衆議院

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第9号 平成25年5月22日(水曜日)

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平成二十五年五月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 森山  裕君

   理事 伊藤 忠彦君 理事 小里 泰弘君

   理事 北村 誠吾君 理事 葉梨 康弘君

   理事 宮腰 光寛君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      加藤 寛治君    川田  隆君

      菅家 一郎君    清水 誠一君

      末吉 光徳君    鈴木 憲和君

      武井 俊輔君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      長島 忠美君    西銘恒三郎君

      橋本 英教君    福山  守君

      堀井  学君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    寺島 義幸君

      福田 昭夫君    鷲尾英一郎君

      鈴木 義弘君    高橋 みほ君

      百瀬 智之君    稲津  久君

      佐藤 英道君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   環境副大臣        田中 和徳君

   農林水産大臣政務官    稲津  久君

   農林水産大臣政務官    長島 忠美君

   経済産業大臣政務官    佐藤ゆかり君

   会計検査院事務総局第四局長            田代 政司君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   福田 淳一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            針原 寿朗君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            實重 重実君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  伊藤 哲夫君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

五月二十一日

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

森山委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官荒川隆君、食料産業局長針原寿朗君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長實重重実君、水産庁長官本川一善君、財務省主計局次長福田淳一君及び環境省自然環境局長伊藤哲夫君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第四局長田代政司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井野俊郎君。

井野委員 おはようございます。自由民主党、群馬二区選出の井野俊郎でございます。

 今回、初めて質問に立たせていただきます。何分ふなれな点もございますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回、安倍総理、そして林大臣が積極的に推し進めていらっしゃいます攻めの農業について具体的に質問をさせていただきたいと思っております。

 我が党が取りまとめました農業・農村所得倍増目標十カ年戦略は、地域、農家の所得倍増などにより、農家が安心して農業を続けることができるようにし、農業の多面的機能を維持発展させるという意欲的なものであり、今般の総理の成長戦略第二弾にもその一部が取り上げられたところでございます。

 これを受け、先日成立した平成二十五年度予算においては、農業の多面的機能・担い手調査として、約十六億円の予算が計上されております。これは、攻めの農業を支えている日本型直接支払い及び担い手総合支援の制度設計に向けた調査を行うものであり、極めて重要な調査であると考えております。

 そこで、まず、当該調査の調査主体が大変気になるところでございます。この点、今回の調査の委託先として、民間団体などというようなことになっておりますが、農水省として具体的にどのようなタイプの団体にこの調査を委託する予定なのか、まずお伺いさせていただきたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の多面的機能・担い手調査でございますけれども、これは農業の多面的機能を評価した日本型直接支払いなどの制度設計に必要なデータを収集、分析するということを目的とした委託調査事業でございます。その委託先につきましては、競争入札を経て決定をするという予定にいたしておるところでございます。

 その際、一般論として申し上げますれば、農業の多面的機能に着目した調査でございますので、その委託先としては、農業活動の実態に精通していることが望ましいと考えておるところでございます。

 具体の手続としましては、単に価格のみに着目をした一般競争入札ではなくて、調査の提案内容の評価もさせていただいた上で落札者を決定いたします総合評価方式による入札ということで考えているところでございます。この手続によりまして、公平、透明性を確保しながら、高い調査能力なり分析能力を有する方が選定されるように意を用いてまいりたいと思っております。

井野委員 総合評価入札ということでございますけれども、一点、もう一度確認させていただきたいのが、やはり農業の多面的機能というものは、入札というか金銭的な評価だけではなかなか評価し切れない面、これは農家の実態、また地域によっても、本当にさまざまな問題、特性があるわけでございます。一社、例えば東京にある会社だけがするというのではなくて、やはり地域ごとの実情に合った調査も必要だと思いますけれども、地域ごとのそういったものも含めて総合評価するということでよろしいんでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 総合評価方式による入札というものは、当然、調査主体が持っております能力がどういうものであるかというようなことですとか、調査の体制がしっかりしているか、あるいは同種の調査の経験があるか、こういったようなものを総合的に評価するわけでございます。

 先生今お話がございましたように、今度のこの調査は、まさに日本全国のいろいろな農業実態についての調査を行うということになりますので、そういった先生御指摘の点も評価の基準になるように対応してまいりたいと思っております。

井野委員 調査主体の点については、詳しくわかりました。

 続きまして、この調査についてですけれども、現状の把握、分析、またデータ収集というものを前提にされていると聞いております。これは農業の多面的機能評価という点をも含まれると考えられますが、私自身、この調査結果については大変興味を持っている一人でございます。特に今回の調査結果は、今後の農政の根幹をなすものというふうに考えられております。そのため、この調査については、農業関係者による専門性が求められることはもとより、一般国民にも十分理解できる、わかりやすいものとする必要があると考えております。

 そこで、農林水産省として、どのような分析、データ収集を想定され、また、どのように国民への説明資料とされていくのか、現時点での具体的なイメージや内容についてお伺いさせていただきます。

江藤副大臣 委員におかれましては、初めての御質問ということで、これからまた、いろいろな、若い切り口での御意見をよろしくお願いいたします。

 確かに、農家の、また地域の果たしている役割を数値的に出すということはなかなか難しいと思います。東京に本社がある会社がやれば済むということでもない、これもいい指摘だと思います。

 我々が目指している農政というものは、全国一律ではなくて、それぞれの地域の特性を生かした農政を展開するということでありますから、できるだけ現場に近い人たちが地域の調査対象の調査を行って、そしてきめ細やかな結果を、これは単年度事業ですから、三月の年度末にはきちっとしたものを、なるべく早く出しますけれども、出していかなければならないというふうに思っております。

 具体的には、集落ごとの資源管理活動とか環境保全型農業による生産活動に要するコストがどれぐらいかかるのか、それは地域によってばらばらだと思うんですよ。それから、多面的機能でいえば、作物別、地域別の生産活動をまず把握しなければなりません。そして、それを分析しなければなりません。そして、その先には農地情報、これもまた大事です。これもまた整備しなければなりませんし、直接支払いの設計に必要なシステム、これもまたつくっていくためにこの調査をするものでありますから、この内容次第によって我々が出した二つの法案の行く末も大きく変わってまいりますので、できるだけ現場に即した人たちが精緻な調査ができるように進めてまいりたいと考えております。

井野委員 先ほど江藤副大臣の方からもお話があったとおり、今回の調査の目的は、農業の多面的機能を評価した日本型直接支払い及び担い手総合支援の制度設計に向けた調査だというふうに考えられます。

 農業の多面的機能の評価については、過去、平成十三年に農業、森林について、また平成十六年には水産業及び漁村について、農林水産大臣は日本学術会議から答申を受けていらっしゃいます。

 そこで、今回の調査は、この答申との関係でどのようなものと位置づけられているのか、お伺いいたします。

 また、約十六億円もの予算をかけてやるわけでありますので、充実した調査結果を期待するものでありますが、この調査結果の姿については、どのような姿を見込んでいらっしゃるのか。特に多面的機能という面で、先ほど、金額、数値で評価は難しいというお話がありましたけれども、こういった金額、数値というところまで踏み込んでその調査をするというか、結果を求めていくのか、そういった点も含めてお聞かせください。

林国務大臣 お答えを申し上げます。

 この十三年の日本学術会議の答申、今、井野委員からお触れいただきましたが、これは農林水産大臣から、その前年の平成十二年に、地球環境、人間生活にかかわる農業及び森林の多面的機能の評価についてということを諮問いたしまして、具体的な試算をして、貨幣で評価をすると幾らぐらいになるのかということを諮問し、そしてそれを答申していただいたということでございます。それ以来、この議論をするときはこの数字を使っているわけでございます。

 一方で、十五億七千万、約十六億の予算をかけて行おうというこの調査ですが、これは多面的機能・担い手調査でございまして、改めてそういう貨幣的な評価を学術的にやるというよりは、それだけ貨幣的評価をしていただいた、また貨幣であらわし切れない大切な多面的機能、こういうものを評価して、そして日本型直接支払いという制度の設計をしていこう、こういうことでございます。

 集落共同体による資源管理活動とか環境保全型農業による生産活動、多面的機能を守るために現在どういうことが行われているか、それにどういうコストがかかっているか、こういうものの実態を把握していこうということでございますので、日本学術会議の答申のような、そもそもの多面的機能が幾らぐらいあるのかということをアカデミックにやるというのとはちょっと性格を異にするということで、具体的な制度づくりのための調査、こういうことでございます。

 したがって、制度をつくっていくときに、今副大臣からも答弁いただきましたけれども、つくってみたら実情と合わなかったというようなことがないように、しっかりと調査をする必要があるということでございますし、今後検討していく過程の中で、ここはもう少し調査をした方がいいかもしれないということが出てくれば、これは必要となる調査をさらに実施するということもあり得るというふうに思っておりますが、関係方面の議論とも十分連携をしてこの調査を進めていかなければならないと思っておるところでございます。

井野委員 かしこまりました。

 次に、農地の集約化についてお伺いさせていただきたいと思います。

 大臣は、産業競争力会議において、担い手への農地集積と耕作放棄地解消の加速化のため、農地の中間的受け皿となる公的組織の整備について御説明されました。先ほど述べました我が党の農業・農村所得倍増目標十カ年戦略にも、農地の中間的受け皿組織は基本政策としてまず取り組まなければならないものとされており、今般の総理の成長戦略第二弾においても、受け皿組織が挙げられたところでございます。このように、農地の中間的受け皿組織の整備は、攻めの農業を具体化する重要施策であると考えております。

 そこで、農水省として、この組織設立までのスケジュールについてはどのように見込んでいらっしゃるのか、今後の法制化等を含めた予定についてお伺いいたします。また、組織内容や組織の構成メンバー、現時点で想定されている予算規模などについてもどのように考えているのか、お伺いさせていただきます。

奥原政府参考人 農地の関係でございます。

 今回、担い手への農地集積あるいは集約化、それから耕作放棄地の解消、これをさらに進めるために、県段階に、農地の中間的な受け皿といたしまして、仮称でございますが、農地中間管理機構というものを本格的に整備し、活用することを考えております。

 今後、構想の具体化を図っていくことにしておりますので、現時点では詳しいことは決まっておりませんが、できるだけ早くこのスキームが動き始めることが重要であるというふうに考えております。したがいまして、必要な法制度につきましては、遅くとも来年の通常国会には関係法案を提出したいと考えております。

 また、このスキームが本格的にワークするためには予算措置も重要であると思っておりますので、詳細は今後検討するということになりますけれども、この農地の中間管理機構が地域内の農地を借り受けるための賃料ですとか、あるいは機構が借り受けた農地について基盤整備などを行うのに要する経費、あるいは、受け手が見つかるまでの間、機構が農地として管理するために要する経費、こういったものについて国が支援する必要があるというふうに考えておりまして、法制度の施行と平仄が合うように予算をきちんと確保していきたいというふうに考えております。

井野委員 新しい制度、中間的受け皿組織というものが新たに制度設計されるということでございますけれども、これまで、こういった農地の移転であったりそういったものについては、農業委員会が主な役割を果たしてきたというふうに思います。

 そこで、この中間的受け皿組織が設立された場合、農業委員会とのすみ分け、役割分担というものはどのようなものになるというふうに考えているのか、現時点での考え方でも結構ですので、お聞かせください。

奥原政府参考人 農業委員会につきましては、従来から、農地法に基づきまして、農地の権利移動の許可等の業務を行ってきたところでございますが、平成二十一年の農地法の改正以後は、これに加わりまして、地域全体としての担い手への農地の利用集積あるいは耕作放棄地の解消に積極的に関与する、こういった能動的な業務が追加をされたところでございます。

 今回、農地の中間管理機構を整備することにしておりますが、ここが農地の権利移動の許可等を行うわけではございません。

 一方で、農地の中間管理機構が農地の借り入れ、貸し付け等の業務を行うに当たりましては、種々の関係機関に委託をいたしまして、地域の関係者の総力を挙げて取り組むということにしておりまして、農業委員会も、農地の中間管理機構のもとで、この機構と一体となって業務を行うということになるというふうに考えております。

 特に、農業委員会が保有しております農地の基本台帳等の農地情報、それから農地のあっせん等のノウハウ、これは今回のスキームの中でより一層活用されることになるものというふうに考えております。

井野委員 わかりました。一体となって、今後、協力しながらやっていくということで了解いたしました。

 次に、この中間的受け皿組織の活用により、これが重要な点かと思いますけれども、担い手への農地集積を加速するというふうにされておりますが、担い手と農地をめぐる地域の合意形成はなかなか容易ではありません。

 特に今、人・農地プランにより農地の集積というものを図っていこうというような計画もございますけれども、地域によってさまざまな事情だったり、全員が同じ方向を向いているというのであれば本当にそれはいいといいましょうか、そういう方向で進んでいくんでしょうけれども、なかなか、現時点でも人・農地プランの作成も十分進んでいないということであっては、こういった面では本当に難しい面がある、地域の全員の合意形成というのは難しい面があるかと思います。

 そこで、中間的受け皿組織による担い手への農地集積がやはり着実に進むようにしていかなければならない。これは攻めの農業での根幹をなすものと考えております。

 そこで、具体的にどのように農地集積を中間的受け皿組織を使いながら進めていこうというふうに考えているのか、また、具体的に、何年後ぐらいをめどにして担い手への、どれくらいの規模に集積をしていくというふうに考えていらっしゃるのか、ぜひ、農林水産大臣の御意見をお聞かせください。

林国務大臣 大変大事なポイントだというふうに思っております。

 今お話がありましたように、農地中間管理機構、仮称ですが、これを本格的に整備しようということで、具体的には、やはりどうしても、分散、錯綜した農地利用ということでばらばらになっていますので、これを担い手ごとに集約するということ。それから、受け手がすぐに見つからない、今、受け手がいて、出し手がいると、つなごうということですから、受け手が見つからない場合はなかなか動きにくいということでございますので、一旦この中間管理機構が借り受けまして、いろいろな方から借り受けたものを少し整理したりして、管理機構段階で少し集積化ということも可能にする。そしてまた、機構の負担で基盤整備等も行えるようにする。

 こういうことで、入ってきたものと、今度受け手の方に出ていくものは、違った、もう少し規模の大きいものであったり、整備が進んだものにしてということも含めてやっていって、そして、法人経営体や大規模経営、企業等々の担い手にこういう集約された農地を貸し付けられるようにしようということでございまして、構想を今からさらに具体化していきたいと思っております。

 そのために、やはりどうしても、法制度、それから積極的に活動ができるような予算措置というもの、そして、今委員がおっしゃったように、人・農地プランの作成をさらに進めるということと、一旦つくっていただいているところもさらに進化させていくということが必要だ、こういうふうに考えておりまして、こういうことを通じて、今後十年間で、担い手の農地利用が、現在五割ですが、これを八割まで持っていきたいと考えておるところでございます。

井野委員 時間が参りました。ふなれで多々失礼があったかと思いますが、本当にありがとうございました。

森山委員長 次に、簗和生君。

簗委員 自由民主党の簗和生でございます。

 本日、私も、この農林水産委員会、初めての質問でございますので、大臣を初め皆様には、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、四月以降の、梨を中心とした、霜、いわゆる降霜を伴う低温による被害について、国の対応について所見をお伺いしたいというふうに思っています。

 今回、全国的な被害がありまして、十県、北から言いますと、福島、栃木、群馬、山梨、長野、和歌山、広島、大分、鹿児島というところで、果樹、そして野菜に大きな影響が出ています。まずもって、農産物の生産者を初め関係各位に、心よりお見舞いを申し上げたいというふうに思ってございます。

 さて、この被害でございますが、まず冒頭に、概要を私の方から説明させていただきたいというふうに思います。

 まず、果樹については、三月に非常に暖かい気温の状況が続いたという中で、早期に開花が進んでしまったという状況がありました。その中で、既に開花、つぼみ、新芽の状態であったところに低温による影響、霜の影響もありまして、そうした中で、雌しべがやられて結実不良になる、それから芽の状態のときにやられてしまう、受精後の幼果の状態のものが障害を受ける、こういった被害が生じてしまっています。

 栃木県は、全国で第三位の梨の産地でございまして、産出額五十七億円という状況であります。この影響によって、十七の市と町で梨を中心に十一品目の影響が生じています。その中で九九%が梨の被害ということで、私も、梨農家のところに何度も赴いて現地調査をしてまいった次第でございます。

