衆議院

メインへスキップ



第5号 平成27年4月15日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年四月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江藤  拓君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君

   理事 松木けんこう君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    伊東 良孝君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      今枝宗一郎君    大西 宏幸君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      佐々木 紀君    瀬戸 隆一君

      武井 俊輔君    武部  新君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      西川 公也君    橋本 英教君

      福田 達夫君    古川  康君

      前川  恵君    宮崎 謙介君

      宮路 拓馬君    森山  裕君

      簗  和生君    山本  拓君

      金子 恵美君    岸本 周平君

      小山 展弘君    佐々木隆博君

      福島 伸享君    井出 庸生君

      篠原  豪君    村岡 敏英君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      斉藤 和子君    畠山 和也君

      仲里 利信君

    …………………………………

   参議院農林水産委員長   山田 俊男君

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   財務大臣政務官      大家 敏志君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  石瀬 素行君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         荒川  隆君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            櫻庭 英悦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            木村 陽一君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     福田 達夫君

  勝沼 栄明君     宮崎 謙介君

  古川  康君     大西 宏幸君

  簗  和生君     佐々木 紀君

  井出 庸生君     篠原  豪君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     古川  康君

  佐々木 紀君     簗  和生君

  福田 達夫君     鬼木  誠君

  宮崎 謙介君     勝沼 栄明君

  篠原  豪君     井出 庸生君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     井野 俊郎君

    ―――――――――――――

四月八日

 都市農業振興基本法案(農林水産委員長提出、参法第五号)(予)

同月九日

 都市農業振興基本法案(参議院提出、参法第五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 都市農業振興基本法案(参議院提出、参法第五号)

 農林水産関係の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

江藤委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官荒川隆君、食料産業局長櫻庭英悦君、生産局長松島浩道君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君、林野庁長官今井敏君、水産庁長官本川一善君、内閣官房内閣参事官石瀬素行君及び資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長木村陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 自由民主党の渡辺孝一と申します。

 きょうは、質問の時間を与えていただきまして、ありがとうございます。二十分しかございませんので、早速質問に入っていきたいというふうに思います。

 まず、大臣にお願い申し上げたいんですが、今現在の段階で、TPPに対しまして、大臣の所感について一言お話し申し上げていただきたいなと思います。

林国務大臣 TPP交渉においては、一昨年二月の日米共同声明におきまして、全ての物品が交渉の対象とされること、それから、我が国の農産品にはセンシティビティーがありまして、最終的な結果は交渉の中で決まっていくこと、これが確認をされております。

 このような経緯も踏まえて、衆参両院の農林水産委員会において、重要五品目などの再生産が可能となるよう、それらの品目の確保を最優先とすることなどが決議されたと承知をしております。

 渡辺先生のお地元北海道は、言うまでもなく我が国の大食料供給基地でもあるわけでございまして、北海道の関係者の方々が、TPPのもたらす国内生産への悪影響を懸念して、不安の声を表明されておられることは十分認識をしておるところでございます。

 TPP交渉に当たっては、このような方々の声に十分耳を傾けて、農林水産委員会決議が守られたとの評価をいただけるよう、政府一体となって全力を尽くす考えでございます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 今回、統一地方選挙の最中ということでございまして、選挙区、地元を回っておりまして、農家の方々の心配事につきまして、よく話を聞かせていただきました。

 林大臣は御存じかなと思うんですけれども、黒沢明監督の「七人の侍」という映画は御存じでしょうか。それを例えに、ある農家の方々が、懇談をしたときに、代議士は知っているか、農家というのは、雨が降っても、晴れても、いつも心配ばかりだ、これは弥生時代から変わっていないなんということを言われたのを、そのときは私も神妙に聞いておりましたけれども、ふと思い出したのは、たしか「七人の侍」の映画の際に、いわゆる野武士に荒らされる村の長老が、侍を雇わなければいけないといったときに、村を守るために、その侍たちに言ったせりふだというふうに私も思い出しまして、その後、電話でお話をしたときに、俺のジョークがわかったかなんということを言われたことも覚えております。

 なぜそんな話をするかというと、TPPに関しましても、実は農家の方々は、もう三年余り、正直言って振り回されているというのが現状でございます。確かに、我々も情報不足、さらには、TPPに対してはルールがございますので、十分承知しておりますけれども、我々の場合は、東京にいて、いろいろな方とお話をする機会があったり、直接いろいろな会話をするわけで、安心しているわけではございませんけれども、何となく、情報の入手に非常に優位な立場にいる中で、そのことを地元に帰って言ったところで、私の所感で言うのではなく、やはり大臣が、あるいはそれなりの立場の方々がしっかりとメッセージを送っていただくというのが一番大事なのかなと。

 私は、きょう改めて大臣に聞いたのは、統一地方選挙のちょうど中間地点の日に、こうTPPに対して言ったんだということが、今後、地元に皆さんがお帰りになって、きょうこの日に大臣からこんな話を聞けたよということが農家の方々のどれだけ安心材料になるのかなと思っておりますので、早速大臣のお言葉を引用させていただきながら、統一地方選挙の後半戦に、農家の方々の少しでも安心材料になるようにしたいと思っております。

 政府の方も、確かにルールはあることは承知しておりますけれども、いかにして農業者の方々や、もちろん消費者の方々を含めて国民の皆さんに、TPPのことについては、ぜひ情報提供なりPRの手法を考えていただき、国民総意で納得、理解して進めていっていただきたいな、私はそういう趣旨で大臣に、もう何回も言い飽きたと思いますけれども、所感をお聞きしたところでございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。

 さて、今、食料・農業・農村基本計画が見直しをされている中で、農家の関心事というのは、やはり所得向上というところに結構ポイントがあるようでございます。

 そんな中で、具体的な話でございますけれども、私の選挙区は一大稲作地帯でございます。私がちょうど岩見沢市長をやった最後の年だったと思いますが、いわゆる直播事業について取り組みが始まった年でございました。当時はこのことが、農家の所得向上というよりも、生産費、いわゆるコストの削減について非常に注目が集まって、試験的にスタートしたというのを覚えております。

 今、農水省の方では直播事業についてどこまで捉えているか、さらには、これにつきましてどういうふうに農水省は今後推進していくかというのをちょっとお聞きしたいと思っております。

松島政府参考人 稲作の生産コストの低減についての御質問でございます。

 これにつきましては、日本再興戦略におきまして、今後十年間で、現在の全国平均に対しまして、担い手の生産コストを四割低い水準に持っていくという目標を掲げて取り組んでいるところでございます。

 具体的なコスト低減の手法でございますけれども、まず、やはり規模の小さな地域におきましては、農地中間管理機構の活用などによりまして農地集積を進めていただくということが大事だろうと考えてございます。それに加えまして、今、委員から御指摘がございました直播栽培の導入ですとか、それから省力栽培技術といったものの技術の改善といったことも非常に有効な手法だろうと考えてございます。さらに、生産資材費を低減するという観点から、未利用資源を活用した肥料でございますとか、農業機械についても、付加的な機能を削減して低コストで販売できるような農業機械の導入、こういったことを総合的に進めていきたいと考えてございます。

 今委員から、具体的に直播についてはどういう取り組みがあるのかということでございますが、まず、直播というのは、現在の稲作の全労働時間の四分の一を占めております育苗ですとか田植え作業にかかる時間を非常に削減するという点で大きな効果がある栽培技術だろうと考えてございまして、具体的には、例えば労働時間で見ますと、移植栽培と直播で比較しますと、直播の方が約二五%低減できる。さらに、そういったことも含めまして、全体で見ますと、十アール当たりの生産コストで見ますと、直播は慣行型の栽培に比べまして一一%コストが低い、こういう実証結果もございます。

 こういった実証結果をこれから直播に取り組もうという地域に対しまして普及いたしまして、直播というものを非常に有効な手段の一つとして生産コストの低減に取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 今答弁の中で、資機材等々に対しての支援もちらっと触れたかと思います。今現在、個人向けの資機材の支援というのはどこまであるのか、教えていただけますか。

松島政府参考人 肥料ですとか農薬といった農業資材につきましては、それをなかなか直接支援するという補助事業はございませんけれども、ただ、新しい栽培技術に取り組むような場合に、どういう課題があるのか、それに対してどういう解決策があるのかということについて、実証圃などを設置して現場で取り組んでいただくという試みにつきましては、いろいろなソフト事業で支援させていただいておりますので、そういったものを活用していただきながら、地域地域の実態に合った生産コストの低減を進めていただければというふうに考えてございます。

渡辺(孝)委員 直播事業と個人向けの資機材等々の支援について、二点、具体的なお話をさせていただきましたけれども、まだまだたくさんの要因があろうかと思います。

 なぜ私がこの質問をしたかといいますと、実は、地元の方で、特に若手農家の方々が、私は正直言って目からうろこだったんですけれども、農水省の予算等々も国の予算も大変厳しいことをうたっておりました。そんな中で、効率のいい予算のあり方というのは先生方は議論しているのかというようなことを言われて、なぜそういうふうな問いかけをされたかというと、彼らが言うには、いろいろな事業がたくさんあって、これはもう本当に政府の方々に感謝している、ただ、その使い勝手や、さらには、その効果ということでは非常に疑問を呈するような事業もあるし、また全国一律で制度、政策をつくるという形になると、なかなか地域によって実情にそぐわない、そんな制度、政策もあるのではないかという御指摘を受けました。

 何を言いたいかというと、ぜひ農家側のしっかりとした意見も聞いていただき、今後の予算のあり方の中で、これはまずしっかりと事業として実現していただきたいというような、そういう話し合いをぜひやりたい、その中で、効果のある事業をいかに前面に出してやっていけるかという、そういう現場の方々との懇談会というのはつくれるものだろうかと。

 我々は、皆さんもそうだと思いますけれども、常に地元に帰り、あるいは各種団体、企業、いろいろな方から陳情、要望を受ける際に、お願いされることが本当に多いのかと思います。我々も、陳情、要望を受けた際に、どうしてもこの事業は残せとか、この支援をどうしても考えてくれとかいうケースが多いのではないかというふうに思います。

 でも、実際、農家の方々に聞きますと、国の予算や農水省の予算のあり方の中で、やはり効果的に、さらには本当に農業者の方々が望んでいる政策、制度に力を入れていただきたいという話をされたときには、正直言って、私は今までとは違う話をしてきたんだなということで、むしろ反省させられました。そして、その中で、今後予算を考える上で言われたのは、ぜひ若い人たちに夢を与える政策、制度というのに力を入れてくれないだろうかと。

 今、皆さんも御承知のとおり、農業就業人口というのは六十歳以上の方が三分の二を占めております。本当に十年後に所得倍増になるというのであるんだったら、それはそれでいいですし、今後、政府も生産者も努力をしなければいけないと思っています。

 その中で、本当に十年後に明るい展望を私たちはつくっていけるのかということを考えたときに、私は、多少厳しいかもしれませんけれども、予算のあり方で、若い、本当にこれから農業を支えていく、一次産業を支えていくという方々にもっとスポットを当てるべきではないかというふうに思いますけれども、大臣、どんな考えをお持ちでしょうか。

林国務大臣 現場のお話を先生が聞かれて、私もよくキャッチボールと言っているんですが、一度こういう施策を決めたときに、一度決めたからこれは変えられないんだということではなくて、これを運用していくときに、まさに今先生が、地元の方といろいろ話をして、自分自身も気づかされたというお話がありましたけれども、そういうところをしっかりと受けとめながら政策に磨きをかけていく、これが非常に大事ではないか、こういうふうに思っておるところでございます。

 いろいろな施策というのも、潜在力を引き出すという意味もございますし、また、ゲタ、ナラシ、いろいろございますけれども、サポートをするというのもございますが、基本的には、やはり現場の農家の方が、生産者の方が展望を持って、よし、やろうというふうになっていただく、ここが非常に大事でございますので、そういうことに今後とも意を用いていきたい、こういうふうに考えております。

渡辺(孝)委員 ありがとうございます。

 今後、二十八年度の予算に向けて、農水省の方で、しっかりと若手に光が当たるような事業展開というのをぜひ一緒に考えていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 最後になりますけれども、収入保険等々の話も大いに話題になりました。収入保険の見通しについて、少し御質問したいと思います。

奥原政府参考人 収入保険の関係でございます。

 現在の農業共済制度は、自然災害による収量の減少を対象としておりますので、価格低下は基本的に対象となっておりません。それから、対象品目も収量を確認できるものに限定をしておりますので、農業経営全体は対象になっていない、こういった問題点がございます。

 このために、全ての農作物を対象としまして、農業経営全体の収入に着目をした収入保険の導入について調査検討を進めていく必要があるというふうに考えております。

 これまで、農業者の方の経営データの収集をやってきておりますけれども、昨年の十一月からは、平成二十七年産を対象にしまして、農業者の協力も得て、制度の仕組みの検証等を行う事業化調査を開始したところでございます。

 本年度も、この事業化調査を継続いたしまして、農作物の作付、収穫、販売において、農業者による営農記録あるいは帳簿の作成、あるいは損害が生じたときには通知をしていただく、あるいは保険者の方が現地調査に入って点検をするといった事務について検証を進めることにしております。

 こういった事業化調査の結果を踏まえまして制度を固めていきたいというふうに考えておりますが、今後の調査等の結果によりますので、確たることは申し上げられませんけれども、調査検討が順調に進めば、平成二十九年の通常国会に関連法案を提出したいというふうに考えております。

渡辺(孝)委員 時間が来ましたので、これでやめますけれども、収入保険につきましても、地元の方では、雲をつかむような話だ、ぜひ小出しでもいいからいろいろと情報を提供していただきたいというような話がありましたので、そのことだけは伝えさせていただき、私の質問を終わります。

江藤委員長 次に、瀬戸隆一君。

瀬戸委員 香川県の瀬戸でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、農業をめぐる状況というのは、まさしく待ったなしの状況だというふうに思っております。特に、農業に携わる皆様方が希望を持って農業に取り組めるような食料・農業・農村基本計画でなければならないというふうに思っているところであります。

 言いかえれば、余りにも現実とかけ離れた、絵に描いた餅であってはならないということでありまして、努力していけば必ず明るい未来が描けるような、そのような政策でなければならないというふうに思っているところであります。

 また、ことしは地方創生元年でもあります。そういった意味で、地方に人が住む、それは農業があるから人が住むということも多分にあるのではないかというふうに思っているところであります。そういった観点から、ちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 今回のこの基本計画です。その中に、「農業や食品産業の成長産業化を促進するための産業政策と、構造改革を後押ししつつ農業・農村の有する多面的機能の維持・発揮を促進するための地域政策を車の両輪として進める」との記述があります。これにつきまして、この二つ、産業政策と地域政策ですけれども、両立すれば大変すばらしいことなんだというふうに思っております。

 ただ、産業政策を余りにも強く推し進め過ぎますと結果的に地域の活性化を阻害してしまうこともあるかもしれないし、また、地域政策を余り強く出し過ぎると構造改革が進めにくくなったりする、そういう場合もあると考えております。相反する面もあると思われます。さじかげんが大切であって、かじ取りをうまく進める必要があると考えております。

 林大臣にお聞きします。

 農業の産業政策と農村における地域政策を車の両輪として進めていくとありますが、具体的にどのように進めていくのか、お伺いします。

林国務大臣 新たな食料・農業・農村基本計画におきましては、基本的な方針として、今まさに瀬戸委員から御指摘いただいたように、産業政策は、生産現場を強化して、また高付加価値化等を進めて、農業の成長産業化を図るということです。それからもう一つは、地域政策。構造改革を後押ししながら、農業、農村の持つ多面的機能の維持、発揮を図る地域政策。この二つを車の両輪として進める、こういうことにしております。

 具体的には、産業政策としては、日本の農林水産物、食品の強みを生かした輸出促進、それから六次産業化等の戦略的推進、農地中間管理機構のフル稼働による担い手への農地集積、集約化、こういったものがございますが、地域政策として、一方で、多面的機能支払制度、中山間地域等直接支払制度の着実な実施、こういうことを進めることにしております。

 今お話がありましたように、これをどう組み合わせるのかというのが大変に大事なことでございますが、私は、一律に全国同じようにやるということではなくて、それぞれの地域に合った、実情に即して、これを有機的に組み合わせていく、この組み合わせが大変大事だ、こういうふうに思っております。

 そういう意味では、地域のそれぞれの方々にもこういうものに参画をしていただきながらこの組み合わせをつくっていく、ひいては、それが地方創生にもつながっていくのではないか、こういうふうに思っておりまして、そういうことで、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村、この両立を図ってまいりたいと思っております。

瀬戸委員 ありがとうございます。

 産業政策と地域政策、これはどちらに偏っても、確かに大臣がおっしゃったように、うまく組み合わせていくこと、それが本当に必要なんだというふうに思っています。

 私の地元香川県においても、五反、六反という非常に小さい農業が多い地域でもあります。それは一つの特色ある地域だというふうに思っていますので、そういった中で、うまく組み合わせをして進めていただきたいというふうに思っているところであります。

 それでは、先ほど大臣の方からもお話がありましたが、車の両輪の一つである産業政策の中で、特に輸出対策についてお聞きしたいと思っております。

 我が国の人口は、このままいけば二〇五〇年には一億人を割るとも言われているところであります。人口減少というのは農産物の需要減少をも意味します。しかし、計画にもありますように、海外においては和食の人気が高まっているということでありまして、地元の香川県のオリーブ牛も、香港で試食会を開けば結構な人気だというような話を聞きます。

 農業を成長産業とするためには、海外市場に活路を求めていく必要があると考えますが、あべ副大臣にお聞きします。

 農林水産物の輸出産業策について、一兆円の達成に向けてどのような具体的政策を講じていくのか、お聞きします。

あべ副大臣 瀬戸委員にお答えいたします。

 人口減少の中、日本の農産物、どのように輸出を促進していくかということでございますが、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大に関しましては、平成二十五年に策定いたしました国別・品目別輸出戦略に基づきまして、輸出額一兆円目標を掲げておりまして、官民一体となって取り組んでいるところでございます。そうした中、昨年六月に輸出戦略の司令塔として輸出戦略実行委員会を創設いたしまして、品目別に輸出拡大方針の策定、また輸出団体の育成などを進めているところでもございます。

 このようなさまざまな取り組みの結果、昨年の輸出額は、何度も報道されておりますが、六千百十七億円と史上最高額となったところでございます。

 今後とも、需要フロンティアの拡大のため、各国における輸入規制の緩和、また撤廃などの輸出環境の整備を進めつつ、米、牛肉などそれぞれの品目の輸出を促進いたしまして、一兆円目標をより早く、より大きく超えて達成できるよう、取り組んでいく考えでございます。

 特に、ことしの五月から開催されます食がテーマのミラノ万博は、我が国の農林水産物のすばらしさを発信する絶好の機会でございまして、日本館におきましては、官民一体となって食に関する多様な展示を行いまして、日本の食文化の普及宣伝に努め、輸出拡大に努めてまいりたいと思っております。

瀬戸委員 ありがとうございます。

 ミラノ万博については、香川県からもオリーブ牛が行くというふうに聞いております。しっかり万博が有効だったというような成果を挙げていただきますように、よろしくお願い申し上げます。

 次に、地域政策についてお聞きします。

 香川県の方でも、新規就農者が、少しずつではありますが、ふえてきているという状況であります。若者の中には、都市での仕事よりも地方の農業を選ぶ若者が出てきています。中には、これは地域おこし協力隊の方ではありましたけれども、若者が来て、地方でピザを焼いたりとか、そういったお店をつくったりとか、そういった話も聞くところであります。

 そこで、中川政務官にお聞きします。

 計画の中にも、「都市と農村を人々が行き交う「田園回帰」ともいうべき動きも生まれつつある。」とありますけれども、具体的に農村への移住、定住にどのような対策をとっていかれるのでしょうか、お聞きします。

中川大臣政務官 瀬戸先生の質問にお答えをいたします。

 先月閣議決定をいたしました食料・農業・農村基本計画、そして、これにあわせまして、魅力ある農山漁村づくりに向けたビジョンを策定いたしましたところでございます。

 これは、都市と農山漁村を人々が行き交う田園回帰を実現していくために、農山漁村に仕事をつくる観点から、地域の農林漁業者が主体となって六次産業化に取り組む地域内経済循環を構築すること、そして、集落間の結びつきを強める観点から、生活サービスの機能を基幹集落に集約し、周辺地域とネットワークを形成すること、さらに、都市住民とのつながりを強める観点から、グリーンツーリズムなどによる都市と農山漁村の交流の取り組みを一過性のブームに終わらせずに推進することといった施策の方向性を、事例を交えながら提示したものでございます。

 先生の御地元は香川県でありますけれども、私の子供が、小学生のときに四国を一周したという経験がありまして、最後に高知県の漁村に民泊をいたしました。私の地域でも、毎年大阪の高校生を三千人受け入れているという農村ファームステイというのをやっていますが、これを一過性に終わらせないということが本当に大切だと思います。

 息子は、魚がおいしかったと、あれ以来魚好きになっているわけでありますし、大阪の高校生も、私のところに来て、大変感動した、よかったということであります。仕事をつくりにその地方に行くんだ、仕事をつくりに農山漁村に行くんだ、そういう若い人たちがふえてくれるような施策であってほしいというふうに思っております。

 農林水産省といたしましては、まち・ひと・しごと創生本部のもと、関係府省と連携しつつ、現場の主体的な取り組みを効果的に後押しできるよう、これらの施策の推進に努めてまいりたいというふうに存じます。

瀬戸委員 ありがとうございます。

 まさしく政務官がおっしゃいましたように、一過性に終わらせるということがないようにということをくれぐれもよろしくお願いしたいと思います。

 そしてまた、ことし、まち・ひと・しごと創生本部との連携をしていただきながら進めていただくことは本当に大切だと思っています。特に、そういった中で、県、市町村との連携についてもよろしくお願いしたいというふうに思っております。

 次に、各論について御質問させていただきたいというふうに思っております。

 このたびの統一地方選の中におきまして、地元を歩いておりますと、農家の方々に一番強く言われますのが米の価格の低迷についてであります。平成二十七年度も同じように価格が低迷してしまうと、農業をやめざるを得ない、そういうことを言う方もいらっしゃるということであります。

 この問題の対策としまして、その一つに、飼料用米の需要拡大が必要というふうに考えているところであります。ただ、一方で、取り組みをさらにもっと進める必要があるとも考えられるところであります。

 そういった中で、林大臣にお聞きします。

 米の価格低下が問題になっておりますが、その対策の一つとしての飼料用米の利用拡大をさらに進めていく必要があると考えておりますが、現状をどのように分析されておられますか。また、今後、どのように施策を進めていくかについてお聞きします。

林国務大臣 我が国におきましては、主食用米の需要、これは残念ながら毎年八万トンずつ減少しているということでございますので、水田をフル活用しながら需要に応じた生産を進めるということをするために、やはり主食用米から需要のあるそれ以外の飼料用米などのものに転換を進めていく必要がある、こういうふうに考えておるところでございます。

 飼料用米の需要でございますが、二十七年産については、畜産農家の方から新たに約四・五万トン、また飼料会社から約百万トンの需要が示されておるところでございます。また、もう少し長い目で中長期的に見ていただきますと、日本飼料工業会からは、価格等の条件が整えばということですが、約二百万トンの使用が可能だという発表が既にあるところでございまして、十分な需要が見込まれているところでございます。

 このため、農林水産省としても、餌米の生産拡大に向けまして、水田活用の直接支払交付金を充実しまして、数量払いの導入をするということをやって飼料用米のインセンティブを高めるということ、そしてさらに、利用拡大が見込まれる多収性の専用品種の種子について、必要量を確保する、それから耕種側におけるカントリーエレベーターの整備、それから畜産側における加工、保管施設等の整備、こういうものも必要になってきますので、こういうものの整備に対して支援をする、こういうことを行っているところでございます。

 引き続き、農業者の皆さんがやはり安心して飼料用米の生産に取り組むことができるように、食料・農業・農村基本計画においても、飼料米などの戦略作物の生産拡大をしっかりと位置づけさせていただきまして、その達成に向けて必要な支援を行いたい、こういうふうに思っております。

瀬戸委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣の方からおっしゃいましたように、安心感ということは非常に大切なんだと思います。たくさんのメニューを用意していただいておりますけれども、そのメニューをさらに広報などして話し、農家の方に安心感を持って飼料用米の拡大につなげていただければというふうに思っているところであります。

 それでは次に、バイオマス発電の関係でちょっと質問させていただきたいと思います。

 ちょうど私の地元の方にも塩江という山間部の町があるんですけれども、そういったところに行きますと、大体そういったところというのは林業地域でありまして、林業の経営の悪化とともに集落が廃れてしまったという歴史があります。

 バイオマス発電とかバイオマス熱源利用の可能性を、これからそういった未来があるんですよという話を地域の人にしますと、地域の将来に希望を感じる方々がいらっしゃいます。そういった中で、バイオマスに関心を持つ方々の中に、これは業者の方なんですけれども、間伐材を使いたいという方も出てきております。ただ、間伐材が山に放置されたままであるということも間々あるようでありまして、どうやって利用したらいいかわからないという話も聞きます。

 そこでお聞きします。

 間伐材が有効に使われていない現状があるとお聞きします。バイオマス発電やバイオマス熱源として間伐材の利用を促進すべきと考えておりますが、いかがでしょうか。

今井政府参考人 お答えいたします。

 今後、未利用の間伐材等を利用しまして、木質バイオマスによる発電ですとか熱利用を進めていくためには、燃料となる未利用間伐材への需要と供給を結びつけるマッチングがますます重要になると考えております。

 これまでは、発電事業者等がみずから木材の供給先を見つけるような、そういう例が多かったところですけれども、需要が増大する中で、国といたしましても、木質バイオマスの活用についての相談窓口を設けまして、木材の供給力についての情報提供を行ったり、あるいは必要な助言を行う、さらには、施設が立地する都道府県庁に対しまして、木材の安定供給について、実需者である事業者等と森林組合等の供給者側、そこでの調整を県庁の方にお願いしているところでもございます。

 今後は、こうした木材の需要に関する情報提供ですとかマッチングを進める体制をさらに強化いたしまして、未利用間伐材を有効に利用した木質バイオマスのエネルギー利用が推進されるように努めてまいりたいと考えております。

瀬戸委員 ありがとうございます。

 まさしく需要はあったんだけれども出す方がという話なんだと思います。先ほど長官がおっしゃっておられましたように、県庁との連携、県有林も非常に多いところがありますので、よろしくお願いしたいというふうに思っております。林業地域にとっても、久しぶりの明るい材料というふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 最後に、鳥獣被害についてお聞きしたいと思います。

 地方創生の中でよく出てくる話なんですが、長野県の塩尻の方では、地方創生という観点から、ICTを活用した鳥獣被害対策、これは、イノシシがわなに捕まると、単純な話なんですが、電波で捕まったよというのを連絡してくれると。それによって、巡回する人の数が少なくて済む、そういった制度もあるようであります。

 こうした鳥獣害対策としてのICTの取り組みを全国でも広めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。

松島政府参考人 鳥獣被害防止対策についてでございますけれども、農水省では、鳥獣被害防止特措法に基づきます鳥獣被害の防止のための取り組みを支援してございまして、具体的には、捕獲に要する経費でございますとか、わなやおりなどの捕獲資材の購入、それから侵入防止柵、食肉処理加工施設や焼却処理施設、こういったものの整備についての経費などにつきましても、鳥獣被害防止総合対策交付金ということで、二十七年度予算で九十五億円を計上しまして、支援を行っているところでございます。

 瀬戸委員から御指摘がございましたICTを活用した捕獲技術につきましては、今御紹介がございましたように、自動監視、遠隔監視を可能とする捕獲おりといったものが開発されてございまして、これは非常に効率的、省力的なシステムということでございまして、その導入につきましては、先ほど申し上げました交付金において重点的な支援をさせていただいているということでございます。

 今後とも、鳥獣被害を軽減することによりまして、生産者が安心して農業に取り組めるといったふうに進みますように、しっかり対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

瀬戸委員 ありがとうございます。

 ICTの活用について重点的に、交付金を出していただくということでございますので、よろしくお願いします。

 鳥獣被害は、農業をやる方のやる気をそぐということもありますので、そういった意味で、しっかりと対策をとっていただきたいというふうに思っています。

 それでは、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

江藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 これから順次質問してまいりますけれども、その前に、TPPについて一言申し上げておきたいと思うんです。

 日米の実務者協議が本日より再開されるわけでございまして、日米両国のいわゆるセンシティブな項目について、どこまで話が詰めていかれるかということが一般的には注目をされるというふうに思います。

 もう一つ注視しなければいけないのは、やはり米国のTPA法案の行方だというふうに思っておりまして、これは、大臣も昨日の記者会見の中で、その行方については注視をしていきたいというふうに発言なされたということで、私も同感でございます。当然、この法案の行方は相当大きな影響力を与えますので、これはしっかり見ていかなきゃいけないと思うんです。

 もう一方で、やはり今回の日米の実務者協議の中では、再確認しなきゃいけないのは、交渉期限をあらかじめ設けないで、とにかくしっかり我が国の主張を粘り強く展開すべきだ。特に、これはもう何回も繰り返し申し上げていますけれども、この委員会でも申し上げておきたいと思うんですけれども、やはり国会決議を守る、この立場をしっかり遵守して、強い交渉を進めていくということを強く望んでおきたいと思います。

 それで、きょうは食料・農業・農村基本計画について数点お伺いしていきたいと思いますが、その前に、台湾による日本産食品の輸入規制強化についてお伺いしておきたいと思います。

 これは、三月の下旬に、原発事故の後の輸入停止になっている福島県等の五県の食品を他県の産品と偽って台湾に輸出したというようなことで、産地偽装問題というのが発生した。台湾側において輸入規制の強化をする動きがあって、ついに四月の十一日に日本産食品の輸入規制の強化を決定したわけでございます。

 ここのところは、正確に言うと、科学的な根拠が何か示されているわけではないというふうに思っていますし、そういう意味で考えていくと極めて遺憾である、私はこのように思っておりますが、この点について、事実関係の確認、それと、この輸入規制強化に対して、強い主張を述べた上で、働きかけを強化するということを望んでおきたいと思うんですが、見解を伺いたいと思います。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、台湾におきまして、三月二十四日に、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い輸入が停止されている五県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、そこの食品が他県産と偽装して輸入されているケースが発見されまして、台湾当局が疑いのある食品を扱っている小売店等に対しまして商品を棚からおろすように命じた事案があり、現在も台湾当局におきまして調査中と伺っております。

 委員御指摘のとおり、このような中、一昨日、十三日月曜日でございますけれども、台湾当局が、日本産食品の輸入規制につきまして、先ほど申し上げました現行の五県の全食品の輸入停止に加えまして、一部の産品、一部の県でございますけれども、放射性物質の検査証明の添付を義務化、台湾当局の発表では必ずしも明らかではございませんけれども、現在、詳細は確認中でございますが、内報によりますと、岩手県、宮城県、東京都、愛媛県の水産品、東京都、静岡県、愛知県、大阪府の茶類製品、宮城県、埼玉県、東京都の乳製品、キャンディー、乳幼児食品、ビスケット、穀類調製品となっております。これに加えまして、停止されている五県以外の四十二都道府県全ての県につきまして、産地証明書の添付を義務化という輸入規制の強化を発表したところでございます。近日中にこれが公告されまして、一カ月後にこれを施行するというぐあいに聞いているところでございます。

 この事案が起きた直後から、外務省とも連携しまして、我が国といたしましては、台湾に対しまして、十二日日曜日に交流協会台北事務所から亜東関係協会に対しまして、さらに交流協会東京本部から台北駐日経済文化代表事務所に対しまして、輸入規制強化の撤回を要請するとともに、これまで再三にわたり示してきました科学的根拠に基づく速やかな規制緩和を実施するよう強く申し入れてきたところでございます。

