衆議院

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第7号 平成25年11月20日(水曜日)

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平成二十五年十一月二十日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      小里 泰弘君    加藤 寛治君

      川田  隆君    菅家 一郎君

      清水 誠一君    末吉 光徳君

      鈴木 憲和君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      中川 郁子君    橋本 英教君

      福山  守君    堀井  学君

      簗  和生君    山本  拓君

      渡辺 孝一君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      岩永 裕貴君    鈴木 義弘君

      村上 政俊君    稲津  久君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            實重 重実君

   参考人

   (公益財団法人鳥取県農業農村担い手育成機構理事長)            上場 重俊君

   参考人

   (中央大学大学院法務研究科教授)

   (東京大学名誉教授)   原田 純孝君

   参考人

   (有限会社藤岡農産代表取締役)          藤岡 茂憲君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農地中間管理事業の推進に関する法律案(内閣提出第一四号)

 農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第一五号)


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農地中間管理事業の推進に関する法律案及び農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、公益財団法人鳥取県農業農村担い手育成機構理事長上場重俊君、中央大学大学院法務研究科教授・東京大学名誉教授原田純孝君及び有限会社藤岡農産代表取締役藤岡茂憲君、以上三人の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございました。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、上場参考人、原田参考人、藤岡参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、上場参考人、お願いいたします。

上場参考人 皆さん、おはようございます。鳥取県から参りました上場重俊でございます。よろしくお願いをいたします。

 まず、簡単に自己紹介を申し上げますが、私は県職員のOBでございます。生まれは専業農家の長男、九代目として生まれまして、宮沢賢治に非常に引かれまして、地元の大学を出て農業改良普及員になりました。勤務の三分の一は農業改良普及員をしておりまして、三分の一は県庁で農政をやったのでありますが、商工労働部で企業誘致やベンチャー育成や不良債権の整理やいろいろなことを五年間やったこと、最後は企画部長をいたしまして地方自治とかかわったことというのが、ちょっとほかの人とは違うかもしれません。

 退職をして、現在、財団の理事長をしておりますけれども、この間ずっと自宅の農地を、父が亡くなって三十五年ぐらいになりますが、自分が耕しながら、村の人間として地域で暮らしてきた、こういう者でございます。

 現在の財団の仕事は、お手元に資料を配付しておりますけれども、新しく農業をしたいという人の相談やお世話、そしてまた農地の売買、貸し借りのお世話をしております。各県の農業開発公社が、貸し借りについては、大概、直近は市町村の円滑化団体に移されたのでありますけれども、市町村段階の取り組みもありますが、私どもが直接貸し借りに力を入れておりまして、主に畑でございます。畑の荒廃農地、圃場整備済みの荒廃農地を大型の法人に集積をいたしまして、お手元資料の末尾にカラー写真も入れておりますので御参考にいただきたいと思いますが、大きいものでは、現在、三市七町村、二百十ヘクタールに及ぶ広域の集積を果たしました。これは、私自身が長靴を履いて畑を歩きまして、地元の農業委員さんとタッグを組んでなし遂げた仕事でありまして、何か、黙っていれば勝手にできるというものではないということを冒頭お話を申し上げます。

 鳥取県は、田畑ともに八割方の圃場整備が終わっております。大型の稲作農家もおりますし、園芸、畜産、それぞれ農家は頑張っておりますけれども、過疎、高齢化の波が押し寄せてきまして、特に西日本は中山間地域が多いものですから、今後どうするかという瀬戸際に立っております。

 そこで、今回のこの中間管理事業につきまして、これは足元を見て、十年先を見ますと、現状のままではいかんともしがたいので、何やら新しい制度が要るというのはみんなの共通認識ではあります。県、市町村、農業委員会、JAを含めて、現在準備にかかっているところなのではありますけれども、結論からいって、非常に現場はさめております。そのわけは、国で御検討の制度の子細がまだわからないということもありますけれども、現場の実情が反映されたことにならないのではないかという不安感が各団体にございます。

 農家の方はと申しますと、先般も、いろいろな人と出会って話すのでありますけれども、ことしは米価が安くて、少し大きな農家であれば一千万ぐらい所得が減る、その状況の中で、転作がなくなるとかいろいろ制度が変わるということになりますと、大変な不安に襲われまして、先行きが、見通しが立たない。大きな主業農家ほどそういう傾向がありまして、とても農地の中間管理事業の話まで入れないというのが、きのう、きょうの状況でございます。

 とはいえ、それは当面のことでありまして、十年先を見てどうかということになる。また、いろいろな施策が予算とともに上がってきますので、では、きょうここにかかっております法案が、今後円滑に進むためには何が必要かということについて、現場として五点に絞ってお話を申し上げたいと思います。

 まず第一は、この制度の趣旨、目的は何かということでありますが、私は、将来に向かって担い手が成長していくために、そのツールとして農地の制度はあると思っております。農地の前に人ありであります。人に着目し、人が意欲を持つような、心の通った制度であるべきだというのが私の主張であります。

 この新しい法律は、そもそも基盤法の中で処理をされようとして新法に至った経過がありまして、農水省としては、基盤法の県基本方針と新法の基本方針は整合すべきだという御指導をいただいております。げにもっともだと思います。

 しからば、両方の法律の第一条目的が、整合がとれているかどうか。私は、ちょっと読んだ感じでは、非常にばらばらではないかという感想を持っておりまして、新法の第一条目的の末尾に、農業の生産性の向上に資すると書いてございますが、これは、中心となる経営体の生産性の向上に資すると、そこにはっきりと担い手というものをもっと浮かび上がらすことが必要ではないかと思います。

 なお、それに加えて、地域の農業あるいは農村の健全な発展に資すると付記を願いたい。

 そのことの意味は、食料・農業・農村基本法がありまして、所要の改正はあるにしても、大枠の理念は未来永劫大事なものであろうと私は思っております。その中で、農業を営む人、また、かつては頑張っていたけれども、リタイアをされる人に敬意を表しながら、丁寧に丁寧に、農家の人に、耕す人に訴える、そういう丁寧な作業が必要ではないかと思いますので、ぜひこれは御検討を願いたいものと思っております。

 二番目には、この新法を推進して、十年にわたって担い手を育てていく、その道すがらは随分長いわけでありますが、その推進体制をどうするかということであります。

 現在も、市町村、JA、いろいろ集まっての再生協とか会議がございますけれども、いささか、会議のための会議と、何やら縦割りであったり、ばらばら感が否めません。

 だによって、農地の準公有化というようなお話も出たんだろうと思います。しかし、準公有化というようなことを国家権力でできるわけもありません。

 私は、JAも農業委員会も含めまして、担い手を育てていく、本当に主業的な人たちのコーポレーションになっていくというような制度のリニューアルだったりリフォームが絶対必要だと思いますが、その勢力を結集して、運動論、運動体がなければ制度は維持できない、このように思います。

 現在も、立派なJAや立派な農業委員会もございます。全部がそうだとは言いませんけれども、そういうものを結集して、誰が旗を振るのか、リーダーが見識と哲学を持って農村を引っ張っていく、それは、この法本体ではありませんけれども、この法を載せるお盆として、そういうものが絶対に必要だと思っております。

 なお、そのリーダーは、法で定める者でなく、地域の中から公平公正で信頼の置ける人を選んでいく、そういうようなコンペティションがあってもいいのではないか、このようにも思います。

 三点目は、事業を推進するためのマンパワーであります。

 マンパワーは、職員の数と能力によるわけでありますが、農地の田畑の筆数というのは、一枚ずつの数は人口の数ほどございます。すごくありまして、その一筆ずつに殊さら面倒ないわくがついております。抵当権がついておったり、外から見えないものがいっぱいついておるわけです。それを扱うには人の数が要ります。

 現状の市町村の職員数は、交付税の関係等もありまして、非常に絞られております。マンパワーがございません。介護保険や福祉につきましては、非常にたくさんの人が高齢者の方のお世話をなさっているわけですけれども、農地について、なぜそれが動かないかといえば、マンパワーがないからにほかなりません。ここは非常に大事なことであります。

 なおかつ、農地法制が全部わかっていて、農家の気持ちがわかっていて、担い手がこうしたら損益分岐が上回ってきますよというようなことが言える人はかなりスペシャルで、かつゼネラルな人材であります。

 市町村の職員は、県の職員も、転勤、異動がございます。そういう中で、そういう特別な能力を付与するような資格であるとか、土地改良には換地士という資格がございますけれども、研修だとか、そういうことに、現場のマンパワーの向上にこれは努めていただかなければならぬことだと思っております。

 四点目は、地域の多様性について申し上げます。

 地域の多様性にどういうふうに対応するかということは、これは地方自治の問題でもあり、殊さらに言えば、民主主義の根幹にかかわることでありますが、全国市町村は、小学校単位に、明治二十二年の町村制発布以来の自然条件があり、農業でいえば、作物があり、担い手があり、神社やお寺があって村人の暮らしが成り立っております。市町村も広域合併し、随分大きくなりましたけれども、やはり単位は小学校単位だと思います。

 そこが、これから担い手をどうしようとしたときに、行動を起こすときに、農地政策のツールはいろいろあっていいはずでありますから、農地法三条もあり、円滑化団体もあり、このたびの新しい制度もできたというのは、新幹線の「こだま」や「ひかり」や「のぞみ」があるがごとく、携帯もいろいろあるがごとく、ツールがふえるのはいいのであります。問題は、そのツールを地元の市町村が使いこなすような、主体性が発揮されるような体制がないと、これはだめだと思います。したがって、この補助金はこのツールしか出ませんよという話になりますと、非常に動きにくい。画一的な強制力は働きますけれども、それが逆目に入ることもあるのではないかと懸念をいたす次第でございます。

 私どもの県でも従前の制度でもって努力をしてまいりましたし、全国そういうことだと思いますので、今回の新しい制度をのせるときには、こういう場合はこういう制度が有効だよというような仕分けとか、そういうものが必要かと思っております。

 最後に、五点目に申し上げますのは、耕作者が、農家がだんだん亡くなっていきますから、新しい方を募集して、公募して、配分、貸し付けをしていく、それを機構が行うわけでありますが、私は新規参入をする若い方を扱っておって思うことは、地元の人は大歓迎なんですね。だから、小さかろうと大きかろうと、性悪説で、新規参入する人をもとから何か悪い人のようなことを言っては失礼に当たるわけでありまして、地元は大歓迎をしてかかわってまいります。とはいえ、やはり地域調和要件というのは、念のためにはなくてはならないが、基本的には性善説でそういう人とかかわって地元がいるということを御認識いただく。その際、やりたいよという人が、たくさん手が挙がったときに、この法のもとに、私どもの機構が公平公正な配分をする規定をつくることになっているんですが、私は非常にそれをつくる自信がございません。

 なぜゆえにといいますと、やりたい人がたくさんのときには、現在、既に標準小作料はありませんから、地元で自然調和的に強い人、弱い人の中で相場が成り立っていくわけですね。マーケットとまでは言いませんけれども、みんなが動くわけです。そういう状況のときに、この制度をのせて、上場理事長がするということは非常に無理がございまして、これは大学の先生などとも御相談しながら、本当にどういう理屈が成り立つかということを子細に検討すべきことだと思っております。そこが成り立ちませんと、この制度はそこでエンドということになりかねませんので、これは法本体ではありませんけれども、ぜひぜひ、またいろいろな英知を集めていただきますようにお願いをいたします。

 時間が参りましたので、五点に絞りまして意見を申し上げさせていただきました。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、原田参考人、お願いいたします。

原田参考人 御紹介にあずかりました原田でございます。

 私の専門は、民法及び民法を中心とした法社会学的な研究でございますが、その一環として、農地制度の研究に従事してまいりました。本日は、そのような者としての立場から、御審議中の法律案について、私の意見を申し述べさせていただきます。

 今回の法律案の中心は、農地中間管理事業の創設にあると私は理解しております。すなわち、都道府県知事の下に農地中間管理機構を設置し、管理機構が多数の農地所有者から農地を賃借して中間管理し、農地の集団化や利用条件の改善、整備を行った上で、その農地を担い手たる経営者に貸し付けていくという事業です。

 このように、利用権のレベルで農地の集団化や利用条件の整備を行い、その転貸を通じて担い手への農地集積と規模拡大を図るという施策の方向には、十分に首肯できる政策の方向性があるかと思っております。

 しかし、現在の法律案を見ますと、その事業の仕組み方には多くの不透明さや疑問点があり、ひいては、法律的にも実態的にも、また制度論的にも、さまざまな問題を惹起させるのではないかという懸念を覚えております。

 私がそのように申し上げます理由を、以下五点に絞って御説明いたします。

 第一に、この事業は、法律的には管理機構による農地の転貸事業です。民法六百十二条は適用除外され、転貸人たる管理機構が中間管理権を持って、機構の選定する借り手に貸し付けるわけです。

 しかし、管理機構の借り受けも貸し付けも、基盤強化法上の利用権と同じ性質の権利、つまり、契約の更新という観念のない、比較的短期の定期賃借権とされていますから、一方では農地所有者による再設定の拒絶のリスクが常にあります。他方、機構からの借り手も、期間満了時には改めて機構から利用権を再設定してもらう必要がありますが、再設定されるかどうかは法律的には保障されておりません。経営の安定性とか有益費の投下、その償還などをめぐって、問題が生ずるおそれはないかと危惧されます。

 第二に、機構による借り手の選定作業は、いわば応札者に特段の資格制限をかけない競争入札になっています。このことが地域農業の現場に混乱や問題を生じさせるおそれはないかが問われます。

 例えば、私はつい十日ほど前に、東北の津波被災地の農業と農地の復興状況を知るため、仙台市東部地区の大規模圃場整備事業と、陸前高田市小友地区の基盤整備事業の現場に赴いて、現地の方々から話を聞いてまいりました。いずれの事業の現場でも、大区画の圃場整備を進める傍らで、整備後の農地を誰がどのように経営していくのかということも、地元であらかじめ協議し予定していくという取り組みをしています。しかし、整備後の農地の所有者がその農地を機構に貸し出した場合には、現場で予定していた担い手が借り手に選定されないという可能性も出てくるわけです。

 しかも、同様の問題が、これまで利用権で規模拡大してきた担い手についても一般的に生じてきます。利用権の期間満了時に、所有者が、助成金等のメリットもあるからといって管理機構に貸し出した場合には、その担い手にとっては、当該農地の利用を継続できるかどうかわからなくなるのです。少なくとも、法律的にはそうなります。機構がもし別の借り手を選定する場合には、混乱が生ずることは避けられないように思われます。

 第三に、このような問題の発生を防ぐためには借り手の選定基準の内容を工夫すればよいわけですが、法案ではその点が全く不透明です。

 法案の八条三項五号には、地域の農業の健全な発展を旨として、公平かつ適正に貸し付けの相手方の選定を行うとありますが、その選定の際の実質的な判断要素となる事柄はおよそ書かれていないのです。

 第一条の文言等から見ますと、規模拡大、農地の集団化、新規参入の促進、農用地の利用の効率化及び高度化に資するかどうかなどが判断基準の要素になりそうですが、しかし、それだけでは、第二点で指摘した問題に対処することはできません。

 八月ごろまでの農水省の構想案では、そうした問題を生じさせないようにするために、人・農地プランの地元協議の仕組みを法定化し、その協議を通じて適切な借り手を選定していくという方法が考えられていました。しかし、規制改革会議等から、その方法では新規参入者が劣後させられ、排除されると批判され、その案は撤回されました。農業委員会の関与その他、地元農業関係者の意向を反映するおそれのある要素は全て排除されております。そしてその上で、先ほどの競争入札的な方法と抽象的な選定基準により、管理機構が、いわば上から目線で専権的に借り手を選定するという現在の法案の制度が立案されたわけでございます。

 しかし、私には、この事業をスムーズに展開させていくためには、地域の農業の健全な発展を旨としてという文言の意味をより具体化した諸要素が選定基準中に定められるようにする配慮が、法律自体の中でなされてしかるべきではないかというふうに思われてなりません。現在のままの法案で、重点地区を設定しながら事業が推進される場合には、それなりの担い手の育っている農業地域で、新規参入企業等が優良農地の利用権を優先的に取得していくための手段にもこの事業がなりかねないところがあるからです。

 第四に、この事業の創設によって、賃貸借による農地移動のルートは、基盤強化法上の利用権、農地法上の賃貸借とあわせて、計三本になります。貸し手、借り手はもとより、地域の現場で農業構造の改革に向けた業務に携わる人々に一定の混乱が生ずるおそれはないか、それらをうまく使いこなせるかどうかという問題が当然に出てきます。

 もっとも、農水省では、管理機構により多くの利用権を集めるため、農地の出し手や借り手に対する助成金や補助金等を、機構を介する転貸借の当事者に集中する方針であるとの話も聞いております。とすると、あるいはこの第三のルートが今後の農地賃貸借の主軸になっていくのかもしれません。しかし、もしそうなれば、農地制度全体の意義と機能にも大きな影響が及んでいく可能性があります。

 条文を四ページに引いてありますが、すなわち、二〇〇九年改正後の農地法一条には、農地が、生産の基盤であると同時に、地域における貴重な資源であること、それゆえ、農地の権利取得は、地域との調和に配慮してなされるべきことがうたわれています。同じ改正では、農地の権利取得の許可要件の一つとして、いわゆる地域農業との調和要件も追加されました。そして、基盤強化法には、市町村で認められた認定農業者の制度があり、また、人・農地プランでは、地域で認められた中心的な経営体の位置づけがあります。

 それに対して、中間管理事業は、管理機構が地域農業の現場や地元農業者の意向とは離れたところで、農地の利用の効率化及び高度化を促進するため、それをなし得る者、なかんずく新規参入企業等に農地の利用権を再配分していく事業ということになっております。機構の役員の過半数が、経営に関し実践的な能力を有する者とされているのも、そのような再配分の仕方を方向づける趣旨のものかと思われます。ですから、ここでは、農地は専ら生産手段と捉えられており、機構からの借り手には、地域農業との調和要件も課されておりません。

 今述べた両者の方向性には明らかにそごがあります。中間管理事業の推進過程では、このそごに由来するさまざまな問題が登場し、両者の間の調整をいかに図るかという難しい課題が出てくるのではないかという気がいたします。

 最後に、第五に、この事業のこのような性格は、遊休農地や借り手が見つからない農地の取り扱いにも反映しています。

 構想の当初の段階では、遊休農地対策の側面も強調されましたが、法案では、その側面はかなり後退しているように見えます。

 特に問題を感じますのは、農業委員会が利用意向調査等の手続を履践した上で管理機構に持ち込んだ農地について、機構が借り受けを拒絶できるということです。その農地は、いわば管理機構から農地として利用できない農地というお墨つきを与えられるわけですが、その後の取り扱いはどうなるのか不明です。

 また、機構が一旦借り受けたものの、相当の期間を経過しても借り手希望者がいないため賃貸借を解除した農地についても同じ問題が出てきます。所有者が機構への貸し出しの際に農機具等を処分したというような場合には、所有者としても相当に困った事態になるのではないでしょうか。

 以上のように、現在の法律案にはさまざまな疑問点や問題点が存在しております。

 本委員会におかれましては、法律案の内容を深く分析された上、それらの疑問や問題点を可及的に除去し、補正するような立法上の対処策を講じられますことを私としては強く期待いたしたい次第でございます。

 以上で私の意見陳述を終わります。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 次に、藤岡参考人、お願いいたします。

藤岡参考人 ただいま紹介いただきました、秋田県の北秋田市、県の北部になりますが、北秋田市からやってきました藤岡と申します。

 私は、地元で四十ヘクタールほどの稲作経営、それともう一つ、野菜で六十ヘクタールほど、合わせて百ヘクタールほどの経営をやっております。現場で農業をやっている立場から、きょうは意見を述べさせていただきたいと思います。

 今の農地中間管理機構でありますが、農地中間管理機構は、我々、専門にやっているプロ農業者である担い手への農地の集積、集約を加速させるものであり、日本農業の競争力を強化させるためには有効な仕組みで、趣旨そのものにはおおむね賛成であります。

 一方、プロ農業者の立場から、同機構の設立に当たっては、以下の点について意見を述べたいと思います。以下五項目であります。

 一つには、これまでの経営努力が尊重されるような仕組みとするべきだというふうに考えております。プロの農業者がこれまでの経営努力で相対取引等により集積した経営農地は、今後とも維持できるような仕組みとすべきである。機構による農地賃借の仲介の結果、既存の借り入れ農地、これらが貸し剥がされることがないような措置を願いたいということであります。

 二番目には、機構が作成する農地の配分計画についてであります。受け手が異議の申し立てをできるような仕組みとするべきである。

 三つ目には、農地は公益性を有する財産であり、これまで地域では、農道や水路などの維持管理に率先して取り組んできたことであります。このことから、機構の目的として、農地の公益性を明確にし、受け手は農地の公益性を尊重できる者でなければならないということであります。

 大きな二番として、地域に責任を持てる経営体が農地の受け手となるべきだということであります。機構の受け手は、都道府県が営農実績や資本力、あるいは技術力、地域貢献度等に基づき認定する農業者、あるいは農業法人、新規就農者、参入企業等にすべきである。

 二番目に、このため、農業経営基盤強化促進法に基づく認定農業者制度を拡充し、広域に農業経営を展開している農業者や参入企業等を都道府県が認定できる仕組みとするべきである。地域での話し合いを前提とする中心経営体は、制度が定着しているとは言いがたいということであります。

 三番目に、あわせて、認定農業者制度についてであります。五年後の再認定手続で、経営意欲や経営発展等をチェックする仕組みを充実することが必要であるということであります。

 大きな三番目として、担い手が集積範囲を提示できるような仕組みとするべきである。

 大規模経営を行うプロ農業者では、市町村を、あるいは県を越えて耕作しているケースがふえております。しかし、認定農業者や中心経営体に位置づけられていない市町村では、農地配分計画に参加できないことが懸念をされております。

 この懸念を払拭するためには、機構にワンストップ相談窓口を設け、プロ農業者があらかじめ集積範囲の規模情報を登録できるようにし、それが農地配分計画に反映される仕組みとするべきである。

 大きな四番目としては、市町村が配分計画を作成する際に、農業委員会の意見を聞くということになっておりますが、中間機構の配分計画を市町村で作成する際に、必要に応じて農業委員会の意見を聞くとされておりますが、借り受けた農地全てを効率的に利用することや、地域の農地利用と調和して営農することなどの最低限の要件については、必要に応じてではなく、必ず農業委員会の意見を聞くということにすべきであると考えております。

 五番目には、農地基本台帳の法定化であります。

 農地法の改正では、農地台帳と地図の情報をインターネット等で公開することが義務づけられておりますが、農地の利用集積を進めるのが目的であれば、インターネット上での情報公開は、貸し出し希望農地について、地番、面積など最小限にとどめ、農業委員会窓口での規模拡大や新規就農などの相談活動を通じて、必要な情報を随時提供する方法が効果的であると考えております。

 農地の存在のみならず、所有者、借り受け者、借り受け機関といったような農業経営の基本的な情報について広く公表するということは、個人情報保護の観点からも、現状にそぐわないのではないかというふうな気がしております。