 こうした中、非常に大きな影響ということで、栃木県では、芳賀町が六億三千五百万円の被害、そして宇都宮、大田原、那須烏山市においても二億七千万円前後の被害ということで、県内の梨栽培農家が六百五十五戸あるうちで、被害戸数は四百四十八戸ということで、梨農家全体の七割が今回大きな被害を受けてしまったということになります。

 こうした状況を受けて、現地調査に農水省さんで行っていただいたということでございますが、改めて、その調査の実施内容、そして当該調査の結果、それからその調査の結果を受けたこれからの対応について、施策への反映等も含めて、所見をお伺いしたいと思います。お願いいたします。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のとおり、ちょうど開花期あるいは発芽期を迎えた作物に、異常気象による霜が農作物に大変大きな被害を及ぼしました。十一県から、果樹の着果数の減少、野菜の生育のおくれ等の報告を受けておりますが、先生の御地元の栃木県においては、農作物全体で五百七十二ヘクタール、そのうち、梨が五百三十ヘクタールの被害を受けているというふうに実は承知をしております。

 このため、農林水産省は、きのう実は、栃木県の中でも特に被害の大きかった芳賀町、宇都宮市、大田原市に職員を派遣して、被害状況を実地に調査させていただいたところでございます。その際、霜の被害により実が少なくなった樹体等では、やはり栄養が枝や葉に回って繁茂しやすくなるために、来年以降の着果が心配になるところがございますので、良好な結実がなされるように、適正に剪定をし枝を整えることについて、引き続き、営農指導を徹底することを、県、市町、農業団体と打ち合わせをさせていただいたところでございます。

 また一方、五月十五日には、農林水産省から通知を出して、被害農業者に対する資金の円滑な融資あるいは借入金の据え置き等についてお願いをさせていただいたところでございますし、共済の迅速かつ適切な損害評価の実施や支払い体制の確立について関係団体等を指導させていただいたところでございます。

 引き続き、被害調査、そして補償等について、農林省一体となって取り組んでまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

簗委員 今政務官より御答弁いただいたように、これは今年度の問題だけではなくて、翌年度の生産にも影響するということで、花が枯れてしまって、実がつかなくて、そして枝が繁茂してしまう、そういった状況を抑えるために、剪定とか、それから、引き続き、農薬等の散布によって対策を講じていかなければいけない。

 そうした中で、資金面、ことし収入が入らない場合にどうやって経営を継続させていくか、もっと言えば、生活面、これが成り立たない、生活支援すら必要になる、そういう状況であるというふうに考えています。

 今回の被害は数十年に一度ということで、栃木県の梨の被害について言えば、前回の一九八七年の約二十億七千万円という被害に次ぐ二番目ということもあって、農家の皆さんにとっては、想定外というような、非常に大きなものであったということが言えると思います。そうした意味で、非常に精神的なダメージも大きく、より抜本的な、そして、万全な意味での国の政策的な支援というものを私はお願いしたいというふうに考えているわけでございます。

 私は、現地調査をしてまいりまして、御意見を農家の皆さんから聞いてきました。それを御紹介させていただきたいというふうに思っています。

 今回、防霜ファンというもの、いわゆる霜がつかないように扇風機のようなものを設置するわけでございますけれども、それを回しても被害を防ぐことができなかった、対策の施しようがなかったということで、本当に、梨栽培をして十年以上にもなるけれども、これまでは、防霜ファンを運転させれば何とか被害を抑えることができたけれども、今回、それができなかったということで、それだけ想定外のものであったということが言えると思います。

 それから、実がならないということで、梨園に入る気力がなくなった、わずかに残った実をつけたまま、木が暴れないように管理をしなければいけない、農薬も散布する必要があるということで、非常に落胆しているという状況にあります。

 また、ほかの方は、東日本大震災の影響で家が壊れて、資金を借りてやっと修理したところであったのに、今回の被害でさらに資金を借りなければいけないという状況にあるわけでございます。

 そうした中、資金面の支援としては、農林水産省さんの方では、農林漁業セーフティーネット資金ということで、低利の融資で、それを活用してもらいたいということで御通知等をいただいているということでございますが、これで本当に対応が可能なのかということでございます。

 非常に低利ということでございますが、やはり融資ですから、元を返さなければいけません。先ほど申したように、収入自体が全くないという農家もある中で、営農を継続させる、その意味で、やはり融資、返済するということで、これでも大変だという農家があるわけでございますが、その点について、セーフティーネット資金だけで対応が十分かどうか、それについて御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 今委員がおっしゃったように、自然災害は農林水産業につきものでございますが、被害で意欲を失うことがないようにしていくということがまず何より大事である、こういうふうに考えております。

 したがって、実は、気象庁の低温予報というのがあったものですから、四月五日以来、五日、二十二日、五月一日と三度にわたって、被害防止に向けた技術指導を徹底するように都道府県に対してお知らせをしてきたところでございます。

 また、今委員がおっしゃったように、十四日は長野県でしたが、きのうはお地元の栃木県で県の方と一緒に被害調査をして、今お話があったようなところを技術指導して、県や農業団体と確認をしてきたところでございます。

 今おっしゃった政策金融公庫の農林漁業セーフティーネット資金、長期、低利の融資、これは、理事長宛てに五月十五日で通知を出しておりますし、また、もう一つ、共済、これもなるべく早く支払っていただく、これが大事ではないかという観点から、これも各団体に全て通知を出して、お願いを既にしたところでございます。共済金の支払いには当然損害評価が要りますから、この手続を早くやってほしいということ等で、こういうもので資金的には支援をしていこうということでございます。

 今後とも、こういう想定外というようなことが起こったわけですから、一回起こったということは、今後はこういうことが起こったときに想定外と言わないようにするために、関係県や市町村、農業団体としっかりと連携を緊密にして、技術指導も必要ですし、それから、被害農家に対する支援に的確に取り組んでいく必要がある、こういうふうに考えております。

簗委員 先ほど申したように、被害の程度によっては収入が全くなくなってしまう農家もあるということで、これは経営安定化にとどまらない、生活支援という面の意味合いも強くなってくるというふうに思っています。

 そうした意味で、いわゆる災害見舞金のような給付型の措置を講じていただく、そういった可能性については、御所見はいかがでしょうか。

奥原政府参考人 農業は自然を相手とする産業でございますので、平素から自然災害の発生に対しまして技術上、経営上の備えをできる限り講じておくということが必要だというふうに思っております。

 経営上の備えといたしまして、農林水産省といたしましては、災害時においても農家の経営安定が図られるように、農業災害補償法に基づきまして、農業者の掛金と国庫負担を前提とする保険の仕組みによる農業共済制度を設けているところでございます。

 一方で、災害が起こった後に災害見舞金、こういった形の給付型の資金支援をするということになりますと、農業共済制度に加入する必要性というのが乏しくなってしまう、したがって共済制度が成り立たなくなるおそれもあるということになりますので、これはちょっとなかなか難しいのではないかなというふうに考えております。

 栃木県におきましては、条例に基づいて、今回の降霜それから低温による被害に対しまして、病害虫の防除、樹勢回復等のための農薬代、肥料代に対する助成措置等が適用されることになったというふうに承知をしております。

 農林水産省といたしましても、被害を受けた農業者の方の経営安定に向けて、県と連携して適切に対応したいというふうに考えております。

簗委員 県や市町村を初め各主体としっかりと連携をして、適切な必要な支援を行っていただきたいというふうに考えているわけでございます。

 そうした中、もう一つ提案をさせていただきたいんですが、こうした災害、全国的な災害の場合には、これまで事例として農林水産省の方でも資金支援的なものも行っていただいたということも聞き及んでいるんですが、局地的な災害の場合には、なかなかそういうふうな施策をつくってもらえないということでありました。

 そうした観点からしまして、いわゆる災害対応基金のようなものを各県に創設してもらって、そしてそれぞれが個別の、特有の自然災害等に応じてこうした資金的な支援が行えるような、そういった枠組みをつくっていただければというふうにも考えているんですが、その点について御所見をお伺いいたします。

奥原政府参考人 国といたしましては、全国的な災害対策のスキームとして、この農業共済制度、それから日本政策金融公庫の農林漁業セーフティーネット資金、こういったものを用意しておりまして、これにより対応することが基本であるというふうに考えております。

 局地的な災害の発生に対応いたしまして、県レベルで柔軟に対応できるような基金を設置するかどうか、これにつきましては、基本的には各地方自治体の判断であるというふうに考えております。

 なお、過去の大規模な地震に際しまして、各種分野の災害対策を講じるために県段階に基金が設置されたということはございますけれども、この場合も、国の関与は地方交付税措置にとどまっているというのが今までの実態でございます。

簗委員 やはり現場レベルで、各自治体そして県レベルで柔軟に迅速に対応ができるような、そうした施策というものが必要だと思いますので、いろいろな意味も含めて御検討いただければというふうに考えているところでございます。

 それでは、もう時間も迫ってまいりましたので、今度は共済の制度について質問をさせていただきたいと思っています。

 果樹共済は、非常に加入率が低いという状況があるということで、全国的には三割程度ということでございます。栃木県においては、今回、五割を超えていたということで、比較的、数字的にはいいということなんですが、現場での実感としましては、五割を超えていても、やはり本当に共済でカバーされる農家の数は少ないですから、多いとは言えませんから、そういう意味では、十分に共済制度がセーフティーネットとしての役割を果たしているとは言えないという現状があるものと思います。

 そうした意味で、先ほど、支払いの迅速化というところで取り組みをしてもらっているということでございましたが、ここでは、今の加入率が低位にとどまっていることについて御所見をお伺いしたいのと、それから続けて、加入率の向上に向けた検討の方向性について御所見をお伺いしたいと思います。お願いします。

奥原政府参考人 果樹共済の面積ベースの加入率、これは全国平均では果樹全体で約二五%、梨でいいますと約三一%、栃木県の梨の場合にはちょっと高くて約五四%となっているというふうに承知をしております。

 果樹共済については、加入率がそう高くございませんが、これは、果樹につきましては、農業者間の栽培技術あるいは経営方針等に大きな差があるということ、そのために被害状況にも偏りがございまして、共済掛金の方は、掛金率が原則としてそれぞれの農業共済組合の中で同一水準となっているということがございます。このため、個々の農家の方から見ますと、自分の被害状況と共済の掛金率を比較して、これが見合わない農業者の方を中心に共済に加入しない、こういう傾向があるというふうに考えております。

 一方で、農業共済制度は、農業経営の安定を図るためのセーフティーネットでございますし、農業振興上重要な役割を果たすというふうに思っておりますので、共済掛金に対しては国が二分の一の負担をしております。さらに、加入率を高めるという観点から、組合の判断によりまして、過去の被害の発生状況等によって管内を、地域あるいは農業者を幾つかのグループに分けまして、災害の発生率が低いところでは共済掛金が安くなる危険段階別の共済掛金率の設定をするとか、あるいは特定の災害だけを共済事故の対象とすることによって共済掛金率を下げる方式の設定、あるいは防風ネット等の防災施設を設置した農業者に対しては共済掛金の割引をするといった制度、あるいは選果場ですとか集落単位等の集団加入によります共済掛金率の低減、こういった種々の措置を講じて加入率の向上を図ってきたところでございます。

 引き続き、組合に対しましては、こういった措置の導入の推進あるいは広報活動の積極的な実施について適正に指導いたしまして、加入の促進を図っていきたいというふうに考えております。

簗委員 数々のそうした工夫を講じているということはわかるんですが、やはり、先ほど申したように、現場主義、現場に入って、農家の皆さんがなぜ共済に入らないのか、そうした背景事情というものもちゃんと把握をしていただいて、今後の検討につなげていただきたいというふうに思っています。

 私が現場で聞いてきた声を一つ御紹介させていただきますが、まず、最適な方式がないんじゃないかという意見がありました。

 果樹の共済では、減収総合方式という、一般方式という形でのオールリスク対応型というものと、それから先ほどもおっしゃられたような特定危険方式ということで、暴風雨、ひょう害、凍霜害に限定したものがあるわけでございます。

 ここで、減収総合方式のオールリスク型の方ですが、こちらの方で、いわゆる病虫害というものが入っていますけれども、これは先ほどおっしゃられたと思うんですが、病虫害については農家さんの個人の技量というもので防げる度合いが大きいということで、これが入っているということで、この部分だけを見て、病虫害は大丈夫だからということでオールリスクに入らない、こういう判断があるそうなんです。ですから、いわゆる病虫害のみを抜いた、それ以外の従前のオールリスク、これだけの方式というものも三つ目としてつくっていただくと、非常に加入が進むのではないかなというふうに思っているところでございます。

 あるいは、特定危険方式の中に冷害というものも入れるとか、凍霜害は入っていますけれども、低温というものを、枠の中で冷害というものを入れていただくとか、そうした形で数々の提案というものが現場レベルでは出てきますので、ぜひ現場主義を徹底していただきたい、そのように思っているところでございます。

 いずれにしましても、最後、まとめに入りますが、今回の被害、何十年に一回ということで、農家の皆さんにとっては想定外であったというところで、非常に精神的なダメージが大きいというふうに私も感じています。営農の継続、これは本当に非常に大切なことで、後継者の育成、ようやく後継者が見つかったのにやる気をなくしてしまったというような農家さんもいらっしゃいました。ですから、ぜひ生産意欲を落とさないような適切な措置を講じていただきたい、その際には、現場主義というものを徹底していただいて、生産者の側に立った施策の策定、実施をお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

森山委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 五月十四日の新聞の朝刊を見て、私は大変にびっくりいたしました。

 新聞の記事によれば、日本とオーストラリアのEPA交渉で、豪州産冷凍牛肉の関税が三八・五%から二〇%に引き下げられる方向で近く妥結される見通しになった、さらに冷蔵牛肉の引き下げも検討している、さらにプロセスチーズの原料の低関税の輸入枠を拡大される、そう報道されておりました。

 その日の会見で、大臣は、そうした基本合意はないときっぱりと否定をされました。

 翌日、同じ新聞の一面に訂正記事が掲載されまして、てっきり十四日の報道は誤りでしたという内容かと思いきや、二〇%ではなく三〇%でしたという訂正でありました。これでは、何が事実なのかよくわかりません。

 また、ほかの新聞では、冷凍、冷蔵ともに三〇・八%に引き下げる方向と出ておりました。

 関税が下がれば、肉牛農家は価格競争で太刀打ちできない。北海道においても、このままTPPもなし崩し的に関税撤廃になるのではないかという声さえ出ていたのでございます。

 私は、オーストラリアとのEPA交渉は、これ自体が非常に農家にとってはナーバスな問題であり、報道は正確な事実に基づいて行うべきではないかと思っております。故意ではなくとも、いたずらに農家の不安感をあおるようなことになってはならないし、ましてや、報道によって一定の既成事実ができてしまうようなことも看過できることではございません。

 私も農林水産省の担当者と連絡をとらせていただきましたが、やはりそのような基本合意はなされていないとのことでした。

 これまでも、たびたびこういった記事によって、真面目な農家の方々が一喜一憂してきたのではないでしょうか。今まさに、TPPやEPAで国益をどう守るのか、極めてシビアな交渉が始まるにもかかわらず、いまだにこういったことが続いていて、本当に国益を守り切ることができるのか、私は不安を覚えざるを得ないのであります。

 この件については、徹底的に調査し、以後、農家を初め農業関係者に不信や不安が広がらないように、くれぐれもしっかり対応をいただくようお願いをいたします。この問題については、ぜひ大臣の御見解を伺いたいと思います。

林国務大臣 大変大事な問題だ、こういうふうに思います。

 今、佐藤先生がおっしゃったこの報道について、私も承知をしておりますが、農林水産品のマーケットアクセス交渉も含めて、これは現在も交渉中でございますので、私は会見でもはっきり申し上げたんですが、交渉相手である豪州との関係等もあるので、報道の内容についてコメントすることは差し控えたいと思っております。

 一般論で、今委員がおっしゃったように、この記事を見ますと、例えば、基本合意とか、それから、この方向で調整に入ったというような、極めて、これで決まったというところからちょっとずらしたような書きぶりになっておりますが、見出しを見れば、これをごらんになった農家の方は、ああ、こうなるのかという印象を受けるということでございます。

 かねがね私も思っておりますが、一日でも早く情報を出すということも速報性という意味で大事だとは思いますけれども、しかし、こういうことが決まったということを、正確にきちっと事実をキャリーしていただくということも非常に大事だ、こういうふうに思っておるところでございます。

