衆議院

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第8号 平成26年4月10日(木曜日)

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平成二十六年四月十日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    池田 道孝君

      石崎  徹君    小里 泰弘君

      加藤 寛治君    川田  隆君

      菅家 一郎君    清水 誠一君

      末吉 光徳君    鈴木 憲和君

      武井 俊輔君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      橋本 英教君    福山  守君

      堀井  学君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    篠原  孝君

      玉木雄一郎君    寺島 義幸君

      鷲尾英一郎君    岩永 裕貴君

      鈴木 義弘君    村上 政俊君

      稲津  久君    濱村  進君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      畑  浩治君

    …………………………………

   議員           大串 博志君

   議員           玉木雄一郎君

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   経済産業大臣政務官    田中 良生君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中山 泰則君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  高橋 みほ君     村上 政俊君

同月十日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     石崎  徹君

  寺島 義幸君     篠原  孝君

  樋口 尚也君     濱村  進君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     菅家 一郎君

  篠原  孝君     寺島 義幸君

  濱村  進君     樋口 尚也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出第五〇号)

 農業者戸別所得補償法案(大串博志君外六名提出、第百八十三回国会衆法第二六号)

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第六号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第七号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出、衆法第八号)

 農林水産関係の基本施策に関する件

 派遣委員からの報告聴取


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官松島浩道君、生産局長佐藤一雄君、農村振興局長三浦進君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君及び経済産業省大臣官房審議官中山泰則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。清水誠一君。

清水(誠)委員 自民党の清水誠一です。

 きょうは、私と、それから九州・宮崎、武井先生と二人で、南北から、今回のEPAの大筋合意をしたということに関して質問してまいりたいというふうに思います。

 今回の合意内容というのは、牛肉の関税下げ、これが一番大きな問題点であります。特に、今月に入りましても、このEPAに関しては、各農業団体を初めとして、何とか自分たちの生活を守らなきゃいけない、酪農、畜産を守っていかなきゃいけない、そういうことで、このEPA合意についてはやはり反対ということを打ち出してきたところであります。

 特に、この問題につきましては、平成十八年十二月の衆参の農林水産委員会、これは大変な決議をした次第であります。農業団体はもとよりでありますが、私たちもこの国会決議というのは重く受けとめておりましたし、また、この決議が守られることによって、今大変厳しい環境にあります酪農、畜産業界、この人たちが、将来に夢を持ちながら、もう少し頑張っていこう、次の時代につなげていこう、そんな思いで来たということは事実だというふうに思います。

 しかし、今回、このような大筋の合意ということで、特に牛肉の関税、当初我々は関税から除外されるだろうというように思っておりましたし、また、合意内容というのは、到底、想像を絶する大幅な引き下げになっている。これは冷凍、冷蔵、どちらも同じだというふうに思います。

 ここで林大臣に伺いますが、今回合意をいたしました関税引き下げは、これはもう本当に、廃業を余儀なくされるぐらいの大変厳しい内容であります。そのようなことで、まず、衆参農林水産委員会で決議をした、これの整合性について最初に伺いたいというふうに思います。

林国務大臣 日豪EPAにつきましては、二〇〇七年の四月に交渉開始をして以来、いわゆるケアンズ・グループの中心でありまして、農産物の大輸出国である豪州からの全品目の関税撤廃、この要求に対して、衆参両院の農林水産委員会の今お触れになりました決議を踏まえて、政府一体となって、交渉期限を定めず、粘り強く全力で交渉を行ってきたところであります。

 その結果ですが、決議に明記されている、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖について、豪州側から一定の柔軟性を得たために、交渉を中断せずに継続し、今回大筋合意するに至ったところであります。

 特に牛肉については、関税撤廃を強く要求する豪州と粘り強く交渉をした結果、まず冷凍と冷蔵の間に差を設ける、四%でございますが、それから、現状以上の輸入量となったときに関税を現行水準に戻す効果的なセーフガード、それから、長期の関税率の削減期間、こういう確保ができて、一定の柔軟性が得られました。国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となったところでございます。

 今後、本協定締結の効果、影響に留意しながら、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、肉用牛経営を初めとする農畜産業について、構造改革、それから生産性の向上による競争力の強化を推進してまいるところでございます。

 政府としては、このように、衆参両院でお決めいただいた農林水産委員会の決議の各号を今それぞれお話をしたとおりでございますが、これを踏まえて、真摯に交渉を行いまして、国内農林水産業の存立及び健全な発展と両立し得る合意に達することができた、こういうふうに考えておりますが、今回の合意内容と決議との整合性については、最終的には決議をお決めになっていただいた両委員会に御判断をいただくもの、こういうふうに考えているところでございます。

清水(誠)委員 正直申し上げまして、きのうのきょうですから、影響がどのようになるのかということについては、今その評価は多分できないと思いますけれども、間違いないのは、このEPAの合意によって、現在、後継者もいない、経営も非常に厳しい、さらに飼料についてもやはり高騰が続いている、この大変な状況ということを考えていったときに、今から牛肉が下がるとか、あるいは市場が下がるとか、そういうような意味の影響ではなくて、農家自身の営農意欲を完全になくしてしまう、この影響が出ることだけは間違いないというふうに思います。

 そして、今日、またTPP再交渉ということで、閣僚交渉がきょうから始まるということになっておりますけれども、今回EPAが大筋で合意をしたということで、日米間のTPPにやはり連動していくんじゃないか、こういうようなことを危惧する人は大変多いわけです。

 ですから、オーストラリアでも、最初は関税ゼロからスタートした、何とかそこまで持ち上げた、セーフガードも取りつけたというようなことでありますが、よもや日米間のTPPもこのような状況になるということになりましたら、もう日本の酪農あるいは畜産は壊滅状況に追い込まれるのではないかというように思います。

 この点についてはどのようにお考えでしょうか。今後の進展方向ですね。

林国務大臣 日豪EPAと、TPPについての影響いかんということでございましたが、まず、日豪EPA交渉は、二〇〇七年に交渉が開始されまして、七年間の長きにわたって交渉してきたわけですが、TPPは、二〇一〇年に始まって、我が国の参加は二〇一三年からでございまして、基本的には、全く別の交渉であるということであります。

 日豪EPA交渉の合意内容いかんにかかわらず、御案内のように、TPP交渉は、我が国のほか十一カ国が交渉に参加しておりますので、それぞれ合意に至る必要がある、こういうことでございます。

 したがって、日豪EPA交渉の合意内容がTPP交渉へどのような影響を及ぼすかをあらかじめ申し上げることは非常に困難である、こういうふうに思っております。

 TPPに関して、我が国の具体的交渉方針、中身は差し控えさせていただきますが、まさに衆参両院の農林水産委員会の決議をいただいておりますので、繰り返し申し上げておりますが、国益を守り抜くように全力を尽くす考えであります。

清水(誠)委員 この問題は新たな問題だということですけれども、TPPに関しましても、決議内容は日豪のEPAと大体同じような内容なんですね。ですから、再協議に付す、あるいは柔軟な対応をしてきたというようなことになれば、同じような状況が生まれるのではないかということで、この問題については、やはり国内の酪農、畜産業全ての問題だということで、これ以上一歩も許してはいけない。

 もちろん、日豪EPAについても、今後の影響、それから対策、こういうような状況の中で、本当にこれが最終的に批准できるかどうかというのは、これは委員会に委ねられたということでありますので、TPP交渉に関しましては、今の現状を十分に把握して交渉に臨んでいただきたい、そのように思います。

 もとより、今、日本国内の酪農、畜産業全体という形での話でありますが、私も北海道出身でありますので、北海道の事情について若干話をさせていただきたいと思います。

 北海道では、現在、毎年およそ二百戸ぐらいが廃業を余儀なくされる、離農している、これに歯どめがかからないという現状です。その理由の多くは、子供に希望を持って継がせることができない。親の労苦を見ており、親の跡を継いで子供が就農できない。もう一つ大変な状況というのは、酪農をやっていたら花嫁さんが来ない。そういうようなことで、後継者が育ってきていないというのが離農の大きな理由だ、こういうぐあいに言われております。

 平成十一年に策定した新たな酪農・乳業対策大綱、これがおよそ十五年経過いたしましたが、乳価ですとかあるいは補給金ですとか、こういうものを一年一年決めていくというような形になっておりますので、これは、昨年来、私自身も言われておりますけれども、やはり持続可能な、中長期を見据えたような計画、こういうものをつくらなければいけない、このように言われておりました。

 現在、酪肉近代化基本方針、これは平成二十二年から十年間ということですから、平成三十二年に向けての基本方針、基本計画をつくっておりますが、ちょうど今年度が五年目の改定の見直しというような時期に入っておりますので、今後、この基本方針についてはさらに論議を詰めていかなければいけません。

 その中で打ち出されているのが、所得補償制度を導入していこうということで、中期計画あるいは長期計画、計画は計画ですけれども、こういう具体的な政策としての所得補償制度導入、これは、まさに、今回、こういうようなEPA問題を含めて、真剣な酪農、畜産対策ということで、この問題を今後考えていかなければいけないんじゃないかというように思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。

江藤副大臣 委員は、昨日は部会の方でも御発言をいただいて、ありがとうございました。

 私の方からお答えをさせていただきますが、その基本方針につきましては、今年度中の見直し、前回は平成二十二年ですから、民主党政権下で行われまして、その中で、戸別所得補償を導入することを検討するというような、具体的な内容には触れておりませんが、前政権下のもとで、所得補償についても確かに触れられております。

 しかし、先生も思い返していただきますと、我々は、基本的に、ゲタ、ナラシ、それから将来的な収入保険、そして中間管理機構であったり、農業の構造改革をすることによって農業の生産性を上げていく、所得を向上させていくという方針を今示しておりますので、畜産の世界に所得補償を導入することについては、党内でもさらなる議論が必要だろうと思います。

 しかし、だからといって、全ての政策のオプションをこの場で否定するようなつもりはございません。ございませんが、ただ、我々の党の方針として、戸別所得補償から、いわゆる共同活動に対して支払う維持支払いであるとか資源向上支払いに今シフトしておりますので、そことの政策の整合性をぜひ一緒に、胸襟を開いて議論させていただければというふうに思っております。

清水(誠)委員 時間が来たので、終わらなきゃいけませんけれども、今の水田・畑作経営所得安定対策というようなことでありますが、同じように、酪農、畜産業についても、特に酪農、乳用の雌牛ですね、しかし、そこから生まれてくるぬれ子に対しては、副産物だということで、所得という概念を今は持っていないというような事情でありますので、ぜひこの酪農、畜産についても、やはり経営安定所得対策と同様な考えでもって、これを一つの方針の中に入れ、今後議論を進めていきたいというふうに思います。

 いずれにいたしましても、大変厳しい環境の中での新たな大筋合意というような、本当に劇的な問題、課題ができてきたということでありますので、今後さらに議論を詰めて、今後の対策、それから今の対策を考えてもらいたいと思います。

 どうもありがとうございました。

坂本委員長 次に、武井俊輔君。

武井委員 自民党の武井俊輔でございます。

 先ほどの清水先生に引き続きまして、九州代表ということで御指示をいただきました。質問をさせていただきます。

 畜産県でございます我が宮崎県におきましても、この日豪EPAは大変大きな関心が寄せられております。きのうも、地元の皆さん、多くの皆さんといろいろと意見交換をいたしたのでございますが、さまざまな報道、特に日本農業新聞なんか毎日いろいろな形で書かれまして、例えばこういった、国内産地に打撃みたいなことが書かれますと、農業者の皆さん、畜産の皆さんは当然とっていらっしゃるわけですから、非常に大きなショックを受けていらっしゃる。

 その中で、私が一番心配なのは、やはり畜産を取り巻く状況も大変厳しくなるので、もうこれは廃業しようか、息子に後を継がせようかと思うちょったけれども、もうやめようかなといったようなお話も聞くんです。だけど、それでもやっぱり、与党で、自民党、公明党でしっかり頑張ってくれんと困るとよと。つまり、それでもやはり私たちに託していただいている、このふるさとの皆様の思い、気持ちというものを鑑みますと、本当に涙が出るような思いでございます。

 先ほど、清水先生の質問にも、今後しっかり臨んでいくという大臣の強い思いもございました。冷静に見てまいりますと、セーフガードのこととかさまざまな手当てもございますし、全中の万歳会長も、交渉の最終局面において、林農水大臣を初め政府関係者は、ぎりぎりの交渉を粘り強く行ったと受けとめているといったコメントをされております。

 ですからこそ、今回のこの交渉の内容、結果を、つまり報道は毎日非常に厳しいことを書いているわけですので、より正確に丁寧に説明をしていく。それが、まず、大変重要だと思っております。

 私たちの同年代、今私は三十九でございますが、今回、牛肉について言いますと、現行の三八・五%、冷凍で十八年目に一九・五、冷蔵で十五年目に二三・五ということでございますが、そういたしますと、まさに私たちの同じ世代の人間が、この日本の畜産の柱になって支えるときに向けて、ずっと関税が下がってくるということになるわけでございます。

 我々の世代は、こうした新聞だけではなくて、インターネットも含めていろいろなものを駆使する世代でございますから、ぜひさまざまな手段を使っていただいて、今回の措置の目的を極力丁寧に広報というかお知らせしていくということ、それによって、農業者の皆様への理解、そしてまた、ああ、続けていけるんだな、私もまだ頑張れるっちゃなと思っていただくような努力を極力していただく必要があると思いますが、政府としてどのように取り組んでいかれるのか。これは、私のふるさとの先輩であり、また畜産農家とともに歩んでこられた江藤副大臣にお伺いしたいと思います。

江藤副大臣 同郷のよしみで御指名をいただきまして、ありがとうございます。

 最初、この報道がなされたときに、新聞はドラスチックに書きますから、一九・五という数字をどんと書くわけですよ。十八年後でセーフガードが終わって、セーフガードの内容も評価してくれる新聞もありましたけれども、なかなかそれも少ない。

 あれから、一日、二日たったわけでありますが、随分私の周りの空気が変わってきたのを感じています。正直、最初はかなりがががっという反応がありましたけれども、詳細を見るにつけて、まだ怒っている方もいらっしゃいますよ、不安な方もいらっしゃいますよ。しかし、随分と雰囲気は落ちついてきました、宮崎の方も、やっていけるという雰囲気が出てきました。

 しかし、委員がおっしゃるとおり、いわゆる、末端という言い方は私は嫌いなんですけれども、本当に、現場で仕事をしている方々のところにまでそのインフォメーションが届かなければ、我々はその責任を果たしたことにならないと思っています。

 大臣も私も政務官も、もちろんその仕事は負わせていただきますし、政府の方でも、わかりやすいQアンドAであるとか資料であるとか、そういったものはつくる指示をしておりますので、徹底したもの、どういうものであるか、まず内容を、決して都合のいい説明をするのではなくて、事実に基づいた正確な内容の説明をする努力をすぐにでも始めるつもりでおりますので、またお知恵をかしていただきたいと思います。

武井委員 ありがとうございます。やはり、これで大丈夫なんだと。確かに、今副大臣がおっしゃったとおり、きちんと説明していけば御理解いただける部分はたくさんあると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 しかし、そもそも日豪EPA自体につきましては、これからまた各会派の皆さんの質問もあろうかと思いますが、これもずっと、先ほど大臣からもありましたとおり、民主党政権も含めて継続的に取り組まれてきた案件でございます。

 これは、平成二十二年六月七日の日豪経済委員会、当時の岡田克也大臣のスピーチでございますが、これは外務省のホームページにも掲載されておるんですけれども、ここで当時の岡田大臣は、日豪EPAは、日豪互恵という二国間の文脈を超えて、地域の経済統合をさらに進め、将来にわたる地域の平和と繁栄を確保する戦略的な重要性を持っている、センシティブ分野への対応をどうするかという困難な問題はありますが、この点については、きのうクリーン貿易大臣とも話し合いました、民主党政権としても、優先課題の一つである、引き続き、大局的な観点から、日豪EPAの締結に向けて尽力していきたいと思うといったようなことも述べてこられたわけであります。

 ですから、そういう意味で、こうしたさまざま政権がかわっても、引き続き取り組んできた案件に、こうして一つの方向性を出したということ、これは、今後、また国会決議のお話など先ほどありましたから、委員会でもこれから議論はもちろんどんどんされていくべきでありますけれども、やはりその意味、意義ということは、TPP交渉の状況、その他を含めましても、総合的に考えて、理解をしていかなければならないのではないだろうかと思っております。

 引き続き、お伺いをいたしたいと思います。

 昨日、私どもの自民党の部会でいただいた、農水省から出た牛肉の供給量という資料がございまして、これを見ますと、平成二十四年度で、国産牛が三十六万トン、それに対して、米国産が十三万二千トン、オーストラリアが三十万八千トンとあるわけでありますが、国産牛はこの緑のところなんですけれども、国産牛の推移だけ見ますと、十年前の平成十六年でも三十五万六千トンと、大体ほぼ一定をしているわけであります。米国についてはBSEの輸入停止などさまざまな変遷もあったわけですが、国産の供給量はほとんど変わらず、言ってみれば、アメリカとオーストラリアの割合が変わっている、上がったり下がったりしているということなんです。

 しかし、今度はこういう形で関税を下げるということになるわけですから、輸入量の絶対量の増加というものが当然懸念をされてくるわけですが、まず、そのあたりの影響をどのように分析されているのか、お伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ありましたように、昨日出しました資料をベースに申し上げますと、豪州産の牛肉につきましては、主に米国産牛肉と強く競合しておりまして、国産のホルスタイン種の牛肉とも若干競合するというような関係がございます。

 実際、近年、月齢条件の緩和等によりまして、先ほど先生の方からお話ございましたように、米国産牛肉の輸入が回復しておりまして、豪州産牛肉の輸入が減少しておるといったような状況がございます。今後どうなるかということでございますが、やはり、今の傾向というものが続きまして、アメリカ産と豪州産とのシェアの取り合いといったようなことが起こってくるのではなかろうかというふうに考えているところでございます。

 こうした中で、今般の大筋合意におきましては、牛肉の関税削減のパッケージの中で、現状以上の輸入量となったときには、関税率が現状の三八・五に戻るといったような効果的なセーフガードが盛り込まれておるところでございまして、まずは、やはりアメリカ産と豪州産との置きかえが出てくるというふうに考えているところでございます。

武井委員 もちろん、セーフガードが発動されるという措置がとられているわけですけれども、当然、そのセーフガードが発動されるまでの部分というのは低い関税で入ってくるわけですから、もしこれが全く変わらないということであれば、言ってみれば何の問題にもならないということでありまして、このような懸念が広がっているということには、当然絶対量がふえてくる、すなわち国産の牛肉が影響を多く受けるのではないかという懸念があろうかと思いますので、先ほどの質問で、影響、また説明という話も申し上げましたが、極力丁寧に、そのあたりも含めて分析、影響の評価をお願いしたいと思います。

 最後にお伺いをいたしますが、先ほど清水先生からもありましたが、酪農及び乳用牛生産の近代化を図るための基本方針、農水省が出している冊子、今後の十年間の指針となるものを五年ごとに出すというものでございまして、まさに今、これが今後の十年に向けてつくられている段階にあるということでございます。これは、まさに日本の畜産の基本となるものでございますから、時期的には、ちょうどいい時期にこれがつくられると思うわけです。

 最後に、大臣にお伺いをしたいと思いますが、今後、このような畜産を取り巻く情勢というものが大変厳しいものがある、さまざまな国際情勢も変わっていく、その中で、畜産の未来をどのように描いていくのか。本当にこの基本方針は大事だと思うんですが、日豪EPAという新たな状況の変化も踏まえ、この基本方針にどのような思いを込めて畜産の未来を描いていこうとお考えなのか、御決意をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 先ほどお答えしたように、今回の合意内容は、豪州側から一定の柔軟性を得ることができた結果、我が国酪農、畜産業の存立、健全な発展を図っていけるような内容である、こういうふうに考えております。

 畜産業、これは、食料生産という本来の役割に加えまして、飼料生産による水田の有効利用等を通じた農地や環境の守り手であるという性格もありまして、やはりさまざまな機能がある、こういうふうに思っております。

 今、武井委員がおっしゃったように、国際的な穀物需給の不安定化もあります。いろいろな国際的な環境の変化がございますので、そういう中で畜産業の役割や機能を維持発展していくために、まず、輸入飼料への依存体質、これから脱却をしていかなければいけない。自給飼料の有効活用によって経営体質を強化する。それから、農地の活用によって自給率の向上、それから環境負荷の低減、こういうものが図られた生産構造の実現、そして個々の畜産農家による労働力不足を補う酪農ヘルパー、それからTMRセンター等、酪農家を取り巻く外部、仲間でありますが、酪農家の周りの方という意味で外部組織、こういう方を含めて、地域ぐるみで収益力の向上に取り組んでいく、これが大変大事なことだ、こういうふうに思っております。

 農林水産省としては、二十七年の春ごろの策定を目途に、新たな酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針について既に検討を開始いたしました。新たな基本方針の中でも、目指すべき生産構造を明確にして、そしてその実現に必要な構造改革を加速化していきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

武井委員 ありがとうございました。

 来週、私ども宮崎は、牛の競り市があるんですけれども、そういった中で、どんなに厳しくても、私たちに温かい言葉をかけていただいて、政治を、政府を、農水省を、頑張ってと応援していただく、本当に多くの皆様がいらっしゃいます。

 先ほど大臣から御決意がございましたが、常に農業者の皆様とともにある農水省として、今後も、さまざまな交渉、そしてまた、しっかりとお伝えをしていただく努力を重ねてお願い申し上げまして、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

坂本委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津でございます。

 きょうは、日豪EPAの交渉の大筋合意ということで、以下、順次伺ってまいりますけれども、先ほど来、合意の概要についてのやりとりもありましたので、前段の言葉は省略して、すぐ内容に入っていきたいと思います。

 最初は、日豪EPAは、これまでの国会決議を今回の大筋合意は踏まえたことになるのかどうかということについて、まず伺っておきたいと思っています。

 総理も、これまでの国会での答弁、特に本会議、今国会でもこういう答弁がありました。決議をしっかり受けとめ、国益にかなう最善の道を追求するよう交渉に取り組む。それから、林大臣も、先般私が、酪畜対策について、特に酪農関係の質問に対して、EPAのことについて、交渉期間は定めない、決議を踏まえて粘り強く交渉する、このように答弁をなさったのはつい先日でございました。

 今回の大筋合意というのが国会決議を踏まえたことになるのかどうか。まず、この点を大臣にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 先ほど清水委員にもお答えをしたところでございますが、二〇〇七年四月の交渉開始から、農産物大輸出国でありますオーストラリアから、まず全品目関税撤廃しろ、こういう要求でございましたが、この委員会での決議を踏まえて、政府一体となって、交渉期限を定めずに粘り強く、七年間全力で交渉を行ってきたところでございます。

 この結果、決議に明記されている米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖について、豪州側から一定の柔軟性が得られたため、交渉を中断せずに継続して、今回大筋合意するに至ったところでございます。

 冷凍、冷蔵の間に四%の税率差を設ける、それから、セーフガードを設けて、現状以上の輸入量となったときに今の三八・五%に関税を戻すという効果的なセーフガードを措置した、それから、長期の関税率削減期間を確保した、こういうことなど、一定の柔軟性が得られたということで、国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となったと考えております。

 本協定締結の効果、影響、今後はこの効果、影響に留意しながら、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、肉用牛経営を初めとする農畜産業について、構造改革、それから生産性の向上による競争力の強化を推進してまいりたい、こういうふうに思っております。

 申し上げましたように、真摯に決議を踏まえて交渉を行ってきたわけでございまして、その結果、国内の農林水産業の存立と健全な発展、両立し得る合意に達することができたと考えておりますが、決議との整合性については、最終的には両委員会における御判断をいただくもの、こういうふうに考えておるところでございます。

稲津委員 実は、けさ、もう一回、大臣の大筋合意に対するコメント、それから記者会見の中のやりとりのところも、朝早く起きて、何回か見てみました。

 これは、実は通告していないんですけれども、ちょっと確認だけさせていただきたいんです。

 先ほども大臣は話しておりましたように、国会決議を踏まえて、農林水産業の構造改革に悪影響を与えないように留意をしたと。それから、記者会見の中で、記者の質問に対して、ぎりぎりの線は確保した、そういうコメントも出されております。

 それで、今の答弁は最後のところが非常にわかりにくくなってしまうんですけれども、あえてもう一回確認しますけれども、要するに、国会決議を踏まえてそういう合意に達したのかということをもう一度確認させていただきたい。特に、ぎりぎりの線を確保したというところがよくわからなくて、大変恐縮ですけれども、その点の確認だけさせていただければと思います。

林国務大臣 会見等で、ぎりぎりの線が確保できたというのは、まさに先ほど御答弁をいたしましたように、国内畜産業の健全な発展と両立し得るという意味でぎりぎりのラインが確保できた、こういう趣旨で申し上げたところでございます。

 決議との関係ということでございますが、先ほど申し上げたように、それぞれの決議の各号、例えば一号、三号では、粘り強く期限を定めずにやること、それから、柔軟性が得られない場合には交渉を中断することも視野に入れて云々というのが三号等々にございましたので、それに基づいてそれぞれお答えをしたところでございまして、こういう決議の各号を踏まえて真摯に交渉を行って、先ほど申し上げましたように、国内農林水産業の存立と健全な発展と両立し得る合意に達することができたと我々としては考えておる、こういうことでございます。

 委員会で繰り返し申し上げておりますように、決議をどう解釈するかとか、決議に最終的に当てはまるかどうか、これは決議をしていただいた両委員会、衆議院、参議院の農林水産委員会に最終的には御判断をいただくもの、こういうふうに考えておるということでございます。

稲津委員 私は、生産者や関係団体からの声を聞いていると、決議を踏まえてこういう結果になったんだというのは、まだ私自身も十分理解ができていないところがございます。

 このことだけに終始していると先に進みませんので、次に行かせていただきますが、TPP交渉に与える影響はどうなのかということなんです。日豪EPAとTPPは全く違うものですから、一概にそうは言えないんですけれども、ただ、確認も含めて聞かせていただきたいと思うんです。

 牛肉の輸出については、オーストラリアとアメリカは競争していますので、当然、今度アメリカは、オーストラリアに劣らぬ、そういう条件を要求してくるであろうと推測されるわけです。報道もいろいろありました。

 現段階で、アメリカは全品目についての関税撤廃というのを要求してきている状況の中で、日豪EPA以上の日本に対する譲歩を、繰り返しですが、求めてくる可能性が非常に高いだろう、こういう状況の中にあって、確認させていただきますけれども、今後のTPP交渉に与える影響をどう見ているのか。それから、これも何回か確認させていただいていますけれども、大臣の交渉に当たっての基本的な方針を再度確認させていただきたいと思います。

林国務大臣 日豪EPAは、先ほど申し上げましたように、二〇〇七年に交渉が開始をされておりますが、TPP交渉は、交渉開始が二〇一〇年、我が国の参加が二〇一三年、こういうことでありまして、基本的には別の交渉である、こういうことでございます。

 日豪EPA交渉の合意内容いかんにかかわらず、TPP交渉においては、我が国を含めて十二カ国、したがって、我が国の相手は十一カ国あるということでございますから、それぞれの国と合意に至る必要がある、こういうことでございます。

 したがって、二国間のEPAである日豪EPAの合意内容がTPP交渉のようなマルチのものにどのような影響を及ぼすかということは、あらかじめ申し上げることは非常に難しいというふうに思っております。

 TPPにおける我が国の交渉の具体的内容については、お答えを控えさせていただきますが、ここで何度も申し上げておるように、交渉に当たっては、衆参両院の農林水産委員会決議も踏まえて、国益を守り抜くように全力を尽くしてまいりたい、そういうふうに考えております。

稲津委員 今回の日豪EPAの大筋合意の中で、国会決議というのはどうなっているんだという声をたくさんいただいているのも事実でございます。今大臣からも、TPPについて、国会決議を踏まえてということを改めてお話しいただきましたので、ここはぜひ、これはいよいよ始まってきております。どういう経過になっているかわかりませんけれども、この決議をしっかり踏まえるということをもう一回確認をさせていただいた次第でございます。

 それで、これから先は、今回の日豪EPAの大筋合意の中でも、牛肉について具体的に伺いたいと思っておりますが、ちょっと予定していた時間が少し進んでおりますので、畜産と酪農のそれぞれの影響、与える影響ということをお聞きしたかったんですが、畜産の方は先ほど前段の自民党の皆さんからの御質問もありましたので、酪農の方をひとつ聞いておきたいと思うんです。

 今後、オーストラリア産の牛肉と競合するのは、やはり和牛よりもホルスタインの雄、これは前回の委員会でも私は触れさせていただきました。国内の牛肉の三一%ぐらいを占めておりますけれども、ホルスタインの雄と、もう一つ、和牛の交雑種のF1も、若干これは肉質で競合するんじゃないか。

 北海道では、ホルの雄と廃用牛というのは、酪農経営のある一定程度の収入を実は図ってきている。大体二割弱ぐらいになっていると思うんです。今後、幾らその輸入量がセーフガード等で急増することはないんだと言ったところで、関税の引き下げによって、これは、オーストラリア産の牛肉の価格が下がってくれば、私はその可能性は非常に高いと思うんですけれども、国産牛肉の価格もそれに引きずられて下がっていくだろう。これは、当然、ホルの雄あるいは廃用牛も同じような傾向になるのは見えておりますので、そうなってくると、北海道では、今でも年間に二百軒余りの離農が進んでいる状況を見てみると、この際、酪農経営の先行きを見たときに、これは厳しくなる。よって、さらに離農に拍車がかかったら、これは大変なことになるぞと思っております。

 いわゆる日豪EPAの今回の大筋合意によって、酪農経営に与える影響をどのように見ているのか、この点をお伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、酪農経営におきまして、今先生御指摘がございました副産物たる子牛のシェアといいますか、占める割合でございますが、二十四年度の私どもの生産費調査によりますと、粗収益が、八十一万八千九百三十二円の収入を生乳や何かによって得ておるわけでございますが、その中で、今先生御指摘のホルスタインのぬれ子、あるいは交雑牛のぬれ子の収入が五万五千六百五十九円ということで、シェアといたしましては約六・八%、七%近くがこの中に占めておるということに相なっているところでございまして、酪農経営にとってもやはり重要な収入源であるというふうに認識しているところでございます。

 今回の合意内容につきましては、食肉の場合につきましては一定の柔軟性を得ることができた結果、我が国酪農の存立及び健全な発展を図っていけるような内容であると考えているところでございますが、先生御指摘の輸入が増大した場合の経営への影響でございますが、やはり、まず、一番経営に影響が出てくるとすれば、これは畜産といいますか肉の方でございまして、これに対しましてはマルキンといったものがございます。

 また、酪農の方に対しましては、加工原料乳の不足払いの補給金をやっているわけでございますが、その中で、ぬれ子等の副産物価格の低下も単価の算定に反映する仕組みになっているところでございます。

 いずれにいたしましても、今後のオーストラリア産あるいはアメリカ産牛肉の輸入動向、こういったものを十分注視しながら、適切に対応していく必要があるんじゃないか、このように考えているところでございます。

稲津委員 今御答弁いただきましたけれども、最後のところで、今後について注視していかなきゃならないという答弁がありました。このことに関して、一つ質問を進めておきたいと思うんですけれども、与える影響をしっかり徹底して検証していくべきだ、このように思っています。

 今でも、現行の関税率でも、オーストラリアからは、牛肉は年間約三十万トンほどの輸入がありまして、繰り返しですけれども、税率引き下げの影響で価格が下がってくるおそれがある。それで、餌、燃油、それから生産資材、これもずっと価格が上昇してきている。よって、これはやはり酪畜に対しては経営に打撃を与えるだろう。

 こういう状況の中で、やはり与える影響を徹底して検証すべきだ、ぜひ生産者や酪畜の関係団体の方々の意見も十分聞いていただきたい、そのことを思っておりますが、この点について御意見をいただきたいと思います。

江藤副大臣 先生言われるように、現場への影響は、現場の方々の御意見も踏まえながら検証していかなければならないと思っております。

 大きな影響があるということは、政府としては申し上げてはいないわけでありますけれども、影響がないわけではもちろんありませんので。しかし、これだけの影響がありますよという確定的な物の言い方をすると、先安感を逆に呼んでしまうという、政府が発信するような風評被害ともなりかねませんから、そこら辺は慎重にやらなければなりませんけれども、農水省の畜産部としても、そこら辺の影響、地域によってもそれぞればらばらですから、それぞれの地域によってどのような影響が出るのか、それについての可能性については、現場の声を踏まえながら検証を進めていきたいというふうに考えております。

稲津委員 ぜひ早急な対応をお願いしたいと思います。

 時間の関係上、最後の質問を大臣にお伺いしたいと思うんです。

 この大筋合意についての大臣談話の中身なんですけれども、これは幾つかのパラグラフに分かれていて、四段目のパラグラフのところにこういうことが書いてございます。生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、肉用牛経営を初めとする農畜産業について、構造改革や生産性の向上による競争力の強化を推進します。

 その前段のところでは、全般的な農林水産業の構造改革の努力に対しての評価と、そして留意事項を触れておりますけれども、次のパラグラフのところでは、農畜産業の構造改革、そのことによって生産性向上、競争力強化を推進するというくだりがありました。

 ここで言っている構造改革について、大臣、どういう思いでこれを談話に載せられたのか、この点を確認させていただきたいと思います。

林国務大臣 畜産業は、食料生産という本来の役割に加えて、飼料生産による水田の有効利用等を通じて、農地や環境の守り手という役割も果たしておりまして、さまざまな機能を有しております。

 穀物需給は国際的に非常に不安定化が懸念されておりまして、こういう中で、この大事な役割を維持発展させていくために、まず、輸入飼料への依存体質からやはり脱却をしていかなければいけない。そういう意味で、自給飼料の有効活用による経営体質を強化する。それから、農地の活用によって自給率を向上させ、また環境負荷の低減を図る、こういう生産構造をやはり目指していかなければいけません。

 それからもう一つは、酪農ヘルパー等によって労働力不足を補う。それからTMRセンター等で配合飼料をやる。こういった外部組織を含めて地域ぐるみで収益力を向上していく、こういうことがやはり大事である、こういうふうに考えております。

 先ほど申し上げましたように、二十七年の春の策定を目指して、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針について既に検討を開始しましたので、この新たな基本方針の中でも、先ほど申し上げたような、目指すべき生産構造をまず明確にして、一体どうやって、その目指すべき生産構造に向けて構造改革を加速していくのか、そのために必要な政策は何かということをしっかりとつくっていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

稲津委員 時間が来ましたので、これで終わりますが、構造改革はやはり生産者あってのものであるということを十分我々も認識していかなきゃいけない。

 それから、大臣が今最後に御答弁がございました、来年度の予算に向けての話でもありましたが、国内対策を早く求めている声もございます。オーストラリアは一月が年度という話もございまして、ですから、来年度概算要求だけではなくて、むしろ補正も含めて検討すべきという声もございますので、この辺も視野に入れていただいて、しっかり御検討いただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

坂本委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 久方ぶりに、私のホームグラウンドで質問させていただきます。まず、質問の機会をいただいたことを感謝申し上げたいと思います。

 なぜ私が質問させていただくかというと、理由があるんです。皆さん触れておられます二〇〇六年十二月の決議、このときに農林水産委員会にどなたがおられたか、八年前の名簿を取り寄せております。谷川委員、小里政務官、それから森山理事、自民党ではこの三人、そして、民主党では私、質問者で、四人です。世代が交代しているんでしょうね。岩永さんが、お父さんがおられましたけれども、息子さんが違う党で今ここにおられるようです。そういうことでは、〇・五人分だと思います。

 やはり私は、EPA、FTAというのは、何でこんなことにばかり真剣になるのか、不思議だと思うんですね。本当に日本の国益になっていくんだったら、僕はいいと思うんです。

 オーストラリアは、自動車を譲った、譲ったと。TPPでも自動車関税が問題になっていますけれども、五%の関税がある、これを撤廃するんだと。オーストラリアは、もともとそんなに工業はないなんて言っては失礼ですけれども、ないし、譲っても痛みがないんじゃないか。

 では、問題の自動車。自動車は、アメリカに次いで輸出の台数は多いということですけれども、端的に言って、関税をゼロにした場合、一体どれだけ関税を払わなくて済むようになるんですか。どんなメリットがあるんでしょうか。田中政務官にお伺いしたいと思います。

田中大臣政務官 豪州側に痛みがないのではないかという委員の御指摘でありますが、米国の自動車メーカーが撤退を表明したのは事実でありますけれども、その時期は数年後であります。地域経済ですとか雇用に与える影響を考えれば、特に、この即時撤廃のオファーを日本に行うことに当たっては、政治レベルにおいて相当な議論が行われたものと思われます。

 また、交渉は、やはり全体のバランスを常に意識しながら行われるものでもあります。我が国の関心品目であります自動車分野において、韓国と同水準の譲歩を行うに当たっては、当該分野における影響を超えて、全体として自国内で理解が得られるか、こうした検証もあわせて、覚悟を持って決断がなされたのではないかなと推察するところであります。

 そして、自動車関税が撤廃されることによるメリットでありますけれども、これまで豪州側に支払ってきた関税額分、約四百三十六億円、これだけ我が国メーカーのコストが低減されるということであります。これが直接的な効果であります。

 加えて、各社の経営戦略に直結する話だけに、定量的な評価というのは難しいものでありますけれども、コスト低減による価格競争力の向上、市場シェアへの影響がやはり効果として挙げられるものと思われます。

 豪州での市場で、米国車は関税が既にゼロ、そしてまた韓国車も近い将来ゼロになる、これが確実視される中にあります。よって、今回の合意によって、日本車は、少なくとも関税差を原因とするシェアの縮小リスクから解放されるということであります。また、各社の方針によっては、今後、シェア拡大、攻めの経営、こうしたことが行われるものと期待するものであります。

篠原委員 四百三十六億円、この金額が多いのか少ないのかわかりません。政治家を長くやっていると、金銭感覚がだんだんなくなってきますから、八億円とか言われたって、僕なんかはぴんとこない、そういうのと同じです。だから、これが大きいのか少ないのか。

 四百三十六億円の関税がなくなるんだ。そのために、北海道や南九州の畜産農家は相当困ると思う。そのぐらいは、世界に冠たる日本の自動車工業界に努力してやってもらえば済む話じゃないかなと私は思うんです。

 二言目には、国益、国益と。日本全体の国益を考えてほしい、だから農業は少し我慢してくれとか、どこやらの人は、一・五%が九八・五%をとか、とんでもないことを言い出す人もいます。しかし、努力して一応やっていける分野と、そうじゃない分野があるんです。それを守るのが関税なんです。

 私は、このEPA、FTAを進める国益というのがよくわからないんですよ。本当に全体の国益になっているんでしょうか。木原政務官にお答えいただきたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 日豪EPAに基づいてお答えを申し上げたいというふうに思います。

 日豪EPAについて申し上げますと、これは、我が国がこれまで締結してきた二国間EPAのうち、まさに最大の貿易相手国とのEPAであるという経済的意義があることに加えまして、基本的価値観あるいは戦略的利益を共有する豪州との関係強化に寄与するものである、そういう重要な意義があるというふうに考えております。

 加えて、日豪EPAには、貿易、投資、知的財産、競争、政府調達等、まさに幅広い分野が含まれており、日豪間でこうした包括的な協定が成立することが、地域のルールづくりを促進し、アジア太平洋地域の貿易・投資関係を活性化させ、ひいては我が国の経済成長にも貢献するというふうに考えているところでございます。

 今総論を申し上げたわけでありますが、加えて、先ほど御答弁がありました、自動車を含む鉱工業品の関税撤廃によりまして、豪州市場における我が国企業の競争力が確保される、そしてまた、豪州との間では、とりわけ豪州が日本にとって主要なエネルギーまた鉱物資源の調達先となっておりますので、このEPAの締結によって、これらの物資の安定供給の強化にも資するもの、このように理解をしているところでございます。

篠原委員 考え方の違いだろうと思いますけれども、国際的に分業していこうというふうに動いているんですかね。私は、これは本当に両国にとって幸せなのかどうかというふうに思う。

 マクレーンさんという大使は、林大臣なんかもおつき合いがあったんじゃないかと思いますが、非常に率直な方で、私の部屋に来られて、おもしろかったんでしょうね、二時間半ぐらい、この問題をめぐって議論いたしました。

 僕はどう言ったかというと、オーストラリアみたいなでかい国で安くつくった牛肉だとか小麦だとかは、安く、関税ゼロにして輸出なんて、そんなけちなことを考えない方がいいと。

 日本に鉄鉱石、石炭をいっぱい輸出している。僕がオーストラリア人だったら、日本にそんなものを輸出するのなんかやめて、自分のところで鉄板をつくる。自動車までつくってもいいんだけれども、最低限そうする。この莫大な輸送コスト、大量なのを日本に持っていって、さんざん使って、日本にごみが残る、空気も汚れる。オーストラリアで鉄をつくってもらった方がよっぽどいい。

 世界全体の環境問題なんかを考えたって、僕は、食べ物については地産地消、旬産旬消と言っているんですけれども、そこでできたものをそこで食べる、これが食べ物の原則だ。これは工業にも言えるので、環境のことを考えたら、なるべく輸送を少なくした方がいいんです。マイレージ、輸送コストを下げた方がいいんです。だから、オーストラリアは何でしないんだと言ったら、そこは率直でしたよ。あなたの考えはそのとおりだ、これからやろうと思うとか言っていました。だけれども、牛肉をもっと買ってくれというふうに言っていましたけれどもね。

 だから、そんなことをするのが、一体、オーストラリアと日本、両方にメリットがあるのか。オーストラリアはもっと自動車を生産した方がいいんだろうと僕は思います。マレーシアだってそうしているんです。自分の国民が必要とするものの全部をつくらなくたっていいですけれども、基本的なものはその国でつくったりしていくといい。こういう方針があっていいんだろうと私は思います。

 それを、自動車は日本ばかり、牛肉はオーストラリア、ニュージーランド。こんないびつな国にしてはいけないんじゃないかと私は思います。そういうことを真剣に我々政治家が考えなけりゃいけないんじゃないかと思いますよ。

 それで、畜産です。

 みんな、米、米と言っているんです。皆さんは、決議は守ったかな、守ったかなと言われていますけれども、非常に守っていただいていると私は思いますよ、牛肉以外は。完璧ですね。それは評価いたします。しかし、畜産はやはり大変ですよ。

 そして、みんな、米、米、米さえ守ればいいんだみたいなのがありますけれども、金額的には、農業総生産額でいったら、畜産が一番大きいんですよ。私は、畜産農家が大打撃を受けるんじゃないかと思うんです。特に、北海道や南九州。これは、一体どれだけ影響を受けるかというのを計算されて、こういうことをしておるんでしょうか。南九州を地盤とされておられます江藤副大臣にお伺いしたいと思います。

江藤副大臣 率直なおつき合いをさせていただいていますので、率直にお答えをしますが、これだけの影響が出るであろうということを前提条件として今回の大筋合意に至ったものではありません。

 しかしながら、最小限に、しかも、国会決議をできる限り踏まえた形で合意に至らなければならないという、ぎりぎりの御努力を大臣はされました、先週の土曜日、日曜日と。あんな交渉はとても私にはできないなというような、本当に人間力を発揮するような交渉努力をされた結果がこれだったと思います。

 結果、冷凍と冷蔵を分ける、セーフガードを導入する、それから、長期間である。あと、乳製品についても、一定数量の国産品と抱き合わせで使うことを条件としておりますので、これは関割りでありますから、最低限の影響でとどめることがこれでできたのではないかというふうに考えております。

篠原委員 全部計算してやったわけじゃないというのはわかりますけれども、至急計算してください。

 関税ゼロにしたときの影響というのは、なかなか農林水産省も出さなかったりしたんですが、八年前に初めて出したんですよ。オーストラリアから言われていたんですね。それが、今TPPのときの関税ゼロにした場合の計算というのにも皆引き継がれているんですよ。

 そのときのペーパーがあるんですけれども、牛肉を全部関税ゼロにしたら、国内生産が二千五百億円減る。乳製品を全部ゼロにしたら、二千九百億円で、半分。乳製品もそうですけれども、牛肉も生産量が半分になると言っているんですね。

 これは、ゼロじゃないですし、段階的にですから、なだらかです。しかし、先ほどからほかの委員の方が言っておられますように、ああ、だめなんだな、これでまたちょっとずつ譲っていって、やはりだめなのか、この心理的影響というのは物すごく大きいんですね。ですから、対策をきちんと講じていただきたいと思います。

 円安、円安、輸出がふえたといっていますけれども、皆さん御存じのとおり、餌は大変ですよね。一番安いときの価格の倍になっているんですよ。そして、餌のコストが大半なんですよ。日本の畜産というのは、加工畜産なんです。外国から原料を輸入して、加工して肉や牛乳や卵に変えているだけなんです。そのわずかのマージンでやっている。違いは、外国に輸出していない、これだけなんですよね。だから、そこのところをよく考えていただきたい。円安になって、相当困っているわけです。

 それでいいじゃないかという人もいるんですね。松阪牛とか、ほかにもいっぱいブランド牛はあるんでしょうけれども、ああいうところはびくともしない。それはそうだと思います。差別化しているんですよ。同じ牛肉といったって、こんなことを言うと悪いんですけれども、安い牛肉と全然違う品物だというふうに国民も思っていますし、扱われているんだろうと思います。

 きのう、OECD加盟五十周年のレセプションがあったので、私はOECD代表部に三年勤務していたので、行きました。

 そのときに、PSEという保護指数を出す計算をさんざん、どんちゃかどんちゃかやったんです。小麦だとか米とかいうのは同じ糖質だ、ほとんど質が変わらないから、国際比較できる。牛肉なんて、高い、安い、では、日本の牛肉の平均価格をどこにとるんだということで、全然保護指数が違ってくるわけです。だから、だめだといって幾ら説明しても、舌で食べずに腹で食べるアメリカ人にはわからなかったです。だめなんです。同じだと。味の差にお金を出すという感覚がない国民もいる。例えば、魚もやろうとしたんです。タイなんて、お頭つきのでかいもの、養殖タイか天然タイか、大きいか小さいか、百グラムの値段が全然違うんですね。こういう感覚がわからないんです。ですけれども、やはり肉は肉と言われると、そうかなという気がするんです。

 だから、高級ブランド牛肉だけでいいと言っていたら、全体の畜産、全体の肉業がだめになっていっちゃうと思うんです。だから、例えば繊維産業で、高級ブランドで、こういういいものをつくっていればいい、あとは低賃金でつくれる東南アジアに任せちゃっていいとか言っていると、ほとんど日本ではつくられなくなってしまっているんですね。

 だから、そういうところを手を抜いてはだめなんです。これは大臣にしっかりしていただかなくちゃならないと思いますよ。

 やはりいろいろな、バラエティーに富んだ、多様性のある産業構造にしておかなくちゃいけないと思うんですけれども、この点について、いかがでしょうか。

林国務大臣 基本的には、おっしゃるとおりではないかというふうに思っております。

 私が舌ではなくて腹でおなかいっぱいになるからという意味ではなくて、やはりいろいろ考えています。今委員がおっしゃったように、豪州産の牛肉は、米国産牛肉とまずは強く競合する、そして国産のホルスタイン種の牛肉とも若干競合する、こういうことでございまして、やはり国内の市場というのも、消費者のいろいろな選択によって、ボリュームゾーンというような言葉もありますけれども、そういうところも非常に大事なマーケットであるということは、委員がおっしゃるとおりであります。

 今回の大筋合意ですが、関税削減とパッケージで、まず、冷蔵、冷凍の税率差をつけたこともありますが、セーフガード、これは冷凍、冷蔵両方につけました。それから、特に、冷蔵は十五年ですが冷凍は十八年という、長さにも差をつけたということで、国産乳用牛への影響を軽減して、国内畜産業の健全な発展と両立し得る、先ほど江藤副大臣からも答弁しましたけれども、ぎりぎりの線を確保した、こういうふうに考えております。

 影響はなかなか、為替もあります。加工畜産だというお話がありまして、まさに、輸入した餌で肥育をするという状況。逆に言えば、円安になると餌が高くなる、同時に、豪州産、米国産の牛肉も同じような為替の影響を受けるということでありますが、それを黙って見ているということではなくて、先ほど申し上げた構造改革の中で、なるべく飼料の自給ということをやっていかなければいけないということでございます。

 今の段階で、どういうことになるのかという予測をするのは非常に難しいところはありますが、新マルキン事業等を活用して、やはり生産者の皆さんが引き続き意欲を持って経営を続けられるようにしていかなければならないというふうに思っております。

篠原委員 私の資料を見ていただきたいと思います。

 七カ国の畜産業の平均飼養規模比較というのがあります。これは、大臣はもう見ておられると思いますけれども、二月二十七日の予算委員会でこの話をしたんです。余り見ていただけない私の長いブログなんですが、ホームページに二千件のアクセスがあって、農林水産省が出している資料じゃないんですけれども、農林水産省にも、それから民主党にも、資料が欲しいというのがいっぱい行ったそうです。

 よく見ていただきたいんです。初めての方は聞いていただきたいんですけれども、肉用牛と肥育牛に、そのときと比べてちょっと手を加えてあるんですが、要するに、何を申し上げたいかというと、日本の畜産農家はもう規模拡大の努力をし切っているということなんです。

 肉用牛全体では、規模、これは一農家当たりの飼養頭数ですけれども、この七カ国では六番目です。これはからくりがありまして、日本は、肥育牛と繁殖牛、子牛ですね、そっちと分けているんですが、ほかの国は一緒なんです。統計がないので、そういうふうにしたんですが、繁殖牛の方が小さいんです。だから六位になっていますけれども、肥育牛、肉牛だけでは、オーストラリア、アメリカに次いで三位なんですよ。こんなことを国民の皆さんは知らないと思うんです。何と、豚に至っては世界一の規模なんです。工業製品と同じだから、こういうふうにできるんです。土地の狭さも、狭いという制約を受けないんです。ブロイラーも採卵鶏も同じなんです。

 見てください。ちょっとここはずれますけれども、フランスは、ブロイラーは一番規模が小さいんです。なぜだかわかりますか。フランス人は、ぶくっと太らせて肉だけにした鳥肉なんて食べないんです。みんな地鶏ですよ。健全な鳥肉しか食べていない。いいかげんなつくり方はしないというのがあらわれているんです。舌で食べるフランスと腹で食べるほかの国、こういうところに差が出ているんですよ。日本は、本当は和食云々で、フランスに近くなければいけないのにもかかわらず、違う方向に行っているんですよ。これはよくないことだと私は思うんです。

 これだけ規模拡大して努力している。ぎりぎりの物すごい努力をしてきているんですよ。よく、日本は努力してこなかった、規模が小さいとか、全然実情を知らない経済学者や評論家は、日本は農家は守ったけれども、農業を守ってこなかったと。うそです。これを見てください。畜産農家はばたばた少なくなって、規模拡大は極限まで進んでいるんです。農家は守らず、農業生産の方だけを重視してきたんです。こんな事実、何か総理は、プロパガンダとかマインドコントロールとよく言われますけれども、これこそマインドコントロールされているんですよ。我々、ここにいる皆さんは、違うんだということをちゃんと言っていただかなくちゃいけないんです。

 最後のとりでが関税じゃないかと私は思うんです。もし関税でやらないんだったら、しつこくなり過ぎるので、そのときの資料を持ってきませんでしたけれども、農業保護もそんなにしていないんです。直接支払いなんというのは、EUは日本の七倍から八倍しているんです。こういう準備が全然できていないんですよね。直接支払いは、名前が変わりましたけれども、農業者戸別所得補償で耕種農業には始めています。だけれども、これは難しいので、畜産にはやっていないんです。

 これからはちゃんとやっていただくんだろうと思いますけれども、江藤副大臣、検討されておられるんだろうと思いますけれども、いかがですか。

江藤副大臣 二つの質問だと思いますので、ちょっと長くなるかもしれません。

 まず、規模拡大のお話は、先生よくおっしゃっていただいたなと思って、感謝をいたしております。九一年に関税化を受け入れてから、農家戸数でいえば三割弱に減り、規模拡大は三倍強にふえてきたわけでありますから、まさにエリートと言われる畜産農家が日本には育ってきました。すばらしい肥育技術、生産技術を持っている人たちが今残っていて、最後のとりでという言葉も使っていただきましたけれども、私も同じ言葉を今使っております。

