんじゃないですか。論理的に矛盾していますよ。

 では、なぜ諮問するんですか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 体細胞クローン家畜由来食品の安全性につきましては、国内外においてこれまで数年間にわたり研究や評価が行われてきており、食品安全委員会における安全性評価に必要と考えられる知見が蓄積され、関係文献等の収集が終了いたしましたので、食品安全委員会に食品健康影響評価の依頼を行う運びとなった、こういうことでございます。

川内委員 だから、安全性に懸念があるから、アメリカでもヨーロッパでも安全性を評価しているわけですよ。我が国でも評価しましょうねということになっているわけで、安全性を評価すべき対象であるということをもってして、普通の牛や豚とはやはり若干扱いを違えなきゃいけませんよねということは、私は当然の結論だと思いますよ、大臣。

 人類というのは、口の中に入れて、食べても大丈夫だね、これは食べてもいいねということを何千年もかけて評価してきているわけですね。別に、科学的知見に基づくとか基づかないとかはおいておいて。大昔の人たちは、これは食べて大丈夫かな、そうやって、ああ、これは食べても大丈夫なんだといって安全な食べ物を確定させてきているわけですね。私たちはそういう歴史を刻んでいるわけです。

 そういう中で、クローン技術によって産出される牛や豚を私は否定するわけじゃないですよ。その研究開発の成果は認めます。一生懸命研究されて、頑張っていらっしゃるということに関しては認めます。しかし、それを消費者が何にもわからないままに市場で買う。例えば神戸牛、高い、本当にいい神戸牛がありました。しかし、それはもしかしたらコピーの神戸牛かもしれないんですよ。クローン牛の神戸牛かもしれない。今の議論の立て方だと、わからないということになるわけですよ。それはおかしいでしょう。

 この前、内閣委員会でも、岸田国民生活担当大臣は、国民生活担当大臣としましては、国民の選択の幅を確保するという意味から、科学的な安全性を確認した上で、食の表示の部分についてはしっかりと検討しなければいけない課題だというふうに認識をしていますというふうに御答弁になられ、その後、町村官房長官も、消費者が選択するかしないかという、そこの一点さえ確保されていればというふうに御答弁になられていらっしゃるわけです。

 表示について、安全性については食品安全委員会が評価をされるでしょうが、その後、ではマーケットに出ますよと。アメリカでは、体細胞クローン牛については、その後代牛については全然マーケットで売っていいよということになっているわけで、これは日本にも入ってくる可能性はあるわけですね。

 そういう中で、表示についてはしっかりとしましょうね、まず、消費者の選択の権利を確保しましょうねというふうにしていかなければいかぬのじゃないかというふうに思いますが、大臣、どうですか。

若林国務大臣 先ほど、牛あるいは豚、法令上の用語の概念としていえば、クローン牛というようなものを排除するようなものではないものとして、法令上使われているということを申し上げたわけでございます。

 そして今、体細胞クローン牛について厚生省が食品安全委員会の意見を聞くということをしているわけでございますが、これからの問題として、そういうような人間の安全性という角度から、これの違いというものをはっきりさせておいた方がいいというようなことになれば、その部分について特に定義を明らかにした上で使い分けをしていくということが法律上の表示の仕方としてはあり得ることだ。それは、食品安全委員会の意見を徴した上でそういう差を設けていくということになれば、その方針を法令上も明らかにしておかなければいけなくなるだろう、こういうふうに思うところでございます。

川内委員 今の大臣の答弁は信じられないですよ。だって、食品安全委員会が安全性について差異がないという評価をすれば、逆に言えば、表示についても、自然に生まれる牛とコピー牛は一緒だ、別に表示を分けなくてもいいんだということになっちゃいますよ。だって、そもそもクローン技術を用いて産出されたクローン牛は、自然発生的に生まれてくる牛や豚と明らかに違うわけですから。農水省というのはジャパン・ブランドを推進するということになっているんじゃないんですか。日本の農家の方々が一生懸命育てた牛や豚を売っていこうというふうにされているんだと私は理解していますけれども、研究開発で技術者が、あるいは科学者がつくり出したコピー牛を一生懸命売りましょうというふうにされるんですか。私はそんなことないと思いますけれどもね。

 であるとするならば、消費者の選択が大事だと消費者担当大臣も官房長官もおっしゃっているという中で、農水大臣として、クローン牛、クローン豚について、普通に生まれる牛や豚とは違うじゃないか。それは消費者の選択のために表示の義務づけを検討していく。だって、定義が違うじゃないですか。クローン技術を用いて産出された牛、豚と明確に違うわけですから。

 食品の安全性について差異がある、ないはこの際おいておいても、それは明確に定義が違うわけですから表示を変えるべきだ。表示の義務づけについて検討していくということをおっしゃっていただきたいと思いますが、いかがですか。

若林国務大臣 表示に当たっての基準というのは、品質において差異があるかどうかということで、品質において差異のあるものについては品質表示という意味でその差異を明らかにするということになるわけでございますが、これは食品安全委員会の意見を聞いた結果として、どのような形で意見が出されるか聞いてみなきゃわかりませんけれども、食肉の品質において差異がないということであれば、これは品質表示の世界では差異を設けるということにならないと私は思うのでございます。

 さらにもう一つつけ加えて申し上げれば、そのことを義務づけるかどうかというのはまたもう一つ別の問題になってくるわけでございまして、これを義務づけるということになりますと、輸入牛なども念頭に置きますと、これは内外無差別の原則ということがWTO上の規制でございますので、さらに慎重な検討を要する、私はそう思います。

川内委員 大臣、内外無差別を全然理解していらっしゃらないですよ。国内において表示を義務づけるものは、外から入ってくるものについても義務づけですよというふうにしますよ。ただし、海外に出すものについて、その国で行われているものには従いますよというのが内外無差別でしょう。そんな世界で表示されていないから日本の国でも表示できないんだなんという、内外無差別の理解を全く誤解させるようなことを言っちゃだめですよ。

 それに、食品安全委員会は品質を評価するんじゃないですよ。安全性についてのみ、科学的知見に基づいて差異があるかないかどうかだけを評価するのであって、その製造過程やらその製造に用いている技術が違うんだから、品質は明らかに違うに決まっているじゃないですか。

 消費者の選択が大事だとか、消費者に寄った行政をやるんだとか、福田内閣の一番大事な哲学なんじゃないんですか。福田総理が一生懸命消費者のために消費者行政をしっかりやるんだと言っているんじゃないんですか。そういうときに、それは研究者は一生懸命やりますよ、研究者はマニアだから。マニアの言うことを聞いていたら世の中だめなんですよ。ごくごく常識的な判断をしていただかなければ。クローン牛と普通の牛は明らかに違うでしょう。それをただ消費者の選択のために表示してくださいねと言っているだけですよ。

 官房長官は選択は大事だと言っているわけですからね。それをここで農水大臣が否定をされるというのは、私はあり得ないと思いますよ。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 体細胞クローンの家畜由来の食品の表示の義務づけの関係でございますけれども、先ほど大臣からお話ございましたように、通常の畜産物の肉や乳の成分等と同質であり、品質に差がないと一般的に考えられていることが一つございます。

 それから、EU等も含めまして、海外で表示の義務づけをしている国がないということで、不必要な非関税障壁との指摘を受けるおそれがある。

 さらに言いますと、有効な監視ができるかどうかということで、まさにクローンということでございますので、そのものが結果としてクローンかどうかという検証といいますか、クローンでないかどうかの検証が技術的に大変難しい、できないということがございます。

 そうした種々多くの問題がありますので、この問題については慎重に検討しなければいけない問題だというふうに認識しているところでございます。

川内委員 いろいろおっしゃられたが、運用が難しいということをもって表示の義務づけができないということの理由にはならないですよ。

 消費者行政担当大臣の岸田大臣も内閣官房長官も、消費者の選択が大事だ、消費者が選択できるのであればいいのではないかという趣旨の御答弁をしていらっしゃるわけですね。その答弁を踏まえてきょう議論をしてきて、安全性はこれから評価するでしょうけれども、しかし、クローン牛についてまだ解明されていないこともたくさんある。死産、病死の率が高い。そういう中で、表示ぐらいはきちんとしてくださいねということを申し上げている。そのことに対して、いや、それは検討するのは難しいというのは一体どういうことなんですか。岸田消費者行政担当大臣、内閣官房長官の答弁を否定するんですか。クローン牛について、表示の義務づけを検討すると言わなきゃおかしいでしょう。

 では、この前の内閣委員会の議事録をもう一回ここで読んでくださいよ。ちゃんとおっしゃっていますよ。私、持っていますからお渡ししましょうか。それを踏まえてあした答弁してくださいねということをきのう申し上げたんです。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

若林国務大臣 私が申し上げていますのは、品質の表示という意味で品質が同一である、ゆえにもって安全であるということが出てくれば、品質が同一であれば、品質表示としてのJAS表示というのはなかなか難しいんじゃないかということを申し上げているわけでございます。

 そういう意味で、この安全委員会は、人間の健康にとって安全であるという意見が出されるその根拠として、品質が同一である、差異がないということであれば、品質表示としては、これはどういう形でそのことを差別的に区分するかという問題はなお検討を要するかもしれませんが、品質表示上の法律上の義務づけというのはなかなか難しいという意味で、慎重な検討をいたします、慎重に検討する必要があるというふうに申し上げさせていただきたいと思います。

