衆議院

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第14号 平成26年5月14日(水曜日)

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平成二十六年五月十四日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 坂本 哲志君

   理事 北村 誠吾君 理事 齋藤  健君

   理事 谷川 弥一君 理事 宮腰 光寛君

   理事 森山  裕君 理事 大串 博志君

   理事 村岡 敏英君 理事 石田 祝稔君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      池田 道孝君    小里 泰弘君

      加藤 寛治君    門  博文君

      金子万寿夫君    川田  隆君

      菅家 一郎君    清水 誠一君

      末吉 光徳君    鈴木 憲和君

      武井 俊輔君    武部  新君

      津島  淳君    中川 郁子君

      橋本 英教君    福山  守君

      堀井  学君    簗  和生君

      山本  拓君    渡辺 孝一君

      後藤  斎君    玉木雄一郎君

      寺島 義幸君    鷲尾英一郎君

      岩永 裕貴君    鈴木 義弘君

      村上 政俊君    稲津  久君

      樋口 尚也君    林  宙紀君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   農林水産大臣政務官    小里 泰弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣府地域活性化推進室室長代理)        富屋誠一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            遠藤 俊英君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            山下 正行君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  佐藤 一雄君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           雨宮 宏司君

   政府参考人

   (林野庁長官)      沼田 正俊君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           広畑 義久君

   農林水産委員会専門員   栗田 郁美君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三十日

            補欠選任

             金子万寿夫君

五月十四日

 辞任         補欠選任

  武部  新君     門  博文君

  橋本 英教君     安藤  裕君

  畑  浩治君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     橋本 英教君

  門  博文君     武部  新君

  鈴木 克昌君     畑  浩治君

    ―――――――――――――

五月十三日

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案(内閣提出第八一号)は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案(内閣提出第八一号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

坂本委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長山下正行君、生産局長佐藤一雄君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君、農林水産技術会議事務局長雨宮宏司君、林野庁長官沼田正俊君、水産庁長官本川一善君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣府地域活性化推進室室長代理富屋誠一郎君、金融庁総務企画局審議官遠藤俊英君及び国土交通省大臣官房審議官広畑義久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子万寿夫君。

金子(万)委員 こんにちは。鹿児島二区の補欠選挙で当選させていただきました金子万寿夫でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 委員長も、隣県のよしみで、どうぞよろしくお引き回しくださいませ。

 今回の選挙で、私も、有権者の皆さんとじかに接しながら、多くのことを学ばせていただいたと思っております。私は、安倍政権に対する期待というのは非常に高かったな、率直にそういうふうに感じます。それと、経済政策についても確実な景気回復の道を歩んでおりますし、また、国の基本政策に正面から向き合っていく政権の姿勢というものも高い評価がある、このように感じておりました。

 ただ、景気のことにつきましては、やはり有権者の皆さん方は、それは東京の話じゃないか、大都市のことを東京と称しているんでしょうが、大企業の話ではないか、私たち鹿児島には景気回復なんて遠い話のようにしか思えない、こんな話が多くございました。確かに、これからの安倍政権の成長戦略、やはり一番目に取り組むべき課題は、この景気回復の波を全国、地方にしっかり届けていく、底上げしていくということが大切なんだろう、第一の大きなテーマではないか、このように思っております、躍動感も感じられますけれども。

 ただ、地方も、みずからの地域の景気、雇用を含めた活力を高めていくためには、やはり地方みずからが打って出る必要があると私は思っております。国の施策にただ委ねるということではなくて、地方みずからがそれぞれの地域にある素材を、成長戦略はそれぞれの地方が持っているわけでありますから、それをしっかりと生かし切っていく、そして景気回復の波を引き寄せる、つかみ取るという、やはり地方側から打っていくという姿勢も必要であるし、また国の方は、連携をしながら、それを支援していく、そういう部分が大切なのではないだろうかというふうに感じさせていただきました。

 その中で、鹿児島は、特に全国第四位の生産高、生産量を誇る農業県でありますが、TPPが当然大きな話題になるわけであります。ちょうど二十三日には、オバマ大統領が選挙期間中にお見えになったわけでありまして、その当時の新聞報道でいろいろと出てまいりましたので、農家の皆さんの危機感というか不安感が非常にピークに達していた時期が二十二、三、四日、この辺だろうと思っておりますけれども、そういうときに、林大臣が二十六日にお見えいただきまして、大変ありがとうございました。明確なお話をしていただきました。そのことも心から感謝を申し上げたいと思っております。

 そういう中で、私は、今農家の皆さんがお話をするのは、やはり国会決議をしっかり守ってくださいよ、そしてもっと私たちにいろいろな情報を与えてくださいよというのが農家の皆さんの大きな声だと思っております。金子さん、TPP、大丈夫ですよね、こうおっしゃるものですから、それは議院内閣制だから、両院の決議はしっかり守るというのは政府としては当然の話だ、私はこういうふうに申し上げておりました。

 また、安倍政権というのは、交渉力という点において、これまでの内閣とは違った強い交渉力を持っておられる内閣だ、こういうふうに私自身は評価をいたしておりましたので、そのことをお話ししながら、日本の農業をしっかり守る役割を果たしていきたいということを有権者の皆さんにも伝えたところでありました。

 そういう中で、この委員会では、このことについては今日までいろいろな議論がもうなされた話なのかもしれませんが、新人議員のゆえをもってお許しをいただきたいと思っているわけでございますけれども、大臣のTPPに対する、現状に関する御認識と、また交渉に臨む決意、このことをまずお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 まずは、金子議員、当選、まことにおめでとうございました。こうして初当選後すぐに御質疑に立たれるということで、私もうれしく拝見をしておるところでございます。

 あの日米首脳会談がちょうど選挙の真っ最中、最後の段階であったというお話がありましたけれども、この日米首脳会談で、日米間の重要な課題について、前進する道筋が特定をされた、こういうふうに承知をしておりまして、今後は、残された課題を解決するために、早期の妥結に向けて精力的に交渉を続けていくことになるということでございます。

 次回のTPPの閣僚会合ですが、五月十九日から二十日にかけてシンガポールで開催をされるというふうに聞いております。

 農林水産物を含む二国間の市場アクセスや、またこれ以外に、御案内のように、ルール分野が幾つかございまして、未解決の課題についてそういったところで交渉が行われる、こういうふうに考えておりますが、今行われております首席交渉官会合において、閣僚会合で議論すべき具体的な課題について、整理をする作業が行われているといういうふうに承知をしております。

 これは何度もここでも申し上げていることでありますが、この交渉に当たっては、重要五品目などの聖域の確保を最優先する、この衆参両院の農林水産委員会決議を踏まえて、国益を守り抜くように、全力を尽くす考えであります。

 日米協議に関して、特に候補者として一番御心配なさったところだと思いますが、さまざまな報道があったわけでございますが、交渉の具体的中身はお答えできないわけでございますけれども、個別のラインの関税率等について、日米間で合意をしている事実はないということを申し上げておきたい、こういうふうに思っております。

金子(万)委員 ありがとうございました。ぜひ今の御答弁の趣旨に沿って頑張っていただきたいとお願いを申し上げたいと思います。

 私の選挙区は鹿児島第二区、谷山というところと指宿市、そして南九州市の一部、奄美群島です。奄美群島が私は出身地であります。県議会時代は、奄美群島から議席を得ておりました。議長や副議長を長くやっておりまして、議会質問というのは十年ぶりぐらいになるのかなと思って、委員会室に入ってすぐ質問というのも、ちょっと戸惑いもあったりするわけでございますけれども、ひとつよろしくお願いいたします。

 その奄美群島、南西諸島のサトウキビ、五品目の一つに挙げられているわけでありますが、サトウキビ農業は日本に南西諸島だけです。そして、あの地域、サトウキビの歴史とかいろいろなことについては、もう私が申し上げることもございません。現状についても申し上げることはございませんが、このサトウキビ農業なくして、あの南西諸島は、島は成り立たないわけであります。全くの基幹産業です。台風にもある程度強くて、そういう農業形態を歴史的にずっと続けているわけであります。

 このサトウキビも五品目に入っているわけでございますけれども、南西諸島のサトウキビ農業だけは絶対に守らなきゃ、もう島そのものが消滅してしまうという危機感が当然あるわけであります。何とかサトウキビは大丈夫じゃないかなんていう話を私もするんですけれども、やはり、農家の皆さんは、新聞を見るたび、テレビを見るたびに、心配が絶えないというのが現状だ、こういうふうに思っております。

 交付金制度と買い取り価格で成り立っておりますけれども、交付金も、自民党政権になってから四百二十円ぐらい上げたんじゃないでしょうか。そのことについては、島民みんな感謝をいたしておりますけれども、今後の施策等を含めて、TPPに関するサトウキビ農業はどのような状況に、交渉段階で話題になっているのかを含めて、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

小里大臣政務官 まずは、金子委員の国政への参加、そして当委員会への参加を同県人としても心から歓迎を申し上げ、そして期待を申し上げたいと思います。

 サトウキビについてお尋ねでございます。

 言うまでもなく、砂糖は、国民の生活上不可欠な基礎的食料でありまして、その原料であるサトウキビは、委員から御指摘のとおり、南西諸島における基幹作物として、野菜や畜産等々と大きな柱をなす作目でございます。そしてまた、製糖工場とともに、地域の雇用、経済を支える大変重要な役割を果たしておると認識をするところでございます。

 御指摘のTPP決議において、重要五品目の中で明確に位置づけられております。これを必ず守っていかなければなりませんし、守っていけると確信をしておるところでございます。

 また、サトウキビは、戦略的な、国家にとっての重要な作物として、これまでもお話をいただきましたような品目別の経営安定対策を初め、あるいは製糖工場等も含めた施設整備等、多岐にわたって支援を行ってきたところでございます。

 また、委員の方がお詳しいところでございますが、目下、単収の向上が大きな課題となっておりまして、そのために、地下ダムの整備あるいはフェロモントラップの普及による病害虫対策等を今急いでおるところでございます。

 総合的に支援を図りながら、しっかりと生産振興を図ってまいりたいと存じます。

金子(万)委員 意外と時間のたつのは早いものでございまして、もう一問ぐらいしかできないかなと思っておりますが、地元のことで少しお話をさせていただきます。

 指宿、枕崎、南九州市、南薩地域といいますが、これは、我が県では、露地、ハウス野菜、そしてお茶、カンショ等々、トップを走る畑作地帯です。ここで、国営と県営のかんがい排水事業がずっと進められておりまして、古いものでは四十年ぐらいになります。漏水も激しくなっておりまして、農業競争力強化基盤整備事業の中で、畑かんの施設のストックマネジメント事業が始まっております。二十五年度から新規に進められているわけでございますが、大体十年間で五十五億から六十億といいますけれども、二十五年、二十六年、大体二億六千、二億八千、こういうふうに予算化をされております。

 これは本当に急がないと、地元の方々の早くやりたい、そんな非常に強い要望がある事業でございます。四十年近くたったものから、順次古いものから進めてはおりますが、これの進捗がなかなか進まないというようなところもございまして、このことについて、どういう御認識を持って今後の取り組みをされていかれるのか、お答えをいただきたいと思います。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 鹿児島県の南薩地域は、畑地かんがい施設が整備されて、お茶やカンショ等が栽培されている県内有数の畑作地域であると承知しております。

 御質問の事業でございますが、お話にございましたように、鹿児島県が事業主体となりまして、この地域の老朽化した畑地かんがい施設を対象に、補修、更新等により長寿命化を図るストックマネジメントを実施する県営事業でございます。平成二十五年度に着工したところという状況でございます。

 この事業は、この地域の畑作農業の競争力を強化して、持続可能なものとするための基礎的な条件を整備する重要な事業であると考えておりまして、今後とも、必要な予算の確保に努めてまいりたいと考えております。

金子(万)委員 もう時間もございません。

 もう一つ、燃油高騰対策なんですね。漁船漁業の皆さんは非常に悲鳴を上げているんです。漁業コスト構造改革緊急対策で四本の事業を進めていただいて、二百二十億ぐらい補正で打っているということだと思うんですが、この中で、特に、私は評価もいたしておりますが、燃油のセーフティーネット事業ですか、これを漁船漁業の皆さん方はなかなか活用ができていない。加入率の問題も当然あるんだろうと思います。やはり漁船漁業の皆さんがもっと活用できるようにしなければならない。

 そこら辺について、政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

本川政府参考人 御指摘のように、燃油価格の高騰を受けて、漁業経営が圧迫されております。これに対応するために、昨年七月から、漁業用燃油緊急特別対策というのを実施しております。それから、昨年度の補正予算で漁業コスト構造改革緊急対策というものを措置いたしております。

 これにつきましては、与党とも御相談をしながら決定をしたものでありまして、全国ベースで我々と漁業者団体で十七回の説明会を開催し、各都道府県でも個別に説明会を開催して普及を図ったところでございます。

 その結果、ことしの三月末の燃油の使用量ベースの加入率でございますけれども、従来、セーフティーネット事業自体は七二%の加入でありましたが、これが今八八%の方に加入をしていただいております。それから、昨年の七月から実施しております特別対策につきましては、八三%の方に加入をしていただいております。

 ただ、これはあくまで燃油の使用量ベースでございますので、燃油の使用量の大きい遠洋の方とか沖合の方が入っておられますので、必ずしも沿岸の漁家の方々が多くお入りいただいているということではないというふうに承知しております。

 今後とも、議員の御指摘を踏まえながら、燃油価格の動向を十分注視しながら、国と漁業者団体が一体となって連携をとりながら、現場へのさらなる周知に努めて、着実な実施に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

金子(万)委員 最後でございます。

 日本の農業はこれでいいのかという思いは、農家の皆さんを含めて、いろいろな思いがございます。大臣のこれからの日本の農業のあり方に対する御見解をお聞かせいただきたいと思います。

林国務大臣 農業従事者が減少また高齢化する、耕作放棄地がふえるという中で、国内の農業の活性化、これはTPP交渉いかんにかかわらず、待ったなしの極めて重要な課題である、こういうふうに思っております。

 このため、昨年末に農林水産業・地域の活力創造プランをまとめまして、生産現場を強化する取り組み、例えば中間管理機構の創設や生産調整の見直しを含む米政策の改革などが含まれます。また、直接支払いの創設など、多面的機能の維持発揮を図る取り組み、輸出促進や国内外の需要を拡大するための取り組み、それから、需要と供給をつなぐ、例えば六次産業化等による高付加価値化などのような、バリューチェーンの構築の取り組み、こういう四本柱でプランをつくらせていただいたところでございまして、ことしはこれを実行していく元年であるということでございます。

 自民党が策定した農業・農村所得倍増目標十カ年戦略の内容も踏まえて、今後の展開方向が示されたところでありますので、食料・農業・農村基本計画の見直し作業の中で、この倍増目標に向けた道筋、具体的な経営発展の姿、こういうものをより具体的なイメージを描くことができるように、検討を深めていきたい、こういうふうに思っております。

金子(万)委員 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 自由民主党の渡辺孝一でございます。

 今回、質問の機会を与えていただきまして、大変感謝を申し上げます。

 さて、私の出身であります北海道でございますけれども、ようやく北の大地にも春が訪れまして、一次産業、特に農業の始動が各地域で顕著にあらわれ、いよいよもって、本当に北海道らしい活気が出てきたところでもございます。農水委員会の縁がございますので、北海道に遊びに来るときには、この委員会にも五名の北海道選出の議員がいらっしゃいますので、いろいろな先生に電話をかけて、ぜひ北海道に遊びに来ていただきたいというふうに思います。

 さて、現在、林大臣を初め政府関係者の皆様におきましては、TPPの問題や種々の農政改革、そして成長戦略、本当に大変大きな問題で、恐らく、この難問を解決するに当たって、日々奮闘なさっているのではないかというふうに思います。改めて敬意を表したいと思います。

 いずれにいたしましても、地方においては、一次産業が基幹産業の町が多く、今後、後継者に引き継がれていく産業になること、そのことで地方の再生や日本の再生につながると考えております。私たちに与えられた責任というのは大変重いものだというふうに感じて、日々政治活動を行っております。

 さて、質問に移りますけれども、まず一点目でございます。成長戦略について若干お聞きしたいと考えております。

 先般、四月十九日ですか、私の地元に二十四の市と町のブロックがございますけれども、この地区で、JAの組合長会、さらには北海道庁の主催によりまして、六次産業化、輸出戦略のセミナーを開催いたしました。農林水産省より担当課長を招き、二百名ぐらいに上る参加者、この参加者は、組合長を初めとした農業関係者、さらには自治体首長、あるいは商工関係者、商工会など、今後、六次産業化あるいは輸出戦略に大きくかかわる面々に参加していただきました。

 そのセミナーの中の意見交換、さらには、その後の懇親会の中でも非常に活発な意見が出まして、担当の佐竹課長以下、職員の皆様には大変御苦労をかけたのかなと思いますが、農水省の全面的なバックアップにより、セミナーも大成功いたしました。

 その中で、総じて私が感じたことは、六次産業化、海外輸出に関しましては、やはりしっかりと、国と都道府県あるいは市町村、さらにはJAを初めとした農業団体、商工業者、そして生産者などが、一つの目標に向かって責任分担を明確にしていかないと、なかなかゴールに行かないのではないかというふうに私は思いますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 先生おっしゃるとおりだと思っておりまして、六次産業化の取り組み、これは今お話があったように、国や地方公共団体、JAなどの団体、商工業者、それから生産者の皆様、関係者が連携をしながら、それぞれの役割分担のもとで、目標を持って推進していくということが大変大事だと思っております。

 都道府県、都道府県サポート機関、農政局、地域センター、関係団体、商工関係団体、こういう皆さんを構成メンバーとしまして、六次産業化の推進体制を構築して、こういうもので取り組みを支援しているところでございます。

 関係機関のネットワークを強化して、情報共有を図りながら、それぞれの経営の発展段階、スタート地点から少し発展してきて、また大きくなっていく、いろいろな発展段階がございますので、こういう段階に応じた支援策というものを実施することで、地域ぐるみで六次産業化の取り組みが展開されるように推進をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 であるならば、やはり国としての責任を、数多くある中で、参加者の声としては、本当に単刀直入な声でございますけれども、要するに出口までは我々が頑張らなければいかぬな、しかし、出口、いわゆる日本から海外に行くという話になると、とてもじゃないけれども、我々では太刀打ちできないという声が多くありました。

 具体的な例としては、例えば海外との交渉、これは特に国と国のルール等々にも大きく影響が出るでしょう。また、拠点づくりに関しましても、ただ単に地元にある備蓄倉庫あるいは各種施設を使うだけで、果たしてしっかりとした輸出戦略ができるんだろうか。また、いわゆるコンダクター、総合的なプランニングをしっかりと立てられる人が果たして地域でいるんだろうか。

 佐竹課長以下の説明の中には、いわゆる人材派遣や育成の点まで触れていただき、地元でも育てなきゃいけないというふうには思いますけれども、そこまで行くのにかなり時間を要するのではないかというふうに思いました。

 もちろん出口までは、先ほど言いましたように、地域の問題ではございますけれども、何か国として、やはり責任分担の中でしっかりと指導を、さらには、これからも地方を引っ張っていくような制度、政策を打っていただくことを心からお願い申し上げたいというふうに思います。

 次に、農政改革につきまして、地元の農業関係者には、正直言いまして、まだぴんときておりません。JAを中心に、この改革につきましては、しっかりと窓口を創設し、農業者の方々に逐一説明をしているようでございます。担当の方と会いまして、いろいろとお話を聞いたところ、先生、とどのつまり、私の所得はこの秋どうなるんだろうというのが非常に究極的な質問で、大変多いというふうにお聞きしました。