 そういう意味で、関税措置が必要だという御指摘をいただきましたので、向こうからは厳しい、ゼロ関税と言われても、大臣も必死で頑張って、最終的に関税とセーフガードを残したという経緯は御理解をいただきたいと思います。

 それから、戸別所得補償については、私も、できるものならやりたいと一年生議員のときからずっと考えている、心の中にはあることであります。マルキンとか補給金制度とかさまざまな制度が、畜産をめぐる環境の中には、ほかの、例えば露地野菜をやっている人たちから比べれば、畜産だけ何でそんなに手厚いんだというような批判もないことはないんですけれども、私は、一つの方法として直払いは、先ほども言いましたけれども、オプションの一つとしてはあると思います。

 しかし、今自民党が展開している政策の中では、皆さん方が行われた一万五千円の米に対する直払いというものを見直しさせていただいて、その上で、ゲタ、ナラシ、それから収入保険、それに加えて、今度は資源向上支払いと維持支払いという形でやっていこうということでありますから、そういうような経験を生かして、これを畜産に生かせないかどうか、ぜひ勉強させていただきたいと考えております。

篠原委員 わかりました。ちゃんとやってくださいよ。

 今、牛肉にばかり焦点が行っているんですね。だけれども、ほかのこともみんな考えなくちゃいけないんですよ。

 チーズ、ワインですけれども、消費量が伸びているんです。これもおろそかにしていただいては困るんですね。特に、例えば農林水産省のつくった資料にワインが全然出てこないんです。それは所管は、ワインの関税は財務省かもしれませんけれども、ブドウをつくっているのは農家ですから、今後は農林水産省の説明のペーパーの中にワインも入れてください。

 なぜかというと、農林水産省の最近の政策で皆さんから希望を持たれているのは、六次産業化なんです。ブドウをつくっているばかりじゃない、加工して、それを売って、その場で飲んでもらってということを考えたらいいじゃないかとやりつつあるんですよ。それを、安いオーストラリア・ワインがばんばん入ってきたりしたら、出ばなをくじかれることになるんです。

 チーズも、僕は、本当に日本の皆さんというのは、工夫する、立派な人たちだと思いますよ。フランスにはいろいろなチーズがあるんですが、名前も覚えられませんし、臭くて食べたくないのもあって、あれはいろいろなのがあります。村ごとに違って、その村や地域で一つの種類のチーズしかつくっていないんです。日本は、一軒の畜産農家が三種類も四種類もつくっちゃうんです。その技術があるんです。体得してしまうんですね。だから、一生懸命チーズをつくり出している。それをまた、いやいや、チーズまではつくっておられないから、オーストラリアから来てもいいんだというようなことをやられると困るんです。

 こういうところにもちゃんと目配りしていただきたいんですけれども、そういうことをされておられますでしょうか。

林国務大臣 チーズについても、今回の合意内容の中で、今委員がおっしゃいましたように、私はどちらかというとにおいが強い方が好きなんですけれども、需要の伸びが見込まれるナチュラルチーズは、対象をシュレッドチーズ原料用、それからプロセスチーズ原料用に限定させていただきました。したがって、ナチュラルチーズで、においが強いものも含めて、直接そのまま食べるというところではないということでございます。

 そして、関割りは発表させていただいたとおりの中身でございますが、国内の酪農家がみずから生産、販売するような付加価値の高い国産チーズについては、輸入フレッシュチーズ、熟成チーズ等は今回の合意の関税割り当ての対象の外ということで、そういう意味では、こういうものをつくっておられる六次産業化の取り組みには影響はない、こういうふうに考えております。

 六次産業化で付加価値の高い国産チーズを増産していただくということは、増産ということは、それは売れるということが前提ですが、やはり酪農経営の安定のためにも非常に大事でございますので、農林水産省として、地域における特色ある国産チーズの生産支援を引き続きしっかりとやっていきたいと思っております。

篠原委員 それでは、交渉に当たって、注文を一つ。

 同じときに、国際司法裁判所で調査捕鯨について判決が出たんですね。この提訴国、訴えている国がどこかというと、オーストラリアとニュージーランドですよ。農林水産省は、農林水産省であるにもかかわらず、農業は農業で交渉し、水産は水産で交渉しているんですよ。

 南極海のところへ行って鯨をとるのは、それはいろいろ議論はあると思います、人の庭というか、自分たちの近くへ来てと。だけれども、よくわからないんですが、沿岸捕鯨までやめろとか余計なことを言っているわけですけれども、そんなことは聞かないでいただきたいんです。

 これは私の注文でして、鯨の肉は調査捕鯨のおこぼれで食べているということになっているから、余りでかい声では言えないかもしれませんけれども、鯨の肉を食べずに、自分の牛肉をいっぱい買えというのは、それは虫がよ過ぎるので、片方では遠慮しろと言っても私はいいんだろうと思います。そういう交渉をぜひやっていただきたいと思います。

 それから次に、技術的なことになります。

 セーフガード、これはなかなか工夫されたと思いますよ。農林水産省の後輩の皆さんもなかなか知恵があると思いますよ。これは、余りでかい声で言って、オーストラリアの新聞にでかでかと書かれるとよくないんですけれども、もう新聞は書いています。セーフガードといっていますけれども、実質的には関税割り当てですね、今までやってきたような。

 ですけれども、やはりセーフガードはセーフガードなんです。今までもセーフガードはあったんです。農林水産省はきのうの夜、しらばっくれて全然届けなかったので、きょうはそれに使えないんですけれども、今は亡き松岡利勝さん、大臣になって頑張られて、畳やネギ、シイタケのセーフガードというのをやったりしましたよ。だけれども、それは一時しのぎなんです。おわかりになりますか。つまり、セーフガードで守っているけれども、一時的で、畳は瞬く間に消えていっちゃったんですね。シイタケとかネギとかは、それは必需品ですし、ありますけれども。だから、セーフガードは完璧じゃないと思うんです。

 江藤副大臣、そういうことが歯どめになると思いますか。

江藤副大臣 畳表の事件のことについては、私も、多分一年生議員だったと思いますけれども、覚えております。

 しかし、あのときのことも思い返しながら、肉に関して言えば、現行制度でも三八・五から五〇%へのセーフガード制度があるわけで、一一七という数字がありますけれども、これは確実に現行制度の中できいているというのは委員も認めていただけると思います。

 ですから、セーフガードの水準が五〇から三八・五に下がるということにはなりますけれども、私は、これはやはり確実に効果があるというふうに、多分、先生も心の中ではそう思っていただけているのではないかと思うんですが、違いますでしょうか。

篠原委員 ただいまの御質問にお答えしますと言いたいんですけれども、立場が違いますから。

 僕は、きいてほしいと思います。きちんとやっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 次に、この関係で、TPPです。

 TPPは小泉政務官のところの担当で、突然引っ張り出してきて済みませんけれども、全然TPPの交渉の内容が伝わってきていないんですね。

 きのう、甘利担当大臣がフロマン代表といろいろやられた。十一時間だ、平行線だと書かれている。

 それは後で言いますが、逆に、アメリカでこういうふうに決まったからオーストラリアはこういうふうにしたらと言ったら、オーストラリアは聞いてくれると思います。日豪で決めたから、アメリカもと言ったって、へのかっぱですね。全然聞かないと思います。

 だけれども、交渉をちょっと聞いていますと、アメリカは非常に勝手なことを言っている。米豪FTAがある。それで砂糖が例外になっている。TPPで関税全部ゼロと言っているけれども、既存の、先に締結したEPA、FTAで例外二品目とかいうふうになっていたら、その二国間については米豪FTAを尊重するとか、都合のいいことを言っている。

 私は、今までとんでもないことだと思っていましたけれども、今、日豪EPAが、そこそこ立派だと思いますよ、立派なものができたら、日本もアメリカと合わせて、TPPが仮にでき上がっても、日豪関係については日豪EPAが優先するという主張をしていくべきだと思います。

 本当に、そういうことがTPPでどうやって行われているかがわからない。情報を公開しないとか言っているんですが、この考えについてどうお考えになるのか。

 もう一つ、カナダは、オーストラリアとライバル意識があると思います。ニュージーランドもあると思います。ニュージーランドとはEPAの交渉をやっていませんけれども、カナダとのEPAの交渉もやっているんですよ。そして、TPPというのが今ある。

 TPPに関連して、カナダとの交渉はどうなっているんですか。アメリカとの二国間の交渉ばかり取り沙汰されますけれども、牛肉や小麦だとかなんかというのは、みんなカナダも関係しているんですよ。これについて、今どうなっておりますでしょうか。

 交渉事なのでお答えできないという答弁ばかりいろいろなところで繰り返されているんですけれども、その辺のところをお答えいただきたいと思います。

小泉大臣政務官 御質問は、恐らく二点になると思います。

 まず第一点の、アメリカとの間の再交渉に関する御質問だと思いますが、まずは、日豪EPAに対する前向きな御評価をいただいたことは感謝を申し上げます。

 その上で、先ほど篠原先生がおっしゃったとおり、きのうは、朝の九時から夜の八時まで、休憩時間を含めて約十一時間、そして、けさから午後の一時まで、まさに今真っ最中でやっていますけれども、交渉のさなかでありますので、アメリカがどういった交渉の方針、また主張をしているとかというのは差し控えなければいけませんが、今までも、できる限り、農水委員会の決議に基づいて、情報は可能な限り皆さんに対してお伝えをする。そして、交渉の前後に、与党、野党、党の部会等で御説明もさせていただき、また、地方では、自治体、ステークホルダーに対しての説明会、こういったところも繰り返してまいりましたので、これからも、可能な限りの情報提供というのは努めて行っていきたいと思います。

 そして二点目の、カナダに関してのことですが、今までも、事務レベル、交渉官、閣僚間レベルでさまざまな議論は重ねてきておりますが、これからさらに議論を深めて、最終的に、全体のTPP、これが妥結に向けて前進していくように、交渉に鋭意努めてまいりたいと思っております。

篠原委員 なかなか難しいことだと思いますけれども、柔軟に対応していただきたいと思います。

 それで、よく言われているんですが、西川委員長、八年前の委員長が、オーストラリアのときもいろいろ交渉をやられた。それで、日豪EPAがTPPの交渉の促進につながると。

 これは、どうも僕は、本当にそうかな、逆じゃないかと思います。誇り高いアメリカは、オーストラリアなんかとこんなちょろちょろした協定を結んで、何だ、誰がこんなものをのんでやるかと、逆に反発しているんじゃないかと思いますよ。僕がアメリカだったら、そう思いますよ。何を、ばかにするなというふうになってくるような気がするんです。

 だから、促進材料になるなんて言っているけれども、逆で、ニュージーランドはオーストラリアとライバル意識を持っていますよ。例がいいか悪いかは知りませんけれども、鳥取県と島根県はやたらライバル意識がある、岡山と広島とか。ほかの県はどうでもいいけれども、そこと比べられてどうだこうだ言われたら嫌だという。

 ニュージーランドはオーストラリアを物すごく意識していると思いますよ。では、乳製品をどうしてくれるんだとすぐ言ってきますよ。だから、TPPの下での二国間交渉にも悪影響を与えると思います。ニュージーランドは何も言っていなくて、TPPのところでやっていればいいよと言っていたのに、日豪EPA、こんなものができたんだったら、自分たちともやれと言ってくるんだろうと思います。

 それで、EPA、FTA、日本はどうやっているのかわからない。入れ食いとかダボハゼと言われて、EPA、FTA、数をふやしたいのか。どういう国とやるか。EUは、ECからEUに、自分の近くの国とみんな仲よくしていきましょう、やりとりしましょう、国境をなくしましょうと。そういう方針があって、日韓、日中韓、日・タイ、東アジアでもってまとまっていくというんだったらいいですけれども、メキシコだ、チリだ、あっちこっちやって、私は方針がさっぱりわからないんです。

 日本国の方針というのは一体どうなっているんだ。こういうことをちゃんとやられる外務省は、どのように考えて、だから、EPA、FTAとTPPの関係も含めてですけれども、どういう方針で臨んでおられるんでしょうか。

 よく出てくる韓国は、こうなんです。FTA大国になるといって、のべつ幕なしやっていたんです。そうしたら、罰が当たって、米韓FTAで大変な目に遭っているわけです。多分、遭うだろうと思います。国ががたがたになっていくと思います。

 日本はどういう方針で臨んでおられるんですか。例えば韓国の話をしますと、韓国と話をしました。そうしたら、韓国は、香港やシンガポールと同じ国になってもいいんだという調子でやっているんだそうです。まさか日本はそんなことを考えていないと思いますけれども、いかがでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げたいと思います。

 これは委員も重々御理解いただけるのではないかというふうに思いますが、まず、私たちの日本経済を再生するために、何といっても自由貿易をしっかり推進していく、まさにこれは我々の対外通商政策の柱である。そういう中で、力強い経済成長を達成するために、これまで以上に自由貿易体制を推進し、そして諸外国の成長あるいは諸外国の活力を取り込んでいくというのが私たちの大きな方針でございます。

 本来であれば、これをWTO、まさに多角的貿易体制のもとで進めていくということが中心であるべきだろうというふうに思いますが、残念ながら、ドーハ・ラウンドの膠着状態もございまして、今まさに困難に直面をしているということでございます。

 そういう意味で、これを補完する形で、私ども、二国間のEPA、FTA、そしてまたマルチの中でのTPP、これを両輪として動かしていくということでございます。

 その際、では、一体どういうところとこれをやっていくのかということがまさに委員の御指摘であろうというふうに思いますが、これは、我々は、その国との貿易の状況、それから、その国との間のさまざまな戦略的な連携、そしてまた、価値観が共有できているかどうか、こういったことを一つ一つ個別に判断しながら、まさに交渉を進めさせていただいているというのが現状でございます。

篠原委員 伺っていても、ぴしっとした方針がどうもよくわからないんですね。いつも受け身のような気がするんです。

 その点、オーストラリアは賢いと思いますよ。

 さんざん、七年もかかっているわけですけれども、東日本大震災のときにギラード首相が駆けつけて、被災地に行って、これだけ大変な状態になっているんだから、EPA交渉はやらなかったんです。そういう優しい国です。

 ですけれども、ちゃんと、したたかな点はしたたかで、例えば問題のISD、僕は、これは国家の主権を危うくするので、絶対に認めてはいけないことだと思います。アメリカの企業が国や県を訴えるなんて、今、アメリカでは州政府が訴えられるということで大問題になっていますよ。反対の理由の一つになってきています。

 実は、オーストラリアは、米豪FTAで、アメリカの企業がオーストラリア政府を訴えるなんというのはとんでもない、それは発展途上国に対して必要だけれども、我が国には必要ないといって突っぱねているんです。

 今度、日豪EPAでも、だめだといって突っぱねているんです。僕は、当然だと思いますよ。オーストラリアで革命が起きないことはないかもしれませんけれども、日本の工場が突然デモで何か変なふうになったりとか、変なルールができてわざと外国の企業を排斥するようなのができるかというと、そんなことは考えられないんじゃないかと思います。

 自民党のJ―ファイルの中にも、ISD条項というのはだめだと書いてあるんです。だったら、今度は、オーストラリアがそう言っているので、EPAにも入っていないんだから、私は絶対共闘すべきだと思うんです。

 今まで、フィリピンを除いては、EPAみんなに入っていた。必要だと言っている。だけれども、相手はアメリカなんです。ほかのまともな国なんて言っちゃ悪いんですけれども、穏やかなというか、恩義を感じるような国じゃないんですよ。ごりごりやってくるだけですよ。きのうのフロマン・甘利会談もそういう調子でやっているんだろうと思いますよ。

 だから、全然日豪EPAなんて考慮していないと思う。自分は自分だというふうにやっている。だったら、このときこそ、日本とオーストラリアが手を組んでやっていくべきだと思いますけれども、小泉政務官、いかがでしょうか。

小泉大臣政務官 ただいま御指摘をいただきましたISDSに関しては、委員が御指摘のとおり、今まで日本が結んだ三十の投資関連協定のうち、二十九でもう既に結んでおります。

 そして、先ほどJ―ファイルについて先生はお触れになりましたが、J―ファイルの中での書きぶりというのは、ISDSはだめだという書きぶりではなくて、国内のことにも慎重に配慮をしながら対応する、そういった形だと思います。

 我が国の立場としては、海外投資を行う日本企業を保護するためにもISDSは必要だ、そういった考えで今回の交渉にも当たっております。

 ちなみに、先ほど触れられた日豪の中でのISDSの関係ですが、五年後、もしくは同意する場合にはそれよりも早く、また、オーストラリアがISDS条項を含む協定に合意する場合には協定発効後三カ月以内に再協議、そういった対応になっております。

篠原委員 具体的事例を挙げますと、オーストラリアは、たばこの宣伝をしちゃいけないというので、厳しいことをしている。そうしたら、フィリップ・モリス社というアメリカの企業が訴える。米豪にないから訴えられないので、香港の企業が訴えるみたいな感じになっているんです。

 だから、日本が食品安全の規則でもってこれをやるといったときに、すぐアメリカが文句を言ってきて、日本国政府が訴えられて、そして、真面目な役人は、アメリカに文句を言われちゃよくないからといって、アメリカの顔色をうかがって法律をつくったりするような、そんなばかなことをしちゃいけないですよ。

 だから、私は絶対拒否してもらいたいと思います。投資の云々なんというのは、投資は危険を承知で投資するんです。安全を望むんだったら、外国に投資しないで日本の企業に投資してくださいと言っておけばいいんですよ。そういうことです。

 最後に、国会決議を守っていただいているかどうか。

 大臣は、委員会でと言います。それはどういうことかというと、批准のときに、ちゃんと守ったのかどうかということで御判断くださいと言うのですけれども、政府の方に対して我々委員会が、ちゃんと守ってくださいよと言っているんです。

 率直にお答えいただきたいと思います。

 私は認めますよ、牛肉以外については完璧に守っていただいている。この点では、これをちゃんと維持するんだったら、TPPについても、日本の農民、農業関係者、安心するだろうと思います。だけれども、牛肉について、これも完璧に守ったと言われては、こんなやり方でだったら、アメリカとはもっともっと妥協するに違いないというので、不満と不安とが炸裂してくると思います。

 この点について、守っておられるかどうかというのと、今後、TPPについて、厳然と守っていくかどうかということについてお答えいただきたいと思います。

林国務大臣 先ほど来お答えしておりますように、各号それぞれについて、中身も先ほど御答弁したとおりであります。時間が限られておりますので、そこは省略させていただきますが、国内農林水産業の存立及び健全な発展と両立し得る合意に達することはできた、こういうふうに考えておりまして、今回の合意内容と決議との整合性、これについては最終的に両委員会に御判断をいただくものということでございます。

 TPPについては、先ほど申し上げたとおり、決議を踏まえてしっかりと交渉をやっていくということは一切変わっておりません。

篠原委員 では、頑張ってTPPをやってください。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 日豪EPAについて伺ってまいりたいと思います。

 今回の日豪EPAの大筋合意、私は、率直に、高く評価したいと思います。日豪の間で、豪州から我々は食料の安定的な供給を得る、あるいはエネルギー、それから鉱物資源の安定的な供給を得るというエネルギー安全保障の観点、また食料安全保障の観点からも、極めて有意義だと思います。また、一定の関税を維持する、高い関税を維持しながら相手の市場開放を迫るという、極めてすばらしい形のモデルができたんじゃないかなと私は思っています。

 他方、今までの我々の、我が国の政策を考えたときに、個別の産業、セクター、特定の産業、ありていに言えば農業ですけれども、農業を守るために、農業に足を引っ張られて、我が国全体の国益が失われてきた、こういった状況が続いてきたと思います。

 その例を挙げたいと思います。例を挙げれば枚挙にいとまがないと思いますが、二〇〇九年に発効した日越のEPAを思い出していただきたいと思います。日越のEPAでは、我が国の農産物を守るために、ほとんど相手から関税撤廃をかち取ることができなかった。こういった状況が続いてきたと思います。

 今までのそういった保護主義的な色彩の強い、誤った政策から、今回、プロアクティブで能動的な通商政策、正しい政策に方向転換されたと私は理解していますが、大臣も同じような感覚、認識をお持ちでしょうか。

林国務大臣 先ほど来、先生方から、それぞれのお立場で同趣旨の御質問をいただいておりましたが、村上先生は、また違った角度から御質問をいただいております。

 やはり国内の大事な、畜産業を含めた、農畜産業がやっていける、しっかりと構造改革を推進しながら両立させる、こういう意味で、ぎりぎりの交渉をして、ぎりぎりのところが確保できた、こういうことでございます。

 これをどう評価するのかというのは、今委員がおっしゃっていただいたようなお立場も当然あろうか、こういうふうには思いますし、その前の先生方からの御指摘もきちっと踏まえて、今後いろいろな、今の時点で影響を予断するのは非常に困難だということを申し上げてきましたが、ここに留意しながら、やはり意欲を持って生産者が経営を持続していけるように、しっかりと対応してまいりたい、こういうふうに思っておるところでございます。

村上(政)委員 私が申し上げたのは、すばらしい政策転換を行った、だから、ぜひ胸を張ってそういうふうにおっしゃってほしいということを大臣にお願いしたわけであります。

 各論について伺っていきたいんです。

 再三議論されている委員会決議なんですけれども、この委員会の決議というのは、私の理解では、政治的な意味合いはあるけれども、法的な拘束力あるいは法的な意味合いはないというふうに理解しているんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 国会決議というのは、まさに国会の意思表明である、こういうふうに認識をしております。

 EPAが今回大筋合意ということでここに至りましたけれども、これが最終的な発効をするためには国会の承認が必要であります。日豪EPAの交渉に当たっては、衆参両院の決議を踏まえ、政府一体となってやってきた結果、大筋合意に達することができたと考えております。

 TPPの決議についても、何度か申し上げたこともあると思いますが、やはり我が国の仕組みとして、最終的に国会の批准承認が必要になってくる、その国会の意思の表明が決議である、このことを相手にも再三再四申し上げながら粘り強く交渉するということが交渉論としても大変に大事である、こういうふうに考えておるところでございます。

村上(政)委員 基本的に、国会の委員会の決議は守られたというふうに私は考えるんです。重要五品目を守りながら、かなり高い関税を守って、相手に対して譲歩を迫ることができたということだと思います。

 繰り返しの御答弁になってしまうかもしれませんが、この委員会決議というものを大筋で踏まえて、そして大筋で守る形で大筋合意に至った、委員会決議との整合性はかなり高い形で大筋合意に至ったというふうにお考えでしょうか。

林国務大臣 先ほど篠原委員から最後に御質問いただいたことでございますが、まさに、先ほど交渉論として申し上げたように、こういう決議を我々は国会からいただいているということも踏まえて、また相手に示しながら交渉を行って、国内農林水産業の存立及び健全な発展と両立する合意に達することができた、こういうふうに考えております。

村上(政)委員 次に、韓国との比較を行いたいと思うんです。

 我が国と豪州は、今回大筋合意に至りました。その後、アボット豪州首相は韓国を訪問して、韓国とオーストラリアの間でのFTAも署名に至りました。我が国よりも先に行っているわけであります。

 韓国と比較したときに、それぞれ、相手からとったものと、そして我々が守ったものを比較したいと思うんです。

 まず、相手からとったものの例として、自動車、豪州の市場で我が国はアメリカ車や韓国車と競争していかなければならないわけですが、韓国と比較して、オーストラリアの市場において劣後していないのか、きちんとこのEPAの交渉でとり切ることができたのか、この点、いかがでしょうか。

中山政府参考人 お答え申し上げます。

 自動車についてでございますけれども、我が国からの輸出額の七五%に当たる品目の関税の即時撤廃という合意内容になっております。これは、先生御指摘の韓国と豪州の間のFTAとほぼ同水準の結果というふうになっております。

 これも御指摘のとおり、厳しいシェア争いがございます。豪州の自動車市場におきまして、我が国自動車メーカー各社が第三国と同等の条件で競争し得る環境を何とか確保できたのではないかと考えております。

村上(政)委員 アメリカとの比較においてはどうでしょうか。先ほど篠原先生からもアメリカと豪州のFTAのお話がありましたけれども、アメリカ車あるいは米豪FTAとの比較においては、我々はきちんととるものをとってきたんでしょうか。

中山政府参考人 米豪の間のFTAにつきましては、既に自動車に関する関税については全部撤廃されているというふうに承知いたしております。

村上(政)委員 ということであれば、我々も、きちんと完成車において七五%をとってきた、そして、近いうちに完全に撤廃するということで、アメリカとの間でも競争は劣後しないという認識でよろしいでしょうか。

中山政府参考人 日豪の間の今回の大筋合意におきましても、残りの二五%についても、三年目には関税が撤廃されるという合意になっております。

村上(政)委員 次に、我々がどれぐらいきちんと守れたのかということなんです。

 また韓国との比較になるんですが、我々と豪州の日豪EPA、それから韓国と豪州の韓豪FTAと比較して、どれぐらい守れたのか。韓国はオーストラリアの牛肉に対してどの程度関税をかけているんでしょうか。

林国務大臣 韓国との比較ということですが、既にアメリカに対しては牛肉の関税撤廃を約束しております。

 国内生産の状況等、異なるところもありますので、一概に日豪EPAと韓豪FTAの内容を単純に比較というのは難しいところもありますが、事実関係として申し上げますと、韓豪FTAにおける韓国側の牛肉の譲許内容、これは、関税については、現行の関税四〇%、我々は三八・五ということですが、この現行の四〇%を段階的に削減して、十五年目に撤廃する、こういうことになっております。

 それから、数量セーフガードについては、セーフガード発動時に適用される税率を段階的に引き下げて、関税が撤廃される翌年の十六年目には廃止、こういうセーフガードになっております。

 我々の方は、この三八・五%を、冷蔵と冷凍にまず分けたということですが、冷蔵については十五年かけて削減し、最終税率は二三・五%、それから、冷凍は十八年かけて削減しまして、最終税率は一九・五%。

 それから、数量セーフガードですが、このセーフガード発動時に適用される税率、韓国は、段階的に引き下げて、十六年目に廃止ですが、我々の方は、現行税率の三八・五%に固定、こういうことになっております。

村上(政)委員 今、林大臣から御紹介があったとおり、韓国は牛肉の関税を十五年目に撤廃する、セーフガードもいずれ廃止するということで、極めてオーストラリア側が有利な内容になっていると思います。

 最後に、我が国とオーストラリア、それから韓国とオーストラリアを比較して、我々は韓国よりも有利な条件できちんと妥結できたと思うんですけれども、大臣の評価はいかがでしょうか。

林国務大臣 これは、もう今事実関係を申し上げたとおりでございますので、この事実関係を見て御評価をいただくべきもの、こういうふうに思っております。

村上(政)委員 次に、先ほどから国内対策のことも議論になっているわけであります。例えば、補正予算でというようなお話もありましたし、あるいは戸別所得補償といった話もありました。

 私は、こういった対策というのは、基本的にすべきではないんじゃないかなと思います。セーフガードできちんと我が国の農業なり我が国の農家というものは守られるわけですし、かなりの高関税を維持できた。きちんと維持し、そういった面でオーストラリアに譲歩を迫ることができたわけですから、これ以上我が国の農業を保護するために国税を投入するのは、なかなか一般の納税者の理解を得られないんじゃないかなと思います。

 我が国の中で考えたときに、農業に従事する方というのは、極めて人口的にも小さいわけですし、GDPに占める割合も低いわけであります。そういった一部の産業なり一部の方たちを守るために国税を投入するというのは、なかなか圧倒的大多数である消費者なり一般の納税者の理解を得られないと思います。

 そういった観点から、やはりきちんと政府として、日豪EPAの中で農業が守られるような対策、セーフガードなり高いレベルの関税をせっかくとってこられたわけですから、財政赤字も極めて大きいわけですし、我が国の財政状況というのは厳しいわけですから、財政再建を考えたときに、もうこれ以上の国税というものを一部の産業なり一部の地域に投入すべきではないと私は考えるんですが、いかがお考えでしょうか。

小里大臣政務官 食料の安定供給や多面的機能の維持という、農業の果たしているその重要な役割というものを考えますときに、やや委員とは考え方を異にするわけでありますし、また我々の考え方が国民に理解をされているものと信ずるところでございます。

 従来、決議を踏まえて今回の交渉も取り組んできたわけであります。その結果として、牛肉におきましても影響は限定的であると考えるところでありますが、今後とも、状況を見ながら、引き続き、生産者の皆様が安定的に取り組んでいけるように、丁寧な対応をとっていきたいと思うところでございます。

 そこで、先ほどからありますように、例えばホルスの関係におきましては、優良なホルスの雌にはしっかりと優良な雌を産ませる。それ以外のところは、F1とかあるいは和牛への産み分け等によりまして、適切な需給の安定化を図っていく、そういったところをまず検討しているところでございまして、今までもやってきておるところでございます。

 さらに、やはり強い営農体系、もうかる営農体系をつくっていくという構造改革の観点からも、従来、取り組んでまいっております。すなわち、飼料の安定供給、これは、耕種側と畜産側の両方の連携によって飼料の安定供給を図り、また餌基金の充実強化を図ってきておる。さらにまた、畜種別の経営安定対策の充実強化、あるいは、作業の外部化等によりまして、必要な規模の拡大も進めてまいります。

 そういったことで、しっかりと構造改革を図りながら、強い、効率的な、安定的な畜産の生産、酪農の生産体制というものを目指してまいりたいと思います。

村上(政)委員 政務官の御答弁の最後には、構造改革を進めるということで、その構造改革を進めることはきっちりやっていただきたいと思うんですが、私がお聞きしたのは国内対策の話であります。

 国内対策を進めていくということは、我が国における農業の重要性を考えれば、多くの国民に理解してもらえるはずだというふうな政務官の御答弁だったと思うんですけれども、やはりこれは、我が国の人口の大半は都市部に住んでいるわけですし、多くの国民は都市部に住む消費者であるわけです。その消費者にとっては、この日豪EPAというのは極めて有利な、安くておいしい農産物がオーストラリアからたくさん入ってきて、スーパーで買い物できるし、多くの主婦も喜ぶわけですし、そういった極めて多くの国民が利益を享受するような日豪EPAであるわけです。

 その中で、一部の人たちは不利益をこうむるかもしれませんが、その人たちのために税金をばんと投入するのは、スーパーでお買い物する主婦の人たちは、何でだろうと思うんじゃないかなということを私はお聞きしているわけですが、この点、信じてもらえるという説明以上の説明はありますでしょうか。

小里大臣政務官 やはり国内生産を基本として食料の安定供給を図っていくことが一番の消費者ニーズにかなうものであり、国民のニーズにかなうものであると信ずるところでございます。

村上(政)委員 それからまた、この日豪EPAをぜひ奇貨として、これをある種の外圧として、農業の構造改革というのを進めたらいいんじゃないかなと私は思います。

 安価で、そして品質の高い農産物が豪州からたくさん入ってきて、国内の市場において、我が国の農業あるいは我が国の農産者たちも競争にさらされるわけです。そうした競争という条件を生かして、それぞれの農産者なり我が国の農業というのは強くなっていくべきですし、また、そうした競争条件がきちんと整うように、補助金なり、それから競争を妨げるような規制というのはどんどん撤廃して、農業の構造改革ということについて、我が国としてもきちんと取り組んでいくべきだと思います。

 これは、この委員会でも累次御答弁があるように、強い農業をつくっていく、そして農業を成長産業化させていくという政府の方針にも極めて合致すると私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 今、小里政務官からも御答弁いたしましたように、まず、基本的な食料安全保障ということを食料・農業・農村基本法で定めて、それについて基本計画をつくっておる。それから、多面的機能ということで、いわゆる産業としての側面にとどまらない大きな役割を農業は果たしているということから、きちっと国内の生産を通じて食料安全保障というものができるようにしていこうというのが基本的にあるわけでございます。

 そういう意味で、農業で、先ほど江藤副大臣がおっしゃったようなゲタとナラシという考え方がございまして、国内外の生産条件の格差を是正するためのものがゲタ、こういう考え方でございます。もう一つは、全く農業にとどまらずに、政策論として、法的安定性、制度的安定性、こういうものがございますので、今までこういう条件でずっとやってきて、ぎりぎりの努力をされておられた。

 今回、全体の日豪関係、経済の活性化という観点から日豪EPAというものを結んで、先ほど御評価いただいたことですが、畜産業の方から見れば、自分の努力とは関係ないところで起こったということでございます。

 政府全体として、もしそういうことに対して影響があれば、しっかりと手当てをして、国税を使うことも含めて、これは、国税を投入するということだけではなくて、構造改革をし、そして自己負担というものも交えながらやっていくというのが、これまでの先輩方が築かれてきた農政の来し方であった、私はそういうふうに理解をしておりますので、そういう考え方に基づいて、構造改革、自助努力というものを促しながら、しっかりと対策をやっていく、このバランスが非常に大事ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。

    〔委員長退席、森山委員長代理着席〕

村上(政)委員 国税の投入だけではなくて、自己負担なりそういったものを求めて構造改革を進めていく、ぜひそういった、農業従事者以外の国民が負担を負わないような形で対策というものを進めていっていただきたいと思います。

 次に、TPPとの関係なんですけれども、日豪EPAというのは、TPPに対して、そしてTPPの中の、まさに今フロマン代表が来ているわけですけれども、日米のバイの協議に対していい影響があるとお考えでしょうか。

林国務大臣 TPPとの関連でございますが、先ほど来御答弁しているように、七年間やってきた日豪EPAとTPPは基本的には別の交渉である、こういうことでございまして、特に、日豪がバイであることに比べて、TPPはマルチで、十一カ国の相手、交渉参加国がおられます。したがって、それぞれに合意に至る必要があるということであります。

 したがって、日豪EPAの交渉の合意内容がTPP交渉へどのような影響を及ぼすかということをあらかじめ申し上げることは難しい、こういうふうに思っております。

村上(政)委員 我々の日豪EPAというのは、現在まだ大筋合意の段階でありまして、ぜひ早期に署名、そして発効に至っていただきたいと思います。

 先ほど御紹介したとおり、アメリカはオーストラリアとの間で既にFTAを持っているわけですし、また韓国は署名ということで、ライバルは先を行っているわけであります。政府としても、ぜひ早期の署名、そして発効に向けて努力をすべきだと思うんですけれども、これについてはお考えはいかがでしょうか。

林国務大臣 この署名と発行につきましては、今回大筋合意をいたしましたので、今後は、委員は外務省御出身ですからおわかりだとは思いますけれども、この条文の文言の法的チェック、いわゆる国内の法案でいう法制局審査に当たる、今、条約局がどういう局名になったかあれですが、そういう手続をやっていく、こういうことでございまして、それを粛々と進めていくということだ、こういうふうに考えております。

村上(政)委員 大臣には、所掌以外のこともいろいろとお尋ねして、大変失礼いたしましたが、時間も来ましたので、これで終わりたいと思います。

 この日豪EPA、基本的にはすばらしい内容だと思いますので、ぜひこの通商交渉、通商戦略をどんどん進めていただく。そして、国内の対策というのは、一般の納税者の不安ができるだけ小さい形で進めていただきますようにお願い申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

森山委員長代理 次に、村岡敏英君。

村岡委員 日本維新の会の村岡でございます。

 日豪EPAの問題に関して、我々の村上議員も触れましたけれども、私も、日豪EPAに関して、ぎりぎりの交渉はしたな、タフな交渉はしたなとは思います。

 しかし、外交交渉というのは、一つの問題だけで高く評価するというわけではありません。例えば、鯨の問題、これは司法でしたけれども、完敗でありました。そして、次に日豪EPA、そして今、アメリカのフロマン代表が来ていて交渉をしている。ですから、外交交渉はずっと続くわけです。

 これは、十八年かけて関税が低くなっていく。その中で、セーフガードをとって、ある程度畜産農家、酪農農家の方々がそれに準備をしながら、きちんと競争力を高めていく、ここはぎりぎり何とか交渉が進めたな、こう思っております。

 新聞報道によると、江藤副大臣は、党内のいろいろな後押しがなかったら、これは恐ろしい結果になったというようなことを新聞記事に書いてあったのがありましたけれども、そういう意味では、江藤副大臣は、この日豪EPAに関してはどういう評価をされているでしょうか。

    〔森山委員長代理退席、委員長着席〕

江藤副大臣 私は、今後ろから記事を見せられたので、見ていなかったのですけれども、きのうは自民党内での話でありますので、かなり正直な話の仕方を、いつもしていますけれども、したわけであります。

 決議を守ったのかということはかなり厳しく言われました、正直なところ。その質問に対して、党内で皆さん方から厳しい御意見をいただかず、そして委員会で決議もしていただかないで交渉に臨まなければならない事態に追い込まれていたらどうなっていたかと思うと、ぞっとするという話をしたわけであります。

 今回、篠原先生からも非常に率直な御意見をいただいて、少しほっとしているところでありますけれども、私も、もともとはTPP参加断固反対ということで、自民党内で先頭を切って、鉢巻きを巻いてやってきた人間なんですよ。そういう人間でありますので、いろいろな思いはあります。

 しかし、政府として、安倍政権であるからこそ、これだけの成果が上げられた。そして、ごまをすっているわけじゃありませんが、林大臣であるからこそ、これだけの成果が上げられた。私は、いい結果が得られたというふうに感じております。

村岡委員 自民党だけで正直に言わないで、農水委員会でしっかりと正直に言っていただきたい、こういうふうに思っております。

 林大臣も、この交渉は本当に厳しかったと思うんです。アメリカが目の前にありながら、どのような交渉をするか。自動車は、三リッターまで即時五%撤廃、三年でそれ以外、自動車産業という中では、ある面で貿易で日本が一番の得意分野なので、これはオーストラリアに対してはいい結果になったと思っております。

 しかし、外交交渉ですから、ぎりぎり畜産、酪農の農家の方々に理解していただけるかどうかというのは、こちらの判断ではないんです。それは、私どもはTPP決議にも入っておりませんけれども、ああいう決議をしたということに関して、どうやってこれから農家の方々に説明していくのか。

 そこを理解していけば、初めてこの日豪EPAは、ある程度方向性として、一緒の競争を農業はしながら、また自動車産業の方は歓迎していると思いますので、やはり説明して理解を得るということがこの交渉の成果だ、こういうふうに思っていますけれども、その点は林大臣はどう思っていますか。

林国務大臣 生産者への御説明というのは大変大事だ、こういうふうに思っておりまして、今御質問としては、決議との関連ということでございました。

 先生方にそれぞれお答えをしてきたとおりでございますが、この決議は一号から始まりまして、二号、三号、四号、こういうふうになっております。それから、前文もあるわけでございます。

 まず、一号と三号の関係でいいますと、二〇〇七年の交渉開始以来、豪州から、全品目関税撤廃しろ、こういう要求であったわけですが、この決議を踏まえて、交渉期限を定めず、粘り強く、政府一体となって、自動車の話は主に経産省ということになりましょうが、そういうところも含めてやってきたということでございます。これが一号、三号関係でございます。

 さらに、三号関係として、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖、このことについて、交渉期限を定めず、粘り強く交渉すること、万一、我が国の重要品目の柔軟性について十分な配慮が得られないときは云々、こうなっておりますので、まさにここについて豪州側から一定の柔軟性を得ることができたということで、交渉を中断せずに継続し、今回大筋合意をすることができた。これが三号の関係でございます。

 それから、内容は一号、三号にかかわるところでございますが、冷蔵、冷凍の四%、冷蔵、冷凍に差をつけるというのも今回初めてでございますし、それから、先ほど村上先生のお話にあったように、韓国と比べても、かなり中身の違ったセーフガードをつけることができた、関税率削減期間も十五年、十八年、こういうことで、一定の柔軟性が得られたわけでございまして、国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となった、こういうことでございます。

 それから、四号でございますが、本協定締結の効果、影響に留意しながら、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるように、肉用牛経営を初めとする農畜産業について、構造改革、それから生産性の向上による競争力の強化、これをしっかりと推進してまいりたい、こういうふうに思っております。

 今のようなことをしっかりと生産者の皆様に広報、説明に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 林大臣に答えていただいたように、決議というのは、やはり一回やると、それが走り出しますので、そこのところをしっかりと説明しながら、本当の農業の構造改革をしていかなきゃいけない、こう思っています。

 確かに、条件で韓国よりもいいとかというのは、他国と数字的な比較はそれほど意味ないと思うんです。やはり韓国には韓国の農業構造があり、日本には日本の農業構造がありますから、その評価によって、韓国よりよかったから日本の方がいいということじゃなくて、農業の構造自体が違うわけですから、そこのところにどうやって対策をとっていくのかということをしっかりやっていただきたい、こう思っております。

 先ほど小里政務官が、対策の中でマルキンやいろいろな形でというようなことで、牛肉の関税が減るわけですから、百億ぐらい減ると言われていますけれども、そういうマルキンもいいんですけれども、これをきっかけにして、畜産、酪農農家に対して、どんな形で国際競争力、構造改革を意識的に進めていくということを考えられているか、政務官にお聞きしたいと思います。

小里大臣政務官 御指摘のとおり、しっかりと交渉で、まずは農家を守る、その先をしっかりまた、強い農業を目指して頑張らぬといかぬという御指摘でございます。そのとおりだと思います。

 肉用牛経営につきましては、これまでも、例えば子牛の補填制度あるいはマルキン制度等において、経営安定対策を図って、収益の悪化にも対応してきたところでございます。これらが今後とも経営のセーフティーネットとして機能を果たしていくと期待をしているところでございます。

 また、生産現場の強化対策。

 まず、直近的には、今回の交渉を受けてのことは、先ほど申し上げた、酪農においては、産み分け技術の普及等が考えられると思います。

 そして、生産現場の今後の強化対策としましては、やはり規模拡大というのは一つの大事な柱であろうと思うんですね。そのためには、飼料の安定供給を図ってほしい、畜舎の支援をしてほしい、あるいは作業をどうするんだといった御指摘をいただいているところでございまして、そういったところを耕種側、畜産側、両方からやっていきたいし、特に、作業の外部化におきましては、ヘルパー制度とか、TMRセンターとか、あるいはキャトルステーション等、いろいろなメニューがありますので、しっかり組み合わせながら推進を図ってまいります。また、耕種側においては、飼料米を中心とする水田フル活用、これから強烈に図っていくところでございます。

 そういったところを総合的に行いながら、強い農業、生産者の皆様が引き続き安定的に効率的に、さらに成長していける畜酪営農というものを目指してまいりたいと思います。

村岡委員 ありがとうございました。

 やはり、EPAもFTAもそれからTPPも、農業と工業という対立の枠じゃなくて、日本全体が、食料も大事です、工業での雇用も大事です。やはり、そこを引っ張っていくきっかけで、農業がなかなか今まで構造改革に踏み込めなかった。これをきっかけにして、守るという言葉は、確かに、農業者にとってはありがたいような、逆に、守ると言われると、消費者から責められるような、一緒になって構造改革を進めて、農業がしっかりとした成長産業になる。そして、江藤副大臣の言葉からいえば、一緒にがっつりもうけよう、そういう形の部分に行かなきゃいけないな、こう思っているわけです。

 やはり、どうしても、新聞を見ると、自民党内でも、都会の方と農業県と、ある程度意識の差があると思います。我々維新にもあります。どこの党にもあると思います。ですけれども、そこの意識というのが一致していかないと、国益というのが定まらないと思うんです。そこは、林大臣が、経済通でもあり、外交交渉も通だと思いますので、プラス農林大臣をやったということですから、お互いの、国民の中で一致した意見に行くように、やはりしっかりとメッセージを発していってほしい、こう思っております。これからも厳しい交渉が続く、こう思っております。

 そこで、フロマン代表が来ていて、先ほどの議論の中でも出ていましたけれども、日豪EPAの結果が、生産者に対しての説明の中で理解すると言ったけれども、それよりももっと大事なことは、アメリカとの交渉がどうなることか。これが本当にいい例なのか。アメリカにとってみれば、アメリカは、日豪で先に結んで、どうして我々の要求は何にも聞かないのか、こういうふうな形になると、むしろ先に大筋合意したのは悪かったということになってしまいます。

 新聞記事によると、日本は、当初、アメリカとさえ交渉が妥結できれば、ほかの国とはもう最後でいい、こう思っていたのが、アメリカとの交渉が厳しいので、結果的に、組みやすしと思ったのかどうかはわかりませんが、先にオーストラリアと組んで、オーストラリアの牛肉、昔は日本で五〇%以上のシェアを占めていた、今は三〇%台に落ちてきた、だから、オーストラリアとしても、先に組んで、そして、オーストラリアの牛肉を日本全体に広げるためには、シェアも伸ばすし、オーストラリアとしても非常にそれは利益がある。日本にとってみれば、自動車は五%とかゼロ、それから、アメリカと行き詰まっているということの中で、アメリカに対してプレッシャーをかけられる、こういう方向性じゃないかという新聞記事がありますけれども、林大臣はどう考えられていますでしょうか。

林国務大臣 各社、報道はいろいろな分析をしていただいているようでございますので、興味深く拝見をしておりますけれども、基本的には、まず日豪の方が先に始まっていたということだと思います。

 二〇〇七年から七年越しでやっておりますので、何かTPPの中で先に、急に日豪とやり始めたということではなくて、これはもともと二〇〇七年に始まっていた。TPPの方は、二〇一〇年交渉開始で、我が国が参加したのは二〇一三年でございますので、やはりそこは全く別の交渉としてやっている、こういうことを申し上げておかなければいけないというふうに思います。

 それから、これも先ほどお答えしたとおりでありますが、バイの日豪間だけで完結するという日豪と、それから、TPPは日本を含めて十二カ国、相手が十一カ国いるということですから、それぞれと厳しい交渉をしなければいけない、そして、それぞれと合意に至る必要がある、こういうことでございます。

 各社いろいろな分析はされておられますけれども、それは各社に委ねるとして、今回の合意内容、TPP交渉へどのような影響を及ぼすか、あらかじめ申し上げることは困難であるということを申し上げておきたいと思います。

村岡委員 そういう答えになると思いながらお聞きしました。

 菅元総理が、TPPがあったときに、平成の開国だと言って、何もわからないで船に乗っていこうとしたわけですけれども、それから何年かたって、安倍総理が、これは聖域なき関税撤廃ではないということは確認した、こういう中で交渉参加に入っていったわけです。

 ただ、いまだにこの農水委員会でも国会でも、交渉の中身は秘密保持の中で、なかなか交渉事を明らかにすることはできないということで、それは聞いても明らかにできないと思いますが、TPPとEPA、FTA、この上下関係、どっちが大切なのかというのが何回聞かれてもよくわからないんですけれども、大臣は、これは全く別物だからと考えられているのか。それは、参加している国は同じですから、例えば、日豪のEPAで結んだ、それがTPPで違う十一カ国、ほかとそれが締結した、これは全然構わない、こういう認識なんでしょうか。

林国務大臣 これは、私というよりも、外務省なり、TPPについては先ほど小泉政務官が情報の提供等についても答弁しておりましたけれども、整合性、それから情報の収集、提供については政府全体として対応しておるところでございますので、私から所感として断定的なことを申し上げるということは控えたい、こういうふうに思います。

 基本的には、まずWTOがございます。したがって、百五十九の地域が加盟して貿易自由化を行っている、こういうことでございまして、これに対して、例外と言ってはあれですが、WTOがまずあって、それと別にEPA、FTA、二国間または数カ国間で取り決めをする、こういうことでございます。ある意味では、二国間または数カ国間のTPPも含めて、WTOのルールの例外をつくる、こういうことをやるということであろうかというふうに理解をしておりますので、その間の整合性については、それぞれにおいてどういうふうに定めるか、こういうことになっていくのではないかというふうに思います。

村岡委員 外交交渉なので、なかなか言えないとは思うんですけれども、その整合性がどうなのかというのが一番関心あることであり、国民にとっても、農業者にとっても、我々国会議員にとっても、その整合性がないと、議論していてもなかなか議論が進まないという感じがありますので、これは本当に、その整合性というのはしっかりと、また今度政府の方からお聞きしたいとは思っております。

 そこで、これからアメリカとのEPAや、そういう形の交渉事もあるわけですけれども、新聞とかそういうのは別に事実を報道しているわけじゃないですけれども、アメリカの肉は関税大幅下げとか、いろいろな新聞には出ております。

 ということは、日豪EPAの外交交渉の結果をいい方向に持っていくのか、それとも、逆にアメリカから攻められる材料になるのか、これは、本当にこれからの交渉が大変だと感じております。

 このあたりは、例えばアメリカの交渉に関して、先ほど、新聞報道等はいろいろなことを考えているので、それは新聞は勝手に書いてもいいというような御意見でしたけれども、林大臣としては、アメリカの交渉というのは、日豪EPAを参考にしながら、この方向性でいきたいと思っているのか、それとも違うのか。答えないんでしょうけれども、でも、この交渉事が、林大臣が頑張った評価になるのか、それとも、何だ、考えてみたらかえって悪い結果になったじゃないか、こういうのか、その点ぎりぎりのところだと思いますけれども、お答えできる範囲で。

林国務大臣 先ほど来御質問がありましたので、私のお答えできる範囲で答弁をしてきたところでございまして、あらかじめ、どういう影響を与えるかというのは難しい、こういうことであります。

 また、TPPの交渉については、これは政府の中のことでございますが、甘利大臣が担当大臣ということで、きのう、きょうと担当大臣としてフロマン代表との協議をされておられる、こういうことでございます。

 したがって、私としては、どういう影響が出るか申し上げることは困難でありますが、あらゆることを最大限に活用して、そして決議を踏まえてしっかりと交渉していく、これに尽きるのではないかというふうに思っております。

村岡委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、これから、アメリカとの交渉、TPPと、いろいろ外交交渉をしっかり我々も見守りながら、御意見をしながら、産業もきちんと伸びていただきたい、農業もきちんと成長産業にしていく。その中で、きちんと、林大臣を含め農林省の皆さんが、消費者の理解も得て、ぜひ農業の成長のために頑張っていただきたい。我々も、その点ではぜひ協力していきたいと思っております。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀です。

 きょうは、ここまでずっと日豪EPAについて、やはり、今一番、農林水産委員会としてははっきりとさせておきたいことが多いところだと思いますので、私のスタンスからいくと、こういうときに、また全く違う分野の質問をするというようなこともありかなと思っていたんですが、やはりこの流れの中で、しっかりと私も聞いておくべきことは聞いておきたいというふうに思いまして、きょうは、私も日豪EPAについていろいろお伺いしていきたいなというふうに思っております。

 ただ、一方で、順番がここまで来ますと、事前に皆さんがお伺いになっているということも大分多いなと。私はきょう十問用意したんですけれども、ほぼ七問ぐらいヒットしておりますので、大きな趣旨は変わりません、少し角度を変えてお伺いするかもしれませんが、その点だけ御了承ください。

 それで、私は、こんなことを聞くと、ちょっと恥ずかしいのかもしれませんが、あえて、まだ一期目の議員ということで許していただきたいなと思います。

 まず、国会の決議というのは一体どういうものなんだろうなと。村上委員だったでしょうか、先ほどの質問にも出ておりましたけれども、その法的な拘束力がというか、そういうこともあるんでしょうけれども、私自身は、これだけここまで、TPPもそうですけれども、日豪EPAに関しては、やはり決議でこういうふうに決めたというか意思表示をしたじゃないかと。それも、大臣あるいは政府の皆さんは、しっかり踏まえて交渉に当たるということをおっしゃってきたわけです。そこまでのトーンから考えると、私は、かなりこの決議というのは重視されていて、ここの内容からそれていった、この内容をある程度完全に守れなかったというような状況が起きたときには、これは随分と考えなきゃいけないことなんじゃないだろうかという印象で受けとめておりました。

 要は、ここまで、与野党を問わず、農林水産に所属される委員の皆さんが、やはりこの決議を守れと、そして、特に、農業関係者、生産者の方々もそういったことは強くおっしゃってこられたわけで、大臣におかれましては非常に難しい交渉だったんじゃないかなと思います。

 決議の存在意義というのを、農林水産大臣として、大臣がどのようにお考えになっているかというのをお伺いしたいなと思います。

林国務大臣 先ほど村上先生のお話にあったとおりでございまして、国会決議は国会の意思表明である、こういうふうに認識をしております。

 EPAが発効するためには国会の承認が必要であります。これは、我が国では当然のことのように申し上げておりますが、例えば、アメリカでは、もともとの通商権限というのは議会にございますので、その議会の持っている通商権限を法律という形で政府に与える、これがいわゆるTPA、昔はファストトラック、こういうふうに呼んでおりましたが、そういうふうになっているわけでございまして、どういうふうにするかというのはそれぞれの国で実は異なっている、こういうことでございます。