川内委員 だから、JAS法上の品質表示だけではなくて、例えば畜産局長通知である食肉小売品質基準とか、農水省はさまざまな基準を持っているじゃないですか。一般の牛とクローン牛を区別するさまざまな表示を持っているじゃないですか。そういうものを駆使して消費者が選択できるように工夫しますよ、きちんとやりますよということを言ってくださいということを申し上げているわけです。

 そういうことを何もやらないんですか。消費者が選択できるような選択肢を何も示さないというのであれば、今ここではっきり言ってくださいよ。

若林国務大臣 慎重に検討させていただきますということを申し上げているわけでございます。

川内委員 慎重に検討するって何を慎重に検討するんですか。では、何をどのように慎重に検討するのか言ってください。いつまでに検討するのか。これは大変重大な問題ですよ。受精卵クローン牛はもう市場に出回っているんですからね。それを消費者はわからずに買わされているんですからね。そして、これからは体細胞クローン牛も出回るかもしれないんですからね。クローン技術を用いているんですよ。電気的ショックを与えているんですよ。薬品を使っているんですよ。

 消費者が選びやすいように、選べるようにしますということを言わない限り、僕はきょうここをどきませんよ。だって、それは内閣委員会の答弁と食い違うから。

若林国務大臣 先ほど委員がJAS法上の表示のことを言っているのではないとおっしゃられました。(川内委員「JAS法を含めていろいろ方法はあるでしょうということ」と呼ぶ)

宮腰委員長 委員長の指示の上で発言をしてください。

若林国務大臣 JAS法上の表示につきましては、先ほど申し上げたようなことでございます。

 その他の表示をどのようにするかについては、食品安全の担当大臣あるいは官房長官の内閣委員会での答弁というものも今お聞きしたところでございますので、そういう何らかの形のものが有効にできるのかどうか、そういうことも慎重に検討させていただきます。

川内委員 畜産局長、ちょっと補足で答弁してくださいよ。畜産局長のところはたくさん……

宮腰委員長 畜産局長はおりません。

川内委員 生産局長。ごめんなさい。

 とにかく、農水省はいろいろな表示の基準を持っているでしょう。それでちゃんとやりますということを言ってくださいよ。大臣はやはり事務方にお気を使いになられるすばらしい方だから。

内藤政府参考人 お答え申し上げます。

 私が承知している限りにおいては、義務表示はJAS法のもとで行われております。それ以外には義務表示の制度は我が省には持っていないというふうに承知してございます。

川内委員 食肉表示品質何ちゃら基準というのがあるじゃないですか。和牛は日本の国内で生産したものしか和牛と表示させないとか、あるいは、黒豚については生産地名を前につけるとか、そういう工夫をされているじゃないですか。そういう工夫が幾らでもできるでしょうということを言っているわけですよ。クローン牛と普通の牛を区別するために、消費者の選択のためにそれをやりますと言ってくださいよ。それは官房長官が答弁しているんですから。それを言わないというのは、これはもう絶対おかしいですから。

内藤政府参考人 今御指摘のありました和牛の表示でございますけれども、これは、和牛を表示する場合のガイドラインとして、任意の表示として我々は設けたものでございます。

 以上でございます。

川内委員 違う。任意じゃないですよ。公正取引協議会にちゃんと諮問して、ある種の強制力を持っていますよ。何を言っているんですか。だから農水省はだめなんだよ。そういう表示でうそをつくと、今度は不正競争防止法とか景品表示法違反とか、あるいは詐欺罪ということで罪に問えるじゃないですか。さまざまな法律が使えるじゃないですか。それが消費者の選択ということでしょう。そういう何か業者に寄ったようなことばかり言っているから農水省はだめになるんですよ。消費者のためにきちんと表示しますと言わなきゃだめでしょう。

内藤政府参考人 ガイドラインについて再度申し上げたいと思います。

 これはあくまでも自主的なガイドラインとして定めているものでございまして、いわゆる公取の枠のもとで一定の強制力を持ってやるものとは異なっております。

 以上でございます。

川内委員 だから、私が言っているのは、公正取引協議会という協議会の中でみんなが寄り合ってそうしましょうねということを決めているから強制力があるんですということを言っているわけで、今このことを議論する気持ちはないけれども、要するに、農水省としてちゃんとクローン牛と普通の牛を消費者の選択に資するような形で工夫していきます、なぜかならば農水省が所管だから、それをやりますということを言わなければ、内閣委員会の大臣答弁と内閣官房長官答弁と食い違うということを言っているんですよ。

 やるんでしょう。やらないんですか。やるんでしょう。やりますと言わなきゃ食い違いますよ、大臣。

若林国務大臣 繰り返しで恐縮でございますけれども、先ほど御答弁申し上げましたように、義務的な法令上に基づく表示でないということを前提に、岸田大臣の答弁、そして官房長官の答弁がございますことを念頭に置きながら慎重に検討させていただきたいと思います。

川内委員 またこの問題をやらせていただきますけれども……(発言する者あり)慎重にだから。では、慎重にという言葉を取ってくださいよ、大臣。検討します。ほら、取らないじゃない。結局やる気がないんだもの。(発言する者あり)慎重にという言葉がついている限りだめですよ。消費者のための行政とかいいながら、結局そういうことでしょう。だから、私は農水省は信頼を失っていくんだろうというふうに思いますよ。

 これは本当に大きな問題です。人間が何千年もかけて確認してきた安全な食べ物というものに対する、あるいは日本の、ジャパン・ブランドを推進していくという農政の根幹にかかわるものに対する重大な挑戦だというふうに思いますので、今後も引き続きさまざまな議論をさせていただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

宮腰委員長 次に、大串博志君。

大串委員 民主党の大串博志でございます。

 私は、きょうは、一般質疑の時間をいただきまして、諫早湾干拓事業に関して大臣と議論を交わさせていただきたいというふうに思います。

 この諫早湾干拓事業は、もとは五十有余年前に長崎の大干拓計画に端を発した長年の計画でございまして、それが長崎の南総計画に形を変え、その後諫早湾干拓事業という形になり、その後の経緯は皆さんも御存じとは思いますが、昭和六十一年にやっと計画がなされ、その後のいろいろな計画変更等も経ながら、去年の秋に完工式を迎えました。そして、土地改良事業としてはこの三月三十一日をもって完了し、営農が本格的にスタートするという状況になっております。

 その間、九七年にいわゆる潮受け堤防、七キロにわたる諫早湾を締め切る、皆さん御案内だと思いますけれども、有明海にぐっと一歩踏み込む諫早湾というものがありまして、この諫早湾の入り口を七キロにわたってふたをするような潮受け堤防、この締め切りが、いわゆるギロチンの締め切りというふうに言われましたけれども、一九九七年四月十四日、きのう十一年たちました。

 そういう節目のときにおいて、この事業にはいろいろな意見がございます。二千五百億円の費用をかけた公共事業として適切だったのか、効果はあったのかと。そして、いろいろな漁業被害の問題も引き起こしております。環境被害の問題にも波及してきている。こういう中においてこれをきちっと見詰め直して、これは一体どういう状況にあるのかということを改めて考え直す必要があるんだろうと私は思っています。そういう観点から、きょう、幾つかの論点に関して大臣に質問させていただきたいというふうに思います。

 この諫早湾干拓事業は、御案内のように、農水省の公共事業、土地改良事業でございます。公共事業を行う際には、当然、費用に見合う効果があるのかということをしっかり議論していかなければならない、これはもう常識であります。この諫早湾干拓事業については、二千五百億円の費用をかけてどのような費用対効果という結論になったのか。

 御案内のように、これは計画の変更も途中で多々ございました。きょうは委員長の御了解をいただきまして、資料を皆さんの手元に配らせていただいております。一ページに、「国営諫早湾土地改良事業の概要」ということで書かせていただいています。

 大臣にまずお問い合わせさせていただきたいんですが、諫早湾干拓事業の費用対効果、この結果、そしてその推移について御説明いただければと思います。

若林国務大臣 諫早湾干拓事業につきましては、委員の配付資料にもございますが、昭和六十一年の事業計画決定でございます。その時点におきましては、費用対効果分析を行いまして、経済的妥当性を確認した上で事業に着手したところでございます。

 平成十一年に第一回の計画変更が行われました。その計画変更時におきましては、作物の生産効果の基礎となります導入作物及び作物単価・単収、さらに災害防止効果の基礎となる背後地に存在する各種の資産の数量、価格などについて、平成十年度を基準とした当時の最新データに基づいてこれを見直すとともに、効果の算定につきましても、現在でも一般的に用いられておりますが、その算定手法によりまして測定の見直しを行っておりまして、このような経済効果の算定を行ったことにより、結果として事業効果、妥当投資額が増加することとなったものでございます。

 平成十四年の第二回の計画変更におきましては、その時点での整備状況を踏まえまして、効果を発現するために必要な最小限の投資を行うこととしたため、干陸面積の縮小に伴い作物生産効果等の効果が半減したことにより、事業効果、妥当投資額が減少することとなったものでございます。

