衆議院

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第6号 平成27年4月22日(水曜日)

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平成二十七年四月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江藤  拓君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君

   理事 松木けんこう君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    伊東 良孝君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      今枝宗一郎君    金子万寿夫君

      瀬戸 隆一君    武井 俊輔君

      武部  新君    中川 郁子君

      中谷 真一君    西川 公也君

      橋本 英教君    前川  恵君

      宮崎 謙介君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    森山  裕君

      簗  和生君    金子 恵美君

      岸本 周平君    小山 展弘君

      佐々木隆博君    福島 伸享君

      井出 庸生君    村岡 敏英君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      斉藤 和子君    畠山 和也君

      仲里 利信君

    …………………………………

   農林水産大臣       林  芳正君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   農林水産副大臣      小泉 昭男君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 智哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 武藤  顕君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            櫻庭 英悦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            三浦  進君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (水産庁長官)      本川 一善君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     宮崎 謙介君

  古川  康君     宗清 皇一君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 謙介君     勝沼 栄明君

  宗清 皇一君     金子万寿夫君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     古川  康君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 競馬法の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)(参議院送付)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 競馬法の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)(参議院送付)

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

江藤委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長櫻庭英悦君、生産局長松島浩道君、経営局長奥原正明君、農村振興局長三浦進君、林野庁長官今井敏君、水産庁長官本川一善君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、外務省大臣官房参事官宇山智哉君及び大臣官房参事官武藤顕君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 皆様、おはようございます。自民党の中谷真一でございます。

 本日は、まず、質問の機会をいただきまして、委員長初め委員各位の皆様に心から感謝を申し上げます。

 きょうは、十五分ということでございますので、早速質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 きょう私は、春の例大祭で靖国神社に行ってまいりまして、英霊に感謝の誠をささげてまいりました。英霊が命をかけてでも守ろうとしたこの日本を、私も、しっかり我々は引き継いで、守っていかなければいけないなということを改めて感じたわけでございます。

 そんな中で、日本そのものである、また原点である、そういう農村をしっかり守っていくという意味では、今、農政の大転換を図っているところでありまして、その趣旨としては、私は、農村で、しっかりそれをなりわいとして、食べていける状況をつくっていかなければいけないというふうに思っているわけでございます。

 そういった意味では、私は、特に農地集約については非常に重要だというふうに思っております。これは、効率化やコストを下げるということによって農家の収入を上げていくということだというふうに思っているわけでございまして、この中でも、肝となる農地中間管理機構について質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今、農地中間管理機構を使って農地集約を進めていこうということで、なかなか成果が出ていないというお話も聞くところではありますけれども、私は、これはある程度の時間をかけてやっていくものである、十年とか、こういった期間をかけてやっていくものだというふうに思うわけでございます。

 ただ、これを進めていく上でも、始まってもうすぐ一年になろうかと思いますが、この間、行ったことをしっかり振り返って、そして新たに政策に反映をして、さらに前に進めていく必要があるだろうというふうに思うわけでございます。

 そこで、私の地元から聞こえてくる声の中に、農地中間管理機構の実施主体が、なかなか統一的な見解を持っていないということをお聞きすることがあります。特に、農地中間管理機構と農業委員会というのがあるんですけれども、このすみ分けはどうなっているのかということをよく聞かれるわけであります。

 農地中間管理機構というのは、農地集約をして担い手に貸していくというものであって、農業委員会というのは、どちらかというと相対で、規模は余り大きくないような農地を貸していくというイメージでありますけれども、私は、優先すべきは農地中間管理機構を優先すべきでありまして、そして農地集約を行っていかなければ、集約を行おうとするときに、どんどん相対で貸していってしまうと、なかなかうまくいかないのではないかというふうに思うわけであります。

 ただ、速度的には、どうやら農業委員会の方が速いということで、こっちを使うケースも大分ふえてきているというようなこともお聞きをしているところであります。

 私は、このすみ分けについて、しっかり地元に伝えていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、この点について見解をお伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 農地の中間管理機構と農業委員会のすみ分けの関係でございます。

 両方とも、農地の流動化を推進するそれぞれの組織でございますけれども、農業委員会の方は、それぞれ相対でもって移動するときを中心にこれまで仕事をしてきております。

 今回の農地の中間管理機構は、公的なセクターとして、各県に一つずつ農地の中間管理機構をつくりまして、ここがまず農地を所有者から借りて、これをまとまった形で担い手の方に転貸をする。それによって、規模拡大と農地の集約化と両方を達成する、こういうことでございます。

 今はダブルトラックになっておりますけれども、これは、やるときにも、できるだけこの中間管理機構と農業委員会と連携をとっていただくということが重要だというふうに考えております。

 法律制度の中にも、機構は市町村等に業務委託ができるということも二十二条に明確に書いてございます。それから、受け手に農地を転貸するときには、機構が農用地の利用配分計画をつくりますけれども、これについては市町村に原案の作成を求めることができるという規定も十九条に入っております。この原案をつくったりするときに、これは市町村本体だけではなくて、市町村の独立行政委員会であります農業委員会の意見も当然聞くということも条項の中に入っておりますので、ここの連携をきちんととっていただいて、農地の流動化を進めるということが非常に大事だというふうに考えております。

 それから、既に四月の三日に閣議決定をして、農協法等の一部改正案を国会にお出ししておりますけれども、この中で農業委員会の改革をやっておりまして、一つには、各地域の農地利用の最適化の推進を進める農地利用最適化推進委員、こういうものを新たに置いていただくということも想定をしておりますので、この法律が成立をした暁には、こういったものとさらに連動して、農業委員会と中間管理機構が連携を密にして、成果を上げていくように、きちんと指導を進めていきたいというふうに考えております。

中谷(真)委員 今、局長からお話があったように、私は、計画をしっかりつくって、その計画を推進していくんだということを、みんなで意思統一をしていかなければいけないというふうに思うわけでありまして、そういった中間管理機構と農業委員会がしっかりとした連携をとっていく、このためにはある一定の考えが統一されていなければいけないというふうに思います。

 そういった意味では、農水省の皆さんには、ぜひ現場に出ていって、そして、現場の、そういった機構に、まず、こういう考え方なんだということを徹底していく必要があるんだろうというふうに思います。その点、ぜひよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 また、よく言われるのが、使う方も、余りこの農地中間管理機構をわかっていないということも実は聞こえてくるわけでございます。

 私のところは果樹地帯でありまして、上物まである地域でありまして、農地集約をやっていくときに、では、例えばこのブドウ棚はどうするんだとか、この圃場整備は誰がやるのかとか、そしてまた、それを返すときに、更地にして返せというんですけれども、更地にするのは誰なのかとか、こういった細かいところもあったりするわけであります。

 そういった意味では、使う人、また農地中間管理機構、農業委員会さんや、市の行政、またJAさんとか、また、その中には政治家も入らなければいけないかもしれません。そういった地元の関係者が一堂に会して、会議体のようなものをしっかりつくって、そしてみんなで意見を出し合ってやっていく必要があるんだろうというふうに思います。

 それは水田だったりとか、私が今申し上げたような果樹地帯だったりとか、また平地だったりとか中山間地だったりとか、そういったさまざまな状況があるという意味では、いや、こうやろう、こうやれといって、全国一律にできるものではないというふうに思うわけでございまして、現場の事情とかいったものを吸い上げていくシステムが必要ではないかというふうに思うわけであります。熊本なんかでは、知事さんが先頭に立ってやっておられるということもお聞きしているわけであります。

 そういった意味で、私は、今回つくった農地中間管理機構の中にそういった会議体をつくっていくというような指導を、ぜひ農水省さんに指導していただいて、やっていただくべきだというふうに思いますけれども、このことについて御見解をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 先生から今御指摘いただきましたように、中間管理機構は都道府県に一つ設置をするという形になっておりますので、この一つの組織だけで全てのことがうまくできるということになかなかなりません。したがいまして、機構の事業を軌道に乗せていくためには、地方公共団体等の関係機関が、同じ目的意識をきちんと持って、連携をして対処していくということが必要不可欠でございます。

 そういう意味では、つくっていただきました農地中間管理事業の推進に関する法律の中で、これは二十三条ですけれども、機構は、地方公共団体等と密接な連携のもとに、その創意工夫を発揮して事業を積極的に実施しなければならないということも書いてございます。

 御指摘がございましたように、都道府県によって状況はまちまちというところもございます。農地の状況もありますし、県と市町村の関係ですとか、農協との関係とか、いろいろ違ったところがございますので、それぞれの地域の特性に応じて、やはりこの連携を密にする体制をつくっていただきたいというふうに考えております。

 先生からもございましたように、熊本県を中心として、県と機構、それから県の農業会議、こういった関係機関が集まる推進本部をつくって、意思統一をしながら進めている県も出ております。

 農林省の方でも、この優良県の事例については、いろいろな形で研修会を行いましたり、その研修会の模様をDVDに撮って、各県、各市町村に配ったりもしております。その結果、熊本だけではなくて、宮城県ですとか埼玉県ですとか、そういうところでも同様の協議の場というものができて、だんだん推進をしてきているところでございます。

 これからも、国として、この優良事例を横に展開する努力を広めて、全ての都道府県でこの機構がきちんと軌道に乗るようにやっていきたいというふうに考えております。

中谷(真)委員 今局長がおっしゃったとおり、私は、やはりこれは密接な連携が必要だというふうに思います。ぜひ強く指導をしていただいて、そういった会議体をつくっていただきたいというふうに思います。

 次に、耕作放棄地でございます。

 これは、私の地元だと、相続をした方が東京とかこういったところに出ていってしまっている例が非常にありまして、その方がなかなか農地を拠出しないということでございます。地元に住んでいる人は、何とかしなきゃいけないということで、拠出をして、お願いをして、この農地を使ってくれということをやるんですけれども、離れているとなかなかというところもございます。

 そういった意味で、私は、放棄地については、知事の権限でということもございますけれども、それはなかなか難しいなというふうに思うわけでありまして、やはりみずから出していかなければいけない、出していくことによってインセンティブを与えるということが必要だろうというふうに思っております。

 そういった意味では、私は課税を、ちょっと税を上げて、そして、出せばそれを大きく減税していくとか、こういった仕組みも必要ではないかというふうに思うわけでありまして、この点について御見解をいただきたいと思います。

奥原政府参考人 農地の流動化を進めるときに、耕作放棄地をどうするかという話も非常に重要なテーマでございます。特に、再生可能な耕作放棄地については、これをきちんと機構の方に貸して、担い手が使う体制をつくっていくということも非常に重要でございます。

 そういった意味で、農地中間管理機構の法律をつくるときに、農地法の改正もしておりまして、耕作放棄地の所有者に対しては、農業委員会が利用意向の調査をやって、所有者が意向表明どおりに実行しないときには、最終的には、県知事の裁定で農地中間管理機構が利用権を取得できるといった規定も置いております。

 これに加えまして、やはり税制も重要な手法であるというふうに我々は考えておりまして、平成二十七年度の税制改正に際しましては、中間管理機構に貸し付けた農地については固定資産税を非課税にする、そのかわり、有効活用されていない遊休農地については課税を強化する、こういったセットでの措置を要望いたしましたけれども、最終的には調整がつきませんで、与党の税制大綱では、農地保有に係る課税の強化、軽減等の方策について、総合的に検討するということにされたところでございます。

 これを踏まえまして、農地中間管理機構の初年度の実績、これがもうじき集計できることになりますので、この実績の検証、分析もきちんとやりながら、二十八年度の税制改正に向けて検討してまいりたいというふうに考えております。

中谷(真)委員 その税制改正を私も応援させていただきたいというふうに思います。

 最後に、農協改革について御質問させていただきたいと思います。

 農協改革の本旨は、あくまでも生産者の所得向上だというふうに思っております。

 そういった意味では、JAの理事構成において、やはり経営感覚にすぐれた、そういった方々をつけていくというのは、私は大賛成でございますけれども、ただ、過半数を認定農業者または農産物の販売、法人の経営などに関し実践的な能力を有する者というふうになっているんですよね。私の山梨県では、認定農業者というのは三%しかいませんで、これはちょっと現実と乖離しているのかなというところもございます。

 そういった意味では、現場にもう少し自主裁量の余地を与えていくということが必要かなというふうに思います。この点について、御見解をいただきたいと思います。

中川大臣政務官 委員の質問にお答えします。

 今回の農協改革では、地域農協が、担い手農業者の意向も踏まえまして、農業所得の増大に配慮した経済活動を積極的に行えるようにするため、農協の理事の過半数を原則として認定農業者、農産物の販売や経営のプロとすることを求める規定を置くことにしています。

 地域によりましては、認定農業者の数が少ないなど、原則どおりの役員構成とすることが困難な事情もあることから、原則としており、適切な例外を設けることとしています。

 先生の御地元に去年伺わせていただきました。身延山から西山温泉まで伺って、小規模な農家が多いようにお見受けをしました。山合いの集落の隅々まで先生のポスターが張ってあるのを見て、うらやましく思ったわけでありますが、小規模な農家が多いということで、いろいろ御心配もあるというふうに思います。

 制度の運用に当たりましては、実態調査を行うなどによりまして、制度の趣旨を踏まえつつ、現場の実態を踏まえました適切なルールとなるよう、十分留意してまいりたいと思います。

中谷(真)委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

江藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久でございます。

 きょうは、大要二点にわたって質問させていただきたいと思っていますが、時間も限られていますので、早速中身に入っていきたいと思っております。

 まず、TPP閣僚協議におけるアメリカの米の輸入枠の拡大要求についてということで、これは大臣にお伺いしたいと思っております。

 これは、甘利担当大臣とアメリカの通商代表部のフロマン代表との協議ということで、既にもう報道等でも、あるいは甘利担当大臣の記者発表等がございますので、内容等については詳しくは触れませんけれども、ここで一番気になっているのが、報道ベースによりますと、アメリカが日本に主食用の十七万五千トンを含む二十一万五千トンの米の輸入枠の拡大を要求したということがありました。

 それで、甘利担当大臣の記者発表によりますと、交渉進展そのものが相当難しいという話が一つあったのと、米のところについては、アメリカの要求、あるいはそれに近いものをそっくりのむことはないんだ、こういう話がありました。しかし、米の輸入枠の拡大のことがまことしやかに議論されているとすると、これは大変懸念を持つことではございまして、私は、個人的に考えても、あってはならないこと、このように思っております。

 そこで、今回、協議の争点の一つになった米の輸入枠の拡大、この点について、きのう記者会見もしていますけれども、改めて、この国会の委員会の場において、大臣の御見解を伺いたいと思います。

林国務大臣 今週十九日から二日間でありますが、甘利大臣とフロマン代表との間で協議を行っております。

 日米両国の夜を徹した努力によりまして、双方の主張の隔たりが狭まったものの、米の問題も含めて依然として難しい課題が残っておりまして、いまだ合意までには努力を要する、こういうふうに聞いております。

 我が国は、今、稲津先生から御指摘もありましたように、米は国民の主食であるとともに、最も重要な基幹的な農作物でありまして、地域経済において重要な位置づけを有しております。

 厳しい交渉が続くと承知しておりますが、引き続き、衆参両院の農林水産委員会決議が守られたとの評価をいただけるように、政府一体となって全力を尽くす考えでございます。

稲津委員 今大臣からも御答弁、お話がありましたけれども、ぜひその姿勢を守っていただきたいと強く望みます。

 米のことについては、一つは、米の消費の減少もありますし、何といっても、米価の下落の問題もあって、生産者は非常に今厳しい状況にあるということ、それから、農水省を挙げて、このことについてさまざまな施策を寄せて、展開してきているということを考えたら、こうしたアメリカの要求に対して、これを了解するというのは到底あり得ないことですし、それから、国会での決議も含めて、しっかりこれは守っていくということを改めて申し上げておきたいと思います。それが、まず一つ目の質問でございます。

 二点目は、ロシア水域におけるサケ・マスの流し網の漁業問題についてということでお伺いしておきたいと思います。

 これは、ことしのサケ・マスの漁業交渉については、日本の二百海里内においては三月二十四日に合意がされて四月十五日から操業が開始されているというところですけれども、もう一方で、ロシアの二百海里内の交渉は、ロシアに再三申し入れしているというふうに伺っておりますけれども、いまだに交渉の日程さえも示されていないという厳しい状況にあります。これは、去年もある意味そうだった、おととしもそうだった。