 そうはいいましても、個々の経営体の状況というのは当然複雑で、なかなかJAの職員は、事細かく詳細に指示、御説明できない、そういうことも聞かせていただきましたし、当然、出来高あるいはできぐあい、さらには市場の原理等々も、いろいろなことが絡むのでそこまではいかないんですけれども、理解していただくには、まだかなり時間が必要ではないかというふうに感想を言っておりました。

 林大臣がよく言われますけれども、いわゆる生産性を向上することは、これはもう大いにやっていかなければいけない。しかし、その一方で、やはり経費の削減というのもしっかりやっていかなきゃいけない。そのことで所得向上に大いにつながる、私も同感でございます。

 確かに、経費削減がどこまでできるか。これは、まずは農家個々人の努力が原点だと思いますけれども、今当地では、実は農水省の面々と、いわゆるICTを活用した農業というものの研究に入っております。この実現性というのは、かなり魅力はあるんですけれども、まだまだ一般化されるには時間がかかるのかなと思っております。

 関係者と話をすると、例えば無人作業機で作業が進んでいくということになれば、八十歳になったって農業ができるよ、あるいは中学生ぐらいの子供でも、今のICT世代の子供たちなら、機械の操作というのも十分できるのではないか。そういう意味では、無限の可能性があるというお話を実は聞きました。

 さらには、GPSを活用した農薬散布等々の状況をしっかりと衛星上から確認できれば、一度まいたところにさらにまた農薬を散布しなくてもいい、そのことによって経費も削減するのではないかという研究まで進んでおります。

 ですから、私は、これからの人口減少、さらには労働力不足、高齢化、いろいろな問題がありますけれども、ぜひこのICTを農業にどんどん活用していただけたらなと思っておりますけれども、農水省はどこまで進んでいるんでしょうか。

佐藤政府参考人 渡辺先生の御質問にお答えします。

 今先生御指摘いただきましたように、ロボット技術あるいはICTの活用というのは、農業分野において、労働力不足あるいは高齢化といったさまざまな問題を抱えている中で、その克服につながると期待されておりまして、先生の地元の北海道では、先ほど出ておりましたが、施肥などの農作業の省力化、効率化に向けまして、農業用GPSガイダンスの導入が進んでいると承知しておるところでございます。

 このような状況を踏まえまして、農水省では、ICTの導入による生産性向上や経費削減等の効果を定量的に検証するための実証事業、これは全国四地区でございますが、これを本年度から開始したところでございます。

 この実証で得られました成果につきまして、成功モデルとして全国展開することにより、我が国農業の生産システムの高度化を図ってまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

渡辺(孝)委員 今の農業の抱えている問題の解決の一助になっていただくように、ぜひ局長、これからもよろしくお願い申し上げます。

 さて、二点目ですけれども、国の制度の中で、いわゆる成長戦略の中で、農地集積という目標がございます。

 我が北海道は、例えばお米に関しましても、日本全国の平均一戸当たりの作付が一ヘクタール、ところが北海道は七ヘクタール。実に七倍になりますけれども、農地集積はさらに加速していくのではないかというふうに思います。そういう大型になる時代が、今も現象として起こっておりますけれども、今後もそれにますます拍車がかかっていくのではないかというふうに思います。

 それに伴いまして、やはり農機具等の機材関係の負担も比例していくのではないかというふうに私は思っております。というのも、現場の農家の方々にいろいろ聞きますと、たしか十年ぐらい前は七十馬力が主体となった機材、機具関係が多かった、ところが、これからは百馬力の機能を持った農機具が必要な時代が来る、また農地がそれだけ広くなっていけば、それだけの力がないとなかなか農作業が進まない、そんなお話も聞きました。

 先ほどICTのお話を申し上げましたけれども、例えばICTを搭載した機材に関しましても、今の国の制度の中ではしっかりと補助制度がございまして、大変地元では喜んでおりました。しかしながら、残念なことに、従来の農機具にICTの設備を搭載した場合に補助対象にならないということで、ちょっとちぐはぐではないかというような意見が出て、先生、農水省に何とかかけ合ってくれなんということがございました。

 それで、私も申し上げたこともありましたので、それが今どうなっているのか、ちょっと教えていただきたいなと思います。

奥原政府参考人 ICT、特にGPSを搭載した農業用の機械の問題でございます。

 GPSを搭載いたしますと作業が正確にできるようになりますので、例えばトラクター等の走行距離が短くなる、あるいは作業時間も短くなる、それから、作業の重複ですとか作業漏れの地域もなくなるということで、やはり作業の効率化に相当な効果があるというふうに考えております。

 従来は、経営体育成支援事業で機械の助成をいたしますときに、GPSを搭載されている機械を取得する場合は対象になっておりましたが、機械を持っている場合に、GPSだけを後から取得してつけるという場合には補助の対象になっておりませんでした。

 ですが、ここにつきましては、各都道府県等からの要請もございまして、二十六年度から運用を改正しておりまして、GPSを単独で取得して機械に装着をするという場合につきましても、ほかの用途に使われない、それから農業経営において本当に必要であるといったような要件を満たしていただければ、これも助成対象にするという形で運用改善を図ったところでございます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございました。

 ぜひ、このICTの活用につきましては、もっともっと地元の研究会等々の方々と議論をしながら、一地域だけの話ではなく、全国的に今の農業の抱えている問題の解決の一助になるように努力しますので、これからも御指導をよろしくお願い申し上げます。

 最後になります。もう大臣は耳にたこができるぐらい、おまえ、もうわかっているだろうというふうに言われるかもしれませんけれども、TPPについて若干お話を申し上げたいと思います。

 実は、これも我が地元にというか全国にあると思うんですが、地方議員連絡協議会というのがございまして、二十四の市と町の空知という我がブロックの中には、自民系、保守系のいわゆる市町村議員が百余名いらっしゃいまして、先般、その総会に出席をしてまいりました。

 そんな中で、TPPの話、その際、林大臣の言葉や、もちろん安倍総理や幹事長の声を、私が代表させていただき、しっかりと皆様方に御理解をいただくよう、そして、みんなで頑張ろうというようなかけ声をかけるのはいいんですけれども、逆にその総会の席で質問を受けまして、こんなことを言っている方もいらっしゃいました。石破幹事長が言うには、統一地方選挙は第三ステージだ。つまり、この統一地方選挙をもって、初めて本物の政権になるんだということを言っているはずなのに、なぜこの統一地方選挙に向けて、いわゆる消費税の問題や、あるいはTPPの問題で我々に責任を押しつけるんだというような質問をされたときに、正直言ってたじたじになりました。

 もちろん地方議員の皆さんに、ここにいらっしゃる国会議員の皆さんも、もちろん政府も、何も地方議員に責任を押しつけるなんてこれっぽっちも思っていないはずなんですけれども、なかなかその辺がうまく伝わっていない。そして、結局、中には、国政選挙でしっかりと信を問えばいいじゃないかというようなお声もございました。

 また、ほかの例で言いますれば、おとつい西村副大臣が札幌に入りまして、その際、経済団体の方々との懇談で、私も参加をさせていただきましたけれども、商工会議所の高向会頭が、正直に、我々経済界としてもTPPには断固反対ですという発言をされまして、北海道はTPPにつきましては非常に厳しい風が吹いております。

 そんな中、日がわりのようにマスコミで報道されることについて右往左往し、そのたびに地元に帰り、大臣がこう言っている、総理はこう言っているよ、マスコミの言っているのはあれはでたらめだとか話半分だと言って納得してもらい、そしてまた東京に帰ってきて、逆にいろいろな動きがある中で、その堂々めぐりを続けていくうちに、私は、何だかおかしな話になるのではないかというふうに思っております。

 いま一度、大臣の御決意を聞かせていただき、その声をぜひ地元に伝えたいと思いますので、よろしくお願いします。

林国務大臣 先生のお地元の北海道は、バレイショ、生乳、てん菜、小麦、これは全国一位、米や肉用牛も全国有数の生産地でありまして、我が国の農業生産額の一割、一二%を占める大食料供給基地でございます。

 今お話もありましたように、一次産業の方にとどまらずに、そういった意味で、二次産業、三次産業に至るまで、農林水産物の加工、流通、販売に従事する方は非常に多い、こういうふうに承知しております。

 こういうような関係者の全ての皆さんが、TPP交渉について、関税撤廃による国内生産への影響を懸念して、不安の声を表明しているということは十分伝わってきておりまして、認識しておるつもりでございます。

 TPP交渉に当たっては、このような方々の声に十分耳を傾けながら、北海道を含む我が国の農林水産業、その関連産業に与える影響に留意しつつ、衆参両院の農林水産委員会決議も踏まえて、国益を守り抜くように、全力を尽くす考えでございます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございました。

坂本委員長 次に、樋口尚也君。

樋口委員 公明党の樋口尚也でございます。

 経済が大事だということで、きょうは、株式から商品先物まで扱う総合取引所構想についてお伺いをしたいと思います。

 世界では、株式に加え、金や原油、そして農産品など、商品先物も取引できる総合取引所が主流となっており、政府もその創立を目指しているところでございます。具体的には、商品先物を扱う東京商品取引所と日本取引所グループの統合が想定をされておりますが、監督官庁が違うことなどから、幾つかの課題も指摘をされているところでございます。

 そこで、まず我が国の商品先物市場の現状について。

 世界の商品先物取引がこの十年間で六倍に伸びている一方で、農産品を含めた我が国の商品先物取引は五分の一に減少をしています。国内取引所について、一九九〇年初めには十六カ所あった商品取引所が、昨年、東京穀物商品取引所の解散により、現在は、東京商品取引所と大阪堂島商品取引所の二カ所になりました。

 そこで、まず東京穀物商品取引所の解散の経緯について御説明をお願いします。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 東京穀物商品取引所は、取引量の減少に伴う収支の悪化を踏まえまして、平成二十四年五月に、平成二十四年度内の解散及び関係取引所への市場移管を表明したところでございます。

 その後、東京穀物商品取引所は、平成二十五年二月二十八日の臨時株主総会で解散を決議いたしまして、同年三月十九日付で農林水産大臣の認可を受けたところでございます。

 なお、東京穀物商品取引所が扱っておりました商品については、平成二十五年二月十二日に、米以外の農産物は東京商品取引所に、米は大阪堂島商品取引所に市場移管を行ったところでございます。

樋口委員 今御説明いただきましたとおり、東京穀物商品取引所に上場された農産品については、東京商品取引所と大阪堂島商品取引所に移管をされたところでございますけれども、商品先物市場の現状について、農水省はどのように評価をしているか、お答えください。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 農産物先物市場の取引量につきましては、全般的に大幅に減少しておりまして、近年では、ピークであった平成十三年の三千四百九万枚と比べまして、四十分の一程度となっているところでございます。

 この要因といたしましては、我が国の農産物先物市場につきまして、FX等のほかに魅力的な金融商品が登場したこと、また、現物受け渡し等の取引ルールや商品設計などの点で当業者が使いづらいといったような面があったこと、それから、取引業者に対し累次の規制強化が進められたことなどが指摘されておるところでございます。

樋口委員 今お話がありましたように、ピーク時の四十分の一になっている。だけれども、世界はふえている、日本は減っている、こういう現状かと思います。

 今後、中国、そして他のアジア諸国のさらなる経済成長が見込まれる中、アジアにおけるコモディティー、商品の需要の拡大は必至でございます。トウモロコシや大豆といった穀物の輸入国である我が国にとって、こうした輸入品へのリスクヘッジのためにも、商品先物市場の活性化は重大な課題でございます。

 この商品先物市場の活性化という課題について、農水省としてどのような方策を検討しているのか、御説明をお願いしたいと思います。

林国務大臣 今お話がありましたように、商品先物市場は、公正かつ透明な価格を形成する機能、それから価格変動リスクのヘッジ機能、新たな販売先の提供など、産業インフラとして欠かせない機能を担っておるわけでございます。

 今のまま取引量の減少傾向が続きますと、農業者や食品産業事業者などの当業者にとって、原材料等の調達コストの安定、生産物の販売価格の変動リスクの回避など、経営の安定を図るための手段がなくなってしまう、こういうことになりますので、産業インフラとしての機能が担えなくなるおそれがあるわけであります。

 こういうふうにならないように、商品先物市場の振興を図る観点で、取引所において、まず取引実態を踏まえた商品設計の見直し、それから商品先物取引業者の外務員等に対する研修の充実など、市場活性化に向けた取り組みが進められているところでございます。

 また、政府における規制改革実施計画を踏まえまして、企業における商品先物制度の利用実態に即した会計制度を整備する観点から、先物取引の損益を会計年度をまたいで通算可能といたしますヘッジ会計制度の整備に向けた検討に協力をしているところでございます。

 農林水産省として、商品先物市場が産業インフラとしての機能を引き続き発揮できますように、市場活性化に向けて、取引所に対する指導助言などに努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

樋口委員 ありがとうございます。

 その指導助言を続けていただいて、さまざまな方策をやり、活性化に努めていこうということですが、要するに、外国人の投資家や機関投資家が入ってこないことには、参加者が拡大しないことには活性化というのは生まれないわけだというふうに思っているところです。

 そして、商品先物市場の活性化のために、市場の信頼性の確保が重要な課題でございます。

 商品先物取引については、過去の業者による被害拡大が社会問題化し、平成二十一年の旧商品取引所法の改正を受け、平成二十三年から不招請勧誘が禁止をされたところであります。

 一方、今般、商先法の省令改正案がパブリックコメントにかけられましたが、この不招請勧誘の禁止を換骨奪胎しようとしているとして、消費者委員会などから反発を招いているというふうに報じられているところでございます。

 私は、市場の信頼性を失うような措置は商品先物市場の活性化にはつながらないというふうに考えております。農水省は、どのような趣旨でこの省令改正案をパブリックコメントにかけ、そしてパブリックコメントが終了した現時点でどのように対応していくおつもりなのか、御説明をお願いしたいと思います。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 商品先物取引法における不招請勧誘禁止規則の見直しの関係でございますけれども、商品先物取引市場につきましては、先ほど申し上げましたけれども、FX等の他の魅力的な商品の登場等に加えまして、取引業者に対する累次の規制強化等もあったことから、取引量が大幅に減少し、産業インフラとしての機能が維持できなくなるのではないかといった懸念が生じているところでございます。

 このため、市場活性化のための取り組みの一つとして、先生がおっしゃいましたように、昨年六月十四日に閣議決定された規制改革実施計画におきまして、勧誘等における禁止事項について、顧客保護に留意しつつ市場活性化の観点から検討を行う、こういったことが決められているわけでございます。

 今般の不招請勧誘禁止規則の見直しにつきましては、この閣議決定を受けたものでございます。

 今回の見直し案につきましては、FXなどのハイリスク取引の経験者ですとか、ハイリスク取引について十分な理解があることを確認することができた者のうち、七十歳未満であって、年金生活者でない者、こういう方々に限りまして、電話、訪問勧誘による取引を可能にする内容となっているものでございます。

 この見直し案に対しまして、先生お話がございましたように、消費者委員会から、電話、訪問勧誘を事実上解禁するに等しいものであり、消費者保護の観点から見て重大な危険をはらむものであるとの意見が出されているところでございます。

 こうした中で、この見直し案につきまして、五月七日にパブリックコメントの募集を終了いたしまして、現在、その内容を整理しているところでございます。

 農林水産省といたしましては、今回の見直し案は、取引内容についてきちんと理解できる者のみを対象として行うものでありまして、消費者保護に十分配慮したものになっていると考えております。

 今後は、消費者委員会の意見ですとか、パブリックコメントにおいて提出された意見の内容も踏まえまして、三省庁間で意見交換を行い、市場活性化と顧客保護の双方を満たす内容で規制の見直しができますように実施してまいりたいと考えております。

樋口委員 市場の信頼性ということをベースに、ぜひ実質的な協議をお願いしたいと思っております。

 私は、商品先物市場の活性化という課題に対する方策として、総合取引所を実現することが一つの解であるというふうに考えております。

 総合取引所構想は、第一次安倍内閣時から我が国の重要な政策課題として掲げられたものですが、これまでの議論の経緯を金融庁から御説明いただきたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 総合取引所は、平成十九年に、第一次安倍内閣の経済財政改革の基本方針二〇〇七、いわゆる骨太の方針におきまして、取引所において株式、債券、金融先物、商品先物など総合的に幅広い品ぞろえを可能とするための具体策等を検討し、結論を得るとした閣議決定が行われました。この閣議決定がされて以来、政府の方針として掲げられてきた政策課題でございます。

 第二次安倍内閣におかれましても、昨年、平成二十五年一月には、日本経済再生に向けた緊急経済対策が閣議決定されました。そこにおきまして、アジアナンバーワン市場の構築、日本総合取引所の創設に向けた取り組みの促進という記述が盛り込まれました。

 さらに、昨年六月には、規制改革実施計画が同じく閣議決定されまして、その中で、総合取引所の実現に向けた取り組みの促進が改めて政府の方針として確認されたところでございます。

 このような状況のもと、本年三月には、平成二十四年に改正、公布いたしました金商法が施行されました。総合取引所を実現するために、商品デリバティブ取引を金融商品取引所において取り扱えることとし、総合取引所における商品デリバティブ取引については、金商法に基づきまして、金融庁が一元的に監督することといった内容の規制監督等の法制面での枠組みが整備されたところでございます。

 また、昨年、平成二十五年一月に、東京証券取引所と大阪証券取引所が合併いたしました。それによって誕生いたしました日本取引所グループにおきまして、取引所ごとの機能別再編が進められ、本年三月に、金融デリバティブ取引について大阪取引所に一元的に集約されたところでございまして、総合取引所の中核となる取引所の体制も整いつつあるところでございます。

 しかしながら、既存の金融デリバティブ取引のみならず、新たに商品デリバティブ取引をも取り扱おうとする総合取引所を具体的にどのような形で実現していくかという検討については、残念ながら、これまでのところ、はかばかしい進展がないといったところでございます。

樋口委員 世界的に見ましても、対象となる資産が金融であってもコモディティーであっても、一つの取引所で取引できるという総合取引所が主流でありまして、間違いのない事実でございます。また、かつてライバルであった、先ほどお話もありましたが、東証と大証さんが一緒になって、合併をして、日本取引所グループとなり、世界、特にアジアの中で競争していこうというふうにされているところであります。アジアの中でも、例えば香港取引所によるロンドン金属取引所の買収や、シンガポール取引所の合併による総合取引所化が進んでいるところでございます。

 こうした中、世界に通用する総合取引所を一刻も早く実現するために、その取り組みを強化していくことは、政府の成長戦略の一環として、第二次安倍内閣においても閣議決定をされ、総合取引所の実現は、低迷している我が国の商品先物市場の活性化に資するものだと考えます。

 また、先ほど答弁がありましたけれども、足元の状況としましては、本年の三月には、総合取引所を実現するための平成二十四年改正金商法が施行され、総合取引所における規制、監督の枠組みが整備をされました。また、本年三月には、JPXグループにおけるデリバティブ市場は、私の地元である大阪取引所に集約をされたところでございます。

 大阪は、一七三〇年に江戸幕府が先物取引を公認した先物取引発祥の地でございます。大阪取引所のデリバティブ取引が活発になれば、大阪の、関西経済の活性化にもつながると確信をしているところでございます。

