衆議院

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第11号 平成27年5月21日(木曜日)

会議録本文へ
平成二十七年五月二十一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 江藤  拓君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 宮腰 光寛君 理事 吉川 貴盛君

   理事 渡辺 孝一君 理事 玉木雄一郎君

   理事 松木けんこう君 理事 石田 祝稔君

      井野 俊郎君    伊東 良孝君

      伊藤信太郎君    池田 道孝君

      今枝宗一郎君    勝沼 栄明君

      工藤 彰三君    瀬戸 隆一君

      武井 俊輔君    武部  新君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      西川 公也君    橋本 英教君

      古川  康君    前川  恵君

      宮路 拓馬君    森山  裕君

      簗  和生君    山本  拓君

      若狭  勝君    金子 恵美君

      岸本 周平君    小山 展弘君

      佐々木隆博君    福島 伸享君

      井出 庸生君    村岡 敏英君

      稲津  久君    佐藤 英道君

      斉藤 和子君    畠山 和也君

      仲里 利信君

    …………………………………

   議員           岸本 周平君

   議員           玉木雄一郎君

   農林水産大臣       林  芳正君

   農林水産副大臣      小泉 昭男君

   農林水産大臣政務官    佐藤 英道君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  林  伴子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  秋山 公城君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  松島 浩道君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  奥原 正明君

   農林水産委員会専門員   奥井 啓史君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     工藤 彰三君

  古川  康君     若狭  勝君

同日

 辞任         補欠選任

  工藤 彰三君     瀬戸 隆一君

  若狭  勝君     古川  康君

    ―――――――――――――

五月二十日

 農業者戸別所得補償法案(岸本周平君外五名提出、衆法第一三号)

 農地・水等共同活動の促進に関する法律案(岸本周平君外五名提出、衆法第一四号)

 中山間地域その他の条件不利地域における農業生産活動の継続の促進に関する法律案(岸本周平君外五名提出、衆法第一五号)

 環境保全型農業の促進を図るための交付金の交付に関する法律案(岸本周平君外五名提出、衆法第一六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 委員派遣承認申請に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第七一号)

 農業協同組合法の一部を改正する法律案(岸本周平君外三名提出、衆法第二一号)


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     ――――◇―――――

江藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案及び岸本周平君外三名提出、農業協同組合法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省生産局長松島浩道君、経営局長奥原正明君、内閣官房内閣参事官林伴子君及び内閣参事官秋山公城君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 自由民主党の齋藤健です。

 いよいよ農協法等の改正案の審議が始まるということで、大事な法案でありますので、濃密かつスピーディーに審議が進むことを念じながら、質問に入っていきたいと思います。

 農協法等の改正案の質問、先頭バッターですので、まずはその基本的なところを伺いながら、質疑を進めていきたいと思っております。

 今回の農協改革は、六十年ぶりの農協改革だというふうに言われております。まず初めに、この六十年間、戦後農協が果たしてきた役割、貢献について、まず議論の出発点として、政府としてどう認識をされているか。その点についてお伺いをしたいと思います。

林国務大臣 昭和二十二年に農協法が制定されて以降、食料の需給状況が不足の基調にあったということでございますので、農協が、小規模で多数の農業者から集荷して市場などに出荷するといういわゆる共同販売を行うことによって、ピーク時には、これは昭和六十年でございますが、その取扱高が農業総産出額の約六割を占めるなど、農産物流通において大きな役割を果たしてきた、これがまず一つあると思います。

 それから、生産資材の共同購入についても、これも同じ昭和六十年でございますが、ピーク時、農薬では出荷金額の約八割を占めていたということでございまして、組合員に対する生産資材の供給でも大きな役割を果たしてきた、こういうふうに考えております。

 また、中央会制度についても、単位農協が経営的に困難な状況にあった昭和二十九年に、行政にかわって農協の経営を指導する、そのことによって農協組織を再建するということを目的として導入されたわけですが、中央会制度が導入された当時一万を超えていた地域農協が現在約七百に減少してきておりまして、合併の促進等によって地域農協の経営基盤の強化に成果を上げてきたということで、それぞれの農協が自立できる環境を整備することに貢献をしてきたもの、こういうふうに考えております。

齋藤(健)委員 戦後、農地解放がありまして小規模な農家がたくさん誕生した。当時、日本は食糧難にあって、どうやってそれを乗り越えていくか。農協も一万を超える数があって、経営も不安定な状況にあった。そういう中で、昭和二十九年に中央会制度をつくって、ここまで日本の農業を引っ張ってきた農協の役割というのは、私は大変大きな貢献をされてきたのではないかというふうに考えております。

 そして、それほど大きな貢献をしてきた農協制度でありますけれども、今、それをなぜ六十年ぶりに大きく変えていこうということであるのか、その基本的なところをまず質疑の冒頭にお伺いしたいと思います。

林国務大臣 先ほど申し上げた農協法が制定された昭和二十二年当時と比べますと、現在は、まず食料が過剰基調である、こういうことで、消費者、実需者のニーズに対応した販売努力が不可欠になってくる。また、国内の食料マーケット、これは残念ながら人口が減少している中で、国内の食料マーケットは縮小に向かう、こういうことでございまして、六次産業化をやって川下の付加価値を取り込んだり、また、伸び行く海外のマーケットへの輸出ということを視野に入れなければままならなくなってきているということでございます。

 それからもう一つは、農業者も、大規模な担い手農業者と小規模な兼業農家に階層分化をしてきておりまして、そういった意味で組合員のニーズも多様化をしてきている、こういうことでございまして、こういう多様化してきたニーズに応えた農協の運営を行う、こういう必要が出てきているということでございます。

 こういう状況を受けて、農協の農産物販売、生産資材購入における取り扱いのシェアというのは低下傾向にございまして、農業者、特に担い手農業者のニーズに十分に応え切れていると言いがたい状況になってきております。

 中央会についても、先ほど申し上げましたように、単位農協が、中央会の制度発足時の一万を超えていたものから七百程度に減少するということと、それから一県一JAというのも増加してきております。それから、JAバンク法に基づいて、信用事業については農林中金に指導権限が与えられている、こういう状況も出てきているということで、制度発足時と状況が大きく変化をしてきた、こういうことでございます。

 こうした状況の変化を踏まえまして、今回の改革は、地域農協が、農産物販売など農業者の所得向上を図る上で重要な業務を刷新して、農業者、なかんずく担い手の皆さんと力を合わせて全力投球をできるような環境を整備する必要がある、こういうふうに考えておるわけでございますので、地方分権の発想に立って、まず地域農協が、それぞれの地域の特性を生かして、創意工夫をしながら、自由に経済活動を行いまして、農産物の有利販売などで農業者の所得向上に全力投球できるようにする。そして、連合会や中央会、これは今申し上げた地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていく、こういう基本的な考え方に立っております。

 こうした改革によりまして、農産物の販売力強化に全力を挙げていくような環境を整備することで、地域農協には、農業者のメリットを大きくするように、創意工夫して取り組んでいただくことを期待しているところでございます。

齋藤(健)委員 ありがとうございます。

 私も、この議論を党の中でやる中で、大変危機感を感じながら議論に参画をしてまいりました。一番大きな要因は、いろいろあるんでしょうけれども、私は、これから日本の人口が残念ながら減少を続けていかざるを得ないというところに、日本の農業がどう対応していくかというところが非常に大きな曲がり角に来ているんだろうと思います。

 今は、まだ人口減少は始まったばかりで、毎年二十数万人ペースで人口が減っているわけでありますけれども、やがて、これは毎年八十万人とか百万人というペースで人口が減っていくわけであります。百万人といいますと、岸本さんの和歌山県一県分の人口が毎年日本列島から消滅をしていくというような、そういうマグニチュードを持った人口減少をもうすぐ目前に控えているわけであります。

 残念ながら、日本の農業の生産というのは国内消費向けが中心でありますので、人口が減れば、それに応じて売上額が当然減っていくということであります。つまり、今までと同じようなやり方をしていたのでは間違いなくじり貧になっていくというのが、今、日本の農業の置かれた厳しい現状だろうというふうに思っております。

 こういう状況に対応していくには、細かく言えばいろいろありますけれども、大きく言えば二つの方向で対応していくしかない。一つは、国内のマーケットが縮小するのであれば、海外のマーケットをとりにいくということが大きな方向として一つであります。そして、もう一つは、生産中心であった日本の農業が、これから伸びていくと予想される流通ですとか加工ですとか、下流に進出をすることによって、そこで上がる付加価値を生産分野に取り込んでいくという方向。