 根室地域、また漁業者の方々からも、本当に深刻な状況であるという要請もされておりますけれども、まず、このことについて、きょうは外務省からもお越しいただいていますので、これは外務省と農水省とで一緒にロシアに対する交渉をされているというふうに承知しておりますので、現在のロシアとの交渉状況はどのようになっているのか、これはまず外務省にお伺いしておきたいと思います。

武藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の政府間協議でございますが、これまでに日ロ間で開催については一致しているところでございます。それを受けまして、本年二月以来、ロシア外務省及び連邦漁業庁に対して、書簡の発出、それから直接の申し入れにより、四月前半をめどに早期に開催するよう繰り返し申し入れてございます。

 これに対し、ロシア側は、これまで具体的な開催日程の提示に至っておらず、現時点において開催日程は引き続き調整中でございます。

 日ロ間の漁業協力は日ロ関係の非常に重要な協力分野の一つであると認識しております。我が国漁業者の操業機会が適切に確保されますよう、早期の政府間協議の開催に向け、引き続き水産庁と連携しつつ、さまざまなレベルで働きかけていく所存でございます。

稲津委員 努力していただいているということは、今の答弁でもよくわかります。私も、このことについては理解はしているつもりなんです。

 そこで、ひとつ大変困ったことに、今ロシアでは流し網の漁業の禁止法案というのが連邦議会に提出されているということです。これが今提出されて、これから審議に入っていくことになると思うんですけれども、仮にこの法案が可決された場合は、これは当然ですけれども、ロシア二百海里内での日本船の流し網の漁業が継続できなくなる、こういうことになるわけなんです。

 極めて深刻な状況に追い込まれる、このように思っておりますが、今回この禁止法案が連邦議会に提出されたということを踏まえて、このことについての認識、また現段階でのお考えについて、これは農水省にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 ロシアに対しましては、昨年十一月の北京のAPECの際、日ロ首脳会談においても安倍総理からプーチン大統領に我が国漁業者が操業を継続できるよう直接働きかけをしていただくなど、これまでにもさまざまな場面で働きかけを行ってきております。

 こうした中、本日未明でございますが、ロシア政府が流し網を禁止する法案を支持するという見解を公表したというふうに承知しております。

 こういうふうに、状況は大変厳しいわけでございますが、外務省とも連携しながら、ロシア国内の動きについて情報収集に努め、さまざまな機会を捉えてロシア当局に対する働きかけを継続してまいりたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 今、少しショックな報告が大臣からもありましたが、私もこのことについては詳細はまだ把握していないんですけれども、今御答弁のように、ロシア政府自体がこの法案について支持をするということを表明したということなので、そうなると今後の展開、これは注視するしかないのかもしれませんけれども、しかし、仮にそういう方向に動いていくとしたら、やはりこれはロシア自国の問題として、相当こちら側の方もさまざまな働きかけをしていかなきゃならないだろうと思います。もちろん、最終的に首相や大統領の考えも、そこには、どうなるのかということも見ていかなきゃいけないと思うんです。

 いずれにしても、この法案が可決をするようなことがあれば大変なことになりますし、特に、これはサケ・マスだけの話に聞こえますけれども、漁業者とかあるいは水産加工だけじゃなくて、これは根室市及びその関連でいいますと、例えば運輸とか倉庫業ですとか、あと船舶の関連の資材ですとか、根室においては夏から秋にかけてのサンマとあわせて大事な漁業の一大項目になるわけですね。

 したがって、今、大臣からの御答弁がありましたけれども、その上で、今後ロシアに対して強力な漁業外交を続けていかなきゃいけないだろうということだと思うんです。

 そのことで、改めてこのことについて、今後の交渉についてどう当たっていくのか、この点についてお伺いしたいと思います。

林国務大臣 先ほど申し上げたロシア政府の見解でございますが、まず、流し網漁業の禁止が水生生物資源の保存にとって有する意義を考慮し、法制化することを支持する、これに鑑み、ロシア連邦政府は同法案を支持する、同法案の採択は、日ロ漁業協力協定の破棄の理由とはならない、こういうことを言っておるようでございます。

 また、下院ですが、国家院というところでございますが、審議日程はまだ明らかにされていない、こういう状況でございます。

 したがって、先ほど申し上げましたように、外務省と連携しながら、法案審議の情報収集に努めるとともに、我が国の漁船の操業に影響が出ないように、しっかりといろいろなルートを使ってロシア側への働きかけを継続強化していかなければならない、こういうふうに思っております。

稲津委員 ぜひ、今大臣に御答弁をいただきましたけれども、このサケ・マス流し網漁業がこれからも継続的に事業できるように、最善を尽くしていただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 かつては、遠洋漁業があって、日本の漁業、水産業というのは、いわば最盛期を迎えた時期もあった。今は、今度は沿岸漁業にある程度光が当たっている。しかし、このサケ・マスのことも含めて、どれだけいろいろなサイクルで日本の漁業が安定的に事業できるかということは、これは漁業者だけにかかわらず、先ほど申し上げましたように、関連事業とか、ひいては根室市とか、ああいう町の人口減少にも大きく響いていくと思うんです。

 そういう意味で、ぜひ粘り強い外交交渉をしっかりやっていただける、漁業交渉をやっていただけるように、私の方からも申し上げさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 おはようございます。民主党の岸本周平でございます。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、委員長初め理事の皆さんに感謝を申し上げたいと思います。

 冒頭、質問する前に、委員長にお願いを申し上げたいんですが、与党の空席が目立っております。野党はほとんど全員出席しております。本来、委員会を成り立たせるのは与党の責務ではないかと存じますが、与党の空席がこんなに目立つというのは、私はまだ三期目でありますけれども、驚天動地でありますので、委員長から御注意をいただくことをお願い申し上げます。

江藤委員長 しっかり承りました。

岸本委員 その上で、きょうは林大臣にちょっと教えていただきたいと思いまして、昨年、バターが品切れになりまして大変な騒ぎになりました。喉元過ぎれば熱さを忘れるでありまして、皆さん御記憶にないと思いますが、大変な騒ぎになりました。現状、スーパーへ行っていただくとわかるんですけれども、バターはあふれ返っております。

 実は、昨年、夏の終わりから秋にかけて、特にケーキの需要がふえる冬にかけて、スーパーの棚からバターが消えました。ただ、私、あれはよくわからないんです。なぜあのような事態になったのか、いろいろ事務方にも教えていただいて勉強したんですが、全く理由がわかりません。

 そこの分析をぜひ林大臣に教えていただいて、あるいは農水省に教えていただいた上で、目的は、ことし同じことが起きてはいけない、ことしだけではなくて、今後いろいろな局面でこういうことが起きてはいけないということを申し上げたいという意味で、ちょっと真面目に、勉強会ではありませんが、教えていただきたいという趣旨であります。

 実は、表面的に調べますと、昨年の秋から冬にかけて、バターの小売売り上げは、統計は毎週ごとにとっているんです、一番多い週はプラス三割です。前年同期比三割売り上げ増でありました。そうでなくても、秋口は大体二割増なんです。二〇%売り上げがふえているわけです。それだけ商品が供給されても棚から消える。

 これは明らかにオイルショックのときのトイレットペーパーと同じ現象が起きているわけです。二割も三割も商品を供給しながら蒸発してしまう。それが証拠に、あのパニックがおさまった十二月の末から現在まで、小売の売り上げは、週によりますけれども、多いときで大体二割減。普通、一割減です。売れていないんです。だって、去年の秋に買っちゃったから。

 バターの賞味期限は半年であります。ただ、御存じのとおり、賞味期限なんか見る主婦はいません。鼻です。においを嗅いで、最悪、食べてみて、酸っぱくなければ食べるんです。バターは冷蔵庫に保存すれば絶対一年はもちます。したがって、去年買い過ぎたバターは、ことしは売れないはずなんです。恐らく、秋まで売り上げのマイナス一割、二割は続くんだろうと思います。

 だとすると、あの騒ぎは一体何だったんだということに表面的にはなるわけでありますが、それだけでもないのではないか、調べれば調べるほどよくわからないのであります。

 数字だけを追ってもいけないと思うんですが、実は、生乳の生産は、平成九年以降、どんどん下がってきております。もちろん、乳牛を飼養する農家の戸数はもっと昔から減っております。一度激減して、その後、ずっと微減を続けておりますし、牛の飼養頭数もどんどん減ってきているということであります。これは統計のとり方によりますけれども、農水省さんは最近十年ぐらいの統計をよくお出しになりますが、十年ぐらい、飼養農家数も飼養頭数もどんどん減ってきている。

 そして、生乳の生産についても、二十五年の夏が猛暑でありまして、このときに大きく減ったんですが、実は、二十六年、昨年、生乳の生産が減り、バターや脱脂粉乳の生産がやはり極端に減っているんですね。結果として、在庫の量も、これはそんな遠くを見る必要はありませんけれども、二十五年を見ると、猛暑の前、七月段階で、バターの在庫が二万五千トンぐらいある。過去も、二万トンを超えるとパニックは起きていないんです。二万トンを切ると、時々、緊急輸入をしなきゃいけないというようなことがあります。原因はいろいろですけれども、生乳の生産が減るケースが多いんですね。

 二万五千トンの在庫だったのが、猛暑の影響で、二十五年、一昨年に、やはり年末で一・八万トンまで下がっています。それを受けて、昨年、二十六年も、非常に低い在庫状態、一・七万トンぐらいが一年間ずっと続くんですね。生産量も、二十五年の猛暑の後、前年同期比約三%ぐらいのマイナスが続いた後、年が明けて二十六年度もずっとマイナスということです。

 ですから、やはり、根っことして、二十六年にバターの生産が大きく減ったことも影響しているのではないかと思われますが、そこの関係が私にはよくわからないんです。

 まず、一つ一つ聞いていきたいんですけれども、では、ここ十年をとりましょう。何で、この十年、乳牛の飼養農家数が減り、頭数が減ってきたのか、その原因ですね。基本計画には、さらっと、高齢化して離農しているとか後継者不足だとか、役所の作文が書いてあるんですが、そんなおざなりなことを言われても困るので、農政の失敗ではないのかということを言われているわけです。

 林大臣、何で、この十年間、農家の戸数や頭数が減ってきたんでしょう。どういうふうに分析されていますか。

林国務大臣 飼養戸数ですが、過去十年間で、平成十六年の二万九千戸から平成二十六年の一万九千戸まで減少しております。

 十九年以降、飼料価格が上昇しておりまして、やはり厳しい経営環境、「銀の匙」という映画を私も見たんですが、親子でやっておられるところが、やはりどうしても続けたい、かわいいんだけれども、やめざるを得ないというようなところが出ておりましたが、そういうところを見ても、あの映画の場合は、やめていくところは後継者がいて、その子はちゃんと学校に通っていたわけですが、一般的に言いますと、やはり高齢化それから後継者不足の理由から離農されるという方が多い、こういうことであろうかと思っております。

 それによって飼養頭数も減っているんですが、こちらは、やめられた方の頭数を少し引き受けるようなことも多分あって、一戸当たりの飼養規模は逆に五八・七から七五とふえているということで、それから、規模の拡大もあって、一頭当たりの乳量も増加傾向で推移しているということでございます。

 いずれにしても、全体としては減っているというのは、先ほど申し上げたような原因ではないかなというふうに考えております。

岸本委員 そうだといたしますと、今後も減っていくということですか。高齢化による離農、後継者不足、経営が成り立たないということでありますが、この傾向は続いてきました。一戸当たりの頭数の増加は、大規模化はそろそろ頭打ちだろうというふうに統計上見られると思うんです。

 では、今後、基本計画とも関係するわけですけれども、農水省は政策担当官庁ですから、そのトレンドをどう見ていらっしゃるのか。基本計画では、もちろん、役所の作文ですから、そういうわけにはいきませんので、何と、生乳の生産量についてはほとんど横ばいという信じられない数字を置いておられるのでありますけれども、それは何を意味するのか。基本計画の生産量が横ばうというのは何を意味するんですか、どういうことになるんですか。

林国務大臣 食料・農業・農村基本計画ですが、三十七年度における生乳の生産量の目標、二十五年度比で五万トン増加ということで七百五十万トン、こういう目標を設定しております。

 これは、消費拡大の取り組み、それから、チーズを中心とする乳製品需要の伸び等に即して、昭和三十七年度における推定人口も勘案して算出した需要量を見込んでおります。

 それに対応して、農家における搾乳ロボットの導入等、省力化のための機械の導入による飼養管理の高度化、それから、乳用牛の能力向上、飼養管理の改善による一頭当たりの搾乳量の増大を生産面で取り組む、こういうことを需要と生産と両面で踏まえて見通しをつくっております。

 この目標のための必要となる飼養頭数の目標値ですが、こちらは、本年三月に、いわゆる酪肉近、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針で、平成三十七年度に百三十三万頭と見通しておりまして、このためには、生産面での取り組みに加えて、先ほど申し上げました飼養規模の拡大、それから、飼料生産、供給における外部支援組織、これはコントラクター等いろいろあると思いますが、こういうものの活用を推進する、それから、あともう一つ、性判別技術とか受精卵の移植技術といった技術の活用、こういうことをやりまして、計画的に乳用後継牛を確保する、こういうものを推進してまいることによってこれを達成していきたい、こういうふうに考えております。

岸本委員 作文はそうなんですね。だけれども、それは役所の方は作文はお上手ですけれども、ロボットですか。それは字面は美しいですけれども、搾乳ロボットでどれだけ生産性が上がるのかわかりませんが。

 まず、そもそも、生産量が横ばう、少しふえるという前提として、当然ですけれども生乳を消費する方々がいるわけで、主として牛乳で飲む、いろいろな製品でお食べになるわけですが、食料自給率の目標というのは基本計画と連動しているんだろうと考えますが、お米なんかはかなり減少するわけでありますよね、それぞれの消費量が少子高齢化の結果として基本的には減少していく。牛肉も減少ですね。ただ、豚肉、鶏肉、鶏卵は横ばいというふうに見ておられる。だけれども、生乳だけは五%ふえるというふうに置いておられる。畜産のほかの作物は横ばいかマイナスなんだけれども、なぜか生乳だけは五%も増加をするという前提で置かれていて、さっきおっしゃった頭のいい農林省の役所の方々が書いた作文をちりばめて、生産量が横ばうというふうになっているわけです。

 まず、何で、少子高齢化で、しかも、実際牛乳を飲む人、若い人は飲むのかどうかわかりませんが、今、給食も、御飯を出すと牛乳を出さない小学校がふえているみたいですね。小学校の給食で牛乳を飲まないところもある。御飯と牛乳はよくないといって牛乳を出さないところもあるんだそうです。牛乳を飲むんですかね、これから。牛乳で育った年寄りが、年をとっても牛乳を飲み続けるのかもしれないし、皆さんが宣伝して、骨粗鬆症対策で牛乳を飲めといって飲ませるのかわかりませんけれども。

 まず一つは、何で、ほかのものは下がっているのに生乳だけふえるのかということに対する私の素朴な疑問と、あと、この基本計画の中身はまた別のときにやらなきゃいけないんでしょうけれども、これを、えいやと十二年後にここまでいきますという推計をされているのか、毎年度毎年度積み上げていらっしゃるのか。

 というのは、生乳については、これまで生産が下がってきているトレンドをどこかでとめなきゃいけないですよね。どこかでとめて逆転させて上がっていかないといけない、あるいは、五万トンふえるわけですから、横ばう、それを毎年度積み上げているのか、十二年分えいやと一気にやっているのか、そこの手法についてもお聞きしたい。

 つまり、ぜひ説得力を持たせてほしい。国民に対して訴えるわけですし、我々国会議員に対しても、こういうことだから安心してくれというふうに御説明いただきたいんだけれども、例えば基本計画の、今の生乳の七百四十五万トンが七百五十万トンになるという推計のやり方として、いろいろな前提を置くんでしょうけれども、えいやと十二年分飛ばしているのか、毎年度ずつそういう推計、数字があるのか、教えていただきたいと思います。

林国務大臣 まず、この生乳という言葉でちょっとわかりにくくなっているのかもしれませんが、乳製品になりますから、飲む牛乳に加えて、一人頭がふえるというのは、チーズ、こちらの需要がふえていくということなんですね。

 したがって、実際には、少子高齢化等の影響で、まさに今先生おっしゃったように、飲用牛乳を中心に減少は見込まれる。ただ、消費拡大の取り組みや、引き続きチーズを中心とする乳製品の需要が伸びる。チーズのほか乳製品はいろいろございますね。ですから、一人頭のキログラムがたしか八十九から九十三というふうに四%ふえる、それに推定人口、これは大体五%ぐらい減るだろう、こういうことでこの量を推計しているということでございます。