 今般施行された改正金商法においても、金融庁と農水省、経産省との事前協議、同意の規定が整備をされています。これは、商品の生産、流通への配慮という趣旨を伺っておりますけれども、この規定があることをもって、総合取引所の実現を先送りするようなことがあってはならないと考えております。それによって総合取引所の早期実現が妨げられるようなことになれば、それは商品先物市場の活性化を損ない、また、大きく国益を損なうことになります。

 我が国の商品先物市場の活性化には総合取引所の実現が不可欠だと思いますけれども、金融庁、そして農水省、それぞれのお考えをお聞かせください。

遠藤政府参考人 先生御指摘のとおり、世界の取引所は、高度化するシステム設備投資に耐え得る経営基盤を確立し、価格形成の主導権でありますとか、顧客基盤の拡大を通じた投資資金を獲得し、グローバルな競争に対応するために、取引所同士の統合、連携を進めているところでございます。

 そうした中で、我が国における総合取引所の実現は、証券、金融、商品取引の垣根を取り払い、日本の金融資本市場の国際競争力を強化し、投資者に対する多様な投資機会の提供を目指すものであります。

 さらには、世界的な拡大の流れとは対照的に縮小してきてしまっております日本の商品先物市場を、反転、活性化するための方策となり得るものと考えております。すなわち、総合取引所の実現により、多様な顧客基盤を抱える証券会社などの参入を促し、市場参加者の質、量の拡大を通じて、市場にとって最も重要な流動性の向上を図り得ると考えております。

 金融庁といたしましては、総合取引所を一刻も早く実現することが、我が国の商品先物市場の活性化のためにも極めて重要であると考えております。その早期実現に向けて、引き続き、関係省庁、取引所等への働きかけに積極的に取り組んでまいりたいと思います。

林国務大臣 総合取引所構想は、昨年六月の規制改革実施計画において、改正金融商品取引法の着実な実施を初め、総合的な取引所の実現に向けて所要の整備に積極的に取り組む、こういうふうにされておりまして、我々としても、関係省庁と連携して関連規定の整備等を進めてきたところであります。

 農林水産省として、早く総合取引所の実現について取り組みたいと考えておりまして、速やかに、関係省庁とよく連携しながら、関係者とも連携しながら進めてまいりたいと思っております。

 なお、この事前協議に関する規定についてお話がございましたが、これは農林水産物について、総合取引所で先物取引が行われることになった場合の生産、流通に対する影響を勘案して、あらかじめ必要な措置を講じることができるように設けられているものでございますので、この規定によって実現が先送りされる性質のものではないということでございます。

樋口委員 ありがとうございました。

 今、大臣からも早く、速やかにというお話をいただいたところであります。

 総合取引所構想は、中国が力をつけている中、我が国が農産物におけるプライスリーダーにもなれるチャンスだというふうに思いますので、早く、速やかにという点。

 江戸時代中期に、大阪の米相場で、他の地域に米のプライスを最も早く伝達をしなければいけない、そのときに発達をしたのが旗振り通信でございます。この江戸時代中期の旗振り通信は、何と、その時代、大阪から和歌山までたった三分、京都まで四分、大津まで五分、そして岡山まで十五分、広島まで二十七分で通信をできたという史実もございます。まさにスピードが日本の先物の原点だというふうに思っております。

 ぜひともスピード感を持って、総合取引所が実現されることを心から要望をし、質問を終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の党の鈴木でございます。

 私は、きょうは、木に特化して少し御質問をさせていただきたい、このように思っています。

 本当にいい季節になりました。木々の緑が目に鮮やかというのは、まさに今の時期をいうのではないかなというふうに思うんですが、いずれにしましても、木の重要さは今さら言うまでもありません。国土の保全、水源の涵養、そしてまた地球温暖化防止等々、まさにいろいろな働きをしてくれているのが木だというふうに思っています。そしてまた、我々の生活に欠かすことのできないのが木である、このように思っています。

 そういう意味で、日本の木をどのように振興させていくのか、そしてまた木の恩恵に浴していくのかという視点で少し質問をさせていただきたい、このように思っています。

 もう皆さん方御存じのように、我が国の森林資源というのは、今非常に大きなものになってきております。蓄積量というんですか、四十九億立方メートルということで、一年に一億立方メートルずつの資源が増加をしておるということであります。これは本当に、ある意味では大きな我々の財産であります。もちろん、先輩たちの努力で今日があるわけであります。

 その上、利用可能ないわゆる人工林が非常に多く、例えば四十六年生、ですから、四十六年前に植えられたということでありますが、そういった人工林が全国で五一%、もう五割を超えておるということでございます。私は愛知県でありますが、私の地元でも約七割が人工林ということでありまして、ある意味で、日本の森林が本格的な利用時期を迎えたと言っても過言ではないというふうに思っています。

 それで、まさに今こそ、林業を活性化し、森林を再生させる、ある意味では絶好の機会だ、このように思っておりまして、そういう観点から何点か御質問をさせていただきたいんです。

 我が国の森林資源が充実してきたということを申し上げたわけでありますが、やはりそれは積極的に利用されて初めて意義があるということであります。農林水産省として、このような木の利用といいますか、木材利用をどのように取り組んでみえるのか、その辺をまず最初にお伺いをしたいと思います。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、我が国の森林資源でございますけれども、本格的な利用期を迎えております。そういった中で、私どもとしては、林業の成長産業化や地域の活性化、こういったものを図っていく必要があると考えておりまして、施業の集約化や路網整備等の川上対策とあわせて、木材需要の拡大など川下対策を一体的に講じていくことが重要であると考えております。

 このため、昨年十二月、官邸の本部において決定されました農林水産業・地域の活力創造プランでございますけれども、こういったことも踏まえまして、中高層建築での活用が期待できるCLT、クロス・ラミネーテッド・ティンバーでございますけれども、こういった新たな製品、技術の早期実用化に向けた支援、木造公共建築物の整備等に対する支援、三つ目には、木造住宅の建築等に対しポイントを付与いたします木材利用ポイント事業の実施、そして、木質バイオマス利用施設の整備や全国的な相談、サポート体制の構築といったものに対する支援、こういったものに総合的に取り組んでいるところでございます。

 私どもとしても、木材需要の拡大、地域の活性化等に積極的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 今長官がお答えいただいたように、いろいろとやっていただいておるということはわかるわけでありますけれども、本当の意味で我が国の財産である森林・林業が十分活性化をしてきているのかということを見ると、私は、まだまだ不十分な点があるのではないかなというふうに思います。

 ここ一、二年でありますけれども、私の地元で小学校や町の庁舎が幾つか建てられました。新城市というところで黄柳川小学校、設楽町で設楽町の庁舎、それから東栄町で東栄小学校ということで、これは全て木を使ってつくられたということで、私も完成のたびにお招きをいただいて拝見してくるんですが、鉄筋の校舎と木造の校舎と二つ並べるわけではないのであれですけれども、本当に子供たちが喜んで、喜々として遊んでおる、学んでおるという姿を見て、やはり日本は木の民族、木の文化なんだなということを改めて私は痛感しておるわけであります。

 先ほど長官がおっしゃったような形でさらに普及をしていくという上において、やはり大事なのは、広く一般の人々に国産材の重要性というものを理解していただくことだと思うんですね。

 ここで私は思うんですが、木を植えることはいいことだ、しかし、木を切って使うことは破壊であるというような一つの考え方があるように私は思うんです。マイ箸運動というのは、別にそれを私はいかぬとは言いませんけれども、何か本当に木を生かすのが果たしてそれであるのかということを考えていくと、若干違うんじゃないかなというふうに思うんです。

 そこで、林業の活性化、それから森林再生や地球温暖化の防止、そして国土の保全等につながっていく木材利用の意義や大切さをさらに多くの人々にわかってもらうための普及啓発ということが私は大事だというふうに思うんですが、その普及啓発についてどのようにお取り組みをいただいておるのか、お示しをいただきたいと思います。

沼田政府参考人 御指摘いただきましたように、今私どもにとって大事なのは、木を切って使うこと、国産材を積極的に利用して我が国の森林資源を循環させていく、こういったことの大切さというものを広く国民の皆様方に理解していただくことが重要だというふうに認識しております。

 私どもといたしましては、このために、シンポジウムやイベントの開催を初めとした、各種メディア等を通じたさまざまな広報活動、こういったものを積極的に実施しております。

 例えば、木質空間は、湿度を調節する作用があるであるとか、安らぎを与えたりリフレッシュさせる効果がある、あるいはインフルエンザによる学級閉鎖の数が少ないとか、こういった木材のよさを訴えております。

 また、あわせまして、タレントの方を木材利用ポイントのPR大使、こういった大使に任命させていただいて、木遣いのよさについて御発言をいただきましたり、あるいは、今現在、実は林業を素材にした映画「WOOD JOB!」が公開されておりますけれども、この映画の宣伝とあわせて、監督や出演者から森林・林業の実情等を繰り返しお話ししていただくなどして、幅広い層へのPRができるように工夫しているところであります。

 また、いわゆる教育活動の一環として、親子で木と触れ合う、こういった木育といったものの取り組みも進めているところでございます。

 今後とも、私どもとしては、あらゆる機会を活用して、木材利用の必要性、重要性について国民の皆様方の理解を深める取り組みというものを進めてまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 先ほど私も地元の例を申し上げたんですが、おっしゃるように、確かに、例えば教室なんかでも、木の教室に入った子供たちはやはり表情も違うし、非常に感性豊かな子供が育っていくというふうに私は思っております。

 そこで、ちょっと視点を変えるんですが、我が国は今から人口が減少していくということであります。人口減少時代に入るということです。したがって、今後、いわゆる住宅着工戸数といいますか、これが大きく伸びていくということは考えにくいわけですよね。そういう中で、では、どうするかということであります。

 現在は鉄骨づくりや鉄筋コンクリートづくりが主体となっておりますいわゆる中高層の建築物、何か高いものは木には向かないんじゃないかというような一つの観念があったやに思うんですが、先ほどちょっと長官からも出ましたCLT、クロス・ラミネーテッド・ティンバーというんですか、これがヨーロッパでは非常に盛んで、いわゆる中高層の建物がこれによってつくられている、こういうような報告も実は聞いておるわけであります。

 ここに資料があるんですけれども、非常に断熱性が高い、それから耐火性、強度が期待できるということで、これをやはりどんどん進めていくというのがある意味ではまさに林業そして木の活性化につながっていくというふうに私は思うわけです。

 我が国において、先ほど申し上げたCLTの普及に向けて、農林水産省としてしっかり取り組んでいくべきだというふうに私は思うんですが、その点の御見解をお示しください。

沼田政府参考人 御指摘いただきましたように、中高層建築物等で利用が期待されますCLTの普及でございますけれども、林業の成長産業化にとっても極めて重要だと考えております。

 農林水産省といたしましては、CLTの品質等の基準を定めましたJAS規格でございますが、これを昨年十二月に制定いたしました。また、JAS規格に適合したCLT製品が早期に生産、流通されるよう、現在、関係団体に対して働きかけを行っているところでございます。ことしの三月でございますけれども、国土交通大臣の認定を受けた、我が国で初めてのCLT建築物が高知県で竣工したところでございます。

 私どもといたしましても、国土交通省とも連携を図りながら、CLTの早期普及に向けまして、建築関係の一般的な基準の策定に必要となる強度データの収集、あるいはCLTを用いた建築物を実証する取り組みの支援、こういったものに積極的に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 続いて御質問をさせていただきます。

 市場の関係者にお話を伺うと、実は、国産材といいますか、丸太や製材品が安定的に供給される、ここがやはりポイントだというふうにどなたもおっしゃるんですね。現在の国産材の供給体制というのはやはり問題がある、脆弱であるというふうに聞いておりますし、私もそのように見ておるわけでありますけれども、例えば、先ほどのCLTなどを用いた中高層建築物の建設などによって新たな木材需要がふえた場合、それらの需要に応えられるだけの供給力をつけなければならないということであります。

 したがって、そういった国産材の安定的、そしてまた効率的な供給体制、このような体制の構築に向けて、農水省としてはどのような施策をお持ちなのか、お示しください。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 国産材の利用を拡大していくということのためには、新たな木材需要の創出とあわせまして、量、価格、質、こういった面において、住宅メーカーを含む需要者の方々のニーズに応じた国産材、こういったものを安定的、効率的に供給する体制を構築していくということが重要な課題と認識しております。

 このため、私どもとしては、路網の整備や森林施業の集約化の推進、さらには民有林と国有林が連携して木材供給量を増大させていく取り組み、あるいは流通経費を削減するためのストックヤードの整備等の川上対策、こういった一連の対策を打っております。

 また、こういったものとあわせまして、生産効率を高めるための木材加工流通施設の整備など、いわゆる川中、川下対策と呼んでおりますけれども、こういったものに総合的に取り組んでいるところでございます。

 先ほど先生からお話がございましたように、我が国の森林資源は年間一億立方増加しております。こういった資源の増加というものも背景にしながら、私どもとしても、需要者のニーズに応じた国産材が安定的、効率的に供給できるような体制、こういったものを構築してまいりたいと考えているところでございます。

鈴木(克)委員 鶏が先か卵が先かという話になるわけですけれども、やはり供給がきちっと整えられてくれば商売になりますよという反面、どんどん需要があれば供給はふえていきますよという面もあるわけですよね。卵が先か鶏が先かという論争をしておってもしようがないわけで、毎年一億トンずつ出てくるんですから、少なくとも一億トンは市場に出していくんだ、そしてそれを政策的に使っていくんだというぐらいの迫力を持った展開をしていただかない限り、この議論は本当に何年繰り返しても私はらちが明かないというふうに思っております。

 そこで、時間の関係もありますので、ちょっとまた視点を変えて申し上げたいんです。

 どんどん木を使って家をつくってください、また、さっきのCLTのような、大型のものもやってください、こういうことになっても、問題は技術者なんですね。町で聞いてみると、やはり大工さんが少なくなってきた、高齢化してきた、それから、木を使ってやってもらえる工務店が少なくなった、こういうことなんです。これもまた需要と供給以外の非常に大きなポイントになってくるというふうに思うんですが、木造建築にかかわる人材の育成、この部分についてはどのような御尽力をいただいておるのか、お示しをいただきたいと思います。

広畑政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、木造住宅供給の担い手でございます大工職人につきましては、ここ三十年以上、減少が続いております。

 国土交通省におきましては、大工職人の育成を図るため、木造住宅の施工技術の継承や向上のための事業に支援を行っております。

 具体的には、三年間の講義、実習で若手の大工さんを育てる大工育成塾を行っているところでございます。

 また、木材供給者や工務店が連携して取り組みます、地域の気候、風土に合った木造の長期優良住宅への補助を行います地域型住宅ブランド化事業によりまして、大工職人の技術力向上のための環境整備を図っているところでございます。要件を満たしました住宅について、一戸当たり百万円を上限に補助を行っております。

 さらに、大工職人の処遇の改善を図ることも重要でございます。公共工事の予定価格の積算に用います労務単価について、最近の賃金の上昇傾向を踏まえまして、大工職人につきましては、昨年四月より、全国平均で約一六・一%引き上げを行いました。さらに、本年二月より、約七・七%引き上げを行うとともに、民間の発注者及び建設業団体に対しまして、適切な水準の賃金支払い等の要請を行ったところでございます。

 今後とも、これらの取り組みを通じまして、大工職人の育成や技術力の向上を図ってまいります。

鈴木(克)委員 最後の質問にさせていただきます。

 大臣、今いろいろと私は申し上げてきました。本当に課題はたくさんあるんです。しかし、一億トンずつ間違いなくこれはふえてくるわけですから、ここをやはり生かしていくという本格的な施策をしていかなくてはいけないというふうに私は思っています。

 そこで、例のオリンピック・パラリンピックに絡めて一挙にそういった流れをつくっていくという、これは格好のチャンスが日本には今来ておるというふうに思います。

 やはり外国から見えた方々は、日本の木造建築、木に対する憧れというのは非常に高いんですね。ですから、観光客の誘致という意味合いも含めて、そして、逆に言えば、東日本大震災なんかで被害を受けておる東北の材もここで生かすことができるということであります。

 オリンピック施設というのは、約三十ぐらいの施設が今からつくられるということでありますので、大臣の英断で、一切国産材以外は使うな、それでなければもうオリンピックはさせないというぐらい、大号令を天下に発していただきたいというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 一億立米、これはスカイツリーの高さ十六個分を百平米分だそうでございまして、これぐらい毎年木が伸びている、こういうことだと思います。

 したがって、オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村、競技施設、これは大きな注目が集まりますし、こういう資材、内装に木材を利用する、これは大変大事なことだと思っておりまして、木のよさ、木の文化の伝統を有する日本のすばらしさ、技術力、こういうものを実感してもらう。それから、木の特性について、海外の人にだけではなくて、国民の理解も醸成していける。こういうことで、建築用資材として木材の利用を拡大できる、地球温暖化の防止や循環型社会の形成に資する、いろいろな意味で大事だ、こういうふうに思っております。

 日本の和のよさや東日本大震災からの復興の取り組みをしっかりと発信していくことが極めて重要だと思っておりまして、東京都、それから文部科学省、これが大会関連施設の整備を行うことになっておりますので、こういう関係者や関係団体と連携を密にしまして、大会関連施設に木材が活用されるようにしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

鈴木(克)委員 終わります。

坂本委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 民主党の大串博志です。

 早速質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、TPPの話題から入らせていただきたいというふうに思います。

 きょうは、西村副大臣にも石原政務官にも来ていただきました。どうもありがとうございます。

 TPP及びそのほかの経済連携ですけれども、まず、日豪EPAは、この間、四月の頭に首脳間で協議が行われ、大筋の合意ということになりました。御案内のように、日豪EPAにおいても農林水産委員会決議というものがあって、これとの整合性はこの委員会でもかなり議論してきたところであります。

 率直に農水大臣にお答えいただきたいと思いますけれども、今般の日豪EPAの農林水産品に関する合意内容、例えば、冷蔵肉に関しては四割削減、冷凍肉に関しては約五割削減、しかも、一年目に物すごく下がるんですね。

 セーフガードがあるとはいえ、こういった関税の引き下げが決まったということに関して、農林水産委員会決議においては、「米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目が、除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。」こう書かれています。農林水産大臣は繰り返し、これを踏まえて交渉に当たるとおっしゃってまいりましたけれども、結果は決議を踏まえたものになっていると大臣はお考えか、お答えいただきたいと思います。

林国務大臣 決議との関係でございます。

 日豪は、二〇〇七年の四月から交渉を開始しております。オーストラリアは、何といってもケアンズ・グループの中心でありまして、農産物の大輸出国であります。全品目の関税を撤廃しろ、こういう要求を豪州から受けておりましたが、今御指摘のあった衆参両院の決議を踏まえて、政府一体となって、交渉期限を定めずに、粘り強く全力で交渉を行ってきたところでございます。決議一号、三号の関係で、そういうことを申し上げたいと思います。

 また、決議に明記されている米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖について、豪州側から一定の柔軟性を得たために、交渉を中断せずに継続しまして、今回大筋合意するに至ったところであります。これは決議三号の関係でございます。

 特に、牛肉について、関税撤廃を強く要求する豪州と粘り強く交渉した結果、今触れていただきましたように、冷蔵と冷凍の間に四%の税率差というものを設けさせていただきました。また、現行以上の輸入量となったときに関税を現行水準に戻す効果的なセーフガード、それから長期の関税率削減期間、こういうものを確保するということで一定の柔軟性が得られまして、国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となったところでございます。一号、三号関係でございます。

