衆議院

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第3号 平成22年3月23日(火曜日)

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平成二十二年三月二十三日(火曜日)

    午前九時五十分開議

 出席委員

   委員長 筒井 信隆君

   理事 石津 政雄君 理事 梶原 康弘君

   理事 小平 忠正君 理事 森本 和義君

   理事 森本 哲生君 理事 北村 誠吾君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      石原洋三郎君    石山 敬貴君

      磯谷香代子君    金子 健一君

      河上みつえ君    京野 公子君

      後藤 英友君    佐々木隆博君

      斉藤  進君    高橋 英行君

      玉木 朝子君    玉木雄一郎君

      道休誠一郎君    中野渡詔子君

      仲野 博子君    野田 国義君

      福島 伸享君    柳田 和己君

      山岡 達丸君    山田 正彦君

      和嶋 未希君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    江藤  拓君

      小里 泰弘君    坂本 哲志君

      橘 慶一郎君    谷川 弥一君

      鳩山 邦夫君    保利 耕輔君

      山本  拓君    西  博義君

      吉泉 秀男君    石川 知裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       赤松 広隆君

   農林水産副大臣      山田 正彦君

   外務大臣政務官      吉良 州司君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 滝本 純生君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  今井  敏君

   政府参考人

   (株式会社日本政策金融公庫代表取締役専務取締役) 坂野 雅敏君

   農林水産委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  津川 祥吾君     磯谷香代子君

  伊東 良孝君     坂本 哲志君

  金田 勝年君     橘 慶一郎君

  保利 耕輔君     赤澤 亮正君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     斉藤  進君

  赤澤 亮正君     保利 耕輔君

  坂本 哲志君     伊東 良孝君

  橘 慶一郎君     金田 勝年君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤  進君     津川 祥吾君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業経営に関する金融上の措置の改善のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二四号)


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     ――――◇―――――

筒井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業経営に関する金融上の措置の改善のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省経営局長今井敏君、総務省大臣官房審議官滝本純生君及び株式会社日本政策金融公庫代表取締役専務取締役坂野雅敏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 質問の機会を賜りまして、ありがとうございます。早速入らせていただきます。

 農業改良資金助成法の改正によりまして、農業改良資金の貸付主体が都道府県から日本政策金融公庫に変わります。転貸による実際の窓口はJAとなることが想定をされておりますので、実際の利用者の利便性は変わらないんだろうなと思いますが、確認をさせてください。

 大臣、お願いします。農業改良資金法の一部改正で、利用者の利便性は変わらないのかどうかということです。

佐々木大臣政務官 小里委員の質問にお答えをいたします。

 資金の利便性をむしろ増すということを主体に考えてございますので、そうした意味では、農家自身にとっての利便性には大きな変化はないというふうに思ってございます。

小里委員 農業信用保証保険法の改正についてお伺いします。

 従来、通常の融資における債務保証、約六兆七千億円分が農協系統と地銀等について行われてまいりました。今回の改正によりまして、大口融資、約八十億円分の融資保険の対象者が地銀等に拡大をされるわけであります。これによりまして、農協系統の経営への圧迫にはならないかどうか、確認をさせてください。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 今度の融資の改正は、窓口が広がるという意味では、農家にとってはむしろ利便性が増すというふうに思ってございますし、八十億円のことについても、選択肢が広がるというだけであって、農協にとってデメリットになるというようなことはないというふうに考えてございます。

小里委員 ぜひ、しっかりとした運用を図っていただきたいと思います。

 それでは、次のテーマに入りたいと思います。

 食料安保の基本は、農地と担い手を確保することにあります。ところが、平成二十年中に全国で八千二百件もの違反転用事案が発見をされております。こういった事態を受けまして、昨年、農地の違反転用に対する罰則が強化をされました。あるいは、新たな食料・農業・農村基本計画におきましても、農地転用規制の厳格化がうたわれる予定であります。

 そのような中、民主党の輿石参議院議員会長による農地の違反転用事件が発覚をいたしました。正直言って私は、最初はそんなに重大にはとらえていなかったんですが、実際に現地を見に行きまして、事態の重大性、悪質性というものを認識せざるを得なかったのであります。

 輿石氏の自宅周辺のほとんどが農振農用地でありまして、ブドウや野菜が作付をされているのどかな農村地帯であります。その中で、農振農用地七百七十九平方メートルを含む千二百九十八平方メートルが、全体が塀で囲われまして、輿石氏の自宅の敷地として使用をされているのであります。

 弟さん名義の農振農用地七百七十九平方メートルでありますが、実際には輿石氏により実効支配がなされておりまして、一部報道によりますと、弟さんはこれは上げたものだというような説明もなされているようでございます。

 その農振農用地の入り口から石畳が敷き詰められまして、あるいは、庭石や庭木などが植栽をされている、置かれている。そして、全体が輿石宅の庭園を構成しております。駐車場も置かれております。申しわけ程度に、二十平方メートル前後の菜園がある程度でございます。

 相模原市の農業委員会によりますと、これが明らかに農地法違反、農振法違反であることを確認いたしまして、昨年来、三回にわたりまして農地への原状回復を促す行政指導を行っておりますが、本人らは応じておりません。また、輿石氏は、その改善指導に対応しつつあるとしておられるわけでありますけれども、農業委員会が確認したところでは、直近まで、現状は変わっていないということであります。原状回復を目指す計画書の提出もないということでございます。

 輿石氏の自宅建築は昭和五十年でありますが、政権党のナンバースリーともいうべき人物が、長年にわたり農地の違反転用を行い、改善指導にも応じないことをどう考えるか、食料安保の責任者として、大臣にお伺いいたします。

赤松国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 基本論として、優良な農地をしっかりと確保していく、それでもって自給率向上や食料安全保障という国の方向をきっちりと定めていくという御指摘は当然だというふうに思っております。

 そういう中で、今、資料も何か配られたようでございますけれども、私もこんなにわかりやすい図面は初めて見ましたが、一連の報道もなされていることは承知をしておりますし、また、本件についても、三月十七日に神奈川県、相模原市及び農業委員会の担当者が現地を訪れ、輿石議員の義理の弟さんから、無断転用された土地を農地に戻す意向を確認したというふうに聞いております。

 なお、二十日付の新聞では、十九日に、自民党の逢沢一郎議員、そして小里議員らが現地を調査され、神奈川県、相模原市から事実関係をお聞きになった、現地にも行かれたということも報道を通じて承知しておるところでございます。

 どちらにいたしましても、当省としても、今後の状況を注視しつつ、本件が適切に処理されるよう、必要に応じまして神奈川県あるいは相模原市及び農業委員会に対し指導助言する考えでございます。

小里委員 資料をお配りしておりますが、この中で、七三二―一、七という部分が農振農用地であります。それ以外は、従来、農地でありました。小野沢さんというのは義弟に当たられるわけであります。

 毎日新聞によりますと、輿石氏は、八九年ごろ、行政書士に相談をされまして、違法状態であることを認識しておられます。にもかかわらず、長年放置をしていたことになり、さらに悪質であります。

 道路側の敷地百九十平方メートル、この七三二―十のところでありますが、これにつきましても、二十年来、違反転用の状態にありましたが、その原状回復もないままに、昨年、非農地証明がなされまして、事実上の転用許可がおりております。前述の農振農用地、七三二―一、七の原状復帰もないまま、いとも簡単に転用許可がなされているわけであります。

 本来、非農地証明の適用は厳格に細かに要件が定められております。特に本件の場合は、事態の悪質性を総合的に勘案して、より厳格に対応すべきところでありますが、農業委員会の対応として問題がなかったのか。さらには、前述をしました農振農用地全体が長年にわたり違反転用の状態をほうっておかれたわけでありまして、いろいろな意味におきまして、農業委員会、行政の責任も問われると思いますが、大臣、いかがでありましょうか。

赤松国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 事実、そういうことがあったわけでありますから、これは当省も含めて看過していたではないかと御指摘を受ければ、確かにそのとおりでございます。しかし、私どもも本当に存じ上げなかったわけでございますし、こうした土地が無断転用されて、他の目的で使われていたということであれば、これはできるだけ早くもとの農地に戻していただくということしかないわけでございまして、本件が適切に処理されるよう、関係の神奈川県、相模原市及び農業委員会の皆様方に対して適切に処理するよう申し上げたいというのが、我が省の立場でございます。

小里委員 いわば既成事実を積み重ねる中で、なし崩し的に農地の不正使用がなされていくわけでありまして、これはぜひ厳格に対応していただきたいと思います。

 また、この事件が発覚をしまして日も経過をしておりますが、農水省としてまだ調査もしておられないということであれば、それはそれでまた問題でありますので、ぜひしっかりととらえていただきたいな、そんなふうに思います。

 輿石氏の自宅敷地として使用されております農振農用地の地目は、畑であります。実態としては宅地として使用をされながら、固定資産税においては農地として課税をされております。すなわち、宅地に比べまして数十分の一から百分の一とも言われる税額で済んでいるわけでありまして、これは考えようによっては脱税に当たると考えます。

 総務省、見解をお伺いいたします。

滝本政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の課税事案につきましては承知する立場にございませんので、一般論として申し上げたいと思います。

 土地に係る固定資産税につきましては、その土地の現況に応じて課税されるということになっております。したがいまして、例えば、居住用の建物が建っていることが確認されれば、登記簿上の地目にかかわらず、宅地として課税されるということになります。

 個別の事案につきましては、現況を確認した上で市町村において適切に対応されるべきもの、そのように考えております。

小里委員 一般論ながら、宅地として課税されるべきであるという今の御見解でございました。いわば脱税状態にある、あったということは明確であります。これは強く指摘をしておきたいと思います。

 輿石氏の自宅部分が建築されたのは昭和五十年でありますが、以来、この母屋部分の輿石氏所有の宅地についても、平成四年まで地目の変更がなされておりませんでした。不動産登記法には、地目の変更があった場合には、本人が一カ月以内に登記を行うことが定められております。これはまた、明らかに不動産登記法違反でもあるわけであります。輿石氏は、従来、農業の振興を訴えてこられましたが、これでは訴える資格はないと思います。あるいは、ルールをより厳格に遵守すべき国の為政者として教育を語る資格もない、そのことを強く主張したいわけであります。

 政権党のナンバーワン、ナンバーツーに次ぐナンバースリーの犯罪であります。これを見逃し、甘い対応をしてきた行政の責任が問われます。今、お笑いになりましたね。民主党の皆さん、その対応こそ、その姿勢こそ問われることだと私は思いますよ。すべてを軽く考えておられる、身内に甘い、そういった民主党の体制が、今、図らずもここに露見をしたわけであります。

 赤松大臣、先ほどおっしゃいました。調査がおくれております。即刻調査をして、その責任の所在を明らかにしていただきたい。そして、しかるべく厳格に対応していただきたいと思います。これは、行政として、政権党として、今後の動きが大きな注目をされております。改めてその決意をお伺いしたいと思います。

赤松国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 私どもは、こうした立場からいえば、その土地の所有者がだれであろうがそんなことは全く関係なく、やはり適正、厳正に、いかなる場合も、事実は何なのかということをきちっと判断をしながらやっていくということだと思っております。

 ただ、先ほど課税の問題等もございましたけれども、これは税務当局が判断することですし、直接的にはその地域の、ここでありますと相模原市になりますけれども、宅地として評価するのか、あるいは農地、あるいは農業の関連施設として評価するのか、そういうのは課税する当局たる相模原市の判断になるというふうに思っておりますので、そういう判断を尊重しながら税務当局も最終的に判断をされるということではないかというふうに思っております。

小里委員 先ほどの大臣の御答弁では、できるだけ早く農地に戻していただきたいということでありましたが、間違いないですね。

赤松国務大臣 それは、農振農用地ですから、目的以外に使われているとしたら、当然のこととして、本来の形に戻すということではないでしょうか。

 そして、十七日には、神奈川県や相模原市及び農業委員会の担当者に対して、所有者であるこの義理の弟さんからは、農地に戻す意向だと、戻しますということを確認しているというふうに聞いておりますので、早晩そのようにされるのではないかと思っております。

小里委員 まずは農地への原状回復、当然のことであります。そして、ばれたから戻すということでは、これはどこかの総理と一緒であります。ぜひ、その責任をしっかりとっていただくように対応をお願いしたいと思います。

 次の話に入ってまいります。

 先日の予算委員会で質問をさせていただきましたが、鳩山総理は、野菜やお茶などのことを考えると、カロリーベースの自給率目標だけでなく、価格ベースや食料自給力の考え方も重要であると答弁をされました。ところが、新たな食料・農業・農村基本計画におきましては、生産額ベースの自給率目標が、従来の目標七六%から七〇%に下げられております。総理の答弁と食い違う形になってきているわけであります。

 私どもの試算によりますと、一ヘクタール当たりの産出額、例えば米は百七万円であります。小麦は二十九万円、大豆が二十六万円。これに対して、野菜は三百十九万円、果実が二百九十二万円、お茶が百九十三万円であります。すなわち、野菜や果樹を生産振興すれば、生産額ベースの自給率はより高くなっていくわけであります。これを低く抑えたということは、野菜や果樹あるいは畜産を軽く考えておられるんじゃないか、そんな懸念を抱きますが、大臣、いかがでありましょうか。

山田副大臣 生産額ベースにおいて、かつて自公政権時代の計画ですと、確かに七六%という形にしておりました。しかし、実際、今現在幾らかと申し上げますと、どんどん減って、六五%という形なんです。そうしますと、私どもも、現実的に、確かに米とか大豆、麦よりも果樹、野菜の方が金額的にも生産額ベースでいくと非常に大きい。

 しかしながら、現実に即した目標という形、例えば、どんどん高齢化は進んでいくとか、需要、消費の動向その他考えながら、今よりも生産額ベースでさらに五%上げる七〇%ぐらいが一番具体的な、いわゆる生産額ベースで、果樹、野菜等についても今よりも生産を伸ばすという方向で妥当であろうというところから、そういうところに達しているところです。

小里委員 一方では、カロリーベースの自給率目標は引き上げられております、これは当然でありますけれどもね。

 新たな計画における十年後の品目別自給率を見ますと、麦、大豆は大きくふやされております。しかるに、野菜、果樹、畜産は従来の自給率目標より減らしておられるんですね。しかも、ほとんど現状維持になっているんですよ。政策を見る限り、この現状維持すら難しいんじゃないかと思っております。新たな品目別自給率目標を見る限り、果樹、野菜、畜産等を前に進めよう、前に進めていこうという姿勢、意思はそこには見られない、そんなふうに断じざるを得ないわけであります。

 民主党農政では、品目別の自給率目標に基づきまして、品目別に生産数量目標を課すということになります。また、新たな転作奨励制度では、従来地域で自主的に決めていた品目ごとの交付金単価を全国一律とされます。例えば、麦、大豆は反当たり三万五千円、これに対して、野菜などのその他作目は反当たり一律一万円となっております。これでは、地域の野菜を中心とするブロックローテーションや地域で創意工夫して支え合い築き上げてきた仕組みというものが壊れていくわけでありまして、地域の振興作目が廃れていきかねないわけであります。