 この二つの方向で日本の農業の生産サイドを何とかこの厳しい状況に対応していく、この大きな二つの方向なんだろうと私は思っております。そして、幸いなことに、この流通、加工分野の伸び代というものは、私は非常に大きな可能性があると思います。もちろん、輸出も大きな可能性があると思います。

 今やらなくてはいけないことは、この流通、加工という今までどちらかというと余りおつき合いのなかった分野にどうやって生産サイドが出ていって、そしてその付加価値を取り込んでいくかという努力、この努力をいかにうまく進めることができるかどうかの一点に日本の農業の将来がかかっているんじゃないかと思うほど、この分野の充実というのが大事だと思っております。

 ところが、一方で、誰もが同じことを考えるわけでありまして、流通、加工サイドの人たちも、この分野が伸びるということを認識しているものですから、逆に、この分野から生産分野にどんどん進出をしてくるということが現状起こっているわけであります。つまり、この伸び行く分野を誰がとっていくかということの競争が始まってきているということであります。

 したがいまして、私は、この農業の生産サイドからそういう付加価値をとるような大きな力強い動きをいかに起こしていくかというのが、今後の日本の農業を支えていく上で一番大きな論点なんだろうというふうに思っております。そういう意味では、伸び行く分野の競争が始まっている中で、その付加価値を生産サイドに取り込んでいくという競争を戦って勝ち残っていけるしたたかな農協というものをこれからつくっていけるかどうかが、これからの日本の農業を支えていくことができるかどうかは、この一点にかかっていると言っても過言ではないと私は思っております。

 そういう意味では、農協の販売力をいかにして強化していくか。それから、今まで余りおつき合いがなかった流通、加工の分野の人たちと連携をしながら、しかし、とるものはとっていくという強い農協になっていく、その連携力。それから、最後は経済事業に、今赤字だからということではありますけれども、経済事業にもっと集中をしていって、そして付加価値を高めていくということで、販売力とか、連携力とか、それから経済事業への集中力、こういったものがこれからの農協が果たすべき重要な役割になっていくんだろうと思っております。

 そういう意味では、こういった三つのポイントに今回の法改正がどう応えているのかという点について、お伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 ただいま先生の方から、農協を発展させていくための三つのポイントが指摘されたかと思います。

 まず、一点目の地域農協の販売力の強化でございます。

 この販売力の強化に向けて積極的な経済活動ができるように、今回の農協改正法案の中におきましては、一つは、農協の経営目的を明確化するということで、農協は農業者の所得の増大に最大限配慮をするということ、それから、農産物の販売などを的確に行うことによって、利益を上げて、事業の成長発展のための投資ですとか農業者に利用分量配当で還元していく、こういった規定を一つ置いております。

 もう一つは、責任ある経営体制を確立するということも必要でございますので、理事の過半数を、原則として、認定農業者や農産物販売のプロ等とする、こういう規定も置いております。

 それから、中央会につきましては、地域農協の創意工夫による自由な販売活動を促すという観点におきまして、自律的な新たな制度に移行するということにしているところでございます。

 それから、二つ目のポイント、経済界との連携でございます。

 これは地域農協のレベルでも当然必要でございますが、特に全農ですとか経済連、ここにつきましては、農業、食品産業の発展に資する経済活動を経済界と連携をして積極的に行っていただく、これを促していきますとともに、経済界との連携を迅速かつ自由に展開する上で必要な場合には、農協出資の株式会社に転換することができる、こういった規定も置いているところでございます。

 さらに、経済事業のところに集中するという観点でございますけれども、地域農協の経営における金融事業の負担ですとかリスクをできるだけ減らして、人的な資源を経済事業にシフトできるようにするという観点で、既にJAバンク法の中で代理店方式というのが書いてございますけれども、これを積極的に活用するということで、今回の改正案におきましても所要の規定の整備を行っているところでございます。

 こういった改革によりまして、販売力の強化、経済界との連携、それから経済事業に軸足を置いた事業運営、こういったものに努めていきたいと考えております。

齋藤(健)委員 日本の農業が生産サイドの所得を維持向上させていくために、農協が、販売力、連携力、経済事業への集中力、こういうものを高めていかなくちゃいけないという点について、今法案でどう対応しているかお伺いをいたしました。

 本件につきましては、自民党の中でも大議論してきたテーマであります。ただ、党内以外のところからいろいろな指摘をいただいて、厳しい状況の中で、それへの対応も我々はやってきたわけでありまして、その一つに、農協の信用事業を切り離せという議論がありました。

 先ほど申し上げましたように、日本の農業はこれから厳しい状況になる中で、農協は経済事業に集中すべきである、そうしないとなかなかこれは乗り越えていけない。そのために、切り離せという議論が随分ありました。

 我々は、経済事業自身がもう信用事業なくしてはやっていけない現状で、それを今切り離せと言われるのは非現実的であり、むしろ経済事業をシュリンクさせるものであるという観点から、一貫して反対をしてきておりました。

 ただ、議論の中で一考を要する点も確かにあったように思います。

 それはどういう点かと申しますと、そもそも信用事業でもうけたお金を、経済事業が赤字だということで恒常的につぎ込む、今の農協は、全体として見れば、そういう構造にあるわけであります。やはりこの構造は、信用事業で上がった利益を、普通はほかの分野で使ってはいけないというのが、ファイアウオールを設けてなんというのが金融の世界の常識なんですが、そうなっていない。これはおかしいのではないかという議論があったわけであります。

 そして一方で、准組合員の人たちがふえている。御案内のように、准組合員の人は農業者以外の方であります。つまり、突き詰めて言えば、農業者以外の方との信用事業で上がった利益を農業者の人に恒常的につぎ込む、こういう構図になっているのはいかがなものかという議論がありました。

 そしてその過程で、こういう議論がありました。

 つまり、今の農協監査士による監査を、農業以外の人たちがふえてきている現状の中で、そこで上がった利益を農家に、農業につぎ込むのであれば、監査はしっかり、第三者の誰が見ても、ああ、ちゃんとやっているなという監査にしなければいけないんじゃないか。公認会計士による監査にすべきじゃないか。もし准組合員の利益を恒常的に経済事業につぎ込むのであれば、きちんとやれという議論がありました。

 そして、今のまま農協監査士の中でやるのであれば、やはり農業以外の人たちで上がった利益を恒常的につぎ込むというところに手を入れなければいけない。つまり、准組合員問題を直していかなくちゃいけないんじゃないか、そういうリンケージがあるという議論がありました。

 私は、現実を考えれば、この議論に最終的にくみするものではありませんが、ただ、一考を要する指摘であったなというふうには思っております。

 准組合員問題と監査が連携しているのではないかという指摘をずっとされてきた点について、この法案ではどのように対応されているのか、お伺いしたいと思います。

奥原政府参考人 まず、監査の問題でございますけれども、今回の農協改革の中では、全中の監査の義務づけを廃止いたしまして、公認会計士の会計監査を義務づけるということにしております。

 これは、准組合員が農業者である正組合員を上回る状況になっているということが一つございますし、それから、農協の数も現在七百農協となっておりまして、一農協の貯金量の規模も非常に大きくなっております。中には、一農協で一兆円を超えるような貯金量のところもあるということでございます。

 こういったことに鑑みまして、農協が信用事業を今後とも安定的に継続できるようにするためにはどうするかという観点で、他の金融機関と同様に公認会計士による会計監査を受ける、こういう形にすることが適当ではないかという判断をしたところでございます。

 それからもう一つ、これと関連をいたしますが、准組合員の問題でございます。

 農業者の協同組織である地域の農協は、正組合員であります農業者のメリットを拡大する、これが最優先でございますけれども、過疎化それから高齢化が進行しております農村社会において、実際上、農協が地域のインフラとしての側面を持っている、このことも事実でございます。

 そういったことを踏まえて、准組合員についてどういうことにするかという議論がなされてきたわけでございますけれども、准組合員の利用規制につきましては、これまで規制がなかったということもございまして、正組合員と准組合員の利用実態が必ずしも把握できておりません。

 それから、今回の農協改革によって、農業者の所得向上に向けた成果がどの程度出るか、これを見きわめる必要もあるということもございまして、今回の法案の中では、五年間の調査を行った上で決定をするということにしているところでございます。

齋藤(健)委員 今回の法案では、公認会計士への監査に農協の監査が移行するということでありますが、これは相当大変な作業だろうと思います。したがって、移行に当たって混乱が生じるようであれば、かえって日本の農業の発展を阻害することにもなりかねないと思っております。

 この移行について、どういう手当てを打って混乱を防止しようとしているのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