 以上五項目について述べましたが、最後に、農業経営は、これらの法律いかんにかかわらず、さまざまな政策が関係しております。特に経営安定対策、いわゆる日本型直接支払い制度、水田活用の直接支払い交付金、米の直接支払い交付金などが密接に関係しておりますので、農地中間管理機構のこの事業が現場にスムーズに受け入れられるためにも、他の農業政策についても慎重な議論をお願いいたします。

 以上であります。(拍手)

坂本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木憲和君。

鈴木(憲)委員 自由民主党の山形二区の鈴木憲和です。

 本日は、三人の参考人の皆さんには、それぞれの立場から率直な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私も、今伺っていて、ごもっともだなというふうに思う点がたくさんありました。ただ、皆さんそれぞれ御懸念されている点をごもっともだなというふうに思っているだけではなかなか前に進みませんので、ぜひ、この法案を役に立つものに、現場でこれは役に立つんだというふうに言っていただけるものにしたい、そういう気持ちを新たにいたしました。きょうは、そういう観点からの質問をさせていただきたいと思います。

 早速ですが、まず上場参考人と藤岡参考人に一点御意見をいただければと思います。

 私は、この法案は、単なる規模の拡大だけではなくて、現実的に、地域で分散錯圃というのが大変問題になっていると思います。例えば生産者や行政の立場に立ったときに、どういうふうにしてこれを解決していけるんだろうか、それにどう役立てられるのかということが問われているんだと思います。

 現実に、現場に行くと、例えば藤岡さんの御地元でも、藤岡さん自身もそうだと思いますが、生産者の方は相当土づくりというものに御努力をされていて、いろいろな場所に圃場があるんですが、それぞれ生産者によって、できる作物の質が違ってくるということだと思います。私は、上場参考人の御地元である鳥取の湯梨浜町というところ、二十世紀梨の産地ですが、もう十回以上訪れておりますが、そこでも、同じ生産者の方でも、圃場によって梨のつくり方が、レベルが違うということが起きております。

 そういった現実を見たときに、一体全体、この法案、机上の空論にならずに、現場でいかに機能するかという観点で、国による自治体への財政支援なんかも大きい支援が私は必要だというふうに思っているんですが、そこについて、現場から見たときに、これだけは最低限やらなければいけないんじゃないかということをぜひ簡潔にいただければと思います。

上場参考人 お答え申し上げます。

 これだけはということは、私も藤岡さんもお話をしたように思っております。

 今ありました分散錯圃につきましては、資料は、ばらばらなのをシャッフルしてまとめてとなっておりますが、現実に、農家がどの程度離れていたら分散錯圃と感ずるかというのは、まとまっているにこしたことはないのだが、ここからあの窓ぐらい離れた田んぼであれば、それはもう一団の団地であります。トラクターは、非常にハイスピードでも走ります。私がお世話しております岡野農場、ローソンファーム鳥取さんの場合だと、三市七町村にわたって二百十ヘクタールあるんですけれども、一団の団地が十ヘクタールぐらいですと、トラックに積んでぶうんと高速を走っていきますので、それは何ら問題はないんですね。

 だから、今の作業機械でもって作をするときに、どのぐらいであれば分散錯圃というのか、これは厳密な検証が要ります。生産性を阻害するのか、何ら問題ないのか。それは、もっと学術的な要素も要るんだと思っています。

 それから、土づくりというのはもうそのとおりでありまして、農地というのは、単なる土地ではなくて、農家が耕し続けることによって肥沃性を増す生き物であります。したがって、野菜は、いや地もあります。輪作もせねばなりません。生き物を生き物としてどう扱うかということが実は肝要なところでありまして、それも含めた議論、施策でなければならぬと思っております。

 以上、二点でございました。

藤岡参考人 お答えいたします。

 今の分散錯圃の問題でありますが、私も、現場で米をつくっておりますと、これは当然まとまった方が効率がいいということは確かであります。

 しかし、では、一カ所に全部まとまれば全て済むのかといいますと、決してそうではなくて、ある一定の面積、例えば米であれば、一日で作業できるぐらいの面積が一カ所にあれば、これは決してそんなに阻害されるものではない。一カ所にまとまったことで、かえって効率が悪い場合もあるんです。例えば、水路の関係、一カ所にまとめて全部自分の田んぼに水を入れようとしますと、これは相当周りとあつれきが生じますので、そういう意味では、一日で仕事ができるぐらいの田んぼが数カ所に分かれている方がむしろ効率がいい場合もある。

 これは、つくるものによって大分違います。例えば畑作の大豆等であれば、これはもっと大規模な、何十ヘクタールと一カ所にまとまった方が効率がいいことは確かであります。そういう意味では、つくる作物によって、あるいは地域の条件によって、かなり違うということであります。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 本当に、この制度は地域によって、多分受けとめられ方も、どのように活用できるかというのも全然違ってくるんだろうなということを、今お話を伺っていて感じました。それも踏まえて、これから制度設計を具体的にするときに、いかに今の話を反映できるかということに私も取り組んでいきたいというふうに思います。

 もう一点お伺いいたします。

 今回の法案には、農地利用配分計画をつくるときに、先ほどもお話にありましたが、必要があれば農業委員会の意見を聞くというふうになっています。その一方で、今、地域でいろいろな方が参加をして、どういうふうに地域の農業をやっていくかというのを話し合われている人・農地プラン、これは残念ながら法案に位置づけることがされておりません。

 私は、現状を見たときに、現場でいかにスムーズにこの法案を使ってもらえるかどうかということを考えたときに、農業委員会の委員の皆さんの役割であったり、あとは、法案にはないですけれども、人・農地プランの役割であったり、そして、それの前提である、基盤である農地台帳の役割について、これからいかになっていくのか、どうしていったらいいのかということを、ぜひ三人の参考人に御意見をいただきたいと思います。

藤岡参考人 お答えいたします。

 今の現場のことについてでありますが、この農地中間管理機構というのは、恐らく県に一カ所設けられて、それが市町村におりて、そこから機能していくんだと思いますが、これがうまく機能するかどうかというのは、私は、市町村段階がどう機能するか。しかも、その市町村の農業委員会、あるいは農協、共済組合とか土地改良区だとか、さまざまな農業団体がありますが、それらがうまく機能しないことには、私はこれは絵に描いた餅になるような気がしているんです。

 特に、農業委員会というのは、皆さんおわかりのように、一番基本的な台帳、それから耕作者の状況等をわかっているのが農業委員会であります。私も地元で二十年以上農業委員をやっておりますが、農業委員会の意見なりデータを活用しないことには、私はこの制度は機能しないと思っています。

上場参考人 農業委員会、必要があればということについてでございます。

 地方分権の時代でございますから、県、市町村、自治体にこうしなさいと書けないのかもしれないなと思いながら聞いておりますけれども、今、藤岡さんがおっしゃいましたように、農業委員会がなくては絶対に事柄は出ないのでありますから、現場は必ず聞くということになります。少なくとも、鳥取県ではそういうふうに運用していくということだと思います。法文上どう書くかということは、また専門で御検討いただければと思います。

 あと、人・農地プランなのでありますけれども、私は、村の話し合いは絶対必要だと思っておりまして、それはそのとおりなんです。しかし、村人の立場とすると、非常に違和感があります。

 集まって話し合いをしなさいと役場は言いますけれども、私は、うちの村の百三十五戸の集落の農事のお世話をしておりますが、農家は八十五戸、その中で、米を自分が出荷するという人は三十戸にすぎないんですね、全部土地持ち非農家ですから。実際に農業をする人は少数派で、なおかつ、そこの奥さんも娘も嫁さんも子供も、自分の農地がどこにあるかがわかっていないという、これが現実なんです。したがって、おばあさんの名義になっていて、口座は息子だけれども、息子はどこにあるかわからないとか、なおかつ、土地改良区の名寄せ帳と農協の正組合員資格と農業委員会の選挙人名簿が全部ばらばらだ、それを私ども村人がお世話をしているわけです。

 そういう中で、人・農地プランを組んでいくときのアドバイスは誰がするかとか、そういう体制が非常に必要なので、そこに人手と能力を付与していただきたいということをお願いしているということでございます。

 以上です。

原田参考人 私は、現場で農業関係のことをやっているわけではありませんが、農地制度の研究をやっている過程で、しばしば農村を訪れ、いろいろ話を聞き、勉強させてもらうことがございます。その経験を踏まえた上で、二点ほど発言いたします。

 一つは、これは法律家として見ていてそうなんですけれども、この法案のもとになった構想が出てきた段階から現在の法律案になってくるまでの過程で、特に、規制改革会議のレベルの議論の中で、要するに、地元の意向を反映させないようにするんだ、それを反映させる仕組みにしてはいけないんだということが繰り返し言われてきているわけですね。その結果がこの法案に盛り込まれている。辛うじて、市町村が依頼されて配分計画の原案をつくるときに、市町村は聞くことはできる、聞かなければならないことはないけれども、聞くことができるものとするとだけ書かれている。そこだけがつながっているわけです。このことに非常に違和感を覚えました。

 そして、今お二人の参考人がまさに現場の感覚からお話しなされましたように、この機構の構想がうまくスムーズに動いていくためには、現場での協力がなければ動かないんだと思うんです。ところが、そこを切り離してしまっているということに非常に違和感を感じた、これが一つです。

 もう一つは、やはり選定基準のところの考え方をかなり大幅に変えないと、要するに、現場のいろいろな協議あるいは活動の御努力と、それから県の段階で、最終的に機構が決定権を握っている、機構の決定というものとを結びつけるのが非常に難しいのではないか。そこが、この法案の審議、あるいは、場合によってあり得る一定の是正措置の難しいところかもしれないというふうには思っております。

 以上でございます。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。本当に参考になる御意見をいただいたというふうに思います。

 最後に、もうすぐ時間になりますので、一点だけお伺いしたいんです。

 今回の法案には、新規就農する際の無利子貸し付けの規定が、どこかの法案から持ってきてということで盛り込まれているんですが、これから地域で農地を担っていくためにはどう考えても新規参入をもっとふやさないといけないというふうに私は思っています。

 上場参考人は鳥取で新規参入の方の受け入れをもうどんどんやっているということですが、今後、新規参入をもっとふやすために、国として今やらなければいけないことは何なのかということを、ぜひ三人の参考人に、御意見がございましたらいただきたいと思います。

上場参考人 お答えを申し上げたいと思います。

 例えば、大阪とか県外から鳥取に来まして、農業を始めたいという一人の人もあれば御夫婦もあります。研修をして、農業を始めるには農地が要りますから、おおむね全部貸し借りでいきますが、イチゴをやりたいということになると、二十アールもあれば十分です。

 住宅はアパートを借りればいいんですけれども、問題は、作業小屋が要るんですね。その作業小屋を建てるときに、なかなか作業小屋が見つからないんですが、荒廃農地や畑は山ほどありますから、そこを買いまして、二百平米未満であれば、作業小屋は建つんですね。なので、今は荒廃農地だと十アールが二十万円とか三十万円とかぐらいなものですから、五アール買うといったって、軽トラの中古や管理機より安いぐらいのことなので、買って、そしてそこに何か物置でも持ってきたらいいんじゃないのということになると、できないんですね。農地法の本則で五十アール以上という決めがございまして、よっぽど地域で、特産物、ハウス団地だから二十アールでもいいやねということをすれば、特例は、下限面積は設定できるんですけれども、つまり、アーリーステージの人たちが入っていくための農地法制になっていないんです。

 こういうことは非常に小さなことですけれども、もっと丁寧に、そして、そこに融資だとかいろいろなことをかみ合わせていただきたい。

 もう一点申し上げますと、百五十万を五年間もらえるようになりまして、随分いい制度ですが、反対に、それをもらえばいいんだというようなことから、ついつい怠けちゃう人も実はなくはないんですね。補助金は要らねえや、補助金の世話にならぬ、俺は頑張るというタフなやつもおりまして、そうなれよというふうに僕なんかは指導するんですけれども、補助金が百五十万ありますからとそればかり役所が言うと、これは薬の出し過ぎみたいなことになりますので、役所の世話にならぬでも頑張るやつをもっとつくっていく、そういうことが私は大事だと思っております。

 以上、二点でございました。

坂本委員長 参考人にお願いします。時間が経過しておりますので、答弁を簡潔にお願いいたしたいと思います。

藤岡参考人 新規就農の件についてでありますが、最近は、結構若い人たちが農業に関心を持って、やりたいという人が徐々にでありますがふえてきております。昔みたいに、農家の子弟が農業をやる時代ではないと思っております。

 そういう意味では、都会の若い人たちが農業をやりたいという意欲がありますので、今の農の雇用制度等を拡充してもらって、やはりいきなり自分で農業経営をやるというのはかなりハードルが高いので、一旦法人経営あたりに研修で入って、そこから独立、のれん分けしていくような、その辺のところにもうちょっと力を入れてもらわないと、なかなか、いきなり新しい土地で農業をやる、これは資金的にも大変だと思いますので、研修から徐々に独立していく、そういう制度を拡充してもらうことをお願いしたいと思います。

原田参考人 今回、四十代以下の若い就農者をいかにふやすかということが重要な課題として挙げられているということは承知しております。

 実は私は、農地制度の比較研究の対象としてフランスをやってきましたけれども、フランスでは、一九七六年に、全国共通の青年農業者の就農促進、自立促進の制度が入りました。一九八〇年からは、既に、第二の農業基本法の中で最も重要な政策の柱の一つとして位置づけられ、一九八五年からは、EUの資金もそれに使える、EUの制度にまで上がっていっているわけです。現在まで、その青年農業者の就農促進、自立助成というのは農政の基本的な柱になっております。

 私は、一九八〇年代の初めごろから、そういう制度がある、若い人をどうやって育てるんだということを盛んに言ってきたんですが、三十年おくれでやっとここまで来たかという印象でございます。

鈴木(憲)委員 どうもありがとうございました。

坂本委員長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 公明党の樋口尚也でございます。

 お三人の参考人の皆様におかれましては、大変お忙しい平日にこのように御出席をいただきまして、貴重な御意見を聞かせていただきました。本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 まず、お三人の皆様に共通でお伺いをしたいと思います。

 この農地中間管理事業については、成功するか否かは、中間管理機構に農地が円滑に集まってくるかどうかだ、こういうふうに認識をしておりますが、まずそれでよろしいかということと、円滑に集まってくることが大事だというふうにしますと、機構への貸し付けを促すためにどういう課題があるのか、この点について伺いたいと思います。

上場参考人 大変難しいテーマだと思います。

 私も、あと三十年若かったら農業をやろうかと思いますけれども、いかんせん年には勝てません。全国津々浦々の農業をしている方が、やはりこれから、残念ながらリタイアをされていくのであります。そのときに、あの人には貸したくないとか、あれは好かぬとかというのはあって当然であります、世の中は。そのときに、信頼できる我々が仲立ちをしてお世話をしていくというのは大事なことなんです。

 やはり信頼といいますか、きちんと地域全体で認められたようになっていくよというところがないと、何か強い者勝手にいっちゃうとか、国家権力に剥がされるんじゃないかとか、おばあさんが、昔、農地解放というのがあってなとか、そんな話になりますと、ほっといた方がいいやみたいなことにもなりかねません。

 非常にデリケートな問題ですが、要は、地域ぐるみで、信頼を持って、そして将来を展望するということを丁寧に丁寧にしていく以外にはないのではないか。単一の、一つの制度があれば、力ずくで何かいくというものではないというふうに思っております。

 以上でございます。

藤岡参考人 先ほども申し上げましたが、この事業というか管理機構の成功のいかんについては、私は、農業政策に対する地域あるいは農家の信頼度だと思っております。二年、三年でころころ変わるような農業政策では、決して地域の信頼を得られない。

 したがって、安定的に、未来永劫これらを、その時々によって見直しはあるにせよ、長いスパンで地域のことを考えてやっていくんだということが地元に浸透すれば、これは進んでいくと私は思いますが、そこの信頼性を得るかどうかにかかっていると思っております。

原田参考人 現場の様相は必ずしもよくわかりませんけれども、私は、この中間機構が、例えば、ある地域の農地の大宗を利用権としてコントロールするという状況になるとは思っておりません。また、そうなる必要もないだろうと思います。

 しかし他方で、例えば、市町村を超えて、あるいは場合によっては県をまたいで規模拡大するようなときに、それは市町村レベルだけでは調整ができない、そういうときに、いわばうまく調整できるような仕組みが必要だ、これは一つわかるように思います。

 それからもう一つは、そもそも、この構想の初発の段階では、まさに現場で農地を動かす、そしてその権利調整をしながら担い手に結びつけていくという、現場の人たちの中からある程度の農地をプールして、そこを調整しながら、場合によっては畦畔をとって大規模化できるようにして使えるような形で一時的にプールをしてもらう組織があるとありがたいという話が出たというふうに聞いております。それを受けて、農水省では構想を始めたと。

 そういう役割を果たすようなプール機関、利用権のレベルで農地をプールするような機構はあってもいい、しかし、それが全てを覆うというような発想はなくていいのではないかというふうに思っております。

 それからもう一つは、制度の問題として申しますと、要するに、三つのルートができたときに、この三つのルートをどう使い分け、どうすみ分けていくのかという問題があるわけですね。この第三のルートに全てを集めていくんだという発想は、どうも余り芳しくないのではないだろうか、必要に応じて現場で三つのルートをうまく使い分けることができるような仕組みにした方がいいのではないかというふうに思っております。

樋口委員 長く信頼できる制度を続けていかなければならないという点、非常に感銘を受けました。ありがとうございます。

 そして次は、今御指摘を原田先生からいただきました、先ほど原田先生が指摘をされた四番目の、三つのルートが存在をするということになる、基盤強化法上の利用権と農地法上の賃貸借ということと今回の制度、合わせて三本ということになります。

 現場で実際にこれまでおやりになられてきた上場理事長と藤岡取締役にぜひ伺いたい点でありますが、混乱を来すのではないかという原田先生の御指摘があります。これについて、混乱を来すかもしれませんが、その後にどういうふうにしていったらこれがスムーズになり、農家の皆様が喜んでいただける制度になっていくのか、その点をお二人に伺いたいと思います。

上場参考人 混乱を来すとしますと、この新しい制度で全部やっちゃうんだとか、あるいは、この新しい制度があれば日本の農業が十年先まで大丈夫なんだとかということになると、混乱を来すのであります。それは、中身と表示がいささか、偽装表示と言うと語弊がありますけれども、物事の現場の実情と説明のしぶりに大幅に乖離があるのであります。

 現在、農地法三条と基盤法の使い分けがございます。二十アールを持っているおばあちゃんが、もう身寄りもないし、高齢になられて、二十アールの畑を売りたいよとおっしゃった。隣のおじいさんに頼みました。隣のおじいさんはお金持ちです。八十になられますが、まだ元気ですので、隣のおばあちゃんの言うことなら、その二十アールを買いましょうというめでたいお話になったんですね。

 それは、農地法三条では、農業委員さんが見て、それは妥当なことだよ、隣のおじいさんが買って、おじいさんも元気だし、まだやっているんだよと、それでオーケーなんです。ところが、それは基盤法にはのりません。なぜなら、基盤法は認定農業者や大きな農家をつくるためなのでありますから、基盤法で我々が介在するとすれば、認定農業者であるとか地域の平均以上の農家でないと売り買いができないんですね。

 したがいまして、認定農業者の方やそういう人が向かってきたときは、私どもが合理化事業で対応いたします。そうすると、売る方の人の農業者年金であるとかいろいろな課題がクリアできる仕掛けになっているわけです。そこに今回の新しい制度がのったときに、私は、新しい制度は、地域限定的に、この制度を使ったら随分うまくいくねというところはきっとあるはずだと思うんです。それを私は地方分権という立場で言いましたけれども、先ほどの原田先生のお答えも同じ趣旨だろうと思っております。

 したがって、どういうところでどういう場所にこの制度を適用すればうまくいくかということを、個別具体に、もっと現場のプロポーザルがあっていいはずですし、あくまで現場に立って物を考えていくということが混乱を招かない唯一の道ではないか、このように思っております。

 以上でございます。

藤岡参考人 ただいまの件でありますが、私ども、私自身も、基盤強化法、あるいは三条、さまざまな制度を利用して農地を集積してきた経緯がありますが、ここにまた新たな制度が組み込まれるということでありまして、恐らく、当面は現場でも混乱といいますか、迷うことは確かだと思っています。

 ただ、やはりこれは丁寧に説明をしながらやっていく。いずれは、数年経過した後には、これらがうまく統合できるような仕組みになっていけば、私はもっと現場は使いやすいような仕組みになっていくと思っております。

 ですから、ここ一、二年、三年ぐらいがこの制度の根幹を問われることになろうかと思っています。いかに地元がそれを納得するのか、丁寧に地元に説明できるのか、あるいは、県と市町村、農業委員会、農協あたりの関係がうまくスムーズにいくか、これにかかっていると思っております。

樋口委員 大切な御示唆、ありがとうございます。

 本当におっしゃるとおりでありまして、先ほど藤岡参考人からもありましたけれども、ツールはいろいろあっていいんだ、ただし、例えば補助金であるとか使い勝手がいいような仕分けとか、そういうことについてはこれからしっかりやっていただきたいという御示唆もいただきました。今の話に、非常に感謝を申し上げたいと思います。

 次に、原田先生にお伺いをいたします。

 今回の制度、これ自体で何か全てがうまくいくということでは当然ないという今のお話でございます。

 例えば、賃貸だけでなくて、購入についても対象とした方がいいといったような御意見があります。購入を対象として、売買をしたいんだ、皆さんは貸したいわけではなくてというような御意見があったりいたします。それについてどう思われるかということ。

 もう一つは、これまで整備されてきた土地があるわけであります。現在の基盤整備を実施している地区、そして、この法制度を使って今後整備に取りかかる地区、この農地の所有者の経費の負担に不公平感が出るのではないかという御指摘がさまざま出ております。

 購入についても検討すべきではないかという点と、もう一つ、これまでの制度と今回の制度で所有者の方の経費負担の不公平感がないようにという点の指摘について、先生の御意見をいただきたいと思います。

原田参考人 機構が農地を売り買いすることができるようにということでございましょうか。

 今回の法律案、要するに、農地中間管理事業の推進に関する法律の中では、その事業として行えるのは賃貸借等に限られていて、もちろん使用貸借等を含みますが、農地の本来の売買はできません。

 しかし、経営基盤強化法の方で、従来、県レベルとか農地保有合理化法人がやっていた農地の売買等の事業を、機構がたしか引き継いでやれるようになっているかと思うんですね。そのことと今お話しになったこととは違うことなんでしょうか。要するに、この中間管理事業の中に売買を入れろということなんでしょうか。それは、いろいろな考慮を要すると思います。

 もし、機構に集めれば、いろいろなことがありますが、いずれにしろ、利用権の場合でも農地の滞留ということが起こるのではないかという危惧があるというふうにも聞いておりますし、それが所有権で、お金で買って滞留すると、機構にとっては大変な財政問題が起こることがある。それから、売買の場合には、要するに、地価が上がるか下がるかで非常に経費負担が変わってくるような問題もあって、そこは、今までの経験を踏まえて慎重に考える必要があるだろうと思います。