 そこで、激変緩和措置が打たれることになりました。ところが、この激変緩和措置を見ていきますと、まず、野菜などのその他作目に充てられる交付金を麦、大豆に振りかえることは認めても、その逆、麦、大豆から野菜などのその他作目に振りかえることは認めない、一方通行になっているわけであります。あるいは、飼料作目から麦や大豆に交付金を振りかえることは認めても、その逆も認めません。その調整をやった上で、二百六十億円でしたか、激変緩和、調整枠をもって最後の調整をするとなっているわけでありますが、全くこれは焼け石に水でありまして、実効性のない激変緩和措置と言わざるを得ないわけであります。これはあくまで激変緩和措置でありまして、二十三年度からは本格的な制度になっていくでしょうから、そうなると、さらに野菜などの作目が懸念をされるわけであります。

 すなわち、麦、大豆に特化した自給率目標のもとに、麦、大豆に特化した生産数量目標を課して、麦、大豆に特化した交付金によりこれをコントロールするという図式が、構図が見えてくるわけであります。まさに国家統制と言わざるを得ないと思います。

 申し上げてまいりましたように、本来、食料安保の基本は農地と担い手を確保するということにあります。そのためには、まずは、お茶でも花でも野菜でも、あるいはたばこでもそうですが、にわかには食料自給率には貢献をしなくても、それぞれの農地に適した、それぞれの地域に適した作目をしっかりとつくっていくことで、農地が生かされ、そして担い手が生かされるわけであります。そして、やがて、いざ食料危機が来たときに、そうやって確保された生産基盤、農地や人、この食料生産基盤が確かに働いて、国民の食料の確保に貢献をしていくわけであります。これがまさに食料自給力の考え方であり、食料安保の基本であるな、そんなふうに考えているところであります。

 こういった観点からいきますときに、今なさろうとしている政策は、地域の自主性や創意工夫を無視した、まさに国家統制型の農政であると言わざるを得ないわけでありますが、大臣、いかがでありましょうか。

赤松国務大臣 いろいろ御心配いただいていますが、私どもは、決して国家統制なんというつもりはございません。むしろ、しかし国が責任を持って、これからの第一次産業、地域における基幹産業である農業をしっかり支えていこう、そういうことでございまして、支えるのと国家統制では全く違いますから、ぜひそれは、むしろ農業者の味方である小里委員なんかはその辺よく御理解をいただいていると思いますので、私どもがしっかり支える、もっと支えろとむしろ言っていただきたいぐらいだと私は思っております。

小里委員 大臣と思いは同じであろうと思います。しかし、制度がそうなっていかないんですよ、本当に。本音ではそう思っておられるんじゃないでしょうか。

 食料安保は、確かに国が最後まで責任を持つべき最たるものであります。ただ、それが決して国家による無理な押しつけにつながってはいけないんですよ。例えば農地転用ですね。まさに農地転用をどうするかといった、そういった農地の確保のような部分は、国家がしっかりと責任を持つべきであります。そうやって確保された農地に何をどうつくるかということは、あくまで現場にゆだねる、任せていくべきである、私はそう思います。そうしてこそ、農地が生かされ、人が生かされ、食料安保が成っていくわけでありまして、そこはあえて申し上げておきたいと思います。

 先日、地元の生産者からはがきをいただきました。これは先日の予算委員会をごらんになってのはがきでありました。まさに転作奨励制度を初めとする交付金の制度の今後を心配しておられます。残念ながら満足のいく答弁はなされていないとまず書いてあります。農林大臣、ぜひ現場のことをもっと見ていただきたいと書いてあります。そして、新たな制度がどうなるのか、いまだに地域に説明がなされていない、取り組みができませんということが書いてあります。団地加算、地区達成加算、ぜひ欲しいものだ、今までの制度をそのままやっていただきたいな、そういう切々たる思いもここに書かれているわけであります。

 そういった現場の混乱状況というものをぜひつぶさに見ていただいて、しっかりとした対応をしていただきたい、そんなふうに思うところであります。

 続きまして、民主党は戸別所得補償を選挙の有力な武器として位置づけてこられました。その一方で、農業公共予算を大きく削られました。これはやはりまずいなと思いますね。

 特に、土地改良事業費を三分の一に削ったのは、自民党対策と言われましたように、あからさまな選挙対策であります。一方で、新たな食料・農業・農村基本計画においては、規模拡大、品質向上の重要性をうたっておられます。大きな矛盾であります。

 先般新潟で行われました予算委員会の公聴会では、品質向上や収量アップあるいは規模拡大に土地改良事業が果たしてきたその役割というものが切々と述べられました。まだ圃場整備率が五〇%台であること、そしてまた老朽化した用水路や排水路などの施設の改修が待たれている現状、土地改良事業に対する待たれている現状が、まさに悲鳴にも似た声として公聴会で訴えられたわけであります。

 大臣、土地改良事業に対する考え方をお伺いいたします。

山田副大臣 大臣にかわって私からお答えしたいと思います。

 御承知のとおり、土地改良事業は、前年度比三六・九%と大変少なくなっております。しかしながら、本当に意欲ある農家がこれから農業、自給率を達成するためにも、いわゆる土地改良事業、排水事業の、利水性の便利さなど、改修工事とか、大変大事であるというということは、私どももよく承知しております。

 そのために、例えばその地域で最も本当に今必要とされているもの、いわゆる農漁村整備交付金千五百億、これを非常に使いやすく、国がこちらにしなさいと、いわゆるひもつき補助金みたいな形ではなく、弾力的に使えるようにしたり、また私どもも、三六・九%になったとはいえ、何をやったのが、どういう事業が一番本当に農家にとっていいかという面では、その必要性の度合い等々も検討しながら、十分これからも、このいわゆる土地改良事業については重きを置いてやっていきたい、そう考えております。

小里委員 交付金千五百億円を有効に使っていくという御答弁でございました。

 この千五百億円は、御案内のとおり、農業、林業、水産業に充てられます。農業に来る割合がどのくらいになるのかわかりませんけれども、恐らく、この農林水産の公共事業費にそれを含めて考えましても、六五%に減るんですね、御存じだと思いますが。これでは全く足りないわけでありまして、焼け石に水とは言いませんけれども、いかに貧弱な予算の措置であるか、そこはあえてここで主張申し上げておきたいと思います。

 本来、よき政策を実現するために選挙があると思います。選挙のために政策があるわけじゃありません。民主党の政策は、残念ながら目的と手段が逆になっております。選挙対策農政と言われるゆえんでありまして、そこはぜひ、少なくとも、この大事な農政の政策においては是正を図っていただきたい、本来のあるべき方向性を模索していただきたい、実行していただきたい、そんなふうに申し上げておきたいと思います。

 経営局長にお伺いをいたします。

 現行の品目横断的経営安定対策、水田経営安定対策におきましては、生産条件不利補正交付金というものがありますが、生産条件不利補正交付金とはいかなるものか、お伺いをいたします。

今井政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの生産条件不利補正交付金についてでございますけれども、これは、安価な輸入品との競合によりまして国内の農産物の価格が低く抑えられ、販売収入では生産コストを賄うことができないような品目についての、我が国と諸外国との生産条件の格差から生じる不利を補正するために生産コストと販売収入の差を補てんする、そういう交付金でございます。

小里委員 すなわち、貿易自由化があった場合に、内外の生産条件の格差を埋めるため、農産物の価格が下がった場合にそれを埋めるため、それが生産条件不利補正交付金であるという今の御説明でありました。

 現行の安定対策におきましては、生産条件不利補正交付金として麦、大豆等について補てんを行っております。ここで、政令で米を対象として定めれば、同じように補てんができると考えますが、間違いありませんか。

今井政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました生産条件不利補正交付金の対象となる品目につきましては、政令で指定する仕組みになっております。現行では、米は、国境措置によりまして安価な輸入品との競合という事態が生じておりませんので、政令では指定しておりませんけれども、仮に、米につきまして国境措置が引き下げられるなど競合という事態が生じますれば、枠組みとしては、指定し得る、そういう法律の枠組みになっております。

小里委員 ちょっと遠慮がちな表現でありましたが、要するに、政令でもって米も指定できるわけであります。

 先般の予算委員会で同じ質問をいたしましたが、そのときは、たしか別の局長の御答弁でありましたが、違う御答弁をいただきました。あえて申し上げませんが、私の質問の仕方も適切でなかったのかもしれません。

 小沢氏の持論として、貿易自由化を推し進めて、農産物の価格が下がった場合に補てんをする、それが戸別所得補償制度であると従来訴えてこられました。それであれば、現行制度のもとで、政令で指定することで米も十分対応していけるわけであります。米のモデル事業における補てんの変動部分も、現行制度のナラシに準じたものであります。むしろ、御案内のとおり、現行制度においては基準のとり方が五中三、よりきめ細かくなっております。単価設定に当たっては、県別、地域別の対応でありましたり、また、販売価格だけでなく、収入、すなわち量にも思いをいたした仕組みになっておりまして、よりきめ細かい制度になっているのが現行制度でもあるということも言えるわけであります。

 また、この生産条件不利補正という要件を外せば、文字どおり、内外価格差に限らず、現状のコスト割れにも対応できるわけであります。対象者をどうするかという議論もありますが、それは、販売農業者あるいは認定農家といったようなところは、また法の改正によりまして対応ができるわけであります。

 いずれにしましても、現行制度の手直しによりまして十分対応できるということが言えるわけでありますが、大臣、どうでしょうか。

赤松国務大臣 基本にかかわることなので、私から少しお話ししたいと思います。

 今まで自民党の皆さん方も一生懸命やってこられたと思いますけれども、直接生産にかかわっておられるお百姓さんたちの一番の混乱の一つは、いろいろな補助制度や交付金制度はあるけれども、それが余りにも細か過ぎて、そしていろいろな条件がそれぞれ違ってわかりにくい、これを何とかもっとシンプルに、そしてまた、より統一的な、そういうものにしてほしいという声もあったわけでございます。

 その意味で、私どもは、今回、自給率向上のためのそうした事業として、品目横断は別ですけれども、ほかのものはできるだけ集約をして、十アール当たり幾らみたいな形でやったということで、そういう意味では、ある意味で農政の大転換ですけれども、ただ一方、委員が御指摘のように、来年度以降、一体どうなるのか、そういう御不安があるのもまた事実だと思っております。

 ですから、私どもは、本格実施の中で、まさにわかりやすい、そして、本当にシンプルで、またやる気の出る、そしてそれがまた結果的に自給率向上につながる、そういう仕組みに、本格実施の中できちっと、向けていきたい、このように思っておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

小里委員 現状で、現場は非常に混乱を来しております。また、きょうは時間がなくてちょっと議論できませんでしたが、生産数量目標をすべての対象品目に課していくとなりますと、大変なコストと事務作業が必要になるわけであります。これを、農家の希望を聞いて生産数量目標を割り当てて、すべての品目にわたって生産から出荷に至るまで管理をしていくとなりますと、今、市町村が合併をされ、あるいは、JAの協力を得るかどうかわかりませんけれども、JAもまた今合併をされている。こういった中で、事実上これは不可能だと私は思いますし、シンプルな形と大臣はおっしゃいましたけれども、全く逆でありまして、相当な複雑化をして、現場に大きな混乱を来すし、不可能であると私は申し上げておきたいと思います。

 品目横断策の中で、麦、大豆、てん菜あるいはでん粉用バレイショは、確固たる補てん策が準備をされております。サトウキビやでん粉用のカンショにつきましても、その特殊性に応じた補てん策が講じられているわけであります。御案内のとおり、畜産は、畜種別に補てんの制度が実行されております。野菜は、産地指定等があります。一応、価格安定制度が準備をされておりまして、カバー率は約四〇%ということでありますが、これをさらに要件を緩和して、より広く生産者の皆さんに利用していただけるように改善をしていく必要があろうと思います。

 果樹とかお茶は、かつて調子はよかったんですけれども、最近、大分経営環境が悪化している。そこに制度が追いついていないわけでありまして、これはしっかりと新たな経営安定制度を構築していく必要があるな、そういうことで勉強も重ねてきているところでございます。

 予算委員会でも申し上げましたように、何の準備もなく、政策目標も制度設計もあいまいなままに現場に対して大なたを振るうようなことをしまして、現場は混乱をする可能性がある、現に混乱をしております。そして、農村社会が崩壊しかねない、取り返しのつかない事態になるおそれがあるわけであります。そうなるよりも、今ある制度の、その至らないところを改善していく方法の方が、より近道であるし、確実であると私は思っております。

 どうか、いろいろな意味におきまして、率直な、真摯な議論の中で農業、農村の確かな未来を開いていきたいなと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 以上で、ちょうど時間をオーバーしましたので質問を終えますが、何かありますか。一言。

赤松国務大臣 ちょうど時間が来たようですので、トータルでお答えをさせていただきたいと思います。

 先ほど、冒頭、ぜひ全国の生産現場を見てほしいというお話がございました。私自身もそういうことを心がけておりまして、就任以来、ほとんど土曜、日曜は、きのうも韓国へ行っておりまして、果樹、野菜、あるいは、もちろん水田、畑作、水産業、林業、いろいろなところを見てまいりました。そういうところで率直な皆さん方の意見を聞かせていただいて、ぜひそれを現実の農政あるいは農林水産行政の中に反映をしていきたい、このように思っております。

 ただ、各地へ行くと、今みんな大変なんですね。青森へ行ったらリンゴが大変だ、この間も、和歌山へ行ったら梅はもう何ともならないとか。そういう話を聞くにつけ、ありがたいことに必ず出るのは、ぜひ、水田ばかりじゃなくて、我々も戸別所得補償制度に入れてくれというお話が出るんです。それだけ、ある意味でいえば、不遜かもしれませんけれども、大変この制度がいい、この制度でぜひ何とか今の農業者を救ってほしいという声だと私は思っております。

 ただ、この制度の基本は、委員御承知のとおりに、生産費と販売価格が常に恒常的に、あるいは構造的に逆転をしておるものというのを基本としているものですから、だからといって、果樹、野菜、そういうものをそのままでいいとは思いませんし、今もいろいろな補助制度、支援制度はありますけれども、果たして本当にこれで十分なのかどうなのか。

 そういうことを考えるときに、この一年、しっかり見させていただく中で、より使い勝手のいい、そしてより本当に、果樹や野菜やお茶や、そういうことをやっておられる生産者の皆さん方のしっかり支えになる、そういう補助制度はどういう姿なのかということについては、また与野党の委員の皆さん方の御意見もいただきながら、ぜひこの一年で考えていきたい、このように思っております。

小里委員 以上で終わります。ありがとうございました。

筒井委員長 次に、坂本哲志君。

坂本委員 自民党の坂本哲志でございます。

 今回、質問の機会を与えていただきました委員長初め委員会の皆様方に、心から感謝を申し上げたいと思います。

 三日連休で、先に質問されました小里先生と質問のすり合わせ、項目のすり合わせあたりをしておりませんので、一部ダブる面があるかとは思いますけれども、お許しをいただきたいと思います。

 大臣、質問項目になくて申しわけないのですが、今、小里先生から輿石参議院会長の話がありました。私は、文部科学委員会で、この輿石参議院議員の今回の農振、農転違反の問題について質問をさせていただきました。本当に、輿石会長、やりたい放題なんです。