 農林水産省としては、今後とも、関係省庁と連携して、引き続き台湾側に対して働きかけを強化してまいりたいと思っておるところでございます。

稲津委員 これは農水省としても、農産物等の輸出については重要な戦略でございますので、そこに水を差すようなことになってはいけないと思っていますので、ぜひしっかりとした対応を今後も強く望んでおきたいと思います。

 続いて、食料・農業・農村基本計画について順次質問してまいります。

 これは、平成十一年の七月に食料・農業・農村基本法が制定されまして、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的発展及び農村の振興、こうした四つの基本理念を具体化するための施策をこれまでも推進してきた。

 そういう状況の中でも、一方で、最近は生産現場におきましては、新たな方向性それから変化も生まれてきているということで、大規模経営ですとか先端IT技術を生かした施設園芸ですとか六次化、それから、先ほどもテーマになりました海外輸出、そういう意味で、今後さらに農業、農村の潜在力を最大に発揮をしていくということが重要で、そのための基本計画である、このように認識をしているところでございます。

 そこで、数点にわたってお伺いしますが、まず、薬用作物の国内生産の拡大についてお伺いしたいと思います。

 これは、先日、超党派で議員連盟が発足しまして、私も参加をさせていただいていますけれども、現在、薬用作物については、その八割余りが中国から入ってきているということでございますけれども、これから、やはり安定的な漢方薬の原材料となる薬用作物の確保ということについては大変重要な課題で、国内生産をもっと高めていくべきだ、こういう機運があります。そのことは、ひいては、耕作放棄地に対する対応にもなっていくし、新たな農業分野ということで大変注目もされる、このように思っております。

 そこで、お伺いしたいと思うんですけれども、このことについては、支援事業として、薬用作物等地域特産作物産地確立支援事業ということで、約四億円の予算も計上されているところでございますが、最近では全国各地で作付が拡大してきている中で、私は、繰り返しですけれども、新しい農業分野としても注目されるということで、ぜひここの支援を強化していくべきだ、このように思っているところでございます。

 そこで、今後どう支援していくのか、あるいは期待されていることはどういうことなのか、特に、やはり生産性を上げていく、そのためには、現場的に言うと、ほとんど手作業でやっているんですね、したがって、農業機械器具等の開発、改良、これも重要だと思っていますが、これらの支援策についてお伺いします。

松島政府参考人 稲津委員御指摘のとおり、薬用作物につきましては、漢方薬メーカーから、原料が安定供給されるように国内生産の拡大に対する期待は極めて大きいというふうに承知してございます。

 国内の薬用作物の生産状況を見ますと、ここ五年間で、収穫面積、生産量とも一割以上増加しているという実態にございます。

 今後、薬用作物の生産振興を図るためには、まず、生産者と漢方薬メーカーなどの実需者との契約栽培を促進していくということ、それから、次いで、一定の品質をクリアするための栽培技術の確立などの生産上の課題へ対応していくということが重要であると考えてございます。

 まず、契約栽培の促進でございますけれども、これにつきましては、農水省では、厚労省と共催で、全国各地で説明会を開催しまして、マッチングを推進してございます。過去二年間で、それぞれ全国八カ所で会合を開催いたしましたけれども、例えば二十五年度でいいますと、三十七道県から百三十七件の栽培希望が提出されて、それ以降、産地と実需者が個別に交渉を行って、既に十四道県十八産地で試験的な栽培契約が成立しているという実績もございます。こういったものを今後とも進めてまいりたいと考えてございます。

 さらに、委員からもございましたように、薬用作物につきましてはさまざまな技術的課題がございまして、地域ごとの気象や土壌条件に適した品種の選定ですとか、それから、安定的に生産するための栽培技術、こういったものにつきましても、これも国の事業で実証圃を設置して、地域の実情に合った形での栽培技術、どういった品種がいいのかということについて検証していただいているということでございます。

 今後とも、厚労省それから漢方薬メーカーとも連携しまして、薬用作物の生産振興にしっかり取り組んでまいりたいと考えてございます。

稲津委員 ぜひしっかり取り組んでいただきたいんですけれども、ただ、四億円の予算計上というのはいかにもまだ十分とは言い切れないと思っておりまして、ぜひこの予算の拡充も検討していただきたい、このように申し上げておきたいと思います。

 次は、食料の自給力についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 カロリーベースの食料自給率の目標、現行の二〇二〇年度までに五〇%というところから、二五年度までには四五%、これは引き下げるということでございますけれども、私は、これは現実的な路線であろうというふうに思っています。五〇%の目標というのは、やはり、当初からかなり無理があるということも言われてきましたし、一九八九年以降、一度も五〇%を上回っておりませんので、これはなかなか難しいことというふうに思っておりました。

 ただ、では四五%の実現はどうなのかということになると、これも決して容易な数字ではないと思っていまして、特に主食用米の消費が低下していることを考えると、ここは相当腰を入れてやっていかないといけないんだろうな、こう思っております。

 そこで、今後は新たに食料自給力という考え方も示されたわけなんですが、食料の潜在生産能力をあらわす食料自給力、これは、その動向を示すということは私は大変必要なものであろうというふうに認識をしております。

 食料自給率については、花卉とか、ああいったものについて反映されない、それから、先ほどの主食用米の話につながっていくんですけれども、高齢社会になっていって食生活の変化を考えると、消費構造に影響を受けるということから、この食料自給率だけの指標ではやはり限界がある、こう思っています。

 食料自給力を示すということは、ある意味、今後の食料供給の確保とその生産性の向上に向けて、我が国の農林水産業が有する食料の潜在生産能力、これを評価していく意味で大変重要である、このように考えております。

 ただ、その上でお伺いしておきたいのは、この食料自給力という考え方について、生産者、消費者、どの程度理解が進んでいるのか。私は、ある意味、まだまだこれからだと思っています。その意味で、今後どう対応されるのか、そしてまた、食料自給率との関係をどういうふうにこれから整理していくのか、この点についてお伺いしたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から自給力の概念それから自給率との関係についての御指摘をいただいたところでございます。

 自給力につきましては、先生御指摘ございましたように、自給率が持っております一定の課題、花ですとか非食用の作物に使われている農地が反映されないといったような一定の限界がある中で、我が国の潜在的な食料生産能力をどうやって適切に評価をしていくのかということで今回考えたものでございます。

 今回お出ししました自給力の指標につきましては、パターンAからパターンDまで四パターンを示させていただいたわけでございますが、こういったものをお示しすることで、現実の食生活とは大きく異なります芋類中心型では何とか推定エネルギー必要量に達しているわけでございますが、一方で、現実に近い主要穀物型では遠く及んでいないといったような事実ですとか、それから、自給率が横ばいで推移をしている中で、近年、自給力は低下傾向にあるといったようなことで、将来の食料供給能力の低下が危惧されているといったような状況について、国民の皆様に知っていただいて議論を深めていただきたいと考えているところでございます。

 当然、国民の皆様に共有をしていただいて議論を深めていただくためには、この概念につきましてきちんと説明をしていくということが必要だと思っておるところでございまして、まずは、早速、今週の金曜日の関東農政局を皮切りにいたしまして、全国で十のブロックで説明会を開催させていただきたいと思っております。並行して、全都道府県におきまして周知活動をやっていきたいと思っております。その際には、わかりやすいパンフレットを作成するですとか、あるいは私どものホームページなり広報誌等を通じてしっかり宣伝をしていきたいと思っております。

 あわせて、従来毎年八月に公表しておりました自給率の状況を公表する際に、あわせてその時点の食料自給力指標も公表していくということで、議論を深めていただきたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

稲津委員 ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 時間の関係上、最後の質問になりますけれども、農地中間管理機構についてお伺いをしていきたいと思います。

 法律の方は昨年の三月一日に施行されて、事業については順次進められているというふうに承知をしておりますが、借り入れの面積と貸し付けの面積、これは二十六年の十二月現在を見ても、やはり相当乖離があるというふうに思っています。

 それは、借り入れの希望に対して貸し付けの面積が非常に少ないということで、今後の取り組みに期待したいと思うんですけれども、相当やはり各県ごとに進捗状況は濃淡、差があるんだろうというふうに思っております。

 特に、これは熊本県ですけれども、知事が大変なリーダーシップを発揮されて、現場のコーディネーターもふやしていく、それから、モデル地区も多数つくって横展開をどんどんやっていくということで、ここがある意味大変期待されている、そういう事業の取り組みになっていくんだろうなというふうに思っております。

 ただ、今後、この借り入れ、貸し付けをどう促進していくのか。私は、やはり立ち上げからしばらくの間、例えば三年間ぐらいは集中的にいろいろな施策を展開していくということも必要だと思っておりますし、そうした体制を構築したらどうか。

 それから、これは一つの提案なんですけれども、基本的には機構による農地の貸し借りなんですけれども、もちろん売り買いもあるんですけれども、例えば、農地の買い入れも機構がやる、しかし、貸し出しは貸し出しとしてやっていく、こういうような展開もパターンとしてはあるのかな、こんなことも思っております。

 いずれにしても、こうした中間管理機構の事業促進についての所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 農地中間管理機構は、担い手への農地の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消などの課題解決のための切り札ということで、平成二十六年の三月に関連法律が施行されましたので、そこで創設されまして、実質昨年度が発足初年度ということになっております。

 今、例に出していただきました熊本県のような優良事例を横展開するために、国としても研修会や県別ヒアリングを行うなど、それぞれの県に置かれております機構の体制整備を促してきたところですが、まだ全都道府県で機構が軌道に乗っているという状況ではない、こういうふうに思っております。

 この背景としては、やはり役職員の皆さんが、いわばお客さんが来るのを待っている不動産屋さんのような意識を持っている、地域農業の将来をみずからデザインして実行していくディベロッパーとしての自覚がまだできていないということ、それから、各県、各地域における人・農地プランなどの地域の農業者の話し合いが十分進んでいないなど、出し手の掘り起こし活動が十分とは言えない、それから、機構の農業者への周知がまだ徹底されていないこと、こういう問題があるというふうに考えております。

 三月末時点のさまざまなデータを収集いたしまして、これをもとに、官邸も含めて、機構の活動の検証、評価を徹底的に行いまして、この結果を踏まえて、今いろいろ御提案もいただきました、機構の体制整備、それから売買、特にお地元の北海道の売買というのも非常に大きなツールではないかと思っておりますし、法律上はできることになっておりますので、この機構事業を軌道に乗せるため、こういう御提言も踏まえて、具体的な対応策を検討していきたいと思っておるところでございます。

稲津委員 終わります。

江藤委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 始まる前に、委員長、委員会は成立しているんでしょうね。大丈夫ですか。

江藤委員長 ぎりぎり定数は超えております。

佐々木(隆)委員 きょうは、食料・農業・農村基本計画について質問させていただきますが、その前に、一つだけ確認をしておきたいんですが、二月二十三日の件であります。

 あべ副大臣の答弁を何度か、一、二度聞かせていただいているんですが、どうも説明に合点がいかない点がございます。それで、二月二十三日の政務二役の対応について、もう一度説明をいただきたいというふうに思いますが、お願いをいたします。

あべ副大臣 お答えいたします。

 二月の二十三日月曜日でございますが、夕刻、私、十六時三十分ごろから十八時ごろまで、農林水産省の副大臣室で面会対応及びレクを受けていたところでございます。十八時過ぎに退庁をいたしまして、十九時過ぎまで議員会館で打ち合わせを行った後に、都内の自宅に帰宅をいたしました。

 この間、十七時三十分ごろ、レクの最中でございましたが、西川大臣が辞任されたとの知らせを受けまして、その後、十八時十分ごろ、二十三日に林大臣との初顔合わせは行われず、当日ではなく、翌日である二十四日に改めて時間をとって初顔合わせが行われるという連絡を受けたところでございます。

 農林水産省の副大臣及び政務官は、西川大臣が辞任されたその後、林大臣が就任されるまでの間、十八時過ぎまでは私が登庁しておりまして、また、十八時ごろから二十時ごろまでは佐藤政務官が登庁されていたと承知をしているところでございます。

 また、退庁していた副大臣及び政務官も含め、全員が都内近郊で事務方と連絡がとれる体制になっていたことから、農林水産省といたしましては、危機管理上問題があったとは考えていないところでございます。

佐々木(隆)委員 今説明を伺って改めて思ったんですが、危機管理の問題として適切ではなかったと言わざるを得ないというふうに思うんですね。

 それはなぜかというと、今のお話を聞くと、四人が寄って何か協議したという話はないんですね。要するに、大臣がやめられたというのは危機的な状況なわけですよ、農水省にとっては。その危機的な状況だったら、二役の皆さん方が、こういう危機的な状況にどう対応するかといって、まずは四人で協議をしなければならないんだと思うんですね、どうするかということについて。

 その結果として、例えば、前にお伺いするところによると、佐藤政務官なら佐藤政務官がそこに残っていて、みんなに指示ができるようにという体制をとるというのが、本当はそのときやらなければいけなかった対応だったと思うんです。いわゆる危機管理というのはそういうことだと思うんですね。

 事務方と連絡がとれたからいいという話は、それは余り説明にならなくて、要するに、シビルコントロールとして何ができたかということが実はここで問題なのであって、事務方と連絡がとれたからそれでいいんですという話ではない。事務方が判断するわけじゃないですからね、いろいろなことが起きたときに。大臣がいないんだから、そのときは二役が判断をしなきゃいけないんですよね。その対応ができていなかったということが、この場面では大変問題だったのではないかというふうに思うんですね。

 そこのところがどうも、今まで話を聞いていても、都内にいました、事務方と連絡がとれるようになっていましたというのは、事務方に二役の皆さん方は使われているわけじゃないんだから、皆さん方がどうやってコントロールするかということを先に決めて、そして事務方に指示をして、そして議員宿舎に戻った、会館に戻ったというのなら、それは少しわからぬわけでもないんですが、そこの対応のところが私は危機管理としては不十分だったというか、大変手落ちだったのではないかと指摘せざるを得ないというふうに思うんですね。

 ぜひ、そういうことのないように、政務、今は三役ですが、政務の皆さん方はそういう立場であるんだということでいえば、ちょっとそのときの対応はまずかったのではないかということを指摘せざるを得ないというふうに思ってございます。

 限られた時間でありますので、基本計画について順次質問させていただきたいというふうに思います。

 多分、皆さん方が全国の説明会で使われた資料だと思うんですが、過去三回の計画をずっと対比して、それぞれ基本理念から始まって、それぞれの計画について説明の資料として配付をされたものがございます。それに沿って少し何点かお伺いをしていきたいというふうに思います。

 まずは、基本計画というのは基本法に基づいて計画を立てるわけですから、基本計画の理念というものがこの中に盛り込まれていなければならないということであります。

 基本法の四つの理念というふうに皆さん方は解釈をしておられるようですが、その基本法の四つの理念、あるいは皆さん方がおつくりになられた農林水産業・地域の活力創造プランなどなどあるんですが、それがこの基本計画にどう生かされて、前計画と比較して、どう整合しているのか、していないのか、それらについてまずお伺いをいたしたいと思います。

中川大臣政務官 質問にお答えいたしたいと思います。

 新たな食料・農業・農村基本計画では、安倍内閣のもとで進めてまいりました農政改革の取り組みや、超高齢社会、本格的な人口減少社会の到来などの中長期的な情勢変化等を踏まえて、農政改革の着実な推進に向けた対応方向を示したところでございます。

 基本計画は、食料・農業・農村基本法第十五条の規定に基づきまして政府が策定するものでございまして、基本法に掲げる食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、農業の持続的発展及び農村の振興という四つの基本理念に即しまして、施策の基本的な方針、食料自給率の目標、講ずべき施策などについて定めることとされております。

 今回の基本計画におきましても、講ずべき施策の中で、食料の安定供給の確保に関する施策、農業の持続的な発展に関する施策、多面的機能の発揮を促進するための取り組みなど農村の振興に関する施策を位置づけておりまして、四つの基本理念に即した個々の施策の具体的な方向が示されているところでございます。

佐々木(隆)委員 今、四つの基本理念について説明をいただきました。

 ちょっと私、このポンチ絵というのか、これを見て少し違和感を感じたのがあるんですが、右の方に四つ、食料の安定供給、多面的機能の十分な発揮、農業の持続的な発展、農村の振興、こうあるわけですよね。

 それで、それを三つ、食料と多面的機能というジャンルと農業というジャンルと農村というジャンルで分けているんですが、多面的機能の十分な発揮というのは食料のところに分類されているんですが、これはむしろ農村の政策ではないかと思うんですが、なぜここに分類したんでしょうか。

荒川政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生ごらんいただいている資料は、恐らくこの「食料・農業・農村基本法について」ということで、こういうものだと思っております。緑色で書いてございます、左側に書いてございます食料と農業と農村とそれから多面的機能の発揮というものが、今政務官が御答弁いたしました、基本法で言うところの基本理念ということでございます。

 それで、この四つのものについて、食料・農業・農村基本法の中で、食料の安定供給の確保と多面的機能の十分な発揮と農業の持続的な発展と農村の振興ということで書いてあるわけでございますが、食料と多面的機能が一緒ということではなくて、農業、農村の基盤となる農村の振興を図る、その基盤の上で農業をしっかり振興していくということで、結果として、農業の持つ食料供給機能という面で食料の安定供給が図られるとともに、農地ですとか農業が持っております多面的機能が発揮できるという、因果関係といいますか前後関係といいますか、そういうものをこの右側で整理しておるというつもりでございます。

佐々木(隆)委員 ここにだけ余り時間をとるわけにもいかないんですが、政策を展開していくときに、この分類の仕方がずっと影響していくのではないかということを心配して今質問をさせていただきました。

 だって、多面的機能の十分な発揮、いわゆる国土の保全、水源の涵養等々、これは今の農政でいうところの日本型直接払いのもとになっているというか、根拠になっている部分だと思うんですよ。それは食料に位置づけられるべきものではなくて、農村の発展のために位置づけられるものでなければならない。

 というのは、農村の政策として、例えば日本型の直接支払いというものは、農村を維持する、あるいは農村のにぎわいを維持発展させていくという視点の政策に分類をされなければいけないのであって、食料の中に分類されるということになってしまうと、それは、四つ相互関係があることは承知の上です、そうなると、政策のつくり方としておかしくなるのではないかということを思うものですから、ここは指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 次に、今ほどお話もありましたが、自給率についてであります。

 自給率については、基本法の二条の二項、「国民に対する食料の安定的な供給については、」「国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、」こうなっているわけですね。だから、増大を図るために基本計画をつくるんだということであります。

 自給率の目標という十五条については、「その向上を図ることを旨とし、」というふうになっていて、いずれも自給率の向上を図っていくということを示すのが基本計画だ、こういうふうに基本法の中では書かれているわけです。当然なんでありますが。

 三つ対比された、皆さん方が説明に使った資料、平成十二年と平成十七年と平成二十二年の対比表、これの十二年のところには、基本的には五割以上を国内で賄うことを目指すことが適当、こういうふうに書いてあるんです。にもかかわらず、今回、四五に下げたわけですよね。

 この一連の基本法の趣旨や第一次の計画のときに書いてあった五割以上を国内で賄うことを目指すことが適当という言葉からすると、どうしてそう変化をしたのかということについて説明を求めたいと思います。

林国務大臣 御指摘のありました平成十二年及び十七年の基本計画でございますが、十年より先の将来の姿ということで、「基本的には、食料として国民に供給される熱量の五割以上を国内生産で賄うことを目指すことが適当」とされております。

 平成十二年の基本計画で初めて食料自給率の目標が設定されて以降、実際の食料自給率が目標水準に達したことがないということでございますので、今回の基本計画における食料自給率の目標設定に際しては、計画期間内における実現可能性、これを最も重視することにしたところでございます。

 このため、まずは実現可能な食料自給率目標として、カロリーベースで四五%、生産額ベースで七三%の目標を設定いたしまして、その達成に向けて総合的かつ計画的に施策を講じることによりまして、計画期間内における目標の実現を図ることを最優先することとしたところでございます。

佐々木(隆)委員 新計画の特徴は、実現可能性という言葉があちこちに出てくるんですが、そこがある意味特徴なのかなというふうにも思うんですが、もともと四五%も掲げていたんですね。これもなかなか届かなかった。五〇%に届かなかったということをおっしゃりたいのかもしれぬけれども、四五%も届いていない。

 ただ、これは政治目標なんです。計画というのは政策目標なんですよね。政策目標として実現可能と、あしたにでも達成できるような計画をつくるということは、消費者にとっても農業者にとっても、では、それが励みになるのかというと、目標値を下げてしまうことによって、かえって意欲をそいでしまうことになるのではないかということを心配するんですね。

 だから、何で四五に下げたんですかと問われたときに、実現可能性といったって、四五だって前にも掲げていたんですから、そのときだって実現していないのに、今度四五にしたら、では、来年か再来年実現するのか、まあ十年計画ですけれども、来年か再来年実現するんですかというような話になってしまう。そうすると、みんなが五〇を目指して頑張りましょうと言っていたのをわざわざ下げた意味というのは、私は余り意味がないんではないかというふうに思うんですね。

 そこで、実現可能性とか大きな転換点とかという言葉で説明をされるんですが、なぜ五〇ではだめで四五なら実現可能性を考慮したことになるのかということについて、もう一度説明をいただきたいと思います。

林国務大臣 まさに大事なところだと思いますが、審議会の中でも、まず前回の計画を検証するところから始めさせていただいたわけでございますが、それぞれの品目別に、前回の計画で、例えばこれぐらいの転作をするとか、これぐらいの需要を見込むとか、いろいろなことをやっておりますが、その数字が、可能な限り理論上最大値的な数値がございまして、それぞれの品目でなかなかそこまでいかなかった、こういう検証もあったわけでございます。

 したがって、今まさに御指摘いただいたように、十二年、十七年のときも四五%という目標を掲げて、それを積み上げてそういう数字をつくっていったということでございますので、現行の三九%を四五%にしていくという意味で、やはり高い目標を掲げて、しっかりとそこへ向けて頑張っていくということは変わらないわけでございますが、それを積み上げるときに、余り過大な目標をつくって、これはちょっとなかなかできないのではないかということになると、かえってそこへ向けて頑張っていこうという意欲をそぐことにもなりかねない、こういうこともあるわけでございますので、そういった意味で、四五%、七三%ということにして、その実現を図ることを最優先しようということでございます。

 カロリーベース五〇%という、さらに高い目標の設定については、今回の基本計画で設定した目標を達成した段階で議論をしていくことが適切である、こういうふうに考えておるところでございます。

佐々木(隆)委員 四五%を達成すれば五〇%にしていただかなきゃそれはもちろん困るんですが、そういうことではなくて、みんなで何を目指していこうかというのは、では、五〇%のときに、皆さん、ああ無理だなといって、がっかりして意欲がそがれたかというと、私は決してそんな現象が起きていたとは思えないのでありますが、余り実現可能性という言葉にこだわり過ぎるというのは、どうも役所的発想になってきちゃったのではないかということをちょっと心配しているんですね。

 やはり政治の場面が、政策的に何を国民の皆さん方に、あるいは消費者の皆さん方に、農業者の皆さん方に訴えるかということがこの計画のもう一つの大事な点だと思うので、そういった意味でいうと、余り実現可能性にこだわり過ぎると、かえって意欲をそいでしまうことになるのではないかという意味で申し上げました。

 そこで、品目ごとに本当に細かく積み上げて、対比もしてこの計画に至ったというのを、私も見せていただいてそう思ったんですが、その中で、特に品目ごとの中で、米について少しお伺いをしたいというふうに思うんです。

 主食用米は、今の水田面積からいうと約半分ぐらいが主食用米をつくっていただいているわけであります。残りの半分で転作をしているわけでありますが、余談でありますが、これを時々減反などと言う人がいるんですが、私は減反という言葉には大変憤りを感じておりまして、減反をしているわけではなくて転作に協力をしているのであって、減らしているわけではありません。皆さん意欲を持って取り組んでいるわけでありますので、この言葉を農水委員会の中で使う人はいないとは思うんですが、大変腹立たしく思っている、余計なことですが。

 そこで、この計画の中にも出てくるんですが、主要穀物という表現が出てくるんです。主要穀物というのは何かというと、米、麦、大豆などをいうわけですね。なぜ主要穀物というのかというと、代替がきかないからいうんですよね。決して野菜をつくっている人や果樹をつくっている人をとやかく言うつもりは全くありませんし、その人方も一生懸命頑張っていただいているんですが、要するに、野菜の場合は、例えば、大根が品薄になると白菜の需要がふえたり、リンゴが不作になったらミカンの方にぐっとシフトしたりということが起きるわけですね、現実に。ところが、主要穀物の場合は代替がきかないものなんです、お米にしろ、麦にしろ、大豆にしろ。だから主要穀物という言い方をしているわけですね、飼料作物もその中に入りますが。

 その主要穀物は、やはりできるだけ自給率を高めていこうというのが目標でなければならないと思うんです。ところが、お米は一〇〇%を超えるぐらいでありますが、麦は一二%、大豆は八%です。今度のこの計画の中で、そういう転作をしていただいても水田としてしか利用できないところもあるわけですね、湿地帯のようなところとか。それで、では、水田としてどうやって活用してもらうかというところに出てくるのが加工米であったり飼料米だと思うんです。

 ところが、今度の飼料米の目標値を見ると、本来やらなければいけない主要穀物の自給をふやすということよりも、飼料米の方が先に来ちゃっているんですね。これは順番が違うと思うんです。

 だから、代替のきかない、しかも、人間が食べる上において大切な食料としてあるべき米とか麦とか大豆というものを目いっぱい、お米は休んでいただいていますが、目いっぱいつくってもらうということがあって、その先に、田んぼとしてしか利用できないところに限って加工米や飼料米をつくってもらいましょう、そういう流れでなければおかしいと思うんですが、どうもそれが、飼料米の方が先に来てしまっているような感じを受けるんです。その点について説明を求めたいと思います。

松島政府参考人 まず、委員から御指摘ございました、米、麦、大豆につきましての生産努力目標の設定の考え方でございますけれども、我が国におきましては、食生活の変化などによりまして主食用米の消費量が大幅に減少していくという中で、水田のフル活用と主食用米の需給の安定を図るという観点から、まず、飼料用米や米粉用米といった主食用米以外の米の生産振興を図るということに加えまして、今委員から御指摘がございました小麦、大豆などにつきましても、固定的な国産需要があるということで、しかしながら、その多くを海外からの輸入に依存しているということでございまして、そういったものについても作付の拡大を図っていくということがあわせて必要だというふうに考えているところでございます。

 こういった中で、飼料用米につきましては、平成二十五年に十一万トンであったものを、三十七年の目標としましては百十万トンということで、十倍に拡大している目標を設定したわけでございますけれども、その背景といたしまして、飼料自給率が低い我が国におきまして飼料用米の生産が増加することは、飼料の安定供給につながるということと、それから、飼料用米につきましては、主食用米と同様の栽培方法ですとか農業機械が使える、そういうメリットがあるということで、飼料用米を拡大いたしまして食料自給率や食料自給力の向上につなげていこうという考え方で設定したところでございます。

 さらに、飼料用米の需要につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、十分な需要があるということでございます。

 そういった中で、先月閣議決定しました基本計画におきましても、小麦や大豆、米粉用米とあわせまして飼料用米を戦略作物と位置づけて、その生産拡大を図っていくということにさせていただいたところでございます。

佐々木(隆)委員 いや、局長、メッセージの送り方を間違ってしまう危険性があるから私はこのことを申し上げているんですね。

 ですから、水田フル活用というのは、別に、田んぼとしてフル活用するという意味じゃないですよね。転作も含めて、畑作物も含めてフル活用しましょうという意味だと思うんです。田んぼとして一番使いやすいのは当たり前です、それはもともと田んぼなんですから。だから、飼料米やいわゆる加工米をつくるということは、水田の機能のまま使えますから、それは確かに、今言うように、栽培方法が簡単だと言われればそのとおりですが、しかし、先ほど申し上げましたように、主要穀物、代替のきかない、人間の生存に欠かすことのできないものについて一定程度まず自給を上げましょうという、その次に来る話だと思うんです。

 それがどうも、メッセージの送り方を間違ってしまうと、そっちの方を主につくればいいんだというような話に転換をされてしまうし、これにだって相当な奨励金はついているわけです、お金もつぎ込んでいる。しかも、にもかかわらず、基盤整備はさらにやりましょうという話になっている。

 飼料用米はだめだと言っているんじゃないですよ。飼料米を殊さら大きくしておいて、その後にフル活用そして基盤整備だといっても、本来やるべき話は、主要穀物をまず自給率を上げるという話をしっかりメッセージを送って、その後に来る話なのではないか、メッセージの送り方をこの計画によって間違ってはいけないのではないかということを申し上げているんですが、もう一度、どうぞ。

松島政府参考人 お答え申し上げます。

 飼料用米と同じく飼料穀物でございます麦、大豆について、優先順位をつけて取り扱っているということではございませんで、同じ考え方に従って、今後、平成三十七年に向けてどういった生産努力目標を設定するかという観点から、具体的な生産努力目標を設定したということでございます。

 今委員からお話ございました麦、大豆につきましては、例えば小麦につきましては、いろいろな需要があるさまざまな新品種が開発されてきておりますけれども、これまで主流でございましたうどんから、中華麺用とかパン用といったものに転換できるだけのそういった新品種の開発等が必ずしも十分でなかったという問題がございますし、また、やはり小麦、大豆というのは湿害に弱いということもございますので、水田で生産するためには一定の排水対策等が必要、そういった課題がある中で、前回の基本計画のときには、小麦につきましては百八十万トンという生産努力目標、大豆につきましては六十万トンという生産努力目標を設定したわけでございますが、残念ながら、小麦については平成二十五年度で八十一万トン、大豆につきましては二十万トンにとどまっているということでございます。

 したがいまして、今回、前回計画の検証もした上で、新計画におきます生産努力目標につきましては、例えば、実需者が求める品質、ロットで供給できるような品種の統一などによって産地体制を確立する、また、他の作物との組み合わせによって合理的な輪作体系を導入したり、収量性の高い新品種の導入によって単収の向上を図る、そういったことも行いまして、達成可能な水準といたしまして、小麦については九十五万トン、大豆については三十二万トン、いずれも増産の目標を設定したところでございます。

佐々木(隆)委員 時間がありませんから、これ以上ここは質問しませんけれども、飼料米が十倍なんですから、麦や大豆も十倍ぐらいの設定はしないとバランスがとれないと思いますし、基盤整備をせっかくやるというんですから、排水が問題だというんだったらそれをやればいいのであって、そのための基盤整備でなければいけないんだと思うんですね。指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、自給力についてでありますが、これを読みますと、私は不測の事態のためにこれがあるのかと思ったら、そうではなくて、国民各位へのメッセージだというふうに説明されているんですが、誰に何のためにどういうメッセージをこれで送りたかったのかというのが、どうもこの自給力というものについていま一つ意味がわかりませんが、説明いただきたいと思います。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘ございました自給力指標でございますが、先ほども申し上げましたが、今の自給率自体は一定の限界がございます。花など非食用作物が栽培されている農地が潜在生産力に反映されないといったことですとか、比較的経済力の小さい国の自給率が大きく出やすいといったようなこと、それから、消費者の消費構造に大きく影響されるといったような課題といいますか限界があるということはずっと指摘されてきたところでございます。そういう中で、我が国の潜在生産力、底力みたいなものをあらわす指標というものは大事ではないかということで、ずっと議論を進めてきたところでございます。

 今般の基本計画の中で出させていただきました自給力指標をお示しすることで、先ほどもちょっと申し上げましたが、幾つかのパターンに分けて、前提を置いて計算をすれば、芋類中心ですと何とか推定エネルギー必要量に届くんですけれども、現実に近い米、麦、大豆型ですとなかなか届かないといったような現状を国民の皆様にごらんいただくとともに、自給率につきましては近年横ばいで推移している中で、自給力の方がずっと右肩下がりで推移しているというような中で、将来への懸念があるのではないかといったようなことを御理解いただくということだと思っております。