 私は、フランスのSAFERがずっとやってきたのを知っておりますけれども、これは膨大な農地の売買をやりました。現在でもやっております。それには非常に、いわば細かい技術的なテクニックと長期見通しが必要な事業かと思います。

 それから、もう一点の方ですが、これは、今度管理機構が行う整備事業との関係のお話でございましょうか。

 管理機構が整備事業を施して、そして貸した。借り受け人がやめて、貸した農地が戻ってきた。そのときに、一つは、その整備事業の問題をどうするかということがあります。

 ただ、今までのお話で、私が聞いている限りで申しますと、整備事業にかかった費用については、借り手に対する賃料に上乗せするというふうになっているように聞いております。したがって、管理機構としては、国費の持ち出しをするわけでしょうけれども、とにかくそれは回収するという形で、一応筋は通す。

 他方、その農地が戻ってきて、もとの貸し手、所有者に戻るときにどうするのかというところが残る。そこが必ずしも明らかになっていないので、もし、整備されて付加価値のついた、価値が上がったものになると、その所有者が得をするのではないかというようなことが議論されているのかと思います。しかし、これは技術的な問題として処理できるのではないかというふうには思っております。

 以上でございます。

樋口委員 ありがとうございました。

 済みません。一点だけ、最後に藤岡参考人にお伺いをしたいと思います。簡潔にで結構です。

 本論とちょっとずれますけれども、これまで六次産業化ということで、非常に営業に力を入れて、お米をブランディングしてお売りになっていらっしゃったという資料を読ませていただきました。

 六次産業化がやはり大事だということで、推進をしていく上で、ぜひ一言、こうすれば日本の六次産業は強くなる、御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。

藤岡参考人 六次産業化についての質問であります。

 これは私の持論でありますが、確かに今、国も六次産業化を積極的に進めてはおります。ただ、農業生産者がやる六次産業化というのは、ある程度限界があるんですね。大きくなっていくと、どうしても、加工であれ、専門的になっていきますので、これは販売もそうですね。

 したがって、私は、農業者が全て、一次から二次、三次までやる六次産業というのは、ある一定の限界があると思っています。それ以上になっていくと、専門的な分野に入っていきますので、農業者が片手間でやるような六次産業では、とてもじゃないけれども、大きなマーケットあるいは世界に通用するような六次産業にならないと思っていますので、そこの辺の見きわめが大事だというのが一点。

 あと、六次産業化によって一次産業が食われてしまうような六次産業であってはならないと思っています。

 そういう例が結構あるんですね、やったはいいけれども、二次、三次に食われて、一次はほとんど利益がないという。そこだけは気をつけてやらないと、間違った六次産業化の方向に行くんじゃないかというところを私は懸念しております。

樋口委員 大変参考になりました。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 参考人の皆様方には、きょうは貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速質問をさせていただきたいと思います。

 私は、新潟県の選出でございまして、実際に現場で、農地が点在をしている、点在をしているがゆえに、もうちょっと近くに農地があったらいいななんて話はよく聞きます。ですから、法案の説明でも農水省から聞きましたけれども、抽象的には、やはり農地の利用をできる限り円滑にするために利用権を集積してやっていくということは、理解できるところではあるんです。

 ただ、やはりこれまでの議論、特に、きょう原田参考人からもコメントがされていましたけれども、規制改革会議の意向にかなり偏った重点があるんじゃないか。

 つまり、どういうことかというと、今まで議論がどうあったにせよ、結果として、地元の農業関係者の意向要素というのをかなり排除した形で法案の作成がなされておりますし、いわゆる競争入札的な形で公募をかけてやっていくということで、実際に利用する方というか、農地の借り手が誰になるかということを貸し手の側から全く想像できないという話になってしまっています。果たしてこれがいいのか、やはり現場で随分と混乱があるんじゃないかという観点が私はあるわけです。

 その中で、ちょっと具体的にお聞きをしたいなというふうに思っているのは、やはり、農地を借り受けする方が、例えば認定農業者であった方がいいよということを運用上あるいは法文上盛り込むとか、農地法にもあります地域調和要件、しっかりとその基準を満たす方に借り受けてもらうとか、あるいは、市町村が農地利用配分計画の原案を作成する際に、農業委員会の意見を必ずではないけれども聞くようにするよと、先ほど上場参考人からは、聞くことになるんですという話がありましたけれども、実際聞くことになるんでしょう、多分そうなんでしょう、ただし、これはあえて、聞くようにする、要するに、聞かなければならないという規定にしていないというところは、やはり私は、若干そこは弱いなというところも感じているところでございます。

 実際、この三点につきまして、総論、各論ともに、お三方の参考人から御意見を承りたいと思います。

上場参考人 先ほどの、どうすれば農地が集まるかというお話にも共通するのでありますが、私が今実際に地主さんに当たって話を進めますときには、こういう担い手の人が何々をつくりたいといって希望しておられまして、その人は随分いい人でありまして、なおかつ上場重俊が責任を持ちますので、貸してあげていただけませんか、ついては、いかほどの賃料にして、何年ですよねということでお話をいたします。

 そのときに、今度は、上場重俊は知事に認められた立派な偉い人なので、誰に貸すかはわからないけれども、おばあさん、出してくださいねという話は、これはちょっと世間常識上はあり得ないと思います。どんな人に貸すかわかりませんよと言った途端に、おばあさんは引けちゃうんだと思いますね。

 したがって、いかに、公募をして、募集をして、ルールによって配分といえども、そのプロセスはやはり貸す人に丁寧に説明をするということは絶対に必要であろうと思っております。

 以上でございます。

藤岡参考人 お答えいたします。

 私も、現場で数十年農業をやっておりまして、今の藤岡農産も平成九年からやっておりますので、もう十六年ぐらいやっております。言ってみれば、ゼロから始めた会社でありますので、丁寧に説明をしながら、そして地元の信頼を得ながら、徐々に徐々に面積がふえてきたという経緯があります。一気に、まとまった何十ヘクタールという農地がどんと来るなんということはない。地元では恐らく一〇〇%あり得ないと思っています。

 そういう意味では、いかに地元の信頼を得るか。これは、農業だけじゃなくて、ふだんの社員の行動なり、地域の水路の維持管理、農道維持管理にも参加しているのかどうか、あるいは、地域から雇用を入れているのか、そういうトータルで見られて初めてだんだん農地が集積していくのでありまして、中間管理機構ができたから、では、どんとまとまって来て、一気に大規模農家になるなんということは一〇〇%ないと私は思っています。

 さらには、今、外から企業が農業に参入するというのがいろいろ言われていますが、では、外から、資本力で、札束をはたいてその農地をまとめられるかというと、私は、決して農業の世界はそうじゃないと思っています。それがゆえに、今までやはりいろいろ苦労しながら、信頼を得て、徐々に徐々に農地を集めてきたというのが現状であります。

原田参考人 今回の法案を見て一つ気がつくことは、地域の農業の発展とか振興という言葉が、私も先ほど引用したあの一カ条の一言しかないと思います。要するに、地域からは切れたところ、上のところで農地を集めて動かすんだという印象が非常に強い法案になっています。

 そのことを踏まえた上で考えますと、やはり選定の対象として、認定農業者とか、地域で信頼されている、担い手となっている人がそれなりの受け手として選ばれるような条件が入ることが必要であろうと私は思います。

 それから、地域農業との調和要件、これは農地法の三条の一般的な許可要件として入っているので、これをあえて外す必要はないはずだし、それを外して困るような農業経営をされては困るわけですね。やはりこれも明確にした方がいいだろうというふうに思います。

 それから、市町村レベルで、特に原案をつくるときに農業委員会の話を聞くのは当然のことになるであろうというふうにお二人が申されましたが、そうであるのならなおさら、やはり農業委員会の意見の反映が明確になされるような規定の体裁にした方がいいのではないか。

 実際、農業委員会が、これから法定化された農地台帳を整備し、しかも、これまでと同じように、遊休農地の対策等も実際に現場を見ながら取り組んでいかざるを得ない。そういうところの意見が反映されないままでは、やはり動かないんだろうという気がいたします。

 もう一つは、余りきょうお話に出ておりませんけれども、二〇〇九年の改正以降で導入された経営基盤強化法の農地集積円滑化事業の方もどういうふうに位置づけるのかというようなことをやはり考える必要があるのではないかというふうには思っていることを一言つけ加えさせていただきます。

鷲尾委員 今、最後に原田参考人が付言された点は、最後の質問にしたいなというふうに私は思っていたんですが、上場参考人と藤岡参考人の中のコメントとして、先ほど私が申し上げました、藤岡参考人も、すぐに大規模化なんてするわけないよというコメントがありましたけれども、私もそう思うわけです。そんな簡単じゃないだろうなと思うんです。

 ですから、例えば、今、原田参考人がおっしゃったような、地域調和要件ですとか受け手の側が認定農業者の要件をとるんだよという点については、具体的にどうでしょうか、参考人のお二方。

上場参考人 私どもで今二百十ヘクタールになっております法人は、平成六年に六十アールから始めて、約二十年かかって今日まで来たんです。そのプロセスの中で、広域市町村にまたがりますが、全部認定農業者になりまして、認定農業者になって地域と調和しながら徐々に徐々に来たんです。

 したがって、藤岡さんからもおっしゃいましたけれども、認定農業者は、市町村が認定するだけでなくて、県域で広域に知事認定を待ってもいいと思うんですけれども、やはり育てるべき担い手として集中的にそこを支援するような、そういうイメージがぜひ必要だろうと思っております。

藤岡参考人 お答えいたします。

 今お答えがありましたとおり、やはり地域の中で認められた認定農業者、これらを中心に、それに新規就農者、法人、そして、どうしてもそういう担い手、受け皿がないところには、それは外部からいろいろな人を入れてもいいと思いますが、やはり基本となるのは今まで地域で頑張ってきた地域の認定農業者、これらを中心にやらないと、私はこれはうまくいかないと思っております。

鷲尾委員 時間がもう大分迫っているそうでございまして、今度は、農地の出し手側の問題点をちょっと指摘しながら、参考人の御意見を伺いたいと思っております。

 農地中間管理機構、結局、条件不利地域は、場合によってはかなり農地が集まってくるんじゃないかと思っています。もう担い手が随分減っているわけですから、中間管理機構が来て、利用権を集めて、貸し手も機構が探すよという話になったら、ああ、それならという方は多分多くいらっしゃるんじゃないかと思うんです。

 そこで、実際に中山間地の農地は条件不利地域ですから、では、今度は、条件不利地域の借り手というのは本当に出てくるのかなというのが一方で問題点としてあると思うんです。

 その問題点を解消するために、農水省に聞きましたら、簡単な整備はやっていくんだという話でした。条件不利な部分について若干の整備を加えて、それで貸し手を見つけていくんだよという話でした。

 それは、話はそう承るんですけれども、実際そこではお金がかかることですし、そうすると、では、管理機構としては、今度は、その整備にかかったお金を賃料に反映させて、その賃料で、メリットがあるから借りてくれという話をしていこうということのようであります。そうなってくると、中間管理機構がお金を、政府からも当然補助が入るでしょう。その上で、いろいろ整備を加えていくでしょう。賃料を高くしていくでしょう。高くして、本当に借りる人が見つかればいいですよ。それでも本当に借りられない場合だって当然あるだろうし、どれくらいの規模の整備だったらいいのか悪いのかということも、中間管理機構がかなり恣意的にやるという形になると思います。

 今私が指摘したい点は二点です。

 結局、農地が借りられずに、中間機構にほっぽっておかれる可能性がある。場合によっては、それは借り手に戻される。その間いろいろやったプロセス的にも問題だ。あるいは、その戻される農地の所有者、これも随分と私は問題になるというふうに思っています。

 こういった点で、これはもうおのずからこういう問題が生じるということが明らかでありますので、この機会に参考人から御意見を承りたいというふうに思います。

上場参考人 中山間地域で担い手がないときにどうするかという話でありますが、担い手が見つかる場合もあるし、見つからない場合もあるんだと思います。

 私は企業誘致を五年間担当したことがございまして、工業団地があって、ぜひ鳥取にお越しくださいと企業を回るんですね。うちはこれだけいいところです、そしてまたこうですと説明をして、説いて説いて説いて、では、まあ、行ってみようかということで来てもらうこともあるし、来ないので、工業団地がほっぽらかしというのもあるんですね。

 多分、中山間地域で誰か農業をしないかというときは、かなり丁寧に丁寧に説いて、こうやったらできますよということを言わねば、来たり、したりできるわけがないんです。だから、そのためのマンパワーが要りますよということを冒頭お話し申し上げています。

 もし、なかったときにどうするかは、これは撤退のルールがないとどうにもなりません。そうすると、農振法はどうするかとか、農振農用地ではどうするかとか、過年度に整備した土地改良負担金はどうするかとか、国土としてどうするかという大変重要な問題がそこに含まれます。

 したがって、そういうことも含めた全体的な法整備をぜひとも御検討いただきたい。それを、中間受け皿だけが何とかということは、しょせん無理があろうというふうに思っております。

 以上です。

藤岡参考人 お答えいたします。

 今の件でありますが、中間管理機構が積極的に耕作放棄地の解消問題、この辺のところに取り組まないと、平場の農地というのは、中間管理機構をあえて利用しなくてもまだまだ借り手があるんですよ、条件のいいところは。ただ、いわゆる耕作放棄地なり、それになりそうな土地をどうやっていくのかというのがこの中間管理機構の大きな課題だと思っていますので、借り手がないところは受けませんよ、これでは中間管理機構の意味がないんじゃないかと私は思っています。

 しかし、では、どんなところでも引き受ければいいかというと、これもまたやはり大きな問題がありますので、私は、これを始める前に、ある一定の線引きをするべきだと思っています。もうこれは無理だ、山に戻すべきだというところは、もう山に戻すんだ、農地じゃない、そういうある一定の線引きをしてからやらないと、今のままで中間管理機構に耕作放棄地みたいなところがどんどん集まってきても、これは私は絶対機能しないと思っています。

原田参考人 実態のところは私は必ずしもよくわからないところがありますが、少なくともこういうことが一つは言えるかと思います。

 つまり、中山間地域でもそれなりにやっていた人がやめて機構に貸す、その場合、先ほども申しましたように、多くの場合には、特に、補助金をもらうときには機械等を、もう農業をやめるというときに、補助金が加算されるということがありますね。そして、それを機構が借りて多少の整備をしても、やはり借り手はいないということがあり得るわけですね。そうなると、逆に、その後誰が耕作するのかという問題で、遊休農地が発生する可能性すらある。

 それから、しばしばこれは聞くことでありますけれども、そういうところでも、無理してお互いの関係で引き受けて耕作を続けているという借り手がいると思います。ところが、もし中間管理機構がその間に立ってやる場合に、そういう無理をしてまで条件の悪いところを引き受けるかという問題も出てくるわけですね。

 ですから、やはり実態との関係で、中間管理機構が何ができるんだろうかということをよく考える必要があるのかなというのが一点です。

 もう一点は、やはり中山間地域の、特に条件の悪いところの対策、これは、中間管理機構による農地の流動化とかいうことだけで問題は済まないわけで、やはり全体として総合的な施策、体制が要るわけですね。その中で、どういう条件であればどういう経営が育っていけるのか、また、そのためにはどういう援助施策が必要なのか。総体的な問題であるという御指摘が先ほどもありましたが、私もそのように思っております。

鷲尾委員 大変勉強になりました。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 日本維新の会の村岡でございます。

 きょうは、参考人の三人の先生方、農水委員会にお越しいただきまして、ありがとうございます。

 先ほどから、先生方の陳述を十分ずつ、そして質疑を聞いて、やはり現場の話というのをしっかり聞いて、政策、法案に反映していかなきゃいけないなとつくづく感じたところであります。

 そして、上場参考人のお話を聞いて、鳥取県農業農村担い手育成機構理事長ということで、土地の集積に、二百ヘクタール以上の集積をした、それは二十年間かかってやったと。そしてまた、藤岡参考人は、それぞれ最初のスタートは非常に小さい農家だったけれども、今では百ヘクタールぐらいの農業をやっている。また、大学の先生である原田先生は、いろいろな土地、また農地法の観点から、この法案に疑問も呈している。こう考えると、本当にやはり農業を大転換して新しい方向性に進めるためには、プロフェッショナルの人が相当引っ張らなきゃいけないということが現実だ、こう思っております。

 例えば、上場先生のような方が中間管理機構にいて、四十七都道府県、情熱を持って農業者の方々にお尋ねして、そういう方がいないと、県の役人であったり、また、それぞれ今までかかわってきた人たちでも簡単にできるものじゃないということを今痛感いたしております。

 そういう意味で、先ほど先生が陳述の中で、例えば資格だとかそういう形で、この中間管理機構を成功させるためには、どんな人間が基本的に県の中心となり、また地域を回るべきか。それは、人もあるでしょうし、これを進めていくためには人数的にも大変ということがあると思いますが、どう思われるでしょうか。

上場参考人 先日、衆議院の事務局から、参考人にというインビテーションをいただきまして、ちょうど東京におりましたので、小田原まで足を運びまして、二宮尊徳のお生まれになったおうちを訪ねてまいりました。

 我が国には、上杉鷹山があり、尊徳があり、また昭和の大恐慌の後の農村更生運動は石黒大臣が指揮をされましたが、いずれも、国家予算もない、しかも、飢饉に瀕して非常に農村が荒れた、それをたび重なって復興した我々の先祖の英知がございます。いずれも、お金ではなく、人の知恵だったと思うのであります。そういう歴史も含めて、我が国の歴史教育も含めて、これは非常に大変な岐路に来ております。

 戦後、農業改良普及員が、私もそうでしたけれども、自信と誇りを持って農村におりましたのですけれども、今、普及員は定数が削減をされて、本当に数が少なくなっております。今回の担い手の話や農地法制の話と普及員の話が全く連動しておりません。要は、人であります。人です。農業委員さんの話も、これは農業委員という人に帰属をしておりまして、人の信頼関係をほっといて、そしてお金とか制度で、権力で物をやるということはあり得ないことだと私は思っております。

 これから五十年、百年の国家の大計は人にある、それは、農業をする人も、それを支える人も、現場の教育も、すこぶる人にあるということを訴えさせていただきたいと思います。私は、そういうことを諸先輩や先祖から教わりまして、きょうここにおりますので、あわせて、そういうことだと思っております。

村岡委員 大変いいお話を聞かせていただきました。

 やはり、歴史、文化、その地域をしっかり知っている方がこれに取りかからないと、とても中間管理機構がうまく進むとは思えない。また、私なんかは三代前ぐらいでもうわからないんですが、九代目というこの信頼感も、やはりそれまで培ってきたものが先祖代々あるということを認識しなきゃいけないということを聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 そして、私と同じ秋田出身の藤岡さんにお聞きしたいと思います。

 今度は、農業者として、面積を大きくしていくときのいろいろな御苦労があると思います。例えば、今、貸し手の方では上場参考人がまとめる。しかし、借り手の方で藤岡参考人みたいな方がいないと、これは大きな農業もやれない。

 そして、藤岡参考人の資料を見ますと、作業受託で五十ヘクタール、こうなっておりますけれども、例えば中間管理機構でその土地がまとまったら、逆に言えば、これをもう借りてしまうというようなことが現実の中ではあるんでしょうか、お聞きしたいと思います。

藤岡参考人 お答えいたします。

 先ほどもお答えしましたけれども、長年かけて農地を集積してきたわけですが、かつては、さまざまな作業を頼む小さい農家の人がいっぱいいたんですが、最近は、そういう人がもうリタイアして、賃貸に回ってくる。そして、その賃貸も、やがては売買に来るというふうな仕組みにどんどん変わってきているんですね。

 これは私のところもそうですが、地域の農業者も、買ってくれという要望が多くて、とてもじゃないけれども買うのはちょっと無理だという現状にもあるんですね。したがって、かつては作業受託がかなりの面積あったんですが、今はもうどんどんそれが賃貸、売買に変わってきているというのが実態であります。

村岡委員 そうしますと、藤岡参考人、今の御自分の受託が、賃貸であったり、また売却ということで申し入れますけれども、例えば、中間管理機構がそれをまとめます。五十ヘクタール、三十ヘクタールまとめます。それで、地域の近くにあるので、これだけ大規模にやられている藤岡参考人ですから、では、中間管理機構がまとめてくれたんだから、これはやろうかという気持ちになられるかどうかということの中でお聞きしたいと思います。

藤岡参考人 お答えいたします。

 中間管理機構がそれぐらいまとめてくれれば、これは非常にありがたいことです。しかし、私は、なかなかそう一朝一夕にはいかないと思っております。

 私も、経験上から、規模がどんどん大きくなれば、では、どんどんコストが下がってどんどん利益が出るのかといえば、決してそうではないと思っています。ある一定の規模を超えると、またそれなりの設備投資なりがかかります。例えば、二十ヘクタールでワンセットだとすれば、それを超えたら機械が二セット、それを超えたらまた三セットとなっていきます。特に、肥料、農薬なんというものは、面積がふえたからといってコストが下がるわけじゃないので、そういう面では、規模拡大、面積がまとまれば、中間管理機構は大変ありがたいということには一朝一夕にはならないと私は思っています。

 その辺の、経営という観念から考えて、そういう受け皿、受け手がどんどんいるのかといえば、これもまたやはり受け手を育てていかないと、中間管理機構が農地をまとめただけでは無理だと私は思っています。

村岡委員 大変いい話をお聞きしました。

 政府全体が、もちろん大きさの規模というのはそれぞれによって違うと思いますけれども、基本的には、今の担い手が耕作面積の五割、それを八割にしたい、三百万ヘクタール以上担い手が受けるということにしたいという中の一環として、中間管理機構もあるでしょうし、農業委員会の充実もあるでしょうし、円滑事業もある。

 しかしながら、根本的な問題で、これから政府が打ち出していくと思いますが、農村の所得倍増という話がある中で、中間管理機構もあるでしょうし、また六次産業化もある、再生エネルギーもある、そして日本型直接支払いもある、中山間地の直接支払い、飼料米の需要をアップして、加算してお金もつけるというようなことはあります。

 そういう全体の仕組みの中で、原田先生にお聞きしたいんですけれども、その中の一つとしての中間管理機構というのは意味があると思いますか。それとも、もちろん先ほどからのお話を聞いていると、この単独ではなかなかうまく機能しないということを聞いていますが、この一連の流れの中では大きな意味が中間管理機構にあると思われるかどうか、お聞きしたいと思っています。

原田参考人 お答えいたします。

 現在の法律案のままでこれが実現されたときにどうなのかという問題と、きょう、私も申しましたし、ほかのお二人の参考人の方も申していますように、いわば、現場で実際の農地が動いている、また、動かし、担い手を育てて、そこに農地を集めている、この動きとうまくリンクして動くのかということで、そのどちらになるかによってお答えする内容が変わってき得るかなというふうには思っております。

 もし、現場とうまく結びついて、そして現場が必要とするような一定のプール機能、農地をまとめていく、集団化していく、場合によっては一定の整備を施していく、それを利用権レベルでやる、それが現場の動きと対応して動いていくのであれば、今お話しになりましたような、全体としての政府の農業の改革、その中の政策の一環として機能し得る考え方であろうと思っております。これは、私は最初に申しました。

