衆議院

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第6号 平成23年3月23日(水曜日)

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平成二十三年三月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 山田 正彦君

   理事 梶原 康弘君 理事 佐々木隆博君

   理事 津島 恭一君 理事 仲野 博子君

   理事 柳田 和己君 理事 谷  公一君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      網屋 信介君    石田 三示君

      石原洋三郎君    今井 雅人君

      大串 博志君    加藤  学君

      金子 健一君    川越 孝洋君

      近藤 和也君    篠原  孝君

      田名部匡代君    高橋 英行君

      玉木雄一郎君    筒井 信隆君

      道休誠一郎君    中野渡詔子君

      野田 国義君   松木けんこう君

      山岡 達丸君    吉田 公一君

      伊東 良孝君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    小里 泰弘君

      小野寺五典君    北村 誠吾君

      谷川 弥一君    保利 耕輔君

      山本  拓君    稲津  久君

      吉泉 秀男君

    …………………………………

   議員           高市 早苗君

   議員           谷川 弥一君

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   農林水産副大臣      篠原  孝君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   農林水産大臣政務官    田名部匡代君

   農林水産大臣政務官    吉田 公一君

   国土交通大臣政務官    小泉 俊明君

   政府参考人

   (内閣府原子力安全委員会事務局管理環境課長)   都筑 秀明君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    原  敏弘君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           加藤 善一君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       梅田  勝君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            吉村  馨君

   政府参考人

   (水産庁長官)      佐藤 正典君

   農林水産委員会専門員   雨宮 由卓君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十三日

 辞任         補欠選任

  石山 敬貴君     川越 孝洋君

  小里 泰弘君     小野寺五典君

  西  博義君     稲津  久君

同日

 辞任         補欠選任

  川越 孝洋君     石山 敬貴君

  小野寺五典君     小里 泰弘君

  稲津  久君     西  博義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 森林法の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)

 森林法の一部を改正する法律案(高市早苗君外十六名提出、第百七十六回国会衆法第一六号)

 農林水産関係の基本施策に関する件

 平成二十三年度畜産物価格等に関する件


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     ――――◇―――――

山田委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省農村振興局長吉村馨君、水産庁長官佐藤正典君、内閣府原子力安全委員会事務局管理環境課長都筑秀明君、消費者庁審議官原敏弘君、文部科学省大臣官房審議官加藤善一君及び厚生労働省医薬食品局食品安全部長梅田勝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原洋三郎君。

石原(洋)委員 このたびの東北・関東大震災の被害に関しまして、心からお見舞いを申し上げるところでございますし、亡くなられた方々、御家族の皆様方の御心痛に心からお悔やみを申し上げます。

 民主党・無所属クラブの石原洋三郎でございます。

 我が県福島県におきましても、他県と同様に、被害は空前絶後、目を覆うものがございます。東北の漁業は壊滅的打撃、漁船、漁港、加工、市場さらには漁村、すべて全滅です。海岸線の電気、水道、下水などのインフラは破壊され、家もない、船もない、道具もない、もう海のそばには住みたくない、漁業をやめたい。先が見えない状況であります。

 政府は、被災された方への食料、燃料、物資の供給を行っておりますが、これからは、本格的に被災地域の漁業の再建を図る取り組みを全力で行うことが重要です。まさに、戦後の焼け野原から漁村を再生させる、新しい町をつくる、国の強力な支援策が重要です。このためには、漁業者への強力なメッセージ、政府の強力な支援、漁業漁村復興対策本部なるものを早急に設置し、そして漁業者の皆さんと早急に復興プランを作成し、総合的な計画を立て、スピーディーに、大胆に実施していくことが大切だと考えます。

 政府の、漁業者の方々への支援策について伺います。

篠原副大臣 今回の地震、津波によりまして、震源に近い岩手県、宮城県、福島県、これらの県は当然でございますけれども、ほかの、茨城県、千葉県、太平洋沿岸地域の広範囲におきまして、漁港、漁船、それから水産関連施設に極めて大きな被害が発生していることは十分承知しております。

 農林水産省といたしましては、これまでも、被災された方々に一刻も早く食料、水等を届けるために全力を挙げてまいりました。

 例えば、我が省は水産庁におきまして船を持っておりますので、その船を活用いたしまして、もう皆さん御承知だと思いますけれども、東光丸が一番最初に出かけまして、釜石港、気仙沼それから宮古港で、粉ミルク、軽油等を提供しております。続きまして、白竜丸、開洋丸それから「なのつ」、こういった取り締まり船等を活用いたしまして、食料の供給の確保に全力を挙げてまいりました。

 被害状況につきましては、正直なところ、どのぐらいの被害額かというのはわかっておりません。例えば、宮城県でも岩手県でも、漁船がそれぞれ一万隻ぐらいあるわけですけれども、どのような被害状況かというのが皆目つかめておりませんけれども、こういった被害状況につきまして迅速に把握できるように、情報収集に努めているところでございます。

 それから、石原委員御指摘のとおり、被災された方々が将来に希望と展望を持って漁業を再開できるようにするというのが我々の一番の使命だと思っております。ですから、漁業関連施設、漁港それから漁船、水産関連施設もいろいろあります。養殖施設もあります。漁村全体が復旧できるように全力を尽くしてまいりたいと思っております。

 それから、対策本部というような御提案がありましたけれども、これは今後検討してまいりたいと思っております。

石原(洋)委員 ぜひ全力でお願いいたします。

 福島県相馬市松川浦におきましては、アオノリなどの養殖も盛んであります。養殖全般についての支援策について伺います。

篠原副大臣 養殖についても、太平洋沿岸の広範囲において壊滅的な打撃を受けております。震源に近い宮城県、岩手県は、カキそれからワカメ、ギンザケ等、国内の主要な養殖生産地でありまして、これらのところ皆、壊滅的な被害を受けております。

 養殖業の復興に向けましては、三月十三日にこの災害を激甚災害と指定いたしまして、養殖施設を災害復旧事業の対象としたところでございます。また、今回の災害に伴う災害復旧事業につきましては、補助率を、復旧事業に要する経費の九割としたところでございます。

 今後、被害状況を迅速に把握いたしまして、養殖業の復旧復興に向けて全力で取り組んでまいる所存でございます。

石原(洋)委員 ぜひお願いいたします。

 大地震、津波被害で農業、水産業が壊滅的打撃を受けていまして、復興のめどが立たないだけでも大変な現状ですが、さらに追い打ちをかけて、原発事故、放射能、そして事故被害による農産物の出荷停止、県外へ避難を転々と行う県民の皆さん、まさに福島県は三重苦、四重苦、五重苦となっております。特殊事情の大災害に見舞われております。

 三月二十一日、原子力災害特別措置法に基づき、福島県の原乳がすべて出荷停止となりました。酪農家にとっては死活問題となっております。牛は、えさを与え、乳を搾ってやらねば死んでしまいます。原発事故の被害によりえさは入荷せず、今度の出荷停止で収入も途絶え、このままでは人も牛も死んでしまいます。

 つきましては、速やかな補償、あるいは一時金の交付、あるいは借入金の返済一時猶予、酪農、畜産に対する支援策を求めますが、伺います。

篠原副大臣 生乳の出荷制限の対象になった農家に対しましては、出荷制限の実効性を担保し、消費者の食の安全を確保するためにも、適切な補償が必要だと考えております。

 その補償は、原子力損害の賠償に関する法律に基づきまして、一義的には事故の原因者の東京電力の責任となります。政府といたしましても、適切な補償が行われるよう万全を期する考えでございます。

 それから、当面の資金繰りにつきましては、償還猶予や農林漁業セーフティネット資金の円滑な融通等による支援措置を講じているところでございます。

石原(洋)委員 今回の原発災害は、天災に加え人災であり、生産物に対する完全補償をお願いしたいということであります。原子力災害による出荷停止、さらには価格下落を含め、完全補償を求めます。また、酪農家の方々は、三月十一日から収入が途絶える一方であります。その一方で、酪農家の方々は、生乳の廃棄場所と処理経費の負担に困っているわけでございます。そういった経費、あるいは生活費というものも含めた形で早急なる政府の支援をお願いするところでございますし、一刻も早い一時金をお願いするところであります。

 乳製品にも大きな影響が出ております。製品化したものを廃棄せざるを得ない状況ともなっております。生乳の廃棄、あるいは流通、加工にまで及ぶ今回の原子力被害に対する支援策についてお伺いいたします。

吉田(公)大臣政務官 まず、福島県内の被災地につきましてお見舞い申し上げます。

 出荷制限の実効性をまず担保する、そして消費者の食の安全を確保するためにも、適切な補償が必要なものと考えております。

 一義的には事故原因者の東京電力の責任となりますが、政府としても、適切な補償が行われますよう万全を期していく考えでございます。

 生乳等の廃棄の方法は、現在、政府の緊急対応センターに照会をいたしておるところでございまして、早く結論が出るように促進をしてまいりたいと思っております。

石原(洋)委員 今回のケースですと、一刻も早く政府の補償を明示していく、そのことが一番大切なことではないかと思いますので、ぜひ早急なる、大胆な支援策をお願いいたします。

 酪農だけではありません、農業にも出ております。先を考えたら首をくくるしかない。今植えなければならないものはどうするべきか、植えて育てても、市場で売れないのではないか。果樹、野菜も、福島の名前が出ると売れないのではないか。国は、東京電力のせいにして、対応してくれない。天災だけではない、人災も含まれている。何かしら安心できるお話を聞きたい。そのほか、数多くの不安な声が寄せられております。

 出荷停止した農産物はもちろん、それ以外、今まで育ててこられた農産物に対しても補償が必要です。また、農家が恐れず、これから秋の収穫に向けて春の種まきを安心してできるような補償、支援策が必要です。この点についてお伺いいたします。

篠原副大臣 今回の出荷制限につきます損害については、補償の問題、政府部内でもいろいろ議論させていただいております。

 明らかに野菜等の出荷制限の対象になったものにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、出荷制限の実効性を担保し、消費者の食の安全を確保するためにも、絶対適切な補償は考えております。

 補償は、原子力損害の賠償に関する法律、原賠法に基づきまして一義的には東京電力の責任となりますが、政府といたしましても、適切な補償が行われるよう万全を期したいと思っております。

 出荷制限以外にも、今石原委員御指摘の、いろいろな損害が生じているじゃないかと。例えば、自粛というのがあります。それから風評被害というのもあります。こういった問題、我々承知しておりますけれども、一体どこまで補償の対象にするかというのはなかなか明確に線を引けない面があります。

 しかし、これは皆さん御承知のことと思いますけれども、未曾有の災害でございますし、原子力の問題というのは非常に込み入った部分がございます。ですから、我々は、被害を受けられた方、出荷できなかった皆様方には、いずれにしろ、いろいろな方法があると思いますけれども、手厚な補償を考えてまいりたいと思います。

 とりあえずは、明らかに出荷制限によりまして被害を受けた方々には全面的に補償していく考えでございます。

石原(洋)委員 ぜひ全面的な支援を何とぞお願いいたします。

 けさの新聞には、十一品目の野菜から新たに放射性物質基準大幅超過と出ております。長期的な点でいえば、土壌汚染も心配になってまいります。ぜひ大胆な、長期的な補償をお願い申し上げるところでございます。

 突然で恐縮なんですが、もう一度コメントをいただければと存じます。新しく十一の野菜等々からも出ているわけでありますが、その点についてのコメントをいただければと存じます。

篠原副大臣 検査は、この休みの期間中から各県で、それぞれ地域、品目を選びながらしてまいりました。厚生労働省が、野菜の検査により、暫定値をきちんと報告しています。

 きのう深夜二十六時に、福島県における放射性物質の検査におきまして、今委員御指摘のとおりでございますけれども、私も詳細は今手元にないんですけれども、飯舘村のブロッコリーや小野町のホウレンソウなど、複数の地域あるいは複数の野菜において、放射性沃素あるいは放射性セシウムの濃度が食品衛生上の暫定値を上回っているとの結果を公表しております。

 この結果を踏まえまして、厚生労働省は既に、原子力安全委員会の助言を踏まえまして、福島県産の葉物野菜、それから今申し上げましたブロッコリーやカリフラワー等の摂取を控える旨を明らかとしているところであります。

 我々、これを踏まえまして、農林水産省としても、こうした状況に対応して出荷制限等を考えてまいりたいと思っております。

石原(洋)委員 出荷制限にかかわる部分のみならず、さまざまな、先ほどのお話にもありました、風評被害等々も含んだ形での補償、あるいは、植えることができないかもしれない、そういった農家の方々に対する補償、これをぜひともお願い申し上げるところでございます。

 政府と東電には、一刻も早く原発の安全の確保を求めるところでございますし、その安全の確保に努めていらっしゃる自衛隊、消防隊、レスキュー隊など、さまざまな皆様方の御努力には心から敬意を申し上げます。大地震、大津波の復興支援はもちろんのこと、放射能そして事故被害に対する補償、支援、これをいかにスピーディーに、大胆に行っていくか、それを明示していくかが被害に遭われた方々の生きる希望につながるものと考えますので、ぜひとも早急なる、大胆なる復興支援策の明示をお願いいたします。

 今回の大災害は、激甚災害の上乗せだけではなく、新たな立法措置あるいは全面支援、または復興省なるようなものの、トータル的な政府による全面支援策、そういうものも御検討いただければと存じます。何とぞ、全面的な復興支援策、補償をお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、仲野博子君。

仲野委員 おはようございます。民主党の仲野博子でございます。

 質疑に入る前に、冒頭、今月十一日に発生いたしました東北・関東大震災で被害に遭われた皆様方に心よりお見舞いを申し上げるとともに、犠牲になられた方々と御遺族の皆様方に対して深くお悔やみを申し上げる次第でございます。また、救援、救出、原発事故への対応等に当たって全力を挙げていただいている自衛隊、警察、消防、海上保安庁、各自治体、各省庁等の関係各位の大変惜しみない努力に、心から敬意と感謝を申し上げる次第でございます。

 さて、被災地でも食料や燃料が不足しており、特に、食料の供給確保については、農林水産省としても、先ほど副大臣からも御答弁をいただいておりますが、対応に万全を期していただきますよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。

 けさ、テレビを見ておりましたら、陸前高田市の市長さんが、国民の皆様方に、この被災状況、そして避難をしている国民の方々の気持ちをぜひ認識、理解いただくためにも、政府の方あるいは国会議員の方がこの避難施設に来て泊まっていただければその状況等がよくわかる、そのようにおっしゃられている映像を拝見いたしまして、大変せつない思いを抱いたところでございます。そういったところで、一日も早い復興を願うわけでございます。

 さて、本日は、二十三年度の畜産物価格の決定について議論をさせていただきたいと思います。

 現状は、非常に厳しい状況の中、一生懸命今酪農家の皆様方が頑張っておられます。その中で、加工原料乳生産者補給についてまず伺ってまいりたいと思います。

 私の地元北海道でも、昨年の夏、平年より二度以上も高く、まさに猛暑でありました。牛は暑さに弱く、この猛暑の影響により、乳量や受胎率の低下などの状況が見られ、国内生乳生産量が低下をしているわけでございます。このため、平成二十二年の生乳生産量は前年比二・四%減の七百七十二万トンとなり、昭和六十三年の七百六十一万トンに次ぐ低水準であったとされております。こうしたことに加えて、酪農経営の悪化による離農や口蹄疫、そして地震の発生などによる生乳生産基盤の弱体化が非常に懸念をされているわけでございます。また、配合飼料価格が高どまりする中で、トウモロコシの国際価格の上昇などにより飼料価格が上昇しているわけであります。さらに、昨年は北海道で乳価の引き下げがあり、これらの状況が重なり合い、今大変な経営を強いられている厳しい状況にあるわけでございます。

 平成二十三年度の加工原料乳の補給金単価と限度数量については、こうした状況を十分に踏まえていただき、酪農が今後とも意欲を持って経営が維持できるよう、私はここは政治判断で現行以上とすべきと考えますが、その見解を副大臣にお尋ねいたしたいと思います。

篠原副大臣 お答えする前に、先ほど私が昨夜深夜と申し上げましたけれども、本日の二時に厚生労働省は発表しております。訂正させていただきます。

 それから、乳価の関係につきましては、仲野委員御指摘のとおりでございます。

 一つは、猛暑の影響がありました。それから、国際的に飼料穀物価格が高騰しております。それから三番目には、これも今仲野委員御指摘のとおり、生クリーム向けの生乳価格の引き下げ等がありました。いろいろな面で酪農家の経営については影響を与えると承知しております。

 問題の加工原料乳生産者補給金につきまして、その単価でございますけれども、生乳の生産費や物価その他の経済事情、それから限度数量につきましては、生乳の生産事情、飲用牛乳及び乳製品の需給動向等を考慮し適切に算定して、生乳需給及び酪農経営の安定を図るつもりでございます。

 いずれにしましても、このような厳しい状況にあることは我々も十分承知しておりますので、酪農家が元気になるように、元気を出せるように、適切に単価、限度数量を決定してまいりたいと思っております。