奥原政府参考人 今回の公認会計士監査への移行につきましては、円滑に行われるようにすることが極めて重要であるというふうに考えております。

 このため、今回の法案の中では、改正法の施行後三年六カ月の間をその準備のための移行期間ということでまず設定をしておりますし、それに加えまして、政府は、全中の監査に従事していた公認会計士の方々が新たに外に出して設立をする新たな監査法人、ここが円滑に業務を行えるようにすること、それから農協の方から見て公認会計士等を確実に選任できるようにすること、それからこれによって農協サイドの実質的な負担が増加しないようにすること、こういったことについて適切な配慮をするという規定を附則でもって書いているところでございます。

 さらに、公認会計士監査に移行した場合におきましても、これまで全中監査に従事をしてこられました農協監査士の方々が持っておられる農協の監査に関するノウハウ、これを活用することが有効でございますので、政府は、農協の監査士の方々につきまして、今後とも農協に関する監査の業務に従事することができるようにすること、それからこの方々が公認会計士の試験に合格した場合には、その実務の経験等を考慮して円滑に公認会計士になることができるようにすること、こういったことについても適切な配慮をするという規定を置いております。

 さらに、これに加えまして、こういった配慮が自主的にうまくできるようにという観点で、農林水産省それから金融庁といった関係行政機関と、それから日本公認会計士協会と、さらに全中によります協議の場を設けるということも法律の中に盛り込んでいるところでございます。

齋藤(健)委員 法文上の文言についてはよく理解しましたけれども、現実に大変な制度であることは間違いないと思いますので、ぜひ、現場の声をよく聞きながら、混乱なく円滑に移行できるように、我々の方からも強くお願いをしておきたいと思います。

 また、時間がなくなってきたのでまとめて聞いてしまいますが、農業委員会制度の改革も非常に大きな改革となっておりまして、とりわけ農業委員の公選制から任命制への移行につきましては多くの不安を抱える、そういう声を聞いております。

 この移行に当たりましては、確かに地域の代表者をきちんと選んでいくということも大事、それと同時に、それだけでなく、任命でもできるという、この極めて微妙なバランスの運用が本当にきちんとなされなければならない制度だと思いますので、この微妙な制度設計についてどのように考えておられるか、それが第一点。

 それから、農業生産法人改革についても、何が問題だというふうに認識をされて今回の改正に及んだのか。時間もないので、手短にお答えいただければと思います。

奥原政府参考人 まず、農業委員会の関係でございます。

 農業委員会は、農地に関する市町村の独立行政委員会でございますが、ここがきちんとした活動をしていただくことが、農地の集積、集約化におきましても重要な要素になっております。

 今回の法案では、適切な方が確実に農業委員に就任をしていただくという観点におきまして、農業委員、従来は公選制でございましたけれども、これを市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改めるということにしているところでございます。

 ただ、その際、恣意的な運用になってはいけませんので、農業委員の選出につきまして、市町村議会の同意を得るということに加えまして、あらかじめ地域からの推薦を求めたり募集を行うということ、それから推薦を受けた方あるいは募集に応募した方についての情報を整理、公表するということ、さらに、市町村長は推薦や募集の結果を尊重しなければいけないということまで規定をしているところでございます。

 こういった規定を踏まえまして、恣意的な運用にならないように、きちんとした対策を講じていきたいと考えてございます。

 それからもう一点、農業生産法人の関係でございますが、何が問題かということでございます。

 農業生産法人は、これは農地の所有ができる法人の要件を満たしたところをこういうふうに呼んでいるわけでございますけれども、農業を継続的に真剣に取り組んでいただくということを担保する上で、役員ですとか議決権につきまして一定の要件を設けております。ですが、この要件が、法人の六次産業化等の経営展開を進めていく上でネックになる場合がございます。

 法人が六次産業化に取り組む際の障害を取り除いて、法人の経営発展を推進していく、こういう観点から、役員の農作業の従事要件ですとか、議決権の要件を見直すということにしているところでございます。

 具体的には、現行では、役員の約四分の一程度の方が農作業に従事をするという要件になっておりますけれども、六次産業化を進めていきますと、当然、役員の方の中でも農作業のウエートは下がっていくことになりますので、役員等の一人以上が農作業に従事をすればいいという形に改めております。

 それからもう一つ、現行では、総議決権の四分の一以下に制限されている農業者以外の方の議決権でございますけれども、六次産業化を進めていきますと、外部からの資本調達が必要というケースも当然出てまいりますので、これにつきまして二分の一未満まで保有可能とする、こういった見直しを入れているところでございます。

齋藤(健)委員 本件につきましても、現場は大変心配をしておりますので、よく現場の声を聞きながら、制度の移行を丁寧にしていただきたい、これも強くお願いをしておきたいと思います。

 私も、この農協改革については、大変個人的に思い入れが強くございます。たまたま経済産業省で奉職を二十三年間しておりまして、いろいろな産業を担当してまいりました。その中で、やはり農業のとりわけ輸出に関しては、これほど伸び代を感じる産業も、なかなかほかの産業界ではないんじゃないかというぐらい、私は可能性を感じております。

 日本の自動車がなぜアメリカで売れるようになったか。こんなぼろ車は売れないよと言われる中で、これだけ輸出をふやしてきたのはなぜか。それは、特定の会社の名前は言いませんが、自動車会社がアメリカに行って、足を棒にして歩いて、必死で売り歩いたから売れるようになったわけであります。

 また、私の地元のしょうゆ会社のしょうゆは全米のスーパーで売られております。なぜ日本のしょうゆが売られるようになったか。これはしょうゆメーカーの社員が、足を棒にしてスーパーを歩き、そしてアメリカのスーパーの店頭でアメリカの肉を焼き、日本のしょうゆをかけて食べてもらって、それで売れるようになったわけであります。

 しょうゆメーカーや自動車メーカーは大企業ですから、そういうことを社員にやらせることはできますが、日本の農家にそれをやれと言っても無理です。では、かわりに誰がやるんでしょうか。私は、それこそ農協がその役割を担っていくべきだと思います。日本の果物や野菜を売り歩く姿をアメリカその他のスーパーで見るようになる、見られるようになるということが、これから一つの農協改革のシンボルになっていくんだろうと私は思います。

 そのためには、意識も変え、組織も変え、そして政策もそれに応じて変えていくというこの三つがそろっていって、みんなで意識をそろえて努力をしていくということが大事であり、そのための一助となるのが今回の農協改革であると私は確信をしております。

 最後に、民主党からも法案が提出されておりますので、これについて伺いたいなと思っております。

 岸本周平さんは、私が前の職場にいるときから御指導いただいて、財務省の中でも改革派の先輩として大変尊敬をしてまいりましたし、玉木雄一郎さんも、一緒に行政改革をやり、抵抗勢力と戦いながら改革を一緒にやってきた仲間でありますし、福島さんも、私の後輩で、当時は、経済産業省というのは改革派の人が多いんですけれども、その中でも先鋭な改革派でありまして、日本で初めて特区制度を導入するときに彼が一生懸命汗をかいていた姿が、今私の脳裏に焼きついているわけであります。揚げ足をとるようなことをしない、正論できちんと議論する、そして意見の対立はあっても最後は決めるという腹のある方であると常々敬意を表していたところでございます。

 そういう目で今回の民主党の法案をちょっと見てみますと、例えば、さっき申し上げた、農業にどうやって所得というか付加価値を取り込んでいくかという観点が非常に大事になっているにもかかわらず、今回の民主党さんの案では、そこがはっきりと記されていなくて、いや、むしろ、それは地域のために頑張るという条文を加えるだけになってきている。本当にそれでいいんだろうか。

 それからもう一つは、組合の運営については最大限尊重するということで、行政は余り口を出すなというような条文が入っていたり、本当にこれで、この厳しい大きな曲がり角を曲がれるような法案になっているんだろうか。

 私は、あの改革派の人たちがつくった法案にしては、本当にこれは本音でこれでいいと思っているんだろうかという疑問がどうしても頭から去らないわけであります。

 ですから、私がお伺いしたいのは、この改革案で、本当に農協がこの厳しい時代に対応できるような意識改革、組織改革ができると思っておられるのか。私は、この方々は絶対に思っていないと確信をしているんですが、本当に思っていますかということをお伺いしたい。

 それから、最後にもう一つだけ。済みません。手短に申し上げますが、政治的中立性について、皆さん方の法案に入っております。

 ただ、私がお伺いしたいのは、実は平成二十年にも、皆さんが野党のときに同じ条文を出しておりまして、当時も農協法の一部改正案を皆さんは提案されて、そこにも政治的中立性についての記述が全く同じ表現で書いてありました。野党時代に出されました。それは、ねじれておりましたので、参議院を通過いたして、衆議院では通らずに、解散・総選挙となったわけであります。