 文部科学行政にいろいろな影響力を持つだけに、農振、農転以外のことに対しても注意を払ってもらわなければなりませんけれども、昨年は、教組の東京で行われました会合で、教育に中立はない、日教組とともに闘うというようなことを言っておられますし、山梨県教職員組合では、教職員組合ぐるみの輿石参議院議員の選挙をやって、そして多くの組合員あるいは元教職員が逮捕され、そして罰金刑に処せられておりますけれども、罰金刑に処せられても、その次の次の異動あたりでは教頭になっているというような、これはだれかの、やはりボスが、口ききがなければできないことであります。

 また、最初の、小沢幹事長の第一秘書が逮捕されたときも、悪いことをやっているわけではない、あるいは小沢幹事長に対しても、その強制捜査に対して、もっと闘えというような趣旨のことを言っておられます。

 良識の府の参議院、しかも民主党の参議院の会長として、これだけのことをやっている、そして今回法律違反までこうやってやられている。私は会長を辞職すべきだと思いますが、どうですか。

赤松国務大臣 これは党の役員あるいは院内の役員の話ですから、しかも参議院会長という。私の立場で云々するのはいかがかと思いますので、それについては発言を控えさせていただきたいと思います。

 ただ、農林水産行政にかかわる土地の転用問題については、先ほども申し上げましたように、だれであろうが、そういうことにかかわりなく、やはり適正、厳格にきちっと運用されなければならないということですから、それが法に照らしてまずいものであれば、やはりきちっと法に合った形に変えていただく。そのための農水省としての指導はきちっとしていく。これは当然のことだと思っております。

坂本委員 政権与党の、しかも良識の府の参議院会長であるわけでありますので、私は事実上の公職と同じだと思います。

 北海道の方で、幹部が選挙違反で逮捕されても辞職をされない。あるいはみずからが逮捕されても辞職をされない。そして今回のような農転、農振法の違反があってもそれは知らぬふりしている。一方で、ちょっと党内の批判をすれば解任をされる、解職をされる。これが今の政権与党の体質かなということを改めて思うときに、これからの日本の政治に対する大いなる不安を感じるわけであります。

 質問に移ります。

 私は、農林水産委員ではありませんので、大臣の所信というのを聞いておりませんし、読みませんでした。今度の質問に当たって、改めて今国会の赤松大臣の所信を読ませていただきました。驚きました。こういうことが本当に真顔で言えるのかというふうに思いました。

 こういうくだりがあります。「過去四十年にわたって農村を疲弊させ、閉塞感を与えてきた生産調整政策を大転換します。つくらせない農政からつくる農政へとかじを切り、」云々というのがあります。

 私は、この文言は、余りにも農の歴史を知らない、浅薄で品格のない言葉である、国民一体となって食料生産あるいは食料政策をやっていかなければならない大臣の使う言葉ではないというふうに思います。

 戦後、日本は失業とインフレと食料難の三重苦だったんです。それを、まず国家最優先の課題として、いかに国民に飯を食わせていくか、食料増産というのが優先順位の最大のテーマであったんです。そして、GHQによる農地改革、さらには規模拡大、あるいは開拓、開田による規模拡大、そして、できるだけ国民一人一人に食料を行き渡らせるための食糧管理制度、また、農家の所得を少しでも上げる、そして、消費者に少しでも安く買っていただく、そのために、生産者米価あるいは消費者米価、こういったものを、できるだけ高く買って安く売る、そういう政策を続けてまいりました。

 この政策の中には多くの方々の知恵があったんです。小倉武一先生を初めとする有識者の方々、そして自民党を初めとする数々の議員の皆さんたち、さらには労働農民党から社会党に身を転じて農業問題に全力を挙げられた大臣のお父さんの赤松勇先生たちも一緒になって、与野党一緒になって食料増産に励んでこられたんです。しかし、その成果があって、やはり日本の農家というのは技術も意欲もすばらしい、わずか二十四、五年でそれを達成し、気がついたときは米余り状態だったんです。

 一九六九年、減反政策が始まります。しかし、そのときはもうそれで、生産調整をしなければ仕方なかった。生産調整をして、そして今後どういうふうに農政を転換するかという、みんなでやってきたことが一つの目標を達し、そして次の目標にまた進む、そういう時代でありました。ですから、生産調整以外にそのときはなかった。そして、農家の御理解を得て生産調整を始め、水田調整、水田というものをいかに機能的にフル活用していくか、そういうような農政に転換をし、ここまで苦しみながらやってきた。

 もちろん、反省もしなければなりません。やはり、減反減反、その中で閉塞感があったということは事実でありますけれども、しかし、それで減反をしなかったら米が暴落する、その中で農家の所得はどうなるかというようなことがありました。ですから、私は、この四十年間の生産調整が閉塞感を生み、あるいは非常にまずい政策であった、このことは訂正すべきだと思います。

 そして、つくらせない農政からつくらせる農政へ、このこともやはりおかしい。参加しない農家は戸別所得補償制度を受けられないわけですから、これはつくる農業とはまた違うんです。ですから、このくだりは、私は、削除するか訂正するか、何らかの大臣としての御意見なり考えをいただきたいというふうに思います。

赤松国務大臣 これはあくまでも所信でございますので、私自身がこういう方針のもとでやっていきたい、ある意味でいえば大臣としての決意でございます。

 そして、委員が今いろいろ御指摘をされました。個々の細かな問題は言いませんが、一つは、戦後の食料不足の中で、わかりやすい、具体的な例でいえば、例えば干拓事業についても、多くの海を埋め立てて、そこで米の増産に励もう、あるいは食管制度をつくって、きちっとそういう国の管理のもとで食料供給をやっていこう、特に米の供給をやっていこうということをやってきたわけです。

 しかし、当時としてはそれはある時期正しかったかもしれないけれども、八郎潟なんというのは一番わかりやすい例ですけれども、さあやりましょう、全国から、やる気のある農業者は財産を売っ払ってみんなここへいらっしゃいと言ったら、一年か二年たったら、もうつくるな、もうここはつくらなくていいんだというようなふうで、まさに猫の目の農政の転換の中でそれに愚弄されてきたというのが、そういう干拓地域の人たちであったわけでございます。

 また、食管制度についても、かつての戦後二十年代、三十年代はどうだったかはわかりませんけれども、少なくとも今の時代に、食管制度を維持して、そして先ほど委員は米を高く買って安く売るんだと。しかし、そのバランスを、一兆円、二兆円をずっと払い続けることに果たして国民全体の理解が得られるのかどうなのかということを考えていったときに、それは時代とともに、当時自民党政権でしたけれども、食管制度の見直しをせざるを得ない。干拓事業もつくれつくれから変えざるを得ない。そういうふうで、やはり時代とともに変わってきているんですね。

 今一番何か気にかかっているところは、つくらせない農業からつくる農業へというくだりのようでございますけれども、これはまさに減反政策を進めてきたこれまでの政権が、必ず減反に従わなきゃいけないんだ、従わなければペナルティーなんだ。どんどんどんどんペナルティーを科して、それで、おまえの来年の割り当ては三十だ、持っている土地が十あるとすれば三でしかつくっちゃいけない。こんなことをやればますます、きちっとやろうとしてもそれはできないというふうになるわけです。

 そういう意味でいえば、力と権力によって無理やり抑えつけてこの減反政策に従わせようとしたわけですけれども、実際にはそれに従わない人がどんどん出てしまって、むしろそういう人たちが自由につくるものですから、米がどんどん市場に出て、価格は下がっていく。しかし、下がったって、その米をつくったお百姓さんには、それそのものには直接何の援助もないというのをやはり変えていこうというのが今度の戸別所得補償制度であります。

 私どもは、この制度に入るか入らないかは農業者自身が決めてください、しかし、入ったらこんないいことがあるんですよ、こんなメリットがあるんですよ、入らない場合はこうなるかもしれませんよということを農業者自身が御自分の判断でしていただく中で、そして現実の問題として、今ずっと集計中ですけれども、今まで一番こうした生産調整に応じてこなかった、ワーストスリーなんというのでよく県が出ていますけれども、そのトップだった秋田県とか福島県だとか、そういうところでもって、積極的に、一〇〇%とは言いませんけれどもかなりの比率で、今まで生産調整に協力してこなかった人たちが、ぜひこの制度に入れてください、ぜひこの制度でやりたいんですと。そして、生産数量目標をきちっと守りますから、そして余った水田では今度は米粉をつくります、飼料米をつくりますということで、今、一生懸命に取り組んでいただいているということも、ぜひ委員も客観的な目で見ていただきたい、このように思っております。

 そして、私どもは、今までの農政で一〇〇%全部悪いと言っているわけじゃなくて、必要なこと、いいことについては、これじゃむしろ足らないぐらいだからもっとそれを支援していこうなんということも現にやっておりますし、これからまた一年モデル事業をやる中で、二十三年度からは本格実施になるわけでありますので、そういう中で、戸別所得補償制度の本格実施、そしてもう一つは六次産業化、そして、広く言えば、これは農業者ばかりじゃなくて、消費者である都市の住民の皆さんも含めた食の安心と安全と安定供給というような三本柱を中心にして、しっかりとやっていきたいというのが私の決意でもございます。

坂本委員 生産調整は必要なんですね。その生産調整を半強制的にやるのか、それとも選択制でやるのか、それの違いだけなんですよ、一つは。

 自民党も、平成十六年、十七年、あるいは十八年だったですか、選択制、あるいは地域に任せるという時代はあったんです。しかし、それではなかなかうまくいかなかった。そして、過剰米が出てきた。その反省に立って、もう一度、では、きちんとした生産調整をしましょうというようなことになったんです。

 それから、大臣は今、もっと客観的に見てほしいと言われましたけれども、大臣は二言目には八郎潟のことを例に出されますけれども、私たち九州は、一〇〇%生産調整に応じて、そして狭い農地をやはりしっかり使って、そこからどれに転作をするか、裏作を何にするか、そういう土地利用というものを進めてきました。

 日本にはいろいろな農業の形態があるんです。八郎潟だけじゃないんです。九州もあるんです。中国地方もあるんです。そして四国の山間地域もあるんです。私は、小さい耕地のところへ行けば行くほど、やはりこれはきちんとした農政をやってきたと思います。

 閉塞感がある、あるいは非常に厳しい、そのことは認めます。それはみんなで、今から、やはり自民、民主、それぞれの議員がやっていかなければいけないことであるというふうに思います。

 ただ、つくらせない農業からつくらせるとか、四十年間閉塞感を与えたとか、やはり、こういう言い方というのは先達に対して失礼である、もっと、農の歴史とか、農に携わった人たちのこと、これはしっかり考えるべきであるというふうに私は思います。

 次に、今回の戸別所得補償制度、あるいは食料・農業・農村基本計画、このことについて、私自身としては、矛盾する点、あるいは非常に意味として不明瞭な点が余りにも多過ぎますので、もう一度ただしたいと思います。せんだって、予算委員会の分科会のときもお尋ねいたしましたけれども、もう一度お尋ねいたします。

 意欲ある多様な農業者という言葉はありますけれども、後継者という言葉はありません。農業で一番大切なのは何が一番大切か、後継者だと思います。後継者がいない産業というのは、これは農業に限らずいろいろな産業についても、その歴史を閉じます。後継者を育成していくために、やはり、いかにその後継者が農業に従事できるような制度設計にしていくかというのが一番大事だと思います。

 この多様なということの意味は、何をイメージして使用されているんでしょうか。規模でしょうか。作物の違いでしょうか。それとも、米、果樹、花卉、酪農、畜産、こういった営農別分類なんでしょうか。それとも経営形態なんでしょうか。それとも、農協系統かあるいは非農協系統か、そういうことを言っておられるんでしょうか。よくわかりません。

山田副大臣 まさに、私ども、後継者の育成、担い手の育成ということは大事だということで、自民党政権下でも随分言われてき、そういう予算もやってきたと思いますが、実際に、では、後継者が、担い手がどれだけ育ったか、そう考えますと、今のところ、ほとんどそれが功を奏せなかった。

 そういう意味で、例えば、選択と集中とこの前坂本委員は言っておりましたが、いわゆる四ヘクタール以上の農家を中心として、それを後継者として、中核農家として育てようとか、そういう試みもしたようです。私どもは、そうではなくて、意欲のある農家、これから農業をやろうという意欲のある新人でも結構なんです。そういった者たちも対象にして、その形態も、それこそ会社でやろうと家族経営でやろうと、あらゆる形で、本当にみんなが、農業に関心を持っている、意欲を持っている人がだれでも農業に参加して、農業で食べていけるような制度。これを私ども考えて、これがまさに、食べていけることが後継者づくりであり、担い手づくりである。

 その食べていけることのために、今までの制度を、先ほど大臣が言いましたが、四十年にわたる閉塞的なこういう農業政策を一転して、そして食べていけるような、若い後継者が、若い担い手がどんどんふえていけるような、そういう政策に、多様な農業政策に大転換を図った。そう思っていただければ、まずそのための戸別所得補償制度だと考えていただきたいと思っております。

筒井委員長 今、多様なという意味の質問がありましたが、それについては、今の答弁でよろしいんですか。

赤松国務大臣 一番の違いは、私どもが多様なと申し上げているのは、今副大臣が言いましたけれども、一定規模以上の人たちに限って集中的に支援をしていくやり方から、日本の農業の実態を見てみるときに、特に水田、稲作については、高齢農家やサラリーマン兼業農家が、中四国なんかそうですけれども、六五%を占めている。そういう人たちが担っている。

 では、その六五%の人たちを切り捨てて、あとの三五%にだけ支援していって果たして、こうした、小規模であっても、あるいは年寄りであっても、あるいはサラリーマンと兼業であっても、そういう人たちが現実の問題として日本の稲作や、水や環境を支えてきている。保って、その維持のために頑張ってきている。そういう意欲がなければ困りますけれども、そういう意欲があってやっている人たちについても、規模の大小にかかわらずしっかりと支援をしていこうというのが、この戸別所得補償制度でございます。

 ちょっと一言だけ申し上げたいと思いますが、先ほど、八郎潟ばかり例に出してと言われますが、そういう意味でいえば、私は九州のこともちゃんと見ておるつもりでございます。

 例えば、北海道では、米をつくりたいと思っても地域によってはつくれない地域があります。今度の制度では、残念ながらそれは乗っかりません。しかし、九州は気候の温暖さもあって、本当にすべての地域で、しかも意欲を持って積極的に、こうした水田における稲作に取り組んでいただいております。

 そういう意味でいえば、この九州地域こそ、すべての農家の人たちが、まさに今回の戸別所得補償制度によって、米をつくっても、つくること、米そのものには今まで補助も何にもなかったわけですから、応援がなかったわけですから、今度はそのものに支援が来るということになれば、皆さんが意欲を持って、九州地域の皆さん方も本当に喜んでこの制度に参加をしていただいているんじゃないかということもつけ加えさせていただきたいと思います。

坂本委員 大臣、少し答弁は簡潔にお願いします。

 意欲だけで飯が食えるならそれはいいんですけれども、やはり農業は難しいんです。熟練した技術が要るんです。風を知り、土地を知り、人の和が要るんです。そして、やはりプロでなくてはできないんです。意欲があって、新人で、そして農業をやります、ほとんどやめていかれます。トマトをつくる、何をつくる。見かけはいいけれども、しかし実際は非常に厳しいということをやはりしっかり考えて、そして後継者というものを、地域の担い手というものをつくっていかなければいけないと思います。