 したがって、我が国の場合は、発効のための要件として国会の承認、あるいは条約の場合は批准という言葉もありますが、こうなっているわけでございまして、そういう仕組みの中で、この決議があるということでございます。

 したがって、我々としては、常々申し上げてまいりましたように、この決議を踏まえて、政府一体となって交渉を行うということを常々申し上げ、そして今回の大筋合意に至った、こういうことでございます。

林(宙)委員 先ほど江藤副大臣がおっしゃったことで、私の理解が正しければですけれども、今回の決議があればこそ、その交渉の中でも、やはり日本としてはこう考えているんだよ、国会でも意思表示されているんだよというものがあったから、タフな交渉も乗り切れたというようなことをおっしゃったのかなと私は理解しているんですが、そういう意味では、やはりこの決議は非常に大事な国会の意思表示だと思っています。

 ちょっと調べてみたんですけれども、若干脇道にそれますが、決議というのは過去に一体どのぐらいやられているのかなと。調べてくださいということでちょっと依頼をしてみたら、戦後の数ということで出されたんですけれども、それだと余りにも多過ぎるかなと思ったので、では、二〇〇六年からという形で調べてみました。

 多いところからいきますけれども、まず、農林水産委員会は、二〇〇六年以降、十五決議しています。同じく総務委員会が十五決議していますが、では、その次に来るのはどこでしょうかというと、厚生労働が七なんですね。半分なんです。さらには、その後に、国土交通、それから災害対策特別委員会というのが六つほどやられておりますけれども、やはりこうやって考えると、農林水産で出している決議というのは、圧倒的にと言っていいかどうかわかりませんが、少なくともかなり多いという印象があります。

 二〇〇一年からで数えても、農林水産委員会では二十四になっていまして、総務委員会が二十二。トップクラス、まさに一番という形になるんですが、これだけの意思表示を過去にもやられてきた。その結果、それがどのように結びついたかというのはそれぞれだと思うんです。

 例えば、今回の決議をもとにして日豪EPA合意をしたわけなんですけれども、これを、仮に国民が、何か言っていることと違うじゃないかという印象を持たれてしまうと、では、次に同じような決議をしたときに、どうせ口だけでしょうと思われてしまうリスクというのは非常にあると私は思うんです。

 これは国会にとっては大きな損失になるんじゃないかなと思っていますので、ぜひ、大臣も、これはぎりぎりで何とか交渉してここにこぎつけましたというおっしゃり方でもいいと私は思いますが、ただ、与野党を問わず、私たち、国民の皆さんに、こういう意義のもとにこういう内容になったんですよというのはしっかり説明しなきゃいけないと思うんです。私たちもそうですが、これは政府の皆さんにも、ぜひ、より強く今回のこの意義を発信していただきたいなというふうに思っています。

 私は、今回、この決議の内容を考えていったときに、大臣がこの合意をした後の談話で、談話のトーンとして、決議でこういうものが出されていて、若干そこよりは少し相手に譲歩した部分はあるかもしれないけれどもというようなトーンになるのかなと思っていたら、談話を読ませていただいたら、結構、よし、これはいいものになったという感じのトーンで私は受けとめたんですね、それはそれでいいんですけれども。

 ということは、これも先に皆さんにお答えいただいていることになってしまうんでしょうけれども、やはりこの合意内容と国会決議の関係というのは、大臣の中では、これはいいものになったというような感覚で捉えられているのかどうか、その辺をお伺いしたいなと思います。

林国務大臣 この談話について、なるほど、そういうふうにお読みになったのかなと思って聞かせていただきました。

 一昨日は参議院で、そしてきょうはこの衆議院で、特に衆議院の場合は、日豪EPAについてということで御議論いただいておりまして、さまざまな御意見、見方というものをそれぞれの先生方からいただいたな、こういうふうに思っております。

 私としては、やはり、談話にも申し上げましたし、先ほど御答弁を申し上げているように、この七年来の交渉を決議を踏まえてやってきて、決議、それぞれの号に対してこういうことだったということも先ほどお話をしたとおりでありますが、大筋合意というところに来たということができておりまして、主観的によかったとか悪かったとか、そういうことを申し上げるべきことではない、こういうふうに思っております。

林(宙)委員 私自身は、我が党の政策的なところからいっても、今回のこの合意内容はよかったな、いい内容だったんじゃないかなと率直に評価を、まあ評価をさせていただいているという言い方がいいかどうかわかりませんが、私はすごくいい内容だったんじゃないかなというふうに個人的には思っています。

 ですからこそ、ちょっとニュートラルに聞いていきたいなというふうに思うんですけれども、今回の合意内容で、やはり先ほど来からありますが、報道に関しては物すごく否定的な調子で書かれている、要するに、これをもって国内の、特に牛肉、国産牛に関しては大きな打撃があるんじゃないかというような論調が多いなというふうに受けとめているんです。

 先ほどから影響が限定的だというようなことをおっしゃっていますけれども、合意するに当たって、今回の、やはり合意するときにはこの内容だとどのぐらいの影響があるのかなという想像というか、考えないはずはないので、その判断に際して、例えば乳製品もそうですし、国産の牛肉その他、大きな影響は受けないというような判断のもとに合意されているのかということを、まず政府参考人の方にお伺いしたいなと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、審議の中でもいろいろと御答弁させていただいておりますが、まず牛肉につきましては、冷蔵、冷凍間の四%の税率差といったこと、それとまた、効果的なセーフガードといったことで、現状よりもふえれば三八・五に戻るというかなり効果的なセーフガード、そしてまた、関税の削減でございますが、冷蔵が十五年、冷凍が十八年といったようなことで、長期間をかけた関税削減といったものが盛り込まれておりまして、国内畜産業の健全な発展と両立し得る、我が国としてぎりぎりの線は確保できたものというふうに考えているところでございます。

 また、乳製品でございますが、バター、脱脂粉乳については、いわゆる再協議、将来の見直しということであります。ただ、ナチュラルチーズにつきましては、プロセスチーズ原料用などについて、一定量の国産品を使用するといったことを条件にした関税割り当ての設置ということになっておりまして、国内の生乳生産に影響を及ぼさない範囲の合意内容となっているものと考えているところでございます。

林(宙)委員 そうしますと、続けてお伺いしたいんですけれども、今回まだ、大臣の談話が発表されて、そのほかにそんなに大きい情報が出てきているわけではありませんので何とも言えないんですが、ただ、今見る限りは、今回の合意を受けて、今後どういう支援を打っていくのかということは非常に重要な要因になってくると思うんですね。まだ、それについては具体的にというところまでは行けないでしょうけれども、構造改革をやっていくんだとかそういうことぐらいしか触れられていませんので、今の局長の御答弁だと、かなり影響は限定的なので、もしかすると、そんなに具体的な大きな支援は必要ないんですよというふうに受けとめられる方もいらっしゃるんじゃないかと思います。

 その辺について、まず、今後支援が必要なのかどうか、そして、やっていくのであればどんなことを今お考えなのかということを、御答弁いただける範囲でお願いします。

江藤副大臣 先ほどから答弁させていただいておりますが、具体的なことを、かくかくしかじかということをここで申し上げることは控えたいと思います。

 しかし、畜産部は非常に優秀な部局でありますので、スタディーとして、こういうことが起こり得るということは当然、私も畜産畑をずっとやってきましたから、検討、考えるようなことはしているわけであります。

 しかし、今回の合意内容であれば、それほど大きい影響はないとは考えておりますけれども、大臣も先ほど申し上げましたように、農家からしてみれば、国の判断によって関税が下がって、それによって安い牛肉が入ってくる、そういった歴然とした事実はあるわけでありまして、農家から受け取れば、それに対して支援をしてもらうのは当然のことだというふうにお考えになるのも当然だと思います。

 ですから、きのう、農林部会が自民党であったわけでありますけれども、そこで決意表明をしろと私は言われました。きちっと経緯を留意させていただいた上で、影響が出ればしかるべき対策は打たせていただきますということを申し上げましたので、同じことをここでも申し上げたいと思います。

林(宙)委員 きょうは、先ほど自民党の武井委員も、今までの輸入の実績なんかを見ると、国産と輸入の割合というのはそんなに変わっていないんだけれども、今回のこれによって輸入の絶対量そのものがふえてきたらどうするんだとか、いろいろな影響が考えられると思うんです。

 一応、事前に事務方の皆さんにもお伺いをしたところ、支援策について今云々というわけではないんですけれども、基本的なこれまでの構造改革あるいは生産性の向上、こういったところで対応がある程度はできるはずだというふうにお考えだということをお伺いしましたが、くしくも、先ほど民主党の篠原先生が表でお示しになられましたけれども、実際、日本の構造改革というのは大分進んでいるんだということを数字的に示されたというのが私は非常に重いなと思っていて、では、ここまで進んでいるものをさらにどのぐらい進める余地があるのかとか、まだまだいけるんですよということであれば、私はそれでいいと思いますし、いや、実はそうではないんだという現状がもしあるんだったら、これは政府としても積極的に支援を考えていかなければいけないんじゃないかなと思います。

 篠原先生がいいなと思ったのは、数字で出してくださったことなんですね。私はいつも事務方の皆さんに、これはほかの委員会でもそうなんですが、数字はあるのかということをお話しするんですけれども、基本的には、ない、そういう数字はお出しできない、あるいは、いろいろな要素があり過ぎて計算ができないということをよく言われるんですが、物事を判断するに当たって、このぐらいの影響があるだろうなと想像する場合には、必ず何らかの試算を頭の中でしているはずなんです。それを根拠に反論していただくというのが正しい反論だと思うんですけれども、人間の皮膚感覚で、もちろん、勘とか経験というのはあると思いますよ。それに基づいて、いや、例えば影響は限定的だと思いますと言われても、私らは、では、それをよい方に受け取っていいのか、その限定的というのは、実は思っているよりも悪いと考えた方がいいのか、この判断に非常に迷うわけで、できることなら、今後、しっかりと、仮定に仮定を置いても結構ですので、そういった数字というのはぜひある程度出していただきたいなというふうに思います。これは、質問ではなくて、ただの意見表明です。

 あと、時間がなくなってきましたので、今までいろいろなことを言ってきましたけれども、消費者という立場に立つと、今回の内容はむしろ受け入れやすいものなんじゃないかなと思うんです。どういうことかというと、これも事前に聞いたら、私は、消費者的にはこれはすごくいいことですよねと聞いたら、業者の方がブロックで肉を買うときには、かなり関税の分というのは値段が下がってくるということがあろうという一方で、例えばスーパーなんかで売っている値段はどうなるんですかと聞くと、それは、その処理をするまでにいろいろなところでいろいろな人件費がかかっていたり、物流コストがかかっていたりするので、余り大きく値段が下がるということはないんじゃないか。これも、ないんじゃないかという言い方ですよ。

 なので、断定ではないんですが、そうなると、私は、これは消費者の皆さんにとってはよかったですよと説明しようと思っていたんですけれども、いや、そうじゃないんだということになってしまうので、これはどうしようかなと思っているんですが、政府におかれましては、消費者の立場で考えると、今回の内容はどのように御説明されるんでしょうか。

江藤副大臣 どれがどれぐらい下がるかという店頭価格について数字を出すことは差し控えさせていただいて、個人的には勉強しました。それから、例えばハンバーガーのパテが一個当たりどれぐらい下がるかということを、個人的にはですよ、省としてではなくて、研究はしましたけれども、ここで申し上げることは差し控えたいと思います。

 しかしながら、まずは、選択肢が広がるということがやはり消費者にとっては大きな利益だと思いますし、店頭価格は、これで上に向くというベクトルが働くわけではなくて、少なくとも下には向くわけでありますから、消費者にとっては利益はもちろんあると思います。そういうことによって起こる生産者に対する損害というか影響については、国としても、しかるべき対応をとる準備をしなければならないということもあわせて考えております。

林(宙)委員 私もそのような形で消費者の皆さんに御説明をさせていただきたいなというふうに思います。

 いろいろ申し上げましたが、最後に、私は、これはよかったなというのが一つありまして、今回のEPAの内容で、食料供給章というのが入っていますよね。私は、今回、ちゃんと入っているというのは、すごくいいことなんじゃないかなと思うんです。

 というのは、日本というのは、もちろん自国内で食料生産というのを非常に頑張ってきているわけなんですが、かといって、では、全部が全部、完全に将来にわたって賄えるかと言われたら、そうは言い切れない部分があります。必ず輸入の食料にある程度頼らなければいけない側面というのはあると思いますので、何かあったときに、ちゃんと輸入が滞らずに食料が入ってくるということを安全保障的に決めていくのはいいことなんじゃないかなと思うんです。

 もともとガットの方で決まっていることがそのままEPAに、今回、農業大国とのEPAということで引き継がれたということなんですけれども、今後、やはり農業を主にしている国とEPAなどをやっていくに当たっては、これは前例として、オーストラリアのとき、これを入れたんだから、今回もちゃんと入れますよと言えると思いますので、非常によかったんだと思います。

 これに関して、大臣は御自身でどのように評価されているか、最後にお伺いします。

林国務大臣 食料・農業・農村基本計画にも、食料安保のために、国内生産、輸入、備蓄等々でしっかりと確保していく、こういうふうに書いてあるところでありまして、そういった意味でも、この食料供給章、今回は本邦初公開といいますか、EPAとして初めて設けられたものでありますが、御指摘のとおり、食料について輸出国内の生産が不足した場合でも輸出規制を新設、維持しないよう努めるというふうにきちっと書かせていただいたところでございます。

 それに加えて、輸出制限を導入する場合の制限範囲の限定、事前に情報を提供し協議をする、食料分野への投資の促進及び円滑化、それから食料の輸出量が著しく減少することが予見される場合の食料供給に関する協議のメカニズムについても規定をさせていただきました。

 豪州は、我が国にとって五番目の重要な農林水産物の輸入先国であるわけでございまして、食料供給に関する日本と豪州の関係をこの章によりまして強化するということは、大変に両国にとって有益であるというふうに考えております。

林(宙)委員 先ほど申し述べたように、本当にいい内容になっていると思いますので、引き続き、私たちもしっかりと前へ向いて、協力をさせていただきたいなというふうに思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 最後なので、私もかなりかぶりましたので、通告の範囲内ですが、ニュアンスを変えたり、あと、更問いっぽくなるかもしれませんが、その点を御了承願いたいと思います。

 まず、国会決議との関係で、ちょっとミクロな議論をさせていただきたいと思います。

 きょうは、内閣官房に来ていただいておりますので、TPPにおける定義ということになりますが、除外、再協議というのはどういうものなのかというのを確認したいと思います。

 資料をお配りしております。資料はいろいろあるんですが、内閣官房の二つを抜粋してみたところ、何回も同じことが載っているんです。除外というものは、特定の物品を関税の撤廃、削減の対象としないこと、再協議とは、特定の物品の扱いを将来の交渉に先送りすることと定義しておりますが、この記述は事実でしょうか。確認をいたします。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました記述でございますが、我が国が、TPPの交渉に参加する前に、TPPにおけるセンシティブ品目の扱いについて、事前の情報収集に基づいた内容を取りまとめたものでございます。

 TPPの交渉では、全ての物品を交渉の対象とすることが前提であり、センシティビティーについては交渉の中でかち取るべきものだ、そういう意味で、これまで我が国が結んだEPA、FTAとは違いますよ、かなり厳しいものだという趣旨を述べたものでございます。

 今先生、定義とおっしゃいましたが、政府として、除外、再協議についての一般的な定義を示したものでは必ずしもないと認識しております。

畑委員 一般的な定義は結構です、法的な、厳密な議論をしているわけではありませんので。

 ただ、この決議を踏まえ交渉すると大臣もおっしゃっておりましたが、決議を踏まえるということは、一般的な文言も含めて、定義というものは当然腹に置いておかなければ交渉できないわけであります。

 これは、国語的に読むと、除外はまさに除外であります。除外は、何を除外するかというのは確かに解釈の疑義はありますが、関税の撤廃、削減ということで、再協議もそういうことであります。

 そもそも、TPPの決議ができたのは、EPAの決議が時期的に最初にあって、この決議をやって、その文言を踏まえてTPPの決議の文言になっている。なおかつ、先般、大串委員から、こういうふうに書かれたEPA、FTAの決議で、関税が引き下げられた例があるかということはないと言われた。そういうことを勘案すると、この定義は明確であろうかと私は思っております。結局、関税の撤廃、削減を対象としないということなわけです。

 ここで大臣にお伺いしたいと思いますが、全体の趣旨は合致するように一生懸命交渉していただいたということに対して敬意を表させていただきますが、細かいところを言うと、日豪EPAの一の「除外又は再協議の対象となるよう、」云々というところは守られたと言っていいんでしょうか。

林国務大臣 我が国がこれまで締結したEPAにおける物品市場アクセスの約束の中で、確立した除外の定義はない、こういうことでありまして、今委員も、国語的に言うと、こういうことでございましたが、したがって、政府として、今回の牛肉の約束は除外かどうかという判断を示すことは難しいということであります。

 事実関係として申し上げますと、日豪EPAの中の話として、関税の撤廃、引き下げに関する約束等の対象から除外されるという区分があります。牛肉は関税削減を行っておりますので、日豪EPAの中では当該区分には該当しない、こういうことであろうかというのが事実関係であろうというふうに思っております。

 牛肉については、もともと関税撤廃を豪州はずっと強く要求しておりましたが、そこと粘り強く交渉した結果、これは決議にありますように、豪州側から一定の柔軟性を得て、国内畜産業の健全な発展と両立し得る結果を確保した、こういう判断をいたしまして、今回、大筋合意をするに至った、こういうことでございます。

畑委員 該当するかどうかということに対してはそういう答えになると思いますが、となると、きょう、これは一般論では質疑がたくさん出ましたが、今回の日豪EPAの牛肉の関税の引き下げ、これがこれからの協議のモデルに当然ならなければならないだろうと思います。

 であれば、先ほど林委員からありましたが、この文言が趣旨として合っているとか、一生懸命国益を守ったという問題は別として、国会の文言が、反しているというか、そこは違うんじゃないかというように見られることになると、国会の決議は趣旨を守ればいいんだとか、文言は総合解釈なんだというふうになってしまうというのは、なかなかいいことではないなと思っております。

 それで、TPPとの関係とか今後の関係をちょっとお聞きしたいわけであります。

 今回の合意を見ますと、結局、関税を引き下げて、セーフガード発動とか、言ってみれば、低関税輸入枠ということで入れる。こういうことの趣旨でセンシティビティー品目を守れば、趣旨としては、政府としては、EPAは今回こういうことなので、TPPも決議に反しないのだろうなという解釈というか、そういう方針でおられるのか。

 要は、これからアメリカと交渉するわけです。そこは交渉のことで、なかなか一概には言えないというのはそれまでなんですが、さはさりとて、アメリカはまだがんがん言っている。そうした場合に、日本はもちろん、今回、日豪EPAで妥結したラインを割ってはいけないのは当たり前で、だから、ここが一つのスタンダードにならなければいけないというのは確かだと思うんですが、その辺の方向性をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 恐縮ですが、これも何度かお答えをしてきたところと基本的には同じ答弁になると思いますが、日豪のEPAはTPP交渉と別の交渉であるということでございます。

 したがって、客観的な事実としては、これが大筋合意を、今お話ししている内容で決まったということは客観的な事実でございますから、そのことは、当然、我々のみならず、豪州やアメリカやほかのTPP参加国も承知されておられる、こういう前提は申し上げておかなければいけません。

 その上で、この合意内容が、TPP交渉、これは十一カ国とそれぞれ交渉し、合意をする、こういうことですが、どういう影響を及ぼすかということをあらかじめ申し上げるということは難しいというふうにお答えさせていただきたいと思います。

畑委員 影響はおっしゃっていただかなくて結構ですが、我が国の交渉方針というのは、当然、これをベースにとは言えないんでしょうが、要は、こういう今回の日豪EPAの合意を前提、ひな形にというか、これを下げずに交渉する方針であることは確かなのでしょうかということをお伺いしたいんです。

林国務大臣 これは一貫して交渉参加以来私が申し上げてきたことでございますが、TPPにおける、具体的にどの品目をどうということは、このお答えは手のうちを明かすことになりますから申し上げられない、こういうことでございますが、重要五品目等の聖域の確保について決議をしていただいておりますので、この決議を踏まえて、国益を守り抜くよう全力を尽くす考え、これは変わっておらないということを申し上げておきたいと思います。

畑委員 決議を踏まえ、これを守ることは変わっていない。ただ、そこまで厳密に除外、再協議の定義もおっしゃっていただけないし、そこは守っているか守っていないかというところが、非常にこの文言についての議論が深まらないところです。何となくすっきりしないし、本当にそうなのかなと思うわけでございます。

 ちょっと牛肉以外の部分をお伺いしたいところがあります。

 今回の合意で、小麦が将来の見直しと書かれてあります。そして、乳製品も、一定のものは将来の見直し、砂糖も将来の見直し。将来の見直しと書いている部分の定義なんですが、要は、これが再協議の対象ということで、守られたのかどうか。将来の見直しといった場合には、これは将来の見直しについてコミットメントしたものかどうかというところを解釈しないと、守られたかどうかはなかなかわからないという疑問を私は持っていまして、ゼロベースで単純に先送りしたにすぎないのか、あるいは、将来協議する場合に、見直しと書いている以上、これは見直すだから、何らかの変更を前提にした合意なのか、そこのところは、いかがなんでしょうか。

林国務大臣 将来の見直しですが、一定期間経過後、五年目等に、両国で関税等の取り扱いを協議するということでございます。

 将来、それらの品目について何らかの市場アクセス改善を付与するかどうか、これについては、まさにその協議の中で議論されるものでありますので、その協議結果を予断する約束はしていない、こういうことでございます。

畑委員 わかりました。

 予断をもたらすような合意はしていないということは、要は、将来再協議するだけであって、ゼロベースだということで理解してよろしいんでしょうね。もう一度、同じことになるかもしれませんが、ちょっと大事なところなので、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

 リビューというふうに英語はなっております。これは今後、法的チェックを経て文言は確定いたしますが、再協議について確立した定義がないものですから、今回の公表資料には、リビューなので将来の見直し、こういう表現を使っているということでありますが、先ほど申し上げたように、この協議結果を一方の方向にこうしようということがないという意味では、委員がおっしゃっている再協議ということと余り変わらないのではないかというふうに思っております。

畑委員 確認をいたしました。ありがとうございました。

 では、影響の方なんですが、今回の合意の重要農産物に与える影響については、これはそんなにないだろうという話がございました。

 ちょっと具体的にお伺いしたいわけです。

 この合意で豪州産の牛肉関税が引き下がれば、セーフガードがありますので、そんなに多くは入っていないというか今ぐらいの輸入数量で来るということだとしても、関税分の価格は当然下がってくるわけです。まさに和牛とか競合しない分野はいいんですが、赤身肉で競合する分野は当然あって、安い部分、品質が中下位レベルだと競合してしまう。そこはやはり値下げ圧力が働いてくるのではないかと思います。

 これは競合するかどうかは別として、私の地元、かねて委員会で申し上げていますが、地方特定品種で短角牛なんかがあって、これも赤身肉で、赤牛は江藤副大臣のところもあられますが、こういうものに影響が出てこなければいいのですが、本当に影響なしと言えるのかどうか、私もちょっと心配しているところであります。

 これは短角に限らず、そういうまさに和牛じゃない部分のところについて、悪影響はないと見ているのでしょうか。その辺の影響を具体的にお伺いしたいのと、あと、きょうの議論だとこれから検討されるんでしょうが、影響があるとした場合に何らかのやはり支援の検討というのをしていかれるのか、そういう影響があればということですね。そして、特に、これで考えられるのは、細かくいうと新マルキンなんでしょうね、もし対策を検討するとすれば。新マルキンの発動基準とかあるいは国の補填割合の向上とか、素人的に考えるとそういうところを検討していくのかなと思うんですが、森山先生、うなずいておられまして、ありがとうございます。その辺のところの方向性と影響の感覚というのをお教えいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、影響でございますが、先ほど申し上げましたとおりに、ぎりぎりの線は確保できたというふうに考えております。需給関係で今後起こり得るとすれば、先ほど御答弁申し上げましたように、アメリカ産と豪州産の置きかえ、これが生じるだろうというふうに考えているところでございます。

 牛肉につきましては、今先生の方からお話ございましたように、いわゆる新マルキンといった経営安定対策、こうしたものを既に実施しておりまして、これによりまして我が国畜産に係る生産基盤の継続強化に取り組んできているところでございまして、これにつきましては、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営が続けられるよう、今後ともしっかり適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。

 その中で、マルキンの点でございますが、これにつきましても、やはり輸入の状況等が今後どうなっていくかということを十分注視しながら適切に対応していきたい、このように考えているところでございます。

畑委員 ありがとうございました。しっかりと注視しながら検討をいただければと思います。

 それで、ちょっと時間がありますので、厳密には通告していない部分ですが、きょうは局長に来ていただいていますので、お伺いしたいんです。

 影響がそれほどないということなんですが、先ほどの議論で、例えばオーストラリアの自動車関税がなくなることで四百三十六億円の関税がなくなるというメリットがあると言っていましたが、当然、こちらの方は牛肉の関税を下げるわけですから、米国産が豪州産に置きかわるとしても、そこの価格低下があったり、あるいは関税収入のもちろん低下はあるわけですが、この四百三十六億円と比べると、そこは試算されていないということだったんですが、それを前提にお伺いします。

 試算、厳密なところはいいんですが、やはり交渉というのはプラマイ・ゼロ以上じゃなければ妥結してもおもしろくないものですから、そこは、そういうところも含めてマイナスはそれほどないというか、そういう感じの感覚を持たれておりますでしょうか。

佐藤政府参考人 影響につきましては、先ほどから答弁させていただきますように、為替の問題でありますとかいろいろな状況が出てくるということで、一概にこのくらいというようなことは、当方でもお話し申し上げることはなかなか困難だというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、現在、新マルキン事業というのがたしか九百億弱、八百六十億といったような予算措置を講じておるところでございまして、こうしたものが岩盤となって、今後とも、生産者の皆様が安心して経営に取り組んでいけるようにしていくといったことが我々の責務かというふうに考えているところでございます。

畑委員 これを踏まえて、大臣か、江藤副大臣でも、通告していなくて恐縮ですが、ちょっとお伺いしたいんです。

 先ほど篠原議員からもありましたが、試算のことです。

 私は、国際交渉というのは、いろいろな状況の中でフレキシブルにやらなきゃいけないので、かちっとした試算はもちろん求めないんですが、やはりどういう影響があるかというのは、ある程度腹づもりで試算して交渉しているものだと思っていましたが、そこは影響はないと言いながら、試算が十分、厳密なところがないというのは、ちょっと腑に落ちない思いでおります。

 これから影響を考える場合には、きょう出た論点も含めて、やはり試算が必要なのだろうと思います。その試算というのは、篠原議員は早急にしてくださいとおっしゃっていましたが、この試算を行う考えはありませんでしょうか。いつぐらいまでに行うか、その辺のところを、ぜひとも試算していただきたいんですが、お答えいただきたいと思います。

林国務大臣 今回の大筋合意に当たって、景気変動、それから為替変動によってさまざまに貿易に影響が及ぼされる、また国内の価格に対する影響も、そういう影響がございますので、今回のEPAによる影響について、貿易額の変動予測を行うのは困難である、こういうふうに思っております。

 一定の前提を置いて、こういうことでございましたが、やはり一定の前提を置くと、また、前回、経営所得安定対策、米政策の見直しのときも、その前提の置き方についていろいろ御議論を賜ったところでございますので、当然、頭の中で、対策が必要になった場合のことをいろいろ体操する場合に、勘でやるということではないでしょうから、これぐらいの為替で、こういう景気で、こういう影響が出ればということはやりますけれども、我々が試算をして公表するということになりますと、それがひとり歩きをする、こういうことも当然考えられるわけでございます。

 影響が出た場合の準備を怠りなくやるということはしっかりと、先ほど副大臣から申し上げたとおりでございますが、何か一定の仮定のもとに、影響試算ということを外に公表する形でやるということはなかなか難しいのではないか、こういうふうに考えております。

畑委員 私は、そこは認識が違うというか、ちょっと残念です。

 やはり、これは、影響がないならないで、一定の前提を置いてもいいんですが、一定の前提だということをしっかり誤解のないように言っておけばいいのです。そこの、米のところの議論でもそうですが、なかなか試算を出したがらない、そういうふうに見えるんです。そこの考えは、ちょっと残念というか、新しい政策をやるといった場合、やはり試算というか、そういうデータに基づくことが必要なのです。しかも、ここは国会ですから、そういうのは公表していただきたいと思います。

 時間がないので、そのことをきょうは申し上げておきますが、いずれにしても、大臣の今の御答弁だと、もし影響がある場合には、こういう政策の充実支援策というのをやっていくわけだから、当然、勘でやるわけにはいかないから、これを公表するかどうかは、きょうの段階では別として、やはりそこはしっかりとした検証と、そういう試算をやっていくということは確認いたしました。

 公開の方法については、引き続き議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

坂本委員長 この際、内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案審査のため、昨九日、第一班佐賀県、第二班新潟県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を聴取いたします。

 まず、第一班として佐賀県に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、坂本哲志を団長として、谷川弥一君、大串博志君、鈴木憲和君、玉木雄一郎君、岩永裕貴君、鈴木義弘君、樋口尚也君及び畑浩治君の九名であります。

 会議は、昨四月九日午前十時より佐賀市内のマリトピアにおいて開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の六法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、神埼市長松本茂幸君、佐城南部地域大豆共乾施設利用組合役員光吉正明君、株式会社石動農産代表取締役・佐賀県農業法人協会会長秋吉義孝君及び元大和町長原口義春君の四名でありました。

 意見陳述者の陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。

 まず、松本茂幸君からは、水田のフル活用においては、飼料用米のみならず、麦、大豆にも力を入れる必要性、内閣提出二法案について早期に成立を図る必要性等の意見が述べられました。

 次に、光吉正明君からは、急激な農政転換は、現場に混乱をもたらし、農家にとって死活問題であること、農業者戸別所得補償制度を法制化し継続することの必要性等の意見が述べられました。

 次に、秋吉義孝君からは、農地中間管理機構の制度化や多面的機能支払いの創設については、規模拡大を行う好機と捉えていること、中山間地域の農業は危機的な状況にあり、総合的な所得補償を行う必要があること、教育現場において、命や食料の大切さを子供に理解してもらうことの重要性等の意見が述べられました。

 最後に、原口義春君からは、農家においては、個々の所得につながる政策である農業者戸別所得補償制度がわかりやすくてよいという声が多いこと、旧大和町地区の農業の現状を踏まえ、規模拡大が円滑に行われるような施策を進める必要性等の意見が述べられました。

 次いで、各委員から、担い手経営安定法改正案において、認定新規就農者を対象農業者に追加するとともに、面積規模要件を外したことに対する評価、麦、大豆、飼料用米に重点的に支援を行うことの重要性、農業者戸別所得補償制度に対する評価、海外への販路開拓に係る取り組み状況、自主的で実効性のある生産調整の実現方法など、多岐にわたる質疑が行われました。

 以上が第一班の概要であります。

 会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。

 今回の会議の開催等に当たりましては、地元の関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

 次に、第二班宮腰光寛君。

宮腰委員 第二班として新潟県に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 派遣委員は、私、宮腰光寛を団長として、北村誠吾君、村岡敏英君、石田祝稔君、武部新君、寺島義幸君、鷲尾英一郎君、高橋みほ君及び林宙紀君の九名であります。

 会議は、昨四月九日午前九時三十分より新潟市内のANAクラウンプラザホテル新潟において開催し、意見陳述者の方々から、現在本委員会で審査中の六法案について意見を聴取した後、これに対して各委員より質疑が行われました。

 意見陳述者は、有限会社フジタファーム代表取締役藤田毅君、柏崎専農経営者会議会長布施学君、上越市副市長野口和広君及び高柳町農業農村活性化協議会委員鈴木貴良君の四名でありました。

 意見陳述者の陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。

 まず、藤田毅君からは、現状の生産コストを前提に農家所得を維持しようとすることが、強い経営体の育成の阻害原因となっていること、直まき等のコスト削減の取り組みはリスクを伴うため、セーフティーネットの構築が重要であること等の意見が述べられました。

 次に、布施学君からは、米の直接支払交付金の廃止は農業者の経営に大きな影響を与えるため、継続を希望すること、米の生産調整を見直す前に、余剰米の問題を解決し、米の需給バランスを確保する必要があること等の意見が述べられました。

 次に、野口和広君からは、制度改正に当たっては、安定的な制度となるよう法制化が必要であること、担い手が将来の見通しを立てやすい方向とするよう希望すること等の意見が述べられました。

 最後に、鈴木貴良君からは、中山間地域等直接支払制度の法制化に当たっては、現状を踏まえて改善を図るよう配慮すべきであること、米の直接支払交付金は中山間地域の農業を支える根幹となっており、個に対する支援は今後も必要であること等の意見が述べられました。

 次いで、各委員から、経営所得安定対策の対象を担い手に重点化することに対する評価、米の直接支払交付金を平成二十六年産から減額し平成三十年産から廃止することの妥当性、農業者戸別所得補償制度による農地の貸し剥がしの発生状況、検討中の収入保険制度に対する見解、飼料用米の増産に取り組む上での課題、地域の共同活動を維持するための日本型直接支払いの活用方策、中山間地域等直接支払交付金の改善点、大規模化の進展により発生する離農者の雇用及び定住対策など多岐にわたる質疑が行われました。

 以上が第二班の概要であります。

 会議の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。速記録は、本委員会議録に参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。

 今回の会議の開催等に当たりましては、地元の関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

坂本委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。

 お諮りいたします。

 ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録は、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕

    ―――――――――――――

坂本委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十七分開議

坂本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 内閣提出、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに第百八十三回国会、大串博志君外六名提出、農業者戸別所得補償法案及び大串博志君外六名提出、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君及び林野庁長官沼田正俊君の出席を求め、説明を聴取したいと思いますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。後藤斎君。

後藤(斎)委員 皆さん、大変お疲れさまでございます。

 冒頭、大臣でなくて結構なんですが、二月の豪雪、累次にわたり対策を打っていただきました。特に、一次、二次という形で、二次対策については、現状を踏まえて、きめ細かな対応をしていただいたというふうに思っております。

 実は、四月の上旬になって、私が以前この委員会でも指摘をさせていただいたように、いわゆる壊れたハウスの撤去について上限を定額制にするという形で、農水省からも、それを上回ったものについては農家の自己負担にするというお話もございました。この点については、やはり少し柔軟に対応しなければいけない。

 特に、それぞれの地域の農家の方々から見れば、撤去の需要がたくさん発生し、みずからも、十アールで十一万ということではなかなか難しく、また、普通のハウスにとっても、十アールで二十九万というキャップをはめられると、それを上回ってしまった農家の方々がいらっしゃるということで、それに柔軟に対応するという報道を拝見させてもらいました。

 あわせて、山梨県でも、いわゆる露地物、施設物をつくると、未収期間の部分について、果樹は時間が非常にかかるものですから、その部分をできるだけ農家負担が極小化するようにというお願いをしておりましたところ、これも、露地を一部施設に戻したい農家の方々については、今までのスキームの中の延長線ということでありますけれども、農家の方の負担をできるだけ軽減するという仕組みで、露地物から施設物への農家単位での転用ができるというお話もありました。

 実は、これは三次対策としてパッケージにすればいいのかなと思っているんですが、農水省でも、二月の豪雪でハウスの被害額が一千億を超えたという公表もしているようでありますから、これは三次対策として、それぞれの地域に、また農家の方々にきちっと伝わるようにしていただきたいと思いますけれども、現時点で農水省が把握をされている被害の総額と、そして三次というか、二次までに追加をした対策について御報告をお願いしたいというふうに思います。

奥原政府参考人 大雪の被害の対策でございます。

 この冬の大雪、非常に大きな被害になっておりまして、三月二十八日時点の被害、これは農業用のハウスと畜舎の損壊だけをとってみましても、件数でいきまして二万八千三百四十二件、被害の金額につきましては約千四億円ということになっております。

 今回の支援対策につきましては、今御指摘ございましたように、二月の二十四日に第一弾、それから三月の三日に第二弾ということで、対策の発動を既に決定し、周知に努めてきたところでございます。

 特に、農業用ハウス等の撤去、再建を支援する、被災農業者向けの経営体育成支援事業、それから果樹の改植への助成、これにつきましては、その中身につきまして周知徹底を図りますと同時に、現在、要望調査も進めているところでございます。要望調査が全部終わりますのは、この四月末から五月にかけてということになるかと思います。

 この二つの対策を現場の実態に合わせてきちんと執行していくということが非常に大事だというふうに思っておりますので、現場のニーズに応じていろいろな工夫をしておりますが、そのことも含めて、現場にきちんと周知をしながら速やかな実行に取り組んでいきたいというふうに考えております。

後藤(斎)委員 全ての地域の農家の方が、先ほど二つだけ指摘をしたものが、報道等では理解をしている方もいらっしゃるし、していない方もいるというのは不平等感を生じると思いますので、ぜひ、局長名でも大臣名でも結構ですから、市町村やJAまた農家の方にきちっと対策の内容が伝わるように対応していただけますように、御要請をしておきたいというふうに思います。

 これは、法案に入る前に、一点だけ確認をしておきたいのがあります。

 実は、キノコ類でシイタケとマツタケというのがあります。シイタケは、人工栽培ができ、そしてこの五十年間で、非常に手ごろな価格で通年食することができるという代表的な林産物というか農産物になっています。一方で、マツタケについては、人工栽培ができないというふうなことも含めて、これは松の根っこに生えるものですから、その手入れが不十分ということもあって、生産量が五十年前に比べると一、二%だというふうな推定もあります。価格についても、御案内のとおり、十倍から二十倍違う。実は、これは、五十年前はシイタケの方が十倍とか二十倍高くて、今でいうと、シイタケとマツタケの逆転現象があります。

 そういう意味で、ほかの作物もそうなんですが、供給と需要が、当然のことながら、需要の方が多く供給が少なくなると値段は非常に上がり、そして供給の方が需要よりも多くなると値段が下がるというのが、米とか土地利用型のものは若干ストックができますから違うものの、生鮮と言われているものはそういうふうなことになっています。

 そういう意味で、秋になればマツタケが欲しいなということで世界じゅうから輸入をしておりますけれども、やはり日本の国内で、人工栽培も含めて、マツタケのようなものが、内需があるわけですから、国内にもっと出回るような施策を私はすべきだと思っていますし、あわせて、今シイタケも、非常に高額なシイタケというのが品種改良という中で出て、マツタケとほぼ同じような水準で、五百グラム当たり二万三千円を超すようなケースもあるというふうなことであります。

 ぜひシイタケについても、菌種で原木栽培も含めて、いろいろな栽培の方法がありますけれども、やはり手取り額がシイタケも非常に少なくなっているということで、この辺の品種改良というものももっとやっていかなければいけない。

 この二つについて、林野庁としてどのような取り組みをなさっているのか、御見解をお伺いしたいというふうに思います。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、マツタケでございますけれども、御指摘のように、高値で取引される天然の高級キノコということでございますが、平成二十四年で申し上げますと、全国の生産量が十六トンでございまして、一キログラム当たり約三万円という価格になっております。そういった意味で、山村地域の貴重な収入源となっていると思っております。

 このマツタケでございますが、針葉樹の松類等と共生いたしまして、生きている樹木の根から栄養分を吸収して成長するキノコでございます。現段階では、自然界と同様またはそれにかわる条件をつくり出すことができませんで、人工栽培は実現しておりません。

 最近の研究成果といたしましては、森林総合研究所で、松類以外の樹木にもマツタケ菌が共生しやすい樹種があるという研究成果が公表されておりますし、また、岡山県の研究所でございますけれども、野菜等に含まれる色素成分であるフラボノイドの一種がマツタケ菌糸の成長促進作用を持つことが明らかになった、こういった発表がございます。

 そういった意味で、マツタケの人工栽培技術の確立に向けました新たな知見も得られてきているところでございまして、私どもといたしましても、こういった研究所等と連携しながら、マツタケの人工栽培技術が確立されるように取り組んでいきたいと思っております。

 シイタケの方でございますが、先生から御指摘ございましたように、一部の品種でございますけれども、マツタケより単価の高いものもあるというふうに承知しております。

 私ども、こういったシイタケにつきましては、里山林の循環利用を促進する観点から、例えば生活習慣病に効果がある成分が多く含まれている、こういったPRでありますとか消費の拡大、あるいは食感や香りのよい原木シイタケの品種開発、こういったものが重要だというふうに考えております。

 そういった意味で、私どもとしても、原木シイタケの生産振興や消費の拡大、そして優良品種の普及、こういったものに向けまして、平成二十五年度補正予算も活用しながら、原木や種駒の購入に対する支援、それから消費拡大に向けた支援、こういったものに取り組んでいるところでございまして、今後ともこういった活動を通じて農山村地域の振興に努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

後藤(斎)委員 今、シイタケとマツタケという、実は需給の部分で非常に典型的なものだと私は思っています。私は、マツタケよりもシイタケの方が個人的には好きなんです。肉感もありますし、味も、いろいろな調理方法があると思っているんです。

 やはり、需給をどうするかというのが価格を決定するのに非常に大きなものになります。特に、今般の、我が党も含めた、政府案の二法案も含め、そうなんですが、三つの要素、土地、労働、資本というこの三つが合わさって供給ができ、そして、コストというものがどれだけかかるかということで所得が決まるというふうな循環だと思っています。

 そういう意味で、特に多面的機能と言われている部分は、多分、土地という部分に着目をして、できるだけ全体でそれを支えていこうという発想ですし、担い手経営安定という政府案の表題と、我が党は戸別所得補償という、私は共通項は当然あると思っているんですが、いずれにしても、今回議論をされている法案というものは全て、農家の方にとって、また土地利用にとってという視点を、何とかして農家の方に安定して、また継続的に営農をしていただきながら、食料の安定供給をきちっとしていこうということについては同じだと私は思っています。

 そういうことからいえば、実は、農業所得をどうするかというものをまず基準に置きながら、それを支える土地であるとか資材であるとかというものをどう組み合わせて、何をつくっていくのかということが当然必要なわけです。

 特に、今非常におかしな現象が起きているのは、要すれば、農業所得率と言われている農業粗収益、全体の売り上げですね。それが、平成十六年と二十三年を比較しても、二一%粗収益が上がっているものの、経営コスト、経営費が逆にこの間で三三%増加しているので、所得率が下がっている。これは、農機具の部分、飼料の部分、光熱費も含めたものが大きくそれをコストアップしているということで、本当に、この七、八年を見ても、農業所得率というのは四〇%から三〇%くらいまで低下をしている。ここをどうするかということも、一方の議論としてきちっとしていかなければいけないというふうに思っています。

 それを前提に、経営所得の部分、戸別所得補償の部分、要するに、経営体にどういうふうな所得的なサポートをするかという結論が出てくるんじゃないかなというふうに私は思っているんです。

 これは、前回のときにもヒートポンプの話をして、ヒートポンプを導入すれば、施設型の野菜、四〇%くらい暖房費が下がるというお話をさせてもらいました。これは、別に私が言っているわけじゃなくて、果樹試験場も含めたきちっとしたデータであります。

 そういう意味で、経営コストと言われている、今三つ指摘をさせてもらった、農機具をどううまく使うのか、畜産でいえば、飼料費がどうなるのか、さらには肥料も当然ありますし、光熱水道という電気代、暖房代みたいなものがありますけれども、それをどう組み合わせて下げていくかという施策は、以前はかなり議論をされていたんですが、それも含めて議論を進めていく中で、どの程度の水準が本当に正しいのかということを考えていかなきゃいけないと私は思っています。

 そういう意味で、経営コストを下げる施策というものをもう一度、今かかっている土地や経営体に着目した制度を法律的に担保するというのとあわせて、きちっと、コスト部分もどういうふうにするのかということを議論しながら、並行的にやっていかないといけないのではないかなというふうに私は思うんですが、その点について、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

林国務大臣 まさにおっしゃるとおりだと思いまして、それなりの規模を持っていただかないとなかなか経営判断に結びつかないということはあるとは思いますけれども、売り上げからコストを引いたものが所得だ、これが基本的な考え方であるとすると、所得向上を図るためには、生産性向上を図るということをやるとともに、機械や資材の効率利用等といった農業生産コストの低減を推進することが非常に大事である、こういうふうに思っております。

 今、ヒートポンプの例を出していただきましたけれども、コストといったときに、バランスシート上、投資をすることによって損益計算書、毎年のものが低減される。こういうことをいろいろ考えていきますと、損益計算書を改善したいんだけれども、バランスシートが重くなるのでそこに踏み切れない。したがって、なかなかPLが改善しない。こういうようなところに着目して、それでは、ヒートポンプを入れるときにバランスシートがそれほど重くならないようにサポートしていこう、これは一つの前向きなやり方ではないか、まさにそういったことをいろいろ組み合わせながら、しっかりと農家の所得向上を図っていかなければならない、こういうふうに思っております。

後藤(斎)委員 そういう中で、農家の方がどのようなことを経営課題として挙げているかというのは、言うまでもなく、やはり自分の農業所得が安定することというのが、これは昨年の二月に農林省が意識・意向調査を行ったアンケート調査の結果でありますけれども、九割が農業所得の安定を望み、そして、資材費のコスト軽減というふうなことを望んでいる方が八割、収量の安定向上というのが六割弱というふうなことで、これはごもっともな数字だなと思うんです。

 そういう中で、大臣、いろいろ飛んで恐縮なんですが、実は、この多面的機能をよく整理をするときに、平成十三年の学術会議の資料をベースに議論をしておりますよね。これはたしか、私は去年も御指摘をさせてもらっているんですが、やはり平成十三年の部分を、十三年たった部分で、少なくともこの学術会議のものがベースになるのであれば、十三年のときには、洪水防止機能から安らぎ機能も含めて約八兆円の農業の多面的機能がある、貨幣評価があるというふうに試算がされています。これは多面的機能を法的に担保するということを今回やっているわけですから、それぞれが貨幣価値の部分でやはり変化をしているはずだと僕は思うんです。

 たまたま、今回の平成二十六年の予算の農地・水保全管理払いや中山間地域等直接支払いや環境保全型農業直接支援というものを足し算すると、大体八百億です。ですから、この平成十三年度学術会議の数字から見れば大体一%というふうなことで、何となく根拠はここかなというふうに思うんですが、実はこの平成十三年度以降、幾つかの団体や研究機関でいろいろな数字が出ています。これは、農水省の研究機関でもある農業工学研究所とかいろいろな大学の先生も含めて、評価をし直している部分があります。

 そういう意味で、大臣、もう一度、これは基本的な原点ですから、この学術会議のやり方を踏襲して、貨幣価値の部分、多分、単価が細かくあるはずなので、評価をして、これが九兆円になるか十兆円になるかということで、例えばその一%を多面的機能の経費として、今回、予算に計上するというふうに言った方が国民的にわかりやすい議論だと、実はこの数字をいろいろ見ながら、私は感じました。

 あわせて、もっと言えば、もし、この学術会議のものが全然ベースになくて、今御指摘をさせてもらった三つの部分がどう関連をしているのかというのは、私どもも分割して法律を出させていただいていますから、それはやはり分割すべきだというものになっていくんじゃないか。ある意味では、政府案では、これを合体して、日本型直接支払いの部分を上手に多面的機能という形で整理をされているようでありますから、この基準というふうなものを、この際、まだ若干時間はありますから、私はぜひもう一度確認していただきたい。

 これは、きょう午前中に日豪EPAの、特に牛肉の関税の問題について、若干ブレーキをかけるべきだという方と、いやいや、もっとやれといういろいろな御指摘が、いろいろな議論はあるにしても、ちょっと話が飛んで恐縮ですが、もともと内外価格差を埋めるために関税というものがあったはずです。それが、私も直接担当させてもらったことがありますけれども、やはりアメリカからの要求やいろいろな要求の中でそれを下げていった。途中になると、この水準というのは何というふうに本当は思うはずなんです。

 ですから、三八・五から一九・五になったことは確かに多く減ったことなんですが、もともとはもっと高かったわけですよね。一番初めに関税を設定したときが、その時代の、要するに内外価格差、関税水準だったはずなんです。

 同じように、今回、多面的機能を担保するのであれば、その根拠というものを学術会議の十三年のものに置くのであれば、それは少なくとも平成二十六年時点でどうなるのかというのが前提にあって、それをベースに、その予算というか財政をどの程度国民的に負担をしていくのかという議論がないと、実は後世に禍根を残すのではないかなと。

 私は、学術会議にすぐやれというよりも、むしろ事務方で、これは貨幣単位の部分が、単価があるはずですから、ぜひそこの整理をしていただいて、次の委員会は多分来週になると思いますので、それまでにぜひ整理をしてお出しをいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

小里大臣政務官 御指摘のとおり、平成十三年の日本学術会議におきまして、多面的機能を分類、整理するとともに、それらのうちの一部の機能について貨幣評価額の算定が行われているところでございます。そういった答申が行われているところでございます。

 一部の機能と申し上げましたのは、洪水防止機能等についてはこの評価ができるわけでありますが、生態系とか文化等はなかなか難しいということで、評価がなされていないわけであります。

 御指摘は、その貨幣評価額の再評価を行うべきではないかということでございますが、実は、算定で用いられたデータの中に、その後における調査が行われておりませんで、更新ができないものがある、したがって、再評価が困難な状況にあるということでございます。

 また、多面的機能支払いについては、多面的機能の発揮の促進のために農業者等が共同で取り組む地域活動のコストに着目して支援措置を講ずるものであります。したがって、多面的機能の貨幣評価額と直接関連づけを行っているものではありません。

 なおまた、農業の多面的機能につきましては、幅広く国民の理解を得ようという観点から、食料・農業・農村白書、広報誌、ホームページへの掲載、各種イベントにおける展示等を通じてその普及啓発を図っているところでありますが、今後もこうした取り組みの一層の推進を通じて目的を達成してまいりたいと思います。

後藤(斎)委員 小里政務官、何となくわかるんですけれども、私はできる範囲でいいと思うんです。確かに、なくなったデータであればそれはしようがないので、別にSTAP細胞を今小里さんに再生しろというふうに言っていないのです。

 やはり、この間いろいろな制度が変化をしてまいりました。特に米、土地利用型の、水田を中心にした事業というのも、十三年くらいでかなり変化をしてまいりました。そういう変化の中で、あるデータというのはあるんだと思うので、そこで、上がり傾向にあるのか、十三年前よりも下がり傾向にあるかくらいのことは少なくともわかるはずなんです。

 そういう中でやはり位置づけをしないと、小里政務官、これから、なぜこの大きい法体系の整備を今するのかというところを、農水委員会のメンバーの方はみんな専門で、勉強もしますのでわかるにしても、消費者の方、都市部に住んでいる方も含めて、なかなか理解できない方にはやはりわかりやすく納得をしていただく努力をするというのは当然のことだと私は思うのです。私もやれと言われればやってみますけれども、単価がわからないのでできませんけれども。

 改めて、できる範囲で結構ですから、この約八兆円のものがそれで動かないのか、それとも上昇傾向でいくのか、少なくとも、あるデータで結構ですから、どういうふうな方向感になるのかというのは、ぜひ次回の委員会までにその数字をお示しいただきたいと思いますけれども、委員長、ぜひお取り扱いについてお願いをしたいと思います。

坂本委員長 理事会で協議をいたします。

後藤(斎)委員 それと、大臣、もう一つ、今回の部分で議論がちょっと抜けているなと私が感じているのは、備蓄という考えであります。

 これは特に、先ほども御指摘をさせていただいたように、果樹や通常の野菜というのはいわゆる数日から一週間が旬という形で、勝負であります。ただし、お米にしても麦にしても、今回の対象になるようなものについては、少なくとも在庫というものができるはずであります。