 そして、その後、皆さん方が与党になりましたが、そのときには、農協の政治的中立性、法案を出してきませんでした。そして、また野党になられたら政治的中立性を、また条文を出してこられるという経緯があるわけでありますが、なぜ政権をとっていたときにこれを出してこなかったのかという点についてお伺いをしたいと思います。

 以上です。

岸本議員 時間も来ましたので、手短にお答えをさせていただきます。

 齋藤委員、私も、最も敬愛する同僚議員の一人から御質問いただいて、大変名誉なことであると存じます。

 本当にそう思っています、答えは。

 二つだけ申し上げます。

 一つは、政府の案も、危機感を共有するという意味では、私は危機感を共有しています。ただし、少し上から目線のパターナリスティックな部分が多いのではないか。

 例えば、株式会社。これは、今の日本の制度では誰でも株式会社をつくれます。実際、私のJAわかやま、これはもう平成二十二年に株式会社をつくりまして、農地を借りて事業をしたり、農産物の販売をしたり、やれる農協は、販売もいろいろなことをやっています、株式会社をつくっています。わざわざ法律で慫慂する必要はないと思います。

 もう一つ。我々は、協同組合という点に物すごく着目しています。

 これは、ICAという組織があります。ICAの取り決めの中で、協同組合のアイデンティティーに関する宣言があります。詳細は言いませんけれども、その中に、組合の自主性を政府の間でも保つべきであるとか、地域社会の持続可能な発展に努めなければならないというようなものがあって、我々は、この国際的な協同組合をどう考えていくのかという観点から案をつくっているところであります。

 そして、最後の御質問ですけれども、与党の時代は、私どもは本当に経験不足で、今、ざんきの思いにたえないところでありますけれども、経験不足で政権担当能力が非常に少なかったということを申し上げて、お答えにかえたいと思います。

 以上です。

齋藤(健)委員 終わります。ありがとうございました。

江藤委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。

 きょうは、さきの本会議での質問に続いて、委員会による法案の審議ということで、一つは、本会議のときにもう少し具体的にお聞きしなければいけなかった点、これを委員会でお聞きしたいということと、あわせて、少し、法改正に基づく個別な案件についても、時間は短いですけれども、この中で審議を深めていきたいというふうに思っています。

 最初は、今回の農協法等の改正によって、農業の成長産業化、農家所得の向上をどう図っていくのかということについての具体性についてお伺いしたいと思うんです。

 これは本会議で質問いたしまして、そのとき、総理からの御答弁というのは、意欲のある担い手それから地域農協が力を合わせて、自由な経済活動をすることによって農家所得が向上することにつながっていくんだ、こういう答弁でした。私も全くそこはそうだなと思っています。

 では、そこを具体的にどうするのかということについて、これは今回の農協法の改正によるということも非常に大事ですけれども、やはりもう一方では、これはどこの組織でもそうですけれども、たゆまぬ改革が多分必要なんだろう。その時代、その地域、そのさまざまな環境の中において、やはり、どう生き残っていくというよりは、むしろ先に進んでいくのか、そういうことだと思うんですけれども、そこは、実は私は、大臣がこの委員会における所信表明のときに触れたことが、一つその具体性につながっていくことだろうと思っているんです。

 それは、攻めの農林水産業の実行、その取り組みとして、需要フロンティアの拡大、需要と供給をつなぐバリューチェーンの構築、生産現場の強化、ここになってくると思うんですけれども、では、さらにそこをもう少し今回のこの農協法の改正等と結び合わせて、より具体的にこのことについて触れていただきたい、お考えを示していただきたい、このように思っています。

 まず、大臣の所見を伺いたいと思います。

林国務大臣 まさに、農林水産業・地域の活力創造プランをつくらせていただいたわけですが、当初の作成作業においては、稲津先生も政務官として御参画をいただいていたわけでございます。

 需要フロンティアの拡大、それから生産現場の強化、そして、需要と供給をつなぐバリューチェーン、この三本柱をつくったわけですが、まさに、こういう政策を成果を上げていくために、こういう政策をしますという農政の改革そのものも大事ですが、それを受けとめて実行していくという主体にやはり政策の方向性を共有していただいて、政策を活用しながらやっていく、こういう環境が必要になってくるというのがこの農協改革の一つの大きな目的である、こういうふうに思っております。

 それぞれ少し具体的に申し上げますと、需要フロンティアを拡大するということであれば、やはり高機能食品、それから例えば漢方薬の原料の薬用作物、こういった新たな国内ニーズ、また介護食品等もございますが、そして、先ほどの齋藤委員の御議論の中にもあった、もう一つの海外のマーケット、輸出を拡大するということがありますので、こういうことを、それぞれの地域に合わせて、各経済主体である農協さんが経営を展開していく、こういうことになってくると思います。

 バリューチェーンも、まさに販売、加工へ進出する、いわゆる六次産業化を進めていく必要があるわけでございますので、個々の農家がやられる場合もあるかもしれませんけれども、やはり農協としてまとまってこういう作業をやっていく。

 そして、生産現場を強化する、まさに担い手の育成、確保、担い手を軸とした地域農業を確立していく、また、今やっていただいておりますけれども、農地バンクを利用して集積を図っていく。これも、やはり個々の農家でということもありましょうけれども、地域の農協が中心となってやっていくということが大きいわけでございます。

 まさにそういうことをやっていくために、農業者、組合員、それから農協の役職員、徹底した話し合いを常に行っていただいて、どういう役員体制にするのか、どういう販売方式で売っていくのか、六次産業化にどうやって取り組んでいくのか、輸出をどこにどうやって拡大していくのか、こういうことをしっかりと検討していただくことによって方向がしっかりと出てくるということで、政策と主体が連動をするということで農業の成長産業化への道筋がつく、こういうふうに考えておるところでございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 具体的にお答えいただいて、少し流れが見えてきたなと思うんです。

 そこで、今大臣にお話で触れていただいた、地域農協の組織の中、特にどういう人たちがこの議論を深めて、そして道筋をつくっていくのか、まずそこに触れていただきました。これが、実は今回の農協法の改正の一つの肝だと思っているんですけれども、ここで一番大事になってくるのが、まさに農協の役員、理事の構成の話になってくると思うんです。

 今回、改正案の中では、過半を認定農業者や販売、法人経営のプロとする、こういうふうになっています。

 これは、私もそうだなと思うんですけれども、もう一方で、地域はそれぞれさまざまな事情、環境が違う。例えば、生産している品目も違ってくれば、認定農業者そのものが非常に少ない地域もあろうかと思います。ですから、そういった地域の実情に合わせた対応が必要なんだろうということで、例えば認定農業者の少ない地域はどうするのか。

 それから、販売や経営のプロという話が出ているんですけれども、その販売や経営のプロというのはどういう視点で見るのか。例えば、どんな資格、能力、資質が求められるのか。これもなかなか難しいところで、しかしながら、この法案の審議の中では、ここはひとつ明確にしていかなきゃいけない。

 本会議でも、他党、他会派の方々からも御議論があったところですけれども、もう少し詰めてここをお示しいただきたいと思います。

林国務大臣 まさに今おっしゃっていただいたように、今回の農協改革では、地域農協が、担い手農業者の意向も踏まえて、農業所得の増大に配慮した経済活動を積極的に行えるようにするというために、理事の過半数を、原則として、認定農業者や、農産物の販売や経営に関し実践的な能力を有する者とすることを求める規定を置くことにしております。

 ここが販売のプロということになるわけですが、ゴルフと違って、別にプロのテストがあるわけではございませんので、この実践的な能力を有する者については、基本的には、各農協において御判断をいただく、こういうことになりますが、当然、先ほど言ったように、地方分権という発想でやっていきますから、その農協がどういう販売事業をしていこうとしているのか、どういう経営をやっていこうとするのか、この方向性を踏まえながら、それぞれ適任者を選任いただくということになると考えております。

 地域によっては、今まさに御指摘いただきましたように、認定農業者の数が少ないところもあるわけでございますから、原則どおりの役員構成とすることが困難な事情もあるわけでございますので、原則としてというのはまさにそういうことでございまして、適切な例外を設ける、こういうふうにしております。

 制度の運用に当たっては、実態調査を行うことなどによって、制度の趣旨を踏まえながら、現場の実態を踏まえた適切なルールになるように、しっかりとそれぞれの地域事情にも留意をしてまいりたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 そうすると、そこで一番大事になってくるのは、やはり地域の実態に合わせることが非常に大事なことになってくるんだろう。法人経営のプロといっても、特に資格があるわけでもないし、例えば、Aという地域では、こうした新たな農協の理事の資質というのが大事だったかもしれないけれども、しかし、こっちの方ではまたちょっと違うよねと。

