衆議院

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第3号 平成27年3月19日(木曜日)

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平成二十七年三月十九日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江藤  拓君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君

   理事 松木けんこう君 理事 石田 祝稔君

      穴見 陽一君    井野 俊郎君

      伊東 良孝君    池田 道孝君

      石川 昭政君    今枝宗一郎君

      岩田 和親君    大野敬太郎君

      加藤 鮎子君    勝沼 栄明君

      木村 弥生君    熊田 裕通君

      瀬戸 隆一君    田中 英之君

      武井 俊輔君    武部  新君

      武村 展英君    谷川 とむ君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      古川  康君    細田 健一君

      前川  恵君    宮路 拓馬君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      森山  裕君    簗  和生君

      山本  拓君    金子 恵美君

      岸本 周平君    小山 展弘君

      佐々木隆博君    福島 伸享君

      井出 庸生君    村岡 敏英君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      斉藤 和子君    畠山 和也君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           梶島 達也君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房統計部長)          佐々木康雄君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十九日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     熊田 裕通君

  瀬戸 隆一君     武村 展英君

  武部  新君     大野敬太郎君

  橋本 英教君     田中 英之君

  簗  和生君     宗清 皇一君

  山本  拓君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     武部  新君

  熊田 裕通君     木村 弥生君

  田中 英之君     加藤 鮎子君

  武村 展英君     瀬戸 隆一君

  務台 俊介君     山本  拓君

  宗清 皇一君     谷川 とむ君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 鮎子君     穴見 陽一君

  木村 弥生君     岩田 和親君

  谷川 とむ君     簗  和生君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     石川 昭政君

  岩田 和親君     伊藤信太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     橋本 英教君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件

 山村振興法の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

江藤委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房参事官梶島達也君、大臣官房統計部長佐々木康雄君、生産局長松島浩道君、経営局長奥原正明君及び農村振興局長三浦進君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小山展弘君。

小山委員 おはようございます。民主党の小山展弘でございます。

 それでは、早速質問に入りたいと思います。

 政務二役の大臣不在の際の職務代行、危機管理意識について、最初にさらっとお尋ねしたいと思います。

 二月二十三日、前任の西川大臣が辞任した日ですけれども、この日、小泉副大臣は、終日農水省には不在。あべ副大臣は、十六時半に登庁して、十八時に退庁、朝から十六時半までは農水省には御不在であった。中川政務官は、十一時に登庁し、十七時に退庁しています。佐藤政務官は、十三時に登庁し、十七時半に退庁するも、十八時に再び登庁し、二十時に退庁しております。

 大臣の交代に際して、副大臣、政務官のほとんどが農水省に不在状態でありました。

 また、林大臣の初登庁を迎えたのは佐藤政務官のみという状況でありました。

 このことについて、政務三役の、お一方は、副大臣か政務官の方がいらしたということではあるんですけれども、最高責任者である大臣不在の際に他の政務二役の方がほとんど不在状態だったということについての危機管理意識、こういった認識について、まず問いたいと思います。

 なお、中川政務官におかれましては、先日の予算委員会におきまして、約二週間の入院ということで伺っておりますけれども、そろそろ退院の時期等にもなってきたかと思います。公務復帰の見通しについても、あわせて御答弁いただきたいと思います。

あべ副大臣 二月二十三日の西川前農林水産大臣に伴ったときの、私ども、農林水産省でどのような体制であったかというお問い合わせでございますが、二月二十三日月曜日夕方でございますが、私自身は、十六時三十分ごろから十八時ごろまで、農林水産省の副大臣室で面会対応及びレクを受けておりました。十八時過ぎに退庁いたしまして、十九時過ぎまで議員会館で打ち合わせを行った後、都内の自宅に帰宅をさせていただきました。

 この間、十七時三十分ごろ、レクの最中に、西川大臣が辞任をされたという知らせを受けました。その後、十八時十分ごろに、二十三日は林大臣との初顔合わせは行われず、二十四日に改めて時間をとって顔合わせを行うという連絡を受けたところでございます。

 農林水産省の副大臣及び政務官は、西川大臣が辞任され、林大臣が就任されるまでの間、十八時過ぎまでは私が登庁しておりましたほか、委員がおっしゃったように、十八時ごろから二十時ごろまでは佐藤政務官が登庁されたというふうに承知をしているところであります。

 また、退庁していた副大臣及び政務官も含め、全員が都内近郊で事務方と連絡がとれる体制になっていたことから、農林水産省といたしましては、危機管理上問題があったとは考えておりません。

中川大臣政務官 二月二十三日月曜日の夕刻は、十七時ごろ退庁し、議員会館の事務所に在室をいたしておりました。十七時四十分ごろ、秘書官から、西川大臣が辞任をされ、登庁の必要があるかもしれないので、都内で待機をするように連絡を受けました。その後、十八時十分ごろ、二十三日には初顔合わせは行われず、二十四日に改めて時間をとって初顔合わせを行うとの連絡を受けました。

 私といたしましては、登庁し、林新大臣にお会いをしたいとの思いはございましたけれども、当日、新大臣の就任記者会見などの日程もあることを踏まえまして、事務方からの連絡どおり、登庁しないことといたしました。

 その後、十八時三十分ごろから二十一時ごろまで、都内で支援者の方々との会合に出席をいたしました。さらにその後、門議員とお会いをし、会食をいたしました。

 事務方からは、私を含め、農林水産省の副大臣、政務官は全て都内近郊で連絡がとれる体制になっていると聞いており、農林水産省の危機管理上、特に問題があったと考えてはおりません。

 危機管理上の問題は別といたしまして、私の軽率な行動によりまして皆様方をお騒がせいたしましたことについて、深くおわびを申し上げます。

 また、体調については回復基調にあると感じておりまして、私といたしましては、早急に退院し、公務に復帰したいと考えてございます。

 退院の時期につきましては、健康上の問題であり、医師の診断次第でございますので、私からこの場で申し上げることは差し控えさせていただきたいというふうに存じます。

 なお、国会への出席要請をいただいた際には、医師と相談をし、通告を受けた時間も考慮の上、外出可能との診断をいただいて国会に出席をさせていただいているところでございます。

小山委員 大臣が辞任をする、交代が起きるというような、最高責任者の空白が起きたような、農水省にとっては、責任の所在が、権力の空白が起きるような大変な日だったわけでございます。何らかの、口蹄疫とかそういったことが過去にもございましたが、現地対策本部とかあるいは国際会議、こういったことでの不在のケースを除けば、役所の役人が、特に農水省本庁にいなくてもいいよということであっても、基本的には、やはり農水省に在庁するというような責任感というか緊張感というものが必要だったのではないか、私はそのような認識を持っております。

 ぜひ、役人の方からもそういったアドバイスがあり、また役所の人間と連絡がとれるというような状況ではあったということは今伺いましたし、また都内にも皆さんいらしたということではあるんですけれども、新任の林大臣を、以前もやっていらっしゃった、また戻られたわけですけれども、やはり大臣をお迎えするというような緊張感もあった方がよかったのではないか、私はそのように感じております。

 次に、農業人口の減少に関する政府の認識についてお伺いをいたします。

 安倍総理は、施政方針演説で、戦後一千六百万人を超えていた農業人口は、現在二百万人、この七十年で八分の一まで減り、平均年齢は六十六歳を超えました、これは施政方針演説の議事録からそのまま読み上げておりますけれども、その次の言葉が、もはや、農政の大改革は待ったなしでありますと述べています。私は、ここに論理の飛躍があるように思います。

 そして、その後に、農協改革の話になるのですがと続けるんですけれども、これでは、まるで農業人口の減少が起こり、農業従事者の高齢化が起きたことは全て悪い現象であり、また、それらは農協の今までの体制が悪かったからのような印象を与えます。

 農業人口が減ったことは、戦後直後と比べて、機械化、トラクターとかコンバイン、田植え機、こういったものが導入をされまして、農業労働時間の大幅な短縮があったこと、これらの機械化の進展によって専業農家だった農家が農作業の手間が大幅に省かれて、兼業農家となり、また、余剰人口が都市部に流れ、高度成長期の日本の発展を労働力という面から支えたわけであります。また、大規模化によって農家数が減ったということも考えられます。

 必ずしも、戦後直後より農業従事者が減少したことをもって農業の発展にとって阻害要因であったというのは、私は言い過ぎではないかと思う。もちろん、人口が減ることは悪い側面もあるかと思いますが、全て阻害要因だったというのは言い過ぎではないかと考えております。

 これについて、予算委員会の第六分科会で質問いたしましたが、このときに、もう一つの高齢化の方についてはあべ副大臣から御答弁いただきましたけれども、農業従事者の人口減少に対する政府の認識については御答弁がございませんでしたので、改めて、政府は、戦後の農業人口の減少について、どのような要因でそれが起きたのか、それは批判されるべきことだけなのか、また、ロボットの導入も進めるという中で、そしてまた日本全体の人口が減少する中で、望ましい農業人口はどの程度だと考えているのか。

 これは大規模化をどの程度進めていくかということを考える上でも大事なことであります。これについては、予算委員会分科会に出席できなかった中川政務官から御答弁いただきたいと思います。

中川大臣政務官 委員御指摘のとおり、農業就業人口は、昭和三十五年の千四百五十四万人から平成二十五年の二百三十九万人と大きく減少してきているところでございます。

 その要因といたしましては、高度経済成長期において、農業外部からの労働力需要が強かったことから、多くの農家世帯員が他産業に就業して都市部に流出したこと、その後も、若年就業者の確保が進まず、高齢化が急速に進展する中で、高齢農業者の離農が進んだことなどが考えられるというふうに思います。

 私は、大規模化や機械化の進展により生産性が向上するものの、現在の農業構造につきましては、六十五歳以上が六割を占めるなど高齢化が極端に進んでおり、持続可能なものとしていく必要があるというふうに認識しております。このため、新規就農を促進し、世代間のバランスのとれた就業構造にしていくことが重要と考えており、現在進めている新たな食料・農業・農村基本計画の策定とあわせて、十年後の望ましい農業構造の姿と農業労働力の見通しを示していくことといたしております。

 このような農業人口減少以外にも、我が国の農業、農村は、耕作放棄地の増大、農業所得の減少など課題がありますことから、強い農業水産業と美しく活力ある農山漁村を実現させるための農政改革を実施しているところでございます。

 これらを着実に進めていくことにより、我が国農業、農村の活性化を実現し、農業を若者に魅力ある産業に成長していきたいというふうに考えています。

 十年後に現在と同程度の生産を維持するためには、土地利用型作物以外、野菜、果樹、畜産等でございますけれども、につきましては、現在と同程度の約六十万人、土地利用型作物については、構造改革が進むことを前提としても、約三十万人、両者を合わせて、少なくとも九十万人以上が必要と試算しているところでございます。

 十年後の農業就業者数につきましては、趨勢では、六十代以下で九十万人を下回るが、農業の内外からの青年層の新規就農によりまして、若い農業者が定着ベースで倍増すれば、六十代以下で九十万人以上を確保することが可能となるというふうに見通しているところでございます。

小山委員 どちらかというと、今の政府の答弁においても、高齢化の方が問題であるということかと思います。

 もし私が計算を間違っていたら恐縮ですが、今よりもさらに、大規模化とかロボット化、機械化で人口は減っていくということですから、総理の施政方針演説ということで、非常に短い文章の中で、いろいろなことを詰めなきゃいけないというのはあるとは思うんですけれども、今の答弁の中にもありましたが、農業人口の減少というものは全て悪い、マイナス要因だということで、今後も減っていくという見通しであるということを考えても、そういった施政方針演説にすべきではなかったところもあったんじゃないかな、私はそのように感じております。

 次に、高齢化のところで、先日の予算委員会第六分科会でも質問させていただきましたけれども、このことについて、もう少し深掘りをしていきたいと思います。

 高齢農業従事者を農政の中で、では、逆にどのように位置づけるかということについて政府の認識を伺いたい。

 今、中川政務官からもお話もありましたが、農業を若者にとって魅力のある産業に成長させていきたいという、そこについては私も認識を共有するところであります。

 一方で、我が国の農業はよくも悪くも高齢者が担っているという現状もあります。これは裏を返せば、製造業やサービス産業と異なって、高齢者でも生産に従事できるという農業の特徴でもありますし、また、生涯現役で農業に従事することもでき、高齢者にも適した産業であるということも示していようかと思います。

 また、最近では、長野県のように、長寿健康県で、実は高齢者で農業従事者の多い地域は、介護の比率が少なくて、結果として医療、介護コストの削減というような効果も見られるんじゃないか、これも農業の多面的機能の中に含めるべきではないかという考えもあります。

 こういった中で、六十五歳以上の高齢農業者の方をどうやって農政の中で位置づけるか、御答弁をいただきたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 高齢農業従事者、その豊富な知識、経験を生かして、農業に関するさまざまな活動、また、地域活動に取り組んでいくことは、農山漁村の維持、活性化を図っていく上で重要であるということは認識しているところでございます。

 こういう観点から、農林水産省におきましては、水路、農道などの地域の資源を、高齢者を含む地域全体で維持管理し、農業、農村の多面的機能の発揮を図る活動の支援、また、地域の高齢者の参画を得まして、農山漁村の持つ豊かな自然、また、伝統的な食を活用いたしまして、農山漁村の活性化を図る取り組み、例えば特産品づくり、都市住民参加の体験活動などへの支援などの施策を講じてきているところでもございます。

 こうした取り組みによりまして、高齢農業従事者の知識や経験も生かしつつ、農山漁村の維持、活性化を図ってまいりたいと思っております。

小山委員 ここからは、農協法の制度変更について伺っていきたいと思います。

 まず、骨格によりますと、理事の過半を認定農業者や農産物販売のプロとするとのことですけれども、農産物販売のプロというのは、どういう定義で、どういった人たちのことを指すのか。

 例えば、今ある全農とか経済連に勤めた、いわゆる学経職員のOBなどもこのプロの中に入るのか。恐らくイメージとしては、それぞれの地域でかなり手広く農産物を他の農家さんからも買って売っている、農産物の売買をかなり専門的にやっている、自分自身でも農家として大規模にやっている、そういう人たちをイメージしているのかなというふうに私も感じております。

 農協の理事については、それぞれの地区で選出をするんですけれども、選出の結果、認定農業者や農産物販売のプロといった人たちがそれぞれの地域で選ばれずに、過半数に届かない場合というのは、今回の法制度の変更の骨格と反するような理事の選出結果になることも考えられると思うんですが、その場合はどうするのか、お尋ねしたいと思います。

奥原政府参考人 今回の制度の骨格におきましては、理事の過半を認定農業者の方と、それから販売とか経営のプロの方にする、ただし、原則としてという言葉がそこに入っております。

 まず、販売のプロの方がどういう方かということですが、現在、法律の条文の作成を進めておりますので、まだ完全に確定はしておりませんが、制度の骨格のときのイメージでいきますと、現在の農協の農産物の販売の仕方は、ほとんどは委託販売ということでございます。しかも、農家から農産物を集荷して、これを市場等に出荷する、こういったものが中心になっておりますが、今のような食料が過剰な状況のもとで有利に販売していこうと思えば、やはり末端の消費者ですとか実需者のところに、相手のニーズに応じる形できちんとした販売をしていかないと、農家の手取りは上がっていかないというふうに考えております。ですから、そういうような販売の仕方がきちんとできる方をできるだけ理事の方の中に入れていただくという発想でございます。

 農協の職員の方の中にも、そういうことに取り組んでいただいている方は当然いらっしゃいますので、そういう方はこの販売のプロに当然該当すると思いますし、場合によっては、その県の、その地域の出身者で、東京でいろいろな食品メーカー等で仕事をされた方で、能力のある方を連れてきて理事にする、そういったことも当然含まれるということになると思います。そこは、農協が、どういう方が販売能力があるかということを判断した上で選択をしていく、こういうことになります。

 その上で、こういう販売のプロの方と、それから認定農業者の方で理事の過半を占めるということを今回ルール化するということになっておりますけれども、制度の骨格でも、原則としてという言葉が入っておりますので、具体的な法律の条文のつくり方は今いろいろ検討しておりますけれども、実際に、その地域の中に認定農業者の方がほとんどいないという地域も中にはあります。場合によっては、農業経営基盤強化法に基づく市町村の基本構想が決められていないといった市町村もありますので、ここは認定農家はいないということに当然なりますといった実態も踏まえた上で、ここの例外についてどういう形にするかということは、法律の条文としてよく詰めたいというふうに考えております。

小山委員 原則としてという言葉が入るということで、必ずしも認定農業者や農産物販売のプロということで過半を占めなくてもいいと。これであれば、何のために法改正をするのか、法改正しなくてもいいんじゃないかというふうに私は感じました。

 それと、この骨格の部分で農産物販売のプロというものの定義がなされていないというのも、私もこれはいかがなものかと。この定義すらなされていないまま骨格がもう出されているということからしても、ちょっと今回の法改正というのは、何のために行うのか、本当に農水省の方も、農水省としてこれがやるべきことなのか、むしろ規制改革会議の言いなりみたいになっているんじゃないか、こういったことを私は正直感じました。

 協同組合というのは一人一票なんですね。それで、素人かもしれないけれども、自分たちが経営に参画をして、経営参加というようなことがあります。だからこそ、また後ほど触れていきたいと思いますけれども、必ずしもプロばかりではない、だけれども、プロの方も中には含まれる場合もあったり、地域の中では最もすぐれた方が理事になったり組合長になったりする場合もあろうかと思います。時には、必ずしもそういう適格ではない方ばかりで理事が構成される場合もあるかもしれない、民主的な手続の中で。

 だからこそ、全中の業務監査、経営改善指導、これらによってJAの経営の安定性、そして財務の安定性というものは確保されてきたわけであります。このことを考えてみても、今回の、またこれからも触れていきますが、ますますこれは、全中の経営改善指導、そして業務監査というものは続けるべきだと私は思います。

 そして、今のことに関連しますけれども、今後、有利販売、実質的には農協による買い取り販売を拡大していくということでございます。私は、これも非常にリスクが大きいことだと。今まさに奥原局長がお話しになったように、今は物があふれ返っていて、なかなか簡単に売れる時代ではないという御答弁がございました。だからこそ、リスクが大きいんです。

 森林組合が、財務がなぜあそこまで毀損をして、そして合併が必要になったかというと、これは全部買い取り販売で、赤字が出ているんです。同じようなことが、受託販売はリスクがないから、協同組合にとっては、確かに、非常に自分たちにとってはリスクの少ないやり方であったと思いますし、私も買い取り販売を否定するものではないんですけれども、ただ、これから積極的に乗り出していこうということで、これが相当リスクがある、今の日本の需要の状況からしても。

 そういったときに、株式会社であれば、これは安く仕入れて高く売る、そして会社の利益の最大化を図って、理屈で言えば配当をふやすというようなことになろうかと思いますが、協同組合は組合員に資するための組織ですから、農協であれば、できる限り組合員のつくった農作物を高く仕入れて高く売るというようなことが組織としての使命になってこようかと思います。

 その際に、認定農業者や農産物販売のプロが、例えば、余り人を疑うようなことは言いたくないですけれども、高く農産物を農協に買わせて、価格リスクを農協に負わせる、自分の農業法人の利己的な利益の拡大を図る、確かに特定の農家の所得向上にはなるわけですけれども、他の組合員からすると、一種の背任的な行為が行われる可能性もあります。

 このような利己的な取引に対しては理事会のチェックがあるということですけれども、その理事会も、例えば声の大きい大農家とか、農協を通さない取引で農産物販売のプロの人にお世話になっているような人が理事になった場合、他の理事が適正にチェックできない、口をつぐんでしまうというような可能性も、残念ながら、現場の話を聞くと、あると言わざるを得ない。農産物販売のプロであれば、こういった影響力を行使することは十分可能性としてあるわけであります。

 こういう利己的な取引を防ぐためにも、全中の業務監査、経営指導がストッパーとして存在していたわけですけれども、少なくとも強制的な経営指導や業務監査は廃止され、多分実質的に、今後、これはコストの面から行われなくなっていくことと思います。

 理事会以外に、このような利己的な取引、背任的な取引を防ぐ仕組みというものは想定しているのでしょうか。

奥原政府参考人 農産物の販売におきましては、できるだけ高く売っていただくということが一番大事なことで、そうやって、農家の所得、手取りをどうやってふやすかというのが今回の農協改革の最大の眼目だというふうに考えております。

 それができるように、担い手のニーズをきちんと踏まえた運営をする、あるいは販売能力を高めてきちんと販売をしていくということを理事のところで求めているわけでございますが、今先生が御指摘になりました、要するに、自分の利益を図るために農協に損失を及ぼすというようなことをどうやって抑制するかというのは一つのテーマでございます。

 現在の農協法の中でも、これにつきましては、例えば農協の理事についてはいろいろな義務がかかっております。例えば、善管注意義務もかかっておりますし、それから、法律の三十五条の二の第一項というところでは忠実義務という規定もかかっております。これは、農協に損失を与えないように、競業避止義務を含めて、そういうことがルールとしてかかっているということでございます。

 それから、理事が農協と取引をするような場合には理事会の承認を受けて取引をするというルールも当然決まっておりまして、これは法律の三十五条の二の第二項でございます。

 こういった形で、理事の不正行為につきましては、理事会でのチェック機能は当然ありますので、自分たちの組織としてきちんとやっていただく、これは当然のことでございますが、この任務を怠ったときは、これについては、農協に損害を与えれば、損害賠償責任の規定も農協法の中にございます。それから、刑法上の背任の条項に該当することも当然出てまいります。それともう一つは、行政の方の検査、それから監督も当然行われておりますので、そういったことを通じて、理事の不正についてはきちんとチェックをしていくということになると思っております。

小山委員 今、奥原局長からのお話でございましたが、最初の農家の収益、高く売っていくということが目的だということと、やはり今回の全中の組織をいじるということにつながりがあるというふうにはまず感じられないということであります。むしろ、リスクのある買い取り販売をしていくからこそ、経営の安定性、財務の安定性というものはより必要になるわけですから、これは何重にもチェックがあった方がいいにこしたことはないわけでありまして、もちろん行政の常例検査とか、そういったものもありますけれども、その実態というものを多分農水省さんで御存じだと思います。