大串委員 ここにもありますように、今大臣が御説明されましたね、第一回計画変更時に妥当投資額がふえました。他方、事業費もふえました。費用対効果は、最初一・〇三と見積もられていたものが、第一回変更のときに一・〇一になりました。第二回変更時には、今大臣もおっしゃいました妥当投資額、効果ですね、これが減りました。よって、費用対効果は、御案内のように二千五百億円の費用に対して効果は一を切る〇・八三という数字でございます。事業費は二千五百億円を上回っていますので、結果として費用対効果は〇・八ぐらいになるというふうに聞いておりますけれども、そういうふうになる。

 大臣にお尋ねしたく思いますけれども、公共事業というものは、後ほどまた詳しく議論させていただきますけれども、特に土地改良事業では費用対効果は一を上回らなければならないというのは法律にも決められております。結果として、一を上回らなければならないにもかかわらず、〇・八に終わっている。こういうことから振り返ってみると、この事業はすなわち失敗だったのではないかというふうに私は思いますけれども、大臣の所見はいかがでしょうか。

若林国務大臣 失敗でありましたかどうですかということは、いろいろな評価があろうかと思います。

 この諫早湾の干拓事業は、平成十三年の国営事業再評価委員会の意見を踏まえまして、干陸面積を半分にするなど、第二回の計画変更で計画の総合的な見直しを行った結果、費用対効果が一・〇を下回ったものでございます。

 しかしながら、諫早湾の地域ではたび重なる水害によりまして被害を受けてきた長い歴史がございます。平成十一年の潮受け堤防の完成によりまして、台風や大雨の際にこの事業によります防災効果が大変顕著に見られたところでございます。また、諫早湾を直撃した平成十七年の台風十四号の来襲時にも高潮を防止する効果が発揮されまして、地元からは大変感謝をされたところでございます。

 このようなことから、諫早湾の干拓事業は、諫早湾地域において防災上極めて重要な役割を果たしているところであります。

 さらにまた、干拓地では、委員もおっしゃられました本年四月一日から本格的な営農が開始されておりまして、農林水産省としても、生産性が高く環境に配慮した営農が円滑に展開されるよう、目標を持ちましてこれを進めているところでございまして、今後とも、関係機関と連携をとりながらこれに協力をして、その効果を上げていきたいと考えております。

大串委員 今大臣がおっしゃいました後背地の町において防災効果が見られる等々のことは、私も否定しているわけではございません。それはあるでしょう。潮受け堤防をつくり、干拓事業を行っているわけですから、そのような効果がないと申し上げるつもりは毛頭ございません。

 ただ、事業を行う側の大臣としては、それがある一定の客観的なメルクマールとして、すなわち費用対効果という形として、しかも、法律に決められている一を上回らなければならない、こういうふうに決められているんですね。これは行政上そういうふうに決められているわけでございます。しかし、それが結果として下回っている。

 今、いろいろ定性的なことはおっしゃいましたけれども、しかし、事業を行うかどうか、費用対効果は本当にあるか、一を上回るかというところは、現実問題として厳しく見ていかなければならないんだろうと私は思います。それが結果として一を切っているという意味で、私はこの事業は失敗だったのではないかというふうに思うわけです。

 きょう、文部科学省の方に来ていただいております。

 文部科学省の所管の独立行政法人科学技術振興機構、昔の科学技術振興事業団ですね、ここが失敗百選という事業をまとめております。それをデータベース化して公表しております。文部科学省の方に来ていただいていますけれども、この失敗百選とは何でしょうか。

岩瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今お話にございました失敗知識データベースでございますが、これは独立行政法人の科学技術振興機構が失敗経験から得られた知識や教訓を大学や技術者の組織学習、教育訓練などのために広く活用することを目的として作成しているものでございます。

 失敗知識データベースにつきましては、東大名誉教授の畑村洋太郎先生を委員長として、大学の研究者で構成された失敗知識データベース推進委員会におきまして、失敗知識に関する専門家の視点でデータを収集、分析し、選定を行っているところでございます。

 失敗百選につきましては、この失敗知識データベースの中から、国内外で発生した典型的な事例を百例程度詳細に取り上げたものでございます。

大串委員 ありがとうございます。

 これは資料の二枚目にありますね、失敗知識データベースと。今まさに御答弁いただいたように、失敗知識データベースは、事故や失敗の事例を分析し、得られる教訓とともに共有できる知識として整理し、収録したデータベースです。今もおっしゃいました、広く皆さんで経験を共有できるように、そういう意味で失敗百選という名前のもとに出しているということですね。

 資料の三ページ目にありますけれども、諫早湾干拓事業も失敗百選の一つとして載せられています。公共事業としてこの中に載せられているのはほとんどございません。公共事業の中で載っているものは、百個のうちたしか二つぐらいしかありません。そのうちの一つです。

 三ページにありますけれども、失敗事例として書かれているんですね。四ページ目など見ていただきますと、「対策」とか「知識化」というところがありますけれども、「「走り出したら止まらない公共事業」という国民的批判を背景に、」とか、「再評価システムは数々の不備が問題とされている。」とか、「国はある時期に実施決定した公共事業であっても、社会経済条件の変化について的確に再評価を行うべきである。」と。あるいは、五ページを開いていただきますと、死者数、負傷者数はゼロでございますけれども、「物的被害」は「漁獲高の減少」というふうに書かれています。「社会への影響」ということで「地元住民の反対を無視し、「走り出したら止まらない公共事業」という国民的批判と不信を生み出した。」、こういうふうに書かれています。

 大臣、いかがでしょうか。こういう政府の独立行政法人の公開されているデータベースに、百選のうちの一つとしてこういうふうに書かれている。これを踏まえられても、この事業は失敗だったと思われませんか。

 しかも、もう一つ問わせていただきたいんですけれども、費用対効果が〇・八三になったという理由は、大臣も先ほどおっしゃいました、第一回計画変更の際に、事業費が千三百五十億円の当初計画から二千四百九十億円と大きく増加しております。

 時間がありませんので、そこは私の方から御説明させていただきますと、なぜこんなに費用がふえたのかということを農水省の方にお尋ねしたところ、思ったより地盤が緩かったのでより深く掘って工事を進めなければならなかったとか、あるいは、九七年に潮受け堤防の締め切りをするときに、それまでは順次締め切る方法にしていたのが、一斉締め切りの方がいいんだということになって、それでまた費用がかかったというようなことでございまして、何がしか当初から予測できない天変地異のようなものがあってどうしようもなくふえたというものではなくて、見通しが甘かったというふうに言わざるを得ない、そういうふうな原因から、より工事費用がかかって、そのために最終的に〇・八という数字まで落ち込んでいるわけでございます。

 こういうふうに見通しがあくまでも役所の側で甘かったということを考えると、〇・八三という数字が最初からわかっていたら、この事業はやらなかったんじゃないかと思うんですね。もし最初からわかっていたら、やらなかった事業じゃないかと思うんです。

 こういうことも踏まえて考えると、大臣、この事業はやはり失敗だったと言わざるを得ないんじゃないでしょうか。どうでしょうか。

若林国務大臣 トータルとして考えますれば、先ほど申し上げましたような効果が発現をされているわけでありますし、その有効性というものは非常に大きなものであったというふうに考えているところでありまして、諸般の事情で事業を早く完了させること、そのためには干陸面積を大幅に半減させなきゃいけないというような事情が生じたことを念頭に置きながら、事業規模を縮小した結果として〇・八三というような結果が生まれているわけでございますので、事業全体をトータルとして見れば、決して失敗だとは思っておりません。

大串委員 事業をトータルとして見るとなると、やはりこの費用対効果なんですよ。〇・八三なんです。先ほどおっしゃった、防災効果があった、あれもあった、これは私も認めます。町の方々も恩恵を受けていらっしゃる、これは私も認めます。しかし、トータルとして見ると、やはり費用対効果の数字〇・八三に収れんされている。

 先ほど大臣は災害防止効果も含めていろいろな効果はあるんだということをおっしゃいました。そこをもう少し詳しく見てみたいと思います。

 資料の六ページ、「諫早湾干拓事業の効果一覧」にあらわれています。上から作物生産効果、災害防止効果、国土造成効果、その他となっていますね。それで、妥当投資額として下に全部まとめられています。千三百九十億が、第一回変更、第二回変更に伴って二千五百九十億、二千百二十億という妥当投資額になっている。これとの比較で費用対効果が考えられているわけでございます。

 この中で一番大きいのが災害防止効果ですね。見ていただくとわかります。これが当初計画から第一回変更になるときに大きく上がっていますね。これは、第一ページ目とあわせ読んでいただきますと、第一ページ目に、事業費が当初千三百五十億円から第一回変更のときに二千四百九十億に大きくはね上がっている。事業費が大きくはね上がっているにもかかわらず、なぜそれでも費用対効果が大きくがさっと下がらないかというと、六ページにありますように、災害防止効果が六百六十億から千五百二十億へと大きくかさ上げされているんですね。これが非常に大きくきいているわけです。

 ただ、なぜこの災害防止効果が大きく上がっているのかというふうにその内容をお尋ねしてみますと、大臣も今いろいろおっしゃいましたね、価格の調整を行ったとかいうことも冒頭おっしゃって、その次に、被害を受ける財の評価の方式も変わったんだということをおっしゃいました。