仲野委員 二十五日が、審議会の価格決定をいただくわけでありますけれども、いずれにいたしましても、今大変な厳しい経営状況ということで、なかなか担い手も、本当に将来の酪農経営が、このままでは経営できない、そういった切実な状況の中で、北海道という、そして酪農生産基地という中で誇りを持って、若い方たちがこれから意欲を持って働ける環境をつくるためには、今、加工原料乳の補給金の現行の単価が十一円八十五銭というのではなかなか意欲をそがれるという状況でありますので、私は、やはり今以上、再度このことを強くお願い申し上げる次第でございます。

 その中で、今回チーズ対策ということで、一般措置で八十八億円を措置いたしているわけでございます。

 チーズは、需要の伸びが期待できますが、国際競争というものにさらされ、飲用乳価等に比べて非常に乳価が安い状況にあることから、私は、かねてからずっとこの委員会質疑の場などを通じて、チーズへの支援を拡充すべきと主張してまいりました。新たにチーズ向け生乳供給安定対策事業を創設することとし、これまでの拡大量に応じた助成から、酪農家の所得確保を図る観点からチーズ向け生乳供給量に応じて助成金を交付する仕組みへ大きく転換したところでございます。これは、私は評価をさせていただきたい、そのように思うわけでございます。

 この新たな対策においては、単価をキログラム十四・六円、供給量を六十万トンに設定されております。供給量六十万トンは、平成二十二年度から約二割程度の増産になると思いますが、この予算を確実に執行し、チーズ向けの生乳拡大を着実に進めていく必要があると思います。

 しっかりと取り組んでいただきたいと思いますが、副大臣よりまた新たな決意を伺いたいと思います。

篠原副大臣 チーズ向けの支援につきましては、仲野委員御指摘のとおり、改善措置を講じてきております。

 二十二年度は、チーズ向けの生乳供給量が拡大した場合に、拡大部分についてキログラム当たり二十円の奨励金を交付しておりますけれども、先生の御提言を踏まえまして、来年度、二十三年度からは、チーズ向け生乳の供給量に応じて一律にキログラム当たり十四・六円の助成金を交付することにしております。

 これは言ってみれば、農業の分野でいいますと、農業の場合は、戸別所得補償の場合、逆でしたけれども、固定支払いにしていくというようなことではないかと思います。農業の場合は、拡大部分について、それを加味するというふうにやりましたけれども、こちらは逆な政策になったんじゃないかと思います。

 このような変更をした理由というのは、生産拡大した部分だけでは、すべてのチーズ向け生乳を助成金の交付の対象にすることはできません。これではよくないので、生産者が安心してチーズ向け生乳の供給に取り組んでいただけることを考えたからでございます。

 これも先生御指摘のとおり、我が国の飲用牛乳の需要は減退しておりますけれども、チーズ等乳製品につきましては需要の伸びが期待できる。現に需要もふえております。こういったことに使えるわけですので、新たなチーズ対策を活用しまして、国産チーズの供給拡大をこれ以上に図ってまいるつもりでございます。

仲野委員 乳製品の中でもチーズが、今、国民の嗜好も大変変わりまして、需要が伸びているということもあります。

 いずれにいたしましても、これから我が国の酪農の課題として牛乳の消費減退があるということで今お答えいただいたんですが、近年の飲用牛乳の需要が毎年二から三%減少しているわけでございます。これは、少子高齢化の進行や、その他の飲料の消費が拡大しているなど、さまざまな要因が重なり合った結果であると思いますが、酪農経営の安定のためには、今後とも、牛乳・乳製品の消費拡大を図っていくことが極めて重要であると思っております。

 今後とも、国として積極的に取り組むべきと思いますが、今後の取り組み方針を、どのようにまた消費拡大に努めていくのか、副大臣のお答えをいただきたいと思います。

篠原副大臣 私、乳製品の需要の拡大というのには、個人的にも力を入れて、いろいろ協力してきております。

 例えば、十五年前、二十年前は日本でチーズなど余りつくられておりませんでしたけれども、そうした中で、北海道の意欲ある農業者の皆さんがチーズサミットというのを開催されたと思います。私、そのチーズサミットの第一回に参加させていただいております。

 欧米諸国と比べた場合、食生活の欧風化というのが盛んに言われておるわけですけれども、肉等も相当消費がふえてきておるわけですけれども、乳製品についてはまだまだ差があるのではないかと思っております。そういう意味では、需要拡大というのが一番大事ではないかと思っております。

 ですから、加工品についての質の向上でございます。そういうようなところも、十五年前に私がパリの勤務を終えて帰ってきてすぐ行ったときに、チーズを食べ比べてみました。余り質はよくありませんでした。しかし、今非常に質がよくなって、フランスの一番質の高いチーズと同じようなものをつくり出しておられる方がおられます。こういったことがありますので、私は、より質の高いチーズ、乳製品をつくっていくこと、これが消費の拡大につながるのではないかと思っております。そういった方面にバックアップしていきたいと思っております。

仲野委員 これから国民の皆様方に、おいしい、国内で生産される安全、安心な乳製品をどんどん供給することがやはり一番大事なことでありますし、栄養価の高い乳製品については、学校教育現場、あるいは骨にも強いという意味では老人施設等にもどんどん供給できるような、そういったことも工夫をしてやっていく、積極的に推進をしていくべきではないのかな、そのように思っております。

 いずれにいたしましても、チーズの今回の八十八億円の予算措置でありますけれども、私は、実効あるものとしていただき、ぜひとも、農家の、生産者の方々にいい制度であったというふうに喜ばれるような制度であることを、ぜひともこの執行に当たっていただきたいな、そのように思っているわけであります。

 現場でまた特に心配をされているのは、配合飼料価格についてであります。

 配合飼料価格安定基金が平成二十年度に一千百九十二億円の借り入れを行っており、毎年度、積立金より、二十二年度から二十九年度までに返済するとされております。また、畜産物の生産コストに占める割合は四割から六割と高く、今後の配合飼料価格の動向は畜産農家の方々の大きな関心事でもあります。

 配合飼料価格の今後の見通しを確認するとともに、この価格の上昇が今後も見込まれるのではないかと非常に心配もされているわけであります。こういった価格の補てんを含め、万全の対応をお願いしたいと思います。政務官の答弁をお願いいたします。

吉田(公)大臣政務官 仲野委員御承知のとおり、配合飼料は輸入に依存するところが大変大きくて、したがって、二十三年四月―六月期の配合飼料価格は、全畜種平均で前期よりも一トン当たり二千百五十円値上げとなっております。配合飼料価格安定制度の補てんによりまして、畜産経営への影響をできる限り緩和してまいりたいと思っております。

 今後の見通しでございますが、トウモロコシの作柄や為替などの不確定要因もございまして、現時点での予測というのは、輸入物であるために非常に大変でございますけれども、引き続き動向を注視しながら努力を続けてまいりたい、そう思っております。

仲野委員 えさは、配合飼料は生産コストのおよそ六割のウエートを占めているということで、どうしても、農家にとってはなかなか大変厳しい経営環境にあるということで、私は、こういったいろいろさまざまな影響を受ける飼料価格について、やはり機動的にしっかり国として対応をいただけるように、このこともぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 もう一つ、経営安定対策を補完するものとして、酪農環境負荷軽減事業というものがございます。この事業は、酪農版の環境直接支払いとも言える重要な事業であると思っております。

 この事業の取り組み内容の一つに堆肥の適正還元の実施がありますが、これは家畜排せつ物を適正に堆肥化し、飼料作付地の地力増進を図るとともに、環境負荷を軽減する、まさに酪農の資源循環を推進するためにも重要な取り組みであります。

 家畜排せつ物の処理形態は、各地域や経営の実態に応じてさまざまであり、私の地元では、堆肥化ではなく、スラリーとして液肥化処理している方も多数おられ、資源循環型の酪農を立派に実践されているわけでございます。

 そこで、二十三年度の事業について、スラリーを適正に処理し、適正に飼料作付地に還元していれば、堆肥の適正還元の実施として対象になるのか、まず伺ってまいりたいと思います。

篠原副大臣 酪農環境負荷軽減支援事業は、酪農経営が環境負荷軽減の効果の高い活動を実践する場合に奨励金を交付する事業であります。仲野委員御指摘のとおり、これは環境支払いの非常にはしり的な事業だと思っております。

 委員御指摘のとおり、奨励金の交付というのは、環境負荷軽減に資する取り組みをポイントづけいたしまして、十五ポイント分の取り組みを実施した場合に、一ヘクタール当たり一万五千円の奨励金を交付するものでございます。これはヨーロッパの場合でも農業全体に行われておりまして、いろいろな環境に優しい農業をした場合にポイントをつけておりますけれども、それの酪農版でございます。

 この事業におきましては、それぞれの項目、いろいろな項目があります、耕畜連携の取り組みに五ポイントとか、不耕起栽培の実施に五ポイント、メタン発酵によるエネルギーの利用は十ポイントというのがあります。その中に、堆肥の適正還元の実施の取り組みというのもありまして、五ポイント与えられることになっております。

 それで、スラリーも、堆肥と同様に、攪拌発酵などにより適正に液肥化処理され、成分分析等がなされている場合には、委員御指摘のとおり、御意見も踏まえまして対象にしたいと考えております。

仲野委員 これも酪農経営を補完する重要な事業でありますので、ぜひとも今後とも引き続きよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、家畜改良について伺ってまいりたいと思っております。

 北海道では、これまで、牛乳の生産性向上を図る観点から、牛群検定組合を中心に、乳牛の改良に熱心に取り組んでまいりました。

 昨年七月に改定した家畜改良増殖目標では、特に乳用牛に関しては、泌乳持続性の向上により泌乳曲線を平準化させる牛への改良を目指すことで、エネルギー源である飼料穀物の節約の可能性を示されました。このような乳牛改良を進めていく上で、遺伝的能力評価の制度の改善を図っていくことが必要であります。

 このためには、評価のための基礎データを収集する牛群検定を確実に実施する必要がありますが、このため牛群検定組合の協力が大変不可欠であります。牛群検定については、牛群検定牛と未実施牛とでは、年間乳量の差が平成十九年度では一千七百六十三キログラムであり、この差は所得の差ということになりますし、また、検定農家の方が非検定農家より離農率が低いとの評価もあります。

 このように、牛群検定情報の活用による生産性向上を図り、酪農家が引き続き乳牛の改良に積極的に取り組めるよう、牛群検定組合の取り組み支援を含めて、牛群検定をどのように推進をされていくのか。政務官よろしくお願いいたします。

吉田(公)大臣政務官 お答えいたします。

 乳牛の改良というのは酪農経営にとって基本的なことでございまして、かなり継続的に改良、改良と重ねているわけでございますけれども、なかなかこれでよしというところまではいかないわけでございまして、引き続き乳牛の改良に努めてまいりたいと思っております。

 乳牛改良を効率的に進めるためには、牛群検定組合による乳量のデータの収集活動が不可欠でございます。二十三年度におきましては、前年同様約三億円、同額を確保し、牛群検定組合が取り組む乳牛改良及び飼養管理技術の向上に対する支援を実施していきたいと思っております。

 引き続き、新たな家畜改良増殖目標の達成に向けて乳牛改良をさらに進めていきたい、そういうふうに思っております。

仲野委員 今、酪農家の皆さん方が、経営するに当たりまして、将来に希望を見出せない、どういった酪農政策、酪農を担っていくのかという、現場では生産者の方々からそういった大変切実な声を伺っているわけであります。

 私といたしましては、党で畜産、酪農政策を預かる身として、畜産、酪農が今大変厳しい状況の中で、もう一度政府の方から、農家の生活が第一という、我が国農林水産業の一日も早い、将来に希望を見出せる、そして安定した経営ができる、そういった政策を確立していただきたいと心から願うものであります。

 そういった意味で、二十五日の畜酪価格決定をいただくに当たりましても、私は、先ほど申し上げましたように、まずは現行の補給金単価十一円八十五銭でありますけれども、ぜひともそこから引き下がることのないように、それ以上のものにしていただくことと、そしてまた、限度数量に当たりましても、現行百八十五万トン、ここもぜひとも引き下がることがないように、それ以上の数字を出していただくようにお願いをしたいと思っているわけであります。

 いずれにいたしましても、これ以上の離農、これ以上生産を落とすようなことがないように、元気の出る、そして、地域から、若い方たちが一生懸命、誇りを持って、自信を持って酪農経営に当たれるような政策、また意気込みを、ぜひともいま一度副大臣から力強い決意を聞いて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

篠原副大臣 TPPという問題がありました。そこに、今度の地震、津波それから原発の問題がございました。農業経営、特に畜産経営、非常に困難な局面に対峙しておられるんじゃないかと思います。そういったことも踏まえまして、委員御指摘のとおり、元気の出る畜産経営、酪農経営ができるように万全の対策を講じてまいりたいと思います。

仲野委員 ありがとうございました。

山田委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。本日は、質問の機会をありがとうございます。

 被災地気仙沼に住む人間の一人として、きょうは、全国の皆様にさまざまな御支援をいただいていることに心から感謝を申し上げます。

 ですが、本当に想像を絶するような大変な災害だったと思います。また、今でも、実は、避難所に住む皆さん、あすの生活を心配して、あすの町づくりを心配して日々暮らしている状況にございます。きょうは、生活再建を含め、産業の再生についてお話を伺いたい、そのように思っております。

 まず、副大臣にお伺いします。

 今回の災害で一番の特徴というのは大きな津波でした。そして、この津波の影響で、私の家から約三十メートル先が気仙沼の港です、私の家も崩壊をしました。その港にさまざまな漁船が今実は沈んでいる、打ち寄せられている。場合によっては道路に三百トンの船がそっくりそのままのっている、こういう状況が今でも続いております。

 まず、これらの撤去、除去、こういうことについて国としてどのような体制があるのか、教えていただければと思います。

篠原副大臣 今回の地震、津波によります災害、私もよく承知しております。特に漁港施設等は壊滅的な打撃を受けておりまして、先ほどちょっと触れました東光丸等、食料を積んで出かけたわけですけれども、目的地の港に着けない。なぜかというと、港が瓦れきや漁船の残骸で埋まっていて近づけないということで、我々の場合は、違う小さな港に行きまして、漁業者に連絡をとりまして、小さな漁船に来ていただいて、積み荷をおろして届けることができました。しかし、ほかの一般の船というのはとてもじゃないが近づけないような形になっているんじゃないかと思います。

 瓦れきの除去等につきましては、災害復旧事業の対象にきちんとしてまいる所存でございます。公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法第三条、第六条において、このようなものについては事業の対象になりまして、国が全力を挙げて撤去に取り組めるようになっております。

小野寺委員 確認したいんですが、費用も含めて、国が全部責任を持ってこの撤去をするというふうに理解してよろしいんでしょうか。

篠原副大臣 災害復旧には全力で取り組んでまいります。

小野寺委員 自治体にさまざまな負担を求めても、もう既にそのような余力はございません。ぜひ国が全面的な立場でこの復旧をしていただきたい、そのように思っております。

 また、実は、今回はかなりの地盤沈下というのが実際起こっております。今、気仙沼でも、魚市場周辺が約七十五センチ沈下したという報道もございます。ということは、今後、この沈下したさまざまな港湾設備をもう一度復旧するというかなりの大きな仕事もありますが、これについても国がしっかり対応するということでよろしいんでしょうか。

篠原副大臣 さまざまな施設につきまして、同じように扱いまして、復旧に全力を挙げてまいります。

小野寺委員 また、同じく、今回は、すべての生産基盤が失われてしまいました。例えば、漁港であれば、冷蔵庫、製氷工場あるいは加工場、このようなものもございます。この再建につきまして、まずお伺いしたいのは、一つは、水協法による、組合の所有のこのような施設についての、国の激甚を含めた補助についての現在の状況を教えてください。

篠原副大臣 現在の状況につきましては、今、連絡もつかない状況でございまして、いろいろな港、施設等壊滅的な打撃を受けているというのはわかりますけれども、被害状況全般については、きちんとした、被害額がどのくらいというのは、我々のところではまだ集計がとれておりません。

 しかしながら、先ほど先生御指摘になりました沈下した漁港施設の岸壁の修復とか、そういったものについてはすべて国が責任を持って取り組んでまいります。

小野寺委員 地域、町が消滅したんです。何か残っているものは一つもありません。ですから、まず、私どもは、この再建のために、実は、激甚災害指定になりますと、水協法の組合のさまざまな冷蔵庫や加工施設、これは最大十分の九補てんして再建できるという制度になっています。ぜひ、この際この十分の九、限度額いっぱいの支援をしっかりしていただきたい。もっと言えば、今回は、むしろ十分の十国が対応していただいてもいいんではないか、そう思っております。

 もう一つ、同じような冷蔵庫あるいは水産加工施設でありますが、民間所有の場合、通常のルールであると、民間所有は、これはまず保険の対応、それぞれが掛けている保険で対応し、そして融資、制度融資があるというのが通常のやり方です。ところが、今回、津波という状況あるいは天災という状況であれば、一部の保険が十分に補てんできるのかどうか、大変不安な状況があります。もしかして、もし保険がきかないということになりますと、再建は全く難しいということにもなります。従来の融資というやり方ではとても足りません。