 その地域の担い手についても、非常に私が疑問に感じますのは、基本計画の中で、こういうくだりがあります。今言われたことです。「一部の農業者に施策を集中するだけでは、生産現場において意欲ある多様な農業者を幅広く確保することができず、地域農業の担い手を育成するという目的に対する施策効果が限定的なものとなった。」というふうに書いてあります。

 地域農業の担い手というのは、これは人のつながりがなくてはなりません。そしてやはり、その土地と人との関係がなくてはなりません。一定の期間が必要であります。

 ある日、そこに食料、農業の工場が来て、そこで食料を生産することになった。それが地域農業の担い手になるかというと、そうではないんです。やはり一定の期間を持って、人との和を持って、さらに土地を集積させながら、そしてできていく、これが集落なんです。今の集落でもあるんです。それをどう機能的に活動させていくかというのが一番大事なところでありますので、ここで言う地域農業の担い手ということと多様な担い手ということ、この二つは矛盾するんじゃないですか。

赤松国務大臣 お答え申し上げます。

 矛盾しません。なぜか。これは今度の新しい制度でもつくっておりますけれども、私どもは、今委員が御指摘のように、例えばサラリーマン。定年になった、リタイアして、私は空気のきれいな環境のいい農村で百姓をやってみたい、そうリタイアしてやられる方もいます。それは別に否定しませんし、大変いいことだと思います。

 しかし、そういう人がどれだけふえても、本当の意味で日本の農業を再生させるということにはならないんですね。委員が御指摘のように、技術も要るんです、知識も要るんです。農業というのは、決してそんな簡単なものじゃないんです。

 だからこそ我々は、本当に若い、そして将来自分の仕事として頑張っていただけるような、そういう人を育成していこうということで、今でも、一年間に限ってですけれども、給料の半分は、では補助を出しましょう。十四万円だったら七万円は国が持ちますよ。その七万円で、あと、それは申しわけないけれども、そこは負担をしていただく中で、一年間、労働力であると同時に、次の農業を担う、そういう後継者、担い手として、ぜひいろいろな知識を与えてください。作業を覚えさせてください。そして若い人たちをどんどん大きく育ててくださいということでお願いをして、こういう制度も今、取り組んでおるところでございます。

 ですから、決して集落営農だとか農業法人だとかいうことを否定しているわけでもありませんし、ぜひそういう形で、生産性を上げる、効率性を上げる、協業化を進める、やはりそういう農業がこれからの日本の農業の中心であるということも否定しているわけではありません。

 ただ、残念ながら、今まで農地の集約をしても、農地集約は一定に進んだんですけれども、しかし、進む度合いと農業をやめて耕作放棄地になる土地とどっちが多いかといったら、耕作放棄地になる土地の方が多いんですよ。ですから、それは、限界集落と言われるようなところで、本当に数少ない人たちが歯を食いしばって水や緑や環境を守るために頑張っている。そういう人たちにもやはりしっかり支援をしていくというようなことをやらなければ、三十九万ヘクタールと言われる日本の耕作放棄地は、あっという間にこれが五十万になり、七十万になりというふうになるんじゃないかということで、今度の制度を組み立てている、設計しているということをぜひ御理解いただきたいと思います。

坂本委員 その制度設計が明確でないから聞いているんです。多様な農家とか地域の担い手とか、いろいろな形で文言は並んでおりますけれども、新規参入者に給料を与える、これは前政権からずっとやっています。それでもなかなか後継者が育たない。だからどうすればいいかというような制度設計をやはり明確に出さなければいけないというふうに思います。

 そういう中で、認定農家制度、これもこの基本計画の中で非常に矛盾に感じるところがあります。この認定農家について、認定農業者制度において、米の生産数量の目標に従って生産していることを要件に加えてきたことなどが、多様な農業者を育成、確保する上で制約要因になっている、このことについても適切に見直していくというような記述があります。そして、その一方で、こういう記述もあるんですよ。農業者の自主的な申請に基づき市町村などの地域の関係機関が協力して地域農業の担い手を育成、確保する仕組みとして定着している認定農業者制度の活用を推進する。年齢、規模、兼業は認めないとしていた誤解解消にも努めるというふうなことがあります。

 認定農家というのは、この五年間、どういう農業をやるかということで、規模とかいろいろなものに関係なく、その地域が、この人にはこれからの後継者として、地域の担い手として農業を任せようというようなことで決めたのが認定農業者なんです。今二十五万ですか、三十万ですか、立派に育ってきている。これにもう少し所得的な保障をする。補う補償ではなくて、きちんとした保つ保障の方をしていくならば、後継者、認定農業者として育っていくし、そのプロの農業者に対していろいろと協力をしていく地域の方々が兼業も含めて出てきて、そして一つの農業集落経営体、あるいは農業経営体をつくっていくだろうと私は思います。

 しかし、ここで書いてあるのは、私は矛盾するように思います。一方で、米の減反政策、数量目標に従うことを要件に加えてきたことが農業者を育成する上で阻害したんだ、一方で、この認定農業者を認めているんだ、定着しているんだというようなことを言って、相反するようなことが書かれております。そういう気がいたします。

 そこで、聞きます。今後、認定農業者の戸数というのをさらに増加させていかれるわけですか。そして、今後、認定農家には米の生産数量目標に従わなくてもよいというようなことも言われるわけですか。

山田副大臣 認定農業者の制度が今の農家のいわゆる中心的な役割を担っていることもよく承知しておりますが、逆に言うと、認定農業者、そういった者に対して四ヘクタール以上とか、場合によっては市町村によって、これだけの所得がなければいけないとか、こういう営業というか農業計画をきちんと出さなきゃいけないとか、認定農業者でなければ機械等のリースとか補助金を受けられないとか、いろいろな条件とか制約がいっぱいあったと思います。

 私ども、民主党時代に、そういったものだけではなく、本当にこれから農業を新しくやろうという人たち、生産調整数量目標に参加しなかった人たちでも、そういうペナルティーを受けたり云々じゃなく、だれもが本当に今度の新しい農政に参加できるように、認定農業者だけではなく、今回、意欲ある農家をすべて、そういう形で、ぜひ日本の農業を支えてほしい、担い手になってほしい、そういう見地から、今、考えているところです。

 従来、確かに認定農業者たちが果たしてきた役割というのは大きいと思いますし、今回、また認定農業者がこうして戸別所得補償等に協力していただけることも、ぜひ頑張っていただきたいと思っておりまして、今すぐこの制度をやめたり、ふやしたりとかいうことは今考えておりません。

坂本委員 では、米の生産数量目標の要件、これには加えないわけですね。いろいろ誤解があるようですけれども、四ヘクタール以上とか、それから生産額とか、こういうのは要件になっていないんですよ。最終的にはその地域が、この方はやはり将来、五年後あるいは十年後、この地域の担い手になるということで、地域が決めるのが認定農家なんです。後は運用次第なんです。

 ですから、私は、この認定農業者制度、これから大いに活用していかなければならないし、そしてそのためには、一定の国の政策と歩調を合わせるというようなことも必要であると思います。農家のプロですから。食料、農業をやはり引っ張っていく方々ですから。このことについてはぜひ今後、お考えいただきたいと思います。

 それから、もう一つ、農業団体についてお伺いいたします。

 こういう記述がございます。「農業関係団体を経由又は活用した施策を多くの場面で採用してきたことにより、当該団体との関わりが薄い担い手に対し、施策に対するアクセス機会が十分に確保されないといった結果を招いてきた」。このことは、農協に入っていない、系統でない方々のところからいろいろな意見が出てきた、これをやはり採用されているんだと思いますし、一部は認めます。しかし、今、民主党の方でやろうとされている政策は、私は、これは行き過ぎである、農協外し、農協またぎ、農協敵視、農協つぶし、そういったものに思われてなりません。

 私は、農協がいいとも悪いとも言いません。やはり本来の農協の姿に戻るべきであるという気はいたしますし、民業圧迫をしない、経済的、社会的弱者である農業者が、みんなで相互扶助によって生産や販売や商品に対して力を持つ、これが協同組合の本来の理念でありますので、そこがきちっとできていけるような農協体制にするというのが本来の国の役割であります。

 一方で、今やられようとしているのは、系統以外の農業者が出てくること、そういうことのように思えてなりません。それは、逆に言えば、今度は新たな資本の論理で農業弱者が誕生してくるということにつながります。私は、そこは非常に慎重にしてやっていかなければ、農村の構造そのものがずたずたになってしまうと思います。もっとJAを、あるいは農協を活用する方向に持っていかなければならないと思いますが、いかがですか。

山田副大臣 坂本委員がおっしゃっているように、農協が本来の、農業者、生産者同士が共同して販売したり共同して仕入れするとか、お互いに相互扶助する、そういう原点にもう一度戻って、農協としての立場というのをきちんとしていただければありがたいんですが、これまでやはりどうしても、農協に入っていない、あるいは農協に協力的でない人たちとの、いろいろな差別とか、さっき坂本委員もおっしゃったように、いろいろな問題があったことも事実であります。しかし、それを超えて、私どもは、農協、JAの果たす農村地域における役割というのは、それはそれなりに非常に大切に、大事に思っております。

 したがって、これから先も農協が本当に農家のために頑張ってもらうこと、我々もそうしっかり思っておりますが、同時に、国からの助成金、今回の戸別所得補償にしても直接支払い、できるだけ、農家個人に対して直接支払いが行くような形のものは、先進国ほとんどがそうでありますように、やはりこれから先そういう形はきちんととらせていただきながら、農協のあるべき姿と農家のあるべき姿と、我々もいろいろな意見を聞きながら、しっかりとこれからも検討させていただき、農協にもぜひ頑張っていただきたいと思っているところです。

坂本委員 今後の農政として、直接支払い、所得補償、それは十分わかります。しかし、それはEU、ヨーロッパで誕生した制度であります。日本は日本のやり方にやはりそれを変えていかなければなりません。日本の制度設計というものをつくらなければいけないんです。水田は日本にしかないんです。あるいは畜産も、果樹も、花卉も、お茶も、やはり日本なりの新たな制度にしていかなければいけないけれども、その制度そのものが未成熟のままに今スタートしようとしていることが現場に混乱を与えているということなんです。

 これは私、自民党だけが言っていることだろうと思ったら、民主党の中でもそういうことが言われているんですね。篠原孝議員、私はかねて、農業には造詣が深く、篠原議員の農業論に対しては耳を傾けることが多いんですけれども、三月十二日の農業新聞のインタビューの特集の中で、やはりこのことが、同じようなことが言われています。法制化をしないまま、しっかりとした制度設計をしないまま、予算づけだけをして走ろうとしている、農政の悪弊だというようなことを言っておられます。

 こういうようなことをやることによって農業がこの一年間混乱することになれば、それは二十三年、二十四年にも大きな混乱を招くことになるんです。

 同じ民主党からこういう意見が出てきていることに対して、どう思われますか、大臣。

赤松国務大臣 民主党はまさに民主的な党なものですから、いろいろな意見を言っていただいても全く構いません。しかし、最終的には、議論の結果みんなで一つの方向を決めて、その決まったことにはみんなが従っていくというのが私は党風だと理解しております。

 今の件でいえば、私どもが勝手に法律をつくるとかつくらないとかモデル事業でスタートするとかやっているわけではなくて、これは私どもがかつて選挙でマニフェストの中で、二十二年度はモデル事業ですよ、二十三年度から本格実施ですよ、本格実施では約一兆円、ほかの、もし水産、畜産等を含めれば一兆四千億というあれもありますが、とりあえず、とにかく一兆円、二十三年度からと。それまでは、工程表を見てもらうとわかるんですが、こう斜めになっていて、モデル事業とちゃんと書いてあるんです。ですから、モデル事業が法律でどうのなんということはあり得ないわけで、これは私どもは国民に約束したマニフェストに従ってきちっとやらせていただいている。

 それに対して、それはおかしいとか、おれは本当は最初から本格事業でやった方がよかったんだと思うのは自由ですし、先ほど言ったように民主的な党ですから大いに議論はしてもらって結構ですが、党で決まったことはやはりマニフェストに従って守っていただかなければいけない、このように思います。

坂本委員 思うのは自由ですけれどもということを大臣みずからがおっしゃること自体が、私は認識が軽いと思うんです。子ども手当や高校授業料の無償化、これは人が相手です。ですから、それを一つのモデルとして、ではその次から適用をどうするか、除外するところをどうするかということが言えるんです。しかし、これは相手が土地なんです、自然なんです、集落なんです。

 一度作付をして、そしてそれがだめだったからまたもとに戻しましょう、あるいはこういうことにしましょう、これまでそれを何回か繰り返してきたことが猫の目行政というふうになったんですけれども、今度の場合には、それぞれの法的な体系もないまま五千六百億の予算でスタートする、レールなき農政を札束を敷きながら走っているようなものなんですよ。全然そこに将来展望、あるいはこれからの構想というのが見えてこない。だから、私たちは現場のことを心配して言っているわけです。

 ぜひここは、きちんとした経営安定対策、そして水田の強化対策、こういった法整備というものを行っていただきたい。二十二年度中に、二十三年からまた新たなことが加わるわけでしょうから、この法体系というものをどういうふうにしていかれますか。

 それからもう一つ、先ほどの小里議員の質問とも関連しますけれども、今後、このモデル事業をモデルとして二十三年から新たな戦略作物、あるいは転作作物、あるいは団地加算、あるいはさまざまな加算制度、こういったものを考えるというふうに言われますけれども、二十二年でやって、そしてそれを制度改正して二十三年でやろうとしても、もうそれは遅いんですよ。ですから、その時期を、法体系をつくるのをどうするのか、そして戦略作物としては何をするのか。大豆や麦が適作でない湿田地帯もあるんです。その湿田地帯に対してはどういう方法をとるのか。それをいつまでに、どういう形で出すのか、そのスケジュールを答えてください。

赤松国務大臣 今議員が御指摘の点については、私どもも十分承知をいたしております。

 ですから、二十二年のモデル事業を実施する中で、いろいろな課題も出てくるかもしれません。そういう課題を次の法制化の中にきちっと組み込んでいく。

 なぜ米なんだ、水田だけなんだという話もありましたけれども、日本の農業を考えるときに、規模の大小、売り上げの額の問題は横に置いておいて、どういう作物に一番かかわっているかといえば、約七割は水田稲作だと思っております。そうすると、そこを外して、その基本のところを抜いてモデル事業なんということはあり得ないわけで、まずそこを重点にした、モデル事業としては、水田に注目した、その利活用を含めたものにまずその基本のところを置いてやってみようということでございます。

 ですから、これはマニフェストにも書いてありますけれども、本格実施の中で、例えば規模加算だとか環境加算だとかそういうことについても検討するということで言っております。ではほかの作物については、米以外については一体どうしていくのか。制度に入れるのか入れないのか、入れないとしたら、では別個にどういう支援策がいいのかということをあわせてこの一年できちっと検討していこうということでございます。

 それから、間に合うのかという話がありますが、当然、常識的におわかりになると思いますけれども、来年、二十三年から本格実施、基本的には来年の四月一日から実施ということになったときに、幾ら野党の自民党が積極的に成立に協力をしていただいても、通常国会ということには正直言ってならないというのは、これは常識だと思います。そういう意味で、来年の四月一日にきちっと法律がスタートできる、そういう時期にしかるべく法案を出すということになるのは当然ではないでしょうか。