 したがって、これは毎年の積み上げというよりは、三十七年、先ほど、私、間違えて昭和と言ったそうですが、平成でございますので、平成の三十七年にこうなるということを中期的に推計をしている、こういうことでございます。

岸本委員 では、えいやということですか。

 ただ、大臣、お気持ちはわかるんですけれども、チーズはふえるのかもしれませんよ。だけれども、いや、笑っちゃいけないけれども、生乳のうち、やはり牛乳等向けが過半数ですよね。バター、脱脂粉乳が三百万トンを切っていますけれども、クリーム向けはちょっとふえていますね。百万トンをちょっと超えています。チーズ向けというのは五十万トンほどじゃないですか。ウエートのごく低いものがふえるからと説明されても、一国民としては、なるほど、そうか、これからみんなチーズをがばがば食べるから酪農農家は安心して牛乳の生産ができると思うかというと、ウエートが低いものがふえると言われても、なかなかしんどい思いがあります。

 ともかく、基本計画が説得力を持たない限り、現場の酪農家の方たちが、いや、いろいろある、しかし、農水省さんもいろいろやってくださる、そうならば、少ししんどいけれども頑張って家族経営でもやっていこうかというような判断をするのは現場ですよ。どれだけ基本計画が説得力を持つかというと、申しわけないですけれども、全く説得力がないんですよ。私は酪農家じゃないですよ、酪農家でない人間からしても説得力がないのが、現場で必死に働いている方々が、搾乳ロボットが入りますから大丈夫です、安心して酪農家を続けてください、チーズがどんどんふえますからどんどん牛乳をつくってくださいと言われたって酪農家は困りますということを、きょうはこの話じゃないので。

 まず、基本的に、酪農政策をどう考えていくのかということがきちんとしないと、また猛暑が何とかでフラクチュエートするということはあると思いますので、まずベースのところをしっかりしていただきたいということをお願いしたいという意味が一つです。

 それから、では、マーケットがフラクチュエートしたことについて、来年以降、そういうことがないようにするには、ことし具体的にどうすればいいのかという観点でお教えをいただきたいと思うんです。

 実は、大体その年の一月から三月の間に、カレントアクセスの契約の決定をされる前例がありますよね。そのときに、バターでいくのか脱脂粉乳でいくのか、トータルを見ながらいろいろな年度において契約をされるわけであります。

 では、昨年の二十六年の秋口にバターが市場から消える、そのことを全く予見できなかったんだろうと思うんですけれども、二十六年の一月―三月のカレントアクセスの数量を決める、契約をする段階で、農水省はパーフェクトであったのかという問いをしたいと思います。

 つまり、去年は一月―三月にバターを三千トン契約されたわけであります。ことしも同様に約二千八百トン。去年は二月に三千トン、カレントアクセス分のバターの輸入を決定されたのが、ことしは早目に、一月に二千八百トン、約同量、決められたわけです。

 昨年の二月の段階で三千トンの輸入を決められた。そして、五月の段階で七千トン、さらには九月の段階で三千トン。それは、生産量が減り、在庫が減り、九月ですと既にマーケットからバターが払底してきたころでありますから、追加輸入をされているわけですが、これはある程度仕方がないと思いますよね、状況は。しかし、では、その二月の段階の三千トンの判断というのが正しかったのかということについて少しお伺いしたいんです。

 これは、毎月毎月、当然ですけれども、生産量、在庫量は、農水省の担当者は把握をされているわけであります。四半期ごとにとってもいいんですけれども、さっきも言いましたが、二十五年の猛暑で、十月以降、生産量が大体前年同期比でマイナス三%ぐらいずつ減っております。これが、十―十二もそうですし、二十六年に入って一―三もそうです。二十六年に入ったら、これは統計ですから、ずれますから、ここの数字の把握は無理にしても、例えば二十五年の十―十二月期が生産量が減っている。しかも、さっき言いましたように、ふだん二万五千トンの在庫量が一気に一万八千トンまで減っている。これは去年の二月の段階でわかっていたことでありますから、そのときの判断が通常どおりの三千トンの輸入でよかったのか。

 あるいは、二十六年の一―三も生産量がマイナス三%です。在庫も、二十六年の三月末、年度末で一万七千トン。非常に低いです。では、そのとき、別に七月―九月まで待たなくても、追加輸入を早期に決める判断というのはあり得たのではないか、足元の生産量が減っていて在庫が激減しているわけですから。

 このあたり、反省点も含めて、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 私も改めてこれを振り返ってみて、今、岸本委員から御指摘のあったような、二月に、三千トンの時点でもう少しできなかったのかなという思いを最初持ったわけでございますが、在庫量、今、岸本委員から二万トンぐらいがスレッシュホールドというような御指摘もあったわけですが、ずっとさかのぼってみますと、二十五年度も一万七千三百ですか、大分減っているときもあったということでございます。その後、二十六年を見ても同じような推移があった、こういうこともあるわけですが、カレントアクセスの範囲内ということで、あくまで夏までの需要ということで三千トンを決定しているということでございます。

 その後、実は、まさにクリスマスケーキ等の需要がある年末に需要期が来るということで、生乳生産及びバター生産の状況を見きわめて、五月に七千トンの追加輸入を決めたのでございますが、この七千トンの大半の五千トンが十一月に入ってきている。今から考えれば、ここが、五月に七千トンを決めたんだから、プロラタでちゃんと入ってきてくれればなということですが、たまたまニュージーランドが真冬になってしまっているということもあって、結局、十一月に入ってきたものが需要者に届くのが十二月になってしまう、こういうことですね。したがって、これがバター不足の要因の一つであり、ここはちょっと改善の必要があるだろう、こういうふうに考えております。

 夏の気象状況がやはり生乳生産に大きく影響を与えますので、九月にも三千トンの追加輸入を決定したわけですが、先ほどちょっとトイレットペーパーの例を出されましたけれども、去年こういうことが起こったということも踏まえて、もう少しなだらかに物が入ってくるようにしたいと思います。

 結果として、先ほど、冷蔵庫の中に入っているとおっしゃいましたけれども、十二月を越えてからは今度は減っている。こういう、ふえたり減ったりということになるべくならないようにしっかりと対応していかなければいけない、そういうふうに思っております。

岸本委員 全くおっしゃるとおりでありますし、担当者の方には本当にお気の毒だと思うんですよね。別に一万七千トンになったからといってスーパーから品切れにならない年もあるんですよ。ですから、そこが私はよく分析してもわからないと申し上げたゆえんでありまして、そこは担当者の方を余り責めても仕方ないし、我々が後から統計の数字を見て後知恵で言うのは勝手ですけれども、そこは少し慎まなければいけないなと思いながら申し上げているわけであります。

 さらに、ことしは、今おっしゃいましたように、一月二十三日のプレスリリースも読ませていただいていますけれども、きちんとした改善をされるということが書かれていますので、ここはぜひ、このとおりにやっていただければ国民も安心をするし、メーカーの皆さんも安心をされるんだろうと思います。

 それで、ちょっとそれも含めて、逆に去年のパニックも防げたのではないかという見方もあり得ると思うんです。それは広報、パブリシティーの問題だろうと思うんです。

 どう考えても、プラス三割の売り上げ増に寄与するぐらいの商品は出ていたわけですから、それは通常であれば、多分パニックさえなければ、普通の年と同じように小売はいけた。つまり、ケーキ屋さんとか大口需要家のところは私もよくわかりませんが、小売の末端のところは、うまくパブリシティーさえ行われていれば、そんなに大騒ぎすることではなかったのではないかという気もしております。それは、表面上の統計を見てみますと、明らかにそんなに慌てて買う必要はないわけであります。

 そういう意味で、その若干のパニックをとめるためにこれからどうされればいいのか、そういう部分と、まさに今おっしゃいかけましたけれども、大臣の方からきちんと、一月二十三日にプレスリリースされました輸入の具体的なやり方によって、大丈夫ですよ、ある程度カバーできますよという点についての対策、ことしあり得るとしたら、その対策について御説明をいただければと思います。

林国務大臣 まずは生乳の生産基盤の回復、これをやらなきゃいかぬということで、経営規模の拡大、新規参入促進のための畜産クラスター事業を通じた施設、機械等の整備、それから、搾乳ロボット等の導入、外部支援組織の活用を通じた労働負担の軽減、性判別精液・受精卵移植技術を活用した優良な乳用後継牛の効率的な確保、これをやろうということであります。

 そして、二十七年度のバターの国家貿易による輸入でございますが、まずは二十六年度の状況を踏まえまして、バター製造者それからユーザー等が需要量に見合った供給を行えるようにするために、二十七年度は、輸入決定時期、これを一月、五月と九月というふうにあらかじめ明確化をしておこうということでございます。そして、年末の需要期に向けては、遅くとも十月までにユーザーに引き渡されるよう引き渡し時期を設定するというような運用改善を図ろう、こういうふうに思っております。

 さらに、今まさに岸本委員からも御指摘があったように、消費者の供給不安というのがあって家庭用バターの販売量が増加したということも踏まえて、今申し上げたようなことも含めて、こういうことをやりますよということを、しっかりと消費者、ユーザー等に対して需給情報、適切な情報提供に努めていくということをさらに徹底したい、こういうふうに思っておりまして、こういうことをあわせて、バターの安定供給ということにしっかりと努めてまいりたいと思っております。

岸本委員 ありがとうございます。

 ぜひ、もともとの、本来の酪農政策にプラスして、消費者対策も万全を期していただくよう強く要請をしたいと思います。

 最後に、少し時間が残りましたので、再び基本計画に戻りたいと思うんです。

 基本計画の前提を見まして、農業所得の関連でいいますと、生乳の農業所得が九百六十億円から、十二年たつと千二百六十億円にふえている、こういう試算になっています。三割です。三〇%も農業所得がふえるわけであります。その前提として、生産量が横ばうという前提で生産性を上げていくということなんだろうと思うんですね。

 生産量が横ばうということに対して私は疑問を呈しますけれども、それは議論ですから、仮に前提として置きましょう。それでも、三割農業所得がふえる、これは大変意欲的な目標であると思いますが、それは生産性の向上ということがないといけないわけであります。

 それについては、さっき、生産をふやす、あるいは横ばわせるための施策を大臣はおっしゃいましたけれども、さらに加えて、本当にこれは生産性の向上で三割ふやすことを前提とされているのかどうか、そして、これは具体的にどうすれば三割もの農業所得、生乳の分野でできるのかどうか、その辺の御説明をいただきたいと思います。

林国務大臣 まず、今お話がありましたように、生産数量目標は七百四十五万トンからほぼ横ばい、七百五十万トンで設定をしまして、価格も現状と大体同じという前提でやっておるということでございます。

 その一方で、粗飼料自給率一〇〇%を目指そう、こういうことでございまして、生産性の向上ということになるのかどうかあれですが、コストを下げるということでございます。酪農経営の生産費の中で、餌代、飼料費が五割を占めております。また、関係者が一体となって生産コスト低減を見込むということで、その分、所得が現状の九百六十億から千二百六十億に向上する、こういう試算をしております。

 生産コストの低減ですが、生産性の高い草地への改良それから草地整備の推進に加えて、餌の生産の外部化をしようということで、既にございますが、コントラクターやTMRセンター、こういうものをさらに進めていこうということで、こういうものを畜産クラスター関連事業に含めて強力に推進をしていきたい、こういうふうに思っております。

 畜産クラスターについては、二十六年度補正から機械、施設の整備への支援を開始しております。今後、この効果を見込んでいきたい、こういうふうに思っておりますので、しっかりと後押しをしていきたいと思っております。

岸本委員 本当にコストが下がることが絵に描いた餅にならないように、しっかりと政策を行っていただきたいと思いますが、ちょっときょうは時間がありません。その辺についてはまた引き続き御議論をさせていただきたいと思います。

 そして、基本計画を見てまいりますと、最後に、乳業の再編合理化といううたい文句があります。

 乳業の再編合理化というのは役所主導でなさるのか、ちょっと文章が少ないのでわかりませんが、今どき役所主導で再編合理化なんというのはめちゃくちゃオブソリートな時代おくれの考え方でありまして、よう言うわという話でありますから、そんなことではないと思います。

 一方で、農畜産業振興機構の問題なんですけれども、これは、批判する側からすれば、天下り団体として、これも本当によかったのかどうかわかりませんけれども、日本政府は、これは私が役所にいたときもそうですし、我々が与党のときもそうですけれども、ともかく数を減らすことばかりやって、合併合併でわけがわからなくなるんですね。特別会計だって独法だって、あるいはこういうものが、実は、私は合併すればいいものだと思っていないんですけれども、それはおいておきましょう、この農畜産業振興機構もわけがわからないですね、いろいろなものがぶら下がっていますが。

 しかし、この農畜産業振興機構はけしからぬ、天下りの巣になっているんじゃないかとかという御批判もあるし、非常に効率が悪いんじゃないかという御批判もありますが、私は、あえて批判するとするならば、現役出向の問題だと思うんですよ。物すごい数の農林省の役人がここの機構に出向しているんですね。ここの方がよくわからないわけであります。きょうはそれを議論する場じゃありませんので、改めて独立行政法人と現役出向の問題は御議論させていただきたいと思います。

 このバターの問題について、一部の識者が、オピニオンリーダーが、農畜産業振興機構、ALICの国家貿易があるから、だからマーケットメカニズムが働かなくてこういうことになったんだという批判もありました。これについては、基本的には脱脂粉乳、バター向けの生産量に比べて国家貿易の量が占める比率はそれほど大きくないわけでありますから、私自身は、ALICの国家貿易が今回のバターの騒動を引き起こしたとまでは言えないのではないかと思っています。そこは、大臣、どうですか。

林国務大臣 委員がまさに今おっしゃられたように、この仕組みは去年に限ってやったということではございませんので、ずっと同様の仕組みでやってきて、去年の場合は、先ほどちょっと消費者に対する情報提供ということを申し上げましたが、その辺や在庫量やいろいろなことが絡んでああいうことが起きたのではないか、こういうふうに思っておりまして、少なくとも今の仕組み自体が相当因果関係のようなものがあるということではないのではないかというふうに思っております。

岸本委員 ところが、これは残念なことなんですが、ALICが乳業メーカーの株を持っているんですよね。ここに癒着があるんじゃないかという批判を浴びてしまうわけですよ。具体的には、よつ葉乳業さんとか四国乳業さんの株を持っている。もちろん、食肉関係はもっと持っていまして、十九社の株式会社の株を農畜産業振興機構は持っておられるわけで、この辺が癒着ではないかと常に批判をされるわけであります。

 特に、よつ葉乳業の場合は三分の一ぐらいなんですね。九億円で取得されていますので、三分の一も株式を持っているんですよ。だから、乳業メーカーと振興機構の間に何がしかの癒着があるんじゃないかという批判を浴びてしまっています。これはゆゆしき問題でありますし、会計検査院からも、この株は売りなさいという指摘を受けているんですよね。

 こういう乳業メーカーの株をALICが持っていて、しかも、それで乳業の再編合理化というようなことを政策的になさろうと思ってもなかなか難しいものが多いと思うんですけれども、その辺、大臣、どのようにお考えですか。

林国務大臣 まず、仕組みとしての出資でございますが、ALICによる株式の保有、出資については、畜産物の価格安定等に関する法律というのがございまして、主要な畜産物の加工、流通の合理化等の政策実現のために産地食肉センターや乳業会社に対して出資を行う、こういうふうになっております。

 今、会計検査院から御指摘があったというよつ葉乳業ですが、これは、昭和四十八年に生乳の需給調整のための全脂濃縮乳の生産部門の新設をする、それから、昭和五十五年には乳製品の消費拡大のためのナチュラルチーズの生産部門の新設といった、政策的に重要性のある事業活動に対して実施をしたということでございますが、随分時間もたちまして、昨年九月には、まさに今先生から御指摘があったように、会計検査院の検査報告において、よつ葉乳業において多額の利益剰余金が発生している、同機構が株式を処分しても、まさに政策の重要性があるとして出資した対象事業、これを継続していくことは可能となっているということで、株式を処分して出資金を回収するなどの適切な措置をとる必要がある、こういう指摘を受けております。

 したがって、昨年八月に、同機構として、出資金回収の判断基準をつくりました。これに基づいて、今、出資金の回収を検討している段階に来ているということでございますので、我々としても、早く出資金を回収するように、引き続き適切に指導してまいりたいと思っております。