 特に、昔のように米麦について政府在庫を十分持てという立場には私は立っていませんけれども、少なくとも、一番多い時代には、ちょうど減反政策が加速をした時点で、最大は一年間で七百万トンを超える在庫というものがあり、第一次在庫処理には一兆円以上のコストをかけ、そして五十年代に入って、さらに第二次過剰米処理のときには二兆円のコストをかけ、その負担が国民にあったということは事実です。私たちもその一部を担った人間として、大変申しわけなく思うんです。

 ただし、今回の議論でも、一方で、多面的機能にしても、戸別所得補償にしても、経営安定対策にしても、農家の方が継続的に営農ができ、ひいては、それが国民の食生活や食料自給力という食料安全保障にプラスになるというふうな目的については一緒なのです。

 今のような在庫というものが、いろいろな数字は見せてはいただいておりますけれども、やはりもう一度、今提案をされて、私たちも提案しているものにどう絡んで、対応ができるのかできないのかということを、この在庫というものが、供給、生産と消費というもののバランスをとる一つの手段であることは言うまでもないというふうに私は今でも思っています。それが、昔のように二百万トン、三百万トン一挙に持てということでは財政的にもたないという議論もよくわかります。

 少なくとも、在庫や備蓄というものをどういうふうに農林水産行政、特に米麦、大豆等の今回の対象となっているような品目について、対応ができるのかできないのかということを含めて、やはりきちっと、あわせて議論をしておくべきだと私は思うんですが、その点について、大臣はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

林国務大臣 米が国民の主食でございます。したがって、国は、そのことも踏まえて、食糧法で、大不作などの不測の事態が生じた場合でも米の安定供給が図れるように、百万程度の基本備蓄をする、こういうことでございます。

 でも一方で、これは委員もよく御案内のとおりでございますが、この備蓄の運営に当たって、米の買い入れ、売り渡しが市場に影響を与えないように、一定量について買い入れ契約を行って、不作等による放出がなければ一定期間保管後に非主食用に販売する棚上げ備蓄、こういうことでございます。

 したがって、需給の関係と備蓄の関係ということが直接つながってまいりますと、非常に、需給調整のためにやるのではないか、こういうことになって、やはり適当ではない、こういう考え方でございます。

 したがって、今回の改革でもそういうふうにしておりますが、消費者のニーズ、需要に応じて生産が行われるということが重要でございますので、豊作や需要の減少による需給緩和については、民間主導による対応が基本である、こういうふうに考えておるところでございます。

後藤(斎)委員 実は、震災の後に、特に今回の豪雪のときもこの委員会で何度かお話をさせてもらったように、四日間ほど中央道も中央線も途絶をされ、山梨県が遮断をされたときに、スーパーやコンビニで、全ての食料品というものが完全になくなりました。

 そのときに痛切に感じたのは、ほとんど今は、冷蔵庫に入れておく方も、当然うちのもそうなんですけれども、冷凍食品をたくさん買っておくのもあるんですけれども、やはり自分のところの台所の横みたいな感じでコンビニやスーパーを使っている方がたくさんいらっしゃいます。

 そして、特に東京都では、災害にどう備えるかというときに、ストックヤードを容積率にカウントしないような工夫というものもしながら、ですから、コンビニの裏に、いろいろ、少しもつような加工食品等については、例えばお米についても、そこで在庫を当然置いておくので、そういうところの容積率を例えばカウントしないような工夫をすれば、いわゆる民間備蓄というのかお店備蓄というのかは別としても、そういうことも多分可能になると思うんです。

 ですから、これは、先ほどもお話をしたように、コストをたくさんかけて需給をコントロールしようなんてことを私は言っているわけじゃなくて、では、消費者が例えばお米について何を求めているかといえば、おいしい品質のブランド米を安く買いたいということがやはりベースにあったので、食管法がなくなった以降は、純粋な町のお米屋さんというのは、まだもちろん現存するものもありますけれども、ほぼというかかなり、もう九割以上減っているというのも、私の地元だけではなくて、大臣の御地元や副大臣の御地元でもそうだと思うんです。

 ですから、おいしいものを安くという消費者の方のニーズはその前提としてあって、ただ、先ほど林野庁長官にお答えをいただいたように、シイタケでもマツタケと並ぶくらい高く売れるようなものがあるわけなので、やはり外食産業も、どうしても、今、日本で普通にスーパーで売っているよりも安く買いたいという部分で中国やアメリカやオーストラリアのお米を使っていくというところも当然あるわけなんですね。

 それは、まさに、そこのニーズというものをどうコントロールしろとは、昔のように食管法ではありませんからできないので、これもよくわかっています。ただ、そういうふうな情報を上手に、前も御指摘をさせていただいたように、加工野菜やカット野菜みたいなものは中国からを中心に二百万トン近く輸入しているという野菜の現状も当然あるので、やはりそういうことを、きちっと在庫というものを、政府備蓄とか政府在庫ということ以外も含めて、そういう指導や要請や協力というものを制度として組むというのは、大規模災害や食料安全保障という観点からも制度的にきちっとつくっていくことは必要だと思うのです。

 改めて、大臣、イエスとすぐ言えとは言いませんけれども、前向きに検討しますというくらいはぜひお答えをいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 まさに、食糧法の時代からよく委員は御存じでございますから、今なるほどなと思って御意見を拝聴したわけです。

 やはり、不測事態への備蓄とふだんの需給、これが、要するに概念的に余りダブらないようにする上で二つあるなと思いましたのは、後藤委員が今おっしゃいましたように、流通在庫的にいろいろなことをやることによって、ある意味で付加価値をつけていく。

 それからもう一つは、コモディティーで一つの価格というものではなくて、いろいろなブランドにして付加価値をつける。シイタケの中でも値段の高いものと低いものがある、これはいろいろな工夫の仕方によって生産段階で付加価値をつけるだけではなくて、いろいろな場合があり得る、こういう御示唆をいただきましたので、総合的にいろいろなことを考えてみなければならないのかなと。

 この五年間で生産数量目標の分配をせずともやっていける仕組みをつくっていく、こういうことでございますから、地道な取り組みの中で、先生が今おっしゃったような知見をどうやって取り込んでいくか、しっかりと検討したい、こういうふうに思います。

後藤(斎)委員 何か、時間があと五分しかないんです。

 きょうは久しぶりにお手元に資料を三つお渡ししました。細かくは語りませんけれども、特に宮腰先生もよく聞いておいていただきたいんですけれども、私は、この二つの政府案と我が党案をそれぞれ、多面的な機能の部分と担い手、戸別所得補償の部分、農水省の資料から対応させていただいたんですけれども、当然、非常に共通をしている部分と若干の差というものがあります。

 大臣、これは党内の全ての議論ではありませんけれども、私の思いとしては、少なくとも共通部分をたくさんつくりながら、やはり農家の方にとってみれば、制度というものは、特に農業というのは、土地利用型の作物ももちろんですし、施設型も、畜産も全てのものがほかの製造業と比べて、時間をかけながら対応するものなので、制度の安定性というものは少なくとも五年くらいのスパンで見れば、私はすごく大切だと思うんです、本当は十年同じであればいいということではありませんけれども。

 やはり、この差というものが若干まだあります。ただ、例えば担い手経営安定や戸別所得補償についても、少なくとも、農業経営の安定と、もって国民に対する食料の安定供給というのは、基本的には同じような思想というものがあるわけです。もちろん、どうしても我が党の中でそれが対応できないというものもあるので、私は大臣や政府や与党の皆さん方にぜひお願いしたいのは、やはりこれだけ共有部分があるものを、与党や政府、大臣の大きな懐の中で、ぜひ我が党案も含めて前向きに考えて、できるだけ共有項をつくっていこうということに私はすべきだと。当然、理念的にどうしても相入れない部分はあるかもしれませんが、それはまた時間をかけてやるべきだというふうに思いますけれども、これからどういうふうな形で行われるかどうかは別としても、大臣も政府の農業の責任者として、また、与党の皆さんにも、ぜひ私はそういうふうな部分で、対応がこれから、議論がいい形で、かみ合う部分はきちっとかみ合っていただきたいというふうに思っていますけれども、大臣、その点はいかがお考えでしょうか。

林国務大臣 大変にありがたいお話をいただいた、こういうふうに思っております。

 今、委員がまさにおっしゃっていただいたように、今回の法案は農業政策の根幹でございますので、やはり、農業者の方が安心して経営計画を中長期で立てていける、そのための法案化であり、制度でございますので、できれば与野党合意のもとで安定した制度になることが大変に望ましいというふうに私も思っております。

 ここで、表を整理していただきましたので、中身を一つずつ申し上げることはいたしませんけれども、かなり共通しているところが多い、こういうことでございまして、また、運用でどうしていくか、こういうところまでいろいろな検討というのはあり得るのではないか、こういうふうにも思っておるわけでございます。

 我々の今の立場は政府案を提案してお願いしているというところでございますけれども、この委員会で御議論をやっていただいて、そしてそれを踏まえて、たしか中間管理機構の法案も最終的にはここの委員会で与野党合意で御修正いただいたということもございますので、しっかりとそういう議論が進むことを我々も期待し、また必要があれば協力を惜しまないつもりでございます。

後藤(斎)委員 時間が来ちゃったので、一点だけ、要望だけもう一度したいと思います。

 いわゆる収入保険の問題についても、我が党案は、これからの検討事項という形で、大臣もお約束をいただいているように、ことしから調査が本格的に始まって、二十九年度までに法案提出という形で進めていただく。これは私の十年来の思いでありますから、本当にありがたいと思っています。

 その中で、大臣、やはり、ナラシとかゲタとか、何となくイメージが悪いので、だから通称の呼び方を、ゲタというと、何か底上げをしているようでよくないですし、ナラシも、ならしてばらばらというか、うん、よしよしみたいな感じで、よくないんです。ここはちょっと考えていただいて、やはり、政府と与党の皆さん方にぜひ大きな心を持って、私どもの考えているものにより近いような形でまとまっていけるように、大臣にもお願いをして、宮腰先生にもお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れのところ、もう少しおつき合いをいただきたいと思います。

 きょうは、たまたま委員長と同じネクタイの色になってしまったものですから、ぜひ、御質問に対しての答弁は、かみ合うような御答弁をいただければありがたいなというふうに思っております。

 昨日、佐賀の方に行ってまいりまして、そこで具体的に農家の方からお聞きしたこともきょうの質問の中に少し入れさせていただいて、御質問をしたいなというふうに思っております。

 一つは、農業の担い手に対する経営安定化のための交付金に関する法律の一部を改正する法案について、民主党、生活の党、社民党から出された案も含めて、御質問をしたいと思っております。

 昨年から、いろいろな形で、農政の大転換点だというふうに言われてきていますし、大規模な農業者や高付加価値戦略にたけた農業者などへの生産集中や日本農業の競争力が高まったとこれから言われていくんだと思うんです。

 しかし、今回の法律の改正によって、農業者の保護を抑制する施策と農業者に対する保護を強化する施策が組み合わさっており、構造再編や競争力強化のスピードがおのずと緩やかにならざるを得ないとも言われています。アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるんじゃないかということなんだと思うんです。

 まず初めに、昨年から幾つかの法案が出てきたと思うんですけれども、ことしも、今協議をしている法案が駆使されれば、構造再編や競争力が強化されるのか。そもそものお話なんですけれども、閣法と衆法の代表者にお尋ねしたいと思います。

林国務大臣 では、まず閣法の方をお答えしたい、こういうふうに思います。

 今回の農政改革は、経営感覚あふれる農業経営体を育成する、そして、これらの農業経営体がみずからの経営判断に基づいて作物を選択できる環境を整備するということを主な目的としております。

 具体的には、昨年の国会で通していただきました農地中間管理機構を使って、農地の集積、集約化をやって、構造改革と生産コストの削減をする。

 それから、経営所得安定対策については、一律に補助金を交付してきた米の直接支払交付金の見直しをするなど、構造政策に矛盾しない施策に再構築する。

 米政策の見直しについては、みずからの経営判断で需要がある作物を選択する、そして、需要に応じた主食用米生産ができるような環境整備。

 多分、委員がおっしゃっているのは、アクセルとブレーキというか、構造改革と保護、片方で日本型直接支払制度というものを創設するということで、これが少し毛色が違うのではないかという御意見があるんじゃないか、こういうお話ではないかと思いますが、実は、これをやることによって、規模拡大に取り組む担い手の負担が軽減されるという意味で、構造政策を後押しする、こういうことだというふうに思っております。

 都会で公共事業としてやられているインフラの整備を、農村では水路の補修等々を農村の方々がやっていらっしゃるわけでございます。規模を拡大していきますと、一人の担い手がそれを全部やらなければいけない、こういうことになりかねないわけでございますが、そこを切り分けて、多面的機能支払いということでやることによって、その部分は集落で今までどおりやっていこう。それで、集約された土地の耕作自体は中心の担い手がやっていこうということで、耕作に専念できるという意味で、担い手の負担を軽減して、構造政策が後押しできる。こういうことであると同時に、主食用米のみに支払われていたものからここに振りかわることによりまして、より経営判断でいろいろなものを、経営判断に基づいて植える作目を選んでいく、こういうことも結果として後押しするということである、こういうふうに考えておるところでございます。

玉木議員 お答えいたします。

 この委員会でも何度もお答えを申し上げていますけれども、我々は、いわゆる静かな構造改革を促していきたいということでこの制度をつくっております。

 幾つか特徴がありますけれども、一つは、全国一律単価にしたことによって、例えば、二ヘクタール未満の農家でありますと、これをもらってもなお収益が出ないという単価設定にしております。そのことによって、規模の小さいところは、みずから努力して構造改革を進めるか、面的な集積をして集めるか、あるいは誰かにお預けしてやっていただくということをしないと、それだけではなかなか営農継続ができない単価設定になっている。

 あわせて、集落営農組織を組みますと、組織全体から十アール控除ということになるので、単独でやるよりも、まとまった方が個々の農家への配分は多くなる、こういった仕組みを入れながら、静かな改革を促していく。

 なぜ静かかというと、面積で切ったり、いきなりドラスチックに、あるところは全くもうからなくするというのではなくて、やはり個々の営農継続をまず大事にして、これも、政府案で言うと日本型直接支払いでやろうとしているんですが、我々は、あくまで農業をやっている人に対して交付をすることによって、水田を水田として維持する、その行為自体に一定の価値を見出して、反当たり一万五千円を交付しているということで、営農継続を促しつつ構造改革も促していく、そういう仕組みにしております。

鈴木(義)委員 農業の分野は、余り速いスピードでころころ変わるのはよくないんじゃないかというお考えが衆法の方で読み取れるんですけれども、でも、産業界は、それだけ待ってくれていないですよね。構造改革をどんどん進めていかなければ、競争は、世界と競争しているわけですよね。農業も、ある意味では同じところがあるんだと思うんです。

 結局、日本だけはゆっくりでいいよねといっても、海外はどんどん変わっていく中で、それに追従するのはいいかどうかというのはありますけれども、スピードはある程度速めて改革をして、その先に、改革というのは、目標、目的があるから今改革をするのであって、その目的がずっと先の方にあるのでは、やはりいつになっても農業者のためにならないんじゃないかなというふうに個人的には思っています。

 ところで、民主党の政権の時代、自民党の政権の時代もそうなんですけれども、農家の戸別補償制度やその前の自民党の時代の制度、その検証というのは今までしてきたのかということなんです。

 検証してきて、ここがふぐあいがあるんだから、ここを直しましょうということで政府案を出してきたのか、民主党案を出してきたのか、そこのところがきちっとしていないと、出してきたものが意味がなくなってしまうんじゃないかなと思うんです。

 これも、お二人から御答弁いただければと思います。

林国務大臣 それでは、まず、私の方からお答えさせていただきます。

 経営所得安定対策、旧戸別所得補償制度ですが、日本型直接支払いの創設とともに、この見直しをするということがまず選挙公約になっておりました。

 政権に復帰させていただいた後、これの見直しに当たって、政府・与党として、それまで行われてきた経営所得安定対策につきまして、その実績、データ等をもとに、検証を進めてきたところでございます。昨年の二月以降、自民党の農業基本政策検討PTで、農業者等のヒアリングも含めて、二十二回議論をしてございます。

 こうした検証をいたしまして、民主党政権下で実施された戸別所得補償制度について、まず、十分な国境措置があって、諸外国との生産条件格差から生じる不利はない、先ほど後藤先生は言葉をかえた方がいいんじゃないかとおっしゃいましたが、今の言葉で言うゲタ、これを履かせるというような必要がない米について交付金を交付することは、他産業の従事者や、ほかの作物を生産する農業者に納得していただくのがなかなか難しいのではないかということ、それから、全ての販売農家を対象に交付金を支払うものであるということで、農地流動化のペースがおくれるのではないか、こういう問題が指摘をされたところでございます。

 実際の数字を見ますと、交付金の約四割、六百億円が、加入者の九割に当たる二ヘクタール未満層に交付をされております。また、農地の権利移動面積の推移が、担い手経営安定法に基づく経営所得安定対策を導入した平成十九年は十三万ヘクタールであったのですが、戸別所得補償制度を導入した平成二十二年は九万ヘクタールということになっておりまして、農地流動化のペースが鈍化しているということでございます。

 こうした検証結果を踏まえて、昨年十二月の農林水産業・地域の活力創造プランの中で、今御提案しているような内容の見直しをすることを決めまして、それに基づいてこの法律の改正を御提案している、こういうところでございます。

大串(博)議員 お答え申し上げます。

 私たちも私たちなりに、戸別所得補償制度をやってきたときの検証を行ってまいりました。

 御案内のように、私たちのときには、まず、米のモデル事業から導入し、その後、本格実施を行ってきたという経緯の中で、事業の進捗を行ってまいりました。

 そのような中で検証してきたわけでございますけれども、それらを通じて私たちなりにわかってきているところは、例えば、全体の一割に当たる二ヘクタール以上の農家に総予算の約六割が配分されるという形になっていること、先ほど来、玉木提出者の方からも話がありましたけれども、一律の価格を用いて、全国一律に単価を設定していることから、規模が大きければ大きいほどコストが低いという事実を踏まえ、そちらの方により有利に働くという仕組みがあるものですから、集落営農数が、それまでは一万一千台であったものが、二十三年度には一万二千台に増加してきている、あるいは、選択的減反制度ということと相通じるところでございましたものですから、過剰作付米も減少したといったような効果の検証結果も得られているところでございます。

 先ほど、静かな構造改革に関して、スピードと絡めての御発言がありましたけれども、私たちが静かな構造改革と言っているのは、スピードが遅いという意味ではなくて、先ほど申しましたように、一律の単価を用いて、それを全国一律に当てはめているがゆえに、構造改革を透明な形で後押しする、そういう仕組みになっているというようなことというふうに理解していただければというふうに思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 昨日、佐賀に公聴会に伺ったときに、私から二十分の持ち時間で何点か御質問をさせていただきました。

 議事録をお読みになった方もいらっしゃると思うんですけれども、一つは、私が昨年からよくお尋ねしています、一軒の農家がどのぐらいの規模であれば、もうかるというより、食べていかれますかというお尋ねをしました。ある農業の生産者の方は、二十町歩から二十五町歩ぐらいが限界だろうなというような言い方をされる方もいらっしゃいました。また、ある方は、十町歩がいいところだろうというお話をされました。

 その中で、飛行場から会場までに麦が青々と、まだ穂が出ているのは少しだったんですけれども、目に入って、すごいなと思って、小麦なのか大麦なのか、私は素人なのでよくわからないんですけれども、二毛作をやっているところ、集落でも個人でも法人でも、お尋ねしたら、ある方は、うちは一〇〇%二毛作をやっています、ある方は、九〇%だというお話をいただきました。六十五ヘクタールの生産法人でやっている方は、農地は一八〇%使っている、こういう話なんです。だから、ほとんど一〇〇%に近い、九〇から一〇〇ぐらいの二毛作、大豆か麦で、裏作で水稲、これでやっているというお話だったんですね。

 失礼だったんですけれども、金額までお尋ねしました。六・五ヘクタールの農家の方は、売り上げは二十五年度は六百十万で、販売額が二百六十万で云々というお話だったんです。

 結局、中間管理機構もそうですし、今回のいろいろな施策もそうなんですけれども、やれることはやっているんだという地域もあるんだと思うんですね、これからどうしようかという地域もあると思うんですけれども。その辺が、結局、今お尋ねした構造改革の話だとか、競争力が強化されるか、あと、今までの検証をしてきたのかというところに入ってくるんです。

 今、では、どういう伸び代があるのか。水田をフルプランで活用していくんだというふうに国が方針を出すんですけれども、伸び代のないところに、一生懸命やれ、やれといっても生産高は上がらないし、では、あとはどうするという話になってしまうと思うんですね。

 そこで、一つお尋ねしたかったのは、食料自給率のところでもお尋ねしたんですけれども、ゲタ政策の対象品目のところになぜトウモロコシが入っていないのかなと不思議なんです。食料安全保障のところでもお尋ねいたしましたし、食料自給率を引き下げているのは穀類、餌だと私は思うんですね。それを、トウモロコシの場合、輸入にほとんど一〇〇%頼っていて、米をわざわざ飼料米として作付するよりも、飼料用トウモロコシの方がコストを安くつくれるんだということであれば、トウモロコシをつくってもらって、そのまま競争させた方がいいんじゃないかという発想がなぜ生まれてこないのかなと思うんです。

 前にレクを受けたときに、なぜこの品目が、麦だとか米だとかバレイショだとかが入っているんですかと言ったら、食料安全保障のためだ、こういう言い方をするんです。自給率を下支え、また向上させるために、ゲタ政策という言い方なんでしょうけれども、これを品目対象にしているんですと。

 というのであれば、トウモロコシも穀類ですから、自給率は上がるはずなんです。それをなぜ、この法案のきちっとした位置づけを、食用でやっていますよと言えばいいんですけれども、それは微々たるものだと思うんです。それに飼料用トウモロコシを加えなくて、ソバや菜種を追加して、どれだけ食料自給率が確保できるのか。私にはちょっと不思議で、疑問でしようがないんですね。

 衆法もそうですし、閣法もそうなんです。ソバ、菜種は、法令で出すか、政令で指定するかだけの違いなんです。ソバ、菜種はヘルシーだから、逆に私もそばを一生懸命食べなくちゃなと思っているんですけれども、なぜ、食料自給率の確保のために、二品目追加して、トウモロコシを入れないのか。そこの理由をちょっと聞かせていただきたいと思います。

小里大臣政務官 担い手経営安定法に基づくゲタ対策、生産条件不利補正対策でありますが、その対象農産物の要件の一つは、御指摘のとおり、食料自給率向上の観点から、国民に対する熱量の供給を図る上で特に重要であることでありますが、この国民に対する熱量の供給とは、その農産物自体を直接国民に対して供給することを前提としております。したがって、餌等の中間生産物を含まないということにしておるわけであります。

 トウモロコシ等の飼料用作物については、家畜の餌として摂取される、いわゆる中間生産物であります。国民に対して直接熱量を供給するわけではないことから、対象農産物には含めないこととしているわけであります。

 ただ、もとより、御指摘のとおり、トウモロコシを含めた飼料作物の生産振興を図ることは、食料自給率の向上を図る観点から、重要な課題であります。そのために、例えば、水田活用の戦略作物助成、この中で反三万五千円を支援しているところでございまして、そういった各般の支援策を講じているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

 今御説明いただいて、反当たり三万五千円の補助金をもらっているんですけれども、それで、大臣がよく、どういった作物をどのぐらいつくればいいか、後段でもちょっとお尋ねするんですけれども、経営者が決めてくれというお話なんですね。

 トウモロコシの価格は、もう御案内のとおり、鶏を飼っているところに卸すというと、大体キロ三十二円ぐらいで今おりているわけですね。六十キロつくったって、千八百円とか二千円ぐらいで売り買いされていて、三万五千円の補助金をもらったとして、反当たり四万円ぐらいにしかならないんですよ。片や、飼料米をつくれば十万超えるんですよね。大豆をつくれば幾らですよと、物によって値段がばらばらなんです。誰だって、やはり同じ田んぼでつくるんだったら、高く買ってもらう、補助金がたくさんもらえるものをつくりたくなるのは人情じゃないかなと思うんですね。

 そこで、ちょっと幾つか数字を並べ、例えの話ですから、お聞きいただきたいと思うんです。

 例えば、十ヘクタール、十町歩の水田を作付している農家の方が、私どもの方はそんなに収量はとれませんから、反当たり八俵の収穫を二十五年度にできたとして、お話を聞いていますと、昨年の価格は一俵当たり一万三千円ぐらいです、もう少し下がるんですけれども。それで、十ヘクタールで売上金が一千四十万。

 お米をつくって、飼料米はやらないよ、ほかの転作作物もやらないといった農家に、今回の経営安定化交付金だとか日本型直接支払いの補助金、もろもろ、もらえるものはもらえるものと、先日も江藤副大臣が、もらえるものは全部もらうんだ、みんな待っていますという御答弁をされたと思うんですけれども、それと同じで結構なんですけれども、米だけをつくって、今回、補助金がどのぐらいいただけるものなのか、御答弁いただきたいと思います。

 それは、もし両方で計算できているんだったら、お願いしたいと思います。

小里大臣政務官 両方というのは、主食用米と飼料米ということですか。

鈴木(義)委員 飼料米は後からお尋ねしますので、主食の方で。

小里大臣政務官 わかりました。多面的機能払いと両方ということですね。

 御指摘の前提に従って計算をしておりますが、二十六年産の主食用米の作付面積が十町歩であれば、自家消費米として十アール控除した九・九ヘクタールが交付対象面積となります。十アール当たり七千五百円の単価を乗じた七十四万二千五百円が米の直接支払交付金として交付をされることになります。

 また、一方の、平成二十六年度から開始される日本型直接支払いのうち、多面的機能支払いについては、個々の農家への支払いではなく、共同活動を行う活動組織に交付されるものでありますが、農地維持支払い及び資源向上支払い両方に取り組んだ場合、支払いの対象となる農用地に対して、都府県の水田であれば十アール当たり五千四百円が交付されることから、十ヘクタールに対して五十四万円が支払われるということになります。

 このため、平成二十六年産においては、十ヘクタールの主食用米の作付に対して、両対策により、合わせますと百二十八万二千五百円が交付されるという計算であります。

玉木議員 戸別所得補償制度の場合は、反当たり一万五千円でありますので、十アール控除がありますから、それを差し引いていきますと、十ヘクタールで百四十八万五千円です。

 プラス、農地・水のところは、これは我々も指摘をしましたけれども、農業をやっている方にそのうち一体どれだけ行くのかについては、これはよくわからないところがあります。ただ、政府のお答えになったように、半分ぐらいということで考えると、今、反当たり四千四百円ということでありますから、その意味では、仮にその半分とすると二十二万円ぐらいということで、百四十八万五千円プラス二十二万円ですから、百七十万円ぐらいが十アール当たりに交付されるかな。仮定を置きますけれども、そういう計算になると思います。(発言する者あり)十ヘクタールですね。

鈴木(義)委員 続きまして、今政務官の方から御答弁いただく予定だったんですけれども、同じ条件で、飼料米は、これは同じだとちょっと計算がまた違ってきちゃうので、多収穫米。

 今お聞きしていっても、品種改良した、去年もお尋ねしたみつひかりという多収穫米で、ハイブリッド米なんですけれども、これを使ったとしても、うちの方は作付している農家さんがありますので、私が地元で聞いたのは、反当たり千キロとれるんだというんですけれども、千キロはちょっと、本当に一番条件の合ったときというふうに言われていますので、計算しやすいように、反当たり十六俵、九百六十キロとれたという計算でやったときに、トウモロコシの価格は、今申し上げましたように、キロ当たり三十二円で取引されているんですね。飼料米をキロ当たりで三十円ぐらいから三十二円で売れれば大したものなんですけれども、これでいって計算したとしても、十六俵で計算して、反当たり二万八千八百円なんですね。十ヘクタールにして二百八十八万。

 先ほどお尋ねしました、主食用米で売ったときに、収量が減っているのも、倍というのはちょっと大げさな数字かもしれませんけれども、一千万を超えた販売価格になるんですね。飼料米にしたときに、単純に計算すると二百八十八万なんです。

 では、これに対して、奨励金、今回の法律は二案ありますので、経営安定化交付金と直接支払い、同じような計算をしたときに、幾らずつぐらいになるか。トータルの金額で結構ですから、お示しいただきたいと思います。

小里大臣政務官 十ヘクタールで飼料用米を多収性専用品種で作付した場合、十アール当たり十六俵、九百六十キログラム収穫できた場合の交付金ということでございます。

 ただ、念のために申し上げておきますと、全国平均でいえば、六百八十キロとれれば、最高の十万五千円がもらえるということであります。

 まず、戦略作物助成として、十アール当たり上限単価十万五千円を十ヘクタールに乗じた一千五十万円、産地交付金についての多収性専用品種への取り組みに対する助成として、十アール当たり単価一万二千円を十ヘクタールに乗じた金額が百二十万円、合計は一千百七十万円が支払われるということになります。また、多面的機能払いは、先ほどの計算のとおり、五十四万円ということになります。これらの総額として、一千二百二十四万円であります。

 また、念のため申し上げておきますと、飼料米の場合は耕畜連携がききますから、耕畜連携でさらにわらを提供していただければ、反当たり一万三千円の上乗せ。

 また、県や市町村が設定する産地交付金を利用した地域設定分が場合によってはありますので、そういったものも御利用いただける。

 また、二毛作助成。これも、例えば表で飼料米をつくって裏でイタリアンをつくれば対象になって、反一万五千円。二毛作助成は、もちろん主食用米の方にも適用されるわけであります。また、できるところ、できないところがあるということはございます。

 そういったことで、生産者や地域で努力をすれば所得が上がる、そういう仕組みになっておるわけであります。また、御指摘のとおり、販売価格の差がありますが、これを考慮しましても、飼料米の方が普通米に比べて所得が上がる、そういう制度設計になっております。

玉木議員 今、小里政務官から説明があったところの単価が違うだけで、ほとんど同じであります。

 ちなみに、我々の案では、収量にかかわらず八万円ということになっておりますので、十ヘクタールでいけば、そこが八百万ということになります。

 また、農地・水の支払いといったものは、先ほどの前提を置けば、約二十二万円。プラス、我々は、産地資金あるいは耕畜連携、二毛作助成は同じようにありますので、こういったことも同じような条件であれば加わってくるということでございます。

鈴木(義)委員 結局、今お示しいただいて、自分自身で計算すればいいんだと思うんですけれども、やはり金額の差がすごく経営判断を悩ますんだと思うんですよね。

 本当に、二十六年度の作付は飼料米でやった方がいいのか、主食米でやった方がいいのか。それは、国とか県の機関を通していろいろな情報は出しますというんですけれども、面積当たりだとか自分がどのぐらいやりたいかというのが、先ほど佐賀の例示で申し上げましたけれども、十町歩やっていて二毛作をもう既にやっているところは、計算していけば、幾らもらえるというのはすぐ出るわけですよね。

 だから、今までの答弁の中で、やはり耕作するかしないかとか、土地を貸した方がいいとか、一町歩、二町歩持っている方が経営判断をするには、この補助金がこれからも、来年度以降も、三年で打ち切りとか五年で打ち切りじゃなくて、結局、コンスタントにもらえるのかということなんです。

 あと、一年ごとにいろいろな状況は見直ししますというのがこの法案の中身だったと思うんですけれども、その辺について、経営をどうしようかというのはやはり一番悩まれるんだと思うんです。

 この制度を考えられた方がいらっしゃるんでしょうけれども、自分が水稲をつくっている農家だとしたら、本当にこれから営農を続けていく自信があるかなというふうに自分自身も疑問も湧きますし、これから国の方はなるべく飼料米の方に、転作じゃないんですけれども、加工米だとか飼料米の方に誘導していきたいんだと思うんですけれども、二十七年度から予算措置をしていくんだと思うんですけれども、ある程度の目測をしなくちゃいけないんだと思うんですね。

 それが、今御説明いただいたように、十ヘクタール当たりで一千二百万の補助金をもらえるというのが飼料米になるわけです。主食用の方は、その時々によって値段が上がったり下がったりします。トウモロコシと連動しますから、飼料米も多少は上がり下がりすると思うんです。トウモロコシの値段が上がれば、飼料米の値段も上がると思うんですけれども、それを、政府案として、衆法でも結構ですけれども、二十六年度の予算は、これから、ある程度もう組んだところというか可決しちゃったところもあるんですけれども、大体どのぐらいを想定しているのかということなんです。

 想定するということは、金額で想定するのは、逆算して考えると、面積がそこで割り出されてくるはずなんです。ちょっとお尋ねの仕方がわかりづらいですか。わかりますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 平成二十六年度予算におきましては、これはあくまでも積算上の数値でございます。

 二十六年につきましては、主食用米の生産数量目標が前年に比べまして二十六万トン減ります。この二十六万トンを餌米と加工用米でカバーするという前提で、餌米につきましては、平成二十五年産の生産予定数量が十一万五千トンだったわけでございますが、二十六年産につきましては二十九万二千トンに増加するということで積算しておりまして、対前年十七万六千トンの増、そういう前提で置きまして、その場合には四百四十二億円。加工米につきましては、平成二十五年産の生産予定数量が二十一万トンから二十六年産に二十三万七千トンに増加するということで、対前年二万七千トン増ということで、八十五億円の予算を計上しているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 そこで、私が先週お尋ねした食料安全保障のところの食料自給率、大臣から答弁いただいたんですけれども、平成二十二年から三十二年の十年間で飼料米を、平成二十四年度で十六・七万トンを三十二年で七十万トンにふやしていく、加工米を三・三万トンから五十万トンに目標を掲げているという答弁をいただきました。

 これを単純に計算していくと、飼料米で年間七万トン、加工米でもやはり七万トンぐらい増加させていかなければ、食料自給率の七十万トン、五十万トンに達しないんですね。だから、何回も同じようなお尋ねをするんです。

 東北の方はどんなに頑張っても二毛作はできないんですね、一作。それで、誰がどの地域でどのくらい作付していくのか。それは経営判断に任せるんですと言うんですけれども、今国が掲げている、年間約七万トンずつ飼料米や加工米をふやしていこうというふうに、それに基づく予算措置も二十七年度は必要になってくるでしょうし、では、どこでその作付をしてもらうのかというのをある程度方向を出していかなければ、これは目的達成できないんじゃないかと思うんです。

 ですから、冒頭お話し申し上げたように、きのう佐賀に行ったら、九〇%ぐらい二毛作をやっているんです。そこにもっと頑張れよといっても、三毛作できれば別ですけれども、それはなかなかやはり物理的に難しいと思うんですね。

 そうすると、どこの地域でどのぐらい作付したらいいのかというのを示さなければならないんじゃないかと思っています。

 それについて、もし、閣法と衆法で、民主党さんも、食料自給率五〇%に上げますというのは、政府にいらっしゃったときにはそういう目標を挙げているんですね。そこに近づけるのにどうするというふうに尋ねられたときに、お答えできればお願いしたいと思います。

小里大臣政務官 飼料用米をどのぐらいを目指して、作付をどこでどうやっていくんだというお問い合わせでございます。

 まず、先ほど政府参考人の方からお答えをしましたように、毎年主食用米の消費が減っていく。その分が全体で七万トンだったかな、ございます。そしてまた、不作付地、これが水田の約七、八%ございまして、そういったところを活用して最大限に生産をしていこうということであります。

 飼料米の潜在需要としては、申し上げてまいりましたとおり、かたく見て四百五十万トンあります。

 また、自民党のつくった十カ年戦略におきましては、飼料用米や加工用米等を合わせて百五十万トンの生産を目指していくところであります。実は、この百五十万トンまでは、その不作付地等を活用すれば十分に視野におさまってくるところでございます。

 それとまた一方の、品目別の自給率との絡みも御指摘でございます。

 飼料米の自給率、生産目標、七十万トンだったですか、これもまた見直しを図っていくことになろうと思います。折から食料・農業・農村基本計画の改定作業がございますから、その中で、飼料米をどれだけ伸ばしていくのか、あるいはまた一方で、米粉用米はなかなか生産が、需要が伸びておりませんので、そこら辺をどうしていくのか、この辺をよく勘案しながら、また新しい品目別の生産目標、自給率目標も立てていくことになろうと思います。

大串(博)議員 お答え申し上げます。

 私たち民主党政権において行っていた戸別所得補償政策等々の中で、米のいわゆる定額補助にのみ光が当たる傾向がありますけれども、のみならず、需要が増加傾向にありました飼料米を新規需要米と位置づけて、戸別所得補償制度の中で水田利活用自給力向上事業ということで予算措置をして、生産の増強を図ってきた。もちろん、十・五万円という形ではなかったですけれども、八万円という形の中でシフトを促してきた経緯がございます。

 そういう中で、畜産業における飼料用米や製パン業における米粉の活用など、需要の掘り起こし、あるいは消費拡大などについても力を入れてきて、それによって食料自給率五割を目指していこう、こういうふうな計画を立てておったところでございました。

鈴木(義)委員 ちょっと質問がかみ合っていなかったなと思うんです。

 一つお尋ねしたいのは、それに関連するんですけれども、飼料米や加工米を、ことしは一千二百万円の補助金をもらって十ヘクタールに作付しました。売る先というのは自分で探せということなのか、誰かがちゃんと手だてしてくれているのか、そこのところだけちょっと確認したいんです。

 それを自分で見つけろよということになると、農家の人が仕事をしながら売り先まで考えるということになると、なかなかこれは難しいなと思うんですけれども、仮にそれが売れ残ってしまったら、誰が買ってくれるのかどうかなんですね。

 お金はもらっちゃいました、飼料米はどんと残っちゃっています、さあ、これを処分するのはどうしますかといったときに、最後は廃棄物で処分するのかという話になっちゃうんです。まあ、田んぼに還元して肥料で使うといえば、また別の考え方なんですけれども。

 そこまである程度道筋をつけてやらないと、やはり飼料米、加工米にどんどん誘導しようとして、お金だけを出したからといっても、農家の方は経営判断をどうしようかというふうに悩まれるんじゃないかと思うんです。もうそれはきちっと都道府県を単位にして協議会なり話し合いをされているのであれば、それはそれで結構なんですけれども、お二人から御答弁をお願いしたいと思います。

江藤副大臣 大切な御指摘だと思います。つくりたい方がたくさんいて、行き先がなかったら、これは大変だということであります。

 基本的なことから申し上げますと、作付前にいわゆる需要者が購入することを同意しているもののみ、水田活用の直接支払交付金の対象となるということになっておりますので、制度的には、システム的にはそういうことにならない。

 しかし、つくりたい人が、こういう制度があるがゆえに、私は手を挙げたいけれども挙げられないということになっては、決していいことではありませんので、農林水産省としては、このマッチングを一生懸命やらなきゃいけないと思っています。

 何度か答弁させていただいたと思いますけれども、飼料米につきましては、現在、畜産農家から、新たに七万トン、これぐらいは使える、すぐには転換できませんから、御要望が来ております。さらにこれはふえていくと思います。

 そしてまた、加工用米についても、なかなか急激にふえるというのは難しいんですけれども、私の宮崎だと、焼酎をつくっておりますので、これも、MA米を回してくれとか、足りないとか、毎年そういう話があるんですよ。ですから、県と市町村が主導権をとりまして、これから加工用の米を積極的につくっていこうという、焼酎メーカーとの連携も進んでおりますので、こういったことが急激に進んでもマッチングがうまくいくように、決して田にすき込まなければならないような事態にならないように、注意深く制度を運営していきたいと考えております。

大串(博)議員 私たちの案は、鈴木委員も御理解のように、十・五万円という形で飼料用米への急激なシフトを想定しているものではなくて、むしろ、戸別所得補償政策の米の定額、これが選択的減反制度とリンクしていたがゆえに、これによって自然な形で過剰作付が減ってきていたという実績を出してきている、こういうことでございますので、ある意味、鈴木委員と私たちも、懸念を共有するものであるというふうにお答えさせていただきたいと思います。

鈴木(義)委員 以上で終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

 また来週質問に立ちますので、引き続きよろしくお願いします。

坂本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十二分散会

     ――――◇―――――

  〔本号(その一)参照〕

    ―――――――――――――

   派遣委員の佐賀県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十六年四月九日(水)

二、場所

   マリトピア

三、意見を聴取した問題

   農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出)、農業者戸別所得補償法案(第百八十三回国会、大串博志君外六名提出)、農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出)、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出)及び環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 坂本 哲志君

       鈴木 憲和君   谷川 弥一君

       大串 博志君   玉木雄一郎君

       岩永 裕貴君   鈴木 義弘君

       樋口 尚也君   畑  浩治君

 (2) 意見陳述者

    神埼市長        松本 茂幸君

    佐城南部地域大豆共乾施設利用組合役員     光吉 正明君

    株式会社石動農産代表取締役

    佐賀県農業法人協会会長 秋吉 義孝君

    元大和町長       原口 義春君

 (3) その他の出席者

    農林水産省大臣官房総務課長          新井  毅君

    農林水産省生産局農産部農産企画課長      松尾 浩則君

    農林水産省経営局経営政策課長         平形 雄策君

    農林水産省農村振興局農村政策部長       佐藤 速水君

     ――――◇―――――

    午前十時開議

坂本座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院農林水産委員会派遣委員団団長を務めさせていただきます坂本哲志でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、どうかよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 この際、派遣委員団を代表いたしまして一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに農業者戸別所得補償法案、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たりまして、国民各界各層の皆様方から御意見を得るために、当佐賀市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言いただきますようお願いをいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただきます。その後、委員からの質疑に対しましてお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の谷川弥一君、鈴木憲和君、民主党・無所属クラブの大串博志君、玉木雄一郎君、公明党の樋口尚也君、生活の党の畑浩治君、そして日本維新の会の岩永裕貴君、鈴木義弘君でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 神埼市長松本茂幸君、佐城南部地域大豆共乾施設利用組合役員光吉正明君、株式会社石動農産代表取締役・佐賀県農業法人協会会長秋吉義孝君、元大和町長原口義春君、以上四名の方でございます。

 それでは、まず、松本茂幸君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いします。

松本茂幸君 では、失礼いたします。神埼市の松本でございます。

 本日は、このような公聴会を開催していただきまして意見を述べるような機会をいただきましたことを、本当に心から感謝申し上げたいと思います。

 それでは、限られた時間でございますので、一応私は口述書をしたためてまいりましたので、読み上げて、早速御意見を述べさせていただきたい、こう思います。

 我が神埼市は、平成十八年三月二十日に旧神埼町、千代田町、脊振村の二町一村が合併し、市政としてのスタートをしております。

 神埼市は、佐賀県の東部に位置し、地形は、城原川、田手川及び嘉瀬川の源流部をなす脊振山を最高峰とする北部の山間地域と、同河川が潤す肥沃な平野から成る南部の穀物地帯とに分別され、縦に長い形をしております。

 人口は、ことし三月末現在で三万二千八百一人と、合併当初から千八十九人の減少をしております。一世帯当たりの家族は二・八人となり、しかも、高齢化による高齢者のみ世帯や独居老人世帯が急増しております。また、空き家が増加傾向にあり、六百戸の空き家が見られます。

 土地の利用を見ますと、山林、原野などが約六六%を占め、田畑が二八%、宅地は五%、河川、水路は七%で、緑豊かな農村環境が広がっております。

 また、気候は、比較的に温暖多雨ですが、冬季には山間部で路面凍結や積雪を見るなど、四季の変化がはっきりした地域であります。

 まず、市の北部の脊振町では、脊振山の南面に広がる山村で、面積の八三%は山林で占め、耕地は六%とわずかで、谷間に沿って棚田、谷地田が散在しております。

 特性として、ワラビやゼンマイなどの山菜、干し柿、コンニャクなどの特産品の生産に力を入れております。

 このような立地条件の中で、米作を中心とした農業生産が行われてきましたが、生産調整の推進によって、夏季の冷涼な気候を生かした野菜栽培に取り組まれ、特に近年は、雨よけハウスの導入により、ホウレンソウやピーマンなどの産地を形成しております。

 一方、市の中部の神埼町では、山麓地域のごく一部を除くほとんどが平たん地で、この地味肥沃な立地条件を生かした米、麦を主体とする土地利用型の農業生産が営まれてきたところであります。

 また、近年は、農業経営の安定、発展を図るため、複合経営を中心に多様な農業経営が展開されており、特に園芸作物においては、イチゴ、ナス、アスパラガス、小ネギ、タマネギ、ブロッコリー、神埼あーさいなどの推進を行っております。

 次に、市の南部の千代田町では、全域が純平たん地で、水田の間には農業の用排水や町民生活に供されるクリークが縦横に走っており、クリークや川などの水面が千代田町地域の全域の二〇%を占め、このことが大きな地域の特徴となっております。

 昭和五十年から始まった土地改良事業、圃場整備事業によって整備された圃場を生かして、農地の集約、農業用大型機械の導入が進んでおります。

 温暖な気候条件、肥沃な土壌と豊かな水利を生かした農業経営は、米、麦を主体としてきましたが、近年、経営発展を図るため、イチゴ、ナス、アスパラガス、小ネギなどを中心とした施設園芸の導入が盛んとなっております。

 本市の農業生産は、米、麦、大豆を主体に、農業経営の安定、発展を図るために、施設園芸を取り入れた多様な農業経営が展開されており、大半が、施設園芸など他部門と組み合わせた幅広い複合経営体のもとで営まれております。

 米作は、土地利用型農業の基幹作物であり、市の農業経営の基盤をなすものであります。また、農地、共同乾燥調製施設等の生産基盤の整備を推し進め、麦と組み合わせた二毛作により、生産性については全国的に高い水準にあります。

 また、ウルチ米、モチ米を組み合わせた独自の産地づくりの展開により、全国でも上位に位置するモチ米産地の形成など、着実に成果が上がっております。

 さらに、所得向上を目指した栽培指導を徹底し、国内外にわたる産地間競争が一段と激化する中で、生産調整の着実な実施による計画的な生産と、おいしくて安全な米の生産を基本とし、消費者に魅力ある、売れる米づくりを推進したいと思っております。

 麦作は、水稲と組み合わせた土地利用型農業の基幹作物として重要な位置を占めており、これまでの土地基盤の整備、期間借地等による生産集積、効率的な農業機械、施設の整備促進により、全国有数の主産地として位置づけられております。

 今後の麦作振興については、良質麦の安定生産を進めることを基本として、なお一層の作付拡大を図っていくことが必要であり、水田本作としての定着拡大、中長期にわたっての計画生産、産地銘柄の確立を図り、もって、民間流通の意向に対応した売れる麦づくりの展開を目指し、実需者ニーズに即した良質で均質な麦の生産拡大と安定生産、スケールメリットの発揮などによる低コストの麦づくりを推進していきたいと考えております。

 次に、大豆については、水田における転作大豆として生産が行われており、転作の基幹作物として、米、麦などとの組み合わせにより、水田の合理的な輪作体系を形成するなど、重要な地位を占めております。

 実際に、集落を中心としたブロックローテーションの実施など作付の集団化や、機械、施設の共同利用などにより、低コスト化や生産安定化が図られ、県内有数の主産地を形成しております。

 また、近年、国産大豆は、そのすぐれた加工適性などから実需者等の高い評価を受けており、品質のよい大豆の増産が強く求められております。

 これまで、市内では、多種多様な取り組みにより、その生産振興が図られ、産地の定着化、団地化の推進、商品化率の向上、労働時間の低減化などについては、その成果があらわれつつあります。

 このような農業の多様性と農業構造の変化及び平たん地から山間地までの地域の特性を十分に踏まえ、米、麦、大豆は、経営の規模拡大、作付の団地化など、合理的、効率的な生産をなお一層進め、あわせて、環境対策や食の安全に対応した、麦わらのすき込みや減肥料、減農薬、有機堆肥を活用した取り組みを推進しております。

 また、高収益作物等の導入への取り組み、施設園芸等における専作の育成を図り、米麦と園芸相互の農地の流動化を積極的に推進し、秩序ある土地利用と望ましい経営体の育成に努めていきたいと考えております。

 その一方で、本市においても少子高齢化が進み、年少人口比一四%、高齢人口比二六%となっており、全国の農村と同様に、後継者不足により高齢化や担い手の減少が進んでおり、特に山間部において限界集落化が深刻な問題となっております。

 さらに、近年の農業を取り巻く情勢では、競争力ある農業の構築が迫られ、生産量、品質面での需要に応じた生産が可能な担い手、地域農業を支える担い手の早期育成が急務となっております。

 平成十九年度から実施されている水田経営所得安定対策では、神埼市として、整備された施設や土地基盤を生かし、中山間地、平たん地域を問わず、共同乾燥調製施設を核とした生産組織の育成や、集落での担い手農家、兼業農家等の徹底した話し合いに基づき、農地や労働力、機械、施設等の利用を一体的に調整し、最も効率的な生産が展開できるような集落営農組織、農作業受託組織に再編、強化に取り組んでまいっており、農地、労働力、農業機械、施設の利用調整などを進め、地域全体として農業の発展を目指して、効率的な地域営農の仕組みづくりを進めているところであります。

 この結果、米、麦、大豆を中心に、集落等を基盤とした営農組合、機械利用組合等の設立が進み、省力化や低コスト化が図られているところでございます。

 また、複数の集落を受益とした広域的機械利用組合や農業法人による農作業受託組織の設立がなされたところであります。

 さて、今回の見直し内容については、水田のフル活用を推進し、食料自給率、自給力の向上を図るとのことだということでございますけれども、飼料用米のみならず、それぞれの地域の状況を踏まえ、麦、大豆などに力を入れていくことも重要だと考えます。

 神埼市では、これまで、麦、大豆にしっかりと取り組んでおり、うまくいっております。市内各地域での工夫と協力によって、ブロックローテーションを行うなど、うまく生産が行われておりますので、引き続き、麦、大豆に力を注いでいただきたいとお願いしたいと思います。

 また、畑作物の直接支払交付金については、これは、諸外国との生産条件の格差によって不利が生じている農産物のうち、米を除いて麦、大豆等が対象となって、生産コストと販売額の差を補填するという形で実施されるとのことですが、交付対象者は、今まで経営規模要件が四ヘクタール以上などと決まっていたものが、この規模要件をなくして、認定農業者、集落営農、それに認定新規就農者への規模要件を課さないということですので、ぜひとも実施していただくようお願いしたいと思います。

 また、今回の見直しにより、地域の担い手の方をしっかりと支援することで、我が神埼市も含めて、日本農業が抱えている農業者の高齢化や耕作放棄地の問題解決の糸口になればと考えておりますので、安定的な制度となるよう法案の早期成立を期待しております。

 引き続き、農業の有する多面的機能の発揮についてですが、中山間地域等直接支払交付金、また農地・水保全管理支払交付金は、ともに、創設されて以来、神埼市では取り組んでまいっております。

 中山間地域等直接支払交付金では二百九十四ヘクタール、農地・水保全管理支払交付金では二千二百六十四ヘクタールで取り組んでおり、重複を除いて合計すると二千四百四ヘクタールとなり、神埼市の農振農用地のおよそ七〇%で取り組んでいる実態であります。

 これまで、農家みずから、あるいは集落としての区役等により行われてきたものが、今では、過疎化、高齢化の進行によって水路や道路の機能低下や耕作放棄地の増加などが顕著に見られ、地域の大きな問題として懸念されてきております。

 しかし、交付金による組織的な取り組みで農地の維持が図られ、多面的機能の維持に努めてまいっております。

 神埼市における特徴としては、北部の山間地域では鳥獣被害、特にイノシシの被害が多発しておりまして、これらの対策として、交付金を使用したワイヤメッシュを張りめぐらして対処しております。

 また、南部のクリーク地帯では、その多くが素掘りの土水路のままとなっていたことから、そののり落ち対策の整備が急務となっております。

 近年、比較的規模の大きな土水路については、国営事業や県営事業によるクリークののり面整備工事を行っていただいているところですが、規模の小さな土水路は、交付金を活用したしゅんせつやのり面整備等に取り組んでおります。

 近年、温暖化の影響の中、ゲリラ豪雨が多発し、経験をしたことのない大量の雨が降っております。神埼市の南部の低平地では、あっという間に水があふれ、園芸等に被害をもたらす洪水となることがたびたび発生しております。

 そのために、防災施設等の整備も急がねばならないことでありますが、水田、農地が持つ水の貯留機能とあわせ、降雨前にクリークなど水路の排水を行うなどの樋門操作管理を行い、水路の空き容量を確保した上で、一時貯留をさせることができるならば、洪水等から、その被害の減少となる有効な手段の一つだと考えております。