 あと、個別の、この作物について、あれについてというのは、これから、まだモデル事業さえ始まっていないんですから、始まる中で、いろいろ取り組みをする。この仕組みはどうなのか、この額はどうなのか、ほかの支援策との関連をどうするのか、入れるのか入れないのか、そういうことを含めてしっかりと検証して、ちゃんと二十三年度から本格実施してスタートできるように頑張りたい。

 五千六百十八億の金額の話もありました。これも、もう少し小規模から始めたらいいのではないかという意見もなかったわけではありませんけれども、ぜひ本格実施をスムーズにスタートさせるためには、それなりのことをモデル事業とはいえきちっとやらなければだめなんだということで、財務当局と私あたりはどんどんと大議論をいたしまして、最終的には私どもの考え方が内閣全体で御理解をいただいた。財政当局にも御理解をいただいてこの額が決定したということでございますので、きちっとやっていきたいと思います。

坂本委員 であるからこそ、モデル事業としてまだスタートしたばかりなのに、来年のことなんと言うこと自体が私は驚きであります。やはり農政というのは、しっかりした制度設計がなければいけない。ですから、私は、この一年間は制度設計に集中すべきである。今の食料・農業・農村基本法、これは十年かけて有識者あるいは官僚も含めて多くの方が練りに練ってこの新しい食料基本法というものを出したわけですので、大転換であるならば、そのくらいの年月をかけて本当は制度設計するというのが本来のあり方であります。ぜひ、これからの農政、一つ一つ私たちもチェックをしてまいりたいと思います。

 林業についてお伺いをしたいことがいっぱいありましたけれども、きょうは農業だけにとどめさせていただいて、次回に回させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 法案の質問に入る前に、クロマグロのことと宝石サンゴの件について少々お伺いをいたしたいと思います。

 今回、ワシントン条約締約国会議の第一委員会で、大西洋クロマグロについて附属書1に掲載をしよう、こういう動きがあった。こういう動きの中で、今のところ、第一委員会では多数をもって否決をされた、こういうことであります。このクロマグロが、本来ICCATで当然やるべきではないかと思ったんですが、ワシントン条約の締約国会議にかけられた。これはそれなりの主張する国の理由もあると思いますけれども、今回の状況に至った理由をまず簡単にお伺いいたしたいと思います。ちょっとごめんなさい、農林水産省とそれから外務省にも来てもらっていますから、それぞれお答えをお願いします。

佐々木大臣政務官 このたびの一連のCITESの決議についてでありますが、本来、今委員が御指摘のように、ICCATで資源管理を行うべきものでありますが、その資源管理の状況というものが、私もスペインでそのことを主張してきましたけれども、やはりそこを世界じゅうにアピールし切れていなかったんだと思うんですね。そのために、やはりICCATが資源管理をしているんだということをもうちょっと世界にきちっとアピールをしていかなければならない、それが不十分であったがゆえにCITESの方で論議をされるという結果になったんだというふうに思っております。そこのところは私も、しっかりこれからアピールをするべきだということについても主張してまいりましたし、同時にまた、これから日本がそこでしっかり貢献をしていくということについてもステートメントさせていただいてきたところであります。

 ですから、今後においては、大臣もコメントで申し上げていたように、しっかりとした資源管理をどうしていくかということが大きなテーマになろうかというふうに思ってございます。

 以上です。

吉良大臣政務官 今、佐々木政務官の方からお話ございましたけれども、日本としては、ICCATの中で資源管理については十分リーダーシップを発揮している立場でございますけれども、そのことが必ずしも国際的に理解が十分ではなかったということで、ICCATによる資源管理が必ずしも十分ではないという問題意識を持たれた結果、このような提案になったものだと了解をしております。

石田(祝)委員 それぞれ御見解をお述べいただきましたが、ICCATでの管理が十分ではない、こういう認識を持たれたことで、ワシントン条約の締約国会議の方に回って提案をされたと。

 一時期、ひょっとしたらこれは通ってしまうんじゃないかと、三分の二以上の賛成ということでありましたけれども、大変心配をしておりましたが、今回、結果的には、何というんでしょうか、これは一安心と言った方がいいのか、ちょっと言葉の使い方でまずいかもしれませんけれども、この会議の状況について詳しくお答えをいただきたいと思います。

山田副大臣 先ほど、どうしてワシントン条約でということをお聞きになったと思いますが、まさにモナコからの提案に対して、EU各国、アメリカ、そういった、大西洋についてはぜひマグロ類の商業取引等々を禁止すべきだという意見が出てきたわけです。あの地中海の中でも、大西洋の中でも、EUの中でも、例えばスペインとかイタリアとか、あるいはいろいろな国々、マグロをとっている国々、地中海の中でも小さな、リビアとかチュニジアとか、そういった国々が幾つもあるわけですが、逆に今度は発展途上国、アフリカ諸国等においても、こういうマグロ漁が禁止されると、自分たちがとっているマグロも大変なことにはなりますが、これから次々にシーラカンスと同じように絶滅危惧種、そういう魚がワシントン条約でいわゆる捕獲禁止とか取引禁止とかになったら大変だ、そういう思いから、今回、リビアの提言によって、ああいう緊急動議でうまく解決できたといういきさつだと聞いております。

 やはり、今回これを教訓にして、しっかりと太平洋、日本海等々についても、クロマグロの資源管理というものについてはきちんとした対応をこれからやっていかなきゃいけないだろうと思っております。

石田(祝)委員 クロマグロについてお聞きをしておりますけれども、今回は委員会の段階で三分の二の多数をとられなかった、こういうことでありますけれども、日本がいろいろな働きかけをやった。クロマグロは科学的に、そんなにモナコが言うほど減っていないんだとか、いろいろなことを日本が説得したと思うんですね。ですがゆえに、これは今回は数の上では否決をされましたけれども、逆に、マグロの管理、資源の管理ということに対して、ある意味でいえば日本が世界に対する大きな責任が出てきた。日本がいろいろな主張をして、日本の主張が認められた、これはこれで私は結構なことだと思います。外交的にも頑張っていただいた、こういうふうに思いますけれども、逆に責任が出てきた、こういうことだろうと思います。

 ですから、これは、今回ワシントン条約締約国会議にかけられたということ、それだけいろいろな方がこのクロマグロについて思いをなさっている。ですから、捕獲量とか取引されている量が本当に報告されているとおりなのか、こういうことだろうと私は思うんですね。

 例えばお米でいっても、南魚沼産のコシヒカリが生産量の何倍も流通しているという、お米でもあるというのを聞いたことがありますから、その数字の妥当性について疑問が持たれている。そして、今回、日本がいろいろな主張をなさってそれが一定の理解をいただいた。逆に、先ほどから申し上げているように、このことに対して責任が出てきた。こういうことですから、これからも今までと同じ理屈で世界各国の理解が今と同じように得られるかどうか、これは私は大変心配また疑問を持っております。

 逆に、日本がこれからクロマグロをどういうふうに資源管理していくか、保護していくか、積極的な姿勢を先に打ち出していく、こういうことでないと、いつも、攻撃された後、いろいろ言われた後、一生懸命各国に根回しに走る、それでやっと否決をされた、胸をなでおろすんですけれども、実は問題は残ったままだ、こういうことだろうと思います。

 大臣、クロマグロについて、私は環境保護団体等はまだあきらめていないと思いますし、ますます一つの運動の象徴として取り上げられる可能性もある、こういうことで、今後どういうふうにお取り組みをなさるのか、これは大臣にお伺いします。

赤松国務大臣 お答え申し上げたいと思います。

 まず、基本的に言えば、私どもは、今回クロマグロを否決したから、それによって資源管理の責任が発生したということには考えていません。

 それ以前から、もともと昨年秋のICCATで、日本が提案をするような形でリーダーシップを発揮して、地中海を含む大西洋地域における四割削減の提案を日本がして、そして各国の了解を得て、一年間四割削減しましょう、それでも資源がもしまだ減少するようだったら、一年間操業するのを大西洋ではやめましょうということを提案して決めたにもかかわらず、二、三カ月たったら、急にモナコがああいうことを言い出してきたということです。

 私どもは、もしこれが通ったら、魚種がふえるとか、管理区域がインド洋にも太平洋にも来るんじゃないかみたいなことはもちろんありますけれども、どちらにしても、そういう地域についても、太平洋地域についても、日本と韓国が中心になって資源管理をきちっとやっていこうということも今提案しているわけでございまして、それをきちっと私どもが説明することによって各国の理解を得た。

 もちろん、省を挙げて取り組んだこともありますし、山田副大臣には韓国へ行ってもらう、それから佐々木政務官には議長国であるマドリードへ飛んでもらう、あるいは舟山政務官には私のかわりにOECDの農業大臣会合に出てもらってその場でいろいろ各国を説得する、それぞれ政務三役としても役割を果たしましたし、いい結果だったと思います。

 ただ、一番のポイントは、これは日本でも一部は報道されていますが、環境国と言われる、あるいは環境派と言われる人たちが、本当にそういうことの視点から言っているのか。例えば、EU二十七カ国は一つの国だ、これは国内だ、だからスペインがフランスに輸出とかマグロを出すのはいい、あるいはマルタがギリシャに出すのはいい、これは国内取引なので禁止されないんだ、あるいは沿岸漁業者はフランスは認めるんだとか、しかし発展途上国のモロッコやスーダンが蓄養をやったり日本に輸出するのはけしからぬ、だめだ、日本もとるな、そういう論理です。

 そういうことが、自分たちのやることはいいけれどもほかの国はやっちゃだめだというような、私から言わせればそういうめちゃくちゃな論理がきちっと明らかにされれば、通るわけがないわけで、これは日本もそういう演説をしました。あるいはスーダンあたりも、おかしいじゃないか、何で、フランスがよくて、自分たちは、発展途上国はマグロをとったり輸出したりするのはだめなんだみたいな大演説をやりました。

 そういう意味で、私どもが、総会のときばかりじゃなくて事前に、これは水産庁のOBの皆さんにもお願いして各国に飛んでもらって、きちっとしたそういう日本の主張に対する理解を求めることをやり切ったということが、あの二十対六十八という大差での勝利に私はつながった。これは宝石サンゴについても言えますし、サメは二十三日にやると思いますけれども、これも多分勝てるんではないかというふうに思ってやってまいりました。

石田(祝)委員 最後に確認ですが、これはまだ本会議というのがどうも残っておるようです。大臣が韓国で、その心配はないだろう、こういうことをおっしゃったということはニュースで聞きましたが、それはそういう見通しでよろしいんですか。

赤松国務大臣 現地に水産庁長官を行かせておりまして、連日電話でやりとりしていますけれども、モナコは余りの大差の大敗北にもうその気は全くないというふうに表明をしておりますし、それから、フランスが一時苦し紛れに、もう一度総会で、附属書1でなくても2でいい、2で何とかやるためにEUで一回話し合おうよみたいなことを呼びかけたらしいんですが、ほかの国は相手にしていないということで、総会の二十五日、最終日ですが、クロマグロについてはこれにかかることはないだろう、そのように思っております。

石田(祝)委員 最後ですけれども、宝石サンゴの件を、これはごく短くお願いしたいんですが、結果はどうだったか、よろしくお願いします。

赤松国務大臣 これは先生のお地元かもしれませんが、高知県知事も高知の特産品ということで事前にも陳情を私は受けておりましたし、これも、クロマグロを頼むときに同時に宝石サンゴも頼む、附属書2だとはいえ絶対これも否決してくれということもあわせて頼んできました。

 ただ、ちょっと心配していたのは、宝石サンゴといっても関係ない国がほとんどで、生産もしない、流通もしない、そんなものは見たこともない、宝石サンゴなんかどっちでもいいわという国が多かったものですから、非常に心配をしておりましたけれども、これもクロマグロとセットで日本は各国にお願いしてきましたので、票差はかなり、こうなりましたけれども、結果的に否決できたというのが経過でございます。

石田(祝)委員 それでは、法案の方に移りたいと思います。

 今回、農業改良資金の法律を変えるということでありますが、農業改良資金の融資実績がずっと減少してきているわけですね、これについてどのように理解されているのか。それから、今回、原資供給方式から利子補給方式に変更した理由。この二つについてお伺いをいたしたいと思います。

佐々木大臣政務官 減少している理由についてでありますが、これには幾つか要因がございますが、一つは、低金利状態がずっと続いているというようなことで、本来、改良資金の無利子という優位性があったんですが、その優位性が余りなくなってきたというようなこと。あとは、担保、保証人などという義務づけがございまして、そうしたことのハードルが非常に高かったというようなことが原因ではないかというふうに思ってございまして、そういった点を中心に、今回、見直しをさせていただいたということでございます。(石田(祝)委員「いやいや、もう一点聞いているよ。原資供給から利子補給に変えた理由」と呼ぶ)

山田副大臣 いわゆる今まで原資まで融資しておったものが利子補給方式に変わったことについての質問ですかね。(石田(祝)委員「ちゃんと話をしたじゃないですか。よく聞いていてくださいよ。質問通告もペーパーでしているんだから」と呼ぶ)はい、ごめんなさい。

 そうであれば、今回、何でそういうことにしたかといいますと、実際に仕分けその他において基金そのものの返還をかなり求められたんですが、確かに、基金をためておいてそこから融資するということは、今までこういう融資をなされてきたわけですけれども、その中で、利子補給をその都度予算にもらって、その基金そのものは財務省に一たんお返しするという方向で、私ども、財務省とも仕分けのときに話させていただきました。

 しかし、実際に借りる側にとってみれば、農業者にとっては、利子補給、その点については従来と全く変わりませんので、むしろ、基金を返還することによってその基金が有効に活用される、いわゆる財政厳しい折、ほかのいろいろな資金に、いろいろな手当てに使われるという意味ではその方がより合理的であると私どもは考えて、今回こういう制度に、基金から利子補給に変わったということであります。

石田(祝)委員 次にお伺いしたいのは、融資市場に地銀等が参入、これが増加をしている。私も、地元の銀行が、農業に融資をします、こういうパンフレットをつくって融資が始まっている、こういうことを最近確認いたしました。

 確かにこれは私は結構なことだと思いますけれども、地銀が今までなかなか農業関係に融資をしなかった、これに融資を始めた、その背景ですね、それからあとリスク管理のあり方、これについて、農林水産省とそれからきょうは政策金融公庫も来ていただいていると思いますが、それぞれ御答弁をお願いします。

佐々木大臣政務官 地銀の参入についてでございますが、これについては、今、例えば地銀等の皆さん方が、農業が地域経済にとって非常に重要な地場産業であるという思いで、融資先として農業界というものに着目するようになったということが一つあると思います。

 それともう一つは、特に法人などがふえまして、農業の中でも非常に大口の融資が一方ではふえている。そういったときには施設整備と同時に運転資金も大きくなりますので、そういった意味で、農協系統のほかにそうした地銀等の融資も必要とする人たちが出現をしてきたというようなこと、この二つあたりが原因として考えられるところでございます。