 問題は、その事業の仕組み方が今のままでは問題が多いのではないかというふうに私は思っているということでございます。

村岡委員 ずっと議論をさせていただいて、この新しい農業の大転換が、産業競争力会議の生産調整の見直しもそうですけれども、また農村の所得倍増も、どうも机上の空論みたいな形の中でとは言いませんが、現場とのしっかりとした話ができていない。特に、プロフェッショナルな方々が三人、参考人が来たわけですから、そういう意味では、これはうまくいくのかなという不安が非常に出てくるわけです。

 その中で、参考人の方々にお聞きしたいんです。

 しかしながら、今、農業は、六十五歳以上の方々がいる、なかなか所得が上がらない、そしてTPPの問題もある、そういう意味合いの中では、やはり変えていかなきゃいけないことも現実であります。

 そうなったときに、例えば、農業者の方々、農協を含めて農業団体の方々と一緒に話していくとき、何が一番中心になってお話ししていくことが、今、先ほど挙げました中間管理機構も再生エネルギーも、そして六次化産業も中山間地の支払いも飼料米もあります。これは、それぞれの政策です。何が基本になってこの現状を変えていくというふうにふだん現場におられて思っているか。上場参考人から、三人の先生方にお聞きしたいと思います、大変大きな問題ですけれども。

上場参考人 大変大きな課題でございますので、どうお答えしたものかと思うんですが、仮に、米価がすごく安くなっちゃって、もう全然肥料代も農薬代も賄えなくなったときに、おい、あんたどうするやと。僕は、約二ヘクタールの水田があるんですけれども、大きいものですから、受け手もなかなか受けてくださらないので、自分がやっているんです。

 そうすると、自分の家族と友達を養うだけの米はできる。それを考えますと、自分の米をどうやってつくろうか。自分がつくらぬのなら、頼んで分けてもらおうか。それが、村は何ぼ米が要るのか、町は何ぼ要るのか、県では何ぼ要るのか。うちは必ず輸出をします、東京のような消費地はありませんけれども。そこの、自分たちが何をつくって食べるかこそが自給の概念ではないのかと思うんです。

 これは、国家の安全保障にも全てかかわる問題でございます。米を誰がどうしてつくるのか。自分がようつくらねば、頼まねばならぬ。お金を出せば、どこからであるというものでもないのであります。

 大変お答えしにくいのでありますが、くわ一本あって土地を耕してきたことを思えば、私はやはり、もっと本当に、物をつくったり、食べたり、自給するということの意味を確かめていきたいと思っております。

坂本委員長 藤岡参考人、時間が経過をしておりますので、答弁を簡潔にお願いいたします。

藤岡参考人 はい、簡潔にお答えいたします。

 今までの農業政策でさまざまな政策が打たれてきたのでありますが、どうも、産業としての農業と、地域をどう守っていくのかという、それが一緒くたに、ごっちゃになってやってきたところに私は大きな間違いがあったのではないかと思っています。

 これからは、やはり国も強い農業を育てると言っていますので、強い産業としての農業をどうするのかというのと、中山間地も含めて地域を守っていくのかというのは別個に考えて、はっきりした政策を打たないと、この中間管理機構もその一環だと思いますけれども、今までの経緯を見ていますと、どうも、どういう人に誰を育てていくのか、農家は守ってきたけれども農業は守ってこなかったんじゃないか、何かそういう気がしますので、これを機に、きちっとした産業政策、地域政策を立ててもらいたいと思っています。

原田参考人 お答えいたします。

 大変大きな問題で、ちょっと私にうまく答えられる能力はありませんが、一、二点だけお話しいたします。

 一つは、やはり政策がぶれないことが非常に重要なんじゃないかと思います。

 それによってどうするのかという悩みを、特にこれから農業で生きていこうとするような若い人たちが迷うということは望ましくない。私はフランスをやっていると申しましたが、政権がかわっても、基本線はぶれないで一九六〇年からやってきていますね。それを見ていて、日本の場合との違いを感じております。それが一点。

 もう一点は、一番大きな象徴的な問題が、やはり担い手の高齢化だと思うんです。

 これは、逆に言いますと、若い人がなぜ入ってこなかったのかという問題になります。若い人がなぜ入ってこなかったというときに、先ほど、産業としての農業と集落を守る上での農業というふうにありましたが、若い人が産業としての農業に入ることはそれなりにあるんだろう。ところが、問題は、集落としての農業とか、地元の、地域の、生活の場としての農業を守るところが高齢者に任されてしまってきた。

 ところが、これもフランスの話で恐縮ですが、先ほど、一九八〇年には青年の就農促進ということが農政の基本的な柱に据えられたと申しました。それは同時に、中山間地域をどうするのかという問題と絡んでいたわけです。ですから、中山間地域に就農してくれる人がいれば、それには平場のところとは全く違う額の補助金を出し、援助をしていく。そういうような努力をやはり積み重ねてきている。もう三十年たっていますけれども、その中で何とかやってきた。そういう努力を一貫してやるような姿勢が必要なのではないかというふうに思っております。

村岡委員 お三人の先生方に貴重なお話を、大変ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 みんなの党の林宙紀です。

 本日は、三人の参考人の皆様、本当に御多用の中、貴重な意見をいただき、ありがとうございます。

 私の方からも早速質問をさせていただきたいと思います。

 ここまで、委員の皆さんの御質問で、いろいろな御見解を頂戴しながら、なるほどという思いが多々ございます。

 一番初めに、これは私の興味なので非常に細かい点になるんですけれども、原田参考人にまずお伺いしたいんです。

 先ほどから何度か出てきておりますフランスのSAFERのお話なんですけれども、過去に新聞等々でもこのフランスのSAFERについて若干お触れになっていたことがあったようなんですが、まず、今回、中間管理機構のシステムとこのSAFERで明確に、クリアに違うところを教えていただきたいというのと、もし、例えばSAFERの方式で、今回日本が学ぶというか参考にすべきところがあるんじゃないかという御意見があれば、そのあたりを伺わせていただきたいと思います。お願いします。

原田参考人 お答えいたします。

 決定的な違いは、SAFERの場合には、土地を、所有権を取得して、所有者として中間保有して、それを整備し、場合によっては交換分合事業とか農地整備事業の中に入って、基盤を整備し、それを再譲渡していくということです。保有期間は原則五年以下、長くても十年以上は持てない、つまり公有化はだめ。その後、農地を買って整備し、再譲渡していくという仕組みです。ですから、所有権レベルの移転であるということが違う。

 他方、参考になることはたくさんございます。例えばのことで申しますと、特にきょう問題となっております、誰に農地を渡していくかというところに関しては、非常に細かい基準が法令上で決められております。

 先ほど申した一九八〇年、SAFERは一九六〇年につくられ、六二年から活動してきていますから、もう膨大な農地を買い、再譲渡して売り渡しているわけです。その再譲渡の基準というのが非常に明確に決められていて、しかも、先ほどのように、一九八〇年からは青年農業者の就農を促進するというのが入ります。それを第一義的な買い手にしていくところと、例えば既存経営の規模拡大をするところと、そういうところも順番をきちんと決めて、誰に売っていくか、こういうことも法律で決まってくるわけですね。現実に非常に細かい施策が決まります。

 それから、その選定をする者、機関についても、基本的には公共的な機関から人が派遣され、当然ながら、地元の農業組織からも人が出る。その数も全部法令上で決まっています。そういう形で、公的な形の介入をする仕組みがきちっとできている。ここが、非常に今回の法案は曖昧なところが多いと思っております。

林(宙)委員 非常に明快にお答えいただきまして、ありがとうございました。

 もう一点お伺いしたいんですけれども、そうしますと、今回の中間管理機構とは基本的には思想の異なるものですので、それをどうするかという話とはまた違ってくるかとは思うんですが、日本の場合は、今回、中間管理機構は、農地の貸し借りがベースになっています。今お話しいただいたように、SAFERの場合は、保有する、所有権のところだということになるんですが、日本の場合は、所有しようとすると、買う、土地の価格と、賃貸、借りるときの賃料が決定的に大きく乖離しているというところも一つの問題だと思うんです。

 日本でSAFER方式が実際には取り入れにくいとすれば、やはり賃料あるいは土地の買い取り価格というところが大きな原因なのか、それともほかに原因があって、これを乗り越えていけばある程度取り入れられるんじゃないかというところがもしあれば、原田参考人、教えていただけるとありがたいです。お願いします。

    〔委員長退席、森山委員長代理着席〕

原田参考人 お答えいたします。

 SAFER方式というのは、所有権を買うということですか。その構想は、かつて農地管理事業団法案という形で日本でもあったわけですが、結局実現しませんでした。要するに、財政上の問題もあれば、所有権をそういう機関が取得するという公的な介入に対して、やはりそれは日本の状況では受け入れがたいのではないか。もちろん、当時の時価の高さの問題もあったと思います。

 それがこれからできるかというと、私はそう簡単にはいかないだろうというふうに思っております。それでよろしいでしょうか。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 私たちの政党も、できるだけ公費の負担は少なくしましょうということをモットーにしている政党ですので、そのあたりはなかなか難しいだろうなというふうに考えております。

 きょうは、いろいろと皆さんの御質問に対してのお答えをお伺いしていると、今回の中間管理機構も、なかなか、このまま進めていって大丈夫なのかなと不安を抱いてしまうようなところが多くあります。

 一つ、私がかねてから、私の党の方針であるにもかかわらず、若干懸念をいたしておりますのは、そもそも、コストを下げるために大規模化をしていくというのが大きな前提にあるんですけれども、私も夏に秋田県の大潟村などをちょっと訪れさせていただいて、あそこは大規模農業の盛んなところですから、実際にそういったところでいろいろお話を聞いたときに、先ほど藤岡参考人のお話にもあったように、大きくしていけば、ある時点でそれはコストが、また追加投資がかかってしまって、意外と下がっていないんですよという話でした。政府の方は四割下げるということを目標にされていて、これは大変野心的でいいと思うんですが、実際に大潟村の場合は、平均的なコストから一六%ぐらいですかね、下がっていてもそのぐらいですかねというようなお話だったんです。

 今回、中間管理機構法案で、貸し借りという形で、農地、あるいは一つの圃場単位も、例えば一ヘクタール以上とかそんな形で大きくしていくそうなんですが、そもそも、私の党是を否定するようなところがあるんですが、この大規模化というのをイの一番に進めていくべきなのかどうかというところをもう一度私は考えなきゃいけないのかなと思っているんですね。

 それを三人の参考人の皆さんがどのように考えているか。もちろん、大規模化というのはした方がいいんでしょうけれども、それを最優先でやっていくということが、今の段階でどのようにお考えなのかということをお一方ずつお答えいただけるとありがたいです。

藤岡参考人 お答えいたします。

 一口に大規模化といっても、やはり地域によってかなり条件が違いますので、一概には言えないと私は思います。かといって、零細の一ヘクタール、二ヘクタールで採算がとれるかといえば、これもまた難しいと思いますので、ある一定の、十五なり二十ヘクタールぐらいの基本的な面積は必要だと思います。

 では、かといって、アメリカとかオーストラリアみたいな、そういう大規模化を目指しても、私はこれは日本では無理だと思いますので、そこよりも、先ほど先生がお話しになったように、いかにコストを下げていくか、これは私どもも至上命題であります。

 ところが、日本はなかなか我々の努力では下がらない。例えば、肥料、農薬、農業機械であったり、流通経費であったり、これらが高いんですね。したがって、それらもトータルで下げていかないと、我々の規模拡大のメリットだけでコストを下げるというのは、私は大変難しいと思っております。

上場参考人 平成元年に、我が国が、プラザ合意がありまして、為替が今みたいになりまして、ちょうどガットのURの決着前でございました。農政は新農政ということになりまして、私は鳥取からいろいろな提言をさせていただきまして、平成五年の基盤法に結実をいたしました。入沢先生が構造改善局長でした。

 その後、十年たちまして、米政策の大幅な転換をめぐりまして、米政策の議論が丸一年行われました。私は鳥取県から委員として出席をしまして、生源寺先生が座長だったんですけれども、物すごく議論をしたんですね、一年間かけて。

 そういうプロセスからしますと、今回のこの改革は、かなりエポックメーキングな大改革であります。なおかつ、農地という国家の基盤になるものを扱うものでございますから、私はもっともっと議論を尽くすべきだと思っておりますし、とりわけて、食料・農業・農村基本法の中の審議会、生源寺先生が座長ですけれども、もっともっと、地元も含めて、農業委員会、系統やJAを含めて議論を尽くすことが必要だと思っております。

 その時間がないのであれば、この法案がスタートしてからでも結構でございますので、その中で、日本型の農業というのは一体何なんだと。当然限界もあるし、また特色もあります。その特色がまた強さでもございますので、ぜひ今のような議論をもっと深めることが大事ではないかと思っております。

 以上であります。

    〔森山委員長代理退席、委員長着席〕

原田参考人 お答えいたします。

 と申しましても、私はこの質問には非常に答えにくい、専門としては法律でございますので、経済的な形で分析してどうなるという形の議論ができません。

 大規模化というときに、問題は、どういう作目で、どの程度の規模をイメージして言っているのかということが一つは問題になろうかと思います。

 作物によっても違うし、地域によっても違う。地域によっては、例えば稲作を三十ヘクタール、五十ヘクタールの規模にはできないような地域も日本にはたくさんある。しかし、その地域での稲作が米の生産の相当大きな部分を担っているというような現実もあるわけで、そういうところをどういうふうに考えながら大規模化ということを考えていくのかということがあるのではないか。作目によってもいろいろ違う。例えば、野菜であればまた違うんだろうと思います。

 それからもう一つは、それとは別の問題だということを、先ほど藤岡参考人がおっしゃった、コストを下げるということですね。

 このコストを下げる努力というのは、あっていいし、当然なされるべきだし、しかも、それは大規模化とは違うところでもたくさんあるんだという話も聞いております、先ほどの藤岡参考人のお話もそうだったんだと思いますが。そういうところも考えていく必要があるのかなということは考えております。

 しかし、専門領域ではありませんので、これ以上の発言はちょっと差し控えます。

林(宙)委員 お三方、本当にありがとうございました。

 やはり、これだけ大きなことをやる、まさしく先ほどの上場参考人のお話を引用すれば、本当にエポックメーキングというか大改革だということですので、本当はもっともっと議論をすべきでしょうし、これがスタートした後も、検証を加えながらやっていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 もう時間がほとんどなくなってきましたので、私も一つ大きな課題だなと思っているのは、実は、原田参考人が先ほど意見陳述の中でおっしゃっていた、まさしく仙台市の東部の大型圃場計画を今やろうとしているところなんですけれども、ここはもう既に、本当に担い手が決まりつつあるというか決まったようなところがあるんです。そのときに、後から、もちろん、公正な競争のもとに担い手を決めるというその思想自体は私はいいとは思うんです。そして、私たちも市場原理というのを大切にする党ですから、それが原理原則にあってしかるべきだと思っている一方、やはり地元としては、信頼感を持って、顔の見えるこの人にお願いをしようというようなところが一番いいんじゃないのかなというふうに私個人としては思っている部分があります。

 そういったところも含めて、今後もまたこの委員会で審議をしていく時間があると思いますので、きょういただいた御意見を参考にしながら、詰めさせていただきたいなというふうに思っております。

 それでは、本当に貴重な御意見をありがとうございました。ここで、質問を終わらせていただきます。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 本日、参考人の皆様には大変貴重な御意見をありがとうございました。

 伺っておりますと、農政は改革しなければいけません。ただ、その改革というのは、地に足をつけた、現実的な観点に立った改革でなければいけないんだなというのをつくづく思った次第であります。

 そういう中で、重複もありますが、ちょっとお聞きしたいところは、やはり一つは、先ほど来議論がありましたが、農地を集積するといった場合に、これは大きければ大きいほどいいものではないという話がありました。これはもちろん作物によって、あと地域条件によって違うわけですが、日本の国情を考えた場合、二点お伺いしたいのは、どの程度の規模をまず目指すのが合理的なのかというのが一点と、それからどのような経営体でやっていくのが合理的なのか。担い手はいろいろ、認定農業者がありますが、あるいは集落営農の法人化という観点もありますが、あと、もちろん会社というのもあるんでしょうが、どういうところでまず取りかかっていくのが合理的なのか。この二点の感覚を藤岡参考人と上場参考人にお答えいただければと思います。

藤岡参考人 お答えいたします。

 先ほどもお話ししましたが、一概には、やはり地域だとかあるいはつくる作目によって違いますので、これがベストだという面積はないのではないかと私は思っております、答えにはなっていないと思いますが。

 それと、どういう人が担うかというのも、これもまた、やはり農業というのはさまざまな階層がやっていますので、いわゆる自給的な、趣味でやっている人もいれば、それから家族経営でやっている人もいる、あるいは法人、集落営農、さまざまな経営体がありますので、私は、別に法人経営が全てだとは思っておりません。さまざまな経営体が混在しているのが農業だと思っていますので、それはそれなりに認めてやるべきだと私は思っております。

上場参考人 先ほどのお答えとほとんど一緒でございます。

 農業をしようとする方の哲学といいますか考えもありますし、また能力、才覚もありまして、大きければもうかるというものでもなし、小さいからもうからないというものでもありません。その前に、生活費を幾らぐらい、所得を得て、どういう暮らしをしようかということも当然ございます。

 私どもの県は、中山間地も多いんですけれども、稲作でいいますと、百ヘクタール規模の農家はございますが、それが二百になればもっともうかるかというと、そういうものではない。一定の限界は、五十から百ぐらいかなと思っております。

 酪農では、一番大きな農家が五百頭規模というのもございますけれども、平均では五、六十頭規模なんですが、最近では一千頭規模のようなものも出てきております。

 大きいか小さいかはそれぞれの経営判断、こういうふうに思っております。

 以上です。

畑委員 ありがとうございました。

 次に、原田先生にお伺いしたいんです。

 結局、地域の人たちの意向をできるだけ反映させるための具体的な仕組みがこの法案はかなり乏しいというお話でありまして、法律的な手当てをもうちょっと書き込むかどうかという議論は必要だと思いますが、これを書き込んだ上で、具体的に機構が自由裁量みたいな形で選定してはまずいんだろうと私も思います。

 その際、公共事業なんかですと、指名競争入札の場合には、一定の基準を持った人を公募する。今回、これに当てはめると、まさに地域に適合した要件の人を指名して、そういう人たちを公募しましょうというやり方にするのか、まあ、法律上はそうなっていないんですが。あるいは、一般競争入札であれば誰でも応募できますけれども、実際に応募した中で、選定する際には点数づけをするのか。

 例えば、公共事業は地域貢献とか、農政の場合には地域の配慮とか地域的な観点というのを点数づけして結局やっていって、そこの点数が高い人を選ぶということにしながら地域の意向を反映できるようにする。多分、実務的にはそういう組み方をするのかなと思うんですが、その実際の選定の実務になった場合にどういう選び方が必要なのかというところの御意見をお伺いしたいと思います。

原田参考人 お答えいたします。

 現在の仕組みは、指名入札ではないと思うんですね。応募した人が全員アプライできるわけですから、むしろ一般競争入札的な仕組みになっているだろう。

 問題は、そこの選定基準がはっきりしないことであるというふうに申しました。その選定基準が、いわば農地利用の効率化あるいは高度化を行えるような者であるということがどうも一番重視されているようである、それだけでいいのかという疑問を出したわけです。

 それにかえて、どういうことを注意すればいいのかというときに、今、一般競争入札のときに、いろいろな要素を決めておいて、それで点数化して、その合計の高い人というような形のお話がありましたが、私はそれではないだろうと思っています。

 やはり、農地は土地にあって動かないわけですから、その農地が動かない、その地域にある農地を経営するのにふさわしい人、それは地元ではどう見られているのか。地元では、そのふさわしい人についての一定の評価と選定、例えば先ほど触れた土地改良事業のようなところで、事前の一定のことがあれば、それがなぜまずいかということを言えるような基準、むしろ逆に言えば、そういうものがあればそういうものを重視して、しかし、それはちょっとまずいからこちらへという感じの決め方でないとまずいんだろうというふうに思います。

 ですから、やはり地元ベースの意向が基本的に反映される、それを排除するのであれば、排除すべきそれなりの理由がなければならない、こんな考え方で私は見ております。具体的にどうこうという細かいところまでは考えておりません。

畑委員 ありがとうございました。

 次に、原田先生にお伺いしたいんです。

 今、中間管理機構が十分な役割を果たすには、土地が出てくることが必要だという議論がありました。貸し付けの動機を高めるということだと思います。

 その際に、よく言われる議論は、不適正な農地利用に対する抑制措置、これを強化すべきだという議論は、いわゆる規制改革主義者も含めて、かなりされるところであります。

 その場合、先ほど上場参考人からも、新規参入を促す農地制度になっていないという部分がありました。結局、今の農地制度というのは、私も中途半端だと思うのは、新規参入はブロックしている。しかし、実際、農業をやることに対する規制が緩い。だから、本当は、入り口規制を緩くして、出口規制を強くする。つまり、入るのはどんどん入ってください、しかし、入った人に対しては、農業をしっかりしなきゃいけませんよという規制を高めることが、農地法上というか土地利用法上も必要だと思っております。

 その際に、要は、農地が出てこない、耕作放棄地が進行するという現象の根本的な対策というか理由というのは、そういうことで、まず、転用による農地売却益に対する期待が高いものですから、うだうだと、十分しないで持ってしまうということがあるのと、あと、農地利用に対する規制が弱いという意味では、耕作放棄を許さないような厳しいゾーニングが必要じゃないかという議論もあるだろうと思います。

 そういう形で、参入の規制の緩和とあわせて、土地利用の規制の強化あるいは転用規制の強化というか、原則転用を許さないような形にするのか、そういうことが必要じゃないかなと私も問題意識があるんです。

 そういうことで、日本は、二〇〇九年ですか、農地法上、かなり規制強化をしましたが、土地利用法制上は、日本の場合は白地地域も許されますし、あるいは農振農用地域だって開発の例外は結構まだありますし、あと、そこの部分もまた農振農用地を外れたり転用される可能性もあって、そこは本当に厳格かと言われれば、厳格でもない部分はまだあるだろうと思います。

 こういうことがなぜ起きるかというと、もちろん憲法二十九条の財産権の保障という部分もあるんですが、日本は、都市計画もそうですが、開発自由の原則がまず根本にあって、そこに規制していくので、どうしても中途半端な規制になるという部分があると思います。フランスとかドイツだと開発不自由の原則という形から始まっているので、そこの徹底的な規制強化が組みやすいという部分もあるだろうと思います。

 いずれにしましても、農地の土地利用規制の強化、ゾーニングの強化、厳格化も含めた部分と、あと、参入のところは規制緩和すべきだという部分が両方必要だと思うんですが、そこに対するお考えをお伺いしたいと思います。

原田参考人 お答えいたします。

 非常に広い範囲の事柄を御指摘になったので、どこを中心にお答えすればいいのかやや迷うんですけれども、まず一点ですが、参入規制に関しては、二〇〇九年の改正で、特に利用権レベルでの参入であれば、ほぼ自由化されているというふうに私は思っております。

