衆議院

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第2号 平成23年10月26日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十三年十月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 吉田 公一君

   理事 石津 政雄君 理事 梶原 康弘君

   理事 菊池長右ェ門君 理事 京野 公子君

   理事 佐々木隆博君 理事 小里 泰弘君

   理事 宮腰 光寛君 理事 石田 祝稔君

      石田 三示君    石山 敬貴君

      今井 雅人君    打越あかし君

      大谷  啓君    笠原多見子君

      金子 健一君    桑原  功君

      空本 誠喜君    田名部匡代君

      高橋 英行君    玉木雄一郎君

      筒井 信隆君    道休誠一郎君

      富岡 芳忠君    中野渡詔子君

      仲野 博子君    野田 国義君

      福島 伸享君    松岡 広隆君

      皆吉 稲生君    森本 哲生君

      山尾志桜里君    山田 正彦君

      山本 剛正君    赤澤 亮正君

      伊東 良孝君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    小野寺五典君

      北村 誠吾君    武部  勤君

      谷川 弥一君    保利 耕輔君

      山本  拓君    西  博義君

      吉泉 秀男君    石川 知裕君

    …………………………………

   農林水産大臣       鹿野 道彦君

   内閣府副大臣       石田 勝之君

   農林水産副大臣      筒井 信隆君

   外務大臣政務官      中野  譲君

   農林水産大臣政務官    仲野 博子君

   農林水産大臣政務官    森本 哲生君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  日下部 聡君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  大杉 武博君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  川村 博司君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  松尾 剛彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 香川 剛広君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房政策評価審議官)       田中  敏君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           五嶋 賢二君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       宗像 直子君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   伊藤 哲夫君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  大谷  啓君     皆吉 稲生君

  笠原多見子君     山本 剛正君

  金子 健一君     空本 誠喜君

  富岡 芳忠君     桑原  功君

  伊東 良孝君     小野寺五典君

  江藤  拓君     赤澤 亮正君

同日

 辞任         補欠選任

  桑原  功君     富岡 芳忠君

  空本 誠喜君     金子 健一君

  皆吉 稲生君     松岡 広隆君

  山本 剛正君     笠原多見子君

  赤澤 亮正君     江藤  拓君

  小野寺五典君     伊東 良孝君

同日

 辞任         補欠選任

  松岡 広隆君     山尾志桜里君

同日

 辞任         補欠選任

  山尾志桜里君     大谷  啓君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

吉田委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りを申し上げます。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官香川剛広君、文部科学省大臣官房政策評価審議官田中敏君、経済産業省大臣官房審議官五嶋賢二君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長糟谷敏秀君及び環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長伊藤哲夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福島伸享君。

福島(伸)委員 皆さん、おはようございます。民主党・無所属クラブの福島伸享でございます。

 私、昨年、TPPに反対の先陣を切っていましたところ、農林水産委員会から外されてしまいまして、しばらく姿を隠しておりましたが、また戻ってまいりましたので、きょうは張り切って質問させていただきたいと思っております。

 去年も九月ぐらいにTPPの話が盛り上がって、ことしもしばらくお休みしていたなと思って、総理がアメリカから帰ってきた途端にTPPの議論が盛り上がるというのが実はこのTPP問題の本質ではないかと思っておりますが、きょうは、その話はあえてせずに、しかしながら、一方で、これまでずっと農業対工業という対立構造でこの問題はとらえられてまいりましたけれども、政府もようやくTPP協定交渉の分野別状況というものを明らかにいたしまして、政府調達や、あるいは医療分野、金融分野、郵政、さまざまな分野で問題があるということが明らかになっております。

 その中で、農業対工業の問題の二つに特化して議論をするというのは私の本意ではありませんけれども、格式ある農林水産委員会でございますので、本日、私は、農水分野を中心に質問させていただきたいと思っております。

 TPPの特徴というのは、ほかの自由貿易協定と違って、決定的に違うところが二点あるというふうに認識しております。一つは、あらかじめ特定の品目を除外しての交渉参加は認められないという点、もう一点は、参加交渉に当たって、すべての参加国の同意がなければ参加できないという、この二点において、これまでの自由貿易協定と異なることであるということについて、外務省の審議官がうなずいておるので、そのとおりだということだと思います。

 言ってみれば、普通の交渉というものは、いろいろなカードを持ちながら、それを出したり引っ込めたりしながらするわけでありますけれども、武器を捨てて交渉に参加しろというような極めて特殊な協定がこのTPPであるというふうに私は考えております。

 現に、カナダは、酪農製品や家禽類、鶏とか卵の供給管理制度を維持しようとしたために、アメリカやニュージーランドから、あんた来なくていいよというふうに言われて入れなかったという事実もあります。こうした事実は正しいと考えてよろしいですか。一言で答えてください。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 カナダがTPPの交渉の参加に入っていないということは、先生おっしゃるとおりでございます。

福島(伸)委員 政府の出した資料では、「センシティブ品目の扱いについては、関税の撤廃・削減の対象としない「除外」や、扱いを将来の交渉に先送りする「再協議」は原則として認めず、長期間の段階的関税撤廃というアプローチをとるべきとの考え方を示す国が多いが、各国の状況によって個別の対応を考える必要性は認めるとの考え方を示す国もあり、」として、さも除外が認められるような言いぶりをしておりますが、私はこれは極めて怪しいと思っております。

 私が知る限り、アメリカは砂糖や乳製品についての除外を求めているような報道がされておりますが、これは、今まで結んだアメリカとオーストラリアの自由貿易協定とTPPの、条約間の優先関係という議論で行われている話であって、特定品目の除外とはこれは別の議論であると私は理解しております。

 一部には、ルールメーキングに参加するためには早く交渉参加をという前のめりの声もありますが、こうした品目の除外を求めての交渉参加はほぼ認められる余地がないと考えてよろしいかどうか、その点についての認識を問います。

香川政府参考人 先生おっしゃられましたように、今、TPP交渉、九カ国、交渉参加国がございますけれども、九カ国の立場は、原則として例外のない関税撤廃ということを目標に交渉していくということでございます。

福島(伸)委員 これまで外務省が得た情報の知り得る限りで、これから日本が協定の交渉に万が一参加したとして、米や、あるいはほかの、乳製品、砂糖等の除外を求めて交渉参加を求めた場合に交渉入りさせてもらえると考えますか。その点についての認識を伺います。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 交渉に参加する際には九カ国の同意が必要でございます。九カ国の立場は、先ほど申し上げましたように、原則として例外のない関税撤廃、自由化を目指していこうということなので、それだけの高いレベルの意思を持った国が交渉に参加するということは歓迎しますけれども、あらかじめ、この品目については例外にしてほしいということについては認められないという立場だと理解しております。

福島(伸)委員 今の答弁でも明確になったと思います。政府は、APECまでに交渉参加入りを表明したいということは、これは特定品目を除外しないということですから、米を初めとするセンシティブ品目は関税ゼロになる覚悟がありますよということを示すと同義語であるというふうに普通の日本人であれば今の言葉で理解すると思います。

 そうしたときに、一つの例をとってみれば、日本の主食である米、これは当然主食であり、日本人の多くのカロリーを賄っていると同時に、水田農業がさまざまな、国土を守る機能を果たしておる、あるいは、日本のいろいろなお祭りは、政治家の皆さんであれば出られるように、水田耕作をカレンダーとしてやっているようなお祭りも多いわけでありますし、天皇陛下が宮中で行う祭祀というのも米づくりにちなんだものが多いという意味では、文化の源でもあるというふうに考えております。そうした米の関税がゼロになるということを覚悟して、今、政府は参加を検討しているものというふうに私は理解をいたします。

 きょう、コメの内外価格差という、農林水産省の資料を皆様方に提出させていただいておりますが、米の内外価格差、国産米の相対価格はキロ当たり二百五十一円です。SBS貿易というのは国家貿易ですから、市場メカニズムで決まる価格ではないという意味では、それを除いた価格を見るのが適切だと思いますが、この紫色のカリフォルニア州、TPP協定の協議参加国のカリフォルニア州の短粒種はキロ当たり百一円で、日本との差は大体二・五倍。協定参加国のベトナム、米の生産国であります、そこはありませんけれども、それに比較的近いと考えられる中国のジャポニカ米、これはキロ当たり四十九円ということで、五分の一ということでありまして、これだけの価格差があります。

 よく、戸別所得補償制度があるから関税が大丈夫という議論があります。しかしながら、これだけの価格差があるときに、戸別所得補償制度が幾ら必要か。私が試算したところによりますと、この中国産米と同程度の価格、一キロ当たり五十円の米が入ってきた場合に同等の競争をするために戸別所得補償の予算がどれぐらい必要かというのを、二十三年度の生産数量目標面積の百五十万ヘクタールで換算すると、大体一・五兆円です。米だけで一・五兆円。それに加えて麦や畜産や酪農とやると、恐らくこの倍ぐらいいきます。三兆円近くの予算が必要になります。

 昨日、内閣府の大串政務官は、TPP参加により我が国のGDPを〇・五四%、二・七兆円押し上げると説明しました。恐らく二・七兆円ぐらいですよ、TPP参加で得られるメリットと同じぐらいの戸別所得補償の予算を講じなければ日本の農業が守れない。これは何のためにやるんですか。マッチポンプと言わずして何と言うのか。農水省の一年間の予算は二兆二千七百十二億円ですよ。戸別所得補償をやるとするならば、それ以上のお金を講じなければ守れない。私はそんなばかな話はないと思っておるんですけれども、副大臣、どうですか。この点についての認識をぜひお聞かせください。

 戸別所得補償で本当に守ることができますか。まず戸別所得補償の二兆円の予算を講じることすらも難しいと思いますし、戸別所得補償制度があるから自由貿易をやっても大丈夫だという意見については、副大臣、どのように御認識されますか。

筒井副大臣 今度のTPP、デメリットは、今先生が説明されたのを含めて極めて具体的に出てきているわけでございますが、メリットの方は、そういう具体的なものとしては出てきていない状況だろうというふうに思います。ですから、これに関しては極めて慎重に考えていくべきであるという姿勢を、農水省としては一貫をしているわけでございます。

福島(伸)委員 もうちょっと正面で答えていただきたいんですけれども。

 中国産の米と日本産の米の価格差を見たときに、戸別所得補償で手当てをすれば一・五兆円も必要だというような試算が、私の試算ですけれども、ある中で、所得補償で本当に関税ゼロに耐えられるんですかという点についてはどのように御認識でしょうか。

筒井副大臣 所得補償の、今の、関税ゼロになった場合に一・五兆円という計算ですが、今農水省はそういう試算をしておりません。

 ただ、この前から発表しておりますように、生産減少額として、全部で、農林水産物三十三品目で四兆五千億というふうに計算を発表、公表しております。そのうちの米の生産減少額は約二兆円というふうに試算を出しております。

 いずれにしろ、今先生がおっしゃった試算の結果がどうなるかは別にして、今の財源の状況からいって極めて難しい、困難な局面になるというふうに思っております。(発言する者あり)

福島(伸)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりの認識だと思います。でも、いやいや、そうじゃない、大規模化すれば勝てるんだという無責任なことを経済界の人たちなどがおっしゃいます。

 昨日政府は、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画というのを発表されました。これはTPPと関係のないことであるというふうに私どもは理解しておりますが、その中で「平地で二十〜三十ヘクタールの土地利用型農業を目指す」というふうにしております。

 きょう、もう一つの資料で、水稲作付規模別の経営状況という、農林水産省さんがつくられた資料を出させていただいておりますが、〇・五ヘクタール未満の経営ですと大体コストが二万二千七百円、一俵当たりですね。一ヘクタールぐらいだと大体一万五千円というふうに、確かに規模が拡大していくとコストは下がってまいります。

 これで実際に、ここの基本方針で言う二十ヘクタールから三十ヘクタール、そこまでの規模拡大をすれば、米の生産コストというのは大体どのぐらいになるんですか。

筒井副大臣 現状で申し上げますと、十五ヘクタール以上の場合の生産コストが約一万円でございます。これは労働費と生産費と、両方足したものでございます。

 ただ、申し上げておきたいと思いますが、規模拡大によって生産コストをある程度削減することができる、これは事実でございますが、二十から三十ヘクタールが大宗になったといっても、アメリカとかオーストラリアの生産コストと同等になるなんということは、これは絶対的に不可能だというふうに考えております。アメリカは平均耕作面積が二百ヘクタール、そして豪州は二千から三千ヘクタールでございますから、自然条件等々の違いから考えても、規模拡大によるコスト削減で国際競争力を持つなんということはあり得ないというふうに思っております。

福島(伸)委員 極めて正しい御認識だというふうに私も思います。

 確かに大規模化すればコストは下がるんですが、私、かつて農業経済学を勉強してきた者として、だんだん逓減していって、平らになっていく水準があるんですね、恐らく一万円とか、頑張っても九千円程度の話でありまして、先ほど例を出した中国産の米は一俵当たり三千円ぐらいです、売られている値段で。どう見たってこれはかなわないんですね。先ほど申し上げましたように、戸別所得補償で兆単位のお金をつけて、かつ大規模化したとしても、関税がゼロという世界では絶対にこれは競争にならないということは、科学的に見ても明らかなんだというふうに私は思っております。

 一方、戸別所得補償のお金が幾らあれば足りるか試算すらしていないということを先ほど副大臣はおっしゃいました。私は、これは極めて不誠実なんじゃないかと。政府は十一月までに結論を出すと言って、しかも、その結論を出した瞬間に米の関税がゼロになるということを確認しているにもかかわらず、その国内対策すら考えていないということだったら、私は、十一月に協定参加の表明なんというのは絶対にできないし、してはいけないというふうに思っております。

 十年間の猶予期間をもって関税を下げていけば大丈夫だという議論もあります。しかしながら、十年間といったって、工業製品と違って、米は十回しかとれないんですよ。豊作のときもあれば凶作のときもある。そんな、十年間でいきなりコストなんて下がるわけがありません。

 きょう、私の地元からも傍聴に来ていただいております。多くの仲間が心配して、今駆けつけております。そこに来ている皆さんは、例えば、大子町という茨城県にあるところで日本一の米づくりをやっている大久保君という、私の同級生です。昔は悪いことをやっていたらしいですけれども。日本一の米づくりですよ。あるいは、きょう、百二十町歩、私の地元で米やソバをつくっている人も来ております。

 競争して壊れるのは、そうした将来の農業の明るい夢を見てやっている、私と同世代の、大規模でやっている人なんですよ。片手間で、年金でやっている人なら、米が幾ら安くなったってやるかもしれないですよ。それで生きていこうと夢を持ってやっている人が一番つらい目に遭うのがTPPであると私は思っております。

 地元の仲間は、きょう、徹夜して議員会館の前で座り込みをやっていますよ。これを農協の動員だとか、ばかにするのは簡単ですよ。だれがこの寒い夜の中、一晩かけてずっと座り込みするんですか。みんな若い農家ばかりですよ。農業で飯を食っていこうとする人ばかりですよ。

 そうした中で、ろくろく検討もしないで、情報収集もしないで、十一月のAPECまでに協定交渉に参加を表明するんだと、私は、これは政治家の考えることではないと思っております。

 さきの代表選で、鹿野大臣、スーツを脱いだことが私は野田総理を誕生させたと。私は、馬淵澄夫という二十四票しかとれなかった候補の陣営におりましたけれども、ある意味、鹿野大臣は生みの親であると思っております。

 そうした状況を踏まえるのであれば、大臣、十一月のTPPの協定交渉参加入り、もっときちんと情報を集めて、できるのかできないのか、米の関税がゼロになるような協定に本当に参加していいのかを科学的にしっかり調べてやりましょうというのを、閣内で、不退転の決意で訴えるべきだと思うんですけれども、いかがですか。決意のほどをぜひお聞かせください。

鹿野国務大臣 今、福島議員の方からいろいろ御見解をお聞かせいただきました。

 そういう中で、私自身も、今月の十一日に、このTPPに関しましても、経済連携の関係閣僚会議におきまして率直に申し上げました。

 その一つは、国論を二分すると言われておるこのような重要なTPPに関する問題をどうするかということであるから、やはり、しっかりと議論するためには情報を提供することが大事である、こういうことを申し上げました。

 もう一つ話をしましたことは、巷間、APECの時期までに考え方を示す等々というような報道がされておるわけでありますけれども、私は、外交交渉というふうなことは、期限を切ってこうします、ああしますというふうなことは決して外交交渉にとって我が国にプラスになるということにつながるものではない、ゆえに期限を切るというふうなことはやはり慎重であるべきだ、こういうふうなことを明確に申し上げておるところでございます。

吉田委員長 福島委員、時間が来ておりますので。

福島(伸)委員 はい。

 ありがとうございます。

 本当に、期限を区切るのは外交交渉では慎重であるべきというのはおっしゃるとおりだと思っております。

 TPP交渉は、農業だけではありません。冒頭申し上げましたように、さまざまな分野にわたって、あるいは外交の基本的な、根本の問題、日本がアジアでどのような国として生きていくのか、あるいは日米同盟をどう考えるのか、さまざまな論点から検討しなければならない問題であり、鹿野大臣もおっしゃったように、APECまでに結論が出せるような問題ではないと思っております。

 私は、根っからの自由貿易論者です。経済産業省出身です。しかしながら、今のような、非科学的、非論理的、戦略のない検討の中でのTPP交渉の参加表明は絶対に反対であります。大臣も、APECまでに表明するのは慎重であるべきとおっしゃっている。私は、きょうお集まりの与野党の皆さんは、APECまでにTPPへの交渉参加入りを表明する拙速さに反対という一点では、委員長も含め、みんな同じだと思っております。

 ですから、私は、この農林水産委員会において、TPPへの参加交渉をAPECまでに表明することに反対という決議をぜひしていただくことを提案したいと思いますので、委員長、理事会においての取り計らいをよろしくお願い申し上げます。

吉田委員長 理事会でお諮りいたします。

福島(伸)委員 ありがとうございます。

 以上をもちまして、質疑を終わりにさせていただきます。ありがとうございます。

吉田委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木(雄)委員 民主党・無所属クラブの玉木雄一郎です。

 福島議員の熱い質問の後を受けて、私も質問をさせていただきたいと思います。

 TPPの今の議論もそうなんですけれども、我々農水委員会に属するメンバーは、与党、野党関係なく、やはり、日本の農業をどうしていこうか、どうやって日本の農業をしっかりと活性化していけるか、この点については一致しているし、一致できる委員会だというふうに私は思っております。その意味では、よりよい農政を求めて、その観点から質問をさせていただきたいというふうに思います。

 きょう、私、戸別所得補償制度のことについて中心に御質問をさせていただきたいと思っております。

 所得補償制度については、いわゆる三党合意の中でも見直しを検討するということになっておりまして、今後、与野党での議論が進むと思っておりますが、その中でも、特に二十二年度に行ったモデル事業の検証をしっかりやっていく。私は、いいところは伸ばせばいいと思うし、悪いところがあれば、つまり農家、農業にとって悪いところがあれば直せばいいというふうに思っております。その意味では、客観的にこれを分析するということがまず必要だというふうに思っております。

 その中で、まず、農家の評価でございますけれども、農林水産省がおまとめになられたアンケート結果によりますと、四人のうち三人が、これは評価できる制度なので維持してほしいという、いわば前向きな評価をしているというふうに理解しております。

 加えまして、小規模農家にばらまかれている、よくそういう印象のある戸別所得補償制度なんですが、今、手元に資料をお配りしておりますけれども、これは農水省の資料をもとに私が作成した円グラフなんですが、農家の作付規模別に整理をしたものなんです。

 支払いの件数におけるシェアで見ますと、確かに、五反未満、〇・五ヘクタール以下の農家が半分近く交付対象になっております。その意味では、支払い件数シェアで見ますと、小さな農家に配られているということは事実なんだと思います。

 ただ、一方で、下のお金のシェア、支払い額シェアで見ますと、半分を占める五反未満の農家に対しては、全体のお金のわずか、非常に限られた額しか配られていなくて、ここで見ていただくとわかるように、五ヘクタール以上、あるいは三ヘクタールから五ヘクタール、また二ヘクタールから三ヘクタールという、上から三つのカテゴリーに総額三千億を超える予算の約六割が実は交付されているという実態が見えてまいります。

 そして、この二ヘクタールから三ヘクタール、三ヘクタールから五ヘクタール、五ヘクタール以上という、いわゆる二ヘクタール以上の農家に対してが、全体の交付件数に占めるシェアで見ると、それはわずか九・八%にすぎません。

 ですから、たくさん小さな農家にばらばらと配られているということが一般に言われますけれども、逆に言うと、全体の一割にも満たない大規模農家に総予算の半分以上が実は交付されるという、ある意味、私は、これほど集中的に配られている予算、政策はないのではないかな。

 というのは、私は四国の出身、香川県なんですね。香川県は全国で一番小さい県でもありますし、平均耕地面積が全国の約半分の約六反、我々はよく五反百姓というふうに言うんですけれども、大変小さい面積の農家が多いわけです。そうすると、先ほど福島先生の資料にありましたけれども、五反未満の農家というのは生産コストが極めて高いし、中山間地域が多いので、どんなに頑張っていろいろな工夫をしても生産コストを下げることができない農家も多いわけです。そういう意味からすると、大変いいなと思って、実はこれはうらやましく見ている表であります。

 私は、大変、これからいろいろなことを、所得補償制度、改めるべきところは改めたらいいと思うんですが、こういうふうに大規模農家にむしろ集中的に配分されているという実態、加えて、集落営農の新設数も、前年度の二十二年度が新しくできた集落営農が四百三十九に比べて、二十三年度になってから一千四百五十九と、集落営農の新設数が大幅にふえているわけです。そういう意味では、極めて、ある種効率的な農業を推進するような役割も実は戸別所得補償制度は果たしているというふうに思うんですが、まず、先ほどの農家の評価も含めて、この戸別所得補償制度に対しての大臣の評価を教えていただければというふうに思います。

筒井副大臣 所得補償制度に関しての評価は、まさに今先生がおっしゃったとおりでございます。

 加入者も以前の政策よりもふえて、過剰作付面積が以前の政策よりも減って、そして新規需要米も大幅にふえている、その上に、今先生が言われたようなそういう結果となっているわけでございまして、決して、先生も言われましたように、ばらまきなんというものじゃない。

 ばらまきの最大の理由として言われているのが、あの全国平均の一律の支給だというふうに言われておりますが、あれこそに、あの仕組みの中自体にコスト削減の努力に対するインセンティブが含まれているんだ。全国平均で生産コストやあるいは農家の手取り額を計算いたしますから、全国平均よりもコストがもっと低い、規模の大きな農家に関しては、その平均よりも少ない分はさらに利益としてプラスアルファがつくわけでございますから、だから規模拡大した方が有利になっている。その仕組みが含まれている。

 その結果、今先生が言われましたように、一割ぐらいの件数、農家の加入者が五割以上の、六割ぐらいの交付金の支給を受けている、そういう結果になるんだというふうに思っているわけでございます。

 先ほど福島先生の質問の際にも申し上げましたが、規模拡大によるコスト削減では絶対にアメリカやオーストラリア等に伍していくことなんてできない。そういう自然条件があるんだということを大前提にいたしまして、その中においてもやはり規模拡大、コスト削減の努力はしていかなければいけないということから、それらの仕組みもこの所得補償の中に組み込んでいるところでございます。

玉木(雄)委員 世の中で一般的に言われている小規模ばらまきだということと、実は、実際に行われることが違うということについても私はきちんと説明すべきだし、むしろ効率化を促している面がある。

 この全国一律一万五千円というのは非常にシンプルでわかりやすい、ある意味、そういった効率化を促す制度として私は意味があると思うんですが、一方で、先ほども申し上げたように、小規模農家に対しての支援については、私、ある意味欠ける面もあるのかなと実は思っております。

 民主党農政に対する期待は、規模の大小にかかわらず、やる気のある農家、多様な担い手が認められるということが実は一つの期待だったのではないかと思っています。

 この戸別所得補償制度の政策目標も、ある意味、多面的機能の発揮そしてまた自給率の向上をこれによって図っていくということです。大規模な人はこれでうまくいくと思うんですが、小規模な人は、いわゆる再生産可能なコスト、所得一万五千円ではどうしても賄い切れない面があると思うんですね。私は、地域によって生産コストに差があるところをもう少し踏まえて、例えば、最低でも農政局単位で生産コストを少しきちんと分析をして、この全国一律になっている部分についても、多少地域差を設けて配分していくということがより政策目的にかなうのではないかなというふうに思っております。

 加えて、先ほど福島議員からもありましたけれども、先般発表された実現会議の、例の二十ヘクタール―三十ヘクタール、あるいは中山間地域でも十ヘクタール―二十ヘクタールというのを聞きますと、我々香川県の農家からすると、一けた違ってもきついかなと思うんです。ですから、その点については、いわば大きいところしか救わないんだというのではなくて、多様な農業のあり方が日本全国あり得るわけですから、そういったことに対してきめ細かく配慮していくという意味でも、この戸別所得補償の定額部分の単価の設定については今後またいろいろな検討をぜひ加えていただきたいな、これはもう要望を申し上げます。

 加えてもう一つ、私は、所得補償制度の政策目的に照らして改善すべきだなと思う点が、これが自給率向上に果たして本当につながった効果があるのかないのか、ここの分析はしっかりする必要があると思っています。

 特に麦、大豆という自給率が低い作物について、いかに自給率を上げていくのかということが極めて重要な政策課題だと思っています。ただ、残念ながら、農林水産省からいただいた資料を見ると、二十二年度のモデル事業によって、必ずしも麦、大豆の自給率は上がっていないんですね。私は、その意味では、自給率をしっかり、低いものを上げていく、国家の食料安全保障の観点からも極めて大事だと思いますので、その意味では、もちろん米も大事なんですが、自給率の低い麦、大豆、こういった戦略作物をより推進していくような方向で制度を充実、拡充していくことが大事だと思っています。

 その意味で、一つ私申し上げたいのは、私は香川県と申しましたけれども、うどんが盛んなんですね。この前十月一日に香川県はうどん県というふうに名前を改名した、こういうキャンペーンをやっておりまして、うどん県と十月一日に改名した、こういうキャンペーンをやったわけです。つまり、何が言いたいかというと、各地域地域にはその地域の特徴を生かした作物があるわけですね。とりわけ、香川県であれば、さぬきの夢二〇〇九という新しい品種を開発して、国内の小麦を使って讃岐うどんという食文化を推進していこうということをやっております。

 その意味で、今、水田を活用して麦をつくれば、水田利活用ということで反当たり三万五千円が出ますけれども、実は、我々の地域は二毛作ができます。裏表で作物をつくれるんですが、表で麦だけつくれば三万五千円、水田を活用すれば出るんですが、裏作で麦をやりますと、二毛作助成といって、これは一万五千円の単価に下がってしまうんです。私は、裏でやろうが表でやろうが、本当に麦の自給率を上げよう、あるいは地域の作物をより推進しようということであれば、裏作であろうが表作であろうが、麦をつくれば反当たり三万五千円を出すというような政策もあると思うんですけれども、この二毛作助成の、特に麦に対する二毛作助成の単価を上げていくということについて農林水産省としてどうお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