岸本委員 ありがとうございます。

 ぜひ、李下に冠を正さずということでやっていただきたいと思います。

 最後に、この基本計画にある乳業の再編合理化ということの真意、農林水産省としては、どういうやり方で、どのような再編合理化を目指そうとして基本計画の中に書かれているのか、教えていただければと思います。

林国務大臣 岸本委員からオブソリートと言われないように、しっかりとやっていきたいと思っております。

 乳業施設については、まさに飲用牛乳工場を中心として、一定程度再編合理化が進んできたところであります。二十年度に二百八十一あったのが二十五年度は二百五十三ということでございますが、ちょっと最近そのスピードが鈍化してきておりまして、特に中小それから農協系においては、商品開発力が弱くて稼働率も低いということで、厳しい経営も見られるということでございますので、HACCP等を導入した高度な衛生水準を備えた施設への投資、再編合理化がちょっとおくれているということで、やはり中小、農協系乳業を中心として乳業再編を推進することは課題であるということでございます。

 基本計画や酪肉近においても、中小、農協系乳業者を中心とした乳業者は、こうした高度な衛生管理水準を備えた乳業施設への再編合理化に取り組むことが必要であるという旨を明記しまして、目標工場数が、乳製品は現状四十四の八から九割程度、飲用牛乳の方は二百九の八割程度の目標を設定しております。

 あくまで農林水産省としては、こうした目標が達成されるように、補助事業として新設や廃棄、計画策定等を支援するということで、乳業者がみずから施設の再編合理化の取り組みをされることを促進していきたい、こういうふうにしていきたいと思っております。

岸本委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

江藤委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 民主党の金子恵美でございます。

 TPPの問題、農業改革の問題、一体我が国の農業はどこへ向かっているんだろう、不安の声を地元の多くの皆様から聞いております。それをお伝えいたしまして、私の質問を始めさせていただきます。

 まず、被災地での営農再開支援策についてお伺いしたいと思います。

 東日本大震災から四年がたちました。被災地では営農再開に向けた取り組みがなされてまいりましたが、今どのような形で営農再開がなされているのか、営農が再開となった面積の割合はどのようになっているのか、さらには、今後、営農再開を希望している農業者の方々に対してどのような支援をしていくのか、まずお伺いしたいと思います。

林国務大臣 東日本大震災の発生から四年間ということでございますが、これまでの取り組みによりまして、津波の被災農地の約七割で営農再開が可能となっております。計画的に復旧事業を進めてまいりましたし、これからも進めてまいりたいと思っております。

 単なる復旧にとどまらずに、まさに将来を見据えた復興となりますように、農業施設の再編、それから農業機械の導入支援、効率的な農業経営を実現するための農地の大区画化、これは仙台東地区というのが大変大規模になっている姿を、私も二、三回、定点観測的に見てまいりましたが、こういうことを進める、また、官民連携によって先端技術を被災地で実証実験する、こういうことも含めて取り組んでまいりましたし、これからも進めていきたい、こういうふうに思っております。

 全ての閣僚が復興担当大臣になったつもりでという総理の御指示もございますので、被災者の皆様の心情に寄り添って、被災地の農業の一日も早い復旧復興に全力で取り組んでまいりたいと思っております。

金子(恵)委員 農産物をつくれるようになっても、風評被害との戦いもございます。特に、原発事故がありました私の地元の福島県では、農地や果樹の除染をし、そしてまた、米の全袋検査を含めて農産物の検査体制を整備してまいりました。安全性をしっかりと示した形で出荷をしても、それでも震災前の価格には戻らないという状況がありまして、まだまだ厳しい風評被害との戦いがあります。

 政府では風評被害対策をどのように講じているのか、そして、どのようにこれからも講じていくのか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 消費者庁がことし二月にアンケートを行っておりますが、依然として、福島県産の食品の購入をためらうというお答え、低下傾向にあるんですが、まだ二割弱おられます。これを払拭していくということが大変に大事だ、こういうふうに思っております。

 前回大臣だったときだと思いますが、相馬双葉漁協にお邪魔していろいろなものを食べさせていただいたんですが、組合長さんがぽろっと、今世界で一番安全なんですけれどもとおっしゃいました。全部検査していますから。まさにそれが生産者の皆さんの本音だろうな、こういうふうに思います。

 まさに、そういう科学的なデータに基づいて、正確でわかりやすい情報提供が大事になってまいりますので、関係省庁とも共催をいたしまして、地方公共団体と連携しながら、食品中の放射性物質に関する説明会等を、平成二十四年度以降、全国各地で四十一回開催しております。

 それから、メディアを活用してPR活動をする、生産地へのツアー等を行うなど、福島県が行われております広報活動に対しまして、平成二十五年度の補正予算で十六億円、それから二十七年度予算も十六億円の予算で、復興庁と連携して支援を行っております。

 それから、ことしの一月には、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、イギリスのそれぞれの大使の皆様と一緒になって福島県のアンテナショップを訪問いたしまして、福島県産の食品を食べて応援する、「食べて応援しよう!」というキャッチフレーズのもとでイベントを開催する、こういういろいろな努力をしまして、全国の企業、関係団体等と一緒になって被災地の農林水産物等の積極的な消費の推進に取り組んできたところでございます。

 この間も外務省の公館で、知事もいらっしゃって、先生もたしかいらっしゃったと思いますが、たくさんの大使をお招きして、やはり海外にもいろいろな機会を捉えて発信をしていかなければならない、こういうふうに思っております。

 今後とも、風評被害の払拭は大事でございますので、しっかりと取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。

金子(恵)委員 原発から遠く離れた会津地方の農産物などを使った料理やお酒を提供する、そしてまた、食文化を発信する拠点として、平成二十四年から銀座で営業がなされていました会津若松地方広域市町村圏整備組合のアンテナショップ型居酒屋、これは「会津ふるさと居酒屋よってがんしょ」というんですが、それが六月の三十日でもう閉店するということが四月の十八日の地元紙で報じられました。大変残念なことだとも思っております。

 今おっしゃっていただいたように、さまざまな形で応援もいただいていますが、本当にまだまだ風評被害というのはおさまっていないという状況で、そして、やはり、今申し上げました居酒屋の委託企業も、原発事故に伴う風評被害の影響を大きく感じたというふうにコメントをされているところでもあります。

 風評被害は本当に福島県全体に広がっています。ぜひ、しっかりとした形での応援をまた引き続きお願いしたいと思いますし、また、海外に向けた発信をさらに続けていただきたいと思います。

 先ほど大臣おっしゃっていただきました、飯倉公館で開催されました福島復興イベントのレセプションでは、本当に多くの大使の皆様初め出席者の方々が福島のお酒や福島の農産物を使ったお料理などを堪能されて帰られたとは思います。しかし、これは本当に一過性のものにしかすぎないということでありまして、やはりもっとしっかりと世界に日本の食の安全性、そして福島の食の安全性というものも発信していかなくてはいけないと思います。

 日本産の農林水産物の輸入規制については各国さまざま措置がされているところでもありまして、特に、香港、台湾、中国及び韓国に対しては政府も重点的に規制撤廃を申し入れているということでありますけれども、しかし、まだ日本産の農林水産物、食品の輸入規制というものが維持されている。さらには、先般、台湾は輸入規制を強化したということでもありますし、大変残念なことでもあります。

 どのような形で世界にさらに発信していくのかということ、決して輸出の拡大ありきの議論ではなく、やはり安全性をしっかりと理解していただくということを進めなくてはいけないと思いますが、いかがでしょうか。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴いまして、多くの国、地域におきまして、我が国の農林水産物、食品に対して放射性物質に関する輸入規制が行われたことは御承知のとおりでございます。

 政府といたしましては、これまで、輸入規制を行う各国政府に対して、国内のモニタリング検査の科学的なデータに基づきまして、安全性を説明し、輸入規制の緩和、撤廃を求めてきたところでございます。

 その結果、オーストラリア等十三カ国で規制が完全撤廃されました。また、EU、シンガポール、タイなどで規制措置が緩和されてきたところでございます。

 しかしながら、現在においても十二カ国・地域において、一部の都県を対象に輸入停止の措置が行われていることは事実でございます。

 今御指摘のとおり、海外における日本産品の風評被害に対しては、政府を挙げて、各国要人との会談、国際会議の場、在外公館や在京大使館を通じるほか、海外の一般消費者に対しまして、食品モニタリング検査結果、そして安全性の確保の措置に対する正確な情報提供を行いまして、科学的な根拠に基づいた適切な対応を要請してきているところでございます。

 今後とも、このような取り組みを通じまして、海外における日本産食品の風評被害の払拭に全力を挙げて努めてまいりたいと考えております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 しっかり進めていただきたいということと、そして、せっかく営農を再開した農業者の方々の意欲が低下しないような形で支え続けていただきたいというふうに思っています。

 被災地での営農支援をさらに進めていくという観点から、営農再開の妨げになっている鳥獣被害対策がまたさらなる課題となっています。

 この質問につきましては、私、先般、復興特別委員会の中でも質問させていただきましたが、もう一度確認をさせていただきたい点がございますので、再度質問させていただきたいと思います。

 福島県の旧警戒区域等は環境省の所管、そして周辺地域は農水省ということで、農水省も、福島県営農再開支援事業、東日本大震災農業生産対策交付金や鳥獣被害防止総合対策交付金によって鳥獣被害対策を進めているということですが、特に、放射性物質を含むイノシシを捕獲した後の処理の仕方というのが大変課題になっていると思います。

 先ほど申し上げました交付金によって焼却施設を設置することは可能になっているわけですが、例えば、イノシシを焼却施設で処理した後に高濃度の放射性物質を含む焼却灰が発生します。その焼却灰の処理というものをどうしていくかということが大きな課題になっていくというふうに思いますが、その件につきましてどのような考えをお持ちであるか。

 四月の二日の復興特別委員会では、中川政務官が御答弁くださいまして、農水省が環境省との連携を図っていく、そういう御答弁もしていただきました。

 具体的にどのような連携を図っていくのか、お聞かせいただきたいと思います。

松島政府参考人 被災地におきます鳥獣被害の防止対策につきましてでございます。

 被災地の現場におきましては、野生鳥獣の捕獲頭数が近年大幅にふえているという状況にございます。しかしながら、その処理施設が不足しているために、捕獲個体の処理が進まないということが課題になっているということも、私ども、現場からは伺っております。

 このため、農水省といたしましては、引き続き捕獲活動をしっかり推進するということに加えまして、今委員からお話がございました東日本大震災農業生産対策交付金、こういったものを活用して、焼却施設の整備に向けまして、これに関心がある市町村と事業計画につきまして具体的な相談を行っているという状況にございます。

 さらに、焼却灰の処理につきまして御質問がございました。

 これは、環境省が定めた基準に基づきまして、その濃度に応じて市町村または環境省が処理することになっておりますけれども、農林水産省は、捕獲から焼却施設整備まで一貫して支援を行っているという立場にございますので、焼却灰の処理につきましても、農水省の職員が現地に赴きまして、現場の声を直接お伺いして、環境省や復興庁、それから現場の市町村と連携しながら、必要な措置が適切に講じられるよう指導してまいりたいと考えてございます。

金子(恵)委員 農水省が所管となります周辺地域の一つの自治体で、相馬市というところがありますけれども、そこでは、捕獲した、そしてまた殺処分したイノシシが冷凍保存されている。まだ焼却もできないで保存されているという状況、それについてもしっかりと取り組んでいただいていることだとは思いますが、今後、先ほどもおっしゃっていただきましたように、施設ができ、そしてまた焼却灰の処理についても、やはり営農再開を支援する、そういう観点からも支援をしていくということだと思いますので、ぜひしっかりと進めていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 私、実は、縦割り行政をとにかくやめてほしいということで、ここまでは農水省、そしてここからは環境省ということではなくて、対策チームをしっかりとつくり上げていただき、多分その司令塔となるのは復興庁かもしれませんけれども、チームをつくりながら、やはり被災地の皆さん、農業者の方々の営農再開の支援という観点で、繰り返しになりますけれども、この鳥獣被害対策を進めてほしいというお願いをしてまいりました。それにつきましても、またさらに御検討をいただきたいと思います。

 次に、農山漁村への移住、定住支援についてお伺いしたいと思います。

 農山漁村において人口が減少し、高齢化が進んでいる中、地域コミュニティーの活力の低下、地域経済の低迷が進んでいます。美しいふるさとを守り、限界集落にしないためにも、地域の未来を担う子供たちを産み育てやすい環境を整備することはもちろんのことでありますが、第二のふるさとの農山漁村への移住、定住等を促進する取り組みが重要となっているというふうに思います。

 国は都市農村共生・対流総合対策交付金で都市との交流事業を進める支援をしています。都市住民の皆さんの農山漁村への移住、定住等にそれをもってつなげようとしているわけでありますが、この交付金の活用でどの程度の定住者があったのか、その実績はどうであったか、そしてまた、その実績についての所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣 「田舎で働き隊!」ということでございますが、農山漁村に都市部の意欲ある若者を派遣しまして、地域活性化に関するさまざまな活動に取り組んでもらうことを狙いとして、平成二十一年度に創設をされたものでございます。

 隊員は、派遣先において、地域の特産物を活用した新商品の開発、グリーンツーリズムの企画、運営等々、農林水産業関連の幅広い活動に従事していただいております。

 二十一年度から二十四年度まででございますが、九百三十六名の隊員が派遣されておりまして、派遣期間が一年でございますが、終了後の定着率が五割ということで、移住、定住の促進に一定の役割を果たしてきておる、こういうふうに考えております。

 定着した方々のうちで、六五%が農林水産業、農業生産法人、NPO等に就業しておられまして、こういう方々が活動期間中にいろいろなノウハウを得られておりますので、そのノウハウを引き続きこの地域で発揮していただくということが期待をされるところであります。

 「田舎で働き隊!」については、今年度から、総務省の地域おこし協力隊というのもできましたので、まさに縦割りでなくしてということもあって、名称を統一しまして、合同で研修を実施して、隊員間の交流も活性化させよう、こういうふうにしておりまして、こういうこともあわせ持って、派遣された隊員の活動がより充実したものになって、定着率がさらに上がっていきますように、適切にフォローアップをしていきたいと考えております。

金子(恵)委員 今大臣からの御答弁の中でありました「田舎で働き隊!」、実際に五割の定住者がいらっしゃった、そしてまた、就農など就労された方々、農業関係の仕事等につかれた方々というのは六五%に上るということでありますけれども、この数字は、実は、「田舎で働き隊!」は一年間の研修でありまして、その一年後に調査をされた数字だというふうに聞いていますので、一年間田舎暮らしをされ、そしてまた、その後一年間はとりあえずとどまったという方々だけかもしれません。その後のフォローアップをした形での調査というのも必要になっていくと思いますし、今挙げられました数字を見て、この方たちが本当に定住したというふうに言っていいのかどうか、私はそこは疑問に感じているところでもあります。

 繰り返しになりますけれども、今度は、この事業を終え、そしてまた定住を決められた方々に対するしっかりとした支援というものを国が前面に出て進めてほしいというふうにも思います。大臣からは、一定の成果があったということではありますけれども、事業が終わって一年間住みました、これでは定住ではないと私は思っております。

 私の地元の伊達市霊山町というところで、実は「りょうぜん里山がっこう」というNPO法人がありまして、こちらは廃校になった木造の校舎を利用し、例えば米粉活用教室、自然体験教室、木工教室など、そういう体験活動をされ、都市との交流事業もされています。そしてまた、さらに就農希望者支援などの相談活動をも展開しているんですが、その「りょうぜん里山がっこう」の代表理事の高野さんのお話を聞いてまいりましたけれども、昨年五月から八名の方が実際にIターンで移り住んでいらっしゃるということであります。

 高野さんはこのようにおっしゃっていました。福島は原発の問題があり、通常の状況にない、そのような中であっても福島を支援したい、美しい自然の中で暮らしたいとおっしゃっている人たちを大切にしたい、人に対する支援が必要だとおっしゃっていました。農業を営みながら第二のふるさとのために働きたいとおっしゃってくださる方がそこにいらっしゃるということでありますが、農業所得が安定できるような仕組みをまずつくっていただきたい、そういう声ももちろんあるわけですが、農業に関連した新たな雇用の場の創出の必要性についても触れられていました。