 自給力自体は、昭和五十年ぐらいからいろいろな形で政策文書の中でも取り上げてきたわけでございますけれども、指標という形でお示しするのは今回の基本計画が初めてでございまして、私ども、これで、先ほど申しました、PRといいますか説明会などもぜひやらせていただいて、国民の皆様とともに議論を深めていきたいと思っておるところでございます。

 以上でございます。

佐々木(隆)委員 もう一問質問したいので、指摘だけさせていただきます。

 今、例えば、芋をたくさんつくって、そうすればカロリーが満たされますよというメッセージを国民に送って、それで皆さんが安心するということ、いや、安心するのでなければメッセージを送る必要がないんですから、余り意味がない。片っ方で四五%に下げておいて、それを五〇%にするのはやめておいて、では、何か、あるとき、花畑を潰して芋にして、そして耕作放棄地も全部つくったら何とか間に合うんですという、これは余りメッセージとしての意味がないのではないかというふうに思うんですね。

 総理府がアンケートをしたというのを根拠にされているようですが、自給力は高めた方がいいですかと聞かれたら、それは、いいと答えるに決まっている話で、このアンケートも余り意味のないアンケートだというふうに思います。そこの点を指摘しておきたいと思います。

 最後に、担い手についてお伺いをしたいと思います。

 担い手について、新しい計画では、認定農業者と新規就農者と集落営農ということに位置づけているわけでありますが、認定農業者というのは実は何も根拠がないんですね。

 経営基盤強化法の十二条に「経営改善計画が適当である旨の認定を受けることができる。」というのがあって、それがどうも認定農業者ということになっているんですが、認定農業者というのはこういうものでちゃんとした法的な根拠があるかというと、この経営基盤強化法のこの一行のところにしかないわけです。

 しかも、この認定農業者というのはこのごろ減少しているんですが、例えば農協改革や農業委員会だとか、いろいろなことの改革案の中に認定農業者というのは全部出てくるんですね。極めて法的根拠の薄い認定農業者について、もともとこれは長期資金を借りるためのものだったわけですが、それを、何でもかんでも認定農業者だということに位置づけていく。これで担い手に位置づけるというのは、僕は余りにも乱暴だと思うんですね。担い手というのはもっと多様な人たちがいるわけでありますし、高齢者だって担い手です。

 もう一つ、あわせて聞かせていただきますと、では、農村の担い手というのは一体誰なんだ。食料・農業・農村基本法なんですから、農村の担い手というのがあって、そして、その人たちも政策の対象になるはずなんです。ところが、この認定農業者と新規就農者と集落営農だけが農村の担い手だというのは、余りにも私は乱暴な発想だというふうに思うんですが、ここを最後の質問にさせていただきたいと思います。

奥原政府参考人 担い手の関係でございますけれども、担い手につきましては、食料・農業・農村基本法の第二十一条、ここのところに「望ましい農業構造の確立」という話が書いてございます。今回の基本計画に際しましても、この条項をもとにいろいろな御議論をいただいたわけでございますけれども、我が国の農業を安定的に発展させる、国民に対する食料の安定供給を確保していくという観点で、効率的かつ安定的な農業経営が生産の相当部分を担う、そういう農業構造を構築するというのがこの基本法の二十一条の趣旨でございます。

 このため、今回の基本計画では、効率的かつ安定的な農業経営になっている経営体、もうそれになっているところもございますので、このなっている経営体に、それを目指している経営体、これも加えて、あわせて農業生産における担い手というふうに考えているわけでございます。

 具体的には、効率的かつ安定的な農業経営を目指して経営の改善に取り組む認定農業者、今御指摘ございましたように、農業経営基盤強化促進法の市町村長の認定を受けた者がこの認定農業者でございます。それから、将来、認定農業者となると見込まれる認定新規就農者、これも基盤強化法の中に位置づけられております。それから、将来、法人化して認定農業者となることが見込まれる集落営農、これを担い手として位置づけて、ここにいろいろな政策を集中してやっていく、こういうことにしているわけでございます。

 こういった特に認定農業者を含めた担い手につきましては、現時点での経営規模あるいは年齢、こういったもので一律に足切りをしたりすることはしないということを認定農業者の認定に関する通知上も明確にしておりますし、昨年御議論いただきました担い手経営安定法の改正の中でも、この担い手であれば規模要件は特に課さないということも明確になっているわけでございます。

 したがいまして、将来に向けて農業で生計を立てていく意欲と能力のある方、こういう方が幅広く担い手になっていただいて、産業政策としての農業をきちんとやっていく、こういう発想でございます。

佐々木(隆)委員 時間ですから終わりますが、今の発想からいうと、農村のいわゆる日本型直接支払いの対象者にはその人たちしかならないということになっちゃうわけですよ。だから、担い手というものをちゃんと定義しなきゃいけないんです。そこがないまま認定農業者という言葉をあちこちに使うから話が変になってしまっているので、ここはやはり整理をしておく必要があるのではないかということを指摘して、終わらせていただきます。

江藤委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民主党の福島伸享でございます。

 食料・農業・農村基本計画について、佐々木先生に引き続いて質問させていただきます。

 前回、五年前の基本計画の改定は、ちょうどここにいる我々が初めて当選したときでありまして、政権交代で政治主導だと沸いているときに、前回の五年前の基本計画は、役所がつくっていた案をかなり議員間で何時間も討議してつくったということを思い出しまして、まさに政治の現場と役所が一体となってつくった、ある意味、画期的な基本計画だったんじゃないかなと思っております。

 ですから、先ほど佐々木先生がおっしゃったような、五〇%の自給率の目標というのは、これはある意味の政治のメッセージとして出したものであり、そこには、米だけじゃない、麦や大豆といった主要穀物はなるべく自国で賄うんだという気概を、政治の意思として示そうということでつくったのが前回の基本計画だったんじゃないかなというふうに、今振り返ると思います。

 その前回の基本計画の前文のところには、「本基本計画は、食料・農業・農村に関する各種施策の基本となるという性格を踏まえ、今後十年程度を見通して定めるものとするが、食料・農業・農村をめぐる情勢の変化及び施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに見直し、所要の変更を行うこととする。」という意味では、農政は、たとえ政権がかわろうが、思いというのは与野党そう変わらないと思いますし、我々が直面している現実というのは、与党、野党、問わず、同じ現実に直面しているんだと思います。

 そこで、まず基本的に、私は大臣にお伺いしたいんですけれども、この五年前の前回の基本計画をどのように評価されるか。自給率の目標もあります、あるいは、農家の所得がどうなったのか、農地の集約とかいわゆる構造改革がどうなっているのか、どこを評価し、あるいは、どこに問題があって、今回、五年ごとの見直しという観点でやっているのか、それとも、五年前のものを根本的に変えようとされているのか、そのあたりの今回の基本計画と前回の基本計画の関係に関する基本的な御認識をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 新たな食料・農業・農村基本計画の策定に当たりましては、昨年の一月から、食料・農業・農村政策審議会において、これまでの基本計画のもとで実施されてきた施策の検討を行いまして、今、福島委員からお話がありましたように、五年前に、今度やるときに評価をする、こういうことは書いておりますが、まさに新たな基本計画の中の第一の基本的な方針の中で、主な施策の評価と課題、こういう整理をさせていただいているところでございます。

 例えば、六次産業化については、今後、より質の高い取り組みや地域に広く役立つ取り組み、こういうのを全国的につくり出していく必要がある。

 それから、輸出についても、輸出先国の規制等、まださまざま克服すべき課題が存在する。

 それから、農業構造に関しては、平成二十二年以降、担い手の姿が不明確となったことに鑑みまして、再度、担い手の姿を明確に施策を推進していく必要がある。

 また、中間管理機構を活用して集積、集約化をさらに進めて、農業の構造改革を一層加速化していく必要がある。

 それから、生産、供給の体制ですが、増大する加工、業務用の需要等、消費者ニーズの変化等に対応した体制の構築等を図る取り組みをさらに後押ししていく必要がある。こういう整理をしておるところでございます。

 これまでの基本計画のもとで実施されてきた施策の評価をこういうふうにした上で、新たな計画では、基本的な方針ということで、先ほど来御議論がありますように、産業政策と地域政策、これを車の両輪として進めていくということにしております。

 その考え方のもとで、先ほど評価のところでも申し上げました、輸出拡大に向けた取り組み、六次産業化の促進、これは産業政策の需要サイドということになろうかと思いますが、それから、サプライサイドということで、農地中間管理機構のフル稼働による農地集積、集約化、米政策改革の着実な推進による需要に応じた生産の推進ということ。

 そして、こういうことをやっていくためのプレーヤーも変わっていただかなければならないということで、農協改革、農業委員会改革による意欲ある農業の担い手が活躍しやすい環境づくり、それから、集落機能の集約とネットワーク化などの地方創生に関する取り組みの強化、こういうことを、現場の皆様が創意工夫を発揮して取り組みを進めることができるような環境づくりをやっていく、こういう考え方で基本的にはつくらせていただいたところでございます。

福島委員 今の御答弁をお伺いしますと、もう八割、九割は恐らく同じだと思うんですね。五年前の基本計画の中において、農家の所得は我々の所得補償政策もあって上がりましたし、農地の集約や法人の数などもふえているという意味では構造改革にも、静かであるけれども、つながってきたということで、ただ、恐らく一点違うのは、先ほど大臣のおっしゃった、担い手の姿が不明確になった、その担い手というところだけが違うのかなというふうに思うんです。

 前回の基本計画の一番の要点というのは、一番目に来ていたのが再生産可能な経営の確保なんですね。今回の基本計画では、それがすぽっと抜け落ちているんです。

 もう一つの視点は、多様な用途、需要に応じた生産の拡大。三番目が、意欲ある多様な農業者を育成、確保ということで、一つのキーワードが多様だと思うんですね。我々の政権のときにつくった基本計画のキーワードは多様である。さまざまな需要に応じた、さまざまな生産方式を広げていこう、あるいは担い手に限らず、意欲ある人であれば、多様な農業者を認めていって、支援をしていこうということです。

 一方、今回の基本計画では、担い手が活躍できる環境の整備と言っていまして、多様じゃなくて、担い手が活躍できる。私はここが、一番大きな、我々の政権のときと今回の基本計画での理念の違いである。逆に言えば、それ以外は、大まかなところは同じなんじゃないかなというふうに考えているわけです。

 先ほど佐々木先生の話でもありましたが、では、その担い手というのが具体的にどう定義されているのかといえば、それは曖昧ではない。基本計画では、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、認定農業者、認定新規就農者、集落営農に対して、重点的に経営発展に向けた支援を実施するとされていまして、経営所得安定対策をいわゆる担い手に限定したりとか、農協や農業委員の理事に担い手を入れることを義務づけたりということで、担い手に限定しているんです。でも、私はそれが本当なのかなという思いがあるんです。

 今回の農協改革も同じなんですけれども、何か箱を変えて、表面上の形を変えれば農業構造が変わる、余りにも上から目線に過ぎないか。そもそも、認定農家という言葉自体、役所の人が使うのはいいんですけれども、我々政治家が認定農家と言うのは、農家の側に立って考えてみてくださいよ。皆さんが接する農家の皆さん方が、先ほども局長が答弁されていたけれども、規模で足切りはしませんとか規模要件は課しません、意欲とか能力のある人を認めるんですという話なんですけれども、役所に認められるものですか、意欲とか能力というものは。経営改善の意欲があるかどうかというのを、お役所が認めたものを担い手とするんだという発想自体が農政の根本としておかしいんじゃないかというふうに私は思うんです。

 能力や意欲は役所が評価するものじゃないですよ。逆に言えば、買い手であったり地域の人が評価するものであって、規模がどうたらとか、役所が認めた人に政策資源を集中させるというやり方自体が、私は余りにも硬直的なんじゃないかなと思うんです。その一番の例が、先ほど来何度も話題になっている農地中間管理機構ですよ。

 各都道府県の農地の集積面積の現状と十年後の集積目標というのをお配りさせていただいております。担い手への集積状況というのをごらんになっていただきたいんですけれども、佐々木先生や松木先生のような立派な方がいらっしゃる北海道は集積率が八七・一%。佐賀は一生懸命農政に協力していて、佐賀県も七三・七%。あと、東北とか北陸、九州といったところは比較的担い手に集中はしているんですけれども、例えば私の地元の茨城県、農業生産額全国二位でありますけれども、担い手への集積は二五・一%。三位の千葉だって二〇・三%。理事の玉木先生のところは二七・八%。

 これは、農業が発達しているから担い手に集積しているというわけではないんです。農家が所得を上げていたり農業が盛んなことと、担い手が活躍しているかどうかというのは、実はそんな相関関係はなくて、私の直観で見ても、頑張っている農家ほど、俺は国の支援なんて受けないから認定農家なんかにならないんだという人はいっぱいいるわけですよ。

 このように、都道府県の担い手への農地の集積状況と生産額というのは比例しないので、相関関係はないんだと思いますね。そのことについてどう認識されるか、ちょっと御認識をお伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 我が国の農業構造を見てみますと、この十年間で、担い手が利用している農地面積の割合、これが相当上がってきておりまして、十年前三割であったものが現状で五割まで来ております。農業の生産性を高めて成長産業にしていくためには、さらにこれを加速して、今後十年で八割のところまで引き上げていきたいというふうに考えております。

 特に、農業者の中で六十五歳以上の高齢の方が、現在、平均でも約六割を占める、こういう状態になっておりまして、茨城県でも六〇・七%というふうに承知をしておりますが、この状況の中で、リタイアする方の農地を担い手に円滑に集積していきませんと耕作放棄地が増大をしてしまう、そういう可能性も非常にあるというふうに思っております。茨城県におきましても耕作放棄地は、これは客観的な調査のベースで九千ヘクタールあるというふうに承知をしております。

 それから、我が国では、大規模な経営体といいましても圃場は非常に分散している、分散錯圃の状態ということが多いわけでして、これではなかなかコストが下がっていかない。圃場が分散していることが生産性向上の一つの阻害要因となっている、こういうことでございます。

 したがいまして、こういった担い手への農地の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止あるいは解消、こういったことを実現するための手法として、先ほどから出ております農地の中間管理機構、これを整備することにしたわけでございます。

 茨城県を含めまして、この中間管理機構をきちんと軌道に乗せていく必要がございますが、これを軌道に乗せて、担い手への集積、集約化、それから耕作放棄地の発生防止、これをきちんと図っていくことが地域の発展につながるというふうに考えております。

福島委員 ある意味、すごいきれいだけれども表面的だと私は思うんですね。

 担い手に集約していると言っているけれども、担い手の数がふえたから担い手に農地が集約しているのか、一人一人の担い手自身に農地が集まったのかというのは、これはちゃんと私は分析しなきゃわからないと思っておりまして、現場で聞くことは、数字を上げるために逆に担い手をふやす、意欲ある農家の人に担い手の認定を受けてくださいといってふえている場合もあるわけでありますから、上から数値のデータだけ見ていてもだめなんですよ。今局長がおっしゃったような高齢化とか耕作放棄地の増大へつながっておりますよ。農村の人は我々以上に危機感を持っておりますよ。しかし、それは静かに、その集落のまさに自治、自立の中で進んでいるわけであります。

 政府は、日本再興戦略で、担い手の農地利用の面積を平成三十七年までに五割から八割に上げると言っていますが、ただ、これは耕地面積の四分の一は北海道で、北海道が八割近い集積率だからでありまして、北海道を除けば、現在集積されている面積というのは大体三六%ぐらいなんですね。それを八割まで上げるというのは、二倍以上に上げることなんですよ。

 農地中間管理機構があるんだといいますけれども、例えば、これを表で見てみますと、私の茨城県を見ると、今、集積率二五・一%を六六%までふやします。今の担い手への集積面積は四万四千ヘクタール、それを十一万四千ヘクタールに七万ヘクタールふやしましょうというんですけれども、右に手書きで書き加えていますけれども、平成二十六年十二月末だと、たったの百九十ヘクタールですよ。七万ふやさなきゃならないのに百九十ヘクタールということは、達成率〇・二七%ですよ。このペースで本当に十年後に六割の目標なんか絶対達しないと思いますよ。

 これまでの答弁だと、いや、そうじゃないんだ、農閑期を過ぎればふえるんだということで、あえて玉木理事のところだけ出したんでしょう、十二月末から三月末にどれだけふえているか。これは玉木さんが質問するかもしれませんけれども、香川で見ても、十二月末で八十ヘクタールだったのが百ヘクタールにふえただけであって、一万二千ヘクタールふやさなきゃならないのが、桁が二桁ぐらい違う部分しかふえていないわけですよ。

 私は、その目標が達せられていないということを非難するつもりはないんです。八割の農地が担い手に集約されるという方が私は不自然だと思っているんですよ。目標自体が間違いなんだ。

 担い手に、確かにやる気のある人に農地を集約したり分散型の圃場をまとめたりするようなことは必要であると思いますよ。でも、それは一つ一つ地域の事情に応じた個々の取り組みを支援するしかないのであって、数値目標をつくって、担い手に八割農地を集積すれば強い農業ができるなんというのは、これは数値だけの自己満足の世界であって、農業政策としては余り意味のないもののように私は思うんですけれども、林大臣、どのようにお考えになりますか。

奥原政府参考人 担い手に八割ということの実現可能性の問題かと思いますけれども、先ほど申し上げましたけれども、過去十年で三割から五割まで、要するに二割アップをしたわけでございます。今後十年間では五割から八割、三割アップ、要するに、従来の十年間に比べて一・五倍にするという発想で物事を考えております。これだけ高齢化が進んでおりますので、やはりそのぐらいの目標を持って進めていかないと、これについては本当に耕作放棄地がふえてしまう可能性もございますので。

 それから、先生が御指摘ございましたように、地域の中での話し合い、これは非常に重要でございます。二十四年度から民主党政権下で始めていただきました人・農地プラン、これとの関係というものがやはり基本的にございます。

 中間管理機構をつくるときも、人・農地プランで農地が円滑に動いていくためにどういう手法が必要かということをいろいろなところで議論する過程で、やはり相対でもってAさんからBさんへ動かすというだけでは限界もある、その間にある程度公的なところが入って、そこが借りて担い手に転貸をするというスキームにしないとうまく動いていかない、こういう御指摘もございましたので、つくったのが中間管理機構、こういうことだというふうに思っております。

福島委員 いや、私は中間管理機構の役割自体は否定しているわけじゃないんです。そういうものもあっていいんじゃないかなと思うんです。ただ、数値目標をつくって、それが進めば農業の構造改善につながるとか農家の所得につながるという、その政策の方法自体がおかしいんじゃないかと問うているわけです。

 我々が人・農地プランをつくったときには、集落の自治の機能とか自治体の機能に多くを委ねましょうという現実的な、しかし、一歩一歩前に進む政策をとったんですよ。

 もっとこれは地道にやらないと、農地というのは農家にとって宝物なんですよ。もしかしたら命より大事なものかもしれないものを扱っているわけだから、いいかげんな目標をつけて、それで五割から八割だと言うけれども、それよりももっと現実的な農地の集約の仕方、担い手と認定農家とかそういうのに集約するのではなくて、意欲ある人だったら誰でもいいじゃないですか、役所が認めない人であっても。

 その人がやりやすいようなもっと柔軟な目標を掲げるべきであると考えますけれども、大臣の御答弁をいただきたいと思います。

林国務大臣 先ほど局長が答弁したとおりでございますが、やはり、先ほど佐々木委員からも御指摘いただいたように、四五%は低過ぎるんだ、五〇%の目標を掲げてやるべきだ、こういう御指摘も一方でいただいているわけで、やはり目標を定めて何かやっていかないと、人・農地プランでそれぞれの地域で自主的にやっていただければいいんですと、客観的に、これは、国が上から目線という御指摘もありましたが、市町村がこの認定をしていただく、こういうことですから、それぞれの地域に合ったことをやっていただくということで、規模要件や年齢要件も外しておるわけでございます。

 したがって、何か政策をやっていくときには、福島委員も経産省におられましたから御存じだと思いますが、やはり予算を獲得して政策を遂行していく上で、この政策をやったらどれぐらいのアウトカムになるのかということはしっかり持ちながら、ただ、これを一律に国の基準で押しつけるということではなくて、あくまで環境を整備して、その中で皆さんがやっていきやすいようにしていく、これは最初に申し上げたとおりでございますので、そこをしっかりと踏まえてやっていかなければならないというふうに思っております。

福島委員 時間が半分過ぎましたので、次の点に行きます。

 今回の基本計画を見てみると、結局、土地利用型の農家がすがらざるを得ないのは餌米しかないわけです。先ほど佐々木さんがおっしゃったように、餌米だけ目標を十一万トンから平成三十七年で百十万トンと十倍以上上げているわけですね。麦とか大豆は余り上げていない。それに頼らざるを得ない。地元のJAの皆さん方も、餌米の生産をふやすために必死になって頑張っていただいております。

 でも一方、これは餌米なわけですから、餌を食べていただく家畜がいなきゃならないわけでありまして、需要側、受け手側を考えなければいけないわけですよ。

 例えば、私の知り合いの酪農農家は、試しに餌米、飼料用米で与えてみたけれども、乳量が落ちちゃって、やはりちょっと使うのはなと言っている人たちがいたりとか、養豚農家もおりますけれども、これから代がわりをやって、なるべく耕畜連携で、地域の中で餌米を使ったのをやりたいんだけれども、ただ、今はもう経営があっぷあっぷで、それを考えることもなかなかできないよと言っている畜産農家が多くいるんですよ。

 私は、今の状況で畜産農家の皆さん方、酪農の皆さん方に餌米を使ってくださいというのは、全農とかから聞くと需要はあるんですと言いますよ。でも、現場ではそんな簡単ではないですよ。特に肉質とか乳量とかは、非常に大きいし、敏感でありますから、そこは非常に慎重になると思っているんです。

 ちょっと違うかもしれませんが、それで一番大きなのは、やはり自由貿易がどうなるかというのは畜産農家にとっては物すごい大きな問題になっているんですよ。

 日豪EPAで、もう既に段階的に牛肉の関税が下がることになる。確かに円安になったからそんなに価格が下がる効果がなくて、輸入は現時点ではふえていないかもしれないけれども、為替レート次第によっては関税が下がった効果というのは大きくなると思います。

 TPP交渉を今やっているでしょうけれども、恐らく日豪EPA以上に関税が下がるんじゃないかというのは、いろいろなリークの情報を見ていると想像されるわけです。TPPに入れば、オーストラリアやアメリカだけではなくて、ニュージーランドとかカナダとかメキシコとか、さまざまな畜産の強い国はいっぱいあると思うんですよ。

 自由貿易をやった結果、関税撤廃になるということはよもやないとは思いますけれども、我々の政権のときに、では、関税撤廃したら日本の畜産はどのぐらい影響があるのかというのを政府で試算したことがあります。その試算のデータをちょっと教えていただけませんでしょうか。

松島政府参考人 関税撤廃の影響試算でございますけれども、これにつきましては、最新のものは平成二十五年三月の政府統一試算というものがございまして、畜産物についてもそれぞれ生産量減少率を出してございます。

 例えば、牛乳・乳製品でいいますと四五%減少、牛肉でいいますと六八%減少、それから豚肉ですと七〇%、鶏肉ですと二〇%、鶏卵ですと一七%という試算結果を公表してございます。

 なお、この試算結果につきましては、全ての関税を撤廃する、いかなる対策も講じないという前提のもとに試算した結果でございます。

福島委員 今局長がおっしゃったように、これはあくまでも関税を撤廃した場合でありますけれども、しかし、それでも今の五つを足しただけで一兆三千百九十億もの生産額が関税を撤廃すれば減少する、それの半分だとしても五千億ぐらい減っちゃうわけです。

 農水省さんのデータによりますと、生産額に対する飼料費の割合というのは、牛で大体五割ぐらい、豚とか鳥だと三分の二ぐらいだといいますから、関税を撤廃して一兆三千百九十億円の畜産、酪農関係の生産額が減少すれば、飼料の需要だけで約七千五百億円も減少するわけですよ。もし、これの影響が関税撤廃じゃないから半分だとしても、数千億単位で飼料の需要量というのは減ってしまうんですね。

 ですから、飼料米に頼るということと、その一方で自由貿易を進めていくというのは、私は、これは両立しない、リスクのある道なんじゃないか。TPP交渉の結果、どうなるかわかりませんよ、でも、恐らく関税が下がるのは必至でしょう。その影響というものを試算しなければならないでしょう。そうしたときに、その影響に基づいて予想される飼料の需要量というのも変わっていくでありましょう。

 そのときに、私は、基本計画そのものの根本を見直さなきゃならなくなると思うんですよ。その点についての御認識はどうかということをお伺いしたいと思います。

林国務大臣 我が国においては、主食用米の需要が毎年八万トンずつ減少をしておるということでございまして、需要に応じた生産を進めるとともに、水田のフル活用を図る、先ほども御議論させていただきましたが、これはTPP交渉いかんにかかわらず、主食用米から需要のある餌米などの主食用米以外への転換を進めていくことが必要である、こういうふうに考えております。

 こうした認識のもとで、飼料用米の生産努力目標を新たな食料・農業・農村基本計画において百十万トンと策定しておりまして、これはもちろん、TPP交渉の結果等を予断することなく定めたものでございます。

 仮に、TPP交渉が合意した場合に当該生産努力目標を見直す必要があるか否かについては、まさに今TPP交渉中でございまして、仮定の質問ということではなかなかお答えすることが難しいということでございます。

福島委員 いや、今回の基本計画は、自給率の目標を定めるに当たっても、餌米を十倍にして、小麦とか大豆はほとんど変えていないんですよ。ある意味、餌米に全ての解決策を求めるやり方なんですよ。

 TPPで、もしかしたら米も別枠の輸入を拡大するかしないかみたいな議論をしているやにお伺いしておりますけれども、そうすれば、ますます国内の米の需要量というのは減っていくわけですね。そういうことを考えれば、今回の基本計画が餌米に大きな役割を背負わせている以上、私は、TPP交渉の結果次第では、これを変えなければならないと思いますよ。

 これはTPP交渉のある程度の見通しが立った時点でもう一度この委員会でも議論させていただきたいと思いますけれども、そういうものだということをまず御指摘させていただきたいと思っております。

 みんな、多くの畜産の人も水田農家も、将来を見通せない不安な中で、今、餌米しか所得を得る手段がないから、頑張って無理をして餌米の作付をしようとしているわけですよ。

 なぜ水田農家が餌米をつくるかといったら、あめとむちの二つがあると思うんですね。あめとむちと言ったらおかしな話ですが、あめは転作に対する助成金、むちは減反じゃない生産調整、生産数量に合わせて作付をすれば直接払いが受けられるという生産調整の二つがあると思うんです。

 今回の基本計画では、米の直接支払交付金、いわゆる我々がやったときの戸別所得補償ですけれども、これを平成二十九年産米までの時限措置とし、平成三十年産からを目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも生産が行える状況になるようにするとしております。一方、飼料用米については、水田活用の直接支払交付金による支援等により生産拡大を図る。

 要するに、むちの部分はなくします。私は、これは甘いむちだと思っているんです、お金がもらえるわけですから。ただ、生産数量目標は守らなければならない。一方、あめの部分の飼料用米については、水田活用の直接支払交付金による支援により生産拡大を図るとしております。

 現在、飼料用米を生産する農家の所得は、財務省の財政審の資料によりますと、九割以上が交付金に頼っている。飼料用米を売って得られるものが所得に占める割合は一割、残り九割が交付金である。つまり、交付金がなければ成り立たないということなんですね。逆に言えば、交付金をもらうために餌米を生産しているというわけです。

 これは、十一万から百十万トンにふやせば、今の制度が続くのだとすれば、当然、それに応じた財政負担というのが生じるものと思われます。機械的に計算した数字でいいんですけれども、飼料用米が百十万トンになったときに、現在の交付単価が継続したとすれば、どのぐらいの財政負担になるか、お答えいただけますでしょうか。

松島政府参考人 飼料用米の増産に伴う財政負担という御質問でございます。

 委員御案内のとおり、飼料用米に対する支援につきましては、収量に応じて交付単価がふえるという仕組みになってございまして、将来の各地域の単収などを見通すことはなかなか難しいということで、飼料用米百十万トンを生産したときに要する財政負担額を示すことは困難であるというふうに考えてございます。

 ただ、委員から機械的にというお話がございました。これは本当に純粋に機械的に試算させていただきますと、例えば、現状の標準単収、反当たり五百三十キログラム、これを、現行の標準的な補助金単価、反当たり八万円を用いまして、百十万トンの飼料用米生産に必要な補助金額を機械的に計算いたしますと、千六百六十億円。

 また、仮に、基本計画の中で生産努力目標で使用しております飼料用米の単収七百五十九キログラム、これが実現された場合に、その補助金単価八万円を掛け合わせまして機械的に試算いたしますと、千百六十億円という計算結果になるところでございます。

福島委員 いずれにしても、一千億を超える膨大な予算がこれから毎年伸びて必要になってくるわけですよ、笑っていらっしゃいますけれども。

 昨年十二月の財務省の財政制度等審議会では、「水田営農は、行政から配分される生産数量や補助金に大きく依存する構造にあり、」「転作助成の在り方を検討していく必要がある。」しっかり査定しましょう、制度の見直しも検討してくださいという指摘をしております。

 本当にこれは、生産数量がこれから目標どおり伸びていったときに、それに値するような財政負担というのはきちんと講じることができるんでしょうか、財務省にお伺いしたいと思います。

大家大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘の財政審の建議では、今も先生御指摘ありましたが、「需要というよりは、補助金の単価が作付する作物の選択に大きな影響を与えていると考えられ」「所得向上に向けた自律的な経営努力を促していくためには、転作助成の在り方を検討していく必要がある。」というふうに提言をしております。このことは、水田農業の成長産業化のためには重要な観点であるというふうに考えています。

 飼料用米等につきましては、今般閣議決定された基本計画において生産拡大を図ることとされていますが、そのために必要な財政支援のあり方については、施策の不断の点検と見直しを行いつつ、毎年度の予算編成過程で議論されるものと考えています。

福島委員 私は、きのう、財務省の質問取りの方にも言ったんですけれども、答弁は政治家の方を出してくださいとお願いしたんですよ。今の答弁はまさに財務省の、役所としての立場だと思うんです。

 今、餌米を進め、この基本計画を進め、農家の所得が倍増していると言っているのは、政治家としての与党の皆さん方なわけなんですよ。私は、皆さん方が、どんなに餌米を作付しても、それに値する財政措置はちゃんと講じるんです、予算措置が講じられるんだから、農家の皆さん方は心配なくできますと言わないと、今のような答弁だったら、つくればつくるほど、いずれ単価を見直されるんじゃないかとなりませんか。現に、みんなそう思っていますよ。

 いいんですか、今の答弁で。自民党の、政府の、与党の議員の一人として、財務政務官として、今の答弁でよろしいんでしょうか。もう一度御答弁ください。

大家大臣政務官 お答えいたします。

 先生の御指摘の件でありますけれども、繰り返しになりますけれども、「不断に点検しながら、生産拡大を図る。」というふうに書かれていますので、財政支援のあり方も含めてきちんとした総合的な点検が行われると考えていますので、毎年度の編成において、これも繰り返しになりますけれども、農水省としっかり議論をしていきたい、その上できちんとした形を出していきたいというふうに思っています。

福島委員 この議論は私に対する答弁であるとともに、多くの人がこの答弁を見ているわけですよ。後で議事録でも出るわけですよ。今の姿勢のもとで政府がこれから餌米の増産を求めていくということで、私は、生産現場の皆さん方が、よし、餌米を作付しようと思うことはないと思いますよ。

 政治家というのは、私のようなぺいぺいが言うのも僣越な話でありますけれども、言葉が全てだと思うんですよ。ちゃんと政治家のメッセージとして、財政はもう大丈夫だ、任せろということを言わないで餌米をつくれつくれというのは、私は非常に酷なことなんじゃないかなというふうに思っております。