 七ページを見ていただければと思います。

 平成九年から十年にかけて、公共事業の効果に関する評価の方法が変わったんだという、まさにそのとおりのことが私もわかりました。これは農水省からいただいた資料ですけれども。

 「公共土木施設」等々のところで「再建設費」と書かれていますね。すなわち、この諫早湾干拓の潮受け堤防なかりせば、高潮などが起こったときに、わあっと波が押し寄せてきて、対岸にあるいろいろな公共土木施設等々が壊れてしまう、損壊してしまう、この再建設費がいわば効果なんですというふうな計算方法になっているんですね。

 ここは、こういう評価方法ではなくて残存価値みたいなもので考えられていた。ところが、平成十年から、ここは、再建設費、すなわち真新しいものをつくるとしたら幾らかかるかという、そういう価格が計算の積み上げとして使っていいんだということになった。当然、真新しいものをつくるためにはお金がかかります。それが効果として額の積み上げができるということになったものだから、六ページにあるように第一回変更のときに災害防止効果がどんと上がっているということなんですね。

 しかし、大臣、これは私は役所にしか通じない論理だと思うんですね。普通、例えば損害賠償請求でも保険事故の場合でも、何がしかの耐久消費財や不動産等に対する補償を行う際には減価償却という考え方を入れます。ある物がつくられて、長い年数たって、その役務を年々達成してきている、それによって減損してきている、その減損分を差し引いて、残存のいわゆる価値というものを減価償却した後考える、それを補償するというのが通常の一般民間の考え方です。

 公の補償においてのみこういうふうに額がどんと高く出るように平成十年に計算の方法を変更している、これによって、事業費が大きく上がったにもかかわらず妥当投資額、便益が下がらないようになっている。これは大臣、こういうふうな便益の計算方法はおかしいと思われませんか。

若林国務大臣 何かあたかも任意に行政側の都合でこの計算評価方式を変えたかのように受け取れるお話がございましたけれども、決してそういうことではございません。

 当初は、公共土木施設については耐用年数を考慮した残存価格方式で評価するという、まだ共通のルールがないときにそのような評価をしたものと承知しておりますが、その後、委員もおっしゃられますが、どれだけの機能、どれだけの価値を持っているのかということに着目をしまして、既存施設と同じ機能を有する施設を現時点で建設すればどれだけの費用が必要かという再建設費をもって評価することが妥当と考えられるようになったのでございまして、この考え方のもとで、土地改良の経済効果に関する具体的な算定手法の検討においては、再建設費を資産評価額とすることで昭和六十三年三月に算定手法を示したマニュアルが取りまとめられ、堤防などの公共土木施設につきまして再建設費で算定するということを明記したところでございまして、諫早のためにやったものではありません。

 また、他の公共事業を見ましても、例えば平成九年度には海岸事業の費用対効果分析手法というものが定められております。海岸堤防というのは農業土木の場合におきます堤防などと類似のものでございますが、この分析手法が定められて、公共土木施設につきましては、海岸事業を所管する関係省庁、これは運輸省、建設省、そして海岸を所管しています水産庁なども共同で、関係省庁が共通の考え方でこれを採用したものでございます。

 このように、資産の評価額につきましては再建設費で評価することが一般的になったということから、平成十一年度に行われた第一回の計画変更時に本事業においてもこれを見直すことに至ったという経緯のものでございます。

大串委員 諫早湾干拓事業の便益をかさ上げするためにやったものではない、これは他省庁横並びでやったものなんだ、その経緯は私も説明を聞きました。

 私が大臣にお尋ねしたかったのは、全省庁一致して行っていらっしゃる、真新しいものをもう一回つくると、という再建設費を効果額として計算するやり方は、一般民間の考え方からすると大きくおかしくないですか、効果があたかも大きく出るような数字をとるというような考え方からやられているのではないですか、これに基づいてやると、いろいろな物事が効果あり、効果ありとなって偏ってしまうのではないですかというようなことを申し上げたかったわけです。大臣、それはおかしいと思われないですか。もう一度お願いします。

若林国務大臣 住宅でありますとか自動車といったような、耐久性はありますが、そういう消費財についてはいわゆる資産として評価するということでありますから、現在価値、これは市場流通した場合には市場価格を推計の基礎といたしまして減価償却などを経て価格を決める、評価額を決めるということでございますけれども、道路でありますとか堤防といった公共土木施設については、この市場流通の概念を適用するのは不適切だと思います。

 これらの施設については、その施設が有している役割を果たしている機能というものをどのように評価するかという点で評価手法を考えることが妥当だと考えているわけでございまして、その施設が現在どれだけの市場価値を有しているかということではなくて、どれだけの役割、価値、機能を有しているかということに着目をいたしまして、既存施設と同じ機能を有する施設を現時点で建設するとすれば、どれだけの費用が必要になるかという再建設費をもって評価することとしていることにつきましては、私は妥当なものだというふうに考えております。

大串委員 一般の感覚からすると、通常はそうではない。不動産でも、先ほど申し上げましたように、保証等々を考えるときには通常は減価償却という考え方を入れるんです。そういう観点からすると、この公的な公共事業に関する効果の計算方法は明らかに過大だと思うんですね。

 こういうふうに効果が大きく出るような、いろいろおかしいところがたくさんあるんです。例えば、今のところも一つですけれども、もう一つ、きのういただいた資料、六ページですけれども、災害防止効果が一番大きな効果となっておりますね。見ていただくとわかると思います。

 最終的には、全妥当投資額二千百二十億のうち災害防止効果は千四百七十億、約四分の三が災害防止効果。だから、大臣は災害防止効果があるんだとおっしゃるんだと思うんです。この内容を詳しく教えていただきました。資料を配ればよかったのですけれども、配りそびれてしまったので、いただいた資料の内容を詳しく御説明させていただきますと、農水省の方から災害防止効果の内訳を教えていただいたところ、この六ページには「潮受堤防を造成し、調整池を設けることにより、背後地の農業用施設や農地等に係る高潮及び洪水被害が防止又は軽減」というふうに農地等のことが書かれているので、これが大きいのだろうと思って見たところ、内訳のうち農地は一五%足らずなんですね。内訳のうち一番大きい被害額、あるいは被害を防ぐという意味において妥当額、効果額の一番大きいのは堤防なんですよ。五割が堤防なんです。つまり、大まかに言って、この千四百七十億の五割は堤防を守る。

 これはどういうことかと私思いましたら、要するに、諫早湾の入り口のところで七キロの潮受け堤防をつくっている、その内側に、内海に、これは公共施設でありますけれども、ずっと長い堤防があります。潮受け堤防をつくることによって災害防止効果が発揮され、もしこの潮受け堤防がなければこの内側にずっとあった堤防が壊れてしまう、この堤防が壊れてしまわないようにする効果が災害防止効果のうちの約半分を占めている。堤防を守るために堤防をつくっている。一体これはどういうことですか。しかも、それが半分。

 すなわち、この災害防止効果は、先ほど申し上げましたように、妥当投資額、つまり効果のうちの四分の三、七五%を占めています。七五%のうち半分、すなわち三七・五%、約四割弱は堤防の内側の堤防を守るためにできている。一体これは本当に効果がある事業なんでしょうか。どうですか、大臣。

若林国務大臣 私は一つもおかしいと思いませんね。つまり、その堤防によって干拓地の干陸地を保護しているわけですね。その外側に潮受け堤防をつくるわけですね。だから、もちろん内側の堤防も含め、背後地も含め、全体が災害防止の効果として評価されなければ全体の防止効果というのは出ないんじゃないでしょうか。

大串委員 災害の防止をするのであれば、もともと内側にあった堤防を強くする、高くする、強化することで済むわけであります。この堤防を守るために外側にもう一個つくり、外側にもう一個つくった堤防の効果は何かというと、内側の堤防が壊れないということです。どう考えても一般の方々には理屈がつかない、そういうことじゃないかと思うんです。

 もう一つ、大臣、この効果の計算のところで、私がえっと思ったことがあるんです。

 災害防止効果、すなわち、ある一定の高さの防潮堤防をつくっているわけです。この高さより低いいろいろな公共物が高潮が来ても壊れないという意味において、この高さ以下のところが被害を受ける、壊れる、この金額を足し込んで妥当投資額としているわけでございますけれども、では、この高さ以降のところは守られるので大丈夫という、この高さはどうやって決めているのかというふうに聞きましたら、資料の八ページ、九ページ、「海岸保全施設築造基準解説」、これは昭和四十七年三月に農水省等々の方々がつくられている。海岸事業を行って堤防をつくる際に、どういうもの、どういう高さ以下のところを守ろうとするか農水省の方に聞きましたら、諫早湾干拓事業をつくったときにこの高さまで守ろうと、その高さとは何か、伊勢湾台風が来ても越えない高さにしよう、そういうことだったそうですね。大臣もうなずいていらっしゃいます。伊勢湾台風です。本当にそこまでのものを積み上げる必要があったのか。