 政府として、この漁業関連施設、例えば冷蔵庫あるいは水産加工場、個人、株式会社経営、こういうものに対しての支援をどの程度お考えか教えてください。

篠原副大臣 水産業協同組合等が所有する一連の施設、これは同じように災害復旧事業の対象となりますけれども、民間企業の所有するものにつきましては融資の対象ということにしか現在はなっておりません。

小野寺委員 それは私が今お話をしました。

 そして、問題なのは、通常の、例えば火災とかそういう災害であれば、皆さん、冷蔵庫なり水産加工場というのはそれぞれの保険に入っています。ところが、それぞれの保険の中の、例えば免責要件の中で、このような自然災害あるいは津波、こういうものに対してもし保険がきかないということ、恐らくこれは今の段階でも相当数想定されるんではないかと思います。

 そうすると、従来の考えとは全く違った、激甚災害指定で、むしろ個人で経営されているところにも補助なりということを今後検討していかなければ再建は全く無理だというふうに思うんですが、大臣のお考えをお聞かせください。

篠原副大臣 小野寺議員の御指摘のとおり、協同組合の所有だろうと、民間企業の所有だろうと、地域の水産業の核となって役立っているということには変わりないんじゃないか、その点はそのとおりでございます。

 ただ、我々、今十分な情報が得られておりませんので、情報収集にまず努めているところでございます。

 それから、地域全体として漁業、水産加工業の復旧というのは大事でございますので、ただいまのところは日本政策金融公庫の災害復旧貸し付けの特別措置がございますけれども、これを活用していただきまして、貸付利率の引き下げ等を実施するよう要請しているところでございます。

 今後、被害の状況等を把握いたしまして、さらなる措置が必要だというのはもう明らかでございますので、復旧復興に全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。

小野寺委員 今お話がありましたけれども、例えば冷蔵庫あるいは水産加工場、個人経営の場合には、相当の借金をして、今でもその借金の償還が終わっていない施設がほとんどであります。それが失われ、通常であれば、その失われた部分を保険の適用ということで対応されるんでしょうが、その保険の適用が十分でない場合、そうしますと、企業経営者は、借金が残り、生産資材はすべてなくなり、さらにまた借金を背負う。こういう無体なことを政府が言うということは私は到底あってはならないことだと思っております。

 現行制度は現行制度として、今回の津波という、もしかしたらこれは保険も適用できないような状況、本当の大災害、こういう場合については、現在の制度を超えた形での検討が必要だと思います。このような検討が必要だという考えを私と同じように篠原副大臣がお持ちかどうか、教えてください。

篠原副大臣 全く同様に考えております。

小野寺委員 お人柄を信じております。また、今の言葉の重さというのを私は確信をしまして、ぜひしっかり、ともに、新しい法律、新しい制度、これが必要かと思っております。

 さて、漁業といいますと、もちろん漁船、船も必要であります。この漁船についてちょっとお伺いしたいと思います。

 今、私、気仙沼、南三陸、陸前高田、大船渡あるいは女川、牡鹿半島、こういうところを回っておりますが、ここで感じますのは、今回の災害では漁船というのが実はすべて失われております。ほとんど船というものがもう残っておりません。こうなりますと、新たに生産をしようと思っても、肝心の漁船がない。あるいは、養殖業を行うにしても、実は作業をするための小型の漁船が必要になります。このようなものが今回消失した。これは本当にないんです、一隻も。

 こういう状況で新たに漁業を始めるためには、当然、漁船の新たな建造なり購入、中古も含めて、それが必要となりますが、これについての政府の支援について教えてください。

篠原副大臣 漁船は漁業にとっては不可欠な存在でございます。小野寺委員御指摘のとおり、壊滅的な打撃を受けておりまして、テレビ放映では、どこかの漁協で八百隻のうち残っているのが十隻ぐらいしかないというのはよく放映されておりました。我々は何隻のうち何隻だめになったかという正確な数字は把握しておりませんけれども、委員御指摘のとおり、ほとんどの漁船が使い物にならなくなっているのではないかと思います。

 今のところの制度では、漁船保険とかありますし、融資がございます。それから、激甚災害法に基づきまして共同利用小型漁船建造費補助を都道府県が行う場合は、国が事業費の三分の一を補助するというような仕組みがございます。

 しかし、今回の災害は、委員御指摘のとおり、こんなことではとても対応できない広範囲のものになっております。壊滅的な被害が発生しております。だから、ゼロからのスタートということになるのではないかと私は思っております。したがいまして、速やかな漁船の再建等について今までにない支援が必要ではないかと思っておりまして、現在、大至急検討を進めているところでございます。

小野寺委員 ただいま漁船保険というお話がございました。実は、漁船保険というのは、大臣もよく御存じだと思いますが、残存価値に対する保険ということになります。ですから、例えば船齢が二十年を超えたもの、そういうものに関しては、当然もう減価償却も相当進んでおりますので、残存価値というのはそんなに多くない。その金額を補てんされても、船は新しいものをつくらなきゃいけない。ですから、とても再建ができるような状況ではありません。また、最近の漁船漁業、決して経営はよくありません。ですから、再建するためには、相当踏み込んだ、融資だけではなくて、さまざまな支援が必要だと思います。

 現在の法制度でもし間に合わなければ、ぜひ、新しい制度、特に漁船の新たな建造あるいは購入、このことについてもお願いをしたい。日本の近海、遠洋漁船、特に近海漁船につきましては船齢が相当数古くなっています。ですから、保険で見られるといっても、新造するための何分の一の価値しか保険ではおりません。ですから、ぜひ、再建ができるようにさらなる支援をお願いしたい、そう思っております。

 また、同じく、実は養殖施設、三陸沿岸は大変有数な養殖施設もございます。この養殖施設の再建、これはすべてがなくなってしまいました。その再建についての政府の対策についても教えてください。

篠原副大臣 養殖業につきましても、三陸地域、非常に大生産地でございます。

 ちょっとお答えさせていただきますと、岩手県はカキが四位、ワカメが一位。小野寺委員の地元の宮城県でございますと、ギンザケが養殖では一位、カキも二位、ワカメも二位というところでございます。こういった養殖施設、漁船と同じように壊滅的な打撃を受けております。

 養殖業の復旧復興に向けましては、三月十三日にこの災害を激甚災害と指定いたしました。ですから、養殖施設も当然災害復旧事業の対象となります。補助率は、先ほどから申し上げておりますとおり経費の十分の九でございます。

 こういったことを活用いたしまして、養殖の復旧復興に向けて全力で取り組んでまいる所存でございます。

小野寺委員 養殖といいますと、皆さん、例えばいかだにつるされたカキとか、あるいは海に浮きでロープにつるされたワカメとか、そういうイメージを持たれると思いますが、その作業をするためには、実は、いかだとか海に浮かぶ養殖施設だけではなくて、そこで作業をするために、あるいはギンザケを含めてえさを供給するために漁船が必要になります。そして、陸上では、この漁船のさまざまな資材を運ぶためのトラックあるいは軽トラ、こういうものが必要になります。そして、沿岸におきましては、当然、揚がったカキの処理、あるいはさまざまな資材を入れる倉庫、これが必要になります。

 災害で養殖といいますと、どうもいかだとか生けすとか、そのもの本体にしか適用されないような印象をお持ちだと思いますが、今回は資材がすべてありません。漁船、車もすべて流されてしまいました。こうなりますと、従来の養殖施設だけではなくて、例えば、陸上であれば、それを運搬する車なりの施設設備、あるいは海上であれば漁船、そして陸上の上屋、さまざまなものが必要になります。こういうものをすべて入れた形で初めて養殖業が再建、復活をする。このすべてに対して、今回この支援というスキームが適用されるのかどうか教えてください。

篠原副大臣 どこまでが養殖施設に含まれるかということについては今検討中でございまして、なるべく広範囲まで対象にしたいと考えております。

小野寺委員 今の言葉、額面どおりになかなか受け取れない。心配をしております。実は、一年ほど前でしょうか、チリ地震津波が同じくございました。このときの養殖施設の被害ということでは、いかだ本体、この施設だけの復旧にとどまりました。

 今回は、関連のものがすべて消滅をしているということ。ぜひ篠原副大臣に認識していただきたいのは、養殖施設というのは、いかだだけじゃない、生けすだけじゃない、もうすべてのもの、これが全部相まって養殖施設、養殖に対する漁業の支援ということになります。今回、広く読み込んでいただけるということであれば、ぜひ養殖場に運ぶ船、そして陸上で物を運ぶ、例えば軽トラック、そしてそれを入れる上屋、こういうものすべてが相まって養殖施設だという認識をお持ちいただきたいと思いますが、私と同じ認識を持っていただけますでしょうか。

篠原副大臣 今回の災害は未曾有の大災害でございますので、いろいろな適用については違った対応を我々は考えてまいりたいと思っております。そういう点では、小野寺委員と全く認識は一緒じゃないかと思っております。

小野寺委員 先ほど、漁船漁業で、例えば冷蔵庫とか加工場の話をしました。三陸沖というのは、近海にしても、あるいは沿岸にしても、そして養殖業にしても、世界の三大漁場の一つということになっています。ですから、国民全体の大変な財産であると私どもは思い、そこから優良な水産資源を国民のため、世界の人のために利用するというのが私ども沿岸に住む人間の使命だと思っています。今回、それを果たすための生産資材がすべて失われてしまいました。

 そして、ぜひ認識をしていただきたいのは、漁船だけがあれば魚がとれるわけではないんです。漁具だけがあれば魚がとれるわけではないんです。とった魚を市場に揚げて、そしてその魚の鮮度を保持するために、冷蔵庫なり、あるいは氷で冷やすための製氷工場が必要です。そして、それに付加価値をつけるために水産加工場が必要。こういうすべての基盤、さらに、これを運ぶ道路のインフラも必要。これがあって初めて漁業というのは生きてまいります。船だけを補てんすれば漁業が再生するわけではありません。すべての生産資材が実は相まって漁業の再生が行われるということでありますので、ぜひ、これ全体の支援ということを改めて認識していただきたい、そう思っております。

 そしてもう一つ、地元の漁業者あるいは水産加工業、冷蔵庫、この経営者の方にお話を伺うと、皆さん、意欲を持っています。すべてを失い、家財も失い、本当に着のみ着のままで、今避難所で、おふろにも二週間も入らず、そういう生活で暮らしていながらも、何とか再建したい、そういう気持ち、強い思いを持っていらっしゃいます。こういう経営者あるいは漁業者に対して、気持ちが折れないように、さまざまな支援が行き渡り、再建されるまで生活の支援、生活の保障ということが必要となると思っております。

 特に、例えば水産加工場、冷蔵庫にお勤めの方には雇用調整助成金の拡充、現在の激甚対応であれば、例えば八割、最大九割までの補償が三年間のうちの三百日に給与補てんとして国から出る雇用調整助成金の制度がございます。これをぜひ周知していただいて、従業員の方を解雇せずに、とにかく再建に向けて頑張っていただけるように、政府としても全力を挙げていただきたいと思っています。

 もう一つ、実は、このような、例えば水産加工場、冷蔵庫にお勤めの方については雇用調整助成金の対応になりますが、一般の漁業者、この方々は、働きたい、働く力がある、再建したいという思いを持っています。生活保護者ではありません。ですが、働くための資材、ツールがすべて失われています。それがそろうまで三カ月になるか半年になるかわかりません。この間の生活の支援、これは私は、水産庁が中心となって、農林水産省が中心となって考えていくべきだと思いますが、このような、生産資材がそろい、漁業が再建できる間の漁業者に対しての生活の支援について政府としてはどのようなお考えがあるか、教えてください。

篠原副大臣 今後何よりも大切なのは、災害でもって非常に絶望的な気持ちになっておられる方が一部にはおられるんじゃないかと思います、この皆様方に、将来に向けて希望と展望を持っていただくのが我々の大事な仕事じゃないかと思っております。

 今、小野寺委員御指摘になりました、漁業の活動の再開には、漁船にしろ、養殖業の復興にしろ、時間がかかる、その間、被災された方々がどのように生活していくのか、その間の休業補償、そういったものを考えるべきではないかという御指摘じゃないかと思っております。

 これも、私の記憶するところでは、今まではこのようなことに対して休業補償をしたことがなかったかと思います。しかし、今回の災害、大災害でございますので、我々政府部内におきましては、現在、大至急、何かできるのではないかということで検討を進めさせていただいております。

小野寺委員 今までの制度でお話をされました。今回の災害は、恐らく人類史上でも歴史的な災害、そしてまた日本においても恐らく千年、二千年規模で一度あるかないかという災害、ですから、当然、今までにない制度で対応するというのは当たり前のことだと思っています。同じ認識だと私どもも思っております。

 さて、もう一点。このような災害を受けましたが、沖合に残っている漁船は実はあります。例えば、気仙沼を主に母港としています近海の漁船、これは十八隻、たまたま沖合で操業していたために、今回この災害には遭っていないという状況にあります。

 ところが、この十八隻の漁船というのは、今、経営的に厳しい状況にあります。なぜかと申しますと、近海船が対象としています、例えば、マグロ類もありますが、カジキ類あるいはサメ類、こういうものが、主に利用する、端的に言えばサメであればフカひれの加工、こういう技術を持っている、サメの付加価値をたくさんつけるような技術を持っているのがこの三陸沿岸の漁港でありました。それがすべて失われるということになりますと、この近海の漁船が対象としていますカジキ類、サメ類、これが実は余り値段がつかない。そうなりますと、幾らとっても採算が合わないということになり、沖合でたまたま災難を逃れた漁船であっても、この技術を持った主産業の地域であります三陸沿岸の水産業が消滅したということで、今大変厳しい経営状況にあります。

 政府では、もうかる漁業という制度をつくっていただいて、とにかく、ある程度の船団を組み、さまざまな工夫をし、その中で経営努力をして、漁業がもうかる体質になるという先駆的な取り組みをしていただいています。

 今、気仙沼所属の船十隻で、もうかる漁業の申請をさせていただいています。今回の災害を受けて、気仙沼地域全体で、近海漁船の、ある面では共同操業を含めた再生を図るためには、この十八隻全体をもうかる漁業の対象にしていただきたい、そう思っております。当然、予算の枠はさらに必要になると思いますが、もうかる漁業の予算枠の拡充、このことができるかどうか、あるいは、ぜひしていただきたいということを思っております。

 大臣の御見解をお伺いいたします。

篠原副大臣 もうかる漁業創設支援事業につきましては、先進的な漁業者の取り組みを支援するものでございまして、すべての漁業者を対象とするものではございませんけれども、これまで、気仙沼地域の近海マグロはえ縄漁業につきましては、先生御指摘のとおり、十隻でもって計画を進めてきたというのは承知しております。

 しかしながら、今回の災害というのは、そういった事業で対応できるものではないんじゃないかと私は思っております。とりあえずは、もうかる漁業創設支援事業の対象ということもありますけれども、そういったことを超えて、漁船の再建のためにもっと違ったスキームでもってバックアップをしていきたいと思っております。先ほどから申し上げているとおり、そういったスキームを今検討中でございます。

小野寺委員 残った漁船についても、もうかる漁業を超えるような、もっと魅力的な制度を考えていらっしゃるというふうに伺っております。予算措置については私どもも全面に支援をさせていただきますので、ぜひ漁業者が安心できるような体制をつくっていただきたい。それは、再建に向けて、そして再建までの生活の糧、休業補償も含めて対応していただきたい、そう思っております。

 さてもう一点、地元に住む者として、実は住民の方から大変感謝されていることがございます。これは道路の整備です。私どもの、災害を受けた地域に、三陸縦貫道の唐桑道路というのがあります。三カ月前に、たまたま開通を早くしていただいておりました。本当は年度末ということで、もしかしたらこの地震の後の開通だったかもしれませんが、年度内開通という努力で、昨年の暮れに開通をいたしました。この道路が開通したおかげで、数百人の方の命が救われました。

 この道路に向かう旧道であれば、気仙沼から唐桑というところに下って、そして一番の、湾の沿岸、海のすぐそばをずっとしばらく走って、それからまた高台に上る、そういう数キロの区間が、実は今回、津波で全く跡形もないような状況になっております。そして、地震発生から三十分、四十分時間がありましたので、多くの皆さんがここから逃げる、そのような状況をしております。従来であれば、もしこの道路がなければ、この数キロにわたって大渋滞が起きました。大渋滞が起きた瞬間に津波が来たら、恐らく数百人以上が亡くなってしまったんだと思います。幸いにして、三カ月前に三陸縦貫道唐桑道路というのを開通していただきました。これは全く山間部、そしてトンネルを真っすぐ抜ける道です。この命の道のおかげで本当に多くの人が救われました。