筒井副大臣 三万五千円の場合は、主食米との関係、主食米をつくった場合との差がそんなにないようにしなければ麦作をやってくれないという判断から三万五千円としたわけでございます。

 そして、二毛作の場合には、米の方の固定払いが一万五千円で、そして麦の方がやはり一万五千円ということになるわけでございまして、それらを総合して、やはり現在の財政事情の中で何とか自給率を高める方策をとりたいというところから現在の制度をつくったわけでございます。今先生がおっしゃったことは今後の検討課題かというふうに思っております。

玉木(雄)委員 自給率を向上させるということであれば、既に自給率が一〇〇%を超えている作物の支援も大事なんですが、一〇〇%に達していない重要な作物を、どうやってそれを上げていくのかということに政策的な重点をぜひ今後移していっていただきたいというふうに思います。

 最後に、ちょっとTPPに絡めてお話をさせていただきたいんですが、二十二年度のモデル事業の際に、米価を下落させる、ある意味悪い効果があったんじゃないかということが言われました。結果として二十二年産米は下がったところが多かったんです。ただ、結果として見ると二千五百円から三千円ぐらいの下落があったところが多かったと思うんですが、所得補償の定額部分と変動部分で、六十キロに直すと、一千七百円、一千七百円で三千四、五百円の交付が行われて、米価が下がっても、所得で見ればその分のカバーがされたというのが、結果としてその効果はあったと私は思うんですね。

 その意味では、ある種皮肉なというか、一つの面としてあるのは、価格の下落に対して極めて強い制度なんだと私は思っているんです。ただ、それは一つ前提があって、財源がきっちりと確保できたときに初めて所得政策、価格政策ではなくて所得政策としての所得補償制度は機能すると思います。

 そこで、先ほどの福島先生の話とも絡むんですが、これは、昨年のTPPの議論が出てきたときに、農林水産省が国内への影響ということで幾つかの試算をされて、四兆円ぐらいの生産額の減少があるということを計算したときに、米について分析した資料がありまして、これを少し加工しまして、またお手元に、コメの関税撤廃の影響試算ということでお配りしております。

 これを見ますと、ブランド米の、非常に優位性が高いものについては余り置きかわらないけれども、それ以外の通常の国産米はほとんどが外国産に置きかわるという前提で計算されています。約一〇%のブランド米は余り影響を受けない、九〇%の普通のお米はほとんど入れかわるという、ある種の前提で計算しています。

 この前提についていろいろな議論があるのは承知しておるんですが、仮にこれを前提として六十キロ当たりで計算しますと、ブランド米は約六千六百六十円価格が下落する、通常のお米については、国際価格の三千四百円ぐらいまで下落して、一万円以上米の価格が下落をするという前提であります。この価格の下落をすべて所得補償的な制度でカバーしようとすると、ここで言うと一兆九千七百億円。先ほど福島先生は一兆五千ぐらいとおっしゃいましたけれども、これだと二兆弱ですね。いずれにしても、米だけで一・五兆から二兆ぐらいの、仮にこういった所得補償的な制度でやろうとすると財源が必要になるということになるんです。

 ただ、これから、我々、まさに復興の財源が十年間で二十三兆円、前半五年で十九兆円、また、税と社会保障の一体改革でまた消費税が必要だというような議論をしている中で、単年度で一・五兆円、ここで言う一兆九千七百億円、十年間でいうと二十兆弱はかかるというような財源を果たして本当に捻出できるのかどうか。

 よく、政策を言うときに、財源なくして新規施策なしと言います。その意味では、このTPPも、国内対策を講じますというふうに推進派の方もおっしゃいますけれども、果たして講じられるフィージビリティーがあるのかどうか。その意味では、財源なくして新規施策なしという意味であれば、本当に十分な財源を確保して国内施策を講じた上でTPPに参加するということが今の日本の財政状況で現実的にあり得るのかどうか。この点について御意見を伺いたいのと、もし可能であれば、そういった財源を確保できないのであって、それでもなおTPPに参加を求められるのであれば、米を除外して参加するということがあり得るのかどうか。あるいは、それについて今の時点でどういったお考えがあるのかどうか。可能な範囲で、これは最後、大臣にぜひお答えをいただきたいと思います。

 この財源の問題と、米を除外しての交渉参加ということが一体あり得るのかどうか、この点について今の大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

鹿野国務大臣 私自身、TPPに対してどう我が国が対処していくか、このことにつきましては、当然今具体的な形で、関税ゼロというようなことになったときには我が国の国内の農産物の生産体制に対してどういう措置を講じていかなきゃならないか、具体的に新たな予算措置も必要じゃないか、こういう御指摘。一方においては、このTPPというものは市場アクセスが主に議論されていますけれども、その他の、先ほど来からのお話のとおりに、いわゆる投資が、あるいは金融が、あるいは環境が、あるいは政府調達がというような、そういう分野においてもどうなっていくのかというようなこと等々、総合的にやはり議論をしていかなきゃならない、こういうふうなことだと思っております。

 そういう意味では、今玉木委員から言われた件も当然いろいろな意味で重大な視点として考慮していかなきゃならないことでございますので、私どもとしては、一つのとらえ方ということだけではなしに、総合的に、我が国としてどういうこれからの社会というものを目指すのかということも含めてやはりきちっと議論していく必要があるのではないか、そんなことを考えながら、今御指摘の点も十分頭に入れさせていただきたい、こう考えておるところでございます。

吉田委員長 時間が来ていますから、簡単に。

玉木(雄)委員 最後に一言。

 韓国が米韓FTAを結ぶ際に、先対策、後開放ということで、まずきちんと国内対策をつくって、それを国民に見せて、その後、開放ということを踏んだというふうに聞いております。その意味でも、仮に何かやるということであれば、明確な国内対策をきちんとつくって、国民に説明してから行っていくようにぜひ要望させていただきたいと思います。

 終わります。

吉田委員長 次に、金子健一君。

金子(健)委員 民主党の金子健一でございます。質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 福島議員そして玉木議員のTPPに対する発言につきましては、これからの農政がどのような方向に進んでいくのか、農林水産業を営んでいる方は大変不安になっていると思います。私も後で質問させていただきますけれども、その前に、今、農林水産業を営んでいる方々の今の不安に対しまして農林水産省としてどのような対応をしているのか、質問をさせていただきます。

 まず、今回の大臣発言にもありましたけれども、原子力発電所事故により農林水産業の皆様がこうむった損害については云々がありました。一層の早期支払いを求める等、適切かつ迅速な賠償の実現に取り組むとあります。

 丹精込めてつくった農林水産物が、今、出荷制限、出荷停止、そして風評被害によって多大なる犠牲をこうむっております。今、農林水産業を営む方々は大変苦しい生活を強いられている、これも一つの事実でございます。

 損害賠償に対しまして今支払いが行われていると思いますけれども、今の現況を御報告いただきたいと思います。

筒井副大臣 今現在の支払い状況は、結論的に申し上げますと、仮払い、本払いを含めて約四百六十億円、これは請求額の約半分が払われたという状況でございます。

金子(健)委員 発災後、もう七カ月がたちました。これで五三%の支払い率というのは、高いと見るのか、低いと見るのか。きのう、農林水産省の方からその資料をいただきました。多いところでは相当な支払い率で支払いが行われていますけれども、私は千葉県ですが、請求が六十一億八千三百万円ありますけれども、仮払いが行われたのが六億一千五百万円。

 この請求があったときに私は申し上げたんですけれども、農業も水産業も、日々の収入を得て、農業の場合は、ある程度の一定期間があって収入が入ります。漁業の場合は、その日その日で収入があり、それを支払いに回しているというような状況です。七カ月間という間の中で、これはさまざまな基準があるのかもしれませんけれども、大臣のきのうの発言の中でありましたけれども、なるべく早く皆さんに支払っていただくことが安定した農林水産業の運営にも当たりますので、大臣の御決意をもう一度いただきたいと思います。

鹿野国務大臣 非常に重要な、今、金子委員からの、賠償について早期支払いをやるということは、やはり農林水産省としても、そのことを、背中を押していかなきゃならないと思っております。

 今日まで七回にわたりまして、農林水産省がいわゆる連絡会議というものを設けまして、そして東電に対しましていろいろな要求、要望を直接行うということもやってまいりました。このことを踏まえて、これからも東電に対しまして、賠償の早期支払いというふうなものに積極的に取り組んでいくよう強く求めてまいりたい、このように考えておるところでございます。

金子(健)委員 ぜひお願いいたします。これからも、まだまだ風評被害があります。また後で申し上げますけれども、私の千葉県においては、風評被害によって契約がすべて解除されてしまった農家もあります。漁業に出たくても、出荷制限、そしてまた価格が下落していることで出れば出ただけ損だということで、出漁したくてもできない方もいらっしゃいます。その辺のことを十分考慮していただいて、なるべくスピードアップした請求をよろしくお願い申し上げます。

 次に、私、民主党の農林水産部門会議の食の安心・安全ワーキングチームの座長をしておりますけれども、昨年から、米以外の飲食料品についてのトレーサビリティー制度の導入や、加工食品における原料原産地の義務づけの拡大等の議論を重ねてまいりました。

 これは、国内においては、我が国の農林水産物の安心、安全を明確にすることによりまして、消費者の方々への販売促進、また、海外に向けて、いわゆる安心、安全なジャパン・ブランドをもとに、農林水産物の輸出拡大も図りたいとの考えでこの一年間議論をしておりましたけれども、福島の原発事故以来、この安心、安全なジャパン・ブランドの信用が失墜をしてしまいました。

 日本の食を守る農林水産省として、信用回復への対応を伺いたいと思います。

仲野大臣政務官 ただいまの金子委員の質問にお答えさせていただきます。

 このたびの原発の事故に伴い、生産水域の情報に対する消費者の関心が非常に高まっているということを踏まえまして、東日本の太平洋側で安全、安心な水産物を供給するということでは、生産水域の区画及び水域名を明確化した原産地表示をしっかりと奨励することが大事だということで、我々といたしましても、そのことをしっかり徹底、通知をいたしております。

 したがいまして、もう既に一部の大手小売店で本通知内容に沿った表示を検討中との情報も得ておりますし、今後とも、関係団体へのさらなる要請等により、生産水域の表示の周知啓発に徹底的に努めてまいる所存でございます。

金子(健)委員 ありがとうございます。

 今政務官のお話は、十月の五日付、各団体あての「東日本太平洋における生産水域名の表示方法について」という事務連絡だというふうに思います。

 先ほどから申し上げているし、私の地元は千葉県です。海は広いな大きいなではありませんけれども、どこまでが千葉県沖であるのか、茨城県なのか、福島県沖なのか、なかなか明確にならない。今の表示方法は、大くくりであっても構わないということです。

 聞くところによりますと、もし千葉県の方々がそういう心配があるんなら、千葉県産だけを知ればいいでしょうという話もありますけれども、これは聞きようによってはちょっと冷たい考えかなというふうに思います。

 各都道府県のさまざまな関係団体の方々の御協力をいただきながら、できるだけ明確に、ここは、どこどこ沖でとれたものが、どこの港に入って、どこで加工してということが消費者の方々に対する安全の知らせにもなっていくと思いますので、その辺については、さらなる関係団体への通知、そしてお願いになってしまうと思います。まだまだ法整備がありませんので、どうしてもお願いという形になると思います。テレビ、新聞等ではJAS法に基づいてこのことがされたということも報道されておりますけれども、なかなか業者の中では、それはまた相当なコストもかかることですということも聞いておりますけれども、ここは国を挙げて、日本の食にかかわる方々の協力をいただきながら、日本の安全基準をもう一度明確にしていただきたいというふうに思っていますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 そしてまた、もう一つ、国内ではなく、今度は海外に向けて、ちょっと問いたいと思っておりますけれども、海外では、三・一一の原発事故以来、各国の輸入規制によりまして大きな影響が出ています。

 主な国の日本国産品への状況はどうなっているのか、御説明をお願いいたします。

筒井副大臣 各国それぞれ、さまざまな輸入規制をしているところでございますが、大きく分けますと、食品全体についての輸入停止あるいは証明書を要求している国、例えばEUとか中国がそうでございます。その中でも、中国の方がより厳しいわけでございます。それと、特定地域、特定県の食品についてだけ証明書等を要求している国、アメリカとか香港とか台湾とかがそうでございますが、それらに分けられているわけでございます。

 いずれにしろ、それらの規制について、科学的知見に基づいてその規制を緩和してほしいということは、ずっと、あらゆるルートを通じて、今、情報提供を行いながら要請をしているところでございます。

 その際に、先ほど話にありました安全性の問題でございます。日本の規模の拡大によるコスト削減は国際競争力を持つはずがない、あり得ないということを申し上げました。しかし、安全性と食味のよさに関しましては世界一の優秀さ、強さを持っているというふうに考えているわけでございまして、それが原発事故によって揺らいでしまったということが残念でございまして、安全性、食味のよさに関してもきちんと諸外国に情報提供するという作業も同時にやっているところでございます。

金子(健)委員 ぜひお願いします。

 これは、外交上いろいろな問題があるかもしれません。この前、倫選特で、私、ヨーロッパの方に視察に行かせていただきましたけれども、フランス大使そしてイギリス大使とお話をしました。向こうは日本食が大変ブームです。すしレストランがたくさんあります。食材はどこからですかというと、日本以外のところから入れているということです。大使には、日本産を使っていただけるようにぜひお願いしてくださいと言うんですが、どうしても、EUは大変厳しい制限があるので、なかなか努力しても難しいものがありますというふうに言われました。

 ただ、そうですか、では、しようがありませんねということでは政治が成り立たないというふうに思います。今副大臣の方から御説明をいただきましたけれども、大臣、これからは国を挙げて、日本の食材、食品は安心、安全であったはずです。ただ、今、福島原発事故以来の風評によってさまざまな食材の輸出がとめられています。私の地元だけではなく、さまざまな農林水産品がとめられ、その加工業者そして輸出業者の方々が、倉庫に眠ってしまっているというような悲鳴も聞きます。ぜひ御努力をしていただいて、農水省の職員の方々は走り回っていると以前大臣からお聞きしたことがありますけれども、さらなる努力をいただきたいと思います。大臣の御決意をお願いいたします。

鹿野国務大臣 今、金子委員からのお話のとおりに、ある程度、農産物なり食品の輸出というものが少しずつ諸外国に対して伸びてきておったところでありますけれども、これが、原発事故以後、相当な落ち込みというふうなことであります。

 これに対して、農林水産省といたしましても、何とかしなきゃならないというようなことから、一つは、政務三役が諸外国に対して、参ったときには直接、あるいはまた事務方もそれぞれの関係国に参りまして、派遣をいたしまして、いわゆる客観的な、科学的な見地から判断をしていただきたいというふうなことで、規制緩和等々お願いを、要求、要望もしてきたところでございます。あるいは、関係省庁とも連携をとって、できるだけ今申し上げたようなことの理解を求めてきたところでありますけれども、なかなか思うように運んでいないという点もございます。

 いわゆる農産物あるいは食品の輸出戦略というふうなものの立て直しを図っていかなきゃならないというふうなことから、このことについての検討会を立ち上げることにいたしまして、具体的な戦略というものを含めての今後の見直し等々も具体化してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

金子(健)委員 ぜひ大臣、よろしくお願いをいたします。これからの農業を考えたときに、どうしても、国内需要だけではなく輸出も大変大切なところでございますので、一層の努力をよろしくお願いいたします。

 また話が変わりますけれども、塩害対策について伺いたいと思います。

 東日本大震災の津波によりまして、多くの田畑が津波に襲われました。私の地元千葉県でも、ことし除塩作業をして耕作をした農家から、収穫量が減少したとの報告を受けています。関東農政局では、現地に出向き聞き取り調査をされたと聞いております。本当にありがとうございます。

 先週、私、宮城の方に行ってまいりました。宮城の農家の方々から、来年の作付に向けまして除塩作業をしていくんだけれども、こんなような津波の経験は初めてであり、除塩作業をして作付をしても、収穫が上がらないときのことが心配だというようなお話がありました。

 今、政府では、このことに対してのさまざまな支援措置があると思いますけれども、改めて御確認をさせていただきたいと思います。

仲野大臣政務官 ただいまの金子委員の御質問にお答えいたします。

 除塩した農地に作付された水稲の収穫量が減少した場合の対応についてということでありますが、農業共済において、東日本大震災発生以前は、海水が流入し浸水した農地については、これは収穫が見込めないということから一般に引き受け対象外でありますが、しかし、東日本大震災以降は、除塩により収穫が可能と見込まれる農地について、現地調査を徹底的に行い、水稲の生育状況を踏まえた基準収穫量をもとに引き受けを行っていたところであり、したがいまして、来年以降についても、皆様方に御心配のないように、本年と同様の取り扱いを徹底的にしてまいるところでございますので、御理解いただきたいと思います。

金子(健)委員 ありがとうございます。

 塩害による作付への影響は複数年にも及ぶことがあります。今、仲野政務官の方からお話がありましたことは、まだまだ米づくり農家の方々に周知されていないところもありますので、どうぞきめ細かな広報活動もよろしくお願いをしたいと思います。

 続きまして、その宮城に伺ったときに、施設園芸の農家の方からこのようなことを言われました。施設園芸農家も被災をしました、施設園芸農家が支援を求め、補助を申請する場合、さまざまな制限があり、営農継続にも厳しい状況にあると言われました。

 我が国農業において施設園芸は大きな役割を担っていると思いますけれども、後継者が事業を引き継ぐ際、高規格設備に対する援助だけではなく、多くの要望が、小規模でも独自性を大事にしている農業者からあります。今後の課題としても十分検討していくべきだと思いますけれども、これは大臣としてのお考えをいただきたいと思います。

筒井副大臣 施設園芸につきましては、二つに分かれていて、植物工場を含めた先進的な施設園芸につきましては、五戸以上の農家の共同利用施設の場合に二分の一の補助をしているところでございます。そして、パイプハウス等の簡易なハウスに関しましては、これは個々の経営体に対して三割の補助をしている、こういう状況でございます。

金子(健)委員 ありがとうございます。

 施設園芸をやられている方々といろいろお話をするんですけれども、どうも、その方々からはさまざまな要望があります。細かな要望ですけれども、そこに一つ一つこたえていくのも私たちの行政としての役目でもあると思いますので、引き続き議論をしていきたいと思います。よろしくお願いします。

 時間もあと二分ほどになってしまいました。私もTPPについて、私は商人、流通をやっている人間ですけれども、その立場から一つお話をさせていただきます。TPP交渉参加と六次産業化について伺いたいと思います。

 よく総理は、六次産業化を推進し、農業を成長産業にしていくというふうに言われます。この六次産業化法に基づく認定事業計画の概要をいただきましたけれども、現在は二百五十三件の認定があるとのことです。六次産業化は、農林水産業、農山漁村の再生のために、地域で新たな雇用の場をつくり、地域の多様な資源と産業を結びつけるものと私も期待しておりますけれども、この成功には大きな期待をしております。

 私は、地元で商工会の役員をしていたときに、経済産業省がやっております農商工連携にかかわったことがあります。農業の方と連携して、もうかる農業を支援したいということで、私も役員でしたので、いろいろな農業者とお話をしました。

 ここで、農業者と私たちみたいな人間とのちょっとのギャップを感じたことがあります。それは、農業者は物をつくるのには本当に一生懸命です。ただ、商売をすることについては余り得意ではないという方々の集まりです。これは、これからコーディネーターがいらっしゃったり、市町村の役場の職員であったりJAの職員であったり、さまざまな方がこの六次産業化について丁寧に説明をして、こうやっていけばこういった形でもうかる農業ができますよ、そして、これを実行していくことに、私のところでもちいちゃな直売所がたくさんありますけれども、すべてが黒字経営ということではありません。それで、中でやっている方々も、自分のものを売ればいいんだという話もあります。

 そういった中で、この六次産業化というのは地道にやらなければいけないものだと思います。総理が言うような打ち出の小づちではないというふうに私は考えます。農業を成長産業にしていくには、戸別所得補償制度であったり六次産業化であったり、さまざまな地道な活動の組み合わせによって農業の成長産業はあるものだと私は考えます。

 今総理が言われているように、これを拙速に進めていって、交渉に入る、それは六次産業化等で成長産業にしていくからいいんだでは全く議論が合わないというふうに思います。これは、あたかも六次産業化があるからというような話では全くないというふうに考えます。まだまだ政策効果が確立できない状況にあるこのような状況の中で、しかも、TPP参加のメリット・デメリットの議論を尽くさない上での拙速なTPP交渉には参加すべきではないという考えを私も持っております。

 ぜひ大臣のお考えをいただきたいと思います。

鹿野国務大臣 過般、食と農林水産業の再生に関する基本方針そして行動計画というものを決定いたしたわけでありますが、その中に六次産業化の推進というふうなものが盛り込まれております。このことは、TPPに参加するしないにかかわらず、これから積極的に推進をしていくということでございます。このことだけは申させていただきたいと思います。

金子(健)委員 時間が来ました。ありがとうございました。

吉田委員長 次に、保利耕輔君。

保利委員 久しぶりに質問をさせていただきます。

 鹿野大臣とは、随分長い間、農林関係で一緒にお仕事をしてきました。特に農林部会あるいは総合農政調査会という場で、昔は例えば米価闘争であるとかそういうところにも参画をしながら一緒に努力をしてきた仲間でございまして、きょうその大臣を前に置いて私が質問するというのは、何かこう感慨無量のものがあります。随分長い間のおつき合いだったと思っております。

 きょうは、まず最初に、農林大臣発言というのを昨日いただきました。農林大臣発言ですから、恐らくこの国会での主要なマターは第三次補正だろうと思いますし、また二十四年度予算の編成作業ということにもなるんだろうと思います。したがって、そういうことを中心にして書いた大臣発言でございますので、それはそれで僕は非常にいいと思いますし、特に震災対策について、あるいは津波対策についてしっかりやるということを書かれているということは非常によろしいかなと思います。

 ただ、目下我々が一番気にいたしておりますTPPの問題については一ページだけそれらしいものが書いてあるなということでございまして、TPPという言葉は入っていないのでございます。しかし、それに類似したことが十二ページに出ておりまして、「経済連携については、八月に閣議決定された「政策推進の全体像」」と引いてありますし、またWTOドーハ・ラウンドの交渉についても述べておられますから、一応述べておられると思います。

 しかしながら、今盛んに、きょうも大きな大会がありますが、TPPの問題についてこの発言の中にほとんど見えないということについては、大臣、どういうような感想を持っておられますか。これはやはりもう少し、今の社会情勢、一般情勢からいったら、農林水産大臣としては御発言をしっかりされた方がいいんじゃないかなと私は思いますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鹿野国務大臣 保利先生から久しぶりに、穏やかな口調の中にも厳しい御指摘をいただきました。まさに自民党時代、保利先生が今日まで、農林水産行政のまさしく関係議員の軸として、中核的存在として今日御活躍をいただいているということに対しまして、また大変な役割を果たしてこられたことに対しまして、議員の一人として敬意を表させていただきたいと思います。

 正直、今御指摘の点につきましては、私も私なりに考えました。どういう所信を申し述べるかということでございます。

 そこで、一つは、決して弁明、弁解ということではございませんけれども、昨年の菅内閣当時でございますけれども、包括的経済連携というものの基本方針を打ち立てました。これは継続してやっていくということでございまして、この点はそういう意味でこの所信の中にも盛り込ませていただいた。

 そして同時に、先ほど申し上げましたとおりに、今日の農林水産業を取り巻く情勢というのは待ったなしの状況だ、このようなことから、どういう方向性を見出していくか、どういう姿を描いていくかというふうなことが差し迫った問題でございました。そういう意味で、食と農林水産業の再生実現会議というものを設置いたしまして、御議論をいただいてきて、過般取りまとめていただき、決定に至ったということでございます。そういう意味で、いわゆる来年度の予算等々も含めて、そのことについての所信を申し述べさせていただいたということであります。

 そこで、TPPについてどうなのかということでありますけれども、正直なところ、今日、野田内閣としてどういう方向性を持ってやっていくかというふうなことは今しっかりと議論をして、そして結論を出していきたいという考え方でございます。私も当然内閣の一員でございますから、私自身が明確に私の考え方というものを今こういう段階で申し述べるということが果たしてどういうふうなことにつながるかということも、総合的な見地から判断をしなきゃならない。しかし、私自身、このTPPに対する政府としての取り組みというものをどうするかという、このことを決めていく経緯においては、私の考え方というものをきちっと主張し、そして考え方を述べていきたい。こういうふうな考え方から、今回の所信の中にはTPPについては触れるということを避けさせていただいたというふうなことでございます。

保利委員 御丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 大臣が御苦労なさっている点というのは、閣内不統一をつくっちゃいけないという御心配がやはり胸の中にあるんだろうと思うんです。だから、はっきり物が言えないということなんだろうと思います。私はそういう印象を持ちました。

 そこで、きょうは、実はこのTPPの問題というのは、先々はこれは条約案件になると思います。条約案件ということになれば、当然これは外務省が主導権を持って条約をつくることになっていくわけだと思います。条約ということになれば、国会承認案件に当然なるだろうと思います。そしてまた、国会が承認をとれれば、外務省として批准行為に入っていくということになるんだろうと思います。それで間違いないだろうと思いますが、外務省にちょっとお伺いをしたいんですが、今の点は間違いないと思いますから、それはそれで結構です。

 ただ、問題は、九月の末にアメリカを訪問された野田総理がオバマ大統領とお話しになられて、その後、外務省からも報告が来ているんですが、この問題についてはしっかり議論をして、できるだけ早く結論を出す、こういうふうにおっしゃったと報道等で伝えられておりますし、外務省からもそういう報告をいただいております。

 しっかり議論をして、できるだけ早く結論を出す、この意味を外交交渉に当たっておられる外務省としてはどういうふうに理解しておられますか。それはTPPに参加を目指すという感じがあるのか、それともまだそこまではいっていないということなのか、そこら辺はどういうふうにとらえておられますか、外交当局として。以上、御質問いたします。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃられましたように、野田総理とオバマ大統領との会談におきまして、総理から、しっかりとTPPについては議論して、できるだけ早く判断をしたいというふうに総理の方から伝えた経緯はございます。

 それを外務省として、外交当局としてどのようにとらえられているかという御質問でございますけれども、それはまさに早期に判断をすると総理がおっしゃられているわけですから、我々としてはそれを受けて、そのための早期に判断するような材料、情報収集をして、国民の皆様にも情報を提供して、総理が判断をしていくということをおっしゃられているものですから、その準備をしていくというのが外交当局の務めだと思っております。