 九ページを見ていただくと、これがその資料でございます、下線を引いています。これをよく読んでみると、伊勢湾台風が来るという前提でつくらねばならないと書いてあるわけではないんですね。下線部を読むと、これは四十七年で、伊勢湾台風は昭和三十四年ですから、それから十年後ぐらいに書かれている、「近年東京湾、伊勢湾、大阪湾など重大な被害が予想される地域においては、最大潮位偏差あるいは高潮を電子計算機で、数値模型実験によって検討する方法が試みられている。これらは実際の台風を含め、各種のモデル台風(例えば伊勢湾台風をモデルとしたもの)を、いくつかの経路を仮定して来襲させ、高潮の様相を検討するものであり、必要に応じてこのような手法を採用してもよい。」というようなことが書かれているわけでありまして、伊勢湾台風が来ても大丈夫というふうに、一〇〇%つくらなければならないとは書いていないわけであります。

 なぜ伊勢湾台風が、大体、その後日本に伊勢湾台風と同等のものが来ているかどうか、大臣は御存じですか。御存じないですね。伊勢湾台風というのは、御案内のように室戸台風、枕崎台風とあわせて三大台風と言われている。こんなでかいのは今まで来ていないんですよ。しかも、それを一〇〇%守らなければならない。ダム等の公共事業においては確率論を加えて、こういう水害が例えば三十年に一回、五十年に一回来る、その確率論を掛け合わせて効果を算出しますけれども、この場合には確率論も考えなくて、伊勢湾台風のようなものが必ず来る、そのときに一〇〇%守る、それが効果だという計算をしている。いつ来るのかわからない。大臣、これもおかしいと思われませんか、どうですか。

若林国務大臣 決しておかしいとは考えておりません。

 干拓事業における潮受け堤防の堤防の高さにつきましては、高潮による被害から堤防の背後地を完全に防御するという考え方が基本になっているわけでありまして、この考え方のもとに立ちますと、一般に堤防の高さというのは、設計高潮位(計画高潮位)に来襲する波に対する必要な高さと余裕の高さを加えた高さとして決定されるわけでございます。

 海岸の場合、計画高潮位の決定に当たりましては、関係三省が共同で取りまとめております「海岸保全施設築造基準解説」、これは昭和四十七年の三月に定められているものでありますが、「重大な被害が予想される地域においては、最大潮位偏差あるいは高潮を電子計算機で、数値模型実験によって検討する方法が試みられている。これらは実際の台風を含め、各種のモデル台風(例えば伊勢湾台風をモデルとしたもの)を、いくつかの経路を仮定して来襲させ、高潮の様相を検討するものであり、必要に応じてこのような手法を採用してもよい。」と、委員がおっしゃられたように定められているわけであります。

 この事業では、この潮受け堤防が計画高潮位までの高潮を防止する機能を災害防止効果として算定しているわけでございまして、具体的には、潮受け堤防による高潮及び洪水の被害が防止または軽減される効果を算定しているものでございます。

 海岸保全事業における設計高潮位の算定方法を見ますと、有明沿岸地域において平成二十年度実施中の十一地区では、伊勢湾台風級の台風が来襲したケースを想定した検討が行われております。

 また、伊勢湾台風級の台風が来襲したケースを設計高水位としている地区は、直轄事業で一地区、補助事業地区で七地区、他の地区についてもこの方式を採用しているものでございます。

大串委員 今の説明は、私は、ますます国の公共事業はこれでいいのかという思いを強くさせるんです。すなわち、他地区においても伊勢湾台風は必ず来るという、確率論を入れない設計高水位でつくっている、そういうことなんですね。

 これが本当にいいんでしょうか。伊勢湾台風が必ず来る。そして、効果の約四割近くは、堤防の内側の堤防を守るという効果。しかも、その内側の堤防を真新しく建設する、その建設コストが効果なんだと。それが効果として計上され、それでも費用対効果は〇・八三。この事業は、私たちの税金を使って行って本当によかったんだろうかと私は強く思わざるを得ません。

 土地改良法の問題についても指摘させていただきたいというふうに思います。そして、再評価の方法についても指摘させていただきたいと思います。

 土地改良法において、公共事業は費用対効果が一でなければならない、こういうふうに法律上定められています。しかし、計画変更が行われ、計画を変更して進められる場合には一を切ってもよいという法律になっています。これが大きく問題なんだろうというふうに私は思っています。そして、再評価の仕組みも今入れられています。しかし、そのような再評価の仕組みを入れたとしても、結果として〇・八三という費用対効果しか生まない事業が行われてしまう。大臣、この仕組み自体に問題はないでしょうか。

 この仕組み自体を、土地改良法の計画変更のときには費用対効果は一を上回らなくていいというこの仕組み、そして結果として〇・八三になるというこの再評価の仕組み、これは見直さざるを得ないのではないでしょうか。どうでしょうか。

若林国務大臣 委員が御指摘のように、事業の計画変更に当たっては、法律上は費用対効果が一・〇以上であるということは求められておりません。その規定を計画変更については準用しないということで適用しないことにしているわけであります。

 今のは国営の土地改良事業についてでありますが、これは、事業規模が非常に大きいために、一般的に言えば工期が非常に長期にわたります。また、事業を取り巻くその間の社会経済情勢の変化が生ずる可能性が大変大きくあります。このような場合には事業規模を縮小することが妥当だとされる場合もありますし、これに伴う附帯的な工事を実施して、早期に事業を完了させることがより公益にかなうというふうに考えられる場合もあるわけでございます。そういうような状況になったときに、工事はやめられないというかゼロにするわけにいきません、工事を変更して、今までの工事の事業効果はそれなりに生かして使っていかなきゃいけない。こういうことがあるために、総合的な価値判断によって、土地改良法上は計画変更においては費用対効果が一・〇以上であるということを求めないこととしているわけでございます。

大串委員 その大臣の説明は説明として私は聞きました。

 しかし、結果として費用対効果が一を下回るような事業が今後も起こる仕組みになっているわけであります。今、これを変えなくていい、この仕組みでいいんだとおっしゃった。私はその感覚には同意することはできません。結果として一を下回るような公共事業が今後も行われていいというふうに、政治家として私はとても言うことはできない。そこは大臣と見解を大きく異にするものであるというふうに言わせていただきます。

 この公共事業のあり方の問題に引き続いて、諫早湾干拓事業と漁業被害の関連について少しお話しさせていただきたいと思います。

 諫早湾干拓事業が行われ、潮受け堤防が九七年に締め切られて以降、有明海においては漁獲高が激減しました。それによって漁業を続けられない方々が多数出てきていらっしゃいます。生活を続けられない、家庭が崩壊する、地域が崩壊する。ある地域のお祭りは、若者の裸祭りがことしの一月まで行われていましたけれども、来年から若者がいないものだからなくなるそうです。こういう地域が続出してきています。

 そういう中で、諫早湾干拓事業と漁業被害の因果関係について農水省の方々と議論すると、因果関係はないんだということを多々おっしゃいますけれども、ぜひ指摘しておきたいのは、資料で言うと十四ページ、十五ページです。

 十四ページは、諫早湾干拓事業の工事差しとめ仮処分認可決定に対する保全抗告申し立て事件で福岡高裁で出された判決でございます。数年前であります。ここで因果関係がないとは裁判所も言っていないんですね。下線を引いていますけれども、「本件事業と有明海の漁業環境の悪化との関連性については、定性的にはこれを否定できないが、定量的にはこれを認めるに足りる資料が未だない」。データがないんだと。それはそうですよね、中長期開門調査も行っていないんだから、あけた状態と締めた状態とどういうふうな違いがあるのかというデータがない。だから、資料がないと言っているだけであります。

 一枚おめくりいただきまして、公害等調整委員会における裁定においても、「結論」のところで「諫早湾干拓事業による環境影響との関係につき高度の蓋然性を肯定するには至らず、」と言っていますけれども、「付言」のところで「環境変化の可能性は否めないものの、これを裏付ける客観的データがなく、」、だから「高度の蓋然性をもって肯定するに至らなかった」、さらなる調査研究が必要なんだ、こういうふうに言っています。

 ですから、被害と締め切りとの間に因果関係がないということは裁判所も言っていなくて、定性的にはこれがあるんだ、ただ、資料、データがないんだと。中長期開門もしていない中で、開門した状態と閉門した状態とどう違うんだということもわからない中で、資料がないんだということを言っているだけなんです。そこは私は農水省の皆さんにもしっかり認識していただきたいというふうに思います。

 そういう中で、先週金曜日に、地域の漁業者の方々が、データを集める、データが必要なんだと、開門をした状態と開門していない状態で何がどう違うのかというのを自分たちも追求したいという思いの中で、開門と損害賠償請求を求める訴を提起したいということを発表されました。個人の皆さんが訴を提起するについては、非常な決心、勇気があろうと思います。それをやるときにもいろいろな不安な思いもあられるんだと思います。例えばこれをやると国からにらまれないか、地元においては調査事業や海底耕うん、覆砂事業、あるいはいろいろな管理事業等々が行われています、それがこういう訴を提起すると国からにらまれてとまったりしないかというような不安の声を抱く人もいらっしゃるでしょう。

 大臣、ちょっと事実関係としてお尋ねしますけれども、この訴を提起するという動きがあり、かつ先週金曜日にそうしたいという発表がなされたわけですけれども、これを受けて、これを理由として、現在行われているあるいは今後行われようとしている国による海底耕うんや調査、管理事業等が、現地の当該人あるいは当該人が所属する組織、組合等々に対して打ち切りますよ、あるいは今後打ち切りますよというふうに言われたことは事実としてあるんでしょうか。