 そういうことを考えていくと、今大臣が御答弁いただいたことを踏まえていくと、まさに、農協改革というのは、地域農協の自己改革がやはり一番大きなウエートになってくるんだろう、こう思うんです。

 ですから、そこのところを、これは本会議でもいろいろ触れていただきましたけれども、やはり地域の農協の自己改革がベースだということを、もう一度、改めて確認の意味で質問させていただきたいと思います。

林国務大臣 まさにおっしゃっていただいたとおりでございまして、そもそも農協は、農業者によって自主的に設立された民間の組織でございますので、その改革は自己改革が基本でなければならないと考えておるところでございます。

 今回の農協改革においては、こうした農協の自己改革を促進する、そういう観点で、地域農協については、責任ある経営体制を確立するための、今申し上げた理事構成や経営の目的などを規定していただいて、自己改革の枠組みを明確にするということと、それから、中央会についても、地域農協の自己改革を適切にサポートできるような組織体制に移行する、こういうふうにしておるところでございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 非常に大事な視点について明快にお答えいただいて、論点というか課題がきちんと見えて、課題解決の方向性も明らかにしていただいたんじゃないだろうかなというふうに思っております。

 それで、次に移りますけれども、今回の法改正案による農業委員会のことについて質問させていただきたいと思うんです。

 先ほども議論がありましたが、今回の農業委員会改革の取り組みについてということで、一つは、公選制から、市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改めるということ、それから、これも今回新しいことで非常に注目しなくてはいけないんですけれども、農地利用最適化推進委員を創設する、それから、都道府県農業会議、全国農業会議所の役割を見直していく、指定法人制度に移行していく、こういうことがありました。

 それで、ここも一つのポイントになってくると思うんですけれども、農業委員会の過半を認定農業者とする、こういうふうになっています。これも先ほどの農協の理事と同じで、なかなか地域によっては認定農業者が少ない地域もありまして、ここもやはり地域の実態に即した中身にしていかなきゃならないだろう、このように思っていますが、この点について御答弁いただきたいと思います。

小泉副大臣 先生御指摘の部分なんですが、今回、お話しのとおり、農業委員会改革におきましては、適切な人物が確実に農業委員に就任すること、これは極めて大事でございますので、一つ目には、農業委員の選出方法につきましては、公選制から、市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改める、この方向でございまして、二つ目には、委員の過半を、お話にございましたとおり、原則として認定農業者とすることとしているわけであります。

 先生御指摘の部分でございますが、この場合、地域によりましては認定農業者の数が少ない、こういう地域も聞くところでございますので、原則どおりの委員構成とすることが困難な事情も考えられるわけであります。あくまでも原則としておりまして、適切な例外を設けることとしていきたい、こういうふうに考えております。

 制度の運用に当たりましては、実態調査を行うことなどによりまして、制度の趣旨を踏まえつつ、現場の実態を踏まえた適切なルールとなるように十分留意をしてまいりたい。

 なお、例外を定める農林水産省令の内容につきましては、今後検討していくことになるわけでございますが、実態調査をした上で、必要がある場合には、認定農業者のOB、それと、集落営農の役員などの認定農業者に準ずる者をカウントできるようにすることを想定してまいりたい、こういうふうに思っております。

稲津委員 これから調査をして、その上で省令等にしっかり書き込んでいくということですので、ぜひ速やかにやっていただきたいと思うんですね。

 そのことと同時に、今回の農業委員会の制度の見直しのところでやはり一番大事になってくるのは農地利用最適化推進委員なんですね。これがよくわからないという声をたくさんいただいています。

 今回、農業委員会は農地利用最適化推進委員を委嘱することができる、こういうことなんですね。では、その推進委員は何をするのかということなんですけれども、これは名称のとおり、農地の利用を最適化するんだということになると思うんですが、もっと具体的に言うと、今の一番の課題である担い手への農地の集積をどういうふうに図っていくのか、そこが大事な仕事だと思うんですが、やはりこれがなかなか大変なことで、今の中間管理機構の初年度の集積率の報告もありましたけれども、初年度ですからまだここで全部判断するわけにいきませんけれども、やはりいろいろと難しい問題はあるんだろう、このようなことはわかってきていると思います。

 その上で、では、今度は、最適化推進委員はどういう人が選ばれていくのかということなんですね。そこで、先ほどの理事のプロの話になってくるんですけれども、その委員にどんな資質、資格が求められるか。それともう一つ、では、そういう資質や資格を求めていったときに、そういう人材は本当に確保できるのか、このことは非常に大事な話ですので、この質疑の中で明確にしていただきたいと思います。

中川大臣政務官 今回の法案で新設することとしています農地利用最適化推進委員は、担当区域におきまして、担い手への農地利用の集積、集約化や耕作放棄地の発生防止、解消のための活動を行うものでございます。

 現場においてこうした農地の利用最適化推進活動を行っていくためには、地域の農地所有者や農業者の信頼を得て、農業者などへの働きかけを円滑に実施していく能力が必要であり、このような方が推進委員となることが望ましいと考えてございます。

 このため、推進委員につきましては、農業委員会が委嘱するに当たり、地域の農業者などから候補者の推薦を求めまして、または募集を行わせていただき、その推薦などを尊重して委嘱することとしており、これらの手続を通じて必要な人材を確保していくこととしています。

稲津委員 済みません、本当は更問いしたいところなんですけれども。

 もう少し明確に言いますと、これは質問しませんが、意見として言いますけれども、今の答弁を踏まえていったときに、例えば、普及員のOBの方とか、それから、かつて農業委員をやっていて非常に識見も人格もすぐれていて、しかし、一旦委員を外れているとか、ある意味地域のことあるいは農業を知悉していると同時に、そういう役割、機能を持っているような方々が多分大事になってくるんだろうと思うんですね。

 したがって、ここはまだもう少し詰めた議論をしていかなきゃいけないと思うんですけれども、ぜひ私が今申し上げたようなことを検討していただきたいなと、これは意見として表明させていただきたいと思います。

 それで、時間も大分参りましたので、もう一点お伺いしたいと思うんですけれども、農林中金、信連のことについて伺いたいと思うんです。

 今回、農協から信用事業を譲り受けて、そして、かわりに支店、代理店を設置して、単位農協には手数料を支払う、こういう状況なんですが、単位農協というのは基本的に今までも総合事業でいろいろやってきた、ある意味、いろいろな農家の方々や地域の営農、経済状況を把握しているということです。

 ですから、こういうことを考えていったら、今私が申し上げましたような、総合事業をしていることによって、そういう情報等をしっかり把握している。今度、支店制になると、こういった組合員の状況がきちんと把握できるのか、あるいは組合員のニーズに対して柔軟に対応していけるのかどうか、ここが今回の改正の一番の肝だと思うんです、中金や信連や共済のことで。このことについて御答弁いただきたいと思います。

奥原政府参考人 今回の農協改革におきましては、これは既にJAバンク法の中に規定されている方式でございますが、代理店方式を積極的に進めるということにしております。すなわち、地域の農協から農林中金、信連へ信用事業の譲渡を行って、地域農協はその代理店となって、農林中金や信連から相応の手数料等を受け取る、こういう方式でございます。あくまで選択でございますが、こういう方式を進めていくということにしております。

 この方式を選択した場合には、地域農協は信用事業の実施主体ではなくなるわけでございますけれども、ただ、地域農協は農林中金や信連の代理店となって仕事をするということになります。したがいまして、組合員にとりましては、これまでどおり地域農協の窓口で貯金の預け入れや払い戻し、あるいは資金の借り入れの申し込みができるということになりますので、利便性は基本的に維持をされるということになると思います。

 それから、資金の借り入れ等に当たりましても、おっしゃるとおり、組合員の事情に通じた地域農協でございますので、ここが窓口となっておりますから、その組合員の事情、経営環境、そういったものにつきまして、代理店となった農協の方から農林中金なり信連にしっかりと伝達をするということが可能というふうに考えております。

 いずれにいたしましても、この代理店方式が農業者、組合員にとって使い勝手のいいものになるように、農林中金等とも十分に意見交換を行っていきたいと考えております。

稲津委員 終わります。

江藤委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民主党の福島伸享でございます。

 いよいよ、この農林水産委員会の一番の山である農協法の審議が始まるわけでありますけれども、まず最初の、野党のトップバッターでありますので、審議のやり方等について、ちょっと私なりの意見を申し上げさせていただきたいと思っております。