 こういったことも含めて、今、理事会あるいは法律のお話もございましたけれども、問題が起こってからでは遅いんですね、信頼が失われますから。問題を起こさないように、いかに未然に防ぐかということも大事ではないか。その点からすると、今回、業務監査あるいは経営改善指導がなくなるということがメリットであるということは、私は今の答弁からは感じられませんでした。

 次の質問に移りたいと思います。

 政府は、農業協同組合について、職能協同組合と認識しているのか、あるいは地域協同組合と認識しているのか。また、農協の実質的な組織の設立はいつであったのか。戦後の農協法の成立の前に、大正時代の産業組合、あるいは農会、戦時体制としての戦時農業団、農業会等があり、これらの組織を受け継ぐ形で農協に組織が移行したと考えられますけれども、これらの歴史的な経緯等について、政府はどのような認識を持っているでしょうか。

林国務大臣 農協法の一条でございますが、農業者の協同組織であるということをここに明記してございますので、農業者が農産物の販売や生産資材の調達などの事業を利用することでメリットを受けるということを主目的として設立する、農業者の職能組合であるということがここに明記をされておるわけでございます。

 高齢化、過疎化が農村社会で進んでおりますので、農協が地域のインフラとしての機能を果たしている、これは事実だと思います。事実でありますけれども、だからといって、法律的に農協が地域住民のためのいわば協同組合であるということにはならない、こういうふうに考えておるところでございます。

 また、歴史的経緯についてお尋ねがございましたが、農協は、昭和二十二年に、戦後の民主化政策の一環として制定された農業協同組合法に基づいて、農業者の自主的団体として設立をされたものというふうに認識をしております。

 種々の経緯や関連はあるものの、今お触れいただいた産業組合法、これは明治三十三年でございますが、これに基づいて、地域の人を農林、商工、小売業者、消費者、こういうふうに幅広く構成員とした産業組合、これが、戦後、各種協同組合としてそれぞれ独立をしたわけです。

 それから、昭和十八年には農業団体法というものができて、強制加入の戦時統制組織だった農業会、こういうものができておりますが、こういうものとは今の農協は性格を異にするものであると考えております。

小山委員 林大臣から、ある意味、いい御答弁をいただきました。実態として、事実として、地域インフラとしての役割を農協が果たしている、私もそのとおりだと思います。

 だからこそ、私は、現状を理屈に合わせるのではなくて、むしろ今の実態を認めていく、まさに地域インフラ、地域に役に立つということを、農協法の第一条と第八条こそ改正をして、農協法の法目的や事業目的に地域インフラとしての役割を担うという文言を入れる、こういう改革をすべきではないかと思います。これこそが、人口減少し、過疎化が進む地方農山村において、農協が今後も地域インフラとしての役割を果たしていくために必要な農協法の改正である。

 政府のこのポンチ絵、農協改革の法制度の骨格、この出発点は農協法の第一条のことのみが書かれておりますけれども、しかし、実際の人間的な社会システムとしての農協はやはり産業組合に原点があろうかと思います。これは、最初は農村協同組合として出発しました。もちろん、第一次産業が主でしたから、農家の方が多かったでしょうけれども、本来は、今大臣が御答弁あったように、いろいろな職種の方が入った地域協同組合であった。ドイツのライファイゼンバンクを手本に、日本は農村協同組合を構築した。

 決して今までの戦後の歩みを否定するものではないんですけれども、ただ、農協は農水省の経営局、漁協は水産庁の経営指導室、森林組合は林野庁、生協は厚生労働省というように、縦割り行政に合わせたように、それぞれが専門を守り、それぞれが先細りしていくのではなくて、これから人口減少、高齢化、過疎化の時代であります。そういったときに、この産業組合の原点というところもいま一度見直して、地域の協同組合として連携をしていく、こういったこともやはり将来に向けて私は考えていくべきではないかと思います。将来は生命産業協同組合というようなこともひょっとしたら視野に入れていくべきではないか、それが地方再生になる、自民党さんの言う地方創生になっていくんじゃないかと私は考えております。

 もし農協法の改正ができないということであれば、農業を基軸としつつ地域インフラとしての役割を果たすというようなことを、例えば附帯決議で付すというようなことも私は考えていってもいいのではないか、こういうことを御提案申し上げたいと思います。

 何かいろいろ話しているうちに時間が過ぎてまいりましたが、次の質問をさせていただきたいと思います。

 再編強化法に基づく農林中央金庫による指導については、信用事業を中心に、経営不振のJAに対して経営改善指導を行うものでありますけれども、これまで全中の経営改善指導、業務監査とともに、まさに車の両輪として、JAの経営破綻防止に努めてまいりました。今後、全中の経営指導が行われなくなれば、強制的な指導という意味では、農林中金が単独で行うことになります。

 このことについて予算委員会の分科会でも質問し、御答弁いただいたんですけれども、制度上、農林中金が、この再編強化法、JAバンク法に基づいて指導ができるという制度の御説明ということの御答弁でありまして、全中の経営指導がなくなって、その分、不幸にして経営不振JAが出た場合には、農中がある意味肩がわりをしつつ経営指導をしていかなければならない、負担がふえる可能性があるということを農中が承知をして、それを行える体制が整っているかどうかということを問うたのでございます。

 農林中央金庫にも確認をいたしていただきまして、この点について御答弁をいただきたいということで事前通告しましたが、これについて御答弁をお願いします。

あべ副大臣 多くの農協に関しまして、信用事業、また経済事業を含めた総合事業を営んでおりまして、組合の自己資本比率が経済事業の結果として低下することもございます。

 その場合、JAバンク基本方針、自主ルールでございますが、それに照らしまして、農林中金が農協に対して、信用事業以外の事業も含めた経営改善指導を行うことになっておりまして、したがって、経済事業につきましても、自己資本比率に影響するような重大なものに関しましては、いわゆる農林中金の指導が及ぶ仕組みになってございます。

 このJAバンク基本方針は、JAバンク法に基づき農林中金がみずから定めたものでございまして、その責任と自覚に基づいて、農林中金は農協を指導していくことになります。

小山委員 今のあべ副大臣が御答弁いただいたときには、まさに、全中の経営改善指導、そして業務監査というのが前提だったわけだと思います。

 ですから、それが、今回、このような法制度の変更でなくなるということですから、当時想定し得たものではないんですね。やはり、農林中金も銀行であります。こういった銀行、金融機関が指導業務をどこまで行えるかというと、人員体制あるいは経験ある職員の育成とか、そういったことも含めて、これは、なかなか、そう簡単に対応がすぐできるというものではないのではないかということは想像をできるわけであります。

 ですから、こういったことを含めても、やはり全中の経営改善指導、そして業務監査というものは、一見こういう監査というのはわかりにくいテーマである。だからこそ、こういうテーマを安倍総理はお選びになったのかなということもちょっと邪推するところもあるわけなんです。だけれども、今回のは、一見余り大きな変化がないように見えて、非常に大きな悪影響を及ぼしてしまう可能性もあると思っております。

 私は、そういった観点からも、先日の予算委員会の分科会の答弁におきましても、今までの全中の監査というものは非常によく機能してきたんだ、一万あったJAを七百まで統合を指導してきたということで、評価をしているということで伺っていますけれども、今うまくいっているんですから、なぜこれをやめるのかということについては、私は、かえって、今うまくいっているんだから、何か大きな破綻事例が出たとか問題が起きればそれは改正すべきですけれども、そういった問題が起きていないというところについて、なぜこの法改正が必要なのかというところにやはり疑問が残ります。

 最後に、ほとんど時間がありませんが、前回の予算委員会の分科会でも質問しました、全中の業務監査なり経営改善指導で農協の経営の自由を制約したという事例があるのか、アンケートの結果の数字を御答弁いただきましたけれども、具体的な事例というものがあるのかどうか、先日のアンケート以外に示すものがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。

あべ副大臣 お答えいたします。

 中央会が単位農協の経営の自由を制約した事実がどの程度あるのか数字でお示しすることは、農協側の主観的な受けとめ方であることと、JAグループの一員である以上、公然とは発言しにくいことなどから、難しいところでございます。

 例えば、一月二十九日付の日本農業新聞に掲載された組合長に対する農協改革緊急アンケート、十農協が、中央会制度がJAの自由な経営を阻害していると思うと回答しておりまして、実は六百二十五農協が、思わないとも回答しているところであります。中央会の指導は各農協の特異性を生かさず、画一した面もあるとの組合長の意見も紹介されているところであります。

 また、昨年九月二十五日に掲載されました同紙の読者モニター調査におきましては、二六%の方が、中央会があることにより、あなたの地域のJAが、独自の工夫をして、農業を振興することが難しくなっていると思うと回答しているところでございますが、四〇%が、思わないと回答しているところであります。

 このように、いわゆる数の問題だけではなく、単位農協の自由な経営展開を促すという点で、この中央会の制度を否定的に捉える人も存在することは事実でございます。

 そうした中、農協システムを現在の経済環境に適応したものにしていくという観点から見直していく必要があるものだと私どもは考えております。

小山委員 質問の持ち時間が来ましたので終わりますが、七百JAのうちのわずか十農協、そしてまたモニター調査でも四割が感じないと言っているわけですから、私は、これは根拠がやはり弱いと思います。

 以上で終わります。

江藤委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民主党の福島伸享でございます。

 二年ぶりに国会に戻ってまいりまして、初めて野党として質問させていただきます。

 林大臣と議論できることを幸せに思っておりますし、江藤委員長が野党時代、本当に地元を一生懸命歩いて得た農家の声を質問にぶつける姿を見て、私もまぶしい思いで見詰めて、二年間の浪人時代、ずっと地元を歩き、時には若い農家たちと夜遅くまで杯を酌み交わしながら、いろいろな思いを受けとめてまいりました。きょうは、その思いを林大臣にぶつけてまいりたいと思っております。

 大臣所信をお聞きいたしますと、攻めの農林水産業とか強い農林水産業、非常に勇ましい言葉が躍っていると思います。しかし、あの所信を聞いて、多くの地元の仲間たちにお話を伺うと、何か自分たちのこととは全然別世界のことだね、本当に農業の話をしているのというような感想を多くお聞きいたしました。私の歩いている皮膚感を見ても、いきなり攻めの農林水産業とか強い農林水産業と言われても、皆さんが気にしているのは、今これだけ米の値段が下がってどうなっちゃうのかねとか、TPPで自分たちはどうなっちゃうのかね、そういう不安感とか閉塞感ばかりなんですね。

 最近、サッカーの日本代表のチームは監督がかわりましたけれども、攻めのサッカーをやるんだといっても、その監督はブラジルと同じようなサッカーはできないわけですよ。今の日本のサッカーの代表チームの実力を見ながら、攻めのサッカーをやるにしても、どういうサッカーをやるんだという戦術を考えるのが私は監督の役割であると思っております。

 まず、大臣の基本的な認識として、攻めの農業、強い農業を掲げる中で、一体、今の農業とか農村の現状をそもそもどのように認識されていて、また、そういう状況になっている原因はどこにあるかということについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 福島委員におかれましては、お戻りいただいて本当に歓迎をいたしたい、こういうふうに思います。

 二年間、浪人時代に随分お回りになったということですが、私も、それほど数はないかもしれませんけれども、この半年間は大臣の職を離れておりましたので、なるべく地元に帰っていろいろな方の意見を聞くようにしておりました。

 勇ましい、攻めの農業とか強い農林水産業、こういうことを掲げておるということですが、一方で、やはり課題なしとしていないわけでございます。やはり、農業従事者が減少している、高齢化している、先ほど小山委員からも御指摘があったところでございますし、また、耕作放棄地も増大をしておりますし、農業所得も減少している、こういう課題があるということは、まず認識をしなければいけないと思っております。

 一方で、農業には大変大きな潜在力があるのではないか、こういうことも思っておりまして、例えば、輸出を考えてみましても、世界の食市場というのが大きくふえていく現状にある、特にアジアの食市場は非常に大きくなる、こういうことでございますので、こういう潜在的な可能性というのをどうやって現実化していくか、これが大事なことではないかな、こういうふうに思っておるところでございます。

 今申し上げましたように、需要フロンティア、これは輸出や、それから国内でも介護食品、漢方薬の原料等、まだいろいろなやり方があるのではないか、こういうふうに思っておりますし、それから、中間管理機構などを活用して生産現場を強化するということもやりながら、需要サイドと供給サイドがばらばらにやるということではなくて、しっかりとそこがつながっているという意味で、バリューチェーンの構築が大事だと思っております。

 さらに、農業の場合は自動車やコンピューターと違いまして多面的機能というのを持っておりますので、まさに地域コミュニティーを維持していくという意味での大切さも持っておる多面的機能、これを日本型直接支払い等で着実に実施していこう、こういうことをやっておるところでございます。

 基本的には、三本の産業政策的なものと、それから一本の地域政策的なもの、この四本柱ということでしっかり進めていかなければいけないと思っております。

 輸出は、御案内のように、四千五百からスタートして五千五百、六千百と順調に推移をしておりますが、まだまだ、フランス、イタリア等に比べますと、一つ桁が違うようなところでございます。

 しっかりとこのプランを着実に進めることによって、やはり需要をどうやって取り込んで、これを生産者の所得につなげていくか、ここに意を用いていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

福島委員 今のような説明が、恐らく生産者の方に余り、残念ながら、けちをつけるわけじゃないんですけれども、まだ響かないところがあるんですよ。

 よく高齢化が進んでいるとか農業者人口が減少しているということがありますけれども、私が歩いて一番実感するのは、これまで政府が大切に育ててきた担い手の皆さん、プロの農家の皆さん、あるいは私と同世代の若い農家の皆さんが今やる気を失っているんですよ。マクロの面での第一次産業の衰退も問題でありますけれども、本来中核にならなければならない人がやる気を失っている。

 それは、一つは、大きなものは米価の問題があるでしょう。もう一つは、何よりも、政策がころころころころ変わって、その政策メニューが実際の生産者の皆さん方の心に響くものになっていない。そうしたことから、多くの中核的な人、これから支える人がやる気にならないということが一つの現状として私はあると思うんです。

 その一つが、小泉政務官、お越しで、お忙しいでしょうから、順序を変えてTPPの話をさせていただきますけれども、TPPの問題もその背景にはあるというふうに私は思っております。

 きょうは、資料で新聞記事をお配りいたしました。

 新聞記事、いろいろ、これは去年の四月に、オバマさんが来る前後に、「豚肉関税、一部撤廃も」とか「牛肉など歩み寄り」、さまざまなリーク記事が出ます。裏を見ると、これはことしの最近のものですけれども、「牛肉関税まず二七・五%」とか「豚肉関税五十円」とか。これに基づいて、事実ですかと言えば、交渉中ですから答えられないというふうにお答えになるんだと思いますけれども、ただ、火のないところに煙は立たないんですね。

 きょうは齋藤先輩がいますけれども、私が役所に入ったときに最初言われたのは、新聞は読むものではない、書くものだというふうに言われて、恐らく、ちょっとずつガス抜きしながら、ある提案をしているのは事実だと思うんですよ。

 さまざまなこうしたリークに基づく報道がなされていますけれども、これはいずれも、例えば畜産物の関税が大幅に低下するとか、米の別枠輸入化とか、議論の俎上に上っているのは事実だと思うんですけれども、若い小泉政務官、どうですか、議論はどうなっていますか。

小泉大臣政務官 先ほど先生が、若い農家の方がやる気を失っている、そういったお話もありましたけれども、私の地元に限って言えば、そういったことはありません。

 若い農業者団体が新しくできまして、今から頑張って、どうやったら農業を魅力ある産業にできるのかということもありますので、やる気を失っている方もいて、やる気がある方もいるというのはどこの世界でも共通だと思うので、ぜひ、やる気がある若い農家の方のこともお触れいただきたいな、そういうふうに思いました。

 また、齋藤先生は私の同期で、大変お世話になっている先輩ですけれども、火のないところに煙は立たないかどうかというのは私もいろいろ思いがありますが、今回御指摘をいただいたTPPに関するさまざまな報道について、今交渉が進展してきていることは事実でありますけれども、大変重要な局面を迎えている中で個々の報道について述べることは適切ではないと思いますので、お答えすることはできませんが、例えば、先月、二月に、ワシントンDCでのカトラー・大江会談の後とかにも、事務方の方から、関係の業界団体、さまざまな組織に対しての説明会も開催をしております。約三百団体近くいらっしゃいますけれども、そういった機会を通じて、できる限り理解を深めていただいて、また御理解いただけるように、これからも全力で尽くしていただきたいと思います。

福島委員 私は、若い農家をけなそうとしているんじゃなくて、やる気のある農家も当然おりますし、その方々をむしろ後ろ支えするために地域を回っているということを申し上げながら、正直言って、今の答弁では全く理解できませんよね。具体的にこれをやっているというのを聞いているわけじゃないんですよ。

 ただ、おとといの記者会見で甘利大臣が、総理がこの五月に訪米される、総理が訪米されるとしたら、その前に日米の閣僚案件は決着しておきたいと言っているわけですよ。ということは、もう大分煮詰まっているということですよね。あとちょっとボタンを押せば、日米間では少なくとも実質合意をするんだ。いや、私はむしろ、去年のオバマさん来日のときのリークから見ても、かなりもう去年の段階で煮詰まっていて、いつでもまとまるような状況にあるんじゃないかと思うんですよ。

 もう一点、私がお聞きしたいのは、アメリカは、いわゆるTPA法案、貿易促進法案が通るか通らないかというのは非常に微妙なときにあるんですよ。TPA法案が通らない段階で日本が合意するなんというのは私はあり得ないと思うし、そこはある意味アメリカにとってのアキレス腱なわけでありますから、私は、大臣が記者会見で、総理が訪米される前に日米の閣僚案件は決着しておきたいとか、そんなカードを切るような話はすべきではないと思いますよ。

 だから、私は、TPA法案を通さない限り、日米間の交渉をまとめるなんということはあり得ないと思うんですけれども、甘利大臣のこの記者会見の発言に対して、小泉政務官、何かコメントはありますか。

小泉大臣政務官 交渉を担当している閣僚として、また私もそのラインにいる政務官でありますけれども、この交渉を早期妥結したい、そういった思いを持って取り組んでいることは当然のスタンスだと思っております。

 その上で、今委員の御指摘のあったTPAのことですけれども、これはアメリカの国内法でありますので、それぞれの国内で議会の承認を得るのは、その国の政府の責任で行うべきものであると思っています。

 そのため、十二カ国で合意されたものについては、ほかの国の事情で再交渉を求められた場合にも基本的には応じないという姿勢で臨むこととして、その旨を対外的にも明確にしているところであります。

 これからも、その早期妥結に向けて全力で交渉に当たってまいりたいと思っております。

福島委員 そういう官僚答弁をされるのは非常に残念なんですけれども、交渉期限をいつにするかということも重大なカードなんですよ。もしかしたら一番大きなカードかもしれないんですよ。そのカードを切るようなことを記者会見で発言するのが問題じゃないかと言っているんです。TPAがどうだとか、それに対して応じる、応じないとか、それはあるでしょう。それよりも前に、TPAができる前に妥結する可能性があると言うこと自体が、非常に大きなカードを切って、私は問題だと思うんです。ぜひそのことを大臣にお伝えください。

 なぜそう言うかというと、林大臣は、前の大臣のときに、所信表明では、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の重要品目の聖域を確保すること等の衆参両院の農林水産委員会での決議も踏まえ、国益を守り抜くよう引き続き全力で交渉を進めます。」非常に力強い所信を表明されたんですよ。

 ところが、ことしの所信をお聞きしたら、「国益を最大化する形での早期妥結に向け、引き続き、衆参両院の農林水産委員会決議が守られたとの評価をいただけるよう、政府一体となって全力で交渉を行ってまいります。」

 何か今の交渉状況はもしかしたら評価をいただけないんじゃないかという、私は言葉に敏感なものですから。これは、多くの皆さんがおやっと感じたと思いますよ。今まで国会決議を守り抜くんだと言っていたのが、もう恐らく大分固まったんでしょう、しかも、それは評価いただけないかもしれない、決議が破られていると評価されるかもしれないからこそこんなことを言っているんじゃないかというふうにとられるような、ニュアンスを変えているんですよ。私は、それが、先ほど言った、多くの生産者の皆さんに、情報も出さないから、一体何をやっているんだ、どうなるんだという不安を巻き起こしているんだと思います。

 国会決議は明確なんですよ。「牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。」ですよ。除外または再協議の対象としなかったら国会決議違反なんですよ。

 これは何の除外かはっきり書いていないんですけれども、これまでの貿易交渉において除外とか再協議というのは、関税の交渉のそもそも除外なんですよ。だから、本当は、関税交渉していることすら決議違反かもしれないんですよ。

 そうはいっても、交渉だから、多少のハンドルの遊びがあってもいいと認めるにしても、今リークされているような、米の別枠輸入枠の設定そのものをしたり、豚肉の関税を五十円にしたりとか、これは、こうやっていないと言うかもしれないけれども、もしこうなったら、明確にこれは衆議院のこの委員会の決議に違反すると大臣は思われませんか。

林国務大臣 衆議院、参議院両院で、農林水産委員会で決議をいただいております。

 これは、立法府である国会の意思表示でございますので、この決議の意味するところについて、国会で評価をしていただくものだと考えておりますので、私の方から、すなわち行政府の方から具体的な解釈を示すということは適切ではない、こういうふうに考えております。

 今御指摘のあった、米などの重要品目についてはTPP交渉の対象とすることすら認めないのではないか、こういう趣旨でございますが、一般論として申し上げますと、除外の扱いについては、これは委員も御専門ですが、WTOなどで具体的要件が確立をしているものではなく、交渉の中で決められていくもの、こういうふうに認識をしておるところでございます。

福島委員 少なくとも、多くの現場の皆さんは、除外、再協議、聖域だといって、聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対と言って多くの皆さん方も当選したわけで、そういうふうに思っているわけですよ。思っている中で、さまざまな、詭弁とは言わないけれども、言辞を弄してやること自体が、生産現場の皆さん方に、本当にこの人たちを信頼して大丈夫なのだろうかという思いを起こさせるんだと思います。