保利委員 オバマ大統領との議論の方向性については、外務省としてはどう感じておられますかね。それは総理がお決めになることですと言って逃げちゃうのかもしれないけれども、外務省のとらえ方というのは、オバマさんと総理との会談があった後、やはり雰囲気を恐らく感じられたんじゃないかなと思うんです。

 日本とアメリカとの関係というのは非常に広範囲でございまして、また微妙な点もある。例えば、基地問題についてもしかりですよね。それから、集団的自衛権なんかの問題についても、アメリカとの問題もある。それから、日米安全保障条約というのもある。そういう関係の全体を見ている外務省として、野田総理大臣がお話しになった、しっかり議論して早期に結論を出すということ、これを全く、外務省としては方向性を感じていないかどうか、全くありませんという返事なのかどうか、そこをもう一遍御答弁いただきます。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 オバマ大統領との会談におきましては、大統領の方からは、この問題については、TPPの交渉に参加するかどうか、これは日本が判断する問題ですということはおっしゃられておりまして、まさにアメリカとして日本に交渉参加してもらいたいという希望は我々としては感じておりますけれども、同時に、アメリカとしては、これは日本が判断をする、そういう問題であるという明確な立場を明らかにしているというふうに理解しております。

保利委員 外務省としての、お役所としての限界というのを私は感じますよ。もう少し会談の後の雰囲気というのをしっかりつかまえて、そして方向性というものを感じなきゃいけないわけですよ。それが答弁の中ではあいまいですから、それは役所の限界だろうと思いますね。

 ところで、アメリカというのは、日本もある意味ではそうですけれども、圧力団体というのが非常に強いでしょう。それで、オバマ大統領のもとにいろいろな団体が、このTPPについては完全自由化を求めるということを一生懸命言っていると思います。どういう団体が何をオバマ大統領に言って、オバマ大統領はどういう受けとめ方をしているのか。外交当局としてはどう感じておられますか。ちょっと御答弁いただきます。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃられましたように、アメリカの商工会議所とか各種団体からオバマ大統領に対して、例外なき自由化を達成する、そういうTPP交渉であるべきですし、その立場をアメリカとしては新規参加するという国に対しても貫くべきだ、そういう立場の表明があったということは承知してしております。

 ただ、アメリカの行政府としては、先ほど申し上げましたように、日本がこの交渉に参加するかどうかはあくまで日本の判断の問題で、そこはアメリカとして、その判断の前にこうしなくてはいけない、日本はこうすべきだということを言ってきているわけではございません。

 以上でございます。

保利委員 これ以上の質問はやめますけれども、やはりそういうことは、圧力団体からオバマさんがどういうふうに受けとめておられるのか、それは雰囲気として何かにじみ出てきていないか、そこら辺をしっかりつかむのが外務省の役割じゃないでしょうかね。私はそういう感じがいたします。だからそれを、今この場では言えないだろうけれども、今後、こういういろいろな問題が煮詰まっていきました段階では、そこら辺をよく外務省としてはつかんでいただくということをお願い申し上げたいと思います。

 いろいろなことがございますので、私からいろいろ質問することは外務省に対しては一応これだけにしたいと思いますが、最後に一問、自由化を求めるということを圧力団体も言っておりますし、恐らくオバマ大統領もそういう感じだと思うんです。

 自由化ということをどう考えるか。商売が自由にできる、これはいいことですね。しかし、自由化の中には、売らない自由というのもあるんだ。この売らない自由というのをどう考えて、自由化という言葉を使うか。これは非常に難しい問題ですけれども、外務省に聞くのはちょっと酷かもしれないけれども、何か印象がありましたら、ちょっとお話しいただけますか。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生がおっしゃられましたのは、売らない自由、いわゆる輸出を規制するか否か、そういう問題だと思いますけれども、食料、資源などについて輸出を制限している、そういう輸出国があるのは事実でございまして、日本は食料も資源も輸入国でございますので、各国が勝手にそういう自分たちの都合だけで輸出規制をするということについては、WTOの場でも何らかの規律がきちっとはめられていかなくてはいけないということを主張してきておりますし、WTOの場でもそうですけれども、このEPAやTPPの場でも輸出規制の規律という問題が取り上げられて、それが実現してルール化されていくということになれば、食料輸入国、資源輸入国の日本として大きな利益があるのではないかというふうに考えております。

保利委員 それは、輸出をとめるのは規制はできるかもしれない。しかし、大不作があって物が出ないというときに、輸出がとめられたということに対して、だれがどうクレームをつけますかね。恐らくクレームのつけようがないと思いますよ。だって、食料がなくなっちゃったときに、自国民を差しおいて日本に差し上げましょうなんて、そんな人のいいことを考える国というのはないだろうと僕は思います。そこら辺は食料安全保障を考えるときに非常に大事なテーマなんです。

 自由貿易には、売らない自由もある。これはここの場で議論になったことがありますが、アフガニスタンにロシアが、ロシアというか、当時のソ連が侵攻したときに、ソ連に対する食料の輸出というのをとめたことがある。そういういわゆる戦略的な意味での輸出をとめるということもある。しかし、物がなくなったときは輸出のしようがない、これはとめられないですね。そこら辺が非常に大事なことだと思います。

 あともう一問、せっかくおいでですから香川さんに伺いたいんですけれども、WTOとTPPの関係はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOは、御案内のように、ドーハ・ラウンド交渉が今まだ続行しておりまして、政府としては、多角的自由貿易体制、WTOを中心とするこの体制のもとで自由化が図られていくということが極めて重要であるということで交渉に参加してまいりました。この姿勢は全く変わりません。

 TPPも含めまして、EPAというのは多角的自由貿易体制を補完するものであるという位置づけになっておりまして、ですから、アジア太平洋におけるEPA、TPPが多角的自由貿易体制に資する協定になっていく、そういう観点から取り組んでいくべきものだというふうに思っております。

保利委員 この問題は意外に複雑でして、国民の皆様はここが一番わかりにくいところじゃないか。

 自由貿易はWTOの場でやろうということで、ずっと、ドーハ・ラウンド、その前のウルグアイ・ラウンド、その前にもありました、それがやられてきて、自由貿易というのはそこでやるものだということが宣伝されて、そこへ持ってきて、部分的な、もっときつい意味のTPPなんかが発生してきているということは、国民の皆さんは一番わかりにくいところなんです。だから、外交当局として整理をして、一遍わかりやすく国民に説明する必要があると僕は思いますね。それを一つ研究しておいてください。よろしくお願いします。

 外務省に関してはここまでにいたしますので、どうぞ、用があったら御退席をいただいて結構です。

 そこで、今お話をしたWTOですけれども、この歴史は非常に長いですね。私も三十年以上議員生活をやっておりますが、いつもこの問題で悩まされてきた。これは大臣も御記憶があると思います。何遍も何遍もジュネーブに行って、当時のガットですけれども、交渉をした覚えがあります。場合によっては紙を投げつけ合うぐらいの議論をして、日本の立場をもうちょっと理解しろというようなことを言ったことがありますし、そういう激しい議論の中でだんだん、あちらの方も少し耳を傾けるようになってきたということであります。

 WTOのウルグアイ・ラウンドの決着というのは非常に難しいことでございましたけれども、ウルグアイ・ラウンドの決着のときにはどういうことが起こったかというと、これを決断されて、最終的にウルグアイ・ラウンドの締結文書に署名をされたのは当時の羽田孜外務大臣でいらっしゃいました。モロッコのマラケシュに行って、そしてサインをして、それでウルグアイ・ラウンドは妥結して、当時の事務局長のサザーランドがチーンと鐘を鳴らしたという非常に印象的な場面があったわけでございますけれども、このウルグアイ・ラウンドの中で言われておりましたことは、例外なき関税化という考え方ですね。すべての国境措置は、すべて関税化しなさいと。

 だから、日本はそうはいってもお米なんかはそんなに関税を引き下げるわけにはいかないということから激しい交渉があって、当時、京谷さんはおられたかどうかわかりませんが、鶴岡さんとかあるいは塩飽さんとかが随分苦労されて、農林省は闘いましたね。それで、高い関税を維持することについては認めてもらった。しかし、条件がある。その条件は何かというと、ミニマムアクセス。少なくとも日本は、需要のある部分を輸入する義務を負うという形になりました。

 義務なのか義務じゃないのかというのは当時の細川総理と予算委員会で随分やりとりしましたが、つまるところ義務だったと思います。それを今日まで日本は忠実に履行してきていると私は思いますよ。それで、SBSというような方法も考えながら米の輸入をしてきたというのがウルグアイ・ラウンドの結果でございます。

 そこから一転して、TPPにおいては関税を全部撤廃しろと。これはちょっと、ウルグアイ・ラウンドの結果からいったらむちゃくちゃな方向転換じゃないでしょうかね。方向転換とは申しませんが、階段を七、八段、一遍に飛びおりるような形じゃないかなと私は思います。一挙に関税を廃止するというのは、今までやってきたWTOにおける外交交渉からいって、先ほども申しましたとおり、余りに、飛躍というんじゃなくて、下へ飛びおりたという感じでございますが、これはアメリカの団体が非常に強くいろいろ要望をしているということでございます。

 しかし、アメリカはアメリカで、中にTPPに反対をする勢力もいらっしゃるということでございますので、これは非常に複雑です。そういう複雑な中で、しっかり議論をして早期に結論を出すというのにしては、議論が余りに進んでいないんじゃないか、政府の中で。その段階で早期に結論を出すということは、どういうことになるのかなと。私どもはわかりません。

 その辺は農林水産大臣としては閣内にいらっしゃるからなかなか言いにくいのかもしれないけれども、しっかり議論が終了しかかっているのかどうか、そこをひとつ御説明いただけますか。

鹿野国務大臣 先生の今の御指摘のとおりに、しっかりと議論をするということのためには材料が必要であります。材料というのは情報でございます。今、九カ国においてどういうふうな交渉になっているのか、こういうふうなことによっていわゆるTPPという協定の内容というものが少しずつ明らかになってくる、そういうことを踏まえて議論する必要がある。このようなことから、私自身は、とにかく情報を提示するというふうなことの必要性を常にあらゆる場において申し上げてきたところでございます。

 そういう中で、いわばいろいろな報道等というふうなことの中で、十一月のAPECまでに何らかの結論をというようなこと、このことについては、やはりそれまでに本当にしっかりとした議論というふうなものがなし得るのかどうかというようなこと、それからもう一つは、先ほど申し上げましたとおりに、期日を決めて、そして何らかの判断をしていくということは我が国の外交交渉上どうなのかというようなことを踏まえたときに、私自身は、閣内におきましても、情報の提供というものをしっかりとやって議論すべきである、そして同時に、結論を出す、何らかの方針を出す期限を切るというふうなことは慎重であるべきだということを申し上げているところでございまして、このことはこれからもしっかりと議論を重ねていく必要があるというようなことも含めて、私自身の考え方を申し上げていかなければならないと思っております。

保利委員 APECの会議は十一月の十一、十二日と伺っております。それまでの時間というのはごくごく限られている。十一月三日は休日でありますし、休日関係なしに政府の中ではいろいろ議論されると思いますけれども、しかし、余りにも時間がなさ過ぎる。例えば、もう論点整理がきちんとできていて、あとはマル・バツをつけるだけという状況では必ずしもない。

 そういう状況の中で見切り発車みたいにしてこの国家の重大問題に結論を出すということについては、大臣がしっかり頑張って、ここはもうちょっとしっかり議論させろ、少しおくれたって構わないじゃないかということを閣内で主張していただきたいと私は要望いたしますが、大臣、決意を述べていただけますか。

鹿野国務大臣 今、保利先生からの御指摘の点は、保利先生が政治家として国を憂い、国を思う気持ちの中での大変重要な御指摘でございますので、私自身は一議員として、一閣僚として、保利先生からの御提言というふうなものは頭にきちっと入れながら今後行動してまいりたいと思っております。

保利委員 大臣には今の段階での御発言はその程度かなと思いますので、それ以上は申し上げません。ぜひ私どもの気持ちとしてお酌み取りをいただいて、政府の中で国家の重大事をそんなに簡単に決めるなということを言っていただきたいと思いますし、総理には、農業関係がどういう問題に直面するのか、このことによってどのような被害、被害というよりは、大きな影響を受けるのかということをよく御説明いただきたいと思います。

 それは、ほかの省庁の大臣方も、また農業が騒いでいるぐらいの気持ちの方もいらっしゃるんじゃないかと思うんです。そんなものじゃないんです。実はこれは私は年来主張しておりますが、食料安全保障という重大な概念と関係があると私は思っております。食料安全保障というのは、国家としては、いついかなる事態があっても国民に必要にして十分かつ良質な食料を供給する体制が食料安保だと私は思うんです。そういう点を御理解いただきたいと思う。

 そんなものはもうお金で済ませばいいんだと、先ほども議論が出ておりましたが、所得補償では随分お金がかかるぞというようなお話でした。所得補償で片づけられる問題とは違うと私は思っておりまして、それをひとつ大臣もほかの閣僚に働きかけていただいて、食料安保というものに対しての考え方をしっかり植え込んでいただきたい、このように思います。

 大臣の御決意をひとついただきたいと思います。

鹿野国務大臣 昭和四十年代でございますけれども、先生も御指摘のとおりに、国際分業論というふうなものが一時盛んに言われたときがありました。いわゆる農産物等々は土地の広い諸外国に賄ってもらうということでいいんじゃないかと。しかし、このようなことが果たしてこれからの日本の次の時代を考えたときにどうであるのかというようなこと等々から、食料安全保障というふうな問題について議論がなされるようになりました。

 特に、私自身、決して自画自賛で申し上げるわけではございませんけれども、二十三年前の農林水産大臣当時、五極の農林大臣会合がありましたときに、初めて国際会議の場で正式に食料安全保障という問題を提起いたしたところでございました。自来、この問題意識は、今日まで共通の考え方のもとに、私自身ずっと頭の中に入れさせていただいているところでございます。とりわけ、食料とエネルギーというものが金さえあれば何とでもなるという時代はもう完全に終わったという、この認識を持っていかなきゃならない。

 そして、昨年の十月でございますけれども、新潟におきましてAPECの農林大臣会合が初めて行われました。このときに、二〇五〇年におきましては世界の人口が九十億を超すということを考えたときに、すべての国が食料増産というふうなものをきちっと受けとめていかなきゃならない、このような考え方が採択されたところでございまして、そのようなことも考えたときに、先生からの御指摘の食料安全保障という、この視点というものは、これからの次の時代に対しての、政治の世界に生きる者としての大きな責務でもあるというふうなこともやはりきちっと受けとめておかなければならないのではないか、こんな思いをいたしているところでございます。

保利委員 今もお話に出たかもしれませんが、世界の人口は七十億に達しようとしているわけですね。そのうちの十億近い人間が飢餓に苦しんでいるという状態。これは日本のみならず全世界の食料安全保障というのをどう考えるかという問題ですから、恐らく世界の指導者が集まる会議で、やはり総理から、そういった懸念を日本は持っているということをきちんとお話しになられるのがいいんじゃないかなと思っております。そういう意味で、日本の食料安全保障というのは、TPPを前にして非常に危機感を感じているということを強調したいと思うのであります。

 そこで、最近、農林漁業の再生実現会議ですか、これは総理が議長を務めていらっしゃいますね、そこで一つの結論を出されました。それで、この結論について、総理はこうおっしゃっていますね。高いレベルの経済連携と農業を再生していくことは、両立できるかできないかではない、しなくてはいけない、マストです、こうなっているんです。

 今発表されました農業の再生プランというのはTPPとは関係がない、大臣はこうおっしゃっているやに報道されておりますが、それは今でもそういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。

筒井副大臣 きのう再生実現会議の対策本部で決まりました基本方針、これは、大臣が常に強調しておりますように、TPP参加とは全く別次元の方針でございます。TPP参加を見据えたものでもないし、それを前提としたものでもありません。参加ということになれば全く別の対処政策、対処方針が必要になってくるわけでございまして、それは基本方針の末尾でも、経済連携に関しては、個別の経済連携ごとに改めて検討するという記載があります。

 ですから、全然別次元のものであるということは内容的にもはっきりしているわけでございますが、そのことは官房長官も、担当であります古川国家戦略大臣も明白に確認しているところでございます。

保利委員 国家的な大事でありますTPP問題という黒い雲が覆っている中で、それとは全く関係ありませんと言って農業再生計画をおつくりになるというのは私はどうも納得できないんです。納得できなくてもそれは私の勝手かもしれませんが、そういう切り離した形では、これはやはり真剣にTPP問題を考えていらっしゃるのかどうかということが疑われるなという感じを持って仕方がないんです。これはもう率直に私の意見ですね。

 ですから、やはりTPPを前提としたものということで考えていった方がいいんじゃないかなと思いますが、今の副大臣の御答弁を聞いておりますと、TPPは関係ないよという感じで、しかし日本の農業を強くするためにこういうことを考えたんだというふうに聞こえるわけでございますが、現在の時点でそれでいいのかどうかということは私どもは大きな問題があるなと思っております。ということは、TPPで想像される事態というのはこの農業再生計画ではとても間に合わないんじゃないかということを私は心の底に感じるんですが、そこら辺については感想はございますか。

筒井副大臣 今の点は、まさに先生のおっしゃるとおりだと思います。TPP参加ということになれば、今度の基本方針では全くそういう対処ができないものだというふうに思っております。

 それらの基本方針をTPPが議論されている最中に決めるのはおかしいんじゃないかという先生のおっしゃることも理解できるんですが、しかし、今、TPPは、交渉参加でさえ決まっているわけではありません。賛成、反対がまさに今議論を始めたところでございまして、その状況で参加を前提とした基本方針を出すことはかえって正しくないというふうに思っております。

保利委員 それは見解の相違になるのかなと思いますけれども、TPPというのは見えないよ、とにかく日本の農業を強くしなきゃいけないよという観点からおつくりになったプランだとするならば、TPPは全く関係なしということならば、TPPに参加することはしっかりやめた方がいいんじゃないか、そうでないと、せっかくつくったプランというのが意味をなさなくなってくる、そういうふうに思いますので、そこら辺は、これは議論を重ねていても仕方ありませんが、そういう指摘があったということをよく心にとめておいていただきたいと思います。

 それを一つ、これは副大臣にまた、どういう御感想をお持ちか、もし可能ならば御答弁いただきたいと思います。

筒井副大臣 もちろん、先生のおっしゃることをきちんと頭に入れておきたいと思います。

 先ほども申し上げましたが、TPP参加ということになれば、今度の基本方針では全然対処になっていないということは先生のおっしゃるとおりでございます。

保利委員 よくわかりましたが、総理が、両立できるかできないかではない、しなくてはならないんです、マストです、そういう発言をしておられることと整合性がどうとれるのかなと、私は頭の中でちょっと混乱しておりますので、そこら辺はよく整理をして、またいずれかの機会にお話をいただければありがたいと思います。

 何かありますか。

筒井副大臣 総理のおっしゃる趣旨はもちろん御本人に確かめていただきたいわけでございますが、高いレベルの経済連携に……(発言する者あり)答弁しているんですからちゃんと聞いてください。高いレベルの経済連携に参加するということになった場合に、それに対する対処方針、対策をきちんととって両立させるという趣旨なんだろうというふうに理解をしております。

保利委員 これも副大臣としての限界かもしれませんな。それはそれで私は受けとめておきますが、私の気持ち、我々の気持ちをどうぞしっかり胸に入れておいていただきたいことを希望いたしたいと思います。

 そこで、仮に完全自由化というような問題が起こったときに、日本の農業が立ち行くのか行かないのかという観点から少し考えてみなきゃいけないと思っております。

 私はかつて、かなり前ですけれども、アメリカのルイジアナ州の農家に三日間泊まりまして、そこのだんなとつたない英語で話をしながらアメリカの農業を理解したわけです。そのときに出てきた言葉というのがあります。御存じの方もいらっしゃると思いますが、ここの単位というのは、アメリカの農地の単位というのはワンセクションである、こう言いました。それは、昔、ルーズベルトが新規巻き直し政策というのをやったときに、アメリカの農地開発ということをしたときに、ワンセクションというのを単位にして農地開発をした。

 しからば、ワンセクションとは何だ。ワンセクションは一マイル四方であります。アメリカの農地に行ってみますと、例外はありますけれども、大体一マイル四方で正方形の農地ができておる。これが何ヘクタールになると思いますか。一マイルですから千六百メートル。十六掛ける十六、二百五十六ヘクタールですよ。これが一軒の農家が経営している面積です。

 二百五十六は全部耕し切れないから、二百とか百八十とか、そのくらいのところで耕しているんでしょうけれども、それを何と、そこのだんなと助っ人一人と、高校生の男の子が手伝って、そこでトウモロコシと大豆をつくっているというところに三日間泊まった。これはとてもかなわぬわ、そのときにそう思いました。それが私の経験したアメリカ農業の実態であります。

 今の話はイリノイの農家でしたので、ちょっと訂正をお願いいたします。

 また、ルイジアナでは米をつくっているところを見に行ったんですが、やはり同じような広さのところでつくっている。飛行機で種をまく。そうしたら、農民がぼやいているんですよ。何でと言ったら、飛行機で種をまくから三〇%はロスが出る、こう言っておりました。それで大体、二毛作に近い状態のことをやっている。それが世界の農業の、世界じゅうとは言いませんが、アメリカの農業の実態ですね。そこと、二十ヘクタール―三十ヘクタールにして、しかも、水田農業というのは基盤整備が大変ですよ、平らにしなきゃなりませんから、水をためるんですから。そういうことがございますので、とても太刀打ちできないなという感じはいたしております。

 しかし、大事なことは、我々が生命をつないでいくべき食料というのは、国家としてやはり少なくとも最低限のものは生産が維持できるように計らっていくというのが政治の役割じゃないか。この十七委員室でいろいろな議論がありましたけれども、そういうことを私は強く感じております。

 そういうことから考えますと、完全自由化を行ったときに日本の農業は壊滅的打撃を受けるだろうと思います。とりわけ、零細農業とも言われておりますが、中山間部。日本は中山間地が多いですね。そこでやっている農業というのは、経済家から言わせれば、こんな非効率な農業をやらなくたっていいじゃないかという議論が出てくるかもしれない。しかし、私は、中山間地の農業に別の意味を見出しております。

 EUの農林委員、農林大臣をおやりになっていたフィッシュラーという人を長野県の更埴市の棚田に連れていったんです。三月でありましたけれども、長靴を履いて三十分も歩いてもらった。よくこんなところで米をつくっているな、どういう意味があるんだ、あの平地でつくった方がよっぽどいいじゃないのという話でした。

 しかし、僕はそのときに説明をしたんです。あなたは、日本の水田のあぜの高さ、あぜというのは難しい言葉ですけれども、英語に訳しにくいんですけれども、リッジとかなんとかという言葉で、その平均の高さは何センチあると思いますかと。

 これは農林水産省の人も余り知らないんですけれども、調べてみましたら、二十七センチというのが日本の平均のあぜの高さでした。二十七センチ、まあ、二十五センチとして見ましても、そこへすり切り一杯の水がたまれば、二千五百トンの水がたまるんですよ、一ヘクタールに。一ヘクタールに二千五百トンの水がたまります。四ヘクタールで一万トンの水がたまります。四十ヘクタールあれば十万トンの水がたまる。そういう洪水調節機能というのを数字を使って説明してあげた。そうしたら、外国の人も、ああ、わかった、こういうのをつぶすわけにはいかないなということを言っていました。

 それほど、山の農業というのはそれだけでも大事な意味を持っていると私は思っております。こういうところの農業をどう守っていくのか、守らないのか、もうそんなものはやめちまえというのを国家の政策として決めていくのか。それとも、やはり大事だから、どんなに抵抗を受けてもそういうものをきちんと整備していこうという気持ちになっているのか。私はそういう気持ちを持っております。

 したがいまして、日本は同じように二十ヘクタール―三十ヘクタールの農地をつくるという余裕はない、そういうところも耕して、日本の国民が生きていく食料をつくっている、そういうことは非常に大事なことだと思いますので、ぜひともそのことを頭にとめておいていただいて、中山間地対策についても十分配慮をしていただくように、大臣にも副大臣にもお願いを申し上げたいと思います。

 大臣、何か御所見はございますか。山形県もかなり山の田んぼが多いと思いますが。もしなければ結構でございます。

鹿野国務大臣 先生からの今の御指摘は見識である、このように受けとめさせていただきます。

 まさしく中山間地域をどうするか、多面的機能を維持するという上で、この政策、これに対する施策はやはり不可欠であると思っております。そういう意味では、経済性というふうなことからのいわゆる政策ということだけではなしに、社会政策的な視点からもこの中山間地対策をやっていかなきゃならないというところも求められるものと思っておるわけでありまして、今御指摘をいただいたような考え方も十分踏まえさせていただきながら、今後、過般まとめさせていただきました基本方針・行動計画を実施する上で受けとめさせていただきたいと思っております。

保利委員 もう時間が終わりますので、きょうの議論の結論部分を申し上げたいと思います。

 それは、賢明な野田総理がこういう状況を理解されまして、よもや関税完全撤廃を目標とするTPPに乗るということについては極めて慎重な態度をつくっていただきたいと思います。もしものことがあれば日本の食料安保というのは根底から崩れていくということを申し述べたいと思います。野田総理がしっかりと御理解をいただくように、農林水産省、そして農林大臣、副大臣、政務官の皆様方それぞれが、日本の農業を守らないと日本の国がつぶれるということを御主張いただくようにお願いをして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

吉田委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官日下部聡君、内閣参事官大杉武博君、内閣参事官川村博司君、内閣参事官松尾剛彦君及び経済産業省通商政策局通商機構部長宗像直子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉田委員長 次に、小里泰弘君。

小里委員 自由民主党の小里泰弘でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私もTPPについてお伺いをしようと思いますが、その前に、農業者戸別所得補償制度、そのカテゴリーについて、日ごろどうしても腑に落ちない点がありまして、若干確認をさせていただきたいと思います。

 戸別所得補償制度は、いわゆる米の所得補償交付金以外にどのような交付金、制度で構成をされておるか、制度名だけまずお伺いします。

鹿野国務大臣 恐縮でございますが、具体的に、今先生からの御質問について、どういうふうなことを聞かれておられるかということをもう一度ひとつ教えてください。

小里委員 別に専門的な詳しい中身を聞いておるわけじゃありません、制度名だけ聞いておる。

 戸別所得補償制度、中身は多岐にわたっていると思うんですね、いろいろな交付金がある、いろいろな制度がその中に入っておる。その中で、米の交付金部分以外にどういう交付金、どういう制度があるか、その名称だけお答えをいただきたい。

筒井副大臣 御存じのことだと思いますが、主食米についての制度と、それから転作についての制度と、それから畑作についての制度、この三つを大きな柱として成り立っているわけでございます。