 では、どうぞ、大臣。

林国務大臣 財務省が個別の省庁の政策について、これは必ずどんどんやりますということを言うと、国民が財務省から聞いていただきたいのは、財政再建をきちっとやる中で、必要なところに予算をつけていきます、こういうメッセージだと思うんです。農家の方がどうやってこれを今からやっていくかというときには、むしろ我々農水省の発言というのをやはり聞いていただきたいと思います。

 まさに飼料用米の生産拡大に向けては、水田活用の直接支払交付金を充実しまして、数量払いの導入など餌米のインセンティブを高めるということをやってきたわけでございます。

 この八万円のもともとの単価は、政権交代前の自公政権から、福島先生たちがやっていただいたときも引き継がれてきておるわけでございまして、また我々に戻って、八万円という単価を維持しつつ、さらにインセンティブを加えてきた、こういうこともあるわけでございます。

 したがって、農業者の方々が安心して餌米の生産に取り組むことができるよう、まさに食料・農業・農村基本計画というのは閣議決定をしたということでございまして、その中で餌米など戦略作物の生産拡大を位置づけて、その達成に向けて必要な支援を行うこと、こういうことにしたところでございます。

福島委員 あえて反論はしませんけれども、私は、財務省に入る政治家というのは、財政再建と、政治として目標とする政策につける予算をどうつけるかとの兼ね合いの両方であるべきであると思いますから、財政再建だけをやるのが財務省に入った政治家の役割だとは思いません。それはいいです。

 今回、生産調整の見直しの話はちょっと時間がないのでできませんけれども、多分これをやったら、米価はまだまだこれからめちゃくちゃ下がりますよ。困るのは皆さんがおっしゃっている担い手だと思いますよ。担い手に農地がそんなすぐは集約いたしません。みんななかなかそんなに農地は手放しませんよ。損をするのは、今度はプロで、それを主業としてやっている農家だと思うんです。

 現に、ことしの米価が下がって、私の地元のある人は、サラリーマンを二年早く定年をやって、親の田んぼを継いで数十町歩の専業農家をやっていますよ。まさに認定農業者ですよ。でも、この一年間で数百万収入が減りました、サラリーマンで一年間に数百万も下がるなんてあり得ません、そんな仕事は仕事と言えるんですかと涙ながらに訴えていましたよ。

 だからこそ、我々が一番に掲げたのは、再生産可能な経営の確保なんですよ。仕事としてやっているわけですよ。では、これをやって幾ら将来収入が確保されるんですか、それが五年後、十年後どうなるんですかということが見通せなければ、担い手もくそもないわけですよ。

 それは、五年、十年で山もあり谷もあるでしょう。その山、谷を埋めるための保険的なやり方もあると思いますよ。でも、今それが全く見通せなくなっている。不安だからこそ、多くの皆さん方は、規模拡大したくても、いや、金を借りてまで田んぼを新しく買うのはやめようかとか、機械を買うのはやめようかと、シュリンクしちゃっているわけですよ。

 今やっている政策は、逆にそうした将来に対する不確実性や不安を増すような政策が余りにも多いし、それを全て飼料米で一点突破をしようとしている。それを、十倍に数量目標を上げ、交付金を多く出すことによって、そこに農家の経営を頼らせようとしているけれども、生産者の皆さんはそこまで今の政府の政策に信頼度がないと私は思うんですよ。

 ですから、認定農家とかなんとかといって上から目線の政策をやるのではなくて、ある程度生産者の皆さんが安心して、将来の安定が見越せるような、頑張る人を応援するのは当然必要なんですけれども、その基盤となるべきものというのをもう一度しっかりと、この食料・農業・農村基本計画には書いてありませんけれども、政策として講じていただく。その基盤の一つが我々がやっていた戸別所得補償制度なのであり、いろいろな意見はありますけれども、多くの生産者の皆さんは、これがあるから安心して将来の営農ができると言っている人は多くいるわけですよ。

 その意味というのをもう一度しっかり見直していただきますことをお願い申し上げまして、質問時間が参りましたので、私の質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

江藤委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 民主党の小山展弘です。

 福島伸享先生に引き続いて質問いたします。

 まず最初に、食料・農業・農村基本計画の中で、農業所得の試算、今後の見込みについて質問いたしたいと思います。

 この農業所得の試算、農業所得倍増ということで今政府・与党の方では目標を掲げておりますけれども、この見込みというのはインフレ率を勘案した実質値で見込んでいるのか、名目値で見込んでいるのか、まずこのことをお尋ねします。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十七年度の農業所得の試算におきましては、物価変動の要因を除きまして、実質での所得変化を試算するということで、二十五年度の価格を基準価格といたしまして試算をしたところでございます。

 所得の試算に当たりましては、仮に名目値とした場合にはインフレの影響を受けるといったような問題があるということで、実質値としての試算が適切と考えたところでございます。

小山委員 実質値ということを今確認させていただきました。ですので、日銀の金融緩和等の物価上昇に関係なく所得が倍増するという方針で臨まれたということだと思います。

 そこで、次に伺いたいと思いますけれども、政府は、農業所得の試算について、十年後の価格、平成三十七年の価格を、二十五年農家庭先販売価格と同じと仮定して算出をいたしております。また、農水省から示されました農業所得の試算の諸元によりますと、これも価格が変わらないということで、今、福島委員からも質問がありましたが、飼料用米がほぼ一点突破ということですけれども、他の品目についてもほぼ生産量は変わらない、あるいは若干増加ということで、この農業所得ということに関しますと、数量がふえて農業所得が向上するということを想定しております。

 このように、価格が変わらないということをもとに農業所得を算出した根拠について、答弁願います。

    〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕

林国務大臣 まず、先ほどちょっとお答えする機会がなかったので。一点突破ということはなかなか、我々はそういうふうに申し上げているわけではなくて、麦も大豆もやっていこうということで、先ほど佐々木先生のときにもどちらに重点をかけるかが表現の問題だという話がありましたが、そこはあえて申し上げておきたいと思います。

 それで、三十七年度の農業所得の試算ですが、価格の取り扱いについては、農産物の価格は需給の動向等を踏まえて民間取引で決定されますので、非常に上下があるということで、例えばCPIも、コアコアなどでは、生鮮を除く、こういう扱いをしているところもございますので、さらに十年後の価格を見通すのは非常に難しいということがまずあるということでございます。

 十年後の生産額ベースの食料自給率目標をつくるときも、従来から現状の価格を用いて算出をしておりますので、こういうものとの整合性を図るという意味があるということで、この十年後の価格を現状と同価格と仮定をしているということでございます。

小山委員 確かに、今御答弁にもありましたが、一定の前提のもとに試算をしなければいけないということは当然あると思いますし、また、ほかの生産額の試算との関連性ということもあると思います。

 しかしながら、例えば民間で経営改善計画なんかをつくるときには、価格の見込みがどうなるか、それはその時点でそれなりの実証性のあるものをもってやらなければ、とてもじゃないですけれども稟議は通らないんですね。現状価格がどうかということで考えますと、特に米価なんかはもう大変下がっておりますし、お茶の値段なんかも下がっているわけです。こういう価格をむしろかた目に見積もって、特に農業所得の今後倍増ということをおっしゃっているわけですから、そういったものを考えるときには、ややかた目に、価格低下ということも織り込んでいくべきではないか。

 特に、今人口が減少しております。また、高齢化が進む中で、食料需要というものは、やはりこれから大幅に伸びていくというよりも減少していくということが見込まれるのではないか、むしろ価格下落の要因が多い環境であろうかと思います。

 そのような中で、かえって生産量がふえればどうなるか。生産量がふえたことで、さらに供給過剰になって価格下落が発生する、価格低下が起こるということも十分に考えられようかと思います。現に今、米価もそうですし、お茶もそうです。

 こういった中で、今回の農業所得の試算の見通しというのは、価格が一定のもとに算出をしている。農業所得が約六千億、農村関連所得、またこれはこれから質問していきたいと思いますが、これが約三・三兆円増ということですけれども、私は、価格が一定のもとに算出しているというのは、見通しが不十分ではないかと思います。

 関連しまして、当然、価格が低下すれば農家の所得はふえていかないということになるんですけれども、その際に、農家の方々が、例えば所得を確保したいということで数量を伸ばす、あるいは今ロボット化とか大規模化とか機械化を進めて、効率化して生産性を上げるということも考えられますが、それがかえって、供給過剰状態を解消できずに、さらに価格を低下させていく、所得が伸びない、こういう状況を生んでしまう可能性もあるんじゃないか。

 現に、漁業においてはまさにそれが起こっているんです。漁業においては、価格が低下をしてきて、それを数量で確保しよう、そんなことで減船事業なんかもやったんですけれども、それでも、船の性能が伸びて、さらに数量で収入を確保しようとして行き着いた先が、資源が枯渇をして数量すら確保ができなくなって、大幅に漁業者の所得が落ちた。まさにコモンズの悲劇が起きたわけであります。

 こういう需要が減少する局面において、それを生産者が数量で補おう、賄おうとすれば、働いても働いても収入はせいぜい現状維持、大規模化をしてもせいぜい現状維持、あるいは下がっていくということも考えられるかと思います。

 今回の計画におきましては、このような価格が低下していくような局面というのは想定していないんでしょうか。全ての品目については時間の限りもありますので、代表事例として野菜等を御答弁いただきたいと思います。

    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 大変大事なポイントだと思いますが、食料・農業・農村基本計画における生産努力目標の設定に当たりましては、やはり計画期間内における実現可能性というのを重視しまして、現実的な需要の見通し、生産条件を踏まえて設定をしております。

 基本的には、需要面においては、近年の消費の傾向と今後の消費拡大の取り組みを踏まえた一人一年当たりの消費量をベースにしまして、昭和三十七年度の推計人口を勘案して国内消費仕向け量を推計して、生産面については、この国内消費仕向け量をベースに輸入品から国産品への置きかえ等を勘案して生産努力目標を推計する、こういう順番でやっております。

 野菜についてはということですが、生産量を平成二十五年度の千百九十五万トンから千三百九十五万トンへ大きく増加させておるわけです。まず、これは、消費拡大施策によりまして、一人一年当たりの消費量を平成二十五年度の九十二キロから九十八キロに増加をさせるということを見込んでおります。その中で、三百万程度が現在輸入野菜になっておりますが、いろいろな取り組みを今も進めておりますけれども、加工、業務用を中心に、この三分の二、二百万トン程度を国産に置きかえる、こういうことを前提にしてこの試算をしておるところでございます。

 こういうことをやることによって、品目別に国産農産物の需要を見通した上で、需要に応じて生産の拡大を図ろうということでございまして、国内の需給バランスを保ちながらやっていくということで、価格の低下は起こらないというふうに前提として置いている。

 先ほど、平成三十七年度を昭和三十七年度と言ったそうでございます。平成三十七年度の誤りでございます。失礼いたしました。

小山委員 二点ほど指摘をさせていただければと思いますが、今の御答弁ですと、品目ごとに消費の見通しを立てて、その消費量に見合った生産目標を立てるから、だから価格は下がらないと。結局、生産量を伸ばしていくとか、生産量というのは需要と一緒なものを出すんだということでした。これは裏を返せば、消費量が伸びるから価格はそのままでもいい、消費量の伸びに合わせて生産量をふやしていけるんだ、こういうことかと思います。

 繰り返しになりますけれども、本当に今、確かに消費拡大の試みを持って、政府やあるいは消費拡大の取り組みで実際に消費量がふえるんだということで試算をされているということですが、やはり、人口減少と高齢化の中で、ただでさえ消費量は減っていくと思うんです。この中で消費拡大の試みをして、せいぜい現状維持か下げどまりということになっていくというかた目の見通しも、やはり私は持つべきではないだろうかと。

 米なんかは、実際、確かに、本当に純粋な米、八百五十九万トンから七百五十二万トンに見込み減ということで立てられているんですけれども、ほかの品目についても本当に微増微増で、大豆は二十万トンから三十二万トンとかなっていますけれども、このあたりも、本当に消費量が伸びていくのかどうかというところは、やはりもう少しかた目に見ていくことが必要ではないか、そのように思います。

 それともう一つ、野菜についてですけれども、二百万トンが、業務用の輸入してきている野菜に国内のものを充てるという答弁でしたが、やはり業務用ということですから、もちろん、安定供給という部分で外国の輸入品の野菜の方が適しているというような、国内だと安定供給できない、物がないというところはあるのかもしれないですけれども、普通に考えれば、外国から来る野菜は相当安いものだと思います、薬漬けになっている可能性もあるかと思いますけれども。そこにかわっていくということであれば、国内のほかの野菜の流通よりも単価が下がるということもやはり考えられるのではないか。

 こういったことも考えますと、私は、今回の所得の見込みというのは、価格が一定になっているというところも消費量次第ということと、この中についても、野菜について言えば、外国の業務用の置きかえで消費量が伸びるということであれば、やはり価格が下がるんじゃないか。そうしますと、やはり、ここの価格の見通しという中で所得倍増というのは、やや甘い見通しではないかなということを感じております。

 さらに、お茶について伺っていきたいと思います。

 農水省からの事前の質問取りのときの話で、発酵茶とかペットボトルあるいはティーバッグ等への需要の対応、そして輸出によりお茶の生産がふえるということでございましたが、特に、ペットボトルのお茶がふえれば、これは単価が下がる可能性の方が高いですね。三十七年まで同じ価格として算定していますけれども、現状でもお茶も米価と一緒で在庫がだぶついていて、今後も価格低迷が見通されております。

 また、輸出についても、アメリカの富裕層が輸出の全体の数量の半分ということですけれども、アメリカも、業務用が中国茶、富裕層向けの健康志向のお茶が日本ということですが、中国茶の七倍の価格で日本が売っている。ここを、さらに今以上に価格を上げていくということが輸出では難しいと思うんですね。

 その中で、国内では、ペットボトルとかの数量が伸びて、これは価格が下がります。輸出で価格が上がるよということは言いにくい状況だと思うんですね。そうしますと、やはりこれも価格見通しが私は甘いと思います。

 むしろ、お茶については、生産調整なんかも行って、供給量自体をやはり需要に見合って減らしていくというようなこともこれから考えていかないと、競争貧乏になるんじゃないか、そういうようなことも私は考えるんですけれども、どのような認識をお持ちでしょうか。

松島政府参考人 お茶につきましての見通しでございますけれども、基本計画におきましては、お茶の生産量、生産努力目標につきまして、平成二十五年が八万五千トンでございますが、これを一万トン増の九・五万トンという形で設定させていただいております。

 この根拠でございますけれども、委員からお話がございましたように、お茶の需要につきましては横ばいということで、近年では若干価格が低落傾向にあるということでございますので、この一万トンの増という部分につきましては、輸出の増でその部分を、国内生産をふやしていこうという考え方でございます。

 その輸出の増をどういう形で見込んでいるかということでございますけれども、近年の我が国のお茶の輸出につきましては、外国におきます和食ブームということもございまして、五年前と比較して輸出額ベースで二倍以上にふえているという実態がございます。

 また、FAOという国際機関がございますけれども、そこでの分析によりますと、今後、世界の茶の貿易量はさらに増加するということで、二〇一三年、平成二十五年の段階で三十八万トンの貿易量があるんですが、これが平成三十五年、十年後に六十八万トンになるということで、まだまだお茶の全体の貿易量はふえていくのではないかというふうに考えてございます。

 そういった中で、では、我が国のお茶の輸出ということに目を向けますと、先ほど委員から御指摘がございましたように、やはり米国における輸入需要が大変大きいという中で、中国茶は非常に安価なものでございますから、そういったものと差別化を図って、富裕層に対しての売り込みということもございますし、また、EUといった、まだまだこれから開拓できる新規市場もございます。こういったところに販売促進をいたしまして、一昨年の八月に輸出目標を定めておりますけれども、これは平成三十二年に茶輸出額百五十億円という課題を設定いたしまして輸出に取り組んでいるということでございます。

 輸出につきましては、現在さまざまな課題がございますけれども、その中で、例えば、新規市場と考えてございますEUにおきましては、残留農薬基準が日本と異なっているということがございます。それが日本の茶の輸出のネックになっているということもございますので、例えば、EU側におきまして新たな残留農薬基準の設定をしていただくよう申請する場合に、必要な残留農薬データの収集や分析について、それに係る経費について支援申し上げたりとか、また、欧米などの残留農薬基準に対応したお茶を生産するために、農薬ではなくて天敵を利用した防除を行う、こういったことについても取り組んでございます。

 総合的に茶の輸出の拡大を促進してまいりたいと考えているところでございます。

小山委員 余り、発酵茶とか国内の需要の増というよりも、一万トンはほとんど輸出の増ということですね。

 そういう答弁でしたので、そこのところは余り時間もないので触れませんけれども、中国茶の方が価格は七分の一。その中で、中国茶と日本茶でどれほど差別化が図れるのかというところでは、農薬の問題ももちろんある中で、私はそれほど日本茶に、日本でつくったというブランド以外のところでどのぐらい差別化が図れるというふうにお考えになっておりますでしょうか。

松島政府参考人 先ほど委員からまさに御質問がございましたように、七倍の価格差がある中で、我が国のお茶のアメリカへの輸出がふえている、こういう事実がアメリカ市場においてしっかり差別化が図られているということの証左ではないかというふうに考えているところでございます。

小山委員 日本製品の品質のよさとか、具体的なものはちょっとないという、今、売れているから売れているんだという話では、将来にもわたって今のような輸出が伸びていくということは、ちょっと今急な質問をいたしましたけれども、自信を持ってこれからもずっと伸びていくということは言いがたいかもしれない。あるいは、中国なんかがもっとアメリカに対して別な売り込みをかけたりしてくれば、必ずしも順調に輸出が伸びていけるというような見込みとは言えないのではないかと思います。

 関連しまして、お茶の、燃油価格の影響を受けにくい省エネ型の生産体制への転換を推進していくということがありますが、これはどのようなことでしょうか。

松島政府参考人 燃油高騰対策ということにつきましては、かねてから、漁船の燃油高騰対策ですとか、それから施設園芸の燃油高騰対策ということで、生産コストに占める燃油の割合が高い分野につきまして政府として支援をさせていただいたわけでございますけれども、お茶につきましても、これまではそういう燃油対策がなかったわけでございますけれども、実は、荒茶加工の過程を中心に大変燃油を使う業種でございまして、経営費のうち、燃油の占める割合が二割から三割程度あるということでございます。

 現在、燃油価格は落ちついてございますけれども、今後とも安定的に生産コストの削減を図っていく上で、やはり省エネ化を進めることが大事だということで、実は、平成二十七年度から新たに、省エネ型加工機械のリース導入支援ということで、燃油使用量を一五%から二五%削減できる省エネ型粗揉機、加工の機械でございますが、そういったものの導入に当たって支援しましたり、また、そういった省エネ対策に取り組むお茶農家に対しまして、燃油が高騰した場合に交付金を交付するセーフティーネット事業というものを措置したところでございます。

 今後は、こうした支援措置を産地で御活用いただきまして、燃油価格の影響を受けにくい省エネ型の生産体制への転換を進めていただきたいと考えているところでございます。

小山委員 省エネ型の生産機械の導入をリースで進めていくという、このこと自体は決して悪いことではないと思うんです。ただ、では、どのぐらいのお茶農家さんがこれを導入するかということ、現場感覚から考えると、なかなかこれは少し現場の現状と意識がずれているように思うんですね。

 その前に申し上げたいと思いますのは、農家所得の倍増、これは当然どの農家さんも、自分たちの所得が倍になるんじゃないかということを期待するわけです。もちろん、お茶というのは、民主党のやっておりました戸別所得補償政策の対象でもありませんでした。ですから当時も、何でお茶だけ戸別所得補償の対象じゃないんだよなんというようなことも私なんかは言われていたんですけれども、そういった中で、今お茶の価格が、先ほども申し上げましたように、どんどん下がっているわけなんですね。

 福島委員から、お米についても今見通しが見通せない、そういう中で、飼料米に行こうかどうか、あるいは経営をやめていこうか、廃業しようか、継続しようかということをぎりぎりのところで迷っているのが農家の方々の今の、現状の姿だというお話がありましたが、まさにそこの点はお茶も一緒でありまして、もう経営をやめようか、お茶はやめようか、こういうところに、省エネ機械を導入すればコストが下がるから、だからコストが下がった分は農家の方の所得がふえますよということが、いかに空虚な言葉に聞こえるかということではないかなと。

 当然、設備を入れれば、その分借り入れもして、あるいはそれを償還する余力もなければいけないわけですから、そういう償還余力のある農家というと非常に限られてきますし、やはりここは少し、省エネ機械を導入するからコストが下がるし所得がふえるというのは、かなりこれは現場に響かない言葉ではないかと思います。

 ここから先、農村関連所得というところに質問を進めていきたいと思いますが、お配りしました資料をごらんいただければと思います。

 先ほども申し上げましたが、農業・農村所得の倍増ということなんですけれども、こちらの表のとおり、平成二十五年では、農業所得二・九兆円、関連所得一・二兆円、これで合計四・一兆円。これが平成三十七年に、農業所得が三・五兆円で六千億円増、関連所得が四・五兆円で三・三兆円増、合計で約八兆円で倍増になります、そういう見通しかと思います。

 このそれぞれの平成二十五年と平成三十七年を比べてみますと、金額ベースでいうと、輸出が一兆三百億円伸びる、次、加工が六千五百億円伸びると。ここが金額ベースでは多いわけです。増加率で見ますと、輸出が七・一倍、医福食農連携が十一・八倍、ICT活用・流通が八・三倍、バイオマス・再生可能エネルギーが八・八倍と。

 八倍から十倍、こういう見込みになっていて、むしろ、増加率の方で見ますと、加工とか、都市と農山村の交流とか、あるいは地産地消の推進、約二倍から二・五倍ということなんですが、このあたりはある程度、実現可能性というか、それとか目標値で考えても、これは何となく肌感覚でも感じるところですけれども、輸出について七倍、金額でも一兆三百億円と非常に大きな割合を占めておるわけなんですが、この点、日本の国内の需要も含めて、世界全体の食料需要をどの程度見込んでいて、為替はどの程度で考えているか、どの国にどの品目をどの程度輸出するのか、一兆円の算出根拠は何かということを伺いたいと思います。

 輸出がふえるといっても、これまでの傾向を見てみますと、平成十七年から二十四年までは、四千億円から五千億円ぐらいの間で推移をいたしております。平成二十五年になって初めて五千五百億円、平成二十六年になって六千百十七億円とふえておりますが、これが毎年これからずっと一千億円ふえていくというのは、トレンドということだけでは根拠が薄いのではないか、このように考えますけれども、どのような根拠があるんでしょうか。

林国務大臣 輸出でございますが、まさに今お話ししていただいた、成長が見込まれる世界の食関連市場、いろいろな推計がございますが、十年ぐらいで倍になる、こういうふうに言われております。特にアジアが成長著しい、アジアの食市場は三倍だ、こういうふうにも言われておるわけでございますが、ここに限らず、より購買力の高い、人口を多く擁する欧米の大市場、これも同じように重視して拡大を図っていきたいと思っております。

 実は、お触れいただいた平成二十五年というのが、政策的な目標を掲げて、その前の年の二〇一二年、平成二十四年の四千五百億円を、オリンピックの二〇二〇年までに倍増しようということで、一兆円の目標というのを掲げて、そして、品目別、仕向け国別の戦略目標を全部つくり、それぞれの課題を全部抽出して、品目別の実行委員会なるものもだんだんできてきた、こういう状況でございます。

 その目標がまさに立って、平成三十二年が一兆円ということでございますが、それに向けて、四千五百が五千五百、六千百、こういうふうに推移をしてきておるわけでございまして、先ほど、どなたかの御質問で、一兆円をより早くより大きく超えていくということを今目指しておるわけでございます。さらに、一兆円の先の目標として、この実績をもとに、平成四十二年に輸出額五兆円の実現を目指す、こう書いております。

 実は、例えば、今、四千五百が六千百にふえた、さらにふやすんだということですが、フランスやイタリアを見ますと、これは委員御案内だと思いますけれども、一桁多い四兆円とか六兆円とか、そういうものをやっているわけでございます。したがって、この五兆円というのも、一兆円をつくったときも、そんな倍になるなんてという声もあったわけでございますが、今そこに向かってまさに推移をしておりますので、そういうことで、この五兆円の目標に向けて頑張っていきたいと思っております。

 この平成三十二年の一兆円と四十二年の五兆円の中間値が三兆円でございますが、この中間値を一五%程度上回る、こういうふうに見込んで、市場規模を三・四五兆円、こういうふうに推計をしております。これに付加価値率を乗じて、所得ベースで一・二兆円、こういう試算をしております。

小山委員 確かに、輸出を促進していくというところは重要なことですし、これは大変いいことだと思います。

 しかし、ここも微妙に、農業・農村所得ということで、今回この計画にはあるわけなんですけれども、実際の輸出の中身を見てみますと、水産物がかなり大きいウエートを占めている、あるいは加工食品が非常に大きいウエートを占めている。

 言いますと、農家の方々が所得の倍増、その中の大宗が、大宗まではいかないですが、大きなウエートを占めているのが農村関連所得、その農村関連所得の中でも一番大きいのがこの輸出と。全体から見れば輸出の割合というものはそれなりに、少ないかもしれませんが、無視できる要因ではない。その輸出の中身を見てみますと、加工食品と水産物が多い。

 そうしますと、漁村と農村が一体となっているようなところなんかはプラスの影響が出るかもしれないですけれども、必ずしも、輸出といっても、農産物そのものが輸出されていくというよりも、加工食品とか水産物が多いわけですから、このあたりも、実際に自分たちの所得が倍増するんじゃないかと思っている農家の方々からすると、少し意識にずれが生じてくるのではないかということも考えられるかと思います。

 また、アジアへの輸出ということですけれども、シンガポールあるいは中国といったような国々もこれから高齢化が始まってまいります。そういうところで本当にこれからも食料の輸出ニーズというものが継続的に出てくるのかどうか、こういったところもやはり考えていかなければならないとは思います。

 確かに、イタリア、フランスなどが、今の日本の一桁多い農産物、農業関連の輸出があることを考えますと、もちろんこの点は積極的に取り組んでいくところかと思いますが、やはり農業所得、農村関連所得という、この所得と関係して話すときには、少しこれも甘い見通しではないかということを指摘せざるを得ないと思っております。

 関連しまして、この表で示しましたが、この農村関連所得のところで、医福食農連携が十一・八倍、ICT活用・流通が八・三倍、バイオマス・再生可能エネルギーが八・八倍という非常に高い見込みとなっておりますが、これらの根拠はどのようなものでしょうか。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘になりました医福食農連携、これは、例えば介護食であるとか、それから、この四月から表示ができましたけれども、機能性食品、農産物、こういったものでございますし、あるいはICT活用・流通の分野、これはEコマースであるとか宅配サービスということでありまして、今後新たに成長が望まれるという分野を対象にしております。

 それぞれの分野、例えば介護食でありますと、現在五百七十一万人の要介護の方がいらっしゃいまして、五十年後には一千万人に迫るんじゃないか、あるいは超えるんじゃないかと見通されております。

 そういった状況において、現在の市場規模、売り上げ高でございますが、それに過去のトレンドの伸び率を乗じまして、市場全体の規模を推計しました。その中で、農村に帰属する割合という形で、先ほど来御指摘がありましたけれども、農家の皆さんが出した原料の部分に返る部分、そういったものを乗じまして、それに、中間投入額を除くためにも、付加価値率を乗じることによって関連所得を算出したところでございます。

 また、バイオマス・再生可能エネルギー分野につきましては、電源ごとの取り組みを推計しまして、固定価格買い取り制度における売電価格を乗じた、それとともに、バイオマスについて、バイオマスごとの賦存量に、バイオマス製品ごとの利用率、そしてバイオマスごとの販売価格をそれぞれ乗じて市場規模を推計しまして、これらに付加価値率を乗ずることによって関連所得を推計したところでございます。

小山委員 医福食農連携とICT活用・流通については将来の需要を見込んでということですが、これもシンクタンクの調査結果をもとにしているということですけれども、シンクタンクだとかコンサルなんというのは顧客が喜ぶようなデータを出すようなところもあるので、この点はこれから農水省の方でも調査をして積み上げていっていただきたいと思いますが、その中で、バイオマス・再生可能エネルギーは、これは積み上げて見込みを出したということでございます。

 それでは、固定価格買い取り制度の運用を基礎とするということなんですが、今後、政府の再生可能エネルギーの買い取り制度に対する方針というのは変わらないんでしょうか。

木村政府参考人 固定価格買い取り制度でございますけれども、開始から二年半たちまして、この制度の対象としております再生可能エネルギーの導入量は八割近く伸びてございます。このことは、この制度の再生可能エネルギー導入拡大における非常に高い意義というものを示すものと評価をしてございます。

 他方、やはり太陽光中心で導入が進んでおりまして、国民負担の上昇でございますとか電力系統の受け入れ能力の限界といった、幾つかの批判あるいは課題があるということも事実でございます。

 必要な見直しの検討は進めてまいらないといけないとは思っておりますけれども、やはりこの制度の再エネ導入拡大における高い意義に鑑みまして、引き続き適切な運用を図ってまいりたいと考えてございます。

小山委員 先ほどの財務省の話とある意味相似形、似ているかと思いますけれども、これからこの価格が変わるかもしれないということですね。ですから、ここもやはり将来にわたった根拠がかなり不安定な部分ではないかと思います。

 時間もないので、活力ある農山漁村づくりの中で、社会的企業とかいろいろ触れられておりますけれども、なぜ、今かなり中心的な役割を果たしている協同組合、農協について触れられていないのか。あるいは、基本計画には書いてないものの、農村振興という観点から農協や漁協あるいは森林組合が果たすべき役割、期待される役割はどのようなものであると政府が認識しているか、御答弁をいただきたいと思います。

林国務大臣 食料・農業・農村基本計画を閣議決定いたしたときに、これにあわせて、魅力ある農山漁村づくりに向けたビジョンということで、活力ある農山漁村づくり検討会報告書、これも決定させていただいております。

 この中で、都市と農山漁村を人々が行き交う田園回帰を実現するために、小さなビジネスを営みながら、民間主体で地域の課題解決に取り組む、いわゆるソーシャルビジネス、社会的企業とでもいうんだと思いますが、こういう方々が活躍できる環境を整備するという施策の方向性を提示いたしました。

 ここで言う社会的企業は、会社形態でなくてはならないというものではございませんので、まさに農山漁村において実際上地域のインフラとしての側面を持っている例として、この報告書の中でも、これは岩手県の例ですが、有限会社が漁協と連携をして漁業の活性化に取り組んでいる例、それから、岡山県の西粟倉村ですが、村役場と森林組合が連携をして森林整備を担っている例、こういうものを取り上げているところでございます。

小山委員 社会的企業の中には協同組合も入ってくるということでございますが、企業の中に協同組合、確かに一般の方から見ると見分けがつきにくいということはあるかもしれないですけれども、やはり協同組合は協同組合としてしっかり位置づけていただければと。特に、今、農協法の制度変更等で議論がなされて、かなり協同組合の組合員やあるいは職員の皆さんも動揺がありますので、そのようにしていただけたらと思っております。

 最後に、団体の再編整備等に関する施策の中で、土地改良区について、合併とありますけれども、これは水系が異なる改良区が合併することも視野に入れているんでしょうか。

林国務大臣 土地改良区の合併は、土地改良法の規定がございまして、それぞれの土地改良区が行う土地改良事業相互間に相当の関連性があれば、そういう場合に限ってできる、こうなっております。

 相当の関連性がある場合というのは、水系を通じたつながり以外にも、例えば同じ行政単位であるというような社会的つながりを有する場合もあって、水系が異なる土地改良が合併する場合もあり得るということでございます。

 土地改良区の間でこういう関連性のもとに合併を行おうとする場合は、賦課金等の水準が異なる場合もあるわけでございますが、合併協議会を設置していただいてあらかじめ所要の調整を行っていただく、こういうふうになっておりまして、こういう合併協議会の設置等への支援を農林水産省としても引き続きやっていくことによって、合併による土地改良区の組織運営基盤の強化を促進してまいりたいと思っております。