 そして、残念なのは、これはごく一部だったんです。三陸沿岸にもっと早くこの道路が通っていれば、もっともっと多くの人の命が救われた。私どもは再三、この三陸縦貫道は命の道だとして訴えてきました。予算が少ないのはわかります。ですが、ぜひこの教訓を生かして、この命の道の一日も早い全線開通、このことについて努力をしていただくことを改めて国土交通省からお伺いしたいと思っております。

小泉大臣政務官 お答えさせていただきます。

 ただいま先生から御指摘をいただきましたように、太平洋沿岸の国道四十五号等は今回の震災で寸断をされましたが、この国道四十五号と並行しております三陸縦貫自動車道は、津波による浸水予想区域を回避する内陸部のルートであったことから、ほとんど損傷を受けておらず、今回の震災後も、国道四十五号の迂回路や緊急輸送道路として大きな役割を果たしたところであります。

 三陸縦貫自動車道は、現在、五割が供用、約二割が事業中でありますが、来年度は本吉気仙沼道路を新規事業化するなど、引き続き、災害に強い道路整備を全力で推進してまいる所存であります。

小野寺委員 これらの再建というのはこれから大変だと私は思います。本当に、生まれ育ったふるさとの風景が一変し、友達の多く、親戚の多くが今でも見つからない、そのような状況がございます。ですが、これに心が折れないで頑張っていくこと、それがやはり、日本というのはすばらしい国だと世界に発信するためにも大きな役割になると思います。

 委員を初め政府の皆様に、これからもこの地域への御支援を心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山田委員長 次に、谷公一君。

谷委員 自由民主党の谷公一でございます。

 今、被災地の小野寺先生の質問がございました。小野寺先生自身、大変被害に遭われて、うちもやられ、事務所もやられたかと思いますし、また同僚の国会議員も、御家族がまだ行方不明という方もお聞きしています。しっかりとこれから人命救助、復旧復興に向けて頑張らなければならないし、助かる命を、助かった命をこれ以上不幸なことにならないように頑張らなければならないと思います。

 十六年前の阪神・淡路では六千四百名余りがお亡くなりになりましたけれども、当日亡くなったのは五千五百名です。九百名以上は震災関連死ということで、震災そのもので亡くなったわけではなくて、被災のショックや避難生活のストレス、疲労で心筋梗塞とか持病の悪化で亡くなるケースを震災関連死、これは、阪神・淡路のときに初めてそれも震災による死者というふうに位置づけられて、災害弔慰金なども出ることになりました。今でも、残念ながら、少なからず出ております。

 そして、今の避難所あるいは被災地の現状、私も自民党の災害対策本部事務局で翌日から休みなしにきょうまでやっておりますけれども、大変心配です。そういう意味で、助かる命を、これ以上犠牲者を出さないということが、政府なり自治体なり、あるいは我々国会議員にも何よりも求められていることだと思います。そういう危機感を持ってしっかり取り組まないと、まだまだ犠牲者はふえてくるのではないかということを危惧しているわけであります。

 三連休の土曜日から政府と各党の実務者の会合が開かれて、私も自民党を代表して、毎日、きょうも四時半からございますけれども、出させていただいておりますけれども、そういう危機感を持って、スピーディーに、思い切って、大胆にやらなければならないと思っております。

 政府・各党の実務者会議の議題は、今までは、毎日二つのテーマでございました。原発対応については毎日やる、そしてそのほかのテーマは日ごとに変わり、土曜日は物資輸送、日曜日は計画停電、月曜日、きのうは、私の提案で避難所ということを今やっているところであります。

 その中で、農林水産業については、当面の緊急性からいえば、まず人の命が最優先だということで、まだその項目には上がっていないわけでありますけれども、しかし、今回の災害のいろいろな状況から見ると、大変なことになっているのではないかと危惧しております。今回の災害の特徴として、けた外れに地震の規模が大きかったということ、大変広域にわたるということ、四百から六百キロと言われていますけれども、どうも、水産関係を見ると、場合によっては、はるかに三重とか和歌山とか九州まで及んでいることを考えると、五百、六百キロの幅というのも必ずしも正しいものではないと思っております。

 被害の全貌はまだよくわかりませんが、篠原副大臣としてどうですか、農林水産副大臣として、今回の災害を見られて、どういうふうに認識されておりますか。そのもたらした災害の特徴といいますか、そういうことについてお尋ねしたいと思います。

    〔委員長退席、津島委員長代理着席〕

篠原副大臣 先ほど谷委員は阪神・淡路大震災に触れられましたけれども、それとの比較で申し上げますと、あちらの場合は、農林水産業については、影響はありましたけれどもそれほど大きな被害はなかったのではないかと思います。

 それと比べますと、今回はいろいろな方々に被害が及んでおりますけれども、どのような職業に携わっていた方に一番大打撃があったかというと、沿岸の漁業者ではないかと思います。それから、津波によりまして水田、畑が塩水につかっているということで、これも大被害で、先刻から申し上げておりますが、被害状況すらわからないという未曾有の大災害ではないかと思っております。したがいまして、我々は、これにつきましては、今までの災害対策とは違った観点から対策を講じなければならないんじゃないかと思って、いろいろな対応策を検討しているところでございます。

 概略をちょっと申し上げますと、まだ全容がわかっておらないんですが、岩手、宮城、福島の三県で、漁船が約二万隻、それから二百六十三漁港、あるいは漁業施設、これがほとんど壊滅的な打撃を受けております。それから、影響を受けた農地面積でございますけれども、今のところ約二万ヘクタールということで計算しております。ただ、これは、これからの被害状況の報告によりましては大きく数字が変わってくる可能性もあるのではないかと思っております。

 いずれにしましても、このような数字を見ましても、今までにない大災害だと認識しております。

谷委員 被害状況ですけれども、副大臣、ちょっと私が心配していますのは、各党実務者会議でも何回か話題になったんですけれども、市町村自体がやられているでしょう。もちろん、十六年前の神戸のときもやられました。やられましたけれども、今回のはその比じゃないんですね。

 岩手の宮古市役所、市役所機能は支所で代行している。陸前高田市、人口二万三千ですけれども、市役所が壊滅、給食センターを利用している。町長がお亡くなりになられた大槌町、壊滅、中央公民館を利用中。宮城県南三陸町、庁舎壊滅、総合体育館を利用。福島県いわき市、損壊、消防本部にある。

 加えて、原発の避難地域はみんな移転しているんです。だれもいない。そうなると、調査そのものも、原発地域に限って見れば、一体できるのか。今は二十キロ圏内はだれも入っていないんです、入れない。警察、消防の規制がありますね。そういう大変、今までにない、時がたてばわかるというのではないのではないか、そういうことを考えてこれから対策を講じなければならないと思います。

 整理しますと、まず原発の問題はおいておきます。原発以外の、こういう、庁舎もなく、職員の方も、恐らく相当犠牲になられておる方もあるかと思います。もう少し落ちつきましたら、そういう岩手、宮城の被害の算定なども、応援を求めてやらなければとても手が回らないんじゃないかと私は思っています。

 現在の時点で求められているのは、専門の保健師とか、そういう職員はもう既に行っているんですけれども、行政職の方が足りないわけです。一般の事務をやる、戸籍証明とかあるいは死亡証明書を受理するとか、そういう基礎的な行政サービスをやる職員がいないので、早急に、総務省でリーダーシップをとってもらって、全国から派遣する仕組みができつつあるんですけれども、それらが落ちついたときに、やはり農林水産関係も、農林水産省がリーダーシップをとっていただいてある程度の期間派遣をする、そういうことをぜひ考えていただきたいんですけれども、現時点でのお考えをお伺いします。

篠原副大臣 谷委員から、非常に正しいというか的を射た御指摘をいただきました。私も、その点では全く認識を同一にいたしております。

 それなりの手も打ってございます。ちょっと長くなるかと思いますけれども、お答えさせていただきますと……(谷委員「簡単でいいです」と呼ぶ)簡単にいきます。

 今、私の後ろを見ていただくとおわかりいただけると思いますけれども、いつもいる秘書官がおりません。彼は、偶然ですけれども、三月十二日、義理のお父さんのお葬式がある、休ませてほしいというふうに言っていました。それは石巻市ででした。休暇中に被災いたしまして、家族は皆高台に逃げて助かったわけですけれども、ひつぎが流されたりしているということで、避難所に行っております。

 そこがなかなか連絡がとれなくて心配していたんですけれども、連絡がとれましたので、私から命じました、私は一人で大丈夫だ、余り大丈夫じゃないんですけれども。だから、石巻市に残って、そちらで被災の皆さん方を助けて、本人も被災しているわけですけれども、ということで、きのう、石巻市長さんから私のところに電話がありまして、一カ月ほど石巻を補佐してほしいということで、私は快諾しております。

 それに加えて、副大臣会合で、私が谷委員と同じような意見を申し上げました。この際、政府の若手を、もうちょっと行けるようになったらどんどん派遣して、そして復旧に努めさせるということを大々的にやるべきではないかということを提言いたしました。それで、片山総務大臣がそれを受けられまして、そのようにするということで、そのような体制を今築きつつあります。

谷委員 大変いい話をありがとうございました。

 ただ、ちょっと、コメントするわけじゃないんですけれども、今、被災自治体に必要な公務員は、国家公務員よりも、むしろ市町村の職員なんです。現時点では現場の方はもっと基礎的な住民サービスが、ただ、それが落ちついたらまた農林水産関係の被害にも応援職員がいないととても対応できないと思いますので、ぜひともその辺の仕組みを今の時点から検討していただきたいと思います。

 それともう一つ、これは要望ですけれども、やはり原発の地域、これは副大臣、考えなきゃならない。このままでは被害額も相当の期間わかりませんよ。何にもわからない。だって、入れないんですから。今でも御遺体がそのまま放置されているという話はよく聞くことですし、その辺のことも、答弁は要りませんから、その地域をどうしていくのか、どういう被害を受けているかということとあわせて、これからどうしていくのか、このまま。幾ら、この事故が当面収束したとしても、あの地域の復興、そしてあの地域の農業、畜産業をどうしていくのかということも、ぜひしっかりと、また幅広い観点から検討をお願いしたいと思います。

 今回の災害によって、田畑が相当流されたり、あるいは、海の水で、塩水を含んで、今の時点でもまだ海のようになっているところもございます。きょうは農村振興局長に来ていただいていますけれども、こういう場合、復旧はどないなんですか。田んぼが長期間塩水につかって、地盤沈下になっている。技術的に見てどうでしょうか、今後の復旧についてお尋ねします。

吉村政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回の津波被災、特徴として、一つは、先ほど副大臣も答弁いたしましたけれども、現時点での推計で約二万ヘクタールという規模に及んでいるという、極めて大きな面積であるということがございます。また、今委員御指摘のように、地盤沈下、それから湛水し続けている、こういうことも大きな問題でありまして、農地等の災害復旧に当たりまして、このような課題を踏まえて、客土、除塩、それから排水対策など総合的な取り組みが可能になるように検討していかなければならないというふうに考えております。

    〔津島委員長代理退席、委員長着席〕

谷委員 これは、局長、一、二年で復旧できますか。いろいろな条件がありますけれども、技術的といいますか、いろいろなやり方の工夫によって、土も入れかえなきゃならないでしょうし。お尋ねします。

吉村政府参考人 お答えいたします。

 特に除塩、これについてはかなり時間がかかる可能性があるというふうに思っております。

谷委員 またぜひしっかりとした対応を要望したいと思います。

 漁業の問題は先ほど小野寺先生から質問がありました。私も、小野寺先生が言われるように、今までの発想ではだめだと思います。今までの災害の復興のスキームでこの地域が復興成るのかというと、大変厳しい。すべてがやられている、すべてが流されている、壊されている。

 先ほど篠原副大臣も、大変前向きに、幅広い、思い切った方策ということを言われていたかと思うんですけれども、漁業者に対する直接支援、そういうことにもやはり踏み込む必要があろうかと思いますけれども、どうでしょう、副大臣。

篠原副大臣 被災された方々はたくさんおられまして、漁業者の生活の支援ということに絞ってということは、全般で考えていただくことになろうかと思いますけれども、漁業の再開ということに関しましては全面的にバックアップしていいのではないかと思っております。そういった観点から、政策を考えてまいりたいと思っております。

谷委員 時間が参りましたので、もう一度、では最後。いや、別に責めているわけではないんですよ、考え方ですから。

 個人への助成は、個人財産への助成は憲法上好ましくないとかいう理屈で、阪神・淡路のときは住宅の再建について出ませんでした。全く出なかった、税金は。ほかのやり方でいろいろ工夫をしましたけれども。しかし、その後、いろいろな災害を経験することによって、そういう考え方はやはり修正しなければということで、生活再建の法律もでき、仕組みもでき、完全ではありませんけれども、まあまあのレベルまでになりました。

 やはり漁業の場合も直接的に助成という、事実上漁業者への直接助成にまで大きく踏み込む必要があるのではないか。漁協を通すとか、いろいろなやり方はあろうかと思いますけれども、そうしなければこの地域の漁業は立ち上がれないのではないかと私自身は感覚的に思いますけれども、副大臣のお考えを最後にお尋ねして、終わりたいと思います。

篠原副大臣 谷委員の御指摘、ごもっともではないかと思います。

 申し上げられませんでしたけれども、家の再建資金に三百万円というのもできました。それから、我々の方のいろいろな、戸別所得補償それから子ども手当といったものは、みんな個人に行くものでございます。

 そういった延長線上から、財政学的にも、一番効率のいい政策の一つが直接的なものではないかという考えも財政学者の中では言われておるんですね。こういった災害の復旧については、最もそういうことが主張されていいのではないかと私は個人的には考えております。そういう点では、谷委員と全く考え方は一緒ではないかと思います。

谷委員 ありがとうございました。

山田委員長 次に、江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。

 まずは冒頭に、被災された方々、亡くなられた方々、お見舞いとお悔やみを申し上げます。

 宮崎県も口蹄疫で本当に全国の方々から助けていただきました。今こそ宮崎県も恩返しをするときだという機運が宮崎では非常に高まっておりまして、新燃岳周辺でも、お金や物資を集めて今送っているような運動が広がっております。

 そしてまた、この委員会で、今、副大臣の御答弁をずっと聞いておりましたけれども、今までのスキームじゃだめだということは共通認識としてあるということがよくわかりました。ということであれば、今まで以上に、この農林水産委員会の果たすべき役割というのは大きいですよ。ですから、この委員会がもっと頻繁に開かれて、これは委員長に対するお願いですけれども、両筆頭に対するお願いですけれども、そして官民一体、まさに与野党の垣根も越えて、被災者の方々のために、みんなで力を合わせて、いい議論が、建設的な議論がこの場でできるようにしていきたいということを私は心から望むものであります。

 菅総理は、三月二十一日に、特措法に基づいて、福島の原乳と、福島、茨城、栃木、群馬、四県で生産されたホウレンソウ、かき菜、これについては当分の間出荷停止、この指示をされて、けさの報道等でも、また十一品目ですか、追加をされたということであります。

 これはほかの民主党の先生方も御質問されましたので重複を避けますけれども、ただ、私が一番心配するのは、原産地表示があるじゃないですか。やはり主婦感覚、特にお子さんたちがいるような方々は、例えばスーパーで段ボールの箱に、大変失礼ですけれども、茨城県産とか福島県産とか書いてあると、根菜であっても、例えばこっちに宮崎とか鹿児島のものがあれば、やはりこっちに手が伸びると思うんですよ。

 市場で仲買人の人もそうかもしれない。大田市場の方には拒否をしないようにという指導をしたということは農林水産省の方から説明がありました。いい指導だと思いますよ。ただ、仲買人が何ぼの値段でこれを買うのかということについては、農林水産省できちっとウオッチをしてください。当たり前の、この原発の事故がなければ例えば百円で当然買われているはずのものが、半値で買いたたかれたということであれば、そこには、政府としてちゃんとウオッチをして、そして、民民の取引ですからどうしてもそれはしようがないということではなくて、間接的な風評被害ですから、何らかの補てんをしてあげないと、そういう人たちもどんどん経営が苦しくなって地域全体が疲弊していく、私はそういうことについて考えてほしい。

 先ほど、ほかの先生からもお話がありましたけれども、今回廃棄処分された分については補償が出る、当たり前ですよ、そんなのは。千二百億、その分出たのは枝野さんも言っていました。それは当たり前のことで、いいことでしょう。

 だけれども、これから、春、作付を果たしてやっていただくのかどうか。キリンとかいうのがどんどん放水をして、通電もして、大分状況はよくなったと、きのうの対策本部、自民党は七時半からやったんですけれども、報告があって、少し安心はしておりますけれども、もしこの原発の問題が長期化したら、米も、先ほど話がありましたけれども、水を張って植えつけて収穫して結局だめだったということがあれば、いいか悪いか、これは議論はあると思いますけれども、作付をすることが適当なのか、それとも、補償しますからしばらく休んでくださいということが適当なのか。特に二十キロ、三十キロ圏内は深刻ですよ。そういうことはやはり政府として、私は考えておく必要がある。