小里委員 私の方からお答え申し上げます。

 本来の米の所得補償交付金以外に、畑作物の所得補償交付金、水田活用の所得補償交付金、米価変動補てん交付金、それに各種の加算措置で構成をされているわけであります。

 その中で、畑作物の所得補償交付金、これは、自民党政権時代からの品目横断のゲタに当たる部分であります。水田活用の所得補償交付金、今副大臣がいみじくも言われましたように、従来の転作奨励金、これは、先ほど議論にもありました、我々が何年もかけて苦労して築き上げました新規需要米の制度等を含めて、いわゆる転作奨励の交付金に当たるわけであります。そして、米価変動補てん交付金、これは、品目横断時代のナラシをもとにした制度であります。加算措置として、また各種措置があるわけであります。

 ここまでで見ただけでも、そのほとんどが自民党時代の制度をもとにしております。民主党のオリジナリティー、独自色というものは、わずかにこの米の所得補償交付金に限ると言っても言い過ぎではないと思う次第であります。

 続けてお伺いをいたします。

 規模拡大加算、これはどういう制度か、お伺いします。

筒井副大臣 今年度からそれがプラスされたものでございますが、規模拡大をした場合に、受け手の方へ、規模拡大の農業経営をやる方に加算金を支払うという制度でございます。(小里委員「幾ら」と呼ぶ)二万円です。

小里委員 この規模拡大、言いたいことはいっぱいありますけれども、従来自民党が、五、六年前から議論をして真摯に進めてきた制度でありますが、民主党は当初から規模拡大には否定的でありました。

 ちなみに、新制度における規模拡大加算は、自民党政権時代につくりました農地利用集積円滑化事業により、面的集積する場合に農地の受け手に交付をすると新制度ではなっております。おっしゃったとおり、反二万円であります。要するに、旧制度下の集積円滑化事業で仕掛けをつくったものであります。実際に、面的集積の実証的な取り組みへの支援措置として、二十一年度の当初予算で、農地確保・利用支援事業の中で、最大反一万六千円を支払うという過去の経緯もございます。

 それでは、再生利用加算とはどういう制度でしょうか。

 では、こちらから申し上げます。

 これも今回の農業者戸別所得補償制度の中の加算措置の中の一つの柱として出てきておるわけなんですよ。すなわち、耕作放棄地を解消して麦、大豆等を作付する場合、作付面積に応じた加算金を最長五年間交付していく、そういう制度でありまして、平地の場合反二万、条件不利地の場合反三万となっております。

 これも、旧制度下、自民党政権下、平成二十一年度に耕作放棄地再生利用緊急対策交付金として設けた制度が先駆的な制度となっております。耕作放棄地を再生利用する活動に対して反当たり二万五千円から五万円支払うとしたものであります。

 それでは、引き続き加算措置についてお伺いします。

 緑肥輪作加算とはどういう制度ですか。

筒井副大臣 農地の地力の向上、生産の向上につながる、そういう対策に対して加算をする、そういう制度でございます。

小里委員 大方そういう制度であります。

 すなわち、緑肥作物、イタリアン等を栽培し、これを収穫せずに、連作障害を避けるために農地を一年間休ませて、そういった場合、すなわち緑肥作物をそこにすき込んでいく場合でありますが、これに対して交付をするもの。反当たり一万ということでございます。これも旧制度下におきまして、平成十九年度から二十一年度にかけまして、担い手経営革新促進事業という中で行ってきた制度であります。

 また、集落営農の法人化等に対する支援措置というものもこの加算措置の中に入っているわけでありまして、これはもうお伺いしませんが。

 にわかに政府の方からもお答えがなかなかできないぐらいに取ってつけたような制度なんですよ。要するに、自民党時代の政策を、評判のよかった政策をそのまま取り入れて、これを戸別所得補償制度というカテゴリーの中に入れ込んで体裁を繕った、いわば自民党政権時代の制度をぱくって、それをまた農業者戸別所得補償制度というカテゴリーの中に入れ込んでおるわけであります。せめてその制度の中身ぐらいはしっかりと認識をしていただきたいと思います。

 さらに申し上げますが、この戸別所得補償制度の関連支払いとしてどういう制度がありますか。お伺いします。

筒井副大臣 質問の趣旨は恐らく、中山間地直接支払い制度とか農地・水・環境保全向上支援事業、これは今二つの制度に分けましたが、それらの制度のことを聞いておられるのかなと思います。

小里委員 今おっしゃった中山間地直払い制度、それから農地・水保全管理支払い交付金、環境保全型農業直接支援対策、それに加えまして、甘味資源作物・国内産糖交付金、さらに戸別所得補償経営安定推進事業というものが入っているわけであります。

 これらもすべて、今若干お触れになりましたように、例えば中山間地払いは従来からの制度であります。また、農地・水・環境がもとになっているのがおっしゃった制度であります。また、サトウキビとかでん粉用カンショに対して、品目別の経営安定対策を行ってまいりました。これがまた新たな交付金の制度になっているわけなんですね。それから、最後の戸別所得補償経営安定推進事業というものは、従来、緊急対策として、農地集積加速化事業として三千億円積んで、我々が打ち出したもの。これは、民主党さんが否定をして一たん引っ込めたわけでありますが、これをまたよみがえらせたのが、申し上げた戸別所得補償経営安定推進事業ということでございます。

 要するに、自民党時代の政策、しかもその中では規模拡大加算、集落営農、あるいは農地集積加速化事業を初め、自民党の政策を否定しておられた、あるいは極めて消極的であったものも含めて、全部、農業者戸別所得補償制度及びその関連支払いということで、中にひっくるめてきておられるんですね。

 それを、どう申し上げていいのかよくわかりませんが、農業者戸別所得補償制度という一つの名称を冠して、そのもとに体裁を取り繕っておられる。これは余りフェアなやり方じゃないと思うところでございまして、また、特に、申し上げた、政策転換とも解すべき制度が多々入っておるわけであります。その辺の経緯についてどうお考えであるか、お伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 基本的に、今委員から、フェアである、ないというお話でございますけれども、私どもは、与党だろうが野党だろうが、農業者に再生産に向けてのさらなる意欲を持って生産にいそしんでもらうというような政策はやはり大切にしていかなきゃならない、これは共通の認識だと思うんです。

 私ども、あえて申させていただきますと、この戸別所得補償制度の原点は、どこからこういう政策が決定されたかというのは、八年前になりますけれども、当時、菅代表の時代でございました、このときに、野党としてやはり民主党も農業政策というふうなものをしっかりと確立しなきゃならない、このようなことから、私自身にその責任者になるようにということで、私も約十名のメンバーの中で議論を展開して、そこで一つの考え方としてまとまったのが直接支払い制度という、いわゆる所得制度であります。これはまさに今日の戸別所得補償の原点であるわけであります。

 そういう意味で、当然、自民党の政策をただつまみ食いしてまとめたのではないかというような趣旨のお話でもございましたけれども、私どもは、自民党の政策としてやってきたことは、もう六十年間もやってきたわけですから、いいところはいい、これはやっていかなきゃならないというならばやらなきゃならない、こういうことでありますし、基本的には、ただ、所得政策というところに大きな転換がなされたということが現実の姿ではないでしょうかということを申させていただきたいと思います。

小里委員 自民党政権時代の政策を評価していただいて、それを新しい政策に反映させていく、これは我々も賛同するところであります。

 しかしながら、例えば、その看板だけつけかえて、特に、戸別所得補償制度という名のもとに、何もかんも入れ込んで体裁を取り繕うということはまさにまやかしであって、これは我々はなかなか納得できないなと思うところでございます。

 そして、そうやって自民党政権時代の政策をいろいろ集めて全体の体系をつくっておられるわけであります。この中で、あえて申し上げれば、民主党のオリジナリティーというものは米の所得補償交付金だけでありまして、その他はすべて今までの政策を踏襲した。あるいは、自民党政権時代に先駆的な制度があったわけでありますが、いずれにしましても、その全体像をせめて理解をいただかぬと、どういった政策を自分たちが展開しようとしているのか、自民党政権時代の政策にこういうことを学んだ、これを入れ込んだということぐらいは理解をいただかないと、先ほどからの答弁でも、なかなか、その個別の政策を聞いても、措置を聞いても、どういう制度か、どういう制度が入っているのかすら理解されておられない。これは極めて残念に思うということを申し上げたいわけであります。

 それと、所得補償交付金そのものは、我々も複雑な思いはございます。しかしながら、この米の所得補償交付金は、米価への影響の問題、あるいは地域のきずなの問題、そしてまた堕農政策につながるんじゃないかというようなこと等、いろいろな懸念があるところでございます。

 したがって、私どもは、真に農業、農村のためになる制度ということで、担い手新法、そして多面的機能支払い新法というものを既に提出をしておるわけでありまして、別の角度から、真に地域の農業、農村を育成する、そしてまた担い手を育成していく、そのための議論をまた今後重ねてまいりたいなと思うところでございます。

 それでは、本題のTPPに入りたいと思います。

 午前中の議論におきまして、いろいろな御意見が出され、また新たな確認もなされたところでございます。

 まずお伺いしたいのは、TPPに参加しないと世界の自由貿易圏から取り残されるというふれ込みが政府側から盛んに当初から伝わってきたところでございます。

 TPPの参加国を考えてみますと、今のところ、参加予定九カ国であります。御案内のとおり、そのうち六カ国とは既に自由貿易協定、FTA、EPAを結んでいる、あるいは結びつつあります。豪州とは、農業、農村をしっかり考慮していく、その前提で今交渉を進めているところであります。ニュージーランドとは、今後のバイの交渉を進めていくべきであろうと思いますが、要するに、残るところ、米国との関係、GDPから計算しても、要はTPPというのは日本と米国との関係であるということは論をまたないところであります。そして、もちろんそこには韓国も入らない、中国も入らない、EUも入らないのであります。

 そして、米国との関係におきましては、米国における関税、工業品の関税は平均二%だったでしょうか、極めて低いものでありまして、為替変動リスクの方が大きいという状況であります。対して、農産品の方は、日本における大変な対応を迫られているわけでありまして、さらに、アメリカにおける工業品の現地生産が進んでいるというようなことも考え合わせますと、要するに、TPPは、日米関係であるが、日本にとってのメリットはほとんどないということが言えるわけであります。

 また、このTPPをやらないと、これが今後アジアにおける自由貿易圏づくりの一つの核になっていくんだからというような御意見もありますが、ではアジアではどうなっているかと考えますと、アジアでは、ASEANが一つの連携をしております。そのASEAN諸国、東南アジア諸国とは日本は既にEPAを結んでいるわけでありまして、その中の中心となっておるタイやインドネシアにしましても、まずはASEANの中で、アジアの中でしっかりと連携を図っていこう、そして米国に対して対抗していこう、そういうスタンスにあるわけでありまして、決して、TPPに参加しないと世界の自由貿易圏から日本が取り残されるわけではない。それよりもむしろ、まずは、東南アジアを中心とする地域における、日本が中心的、先導的役割を果たしていくためにも、そういった地域を中心にしてしっかり対応を図っていく必要があろうと思いますが、そういった観点から大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 昨年の十一月に、当時は菅内閣でございましたけれども、いわゆる包括的経済連携の基本方針というものを打ち立てたところでございます。その以前の六月におきましては、いわゆるアジア太平洋の自由貿易圏を二〇二〇年までに形成、構築をしていくというようなことにどういう道筋をつけていくか、こういうふうなことから、今小里委員が触れられますとおりに、一つの考え方としては、これからASEANプラス3あるいはASEANプラス6というような形で形成をしていく、あるいはまた、バイの関係で経済連携というふうなものを推進していく、そういう中で、もう一つ、TPPというふうな物の考え方もありますね、このような、道筋についての考え方を示すということになったわけでございます。

 そういう中で、今、御承知のとおりに、どういうふうな方向性を持ってこの経済連携というものを進めていくかというようなことについては議論をいたしておる、こういうふうな経緯、経過でございます。

小里委員 ということは、要するに、日本がこれからとっていくべきは、ASEANあるいはASEANプラス3を核にすべきであって、TPPに参加しないと世界の自由貿易圏から取り残されるわけではないということでよろしいでしょうか。

鹿野国務大臣 TPPの交渉参加をするかしないかを早く決めないと世界の自由貿易というふうなところの、いわばバスに乗りおくれてしまうということは決して好ましいことではない、それも一つの考え方であると思いますが、私自身は、まさしく、この今の段階で乗りおくれることになるというふうなことは、もっといろいろTPPに関しての議論が必要ではないか、こういうふうな認識に立っておるところでございます。

小里委員 もう一つ歯切れのいい答弁を期待したいと思います。

 午前中の議論で、TPPは関税の完全撤廃が前提である、これがないと交渉に入れないんだという認識が政府から示されました。そこで、それを前提にしてお伺いをしたいと思いますが、TPPを奇貨として、これを契機として、日本の農業の構造改革を進め、競争力をつけるんだという議論があります。

 ところが、先ほどの議論で、規模拡大で競争力をつけるということは難しいという答弁でありました。では直払いはどうかとなると、直払いをどのような規模でどのようにやればいいかという考えは今のところ存在しない、その計画はないということでありまして、現在ある、出された基本方針ではTPPには対応できないという御答弁もあったわけであります。要するに、TPPに交渉参加するに当たっての対策も戦略も何もないということが先ほどの議論で明らかにされたわけであります。

 ちなみに、日本における関税保護額というものは、直近のデータではどうなっておるんでしょうか。

筒井副大臣 日本のすべての品目についての……(小里委員「農産品、農産品」と呼ぶ)農産物についての平均の関税率を……(小里委員「いやいや、関税保護額。全体額。関税保護額です」と呼ぶ)それが、先ほども申し上げましたが……。徴収している関税額そのものですか。(小里委員「関税保護額、OECDが出しています。関税保護額。関税によって守られている額ですね」と呼ぶ)関税によって守られている、そのことによって、関税が全部ゼロになった場合に四兆五千億円の減少額が出てくるということは先ほど申し上げましたが。

小里委員 結果としてはそういうことになるんですが、OECDが毎年関税保護額というものを発表しておりまして、この直近のデータ、たしか二〇〇九年だったですか、その数字を見ますと、四兆三千五百億円となっております。今、副大臣がおっしゃった必要な措置というか、影響額、それに大体一致をしてくるわけであります。要するに、関税を完全に撤廃して、それを直払いで補おうとすれば、この関税保護額相当額がほぼ必要になる、それに近い額が直払いで必要になるというふうに認識をできると思う次第であります。

 そこで、今までの議論で、そういった中身の国内対策がなかなか議論がなされていない、その用意もないということでございました。

 例えば、EUは、貿易自由化に先立って対応をしてまいりました。一九九二年のウルグアイ・ラウンド以前に対策を打った上で交渉に臨んだわけでありまして、そして、想定よりも、結果は、関税は思ったより下げなかった、たしか半分ぐらいしか下げなかったと思うわけでありますが、各国が、こういった貿易自由化交渉に臨む上では、事前に対策を打って、しっかりとした戦略を練った上で臨んでおるわけであります。

 日本のように、先ほどの議論にありましたように、構造改革を進めても競争力をつけることは不可能であるという条件下で、国内対策、財源も何も考えていないということは一体どういうことであろうか、まさに、日本の国益というものを考えておられるのか、極めて疑問の残るところであります。

 また、カナダは、供給管理制度というものがあったんですね。このTPP交渉参加をどうするかどうかという前に、要するに、鳥肉、卵、乳製品の輸入割り当て制度であります。この供給管理制度を米国が指摘をしました。しかし、カナダは、これを、国益に照らしてきっぱりと拒否をして、そしてTPP交渉参加入りを見送ったわけであります。要するに、たとえ隣り合っていても、しっかりと主張すべきは主張する、拒否すべきは拒否する、これがまた日本の国益を考える上での政治がなすべき役割であろうと思います。

 EUとカナダから非常に貴重なことを学ぶわけでありますが、そういった他国の例にかんがみましても、いかにも、今、日本は何の用意もなく、対策もなく、戦略もなく、このTPP交渉に参加しようとしているわけであります。

 そういった観点から、農林水産大臣として、真にどうあるべきと考えておられるか、改めてお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 非常に重要な御指摘をいただきましたけれども、先ほど申し上げますとおりに、二〇二〇年までにAPECにおきましての自由貿易圏をどうやってつくっていくかというふうなことにおいてはいろいろな道筋がある、こういうことを申し上げたわけでありますけれども、その中でどういう選択をするかということになりますならば、戦略ということを言われましたけれども、当然、戦略論的な視点に立ってやはり議論をしということも非常に大事なことではないか、こう思っておるわけであります。

 アメリカ、中国という二つの大きな巨大国に対する、あるいはASEANの国々に対してどうするか、あるいはまた、日本の国が国内対策というふうなことも含めてどういう選択肢があるのかというようなこと等々、諸外国あるいは国内、両方を見据えた上で戦略的に判断をしていくということは、議員の御指摘のとおり大事なことだ、私自身はこういう認識に立つところでございます。

小里委員 米国では来年十一月に大統領選挙を控えておるということは御案内のとおりであります。そして、TPP参加入りを各国が、議会が認めないといけない。特に米国議会に対しては、米国議会がそれを審議する三カ月以上前に通知をしないといけないということは御案内のとおりであります。したがいまして、仮に近いうちに日本が参加表明をしましても、実際にアメリカ議会で交渉参加入りが認められるのは来年の三月、四月だろうと思います。そのころはもう選挙モードにも入っているんだろうと思うんですね。なかなかこの交渉の議論も行いがたいんだろうなと思います。要するに、今日本が参加表明をしても、にわかにこの交渉に参加できる、日本の主張を展開できるわけではないんだろうと思うんですね。

 それと、大震災で、被災地の農林水産業が大変な打撃を受けました。さらに被災地の農業にむちを打つつもりですかということを、この前も現地に行きましたときに聞かされましたし、これは民主党の議員からも聞かされたところであります。さらにまた、風評被害は全国に及んでおります。風評被害で日本の農産品は輸出競争力をなくしている、買ってもらえないわけであります。さらにまた、ここに円高が来て、日本の輸出競争力というものは低下をしているわけであります。こういった事情をかんがみますと、外交上、もっと検討させてくれと日本は言える立場にあると思うんですね。そこはまた、外交上、外国の政治家も理解をしてくれるんだろうと思うんです。

 どうでしょうか、大臣。

鹿野国務大臣 今委員からの御指摘の点は、一つの重要な考え方である、こういうふうなことで受けとめさせていただきたいと思います。

小里委員 交渉に参加しても、途中で、日本にとって都合が悪いとなれば抜けていいんだということが民主党の幹部から発言がなされまして、それでもって民主党の反対派議員の皆さんをなだめようというふうに出ているように聞いております。一方で、昨日、玄葉外務大臣が、この交渉に参加後、途中離脱することは理論的には考えられるが実際には難しい、要するに途中離脱は困難との見方を示したわけであります。私もそうだろうと思うんですよ。

 要するに、日本が交渉に参加すれば、そこにまた新たな交渉バランスというものが生まれるわけであります。それを、途中で都合が悪いから抜けるとなりますと、各国に迷惑をかけるんですね。ましてや、途中で離脱をするという可能性を示しながらの交渉というものは、いわば半身の姿勢で交渉するということでありまして、なかなか得るものも得られないんだろうと思います。

 こういった観点から、実際、どうなんですか、政府の見解として。玄葉外務大臣の見解が私は妥当なんだろうと思いますが、これは内閣府でしょうか、お伺いします。

川村政府参考人 お答え申し上げます。

 協定交渉に際しまして、交渉参加国のやむを得ぬ事情から交渉が事実上行われなくなるということにつきましては、EPAでも前例がございます。

 TPP協定につきましても、交渉に参加して、我が国の国益に全くそぐわないものであるような場合、これは玄葉大臣もおっしゃっておられるとおり、外交上の配慮等々を考える必要はございますけれども、交渉を離脱することは、これは官房長官も明確に記者会見などでおっしゃっておられるとおり、一般論としては、論理的にはあり得ないわけではないと政府としては考えております。

小里委員 今の御答弁からすると、要するに、内閣の中で不一致があるということなんですね、この認識について。これは改めてまた予算委員会等で取り上げてまいりたいと思います。

 申し上げるまでもなく、日米関係の悪化を招いたのは民主党政権であります。要するに、アメリカに負い目をつくってしまったんですね。そのような状況下で、交渉途中においてこれを下車するとなれば、さらに日米関係の悪化を招くということは火を見るよりも明らかであります。そういったことを考慮いたしましても、この交渉参加後、これを途中離脱するということはなかなか困難であろうなと、玄葉外務大臣の認識を私は認めるところであります。これはまた引き続き議論をしてまいりたいと思います。本当に、特にここは大事な論点であると思います。

 その他の分野におきましても、要するに、関税の自由化以外の分野におきましても、政府から、それぞれの分野ごとにメリット・デメリットの認識が公表になったところであります。

 しかしながら、その中で、例えば、公共工事を海外の業者に開放することになるんだとか、あるいは、郵政が小泉内閣の民営化どころの騒ぎではなくなるんだというようなことであるとか、BSEの問題であるとか、多くの懸念があることがその中にも出てきておるわけであります。さらにまた、医療、保険、労働者の分野を初めとして、明確にその懸念を否定はしていないんですね。例えば、今の段階では考えにくいとか、議論されていないとか、そういう抽象的な、あいまいな表現が目立っているわけでありまして、それぞれの分野にわたって多くの懸念があるということがむしろ明らかになっているわけであります。

 こういった多くの懸念が存在する中で本当にこのまま進んでいっていいのか、本当に我々は心配するところであります。日本が、先輩の皆さんが営々として築いてこられた日本の社会のシステム、誇るべき文化というものまでが崩壊をしかねないという事態でありまして、極めて憂慮をするところであります。

 さらに申し上げますと、TPP交渉参加予定国のほとんどが外需依存の小国であります。あるいは農産品輸出国、そして低賃金労働国でありまして、日本と利害が一致しないんですね。したがって、多数派工作は極めて困難であると私は認識をしておりまして、交渉に参加しても、日本にとっての有利なルールづくりというものはなかなか期待しがたいわけであります。それよりも、今は事態を静観して、その間にしっかりと議論をするということが、これはもう論をまたないところであろうと思います。

 大臣が先ほど、期限を区切って交渉してはならない、交渉参加を期限を区切って決めてはならないと何度か答弁をいただいたところであります。であるならば、今までのこの議論にかんがみまして、農林水産大臣として、体を張って、この早期の参加には納得しない、体を張ってこれは阻止するという決意というものがあるかどうか、お伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 TPPに関係しての交渉参加するかしないかというのを期限を切ってやるべきではない、こういうようなことを言われましたけれども、私は、そのことは慎重であるべきである、こういうふうな表現で申し上げさせていただいておるところでございます。

 同時に、きょうもそれぞれの委員の皆様方から、TPPの参加交渉に関する御意見、お考えというものをお聞かせいただきました。大変、私自身にとっても大事な指摘をいただいた。私自身というよりは、私も議員の一人としてこのことを受けとめさせていただき、閣僚としても受けとめさせていただく。そして、同時にまた、TPPというふうなものに参加をすべきだ、交渉参加すべきだという考え方も一方にはあるというふうなことも承知をさせていただいておるわけであります。

 そういう中で、きょう御指摘をいただいたところも受けとめさせていただきながら総合的に判断をしていくというふうなことが私にとって大事なことだ、こんなふうに思っておりますが、いろいろときょうは御参考になるお考えをお聞かせいただきまして、ありがとうございました。

小里委員 今回の事態は、日本の農林水産大臣としてどのようにこれに対応されるか、極めてその真価というものが問われているわけであります。日本の農業、農村をしっかりと守っていく、その使命が、当然大臣には最たるものがあるわけであります。同時にまた、先ほどから議論にありましたように、各分野にわたって大変な懸念材料があるところであります。これは国務大臣としても大変な決断、対応を迫られているわけであります。どうか、後世に汚点を残すことのないように、しっかりと対応いただきたいとお願いをするわけでございます。

 そもそも、世界の人口というものがいよいよ七十億人になろうということが先般報道にあったところでございます。世界の人口はどんどんふえてまいります。二〇五〇年には九十億人台に至るであろうという予測でありました。世界の、また、中国、インド等の新興国が経済発展をしてまいりますと、さらに食料需要が高まっていくということもございます。要するに、これから世界は加速度的に食料不足の時代を迎えてまいります。今でも食料飢餓人口が十億人近いものがあると言われておりまして、この点は以前にも大臣に対して申し上げたところでございます。

 そういった中で、世界各国が食料生産基盤を増強して食料供給体制の強化というものを図っていかなければならない、これも論をまたないところでありまして、TPPであろうと何であろうと、貿易自由化の結果、どの国であれ、その食料生産基盤というものが損なわれてはならないというのは、これはもう信念として我々は共有をしていかないといけないんだろうなと思うところでございます。

 この点において、農林水産大臣としての改めての見解をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 TPP参加交渉に対する対処というふうなものにおきましては、今御指摘のとおりに、今日の農林水産業にかかわっておる方々にどういう方向性を持って道を切り開いていくか、そういう意味での受けとめ方を私自身もしていかなきゃならない、これはまさしくそのとおりであります。

 同時に、私も一議員でありまして、閣僚の一員でありますから、我が国の国益というふうなものを考えたときにどうであるか、そういう意味も含めて、総合的な視点に立って、きちっと情報を受けとめていきながら、しっかりと勉強もし、そして、そういう中で私の考え方を申し上げていくということも大切なことではないかと思っておるところでございます。

小里委員 いざというときに、日本の使える農地をフルに使って、そこにカロリーのある作物を作付しまして、例えば芋などを作付いたしまして、一人当たり最低限必要とされる一日当たり二千キロカロリーの食料生産基盤というものを確保していこうというのが食料安全保障政策の基本にあったと思います、今でもあると思います。

 この、いざというときにカロリーのあるものを作付して、一人当たり最低限度の二千キロカロリーの食料生産基盤を確保していく、これを超えるところの要求というものは認められがたいものがあるかもしれません。しかし、これを守らんがための範囲における、自由化交渉における日本の主張というものは当然認められるべきであって、むしろ、国際交渉における、食料生産基盤の確保、その基準になるべきであると私は思うところであります。

 日本として、国民の必要な食料をしっかりと、いついかなる事態でも確保していく、そのために国際交渉上のルールというものを、新しいルールというものをむしろ主張していくべきであるという持論を私は昔から持っているところでありますが、そういった観点から大臣のお考えをお伺いします。

鹿野国務大臣 今の先生の御指摘の点は、私自身、真摯に受けとめさせていただきたいと思っております。

小里委員 今まで、与党議員の皆さんも含めて、このTPPについては議論がいろいろございまして、いろいろな意見がございました。またこの後も議論が続いていくんだろうと思います。まさに、今、日本の国の歴史的な、大変大きな正念場に立たされているんだろうなと思います。その中で、この農林水産委員会が果たしていくべき役割というものは極めて大きい、まさにこの委員会がその中心となっていかなくてはならないわけであります。引き続き、こういった議論の場を積極的につくっていただきたいなと思うところでございます。