 今回、日本型直接支払制度の創設に伴い、農地維持支払い、資源向上支払いに取り組んだ場合、神埼の現在の面積で試算すると、農地・水管理支払交付金では三千五百万円であったものが五千万となり、およそ一千五百万円の増加となるようです。

 神埼市の農地の維持、多面的機能の発揮のために必要な費用として、現行の取り組みが継続できるように活用していきたいと考えております。

 また、今回、日本型直接支払いの法制化が国会で議論されていることですが、今後、農家が安心して計画的な営農や農村地域活動に取り組んでいけるようになれば大変喜ばしいことと思っております。

 ぜひとも、関連法案が早期に成立され、安定した制度として運用されますことを強く期待して、私の意見陳述といたします。

 終わります。(拍手)

坂本座長 ありがとうございました。

 次に、光吉正明君にお願いをいたします。

光吉正明君 こんにちは。

 川副町は、二千四百ヘクタールの土地において、四地区、西川副、犬井道、大詫間、中地区、平たん地で米麦中心の農業地帯であります。その中で、川副と諸富の千百ヘクタールを乾燥する大豆共乾施設を持っております。

 この中で、私は、造園業並びに農業をやっておりまして、耕作面積、自作地は五ヘクタール、一・五ヘクタールは期間借地でやっております。家族経営は、私と妻、二人。その中で、昨年まで川副中地区生産組合長代表として、現在は佐城南部地域大豆共乾施設利用組合の役員をしています。

 農業での経営が、さっき言いました、米麦、六・五ヘクタール。米価が下がり、経費がかさむ中で、子供たちに農業を継がせることすら考えができない状況でした。

 戸別補償制度が始まり、農業に希望が見え始め、実際に農業所得もふえ、子供へ後継の話をしようかと考えることができるようになりましたけれども、自民党へ政権がかわり、農業政策も変わり、戸別補償も、一万五千円から七千五百円に本年度から下がるということであります。下げても、これからの後継者不足は解消できないと思います。戸別補償制度を安定させ、担い手を育成してから政策を転換していくのがよいのではないでしょうか。

 農地・水、充実の中で、治水に対しては、川副町は自治会そして土地改良において水路の方の管理を行っております。そいけん、農地・水に際しては、どうかこの予算を団体じゃなくして農家の方に配分してもらえればいいと思っております。

 三十年前から生産目標をやめると聞いています。戸別補償制度が始まり、減反が進んでいる中で、米が余っている。生産を、主食用米から飼料米へ転換していくということですが、最近、地元の川副の方では酪農家が減っており、この飼料米についてはやはり幾らか考えなくちゃならぬのじゃないかと思っております。生産数量目標をやめれば、主食用米をつくる農家がふえ、米の価格が下がるのではないでしょうか。そうすれば、農家所得は下がるのではないでしょうか。

 私も、地域の生産組合の代表として、農業従事者として、農業に希望が見えてきた中でのTPP、戸別補償の取りやめなどの政策転換を行おうとしている国には、地域農業の現状は映っていないと思います。

 先祖から受け継いだ農地、幼少のころから農業を手伝い、米をつくり、地域を守ってきた農家と言っても過言ではないと思います。

 政権がかわり、政策も変わる。混迷しているのは現場です。国もいろいろな状況から転換していると思いますが、急激な転換は死活問題です。農業意欲が下がり、地域のコミュニケーションはうまくいかないのではないでしょうか。環境面からも不安を感じます。

 私は強く希望します。戸別補償制度を継続、法制度化して、農業経営を安定させ、世代交代していくのが先決ではないでしょうか。地域を守っていくためにも、農業の現場で働く者として、これを強く要望いたします。

 短い時間ですけれども、以上であります。

 ありがとうございます。(拍手)

坂本座長 ありがとうございました。

 次に、秋吉義孝君にお願いをいたします。

秋吉義孝君 秋吉です。

 きょうは、こういう席に、意見陳述という機会を与えていただきまして、本当に光栄に思っております。こういう会議を設定された皆様に非常に感謝をし、この場をかりて厚く御礼を申し上げたいと思っております。

 私は、吉野ケ里町という、ここから三十分ぐらい東に移動したところで、六十五ヘクタールの田んぼを、賃借によって農業経営をしております。

 内容は、飼料米を四十ヘクタール、主食用米を十五ヘクタール、そして大麦を二十ヘクタール、キャベツを二十ヘクタールつくって、私を含めて十四名のスタッフで農業経営をしております。

 私は、二十九歳で脱サラをして農業の世界に入りました。そして、自分でいろいろ模索をしながら、結局は、水田農業をやりたいと思うようになり、規模拡大をやってきて、大体五年ぐらいで限界の面積が集まってきまして、三十九歳のとき、就農して十年目に、仲間と二人で有限会社石動農産という会社を立ち上げました。

 それからずっと私の主張というのがありまして、米はもう勝手につくらせてくださいよ、何十年という間に減反政策をやってきた成果が見られない、そうしたら、一度はドンガラポンして、減反を廃止してもいいんじゃないかということをずっと言ってきました。

 そのかわり、米を自由につくらせてもらったら補助金は要りませんよということでやってきて、それだったらば、みんなが米をつくったら大変になってきますので、米以外の作物をつくった人に、例えば飼料米とか大豆とか、そういうものをつくった人に米並みの所得を補償できればそれでいいんじゃないのと。米をつくって赤字が出るぐらいだったらば、農家もばかじゃないから、ほかの農産物をつくるはずだというようなことをずっと言ってきまして、今日まで来ております。

 やっと四年後に減反が廃止されることが決まりまして、そして、これから先の、今ここに出ている法案なんかも、非常に私にとっては都合のいい法案となっております。

 先ほど言いましたけれども、私のそういう主張のおかげで、大体平成二十年までほとんど補助金はもらわずにずっとやってきまして、今、二十一年度から、飼料用米を作付するようになって交付金をいただく。少なくとも、条件不利生産物である飼料米等は、交付金等がないと経営上生産ができないということでありますので、これをもっともっと充実させていく。それは、私の経営だけじゃなくて、やはり日本の農業にとっていいのではないかと思っております。今後の政策に大いに期待しているところでございます。

 これから先の農業経営にとって、今行われている政策の人・農地プラン、それから農地中間管理機構等の制度、そして今回の農業の有する多面的機能の関連の法律等なんかをずっと見ていると、確実に規模拡大を行うチャンスが来たなと僕は思っております。本当に大いに期待しておりますので、早期の法制化をお願いしたいと思っているところでございます。

 次に、もう一つ、私が大変危惧しているところ、今度は逆に、希望じゃなくて危惧しているところがありまして、それは中山間地の農業なんです。

 私の村では、もう既に米つくりをやめた集落も出てきました。そして、隣の町、ここにいらっしゃる松本市長のところなんですけれども、そこには本当にお年寄りばかりしかいない集落もあります。

 それで、その人たちが細々と農業をやり、田んぼを耕し、地域を守ってやっているというような現状でございまして、これがあと五年、十年たったらどうなるのか。米をつくる人もいなくなれば、集落を守る人もいなくなるということが起こり得るんじゃないかということを大変危惧しています。

 そして、我が石動農産も、中山間地域に十ヘクタールの田んぼを有しているわけですけれども、できることならば、引き受けたくない、そんなところで経営したくないというのが現実です。

 そして、私のところは、特定法人という制度になるときに、集落の田んぼは全て引き受けますよ、無条件で引き受けますよという約束事がありますので、確実に引き受けるんですけれども、できることならば、採算のとれない中山間地では引き受けたくないというのが現状。

 では、そういう中山間地を、あえてこのままにしておいていいのかと僕は思います。

 中間管理機構も、借り手がいない農地は引き受けないというような話も聞いております。ぜひともこれは引き受けるようにしていただきたいし、引き受けても何とかなるというようなことを考えれば、別に難しいことじゃないのではないかと思います。

 私は、こういうふうに考えます。

 中山間地域では、村の人たちで農地とかその村の伝統文化、そういうものを継承しているわけですけれども、先ほども申しましたように、ここ数年のうちにはそういうこともできなくなっちゃうんじゃないかということで、早く集落営農を立ち上げ、それを法人化した上で、農業をやりたいという若者を都会から連れてくるというような、雇用して、地域の農業を守っていく、地域の文化を守っていくというようなことをやればいいのではないか。地域の人々は、その後継者を支えていただいて、いろいろなことを教えていただいて、守っていくシステム。

 国や県などの行政は、逆に、後継者に所得補償を行えるようなシステムをつくり、今回の多面的機能の制度、中山間地直接支払制度、それから農地・水、そういういろいろな制度を含んだ総合的な中山間地域の農業を守るということ。モデル事業等でもいいですから、早く設置していただいて、試してみる、そういう価値があっていいのではないかという気がします。

 一刻の猶予も許されない中山間地の農業ですから、私を含めて協力はやぶさかではございませんし、いち早くやってほしいということです。

 次に参ります。

 国は、これまでは、農業とか漁業とか、そういうカテゴリーの中で政策を論じてきた形跡があるんですけれども、これからは食料というカテゴリーの中で政策を論じてはどうなのか。

 というのは、産業としての農業に費やす補助金は、やはり国民の理解が得られないんじゃないか。何で農業ばっかりそげん補助金を使うてせないかぬのかとか、では、我々中小企業もほかの中小企業も苦しいのは間違いないんだからということもあるので、そこになかなか理解が得がたい。

 でも、日本人の食料を責任持って調達、担保するのは、しなければならないのは国でございまして、日本人の食料を責任を持って生産できるのは農業であり、漁業であるんですね。そういうところに、国がきちんと食料を調達するという大名目で補助金等を使っていただくと、国民の理解も得やすいのではないかと考えております。

 もう一つ、今度は、教育の現場に今非常に危惧しているところがありまして、子供たちに鶏の絵を描かせたら四本足の絵を描いたりというようなことがあります。それとか、若者も、もうしばらくなくなりましたけれども、おやじ狩りと称してゲーム感覚で人を殺す、ほかの人が何かやったら、俺も負けじと何か悪いことを、人を殺す、そういう風潮が日本に一時期ありました。非常に教育が荒廃していると思います。

 これは何だろうと僕が思ったときに、やはり情操教育が欠如しているんじゃないか。昔は、おじいちゃん、おばあちゃんが鶏を飼って、その鶏から生まれた卵を食べて、年に一度、食料としてその鶏を食べていたというようなこともあって、それとか、川に魚をとりに行った、そういうことで命の大切さとか食料の大事さというのが育まれてきたんじゃないか。でも、今の時代、そういうことがなくなってきた。核社会になって、そういうことがなくなってきた、そういう情操教育が足りなくなってきた。

 そのことも含めて、もっともっと子供たちに命の大切さ、食料の大切さを教えていくためには、やはり学校でそういう機会をつくってあげて、教育という現場の中で育んでいかないといけないんじゃないかなということを思います。稲を育てる教育、畜産、動物を育てる教育、そういうことが行く行くは、日本人の食料、食料を生産する農業、漁業、そういうものに理解が得られてくるんじゃなかろうかということで、ぜひとも、これから先、そういうことも含めて農政の場に活用していただければと思います。

 人間は、空気と水と食料、この三つというのはどうしても生きていくために必要なものなんですね。車はなくても何とか生きていける。社会を形成するという意味じゃなくて、各個人として、人間一人一人は、この三つがあれば少なくとも生きていける。

 その大事な一つ、食料というものを担っていることを国民に理解していただいて、我々は、その責任の上に安定した農業経営をすることができれば、平場の農業であれ、中山間地の農業であれ、はたまた漁業でも、十分、後継者を育成し、日本人の食料供給という役を担えるんじゃなかろうかという気がしております。

 これから、今度の多面的機能の発揮その他の法令を早期に成立させていただいて、そしてその次に、我々が目標となれるような政策を打ち出していただきたい。大いに期待をしております。

 終わります。(拍手)

坂本座長 ありがとうございました。

 次に、原口義春君にお願いいたします。

原口義春君 私、佐賀市大和町の原口でございます。

 委員の先生方は日ごろから、国会議員、衆議院の議員として国政の場で御活躍をなさっておることに対し、まずもって心から敬意を表します。本当に御苦労さまです。ありがとうございます。

 今回、この公聴会で、私、発言の機会を与えていただきましたことに対しても、厚くお礼を申し上げます。

 早速ですが、私の率直な意見を、しばらくの時間おかりして、述べさせていただきます。

 私は、地元の地区の生産組合長及び旧大和町のその上部団体、生産組合の協議会の会長等をさせていただきました。その中で、多くの皆さんと接する機会を持つわけでございますが、やはり生産者の多くの皆様方がおっしゃるのが、もちろん、米、麦、大豆、そして我が大和町は、干し柿、つるし柿、そして佐賀の特産でありますミカン、それからイチゴ、その施設園芸等々、非常に多岐にわたった栽培をしておる地域でございます。今申し上げましたとおり、皆さんとの意見交換をする中で、皆さんがよくおっしゃる言葉が、個々の農家それぞれの所得につながる政策がわかりやすくていいと思う、率直な佐賀弁で言いますと、その方がよかという意見が非常に多うございます。

 特に、私が申し上げたいのは、若い生産者は、米、麦、大豆は、幾ら一人一人がどんなに頑張っても、努力しても、やはり価格の面を含めて限度があるというのは、所得向上が非常に厳しい面がある、しかし、やはり農業は続けていきたい、生産は続けていきたいという方が非常に多うございます。

 そういう皆さんがおっしゃるのは、やはり国、政府の一定の支援があれば非常に助かる、支えになるという意見が多いというのも、これは私個人じゃなくて、多くの皆さんと接した中でそういう意見が出るというのも事実でございます。一言で言いますと、戸別補償がわかりやすくていいなという意見でございます。そういうことでございます。

 少し私の地元の紹介をさせていただきたいと思います。

 私のところは、いわゆる都市計画の市街化区域と調整区域に分かれておりまして、私どもの民家があるところは全て市街化区域でございます。私の地区、国分という地区でございますけれども、現在、八百戸を超して、大きな集落になっております。しかし、今申し上げましたとおり、調整区域、いわゆる水田、田畑は、現在もほとんどがそのままの状態で耕作をしておるというのが現状でございます。

 私の地域は、約六十町歩の水田がございます。戦前戦後は、大分長く、昭和三十年代までは、兼業も含めて四十三戸の農家で耕作をさせていただいておった時代が続き、それから高度成長とともにどんどん農家数も減っていき、現在、今日、十一戸の農家。これももちろん、公務員、学校の先生、消防団、いろいろいらっしゃいまして、本当の専業農家、いわゆる認定農家は三戸でございます。三軒の皆さん、三戸の農家が専業をなさっておるという地域でございます。

 今申し上げたとおり、耕作をやめられた方がこの認定農家の皆さんにそれぞれお願いをしておるという現状、ここが非常に難しいというんですか、気配りをしておるところでございますけれども、やはり、長年自分のつくっておった土地を人さんに貸し与えるということでございますので、口には出せないですけれども、人それぞれ、農家それぞれの考えがあります。ですから、それを今言った三名の認定農家が耕作させていただく。私の集落では、失礼ですけれども、うまく貸し借りができておるということで、地域としては農業が成り立っておるという地域でございます。

 今申し上げたとおり、実態はそういうことでございますけれども、今、小作料、いわゆる地権者から耕作されている方に行くためにはいろいろ手続等がございます。小作料も含めて、農業委員会等の手続もさせていただいておりますけれども、どうしても、今言ったように、私の土地はこの耕作される方にお願いをしたいなという人間関係、この人間関係がスムーズにいくような形でつないでいくというところが、私の地域を含めて、非常に大事というんですか、注意をしなきゃいかぬなというふうに実態として考えておったわけでございます。

 いろいろ申し上げましたけれども、やはり規模拡大が進まなければ、今日の機械化された農業は経費もかかります。そういう規模拡大がスムーズにいくような手助けを、失礼ですけれども、国、政府もお力添えをいただければ非常に助かるという私の考えでございます。今申し上げたとおり、スムーズにいっておりますけれども、全てとは言いませんけれども、今、規模拡大のための施策、これを、地域の皆さんの声を大にして、うまく進めていただければいいなという率直な気持ちでございます。

 一方、我が大和町は、今御案内いたしましたとおり、旧大和町、合併して佐賀市ですけれども、人口は現在二万数千名の地域で、面積は五十五平方キロ、そういう中で、典型的な山間、山麓、平たん。

 今言った山間部、中山間は、干し柿等々の生産を非常に強く皆さん頑張ってやっていらっしゃる。山麓地帯は、ミカンの産地、ほかにもいろいろありますけれども、今はミカンといっても、極わせ、四月から収穫が始まるミカンから、大体昔のおくて、十一月、十二月に生産をするミカン、多種にわたっております。そういう地域でございまして、もちろん、南部はきれいに圃場整備をされた水田地帯が広がっております。

 私が申し上げたいのは、日本の農村では、戦前戦後、昭和三十年代まで、家族が中心になって、家中心の農業を長年やってきた歴史があろうかと思います。これは本当に古きよき時代。しかし、水田地帯では、機械化されて、田植えも、収穫、刈り取りも全て機械がしてくれる。人手は、そんな家族の手は余り必要がなくなったという時代が現在でございます。

 そういう時代ですけれども、今申し上げた干し柿、そしてミカン、特にミカンは大変な人手を要します。収穫時は、昔の言葉で言うと猫の手もかりたいような、それこそ約二カ月間、おじいちゃん、おばあちゃんからお父さん、お母さんはもちろん、子供、孫までお手伝いをして、収穫は、失礼ですけれども雇った皆さんがしていただきますけれども、五時以降、そのもぎ取ったミカンを車でどんどん家に運ぶ。

 そして、コンテナにいっぱい山ほど積んでいらっしゃいますけれども、そのミカンは各家庭の大きな倉庫にずっと詰めなきゃいかぬ。すぐ選果場に持っていくわけではございませんので、一時的に家の貯蔵庫に入れる。その作業たるや、もう大変なんです。今申し上げたとおり、中学生、高校生の男の子供さんは帰ってきたらすぐ家の手伝いをなさっておるというのが、本当に私よく見かけますけれども、実態でございます。

 そういう中で、用事があって出ていきたいと。早く来たらば忙しくて話はでけんばい、こう佐賀弁でおっしゃる。私、時間を合わせて九時ごろ行けば、まだ農作業を倉庫の中でなさっておるという実態。しかも、今申し上げたとおり、倉庫に入れるお手伝いをお孫さんが一生懸命なさっておる。

 そのお孫さんに対しおじいさんがおっしゃる言葉、これは本当に私感心しますけれども、最後にそのお孫さんの名前を言って、ありがとうねと。このありがとうの一言が、ああ、ふるさと、我が農村地帯のふるさとがここにありと、非常に、私、心和む。

 そういう地域が、現在、一生懸命働いていらっしゃる方がいっぱいいらっしゃるということも、失礼ですけれども御理解をいただいて、そして、そのおのおのの皆さんの努力の汗の結晶が今日の地域の発展につながっておるということも御理解をいただければなというふうに思っております。

 今申し上げたとおり、地域の皆さんが汗し、努力したのが、大きくなって県になり、国になっておる、この社会づくりが構成されておるということからして、現在、いろいろな産業、職業がございますけれども、私、ほんの一部を申し上げておりますけれども、こういう地域の皆さんが営々と汗して頑張っておらっしゃる、これをおのおのの皆さんも御理解いただいて、くどいようですけれども、ひとつ、一方では、やはりどうしても、政府、いわゆる国のお力なくしては、続けたいけれどもなかなか思うようにいかないという面もありますので、勝手ですけれども、皆様方のこういう農業政策に対してのお力添えを重ねてお願いしたい。

 今申し上げたとおり、やる気のある農家、これはいっぱい地域にはいらっしゃいます。そういう地域のやる気のある農家のためになる施策を取り入れていただければ、非常にこれからの農業、悲観的な面が多く声に出ることがございますけれども、私は、実際いろいろと今日まで、町の議長をやり、町長をやり、その経験をさせていただきましたけれども、私ももともと農家ですから、一農家にまた戻って、農地を耕し、耕作してみて初めてその地域の皆さんの声がよくわかる。ああ、なるほど、こうだというのが本当によくわかるようになってきた。

 もう年も年ですけれども、そういうことを踏まえて、今の若い後継者、そして、次の世代を担う、現在、学校等で勉強なさっているお孫さん等に受け継がれていくような施策を、重ねてですけれどもお願いをし、私の至らない点、多々あったかと思いますけれども、意見の発表とさせていただきます。

 ありがとうございます。(拍手)

坂本座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

坂本座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木憲和君。

鈴木(憲)委員 自由民主党の鈴木憲和といいます。

 本日は、お忙しい中、四人の皆様には、本当に現場の感覚を踏まえた貴重な御意見をありがとうございます。

 私の出身地は山形ですので、まだ多いところは雪が圃場に三十センチから五十センチぐらい積もっていまして、きょう、佐賀空港におりてここまで来る間に、麦の青々とした、あれは水田ですかね、あれを拝見すると、農政というのは本当に地域密着で、現場ごとに違うんだなということを改めて感じました。

 そのような中ですけれども、きょうは、ぜひ何点か御意見を皆さんにお伺いしたいと思います。

 まず、戸別所得補償について御意見を伺いたいと思います。

 先ほど、光吉さんからはぜひ残してほしいというお話がありましたが、私の地元でも、うちの地元はほとんど水田しかありませんので、戸別所得補償は大変ありがたかったという意見がたくさんある一方で、高関税で実は米は今守られている、その中で、今の日本の財政状況を考えると、実は、ああいうお金をもらうことは農家として大変心苦しい、納税者の方に申しわけが立たないというような声もあるところです。

 昨日の実は農水委員会の参考人質疑の中でも、同じお金をもし使うのであれば、将来への投資のために基盤整備の方に使った方がいいのではないかといったような意見もありました。お金、財源は限られていますので、その中で、経営として考えたときには、例えば一反幾らの補助というのが本来なくてもやっていけるような経営の方がいいのではないかというふうに私なんかは思うわけですが、将来を考えたときに、先ほど原口さんからも、次の世代に、あとは大規模化をというようなお話がありました。

 そのような中で、戸別所得補償についてどのように評価をされているか、これはぜひ秋吉さんと原口さん、お二人にお伺いをしたいと思います。

秋吉義孝君 その件については、一番最初にできたときから、私は、米をつくるのに一万五千円の補助金を出す、転作をして、これもまた補助金を出すという、政策の整合性がとれていない補助金が非常に不思議でした。当時から、私もずっと、これはおかしいよ、やはり一万五千円はなくすべきじゃないのというような話を大分したことがあります。しかし、当時の政権の担当の方が、いや、これはもうぜひやるんだということで実行されたと聞いております。

 私は、整合性をきちんととって、これはなくすべきだと思っております。

原口義春君 私は、今申し上げたとおり、これは、いわゆる足して割るような、答えがきちっと出る問題じゃないというのはよくよくわかります。しかし、現在の日本農業、特に米、麦、大豆等々、ある程度の用地を耕さぬと、面積を耕さぬと成り立たないということからして、一方、私も海外のいろいろな地域を研修させていただいておりますけれども、一目で、日本農業とオーストラリア、アメリカ、フランス、見ただけで、ああ、こんな桁違いの農業をなさっている地域と同じレベルで用意ドンで競争しろと言われてもそうはいかないというのも、私、目で見てよくわかります。

 今先生おっしゃるように、補償というのは、やはり外国もいろいろな形でなさっております。自給力向上のためとかいろいろありますけれども、日本の一億二千六百万の胃袋を満たすためには、基本的には、安心、安全、いわゆる食の安全性も含めて、国産、日本で賄った方がいいという率直な考え、それを果たすためには、やはり政府、国としてのある程度のお力添えを必要とするというのが私は現実かと思います。

 そのためには、いろいろな施策がございますけれども、補償という言葉が当てはまるかどうか知りませんけれども、昔の全量政府買い上げの時代、今の自由化された時代ですからそうはいかないですけれども、生産を維持していくためにはそういう補償制度も必要であるという考えを私は持っております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございます。

 済みません、もう一点だけ、今の件でお伺いさせてください。

 イエスかノーかというか、簡潔で結構ですので、原口さんにぜひお伺いしたいんです。

 お金が限られている中で、要するに、基盤整備に使うべきか戸別所得補償に使うべきかという観点でいうと、どっちに将来のために今使うべきだというふうにお考えですか。

原口義春君 鈴木先生おっしゃった圃場整備等も、七五%の国庫補助をいただいて、全国津々浦々まで整備が、まだできていないところももちろんございますけれども、それも何兆円という国費を使ってしていただいた。これは、失礼ですけれども、最終的には個人の所有財産に国がこれだけのお金を払うというのも一方では問題ありという見方も、それは確かに成り立とうかと思います。

 そういうことで、国としての施策の中で、今の米価を含めた価格をある程度安定し、生産される方の生活が成り立つようにするためには、私は、補償制度、基盤整備ももちろん必要な部分もございますけれども、やはり個々の農家の補償をさせていただいて、なおかつ、それが無駄にならないように、いわゆるばらまき等々にならないような形での、生産者の次なる生産の向上につながる施策であってほしいというふうに思っております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 次に、認定農業者の要件の件について、これは神埼市の松本市長にお伺いをしたいと思います。

 今回の担い手の経営安定法の改正案では、認定農家の要件から規模の要件をなくすということをメーンとしてやります。地域農業をやはり支えていくためには、大規模農家だけではなくて、さまざまな経営体、例えば、複合経営で小さい規模ですけれどもやっているという農家とか兼業農家も含めて、さまざまな農家が私は不可欠だというふうに思っております。

 今回の改正案で、規模の要件を外して、あとは、認定新規就農者についても、基本的には、もう国じゃなくて基礎自治体に、誰が認定農家であるか、誰が認定就農者であるかをお任せするということになるんですが、それについて首長としてどのようにお考えでしょうか。

松本茂幸君 ただいまの御質問にお答えしてみたいと思います。

 私ども神埼市内におきましても、やはり一定の規模以上の農家というのは限られてまいります。こういった規模の要件が示されれば、それ以下の方たちは、しようとしてもできない。私は、農業だって、誰だってやりたい方にやらせたらいいと思います。そうすべきだと思っております。今回、こういった規定要件を外されるということは、私は非常に歓迎いたします。

 そして、やはり多くやりたいという者には、我々行政が支援できる範囲のものであれば、大いにやっていきたい。支援するにいたしましても、お金は税金ですので、やはりここは、市民の皆様に説明ができるお金であればいいのだと私は思っていますので、今回、こういった形で規模の要件を外していただけることは、非常に歓迎するものであります。

鈴木(憲)委員 どうもありがとうございました。

 きょう、私は、飛行機で羽田から佐賀まで来たんですが、窓の外をずっと眺めていると、やはり我が国は中山間地と呼ばれるところが、特に九州に入ってからも、大分、熊本、佐賀と、佐賀は平野部が多いところもあると思いますが、そこの中山間地をいかにして維持していけるかというのがこれからの大変な課題だというふうに思っております。

 そのときに、今回、多面的機能法案というのを与党の方からは出させていただいて、まずは中山間支払いを法的に位置づけていくということをします。

 実は、昨日の参考人質疑の中で、これは茨城の水田農家の、大規模でやっている方でしたけれども、その方がおっしゃっていたのは、農業経営には二つのリスクがあるんだ、一つは天候のリスクで、もう一つは政策変更のリスクというのがありますという話でした。

 これまで、実は、農地・水もそうです、多面的機能支払いと言われている中山間支払いなんかもそうですが、全てこれは予算措置で行ってきました。五年に一回、中山間支払いについては見直しがあったということですが、そうすると、では、五年後またどうなるのかというので、その都度、これは政治的にもいろいろな議論があって、ふやすのか減らすのかみたいな議論を結局せざるを得ないという中で、今回、法案に盛り込んでいくということです。

 これについて、例えば神埼市内でも、中山間支払いは約三百町歩、ほとんど大半をやっているというふうに伺っておりますが、まず、法律に位置づけることについて、どのように評価をされていますでしょうか。これは松本市長にお伺いしたいと思います。

松本茂幸君 ただいまの御質問にお答えしてみたいと思います。

 中山間地でこういった農業を営むというのは、今、大変厳しい条件下にございます。その中で、今回こういった中山間地の支払いがいただけるということ、そしてまた、これが法制化されるということは、将来の計画、プランを立てていく、自分の生活を立てるのに安定的に計画が立てられるということで、私は非常にいいことだと思っております。

 そういったことで、内容の充実もまたお願いしたいところはございますけれども、こういったことで、私は非常に歓迎するものであります。

鈴木(憲)委員 ありがとうございます。

 そこで、秋吉さんにぜひお伺いしたいのは、今の中山間支払いは、額が一定額あるわけですが、先ほど正直なお気持ちの中で、今なかなか中山間まで自分は引き受けたくないという気持ちが心の中では結局あるというのが、どこの地域でも、うちの地元もそうですし、日本じゅうどこに行っても、大きくやられている方は、そこの部分、中山間を引き受けろと言われても、なかなかちょっと手が出ないという現実があるんだと思います。

 そこで、今の中山間支払いについて、もうちょっと、例えばこういったことがあれば平場でやっている方が規模拡大をするときに中山間まで出ていってとか、いろいろな手助けができると、もし何かアイデアがありましたら教えていただきたいと思います。

秋吉義孝君 今の政策というのは、平場の政策も、この多面的機能にしても、何にしても、平場も中山間地も一緒の政策。ただ、違うのが中山間地直接支払制度だけだと僕は思いますけれども、今、田んぼで二万一千円でしたか、そのわずか二万一千円ぐらいのあれで、では、本当にあの急傾斜地でしたいと思う人がいるのか。いないと思います。

 やはりもっともっと額を積み上げるなりなんなりして、それこそ、先ほども申しましたように、そこから出た人がそこに帰ってきてでも農業ができるような、それで何とかしていけるような政策じゃないと、今のままだと、当然、帰ってくる人もいなくなってしまうし、日本は、川に例えると、川上から川下まであって、その先には海まであってというようなことがあって、一番大事な川上を大切にしていかないと日本全部の国土が荒廃していくような気がします。

 もっともっと、やはり中山間地は中山間地の特別な施策といったらおかしいけれども、施策というのは平等でなければいけないというのは原則的にあるかもしれませんけれども、中山間地には中山間地独自の、直接所得補償だけじゃなくて、何かやっていただけたらいいのではないか。

 とにかく、若者が帰って農業をやって生活できるというような、それこそ早くモデル事業でも立ち上げてやっていただいたら、やってみないとわからないこともたくさんありますから、お願いしたいと思います。

鈴木(憲)委員 貴重な意見を本当にありがとうございました。

 私も、中山間のみの、何ができるのか、そういったことを考えていかなければいけないなというふうに思っております。

 最後の質問になります。

 今回、多面的機能法案、日本型直接支払いを法律にして出させていただいているんですが、その中で、地域の現場に行くと、法案の趣旨自体はいいものだということを、多くの方からそういう声はいただきます。ただ、一方で、今はいいんだけれども、十年先、二十年先、人口が減っていったときに、一体全体、誰が多面的機能を維持するための担い手としてやっていくのかということがなかなか見えてこないという現実があるんだよという話です。

 実際は、先ほど秋吉さんからは、若い人を呼んでとか、もしくは集落営農をやっていないところはすぐにやって、何とか支えていくべきだというお話もありましたが、これから現実に、きょう、さっき拝見させていただいたクリークなんかも、あれも重機を入れないと掃除をするのが多分できないんだろうというふうに思ったんです。

 そういったことも含めて、地域の担い手、これは農業の担い手という意味ではなくて、多面的機能を維持するための担い手をどのようにして見出して確保していくいい策があるのかということを、もしどなたか御意見がありましたら、ぜひ伺いたいと思います。

松本茂幸君 ただいまの御意見に対しまして、これが絶対いいという話ではありませんが、私も、二十年先だとか、こういったところは、非常に心配、危惧をするものでございます。

 今日は確かに、集落営農で全体でやるとか、地域でみんなでやったらいいとか、こういうことは考えられるんですが、これから人口が減るという、今先生の言われたところで、今から二十年先、三十年先は人口が非常に減ります。そしてまた、農村地域の集落がどのような姿になるかということをしっかりと想定を描かない限り、このことの解決の解答はなかなか難しいと私は思います。

 そこで、私も非常に危惧するのは、農村がぐっと減るのではないか、農村の家庭、その戸数が減るのではないか。では、そのとき、こういったところの地域の周りの環境保全だとか、多面的機能を維持する、させるための人がいるのかということです。それだけ従事できる人がいるのか、人口があるかということ。

 それを危惧するとなかなか答えは出ないのでありますが、今、大きな重機を使ってやれば、これは企業が、そういった事業者がやればいいかもわかりません。そうすると、この多面的機能のやろうとする農地・水保全のこういった制度で本当にやれるのかというのは、私は疑問視いたします。

 でも、そういったことを少しでもやれるところはやろうではないかという気持ちをしっかりとつないでいけるような法の制度、仕組み、こういったものは必要だと思います。

 先ほども御意見が出ていましたが、子供さんたちもやはりやっていかなきゃならない。こういったことを教えて、自分たちみずからがこういった地区を守っていかなければいけないんだという責任感というか、そういったものをやはり抱くような地域づくりをしておかなきゃならぬ、こう思います。

 ただ、私は、今回、こういった地区の方たちが積極的に自分たちのところは自分たちでやろうという意識をどのようにして醸成していけるのかというのが大きな行政の課題だと思って、今そういったことに意を酌んでいるところでございます。

坂本座長 あとお三方から、今の鈴木君の質問に対しまして、いろいろなお考えはございませんか。

秋吉義孝君 先ほども申しましたけれども、今、松本市長のお話にもありましたように、やはりこれは一つの郷土愛とかそういうものの育み方だと思うんですね。だから、どうしても、それをやはり小さいうちからやって、教育の現場の中でやらない限りは、お金とか、大人になった人間関係とかの中ではなかなかできないこともあります。だから、どうしても、やはり教育現場の中にこういうものも取り込んで、小さいうちからそういう精神を育んでいくという行動をとらない限りは、なかなか難しいんじゃないかなと思います。

坂本座長 あとはよろしいですか。もう少し時間がありますけれども、よろしいですか。

松本茂幸君 ちょっと済みません。先ほど子供の教育の話が出ましたので。私、こういった経験をいたしました。

 最近、中学生の意見交換の中で、こんなことが出てきたんですよ。将来どんな大人になりたいかというのに対して、子供がこういう答えをいたしました。ボランティア活動に積極的に参加したい。これは正しいんです。ところが、ごみ拾いとかクリーン作戦とかに大いに参加するようなことに努めたいという答えだったんですよ。そこで、私はその子供にこう話しました。拾うことをやるんじゃなくて、捨てないようにするんだよねと。

 今、ボランティアということが先行しまして、非常に広まっていまして、そういったことをすることが善と考えていますけれども、物を拾う、ごみを拾うという発想は、捨てないのが先なんですよね。そういう大人になってほしいんですよ。捨てるのを容認した上で拾うという社会じゃない。

 だから、個々の教育だって、今言われますように、小さいときから自分たちの地区の環境は自分たちで守っていかなきゃならないんだ、こういう思想をつくらなきゃいけないとは思います。ただ、個々に、やれるやれないの範囲がありますから、そこは自治体がやるのか国がやるのかということになるかもわかりませんけれども、やはり、これからの将来、人口が減るというときに、なかなか想定が難しいものですから、その辺、またよろしく御指導賜りたいと私は思うところです。

鈴木(憲)委員 本当に気持ちの通った御意見をありがとうございました。

 どうもありがとうございます。

坂本座長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 皆様、きょうはありがとうございます。公明党の樋口尚也でございます。福岡県の柳川市出身で、さっきから、それがよかとか、よかろうもんという話を聞いて、私も頑張ろうと思います。

 きょうは、佐賀の皆様に情熱的な御教示をいただいています。大変ありがたいし、先ほど原口さんがおっしゃっていましたけれども、農営をされる皆様のとうとき汗と労苦の上に私たちの生活が成り立っているということは重々承知をし、そして、そのことに心から感謝をして、敬意を表して、毎日営んでいるということをまた今思い起こしております。大変ありがとうございます。

 幾つか聞いてまいりたいと思いますけれども、最初に、今、鈴木先生から最初に戸別補償の話がありまして、秋吉さんと原口さんにはお答えをいただいたんですが、これは光吉さんもお話しされたいと思いましたし、松本市長にも聞いてみたいと思いましたので、それについての御見解を光吉さんと松本市長にお伺いしたいと思います。

光吉正明君 戸別補償については、減反が始まって、多目的、ゲタ、緑ゲタ、黄ゲタ、そして戸別補償、そして日本型直接支払い、その中において、やはり農業を取り巻く資材が高騰しておるとですよね。だから、ことしなんか、米の価格払いは恐らくあると思います、それだけ、一万三、四千円、下っておるとですよ。それにはやはり、地域の農民の方も、ぜひとも米一俵当たりを一万六千円ぐらいまで持っていってくれるように、行くんやったら一言言うてくれということです。

 要するに、小学校の子供でも計算ができるわけですよ。資材は高くて、生産物は安い。ことしのハウスなんかも、トマト、ナスビ、そしてイチゴ。イチゴは、きのうの話じゃないですけれども、一パック五十円、去年から安くなっている。そのように一パック五十円も下がれば、そして、油は高騰。

 要するに農家は、私は、ゲタのとき、こういったことを聞きました。光吉君、年金号というのを知っておるかと。年金号というのは農機具の名前にはないですよ、農機具には、クボタ、井関、ヤンマー、シバウラと。いや、君、そうじゃないよ、これは、うちは息子夫婦が田んぼを二町つくってハウスをしておるけれども、収入がないから、孫が百姓をやると言うたから、じいちゃん、ばあちゃんの年金をはたいて三百万のトラクターを買ってやったと。僕も今、この話の中で涙が出ます。議員の皆様、どう思いますか。

 そういう点で、自分としては、後継者をどのように育てていくか。

 秋吉さんと話は食い違いますけれども、秋吉さんも立派な話をした中で、僕としては、やはり後継者を育てる環境づくり。

 各圃場整備、川副は、ちょうど二十五、六年になって、共乾施設四つ、ライスセンターも、中で、もう二十六年、七年たって、補修すらできない状態に来ております。しかし、農家も派手に町に出て飲み食いばかりはしとらんとですよ。

 だから、ここに来ておられる国会議員の皆様には、皆様も全国を回っておられますけれども、どうか農家を見捨てない政治を、党派を超えた中で、やはり手を握って農家を守っていってもらいたいと思います。

 以上です。

松本茂幸君 ただいまの質問にお答えしてみたいと思うんですが、なかなかこれは難しいものでございまして、農業というものを業として見るとすれば、やはり、ここに利益が出なければやっていけないというのは当然でございます。しかし、ここのところでとれないところを、今回の所得補償ということですか、こういったことを見ていただけるということは農家にとってはありがたい話でございますから、これは異論はございません。

 ただ、この農業をどうしてもやらなきゃならない、そういった補償を積まなきゃならないというときに、また別に多面的機能制度というのが中でありますけれども、そういったところで補ってもらうものがあるかもわかりませんが、やはりそこに、農家の方たちに生活が営めるだけの所得、農業所得というものがなければ、もうやめるんですね、続かない。先ほど話がありましたけれども、じいちゃん、ばあちゃんが年金からトラクターを買うてやった、それで何とか耕している。それは、大変な赤字ですから、完全に赤字ですから、続かない。

 だけれども、やはり、農業をしてもうかる、生活をやっていける、こういった夢なり希望なりを持てるような施策をやっていただくと、みんな頑張って、後継者もできると思うんです。ですから、農業の方たちから、今、農業はおもしろいよ、所得が上がるよという声が出るような施策をやっていただかないといけないんじゃないかな。

 先ほどありますように、コストは高くて生産した価格は安いならば、当然売れませんし、もうけた話も絶対出てこない。だから、価格を上げていただく方法があるのかどうか、そういうふうにちょっと私は思うところでございますけれども、今回、こういった制度をつくってもらうことはありがたいんです。でも、全体を見たときに、果たしてこれでいいんだろうかという疑問は残っております。

樋口委員 貴重な御意見をありがとうございます。

 本当に、わかりやすく、長く安定をして続けていただくために、これからしっかり頑張ってまいりたいというふうに思っております。

 松本市長にお伺いをしたいんです。

 先ほどからスピーチをいただきましたとおり、神埼市さんにおかれましては、米、麦、大豆、そして施設園芸、この複合経営形態ということで先駆的にやられている市ということだと思います。

 これからの国の補助金のあり方について、余っている主食用米から、生産をふやすべき麦とか大豆、こういう作物を対象にするということが重要になってくるわけでございますけれども、これまでバランスよく取り組まれてきた御市におかれましての取り組みというか、この麦や大豆を対象にしていくということについての御意見をいただきたいと思います。

松本茂幸君 お答えしたいと思います。

 今、米、麦、大豆というようなことで、神埼市はこれを三つ組み合わせて進めてまいっております。減反政策の中で、では転作は何をやるのか、こういったところで、大豆が一番よかったわけであります。

 といいますのは、今回も、私ども、圃場整備でもって、田んぼの整備、基盤整備は非常にうまくやっていただきました、国の施策の中で。こういったことで、田畑輪換ができるということで非常にありがたい。土地ができたわけであります、農地ができたわけであります。そんなことを考えたとき、一番効率がよかったのが大豆であります。

 そんなことで、やはり今回は、私どもの市では、農地の中では、米、大豆、麦というものをしっかりと組み合わせながらやる。しかし、その大豆のところの、同じ場所ばかりつくるのではなくて、これがまたうまく、地元の農家、農村の中で、地区で面積割りをやりながらローテーションを組んでいくんですよ。ですから、やはり土地の肥沃度といいましょうか、ああいったこともうまくいくのではないでしょうか。

 そんなことで、地区の方々が非常にうまくお話をされながら、そこの中で、転作なりなんなりをやっていくものが、うまく組み合わせ、また話し合い、協議の上で進められた。そしてまた、機械の利用組合といったことの関連からしても、うまくそれができた。共乾施設を一緒になってつくる、こんなこともうまくできたものの一つだと思います。

 やはりこれは、今回こういった形で進めていただくこと、本当にありがたいものだと思っております。ぜひとも、これはもっともっと強力に進めてもらいたいと思います。

樋口委員 ありがとうございます。

 続いて、同じく市長に、先ほどお話の中で、農地・水保全管理支払交付金が耕作面積七〇%ということで、全国平均が三五%でありますから、全国平均の倍の取り組みをされているということだと思いますけれども、この盛んな取り組みが展開されているのにどういう理由があったのかということ、また、この取り組みの広がりに当たって、市長としてどのような御苦労があったか、二点お伺いをしたいと思います。

松本茂幸君 ただいまの御意見にお答えしたいと思います。

 神埼市におきましては、農地・水・環境保全、こういった形での制度が出されたときに、私も神埼町の町長からこういった形で市長になっておるわけでありますが、神埼町時代に地域協働推進事業というものをちょうど私は始めたものであります。

 これは、考え方は非常に似ているんですが、何といいましても、自分たちの住んでいる地域は、国道なり県道なり、または道路、水路が、管理者が違っても、やはり自分たちが一番使うんじゃないですかといったことから、そこの美観だとか、若干の不便さとか、それを解消するのに、みずからの手でもってできるところはやってほしいんだと。それに行政の市が、町が何がしかの財的な支援をすることによって、それが解消していくならばいいのではないか。これは国がやるべきですよ、県がやるべきですよという前に、地域の方たちが一番その恩恵を受けるわけですから。

 そんなことで進めてきておったものが、ちょうど市になりまして、そういった形での政策、制度になってきた。そうすると、これがまた、国が五〇、県が二五、市が二五持つということで、農家の方たちにとっては、農村の方々にとっては非常に都合のよい仕組みであったわけであります。

 そんなことで、市域全域そういったことに取り組んでほしい、こう指導したところであります。やはりなかなか事情がいろいろありまして、手続上の問題とかいろいろございましたけれども、そんなことについては非常に理解があったところが多かったということと、職員にそういったことについて積極的に働きかけ、または協力をしてきた、そういったことが今日の結果だとは思いますが、これをもっともっと手厚く進めてもらいたいという気持ちもございます。よろしくお願いしたいと思います。

樋口委員 ありがとうございます。

 基礎自治体さんの積極性ということがこういうことに結びついて、またこれが上がっていくようにしっかり頑張っていきたいなというふうに思います。

 次に、秋吉さんにお伺いをしたいと思います。

 先ほどスピーチの中で、今回の施策が、確実に規模拡大を行うチャンスが来たなという実感をされているという心強いお話だと承りました。そしてまた、秋吉さんがやられていることが目標になって、これから若い皆さんがしっかり頑張っていこうという目標になるような存在になられるということであれば、非常に夢がある、また希望がある御存在だなというふうに拝察をいたしまして、あのお話を承りました。

 そこでお伺いをしたいのが、今回の改革で、麦、大豆、飼料用米、今自給率が低い、需要のある農産物を支援することが重要だというふうに施策を変えていくわけです。主食用米から飼料用米、積極的に今取り組んでいらっしゃいますけれども、飼料用米や大豆、麦などについて支援を行うことの重要性をどう認識されるか、御意見をいただきたいと思います。

秋吉義孝君 お答えします。

 今、日本の国の自給率は四〇%です。ほとんどが穀物飼料の輸入というのがあります。その穀物、今は潤沢に入ってきているからそんなに問題はないんですけれども、もしこれが、どこかで食料パニックになったりとか、国連あたりが、アフリカとかああいうところの貧しい国に食料支援をしなきゃいけないというようなことになったときに、多分食料が足りなくてパニックになる。そんなときに、日本に回ってくる飼料作物が、穀物があるのかどうかということ。

 そして、そのときにいかに高騰するかということを考えると、今現在でも飼料が七十円を超したら大変だと言われている、もうほとんど小さい畜産農家はやめていくだろうという中で、やはり、これだけ畜産物あたりが日本の食の文化の中に入ってきた以上、四十年前、五十年前の日本食に戻せというのはなかなか難しいと思います。

 そういうときに、では、日本の国内でどれだけそういう代替作物をつくれるかということ、そして、それをつくったときにどれだけの収入があるのかということを踏まえて、やはり、先ほども申しましたように、米並みの所得があるような施策じゃないと僕はいけないと思っていますし、率先してこれまでもやってきました。

 ぜひとも、もっともっと拡充されて、今、主食用米が余っているという人がやるんですけれども、主食用米から転換して飼料米等をつくることによって主食米の作付が減ると、今度は主食米が高くなっちゃって、それで所得もふえていくと思うんですね。だから、そういう選択の自由というのを農家にも任せてやったらいいんじゃないかなと思います。

 以上です。

樋口委員 ありがとうございます。

 飼料用米につきましては、先ほど、やられている六十五ヘクタールのうち四十ヘクタールが飼料用米というふうに伺いました。

 資料を読ませていただきますと、みつせ鶏に納めていらっしゃるということで、私はいつも柳川から大阪や東京に帰るときに、妻がどうしても基山パーキングに寄らなきゃいけないと言うんです。近いんです、柳川から基山は。そこに寄って、みつせ鶏のつくねとか、から揚げとか、それを食べたいと言って、それば食べてから帰ると言って、一々寄らんでよかろうもんと言っているわけですけれども、どうしてもそれが食べたいと言うわけです。

 飼料用米をどういう、販売をそこにされているわけでありましょうけれども、どうやってその販路を拡大し、見つけて、納めていったのか。これから飼料用米が非常に、ホロホロ鳥とか金華豚とかいろいろなものが飼料用米を食べていますけれども、これをこれから充実させていかなければいけません。どういうふうに販路を拡大していかれたのかということを教えていただければと思います。

秋吉義孝君 私は、たまたま運がよくて、株式会社ヨコオというんですけれども、そのみつせ鶏の運営をしているところ、そこの社長とたまたま知り合いでありまして、仲がいい会社、社長仲間でありました。

 その前の年から、東京の大手の商社と、これから先は飼料米のことを考えて日本の食料自給率を上げなきゃいけないということで、たまたま商社の方と飼料米制度が始まる前から勉強会をやっていまして、そのときに、大々的にこういう飼料米で八万円の制度ができたときに、たまたま私のところがそういうことに取り組んでいた。そして、ヨコオさんはヨコオさんで、みつせ鶏というのをやって、それに食わせたいということがありまして、たまたま意気投合して、とにかく、では俺がつくった米は全量買い取ってくださいよ、向こうも、つくったものは全部とりますよ、そして、もっと仲間にも呼びかけてつくってもらうようにしてください、そういうことがきっかけで販路ができました。

樋口委員 では、最後の質問、秋吉さんにもう一つだけ聞かせてください。

 大規模農家として、地域の共同活動に、これまでも農地・水保全管理支払いの活動の組織の一員として携わられてきたというお話も承っておりますけれども、今後、地域の共同活動が継続されることで農地集約を進めやすくなるなど、そういうメリットをお感じになっているかどうか、この点について伺いたいと思います。

秋吉義孝君 現在、農地・水で、集落の人たちの助けをかりて、用水路の整備、それから排水路の清掃等を行ってもらっています。その件に関して、先ほど言われていましたように、重機が必要なときは私のところで重機を出してあげて、人も出してあげて、一緒になって地域を守っていこうということはやっていますし、それは今から先も大事なことだと。

 私のところは、集落の大体八五%の面積を集落から預かって農業経営をやっていますので、そういう人たちの手もかりないと、私のところだけではなかなか難しいので、大変いい制度で、これからますます拡充していっていただければ、私にとっては幸いでございます。

 ありがとうございます。

樋口委員 時間が参りましたので、終わります。

 ありがとうございました。

坂本座長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志でございます。

 きょうは、私、農林水産委員会の理事としましても、この佐賀の地で地方公聴会を開催していただくこと、座長を初め委員の皆様、そして、きょう意見陳述をしていただきました皆様、さらには、準備も含めて当たっていただきました皆様に心から感謝を申し上げながら、歓迎の意を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 今、国会の場で、与党から提出されている担い手経営安定法、そして多面的機能法、それに対して、私たちの方から、農業者戸別所得補償を法制化する法律、そして、これまで予算措置でやってきました農地・水共同活動を法律化する法律案、そして中山間直接支払いを法制化する法律案、そして環境保全型農業を支える支払いを法制化する法律案、この四つを私たち、対案として提出させていただいて、国会で議論をさせていただいているところでございます。

 私たちのこういう対案をつくらせていただいた心は、将来、日本の農業を守りつつ、食を守りつつ、かつ、地域の多面的機能を守っていくためには、やはり営農活動を続けていただける地域をつくっていかなければならない、営農活動があって初めて、多面的機能も守られていく、食も提供されていく、そのためには、農業の所得が上がっていなければならない、所得が守られることによって、後継者をつくっていこうという意欲も湧いていく、そして地域も守られていく、多面的機能も守られていく、こういった考え方で、対案を提案してやってきているわけでございます。

 そういった中で、いろいろないい議論が国会の中でも、そしてきょうも展開されていると思いますので、本当にありがたく存ずる次第でございます。

 私の方から幾つか御質問させていただければと思いますが、大変失礼ではございますけれども、こういう場でございますので、さんづけで皆様に質問させていただければと思います。

 まず、原口さんに質問させていただければと思います。

 私たちは、戸別所得補償制度というのをつくって、やってまいりました。これは、先ほど申しましたように、所得を守りながら、そこに力点を置いて営農活動を継続できるようにしていこう、こういうふうに思ってつくった制度でございましたけれども、これに関しまして、今回これが、米の定額補償の部分が七千五百円に減る、将来的にはこれはなくなっていくということでございます。

 戸別所得補償制度に関して、これはどういうふうによい面があったのか、あるいはさらに改善するべき面があったのか、この辺に関しまして、現場の皆さんの声、いろいろお聞きになっていると思いますので、お教えいただけたらなというふうに思います。

原口義春君 今、大串先生の方からお尋ねになった、これは失礼ですけれども、農業をされる方が、さっきも申したとおり、同じ意見、この答えが正解だということはないと思います。いろいろな意見がございます、人それぞれ。特に農業経営者というのは、一人一人が独立しております。企業経営みたいに大きな組織というのはない、ゼロとは言いませんけれども。