 私も本当に、次のステップとして、定住を決めた方々の仕事、雇用の場の創出、これは重要な課題だというふうに思っています。

 また、二本松市の東和町というところでも、NPO法人福島県有機農業ネットワークというところの菅野理事長さんと私はお話をさせていただきましたが、東和町にはIターンで十年間で三十人の方が移り住んだということです。

 ただ、やはり定住促進をするためには、行政が中心となって計画的に空き家の確保をすることも必要でありますし、またさらには、地域の食文化を守ってこられた方々と新規就農者の方々が一緒になって働くことができるような加工場の設置や、そういうものも必要になっていくわけで、それを積極的に支援してほしいという声もありました。

 定住を決める、新しいふるさとで生きていく、そこには安定した生活を求めて行くわけで、安定した雇用も必要になっていく。それが農の分野であればという願いを持っていらっしゃる方々がいるわけですけれども、その方々に対しての支援をこれからぜひ国としてもしっかりやっていただきたいと思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。

中川大臣政務官 地方に人の流れをつくるという地方創生の観点から、御指摘のとおり、都市農村交流がきっかけとなって農山漁村に移住、定住するケースが想定されているところでございます。

 都市農村交流は、収穫体験を行う一時滞在、農家民宿への宿泊、週末の田舎暮らしといった幅広い取り組みを含むものでありまして、こうした取り組みを、先生おっしゃるように、一過性のものとせず、移住、定住へと結びつけていく観点に立ち、地域の取り組みを支援していく必要があるというふうに考えています。

 また、先生が御指摘いただきましたように、安定した所得を確保することは本当に大切だというふうに思います。移住者を含めた新規就農者の皆さんへの支援や、移住者御自身が持っておられるノウハウも生かしつつ、地域全体で取り組む六次産業化に対する支援を行うほか、農村における生活に必要な機能を確保するために、生活サービスの機能を基幹集落に集約し、周辺地域とのネットワークを形成するための支援を講じていくこととしております。

 農林水産省といたしましては、農村地域への定住、移住を促進する観点から、まち・ひと・しごと創生本部のもと、関係省庁と連携しつつ、これらの施策を着実に推進してまいりたいと存じます。

金子(恵)委員 福島県のことについてお話をさせていただきますと、例えば、いろいろなメニューを農水省から出されたとしても、今、被災地ということもありまして、大変現場の職員の方々は疲弊しているということもありまして、私は、現場にもちろん一番足を運んでいただいているのが農水省だとは思いますけれども、もっとしっかりとそれぞれの地域の現状を見ていただきたいというふうに思っております。

 その中で、今たくさんのメニューがあるとしたら、例えば就農者支援については、新規就農者の支援、そしてまた農の雇用等、そういう支援もいろいろありますけれども、そういうものもパッケージとしてしっかりと移住、定住を希望している人たちに出せるような形での、人を育てる、コーディネーター等を育成するということももっと重要になってくるのではないかというふうに思います。ぜひ、それも含めましてお願いをしたいというふうに思います。

 今、農村ということでお話をさせていただいたんですが、今度は、山村への移住、定住の促進に向けて具体的にどのような取り組みをしているのかということをお伺いしたいと思います。

 三月に山村振興法が改正されましたが、基本理念に、産業基盤及び生活環境の整備等を図るとともに、地域の特性を生かした産業の育成による就業の機会の創出、住民の福祉の向上等による山村における定住の促進を図ることを旨として行われなければならないというふうにあります。

 こうした定住の促進に向けてどのような取り組みをしているのか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 今般、改正、延長が行われました山村振興法においては、基本理念のところで、山村の振興は、森林等の保全を図ることを旨として、また、山村への移住の促進を含めた山村における定住の促進を図ることを旨として行われなければならない、こういうふうに規定をされております。

 山村地域への定住の促進でございますが、やはり山村地域には豊富な森林資源がございますので、これを活用して地域の雇用と所得の増大を実現する、これが大事であると考えておりまして、例えばCLT、直交集成板ですが、こういうものなどの新たな木材製品を開発普及させる、それから、木質バイオマスのエネルギー利用の促進をしていく、こういった新たな木材需要の創出をやっていく取り組み、それから、もう一つは人の方でございまして、若い就業者の確保対策を含めました国産材の安定供給体制の構築の取り組み等を総合的に推進しているところでございます。

 昨年でございますが、「WOOD JOB!」という映画もかなりヒットをしましたので、こういうものにあやかって、今、ポスターにも、みどりの女神という女性の方の写真を利用しまして募集なんかもやっているところでございますが、そういうことも含めて総合的に推進をしていきたい、こういうふうに思っております。

 こういった施策が具体的な定住の促進に結びつくために、今まさに委員から御指摘があったように、やはり関係者が一体となってきめ細やかな施策の運用を図る、こういうことが大事だと思っておりまして、そういうことを図りながら山村地域の活性化を図ってまいりたいと思っております。

金子(恵)委員 今、やはり雇用の問題、安定した雇用の場を確保しながらということではありますけれども、手を挙げてくださる方もたくさんいます。でも、実際に山村でどのような仕事があるのかというのをまだまだ理解していない方々もいるかもしれません。

 緑の雇用、その前にトライアル雇用、山にかかわる仕事として、あるいは林業にかかわる仕事としてそういうメニューもあるわけなんですが、もちろん、今申し上げましたように、それだけでは十分ではない、もっと安定した雇用の場の創出というのも必要になってくるわけです。実際に、地元雇用の安定的な確保、そしてまた林業労働者の方々の処遇の改善というものもしっかりと進めていかなくてはいけないというふうにも思います。

 仕事が創出されたとしても、本当にまたその仕事に対しての定着率というものをしっかりと上げていくという努力が必要にもなっていくというふうに思いますが、どのような取り組みをされていくのでしょうか。お伺いしたいと思います。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省では、平成十五年から緑の雇用事業というのを実施しているわけですけれども、この事業の成果といたしまして、林業への新規就業者の数ですけれども、事業の創設前は年間平均二千人弱の水準であったものが、事業開始後は平均三千人強にまで増加しているところでございます。

 今後、こうした林業への新規就業者が定着し、地域に定住してもらえるようにするためには、先生御指摘のように、キャリアアップに応じた所得の向上など、林業労働者の処遇の改善を図っていくことが重要だと考えております。

 このため、緑の雇用事業の中におきまして、技術習得のための研修内容を充実させる、あるいは研修期間を三年間に延長する、さらには、現場管理責任者等の育成のためのキャリアアップ研修を追加する、そういった充実を図っているとともに、労働災害防止のための巡回指導ですとか安全教育の実施、さらには、高性能林業機械や安全装備の導入支援、こういったことにも取り組んでいるところでございまして、引き続き林業労働者の確保、育成に向けてしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

金子(恵)委員 資格の取得、そういうものでキャリアアップをしていただくということですが、そうすると、実際にそれが給与にきちんと反映されていくということでよろしいのでしょうか。

今井政府参考人 お答え申し上げます。

 そうしたキャリアアップの研修が給料に結びつくようにということを念頭に置いて、研修のカリキュラムをつくっているところでございます。

金子(恵)委員 林業における雇用状態というのは、通年雇用が確保されているのは約四割、そして、賃金の支払い形態では約八割が日給制で、月給制は約一五%、年収は全産業平均と比べ、約百五十万円も低いという状況であるというふうに伺っています。厳しい条件であります。だからこそ、しっかりと処遇改善のための方策を考えていかなくてはいけませんし、人もしっかりと育てていかなくてはいけないと思います。

 繰り返しになりますが、林業において、緑の雇用による取り組みというものもあるけれども、実際に定着率は七〇%というふうにも伺っています。その七〇%の方々が本当に山村に移り住み、そして定住をする、何十年もの間、山で頑張っていく、そういう環境がつくれればいいんだと思いますが、現段階では、それは疑問でもあります。さらに労働条件改善に向けた対策をぜひ進めていただきたいと思います。

 一方で、今、外国人技能実習制度についての見直しが検討されておりまして、技能実習二号の対象職種の追加が検討されています。

 林業のように、ほかの産業よりも労働条件の整備が進んでいない業種での実習生の受け入れというのは、低位な労働条件の固定化につながってしまうという可能性があると懸念されます。

 これについて、どのようなお考えをお持ちでしょうか。私は、関係者の意見を聞いて、慎重に扱うべきだというふうに思いますが、いかがですか。

あべ副大臣 金子委員にお答えいたします。

 外国人の技能実習制度、この制度にかかわらず、国内における林業の労働の処遇改善、これはしっかりと改善していくべきだと私も思っておりまして、特に人材育成は林業にとって非常に重要だと思っております。

 そうした中、外国人の技能実習制度に関しましては、我が国で開発されました技能、技術などの開発途上国への移転による国際協力を推進することを目的としているものでございます。

 本制度に関しましては、出入国管理法などによりまして、職種を問わずに、実習期間を一年以内として行う技能実習一号と、さらには、特定の七十一職種のみを対象として、技能実習一号で習得した技能の熟練のために、さらに二年以内の実習期間が認められている技能実習二号が定められておりまして、林業はこの技能実習二号の対象職種には含まれていないところでございます。

 こうした中で、平成二十六年六月の、法務大臣の私的懇談会の出入国管理政策懇談会の外国人受入れ制度検討分科会の報告などにおきまして、この技能実習二号の対象職種への追加を検討すべき職種の一つに林業が挙げられたところでもございます。

 こうした中、林業労働力に関しましては、外国人技能実習生の受け入れにかかわらず、先ほども申し上げました、金子委員が心配していらっしゃるところの処遇改善、これを進めてまいりまして、国内における労働力をまずは確保、育成することが重要だというふうに考えておりまして、その一方で、日本の高い林業技術を途上国に移転することは、国際貢献の観点から意義があることというふうに考えているところでもございます。

 こういうことを踏まえまして、外国人技能実習制度の活用につきましては、国内における林業労働力の動向、受け入れ側となる業界団体の意向、さらには、送り出し側となる途上国のニーズなどを総合的に勘案しながら、適切に検討してまいります。

金子(恵)委員 適切に検討していく、そしてまた業界団体の方々の意見を聞いていく、そしてまた国内での就労者の確保、労働者の確保をまず最優先にしていくということでありますので、山を愛し、そして山で働きたいと本当に強い信念を持ちながら頑張っていこうとする人たちを支えていく仕組みをしっかりとおつくりいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 最後の質問になりますが、農業委員会法の改正案について質問させていただきたいと思います。

 総理は施政方針演説で、農業委員会の改革について、地域で頑張る担い手がリードする制度へ改め、耕作放棄地の解消、農地の集積を一層加速化するとおっしゃっていましたが、この改革でどのようにそれが進められるのか全くわかりません。何のための改革でしょうか。農業委員会の関係組織からも不安の声が出ているところでもあります。

 私の地元の福島県農業会議も、三月の二十四日に開催されました総会で、地域に根差した農業委員会組織、制度改革の実現に向けた要請というのを行いました。要請書には、農業委員の公選制の堅持、意見の公表、建議、諮問に対する答申を法定化して確保することという項目ももちろん含まれておりました。

 農業委員会が地域農業者の代表としてしっかりと現場で働くことができ、そして成果を上げることができる、そういう環境をつくるということが重要ではないかというふうに思います。

 それで、農業委員の公選制を、今回の改正案の中では廃止というふうなことでありますが、廃止とするまでの農水省としての経緯を御説明いただきたいというふうに思いますし、またさらには、この改正案の中では、行政庁への建議の規定を農業委員会法から削除しているということであります。なぜこれが削除されているのか、お伺いしたいと思います。

林国務大臣 農業委員会は、御案内のように、農地に関する市町村の独立行政委員会でございまして、担い手への農地利用の集積、集約化、新規参入の促進、耕作放棄地の発生防止、解消、こういったことを積極的に進めていくことが期待されております。

 一方で、地域によって活動状況がさまざまでございまして、二十四年のアンケート調査によれば、農業者の方々から見た農業委員会の活動に対する評価は、評価しているという答えが三割にとどまっておりまして、農地集積などの農家への働きかけが形式的である、遊休農地等の是正措置を講じない、農業委員が名誉職となっている、こういう意見が出ておりまして、余り評価されているとは言いがたい状況も見られるということでございます。

 農業委員の四割が兼業農家の方がなっておられるということで、担い手など農業経営に真剣に取り組んでいる者が主体となっていないということが一つの原因であろう、こういうふうに考えられるわけでございまして、四月三日に閣議決定されました、いわゆる農協法等の一部を改正する等の法律案の中で、適切な人物が確実に農業委員に就任するようにするために、公選制から、市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改めるということにいたしました。

 その際、市町村長は事前に地域からの推薦、公募等を行いまして、その情報を整理して公表するということにいたしました。そして、その結果を尊重しなければならないということも定めまして、選出プロセスの透明性をしっかりと確保するとともに、代表性も確保していかれるもの、こういうふうに考えております。

 また、建議でございますが、農地に関する市町村の独立行政委員会として、都道府県の農業会議等も農業委員会の活動を支援する組織でありますが、やはりアンケート等でもなかなか十分に機能していると言えない状況も見られるということでございますので、まずは、主たる業務である農地利用の最適化の推進業務に集中して取り組むことができるようにするために、この法律案では、法的根拠がなくても行える意見公表や建議は法令業務からは削除するということにいたしました。

 法令業務から意見の公表等を削除しても、当然でございますが、意見の公表等は自由に行えるわけでございます。さらに、この改正法案では、所掌事務の遂行を通じて得た知見に基づき、必要があると認めるときは、関係行政機関に対して農地等の利用の最適化の推進に関する施策についての具体的な改善意見を提出する義務を課しているところでございます。

金子(恵)委員 公選制をなくしていくということは、本当に私は農業委員のメンバーの偏りにつながっていくというふうに思います。本当の農業者の方々の代表が存在する農業委員会とはならないと思います。

 農業者の代表の方々がいらっしゃらないという中で、建議権をさらに続けるということにも、どういうふうな議論をしていくかという大変難しいことにもなっていますけれども……

江藤委員長 金子君、簡潔にお願いします。

金子(恵)委員 いずれにしても、農業者の方々の代表者の意見というのが、今後、さまざまな政策についても、あるいは地元の声、これからさまざまな政策、あるいは農地利用ということについても、声が届かないという状況になっていくということが大変懸念されるところでもあります……

江藤委員長 金子君、簡潔にお願いします。

金子(恵)委員 はい。

 四月の十日に行われました説明会では、さまざまな改革における、組織の改編についても、予算をどういうふうに講じるかということが全く見えないというようなことで、農水省からの説明がなかったというふうにも聞いています。本当に、この改革は一体何のためにあるのかわかりません……

江藤委員長 委員長の指示に従ってください。質疑を終了してください。

金子(恵)委員 今後、このような改革をしっかりとわかりやすく説明していただきますようお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

江藤委員長 質疑の時間を厳守していただくように、よろしくお願いいたします。

 次に、村岡敏英君。

村岡委員 維新の党、村岡敏英でございます。

 きょうも質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 朝一番の質問で、自民党の委員の方がもう靖国神社に行ったということで、私も、きょう朝一番で靖国神社に、みんなで国会議員で参拝する会で行ってまいりましたけれども、日本の伝統文化、そして社会というのは農村がしっかりとつくり上げてきた、やはり農耕民族だなということをつくづく感じております。

 戦後、工業化して、世界に工業製品を売って成長してまいりました。これは非常にすばらしいことだと思います。しかしながら、その結果が、やはり農業がだんだんとないがしろにされてきた部分がある。当然、農業人口も減った。そして、農産物も輸入をするようになった。そういう形の中で、なかなか農業に目を向ける方が少なくなってきた、それを感じています。

 特に、私は大臣にもぜひ勧めてほしいんですけれども、農業が今、戦後最大の改革をするときに、いつも思うんですが、なかなか農水委員会に傍聴人の方もいない。農水委員会の活性化の改革から始めなきゃいけないんじゃないか。議員もそうです。少なくなってきて、途中で抜けられることもあるでしょう。戦後の最大の改革、そしてTPPがこのような交渉をしているとき、やはり農水委員会をもう少し活力を与えるような形で活性化しなきゃいけない。

 私は、例えば地元の農協、土地改良、そしていろいろな農業関連団体が東京に来たとき、反対のデモもいいでしょう。それから、日比谷公会堂でいろいろな集会をするのもいいでしょう。しかし、東京に来たなら、必ず農水委員会に来るようにしてくれ。その委員会の議論も聞かずして、自分たちだけ集まって、その中で議員がただ発表するだけじゃない、農水委員会というところに来てくれという声をかけております。また、全中なんかも訪ねてきたとき、畜産団体にもかけています。