 まず一つは、今回、農協法、農業委員会法、農地法の三つを束ねております。ただ、農協法にしても、農業委員会法にしても、これは本当に大きな大改正であるというふうに思っております。なかなか、普通はこういうのを束ね法案でやらないと思うんですよ。

 私は、平成十一年の電気事業法とガス事業法の改正というのを束ね法案でやったんです。これも結構大議論になりました。ただ、そのときの改正は、電気事業法、ガス事業法、同じ条文をいじるという共通性があったから、一緒に束ねましょうと。今回も、実は電気事業法、ガス事業法が束ねられて国会に出てきて、そのときも、なぜ束ねるのかということを私はしつこく役所に聞きましたけれども、それはこの両方の、電気事業、ガス事業に共通する電力・ガス何とか規制委員会という委員会をつくるという、いわば一本の法律として扱わなければならない事情があるから束ねているわけですね。

 この農協法、農業委員会法、農地法は、それぞれいろいろな賛否があるわけですよ。それぞれごとにいろいろな意見があるわけですね。なぜ、今回これを束ねようとしているのか、その理由を教えてください。

小泉副大臣 先生御指摘の部分でございますが、安倍内閣におきましては、農業を成長産業として、地方創生の核としていくために、農林水産業・地域の活力創造プランに基づきまして、六次産業化、これは高付加価値化でございますが、それと海外マーケット、話にも出てまいりましたけれども、これも視野に入れて需要の開拓をやっていくということでありまして、農地の集積バンクによる担い手農業者への農地集積などを柱としております農政改革を進めてきたところでございます。

 これら改革が成果を上げるためには、政策面の見直しとあわせまして、農業者を初めとする経済主体が、政策も活用しながら自由に経営を展開できる、これは極めて大事なことでございますので……(福島委員「何で束ねたのか、早く答弁してください」と呼ぶ)はい。

 内容につきましては、こうした観点から、六月の閣議決定でございますが、日本再興戦略二〇一四、規制改革実施計画、これは御案内のとおりでございますけれども、農業協同組合、農業委員会、農業生産法人に関する制度の一体的な見直しを行う、こういうことで、農協法、農業委員会法、農地法等の改正を行う方向でございます。

 このように……(福島委員「何で束ねなきゃいけないんですか」と呼ぶ)御指摘の部分でございますね。趣旨、目的が共通しているということでございまして、法律案については、一括法とすることでその趣旨をさらに明確にしていく、こういうことでございますので、御理解いただきたいと思います。

福島委員 これは全く理解できませんね。

 そもそも、この農協法とか農業委員会法を昭和二十八年とかにも大改正しているんです、同時に。そのときは、農協法と農業委員会法を別々の法案で出しているんですよ。

 そんな昔じゃなくても、先ほど齋藤健さんから名前を出していただきましたけれども、改革派の薫陶を受けた私としては、それは国会はきっちり、その法案が改正されることによってどういうメリットがあって、どういうデメリットがあって、それぞれの法案は法目的を別にする法案なんですよ。だからこそ、趣旨は一つでも、極力一本一本の法律を議論していくというのが私は立法府の務めだと思います。

 役所は、楽にやりたいから束ねたがるんですよ。私も、その平成十一年のとき、束ねますと言ったときに、当時の自民党国対、たしか今の大島議長がいらっしゃったと思いますけれども、そんなのはだめだ、役所は楽をするなというふうに党側から逆に御指導をいただいて、四の五の四の五のへ理屈をこねて束ねたわけですよ。

 これは農林水産業・地域の活力創造プランに掲げられているから一本だといったら、例えば、骨太の方針みたいに掲げられているようなものを全部一本にして経済改革推進法とやったら、国会なんて要らないですよ。そういうふうな話になるからこそ、我々は、決して揚げ足をとりたいわけじゃありませんよ、慎重に審議をした上で、この法律が変わることによって何がどう変わるのかというのを、政府の観点じゃない観点から見きわめて審議をしたいんですよ。ですから、今回こうやって束ね法にしたのは、私はまことにけしからぬ話だと思っております。

 そして、我々がこの法案を渡されたのはおとといです。机の上に乗っかっていて、一生懸命この重いのを持って帰りましたよ。農水省から説明を受けたのは昨日が初めて。でも、この法案の条文を誰が一日で読めますか。多分、役所の人は、どうせ政治家なんて法律の条文なんて読むわけねえべと思っているわけですよ、ねえべというのは茨城弁ですけれども。

 でも、それじゃだめなんですよ。立法府である以上は、よく役所はきれいなポンチ絵を描きますけれども、そのポンチ絵だけを見たってわからないんですね。

 例えば、条文をぱらぱらめくっているだけでいろいろあって、まず、附則が百十五条もある。本則より附則の方が分厚い法案で、どっちがおまけなんだ、附則をつくるためにこの法律をつくっているんじゃないかと思えるような法案で、今度、県の中央会が農業協同組合連合会に移行するとポンチ絵には書いているんですよ。本則の新しい三条一項では、農業協同組合連合会は農業協同組合連合会という文字を用いなければならないと義務で規定しているんですよ。

 ところが、附則の十八条で、この三条一項の規定にかかわらず、その名称中に、農業協同組合連合会という文字にかえて、引き続き農業協同組合中央会という文字を用いることができると。何ですか、これは。だって、連合会なんだから連合会じゃないですか。附則でこんなことをやる法案は、私は非常に恥ずかしい法律だと思いますね。

 それとか、ちょっとこれは質問で聞きますけれども、農地法で、農地を所有できる法人の名称が、なぜか農業生産法人から農地所有適格法人になっているんですよ。この名前も人に愛される名前じゃないですね。適格法人という言葉自体が上から目線ですよ。では、ほかの人は適格じゃないんですか。認めなければ適格にならないような上から目線の名前だけれども、何でこれは変えているんですか。

奥原政府参考人 農業生産法人の名称の関係でございますが、法人による農業参入につきましては、平成二十一年の農地法の改正の前までは、農業生産法人でなければ、リースを含めて、農地の権利を取得して農業生産を行うことはできなかったわけでございますが、二十一年の農地法の改正によりまして、リース方式であれば全面的解禁をしましたので、一般の株式会社など農業生産法人以外の法人であっても、リース方式であれば自由に参入をして農業生産ができる、こういう仕組みになっているわけでございます。

 したがいまして、現在は、農業生産法人というのは農地を所有できる要件を満たしている法人のことを指す、そういう農地法上の略称といいますか、呼称にすぎないものでございます。

 しかしながら、農業生産法人という言葉が非常に立派な言葉だということもございまして、これは農業生産法人という特別な法人格があるわけではございませんので、一定の要件を満たしているところをこう法律では呼んでいるだけでございますけれども、いまだに、この呼称があるために、農業生産法人でなければ、リースを含めて、農地の権利を取得して農業生産を行うことができないという誤解も見られるところでございます。中には、この誤解に基づいて、さらなる規制緩和が必要だという要請もされている、こういったことも散見をされてございます。

 こういった実態を踏まえまして、誤解を招かぬようにするという観点で、今回、農業生産法人という呼称を、農地を所有できる法人という制度上の性格をより正確に示す、そういう名称に改めるという意味におきまして、法律上の呼称は農地所有適格法人という形に変えているということでございます。

福島委員 全くよくわからないですよ。

 立派な名称なんだから変える必要もないし、誤解を受けないようにすると言うけれども、今度の農地所有適格法人の方が誤解を招くと思いますよ。何か役所が、適格か適格じゃないか、一々個別に判断するようなイメージですよ。

 事ほどさように、条文を読むといろいろ問題があるんですよ。今回大きく掲げている、中央会の監査制度を見直すとか、株式会社化の道を示すといった大きな論点もありますけれども、一つ一つの条文を読んでいると、さまざまな問題が私は浮き上がってくると思っております。

 先ほど齋藤理事はスピーディーな議論と言いましたけれども、我々はいたずらに牛歩をやったりはしませんよ。ただ、せっかく国会で、これだけ優秀なメンバーが集まっているわけですから、逐条審査、しかし、そこまでと言わないんだったら、きちんと条文に基づいた、たっぷり、しっかりとした丁寧な議論を行っていただきたいんですよ。それがこの後ろにいる農協関係者、農業関係者、農業委員会関係者が一番期待しているんです。

 農協の人もこんな法律は読んでいませんよ、はっきり言って。読まないもの、読めないですから。それを立法府の場できちんと議論していく。もしおかしなところがあったら柔軟に改めることも辞さずという姿勢であるのが、私はこの委員会の良心だと思うんですけれども、委員長、ぜひともそのような審議の取り計らいを、御検討をお願いいたします。