 今大臣が、委員会の決議についての解釈のあり方は、この委員会の議員の間での討論に委ねたいということでありますので、この点は、与野党を問わず、選挙で皆さん方も現場で言ってきたわけですから、この決議の意味をしっかり見ながら、仮に実際に交渉が妥結した場合は、それが決議に違反するかしないかというのを、与党を守るとかそういうのではなくて、自分が言ってきたことに果たして合っているのか合っていないのかという観点から、これから見ていきたいと思っております。

 TPPはこれだけでございますので、小泉政務官、御退席ください。

 さて、そのTPPとも絡みますけれども、今回の大臣の所信において一丁目一番地に掲げられているのは、国内外の需要フロンティアの拡大をするとして、輸出であり、先ほどの大臣の冒頭の答弁の中でも、アジアのマーケットをとりに行くんだという話がありました。

 確かに、「農林水産物、食品の輸出実績額は、過去最高であった一昨年から一〇%以上増加し、六千百十七億円と、初めて六千億円台に到達いたしました。」ということでありますが、この輸出の六千億円の内訳はどうなっているでしょうか。恐らく、農家が考えるのは、自分たちがつくったものがどう輸出されるかということですから、六千億円のうち、穀物等とか野菜、果実というのはどのぐらいなものなんでしょうか。御答弁をお願いします。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 輸出の主要な品目の内訳ということでございますので、例えば米につきまして申し上げますと、二〇一四年では十四億円の輸出金額となっております。それから、日本酒につきましては百十五億円、牛肉は八十二億円、リンゴは八十六億円、花卉は八十九億円、緑茶は七十八億円等々となっているところでございます。

 以上でございます。

福島委員 個別の品目で言いましょう。

 米が十四億円というのは、六千億円のうちのたった十四億円であります。六千億円のうち、水産物が二千三百三十六億円、加工食品が一千七百六十三億円。

 レクに来たとき、この加工食品というのはどういうのがあるんですかと言ったら、ポカリスエットとかという話なので、ポカリスエットは農産物じゃないと思う、確かに飲食品だと思いますけれども。

 六千億円のうちに、穀物とか野菜とかそういうのは大体五百億円ぐらいしかないわけですよ。ごく微々たるもので、ふえましたといっても五百億円しかないわけです。

 だから悪いと言っているわけじゃないですよ。これからふやすことは当然でありますし、それのために頑張っていかなければならないんだけれども、しかし、農家の皆さん方にとって、では、これから日本の農業は輸出産業になるかといえば、それは余りにもかけ離れた話じゃないか。日本代表の監督がブラジルのように攻撃サッカーをやろうと言っているより、もっとそれよりかけ離れたものに近いんじゃないかというふうに思うんです。

 そもそも、加工食品とか穀物とか野菜、それぞれ、国内生産に対して輸出の割合というのはどのぐらいになるんですか。幾つか品目を挙げてお答えいただけますか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 主な農産品の産出額と輸出額を比較可能なデータが存在いたします二〇一三年で見ますと、米につきましては、産出額が一兆七千八百七億円であるのに対しまして、輸出額が十億円でございます。牛肉は、生体ベースの肉用牛の産出額が五千百八十九億円、牛肉の輸出額が五十八億円。それから、リンゴにつきましては、産出額が一千三百七十五億円、輸出額が七十二億円となっております。

 また、主な加工食品につきましては、比較可能なデータが二〇一二年でございますけれども、調味料につきましては、生産額が一兆四千五百十億円、輸出額が二百七十億円。菓子につきましては、生産額が二兆八百七十一億円、輸出額が九十四億円となっているところでございます。

 以上でございます。

福島委員 ありがとうございます。

 例えば米で見たら、米の生産額の輸出に回っている割合は〇・〇一%です。例えば野菜とか果樹というのは全部で三兆円ぐらい産出をしておりますが、そのうち輸出に回っているのは二百億円ぐらい。これもやはり〇・一%以下ですね。

 これを別に卑下する必要はないんです。農産物を輸出するということは、自分たちの村の農産物が輸出されているぞというブランド力がつくことになりますし、生産者にとっても励みになるし、夢のある話であります。どんどん私はこれは推進すべきだと思うし、自分の地元でも、これまで消極的だった人たちが頑張ろうと言っているのはあります。

 しかし、マクロの農政全体、日本経済の全体の話で見たら、リカードの比較優位論というのがありますけれども、私は、農産物は、輸出がトップバッターになって、四番バッターになって、日本経済を牽引したり、日本の農業の再生のキーになるということはないと思うんですよ。

 確かに夢のある話ですよ。やらなければならない、頑張りたいと思いますよ。ただ、それをもって農家の皆さん方に、これからあなた方は輸出産業になって頑張るんですと言うことは、何か、どこの国の話をしているのというのが実際の現場の思いだと思うんですよ。

 むしろ、強い農林水産業は、輸出に頼るんじゃなくて、十年、二十年たってもこれだけの所得が得られるから、では、二十年後のために、農地を広げたり、機械を更新したり、投資をしましょうと呼びかける政策が本来の強い農林水産業をつくる政策だと私は思っていて、一丁目一番地が輸出というのは、私はちょっと違うんじゃないかなと思うんですけれども、大臣の所見はいかがでしょうか。

林国務大臣 輸出が一丁目一番地と言ったかどうか、ちょっと記憶が曖昧でございますが、輸出だけをやっていればいいということではもちろんなくて、今委員がおっしゃっていただいたように、まだ全体の数量の中で見れば少ないわけでございます。

 逆に、私、最初に潜在力と申し上げたのは、まだまだ伸びる余地がここにあるだろう、これは需要との関係でいってもそういうことでございますので、伸びる余地があるところはしっかりと追求していこう、これは委員がおっしゃっていただいたとおりでございます。

 輸出をやるからといって、国内はもういいのかといえば、やはり国内の需要の拡大というものもしっかりやっていかなければならない、こういうふうに思っておりまして、残念ながらと言っていいと思いますけれども、高齢化に伴って人口が減る局面に今ございますので、マクロのボリュームは、確かに国内の市場は成熟している、こういうことかもしれませんが、高齢化等の社会構造の変化に伴って需要が拡大しているところもあるわけでございます。例えば、介護食品であったりとか、それから漢方薬であったり、この原料をどうしていくか、こういった医療や福祉と連携していく医福食農連携。

 それからもう一つは、先ほど、供給と需要のところをマッチングするという、バリューチェーンと申し上げましたが、私の山口の隣の福岡では豚骨ラーメンというのが非常に名物でございまして、ラーメン専用の小麦の開発、こういうものを品種改良として最初からやっていくということで、ラー麦という名前で、今大変好評を博しておるようですが、こういうことで国内産の小麦の需要をつくっていく。また、すぐに食べられるようなカット野菜、これも生産、供給を推進していく。

 こういうことをしっかりと取り組んでいくことによって、まだまだ国内の市場も新たな需要の創出、拡大ができる、こういうふうに思っておりますので、国の中、外あわせて、しっかりと需要を取り込んでいくということが、逆に言えば、今委員がおっしゃっていただいたように、そういう需要があるから、設備投資をやって、供給も充実させていこう、これは両々相まっていくもの、こういうふうに考えておるところでございます。

福島委員 ありがとうございます。

 輸出は伸びる余地があるということですけれども、米は生産額に対する輸出の割合は〇・〇一%なわけですが、仮に輸出を百倍にしたって、生産量に対しては一%分のものしかふえないわけですね。ですから、伸びる余地はあるけれども、農業に大きな影響はない。むしろ、今最後に大臣がおっしゃったような地道なちっちゃな例をもっと広めてあげる方が、現場はやる気になると思うんですよ。

 総理の施政方針演説を見てみると、「もはや、農政の大改革は待ったなし」とか、「伝統の名のもとに、変化を恐れてはなりません。」とか、いろいろ気張ったことを言っているんですけれども、実際の生産者は、変化を恐れず、努力をしていますよ、そんな、総理に言われるまでもなく、土もいじっているかどうかわからないような。

 とにかく、農水省は土の香りがしなきゃだめなんです。最近は、何か言っていることに土の香りがしなくて、何か昭和時代の私のいた通産省のような政策とか、何か外資系のコンサルタント会社が怪しげな言葉を操っているように見えちゃうんですよ、失礼ながら。

 その一つが、国内の政策を見ても、例えば、農地中間管理機構というのをやって、今、農地の集積をしております。担い手の農地利用は、今、全農地の五割でしかない。十年間で担い手の農地利用が全農地の八割を占める農業構造を実現するという目標を掲げていますけれども、現段階で農地中間管理機構の目標の達成度合いというのはどのようなものですか。

あべ副大臣 お答えいたします。

 我が国の農業を特に成長産業としていくためには、担い手への農地の集積と集約化をさらに加速することが必要であるというふうに思っておりまして、今後十年間で担い手の農地利用割合を現状の五割から八割まで拡大させることとしております。

 このために、担い手への農地の集積、集約化、また、耕作放棄地の発生防止、解消など課題解決のための切り札として、都道府県段階に公的な農地の中間的受け皿である農地中間管理機構を整備することといたしまして、平成二十六年三月に関連法律が施行されまして、二十六年十一月までに全都道府県で機構が指定されたところでございます。

 そうした中、機構の十二月末時点の農地の借り入れ、貸し付け面積につきましては、概算の速報値でございますが、借り入れの面積は一万七千九百七十ヘクタール、貸し付け面積は四千四百七十ヘクタールとなっているところでございます。

 機構への借り受けの希望が二十六年度当初における想定を超える規模で多数寄せられていることがございます。十五万ヘクタールの見込みに対して、平成二十六年九月末現在の応募状況は、全国合計で三万経営体の二十三万ヘクタールでございます。

 農業者の高齢化が進んでいる中、農地の潜在的な出し手は多く存在することが言われているわけでございまして、また、農地の権利の移動に関しましては、次の営農活動が始まる春までに行われることが多いことから、三月末までの実績はさらに大きく伸びると考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、権利の移動がおおむね終了する三月末時点のデータを的確に把握いたしまして、これをもとに、官邸も含めまして、機構の活動の検証、評価を抜本的に行いまして、この結果を踏まえて、機構事業を軌道に乗せるための具体的な対応策を検討しているところでございます。

 特に、三月末までの実績、本当に伸びるんだろうかということに関しましても、農地中間管理機構における農地の借り入れ、貸し付け面積、昨年八月末時点で、全国合計借り入れ面積が五百五十二ヘクタール、貸し付け面積が五百六ヘクタールであったのに対し、昨年十二月末時点、全国合計で借り入れ面積が一万七千九百七十ヘクタール、三十三倍でございます。また、貸し付け面積は四千四百七十ヘクタールの、約九倍と大幅にふえているところでございます。

 ぜひとも、また三月末時点の実績がどうなるかを見守りたいと考えているところでございます。

福島委員 役所がつくった答弁を一生懸命読んでいただいて、本当にありがとうございます。

 みんな頑張っています。現場で頑張っています。ただ、例えばうちの地元とかで、物すごい頑張っているんですけれども、御苦労されているんですけれども、なかなか進んでいないんですね。春になれば進むと言っているけれども、いや、それは余り変わらないですね。なかなか進んでいないです。一部では上がっているのかもしれないけれども、端境期になれば農地の流動化が進むと役所は考えるけれども、実際はそんな簡単なものじゃないですよ。

 うちの茨城県は、農水省からいただいた資料だと、担い手に集積する割合が二五・一%とえらいちっちゃくて、なかなか役所の言うことなんか聞かない頑固な農家が多い県なのかもしれませんけれども、四万四千ヘクタール担い手に集積しているのを、県は十一万四千ヘクタールに上げましょうという目標を立てております。これも去年の十二月までですけれども、そこまでいただいた中で、茨城県で十一万四千にふやさなければならないのに、提供されたものは、たったの百九十ヘクタール、〇・二七%。これは十年間で絶対目標は達成されません。現場の人は、こんな絵そらごとはないと言っていますよ。

 集積率が八七・一%の北海道。北海道が農業生産額一位で、私の茨城県が二位ですけれども、ここは、今、担い手に百万四千ヘクタールあるのを百九万五千と、九万一千ヘクタール担い手に集積をふやしましょうと言っているんですけれども、現在集まっているのはたった三千四百ヘクタール、三・七%。これは農地を貸しますよという申し入れであって、マッチングが進んだのは、北海道だと、三千三百九十ヘクタール貸していいですよと出て、借りていいですよというのはたったの六百五十ですから、さらに減っていくわけですよ。これはなかなか進まないんです。

 単に、中間管理機構をつくって、何かお金をぶら下げれば農地が出てくるだろうとか、誰か借りる人がいるだろうという、そんな単純な話じゃないんですね。

 農地の移動は決して経済原理では進みません。誰がその土地にどう持っているかというのは、長い歴史の中で、あそこの家は昔はここの土地だったんだけれども、実はこういう経緯でこう持ったんだよとか、いろいろな、それぞれの家族の歴史の集大成の中に持っているわけでありまして、実際それを進めるためには、我々の政権のときに人・農地プランというのをやって、今もやっておりますけれども、なかなかこれも進まなかったんですよ。

 なぜか。今、全部、県とか市町村に丸投げしているんですよ。でも、市町村の中で農政を担当している人なんて一人とか二人ですよ。私の地元の農業が盛んなところでも、経済課とか商工課の中に係が一人か二人いるだけで、農村に行ったって、あなた誰ですかというところから始まるわけですよ。

 今、農村の中に入って、おばあちゃん、もうそろそろ農業をやめて、誰々さんに貸したらと言うためには、人間的な信頼関係がなきゃだめなんですよ。そういう農政の毛細血管というべきものが今細っちゃっているんですよ。後ろに座っている農水省の本省の人が一生懸命頭で考えて県や市町村にその政策を実行しろと言ったって、動かないのが農林水産行政だと思うんですよ。

 私は、最近の農政というのは余りにも冷たいと思うんですよ。そして、農林水産省の本省自身も、自分たちが政策をつくって、それを実行する体制がどれだけ痩せ細っているか、農村の中で誰がどういう会話を行っているのか、いや、行っていないのかということをやらないまま農地中間管理機構なんてつくったって、私は絶対動かないと思いますけれども、この点に対して、大臣、どのようにお考えになりますか。

林国務大臣 問題意識は共有をしておる、こういうふうに考えております。今委員がおっしゃっていただいた毛細血管といいますか、現場にきちっと入っていっていろいろな話をしていた方、やはりこれが重要である、これは我々もそういうふうに考えておるところでございます。

 例えば、熊本県の例がよく出ますけれども、現場でコーディネートに当たる機構の職員を四十人ほど置きまして、まとまった農地を機構に貸し付けるよう働きかけを行う、こういうすぐれた取り組みを行っていらっしゃるということでございましたので、実は、昨年九月に、熊本県のその取り組みをやっていらっしゃる方を講師にお招きして、全都道府県に集まっていただいた研修会で話をしていただいたりして、優良事例の展開をしていこう、こういうことでございます。

 まさに、平成の合併が進みまして、今まで農政を担当していたそれぞれの役場におられた方というのが減っておられるということも私はよく聞くものですから、今度は、この国会にお出ししようと思っておりますけれども、設置法の改正をして、そういう御用聞きをきちっとして回るようなポジションをつくっていこうということも考えておりますが、まさに、役所の人間だけではなくて、現場の方、土地改良区の方、JAの方、やはりいろいろな方総出でこのことはやっていかなければならないと思っております。

 今、民主党時代の人・農地プランについてもお触れいただきましたが、まさに人・農地プランで話し合いをする中で、こういうものがさらにあるといいな、こういうところから実はこの中間管理機構というのは出てきたものであるということも申し上げておきたいというふうに思います。

福島委員 全否定はするつもりはないんですよ。枠組みとしては非常にきれいにつくられていると思うんです。ただ、それに魂を入れる部分が決定的に欠けているし、こういう観点から見たときに、きょうは議論しませんけれども、農業委員会制度とか農協の理事の要件とかというのは、今大臣がおっしゃったことにむしろ逆行することをやっているわけですよ。農村における公的な役割を担う人材をどんどん減らして、外から人を入れればうまくいくだろうと、逆のことを今やっちゃっているわけですよ。私は、そのことをぜひとも考えていただきたいと思います。

 時間がないので申し上げませんけれども、補正でとった稲作農業の体質強化緊急対策事業二百億円、これは多分余り執行は進んでいないと思うんです。一次募集をやって集まらなくて、二次募集を二月末にやって、それでも集まらなくて、きょう締め切りで三次募集までやっているわけです。

 現場で何が起きているかといったら、さまざまな、ここで掲げられているような、堆肥散布を踏まえた施肥の実施とか、土壌分析を踏まえた施肥の実施なんというのは、プロの農家はもうとっくにやっていますよ、こんなもの。小規模農家は、これまた要件をつけて、一ヘクタール未満は二万円、一ヘクタール以上二ヘクタール未満は三万円。こんな子供のお小遣いみたいなお金をやるために申請書なんて書きません。ばかにしているのかという話です。

 プロの農家にしてみたら、こんな、もうとっくにやっているようなことをやったら一町歩当たり二万円出しますなんというのは、ばかにするなという話なんですよ。一生懸命市役所の職員たちが、皆さん方がノルマをかけるから、プロの農家に、そうはいっても書類は自分たちで書きますから申請してくださいと言って出しているのが実態ですよ。

 今の農地中間管理機構もそうですし、稲作農業の体質強化緊急対策事業もそうですけれども、今の農水省は、残念ながら、余りにも現場の感覚からかけ離れていると思いますよ。むしろ、頑張っている農家の神経を逆なでしちゃっているんですよ。

 冒頭申し上げましたように、プロの農家とか、これから日本の農業を背負っていくという人ほど、役所のことをばかにして、信用していないんですよ。その信頼関係がないから、どんな政策をやっても、いい人がついてきてくれないんですよ。

 私は、もっと農水省は農村の中に入って、泥臭くやるべきだと思いますよ。官邸はそういう意識を持っていないんであったら、官邸とけんかしてでも、農村はこうなんだ、百姓はこうなんだということを言うのが農水省の役割であり、農林大臣の役割じゃないかと私は思っているんです。

 最後に、最近、「自民党農政史」という分厚い本が、自民党の政務調査会の吉田修さんという方が出した本があるんです。戦後、農業基本法を最初につくったときに、当時の池田勇人大臣は、私の地元の水戸二中、玉木さんの奥さんが出た学校ですけれども、そこで演説をやるわけですよ。そこで池田さんはこう言っているんです。

  皆さん、昔から言われておりますように、農業は民族の苗代であります。立派な民族の指導者を出すのは農家からでございます。あの質実剛健、あの勤勉な血を受ける農民の子どもさんが民族の先達に立つことは歴史の示すところでございます。単に経済の問題、所得の問題ではございません。民族の将来を考えるならば、立派な農業として成り立つようにしようではございませんか。

 これは皆さん方の大先輩が言っていることです。私は、この考えこそ保守本流だと思うんですよ。

 そうであるとするならば、農林水産省は、今、官邸農政と言われているんですよ、ばかにされて。それに対して、そうではない、しっかり土に根差した農政というのを政府の中で主張していただくことを最後に求めまして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 林大臣と、再びこうして質疑ができることをうれしく思っております。

 今、国士である福島先生から、いろいろな農政への思いがありましたけれども、私も、今の安倍農政について違和感を感じている者の一人であります。

 特に、この言葉がどうかなといつも思うことがあるのは、棚田のことを総理が語るときに、息をのむように美しい棚田と言うんですね。これは観光客の視点です。

 私は、棚田とか近くにもあるんですけれども、私が棚田を見るときに何を感じるかというと、山からイノシシがおりてこないかなと思うんですよ。この面積でどうやって機械を入れられているのかな、どの道を使って上から下までやっているのかなということを考えます。あとは水の問題ですね。

 棚田を見て、きれいかどうかという発想をするのは、これは外部の目です。そのことを図らずも総理は吐露しているのではないかなと私は思っております。

 きょうは、細かい話はこれから法案の審議がありますからそこでやりたいと思うんですが、大きい、農政の方向について政務三役の皆さんと話をしたいんです。

 ちょっと順番を変えて、今、あべ副大臣が福島議員の質問に対して、農地集積バンクの数字を答えられました。

 私がお配りした資料四をちょっと先に見ていただけますでしょうか、これは予算委員会でも使った資料でございますけれども。

 副大臣がおっしゃったように、借り受け希望面積、受け手の希望は二十三万ヘクタール、これは、当初の予定よりも九万ヘクタールぐらいふえて二十三万ヘクタールになったので、補正で新しく予算を積まなければいけないという理由の一つに使われたものであります。

 この二十三万ヘクタールの借り受け希望があることに対して、今答弁にもありましたけれども、昨年末の実績が四千四百七十ヘクタール、私の理解では、これはマッチングができた実績だと思います。同じくマッチングができた実績の八月時点の数字は、たしか五百ヘクタール強だったと思いますけれども、それは正しい理解でしょうか。

あべ副大臣 昨年八月末時点、委員がおっしゃったように、全国合計で借り入れ面積が五百五十二、貸し付け面積が五百六でございました。

玉木委員 借り受け面積が五百六、七ですか。マッチングですか、借り受けですか。どちらですか。

あべ副大臣 貸し付け面積が五百六でございます。

玉木委員 そうすると、実際に貸し付けた、いわばマッチングが成立したものの実績は幾らになりますか、八月時点。

あべ副大臣 貸し付け面積というのはマッチングした値でございますので、五百六でございます。

玉木委員 十二月末時点でのマッチング、つまり貸し付けが成約したものは。もう一度、面積は幾らになりますか。

あべ副大臣 昨年の十二月末時点という御質問でございました。この貸し付け面積は、約九倍となった四千四百七十ヘクタールでございます。

玉木委員 先ほど三十三倍というふうにお答えになったのは何の数字でしょうか。

あべ副大臣 借り入れでございます。

玉木委員 もう一度、資料の四を見ていただきたいんですけれども、二十三万ヘクタールの借り受け希望に対して、貸付実績は四千四百七十ヘクタール。先ほど、これは何倍にふえたという話がありましたが、ある種、目標とするような実績、目標に対しての率からいうと、面積ベースでいうと一・九%ですね、これは単純計算していますけれども。