 やはりもう少し、このぐらい大改革をしよう、そしてTPPがあるといったときに、大臣からも、ぜひそういう団体にも農水委員会に来てくれと。そうしたら議論ももっと盛り上がって、やはり国会議員は有権者や団体がいてこそいろいろな議論がもっと深まっていく、こう思っていますけれども、その点を最初にお聞きしたいと思います。

林国務大臣 一義的には、尊敬する江藤委員長初め委員の皆様がお決めになることでありますけれども、大変いいお話だと思いますので、私は、できる範囲で、ぜひこの委員会に傍聴をお勧めしていきたい、こういうふうに思っております。

村岡委員 そこから始めるというのも悲しいような気がしますけれども、でも、これは大事なことだと思っておりますので、理事会で話して、委員長にもぜひそういうお勧めをその人たちにもしていただきたい、こう思っております。

江藤委員長 はい。

村岡委員 そして、今TPPは、未明までかかって、十八時間、大変な交渉をされたと思います。

 西村副大臣にも来ていただきました。大変な交渉をぎりぎりやっている最中で、まだ結論は出ていないということは新聞紙上でお聞きいたしております。

 ただし、甘利大臣が、交渉は進展した、そして、日米首脳交渉の中では、この中で歓迎すべきようなことが出てくると思うというような発言をされております。

 西村副大臣はその甘利大臣の発言と同じ感想なのかどうかを先にお聞きしたい、こう思っています。

西村(康)副大臣 お答えを申し上げます。

 御指摘のとおり、二十一日の朝方、未明まで、甘利大臣と米国フロマン通商代表の間で厳しい交渉が行われたわけでございます。

 大臣が発言をされているとおり、相当間合いは縮まってきているということで、ようやく将来が少し見えてきたのかなという感じのところまで来たんだと思いますけれども、ただ、これは安倍総理も言われているとおり、最後の本当に難しいところは残っておりますので、引き続き、両大臣から事務方には、しっかり詰めるようにということで指示がなされたところでございます。

 そういう意味で、前進はしているけれども、最後の厳しいところは残っているというのが現実だと思います。

 首脳会談で細かいそういうところを議論することにならないと思いますけれども、これまでの一定の前進があることは、恐らく、これは首脳間でどういう話になるかあれですけれども、引き続き、早期妥結に向けて協力していこうということになるのではないかというふうに期待をいたしておるところでございます。

村岡委員 お話しにならないかもしれませんけれども、前進しているのが、攻めるのが自動車で、そして守っているのがお米、その認識でよろしいんですか。

西村(康)副大臣 全体をパッケージで議論いたしておりますので、攻めるところもあれば守るところもあり、それは激しくいろいろな形で交渉しているところでございます。

村岡委員 全体のパッケージなので言えないこともあるでしょうけれども、新聞紙上、この印象は、よく総理が使われる、瑞穂の国といいますけれども、自動車の国になっちゃったのかなと。

 いや、自動車も成長産業でいいんですよ。ただ、農産品だけは相当攻められているという印象があるんですけれども、パッケージの中でやっているから、米と自動車の問題では、聖域だと言われた五品目に関して、聖域だという認識のもとでやっていることは、これまでどおりでしょうか。

西村(康)副大臣 国会で決議をいただいておりますので、その決議を我々はしっかりと踏まえて交渉をいたしております。最終的に国会で承認をいただかなければいけませんので、皆さんにこれは決議をしっかり守ってやったんだということが理解していただけるように、粘り強く交渉していきたいと思っております。

村岡委員 林大臣も、交渉の中身は言えないでしょうけれども、お聞きしていると思います。そこは、ぎりぎりの交渉というのは、聖域を守ったというふうな方向での交渉事が進んでいるという認識でよろしいでしょうか。

林国務大臣 今、西村副大臣から答弁がありましたように、全体をパッケージとして交渉しておりまして、まだ難しいところが残っているということでございますし、全体をパッケージということでありますと、全部が決まるまでは何も決まっていないということも言えるわけでございます。

 依然として厳しい交渉が今からも続く、こういうふうに思いますけれども、農林水産委員会の決議が守られたというふうに評価していただけるように、政府一体となって全力を尽くす考えは変わらずにやっていきたいと思っております。

村岡委員 全部が決まっていなければ決まっていないと言えば、前進もあったのかないのかよくわからなくなるんですが、それは別にして、個別のものは答えないでしょうけれども、日豪EPAよりも畜産物もレッドラインを超えるんじゃないか、いろいろな不安が農業者の中にはあります。

 そういう意味で、聖域を皆さんに守ったと言えるようなラインには行きたい。このラインというのはどのぐらいで考えているかというのは言えないということでいいんですか、大臣。

林国務大臣 これはまさに手のうちを明かすことにもなりますので、私から交渉の中身について申し上げることは控えさせていただきたいと思います。

村岡委員 交渉の中身じゃないので、何を守ったかがなければ、何が聖域なのか、何がラインなのかさっぱりわからないということになりますので、そこを本当は答えていただきたいんですけれども、同じ答弁なので、そこはもうお聞きいたしません。

 しかしながら、アメリカは、しっかりこのTPAの中で情報を開示するという、法案はまだ通っておりませんけれども。アメリカはしっかりと議員に対して情報を開示して、それをやっていくということで、民主党さんは出されるようですけれども。

 そういう中で考えると、日本とアメリカの差は、情報公開という中でどのように西村副大臣はお考えでしょうか、この差がいろいろな交渉事にもかかわってくると思いますが。

西村(康)副大臣 まず、制度がアメリカと日本で違いますので、必ずしも各国が全て一致してやっているというわけではございません。それぞれの国で、秘密保持と、それから情報開示と、このバランスをよく考えながら、各国で苦労しながら、できる限りの情報開示をやってきているという認識であります。

 アメリカにも我々は照会をいたしておりますけれども、ホームページ上に出ていることが全てであるということで回答ももらっておりますので、全てのテキストを、全て公開して、全ての議員に見せているということでもないようでありますので、現に不満を言っている議員も出ているようであります。

 そういう意味で、私どもとしては、しっかりと、引き続きできる限りの情報提供、これにも努めてまいりたいというふうに考えております。

村岡委員 確かに、アメリカの政治の仕組みと日本の政治の仕組みは違うと思います。

 しかしながら、アメリカでは、限定された人でも、ある程度、与野党を問わず、この交渉事の中身が出てきたとします。そうすると、日本の国会議員はアメリカの国会議員から情報をとることになっちゃいます。何か向こうは、もう既にそれは業界団体にもある程度のところへ行っていて、我々はわからないまま、それを受け入れなきゃいけない。しかし、アメリカに行って聞けば、アメリカの法律で日本の国会議員に教えちゃいけないということがなければ、それは入ってくる。何かちぐはぐになってしまう。

 それに対して、制度が違うからというだけじゃなく、もともと政府がずっと言い続けてきたのは、このTPPは妥結するまでは言っちゃいけないんだ、こう言っていたわけですけれども、ちょっとそれは違うんじゃないかと思いますが、副大臣、どうですか。

西村(康)副大臣 繰り返しになりますけれども、それぞれの国がいろいろ苦慮しながら情報開示に努めてきているところでありまして、アメリカはアメリカでやってきている。それについて、我々も照会もしながら、確認もしながら、我々としても、引き続きできる限りの情報開示はしていきたいと思いますし、最終的に国会で御承認いただかなければなりませんので、これは、最終的には、しっかりと全てもちろんお示しをして、御審議をいただいて、御承認いただけるように努力をしていくということでございます。

村岡委員 そうすると、逆に考えると、先ほど副大臣も言われましたが、アメリカとの首脳会談で細かい数字は決められない。今、甘利大臣は相当距離は縮まったと。全体的にまとめましょうということだけの首脳会談に二十八日はなるというふうに考えてよろしいんでしょうか。

西村(康)副大臣 首脳会談はこれから開かれる会議でありますので、私がそれを予断を持って申し上げることはできませんけれども、恐らくは、TPPの重要性と早期妥結に向けて、最終局面であるということも認識をしながら、お互いに努力をしていこうというふうな流れになるのではないかということを期待いたしております。

村岡委員 二つの側面があるんですけれども、アメリカでTPAが通らないうちにやったら、どんどん修正がされる。そうすると、流れとしては、日本側の今のスタンスは、首脳会談では大筋のTPPはいつまでにまとめましょうという話をして、TPAが通ってから日米の妥結という考えなんでしょうか。

西村(康)副大臣 TPPの交渉に参加をしておる国々は、TPPの交渉妥結にはTPAの成立が不可欠だ、これは必須だという考えの国々ばかりでありますので、最終的にまとまるにはTPAが必要だという認識を私どもも持っております。

村岡委員 本来であれば、日本も情報開示して、しっかり妥結する前に、その中で、アメリカのTPAとは違いますけれども、やっていくということが必要だったんじゃないか、こう思います。やはり情報を開示しないで、アメリカも当然いろいろな団体やいろいろな考えの人がいて、TPAをするというのは、情報を開示しなきゃ、それは認めるはずないですよ、白紙委任で。

 日本は、最後は国会で承認すると言いますけれども、何か白紙委任みたいな感じになっちゃっているんです。それは、本当は本来じゃない姿だと私は思っているんですが、西村副大臣と林大臣と、ちょっとお答え願えれば。

西村(康)副大臣 私どもは白紙委任だとは思っておりませんで、まさに国会の決議をいただいておりますから、その決議の範囲内でまとめなきゃいけないという認識を持っております。この決議をしっかり踏まえて、粘り強く交渉していきたいというふうに思っております。

林国務大臣 村岡先生から仕組みが違うんだというお言葉がまさにありましたとおり、私の拙い理解によりますと、アメリカは通商交渉権限そのものを議会に持たせている、こういうそもそもの成り立ちがございます。

 我々の仕組みは、政府が交渉して妥結をしたものを国会で批准をいただく、こういう仕組みになっておりますが、アメリカはTPAがありませんとそれすらない。したがって、ラインアイテムとよく言いますが、一行一行、数字の一つ一つを議会が修正できるというのが素の状況である。それを我々のように批准ということで、全体をまさにパッケージとしていいか悪いかということを御審議いただくということまでを行政府に委ねる。これがTPAであるというふうに理解をしておりますので、TPAをアメリカ政府がとって初めて我々と同じような立場になるということではないかというふうに、私の拙い理解ではそういうふうに考えておるところでございます。

村岡委員 TPAの妥結といいますか、TPAの方で、アメリカの方でやる前に情報をもうつかんでいるからこそ、それはお任せするわけですね。

 もちろん、仕組みが違うのはわかります。しかし、仕組みが違うところと最初から交渉しているんです。向こうには情報が行っていて、こっちには情報が、国会議員の方にはない。向こうは幅広く、業界団体まである。こっちは業界団体も知らない。この状況は、違う仕組みだからこそ、その仕組みが違って、いろいろな交渉事をやっているとすれば、国会議員であれば秘密会でもいいでしょうし、そういう団体であれば、ごく少数のところと御意見をお聞きするということも必要でしょう。これをやってこないで、結果が聖域を守ったということになればいいですよ。ではなかったとき、本当にこれは大変な状況に、農業改革をこれまで二年間、相当やってきました、畜産物にしても、そして米の体質強化にしても。結果、これがTPPで食い込まれた場合に、今までやっていた改革を全てゼロから見直さなきゃいけないぐらいの大きなことなんです。

 それが、あとは国会の承認だ。国会議員がいいからといっても、農業団体も、今まで一緒に進めてきた人も、何だ、この政策によってしっかり進んでいこうと思っていたのが、また変更なのか、こういう心配をしていることが現状ですけれども、もう一度、そうはならないんだという認識を大臣から。

林国務大臣 情報公開の運用につきましては、先ほど西村副大臣からありましたように、それぞれの国が、秘密を保持するということと、それから情報をそれぞれのステークホルダー等に開示するというこのバランスをどうとるかというのは、それぞれ工夫をされておられるというふうに答弁されたとおりだ、こういうふうに思っております。

 我々は、批准という仕組みがありますから、こういう決議が国会でされているということも相手に示しながら交渉をしてきたということを申し上げておりますし、まさに、批准をされなければ、これは発効しないということでございます。

 そういった意味で、この決議を守ったと評価していただけるようにというのは、そういうところに帰着するわけでございますので、まさにそういう御判断がいただけるということが、今先生が御指摘になったことも踏まえて、最終的に御判断がされるのであろう、こういうふうに考えておるところでございます。

村岡委員 手前に戻りますけれども、聖域が、その認識が、ちょっとラインが示されないので一概に言えないですけれども、思っている聖域に踏み込まれた場合には、いまだに脱退もあり得べしというふうに思っているんでしょうか。それはもうないんだというふうな認識でしょうか、西村副大臣。

西村(康)副大臣 いただいた、された決議、これを我々はしっかり踏まえながら、その範囲内でまとまるように粘り強く交渉しておりますので、脱退等、そんなことは一切考えておりません。

村岡委員 決議には書いてあるんですけれども。ですから、ラインは示せない。そして、脱退は絶対しない。それはやはり不安につながるんですね。

 ラインはしっかり決めていかなきゃいけない。そしてその中で、この交渉が、スケジュール的にいくと、五月の中旬ぐらい、大統領選が始まる前に大体結論が出るんじゃないか、こう言われておりますけれども、ぎりぎりやって早目に妥結しようというのは、やはりそれは政治ですから、アメリカの政治状況、日本の政治状況、いろいろなことを加味して、いつごろにしなきゃいけないということがありますから、大統領選の前というか、大統領選の準備が始まる前にはまとめたいということで交渉されているんでしょうか。

西村(康)副大臣 これは、かねてから申し上げておりますけれども、日本の国益をしっかり実現する、守るべきは守り、攻めるべきは攻めるという粘り強い交渉をしておるところでございますけれども、日本にとっては大いにプラスがあるということで、早期妥結に向けて我々は努力をしているところでございます。

村岡委員 やりとりを何回やっても交渉中なので言えないということなので、これ以上はやめますけれども、我々は、野党で申し入れているのは、内閣との連合審査をしていただきたい、こういうことを申し入れていますので、これは委員長に、強く、ぜひとも、このTPP、妥結して、そのままただ国会承認というだけじゃなく、いろいろな交渉状況をしっかりとお聞きしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

江藤委員長 理事会でも御提案をいただきましたので、委員長に預からせていただきます。

村岡委員 ありがとうございます。

 それで、林農林大臣、実際に五万トンとか二十一万トンとかいろいろ出てきておりますけれども、この五万トンという話は、もう農林省の方では五万トンならいいという話なんでしょうか。

林国務大臣 これはまさに交渉の具体的な中身でございますので、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、米が国民の主食でありまして、最も重要な基幹的農作物であるという認識のもとで、慎重に交渉を進めているところでございます。

村岡委員 五万トン自体が聖域を崩していないのかどうかという議論が、本当に多分激しくなってくると思います。

 例えば、それは連合審査の中でぜひいろいろな議論をしたいと思っておりますが、朝日新聞の、米価維持のための支出ということで、TPPの米、対米輸入枠を五万トン検討という記事ですけれども、その中で、大体一万トン当たり赤字は二十五億になる。これは今でもミニマムアクセスで飼料米にしたり何かすると、そのぐらいの赤字になる。そうすると、百億円以上の赤字になる。

 これは、例えば備蓄で、そういう仮定ですよ、何万トンというときは、ある程度備蓄で対応しようとしているのか。どのような対応をとろうと思っているのか、お答えできるでしょうか、トン数は関係ありませんけれども。

林国務大臣 そういう報道に私も接しておりますが、まさに先ほど申し上げたとおりでございまして、交渉の中身そのものでございますので、その中身について申し上げることは控えさせていただきたいと思います。

村岡委員 交渉の中身じゃなくて対策の方ですので、対策はどのような、交渉がそういうふうにならないという前提ならば対策も立てる必要はないんですが。

 この財政負担というのが、備蓄であろうと、それが飼料米に行こうと、また相当な米価の下落につながる可能性があると思っています。そして、毎年、どんどん米の需要が減っているわけですから、これは五万トンであろうと、相当な打撃を与えるという認識は、もし対策も何も今交渉中で言えないなら別です、ある程度の米が、五万トンでも三万トンでも二万トンでもいいですけれども、それをどんどん買っていくことは、日本の米市場に影響を与えるとお思いか、お思いじゃないかだけをお答え願えればと思います。