 我々といたしましては、省を挙げて情報管理に努めているところでございますけれども、今後とも、これは厳格に交渉関係の情報管理を徹底してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

佐藤(英)委員 ぜひよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、北海道にかかわることについてお伺いをいたします。

 ことしは、四月、五月と降雪や降雨、そして低温、ゴールデンウイークを過ぎてもなかなか気温が上がらず、一部では降雪もありました。そのせいで、農業にも大きな影響が出ないか大変に心配しております。現在のところ、苗、麦などの生育や、てん菜、バレイショ、タマネギなど、広く移植におくれが出ているところであります。この後、順調にいけば、一週間程度のおくれなら取り戻せるとの話も聞きますが、過去において、北海道においては低温障害で大変厳しい不作に見舞われたこともあり、大変に私は心配をしているところでございます。万が一の不測の事態に対する十分な対応をお願いしたいと思います。

 現在の農水省の取り組み状況とあわせてお伺いをしたいと思います。

佐藤政府参考人 佐藤先生の御質問にお答えいたします。

 今先生御指摘いただきましたように、ことしは、春先からの低温ということで、気象庁の方から低温予報、こういったものが出ておりまして、私どもといたしまして、農産物の被害軽減に向けた取り組みを徹底する必要があろうということで、関係都道府県に対しまして、四月五日、四月二十二日、五月一日と三回にわたりまして技術指導通知、こうしたものを発出させていただいているところでございます。

 先生の御指摘の北海道につきましては、四月中旬以降、低温あるいは多雨などによりまして、水稲や小麦、バレイショ、てん菜、タマネギ、こうした作物で一週間程度のおくれが出ておるところでございまして、特に顕著な低温となりましたオホーツク海側では、てん菜あるいはバレイショの移植、植えつけ作業がかなりおくれているという状況となっていると認識しているところでございます。

 これを受けまして、北海道庁では、四月三十日に、長期間の低温と日照不足に関する営農技術対策を発出しまして、五月九日には、気象庁、農業団体あるいは農業共済組合等の関係者を集めまして連絡会議を開催しまして、関係者間での情報共有、技術指導の徹底、こういったものを図っているところでございます。また、昨日でございますが、二十一日に、六月の営農技術対策を公表しまして、技術対策の徹底を図っている、こういうような状況になっております。

 私ども農水省といたしましても、五月十五日に担当課長をオホーツクの方に派遣いたしまして、さらに、昨日でございますが、北海道に対しまして、技術指導の徹底を図るよう発出したところでございまして、今後とも、私どもといたしましても、また現地の方にも逐次伺わせていただきまして、よく現地の状況といったものを把握していきながら、適切に対応していきたいというふうに考えておるところでございます。

 以上であります。

佐藤(英)委員 ぜひ、万全な対応をよろしくお願いいたします。

 次に、ゼニガタアザラシについてであります。

 ゼニガタアザラシは絶滅危惧種に指定されていますけれども、私たち北海道民にとっては、貴重な水産資源を傷つけるアザラシでもありますし、えりもや道東部の漁業者にとっては、トドやオットセイと並んで、いわゆる害獣とも言われているわけであります。年間三千万円の漁業被害、地元の人たちは、もっと多額だという説もありますけれども、被害を少しでも減らせないのかというのが地元漁業者の切なる願いでもあるわけであります。

 今回、地元漁業者に対する説明会が行われたわけでありますけれども、その説明の中に、被害の軽減を目指す防除対策というものがありました。その実効性については、さまざまな意見がございました。本当にこれで大丈夫なのであろうか等々、さまざまな意見が現実的にあるのも事実であります。

 この対策で、現在一千万円程度の予算を予定されているということでありますけれども、一つは、この金額で本当に十分なのかどうか。これは、まさに被害に遭っている現地の漁協、漁業者の御意見をしっかり伺いながら検討を進めていかなければならないのではないかと私は大変に危惧をしているのであります。来年はさらに工夫、改良をしながら効果を上げようと言ったとしても、来年はこの事業が本当にあるのかどうか、今のところ、残念ながら不明であり、大変に心もとないと思うのであります。前回の委員会でも、堀井委員を初め北海道の委員の先生たちが、この問題に対して何度も強調しているのは、やはりそうした地元の水産業者の方々が本当に不安に思っているからなのであります。

 したがって、これから行われる各省の予算要望において、来年度の予算要望に防除対策をしっかりと計上しなければならないのではないか。できれば、現地の御意見をよく踏まえ、必要に応じて増額も検討していかなければならないのではないか。いかがでしょうか。少なくとも、今後数年間、毎年、地元の漁業者が防除対策に取り組めるまで考えていかなければならないのではないかと思うのであります。

 環境省は具体的にどのように考えているのか、ぜひ明快な御答弁をいただきたい。よろしくお願いします。

伊藤政府参考人 ゼニガタアザラシにつきましては、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧種に選定している動物である一方で、特に、えりも地域において漁業被害が深刻であるということは、環境省としても十分認識しているところでございます。

 環境省では、この状況を踏まえまして、鳥獣保護管理強化事業の一環として、ゼニガタアザラシの網への侵入を防止するなどの漁業被害防止のための事業を中心として、しっかり対策を行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

 具体的な事業の内容につきましては、今後、地元の御意見を聞きながら、漁協等とも十分調整して、どのくらいの額でどういうことをやっていくのかといったことを調整していきたいというふうに考えてございます。

 先生御指摘の来年度以降の事業につきましても、環境省としては、十分な対策がしっかりできますように、十分な予算要求を行うということを検討してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。

佐藤(英)委員 防除対策、実効性についてさまざまな意見があるのも事実であります。ぜひ、地元の漁業者の方々が納得できるような対応を強く強く要望させていただきたいと思います。

 さて、十七日、先週の金曜日でありますけれども、総理が成長戦略第二弾を発表されました。多くの人が大きな期待を抱いたのではないかと思います。私もその一人であります。

 私は、特に、国別、品目別の戦略に基づく輸出拡大に言及されたことに非常に強い関心を持ちました。この国別、品目別の戦略策定について、ある国、例えばオーストラリアならオーストラリアで、一般的な特定の料理の食材として、オーストラリア産に置きかわるような日本産を探し出す、あるいは開発する、結果として何割程度置きかえられるというような、大変に精緻な調査、研究、分析を要するのではないかと思うのであります。

 こうしたマーケットへの戦略的な売り込みについてのノウハウ、人材、情報は、政府というよりも民間の中にたくさん蓄積されているのではないかと思うのであります。そういった力を十二分に活用することが政府に求められているのではないかと私は思うのであります。

 私は、このマーケット戦略を継続的に力強く推進していくために、別建ての作戦本部、ヘッドクオーター的な組織を設置されてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

 あわせて、戦略の全体像について、おおむねいつごろをめどにまとめられることになるのか。アジアを初め、新興国や途上国との経済格差がこれからどんどん小さくなり、市場がどんどん広がっていったときに、日本の農業は戦略で勝ったんだと言えるようにしていただきたいと思うのであります。見解を伺います。

江藤副大臣 委員のおっしゃることは全くそのとおりだと思います。

 せんだって、総理の随行をさせていただきましたけれども、やはり地域に、商社の方とかその場でビジネスをやっている方々が一番、その現場の情勢とかその地域の食味とか、しょっぱい方が好きだとか、薄味が好きだとか、そういう食味についても、例えばサウジなんかは非常に甘くて、それで私なんかは厳しかったわけですけれども、それぞれの国の食味がありますから、そういったことの情報収集、そのためには民間のノウハウ、人材、情報を収集することが大事です。

 ですから、二十五年度予算においても、ジェトロと連携強化をしようということで予算要求をしたわけであります。ですから、海外のコーディネーター、こういった方々に相談窓口をつくっていただく、それから、商社のOBの方々、こういった各国を歩いてこられた方々に輸出プロモーターとして活躍をしていただく、こういうことをまた考えております。

 今委員からおっしゃいましたように、国別そして品目別に、我々の強みとは何なのか、そしてどのような市場があるのか、そういった精緻な調査、そういうものも必要になってくると思います。委員が御指摘のような別建てのヘッドクオーターを立てるということも、一つの大変有効な手段だと思いますので、ぜひ検討したいというふうに考えます。

 そして、いつまでにということでありますが、これは余り時間をかけるわけにはまいりません、成長戦略第二弾も発表になったわけでありますから。年内には、きちっとした、年内といっても十二月というわけではなくて、なるべく早いタイミングで、その一兆円規模に到達できるような、そういったスキームを皆様方に御披瀝できるよう努力をしてまいりたいというふうに考えております。

佐藤(英)委員 ぜひ御支援させていただきたいと思いますので、取り組みのほど、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 最後に、都道府県の農地中間管理機構、いわゆる農地集積バンクについてお伺いをいたします。

 規模拡大のための農地集積は積年の課題であるわけですが、これまでも、人・農地プランの推進や市町村の円滑化団体によるマッチング、出し手と受け手にそれぞれお金を出して、一生懸命お金を出して取り組んできたわけであります。

 今回の農地集積バンクは、現在の売買を中心に取り組んでいる農業公社をモデルチェンジして、都道府県単位で新たに中間管理機構を設置するという認識でよろしいのでしょうか。

 また、ここ数年、毎年六万から七万ヘクタールぐらいの利用権による集積が進んできたと認識はしておりますけれども、成長戦略に位置づけられた以上は、この農地集積バンクは、少なくとも一年目に七万ヘクタールぐらいの実績は残さなければならないのではないでしょうか。したがって、相当の規模の予算対応が必要だと思いますし、臨時国会を開いた際には、ぜひ法的措置を行っていく必要もあるのではないかと思うのであります。

 あわせて、これまで、遊休農地の貸し付けに大変な手間と時間がかかったこともありまして、うまく進まないケースがたくさんあったことも踏まえ、手続を簡素化していただくようお願いをしたいと思います。御見解を伺います。

林国務大臣 先ほどもお答えを同じ質問に対してさせていただきましたが、まさに佐藤委員おっしゃるように、大変大事なポイントでございまして、県段階に農地の中間的受け皿として農地中間管理機構、今ある公社みたいなものを衣がえしていこう、こういうことでございます。

 具体的には、分散し錯綜した農地利用を整理して、担い手ごとに集約化していこう、それから、受け手がすぐに見つからない場合が今まで多々ありますので、一旦借り受けて、機構の負担で基盤整備等も行った上で、少し大きく、きちっと整備をしたもので、これでやりませんかというような機能をきちっとここに集約したい、こういうふうに思っておりますので、まさに今委員がおっしゃっていただいたように、この法制度は必要になってくる、こういうふうに思っております。

 遅くとも来年の通常国会には間に合うようにと思っておりますが、可能であれば、今おっしゃっていただいたように臨時国会、これは臨時国会ですから、開かれるかどうかというのを今前提にするわけにはいきませんが、もしあれば、この秋の臨時国会にも出せるように準備をしていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 詳細は今後検討ということになりますが、今、予算措置の話もしていただきました。やはり、賃料をまずお支払いするということ、それから基盤整備を行うための経費、それから、受け手が見つかるまでは農地としてこの機構がある程度管理をしなければいけませんので、かなりの規模の予算が必要になってくる、こういうふうに考えておりまして、きちっと法制度とあわせて予算を確保してまいりたい、こういうふうに思っております。

佐藤(英)委員 この成長戦略第二弾、ぜひ、林大臣を先頭に取り組んで、推進をしていただければと思いますし、この成長戦略が絵に描いた餅にならないよう、強力な推進体制を心からお願い申し上げまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

森山委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民主党の福田昭夫でございます。

 まず、私からも、先ほど簗委員から要望がありましたけれども、今回、栃木県も梨などに大きな被害が出ておりますので、ぜひ万全な対応をお願いしておきたいと思います。

 きょうは、一般質問だというので、栃木県で今行われております前代未聞の二つの裁判、エコシティ宇都宮という会社をめぐって、一つは、栃木県知事が宇都宮の市長を訴えている、もう一つは、栃木県知事がオンブズマンから訴えられている、こういう前代未聞の事件があります。そのことについて、農水省もかかわっておりますので、農水省がどんな対応をしてきたのか等も含めて、この問題の先にどんな問題が潜んでいるのかということも含めて、ただしてまいりたい、このように思っておりますので、ぜひ簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

 まず、エコシティ宇都宮について、最初、農水省のバイオマスの環づくり交付金を受けたエコシティ宇都宮の事業の概要について、その申請者、事業内容、総事業費、そのうち国庫交付金は幾らなのか、そうした概要についてまずお答えをいただきたい。

針原政府参考人 エコシティ宇都宮の事業概要でございますが、この事業は平成十七年度の事業でございます。予算名はバイオマスの環づくり交付金でございます。事業費が八億二千二百五十八万五千円で、国庫が二億六千百十三万八千円、二億六千万でございます。補助率は三分の一でございます。事業主体は株式会社エコシティ宇都宮でございます。

 この事業は、県、市を通す間接補助事業でございまして、補助金の交付は、国から栃木県、それから宇都宮市、それから事業主体に払われております。

 事業内容は、事業系の生ごみを処理して堆肥をつくるという内容になっております。一日五十トン、年間一万五千トンの処理能力を有する施設として補助金が交付されております。

福田(昭)委員 このエコシティ宇都宮の代表者は誰ですか。

針原政府参考人 代表取締役が二人おりまして、岩本勝男、唐木正信、両名でございます。

福田(昭)委員 岩本勝男、唐木正信、この二人が代表ということですね。

 それでは、エコシティ宇都宮が操業を開始したのはいつか。どれぐらい操業していたのか。操業停止の理由は何か。簡潔にお答えいただきたい。

針原政府参考人 施設の稼働は、平成十八年の八月一日に稼働を開始しております。機械のふぐあいがございまして、平成二十年の十月に施設稼働を停止いたしました。したがいまして、二年二カ月の操業ということでございます。

福田(昭)委員 そうすると、停止の理由は機械のふぐあいだった、こういうことですね。

 では、会計検査院にきょうは来ていただいておりますので、会計検査院にお聞きしたいと思います。

 会計検査院は、平成十九年、二十年、二十一年と、それぞれ二月に、三回もエコシティ宇都宮の検査をしておりますけれども、その検査の際に、この設備等がいかに不十分で施設が回らないんだ、そのような判断ができなかったのか。施設を何回も検査して、動かない原因、そうしたものがわからなかったのかどうか、お伺いをいたします。

田代会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院では、平成二十年二月に株式会社エコシティ宇都宮への交付金の検査を実施いたしております。

 そして、エコシティ宇都宮が行った事業も含めまして、全国で二十の道県の六十のバイオマス施設整備事業につきまして検査したところ、このうち八事業におきまして食品廃棄物の分別等に対する意識の注意喚起が十分に行われていないというような事態がありましたので、バイオマス資源の受け入れ量が十分に確保できていない事態が見受けられたところでございます。

 このような事態の発生原因としては、農水省が都道府県等に対して、事業実施の確実性に係る審査等の具体的な方法を示していなかったことなどであると認められました。

 したがって、農水省に対しまして、事業実施計画作成時等の早期の段階において、その後の問題点への対応策を検討して、施設の利用率の向上を図るよう求めたところでありまして、その検査結果を平成十九年度決算検査報告で掲記したところでございます。

福田(昭)委員 そうすると、検査院が検査したところ、計画が非常にずさんだったということがわかって、そのことを農水省に指導した、こういうことでよろしいですか。返事をしていますけれども、よろしいですか。

田代会計検査院当局者 今お答えいたしましたとおり、平成二十年の検査におきましては、エコシティ宇都宮が行った事業も含めまして、全体では六十の事業を抽出いたしまして検査したところでございます。

 その際の共通の問題点というところを、先ほど御説明した問題点を指摘したところでございまして、その共通の問題点というものとして、事業実施計画作成時などの早期の段階における対応が重要と考えまして、都道府県における補助金審査の充実などを求めたところでございます。

福田(昭)委員 わかりました。審査が甘かったという指摘ですね。

 それでは、次に、補助金等の適正化法第二十二条に基づいて財産処分申請したのはどなたですか。農水省にお伺いいたします。

針原政府参考人 経過を申し上げますと、平成二十三年五月十二日でございますが、エコシティ宇都宮が当該事業についての財産処分申請書を、まずは宇都宮市に申請しました。翌日の五月十三日に、宇都宮市長が栃木県知事へ財産処分申請書を申請します。同日、栃木県知事が関東農政局長に対し、補助金適正化法第二十二条に基づく補助対象財産の処分に係る承認申請を行っております。