 ですから、所有権レベルのところをどうするか、これは一つ大きな問題で、それは農地が地域の動かない資源であり、その地域のいわば生活の基盤の一部をなしている、そのことを踏まえてどう考えるのかという問題で、これはこれから先の問題ですけれども、農業をやるための新規参入であれば、それは企業であれ、個人であれ、一定の条件をクリアすれば入れる、その条件はそれほど厳しいものではないということになっていると思います。

 他方、利用権であれ、所有権であれ、農地を持っている以上、きちんと耕すべきである、耕作すべきであるということは、やはり二〇〇九年の改正で、いわば一般的な責務の規定として入りました。

 ただ、それを義務づける、この程度の収益が上がるように耕作しろということを義務づけることは、これは農地であれ、都市の市街地であれ、できないんだろうと思います。むしろ、それをどういうふうに実際にうまく耕作し、一定の生産をし、収益を上げてもらうようにするかというのは、これは農政の政策全体の体系の問題である、こういうふうに思います、場所も、例えば中山間と平場とでは違ってくるでしょうから。

 それから、ゾーニング、都市計画規制というようなお話がありましたが、これはこれで話せばたくさんありますけれども、一つは、日本の場合には、農地の転用については転用規制があります。そして、他方で、都市の側には都市計画上の規制があるわけです。そして、時間はよろしいでしょうか。

坂本委員長 どうぞ。

原田参考人 はい。

 実は、日本の都市計画法の、要するに利用規制というのは、一九六八年まで郊外部にはなかったわけです。そこでは農地法による転用規制しかなかった。他方、都市はどんどん市街地が拡大します。それから、高速道路をつける、あるいは新幹線を引く。そういうときには、開発立法でそこを持っていくわけですね。市街地を民間が開発して広げていくというときに、そこが農地に及んだときに、都市計画には規制がないわけです。ですから、優良農地を守ろうとすれば、農地法の転用規制しかなかった。そこのバッティングがずっと続いてきたわけですね。

 むしろ、転用規制があるから開発が進まない、時価が上がるんだという議論が盛んになされた時期があります。これはいわば開発畑、いわば財界畑の方からの議論でした。今では逆に、農地法の転用規制が緩いから、農地がうまく動かず、農業構造が変わらないんだということを、むしろ財界畑あるいは開発畑の方もおっしゃっています。

 しかし、実際に農地が、都市計画の側のきちっとした規制がないにもかかわらず、一応守られてきたのは、農地法の転用規制が中核にあったからだと思っております。この点はヨーロッパの場合と全く違うので、前提が違うということを一つ御了解いただきたいと思います。

 それからもう一つは、現在の状況でもそうですが、要するに、現在の市街地周辺の開発志向は、むしろ市町村長の方が強く持つわけですね。そして、それに対して農業委員会の方がむしろブレーキをかけるというのがどちらかというと多いというふうに私は理解しています。

 しかるに、農業委員会がルーズに転用するから困るんだとよく言われます。確かに、農家の次三男の住宅を建てるとか、あるいはどうしても必要なので住宅の建て増しをするというようなときに、農業委員会が許可しやすいという状況はあるかと思います。しかし、大々的な転用を、農業委員会が、あるいは農業の側が、その転用する場所を決めたり、そこへ転用需要を呼び込むことはできないわけです。転用需要というのは、基本的には外から入ってくる。その防壁になっているのが転用規制の制度だと思います。

 よろしいでしょうか、時間のことがあるので。

坂本委員長 まだよろしいです。

原田参考人 よろしいですか。

 これも制度論なので申し上げますと、要するに、都市計画の方の土地利用規制が現在ではそれなりに整備されてきています。そして、分権化の中でそれが市町村におろされました。とすると、その土地利用規制によるゾーニングで、ここから先は農地転用しない、ここから先は市街地にするというゾーニングをすればそれで済むのではないか、農地法の転用規制は要らないのではないかという議論が一部にはあります。

 しかし、先ほど申しましたように、都市計画の側が逆に転用需要をつくり出してきたというのが日本の実態です。ですから、本当にここは難しいんですが、日本の場合には、先ほど述べたような歴史を踏まえると、都市計画規制によるゾーニングで一本化して農地が守れるということにはならないんだろうと思います。

 それに対してヨーロッパは、非常に強い、先ほどもお話のありました開発不自由の原則を、むしろ原則として都市計画の中に組み込みます。したがって、規制も非常に強いし、ゾーニングが機能したわけですね。

 ところが、これも一つですが、そのヨーロッパですら、フランスの場合ですら、最近、市町村長が開発志向に走れば、議会が開発志向に走れば、そのゾーニングを変えて、優良な都市周辺の農地を転用して壊廃してしまうという問題が大きな問題になっています。そこで、逆にフランスでは、改めて、農地サイドの側から転用を規制する論理と制度の仕組みを現在導入しようとしているところです。

 ですから、日本があえて今の段階で一本化する必要はないんだなということを改めて感じているということを最後につけ加えておきます。

畑委員 時間が参りました。大変参考になりました。

 ありがとうございました。

坂本委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げたいと思います。今後とも、またよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きますが、定刻に開会をしたいと思いますので、委員の皆さん方は定時にはお集まりいただきますよう、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 この際、お諮り申し上げます。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君及び農村振興局長實重重実君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。きょうは、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、これから農業は本当に重大な局面に入っていくのではないかという大変な危機感を正直持っております。

 日本の人口は、二〇一〇年にピークをつけました。このときが一億二千八百六万人だったと記憶しております。約一億三千万弱ぐらいであります。これは、もう二〇一〇年にピークを打ちました。二〇一〇年から一一年にかけての一年間で、二十六万人人口が減りました。二〇一一年から一二年にかけては、二十八万人人口が減りました。三年前にピークをつけて、今減り始めたところでありまして、その減り方はまだなだらかでありますが、これから急速に日本の人口は減っていくと予測をされております。

 社会保障・人口問題研究所の予測によりましても、今後二十年間、わずか二十年間で、いろいろなケースを彼らは試算しているわけでありますが、人口が大きく減るケースによりますと、これからの二十年間で千六百万人から千七百万人人口が減るという予測になっております。さらに、二〇五〇年、この時点ではどうなっているかということでありますけれども、これもいろいろなケースがありますが、厳し目のケースを見てみますと、大体三千六百万人とか三千七百万人、今よりも人口が減るということでございます。

 日本は、一九四五年に終戦を迎えまして、そのときの人口が、そのときはデータがないんですけれども、恐らく七千万ちょっとぐらいだったろうというふうに言われております。つまり、日本という国は、戦後、七千万ちょっとから人口をふやして、二〇一〇年に一億三千万弱まで人口がふえてきたということであります。この間、六十五年間。六十五年間で六千万人人口をふやしてきたというわけであります。年平均にいたしますと、一年当たり大体百万人ずつ人口がふえてきた計算になります。

 一方で、頂点を迎えて、これから急速に減っていくわけでありますけれども、先ほど私が申し上げましたように、厳し目のケースでは、二〇五〇年に、三千五百、六百、七百、このくらい減ると言われているわけであります。つまり、今後三十七年間で三千数百万人減るということですから、やはりこれからは平均すれば一年間で百万人ずつ人口が減っていくという時代に我々は足を踏み入れているんだろうと思います。

 戦後六十五年かけて毎年百万人ずつふえてきた人口が、今ピークを迎えて、これからは逆に平均すれば毎年百万人ずつ人口が減っていくかもしれない時代に足を踏み入れてきているということでございます。二〇五〇年に三千数百万人人口が減るということは、今と比べますと、この日本列島上から人口が三分の一なくなるということであります。三分の二になってしまうということです、わずか三十数年で。

 それから、毎年百万人といいますが、百万人といいますと、和歌山県の人口と大体同じぐらいだと思いますので、これから日本が減り始めますと、毎年毎年、この日本列島上から和歌山県一県分の人口が失われていくという事態が、最悪のケースでは想定をされているというわけでございます。

 しかも、高齢化が進みます。現在、我が国の平均年齢、赤ちゃんからお年寄りまで全部ひっくるめて平均すると何歳かといいますと、四十五歳ぐらいだということであります。これが、二〇五〇年には平均すると五十三歳ぐらいという恐ろしい年齢になるわけであります。

 当然、一人当たりの食べる量というのも高齢化に伴って減っていくわけでありますので、これから二十年、三十年というタームで日本の農業を考えた場合には、この国内人口の減少にどう対応していくかというのは極めて重大な課題になってくるんだろうと思います。

 一方、皆さんもこの間フィリピンの台風で驚かれたと思いますけれども、世界で異常気象というものがかなり頻繁に起こるようになってきております。アメリカでは竜巻が多発しているようでありますし、私の地元でも、この夏、何と竜巻で被害が出ました。

 世界の気候がおかしくなっている原因は温暖化にあるということが、今、世界の専門家の間でほとんど常識になってきております。この温暖化によりまして、当然、畑作物や農産物、水産物にも影響が出ることが考えられます。

 私は、前職が環境の政務官をやっていたものですから、この温暖化というものへの危機感はかつてないほど今高まっております。

 実は、二〇〇〇年から二〇〇五年にかけて調べた結果、世界で、森林とかがCO2を吸収してくれますので、この五年間、平均すると一年間で三十一億トンのCO2換算の温室効果ガスを森林は吸収してくれます。ですから、人間が三十一億トンしか出していなければ、CO2濃度はふえません。ところが、人間活動によりまして、この間、一年平均で七十一億トンも出しています。つまり、自然界が吸収できるCO2の量の倍、実は今、人間活動によって出ているわけであります。

 ですから、このCO2の濃度を安定させようと思えば、今出ている排出量を半減すれば、そこで安定するわけでありますので、それ以上の温暖化は防げるということになります。

 それでは、いつの時点で半減すればいいかということは、これも世界で一応共通認識ができているわけでありますが、二〇五〇年に半減をしようという目標を、今、先進国も途上国も含めて掲げているわけであります。そうすると、二〇五〇年ぐらいまでに半減できれば、産業革命前と比べて世界の気温は二度C以内の上昇に抑えられる、二度C以内に抑えられれば、そんなにひどい影響は人間の生活に及ぼさないだろう、こういう考え方で削減努力をしているわけであります。

 そうはいっても、小さな島なんかに大きな影響が出る可能性はありますけれども、とにかく二度C以内に上昇率をおさめるためには、二〇五〇年に人間が出す排出量を半分にしよう、そうすれば安定する、こういう努力をしているわけでありますが、残念ながら、現状は年々ひどくなっております。

 二〇〇〇年から二〇一〇年までの十年間で、世界のCO2の排出量はトータル九十五億トンふえました。減らして半減に向かっていかなくてはいけないのに、十年間で九十五億トンもむしろ排出量はふえております。そして、その何と六割は中国一国でふやしている分であります。

 現在、世界の約四分の一のCO2排出量は中国一カ国で出しているわけであります。世界の四分の一は中国から出ています。中国は削減目標というのを持っておりますが、その彼らの目標は、何と、増加幅を緩めます、そういう目標になっておりまして、減らすというベクトルになっていません。

 そういうことを考えますと、これから、大変残念ながら、みんなが努力をすることは当然のことながら、地球の温暖化というものは進み、それがまた農業、水産業に影響を与えてくる、そういう危険性は現在どんどん高まっているという現状であります。そういう中で、日本の食料安定供給をどう維持していくかというのも大変大きな課題になっているんだろうと思います。

 そして一方で、日本の農産物は、本当に品質の高い、おいしいものがたくさんあります。これをもっと世界に売っていこうということもこれからやっていかなくてはなりません。

 私がきょう申し上げたいのは、そういう少し長い目で物を見たときに、我々が今からやっていかなくちゃいけないことは大変多いなということであります。

 よく江藤副大臣は、農政を巨大タンカーに例えて、かじを切っても、なかなか急にかじを切ることができないんだ、農業政策はそういうものなんだということを強調されます。私も全く同感であります。だからこそ、巨大タンカーの、まさに大臣、副大臣、政務官のような船長に当たる人は、遠く先をにらみながら、早目早目にかじを切っていかなくちゃいけないということなんだろうと思います。

 私は、これから農政の課題をたくさん、国の政策のレベルで前進させていかなくちゃいけないと思います。そして、そのうちの一つが、やはり農地の集積化を図っていくという大きな課題で大きな前進を図っていくことがどうしても避けて通れないと思います。これから、この法案が皆さんの御賛同をいただいて通ることになった暁には、何としても、これによって大きく集積を前進させていかなくてはいけないと強く思っているところでございます。

 そういう意味で、きょうは、法案に関しまして、きちんとした国会の論戦で議事録を残して、今後の運営で、我々がここで議論したことがきちんと反映されるように、そういう意味で、確認的に幾つか質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、農地中間管理機構は、売買ではなくてリースを中心にやるということでありました。しかし、高齢化して、もう後継者がいないというところは、むしろ売った方がいいんじゃないかという人もたくさんいると思うんです。この機構でリース方式をとって、さらに、中間管理という、普通の人にはわかりにくい言葉を使っているわけでありますが、ここを少し、誰にでもわかるように解説をしていただけたらと思います。

奥原政府参考人 今回、農地の流動化を進める画期的な手法といたしまして、都道府県段階に公的な機関として農地中間管理機構を整備する法律案を出したところでございます。具体的には、農地中間管理機構が農地を借り受けまして、これを担い手の方に転貸の形で貸す、こういうスキームを整備するということでございます。

 御指摘ございましたように、売買という方式をとっておりません。とっておりませんのは、一つは、売買でやりますと財政負担が相当かかるということもございますけれども、売買をしてしまいますと、売ってしまうと、その後、中間管理機構は農地について何もコントロールができないという方法になります。これは、売買の場合も、それから賃貸借のあっせんも同じでございますけれども、今回のスキームは、一旦借りて、その上で転貸をする。したがいまして、農地中間管理機構は、担い手に転貸した後も一定の権限を持っているという状態になります。

 例えば、農地を転貸で借りた担い手の方、この方々が場合によってはリタイアすることもあるでしょう。その場合には、中間管理機構が、一旦返していただいて、別の方にお貸しをする、こういうことも当然ございます。

 それから、担い手の方に転貸をしたとしても、最初から理想的な農地の利用状態になるとは必ずしも限りません。分散錯圃の解消に努めていくとしても、最初から十分な解消はできないかもしれません。そのときに、数年たったところでもう一回、まとまった形で農地が使えるような形にして、中間管理機構が担い手の方に貸し直す、こういうことも十分あり得るわけでございます。

 したがいまして、今回の方式は、所有者と、それから実際に使われる担い手の方の間に農地中間管理機構が入りまして、常に入った形で、その地域の農地利用を最適な状態に持っていく、これが一つの目的でございます。そういう意味で、農地の中間管理という言葉を使っております。

齋藤(健)委員 次に、これまでの議論で御説明があったのは、中間管理機構が農地を借りて、最終的に借り手が見つかるまでの間、中間管理機構が農家の方に賃料を払う。それから、中間管理機構がお金をかけて整備をすることもある。そして、それらの費用は借り手のリース料にオンされることになるので、中間管理機構は最終的には負担をしなくて済む。そういう制度だというふうに聞いているわけであります。

 これはちょっと一点確認なんですが、一旦中間管理機構が借りて、農家の出し手の人に賃料も、毎月だかどういう契約で払うかわかりませんが、もうお金を払い始めた、そして整備もした、しかし借り手がつかなかった、そういうケースも当然あると思うんですけれども、そのとき、機構が負担した費用というのは、誰がどういうふうに負担をすることになるんでしょうか。

奥原政府参考人 ただいま御指摘ございましたように、農地中間管理機構が一旦農地を借りまして、そこで基盤整備をするということがございます。特に、典型的には、区画を大きくするというものが中心だと思いますが、例えば、三反区画が三つ連なっているときに、間のあぜを二つ取ればほとんど一ヘクタールの区画になりますので、そういった事業をやって、効率のいい土地にした上で担い手にお貸しをする、こういったことを想定しております。

 ただ、この事業を常にやるかといいますと、これはどれだけの期間農地を貸していただけるかということにも関係をしてまいります。例えば、農地の出し手の方が、一年だけ機構に農地を貸して、その間に整備をしてもらって、すぐ返してくれという話になれば、これは整備した土地が担い手の方に効率的に長期にわたって使われるということになりませんので、どういう場合に整備をするかということは慎重に判断をしていかなければいけないというふうに思っております。

 したがって、出し手から機構の方に相当長期にわたって貸していただくということが、機構の負担でとりあえず基盤整備をするときの一つの条件になるということでございますので、無駄な国費を投入する形にならないように、整備をした場合には、それが担い手の方に長期にわたって効率的に使われるように、そういったことに配慮しながら仕事をしていく、こういうことになるものと思っております。

齋藤(健)委員 私の聞いた点が、一点だけです。整備をせずに、預かって賃料だけ払っていた場合、借り手がなかったら、それも機構の負担になると思うんですけれども、それは誰かが払ってくれるんでしょうか。

奥原政府参考人 今回の法律の中では、一旦農地中間管理機構が農地を借りまして、その後、相当期間たっても受け手が見つからないという場合には、その農地をもとの所有者の方にお返しするという制度が書いてございます。

 ですが、この規定が書いてあります狙いは、そういうお返しをすることをどんどんやっていこうという趣旨ではなくて、返さなくていいように、中間管理機構はきちんと受け手の方を探していただく、この努力を一生懸命やっていただくというための規定でございます。

 そのために、今回の法律の中で、受け手を公募するということも書いてございますが、公募だけでは十分な受け手は見つからないケースもございます。その場合には、機構の方々が本当に一生懸命、例えば、ほかの地域の担い手の方、法人経営の方とか大規模な家族経営の方々に話をして、この地域を借りてほしいというような働きかけもしなければいけません。それから、場合によっては、企業の方に、リース方式で参入してほしいという働きかけも必要だと思います。

 そういうことをやりまして、きちんと受け手を見つけて転貸していくということを誘導するための規定としてこれは書いているというつもりでございます。

齋藤(健)委員 この辺で、与党ですので、次の質問に移ります。

 午前中、参考人の皆さんの意見を聞かせていただいて、本当にいい勉強になりました。

 そこで言われていたことは、機構の職員、担当者が農家の人に土地を出してもらうのは本当に大変で、相当優秀な人が相当時間をかけないと、なかなか農地なんかは集まらないというのを実際に経験されている方が強調されておりました。

 例えば、一筆一筆細かく農地が分かれているわけですが、その一筆ごとにいわくがあるという表現をされていました。多分、近隣との関係ですとか、それから、場合によっては抵当権の設定ですとか、いろいろいわくがあって、それを全部取り除いて人に貸せるような状態にするのは大変なんだというお話を、実際に農家から土地を買ったり借りたりしている方がおっしゃっておりました。

 そうなりますと、機構の組織というもの、役員ではなくて、実際に働いている人たち、農家に足を運ぶ機構の職員というのは、かなりのマンパワーが必要で、しかも、かなり優秀なというか、参考人の一人は、研修とかそういうことをしなければいけないんじゃないかという御意見もされていましたけれども、かなり優秀で、なおかつ数も相当ないと、農地を集めることはできないという印象を私は参考人の方から受けました。

 ここでお伺いしたいのは、機構が本当に役割を果たしていくためには、まず、役員について、しっかりした人、本当にそれを担える人になってもらう。天下りが全部悪いとは言いませんが、指定ポストみたいになって、県のOBなんかが行くようなことがあってはならないと思いますし、加えて、職員、これが非常に優秀でやる気のある人が集まらないといけないと思います。

 こういう役員の給与、職員の給与を含めて、この機構の運営費というのは一体どこから賄われるというふうに考えたらよろしいんでしょうか。

江藤副大臣 委員の御指摘はごもっともだと思います。受け手にしてみれば、受け手がどういう人であるかということを、機構の職員の人たちがきちっと見なければなりません。出し手にしてみれば、この人たちになら出しても安心できるという信頼が得られるような人をやはり人選しなければなりません。

 今A―FIVEと呼んでおりますが、六次産業化支援機構のときに、役員の給与については党内でもかなり議論しました。この人たちが高給取りになって、いわゆる格好な天下り先になるということであれば、自民党としては絶対通さないぞということで、随分議論を尽くしたわけでありますけれども、それと同じことが今回も言えるわけで、ここに県庁職員が続々と天下っていくような話になれば、これはもう論外でありますので、そういうことは決して認められないと思います。

 そして、給与等も、もちろん予算の中の、多分この機構の体制整備費、業務費の六十三億円の内数に入っておりますけれども、客観的な批判に耐えられるような、かなりボランティア的な感覚に近い水準に、もちろん給与体系は各都道府県等の機構の中で各自に決められることになると思いますが、その中で私は決められていくことになるんだろうというふうに思っております。

齋藤(健)委員 私が何でこだわるかといいますと、この機構が農地集積の最後の切り札になるんじゃないかと思っております。機構が本当に仕事をしていくためには、運営費を含めてやはり十分な財源が手当てされていないと、例えば、職員が十分雇える運営費がないとか、あるいは、本当に優秀な人がいるんだけれども、ただ働きしなくちゃいけないとか、そういう状況でありますと、この最後の手段が生かせないまま終わってしまうのではないか。これを、例えば地域で、市町村で負担しなさいとか県で負担しなさいと言っても、なかなか難しいのではないか。ですから、私は、この最後の手段である機構が十分な仕事をしていくためには、十分な国の予算的手当てをしていかなくてはいけない、それが、長い目で見て、むしろ国費を効率的に使う手段になるのではないかと思っております。

 ですから、機構がちゃんと回っていくような、人件費を含めた運営費、それから、どんなに努力しても見つからなかった場合に新たに生じた負担、もっと言えば、最初三年間ぐらいは借り入れる方が多いと思いますので、受け入れ先が見つかるまでの間の負担も膨らむ可能性があります。そういう財政的な問題について、本当に十分な手当てをしていかなければ、機構は動かないのではないかと思うわけであります。

 そして、その十分な手当てが、地方がやりなさい、自治体でかぶりなさい、あるいは県でかぶりなさいと言ってしまったら、そこで十分な手当てがなされない可能性があるなというふうに私は実感をいたしております。私自身も、ある県で副知事をやっていた経験がありますので……(発言する者あり)済みません。埼玉でした。そんなに財政に余裕があるわけではありませんので、国に言われたからといって、巨額の金を自治体がこれに突っ込むという現実にはなっていないんです、残念ながら。

 しかし、この機構をうまく回していくためにはお金が必要だということになりますと、そこはやはり国が前へ出て、手厚く支援をしていく必要があると思うんです。

 きょうは、高校同級生の葉梨政務官が来ておられます。財務省も当然そう思うと思いますが、どうでしょうか。

葉梨大臣政務官 いつもお世話になっております。

 私も、財務省の政務官を拝命する前は当委員会の理事をやっておりまして、個人的にも、中間管理機構というのが、まさに農地の集積を進めていく上で本当に最後のチャンスだろうというような認識も持っておりました。

 そこで、地方負担の話が今あったわけですが、御案内のように、政府の産業競争力会議で、適切な地方負担を求め、関係者が責任とコスト意識を持った上で、創意工夫を凝らす制度とすべきという意見が出されたことは、そのとおりでございます。また、地方の財政状況が厳しいというのも、そのとおりでございます。