林国務大臣 繰り返しになりますが、交渉の中身についてはお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、単純に、今委員がおっしゃったように、仮定を置きまして、備蓄米の買い入れ数量を、例えば一万トンというふうに仮定をしますと、これは、毎年毎年の買い入れ価格が米の需給動向等によって変動するために、一概に幾らだと言うのはなかなか難しいんですが、平成二十四年産の買い入れ価格で六十キロ当たり一万三千四百六円でございましたので、これを前提に機械的に計算すると、二十二億円ということになるわけでございます。

村岡委員 この対策というのは、交渉の結果によってではありますけれども、同じことを繰り返しちゃいけないのが、一九七四年から約七百四十万トンの米余りが生じ、さらに一九七九年から一九八三年にかけて六百万トンの米余り、合計千三百四十万トンも余って、かかったお金が処理だけで三兆円と言われているんです。

 この対策をどういうふうにしていくかというのは、やはりしっかり考えておかなきゃいけない。その部分はどういうふうな結果になるかがわからないんですが、やはり財政負担というのが非常に大きくなる可能性があるので、交渉はしっかりやっていただきたいということと、交渉の中身も、連合審査の中でぜひそれはしていきたいと思いますので、そちらの方でまた質問させていただければと思っております。

 それでは、きょうの二つ目の議論で、これは攻めの方の議論になりますので、交渉の中身じゃないので、答えていただければと思います。

 今、千葉県成田市の、成田空港を見据えて、国家戦略特区の中で、成田市の市場機能ということで、国際的に物を売ろうという中で特区に指定してやっておりますが、成田だけじゃなく、これは農業地帯がありますので、その空港からとか、いろいろな意味で広げていくつもりなのかどうか、ちょっとお教え願えればと思います。

櫻庭政府参考人 御指摘の成田市において、成田空港の立地と国際線のネットワークを生かして、農産物の輸出拡大を図るために、成田市の公設地方卸売市場を輸出拠点として整備し活用する構想を今検討していると承知しております。

 農林水産省におきましては、オール・ジャパンの輸出拡大の司令塔であります輸出戦略実行委員会の中に卸売市場部会を設置しまして、国際農産物等市場構想展開のための全体戦略の検討等を行うとともに、卸売市場を輸出拠点化するための支援を総合的に実施する、そういったこととしております。

 これらの取り組みを通じまして、成田市の構想の実現を図る、このための支援を充実するとともに、その成果を全国的に展開していくことによりまして、日本の農林水産物の輸出拡大につなげていきたい、かように考えている次第でございます。

村岡委員 成田も、ぜひ、空港を最大限活用して、日本の農産物を世界に売っていただきたいと思うんですけれども、これは港もあると思うんです。地方空港も、農産物に近い空港で、それをアジア向けであったりいろいろなところにやっていただきたい、こう思っています、港もそういう形で。それは、大臣、これからも進めていくのでしょうか。

林国務大臣 やはり港も含めて、まあ、空港も空の港と書くわけでございますから、しっかりと対応していきたいと思いますが、やはり空輸の方が到達距離というのですかね、生鮮の場合は特に、長くなるというような特徴もございますので、それぞれの特徴を生かして、しっかりと輸出の促進に努めていきたいと思っております。

村岡委員 昔、農道空港というのがありましたけれども、これはなかなかうまくいきませんでした。農産物を世界に輸出するという意味では、ぜひともこの戦略は進めていただきたい、こう思っています。

 その中で、今一番伸びている日本酒のことに関してお聞きしたいんです。

 フランスから日本へアルコール飲料の輸出入ということで、輸入は九億四千三百万ドル、それから、日本からフランスに送っているのは一千百八十万ドル。もちろん、これは日本酒を世界に売っていこうという中のまだまだ先駆けですから、量が少ないのはわかります。

 しかしながら、日本酒を売り出していこうというときに、やはりフランスのいろいろなワインを世界にという戦略をしっかりと見据えていないと、日本酒も、ある程度限定したところまではふえていくでしょうけれども、それ以降がなかなかふえないという状況にならないために、農林省として、どんな日本酒の売り込みのためのいろいろな対策また戦略を練っているのか、教えていただければと思います。

あべ副大臣 日本酒でございますが、やはり、海外にしっかり和食とともに広めてまいりたい、私どもこのように考えておりまして、在外公館における乾杯は日本酒で必ずするということも進めているところでございます。

 そうした中におきまして、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大に対して、国別・品目別輸出戦略、これを官民一体となって取り組んできたところでございます。

 そうした中、日本酒を、米また米加工品の一環として重要品目として位置づけておりまして、輸出拡大に向けてさまざまな取り組みを行ってまいりまして、平成二十六年の輸出額は、対前年比九%増の百十五億と過去最高となったところでございます。

 また、昨年十一月に、米、米加工品の品目別団体でございます全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会が発足したところでございまして、この協議会の日本酒の輸出拡大の取り組みを支援していくことと農林水産省としてはしているところでございます。

 なお、平成二十六年産米から、日本酒の生産増に伴う、いわゆる酒米、酒造好適米と言われるものに関しましては、生産数量目標の枠外といたしまして生産をふやせるようにするなど、後押しをしているところでございます。

 和食との組み合わせ、これだけではなく、世界各国の料理とも相性がいいということをPRしていきながら、また、日本の農村風景、このおいしい酒米が日本の農村でできているんだということも含めたブランド化の中で、日本酒の輸出を伸ばしてまいりたいと考えているところでございます。

村岡委員 大使館やそういうのが乾杯条例の中で乾杯するということは非常にいいことだと思います、秋田県も乾杯条例があるんですけれども。ただ、乾杯した後、ワインになったりビールになったりすると、乾杯の方が少ないんですよ。だから、乾杯条例というのは大切ですけれども、決してそれでふえていくとは思っておりませんので、一つのきっかけとしてはいいんですけれども、かえって、ワインが飲みたくなったり、ビールが飲みたくなったり、現実にそういう風景は何回も見ています。

 それで、日本は世界に大使館がありますけれども、大使館がしっかり農産物を売り込むということの中で、大分前にも言いましたけれども、農林省の職員の人たちもアタッシェでいろいろなところに行っていると思います。六次産業化というわけじゃないんですけれども、日本の農産物を売り込むということで、世界各国で、日本食が売れる、日本酒が売れるというところには積極的に海外に出ていただきたい、出向させていただきたいと思っているんですけれども、大臣、そういう考えはありますでしょうか。

林国務大臣 我々も、なるべく、そういうことをよくわかっている我が省の職員が海外の公館で活躍できる場をふやしていきたいと思っておりますが、よく御案内のように、定員、それから全体の中でのいろいろな割合みたいなのがございますので、外務省にもいろいろお願いしながらやっていきたいと思っておりますし、農水省職員だけではなくて、在外公館に出た方はどこの省庁の出身であっても、乾杯するだけではなくて、その後もたくさん日本酒を飲むとかいうことも含めて、しっかりと日本の農林水産物、食品のセールスマンになっていただきたい、こういうふうに思っているところでございます。

村岡委員 もちろん、官僚の方々の職員数から何からふやしていくわけにいかないので、大臣が言うように、外務省に限らず、その大使館にいる人たちは全員そういう気持ちの中で、今、日本の農産物を売ることは、そして加工食品を売ることは日本の成長につながるんだという意識をしっかり持っていただきたい。国内では大分そういう気持ちはあるんですが、やはり海外に行っちゃうと、それほど伝わっていないという感覚もありますので、しっかりと大使館の方にそれは農水大臣としてお勧め願いたい、こういうふうに思っております。

 そこで、大臣がこの五月の三日から九日にかけて、イタリア、イギリス、トルコに出張ということで、ミラノの国際博覧会日本館イベントに参加して、日本食、食文化の魅力をPRするということをお聞きいたしておりますけれども、このミラノの国際博覧会というのは、大臣にとって、日本の農産物をどういう位置づけで行かれるのか、お教え願いたいと思います。

林国務大臣 国会のお許しがいただければ、連休を活用してミラノの万博に行ってまいりたい、こういうふうに思っております。

 FBI戦略というのを掲げて、メード・フロム・ジャパン、メード・バイ・ジャパン、メード・イン・ジャパンとシナジー効果で輸出をふやしていこうということをつくってまいりました。特に、メード・バイ・ジャパンの日本食を発信するための格好の場がこのミラノ博ではないか、こういうふうに思っております。

 幸いなことにユネスコで無形文化遺産登録もしていただいて、今アンケートをとりますと、いろいろな海外の都市や国で、海外で食べたい食事のナンバーワンに日本食が位置づけられるようになってまいりましたので、この万博の場は、さらに、それを実際に食べてもらうということ等を通じて、なるほど、いろいろと聞いていたけれども、実際に食べてみると本当にすばらしいなということを、なるべく多くの方に体験をしていただきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

 日本館のレストランにも、そういったいろいろな趣向を凝らして、日本の伝統的な懐石料理、それからもう一つは、最近のカレー屋さんであったりといったような、ワンコインでこれだけのものを日本のサラリーマンは楽しんでいるんだな、こういうところもあわせてやっていただける、こういうふうに聞いておるわけでございます。

 いろいろな地方公共団体も、それぞれ、どこどこの県の日とかいうのもつくっていただいて、それぞれの特産品を出していただく。また、EU、イタリア当局とも大変にいろいろと交渉をさせていただいて、今までEUになかなか持っていけなかったものも、この博覧会限定ということで持っていけるようにというふうになっておりますので、そういう大きな発信の場にして、FBI戦略の推進に役立てていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。

村岡委員 国会の承認がありますから、国会がない前提での中で、行っていただいたときには、その博覧会の中で、何かフグとかいろいろな、普段は売れないものまであるということで、日本の本当の店頭のおいしさを売り出すということで、ぜひお願いしたいと思います。

 そのときに、一つ提案なんですけれども、時差はありますけれども、ぜひ、ネットで映像を流していただきたい。せっかく行ったときに、ただ単にテレビカメラがちょっと映して、その場面だけとか、それから新聞の記事だとか、そういうのじゃなくて、大臣には、別に新たに一人連れていかなくても、大使館でも、農林省のついていく人で、ぜひ、それはユーチューブで流していただいて、こんなことをやっているんだと。

 やはり、そういう情報を、先ほどのTPPは情報を言えないでしょうけれども、こういう情報はしっかりと流してほしいんです。同時中継で流しても、時差があっても、見る人は見ますし、そして、後でそれはアップされますので、しっかり見られるので、そういう、せっかくこの連休中に行って、ミラノ博覧会の中で、日本の農産物、加工品を売り出そうとしているのであれば、やっている姿をぜひ情報発信してほしいと思いますけれども、どうですか。

櫻庭政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの点でございますけれども、双方向のネットワークシステムを今回活用しまして、瞬時に日本国内に映像を配信する予定になっております。

 今回、先生御指摘のとおり、各自治体、団体が非常に多く参加していただいておりますので、全国津々浦々に届けられるようなネットワークシステムを今構築中でございます。

 また、ジャパン・デーとか開会式、そういったイベントにつきましては、特番とかいろいろな形で進めさせていただきたいというぐあいに考えておる次第でございます。

村岡委員 同時中継しますので、大臣は体調を整えて、おいしそうに食べていただくように、お酒も、日本酒をがんがん飲んでいただいて、お願いしたい、こういうふうに思っております。

 そこで、輸出の方の戦略はぜひ進めていただきたいので、国会の承認があれば、ミラノの部分では頑張っていただきたい、こう思っております。

 しかし一方、東日本大震災で、台湾の輸入規制だとか、いろいろな風評被害といいますか、そういうものがあります。これは、せっかく日本のすばらしい農産物を売ろうとしているのに、一方で、一つの国だけというわけじゃなく、一つが出れば、これは風評被害ですから、広がっていきます。これに対して、どういった対策をとって風評被害を防いでいくのか、農林省としてどういうふうに取り組んでいるか、お教え願いたいと思います。

櫻庭政府参考人 委員御指摘の点は、今般の台湾の輸入規制強化の点というぐあいに思っております。

 御案内のとおり、台湾は、平成二十三年三月の震災、原発事故に伴いまして、五県、福島県、茨城県、群馬県、栃木県、千葉県の全ての食品を輸入停止しているところでございます。

 そういった中、本年三月二十五日に、台湾の立法院において決議がされました。輸入規制強化の決議でございます。これを受けて、今月の十五日に、その正式公告が行われ、三十日後に施行するということでございます。

 内容は、現在の五県に加えて、幾つかの産品、幾つかの県の放射能検査の検査証明書、それから、五県以外の四十二都道府県の全ての食品につきまして産地証明書をつけるなどの非常に厳しい規制強化でございます。

 しかしながら、この輸入規制強化につきましては、対象地域、品目の選定の理由につきまして、台湾側から、科学的なデータの提供や、あるいはWTO・SPS協定上の明確な根拠を示さず、一方的になされたものであるというぐあいに認識しております。

 このように、台湾の輸入規制強化は非常に不適切であると認識しておりまして、実は先週十七日金曜日に、大臣の御指示により、台湾当局と、私が出張してきたところでございます。その中で、この規制強化の撤回を強く申し入れるとともに、輸入規制強化の根拠となる科学的なデータやリスク評価の提供を強く要請したところでございます。

 今後、台湾当局のデータの提供があれば、それを詳しく分析しつつ、その措置が施行されるまで、余り時間がないものですから、迅速かつ適切な対応をしてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。

村岡委員 大臣、これは非常に、輸出戦略とともに、台湾というのは、香港、アメリカ、台湾と、三位になる農産物の輸出国です。ここが、このような風評被害の中で、日本の農産物に対していろいろな規制がかかる。これは、日本の今までの成長戦略の中の海外に輸出するというのが根本から崩れますので、農林省の方も頑張っていらっしゃるでしょうけれども、ここは大臣がしっかりと台湾に説明する、これは大切なことだと思っていますけれども、その御認識をお願いします。

林国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

 今回は、特に産地偽装問題というものもあって、こういう状況になっていることもあるわけでございますが、いずれにしても、台湾は大事な輸出相手先でございますので、しっかりと、そういう視点でもって対応してまいりたいと思っております。

村岡委員 ぜひとも、ここは本当に重要なことだ。連休中、一日ぐらいは台湾に行くぐらいの気持ちで台湾には接しなきゃいけない、大臣が行けなければ副大臣でも。やはり政治家が、この問題は大事だという認識をしっかり台湾に説明するためにも、私は必要なことだと思うので、それをちょっと検討してみていただければ、こう思います。

 もう時間が来ましたので終わりますけれども、もう一度お願いしますが、ぜひともTPPは内閣との連合審査を委員長に改めてお願いして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、斉藤和子君。

斉藤(和)委員 日本共産党の斉藤和子です。

 TPPの問題について質問をさせていただきます。

 先ほどからありましたけれども、十九日、二十日に行われた日米の閣僚協議で、アメリカ政府は日本に対して米の別枠輸入二十一万五千トンを要求し、日本政府は五万トンの別枠輸入を認めているというような報道がされています。その点で、どのような日米閣僚協議だったのかを内閣官房の方からお答えいただければと思うんです。

澁谷政府参考人 先ほど西村副大臣からもお話をされたかと思いますが、十九日の夜から二十一日の未明まで、甘利大臣とアメリカのフロマン通商代表との間で、今お話がありました、米だけではありませんが、米を含む農産品、それから自動車の問題について、これまでの事務レベルでの協議を踏まえて、これは閣僚間で延べ二十時間、しかも、その多くの時間が甘利大臣とフロマン代表との一対一の協議に割かれて、厳しい協議を行ったところでございます。

 大臣同士で協議をしている間も、並行して事務レベル協議を断続的に行う、そういう形で行われたところでございます。

 二国間の距離は相当狭まったわけでありますけれども、米の問題を含む農産品、さらに自動車については依然として課題が残っておりまして、合意までには努力を要するということでございます。

 早速、昨日から事務レベルでの作業を引き続き継続しているところでございまして、閣僚での協議の内容も踏まえまして、事務レベルでの作業を継続しながら、交渉に全力を尽くす、こういうことでございます。

斉藤(和)委員 安倍首相自身も九合目まで来たというふうに話されていたり、今もありましたとおり、二国間の距離は相当狭まったというふうに言われています。まだ引き続き協議が必要な部分もあるということなんですが、何が狭まったのかというところで、これがもし報道で言われているとおり米の問題だとしたら、私は大問題だというふうに思うんです。