 本協定の締結の効果、影響に今後留意しながら、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるように、肉用牛経営を初めとする農畜産業について、構造改革や生産性の向上による競争力の強化を推進してまいりたい、こういうふうに思っております。決議の四号の関係でございます。

 政府としては、このように、衆参両院のそれぞれ各号に沿って今お話をさせていただきましたが、踏まえて真摯に交渉を行いまして、国内農林水産業の存立及び健全な発展と両立し得る合意に達することができたと考えておりますが、今回の合意内容と決議との整合性については、最終的にはこの決議をおつくりになった両委員会に御判断をいただくものである、こういうふうに考えております。

大串(博)委員 江藤副大臣にお尋ねしたいと思います。

 今回の合意が、先ほど大臣も少し触れられていらっしゃいましたけれども、国内畜産業にどういうふうな影響を与えるというふうに考えていらっしゃるのか。対策も含めて、何か考えていらっしゃるところがあったら教えてください。

江藤副大臣 短くお答えしようと思います。

 今回、大臣がおっしゃいましたように、いろいろな条件をつけることに成功しました。政府一体となって粘り強く交渉したという結果でありまして、牛肉についてはぎりぎりの線を確保できた、何とかなったというふうに、私自身は畜産をやってきた人間として評価をしております。

 乳製品につきましては、バター、脱脂粉乳については、再協議、将来の見直しということでありますし、ナチュラルチーズにつきましても、プロセスチーズ原料などについて一定量の国産品を使用することを条件とした関割り制度を設置しておりますので、これも国内のいわゆる生乳生産には影響を及ぼさない範囲にとどまったということで、評価をいたしております。

 豚肉とか鳥肉とか鶏卵、蜂蜜、その他ありますけれども、畜産全体を見て、私は、今回の合意内容というものは、この委員会の決議等にも沿った、そういう内容についての結論に至ることができたと。

 これからのことでありますけれども、前にも答えましたけれども、もしもこれらのことによって何か大きな影響が出ることがあれば、国の判断としてこれらの関税なりが下がることになったわけでありますから、当然、税収で減る分の財政的な措置、それから、追加的な畜産に対する直接的な補助、そういったものも検討してまいりたいというふうに考えております。

大串(博)委員 どのような影響があって、どのような対策を打っていくかということに関しても、副大臣からはいつも、ぎりぎりの線はできたのじゃないか、こう言われる。何がぎりぎりなのかということは、いつか詰めて、また議論させていただきたいと思います。何がぎりぎりなのか、何を根拠として、どういうことでぎりぎりと言えるのかという点は、答弁されているわけですから、いつかそこはきちんとまた議論させていただきたいと思います。

 まず、私の方で、決議との関係で問題視しているのは、「重要品目が、除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。」これが決議文なんです。

 この除外、再協議ということに関して、この委員会でも前に取り上げました。前に取り上げて、除外、再協議の意味ということで、非常に緩んだ形で理解された中で話されてもよくないので、外務省の政府参考人からはどういった答えがあったかというと、これまで、除外される区分の品目というふうに規定されているものの中では、関税の撤廃、引き下げ、あるいは再交渉以外のものはないと。つまり、過去の例として、除外となったものに関しては、関税の撤廃とか引き下げとかそういったものはないということが明確に、過去の事例として、この場で、農林水産委員会で発言があって、林大臣御自身もその旨を認定されて、今、外務省と委員がやりとりをしていただいて、過去の実例はそういうことであったということでございますので、そういう事実関係も含めて、農林水産委員会でこういう決議をされておられるということが今よくわかったわけでございますし、それは我々は、当然、交渉をやる身として頭に入れておかなければならない過去の事例だと。

 すなわち、過去の事例は、除外、再協議においては関税が引き下がった例が一つもないということを踏まえてやらなきゃいかぬと言われているんです。言われている中で、重要品目が除外、再協議と書かれているこの決議に対して、私は、事実として、どう考えても関税が下がっているとしか思えない、これは決議を踏まえたものとはなっていないとしか思えない。決議との関係でどう評価するかは、最終的には委員会が判断するんでしょう。しかし、農水大臣は、踏まえるということをおっしゃっています。踏まえた結果となっているかということを御自分としてどう判断しているかということをおっしゃるのは責務があると思うんです。

 なぜこれをこんなにお尋ねしているかというと、TPPに関する農林水産委員会決議も基本的に同じ構造だからなんです。TPPにおける農林水産委員会決議は、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」基本的に、求められることは一緒なんですよ。

 日豪EPAの決議との関係で、今回の日豪EPAの大筋合意の内容が、大臣自身、もし、決議違反ではない、趣旨をたがえるものじゃないというふうにおっしゃるのであれば、ひょっとしたらTPPにおいても、少々関税が下がることも決議違反ではないという心構えで、そういう心持ちで交渉に臨んでいらっしゃるのではないかというふうに心配になるからなんです。

 あわせて、大臣、ぜひお答えください。日豪EPAに関して、大臣自身は、今私が申し上げた意味での、そして大臣自身もこの委員会で、過去の事例はそうだった、それも踏まえてやらないかぬとおっしゃっている、それも踏まえた上で、決議をたがえたものになっていると考えていらっしゃらないのかどうか。その答えによって、さらにTPPにおいて、同じ構造になっているわけです、TPPにおいても除外、再協議と書かれているわけです。どういうお気持ちで臨まれているのか、大臣、ぜひお答えください。

林国務大臣 これは前もやりとりさせていただいたとおりでございますが、まず、物品市場アクセスの約束の中で確立した除外の定義はないということ、それから、そういった意味で、今回の牛肉の約束が除外かどうか判断を示すことは困難である。

 事実関係でございますが、日豪EPAに関して言えば、関税の撤廃、引き下げに関する約束等の対象から除外されるという区分がありまして、牛肉は関税削減を行っているので、当該区分には、この日豪EPAの中では該当しないということであります。

 先ほど申し上げましたように、豪州側から、特に牛肉について粘り強く交渉した結果、国内畜産業の健全な発展と両立する結果を確保したと判断いたしまして、今回大筋合意に至ったところでございまして、合意内容と決議との整合性については、最終的には両委員会に御判断いただくものと考えております。

 それで、TPPにもお触れになられて、御心配のお話がございました。

 踏まえて交渉する、こういうふうに言っております意味は、最終的に、何の交渉でもそうです、日豪でもそうでございますし、またTPP交渉が妥結したという場合には、その発効のために、これは委員もよく御案内のとおりでありますが、国会の承認が必要である、こういうことであります。したがって、国会の承認が得られるような合意内容とすべく交渉に取り組む、こういうことでございます。

大串(博)委員 今、私はもう一回確認させていただきたいんです。

 踏まえるという意味は、何がしかの取り決めは、最終的には国会でエンドースを受けなければならないので、エンドースを受けられるようなものにするということがこの決議を踏まえるの意味であって、すなわち、例えば日豪EPAの交渉開始に関する件、この決議の、これらの重要品目は除外、再協議の対象となるよう交渉すること、あるいは、TPP決議にある、重要品目について除外、再協議の対象とすること、それ一つ一つは、踏まえるというか、その目標物ではなくて、全体として国会で承認を得られるようなものにすることが踏まえたことなんだという話でした。

 でも、TPPなんかは農産物以外にもたくさんの要素がありますよね。その中で国会でいろいろな判断がなされるんでしょう。もし、例えば、今おっしゃったことを敷衍して言うとすると、農林水産物においては、ここに決められたことと誰がどう読んでも違った形になっているけれども、全体として、総合的な判断の中で国会で承認されたならば、農林水産大臣としては決議を踏まえたものだというふうに言える、そういうことですか。

林国務大臣 それは、農林水産委員会で決議をされておられますので、農林水産委員会として御判断をされるということでありますから、その過程で、全く違っているということがどういうことかもよくわかりませんが、そういう場合にどうなのかというのは、まさにこれは決議をされた農林水産委員会の御判断ということでございます。

 繰り返しになりますが、政府としては、交渉をいたします、交渉を妥結した場合に、国会の承認がその発効のために必要でございますので、逆に言えば、国会の承認が得られないようなものを妥結しても仕方がないということであります。当然、我々は、交渉に当たっては、決議を相手にも示しながら、我々の仕組みの中で最終的に承認をされる国会の意思がこういうことであるということを示しながら交渉をするわけでございまして、踏まえるということで先ほど御説明したのはそういう意味でございます。

大串(博)委員 いや、だから、そこはどうもやはり緩いような感じがして、心配なんです。

 すなわち、私たちは、この委員会で決議をつくるときに、一生懸命、文章を一つ一つ、文言も含めて、練りに練った上でつくったつもりであります。一項目一項目が極めて大事。特に、農業者の方々は、この一項目一項目を極めて重く読んでいらっしゃいます。除外、再協議の対象とすること、あるいは途中脱退することも辞さずとすること、こういった一言一言を極めて大事に見ておられると思うんです。それを政府が踏まえてというふうに言うからには、その一つ一つを達成できるように踏まえてというふうに考えているだろうと思うと私は思いますよ。しかし、今大臣は、全体が国会で承認されるかどうかということが踏まえてだというふうにおっしゃったというのは、私は、農業者の方々からすると、やはり非常に心配だなということだと思うんですね。

 ですから、そこは大臣、ぜひこの決議に関しては厳密にやってほしいと私は思います。私の目から見ると、先ほど指摘しましたように、除外、再協議に確立した定義はないとおっしゃいますけれども、過去の事例は、除外、再協議の中で関税が引き下がった例は今まで一つもなかったんです。それをあえてこの決議に書いたんです。しかし、日豪EPAは、れっきとした関税が下がる結果となっている。仮にTPPに関しても同じように関税が下がる結果になったら、決議とは異なる内容になったと私は言わざるを得なくなると思いますよ。それを申し上げているんです。

 大臣、いかがですか。もう一回御答弁をお願いします。

林国務大臣 したがって、前回御答弁いたしましたのは、委員からそういう御指摘があったので、委員もこの委員会のメンバーであられますので、そのメンバーのお一人がそういうお考えを持っているということは、当然、私としても認識として持っていなければいけない、こういうことで申し上げたわけでございます。

 まさに、踏まえという意味は、先ほど申し上げたとおりでございます。

大串(博)委員 委員の一人がとおっしゃいましたけれども、過去の事例は、先ほど申しましたように、除外、再協議において関税が引き下がった例はない、これは厳然とした事実です。確かに、私は一人の委員としてここで申し上げております。しかし、この委員会の中にも同じ思いでいらっしゃる方々は多いんじゃないかと私は思います。ましていわんや、全国の農業者、農業関係者の皆さんの中においては、私と同じように心配されている方がたくさんいらっしゃると思います。その一人一人の方々が、大臣の交渉のあり方や、あるいはここでの発言を極めて気にしながら見られているということだと思います。

 さらに、私が心配なのは、安倍総理大臣がここに来られました。そこで何度もこの点を質問された上で、総理大臣は、決議を受けとめるということしか言われなかったんですよね。踏まえるとはおっしゃらなかったんですよ。

 政府としてはどうなんですか。政府としては、踏まえるんですか、受けとめるんですか。大分ニュアンスが違うと思うんですよ。政府として、受けとめるなんですか。

西村副大臣 政府として、決議を踏まえということと、決議を受けとめというのを特に使い分けているものではございません。甘利大臣も、今御指摘のあった安倍総理も、それから林大臣も全く同じ方針で臨んでおりますし、私自身も、過去の答弁なんかを見ますと、踏まえ、受けとめ、両方使っていることがあったようであります。

 ちなみに、大辞泉というものから引いてみますと、踏まえるは、判断のよりどころとするというふうであります。これは、先ほど来、林大臣が答えられているとおり、国会に御承認いただけるということの判断のよりどころとして我々は交渉に臨んでいるということだと思いますし、受けとめるは、大辞泉によりますと、事柄の意味をしっかりと理解すると書いてありますので、これは、決議の意味をしっかりと理解をして、そして交渉に臨むということですから、その先には国会に御承認いただかなきゃいけないということを頭に置いているわけでありますので、私どもとしては、使い分けているものではございません。

大串(博)委員 大辞泉は私も見ましたよ。見た上で聞いているんです。だから、随分ニュアンスが違うなと。判断のよりどころとするというのと事柄を理解する、随分違いますよね。だから、農家の方々は、それを聞かれて、えっ、なぜ安倍総理大臣は受けとめるなのかというふうに心配になっていらっしゃる声をたくさん聞きます。

 このTPPの問題を、今後予算委員会等々でも、総理もいらっしゃる場で集中審議なんかもあるんだと思います。その場でも、政府の立場として、今、西村副大臣がおっしゃったような点、踏まえる、受けとめる、同じですかと総理にもお尋ねしてみようと思います。総理にも、踏まえるでいいんですねとお聞きしてみようと思います。なぜなら、副大臣の今の答弁がそうだったから、総理にも確認してみたいというふうに思います。

 さらに、ちょっと農業とは離れて、今度は自動車の件をお尋ねしたいと思います。

 なぜなら、これは実は、農業に関しても極めて大事、すなわち、交渉する際には、向こうが求める農産物に関する交渉事を守るという態度のみならず、きちんとこちら側から言うことも言うということは極めて大切だと思うんですね。日本がTPPにおいて得ていかなければならないものは、やはり自動車の面でメリットを得ていくということは極めて大きな問題だというふうに思います。

 その中で、最近、いろいろな報道が出てくるんですけれども、農産物に関するいろいろな報道は出てくるんですが、自動車に関する、こういう交渉をしている、こういうふうなことになっているという報道がとんと見られないものだから、心配しているんです。

 しかも、時々自動車に関する報道が見られても、それは、こちらから関税をなくすべしということでせめぎ合っているという報道ではなくて、向こうから外堀的な、日本のマーケットにアメリカの車をこれだけ入れさせろみたいな話、つまり、これも譲らされる話みたいなことばかりが聞こえてくるものだから、心配になっているんです。

 自動車に関しては、完成品と部品とあります。アメリカに対する関税額は、払っているもので、完成車では大体年間七百億円ぐらい、部品でも百五十億円ぐらい、極めて大きいですね。

 本体もしっかり交渉してもらっていると思いますけれども、部品に関しても、関税撤廃だということでしっかり交渉してもらっているんでしょうか。

西村副大臣 日米の間では、農産物と同時に、自動車についても、車についても議論しておりますし、昨年四月の日米合意におけます自動車に係る米国の関税については、御指摘の自動車部品は含まれませんので、これは、一番長い期間をかけるとかなんとかということもありませんので、我々としては、具体的な内容は差し控えたいと思いますけれども、高いレベルのものを目指して交渉しておりますので、その中で引き続きしっかりと交渉していきたいと思います。

大串(博)委員 米韓FTAでも、完成車の関税、あるいは貨物車、トラックの関税に関しては、一定の期限を持った上での撤廃ということになっていますけれども、部品は即時撤廃なんですよね。こういうことも踏まえていただいて、ぜひ部品に関してもしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 あと、私はどうしても確認しておきたいのが、これは前にも国会でも何回も議論になったことでありますので、今この時点ですから、逆に極めて重要だということで、確認させていただきたいんです。

 去年の四月に、TPP交渉にアメリカとの関係で参加しますということを合意したときの、今副大臣から言及のあった日本とアメリカの間の取り決めの文書、自動車に関して、TPP交渉におけるほかのあらゆる物品の中で最も長い段階的な引き下げ期間に従って撤廃され、かつ、これらの関税の撤廃が段階的引き下げ期間の最後に行われるよう後ろ倒しされることに合意した、さらに、両国は、これらの米国の関税についての扱いは、米韓FTAにおいて自動車に係る米国の関税について規定される扱いを実質的に上回るものになることに合意した、この問題がありますね。

 ここをもう一回確認です。

 今いろいろな議論をされて、農産物も頑張って議論してもらっていると思います。関税が引き下がるということ自体は、私は、繰り返しになりますが、決議違反だと思いますけれども、仮に関税の引き下げにとどまって、農産物においては、関税が撤廃されるというものでないものがとれた場合、この日米の合意との関係において、アメリカ側から、いやいや、農産物においては結局撤廃にならないものが残ったじゃないか、よって、車に関する、完成車に関する関税は撤廃しないんだというふうに言われるような日米合意ではなかったのかという点を懸念するわけなんです。ここはいかがでしょうか。

西村副大臣 仮定の質問にはお答えを差し控えたいと思いますが、米国の自動車関税については、今御指摘のありました昨年四月の日米間の書簡において、まさに今お話のあったとおり、自動車に係る米国の関税がTPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされることを確認しておりますので、その期間がどうなるかは、まだ交渉で、結果次第ですけれども、文字どおり、最終的に米国の自動車の関税は撤廃されるということで認識をしております。

大串(博)委員 私は仮定の質問をしているんじゃないんです。この日米合意の内容自体がどういうものですかというものを聞いているんです。

 すなわち、TPP交渉における、ほかのあらゆる物品の中で、わざわざあらゆると書かれているんですよ。あらゆる物品の中で最も長い段階的な引き下げと書かれているんですよ。あらゆるですよ。こう書かれた文書を突きつけられて、これに合意して、このあらゆるというのは農産物は入りませんよねということは確認したんですか、していないんですか。

西村副大臣 まず、自動車の関税は、期間はともかくとして、撤廃されるということはもう日米間で確認をしておりますので、どの期間かは別として、アメリカの自動車の関税は撤廃されるというふうに我々は認識をしております。

 それから、その期間の問題は、TPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間と書かれておりますので、これはまだ交渉過程でありますので、交渉の結果出てくる、自動車に限らず、最も長いものについての期間ということになります。

大串(博)委員 石原政務官、済みません。政務官の分野まで副大臣が答えてくださっているので、それはそれでどちらでも結構なんですけれども、政府として答えていただければ結構なんです。

 いいですか、あらゆる物品の中で最も長い段階的な引き下げですよ。あらゆると書かれているんですよ。アメリカにしてみると、あらゆると書いたじゃないかと。あらゆると書いた、すなわち、農産物が関税撤廃にならなかったじゃないかというふうに言われるよすががここに入り得るじゃないですか。

 それに関して、農産物が撤廃にならなかった場合には、このあらゆるの中には入りませんよねということを確認されて合意されているんですかという経緯を聞いているんです。

西村副大臣 確認をしますけれども、書いてあるのは、日米間で確認したのは、TPP交渉における最も長い段階的な引き下げ期間によって撤廃され、かつ、最大限に後ろ倒しされるということですから、TPP交渉の中で取り入れられた最も長い、これは自動車に限らず農産物も含めてですけれども、その中に、TPP交渉における最終的に決まった最も長いものをここで採用するというふうに我々は理解をしております。

大串(博)委員 副大臣の理解を聞いているのではないんです。

 当時の、これをつくったときの、あらゆる物品の中でと書かれているので、そこはこういうことですよねと確認された上で、こういう約束になっているんでしょうか。まさか、こんな大事な文書を確認もしないでするっと通して合意されているということではないでしょうねということを確認させていただいているんです。

西村副大臣 何度もお答えをしますけれども、TPP交渉の中における最も長い段階的な引き下げ期間というふうに明確に書かれておりますので、TPP交渉で決まる最も長い期間だということで我々は理解をして、この合意に至っているわけであります。

大串(博)委員 審議が審議であれば、答えになっていませんと言って審議をとめてもらうところです。私は、確認したのかということを聞いているわけですから、今の答弁と求めているものは違います。

 ただ、わかることは、極めてあやふや、あるいは緩い形での議論の中で進んでいるということが非常に懸念されます。首席交渉官会合も行われ、閣僚会合も行われる中でありますので、私たちとしても、また国会の中でしっかりフォローしていきたいというふうに思います。