 まずは、我々としてやっていかなければいけないのは、これは財務省も農水省もそうだと思いますけれども、この機構に対してしっかりとお金をつけなければいけない政策だということを地方の自治体に対してしっかり伝えていかなければいけない。

 ただ、それは、国が引くということではございません。今、予算編成の過程でございまして、私の立場から、では、これは幾ら、絶対大丈夫ですというようなことを今の時期で申し上げることはできないんですけれども、もう既に農水省の方から相当額の概算要求がなされてきています。そして、この機構をいかにワークさせるかという思いにおいては、全く一緒でございます。ですから、しっかりとそこは精査をして、結果としてこの委員会でもワイズスペンディングという形で御報告できるように、農水省とよく協議をしてまいりたいと思っております。

齋藤(健)委員 葉梨政務官を信じておりますので、ぜひ、ちゃんと動くような十分な手当てを工夫していただきたいと思います。

 それから、今まで出ていない質問について、確認のために聞きたいんです。

 農地台帳について、いろいろな議論がありましたが、法定化して、インターネットでも見られるようにするという御説明がありましたが、これはいつまでに全部出そろうと考えたらよろしいんでしょうか。

奥原政府参考人 農地台帳でございます。

 農地台帳は、農業委員会の業務執行に関する基礎資料として、現在は通達に基づいて整備をしております。農地の所有者ですとか借り受け者の氏名、住所、農地の所在、地番、それから賃借権の設定状況、こういったことが整理をされております。

 九割の農業委員会におきましては、この台帳につきまして電算処理システムを導入しておりますし、また、四割の農業委員会では、電子地図の情報システムまで導入をしております。

 この電子地図の情報システムまで整備ができますと、耕作者別の経営農地を色分けで示したり、あるいは耕作放棄地を色分けで示したりということができまして、地域の農地利用の効率化あるいは高度化を進める上で非常に役に立つというふうに考えられます。

 このため、今回、農地台帳を法定化いたしまして、地図の情報システムを含めて整備して公表するということにしておりますが、二十六年度中の整備を目指しまして概算要求を行っているところでございます。

齋藤(健)委員 そうすると、二十六年度末には全国で整備が完成するという理解でよろしいのでございましょうか。

奥原政府参考人 それを目指して、鋭意やっていきたいと考えております。

齋藤(健)委員 あと、いろいろな方が、機構ができることによって心配をされている方がたくさんおりますので、少し整理してお答えいただきたいと思います。

 この機構ができたときに、例えばJAなどの農業団体の機構との関係はどうなっていくのか、あるいは農業委員の方はどうなっていくのか、そういう素朴な質問をたくさん聞くところであります。機構と農業委員会の関係はこうなります、農業団体の関係はこうなりますということを、皆さんにわかりやすく、ここで議事録に残させていただいたらと思うんです。

奥原政府参考人 まず、農業委員会の関係でございます。

 農業委員会は、市町村の独立行政委員会でございます。農地に関する業務を法令に基づいて行っておりますので、農地に関する各種の情報がここに集まっているわけでございます。

 したがいまして、農業委員会が市町村と連携をして、今度の農地中間管理機構の業務に協力をしていただくことが必要不可欠というふうに考えております。

 特に、機構の方で農地利用配分計画を作成していくことになります。実際の農地の転貸はこの計画に書いてやっていくということになりますが、この計画を作成する場合には、当然、農地の地番ですとか所有者につきましての正確な情報がなければ書くことができません。そういう意味では、先ほどの農地台帳で情報を持っているのは農業委員会でございますので、これの協力はもう必要不可欠というふうに考えているところでございます。

 それから、JAの関係でございます。

 JAにつきましては、これは地域によって違いますけれども、農地の流動化について、相当な実績あるいは能力を持っていただいているところもございます。

 今回の法律の中では、農地中間管理機構は、自分で直接業務をやるだけではありませんで、関係の機関に業務委託をやって、地域の関係者の総力を挙げて業務を遂行するといった体制にしておりますので、実績と能力のあるJAであれば、機構は委託先としてJAを選んで、機構からJAに業務委託をする。その場合には、委託料も当然払われることになりますので、JAは、農地流動化に関する業務をある意味従来以上に円滑に行うことができるようになるというふうに考えております。

齋藤(健)委員 この機構ができたときに、それでは、市町村とこの機構の関係というのはどのようになっていくか、整理して、また教えていただけますでしょうか。

奥原政府参考人 市町村との関係でございます。

 農地の中間管理機構は県段階に一つ指定をするという法制度になっておりますので、この成果をきちんと出していくためには、市町村は人・農地プランの作成の主体でもございますので、市町村と密接に連携をとって対応していくことが必要不可欠というふうに考えております。

 このために、法律案の中では、これは第二十二条ですけれども、機構は市町村に業務委託ができるということも書いてございますし、先ほどの農地利用配分計画、これにつきましては原案の作成を市町村に要請するということもできますし、また、この配分計画に関連して市町村に協力を求めるということもできる制度になっております。

 したがいまして、実際には、ほぼ全ての市町村に機構は業務委託をするというふうに考えておりますし、農地利用配分計画の原案作成も、ほぼ全ての市町村に要請をするということを想定しているところでございます。市町村に委託をする場合には、機構から市町村に対してこれも業務委託料が払われるということになりますので、従来以上に市町村の仕事はやりやすい形になってくるのではないかなというふうに考えております。

 これに加えまして、法律案の中では、機構は、地方公共団体と密接な連携のもとに、その創意工夫を発揮して農地中間管理事業を積極的に実施しなければならない、これは第二十三条でございます。それから、関係団体は、機構から協力を求められた場合には、これに応ずるよう努めることとする、これは第二十四条でございますが、こういった規定も置いております。

 したがいまして、農地中間管理機構と市町村が連携をしながら成果を上げるようにしていきたいというふうに考えております。

齋藤(健)委員 本件の質問の最後に、大臣にお伺いをしたいんです。

 今、奥原局長から御答弁がありましたように、恐らく地域によっても実態はいろいろでありますし、それからJAも実態は地域によっていろいろでありましょうし、農業委員会もいろいろでありましょうし、市町村もいろいろであると思うんですね。そうなりますと、この機構が本当に現場において機能していくためには、さっき申し上げましたように、人的それから財政的基盤がしっかりしていなくちゃいけないのとあわせて、デリケートな、本当に地域でうまく回っていく運用ができるかどうかということにかかっているんだろうと思います。

 自民党の中で本法案を議論したときも、これは運用が難しいなという話になりまして、その辺については、これからも運用の実態をきちんとフォローして、絶えず改善をしていくということが大事なんだろう、そういう議論になっておりました。

 大臣にお伺いをしたいのは、この機構の運用に関して何が一番大切かということを、大臣の御見解を御教示いただきたいのと、また、機構が立ち上がり、運用される段階になりますと、本当に多くの方が機構に直接間接かかわってくることになると思いますが、そういう将来の関係者の皆さんに大臣としてお訴えをしたいことがありましたら、この国会の場でお訴えをしていただければと思うんです。

林国務大臣 お答え申し上げます。

 まず、ちょっとその前に、先ほど局長の答弁で、御質問が、リース方式をとっている理由、こういうふうにありましたので、この機構はリース方式をとっている、こういう御答弁をさせていただきましたが、正確を期するために、売買は否定しておるわけではなくて、売買もできるようにはなっておりますけれども、リースを中心にやっていこうということでございますので、念のため申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、今の何が一番大事なのかということは、今、齋藤委員が質問の中でそれぞれ明らかにしていただいたように、各地の農業者の方々、地方行政の方々、農業関係団体の方々、そして農地中間管理機構の役員になっていただく皆さん、それぞれの皆さんが、地域はさまざまだということがありましたけれども、人・農地プランというのをずっとやっていただいておる中で、やはりこれがうまくいっているところは、地域の中で、どういうところへ今から集約していくのか、どういう将来展望を持っていくのかとかがおぼろげながら出てきている、もしくは、もう少しはっきり出てきているということでございますから、やはり最終的にはそこが一番大事なんだろうな、こういうふうに思っております。

 私は、よく寄ってたかってと言っているんですが、みんなが創意を、総力を合わせて、みんなで将来展望をこの農業について切り開いていくということが大変に重要であろう、こういうふうに思っております。

 この機構を各県につくっていただくわけですけれども、これが本当にうまく回っていくためにも、そういう皆さん方の創意それから協力というものが何よりも大事でございますし、そのために、我々もしっかりと、いろいろな仕組みはガバナンス等を含めてやっておりますけれども、運用においては、その仕組みもさることながら、皆さんの総力を挙げて、創意工夫をしながら取り組んでいただくというところを、一生懸命、一緒になってやっていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

齋藤(健)委員 ぜひ、仏つくって魂入らずということにならないように、みんなで、最後で最強の手段となるように、この機構を盛り上げていきたいと思います。

 それから、話は全くかわるんですが、神事で主に使われるサカキについてなんです。

 現在、サカキの国内市場規模はどのくらいで、多分神事が中心なんじゃないかと思いますが、どういう消費実態にあるか、事実関係を、時間がないので手短に教えていただけますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今、先生の方から御質問ございましたサカキでございます。

 古来より神事に用いられているものでございますが、これにつきましては、比較的温暖な地域に生息するサカキというのと、関東以北の寒冷地にも生育いたしますヒサカキの二つ種類がございまして、一般的に、両者を合わせてサカキというふうに呼んでいるということでございます。

 これにつきまして、都内のある花卸の会社から実態を聞いてみますと、同社におきまして二十三年度で取り扱ったサカキのうち、先ほど申し上げましたヒサカキというものがございますが、これが九九%を占めておりまして、そのうちの八七%が中国等から輸入しているというようなことが、聞き取りの結果、判明しているところでございます。

齋藤(健)委員 神事に使うサカキが、皆さん方も玉串奉奠とかよくやられるんじゃないかと思いますが、実は九割近くが中国でつくられたものという実態にあります。私は、これがもし国産と中国産の表示があれば、一気に国産品に向かうんじゃないかと思っておりまして、きょうは、そういう事実があるということを皆さんに知っていただきたかったので、質問させていただきました。

 これで私の質問を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

坂本委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串でございます。

 きょうは、質問の時間をいただきましたので、法案の審議等々を進めさせていただきたいというふうに思います。

 まず、法案の審議に入る前に、質疑に入る前に、先週報道でも大きく取り上げられました諫早湾干拓の問題を取り上げさせていただきたいと思います。

 三年前の高裁判決が確定判決として存立してまいりました。それに向けて、開門という方向に向けての動きがあったと思います。しかし、去る十一月十二日、長崎地裁において開門差しとめの仮処分が出るという結果となっています。

 この点について、私は過日の委員会でも、この長崎地裁の判決の前の私の質疑でございましたけれども、大臣にこの点を質問させていただきまして、大臣からも、この判断を予見することはできませんが、こう前置きをいただいた上で、いずれの判断が出るにせよ、福岡高裁判決による開門義務というのは、確定した法的な義務であることは変わりございません、したがって、努力します、こういった発言がございました。

 まず、大臣に確認させていただきたいと思います。

 いずれの判断が出るにせよ、福岡高裁判決による開門義務というのは、確定した法的な義務であるということに変わりはない、この考えはお変わりありませんか。

林国務大臣 今、委員がおっしゃったとおりでございます。

大串(博)委員 福岡高裁による開門、確定した義務というのは、対策工事をとった上で、三年間のうちにそれをとり、その後五年間開門しなさいというものでございました。その三年間という期日は、きょうは十一月二十日でございますが、あとちょうど一カ月後の十二月二十日が期限でございます。そういう中でのこの間の長崎地裁の仮処分でございました。

 そういった開門差しとめの仮処分が出た中で、開門義務というのは確定した法的な義務であるという立場をとられるのであれば、先般の長崎地裁における開門差しとめの仮処分に関しては異議申し立てを即座にされるのが筋ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 おっしゃっていただきましたように、十一月十二日に、長崎県関係者が長崎地裁に訴えている開門差しとめ訴訟におきまして、長崎地裁は、仮処分の申し立てを認容し、国は開門してはならないと決定したということでございます。

 これはもう委員御案内のことだと思いますが、仮処分の決定というのは、地裁段階のものであっても当事者を拘束する法的義務になる、こういうことでございますので、先ほど申し上げた福岡高裁判決による開門義務と、それから今度の仮処分による開門をしてはならない義務の二つの義務を負うことになった、こういうことでございまして、この二つの義務は相反する義務ということでございまして、難しい状況になった、こういうふうに考えております。

 今申し上げたように、仮処分の決定が十一月十二日に出されたばかりでございまして、これは御案内かと思いますが、五百九十三ページに及ぶ大部なものでございます。したがって、今現在、農林水産省にとどまらず、関係各省を含めてこれを吟味、分析しておるところでございまして、現段階では確たることを申し上げられないわけでございますが、政府部内で慎重に検討を行って、今後の対応を考えてまいりたいと思っております。

大串(博)委員 今、大部に及ぶ、五百九十三ページに及ぶ内容を吟味しておるということでございましたけれども、まず筋として、開門義務というのは確定した法的な義務ということであれば、それと異なる仮処分が出たのであれば、それに異議申し立てをするのが筋であろうということを今申し上げたわけです。

 それに対して、今、大部に及ぶので議論しているということでございましたけれども、例えば、二〇〇四年の八月二十六日、佐賀地裁で、工事を差しとめしてくれというふうに、原告団、弁護団の皆さんがこれまた仮処分、今回とは違った方向の仮処分を求められたわけですけれども、二〇〇四年の八月二十六日、佐賀地裁は工事を差しとめせよという仮処分決定をしました。そのときには、その翌日、八月二十七日には、既に農水省は異議申し立てを行う意向を表明しています。そういった過去の歴史もある中で、なぜ今回だけそんなに時間をかけられるのかというのが、とても解せないのです。

 ぜひ大臣にお願いしたいのは、過去はこうでした。今回、恐らく事務方の方々が用意された答弁でありましょう。そういう中でありますけれども、開門は確定した法的な義務という態度をとられるのであれば、やはり筋からすると、異議申し立てをして、二つの相異なった判断があるという状況を解消していく方向に行くのが通常あるべき姿なんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

林国務大臣 誤解があってはいけませんから。

 福岡高裁判決による開門義務は、委員がおっしゃったように、変わりなく負っておる。

 しかし同時に、今回は、この十一月十二日の決定によって、もう一つの義務、すなわち開門してはならない義務という二つの義務を負うことになった、こういうことでございまして、そこが大変難しい状況になっている、こういうふうに先ほど申し上げましたので、今後、きちっと政府部内で対応方を検討していきたいということでございます。

大串(博)委員 これまで、開門義務というのは法的な義務であるということで、開門に向けた努力をされているという答弁でございました。長崎の皆さんとの理解も得るべく一生懸命やっている、今後もやっていくというような御答弁でありました。

 という流れで来ているのであれば、今二つの異なった義務を負っているということのみならず、これは一つの政治判断として、これまで行ってきたように、開門判決を一つの確定した法的な義務として引き続き負うた上で、この二つの相異なる判決のあり方を解消する方向を政治的な判断も含めて求めていくというのが、私は、あるべき判断ではないかというふうに思います。

 そういった意味からすると、まずは異議申し立てをした上で、この二つの異なった方向性を解消していくというベクトルを明らかにするのが鍵なのではないかというふうに思いますが、大臣の所見はいかがでしょうか。

林国務大臣 大串先生の立場からいえばそういうことになるんだ、こういうふうにそこは理解をするわけでございますが、一方、この十二日の決定が出てからは、反対側の立場の先生方から、それと逆の方の決断をするように、こういう御質問もいただいているところでございます。

 まさに二つの義務を負っておるという状況、こう思うわけでございます。したがって、この難しい状況になったという中でどうしていくかということは、やはりこの仮処分決定の内容も吟味しながら、政府部内、農林水産省にとどまらず、関係省庁ともよく連携をして検討していかなければならない、こういうふうに考えております。

大串(博)委員 裁判所が、ある意味勝手に異なった二つの判断をしているというだけでもないと私は思うんです。

 といいますのは、今回、高裁判決とは異なった方向のように読める判決が出ています。しかし、これに関しては、今回の判決はわざわざ断り書きをつけている。どう書いているかというと、事実上矛盾する決定をするものであるが、これは次のような事由によるとあえて後ろの方で書いて、その事由とは何かというと、福岡高裁のときには、諫早湾干拓による漁業被害の主張があって、それによって開門ということになったんだ、しかし、今回、国は漁業被害を主張しなかった、主張しなかったものだから、それは判断するための情報にはならなかった、よって、判断の根拠とした事実が大きく異なるから違った判断になっているんだ、こういうふうに裁判所は言っているわけですね。国のもともとの漁業被害を主張しなかったという行為があるものだから、こういった判決になっているわけです。

 そこがある意味ねじれた状況をもたらしているということを相あわせて考えると、やはり私は、これまで大臣は、御努力されてきているというふうにおっしゃってくださったように、開門に向けての御努力を、今回異議申し立てという形でその方向性を、何がしかの判断が必要なわけですから、何がしかの政治判断が必要なわけですから、しかも裁判所はこういうふうに言っているわけですから、この判断をしていただきたいというふうに思います。

 いま一度、大臣の考えを聞かせていただきたいと思います。

實重政府参考人 仮処分決定の中で漁業行使権について触れておりますので、これについて申し上げさせていただきます。

 十一月十二日の仮処分決定の中で、国は、排水門を開放しないことによる漁業者五十八名の漁業行使権侵害の事実を主張しなかった、このために、これについては判断に当たって考慮しないという趣旨のことが触れられています。

 このように国が漁業行使権の侵害について主張しなかったのは、現在、福岡高裁で、別件として係争中の即時全面開門訴訟との関係でございます。

 その別件の訴訟の中で、原告漁業者の方々は、国に対して漁業行使権の侵害を理由として損害賠償を求めておられます。これに対して、国は、これら漁業者に対して既に漁業補償を行っておりますので、それを理由に損害賠償を認めないということで争っているという立場にございます。

 このような別件の係争中の訴訟の中での主張もございますので、長崎地裁の差しとめ訴訟の中でも漁業行使権については言及しなかったところでございます。

大串(博)委員 最後に、大臣の答弁を一言またいただきたいと思いますけれども、今のように、即時全面開門の訴訟においての損害賠償を求められていることから漁業被害に関しては主張しなかったということであれば、聞きようによっては、そういうものがなければ漁業被害のことを主張してもよかったとも聞こえるわけです。そうであれば、ひょっとしたら長崎地裁の判決も違っていたかもしれない。

 こういった全体のことを考えて、最終的には政治の判断だと思うんですね。ぜひ大臣、どういう方向性で考えられるのか、御所見をいただきたいと思います。

林国務大臣 この長崎地裁の仮処分を受けまして、十一月十四日に、長崎、佐賀両県の関係者が上京されまして、私や江藤副大臣がお目にかからせていただきましたが、まず長崎県関係者からは、仮処分決定を尊重し、開門方針を見直すこと、こういう要請をいただきました。佐賀県関係者からは、福岡高裁の確定判決に従い、十二月二十日までに開門すること、こういう要請をいただいたわけでございます。

 これまで、委員も言っていただきましたように、十二月二十日までの開門義務の履行に向けて、長崎県関係者の理解を得るべく繰り返し対話を行ってまいりました。また、工事着手も三回試みてきたわけでございまして、できる限りの準備を行ってきたところでございますが、先ほど来申し上げておりますように、今回の仮処分によりまして、開門すべき義務と開門してはならない義務の二つの義務を負ったところであり、大変難しい状況になったということでございまして、しっかりと、この決定文についても吟味、分析した上で、関係省庁と慎重にこの対応方を検討してまいりたい、こういうふうに思っております。

大串(博)委員 あと一カ月すると、十二月二十日という期限が来ます。その際に、福岡地裁の確定判決を保持している原告団、弁護団は、もし開門がなされていなければ、強制執行や間接強制というような、そうお願いするということすらあり得る。

 仮に間接強制ということになった場合には、国は、その許しが裁判所からおりれば、それに対して金銭的な対応をしなければならない、連日連日、税金から間接強制に対する金銭支弁をしなければならない、こういうことになってまいります。その際には、国は、それまでそういった金銭的な支弁をしなくてよいように全力を尽くしたのかということが問われるわけですね。

 そのことも含めて、ぜひ大臣には開門に向けて賢明な判断をいただきたいというふうに思います。

 以上を申し上げて、中間管理機構の質問に入りたいと思います。

 その前提として、まずTPPなんです。

 TPPは、これまでここまで議論してきました。私は、これまで重要五品目の聖域を守るということに関して、五百八十六品目をしっかり守っていくというのが約束の筋なのではないかという議論をしてまいりましたけれども、最近のいろいろな報道を見ていると、あの議論は一体何だったのかという感じすらします。

 というのは、最近、報道を見ていると、関税全撤廃、全ての関税の撤廃を求められているとか、あるいは米そのものについても関税の削減を求められるので、例えば関税割り当てを考えるとか、あるいはミニマムアクセス米の主食用米の部分を広げることで対案を考えるとか、そういった報道も出ています。

 そういったところまでの報道が出てくると、あの五百八十六品目の、本体、加工品、調製品までを含めたところを守るのが約束だったのじゃないかとほとんどの私の地元の皆さんはそう思っていますけれども、それが余りに違った次元のところに行っていないかという感じすらしてなりません。

 何となれば、米などについて見ると、本体のところまで食い込まれ、それを主食用米のMA米の枠を広げるなんということも俎上に上っているのかと思うと、五百八十六品目と言ったことと、今議論されているかもしれないことと、大きな差があるのは一体何なんだろうという、若干徒労感みたいなものすら感じるところでもあるんですね。

 大臣、農水行政を扱う大臣として、ここでぜひ胸を張って言っていただきたいんですけれども、五百八十六品目、これは私は今でもお約束されたことだと思っています。しかし、相当な交渉もありましょう。ただ、せめて米本体は絶対に守るんだ、これぐらいは、大臣、言えないですか。

林国務大臣 TPP交渉における物品の市場アクセス交渉、これは二十一ある分野の中の一つでございますが、まさに今委員がおっしゃっていただいたように、二国間での交渉を精力的に進めているところでございまして、相手国の要望など、交渉の具体的内容についてはここでお答えはできないということでございます。これは御理解いただきたいと思います。

 私は、スタート時点から変わらず、その都度その都度言い方を変えずに、衆参両院の農林水産委員会においては、農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先することなどが決議されておって、この決議も踏まえて、国益を守り抜くよう全力を尽くす考えである、これは一切変わっておりませんので、きょうもそういうお答えにさせていただきたいと思います。

大串(博)委員 そういう答弁かなと思っていたところでありますけれども、しかし、恐らく受け取っている農家の側からすると、米本体すら明言できないのかという素朴な思いを持たれる方は多いと思うんですね。だから、私は非常に、いわゆる日本の農業をめぐる状況が激動どころか激震、激々震ぐらいするような状況になっているんじゃないかということを危惧するものですから一言申し上げさせていただきましたし、ぜひ守り抜いていただきたいというふうに思います。