 ですから、今言ったように、なぜ戸別補償の方が、より今の地域の皆さんが希望なさっておるかということは、さきに言った、米価が、米、麦、大豆あわせて、非常に価格が低迷というんですか、下がる傾向にある。おっしゃったように、それに合わせて、資材、いわゆる肥料、農薬等も下がればなんですけれども、それは一向に、なかなか思うようにいかない。

 その中で農業を継続して、しかも地域のためにというのは、先ほどから先生方がおっしゃっておりますとおり、農業プラス環境保全、国土保全、地域保全。私は、自分が実際やってみて、自分が耕作する面積、三町歩とか五町歩、それに限ったところ以外は知らない、そうはならない。

 特に中山間では、私はよく、最初に申した干し柿等の地域に足を運びますけれども、それこそ面積的には非常に広い地域を皆さんが、管理と言ったら失礼ですけれども、柿畑はもちろんですけれども、地域の安全、安心のための、保全のための作業をなさっておる。これは価格にはかえがたいものがある。

 この点も含めて、今言った、やはり農業がそれだけの、この日本の国土の三十七万平方キロの、全てとは言いませんけれども、多くの地域のために汗を流し、頑張っていただいておることに対し、考慮というんですか、配慮をしていただければ、非常に、汗した努力が報われる。

 そういう点も含めて、私は、くどいようですけれども、戸別補償制度によって地域の安心、安全の、次なる世代のために保たれるということが必ず効果としてある、また現在、三年半の民主党政権時代はもちろんですけれども、これからも続けていただくことを希望し、私の意見とさせていただきます。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 光吉さんにもお尋ねしたいと思います。

 戸別所得補償の米の一万五千円分が七千五百円になっていって、さらにこれからなくなっていく、そのときに農家の所得が減るのではないかという議論が、農林水産委員会の中でもたくさんあります。

 それに対して、今回、政府の方からは、多面的機能法案があって、いわゆる新しい直接支払いということで、農地維持支払いとか、農地・水・環境をこれから上増ししたような形のものが出てくるということでございますけれども、いろいろ私たち委員会でも議論しているのは、農地・水・環境対策のような、集落に対して、いろいろ作業をしていただいている、取り組んでいただいていると思いますけれども、交付される支援が農家の所得にちゃんとなっていくのかというところが、これは所得じゃなくて、やはり集落に行っているものであって、集落活動を支えるものであって、戸別所得補償と置きかわるような、農家の所得を直接支えるようなものにはならないのではないかという、実態に関するいろいろな意見がございます。

 その辺の実態のところは、農地・水・環境というのは農家の所得を直接支えるようなものになっているのか、その辺の実態を教えていただければと思います。

光吉正明君 私のところでは、さっき申したように、自治会と土地改良で、生産組合の組合員の中において除草作業、そして水田の中の草取りを行っております。だから、農地・水に対しての法案は、団体に予算をつけるんじゃなくして、やはり農家の方にその所得を持っていけばいいんじゃないかと私は思います。

 それはどうしてかといえば、土地改良からの、毎年、一年に一回、二回やる中で、そのお金が、土地改良として私たちの部落に百万近くありますものね。それは労働作業をした中での食事代なんかに繰り込まれております。しかし、その食事代のほかに、それだけ、百万からの金額を残すよりか、その時点で、あるところは日当配分をしております。

 そういった農家に対して、汗に対して、やはり国土を守る、堀を守る中で、我々農家は、収入というか日当というか、その辺の、農家の方に還元したらいいじゃないかと思います。

 しかし、クリークの中の方のヘドロなんかは、やはり重機を使わないといけません。これはやはり国、自治体が協力をしてもらった中で進めるべきものじゃないかと思います。今、私たちの川副では九年、十年計画でクリーク防災をやっておりますけれども、その中でも、工事関係者は、やはり資材が上がっとるて、しかし仕事はとりたかばってんが、赤字こいてまでもしたくない、そういった状況であります。

 ノリはやはり日本一だけれども、佐賀県の平たん地としては、我々川副町は、平たん地として非常に、米麦、大豆、タマネギ、そういったところは恵まれた地域であります。最近変わったのは、タマネギをつくる生産者がふえたということ。そしてもう一つは、若手がレンコン。ああ、何か意識が変わったかな、もしこの戸別補償制度がなくなったら先はどうなるのかなと、私ひとり危惧しております。

 だから、さっきも述べたように、やはり後継者をどのように育てていくかですね。それは家族経営の中で考えていかないかぬけれども、集落営農、法人化、これから向かっていく中で、農家が米からどのような、年間八万トンという米の消費が減っている中で、ほかの作物にかわるか。それは、僕個人としては、もうこれだけ消費が少ないから、やはり米から外れた作物体制がいいじゃないかと思っております。

 以上です。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 米の需要が減ってきている中で、今回、政府の方からは、飼料用米に移りましょうという推奨が強くなされています。それによって所得を上げていこう、これは減反の廃止と言われることともつながっていると思いますけれども、さらに、収量を標準単収から、例示でいうと、十アール当たり六百八十キロまで上げていけば十・五万円という高い助成ももらえる、こういうふうになっているところであります。

 光吉さんにお尋ねしますけれども、飼料用米というのはどこに出していかれるんだろう、あるいは、そう簡単に米から飼料用米に移れるものだろうか。ましてや、いわんや、この六百八十という最高収量に到達できるものなのか。その辺の実態のところを、しやすいのかということを教えていただければと思います。

光吉正明君 川副の方は、中山間地の方の大豆ができないところに対しては飼料米をつくり、そして、山間地での大豆を平たん地の方につくるようになっております。

 しかし、飼料米としては、六百八十キロを基準として、それが下がった場合はまた八万になる。しかし、それを上回ったら、その金額の十万五千円が手に入る。その点については、品種改良、そして農家の方が地元にWCSをつくっている中で、やはりそれは酪農家の方が収穫しております。だから、地元ではWCSがいいじゃないかという話もあります。だから、山手の方に対しては飼料米としていいけれども、平たん地としては、やはり酪農家が減っている中で、それがいかに浸透していくか。

 そして、飼料米については、農家が販売先を見つけ、そのような系列の関係については農家が売り先を見つけることになっておるとですよ。しかし、その点、やはり農協、行政が何らかの形でそういったことを手助けしてもらえば、それはまたわかりません。

 しかし、今回、きのうはオーストラリアとの肉の関係、そして今度、日本に一番重荷になっているTPP、これによってもまた流れが変わるんじゃないかと私は思っております。

 以上です。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 秋吉さんにもちょっとお尋ねさせていただきたいんですけれども、私もよく現場も見せていただいて、本当にすばらしい、すごい農政をされているなといつも感心しておりまして、一時期、私の縁者もお勤めさせていただいたし、本当に、いつもありがとうございます。

 やはり規模拡大ということは、私たちもずっと、前の自民党政権のときからも長く、戸別所得補償に規模拡大加算なんかを加えてやってきたところでございます。でも、なかなかうまくいかない面もありますね。秋吉さんのようなところに六十数ヘクタールの集約、佐賀県、低平地が多いところでもなかなかそうはいっていないのが現状でございまして、今実現されているような集約がなぜこれまでうまくいかなかっただろうかという点の御認識を一つ。

 それと、あと、規模拡大して、どの辺が最大限というんですか、効果のマックスといいますか、先ほどこの辺が限界だというふうにおっしゃいましたね、六十数ヘクタールのところが限界だというふうにおっしゃいましたけれども、どの辺が、これ以上広がるとなかなかやりにくいなというところがあるのか、その辺をお聞かせいただければと思います。

秋吉義孝君 ちょっとお尋ねします。

 集約ができたのかできなかったのかという、どっちなんですか。

大串(博)委員 私の質問の趣旨は、集約、規模拡大を今まで長年農政の中で推進してきたんだけれども、低平地の佐賀県でも、秋吉社長のようなところがたくさんあるわけでは、なかなかできていないですね。なぜそううまくいかなかったのかなという御認識を一つと、集約できたとして、何十ヘクタールぐらいが一番ベストかなというところをお尋ねしたいと思います。

秋吉義孝君 私のところはたまたま、本当に集落の人たちと一緒になって特定農業法人にならせていただいて、上石動地区というんですけれども、この上石動地区の組合員さんが、この地区に大体五十ヘクタールありまして、それの約八五%、ほとんどが七反百姓であります。吉野ケ里というところは佐賀の東部にあって、インターチェンジもありまして、鳥栖まで三十分、佐賀まで三十分、久留米まで三十分、高速に乗れば福岡の博多のど真ん中まで三十分で行くというようなところで、非常に交通の便がいいところなんですね。

 そして、旧東脊振村には三つの工場団地がありまして、働きやすい環境に恵まれていたということであって、農業をする若者がいなくなったというよりも、親が農業をさせなくなっちゃったんですね。だから、たまたま七反百姓の人が、親がやっている間はするよ、しかし親がせぬようになったら農業をやめるというような地域で、非常に僕のところはスムーズに農地が集まっていきましたけれども、全体的には集まらなかったということなんです。

 私がずっとやってきて、集約がとまったときが二回あります。一回目は、集落営農の制度ができたとき。もう一つは、所得補償がされたとき、一万五千円が設定された。その二回が、大体集約がとまって、今ほとんど広がっていません。ここ五、六年間に集まったのが四、五ヘクタールです。だから、そんなことで、そういう制度あたりがなかなか、阻害したのかなという気がします。

 先ほども申しましたように、一番とまったときは、やはり集落営農ができたときに、集落集落の中で営農が始まった。それはそれで僕は非常にいいことだと思っています。そして、戸別補償になったとき、そのときたまたま、もうやめようかなと言っていた人が、一万五千円もらえるならまだするかという人もおられまして、そういうときはちょっと阻害になったんじゃないかな。

 ただ、規模拡大しなきゃいけないというのはもう至上命題だと僕は思っています。というのは、今農業者が大変苦しい苦しいと言っていますけれども、労働時間からすると、千五百時間働くためには十町の農業。水田農業、米麦、大豆でやると、十町近くしないと二千時間働けないんですね。だから、二千時間働いたら、結構所得としては上がっていくんじゃないかと思います。

 だから、どうしても、大きい農家ばかりで農業をやるというのも、これもまた無理があるんですけれども、小さい農家もそれはやってもらわなきゃいけないんですけれども、兼業農家は兼業農家としてやっていただければいいことであって、やはり農業でちゃんと食ってやっていこうとするためには大規模農家じゃないと、とにかく二千時間働けるような農業環境じゃないと自立できないと思っています。

 その点においては、雇用してやるということに関しては、限界はありません。

坂本座長 秋吉君、質疑の時間がオーバーしていますので、簡潔にお願いいたします。

秋吉義孝君 私、先ほど限界があったというのは個人的なことであって、今は、雇用することによって、余り限界はないと思います。

 以上です。

大串(博)委員 終わります。ありがとうございました。

坂本座長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 よろしくお願いします。

 大変貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。何点かお尋ねをしたいと思っております。

 四人の方に、簡潔にお答えいただくので結構ですから、一番最初にちょっと下世話な御質問をさせていただきたいんですけれども、私ももとは農家のせがれだったので、今はもう農業をやっていないんですけれども、当時、四反ぐらい田んぼをやって、六反ぐらい小カブをつくっていました。今はほとんどカブをやっている人はいなくて、コマツナです。埼玉県の東南部で東京に隣接している地域なんですけれども、一部田んぼをやっている人もいますけれども、ほとんど葉物野菜が中心のところです。

 選挙区の中にはお米どころのところもありますし、そんな中で、これからの農業をどうしていったらいいんだとよく農家の人にも尋ねられたりするんですけれども、このままやっていって、あと二十年先どうなるというふうによく尋ねられるんですけれども、ぜひ、佐賀の御当地の皆さんからいろいろアドバイスをいただければなと思います。

 一つ、単純な聞き方をさせていただきたいんですけれども、今までの議論をお聞きしていて、どのぐらいの規模の農家だったら、要するに、金額もそうですね、金額に裏づけられた面積というのは必ず出てくると思うんです。昨年から私も農水委員会で何回も質問しているんですけれども、ではお米で、麦をやったり大豆も組み合わせてやったときに、三十町歩やれば食えるのか、五十町歩やらなくちゃだめなのか、百町歩やらなくちゃいけないのか。二毛作ができる地域なのか、三毛作ができる地域なのか、一作しかできないのか。それによっても全然条件が変わってきちゃうと思うんですね。

 結局、今議論をしている中で、単体、水田なら水田の中で、米なら米、麦なら麦、大豆なら大豆というだけで終わってしまっているので、本当はみんな工夫して、私どもの方でも昔やっていたのは、米をやりながら、今の時期はイチゴの最後なんです。麦をやって、裏作で水稲をやる地域もあります。でも、イチゴは収穫するのに大変だからといって、イチゴ農家はやめちゃって水田だけやっているところも出てきているんですけれども。

 だから、実際にどのぐらいの規模を想定してやっていけばいいのかといったときに、現場でお仕事をされている四人の方で、このぐらいあればいいよなというのがあって、では、幾らぐらいの金額を目標にしたら後継ぎもちゃんとやってくれるよなというのがあったら、御教示いただきたいと思うんです。

松本茂幸君 私は、このような仕事柄、幾らあったらいいのかというのはなかなかわかりません、正直申し上げまして。

 私のところも、実は私の家は農家でございますが、うちは一町五反ぐらいの農家でございました。以前は食えていたのに、今は全然だめだと思っております。

光吉正明君 町歩に対しては、やはり佐賀県は、麦をつくった場合は、ながせを控えておるわけですね、梅雨を。だから、何年か前、神埼の方で、立ち毛のままに芽が出たわけですよ。そうしたら小麦の場合は金にならない。しかし、それを機械でそのまま収穫して、その実を田んぼに落としたら、今度、ガスが出ますものね。そうしたら苗が枯れてしまいます。

 だから、私としては、面積として六町五反で、二十五年度が、雑収入が六百十万、販売金額が二百六十万、米、麦、大豆。その中で、さっきお隣の方が言われたように、大豆がやはり効率がいいですね。それはどうしてかというに、旧制度の中において、大豆の六十キロ当たりの金額が、戸別補償の方が三千円前後高いです。そして、二条大麦については九百円ばかり高い。そして、小麦については六十キロ当たり百十円高い。

 だから、反別をどのように、二十町、二十五町、規模拡大、規模拡大でやっていく中で、ながせを控え、いろいろな作物に対して、やはり二十町から二十五町が限界じゃないでしょうか。それは家族構成にもよります。しかし、今の農家の方は自分でやろうと思うから、規模拡大がでけんとですよ。その中に、期間借地でも年間を通して二人か三人入れれば、体も楽になって、私はいいんじゃないかと思います。

 だから、規模拡大、規模拡大もいいけれども、その中にはリスクも伴う。それは大型機械。その大型機械だけでみんな耕作できればよかばってんが、一年三百六十五日の中において使うのは、皆さんも御承知のとおり、田植え機は一日か二日、トラクターは二十日前後使うかもわからぬけれども、農家には機械が四つも五つも、いろいろな種類を持っておかぬと、稲作経営、農業経営がでけんとですよ。

 だから、皆さんの力をかりて、ぜひとも戸別補償をこのまま継続できるように、切に要望いたします。

 以上です。

秋吉義孝君 農業者の生活のレベル、それから農業者の経営の内容、そういうものがあって、一概に何ヘクタールあったら農業経営がうまくいくよということは決して言えないと思います。

 ただ、一つ言えることは、先ほども申しましたように、一年間に千五百時間から二千時間働ける農業環境をどうやってつくるか、それだけだと思います。私、先ほど十ヘクタールと。今は、十ヘクタールで、家族でやって、夫婦二人でやったら十分食える位置にあると思います。だから、その人の生活のレベルがどれぐらいなのか、その人が経営できる農業はどれぐらいなのかによって変わってくると思います。

 以上です。

原口義春君 今、鈴木先生お尋ねの件ですけれども、私の地元、いわゆる旧大和町では親子、家族で耕作されている方が多い、認定農家で。見ていると、大体十五町歩から二十町歩。

 二十町歩耕作されている人、名前は申し上げませんけれども、その方によくお尋ねしますけれども、原口さん、やはり自分でできる範囲は二十町歩が限度じゃないかなとおっしゃいます。大きな農機具を持ち、自分でされておる、そういうふうで、単作、いわゆる米、麦、大豆だったら、面積に限度がある。

 しかし、もう一方の家族は、お父さんが米、麦、大豆、息子さんがイチゴ、息子さんはイチゴに専門的にはまっていらっしゃる、そういう家庭もございますから、これは一概に答えが出ないんですけれども、米は、失礼ですけれども、坪当たり四百円もならない。しかし、イチゴは、坪当たり一万から、いい人は坪一万三千円ぐらい収益を上げる。

 私のところでは、ニラそれから小ネギ、いろいろな作物がございますけれども、やはり、見ていると、努力しておる方、本当によく研究し頑張っていらっしゃる方の方が収益が上がっておるというのが事実でございます。

 以上です。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 先ほど御説明をいただいた中で、米をやりながら麦をやったり大豆をやったりされているというんですけれども、二毛作をやっている農家の方の割合というのは、御当地で大体どのぐらいなんでしょうか。六割ぐらい二毛作をやっているとか、それであればまだ、二毛作をふやそうとすれば、収穫だけを考えれば、あと四割まだ歩のみがあるという考え方になるわけですね。

 だから、一つの土地を有効に使おうと思えば、やはり、なぜ私どもの方でコマツナをつくっているかといったら、一年に五作から六作やります。なぜコマツナだけつくるんですかと聞けば、コマツナは年に五作も六作もつくれるから、一年に一作しかできないものよりは六作つくった方が反収当たりの売り上げは上がるだろうということなんですね。だから、逆に、産地が広がっちゃったので、余り佐賀の方ではつくらないでもらいたいんですけれどもね。まあ、それは冗談なんですけれども。

 でも、そのぐらいのところをぜひ、効率のいい農地の使い方というのはやはり工夫されていると思うんですけれども、今どのぐらいの割合で工夫されているのか、現場でお仕事されている方に。

光吉正明君 川副町の方では、一人の方が一カ所で十町つくっておる。政府が今やるとしているところの中で、集積、これは非常にやはり効率を生むんですね。今の私たちのたんなかは、ちょうどあっちこっち、てんでんばらばら、佐賀弁じゃないけれども、あっちこっちあるけれども、移動するためにはキャタピラが傷む、五条だからですね。だから、政府が今行われようとしている集積は、確かに私は要ると思います。

 それやったら、ある程度できやせぬでしょうか。要するに、私の一番広いたんなかで一町二反。一町二反も二反も四隅は一緒ですものね。広いたんなかも狭いたんなかも四隅は一緒。だから、やはり集積をやっていくことによって労働時間を下げて、またコストも下がっていくんじゃないでしょうか。

 以上です。

原口義春君 今先生おっしゃることで、私の地域では、ほとんどが減反。もちろん、その水田は大豆をつくる。表に米、裏作に麦、そして大豆。ほとんど、つくっていない田んぼはないくらいに耕作をされております。

 以上です。

松本茂幸君 ただいまの御質問でございますが、神埼市におきましては、山麓部においては裏作ができないですね。そんなことで、米だけということになっております。

 しかし、平たん部につきましては、ほとんど九割を超えるような、一〇〇%近い形での土地の利用がされているものもございます。これは二毛作でございます。米をつくるか大豆をつくった裏は麦がある、こういうような形でございます。

秋吉義孝君 私の会社では、田んぼを効率よく利用するということは常識的なことであって、でも、先ほど松本市長が言われるように、できないところもあって、私のところで大体一八〇%となっています、利用率が。

 先ほども言いましたように、一年じゅう雇用を使って、要するに、一年じゅうできる仕事をつくるために、キャベツをつくってみたり、やっています。

 以上です。

原口義春君 今お答えさせていただきましたけれども、私が申した、ほとんど二毛作、裏作もされておるというのは、専業農家、認定農家でございまして、そうじゃない、失礼ですけれども、一町、二町、三町程度、個人でされている方は、そうじゃないところもあるということもお伝えいたします。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 あと、よく国の方は、今、農産物だとか加工品、食料品が全国で四千億ぐらい、海外に製品として出しているんですと。これを十年ぐらいかけて一兆円にしていこうというような構想を持って、後押しをするんだと言うんですね。

 御当地であったら、海外に最後は販路を、最後じゃなくてもいいんですけれども、国内はもういい、最後は海外に出していってもいいじゃないかというようなお考えがおありなのかどうか。あればあったで、なければないで結構ですから。

 それと、あと、国がよく六次産業化と言うんです。農業は、これから大事なのは六次産業化だと。

 私は、質問したときに、農家を一生懸命やっている人ほど、そんな考えるほどの時間がないよという御質問をしたんですけれども、御当地で六次産業化がうまくいっている事例があったら教えていただきたいんです。もしなければ、ないで結構ですから。逆に、失敗してしまったような事例があれば教えていただきたいんですね。

 それと、最後にもう一点。この二十六年度から米粉用の、加工用米にシフトしていく選択をされる農家の方、飼料米にシフトする方とか、昔でいえば転作奨励金じゃないんですけれども、そちらにシフトをしていくのに、話し合いみたいなのを地域でされているのかどうかなんです。

 御自分で十町歩やっているとか、土地を借りて、先ほど秋吉さんの方から、二十ヘクタール、十五ヘクタール、二十ヘクタール、二十ヘクタールで飼料米、主食用、大麦、キャベツと御説明いただいたんですけれども、二十町歩、三十町歩をお一人でやっているとか、集落でやっているといったときに、一人だけで一町歩飼料米をつくるよりは、十町歩飼料米をつくった方が効率がいいはずなんですね。

 うちの方でも実際つくっているんですけれども、みつひかりという銘柄の多収穫米で、その年によっても違うんでしょうけれども、一反当たり千キロぐらいとれる米があります。それ以上とる品種というのは実際、技術的には難しいだろうというんですけれども、そういう米を使って、もしやるんだよといっても、一軒の農家で少しばかりの面積でやるよりは、ある程度集落で話をした方が早いと思うんですけれども、そういった話し合いを今されているのかどうかです。それはもう個別で判断するんだというお話なのか。

 三点ぐらいにわたっちゃうんですけれども、時間がないものですから、御答弁いただいて、終わりにしたいと思います。

光吉正明君 六次産業については、私が昨年まで農政協議会の中地区の生産組合の代表をしておりました中で、六次産業については余り話が出ませんでした。

 以上です。

秋吉義孝君 輸出の話が今出ましたけれども、私個人としては、やはり日本の食料ということを中心に考えていこうと思ってやっております。でも、私の仲間には、やはり輸出を中心に経営規模拡大をやっていきたいという人も多々おります。

 六次産業化に対しては、六次産業化が法制化する前に農商工連携というのがあって、その中で大体、六次化できる人はやってしまった。その以前にも、力のある人はほとんどの方が六次化をやっちゃったということもあって、なかなか今、六次化が新たに進んでいるというのは、余りうまくいっているというのは聞きません。しかし、私の仲間には、これから始めるという人もたくさんいますので、まだ経過を見るべき時期なのかなという気がします。加工用米も含めて、そうですね。

 それから、作付の状況について集落で話し合われているのかということを言われましたけれども、私の近所のところはほとんどがまだ、農協さんとライスセンター、カントリー、そういうものと一緒に手を組んでやっていらっしゃいますので、作付の面積とかなんとかというのはそちらの方でやっておられて、私そのものはもう大体、私の勝手な作付状況でやっています。そして、それに賛同してくれる農家がいれば、どうぞ協力して一緒にやりましょうということでやっている状況です。

 終わります。

坂本座長 時間が来ておりますので、それぞれ簡潔に、原口君そして松本君の順でお願いします。

原口義春君 今先生おっしゃった六次産業化、私の地域でも、専業農家の息子さん、本当は娘婿さん、福岡でばりばりサラリーマンをやって帰ってこられた。そして、今おっしゃる、非常に、私から見れば、なるほど若くて、現在まで農業をしていない立場で農業に取り組む。田畑つくるのはさておいて、いろいろな、蜂蜜から、それこそ多種にわたってされておりました。

 しかし、やはり、立派なものをつくられますけれども、いわんや、価格の面を含めて、それが軌道に乗るかというと、非常に難しい。よく相談を受けました。うちも、失礼ですけれども、道の駅もあり、販路もいろいろ、私も相談に乗って、させていただきますけれども、やはり個人で限度があるなと。

 そのサラリーマンをUターンされた方、物すごく頑張って、今ももちろんなさっております。しかし、これで生計が成り立つかというと、なかなかそこまで行き届きそうで行き届かないという面があるということでございます。

坂本座長 松本君、簡潔にお願いします。

松本茂幸君 私の方からお答えいたします。

 私のところは、意見陳述の中でも述べましたように、米、麦、大豆というのは非常にうまくいっている。そういった中でも、こういった制度の中で、いろいろな作付作物がありますけれども、その検討はなされていると思いますが、そういったことで、行政的、私自身としては、米、麦、大豆という方向で、指導、誘導といいますか、そんなことをやってきました。

 ただし、個人的にそういった利益を求めていく、より向上させるためにされる方については、当然やっていただいて結構でございますが、そういった支援をまた怠りなくやりたい、こう思っているところでございます。

鈴木(義)委員 ありがとうございました。

坂本座長 次に、畑浩治君。

畑委員 生活の党の畑浩治でございます。

 長時間、皆様、本当にお疲れさまでございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、生産調整についてお伺いしたい。これは松本さんと光吉さんと原口さんにお伺いしたいと思います。

 生産調整について、あり方について伺いたいわけであります。

 私は、自由につくらせてやるというのは、やはり野菜のように米価も乱高下するのは得策じゃないというか、不幸なことだと思っていまして、ソフトな生産調整は必要だと思っています。ソフトなという意味は、国が無理くり減反をペナルティーでやるんじゃなくて、誘導しながらやっていく。だからこそ、今の戸別所得補償制度は合理的だと思っているんです。あめを与えて、それに従わなくてもいいわけで、実質、選択制になっていますね。だから、私は、それはそれで戸別所得補償制度の合理性は生産調整においてもあるんだと思っております。

 ただ、政府のは、結局、米の直接支払交付金を四年後に廃止する、来年から半額にする、そういうことで、生産調整をなくすると言っておりまして、生産調整をなくすることで立ち行くとは思わないんですが、政府は、きめの細かい情報提供で生産調整が自主的にできる仕組みをつくると。これは、要は、行政が生産調整に関与することをやめるということが建前のようですが、理想的にはそうですが、私はうまくいくとは思えないんです。情報提供をどんなにきめ細かくやっても、それは秋吉さんのような本当に経営能力がある人が米農家全部だったらいいんですけれども、一般の人も含めて、なかなか、情報をもらって、それで需給に合わせて的確にやっていくというのは難しいだろうと思います。

 結局は、自主的といいながら、やはりソフトな行政指導が入らざるを得ないのではないか。要は、結局、行政なり国に生産者団体が相談することもあるでしょうし、実質的には、事前にすり合わせでこれぐらいという割り当てをすることも出てくるんじゃないか。そうすると、二枚舌だと思うんです。

 そこのところでお伺いしたいんですが、結局、実際に、自主的でかつ実効性ある生産調整というのは、どのようにすればいいとお思いになりますでしょうか。

松本茂幸君 ただいまの件に答えたいと思うんですが、なかなか難しゅうございます。

 これが自由というのは、本当はすばらしい、いい姿かもわかりませんけれども、言われるように、ソフト的な調整が必要ではないかという御意見、もっともだと私も思います。

 ただ、農家の方々がそれぞれつくろうとしても、今、生産の基盤である土地が、圃場整備をして、水をかけるポンプの、用水ですね、こういったものは共同でやっていくわけです。ですから、ばらばらになっても大変でございますから、やはりこの辺は、ある程度効率を求めるとすれば、一定の作物作付の計画性を持たなきゃならない。そういった、お互いが協力し合わなければならないという姿だと思います。

 しかし、では、全体で何をつくるのかというときの決定はなかなか難しいかもわかりませんが、やはり今日の姿で情報を国からいただくとすれば、そういった方向に基づいて判断していくと思います。大きく左右されるんじゃないかと思います。

 先ほど言われた、個人で大きくやって、販売ルートまでちゃんとされる方はいいですけれども、今、農家の方々は、生産の力はあっても、これを今度売るということになるとなかなか難しいものですから、この辺はJAさんとか、または政府の方から、国からそういった情報をいただいた中での判断をしていくことになろうかと私は思います。

光吉正明君 川副の大豆共乾、カントリーは、利用組合で成り立っております。どのように言うかというと、減反を廃止した場合は、米だけつくれば、今度は大豆のカントリーが利用されんとですよね。だから、私の考えとしては、JAはどのように考えているかはわからぬけれども、このままの、大豆、米の二つの二刀流でいった方がいいじゃないかと思います。

 これは、戸別補償を生かす中で、米、麦、そして大豆。大豆利用組合も、共乾もありますから、その点、やはり利用者が米だけつくったら、大豆利用組合は潰れます、利用しないから。それを、農協が全面的に政府と一体となった中で、政府運営にすればわかりません。しかし、今後、最近騒がれている、さっきも言いましたけれども、TPPがどのようになるか。しかし、政府はある程度の見通しはつけていると思います。だから、その辺の今後の成り行きを私は見守っていきたいと思います。

原口義春君 生産調整、今日まで減反政策が行われてきた。これは、私としては、国策、国としてその方向性を定めるためには必要な施策であるというふうに認識をいたしますし、自由主義社会、資本主義社会では、競争の自由からするとそれもおかしいんじゃないかという論理ももちろんありますけれども、非常に限られた、農業を生産する皆さんの一人一人の気持ちとして、私が接する限りでは、これはやはり社会的通念として、調整ありという方向が好ましいという意見が多いというのも事実でございます。

畑委員 ありがとうございました。

 次に、御四方にそれぞれお伺いしたいんですが、今度、政府の案でいろいろな交付金、制度ができることがいろいろ議論されています。これは、きのう、国会の方の参考人質疑で、新たな助成金体系は必ずしも魅力的ではないと言っている先生がおられました。その理由が、実質的には単価切り下げになっていると言うんですね、飼料米でも。

 とともに、よく我々が議論するのは、飼料米を地域の平均単収よりもつくれば十万五千円、最大限もらえる。ただ、これは単純に考えると、みんなが頑張れば平均は上がるんですよね。ということは、平均以上をつくるのが大変難しくなって、実際、十万五千円もらえる人はそんな多くないだろうというのも現実のようです。

 あと、いろいろな加算措置は確かにあります。耕畜連携で一万三千円加算するとか、あるいは、多収性専用品種の取り組みで一万二千円加算するとか。結局、そういうものを最大限出していくと所得はふえるという試算になるんですけれども、実際に、耕畜連携だと実績は二五・四%ぐらいなんだそうです、日本で。

 だから、政府案のもらえる交付金の額というのは、その仕組みも含めて、余りに高いハードルから出発しているので、やはりこれは、誰もが取り組めて、もっとシンプルで、目標に向かうインセンティブが湧くような交付金制度が必要だ、そういうことで戸別所得補償制度がいいという先生の論旨だったんですが、政府案のところの交付金体系、もらえる額も含めて、どういう感想を持っておられるのか、お伺いしたいわけです。

松本茂幸君 お答えいたします。

 これはなかなか難しいものだと思います。ですから、ここのところは、努力しようとか、頑張ろうとか、こういう方々に対する見返りがあるような制度というのはやはり当然あってほしいですし、しかし、そのハードルが高ければ、完全に最初から諦めなきゃならないような措置だったら問題だと思います。そこの設定の仕方がやはり基本じゃなかろうかと私は思います。

光吉正明君 これについては僕はわかりませんね。やはりどのようになるかですね。私が、それをつくって、売り先を見つけてあれしている場合は言えるけれども。それについてはちょっと答弁を控えさせていただきます。

秋吉義孝君 今、飼料米をつくって、それで十万五千円。まあ、段階があるわけですよね。だから、十万五千円分、六百何十キロぐらいとらないと、それをとらないとゼロですよという政策じゃないので、僕は、たくさんとろうとする努力をするという面では非常にいいと思います。

 ほかにいろいろな政策があると思うんですけれども、我々がそれをうまく利用して、どう活用するかということで、こうしてくれ、ああしてくれじゃなくて、出された政策をうまく利用していくということで僕はやっていきたいと思っています。

 以上です。

原口義春君 私も、私の地域では、そういう状況が、現在は取り入れている農家はないということで、非常に、お答えするのはどうかと思いますけれども。

 以前、この生産調整が始まり、減反に協力するけれども、つくった米は多用途米として買い取るという制度がずっと続いておりましたね。そういう中で、あの多用途米が、では、どういう形で利用というんですか、飼料に行ったのか、工業製品の方に行ったのか、いろいろ話は出ますけれども、私たちは確たることについて詳しく知らないという点もありますけれども、この飼料米、確かに、品種改良をし、非常に高単収になるということはあり得ると思いますけれども、現時点では、私がこうだという答えを出し切るというのは、その考えは持ち合わせていないというのが現状でございます。

畑委員 ありがとうございました。難しい質問を、大変恐縮でございました。

 それでは、もっとシンプルな、理念の質問をさせていただきたいと思います。

 きょう、議論を聞いていて、要は農家支援の理念なんですが、これは松本さんと光吉さんと原口さんにお伺いしたいと思います。

 要は、やはり政府案と野党案の違いは、政府案は、結局、お金が限定された中で、どこに使えばいいかというのは、基盤に使うのが合理的だという考えだと思います。そして、野党案の方は、私も野党の提案者の一人なんですが、そうじゃないと。つまり、先ほど議論がありましたが、農業所得がないと農家は続けられない。要は、そこを続けることをまず支援しなきゃいかぬ。というのは、農家を続けられなくなって、所得がなくて、基盤だけ整備したってしようがないわけですよね。一番大事なのは、続ける、そういう農家を支えることだ。逆に、農家が経営として成り立てば、自分で、基盤整備というか、そこは、やる話というか、やれるわけですよね。

 結局、支援の理念と順番がちょっと逆だなと。つまり、必要な財源が限られているのであれば、やはりまず、農家を支えるところに使って、経営を安定させて続けられるような環境をつくる、そうすることで、農地は農地としておのずから維持されていくんだと思います。農業の所得とかそういうものを支えないで、農家が所得が厳しい中で基盤をやっていく。そうしても、結局、農家がどんどん減っていって離農していくと、整備した基盤が残りますが、やはり農家が残らないと本末転倒だと思うんです。

 そこで、結局、農家を支える、その所得を支える所得補償というところの意義は私はそこにあると思うんですが、やはり農家支援の理念というのは、限られた財源だとすれば、どちらに重点を置くべきだとお思いになりますでしょうか。

松本茂幸君 お答えします。

 ちょっと難しいな。どちらが先ですかというと、なかなか難しい。

 しかし、農家だって、農業としての所得が上がらなければやめますよね。しかし、農業をやめられたら、やはり保全的な立場からどうしてもこれは困る、では続けてほしい。では、続けさせるために何がしかの金銭を渡すのか。しかし、これは、業として考えるなら、ほかのいろいろな事業もあるじゃなかですかね。農業ばかりじゃない。だとしたら、それも同じように考えなきゃならないといったら、それはちょっと疑問を感じます。

 しかし、農家というものの土地を保全していくためには、国なり、やはり手だてが必要なんだから、それに支援するんだよというのであれば、全然農業とは違う。しかし、そこの地域づくりのために支払うものだとするならば、やはり問題があるだろう。

 ですから、農業に対する所得を補助するという面からすると、他の問題に、いろいろ、産業分野にわたると思いますけれども、保全の立場からすれば、私は、手厚くされてもいいのではないか、こういう気がいたします。

 でも、だからその辺のところが、先ほどもありましたように、では、環境保全で農業の所得につながるかと言われたら、あるいは、日当でもらえる、作業として出たらもらえるといったら、やはり一つの所得、財布の中に入ってきますので、そういったものも考えられるけれども、これは農業と全然関係ない。しかし、こういったところをうまく整理してやらなきゃならない。

 理念のどちらが先ですかと言われると、私も先ほど尋ねられて、一生懸命頭の中を回転させましたけれども、どちらが先となかなか答えづらいなと思いましたけれども、業としたら、やはり補助はなかなか難しい。だから、保全の立場が優先ですよという気持ちでいかれたらやはり説明がつくのかなと私はちょっと思ったところでございました。

光吉正明君 ちょっと考えても、議員の回答に対して答えなくちゃいけんなと思うたけれども、やはりその辺がちょっと私の脳裏には映ってきませんね。

 そいけん、この回答については、済みませんけれども、パスさせていただきます。

原口義春君 失礼ですけれども、非常に答えづらい問題です。

 やはり日本の農業をこれからも意欲のある方に引き続き頑張っていただくためには制度が必要であるというのは、私は認識をいたしておりますし、先ほども申したとおり、自由競争の中で、アメリカやヨーロッパへ行ってみると、日本と桁違い、太刀打ちできない、これもよくわかります。一方で、ベトナム、台湾等に行ってみると、ああ、なるほど、こうか、これもよくわかります。

 ですから、今先生おっしゃるように、やはり国、いわゆる先生方含め、政府として、なるほど、日本のために、これからの将来のためになる方向はこうだという道筋を私たち、個々の農家に教えていただき、そして、知恵ある者が勇気を持って頑張れる農業を見出す努力をさせていただければなというふうに考えております。

 以上です。

畑委員 たびたび難しい質問で、大変恐縮でございました。

 私も、思いは、農業だから無条件で、他と違うんだから、特殊なんだから、お金を個々の農家に入れなさいと言っているわけではなくて、戸別所得補償の背景としては、もちろん、農業の有する多面的機能とか公益機能を前提にしているわけですね。だからこそ、農家を支えて、維持していかなきゃいけないと。

 結局、多面的機能を前面に出すか、あるいは、不足払いのところの所得補償を前面に出すかというのは、最終的にはこれはニュアンスの違いになってくるわけですね、農業の現実を踏まえていますから。

 ただ、結局、さはさりながら、そういうことをもとに、今回は、米の直接交付金を減らして、そして廃止して、恐らく、その部分が多面的機能とか、またはそういう集約のお金に入っていくということなので、そこのお金の使い方のバランスがどっちがいいのかという議論にも尽きてくるんですけれども、なかなか難しい問題ではありますが、本当に参考になりました。

 では、最後の質問をさせていただきます。

 これは秋吉さんにお伺いしたいんですが、中山間地の支援の話、きょうも議論に出て、お話がありました。

 私のところも中山間地の典型みたいな地域、岩手なんですけれども、岩手の北半分でして、そこで中間管理機構ができたんですが、やはり中間管理機構が中山間の土地は引き受けてくれないというか、引き受けにくいわけですよね。一般の事業者も、秋吉さんも引き受けたくないと言っているぐらいですから。

 その場合に、何か支援がないか、制度上、支援を仕組めないか。要は、中山間の直接払いをふやすことも一つの手なんでしょうが、中間管理機構をつくったことで、受け手への支援がなくなったというか、乏しくなったんじゃないかという問題意識があります。中間管理機構からさらに受ける人ですよね、あるいは中間管理機構に対する支援でもいいんですが、受け側に対して、こういう条件の悪いところを受けることに対する特別な支援、限定した上で、条件の悪いところを受ける人に対する支援というか、そういう支援というのを一つ加えるという道があるんじゃないかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

秋吉義孝君 農業経営、私みたいに、中山間地もある、平場もあるという中山間地の場合と、集落そのものが中山間地である場合というのは、また違うと思うんですよね。

 だから、僕が先ほども言いましたように、本当にもともと中山間地ばかりのところで農業をやるとか、地域の文化、社会を守っていくという人には、やはり所得補償しかないと思うんですよね。どういう形であれ、所得補償をして、その地域を守っていただく以外に、要は、後継者がなぜできないのかという根本的な問題は、答えは簡単なんですね。もうからないからなんですよ。生活できないからなんですよ。では、そういうことを解消してあげない限りは、絶対、中山間地はできないということです。

 我々みたいに、平場もあれば中山間地も耕作地として持っているという者に対しては、先ほど畑先生が言われるように、引き受け手に何かのインセンティブを与えるというのも、それは我々にとっては非常にいいことだと思います。あったらいいと思いますけれども、そこまで回せるのか回せないのかは私もわかりません。

 ただ、荒廃地がふえているというのは間違いないことであって、一刻も早くどうにかしていただきたいというのが私の意見です。

 終わります。

畑委員 長時間ありがとうございました。終わります。

坂本座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきました。心から感謝を申し上げたいと思います。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがある、非常に参考になった次第でございます。ここに厚く御礼を申し上げたいと思います。

 また、この会議のために格段の御協力をいただきました、地元佐賀を初めとする関係各位の皆様方に対しましては、心から感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。

 それでは、これにて散会いたします。

    午後零時四十四分散会

    ―――――――――――――

   派遣委員の新潟県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十六年四月九日(水)

二、場所

   ANAクラウンプラザホテル新潟

三、意見を聴取した問題

   農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案(内閣提出)、農業者戸別所得補償法案(第百八十三回国会、大串博志君外六名提出)、農地・水等共同活動の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出)、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(大串博志君外六名提出)及び環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(大串博志君外六名提出)について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 宮腰 光寛君

       北村 誠吾君   武部  新君

       寺島 義幸君   鷲尾英一郎君

       高橋 みほ君   村岡 敏英君

       石田 祝稔君   林  宙紀君

 (2) 意見陳述者

    有限会社フジタファーム代表取締役       藤田  毅君

    柏崎専農経営者会議会長 布施  学君

    上越市副市長      野口 和広君

    高柳町農業農村活性化協議会委員        鈴木 貴良君

 (3) その他の出席者

    農林水産省大臣官房審議官           豊田 育郎君

    農林水産省大臣官房参事官           橋本 政樹君

    農林水産省生産局農産部穀物課長        鈴木 良典君

     ――――◇―――――

    午前九時三十分開議

宮腰座長 これより会議を開きます。

 私は、衆議院農林水産委員会派遣委員団団長の宮腰光寛でございます。

 私がこの会議の座長を務めさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。

 この際、派遣委員団を代表して一言御挨拶を申し上げます。

 皆様御承知のとおり、当委員会では、農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律の一部を改正する法律案及び農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律案並びに農業者戸別所得補償法案、農地・水等共同活動の促進に関する法律案、中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案、環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案の審査を行っているところでございます。

 本日は、各案の審査に当たり、国民各界各層の皆様方から御意見を承るため、当新潟市におきましてこのような会議を催しているところでございます。

 御意見をお述べいただく皆様方におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いをいたします。

 それでは、まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。

 会議の議事は、全て衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、その都度座長の許可を得て発言していただきますようお願いいたします。

 なお、御意見をお述べいただく皆様方から委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、意見陳述者の皆様方からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。

 まず、派遣委員は、自由民主党の北村誠吾君、武部新君、民主党・無所属クラブの鷲尾英一郎君、寺島義幸君、日本維新の会の村岡敏英君、高橋みほ君、公明党の石田祝稔君、結いの党の林宙紀君、以上でございます。

 次に、本日御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。

 有限会社フジタファーム代表取締役藤田毅君、柏崎専農経営者会議会長布施学君、上越市副市長野口和広君、高柳町農業農村活性化協議会委員鈴木貴良君、以上四名の方々でございます。

 それでは、まず藤田毅君に御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。

藤田毅君 この場で発言をさせていただくことになりまして、本当にありがとうございます。よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、まず、私がどういうことをしてきたかということをお話しさせていただきます。

 昭和三十一年に生まれまして、昭和五十四年に帯広畜産大学を卒業しまして、一年間、北海道で牧場の実習をしました。昭和五十五年に家に帰りまして、ことしが三十四年目であります。手植えのころ、手刈りの稲刈りのころから今まで、機械化されるほとんど全てのことを経験してまいりました。

 そして、平成三年に有限会社フジタファーム、酪農の会社をつくりまして、平成十年に米の生産と販売の会社、米工房いわむろをつくりました。平成十五年に有限会社レガーロ、乳製品の製造販売の会社をつくっております。その代表として、僕は今ここにいさせていただいていると思っております。

 また、新潟県農業法人協会の会長をしております。おおよそ八十社の会員がおりまして、ほとんどが稲作経営というところであります。もう一つですけれども、公益社団法人日本農業法人協会の政策委員として、一言お話をさせていただきます。

 この新潟の僕の地区というのは、新潟の中心部から三十キロのところにありますけれども、その三十キロまでの間、標高差は六、七メートルという非常に真っ平らなところであります。米をつくるのに非常によい地域、日本でも有数の地域だと思っております。この地域でコスト削減と生産性向上を追求し、競争力のある経営体を生み出していくということが、この地域の大事な責務かと思っております。まさに、産業政策として位置づけられる地域なのではないかなと思っております。

 そうした中で、僕自身が、今回のこの件におきまして、本当に強い農家がつくられてきたのかということを問うたところ、実際そんなにつくってこられなかったのではないかなと思っております。その阻害要因というのは、現状で計算されたコストを前提に農家所得の維持をしようとしている部分が多かったのではないかなと思っております。

 この現状というのは、分散している農地、これが一番コスト削減に厳しい状況だったのかなと思いますし、そのほかにいろいろあります。過剰な機械化投資とか、肥料、農薬の非効率的な投下、技術の革新が進んでこなかったのではないか。こういった現状があったから、この現状のままコストを維持しようとしたときに、やはり強い農家というのが出てこなかったのかなと思います。

 この現状を打破していこうとしていく農業者、そういう農業者が僕は担い手なんだと思っております。

 法人協会でも、認定農業者としてその担い手を位置づけておりますけれども、認定要件については、現状では問題ありではないかという意見が出ております。年齢や面積要件よりも、独自の、みずからの経営計画書の作成ができる人ということが僕はとても大事なことではないかと思われます。

 ただ、作成に当たり、農政の方向性がどこまでしっかりしているのかということが問われると思われます。経営計画書も、五年の経営計画です。農政が本当に方向性をしっかりと持っていただくということが非常に大切なことかと思います。

 今回、農地の分散については、農地中間管理機構というものができ上がるんだということで、非常に期待をしております。ただ、地元では、まだぴんときていないという農家がとても多いのも確かであります。新潟県内では、幾つかがきっとこの一年目に手を挙げると思います。僕自身も、地域においてしっかりと説明をして、これを進めるために努力したいと思っております。

 あと、ほかの要因というのは、ほとんどが経営者がすぐ取り組める状況なんですね。ところが、こういう取り組みの中で、例えば直播とか、コストを特に下げることになるとは思うんですけれども、非常にリスクを伴います。このリスクをどうヘッジするか、セーフティーネットがどこにあるのか、こういったことを後押ししていただけるということがとても担い手にとって大切なことだと思っておりますので、そこを、どううまくいくのかをよろしくお願いしたいと思っております。

 このリスクヘッジの中には、僕自身の個人の意見ではありますけれども、先物市場というのが確立するというのも一つ大きな部分があるのかなと思っております。

 次に、日本型直接支払制度についてです。

 私の集落では、今まで手を挙げておりませんでした。理由は、非常に事務手続が大変なんじゃないかとか、そういうことが往々に言われたからなんですけれども、うちの集落が別に、事務がそんなにできない人がいるわけではないんですね。予算もあり、決算もあります。それも、複式でやっていますので、非常にしっかりとした集落なんですけれども、逆に、国からこういうお金をいただくということに関しては非常に慎重な人が多かったということがあったかと思います。

 ただ、ここに来て、ことし、手を挙げております。

 やはり農家が高齢化し、減っております。そうした中、農地の用排水の管理について非常に危惧している部分があるということから、手を挙げました。

 また、手を挙げたもう一つの要因が、農家組合でできる部分があるということなんですね。

 うちの地区は、非農家、農家から非農家になった人だけでなくて、町から来た非農家の方がおられます。そういう人たちとの温度差というのが幾つかありまして、全体を一度に、会として会合を持ちながら進めるのはなかなか難しいのかなと思っております。できれば、こういう農家組合でできる仕組みから発展した形で、全体の集落での方向というものを持っていけたらなと思っております。

 続きまして、私が配付しました「飼料米の展望」についてお話をさせていただきます。

 現在の酪農情勢は、これは円安のこともありまして、輸入飼料の高騰が第一の要因で、とても厳しい状況であります。生産量の前年割れというのは、特に北海道で、ことし初めて九六%ということで前年割れしております。また、府県での廃業も増加しております。新潟県も、ことし一年で約一割やめるという、廃業の増加率がすごく上がっているということです。

 この状態に歯どめをかける手段が本当にないのではないかと言われておりますが、僕自身は、いろいろなことから、国産飼料の増産、特に飼料米に期待をしているわけですけれども、そのほかに、食品残渣のリサイクルがとても有効である。幾つかの有効事例がありますけれども、そういうことがあります。新潟県においては、特に水田に適しているということから、飼料米の生産はとてもありがたいなと思っております。

 その中で、飼料米の普及にどうしていったらいいかということで、第一に、乾もみで地域内流通であります。乾もみは、貯蔵に非常にコストがかかりません。それと、とても安い餌なので、流通コストがかかる遠い地域に運ぶということ自体は非常にコスト増になりますので、これは地域内流通というのが適切なことかと思います。

 また、畜種ごとの利用技術啓蒙です。鶏なら直接できますけれども、豚、牛に関しては、幾つかの利用技術が必要であります。そういったことをしっかりやることで出口対策になるのかなと思っておりますし、これをやることで酪農もしっかりと経営ができるのではないかなと思っております。

 あと、育種ですけれども、やはり多収性のある品種で、そして直播に向くということがとても大事なんだと思っております。

 あと、飼料米の収穫においては、もみと稲わらのセットと書いてあります。例えば、新潟次郎は非常に多収性があると言われておりますけれども、そのほかに、稲わらの品質が、非常に牛に食べさせやすいと言われております。今年度、新潟県でも、この消化試験等も含めた実験に入ると思いますけれども、ここをやることで非常に効果は増大すると思われます。

 有限会社米工房いわむろでは、以前からWCSの生産を続けてきました。そんな中、作付後でも、産地間調整で主食用米への転換を二十五年も行いました。これは、山口県からの産地間調整で行いました。このように、主食用米への転換が可能な生産体系をとることができれば、非主食用米による立毛備蓄という道が開けるのではないかということです。

 現在の備蓄は、玄米備蓄のため、保存などに多額のコストがかかり、私個人は、本来必要であろう十分な在庫量を確保できていないと思います。立毛備蓄により玄米備蓄を減らすことは、大きなコスト削減となり得ます。

 例えば、非主食用米を百万トン以上作付すれば、最低限の玄米備蓄で済むわけです。日本における大きな災害や、海外への緊急支援にも有効であります。

 この場合、畜産農家との契約の確保に関して、非主食用米の場合、例えばこれは二十五円としておりますけれども、主食用米は百五十円、要するに、差益が出るわけです。その差益分で海外からの飼料用穀物で調達できる穀物を調達するというようなことができれば、備蓄として有効なのではないかということです。

 これはあくまでも概略的なものであり、詳細の検討が必要かと思われます。

 続きまして、今、酪農教育ファームのフジタファームは認証牧場になっているわけですけれども、この認証が続いて、ことしで十五年目になります。全国で三百牧場が今認証を受けております。

 どんどんそこで体験をする人がふえてきたわけですけれども、口蹄疫によって大分減りました。現在、また回復しつつありまして、約七十万人の人が体験をしております。酪農教育ファームというのは、通年できるということもありまして、体験者が常に同じ条件で体験できるという面で、農業理解にとても貢献していると思っております。

 しかし、最近の食育における国の事業というものがおおよそ三年ごとに変わっていっているということから、ずっと続いているものはないのではないかなと思っております。

 酪農教育ファームが十五年続いている理由というのが、これは中央酪農会議が事務局をしているわけですけれども、酪農家からの拠出金を使っております。この拠出金を使ってずっとこれを下支えしているということが続いている要因だと思いますし、もちろん、認証牧場の酪農家の熱意というものもしっかりあるものと思っております。

 こういったことからいいまして、できれば、本当に、食育というか、そういうことを大きな柱として、方向性を持って進めていく方向があってほしいなと思っております。

 最後になりますけれども、オーストラリアとの牛肉の交渉の件です。

 ここで僕自身が思っているのは、去年のディズニーランドから始まった食肉偽装の問題です。この問題にしっかりと厳格な対応をしていただくということがないと、和牛の生産者であったり、いろいろな食物の生産者にとって、こういう食品偽装があるということがあっては、今言ったオーストラリアから来る牛肉との競争をしっかりやろうと思う人にとってはとても問題なこととなるわけですから、できればその点を、市場に関しての監視を含めてやっていただければ、やる気ある農家のために非常に励みになるかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 以上で私の意見を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