若林国務大臣 委員からのお話がございましたので、九州農政局などの担当部局に確認をいたしましたが、そのような事実はないというふうに申しております。

大串委員 私も、よもやないだろうというふうに思います。訴を提起するというのは、憲法上定められた個人の権利、個人に認められた権利でございます。その中で、自分としてはこういう行き方でいきたいというふうにお考えの方がいらっしゃるということでございます。

 大臣にいま一つお尋ねしたい。

 今年度も、当該地域においては、海底耕うんや覆砂、あるいはいろいろな調査や管理事業等々が行われる予定になっております。今回、開門あるいは損害賠償等の訴を立てることのみをもってして、合理的な理由もなく、圧力ともとられない形で国からそのことを理由に事業を打ち切りますと、よもやそういう圧力的なことはないというふうに理解してよろしいか、御返事をいただきたいと思います。

若林国務大臣 今委員がおっしゃられたように、底質や潮流などについて必要な調査の一部を漁協などに委託を行っておりますけれども、今後ともそのようなことを理由にしてこれを打ち切るというようなことはありませんし、今後とも必要に応じて委託はしていくつもりでおります。

大串委員 ありがとうございます。ぜひ今おっしゃったような公正な運営をお願いしたいというふうに思います。

 先ほど、この裁判の中でも言いました、裁判所は漁業被害との因果関係については定量的にはこれを認めるに足りる資料がいまだないと言っています。十四ページの資料をいま一度見ていただくと、高裁の判断においても、この高裁は結局工事差しとめの仮処分を認めなかったわけでありますけれども、それでもこういうふうに言っているわけです。

 そして、さらにこの十四ページの下の方の下線ですけれども、「その意味で、これらの原因について更に究明するために、本件事業を所管する九州農政局は、ノリ不作等検討委員会の提言に係る中・長期の開門調査を含めた、有明海の漁業環境の悪化に対する調査、研究を今後とも実施すべき責務を、有明海の漁民らに対して一般的に負っている」というふうにあえて中長期の開門調査も含めたということを、あたかもこの上の「定量的にはこれを認めるに足りる資料が未だない」ということと呼応する形で言っているわけでございます。

 漁民の皆さんの今の思い、願いは、中長期開門調査を行ってほしいという声であります。中長期開門調査を行うことによって、潮の流れが以前と同じような流れに近づいたらどういうふうな影響があるのか、好影響があるんじゃないか、それをもとに、諫早湾干拓事業も完工した今、農業も含めて一緒に共存できる道を探していけるんじゃないかという思いであります。

 大臣にお尋ねしますけれども、中長期開門調査はなぜできないんでしょうか。

若林国務大臣 中長期の開門調査の実施につきましては、十分な対策を講じたとしても予期できない被害が生ずる可能性があること、その調査には長い年月を必要としまして、その調査の結果は明らかでないことなどから、委員も御承知のとおり、平成十六年五月に、当時の亀井農林水産大臣の判断として、中長期開門調査にかえて、有明海再生に向けた調査、現地実証などを実施するという方針を決めたわけでございまして、この判断に変わりはございません。

 農林水産省としては、今後とも、漁業者の方々とともに、有明海の再生に向けた調査、現地実証に取り組んでまいりたい、このように考えております。

大串委員 資料の十六ページを見ていただければと思います。農林水産省の方から「中・長期開門調査が困難な理由」を、今大臣も触れられましたが、いただきました。幾つかのことがここに書かれています。開門調査を行うと速い潮の流れが生じるので漁業に被害が起きるとか、後背地へ影響を生じる、すなわち、調整池の中が塩水化しますから、塩水が入ってきますから、これによって後背地に水の面とかで影響が生じる。一番大きいのは、これは複数回書かれていますけれども、中長期開門、常時開門すると、二百五十メートルしかない開門の幅の中で潮の流れが行ったり来たりするから、非常に速い流れになって土泥の巻き起こりがあって環境被害があるんじゃないかということですけれども、それを防止しながらやる方法も提起されているわけであります。

 すなわち、いきなり常時開門、全開するというわけではなくて、例えば外側が下げ潮時に、有明海は六メートルの干満の差がありますから、下げ潮時にそれに合わせて調節しながら少し下げて、一定のところでとめる。また、満潮になっていくときに少し上げられるようにあける。そういうふうに、外側と全く同じような潮の動きじゃなくて、制限しながら開門を行うという潜り開門の方法も提起されているわけでございます。

 実際、大臣、かつては短期開門調査として約数十日でございましたけれども、このように潮の流れを制限する形、秒速一・六メートル以下に抑える形での開門調査は行われています。そのときにおいてすら、周囲の漁業者の方々からは、いい影響が見られたという声が多々寄せられています。今おっしゃいました、予期しない被害がいろいろ生じる可能性がある、あるいは潮の流れが速い可能性がある、潮の流れについては制限した開門の方法でクリアすることができます。予期しない被害が発生するおそれがあるとも言われましたけれども、短期開門調査は制限した方法で実際行ったことがある。それでも予期しない被害は起こらなかった。予期しない被害があるというのであれば、例えば短期開門調査のときのように制限した方法で、日にちを区切って少しずつ、被害が出ないかを慎重に見ながらやっていく方法もあるんじゃないかと思うんです。そのように制限した方法も加えながら柔軟に考えて、中長期開門を考えるということはできないんでしょうか。どうでしょうか。

若林国務大臣 委員がおっしゃっている方法、御提案というのは、いわゆる潜り開門と言われるやり方であるというふうに承知をいたしますが、このような排水門を操作しながら中長期開門調査を実施する、中長期にそのことを実施するという方法について申し上げれば、常時開門する方法に比べて、確かに被害防止対策の規模は小さくなるものの、短期の開門調査の際にも漁業被害が出たこともございます。そういう意味では、予期しない被害が発生するおそれは依然としてあるというふうに言わざるを得ないと思うのであります。

 そして、二つ目は、この地域は雨の予測が極めて難しい地域でありまして、予期しない豪雨が発生した場合、今までもいろいろな例がございますが、排水門の操作の誤りというようなことがその結果として起こり、人為的被害を発生させるおそれもあると考えるのでございます。

 そういう中で、海水の導入量などを制限して調査を仮に行ったとしても、これまでの短期の開門調査以上に得られる成果は見込まれないというふうに考えられますことから、農林水産省としては、このような方法による調査を実施することはできないものと判断をしているところでございます。

大串委員 今、豪雨のときのことなんかもおっしゃいましたけれども、予期せぬ豪雨が来たら閉めればいいわけです。だって、今もとめているわけですから。とめているがゆえに豪雨に対して対応できると言っているわけですから、そのときは閉めればいいわけであります。そういうふうな対応は十分できるわけであります。予期せぬというふうにおっしゃいましたけれども、そういうふうに対応する方法は幾らでもあるわけでございます。

 最後に、今村副大臣にお尋ねさせていただきます。

 今、やりとりを聞いていただきました。今村副大臣と私は地元を同じくしております。いろいろな漁家の方々の声も聞いていらっしゃると思います。中長期開門が強い思いであることは御存じだと思います。今のやりとりを聞いていただいて、中長期開門をすべきではないかという声に対しどういうふうな御感想をお持ちになったか、聞かせていただければと思います。

今村副大臣 中長期開門調査の実施につきましては、ただいま大臣が御答弁申し上げましたとおりでございます。現在、司法の場でこれは係争中でございますので、それ以上のコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 なお、強い海づくりにつきましては、引き続き漁業者の方々とともに調査や現地実証あるいは海底耕うん、覆砂等々の諸施策を強力に実施して、全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思っております。

大串委員 農業が開始された今、かつ、きょう議論できませんでしたけれども調整池の水質の問題も大きく取り上げられている今、その調整池の水質の問題があるがゆえに干拓地で行う農業についてもきれいな水をどうやって確保していくのかという問題もある今、私は、中長期開門も含め、近隣の漁業と農業とを一体的によくしていく方法というのは知恵を出して考えていけばあり得るんじゃないかというふうに思っています。ですから、大臣、中長期開門調査、イメージしていらっしゃる中長期開門調査は絶対だめだというふうに考えられるのではなく、どういうふうな開門のあり方ならあり得るんだということを柔軟に、かつアイデアを出しながらいろいろな論点を個々につぶして今後に生かしていただければというふうに思います。

 いずれにしても、近隣の漁家の皆様は、本当に塗炭の苦しみを負う状況でございます。そこのところをぜひ胸に置いていただいて、事案の対応に当たっていただきたいというふうに思う次第でございます。

 以上です。終わります。

宮腰委員長 次に、横山北斗君。

横山委員 今月五日の未明に、青森市の陸奥湾でホタテ漁船の遭難が起こりました。漁船には八人が乗っていて、六人の方がお亡くなりになり、なお二人の方が行方不明という状況であります。事故原因につきまして、同じホタテ漁を営む漁業者の中に、ユウレイボヤと呼ばれるホヤのせいだろうということをおっしゃった方がおられました。