 二つ質問しましたけれども、副大臣の御見解をお尋ねします。

吉田(公)大臣政務官 お答えいたします。

 今議員のお話のように、三十キロ圏内等については確かにどうなんだろうかという心配があろうかと思いますが、それはあくまで、計測をいたしまして、安全圏内の規制値なのか、それともそうではないのかということだけはきちっとやらなければならない、そんなふうに実は思っております。このことにつきましては、厚生労働省が食品衛生法に基づきまして暫定規制値を決定、公表し、農産物等を調査いたしております。

 以上のように、これからもそのことについては十分注意をいたしまして、現在も、中央卸売市場等については冷静に対応するようにということを申し上げたところでございます。

江藤委員 時間がないのでもう追及はいたしませんが、そういうことを聞いているんじゃないんですよ。そういうことを聞いているのではなくて、もういいです、もういいです。

 それから、もし長期化した場合は、もしかしたら、ホウレンソウとかかき菜、その他の品目、ブロッコリーをつくっている人は転作しなければいけないかもしれない、露地野菜からほかの品目に転作しなきゃいけない、その場合は当然経費がかかるわけですよ。そういうときも、やはり政治は先読み先読みをして対策を打たなければいけないから、そういうことも政府・与党内で、もう答弁は求めませんけれども、副大臣、ぜひ御検討ください。お願いします。

 それから、私は自民党の畜産の担当ですけれども、非常にこれも心配しているんです。原乳の話は随分ありましたからもうしませんけれども、例えば、この四つの指定された県、子牛の市場はどうなるんだ、それから、枝肉が出荷された場合に、当たり前の価格で果たして取引されるのかということが私は怖いんですよ、怖いんですよ。もし枝肉の価格がどかんと落ちたときには、肥育農家の経営環境というのは急激に悪化しますよ、物財費は物すごく上がっているんだから。

 ただ、マル緊はあるとはいっても、これは家族労働費を埋めるものであって、枝肉価格がどかんと下がったときに肥育農家を支援する政策というのは今ないじゃないですか。今回はこのことも早急に検討に入らないと、市場をちゃんとウオッチしないと、肥育がつぶれたら生産もありませんからね。当たり前の話ですから。このこともぜひ考えていただきたいと思いますが、いかがでございますか。

篠原副大臣 今のところ、野菜と生乳につきましては基準値を超える数値が出てきておりますけれども、肉の関係ではそういったことがございません。したがいまして、関係する今の四県の枝肉価格が低落したというような状況はございませんけれども、今後は我々は注意深くこれを見守ってまいりたいと思っております。

 江藤委員、多分、口蹄疫のころの対策を念頭に置いて言っておられるんだと思いますけれども、屠畜場の拒否というのも今のところ幸いにしてございません。ですけれども、口蹄疫の対策の中では全国一律だったものを各県別にしたりという細かな対策を講じましたので、当然のことですけれども、それと同等の対策は今検討しております。

江藤委員 これは枝肉も考えるというふうに理解してよろしいですね。ありがとうございます。

 漁業についてももうちょっと触れたかったんですが、大分先輩委員がやっていただきましたので、小野寺先生の言われたことをしっかりと胸にとめて、きちっと対応をしていただきたい、これだけ申し上げて、漁業に関しては飛ばさせていただきます。

 それから風評被害、これはお願いしたいんですよ。テレビを見ていますと、民放各局がそれぞれのオーソリティーを連れてきて、いろいろなことを言う。ある人は、喜んで家族で食べますよと言う人もいるかと思えば、煮た方がいいですねと言う人もいる。これは非常に国民を混乱させている原因だと思う。やはり民放に対しても、政府として少し指導してほしい。

 そして、広告がありますよね。ACジャパンというのがやたらに流れて、やっている内容はいいんですよ。内容はいいんですよ、内容は、子宮頸がんがどうとか。でも、せっかくだったら、民放さんに協力を仰いで、この時間帯を、例えば原発はこういう状況ですよとか、風評被害については、こんなことは安心ですから皆さん御安心くださいとか、あらゆるツールを使ってやらないと、農林水産省のホームページを見てくださいとか、厚生労働省のホームページを見てくださいとか、だめですよ。もうちょっと知恵を使ってです。これはここでやるべきことじゃないかもしれません。でも、内閣の一員なんですから、ぜひ持ち帰っていただいて、検討してください。これはお願いですから、ぜひよろしくお願いいたします。

 それから、明後日には食料・農業・農村政策審議会畜産部会がいよいよ開かれます。ここで価格決定が行われるわけでありますから、この政策その他について質問させていただきます。

 経営安定対策と畜産物価格、これがばらばら、四半期も離れて決定されるということは、そもそも私はおかしいと思います。全国を回って畜産農家の方々とお話をしてきましたけれども、そのことに対する違和感というものは生産者の方々は強く感じていらっしゃる。だって、政策を決めたときと価格決定と四半期ずれちゃうんだから。政策というのは常にパッケージじゃないですか。合わせて一本というのが政治ですよ。ですから、このやり方についてまず疑問であるということを申し上げておきたいと思います。

 それから、宮崎の口蹄疫のことをちょっとだけ触れますけれども、全然導入が進んでいません。簡単に言います。頭数で、繁殖農家は三五%、それから肥育農家一四%、酪農家は五〇%、養豚農家は三八%しか導入されていない。これはいろいろな事情がありますよ、いろいろな事情が。非常に心の傷を負った、この際、高齢だから離農しようという方もおられます。それから、配合飼料価格が高い、子牛の値段が高い、そういった事情もさまざまありますが、やはり地元を歩いて一番言われるのは、今の政府はEPAをやるんだろう、TPPをやるんだろう、そうしたら三八・五%も安い牛肉がどんどん入ってくるんだろう、そうなったら、我々再建したってどうせつぶされるじゃないかと。だから様子を見ているんです。(発言する者あり)やろうとしている人がいるから言うとるんです。あなたの気持ちはわかっとるんだよ。政府に言うとる。

 だから、この大震災が起こった、こういう状況の中で、さらに状況は厳しくなっておるわけですよ。

 きょうは大臣はおられませんけれども、副大臣にお尋ねをします。副大臣、EPA、TPP、どういう姿勢で臨まれますか。御答弁を求めます。

篠原副大臣 ただいまは、我々の第一の任務は、地震、津波被害の発生を受けまして、その被災者の救済、援助、それから農林水産業の復興、特に東北地域の復興、これが私は一番大事じゃないかと思っております。

 引き続いてあります国際関係でございますけれども、私は、原点に戻りまして、やはりWTOの交渉できちんと対応していくのが一番真っ当な道ではないかと思っております。これは、政府部内で議論するときに、私はこれを常に主張してまいりました。

 それで、TPP、EPAの関係でございますけれども、これは御存じだと思いますけれども、予定では、三月の下旬に四回目の本部の会合を開いてまとめていく予定でございましたけれども、開国フォーラムも中止、幹部会も中止、そして三月の中間報告もやめることにしております。その先というのはまだ決まっておりませんけれども、政府全体として、今回の震災の状況等も勘案して決めていくべきことではないかと思っております。

江藤委員 副大臣の言うとおりですよ。口蹄疫も東北も、復興しようという人の気持ちを折ったらいかぬ、これ以上負のインパクトを政治が与えるようなことを絶対にしたらいかぬということでありますので、毅然たる態度で、そのときは副大臣をやめてやるというぐらいの覚悟で臨んでいただきたいというふうに私からはお願いを個人的にいたしておきます。

 それから、東北とかいろいろなところに視察に行きましたけれども、一番やはり、先ほどもちょっと触れられましたけれども、配合飼料価格安定制度、これの将来に対する不安は大きいですよ。

 二〇〇八年に非常に価格が高騰して、枯渇したことは、副大臣よく御存じのとおり。民間からも借り入れをし、ALICからも借り入れをし、やっとしのいだ。だけれども、この民間からの借り入れの返済がもう既に昨年の四月から始まっている。

 農水省に説明を聞くと、四―六月は何とかいけると。四―六月で一トン当たり千八百円の値上げということがJA全農から三月十四日に発表されましたけれども、この値段でいけばいけるというふうに言いますけれども、しかし、私は非常に不安なんですよ。残金も減ってきておりますし、まあ五百億ぐらいあるというふうに多分御答弁されるんでしょうけれども。

 借金の返済、それから、今後さらに急激な、二〇〇八年に経験したような価格の高騰局面が来ても、間違いなく配合飼料価格安定制度は維持されて、補給金が農家の手元に渡るというふうに理解してよろしいですか。御答弁を求めます。

篠原副大臣 飼料につきましても、東北地方の港が全部壊滅的な打撃を受けましたので、対策の一環として、加えて、船で志布志湾や苫小牧から送るような措置を講じております。ですから、我々は、畜産業のことを考えた場合、飼料のことを真っ先に手当てしなくちゃいけないことだと思って考えております。

 それで、配合飼料価格安定制度の補てんについて、江藤委員御心配の向きはわからないでもございません。ですけれども、おっしゃったとおり、まだ三百六十五億円の財源があります。さらに、二十三年度中には約百八十億円の積み立て増も考えております、見込んでおります。ですから、補てん財源が直ちに枯渇する状況にはございません。それから、これも委員御存じだと思いますけれども、借入金というのを今までもしております。

 こういった手当てもありますので、私は、こういった事態、ちゃんと飼料については手当てが行われつつあるのではないかと思っております。

江藤委員 オーソリティーに対して大変失礼ですけれども、私は御認識が甘いと思いますよ。

 だって、二〇〇八年のときは為替が百十円でしょう。今は八十円じゃないですか。

 今、中東なんかで民主化運動が起こっていますけれども、原因は、小麦とか穀物相場が上昇して、食料が十分に渡らないことが一つの原因になっていると言われている。中国でも食料の値段ががんがん上がっていると言われている。こういう状況じゃないですか。

 もし為替が振れたらどうするんですか。今回の復興支援でお金を調達しなきゃいけない。もしかしたら震災特例国債のようなものを大量に発行しなきゃならないかもしれない。これは本当に慎重にやらないと、確実に円安に振れますよ、確実に円安に。下手すれば百二十円、百三十円、簡単に振れますよ。それでも配合飼料価格安定制度は大丈夫ですか。もう一回御答弁ください。

篠原副大臣 江藤委員は先の先まで考えておられるんじゃないかと思います。

 確かに、阪神・淡路大震災の後、一たん円高になった、その後急激な円安になった。その円安になったりしたとき大丈夫かというような御指摘だと思いますけれども、我々、そのような先のことまで一応考えておりますけれども、今のところは着実に手当てをして積み重ねていく以外に方策はないのではないかと思っております。

江藤委員 これ以上もう追及はいたしません、時間もなくなってきたのでしませんが、ただ、さっきも言いましたけれども、先を読まなきゃまずいですよ。畜産農家の方々はみんな不安なんだから。北海道に行って一番言われたのは、TPPのことと配合飼料価格安定制度のことですよ。二時間意見交換して、この二つにほとんど議論が集約されていたような気がします。

 ですから、ぜひともこのことは、副大臣は特にオーソリティーなんですから、専門家なんですから、先の先を読んで。だって、市中銀行はこれ以上貸さないと言っているじゃないですか。前回は九百億貸したけれども、まだ借金もちゃんと返してもらっていないのに追い貸ししてくれといったって、それはできないよという話なんでしょう。

 極端な話、補正を組むのか、一般財源から持ってくるのか、それか予備費を使うのか、わかりませんけれども、ありとあらゆる方策を講じて、緊急事態が起こっても配合飼料価格安定制度は堅持します、そういうふうな御答弁をください。もう一度お願いします。

篠原副大臣 市中銀行からの借り上げというか、貸していただいたことにも触れられましたけれども、そうした皆さんの信用を得るためにも、この制度をきちっと運用していかなければならないんじゃないかと思っております。ですから、この制度の存続については全力を挙げて取り組んでまいります。

江藤委員 時間が参りましたけれども、最後に一つだけ申し上げさせていただきます。

 宮崎とかの方に、家畜をちょっと預かってくれないかというお話が実は来ているんです。北海道にも多分大分行っていると思います。そうすれば、どうしてもキャトルセンターが要るんですよね、キャトルセンターが。我々の政権時代は、キャトルセンターをつくるときに直接補助する事業があったんですよ、予算づけしていたんです。ところが、今それがなくなって、やるとすれば強い農業づくり交付金、これは都道府県にばらまかれるものですけれども、これでやるしかないわけです。

 例えば宮崎のコムテックという会社がありまして、ぜひ預かりたい、預かってあげたい、新燃岳の牛も預かってあげたい、東北で苦労している人たちの牛も預かってあげたいというお話がありますけれども、それを全部個人の善意でやってくれというのはなかなか酷な話なんですよ。

 ですから、キャトルセンターをつくる補助事業、こういったものを復活させていただくことが、今回の震災に対応するには大変有効ではないかと私は考えておりますが、御意見だけお聞かせください。

篠原副大臣 従来の制度が、いい制度があった、それを復活してはいかがかという御指摘でございますけれども、先ほどから申し上げておりますとおり、大災害でございます、緊急事態でございますので、家畜改良センターやその他の県の施設、そういったところに受け入れられるのではないか、こういった可能性を考えまして、万全の対策を講じてまいりたいと思っております。

江藤委員 ありがとうございました。これで終わります。

山田委員長 次に、伊東良孝君。

伊東委員 まず冒頭、東日本大震災に見舞われました地域の皆様、また犠牲になられました皆様、さらにはまた、今なお行方不明として捜索をされている多くの皆様に、心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 そしてまた、我が国の農林水産業における大打撃という部分も、小野寺先生あるいはまた皆さんから今御指摘のあったところでありまして、農林水産省として、ぜひ、この災害復旧につきましては、生活が成り立つ、あるいは、できることなら漁業も農業もかつての仕事ができる、そうした環境整備に、一刻も早く立ち上がるよう取り組んでいただきたいというふうに思います。

 また、従来の考え方では、自治体も事業者もあるいは個人も、自己負担のあるところでは復旧はなかなか難しいということも想像されるわけでありまして、先ほど篠原副大臣が何度もお話ございますように、ぜひ、国を挙げて、特別な法律をつくってでも、この災害復旧に取り組んでいただきたいというふうに思うところであります。

 実は、私の地元も、北海道釧路でありますけれども、釧路、根室地方は夏場になるとたくさんのサンマ漁船、サケ・マスの漁船がやってまいります。大半が東北地方からの船でありまして、今回の津波によりまして、お話ありましたように、ほとんどの船が大きな被害を受けております。船だけではなくて、漁具、漁網の果てまでこれからまた用意をするということになりますと、本当に、ことしのシーズンに、これからの盛漁期を迎えて、漁期を迎えて着手できるかどうかもなかなかわからないという状況にあるわけであります。

 日本の水産そして農業を守るため、特段のひとつ配慮と、あるいは国の指導、お力添えがなければならない、このように思うところでありますので、先ほど力強いお話もいただきました、早急なる対策、検討をお願いしたいと、冒頭、まずお願いを申し上げる次第であります。

 さて、私は、ただいま江藤拓議員が畜産を主としてお話しされましたので、先ほど仲野博子議員がお話ありましたように、酪農関係を重点にお話しさせていただきたいと思います。

 まずもって、酪農家にとりまして今最大の関心事は、加工原料乳の生産者補給金制度、そして、一方ではまた、飼料価格、さらにはTPPの将来ということであります。お話にありましたように、去年の猛暑は牛を相当疲弊させました。生産量の減少あるいは乳成分の低下、さらに疾病の増加や受胎率の減少、低下によりまして、ことしの酪農経営に大きな影響が出てきているわけであります。

 実は、ことしの春の出産頭数が減少いたしまして、これが即、今後の生産量の減少につながってくるというふうに見通されているわけであります。特に、北海道におきましては、二十二年度、昨年度のプール乳価は、三円九十銭、約四円近く低下をいたしまして、生産者所得を大きく押し下げたのであります。

 私ども、この間、春先に、私ども自民党の中の畜産、酪農の小委員会で農家の意見聴取を行いました。実際に現場に行ってみましたところ、極めて優良な農家が大幅な収入の低下に本当に苦しみあえいでいたところでもあります。

 これは先ほど仲野議員からお話しのとおりでありまして、農家の意欲の減退、そして、もうこんなことであればやめてしまおうかという声があちらこちらから聞こえてくる。さらにはまた、農家を自分で経営してやっているより酪農のヘルパーになった方が収入がいいのではないかなどという話も聞こえてくるわけであります。若い人たちあるいは担い手の人たちが生産意欲を持ち得ないような酪農であってはいけない、このように思うところでもあります。

 ぜひ、新年度の加工原料乳の生産者補給金単価につきましては、現行の十一円八十五銭でありますけれども、これを引き上げていただきたい、こういう強い声があることをお知らせし、私からもまたお願いを申し上げる次第であります。

 一方、日本酪農乳業協会、Jミルクといいますけれども、ここが、平成二十三年度生乳の需給見通しの中で、需要が供給を上回る見通しであるという話がございました。また一方、バターの国際価格が、普通は年末の需要期を越えると年明けて安定するのでありますけれども、年明けてからもトン当たり五千ドルを超える上昇基調にあるわけでありまして、国内のバターの在庫も減ってきているというふうに聞いているところであります。