 これらのチェック体制については、これから保証あるいは融資保険などを含めてしっかりとやっていかなければならないという認識は持ってございます。

坂野政府参考人 地銀の農業へのかなりの参入といいますか、それについてでありますけれども、動向を見ますと、地銀の方で各地域にどのくらい意欲的かというのを、いろいろな情報を新聞とか地銀に聞きますと、やはり農業の、非常に熱心といいますか意欲が高いといいますか、全体の産業に占める割合が多いところ、ここについてかなり地銀が意欲的であるというふうに承知しております。ということは、地銀の方で、そういう地域においては農業も地銀の大きなビジネスというふうにとらえているということから、地銀はそのように動いているというふうに承知しております。

石田(祝)委員 地銀がそういう融資に乗り出してきた。これは当然、地銀もリスクを管理し評価する、こういうことでやっていると思いますので、農業がやはり有望な貸出先、こういうことが徐々に地銀でも浸透してきたのかな、こういうふうに思います。

 それで、別の角度からお聞きをいたしますけれども、貸し付け資格、これは今回いただきました資料を見ますと、国の一般会計から利子補給する、財政投融資特別会計から原資を有利子で日本政策金融公庫に貸す、こういう形になるわけであります。今まで、都道府県が国の食料安定供給特別会計から原資を供給されて、県も特別会計で出して、それで貸し付けをしておった。ここのところが、県の役割が今回、償還、回収以外なくなるわけですね。

 しかし、現実問題として、ではどういう人に貸すのか。貸すというときに、認定をまだ都道府県に残している。そうすると、借りる人は、認定もしてもらわなくちゃいけない、県の方へ行く、実際のお金は政策金融公庫へ行かなくちゃいけない、こういう形になりはしないか。

 なぜここで都道府県にそういう認定の業務を残したのか。政策金融公庫は当然そういうノウハウがあるから、今回、政策金融公庫から貸し付ける、こういうことにしていると思うんですが、認定の主体をどうして都道府県に残したのか。これはどういう説明になりますか。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 認定についてでありますけれども、この融資制度は、農家の皆さん方が非常にチャレンジングな事業を展開するという場合に融資をしていた、もともとそういう制度でございます。新しい技術などの指導とセットで、新しいことにチャレンジしようという人たちに対して融資していたというその性格からすると、やはり普及指導と相まった融資ということになるわけでありまして、そういった意味では、引き続き、都道府県が技術指導をしながら、営農指導しながらというそこの性格そのものは残ることになります。

 そういった意味では、審査能力などについては公庫の方でやっていただきますが、そうした事業に持っていくまでのプロセスというところでは、今までどおり都道府県の普及事業の役割、連携というものはそのまま残るものというふうに考えたところでございます。

石田(祝)委員 都道府県の役割が残るということでありますが、普及職員の数がどんどん減っていっていますよね。元年から、ある意味でいえばもうずっと減り続けている。二十一年当初では七千九百五十五人、その前の年が八千八十四人。指導するという形で認定を残す、しかし現実に指導する普及指導員が減ってきている、ここのところはどのようにお考えでしょうか。

佐々木大臣政務官 確かに、今議員が御指摘のように、普及センターもそれから普及員も減少してきているわけでありますが、今後、こうした養成それから資質の向上ということは、用途が、今の新しいニーズあるいは六次産業などというニーズも含まれてきますので、大変大きくなってくるわけでありますので、いろいろこれから、国、都道府県、それぞれ役割分担をしながら、養成、資質向上に向けていきたいというふうに思っています。

 特に、高度な技術の習得、それからコーディネート機能、コーディネートの強化、それからマーケティング、こうしたところは今度国の方でも研修事業などを含めて支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。

石田(祝)委員 法案の新旧対照表を見ますと、今までの法律の中では、「担保又は保証人」、ここは両方とも要りますよと。これが今回新しい法律では、「削る。」こういう新旧対照表になっています。

 そしてもう一つ、今までの法律の中で、「支払の猶予」こういう項目がありまして、「都道府県は、災害その他政令で定めるやむを得ない理由により貸付金の償還が著しく困難であると認められる場合には、償還金の支払を猶予することができる。」これが今回、「削る。」こういう形でなくなるわけですね。ですから、今までは、支払いの猶予、やむを得ない事情では待ちますよと。これが今回、新しい法律ではなくなる、こういう法律の立て方になっていますね。

 これは、具体的に、今までは災害等で待っておってもらったけれども今度はなくなる、こういう法律の立て方になっておりますが、そういう理解でいいんですか。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 担保、保証人についてでありますが、この義務づけについては廃止をさせていただきます。

 改正後でありますが、この担保、保証人については、公庫の方の業務方法書というものについて運用されることになりますので、一つは、その中で公庫の今までの農業融資に対するノウハウが生かされることと、もう一つは、業務方法書というものによって運用されるというような仕組みになっていきます。

 さらにまた、支払い猶予の関係でありますが、この規定も廃止をすることになってございますが、これも公庫の内部規定によって運用されるということになりますから、公庫の内部規定の方でそれらの運用が行われることによって、より柔軟な運用が行われていくということになろうかというふうに思います。

石田(祝)委員 これは、公庫に来てもらっていますからお答えいただきたいんですが、法律で支払い猶予ということが明文化されているわけですね。これが今度なくなる。なくなったものは公庫の内部規定でやりますよ、こういうことですね。

 そうすると、今までは、そういう支払い猶予は、それを万が一取りやめるとなったら法律改正しなきゃいけなかった。今度はそれを公庫にやってもらう、公庫の内部規定でやるんだと。今までは法律を変えなきゃできなかったことが、公庫の内部規定の方に行っちゃっているわけですね。

 そうすると、ある意味でいえば、これは借りる方からしたときの万が一のときの、いわゆる法でいう安定性ということからいくとどうなるんですか。公庫が勝手に変えちゃっていいんですか。今までは、法律を変えなきゃいけないから、当然、農林水産委員会にかけて法律改正しなきゃいけないのが、公庫に投げちゃって、公庫の中でいいですよ、内部規定でやってくださいよ、こういう形に落とされてしまうわけです。

 これについては、とりあえず公庫のお考えを聞きましょうか。

坂野政府参考人 日本公庫では業務方法書に従っていろいろな仕事をするわけでありまして、業務方法書を決める際には、あらかじめ十分国の方とも相談して実施していきたいと思っております。

石田(祝)委員 もう時間もなくなりましたけれども、こういう支払い猶予という法律に明文化されておったものが突然なくなる、そして今度は公庫が内部規定でやる、いろいろなところと相談はしますよ、こういうことであります。

 これは、その問題について国会の中からいわゆる審議をする場所がなくなるわけですね。ですから、これは借りる方からしたら万々が一のときに非常に心配な点ではないのか、こういうことを私は思うわけであります。これはちょっとやり方を考えないと、いろいろな形で法律から別のところに移していって、そして私たちの議論が届かないところでいろいろなことが決められていっている、決められていく、そういう可能性があるんじゃないのか。

 そしてもう一つは、これは大臣に最後、通告しておりませんけれども、ちょっとお聞きしたいんです。

 今回、原資の供給が食料安定供給特別会計から財政投融資特別会計に移るわけですね。財投にこれからいろいろなことをやらそうとしているのかな、こういうことも感じるんですが、ちょっと大臣、申しわけありません、さっきの法の安定性ということと、財投に肩がわりさせるということに何か意味があるか、最後に、簡単で結構ですからお答えいただけますか。

赤松国務大臣 これは財政当局とも相談をいたしまして、資金のより有効な活用という視点からそのような形にさせていただきました。

 例の、原資を抱えてやる基金方式よりも、利子だけを補給することによって有効に資金を使っていくということと同様の考え方でございまして、その仕組みの方がよりいいんじゃないかという御指摘もあったものですから、そのような形にさせていただきました。

石田(祝)委員 ちょっと済みません、さっきの、いわゆる支払い猶予をする、これは法律に書かれているわけですね。これを法律からなくしてしまって、公庫に投げて、公庫の中で内部規定で、相談をしますよとおっしゃいましたけれども公庫の中で処理をされたら、私たちがそういう大事なところを議論する場がなくなるんじゃないですか、いわゆる借りる方からしたら法的安定性というものはなくなるんじゃないかということを聞いているわけです。

赤松国務大臣 それは、公庫の方に行きましても、そのもとの資金は国から出ているわけですから、委員がこういう場を通じて言及される、あるいはそれについて場合によっては御批判をいただくということは遠慮なくやっていただいていいと思います。

石田(祝)委員 終わります。ありがとうございました。

筒井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

筒井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玉木雄一郎君。

玉木(雄)委員 皆さん、こんにちは。民主党の玉木雄一郎です。

 本日は、質問の機会をいただきましたこと、委員長また与野党の理事の皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。

 本日は、午後、私、玉木雄一郎と、私の後にまた玉木朝子さんと二人、玉木・玉木コンビで与党質問をさせていただきたいと思います。

 実は、我々、名前が同じだけではなくて、民主党の質問研究会、今は政策研究会というふうに名前が変わりましたけれども、そのもとに幾つかの小委員会を設けまして、この改良資金助成法の法律案の改正についても小委員会を設けまして、この間、数度にわたりまして審議を続けてまいりました。そこで出された質問や疑問、そういったことを踏まえてきょうは質問をさせていただきたいと思います。その意味では、私の質問というよりも、民主党を中心としました与党の農林水産委員会所属の議員及び所属していない人の意見も踏まえた質問だということで、政務三役の皆様にはお答えをいただければというふうに思います。

 それでは、まず、改良資金助成法の改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 午前の審議でもお話が出ましたけれども、私、この改良資金助成法は非常に大事だと思っております。それは、これはまた後で出てくると思うんですけれども、六次産業化法案というものがこの通常国会に政府としては提出を予定されているというふうに思います。その中で、認定を受けた者に対して、改良資金助成法の特例という形で一つ支援措置が設けられるというふうに伺っております。その意味では、この改良資金助成法をより使い勝手のいい、わかりやすい仕組みにしていくことがまず大前提として必要だというふうに思っております。

 ただ、先ほど、午前の審議でもありましたように、貸付残高がどんどん減っております。去年がたしか八億円程度になっております。また、六次産業化法案と似たような法律で、農商工連携推進法というものがあります。認定された者に対しては改良資金助成法の特例が農商工連携法の中でも認められています。しかし、それは残念ながら、今のところ実績がないという状況でもあります。そういう意味では、今回の改良資金助成法改正によりまして、改良資金がより使われやすい、金融の円滑化に資するものになるのかどうか、このことがポイントだと思います。

 それで、最初に大臣にお伺いしたいと思います。

 今回の改正によって、改良資金の貸し付けの主体がこれまでの都道府県から日本公庫の方に変わるということになりますけれども、公庫に貸付主体が変更になることでどのような効果が生まれるのか、どのような効果を期待しているのか。この点について、まず大臣にお伺いしたいと思います。

山田副大臣 それでは、大臣にかわって私から。

 今、玉木委員がおっしゃるように、八億円まで下がったんですが、六次産業化で大変大事になってまいります。そんな中で、私どもが一番考えたのが、今までの改良資金は、どうしても担保が要る、保証人が要るということだったんです。今回、政策金融公庫でその義務を外しました。でも、担保が必要なときには政策金融公庫でも担保をとる場合もあるかとは思いますが、今まで義務とされておったものを外して、無担保無保証で受けられるようにしたということが、まず一番大きいんじゃないかと思っています。

 それから、六次産業化でもそうなんですが、これまでも農業分野での技術改良といいますか、例えば、かつて水田で、田植え機とか収穫機とか、そういったものを指導しながら、そのために融資してきた。そのようなことが、今回も六次産業化の中で、直販店を設けるとか加工品をつくるとか、そういったときにこの改良資金が有効に機能する。そのためには、いわゆる政策金融公庫みたいな金融の専門の窓口で柔軟に幅広く対応していただいて、弾力的に農業者が使いやすいような形にしたい。

 ただ、やはり今までの土地改良資金の制度から、技術指導的な役割の今までの普及員のそういう指導もぜひ受けてもらいながら、そう考えているところです。

玉木(雄)委員 今、副大臣からもお話がありましたように、これは、単に窓口を変更することだけではなくて、これまでの普及指導センター、普及指導員、あるいは系統経由の融資も残りますから、営農指導員等々との連携というものをしっかりとやっていきながら、公庫の金融のプロとしてのノウハウを最大限生かしていくということが非常に大事になってくると思います。このことができないと、制度はつくっても実際にまた融資残高が伸びないというようなことにもなりかねませんので、この連携についてはぜひ強化をしていただきたいというふうに思います。

 次に移ります。

 これは政策研究会の小委員会での議論で私も実は指摘を申し上げた点なんでございますけれども、今回、改良資金助成法の改正案が提出をされております。このことについては私も非常に進めるべきだと思うんですが、実は、六次産業化ということを進めていく際には、農業だけではなくて、林業や水産の分野もこういった地域の資源を生かして付加価値を増進していくことが非常に大事だというふうに思います。

 そんな中で、この改良資金助成法は、農業分野でのそういった新しいチャレンジに対して資金を供給していく一つの大きな制度金融の柱でありますけれども、あわせて、例えば、林業の分野であれば林業・木材産業改善資金助成法というものがございます。また、水産の分野では沿岸漁業改善資金助成法というものがありまして、農業、そしてあわせて林、水の分野でも、こういった改良あるいは改善資金というものが用意をされております。

 今回の法律案は、改良資金助成法、貸付主体を都道府県から公庫に変えるというもので法案の提出がなされておりますけれども、今申し上げました林業あるいは水産の分野についての二つの改善資金については、依然として都道府県から貸し付ける形態を変えておりません。もちろん、いろいろな経緯等々はあるのだとは思いますけれども、やはり金融のプロとしての知見を生かすということであれば、水産の分野あるいは林業・木材産業の分野でも、公庫なり民間の知見を活用するような制度変更のあり方が一つ考えられるのではないかというふうに思います。

 この点について、今回、法律改正案をつくる際に、いわゆる農林水産業全体の金融のあり方についての議論、つまり、制度金融全体にわたる議論がどのように行われたのか。今回の法律の改正の対象が改良資金助成法にいわばとどまっていることについて、今回の改正に至る経緯について、まず一点、確認したいと思います。

佐々木大臣政務官 経過についてお答えを申し上げたいというふうに思います。

 この農業改良資金は、私どもにしてみれば、野党時代も含めてでありますが、長い間検討してきたものであります。基本的に私どもは、補助から融資へという方針をとってございますので、そういった意味では、融資の方にできるだけシフトをしていきたいというふうに思っているところでございまして、そうした意味では、今度の制度についてもそのようなプロセスを経て検討させていただいてきたところでございます。

 林と水についても御質問がありましたので、お答えをさせていただきます。

 林業それから沿岸漁業等についても同趣旨の融資制度を持っているわけでありますが、我々もずっとこれを検討してきた中で、農業の分野だけが近年著しく低下をしているというようなことが一つありまして、農業改良資金については、今ほど議員も御指摘をいただきましたが、百六十七億円から八億円に、これは平成十年と比較してですが減少しています。

 しかし、林業・木材産業改善資金については平成十年三十一億円が平成二十年で二十一億円、沿岸漁業改善資金については平成十年四十一億円が平成二十年で二十二億円ということであって、融資の体制あるいはそれぞれの融資の残高において格段の差があるというようなことから、特に農業改良資金については急いで改革をしていかなければならないのではないかというようなことから、今回、農業改良資金について改定をさせていただくということを提案させていただいている次第であります。