 というのは、海上保安庁の調査によって、沈没した船には、もう既にホタテの養殖かごの大部分が水揚げされていたことが明らかとなっているんですけれども、その際、船に積まれるホタテの重さは大体三トン前後になるだろう。ところが、ユウレイボヤと呼ばれるホヤの一種が養殖かごに多数付着すると詰まってしまって、かごを引き揚げることも困難になる。非常に重たくなる。これによって船体を保つことが難しくなっていたところに、強い追い風、追い波を受けたんじゃないかということをおっしゃる方がいるわけです。

 私は、この調査中の事故原因について何か言及するとか、そういうつもりは全くございません。そうじゃなくて、例えばユウレイボヤのせいなんだというような言葉が地元の漁業者の間から出てくること自体に、常日ごろからホタテ業者たちがその漁に際して、こうしたユウレイボヤと呼ばれるものに悩まされていて、それゆえ対策を講じてほしいということをお願いしていたのに十分な策が講じられることなく今日に至っているという、一つの不満の大きなあらわれなのではないかと私は考えております。

 そこで、きょうは、この陸奥湾でホタテ業を営む方々が日ごろから対策を講じてほしいと考えていること、もちろん、政治、行政サイドが親身になってやればできるはずの問題につきまして、大臣、関係各省の皆様に漁業者の声をお届けいたしたく、三十分という質問時間をいただきました。

 それでは、質問を始めさせていただきます。

 まず、貝毒というものの検査からお聞きしたいんですけれども、ホタテ貝のような二枚貝は植物プランクトンをえさとして食べております。これが毒素を含む植物プランクトンであるということで、貝毒を持つことがある。現在、貝毒を検査する際に、マウスによる検査が行われているのですけれども、これにつきまして、どういう方法で行われているのか。また費用、どれぐらいお金とかかかるのか、教えていただけないでしょうか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 食品衛生法におきます有害、有毒なものの取り扱いということで、麻痺性貝毒及び下痢性貝毒の検査法及び規制値が通知により示されております。

 その方法でございますが、貝の可食部等の抽出物から調製した試験溶液を複数のマウスの腹腔内に注射いたします。その後、麻痺性貝毒では十五分間、下痢性貝毒では二十四時間までに死亡に至るマウスが何匹であったか、その数をもとにいたしまして、一定の計算方法に基づきまして、可食部一グラム当たりの毒量を算定するという方法をとってございます。

 これらの検査に要する時間でございますが、試験溶液の調製から毒量の算定までで見た場合、麻痺性貝毒の場合はおおむね一日、下痢性貝毒の場合はおおむね二日で結果が判明するということになっております。

 それから、今、どれぐらいの費用かというお尋ねをいただいたんですけれども、これは私ども、手元にございませんので、わかる範囲で、また後ほど御報告させていただきます。

横山委員 それでは、今説明を受けましたマウスによる検査にかわる貝毒の検査方法というのが水産研究所等において開発されているとお聞きしました。この研究開発中の検査についてお尋ねいたします。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、水産総合研究センターに委託をいたしまして、平成十五年度から十九年度に貝毒安全対策事業等によりまして、貝毒簡易測定キットそれから貝毒成分の機器分析法の開発をしたところでございます。

 具体的には、平成十八年度には、ホタテ等の二枚貝類を確定試験法であるマウスを用いた毒性試験に供するべきかどうかを判断するために、生産現場において二枚貝中の下痢性貝毒、麻痺性貝毒の含有を早期かつ簡便に把握する手段として、貝毒簡易測定キットが有用であることを明らかにしたところでございます。また、下痢性貝毒の機器分析法を開発するとともに、この方法がマウス毒性試験にかわる迅速な確定試験方法として使用できる可能性を示したということでございます。

横山委員 同じこの貝毒の研究開発を厚生労働省もされているそうですけれども、それについてお尋ねいたします。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでに、厚生労働省では、厚生労働科学研究を用いまして、動物を用いない検査方法、マウスを用いない検査方法ということで、液体クロマトグラフ質量分析法の開発等について検討を行ってまいりました。

 液体クロマトグラフ質量分析法は、感度、特異性についてすぐれていることが確認されておりますけれども、検査に際し必要な標準物質の作成がまだ終了していないという状況でございまして、現在も鋭意開発を進めているところでございます。

 平成二十年度につきましても、引き続き、標準物質の作成、検査法の開発に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

横山委員 ちょうど二年前の平成十八年五月三十一日のこの農林水産委員会で、仲野博子委員の質問に対しまして、こういう答えがございます。

 貝毒対策は、迅速かつ正確な分析方法を開発するのが一つの課題であり、平成十五年度から、機械によっていろいろの種類の毒をできるだけ短時間かつ正確に開発する研究を始めている、十五年から始め、十九年度までに実用化の技術を完成させる目的で今やっているという答弁がございました。また、もう一つ、現場での対応が大事ですから、生産現場の近くで迅速に貝毒があるかどうかということを簡便な方法で調べるということも大事であり、同じように十五年度からスタートさせ、十八年度までの予定で現場即応型の貝毒検査技術ということで、簡単なキットを使って判別できる検査キットを開発中である。

 ということは、この答弁からもう既に時期がたっていると思うんですけれども、これは結局間に合わなかったということなんでしょうか。

 いま一つ、この方法は、今いろいろな専門用語も出てきてわからないんですけれども、マウス検査よりも費用は安くて済むんでしょうか、どうでしょうか、お尋ねいたします。厚労省の方でお願いいたします。

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 費用の関係ですけれども、ちょっと手元に正確な数字等ございませんけれども、簡易キットによりますものにつきましては、結果等も即時に出てまいりますし、費用等も相当程度安くできるかというふうに思っています。

 現在のところでは、マウスを用いたものに至るまでの間で、早期の、貝毒がどのぐらい出ているとかそういうことを見るための方法として有用ではないかというふうに思っているところでございます。

横山委員 貝毒を検査する方法の中で、このマウス検査の方法というのが、マウスですから、当然、雄の体力の似通ったマウスを何十匹もそろえなければいけないとか、それで動物を殺してしまうことへの問題点も指摘されているわけですね。

 それにかわって、今、新しい制度を開発中であり、十九年度中にはということがあったんですけれども、結局、それはまだ今の段階ではできていないけれども、これからも開発中であり、そして、その開発中のものは、少なくともマウス検査よりも日数も短く、正確で、そして費用も安くて済むものであるという理解でよろしいのでしょうか。

宮腰委員長 どちらに聞きますか。

横山委員 厚労省でも。

宮腰委員長 でも、でもというと何か……。

横山委員 これは、仲野博子先生の御質問に答えたのは厚労省だと思います、平成十八年五月の段階で。

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 少し説明が重ねてということになりますけれども、先ほど申しましたような簡易キットの関係につきましては一応でき上がっておりまして、それから、機器分析法につきましては、下痢性貝毒につきましては開発が進んでおりますけれども、麻痺性のものについてはまだ作業が残っているというところもございまして、今後、引き続き努力していくことが必要かというふうに思っております。

 いずれにしましても、厚生労働省とよく連携をとりながら進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 一点、補足をさせていただきたいと思います。

 ただいま佐藤局長の方からもお話ございましたが、現在、農林水産省の方で開発しておられます、いわゆる簡易法と言われる方法、これはかなり開発が進んでいるというふうに理解いたしておりまして、その用途というのは、スクリーニングに用いるということでありまして、一定の海域において問題のあるような毒が貝に含まれているかどうかということを、ある意味で定性的に種類を問わずそういうものがあるかどうかということを把握するというような段階では有用であるというふうに私ども理解しておりますが、私どもの食品衛生法の適用というのでは、一定の規制値というのがございますので、それを定量的にはかれるかどうかということが問題になってまいります。

 そういう意味では、現在の段階で、専門的な話になりますが、先ほど申し上げましたような液体クロマトグラフ質量分析法を活用して、感度のいいものを開発しているわけでございますが、それがまだ実用化には至っていないという段階でありますので、現時点では、定量的にはかるためにはマウスを用いた検査方法によらなければならない。

 しかしながら、先生おっしゃられますように、マウスを使うという制約がございますので、なるべく早くこれを開発して、そのような新たな感度のいい方法を用いて定量的な分析ができるように、私どもも努力をしておりますし、農林水産省の方でも努力をされている、こういうふうに理解をいたしております。

横山委員 では、まだ開発中ということを理解いたします。

 それで、実際貝毒が出たときに、検査で基準値を超えると出荷を産地では自主規制するんですが、その期間が三週間である。漁業者の間では、三週間というのは長い、もっと短くならないかなという声があるんですが、三週間は農水省が指導しているものだと思いますけれども、どういう根拠なのか、ごく簡単にお答えください。

佐藤政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、禁止されて、出荷自主規制が行われている生産海域におきまして、三週間連続で規制値を下回った場合に、出荷再開が可能になるということでございます。

 それで、これまで貝毒の蓄積といいますものは、毒化原因となるプランクトンの出現状況等に影響を受けるものでございまして、検査の結果、二週間連続で規制値を下回ったにもかかわらず、三週間目になって再び規制値を超えるような場合もございまして、また、この貝毒の場合、最悪の場合にはかなり重篤になるということもございまして、現時点におきましては、自主規制の三週間を短縮するというような考え方ではございません。