宮腰座長 ありがとうございました。

 次に、布施学君にお願いいたします。

布施学君 布施です。本日は、よろしくお願いいたします。

 私は、柏崎専農経営者会議という、柏崎市にある任意農業団体の会長をしています。耕作面積は、柏崎市の全体の一二、三%ぐらいを我々の会員十九名でまかっております。そのほとんどが米が主体でありまして、ほかのものをつくっているという方はほとんどいらっしゃいません。ですので、きょうこの場で、特に、戸別補償制度についてはきちっとはっきり意見させていただきたいんです。

 今まで、民主党政権さんが定額一万五千円出してくれていたことが四年続いてきたわけですよね。それを見越して、我々稲作農家は、ずっとそれが今後も出ると思い込んで機械投資やら何やらをした人も我々の会員の中に結構いまして、それが、例えば来年以降半額になって三十年から廃止ということは、我々の経営に非常に大きい影響を及ぼすといいますか、今ですら、はっきり言えば赤字な状態が、さらに輪をかけてひどくなってしまう、そういう状況になっています。

 先般、新潟日報さんが、今、新潟で一万三千円のコシヒカリ一俵をつくるのに対して一万五千円の経費がかかると。そういう新聞報道を見て、原価割れをしているところに、その補填として戸別所得補償制度があったわけですが、それがなくなるというのは本当に影響大であります。

 特に、新潟県は、米に対するこだわりというか、品質及び食味もそうなんですが、非常にレベルが高いわけですよね。レベルが高いということは、イコールそれだけ生産資材費、コスト、ありとあらゆるものに他県よりお金がかかっているはずなんです。それゆえ、新潟米というブランドが築かれてきたんでしょうが、現状を見ますと、北海道、また九州の方で森のくまさん、そういう新しい米が出てくる中、我々はどうやって生き残っていけばいいのか。

 その前段、生き残る最低限の準備期間であるのが戸別所得補償であったわけでありまして、本当にわかりやすい制度です。誰でも一万五千円もらえた、難しいことがなかったというのが最大のわかりやすい利点ですよね。今、いろいろ農業補助金、農林水産省さんの補助金で四百七十ぐらい補助金があるらしいんですが、どれをとっても、普通の農家の人が急に申請したいからといっても、ちょっとわからない、取り組みづらい、そういうものが多かった中で、戸別所得補償だけは非常にわかりやすかったということですよね。

 それが、いきなりぱっとなくなると、本当に困りますというか、恐らく、新潟県内の稲作農家の方で、戸別所得補償制度が来年から七千五百円になりますとなって喜ぶ人は一人もいないはずなんです。新潟に限らず、恐らく、山形とか富山、北陸の、米がメーンの方は、どうやってその分を補填していこうかなというのは本当にみんな考えていることだと思いますので、この制度についてはぜひ継続をしていただきたいと思います。

 稲作農家というか農家以外の方から見ると、恐らくばらまきのように感じられるのかもしれませんが、我々生産者からすると、それでもまだ足りない。十アールに一万五千円という金額を人件費で割ると、時給千円で人を雇っても、八時間、二日間雇えないんですよね、一万六千円。時給千円にするような人はいないと思いますけれども。よそから見たら、ばらまきで一万五千円もくれるのかという印象かもしれませんけれども、生産者側から見たら、何度も繰り返して申しわけありませんが、本当に人を二日間雇えない金額でしかないということですよね。

 稲作は機械化が進んでいるので、それほど人を使って何かをするということはありませんが、それでもやはり人が要るときがあるんですね。そういうことを考えますと、やはり一万五千円でも足らないぐらいだと。

 昔から農家は、補助金よこせ、補助金よこせとしか言わないようなイメージが強いので、私も似たような感じに聞こえるかもしれませんが、今後も継続をしていただきたいというのは、もう我々会員十九名全員の意向といいますか、県内農家は、本当にくどいですが、恐らくそう思っているので、そのことについては引き続き継続していっていただきたいと思います。

 続いて、農地・水保全管理支払制度と環境保全型直接支払制度について、ちょっと私なりの意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 新しい制度になって、またそこで補助金がおりてくるんですが、そこでの最大の問題は何かというと、個人におりてこないんですよ。集落におりてくるというのは、国の政策からすればそれが普通なんでしょうが、今、我々の地域、柏崎地域で、新潟県はそういう地域がほかにもあるんでしょうが、何が問題になっていますかというと、集落営農組織等の既存の大規模個人農家への貸し剥がしの問題です。

 わかりやすく言うと、ここに藤田さん初め鈴木さんまで四人いらっしゃいますよね、この四人で百ヘクタールつくるとします。この半分、私までが、五十ヘクタールで個人でやっています。野口さんから鈴木さんまでは、集落営農で五十ヘクタール。半分半分でやっていると仮定する。そうなったときに、大抵の集落営農さんは、ここで入ってくるお金、農地・水保全管理支払いとか農地維持のお金を個人の方には回さないんですよ、大体集落が中心となって仕切っていきますので。

 そうなると、個人農家はますます不利になってしまうというか、貸し剥がしの問題からスタートして、今まで既存で頑張って、二十年、三十年、四十年と、親の世代から、将来の展望を描いて、今後ともその地域でやっていこうというつもりで過去四十年間頑張ってきた我々の親世代がやってきたことが、あっという間に集落営農によって覆されて、貸し剥がしに遭ったりとか、本当に、そういう問題を考えると、なるべく個人にお金が入るようにしていただきたいんですね。

 例えば、さっきの話の続きですけれども、集落営農さんの方は、お金をかけて水路の補修等、ありとあらゆることをしますよね。でも、個人の方には極力そういうことは回さない可能性も出てきますので、そのことについて、やはり大規模個人生産者の方へも直接おりるようにしていただきたいと思います。

 この制度も、農地維持支払いとか、事務手続が面倒なのと、トリプルでもらうには口座を三つ別にしないといけないわけですよね。それもまた手間ですし、そうなってくると、個人で本当に対応し切れない。し切れないから集落とか組織におろすんでしょうけれども、そうなってくると、ますます個人農家は不利になりますので、このことについても、もう少し御配慮をいただけたらなと思います。

 次に、飼料米の作付についてです。

 柏崎地域で新潟次郎という多収性品種をつくる予定なんですが、我々の会の中でも、率先して取り組もうという人がそうそういないんです。その理由は、コンバインの消耗がすごく激しいんですね、多収性品種というのは。十何俵とらないといけないとか、そうなってくると、機械の耐用年数が下がりますので、例えば、七年使えるコンバインが、それをメーンにつくっていくことによって五年しかもたないとか、そういう問題があるわけですね。ですので、つくろうという人が余り出てこないんです。

 一般農家さんは、七百二十キロとって十万五千円もらうことが目的で、その十万五千円にだけ目がくらむという言い方はちょっと失礼ですけれども、その十万五千円が先にありきで物をつくっていこうという発想でしかありませんので、単純にそっちへ行くんでしょうけれども、我々では、やはり機械の耐用年数から整備代、そういうことまで考えると、なかなか取り組みづらいですね。

 それと、飼料用米というのは、我々がつくって果たして売れるのかというか、需要が見込めるのかということと、結局、米が余って政府の備蓄米になったりする、それが飼料用米に転化しているだけで、変わらない状況になるんじゃないのかというのを、会員から、きょうこの場で訴えてくれというふうに言われましたので、その話もさせていただきます。

 結局、飼料用米だけを大量につくるようになると、だぶついてくることになるので、その辺の読み込みがわからないうちはつくれません。

 あともう一点、これは私が心配することじゃないのかもしれませんけれども、十万五千円もらうために、七百二十キロですよね、十アールでその数量をとるということが前提になっていますけれども、昔の秀吉時代の太閤検地みたいに直接その現場へ来ているわけではないので、十アールでしかつくっていないことにして、実は闇で、よそでつくって収量を稼いで十万五千円もらうことも、しようと思えばできるわけですよね。やっちゃいけないことなんですが、そういう心配事もありますので、安易に数字にだけ飛びつかないような農業政策にしていただきたいと思います。

 それと、我々は米専門でやっていまして、園芸をしろ、畑をしろ、ありとあらゆる方向に方向性を変えて何かをやっていこうと思っても、この地域独特の、新潟平野というんですか、田んぼにしか向かないような土地で、大豆、ソバを転作でという話をしますけれども、うまくいかないんですね。補助金があるので、大豆、ソバとなりますけれども、もし仮に補助金が出なかったら、誰も大豆やソバをつくりませんよね。ですので、まず補助金ありきの農業政策よりも、やはり品質がきちっと伴うような感じにしていただきたいです。

 それと、生産調整の廃止についてですが、今、現場というか全国で、二十四年産と二十五年産で大体七十万トンぐらい実際は余っているわけですよね。

 七十万トンということは、反当たり八俵と計算して、面積換算すると十四万五千ヘクタールぐらいですか。今、資料を見ていると、全国で水稲が百五十四万ヘクタール作付されている中で、一〇%と仮定して、生産調整を廃止する前に七十万トンの余剰を、生産調整できちっと需給バランスがとれるような状態にしてから廃止をしていただきたいと思います。

 それがないと、今、この状態で、七十万トンぐらい余っている中で五年後に生産調整を廃止しますとなったら、最初の一、二年で爆発的に余剰が出て、米の価格が一気に半額は大げさでも、新潟米で一俵八千円ぐらいになるわけですよね。

 そうならないように、五年後に廃止しますよではなくて、きちっと余剰分を、今のうちから五年かけて段階的に、プラマイ・ゼロにしていってから生産調整を廃止していただきたいと思います。

 そうしないと、市場の原理からすれば、本当に値段が下がって、コシヒカリ一つとっても、今、個人で売れ、個人で売れといいますけれども、楽天でコシヒカリと検索したら、二万六千件ぐらい出るわけですよね。そんな中で個人で売れといっても無理ですし、なるたけ生産調整で、米の品質が高い地域、米の食味がいい地域だけを上手に配分して、きちっと生産調整して、プラマイ・ゼロにしてから廃止にしていただきたいと思います。

 あと一分そこそこしかないので、これも私個人のお願いなんですが、戸別所得補償の話で、一万五千円いただいていたその分がなくなる、では、どうすればいいんだとなったときに、私の会の全員の総意なんですが、小作料の撤廃をお願いしたいと思います。

 今、農地法が変わって、農業委員会さんが幾らですよとは決まっていないんですよね。あくまで見本なんですけれども、それでも一万五千円ぐらいなわけですよ。それを、小作料を減らすというよりも、ゼロにしていただきたい。

 荘園制度が発足してから、農家は小作料を払うものだ、年貢を払うものだという意識がありますが、今これだけ米に余剰が出ているときに、要らないものをつくっている中で、もうからぬとわかっていることをしているのに小作料だけは払わなきゃいけないという概念があるわけですよね。

 ただ、田んぼというのは個人の持ち物で、私有財産なわけですから、もう今はその私有財産を管理しているような状態なわけです。お金を払ってまで要らぬものをつくっているという意識が地主さんに余りないものですから、仮に、田んぼはもうからぬから全部やめますよ、では、地主さんが全部保全管理するのかといったら、そうはならないわけです。

 農地の維持という観点から我々がつくるかわりに、戸別所得補償分の一万五千円は小作料を撤廃すればプラマイ・ゼロで、国はお金を払わなくて済むわけですから、急には無理でしょうけれども、できれば小作料を撤廃して、なおかつ、農振除外地域なんかですと、管理料か何かを逆に我々がいただきたいというレベルの経営状況になっていますので、そのことについてもよろしくお願いしたいと思います。

 ちょっと時間が過ぎて、大変申しわけありませんでしたが、以上、御検討をよろしくお願いいたします。(拍手)

宮腰座長 ありがとうございました。

 次に、野口和広君にお願いいたします。

野口和広君 おはようございます。私は、副市長の野口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、意見陳述という貴重な場での発言の機会をいただきましたことに、心から感謝を申し上げます。

 私は、市では、農林水産部門を十五年間、そして、相反する都市計画部門を二十二年間担当しておりました。

 また、家では、水田二・八ヘクタール、畑十アールを所有しておりまして、平成十九年には集落で農事組合法人を立ち上げまして、十人の構成員の一構成員として農作業の手伝いをしているところであります。

 それでは、当市の農業施策の取り組み状況について、お手元の資料に沿って説明をさせていただきます。

 当市では、農業施策を強固にするために、平成十二年三月に食料・農業・農村基本条例を策定いたしました。あわせて、同基本計画では、目標を明確にして農業施策に取り組んでまいりました。

 その中で、特に重点的に取り組んだものが六点ございます。

 一点目は、担い手の育成、確保。二点目が、担い手への農地の利用集積であります。三点目が、集落営農の組織化と法人化への移行。四点目が、売れる米づくり。五点目が、効率化のための基盤整備事業の促進。六点目が、中山間地域農業の振興でございます。

 特に、担い手の育成と集落営農の法人化、そして中山間地域対策として、集落間連携、地域マネジメント組織の設置について、最重要項目として取り組んでまいりました。その結果、担い手への農地利用集積が約六割となったものでございます。

 それでは、お手元に配付してあります「上越市の農業の現状」、この資料をもとに説明をさせていただきます。

 一枚めくっていただきますと、そこに当市の位置が表示されております。人口が二十万一千人、市域の面積が九百七十四平方キロメートル、そのうち約七割が中山間地域でございます。

 次に、三ページをお開きください。三ページは、米の需給調整の取り組み状況でございます。

 一の一では、水田経営面積が約一万五千ヘクタール、そのうち作付面積が約一万一千ヘクタールであります。一の二では、水稲作付面積の五八%は経営面積が五ヘクタール以上の経営体が占めておりまして、大規模化が進んでおります。大規模化の要因としては、やはり基盤整備によるところが大きいものというふうに考えております。

 次に、四ページをお開きください。

 四ページの二の一では、米の直接支払交付金の交付状況でございますが、面積のカバー率が九七%で、県内でもトップクラスだと思っております。二の二では、交付対象作物の表でございます。転作でございますけれども、大豆が七百七十九ヘクタールと減りまして、その分、全体的に備蓄米の作付にシフトしております。大豆の作付が、多いときには千三百ヘクタールありましたが、大幅に減ってしまったものでございます。

 国民の食料確保のためには備蓄米は必要だと思っておりますし、今後は、国内全体で、適地適作に向けてどうあるべきかをぜひ検討する必要があるのかなというふうに考えております。

 次に、六ページをお開きください。A3の折り込みでございますけれども、担い手育成の状況の推移でございます。

 経営体の安定化を図るため、担い手の育成でありますが、特に集落営農の法人化を進めてまいりました。二十五年度では、認定農業者が九百八十四人、うち法人が百四十四、そのうち集落営農の法人が百十五であります。認定農業者への農地集積率は約六割でありまして、ことしの三月三十一日現在では、認定農業者が千四とふえている状況でございます。

 次に、七ページをお開きください。七ページは、新規就農者数の推移です。

 平成二十一年度からは農の雇用事業が入りまして、特に農事組合法人への就業が進んでおりまして、定着率は七割でございます。

 次に、八ページをお開きください。八ページは、広域連携協定の取り組みでございます。

 中山間地域の直接支払いの一期対策から二期対策への移行時に、高齢化が進む集落では、事務手続や計画書づくりが困難なことや、今後の五年間の取り組みができないなどとして、参加集落が減ってしまいました。

 このことから、将来に向けての農業生産活動を継続するため、集落間連携の推進計画を作成いたしました。この計画書をもとに農業者や関係団体に説明させていただきまして、理解をいただいた地域から、複数集落で地域マネジメント組織をつくって、その組織全体で中山間地域の直接支払いを取り組むこととしたものであります。

 次は、十ページをお開きください。十ページの下段のところに組織のイメージ図がございます。

 この組織では、中山間地域の直接支払いの事務手続を初め、地域の土地利用計画の調整、共同取り組み活動の支援、そして農業機械の有効利用などを行って、これら全体を市がバックアップすることとしております。

 裏面の十一ページには、設立した組織の一覧が記されておりまして、関係集落百六十二集落が参加している状況でございます。

 次に、飛びまして、十五ページをお聞きください。

 十五ページの(一)では、中山間地域の直接支払いの一期から二期目への取り組み集落が減少している状況でございます。下の(二)は、二期対策から三期対策への移行では、マネジメント組織の活動により、取り組み集落がふえております。

 十六ページの(三)では、三期対策での二十四年度と二十五年度の比較でも協定面積が増加に転じるなど、集落間連携が大いに機能していることが見られます。

 中山間地域の直接支払制度は、平場と中山間地域の格差是正のための制度でありますことから、条件不利地である中山間地域には極めて重要な制度でございます。今までの経過、そして支援制度を検証し、より好ましい制度としていただきたいと考えているところでございます。

 当市では、国、県の制度資金を最大限活用しながら、強い経営体や農家を育てるために、農業者の方々や農協などと一緒になって考え、応援するのが私ども市町村の役目かなというふうに感じております。

 次に、十七ページをお開きください。十七ページは、平成二十五年度の農地・水保全管理支払交付金の取り組み状況となっております。

 当市では、共同活動支援は農振農用地の五三・一%、向上活動支援は二七・九%の取り組み状況であります。

 また、二十六年度から多面的機能支払交付金へと制度が変わるため、農業者に制度設計を周知した結果、農地維持支払いにおいては農振農用地の七四・七%もの要望が上がっており、当交付金への関心の高さがうかがえる結果となっております。

 二十ページをお開きください。二十ページは、基盤整備の状況でございます。

 大規模経営体や集落営農の法人化に向けては、この基盤整備がきっかけとなって進むのが実態でございます。作業効率や収益性を求めるならば、基盤整備事業を進め、特に、中山間地域では、農地環境整備事業で、地元の負担が少ない手法で積極的に取り組むことが必要と考えております。

 基盤整備を機に法人設立のインセンティブも働き、一方、圃場条件が悪く、保全管理されていた農地に当市の戦略作物でもあります大豆等を作付することも可能となっておりまして、自給率の向上にも貢献できるかなと思っているところであります。

 以上、当市の取り組み状況を説明させていただきました。

 このたびの農政改革に関しまして、ことしの二月十五日に、当市主催で、農林水産省の担当者からおいでいただき、農業者や関係団体、約千五十人の方々から参加していただきました。そして、説明会を開催いたしましたが、多くの農業者からは高い関心を持ってお聞きいただけたところでございます。

 このたびの法律改正については、その時々の財政状況に左右されることのない、安定的な制度とするための法制化が必要であると思っております。担い手が、今後十年先、二十年先の経営見通しが立ちやすい方向に持っていっていただくようお願いするものでございます。

 特に、担い手の育成は極めて重要な部分でありまして、後継者としての新規就農者の受け入れ体制から見て、集落営農の法人化は理想と思っております。

 また、攻めの農政でチャレンジする人が報われる制度が必要と考えております。産地交付金にしても、需要が伸びる分野への支援拡充や、農家にとって農業経営の改善に必要な農業機械などの整備資金を従来どおり継続していただきたいと思っております。

 以上で、私からの意見陳述を終わります。大変ありがとうございました。(拍手)

宮腰座長 ありがとうございました。

 次に、鈴木貴良君にお願いいたします。

鈴木貴良君 皆さん、こんにちは。私は、柏崎市高柳町門出というところから参りました鈴木貴良と申します。

 このようなところでお話をさせていただくのは非常に光栄なことでありますけれども、何分、ふだんは野山を駆け回って仕事をしておりますので、大変ふなれでございます。どうか、不行き届きの点、お聞き取りづらい点があろうかと思いますけれども、きょうは、それこそ中山間地の仲間の思いや地域の仲間の思いをお話しさせていただけるいいチャンスということで、一生懸命頑張ってお話をさせていただきますので、よろしくお願いをいたします。

 先ほど申し上げました柏崎市高柳町というところは、旧刈羽郡高柳町であります。標高が、低いところが百メーターぐらいから、高いところは五百メーターという、準山間地といいますか、中山間地よりも山間地の方に近い部分かと思います。

 私は、その旧高柳町で、高校を卒業するまで地元で暮らしましたけれども、高校卒業後、東京に憧れまして、関東の方に就職し、旅立っていきました。東京暮らしといいますか、都会暮らしを楽しんでいたわけなんですけれども、二年ぐらいしたら、うちのおやじから連絡がありまして、実は、地域でライスセンターをつくる計画があるんだということで、おまえが帰ってくればやるし、おまえが帰ってこないと俺も商売にならねえんだがなと。

 実は、うちは非農家であります。商売を請け負うだけの仕事でありまして、農家ではありませんでした。まあ、公共事業だから、多分もうかるんだろうと、私は、そのころ全然わからずに、のこのこと帰ってまいりました。楽しい東京暮らしも捨てがたかったわけですけれども、公の仕事をするという魅力にも引かれて実は帰ってきたわけであります。

 当時、うちの集落は百八十軒ほどあったかと思います。現在はちょうど百軒になりました。田んぼの面積も三十五町歩ぐらいあったのが、今は十町歩ほど減りまして、二十五町歩ぐらいになりました。平均耕作面積は、当時から五反ぐらいですね。今、一町歩ちょっとになりました。

 ライスセンターでありますので、地域の農家さんがいないと困るわけであります。徐々に減りまして、当然、過疎化が進んで減っていくわけでありますが、これは、就農したきっかけというのも、人がやめるので、うちの商売がなくなっちゃうとまずいので就農した、機械を自分で買ったりとかして田んぼをふやしていったということであります。

 一時、多いときでは五町何反ぐらいまでふやしましたけれども、数年前におやじを亡くしまして、ちょっと面積拡大は大変だなということで少し減らしたり、それから、一番最初は、今まさに国の政策の方で出ましたけれども、薬草栽培というのが出ましたね。あれは、二十八年ぐらい前に、実は、アマチャヅルの栽培というのを私は始めまして、田んぼをいきなり貸してもらえないものですから、遊休農地といいますか、畑が大分荒れていましたので、それらを借りて薬草栽培に取り組んだんです。

 きょう、上越市の副市長さんがおられますけれども、大潟にウチダ和漢薬さんという和漢薬のメーカーがございまして、そこと契約をさせてもらって、婦人病の基礎薬になる当帰芍薬散というトウキですとか、いろいろな、新潟でもつくれるような薬草の栽培を実はやってまいりました。

 それから、うちの集落には、イチョウ団地といいますか、イチョウの木をたくさん、百五十本ぐらい植えた、集落で取り組んだんですけれども、そういう団地があるんですね。クリ団地というのもありまして、一生懸命やったんだけれども、実は、やられたのは、中国なんですね。輸入品に全部やられました。薬草栽培もそうです、さっき言った果樹や何かもそうだけれども、一年や二年でできないんですね。このできないのを一生懸命つくったあげくに、最後、その技術をぽっと持っていかれて、中国からだあんと入って、みんなやられてしまったという経緯があります。

 うちの門出という集落は、大昔でいいますと、ウサギの養殖をやりました。それから、綿羊の養殖をやりました。豪雪地帯でありますけれども、そんな中で、乳牛の生産といいますか、牛乳の生産もやった地域であります。

 すごく不利な地域だけれども、実は、細かいそういうものを組み合わせて何とか生きていこうとしてきた地域なんです。それらが全部、外の環境といいますか要因によってどんどんだめになってしまう。それをいろいろ繰り返してきているわけですけれども、今唯一残っているのは和紙の生産であります。一軒しかありませんけれども、皆様方、多分飲んだことがあるかと思いますが、久保田という新潟のお酒のラベルになっておりますけれども、あのラベルの生産を我が門出集落で行っております。ここでは、コウゾという和紙の原材料も生産をしているというところであります。

 しかしながら、先ほど申し上げたいろいろなものはありますけれども、非常に細い線でありまして、それが圧倒的な強さの経済につながっていくことは今まで実は余りなかったんですけれども、私たち中山間地で続けてこられたのも、それこそ農政に取り組まれた先生方の今までのお仕事の結果だと思っています。中山間地直接支払いも今期で、三期はもうすぐ、もう一年で終わりますが、これが続いてきたおかげで、今、中山間地が維持できているというふうに思っています。

 私が就農したときには、あと五年で門出じゅうの集落の田んぼはみんなおまえのものになるよと言われたんですけれども、実はなりませんでした。おかげさまで全然ならなかったんですけれども、その言葉を聞いたときに、うわあ、恐ろしい話だなというふうに当時は思いました。この山、坂を越えなきゃならぬ田んぼが全部自分のものになったら、どんだけ大変なことになるんだろうと思いましたけれども、先ほど申し上げたように、最近では、それこそ戸別所得補償制度ですとか、いわゆる中山間地直接支払制度、そういった制度のおかげで今が維持できているというふうに私は思っております。

 中山間地直接支払制度も、時間をかけながら、いろいろ現状に合わせていただいたというふうに私は思っています。

 一期目から二期目にかわるとき、それから二期目から三期目にかわるときもそうでしたけれども、例えば、隣接農地であれば、勾配は関係なく、寄せてもいいよ。当然、農道はみんなつながっていますので、この田んぼとこの田んぼ、平らのところと勾配のあるところを分けているわけじゃないですね。その平らのところを通って急勾配のところに行くわけでありますので、現場を見ていただいたおかげで、非常にいい制度に成熟をしつつあるなというふうに感じております。

 ただ、長く続くということであっても、とにかく、現状を見ながら、少しずつ少しずつ変えていくことで現場に反映されることだと思いますので、今後ともそういった御配慮をいただきながら、これを法律化していただきましたので、本当に心強く思っていますし、また、そういったことに御配慮いただくことをお願い申し上げたいというふうに思っております。

 先ほど言いました戸別所得補償についてですけれども、先ほど布施さんの方からもお話がありましたけれども、農家としてはすごく当てにしているといいますか、私もそれこそ戸別所得補償のお金を当てにして機械を買っていますので、これを半減されると、またどこからか用意をしなきゃならぬ、借金がふえるというような結果になろうかと思います。

 そういった声は、私の町内でも中山間地でも同じように聞こえてきます。この中山間地の農業を支える根幹、根っこの部分だというふうに思っていますので、廃止をするというお話になっていますけれども、どうか今後とも、個に対する支援というのは、必ずここを続けていただかないとまずいんじゃないかなという気がいたします。

 先ほど、平場の方でも人間がいないという話がございましたけれども、私たちの地域、中山間地に来ればなおさらであります。今、制度を、人・農地プランの中でも新規就農者の皆さんを支える制度とかたくさんありますが、残念ながら、その制度に合わないんですね。

 例えば、先ほど言った、私が二町歩や三町歩の田んぼをやって、三年後に所得は百八十五万を確保しなさいという制度が、百八十五万の所得というと真っ赤な所得ですので、売り上げじゃないので、その制度に、今、多分、私たち近所全部合わせても、誰もそんな所得ねえよなという話なんですね。それこそ、直払いにしろ、人・農地にしろ、環境型にしろ、全て、先ほど言ったように、事務というのが膨大に出てまいります。それらをこれからの若い人たちからやってもらえるように人材を呼び込みたいんだけれども、なかなかそういう手だてが得られない、個に対する支援の形がないということが、集落地域にとって一番切実な問題であるというふうに考えています。

 それこそ、私が三十年間、ここで、門出というところで暮らしてきていて、若い人たちが来たいというニーズはたくさんありました。でも、それらの仕事やサラリーをつくってあげることが私たちはできませんで、今、自分が指導農業士をさせていただいているんですけれども、その間に、三人、就農を御支援させてもらいましたが、彼らの人生にとって俺は悪いことをしたんじゃないかなという気持ちがまだどこかにあります。この将来の見えなさというか、不安を払うことは全然できませんので、その部分を非常につらい思いで今見守っているところであります。

 いろいろ考えてきたんですけれども、言いたいことをなかなか言えないものですね。済みません。

 とにかく、私たちは直接支払いが頼みだということをまた御理解いただきたいと思いますし、今後、人数が減ってきますと、直払いを受ける側の金額が上がってきます。一人百万円を超えないようにという制限がありますが、百万円を超えてしまうような可能性は今後たくさん出てくると思うんですね、集落営農やあるいは法人化していく中で。それを今度外してもらわないと、思い切ったことができなくなっていく。それらが本当に支える仕組みの根本になるので、その部分を少し考えていただけないかなということは、地域の中でたくさん話が出た部分でありました。

 それから、先ほど言った人・農地プランの中で担い手を支える部分とありましたけれども、若干、資料だけちょこっと用意させていただいたので、ごらんをいただきたいと思います。

 二枚つづりのものがありますけれども、一枚目、上の方は、新潟県の農業大学校の志願者数というのがございます。それから、二枚目の方は、新聞の切り抜き記事となっています。

 一枚目の方は、実は、ここ数年来、しゃばの景気が悪くて、農業大学校にわっと志願者がふえたんですね。それで、平成二十一年からしばらく高い数字をとっていまして、全寮制でありますので、近い子はうちから通えというようなことで、定員をオーバーしていたということでありました。ところが、御承知のとおり、アベノミクスの効果でしょうか、急に下がったんです。ことしは定員割れをしました。景気がよくなると、あっという前に、地方からでもごっそり若者を大手企業さんにとられてしまうということが起きたんですね。

 これはいろいろな要因があると思いますけれども、単純にそう見てしまえばそうかもしれませんし、またほかの要因もあるかもしれないんですけれども、世の中では、これから起きることは、そういうことなんじゃないかな。子供の数もどんどん減ってまいりますので、農業を志そうという人たちの数、それから質が、少しずつまた落ちてしまうんじゃないかなという危惧はされるわけであります。

 何かいろいろな、先ほど、中国にいいところを持っていかれたりとか、世の中の経済にいいところをみんな持っていかれるような、そういう農業では将来続けていくのは難しいんじゃないかな。そこの部分、また皆さん、先生方からお考えをいただければありがたいなというふうに思っております。

 もう一枚の方は、また上越市さんの記事をおかりして申しわけないんですけれども、私たちの農業というのは、農業じゃないんですね、百姓なんです。さらに、農業をやるということは、農村維持をやるのとイコールなんですね。隣のばあちゃんがきょうは体調が悪いといったら、心配してやったりとか、雪掘りができなきゃ、雪掘りを手伝いに行ったりとかというのがやはり農村維持の大事な部分だと思います。誰かが、農業は一人で始められるが、一人では続けていくことはできないというふうに言われました。この関係性は、山間地に来れば来るほど、なおさら強くなります。

 先ほど言った、私たちの地域で百八十五万円の所得を上げられないという要因の一つには、地域の仕事、集落維持の仕事が膨大にあるということがやはり要因の一つにあります。環境が、条件整備が整っていないのと同時に、そういった仕事も担わなきゃならぬ。先ほどの百八十五万じゃなくて、八十万でもいいよ、あとは、残りの部分は集落維持を一生懸命頑張ってくれればいいよというような免責をつけていただけるとありがたいのだがなと私は思っています。そういうのがないと、その制度をうまく利用できるチャンスも逃してしまうんじゃないかなという気がいたします。

 今の新聞の方ですけれども、住民組織というのが各地に、私たちも平成の合併で合併をしましたので、そういったことが、大きなところであれば、地域の農家と非農家が連携をするということはできますけれども、純然たる高齢化社会と純農村でありますので、全部ここに負担が、私たちの方へ来ている。こういった組織をつくっても、それを維持するための資金もなければ、人材もつながっていかないということがあります。

 とにかく農村は、中山間地の農業に対しては、人を育てること、若い人をとにかく育てていただくこと、あるいは、周りの環境の整備をしていただいて、私たちが直払いで担えない部分は、国の環境保全あるいは国土保全という観点の中で御整備をしていただく、それしかないんじゃないかなと思います。その環境が整えば、多分若い人たちも入ってくる、暮らせる社会ができるんじゃないかな、そんなふうに思っております。

 いろいろなことを申し上げたかったんですけれども、時間がちょうど来たようであります。

 以上で意見を終わらせていただきたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)

宮腰座長 ありがとうございました。

 以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

宮腰座長 これより委員からの質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新でございます。

 四人の参考人の皆様、生産現場の大変苦労のある生の声もお聞かせいただきましたし、自治体のお取り組みもお話をいただきまして、大変参考にさせていただきました。ありがとうございました。

 私は、北海道選出でございまして、地域は畑作と酪農が中心でありますので、余り水田はないんですけれども、実は、私の祖父は新潟県の長岡市出身でありますので、新潟にルーツがあるわけでございます。きょう、こうやって皆様方のお話を伺って、またいろいろと御質問させていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 まず、藤田さんにお伺いさせていただきます。

 地域農業の発展を考えたときに、先ほど藤田さんからもお話がございましたけれども、産業として藤田さんの地域は大変優位性があるというお話がありました。農業を強い産業にしていく上で、構造改革をしっかりと推進していかなきゃいけないというふうに思うんですけれども、経営安定対策の対象者につきましては、やはり意欲と能力のある担い手に重点化することが大事じゃないかなというふうに私どもは考えます。この点について、藤田さんの御見解をお伺いしたい。

 また、もう一つ、先ほど、担い手というのは、現状のコストを打破して取り組んでいくのが担い手だと、大変意欲的といいますか、強い意志のあるお言葉があったんですけれども、コストが高くて大変御苦労もあるんだというふうに思います。現状のコストを打破していくためには、先ほども、農地バンクにも期待されているというお話がありましたけれども、どういった取り組みが必要か、どういったことに御苦労されているかということもあわせてお聞かせ願えればというふうに思います。

藤田毅君 先ほどから産業政策的な話で私も強く述べましたけれども、地域政策と両輪だと思っておりまして、今言った中山間地と全く別の観点で私は申し上げたつもりであります。産業的に考えれば、やはりやる気のある、集約するということがなければ進まないと僕は思っております。

 二年前にサクラメントに行ってまいりまして、サクラメントの稲作を見たときに、私は、新潟はそこに近づけると思っております。この先に輸出を考えるのであれば、品質向上よりも、やはりコストを下げた安い米づくりというのが日本でもなければいけないと思っております。

 品質の高い、よい米をつくる部分と、普通のお米で、コストを低く抑えるお米をつくるという両方がなければ、僕自身は、ここでのお米の生産をしっかりやっていく量を確保できないのではないかなと思っております。

 そういう面で、チャレンジできる人間というのが産業政策においては必要なんだろうと思っておりまして、それが、今言う担い手であり、認定農業者というくくりでいければいいのかなと僕は思っております。

 あと、コスト削減に関しては、今までずっと田植えというのをやってきたわけですけれども、これはやはり米の価格が安定していたせいだと思います。米がもしも一万円という価格になった場合に、直播をしなければ、確実にもたない。あと、農地の集積が必要です。

 今、うちの地区では、一ヘクタールの田んぼと十アールの田んぼ、両方あります。これを同じに代かきしますと、一ヘクタールは半分で済みますね。ということは、経営も半分、労賃も半分、全て五〇%引けるんですね。ほかの農作業に関しては全部半分にならないんですけれども、ただ、全体では相当下げていくことができるわけです。

 また、うちの方では、農地と市街化調整区域も含めて、普通の道路が多いわけですね。それが混在しているんです。その混在しているところで、例えば、トラクターを道路に、舗装のところに上げた場合に、農道に土が出たのを、後ろからその土をとって回っているんですね。これは、世界で日本しかないんじゃないかと思います。それをまた、役場の方に言う人がいるわけですね、土を出していると。もうとてもこんな状況ではだめなんですね。

 やはり農地の集中をすれば、その農道に、道路に上がる必要がなくなってくるわけですし、道交法の関係でも、非常に問題が出てくることを、これからそれも回避できるという面では農地の集積がとても大事な部分でありまして、これ抜きにはコスト削減はできないと思います。

 技術革新という意味で、直播、特に、これから温暖化がもしも本当に進んでいくのであれば、なおさら直播というのは進むんでしょうと思います。北海道のような寒冷地においては、やはり育苗というのが必要だったわけですけれども、順次、直播での増収というのは非常に高くなっていくんだと思っております。

 以上です。

武部委員 ありがとうございます。

 藤田さんのお話のとおり、産業政策と、私どもは地域政策、多面的機能と中山間の支払いも含めて、地域政策というのももちろん重要だというふうに思っております。

 続いては、野口副市長にお聞きしたいんです。

 私のイメージは、新潟というのは大変平地が多くて、全国一の米どころですから大変優位なところだというふうに、全体がそう思っていたんですけれども、今、上越市は中山間の面積が七割というお話がございまして、ちょっと驚いたところでもあるんです。農業を行う上では決して恵まれてはいない中で、大規模化も進めていらっしゃいますし、それから、基盤整備の整備率も非常に高いという資料を拝見させていただきました。

 それで、お話の中にも、担い手育成が大変重要であるというお話がございましたけれども、今の取り組みの中で、平成十七年から二十二年の間で、認定農業者も八百から千経営体にふえている、法人も三倍ぐらいふえているというような数字でございますが、認定農業者や法人組織を育成するというその意図と、どうやってここまで短期間に数をふやすような育成をされたのか、手法についてもアドバイスをいただければというふうに思います。

野口和広君 それでは、お答えいたします。

 担い手の育成、認定農業者の育成でございますけれども、この起点というのは、平成十三年にWTOのドーハ・ラウンド、それが起点でございます。

 平成十七年の第六回閣僚会議では、十八年には合意するのではなかろうかという話がちらっと出ました。そうした中で、私ども、この上越の農業をどう守っていくのか、そういったことを考えると、やはり担い手の育成、そして、国からいろいろな制度がございましたので、もらえるような人たちをふやしたいということでございます。

 そういった中で、私ども上越市の農業も、水田農業の構造改革が若干おくれた部分がございます。それを加速的に改革する必要があって、やはり担い手の確保、育成と集落営農の法人化です。

 この集落営農の法人化というのは、やはり一人ではできないけれども、数人が集まれば農業経営できますよということでございます。そして、集落営農の場合は、一人の定時定給者、要は、決まった時間でお勤めして、決まったお金をいただく、そういった人を一人支えながら、あと残りの人は作業人夫に出るという形で、そういった法人化をどんどん進めてきたところでございます。

 いずれにしても、十九年から実施された品目横断的経営安定対策を活用しまして、米価下落や産地間競争に対応できる強い農業経営体を育成しようということがきっかけでございました。

 それと、私どもは、認定農業者をふやすためには、やはり各集落に出向いて、農業政策に関する説明を行いました。そして、担い手の育成に対する意見交換をさせていただきまして、特に、法人化については、集落という形態に即しているということでございまして、とりあえず集落営農を組織してください、それから、やはり明朗会計でいくべきでありますので、法人化をして、貸借対照表をつくりながら経営していただくというようなことを行ったわけでございます。

 いずれにしても、私どもは、市のプロジェクトの中で、担い手育成総合支援協議会という組織を立ち上げまして、これは、市の農林水産部、そして農業委員会、農協、農済、そして土地改良区などが集まって、窓口を一本化して、農家の方々の一応相談に乗るということでございます。

 法人ができ上がりましたら、当然、経営のシミュレーションもやりながら、ここはこういうふうにした方がいいとか、そういった形で指導して、現在に至っているところでございます。

武部委員 ありがとうございます。

 上越市は生産者の方に非常に丁寧にやられているんだなということがよくわかりました。

 次に、飼料米についてもちょっと皆様から御言及がありましたので、藤田さんと野口副市長にお伺いしたいと思うんです。

 まず、藤田さんにつきましては、先ほど、飼料用米を利用して立毛備蓄という提案もいただきましたけれども、まさに我々も水田をフル活用しようというようなことを考えておりまして、そういった御提案も含めて、この水田フル活用にも資する御提案じゃないのかなというふうに思います。

 また、もう一つ、飼料用米につきましては、我々が、今回の農政改革の中で数量払いを導入しまして、収量が上がればその分助成額がふえていく、頑張ればちゃんとお支払いしますよというような仕組みを整えたんですけれども、その点について。

 もう一つは、やはり耕畜連携でやられていますので、恐らくは、飼料用米として出すだけじゃなくて、いろいろな使い方を、酪農でも使われていると思いますので、その飼料米についてのお考えをもう少し詳しく聞きたいということ。

 野口副市長には、上越市の飼料用米の作付面積も、これも非常に大きく伸びていまして、平成二十四年は四百二十六ヘクタールと作付面積は拡大しているんですけれども、拡大をしていこうとした狙いと、ここまで短期間で広がったというその手法についても、どうやってお取り組みをされたかということをお聞かせ願いたいというふうに思います。

藤田毅君 まず、僕が立毛まで話したというのは、やはりこれからの財源の問題ですけれども、飼料米を盤石な形で残していただく、こういうことで、経営としては、先を見通した計画を立てられる。そのためには、飼料米というのは備蓄にも向くよというような幾つかの方向性があれば、飼料米に対して大きな手当てをする可能性を持つのかなということで、僕はこういう提案をさせていただいたわけです。

 飼料米がだぶつくという話なんですけれども、これは非常に、今、世界的に穀物は、数年前に倍に上がっているわけですね。これはもう基本的に下がることはないんです。何か天候不順になれば上がるだけです。ここに来て円安です。今のところ、なおさら円安になる可能性しかないんですね。

 そうなると、国内の畜産農家が非常に厳しい中においては、出口としてのというか、受け手が絶対あるわけですね。これが今国内で一番大きな要因だと僕は思っていまして、これを絶対つかまえていけるというふうに思っております。

野口和広君 お答えいたします。

 飼料米の面積拡大でございますけれども、これについては、二十一年度に飼料米に対する交付金制度が始まったわけでございます。そういった中で、私どもは、生産調整をいろいろとやっておったわけでございますが、やはり出口がないとつくってもしようがないのかなという感じはしておりました。

 そこで、いろいろ悩む中で、実は、農林水産省の畜産担当の方のところへ私と農協の部長が出向きまして、どこか売り先はないでしょうかということを相談させていただきました。そうしましたら、埼玉県の嵐山でございますけれども、そこで養鶏業者の方とマッチングさせていただきました。そこから始まったわけでございます。現在は、埼玉県の二社と、そして富山県の一社、その三社と一応契約を結びながら、今流通をさせているところでございます。

 この養鶏業者に供給する飼料米は、もみ殻がついていいわけです。ですから、非常に乾燥したものを、私どもは、カントリーエレベーターが結構ありますので、そこで貯蔵しながら運ぶという形でございます。

 いずれにしても、これから、例えば牛とか豚にどうしたらいいのかということも非常に悩むところでございますが、牛は、基本的には粗飼料、牧草とかわらを食べる家畜でございます。豚は、私ども人間と一緒で雑食性でございますので、豚については何とかいけるのかな。ただ、もみ殻をとって、そして破砕するなり粉にしなければならない、そういったものがございますので、これはこれからもうちょっと研究しなければならないのかなということでございます。

 いずれにしても、私どもは安定的に飼料米をつくっていきたいというふうに考えております。

武部委員 ありがとうございます。

 藤田さんのお話のとおり、私の地域も酪農、畜産の地域でありますので、非常に飼料が高騰して酪農経営を圧迫している実態があります。飼料用米、牛がどれぐらい使われるかというのはあるんですが、農水省の試算でも四百五十万トンの可能性があるというような数字もありますので、この飼料用米に対する期待というのは、いろいろな不安もありますけれども、期待も大きいというふうに思っております。

 それと、先ほど皆様から、地域をどうやって守っていくというお話がございました。藤田さんからは、非農家さんとの温度差があってというお話もありましたし、鈴木さんからは、農村維持の役割も果たしているというお話がありました。

 皆さんにお聞きしたいんですけれども、今、農村の非農家の方と農家の方が混住化したり、あるいは、鈴木さんのお話のとおり、高齢化が進んでいて、集落機能というのがどんどん低下していくことが恐らく人口減少化の中で見込まれるというふうに思いますが、これから地域の共同作業を維持していくためには、今回の支援策、日本型直接支払いも含めてどのように活用していくべきか、皆様方の御意見を伺いたいというふうに思います。

宮腰座長 時間が迫っておりますので、申しわけありませんが、布施さんと鈴木さん、二人に絞ってお願いいたします。

布施学君 その制度につきましては、地域できちっと話し合いを持って、集落営農さんだけが独占するとか、もしくは、個人農家さんが別の、会社組織である個人経営の方が、自分の懐へだけ入るような形ではなく、周囲の皆さんと協調して、話し合いをきちっとした上で、地域全体のものになるような形になるような制度にしていただきたいと思います。

 以上です。

鈴木貴良君 うちの町は、土建屋さん以外の会社がみんななくなってしまいまして、ほとんど農家に近い人ばかりですので、農家と非農家という関係性についてはそれほど問題はないかと思いますけれども、なればなるほど、結局、担い手という個の支援の部分が、先ほど言ったように、一万五千円から七千五百円になってしまうと、支援の方がなくなって、幾ら共同作業をしたくても、個がいなければ共同作業にならぬわけでありますので、その前の段階で、地域にとってはやはり支援の仕方を、また平場と山間地の違いが出てくるのではないかなと思うので、そこら辺をお考えいただけるとありがたいなと思います。

武部委員 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮腰座長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 きょうは、日本一の米どころの新潟県にお邪魔をいたしまして、現在、農林水産委員会で審査中の法案の参考にさせていただくということで、御意見をお伺いいたしました。これから少々質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたしたいというふうに思います。

 まず、野口副市長さんにお伺いをしたいんです。

 いろいろと意見陳述をいただいた中で、幾つか上越市で取り組んでいることの中で、農地の集積ということが何か一つ入っていたようにお聞きをいたしましたが、具体的にどういうことで実績が上がっているのか、何か実例的なことがありましたら、ちょっと開陳をいただきたいということと、それから、いただいた資料の中で、平成二十一年から農業法人への就業者が、この数字だけを見ると、急激にふえている。これは何か特別な理由があるのか。まず、そこの二点をお願いしたいと思います。

野口和広君 お答えいたします。

 農地の利用集積でございますけれども、先ほど申し上げましたように、基本的には、基盤整備事業、これは経営体育成基盤整備事業というメニューがございまして、やはり担い手へ農地を集積してくれれば、できるだけ負担が少ない、そういった補助制度もございます。

 それと、私の集落の法人でございますけれども、発足は十ヘクタールで設立いたしました。実は、一昨年、隣の大規模個人農家が体を壊されまして、それで、うちの法人が五ヘクタール引き受けるということになりました。その方は、もう農業をやめるということでございます。それと、ことしになっても、やはり一ヘクタールくらい、三キロくらい離れた場所からでございますけれども、つくってほしいという話がございました。

 そういったことで、やはりきっかけは基盤整備事業、そして、私どもは大規模化に進んでいるということを意思表示しておりますので、そういった中で、私どもは人・農地プラン、これも一応つくらせていただきました。出したい人が五百ヘクタール、受けたい人が二千五百ヘクタール。ですから、完全に五倍の差がございます。面積を拡大したい人が二千五百ヘクタールです。今はそういったアンバランスでございますけれども、いずれにしても、経営の効率化、コスト削減のためには、やはり農地利用集積が一番の原点かなというふうに考えております。

 それと、法人への就農でございます。集落営農は、基本的には、やはり各集落の高齢化になった方々の集まりでございます。そういった中で、やはり次の担い手、後継者、そういったものを育成する、そういったところに若い人から入っていただいて労務作業をやっていただく、そして、将来的には経営者として頑張っていただくための素地づくり、そういったものをつくっております。

 中山間地域の牧区の一番奥の山でございますけれども、雪太郎の郷という法人がございます。そこに若い人に二人入っていただきました。非常に活躍されておりまして、そこのもともとの構成員である母ちゃん方は、草刈りをしないで、非常に楽になったというふうに喜んでおります。

 そういった中で、どこまでが正解かはちょっとわかりませんけれども、いろいろな情報を提供しながら就業していただいているような状況でございます。

石田(祝)委員 ありがとうございました。

 続いて、藤田参考人にお伺いをしたいんです。

 いろいろお話を興味深く聞かせていただいたんですけれども、その中で、現状を打破していく人が本当の担い手ではないのか、こういうお話があったというふうに思います。

 特に、今回、担い手の法律の改正ということもありますが、これは御自身の体験から、いわゆるブレークスルーみたいな、打破してきたことがあるんだ、それが今の御自身のいろいろな意味でのプラスになっているとか、そういうことがありましたら、ちょっと教えていただけますか。

藤田毅君 今言う中で、やはり産業政策という面で現状打破をしていかないとだめであろうということの中で、先ほどから話もしているわけですけれども、農地において、余りにも今までの既成の概念にとらわれ過ぎておりまして、既成の概念で進んでいるんですね。いつまでたってもそれが変わらない。あぜ一つとることもできないような状況が、今でも、うちの新潟の地区でも続いているわけですね。これをどうにか打破しないと、次にとても進めない。そういう面で、既成概念からの脱却ということが確実に必要なんだなと思っております。

 僕も、酪農を始めて、普通のつなぎ牛舎からフリーストールにかわっていく、そういう段階では、毎年毎年どうしたらいいのかということを常に考えてきております。牛に餌を上げる方法でも毎年どんどん変わっていくものだと思います。常に同じであることはないと僕は思っております。

 以上です。

石田(祝)委員 それともう一点、同じく藤田さんにお伺いをしたいんですけれども、今、食品残渣の問題、これも非常に大きな課題になっておりまして、エコフィードということで、そういうものを利用していかなくちゃいけない。そういう中で、いただいた資料の中で、畜産の問題について、要するに飼料で、食品残渣のリサイクルも有効である、これで有効事例もあるということで括弧書きで書かれております。

 それで、今も我々が、これは養豚でありますけれども、養豚農業についてその振興を図ろうということで、そこでは、やはり一つは餌の問題で、食品残渣をエコフィードということで大きく利用していこうじゃないか、こういうことも今考えているんですが、これは有効事例ありということで、我々が聞いて、ああ、そうかというようなことが何かございましたら、ちょっと教えてもらえればありがたいのです。

藤田毅君 では、二点申し上げます。

 まず一点が、島根県の松永牧場です。肥育農家だったんですけれども、五年前から酪農に新規で入りました。十一億円を投下しまして、現在千頭の搾乳をして、今きっと福井県よりも大きな搾乳量を誇る。これを、食品残渣を中心とした餌をつくる。食品残渣というのは傷むので、発酵飼料にしております。そういう仕組みをつくっていけば安定した餌がつくれます。非常に短期的に、五年という間にこれだけの成長をしていくというのはすごくすばらしいなと思っていますし、松永さんとはその五年以上前に会って、これからは食品残渣か国産飼料だろうという話は、前から思っておりまして、そういうことで、すごく称賛できるなと。年間の売り上げは十一億円になっていると思います。

 もう一つが、新潟県魚沼で、飼料米を今酪農家で上げているわけですけれども、大体二割ぐらいが上げられると言っていますけれども、今それ以上の給与をしているようです。酪農家として非常に利益が上がっているということが、一年以上、中で行われている。僕はそれに非常に期待しておりますし、酪農も、三割とかになりますと、相当大きな経営に対応していくことになると思います。

 以上です。

石田(祝)委員 二割以上上げているんじゃないかということですけれども、我々がいろいろ聞くところでは、余りたくさん飼料用米は上げられないと。これは飼料用米ということでいいんですかね。そんなに食べられないんだということを聞くんですけれども、それは二割以上で特に何も問題ないということなんですか。

藤田毅君 これは、一年以上やっているということの中で、あと、結局、牛の生理の問題もありますので、基本的に置きかえは可能なんですね、炭水化物ですから。ただ、消化速度の問題がありますので、技術的な問題は結構ありますけれども、非常にマッチング、ほかの餌との組み合わせで可能であると僕は思っておりますし、どこまでいくかについては、まだ技術的にどこまでいくかははっきりしていませんけれども、そういう状況でいきますと、炭水化物ということを考えれば、可能性はあります。

 鶏に関して言えば、黄身が白くなるんですけれども、健康上、人間にとっては、コレステロールの関係で非常によいとされています。そういう点でも、飼料米というのは、この先の有効利用の可能性は非常に高いと思っています。

 以上です。

石田(祝)委員 ありがとうございます。

 では、鈴木参考人にお伺いしたいんです。

 さまざまな御意見をいただきましたが、その中で、中山間地の直接支払いが非常に助かっている、こういう趣旨のお話もあったと思います。

 そういう中で、私は高知県に今住所があるんですが、高知も非常に中山間地が多くて、なおかつ幾つか分かれている、小さいところに。その連担化ということで、今お話があったように、一固まりのまとまりとしてできるんだったらいいよ、対象になるよという話になっていると思います。