 失礼な質問もあったかと思いますが、一に、日本の農業、農村のこれからを思う、そして日本の社会のこれからを思う、共有した思いのもとに質疑を行ってまいりました。これからもよろしくお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

吉田委員長 次に、小野寺五典君。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 冒頭、TPPについて少しお話をします。

 実は、つい数十分前まで、外務委員会で、玄葉外務大臣にTPPのことについて質問をしておりました。そして、玄葉外務大臣は、TPPをもし途中で抜けるようなことがあったら、当然これは重要な日米間の大きな外交問題になる、そういう認識を改めてお話をされました。そこで、もう一回聞いたんです。最終的にはTPPは国会の承認が必要になる、では、国会承認を受ける見込みはありますかと。明確に答えが出ておりませんでした。

 恐らく、今後、農業の問題だけじゃない、保険や金融やサービスやさまざまな問題で、今回かなりのTPPへの懸念が出てくるんだと思います、交渉の過程で。そうすると反対の方がますますふえてくるんじゃないか、今でも例えば玄葉大臣の地元の福島では、玄葉大臣以外はみんな反対をしている、本当にまとめられて、これは国会で批准できるんですかと。自信があるという答弁は一切ありませんでした。ということは、結局、これは国会で批准できなければ、もっとひどい日米関係の最大の亀裂になるんじゃないですか、与党ですから、批准ができる見込みを立てていただいた後に交渉参加しないと大変無責任なことになる、沖縄の普天間と同じことになるんじゃないのというお話を何度もさせていただきました。

 私どもが心配するのは、外交関係で一番心配なのは、TPP交渉に参加することじゃないんです。抜けるときが最大、日米の関係が壊れてしまう、だから、見込みがあって初めて交渉に参加するのが普通じゃないですか。このような懸念を今でも持っております。

 そして、玄葉大臣はこう言いました。福島の議員が反対するなら私はみんなを説得する、次の選挙でも、TPP加盟、参加、これを公約としてほかの議員を説得するんですよと。そんなことができるわけない、私は一人でそう心の中で思いました。

 さて、きょうは、牛肉の問題についてお話をさせていただきます。

 御案内のとおり、宮城県含めて東北の中で、汚染した稲わらというのが流通してしまいました。そして、これが牛肉のさまざまな実被害、風評被害につながっております。

 一つ、これはきょう、けさ入ったニュースで、流通業者の方から届いた情報です。新潟日報、きょうの朝刊です。汚染宮城産牛肉が販売された、小千谷市のスーパーで、基準値以上の数値がある牛肉が販売されて流通してしまったというのが、新潟県の発表ということで、きょう新潟日報に出てしまいました。

 この事件を受けて、流通業者の方はこう言っていました。やはり、市場の中に汚染もしくは汚染の疑いがある牛肉がまだ在庫としてある、あるいは、今まで政府はしっかりとした処分をせず、保管してくれと、ある面ではそのようなあいまいな対応をとっていたためにこのようなマーケットの信頼を著しく失うようなことが起きてしまう、こういう事例がなくならない限り市場は回復しない。これは農家の責任じゃないんですよ。恐らく流通業者の責任でもない。

 BSEのときは、市場から冷蔵庫からすっかりこういうものを回収して、焼却処分をしたと思います。改めてこのような事例がないような対応をしていただきたいと思いますが、大臣にお伺いいたします。

    〔委員長退席、佐々木(隆)委員長代理着席〕

鹿野国務大臣 ただいま小野寺委員からの御指摘の点は、私自身も事実関係を確認いたしまして、きちっと対処してまいりたいと思っております。

小野寺委員 事実関係ということ、それ以上に、やはり潜在的にこういうものがまだ流通関係にあるということなんです。ですから、いち早くこういうものを何らかの形で処理していただかないと、またぽろぽろこういう報道が出るたびに、私ども地元の牛が入札を手控えられたり、値段が半値以下になったり、泣いてしまう、そういう現実があります。

 さて、今回の風評被害については、東京電力、これは賠償を負うというふうに審査会でも明確にしていただいております。今、地元の農家、例えば宮城県の農家の方は、七月、八月、九月、十月、場合によっては十一月、出荷停止になっています。あるいは、仮に出荷ができる牛に関しても、値段が半値以下になっている、そういう農家もいます。ですから、収入がないか、収入を期待するものが半値以下になっている。何とか早く先が見たい、何とか早く賠償請求をしっかりしたい。実は、全国の中央会を通じて、当然ですが、宮城もこの請求をしています。でも、今現在も、東京電力から、この請求額、どのぐらい請求し、いつ補償金が出るのか、その内容については全くナシのつぶてです。

 実はきょう、これを東京電力に聞きたいと思って、私どもの方の理事から東京電力の関係者を呼んでいただいて、被害を受けて補償すると決められた宮城の農家、東北の農家の皆さんに対してどのぐらいの賠償額がいつ出るんですかということを聞こうと思ったんですが、理事間での協議成り立たずということで、きょうは東京電力の方の出席ができませんでした。

 であれば、政府にかわりにお伺いしたい。この困っている、被災を受けた農家の方々の補償額というのは、いつ決まり、いつ補償が支払われるのか、見通しを教えてください。

    〔佐々木(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

鹿野国務大臣 宮城県におきましてということでございますけれども、汚染牧草の代替飼料購入費として約二億二千万円を八月三十一日に、肉用牛の価格低下に対する損害賠償として約三億二千万円を九月三十日にそれぞれ請求済みでありまして、東京電力におきましては、書類等を精査の上、八月末請求分については今月中に、九月末請求分については十一月中に本払いを予定している、こういうふうなことを聞いておるところでございます。

小野寺委員 今のお話で、牧草については既に払うと。でも、肉の下落分については、二次の請求分ですが、その請求分については十一月、今月中と言いましたっけ、今。(鹿野国務大臣「十一月中に」と呼ぶ)十一月中ですね。

 再度お伺いしたいのは、その補償が、本払いが出るという金額なんです。農家の方が期待している、本来このぐらいの価格でこの牛は売れるはずだ、でも実際、風評被害で競りでは下がってしまった、この間を補てんしてほしい、これが今回の請求なんですが、農家の方が示している基準金額、満足できる額で今回は査定されているんでしょうか。

吉田委員長 政府参考人、官名を名乗ってから発言してください。

糟谷政府参考人 経済産業省の電力・ガス事業部長の糟谷でございます。

 肉牛に関する賠償につきまして、各県の協議会から、策定いただきました肉牛の評価方法の内容につきまして東京電力に確認いたしましたところ、大きな異存はないということでございます。十一月中には支払いが行われる予定と聞いております。

 いずれにしましても、ナシのつぶてであるということは非常に遺憾なことだと思っておりますので、私どもとしましても、親切、親身な賠償がなされるように、引き続き働きかけを徹底してまいりたいと思います。

小野寺委員 賠償を担当している経産省にもう一度お伺いしますが、今回、この宮城の農家を含め、東北の農家が下落、風評被害を受けたと見積もられる金額、これをほぼ満たす金額が東京電力から賠償として支払われ、その期限が十一月中だというふうに再度確認してもいいでしょうか。

糟谷政府参考人 宮城県からは三億円の御請求をいただいております。その他十二県から既に請求をいただいておりまして、そのうち肉牛が区分されております八県につきましては、合計約十億円の請求だというふうに承知をしております。

 評価方法の内容について大きな異存はないということですので、金額についてもそんなに大きな違いが出ないものと理解をしております。

小野寺委員 現時点では、今の答弁を信じれば、とりあえずは農家の方に安心だよと。実は、農家の方は、この十一月、十二月に農協の決済が控えております。幾ら補償が入って、幾らになるかということがわかれば農協にもうちょっと支払いを待ってくれよという話ができるんですが、それがずっと今までなくて、きょう初めて答弁をいただきましたから、これがもっと丁寧にあれば、農家の方も何とかもうちょっと待てば補償金が入って支払いができる、そういう安心感を与えることができます。ぜひこういう優しいフォローをこれからもしていただきたい。

 そしてもう一点。恐らく、きょうもまたこういう報道が出たので、この風評被害の肉牛、牛肉の下落というのはなかなか急には解消しない。ですから、今回だけじゃない、来月も再来月も、もう少し期間がかかるということになると思います。例えばこれが年を越して一月、二月になったとしても、継続してこの請求というのを農協から、中央会から受けて、東京電力にしっかりかけ合ってもらえるということを確認したいと思うんですが、いかがでしょうか。

糟谷政府参考人 迅速かつ適切な賠償が引き続き継続してなされますように、私ども、全力を挙げて取り組んでまいります。

小野寺委員 とにかく、私どもはこの問題をずっと価格が戻るまで追及してまいりますから、そこは、特に農林水産大臣、農家の味方ということでしっかり対応していただきたい、そう思っております。

 さて、今回、この風評被害の問題については、例えば宮城は牛については対象になりましたが、牛以外、農産物については今回の審査会ではとりあえずは対象にしていただいておりません。その後の答弁の中で、被害があった場合には対象にするというふうになっていますが、私は、今回の農産物の被害のエリアというのがかなり限定化され過ぎているのではないかと。福島やその南の数県が対象になっていますが、宮城や御地元の山形、ここも実は対象になっていない。

 そして、例えば山形ではどんなことが起きているか。もう大臣御存じだと思いますが、桃の農家が大変な風評被害で苦しんでいます。特に今回、山形は観光農園等が大変ありますが、そこへの入り込みが非常に少ない。ということは、本来、観光農園で桃を収穫してもらって販売する、観光農園、農家が、お客さんが来ないから、その桃を普通の農協の出荷に回してしまう。市場があふれてしまうわけです。そして、桃は今下落をしている。これだって風評被害になります。

 また、宮城では野生のキノコを採取して生活している人がいますが、御案内のとおり、キノコにはセシウムの付着が多いということで出荷できない、この時期を逃して全く生産できない、こういう方もいます。

 特に福島南の数県、ここは牛以外の農産物ということで指定されていますが、東北のほかの県はこのような対象になっておりません。ぜひ、この審査会でしっかり対応していただいて、こういう農家の風評被害、例えば山形や宮城やそういうところまでも広げていただき、岩手も青森も秋田もそうかもしれません、しっかりこういうところまで広げて対象を目くばせしていただきたいと思いますが、まず農林水産大臣からお話を伺います。

鹿野国務大臣 損害賠償の審査会に盛り込まれておらない中でも、実質的に今回の原発事故におけるところの因果関係というふうなものがきちっと判断されるものについては請求をするというようなことにもなるわけでございますので、私どももそういう実態というふうなものをきちっと、各県の状況というものを把握もしていく必要があるのではないかなと。そういう中で、今日まで協議会を農林水産省として開いてきたわけでありますけれども、これからも、そういうふうな因果関係がはっきりとするというような場合は、私ども農林水産省としても賠償というものを求めていかなければならない、こう思っております。

小野寺委員 実際、因果関係は明確なわけですよ、宮城のキノコにしても、あるいは一部の東北の地方の米にしても。五百ベクレル以下の、基準値以下ではあるけれども、今、検出されず以外の、例えば二十ベクレル、三十ベクレルが出ました、こうなったら、米の流通業者はそれを引き取りませんよ。実際、被害は出ているわけです。山形でも同じだと思います。桃の問題でもそうだと思います。

 それであれば、きょう文科省が来ておりますが、この審査会の基準の中に、福島あるいはそこから南の数県だけじゃなくて、宮城や山形や岩手という実際に被害が出ているところも今後の審査会の中に入れていただいて、そうすれば農家の方が、ああ、うちの県も農産物が入ったんだ、ではこれも請求してみなきゃいけない、これはどうなんだろう、そういうことになると思いますが、今後の審査会にぜひこれを入れていただくような方向は考えられませんでしょうか。

田中政府参考人 文部科学省政策評価審議官、田中でございます。

 先生御指摘の原子力損害賠償紛争審査会、これは八月五日に中間指針を策定いたしました。この中間指針におきましては、先生からも御指摘がございましたけれども、農林漁業あるいは食品産業の風評被害ということについて記述がございます。

 その指針によりますと、指針に規定されている具体的な損害のほか、本件事故以降、三月十一日の事故以降でございますけれども、現実に生じた買い控え等による被害について、個々の類型あるいは個々の事例ということで、取引価格、取引数量の動向、あるいは具体的な買い控え等の発生状況を検証いたしまして、当該産品の特徴を考慮して、消費者の方々がやはり少し汚染の危険性ということを懸念されまして買い控えをするというようなことが合理性があると認められる場合には賠償の対象となるというふうにきちんと明記をされてございます。

 我々としては、この審査会の中間指針に従って適切な賠償が東電と被害者の方々の間で行われるということを期待しているところでございます。

小野寺委員 審議官、今、最後に期待と言いましたよね。それから、あなたは、ぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃ前提をずっと言っていたじゃないですか。そんな前提が全部合って、そして期待する、そんなしち面倒くさいことをするんだったら、今、これは中間指針じゃないですか、次の指針もまた出るわけでしょう、その中に入れてくださいよ、農産物の項目として。岩手もあります、青森もあります、秋田もあります、山形もあります、宮城もあります。これを入れてくださいよ。入れれば、もっと簡単に話が進むんじゃないですか。

 この中間指針を、これは中間ですからね、さらに審議会を開いてこの範囲について再度検証する、そのようなおつもりはありますか。あるいは、あるとすれば、いつごろやりますか。

田中政府参考人 先生御指摘のとおり、これは中間指針でございます。したがいまして、紛争審査会も、今、引き続き課題に残っているようなことについて審議をしているという状況でございます。

 この農林水産物の風評被害ということにつきましては、先ほども東電の状況について説明がありましたけれども、仮払いあるいは本賠償ということが進んでいるというような状況もございまして、この中間指針に基づいた適切なきちんとした対応が東電としてとられているというふうに考えてございます。

小野寺委員 もうこれは政治的な判断だと思います。農林水産大臣にお願いをいたします。このような被害の実態が表に出てきています。ですから、ぜひこの指針をもう一度きちっと審議会に諮っていただいて、そして適切な対応をしていただきたいという意見を農林水産省から、お願いをしたいと思うんですが。

鹿野国務大臣 御指摘のようなことを踏まえて努力をしてまいりたいと思います。

小野寺委員 ぜひ期待をしております。

 それから、汚染稲わらの処理のことについてお話をします。

 宮城県でも、四万数千個の汚染稲わら、百数十キロのものが残っておりまして、この処理に困っています。基本的には自治体で行えと。今、市町村は頭を抱えています。実は、一つの市の中で何カ所か汚染稲わらの保管の場所を用意しておりますが、ビニールハウスをつくって、その中にこれを入れる。ところが、住民の反対運動があちらこちらで起きています。これは、だれかがどういう形かで説得をしなきゃいけない。今、地元の市町村長がこれを背負って、住民の方にお願いをして頭を下げている、これが現状なんですよ。本当だったら、東京電力の方が来てごめんなさいするのが本当ですが、かわりに自治体の職員や首長がこの責め苦を負っているわけです。これは本当に腹が立って仕方がないんですが。

 であれば、せめて、この汚染稲わらの最終処分をこういうふうにするんだと国で明確に決める。そしてもう一つは、一時仮置き場で置くのであれば、置いたとき、万々が一、可能性は低いかもしれませんが、そこで例えば、放射能汚染の二次被害。置いた場所というのは、減反をしている場所なんです。ですから、草地にしているところにハウスを建てて今みんな詰めようとしているんですが、その周辺には田んぼがあるわけですよ。その周辺には畑があるわけです。そういうところにもし万々が一影響が出た場合、これも損害賠償としてちゃんと見るよ、だから申しわけないけれども最終処分が決まるまでここに仮置きしてくれ、そういう方針を東京電力がするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

鹿野国務大臣 汚染された稲わらにつきまして、パイプハウスでの共同一時保管の取り組みというふうなものが進められているわけでありますけれども、その取り組みにとって大事なことは、周辺住民の理解と納得というものを得るというふうなことでございます。この点については宮城県、関係の県なり市町村の方々も大変苦労なされておられるというふうなことも、私どもも承知をさせていただいております。

 そういう中で、農林省といたしましてもいろいろ具体的なことにつきまして一緒になって取り組んでいるところでございますけれども、とにかく保管場所周辺の空間線量を計測いたしまして、その情報もしっかりと周辺住民の方々に伝達をするというようなことも大事なことであります。

 また、一時隔離した、一時的な保管というものに対する取り組みにおける費用の負担等々につきましても、国がすべて負担をするというようなこと等々、丁寧に住民の方々に説明をしていく必要があるわけでありまして、こういうことにおきまして、農林水産省も県なり市町村と連携をとって取り組んでいかなければならない。さらにその点を、私自身からもそのことを指示し、そして、できるだけ早く具体的な措置がさらに推進するようにしていきたいと思っております。

小野寺委員 農家の方が心配しているのは、自分のところの休耕田に仮にこれを預かるとしても、これは最終処分が決まらなかったらずっとそのまま置かれるだけじゃないか、そんな心配をしています。

 きょうは環境省に来ていただいていますので、伊藤対策部長に、最終処分をどうやったらいいのかということ、そのことを言っていただくのと、その後、糟谷部長、さっき御答弁いただきましたが、もしここで一時仮置きの間にまた何らかの放射能による二次被害が出た場合、これも損害として請求できるよう東電に話をしていくということについて確認をしたいと思います。

伊藤政府参考人 環境省の廃棄物・リサイクル対策部長、伊藤でございます。

 環境省におきましては、放射性物質により汚染されたおそれのある廃棄物を安全に処分するため、災害廃棄物安全評価検討会を開催しまして、適切な処分方法の検討を進めてきたところでございます。

 その知見を踏まえますと、一キログラム当たり……

小野寺委員 途中で済みませんが、こういうことなんです。皆さんは、今回、八千ベクレル以下は燃やしてもいいし、田んぼにすき込んでもいい、だから市町村にやってくださいと。市町村長はその指示を受けて、地元の方に燃やしますと言ったら、地元の住民はだめですと言う。すき込んでいいと言うと、農家はだめですと言う。その間に挟まって困っている。これはどうしたらいいんですか。あなたの基準を聞いているわけじゃなくて、すべて市町村長にこれをぎりぎりやらせるということなんですか、どうしたらいいんですかという、人間としての答えを伺いたいと思います。

伊藤政府参考人 環境省としましては、まずは廃棄物の安全な処分の基準をきちっとつくる、これがまず大前提だ、こういうふうに考えております。そういったことから、八千ベクレル以下につきましては焼却処分を、一定のバグフィルター等の十分な能力を有する排ガス処理装置が設置されている焼却施設であれば焼却しても大丈夫だ、こういうふうな結論を一応得ているわけでございます。

 もちろん、実際どういうふうに処分していくのか、こういったことにつきましては、環境省は、農水省と相談の上、十分説得にも当たっていきたいというふうに思っております。

小野寺委員 お願いしたいのは、市町村長が必死にやってもだめな場合、部長あるいは大臣も含めて、あなたたちが対応なんだから、現地に行って一緒に説得をしてくださいということですよ。

伊藤政府参考人 環境省といたしましても、農林水産省等とも連携して、当然、現地への説明といったことにも当たっていきたいというふうに考えております。現に、災害廃棄物の瓦れきの焼却等につきましては、既に環境省の職員が福島県内の市町村に行ってそういった説得に当たっているというところでございます。

糟谷政府参考人 二次損害について御質問いただきました。

 損害の項目が中間指針に明示されているかどうかにかかわらず、原子力発電所の事故と相当因果関係が認められれば、東京電力は賠償金の支払いを行うべきものというふうに考えております。被災者の方々の御主張、御実態をしっかりと伺った上で、被災者の方々の立場に立った親切、親身な賠償を行うように指導してまいります。

小野寺委員 もしこの二次被害が明確だということがわかれば、賠償していただけるというふうに確認をさせていただきました。

 さて、最後に、これは十月二十五日付で出た我が国の食と農林水産業再生のための基本方針・行動計画ということなんですが、実はこれを見てちょっと違和感を感じたことがあります。

 一つは、ここの表題、項目、目次の中に戸別所得補償という数字がなくなってしまったということ。

 それからもう一つ、ここで、これから目指す農地というのが、平地で二十から三十ヘクタールの土地利用型を目指すということ。これは私は、民主党の農政の中で今まで進めてきたところとかなり方針が違うんじゃないかな、大きく変わったんじゃないかなというふうに思います。

 さらに、農地集積の推進ということで、これは自民党が何とか農地を集積したいということで、借りやすくするとか買いやすくするとか、そういう制度をつくったと思います。その予算がたしか、政権がかわって、すっかり別な方向に使われたというふうに確認をしておりますが。

 私は、この方針が、ある面では正しい方針なんだと思います。自民党が農政の中で言ってきたのと方向としてはそんなに違わないのかなと思うんですが、今までの政策とどうも大きく変わったという印象があるんですが、具体的にどのような方向になるのか、教えていただければと思います。

筒井副大臣 先ほども、民主党は規模拡大に否定的だ、規模拡大路線に否定的だという話がちょこっと出ておりましたが、全くそういうことはありません。規模拡大をいろいろな形で進めているわけでございまして、今の所得補償の仕組みの中自体に規模拡大に対するインセンティブを働かせているわけでございまして、そのこと自体がもう、規模拡大に否定的ということではなくて、逆にそれを進めたいんだという趣旨が出ているというふうに思っております。

 そして、しかし、規模拡大だけでは決して国際競争力を持つなんということは不可能であるということも先ほどから何回も強調しているところでございまして……(小野寺委員「筒井さん、私が聞いているのは、今までと違うんじゃないですかと聞いているんですよ。これは規模拡大になっているけれども」と呼ぶ)いや、今までから……(発言する者あり)昔も否定的ではありません、規模拡大自体は。それは、四町歩以下は切り捨てたり、あるいは二十町歩以下の集落営農は切り捨てたり、そういうことについて言っているわけです。だから、面積要件で限定することを批判していたんです。規模拡大そのものの政策を否定していたわけでは全くありません。

小野寺委員 最近、さまざまな報道を見て、農家の方は今こう思っています。民主党は、戸別所得補償で兼業も中小零細も救われるということで、そうかなと思っていたけれども、今度は急に所得補償の数字が消えて、そして、一部の中では所得補償は仕分けにかけろという意見もある。そして、ここで出てくるのは、二十ヘクタール―三十ヘクタールに集約をするんだと。二十から三十ヘクタールに集約をした人を中心に所得補償が今後も行われて、そうすると、今までの人たちはどうなるのか。

 もう一つ言うと、これはアクセルとブレーキを両方踏んでいるような気がするんですね。今まで集落営農とか、あるいは担い手に収れんしようと思った政策でやってきたことが戸別所得補償で実際には集落営農から抜けていって、どんどんどんどん虫食い状況で、大きな面積が集約できなくなった。そういう政策を片方でやっておきながら、片方では二十から三十に今度は集約しますと。これは一体どっちが本当なのか、よくわからないんですが。

筒井副大臣 全くそれは誤解でございまして、所得補償という文字もその政策も消えておりません。それはさらに継続する、継続するだけではなくて、法制化し恒久化したいというふうな意向をはっきり示しているところでございまして、その中で二十から三十ヘクタールというのは、これは平地におけるものとして、それを大宗としていきたいという表現になっておりますが、二十から三十ヘクタールを平均耕作面積にする、こういう趣旨ではありません。いずれにしても、以前から、所得補償政策をきちんと出していて、その中で規模拡大も進めていきたいということは一貫をしているわけでございます。

 ただ、もう一回、繰り返しになるかもしれませんが、規模の要件で支援対象を限定すること、これがいけないんだというふうに批判をしていたわけでございます。

小野寺委員 恐らく、なかなかみんなが理解できないかもしれません。いずれにしても、今回の指針の中で、戸別所得補償はこういう表現が文章の中で一行だけありました。「戸別所得補償制度の適切な推進」。前は推進だったと思うんですが、今度は適切という形に変わり、二十から三十ヘクタール、こういうことが出ると、どうも方針が変わったのかな、そう多くの農家の方は多分感じると思います。

 今後、委員会等でその内容についても質疑させていただくことになると思いますので、その辺の矛盾について、誤解のないようにこれからもお願いをしたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

吉田委員長 午後三時から委員会を再開することといたしまして、この際、休憩をいたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時二分開議

吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤澤亮正君。

赤澤委員 質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 きょうは、まず、昨日決定をされました食と農林漁業の再生推進本部決定、我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画についてお伺いをしていきたいというふうに思います。

 それで、基本方針・行動計画には、「農林漁業再生のための七つの戦略」というものを定めています。ただ、大臣に確認をしたいのは、これら七つの戦略はTPPとは直接関係がないと考えていいのかということの確認で、さらに言いかえれば、これら七つの戦略はTPPに参加しない場合でも実現しなければならない政策であり、かつ、裏返せば、もしTPPに参加するのであれば、これら七つの戦略は当然実現した上で、さらに政策を拡充しなければ農林漁業は再生できないというのが再生推進本部の考えである、私は、事務方から説明を聞いてそう理解しておりますけれども、その理解でよろしいですね。

鹿野国務大臣 昨日決めさせていただきました基本方針そして行動計画ということにつきましては、五年間の間の施策というふうなものの第一歩を踏み出していくということでございまして、TPPに交渉参加するかしないかということにかかわらず、この基本方針・行動計画を推進していく、こういう考え方でございます。

赤澤委員 済みません、もう一度ちょっと、わかりやすく確認をしたいんですが。

 要するに、TPPに入るための国内対策ということでは全くなくて、これはTPPとは関係なしにとにかくやらなければならない政策だという理解でよろしいですね。イエス、ノー、もう本当に簡潔にそれだけで結構です。

鹿野国務大臣 わかりやすく申し上げますならば、そういうことでございます。

赤澤委員 午前中もそういうやりとりがあったようで、私はまた別の委員会で質問をしていたりしたものですから、時間をとって恐縮でございましたが、そういう前提でお話を伺います。

 それで、その計画の2、「目指すべき姿と基本的考え方」、その「2.基本的考え方」の中に(2)というのがありまして、「今後五年間」で、平成二十八年度までということのようですけれども、「平地で二十〜三十ヘクタール、中山間地域で十〜二十ヘクタールの規模の経営体が大宗を占める構造を目指す。」

 これは、目標として定める以上、後々この大宗の意味でもめたら意味がないのでありまして、大宗というのはどういう意味かを教えていただきたいと思います。大体何割程度のことを言っているんでしょうか。

筒井副大臣 大宗という表現が、内容的にはっきり確定しているわけではありません。何割というふうな数値で示されているものでもありません。それがその地域における中心的な担い手の耕作面積、こういうふうな感じで記載されているものでございます。

赤澤委員 そこはしっかりさせてもらわないと、私の地元の米子市ですら、一番大きな人というのはもう既にこの二、三十ヘクタールというのは満たしているんですよね。どこでもそうだと思いますよ。