 副大臣、政務官、どうもありがとうございました。どうぞ、退席いただいて結構です。

 最後に一つだけ、諫早湾干拓に関しまして、四月十一日、間接強制に関して、二カ月の猶予の後に対策がとられなければ、支払いなさいという地裁の決定がおりました。それに対して、執行抗告を出されています。

 その執行抗告がどうなるかというのもあると思います。しかし、私の見るところは、執行抗告に関するその後の上訴の取り扱いは早いんじゃないか。仮に最高裁に行ったとしても、それも一定の長さの中で結論は出るんじゃないか。これは、執行抗告、いろいろ上に上げていった結果、間接強制の訴は認められます、金銭を払いなさいというふうに仮に最高裁でなった場合、国は、請求異議という別途の執行力を問う訴を出されていますが、それをずっと続けられるんだろうか。

 すなわち、間接強制に関して、もし仮に最高裁までそれを決めて、支払いなさいと突きつけられたときに、それ以外の訴訟を政府として、いやいや、強制力は排してくださいという請求異議の訴訟をあえて続けるべきなのか。いろいろな訴訟は、日本の訴訟制度だから、起こせます。極端に言えば、ある一人の方でも、自分の利害関係からいうと、開門してもらっては困るという訴は起こせます。その訴が出るたびに、いやいや、裁判が続いているからと判断をおくらすということでいいのか。

 すなわち、それが、仮に間接強制に関する判断が最高裁まで出た以降は、それが日本の裁判所制度の中での一定の結論と考えて、どんなに遅くともその場で結論を出すべきじゃないかというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 佐賀地裁で、四月十一日に、国に対して諫早湾の干拓地の潮受け堤防に係る間接強制の決定がなされたわけですが、国として、開門義務と開門禁止義務、この相反する二つの義務を負っておりまして、対策工事を実施できないまま開門できる状況にないということに変わりがないと思っております。

 国は、四月十一日の佐賀地裁の決定について、同日、福岡高裁に執行抗告と執行停止の申し立てをしたところでございまして、これらの裁判手続が、今、福岡高裁で係属中であります。

 今のお尋ねは、今後の裁判の帰趨を前提とする、仮にこうならばということでございましたので、今の段階で仮定に基づいてお答えをするということはなかなか難しい、こういうふうに思っております。

大串(博)委員 そういう答えだろうなと思っておりましたけれども、そのときはやってまいります。そのときに、ぜひ国民の皆さんに対して最も説明のつく解決策を出していただきたい、このことを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

坂本委員長 次に、寺島義幸君。

寺島委員 民主党の寺島義幸でございます。

 順次質問させていただきたいと存じます。

 初めに、協同農業普及事業についてであります。

 協同農業普及事業は、農業改良助長法に基づきまして、普及指導員等が、試験研究機関と農業者との双方の橋渡しをして、その役を務めてくれているわけですが、国民に対する安全な食料の安定的な供給の確保等について、国の責務と、地域の実情に応じた農業の振興について、都道府県とその責務を果たしているというものでございまして、まさに名のとおり、国と都道府県との協同事務であるということであります。

 現在、各県において、国が策定されました協同農業普及事業の運営に関する指針、これは平成二十四年のものでありますけれども、七項目あるわけです。食料自給率の向上とか東日本大震災からの復興等が加わったわけですけれども、七項目の基本的な課題について、地域農業の実情に合わせて取り組んでいるわけであります。

 また、ことしの二月に、過去に経験のない雪害があったわけであります。私の長野県もそうですし、お隣の山梨県等もそうなんですけれども、この大雪に見舞われたときにも、このような気象障害のときにも、普及指導センターの方々は、生産者からの技術対策であるとか、あるいはまた融資の相談等に乗ってくれているわけであります。

 普及指導活動の活動範囲は、その意味においては大変広いわけでありますが、この活動を支えている財源を見てみますと、平成二十五年度でありますが、普及事業費は、国の交付金と一般財源を合わせて五百三十三億円であります。このうち、国の交付金である協同農業普及事業交付金というのは、平成二十五年度は二十四億円でございまして、残りの五百八億円は、各都道府県の一般財源から捻出をされているという現状であります。

 この普及事業は、小泉政権の三位一体の改革によりまして、平成十八年度において、普及事業交付金の約八割が都道府県に税源移譲されておるわけであります。御案内のように、地方財政の厳しい中、都道府県は、一般財源による負担も大変厳しいわけでありまして、平成十九年度以降、毎年マイナスになっているんだろうというふうに理解をいたしております。

 国は、攻めの農政をキーワードに、生産現場の強化、六次産業化の推進、あるいはまた鳥獣被害対策等、さまざまな施策を打ち出しているわけですが、こうした施策を生産現場におろしていく役割も、実は普及指導センターの役割として大きなものがあるわけですが、その置かれている環境というのは大変厳しいのではないかというふうに想像いたしておるわけであります。

 そこで、攻めの農林水産業を農業生産現場において着実に推進し、国際化の推進にあわせて、個別の農業者への経営支援の強化や関連支援策を確実に推進していくためには、協同農業普及事業の実施体制の充実強化ということが大事ではないかというふうに考えているわけでございます。

 大臣の所見を伺うと同時に、協同農業普及事業交付金を交付したり、また普及指導員の試験を実施したり、専門的な技術研修を行って指導水準を確保したりすることで、都道府県と連携して普及事業を支えているわけでありますが、協同農業普及事業の円滑な推進のためには、結局、普及事業の土台となる交付金のさらなる確保というものが必要ではないかと考えるわけでありますが、その財源負担についてどのように考えておられるのか、あわせて大臣にお伺いいたします。

林国務大臣 新品種や新技術の普及、それから六次産業化、人・農地プランの策定など、攻めの農林水産業を地域段階で、まさに現場で実現するためには、やはり農業に関する知識、指導能力、こういうものをもって、担い手や産地の育成に取り組む普及指導員の活躍は大変重要だ、こういうふうに認識をしております。

 平成二十四年度から、今お話もしていただきましたが、研究、行政との連携、先進農業者からの相談対応等、高度な普及指導活動を行う農業革新支援専門員、今全国で六百二名でございますので、普及指導員全体の七千四百五十七名のうちの一割弱ということですが、こういう方を都道府県に配置しまして、協同農業普及事業の実施体制の充実強化に努めておるところでございます。

 二十六年度予算は、今お話しいただきましたように、交付金で対前年同額二十四億円を確保いたしましたほか、新品種、新技術の普及、六次産業化の推進等、普及組織が活用できる関連予算を数多く確保したところでございます。

 攻めの農林水産業の推進に向けて、普及指導員、中でも、農業革新支援専門員の皆さんが十分に活躍できるように、必要な活動費の確保にしっかりと努めてまいりたいと思っております。

寺島委員 おっしゃるとおり、もろもろの支援策、支援事業もあるわけでありますけれども、普及事業の根幹というか土台をなすのは、やはり交付金が重要だろうというふうに思うわけであります。したがいまして、年々減らされておるわけでありますが、この確保というのをしっかりすると同時に、私はむしろふやしていただきたいということを申し上げたいというふうに思うわけであります。

 次に、これはちょっと言いづらい話なので恐縮なんですが、平成二十二年、二十三年の民主党政権において事業仕分けが行われたわけでございまして、じくじたる思いはあるわけでありますが、とにかく事業仕分けが行われて、その結果、実は見直しがなされたというふうに理解をいたしております。国は、平成二十四年度から、関係研究機関、大学、行政との連携を促進、あるいはまた、普及活動の総括、普及指導員の資質向上、そして、先進的な農業者等からの相談支援などを担う農業革新支援専門員の配置と農業革新支援センターの整備を進めるというふうに承知をいたしております。

 長野県においても、例を挙げれば、専門技術員や農業試験場の研究員を農業革新支援専門員に充てまして、専門技術員がいる部署を農業革新支援センターに位置づけまして、農業者からの高度な、さらにまた専門的な相談に対応できるような体制を整えているわけであります。

 国は、農業革新支援専門員の配置と農業革新支援センターの整備とともに、農業革新支援専門員や研究機関、行政機関から成る情報ネットワークの構築やプロジェクト型普及活動の強化を図ることとしておりますが、その専門員の配置だとか支援センターの整備を進めることによりまして、どのような効果を期待しているのでしょうか。現場の農業者のニーズに応えた普及活動をどう進められていくのか。この辺についてお伺いいたします。

佐藤政府参考人 寺島先生の御質問にお答えいたします。

 今先生の方からも御指摘があったわけでございますが、この普及事業につきまして、より質の高い普及活動を展開する必要があるということで、平成二十四年度に、農業革新支援専門員、全国で六百二人でございますが、これを主要な農政分野に配置するといったほか、先進農業者からの高度な相談に対応できるようにするために、先ほどもありましたが、農業革新支援センターを全都道府県に配置したところでございます。

 農業革新支援専門員でございますが、研究、行政等との連携あるいは普及活動の総括等を担っておりまして、農政や技術の最新の知見が集積して、より農業者のニーズに的確に応えた普及活動の展開が可能になってきているのではないかというふうに考えております。また、農業革新支援センターの設置によりまして、先進農業者からの高度な相談に対応する体制も整ってきたというふうに考えているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした体制の整備を行っているわけでございますが、農業革新支援センター長あるいは農業革新支援専門員、こうした方々をできるだけ集めまして、全国会議の開催を通じまして、行政担当官や研究者とのネットワークの構築、あるいは地域課題の解決に向けまして重点的に活動を推進する重点プロジェクト活動を促進しているところでございます。

 引き続き、農業革新支援専門員や農業革新支援センターを活用した普及活動の充実を図ってまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

寺島委員 次に、普及活動の中で活用できる国の予算というのは、この交付金以外にもあるわけであります。平成二十六年度予算の中で、人・農地問題解決加速化支援事業や六次産業化ネットワーク活動推進交付金、あるいはまた平成二十五年度補正予算では、攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業、これは百億規模なんですけれども、用意されているわけであります。

 研究と普及事業の関係については、現場のニーズと研究成果のミスマッチや現地実証の不足によって、研究成果の実用化がうまくいかないのではないかというような指摘もされているというふうに聞いているわけであります。

 生産現場により近い地方自治体の試験研究機関が参加する実証研究は、生産者の意見や地域の実情を的確に反映することが可能であるわけでありまして、また、その成果の生産現場への定着がより円滑になるのではないかと思うわけであります。

 攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業のような実証研究の予算を普及事業の中で活用していくというのは、試験研究機関と農業者の橋渡しの役割がある協同普及事業にとってプラスになると私は考えているわけであります。

 農業の新しい技術体系の研究やその実証において、国や県の研究機関のかかわり方、研究機関と普及指導活動との連携等について、どのようにお考えになっているのか、お伺いいたします。

雨宮政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきました攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業、二十五年度の補正予算でございますけれども、これまでの研究成果を使いました新たな技術体系の確立を目的としております。ICTを活用した効率的な土地利用型農業、あるいは高度に環境が制御された施設園芸や畜舎などの技術を生産現場で実証的に研究するというものでございます。

 本事業では、国の所管の独立行政法人の研究機関、あるいは民間企業、都道府県の研究機関が連携をして、研究グループを構成しまして、研究開発を実施しますとともに、研究成果の迅速な普及の観点から、地域の気象条件や農業経営の現状を熟知した普及機関の参画を得るということにしております。

 今後とも、関係機関と連携を図りまして、生産現場で求められる技術の研究開発を推進しますとともに、普及活動を通じてこれらの成果が地域の条件に応じて体系化され、生産現場に広まることを期待しているところでございます。

寺島委員 都道府県によって、地域によって状況も違うし、要素も違うわけで、ミスマッチのないようにお願いしたいというふうに思います。

 そして、先進技術の導入や集落機能の維持など、地域が抱えるさまざまな課題解決に向けて、地域営農、農村計画のプロとして、高度で実践的な指導ができる普及指導員の能力向上を図るということは、一方で本当に大事なことだろうというふうに思っています。

 そのためには、やはり研修制度の充実、そして普及指導員の育成体制の充実強化であろうというふうに思っています。その意味において、今後、研修制度あるいはまた普及指導員の育成等について、どのような取り組みをされておられるのか、お伺いします。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございましたように、さまざまな農政課題の変化あるいは農業構造の変化に適切に対応して、普及指導員が攻めの農林水産業を強力に推進するといったことが必要でございますが、その際、やはり普及指導員の資質の向上ということが極めて重要というふうに考えております。

 このため、平成二十五年度からでございますが、先ほど申し上げました農業革新支援専門員向けに、新しい施策ニーズに対応した普及方法を検討するワークショップを年六回開催するようなことにいたしたところでございます。具体的には、鳥獣被害といったような新しい施策ニーズが出ておりますので、こうしたものについての検討を行うようなワークショップの開催といったものが一つ挙げられるところでございます。

 また、平成二十六年度でございますが、普及指導員向けに、新技術、新品種の活用を推進する米、麦あるいは有機農業といったことについて、十コースの研修を開始するといったようなことによりまして、研修の充実強化に努めているところでございます。

 また、都道府県段階での普及指導員の育成を強化する観点から、普及指導員の目指すべき人材像や育成方針等を明らかにした人材育成計画の策定を働きかけているところでございます。

 引き続き、普及指導員の資質向上が十分に図られるよう、研修等の充実に努めてまいりたい、こんなふうに考えているところでございます。

寺島委員 今答弁をいただきましたけれども、ワークショップとかいろいろな研修があるんですけれども、スペシャリストとかを養成するプログラムは、先ほどの答弁のように、多彩であるわけであります。しかし、三日から五日と非常に短期間であるというふうに聞いています。果たしてそれで本当にプロの指導員が養成できるのかということが懸念をされるわけです。

 そしてもう一つ、普及員の世代層を見てみますと、例えば私の長野県の場合だと、専門技術員十八人も含め、長野県には百八十六名いるんですけれども、四十代から五十代が七六%なんですね。三十代から四十歳までが七・八パー。それ以下は一六・二パー。まさに高齢化しているんですね。そこに、実は一つ大きな問題があって、これから攻めの農業をやっていくんだ、専門的にやっていくんだ、指導していくんだというからには、世代交代をしていかなきゃならぬ。

 ということは、先ほどの人材育成計画というのをもうちょっと詳しく教えてもらいたいんですけれども、若手の指導者を育成していかなければならないと思っているわけです。そのためには、中長期的な研修というのが大事になってくるのではないかと思っています。例えば、二週間、三週間を年に何回やるかとか、ある程度長い期間での研修をしっかりとしていただいて、そして若手の人材育成というものを図っていかなければ、攻めの農業をやろうというのはわかりますけれども、実際に現場でいろいろ話を聞いていますと、なかなか年をとってきちゃっていて、次の若い世代は余りいない。

 先ほど、前段で申し上げたように、基金もなくて、この基金、いわゆる交付金は人件費に回せる比率が制限されているわけですよね。したがって、例えば意欲のある県があるとして、人数をふやそうとすれば一般財源から補填するしかない。なかなか厳しい状況の中でそれもできない。少人数の中で優秀な指導者を育成するためには、しっかりとした国の研修制度、体制というものを整備していただくことが重要ではないかと思うわけであります。

 人材育成計画とおっしゃられたので、もう少し詳しく御答弁いただけますか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 今先生の方から御指摘ございましたように、普及員の確保といいますか資質の向上といったようなことで、やはり長期的な視点からの人材の確保といったようなことが必要であるということだと思っております。

 このために、県でどのような体制でやっていくかといったようなことも含めまして、取り組み方針等について計画をつくっていただくというようなことで、ことしの三月から、こうしたものにつきましてガイドラインといったものを設定いたしまして、各県の方に策定の趣旨あるいは目指すべき人材像、こうしたものを明らかにしていくといったようなことでお願いしているところでございます。

 この点につきましては、やはり一朝一夕ではなかなかできない問題だというふうに考えておりまして、現場あるいは各県の皆さん方のいろいろな意見もよく聞きながら、どのような方向で進めたらいいのかということも十分皆さん方と議論しながらやっていく必要があるかというふうに考えているところでございます。

寺島委員 ぜひ、企画から販売まで、企業のように農業経営ができるというような、意欲のある農業者の育成をお願いしたいんですね。でなければ、攻めの農林水産業を生産現場で現実に推進していくには物足りないと思うんですね。それを実効性あるものにするためには、やはり、その指導員の育成あるいはまた世代交代というか、若手の指導員の育成であろうというふうに思うわけです。スペシャル的な機能とかコーディネーター的機能を持った人たちを育成していただいて、ぜひ攻めの農政にふさわしい体制を組んでいただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 地球変動の影響で農産物の産地に異変が起きています。昨年八月、独立行政法人農研機構果樹研究所は、長野県の試験研究所及び青森県産業技術センターりんご研究所と共同で、温暖化に伴って果実の酸味が減るなど、リンゴの甘みが増すという食味の変化が起きていることを明らかにしました。温暖化が原因で農産物の食味が変化していることを立証した初めての成果であろうというふうに思うわけであります。

 これは、リンゴの甘みが増すということもありますが、温暖化について、産地にプラスになる側面もあるという研究成果だとは思いますが、温暖化による環境の変化は、むしろ産地にさまざまな課題を突きつけているような気がするわけであります。米では、登熟期の高温により米が乳白化する高温障害の問題があり、また、国立環境研究所の研究によれば、今世紀末、温州ミカンの栽培が危機に直面する可能性もあるという指摘もされているわけであります。

 農林水産省は気候変動の適応策の検討に着手したと聞いておりますが、各都道府県によって主力となる農産物や品種は異なります。これまでも、都道府県の研究機関が、産地の状況を見きわめ、独自に研究してきた品種や技術があるわけであります。都道府県側としても、気候変動のような長期的課題を見据え、戦略的に生産を後押しする農産物を取捨選択しなければなりません。県によって、県の試験研究機関が、その地域にふさわしい品種の選定や、あわせて技術等の研究をしていくということもあるというふうに考えられるわけです。

 県の試験研究機関による地球温暖化適応策の研究について、農林水産省としてどのように支援、連携をしていくのか。お伺いをさせていただきたいと思います。

雨宮政府参考人 お答えいたします。

 地球温暖化対策に係る試験研究でございますけれども、平成二十二年度から委託プロジェクト研究におきまして、ただいま御指摘いただきましたように、独立行政法人農研機構の果樹研究所が長野県の果樹試験場を初めとする各県の試験研究機関と連携いたしまして、気候変動がリンゴなどの農作物に与える影響評価、そして適応技術の開発に取り組んできたところでございます。

 今後、温暖化の進展が予測されております中で、それに対応した品種、技術を開発していくためには、それぞれの地域の実情に応じた研究開発を行うことが重要と認識をしております。

 このため、農林水産省といたしましては、委託プロジェクト研究などによりまして、今後とも国が所管する試験研究機関と都道府県の研究機関等が連携をいたしまして、地球温暖化に対応するための研究開発などに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

寺島委員 ありがとうございました。

 あと、林業の振興等の質問もあったわけでありますが、時間の配分もまずくて失礼いたしました。と同時に、鈴木先生にも全く同じような質問、御指摘をいただきましたので、あえて避けさせていただきました。

 終わります。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、岩永裕貴君。

岩永委員 日本維新の会の岩永裕貴です。

 本日も三十分のお時間をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、主には国家戦略特区について議論を深めさせていただくというか、農林水産省とのスタンスの整合というか、そのあたりについて整理をさせていただくための時間にさせていただきたいというふうに考えておりますが、その前に、競馬について少しお伺いをさせていただきたいと考えております。