小山委員 水系の異なる改良区が合併するということもあり得ると。確かに、従事者が減る中で維持しがたいというところはあろうかと思いますが、大臣の御答弁にもあったとおり、賦課金が異なるとか、もともと組織あるいは歴史背景が異なるわけですから、この点が無理な合併、合併のための合併ということになりますと非常に現場にも混乱が起きるかと思います。

 また、事務的なものであれば、それをサポートするためにまさに連合会があるわけですので、これは規制改革会議で常に、連合会を廃止せよとかそういう問題も出てくるものですから、ぜひ、現場の現状を踏まえて、進めるべきものがあれば進めていただきたいと思っております。

 以上で質問を終わります。

江藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

江藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。よろしくお願いいたします。

 基本計画についての質問を幾つかしますが、まず最初に、農地集積バンクについて。

 お手元に資料を配っておりますが、一を見てください。これは予算委員会あるいは当委員会でも何度も出した資料でありますけれども、二十三万ヘクタールの公募、借り受け希望があるので、しっかりとマッチングを進めていこうということで、さまざまな方策、予算的な手当てもとられてきたと思います。

 年度がかわって、きょうは四月十五日になりました。二十六年度末時点での初年度、農地バンクの執行の実績について教えていただきたいと思いますけれども、三月末時点での面積ベースでのマッチング比率、二十三万ヘクタールについて、どこまでマッチングが進みましたでしょうか、教えてください。

奥原政府参考人 農地中間管理機構の実績でございますが、この政策は極めて重要な政策でございますので、実質的な初年度であります二十六年度の数字、これをきちんと収集し、分析、評価をして、今後どうするかということを検討していきたいと思っております。

 その観点で、実は昨年の九月から、全ての都道府県に対しまして、三月末のデータをいろいろな角度で整理をして、これを四月の終わりまでに国の方に報告をしていただくということで要請をしているところでございます。

 先生から御要請がございましたので、現時点で来ているものだけ、これはちょっとまだ精査は終わっておりませんが、それでお出しをしたのがこの六県の数字でございます。今先生が配られたここにも書いてございますけれども、今来ておりますのは六県だけでございまして、六県で、この三月末に貸し付けた面積、これは合計で三百二十ヘクタールという状況でございます。

玉木委員 また、資料一、そして二も見ていただきたいんですが、資料一の下に、二月二十五日の予算委員会での私の質問に対して田中主計局長は、一月から三月に恐らく、農閑期でございますので、一番マッチングが行われるということで、去年の八月時点、十二月末時点、それぞれの数字は出していただきましたけれども、低調でありました。

 ただ、一、二、三のこの三カ月でぐっと伸びるので、資料一にも書いてございます機構集積協力金、二十七年度当初を合わせますと五百億円を超えるお金が今積まれているわけですね。確認できた時点で、昨年末で十六億円しか使っておりません。一割も使っていないという状況であります。

 下を見てください。今、奥原局長から説明がありましたが、六県についてだけは確かに出してきていただきました。それで、二十三万ヘクタールというトータルの目標、それぞれ各県ごとに目標がありますけれども、それを全て各県に割り振って、それとの比率を求めたところ、埼玉県、左上にありますが、黄色のところです、二十三万ヘクタールの借り受け希望面積、埼玉県は二百七十ヘクタールですね。これに対して昨年度末でマッチングできたのが七十ヘクタールということで、率にして二五・九、四分の一ぐらいの目標かなというところであります。

 その下、山梨、静岡、三重、和歌山、香川と六県ありますけれども、これを見ていただくと、局長が今答弁されたように、足すと三百二十なんですが、この六県の二十三万ヘクタールに該当する借り受け総希望面積は五千百二十でありますから、三百二十のマッチングでいうと、六・三%ということですね、年度を締めた数字が。

 ただ、少し見ていただくとわかるんですが、三重県なんかは借り受け希望面積は三千六百六十と非常に多くて、八十しか出てきませんから、二・二と大変低いので、五中三ではありませんけれども、上下の極端なものを除いて四県で、トレンドを見るために計算しますと、六中四とあえて書いていますが、一千三百八十ヘクタールに対して百九十ヘクタール、率にして一三・八%です。

 私もいろいろ地元で話を聞いていると、私の本当に直観なんですけれども、多分、年度を締めて、大体一割から二割の間で着地するのかなというようなイメージを私は持っているんです、初年度。ですから、もちろん関連する予算についても、使えて一割から二割ぐらいかなというふうに思っておりまして、少し予想よりは当初の出足が悪いのかなと思っております。

 まだこれから数字が出てくるということですけれども、現時点で、林大臣、大きな政策の目玉であります農地集積バンクの一年目、活動実績、実態、こういったものについてどういった御所見をお持ちなのか、お答えください。

林国務大臣 この農地中間管理機構については、今お話がありましたように、昨年度が実質初年度であったということでございますので、この初年度の実績についてはことしの三月末時点のデータを踏まえて検証、評価を行うということにしておりますが、先ほど答弁いたしましたように、県、機構、市町村、それぞれからデータを収集しておるところでございまして、今、六県の数字だけはわかっている範囲でお示ししたところでございますが、まだ評価できる段階ではないというふうには思っております。

 ただ、今、六中四というのもお示しいただきましたが、全都道府県で軌道に乗っている状況とはなっていない、こういうふうに思っております。

 この背景としては、まず、役職員の意識として、我々は、不動産屋ではなくて、ニーズがあったら間をつなぐということではなくて、ディベロッパーということで、やはり、地域の将来を自分たちである程度イメージを持ってデザインしていく、ディベロッパー的な自覚を持ってもらいたいと思っておりましたが、まだこういうところが十分でないということ。それから、人・農地プランなどの地域の農業者の話し合いが十分進んでいないなど、これは地域にもよりますが、出し手の掘り起こし活動が十分とは言えないこと。それからもう一つは、やはり機構そのものの、その事業に対して農業者への周知が徹底されていないこと、こういう問題があるのではないかと考えております。

 初年度の機構の実績について、さまざまな三月末時点のデータを収集しまして、官邸の本部でも評価をすることになっておりますが、機構の活動の検証、評価をさまざまな角度から徹底的に行いまして、全都道府県で機構事業が軌道に乗っていくために具体的な対応策を検討したいと思っております。

玉木委員 二つお願いがあります。

 一つは、これは多分、結論、三月末時点の数字が出てくると、余りやはり進まなかったという数字が出てくると思います。私は、このトレンド、六中四で見ると。そのときに、何がうまくいかなかった理由なのかということを徹底的に調査をしてもらいたいと思うんですね。いろいろな理由があると思いますけれども、本質的な問題が何なのかというのは地域ごとに違うかもしれませんが、これはぜひお願いしたい。

 その観点から、今大臣が少しおっしゃいましたけれども、やはり人・農地プランですよ。去年の審議で、皆さんも覚えておられる方は多いと思いますが、この農地中間管理機構、農地バンクと、人・農地プランのリンクを切ろうとしたんですよ、官邸は。そのことは、単に切っておいしいところだけ企業が持っていくということはうまくいかない、農地法一条の地域との調和要件、こういう理念をしっかり入れましょうということで、修正なり附帯決議をつけさせていただいた経緯がございます。これは宮腰先生にも御努力いただきました。

 私は今こそ、あそこは問題になってきていると思うし、もう一度あの理念に戻っていくべきではないか。徹底的に、もう一回、例えば人・農地プランをやり直す。これは、青年就農給付金をもらうためだけに、とりあえずやりましょうとつくったところも正直多いんですね。そうではなくて、一体誰がこの地域でいかなる作物を、どういう土地の形態でつくるのかということをもう一回、地域の人、非農家も含めて集まって話し合って、その中で、誰に集約していくんだ、これができて初めて土地は動き始めると思うんですね。

 こういうことをもう一回掘り起こして、多少最初は時間がかかってもいいと思います。だから、私は、おくれていることを必ずしも批判しません。ですから、本質的な問題にやはりしっかりと向き合っていくということをぜひ農林水産省としてもやっていただきたい。これが一点です。

 もう一つは、予算についてであります。

 これは補正予算のときにやりましたけれども、資料一の右の方にちょっと書いていますが、これは急いでやろうということで、二十五年度、まず補正から始めて、百五十三億円つけて、二十六年度当初で百億つけて、当初、十四万、十五万ヘクタールと平均で考えていたんだけれども、調べたら二十三万ヘクタールで、九万ヘクタールふえたので、念のため、これは主計局長の言葉ですけれども、念のため予算をつけようということで、緊要性が財政法上求められている補正予算の中で、念のため九万ヘクタール分として二百億円積んだんです、これは。

 しかし、多分、これは実績が出てきて、例えば五十億しか機構集積協力金が使えないということになると、当初予算でさえ消化できないということになりますね。そうなると、補正、つまり九万ヘクタール分の二百億円は、結果として全く使わなかった、使えなかったということになると思います。

 財政法が求める緊要性の要件から明らかに外れますので、これは一旦国庫返納する。また必要なら二十七年度補正でつけるということをやるべきだと思うし、もう一つは、間もなく二十八年度の予算編成が始まります。大体連休ごろから推計をやって次の年の予算というのは組み始めるので、今回出てきた実績なんかをきちんと反映して、必要な額だけきちんと積むということをしっかりやってください。

 なぜこういうことを言うかというと、このお金があれば、例えば、二十六年度補正でも、今回、実はがたんと減っているんですけれども、土地改良の予算とか、いわゆるNN予算、もっとつければいいのにつけられていないんですよ。ブタ積みになっていて、こういうところに無駄に使うんだったら、やはりしっかりつけるべきです。(発言する者あり)今やじがありましたけれども、二十二年度の、最初の二十二年度当初では減りましたけれども、二十二年度補正と予備費でしっかりつけて、ほぼ数字を戻しているというケースもあるんです。

 ですから、補正でもこういうふうにつけるのではなくて、真に必要なものを見積もった上で、やはりこれだけ農業予算は厳しいわけですから、NN予算とか、あるいは他の予算についても振り向けるということを、もっと厳密な、査定ではなくて要求段階から、真に必要な予算をしっかりと農水省としても考えていただきたい。

 このことを二つ、お願いをしたいというふうに思います。

 次に移ります。

 資料の三を見てください。これは前回も当委員会で取り上げましたし、同僚の小山議員も今取り上げましたけれども、いわゆる農業・農村所得倍増についてであります。

 私は何度も申し上げているように、倍増という言葉はやはり公式な場では余り使わない方がいいんじゃないかということは、農業所得自体は、これは農林水産省の審議会の議論でも、一・二倍にしかならない。ポイントは、農村地域の関連所得で大きく膨らませているというのが実態だということは、この前も申し上げました。

 そこで、農村地域の関連所得について、きょうは質問を申し上げたいんですけれども、そもそも、農業・農村所得倍増といいますけれども、後段の農村所得、ここで定義されている農村、この農村の定義を教えてください。

林国務大臣 平成二十五年の十二月に、農林水産業・地域の活力創造プラン等で、今後十年間で農業・農村の所得倍増を目指す、こういうふうにされておりまして、これを踏まえて試算を行っております。

 農村の所得ですが、統計上の定義はございませんが、今回の試算においては、六次産業化等の推進を通じた農村地域の関連所得というふうに概念上整理をいたしまして、具体的には、国民経済計算の考え方をもとに、市場全体の規模に農村への帰属割合を乗じまして、掛け算をして、さらに、こうして得られた市場規模に付加価値率を乗じて、これは所得ですから、出した、こういうことであります。

 試算に当たっては、加工、直売の取り組み、都市と農村の交流、再生可能エネルギーやバイオマスの利活用の取り組み、今後成長が期待できる、こういう七分野を対象として、農村地域の関連所得の増大につながるということを示したわけでございます。

 食料・農業・農村基本計画においては、農村というのは地域の範囲を具体的に限定する概念として使っているものではなくて、一般的に農業的な土地利用が相当の部分を占め、かつ、農業生産と生活が一体として営まれており、居住の密度が低く分散しているようなところを指しております。

 したがって、こうしたところ以外での取り組みを除外するために、先ほど申し上げましたような農村への帰属割合というのを掛け算した、こういうことでございます。

玉木委員 ますますよくわからない。

 まず、農村の定義はないという大臣の御答弁。でも、農村所得ということを使って、それが倍になるという説明をしている。定義のないものは検証不能ですから、私はこれは公的な文書としていかがなものかと改めて指摘を申し上げたいのと、あと、農村の帰属割合ということを今おっしゃいましたけれども、農村の帰属割合ということを言うのであれば、農村に帰属させるものと農村に帰属できないものがあります。

 そうすると、農村に帰属させるものと帰属させられないもの、そこがやはり分かれるはずなんですが、今の大臣の答弁だと、周辺事態法じゃないですけれども、農村というのは地理的概念じゃないんですよね、今の御説明だと。でも、帰属させるものとさせないものがあるということは、何らかの概念というか、そこにやはり基準を引いているわけであって、そこは一体何なんでしょうか。

林国務大臣 ちょっと先ほど申し上げましたように、統計上の定義として農村ということで定義して統計をとっているわけではないということでございますので、農村地域の関連所得を、今まさにおっしゃっていただいたように、後からきちっと検証ができるように概念上整理をしてこの農村への帰属割合を乗じた、こういうことでございまして、それぞれの分野で帰属割合を乗じて、その分野に応じて出している、こういうことでございます。

玉木委員 その帰属割合の計算方式を教えてください。

櫻庭政府参考人 農村の帰属割合とは、やはり食品産業というかそういうものが、概念上、農村地域以外で活動している場合もございます。その部分を、その経済活動を控除するために算出したものでございます。

 具体的には、これも民間の調査でございますけれども、地場農産物を使用して加工食品を製造している企業の割合、これはアンケートをとっておりますけれども、六三%ございます。そして、当該企業の売上高全体に占める地場産品の割合が二四%でございます。それぞれ掛け合わせることによって一五%、これを代替値として帰属割合とみなしたところでございます。

玉木委員 農村の帰属ということを考えるときに、今非常に大事な答弁をいただいたのは、地場産品という概念を用いるということですね。

 地場の定義を教えてください。

櫻庭政府参考人 いろいろ物品によって、産物によって違うかと思いますが、エリアでございますけれども、やはり当該食品産業なり販売する者が、いわゆる地元の地理的なエリアあるいは産地的なエリアのものを調達できる範囲ではないかと考えております。

玉木委員 例えば、これは機能性食品とか介護食品のときは、地場産品比率を掛けるんですね。ただ、輸出のことを考えるときには、原材料の国産割合という概念を今度出してくるんですが、この地場産ということと国産はどう違うんですか。同じなんですか。

櫻庭政府参考人 国産というのは、まさしく日本の国内でつくられたものであるかと思います。

 日本は、地域、あるいは都道府県、広うございますので、ある一定のエリア、例えば都道府県、あるいは旧市町村、あるいは密接に経済関係が絡んでいる隣同士の県、そういったものが地場に関係するのではないかと思います。

玉木委員 よくわからないですね。

 関連所得は七つの項目から成り立っていますけれども、域外のものは控除するという概念は私もよくわかります、農村の所得にやはりつながっていくと。ただ、あるものでは国産割合という概念を使い、あるものでは地場の概念を使うということになっておるんですけれども、なぜそれを分けるんですか。

櫻庭政府参考人 先ほど、国産割合の問題を、ちょっと御説明が不足したので、あわせて御説明させていただきますけれども、食品産業が原料を調達するときの国産の割合、これは産業連関表で推計できております。それは、現在七三%というのが国産使用割合ということでございます。

 そして、先ほど帰属割合で申し上げました推計値、これは、先ほど申した結果、一五%という形で推計したところでございます。

玉木委員 それは事実を説明されているのであって、なぜ国産比率をある項目には使い、ある項目には地場産比率を使うのかという説明にはなっていないと思いますね。

 では、ちょっと視点を変えて質問します。

 六次産業化の加工、直売のものですね、一番大きいところですが、この加工の部分、これは大きいんですけれども、農村帰属割合が一〇〇%になっているんです。ということは、ここで言う加工というのは、全ていわゆる地場産品による加工のみを取り出して計算しているということでよろしいですか。

櫻庭政府参考人 六次産業化の認定事業者あるいは六次産業化の定義、これは統計部で行われた統計結果でございますけれども、その結果に基づいてこれは出した数字でございますけれども、厳密な意味はともかくとして、その地元の原材料を主として使って活動して加工しているということでございますので、ほぼ一〇〇%地元のものを使っているのではないかというぐあいに推定したところでございます。

玉木委員 局長、これをつくるときにもとになった六次産業化総合調査の調査票をごらんになったことはありますか。

櫻庭政府参考人 今手元にはございませんけれども、調査票は拝見させていただきました。

玉木委員 私が申し上げるのも変なんですが、その調査票の中には、地場ということが定義されています。地場は、同じ県の中で近接する市町村までが地場です。つまり、ある市町村があったら、隣の市町村は基本的に地場、ただし、それが県をまたがって違う県だと、そこで一旦切るということを明確に定義しています。

 そう定義した上で、調査票の中で何を問いかけているかというと、加工したときに、あなたが使った加工品は地場ですか、そうじゃないんですか、同じ県だけれども地場じゃないんですか、他の県ですか、輸入品ですか、そこまで調査票は聞いています。

 ですから、一〇〇%帰属割合を掛けるのではなくて、こういう調査をしたのであれば、本当にいわゆる地場と。ほかのところでは地場産比率を使っているわけですから、そういったことを調査されているので、きちんと掛けて、この一〇〇%農村地域への帰属割合ということを、加工、直売あるいはファンド出資部分ともに掛けて計算しているのは、私は、正確な調査をやっている農林水産省にしては極めて粗っぽい推計だと思いますので、ここはもう一度やり直したらいかがでしょうかということを提案したいと思いますが、いかがですか。

櫻庭政府参考人 先ほど申し上げました企業活動のところにつきましては、帰属割合を用いたということでございます。

 それから、今ございました加工、直売の取り組みについての御質問でございますけれども、これは、算定の方法は、従来申し上げているとおり、トレンドを見込んだ市場規模の伸び、それとA―FIVEによる六次産業企業体への出資予測件数と出資企業体の売り上げ規模に基づく市場拡大効果を加味して算出したということでございます。

 A―FIVEのファンド出資案件というのは、平成二十五年九月からのスタートでございます。したがいまして、過去の売上高からのトレンドに含まれない新たな市場拡大要素として、この中に組み込んでおります。しかしながら、農業者がみずから出資した部分、これがございます。全体で二五%と見込んでおりますけれども、その部分の売り上げについては売り上げから控除しており、そういった試算をさせていただいたということでございます。

玉木委員 質問と答弁が食い違っています。

 一〇〇%を使うのは適当じゃないのではないですかと。私はA―FIVEのことは聞いていません、トレンド部分の方です。一〇〇%はやはり見直された方がいいんじゃないんですか。もう一度、どうですか。

櫻庭政府参考人 今回の推計に当たっては、毎年、検証可能な統計、出典が明確なものを使っております。その検証の過程の中で、もしそういったことが明らかになれば、修正してまいりたいと思っております。

玉木委員 委員長にお願いなんですが、私は、これはいろいろ、もとのデータにもかなり当たって調べたんですが、あやふやなところが多過ぎます。恣意的に置いた裁量的な数字、あるいは今の一〇〇%も、これは九五でもいいじゃないですか。他の県のものを使って加工してやっているということを答えて調査票に書いている方もいらっしゃると思いますから、もう一度正確に、特に帰属割合とか、あるいは市場の伸び率、こういったことをもう一回整理して、その原典、出典ですね、単にこの六次産業化総合調査ではなくて、どの当該部分のどの数字を使ったということを、検証可能な形で、この七つの項目について当委員会に提出していただくことを求めたいと思いますけれども、委員長、いかがでしょうか。

江藤委員長 委員長の預かりとさせていただきます。

玉木委員 それでは、次の質問に移ります。TPPです。

 TPP交渉については、いよいよ大詰めを迎えているという報道もありますし、安倍総理が訪米をされるという中で、また一定の進展があるのではないかと言われておりますけれども、きょう私が質問を申し上げたいのは、TPP交渉に関する情報公開についてでございます。

 まず伺います。

 当委員会で決議をしたTPPに関する農林水産委員会の決議の第七項目め、何が書いてあるか。小泉政務官、いかがでしょうか。

小泉大臣政務官 お待たせしました。

 第七項目めには、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」以上であります。

玉木委員 ありがとうございます。

 両院の決議はしっかりと守っていただきたい。そのことを守る、いや、守ったと評価されるような交渉を進めてまいりたいということを答弁いただきますけれども、いわゆる五項目、牛肉・豚肉、乳製品、米、麦、砂糖、こういったことを守っていただくのもそうなんですが、決議の中には、守るべき項目のほかに、手続的な、ぜひ守っていただきたい項目が書かれてあって、今政務官に読み上げていただいた、とりわけこの七項、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」となっていますが、現時点においてこれが守られていると、政務官、御認識ですか。

小泉大臣政務官 今までも、情報提供に可能な限り努めてきたところでありますので、もちろん、交渉事でありますから、その中の秘密を守らなければいけないという秘密保持契約の趣旨に基づきながら、国民に対して、また議会に対して、委員会に対して説明責任を果たしてきたつもりでございます。

玉木委員 それに関して言うと、きょうは、資料の六を見てください。英文を少し、当玉木事務所で仮訳をつけたものです。これは、本年一月六日に、USTR、米国通商代表部がホームページに載せているものでありますけれども、ここに書いているのは、これまで以上の、先例のないような透明性、トランスペアレンシーと英語では書いていますけれども、そういったことを高めていく取り組みをするということを書いているわけですね。

 ここに書かれているのは、議会あるいは関係者に対して、交渉の内容あるいは交渉に提案する前の米国提案について一定程度情報を出していくということをやっているし、やっていくんだということが書かれているわけであります。

 私はあえて、ちょっと苦言を呈したいのは、この一月六日のUSTRの文書が出て、私は我が党の農林水産部門会議でこういうことを提案したんですが、こちらから言うまで、まず、こういうことが出ているということは、政府側から何の説明もなかったということが一点と、もう一つは、数日前からお願いしていたんですが、これを和訳したものを関係の議員に配ってくださいということを申し上げていたら、このごく一部のところだけを切り取った訳を配っていただいて、きょう朝の理事会でお願いするまで、この和訳さえ出さないということが実際にあったわけです。

 交渉内容を、もちろん出す出さないというのはあるんですが、オープンになっている情報さえ積極的に提供しないということは、このアメリカ側の姿勢と比べると、随分秘密性が高いというか、隠すなあという印象があるんですけれども。

 政務官にお伺いします。

 アメリカ側はかなり、例えば、資料六の二ページ目の真ん中どころの下に、連邦議会議員であれば誰でも交渉中の協定文書、英語では、プロバイディング・アクセス・ツー・ザ・フル・ネゴシエーティング・テキスツと書いていますね、交渉中のいわゆるフルテキストを閲覧できる。セキュリティーチェックを受ければ、スタッフも同行できるということを書いています。

 その下にあるように、交渉のテキストはすごい厚いですから、条文を読む手助けとして、TPPの各章、チャプターをわかりやすく要約した、ウイズ・プレーン・イングリッシュ、わざとわかりやすい英語でサマリーを示します。かなり議員に対しては情報提供をしようとする姿勢が出ているんですね。

 今、政務官の答弁にもありましたけれども、一方で交渉参加国の守秘義務があります。これは、各国はいろいろ苦労しながら、その守秘義務と国内の説明責任をどう果たしていこうかというそのせめぎ合いの中で、それぞれ大変苦労をされているんだと思うんです。

 日本も、アメリカがこれぐらい出しているのであれば、同じぐらい、やはり関係者に、とりわけ国会議員に対しては、与野党を問わず情報提供をしながら、またそれを強い交渉力に生かしていくというような戦略的な取り組みを、この最終段階になった中では、米側がこういうことをするのであれば、我が方もすべきではないかなと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

小泉大臣政務官 玉木委員におかれましては、今回、この仮訳の件でありますけれども、私が伺ったところによると、その仮訳について、最初、一部しか出なかった。そういったこと、ミスコミュニケーションもあったかもしれませんが、直前になってのこの全文を、仮訳を提示となったことは申しわけありませんでした。

 今回、仮訳を提示させていただいたことを御紹介いただきましたけれども、アメリカの今回のUSTRのホームページで発表されたものの中には、「どの連邦議員に対しても、全ての交渉テキストへのアクセスを提供している。これには、適切なセキュリティー・クリアランスを得たスタッフを伴って、議員が議事堂内において都合のよいときに閲覧することが含まれる。」こういった文言に仮訳上もなっております。

 こういったことになっていますが、必ずしもテキスト全てを、全部、誰でも、議員であれば見られるというような状況にはなっていない。報道の部分でも、そういった模様だと思います。ですので、これは本当に各国、先ほど玉木先生のお話の中にも言及があった、秘密をどうやって守るのかという、各国の法制のあり方がさまざまある中で、どうやって情報提供を最大限国民に対して提供していくか、そういったことを考えながら、今まで努めてまいりました。

 ちなみに、簡単な要約をつけているという話もこの仮訳の中にありますが、今までも、内閣官房のホームページなどでは、各章、どういった分野で議論が行われているか、そういった情報も提供させていただいておりますので、日本の中でできる限り情報提供に努める、こういった思いは、これからもしっかりと努めていきたいと思っております。

玉木委員 そういう答弁を甘利大臣からも伺っているというのを聞いていますけれども、必ずしも全てのテキストにアクセスできていないと聞いていますということなんですが、聞いていますじゃなくて、聞いてください。アメリカ大使館は、いっぱい人がいるので、働いてもらったらいいと思うのは、それぞれの下院議員なり上院議員なりに当たっていって、どこまでアクセスしていますかと聞けばわかるので。

 特に、私はそのフルテキストにアクセスするよりも大事だなと思ったのは、議員に交渉で提示する前に米国提案を示しているということですね。こういうオファーをするということを、米国提案を見せているというのは、これはかなりな話であって、こういうことが本当にやられているのかどうなのかということの実態を調査していただいて、当委員会に報告をいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。これは政務官か、あるいは、委員長、お取り計らいいただければと思いますけれども。

江藤委員長 これも私の預かりとさせていただきます。

玉木委員 これから、私は、本当に、国内の声とか国会議員の声をうまく利用しながら交渉していくのが大事だと思っていて、なぜなら、先ほど紹介したUSTRの文書の前文のところにこういうふうに書いています。日本語で申し上げますが、我々には、国民参加、議会への情報提供、オープンな国民的議論は、通商政策を強化すると考える。つまり、国民を巻き込んでいくこと、ステークホルダーを巻き込んでいくことが通商交渉を強化する、強い外交力を発揮するツールだという認識の中に、こういうふうに情報をオープンにしていく。この戦略的な取り組みということも、ぜひ日本としても、とにかくアメリカから黙っておけと言われたらそれに従うんじゃなくて、やはり従うべきは日本の民意であって、アメリカではないと思いますから、その点については、アメリカの動向も踏まえながら、ぜひ前向きに検討していただきたいなと思っております。

 最後に、農協改革について質問いたします。

 済みません。その前に資料の五。

 これは、去年も提出して廃案になったんですが、情報公開を求める議員立法を出して、これは与野党を超えて、やはり情報はあった方が、私は最終的に院として判断するときに大事だと思いますので、この資料五にあるような、情報公開を求める議員立法、一方で、きちんと議員には守秘義務を求めるというようなこととセットで出していきたいと思いますので、与野党の関係議員の皆さんの御協力をぜひいただきたいと思っております。

 農協改革でありますけれども、資料の四を見ていただきたいと思っております。

 これは大臣にお伺いしたいんですが、総理も、そして大臣もお答えになっていると思いますが、全中、中央会は、脇役としての応援団ということがこれからの位置づけでやってくれということなんですが、先般、飼料用米への転換を円滑にやるように、JA、中央会、連合会が一体となって生産者への徹底した働きかけを行っていくということで決めているわけですね。

 今までの感覚だったら、いいなと思うんですが、私は多分新しい、農政新局面だったら、国が、例えば飼料用米、八万円あるいは十万五千円と決めるまで、それでもなお主食用米をつくりたいという農家があったら、無理に飼料用米をつくらせちゃだめだと思うんですよ。あるいは、それでもなお、主食用米をつくって米価が全体に下落しても、うちの農協は高く売りつけるように頑張るから主食用米をつくれ、動物の餌をつくるなといって地域農協の特性を発揮していくのが、まさに今、安倍農政が進めている、地域を生かした農政の改革、農協の改革だと私は思うんです。

 そういうことを打ち出しておきながら、一方で、飼料用米にできるだけ行ってもらうように徹底していく、中央会と単協と連合会が一体となって生産者へ徹底した働きかけをするというのは、ちょっと政策的矛盾があるのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 主食用米の需要が残念ながら毎年八万トンずつ減少しておるわけでございますので、需要に応じた生産を進める中で水田のフル活用を図るために餌米をやっていこう、こういうことで、いろいろな施策をやってきております。

 JAグループにおいて、主食用米の価格の安定のためには、主食用米の需給の改善が不可欠との共通認識を持っておられる、こういうことでございまして、これはあくまでグループとして、自主的に、二十七年産の飼料用米の生産振興目標を六十万トンと設定して、地域農協、中央会、連合会が一体となって飼料用米の生産拡大を推進している、こういうことでございます。

 グループが一体となって、自主的に飼料用米の生産拡大に取り組むことは、地域農協が自由な経済活動を行えるようにするという今般の農協改革の趣旨と何ら矛盾するものではないと考えております。

玉木委員 私は、ここは本当にいろいろこれから整理した方がいいと思うんですね。宮腰先生が今回まとめられた、例えば概算金の払いの五中三にするという話も、私は一つ……(発言する者あり)ないですか。まとめて、いろいろな研究会で、あれは農林水産省か、役所でまとめておられますけれども、あれも、今までの感覚だったらそうかなと思うんですが、例えば、大臣、イメージがよくできると思うんですけれども、例えば、三井物産が穀物を買い付けて、その代金の払いのやり方を五中三にしろとか六中四にしろとか言わないじゃないですか。

 一方で、全農は株式会社化しようとか……

江藤委員長 玉木委員、持ち時間が経過しております。

玉木委員 はい。

 そういうことを言っているので、いいときだけ何か公的な管理をして、だめになったら、悪いのは全中、全農に押しつけるというのではなくて、ここは一回、そっちに踏み出すのであれば、政策的な整合性を一回きちんと整理をつけた方が私はいいのかなと。

 少なくとも概算金の払いのやり方を公的な関与の中で何かやるというのは、これからの農政の、少なくとも皆さんが目指す農政の中ではあり得ないと思いますので、その点はしっかりと整理をされることを望みまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、松木けんこう君。

松木委員 維新の党の松木けんこうでございます。

 あと二時間二十分で終わりますけれども、皆さん、暖かいので、ちょっと落ちそうな感じの方もいますけれども、頑張って議論していきたいというふうに思っております。

 今日、農林水産行政における最重要課題の一つでもあります食料自給率の問題を中心に、きょうは質問させていただきます。

 現在の我が国の農政は、皆さんがそれぞれいろいろな立場であるわけですけれども、大変大きな曲がり角に来ているというのは間違いのないところだと思います。

 高齢化と担い手不足、継続して農業を産業として持続させていくことが非常に難しくなってきている。これをしっかりと解決し、強い農業を育て、日本の農村コミュニティーを強化して、里山を守り、景観や環境を保ち、食料を供給していくための確固とした方針とビジョンが必要とされている。力強く持続可能な農業をいかに育んでいくか、まさに私たちの国が国家として存立する基盤にかかわる議論でありますので、本委員会においても、しっかりと真正面から議論に取り組んでいきたいと思っておりますし、林大臣以下、政府の方々には、ぜひ前向きな答弁をいただきたいというふうに思っています。