福田(昭)委員 今回は、栃木県あるいは宇都宮市が財産処分をするのじゃなくて、担保権者が担保権実行によって処分をするんですよね。これは、まさに適化法に基づく処分じゃないんですけれども、それでも財産処分が必要なんですか。

針原政府参考人 処分のきっかけはどうであれ、処分を伴うわけでございますので、補助金でつくった施設を処分するというためには、法令上、二十二条に基づく申請が必要になります。

福田(昭)委員 国の方としては許可が必要だということですけれども、しかし、許可がなくても、今回は裁判所で処分されちゃうんですね。これは、裁判所に競売の申し立てが担保権者から行われましたから、処分許可がおりようとおりまいと、実は裁判所によってこの財産は処分されてしまう。

 したがって、この法律に、今回の財産処分で処理するということが適切だったかどうかという問題が実は出てくるわけであります。

 農水省は、今回、この財産処分を許可するに当たって、国庫補助金の残額相当額を返すようにという条件をつけたわけですが、それは誰に条件をつけたんですか。それは有効だと思いますか。

針原政府参考人 関東農政局長は、平成二十三年五月十七日に、補助金適正化法第二十二条に基づきまして、栃木県知事に対しまして財産処分の承認を行いました。その際、栃木県知事に対して、国庫補助金相当額の納付を条件として付してございます。

 この際に、栃木県は、この財産処分の承認の際に付された条件に基づいて、平成二十四年二月十五日に補助金相当額である一億九千六百五十九万円を国に納付しております。

 この二十二条に基づく承認は、それぞれの行政長の判断に基づき行われる行政行為でございます。その行政行為に伴って、補助金相当額の納付を条件として付すことは可能であると広く解釈されております。

福田(昭)委員 話を聞いていると、とてもとても、これは裁量行政の典型と。法律で規定していないものを基準で返還させるというんですから、これは裁量行政そのものですよね。こうした話は、地方分権、地域主権を進める中であってはならない、こういう流れがあったわけでありますけれども、とてもおかしな話だなというふうに思います。

 それで、この適化法二十二条は、返還義務については何も規定していないと思うんですが、どうですか。

針原政府参考人 補助金適正化法二十二条には、補助金の返還についての規定はございません。

 別途、補助金の返還についての規定がございますのは、この適正化法では、十七条による交付決定の取り消し、十八条による補助金返還命令により行われるという別途の規定がございます。

 しからば、どちらの規定を適用して補助金の返還の行為を行わしめるか、そういう問題でございます。本件の場合は、事前に栃木県と関東農政局との間で補助金相当額の納付について合意が実質上成立しておりました。補助金適正化法の十七条、十八条に定める取り消し、返還命令という手続を踏む必要がないと判断されたため、二十二条に基づく承認行為に条件を付す形で補助金の納付を求めたものでございます。

 なお、このような扱いとしては、農林水産省におきましても、この場合は県との実質合意がございますので、そういう場合においては通例行われる場合がございます。その一つの理由として、十八条の命令をかけた場合と条件を付した場合、万が一納付期限を過ぎた場合の利息に少し違いがあるということもございまして、こういう扱いが行われていると承知しております。

福田(昭)委員 今局長から答弁がありましたけれども、この適化法が求めているのは、やはり補助金の返還については、十条と十七条による取り消し、そして十八条による返還命令という手続を法律としては予定しているんじゃないでしょうか。二十二条でお金を返させるということについては全く規定していないんじゃないでしょうか。それにもかかわらず、財産処分で返したということは、栃木県知事は返還義務がないのに一億九千六百万もの大金を自主返納したというふうに言われても仕方がないと思うんですが、どうでしょうか。

針原政府参考人 一部繰り返しになりますが、二十二条そのものにつきましては補助金の返還については直接の規定はございませんが、承認を行うに当たって国庫納付の条件を付すということは通例認められているわけでございます。

 その条件の中身でございますが、行政行為の条件、法律用語で付款と申しておりますが、期限を付したり、負担を課したり、撤回権を留保する、そういうようなことがございます。この負担を課すということの中に国庫納付も含まれているということで、そういうような行政上の慣例といいますか、例が行われている。その背景には、先ほど申しましたとおり、県との間で合意があるか、その場合に、仮に納付がおくれた場合の利息がどうなのかということでございます。

 いずれにしても、補助金でつくった施設が補助目的どおり機能していない、それは納税者の目から見れば、やはりどのような形であれ返していただくというのは、どのような手段になるかということでございますが、私どもとしては必要なことだと考えております。

福田(昭)委員 ということは、法律に基づく返納じゃなくて、あくまでも、では、財産処分に伴う自主返納だった、こう考えてよろしいですか。

針原政府参考人 行政行為に基づく付款、いわゆる条件づけに伴いまして、義務がないのにということでございますが、一応その時点で義務は発生しております。

 したがいまして、この場合、平成二十四年一月二十七日、関東農政局は栃木県に対しまして、当該財産の処分価格に係る国庫補助金相当額一億九千六百五十九万円の納付命令を行っております。これに基づきまして、二月十五日に栃木県はその全額を納付したという経過でございます。

福田(昭)委員 それはおかしいんじゃないですか。

 私の手元に、関東農政局の指導に基づいて、栃木県の農村振興課が打ち合わせした資料があります。エコシティ宇都宮の競売開札の実施についてという打ち合わせの資料がございます。

 そこを見ますと、国から指示があったと。宇都宮市や、エコシティ宇都宮とか、いろいろなところと打ち合わせをして、そこで指導事項が三点あって、最初から言っておきますと、一つ、エコシティ宇都宮の事業継続に向けた指導、支援を続けていくこと、二つ目、エコシティ宇都宮からの事業中止の届け出をいつまで待つ考え方とするのか、検討を踏まえたスケジュールなどを作成すること、三つ、エコシティ宇都宮が資金提供者との契約ができない場合は、自主返納の可能性を検討すること、こう書いてあります。

 そしてさらに、今後の対応案、競売開札日が決定され、今後対応すべき事項は以下のとおりだということで、宇都宮市と協議をしております。

 一つは、財産処分の制限、適化法二十二条、この場合には、目的外使用のため自主返納を行うと書いてあります。エコシティ宇都宮には資金がなく、みずからによる国への自主返納は限りなく不可能である、宇都宮市は、市ごみ処理基本計画にエコシティ宇都宮を位置づけ、本事業の計画策定を行うなど深く関与していることから、宇都宮市からの資金提供による自主返納を行う、この場合、自主返納額は約一億四千三百万となる、こう書いてあります。

 さらに、先ほど局長ははっきり言いませんでしたけれども、例えば、十七条の決定の取り消しに基づく返納をするとなると、補助金返還額は約四億四百万円。さらに、宇都宮市による事業継続を行う場合には、再事業額が約五億三千六百万円かかる。この三つの選択の中からどれを選んだらいいかというので、一番安い目的外使用、自主返納を選んだんじゃないですか。どうですか。

針原政府参考人 手元にその事実経過を書いたメモは持ち合わせておりませんが、いずれにしても、自治体との合意に至るまでの話し合いの中で、事業をまず継続する道を探り、それができない場合には一番ベストの解決方法を探って、そういう話し合いが行われたものと推察されます。

 その結果、合意ができた段階で、今度は法律の解釈論として、承認に係る条件づけが行われ、その条件づけというのは一つの契約行為でございますので、契約に基づく義務が発生し、それに基づく納付命令というものが行われる、そういう経過ではないかと思います。

福田(昭)委員 私も、栃木県から返す金ですから、それは一番安いのがいいとは思いますけれども、しかし、問題は、考え方が違う。要するに、義務があって返したのじゃなくて、財産処分の目的外使用で自主返納した、ここが問題なんです。ですから、そこは後でまたやりたいと思います。

 次に、栃木県知事は、そうすると、そうした返還義務がないのに国に自主返納している。栃木県に損害を与えたとして、オンブズマンから訴えられているわけであります。また、栃木県知事は、宇都宮市が返還すべきだとして、宇都宮の市長を訴えているわけです。エコシティ宇都宮をめぐって二つの裁判が同時に行われているんです。

 こんな事例はほかにあるんですか。

針原政府参考人 市町村が都道府県に対する補助金納付を拒否して、それが要因となってこのような訴訟に及ぶという事例は、全部を調査しているわけではございませんが、承知しておりません。

福田(昭)委員 それで、先ほど申し上げたように、栃木県知事が宇都宮の市長を訴える。補助金、県が国に一億九千六百万返したものを宇都宮市が返せ、こう訴えているわけですよ。

 そうすると、宇都宮市は栃木県知事に対してどういう財産処分申請書を出したか。それをここに持っておりますが、それを読むと、こう書いてありますよ。

 処分の予定年月日は平成二十三年五月二十四日。返納予定額は先ほどの金額。そして、返納方法も書いてあります。株式会社エコシティ宇都宮に対し、弁済を求めていく、破産法に基づく破産等会社整理手続が進んだ場合には、一般債権者として配当要求を行い、配当額をもって返納することとする、こう書いてあります。

 こうした財産処分申請を知事は受け取っておきながら、農水省に対しては、自主返納しますよと、こういう財産処分申請書を出したんですよ。宇都宮市長との間で、宇都宮市長は、自分で返さないと言っているのに、みずから返さないと言っているのに、きちっと業者から返してもらってから返すと言っているのに、そういう財産処分申請書を知事は受け取りながら、農水省には、違うよ、条件つきで返すよ、こう返しているんですが、それをちゃんと把握していましたか。

針原政府参考人 冒頭申しましたとおり、これは間接補助事業で、まず国と県との話し合いが行われ、その後、県は、地元の実行体制がきちんと整っている、そういうことを確認した上で申請が行われております。私どもは、県との話し合いの中でそのような合意が成立するわけでございますので、まず、それを信用するといいますか重視する立場にございます。

 その上で、県と市の関係につきましては、今、係争中でございますので、その事実関係を含めて、今この場で私が何かをコメントする立場にないことを御理解いただきたいと思います。

福田(昭)委員 それでは、もう一つ重大なことがあります。

 このエコシティ宇都宮は、設計施工が悪いとして、つまり、機械が動かない、ふぐあいなのは設計施工業者が悪いとして、その業者から損害賠償金を受領しているようですけれども、それを承知しておりますか。その額はどのぐらいなのか、承知していれば、ぜひお答えください。

針原政府参考人 平成二十年十月の操業停止の原因は、堆肥化設備のふぐあいということでございました。このプラントをつくった業者は富士重工業株式会社でございます。株式会社エコシティ宇都宮に対して、瑕疵に基づき賠償金が支払われたと承知しております。

 なお、このエコシティ宇都宮は、その資金をもとに改修工事を行う予定であったと承知しておりますが、改修工事ができなかったということでございます。

 金額につきましては、民間事業者間の取引でございますので、私ども、承知し得る立場にはございません。

福田(昭)委員 それはおかしいんじゃないですか。せっかく二億六千万もの国の大切な税金を出しておきながら、再稼働させるための、今、事業を再整備しようとしているんでしょう。そのときの資金がどこから出ているのか、そこを確認しないでどうして始動できるんですか。もう一度答えてください。

針原政府参考人 栃木県との話し合いの中で、その賠償額の概算については、私ども聞き取っておりますが、あくまでもこれは民間ベースの話でございますので、その金額を申し上げる立場にはないということでございます。

福田(昭)委員 それはおかしいですね。では、どうやってこの事業を再開させようとするんですか。

 大体、実際再開せずに、このエコシティ宇都宮は倒産しちゃったんですよ。しかも、それにもかかわらず、賠償金を幾ら受け取っているんだかわからないけれども、賠償金を受け取って、設備を更新しようとしたのに、そのお金を受け取っておきながら、工事はやらずに倒産をしてしまった。国に対する一億九千六百万、国庫補助、交付金は返さない。これは二重取りじゃないですか、エコシティ宇都宮は。そのことに対して、農水省が知らぬ存ぜぬというのはないでしょう。どうですか、大臣。大臣に聞いているんですよ。局長はいいよ。

針原政府参考人 民間同士の話について、こういうところで述べる立場にないことはぜひ御理解をいただきたいと思います。

 改修工事につきましては、改修工事に一度は着手いたしましたが、途中で資金繰りが厳しくなり、改修工事を休止したということを現地から報告を受けている次第でございます。

福田(昭)委員 それはおかしいですよね。だって、公金が無駄になっちゃうんですよ。一億九千六百万、もっと先に行けば二億六千万という国の大切な税金がパアになっちゃうんですよ。それを承知しておきながら、それを発表できないというのはおかしいですよ、基本的に。まあ、ここでやっていてもしようがないから先へ行きますけれども、それは後でしっかり情報公開請求しますから。

 次に、エコシティ宇都宮は資本金が九千七百万円と大きく、とても簡単に倒産するような会社とは思えないんですが、これはやはり、先ほど会計検査院からの指摘があったように、計画が非常にずさんだったのではないか。あるいは、事業主に問題があったのではないか。

 このエコシティ宇都宮というのは何人ぐらいの会社だったんですか。それを把握していますか。

針原政府参考人 資本金等につきましては把握しておりますが、従業員数につきましては申請書には記載されておりません。

福田(昭)委員 とても八億二千万もの事業をやれるような会社ではもともとなかったんじゃないですか。その会社が、資本金がこんなに大きいのは、どこからいただいたのかわかりませんけれども、しかし、まさにずさんな計画を持ってこの事業に取り組んだ。

 このエコシティ宇都宮の代表者と栃木県知事の関係は御存じですか。

針原政府参考人 承知しておりません。

福田(昭)委員 ぜひ、栃木県知事とこの唐木正信氏との関係をよく調べてください。非常に別懇の間柄だと伺っております。しかも、一時は私設秘書じゃないかと言われたときもある。そういう関係があるそうでありますので、ぜひよく調べてみてください。

 「ホットな情報!ジェイシーネット」、そういうのがネットに出ておりますけれども、そこで、裁判費用、大いなる税金の無駄、エコシティ宇都宮、市と栃木県の裁判決着、こういうのが載っています。

 これを読んでみますと、県は市に対して請求を続けているが、らちが明かず、知事と市長が話し合った結果、互いに税金から裁判費用を支出して裁判で決着しようということになった、この二人は税金を何と心得ているんだろうかと書いてあります。

 さらに下の方へ行きますと、補助金ブローカーというのが出てきまして、こうしたリサイクル施設に対する補助金には、ほとんどの新設施設に補助金目的の補助金ブローカーが介在、補助金がおり次第、がっぽり持っていく、二割が相場ということになっている、そのため、ほぼでたらめな施設ができ上がったり、ずさんな計画だったりする、申請が必ず認可されるように、申請書を作成するプロのコンサルとして介在する補助金ブローカー、ブローカーは機械代金から、指定の機械メーカーからキックバックさせたり、コンサル料として多額の現ナマを事業会社から取る、その一部は相談した議員たちにも裏金として支払われる、補助金ブローカーには議員崩れが多いのが特徴、こう書いてございます。これは私じゃないですよ。ここに、ネットに書いてある。

 ですから、よもや、このエコシティ宇都宮の件がこうした件であってはならないと私も思っておりますので、ぜひ農水省としてもしっかり、大切な国民の税金が二億六千万、パアになっちゃったわけですから、ぜひ今後とも調査をしていただきたい、こう思っております。

 今後、またさらにこの問題を私も追及していきたいと思っていますから、しっかり調査をしていただきたいと思っています。

 残り時間があと五分ぐらいありますので、あとの時間は、TPPへの参加について、大臣から御所見をお伺いしたい、このように思っております。

 まず、大臣は、衆参両院の農水委員会の決議について、農水大臣としてどう受けとめていらっしゃるのか、お伺いをいたします。

林国務大臣 お答え申し上げます。

 今委員からお話がありましたように、TPPにつきましては、先月、この衆議院の農林水産委員会、また参議院の農林水産委員会でも、農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先することなどが決議をされております。

 この委員会決議については、総理も国会で述べておられますように、政府として重く受けとめて、国益を守っていくためにきちっと交渉に当たっていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

福田(昭)委員 私も突然、運よくといいますか、この環太平洋パートナーシップ協定交渉参加に関する件の決議を行うとき、急遽、この農水委員会のメンバーになりまして、賛成の起立をさせていただいた一人として、ぜひ農水大臣には、何としても、この決議の内容が守られるように、頑張ってほしいなというふうに思っております。