 もう一つ、後で聞きますが、民主党時代にやっていた、あるいは林大臣になってからも一年間は継続をいただいた、いわゆる我々の時代に戸別所得補償制度と呼んでいた制度をやめて、その予算をこちらに振り向けて、より集積を加速化するということでやりましたけれども、この予算ですが、ここに、一番右に書いていますけれども、二十五年度補正で、前倒しで百五十三億、これは機構集積協力金といって、出し手への支援策です。そのほかに、受け手の支援策もありますし、機構の運営費そのものもありますから、いわゆる中間管理機構全体の関連予算というのはもっと大きくなりますが、これはあくまで出し手の支援の予算だけを絞ってここに書いています。

 百五十三億を二十五年度補正で積み、二十六年度当初で百億を積み、そしてさらに、九万ヘクタール、受け手の希望がふえたので、二百億を補正で積み、そして今審議をしている、衆議院はもう通ってしまいましたが、当初予算でさらに九十億を積むということで、ここは五百四十三億円ぐらい予算があるんですね。

 これは二十六年度の話なので、二百五十三億というのは補正計上する前の数字なんですけれども、それと実績を比べても、これは六・四%しか使っていません。二百億の二十六年度補正をすれば、さらに執行率は下がりますし、これはこういう予算の使い方でよろしいんでしょうか。円滑に集積が本当に進んでいるのか。

 今の副大臣の答弁によると、一月から三月の間で、農閑期になるので、そこで一気に進むだろうということなんですが、先ほど福島委員の質問の中にもありましたけれども、私はそうは思いません。

 なぜ思わないかというと理由があって、貸し出し希望、農地を出したいという人の希望が、では、今どれぐらいあるのかというのが、マッチングの実績を図る上では極めて大事なんですけれども、貸し出しの希望は、これは予算委員会で出してくれと言ったんですが、全県のものは残念ながら出てきていません。出てきていませんが、大体概要がわかる数県を除いて、貸し付け、農地の出し手の希望面積は一万八千七百七十七というのを最新の情報でいただいています、皆さんのお手元にはないかもしれませんが。

 これは、三月一日とか三月九日とか、つまり今月になってから出してきた数字も入った数字です。つまり、受け手の希望面積が二十三万ヘクタールあっても、そもそも出し手の総面積が一桁違う二万ヘクタールぐらいであれば、どんなに頑張っても、この一―三月でそれを超えるようなマッチングというのは不可能だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 まず、お出しした資料でございますが、玉木委員はお持ちだと思いますけれども、それぞれの県でいろいろやっておられますので、この時点も、一月であったり、去年の九月であったり、これは委員がごらんになったとおりの形になっております。

 したがって、この貸し付け希望面積の把握方法、集計の考え方、これはばらばらでございますので、これを全部足し上げて、統計上どうだということはなかなか言いにくいところであるということは御理解をいただきたい、こういうふうになっております。

 そもそも、このスキームでございますが、受け手となる担い手は公募するということでございますけれども、出し手については、まさに先ほど福島委員とも少し話をさせていただきましたけれども、機構や地方自治体、いわゆる毛細血管というお話もありましたが、人・農地プランなど、地域の農業者の話し合いを進めることでまとまった面積を出していただこう、こういうことになっておりまして、公募する仕組みにはなっていないわけでございます。

 したがって、まずはこの仕事をしっかりと進めていくということ、そして、今の段階での把握しているデータは、先ほど希望面積ということはございましたけれども、これしかないので諦めるということではなくて、しっかりとこれを発掘していったり、いろいろな取り組みでふやしていく、こういう努力をやはりしなければならない、こういうふうに思っております。

 というのは、借りたい人が、さっき御指摘いただいたように、これだけの量がいらっしゃるわけでございますので、貸す方を発掘することによってマッチングがふえていく、こういうふうにも思っておりますので、そこをしっかりと、先ほど熊本県の例のお話もしましたけれども、いい事例の、優良事例の横展開などを図りながら、しっかり取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

玉木委員 農地集積を進めていかなければならないのは、これは多分党派を超えて同じ思いだと思います。

 ただ、これは制度をつくって少し動かしてみて、何が問題なのかということをやはりよく把握する必要があると思います。例えば、受け手の面積、二十三万ヘクタールとありますけれども、これは自民党の先生方も、地元をよく歩いておられる方は聞かれると思いますが、とにかく、農水省から言われたので、希望の数字を出したいので、ちょっと登録だけしてくれませんかといって出してもらっているところもあるんです。

 今、地域の現状でいうと、高齢化して、もうできないのでやってくれといって、とにかく、これ以上できないけれどもと一生懸命引き受けてやって、採算度外視で規模を拡大しているような、作業受託を含めてやっておられる方はふえているんですね。

 そういう中で、受け手も、一応出したけれども、でも、よほどいい優良農地が来ないと受けられないねという声は聞いているので、私はもう一度、例えば人・農地プラン、これも、青年就農給付金をもらうために急ぎつくったみたいなところがいっぱいあるので、もう一回、地域の未来の設計図としての人・農地プランをしっかりやり直してもらって、その中で、この地域において、何を誰が一体どうやってつくっていくのかという設計図を描き直した上で、農地の権利移動について、誰に集約していくのか、どう集約していくのかという出し手と受け手の話をもっとリアルに詰めていく必要があると思います。福島さんがおっしゃったように、機構だけつくったから、何か不動産屋みたいにどんどこどんどこいくわけではないんです。

 もう一つ、問題点。

 通常国会で、これは林大臣と、我々の対案を出して、私もその席に座って随分やらせていただきましたけれども、あのとき、やはり農業委員会の関与を外しましたよ。最後は、農地法に基づく地域調和要件を入れてくれと我々はお願いして、何とか、地域にいきなり企業が入ってきて、ここだけぱっかりとっていきますというのはできないので、やはりこの調和要件を満たしながらやっていく。

 そうすると、地域に住んで、誰と誰という顔を知っている人が、農業委員さんはそういう人がいます。働かない農業委員がいるのも事実ですけれども、一生懸命汗をかいている農業委員さんもいる。そういうマッチングをやっている人、あるいはやる活動に対してお金を出さないと、離農して、田んぼをやめて出してくれたらお金を上げますよ、これではマッチングが進まないんですね。

 ですから、三月末に、今、副大臣もおっしゃっていただきましたが、データが出てきますから、この委員会にもぜひ出していただいて、出し手の情報、受け手の情報、マッチングの情報、さまざまな情報を出していただいて、よく検証してもらって、一体何で進まないのかという要因分析をして、そこにきちんと対応する対策をしっかりと出していくということは、大臣、ぜひこれはやっていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。

 我々としても、全ての県で優良事例と言えるような、熊本県のように進んでいるということではないという認識はしておりまして、やはり今のところ考えられる背景として、例えば、各県機構の役員体制、それから役職員の意識、業務体制等が、今までも農地保有合理化法人というのがございましたけれども、そのときと比べてそんなに変わっているのかなというふうに見られるところもある。今まさに不動産屋と委員はおっしゃっていただきましたが、なるべく不動産屋の、待っていて右左をつなぐということでなくて、ディベロッパーと言っておりますが、余り片仮名を使うと、また福島さんから怒られるかもしれませんが、土臭い言葉を探したいと思いますけれども、自分で発掘していってまとめてやっていく、こういうことを我々も期待しておるわけでございます。

 それから、まさに今おっしゃっていただいたように、各県、各地域における人・農地プランなどの地域の農業者間、これがまだ十分進んでいないところもある、こういうことがあるというふうに今のところ考えておりますので、まさに、この権利移動がおおむね終了する三月末時点のデータが出ましたら、これをもとにいろいろな分析をして、その原因を一つ一つ潰していって、しっかりと軌道に乗せていくための作業をやっていきたいと思っておるところでございます。

玉木委員 ぜひお願いしたいと思います。

 その中で、もう一つ提案して、次の質問に移りたいと思うんです。

 現場のマッチングの状況なんかを速やかにとる仕組みができていないんです。

 私は、予算委員会の補正予算の審議のときも、本予算の審議のときも、今どれぐらいできているのと言って、データを出してくれと言ったら、副大臣は八月のが最新ですとか言って出してくるわけですよ。そうすると、私は、これは財務省にも言ったんですけれども、補正予算のこういう予算要求を認める根拠をどうやってあなたは判断したんだ、最近随分査定が甘くなっているねという話をしたんですけれども、データもわからないのに予算をつけられないし、対策も打てないので、そういった、余り現場に負担をかけてはなりませんけれども、現在進行していることを速やかに把握するような仕組みもぜひ整えていただきたいというふうに思います。

 それでは、本来最初に質問しようと思った質問に戻りたいと思います。

 資料一、二、三、これはこの委員会、ずっと農水委員会にいらっしゃる方は、また出してくるのかと思うような、民主党時代の戸別所得補償政策についてちょっとまとめたものです。

 これは、民主党がよくて自民党が悪いとか、そういうことを言うつもりはなくて、今、農業というのはいっぱい問題を抱えていて、それに対してどういう対策が本当にいいのかというのは、党の枠組みとかメンツとかは全部超えて、いいものはいいし、悪いものは改めたらいいということで、少し提案も含めて申し上げたいんです。

 米価が下落を随分しましたね。この出来秋は本当に大変で、来年はどうしようかという人がたくさん全国に出ていることは事実です。私の近所でも、もう作付やめようかと。私は安倍総理に聞いたんですけれども、今一番、きれいなことを並べるよりも、苗の注文をしていいかどうか悩んでいるんですよ。

 だから、総理に、今全国の、特に水稲農家に言ってほしいのは、苗の注文をこれまでと同じように安心してしていいのかどうか。これは結構難しいんですよ、本当に。それでまたやって、去年以上に米価が下落したら、本当にこれはたまりませんよ。ただ、その確信が持てないというのが農家のお気持ちだと思うんです。

 私は、問題は何かというと、小規模農家のことを言っているんじゃないんです。今一番困っているのは、全体重を米に乗せて、それで、大規模で、それこそ百ヘクタールとか大きくするところ、私は香川県なので、面積がちっちゃいので百ヘクタールもとれないんですけれども、大きいところだと、まさに政府方針にのっとって集約化を進めていて、大規模にやっているところほど米価の下落の影響を物すごく受けるんですね、借り入れもしてやっていますから。

 だから、そういうときに、所得補償の話に戻りますけれども、戸別所得補償制度というのは非常にばらまきだと言われましたが、実は規模の比較的大きい農家が安心して規模拡大ができるセーフティーネットだったと私は思っているんです。規模を大きくして、下落したら、さっき申し上げたように大変なんですが、大きくしたときに、岩盤のように、一定程度、これ以上は所得が下がらないということがあれば、ある意味、安心して規模拡大ができていくというところはあると思うんです。

 これは、二番の、安倍総理の発言と少し関係して書いているんですが、集落営農組織について書いています。これは面的集積そのものをあらわすものではないんですけれども、疑似指標として集落営農組織。これを法人化していったり、さらに、その農地の集積が要件になったりしていくわけですけれども、所得補償を入れて、ぐっとふえているんですね。これはもう事実です。

 それで、私が質問したいのは、この前、三月十六日の参議院の予算委員会で、安倍総理が我が党の羽田参議院議員の質問に対して、所得補償を廃止した理由は何だったんですかということを聞いたところ、こういうふうにお答えになっています。担い手への農地の集積のペースをおくらせる面があったということです。

 これはこの委員会でも私は何度か取り上げて、今は委員長席に座っておられる江藤副大臣からも関連の答弁をいただいた記憶が今鮮明によみがえってまいりましたけれども、担い手への農地の集積ペースをおくらせる面があった、この具体事例を教えてください。

林国務大臣 平成十七年度から平成二十三年度までの農地の権利移動面積の推移でございますが、十七年度が八・七万ヘクタール。それから、十八年度、この年は経営所得安定対策大綱が十七年十月に決定された後ということになりますが、十二・四万ヘクタール。それから、担い手経営安定法が施行された十九年度が十二・七万ヘクタール。そして、二十年度が十・九、二十一年度が九・三。二十二年度に戸別所得補償制度が導入されておりますが、その年も九・三、二十三年度が十・六。こういうことでございます。

 全ての販売農家が対象になっている、これは何度も、当時議論をいたしましたが、改めてということでございますけれども、全ての販売農家を対象に交付金を支払うということでございましたので、リタイアしようとか農地を人に貸そうということを思いとどまらせて、人に貸さずに自分で耕作しようとする方も出てきたということで、農地流動化のペースをおくらせる面があったと考えておるところでございます。

玉木委員 これは去年もやりましたよね、大臣。それで、平成十七年度を起算にするとそういうふうに見えるんだけれども、きちんと棒グラフを全部書いてみるとそうじゃないというのは、私は、これは資料も出して、一度御説明したものだと思いますし、高齢なのに所得補償をもらうからやめなかった、あるいは自分でやり始めた、それはいいじゃないですか。

 私は、今起こっていることは何かというと、確かに米は毎年八万トンずつ需要が減っていっています、米ばかりつくってどうするんですかということはあるんですが、我々が守ろうとしているのは、米じゃなくて水田ですよ。水田というすぐれた生産装置を、何とか営農継続して守ってもらって、その中で、例えば飼料用米とか他の作物に対して、水田フル活用で、その水田を維持していただきながら移動していく。

 私はよく申し上げるんですけれども、野球がこれまでは日本で盛んだったんだけれども、例えば、これからはサッカーだというときに、野球場を一回森林原野に戻して、もう一回そこから造成してサッカー場をつくるよりも、一応、今のままの野球場としてきちんと整備して、それを少し手を加えてサッカー場にしていった方がコストも時間もかからないというのが、私は所得補償の岩盤政策の意味だったと思うんですね。

 きょうは、多くは触れませんが、資料の一に書いているように、いわゆるコストが、やはりちっちゃいほどかかって、規模が大きくなるほど下がっていくのは事実ですよ。これは、実は私は与党時代から言っているんですが、戸別所得補償という名前を変えろとずっと言ってきた、戸別に補償していないから。これはやはり農家に対して誤った印象を与えるので、戸別というところはとれというふうに与党時代から言っていたんです。

 全国一律なことによって、これで救われる農家と、それでもなお救われない農家が特に小規模農家で出てくるわけですね。そこで、特に一ヘクタールから二ヘクタールの人は、この黒線で、米価が下がっても、所得補償で、固定払いと変動払いで赤線までいくので、二ヘクタール以上のところでは利益が初めて出るようになるんですが、それでもなお一から二のところは出ないので、では、彼が何をするかというと、右に行かなきゃいけないんですよ。そういう中で集積のインセンティブが働いて、これも林大臣にも何度も申し上げましたが、静かな構造改革を促す制度として、構造改革のインセンティブがビルトインされているということを申し上げてきたわけです。

 私はこういうところを、もう自民党政権になりましたから所得補償を復活しろとは言いませんが、例えば所得を安定させるような仕組みはやはり何らかの形でつくっていかなきゃいけない。特に、今検討が進んでいる収入保険制度というのが本格的に走り始めるまでは、やはり何らかの形で政策を維持していくことが大事なのかなと私は思っています。

 ここから質問です。

 所得補償制度をやめたことによって、米農家に対する交付が減るだけではなくて、実はさまざまな影響が出ています。

 まず、麦について申し上げます。

 去年、これは奥原局長に来ていただいて答弁をいただいたんですが、ゲタの対策がありますよね。ゲタ、ナラシも、戸別所得補償制度を入れたときに、要件を合わせて、全ての販売農家がゲタ、ナラシを受けられるようにしたんです。それが、法律を改正して、二十七年度からは認定農業者、認定新規就農者、それと集落営農に限定されるようになったんです。

 そのことによって何が起こっているかというと、例えばうちの香川県だと、小規模農家が結構多いのですが、讃岐うどんが有名なので、さぬきの夢二〇〇〇とか二〇〇九とか、うどん用の小麦を一生懸命つくろうと思って、県も増産しているんです。国としても、小麦は、今度の基本計画を見たら、やはり伸びるようになっているんですけれども、この担い手要件から外れてくると、今は全ての販売農家が対象になったのが、削られることによって、香川県でいうと、面積の約四割の麦が補助対象が外れるんです。

 確かに担い手とかは大きいところを集中的に支援していくのはいいんですけれども、連担化が進みにくいところで一生懸命麦をつくっている人を補助から外して、それで水田フル活用とか麦をどんどんつくりましょうとかというのは、私は政策がちぐはぐ過ぎると思うんですよ。所得補償制度を憎らしいからやめたのはいいんだけれども、ゲタ、ナラシの要件は、少しそこは柔軟に見ていかないと、耕作放棄地推進策になりますよ。

 これは、細かい話は後でまた事務方から聞きますけれども、こういう問題点があることを大臣は把握されていますか。

林国務大臣 個々にいろいろな事例がある、こういうふうに思いますが、委員が前半でおっしゃっておられた静かな構造改革というのは随分ここでも何度か議論させていただきましたが、やはり、今まさに麦のお話をしていただきましたけれども、我々の考え方も、水田をフル活用しようというところは全く一緒でございまして、先ほど、野球場でサッカーをするということでしたが、野球をやっていることに対して給料を払うのではなくて、同じ野球場をサッカーもできるようにしていこうということで、まさにその転作支援をするなり、水田を使っていただきながらやっていく。

 まさに今おっしゃっていただいたように、ナラシは、集落営農、それから認定農業者に新規の就農者も加えたということと、それから規模要件も課さないということにいたしたわけでございまして、やはり、担い手として幅広く加入をできるようにしていただこう、これも一緒の考え方ではないか、こういうふうに思っております。

 違いは、米というものに対して一律に支払われるのか、我々のように、転作をしながら水田をフル活用していただく、トータルとして、まさに今お触れいただいたような収入保険という形で、何をつくるかというのは需要に応じて御判断をいろいろしていただくことによって、この最大化をしていくということを同時に進めていくということをやっていこうというのが考え方でございます。

玉木委員 繰り返しになりますけれども、米に対して、いわゆる我々の時代の所得補償制度というのを復活してくれとは言いませんけれども、やはりゲタ、ナラシの要件については、少し見直した方が私はいいと思います。

 もう一つ、ナラシに関して言うと、我々のときのいわゆる変動払いですね、農家拠出がなくても、米価が一定程度下落したら年度末に反当たり一万五千百円とか払われていたものですね。これがなくなって、ただ、暫定措置として、とにかく生産者拠出がなくてもナラシの国分の半分は払おうということで今やっていますよね。これがあるから米価下落対策になるという説明を去年の選挙の前も何度も受けましたけれども、現場をよく見てください、うまくいっていませんから。

 その一つの要件は、経過措置というか円滑化措置ですけれども、農水省の役人もよく聞いておいてほしいんですが、これを受けるための要件が、JA出荷の米だったら受けられるんですよ。つまり、市場に系統以外で出したときも受けられるんですけれども、一つだけ要件が加わっていて、私はチラシを実際に見たんですけれども、農産物検査を受検し、三等以上に格付されたものということで、検査の確認の証明書が要るんです、系統以外だと。これだと、今回みたいに米価が下落すると、系統以外で何とか高く買ってくれるお客さんを一生懸命見つけてやっている。今、そもそも、米でも系統出荷以外がもう半分以上になっているような状況ですからね。

 これをよく確認してください。JA以外のところについては一つ要件が乗っているということで、事実上JAに出荷したものしか、その分しかナラシの経過措置の支援策が受けられなくなっているということが現場でありますので、こういうことについても一度調べていただいて、せっかく制度をつくっているわけですから、余りかたいことを言わずに、来年も営農継続をしてもらえるように、少し運用の見直しとか改善とか、そういったことについてはぜひ配慮をいただきたいと思いますけれども、調べた上で対応いただけますか。

林国務大臣 詳しく調べてみたいと思いますが、私が理解する範囲では、JAへの出荷分も同様の検査をやっている。系統ではないところはそれが明確でないのでということだったと思いますが、いずれにしても、どういうことになっているかということと、実際の運用がどういうことになっているか、もう一度ちゃんと調べたいと思います。

玉木委員 もちろんです。JAに出すとJAの検査を受けますけれども、そうじゃないと、ほかの検査機関を探して、やって、証明書を持ってということになるので、それが非常に負担になるというような話があるので、よくよく現場の声を聞いていただきたいなと思っております。

 もう一つ、先ほど福島委員からもありましたけれども、この補正予算でついた緊急対策の二百億ですね。やはりなかなか現場で混乱していますね、この委員会でも何度も出ましたけれども。何か二%コストを削減したら出すというんだけれども、二%削減した実績なんか出さなくていいとか。いろいろ柔軟に交付できるような要件にはだんだんしていっているんですけれども、私の感覚だと、これは一次募集、二次募集、三次募集とだんだん要件が下がっていって、とにかく年度内にはかせようみたいな感じがすごくするんです。

 これも意見として申し上げておきますが、現場の人が困っているのは、そうはいっても、検査員が来て、後でがりがりやられると、ちょっと出す方も受ける方も怖いなというのがあって、コストを削減するための支援策だというふうに、政策上、名を打っているので、コスト削減の成果は出さなくていいし、証明もしなくていいし、とにかくチェックを二カ所だけやって申請書を出したらもらえると。これはちょっときついなと真面目な現場の人たちは思っているので、こういうことも、制度をつくる上でよくよく考えた方がいい。単に配るんだったら、もう面積払いにしたらいいんですよ。私から見たら、あれは形を変えた変動支払いですよ。そう見えます。

 ちなみに、資料の三に、これも宣伝になりますけれども、所得補償制度を入れたときの一経営体当たりの農業所得の推移を書いていますけれども、所得補償を入れたことによって、二十三年度は震災があったので少し下がっていますけれども、経営が安定し、所得が安定したということは事実としてあるので、そういうことを促しながら規模拡大を着実に進めていくというようにしていくことが必要だと思うのです。

 今回のような補正を打つのであれば、七千五百円をもう少しふやすか、あるいは、変動支払い的に面積に応じてお支払いしてあげた方が多くの人が安心して受け取れたのかなというふうに思いますので、このことはちょっと意見として申し上げたいと思います。