 確かに中山間地で十というのはあるかどうかよくわかりませんけれども、今みたいな話で、何割という数字で目標を決めたものじゃありません、中心的な人が一人、平地でこの二十、三十ヘクタール、中山間地で十、二十がいればいいというんだったら、これは目標とは呼べないんじゃないですか。今でももうできていると言わざるを得ないですよ、そんなものは。どこの地域でも、平地であれば二、三十ヘクタールの人が一人ぐらいいるでしょう。中心の人がその人で、それは二十、三十だからもうオーケーなんだという話だったら、これは全然目標になっていないと思いますよ。いかがですか。

筒井副大臣 先ほどのものにプラスすれば、平均耕作面積でもないということも午前中にも申し上げました。

 ただ、先生の言われていることも確かでございますので、それが全体の経営の三割、四割を占める、それらのものを大体のめどとして目指していきたいということが一つございます。それと、これは、全中の方でもそういう目標にしているという内容とほぼ同一のものでございます。

赤澤委員 二点、ちょっと指摘しておきたいのは、今ので少し明らかになりましたけれども、やはり、政策目標をきちっと定めたら、それはもう逃げることなく、それが実現できたかできなかったか、そのことにちゃんと責任を負ってほしいんです。

 私ども痛い目に遭っているのは、原則、高速は無料化するんだと当時の前原大臣は言いました。原則と例外の関係はどうなんだ、原則と言う以上は絶対に総延長でも半分以上は無料化するんでしょうねと言ったら、いや、そんなことは数字では言えないんだと。最後は、例外の方がよっぽど多くたって、原則無料化しているんだ、そういう強弁をされて、数字で議論しても意味がないなんと言って逃げられちゃったわけですよ。それじゃもう議論にならないですから、掲げた目標がちゃんと実現できたかどうか、わかるようにやってほしいんですね。

 そこで、筒井副大臣が続けて答弁されるのであれば伺いますが、先ほどの、数でいって経営体の三、四割が二十から三十ヘクタール、では、そのときには平均経営面積は何ヘクタールぐらいになるんですか。(筒井副大臣「平均経営面積ですか」と呼ぶ)要するに、経営体の数で三、四割が二十から三十ヘクタールに平地でなる、中山間地で十から二十になるといったら、そのときの一戸当たり平均経営面積は何ヘクタールになりますか。

筒井副大臣 平均耕作面積の試算、数はまだ出しておりません。

赤澤委員 そもそも、大宗が三、四割、経営体の数に占める割合。それが、先ほど私が指摘した、前原大臣が言う、高速は原則無料化と言って選挙に勝ったけれども、ふたをあけたら例外の方が多い、原則と言いながら無料化できないところの方が多い。これが民主党のやり口なんですよ、厳しい言い方をしてしまえば。とにかく耳ざわりがいいことを言うんだけれども、ふたをあけると、全然言っていることとやることが違うんですわ。

 だから、大宗が三、四割って、大体、三、四割は少ないじゃないですか。日本語で大宗というのは三、四割ですか。

 そして、試算ができていないんだったら、そのときにどれぐらいの平均経営面積になるか、それを出してください。お願いします。

筒井副大臣 平均耕作面積は後ほど出してお知らせをしたいと思います。

 それから、今、三、四割と言いましたが、その基準が、面積でいいますと二十から三十ヘクタールの経営が全体の八割ぐらいを占めることを目標にしております。

赤澤委員 いずれにしても、では、そこはしっかりと目標を定めて、私どもも規模拡大について何も反対しているわけじゃない。それができるんだったら、それはすばらしいことだと理解をしますので。

 これはもう委員長も今聞いておられたと思いますけれども、その大宗の意味ですよ。経営体の数で、あるいは、数に占める割合が、二十から三十ヘクタールが八割とおっしゃったのか。あるいは、それでさらに試算すれば平均経営面積。いずれもきちっと紙の形でこの委員会に出していただきたいと思います。委員長にそれをお取り計らいいただきたいと思いますが、いかがですか。

筒井副大臣 はい。それを数字として出して、お示しをしたいと思います。

赤澤委員 では、大宗の定義がきちっと紙で出てくる、そしてそのときの平均経営面積も出していただけるというふうに理解をいたします。なかなか実現は容易ではないというふうに私は理解をいたします。

 では、次にちょっと進ませていただきますが、同じページの(4)に「政府は、農林漁業者にセーフティネットを提供する。これによって、農林漁業の多面的機能等を維持する。」こうなっています。

 セーフティーネットを提供するということなんですが、このセーフティーネット、具体的な内容を聞かないとなかなか何を書いているんだかわからないところがあるし、あと、裏返せば、セーフティーネットなしでは農林漁業の多面的機能等は維持ができないのか。済みません、決めたばかりのあれなので、何かかなり詳しくもう頭の中に入っておられるんじゃないかというのであれなんですが、セーフティーネットというのは何だろう、それから、セーフティーネットなしでは農林漁業の多面的機能等は維持できないのかというあたりを教えていただきたいと思います。

筒井副大臣 農林漁業が持続的な経営として存続できる、このためにいろいろな措置が必要かと思っております。それは、今度の被災もそうですが、たとえいろいろな災害の被害等を受けた場合においても、きちんとそれに対して対応できるような中身を考えて、それをセーフティーネットというふうに表現していると考えております。

赤澤委員 そうすると、まだセーフティーネットの中身は具体的には決まっていないという理解でよろしいですか。では、これから検討していくということで、それも早目にお示しをいただきたいと思います。

 次に伺いたいのは、まず、きのうの決定の一番最初のところ、一ページ目に出ています。昨年決めた食料・農業・農村基本計画、三月三十日の閣議決定ですけれども、食料自給率五〇%の達成はしっかりやっていくんだ、こういうお話になっております。だから、五〇%というのは、平成三十二年までに食料自給率を五〇%まで向上させる。それから、五年以内、平成二十八年度までに二十から三十ヘクタールを大宗とする。今の大宗の定義にもよりますけれども、そういったことを、かなり野心的な目標を掲げておられると私は承知をします。

 財源を確保して新たな対策を講じる必要があると思うんですけれども、必要な財源の規模というのはもう今の時点で想定はされていますか。

筒井副大臣 それは、先ほどから議論があります、高いレベルの経済連携への加入とかなんかを前提としないものでございますから、現在の状況においてそれを考えていかなければいけない。だから、二十四年度の概算要求等でそのことを表現している、こういう考えでございます。

赤澤委員 それでは、今の御趣旨は、二十四年度の概算要求を毎年続けていけば先ほど言った目標に届くという意味ですか。それとも、これから積み増していくものがあるようであれば、やはりその戦略の全体計画というのをちょっと示してもらわないと。

 しかも、大事なのは、二〇〇九年のマニフェスト、決してあれは守られたと私は思っていませんけれども、あのように、四年間でここまでやる、一年目は幾らの財源が出てくる、そのたぐいのことがないと、きちっとその財源を確保できるのか検証のしようもないし、見通しも立たないので、その辺のことを今御説明いただきたいと思います。

筒井副大臣 行動計画も添付されておりますが、一時期財源の問題も議論されたわけでございますが、それは、当面、まず来年度の予算をきちんとはっきりさせた上でさらに詰めていくというふうに考えて、その行動計画の中からは、財源額等は載せないというふうにしたものでございます。

赤澤委員 では、現時点でいうと、財源の裏づけも確定もしていませんし、幾ら要るのかもわからない。また厳しい言い方をすれば、絵にかいたもちかもしらぬ、こういうところなんですね。

 なので、そこは、内々議論されたものがあるのであれば、しっかりと工程表に、財源をこれぐらい確保して、この年にはこういった対策を講じるというものを少しでも早く出していただかないと、見通しが立たないし、この委員会においても、その対策というものがきちっとした財源の裏づけのある、実現可能性のあるものなのかというのがほとんど議論ができないと思うんですよ。だから、そこも早目にお示しをいただきたいんです。

 なので、とりあえず二十八年度まで、食料自給率は三十二年までですけれども、そういった全体計画を財源入りでいつごろ出してもらえるものですか。

筒井副大臣 二十四年度の財源に関しましてはもう御存じのとおりかと思いますが、それ以降の財源について、その数字をお示しすることができるかどうかも含めて検討をしたいというふうに思います。

赤澤委員 それでは本当に実現できるかどうかわからないですよね。

 とにかく、財源が、ある意味宿痾のようになっている民主党政権なんだと思うんです。要は、無駄を省けば幾らでも財源はあるという、四年間で十六・八兆と言ったものができていない。その中で必要な対策を削って財源捻出せざるを得ずということで、七転八倒という言い方がいいかどうかわかりませんけれども。

 そんな中で、かなり野心的ですよ、これは。現在の平均経営面積というのは二ヘクタールにも達していなかったと思いますけれども、二十から三十を大宗とする。それが平均面積に換算すると一体どれぐらいなのかは後で数字をもらえるそうですが、かなり野心的じゃないか。そして、平成三十二年までに食料自給率五〇%、これも相当野心的だ。財源がどれぐらい要るのかということをしっかり示していただいて、その対策の具体的内容が本当にそこに向かっているかということも検証しなきゃいけないし、最後の最後まで財源がついていくということだと思います。

 それを伺った上で、だからもっと厳しいことを言わなきゃいけないのは、冒頭お尋ねしたとおり、今の、現状でもかなり野心的な、具体的な対策の中身が本当に描けるのか、財源確保できるのか、非常に大変だと思うんだけれども、それは冒頭確認をさせていただいたように、TPP参加を前提としていない、そういうことです。TPP参加を前提としなくてもそこまではやらなきゃいけないということですね。TPP参加を前提にしていない状態ですら、まだ財源をどう用意するのか詰まっておらない、こういうことであります。

 加えて、今まさに降ってきているのは、報道によれば、十一月の十二、十三、その週末に開かれる、ハワイで行われるAPECの首脳会議において、野田総理はTPP参加の表明をする意向を固めた、調整を急ぐみたいな報道が出まくっているわけですよ。

 なので、先ほどまでの答えを聞いているととてもこれはまともなお答えは返ってこないと思いますが、もしTPPに参加するのであれば、二十から三十ヘクタール、あるいは五〇%といった野心的な目標を達成するには、さらにはるかに大きな財源を確保して対策を大幅に拡充しなければならない、これは論理必然な話だと思います。

 必要な追加財源の規模、どの程度想定しているかなんというのはまだまだ全然論じられる段階ではないということでよろしいでしょうか。

筒井副大臣 その点では先生のおっしゃるとおりでございまして、TPPに参加なんということを仮定した場合には物すごい財源が必要になってくる。しかし、農水省はその試算をしておりません。今、まだTPPへの参加が決定したわけではありませんし、慎重に考えていくべき問題だというふうに思っておりますので、それらの具体的な予算額等を試算する時期では全くないというふうに考えております。

 それから、一言。先ほど先生、マニフェストについてもということを言われましたが、農水部門に関しましては、モデル事業から始まって今年度の本格的実施等、それに六次産業化路線も含めて、マニフェストは、基本的に農水部門においては実施をしている、実行している、この点をぜひ御理解いただきたいと思います。

赤澤委員 マニフェストの話があったので、私の方からひとつ反論をしておきますが、きちっと財源が用意できていない、それが一点です。それから、法律で本格実施をすると言ったけれども、これもできていない。そして、変動部分の予算はことし要求もしていない。平成二十三年米について、変動部分の予算は入っていませんね。二十四年度要求をすることになっています。そういったことをすべて含めて、筒井副大臣が胸を張りたいのはわかるし、ほかの子ども手当とかああいうものに比べれば、それでもまともにやっている方かもしれないけれども、そこまで譲っても、これはマニフェストをやりましたなんて胸が張れる状態じゃないということは私は断言をしておきたいと思いますよ。

 次の質問に入らせてもらいますけれども、先ほどの、報道ですよ。野田総理が、十二、十三のハワイで開催されるAPEC首脳会議の際にTPP交渉参加を表明する意向を固めたという趣旨の報道が盛んに行われていますけれども、これは大臣がお答えください。事実ですか。閣議でそういう話が出ているんですか。いかがですか。

鹿野国務大臣 私自身は、関係閣僚会議におきましても、期限を切って、いつまでにこの考え方を示すということは必ずしも我が国にとってプラスになるとは言えないんじゃないかという発言を申し上げているということは、このことを閣議において決めたというわけではございません。

赤澤委員 それで、きのうから、民主党の先生方の中にも私と多分同じ行動をとられた方がいる。青壮年部ですか、農協の委員長さんたちが各県から来て、きのう議員会館の前で座り込みをされていました、朝まで。私も午前二時二十分ぐらいに顔を出して激励をいたしました。きょうはTPP断固反対の大会も開かれています。

 その上で、お伺いしたいのは、被災農民の方たちですよ。いまだに復旧復興もままならないのに、政府・与党はよくTPP交渉参加を話題にできるなと大変憤っておられるし、大いに不安になっておられると思いますけれども、大臣、どう考えておられますか。

鹿野国務大臣 今日の野田内閣にとりまして大事なことは、この大震災の復旧復興、そして原発事故に対する対応を最優先課題として取り組むというふうなことを申し上げているわけでございますので、今赤澤議員からの御指摘の点は、被災地におけるところの農業者なり漁業者の人たちの心情というふうなものをきちっと受けとめていく必要があるんではないかというふうなことも、私どもはきちっと頭に常に入れておかなければならないことではないかな、こう思っております。

赤澤委員 最初、大事なことはとおっしゃったので、いや、最優先ですとやじろうかと思ったんですけれども、おっしゃるとおりです。大震災からの復旧復興は、野田政権にとって最大かつ最優先の課題なんでしょう。被災者の気持ちを一番大事にしなきゃいけないんじゃないですか。

 しかも、所信あいさつの中で鹿野大臣御本人が次のように発言されています。東日本大震災からの復旧復興は野田政権の最大かつ最優先の課題、加えて、「私自身、積極的に現地に赴き、被災地域の方々との対話を行うよう心がけてまいりました。」「経済連携については、」「「震災や原子力災害によって大きな被害を受けている農業者・漁業者の心情」などに「配慮しつつ、検討する。」」「その際、最も大事なことは、情報を国民に提供し、議論をしてもらい、関係者の理解を得ながら進めていく」。これは、所信あいさつで鹿野大臣がおっしゃったことです。

 大臣は、どのように積極的に現地に赴き、どのように被災農民とTPPの対話を行い、どのように被災農民にTPPの情報を提供し、どのように議論をしてもらい、どのように理解を得たんですか。

鹿野国務大臣 TPPにつきましては、情報というふうなものをもっと提示する、そして、やはり議論する材料が必要だということでございまして、また、この段階で、現地に赴いて、TPPについてはこうです、ああですというようなところの段階には至っていない、こういうふうな私自身の考え方から、TPPについては議論はいたしておりません。

赤澤委員 そこが私は民主党政権の問題だと思うんですよ。改めて伺ってもいいんですけれども、大臣自身がTPPに賛成なんですか、反対なんですか。

 つまり、内閣は連帯して国会に対して責任を負う、行政権を行使していくわけです。閣内に、内閣の方針あるいは総理の考えと違う考えを持った人が多過ぎるんですよ。その方たちは、総理の考えに従って国民を説得したり理解を求めたりする活動に参加しないわけですわ。まだ質問の最中です。そういうことでは国民の理解を得られないでしょう。少なくとも、これだけ被災農民の方が不安になっているんですよ。農政に責任を持たれる鹿野大臣は、立場を明らかにして理解を求めることをしなければ、一番不安で、一番利害が関係する方がほっておかれているんですよ。

 沖縄の問題だって一緒ですよ。いまだに野田総理は沖縄県に行っていないんです。一番利害が関係して、一番不安になって、一番憤っている方のところに行かないんですよ。

 どうやって理解を求められるんですか。どうやって政治をやっていくんですか。大臣、いかがですか。

鹿野国務大臣 野田内閣として、また総理自身がTPPの交渉参加をするということについての判断を示している段階ではございません。今は、御承知のとおりに、情報を収集して、そしてしっかりと議論をして、こういうようなことを所信でも言われているわけであります。

 そういうことの段階の中で、私自身、閣内の一員として、当然農林水産業というふうなことに対する責任者としての考え方もありますが、閣僚の一員なりあるいは一議員として、これからの日本の国としてどうあるべきかということは、情報というものをしっかりと把握する中で私なりに判断をしていかなきゃならないことでありますから、私自身の考え方としては、今までの発言というものは私としても決して無責任な発言ではなしに、私なりの考え方を、メッセージを送りたい、こういうふうなことで発言をしてきたということでございます。

赤澤委員 現に、被災地の方たちは十分な説明が得られていない。

 逆に言ったら、情報を提供したい、まだ決めた段階でないから何もまずいことは起きていないというネガティブリポートという考え方もあるんですよ。被災地に足を運んで、まだ決めておりません、情報があれば最大限皆様にお示しをして、不安のないように議論を進めたいと思いますと、そういうたぐいのことは被災地に足を運ばれてされていますか。

鹿野国務大臣 TPPに関しましては、昨年来から、フォーラム等々で、各地区におきましていろいろ議論をする場というふうなものを設けてまいりました。そして、三月の十一日以後の、震災等々、大震災後は、やはりこれだけの大震災でありますから、その復旧復興というふうなもの、原発対応に全力を尽くしていかなきゃならないというふうなことで、当然このことは一度中断をしておったところでございます。

 しかし、基本的に、いろいろな諸事情というようなことも含めて、報道されているとおりに、TPPについての問題というふうなものを提起されている中で、どういうふうな形で野田内閣としての判断をするかというようなことになってくれば、当然、いろいろと情報というものを提示して、そして国民的な議論も必要だ、こういうふうなことでありますから、今委員からの御指摘の、いわゆるTPP等々についての議論というものをこれからも展開していかなきゃならないというふうなことは、当然そのような認識に私どもは立っているところでございます。

赤澤委員 それではお伺いをいたしますけれども、十一月の十二、十三の週末にハワイで行われるAPECの首脳会議、野田総理がTPP交渉への参加を表明されることはないと言っていいですね。もしあるんだったら、もう理解を得る時間も議論の時間も何もありはしないじゃないですか。それはないと言っていいですね。

鹿野国務大臣 委員のおっしゃることは私もいささかなりともわかりますけれども、私としては、ここで答弁することについては、仮定の話でございますというふうなことで、これ以上申させていただくことは控えさせていただきます、こういうふうに申さざるを得ない状況でございます。

赤澤委員 いつも、このたぐいの質問をすると大臣の日本語がちょっとわかりづらくなるんです。いささかなりともわかっていると言われても、私も本当にちょっと何とも言えないところがあって、お立場はある種大変なんだろうということも想像いたしますけれども、しかしながら、本当に、十二、十三に表明をするというのがもうラストチャンスだという感じになっていますよ。経済界の代表なんかの発言を聞いていると、もう待ったなしだ、こんな声ばかりじゃないですか。

 本当にそこで総理がTPP交渉参加を表明されるということがないと確信していない限りは、やはりもっと被災地あるいは国民の理解を求めるためにやれることがほかにないのかというのは、私は本当に残念なことだと思っています。いかがですか。

鹿野国務大臣 委員からの御指摘の点は、改めて私自身も、いわば被災地の方々の心情の大切さというものをやはり受けとめていかなきゃならない、こういう思いはいたしているところでございます。

赤澤委員 ちょっと重ねて伺っておきますけれども、前からあった議論は、少なくとも交渉参加をする前には、国内対策がどのようなものかを明らかにして、農業者の不安を払拭して交渉に参加するという議論だったと思うんですが、十二、十三の週末に参加の表明なんかされてしまった日には、国内対策の議論なんか絶対十分になりませんよ。参加の表明を政府としてする前には農業の国内対策、先ほど言っていた、TPPに入る場合にはこの推進本部決定にさらに上乗せをしなきゃいけないという対策を明らかにすべきだというところはきちっと押さえていただけますね。

鹿野国務大臣 すべてがというわけではございませんけれども、十二、十三のAPECにおいて総理自身が交渉参加をするかしないかというふうなことは、いわば今の段階では仮定の話でございます。

 ただ、申し上げさせていただくことができますことは、過般決めさせていただきましたこの基本方針そして行動計画、食と農林水産業の再生の基本方針と行動計画は、これはTPPに参加するしないにかかわらず推進をするというふうなことでございます。このことだけは改めて明確に申させていただくことができるわけであります。

赤澤委員 やはりちょっと逃げの答弁に私はなっていると思うんですよ。

 十二、十三に総理がTPP交渉参加を表明されることがないと確信しているのでない限りは、やはり国内対策とかも含めて議論をきちっと詰めておいて、本当にそういう事態になったらもう直ちに示せるぐらいの準備ができていなければ、結果的に、総理が表明してしまった場合には、農政の責任者として、全国の農業関係者そして特に被災農民の方たちに対して、十分その心情を酌んで対話をし、議論をし、理解を得たとはとても言えないということだけは、私はもう明言をしておきたいというふうに思います。

 時間の関係もあるので、戸別所得補償の話にちょっと移りたいと思うんですけれども、三党合意に基づく政策効果の検証と見直しを約束していただいております。大臣は、所信あいさつの中で、「戸別所得補償制度については、」「「政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討する。」という八月の三党合意を踏まえて、適切に対応してまいります。」こう発言をされました。

 さて、平成二十四年度当初予算の概算要求には、戸別所得補償制度の見直しを前提としない予算がもう既に計上されております。このことはそもそも三党合意の違反ではないんですか。

鹿野国務大臣 基本的に、概算要求ということでございますから、とにかく来年度におきましても引き続き、私どもとしては、この戸別所得補償制度というものを継続してまいりたい、このような考え方から概算要求させていただいているところでございます。

 しかし、同時に、いろいろと御要求いただいておるところの資料等々も提示させていただいておりまして、そして、三党での今後の話し合いというふうなことにおきまして具体的な提言等々がありますならば、そのようなことに対しまして真摯に受けとめさせていただく、こういう考え方は私どもも持ち合わせておりますということを申させていただきたいと思います。

赤澤委員 では、一つ確認をさせていただきたいのは、政策効果の検証をして、必要があれば見直しはきちっとする、予算編成作業の中で見直しをしていく、そのことは断言していただけますね。

鹿野国務大臣 三党合意につきまして改めて正確に申し上げますけれども、「農業戸別所得補償の平成二十四年度以降の制度のあり方については、政策効果の検証をもとに、必要な見直しを検討する。」こういうふうな三党合意でございますので、もちろんそういう中で話し合いがなされて、そして一つの考え方というふうなものがまとまっていくということならば、それを受けて私どもとしては考えて、そして実質的に実施していかなきゃならないんではないかな、こういうふうな考え方でございます。

赤澤委員 必要な見直しがあればそれはしていくということを確認させていただいたと思います。

 それで、三党合意に政策効果の検証とあるんですが、三党の合意である以上それはもう、検証は野党に任せて、戸別所得補償は何のまずい点もないよということではなくて、私は、政府・与党としても検証を当然行うべきであると考えておりますけれども、どのような検証を行われたんですか。

鹿野国務大臣 一つ具体的に申し上げますと、加入者数はどうなのかとか、あるいはまた過剰作付面積はどうであるのか、あるいはまた新規需要米の作付面積はどうなのか、あるいは農業者の方々がどういう思いでいるか等々、こういうふうなことについては検証をさせていただいたところでございます。

赤澤委員 私どもからすると、戸別所得補償、よかったよかったという結果が出ているものについて検証されているように見えるので、ちょっとそれだけでは不十分だと思います。

 いろいろとお願いをした結果、確かに農林水産省に精力的に対応していただいて、三党合意に基づく検証なんだから事実にわたる資料は出してくださいと言って、こういった分厚いものが出てきております。それに基づいて検証していかなきゃいけないというふうに思っていますけれども、一つ、その前提として確認をさせていただきたいのは、戸別所得補償制度の政策目的なんですよ。

 それはどういうことかといえば、政策の効果を検証しようと思ったら、目的が明らかでないと検証しようがないですよね。ある制度がある目的のもとではいい制度だ、目的を達する方向に動いている。目的が、例えば正反対のものであれば、その制度は効果がない、あるいは逆効果だということもある。だから、政策目的は非常に重要なわけですが、戸別所得補償制度の政策目的は何ですか。

鹿野国務大臣 基本的に、やはりポイントは、農業者の方々の再生産につながる、そして意欲を持って取り組んでもらうことによって多面的機能の維持というふうなところに結びつき、食料自給率の向上というふうなものにつながっていく、そのことが国民に対するところの食料の安定供給につながることになる、こういうような考え方に立って私どもは戸別所得補償制度というふうなものを導入した、こういうことでございます。

赤澤委員 今おっしゃったことも確かに書いてあるんですけれども、大事な点で落ちていたなと思うのは自給率の向上ですね。それははっきりとうたってあると思います。所得補償をやれば自給率が上がるんだというのは民主党の喧伝されてきたところであります。

 そこで、私どもは、戸別所得補償制度の政策目的が、その実質的な中核が変質していないかということを大変疑問に思っているわけです。当初、意欲ある農家であれば小規模でも手厚く財政支援するということを本当に色濃く打ち出しておられたと思うんです。その考え方から、農家の規模拡大を推進するツールとして戸別所得補償を位置づける、そういった考え方に、百八十度変わっていないかということをお尋ねさせていただきたいと思います。

 それは、途中から物言いあるいは言い方が変わったんですよ。これは検証させていただいたんですけれども、食料・農業・農村基本計画あたりは「意欲あるすべての農業者が将来にわたって農業を継続し、」、とにかく、小規模であろうが、戸別所得補償をやることでみんな農業を続けられますよ、こういう感じのことが前面に出ていました。その基本計画は否定はしていないと言いながら、TPPが出てきた後、八月二日に出た我が国の食と農林漁業の再生のための中間提言では、戸別所得補償という言及が一カ所でしかなくて、それはどこかというと、「競争力・体質強化 攻めの担い手実現、農地集積」、その(2)の「規模拡大の加速化」の中で「戸別所得補償制度の適切な推進」と。

 なので、当初、選挙の前から選挙に勝たれてしばらくのあたりは、小規模でも意欲があれば農業を続けられますよ、そのための戸別所得補償です、こうおっしゃっていたんだけれども、TPPが出てきたあたりから、これは規模拡大のツールなんだ、規模拡大加算のあたりがポイントがあるんだ、こう変わってきているように思えるんですけれども、大臣、いかがですか。

筒井副大臣 所得補償の制度の目標は今大臣が言われたとおりでございまして、まさに、所得補償制度によって農業経営の持続的な生産を可能にする、その結果として食料安全保障そして多面的機能の維持強化を図るというところでございます。このためには、規模、面積によって政策の対象を限定してはならないということが大前提となっておりまして、その点で小規模の農家も含めて対象にするということを強調したわけでございますが、それは現在においてもずっと一貫しております。

 同時に、しかしまた、持続的な生産を続けていくためにはやはりコストの削減ということが必要でございます。生産費の削減が必要でございまして、そのための一つの方策として規模拡大、これも当初から図ってきたところでございまして、それも一貫をしております。