 その中で、それと相まって、今、農業全体の政策の転換がなされようとしています。

 先般来議論させていただきましたけれども、いま一つまだ理解できないのが、生産調整の見直しのところで、本当にどれぐらいの変化になるのかというのは、いまだに私はよく得心できないところがあるんですね。目標を配分することをやめる、しかし、いろいろな促進助成措置、例えば水田フル活用に関しては数量払いなどを含めてやっていく、こういうふうになっています。

 しかし、それで本当にうまくいくのかなという気もまだするんです。というのは、二〇〇〇年代、農政を大転換しまして、自主的な取り組みを促進するというふうに言って、生産調整に関しても自由度を入れました、自主的と。ところが、それは失敗しました。過剰作付が起こった。その後、またペナルティー措置を入れたりして、二転三転しているんですね。また、同じようなことになりはしないか。

 すなわち、例えば飼料用米をふやしていくということで、これに関する助成措置をふやしていく、それによって、大臣が何度も御答弁されていますように、需給は絶対に均衡させる、供給だけが多いということにはさせない、こうおっしゃるのであれば、今まではどうだったのか。

 飼料用米の流通の状況、生産の状況等々についてはこの間議論もありました。もし、水田フル活用の助成措置を、レベルを上げることによって、農家の方々がよりコスト面で安くそれをつくれるようになれば、それによって飼料用米等々の作付がふえるから、それで自動的に需給が均衡するようになるんだというような単純な話なのか。それとも、そういうコスト面のみならず、質の面は、この間江藤副大臣からも、一定のレベルまでは配合飼料の中にまぜられるという話もありました。しかし、本当に質の面の問題はないのか。

 あるいは、質以外の流通経路、例えば、私は佐賀県ですけれども、佐賀県の皆さんに聞くと、口をそろえておっしゃるのが、うちは畜産もありますよ、畜産もあるんですけれども、畜産地は遠いからねとやはりおっしゃる方々は多いんですよね。こういった流通面等々の問題もないのか。

 こういったことをかみ合わせると、本当に、単に助成措置だけを高めていく、あるいは中食、外食の話もされていましたけれども、それだけで需給が均衡するように簡単にいくものなんだろうか、これまでの失敗も含めて考えると、本当にできるのかという気がしてならないんです。

 大臣、その辺はどういう御所見をお持ちですか。

林国務大臣 大変大事なところでございまして、お地元の佐賀県でも、佐賀牛のブランド化というのは有名で、東京にもおいしい佐賀牛のお店が出ているということも承知をしておるところでございます。

 飼料用米の作付面積は、平成十九年産以前は三百ヘクタール未満でございましたが、平成二十年度以降、高率な助成金、二十一年度は五・五万円でスタートしたわけですが、これが交付されるようになったこと、飼料用米が主食用米と同様の栽培方法や農業機械で生産が可能であるために取り組みやすいこと、それから畜産側にもメリットがあるというものがだんだん認識されてきたこと等から、近年、十九年産の三百ヘクタールから、二十年産は千四百、二十一年産は四千百、二十四年産は三万四千五百とかなりふえてきております。

 では、お金を配るだけでいいのか、こういうことですが、やはりそれだけではいけません。四百五十万トンの需要量がある、こういうふうになっているわけですが、我が国の畜産規模から必要とされる濃厚飼料から換算される潜在的な需要量ということですから、ほっておけばそこまですぐいくということではないわけであります。水田活用の直接支払い交付金を充実するということはまずあるのでございますけれども、さらに、やはり配合飼料工場での長期的、計画的な供給、活用のための情報提供、それから畜産側で必要となる加工、保管施設の整備への支援、それから生産要望のある耕種農家と利用要望のある畜産農家とのマッチング活動等々、こういうことを行っていくことによって、飼料用米の円滑な流通や活用、これも推進していかなければならないと考えております。

大串(博)委員 そのような説明も、実はこれまで何度もずっと聞いてきたような説明でもあるんですね。過去の資料も読みますと、ずっと今のような理由づけが書かれているわけです。うまくいってきたかというと、なかなか苦しい道のりであったというのがこれまでだったと思うんです。

 ですから、生産目標を配分するという仕組みがあった、今度はそれをなくしていく。仕組みは似たようなものがあるということを考えると、本当にうまくいくのかなという疑念は今でも私は払拭できないんですね。

 そういった大きな変化のある中での中間管理機構、これは本当に、この間、中間取りまとめというものを出されました。中間取りまとめだからこれから深掘りしていくということでありましたけれども、今のような御報告も、答弁も、これまで聞いているのと同じようなものでもあるということをかみ合わせると、やはり、中間管理機構がもともと考えていたときに考えられていた農業、農家のあり方、あるいは、そこに農業、農家のあり方というものを反映して集積というものに関して土地を出す出さないということを判断する農家のあり方はやはり大きく変わってくると思うんですね。

 この間、玉木委員の方から、農政全体の大きな動きを受けたシミュレーションを受けてこの中間管理機構を議論すべきじゃないかというのは、私は今でも正しい考えだというふうに思っています。これは理事会預かりということになっていますけれども、改めてそのことは申し上げさせていただきたいというふうに思いますし、それらを踏まえた上で、中間管理機構が、先ほどの参考人の皆さんからの御説明あるいは御意見の中でも、方向性はいい、しかし本当にうまく機能するのか、ここが肝だったと思うんですね。

 そういうところに踏み込んでいくとすると、やはりきちんとした現状認識、農家や農業者、土地を誰が手放そうとしていて、誰がやっていこうとしているのか、あるいは今後誰がどう考えるのかといった現状認識を持った上で、あるいはシミュレーションも持った上で議論していくのが筋じゃないかというふうに私は思うんです。

 それはなぜかというと、この中間管理機構には、繰り返し議論されてきたように、幾つかのやはり心配な点があるからです。その一つの大きな点は、塩漬けにならないか、借りるだけ借りて、受け手がいないということにならないか。もう一つは、そういった形の中で財政が無駄に使われていかないか、こういった点なんだろうというふうに思います。

 この点について幾つか確認させていただきますと、私はこの条文なんかを見ていてかなり大事だなと思うのは、八条で、業務規程なんですけれども、業務規程の中で、重点的にこれを行う地域に関する規定を置きなさい、重点的に行う地域に関してはこういうものでなきゃいかぬということで、中間管理事業が効率的かつ効果的に実施され、農用地の利用の効率化及び高度化を促進する効果が高いと見込まれるものであることというふうに書かれています。

 確かに、これはそのとおりです。これがより具体的じゃないと、何を言っているかわからないようなものまであると、何を言っているかわからないような業務規程になり、それによって、ひょっとしたら非常に漠とした形で農地が集まってくるかもしれないというふうに思われるわけですね。

 この辺について、これをもう少し深掘りするとすると、どういうふうな考え方なんでしょうか。

奥原政府参考人 農地中間管理事業は、担い手への農地の集積それから集約化を進めて、耕作放棄地の解消それから発生防止を図るために、国費も投入して実施をするものでございます。

 したがいまして、その効率的かつ効果的な実施を確保する必要があるということで、今御指摘いただきました八条の三項第二号でございますが、この事業の重点地域というものを決めることになっております。

 この重点地域以外はできないということではありませんが、この地域で重点的にやろうということが書いてございまして、この条文の書き方としては、農地の利用の効率化及び高度化を促進する効果が高いと見込まれる区域ということになっております。

 具体的には、地域内のまとまった農地を借り受けて、担い手への農地の集積、集約化に配慮して転貸できる区域をイメージすることになりますので、例えば、適切な人・農地プランが作成をされている地域、こういったものがこの重点地域に該当するというふうに考えております。

大串(博)委員 そういった考え方もあると思うんですね。すなわち、ちゃんと受け手がある中で出し手があるのかというところは、一つの塩漬けにならない大切な点でありまして、かつ、受け手がしっかり営農を、地域との調和要件、先ほど来議論もありました。農業委員会の皆様あるいはきょうの参考人の皆様からも地域との調和要件という話がありましたけれども、これはとても大事な要件、二十一年改正のときも私たちもこれを主張しました。

 それとの整合性ということを考えていく際にも、人・農地プランを一つのベースとして行っていくということは極めて重要なことだと思うんですね。それがまず第一であるということがきちんとわかっていることが私は大切だと思うんです。

 ですから、私なんかの意見では、やはり人・農地プランというのはきちんと法律として仕立てて、産業競争力会議なんかでいろいろな意見はあったらしいですけれども、このメリットはやはりつとに言われているところです。ですから、これをきちんと法制化していくという考え方が一つ。

 もう一つは、この人・農地プランというものにおいて中間管理事業が行われていくという、このリンクをしっかり張ること、これが大事だというふうに思うんですね。

 このリンクを張るということとの関係でいうと、重点地区ですからそれ以外のものもあるんでしょう。この人・農地プラン以外のものというのはどんなものがあるんですか。

奥原政府参考人 人・農地プランにつきましては、二十四年度から市町村で作成をお願いしているわけでございますけれども、必ずしも全ての市町村で人・農地プランの作成を行っているわけではございません。また、やっている市町村の中でも、地域ごとに分けてやっておりますので、この地域は人・農地プランをうまくつくれないというところもございます。

 やはり人・農地プランは、その地域の関係する農業者の方々にきちっと集まっていただいて話し合いをする、将来のその地域の農業の担い手は誰であるのか、そこにどうやって農地を集めていくのか、それから、担い手の方々とそれ以外の方々を含めて、その地域の農業はこれからどういうふうに持っていくのか、こういった地域農業の将来像を議論していただく、こういうことでございますけれども、中には、その地域の中に担い手の方がほとんどいない、それから、皆さんが集まって話し合うような、そういう素地もないというところもやはりございます。

 ですが、そういうところの農地で、ほっておいたら耕作放棄地になってしまうところはないかといえば、そういうところはやはりあるわけでございまして、そういうところであれば、この農地中間管理機構が土地を借りて転貸をしていくというようなことをやはり考えていきませんと、農地が荒れてしまうことになりますので、この人・農地プランがうまくできていない地域も含めて考える必要があると思っております。

大串(博)委員 その辺が、この中間管理事業のうまくいくか、うまくいかないかの、一番、細部のように聞こえて極めて大事なところだと思うんですね。

 すなわち、人・農地プランができていない、そういった中で、仮にそういうところで出し手から土地を受ける、そこで受けた出し手の出してきた土地に関しては受け手はあるのか。受け手があるという保証というんですかね、見通しというんですかね、これはどうやって確認していくんですか。

奥原政府参考人 御指摘のとおり、その点が非常に大事な点だというふうに思います。今度の農地中間管理機構がきちんとワークするためには、土地を借りておしまいではなくて、その後にきちんと担い手の方々に農地を転貸していって、きちんと使っていただく、これが一番大事でございます。

 この法律の中には、そのことをやるために、この機構が地域ごとに定期的に借り受けの希望者を公募するという制度が入っております。これをまずきちんとやっていただいて、全ての地域で借り受け希望者を募る。

 募ったからといって、全ての地域で必ずしも出てくるとは限りません。その場合に、やはり機構がいかに努力をするかというところが一つ重要なところでございまして、先ほども御答弁いたしましたけれども、そういう場合には、ほかの地域の法人経営ですとか、大規模な家族経営の方々に声をかけて、どうですかという話をするですとか、あるいはリース方式で参入したい企業の方々に声をかけて積極的に誘致をするとか、やはりいろいろなことをしていきませんと、農地の滞留防止、あるいは財政負担を抑えるということができないという話になってしまうと思っております。

大串(博)委員 今、公募して何とかするという話、あるいは中間管理機構の人たちが努力をするという気合いみたいな話がありますけれども、本当にそれでうまくいくのが日本の農業の現状なのかと心配なんですよ。

 そういう点から判断すると、私は、やはり人・農地プランというものを前提にまずは始めてみるというのが鍵なんじゃないかなと。だから、さっきの人・農地プランとのリンクの張り方も、やはり中間管理機構もまずは万般の事業はできないでしょうから、やっていくところはそこから始めていくというのが、リンクの張り方としては、私は強い方がいいんじゃないかというふうに思うのが一つあります。これは申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 そして、もう一つは、公募する、あるいは努力をするという話がありました。つまり、中間管理機構のメリットは何かなと考えたときに、私自身は、例えば、円滑化事業でもありました、円滑化事業も効果は上げてきています。やはり地域の皆さんがコミットして話し合いをして、この人とこの人をつなげばうまくいくんじゃないか、この努力が全てだと思うんですね。

 そこに財政的支援を投じる、これはすばらしい話だと私は思っていて、そういう意味からすると、中間管理機構の予算の中でも、事業推進費、これは市町村におろされていきますね、委託費等々を通じて。あるいは農業委員会への支援、百二十六億、こういったものも私は大事だと思うんです。

 一方で、中間管理機構の予算のコアのところである農地の借り入れ賃料、三百六十億円、あるいは借り入れている間に管理するための費用、百八十億円、全部で合わせて五百億円ぐらいになります。これは一体何を生み出しているんだろうかという気がしてならないんです。つまり、中間管理機構が中間的に土地を持っていることをもってして何が生まれてくるのか、何がメリットになるのか。

 先ほど繰り返し申し上げましたけれども、市町村の皆さんの努力に対する助成措置あるいは農業委員会の皆さんに対する助成措置、活動を支援する措置、これは私はもっとやってもいいぐらいだと思うんです。しかし、何年かの間、中間管理機構が持って、お金を、借り入れ料を払っているこの間、これは何がいいのだろうかという気がしてならないんですね。このメリットをちょっと教えてもらっていいですか。

奥原政府参考人 予算の要求上、二十六年度概算要求ということになりますが、この中で機構の経費六百五十五億円の中で、借り入れの賃料あるいは管理する経費、こういったものが入っております。今先生からお話がございましたが、借り入れの賃料としては三百五十六億、それから管理をしている経費としては百七十八億円というのがその中に計上されております。

 それで、賃料は、農地中間管理機構が出し手から農地を借りまして、そのまま受け手の方に貸すことができれば、受け手の方から払っていただいた賃料で最初の出し手に払う賃料を賄うことができますので、ここについては基本的に財政負担は要りません。

 ですが、常に、借りたときにすぐに受け手が見つかって貸せるか、こういう問題が一つございます。例えば、基盤整備をやっている間はお貸しすることはできないということも当然あると思いますし、それから受け手の方から見て、ばらばらな土地であれば今すぐ借りることはちょっと難しいね、もうちょっとまとまった形にしてから借りたいというケースもございます。そういう場合に、一定の期間、中間管理機構が借りた形になっているけれども、まだ貸し付けができてない、こういうことはあるわけでございますので、そういった間の措置として、借り入れの賃料なりあるいは管理する経費といったものを計上しているわけでございます。

 ずっとそのものを払い続けるという意味ではなくて、きちんと受け手に対して貸し付けができるまでの間の措置としてこの予算は計上している、こういうことでございます。

大串(博)委員 今話がありました、こういった形状のものなら借りてもいいけれどもなというニーズ、あるいはまとまっていれば借りてもいいけれどもなというニーズといったことは、地元を歩いて頑張ってマッチングをしてくださろうという方々がいてくだされば、これは進むんだと私は思うんですね。

 ですから、必ずしも中間的に何年か、まあ何年か何カ月かわかりませんけれども、中間管理機構が借りておかなければそれができないということではなくて、むしろ、地元を歩いてマッチングを一生懸命やってくださる方が多くいらっしゃって、その方々がいろいろなニーズを聞き、分けてくださって、それをつないでくれる、その機能が大切であって、中間管理機構の一番大切なところは実は人であって、途中途中で中間管理機構に幾つかの土地が貸し出されているという状況が存在する、しかも来年度ではそれに五百億の予算を要求されているわけですね。

 五百億というのは、農水省予算の中ではとんでもなく大きな予算だと私は思うんですね。それは単に賃料として払われるわけですから、ある意味消費的に出ていくわけです。これが本当に税金の使い方として、先ほどワイズスペンディングというのがありましたけれども、ワイズスペンディングなんだろうかという気がしてならないんですね。

 そういう意味からすると、このあり方を考えたときに、やはり、中間的に管理するということは、中間的に借り入れて貸し出すという行為あるいは機能については、非常に注意深くこの委員会でも審査していかなければならないと思うし、これが本当に動くのかというのは非常に注意深く見ておかなければならないと思うんですね。

 ですから、この法案の中に見直し規定もありますけれども、この見直し規定でいいのかということも私たちはよくよく考えなければならないと思うんですよ。すなわち、うまくいくのであればいいかもしれません。しかし、ここでいろいろ懸念が議論されているように、仮にうまくいかなかった場合には、即座に財政的なあり方も含めて見直すような覚悟も私たちは持っておかなきゃならないようなことではないかなというふうに思うんです。

 これに関して、大臣、いかがですか。

林国務大臣 聞いておりまして、私はもともとビジネスマンの出身なものですから、予算でこういうことを確保しても、これはいっぱいいっぱい使うまで配って、リース料を払うということではなくて、やはり今委員がおっしゃってもらったようなこととあわせて、こういうことも合わせわざでやっていくことによってスムーズにこの集積が進むようにしようと。

 ですから、ずっとここで持っていて、賃借料を払い続けることがそもそも目的ではなくて、集積をして、今局長からも答弁しましたように、貸出先が見つかっていくことが目的でございますので、どちらにより比重を置くかというところは、委員の今おっしゃっていたところもわからないわけでもないんですが、やはりこういうところもきちっと手当てをした上で、最後は、先ほどの御質問にあったように、運用が非常に大事でございますので、今委員がおっしゃったような問題意識も、我々もないわけではございません。

 ここに予算を計上したからといって、これでばんばんむやみに引き受けて賃料だけを払うというようなことになっていいというふうに思っている人は誰もいない、こういうふうに思いますので、そこはしっかりと運用でやるというのは当然の前提として、しかし、制度としては、こういうものと、それから先ほど委員からもお褒めいただいた方の、これも予算要求しておるわけでございますので、あわせてこの成果を上げていくようにやっていきたいというふうに考えております。

大串(博)委員 私は、十年間で五割から八割に、担い手に集積していくということであれば、中間管理機構の予算のスキームに関しては、時限として考えてもいいぐらいのことではないかというふうに思うんです。その中で、十年間で集中的にやっていくというぐらいの考え方が一番正当なんじゃないかなというふうに思っているぐらいであります。

 そうでなければ、見直し規定に関しては、もっとタイトな、きちっとした、あるいはもっと強力な見直し規定を考えていくというのが一つの考え方じゃないかなというふうに思いますことを最後に申し述べさせていただきまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 皆さん、こんにちは。日本維新の会の岩永裕貴でございます。

 きょう午前中には、三名の参考人の皆様方から、すばらしいお話をお伺いさせていただきました。それぞれに、本当に現場というものを知り尽くした皆様方からのいろいろなアドバイスとか経験談がありました。

 その中には、しっかりとしたリーダー、見識と哲学を持っている人がこの運用にはかかわっていかなければならない、またはマンパワーというところも大事だ、また、耕作者の新規参入というものを、地域はもっともっとこれからオープンに歓迎をしていかなければならないといったお話、または基本台帳の法定化などをお伺いした中で、三名の方々が特におっしゃっていたのが、先ほども大串委員からも出ておりましたし、これまでも林委員の方も触れられておりましたけれども、全体的な農業政策の安定というものがまずはやはり一番大切であるということを強くおっしゃっておりました。私もそのとおりだと思います。

 特に、中間管理事業というものを進めていくには、経営者の視点というものがもちろん大切でありますし、その経営者の視点というものを考えるときには、市場、マーケットがどうなっていくのかということが、まずは一番大切な条件になってくるということは言うまでもないことだと思います。

 率直にお伺いをいたしますが、今後の農業政策、特に生産調整、そして戸別所得補償はどうなっていくんでしょうか。

林国務大臣 経営所得安定対策等の見直しにつきましては、十一月六日に、与党に中間取りまとめの案をお示ししております。

 この中で、経営所得安定対策については、米の直接支払い交付金については、政策的な課題があることを踏まえまして、経過措置として、平成二十六年産米から単価を削減した上で、平成二十九年産までの時限措置ということにいたしまして、平成三十年から廃止をするということをお示ししたところでございます。

 それから、産業政策である米の支払い交付金について大幅な見直し等を行う一方で、これは公約にもそういう表現をしたところがあるんですが、振りかえ、拡充によりまして、地域政策としての多面的機能支払いの創設等を行うこともあわせて中間取りまとめでお示しをしております。

 米政策については、水田活用の直接支払い交付金の充実を進める中で、その定着状況を見ながら、五年後を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、国が策定する需給見通し等を踏まえつつ、生産者や集荷業者、団体が中心となって円滑に需要に応じた生産が行えるような状況になるように、行政、生産者団体、現場、皆さんが一体となって地道に取り組んでいく、こういうふうに整理をしたところでございます。

岩永委員 そのあたりの整理についてはもちろん存じ上げておるんですけれども、やはり農家の皆さん方、そして現場の皆さん方のきょうの声を伺っていると、どうも農政の先行きというものが見えづらい中での経営というものが非常につらいというようなお話が、私には非常に印象的でありました。

 一つ一つ、こういった声に耳を傾けて、しっかりと根幹となる部分をまずはつくり上げていく、そしてそれに対してどういうふうな施策が必要なのかということをまさに経営感覚を持って進めていただきたいというふうに、まずは冒頭、切にお願いをさせていただきます。

 そして、中間管理事業についての作業の流れ、機構が行う作業の流れについて、局長の方から少し御説明をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 農地中間管理機構の事業の流れでございますけれども、大きく言いまして借り受けのプロセスと貸し付けのプロセスの二つがあると思いますが、この二つが同時並行で進むものというふうに考えております。

 まず、貸し付けのプロセスの方でございますけれども、貸し付けのためには、まず借り受けの希望者を公募する、公募に応じた借り受け希望者のリストをきちんとつくりまして、これは公表するということになっております。具体的な農地が出てきた場合には、貸付決定ルール、これは事業規程ということで機構が県知事の認可を受けてつくりますけれども、このルールに即しまして、先ほどの借り受け希望者リストに掲載をされております借り受け希望者の方と交渉してやっていく。交渉が成立をいたしましたら、農地利用配分計画というものを機構がつくりまして、これも県知事の認可を受けて公告をいたします。これによって権利が移動する、こういうプロセスが一つございます。

 それからもう一方では、借り受けるときのプロセスでございます。

 借り受ける方は、所有者の方から機構に対して借りてほしいという申し入れがあることもございますし、それから機構の方から所有者に対して貸してほしいということを申し入れる場合もございますが、いずれにいたしましても、機構と所有者とが借り受けについての交渉をするということになります。交渉が調った時点で機構と所有者が契約を締結して、その上で、必要な場合には利用条件の整備を機構の判断で実施するということもございます。

 こういった、大きく分けて貸し付けのプロセスと借り受けのプロセスとございますので、この二つのプロセスを同時進行でうまく進めていって、適切なタイミングで機構が一定の土地を借り受けて貸していく、こういうことをやることが非常に大事だと思っておりまして、これによりまして機構に農地が滞留をしている期間をできるだけ短くしていく、こういう発想で考えているところでございます。