 それで、農協の話に移りたいと思いますが、資料の最後の六を見てください。

 農協改革については、私は覚えていますけれども、これは一月の閉会中審査のときに、当時はまだ西川大臣でありましたけれども、全中の制度をいじると何で農家の所得がふえるんですかという極めてシンプルな質問をして、大臣がしどろもどろになられたというのが非常に印象的だったんですが、あれ以来ずっと、中央会改革と農家所得の関係というのが、随分、これは自民党さんの中でも議論をされたというふうに仄聞しております。

 六の資料なんですが、先ほど小山さんが出されたことをちょっと資料にしましたけれども、いわゆる中央会が単協の自由な経営を妨げているのか。

 これは物の見方ですから、意地悪されたとか組合長が気に食わなかったとか、いろいろなことがあるのも私も聞いていますが、ただ、大きなトレンドというのはやはり調査をするとわかると思うんですが、先ほど副大臣が御答弁いただいた読者モニター、そしてまた、今回私が表にしております組合長のアンケート、いずれにしても、六十年ぶりの改革だといって大上段に構えるほど、中央会が現場をぎちぎちにコントロールして自由な経営ができないというのも、私は、これは現場の感覚からすると、ちょっと事実と違うなという感じがするんです。

 ただ、感じることがあるのは、農協が悪いというよりも、やはり農政自体が、ある種、全国一律、画一的に、それぞれの地域の特性を無視してとは言いませんけれども、一律農政をやってきた、時には中央会を利用しながらやってきた、そういうことが少し不満として出ているのかなという気はします。

 もう一つ、先進的な農家の一部は、もうとっくに農協を離れていますよ。だから、コントロールしようにも、もういませんから。

 ですから、そういうことも踏まえれば、ちょっとこの立法事実のところがどうなのかなと思うところがあった中で、三月十六日です。参議院の予算委員会で、これは林大臣が農協改革の目的を問われて、次のようにお答えになっています。新しい環境に対応して農協も地域性を十分に発揮していただいて、いわば農協の中での地方分権を進めていこうということでと答弁されておられますけれども、大臣、この農協の中での地方分権というのはどういうことで、何を目指すものなんでしょうか。

林国務大臣 まさに、今委員がおっしゃっていただいたように、地方分権というのは比喩で使ったわけでございますが、中央会が全国一律でいろいろな基準をつくってやっていく、こういうことがあったとすれば、もう少し自由にしていこう、こういうことでございます。

 そもそも、農協が悪かったとか、誰が悪かった、よかったということではなくて、私は、先ほど言ったように、食料をたくさんつくって供給しなきゃいけない時代から、むしろ、需要フロンティアを拡大すると言っておりますが、どうやって売り込むかを考える時代に環境が変化をしているので、やはりその環境の変化に対応して農政も見直さなきゃいけないということで、先ほど御説明したような四本柱をつくらせていただいた上で、この四本柱を、新しい環境に対応していくということであれば、その主体である農業者や農協といったものもこの新しい状況に対応していただかなければいけない、こういう考え方で、より新しい状況に対応できるような形で、まさに今委員がおっしゃっていただいたように、地域でそれぞれ、適地適作という言葉もありますし、独自性を発揮してもらわなきゃいけないという度合いはこれまでにも増して強くなっていくであろう、こういうふうな考え方でそういうことを申し上げた次第でございます。

玉木委員 何度聞いても、やはりよくわかりませんね。

 私は、この委員会でもいろいろ議論しました。例えば、米価が下落したときに、全農がしっかり概算払いで払えとか、飼料用米を買い上げろとか、困ったときには政府なり時の政権なりが農協とか全中、全農をうまく使って何かをやらせようとするし、こういう改革になると、何か縛って現場が動けなくなっているといって、非常に調子よく使ってきたのかなというところもやはり否定できない。

 ですから、農協ももちろん新しい時代に対応して変わること、あるいは変わるようなことを促していくことは大事だと思いますけれども、その根っこにある農政そのものもやはり変えていかなければいけないし、私はこれは何度も申し上げていますけれども、農政局単位ぐらいで、例えば交付単価は変わっていてもいいし、地域によって生産コストも違うので、そういうところを柔軟にしていって、農業対策交付金とかいって、農業関係には自由に使えるような交付金を渡すような、そういうことを実は大胆にしていくと、本当に大臣がおっしゃるような、農業こそ地方分権が必要だと思うんですね。だから、大臣がおっしゃったことも私は賛同します、ある意味。ただ、農協をいじることでそれを実現していくのが、手段がちょっと無理があるのかなと感じる次第でございます。

 最後に、これも大臣と何度も議論させていただいて、これは林大臣が戻ってきていただいて私はうれしいなと思っている一つなんですが、所得倍増の話、これも何度もやらせていただきました。

 資料五です。食料・農業・農村政策審議会の第五十二回の企画部会資料として先般出たので、私はこれを見て、では、どういうのが出るのかなと楽しみにしていたんですが、ちょっとたまげたのは、一昨年の六月時点、これはこの委員会にも出しました。あのときは、大体三兆円の農業所得を六兆円にしようということで、いわゆる農業所得、統計上出てくる農業所得が一兆円ふやして四兆円になる。プラス二兆円は、関連所得、六次産業化でもろもろの農村所得、こっちの方でふえるので、一と二を足して三ふえるので、三が六になって倍ですという話だったんですが、今回出てきているのをつらつら見ていると、そもそも、何か四兆円が八兆円になって倍になっているんですね、この下の濃い赤からピンクのところですね。

 きょうは、時間がないので、もうこれで終わりたいと思うんですけれども、大臣、私は、農業・農村所得倍増と、倍増というのはもうどこかで取り下げたらいいんじゃないですかね。ちょっと無理ですよ、これは何回も言っているように、倍増というのは。物価でも何でもそうなんですけれども、十年で倍になるためには、年率七・二%の成長が必要なんです。およそマクロの経済を考えたって、二%とか頑張ってやるならいいですよ。毎年七・二%成長し続ける。物価安定目標でも二%ですよ。

 ですから、無理無理やることによって何が生じているかというと、これを見てください。農業所得、これは統計上の概念なので余り無理できないので、二・九兆円が三・五兆円になって六千億ふえる計算になっていますね。これは計算すると十年間で約二〇%です、二一%ぐらい。まあ何とか頑張っていけるかなというぐらい。

 でも、二〇%だってだめなので、倍にしなきゃいけませんから、一〇〇%ですから。そうすると、農業・農村という、この後ろの方でフルスロットルでやるわけですよ。

 そうすると、そこを見ると、関連所得が今一・二兆円が四・五兆円にふえるとなっていて、下を見たらわかるんですけれども、四・一から八ですから三・九兆円ふえるわけですね、倍増のために。三・九兆円ふえる分の三・三兆円分、率にして八〇%以上は関連所得で稼いでいるんですよ。

 それで、関連所得とは何ですかときのう事務方に見せてもらったら、販売とか加工とか輸出ですね。さっき輸出の話も出たのであれなんですが、農業所得は、米をつくったり、牛肉、豚肉とかで、いわゆる農業生産物なんですけれども、関連所得になった途端に水産物とかも入るんですよ、いきなり。それを単に足し合わせていって倍ですと。これはちょっと無理があるので、大臣、どうですか、余り政府の言葉で、党の、選挙向けはいいにしても、政府の文章の中で倍増というのは、さっきの現実的な目標に一生懸命やっているんだという信頼性を確保する上でも、倍増というのを政府の文章に書き込むのじゃなくて、せめて増大とか、そういったことに現実的に変えられたらいいかなと。十年間で二〇%の農業所得の向上を目指します、こういうことでいかがでしょうか。

林国務大臣 これは、いろいろな経緯があってこの所得倍増、今言っていただいたようなことで、二十二年度に現状ということでやった数字が、この間の、一昨年の通常国会ですが、今出しておる数字は新しい数字、直近の数字を使ってやったということでございます。

 それで、農業、農村の所得の倍増を目指す、こういう文言は、党の文章にもございますが、政府のたしか再興戦略だったと思いますけれども、そういうことにもなっておりますので、やはり掲げた以上、その実現に向かって、輸出の目標も、最初一兆円と言ったときは、そんな高い目標を掲げてと、こういう雰囲気もございましたけれども、今着実にそれに向かって数字を積み上げておりますので、高い目標であるという御指摘でございますが、高い目標であっても、諦めずに、しっかりと着実にその目標に向けて、努力は続けていくという姿勢は大事ではないかというふうに考えております。

玉木委員 もう終わりますけれども、ここは、取り下げないのであれば、しっかり検証していきたいと思います。

 七つの分野で関連所得が成り立っているというふうにお伺いしましたので、この七つの分野の算出根拠をぜひ出していただきたいなと思います。事務方の皆さんとも少しやりとりはさせていただきたいと思いますが、場合によってはこの委員会にもしっかり提出をいただいて、しっかりとした議論をして、農家の信頼を得られる農政を進めていければと思っておりますので、大臣にはぜひ御協力をいただきたい、このことを申し上げまして質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。

 昨日、きょうの質問を作成しているときに、私の会館に、あるマスコミの方から連絡がありまして、きょう中川政務官に井出さんは質問されるか、そういうことを聞かれたんですけれども、私は、特に質問するつもりもないし、お呼びもいたしませんというようなことをそのときお話しをいたしました。きょう来ていただいているのは政府側の御意図があってのことかと思うんですけれども、私は、そのマスコミの方の、中川政務官に質問されますか、しません、じゃあという形で電話は切れたんですけれども、関心が農政以外のことに向いてしまっている状態を非常に残念に思っております。そのことをぜひ大臣にもお考えいただきたいということを冒頭申し上げて、質問に入りたいと思います。

 きょう質問させていただくことは、先日の予算委員会の分科会でも、三月十日、第六分科会でお話をしたことの関連なんですが、農地の集積について。

 農水省が、平成二十七年の税制改正で耕作放棄地の課税の強化について要望をしている、また、二十八年度の税制改正でも引き続き検討されていく、私は、このことは大変結構なことだ、そういう趣旨で前回質問をさせていただいたんですが、そのときに、農地も耕作放棄地も状態は違えど農地である、だから、固定資産税の公平性の観点からいって、耕作放棄地だけ課税を強化するということは税の面から難しいというお話がございました。

 そこで、農地というものについて改めて考えてみたんですが、農地法を見ますと、農地というものは、「耕作の目的に供される土地」である。

 これは広島県のホームページに詳しい解説があったのですが、「現に耕作されている土地はもちろん、現在は耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できる」「すなわち、客観的に見てその現状が耕作の目的に供されるものと認められる土地」、ここはちょっと問題なんですが、「(いわゆる耕作放棄地)をも含む。 農地であるかどうかは、その土地の現況によって区分するのであって登記簿の地目によって区分するのではない。」そういう話になっております。

 まず伺いたいのですが、これに対して、耕作放棄地という言葉の定義というものがどうなっているのかを教えていただきたいと思います。

奥原政府参考人 今先生が御指摘されましたように、農地法上の農地というのは、「耕作の目的に供される土地」、こういうことになっております。

 この耕作の目的に供される土地につきましては、現に耕作されている土地のほかに、現在は耕作されていなくても、耕作しようとすればいつでも耕作できるような土地も含む、こういうことだと思います。

 一方で、現在、市町村と農業委員会が調査した客観ベースのいわゆる耕作放棄地というのがございますけれども、平成二十五年の数字でいいますと二十七・三万ヘクタール。この中で、再生利用可能なものが十三・八万ヘクタールで、再生利用困難なものが十三・五万ヘクタール、こういうことでございます。

 この中で、今最初に申し上げました、再生利用可能な農地十三・八万ヘクタール、これにつきましては、農地法上の農地ということに当然なると思いますので、農地法上、所有者に対しまして農業委員会が利用の意向調査等を行って、所有者が意向どおりに実行しないという場合には、最終的には、都道府県知事の裁定で、農地中間管理機構がその土地を利用する権利を取得することができる、こういった制度になっているわけでございます。

 一方で、この市町村、農業委員会の調査のときに、再生利用が困難であるというふうにしている土地が中にございます。既に森林の様相を呈しているとか、再生利用が困難な耕作放棄地、これにつきましては、先ほどの農地法上の定義からいいまして、農地法上の農地になるかどうか非常に疑義のあるところでございます。

 したがいまして、こういった再生困難な農地につきましては農業委員会の方で手続をとるということに基本的になっておりまして、総会または農地部会の議決を経た上で、所有者、法務局等の関係機関に対して農地法上の農地に該当しない旨を通知する、こういうことを順次進めていく、こういう話になっているわけでございます。

井出委員 今、耕作放棄地に再利用のできるものとできないものがある、そういう御答弁だったと思うんです。

 もう一度端的に教えていただきたいんですが、再利用困難なものが耕作放棄地に入っていて、それが、先ほどの税制の議論の中で、耕作放棄地は農地であると。

 この再利用困難な土地というものは、農地法で言う農地、その農地の定義の後段、「客観的に見てその現状が耕作の目的に供される」、そうしたものと、明らかに趣旨に反しているのではないか。

 再利用困難なものについて、農地として定義づけておくことが果たして適切なのかどうかというところを端的に伺いたいと思います。

奥原政府参考人 農地につきましては、農業委員会が農地台帳というものをつくっておりまして、これで、どこが農地であって、今誰が使っているかとか、こういうことをきちんと管理しております。今はそれを全部システムにして、電子地図で見られるようにするという整備まで進めているところですけれども、そこで、台帳に載っている農地というのはあるわけですので、それが現況どういう状態になっているかということを毎年農業委員会は調査をする、こういうことになっております。

 そのときに、今耕作放棄されているという状態のものは当然わかるわけですね。その中で、再生可能な、ちょっと草を刈ればすぐに農地として使えそうなところと、木が相当生えていてなかなか再生困難なところが出てくる、こういうことでございます。

 これを農地法に照らして、本当に農地かどうかということを見ていって、農地のところは当然農地として使いますし、もう農地でないという状態になっているとすれば、非農地化する手続を農業委員会の方でとっていく、こういう話になるということだと思います。

井出委員 先ほどの、耕作放棄地、使っていない農地について固定資産税を強化して、所有者に、使っていない農地についてはできるだけほかの人に貸していただくとか、そういうことを促していくということは、私も農水省と同じで、大変メリットはあると思うんですけれども、実際に耕作することが困難な土地が耕作放棄地にも含まれていて、それが、農水省が税制改正で要望されているときに、いや、どっちも農地だからと望みが通らない中に、実際、耕作困難な土地が含まれている。

 まず、農地と耕作放棄地の線引きをもう少しきちっとすることによって、本当に使われていない農地については課税を強化するという仕組みが私は実現できるのではないかと思っていて、農地と耕作放棄地の改めての定義づけというものが必要だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 農地につきましては、できるだけ耕作放棄地にならないようにしていくということが非常に重要でございます。特に、再生困難な耕作放棄地ということになりますと、もう農地ではなくなってしまう可能性が高くなりますので、できるだけ耕作放棄の状態にならない、あるいは、なったとしても、すぐにその状態を解消してきちんと農地として活用してもらう、これをどうやって政策的に進めていくか、これが重要な課題だというふうに思っております。

 前回の分科会のときも御指摘いただきましたけれども、そのための手法として、固定資産税といった税制の話も重要な手法だと我々思っておりますので、二十七年度の税制改正では実現できませんでしたけれども、二十七年度に要求していた中身は、農地中間管理機構に貸し付けた農地については固定資産税を減免する、そのかわり、現在耕作放棄地になっているようなところについては固定資産税について課税を強化するような仕組みができないか、これをセットで、耕作放棄地を発生させない、発生したとしても、すぐにもう一回農地として使える状態にするということを目指した制度を要求したわけですが、まだ実現しておりませんので、これは今後ともさらに検討していきたいというふうに思っております。

 それからもう一つ、土地についての固定資産税の問題ですけれども、固定資産税上の地目の扱いは、先ほどの農地法上の農地の扱いとはちょっと違っているところがやはりございます。これはあくまで税制の世界でございまして、固定資産税の評価は地目ごとに異なっておりますが、どの地目に該当するかということにつきましては、地方税法の規定に基づいて、市町村長が現況によって判断するということになっております。

 一般的には、農地が耕作放棄地になっても、一時的に作物を植えつけていないという状態である場合には農地として評価されて課税をされる、こういうことになると思いますけれども、農地として使えない状態になっているという場合には農地としては評価されないということになります。

 例えば、土地の現況によりますけれども、山林ですとか原野ですとかあるいは雑種地といったような評価をされて、それに基づいて固定資産税が課税されるということになりますが、この場合、山林とか原野ということになると、評価はもっと低くなりますので、固定資産税が下がるということにもなるような、そういう可能性もございます。

 そのことも含めて、早目に耕作放棄地を解消するようにしていくということの方が重要だというふうに考えております。

井出委員 耕作されていなくて、ひどい土地ほどさらに固定資産税が低くなる、その可能性もあると、まさに本末転倒といいますか、税制の面から耕作放棄地を解消していくという取り組みが進まないと思うのですが、私は、農地というものを再定義する、耕作放棄地の中で再利用がすぐにできそうなもののところで線を引くのか、そこはいろいろ議論はあると思いますけれども、農地というものを再定義すれば、先ほどの固定資産税の地目の話、市町村が判断をされるというお話でしたが、そこも変わってくると思うんです。

 農地の再定義によって、使われていない農地に対する固定資産税を強化するということを要望すれば、二十七年度と同じ要望をしていても、二十八年度、どうなるかわかりませんし、そういう農地の再定義という一つのことにトライをされてはいかがかと思うんですが、大臣はいかがでしょうか。

林国務大臣 これは、もし可能なら、総務省の税務当局にもお尋ねいただければと思いますが、私もちょっと党に戻っておりました間、税調にもおりましたので、特に地方税、固定資産税は地方税の主要な項目でございますが、いわゆる政策のための、優遇税制とか促進するためには、地方税法というのは使わないんだということが総務省の一般的な主張でございます。

 したがって、例えば農地法上の、今まさに委員がおっしゃった、我々が要望しようと思っているような、農地を集積するというような政策目的のために固定資産税の特例をつくるということについては、税務当局はそもそも論として非常に慎重であるということがまずあるのではないか、こういうふうに思っております。

 したがって、固定資産税の世界では、今局長が答弁いたしましたように、今の土地の状態に応じて評価額を出して、それに基づいて掛け合わせたものが税率で決まっていく、こういう仕組みということになっておりますので、そういう税務当局の御主張に対応して、我々もどういうふうにしたらこれがもう少しできるのかということを総合的に検討しながら、確かに、今委員がおっしゃったように、去年と同じものを出せば同じ結果になるのではないかということもありますが、税の場合は、何年か、持続的といいますか、しつこく要請することによって税制ができていく、こういうこともございますので、いろいろなことを考えながら、今おっしゃっていただいたような趣旨がさらに進むようなことを、ことしも税の要望に向けて検討してまいりたいと思っておるところでございます。

井出委員 税制改正を要望するに当たって、農地と使われていない農地をしっかりと定義して、もう一度要望することは私は大事ではないかなということで一つ御提案をさせていただいているんです。

 住宅の固定資産税の関係で、固定資産税の住宅用地の特例というものがある。土地に対する固定資産税が課税される年の一月一日において、住宅、アパート等の敷地として利用されている土地については、特例措置があり、税金が軽減される。この特例は空き家対策にも用いられておりまして、空家等対策の推進に関する特別措置法で、簡単に言いますと、市町村長が、特に状態がひどい空き家について、必要な措置をとることを勧告した場合に、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外をする。これは、住宅地がどのように使われているかというところを明確に線引きをして、それによって固定資産税に差をつけている。

 私はこういう、土地の利用の現状に応じて固定資産税に差をつけていくということは、使っている農地と、農地の枠に入っているけれども明らかに使っていないものに対して、差をつけていくことは可能であると思いますし、まして、この空き家対策は、住宅に関するものはきちっと法律で定められておりますので、当然、農地でやるとなれば、農地のところも、では、どっちに課税を強化して、どういうところだと課税が緩やかになるのかというところを、法律でしっかりと決めなければいけない。

 その意味においても、この耕作放棄地という土地の状態、農地という土地の状態を再定義することは絶対必要なことではないかと感じておりますが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 今の空き家対策の話を含めまして、よく勉強させていただきたいと思います。

井出委員 私もにわか勉強ですので、そんなに勉強していただくようなことではないかと思いますが。

 耕作放棄地という言葉が、いろいろな経緯があって、あることだと思います。

 先ほど耕作放棄地を説明した広島県のホームページでは、耕作放棄地という言葉は農地に含まれると書いてあるんですが、一方で、東海農政局の耕作放棄地についてのページを見ると、耕作放棄地は「(遊休農地)」、そういう表現もあるんですね。

 この耕作放棄地をなくしていくということ、御答弁にあった取り組みは当然大切なんですけれども、ぜひ、税のインセンティブによって農地の有効利用を進めていくという意味において、農地、耕作放棄地の定義づけというものを見直すことも必要であるということを重ねてお願いして、次の質問に入りたいと思います。

 次に質問をするのが、農地中間管理機構、さきの委員の先生方も質問されましたが、この農地中間管理機構について、端的に私の感想を申し上げると、金はついているけれども人はついていない、それがこの一年間うまく機能してこなかった最大の理由だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 先ほどちょっとこの背景について触れさせていただきましたが、まさにおっしゃるように、「役員の過半数が、経営に関し実践的な能力を有する者であると認められること。」こういうふうに法律上されていますけれども、役員構成、昨年八月末の時点でございますが、全国で企業経営者が三十四人、農業法人経営者は二十一人ということにとどまっておりまして、民間のノウハウが活用されているというようなことには言えていないであろう、こういうふうに思っております。

 また、先ほど申し上げましたように、人・農地プランなどの、地域の農業者の話し合いを進めるための現場において動き回る人員というのも十分確保されていないであろう、こういうことでございますので、確かに、人の面でまだまだいろいろやっていかなければいけないことがあるというのは御指摘のとおりだというふうに思います。

井出委員 今、民間の方の人数なども御紹介をいただきましたが、さきの予算委員会の第六分科会で、たしか、各県の農地中間管理機構の役員は全体で大体五百五十人ぐらいだ、企業での役員経験がある人または農業で法人経営をやっている人が大体一割だ。その数字が、今大臣がおっしゃった、三十四人と二十一人だと思うんです。