 さて、このような状況でありますので、ここら辺を勘案いたしますと、将来の、新年度の生乳の需給見通し、あるいは乳製品の国際価格の動向等を考えて加工原料乳の補給金単価を考えていかなければならないと思うところであります。

 今般の地震の影響等々もありましょうけれども、まず、この点につきまして、近々これが決定されるというお話でありますので、副大臣の見通し、あるいは農水省としての考え方をお聞かせいただきたいと思います。

篠原副大臣 平成二十三年度の畜産物価格につきましては、三月二十五日に食料・農業・農村政策審議会の畜産部会を開催いたしまして、諮問、答申の上、決定する予定でございます。

 単価の十一円八十五銭をどうするかということについて、伊東委員からいろいろ御示唆をいただきました。

 酪農家の経営は、もう仲野委員も御指摘になりました、伊東委員も御指摘になりました、昨年の猛暑の影響というのは大変だったんじゃないかと思います。これが一つ大問題でございます。二つ目には、先ほど江藤委員も触れられました配合飼料価格、非常に高騰しております。それから三つ目は、伊東委員が御指摘になりましたとおり、生クリーム等向けの生乳価格が三・九円引き下げられた、こういった状況にある。片一方では、これも御指摘のように、世界の需給情勢が非常に不安定になってきている。こういった状況をすべて勘案していかなければならないんじゃないかと思っております。

 このほか、補給金単価につきましては、生産費と物価その他の経済事情、それから限度数量につきましては、生乳の生産事情、飲用牛乳及び乳製品の需給動向等を勘案いたしまして、それに加えまして、この場で今までの全委員からも御指摘を受けております津波、大震災の影響は北海道にも及んでおります。こういったこともすべて勘案いたしまして、適切に決定してまいりたいと我々は思っております。

伊東委員 その適切にはわかるわけでありますけれども、先ほどチーズの乳価のお話も出ました。今回は、新年度、六十万トン、十四円六十銭上乗せするんだ、べたづけでいくんだということで、現年度の増加分だけではない。これは一定の評価ができるわけでありますけれども、場合によってはその六十万トンが消化できないこともあり得るわけであります。

 さて、そうなると、例えば、極端に言えば、今回、チーズ向けは五十万トンしか生産できなかったということになると、十万トン分があくわけでありまして、十四億六千万、ここでまた予算が浮いてくる話になるわけであります。

 これは、その当時のお考えと、今、東日本大震災後の考え方ではちょっと違うのではないかという気がしてなりません。さらにはまた、円がこれだけ高くなってまいります。そうすると、また輸入品が有利に作用するということもあるわけでありまして、乳製品が安く大量に入ってくる可能性もこれまた出てくるわけであります。

 震災後の話でありますから、チーズに充てられた予算の対応につきましても、私は、今後柔軟に対応すべきではないかという気がしてならないわけであります。ぜひ、この六十万トン分の八十八億という予算の将来の使い方について、画一的、硬直化したものではなく、酪農全体の、乳価全体のことを考えながらこれを消化すべき、このように思うところでもあります。

 これにつきまして、もう一度ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。

篠原副大臣 伊東委員御指摘のとおり、生乳の生産量は昨年の猛暑によりまして大分落ち込んでおります。いまだ回復しておりません。したがいまして、チーズ向けの生乳六十万トンというのは過大で、とても消化できないのではないかという声があることは十分承知しております。

 しかし、チーズ向けの需要というのは、二十三年度も伸びは期待できるのではないかと私は思います。どうなるかわかりませんけれども、とりあえずは、我々は、チーズの需要が拡大する、チーズ向けの生乳の供給拡大、これに全力を挙げていくべきではないかと思っております。

伊東委員 私は、今回の災害に乗じてのような話をする気は全くありません。しかし、恐らくこの大震災によって、そうした生乳の需給というのがいろいろ大きな変化があるのではないかという気がしてならないわけであります。

 そうしたことも勘案して、農水省予算の中で、特に加工乳あるいはまたチーズ向け等々についての予算の、もう少し柔軟なる対応が今回はあってもよいのではないかという気がしてなりません。どうか、ぜひお考えをいただきたいというふうに思います。

 またもう一方、限度数量の問題が先ほども指摘をされたところであります。これも毎年減らされてきて、百九十五万トンが今年度百八十五万トンになっているわけであります。これも減らされ続けるということは、本当に酪農家にとって生産意欲の減少というのが極めて大きなものになるわけであります。

 加えて、TPP、EPAの交渉によっては自分たちの将来はもうないのではないか、そういう切迫した思いが特に酪農家の皆さんには強くありまして、これは、まさに後継者にこれから譲ろうとするその親にとっても、あるいは、後継者が今いないので、だれか若手を連れてきて新しい担い手を育ててこの事業を引き継ごうとする、そういう農家にとっても、このTPPの問題というのは、将来、先行き、非常に暗い大きな雲や霧に感じて見通しがつかない、あるいは本当にこんなに借金して大丈夫なんだろうかという思いをしているわけであります。

 私は、大型化をした農場に行って、三億も四億も五億もかけて、三軒四軒のところが集まって農業生産法人をつくり、近代化し、大型化し、ロボット搾乳機を導入して、そして経営の安定、合理化のためにといって頑張っている若手の方をたくさん見てまいりました。そういう人たちにとってみれば、まさに、このTPPの関税廃止というのは、本当に自分たちの将来が真っ暗になって、途方もない借金をどうやって返そうか、そんな思いになっているわけであります。

 こうしたときに、この限度数量も同じことが言えるわけでありまして、どうか、農家が本当にいい牛乳をどんどん搾れるような、国としての制度をぜひおつくりいただきたいというふうに思うところであります。限度数量につきまして、もう一度お答えをいただきたい、このように思います。

篠原副大臣 限度数量についても、先ほどお答えしましたとおりでございまして、客観的な情勢がございますので、それを勘案しまして、酪農家の皆さんが希望を失わないような形で決めてまいりたいと思っております。

伊東委員 きょうは時間が余りないので、要点だけお聞きいたしますけれども、先ほどから配合飼料の高騰の話が出てまいりました。去年から、特に自給飼料をふやしてというお話が随分出ておりまして、それに向けた自給飼料の目標、これも食料・農業・農村計画の中で、平成三十二年度には二六%から三八%、ここに一二%自給率をふやす、こうなっているわけであります。

 飼料をふやすということはどういうことかといいますと、もちろん、デントコーンを植える、あるいはまた草地の改良を行う、栄養価の高い、いい飼料をたくさん自分がつくるということであります。

 しかし、残念ながら、今の農水省のやっていることはこれと全く逆行することであります。といいますのは、御案内のとおり、まさに、土地改良あるいはまた農業の基盤整備事業が、大幅に予算が削られたことによるものであります。

 例えば、酪農家が自分の牧草地、ここを今まで平均七、八年に一回、草地更新として土地改良をやって、そして新しい、栄養価の高い、いい草が生えるようにやってまいりました。ところが、この改良事業予算が大幅に減ってまいりますと、私もこの間、ずっと農家を回って聞いてみたのでありますが、最近、平均十二、三年、長いところでは二十年も草地更新ができない。草地更新ができない畑はどういうことになっているかというと、そこからとれる作物は非常に栄養価が落ちてくる、あるいはほかの草もまじってくる、そういう話になってくるわけであります。

 しかし、これもやはり草地更新事業がしっかりなされていないと、少なくても七、八年、十年以内に一度は土を掘り返してやらないとできない。しかし、残念ながら、予算がなくて、ほとんど最近はさらにその年数が延びていく、こういうことになっているわけであります。

 ぜひ、この草地改良予算、農業の整備予算、この整備予算をふやして、食料自給率の向上に努めてもらいたい、こう思うところでありますけれども、こうした考え方は農水省の中では話をされていないのかどうか、一度お聞かせいただきたいと思います。

篠原副大臣 自給率の向上には、飼料作物の自給率の向上というのが不可欠でございます。したがいまして、飼料生産基盤に立脚した足腰の強い畜産経営を実現するために、我々はいろいろな事業をしてきているのではないかと思います。

 今先生御指摘の点でございますけれども、草地整備や草地更新のためのTMRセンター、このハード整備事業による生産性の向上につきましては、引き続き十分な予算を手当てしているはずでございます。それからほかに、コントラクター等の飼料生産組織の育成、それからエコフィードの利用拡大等、自給飼料生産の拡大に向けた取り組みを着実に実施しております。

 飼料自給率の目標を先ほども二六%から三八%と、ほかの作物の自給率の向上と比べて非常に意欲的な数字を、いろいろなところで農林水産省、我々は示しているのではないかと思います。二十三年度は、公共、非公共、いろいろな、予算の編成でも何%上がったというのがありますけれども、私はこの分野につきましてはそれなりに予算の手当てをしているのではないかと思っております。

伊東委員 おととしでありましたか、自民党政権下で強い農業づくり予算は二百四十億、そして去年、それが百億に減り、新年度は三十億にこれが減っていくわけであります。TMRなどというのはもうできないと言われているわけでありまして、ほかの麦乾施設とか共同施設の金があるじゃないかという話がありますけれども、それはまさに戸別所得補償制度の転作奨励のために、ほかの大型施設をつくる場合、適用させるためにやっているような話でありまして、従来のTMRセンターやコントラクター、こうした共同事業の予算を大幅に減らしていることだけは事実なわけです。そしてまたさらに、土地改良や基盤整備事業は、例えば私どもや仲野先生の地元でありますけれども、八割も予算を減らされているんですよ。

 ですから、ちゃんとやっていますなんという話ではなくて、必要なところに必要なことをしていかないと、自給率を向上させるといったって、現実には予算もついていなければ、ましてや、こうやって減らそうとしているような話になっているわけでありまして、こうしたことを踏まえて、やはり酪農の本来のあり方をしっかりつくっていただきたいし、そしてそのためにも、これは生産者補給金でありますけれども、補給金の単価の引き上げ、あるいは限度数量、さらにはまたチーズ向け乳価等々含めて、やはり農家の意欲をかき立て、そして農家を守り抜くような政策をぜひとっていただきたい。

 最後にもう一度、この点について整合性のあるお答えをいただきたいと思います。

篠原副大臣 予算編成の折には、よく選択と集中という言葉が使われます。我々、飼料穀物の自給率の向上というのは非常に大事な点だと考えておりますので、すべてについて予算をくまなく割り振るということはできませんけれども、少なくともTMRセンターにつきましては、高齢者がだんだんふえてきている、ですから、飼料生産の外部化というのが必要でございます。そういった観点から、この点につきましては、新しい事業を拡充するなどいたしまして重点的な配分をしてまいっております。

 これでも不十分だという御指摘がございましたので、再来年度におきましてはもっとこの分野を拡充してまいりたいと思っております。

伊東委員 では、時間ですので終わります。ありがとうございました。

山田委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。これから順次質問させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 初めに、私の方からも、このたびの震災、津波で亡くなられた皆様、また御家族の方々に心から哀悼の意を表させていただきますとともに、いまだ避難所で暮らしておられる方々、一日も早くもとの生活に戻れますことを心から祈念申し上げさせていただきます。

 それでは、早速質問に入らせていただきますけれども、まず一つ目は、このたびの大震災が酪農業に与える影響についてということで、お伺いいたします。

 まず、この大震災によって、被災地の東北、また関東の酪農地帯には大変甚大な被害がある。そして同時に、今後、全国の酪農経営にどのような影響が出てくるのかということを懸念しているところでございまして、そこで、まずは東北、関東の酪農家、それから乳業メーカーへの早急な支援を求めていきたい、このように思っております。そのためにも、現状を正確に把握することが重要であろう、こう考えております。

 例えば、福島の原発の問題もあります。それから、震災で乳業メーカーが、牛乳の処理施設ですとか、あるいは容器の紙パックの工場の問題、打撃を受けている。あわせて、当然ですけれども、燃料不足、それからいわゆる計画停電で生乳の処理がなかなかできないという状況だと思うんですけれども、特に、集乳システムが破壊されているために、東北あるいは北関東を中心に、生産地が危機的な状況に陥っている、このように伺っております。

 先ほど来質疑の中にもありましたけれども、牛を扱っているわけですから、当然、集乳システムが破壊された以上、搾乳した牛乳はどうするのか。これが消費につながっていかないとなりますと、廃棄せざるを得ないという状況です。一部報道にもありますけれども、今回の被災地における牛乳の廃棄量がどのくらいあると見込んでいるのか、またそれによる被害額は現状どの程度というふうにお考えか、見解をまず伺いたいと思います。

吉田(公)大臣政務官 このたびの震災によりまして、稼働できない乳業工場が多く発生しておりまして、出荷できない生乳が現状では廃棄をされているという状況でございます。

 特に、東北地方につきましては、岩手県、宮城県、福島県の乳業工場において生産施設に壊滅的な破損等が発生いたしまして、現時点でも生乳の三割強しか処理されるようになっておりません。

 関東地方につきましては、茨城県、千葉県の工場の生産施設に破損等が発生いたしておりますが、生乳の約六割が処理される程度となっております。

稲津委員 一部報道によりますと、被災地の廃棄量は毎日一千トンを大きく上回る見込みだ、それから被害額も一日一億円を大幅に超す計算だ、こういうことも出ておりまして、ただいま御答弁いただきましたけれども、まずは、この正確な状況把握というのをやっていただきたい、このように思っております。

 これも先ほど御質疑にありましたけれども、福島の放射能漏れによる汚染のことです。この補償をどうするのかということ。先ほどの御答弁では、東京電力がまず第一義的に対応すべきだという話がありました。しかし、果たしてそれで本当に大丈夫なんだろうかということが懸念されると思います。私は、ある意味、ここは本当にしっかりした補償をしなければいけない、このように思う立場から、改めてこの点についての御答弁をいただきたいと思います。

篠原副大臣 何回もお答えしておりますけれども、原子力損害賠償に関する法律に基づきまして、一義的には東京電力、その上で賄い切れない場合は政府が適切に補償をしてまいることになっております。

稲津委員 これは何度お伺いしても同じ答弁でございますので、ぜひ万全の支援策を講じていただきたいということを私の方からも要望させていただきます。

 次に移りますけれども、こういう状況の中で、先ほど私も触れましたけれども、牛乳用の紙パックの資材の不足ということが非常に懸念されている。東北、北関東にある紙パックの製造工場が地震の被害を受けて一部稼働していないという話も伺っております。業界全体の供給量が通常よりも半分ぐらいに低下しているんじゃないか、こういうことも一部聞いているんですけれども、農水省として、こうした状況についてどの程度認識して、どのような対策を講じようとしているのか、伺います。

篠原副大臣 委員御指摘のとおりでございます。これは紙パックだけじゃないと思います。製油所もそうですけれども、効率化を考えた場合、一つのところに集中してというのが手段として考えられるわけでして、いろいろなものがそうなっております。

 紙パック工場も、東日本の主要な六紙パック工場のうち、集中しておるんですが、そのうち四工場が茨城県と埼玉県にございまして、これが被害を受けております。相当大きな工場ばかりでございまして、西日本を含めましても、一時は通常の五〇%まで紙パックの供給が下がったというふうに聞いております。

 こういったことですので、この復旧に向けまして、我々いろいろ手当てを講じております。幸い、今のところは、茨城県の大きな一工場を除き、製造を再開しておりまして、三月二十二日現在、業界全体の供給量は平常時の六〇%まで回復しております。

 乳業メーカーもこれにはちゃんと対応してくれております。容器不足に対応いたしまして、大きな紙パックの方を多く生産するというような手当てをしていただいております。

 したがいまして、国といたしましては、メーカーに対しまして、製品の種類をそういった大きな紙パックで済むようなものに絞り込むように要請しております。それから、容器包装資材等が食品産業に対して行き渡るように、経済産業省に対して強く要請しているところでございます。

稲津委員 かなり改善しつつあるというお話でございましたので、ぜひ早急な対応もお願いしたいと思うんです。

 これに関連して一つお伺いしたいのは、LL牛乳のことなんですね。これも特殊な紙パックになるんですけれども、例えば、一つの提案として、東北地方の酪農家の方々は、今、生産しても廃棄せざるを得ないという状況にある中で、これを早急に集乳して、例えばLL牛乳に振りかえていくとか、そういうことも考え方としては一つあるのかなと思うんです。

 この点については、例えば東北の被災している酪農家支援に対する考え方として、どういうことが考えられるのかな、LLについてはどのような御意見を持っているか、この点について見解を伺いたいと思います。

篠原副大臣 委員の御提案でございますけれども、物流等のことを考えますと、一気にはなかなか無理なのではないかと思います。

稲津委員 これは、関東地方の生乳を集めて保管するいわゆるクーラーステーションのことなんですけれども、ここがもうほぼ満杯になっている。このまま東北地方から一部もし入ってきても、例えば五分の一ぐらいは廃棄、ここでも、ステーションでも廃棄せざるを得ない状況になるかもしれない、こういうことがあります。