 と申しますのは、最近、安倍総理の答弁をちょくちょく委員会で伺っておりますと、どうも安倍総理はトーンダウンしてきている。確実にトーンダウンしてきている。それは、聖域なき関税撤廃がないということはそのとおりだ、しかし、重要品目などについては交渉の中で決定する、こういう答弁が多くなってきたんですね。

 ということは、安倍総理、もう、一歩引き出したなと私は思っておりまして、安倍総理、これは危ないなと実は思っているんですが、その辺、林農水大臣が、安倍総理の方がちょっと背は高いかもしれませんが、大臣の方が体重はありそうでありますから、ぜひ、総理を押さえ込んでも、こういう決議が守れないようなTPPには参加しない、そういう決意をお伺いできればと思います。

林国務大臣 ありがとうございます。私は少しダイエットをしましたので、体重は少し落ちているかもしれませんが、しっかりとやっていきたいと思っております。

 多分、安倍総理がおっしゃっているのは、共同声明を二月の首脳会談でやっておりまして、ここの中に、例の一定の農産品には、我々はセンシティビティーが存在するということを書かせたわけですが、その同じ段落に、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであるからと。要するに、それが一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する、こうつながっているものですから、その部分のことをおっしゃっているんだろうというふうに思います。

 一方で、三月十五日にTPPの交渉参加を表明されたとき以来、日本の農と食を守り抜く、また、棚田とかそういうものを含めた国柄をしっかり守り抜く、こういうふうにあらゆる機会に総理もおっしゃっておられますので、私も大臣として、先ほどお触れになっていただいた委員会決議を重く受けとめて、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

福田(昭)委員 ぜひ、林大臣には期待をしたいと思っております。

 アメリカというのは非常にしたたかな国だなと思っております。我が国の佐々江大使とマランティスというアメリカのUSTR代表代行の間に、四月十二日に手紙のやりとり、書簡のやりとりがありましたけれども、その中には、お互いにセンシティビティーがありますねというのは確認しているようであります。

 しかし、マランティスが、御承知だと思いますけれども、米国に対する発表の中では、本日、マランティス米国通商代表代行は、米国がTPPに関する日本との二国間協議を完了したことを発表しましたと。この発表した文書の中には、残念ながら、同じ日に発表しておきながら、センシティビティーがあるということは一言も書いていないんです。むしろ、日本の政府が、全ての品目、オールグッズ、全てを交渉の対象にすることを認めたと書いてあるんですよ。ことしの四月十二日、同じ日に、まさに二枚舌もいいところですよ、これは。

 これを私は部門会議で外務省の課長にただしましたけれども、課長は、こんなことは言っていない、何としてもこれとは違うと言うんですが、では、ちゃんと抗議しろと言ったんですけれども、抗議もしないんですよね。だから、非常に危ないですね。

 ですから、時間も過ぎましたので終わりにしたいと思いますが、もしかして、このままそれこそやられっ放しでいったら、何年後になるかわかりませんが、それこそ十年後に、関税はゼロ、非関税障壁も撤廃、アメリカの標準並みになって、日本の国が疲弊したときには、安倍内閣はとんだ内閣だったというふうに歴史に残ることになりますよ。そうならないように、ぜひ頑張ってほしいと思います。

 以上で終わります。

森山委員長 次に、高橋みほ君。

高橋(み)委員 北海道選出、日本維新の会の高橋みほでございます。きょうもよろしくお願いいたします。

 きょうは、まず、先ほど佐藤英道議員が御質問されていましたゼニガタアザラシの捕殺の中止に対しまして質問いたしたいと思っております。

 五月十五日、襟裳岬周辺で本年度行う予定だったゼニガタアザラシの試験捕殺が中止されることが明らかになりました。理由としましては、ゼニガタアザラシは絶滅危惧種で、個体数調整は慎重にすべきだということ、一定数を捕獲しても被害が減少するかどうか確実性が低いとの理由で中止したとの報道がありました。

 私は、かわいいゼニガタアザラシは大好きですので、捕殺するのは忍びないとは思いますけれども、余りに漁業被害が大きいような場合は、一定の捕殺はやむを得ないのではないかとも考えます。

 古来から人間は、ゼニガタアザラシなど、一定量を捕獲して、そして、皮を利用するなど、適切な範囲で共存してきました。それを考えるならば、ゼニガタアザラシの個体数がある程度戻ってきている今、全く捕殺できないというのはいかがなものかとも考えます。

 そして、理由が、一定数捕獲した場合に被害が減少するかどうかの確実性が低いとのことですが、これは常識的に考えて、頭数を削減すれば被害は減少するのは当然かとも考えられます。

 そして、今回の処置は、捕獲頭数を削減するのではなく、中止ということですので、漁業者の利益を余りにも考えない行為とも思われます。

 そこで、環境省さんに、このたびの捕殺中止の経緯などをお尋ねしたいと思います。

田中副大臣 高橋議員が地元北海道の深刻な漁業被害のことについてお尋ねでございまして、私の方からお答えを申し上げたいと思います。

 ゼニガタアザラシの捕殺中止に至った経緯と理由等についてでありますけれども、私たち環境省としては、ゼニガタアザラシによる漁業被害が深刻であることを受けて、昨年より、絶滅危惧種ではあるものの、個体数調整も視野に入れた総合的な対策を行うため、今年度中に決定できるように保護管理計画策定を進めておったところでございます。

 しかし、お話がありましたように、ゼニガタアザラシは日本における絶滅危惧種に選定された動物であり、個体数調整は慎重に検討されなければならないこと、また、一定数の捕獲をしたとしても被害が減少するかどうかまだはっきりしないこと等、そういう視点から、当面、試験的な捕獲を含め、個体数調整を行わないこととしたものでございます。

 以上でございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 ただ、一般的に考えまして、ある程度捕獲したらその分は被害が減少するというのは、普通の一般的な考え方ではないかとは思います。

 それで、漁業者さんにとっては、ゼニガタアザラシであろうが、トドであろうが、ゴマフアザラシであろうが、漁業被害というところでは同じだと思います。その点を実際に酌んでいただければとは思っております。

 ゼニガタアザラシは環境省、トドは農林水産省、ゴマフアザラシは道の所管ということになっています。とすると、環境省さんは、今おっしゃったように、環境の観点からというのが一番の主眼になるかと思います。そして、農林水産省の方々の観点からいいますと、漁業被害の観点から決定されることが多いのではないかと思っております。そうすると、ゼニガタアザラシが絶滅危惧種だからといって、環境省の管轄事項だからといって、漁業被害に一定の配慮をできないというのは、省庁の縦割りの弊害があるのではないかなんということも少し考えざるを得ないかと思います。

 農林水産省さんは、漁業者の利益を考え、漁業者の意見を代弁して、環境省さんに対して意見を述べる機会があったのでしょうか。省庁間の連携等はどうなっているのでしょうか。農林水産大臣にお伺いできればと思っております。

本川政府参考人 御指摘のとおり、現場の漁業者にとっては、どこの省庁がやるかということはやはり関係なく、被害を防止し軽減していただくということが必要であろうというふうに思っております。

 そういう意味で、やはり現場に立脚した防除対策を行う必要があるということで、例えば、私どもがやっておりますトドの被害防止対策につきましては、北海道庁と密接に情報交換や意見交換を行っておるところでありまして、きのうも担当課長が北海道に行きまして、北海同庁を初めとする関係者とトド対策の今後の進め方について打ち合わせをしてきております。

 ゼニガタアザラシについては、環境省の方で被害防除を中心として事業を進めるというふうに聞いておりますが、これまで担当レベルで二回の打ち合わせを行っておるところでありまして、私どもの知見、そういったものを御紹介申し上げているところであります。また、これまで蓄積したトド被害の防除技術に関する情報提供、あるいは、専門家を近く北海道の方に派遣いたしまして、現地で環境省とともに打ち合わせを行いたいと考えているところでございます。

高橋(み)委員 各省が連携してこれらの被害について対策を練っていただけるということを伺って、安心をいたしました。

 それでは、捕殺をせずに漁業被害を抑える方策はあるのでしょうか。その効果が、先ほどの捕殺の場合は、たとえ一定数を捕獲してもその確証が得られないからこの制度は今回は中止をしているということなんですけれども、それだけ実証性があるような、漁業被害を抑えられるような対策というのをとることができるのでしょうか。環境省さんにお尋ねしたいと思います。

田中副大臣 漁業被害の深刻さについては我々も十分認識をしております。地域の声を聞きながら、ゼニガタアザラシの網への侵入を防止するなどの漁業被害防止のための事業の実施を中心として対策を行ってまいりたいと思います。

 また、今年度から開始される環境省の研究費の中でも、音響装置の開発あるいは漁具の改良等を通じた被害軽減手法の検討も行ってまいります。

 いろいろと漁民の皆さんの方が知識が豊富でございますので、本当に有効かどうかということにいろいろな意見もございますけれども、とにかく、ありとあらゆる努力を講じて実績を上げていきたいな、こういう思いでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 音響装置の導入など、本当に効果があるかというのは今の時点ではわからないかもしれませんけれども、今の御答弁で、全力でいろいろな方策を考えていってくださるということに、とても心強く思いました。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に行きたいと思います。

 次は、農業、農村の所得倍増計画についてお尋ねいたします。

 安倍総理は、五月十七日の成長戦略第二弾スピーチで、きょう、私は、ここで正式に、農業、農村の所得倍増目標を掲げたいと思います、池田総理のもとで策定されたかつての所得倍増計画も十年計画でありましたが、私は、今後十年間で、六次産業化を進める中で、農業、農村全体の所得を倍増させる戦略を策定し、実行に移してまいります、その着実な推進のために、新たに、私を本部長とする農林水産業・地域の活力創造本部を官邸に設置します、早速来週から稼働しますとおっしゃっていました。

 所得倍増と申しますと、何だか心が躍って、私の所得も倍増するのかななんて思ってしまうんですけれども、よくよく考えてみますと、では、所得倍増しなければいけないように農家さんは実際に困っているんだろうかということが私の素朴な疑問でございました。

 そこで調べてみますと、二〇一〇年のセンサスの資料によりますと、販売金額別農家数を調べましたが、二百万円未満の戸数、この方たちは兼業農家さんだと思われますが、これは全体の七二・四%もありますが、その販売総額は全体の一〇・一%にすぎないとのことでした。そして、一千万円超の階層は、戸数では七・九%にすぎませんが、販売総額の六七・四%ということです。

 私の地元北海道では、二百万円未満の戸数は全体の一七・三%にすぎず、その販売額も全体の〇・六%なんですけれども、一千万円超の場合が、戸数としましても五六・〇%に達し、販売総額の九一・七%を販売しているそうです。

 この資料からわかることは、農家の方は貧しく、所得を倍増しなければならないというのはイメージにすぎないじゃないかというふうにも考えられるところではございます。

 そこで、お尋ねいたします。

 この安倍総理がおっしゃった所得倍増計画とは、どのような農家さんをターゲットにしているんでしょうか。所得が二百万円以下の農家さんは兼業農家さんだと思われるんですが、その方たちが対象でしょうか。それとも、販売が一千万円を超える人たちがターゲットでしょうか。それとも、農村全体というイメージであって、個別の対象者、ターゲットは余り決まっていらっしゃらないということでよろしいでしょうか。お尋ねいたします。

林国務大臣 今委員がお触れいただきましたように、総理が十七日の講演で、農業、農村全体の所得倍増を目指す、こういうふうにおっしゃっておられます。また、自民党の農林部会でも、農業・農村所得倍増目標十カ年戦略というものがあって、これは、今後党内で所定のプロセスを経て、公約という形になっていくものというふうに承知をしております。

 これもお触れいただきましたように、昨日、閣議で、農林水産業・地域の活力創造本部、これを閣議決定させていただきまして、その後、第一回本部会合を開かせていただきました。総理を本部長、官房長官と私を副本部長ということで、これからやっていくということでございます。

 この本部で、農林水産業、地域を含めて厳しい状況にある、今委員からは、多様な主体があって、それぞれであるということがございましたけれども、やはり現場の皆様の声を聞きますと、非常に厳しいという声がたくさん上がりますし、それから趨勢として、やはり高年齢化、それから従事者そのものの数も減っている、それからもう一つはやはり耕作放棄地もふえていくということで、こういう状況を打破していかなければならない、こういうこともありまして、産業政策と地域政策の両面から、農林水産業や農山漁村の活力の向上を図るということをやっていこうということになったところでございます。

 まさに総理が講演の中で、今後、六次産業化を進める中で、農業、農村全体の所得を倍増させる戦略を策定する、こういうふうにおっしゃっておられますように、農家の個人個人というよりは、農業、農村全体の所得をふやしていこう、こういう観点で、多様な地域の状況、北海道と九州、また例えば私の地元の山口県、それぞれ地域性もございますので、地域の状況を踏まえながら、与党の皆さん方等々とも相談しながら、これから検討していきたいと考えておるところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 所得倍増というのは誰が聞いても心躍る単語ではございますけれども、漠然としたターゲットでは結局、絵に描いた餅に終わる可能性があるかと思います。できましたら、本当にもっとターゲットを絞って、では、どのところが所得倍増して、それで農村自体の所得が倍増するという結果になるというような具体的な道筋をお示しいただければと思っております。

 では、次に行きたいと思います。

 安倍総理は、先ほど私が述べました成長戦略第二弾のスピーチで、都道府県段階で農地の中間的な受け皿機関を創設します、農地集約バンクと呼ぶべきものです、この公的な機構がさまざまな農地所有者から農地を借り受けます、そして、機構が必要な基盤整備なども行った上で、民間企業も含めて農地への意欲あふれる担い手に対してまとまった形で農地を貸し付けるスキームを構築していくとのことですというふうに述べていらっしゃいます。

 農地を集約化して大規模化していくことは望ましいことだと理解しております。維新の会も、農地の集約化の必要性は理解をしており、積極的に進めたいと思っておりますので、農地集約バンクについて、どのようなものか、まずお教えください。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきます。

 今回、担い手への農地集積、集約化や耕作放棄地の解消をさらに進めるため、県段階に農地の中間的受け皿として農地中間管理機構を本格的に整備し、活用することを実は考えております。

 具体的には、地域内の分散し錯綜した農地利用を整理し、担い手ごとに集約化する必要がある場合、そして受け手がすぐに見つからない場合、そんな場合には、管理機構が借り受けて、必要な場合には機構の負担で基盤整備等も行った上で、法人経営体や大規模家族経営、企業などの担い手に集約化した農地を貸し付けるスキームを整備したいと考えており、今後、構想の具体化を図っていくことになります。

 どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 今のお話を伺いますと、ああ、とてもいい制度だなと一見思ってしまうんですけれども、実際のところ、借り手が見つかるかどうかというのが一番大事な点じゃないかと思っております。もし借り手が見つからないと、機構が農地を丸抱えしてしまうことにもなって、その間にも機構は農家の貸し手に賃料を払い続けなければいけませんし、農地を維持管理したり、いろいろな整備する費用もかかるかと思います。

 今現在、借り手の確保の見込みなどが実際あるのか、そこをお尋ねいたします。

長島大臣政務官 御指摘のとおり、農村あるいは農地を見て、私も住んでいますから、かつて農地であったところ、そして、近年まで農地であったところが荒廃している姿というのはあちこちで実は見受けられます。農家にとって決して好ましい状況ではないんですが、やむを得ずそういった形で耕作放棄地がふえている。この中で集約をしたから担い手がすぐに見つかるかということのために、リースを中心にして、機構が抱えた上で農地として整理をして、また農業として経営できるような形として、担い手あるいはそこを受けとってくれる人たちを探していくこともこの機構の機能としてつけるつもりですので、ぜひそんなことで御理解をいただきたいと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 本当にその受け手が見つかって大規模農業化して、コストも下がって利益も上がるというふうになればいいとは思ってはいるんですけれども、なかなか難しい点もあるとは思いますので、ぜひいろいろな方策を立てていっていただければと思っております。

 次に行きまして、六次産業化ファンドと言われております株式会社農林漁業成長産業化支援機構の農林漁業成長産業化ファンドに関しまして質問をいたします。

 これに関連しまして、以前、農水省といたしまして、多額の負債を抱える農家を支援する農業再生ファンド、いわゆる農業ファンドを〇五年度予算において設立したとのことですが、これは農林漁業金融公庫が国の原資をもとに農協の系統とともに出資し、農業再生ファンドとして、農林漁業金融公庫や農林中金、信用農業協同組合連合会やJAなどが設備資金の融資を行い、農業再生委員会が認めた、地域農業に大きな役割を果たす農業者に円滑に経営資源を継承させていくということで、不良債権から正常債権に切りかえていくという、一般の投資ファンドとは異なる、持続不能に陥った農業者の農地や栽培施設が放置されたままにならないよう、力のある農業者へ移転させ、日本の農業を守る再生ファンドというものがございます。