 改めて伺いたいんですが、各県の農地中間管理機構のトップの方、私は東日本の分しか見ていないんですが、半数以上が県の農政部長がそのまま来ている、分科会の答弁でも、県との関係がかなり強い人事になっているというお話もいただいているんですけれども、これは、どうして全国的にこういう県のトップが出向するような、天下りするような、そういう人事になってしまったのかを伺いたいと思います。

奥原政府参考人 農地中間管理機構は、指定法人制として二十五年度に法律をつくっていただきました。

 それぞれの県におきまして、この中間管理機構の法律ができる前から、農地保有合理化法人、県ごとに名前は違っておりますが、通常、農業公社と言っているような、そういう法人がございまして、そこを、この法律ができた後で農地中間管理機構として指定して、体制も刷新しながら今度の仕事に取り組んでいる、こういうことでございますが、従来の各県の農業公社、農地保有合理化法人のときの役員体制がそのまま維持をされているところも随分あるということだと思います。

 従来は、役員についての縛りも特に設けておりませんでしたので、県庁のOBの方がトップになったり、あるいはトップでなくても役員の方がなるというケースが非常に多かったと思いますけれども、今度の農地中間管理機構の法律の中では、役員の過半の方は経営について実践的な能力を持つ方にしてほしいということを法律の中にもうたっているわけでございますので、ここのところ、必ずしもトップだけではございませんけれども、役員の中に民間のノウハウを持った方々にできるだけ入っていただいて、その方々のノウハウを活用して、本当に機構が現場でもってうまく動き回る、そういう組織になっていただくということが重要だというふうに考えております。

井出委員 余り機能しなかった前の体制の名前を変えて、人事がそのまま維持されるというようなことであれば、大きな変化というものは期待できない、そう言わざるを得ないのかなと思うんです。

 今、現場で動き回る人というお話がありました。実際に現地で、農地を貸し出してくれる人、また、農地を借りたいという人の意向を酌み取ったり、その交渉をされる方、そういう方を想定していると思うんですが、私の地元のあるところで、そういう役は誰がやるのかという議論になったときに、市町村がやるんだと。実際、中間管理機構は業務を市町村に委託ができて、市町村がその窓口役を負っている。ですが、実際、現地で、農地を貸してくれる人、借りたい人と交渉をする職員がいない、そういうところも存在しておって、それでは、幾ら金を出しても、そういうことを実際にやってくれる人がいないのであれば、何も物事は進まないんじゃないかと思います。

 現地の交渉役という方は、この農水省のつくっている「今般の施策の見直しに係るQ&A」というものを見ますと、普及員のOBや市町村職員のOBなどを雇って活動していただくことを考えていますということになっているんです。

 まず伺いたいんですが、実際にそういう現場で活動する人を全国の中間管理機構がきちっと市町村単位で雇っているということは実現しているんでしょうか。

奥原政府参考人 ここの現場で動く人の体制は一番重要なポイントだと思っております。

 それで、この中間管理機構につきましては予算措置も当然講じられているわけでございますので、機構に対して、事業費もついておりますし、それから事務費もついているわけです。機構の職員として、現場で動き回る人を整備していただいてもいいですし、それから、機構が市町村に委託をして、市町村段階でもって人を雇っていただいて使っていただいても構わない。場合によっては、委託先が農協の場合には、農協の職員を使うということもあり得ると思います。

 この辺の使い方は、やはりそれぞれの県によりまして現場の実力がかなり違います。ある県では、県の出先が一番動いているというところもありますし、中には市町村が一番動いている、場合によっては農協が動いている、いろいろなところがございますので、これは、それぞれの地域の特性に応じて、動ける方をできるだけ整えていただくというのが非常に重要なんです。

 ただ、実際に、現場で農家の方と顔がつながっていて、農地についてまとまった面積を出していただく、例えば、人・農地プランをきちんとまとめて、自分たちの地域はまず中間管理機構にまとまって預けて、もう一回、利用の再配分をしようとかいう議論まできちんと持っていっていただける、そういう顔がつながって能力のある方がどれだけいるか、なかなか難しい問題がございます。

 普及員で優秀な方々は顔が相当つながっていますので、そういう方でOBになった方々を活用するとか、いろいろなことをこちらからもアイデアとしてお示しをしておりますが、予算もうまく使っていただいて、ここの体制を整備していくことが非常に重要なポイントだというふうに思っております。

井出委員 この農水省のQアンドAで、「機構が市町村に業務委託をするに際し、市町村に、農地の借受け・貸付け等に関し農業者の間を奔走し、交渉実務等に専心する者を置く等、実施体制を整備すべきではないか。」それに対する答えが、普及員のOBや市町村職員OBなどを雇って活動していただくことを考えていますということなんですけれども、現場で動き回る人、先ほどディベロッパーという話もありましたけれども、ここがどれだけ全国的に各市町村ごとで人が配置されているかどうかを検証していただきたいと思います。

 まだ開始して一年だから、これから数字が出てくる、それを見て、もう一回、改善するべきところを正すというお話がありましたけれども、市町村の現場を駆けずり回る人がどれだけ採用されて、その実態、どれだけ動いているかというところもしっかりと分析をして、ぜひ公表していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

 県ごとに相当濃淡がございますけれども、例えば熊本県におきましては、現場で動ける人が四十人ぐらい整備をされております。これは、機構本体の職員の方もいますし、委託先の市町村の方も、それから委託先の農協の方もいらっしゃるんです。

 そうやっていろいろな形で体制を整備して、本当に成果を上げつつあるところもありますので、この一年間、初年度の分については、この三月末でいろいろな数字をとって集計をして、我々も分析して、二年目にきちんと軌道に乗るようにやっていきたいと思いますので、現場の体制も、その中の一つとして、きちんと状況を把握したいと思っております。

井出委員 ぜひ把握して公表をしていただきたい。機構のトップは公表されているから、県の関与が強いということがわかるわけでありますけれども、現場の状況もきちっと公表していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 いろいろなデータを公表した上で、改善策を考えていきたいと思っております。

井出委員 強く要求をさせていただきたいと思います。

 もう一つ、この中間管理機構に関して伺いたいのですが、中間管理機構は、いわば行政が中心となって、これまで所有者が個々に持っていた土地を、土地を借りたい人と個人対個人のやりとりではなくて、そこに行政が受け皿としてしっかり入るんだ、そういう仕組みであるという理解をしているんです。行政の関与が強まっていく。

 もう一つ、農地の集積、その権限の移譲ということで農業委員会があります。農業委員会は、農地の権限に関する許可をやるのがメーンでありつつ、もう一つの大きな仕事として、今私が申し上げたような、現場を動き回る、そういう仕事の部分も担ってきたのではないかと思っているんですね。

 農業委員会の現場の方に聞けば、中間機構には協力しなさいと言われているので協力はします、そこまでは言っていただくんですが、農地中間管理機構に農地の集積が、そこがメーンになってくれば、農業委員会の仕事自体も減っていくのではないか。ましてや、今私が公表してくれと求めた、そういう職員を、現場で駆けずり回っていく人をこれから中間管理機構の方に採用していくとなると、では、農業委員会で今まで地元の農地をしっかり見てくださってきた方の存在というものがどうなっていくのか。

 これは非常にダブってしまっているのではないかと思って、私は農地を細かく把握されている農業委員会のお力というのは非常に貴重だと思うんですね。だけれども、このダブっている状況というものが、これから農地を有効に管理していく上で問題ではないのかなと感じるんですが、そこの見解を伺います。

奥原政府参考人 農業委員会の業務として、権利移動の許可のような仕事もございますけれども、やはり地域の中で、農地のあっせんですとか、農地の流動化に向けて仕事をするということもその仕事の中に入っております。

 そういう意味では、農地中間管理機構の目的と農業委員会の仕事の目的は共通しているところが相当あるわけでして、ここがきちんと連携して成果を上げていくことが非常に重要だというふうに考えております。

 これは、農業委員会の今回の改革にも関係をすることでございますけれども、従来の農業委員会の仕事の状況は地域によってかなり差がございます。本当に農業委員会が中心となって、その地域の担い手への農地の集積を進めているところもございますし、ほとんど農業委員会が活動していないような、そういう地域もございます。

 やはりこれは、全ての地域で農業委員会がきちんと活動していただいて、担い手への農地の集積、集約化を進める、それから耕作放棄地の発生防止をする、新規参入を促進するといった状態になっていくことが非常に重要だというふうに思っておりまして、今回の農業委員会の改革はそういうものをカバーするような改革をする、こういうことになります。

 ここの農業委員会がきちんと機能するようになれば、これが農地中間管理機構ときちんと連動するようになりますので、先ほどの中間機構の現場での推進体制の一部として、この農業委員会の委員の方々、今回は農地利用最適化推進委員という方まで任命されることになりますけれども、その方々も含めて、この地域の農地の流動化がさらに進むようになるというふうに思っております。

井出委員 農業委員会の改革の中で、農業委員会の制度の中に農地利用最適化推進委員というものができるわけですね。中間管理機構にも現場を駆けずり回る職員ができる。

 これはどっちが機能してくるのか、それは地域によって違ってくるし、私は今想像もつかないんですけれども、農地中間管理機構メーンでこれから農地の集積を進めていくというのであれば、農業委員会の農地利用最適化推進委員というものをつくるんですけれども、今おっしゃった、名誉職化とか仕事をしていないとか、それは中間管理機構が仕事をすればするほど、この農業委員会というものが仕事がなくなってくる。私はその整理が必要だと思うんですよ。

 そもそも、農業委員会というものは、戦後、自分たちで農業をやっている人が土地を所有して、行政から独立をしたところがしっかりとそれを見ていくというために農業委員会がつくられた。一方で、今進められている農地の集積というものは、農地中間管理機構というものをつくって行政の関与を再び強めていこうと。

 相反すると言うと少し語弊がありますが、政策転換を行うというのであれば、違う目的で今までやってきた農業委員会とこの中間管理機構が二つのタイヤで現場を回るというのは、私はどう見ても農政の大改革とは言えないと思いますが、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 まず、農地中間管理機構は、行政の関与を強めるというものでは基本的にはないと思っております。

 従来の農地の流動化の政策は、基本的に、出したい方と受けたい方、個別のものをやる、その間にあっせんする方が入る程度でしたけれども、この個別の相対でのやりとりではなかなか農地が流れていきません。特に、出す方と受ける方の個人的な信頼関係の問題もありますし、それから、個々にやっているのでは、まとまった面積を受け手の方に渡すということもできません。

 ということがありまして、間にきちんと入って、一旦農地を中間管理機構が借りて、まとまった面積にして、使いやすくして、受け手の方に転貸をする、こういうスキームをつくるということですので、別に行政の関与を強めるということでは基本的にはないと思っております。

 それから、農業委員会、これは、今回改革をしても、独立行政委員会という性格が変わるわけではありません。農業委員の方も、それから推進委員の方も、基本的にはその地域の農家の方々が選ばれてくる、こういうことになると思います。

 農家の方が自分たちの地域の農業、農地をどうするかという観点でそこは考えていただくことは当然必要ですし、一方で、中間管理機構という、間に入る、中間的に農地を借りて、まとまって転貸する、こういう主体、それの委託先として動いている市町村なり農協、ここがきちんと連携をとることで初めて動いていく。

 中間管理機構があれば農業委員会は要らなくなる、こういうことではなくて、先ほどから現場で動く人の数が少ないと言われておりますが、むしろ、この二つが連動しないと成果が上がっていかないということだというふうに我々は考えております。

井出委員 私は、農業委員会が要らないとは一言も申し上げていないんです。農業委員会の皆さんが現場の農地について非常に細かく実態を把握していることは地域の農業の大きな財産だと思っているんです。

 行政の関与を強めるというわけではない、ただしかし、個々のやりとりではうまくいかないから中間管理機構が間に入ると。その中間管理機構がこれから農地集積のメーンになっていくんですよ。

 農業委員会の方と話をすれば、自分たちの仕事が減っていくということを本当に心配されている方もいて、先ほど中間管理機構と農業委員会の連動という話がありましたが、そこを具体的に示さないから、そういう現場の不安とか、私が申し上げているように、両方の制度が併存して、将来、本当に農家にとって一番いいような農地の集積ができるのかどうか。

 やはり、ここの議論をしっかりやらなければ、農業委員会というものを戦後ずっと今の形にしてきたから改革が必要なんです、変えましたといっても、これは本当に農家のための改革になっていないと思うんですけれども、いかがですか。

奥原政府参考人 農地中間管理機構は、受け手の方々が農地を集めて、できるだけ使いやすい形で農業をやっていくという上では、非常に有効な方策だと我々は思っております。

 現在、初年度ですので、まだ軌道に乗っているというふうに言える状況ではないと思っておりますが、これは一年目の成果を点検しながら、さらに改善をして、これがきちんと動くようにしていく、これが非常に重要なことだと思っておりますし、農業委員会もそれとセットで、きちんと改革をしながら農地の流動化を進めていく、こういうことだと思っております。

井出委員 中間管理機構と農業委員会の問題もそうですし、最初に申し上げた農地と耕作放棄地の整理もそうなんですけれども、そういった法律的な定義の整理ですとか、今まであった制度の目的が何であって、それを政策転換していくときにどういう制度設計をしたらいいのか、そこの大もとの議論をしていかなければ、農家のための改革や、自民党がおっしゃっているような農政の大転換、戦後以来の大改革というものの、その根っこの部分の議論をまずしっかりやることが必要ではないかということをきょうは問題提起をさせていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、松木けんこう君。

松木委員 それでは、質問をさせていただきます。

 農業というものなんですけれども、きょうはばっとした質問をしますので、そんなにかたく考えないで答えていただいて結構ですからね。

 まず、農業の役割というのは、経済性というんですか、経済合理性というものから離れたところにもいっぱいいいものが農業というのはあるんですよね。

 例えば、土地の涵養もそうだろうし、そして家族経営、いいじゃないですか。家族が汗を一緒に流して、そして経営をしていく。本当に美しいというふうに思うし、日本書紀か何かには、たしか、なりわいという字が農業の農で書いてあるんですよね。そんなこともある。すごくいいですよね。日本の原風景だというふうにも思えるんです。そして、日本人というのはやはり農耕民族なのかな、そんなことも考えたりするんですよね。

 どうですか、大臣、副大臣、政務官。私も同じような考えよというのか、いやいや、これからはもう変わっていくのよというふうにお思いなのか。そこら辺を、ちょっとだけで結構ですから、それぞれお答えください。

林国務大臣 大変本質的な御質問をいただいたと思っております。

 農というのは、やはり日本の美しいふるさと、これを守ってきた国の基である、よくそういう言い方をいたします。また、成長の糧になる大きな潜在力を有しておる、こういうふうにも思っておるところでございます。

 まさに、車やコンピューターをつくる製造業と比べて、産業という側面ももちろんあるわけでございますが、一方で、今委員がお触れになっていただいた、水の流れ、流量調整をするとか、それからCO2を吸収するとか、あるいは集落を維持する家族農業とか、そういうことを通じて発揮しておられる、多面的機能とよく呼んでおりますが、こういうものがしっかりある。

 この両方をどうやって車の両輪としてしっかりと組み合わせてやっていくかということをしっかりと考えて、そして農山漁村の活性化を実現していくということが大変大事なことであるというふうに考えております。

あべ副大臣 農業に関しましては、大臣のおっしゃるように、産業としての農業ということと、私は、特に自分の地元が中山間でございまして、そこのところは国土を守り、環境を守り、食料を守っていくという多面的な機能があると思っておりますし、また、農業政策としてのあり方だけではない、地域政策として、その中山間地区をどのように守っていくかという側面もあるんだと思っております。

 今、攻めの農業と言われている中、やはりそこは地域によっての実情がそれぞれある中、地域に合わせた農業政策が本当に重要であるというふうに思っているところでございます。

中川大臣政務官 私も、大臣、副大臣がお答えになったことと同様でございますが、農は国の基といいます。そして、先ほどあべ副大臣がお話をされました産業としての農業という面におきましては、私の地元は委員と同じ北海道でございますので、食料基地北海道というところで育ったものとして、産業としての農業は本当に大切だというふうに思っております。

 また、多面的機能、先ほどあべ副大臣がお話をされましたので重複は避けますけれども、副大臣がお話をされたもののほかに、やはり文化の伝承ということもあるというふうに思います。

 そういう意味で、今委員がおっしゃっているのと同じように、農業というのは本当に大切なものであるというふうに思っております。

松木委員 中川さん、何をしゃべっているのか、余りよく聞こえなかったんだけれども、落ちついて、もう一回ちょっとゆっくりしゃべってみてください。

中川大臣政務官 産業としての農業と、それから多面的機能としての農業、この二つの観点から大変大切なものであり、国の基であると、大臣、副大臣と同様の考えでございます。

松木委員 お三方ともすてきな答えであったというふうに思いますけれども、今、農業というのは曲がり角に来ているんだろうなとつくづく思うんですよね。家族で経営していたのが何か否定されたり、そういうのが非常に僕は寂しい気がするんだけれども。

 林先生なんかは家族を大切にするというので結構有名な方で、そしてホームページなんかを見ると、ちょっといい感じの写真が載っているじゃないですか。あれはいいですよ、すごく。本当にいいと思う。

 そして、政務三役。政務三役というのは、やはりみんなで力を合わせてやっていくということだと思うんですね。

 私も農水政務官をやったことがあるんです、途中でやめましたけれども。それはなぜかというと、残念ながら、離党する前に、いや、離党じゃないんだ、あれは。首になったんだ、民主党を。

 私も政務三役を途中で辞任しました。それはなぜかというと、残念ながら、我が党の方がというか、ある人がいて、急にTPPの話だとかをし始めるものですから、私にはどうしても納得できなかった。だから、そのままいたら、大臣、副大臣の足を引っ張るだろうというふうに私は思いましたので、そこで身を引かせていただいたことがありました。

 そこで、中川さん、私は、別にあなたが路上で何をしようと、あるいは、たばこを病院で吸うのはちょっとよくないけれども、たばこは私も吸いますし、別にそんなことはいいんですよ。いいんだけれども、しかし、中川さん、そもそも、体は大分よくなったんですか。小山君のときにそういう質問もあったと思うんですけれども、私はいなかったものだから、ちょっとお答えください。

中川大臣政務官 先ほど質問にお答えをさせていただきましたけれども……(松木委員「僕はさっきいなかったものだから」と呼ぶ)そうですか。

 私の体調についてお尋ねをいただきまして、御心配いただきまして、本当にありがとうございます。おかげさまで回復基調にございまして、きょうのように、国会ということがありましたら、一時外出許可をいただきまして出席をさせていただいているというようなことでございます。

 御心配をいただきましたこと、重ねてお礼申し上げます。ありがとうございます。

松木委員 大分よくなってきたということですし、大分騒ぎも落ちついたんじゃないかな。

 きょうは、井出君のところにはマスコミから中川さんのことを聞くのかという質問の電話があったといいますけれども、私のところにはありませんでしたから、大丈夫なんです。何にも言っていないし、こういうことを質問するという話もしていませんから。ですから、マスコミもきょうは余り来ていないし、落ちついて話ができるんじゃないかなというふうに思っています。

 でも、中川さん、やはりチームワークというのは非常に大切なんだよね。

 自分は悪いことをするつもりではなかった、いろいろなことがある、それはそのとおりだと思う。しかし、今自分が置かれている立場というのはちょっと厳しいというふうにやはりあなたも思いますか。ひとつ答えてください。

中川大臣政務官 今回、私の軽率な行動のために皆様をお騒がせしたことを深く反省しているところでございます。

 大臣政務官として任命をしていただいたことに鑑み、大臣をお支えし、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に向けて、大臣政務官としての職務に全力で取り組んでいくことが私の責務と考えているところでございます。

 農政は今、大改革の途上にございます。日本の農林水産業のために少しでもお役に立てるよう、まだまだ政治家として若輩者ではございますけれども、精いっぱい頑張ってまいりたいと思います。

松木委員 政務官の仕事というのは、結構、全国いろいろなところへ出張したり、いろいろな大会で挨拶したり、ありがたいことに皇族の皆さんとお食事をさせていただいた、そういう経験もさせていただいた、本当に重要な、大切なポストだと私は思います。それに、今、中川さんは本当にたえられるのか。私は心配ですよ、本当に。

 しかし、あなたも子供ではない。私と多分年は同じなんですよね、私も五十六歳ですから、多分同級生だと思いますけれども。私は男女を差別する、こういう気持ちは全くありません。ですから、女性だからどうのこうの、男だからどうのこうの、こういうことを聞くのはやめようとか、そういうことはしません。

 そこで、きついことも聞くかもしれませんけれども、ひとつ答えていただきたいのは、まず、週刊誌に出ましたね。しかし、週刊誌なんていうのは、まあ、悪いけれども、かなりいいかげんなこともお書きになるときもある。あるいは、昔でいえば、疑惑の銃弾なんといって、週刊誌の報道から大きな事件になった、そういうものも実はあるんですね。

 この週刊誌の報道を私はうのみにはしていないんだけれども、中川さん、特に週刊新潮さんというのに二回目に書かれたのは、たばこがどうのこうのなんていうのは、私は、たばこは病院で吸ってはだめだけれども、ふだんは別にそれは御自由だというふうに思うけれども、一番初めの記事なんかは、あなたはお答えをいろいろとされているんだけれども、それはあなたが本当にお答えになった言葉で間違いないんですか。それをお聞きしたい。

中川大臣政務官 記者からは電話取材がございまして、突然のことで気が動転をしておりまして、幾つかのことはお答えをしたというふうに思います。しかしながら、私は、しっかり全部読んでいるわけではございませんで、今、委員がお尋ねのことを、どのようにお答えをしたらいいのかということは、今、考えを持ってございませんので、そのことをお酌み取りいただければというふうに思ってございます。

松木委員 記事は読んでいないんですね、中川さんは。この新潮の記事は読んでいない。読んでいないんでしょう。いやいや、こんなものは読みたくないでしょう、それは当然。読んでいないということでよろしいですね。