 先日、五月九日、御存じの方もたくさんいらっしゃるかと思うんですけれども、大阪高裁で二審の判決が出たということでした。これにつきましては、四十歳の方が二十八億七千万円の馬券を購入された、それで、その払い戻し金額の総計が三十億一千万円になって、利益を一億四千万円得られたというようなことがございました。それで、外れ馬券が経費としてカウントされるのかどうかというようなことについて判決が出ました。それで、このときは、外れ馬券は経費にまあまあしっかりとカウントしてもいいですよというような内容になりまして、その結果が出たというところなんです。

 そういった部分については、この農水委員会で議論をさせていただいてもしようがないというふうに考えておりますが、競馬で勝ったお金は一時所得として課税対象になるということはもう皆さん御承知のとおりだと思いますが、この方がインターネットを使って馬券を購入されていたがゆえに、どのぐらいの投資をされて、どのぐらいの払い戻しがあったのかということが明らかだった事例でございました。

 そこで、まず一点お伺いをさせていただきたいのが、インターネットユーザーの登録に関する今の手続について、馬券を買うときにどのような手続をとっておられるのかということを少し教えていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 岩永先生の御質問にお答えいたします。

 競馬の勝馬投票券をインターネットで購入するときには、勝馬投票券の購入及び払い戻しを行うための銀行口座、これが必要になりますものですから、競馬主催者でございます日本中央競馬会などに対しまして、銀行口座等の個人情報を添えまして、ホームページまたは書面により申し込みを行う、こういうことになっているところでございます。

岩永委員 インターネットの場合は、申し込み時に、銀行口座の個人情報というか、さまざまな情報、個人が特定されるというようなところで、お金のやりとりがデータというか記録にしっかりと残っていくというのがインターネットユーザーの特徴であろうかというふうに思います。

 一方で、窓口で馬券を購入される方もたくさんいらっしゃるわけですね。これは、競馬場であったり場外の販売所であったりというところなんですけれども、このときにはそういった本人確認等がされているのかということも含めて、どういった手続で購入をされているのかということを教えてください。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 競馬場や場外売り場の窓口において勝馬投票券を購入する際でございますが、今は、一般的には、自動販売機に備えつけてございますマークシート、マークカードと現金を投入する方法が主流となっております。一部に有人の窓口で現金で購入する方法もございますが、現在は、先ほど申し上げました、自動販売機でマークシートで購入するといったものが主流となっております。

 この場合、先生御指摘のように、窓口での購入者については、個人情報というものは特定されないということに相なるところでございます。

岩永委員 競馬を楽しまれる方が、勝った、払い戻しを受けられたときに、それが課税対象になるんだというようなこと、これはJRAさんのホームページ等でも周知をされていることでございます。

 どれだけの国民の皆様方がそれをしっかりと認識しているかというと、少しわからないところではありますけれども、やはりそういった一時所得に関する課税というもの、もちろんルールどおりに支払っていただいている皆さん方もたくさんいらっしゃる中で、窓口で購入をされる方々が、どのぐらいそれについて認識をしていただいていて、そして税を納めていただいているのかということは、かなり不透明というか、把握のしようがないというのが今の現状ではないかというふうに思います。

 このあたりについての問題意識を、競馬を所管される農林水産省としてどういうふうに捉えていらっしゃるのかということについてお答えいただきたいと思います。

小里大臣政務官 払戻金の所得税課税の取り扱い、これは当然国税当局の所管でありますが、競馬ファンへのサービス向上の観点からは、やはり競馬主催者がそれを周知することが必要であると考えております。

 競馬主催者におきましては、今委員から御指摘がありましたように、払戻金が課税対象となるケースがある旨の注意喚起をホームページ上で行っているところでございますが、農水省としても、引き続き、的確な周知が図られますように、競馬主催者に対して指導してまいりたいとしているところでございます。

 なおまた、御指摘をいただきましたように、この払戻金が一時所得なのか雑所得なのか、重要な問題提起が裁判で行われたものと認識をしております。その推移を見守りながら、競馬ファンが法にのっとって安心して競馬に親しめる環境づくりをしていくことがやはり重要な課題であると認識をしております。

岩永委員 私が何を申し上げたいのかというと、今の状況ですと、納税者の良心にかなり頼っていかなければならないような仕組みになってしまっている。それで、支払っている皆さん方が多数いらっしゃる中で、やはり正直者はばかを見ないというような形にしていかなければならないんだろうなというふうな問題意識が一点ありながらも、競馬を楽しんでいらっしゃる方は、もちろん趣味で、自分のお小遣いの範囲の中でやっていらっしゃる方も多数いらっしゃる中で、例えば、年に一回、自宅の方に、あなたはこのぐらい勝ちましたよとか、このぐらい負けましたよなんという通知が来て、だから税金をこのぐらい納めてくださいみたいなことが送られてくると、非常に困るというか、都合の悪い方もたくさんいらっしゃるんだと思います。

 だから、農林水産省としては、やはり今政務官もおっしゃいましたように、とにかく競馬を楽しんでいただくということ、そして、楽しんでいただく方をできるだけたくさんふやしていくというのは農林水産省の役目であろうし、使命であろうかというふうにも考えておりますが、一方で、そちらの納税ということを考えたときに、そのあたりのバランスをとって、難しい問題ではありますが、解決をどういうふうにしていけばいいのかなと。

 私も、申しわけないんですけれども、これについてはまだ明確な答えを持っているわけではないんです。IRなんかの議論も今国を挙げてされている中で、そういったことへの取り組みなんというのも今後課題として取り組んでいかなければならないのではないかなというふうに思いますので、ひとつ問題の提起としてお受けとめをいただければありがたいなというふうに考えております。

 引き続きまして、先ほど申し上げました国家戦略特区について少しお話をさせていただきたいと思います。

 四月二十五日に、農業分野ということで、新潟県の新潟市と兵庫県の養父市という二つの地域が戦略特区に認定をされたということでございました。

 内閣委員会の中で、国家戦略特別区域法については議論をされてきたんだと思いますけれども、議事録等を見てみても、それぞれ個別の内容について、これは六分野なんですかね、都市再生・まちづくり、教育、雇用、医療、歴史的建築物の活用、そして農業、この六分野で十六の特例措置を設けられているという特区なんですけれども、この中身の十六については、委員会の中ではそんなに深くは議論をされていないのかなという印象を議事録を見て感じました。

 特に、農業分野においては四つの特例措置が設けられているわけですが、今後の農政を考える上でも非常に大きな課題というか論点も含まれている内容でありますので、きょうは、そのあたりを少し整理させていただきたいのも含めて、御質問をさせていただきたいと思います。

 まずは内閣府にお答えをいただきたいんですが、この国家戦略区域法、もともと何のためにつくられた法律であるのかということについてお答えいただければと思います。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国家戦略特区の意義について答弁申し上げます。

 国家戦略特区は、日本の経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革の突破口でありまして、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力の強化とともに、国際的な経済活動の拠点の形成を図り、日本経済を停滞から再生へつなげていくということを目指すものであると考えております。

岩永委員 ありがとうございます。

 続きまして、先ほど申し上げましたとおり、四月二十五日に二つの地域が選定をされたということでありますけれども、この二つの地域のそれぞれの選定理由と、あと、全国からどのぐらいの提案がこの分野について寄せられたのかということも含めて、その経緯を教えていただければと思います。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、提案につきましては、昨年の八月十二日から九月十一日までに提案の募集をいたしまして、そこで民間事業者等が百八十一団体、地方公共団体が六十一団体、計二百四十二の団体から百九十七件の提案があったところでございます。

 これにつきまして、ことしになってから、昨年の十月に日本経済再生本部で決定をいたしました国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針という、規制改革事項、いわゆる初期メニューと言われた、先ほどおっしゃった十六項目を初期メニューとして用意したわけですが、その項目を含むような提案のあった自治体、これは二十五地域ございまして、農業関係で八地域ございましたが、こういった自治体から、国家戦略特区ワーキンググループがことし二月から三月にかけてヒアリングを行っているところでございます。

 そうしたヒアリングの状況を踏まえまして、国家戦略特区の基本方針、これは閣議決定した基本方針でございますが、ここで指定の基準というのを六つ定めておりまして、例えばプロジェクトの先進性、革新性ですとか地方公共団体の意欲、実行力など六つの基準がございますが、これに基づいた評価を行っていただいた上で、その評価に基づいて諮問会議等で議論をして、最終的に、新潟市、養父市を含んだ六区域を指定したところでございます。

 さらに、お尋ねの二区域について、選定理由をもう少し具体的に申し上げます。

 まず、新潟市につきましては、お米を初めとしまして高品質な農産物を産出して、農業生産等は県並みの規模でございまして、高い生産力を生かした大規模農業の改革拠点として、農業分野の初期メニューを全て活用して農業改革を実現する突破口になることが期待されるということ、また、地方公共団体の改革意欲が高く、産官学の連携のもとで先進的な農業への取り組みが提案されているということから、国、自治体、民間が一体となった大胆な事業と改革が迅速に実現できるのではないかと見込まれるということが選定理由となっております。

 また、養父市につきましては、高齢化の進展、耕作放棄地の増大等の課題を抱える中山間地域における農業改革の拠点として、農業分野の初期メニューを全て活用して農業改革を実現する突破口となることが期待されるということ、また、地方公共団体の意欲が高く、高齢者の活用、民間事業者との連携等による先進的な取り組みが提案されていることから、ここも、国、自治体、民間が一体となった大胆な事業と改革が迅速に実現できるのではないか、そういうことが見込まれるということを選定理由としたものでございます。

岩永委員 新潟については、平野部で大規模な地域の典型であるということ、そして養父市については、中山間地、特に、高齢化が進む、非常に条件が厳しい地域の典型であるというようなところから、この二地域を選定されたという理解をいたしました。

 そして、引き続き、農業分野における四項目、この四項目を最終的に絞られて特区の中に入れられているという、そのあたりの経緯についても少し教えていただければと思います。

富屋政府参考人 御質問の四項目でございますが、今回この特区法で措置をしております規制改革事項でございます。

 これは、先ほど申し上げましたが、まず、昨年八月から九月にかけて民間事業者や地方公共団体から応募があった提案をもとにいたしまして、国家戦略特区のワーキンググループや産業競争力会議において議論をいただきまして、これまで実現できなかった規制改革事項について、分野を絞り込んで検討してきた経緯がございます。

 農業分野につきましては、そうした分野を絞り込んだ検討の中で、昨年の十月十八日に日本経済再生本部で決定をいたしました国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針という文書の中で、革新的な農業等の産業の実践拠点の形成というものを目指して、農業委員会と市町村の事務分担などの四つの規制改革事項を盛り込んで、これに対して必要な法律上の措置も講じているところでございます。

 私どもとしては、これらの規制改革によって、農地の流動化が促進されるとともに、六次産業化の推進による高付加価値化が図られ、農業の競争力強化に資するものではないかと考えておるところでございます。

岩永委員 引き続き、四月二十五日に選定がされて、今後、どういうふうな流れになって具体的に現場の方でこれが実施されていくのかというようなことを少し御説明してください。

富屋政府参考人 今回、政令で指定をいたしました各特区、六区域でございますが、これは区域ごとに、国家戦略特区の担当大臣と関係地方公共団体の長と民間事業者の三者で構成される国家戦略特別区域会議というものを順次設置する予定でございます。この区域会議は、国家戦略特区基本方針及び区域方針に即しまして、三者の協力のもと、最終的に、区域計画を作成し、合意をいたします。早いものについては夏までに区域計画の策定ということができるのではないかということを想定しております。

 その後、そこでできました区域計画を、内閣総理大臣が認定するという手続がございますから、認定することによりまして、区域計画に基づく規制の特例措置等の適用を受ける事業が開始されるという仕組みになっておりまして、夏ごろに区域計画を策定した後でそういった認定の手続に入るというようなスケジュールを想定しております。

岩永委員 そういった流れになるということではありますけれども、恐らくこれは、現場でどういった効果が出ているのかとか、さまざまな評価を今後していくんだというふうに思いますけれども、そのあたりの評価をどういったタイミングでされていくのか。それで、ひいては、この特区ができたそもそもの趣旨でありますけれども、そのあたりを考えると、やはりこれから、いいところはいいと横展開をしていくものなんだというふうに考えておりますけれども、そのあたりのスケジュール感というか、どういった形でそういったものが進んでいくのかということについて、一点御説明をしてください。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国家戦略特区など進捗状況につきましては、先ほど申し上げた国家戦略特別区域会議におきまして、定期的に、基本的に毎年評価を行いまして、その結果について内閣総理大臣に報告するということとしております。また、当該評価結果につきましては、国家戦略特別区域諮問会議において御検討いただくこととなっております。

 先ほど来お話のあった、特区で具体化された規制改革、農業委員会と市町村の事務分担などの規制改革事項につきましてもこのプロセスの中で評価をすることとしておりまして、諮問会議におきまして、当該規制の特例措置を所管する関係府省庁からの意見も聞きまして、その効果、問題点の検証を行った上で、将来的な全国展開の可否であるとか、要件の見直しの必要性等につきましても、それも含めて検討していくという考えでございます。

岩永委員 あわせて、もう一点お伺いをしたいんです。

 先ほども御説明いただきましたが、このペーパーにも、必要に応じて関係行政機関の長などが国家戦略特別区域会議なるものに参加して意見を言っていくというような話でありますけれども、私は、レクを受けておりまして、少し農林水産省が受け身になり過ぎているんじゃないかなというような印象を受けたものですから、一点お伺いをさせていただきたいんです。

 この決定過程において、区域会議も含めて、農林水産省の携わりというのはどういった形になってくるのか、教えていただきたいと思います。

富屋政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国家戦略特区諮問会議についてでございますが、メンバーには農水大臣等規制を所管している大臣は入っておりませんけれども、必要に応じて、総理の御判断でお招きをして、御意見を頂戴するとなっておりまして、典型的な事例としては、今後、新たな規制改革の事項を追加するような場合の議論には各所管の大臣に御参加いただくというようなことが想定されると考えております。

 また、先ほど来申し上げています国家戦略特区の区域ごとに設けられる区域会議でございますが、こちらも正式のメンバーは国家戦略担当大臣のみでございまして、ここでは地方と民間とで区域計画についていろいろ議論するわけですけれども、そういった中で、区域計画に盛り込む事項につきまして、各所管の規制改革の事項等があると思いますので、そういった際には必要に応じて大臣の御出席をいただくことはあり得べしというような制度設計になっておりますが、その運用については、具体的には今後検討をしてまいりたいと考えております。

岩永委員 ぜひ農林水産省も積極的にこちらの決定プロセスというか流れの現場の中にはコミットをしていただきたいなというふうに考えているんです。

 なぜかというと、一点、農業委員会と市町村の事務分担ということがこの中でうたわれておりますし、恐らく新潟市も養父市もこちらのことには建設的に、前向きに取り組んでいかれることになろうかというふうに思っております。ただ、なぜ農林水産省をもっとということを申し上げているかというと、ワーキンググループが集中ヒアリングというのを農林水産省にされたその提案趣旨が、少し簡単に申し上げますと、農地が流動化されない最大の阻害要因の一つは、農地取引に対する利害関係者が構成員となっている農業委員会による関与であるということを言っております。そして、したがって、構成員に利害関係がない者をしっかりと含んで、第三者委員会による農地保全のための検査制度を設けた上で、現行の農業委員会の土地売買に関する関与を全廃する必要があるということを明確に趣旨として表明をされた上で、このワーキンググループの中で議論が行われ、恐らくこの四項目の中の一つに挙がってきているというようなことだと思います。

 このあたりについて、ちょっと特区の議論は別にして、農林水産省として、今農業委員会に対する問題意識がどこにあるのかということ、この提案趣旨を含めてでも結構なんですけれども、少し御答弁をいただければと思います。

奥原政府参考人 農業委員会は、御案内のとおり、農地に関する市町村の独立行政委員会でございます。ここにつきましては、担い手への農地利用の集積、集約化ですとか新規参入の促進、それから耕作放棄地の発生防止や解消、こういった地域の発展を積極的に進めていくということが非常に重要だというふうに考えております。

 農業委員会のあり方につきましては、昨年の十二月十日に決定をされました農林水産業・地域の活力創造プランの中におきまして、本年の六月に向けて結論を得るということになっておりまして、現在、規制改革会議、それから与党でもいろいろ議論が行われているところでございます。

 農林省といたしましても、関係者の御意見をよくお聞きしながら、検討を深めてまいりたいというふうに考えております。

 現在の検討と国家戦略特区の特例措置、これはちょっと違うものというふうに考えております。

 戦略特区の特例措置におきましては、農業委員会と市町村長の事務分担に関する特例を設けるということでございます。具体的には、市町村長と農業委員会とが、農業委員会の農地の権利移動の許可関係事務を市町村が分担することについて合意した場合に、合意の範囲内で市町村がその事務を行うというような仕組みでございます。

 したがいまして、農業委員会の権限の一部を市町村長に渡すということにはなりますが、農業委員会のあり方そのものをこの戦略特区で見直しているということではございません。

 それから、先生から御指摘ございました、昨年五月の国家戦略特区のワーキンググループのヒアリングでございます。

 このヒアリングは、私が出席をいたしましたけれども、昨年の五月二十八日に行われております。この時点では、先ほどの養父市ですとか新潟市の提案がまだ出ていない段階で、ワーキンググループとして、こういった改革案はどうかというような案をつくって、これを各省に対して集中的にヒアリングを行った、こういう代物でございます。

 このときの具体的な規制改革事項といたしまして、今先生からお話がございました、農地流動化のための農業委員会の関与廃止等といったものが挙がっておりました。そのときの先方の御主張は、要するに、利害関係者である農業者が農業委員の中に入っている、これでは公平な仕事ができないのではないか、こういう御指摘をいただいたところでございます。

 農林省としては、農業委員会につきましては、先ほど申し上げましたように、担い手への農地利用の集積、集約化ですとか新規参入の促進、あるいは耕作放棄地の発生防止、解消、こういったことをきちんとやっていただくということが重要だというふうに思っておりまして、その際、どなたが、どういう方が農業委員になるかということは重要なポイントだというふうに思っておりますけれども、農業者を利害関係者であるとして農業委員から排除すればそれでいいというふうには考えていないということでございます。

 いずれにいたしましても、農業委員会のあり方につきましては、規制改革会議、それから与党での議論を踏まえまして、農林省といたしましても、関係者の御意見を伺いながら、きちんと検討していきたいというふうに考えております。

岩永委員 丁寧に御説明をいただきました。

 まず、特区と農業委員会全体の改革とは別だというようなところ、それで、特区の中で絞られて議論されるのが、農業委員会と市町村のあくまで事務の分担の部分であるというような農林水産省の見解を今いただいたわけなんです。

 局長が先ほどもおっしゃいましたけれども、やはり農業委員会というものについても、二十一年の農地法の改正によってその役割というものが追加等をされて、より積極的に、集約化を図るような部分についても御活躍をいただくというような内容にはなっておるんですが、一方で、農水省が昨年実施されたアンケートによっても、四分の三の現場の農業者の方が、農業委員会の役割という部分について、やはりもう一回整理をしっかりと時代性に合った形でするべきじゃないかということをおっしゃっているのは事実ですので、農林水産省としても、今後、農業委員会というものについて議論を深めていかなければならないし、この委員会でも大いに建設的な議論をしていかなければならないんだというふうに考えております。