 私も、LL牛乳を生産する方に振りかえたらどうかというのは非常に無理があるというのは百も承知で聞いているんですけれども、例えば、考え方として、産地で牛乳を集荷、集乳して、それを簡易な方法で滅菌して、そして被災している方々のところにお渡しをする。それを例えば政府が買い上げるとか、そのくらい大胆なことをやらないと、恐らく東北の酪農家の方々はもう壊滅的な状況になってしまうだろう、こう懸念するわけです。

 したがいまして、これは質問いたしませんけれども、ぜひそのような対応も含めて、早急に支援策を講じるべき、このことを提言させていただきたいと思います。

 時間も参りましたので、加工原料乳生産者補給金制度について、まとめてお伺いしたいと思います。

 特に北海道のことを申し上げますと、昨年は、猛暑、その影響で、人工授精の定着率も低かった、初妊牛の価格も高騰した。こういう状況の中で、一段と酪農経営は厳しい状況にさらされている、このことをどのように認識しているのか。それから、補給金の単価十一円八十五銭、昨年これは据え置きでしたね。こういう状況を考えると、単価は現行以上に引き上げるべき。あわせて、限度数量も、これ以上の削減は、してしまえばもう生産農家は本当に意欲を失ってしまう。

 このことを私は申し上げたいと思うんですけれども、三点、簡潔に御答弁いただければと思います。ぜひ前向きな御答弁をください。

篠原副大臣 これも委員御指摘のとおりでございまして、いろいろ酪農家の経営は非常に厳しくなっております。

 ほかの委員の先生方も御指摘になりましたけれども、飲用牛乳の需要が減少しております。乳価も、二十一年度には値上げされたものの、特に北海道においては二十二年度に入ってから前年を下回っておりますので、酪農経営は非常に厳しいと思っております。この認識は、何回も答弁させていただいておりますけれども、私は皆様方と変わりありません。

 そういったことを勘案して、補給金の単価、限度数量をきちんと決めてまいりたいと思っております。

稲津委員 最後にもう一問伺いたいと思いますけれども、チーズ向けの生乳供給安定事業についてです。

 一つは、二十二年度の国産チーズ供給拡大対策事業、これは拡大部分のみの奨励金交付だったのに比べると、今回のこの事業については、チーズ向けの生乳の供給量に応じて一律の助成金を受けられるということ。これは、一定の評価はさせていただきたいと思うんです。

 そこで伺うんですが、この二十二年度の拡大部分の奨励金はキログラム当たり幾らだったのか。そして、今回の助成金は十四円六十銭ということですけれども、この金額にした根拠。それから、もう一点、果たしてこの十四円六十銭の金額というのが妥当なのかどうか、これで本当にチーズ向けの供給拡大効果が見込めるのか、こういうことが懸念されるわけでございまして、ぜひ酪農家の生産意欲を引き出せるような対策を講じるべきという視点から、まとめてこの三点、伺わせていただいて、質問を終わりたいと思います。

篠原副大臣 チーズ助成金単価の十四・六円の根拠でございますけれども、生産者の生乳販売価格、生産費、それから輸入チーズの原料価格、こういったことを総合的に勘案して、酪農家が安定して経営ができるようにということで決めさせていただいております。

 この助成の方式の変更でございますけれども、先ほど一定の評価はしているという評価をいただきましたけれども、生産者サイドの皆さんも、そういった評価をいただいております。それから、乳業メーカーサイドからも、安心してチーズ生産に取り組めるというような評価を得ておりまして、これは高ければ高いほどいいというのは私はわかりますけれども、一年目の単価としてはそれなりに評価いただいているのではないかと思っております。

稲津委員 終わります。

山田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 私は、今回の野菜、原乳の出荷停止についてお伺いをいたしたいと思います。

 原子力災害対策特別措置法に基づいて、国内で生産された農畜産物の出荷制限指示が出たのは今回が初めてでありますが、このことについて、この出荷停止を指示した根拠、この数字があると思いますけれども、これは、どこのだれがどういうことでデータを集めて、どういう基準とか根拠で決めたのか、お答えをまずお願いいたしたいと思います。

梅田政府参考人 食品衛生法における暫定規制値でございます。三月十七日付で自治体向けに示しました暫定規制値でございますが、これは、原子力安全委員会が定める飲食物摂取制限の指標値を用いて暫定的に設定したものでございます。

 原子力安全委員会が定める指標値につきましては、国際放射線防護委員会、ICRPが勧告した放射線防護の基準をもとに、我が国における食品の摂取量等を考慮して、食品カテゴリーごとに定められたものと承知しております。

石田(祝)委員 ここで、暫定値なんですね。なぜこれは暫定になっているんですか。要するに、食品安全委員会を通していないわけでしょう。結局、リスクを評価する食品安全委員会にかけずにやっているわけですね。ですから、ずっと暫定になっているわけです。

 しかし、この数値というのは、きのう、きょう決まった数字じゃないですよね。これは一体いつ決まったんですか。今まで食品安全委員会にかける時間がなかったんですか。ちょっと答えてください。

梅田政府参考人 指標については、原子力安全委員会が定められたものであり、私どもが持っておりますのでは、これは平成十二年四月十四日、第三十九回原子力発電所等周辺防災対策専門部会の資料によりまして、飲食物摂取制限に関する指標についてという項がございまして、平成十二年の段階でつくられているものと承知しております。

 そして、この値につきまして、各自治体もこの指標に基づき防災計画を定めるなどしておるところから、今回、暫定規制値の参考としたものでございます。

石田(祝)委員 今御答弁があったように、今回初めて出荷停止を指示したという数値のもとは、もう十年以上前に決められたもので、食品衛生法上にそれを採用すると。しかし、そこで安全委員会の審議とかを全然経ていないわけですね。これがつい最近決まったということであればわかりますけれども、十年以上前の数字があって、それを今回にわかに使用した、こういうことですから暫定という言葉がついているわけなんですね。これは、私は、もっと厚生労働省としてちゃんとやるべきではなかったのかと。

 ですから、もともと食品衛生法の適用もお考えになったということを聞きましたけれども、そうじゃなくて、今回は原子力災害対策特例措置法、いわゆる県域で指定をする、こういうことのために若干おくれたのではないか、いろいろなことが後手後手に回ったんじゃないかというふうに思います。

 基準は今お答えいただいたとおりでありますけれども、その基準を超えているかどうかということのデータはどこがとったんですか。ちょっとお答えいただけますか。

梅田政府参考人 厚生労働省では、各県において測定されたデータにつきまして逐次発表しておりますが、各県の衛生部局、農林部局、原子力担当部局等々で測定されたデータにつきまして、今厚生労働省に集約することになっておりますので、それを取りまとめて発表しております。

石田(祝)委員 それは私が聞いたことと若干違いますけれども、きょうは、それ以上申し上げません。

 それで、野菜と原乳の出荷を停止して、それぞれについては理由があって、総理が初めて公示で指示をした、こういうことですけれども、現実問題として、指示をされた作物以外のものにも大きな影響が出てきている。いわゆる風評被害ですね。このことについてお聞きをしたいと思います。

 風評被害について、だれがこの責任をとってくれるのか。農家にとっては、出荷しようと思っていたときに、何々県産だからだめだと納入を拒否される。こういうこともあるということが、農林水産省の調査であったということも、きのうあたりの新聞には出ております。

 この損害賠償というのは、だれがどういうふうに支払ってくれるんですか。そして、直接的と申し上げるんでしょうか、こういう指示があった作物以外のものについてもしっかりと原因者が責任を持ってくれるのか、このことはいかがでしょうか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のございました風評被害に関しましては、それが生じないように、関係省庁を初めといたしまして、関係機関あるいは関係者が客観的かつ正確な情報を国民に伝えるように努める必要があると考えてございます。

 原子力損害賠償法におきましては、一般論として、事故との相当因果関係が認められる損害につきましては、原子力損害に当たるものとして適切な補償を行うことになってございます。したがいまして、風評被害に関しましても、このような考え方に照らして判断すべきものと考えてございます。

 いずれにしましても、一義的には東京電力が損害賠償責任を負うことになりますので、政府としても、東京電力がその責任を全うできるように連携協力して、被害者の方々が適切な補償を受けられるように万全を期してまいりたいと思ってございます。

石田(祝)委員 今の御答弁だと、風評被害もちゃんとそれは補償される、こういう趣旨の御答弁ですね、だれが聞いても。これはぜひしっかりとお願いしたいと思います。

 現実には……(発言する者あり)そういうお声がありますから、私が申し上げたこと、風評被害も損害賠償のカテゴリーに入るということでよろしいか、イエスかノーかだけで、早く出てきて答えてください。時間がないから。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきましては、一般論として、原子力損害賠償法では、事故との相当因果関係が認められるものにつきましては、損害に当たるものとして適切な補償を行うことになってございます。

 以上でございます。

石田(祝)委員 一般論で聞いているわけじゃないので。総理が国内の農畜産物で初めての指示をしたわけですから、それはやはりしっかりと補償しないと、今回のことが前例になったら、いわゆる風評被害で困った人に対しては何もない、こういうことになりますよ。

 農林水産省として、篠原副大臣、これはどうですか。やはり農林水産省もバックアップして、そうだということでやっていただかなきゃいけないと思いますが、副大臣、いかがですか。

篠原副大臣 法律は、先刻から御答弁申し上げております原子力損害賠償法に基づいております。

 しかしながら、この関係で一番最初に被害を受けるのは生産者ということですので、次に消費者が影響を受けるわけでございますけれども、この数日間、週末、ずっとでございますけれども、厚生労働省あるいは官邸等、いろいろ協議いたしまして、補償等についても議論を重ねてきております。

 それで、その得られた結果が、今のところ、出荷制限を明らかにしたところについては確実に補償していこう、それ以外のものについていろいろ派生してくることが予想されますので、それについてはその都度対応していくということで検討を進めております。

石田(祝)委員 不十分な御答弁だと私は思いますよ。

 これは、農家の方が丹精込めてつくって、もうそろそろ出せる、そういうときになって、ある意味では降ってわいたような話ですよ。それに対してはやはり、消費者、生産者の両方の立場はもちろんありますけれども、今回は生産者に何の責任もないじゃないですか。それはしっかりと補償していく、こういうことでぜひお願いをしたいと思います。

 では、短く答えてください。

篠原副大臣 因果関係が明らかになった場合には確実に補償していくべきではないかと思っておりまして、そういった方向で検討しております。

石田(祝)委員 因果関係、因果関係と言いますけれども、化学みたいに実験してこうなりましたというような話じゃないんですよ。風評なんというのは、どこが、だれが言い出したのか、それをどう受けとめられたのかというのは科学的にやりようがないわけですから、そこをしっかりと取り組んでいく、そういう声を聞いてどうするかというのが政治の責任ですよ。因果関係だけでやるんだったら、要らないじゃないですか。

 では、このことについて、さらに別の角度から聞きます。

 これは官房長官も記者会見で言っていますけれども、一年間、毎日食べても大丈夫な量なんだ、こういうことをよくおっしゃいますよね。一年間、毎日食べても大丈夫な量だと言うと、みんなはそうかなと思うけれども、では、一体どれだけ食べるのか、このことについて全然明確になっておりません。

 例えばホウレンソウまた原乳、一年間、毎日続けても大丈夫だと言われている、その一日の量というのは一体どのぐらいですか。これをはっきりアナウンスした方が私はいいと思いますが、お答えをお願いします。

都筑政府参考人 原子力安全委員会で定めております飲食物摂取制限に関する指標におきましては……(石田(祝)委員「一日何グラムか、ぱっと言ってくれればいいんですよ」と呼ぶ)はい、了解しました。

 その前提といたしましては、牛乳におきましては、成人が二百cc、幼児が五百cc、それから乳幼児は六百ccというふうに前提を置いて計算をさせていただいております。

 あと、野菜類につきましては、成人が六百グラム、幼児が二百五十グラム、それから乳幼児が百五グラムという仮定を置いて計算しているところでございます。

石田(祝)委員 ですから、これは官房長官に言わなきゃいけないと思いますけれども、記者会見をして一年間食べ続けてもいいなんとそのまま言っても、みんなは、一体どのぐらい食べることを前提にしているのかわからないわけですよ。今わかったのは、お答えは六百グラムですよ。ホウレンソウ六百グラムを、一年間、毎日食べ続けるというのはできませんよね。

 ですから、実際どうなのかというところに、もうちょっと記者会見等でも、私たちもそうですけれども、政府の皆さんもぜひお気をつけて発表していただきたいと思います。

 ちょっと時間の関係もありますので、原子力損害賠償法の第三条と出荷制限解除、このことについて、これからどういう根拠で出荷制限を解除するのか、続けてお答えをお願いいたします。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力損害の賠償に関する法律第三条につきましては、そもそも原子力損害賠償制度というものが、原子力事業者の無過失責任、責任の集中、無限責任の原則をもって成り立っている制度でございまして、原子力損害が発生した場合には、その被害者に対する賠償をする責を負うのは原子力事業者ということになってございます。

 この制度のもとで、原子力損害が発生した際に迅速かつ確実に損害賠償を履行できるように、この原子力損害賠償法におきまして、原子力事業者に対しまして、一般的な事故については民間の保険会社、それから地震とか津波等によるものにつきましては国が引き受け手となる一種の保険契約を結ぶことを強制しているものでございます。

 以上でございます。

篠原副大臣 出荷制限の解除についてでございますけれども、今、出荷の制限は、生鮮野菜につきましては県別表示をしておりますので、数カ所、まあ何カ所とかいうものまでは緊急事態というのはきちんと決めてありませんけれども、調査をいたしております。それによって出荷制限する。

 数値が下がっていった場合は、原則として県別に、基準値よりも下がった場合は徐々に解除してまいりたいと思っております。

石田(祝)委員 時間が来ておりますから、最後に一言だけ申し上げます。

 今回の出荷停止の指示は、いろいろな大きな影響が出てきました。ですから、私が申し上げたいのは、というよりもお願いしたいのは、安全な野菜については安全だということを言ってほしいんですよ。これが危ないと言われたら、ほかの調べたものについても、危ないと言われていないんだけれども、どうなのかなと思ったら控えてしまいますから。また、その県の表示を見ただけで買わない、こういうことになりますので、これについては安全なものは安全だということを逆に大きく言っていただきたい。

 そして、今回の震災の被害については、一言だけ申し上げますと、思わぬところにもあります。例えば、私のふるさとの高知県の須崎市というところも、養殖施設が全滅いたしました。そういう離れたところにもありますので、農林水産省としては、全国のそういう農業、水産業、また森林の被害等にもぜひ目配りをお願いいたしたいと思います。

 消費者庁の皆さん、ちょっときょうは質問できませんでしたので、またの機会にさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社会民主党の吉泉秀男です。

 巨大災害が発生をしてから十三日目を迎えております。いまだに行方のわからない家族を捜し回っている被災者、途方に暮れ、海岸端に手を合わす被災者。電気もない、水もない、こういう中で生活を強いられている生活者なり、放射能汚染を心配し、町ごと避難をする、そして不便な生活を余儀なくされている方々。東北出身の一人として、心が痛みます。他界された多くの方々に心から哀悼の意を表して、質問に入らせていただきます。

 まず、二十日の日に、ホウレンソウを中心として暫定基準を超えたことが発表されてから、それは食べても安全だ、安心だ、こういう政府の見解が出され、そして、次の日の二十一日は出荷停止という措置がなされ、二十二日はそれぞれJA等を含めて要望書も私どもに出されたわけでございます。

 この措置に対してそれぞれ、評価をする、そういう人方がいる一方、この措置がどういう経過の中でやられたのか、そして、今石田先生の方からもお話がありましたように、国民に対して理解が、なかなかわからない、ましてや生産者の立場から見ると、今その措置に対して大変怒りというものもやはり出てきている、そういう状況がございます。

 そんな面で、二十日から一日たって出荷停止まで、そういう措置をしたその経過、さらにはその根拠、このことをまずお伺いさせていただきます。

    〔委員長退席、津島委員長代理着席〕

梅田政府参考人 三月十一日の福島第一原子力発電所災害の発生を踏まえまして、厚生労働省といたしましては、食品の安全性を確保する観点から、三月十七日、原子力安全委員会により示されました飲食物摂取制限に関する指標値を、食品衛生法に基づく暫定規制値といたしまして都道府県等に通知したところでございます。

 その結果、三月二十一日までに百八十五件の検査が実施され、四十四件の暫定規制値を超える食品が発見されました。同日、原子力災害対策特別措置法に基づき、原子力災害対策本部長である内閣総理大臣から、関係自治体に対し、一定の食品の出荷制限が指示されたところでございます。

 今回の指示の品目や範囲を決定するに当たっては、これまで取得したデータをもとに、作物の形態や暫定規制値を超えた地点の広がりなどを踏まえ、原子力安全委員会からの助言もいただきながら決定されたと私どもでは承知しております。

吉泉委員 私は、きのうの段階から、この質問に対して、それぞれだれが答弁していただけるのかなというふうに思っておりました。当初は、経産省、それに消費者庁、さらには厚労省、農林省、内閣府、いろいろなところの中で、出荷そのものを見合わせていくという見解を出した。それにだれが責任を持つのか、このことに一番関心があったものですから。