 規模拡大の努力と、面積によって限定せずに、例えば四町歩以下の農家であっても支援対象にする、この二つは矛盾しないものだというふうに考えております。

赤澤委員 結論から言えば、財政制約がなきゃ矛盾しないんですよ。財政制約があるから、今から申し上げるとおり、大変難しいことになっていると思います。

 なおかつ、筒井副大臣のお話の中には、例によってと言うと失礼なので、ちょっとそれは言いませんけれども、不正確なところが入っている。当初から規模拡大のインセンティブがあったと言うけれども、それはなかったですよ。規模拡大加算は本格実施のときはやるとおっしゃっていたけれども、モデル事業のときに何をやったかというと、規模拡大加算なんかなかったでしょう。そして、集積について、本格実施になって百億だけ予算がついたんでしょう。三千億の面的集積を我々がやっていたのを引っ込めて、そうなったんですよ。その話をきちっと理解しておいてもらわないと、当初から規模拡大があったなんて、全く逆に向いた方向に行ったんですよ、一回。

 そして、もう一つ、これを聞いてください。この検証で、おもしろかったんです。関心のある方は、民主党の先生方も手に入れて読まれたらおもしろいと思うんだけれども。これは本当に、選挙という意味では、やはり票が非常に戸別所得補償で集まったというのがよくわかる結果になっています。

 何かというと、自公政権当時に米対策をやっていました、ナラシ対策。二ヘクタール未満の農家に配分した予算というのは全体の三・二%なんですよ、三・二%。五ヘクタール以上の農家に配分した予算というのは七六・五%なんですよ。これだけ強力なドライブをかけて規模拡大をやろうということをやったのが自公政権当時。私は、漫画的に言うと、ちょっと選挙のことを考えなさ過ぎるなと思うぐらい政策に走ったなというぐらいやっています。

 戸別所得補償になってから後、何が起きたかというと、今三千六十九億の戸別所得補償の予算、平成二十二年産米の場合ですけれども、二ヘクタール未満の農家に千三百億、四〇%以上を配分しているんですよ。なので、確かに、筒井副大臣がおっしゃるように、規模にかかわらず農家を続けられるように、それはそのとおりに今なっているんですよ、予算の配分という意味では。小規模農家、二ヘクタール未満、三・二%ぐらいしか米政策の予算をもらっていなかったものに、今四〇%割り振っています、千三百億。これは確かに小規模な方たちは喜ぶでしょう。

 だけれども、ここで問題があるんですよ。民主党政権が政権交代の前から言っていた、小規模な農家でも意欲があれば絶対に見捨てませんと、この予算配分をやった、そこまでは一貫しているんだけれども、TPPが出てきてから、規模拡大が大事だ大事だと言い始めているんですよ。

 三千億の面的集積の予算を切って、モデル事業のときにはなし、本格実施で百億。しかも、予算配分は、自公政権当時は二ヘクタール未満の農家は三・二%、それを四〇%に膨らませて、そして、これから二十―三十ヘクタールを目指す政策にかじを切ります、これからそれをやりますと、全くもって政策の、やろうとしていることが百八十度変わっていませんか。財政制約がなきゃできるけれども、あればそれはできませんよ。

 いかがですか。

筒井副大臣 規模拡大を一つの政策目標にしていたというのは、規模加算だけではないんです。規模加算は今年度からつけた制度でございます。

 しかし、当初から、生産費と販売価格との差額を全国平均の一律で支給する、こういう仕組みでございました。その結果、その中には、生産コストを、全国平均よりもより規模を拡大して下げた農家はその分利益が上がるという仕組みに意識的になっているわけでございまして、だから、規模拡大に対するインセンティブを働かせているわけでございます。それは当初からでございます。当初から規模拡大に対するインセンティブがきちんと入っていた。

 細かいことを言えば、十アール部分については自家用として除くという仕組みもつくりましたが、これは、一農家であれば十アールは除かれますが、例えば、集落営農で三十戸の農家が集まれば、十アールの三十倍の三町歩のものが、最初から除かれるんじゃなくて、その場合も十アールで済む。これは集落営農等の規模の拡大に対するインセンティブにもなるわけでございまして、だから、もう一度、しつこいようですが、規模拡大に対するインセンティブは当初から、モデル事業の段階から入っておりました。

 それから、二つ目に、三千億の、自民党さんが出したものについて反対したと言われました。確かに反対をいたしました。あの反対した理由は、あれは農地の出し手に対して支給するのが中心になっていたわけでございます。しかし、規模拡大を阻害しているのは、出し手がいないことというよりも、受け手の農業経営がなかなか安定しないからだ、だから規模拡大がなかなか進まなかった。受け手の方に出すべきであって、出し手の方に出すべきではない。出すべきでないというのは、中心がですよ、それは一部は出してもいいんですが、三千億という莫大な規模の額を出し手の方にだけ出すというのは、これは政策としては政策効果が疑わしいものであるという判断から、当時はまだ民主党は野党でございましたが、反対をしたわけでございます。

 それから、もう一点、最後に、小規模について今はもう言わなくなっちゃって、大規模しか言わないという趣旨ですか、今そういう御意見がありましたが、そうではありません。今も、小規模であってもきちんと十アール以上は対象にしているだけではなくて、さらに六次産業化路線で、小規模であったとしても、六次産業化で、いろいろな努力をしている農家、これらに関してはきちんと支援対象にして支援していく、こういうことも出しているわけでございまして、決して、以前は小規模を守っていた、今度は大規模だけ守って小規模を切り捨てる、こういうのとは全然正反対でございますから、その点もぜひ御理解をいただきたいと思います。

赤澤委員 幾つか問題点を指摘したいと思います。

 まず、もともと規模拡大のインセンティブが含まれていたと。それは普通は通らない話ですよ。所得補償しますから、面積当たりで一律単価、全国でいきますから、面積が多い人の方が所得は多くなりますと。それは当たり前なんですよ。我々もやっていた品目横断的経営安定対策だって、規模の大きなところの方がそれは多くお金が行きます。そういったことをもって規模拡大と言わない。

 規模拡大のインセンティブというのはそれとは別のものをいうのであって、だからこそ規模拡大加算が加えられているんでしょう。もともと制度の中にビルトインされているなら、規模拡大加算なんか要らないじゃないですか。それをやっていないと我々に言われて慌ててやるところ自体が、それは入っていなかったことの証拠なんですよ。面積が多い人の方が一律単価でもらうものは多くもらいます、そんなのは当たり前のことじゃないですか。それを言ったってどうにもならないですということが一点目です。

 それから、それは私は、やはり明らかに説明が変わってきていると思いますよ。TPPが出てきてから、とにかく戸別所得補償は規模拡大のインセンティブという説明に入れかわってきています。

 もう一回だけ指摘しておきたいのは、財源が無限にあれば成り立つんですよ。小規模農家にも何千億と予算を配分して、それに何倍もする兆円単位で大規模な農家に配ったら、それは大規模化していくかもしれません。しかしながら、何度も言うように、民主党政権は財源がない中で苦しんでいるんですよ。

 財源がない中でどうやって規模拡大していくかが問題になっているのであって、これはもう明らかに、財源制約がある中で、国際競争力が、生産性向上が図れない方にかじを切っていますよ。戸別所得補償、どうやったんですか。土地改良の予算を削ったんでしょう。十年もたったら大事な生産基盤はがたがたになりますよ。強い農業づくり交付金を切りまくったんでしょう。機械の補助が減ったんですよ。生産基盤をきちっと手入れして、生産性の高い農業をやりたい、いい農地を持ちたい、いい機械を入れて生産性を上げたい、そういう予算を削って何をやったかというと、千三百億、二ヘクタール未満のところに四割の予算を配分して選挙に勝ったんでしょう。それは我々のやった政策と全然正反対を向いているんですよ。

 ところが、それではTPPとの関係で済まなくなった。だから二十―三十ヘクタールと言い始めて、財源がないから、これは進退きわまっているはずなんですよ。これは詰んじゃっていますよ。できないですよ。財源をどこから持ってくるんですか。千三百億、四割の予算を、戸別所得補償の二ヘクタール未満、要するに平均経営面積以下ですわ、そこに四割の予算を投入し続けながら、財源制約の中でどうやって規模拡大するんですか。私はできるわけないと思いますよ。

 どこに財源がある、どういう対策を打つ、その辺を明確にお答えいただきたいと思います。

筒井副大臣 まず、当初から規模拡大へのインセンティブがあったという点について、先生がおっしゃったのは、面積が大きくなれば支給される額の絶対額が大きくなるという面で言われました。それもあるんですよ。確かに、百ヘクタールすれば、やっていれば三千万円ですか、という形で絶対額が多くなる。

 ただ、私が申し上げたインセンティブはその点ではないんです。生産費と販売価格との差額を全国一律で、全国平均で行っているという仕組み、それ自体が規模拡大へのインセンティブになるという、それとは別の点を指摘したわけでございます。つまり、規模拡大することによって生産コストを削減すれば、全国平均より削減すれば、その削減した部分が削減した農家の、規模拡大した農家の利益になるという点を指摘したわけでございます。

 それら何重もの規模拡大についてのインセンティブが働いているから、先ほど、午前中も数字を挙げて申し上げましたが、今、所得補償の支給金の半分以上が結構規模が大きな農家、二割だったと思いますが、二割の農家に五〇%以上の支給額が集中しているという結果になったんだ、それがそのことを証明しているというふうに思います。

赤澤委員 今の話はやはりおかしいと私は思います。

 というのは、初めて農業の制度を入れたんだったらそれでいいですよ。だけれども、米については国境措置があるから、品目横断的経営安定対策でいうゲタに当たる部分は渡さないとやっていたわけですよ。今までお金がもらえなかったのに、米をつくるだけで単位面積当たりでお金がもらえるようになったんです。小規模農家の人が、それで規模拡大のインセンティブなんか働かないですよ。今まで、もらえなくても、兼業で補えるからとか赤字経営でもいいからといって続けてきたような人たちが今まで以上にお金がもらえて、規模拡大のインセンティブなんか働くわけないじゃないですか。そんなことを全く無視して非現実的な話をされても、それは説得力がないと私は言わざるを得ないと思います。

 だから、筒井副大臣、ひとつ、きょうの話を数字でやりましょうよ。面的集積あるいは規模拡大にかける予算、自公政権当時と民主党政権になって、どっちがどれだけ予算がふえたか、それを数字で出してください。それは委員長にも取り計らっていただきたいと思います。

 最後に、大臣にお伺いをしたいのは、やはりさっきのTPPの話に戻ります。

 政府・与党が農業の重要性を本当に理解しているというのであれば、TPP交渉参加を論ずる前提として、説得力のある農業の国内対策の具体的内容、必要な予算額、さらにはその財源を前もって農業関係者に示すべきですよ。それを怠れば、現在最大の不安を抱えている被災農民を初め農業関係者の理解は全く得られないばかりか、政府に対する不信感ばかりが加速度的に拡大すると思います。

 その点についてお考えを述べてください。

鹿野国務大臣 今の赤澤先生の御提言、お考えというふうなもの、私どもは当然、私自身、今の立場におきまして、きちっと受けとめておかなきゃならない、こう思っております。

赤澤委員 終わります。ありがとうございました。

吉田委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 農業の問題全般につきまして質問をいたしたいと思います。きょうは、TPPにつきまして何人かの議員さんが既に質問をされておりますので、重複するところがあるかもしれませんが、私は私として質問をさせていただきたいと思います。

 まず、大臣にお伺いをいたしたいんですが、所信に、私もしっかりと読ませていただきましたが、TPPの言葉がない、一言も書かれておらない。経済連携という言葉はありましたけれども、これはもうずっと前からやっていることで、EPA、FTA。そうじゃなくて、今問題になっているのがTPPということでありますので、これに一言の言及もないというのはどういうことなんでしょうか。

 大臣として、いろいろお考えがあるんだけれども、今は言えないということで、書かれていないというようなことを午前中におっしゃっておったように思いますけれども、改めてお伺いいたします。

鹿野国務大臣 私自身の所信につきましては、こういう方向を持って、とりわけ来年度に向けてやっていきたい、そしてまた過般、御承知のとおりに、食と農林水産業の再生実現会議の中間提言を受けて、今後の食と農林水産業の再生のあり方の基本方針というふうなものを出していただいたわけでありますから、それを受けての考え方というものを軸にして所信を述べさせていただきました。

 その際、私自身もTPPについてどう言及するかということも考えたところでございますけれども、このことにつきましては、まだ今の段階におきまして交渉に参加する、しないを決めているわけではございませんし、今いろいろ情報提供されている中での議論がなされている段階でございますので、今回は、この中に盛り込ませていただくというふうなことにすることは、私どもとしては判断として入れ込むということをしなかった、こういうことでございます。

石田(祝)委員 大臣がこのTPPについて賛成とか反対とかをここで述べることが妥当だということを言っているんじゃないんですよ。しかし、これが議論になっているのに、一言もその言葉そのものがないことは一体どういうことですか。せっかく臨時国会で、いつまでやるか、十二月九日で終わるか延長するか、これはまだわかりませんけれども、次期の通常国会で所信を聞くまで、大臣のお考えとして正式にお話しになる中に一言もないということ、これはいささかおかしいです。

 私は、後で聞きますけれども、この所信の中で最初から、TPPの参加交渉、交渉に参加すべきだとか、すべきでないとかいうことが書いていないからおかしいと言っているんじゃないんですよ。TPPという言葉自体がない。こういうことは議論になっている大変大事な問題であるとか、こういう認識そのものもないということがおかしいのではないかと申し上げているんですよ。いかがですか。

鹿野国務大臣 先生のおっしゃることも考え方であると思いますが、私自身の判断といたしましては、先ほど申し上げましたとおりに、TPPということにつきましてはまだ情報提示されている中でいろいろ議論されていることでございますから、いずれにしても、私どもの所信というものに盛り込むというふうなことは、今回はそういうことでない方がいいのではないかと私なりに判断したことでございまして、このことについてどうするかというふうなことが、いわばそこから逃げておるとか逃げていないとかという問題ではないというふうなことだけは御理解をいただきたいと思います。

石田(祝)委員 それはちょっと理解できませんね。

 要するに、十一月の十二、十三日のAPECで総理が参加交渉を決断するとかいう話になっているときの、所信表明を次やるときはいつですか。来年ですよ。大臣が正式に委員会とかの場で、ペーパーを持って御自身のお考えを述べる機会というのはもう来年しかないんですよ。あとはいろいろなところで問われればお答えになるでしょうけれども、国会の委員会として、まず委員会の議論の前に大臣の所信を聞く、その所信で聞くときというのはもう来年しかないんですよ。今巷間言われているようなことだったらもう終わっていますよ。そうすると、大臣は、正式にTPPについて何ら、考えや賛成反対は別にして、農林水産業にとって一番大きな課題であるという認識すら示さなかったということになるんじゃないですか。

 これは、これ以上言ってもやりとりで終わってしまいますから、もうこれ以上は申し上げませんが、私としては非常に残念である、このことだけは申し上げたいと思います。

 それで、きょうは外務省、経産省にも来ていただいておりますのでちょっとお伺いをいたしたいんですが、今、民主党の前原政調会長は、交渉に入った後に国益に合わなかったら離脱するんだ、可能なんだと。玄葉大臣は、そんなことは難しいと。たしか、筒井副大臣も難しいということをおっしゃっていたように思いますけれども。

 前原さんは前の外務大臣ですよね。そして、玄葉さんが今の外務大臣。外務大臣が一代かわっただけで、言っていることが百八十度違う。これは一体、閣外に出たら勝手なことを言うのかな、こういう気もしますけれども。

 外務省、こういう国際条約の交渉の場で出たり入ったりできるんですか。このことをお伺いしたいと思います。

中野大臣政務官 私は前原元大臣にお仕えをしていたわけではございませんので、前原元大臣のコメントについては私は言う立場ではないと思うんですが、玄葉大臣におかれましては、きょうも外務委員会でも発言をされましたけれども、論理的にはあり得ない話ではないというのが、玄葉大臣の直近の発言であるというふうに私は理解しております。

石田(祝)委員 今私がお聞きしているのはTPPについてなんですよ。論理的だとか、一般的に言えばとかいう言葉は要らないんですよね。ちゃんと、何のことについてということを私が申し上げている中で、今までの国際交渉を考えたときに、そういう条約交渉で、交渉しておいて出たり入ったりできるんですか、こういうことを申し上げているんですが。

 では、ちょっと角度を変えて聞きますが、マルチもバイも国際交渉、条約の交渉があると思いますけれども、現実に日本が、自分のところの利益にならないからといって交渉をやめたり、撤退したり、打ち切ったりしたことはあるんですか。

中野大臣政務官 条約については、そういう例がないわけではありません。

石田(祝)委員 それでは、私は、日本の不利益だからといって中断をしたり、やめたり、打ち切ったりしたことがありますかとお聞きをしました。ありますということですから、具体的にお答えをいただきたいと思います。

中野大臣政務官 例えば、これは漁船の関係ですけれども、漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関するトレモリノス議定書ということでございます。漁船の安全のためのトレモリノス国際条約に関するトレモリノス議定書、これは十七カ国が参加された交渉でございますね。

 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書、これは百三カ国が加盟しているものですね。

 あと、例えば、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約の選択議定書、これは百四十九カ国が加盟している。

 こういった条約では批准はしていないという例でございます。

石田(祝)委員 批准がしていないというのは、それは国会の話ですよね、批准するかしないかは。だから、署名をせずに、途中で席を立って帰ってきたということでいいんですか、そういう理解で。要するに、日本の利益にならないと。ですから、マルチのそういう国際条約の会合であっても、署名もせずに出てきちゃった、こういうことですか。

中野大臣政務官 そういう御理解で結構だと思います。

石田(祝)委員 では、現実に今までもそういうマルチの国際交渉で、日本の不利益だということで、批准は国会がやるわけですから、署名を政府としてせずに、ある意味では席をけって帰ってきた、こういうことでよろしいんですね。署名と批准ですよ。署名ですね。いいですか。

中野大臣政務官 批准ではなく、交渉に参加をしなかったという、最終的には、交渉の締結、席を立ったとおっしゃいましたが、そういうことでございます。

石田(祝)委員 ありがとうございます。

 これについては、前原さんはそういうことをおっしゃっている、そして玄葉さんが難しいと言っている、過去にはそういう例があった、こういうことでありますが、現実には、今回は入ると、今までのと若干違うのではないか。ですから、これは非常に難しいというふうに私は思います。

 それでは、このTPPについてはいろいろなお話があって、これに入ると知的所有権が守られるとか、投資ルールで優位に立てる、こういう主張もあるんですが、例えば、日本に対して知的所有権を守っていない、日本のいろいろな製品に対して海賊版を出すとか、そういう知的所有権を侵害している国に、TPPに仮に日本が入って知的所有権を守ろうといった場合に、TPPに入っていない国に対してそういうことを言えますか。

中野大臣政務官 質問をそのまま受け取りますと、それは非加盟国でございますから、条約を締結していなければ、そういう意味での効力はないんだと思います。ただ、例えば日本は中国に対しましても、今おっしゃった海賊版の問題等々を含めていろいろな形で申し入れはしておりますので、そのこととTPPとはちょっと関係は、また別なのかなというふうには理解をしております。

石田(祝)委員 私は別に国名を挙げておりませんので、誤解ないようにお願いしたいと思います。

 ですから、これは、いろいろなことをおっしゃられても、結局その枠の中に入ってきた人にしか通用しない。例えば海外投資で新興国に入っていくのに有利だとか言われても、TPPの中に入ってこない国に対しては、これは別に、投資ルールで優位に立てるとか、そういうことは一切ないわけですよね。そこのところをどうも誤解して、それに入ると知的所有権をほかの国に対しても守れるんだとか、投資ルールで新興国に対して優位に立てるだとか、こんなことを言われているように新聞等でも拝見をしますけれども、そういうことは一切ない、こういうことだろうというふうに私は思います。

 そういう理解でよろしいですか。再度お願いします。

中野大臣政務官 これはもう委員御案内のとおりだと思いますけれども、当然のことながら、その枠組みに入っていないわけですから、その枠組みに入ってない国に対しては効力はないということだと思います。

 今、新聞等々でというお話がありましたが、それは新聞の書き方に問題があるのではないでしょうか。誤解を受けるような書き方をされている新聞があるのであれば、その新聞の方がもう少ししっかりと現状を理解していただいて書いていただくという方がいいと思います。

石田(祝)委員 そういうことだということを確認いたしました。これは、今言われているアジアの問題でも、例えば中国も入らないよと。韓国も、またインドも、インドネシアも。そうすると、そういう国に対してアジアの共通のルールというものは、実際、TPPの問題とは無関係だ、こういうことですね。

 それで、きょうは経産省にも来ていただいておりますのでちょっとお伺いをいたしたいんですが、私は、輸出については実際は、例えばアメリカとの問題でいくと、関税のパーセントよりもいわゆるドル安・円高の方がもっと大きな問題ではないのかと。

 ですから、今のような七十円台で推移しているときに二・五%の乗用車の関税がどれだけの障害なのか、もっとこれは円高対策をやった方がいいのではないか、こういう気が正直いたします。その割には、この円高で大体、いろいろな企業が、一ドル幾らで来年度の会社の計画をするか、八十円だとか八十五円だとか、こういうことも聞きますけれども。

 私は、一円の円高になった場合、または一円の円安でもいいんですけれども、これが関税になると実際は何%分の話になるのかなと。このことは、きのうお聞きをすると、まだ計算したことがない、経産省で計算していないということを言っていましたけれども、これは計算されていますか。

五嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 一円の為替変動の及ぼす影響でございますけれども、円高になりますと、例えば海外の資源の調達や資産の購入、こういったもののコストの引き下げに作用する面もございますし、また、為替の予約という形でリスクヘッジをするというようなこともございます。ということで、一概に円高または円安を関税に置きかえて影響を評価するというのは極めて難しい、困難というふうに考えてございます。

 したがいまして、今後とも、EPAの推進、それから関税の格差の解消、円高の対策、こういうものを含めまして競争条件の不利をなくして、国内の産業への悪影響や空洞化の進展を緩和する、そういうことが必要ではないかと考えております。

 以上でございます。

石田(祝)委員 私は、やはりもうちょっと真剣に円高対策を考える、その一つのきっかけとして、関税の問題だけがピックアップされるんじゃなくて、これは私は輸出という観点でお伺いをしたつもりでありましたが、輸入にとって不利じゃないとか、そういうお話をお答えとしてお聞きしたかったわけではございません。

 現実に、アメリカは自動車に二・五%という関税をかけていましたよね。そういうものが、例えば二円、三円の円高になったら、もうそういう関税の問題なんて吹っ飛んじゃうんじゃないのか。逆に、一ドル幾らという想定から例えば三円、五円の円安になったら、そんな関税なんか関係ないよ、実際そういう効果が輸出に対してのブレーキ役にはならないよ、こういうこともあるわけですから。このあたりは経済産業省も一度よく、一円の円高、円安と、それから、関税にどう影響するのか、関税を相殺する効果はあるのかないのか、このあたりは一回ちょっとやっておいてもらった方がいいな、私はこう思います。

 それで、せっかく資料をつくってもらいましたので若干お聞きをいたしますが、お隣の国の韓国と日本のGDPの輸出依存度、これについてはどうなんでしょうか。日本と韓国はどういう数字になりますか。

五嶋政府参考人 御指摘の資料につきまして確認をさせていただきますが、手元に今ちょっと資料がございません。大変申しわけございません。

石田(祝)委員 経済産業省からもらっているんだけれども、本家本元がないと言うんじゃしようがないですね。韓国の輸出依存度は約四六%ぐらいですか。日本は大体一四%ぐらい。こういう中身であります。

 それで、なお、せっかくいただいたから若干、御苦労かけましたのでちょっと申し上げたいと思うんです。

 例えば車、これは日本から輸出するとか云々とありますけれども、日本は海外の生産比率は自動車は六割なんですね。冷蔵庫は七七・八%。一番多いのはインクジェットプリンター、海外生産比率一〇〇%。これなんかは、海外でつくっているわけですから、別にその国に対する輸出関税が高かろうが低かろうが関係ないわけですね、逆に。事ほどさように、いろいろとお話が、関税が低いから、安いから韓国に負けるとかじゃなくて、例えば日本の車は六〇%を海外でつくっている、韓国では現代が五一%だ、こういうふうに、大分もう海外に行っちゃっているわけですね。

 ですから、今回のTPPの問題は、工業製品というよりは、やはり農業であり、水産業であり、そして医療業界、薬品業界、こういうところに影響が出てくるのではないのか、こういうふうに私は思います。そういう点もよくお考えをいただきたいな、こういうことを申し上げたいと思います。

 TPPばかりやるわけにいきませんので、最後に、政務三役、大臣、副大臣、政務官にお伺いをしたいんですけれども、それぞれ、この問題につきまして、TPPの交渉参加に賛成か反対か、お答えいただければお願いいたします。

鹿野国務大臣 今のこの段階で賛成か反対かというふうなことについては、発言を控えさせていただきたいと思います。

筒井副大臣 私も大臣と一緒でございますが、石田先生が今言われました数字だけ見ても、では工業製品の方が必ずしもメリットがあるのかといったら、今の円高の部分と関税の部分の説明が極めて納得的な説明でございまして、メリットがあるとも言えない。かといって、農産物の方は関税がゼロになった場合に非常に大きなデメリット、影響を受ける、これははっきりしているわけでございますし、これはほんの一つのものでございますが、それらの点からいっても慎重に考えなければいけないというふうに考えております。

仲野大臣政務官 私も、大臣、筒井副大臣が今お答えしたとおり、今、このTPP問題、かなり厳しい環境になってきているのかなという状況の中で、期限を決めて判断をしなければならない、そしてまた、さまざまな現場の声を伺ったときに、やはり大変厳しい状況にあるということを考えたときに、私は、総合的に慎重にこのことは検討していかなければならない、そういう重要な問題だと思っております。

石田(祝)委員 ありがとうございます。

 お答えしにくかったと思いますけれども、よくお答えいただいたなというふうに思います。大臣、副大臣、政務官、それぞれ若干ニュアンスが違いましたけれども、現状の認識はよくわかりました。これは、これ以上申し上げるのはちょっと忍びないので言いませんが。

 では、続きまして、食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画についてお伺いをしたいんですが、きょうは石田内閣府副大臣にも来ていただいておりますので、国家戦略の立場からお伺いをしたいんです。これは、なぜ閣議決定をしなかったのかということが一つ。そして、TPPとの関係はあるのかないのか。この二つを石田副大臣からお伺いしたいと思います。

石田副大臣 石田委員にお答えをいたします。

 我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画を閣議決定しなかったわけについてでありますが、この点につきましては、委員御案内のとおり、昨年、平成二十二年十一月の二十六日の閣議決定に基づき設置された食と農林漁業の再生推進本部のもとで検討し、昨日、十月の二十五日に同本部で決定したものであります。そして、この推進本部については、総理大臣を本部長といたしまして、農林水産大臣そして国家戦略担当大臣を副本部長とし、そのほかすべての国務大臣で構成をしている点が閣議決定をしなかった理由であります。