玉木(雄)委員 特に農業が確かに落ち込みがひどいと思いますが、林、水についても、これは程度の差はあれ落ち込んでいっております。その意味では、第一次産業の分野に金融ということを通じて資金を円滑に供給していくことはこれから非常に大切になってくると思いますので、今回は対象から外れておりますけれども、林業の分野また水産の分野におきましても一層の制度の拡充を、ぜひこれからも御議論を続けていただきたいというふうに思いますし、三月末にまとめる農業・農村基本計画の中にもやはり第一次産業分野における金融の役割といったものを、補助から融資へということであれば、そこをまた明確に位置づけしていただきたいなというふうに思います。

 もう一点だけ申し上げますと、金融のプロではないところがやっていた、都道府県がやっていたというのがまさにこれまでの制度ですね。それを一つ如実にあらわしているのは、これは都道府県が貸出主体で今までやってきましたけれども、この実際の資金管理の事務というのは、実は一元的に社団法人農業改良普及支援協会というところが行うようになっております。たしか昭和四十五年から、そういう資金管理業務をいわばアウトソースして、この社団法人が一括受けていることになっていると理解しております。

 しかし、貸出主体が都道府県からまさに金融のプロである公庫に移る以上、資金管理業務をある種委託していたこの社団法人農業改良普及支援協会のあり方そのものについても見直しを進めていくべきではないかというふうに考えますけれども、この点についてお考えを伺いたいと思います。

佐々木大臣政務官 今御指摘をいただいた点については、我々も問題意識として共有をさせていただいているところでございます。

 農業改良普及支援協会、これは今まで、平成十五年までは農業改良資金協会、十六年以降は統合されて農業改良普及支援協会というふうになって、都道府県からの委託を受けて実施をしてきているところでありますが、今回の法改正によって貸付主体が都道府県から公庫へ変更されるわけでありますので、都道府県の貸付債権の規模そのものは縮小していくことになります。したがって、県からの委託を受けてデータを管理するこの協会の業務は縮小していくものというふうに認識をしてございます。

 この協会の任務というのは、普及職員を結ぶ情報ネットワークシステムの運営でありますとか、あるいは普及職員を対象とした月刊誌の編さんということが本来業務でありますので、そういったことも含めて全体的な見直しは必要になろうかというふうに考えているところでございます。

玉木(雄)委員 月刊誌の編集をしていることについては意義を否定するものではありませんけれども、四月から公益法人、独立行政法人を初めとした事業仕分け第二弾が始まりますので、やはり時代に応じて、真に必要なものは残すけれども、必要性が変わってきたものについては大胆に見直していくことを、農林水産省としてもぜひ政務三役が主導してやっていただければというふうにお願いを申し上げます。

 続きまして、今回、金融関連三法ということで、三つの改正法案が出されております。二番目の法案であります農業経営基盤強化促進法、今回、午前中でも法案の審議が余りなされませんでしたので、与党なのではありますけれども、この間法案審議をしていたことを踏まえまして少し、ちょっと細かいことになりますけれども、一点だけ確認をさせていただきたいと思います。

 それは、農業経営基盤強化促進法に基づいて本来公庫の行う融資というのは、低利ではあっても利子のついた有利子のお金を融通するというのが公庫の基本になっています。したがって、この法律に基づいて今行われている無利子資金であります担い手育成農地集積資金というものは、実は、法律の本則ではなくていわば附則におまけのようについて、それに基づいて多額の資金が供給されるという仕組みになっております。

 これがこの間、当面の間ということで長く続いてきたんですが、今御議論いただいています改良資金助成法、無利子資金を本則で書いて、公庫の資金として出すことが今度は行われるようになります。改良資金助成法については本則で書いて無利子資金を供給する、一方で、基盤強化の促進法に基づく無利子資金については法律の附則に書いた形で出していくということになっております。

 今回、せっかく改良資金、この無利子資金が公庫のいわば本則の資金として出ていくということになるわけですから、この法目的に照らして、農業経営基盤強化促進法に基づいて出されている無利子資金についても、附則ではなく、あくまで法律の本則として明確に位置づけて、いわば恒久化を図っていくべきだと考えますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 そもそもこの担い手育成農地集積資金ができ上がった経過でありますが、これは平成五年、ウルグアイ・ラウンド、UR農業交渉の合意の中で緊急的な措置として、今委員御指摘のように当分の間ということで創設をされたわけでありまして、その後も圃場整備がずっと進んでおりましたので、そういった中で、負担軽減という観点から今日まで継続をされてきたわけであります。

 法律上、当分の間というのは次の法律までできるということにも解釈はなるわけでありますが、今委員の御指摘もございましたが、今後これらの現場のニーズにどうこたえていくかというのが法律論と並行して我々が考えていかなければならないテーマでありますので、そういったニーズも含めて適正な運用というものを図っていかなければならないというふうに考えているところでございます。

玉木(雄)委員 それでは、金融関連三法のうち三番目の法案に移りたいと思います。農業信用保証保険法です。

 午前の審議でもありましたけれども、最近、民間の金融機関が農業分野に資金供給をする動きが随分出てきております。こうした資金供給を伸ばしていくためにも、やはり公的な保証制度の充実がかぎになってくると思っています。

 しかし、今、現在存在している信用基金における保証保険の引き受け実績を見ると、これもまた減少傾向にあるわけですね。さらに、信用基金における融資保険の実績というものを見ると、もっとひどくて、数年間にわたって実績がゼロということが何年も続いております。まずこの点について、こういった実績が低迷していることについての御見識をお伺いしたいと思います。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 今委員から御指摘がございましたが、この保険の傾向あるいは今日までの状況でありますが、農業信用基金協会が行っている債務保証の中で、事故のときに補てんをする保証保険、それから、金融機関が行った大口融資に対して、事故時に直接補てんをするという融資保険を行っているわけであります。

 保証保険は、先ほど来、副大臣もお答えを申し上げておりますが、景気低迷あるいは金利そのものが低下しているというようなこともあって、新規投資が非常に少なくなってきているというようなことがあって、こういう状況になっていると思ってございます。

 融資保険は、そもそも、農業信用基金協会が行う債務保証の補完というものでありまして、農協系統に限られていたというようなことが、十六年から十八年の実績が極めてないというような状況になってきているというふうに思ってございます。

 そういった意味で、今後は、先ほど委員からも御指摘がございました六次産業化なども含めて、それから融資の大口化などを含むというような多様化する中にあって、今回、融資保険の対象をふやしていく、銀行を加えていくというような方向も検討させていただいたところでございます。

玉木(雄)委員 今回、この融資保険の対象を系統金融から民間の方にも広げていくということなんですが、これまでの実績を見ても、では、その系統の金融機関に対して、どういう融資に対して融資保険をつけていたかというと、これは厚生連の病院とかなんですね。つまり、農業分野に対して資金が流れることをきちんと融資保険という制度でバックアップするというよりも、そういった病院とかまさに系統絡みのところに流れることをバックアップするということになっております。

 その意味では、今回、単に民間金融機関に対して対象を広げるというだけではなくて、こういった実際の制度の運用を含めて、しっかりと法律改正した後もフォローしていただいて、より民間にしっかりと、特に、大型化した法人に対して資金ニーズを満たしていくような形でこの制度が使われるように、ぜひ法改正後もフォローアップをしていただきたいというふうに思っております。

 次に、中小企業者が金融機関から融資を受ける際に利用できる信用保証制度として、今、中小企業信用保険制度というものがございます。この制度は、例えば、食品産業というものは中小企業の信用保証制度でカバーをされるんですけれども、農業、林業、漁業というものは対象から外れております。

 六次産業化ということを進めていく上では、まさに生産から加工、販売、こういったものを一体化させていって、それをまた支援していく仕組みができていくわけですから、この信用保証、信用保険の制度も、経済産業省所管の中小企業の信用保険制度と、農林水産省が所管しております農業信用保証保険制度、このいわば相互乗り入れといいますか、制度のより一層の連携強化、場合によっては一体化も含めた連携強化というものを図っていくことが必要だと考えておりますけれども、御見解をお聞かせいただければと思います。

山田副大臣 大変大事な指摘だと思っておりまして、例えば、これから事業を六次産業化しようとするときに、これは中小企業の信用保証の問題であって農業信用保証じゃありませんと窓口で断られる。逆のことも結構多いわけでございまして、漁業者、農業者から、何で中小企業の無利息の融資とか無担保無保証の融資が農業だけ借りられないのかというお話もよく聞いたところでございました。

 私どもも、今回初めてだと思うんですが、中小企業の信用保証協会、農業の方の信用基金協会、それぞれのところに窓口を設けることができました。

 例えば、農業者が中小企業の信用保証協会に行って相談したときには、単に、ここはうちの担当じゃないよと言うんじゃなくて、農業の方の基金協会の方に中小企業の信用保証の担当者が連絡をする、伺う前に。それで、農業者がスムーズに農業の方に行くことができる。逆に、農業者も、これは中小企業の信用保証の問題ですよと言ったら、そこから中小企業の信用保証の方に担当者が電話を入れてくださる、そういう連携をとる窓口ができ上がりましたので、これからスムーズに流れていくんじゃないか、そう考えております。

 将来は、一体化も含めて考えられればと思っています。

玉木(雄)委員 これは実は、農業者であっても、今でも、製造、加工の施設を持っていて、それで加工事業を行っているようなところは、中小企業信用保険の対象となります。ただ、こういうことが農業者の人とかあるいは金融機関にも知られていないんですね。

 こういう既存の仕組みの周知徹底も含め、今、副大臣から非常に前向きな答弁をいただいたのは、一体化も含めて、とにかく連携を図っていくということが、特に民間の資金が農業、林業、水産の分野に流れていく上で大きなかぎになると思いますので、ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。

 時間が少しなくなってきたので、最後に、やはり補助から融資への流れというのは、これから農業の分野で絶対進めていかなければならないと思っています。

 それは、一つは、もちろん、財政的に非常に厳しい中で、補助ばかりに頼る農業というのはこれから早晩長続きしないということと、やはり融資というものにたえ得るような農業じゃないと、結局、持続可能な、長く続く農業というのはできないと思っているんですね。

 その意味では、ぜひこれは、金融と農業の結びつきというものを一層強めていただいて、その際には、単に融資だけではなくて、いわゆる出資ですね、直接金融、間接金融を合わせた金融のルートを農業分野に深くつくっていただきたい。あるいは、例えばノンリコースローンであるとか、農業の分野での新しい倒産法制の整備であるとか、農業の金融自体の進化をこの機会にどんどん進めていっていただいて、単に補助に頼らない、本当に力強い農業をつくるその第一歩に農業金融を位置づけていただきたいと思います。

 今回、私、小委員会でいろいろな方のお話を聞いた中で、非常に印象的だったのが、女性で、地域の農村で、地域のいろいろな農産物を生かして、業を起こして、何人かのグループでそういう活動をしている人たちから話を聞きました。そういう人たちは、そういう小口の金融を生かして、そこでいろいろな工夫をして、借りた金だから返さなきゃいけない、だから頑張ろうとみんなが結束して、地域に元気をつくり出していたわけですね。

 そういう意味では、農村における頑張る女性を応援するという意味でも、この農業分野への金融をぜひ一層拡充していただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

筒井委員長 次に、玉木朝子君。

玉木(朝)委員 民主党の玉木朝子でございます。

 このたびの農業改良資金助成法等の一部を改正する法律案につきましては、我が党の農水委員会政策研究会分科会におきまして、玉木雄一郎座長のもと、事務局を担当いたしました。

 本日は、新人でございます私にこうした質問の機会を与えていただきまして、まず初めにお礼を申し上げたいと思います。

 実は、質問の最終者ということもございまして、多少質問が重複してしまうことがあると思いますが、どうかお許しをいただきたいと思います。

 私は、実は、田んぼ、畑を合わせましても一町歩ほどの兼業農家で育っております。現在、私の住んでおります部落は総数百二十二戸、そのうち専業農家はたった三戸でございます。三十年前は、畑一面、栃木の特産でございますかんぴょうを栽培しておりました。ただ、今はそういう農家は一軒もございません。商業施設が建ち並び、残った田畑を耕しているのは高齢者がほとんどという、典型的な都市近郊農村になってございます。

 なぜそうなったのか。それはひとえに、農業だけでは食べていけなかったからという現状がございます。

 四十年前、私どもきょうだいは膠原病という病気を発症いたしまして、二人で入院いたしておりました。何カ月もの治療費をどう工面するか、そうなったときに、蓄えがなくなれば農地を手放すしかない時代であったというのも現実でございます。食べるためには外に目を向け働かざるを得なかった、それが農業だけではやっていけなかった現実かと思います。

 今日の日本の農業は、担い手の半数以上が六十五歳を超える高齢化の中で、農村そのものが衰退の危機に瀕していると考えられます。こうした状況の中で、これまでの施策は、大規模農家等に集中し、大規模、効率化に向けた取り組みでございましたが、大規模化も農地の確保も、また食料自給率を高めることもできませんでした。

 しかし、そうは申しましても、農業はいろいろな方々によって支えられてまいりました。特に、近年ふえてまいりました直売所を見ましても、女性が果たしている役割は大変大きいものがございます。女性の側から見ましても、自分の名前を前面に出し、消費者に責任を持つ手法は今までになかったものであり、やりがいのあるものと聞いております。農山漁村六次産業化の取り組みも、農業に意欲を持つ多様な担い手によって担われなければならないというふうに考えておりますが、そこでお伺いいたしたいと存じます。

 改めて、これからの日本農業を支える担い手像につきまして、具体的に大臣のお考えをお聞かせください。

赤松国務大臣 玉木委員から、みずからの体験の中で、農業に対する思い、そしてこれからの農業を心配しておられる、そういう御質問であったと思っております。

 まさに私も委員と同じ認識でございまして、一生懸命農業をやりたいけれども、しかし、残念ながら、小規模の農業の平均所得は大体年間で三十万、四十万、それでは食っていけるわけがないわけで、問題は、兼業農家であっても高齢農家であってもちゃんと農業を続けていける、あるいは、もう少し大きな規模であれば、ちゃんと農業だけにまじめに取り組めば生活していける、食っていけるという農業にやはり変えていかなければいけないと思っております。

 この十五年間を見ただけでも、先ほどの委員がお話しになった例はもう少し前だと思いますが、ごく近いこの十五年だって、農業所得は半分に減っておるわけでございます。また、日本の農業全体を見てみると、大規模で集落営農等あるいは農業法人等でやっておられるところも立派にありますけれども、しかし、多くは小規模の、中山間を初めとするそういう農業者たちが一生懸命にそれぞれの置かれた条件のもとで頑張っているというのが現状でございます。

 大規模なところはもちろんでございますけれども、こうした地域で頑張っておられる、あるいは、今農業については、単に食料供給という面からだけではなくて、もう少し多面的な機能を重視しようという考え方もある中で、水、緑、環境をしっかり守っていただいておる、あるいは地域の活性化を支えようとしておられるそういう人たちに対しても、しっかりとそれを支えていく、そういう農政でなければならないというふうに思っております。

 その柱が、一つは戸別所得補償制度であり、そしてまた委員が今御指摘をされました六次産業化、そしてまたもう一つは食の安心、安全ということで、私も道の駅などに寄るのが大好きで、必ず見るんですが、必ずそこには名前が書いてある。ほとんど、七割、八割は女性の名前なんですね。これは水産関係でもそうです。まさに顔が見える、だれがつくったか、どんな地域でつくられたのかがだれもがわかって、安心して、納得の上でそれを手にして買っていくということだと思います。