 まず一問目なんですけれども、カロリーベースの食料自給率について質問させていただきます。

 今回の新しい食料・農業・農村基本計画で、これまで五〇%だった目標が四五%まで下げられているわけですけれども、基本計画の中身を拝見しますと、現状との乖離という言葉が使われていますね。要は、現状を見れば、目標が余りにも高過ぎるんじゃないかということなんだと思います。

 現在は、平成二十五年の数字で三九%、これを平成三十七年度に四五%にするということになったわけです。一〇ポイントも自給率を上げるのは難しいという判断があったんだというふうに思いますけれども、こうやって下げることによって、政府は自給率をカロリーベースで上げることにちょっと後ろ向きになっているのかなという気もするわけでございます。

 まず最初に、大臣、決してそうじゃないんだということだと思うんですけれども、この決意の表明をいただいて、その上で、あくまでカロリーベースでの自給率をしっかり上げていく、時間はかかっても、四五%でいいということではないんだという意思表示をはっきりしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 まさに今おっしゃっていただきましたように、今より下がってもいいということはないわけでございまして、今の三九を四五にしっかり上げていこう、こういう目標であるということをまず申し上げておきたいと思っております。

 今、もう委員からもお話で触れていただいたように、平成二十二年の三月の前基本計画における食料自給率目標は、我が国の持てる資源を全て投入したときに初めて可能となる高い目標ということで、四一を五〇にするということでございましたが、実際には消費面で米等の消費量が予測を下回ったということと、それから、生産面では小麦等の生産量が伸び悩んだ等々ありまして、三九%にとどまっております。

 したがって、この新たな基本計画において自給率目標については、基本法で、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として目標を定めるものとされておりますので、食料・農業・農村政策審議会における前基本計画の検証結果も踏まえて、品目別に現実に見合った需要量を想定するということと、生産量は、需要面に加えて、現実的な生産条件に見合ったものとするということで、計画期間内での実現可能性、これを重視しまして三九から四五に引き上げる、こういうふうにしたわけでございます。

 ちなみに、御案内だと思いますけれども、十二年、十七年も同じように四五%であったわけで、ずっと五〇だったのが今回初めて四五ということではないということもつけ加えておきたい、こういうふうに思っております。

松木委員 民主党政権のときに四五を五〇に上げたんですけれども、その前もなかなか思ったように上がっていかなかったというのもそのとおりですけれども、せっかく上げた目標を下げるのもどうなんだろうなというふうに思います。余りさわらないでそのまま押していくという手もあったような、そんな気もしますけれども、まあ、いいです。

 それでは、二問目です。

 カロリーベースの自給率のほかにも、生産額ベースの食料自給率というものがあります。これは平成二十五年度も六五%なんですね。そして、三十七年度にはこれを七三%まで持っていくということですので、これは大変心強いことなんですけれども、厳しい環境の中で付加価値の高い作物を生産しておられる農家の皆様の頑張りに本当に敬意を表したいと思います。

 ただ、忘れてならないのは、食料というのは他の生産物と根本的に違うものであるということなんですね。代替がきかない。生産物が農産物であり、国民の健康と命に直結する存在なわけでございます。例えば、海外で紛争が起きる、もしくは輸入していたところとの関係が悪化するとか、さらには世界的な食料危機が現実のものとなり、各国が食料輸出に規制をかける、こういうことも、すぐではないのかもしれないし、どうなるかわかりませんけれども、考えられることではあると私は思っているんですけれども、想定しなきゃいけないことだというふうに思います。

 こういった食料安全保障の観点というのは、当然ながら、競争力を重視する産業政策としての農政よりも、より重視すべき課題だというふうに私は思っているんですけれども、この点は大臣はどうお考えなのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 本当に食料の安定供給、何か不測の事態に備えて、国家として、食料安全保障を精査していくということは重要だと思っております。

 食料の安定供給を将来にわたって確保していくこと、これは、委員がおっしゃるように、国民に対する国家の基本的な責務でもございまして、食料・農業・農村基本法におきまして、国内農業生産の増大を図ることを基本といたしまして、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせて、食料の安定的な供給を確保する方針を明らかにしているところでございます。

 その際、農業生産が自然条件の影響を強く受け、生産量が変動しやすいこと、また、世界の食料需給が非常にタイトであることなど、国民に対する食料の供給が不安定な要素を有していることから、また、気候変動などによります影響で凶作や輸入が途絶えてしまったときの不測の事態におきましても、国民が最低限必要とする食料の供給を確保し、食料安全保障を図ることは、私ども国の重要な課題と認識を委員と同じようにさせていただいているところでございます。

 こうした考えに基づいて、実際に不測の事態が生じた場合は、緊急事態食料安全保障指針に基づきまして対応することになりますが、食料安全保障を強化するために、今回の基本計画の中で新たに、食料の供給に係るリスクの定期的な分析と評価、さらには、不測の事態に備えた対応手順の周知などの実施を明記したところでございまして、こうした取り組みを通じて総合的な食料安全保障の確立を図ってまいりたいと思っております。

松木委員 えらいいいお答えだったと思います。

 であれば、自給率を下げなくてもいいんじゃないかなと思うんだけれども、それぞれのお考えがあるのかなと思います。

 食料安保というのはやはり大切だということを、副大臣、しっかりお答えをいただいたんだというふうに思いますけれども、大臣も当然同じですよね。ぜひ、よかったら少しお話しいただいたらいいですよ。

林国務大臣 今副大臣から答弁したとおりでありますが、食料安全保障というのは大変大事でございまして、やはりほかのものと違いまして、食べるものというのは、なくなれば生命を維持することが難しくなる、こういうことでございますから、まさに基本法においても、まずは国内の農業生産の増大を図ることは基本である、それに輸入と備蓄を組み合わせる、しっかりと基本的なところで明記をしてありますので、これに基づいてしっかりとやっていきたいと思っております。

松木委員 しっかりお願いします。

 それでは、基本計画で、食料安保の課題ということでちょっと幾つか書いてあるんですけれども、こう書いてあるんですよね。「世界の人口は二〇五〇年には九十六億人に達すると見通されるとともに、新興国の経済成長、所得水準の向上が継続し、今後とも世界の食料や飼料、エネルギー、肥料資源等の需要の増大が続くと見込まれている。一方、地球温暖化等の気候変動の進行により、農作物の生産可能地域の変化や、異常気象による大規模な不作の頻発等、食料供給面への影響も懸念されている。」「近年の環境変化は、中長期的に世界の食料等の需給がひっ迫する可能性を示唆しており、今後、新興国との食料調達の競合や輸出国の輸出規制等により、我が国の食料等の安定的な輸入の確保に支障が生じる事態も懸念される。」こういった指摘を政府は基本計画でされています。農林水産省の皆さんもしっかりとこれは真摯に危機感を持って取り組んでおられるんだろうなということがかいま見られるわけでございます。

 ここで指摘されている、食料の安定的な輸入確保に支障が生じるという事態、これは、まさに国家としての存立、国民の命の危険に直結する重大な問題ですけれども、このリスクを最小限化するために、速やかに食料自給率を向上させる努力を政府を挙げて、国を挙げて取り組むべきだというふうに私は思います。

 しかし、こういった懸念を指摘しながら、残念ながら、同じ文書の中で食料自給率目標を下げるということが書かれてしまっているので、私は、これは大きな矛盾ではないかなというように思うんです。

 書いてある内容を見れば、食料の自給率目標値を引き下げるということをわざわざ書く必要はないんじゃないかなというふうに私は思うんですけれども、まあ民主党が五〇%と言ったというのもあるけれども、今は皆さんがやはり力を持って政権を運営されているんだから、別に五%ぐらい下げる必要はないと思うんですよね。

 林大臣は将来の総理大臣じゃないかとかいろいろ言われているんだから、そのぐらいのお気持ちで、一回これは撤回する、この部分だけでも撤回するぐらいの気持ちというのはないでしょうかね。どうでしょう。

林国務大臣 先ほどのお答えの繰り返しになってしまうかもしれませんが、この食料自給率の目標を定めるときに、指針というのがございまして、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として目標を定めるということで、前回の計画の検証を踏まえて、これは、下げたと言うと、今より下げるというような誤解を招いてはいけませんが、あくまで、三九%を四五%に上げていく。それは、やはりきちっとした、生産面と需要面について現実的にやれることをやってこの目標を達成していくということでございます。

 五〇%のときも、そういうふうにして、我が国の持てる資源を全て投入したときに初めて可能となる高い目標ということでありますが、そういう計算をされてつくられたということは承知しておりますが、先ほど申し上げましたように、例えば、小麦の生産量がなかなかそこまでいかなかったとか、米の消費が予測を下回ったということがありますので、この四五%ということで、しっかりとこれに向けてやっていく。

 それで、今申し上げたように、安全保障もこれを基本として、さらに輸入、備蓄を組み合わせて、食べるものがないというような状況がないように、きちっとこの基本法を踏まえてやっていきたいと思っております。

松木委員 安全保障ですから、食べるというのは本当に大切なことですので、やはり重きを置いて頑張っていただきたい。

 民主党政権のときは、五〇%にしたというのが結局三九%になってしまったということなんだけれども、今までもそんなうまくいっていないんですよ、この自給率を上げるというのは。しかし、わざわざこれを下げる必要はないんです。アナウンス効果も含めて、農業を大切にしていくんだということを世間の皆様にわかっていただくためにも、僕はやはりそのままにしておくべきだと思うんですよね。

 そうしないと、マスコミは、これは下方修正した、下方修正したと絶対言うんですから。いかにも農業を疎んじているというように、誰もそんなことはしていないんですよ、誰一人そんなことはしていないんだけれども、結局そういうふうに映っていく可能性が十分あるので、もう一回考えてみたらどうですか。大したことはないでしょう、このぐらい変えるのは。

 今までだって、自給率が上がらなかった、それでもって何だ何だと大げんかになったわけでもないんだから、これは私は本当に、アナウンス効果ということも含めて、考えていった方がいいんじゃないかなと思うんだけれども、大臣、どうですか。この数字は、ちょっと持ち帰って、省内でもう一回考えてみてくださいよ。

林国務大臣 せっかくの松木先生の御提案でございますが、これは、当然のことながら閣議決定をしております。審議会でも御検討いただいて、その過程では、自民党、公明党、与党の中でもいろいろな議論を踏まえて、やはりこういうことでいこうということになったことでございまして、私もその過程の中で、党におったときも党の立場としても議論してきて、ここに戻ってきて閣議決定もした、こういうことでございますので、やはりこの目標に向かって必要なことをしっかりとやっていきたい、こういうふうに思っております。

松木委員 わかりました。では、これ以上ぐずぐず言いません。ぜひ頑張ってください。

 それで、結果を出しましょうよ。私もあのころは民主党政権の一員で、後に首になっちゃったんですけれども、残念ながら上がっていかなかったんですよ。高い目標もそうだけれども、下がっちゃった。これはやはり、残念ながら、いい結果を出せなかったということなので、とにかく上げる努力というのを本当に徹底的にするという、実のある改革というか、そういうことを頑張ってやってください。

 これ以上言っても、それは確かに党内の議論とかいろいろなことをやってきたんだろうから、それを全部覆せというわけにもいかないし。でも、本当は覆してもらいたいんですよ。覆したってそんなに大変なことじゃないと思うんだけれども、まあ、いいですよ。これ以上はもう言わないようにしますけれども、ぜひ頑張ってくださいね。

 それで、次の質問に行きますけれども、食料安保の観点から自給率の大切さを今指摘させていただいたんですけれども、一方で、では、どうやって食料自給率を上げるかということを具体的に考えていく、こういうことになるわけですよね。

 確かに難しい問題で、一朝一夕に何でもできるということではないことはもう間違いない、時間をかけていろいろ書いてあることを着実に進めていくしかないのかなという気もしますけれども、大事なのは、これはやはり基本計画にも書いてあるんですけれども、食育ということになるんだと思うんですね。

 食文化の多様化、西洋化が進むことで、御飯中心の日本型の食事のスタイルが変わってきたというのがやはり自給率低下の大きな理由かなというふうにまた私も思うんですけれども、一方で、プラスの材料というのもやはりあるので、これは食の安心、安全ということで、若い年齢層の皆さんも含めて、国産志向というのがかなり今広がっているように感じるんですよね。ですから、ファミレスだとか居酒屋さんなんかに行っても、国産とか国産食材ということを結構売りにしているお店も最近ふえているなというふうに感じているんですけれども、実際にもそうなんだなというふうに思います。

 この国産農産物へのニーズが高まれば、当然供給の方にも大きくかかわってくるということになるんだと思うんですけれども、その意味で、農林水産省の皆さんにお願いしたいのは、やはりしっかりとこの流れを応援していくということをしていただきたいと思います。

 生鮮食品の原産地表示というのは、これは今までやらなきゃいけないというルールはしっかりあると思うんですけれども、加工食品や外食産業というのはちょっと事情が異なるんですね。生活が多様化し、晩婚化が進み、また共働きが多くなったりということで、外食する機会あるいはお総菜なんかを買ってきて食卓で利用する機会というのが非常に多くなっていると思うんですけれども、この分野でもしっかりと国産作物を使ってもらうための努力をすることは大変大事だというふうに思うんです。原産地表示の関係は消費者庁の所管でありますけれども、ぜひ農水省の方々にも大いに汗をかいていただこうというふうに思います。

 そうはいっても、加工食品や外食産業でより厳密な産地表示をしてもらうということはそう簡単でない、なかなか難しいことだということもわかっているんです。

 そこで、国産にこだわって努力をしているお店あるいは加工食品について、国の方で一定の基準を設けていただいて、国産作物を活用しているということをしっかり消費者に保証できる仕組みというのはできないものかなというふうに思います。当然、国産品を使えばコストはかかるんですけれども、消費者に対して事業者が、若干高くなっていますけれども、これは国産のものを、がっちりいいものを使っていますよという説明をする上でも非常に有効だと思うんです。

 都道府県ごとに見ていると、県産品を使っているお店などに、県が県産品であることを保証する表示をしているところもあるかと思うんです、どこどこ産の牛と、宮崎なんかは一番いいところなんでしょうけれども。これをより広い範囲に拡大して、例えば、お米にしても、小麦にしても、国産品を一〇〇%使っているということであれば、ちゃんとそうなんですよということを調べて保証するような仕組み、こういうものができないものかなというふうに思うんです。

 ネガティブな意味で、おまえのところはうそをついているなといって取り締まるばかりが能じゃないので、頑張っているところに、ポジティブに、ここは国産を使っています、大丈夫ですよ、そういうものを何かちょっとアピールできるような、保証するというか、そういう仕組みをつくれないものかなというふうに思うし、ぜひ、こういうことを何かシステムとして考えてみたらどうかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

荒川政府参考人 お答え申し上げます。

 松木先生から大変多岐にわたる御提案をいただきまして、ありがとうございます。

 自給率四五%の目標に今回したわけですが、その実現といえども本当に簡単なことではないわけでございまして、私ども、しっかり取り組んでいかなければいけないと思っておるわけでございます。

 自給率は分母と分子がございまして、消費面の取り組みと、それから農業国内生産の取り組みというものがあるわけですが、今ほど、特に消費面でのいろいろな取り組みについての御質問、御提案をいただいたところでございます。

 先生からもお話ございましたように、国内でとれる国産農産物をいかに使っていただくかということが大事でございまして、このために、消費者の皆様方と食品関連産業の方々に国産農産物を使っていただくということが大事であるわけでございます。

 先生も今御指摘ございましたように、食育でお母さん方に国産品のよさというものをしっかり認識していただくとか、それから、子供のうちから日本型食生活あるいは和食というものに親しんでいただく、こういったような取り組みをしっかり進めてきているところでございますが、引き続き力を入れてまいりたいと思っておるところでございます。

 それから、原料原産地表示関係で幾つか御提案がございましたけれども、今、私ども、原料原産地表示につきましては、加工食品について、一定のものにつきまして義務づけをして、消費者の方々の判断に資するようにしておるところでございます。

 基本的には消費者庁の所管になるわけでございますが、今回の基本計画を策定するに当たりまして、消費者庁ともしっかり議論をいたしまして、加工食品の原料原産地表示につきましては、その実行可能性を確保しながら拡大に向けて検討するということで、しっかり記述をさせていただいたところでございます。

松木委員 今、検討するというお話をしたんですけれども、何かつくろう、そういう計画があるということだね。

荒川政府参考人 制度自体は消費者庁の方で所管しておりますものですから、政府全体としてこれから考えていかなければいけないと思っております。

 この四月から、食品表示法という新しい法律が施行されておりまして、表示のやり方が大きく変わったわけでございます。

 今後は、私どもとしては、表示の中で原料の原産地というものをしっかり表示していくということが国産農産物の需要拡大にも大いに資するという観点からも、消費者庁にもしっかり原料原産地表示の拡大ということでお願いをしていきたいなと思っておるところでございます。

松木委員 ぜひ、いいものをつくってください。ただ、加工品というのは結構いろいろと難しいんだよね。そこら辺もよく研究して、頑張っていただきたいと思いますけれども、大臣、どうですか、一言。

林国務大臣 よく、例えばノリなんかで、ノリそのままだとどこかと出ているんですが、コンビニのおにぎりになりますと、このノリはどこかというのが出ていない、こういうことがあります。

 やはり、できる限りのことをやって、私もちょっとうろ覚えですけれども、国産品ならば二、三割ぐらいまで高くても消費者の皆さんは国産品を買う、こういうデータもございますので、そういうところをしっかりと踏まえながら表示の仕方を工夫していって、よってもって、今先生がおっしゃったような方向に持っていくというのは大変大事なことだというふうに思っております。

松木委員 ぜひ頑張ってください。これは大切なことですからね。

 あと、所得倍増なんという昔聞いたような名前の話がこのごろ出てくるわけですけれども、政府の目指す農家の所得倍増の議論についてお聞きをしたいと思います。

 農家の多くの皆さんが厳しい経済環境の中で頑張っているというふうに私は思っているんですけれども、その皆さんの所得を倍増するということ、これは本当に私はいいことだと思いますね、できるのであれば。

 ただ一方で、政府は自給率目標を五〇%から四五%に下げると言うんですからね。自給率が低いということは、製造業の会社でいえばシェアが低くなる、こういうことになってしまうわけですから、一つには、国内産ではなくて外国産のものを皆さんが買っているので自給率が下がるということになるわけですけれども、だとすると、どうしても、自給率目標を下げながら所得だけ上げるというのは、そもそも理屈としてちょっと成り立ちづらいのではないかなというふうに私は思っているんですね。林大臣がごまかしでこういうことを言っているとは私は思いませんけれども。

 政府の皆さんは、この議論の中で農家所得という言葉を使われているようなんですね。この農家所得というのがどうも何かくせ者のようでございまして、農業所得とはちょっと違う意味の言葉なんですね。農家所得というのは、兼業農家なら農業以外で得た所得もあるわけですね。御高齢の農業従事者の皆さんなら年金なんかで得た所得もあるでしょうし、こういった農家の得る農業以外の所得を含めたもろもろの所得全体が農家所得となるわけですけれども、こうなると、理屈上は、兼業農家の皆さんが農業以外の収入が急にふえても農家所得は倍増するということになるんですね。

 これはちょっと私はおかしいと思うんです。強い農業、持続可能な農業を実現するためには、やはり、一番大事な農業を営んで得る収入、農業所得をしっかりふやす、これが必要であるはずなんですね。

 農林水産省が真摯に農業所得をふやす努力をするのであれば、当然ながら、自給率目標の引き下げというのは決してないと思うんですけれども、この点について、ちょっと私もしつこいものですから何回も聞きますけれども、何か矛盾しているかなと思うんですけれども、ここら辺の説明をちょっともう一度、大臣、どうですか、していただけませんか。

林国務大臣 農家所得というのはどこで使っているか、私も今いろいろめくっておりましたが、農業と農村所得ということで、先ほど来、玉木委員と大分やりとりをさせていただいたんですが、農家所得といいますと、確かに先生おっしゃるように、年金が入ってきたりとか、兼業の場合はサラリーマンをやっておられればそういうのも入ってくる、こういうことになりますので、あくまで、倍増を目指すという中で言っているのは、農業と農村の所得倍増を目指そう、こういうことでございます。

 活力創造プランでも十年間で倍増を目指すということになっておりまして、生産額の増大、生産コストの縮減、こういったもので農業所得の増大を図っていく、それから、六次産業化やいろいろなことを通じて農村地域の関連所得の増大に向けた施策を推進する、こういうことでございます。

 法的根拠の有無や具体的な数値目標かどうかということでは、所得倍増というのと自給率というのは性質が一緒ということではございませんけれども、共通するのは、農業生産の増大を図る、この方向性は一致している、こういうふうに思っております。

 何度も繰り返しになりますが、五〇を四五に下げるというのは、目標が変わるということであって、今の状態からは、三九でございますので、これは上がっていくということで、これも何度も繰り返しになって恐縮でございますが、矛盾するものではないというふうに思っております。

 農業所得の試算の際に三十七年度の品目別の生産数量を用いておりますが、これは食料自給率に係る生産努力目標等を使用しておるところでございます。

松木委員 方向性は一致しているということなんですけれども、所得倍増というのはいい言葉なんですよ。その一方で、五〇%だったものを四五%にする必要はないでしょう。ないんですよ。それはそのままにしておけばいいんですよ。その方がいい、私は本当にそう思うんですよ。その方が活力も出るじゃないですか。どうもちょっとそこが、もとの民主党の政権がやったことだからと余り気にすることはないんだから、私はそのまま、ひとつ半分以上はいこうよという気持ちというのは、まあ、努力目標ですよ。それが達成できなくていいというものではないけれども、しかし、わざわざ下げることはないのかなとつくづく思うんです。

 要するに、何も内容が変わるわけじゃないんだという林大臣のお話も、私もそれはよくわかるんです。さすが、将来、自民党政権が続けば総理大臣になる方ですから。どうなるかは、それは世の中というのはわからないですけれども。ぜひ、大臣、今から変えるのは無理なのかもしれないけれども、そういうことをしつこく言っていた議員がいたというのだけでも覚えておいてください。よろしくお願いします。

 それでは、次の問題ですけれども、大臣に、沖縄県知事の問題、辺野古の新基地建設をめぐる作業停止命令に関する質問をちょっとさせていただきたいと思います。

 先日は、沖縄県の翁長知事と、沖縄を訪問されました菅官房長官が会談をされました。実際に直接お会いになって話をされたことは、私は高く評価するんですね。それはいいことだなというふうに思います。報道では対立点が強調されていますが、まずはお会いになるということは本当に大変重要なことだというふうに私は思っています。

 さて、知事が、先月二十三日、沖縄防衛局に対し、作業停止を沖縄県漁業調整規則を根拠に出された。沖縄防衛局は、大臣に対し、審査請求と、同時に指示の執行停止の申し立てを行い、大臣は、知事の作業停止指示の一時執行停止を三十日に、これは三十日間ですか、決めた。

 報道によれば、審査請求について検討がされ、大臣が判断をされる。ただ、その判断に不服がある方は法廷に持ち込むだろうということが言われていますけれども、率直に申し上げて、国と県がこうして権限の行使を応酬しているというんですか、本当に問題が解決するのかちょっと疑問だなと思いますし、大臣におかれましては、こっちにはこんな権限があるぞ、いや、こっちにはこんな方法があるぞというやり合いじゃなくて、しっかり時間をかけて、合意形成を進めて問題を解決しようというお考えはないでしょうか。

 例えば、一度工事が停止したとしても、その間にお互いの対立点をしっかり整理して、対立関係をできるだけ解消する努力をする、そういう時間があってもよかったのではないかという気が私はするんですね。

 林大臣は、言うまでもなく、これは本当に将来、自民党政権が続けば総理大臣になる可能性の非常に高い方ですから、そういう方だと私は承知していますよ。ですから、沖縄と政府の対立が日本国全体にとって大きなマイナスであるということはよくよく御存じだと思いますけれども、ちょっと考え方を変えて、時間をかけてみようというお考えはお持ちではないかどうか、それを聞かせていただきたい。

 翁長さんという知事も、もともとは自民党の方のはずなんですよね。もともと県会議員か何かですか、ちょっと私も詳しいことはわからないんですけれども、そういう意味では、話し合いをもっとされるということが大切だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 翁長知事は、たしか自民党県連の幹事長か何かをされておられた方だと承知をしておりますが、一般論として、やはり、今委員がおっしゃっていただいたように、話し合いをして合意をつくっていく、これは本当に大事なことだ、こういうふうに思っております。したがって、菅官房長官が行かれて、お互いに胸襟を開いてお話をされたと高く評価をしていただいたことは官房長官にも折を見てお伝えしたい、こういうふうに思っております。

 一方で、私が今置かれている立場というのが、行政不服審査法という法律がございまして、これに基づいて、沖縄防衛局から審査請求、それから、これはもう既に執行停止をいたしましたが、これの申し立てがあった、こういう立場でございまして、審査請求を受けますと、手続として、今度は沖縄県からの弁明書というのをいただくということで、提出してくださいというお願いをして、今これを待っている段階でございます。

 この弁明書ともともとの沖縄防衛局の審査請求を内容を分析して検討していく、こういうことになりますが、この後、弁明書が出てきますと、沖縄防衛局に送付をして、反論書の提出を求めるなど、丁寧に審理を尽くしていく必要がある、こういうふうに思っております。

 したがって、行政不服審査法という法律に基づいて、今厳正に法律を執行するという立場でございますので、冒頭申し上げた一般論は、もちろん政治家としてそう考えておりますが、今の立場としては、不服審査法に基づいて公平公正に判断をしていきたいと思っております。

松木委員 林大臣はさすがに、粛々と言わないで、ちゃんと丁寧という言葉を使った。本当に大したものだ。将来の大物ですよ、これは。

 でも、大臣、そうはいうものの、やはり沖縄というのは戦争のときも大変な思いをした地域で、海軍中将だったか何だったか、ちょっと名前を忘れちゃったけれども、将来、沖縄には特段の配慮をお願いしたい、こういうふうに言ってお亡くなりになっていった方がおられましたよね、大田さんという方だったと思いますけれども。そういう方もいますので、やはりこれは余りけんかにならないように、大臣は一応そういう立場があってやっているのはわかるけれども、ぜひ、立場も超えて、違うところではいろいろと話ができるんだから、そういうところでもしっかりお力を発揮していただきたいなというふうに思っております。

 まだまだ質問はしたいんですけれども……

江藤委員長 松木君、時間が経過しております。

松木委員 時間はもうないね。

 それで、持ち時間は一応五分になっているんだけれども、玉木君の時間に少し上げた形になっているので、私はこれで終わりましょう。

 とにかく、大臣、ぜひこの沖縄の問題というのはしっかりコミットして頑張ってください、本当に。よろしくお願いします。

 以上です。

江藤委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 維新の党、村岡敏英でございます。

 きょうは、食料・農業・農村基本計画及び一般的な農業政策についてお聞きいたしたい、このように思っております。

 質問になかったんですが、うちの松木委員が沖縄のことをお話ししたので、私も、ちょうど橋本龍太郎内閣総理大臣のときに官房長官秘書官で、沖縄には一年間に五、六十回行きました。そのときは、ちょうど普天間から辺野古に移すということが決まったときです。そう考えると、今沖縄に対して、例えば大臣じゃなくても、副大臣であったり政務官であったり、また官僚の方であったり、もっとたくさん行かなきゃいけないと思う。

 やはり、気持ちが一緒になって、いろいろな議論をし、そして私もお酒も一緒に飲みました。その当時、時々は集会に岡本補佐官と一緒に行ったんですが、卵もぶつけられました。そういう経験が、今回、選挙で負けてから、むしろ、選挙で与党の応援した候補が負けたら、本来であればもっと行かなきゃいけない。それを冷たくする印象をするから、どんどん心が離れていく。粛々とという言葉も、別にこれは上から目線じゃないと思うんです。ところが、そう聞こえてしまう。そういうところに大きな問題があると思うんです。

 そして、林大臣も法律に従ってやったと思いますけれども、私は、林大臣のタイプですと沖縄の人たちの心をつかめるような気がする。やはり誠実に会うということが前提なんです。それは、やはりあの戦争の中で、唯一戦争で入られた地域ですから、そこを忘れちゃいけない。

 その当時、官房長官が、最初は梶山官房長官。梶山官房長官も物すごい回数を行きました。私の父も行きました。そして、秘書も行きました。そして、官僚も行きました。そういう積み重ねの上に、あの普天間から辺野古というのをやっと了解してもらったんです。

 そして、今、いろいろなことがあってもとに戻ってしまって、そして選挙で負けたからといって、そのまま、もう会うまでは何もしない、沖縄振興策があるんだからいい、この態度をやはり沖縄の県民は見ていると思うんです。

 基地の問題、そして女性がいろいろな意味で暴行を受けたりしたときに、裁判するのは基地の中、そんなところに訴えていない人も現実にはいるんです。それで、訴えれば、やはり、沖縄もそれぞれの村で、あの女性はどこか米軍基地に遊びに行ったんじゃないかとか、いろいろな中傷を言われて、言わないで闇に葬られている事件もあるんです。

 さらには、米軍兵とできた子供たちの言葉で、大臣が知っているかどうかわかりませんが、アメラジアンという言葉があります。アメリカ人とアジア人の女性でできた子供たち、その学校にも私は何度も行っております。

 そこには、日本人の黄色人種じゃなくて、黒人の方の色をしている子供だったり、白人の顔をしていたり、この子たちは一体自分たちは何人だというアイデンティティーを失っています。学校でも言われるんです、おまえは何人だと。もう傷ついているんです。そういういろいろな思いを沖縄は抱えているんです。そして、まだ年間二百人近く、アメラジアンという言葉で呼ばれる子供たちが生まれていると言います。そういう状況をしっかり見た上で沖縄に向かっていただきたい。

 やはり沖縄という、戦争で本当に被害に遭ったこの沖縄が、東日本大震災で地震の被害に遭った福島、宮城、岩手と同じように、沖縄がきちんと立ち直ることが日本の再生なんです。それをぜひ大臣、官房長官にも総理にもお伝え願いたい、こう思いますが、どう思いますでしょうか。

林国務大臣 村岡委員におかれましては、もう数十回沖縄に足を運ばれたということ、大変重みのある御意見を今賜った、こういうふうに思っております。

 それに比べると私の回数は少ない方だと思いますが、例えば防衛大臣の時代にも沖縄に参りまして、アブチラガマだったと思いますが、実際に入ってみまして、こういうところで何人もの方が亡くなっているという現場も見せていただいたところでございます。

 やはり、そういう沖縄の皆さんの気持ちに寄り添うということは大きな政治の方向として非常に大事なことであるということを、私も橋本先生や野中先生、いろいろな先輩方から、単に言葉で教わったというよりは態度で教わってきた、こういう自覚を持っておるところでございます。

 そういった意味で、今そういう御意見を賜ったということを、しっかりと機会を捉えて総理や官房長官にもお伝えしたいと思います。

村岡委員 ぜひ、それはそのような対応の中でやっていただきたいと思います。

 それで、きょうは小泉政務官に来ていただいています。小泉政務官は被災地に何度も足を運んでおられます。

 そこで、実はTPPなんですが、これは新聞記事ですけれども、TPPの新聞記事を見ると、甘利大臣の言っている言葉がよくわからないんですね。それは何か。日米が完全にまとまることはないと思う、ただ、十二カ国の閣僚会議で日米は決着できるところまで話をできるという環境を整える必要がある、そしてさらには、日本側がタイムリミットとして、べた折れすると米国が考えるとすれば、大きな間違いだ、こう書いてあります。

 一体どっちなのか。交渉事ですから、わかりますよ。しかし、これはもう三年もやっているんです。期限を切らないでしっかりやるというのは大切なことです。今どういう状況にあるのかをしっかりと伝えていただきたいと思うんです。

小泉大臣政務官 甘利大臣の御発言等、またTPPの今の交渉の状況についての御指摘がありましたけれども、これから日米首脳会談も控えている中でさまざまな報道もありますが、決して日米首脳会談が控えているからといって不必要な譲歩はしない、しかし、TPPを担当する甘利大臣、そしてそのラインにいる私も含めて、どうにかこの交渉を前に進めていきたい、その思いはずっと変わらずに持ち続けながら交渉に当たってまいりました。