 日本の米はこの間ずっと余っていて、それが要因になって米価が暴落しているということは繰り返しこの委員会でも言われてきました。それに加えて、五万トンをさらに別枠で輸入する。今現在ミニマムアクセス米は既に七十七万トン入ってきているわけで、これと合わせれば、八十二万トン、さらに日本に米が輸入されるということになります。

 TPPは、当たり前のことですが、日本とアメリカだけではなくて、十二カ国がかかわる問題です。アメリカ以外にも、既にオーストラリアやベトナムなどからも、アメリカとの別枠輸入を合意すれば、それと同規模の輸入枠を求められる可能性は十分あるわけで、それも含めて全参加国から輸入枠を十万トンという限定にとどめてやるかというような報道もされているわけです。

 これ以上の輸入というのは、ただでさえ米価暴落の中で生産地は大変な状態になっているわけで、それをさらにひどい状況に追い込む、これは避けられないというふうに思います。

 仮に、米価暴落を回避するために、先ほどもありましたが、五万トンを備蓄に回せば、財政負担はさらに百億という割合でふえていきます。今のミニマムアクセス米でも財政負担が二千七百二十三億円という、この負担がさらに膨れ上がることになる。米の生産現場が立ち行かなくなるだけではなくて、国民の負担自体もさらにふえることになると思うんです。

 このことについて、林大臣はどう認識をされていらっしゃるでしょうか。

林国務大臣 TPP交渉に当たりましては、米が国民の主食でありまして、また、最も重要な基幹的な農作物である、こういう認識のもとで慎重に交渉を進めておりまして、また、全体をパッケージで交渉しておるために、何ら確定をしているものはないということでございます。

 先ほど内閣官房からも御答弁がありましたように、米の問題も含めて、依然として難しい課題が残っておりまして、今後も厳しい交渉が続くと承知しております。

 引き続き、農林水産委員会決議が守られたというふうに評価をいただけるよう、政府一体となって全力を尽くす考えでやっていきたいと思っております。

斉藤(和)委員 非常に慎重にというお話がありましたけれども、今でさえ米の消費量は、繰り返し大臣もおっしゃっていますが、年間八万トンずつ減っている。こうした状況の中で、ただでさえ余っている米をあえて海外から五万トン輸入する。アメリカからの要求は二十一万五千トンとも言われているわけですから、さらなる輸入拡大が米価の暴落を招くということは、もう手にとるようにわかる。

 こういう状況を、大臣は、もう一度になりますが、米の輸入の枠がどうかということだけではなくて、さらなる輸入をふやすことが米の需給にどう影響するというふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、まさに、今委員が御指摘のように、米は国民の主食でございます。また、米の政策の議論も、この委員会でもたびたび行わせていただいておりますような状況でございます。そのことも含めて、重要な基幹的農作物だ、こういうふうな認識をしておりますので、慎重に交渉を進めていきたい、こういうふうに考えております。

斉藤(和)委員 輸入することによって米の需給にどう影響するかというのは残念ながらお答えしていただけませんでしたけれども、米以外にも、既に、牛肉の関税を現在の三八・五%から十年間で一〇%に引き下げる、また豚肉の関税では、差額関税制度をなくして、今キロ四百八十二円相当の関税を五十円まで下げるという話まで出ています。これらの関税引き下げで、日本の畜産はさらなる打撃を受けることは目に見えています。それに加えて、最低でも五万トンと言われる米の別枠輸入がある。

 これはもう明確に国会決議に反している内容だと思いますが、これでも大臣は国会決議が守られたと評価される内容だというふうに思われていらっしゃるでしょうか。

林国務大臣 報道は私も承知しておりますが、交渉の具体的な中身については、私からは申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

 認識は先ほど米についても申し上げたとおりでございますが、まさに、衆参両院の決議が守られたという評価をいただけるような政府一体となった交渉、これをしていきたいと思っております。

斉藤(和)委員 例えば十九日には、日本の養豚協会の生産者の方が、都内で、TPPで関税を引き下げるならもう壊滅だと街頭宣伝をされています。

 日本養豚協会は、昨年十月にもアメリカのビルザック農務長官とフロマン米国通商代表に書簡を送っています。その中で、差額関税制度の国境措置を撤廃すると、我が国の養豚産業は壊滅に追い込まれると指摘をしています。三月十九日の記者会見でも、関税が大幅に引き下げられれば、国内の生産者が壊滅的な打撃を受けるというふうに懸念も表明されています。

 こうした国内の養豚業者の皆さんの声を、大臣はどのように受けとめられますか。

林国務大臣 私は、党に戻っておりました間も、党の農林水産戦略調査会長ということでございまして、その立場で、たしか今先生からお話のあった養豚協会の皆様の御要請というのもいただいたというふうに記憶をしておるわけでございます。

 そういう声もしっかりと踏まえて、米の問題も含めて依然としてと申し上げておりますが、難しい課題が残っておりますので、しっかりと交渉に当たってまいりたいと思っております。

斉藤(和)委員 養豚農家の方からちょっとお話をお聞きしたんですけれども、今普通の豚肉を生産、要は安価で、通常やる豚肉ではもう本当に立ち行かない、それが、さらに四百円以上の関税が引き下げられれば、もう壊滅することは目に見えている、だから、養豚農家の中では高級品を扱う、そういう農家が頑張っているんだという話をお聞きしました。

 本当に、TPPによって関税を撤廃すれば、国内に残る養豚、豚肉はもう高級品だけで、格差と貧困が広がるもとで多くの国民が日本の豚肉を手にできないような状況を生み出す、そういう可能性もあるということをぜひ指摘しておきたいというふうに思っております。

 先ほどもありましたけれども、TPAの法案の問題なんですが、そもそも、先ほど大臣おっしゃいましたとおり、条約交渉権、通商権限は、日本は内閣が持っておりますが、アメリカは議会にあります。そのために、アメリカ議会が、政府に対して一定の手続などを義務づけつつ、一定期限までに政府が交渉、署名した通商協定について、議会が協定内容の個々の修正をせず、九十日以内に審議によって締結を一括して承認するか不承認とするかのみを決することを定めたのがいわゆるTPA法案だと思うんです。これが議会に出された。それが成立するのかどうかという見通しも立っていないもとで、日米閣僚協議を進めること自身、私は問題だと思うんですけれども、これは外務省にお聞きします。

 このTPA法案は、昨年、二〇一四年にも出されていますが、廃案になっています。この経過と理由、そしてまた、今回出された二〇一五年のTPA法案と二〇一四年の法案の違い、特に情報公開の部分と除外の規定について変わった点について御説明ください。

宇山政府参考人 御説明いたします。

 まず、委員御指摘の二〇一四年に米国議会に提出されたTPA法案、貿易促進権限法案でございますけれども、これは二〇一四年一月に議会に提出をされまして、その後、アメリカ議会上院の財政委員会におきまして公聴会が実施をされております。ただし、その後、二〇一五年、本年の一月三日にアメリカの議会期が終了いたしておりますが、それをもって同法案が廃案となったというふうに承知をしております。

 その次に、御質問のございました議会に対する情報公開でございますけれども、二〇一五年法案、このたびの法案におきまして、二〇一四年法案同様、通商協定の交渉の経緯において、米国通商代表は、交渉目標等に関し、要求があれば、全ての議員との面談に応じなければならず、秘密なものも含め、交渉関連文書へのアクセスを提供しなければならない旨の規定があるというふうに承知をしております。

 そして、今回の二〇一五年法案におきましては、適当な場合には、議員に加えて、適切なセキュリティークリアランスを得たスタッフについても交渉関連文書へのアクセスが可能になったというふうに承知をしております。

 国民に対する情報公開に関しましては、大統領が、通商協定署名六十日前までに、協定テキストを米国通商代表部のウエブサイトで公開する旨の規定が二〇一五年法案で新設されたというふうに承知をしております。

 最後に、TPAの手続否認決議に関連する御質問でございますけれども、二〇一五年提出のTPA法案におきましては、二〇一四年提出のTPA法案同様、両院いずれかの議員の提案により、上院または下院の一方が、一定の理由、例えば大統領が議会への通知または協議を怠った、または拒否した、あるいは協定が本法律の目的、政策、優先事項及び目標を達成することに進展を見なかった、こういった理由をもちまして、通商協定の実施法案の審議に迅速な審理手続を適用しない旨の決議、手続否認決議をし、その後六十日以内に他の院がこれに同意した場合には、迅速な審理手続が審議に適用されないということになる旨の規定があるというふうに承知をしております。

 これに加えまして、今回の二〇一五年提出のTPA法案におきましては、上院財政委員会または下院歳入委員会のいずれかが、先ほど述べましたような場合に該当するなどとして、迅速な審理手続を審議に適用しない旨の決議、手続否認決議をし、同決議がなされた院の本会議においてそれが採択された場合に、その院における審議に迅速な審理手続が適用されないこととなるという旨の規定があるというふうに承知をしております。

斉藤(和)委員 ありがとうございます。

 つまり、二〇一五年のTPA法案には、合意署名の六十日前に条文全文をインターネットで掲載することを義務づけました。適当な人にはその前にもアクセスできるというのは先ほどあったとおりです。

 さらに、私はこれは非常に重要だと思うのは、二〇一四年は上院と下院の両方が採択が必要、一定の理由があって適用できないというふうになったらこのTPAから除外されるという話だったんですが、二〇一五年は、どちらか一方がこの拒否の決議を行えばTPAが適用されなくなるという大きな変更が行われています。

 要するに、議会からの圧力によって、本来ファストトラックと言われるように、議会は個々の修正ができず、イエスかノーかしか言えないというふうになっているものが、既に今提出されているTPA法案、これが仮に成立したとしても、その内容に対して、一定の理由や先ほどもあった目標の達成がない場合、議会が納得しなければ、上院もしくは下院のどちらかが拒否の決議をすればTPAは適用されなくなり、アメリカ議会がTPPの中身について修正できるということになります。

 これでは、幾ら日本がアメリカ政府と仮に米の別枠輸入五万トンでぎりぎりTPPに合意したんだというふうに言ったとしても、アメリカ側は既に二十一万五千トンを要求しているわけで、議会が納得しなければ、議会によって修正される条件が既につくられるというふうにもとれます。

 TPPに参加している、日本を含め十一の国々もアメリカの議会のTPA法案の動向を注視しているわけで、やはり、こうした状況が既に組まれているTPAの法案に基づいたTPPというのは、アメリカの思惑によって幾らでも変わる条件が残されている。そうしたものからは私は撤退すべきだということを強く訴えたいというふうに思います。

 次に、TPPの情報公開の問題も私は重要だと思うんですが、二〇一四年TPAでも情報公開条項があり、先ほどもありました二〇一五年法案でもあるということです。それだけではなくて、USTRのホームページでも議員に対するテキスト公開が明記をされている、これも先ほどありました。

 日本政府が議員に対してテキストを明らかにしないことは、私は極めて問題だと思うんです。甘利大臣は、米国政府の公開内容について、四月八日の参議院予算委員会での我が党の紙智子議員の質問に対して、アメリカの議員への情報提供に係る実際の運用について、引き続き精査していくというふうに答えていらっしゃいます。精査された調査の結果というのはいかがでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国といたしましては、アメリカを含む各国と、情報提供やあるいは対外的なコミュニケーションの手法について、よく情報交換をしているところでございます。

 今回も、アメリカを含む全ての参加国に対して、議員へのテキストの開示を含む情報開示の状況について、いろいろと照会を行っているところでございますが、米国政府からは、先ほどお話もあったかと思いますが、USTRのホームページに記載されている公式な内容以上のことを対外的に引用しないでほしいという要請を受けているところでございます。他の国も同様でございます。したがって、米国や各国から公式に聞いている以上の内容についてお話しすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で申し上げますと、秘密保持契約の趣旨である交渉の具体的内容が外部に漏れないようにという点は、米国を含む各国においてかたく守られているものと理解をしているところでございます。

 一方で、米国を含む各国における透明性を高めるためのさまざまな取り組みについても、改めて把握をしたところでございます。こうしたことを踏まえながら、我が国においても、透明性を高めるため、さらに工夫すべく努力していきたいと思っております。

斉藤(和)委員 透明性を高めるためというお話がありましたけれども、やはりしっかりと、TPPという中身は、農産物だけではなくて、多岐にわたります。それだけ国民生活に大きな影響を与えるものだからこそ、アメリカ議会からも情報開示を繰り返し求める声が上がり、TPA法案にも盛り込まれている、これは当然のことだと思うんです。

 日本政府は情報をひた隠しにし、国会決議にも明確に反するような内容が次々報道されているもとで、私はこんなにも国会決議というのは軽いものなのかというふうに非常に疑問に思います。国会決議を軽んじるようなTPP交渉からは私はもう撤退すべきだというふうに繰り返し求めて、最後の質問をしたいと思います。

 前回、農業所得倍増の問題で、水産物の一兆円の輸出を農業所得と計算するのは水増しだという私の指摘に対して、大臣の方から、最終的な関連所得には、原材料である水産物にかかわる漁業の生産所得、これは含まれていないという答弁がありました。

 水産物原料は除いても、輸出にかかわる漁協などの所得は漁村に含まれているものであり、それを農村所得というふうに含めることは、やはり私は水増しだと思うんです。さらに、農家の人が水産物の加工施設で働く、これは率直に言ってレアなケースだと思います。一般化は決してできるものではないと思います。農村所得に水産物輸出に伴う所得を加えるということは、私は問題だと思うんです。

 農産物の輸出を除外して計算し直すべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

林国務大臣 最後のところは、水産物のところを除外してというお尋ねだ、こういうふうに思いますが……(斉藤(和)委員「はい、そうです」と呼ぶ)

 繰り返しになるかもしれませんけれども、今まさに御指摘いただいたように、農村地域の関連所得ということで試算をしておりまして、推計された市場規模から水産物等の中間投入額を除くことによって関連所得を算出しているので、原材料である水産物に係る漁業の生産所得額は含まれていないということであります。

 まさに、今御指摘のあったところは、今度は、六次産業化事業体の関連所得を算出する際に、水産物の輸出による所得を含めているのは、農業者が近隣にある漁協等の輸出向けの水産物の加工施設で働くというような場合も、今レアとおっしゃいましたけれども、ないわけではないわけでございまして、こういうところも、就業の場の創出ということで、農業者、農村の所得につなげていきたいということで、地域全体で雇用や所得を伸ばしていきまして農山漁村を活性化していく、こういうことでございますので、その限りにおいて、水産物も含めて試算を行うことは、我々は妥当なものだ、こういうふうに考えておるところでございます。

斉藤(和)委員 農山漁村の所得倍増ということで、関連所得をふやすということも大事だとは思います。しかし、日本の国土を守り、食料を守るという観点から考えたら、やはり、農家の皆さんの所得をいかに上げて、農業生産をしっかり継続的にやっていける、後継者も育っていく、そういう状況をつくっていくことだというふうに思っています。

 その点からいって、TPPは本当に私は撤退すべきだというふうに最後に求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

江藤委員長 次に、内閣提出、参議院送付、競馬法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。農林水産大臣林芳正君。

    ―――――――――――――

 競馬法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

林国務大臣 競馬法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。

 我が国の競走馬生産者による馬の改良増殖の取り組みや競馬の国際化の進展により、国内競走馬が海外競馬の競走に出走し、すぐれた成績をおさめることが多くなっており、国民の関心が高まっております。しかしながら、現行の競馬法では、海外競馬の競走についての勝馬投票に関する規定がないため、その勝馬投票券を国内で発売することはできず、勝馬投票券の売り上げを原資とした畜産振興への貢献ができないばかりか、有力馬が不在となった国内の競馬では、勝馬投票券の売り上げの減少も懸念される状況となっており、畜産振興という競馬の目的に十分に対応できておりません。

 競馬をめぐるこのような状況に鑑み、特定の海外競馬の競走について、日本中央競馬会等が国内で勝馬投票券を発売することができることとする等の措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、海外競馬についての勝馬投票券の発売であります。

 競馬の公正を確保するための措置が講じられている海外競馬の競走のうち、農林水産大臣が指定したものについて、日本中央競馬会または地方競馬主催者は、あらかじめ、農林水産大臣の認可を受けて、勝馬投票券を発売することができることとしております。また、この改正に伴い、競馬法の趣旨を明確化するとともに、勝馬投票券の購入制限等の規定について、所要の改正を行うこととしております。

 第二に、競馬の監督体制の整備であります。

 地方競馬の監督を円滑かつ合理的に行うため、農林水産大臣の権限の一部を地方農政局長または北海道農政事務所長に委任できることとしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。

江藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明二十三日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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