江藤委員長 審議につきましては、理事会で議論をして、趣旨の説明を大臣からもいただき、そして、御党、野党各派にいただいたわけでありますので、理事会で決めたこと、それに従って委員会の運営はさせていただきたいというふうに考えております。

福島委員 ありがとうございます。丁寧な、良心的な運営を行っていただければと思っております。

 それでは、本論に入りたいと思うんですけれども、資料の一枚目をごらんになっていただきたいと思っております。

 先ほど林大臣からも答弁の中であったかと思いますけれども、現在、農業産出額に占める農協の関係の取扱高はどれぐらいかというグラフであります。

 一番の主食であります米は四七%、野菜で五一%、肉用牛で七七・一%、豚だと一八・三%ということで、農協がかかわっている部分は農業の半分ぐらいであるということであります。売る方だけじゃなくて買う方で見ても、先ほど御答弁にありましたように、農薬が五八%、配合飼料は二九%。この中に入っていない農協系統以外の人は、逆に言えば、企業的な経営をやっている農家とか、独自の、自分で一生懸命頑張っている人が多いというのが実態だと思っております。

 総理は二月十二日の施政方針演説で、もはや、農政の改革は待ったなしだ、だから六十年ぶりの農協改革を断行するんだというふうに意気込んでおられました。

 私は、政策というのはある意味科学であるというふうに昔から思っています。それはどういうことかというと、ここにこういう問題があって、その問題を改めるために何をするかというふうにやっていく。その手段は、法律を変えることもあれば、予算措置を講ずることもあれば、いや、法律なんて変えないで運用でやっていく方法もあるであろう。

 先ほど齋藤委員の方から、我が方の対案について全然改革が盛り込まれていないだろうというのは、我々は、改革をしたくないからその部分の改正をするのではなくて、法律を改正しないでできる改革がいっぱいあって、そっちの方が大事だから、そこは、書いてないことの方が大事なわけです。

 そのような観点から見たときに、今半分の比率の農協ですけれども、そもそも農業全体において、農協というのは本来どのような役割を果たす組織であると認識されているか、大臣の御認識をお伺いいたします。

林国務大臣 農協は、農業者が自主的に設立をする協同組織でございまして、農業者が農協を利用することでメリットを受けるために設立をされているものであると考えております。

 したがって、農協は、農業者、特に担い手から見て、その所得向上に向けた経済活動を積極的に行える組織である必要があるということでございます。所得を上げるということは、売り上げをふやすということとコストを下げる、こういうことでございますので、農産物を有利販売するということ、生産資材を有利に調達する、これがやはり最重点で事業運営を行うことが重要である、こういうふうに考えております。

 今回の農協改革では、農協が、正組合員である農業者のメリットを大きくするという原点に立ち返っていただいて、地域農協が、農産物販売や資材の調達等を通じて農業者の所得向上を図るために、担い手を中心とする農業者と力を合わせて全力投球できるような環境を整備することとしておるところでございます。

福島委員 ありがとうございます。

 私もおおむね同じような認識であります。

 農業というのはいろいろなタイプの人がいるわけですよね。協同組合があってもいい。株式会社もあっていい。どういう組織形態で農業をやっていくかというのはまさに農業者の選択であって、農協が嫌だったら別に農協とかかわらなくたっていいし、現にかかわっていない人はいっぱいいるわけですね。

 ただし、例えば、家族経営でやっている人とか、あるいは特定の地域で同じようなものを一緒につくることで価値が高まるような農業を選択している人にとっては、みんなで肩を寄せ合って、協同組織としての協同組合でやっていく。特に、農産物を外に出て売ることになれば、相手は、完全な経済行動の中で行われるわけですから、一農家が巨大資本と渡り合うことはなかなか難しい。

 だから、一緒にまとまって、交渉力をふやして、みずからの所得をふやした方がいいねという人は協同組合を選択すればいい。いや、そうじゃなくて、もう自分のところは自分の一品で競争力があるから、協同組合なんてならないで、むしろ株式会社でもいいよというんだったらそれはそれでいい、両方あっていいと思うんです。農協法というのは、そのうちの、協同組合でやった方が、自分の所得をふやす人のために、その人たちを守るための法律が私は農協法だと思うんです。

 今回、何か農協を株式会社に転ずるような条文があって、これも後日しっかりと議論させていただきたいですけれども、そもそもそれは別物なんです。だから、選ぶのは生産者です。生産者が選べばいいんです。先ほど齋藤委員が、いや、これから農協は輸出もやるんだみたいなことを言いましたけれども、それも選ぶんです。

 フランスだと、農協が村の中でワインのブドウをつくって醸造までを行う。でも、ワインを輸出しているのは会社ですよ。ネゴシアンという会社があって、そういう民間の営利企業がやっていく。それは、選ぶのは、あくまでも生産者が一番自分に有利なものを選べばいいわけであって、その選ぶ選択肢となる協同組合をしっかりと守っていくためにつくるのが、私はこの農協法だというふうに思うんです。

 そういう観点から見たときに、今の農協、協同組合としての農協にどこが問題があって、その問題に対して、先ほど政策は科学だと申し上げましたけれども、この法案でどのような見直しを行おうとしているのか、その点についてお願いします。

林国務大臣 大変大事な御指摘でございまして、少し昔話になりますが、山口県の大先達の伊藤博文の子分と言われていた品川弥二郎というのがおりまして、これがドイツに留学したときに、青木周蔵という人と話をして、今まさに委員がおっしゃっていただいたように、大資本と小さい人が渡り合う、どうしたらいいのかということを話していたときに、ドイツには協同組合というのがあるんですよ、こういう話を聞いて、その後、品川は自分の一生の仕事だと思い定めて、後にたしか内務卿か何かになるときに、この協同組合法の制定というのをなし遂げて、すぐに亡くなるわけですが、そういう歴史的な経緯があるということであろうか、こういうふうに思います。そういうことで、協同組合というのは明治に日本に入ってきたわけでございます。

 農協法というのは、先ほど申し上げましたように、昭和二十二年に制定をされましたが、当時は、食料の需給状況を見ますと不足基調でありまして、農協が農業者から集荷をして市場等に出荷する、まさにサプライサイドの役割を果たすということが使命を果たすことであった、こういうことでありますし、それからもう一つは、組合員である農業者の皆さんも、農地解放の直後であったということもあって、均質なサイズであり規模であった、こういうことでありますので、ニーズもそれほど多様化をしていなかったということであったと思います。

 これに比べまして、現在は、まず食料が過剰基調になってきたということで、消費者や実需者のニーズに対応して、販売努力をして、売る努力をする。サプライサイドというよりはディマンドサイドの仕事が大変大事になってくるということと、それから齋藤委員のときにも申し上げましたように、食料マーケットが国内でどうしても縮小しますので、六次産業化等によって川下の付加価値を取り込んだり、海外へ輸出する、こういうことを視野に入れなければならなくなっておるわけでございます。

 それから、農業者の方も、先ほどちょっと触れていただいたように、大規模な担い手と小規模な家族経営や兼業農家、こういうふうな階層分化が起こっておりまして、組合員のニーズも多様化をしてきているので、こういう多様化したニーズに応えるということが必要になってくるということでございます。

 こうした中で、先ほど表にしていただいておりましたが、農産物販売や生産資材の購入もピークから低下傾向にある、こういうことでございますので、ニーズに十分に応え切れていない。この数字だけ見てもそうでございますし、私も地元でやはりそういうところに対する農家の不満ということを時々耳にしておったわけでございます。

 したがって、地域農協が販売をしていく、資材を調達する等々で所得向上を農業者のために図っていく上で、重要な業務を刷新して、担い手を中心とした農業者と力を合わせて、全力投球できるような環境を整備する。

 そういうことで、今回の改革は、まさに今委員がおっしゃっていただいたように、それぞれの地域に合ったことを地域農協が創意工夫をしていただくようにする。いわば地方分権の発想に立って、農業者の所得向上に全力投球できるような環境を整備する。それから、連合会や中央会においては、この地域農協の自由な経済活動を適切にサポートしていく。こういう基本的な考え方でもってやっていこうということにしたところでございます。

福島委員 その問題認識を多く共有するところはあるんですけれども、では、その販売努力が今まで足りないのか、全力投球していないのか。カーブとかシュートを投げて、直球を投げていないのか。もしそういう問題があるとするならば、今回の法律の条文で、販売努力を行わせるということは、どこの条文とそれはつながるわけですか。どの制度改革とつながるんですか。その点を具体的に教えてください。