中川大臣政務官 ざっと目を通しましたけれども、一言一句、今覚えているというような状況ではございません。

松木委員 ざっと目を通したと。

 もう一人の議員さんと、これは本当に御自身方がこういうお話をされたのかなというぐらい、ちょっと余りいい内容ではないというふうに思いますけれども。

 実は、中川さん、私の姉貴は二つ年上なんですけれども、仲人がいるんですよ。この仲人が、あなたのおじさんに当たるのかな、中川義雄さん、実はこの方が私の姉貴の仲人なんです。ある意味で中川家の皆さんとのおつき合いも、私は大体、中川さんとは党は違ってずっとやってきましたけれども、しかし、うちの父なんかは、特に昭一さんのことは随分買っていたんですよね。そういうつながりもあるんです。

 その中で、私は本当に気になる言葉がある。一番最後のところで、あなたはこう言っているんですよね。いろいろな悪意と体調と宇宙の摂理が一緒になったときに大きな不幸が起きる、その一回目が中川一郎が自殺したときで、その二十六年後にローマで事件が起き、夫がいなくなってしまった、それと同じようなことが起きたのがこの間のことでした、夫にはこれから報告しますが、ばかなことをしたな、でも、俺もそんなことをいっぱいしていたんだよ、実はなって言うんじゃないですかね、こういうことが……(発言する者あり)いや、これは御本人の言葉だから、私は聞いているんだよ。やじはやめなさい。こっちは、ゆったりやっているんだからね。中川さん……(発言する者あり)政務官の資質だろう。やじには余り反論しない。

 中川さんはこういうお話をされたんでしょうか、このまま。

中川大臣政務官 委員の質問にお答えをいたします。

 先ほど申し上げたように、記者の方からは突然の電話取材で、大変気が動転をいたしました。御指摘のような言葉を口にしたということは記憶いたしております。

松木委員 記憶にないということ、あるのですか。

中川大臣政務官 先ほども申し上げましたように、記者の方からの取材は電話取材でございました。突然のことでございましたので、大変気が動転をいたしましたけれども、今記憶をたどってみましたら、御指摘のような言葉を口にしたと記憶いたしております。

松木委員 中川さん、急に電話が来たら、私も多分同じようなときだったら動転すると思うんだけれども、このお話というのは、何回か取材を受けた一番最後の方なんですよね。中川さんはやはり御自分の言葉に責任を持たなきゃいけないですよ。これは本当に残念なことだというふうに思います。

 その中で、中川さん、私は思うんだけれども、私も政務官をやめたことがあるんです。いろいろなことを言われましたよ。でも、何もあなたに政治家をやめろとまで私は言うつもりもないし、しかし、もう一度やり直すというお気持ちは持った方がいいと思う。

 地元にお帰りになられていますか、今まで。お答えください。

中川大臣政務官 地元に帰ったかどうかという御質問でよろしいですか。

 ただいま私は、現在、入院をいたしておりまして、きょうも一時外出許可をいただきまして公務をしているわけでございますので、まだ地元には帰っておりません。

松木委員 入院中ですから、まだ帰られていないんですね。ぜひ帰られて、私もそうだったんだけれども、皆さんにいろいろなことを言われるけれども、頑張って説明されたらいいと思うし、そして、私はこんなことで政治家までやめろなんて言いませんよ。

 でも、農林水産行政というのは、これからなかなか大変な時期に入っていく中で、中川さんがいろいろなところに出張したときも、好奇の目で見られたりすることもあるので、私は本当に心配なのです。

 ぜひ、大臣、ここで何を言えとは言わないけれども、もうちょっと総理大臣と農林大臣と中川さんとお三方でもお話しする機会を持って、ここで一度身をお引きになった方がこれからの将来のためにも私はいいというふうに思います。大臣、どうですか。

江藤委員長 委員長から申し上げます。

 政治家本人の身の処し方、進退につきましては、御自身も覚悟がおありの上での続投ということでございますので、品位を欠く発言だとまでは申し上げませんが、少し抑えていただければと私は思います。

松木委員 余り責めているつもりではないんだけれども、大臣に上司としてどういうふうにお考えかということだけを、では、お聞かせください。

林国務大臣 中川政務官におかれては、選挙区が、これは松木先生と同じ北海道ということでございます。先ほど少しお触れになられましたが、我が国の食料生産を担う大農業地帯でございまして、大変現場感覚にすぐれたものを持っておられます。農政の改革を前に進めていく上で大変重要な役割を果たしてこられましたし、これからも果たしていただきたい、こういうふうに思っております。

 国民に誤解を与えることのないよう、一層公人としてみずからを律しつつ、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村、これを実現すべく、政務官としての職務に全力で取り組んでもらいたいと考えておるところでございます。

松木委員 大臣、わかりました。

 大臣はハーバード出身なんですね。すごいですね。しかし、そのハーバードに行く前に、あなたはお父さんの会社で、ガス現場でしばらくやっていたんでしょう。この現場にいるというのは私は非常に大切だと思うんですね。その現場感覚をこれからの農林水産行政にもしっかり役立てていただきたいというふうに思います。

 それでは、この話はこれで終わります。

 まず、自然災害による農地や農業施設の復旧等について農林水産大臣にお伺いしたいんですけれども、四年前の三月十一日、東北のところで大きな地震が起きました。この復旧状況というんですか、そんなものは今どこら辺まで進んでいるんでしょうか。

 私なんかは、テレビなんかを見ていますと、なかなか進んでいないなというふうにどうしても見えるんですね。そして福島の、特に大熊町というのは、私の義理の父親、母親が生活をしていたところなものですから、この四年間で残念ながら二人とも死んでしまいましたけれども、どうなっているんだろうかと、特に農業のことを心配なものですから。大分進んでいるよ、そしてこういうことも考えているよというようなことがあれば、お答えください。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 東日本大震災による津波被災農地が二万一千四百八十ヘクタールございますけれども、このうち、平成二十六年度までに営農再開が可能となった農地は一万五千六十ヘクタールでございまして、これは全体の七〇%に当たります。

 また、農業用施設のうち、営農再開を図る観点から早急に復旧が必要な主要な排水機場につきましては、被災したところが九十八カ所ございますが、その排水機場のうち、平成二十六年度までに全体の九二%に当たる九十カ所で復旧が完了または復旧工事中という状況でございます。

 引き続き、地元の皆様の意向を尊重しながら、県などの関係機関と連携を密にいたしまして、できる限り早期に営農再開できるように取り組んでまいりたいと考えております。

松木委員 ぜひ、早くもとに戻るように努力をしていただきたいというふうに思っております。

 それでは、報道の中でもう一つ気になることがありまして、自給率の目標というのがありますよね。これが、民主党時代は五〇%ということを自給率の目標として掲げたんですけれども、これを四五%にお下げになるということなんです。

 農業の役割を軽視する、そういうつもりでは私はもちろんないと思うし、現実的な数字を述べられたのかなとも思うんだけれども、しかし、なるべくこういうことに関しては、さっき、所得倍増を目指せなんという、そういうのは言い過ぎじゃないかなんというお話もありましたけれども、そういうふうにも考えられるし、しかし、そのぐらい野心的なことを述べてもいいんじゃないかなというふうにも私は思います。

 その中で、四五%に下げていくというのは何か寂しい気がするんだけれども、大臣、これは一回撤回して、もう一回ちょっと野心的に、まだまだ五〇%でいこうぜ、こういうお気持ちはありませんか。

林国務大臣 平成二十二年の三月に今の計画が策定をされたわけでございますが、そのときの食料自給率目標というのは、我が国の持てる資源を全て投入したときに初めて可能となる高い目標ということで、平成二十年度の四一%、これはカロリーベースですが、これを平成三十二年度に五〇%まで引き上げる、こういうふうに設定されたものでございます。

 しかしながら、食料自給率目標の進捗状況、これを見ますと、消費面では米等の消費量が予測を下回っておる、それから、生産面では小麦等の生産量が伸び悩んでおりまして、平成二十五年度は三九%にとどまっておるところでございます。

 一方、新たな基本計画における食料自給率目標については、食料・農業・農村政策審議会におきまして、今の基本計画を検証いたしまして、その検証結果を踏まえて、品目別に現実に見合った需要量を想定する、それから、生産量も、需要面に加えて、現実的な生産条件に見合ったものとする、こういう整理が審議会によってなされたところでございます。

 農林水産省としては、こういう議論も踏まえまして、三月十七日に開催された審議会に、この計画期間内における実現可能性を重視した目標ということで、カロリーベースの食料自給率を現在の三九%から四五%に引き上げる、こういう案を提示しておるところでございます。

松木委員 五〇%にする気はないでしょうか。

林国務大臣 今申し上げましたように、専門家の皆さんの審議会でも、現実に見合った需要量、現実的な生産条件、こういうことでこういう数字になっておりますので、しっかりと三九%から四五%に引き上げる、これはまだ案でございまして、今から正式決定ということになろうかと思いますが、正式決定になれば、しっかりとその目標に向かって努力を続けていきたいと思っております。

松木委員 わかりました。

 でも、ぜひ、これは本当に実現するように頑張りましょうよ。結局、どんどん下がっていくばかりなんだよね。本当に残念だなというふうに思っています。

 これは、自民党さんもそうだけれども、民主党さんも政権を握っているときに、そう簡単に上げられなかった、短くて政権終わっちゃったから、それはしようがないけれども。

 そんなことで、あと、JA全中の監査権限の廃止という話が今回の一つの目玉になっているようですけれども、小山委員は、せっかくうまくいっているのになぜ変えるんだという人もいるよということで、何でですかということを言われていました。一方で、余り大きな変化はないよという声もあります。小山さんは、どちらかといえば余りよくない改革だという話をたしかさっきされたと思うんですけれども、大臣、本当のところはどうなんでしょうか。

 確かに、私は、監査権限を廃止することによってそんなに変わるのかなというのは余りよくわからないんですよね。ぜひ教えてください。

林国務大臣 最後のところで監査のところが随分議論になりましたので、報道だけ見ておりますと、そこだけ変えるようなイメージになっておるのかもしれませんが、私としては、一昨年に決めました三本柱と一本柱の四本柱で新しいことをやっていこう、その中で、農協も農業委員会も生産法人もみんなこれに対応して変わっていこうという大きな改革の中で、実は農協の方からも自己改革というのも出ております。先ほど販売の仕方についても少し御議論いただきましたけれども、そういうものも全体として含めて、この改革をしっかりとやっていくということが大事でございまして、監査のところだけを捉えて、今回の改革の全てであるということではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

松木委員 これで終わりますけれども、いい日本を残すのにはいい農業を残すということが非常に直結していると私は思いますので、ぜひ、その意味で、政務三役の皆さんのお力というのは大変大切ですので、頑張っていただきたいというふうに思います。

 以上です。

江藤委員長 午後一時十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十五分開議

江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。委員会で初めて質問をさせていただきます。

 まず、米価暴落問題について質問をいたします。

 二〇一四年度産米の農協の概算金は、コシヒカリで一俵九千円、その他の銘柄では七千円から八千円台の価格になっており、昨年と比較しても、六十キロ当たり二千円前後下回っています。

 農林水産省の米の生産費調査で、米の生産費と物財費は幾らとされていますか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 直近の平成二十五年産の米の生産費統計の全ての規模階層の平均で見ますと、肥料、農薬、農機具等の購入費ですとか償却費等から成る物財費は、六十キログラム当たり八千九百八十二円となっております。

 これに労働費、資本利子、地代を含めた全算入生産費は、六十キログラム当たり一万五千二百二十九円となっております。

斉藤(和)委員 ありがとうございます。

 つまり、今の米価は生産費の半分、物財費さえも割り込む価格になっているということです。

 さらに言えば、日本で最も高いとされる新潟県魚沼産のコシヒカリを例えば五百ミリリットルのペットボトルにいっぱい入れても九十五円にしかなりません。私の地元千葉では六十円です。ペットボトル一本で、おにぎりは大体八個以上つくれる量になります。それが水よりも安い価格で取引されているというのが今の米価です。

 こうした状況の中で、私の地元、稲作農家の方からは、冬の間に機械をメンテナンスに出すんだが、三十五万から五十万かかる、米価も下がり簡単には出せない、農機具屋に話を聞いても、例年約三十件来ていたものが、ことしは五件しか来ていない、こういう話です。米価の暴落による収入減がこうした形であらわれています。また、匝瑳市の営農組合の方からも話を聞きました。先行きは全く見えない、しかし、若手が三人働いているから、やめるにやめられないと話されていました。

 もし、またことしも同じように米価が暴落したら、米農家はたまったものではありません。生産基盤は崩壊寸前、崖っ縁です。今の米価暴落を大臣はどのように認識されていらっしゃるでしょうか。

林国務大臣 二十六年産米の本年一月の相対取引価格でございますが、六十キログラム当たり一万二千七十八円でございまして、今、斉藤委員からお話がありましたように、二十五年産より二千円程度低い水準になっております。二十六年産米の概算金や価格が例年に比べて低下したことなどによって、今、生産現場の御紹介もしていただきましたが、二十七年産の生産に向けて不安が生じているということは承知をしておるところでございます。

 二十六年産米については、ナラシ対策によって収入減少に対する補填を実施するほか、緊急対策ということで、直接支払交付金の早期支払いを実施する、それから、農林漁業セーフティーネット資金の実質無利子化を図る、それから、米の生産コストを低減し、米価の変動にも対応できるように、稲作農業の体質強化のための新たな対策、こういうことを実施してきておるところでございます。

 やはり、米の需給の安定を図るためには、需要に応じた生産を進めるためにきめ細かい情報提供をしていかなければなりませんし、それから、飼料用米等の、ほかに需要のあるものへの転換、これを主食用米から図っていく必要がある、こういうふうに思っておりまして、ナラシ対策の加入促進にあわせて農家経営の安定を図ってまいりたいと思っておるところでございます。

斉藤(和)委員 ナラシ対策といっても、国費で実質補填されるのは三三・七五%で、本当に少ない状況になっています。しかも、標準価格というのは、五年間の一番高い米価と低い米価を除いた価格の平均を基準にしますので、平均価格が下がれば、補償された額も必然的に下がっていくという仕組みで、生産者を支えるものにはなっていません。

 飼料米にということですが、これも、一月十九日の政府の産業競争力会議で、飼料用米の本作化は補助金に依存することなく進めるようにと指摘がされています。農家の方から、いつまで補助金が続くのか、本当に飼料米にして大丈夫なのかという声が既に上がっています。全ての対策を飼料用米だけに求めるというのも、率直に言って、無理があると思います。

 本当に米価暴落の深刻さを認識し、対策を打つというのであれば、私は、やはり需給調整に乗り出す、国が余っているお米を買うということが必要だと思います。

 ことしでいえば、米価暴落の原因となっている余剰米は何万トンでしょうか。

松島政府参考人 委員から余剰米についての御質問がございましたけれども、農林水産省は、毎年、七月から翌年六月の一年間を期間といたしまして、需給見通しというものを発表してございます。そのときに、六月末の在庫数量というのを公表してございまして、昨年六月末の民間在庫数量は二百二十万トンという水準でございます。

 しかしながら、その二百二十万トンの民間在庫数量には、七月から八、九月、新米ができる間の消費される分ですとか、それから、やはり米を安定的に供給するためには一定の流通在庫が必要ということもございますので、この六月末の民間在庫数量が全て余剰になっているというわけではございません。

 そういうお米の性格から見まして、一年間、さらには一年間を超えて消費されるという性格があるものですから、明確にこの量が余剰在庫ということはなかなか申し上げがたいということについて御理解いただければと思います。

斉藤(和)委員 明確に述べられないという御回答でしたけれども、実際に政府が対策を講じているのは二十万トンです。

 全国知事会からも、昨年の十二月、米政策についての緊急要望書が出され、国は、米の需給バランスの改善に向け、必要な対策を講じることを求めるというふうに言われています。また、西川前大臣も、十二月十六日の記者会見で総選挙の選挙結果について問われ、八千円前後では再生産ができない、こういうことがやはり大きな投票行動の一つにあらわれたんだと思いますと答えていらっしゃいます。

 やはり、しっかりと政府が余剰米の買い入れを行い、米価の下落に歯どめをかけるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 国は、米が国民の主食として重要な位置づけにあることを踏まえ、食糧法に基づきまして、大不作などの不測の事態が生じた場合でも国民に米を提供できるよう、百万トン程度を基本に備蓄を行っているところでございます。

 その備蓄の運営に当たりましては、国による米の買い入れ、売り渡しが市場に影響を与えないよう、いわゆる棚上げ備蓄方式としておりまして、毎年、一定量について収穫前に入札による買い入れの契約を行うとともに、大不作などによって放出することがなければ、一定期間保管後に非主食用に販売することとしているところでございます。

 豊作また需要の減少によりまして米の供給が過剰となった際に、国が直接市場に介入し、政府買い入れを行うことにつきましては、食糧法上、政府買い入れは備蓄の円滑な運営を図るために行うものでございまして、需給調整のために行うこととなっていないことから、適切ではないというふうに考えております。

 また、米につきましては、消費者のニーズに即し、需要に応じた生産が行われることが重要でございまして、豊作や需要の減少による需給緩和に関しましては、民間主導による対応が基本であると考えているところでございます。

 このため、平成二十七年度当初予算におきまして、産地であらかじめ生産者が積み立てを行った上で、長期計画的な販売や輸出用などのほかの用途に対しての販売を行う場合に支援する事業を措置しているところでございまして、この需給安定に向けた産地の自主的な取り組みを支援しているところでございます。

斉藤(和)委員 いろいろ言われましたけれども、それでは米価は下どまりせず、いまだに下がっているという状態が、新聞紙上でも報道が行われています。

 今でさえ、ぎりぎりの状態です。既に、農政に展望を見出せず、自殺者まで出ています。

 群馬県では、昨年一月と八月に相次いで大規模な米農家の方が自殺をされました。一人の方は、十五ヘクタールの農地を持つ六十代の男性で、首をつられたそうです。もう一人の方は三十代。民主党政権下の二〇一〇年、戸別所得補償制度が導入されたことをきっかけに、サラリーマンをやめ、実家の農業を継ぎました。耕作面積は二十六ヘクタール。インターネットを通じて直販などにも挑戦するなど頑張っていたそうです。しかし、自民党農政のもとで、十アール当たり一万五千円の直接支払いは七千五百円に半減され、二〇一八年には廃止をされる方向です。

 国が推進してきた大規模化をすればするほど、大型機械が必要になり、そのリース料や修繕費がかさみ、経営が立ち行かなくなっている。同じ群馬の米農家の方は、彼は国に殺されたようなものだとまで話されているんです。

 何とかする必要があると思いますが、こういう事態だからこそ、しっかりと国が需給調整を行う。もし、またことしも同じような米価暴落をしても、国は決して日本の米を買い入れるということはやらないということでしょうか。

松島政府参考人 先ほど副大臣の方から御答弁申し上げましたように、国が需給調整の観点から買い入れるということは、食糧法上難しい、困難だと考えてございます。

 また、米の価格の安定ということにつきましては、主食用米の需要が減少する中で、やはり需要のある飼料用米等への転換を進めていくという形で価格の安定を図ってまいりたいと考えているところでございます。

斉藤(和)委員 それではやはり米価暴落に歯どめはかけられないから、ぜひ乗り出す必要があるのではないかということを質問させていただいています。

 もう一つお聞きします。

 二〇一四年度まであった米価変動補填交付金を廃止しました。米価変動補填交付金は、米の販売価格が標準的な販売価格を下回った場合、その差額を全額直接交付するものでした。

 しかも、この交付金の対象は、米の直接支払交付金を受けた販売農家と集落営農に対してですから、この廃止は非常に大きいと思います。この制度を続けていれば、今回の米価暴落が直接農家に大打撃を与えることはなかったはずです。

 なぜ、この米価変動補填金をなくしたのでしょうか。大臣、復活させる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 なぜこの定額部分の廃止をしたのかという問いと二ついただいておりますが、まず、平成二十五年末の経営所得安定対策の見直しの中で、米の直接支払交付金、十アール当たりの一万五千円につきましては、米は、麦、大豆などと違いまして、十分な国境措置がございまして、諸外国との生産条件の格差から生じる不利はないこと、全ての販売農家を対象とすることは農地の流動化のペースをおくらせるという面があること、また、米につきましては、潜在的な生産力が需要を上回っている状況にあることなどの政策的な課題がございましたので、二十六年産から単価を削減した上で、三十年産から廃止することとしたところでございます。

 このように、米の直接支払交付金を削減する一方、多面的機能支払いの創設、さらには、非主食用米への支援など水田の有効活用対策の拡充、また、農地中間管理機構を活用した農地の担い手への集約を推進するための支援策などの拡充を行うこととしたところでございます。

 米価が変動した場合には、収入減少影響緩和対策、ナラシ対策などのセーフティーネット対策を講じているところでございまして、意欲と能力のある担い手の経営の安定を図っていく考えでございます。

 また、交付金を復活すべきではないかという問いでございますが、これに関しましては、委員がおっしゃったように、民主党政権下で行われた米の所得補償制度の米価変動補填交付金につきましては、やはり、全ての販売農家を対象とする、また、米価が標準的な販売価格を下回った場合に、下回った分の全てを全額国費で補填するというものでございましたが、これにつきましては、全額国費で補填をすることで生産者の販売努力を損なうなどのモラルハザードになるおそれがあること、また、他の農作物の生産者や他産業、納税者の理解を得がたいこと、全ての販売農家を対象とすることは農地の流動化のペースをおくらせる面があることなどから、一昨年末、平成二十五年末に農政改革の中で経営所得安定対策の見直しを行いまして、米価変動補填交付金につきましては平成二十六年産から廃止することとしたところでございます。

 米価が変動したときには、収入減少影響緩和対策、ナラシ対策などのセーフティーネット対策を講じているところでございまして、意欲と能力のある担い手の経営の安定を図っていく考えでございます。

斉藤(和)委員 ナラシ、ナラシとおっしゃいますが、予算面から見ても、ナラシに入っていない人も含めた補填を合わせて一千百八十五億円になっていると思います。

 では、もし仮にこの米価変動補填交付金が存続していたら、今回の米価暴落では幾ら交付金が支払われたことになるでしょうか。

奥原政府参考人 米価変動補填交付金でございます。

 この仕組みは、二十二年産から二十五年産まで措置をされておりましたけれども、価格が低下したときに出る仕組みでございますので、実際に発動されたのは二十二年産だけでございます。この二十二年産のときの交付額、全体で千五百三十九億円でございました。