 そのことは、なぜかといったらば、やはりその原因が放射能汚染なわけでございますし、そのところがまだ、どこまでどういうふうに広がっているのかわからない。こういう状況の中において、今、二日もたたないうちに出された。このことに対して、石田委員からも出されたんですけれども、やはり国民の理解もなかなか得られない、こういうものも一つあるんだろうというふうにも思っております。

 そんな面で、これから土壌汚染の検査なり、さらには、食品安全委員会等の方に諮問とかなされているようでございますけれども、この点について、解除に向けた、さらには、放射能の汚染等の広がり、こういったところについては一定の見解がある程度出されるんだろうというふうに思うんですけれども、これからの進め方がどうなっていくのか、このことについてお伺いします。

    〔津島委員長代理退席、委員長着席〕

梅田政府参考人 この解除のあり方については、今後、対象地区のモニタリングデータ等を見ながら、それも判断していくことになると私どもの大塚副大臣も今まで申し上げております。解除の法的権限自体は、今回の指示の権限となっている特別措置法に基づくわけでございます。

 それで、どういう条件が整えばその法的権限のもとで解除をすることになるかという部分は、初めての出来事ですので、そのこと自身も検討課題だと考えられます。

 今御質問のようなことを含めて、本部の方で検討されていくと承知しております。

吉泉委員 きのうの段階で、食品安全委員会は、政府の諮問を受けて、これの放射能規制値の評価、それを一週間ぐらいで出していくというふうな新聞報道もなされているわけでございます。

 そんなところを含めて、今の暫定基準値、このところがいわゆる安全の前提というふうに今なっていますけれども、この基準値のところがもう少し変わるというふうになっていった場合には、その影響というものが出てくるんでしょう、その出荷停止なりいろいろな措置に対して。この委員会での結論を急がせて、そして、それをどういうふうにこれから生産者に対して、国民に対して示していくのか、そのことについてはどういう考え方でしょうか。

梅田政府参考人 食品衛生法におけます恒久的な基準につきましては、食品安全委員会のリスク評価を得て設定することになります。これは議員の御指摘のとおりでございます。これが出た時点で恒久的な規制値ができるわけでございますので、それに従って、我々厚生労働省としては、きちんとしたデータを集約したいと考えております。

 繰り返しになりますが、この出荷停止等の判断につきましては、原子力対策本部においてどう判断されるかということであると承知しております。

吉泉委員 それぞれ生産者は一生懸命に、有機なり安全なものをつくっているわけですね、努力をしているわけです。そういう生産者の気持ち、そのことも踏まえながら、これだけの措置をする場合に、やはり、消費者庁、農林省、それから厚労省なり、いろいろなところと横の連携もきちっとしていただきながら見解を出していただくよう、お願いをまずさせていただきます、今後の関係について。ひとつよろしくお願いを申し上げます。

 それで、今回の震災によって、特に東北は大変な状況でございます。燃料不足なりありますけれども、震災の前から畜産農家のところに家畜の飼料が入ってこない、こういう状況に今なっていまして、悲鳴が上がっているわけでございますけれども、飼料の供給、これが現状どうなっているのか。そしてまた、今本当に、この飼料用トウモロコシを含めて不足をしているのか。この辺の飼料の状況についてお伺いさせていただきます。

篠原副大臣 東北地方の飼料製造施設は、飼料が外国から輸入されております関係上、岸壁の近くにほとんどありまして、すべてが被害をこうむっております。こうしたことから、東北地方の飼料供給は非常に逼迫した状況になりました。

 農林水産省といたしましては、食料の次に、やはり家畜のえさでございますので、すぐ関係方面に折衝いたしました。いろいろ手を打ってきております。

 どういうことをしたかと申し上げますと、食料運搬車は緊急車両ということで高速道路を走らせていただくようにいたしました。それに続きまして、数日おくれましたけれども、飼料運搬車も同じように扱っていただくことにいたしました。

 それから、そもそも飼料は、東北地方はもう被害に遭っておりますので、九州や北海道、志布志湾あるいは苫小牧、そちらの方から内航船を使ったりトラック輸送したりして配送するように、そして、そのガソリン等は優先して支給していただくようにということを経済産業省等に要請いたしております。これが一つでございます。

 それから、四十万トンあります備蓄の飼料穀物でございますけれども、これを無償、無担保で貸し付けるということ、こういったことで対応しております。

 こういった努力が結びまして、配合飼料メーカーの努力もございます、現在は、震災前の四割程度まで供給が回復してきているところでございます。

吉泉委員 今、四割ということでお聞きをいたしました。特に、基地であります石巻、八戸、花巻、ここのところが、相当の、もう壊滅状態に近い、そういう状況にまで置かれている。

 今、四割というふうな状況でございますけれども、平常時に戻るような状況はいつごろなんですか。

篠原副大臣 完全に戻るには半年ぐらいかかると伺っております。

吉泉委員 半年というふうなことになると、生産者には、養豚から含め、肥育なり、さらには鶏、いろいろなところの生産者がいるわけでございますけれども、それぞれえさが入ってこない。今、いろいろな動き方を農協さんなりがやっているわけですけれども、やはり三分の一、四分の一しか確保できないとか、そういう状況の中で悲鳴が上がっているわけですね。

 それを、もう半年以上もかかるというふうな今の副大臣の答弁ですけれども、ちょっと本当なのかよというふうに、もう一度お伺いします。

篠原副大臣 半年というのは、完全にもとと同じになるには、道路事情等も勘案した場合、半年ぐらいかかってしまうのではないかということでございます。

 ただいまのところは、先ほど申し上げました、志布志湾から、今、図がこうやってあるわけでございますけれども、一万一千四百五十トンほど、もう定期的に運ぶルートができております。吉泉委員の御地元の近くですが、能代、秋田、酒田に参りまして、そこから道路がある。道路事情はそちらの方がつながっておりますので、そういったことを今しております。苫小牧も、苫小牧から青森に行っていただいて、そこからということで。道路事情がよくなりましたら、トラック輸送に変えたりということで事足りるような状態になっております。

 先ほど半年というのは、全く完璧に回復するにはということで申し上げました。今のところは、こういった形で、なるべく早く正常な状態に戻したいと思っております。

吉泉委員 備蓄の関係は、トウモロコシ四十万トンというふうにお聞きをしていますけれども、これは全部放出しているということでございましょうか。

篠原副大臣 すべて活用できる状況になっております。

吉泉委員 畜産農家の苦労している状況を踏まえて、今、道路なり、さらには燃料等についても少しずつ改善をしてきているわけでございますから、その面についてはそれぞれ営農に支障のないように、努力をぜひお願い申し上げさせていただきます。

 次に、災害が起きてから首都圏で、米を初めとする食料のパニックが起きたわけでございますけれども、そのことについてお伺いをさせていただきます。

 米余り現象だ、こういう認識というものが私ども少しあるわけでございますけれども、米が余っている中で米不足、こういう状況に陥った、このことについての認識を、どう思っておりますでしょうか。

篠原副大臣 今回の震災の後の緊急的な措置でございますけれども、ガソリン、灯油、重油等については各地で逼迫いたしておりますけれども、食料については、吉泉委員御指摘のとおり、ちょっと東京等の首都圏のスーパー、コンビニ等から一時、米が消えたことはございますけれども、品薄で逼迫してパニックというような事態には至っていないのではないかと思います。

吉泉委員 今回の災害で、農地なり、さらには米倉庫、これが壊されまして、そして水田もこれからそこに作付できない。こういう状況の中で、当初の米の作付目標なり、ずっとやってきたわけですけれども、今のままで、当初のまだ米が余っている、さらには米は大丈夫だ、こういう認識でございましょうか。

篠原副大臣 その点につきましては、状況がかなり変わってきているのではないかと思います。

吉泉委員 特に私ども米の生産地でございますけれども、生産者農家から見ると、今の災害の中で非常に多くの農地、田んぼがやはり作付できないだろう。そしてまた、これからどういうふうになっていくのかわからないわけです。

 放射能の関係で、土壌がやはり汚染されて作付できないんではないか、こういう心配もありながら、備蓄米との関連なんかも含めて、米余りという状況にはならないんではないか、やはり米が不足するんではないか、こういう認識を農家は持っているわけですけれども、この辺は、今副大臣の方としてはまだ大丈夫という認識をしているかどうか、その点も。

篠原副大臣 今回の津波で二万ヘクタールが塩水につかったりしておりますので、そういったことを勘案しますと、需給事情は、昨年、この年とかなり違ってくるのではないかと思います。

吉泉委員 時間が終わりましたので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

山田委員長 この際、仲野博子君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による平成二十三年度畜産物価格等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。仲野博子君。

仲野委員 民主党の仲野博子でございます。

 ただいま議題となりました決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 趣旨の説明は、案文を朗読してかえさせていただきたいと存じます。

    平成二十三年度畜産物価格等に関する件(案)

  東日本大震災により我が国の農林水産業は過去に例のない甚大な被害を受けた。一日も早い復興のため全力を尽くすべきである。

  こうした中、我が国の畜産・酪農経営は配合飼料価格の高止まりに加え、国際的な穀物需給のひっ迫を背景に今後更なる飼料価格の上昇が見込まれる。加えて昨年来の口蹄疫の発生や高病原性鳥インフルエンザの続発など、これまでにない厳しい環境下にある。

  また、平成二十三年度は畜産・酪農経営安定対策等と畜産物価格の決定が、別々に行われるという初めての年度である。

  よって政府は、畜産農家を取り巻く現状を踏まえ、畜産物の需要を喚起し、困難に直面する農家が将来を展望できる畜産・酪農政策を確立するため、平成二十三年度の畜産物価格の決定に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。

      記

 一 WTO農業交渉、EPA交渉及びTPPの検討に当たっては、平成十八年十二月の本委員会決議の「日豪EPAの交渉開始に関する件」の趣旨を踏まえ、我が国の畜産・酪農が今後とも安定的に発展できるよう、適切な国境措置等の確保に向けて、確固たる決意をもって臨むこと。

 二 酪農は、昨年の猛暑の影響を受け、生乳生産量の低下、乳質及び受胎率の低下など極めて厳しい年であった。

   東日本大震災の影響も踏まえ、今回の価格決定に当たっては、現行の生産レベルの維持はもちろん酪農家の経営努力と生産意欲を喚起する上でも、加工限度数量及び補給金単価を適切に決定すること。

 三 肉用子牛生産者補給金については、今後の飼料価格の再高騰局面を見据えて、保証基準価格及び合理化目標価格を適切に設定すること。

 四 飼料価格の再高騰局面を十分に踏まえ、指定食肉の牛肉安定価格並びに豚肉安定価格については、現行を基本に適切に決定すること。

 五 配合飼料価格安定基金については、今後の基金の発動状況等では財源の枯渇が懸念されることから、必要に応じ、国による追加財源の確保等の支援対策を措置すること。

   飼料用米、エコフィードの活用推進のための対策を充実させること。また、更なる飼料用米利用促進のため、政府所有のMA米の売渡価格を適切に決定すること。

 六 国際的な穀物相場の高騰や東日本大震災の影響により、飼料価格は生産者の経営を相当圧迫する事態が想定されることから、必要に応じ、政策価格の期中改定や追加的経営安定対策、並びに配合飼料価格安定基金の借入金の償還の繰り延べ等、肉用牛・養豚・酪農等の経営支援の対策を機動的に措置すること。

 七 食の安全と消費者の信頼の確保を図るため、加工食品と外食の原料原産地表示の義務対象の拡大を早急に検討するとともに、米国産牛肉の輸入条件については、食品安全委員会による科学的根拠に基づき慎重に対応すること。

 八 近隣諸国において深刻な状況となっている悪性家畜伝染病の国内侵入防止に係る防疫体制の強化を図ること。

  右決議する。

以上です。

 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願いを申し上げます。

山田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山田委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、ただいまの決議につきまして農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣鹿野道彦君。

鹿野国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に従いまして、最近の畜産をめぐる情勢を踏まえつつ、十分検討してまいる所存でございます。

山田委員長 お諮りいたします。

 ただいまの決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山田委員長 次に、内閣提出、森林法の一部を改正する法律案及び第百七十六回国会、高市早苗君外十六名提出、森林法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣鹿野道彦君。

    ―――――――――――――

 森林法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鹿野国務大臣 森林法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 森林は、水源の涵養や国土の保全、さらには地球温暖化の防止や生物多様性の保全等の公益的機能を有しており、国民生活に欠くことのできない重要な役割を担っております。

 森林がこのような役割を十分に果たしていくためには、持続的な森林経営の実施を通じて、森林を健全な状態に保つことが必要であります。しかしながら、我が国の森林の現状を見ると、戦後に植林された人工林が資源として利用可能な時期を迎える一方で、採算性の悪化等を背景とした森林所有者の林業活動への関心の低下により、必要な間伐等の施業が必ずしも適正に行われていない状況にあります。

 こうした中で、森林所有者がその責務を果たし、森林の有する公益的機能が十全に発揮されることとなるよう、森林所有者のいかんを問わず、また、森林所有者が不明の場合にも間伐や伐採後の再造林を確保するとともに、関係者の自発的な取り組みのもとで持続的な森林経営を確立するための措置を講ずることとし、森林・林業再生プランを法制面で具体化するものとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、無届けによる伐採が行われ、跡地の造林がなされないために、災害の発生等のおそれがある場合には、市町村長は、伐採後の造林を行わせる命令を新たに発出できるようにすることとしております。

 第二に、早急に間伐が必要な森林につき森林所有者が間伐を行わない場合に、都道府県知事の裁定により第三者に間伐を代行させる現行の制度について、森林所有者が不明の場合も含め間伐を代行し得るようにする等の拡充を行うこととしております。

 第三に、森林施業に必要な路網の設置等に際し、他人の土地に使用権を設定する手続について、土地の所有者等が不明の場合にも対応できるようにするため、所要の改善を行うこととしております。

 第四に、現行の森林施業計画について、計画の作成主体を森林所有者のほか、森林経営の委託を受けた者とするとともに、路網の整備状況等を勘案して計画の認定を行うこととするなどの見直しを行い、あわせてその名称を森林経営計画に改めることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

山田委員長 次に、提出者高市早苗君。

    ―――――――――――――

 森林法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高市議員 森林法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主な内容を御説明申し上げます。

 我が国の国土の三分の二を占める森林は、国土の保全、水源の涵養、生物多様性の保全、地球温暖化の防止等の公益的機能を有しております。戦後を中心に造林された杉、ヒノキ、カラマツ等の人工林が資源として量的に充実しつつあり、利用可能な段階を迎えているなど、豊富な資源量を誇っております。

 しかしながら、木材価格の低迷等による林業の採算性の低下、転居や相続等による所有者不明森林の存在などから、施業の集約化や路網整備等を通じた適切な管理が行われておらず、森林の有する公益的機能の発揮が危ぶまれる状況にあります。

 さらに、外国資本による我が国の森林取得の動きも報告されております。河川の上流域などの水源地域において、地元の合意がないまま森林売買が増加していけば、森林の適切な管理が一層困難となり、水資源の保全等に影響を及ぼすことが懸念されます。

 こうした現状を踏まえ、貴重な水資源や木材資源の源である森林を守り、森林の有する公益的機能を維持するため、森林所有者等の届け出の制度、伐採及び伐採後の造林の届け出をせずに伐採を行った者に対する伐採の中止及び造林の命令に係る制度の創設等を行う必要があります。

 こうした考え方のもと、自由民主党・無所属の会は、本法律案を提出することといたしました。

 以下、その主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、森林所有者等となった旨の届け出等の制度を創設することとしております。

 第二に、市町村の長は、伐採及び伐採後の造林の届け出をしなかった者の行った伐採または伐採後の造林が市町村森林整備計画に適合しないと認める場合において、森林の有する公益的機能を維持するために必要があると認めるときは、伐採の中止を命じ、または造林に必要な行為を命ずることができることとしております。

 第三に、都道府県知事または市町村の長は、造林または植栽等に係る命令をした場合において、当該命令を受けた者が当該命令に係る行為を行わず、行っても十分でなく、または行う見込みがなく、かつ、当該森林の現に有する水源涵養機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼす等のおそれがあると認められるときは、みずから当該行為の全部または一部を行うことができることとしています。

 第四に、保安林の立木を無許可で伐採した者、保安林に係る植栽命令に違反した者等の罰則について、罰金刑の上限を引き上げることとしております。

 第五に、国及び地方公共団体が講ずる措置等として、保安林の指定に係る適切な権限の行使、森林の土地に係る境界の確定のための措置、森林に関するデータベースの整備等、施業の集約化等の事業の推進、森林所有者等が不明な場合の間伐または保育に係る制度の創設等、地方公共団体が行う保安林等の買い入れに関し、必要な措置を講ずることとしております。

 第六に、この法律の施行の際、現に民有林の森林所有者等である者について、経過措置を講ずることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその主な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

山田委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十六分散会


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