 ただ、その中で、やはりこれだけの大きな、参加国も多い交渉でありますから、ぶつかることもありますし、厳しい交渉をしなければいけません。その中で、前に進めたいという思いが言葉に出るときと、いやいや、ここは譲れない、そういったときに、仮に今回の交渉ですぐに折り合うことがなかなかできないことであっても、大局を見ながら、だけれども、国益のために進めなければいけないこともあるだろうというのを、参加国が一致して一定のところまで進めることができるように、この思いをやっていきたいということは変わらないと思っております。

 きょうも、朝の午前十時から、大江代理とカトラーさんと事務レベルの協議が始まりましたけれども、これらの交渉に全力で当たりながら、先ほど玉木先生の御指摘にもあった、国民や議会、そして皆様方に対する説明責任と情報提供を可能な限りやりながら、そしてTPPの妥結に向けて全力を尽くしていきたい、そういった思いは何ら変わりないものであります。

村岡委員 そこでなんですが、妥結に向かって進んでいきたい、そして聖域はきちんと守っていきたい、この両方を兼ね合わせなきゃいけないという大変難しい交渉のことはわかります。

 ただ、先ほど午前中、自民党の委員が質問した中で、農家を回って切実な思いを聞いた、そして、それに対して大臣は慎重に答弁されていましたけれども、実は政務官、まだTPPに参加を反対と言って選挙をやっている人もいるんですよ、自民党の中で。(発言する者あり)誰だって、別に名前はいいですけれども。

 国会議員はやっとそれが理解できていると思いますか。ちょっとお答えください。

小泉大臣政務官 自民党は大変懐の深い政党でありまして、私も今まで、党の方針に反して、いわゆる造反と言われた、そういったことを何度かしました。だけれども、その後で、厳重注意を受けながら、自民党の先輩方から懐の深い対応をいただき、最後は決まったことは前に進めていくんだ、ただし、それぞれの信念というのは、一人一人、国会議員ですから、尊重しながら、大切にしながら、だけれども組織ですからね、大事だよ、こういった懐の深い自民党の精神があらわれているのかな、そう思っております。

村岡委員 何か、小泉政務官、六十代になったような話をしていますけれども。

 深いということで、言ったら政党はいいんです、それでもまだ。自民党は、そういうのでずっと勝ってきていますから、いいんです。

 しかしながら、地方選で皆さん回ったと思います。江藤委員長なんか特に真っ黒になって、宮崎はやはり二毛作をやるぐらいですから暖かいところで、真っ黒になっていますけれども。やはり有権者、また農家というのは、ふだんは農林省や政治家に陳情しますから、なかなか全部言えないんです。選挙のときだけは政治家も意見をよく聞くということで、選挙のときに言うんです。選挙のときにしっかりと公約を言うのが政治家の責任であり、そして、それを守って政治をやるのが当然だと思います。

 例えばTPP参加、これは秋田の魁新聞なんですけれども、TPPに参加すべきかと自民党の公認候補二十九名に聞きました。どんな結果になったと思いますか。わかりますでしょうか、お答え。わからないですか。はい、三人、一〇%。どちらとも言えない、わかりません、十七名。反対、九名。これはどう思いますか。

小泉大臣政務官 選挙になりますと、いろいろありますよね。

 そういった中で、そもそも、TPPの交渉に正式に参加するかどうかという時点でさえ、本当に決断できるのかと言われました。しかし、それを安倍総理は決断をされて、TPPの交渉に参加をして、そして今、党内もさまざまな声がありながら、だけれども、総裁・総理が決めたことだから、そして守るべきものは守ると言っているんだから、その交渉を見守ろうと。

 ただ、経緯の中で、反対だと思った方もいるでしょう。そういった方の立場というのは理解をしつつ、だけれども、そういった方々がちゃんと多くの方々に説明責任を果たすことができたと言えるような結果に向けて全力を尽くすというのが、私も含め、一方で、TPPに参加すべきだ、そう貫いてきた立場の人間がやるべき責任だと思いますので、そこはしっかり踏まえて進めていきたい、そう思っております。

村岡委員 懐が深いし、選挙のときは選挙のときがある、そういうことだというふうに理解しました。

 ただ、農家の人たちはいろいろな政策をやはり選挙のときにちゃんと聞くんですよ。聞いて、それをやってくれるかどうかなんです。そこを忘れたら、もう全くTPPが、例えば聖域どころか参加さえ反対だということを今言っていて地方選で勝ってくる。それは、負けた野党は、人材不足なのか、一緒になってやれないということなのか、負けていますけれども、実は、そういう政治に対して野党が一番大きいかもしれないですよ、責任が。

 しかしながら、投票率がどんどん下がっている。特に東北なんかは、四年前、三月十一日に東日本大震災が起こって、その一カ月後の四月十日、そして、選挙区によっては選挙カーを回すのも自粛しよう、そういうムードの中でやった選挙よりも、またさらに下がったんです、投票率が。ここには野党の責任があえて大きいと言います。

 しかし、与党も、やはり選挙のときに言ったことを簡単に、懐が深い、そしてさらには、選挙のときはいろいろある、これは国会議員や県会議員しか通じない論理ですよ。これは一般住民や有権者はそう思っていないですよ。そこはやはり与野党ともに直していかなきゃいけない。

 小泉政務官だったらそのことを言わなきゃいけないと私は思っていますけれども、もう一回答弁を求めます。

小泉大臣政務官 私は、有権者の皆さんというのは本当によくその人を見て投票行動に移していると思いますから、仮に候補者の言っていることが本心かどうか、私は見きわめられていると思っています。

 ですので、表向きに言っていることと、その人が本当は心の中で思っていること、全てひっくるめた上での審判だと思っていますので、最後はやはり、一人一人の魅力だったり、人柄だったり、人間力、そういったことも加味されて、また、政策に対してどうかを含めての厳しい審判を国民から受けるために、日ごろからの活動が最後は試されているなと。

 そういった緊張感を忘れないで、これからも、私もそうですし、一人一人の候補者、政治家が国民の信頼を得られるように努力を重ねていく、それに尽きると思っております。

村岡委員 それは投票する人のことですから、投票率が下がってきたということとはちょっと違う、それはいいですけれども。

 しかしながら、例えば私なんかも秋田ですよ。もう稲作地帯ですよ。でも、農協集会という四、五百人のところで、一人、自民党の人たちが全員、県議でも国会議員でも、TPP断固阻止とか聖域五品目とかと、私は一切巻いていないんです。巻いていないで、しっかりと農協集会でも言っているんです。やはりそこは覚悟なんですよ。

 それがないと、これだけの大改革をするときに、もしやるんだったら、やるために、先ほどの沖縄と一緒ですよ。普天間から辺野古に移すといったら、やはり説得するためには、しっかりと全員がやっていかなきゃいけない。それが、例えば国会議員がやるべきなのか、それとも地元の県会議員が農協改革やTPPもやるべきなのか。やはり現場に近いところがやるべきだと思う。

 そういう意味では、小泉政務官は、青年局長としても、全国にいろいろな若い人、それから県会議員にも影響力があると思います。そこはしっかり、そういう自民党を目指したように、私は、小泉政務官が、私が浪人中にいろいろ言っていたことが、自民党は変わるんだ、こういったところ、そこをもう一度お聞きしたい。

小泉大臣政務官 青年局長時代、全国を回らせていただいて、TPPの問題に関して言っても、私は当時からTPPは参加すべきだと訴えていましたから、全国のブロックで袋だたきに遭いました、小泉さんが来るのであれば、行こうかどうか、どうしようかと言われましたし。

 だけれども、そういった中で本気でのぶつかり合いができるのが自民党の青年局のよさで、今も支えていただいている全国の方々は、そのときに激論を交わし、今でもTPP反対だと言っている地方の自民党の青年局の方々も、自分がつくったイチゴを送ってきてくれたり、そんなつき合いもさせてもらっている。まさにそれが、私は、自民党が下野をしてからも、もう一度政権に復帰することができた最大の力の一つが、この地域、地方組織の存在だと思っています。

 そういった中で、公約と、また政治家本人のそれぞれの選挙での立ち位置、これはもう本当に最後は有権者に問われていると思いますので、そこは一人一人、政治家の矜持というか、それを示していただく以外に、ほかの人がどうこう言うことではないのかなと。

 そういった大人が自分の信念を見ていただく場が選挙だと思いますので、もちろん選挙のときとその他のときと言っていることが違えば、そういった方はおのずと有権者からそれに伴う評価を受ける、そして、そういうふうに受けるべきだ、私もそんなふうに思っております。

村岡委員 小泉政務官、もう結構でございます。

 それを小泉政務官に聞いたことで、大臣にお聞きしたいんです。

 先ほどのTPP、数字を言いました。TPPに参加すべきか。はいが三名。どちらとも言えない、十七名。バツが九名。小泉政務官は大人の自民党のことを発言されましたけれども、大臣はどうですか。

林国務大臣 必ずしも、私もまだ大人になり切っているかどうかわかりませんが、二十年もおりますので。

 まず、その二十七名中何名だったというのが、公約として掲げられておられるのか、それともアンケートでどう思われるのかというところに若干違いがあるのかなという気が今聞いていていたしました。

 やはりみずから公約として掲げて、何をもって戦うか。四年間、県議会の選挙だと思いますから、四年間何をするのかということを掲げてやられるということと、特に、TPPは国の政府が交渉することでございまして、県議会議員のお立場で、どれだけそれにコミットされるのかということもあろうか、こういうふうに思います。

 そういう意味では、全体の方針、私は、実は一回前の衆議院選挙で、自公政権に戻ったときの公約、TPPのところを実際につくった張本人でございまして、かなり苦労して、聖域なき関税撤廃を前提とする限り、交渉参加には反対、こういう公約を最終的につくったわけでございます。したがって、党としては、それをしっかり印刷物にして出した、こういうことでありました。

 したがって、やはり公約というのは、みずからそれを掲げて戦う以上は、それを有権者は判断のよすがとして投票されるということでありますので、それがどういう結果になったのかということが次の選挙で問われるし、それがある意味では政治責任であろう、そのことがきちっとPDCA的に回っていくということが、あるいはほかにもいろいろ要因があると思いますけれども、投票率が下がっていくことを食いとめる一因にはなるのではないか、こういうふうに考えております。

村岡委員 実はアンケート調査なんですけれども、しかし、アンケートした県議だと、それは公約といっても日本全体の公約をするわけじゃないのです。アンケートを見て有権者がやはり判断していく。そして、選挙運動では農業のことは余り語らないようにしているんですね。逃げちゃっているんですね、語ればいろいろ突っ込まれますから。やはりそういう姿勢は変えていかなきゃいけない、こう思っています。

 こればかりやっていてもきょうの主題に入らないので、違う質問にかえさせていただきますけれども、資料をお渡ししました。三月に、維新の党、江田代表を含めて八名の衆議院議員で、私の地元ですけれども、大潟村に行ってまいりました。

 この資料を見てください。

 例えばいろいろな、農協を含め、改革の中で話題になった正組合員、准組合員。正組合員が千百五十名、准組合員が三十六名、米の販売事業はJAが持っていない、そして農産物販売は八千万だけ、営農指導は八千万円だけ、資材は安いところを選んでいって一番低価格を選んでいく、そして後継者は八割いる、後継者不足の心配なし、組合員全てが経営者、こういうような大潟村です。

 もちろん、全く普通の日本の農業と違う経緯で成り立っていますけれども、この現実を見て、大臣はどうお考えですか。

林国務大臣 まさに先生のお地元で、先生方が御視察いただいたということでございますが、この大潟村は、私から申し上げるのも釈迦に説法だと思いますが、大規模経営を実践するモデル農村ということで二十年の歳月をかけてやった、こういうことでございまして、経営の耕地面積が十五ヘクタール以上の方が九割いらっしゃるということで、今おっしゃっていただいたような数字がいろいろ出てきているんだろうな、こういうふうに思います。

 したがって、生産現場の強化ということで農地中間管理機構を使っていろいろやっていこうというのも、全く頭の中だけで考えているというよりは、こういう例も実際にあって、やはり集積、集約をしていくとこういうコストの低減やいろいろな規模の利益というのが出てくるという非常にいい例ではないか、こういうふうに思っております。

村岡委員 もっとも日本の農業は、兼業なりいろいろな農家の形、全体の農業を支えてきたので、この地域は比較的、秋田の中では非常に当初は厄介者扱いされたところですし、大変今苦しんでいるのは、実は平均十五ヘクタールあるんですが、これは干拓地なので、全て土手で囲まれています。海抜より低いんです。そうすると、この十五ヘクタールは、先ほど言ったように、専業がほとんど、後継者はいる、今度は大きくしようと思っても、土手を越えていくことはできないんです。土手を越えていくと、昔のいろいろな思い出があって、なかなか売ってくれない、逆に広げられない。干拓地は決まっていますから、平均十何ヘクタールぐらいやって、ほとんどの人がやめていない。

 そして、大体生産額が一農家当たり二千三百万から二千五百万、五百十軒しかありませんので。そして、JAバンクの預金額が二百五十億、一人当たり平均五千万円の預金を持っている。非常に大規模経営としては成功しています。冬なんかだと、ヨーロッパやアメリカへ行って、視察とともにいろいろなところへ行ったりしている、研究もしている。そして、機械は輸入品がほとんどです。日本の農機具では馬力もない、高い、そういう状況です。

 私は、これが全部いいのかどうかは別にして、大臣は、先ほどこれを参考にした成功例ということでは、やはりこの成功例を目指していく方向なのかどうか、もう一度お聞きしたい。

林国務大臣 まさに今御披露いただいたような状況になっている、こういうことでございますが、一方で、平成二十一年度からは米粉用米の生産も推進をされておられるということで、二十一年度には新規需要米推進研究会をおつくりになって、三浦屋さんと連携するとか、デリカ研究所ですか、いろいろな例をやっておられる。また、これはちょっと記憶が曖昧ですが、たしかベトナムの方にも出かけていかれて、現地での生産をやられている。

 いろいろな展開を、やはり先ほど先生がおっしゃったように、全員が経営者でいらっしゃるということでございますので、大潟には大潟なりの土手という制約があるということでしたが、その制約をどうやって超えていくのかということを、やはり経営者としていろいろとお考えになっているということでございますので、まさにそういうことを我々は一つのいい例としていろいろな展開に役立てていきたい、こういうふうに思っているところでございます。

村岡委員 まさに大潟村も大規模化の成功事例ではあるんですけれども、大潟村が、今言ったように、これ以上広げるのがなかなか大きな土手というか壁になっている。それと同じように、小さな農家が集積していって経営体になるとき、やはり大きな壁、土手というのが経営能力という部分なんです。やはり生産者でずっとやってきちゃったんですね。

 その中で、経営感覚を入れろというのは、六次産業化とかいろいろなことがありますけれども、現場へ行くと、六次産業化、それは誰がやるんですかと。いやいや、農家の人がやるんですよと言ったら、えっ、我々がやるんですかと。こういう感覚が本当に多いんです、実は。

 というのは、例えば、転作作物なんかでも、この金額は幾ら、この金額は幾らと。しかし、四年後、生産調整の廃止。そうなると、自分でいろいろ選んで売っていかなきゃいけない。その部分でいくと、やはり経営感覚というのが一番大切であって、それは自立してやるんだと言えばそのとおりかもしれない。

 しかしながら、大臣、これは経営をどうやって、農家の人たちにしっかりと経営感覚を持っていただいて、所得倍増なのかどうかわかりませんけれども、そういう形でやっていくというのは、経営能力に関して、農林省として、農家の人が独自でやればいいんだ、こういうふうに思っていらっしゃるのか、それとも、経営は、こういうふうにやっていくところの五年、十年の単位では、皆さんが経営者としてしっかり自立できるようにサポートをしていく、こういうようなことがあるのかどうか、お聞きしたいと思います。

あべ副大臣 経営感覚でございますが、本当に農業の経営を発展させるためには、生産技術だけではない、経営のノウハウを習得していくという経営感覚のある農業経営者を育成していくことは本当に重要である、委員のおっしゃるとおりでございます。

 今、実は道府県が設置している農業大学校でございますが、就農率が五割という段階でございまして、地域における農業教育機関として中核的な役割を果たしているところでございます。

 また、経営感覚という観点からは、一般社団法人アグリフューチャージャパンという日本農業経営大学校というのが委員御存じのようにございまして、先般も、私は入学式に出席をさせていただきましたが、平成二十五年の四月に開校したところでございます。これは、産業界また農業界の一流の経営者による講義などを通じまして、高度な経営力を備えた農業者の育成に力を入れているところでございまして、平成二十七年三月に卒業した一期生、十八名でございますが、全員が就農いたしました。

 農林水産省といたしましても、こうした経営力の養成の教育を一層強化していきたい、委員の思いと同じでございまして、アグリフューチャージャパンなどが道府県の農業大学校の学生また指導者向けに開催するセミナーの支援を行ってまいりたい。また、道府県の農業大学校が教育の改善を図っていきながら、六次産業化など委員が心配していらっしゃる経営力の強化につながっている新たな教育カリキュラムの導入の支援などを農林水産省としても行っていくところでございます。

 今後とも、これら農業の教育機関における取り組みを推進し、経営感覚を備えた農業経営者の育成に努めてまいりたいと思います。

村岡委員 もう何回も言っていますけれども、今言った各県の農業大学校は確かに五〇%ぐらいになる、これは農業をやろうと思って入っている部分がありますから。また、経営が十八人というのも、しかし、それだけの人数ではとても日本の農業全体を支えることができない。全体で経営を担っていく。そのときに、前から言っている、農業高校をもっと充実させた方がいいと。もう数%なんです。農業高校の十五歳のときからしっかりやらなければ、それはなかなか成立していかないんです。それを何回も言っているんです。

 全く手をかけていないみたいですけれども、何か農業高校に対して取り組みを農林省でし始めているでしょうか。

あべ副大臣 農業高校に関しましては、御存じのように、所管が文部科学省でございます。

 農業のあり方について、今本当に、文部科学省と農林水産省がやっと情報交換を、前からもしているのをもっと密に始めたところでございまして、また、実は農業高校を応援する会というのを一部の有志の議員でつくり、特に、かなり前から産業教育振興法というのがございました。職業高校に対する応援をしていくというものでございますが、国がしっかりと一〇%を、その財政を支援していたのが、都道府県の方が負担するという形になった中、地域によって格差が出てまいりました。

 特に職業高校、農業高校に関しましては、農業機械を更新していくなどの問題点、それが特別会計になっている都道府県もございますれば、一般会計になって、いわゆる農業高校の学生たちがいろいろな売り上げを上げているのが吸い上げられていくところもございまして、それをちょっと強化していく必要が地域創生の関係と職業高校ではあるのではないかと一部の議員の中で議論がされているところでございます。

 関係省庁と一体となって、農業高校は地域創生には必要だと思っておりますので、また、委員の方の御意見もしっかり聞かせていただきながら、御一緒に頑張ってまいりたいと思うところでございます。

村岡委員 今副大臣が言われたように、もう本当に農業高校は悲惨なるもので、昔はこういう稲刈り機を使っていましたよ、昔はこんな田植え機を使っていましたよ、こんな耕運機を使っていましたよと、歴史の授業をやっているような、もう大変お粗末な機械になっているんです。ですから、当然、教えることなんかも、今はどういうのが市場でしっかりとそのニーズがあるかとか、機械はこういうふうに変わっていく、それから大規模化をやったときにはこういう機械を使っている、そういういろいろなことを十五歳からの大事な三年間に教育していく。

 それが文部省だとか、農林省の管轄じゃないとか、それはもうおかしいと思うんです。特に農業の大改革、安倍総理が、成長産業にするんだ、そして担い手をしっかり育てていくんだ、そういう覚悟であれば、文部省だとか農林省とかはないと思うんです。

 ですから、一部の議員でやらないで、これはもう超党派でやりましょうよ、農業高校を応援する会。ぜひ、宮腰先生、お願いします。いや、答弁は求めません。

 でも、これは一部でやっているからよくないんですよ。農業高校というのでいったら、やはりしっかりと全議員が、全議員というか、農業高校を応援する議員が会って、みんなで話し合って、実態を見に行って、この農水委員会でも農業高校をぜひ視察しにいきましょうよ、どんな感じなのか。そういうぐらいのことをやって担い手をつくっていく、この覚悟を、農家の方々にもしっかりメッセージを送ることが大切だと思うんです。

 大臣、どう思いますでしょうか。

林国務大臣 大変大事なことだと思っております。副大臣が一部の議員と言ったのは、多分、志のある議員の皆さんという意味だと思っておりますが。

 先ほど委員からもお話があったように、農業高校を卒業して就農する方が三%、それから、農学系の大学、いわゆる農学部、ここが五百六十二人で二・五%、それから、先ほど御紹介申し上げた道府県農業大学校になると、これは五五%と。したがって、私の肌感覚で申し上げても、十五のときに、俺は就農しようという決断をみんなにしてもらうというのはなかなか難しいことであるなと、一方では、地元のいろいろな人と話していると思うわけでございますが、一方で、だからといって、そこで歴史みたいなことを教えていてもしようがないわけでございます。

 地域の農業大学校とか農業高校等の卒業生の就農を促進するというためには、関係府省、それから都道府県、みんなで連携して、しっかりと先進的な農業経営の学習を充実させたり、それから就職の支援をする、就農の支援体制の強化を図る、こういうことが大事だ、こういうふうに考えておりまして、この食料・農業・農村基本計画にも、まさに青年層の新規就農というところにそういうところを書き込ませていただいたわけでございますので、農水省が中心になってしっかりとやってまいりたいと思っております。

村岡委員 十五のとき職業を決めるのが難しいというのは、それは普通高校に行っていたら、どこに行くのかというのとか職業とか。農業高校へ行っているわけですから、それはやはり十五から十八のとき、農業というのは魅力的だな、この中で、農業でしっかり生計を立てていこうかなと思う人が五〇%ぐらい出てきてもこれはおかしくない、農業高校を選んでいるわけですから。

 別に、農業高校に入ってきて、最初から農業をやらないと思って入ってきている人たちもいるかもしれませんけれども、農業に一応興味を示して入ってきているという前提でいけば、やはり興味をなくしちゃう三年間があるんじゃないか、こう思っていますので、これは農業高校などを、大臣でも農水委員会でも訪ねる。大臣が行くときはかばん持ちで行きますから、農業高校にぜひ視察に行って、農業高校の人たちに、これから担い手は大事なんだ、あなたたちが日本の食料を支えるんだ、農業を経営にしていくんだ、こういうふうなメッセージをぜひ若い人たちに持ってもらいたい。それは、多分大きな影響を農村に与えると思いますので、ぜひお願いしたい、こう思っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 玉木委員の方からは、農地バンクの予算の件がありました。私は、予算委員会とか農林水産委員会でも何回も質問させていただいたんですが、稲作農業の体質強化緊急対策事業なんです。これは、一次、二次、三次、募集しましたけれども、結果はどうなったでしょうか。

林国務大臣 最終的には三次まで申請の期限を延長いたしまして、申請を募ったところでございます。

 主食用米作付面積の半分の七十万ヘクタールについて申請が行われたとしても万全な対応が可能となるように、二百億円ということで確保いたしましたが、申請額は予算額に対して四割の七十八億円でございました。

 全国で三十五万ヘクタールの水田でこういう取り組みを行っていただくということになりましたので、一定の効果を果たしていただけるものと考えておるところでございます。

村岡委員 私は、最初に、二百億ついて、あしたから説明会をやる、あしたからですか、それで一月中ですかとお聞きしました。そして、予算委員会で聞いたとき、一月中では間に合わないので、今度二月、そして三月。結果的に六割使っていないわけですね。

 やはり、こういうことが、先ほど言った玉木委員の話じゃないですけれども、農家の人たちの現場をしっかり把握していたのか、把握していないということのあらわれだと思うんです。それに対して一定の効果という評価だと、これは、衆議院の選挙前、八千円前後の概算金になったということで、米価対策というのは直接はやれないので、体質強化と銘打ちながら、いろいろな項目でお金をもらえるようにしましたけれども、農家の人たちに理解されていないから、結局これは使えなかった。これを一定の評価をしていたら、次の予算もまた同じことの繰り返しだと思うのです。

 やはり、これをうまく農家の方々に体質強化にしてもらうという反省のもとに立たなければだめだと思うんですが、もう一度、大臣の答弁をお願いします。

林国務大臣 全く反省をしていないという意味ではなくて、四割は申請があったわけでございますが、これは地域別に見ますと、北海道では八六・七%、東北で三三・四%、北陸で二九・七%なんですが、九州では六・八%、私の地元も含めて中四国は七・六%、東海以西で、かなり西と東で差がついたなということでございます。

 また、二カ月でという、ちょっと余りにも期間が短過ぎた、こういう御指摘もいただきましたし、それから、例えば新しい機械を導入しなくても対象になるとか、確認を求めるということではないという内容がなかなか正確に伝わっていないのかな、こういうこともあろうか、こういうふうに思っておりまして、こういう対策をまた今後やるかどうかは今後の検討ということでございますが、こういう結果を踏まえて、しっかり検証はしておきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 次に、もう一月の、あれは閉会中審査のときに私は言ったんですね、そうなるんじゃないかと。何かこれは、予想どおりになるというのは全然、予想どおりになってほしくなかったんですよ。だけれども、予想どおりになっている。もう予想どおりになってしまったんだ。ですから、これはしっかりと検証して、今度は、農家の方々にしっかりそれを活用してもらって体質強化する、いろいろな対策は全部そうだと思うんです。

 先ほど、うちの党の松木委員が言っていた五〇%を四五%という目標の点、これも、五〇%を四五%に下げたのは現実的だ。例えば、所得倍増というのを、十年後所得倍増、余り信用していないんですよ、実は。五年後ぐらいに所得一・五倍増とか何かなるのかよくわかりませんが、そういう閣議決定をするのかどうか。やはり、そういう一つ一つの積み重ねが信頼を失っている。それに対して、しっかりと検証して、農家の方々と、この二百億が結果的に六割使われなかったのはどうだったのかということをやはり調べる必要がある、また現場で聞く必要がある、そこをぜひお願いしたい、こう思っております。

 そこで、もう時間がなくなってきましたが、農協改革に関してお聞きします。

 今回の農協改革の中で、大きかったのは全中と監査法人の件ですけれども、これもまた先ほどのTPPと同じような現象があります。

 国会議員の自民党の先生方は、この農協改革、いろいろな意見があっても、消極的な方もあれば、支持政党ですので、大体賛成という方向性で決まったということだと思いますけれども、これもまた秋田県の二十九名の方にアンケートしています。政府の農協改革は妥当か。どのぐらいだと思う、わからないですかね。はい、一人。どちらとも言えない、わからない、これは結構多いんですね、二十二名。バツ、六名。でも、これは稲作地帯ですよ。出る公認の候補が農協改革にわからないと答えて選挙をやるというのはやはりおかしいんじゃないか。俺はここは違うと思うと言った方がもっといいですよ。

 だから、そういう農協改革も、組織も変えなきゃいけないと私は思っていますよ。しかしながら、農家にだけ説明するのじゃなくて、自民党というのは国会議員や県会議員や市会議員がいろいろ公認されていると思います。やはり自分の党の人たちに、これだけの戦後最大の農協改革をするときに、しっかりとした説明をする責任はあるんじゃないでしょうか。

 大臣、最後に。

林国務大臣 政府としても、しっかりと周知を図ってきておりますし、また、これからも図っていかなければなりませんし、しっかりと、党としても政府・与党と一体となって決めたことでございますので、党の立場としても、党内、それから党の支援者や外に向けても、しっかりと説明をしていく必要があると考えております。

村岡委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

江藤委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。

 食料・農業・農村基本計画は今後十年間の農政の方向性を示すものです。

 自民党の皆さんは、二〇一三年四月に農業・農村所得倍増目標十カ年戦略を発表します。同年六月十四日には、今後十年間で六次産業化を進める中で農業・農村全体の所得倍増をさせることが盛り込まれた日本再興戦略が閣議決定されます。それに基づいて、総理が本部長になって十二月十日に農林水産業・地域の活力創造プランが決定をされました。

 農業・農村の所得倍増というのはアベノミクスの成長戦略の目玉だと思います。関連する資料でも、所得倍増になるように試算がされています。

 これだけ所得倍増が強調されながら、基本計画には「所得増大」とされています。農林水産省としては、どのように倍増を増大というふうに整理されているんでしょうか。

林国務大臣 今、新たな食料・農業・農村基本計画についての記述ぶりのお尋ねがございましたが、基本計画にどう書いてあるかといいますと、「「農林水産業・地域の活力創造プラン」等においては、「今後十年間で農業・農村の所得倍増を目指す」こととされており、これに向けて、農業生産額の増大や生産コストの縮減による農業所得の増大、六次産業化等を通じた農村地域の関連所得の増大に向けた施策を推進」、こう記載をしております。

 農業・農村の所得倍増は活力創造プランにおいて目指すとされておりますが、基本法において目標として設定すべきものというふうにされている食料自給率とは異なりまして、基本法上の目標として設定すべきものというふうにされているわけではないわけでございます。

 基本計画とあわせて農業経営等の展望というものを策定しておりますが、この中で、マクロの道筋として、農業所得及び農村地域の関連所得の増大に向けた対応方向とそれぞれの試算値、またさらに、ミクロでの道筋ということで、営農類型別、地域別の農業経営モデルとあわせて地域で六次産業化等の取り組みを示して、地域の農業所得と関連所得の合計が増大するイメージをお示ししているところでございます。

斉藤(和)委員 食料・農業・農村政策審議会の企画部会の委員の生源寺氏がこうおっしゃっています。「所得倍増について、やはり、基本計画の中に、具体的な形で織り込むことは避けた方が良い。」「ある程度高めの目標を設定するということはあるかもしれないが、現実からかけ離れたものを掲げるということとは別。」「引用として「所得倍増」という言葉を使っていくというケースと、この審議会の答申、それを受けた基本計画の中で、「所得倍増」という言葉を使うというのは、全く意味が違う。審議会として、閣議決定した内容に責任を持てるかどうかという、こういうレベルの話になるので、この辺も注意深く対処する必要がある。」というふうに発言されていますが、やはりこの指摘を受けて、基本計画には「所得増大」というふうに書いたのでしょうか。

林国務大臣 生源寺先生は審議会の重要なメンバーでございますので、審議会でいろいろな議論をされる中で、今御指摘の発言があったのかな、こういうふうに思っております。

 最終的に、閣議決定に当たっては、先ほど申し上げましたように、基本法に基づいて計画をつくる、こういうことでございますので、基本法において食料自給率は目標として設定するものと明記をされておりますので、そういう形で設定をすべきもの、こういうふうにいたしたところでございますが、所得倍増を目指すということについては、先ほど申し上げましたように、基本法において設定すべきものということではありませんので、農業経営等の展望の中で書かせていただいた、こういうことだと思います。

斉藤(和)委員 増大というふうには書いたけれども、基本的には所得倍増ということでいろいろなプランなども閣議決定をされているということですので、その所得倍増について、農林水産省の試算などの資料を改めて見ていきたいというふうに思うんです。

 農業の所得は、二・九兆円から三・五兆円と六千億円ふやすというふうになっています。その一方で、先ほど来話が出ていますが、農村地域の関連所得が一・二兆円から四・五兆円と大きく伸びることになっています。これは、加工・直売や都市と農山漁村の交流など七つの分野が示されていますが、大きなウエートを占めているのが輸出になっています。現在の輸出額は、農水省が出した資料ですけれども、四千五百億円ですが、二〇二〇年には一兆円、さらには十年後には三兆円に拡大するという目標です。