 そういう中で、これから、中山間地の直接支払い、私は、非常にこれはすばらしい、いい制度だと思うんですが、今の制度に加えて、御自身の体験から、何かさらにこういう点をということがありましたら、率直な御意見をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木貴良君 先ほど申し上げましたとおり、直接支払いの相手方が、規模がでかくなっていきますと、百万を超えるという事例が今後恐らく出てくると思います。

 今まで、例えば、四人で百二十万円分の仕事を、一人だと百万円しかもらえないということになりますので、その部分を少し緩和してもらわないと、これから先、これは全国同じくやはり数が減っていきますので、そういう状況になろうかと思います。

 それから、あと、うちの地域でいいますと、第一期目は三、四、三といいまして、旧高柳町で一つの協定、活性化協議会という、今、私の肩書がそうなんですけれども、活性化協議会という協定を一つ持ちました。その部分が三、それから集落協定が四、個人に三という、三つに分けたんですね。

 二期目は三、四、三、三期目に入りまして、二、三、五というふうに分けました。活性化協議会が二、それから集落が三、個人が五ということで、割合、それぞれが充実をさせるように、どこの部分が足らぬかというところで配分を変えさせてもらいました。

 今後また、第四期目に当たっては、どういうメニューが出てくるかわからぬのですけれども、集落の中で、あるいは協議会の中で、どの部分にちゃんと注力をしてやらなきゃならないかというメニュー設定をしていかなきゃならぬと思うんですけれども、そういった自由に配分を決められるというよさが、やはり直接支払いの効果ではないかなというふうに思っています。

石田(祝)委員 もう一点ちょっと聞きたいんですけれども、例えば、水田で急傾斜のところが二万一千円じゃないですか。だから、私は、その金額も含めて御要望がないかなと思って聞いたんですけれども、特にその金額については今のでいい、こういうことでいいんですか。

鈴木貴良君 金額については、いっぱいもらえればいっぱいもらえた方がいいに決まっていますけれども、先ほど申し上げたとおり、個が少なくなってくると、大規模な部分の、例えば三、四人でできない仕事が今度はふえてきます。

 揚水の抜本的な改良ですとか、あるいはポンプの入れかえだとか、そういったものにはすごく高額な金がかかってきますけれども、そういった最低限の整備は、直払いではなくて、もう一つ上の支え方で支えていただく。環境を保全するとか国土を保全するとかというものにしてもらわないと、このお金だけで将来続けていくというのはまず不可能だと私は思っています。それを前提に、直払いの仕組みはいいというふうに考えております。

石田(祝)委員 ありがとうございます。

 時間も大分なくなってきましたけれども、皆さんの御意見の中で、一万五千円の定額払いのところの評価が非常に高かったという実感はいたしました。そういう中で、ことしから七千五百円、平成三十年で廃止をする、こういうことを決めたわけであります。

 それで、今回、民主党さんを中心に戸別所得補償法案が出てまいりまして、今一緒に審査をしているところです。

 これは、平成二十一年のときの衆議院の総選挙、我々は当時与党でしたけれども、負けたのはこの戸別所得補償じゃないのか、率直にそういう感じがあのときはいたしました。そのほかにも理由はあったと思うんですけれども、それだけ定額の一万五千円というのは大きな魅力だったのではないのかなと、率直に私たちはそのときは思ったんですね。

 その後、委員会等で、私は、当時民主党政権の三人の大臣に全て、これを法制化すべきじゃないのか、やはり予算措置でいくと非常に安定性がないということで、早く出した方がいいんじゃないかということは、皆さん、出しますと言ったんだけれども、結局出てこなくて、今出てこられておりますので、審査をこれからいたします。

 高知県という中山間地のところで、定額と変動部分、私は一つだけ不満だったのは、全国一律の生産費で考えている。これは、中国、四国と北海道を比べたら、約一・七倍の生産費の違いがあるんですね。そういう点もぜひ加味していただきたかったなということでお話を何回もしたんですが、今回法案として出てまいりました。

 それで、さまざま評価がありますけれども、今お聞きをして、評価されているということはよくわかりました。我々も、これをことしから七千五百円にして三十年で全廃する、ただ何もしないというわけじゃなくて、ことし、収入保険の調査費がつきました。

 この収入保険というのは、戸別所得補償は非常にいいんですけれども、今まで野菜とか花卉とかいうのが全く対象になっていなかったんですね。ですから、特に米農家中心ということになっておりましたので、農業全体を支えていくという意味で、我が党も、まず、収入保険を野菜に掛けてやれ、こういう主張もしたんです。これを全体的に広げていこうということで、私は、平成三十年に今の七千五百円がなくなるときに合わせて収入保険をスタートすべきだ、こういう提案もしているんです。

 これについて、布施さんと鈴木さんに御意見をお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

布施学君 非常にありがたいことだと思っております。

 米価下落変動補填金等の廃止等もありますが、やはり地方の実情は、地域ごとに分かれているわけではなくて、全国平均の相対取引価格がベースになっていますので、地方の、例えば新潟コシと千葉県産のコシヒカリで相当の開きがあるわけですよね。だから、そういうことも加味した上で、地域別にそういった収入保険を掛けていただけると、よりありがたいのかなと思っております。

 以上です。

鈴木貴良君 私も、先ほど申し上げたとおり、人を支える部分ということで、その分しっかり、集落全部でするためには、やはり個が成り立たなきゃなりませんので、できればずっと継続をしていただければありがたいと思いますし、その廃止については、ほかのものがないと、恐らく近い将来成り立たなくなる場合が結構出てくるんじゃないかと思います。

石田(祝)委員 大変貴重な御意見をありがとうございました。

 収入保険につきましては、ことしから調査費をつけて、しっかり現状を把握した上でスタートさせる、こういうことになろうかと思いますので、そういう点につきましても、また貴重な御意見を聞かせていただく機会があるかもしれません。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。

 私は、以上で終わります。

宮腰座長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 新潟の、民主党の鷲尾でございます。

 きょうは、新潟での地方公聴会の開催となりましたこと、関係各位のお取り計らいに感謝を申し上げたいと思います。また、あわせて、きょう意見陳述に来られた四人の皆様方には、遠方よりお越しをいただきまして、心より感謝する次第でございます。大変貴重な御意見をいただきました。

 そこで、早速質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 まずは、藤田さんにお聞きしたいというふうに思います。

 藤田さんの会社にもお伺いさせていただいたり、それこそ私の家族もレガーロの大ファンですから、そういう意味では、大変いろいろな多角的な経営をされていて、いつも関心を持って拝見をさせていただいておりました。

 きょうのお話で、日本型直接支払いの中で、集落全体が補助金を受けること自体には若干慎重だったと。ところが、寄る年波といいましょうか、高齢化が進んで、今期から申請をするというお話をされていました。一方で、競争力向上に当たって、分散錯圃が一番の原因だろうというお話をされていました。

 そこで、ちょっとお話をお聞きしたいのは、我々がやってまいりました、それこそ戸別所得補償、当初は、貸し剥がしがあるんじゃないかとか、さんざん言われたわけでございますけれども、分散錯圃を解消するというところに当たって、戸別所得補償制度という政策がどういった影響があったのかということについてお聞かせいただきたいと思います。

    〔座長退席、北村(誠)座長代理着席〕

藤田毅君 やはり戸別所得補償はとてもありがたい制度というスタートで僕も来ました。ところが、法人協会の中では非常にいろいろな議論が出ました。マリファナのようなものだ、これをもらい続けたいというのは誰もがそう思うだろう、そこに努力の方向性が見出せるのかどうかということの議論が法人協会の中にはありました。法人協会は、常に、広い範囲でいろいろな業者がいますので、さまざまな意見の中で来ていると思います。

 戸別所得補償に関してはそういう意見の中で、農地集積に関して言いますと、これがあるおかげで農業を続けていけるという、ある意味、農家がやめないで済んでいる部分というのはやはりあったのかと思います。現在、そういうことが、集積には余り方向としてはよくなかったのかもしれないと僕は思っております。

 以上です。

鷲尾委員 それでは、ほかのお三方にもお聞きしたいというふうに思います。

 実際は、戸別所得補償制度が開始されまして、集落営農数が顕著に増加をいたしました。というのは、集落営農になりますと、一括して十アール控除ができる、そういうメリットもございまして、実数としてはふえたわけでございます。

 ほかのお三方の現場で、戸別所得補償制度があるから貸し剥がしに遭っているとか、そういった現場感があれば教えていただきたいというふうに思います。

布施学君 私の会員十九名の中で、現場で貸し剥がしがあったのは一件だけですね。その一件の方は、農振除外地域と兼ねるような、ほぼ町中の方で、いつでも転用ができるような場所にいる方がそういうふうになっただけで、とりたてて、そこまで、その人は四ヘクタール一気に持っていかれたんですけれども、それ以外の方は大した影響はなかったと思います。

 もともと、柏崎地域というのは、そんなに各地域ごとに細かい集落営農組織というものがあるわけではありませんので、それほど影響はありませんでした。逆に、定額一万五千円をいただけた方がありがたかったのかなと思っております。

野口和広君 お答えいたします。

 戸別所得補償の固定払いでございますけれども、これについては、私どもは、実際、現場サイドに立つと、これがいつまで続くのかなという感じは持っておりました。それは、まあ、もらえるものはもらっておきましょうという感じだったんですが、私どもは、基本はやはり農地利用集積、そして効率化ができる基盤整備事業。私どもが今持っている土地は、幅が五十メーターで奥行きが二百メーターです。そういった中で、私は、六条植えの田植え機で運転しているんですけれども、二日間で六ヘクタール植えることができました。そういった意味で、あとはパイプ管でやっていますので、非常に労力が削減できるということでございます。

 そういった中で、この一万五千円が七千五百円にとりあえずなる。ただ、これから、例えば過剰作付を行った場合、あっという間に米価が下落するかと思っております。そうした場合、今後四年間、この七千五百円に下げた場合、どういったような経営体系ができるのか、それをきちっと検証していただきながら、また、新たな支援策、そういったものがあれば、手を打っていただければとは思っております。

 いずれにしても、この一万五千円が出たときは、農地の貸し剥がしが多く出るんじゃないかという話が出ましたけれども、私ども上越市では、そんなに多くなかったというのが実態でございます。

鈴木貴良君 高柳では、貸し剥がしは聞いたことはありません。というのは、自分自身がやるのも大変なのに、人のものをとってまで、一万五千円のためにやるという人は余りいなかったんじゃないかなと思います。

 ただ、先ほど申し上げているとおり、戸別所得を得られている方というのは中核の方であります。山間地でも割としっかりとした経営をしている方が多いので、その方に対して集中的に支援が行くという形は、私はすごく評価をするべきところだなというふうに思っておりました。それがなくなるということは、その中核の方々の根っこの部分といいますか、足腰を弱くしてしまうもとになってしまうんじゃないかなという懸念がいたします。

 以上です。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 布施さんのお話で若干わからなかったことがありましたので、確認をさせていただきたいと思うんです。

 農地・水保全管理支払い等々の、集落というか共同作業に対してお金を配分するというところの中で、いろいろ話し合いの中で、個人経営が不利な立場に置かれるのではないかという話がございました。ちょっと認識をお聞きしたいんですけれども、それは、共同作業へのお金の配分が多くなるがゆえに個人の経営としては不利な立場に置かれる、それが問題だという認識でよろしかったでしょうか。一言、布施さんにお願いします。

布施学君 はい。そういう認識でいていただいて構いません。

鷲尾委員 それでは、質問を続けまして、鈴木さんの方からも、個の支援というのが、非常に、いろいろな制度設計をするに当たっても前提だというお話がありました。

 きょうは、四人の方のお話の中で若干聞けなかったものがございます。それは環境保全型の直接支払いの制度で、これも、ある意味、個の取り組みに対してお金が入るという仕組みになっていますけれども、この制度についての感想なり御要望がありましたら、四人の方からお聞かせいただきたいと思います。

藤田毅君 自分自身が循環型の農業を目指しておるということも含めてですけれども、アメリカナイズされない、どちらかというと輪作体系をとるような仕組み、そういう方向というのは日本に向いていると思いますし、ここはこれからもこれを進めていってもらいたいと思っています。そういうもとの中で、どういう支援をしていただけるかについては、これからまだ進め方はいろいろあるのかと思いますので、いろいろと議論いただきたいと思っています。

 以上です。

布施学君 環境保全型農業直接支援についてですが、平場で、しかも水稲しかつくっていない我々のような会は、例えばカバークロップ、緑肥等をつくってまでというのは、恐らく無理だと思います。少なくとも、私の会では恐らく誰も取り組まないのではないのかなと考えております。

 以上です。

野口和広君 お答えいたします。

 私どもは、大規模圃場化している関係で、やはり畦畔面積がかなり少なくなっております。そういった意味で、カバークロップで被覆する、そういったことも有効なことは有効なのかなと思っております。

 いずれにしても、私どものこの環境保全型農業は、資料の十九ページにございますように、三割低減、そして五割低減、米の、主食用として結構頑張っている部分もございます。そういった中で、これについては、もうちょっと勉強しながら、どうあるべきかということを考えていきたいなと思っております。

鈴木貴良君 環境保全型、それこそもう山間地は環境を背中にしょっていますので、当然取り組んでいかなきゃならないものと思っています。また、それは地域だけではなくて、国としてしっかり取り組んでもらいたいなというふうに思っています。

 ただ、そういう制度はあっても、先ほど申し上げているとおり、くどいようですけれども、マンパワーのなさで、事務がまたふえてしまうとか、あるいはハードルの高いような制度になってしまうと、利用の、活用の仕方にも問題が出てくると思いますので、誰もが取り組めて、その価値、効果が出るような方法でしていただければというふうに思っています。

鷲尾委員 それでは、続いての質問ですが、これは鈴木さんにお聞きしたいことであります。

 中山間地においては、我々は、生産条件の不利是正ということで中山間地域への直接支払いを行っているところでございます。また、きょうは、その中において、さまざまな具体的な工夫点、これから人が少なくなっていくに当たって、一人当たり百万を超えてしまうともらえないという、これを緩和していったらいいじゃないかとか、そういった具体的な御指摘もいただいて、かなり示唆に富むものだというふうに思いました。

 一方で、鈴木さんが御指摘になった百八十五万円という所得の話は、これは青年就農給付金の制度等に関連しての御指摘だというふうに思っておりますが、先ほど来、中山間地域はやはり人がいなければなかなか続かない、人の関係というのが、人との地域のかかわりというのが営農継続にとっても大事であると。そういう意味では、我々も今回法律を提出していますけれども、多面的機能を維持することがやはり営農継続と密接にかかわっていかないと、集落そのものがだめになっていくのではないかということを強く感じた次第でございます。

 そういう、人という部分について、先ほど来、所得要件が大変厳しいというお話がございましたが、今、人・農地プランも現場でやっていただいていると思いますけれども、その人・農地プランをやっていく際の現場感ですとか、あるいは今の青年就農給付金の現状ですとかを少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。

    〔北村(誠)座長代理退席、座長着席〕

鈴木貴良君 その青年給付金を受ける、準備型とか開始型とかがありますね。準備型の方が、先ほど言った百八十数万円とかということで、所得の制限があるようでありますし、また、開始型の方は、それほど要件はないんですね。だけれども、入り口の、例えば冬場に、当然、先ほど申し上げているように、三メーター、四メーター雪が積もるところで、どうするんですかと言われるわけですね。どうするんですかと言われたって何もできませんよと答えると怒られて、ハウスか何かをつくって葉物野菜か何かをやらなきゃだめじゃないですか、こう指導を受けるわけですね。ところが、三メーター、四メーターの雪の中で、ハウスを維持するだけで、もう赤字になってしまうんですね。それをまた借金をしてハウスをつくるということが、これが本当にその人のためになるんだろうかというのが現実にあります。

 ほかのところでもよく聞くことなんですけれども、そうではなくて、冬期間は、その集落を維持する、集落の安心のために、その人がそこにいるだけで維持されるということをお認めいただかないと、その部分で、ほかに、例えば除雪をして稼ぐとか、あるいは堰守をして稼ぐとかというのも含めてもらって農業所得というような見方をしてもらわないと、先ほど言ったように、ただ少なくするというのは、それでは生活できませんので、少なくするもののほかに、そういった生産で得たものじゃない部分も所得として見てもらえないかということが実はあるのであります。

鷲尾委員 また、示唆に富んだ御指摘をありがとうございました。

 続いて、飼料用米の件でまたお聞かせいただきたいと思うんです。

 先ほど藤田さんの方から大変有望であるということでお聞かせいただきました。実は私も有望だと思っておりまして、ぜひ、飼料用米が取り組みとして成功していただけると、カロリーベースの食料自給率、これは随分前から四〇%前後で、随分厳しい状況にあるというところでありますけれども、この飼料用米が成功すれば、国産飼料ということで、計算上はカロリーベースの食料自給率は上がるんですよね。そういう意味では、本当に成功してもらいたいなというふうに思うんです。

 一方で、有望だという話を聞いて、大変いいなと思うんですけれども、米粉用米の話を私は例に出したいんです。

 米粉用というのは、麦のかわりに、それに適した米をうまく使うことによって、米の需要をふやしたいという話でございました。

 ところが、これは新潟は先進的に取り組んでいただいたんですけれども、藤田さん、県内は相当厳しい状況じゃないですか、よくわかっているんですけれども。飼料用米も、結局はお米でトウモロコシの代替ということを目指しているわけですけれども、やはりトウモロコシとの違いというのはどうしてもあるんじゃないかと思うんですね。飼料用米を全国展開するということは相当なボリュームになるんじゃないかな、そうなったときに、本当に需要としてあるんだろうかというところ。ですから、トウモロコシとは違うんだよという点が一つ。

 それから、実際に飼料用米では、先ほど布施さんから御指摘がありましたけれども、また、野口さんからも指摘がありましたけれども、結構いろいろ、また機械等、使用方法によってはさまざまなものが必要になってくる。そういった点がハードルになりはしないかというところを感じております。

 藤田さんの御見解を教えていただけたらなと思います。

藤田毅君 まず、多収性なんですけれども、これは機械が傷むという、最近の品種は特にそうなんですよね。カリフォルニアで何で多収性が進んでいるかというと、機械が傷まない品種なんです。要するに、そういう品種まで行くべきですね。今は新潟次郎ですけれども、先に行ったら、機械が無理しない多収性というのがまず第一に必要なのです。これはちょっと遠い展望かもしれませんが、品種改良なのか品種を入れていくのかということがまず一つです。

 米粉用米がふえない理由の中に、僕は最近言われたんですけれども、やはり麦と違うわけですよ。だから、最初から、学校給食も含めてなんですけれども、小さいときからそれに対して、米粉でつくったものという、長いスパンでの米粉の利用ということを考えないと、ただ代替というのでは無理だろうと。香りが違うというんです。うちでピザをつくっていても、米粉用米でピザをつくるんですけれども、やはり違うんですよ。もう違うものとして捉えないと、なかなかできないです。これには相当の時間がかかるし、はっきり言って桁が違うと思います、飼料米の需要の問題とは。

 先ほど飼料米とトウモロコシとの違いと言いましたけれども、炭水化物ではほとんど同じなんです。ただ、玄米での利用となると、牛の場合は消化率が速過ぎてちょっと危険度を増すので、逆に、乾もみを潰すことで、もみを入れることで消化率の速度を遅くすることとか、要するに技術的なことなんですね。それをすれば、トウモロコシ以上の、今言った、コレステロールでいうと人間にはかえっていいわけですから、僕は問題はないと思っています。

 ただ、まだ技術的な問題を何個かクリアしなきゃいけないのは確かです。

 以上です。

鷲尾委員 それでは、時間もなくなりましたので、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 生産調整廃止の方向が打ち出されていまして、これは、正直申し上げて、米価という点では相当乱高下してしまうんじゃないかというふうに思っております。

 その点を藤田さんと布施さんからお聞かせいただきたいんですけれども、乱高下するというのは、やはり収入としては非常に厳しい状況に、それが乱高下してしまうわけですから、そういう部分では大変不安定要因が増すのではないかというふうに思っております。そこの感想をお願いしたいと思います。

宮腰座長 時間が参っておりますので、手短にお願いいたします。

藤田毅君 確かに、すごく危惧しているところです。先物というものを含めた幾つかのセーフティーネットを構築していかないと、やはり厳しいと思います。

布施学君 一旦下がったものはなかなか回復しませんし、無理にJAなりどこかが介入して上げたりしても、翌年もっと下がるという悪循環になるかと思いますので、本当に厳しいことは予見されます。

 今、新潟県内でも、米卸がはかせなくてJAに買い取っていただくというような現状ですので、本当にこの先ますます厳しくなるかと思います。

 以上です。

鷲尾委員 それで、きょうは鈴木さんに中山間地から来ていただいておりますけれども、我々もやはり中山間地に行かなきゃいけないなというふうに思いました。農林水産省はもっと中山間地に行かなきゃいけないなというふうに思いました。

 本当に、きょうは、大変有益な御意見をありがとうございました。

 以上です。

宮腰座長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 本日は、四人の参考人の方に貴重なお話をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は秋田で、稲作地帯なので、まさに新潟と似ている地域だ、こういうふうに思っております。

 その中で、今回の四つと言われる改革なんですけれども、農地中間管理機構、そして経営所得安定対策の見直し、日本型直接支払い等々の改革は、基本的に、産業政策では農地を集積させて大規模農家をつくっていこうと。きょうは中山間地で鈴木さんが来られていますけれども、もう一つ、中山間地は、環境保全という部分で、地域対策でやっていくと。

 きょう来られた方は、会社経営という形での農業をやっている藤田さん、そして布施さんは専業で、個人でやられている。行政の野口副市長さんもいます。中山間地の鈴木さんもいます。その中で、秋田も同じなんですが、大規模化を目指す人と、小規模、兼業農家、これが地域の中でどういうふうに協力関係、またはその方々が農地中間管理機構に土地を拠出していく、そのことによって、地域というのは、当然農業をやる人はがくんと減っていく方向性だと思います。それに附属して、例えば、大規模な農家の方々に負担がかからないようにということの中で、日本型直接支払いで、泥上げだとか草刈りだとか、いろいろなものを手伝うというような対策を組み合わせているわけです。

 農村社会という地域が、皆さんそれぞれ農業にかかわってきて、この大規模農家という方向性は、どんな農村社会になっていくと感じているでしょうか。それぞれ、お一人お一人、お願いしたいと思います。

藤田毅君 うちは、平場の中で大規模農業というのがどんどん進んでいくと思います。その中で、よく三十ヘクタールを超えると余りコストが下がらないとかということを言っておりますけれども、僕自身は、今言ったいろいろな現状を打破することで変わっていくと思っています。

 きっと担い手というのは、数百ヘクタールを超えた大規模農家が出てくる、農家というか、経営が出てくると思います。その数百ヘクタールを超えた経営体が、その集落において雇用を生むと思います。その方がとても健全だと思っています。

 個々でコスト割れしている可能性のある人たちよりも、雇用するということでコスト割れがなくなります。年齢を重ねてもいろいろな仕事というのは出てくると思いますので、柔軟に対応していくことができれば、しっかりとした経営組織ということが前提ですけれども、雇用にはちゃんとした仕組みというのができているわけですから、僕自身は、かえってその方が自然かなと思っています。

布施学君 個々の経営体と集落営農が入りまじって、最終的には個々の経営体が生き残るのかなと私は考えております。

 集落営農さんは、やはり後継者不足が非常に問題で、会社をやめた人しかいないような、定年退職されたような人しかいないような集落営農さんばかりですので、全部が全部とは言いませんが、それに対して、個人でやっている人は後継者はほとんど決まっている方ですし、後継者になってしまうと、状況はどうあれ半分逃げられないような状況になりますので、本当に個人規模の人がいないところはやはり集落営農が幅をきかせるでしょうけれども、個人規模、大規模農家があるところは、そこがいずれは、最終的には、十年後ぐらいには集約すると思います。

 以上です。

鈴木貴良君 山間地では面積をふやすということはなかなかないわけでありますけれども、逆に考えて、今、集落で人がいなくなったところというのはあります。それを見ていると、徐々に減っていくわけでありますけれども、途中で生産組合ができたりとかいろいろするんですが、最後は個に戻って、いなくなるという仕掛けですね。いなくなってからどうするかというと、平場に出た人が通勤で来るんですね。だから、地域とは関係ないところの労力と、稼ぎもほかのところに持っていかれるということで、維持と生産というのがそこになくなって、分離をされる。

 これは高柳だけじゃなくて、ほかの、松代、松之山とかあの辺を見ても、集落がなくなったところを見ていくと、完全に人が住まなくなっても、しばらく農地があるので農地が生きるんですね。だから、そういう形になっていくんだろうと。

 高柳の中で言いますと、黒姫山という八百数十メーターの山がありますが、そこに近いところが一番経営面積が大きいんですよ。要するに、過疎率が高ければ高いほど個人の面積が多くなるということで、そこの連中は、多い人は八町歩、九町歩やっている人がいますし、こういうところは多くなる。でも、その人たちは、例えばそこで生活ができなくなっても、平場に出てから、通って農地を維持するという可能性が出てくる。

 では、インフラとかを誰が管理するかとなると、隣りの大きな集落が面倒を見なければいけなくなるわけです。直払いでよくあるC要件というものでありますが、小さい集落でぐあい悪くなったときは大きな集落が面倒を見ますよという、だから、今、大きい集落、うちの集落みたいなところはちょっと大変なんですね、これから先、小さい集落の分も面倒を見なければならぬから。そこら辺の兼ね合いは今度出てくると思うんですけれども、面積の集約とかはできないですけれども、人がいなくても農地は残るという傾向が今あるということは確かです。

村岡委員 ありがとうございます。

 藤田さんが言われたように、大きな農家がある程度雇用を生んでいかないと、その地域には、これからの日本は人口がある程度は減っていくんですけれども、それが極端に減るということになりますので、やはり雇用を生み出すという方向性の対策をとっていかなきゃいけない、こう思っております。

 そこで、野口副市長さんも、当然、上越市の中で大規模化というのは、逆に言えば、一時的には農家の数が少なくなり、離農して、離村する人もいるかもしれないという状況なわけですけれども、自治体はそこを捉えながら、この方向性の中で、どんな形で、ある程度の農家から離れた人の雇用や、またその地域に住んでもらうという対策をとろうとされているか、ちょっと教えていただければと思います。

野口和広君 お答えいたします。

 小規模兼業農家は、確かに今、元気なうちはやっておられると思います。ただ、これから農機具が傷んで買いかえしなきゃならぬ、そうすると、非常に資本装備に金がかかるわけですね。そういった中で、私どもがいち早く目をつけたのが、やはり集落営農の法人化でございます。

 やはり、法人化しますと、早い話、兼業農家の集まりでございます。それが一つの会社として経営いたします。ですから、私は、農林水産部長になったとき、いち早く思いついたのが、やはり農業収入をふやす、そして農地を減らさない、それと農業に携わる人をできるだけ減らしたくないということを考えておりました。

 やはり、集落営農の法人化で兼業農家も集まっていただき、うちの集落も構成員が十人いますが、今まで本当に田んぼをやっていた人は四人でした。ですから、構成員になった途端に、草刈りとか、田植えの苗出しとか、そういったのに一応協力していただけるようになりました。

 そういった意味で、やはり兼業農家をそういった形で存続させ、それで、先ほども申し上げましたように、そこの法人が高齢化が進んだら新しい新規就農者、担い手を入れて存続させる、そういったのができれば非常に理想だなと思っているところでございます。

村岡委員 ありがとうございます。

 その法人がある程度高齢化してきたときに、新規就農者を、しっかりと次の就農者の人たちを生み出していくということが大切だ、こう思っています。

 私も農林水産委員会の中で、新潟の農業高校の状況がちょっとわからないですけれども、全国平均でいくと、農業高校を卒業した人のうち、五%しか就農していないというのがあります。それは、もちろん大学に行かれる方も専門学校に行かれる方もいらっしゃるでしょうけれども、また一番の大きな原因は、農業に将来性を見つけられないということの中で、高校生が農業高校で学んだのになかなか進んでいないという現状があるので、ここは、やはり農水省の方でも、しっかりと若い人たちが就農していくような対策を立てなきゃいけないということも言わせていただきました。

 それで、先ほど藤田さんの話した中で、コストダウンということの中で、農地の集積や過剰投資をやめたり、経営感覚を持っていく、これは普通の、経営するという中で基本的に大切なことだ、こういうふうに思っております。

 しかしながら、これまでの戦後農政を見ると、機械化が進み、いろいろなハウスがあり、いろいろなのになると、毎年、農業予算というのは二兆円以上かけてきているのに、農家の人たちは収入がない。農家の人たちの努力というのもこれからは求めていくわけですけれども、実はその予算が機械メーカーの利益になっている、資材メーカーの利益になっている、肥料メーカーの利益になっている、この根本をある程度直していかなきゃいけない。

 どういう対策で直すかが問題なんです。先ほど言った一万五千円、布施さんが大変ありがたかったというこの一万五千円も、一万五千円出すというと、米の業者がかえって安くたたく。そういう悪循環があるという中、農業の部分で、やはり今まで相対して、機械メーカーや肥料メーカーや資材メーカーといろいろな形で、経営という中でなかなか交渉できなかった。この交渉できなかった大きな原因を解決していかなきゃいけないと私は思っているんですけれども、それに関して、藤田さんなんかはどう思われているでしょうか。

藤田毅君 新潟県農業法人協会の役員は、毎年、新年に全農にいがたと話し合いを持ちます。その中で、機械の値段が高い、トラクターを、例えば三種類に絞って安く出せないのか、そういうようなこともいろいろ話しました。結局、どこもそのことをする気持ちを持っていないのを強く感じます。これは肥料、農薬、全てそうです。全て値段を上げていく方向にしかなく、非常に問題があると思います。

 どこかで今、グループごとに買い方、もう農協ではちょっとこれが難しいのかなという気持ちは僕はありますけれども、確かに、集団での買い方によって風穴があいていく可能性は、いろいろと聞くという状態が出ているのは確かです。

布施学君 コストカットの話はよく出ますし、当然、経営者として考えていかなければいけないことなんでしょうが、言いわけに聞こえるかもしれませんが、我々がつくっている米はやはり年に一回しかできませんし、また、三十ヘクタールもつくっていれば、大規模だと言われている人でも平均八俵で、全体で二千四百俵ですよね。

 それをコストカットという方向に持っていっても、毎月毎月一万個ぐらいの商品をきちっと必ず決まったところへ納めるようなメーカーさんとか会社であれば一円単位のコストカットをきちっとしていけるんでしょうけれども、例えば新潟県ですと、県認証五割減減対応が当然になったりとか、資材だけが上がっていくんですね。米の価格は下がっていく一方でして、今、新潟一般コシの一万三千七百円なんという価格は昭和五十年ぐらいの価格なんですよね。でも、資材は石油価格とともに徹底して上がっていきますので、コストカットをしなきゃいけないのはわかっていますが、やはり根本的に、どこかしら、何か大きい、先ほど私が言いましたように、小作料であるとか、そういう決定的な改革をしないと変革できないのじゃないのかなと私は思っています。

 以上です。

村岡委員 ありがとうございます。

 個人でいろいろな資材だとか肥料、また機械に挑むというのはなかなか大変だと思いますけれども、ここのところが少し解決していかないと、個人だけでコストカットといっても限界がある、こう思っていますので、何かしらの対策を農水委員会とともに我々も考えていかなきゃいけないな、それにまた協力していかなきゃいけないな、こう思っています。

 というのは、例えば建設業が、生コンや何かというのは、仕事がなかったときには大分安くなるんですね。今、震災以降の需要が高いので、非常に資材は上がっているんですけれども、農業はその変化がなく、むしろ、米がどんどん需要が落ちているのに、もちろん輸入という中で上がっている部分もありますけれども、それだけじゃなく、やはりコストの面で非常に相手との戦いができていないというような気がしますので、そこには何か一つ大きなものを考えていかなきゃいけないかな、こう思っています。

 その中で、それとつながるかもしれませんが、よく言われる六次産業化、生産から販売まで、この中で取り組んでいるのは、藤田さんが取り組んでいらっしゃると思います。布施さんの方はどうなのかわかりませんけれども、お二人に、六次産業化の流れという中で、政府もある程度のお金をもって融資をするという制度になっていますけれども、どのようにお二人はお考えか、教えていただきたい。

藤田毅君 六次化に関しては、なかなかそう簡単に進む問題ではないと僕は思っていまして、僕自身は、たまたまいろいろな方とのめぐり会いがあって、いろいろなことをサポートしていただいて今があると思っています。

 実際、六次化となれば、農業者は、生産物をしっかりしたいいものをつくって、それに対していいパートナーを見つけるということに尽きるのではないかなと思っています。そのパートナーを見つけるということに対して、どんな支援ができるのかとか、そのパートナー同士で、今で言うファンドがありますけれども、ファンドに関してはとてもいい制度だと僕は思っております。今まで、ファンドと言うと農家はちょっと引くんですけれども、本当は非常に使い勝手がいい内容なので、これは特に小さなパッケージになればなるほど使える品物だと思っています。

布施学君 私の会員の中で六次産業化に取り組んでおられる方は一人いらっしゃいますが、やはり国から補助金をいただいていると、さまざまな制約、しがらみが出てきまして、結局、取り組まなければよかったのかなと、すごく失礼な言い方になりますけれども、そうこぼす方だけです。

 やはり生産原価を考えますと、全て、幾らB品を使ったとしても、やはり中国製品とか、漬物一つとっても勝てませんので、そういうことを考えると、六次産業化より、もう少し別のことに何かお金を使っていただけた方がありがたいのかなと思っています。

 以上です。

村岡委員 ありがとうございます。

 なかなか六次産業化というのは、藤田さんの場合は出会いと言いましたけれども、やはり個人で相当な人脈をつくるために、いろいろな人に出会って、御苦労があるということの中での結果、六次産業化に進められたと思います。

 ただ、やはり価格決定力を持つというのは、ある程度その方向性へ行かないと、どうしても価格が、全部ほかの業者にたたかれてしまう。やはり農業で一番弱いのが、価格決定力がないということが一番弱い、こう思っています。もちろん、需要と供給のバランスが米は崩れているわけですけれども、しかしながら、やはりこれから農業がある程度成長しながら担い手の人たちが次々と新規就農していくという形の雰囲気をつくるために、やはり六次産業化は大切だ、こう思っております。

 鈴木さんのところは中山間地ということで、これは観光と組み合わされる、美しい棚田のあるところはもちろん大丈夫だと思いますけれども、逆に中山間地の人たちも、当然、先ほど言ったように、通勤農業なんていうのも将来見えてくるわけで、例えば六次産業化というのは、中山間地から見たらどんな感じに、最後になりますけれども、お答え願えればと思います。

鈴木貴良君 実は、私たちの集落は、もう既に二十数年前からカヤぶきの家を二軒、組合で農泊をしております。それを中心に、うちの米はそこで使わせてもらっていますし、いろいろなかかわりを持たせてもらっています。そこで働くスタッフも、今六、七人おりますけれども、全て集落のお母ちゃん連中からやってもらっています。

 これから始めるんじゃなくて、実は、中山間地は既に昔からそういう六次産業をある程度やっていたというふうに言えるかと思います。集落の中に幾つかグループがあって、くるみ会というおばちゃん連中のところでは、コンニャクをつくって直売所で売ったりとかというのはもう二十年前からずっとやっていることなんですね。

 おかげさまで、最近、全国的にそういうふうな流れになっていますので、日本だけでなくて海外からも昨年はお客さんがありまして、それこそ、イスラエルの方が去年は二百人ぐらい、ことしもまた一応予定をさせていただいていますが、全体でいくと、その二軒で千二百人ぐらいの宿泊を今いただいております。

 なので、あんな山の中であいつらはどうして暮らしているんだやと思いきや、実はそういうつながりがあって、割と商売にはなっている。大きなマーケットではないですけれども、先ほど言われたように、個のつき合いの中で、つながりの中で商売をしているというのが現状であります。

村岡委員 四人の参考人の皆さん、どうもありがとうございました。

宮腰座長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀と申します。

 本日は、四人の参考人の皆様、本当にここまで多くの貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。私で最後の質疑者ということになりますので、多少細かい御質問などもあるかもしれませんが、ぜひよろしくお願いをいたします。

 私は宮城県の人間ですので、当然、宮城県もかなり自信を持って農業県であるということを申し上げさせていただいているんですけれども、やはり米の生産といったところでは、新潟の皆さんにまだまだ学ぶべきことがあるというふうに、現地の生産者の方も思いながら生産に取り組んでいるとよくお話をしています。

 早速なんですけれども、今回、政府側から出されている法案と、それから民主党さんを中心に野党からの提出ということで、大きく二方向から出ている法律案というものを私たちも審議させていただいているという形なんですが、非常に簡略化して両者の差を考えていくと、最終的に、ここまで四年間やってきた戸別所得補償をどう扱うのかというところに基本的には落ちつくんだと思っています。

 先ほど布施参考人のお話の中にも、これまでこの四年間やってきた、今後もそれが続くという前提でいろいろな投資をされた、これは、どの地域、どの農業者の方に聞いても、やはり、それはもうそのとおりですというふうにおっしゃっているので、だからこそ、政府側としても、将来的に戸別所得補償をやめていく中で、その激変緩和措置という形で七千五百円にしましたけれども、それを五年間続けていくということをされているというふうになっております。

 それで、これは四人の皆さんそれぞれのお立場でお答えをいただきたいと思っているんですが、この戸別所得補償が、もともとなかったわけです。ない中で、ほかにもいろいろな対策があったんですけれども、この戸別所得補償に関しては全くないところから、民主党政権になってから加わった制度である、簡単に言ってしまえばそういうことになると思うんですが、だからこそ与党案の方ではこれをなくそうというふうになっているわけなんですが、もしこの戸別所得補償というのが制度としてなかった、今までなかったんだという場合に、それぞれのお立場で、今どういう姿になっていたのか。

 今はその制度があって、それをなくすからいろいろな弊害等々、その特殊な弊害というのも出てくるんだと思うんですけれども、もともとこれはなかったんだよということであれば、それぞれの地域、あるいはお仕事の環境というのがどのようになっていたかとお思いになっているかというのをお一方ずつお伺いしていきたいなと思います。

藤田毅君 戸別所得補償について、僕も三十何年かやっていたこともありまして、続くということに、僕はうのみにはしていませんでしたので、最初から、ちょっといいかなぐらいな感覚は持っていました。

 もしもなかった場合、もともとなかったわけですから、その中で、ほかの作物へのインセンティブを何か持つという仕組みの中で、うちとしては、ホールクロップであったり、そういうところに重きを持っていただいたというのはとてもよかったなという部分があります。

 ただ、今言うように、戸別所得補償制度自体は、ずっと続くかどうかはとても不安でしたので、それを当てにはしていなかったなと僕は思っていますし、うちの経営の中で、全体の中では、ウエートとしてはそんなに大きくはなかったということも確かです。

布施学君 私の会では、もし仮になかったら、そこまで勝手に、当てにして、大型の機械を設備投資したりはしなかった人が多かったんではないのかなと思います。

 また、せっかく一万五千円いただいているにもかかわらず、こういうことを言うのは問題があるのかもしれませんが、一気にここまで、新潟産の米価も一万三千七百円なんという価格にまで一般コシは下がってこなかったんじゃないのかなというふうにも考えています。もらえるということは、それだけ作付するわけですから、当然作付量も多少ふえたでしょうし、米価がここまで、全部とは言いませんけれども、下がってきた要因の一つではあるのかなと思います。しかし、それをいただかないと成り立たないのが、我々の会だけではなく、農業者の皆さんだと思っております。

 以上です。

野口和広君 お答えいたします。

 もともとなかった制度でございます。そうした中で、私どもは、規模拡大とか、強い経営体をつくるために一応努力してきたわけでございます。

 この所得補償については、先ほど申し上げましたように、いつまで続くのかなという部分もございました。

 私どもとすれば、農業をなりわいとしている担い手に対して集中した支援が必要かなという感じはしております。そういった意味で、私どもとすれば、限られた条件の中で努力していく、そういったことが大事かなと思っております。

鈴木貴良君 先ほど私が出させていただいた資料にもありますけれども、農業大学校の生徒の数も、戸別所得補償が出たらがんと上がるんですね。ということは、マスコミでも、今、農業はこれだけ所得は上がるような仕組みになったんだよとばんばん流しましたので、世の中が農業を見る見方がやはり変わったと思います。制度がなくなるというのもばんばんやっていただきましたので、このグラフにイコールではないと思いますけれども、そういう傾向はあるんじゃないかなと思います。

 やはり、あのとき、年末に大量にお金が入ってきまして、皆さん、農家の方はなかなか使い方を知らない人が多いですから、年末に入ったらそっくりそのまま抱いていて、確定申告にほとんど持っていかれたという方も結構おられたかと思うんですね。

 ですから、私が思うには、そういう制度は投入して、しっかり農家から稼いでもらって、さらにそこから税金を、私たちは税金を払いたくないわけじゃなくて、一生懸命払いたいんだけれども、そのチャンスに恵まれていないだけの話でありますが、だから、じゃんじゃん出していただいて、じゃんじゃん税金を納めるという方が私はいいと思いますので、ぜひ、今後ともそういうチャンスがあったら続けていただくようお願いしたいと思います。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 最後の鈴木さんのお話は、こちらから出したものがある意味後で回収されるというようなイメージなのかなと思ったので、なるほどと思いましたが、今の質問は、結局のところ、戸別所得補償がなかったとして、それでどのぐらいやっていけたんだろうなと。それでも何とか知恵を出して皆さんに継続して営農していただいていたのか、もしくはそうではなかったのかというところが、考える上で非常に重要なんだなと思っています。

 私たちは、維新の会さんもそうですけれども、与党の方でもないですし、民主党さんともまたちょっと違う立場というところで、そういう意味では、ちょっと冷静に見ていきたいなというふうに思っています。

 これは布施参考人に改めてお伺いしたいんですけれども、とはいえ、四年間やってきましたので、先ほどおっしゃったとおり、設備投資等々をした方が多いと。それが七千五百円に一気に半減し、さらには五年後にはなくなるというようなことが発表になったわけで、それはもうやっていくことになるという前提で一応話をしますと、なくすにしても、七千五百円に半減された上で五年間でなくすというこのやり方が、現場でクリアできるかどうか、現場で乗り越えていけそうなレベルなのか。もしくは、これを言い出したら当然そっちの方がいいということになると思うんですけれども、もう少し期間をかけるとか、段階的に落としていくとか、そちらの方だったらまだ乗り越えていけそうだとか、そのあたりの御意見をいただきたいと思います。

布施学君 戸別所得補償制度につきましては、生産調整ときちっとリンクさせるべきものだと思っております。

 戸別所得もなくした上に生産調整もなくなりますと、そうなると、生産調整がなくなって、恐らく米価は一気に下がるでしょう。下がったときに、この一万五千円があれば、仮定の話として、継続をされていれば、まだ何とかなるのかなと思いますけれども、生産調整がなくなって、仮に新潟産一般コシが一俵八千円に下がったときに、当然大赤字ですよね。それに輪をかけて、戸別所得で今までもらっていたのが、一万五千円が七千五百円になり、最後はなくなりましたですと、もうギブアップせざるを得ないでしょうね。

 どんなに頑張っても、現状でほぼコスト割れをして、ほかのきちっとされている皆さんから見れば、経営者としての企業努力があなたのところは足りませんと言われるかもしれませんけれども、少なくとも、私の会を見ていますと、生産調整とリンクして考えるべきもので、両方同時になくなると、恐らく本当に、無理というよりギブアップですよね、そう思います。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 今お話の中で、経営努力が足りないと言われてしまうかもしれないというお話だったと思うんですが、私は、いわゆる布施さんのようなお立場の方がほとんどなんじゃないかなと思うんです。もちろん一部に、物すごく努力を、工夫を重ねてそれを乗り越えていこうという方もいらっしゃるとは思うんですけれども、一般的にはそうだと思うので、だからこそ、今のこの七千五百円に落としてという方法が、なくすにしてもいい方法なのかどうかというのはもう少し考えなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っています。

 次に、野口参考人にお伺いをしたいなと思っているんですが、済みません、やゆするわけではないんですけれども、民主党さんの戸別所得補償については、戸別所得補償で集落営農が増加したという御説明をよくいただきます。

 確かにそのとおりなんですね。ただ、委員会の中でも一度指摘をさせていただいたことがあるんですけれども、初年度は物すごくふえました。集落営農数が千ぐらいふえて、ただ、その翌年がそれほど、その年ほどは伸びなかったという格好だったものですから、私自身は、所得補償があるから集落営農というのとはまたちょっと違うのかなと思っているんです。

 実際に、行政の側の立場から、戸別所得補償が集落営農などに寄与した度合いというのは、肌感覚で結構なんですけれども、どのぐらいのものだったのかなとお伺いしたいんですが、お願いします。

野口和広君 お答えいたします。

 私どもが集落営農を始めたきっかけというのは、やはり強い経営体をつくる、また、先ほど申し上げましたように、仮にWTOを国が批准した場合に、日本の農業は大変なことになるでしょうということで、やはり強い経営体をつくっていかねばならない。一番先に大変になるのは兼業農家ですから、そういった兼業農家の集まりを大至急つくって、そして国の支援を受けられる体制をつくっていくということから始まったものでございます。大多数の集落営農の法人化については、大体十九、二十年、今も続いておりますけれども、そういった形でできた状態でございます。

 そういった中で、一応戸別所得補償をいただいたわけでございますけれども、経営的には若干プラスになった部分かなと思っておりますが、基本は、する努力をし、そして経営が成り立つような努力をしていかねばならぬのかなと思っております。

 以上です。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 この戸別所得補償のところを今後どのように考えていくかというのが、今回の双方の法案を判断する一番大きな要素だと私は思っているので、私たち結いの党というのは非常に小さい政党なんですけれども、私たちは、むしろEU、ヨーロッパ型の直接支払いの制度を参考にしてやっていくべきだというようなことも言っております。ただ、それがどれだけ現実的かというのも、これから法案の審議の中で政府側の答弁をいただきながら考えていくことになるとは思うんです。

 ちょっと話はかわりますが、これは鈴木参考人にお伺いしたいと思います。

 今、私は宮城県の仙台市というところにおります。仙台というのはおもしろいところで、東は海岸線なんですよ。一番西はどこまで行くかというと、山形の県境まで行くんですね。海から奥羽山脈まで、帯のようになっているところでして、もちろん平野部でやっている水田農業もあるんですけれども、一方で、中山間地、山沿いの方に行くと、そちらで今までずっと水田などで耕作していた方もたくさんいらっしゃったわけです。

 ところが、そちらの、いわゆる山の方にいらっしゃる農業の方に聞くと、中山間地域に対する支援があってもなお、営農していくモチベーションがないということをよく言われます。これは特殊な要因だと思うんです。

 例えば、仙台市というのは非常に大きい都市なので、しかも車で一時間以内で行けてしまう地域ですから、そうすると、そちらで仕事を探した方がいいんだとか、あるいは、もう農業は引退をして、ほかの方法で所得を上げていった方がいいんだという考え方になってきているんですけれども、先ほどおっしゃった中で、逆に、通いで農業をするということができなくはない地域なんだろうなというのは常々私も思っています。それは仙台という特殊な地域事情ということもあるんですが、一方で、中山間地域に対する支払いが今後どうあるべきかということも含めて、私自身は、実は解決策が見出せない、非常に悩ましい中でおります。

 鈴木参考人に、今御自身のやられている地域でということで結構なので、今後、こういう形で農業がやっていけたら続けていけるんじゃないかとか、あるいは新しい方が入ってくるんじゃないかとか、その上で、政府というか国には、例えばこういう支援があるといいんじゃないかとか、もしそういった御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

鈴木貴良君 実は毎年二月に仙台でセミナーがありまして、私も茂庭荘というところに毎年泊めさせていただいて、すばらしいロケーションのところで、大好きであります。山も海もきれいで、でも割と基盤が小さくて、山合いの中の小さい基盤のところで頑張っておられるなという気がいたしました。

 でも、雪はないんですね。うちの方は、やはり三メーター、四メーターの雪が降りますので、冬は過酷で、まだ田んぼにたっぷり雪があります。そういった環境でありますので、ちょっと違うかもしれませんけれども、先ほど言ったように、やはり自然減で少なくなってくるのは私は仕方ないと思うんですね。そこに住んでいた人だからできることで、そうでない、外から連れてきたりとか、新たな人がそれを担うというのはかなり厳しいと思います。

 先ほど言った、高柳で一番面積をやっている方が一番奥の方にいるんですけれども、その方が言われた言葉が、俺だからできるので、俺みたいなことを人にさせようと思ったらできないから、俺は従業員を雇わないというふうに言われていました。その人と同じ仕事をさせるには、三人も四人もプロの方がいないとやはりできないんだろうと思います。

 その方は、この直接支払いについて、すごく造詣が深かった話を幾つかしてくれたんですけれども、その一つの中で、先ほど言った中山間地もいろいろな形態があって、形はやはり違うと思うんですね。一律にはなかなか難しいと思うんだけれども、一つのやり方として、実績払いという仕方はどうだろうか、そういう提案をされていました。

 五年間の協定を結ぶには、これから、また第四期が始まりますけれども、皆七十歳近くなっていれば、考えてしまうと。だけれども、ことし、これだけ頑張った分を査定してもらうというやり方であれば、百姓というのは、大体、一年、来年ひとつ頑張ろうという気にはなるけれども、あと五年というのはなかなかハードルとして厳しいと思いますので、そういうやり方もいいんじゃないかなというふうにその方は言っておられました。

 私としては、徐々に、多分周りから減ってくるので、中核となる地域に対してもっとしっかり支援をして、周りの防衛線を築くというのもやはり大事なんじゃないかなという気がします。

 田んぼというのは、大体、川筋といいますか、川下へだんだん集落がおりていきますので、その手前で、災害とかにならないような、管理ができるようなところで防波堤を一つつくっていく、集落に維持をさせる力をつけるというのがやはり大事だと思います。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 私の地域だけじゃなくて、全国の中山間地域、地域それぞれの事情というのもやはりあると思うので、そこに合わせたことを考えていく上で、今の御意見もひとつ参考にさせていただきたいなと思っています。

 時間はまだ少しありますか。では、最後に一つ質問させていただきたいんですが、これは藤田参考人にお伺いをいたします。大変細かいところの質問です。

 お話の中に、先物市場のお話が出てまいりました。私自身も、この先物市場というのをうまく使えないものかなというふうに思っているところがありまして、ただ、今は試験上場という形でやっております。

 どういう状況かというと、特にふえているという状況ではなくて、今、横ばいの状況だと聞いています。もちろん、うまく機能すればセーフティーネット等の一つとして活用できるんじゃないかなと思っているんですけれども、一方、扱える米というのが、標準的な米というくくりのみなんですよ。米は、本当に産地によっていろいろな銘柄があって、値段もそれぞれ違うという特徴があるものですから、標準米というのをどういうふうに決めるかにもよるんですけれども、全部の米をそれで扱えるわけではないよということになります。

 その上で、この先物市場というのがちゃんと機能しますよとなったときに、皆さんの経営にどのぐらい先物市場が貢献できそうなのかな、実際にこれがあったら非常に経営が楽になるというか、そういう要素が強いのかどうかというのを率直にお伺いしたいと思います。

宮腰座長 時間が参っておりますので、藤田君、手短によろしくお願いします。

藤田毅君 これは、数百ヘクタールを耕した場合に、三割、二割をちゃんと確定して、リスクヘッジするために必要なのかなと。これがあることで、いろいろなところの販売、要するに一括集中するというのは非常に厳しいという中で、それが生きてしまえば可能性を持っているし、品種は選べると思いますので、いいかと思います。

林(宙)委員 どうもありがとうございました。

 きょうは、四人の参考人の皆さんに、本当にたくさん示唆に富むお話を聞かせていただきました。また、私たちも国政にしっかりと生かしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

宮腰座長 以上で委員からの質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 意見陳述者の皆様方におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。

 本日拝聴させていただきました御意見は、当委員会の審査に資するところ極めて大なるものがあると考えております。ここに厚く御礼を申し上げたいと存じます。

 また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 本日は、これにて散会をいたします。

    午後零時十八分散会


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