岩永委員 これも先ほど参考人からあった意見なんですけれども、非常に大切な意見です。特に、地域の中で出し手と受け手がしっかりと顔を合わせることがまず大切だ、これこそが人と人との関係である、出し手にしてみると、どのような方が借りてくださるのか、その人はどういった人格を持っていらっしゃるのか、本当に先祖代々から受け継いできた農地を大切にしっかりと維持管理してくれるのかというようなところの、本当に人と人との関係性が大切なんだということをおっしゃっていました。そこを大切にしない限り、この制度自体に悪いイメージがついてしまう、地域の中で何となくそういう悪いイメージがついてしまったら、この制度自体がもう一切その地域の中では受け入れられず、前に進まないのではないかというふうな懸念をおっしゃっていました。私もそのとおりだと思いました。

 その中で、受け手側と出し手側がお互い知り合う機会というものがこのプロセスの中にあるのかないのか、可能なのかどうかというところを教えていただきたいと思います。

奥原政府参考人 農地中間管理機構の制度は、基本的に、中間管理機構が所有者、出し手の方から農地をまず借ります。借りた上で、機構が受け手の方に転貸の形で貸すということになっておりますので、基本的には、出し手の方と、最後の受け手の方、これが直接話をするということは想定をしておりません。

 従来の、二十一年の農地法改正で入りました農地集積円滑化団体の場合には、出し手を代理して受け手を探して、その上で契約を締結する、契約のあっせんをするということになりますけれども、こういう組織でございましたので、この場合には、出し手の方と受け手の方が直接接触をするということは当然ありますし、最後に結ぶ契約は、両当事者の契約になります。

 ですが、今回は、出し手の方から見て、貸していただくのはあくまで機構でございます。この機構は県の第三セクター。そういうことで、今回の法律の中でも、ガバナンスを含めて、相当厳しくルールを決めてやっている。信頼できるところでございますので、出し手の方から見れば、今度の機構が公的なセクターである、したがって、賃料を取りっぱぐれる話はまずございませんし、預けている間に耕作放棄地になることもないということを信頼して、まず機構に貸していただく、こういう制度でございます。

岩永委員 今回の法案のプロセスの中では、出し手側と受け手側がお互いに顔を合わせて互いを知り合う機会というものがないというような御答弁だったと思うんですが、やはりそれこそが地域の農村コミュニティーの中では大切なことであって、私が思う中間管理機構の大切な役割というのは、これまで当事者間で結ばれていた契約が、真ん中に機構が入ってくれる、そこには大きな役割があって、安心感が、出し手側にもあるし、受け手側にもある。その意味というものは私はすばらしいと思いますし、それこそがこの中間管理機構の意義だと思うんですが、先ほどちょっと大串委員もおっしゃっていたんですが、まず出し手側からいきなり借り上げるという、ここの意味というのが、私にもどうしても理解ができません。

 民間ですと、お金が動く前に必ず契約をするんです。その前には企画というものがあって、企画書ベースで、お客様に、こういうことを考えています、だからそれに賛同していただけませんでしょうか、わかりましたということで、まずはそこで契約をしっかりとして、それからお金が動いていくというのが、民間では当然の流れです。

 それを、まずいきなり借り上げるということになると、そこには生じてくるリスクがあります。そのリスクというのは、先ほどから出ていましたとおり、機構が借り上げた土地の維持管理をしていかなければならないという経費的なリスク、それともう一点は、受け手が見つからなかったときに、また出し手側にそれを戻してしまう、出した方にしてみると、そんな理不尽なことはないだろうというようなお話にもなってくるし、この二点のリスクがやはりあると思います。

 一点お伺いをしたいのが、機構の維持費、先ほどちょっと御答弁でおっしゃっていたんですが、かかった経費というものは、受け手側に賃料の中で負担をしてもらうといったことでよろしかったでしょうか。

奥原政府参考人 先ほどお答えいたしましたのは、機構が借りている間に、基盤整備のような事業を行うことがあります。特に、土地の区画を大きくするとかいった事業を行ったときに、この費用を誰が負担するかという問題でございます。

 この事業をやるときには、当然、いろいろな補助金を使うことになりますけれども、通常、普通の農家の方がやる場合にも、所有者の負担分というものが、一割とか二割とか、事業によって違いますが、一定の比率がございます。この負担分については、機構が借りている間は機構が肩がわりするというのがまず第一義的な話なんですけれども、それをその後どうやって埋めていくかということでございます。

 その場合に、整備をすることによって、ある意味、その農地の価値は上がることになります。整備前の賃料水準が例えば十アール一万円だとすれば、整備をした後は、その地域の相場から見て、一万三千円の賃料を取れるような農地になるかもしれません。その場合には、機構から受け手の方に貸したときに、受け手の方には一万三千円を払っていただくことになります。機構は、所有者から借りたときは整備前ですから、一万円で借りていることになりますので、三千円の差が出ます。これを何年間かで、最初に機構が肩がわりした経費を埋めていく、そういう話を申し上げました。

岩永委員 基盤整備に係る経費についてはしっかり受け手側に負担をしていただくということですが、では、持っている間の維持管理費というものに対してのリスクというものはどういうふうにお考えでしょうか。

奥原政府参考人 先ほど先生から、事業の進め方がどういうふうになるのかというお話がありまして、そのときに、貸し付けのプロセスと借り受けのプロセス、この二つを同時進行で進めるというお話を申し上げました。

 これは、要するに、農地があるから、まずそれを一旦借りてしまうんだというところからスタートするわけではないということを申し上げているわけです。

 この地域の借り受けの希望者がどのくらいいるか、借りたい人がいて、この方々はどういう農地をどのくらいの面積必要としているか、こういうことを機構がいろいろな意味でよく調べておくということがまずございます。その上で、この地域から一定の農地が出てきそうだというときに、所有者と話をして、そこを一旦機構が借りて、その受けるであろう人に転貸をしていく。

 こういうプロセスですので、この借り受けのプロセスと貸し付けのプロセスを同時進行させて、できるだけ円滑に土地が出し手から機構を経由して最終的に受け手のところまで転貸されるというプロセスにしよう、こういうことでございます。

岩永委員 わかるんです。おっしゃっていることはわかりますし、思いもわかるんですが、ただ、やはり一定期間ずっと保留をしておかなければならない物件というものがそこに発生をするわけですよね。だから、その維持費というものが当然出てくるんです。

 今おっしゃっているようなことですと、これもこの法案づくりの中で出てきた話かもしれませんけれども、例えば登録制というものをとるとか、なぜそこで一旦お金を払って借りなければならないのか。まずは登録をしておいていただいて、それをもとに話が決まった際にはしっかりと借り上げさせていただくというようなこともあり得ると思うんですけれども、そういったことについての御所見をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 実際には、そういう話がいろいろあるんだろうと思います。借りてくれという申し入れがあったからといって、直ちに契約を結んで、借りて、賃料を払うという話には必ずしもなりません。それはそのときの出し手の方々の事情にもよると思いますので、個々のケースごとの判断になりますけれども、申し込みがあったから直ちに契約を結ぶというものではない。やはり、タイミングは機構の方でも相当考えていかなければいけません。受け手が全くない状態であれば、借りてしまってもしようがないわけですので。

 この二つの、貸し付けのプロセスと借り受けのプロセスを同時進行で進めるというのはまさにそういうお話ですので、貸したいという方々はこういう方々がいらっしゃる、どういう土地だということをきちんと登録をしておいて、実際にそれを借りるのはいつにするかは、これは機構がいろいろなことを考慮して判断するという話になると思います。

 したがって、登録をしながらタイミングを見るということも当然あるんだと思います。

岩永委員 では、維持費だけがかかって塩漬けになる土地はないということでよろしいでしょうか。

奥原政府参考人 できるだけ滞留を防止するためにこういった両方のプロセスをシンクロさせることが必要だと思っておりますけれども、これは実際いろいろなケースがあると思いますので、このケースではほっておけば耕作放棄地になってしまうということであれば、とりあえずは借りてしまうことが必要なこともあると思います。その上で、一年あるいは二年持った上で、管理をした上で、まとまった農地にして誰かに貸していくということもございますので、その間の経費を予算要求では計上しているということになるわけです。

 だから、全てが理想的にいくわけではございませんので、こういった、中間的に農地中間管理機構が管理をしている、この時期も当然想定はされます。

岩永委員 ですから、維持費のことについてもお伺いをいたしておりますし、リスクについてどういうふうに考えていらっしゃるかお伺いしているんだということをしっかりと御認識いただきたいと思います。

 もちろん、上手にやっていただくことは大前提ですし、その中でいろいろな知恵を使っていただきながらこれを進めていくということももちろん大切なんですが、そういった、いきなりお金を払って借り上げてしまうというのは民間感覚からしたらやはりずれているわけで、そうしたところに対してのリスクマネジメントというものを行っていかなければならないという指摘をさせていただいております。

 それと、これは最後の質問にさせていただきます。大臣から御所見をいただきたいんですが、これも先ほどの午前中の参考人のお話でもあったとおり、条件のよい土地というのは市場の原理でどんどん集約化は進むんです。やはり中山間地の条件が悪いところの集約化をこの機構によっていかに進めてもらうのかということが現場の皆さんが期待していらっしゃるところですし、そこの腕の見せどころが中間管理機構の存在意義そのものなんじゃないかということをおっしゃっていました。そのあたりについての御認識を最後にお伺いさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。

林国務大臣 例えば中山間地域のような、平地に比べると農地の流動化が難しいところがある。これは当然でございますが、農業者の高齢化、耕作放棄地の拡大ということを踏まえれば、やはり、こういったところでも、農地を農地として有効に利用していくことの必要性は変わらないというふうに考えておりまして、中間管理機構を利用してうまく集積を図っていきたい、こういうふうに思っております。

 かなりいろいろな工夫を凝らす必要がある、こういうふうに思っておりますのは、中山間地域の場合、担い手、それから借り受け希望者がなかなかすぐに出てこないだろう、こういうふうに思います。例えば、ほかの地域の法人やリースで参入したい企業の積極誘致など、受け手の拡大を発掘する、営業をかけるということですね。それから、放牧地としての活用を考えてみてはどうか。それから、都市住民の市民農園として活用を検討したらどうか。それから、新規就農者の研修農場として活用したらどうか。こういういろいろな工夫をしながら、流動化を機構によって推進していくことが必要であるというふうに考えております。

岩永委員 以上で終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 まず初めに、本法の目的についてお伺いしていきたいと思います。

 午前中の原田参考人から、遊休農地対策との関係で懸念が示されましたので、私は、その点をまず初めにお伺いしたいと思います。

 まず、もう一度原田参考人の陳述を振り返ってみたいと思いますけれども、中間管理事業の性格について、構想の当初の段階では遊休農地対策の側面も強調されましたが、法案ではその側面はかなり後退しているように見えますということを述べておられました。

 この遊休農地対策については、農地法の一部の改正ということで対応されると思うんですけれども、本法の一条の目的条項を見ると、やはり集積化をいかに進めていくかということに力点が置かれているというか、一条の中ではその点だけが規定されていて、遊休農地対策については書かれていません。

 本法の目的と遊休農地の対策の関係について、本法の目的に含まれるかどうか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 今の遊休農地の解消についてでございますが、本法の目的規定の一条に、「この法律は、農地中間管理事業について、」云々とあって、「農業への新たに農業経営を営もうとする者の参入の促進等による農用地の利用の効率化及び高度化の促進を図り、もって農業の生産性の向上に資することを目的とする。」こういうふうにしておりまして、遊休地の活用というのも、この「参入の促進等」の「等」によって読み込む、こういうことでございます。遊休農地の発生防止、解消等を進めるということも、管理機構では目的としておるわけでございます。

 特に、同じく御提案させていただいております農業の構造改革を推進するための農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する等の法律案で農地法を改正するようになっておりますが、遊休農地対策に機構をそこで位置づけております。遊休農地の所有者に対して、機構に貸す意向があるかどうかを調査することから始めまして、機構への貸し付けを誘導するということ、そして、最終的には都道府県知事の裁定で機構に利用権が設定されるようにする、こういう措置を講じておるところでございます。

村上(政)委員 大臣から一条の読み方について御解説があったと思うんですが、「もって」ということで、「農用地の利用の効率化及び高度化の促進を図り、もって農業の生産性の向上に資することを目的とする。」ということで、やはり生産性を向上させるということがありきというか、それが大きな目的であって、それに従属する形で遊休農地を減らしていくというふうな規定であって、原田参考人が午前中に述べておられたように、やはり構想の段階からは遊休農地の点が若干後退したのではないかというふうに思います。

 もう少しはっきりと一条の中で遊休農地をどうしていくかという点について規定してもいいのではないかなと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

林国務大臣 先ほどもちょっと触れましたように、遊休農地の発生防止、解消対策、このことは農地法の方に規定をされております。今回も、農地中間管理機構をこの法律の中で活用するということは農地法の中で具体的に規定をしているところでございますので、農地中間管理事業の推進に関する法律の方の目的に遊休農地対策を明記するというところは適当ではない、こういう整理でございます。

村上(政)委員 次は、中間管理機構が対象とする農地について、どのような考え方であるかについてお伺いしていきたいと思います。

 私は、前回質問に立たせていただいたときに都市農業について取り上げさせていただいたんですけれども、大阪は、園芸農業を中心として、都市農業が中心の地域になっております。そういうところでは、今回の対象にならないというような農地がたくさん出てまいります。

 この法案を見てみると、第二条の第三項で、機構の事業は、農業振興地域の整備に関する法律の規定により指定された農業振興地域の区域内に限るというふうに定められておりますけれども、そのように区域を限定している理由というのはどこにありますでしょうか。

奥原政府参考人 先生御指摘いただきましたように、農地中間管理事業の推進に関する法律の第二条第三項でございますが、機構は農業振興地域の区域内で事業を行うこととされております。

 この農業振興地域といいますのは、自然的経済的社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域でございまして、具体的には、農地が集団的に存在をしている、その地域内の農業の生産性の向上やその他の農業経営の近代化が図られる見込みが確実である、それから、土地の農業上の利用の高度化を図ることが相当である、こういった要件を満たす地域ということにされております。

 今回の農地中間管理機構は、農地の利用の効率化及び高度化の促進を図るということでございますので、この趣旨との関係におきまして農業振興地域に対象を限定している、こういうことでございます。

 なお、従来ございました農地保有合理化法人、そこのやっております農地保有合理化事業、これにつきましても、法律上、同じように、農業振興地域の限定があったところでございます。

村上(政)委員 今までるる議論されてきた点は、使い勝手のいい制度であったり、現場で頑張っておられる農家の方たちがさらに農業をしやすくする環境を整えていくという点に本法がやはり寄り添っていかなければならないという点、質疑の中で多くの方が述べてこられた点だと思います。

 そういった現状を考えると、大阪に限らず、都市農業、大都市の周辺での農業でも、それぞれの都道府県が、農地の集約化に向けて今まで賃貸借を進める上で、さまざまな取り組みをしてきたんだと思います。そういう事情を踏まえれば、やはり農業振興地域以外のところを対象としないというのは、農業振興地域区域外の農地を切り捨てることになってしまうのではないかというふうに思います。都市農業の実態も踏まえて、柔軟にその区域を考えるといった考えはおありでしょうか。

奥原政府参考人 農業振興地域以外の農地がどういうところかといいますと、多くは市街化区域になっているところでございます。市街化区域につきましては、農地の転用につきましても、許可制ではなくて届け出制になっている。要するに、届け出をすれば農業用の土地以外のことに使える、そういうことでございます。

 今回の農地中間管理機構は、先ほどからいろいろ御議論いただいておりますが、国費も投入して担い手へ農地を集積、集約化する、こういったことをやる組織でございますので、市街化区域の農地につきまして、国費を投入してそういった集約を図ることは適当ではないのではないかというふうに思っております。

 ですが、そういったところにつきましても、従来の制度で農地の流動化を図る手法はございます。農業委員会のあっせん制度もございますし、それから、二十一年の農地法改正でつくりました農地利用集積円滑化団体もございますので、こういったものを十分御利用いただきたいというふうに考えております。

村上(政)委員 市街化区域内の農地に国費を投入するのは適切ではないという御答弁でしたが、その理由というのはどういうところなんでしょうか。

奥原政府参考人 今もお話しいたしましたように、農地の転用につきまして、市街化区域については、許可制ではなくて届け出制で転用ができる、こういう点でございます。

村上(政)委員 なかなか難しい点もいろいろあるんだと思います。

 次は、都道府県と今回の中間管理機構の関係についてお伺いしていきたいと思います。

 さまざまな都道府県がこれから目標を設定していくということになると思うんですが、やはり目標を設定する際に、それぞれの都道府県が実情に応じて自分たちの目標を設定できるというふうな仕組みであったり制度であるということが必要になってくると考えます。

 そうしたときに、やはりそれぞれの都道府県では非常に事情が異なってくる。例えば、担い手の問題であったり、それから面積の問題であったりということで、事情が異なってくるんだと思います。

 午前中の参考人のお話の中でも、例えば藤岡参考人が認定制度ということについて触れておられましたが、大阪でも、面積は非常に小さいけれども、準農家制度という仕組みをつくって、大阪で独自に認定農家をつくるというふうな取り組みをやっております。

 そうした地方の実情に応じてそれぞれの都道府県が目標を設定できるように、全国一律のハードルを設けずに、柔軟な対応にしていくということが必要だと考えるんですけれども、お考えはいかがでしょうか。

奥原政府参考人 この農地中間管理事業の推進に関する法律案の中では、都道府県知事が基本方針を決めるということにされております。この基本方針の中で、効率的かつ安定的な農業経営を営む者が利用する農用地の面積の目標その他農地中間管理事業の推進により達成しようとする農用地の利用の効率化及び高度化の促進に関する目標、こういったものを定めるということになっております。

 御指摘いただきましたように、都道府県ごとに農地をめぐる状況はかなり異なっているというふうに思っております。したがいまして、都道府県が基本方針の中で目標を定める際にも、全国レベルの目標を念頭に置いていただくことは必要だとは思いますけれども、それぞれの地域の実情を踏まえて現実的な目標の設定が行われるべきものというふうに考えております。

 したがいまして、全国一律のやり方、一律のハードルといったことにならないように、そこは十分留意をしたいというふうに考えております。

村上(政)委員 全国一律のハードルにならないように留意されるということに向けて、具体的にはどのような取り組みをお考えでしょうか。

奥原政府参考人 そこは、各都道府県で、それぞれ自分のところではどういうやり方が一番いいかをいろいろお考えいただくということですので、国の方からいろいろ示してしまえば、それは地域の特性が生かせないことになりますから、大枠は国の方でお示しをすることがあるかもしれませんが、その中で、各県の実情を踏まえて、自主性を持って、創意工夫でつくっていただく、こういうことだと思います。

村上(政)委員 各都道府県は、やはり目標設定が自分たちの考えであったり実情を踏まえたものの中で設定できるのかどうかということを非常に心配しているところも多いと思いますので、今の局長の御答弁で、都道府県の心配というのはある程度緩和されたのではないかと思います。

 もう一つ、それぞれの都道府県に対する負担の面でお伺いしていきたいと思います。

 最初は、全額国費で賄うというふうな話が出ておりました。こうした中、先日の新聞報道では、都道府県に応分の負担、二分の一を求めるという旨の記事が出ました。また、全国知事会においても、本制度の推進に伴う地方の負担増に対して、全額国費で財政措置すべきではないかというふうな意見も出ております。

 私は、何でもかんでも国でお金を出せばいいという考え方ではありませんけれども、やはり非常に大きな予算を使って進めていく制度ですので、都道府県との間で信頼関係といいますか、どれぐらいの負担というものがそれぞれの都道府県に対して求められるのかということは、きちんと地方公共団体に対して説明があってしかるべきですし、農水省の方からも、どれぐらいの負担を次の年度に向けて都道府県にお願いするのかということについてはしっかりとした御説明があってしかるべきだと思うんですけれども、この点はいかがお考えでしょうか。

江藤副大臣 委員の御指摘は、地方を考えると、まさに的を得た、いい質問だと思います。

 正直が取り柄の私ですから、正直にお答えをいたしますが、最初は全額国費でということで頑張ろうというふうに思っておったんですけれども、なかなか、いろいろな御意見がありまして、これから地方と国が一体的になって事業を進めるに当たっては、地方の御負担も多少していただいた方が、ともに力を合わせてやっていくという構図の中では適切なのではないかという議論があります。

 しかし、これを余りに地方の負担分、国の負担が六百五十五億ですから、例えばこのうち相当額を地方負担ということになると、これはかなり重たいものになってしまいますので、我々農林水産省としては、これから予算編成のプロセスの中で財務とやらなきゃなりませんけれども、一生懸命頑張って、地方の負担ができる限り軽くなるように、国の負担分が多くなるように頑張っていこう、決意表明ぐらいにしかなりませんけれども、お答えさせていただきます。

村上(政)委員 副大臣から率直な御答弁があって、感謝したいと思います。

 私が申し上げたかったのは、地方に負担を求めるということ自体はあってもいいんだと思います。ただ、求めるのであれば、最初から、二分の一であれば二分の一お願いしますよと、それで、そういった方針が堅持されていくというのであれば、それぞれの都道府県も安心して予算を組んでいくことができるんだと思うんですけれども、やはり、最初に全部国でやると言われていたのに、後で話が変わってきて、地方にもお願いしますということであれば、各都道府県あるいは現場でも混乱が生じるし、非常に心配しているところも多いんだと思います。そういった、話が変わってきて、信頼関係にちょっと今問題が生じているのではないでしょうかということを申し上げたかったということです。

 例えば、私の大阪でいいますと、農業の予算というのは非常に限られて、小さくて、そういう限られた予算しかございませんので、地方で負担をしろという話がございましたら、今の多くの施策を中止してそういった費用を回していかないといけない、そういった現状がございますので、副大臣から今御答弁がありましたけれども、やはり、どの程度の負担が必要かということをきっちりと国の方でお示ししていただいて、都道府県に安心してもらうということが必要なんじゃないかなというふうに思います。

 最後に、これはもう何度も質問が出ている点ですけれども、やはり、塩漬けになってしまって、それまでに投入された管理費が無駄になってしまうおそれがあるのではないかという点です。

 事業を実施していく中で、貸し付けの見込みがなくて、賃貸借契約を解除した場合、再び遊休農地になってしまって、せっかく管理費を投入したのに、管理費を投入して農業ができるような環境を整えたのに、その費用が無駄になってしまうというおそれがあるのではないかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

江藤副大臣 たびたび御指摘をいただいている点でありますけれども、全く受け手がいないところではそもそも借り受けをしない。そして、先ほど質問が維新の先生からもありましたけれども、登録をして、いつの時点で契約を結ぶか。それはやはり、受け手がある程度見込みがつかなければ、リース料を支払うという段階に至らないわけであります。

 解除するような規定も法律の中には書いてありますけれども、これは、解除することをまず念頭に考えているんじゃなくて、解除することも可能だけれども、そういう事態に至らないように、サプライ・アンド・ディマンドのバランスをきちっととっていく、そのために人・農地プランもあるわけであって、機構内での役員構成、それから職員構成も、地域の実情をよくわかった人たちに構成していただく、そういう努力をしていくことが肝要だと考えております。

村上(政)委員 幾つかの点から質問させていただきましたけれども、やはり、現場であったり、あるいは都道府県が非常に使いやすい制度であるようにしていただくということを改めてお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時散会


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