 最後に、大臣の方に御見解をお伺いできればと思うんですが、四月八日に御出演された「日経プラス10」という番組の中で、大臣自身も、やはりその目的は農地の集約化にあるんだということをおっしゃっております。そのための手法はさまざまあってもいいんじゃないかというような見解を述べられておりまして、それが、農業委員会さんによるものであっても中間管理機構によるものであっても、現状は地域差はさまざまあるんだからというような形の御発言をされているわけでございます。

 先ほども局長の方からもありましたとおり、農業委員会全体の改革と特区というものの今回の取り組みをひとつすみ分けをするならば、特区の結果云々というのを待たずに、ある程度そういった議論にもうそろそろ着手をしていってもいいんじゃないかなというふうに考えているんですけれども、そのあたりについての大臣の御認識を最後にお伺いして、質問を閉じさせていただきたいと思います。

林国務大臣 おっしゃったように、テレビで申し上げたことは特区に関連して申し上げたことであります。

 農業委員会は、一般的に、農地に関する市町村の独立行政委員会でございますので、先ほどの話題になった農地利用の集積、集約化、これはもちろんですが、新規参入の促進、耕作放棄地の発生防止、解消など、いろいろな役割を担っていくことが期待されているわけでございます。

 地域によってさまざまでございまして、十分成果を上げているところとそうでないところもあるようでございます。

 平成二十四年に農水省が実施したアンケート調査によりますと、よく活動している、三割、活動しているが内容に不満、二割、活動が低調、よく見えない、五割、こういうのもございます。評価できない理由は何ですかと聞きますと、農地集積などの農家への働きかけが形式的である、遊休農地等の是正措置を講じない、こういうのが出てきておりますので、こういう点を含めて、農業委員会が、農業者、特に担い手の農業者から評価を受けて、地域農業の発展を支える組織となるようにしていく必要がある、こういうふうに思っております。

 特区ではなくて農業委員会そのもののあり方については、規制改革会議、それから自民党の農業委員会・農業生産法人に関する検討PTにおきまして、六月に結論を得るように今議論をしているところでございますので、我が省としても、農業委員会が農業の発展に資することを旨として検討していきたい、こういうふうに考えております。

岩永委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 日本維新の会の村岡でございます。

 連休明け、初めての農水委員会ということで、質問させていただきます。

 まず初めに、林大臣に、農業、林業、水産業というのが、厳しい産業ではあるけれども、大臣みずから勧めていく、PRをしていただきたいという中で、農林省が協賛した「WOOD JOB!」の試写会に林大臣も行っていただいて、私もテレビで見ました。マキタスポーツさん、長沢まさみさん、伊藤英明さん、有名な俳優の中で、林大臣もひときわ、非常に味のある笑顔で映っておられましたけれども、やはり林大臣みずからがそういう農林水産業に対してしっかりとPRしていくことは大切だ、こう思っております。

 そういう意味では、ぜひとも、今後も、この委員会ももちろん大切ですけれども、時間があったときには、いろいろな意味で農林水産業のPRに頑張っていただきたい、こう思っております。

 さて、きょうは小泉政務官にも来ていただきました。まことにありがとうございます。

 それで、質問の項目ではないんですが、ちょっと問題になっているのがあります。「美味しんぼ」という漫画があります。私も読んだりして、食のことで、その中で人生があったり、いろいろなおいしいものがあって、すばらしい作品だと思います。そして、表現の自由は守らなければならないと思っております。

 しかしながら、福島での鼻血を流している場面とか、そういう部分が描かれております。私も同じ東北の人間として、この三年間というのは、福島の方々は大変風評被害に悩まされ、大変な御苦労をされています。また、今、現実に住まわれている人もおります。

 そのことからすれば、表現の自由、それと、この表現をした漫画というものに対して、林大臣はどのように考えていらっしゃるでしょうか。

林国務大臣 私は、その実物を見ておりませんので、余り断定的に申し上げる立場にはないと思いますが、報道等で承知する限り、今まさに委員が整理してくださったように、表現の自由というのはある中で、ただ、現場の方に対する思いやりといいますか、結果としてどういうことになるのかということについての御配慮がなぜもう少しできなかったのだろうかなという意味で、非常に残念に思っております。

村岡委員 私も同じ思いであります。

 これも、小泉政務官に通告しているわけじゃないですけれども、小泉政務官は、毎月十一日、ずっと被災地に行って、被災地の人たちの気持ちを聞いていたと思います。小泉政務官はどう思われるでしょうか。

小泉大臣政務官 あの漫画の主人公の人は、何年間福島に行った結果、鼻血が出て、疲労感に襲われているのか私はよくわかりませんが、私は三年間福島に通い続けて、鼻血は出ないし、疲れがあるどころか、毎回行ったら元気をもらいますね。

 この前も、先月、浪江から避難をして二本松にいる、浪江焼きそばをつくる食堂に行ってきましたけれども、今、コンビニで浪江焼きそばというのは売っていますけれども、本場の浪江焼きそばはおいしかったですね。

 そういったものを食べて、元気が出て、帰る新幹線に乗る前に、ちょっと時間があったものですから、郡山駅のファミレスに行きまして、復興庁の役人の皆さんと一緒にコーヒーを飲んだんですけれども、レストランにいた高校生、中学生の皆さんと写真を撮ったり話をしたり、ますます頑張らなきゃいけないな、そういう元気をいただくところですので、むしろ「美味しんぼ」には、そういう中でも福島で元気に頑張っている人を描いてもらいたいな、そう思っています。

村岡委員 林大臣、そして小泉政務官、ありがとうございます。福島の人たちは、今のお言葉の中で元気が出る、こう思います。浪江焼きそばは私も大好きですので、福島の人にはぜひ頑張っていただきたい、こう思っております。

 さて、小泉政務官も来ていただきましたから、TPPの問題に関して御質問させていただきます。

 きょう午後からの中で、自民党の議員の方も、同じ党ですから、大変遠慮がちに大臣に聞かれておりました。自分が各地元に帰って、新聞報道、いろいろな面で説明したのに、次はまた違う報道がある、大変説明が苦しい状況にあるということをお聞きいたしました。

 実は、この一時からの農水委員会ですけれども、多分各県やっていると思うんですが、我が秋田県も、農協が十二時半からTPP反対という集会をしておりました。私は農水委員会がありますので、とても間に合わないので、うちの秘書にかわりに行ってもらいました。その中では、秘書に先ほど聞きましたら、自民党の議員は相当責められていたようであります。私は農水委員会があると秘書が言ったんですけれども、農水委員会なんか関係ない、農水委員会なんか行かないでこっちに来い、このぐらいの勢いで言われていたそうであります。

 本来であれば、農水委員会はそういう議論をする場であり、そして国会も議論をする場ですから、そっちの方が大事だと考えるのが農業者です。しかしながら、もう国会も信用していないんです。農水委員会も信用していないんです。農業者の人たちがそういう思いになっているということに、どう責任を感じていくのか。

 やはりきっちりと説明していないということなんですよ。それぞれ、農林省の方から聞くと、きちんと説明しています、そして期限を切らないでやります。期限を切らないでやったから、どんな結果が出るかなんていうことはわかりません。

 前の総理大臣が近いうちにと言ったら、近いうちにというのは、切っちゃうと、そんなことが責められるから、期限を切らないと言ったのかどうかわかりませんけれども、自民党がよく民主党さんを、公約違反をしている、こういうふうに言いますけれども、今の状況は、農業者は、自民党は公約違反をしている、こう思っているんです。幾らそれぞれ大臣が答えても、そう思っている人たちにどう答えていくのかというのが大事だ、こう思っております。

 それでは、林大臣、そして小泉政務官、お答え願えればと思います。

林国務大臣 日米の間での協議等、報道もそれぞれあったわけでございますが、この交渉の中身、具体的な協議内容、これはお答えができないわけでございますが、繰り返し申し上げているように、個別のラインの関税率等について、日米間で合意している事実はない、こういうことであります。

 日米首脳会談で、前進する道筋が特定されたというふうになっておりますので、残された課題を解決するための協議を続けていかなければなりませんし、米国以外の国も当然あるわけでございますから、こういう国と精力的に交渉を進めていく、こういうふうにしていかなければならないと思っております。

 重要五品目などの聖域の確保については、衆参両院の農林水産委員会の決議を踏まえて、国益を守り抜くように、全力を尽くす考えである。これはかねてより申し上げていることでありますし、今後もこれでやっていきたい、こういうふうに思っております。

小泉大臣政務官 農業者の方々の御理解をいただけるような内容に持っていく、これは至上命題だと思います。

 ただ、先ほど村岡先生がおっしゃった近いうちという言葉は、私も忘れていましたけれども、まだ私が野党だったときに、民主党政権でTPPのいろいろな議論があったときに、入るのは拙速だという議論があったんですね。ただ、私はあのときに、拙速じゃなくて遅過ぎるんだと言ったんです、そのとき、私は党内でも少数派ですけれども。

 安倍総理も、オバマ大統領と会って、例外なき関税撤廃ではない、そういった認識のもと、正式に交渉参加して、高い目標のTPPを達成するということと、国会の決議、またさまざまな党の決議も踏まえて、受けとめて、どうやって国会でお認めいただけるような内容のものに持っていけるのかと必死で今交渉をやっていますし、来週も、国会の同意が得られれば、甘利大臣御出席のもと、閣僚級の会合がありますので、これは、いずれにしましても、国会で受けとめていただけるようにこれからも努力をしていきたいと思います。

村岡委員 中身が言えないままで信じてくれというのは、何かトラスト・ミーみたいな感じで、中身がないまま信じてくれというのは、やはりそれは普通信じられないんですよ。それは、自民党の皆さんが、あのトラスト・ミーも、さんざん民主党を責めたんですよ。(発言する者あり)いやいや、それは国民が決めることなんです。自民党の議員が決めることではありません。それは国民が信じているか、信じていないかの問題であります。

 そして、このごろ話しているのは、鶴岡首席交渉官、それから甘利大臣が、四次方程式を解かなきゃいけない。内容は、関税率をどこまで引き下げるか、引き下げにかける期間、セーフガード、そして低関税率の特別輸入枠の設定、これを四次方程式と言っているのかもしれませんけれども、いろいろ新聞に出てくることに政府は抗議をしています。

 しかし、抗議をしていますけれども、実は出ているんじゃないか。いろいろな情報を流して、小出しにしながら、不安感の中で、ある程度落ちついたときの、セーフガードというのは政府のガードのためにやっているような感じがしているんですよ。そういうのではないんですか、小泉政務官。

小泉大臣政務官 さまざまな臆測の記事も含めて、今、村岡先生がおっしゃったようなことというのは、そこまで一つ一つの報道を全て計算どおりに動かしながらやるというのは、現代の情報化社会の中で、不可能じゃないかと私は思いますね。

 そういった中で、交渉の中で、明らかになかなかできないことは、それは、やはりそういった前提で、TPPの交渉参加国は全て同じ認識で入っているわけですから、そのルールは守るという大前提を踏まえつつ、だけれども、情報提供はどこまでできるか。

 これは信頼にかかわりますから、それは、私は、日本は可能な限りやっていると思っていますので、それでも、まだまだ不十分だという声はいっぱいありますから、きょうは澁谷審議官が同席していますけれども、交渉の前後に、関係団体に対するブリーフィング、そして記者に対するブリーフィング、与党、野党に対するブリーフィング、これを毎回やっていますから、これからもそういったことを踏まえながら、しっかりと形にできるように取り組んでいきたいと思っております。

村岡委員 全てをマスコミが動かしているとは思いませんが、民主党の政権運営の反省をしっかりと踏まえて何かやっているような気がして、それが結果的に、もう国会の承認のときに、外交でしっかり決まったのに混乱を起こすということは、もっと混乱を起こすことなので、そこはしっかりしていただきたい、こういうふうに思っております。

 そして、よく石破幹事長が、この前、農業新聞の大会のときも、約束したことは自民党は守ります、衆議院、参議院の選挙で公約したことは守ります、ここまではいいんです。最後に、政策パッケージ、こう言います。

 では、政策パッケージというのを、別にこの分野だけじゃなくて、公約のときに、この分野はこういうふうにいたします、パッケージであります。これから公約というのは、パッケージと言えば全部済んじゃうんですね。だから、そういう意味なのか。それは、交渉がどんなになっても、きちんとした農業対策を全部した上でのパッケージで見てもらうという意味なのか。それとも、聖域といった五品目のことは守るという意味で言っているのか。それはどういう認識でいらっしゃいますでしょうか。

小泉大臣政務官 パッケージというのは、やはりいろいろな分野において、今、各種横断的なものがありますから、やはりそのとおりなんだと思いますが、おっしゃるとおり、パッケージという一言を使えば全て済むというような、そういった話ではないと思います。

 パッケージの中には、真空パッケージのような、中身がいつまでも新鮮に保たれるような、そういったパッケージもあると思いますが、一つ一つの政策を大事にしながら、かつ、TPPは本当にさまざま、多くの分野にわたるものですから、そういったパッケージ的な発想も持ちながら、一つ一つの分野で必死にお仕事をされている方々が不安を持たないように、そして、不安を持っているところに対してはどういった対策ができるのか、そういった意味でのまさにパッケージだと思うんです。

 それは、先ほど大串先生の質問の中で、踏まえとか、受けとめとか、そういった言葉に対するやりとりがあったと聞いておりますが、いずれにしても、一番大事なことは、国会で御承認いただけるような中身のものを早期に持っていく、そういったことですから、そこに行けるように、これからもしっかりと頑張っていきたいと思います。

村岡委員 我々は初めからTPP、自由貿易を推進していくという立場で、選挙前から公約をやっています。

 その中で、国益が守れなかったらというのは何かというと、我々は最初からTPP全体のパッケージで言っているんです。自動車も曖昧にしておかない。ここではしっかりと突っ込む。そして農業分野では、もしその交渉事の中で譲らなきゃいけないことがあれば、しっかりと農業対策は立てる。そういうパッケージが最初からなきゃいけないんですよ、本当は。

 それが、ある選挙のときだけは、農業県の人たちに気を使いながら、そのパッケージだと言ってはいない。守る、そして、TPP断固阻止という鉢巻きを全員が巻いて選挙をやったんですよ、農業県の人は。私はその中で、巻かないで農協集会に出ているんです。でも、その人間でも、農林水産委員会に出席しているのを、そんなのは出席するなと言われているような状況なんです。本当に大変な状況だということをしっかり踏まえて交渉事をやっていただかないと、これは自民党の、政府の約束だということをしっかり認識していただくことを、もう一度、小泉政務官にお願いします。

小泉大臣政務官 おっしゃるとおりだと思います。決議は大事です。その決議の中に込められた、県内の多くの農業者の方、さまざま不安を持つ業界団体の皆さんの声を受けてあれは固まったものだと思いますから、その決議は大事にしながら、最後は国会で御承認をいただけるような中身をつくっていって、これから日本の中で、また世界の中でも大事なアジア地域の経済発展に、日米でGDPの八割を占めるのがこのTPPですから、それをどうやって形にしていくのかというのは、信頼を得ながら進めていきたいと思っております。(発言する者あり)

村岡委員 そうですね。声もありましたけれども、自動車をきちんととってこなきゃいけないということだけはお願いしたいと思います。アメリカにやはり突っ込まなきゃいけないです。そこは外交交渉です。石破幹事長も言っていました、我々がお願いしたのは、強力な政権をつくるんだ、そうすると強力な外交があるんだと。ただ、それが見えてきていないということを、やはり頑張っていただきたい、こう思っています。

 小泉政務官には最後なんですけれども、これは基本中の基本ですけれども、聖域というのを調べてみると、神聖な土地、地域、侵してはならない、比喩的に、手を触れてはならない分野。そして、小泉元総理のスローガンの中に、聖域なき構造改革というのもありました。

 では、TPPで使う聖域とはどうだったのか。手を触れてはならない分野のはずだと農業者は多分理解したんだと思います。そして、重要品目の聖域確保を求めるのは国会決議、国会決議とよく言いますけれども、実は国会決議の前に自民党が決めたんです、最初に。国会決議の前に自民党自身が決めたんです。

 ですから、この聖域というのをどう認識しているかを最後にお答え願えれば、こう思っています。

小泉大臣政務官 聖域というのは、おっしゃるとおり、手を触れてはいけなかったり、守らなくてはいけなかったりということを、よく、さまざまな場で聖域というふうな言葉を使うと思います。

 このTPPの中においても、その聖域という言葉が使われることが多々ありますが、それだけ大切な、重点の分野なんだ、そういった思いを受けとめながら、どういう結果を導いていけるのか、その聖域という言葉の重みを受けとめつつ、しっかりと交渉に当たる。そして、最後に、交渉が妥結をしたときに、その決議と整合性があるような中身だと受けとめていただけて、国会で御承認をいただけるような形にしていく努力を、交渉チーム、政府全体で一丸となって進めていきたいと思っております。

村岡委員 なかなか苦しい説明だとは思うんですが、もうこれ以上、小泉政務官、きょうはどうぞ、ここで。

 引き続いて、TPP、林大臣にちょっとお聞きしたいと思います。

 では、林大臣は聖域というのはどう考えられているのか。林大臣の認識をお聞きしたいと思います。

林国務大臣 言葉の意味として、今、村岡委員からお話がありましたように、いろいろな意味がある、こういうふうに思います。

 決議を見ますと、具体的に決議の六号に、「交渉に当たっては、二国間交渉等にも留意しつつ、自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要五品目などの聖域」、こういうふうに書かれておりますので、聖域の意味を解釈するときに、この文書の中で聖域がどういうことを意味しているかということを認識する必要がある、こういうふうに思っております。

村岡委員 なかなか言葉の定義づけだけで、どうも最初の聖域と違ってきたなという感じはするんです。TPP全体は、これから集中審議があったり、予算委員会でもあるのかどうかわかりませんけれども、総理にも直接お聞きしたいとは思っています。

 一つ、この流れを見ていくと、国民はだんだんと気がつき、国民といいますか、農業者は気づき始めていると思いますけれども、結局、少しでも関税がかかれば、それは守ったという認識になるだろう、こういうふうに思わざるを得ないようになってきた、こう思ってしまっているのが現状だと思います。だから、厳しい声もあるんだと思います。

 そして、特に、自民党が国会より先に決議したとき、多分、江藤副大臣が中心となってやられたんじゃないかと思いますので、江藤副大臣は、農業者の人から、関税を何%でもいいから、一応、一〇%、一五%、何か関税がついていれば守ったという認識でいるのかどうか、その辺、江藤副大臣に。

江藤副大臣 そのようには思っておりません。

 私は、もともとTPP交渉参加に反対をずっとしてまいりました。そして、交渉参加ということになったときに、私が地元で申し上げたことは、交渉に参加したら、国際社会に対して、国家として、これは合意を目指して努力はしなければならない。そうでないならば、交渉に参加することをやめなければならない。しかし、交渉を合意することが目標ではない。

 そして、先ほど大串委員からさらに詰めた議論をするとおっしゃっていただきましたけれども、今回の日豪においても、大臣の御指導のもとで、畜産分野についてはかなり詰めた個別の検討をいたしました。

 例えば、F1はどうなんだ、それから乳雄はどうなんだ、短角はどうなんだ、褐毛はどうなんだ、黒毛はどうなんだ、そういったぎりぎりの検討をした上で日豪の合意が今回あったわけでありますが、委員がおっしゃるように、関税が例えば一%でも残れば決議を守ったとは私は思いませんよ、それは。