 以上でございます。

横山委員 そうしますと、食の安全ということは重要な問題でありますから、この期間を短縮したことによって貝毒による被害が及んではいけないので、あくまでも三週間は今必要だろうということで、なおかつ、その検査方法についても、マウスで検査することはいろいろ問題があるとは感じているけれども、現段階でまだ新しい方法が開発されていない、それはこれから努力していくということで、その二点についてはわかりました。

 それでは、この貝毒を調べる場所、監視するための貝毒の検査区域ですね。青森県全体が六地域に分かれていて、今回事故がありました青森県の陸奥湾の中が陸奥湾の西部地域と陸奥湾の東部地域と二カ所に分かれて検査をするということなんですけれども、この検査方法、昔は陸奥湾内は全体で一つだった、それがいつのころからか二つに分かれた。なぜそれを二つに分けたのか。

 それから、調査の場所というのも、定点調査なのか、それとも、海域なら海域の中で適当な場所をぽっぽっと選んでやっていくのか、それについてお答え願えますでしょうか。

佐藤政府参考人 御説明いたします。

 陸奥湾におきましては、委員御指摘のとおり、以前は全体で一つの海域というふうにとらえておりましたけれども、海流の流れが大きく西と東に分かれておりまして、県からの要望、それからそうした科学的な事実をもとに、この水域を二つに分けているところでございます。

 それから、若干御説明いたしますと、貝毒監視区域の設定のあり方でありますけれども、過去のデータに基づきまして、海流の状況、それから毒化原因になりますプランクトンの分布状況、さらには貝の毒化傾向の共通性などをもとに海域を区分しているところでございます。

 その海域ごとに都道府県が調査点、これは定点を設けまして、陸奥湾の場合、西と東にそれぞれ三カ所ずつございますけれども、こうしたものを置いて検査体制を整備しているところでございます。

横山委員 西と東に三カ所ずつ定点があるんですか。私が調べたのとちょっと違っているんですけれども、では、その三カ所の定点の中で、今回そういう事故現場となったような場所がちょうど一カ所、定点としてあるんですけれども、私が知る限りは、そこから海岸沿いにずっと車を走らせて一時間半ぐらい行ったところも全部西部地域に入ってくるわけです。そういったところでは実際検査をやっているんでしょうか、やっていないんでしょうか。

 こういう貝毒というのは、局地的に発生するし、水温なんかも関係するものだと聞いているんですけれども、実際定点調査をやった場所から車で一時間半もかかるようなところまでもそういう被害の中に含めてしまうのか。つまり、何を申し上げたいかというと、それによって出荷が全部とまってしまうわけですよね。それはやはり漁業者にとって大変なことだと思うんです。

 だから、科学的に、車で一時間半行ったような、これは随分遠くですよ、そういうところにまで被害が及ぶ可能性があるというならともかく、そうでないのであれば、もっといろいろなところで細かく実施して、例えば定点調査なら、その場所でやって貝毒が出た場合でも、いろいろな漁港それぞれで、その場でぱっぱと調査して、ここの漁港が無事なら漁を続けさせてもいいじゃないですか。それが全部とまってしまうというところに私は問題点を感じているんですけれども、その点いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 今、委員のお尋ねの件につきましては、東西に分かれているものをさらに細分化して、監視区域を分けてはどうかというお尋ねだと思いますけれども、基本的には、一つは、県からの要望があるかどうか、それから、その要望があります前に、それを裏づける湾内の海流とか過去の毒化の状況とか、そういったものの科学的データがあれば、その妥当性について検討を行うことになるわけでございますけれども、現時点におきまして、そのような県からの要望は出されていないというふうに承知しているところでございます。

横山委員 ということは、実際、漁業者の要望としてあるわけですから、それを青森県がきちんと検査する。さっき言った簡単なキットで検査する方法もあるわけですから、ある場所で出ても、車で一時間半も二時間もかかるような場所になければ、やはり操業を続けさせてあげることの方が私は重要性を感じます。それが、食の安全にかかわるようなことで危ないというのであればともかく、科学的根拠が示されないのであれば、結局そういう形で三週間も出荷がストップするのであれば、その後に多少しけがあっても、無理をしてでも操業して事故に遭うとか、そういうことだって可能性として起こり得るわけですね。

 ですから、そういう検査というものをもっと細分化して行う、データを集積する。漁業者からそういう声が出ているわけですから、県から出ていないというときに、県は予算がないからやっていないんだとかいうような言いわけだって実際しているわけですね。ですから、ネズミの検査は一体幾ら費用がかかるんですかと先ほどから聞いているんですよ。そういうあたりは、今の時間でなくて構いませんので、後でまた教えてください。お願いいたします。

 もう一つ、今度は、最後に大臣にお尋ねします。

 青森県では、二〇〇九年度から、陸奥湾内で養殖するホタテの適正量を割り出して生産量を各組合に分配する、ホタテガイ適正養殖可能数量制度という新規事業を行う予定であります。

 これは結局、陸奥湾という閉ざされた海域の中において、プランクトンの数が限られていますから、そこで育てられるホタテガイの数にも適正量というのがあるだろう、大体十三億六千万個体ということなんですけれども。こういう制度を県がつくって、水産資源管理というようなこともあるでしょうし、国として、大臣として、それをどのように評価いたしますでしょうか。

若林国務大臣 青森県におきまして、近年、ホタテガイの養殖密度が高まっており、そのことが品質の低下やへい死につながっているということから、過密の養殖を解消する手法として、漁業協同組合に最大養殖可能量を割り当てる仕組みを導入することが検討されているということは承知いたしております。

 このために、現在青森県では、平成十九年度に餌料環境と生産量についての科学的な調査などを実施し、平成二十年度において漁協別の養殖可能数量の算出などを行うというふうに承知いたしております。

 農林水産省としては、水産資源の管理を適正に行うということは大変重要なことであると考えておりますので、持続的養殖生産確保法に基づいて、漁業協同組合などが漁場改善計画を作成し、養殖密度を適正にするなどの施策を推進してきているところでもありますので、青森県の取り組みも注目に値するものと考えておりまして、その検討状況や成果を注視いたし、これを有効と判断した場合には、これも採用することを検討していきたいと思っております。

横山委員 注目に値するものである、評価していいものであるというような御答弁の内容だろうと思います。とすれば、ぜひ農水省として、大臣として、全国展開をするようにしていただきたいと思います。

 というのは、青森県がこういった適正の量をやっても、どこか別のところで成貝を大量にとって大量出荷すれば、収益、もうけという点でのメリットがないわけですね。だから、これは環境問題と同じように、青森県の試みがいい試みであるというならば、全国的に展開しなければ青森だけが収益的に損をしてしまうようなことだって起こり得るわけですから、そのあたりはお考えいただきたいと思います。

 今回、冒頭申しましたホタテ漁船は、漁業者の数が減って、八人乗っていた中で六人がアルバイトだった。アルバイトですから、昼間に正職があるわけで、それに間に合わすために未明の操業であったというような事情の中で起きた事故です。

 こういう事故が二度と再び起こらないように、海域をもっと細分化してくれれば、いろいろなところで、海域全体がとまっても出荷できるじゃないかとか、この青森県の数量を適正化する試みも、それによってきちんとした貝が育てば、それだけ品質のいいものが売れるということで、それはすばらしいことだと思うんですけれども、国全体として取り組まなければ、どこかがばかばかと成貝を売ってしまえば、もうけという点でメリットが少ないと感じてしまうとこういう試みも意味がなくなるという点で、漁業者の生活をよくしていくための取り組みに今後ともしっかり取り組んでいただきたいと要望して、私の質問を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

宮腰委員長 次に、内閣提出、農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣若林正俊君。

    ―――――――――――――

 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

若林国務大臣 農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の農林漁業、農山漁村を取り巻く現状を見ますと、人口が減少局面に入り、農林水産物の国内市場規模の縮小が懸念されている中で、農林漁業の活力が低下するなど、非常に厳しい状況となっております。

 他方、近年の原油価格の高騰、地球温暖化の防止といった内外の諸問題に対応する観点から、バイオ燃料の生産拡大が喫緊の課題となっております。

 我が国においては、稲わら、間伐材といった農林漁業有機物資源をバイオ燃料の原材料として利用することは、農林漁業の持続的かつ健全な発展とエネルギーの供給源の多様化を図る上で極めて有効な取り組みと考えられます。このため、農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用を促進するための措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、主務大臣は、食料や飼料の安定供給等に配慮しつつ、農林漁業有機物資源のバイオ燃料の原材料としての利用の促進の意義やその基本的な方向等についての基本方針を定めることとしております。

 第二に、バイオ燃料の原料生産から製造までの一連の行程の改善を図るため、農林漁業者とバイオ燃料製造業者が連携してバイオ燃料の製造等に取り組む計画を作成し、主務大臣の認定を受けることができることとしております。また、バイオ燃料に関する研究開発を促進するため、民間企業等がバイオ燃料の原材料に適した新品種の育成等を行う計画を作成し、主務大臣の認定を受けることができることとしております。

 第三に、主務大臣の認定を受けた計画に基づく取り組みを進めるため、農業改良資金等の償還期間の延長、新品種の出願料の減免等の法律の特例措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

宮腰委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十二日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十二分散会


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