 当時の農林漁業金融公庫は、現在、日本政策金融公庫となったわけでありますが、この日本政策金融公庫が株式会社農林漁業成長産業化支援機構と提携されたということですので、今回のファンドともかなり関係があると考えます。

 そこで、以前にありましたこの農業再生ファンドは、現在のところ、どんな状況なのかということをお尋ねいたしたいと思います。

長島大臣政務官 御指摘のアグリビジネス投資育成株式会社は、平成十四年に制定された農業法人投資円滑化法に基づき、日本政策金融公庫と農林中央金庫等の出資により設立され、主に農業法人に対する出資を行っております。

 同法において、アグリビジネス投資育成株式会社は、農地法の特例として農業生産法人への出資ができる、つまり、生産法人への出資を目的としております。

 一方、株式会社農林漁業成長産業化支援機構、A―FIVEは、六次産業化法の認定を受けた事業体であって、農業を行う法人とは別に設立した第二次、第三次産業の事業を行う法人を支援対象としているところでございます。

 これまで、アグリビジネス投資育成株式会社は、累計で百五十件、約三十億円の出資を行っており、約一億一千万円の配当を得ているところでございますので、御理解をいただきたいと思います。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私の問題意識というのは、このようなファンドを産学連携というか官庁も一緒になってやるという場合は、結局、結果が出るかどうかということがとても心配でしたので、まず、六次産業化ファンドをお尋ねする前に伺いました。

 では、六次産業化ファンドについてお聞きしたいと思います。

 昨日、農林水産省の方から、投資評価やエグジットはどうなっているのかなどをお聞きいたしました。この六次産業化ファンドでは、いわゆるバイアウト、投資先が成功してその持ち分を買い戻すということが前提に置かれているとお聞きしました。

 現在、ファンドの間では、投資プロジェクトに対してのディスカウントキャッシュフロー法が評価の主流となっており、収益還元法なども使われております。二十年間の時限組織の中で、十五年間投資されるプロジェクトに対し、途中途中での評価がなされない、評価が定まっていないというのは、国民の税金を使うプロジェクトでもありますので、エグジットは持ち分買い戻しができるか否かでは、いささか乱暴ではないかとも思われます。

 また、この六次産業化ファンドによる資金と支援の流れに関しまして、さまざまな利害関係者、ステークホルダーが絡んでまいります。劣後ローンを受け入れた事業者は、その信用の高さにおいて、より大きな資金を融資や出資などで獲得できる仕組みがあり、さらには技術や販路の支援まで付随してくるような国のお墨つきという強力なブランドを獲得するようになっていくかとも思われます。地域の金融機関は地域の産業構造を熟知しているでしょうし、地方自治体や農林漁業団体のバックアップは、裸一貫で創業をするところとは比べ物にならないほどアドバンテージを獲得できると思います。

 ところが、地域で一生懸命頑張っている、地域で政府や自治体のサポートを受けずに頑張っている、そういう企業、それが新たに認定された六次産業化事業体に近い事業を行う企業の場合、果たして公正な競争となり得るかとの懸念があります。

 私の地元札幌市では、スイーツ王国さっぽろという官民共同のすばらしいプロジェクトが行われております。成果が出ていると思われますが、他方、隣の小樽市では菓子製造業者の倒産が続いております。因果関係がどうというわけではありませんが、政府系の投融資によって市場をねじ曲げているおそれが出てくるんじゃないかというような懸念もございます。

 今、金融緩和で、金融市場の中で資金の流れが格段に変わったところでもあるかと思います。民間でできるところは民間で、民間ではどうしても手を出しにくいところに政府が入っていくというのが大原則ではないかとも考えられます。

 ある企業のビジネスモデルに似た事業体への投融資を行われていくようなことが起こった場合、健全な競争が行われ、切磋琢磨となって、より事業が拡大していくとするならばすばらしいことだと思うんですけれども、単に先発企業の売り上げを減らし、あるいは競合分野の売り上げを減らし、その分の売り上げを獲得するならば、健全な経済成長が望むべくもないということは明白なところではないかと思います。

 新技術や新分野が絡むわけではない、既存の一般的な事業に、六次産業化という名目で、農林水産省が主体となってファンドを運用することの意義、ほかの企業を圧迫しないかという観点も入れまして、このファンドを運用することの意義をお聞かせ願いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

長島大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきます。A―FIVEを利用していただいた六次産業化の進め方についてという御質問だと思います。

 我が国の農業と食料関連産業の生産額は九十五兆円でございます。その額は全産業の一一%を占めております。我が国最大の産業分野の一つ、農業と食料関連産業を一体的に発展させて、我が国の経済成長の一翼を担っていくことが期待をされております。

 今後の経済成長に当たっては、地域の農林水産物、食品のすぐれた価値について、一次産業、二次産業、三次産業をつないでいくバリューチェーンを形成することによって新しい結合をつくり出し、イノベーションを進めていくことが不可欠だというふうに考えております。

 また、このような六次産業化の取り組みを強力に推進するため、出資と経営支援を一体的に行う株式会社農林漁業成長産業化支援機構が二月一日から営業を開始したところでございます。

 委員御指摘のように、既存の業あるいは新しい業として、農業者あるいは製造業者、そして販売業者、既存のものとの調整もやはり必要だと思います。ただし、やはり農業者、生産業者が意欲を持ってこれから発信をしていくことのためにこの六次産業化が果たしていく役割は大きくなると思います。ファンドを引き受けてくれる人たちがそのことに対するノウハウあるいは販売網を知らしめることも農業者や製造業者にとっては大きく役立ってくれるものだと信じております。

高橋(み)委員 ありがとうございます。

 私も、この六次産業化ということには大変期待をしております。ただ、この制度などを利用しない人たちが不利益をこうむる、自力で頑張っている人たちを阻害するおそれがあるのではないかなとちょっと考えましたので、質問させていただきました。

 それでは、次に行きたいと思います。

 次に、海外の食料不足のために日本ができることに関しましてちょっと御質問させていただきたいと思っております。

 今日、世界じゅうで、食料不足で困っている方は八億七千万人いらっしゃるということです。アフリカのソマリアでは、国連食糧農業機関、FAOによりますと、二〇一〇年から二〇一二年までの間に二十六万人が亡くなられ、そのうちの半数が五歳未満の幼い子供であるということで、大変な飢餓があったということが発表されています。

 その中で、一部報道では、ドイツの経済協力開発省でドイツ首相のアフリカ担当を務めるギュンター・ヌーク氏が、アフリカの角と呼ばれるアフリカ大陸北東部で中国が農地を買っていることが、この地域を襲った大干ばつの被害を拡大させた一因だと述べております。

 そして、先日、安倍総理とプーチン大統領立ち会いのもと、地元北海道にございます北海道銀行がロシア連邦アムール州政府知事との間で農業分野に関する覚書を締結されたときの話でありますけれども、その目的としまして、双方の農業関係者の直接的交流とその発展を促し、最新農業技術の研究と普及、技術交流、経営力向上などの協力促進を支援することによって、アムール州政府との関係強化による情報交換を通じて、今後もアグリビジネス支援を行っていくというふうな報道がございました。

 ただ、この農地は、以前、中国の方が借りて耕作していたとのことですが、いろいろトラブルがあって、現在は契約を解除し、この調印へ至ったということでございます。

 私が言いたいことは、中国が悪いということではなくて、農業というものは、行う人がかわるだけで、やり方を変えるだけで、農業生産技術の違いにより収穫が随分違うのではないかというようなことです。

 我が国としまして、海外の食料不足のためにできることとして、日本の農業技術移転を農業国に対して行っていくべきではないかというようなこともよく言われております。

 私は、先日、マダガスカルのバッタ大量発生ということをこの委員会で質問させていただきましたけれども、そのときも、そのようなニュースを見ると、日本がもっと海外に対していろいろなことが協力できるのではないかと思うことがございます。

 もちろん、それをすれば技術を移転した方が単に損をするようなことがあってはならないと思いますけれども、この日本の誇るべき農業技術をもちまして、ODAなどでJICAが行っているようなことではなく、海外の食料不足、貧困対策として、日本の農家を丸ごと海外へ移転させて、そこで本物の農産物をつくっていくような協力というのを農林省のプロジェクトとして行うことなどがよいのではないかと思ってはいるんですけれども、そのようなお考えはありますでしょうか。

長島大臣政務官 先生御指摘のように、世界の栄養不足人口は八・七億人存在をしておりますので、食料需給が逼迫基調で推移をしていることは承知をしております。

 先生は、日本の農村そのものを海外に移転して、そのことによって海外の食料不足に貢献したらどうかという御質問だと思います。

 実は、私の地元の新潟市は、先般、江藤副大臣が総理に随行されてロシアに行かれた際に、農業の技術指導あるいは農業技術者の派遣等について少しお話をさせていただいて、実際に食文化を受け入れてもらえるのか、日本の生産技術が受け入れてもらえるのかということを調整しながらやらせていただこうという、意欲のあるそういう市も実は存在をしていると思います。

 ただし、今現在は、国と国あるいは市と市で、農家そのものを派遣してということは、農水省としては、実態としては、把握を実はしておりません。JICAが、御指摘のように、農業ボランティアを、アフリカでネリカ米を普及したりという活動については、個人的には承知をしておりますけれども、農水省として派遣をするということには至っておりませんが、市町村としてそんな動きが出てきていることも事実ですので、そんなことを受けとめながら、世界の食料不足という観点と同時に、日本の食料生産技術がどう受け入れてもらえるのかも含めて、少し私自身としては勉強してまいりたいなと思うところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございます。大変心強いお言葉をいただいたと思っております。

 次に行きまして、飼料の国産化についてお尋ねしたいと思います。

 畜産業を営む場合、幾ら利益が出るかは飼料代が幾らかかるかによることが多いと言われています。高騰する外国の飼料に頼らない、国産米や国産トウモロコシをつくって、国内産飼料をつくろうという動きが現在いろいろなところでございます。

 例えば、山形県庄内地方で進められている飼料用米プロジェクトというものがございます。これは、休耕田を利用して飼料用米をつくり、それを食用の豚の飼料にすることで、食料自給率を高めることを目的としたプロジェクトだそうです。この飼料米プロジェクトは、生協からの提案で、遊佐町と企業が共同で取り組みを始めて四年で、粉末にした飼料用米をまぜた餌を食べて育った豚の脂身にはオレイン酸が多く含まれていて、甘みとうまみがあり、リノール酸が少ないことから、油の酸化を抑制する効果もあるということです。この生産者グループは、食用よりかなり粒の大きい品種を選んで直まきし、この米を食べる豚の尿を発酵させた液肥を利用するという環境保全型農業に取り組み、量産とコストダウンを図っています。

 これは一例なんですけれども、国産の米を消費するモデルとしまして、これらの取り組みを普及させていくのは、米の需要の拡大の観点からも、高騰しがちな外国産のトウモロコシなどに依存しがちな畜産業に明るい話題だとは思うのですけれども、このような取り組み、国産米や、そのほか、国産のトウモロコシを植えて飼料とすることに関しまして、国としましてはどのようにお考えでしょうか。これからこれらを採用してもっともっとふやしていこうというようなお考えはございますでしょうか。お教えください。

江藤副大臣 これは、米をぜひとも飼料にしたいというのは、我々の農林部会の中でもずっと議論してきたことでありまして、多分、牛はそのまま食べると下痢をしちゃいますけれども、ちゃんと砕いて細かくして、消化をよくしてあげれば、大体七百万トンぐらいは潜在的な市場はあるというふうに言われています。非常に先進的に、特に酪農なんかでやっているところは、トウモロコシの半分ぐらいの値段で契約して、それを手に入れている農家もいらっしゃるんですよね。

 ですから、これから、配合飼料価格安定制度も充実していかなきゃいけませんけれども、デントコーンであるとか、飼料用の米であるとか、こういったものについては八万円事業がありますけれども、それについては、耕作機械とか面的集積とか、それに向けての課題がありますので、いろいろな政策を総括して、ぜひ、飼料用米の世界には、品種も含めて、切り込んでいきたいというふうに考えております。

高橋(み)委員 ありがとうございました。期待しております。

 最後の話題に移りたいと思います。

 TPPに参加した場合なんですけれども、守り抜くべき国益として乳製品が挙げられていることが多いようです。

 農林水産省の試算ですが、もし関税がゼロになった場合、バターや脱脂粉乳、チーズなどの乳製品は、内外価格差が大きく、品質格差もないため、国産のほぼ全量が外国産に置きかわるとか、輸入乳製品の急増により行き場を失った北海道の乳製品向け生乳が都府県の飲料向けに供給され、都府県の生産はプレミアム牛乳向けを除いて消滅する。なお、飲用乳は輸送技術の発達等により輸入が可能になり、価格も、牛乳で国産の二分の一程度であるため、業務用牛乳、加工乳等を中心に、国産の二割程度が置きかわるというような試算が以前発表されていました。

 政府は、乳製品に関しましては、守り抜く決意だとは思うのですが、いかんせん、交渉ですので、結論はどうなるのか、一〇〇%保証するということにはならないかとも思います。そのとき、政府のとるべき方策としましては、影響を受ける農家さんに直接補償するということになるかとも思います。

 ただ、ここで私が危惧しておりますのは、仮定の話で恐縮ですが、この農林水産省の試算によると、バター、脱脂粉乳、チーズなどの乳製品は海外産に置きかわり、行き場を失った北海道の乳製品向け生乳が都府県の飲料向けに供給され、都府県の生乳は一部を除いて消滅ということを考えますと、都府県の生産者に補償がなされ、北海道ではせっかくの規模を生かせないと考えることもできるかとも考えます。

 仮定の話で恐縮ですが、政府は、農家の大規模化ということを求めながら、北海道などの大規模農家の方の大規模化を抑制するようなことになるような政策をとらないかとは思うのですけれども、その点の政府の御見解を伺えたらと思います。よろしくお願いします。

林国務大臣 今委員がおっしゃったように、北海道の生乳の生産は農業産出額全体の約三割でございますから、非常に重要な産業になっているというふうに認識をしております。

 お触れになっていただいた政府統一試算においては、これは、十一カ国との間で関税を全て撤廃する、それから何の対策も打たないという想定でやりますと、生産額が二千九百億円減少するということで、まず国産の乳製品のほぼ全量が外国産に置きかわる、それで、今お話ししていただいたように、行き場を失った北海道の乳製品向けの生乳が都府県の飲用向けに供給され、都府県の生乳生産がほぼ消滅する、こういう想定になっておるわけでございます。

 今申し上げたように、即時撤廃、追加対策なし、こういう単純化された仮定でございますので、まずは、今おっしゃっていただいたように、交渉でしっかりとこれを守っていくということでございます。

 それから、国内対策をどうするかということは、こういう想定はいたしておりますけれども、そうならないように交渉するということでございますから、どういうところをどういうふうに対策をやるということを申し上げてしまいますと、交渉でそこを譲ってもいいのではないかと相手から見られるというおそれがありますので、そうならないようにしっかりと交渉してまいりたいと思っておるところでございます。

高橋(み)委員 ありがとうございました。

 交渉中ということはもちろんわかっておりますけれども、もしもの場合がございましたときにいろいろなところの直接の補償、補助金を与えるというようなことになったときに、やはり北海道とか本州、本当にいろいろな地域差があると思いますので、それらを区別せずに、きちんとした皆の競争ができるような制度にしていっていただければと思っております。どうもありがとうございました。

 これで質問を終わります。

森山委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 みんなの党、林宙紀です。

 きょうは、大変ピンポイントなんですが、日本における食料の備蓄に関する内容についてお伺いをさせていただきます。

 備蓄というところに至るまで、どういう経緯かといえば、先ほど少し高橋委員の方からもありましたが、世界的な人口増加ということで、食料が不足するんじゃないかということもちまたではずっと言われてきているわけです。ことしには、どうやら世界の人口は七十一億人に達しようとしている、大変な数なんですけれども、国連人口推計では、二〇五〇年、あと三十年ちょっとぐらいですか、三十七年、二〇五〇年には九十億人、少なく見積もっても八十億人近くまでには行くんじゃないかというふうに言われております。