 今度の二十六年産につきましては、この仕組みはございませんけれども、仮にあったとすれば、これを上回る金額になったものというふうに推測されます。

斉藤(和)委員 上回る金額というお答えでしたけれども、農水省の方から試算を出していただきましたら、二千億円という回答が来ておりました。二千億円というこれだけのお金が、いわゆるこの制度をなくしたために農家、農村から奪われてしまった。経営が立ち行かなくなったということは、私は当然だと思います。

 今回の米価暴落は、米の買い入れも行わず、国が需給調整にも責任を持たない、農家が頼りにしていた戸別所得補償制度の直接支払いも廃止の方向を打ち出し、価格変動に対する交付金も廃止する。結局、米価暴落に対して政府がこれまでやっていたことさえ投げ出していると言えるのではないでしょうか。彼らは国に殺されたようなものだという農家の方の訴えをぜひ重く受けとめていただいて、私は、政治がやはりしっかり責任を果たす必要があると思います。

 国は、今、米の需給調整は行わないというふうに言っておりますが、何が何でも日本の米は買わないという姿勢です。しかし、なぜか海外からは毎年七十七万トンも米を買い入れていると思うんですが、これはなぜでしょうか。

松島政府参考人 海外からの米の輸入の関係でございますけれども、これは、平成六年にガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉が決着いたしまして、その際、ミニマムアクセスといったものについて我が国が同意いたしまして、毎年、消費量の一定量を輸入するという約束をした結果、今委員が御質問ございましたように、現在、玄米ベースで毎年七十七万トン程度の輸入を行っているということでございます。

斉藤(和)委員 そもそもミニマムアクセス米は義務でしょうか。

松島政府参考人 このミニマムアクセスにつきましては、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業協定に基づきましてミニマムアクセス機会を設定するという約束をしているわけでございますけれども、我が国が負っております法的義務の内容は、米の国内消費量の一定割合の数量について輸入機会の提供を行うということでございます。

 しかしながら、我が国のミニマムアクセス米につきましては、平成五年のガット・ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う閣議了解をしておりますけれども、その趣旨を踏まえまして、国産米の需給に極力影響を与えないように、引き続き国家貿易によって輸入していくということとなってございます。

 その結果、米は国家貿易品目として国が輸入を行う立場にあることもありまして、平成六年に衆議院予算委員会において示しました政府統一見解にありますように、ミニマムアクセス機会を設定すれば、通常の場合は当該数量の輸入を行うべきものというふうに考えているところでございます。

斉藤(和)委員 ミニマムアクセス米はそもそも義務ではないということです。

 国家貿易だから輸入するんだというふうにおっしゃいますが、他の国を見れば、例えば韓国では、トウガラシのアクセス数量は七千トン、これに対して、入っている数量は千七百トンです。中国の穀物アクセス量は二千二百十五万トンですが、実際輸入しているのは八十七万トンと、各国の需要によって輸入数量の幅というのは現実に変わっています。

 そうした状況の中で、日本は相変わらずミニマムアクセス米を買っている。その保管料だけでも、例えば一九九五年からの累計で千八百億円以上です。また、このアクセス米は赤字であって、十年間で見ても二千七百億円、売れずに赤字。つまり、ミニマムアクセス米を買い、税金を投入してまで輸入米を買っている、それなのに日本の米を買わないというのは道理がないと思います。

 しかも、このミニマムアクセス米の中で、二月七日の日本農業新聞に出されましたが、「米国産米シェア保証の闇」という記事が載りました。口約束でアメリカと、ミニマムアクセスの半分の数量を買うという約束を日本政府が行っていたという記事です。

 これに対して、大臣、真相を明らかにする必要があると思いますが、いかがでしょうか。

松島政府参考人 委員から御質問がございました二月四日の日本農業新聞の報道については承知してございますけれども、この件につきましては何度も国会で答弁してございますが、米国からのミニマムアクセス米の輸入に関しまして、米国との間で御指摘のような合意は存在いたしません。

斉藤(和)委員 存在しないというふうにおっしゃいますが、実際に、平成十二年から毎年、アクセス米の半数の数量、三十二万トンが輸入し続けられています。もし仮にこうした事態が本当だとすると大問題であり、私は、しっかりと真相を明らかにする責任があると思います。

 同時に、今、TPP交渉の中で、ミニマムアクセス米とは別枠に五万トンを輸入するということが報道をされています。

 この農水委員会でも決議がされている、五品目について聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断したら脱退も辞さないとするという決議をしっかりと受けとめて、私は、TPP交渉から脱退することが必要だということを求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 所信表明で大臣が述べた食料・農業・農村基本計画の見直しにかかわって、先日の審議会において、農水省は、食料自給率について、前計画の二〇二〇年までに五〇%とした目標を、二〇二五年までに四五%へと引き下げました。その理由を、農水省は、計画期間内における実現可能性を考慮して設定したとしています。

 果たして、所信表明の内容で自給率は本当に上がるのか、それでは、どのように自給率を引き上げるべきなのかについて質問いたします。

 食料自給率は、カロリーベースで、一九六〇年度の七九%を最高に、冷害のあった一九九三年度で三七%、そして今や三九%と低下傾向を続けてきました。

 まず、食料自給率を引き上げる意義、なぜ自給率を引き上げなければいけないかについて、大臣の所見を伺います。

林国務大臣 世界の食料の需給また貿易、これが不安定な要素を有しております中で、やはり食料の安定供給を将来にわたって確保していくということは国民に対する最も基本的な責務の一つでありまして、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させることは大変重要であると考えております。

 食料・農業・農村基本法におきましても、食料自給率について、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして目標を定めること、こういう規定になっておるところでございます。

 新たな食料・農業・農村基本計画における食料自給率目標につきましては、こうした規定に即しまして、カロリーベースで、今御指摘のあった、現状三九%から四五%に、生産額ベースでは現状六五%から七三%に引き上げる、こういう案を去る三月十七日に食料・農業・農村政策審議会に提示したところでございます。

畠山委員 食料の安定供給を将来にわたって確保するという点で、引き上げにはもちろん大臣も異論はないわけであります。問題は、では、なぜ自給率が下がってきたのかということです。

 昨年十月に農水省が発表しています「よくわかる食料自給率」では、低下した要因として、「消費面では、米の消費量の減少など食生活の大幅な変化、生産面では、農地面積の減少など国内供給力の低下」を挙げています。

 大臣に伺いますが、低下をしてきた原因というのはこれだけなのでしょうか。

林国務大臣 それも我が省の資料でございますので、おおむねそういうことでございますが、先ほどちょっと委員からも昔の数字も触れていただきましたけれども、昭和三十五年、私が生まれるころでございますが、七九%、生産額ベースは九三%、これが二十五年度に、カロリーベースで三九、生産額ベースで六五まで低下してきたわけでございます。

 やはり背景としては、食生活の洋風化等が進んで、自給率の高い米、米はほとんど自給できておりますが、この米の消費が減少しているということ、それから、畜産物、肉類等、これは餌の多くを輸入に依存しておりますが、この畜産物等の消費が増加をしたということが消費面では言えると思います。

 それから、生産体制そのものについてお触れいただきましたが、さらに言いますと、こういう食料消費の変化に国内の生産体制が対応し切れなかった、こういう側面があるのではないかと考えておるところでございます。

畠山委員 農水省が出す白書では、近年では書いていないんですけれども、二〇〇七年度の食料・農業・農村白書では、「食の外部化の進展とともに食料品等の輸入が増加」、また「海外現地法人からの輸入が増加」していることも並べて記載をしています。

 大臣は触れませんでしたけれども、このようにふえ続ける農産物等の輸入が自給率を引き下げることにつながったのは明らかだと思います。

 この上に、この間のTPP交渉をめぐる報道では、米の輸入枠を五万トンふやすとか、牛肉、豚肉の関税を下げるなどと報じられてもおります。これでは、さらに自給率が大幅に下がることは間違いないのではないか。

 これは農水省の事務方に確認しますが、今回、自給率を検討する際の、実現可能性を踏まえた検討という中に、TPPに参加した場合の検討も含まれているのか、事実の確認だけですので、端的にお答えください。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 食料自給率目標を含む新たな食料・農業・農村基本計画につきましては、現時点ではTPP交渉の妥結の時期が確定しているわけではないため、TPP交渉を前提とはしていません。

畠山委員 そのとおりに、改定したこの目標の前提にTPPはもちろん入っていないわけです。

 ですが、随分と議論もされてきたように、TPPの妥結となれば、肝心の生産現場が壊れていくのではないか。そうなると、やはり、これで本当に食料自給率が上がるのだろうかというような根本的な疑問が湧いて当然だと思うんですね。

 これまでも、農産物等の輸入が進められて、低価格競争に日本の農家が太刀打ちできませんでした。それに対抗するためと、政府が規模拡大あるいは生産費のカットなどを進めてきました。

 きょうは資料を用意しておりますので、まず一枚目をごらんください。米農家の農業所得に占める直接支払交付金の割合の表です。

 これを見て、平均もそうですが、二十ヘクタール以上の米をつくる農家でも国の交付金等への依存度が高くなっております。先ほど斉藤議員も質問したように、ミニマムアクセス米の輸入なども反映しておりまして、規模を拡大しても低価格競争に苦しめられてきた、それをこのように交付金等で補う形でやってきたわけです。

 しかし、この直接支払交付金を外していく、TPPになれば関税も外されていく、あるいは、米で新たな輸入枠を設けるなどとなれば、どうしてこれで自給率を上げられると言えるのか、納得がいく根拠を示してもらえませんでしょうか。

林国務大臣 自給率の向上のためには、食料消費、農業生産の両面における諸課題について、その解決を図っていくということが必要だと考えております。需要に見合ったものをしっかりと生産していく、こういうことではないかというふうに思います。

 やはり、消費者や食品産業事業者等がより国産農産物の消費拡大に取り組んでいただく、これが重要だ、こういうふうに思っておりますので、国内外での国産農産物の需要拡大、それから食育の推進、食品に対する消費者の信頼の確保、こういうものに取り組んでいかなければならないと思っております。

 農業生産については、農業者等が、国内生産による食料生産能力の向上を図りながら、マーケットインの発想によって多様かつ高度な消費者ニーズに対応した国内農業の生産を拡大する、これが重要であると思っておりまして、優良農地の確保と担い手への農地集積、集約化をする、担い手そのものの育成、確保をする、それから、農業の技術革新、食品産業事業者との連携等による生産、供給体制の構築等の実現、こういうものをしっかりと取り組んでいく、これが大変大事なことではないかというふうに考えております。

畠山委員 国内の需要拡大はもちろん大事なんですが、今、基本に立ち返った議論が必要だと思うんですよ。

 食料・農業・農村基本法の第二条には、「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」と定めています。

 輸入及び備蓄は適切にとしているんですが、二〇一三年の農林水産物輸入の確定値では、八兆九千五百三十一億円と過去最高を記録しています。

 食料の安定的供給という基本に立ち返って、輸入のあり方や農業者支援を考えるべきだと思います。特に、圧倒的多数である家族型経営を支えるために、その議論をこの農林水産委員会でも行ってきたと思うんですよね。

 私、この数年間の会議録をずっと読んできました。口蹄疫が発生したときには、農家を救えと真剣な議論がされていました。民主党政権のときの戸別所得補償についての意義をめぐって議論もされていましたし、土地改良の必要性も熱心に議論されていました。

 その中で、民主党政権時の二〇一〇年三月十一日、ある自民党委員が質問でこう述べているんです。「ちゃんと国境措置をすることによって、お米は七七〇%もの関税をかけることによって、日本の農業を守っているんです。いわば農業は防衛なんですよ。」途中略しますが、「上限関税の問題やらさまざまな荒波にさらされているわけですから、そういう意識をきっちり持ってもらわないと。」と大臣に迫っているわけです。

 農水省に確認しますが、このときの質問者はどなたでしょうか。

梶島政府参考人 お答え申し上げます。

 稲田朋美議員でございます。

畠山委員 今、安倍農政改革の先頭に立たれている稲田議員の質問とは思えないほどでありました。

 林大臣、この稲田議員の言葉でそのままお聞きいたします。

 ちゃんと国境措置をすることによって、日本の農業を守っているんですよ。自給率を上げるなら、今の国境措置、関税のあり方を見直して、歯どめなき農産物輸入拡大を今立ちどまって考えるべきではないのですか。

林国務大臣 そのときに赤松大臣がどういうふうに答弁されたか、ちょっと手元に資料はございませんが、当然、食料自給率は国境措置との関係で低下する懸念があるのではないか、こういうお尋ねだと思います。

 今交渉中の経済連携またWTOそのものについても、この結果が食料自給率にどういう影響を及ぼすかという仮定の話にお答えするということは、交渉内容に予断を与えることになるために、差し控えさせていただきたいと思いますが、経済連携交渉、これはTPPも含まれますけれども、我が国の農林水産品が、これらの交渉において慎重に扱うべき事項、いわゆるセンシティビティーを持っている、こういうことを十分配慮して、重要品目の再生産が引き続き可能となるよう交渉を行っているところでございます。

畠山委員 WTOのことはもちろん承知はしているんですけれども、そういう体制のもとでも自給率を引き上げてきている国々はあるわけでして、そういった欧米諸国は、自分の国の主要農産物を守るための国境措置や再生産できるだけの実質的な価格支持政策を行っているのは、これは農水省自身が一番知っていることだと思います。

 EUでは、支持価格の引き下げはこの間ありましたけれども、加盟国の機関が買い支えを行っている。アメリカでは、ローンレートで、市場価格を下回った分の支えがあります。アメリカは、昨年農業法がつくられまして、さまざまなことが議論されてきております。

 日本政府の白書でも、二〇〇七年度ですが、イギリスが四十年間で自給率を二七ポイント上げたことを取り上げています。その要因として四つ挙げて、消費面、生産面のほかに、イギリスは平たん地が多いことや品種改良で単収を上げたことなどとともに、当時のEC加盟で農産物価格支持と国境措置による手厚い保護を受けることになったと書いています。

 ですから、本気で自給率を引き上げるということを考えるのであるならば、歯どめなき農産物輸入にストップをかけることと、生産コストも補償して再生産が続けられるようにして、今いる大多数の家族経営を応援することだというふうに思います。

 資料の二枚目をごらんください。

 実際、特に被災地においては、あすの経営をどうするかということにも苦しみの声が上げられているわけです。これは、昨年の総選挙中に、十二月八日ですが、河北新報において紹介されている記事です。「「担い手消える」 被災地の農家に嘆き」とあります。

 「石巻市の生産者は、津波被災から復旧した水田を、営農を諦めた近隣の七十戸分も請け負っており、本年産米の価格暴落に苦しむ。」として、文中ですが、同市の農家、大内さん五十二歳は、「今年、計四十五ヘクタールの水田でコメを作った。」「震災前、受託による規模拡大でコメの栽培面積が二十ヘクタールだった大内さん。自宅と農機具は流失を免れたことから、復旧した被災水田での生産を進んで請け負った。結果、昨年の栽培面積は四十ヘクタール以上に倍増した。」

 少し飛びますが、小見出しに「使命感で支える」というところがあります。「小作料、手伝いの手当、燃料代などを除くと、純利益が十アール当たり一万円残るかどうか」だ。もともと覚悟していて、ここまでやってきたわけです。その下の五行目になりますが、「町内では来春、さらに三十ヘクタールで稲作が可能になる。うち十ヘクタールを大内さんが」またさらに「引き受け、受託先は八十戸以上に増える。」

 最後に、では、この大内さんは実際にどう考えているかというのが、このように述べています。「TPP参加に向けて小さな農家を一掃するのが、政府の狙いではないかと勘ぐりたくなる」「復興への配慮も支援も消え、被災地が経済原理に投げ込まれれば、地域で踏ん張る担い手、支え手はいなくなる。」と厳しい目を農家の方自身が被災地から向けています。

 繰り返しになりますが、自給率を上げるというふうに言うんだけれども、交付金は減らす、TPPにも参加する、これでは農家は続けられないという声が上がっているわけです。農外企業や六次産業化に期待しても、参入した農外企業がもうけが上がらないと撤退した例も、これまでも幾つかありました。特に、被災地のような、リスクを抱えるようなところへ農外企業が参入するのか、食料自給率の向上にどのような貢献をするのかというふうに思うわけです。

 大臣、このように河北新報で紹介されている農家のリアルな実態や声に、どのように応えますか。

林国務大臣 これは被災地で、単なる復旧にとどまらずに、大内さんですか、その前の規模よりも結果として大きな規模になって、しっかりと覚悟を決めてやっていただいているという例ではないかというふうに思っております。

 一方、自給率との関係でいくと、米は、先ほど申し上げたように、ほぼ自給ということでございますので、さらにこの自給率という意味では、自給ができている米の消費面というのが大事になってくるのではないかと思います。

 そういう意味では、消費拡大の国民運動や、国産農産物を求める食品産業事業者、米を原料として使ってもらうというところも含めてやっていくということと、それから、この大内さんの場合は多分それはできているんだと思いますが、やはり集積をしていくことによってコスト縮減を図っていく、そういう中で、いわゆる売り上げから生産費を引いた所得というものをなるべく上げていく、こういうことをしっかりとお支えしていく、この両面でもってやっていかなければならないと思っております。

 さらに、米以外のところで申し上げますと、先ほど言いました、食生活が変わっていく中で、畜産物、あるいは麦、大豆といったような今自給率が低いところにもしっかりといろいろな施策を用いて、ここの向上を図っていくということもあわせて考えてまいらなければならない、こういうふうに思っております。

畠山委員 自給率引き上げは国民的な願いでもあります。しかし、今回の所信表明から出てくる結論はそうならないのではないか、一部の農家しか生き残れない農業改革ではないのかという問題点を、これからの審議で徹底的に議論していきたいと思っています。

 なお、最後に、この後、議題になる山村振興法の改正案について一言だけ申し上げます。

 山村をめぐる状況に鑑みて、一層の振興に向けて国が役割を果たすべきことは当然です。

 新たに設けられる基本理念に基づいて、森林、農用地の保全事業の推進や産業振興に対する支援策の具体化等、一層の国の取り組みを日本共産党は求めるものです。

 質問を終わります。

     ――――◇―――――

江藤委員長 次に、山村振興法の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、各党間の協議の結果、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ました。

 本起草案の趣旨及び主な内容につきまして御説明申し上げます。

 山村振興法は、山村地域における経済力の培養と住民の福祉の向上を図り、あわせて他地域との格差の是正及び国民経済の発展を図ることを目的として、昭和四十年に衆議院農林水産委員長の提出によって制定されました。

 その後、数次にわたる改正を経て今日に至っておりますが、その間、本法による山村振興計画に基づき、産業基盤や生活環境の整備が推進され、山村地域の経済力の培養と住民福祉の向上が図られてきたところであります。

 しかしながら、昨今の山村をめぐる状況は、人口の減少と高齢化の一層の進行、耕作放棄地の拡大、林業生産活動の停滞等、依然として厳しいものがあります。

 一方、山村地域は、国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等の多面にわたる機能の発揮に重要な役割を担っており、このような役割に対し、国民の寄せる期待はますます大きくなってきております。

 このような状況に鑑み、本案は、本年三月三十一日をもって期限切れとなる本法の有効期限を延長するとともに、本法に基本理念に関する規定を設けること等により山村振興の方向性をより明確化し、山村振興対策の充実を図ることとしております。

 その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、本法の有効期限を十年間延長して、平成三十七年三月三十一日までとすることとしております。

 第二に、本法の目的として、山村の自立的発展を促進すること並びに地域間の交流の促進等による山村への移住の促進を含めた山村における定住の促進及び山村における人口の著しい減少の防止を図ることを追加することとしております。

 第三に、山村の定義について、「産業の開発の程度が低く、かつ、住民の生活文化水準が劣つている」との文言を「産業基盤及び生活環境の整備等が他の地域に比較して十分に行われていない」との文言に改めることとしております。

 第四に、基本理念に関する規定を新設し、山村の振興は、山村の有する多面にわたる機能が十分に発揮され、国民が将来にわたってそれらの恵沢を享受することができるよう、森林等の保全を図ることを旨として行われなければならないこと、また、山村における産業基盤及び生活環境の整備等を図るとともに、地域の特性を生かした産業の育成による就業の機会の創出、住民の福祉の向上等を通じた魅力ある地域社会の形成及び地域間交流の促進等による山村への移住の促進を含めた山村における定住の促進を図ることを旨として行われなければならないこととしております。

 第五に、都道府県が定める山村振興基本方針、市町村が定める山村振興計画等の規定事項に、地域内発型の産業振興の推進等に係る規定及び住民の福祉の向上に係る規定を追加するとともに、山村振興計画に、税制特例措置を伴う産業の振興のための施策の促進に関する事項を記載することができることとしております。

 第六に、国は、山村振興計画に基づく事業のうち、地域資源の活用による特産物の生産の育成等による産業の振興に係る取り組みを推進する事業に対する助成等の措置を講ずることとしております。

 第七に、再生可能エネルギーの利用の推進、介護給付等対象サービス等の確保等及び教育環境の整備について、配慮規定を追加することとしております。

 なお、この法律は、平成二十七年四月一日から施行することとしております。ただし、法の有効期限の延長に関する規定は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 山村振興法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

江藤委員長 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

林国務大臣 本法律案の御提案に当たり、委員長及び委員各位の払われた御努力に深く敬意を表するものでございます。

 政府としては、山村地域の現状に鑑み、本法律案については特に異存はないところであります。

 この法律案が御可決された暁には、関係府省と連携をとりつつ、配慮規定等に十分留意するとともに、施策の一層の充実を図るなど、その適切な運用に努め、山村地域の一層の振興を期してまいる所存であります。

江藤委員長 お諮りいたします。

 山村振興法の一部を改正する法律案起草の件につきましては、お手元に配付いたしております起草案を本委員会の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江藤委員長 起立総員。よって、本案は委員会提出の法律案とするに決定いたしました。

 なお、ただいま決定いたしました法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時六分散会


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