 今回、日豪の合意を見ていただければわかるように、やはり国内できちっと再生産が可能になって、私が地元でいつも申し上げているのは、交渉に参加をすれば、譲らなきゃいけない部分は必ず出てくる、しかし、それは国内対策によって必ず穴埋めができる、ちゃんと補填ができる、そういった範囲の中、私は、よくばんそうこうとかバンドエイドとかいう言葉を使うんですけれども、そういうもので穴埋めができるような範囲の合意でなければならないということを常に申し上げてきました。

 私は、TPPの交渉の責任者でもありませんし、直接交渉はできませんけれども、林大臣のもとで御指導をいただきながら、TPPの交渉においても、こういった、私が今申し上げたような趣旨にのっとった合意になるように、大臣を支えていきたいと今も考えております。

村岡委員 では、その熱い思いを信じて、どういう結果になるか、これは交渉を見守らなきゃいけないと思っていますけれども、引き続き、TPP問題に関するいろいろな集中審議もあるとも聞いておりますので、ぜひやっていきたいと思います。

 きょうは、もう時間がなくなりまして、資料が、ちょっと質問できませんでしたけれども、大変申しわけないと思っております。

 いずれにしても、この前、私が、国会で芋畑があるというような状況の写真を見せました。基本的には、国会議員全員が農業というのは大切だという認識を持ちながら、その上で国益を考えて、ぜひTPP交渉も進めていただきたいと思います。

 質疑時間が終わりました。ありがとうございました。

坂本委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。

 本日は、私が最後の質疑者ということですので、あと少しおつき合いいただきたいと思います。

 きょうは、私は漆について少々お伺いをさせていただきたいと思います。

 実は、かなりたくさん質問をしたいと思っているんですが、きょうは二十分ということなので、できるだけ簡潔にまとめていきたいなというふうに思っております。

 そもそも漆ということできょうお伺いしたいなと思ったきっかけは何かというと、私は宮城県の人間ですけれども、震災で大きな被害を受けました宮城県の南三陸町というところで、これは全くたまたまなんですけれども、ちょっと視察で行った先が、農地も被害を受けたんですけれども、そこの所有者の皆さんが、今までと同じような作物をつくっていくことをもうやめようということになってしまい、たまたまそこを支援していた、地元に宮城大学という大学がございますが、その学生さんたちが、何かかわりにできるものはないのかということで、先生方と一緒に、その農地を使って漆を栽培していきましょうというようなことを始めました。南三陸町の長清水というところなんですが、いろいろな縁があったので、そこに私もたまたま参加をさせていただいて、私自身も、先日、三月なんですけれども、漆の植樹というところに参加をさせていただいて、マイ漆が今二本あるという状態でございます。これからは、これの生育を見守りながら、漆について考えていきたいなと思っているところなんです。

 ただ、いろいろ調べてみると、ああ、漆ってこんなにすごい材料なんだということを私自身初めて知ったところもございます。

 ということで、今お配りした資料の一枚目に、本当はもっとあるんですけれども、簡潔にと言うにはちょっと多いかもなという量ですが、漆ってこんなにすごいんですよというのをざっと箇条書きでまとめてみました。写真には、皆さんがよくごらんになっているであろう漆塗りのお重箱ですとかおわんですとか、そういった写真も入れさせていただきました。

 全部お話ししていると長くなってしまいますので、いろいろと抜き出したところだけで、最初に書いてあります、麻布などを漆で固める乾漆という技法がございますね。これは古来から、千年も千五百年も前からやられている技法なんですけれども、漆は、布を固める、しかも、その固めた布が非常に頑丈である、そういう特質があるわけでございます。

 例として、奈良の興福寺に乾漆八部衆立像という、これは多分、皆さん、社会科の資料とかで見たこともあるでしょうし、実際にごらんになった方もたくさんいらっしゃると思います。有名なのは阿修羅像というもので、あの像の中はどうなっているかというと、布であの像の形をつくっているわけです。中身は空洞になっているわけなんですよ。ですから、非常に軽いんですけれども、実は物すごく頑丈です。

 実際に、漆で布を固めて椅子をつくったりする実験というのは、結構過去にあったんですね。そうすると、本当に百キロぐらいの人を載せて実験したりとかしたらしいんですけれども、それでも全く崩れない。木材と同じぐらいの強度があるということもいろいろと証明されているんだそうです。

 今は科学技術が進んでいますので、繊維強化プラスチックとかいうのがありまして、それは合成繊維を合成樹脂で固めるという技術なわけですが、昔から漆というものを使って、いわゆる天然繊維を天然樹脂で固めるということは日本がかなり技術的にリードしてやってきた、そういう背景がございます。

 ほかには、もちろん、接着剤として使えるとか、一番皆さんにお薦めしたいというか、もう御存じの方は多いと思うんですけれども、非常に抗菌作用がある。殺菌作用があるんですね、この漆には。

 よく、お寺なんかに泊まりで体験とか座禅修行とかに行きますと、朝、おわんでおかゆを食べて、そこにお茶を注いで、最後に拭いてお片づけをするなんということはあったりするんですけれども、あれ、よく考えたらちゃんと洗っていないなと昔から、子供のころから思っていたんですよ。大丈夫なのかと思っていたんですが、そのとき用意されていたのは、随分使い込んだものでしたけれども、実は、確かに漆塗りのおわんだったんです。これは経験的になんでしょうけれども、漆に抗菌、殺菌作用があるがゆえに、余りごしごし洗わなくても非常に清潔に保たれているということなんですね。

 そう考えると、例えばお節料理なんかもそうですね。漆塗りのお重箱でお節を用意するというのは、昔ながらの家ではやっていたりすると思うんですが、これも、冬はなかなか雑菌が繁殖しにくいという環境があるにせよ、やはり漆の殺菌作用でもって、何日かお料理を入れておいても非常に清潔に保たれるということがあるのであろうということは、いろいろな学者さんの中でもう定説になっているというふうに伺っております。

 ということで、いろいろとあるんですね。耐水性ですから、実は水回りに使うと大変よろしいとか、あと、ヨーロッパなんかでは、中世で、フレスコ画というんですけれども、白いしっくいの壁に絵を描くと、黒がなかなか黒くならないということがあって、あれは、白いしっくいの上に黒を塗っても、何か濃いグレーにしかならない、そういうことがあったらしいんですけれども、そのときに、日本の漆に鉱物なんかを入れて黒くした、いわゆる漆黒という言い方がありますけれども、この深い黒に当時のヨーロッパは非常に注目したとか、そういうことがあるんだそうです。

 最後に、ちょっと意外だったのは、非常に手ざわりがよくて、使っていくほどに味が出てくるというのはよく言われるんですけれども、プラスチックの、特に、色の濃い、黒いプラスチックの製品なんかに手をつけると、指紋がつくんです。この指紋を消すのに結構躍起になったりするときがあるんですけれども、実は漆というのは、人の皮脂というんですか、脂との相性がいいということで、指紋がつきにくい、こういう特徴もあるんだそうです。なので、最近は、デザインの最先端でもこれを使って、皆さんお持ちでしょうけれども、例えば携帯電話、スマートフォンといったもののカバーをつくってみようとか、こういう取り組みもなされているということで、非常に有用な材料ということなんですね。これは私も初めて知って、びっくりしました。

 では、そんな漆の何がそうさせているのかというと、この下に書いた主成分ウルシオールという、まさしく漆が持っている機能だからウルシオールということで命名された化学物質だそうです。

 ということで、おめくりいただいて、裏、二枚目になります。その中でも国産の漆というのは非常にすぐれているというお話でございます。

 参考までに、今言ったウルシオールというのが、日本産だと、いろいろばらつきはあるんでしょうけれども、大体六割後半から七割ぐらいは漆の樹液の中に含まれているそうなんですが、これが中国産になると、平均して大体五%から一〇%ぐらい少ないんだそうです。六〇%前後と書きました。同じく、漆の生産が盛んなベトナム産というのがあるんですけれども、これはもっと低いです。三〇から四〇%程度だということになっています。かわりに、構造が似ているんですけれども、ラッコールというものが成分になっているんですが、先ほど言った抗菌作用ですとか固める作用というのは、ラッコールに比べたらウルシオールの方が圧倒的に強いんだというようなお話でございました。

 ちなみに、皆さんが恐らく好きであろうマンゴーも、これはウルシ科なんですね。それはただのなるほど情報なんですけれども。

 そんなわけで、特に私がお勧めしたいのが、抗菌作用というところなんです。京都に漆器工芸協同組合さんというのがありまして、そちらのホームページで公開されている一部の図がこの表でございます。ごらんください。MRSA、これはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌というものですが、そういう強い感染症を引き起こすような細菌、大腸菌、こういったものが、上に「対照」、下に「うるし」と書いてありますけれども、漆処理を施したものとそうでないものでは、全くもって六時間後あるいは二十四時間後の結果が違ってくるというようなことも実証されているんだそうです。

 ということで、今は結構、お子さんが多い保育施設ですとか、あとは介護施設といった福祉施設、それから住宅なんかでも清潔な住宅をということで、いろいろなところに適用されているということでございます。

 その下の写真は宮崎県の中央保育園というところから使わせていただいているんですけれども、トイレの床、これは木材に漆加工をしたりとかして、これもまた清潔だ、あるいは園児たちが遊ぶ木製のおもちゃ、木でつくったおもちゃ、ここにも漆処理を施して、お子さんたちが変な病原菌に触れないようにということでなされているんだということでございます。

 漆のすごいところというのを今かなり簡潔にしゃべらせていただいたつもりなんですが、そうなると、では、一体この漆というのはどのぐらい生産されていて、そもそも国内で賄えているんですかというところを国としてどのように認識されているのかということで、まず、国内の消費量、それから国内生産量、さらに輸入量等について御質問申し上げます。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年でございますけれども、漆の国内消費量は五十三トンということになっております。

 国内生産量でございますが、国内消費量の三%に当たります一・四トンでございまして、主な生産県は、岩手県、茨城県、栃木県となっております。

 また、平成二十四年の輸入量でございますけれども、五十二トンでございまして、輸入額は一億六千万、そのほとんどは中国からの輸入ということになっております。

林(宙)委員 ありがとうございます。

 ということで、簡潔にお答えいただいたんですけれども、それをグラフにするとこうなりますよというのが最後のページに書いてあるこれなんですね。

 ごらんいただいたら、もう一目瞭然なんですけれども、国内生産量が輸入量に対して圧倒的に少ないというのが見てとれると思います。実は、グラフをつくるのにかなり苦労しまして、拡大して、ようやく上の赤い薄い部分が見えるようになった。そのぐらい比率としては少ないんです。

 これは、計算してみますと、便宜上六七年の分から一応載せていますけれども、二〇一二年まで、国内消費量、赤と青を足した分が消費量だと思っていただければよろしいんですが、その全体に対する国内生産量というのは、よくて三%弱なんです。大体が一%台ということになっているんですね。こうして、一目瞭然、漆の消費量自体もだんだん減っていますし、生産量自体もだんだん、ちょっとこれは薄過ぎるのでわからないんですけれども、減ってきているんです。

 次にお伺いしたいのは、漆の消費量というのが、昭和五十年ですから大体一九七五年ぐらい、このグラフでいうと七二年と七七年のこの辺からだと思うんですけれども、ここから一気に下がり出して、今ではピークに比べて一割ぐらいしか消費されていないんですが、そうなっている要因というのは一体どのように認識されていますでしょうか。

沼田政府参考人 漆の国内消費量でございますけれども、先生御指摘のとおり、昭和五十年代前半以降、減少傾向で推移しております。平成二十四年はピーク時の一割程度ということになっております。ちなみに、昭和五十年が五百十五トンでございました。平成二十四年が五十三トンということでございます。

 この背景でございますけれども、生活様式の洋風化が進む中で、漆を使用した食器を使用する機会が減少したことでありますとか、あるいは、同じ木製食器でも、ウレタンなどの合成樹脂塗料等のいわゆる安価な製品が増加したことなどがあるのではないかなというふうに思っているところでございます。

林(宙)委員 生活スタイルが大きく変わりましたので、それに対しまして消費量が減っていく、これはもう時代なのかな、時代の流れで、これはもう仕方がないことなんだなと思うんです。

 ただ一方で、国内でつくっているものが少ないから、消費量自体が減ってくれば、では今度は国産で賄える分がふえるだろうと思ったら、全くもってふえていないわけで、これはやはり輸入品がかなり安いというところにも起因しているんだと思います。

 そうなると、ちょっと気になるんですけれども、四月は一生懸命農業のことで議論をさせていただきました。その中で、こういう分野にこういう交付金を充てるんだとかという議論をたくさんさせていただいたんですけれども、はたと立ちどまって、漆は、そういうものというのは国の方では用意されているんでしょうかというところなんですが、長官、その辺はいかがでしょうか。

沼田政府参考人 お答え申し上げます。

 漆林の整備でありますとか漆の振興でございますけれども、そういった予算的なものについては、通常の森林整備事業のほかに、漆の生産基盤の整備などに活用できる森林・林業再生基盤づくり交付金、そして、森林・山村多面的機能発揮対策交付金というものがございます。

 ただ、今申し上げました二つの交付金については、近年実績はございません。私ども、ちょっと調べさせていただきましたけれども、森林整備事業によりまして、直近の五年間、平成二十年から二十四年でございますけれども、全国の中では十一ヘクタールの漆の植栽を実施しております。また、国有林の分収林制度でございますけれども、現在、地方公共団体や日本文化財漆協会といった民間団体がございますが、こういった団体と、二十三件、七十一ヘクタールの漆林の造成に関する分収造林契約を締結しておりました。

 そういったことで、私どもとしても努力させていただきたいというふうに考えているところでございます。

林(宙)委員 見る見るうちに残り時間が少なくなってまいったわけなんです。

 そういうことで、今、大事だなと思ったのは、国としては、特用林産の中に入りますので、それに対する予算の中に含まれるという意味でも、予算自体はいろいろ用意はされているようなんですが、利用実績がないということなんですね。今お触れいただいたような理由等々も一部あるとは思うんですけれども、これは一度よく考えていった方がいいんじゃないのかなと私なりには思っております。

 というのは、先ほど申し上げたように、漆についてはいろいろな利用価値が今見直され始めているというところがまず一つなんですけれども、やはり一番重要なのは、国の重要文化財を修復するのに漆というのは必要不可欠なんですよ。

 例えば、有名なのは、鹿苑寺の金閣とか、あと平泉の中尊寺金色堂とか、ああいったところも、最近大きな修復をやりましたが、そこはやはり漆をある程度の量使わなければならない。

 そして、今ですと、平成十九年からになっていますけれども、日光の神社二つ、それからお寺一つ、東照宮ですとか輪王寺とかあの辺なんですが、世界遺産でもあるということで、六年間で四トンを超える漆が必要であるということで、四トンですよ、先ほど生産量の話をしましたけれども、一つとか二つの場所で四トンを使うというのはかなりの量なんですね。これには主な生産地である岩手県の浄法寺漆というのが一〇〇%使われるということで、国内産の漆だけで四トン用意しなければいけない。これはもう非常に大変なことなんです。

 大変なことなんだけれども、いろいろほかの文化財等々を調べていくと、最後の上塗り、一番最後に塗るのは国産の漆なんですけれども、その下塗りとか中塗りというのは輸入物を使っていたりするんです。

 これは、コストとかいろいろありますし、私たちも、税金をたくさん使い過ぎてはいけませんというような立ち位置の政党なので、言いにくいところがあるんですけれども、ただ、国とか自治体で決めている重要文化財というものに対して輸入の材料で仕上げをするというのは、私はこれは一回考えなきゃいけないんじゃないかなと思うんです、例えばの話。やはりそこは、優先的にでもいいので国産の漆を充てられるように、もうちょっと生産を頑張りましょう、では、漆をどこに植樹していきましょうか、どのぐらいつくりましょうかというビジョンがあってしかるべきだと私は思っているんです。

 その辺のデータ等々は、きょうは時間の関係で示せずにおりますが、またちょっとお時間をいただいたときに、漆第二弾というか後編をやりたいとは思っております。

 最後に、政府として、大臣にこれはお伺いしたいんですけれども、この国産漆というのを今後どのように振興していきたいとお考えになっているか。しようがない、現状でもとにかくいいのか、それとも、やはりふやしていくべきなのかということにつきましてお伺いをしたいなというふうに思います。

林国務大臣 大変勉強になりました。

 古来から、塗料や接着剤として、漆器や家具、今おっしゃっていただいた神社仏閣等に漆が使われておりまして、漆の生産業は重要な産業だというふうに思っております。

 磁器がチャイナ、こういいますが、漆器はジャパンと呼ばれているというふうに、伝統工芸の代表的なものでありますので、和の文化の継承、発展にとって重要であるということと、今お話があったように、文化財の修復の塗料等としても欠くことができない素材であると思っております。

 したがって、漆林の造成、これは生産者の御意見を伺いながらということで、現在二十三件、七十一ヘクタールですが、また、関係省庁が連携して、和の住まいの推進において、漆や漆器の普及活動の推進、こういう取り組みを通じて、国産漆の生産が継続、振興されるように努めてまいりたい、こういうふうに思っております。

林(宙)委員 ジャパンのくだりで、私も大変勉強させていただいたなというふうに思い、そこに感謝をさせていただきながら、ぜひ、漆のこともまた今後いろいろなところで議論があるようにということでお願い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

坂本委員長 次に、内閣提出、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 特定農林水産物等の名称の保護に関する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の農林水産業、農山漁村を取り巻く環境は厳しさを増しており、これを克服し、本来の活力を取り戻すために、攻めの農林水産業を展開することが喫緊の課題となっております。

 農山漁村地域には、長年培われた特別の生産方法などにより、高い品質と評価を獲得するに至った産品が多く存在しますが、これまで、その価値を有する産品の品質を評価し、地域共有の知的財産として保護する制度が存在していなかったところであります。

 一方、国際的には、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定、いわゆるWTO協定の一部をなす、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定に基づき、品質、社会的評価その他の確立した特性と産地が結びついている産品について、その名称を知的財産として保護することを内容とする地理的表示保護制度が確立しており、多くの諸外国において導入されているところです。

 このため、地域で育まれた伝統と特性を有する農林水産物、食品のうち、品質等の特性が産地と結びついており、その結びつきを特定できるような名称が付されているものについて、その名称を地理的表示として国に登録し、知的財産として保護する制度を創設することにより、生産業者の利益の保護を図り、もって農林水産業及びその関連産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的として、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、地理的表示等の登録であります。

 農林水産物、食品のうち、特定の地域で生産され、品質その他の特性が生産地に主として帰せられるものを特定農林水産物等と位置づけ、その生産者の団体であって、生産行程や品質の管理を行う十分な能力を有するものが、特定農林水産物等の生産の方法等を定めた明細書を作成した上で、特定農林水産物等の名称である地理的表示等の登録を農林水産大臣に申請することができることとしております。農林水産大臣は、この申請の概要を公示し、第三者からの意見の提出を受け付けるとともに、学識経験者の意見を聴取した上で、登録の可否を判断することとしております。

 第二に、特定農林水産物等の名称の保護であります。

 登録を受けた生産者団体の構成員は、明細書に沿って生産した特定農林水産物等またはその包装等について、地理的表示を付することができることとしております。また、生産者団体の構成員が地理的表示を付するときは、登録された地理的表示であることを示す標章をあわせて付するものとしております。これらの場合を除いては、何人も、農林水産物、食品またはその包装等に地理的表示または標章を付することはできないこととしております。農林水産大臣は、これらの規制に違反した者に対し、地理的表示もしくは標章またはこれらと類似する表示もしくは標章の除去を命ずることができることとし、その命令に違反した者に対しては、刑事罰を科することとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

坂本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十八分散会


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