 それから、二点目のTPPの交渉の参加の件についてであります。これは、我が国の食と農林漁業の再生は待ったなしの状況でありますが、TPPの交渉参加の判断いかんにかかわらず進めていく課題でありまして、別な判断でいたしておるわけでございます。

石田(祝)委員 閣議決定、またTPPとの関係性、それぞれお答えいただきました。閣議決定は、もともとこの会議が閣議でできているのでしなかった、こういうことですね。TPPとの関係はない、ですから、交渉参加のいかんにかかわらずこれについては進めていく、こういうことですね。副大臣というよりも、その後ろに座っている人が大きくうなずいていますよ。副大臣のうなずき方より激しいうなずき方をしておりますので、事務方もそういう認識だな、こういうふうに思いました。

 それで、ちょっとこの中でもいろいろと今までお聞きになっているんですけれども、大規模化の問題ですね。これは突然じゃないですか。平地で二十から三十、中山間地で十から二十ヘクタール、これを目指すということですけれども、この数字は一体どこから出てきたんですか。それと、具体的にどうやってやるんですか。中山間地で十から二十ヘクタールなんというところが現実にあるんですか。

 私は、中山間地の直接支払いをするとき、これを何とか使い勝手のいいものにしてもらわなきゃいけないということで、当時私も副大臣をしておりましたが、とにかく一団の面積で、あっちこっちからかき集めてでも、一団と認められれば一ヘクタールでもいいよ、こういう苦労をしたんですよ。そういう中山間地で十から二十なんという経営体、これはどういうお考えでこういう数字が出てきたのかよくわかりませんが、これからはTPPとは無関係に大規模化をしていくんだ、こういうお話ですから、具体策が検討されていると思いますので、お示しをいただきたいと思います。

筒井副大臣 先ほども申し上げたと思うんですが、二十から三十、平均耕作面積では全くありません。それは不可能だというふうに考えております。大宗を占めるという意味内容について先ほど議論がありました。その場合の平均耕作面積に関しましては、試算した上、これをこの委員会にお示しする。さっき、赤澤先生との議論の中で約束したものでございます。

 そして、これを実現する手段としては、これも先ほどからばらばらかもしれませんが申し上げてきましたように、所得補償制度そのものが規模拡大のための一つの大きな手段であるというふうに考えておりますし、さらに今までにプラスして、規模加算の制度もつけ加えたわけでございます。そしてさらに、今度は農地の出し手についての支援もプラスをした。これらいろいろな形で規模拡大を実現していきたいということでございます。

 ただ、規模拡大一本やりで日本の農業の再生ができるとも思っていないということもきょうの午前中の審議を通じて申し上げたところでございますし、規模拡大の点でアメリカやオーストラリアと伍していけるなんてことも自然条件等からいって不可能である。やはり、日本の農業の強みは安全性と食味のよさ等々、そっちの方の点である。この点で日本の消費者にさらに消費をしていただいて、さらには特に東南アジア等を中心として輸出を伸ばしていく、こういう戦略構想を今描いているところでございます。

石田(祝)委員 筒井副大臣にいろいろ熱心にお話しいただきましたけれども、具体的に、じゃどうするのかというお話は全くなかったように思います。

 今の政策の中で規模拡大へのインセンティブがあるんだ、これは戸別所得補償がそうだというお話もありましたけれども、具体的に、平地で二十から三十、中山間地域で十から二十ヘクタールの規模の経営体が大宗を占める構造を目指す。これは、日本語を素直に読めば、平地で二十から三十ヘクタール、中山間地で十から二十ヘクタールの規模の経営体がほとんどそういう経営体になりますよと。日本語で言うならそうなるんですよ。これは書き方が悪いのか、わかっていて書いていて、これから努力しようとされているのか。

 今までも、前の政権もやはり農地集積ということをやってきたわけですよね。そういうことをやってきて、なかなか難しかったんだけれども、突然、二十から三十。北海道はそういう話もあったかもしれませんけれども、中山間地で十から二十、こんなことが本当にできるんですか、日本の中山間地で。これはちょっと無理な話を書いているんじゃないですか。それとも、経営体と書いていますから、個人じゃなくて法人の方に力を入れようとしているのか。

 このあたり、どうなんですか。もうちょっと、せっかく、私は閣議決定した方がいいと思ったんだけれども、閣議決定の会合で決めたものだからいいんだと。これは閣議決定と等しい意味合いを持たせているということだろうと思いますので、そこまで決めたものを、具体的に数字まで入れていますから、どうするかということをもう一度、具体的にお答えいただきたい。

筒井副大臣 今までの所得補償政策にプラスして、今年度から規模拡大加算を入れた、さらには今度、出し手に対する奨励金も入れる、さらには集落営農についての推奨をさらに強化して図っていく、そして耕作放棄地に対するもの、これは今までの所得補償でもきょう午前中議論になりました再生加算というのがありましたが、それにプラスして新しく、さらに耕作放棄地を再生していくという手段も入れているわけでございまして、これらいろいろなものを全部総合して、今言った二十から三十ヘクタールを目指すわけでございます。

 そして、大宗というのは、面積でいいますと二十から三十ヘクタールの経営が約八割を占める、それを目指していこうということでございます。さらに、これは基本方針でございますから、その具体的な手段についてはこれからさらに詰めていかなければいけないものだというふうに思っております。

石田(祝)委員 これは、日本語の読み方が若干私と副大臣は違うと思いますが、普通の人が読んだらそういう理解ではないですね。例えば、経営体が面積の大宗を占めるとか書けばわかるんだけれども、経営体が大宗を占めるとなったら、それは、経営体が百あれば、八十はそういう経営体ですよというのが日本語ですよ。これはちょっとやはり無理がありますね。ですから、そこのところはもうちょっと整理して、せっかくですから、これはぜひ実現をしていただきたいなというふうに思います。

 原子力損害賠償について、文科省に来ていただいておりますのでお伺いしたいと思いますが、まずは農水省に、特に農林水産業の風評被害を含めて、現在までの賠償の請求と支払い状況、これは金額で結構ですから、請求が幾ら、支払われているのが幾ら、お答えいただきたいと思います。

筒井副大臣 今までのところ、約五割が支払われているんですが、その金額は四百二十六億円でございます。失礼、五割ではなくて、請求額の六三%が支払われていて、その金額が四百二十六億円でございます。

石田(祝)委員 ちょっと申し上げておきますけれども、私はきのう資料をもらいました、十月二十一日付で。それには四百六十四億となっていますよ。支払い率で五三%ですが。これは副大臣の読み間違いですか、どうなんですか。

筒井副大臣 十月の見込みを見間違えて読み上げてしまいました。先生のおっしゃるとおりでございまして、本払い、仮払い、午前中にはこれを正確に答弁したんですが、四百六十五億円で、請求額の五三%。先生のおっしゃるとおりです。

石田(祝)委員 それで、今これは五割支払われているということですが、今後いろいろと賠償の問題が出てきます。これがもめたとき、これは和解の形ですから、お互いが納得しなかったら裁判になるんですか。これは大変なことになるんですけれども、そういうところを、文科省、原子力の損害賠償紛争審査会を管轄している役所として、一人一人に、被害者にいわゆる証明責任みたいなことを負わせるようなことをしちゃいけないと思いますが、どう考えていますか。

田中政府参考人 今回の東京電力の福島原子力発電所の事故につきましては、一刻も早く被災者の方々が救済されるということで、全力で取り組んでいるところでございます。ただ、今回の事故は範囲あるいは規模が多様であり、かつ複雑だというようなことから、一生懸命頑張っておりますけれども、紛争というようなことについてはある程度発生をしていくということが見込まれるということでございます。

 このため、これらの発生が起こった場合に迅速にいろいろな処理が進められるよう、文部科学省としては、法務省を初めとした関係機関あるいは法曹界に連携協力をしていただきまして、原子力損害賠償紛争解決センターを開設いたしました。九月一日から被害者の方々と東京電力の和解の仲介のための業務を開始してございまして、現在、約百三十名の経験豊富な弁護士、そしてそれらの仲介業務を支えるためのもろもろの調査をするための調査官、これらの方々も弁護士資格を持っておられますけれども、こういう体制で臨むというふうに考えてございます。

 なお、和解が不成立というようなことも万々が一あろうかと思いますけれども、なるべくこのセンターがきちんとした機能を十分発揮して、被害者の方々と東電との間がスムーズかつ話し合いによって進められるよう取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

石田(祝)委員 できるだけそういうところを煩わさないように、うまく話し合いができれば非常にいいと私は思いますが、万々が一のときにそういうこともやっていると。

 委員長、これは二つ問題があるんですよ。一つは、この和解の強制力がないということ。通常、裁判所の和解というのは判決と同じ効力がありますから強制されますけれども、これは強制力がないということ。そしてもう一つは、これは第二次の補正予算で十億円つけているんですよ。私も二次補正に賛成したから余り言えないんですけれども、東電と被災者との間の和解の問題を国の金でやるということはよかったのかな、これは東電にどこかで請求すべきじゃないかなということを今回いろいろと教えていただいた中で思っております。これは後日の課題だろうと思いますけれども。その二つが若干腑に落ちませんが、とにかく、被災者の立場に立ったら一日も早くスムーズに支払いができるように、御努力をお願いいたしたいと思います。

 続いて、三次補正についてお伺いをいたしたいというふうに思います。

 三次補正というよりも、漁業の問題で、大臣、十月の五日に私は、共同利用漁船等復旧支援事業、これが第一次補正は五月二日に通っているのに、二百七十四億の予算で通りましたが、そのときに一体幾ら支出されているのかと聞いたら、約二千五百万だと。そのときで既に、五月二日からだから、六、七、八、九、十。五カ月ですよ。もう六カ月、半年になろうとしているのに、現在はどんな状況になっているのか。少なくとも私はそのときに、早くやってもらいたい、こういうことを申し上げましたが、あれから二十日たっております。どのように進展なさっているのか、まず数字をお伺いしたいと思います。

鹿野国務大臣 本年の四月一日以降に着手いたしておりますものから補助の対象として、この共同利用漁船等復旧支援対策事業におきましては、九月末までの現在ということでございまして、約七百隻が復旧いたしております。

 予算の執行につきましては、北海道及び富山県に十七億円を交付決定済み、これは予算全体の六・二%であります。北海道には九月二十七日に二千六百万円を支出、岩手県では現在三十四億円の交付の申請を手続中、具体的に今週中には申請が行われる、こういうふうなことを聞いておるところでございます。

石田(祝)委員 大臣、五日の質問で、きょうは二十六日ですよね。要するに、二千五百八十七万円しか支出されていないんですよ。私が三週間前に聞いたときと全く変わっていないんです。被災の漁業の方が、魚はいるから、船さえできればいつでも行けるんだ、行きたいんだ、こういうことで、一次補正で二百七十四億、そして今度の三次補正でも百十三億要求しているじゃないですか。それなのに、支出済み額、実際お金が行っているのが約二千六百万で、三週間前と全然変わっていないんですよ。

 これは何が原因ですか。県費を三分の一出さなきゃいけないという、県がそのお金を出せないから支出できないんですか。その原因を取り除かないと、漁民にとってこれは全然生かされた政策じゃないんですよ。このあたりはいかがですか。

鹿野国務大臣 今先生から、県が三分の一を負担しなければならないというところが消極的になっているところじゃないかという御指摘もございましたけれども、実は、この事業に関しましては、岩手県では、三分の一の負担のところ、九分の四をみずから上乗せして支援をしている、こういうことでございまして、このようなことから、必ずしも県が負担しなければならないということが消極的になっているというふうなことではないものと思っております。

 この件につきましては、石田先生の方から十月五日に御指摘をいただきましたので、私どもも直ちに現地に職員を派遣いたしまして、そして状況把握というふうなものを含めて、県の方からも申請が早期に出されるように、こういうようなことの手続等々につきましても水産庁としても支援をするように、こういうふうな指示を出したところでございますけれども、これからも、県の方の段階におきましてできるだけ早く申請が出されるように、水産庁としても全面的な協力をしていきたいと思っております。

石田(祝)委員 ちょっと時間オーバーしますが、お許しをいただきたいと思います。

 今回、三次補正については、復興木材安定供給等対策ということで約千四百億円、これをやっていただきました。これは地元も大変に喜んでおります。山林のあるところは、もともとの森林整備加速化・林業再生基金。これらについて、非常に喜んでおりますことは申し上げたいと思います。

 最後に一つだけ、戸別所得補償について、これは法律を出すようにお考えが変わったのかどうか。これだけ最後にお聞きして、終わりたいと思います。

鹿野国務大臣 できましたらば、恒常的な形で、これからも安定的な形でこの制度を維持していきたいという考え方でございますので、法律を出して、そして御理解をいただきたい。法案を出して、そして御理解をいただいて、法制度にきちっと持っていきたいという考え方でありますが、三党合意に基づいてこの件につきましては御協議をいただくということになっておりますので、いろいろと御協議をいただく中で合意をしていただいて、法制度というところに向かっていただけば大変ありがたいと思っておるところでございます。

石田(祝)委員 ありがとうございました。

吉田委員長 次に、吉泉秀男君。

吉泉委員 社民党の吉泉秀男です。

 今、石田先生から大臣に対する質問、特にきのうの大臣発言、そしてまたきょうの発言、このことに対して自分自身もすごく心配をしているところでもございます。

 大臣の慎重な態度、そのことについてはわかるわけでございますけれども、しかし、二十四日の日に、野田政権に対する私ども党として初めての、TPPに対する見解、このことを申し入れをしたところでもございます。そのときに官房長官が対応をしてくれたわけでございますけれども、その二十四日はまさに、全国中央会そしてまた経済界、このところからそれぞれの要請を受けて、大変な心境、状況について率直なところを語ってくれたところでございます。

 しかし、もう日にちがない状況ですね。その中で私どもは確認をしたわけでございますけれども、参加する、しない、このことについては閣議でどういうふうにとらえるんだ、閣議決定をするのかと。いや、閣議決定は要らないんだろう、こういうのが長官の返答でございました。だとするならば、APECに向かうその姿勢というものに対して、総理はどこのところで気持ちを明らかにするのか。やはり最低でも閣議の中において、参加をする、参加をしない、このことについては表明があるんだろうというふうに私は思っているところでもございます。

 だとすると、閣議はもう四回しかないわけですね。今週の金曜日と、火、金、そして最終的に火曜日。臨時の閣議でもあれば違うわけでございますけれども、そういう中においてただ何も、閣議、さらには全体の閣僚会議の中で総理がそこに臨むというふうなことにはならぬだろうというふうに思ってもいるわけでございますから、そういうせっぱ詰まった中で、一番大きい被害を受ける農業、こういう状況に対して、大臣の今の当初からの慎重な態度、そして構え方、そのことはわかる。わかるんだけれども、そのことに対して、大臣が総理からどういうふうに聞いているのか。さらには、閣議の中でどういうふうにして、態度表明というものについて閣僚の中で確認をしないで、APECの方に参加をさせていこうとしているのか。

 その辺の状況がちょっと見えないものですから、マスコミでは、もう決めたとか、前のめりだとか、いろいろな話が報道なされているわけでございますけれども、やはり閣僚の一人であります大臣の方から、その辺の、もう待ったなしという状況の中において大臣が総理とどういう話をなされているのか、そのことについてお伺いをさせていただきます。

鹿野国務大臣 TPPに対する交渉参加をするかしないか等々につきましては、報道等におきましても日々活字が大きくなってきている今日でございますが、そういう中で、閣僚の間における議論というものは、経済連携におけるところの関係閣僚会議におきましても議論がなされておるところでございます。

 そこで、私自身は、特に情報というふうなものを、議論するためには情報が最も必要なことである、このようなことから、情報の提供というものはもっと積極的にやるべきである、そして国民的なそういう議論も必要ではないかというふうなことを強調いたしておるわけであります。

 もう一点は、この委員会でも申し上げましたとおりに、期限を切って、いつまでにどうするかというふうなことを判断するということは、プラスの方向に行くというようなことについては私自身は基本的な疑念を持っておるというふうなこと等々の発言をいたし、そして、党内におきましても、今、プロジェクトチームにおきまして精力的な議論がなされているわけであります。

 そういう中で、私どもの考え方あるいは党の考え方というものを受けて最終的に総理自身がどのような判断をするかということになるというふうなことかもしれませんけれども、私どもは、きょうも衆議院のこの委員会におきまして議論がなされたことにつきましては参考にさせていただきながら、今後、私自身の考え方というものに、どうするかというふうなことも含めて、主張すべきときが来たらば主張をしていかなきゃならないというふうなことも考えておるところでございます。

吉泉委員 そうすると、APECに参加する、その前までには閣議のところの中で総理として表明をする、何らかの態度は示す、こういう御理解でいいのでしょうか、どうなのか。

鹿野国務大臣 閣議で、何らかの形でAPECまでに総理自身が考え方を示すかどうかということはまだ決まっておりません。

 すなわち、TPP交渉に参加するかしないかという問題につきましては、今申し上げましたとおりに、経済連携関係閣僚会議におきましての議論というふうなことでありまして、そういうものを受けて総理自身が、また党の議論を受けて何らかの考え方というものをお考えになられるもの、こういうふうに思っておるところでございます。

吉泉委員 それでは、こういうこともあり得る、そういうとらえ方でいいのかということについてお伺いします。というのは、いわゆる閣議のところで何ら態度を示さないでAPECに向かう、その会場、さらにはその前段のところの中で、いろいろな動きの中でそれぞれ、総理はそこに表明をする、こういうこともあり得るというとらえ方でいいんですか。

鹿野国務大臣 どういう形で総理自身が考え方を示されるか。総理自身も、十一月の十二、十三日のAPECまでに云々するという話は明確には話しておられないわけでありますので、どのような場におきましてどういう考え方を申し述べられるかというふうなことは、私自身は不確かなところでございます。

吉泉委員 ちょっと心配なんですけれども、基本方針・行動計画で、自給率を五〇%まで高める、これを決めたわけですね。それで、TPP交渉について、農林省として試算も出しているわけですね。いわゆる三十三品目、このところについて関税撤廃になった場合どうなるのか。これは一三%まで下がる、こういうことも言っているわけですね。これは農林省の試算ですよ。農林省で出した影響試算。

 こういう状況の中において、大臣として、この方針を決めながら、そして今一番大事な、もう二週間後に間近になってきているAPECの中で答えを出そうか出さないか、そういう状況のときに、自給率が一三%まで落ちるんだ、こういうふうなものを農林省で出して、そして傍観をする、さらにはそれぞれ慎重な態度、こういうふうなことについてはちょっと私としては納得いかない。

 もっとやはり大臣としてそれぞれ、農林、いわゆる日本の農業という立場で、リーダーシップ的な、さらには強力な一つの構え方、この部分が必要だろうというふうに思っておりますし、きのう、さらにはきょう、JAの大集会があった、それからもう連鎖的にそれぞれの団体等の関係でAPECまでの全国集会が開催をされるという状況にもなっておりますので、そういう面では、大臣としての慎重な構え方、このことは理解はするわけですけれども、今の時期はそんな状況にはなっていないという立場の中で、ぜひ再度見解をお伺いします。

鹿野国務大臣 二〇二〇年までに、今後の日本の国の経済成長というふうなことも含めて、自由貿易圏をどうやって形成していくかということの中で、いろいろな道筋がありますねというふうなことから、ASEANプラス3、ASEANプラス6、あるいはまたバイの関係でそれぞれの国とEPAを結んでいく、あるいはまたそういう中でTPPというふうなことに参加するということもありますねと、道筋についていわゆる提示がなされているわけでありますが、そういう中で、どういう戦略を持って今後の自由貿易圏というものを形成していくかというふうなことにつきましては、いろいろと今後この議論をする中で決めていかなきゃならないことだ、そんなふうな考え方を持っているところでございまして、きょう、こうやって新たな形で農林水産委員会がなされて、いろいろな委員の先生方から御指摘をいただいたというふうなことは参考にしていかなきゃならない、こんなふうに思っておるところでございます。

吉泉委員 それでは、ここをどうのこうのということでもう少し議論を深めるといったって時間がなくなりますので、筒井副大臣の方にお伺いをさせていただきます。

 それは、再生実現会議の内容でございます。この会議が発足したのは、まさに菅政権のもとで、平成の開国というふうな一つの方向の中で、このTPP交渉に加わっていくというふうな構え方の中で何が問題なのかというところを、それぞれのところの中で、この会議の中で議論するというものだったというふうに思っています。だからこそ、構成そのものが、各省の方からそれぞれ副大臣なりいろいろな方々がやはりかかわっている。そしてまた、そういう中において、もう一つは幹事会、ここまでまたやりながらこの一年間議論をしてきた、その結果がまとまったというものなんだろうというふうに思っています。

 きょう、それぞれ副大臣さらには大臣の方から、TPPに参加する、参加しないにかかわらず、この方向の指針の中で、これからの農業の方向を持っていくんだというお話がございました。しかし、自分自身、大変危惧するわけでございます。

 このところについての農林省のペーパー、ホームページを見せていただきました。確かにそういうTPP云々という問題の言葉は入ってきていなかったわけでございますけれども、しかし、それぞれ幹事会の中で、四回ほどの有識者会議、有識者を呼んでのヒアリング、こういうところが四回開催をされているわけでございます。幹事会の中で、経済界の代表ではないわけですけれども、会社の社長さんなりを呼んでヒアリングをやった。そして、この状況について取りまとめて、第七回の幹事会まではそれぞれ公開がなされております。

 しかし、それ以降のまとめ方、幹事会の内容については公式になっておりません。非公開でございます。私はやはり、今後のまとめ方、それには、強いそういう一つの経済連携、こういうことから見ると、まさに高いレベルの経済連携、これは何を意味するのかというふうになると、自分としては、TPPではないか、そういうふうな疑いもあるわけでございます。

 そんな面で、この一年間、筒井副大臣が参加をしながら努力をしてきた、そのことはわかりながらも、この経過等を含めて、TPPとこの基本方針・行動計画がどういうふうにリンクをしているのか。リンクしていないというふうな、そういう状況にはならぬというふうに思っておりますので、具体的な感想も含めて答弁をお願いします。

筒井副大臣 実現会議の幹事会において、経済界の皆さん、それから農業界の皆さん等々が参加されておりましたので、TPPについての発言がなされ、議論がなされたことは確かでございます。TPPに対して否定的な意見と、それに対して積極的な意見と双方がございました。

 しかし、最後の点だけ申し上げますが、最後にまとまった基本方針については、これはTPP参加とは全く別次元で、日本の農林水産業の再生を図るための方針を、戦略一から七にわたって、それを中心として出したものであるという点。そして、高いレベルの経済連携の問題が出てきた場合には、それに対する対処の方針はその都度検討をすると。だから、別の検討をするという点では、全員一致、確認されたものでございます。

吉泉委員 このことについては、もう時間がありませんので、この次に少し議論させていただきます。

 ただ、問題は非常に動いているなというふうに率直に感じます。その中で、六次産業の方にファンドを入れる、再生可能エネルギーに対してもファンドを導入する。そして、来年度の概算要求、この部分に見るわけでございますけれども、これは今の段階では二百億だ。そして、今の流れで、六次産業というものについては十兆円まで持っていくんだ、こういう力強い方向が出されているわけでございます。

 そして、一番心配するのは、スーパーL資金、農家に対しては最高一億五千万まで融資をする、そして法人には五億まで融資をする、これが、六次産業のファンド事業、それを見越した一つの資金の考え方が出されているのではないか。自分自身、いろいろな面で非常に危惧をしているところでもございます。

 そんな面で、このファンド事業、このことについてどういうふうな考え方を、大きく再生可能エネルギーと六次産業に対してファンドを入れるという中身について今検討なされている点、そのことについて大臣の方からお伺いさせていただきます。

筒井副大臣 おっしゃるとおり、六次産業化というのは、一つは、農産物についての加工、流通まで取り組むという点と、それから、地域資源から新しい事業体を起こすという、その中には再生可能エネルギー事業も入るわけでございます。さらには、輸出業務も六次産業化の中に入るわけでございます。

 それらについて農業者自身が起業していくという場合に、農業者の場合、他の経済界の人たちと比べて資本金がもちろん過小でございますから、それに対して二百億円のファンドを設立して支援する。その支援は、出資という形で支援するというものでございます。もちろんこれは、国の産投資金、産業投融資の資金だけではなくて、例えば二百億のうちの一割、二十億ぐらいは民間からも出資を仰ぐ、これらを考えているものでございます。

 そして、そのファンドのもとに地域ファンドをつくって、地域ファンドが具体的な事業体に出資をする。ただ、その出資をする際に、農業者の人たちと地域ファンド、さらには連携する企業の皆さんの三者が事業体を設立するというのを典型的なモデルとして考えているわけでございますが、その場合に農業者あるいは地域ファンドが出資額の過半を握るというふうな方向性も意識をして取り組んでいるところでございます。

 出資でございますから、もちろん利息とか何かはないわけでございます。その出資も、将来的に利益が上がった場合、十年、十五年の長期を見越した上で、その段階で利益が上がって、きちんとその事業体が持続的に経営が可能であるという段階になったら、地域ファンドの方で出資をしたものを、つまり株になるわけでございますが、農家の皆さん、あるいはそれと連携している民間企業の皆さんにその株を買ってもらうとか、さらに新しくそこに参加する方に株を買ってもらうという形でそのファンドを回収するという方向性を考えているところでございます。

 しかし、まだ完全な意味で詳細が決まったわけではありませんから、これから皆さんの意見を伺いながら詰めていかなければならない点も多々あるかと思います。

吉泉委員 今、副大臣から言われましたように、ファンドはまさに投資でございます。戻ってはこないんです。ひょっとすると戻ってくるかわかりませんけれども。

 自分自身、山形で県議会をやっていたときに初めてファンド事業をさせていただいて、製造業の一つのファンド事業を起こしてまいりました。それはやはり、まさしく県単独というふうにはならないんです。民間企業というのはやらないんです。やはりそれぞれファンドの会社、そういった部分と提携を組まないとこのファンドというのはなかなかうまくいかない、私はこういうふうに思っております。

 そういう面の中で、きのう担当の職員あたりと議論もさせていただいたわけでございますけれども、ファンド事業の中で六次産業を大きく一次産業から変えていく、そういう一つの考え方、そしてまた、大きく十億なり二十億なりの企業をつくるんだというふうな考え方であるならば、もっともっと慎重になってこのファンド事業というものについて考えていただきたい、こういうふうに要望を申し上げさせていただきたいと思っておりますし、この点についても時間を、ゆっくり議論をさせていただきたい、こう思っております。

 時間が大変超過したことに対しておわびを申し上げながら、終わらせていただきます。ありがとうございました。

吉田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることといたします。本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十七分散会


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