 道の駅に限りませんけれども、新たな雇用や産業を農村地域でも起こしていく、その意味で、六次産業化と食の安全、そしてまた基本的にそれを支える戸別所得補償制度、この三つを大きな農政転換の柱として頑張っていきたい、このように思っております。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 それに関連しましてこのたびの改良資金助成法があるとは思うんですが、この農業改良資金の利用状況についてお伺いいたします。

 改良資金は、現行制度においては、先ほど来から質問が出ておりますが、著しく利用者が減少いたしております。件数で申しますと、平成二年度に一万七千二百六十件実績のあったものが、平成二十年度には百五十七件まで減少いたしております。直貸し方式に至っては、全国で十二件の実績という、制度がほとんど機能をしていない状況にございます。

 まず、ここまでになってしまった減少の理由、これをどう理解されておられますでしょうか。お願いいたします。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 農業改良資金が非常に減少しているということについて、先ほど来議論のあるところでありますけれども、一つは、借り入れる農業者側の方から見ますと、いわゆる低金利状態が続いているということで、無利子の資金の優位性というものが余り感じられなくなったということが一つあろうかというふうに思いますし、もう一つには、担保とか保証人とか、義務づけが多くて、非常にハードルが高いというようなことが原因として考えられるのではないかというふうに思います。これは農業者側から見たところであります。

 都道府県側から見ますと、これはまた、農業普及指導センターの統廃合が繰り返されて、その窓口が非常に減少しているというようなことがあるのと、もう一つは、農業改良の事業に当たられている方でありますので、技術指導はプロでありますけれども、債権の管理業務もやらなければならない、ここが負担になっていたというようなことが考えられて、そうしたことが一層消極的になってしまった原因なのではないかというふうに考えているところでございます。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 実は、何度か今まで農業改良資金については改良が進められてきたんですが、その改良があったときも、資金の貸し出しがふえるということはございませんでした。このたびの改良によりまして、どの程度の実績を見込まれているのか。できましたら、件数それから金額等、具体的にお答えいただければと思います。

佐々木大臣政務官 今度の改正についてどう変わるのかというお話でございましたけれども、先ほど来お話がありましたが、担保、保証人の義務づけというものを廃止いたしますし、それから、公庫に変わることによって、経営実態に即した融資判断というものが現場で行われるようなことになりますので、そういった意味では、貸し付けのプロセスというものは相当改善されるのではないかというふうに思ってございます。

 さらにまた、今、予測をすることはなかなか難しいのでありますけれども、スーパーL資金が今無利子で融資をされてございますが、これの償還期間無利子化が二十一年度で終了いたします。それから、今度新たに六次化の制度の法律が通りますと、そういったようなことなどを含めて、かなり資金需要はふえてくるのではないかというふうに思ってございますが、強いて予測をさせていただければ、一千件程度の増にはなるのではないかというふうに考えているところでございます。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 実は、このたびの制度で、貸し付け窓口が日本政策金融公庫となることになっております。しかしながら、この日本政策金融公庫の前身は四つの政府系金融機関であり、各地方に置かれております支店も、ほとんどが今までの支店を利用しているという現状になっております。私自身、昨年まで法律事務所の事務長として、債務延滞者の代理として、こうした機関にたびたび連絡することがございました。しかしながら、民間の金融機関に比べると大変融通性に乏しいものがございます。これは体験者として申し上げたいと思います。

 私自身としては大変危惧するものがございますが、そこで、このたびの農業改良資金の貸付主体を都道府県から日本政策金融公庫に変更することによって、利便性の向上それから金融上の改善措置等によって、どのような効果を期待されておられるのか、お聞かせいただければと思います。

佐々木大臣政務官 今、公庫でありますが、全国に四十八の支店がございますので、そういった意味では、十分かと言われれば、それはどのぐらいが十分かということになりますけれども、ここのところが今、中心になりまして、施行までの六月の間にパンフレットの頒布でありますとか、それから今後の農業改良と債権の管理方法、あるいは公庫においては、金融機関との説明会などを実施していく決意でありますので、そういった意味では、先ほど来お話があります、借りやすさと、それから大口の融資など、いろいろなケースに対応していくことができるのではないかというふうに思っているところであります。

 先ほど委員が冒頭御指摘をいただきました、補助から融資へというお話がありましたが、そういった意味では、私も、そういう方向がこれからの農業の方向として正しいんだというふうに思ってございます。

 なぜ補助から融資なのかというと、補助というのは、やはり一定の決まりの中でやらなければならないというのが補助の決まりなわけですね。結局、それは農家の個性を、ある意味で失わせてきたとも言えるわけですね、一定の補助の中に入れなきゃいけない。融資というのは、そういう意味では、どのぐらい借りやすさを広げるかということによりますけれども、農家個々の個性を発揮しながら農業の展開ができるという意味でも、相当大きく変えていくことができるのではないか、そのように思っているところでございます。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 実質的な窓口ということで、農業者にとって、どういう部分が窓口になるかということは大変大事なことかと思いますので、適切な御指導をお願いしたいと思います。

 それに関連してでございますが、やはりこうした制度が改正されますと、農業者と機関をつなぐ指導センターの役割は大変大きなものになってまいります。そこで、農業者に対し制度の窓口となる普及指導員のあり方について、お伺いいたしたいと思います。

 今後の日本農業を再生させるために必要な六次産業化の推進や食の安全、安心の確保、地球温暖化対応に至るまで、普及指導員の果たす役割は大変重要なものと考えております。しかしながら、普及、組織のスリム化が余儀なくされる中で、企画部会等でも、技術の普及を進めていく必要があると考えております。このため、普及指導員が技術導入を核に、流通、販売面を含む総合的な支援活動を展開する必要が指摘されておりますが、それを担う普及員の数は、十五年前と比べますと、全国で現在約三千名ほど減少しております。大変懸念いたしております。

 そこで、お伺いいたしたいのですが、専門的な知識を持った普及員は今後とも必要不可欠であり、将来に向けて指導員の養成が必要と考えられますが、この点について御見解をお伺いしたいと思います。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今委員御指摘のように、普及員の数が大変減ってございます。そういった中で、新たに、自給率の向上はもちろんでありますが、六次化など新たな対応もしっかりしていかなければならない。いわゆる農家側、あるいは農村側のニーズも多様化をしてきているわけでありまして、そういった中では、普及指導員の計画的な養成あるいは資質の向上というものは求められるわけでありますが、現実には、そうした状況の中で、国と都道府県の役割というものをしっかりと明確にして、それぞれの役割分担をしながら、この普及員の資質の向上などを図っていかなければならないというふうに思っているところであります。

 具体的には、一つには技術の向上がありますし、もう一つはコーディネートの機能をどう高めていくかということ。それと、先ほど来お話があります直売所などを含めて、マーケティングの指導などもこれからの新たなニーズとして対応していかなければならないというふうに思います。

 さらに、オン・ザ・ジョブ・トレーニングというのがございまして、これは、流通業者、農業者、あるいは食品加工場などに直接出向いて研修をするという制度でございますが、こういったことも含めて、養成や資質の向上に努めて、さらにまた、国と都道府県、連携をしながら、深めながら進めていきたいと考えているところでございます。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 私の地元では非常に、花卉栽培、ランの花の栽培をやっている事業主が多いんですが、その方たちから直接こちらに言われた話としまして、指導員の方から受けて、公庫さんの方にこういう制度があるからということで、指導員の方のお話では融資は受けられる、それで窓口に伺うと、実質、担当者は、融資ができないと断られるケースが大変多いというような現状も私どもの方に寄せられておりますので、そういうところを加味していただきまして、これからの指導をよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、農業信用保証制度、融資関係のことなんですが、現在、無担保無保証の方々には借り入れを申し込むときに積み立てなければならない保証金が定められておりますが、一般的に公庫で定められております利率は約〇・二二%というふうに認識しております。ただ、これから民間の方に移りますと、保証金の利率が機関によって大変変わってまいります。現実問題として、私どもの地元の基金では、〇・四二%を積み立てなければ保証制度が受けられないというような状況になっております。

 これは、民間金融機関それから政府系金融機関、いろいろございますので、仕方のないことかとは思いますが、この点について、借りる方にとりましては〇・二%でも大変な金額になりますので、その辺の指導を行うべきではないかと考えますが、お考えをお聞かせください。

佐々木大臣政務官 お答えいたします。

 農業信用基金協会の保証料率なのでありますが、これは都道府県ごとの基金協会なものですから、その基金協会の財務基盤がどうであるのかというようなことが一つあったり、それから当該地域の事故率によってもこれは変わってくるというようなことがあって、それぞれに設定をしていただいているわけでありますが、そのことが、今御指摘のように、農業者の過度な負担につながってしまうというようなことがあってはいけませんので、一定水準の料率以上にならないように上限を設けて、先ほど来お話がある、業務方法書の認可を通じて大臣が指導しているというような仕組みを今、とらせていただいております。

 この保証料について、先ほど申し上げましたように、上限のことの通達も含めて、指導も含めて、過度な負担にならないようにしっかりと指導を徹底してまいりたいというふうに考えているところでございます。

玉木(朝)委員 ありがとうございます。

 この上限制度につきましては、ぜひ、なるべく早く行き渡りますように、通達の方をお願いしたいと存じます。

 本日は、新人の私の質問に本当に丁寧にお答えをいただきまして、ありがとうございます。こうした機会もなかなかいただけないと思いますので、要望事項を少し述べさせてください。

 実は、私、農村で育ち生活してまいりました立場からのお願いでございますが、農作業中の事故についてお願いがございます。ほとんどの当事者が、農業労災という制度すら知らずに事故処理を済ませております。特に高齢者になりますと、先生方は多分御存じないかと思いますが、テーラーというのは皆さん御存じないかと思いますが、耕運機の後ろにリヤカーをくっつけまして走るものでございます。これは本来であれば小型特殊免許がないと走れないんですが、ほとんどの高齢者が小型特殊免許を持たないで走っているような状況にございます。そうしますと、事故が表に出ましたときに、個人が負担してしまう、なるべく内密に負担してしまうというような状況がございまして、表に出ないで処理をされてしまうというようなことも今まで大変ございました。

 このような現状を御理解いただき、まず、農作業事故に対する調査、これに着手していただければ大変ありがたいと思っております。

 また、この件に関しましては、三月十九日に行われました食料・農業・農村政策審議会の企画部会におきましても取り上げられましたが、販売店の指導のみに頼っている現状では改善されないのではないかというふうに思っております。農作業事故に関しましては、原因等はさまざまであり、今後の予防等を含めましても、現状をぜひ調査していただければ大変ありがたいと思っておりますので、要望の一つとしてお願い申し上げます。

 通告していなかったのでございますが、よろしいでしょうか。(発言する者あり)

山田副大臣 大臣から前向きに答弁しろというお話ですので。

 弁護士事務所の事務長さんをされて、いろいろな事故等々についても御経験があるかと思いますが、私もございます。そういったことで、殊に農業トラクターとか、今道路上で運転していて、今までどおり免許なしでもやっておったのにというようなお話もいろいろ聞きますし、ぜひ調べてみて、調査させていただいて、その上で何らかの、農業者がうまいぐあいにそういう対応ができるような方法を検討させていただきたい、そう思います。

玉木(朝)委員 突発的な質問にもかかわらずお返事をいただきまして、本当にありがとうございます。

 では、最後にもう一つ、要望を言わせていただきます。

 このたびの制度につきましては、我が党の農政の基本としております農山漁村六次産業化ビジョン、また、食の安心、安全、環境への適合性等を実現する措置として改正されるものと理解いたしております。よって、一日も早い法体制が整えられることを望んでおります。また、新制度が十分活用されますように、農業者、都道府県、日本政策金融公庫、その他の機関の綿密な連携が図られますことを切望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

筒井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、農業経営に関する金融上の措置の改善のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

筒井委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

筒井委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、梶原康弘君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・改革クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。梶原康弘君。

梶原委員 民主党・無所属クラブの梶原康弘でございます。

 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    農業経営に関する金融上の措置の改善のための農業改良資金助成法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、公的資金及び民間資金を有効に活用しつつ、農業経営の改善を図る際に必要となる資金が円滑に融通されるよう、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 公的資金及び民間資金を有効に活用した農業経営に関する金融上の措置は、農業者等の自主的な判断を尊重した重要な支援措置であることを十分認識し、使いやすさ、分かりやすさを旨として、制度の運用に当たること。特に、無利子資金に対する需要の増大が見込まれることから、その借入れに際し様々な制約が付け加えられることのないよう、利用者にとって借りやすい環境整備を図ること。

 二 新制度が十分に活用されるよう、農業者、都道府県、関係金融機関等に対し、制度改正の趣旨及び内容の周知徹底を図ること。また、農業経営に必要な農業者の資金ニーズに応じて的確かつ円滑に融通されるとともに、資金融通後において着実な経営改善が図られるよう、普及指導センター等をはじめとする関係機関の緊密な連携による支援活動を推進すること。

 三 見直し後の農業改良資金の貸付けに当たっては、貸付主体となる株式会社日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫(以下「公庫」という。)並びに農業改良措置の認定主体である都道府県による緊密な連携体制を構築し、借入れ窓口等において農業者等にとって親身になった対応が行われるよう、相談・窓口の充実を図るなど農業者等の資金需要へきめ細やかに対応すること。また、災害その他やむを得ない理由により貸付金の償還が困難であると認められる場合には、公庫がその償還金の支払いの猶予を行うよう、所要の措置を講ずること。

 四 農業改良資金における担保・保証人の義務付けの廃止は、借入れに対して相当の改善になるものの、それに見合うだけの経営資料の整備等の諸条件が加えられる懸念があることから、借入れに係る諸手続及び書類作成の面でも改善が図られるよう、特段の配慮を行うこと。

 五 「当分の間」実施するとされている担い手育成農地集積資金については、食料自給率向上に資する農用地の改良又は造成の推進に果たしてきた役割を検証し、制度上の位置付けの明確化に向けた検討を進めること。

 六 銀行等を融資保険の対象にすることについては、融資額に伴う交付金負担を適切なものとし、そのための規程の整備を行うなど、独立行政法人農林漁業信用基金の事業運営にいささかも影響を与えないように万全の措置を講ずること。

 七 農業関係者に対する信用保証保険制度等については、今後より一層、農業特有のリスクにも配慮しつつ、事業者の多様なニーズへの対応や利用者の利便性向上が図られるよう、関係省庁が一体となって、制度相互間の連携の強化など必要な見直しを行うこと。

 八 農林漁業者の所得の増大を図る観点から、農林水産物に係る地産地消や販路拡大、付加価値向上などの取組を強化するため、制度金融の更なる充実・強化を図ること。その際、無利子資金である林業・木材産業改善資金、沿岸漁業改善資金等の在り方について、利用者の利便性の観点から、検討を進めること。

  右決議する。

 以上、附帯決議案の内容につきましては、質疑の過程等を通じて御承知のことと存じますので、説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。

筒井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

筒井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣赤松広隆君。

赤松国務大臣 委員長のお許しをいただき、一言申し上げます。

 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。

    ―――――――――――――

筒井委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

筒井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

筒井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五分散会


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