 これはいろいろな見方がありますので、食料が不足するかどうか、それについては議論がさまざまなので、個人的には、ただこれをもっていたずらに食料危機をあおろうとか、そんなつもりは全くないんですけれども、さきの、例えばTPPに関する議論のときもそうでした。私たちは参加賛成という立場をとっておりましたので、いろいろと地元でも有権者の方々に、例えば海外からの農産物がもっと入ってくるようになってしまったら食料自給率はどうするんだ、自国の食料も自前で賄えないのに、農産物輸出とか言っている場合なんだろうか、そんな質問も数多くいただいたりしたこともありまして、個人的興味で、いわゆるフードセキュリティーというか、食料安保というものについてはちょっと調べさせていただいていた部分があるんですけれども、まず、食料が不足するんじゃないかという不安を解消しようと思ったら、その手段の一つとしては、食料をどのぐらい備蓄するかというのは一つの大きな基準になってくるわけです。

 ということで、まず最初に、現在の日本における食料備蓄について、大体どのくらい備蓄しているのか、基準ということですね、及びその量に設定している考え方についてお伺いしたいなと思います。

佐藤政府参考人 林先生の御質問にお答えいたします。

 今先生御指摘のように、食料安全保障の観点から、備蓄の役割といったものは重要だというふうに考えております。

 具体的に申し上げますと、米でございますが、これはこれまでの経験則を踏まえまして、十年に一度の不作、大体これが作況指数九二でございますが、その事態や、いわゆる通常の不作、作況指数九四でございますが、こうしたものが二年間続いた事態を想定した水準ということで、約百万トンの備蓄を行っておるところでございます。

 また、米以外のものといたしましては、輸入にその大宗を依存しております食糧用小麦あるいは飼料穀物につきましては、これは海外から運んでくるものですから、港湾ストライキ、こういったようなものが想定されますものですから、そうしたものを踏まえまして、食糧用小麦でございますと、国全体として外国産食糧用小麦の需要量の二・三カ月分の九十四万トンを、また、飼料用穀物につきましては六十万トンを備蓄している、こういうことに相なっているところでございます。

 以上でございます。

林(宙)委員 今の御説明の中で、米の備蓄量の基準について、作況指数というものをお伺いしました。作況指数九二というふうにおっしゃっていましたが、九二というのは、簡単に言えば、平均的な年間収穫量を例えば一〇〇と考えるならば、不作の基準として九二%程度の出来高だ、こういうふうに理解しております。ということは、平均収穫量から比べて、ことしは八%分が収穫量として足らなかったといったときに、それを補えるだけの備蓄があれば、ひとまず備蓄の役割は果たしているんだというふうに考えていいんじゃないかなと思うんですね。

 ちょっと話がそれますけれども、一九九三年のことを思い出すんですが、あの年は大変な冷夏だったわけですね。私は、宮城県で高校一年生だったわけなんですが、ラグビー部だったわけで、大変涼しい夏で、非常に練習がしやすい、いいなと思っていたんです。ばかだったなと思います。その後、秋口ですよ。米が不作である、足りない、どうするという話になっていまして、本当に反省したんです。

 あのときは、たしか緊急的に米を輸入しようかというようなお話になりまして、タイ米というのが大変話題になったわけですね。ラグビーボールは楕円形をしていますので、練習すればするほど若干タイ米に見えてくるぐらい、タイ米が話題になっていたわけなんです。コンビニに行っても、タイ米のメニューというか、タイ米のお弁当みたいなのが出ていたりとか、あとはファミリーレストランに行っても、タイ米を使っていますというようなメニューがあって、私も、あのとき初めてタイ米を食べたなということを非常によく覚えているんです。

 あのとき、あれだけの騒動になったので、では、あのときの作況指数というのは幾らだったんでしょうかということで調べてみたら、何とあのときは七四だということだったんですね。七四というのは、今の御説明の中ですと、余り通常想定されていないケースであるというふうに考えていますが、九二で今考えているということは、まれなケースで扱っている。

 現状の九二とか、あるいは、先ほど二年連続で九四とかというお話だったと思うんですが、こういう備蓄基準を前提とした場合、まれなケースとはいえ、一度やはり起こってしまったことであって、今後も場合によっては結構な確率で起こるんじゃないだろうかというふうに思う向きもあると思いますので、今、ああいう冷害といった事態については、今の基準からの運用という意味では、どのように対処しようと考えていらっしゃるのかというのをお伺いしたいなと思います。

佐藤政府参考人 林先生の今の御質問でございますが、ちょっと経緯を申し上げますと、平成五年産のことであるかと思いますが、この年は、作況指数が七四ということで、生産量が七百八十一万トンということに相なったところでございます。その際、総需要量は一千四十八万トンということで、一千万トンを超えるような総需要に対しまして生産量は七百八十一万トンというような状況であったわけでございますが、そのとき、折しも、平成五年でございますが、持ち越し在庫が少なくなっておりまして、平成五年十月末在庫がその当時二十三万トンということでございますので、この七百八十一万トンに二十三万トンを足したもの、これが供給量ということに相なったわけでございます。

 いずれにいたしましても、総需要量に対しまして約二百四十四万トンの不足が生じましたものですから、緊急輸入を実施したところ、こういうような状況に相なっているところでございます。

 今先生からの御質問でございますが、現在は、一応、政府備蓄米につきまして九十一万トンを保有しているわけでございますが、今先生御指摘のように、仮に平成五年産並みの大不作が起こった場合にはどうなるかと申しますと、やはり、私ども、まずはこの政府備蓄米の活用といったことがあるかと思います。

 それと、それ以外に、米粉でありますとか、あるいは餌米とかいったような、主食用以外に生産される米がございまして、これが大体、二十四年産でいきますと約四十万トン弱、今ございます。

 それと、それでもまだ足りないような場合には、MA米ということで、これが約七十八万トン近くございますので、総計いたしますと、一応、計算上は二百万トン強を超えるような数字になりますものですから、こうしたものを活用いたしましてそうしたものに備えていく必要があるんじゃないか、このように考えているところでございます。

林(宙)委員 ということは、突発的に、ああいった冷害などの状況で、非常に不作であるという年があっても、少なくとも一年は乗り切れるという考えでよろしいんでしょうか。済みません、これは通告していないですが、そのような理解でよろしいでしょうか。

佐藤政府参考人 単純に計算すれば、そのようなことは想定できると思っております。

林(宙)委員 今のお話の中では、飼料用のお米ですとか、そういったこともありましたので、それは当然ほかの産業に多々影響があるだろうということで、単純な計算で、何とか乗り切れるだろう、もちろん緊急事態ですから、それは一つ、方法としてはありなのかなと思いますが、何よりも、そういった食料安保についてだんだん意識が高まっている中で、安心感というのをどのように国民の皆さんにお伝えしていくかということは非常に大事なことなんじゃないかなと思っております。

 その食料安保の観点からいきますと、先ほどの基準の御説明の中に、お米は大体一・五カ月分、備蓄を目標にしていますということでした。一方で、小麦もたしか二・三カ月分ほどを目標に備蓄をされているというふうに伺いました。私は最初、これを単純に足し算しまして、ということは三・八、四カ月分ぐらいの食料にはなっているのかななんて思ったんですけれども、よく調べてみるとこれは違うんですね。

 例えば米の一・五カ月分というのは、ふだんの需要量を考慮して、ふだんの需要に対して一・五カ月賄える分であるということだったわけですね。となると、例えば、極端なケースですが、ほかの食料がなくなって米しかない、三食、皆さんが米を食べるという想定になりますと、これは多分一・五カ月はもたない、恐らく一カ月弱ぐらいしかもたないんじゃないかなという量になるんじゃないかと思います。

 小麦は二・三カ月ということなんですが、万が一、この備蓄食料だけで何とかやっていかなければいけないとなったときには、多分、米が一・五カ月、これがボトルネックになってくるんじゃないかなと思っていまして、そのまま今と同じ食生活というか、多少節約はするんでしょうけれども、同じその需要の構成で御飯を食べていくと、一・五カ月たったときに最初に米がなくなるという状況が来ます。小麦はまだ〇・八カ月分残っていますが、単純に計算すれば、もうその時点で食料が、この二つだけで食料を賄おうとしていったら、もちろんそれは、あっ、足りない、どうしようということになるんだなということを勝手にシミュレーションして納得したわけなんです。

 何を言いたいかというと、もちろん、こういう備蓄米とか備蓄小麦だけで何とか乗り切っていこうなんてケースは、ほとんどまれなケース、ほとんど起こるか起こらないかということで私は想定していますが、何よりも、東日本大震災というのがあったわけですね。

 私も、あの当時は地元を離れて東京で勤務しておりましたので、東京から何度も米を運ばせていただきました。何往復もさせていただきました。それでも、届いているところには届いているんですけれども、やはり孤立している方々にはなかなか米が届かなくて、ようやく来たといって置いてきたら、もう二週間もしないうちになくなってしまうとか、そんな状況が本当にあったわけで、あのとき、政府の方に備蓄米があるんじゃないですかという問い合わせをしたことがあるんですけれども、何かそれも各それぞれの避難所なんかに送ってしまって、今すぐに送れる分はないんだというお話をされたことがあるんです。

 そうなると、あれももちろん数百年に一度の災害規模だと言われていますから、ケースとしてはまれなんだと思うんですけれども、やはり、起こってしまった以上は、あれを想定外にするのはなしでしょうという感覚がしてございます。

 ほかの国の例はどうなのかなということでちょっと調べてみまして、食料の輸入依存度が高い外国の国ということで、日本とは若干違うかもしれませんが、例えばフィンランドとかありますね。フィンランドの場合、食用穀物は一年分ほど蓄えられているというふうに聞きました。そして、お隣ノルウェー、食用小麦で半年分、六カ月ですね。例えば、そこから離れてスイスに至っては、四カ月分ほどだということなんですが、これは企業にも義務づけている。国が持つんじゃなくて、企業の皆さんにも協力していただいて、食料を確保しましょう、何かのときに備えましょうということがあります。

 国の方でも、今までのいろいろな、さまざまな議論の中で備蓄水準を今の状態に決めているということは、もちろん私も理解しておりますので、何だというわけではないんですけれども、やはりいろいろなことが起こって、災害も起こりました。そんな中で、この備蓄量について、もう一度適正な水準というのを考えてみる、検討してみる価値というのも出てきたんじゃないかなというふうに思っております。

 今、海外の例で申し上げましたけれども、例えば、半年もつのが現実的かどうかわかりませんが、あるいは企業の皆さんですとか、それぞれの行政組織のところで少しずつ持っていただいてある程度確保するとか、そういうスキームも考えられると思うんですけれども、これについては政府の方ではどのようにお考えでしょうか。

佐藤政府参考人 林先生の御質問にお答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございました備蓄の水準でございますが、米につきましては、実は毎年、食糧法の規定に基づきまして、食料・農業・農村政策審議会におけます議論を踏まえた上で、米の基本方針というものをつくりまして、その中で数量を定めているところでございます。

 今先生の方からお話ございましたように、東日本の震災でありますとか、いろいろな事象が起こっているわけでございまして、そうしたものを踏まえて、この水準についてどうしていくかということにつきましては、またこの審議会の部会の中で議論していく必要があるかというふうに思っているところでございます。

 ちなみに、先ほど先生の方から東日本大震災のときの政府のお米のお話がございましたが、今、そのときの反省に立ちまして、精米での供給に対して、我々、なかなか円滑に供給することができなかったということで、今この実証事業を行いまして、精米でありますと搗精することが必要ございませんので、あとは水や何かがあれば炊くことができますので、そうしたものが可能かどうか、精米備蓄といったものができるかどうか、今、研究中といいますか、そういった試験中ということをあわせて御報告申し上げたいと思います。

 以上でございます。

林(宙)委員 何か一つ非常に前向きな御答弁をいただいたので、ありがたいなと思います。

 ただ、備蓄をふやしてみてはいかがですかという議論の中で、大変申し上げにくいんですけれども、今、これは結構コストがかかっているんですね。買い入れするのに、毎年、大体ならして五百億円程度でしょうか。また、保管コストというのも三百億円とかかかっているわけなんです。

 みんなの党としては、税金を使う方向に議論を進めるなんということは余りやりたくないわけで、これは何とかできないものかなと考えたんですけれども、そのときに、買い入れの金額を少し下げる、つまり、米の生産コストを引き下げるというのは一つ解決策なんじゃないかなと思ったわけです。

 ということで、攻めの農業というのがここで出てくるわけですね。今、これまでの御議論にもありましたが、農地集約をするとか大規模化するとか、いろいろな形で生産コストを下げましょうというような議論が攻めの農業の中でもされていると思います。一つ、国際競争力を高めましょうという目標もあると思うんですけれども、この戦略の中で、では、実際、その生産コストをどの程度のレベルまで下げることを目指しているのかというのが、もしあれば聞きたいなと思っています。

 例えば、みんなの党では、TPP参加を賛成だと言っている部分もあって、将来的には、米が国際価格に近づいていっても、それでも戦っていける農業を目指しましょうというようなことを政策で言っているわけなんですけれども、現政権の攻めの農業の中で、このコスト削減、生産費の削減という意味では、どの程度まで下げようとされているのかということを最後にお伺いしたいなというふうに思います。

林国務大臣 今委員から、備蓄の方から考えた上で、コスト低減という御指摘がございましたが、それももちろんでございますけれども、まず、米について生産者の所得向上、所得というのは売り上げから原価を引くということですから、原価が下がるということも所得の向上につながるわけでありまして、売り上げを上げていくという高付加価値化とともに、生産コストの低減が重要であると思っております。

 具体的な目標値というのは設定しておりませんけれども、今、二十三年産では、全国平均で六十キロ当たり一万六千一円ということですが、調査してみますと、十五ヘクタール以上になりますと一万一千八十円になるということでございますので、規模拡大によりまして生産コストの低減を図ることが可能だということで、先ほどから集積化の議論がございましたが、こういうことをやっていかなければならないと思っております。

 十五ヘクタール以上が今一三%しかないものですから、今後、先ほど申し上げた機構等も活用して、農地集積、それから分散錯圃の解消をやることによって、やはり大区画化をしていくということで、それぞれの地域地域に応じた形で取り組んでまいりたいと思っております。

林(宙)委員 いろいろな形で生産コストを下げていくというのはやはりメリットがあることだと思いますので、これはいい方向に前進していけるように、ぜひ政権の方でも頑張っていただきたいなというふうに思います。

 では、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

森山委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 本日は、農林水産業の海外輸出、攻めの農林水産業と今言われておりますが、この観点について、いろいろな業者に、輸出をしようとされている方にいろいろな問題を伺ったこともありますので、そういう実務的な問題を踏まえた御質問をさせていただきたいなと思っております。

 それでは、まず質問に入る前段として、海外への農林水産物輸出の現状についてお伺いしたいと思います。

針原政府参考人 輸出の現状でございますが、農林水産物、食品の輸出は、平成十九年までは増加傾向を示してきておりました。その後、リーマン・ショック、円高、それから原発事故の影響等によって、近年、輸出額が減少しているということでございます。

 直近、二十四年でございますが、輸出額が四千四百九十七億円でございます。前年、二十三年の四千五百十一億円と比べて、〇・三%の減少になりました。

 ただ、二十三年と二十四年の四月から十二月、この期間で比較してみますと、四・四%増加しており、原発事故の影響から少し回復してきたのかなという状況でございます。

畑委員 ありがとうございました。

 実は、日本の農林水産物を海外に販売するためには、これは御存じのとおり、もちろんやらなきゃいけないことが、大きく言うと二点あって、一点は、また後ほど議論させていただきますが、行政上の手続、輸入許可証、そういうものをいろいろとる。原産地証明とか放射能の検査とか、いろいろありますけれども、そういうのをクリアすること。

 これとともに、やはり販路の拡大、ビジネスマッチングというか、民間ベースの販路の拡大、ここが必要になってくると思います。

 もちろん、日本の食材は海外に人気があると一般的には言われているし、その辺の味、市場調査、あるいは食味の調査、好み、いろいろ議論はこれまでありましたけれども、それをいかに具体的に、実際、自分が輸出業者の立場になった、農業者の立場になってみた場合に、市場開拓も含めて、では、どうやって売っていくのか。そこが、これはどの産業もそうですけれども、実は簡単じゃないわけです。これから、恐らくそこの部分の支援が必要だろうと思っております。