 十年で農業の所得は六千億円しかふえないのに輸出額を三兆円にするという見通しは、どのように持っていらっしゃるんでしょうか。

林国務大臣 輸出でございますが、日本再興戦略におきまして、平成三十二年に日本の農林水産物、食品の輸出額一兆円を達成し、その実績をもとに、新たに平成四十二年、二〇三〇年でございますが、輸出額五兆円の実現を目指す、こういうふうに定められております。

 したがいまして、平成三十二年の政策目標である一兆円、それから平成四十二年の政策目標である五兆円の中間値が三兆円でございます。これに最近の好調な伸び率、これは一兆円に向けて実はかなり、四千五百、五千五百、六千百と好調な伸び率を記録しておりますので、これを維持した場合、中間値より一五%程度上回る、こういうふうに試算をいたしまして、数字をはじいて、そしてこれに農村の帰属割合を乗じて、農村地域の市場規模として平成三十七年においては三兆円、こういうふうに試算をしたところでございます。

斉藤(和)委員 三兆円ということで、帰属割合をという話だったんですけれども、やはりウエートとして、三兆円の農林水産省の方が出した試算を見ていただきますと、お手元に資料をお配りしていますが、加工食品の割合というのは五千億円になっています。

 つまり、農業の所得で六千億円にもかかわらず、輸出額は三兆円というふうにするというのは、まさに農業の生産品だけを輸出することによって価格をふやすということだけではなくて、まさにこの試算どおりに、いわゆる生鮮品を輸出ということだけではなくて、加工品の輸出を大きくふやすということだと思いますが、間違いありませんか。

林国務大臣 お示しした試算の中でも、二十五年は生鮮品が〇・一八兆円、千八百億円に対して加工品が三千七百億、〇・三七兆円で、トータルで五千五百億ということでございますが、三十七年はこれがそれぞれ一・二兆円と二・二五兆円になる、こういうふうに推計をしておるわけでございます。

 生鮮品の場合は当然農村地域の帰属割合は一〇〇%ですが、加工品の場合は、二十五年は七三%、これを三十七年においては八〇%をそれぞれ見込んでおるということで、はじいておるところでございます。

斉藤(和)委員 加工食品がふえるということはお認めになりますよね。三兆円の中で加工食品の割合が占めるウエートというのは非常に伸びるという、こちらの。

林国務大臣 当然、我々が内訳をつくって、一兆円の目標をつくっている中も、加工品が五千億だったと思いますが、そういう割合になっております。

 三兆円、五兆円ということを目指していくということになりますと、いわゆる新大陸型のアメリカとかブラジルというような、大豆、トウモロコシ、小麦等の、コモディティー的にたくさんつくって、大変安い値段で輸出するということではなくて、オランダやフランス、イタリアといったような、付加価値の高い加工品、集約的な花等をやっているもの、フランス、イタリアは、さらに加工したものをブランド化するということで付加価値をつけている。

 どちらかというと、我が国が目指す方向はこういう形ではないかな、こういうふうに考えておりますので、先ほど申し上げたような数字の推計をしているということでございます。

斉藤(和)委員 やはり輸出の三兆円というのは、非常に加工品がふえるウエートが大きい。つまり、六次産業化を進めて加工品を拡大し、より付加価値の高いものを海外に輸出をして、もうける。それが、行く行くは農業・農村の所得倍増につながる。私は、農業版のトリクルダウンの発想だというふうに思います。

 経済全体においても、大企業がもうかればそのおこぼれが滴り落ちるというトリクルダウンはうまくいっていないという現状があるもとで、農業において、特に気候条件にも大きく左右される、こうした発想というのがそもそもいいのかということを私はちょっと指摘しておきたいというふうに思います。

 同時に、農林水産省の品目別輸出戦略によれば、二〇二〇年の輸出額一兆円のうち、三分の一以上は水産物です。農業・農村の所得倍増といいながら、水産物が大きなウエートを占めていますが、これはどのように説明をされますか。

林国務大臣 トリクルダウンということは、加工食品の場合はゼロだというふうに申し上げるつもりはございませんが、先ほどフランスの例を出させていただきましたけれども、GI、ことしから我が国でも始まりますが、これを活用して、例えばブリー・ド・モーといったチーズは、非常に小さい規模の生産者がこういうものをつくって、これが世界に輸出されているということもございますので、目指すべき姿はこういうところにあるのではないかなというふうに思っております。

 今お話のありました水産物でございますが、御指摘いただいたように、農村地域の関連所得の算出のもととなる輸出額には水産物も含まれておるわけでございますが、農村地域の関連所得を試算する際に、推計された市場規模から、原料となる農産物や水産物等の中間投入額を除くことによって関連所得を算出しておりますので、最終的な関連所得額には、原材料である水産物に係る漁業の生産所得額、これは含まれていないということでございます。

斉藤(和)委員 つまり、漁業に含まれる帰属割合の意味は含まれていないということですか。輸出額の一兆円の中の三分の一を占める三千五百億円というのの中に、あくまでも農業、農村だというふうに捉えてよろしいんでしょうか。

林国務大臣 輸出は先ほど申し上げたとおりでございますが、六次産業化事業体の関連所得を算出する際には、加工食品を原材料によって切り分けられないなど、統計上、これらのみを厳密に切り分けることが困難であるということに加えまして、農山漁村の実態を踏まえますと、農家の人が、例えば輸出向けの水産物の加工施設で働くというような場合も考えられまして、こういうものも含めて、地域全体で雇用や所得を伸ばしていって、農山漁村を活性化していく必要がある、こういう理由で、六次産業化事業体の関連所得の算出の際には水産物が含まれている、こういうことでございます。

斉藤(和)委員 つまり、今のお答えは加工食品の話であって、一兆円の中の三千五百億円の水産物というのは別だという話だということだと思います。つまり、農業・農村の所得倍増といいながら、漁村の所得にかかわる水産物が含まれているという点でも、この試算自体に水増しがされているのではないかというふうに私は考えています。

 先ほどお答えになりましたけれども、加工食品の帰属割合、この問題で、もう一つの表で、今現在、加工食品の農村地域の帰属割合は七三%だ。これはなぜかといえば、輸入原料を使っているから、農村に帰属するのは七三%。しかし、十年後には八〇%になるというふうにされていますが、つまり、それは国産原料をふやすということだと思うんです、加工食品の中での割合を。これはどのように実現しようと考えていらっしゃるんでしょうか。

林国務大臣 今後、農林水産物、食品の輸出の拡大を図るためには、今つくっております国別・品目別の戦略に基づいて、マーケティングをオール・ジャパン体制で進めまして、相手国のニーズに適した商品開発等を行うことが重要でございます。

 このために、生産者、流通関係者等が一体となって、お客様、海外の需要者のニーズに応じた国産農産物等の生産供給体制の確立を図っていこうということで、PDCAサイクルを回して課題等を分析して、毎年、取り組みの改善を行っていこうということを考えておりまして、こうした取り組みを通じて、加工品の原材料としての国産農産物の使用割合を高めていく、こういうふうに考えております。

斉藤(和)委員 割合を高めていくというお話だったんですけれども、私は、今の加工食品の原料というのは輸入がどんどん増加傾向にある、こういう実態を考えても、本気で国内生産の原料を拡大しようと思ったら、やはり輸入に対する規制をしっかりと歯どめをかけて行う必要がある、TPPなどはもってのほかだというふうに思うんです。国内生産を拡大する対策を打たなければ、この間、輸入はどんどんふえているわけですから、ますます輸入が拡大することは目に見えているというふうに思います。

 この点でも、現状よりもさらに国産品をふやすという八〇%という帰属割合自体も、私は、水増し、数字を合わせるためのものではないのかというふうに感じています。そういう点からも、私どもの試算で見ると、試算の段階で六千四百億円にも上る水増しがされている。

 今、米価が暴落をして先行きが見えない状況の中で踏ん張っている農家の皆さんたちにとって、それをだますような、所得倍増という、これはもう撤回をすべきではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 水増しというふうに、先生から見るとそういうふうに位置づけられるのかもしれませんが、我々は政策をやっていく上で、そういう七三から八〇というのをはじいて、先ほどフランスの例を申し上げましたけれども、GIというのをやりますと、やはりちゃんと地元のものを使って今までやってきたやり方を踏襲するということが付加価値の源泉になる、やはり目指すべき方向はこういうことではないかな、こういうふうに思っております。

 やはりしっかりとそういう目標をつくって、輸出の目標もそうでした、一兆円と最初に言ったときは、関係者の間で、これは高い目標ですけれども、目標として頑張りましょうか程度の感触もあったわけでございますが、実際に戦略を細かくつくって積み上げていきますと、四千五百が五千五百、六千百、こういう勢いでふえてきておるわけでございますので、一見高くハードルが掲げられているように見えても、その実現に向かって諦めずにしっかりと着実に努力を続けていくという姿勢が大事ではなかろうかと考えておるところでございます。

斉藤(和)委員 一見高く見えるような目標であっても、それを掲げて頑張るのであれば、食料自給率は五〇%でもよかったのではないかというふうに思いますが、やはり農業・農村の所得倍増というふうに言っている無理な目標を、逆に言えば、設定することによって現実に合わない施策が進められ、現場は矛盾に陥る、そういう実態もあるというふうに思いますので、私は、しっかりと現場をよく見て考える必要があるというふうに思います。

 次に、農地中間管理機構について質問をいたします。

 農地中間管理機構は、農地の有効利用の継続や農業経営の効率化、コスト削減のためには規模拡大が必要だということで、農地の集積、集約化を進めるために設立をされましたが、今年度の目標とそれに対する実績は、先ほどもありましたとおり、非常に低い。今後、四月下旬に数字が出され、それをもとに安倍首相のもとで検討されていくというふうになっていますが、現時点で、大臣は今の現状をどのように認識され、今後どうしていく必要があるというふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

林国務大臣 これは先ほど来お答えをしてきたところでございますが、熊本県のような優良事例を横展開するための研修会、県別ヒアリング、こういうものを行ってまいりまして、機構の体制整備を促してきたところでございますが、やはり全都道府県の機構が軌道に乗っているという状況ではない、こういうふうに考えております。

 この背景も、先ほど申し上げたとおりでございますので繰り返しませんが、ディベロッパーとしての自覚がなかなかないですとか、人・農地プランの話し合いが十分に進んでいない、また、機構の存在そのものの周知が徹底されていない、こういういろいろな原因が考えられることでございます。

 したがって、三月末時点の初年度のデータをしっかりと収集して、これをもとに、官邸も含めて、機構の活動の検証、評価を徹底的に行いまして、大事な事業でございますので、しっかりと軌道に乗せるために具体的な対応策を検討していきたいと考えております。

斉藤(和)委員 実は、規制改革会議の中で、奥原局長がこうおっしゃっています。「法律さえ変えれば世の中は変わっていって農地が動くのではないかと思ってきたところが随分あるわけです。ですが、この土地の問題というのは都市部でもそうですけれども、そう簡単に動くわけではありません。」とし、小さい規模で高齢の方がいたり住んでいたりする上で、「自分の持っている土地についての執着は物すごくあるわけです。」というふうに発言をされています。

 この局長の発言というのは、私はそのとおりだと思うんですけれども、こうした農家の皆さんの土地への執着、こう考えた場合、農地中間管理機構のやり方というのは、目標に届かない現状を見ても、なかなか貸し出すということ自体に抵抗があって難しいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 ちょっと局長の発言について詳細は承知をしておりませんが、先ほど申し上げましたように、そういう理由が、もしこのデータを収集して一つの理由として出てくれば、それに対応してどういうことを対応していけばいいか、こういう検討をしなければならない、こういうふうに思っております。

斉藤(和)委員 これから検討をされるということですけれども、私は、やはり農地というのは単なる土地ではないと思います。農家は、より収量をとれるように、また、いい作物が収穫できるように、丹精を込めて土をつくるわけです。先祖代々の農地であると同時に、みずからの汗と苦労が詰まっている農地だからこそ思いが強い。そして、そういう思いがあるから、農村社会を構成し、農村文化をこれまでつくってきたんだと思うんです。

 しかも、問題だと思うのは、農地中間管理機構は借りる側を公募します。つまり誰でも公募できるわけで、企業の農地の利用を拡大するためのものではないのかと指摘をされています。

 埼玉県の羽生市で、イオングループが米の生産を始めることも報道されています。農地中間管理機構の役割は、安倍首相が昨年一月のダボス会議で、四十年以上続いてきた米の減反を廃止します、民間企業が支障なく農業に参入し、つくりたい作物を需給の人為的コントロール抜きにつくれる時代がやってまいりますという、まさに民間企業が農業に参入するための後押しだというふうにも見えます。既に、五年、十年で返せと言われたら困るだとか、産業競争力会議でも、企業による農地取得の自由化を求めるということも言われています。

 こうした企業の農地取得に道を開くようなことは絶対にあってはならないというふうに考えています。企業は、もうからなければ簡単に撤退をするわけで、さらなる農地、農村の荒廃を招きかねません。本当に日本の農業、農村を守るというのであれば、こうしたやり方は許せないということを指摘して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 きょうの最後の質疑ですので、よろしくお願いいたします。

 質問に入る前に、先月三十日、翁長沖縄知事が防衛省沖縄防衛局に対して出した名護市辺野古における新基地建設の作業停止指示について、林大臣が効力の一時停止を決定したことについて、我が党は予算委員会などでも、大臣の決定が沖縄の民意を踏みにじり、沖縄防衛局の申し立てをオウム返しにしただけのものであることを批判してきました。改めて、本委員会でも強く抗議の意思を初めに表明したいというふうに思います。

 質問に入ります。

 食料・農業・農村基本計画では、品目別の生産努力目標が示されているわけです。その中でも、飼料用米については十一万トンから百十万トンへ引き上げるというふうにしています。

 なぜ飼料用米の引き上げを重視するのか、その意義と、十アール当たり八万円の交付単価に設定した理由について、事務方で結構ですので、改めて御確認をしたいと思います。

松島政府参考人 まず、飼料用米の生産努力目標の水準を引き上げる、この意義ということでございます。

 これにつきましては、本委員会で何度も御議論がございますけれども、主食用米の需要が年々八万トン程度減少する中で、需要に応じた主食用米の生産ということを図っていく必要がある、やはり主食用米の需給と価格の安定というのは非常に大事な政策目的でございます。

 それに加えまして、水田のフル活用を進めていくという観点から、需要のある飼料用米への主食用米からの転換ということが大きな政策課題になっているということで、主食用米から飼料用米の生産への生産努力目標を引き上げたということでございます。その背景でございます。

 さらに、もう一つ委員から御質問がございました、水田活用の直接支払交付金の交付単価の考え方でございます。

 これにつきましては、飼料用米に限らず、この直接支払交付金の交付単価は一定の考え方で算定が行われてございまして、具体的に申し上げますと、交付対象作物の生産コスト、それから交付対象作物の販売収入、これを一定の前提を置きまして試算した上で、主食用米の所得との格差が生じないようにということを基本に設定しているところでございます。

 具体的に飼料用米の場合について御説明申し上げますと、その生産コストにつきましては、通常、飼料用米は主食用米をつくっている方が転換するということでございますので、通常の主食用米の生産コストから主食用と共通で利用できる農機具費などを差し引いたコストといったものを前提に、反当たり六万四千円程度になるというふうに試算してございます。

 他方、販売収入につきましては、通常、飼料用米は輸入トウモロコシと同等の価格で販売されているということがございますので、それをベースに流通経費などを差し引いて計算しますと、反当たり七千円になるというふうに見込んでいるところでございます。

 その中で、交付金単価との関係でございますが、まずその単収が、標準的単収、反当たり五百二十キロ強でございますけれども、これをベースに、交付金単価を八万円と仮置きいたしますと、例えば、先ほど御説明しました販売収入が七千円、交付金単価が八万円、これからコストである六万四千円を差し引きますと、反当たり二万三千円という所得が得られるという試算ができるわけでございます。

 もう一つ、多収性専用品種による作付を今推進しているところでございますけれども、これを用いて試算いたしますと、多収性でございますと、仮に標準的な収量から百五十キロぐらい多収するということを前提に試算いたしますと、販売収入が反当たり九千円、それから、百五十キロ増収できますと交付金も上限の反当たり十万五千円出ますので、それを加えまして、さらに多収性専用品種を使ったことに伴いまして、反当たり一万二千円の追加的な支払いがある。そうしますと、九千円と十万五千円と一万二千円を加えまして、生産コストを差し引きますと、大体反当たり五万円という数字が出ます。

 一定の試算におきますとそういうことになりまして、他方で、同様に、主食用米につきましても、反当たりで三万六千五百円という所得の試算がございまして、おおむね、幅はございますけれども、飼料用米を生産した場合の所得と主食用米を生産した場合の所得が遜色ない数字になっているという考え方で設定しているということでございます。

畠山委員 大分御丁寧に説明をいただきまして、つまりは、主食用米から飼料用米にかえることを誘導するわけですから、その生産に見合う単価である、所得差が生じないようにするということなわけですよね。

 主食用米ですけれども、ただ一方で、生産努力目標、今回立てられたものを見れば、現在の八百五十九万トンから七百五十二万トンまで下げる、しかも、生産コストは、目標として今後十年間で四割減らすということはさまざま語られてきたわけでして、これで仮にTPPへの参加ということとなれば、間違いなく米価も下がることは懸念されるわけです。

 そうなれば、主食用米の価格に引きずられて飼料用米に対する交付単価も下がっていくということにはなるんでしょうか、ならないんでしょうか、なりませんか。

林国務大臣 今お話がありましたように、主食用米の需要が毎年八万トンずつ減っていきますので、水田のフル活用を図るためにも飼料用米は大事だ、こういうふうに思っております。

 飼料用米の生産拡大のためにも、今細かく試算をお示ししましたが、直接支払交付金を充実して、単価に差が出るのは、数量払いというのを入れまして、飼料用米のインセンティブを高める、こういうことでございます。

 この直接支払交付金の単価ですが、これは毎年度の国会の予算審議を経て決まるものでありますので、これを予断することは適当ではないと考えておりますが、一方で、新たな食料・農業・農村基本計画においても、飼料用米など戦略作物の生産拡大を位置づけまして、その達成に向けて必要な支援を行うということを明記させていただいたところでございます。

畠山委員 もちろん、なかなか十年後まで同じ単価ということを考えるのは難しいかもしれませんけれども、どこでもそうでしょうけれども、やはり安定的に見通しを持ってつくっていくということについては、交付金が維持されていくのかということについて、もちろん、多くの農家は心配されているわけです。

 米穀の新用途への利用の促進に関する基本方針では、この後、出てくると思いますけれども、「競合品と競争し得る価格での供給」という項目があります。「新用途米穀の需給規模を拡大するためには、輸入小麦・トウモロコシ等の競合原料と競争し得る価格で供給することが必要」と明記されています。

 つまり、栄養価も高くて、多収量の品種で、その上、競争に耐えられるようにコスト削減を進めろということだというふうに思うんですよね。コスト削減は今だってどの農家も努力はもちろんしているわけでして、問題は政府の支援の方だと思うんです。結局、コスト削減で乗り切れということかという不安の声が出てくるのは当然だというふうに思うんですね。

 大臣、改めて、この飼料用米に係る生産費に見合うだけの交付金、助成ということを維持していくべきではありませんか。

林国務大臣 これはまさに、先ほど、ほかのものと比べて遜色のない、こう言われましたが、これを基本にしっかりと考えていかなければならない、こういうふうに思っております。

 単価そのものについては、先ほど申し上げましたように、国会の予算審議というのがございますので、予断をすることは適当でないと思いますが、この食料・農業・農村基本計画、これはおおむね十年を目指して、計画をきちっと定めて、生産努力目標も百十万トンということで掲げさせていただいておりますので、これを達成するために必要な水田活用の直接支払交付金の単価、予算についてはしっかりと確保してまいりたいと思っております。

畠山委員 そもそも、飼料の自給率も下げてきたということについても、やはりこの機会に見直して、反省するべきは反省することが必要だというふうに思うんですよ。

 飼料用トウモロコシの輸入は、一九六〇年に百四十七万トン、一九七〇年に四百二万トン、そして一九八〇年に一千十二万トンと急増してきたわけです。

 これだけ急増してきた原因について、農水省としてはどう考えていますか。

林国務大臣 昭和三十年代後半から、畜産物の摂取量の増加など国民の食生活が大きく変化をした、これに伴って、畜産そのものが大きく生産量を伸ばしておりまして、餌の需要が急速に増大したということでございます。

 飼料穀物については、国土や気象条件の制約などがございまして、この需要に対応して生産を拡大することが難しかったということである一方、今御指摘のあった米国等の穀物の輸出国、これがトウモロコシなどの穀物生産を拡大しまして、極めて安価な安定的な供給が可能となったということで、米国のトウモロコシなどの輸入量が増加してきたところであります。

畠山委員 国民の食生活の変化だけに原因を求めたらだめだというふうに思うんですよね。

 当時、もちろん御存じだと思いますが、一九五〇年代に飼料用の穀物の輸入が自由化された後に、一九六一年でしたか、制定された農業基本法で、選択的拡大の名のもとで、外国産農産物と競合するものがほかの作物へ転換が進められて、その結果として飼料の輸入も進むということになったわけです。これが今の飼料の自給率低下の出発点ではなかったのかと思うんですね。

 もちろん、飼料の自給率を上げることは大事だというふうに思うんです。ですから、今このように進めている方向についても遅きに失しているというふうに思いますし、その当時から、さらに飼料は自国で生産するというふうにさまざまな検討や政策を進めることが必要だったというふうに改めて思うわけです。

 ですから、食料自給率を引き上げるんだったら、この六〇年代と同じ轍を踏むべきでない。飼料用米でも展望を持ってつくることができるよう、先ほど述べた交付単価の維持ですとか、歯どめなき輸入拡大路線の見直しを繰り返して求めておきたいというふうに思います。

 次に、農地とその担い手について質問いたします。

 農地の見通しと確保について、前回の基本計画では、優良農地の転用抑制や耕作放棄地の再生で、農地面積を基本的に維持する見通しのものとなっていました。ですが、今回の計画では、二〇一四年現在の農地面積四百五十二万ヘクタールから、十年後には四百四十万ヘクタールと減る見込みとしています。

 食料自給率を上げるなら、さまざまな品種や技術の向上はもちろん必要でしょうが、優良農地の確保も大事なことは言うまでもないというふうに思います。ですが、今回の計画では、農地の転用というところに十一万ヘクタールと見込んでいます。ここには、せっかくの優良農地も含まれるかもしれないわけです。

 この十一万ヘクタールが転用されると見込んだ背景や理由はどういうものですか。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 今回の農地面積の見通しにつきましては、平成二十六年の農地面積四百五十二万ヘクタールを基準といたしまして、近年の農地転用面積、それから荒廃農地の発生面積の趨勢を踏まえて、基本計画の期間における荒廃農地の発生の抑制、それから荒廃農地の再生等に係る施策の効果を織り込みまして、平成三十七年の農地面積を四百四十万ヘクタールと見通しているところでございます。

 このうち、お話のございました農地の転用につきましては、耕地及び作付面積統計におきます平成二十三年から二十六年の農地転用面積の平均が平成三十七年まで継続するものといたしまして、約十一万ヘクタールの減少を趨勢として見通したということでございます。

畠山委員 転用ですから、その後、その農地を受ける、借りる、受けたいというところが、要望がないともちろん転用されていかないわけでして、もちろん農水省がそれを何に使ったかと後追いするものではないんですけれども、それでは、どういうところが強く転用が望まれてきている、実際そのように使われてきているというふうに考えていますか。

三浦政府参考人 お答えいたします。

 今御説明申し上げましたバックデータのそのまた内訳を見てみますと、近年の農地転用で大きな転用先といたしましては、統計の分類でいいますと宅地等ということでございます。

 宅地等には、住宅、学校用地、公園、その他の公共用社会福祉施設、あるいは会社等の厚生福祉施設用地、また商業用地等が含まれているというものでございまして、そのほか工場用地、道路、鉄道用地等がございますけれども、大きなものは宅地等ということでございます。

畠山委員 今、この農地をめぐってさまざまな不安の声が上がっているわけですよ。

 地方創生の一括法案なども別のところで審議されていますけれども、これは、小さな拠点をつくる。今回、基本計画にも盛り込まれていますけれども、これは別の機会に議論したいと思っていますが、そこにかかわって、さまざまな規制や、あるいは許可権者についての変更がされているわけです。

 ことしの一月十六日に、日本経団連が、「わが国農業の持続的発展と競争力強化・成長産業化に向けて」という提言を出しています。その中の、「農業の成長産業化を支える担い手の確保」で、「企業を農業経営の重要な担い手として位置づけ、時期を含め、企業による農地所有の可能化を明確に示すべきである。」と求めています。

 これは、予算委員会等で日本共産党は繰り返し主張してきましたが、農地の転用あるいは流動化というのは、一貫して財界、経済界が主張してきたことだったというふうに思うんですね。

 農外企業が農地を確保して、農業生産法人の要件も緩和される法案がこの後されますけれども、落下傘のようにやってきた場合に、今いる中小の農家はどうなるのかというのが重大な問題になるわけです。

 基本計画では、この計画全体で示している農業構造の実現に向けた担い手について、認定農業者、認定新規就農者、集落営農を挙げて、重点的な支援を実施すると書かれております。

 では、担い手から外された農家はどうなるのか。何の支援もなく、勝手に作付してくれということになるんでしょうか。

林国務大臣 農村地域では、高齢化や人口減少が都市に先駆けて進行しておりまして、集落機能が低下するなど、厳しい問題にも直面しております。

 したがって、こういう状況に対応して、国民に対する食料の安定供給、それから多面的機能の発揮を図るためには、農地や農業の担い手を確保するとともに、農業生産活動が継続して行われるよう集落の共同活動を維持していくことも重要でございます。

 こうした中で、担い手以外の農業者の方々についても、地域の実情はそれぞれあると思いますが、実情に応じて、担い手への農地集積を行いながら、地域の共同活動や六次産業化等の取り組みに参画していただく、また、担い手の規模拡大が当面困難な地域では、農業生産の継続、農地等の保全に一定の役割を果たしていただく、こういうことが期待をされておるところでございます。

 こういう取り組みを通じて、担い手以外の農業者も含めて、地域住民が役割分担をしながら、共同活動、六次産業化等に取り組む環境を整備するということによって、農村コミュニティーの維持にも配慮した農業の振興に努めてまいりたいと思っております。

畠山委員 今、役割分担という言葉がありまして、実際、この基本計画も、五十二ページですけれども、「農業・農村の構造変化が見込まれる中で、農地や農業用施設の維持や管理等における、多様な関係者による役割分担等の在り方について検討する。」というふうにあります。

 大臣も、最初の就任をされたときですけれども、二〇一三年十一月二十六日の記者会見で、役割分担にかかわって記者に問われて、こう答えています。地域として、この農地を農地として維持するための共同活動、これをきちっとやっていって、結果として担い手の育成を後押しをしていくと答えている。

 つまり、今までの議論をまとめてみますと、担い手から外れた農家というのは、認定農業者だったりあるいは参入した農外企業であったりを、水路ですとか農道の管理で後押ししてほしいということなんですか。

林国務大臣 まさに多面的機能支払いということは、水路、農道等の地域資源の維持管理を行っていただく共同活動でございます。

 これは、集積が進んでいって担い手が広いところをやるようになると、それだけ水路の維持、農道等の管理というのは大変になってまいりますので、やはり共同でそういう活動をやっていただくということは大変大事になってきますし、そういうことがあって初めて担い手への集積というものもできてくるのではないか、こういうふうに思っておりまして、そういう活動を御支援申し上げようということで多面的機能支払いという位置づけをしておるところでございます。

畠山委員 そもそも農村の多面的機能というのは、生産と管理が一体として、それぞれの農家の方々が自発的にそれぞれの地域において行ってきたものだというふうに思うんです。ですから、食料・農業・農村基本法の第三条にも、「農業生産活動が行われることにより生ずる」というふうに定めていて、繰り返しですが、生産も管理もそういうふうに一体に進めて、これまでの日本は国土の保全であったり水源の涵養を進めてきたわけだから、この委員会も含めて議論して、だから基本法に盛り込んできたというふうに思うんですよね。

 ですから、これを今言ったように役割分担ということで分けていくというふうになっていけば、農村のあるいは農家のさまざまなこういうコミュニティーが結果として崩れていくことになるのではないかというふうに思うんです。

 ですから、先ほど多面的機能支払いのお話もされましたけれども、このパンフレットで、日本型直接支払いも含めて、担い手に集中する水路、農道等の管理を地域で支え、農地の集積を後押しすると、わざわざ米印をつけて主従関係のように描かれているわけです。そのようにこのパンフレットで書いている。

 そういうわけですから、実際、今まで、どのような年齢であっても、どのような面積であっても、一生懸命地域を、生産とそれから美しい農村を、こうやって結果としてつくっていくことになってきた農家の方々の思いを考えたときに、この道で本当にいいのかということを指摘せざるを得ないというふうに思います。

 ですから、今回の基本計画というのは結局何なのか。TPPを初めとしてさらなる輸入の自由化が前提とされて、農外企業の参入と、勝ち残れるところだけ勝ち残っていればいい、小さい農家は農村維持の役割を担ってくれればいいということなのかというふうに思うんです。それに対して障害となるような農業委員会や農協の制度は見直そうじゃないかということなのではないかというふうに懸念を持つわけです。

 前回の質問でも述べましたが、食料自給率を引き上げるのであれば、国内での価格保障を行うとともに、歯どめなき農産物輸入拡大路線を転換することであるというふうに思います。

 このような道とは違う基本計画では、一層日本の農業を壊していくことにつながるのではないかということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。

     ――――◇―――――

江藤委員長 次に、参議院提出、都市農業振興基本法案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。参議院農林水産委員長山田俊男君。

    ―――――――――――――

 都市農業振興基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山田(俊)参議院議員 ただいま議題となりました都市農業振興基本法案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。

 我が国の都市農業は、大消費地に新鮮な農産物を供給する機能に加え、防災、良好な景観の形成及び国土、環境の保全、農作業体験及び学習の場の提供等、多様な機能を有しており、これを営む者等の努力により継続されてまいりました。

 都市農業については、都市計画制度の導入以降、市街化区域が優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされていることもあって、税制措置等を通じ農地の宅地化が進んできました。しかしながら、近年では、宅地化の圧力が低下するとともに、都市農業に対する住民の意識も大きく変化しており、都市農業の機能に対する評価が高まっております。また、東日本大震災を経て、防災の観点から都市農地を保全すべきとの声も広がっております。

 このように都市農業をめぐる情勢が大きく変化している中、都市農業の意義、役割を改めて見直し、適切な振興方策を確立することが喫緊の課題となっております。

 本法律案は、都市農業の安定的な継続を図るとともに、都市農業の有する機能の適切かつ十分な発揮を通じて良好な都市環境の形成に資するため、都市農業の振興に関し、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定めること等により、都市農業の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、基本理念として、都市農業の有する機能の適切かつ十分な発揮とこれによる都市の農地の有効な活用及び適正な保全が図られるべきこと、人口減少の状況等を踏まえた良好な市街地形成における農との共存が図られるべきこと、また、都市住民を初めとする国民の都市農業の有する機能等についての理解のもとに施策が推進されるべきことを定めることとしております。

 第二に、都市農業の振興に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、都市農業を営む者等の努力並びに関係者相互の連携及び協力について定めることとしております。

 第三に、政府は、都市農業の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、都市農業振興基本計画を定めなければならないこととしております。また、地方公共団体は、都市農業振興基本計画を基本として、当該地方公共団体における都市農業の振興に関する計画を定めるよう努めなければならないこととしております。

 第四に、基本的施策として、国及び地方公共団体は、都市農業の農産物を供給する機能の向上並びに都市農業の担い手の育成及び確保を図るために必要な施策、的確な土地利用に関する計画の策定等のための施策、都市農業のための利用が継続される土地に関する必要な税制上の措置等を講ずるものとすることとしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、この法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。

江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

江藤委員長 本案につきましては、質疑及び討論ともに申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 参議院提出、都市農業振興基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

江藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

江藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.