 これまで展示会ということは行われてきましたが、展示会が展示だけで終わって、イベント屋になってはいけないわけでありまして、例えば、あるジェトロの展示会でちょっと聞いたことがあるんですが、ある県の知事が、そこで展示即売ができると思って行ったら、展示会だけだったので、そこは、何で売ることも含めて総合的に組まないんだと言って、怒って帰ったということもあったと。どこの知事とは言いませんが、そういううわさも聞いたことがあります、岩手県知事じゃありませんけれども。

 あと、農林水産省でもジェトロと組んだ予算がありますけれども、この予算は単発的なものが多くて、ビジネスベースを考えたものではないとか、現地のマーケットを把握しないままで単発的なイベントを開催しても意味はないという話もよく聞くところです。

 結局は、民間の話ですから、役所がやると、そこは努力してやっても、どうしても、展示会をしますから、中国なら中国というか、外国のバイヤー、来てくださいね、そういうことで終わってしまう部分があって、殿様商売みたいに見られる部分もあるわけです。そこをどうすればいいか、なかなか難しいんですが、いずれにしても、殿様商売ではなくて、いかに売り込むか、来てもらうか。そこは、民間の活用というか、民間的な知恵も絞らなきゃいかぬだろうと思っております。

 そこで、思っていますのが、かつて日本の産業を、ここまで高度成長をやってくれた日本株式会社の先兵は商社だった部分もあるわけでして、商社が日本産業のいろいろな物を売り込む、そして日本産業を発展させてきた部分があります。

 農林水産業においても、こういう商社を含めた民間というのをもっと活用できないかなと。今、農林水産業の輸出というのはまだまだ盛んではありませんから、実際に大手の商社というのは輸出をほとんど扱っていない、扱っている額は微々たるものでして、やっているのは地場の食品業者とか中小の商社、こういうところがやっていますので、ここも大きな戦力になかなかなっていないというのが実態であります。

 ですから、これから、商社でもいいですし、何らかの民間の活用でもいいんですが、民間ですからインセンティブを付与しなければなりませんが、そのインセンティブを民間主体に対して付与して、そこが先兵になるような仕組みが必要じゃないか。あるいは、ジェトロなり国も、そういう民間との連携という施策を考えるべきじゃないか、民間への支援策を考えるべきじゃないかと思うんです。

 こういうことも含めて、まさに農林水産物輸出のためのビジネスベースでのマッチング、販路の開拓支援についてどのようにお考えになっているのか。これは農林水産大臣と、きょうは経産から佐藤政務官に来ていただいていますので、それぞれの立場からお伺いしたいと思います。

林国務大臣 委員がおっしゃいましたように、農林水産物や食品の海外マーケット、これは売り込んでいくためには、民間のノウハウ、人材、情報を活用するということは非常に大事だと思っております。

 私自身、実は社会人のスタートは商社に五年間ほど勤務をしておりましたので、商社にとっての一番のインセンティブは何かというと、コミッションであります。したがって、商売が大きくなっていったときに必ずそこからコミッションが入ってくるということが、これは株式会社ですから、将来を見据えていろいろな活動をして、商流をつくっていこうというインセンティブがあるわけでございます。

 ジェトロとの連携等々も非常に大事だと思いますが、そういう意味では、なかなか小ロットで商売の展開が見通しにくいと思われるようなケースに最初から商社が興味を示すかというところと、それから、ジェトロとしては、むしろそういうところを中心にいろいろな見本市で紹介していって、いけそうだ、ここをうまく組み合わせるということが大事ではないかというふうに考えておりまして、ジェトロさんにもいろいろお願いをしながらやっていただく、後で佐藤政務官からお話があると思いますけれども。したがって、こういうところを、使えるものは何でも使いながらやっていくということ。

 そして、商社は、それぞれの国に現地のお店があって、そこをぐるぐるぐるぐる回っております。一方で、例えば日本の方には、輸出をしたいと思っている人のところを回る人がいて、それが、ちょっと私の時代ですから古い時代かもしれませんが、毎日のようにテレックスでやりとりを細かくつないでいくということがございますので、こういうきめ細かな対応をどうやってジェトロのようなところとつないでいくかということが大事だと思っております。

 ジェトロでいろいろな見本市をやって、一回限りにならないためにも、その一回目、二回目の最初のマッチング、お見合いのときに、これはいけそうだなというところ、いけそうだなと思うと、商社もこれをやろう、こういうふうになってくるわけでございますので、そういうことをしっかりと総合的にやっていくということが大事でございます。

 もう一つ、この間、インドネシア、ベトナムに行ってまいりましたが、それから現地のパートナー、これも非常に大事でございまして、やはり現地のことを一番よく知っている現地のパートナー、これも実は商社の出先の方はよく御存じでありますから、こういうところも一緒になって、もう一つの将来的な形としては、この現地のバイヤーを今度は日本に呼んできていろいろな商談会をやる、こういう展開も非常に有効ではないかというふうに思っておりますので、あらゆる手段を駆使して、輸出の拡大に取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

佐藤(ゆ)大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今、畑委員御指摘の商社の活用という観点でございます。まさに官民連携をさせていただいて、この日本のすばらしい農林水産物を、経産省としても、海外輸出に向けて促進をしてまいりたいというところでございます。

 そういう意味で、ジェトロといたしましても、有望な地域地域の農林水産物の発掘に向けまして、やはり地域のことを一番よくわかっておられる民間の中小中堅の商社の方々でありましたり、さまざまな地域の企業の方々の情報ですとか見識、こういったものをうまく吸い上げながら連携をさせていただくのがよいのではないかと考えております。

 ちなみに、ジェトロの方では、国内で三十八カ所、そして海外で七十三カ所のネットワークを持っております。そういう意味で、我が国の工業製品ですとか農林水産物あるいは食品の輸出促進の経験とノウハウは既に有しておりますので、委員御指摘のとおり、こうした民間の商社の方々の見識も含めまして、これをいかにグローバルなジェトロのネットワークに乗せていくかということが一つのポイントではなかろうかと考えております。

 具体的には、平成二十五年度の新規予算の方では、農林水産省が計上いたしました輸出総合サポートプロジェクト事業、これは約十億円でございますが、これをジェトロが実施させていただくということになっておりまして、まさに一つ目の事業として、委員御指摘のとおり、民間なども活用いたしまして、国内外におけます有望輸出事業者の発掘、育成、そして二つ目に、海外見本市への出展支援、三つ目に、海外の有力バイヤーを招聘した商談会などの開催、こういったものを一貫したビジネスサポートとして実施していくことになっております。

 食品加工業などにおきまして、農商工連携など地域の活性化を起爆剤としつつ、このようなジェトロの動き、民間とあわせて活用いたしまして、農林水産物や加工食品等の輸出促進を一貫として、農林水産省と連携をしながら取り組んでまいりたい、そのように考えております。

畑委員 ありがとうございました。

 何事もそうですが、これは軌道に乗るまでが難しくて、特にスペシャルな主体がないんですよね。例えば農協、漁協は、要はノウハウがないのが正直なところで、やる気も出ない。

 そこで、商社を使いたいという話を申し上げましたが、商社ももちろんコミッションがあると今大臣はおっしゃいましたし、あとは、結局、利益を取りますから、実際、売る方の主体の利幅が少なくなってしまうという部分もあって、立ち上がりのための支援で使えるかどうかだろうと私は思っております。

 いずれにしましても、いろいろな段取りを総合的にしていただいてやるんですが、日本の農業、産業に携わっている方々は先方、バイヤーとの交渉力が弱いというのも、これは日本人の特有の傾向ですから、弱いという部分も聞きますので、いろいろな市場調査、段取り、そしてその後に行く、その先も含めてきめ細かい支援が欲しいなと思っております。そのことをお願い申し上げまして、この論点は終わらせていただきます。

 次に、外国への輸出についての行政上の手続ということであります。

 これは、外国に輸出するためには当該国の輸入許可証がなければならないということでありまして、ハンドキャリーで持っていくにしても、輸入番号をそういうことでとっておかなければならない。ここがとれるかどうか、とることが意外に、意外にというか、実態はかなり難しい部分があります。

 例えば、中国との話を申し上げますと、中国は日本の高級な果実、リンゴとか梨が有望な市場だと農業者なり業者も思っていますし、また、現行制度上、リンゴ、梨は輸入許可対象にはなっておりますので、そこまではクリアされておりますけれども、個別の輸出をする際の先方、中国なら中国の輸入許可証がなかなかとれないと言われております。それが一つ。

 それからもう一つ、二本立てで、この輸入許可証がとれたとしても、先ほど議論がありましたが、放射能汚染が日本はあると見られておりますので、放射性物質検査証明書もつけなければならない。これは中国に限らず、一般に、どこの国にもそういうふうに求められております。この二つがなかなかとれない、輸入許可証がなかなかとれないのはなぜなのかということをお聞きしたい。

 あと、放射性物質検査証明書は、水産品は、さっさと迅速にやっていただいたこともあり、中国との間では書式が決まって、放射性物質検査証明書というのをつければ輸出できるようになっているし、果実よりは順調に進んでいるようであります。ただ、今言った果実については、水産品以外は、放射性物質検査証明書の書式さえも日中で合意されていないということがあります。

 この二点が結構障害になりまして進んでいない、なかなか難しいなというのが現状だと聞いておりますが、この点について、この二つ、輸入許可証がとれないという、国際情勢の原因もあるんでしょうけれども、そこの理由と、放射性物質検査証明書が日中でいえば合意されていない理由が何か。

 そして、まさに、こういう部分の行政手続については、国がしっかりと万全に支援すべき部分の公的分野だろうと思いますが、これについてどうやって国が支援、バックアップしていくのか、あわせてお伺いしたいと思います。

江藤副大臣 私の方からお答えをさせていただきます。

 許可証につきましては、それぞれの国の御事情がありますから、検疫その他いろいろな事情があって、我が国としては、できるだけ許可証を出していただくように、これは引き続き努力をしていく、今の段階ではこれ以上はちょっと申し上げられない。大変申しわけないと思います。

 それから、放射性物質の検査証明書につきましては、率直に申し上げますと、昨年の反日デモ、九月にあったわけですけれども、あれから全く協議のテーブルに中国政府の皆様方がのっていただけないという状況にあります。これを何とか打破せないかぬというふうに思っておるわけであります。

 安倍総理も、この間、外遊のときには必ず、行った国、ロシアでも中東でもトルコでも、必ず放射性物質についての規制の緩和を直接要請をされました。私のところにも、先週、ロシアの副大臣が来られましたけれども、ぜひともその点をお願いいたしました。

 中国は、我が国にとっては非常に近い市場であって、最終的には、一番大きな輸出のポテンシャルを秘めた市場でありますので、今後できるだけ早く、まずは政府間の協議のテーブルをつくること、このことに人事を尽くしてまいりたいと考えております。

畑委員 副大臣の御答弁は、いろいろ外交上の言っていいことはあると思うので、なかなか歯切れが正直よくなかったと思いますが、ぜひともそこは御理解を申し上げた上で。

 結局、端的に言うと、中国がこれから日本の有望な市場でありながら、中国は人によって基準が違う部分もある、あるいは時勢によって変わる、そこに難しさがあるんだろうなというのは、私も伺っていますし、そこの難しさがあるんですが、まさにしっかりと、その努力は農林水産省だけではありませんで、外務省も連携しながらやっていただきたい。

 そういう意味で、そこは、実利的な観点も含めて、地に足がついた外交をしていただくということも大前提だろうと思っております。よろしくお願いします。

 これも話のついでに申し上げますと、実は私が知っている、やろうとしている人は、中国の会社までは見つかったと。どんどん持ってこい、持ってこいと中国の会社は言うんだそうですが、それを聞いていると、日本の方に問題があるのか、中国のそういうところに問題があるのか、やはり一般の社会の人はわからないんですね、中国の人も、日本の人も。

 そういうことも含めて、しっかりとバックアップ、国際交渉をしていただくこともあるんですが、情報公開も含めて、何が問題なのかというのは、細かく言うのは難しいんです。ただ、業者は輸出したいのに、フラストレーションがたまって、何が問題かわからないで右往左往している部分も結構ありますので、情報公開も含めた、すっきりするような支援も含めて、難しいですが、お考えも引き続きやっていただきたいなということも申し上げておきたいと思います。

 大体これで本日の論点は終わりますが、時間がありましたので、もう一つ、別の論点をお伺いしたいと思います。

 農業農村整備事業等の農林水産省の公共事業の予算配分、いわゆる箇所づけと言っておりますが、これについて、決定に当たっては、当然、地方の声を取り入れるとか、例えば事業者の裏負担が生じますので、予算策定のための予測可能性を与えることも重要だし、決定過程の透明性も必要ですから、最終決定の前に、恐らく何らかのそういう手続を、いろいろな意見を聞くとか手続をしていると思うんですが、そこのところはどういう手続を行っているのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

實重政府参考人 農業農村整備事業等の公共事業についてでございますが、先般の予算成立後におきまして、箇所づけを公表させていただきました。この箇所づけには、直轄事業と補助事業がございまして、具体的な地区名とその地区についての予算額を含んで公表しております。

 まず、直轄事業についてでございますが、地区の新規採択については、それ以前の数年間にわたって調査を行っておりますし、また、地域における合意形成を行ってきております。その状況等から見て、急ぐ必要のあるものから採択をしているところでございます。

 また、その予算の具体的な金額、配分についてでございますが、地域の意向も踏まえながら、事業計画上、予定工期が何年というぐあいに決まっておりますので、それ以内に完了できるように計画的に所要額を計上しておりますが、特に完了が近くて工期を守る必要があるような地区につきまして、重点的に配分を行うなどの配慮を行っているところでございます。

 また、補助事業につきましては、予算の編成過程におきまして都道府県などからのヒアリングを行っておりまして、これらを通じて地域の要望を聴取いたします。その上で、地区、配分する予算額を決定しているところでございます。

 そうした中で、特に、防災、減災等の理由で緊急性の高い地区、それから、担い手への農地集積といったような、現下の政策課題に沿った効果を期待することができる地区、これらに重点を置いて箇所づけを行っているところでございます。

畑委員 実は、ここからこの関係の議論を始めたかったんですが、これはまた引き続き議論をさせていただくということで、時間が参りましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

森山委員長 次に、内閣提出、食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 本法は、食品の安全性の向上と品質管理の徹底に対する社会的要請を踏まえ、国際的にも推奨されている管理手法であるHACCPについて、その導入に必要な施設の整備に対する金融上の支援措置を講ずること等により、食品の製造過程の管理の高度化を図るため、平成十年に、その有効期限を限った臨時措置法として制定されたものであります。

 本法のもとで、食品の製造または加工を行う事業者において、HACCPに基づく高度な製造過程の管理の考え方が着実に広まってきておりますが、HACCPは科学的な危害の分析と継続的な監視、記録を行う体制の構築等が求められるものであるため、中小規模の企業がその導入に取り組もうとする場合には、人材確保等の面での制約からその導入が進まないという実態にあります。これに加え、中小規模の企業においては、HACCPを導入する前の段階で取り組むべき衛生管理及び品質管理の基盤となる施設及び体制の整備に十分に対応できていない実態もあり、これらの結果、大手企業に比べ、中小規模の企業におけるHACCPの導入率が伸び悩んでいる状況にあります。

 また、輸入される農林水産物・食品についてHACCPを衛生基準として求める国際的な動向がある中で、こうした動向を踏まえつつ、我が国の農林水産物・食品の輸出を促進していくためには、輸出先の国及び地域が求めるHACCPにも対応していくことが重要な課題となっております。

 このような状況を踏まえ、食品の製造過程の管理の高度化を引き続き促進するため、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、現行のHACCPの導入を支援するための計画の認定制度に加え、HACCPを将来的に行う食品の製造または加工を行う事業者を育成するため、HACCPの導入の基盤となる施設及び体制の整備に関する計画の認定制度を導入し、株式会社日本政策金融公庫による貸し付けの業務の対象とすることとしております。

 第二に、このようなHACCPの導入までの段階を踏んだ取り組みを着実に支援するため、本法の有効期限を平成三十五年六月三十日まで延長するとともに、本法は、同日限り、その効力を失うこととしております。なお、この法律の施行から五年後を目途として本法の規定について検討を加えることとしております。

 第三に、HACCPの導入が我が国の食品の輸出の促進に資することとなるよう国として取り組むという方向性を本法において明確に位置づけることとし、厚生労働大臣及び農林水産大臣が定める基本方針は、HACCPの導入等をめぐる国際的動向を踏まえ、HACCPの導入が食品の輸出の促進に資することとなるよう配慮して定める旨を規定することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

森山委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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