奥原政府参考人 現在の農協の販売の仕方は、大体九六%ぐらいが委託販売という形でございます。したがいまして、農協自身はリスクをとらない形になっております。委託販売だからうまく販売できないということは必ずしもないとは思いますけれども、やはりリスクをとりませんと、本当に真剣になって有利に販売しようということにならないのも事実でございまして、そういったところに本当に真剣になって取り組んでいただきたいと思っているわけでございます。

 ただ、条文の中で、委託販売ではなくて買い取り販売をするとかいう規定を書くことは非常に難しいというふうに思っております。これは経済活動を、農協に限らず、いろいろなところがやっておりますが、法制度でそういうものを規制しているものは基本的にはございませんので、そういう形の規定にはなっておりません。

 ですから、農協の役員の方々、この方々が農協の目的は何であるかということをきちんと自覚をして、自分たちの農協の管内の農産物がどんなものであるか、地域の状況がどうであるか、いろいろなことを踏まえて、創意工夫で真剣に取り組んでいただく、そのための条項として、事業の目的の規定ですとか、それから役員の経営体制の整備ですとか、そういった規定を入れている、こういうことでございます。

福島委員 恐らく、農協改革の理念的な今の現状認識、目的と、現在出ている法律の改正している条文がうまくつながらないから、この農協改革は何であるのかということになるわけです。

 細かい論点はまた後ほどしっかりと議論させていただきたいと思っておりますけれども、中央会が監査するから、中央会があるから地域農協の自立とか自由な経済活動が阻害されているということをよく言われるわけですよ。

 これはよく使われるアンケートでありますけれども、日本農業新聞のことしの一月のアンケートでは、組合長さんの九五%がそうは思わないというアンケートをやっているわけです。なぜ、全国中央会の監査が地域農協の自立や自由な経済活動を阻害しているんですか。具体的な、これこれこういう理由があったから自由な経済活動が阻害されているという例を幾つか挙げていただけませんか。何度もこれはお願いしているんですけれども、幾つか挙げてください。

奥原政府参考人 先生が配付されました資料の中におきましても、これは農業新聞のアンケート調査ですけれども、農協の組合長の中で、十の農協の組合長の方は、やはりこの中央会制度がJAの自由な経営を阻害していると思うという回答をされているわけでございます。

 JAグループ、これは大きな、かたい組織でございますので、中央会が自分たちの仕事を制約しているかどうかと聞かれたときに、公然と答える方々は非常に少ないというふうに我々は思っております。ですが、こういったアンケート調査の中でも、十の組合長の方はこういうふうに答えられているということもございます。

 それから、与党の会合の中では、農協の組合長の方のヒアリングもいたしましたけれども、その中で、こういう自由を制約されているケースがありますかという質問に対しまして、ここでは具体的には申し上げられないけれども、いろいろなことがありますというお答えも、された方はいらっしゃいます。

 そういう意味で、やはり農協が自由に、創意工夫でもって経済活動、特に農産物の販売をやっていくという上で、現在の中央会制度はそれなりにいろいろな問題点はあるというふうに思っております。

福島委員 いや、私はそれはおかしいと思いますよ。告げ口とか陰口に従って法律を変えて、こうやって国会で国民の代表である国会議員が議論する、その法案を審議してくださいというのは、私は、これはおかしな話で、本当に問題だったら声を上げますよ、ちゃんと。

 私だって、いろいろな組合長さんと日々話をしていますよ。今回、この問題が出たときに、中央会が悪いのかといろいろな組合長さんに言いましたけれども、いや、実はここで言うと中央会に怒られるから内緒でとかと言って、中央会の悪口を言う人なんて私は見たことがないですよ。

 いや、確かに五人や十人はいるかもしれない。例えば、何か全中の会長選挙に負けちゃったから中央会は嫌いとかいう組合長だっているかもしれませんよ。でも、今、農協が抱えている問題、農業が抱えている問題というのは、多くの与野党議員、林大臣とも私はほぼ認識は一緒です。でも、それが、中央会があるからというのは、私は、奥原局長はそう主張するけれども、奥原局長以外は余り見たことがありません。

 ですから、これは、後でまたこの問題はしっかり議論いたしますけれども、具体的な事実に基づいて、ここに問題があるから、こういう手段でこの制度改正を行うんだということを合理的に説明しないと、いや、裏で聞いたらこうだから変えるんですと言って、誰が納得しますか。

 農業委員会でも同じです。農業委員会のアンケートが後ろにありますけれども、活動に不満がある理由というのが後ろから三枚目にあります。

 これは、農地集積など農家への働きかけが形式的とか、監視活動は行っているが、遊休農地や違反転用の是正措置を講じない、こういう不満があるという意味では、農業委員会は恐らく問題を多く抱えた組織なんでしょう。ただ、その一方で、例えば、農地転用の関係業務が公平公正じゃないとか、農地権利移動の許可業務が公平公正でないというのはないんです。今の農業委員会が公平公正じゃないから農地が進みませんとか、転用がうまくいったりうまくいかなかったりするというのは、実は少ないんですね。

 活動が低調な理由というと、例えば、紫が目立ちますけれども、農業委員会事務局の人手が不足しているから、農業者の中では、確かに名誉職になっているとか兼業農家が多いからというのは比率は多いですけれども、全体で見ると、人手の不足とか、そうした環境がしっかり整っていないというのが多いわけですね。

 その次のページを見てみると、農業委員会はない方がいいかといえば、農業委員会の役割は評価でき、今後とも引き続き重要とか、必要だけれども、果たすべき役割は見直すべきというのも含めれば、必要だという人が圧倒的に多いのがこの農業委員会の現状です。

 そうした中で、これもまた同じ質問ですけれども、今までの農業委員会は何が問題で、今回の法改正で具体的にどういうことを実現しようとしているのか。その問題点と、その問題点に対応するためにどのような制度の見直しを行っているのか、簡潔に御答弁いただければと思います。

林国務大臣 農業委員会は、農地に関する市町村の独立行政委員会で、担い手に農地の利用を集積、集約化する、耕作放棄地を発生防止、解消する、新規参入を促進する、こういうことで農地利用の最適化を進めていくことが重要であろう、こういうふうに思っております。

 今触れていただいたアンケートによれば、ユーザーといいますか農業者からの評価がやはり三割しかないということで、これは地域によっても結構差があると思うんですけれども、農家への働きかけが形式的である、それから、遊休農地等の是正措置を講じない、今おっしゃっていただいたような名誉職になっている、こういうような声が聞こえてきておるわけでございます。

 したがって、やはり最初に申し上げた、農地利用の最適化をよりよく果たせるように、適切な人物が確実に農業委員に就任していただくように、市町村議会の同意を要件として市町村長が選任をするということに、公選制から改めることにいたしましたのと、それから、農業委員会の指揮のもとで農地利用最適化推進委員を新設いたしまして、事務局の数が足らないというアンケートのお答えがありましたが、そういう指摘に対して、各地域における農地利用の最適化、担い手支援をこういう方々に行っていただこう、こういうことにしたところでございます。

福島委員 私は、なぜ問題があるから公選制をやめるかというのは、いまだにわかりません。なぜ公選じゃない方が農業委員の質が上がるかもよくわかりません。

 「農業委員会法の解説」という古い本がありました。これは農林事務官、檜垣徳太郎という人が書いております。昔、事務次官から自民党の参議院議員をされた大御所でございます。この方の本は、「農業委員会設置の基本構想は、これを要約していえば、農業全般に亘る問題を、農民の創意と自主的な協力によつて総合的に解決して行くために、民主的な農民代表機関を地方自治体の組織として設置しようということにある。」私はそのとおりだと思うんですよ。農民の創意と自主的な協力で総合的に解決するための民主的な農民の代表の機関であると。

 今回のこの農業委員会法の改正は、この農水省の大先輩の精神を全部ひっくり返すものなんです。だから、これは農協法以上に大きな改正で、もっと徹底してその理念のところから議論しなきゃならない法案だと私は思うんです。

 あと、何か認定農業者が多い方がいいと言いますけれども、いつも農水省さんは認定農業者を出します。我が茨城県は反逆児が多いから余り認定農業者はおりませんが、三枚目の資料をめくっていただきますと、確かに、佐々木先生の北海道は農業委員に占める認定農業者の割合は八一・四%と高くて、農業委員会の積極的働きかけによる集積面積の割合は二〇・四%と、全国平均より高いですよ。でも、もっと優秀なところがありますね。岸本さんの和歌山県は六八・七%、圧倒的な実績がありますよ。でも、認定農業者は二十四・一%しかいません。我が茨城県は、二七・五%が農業委員の中の認定農業者だけれども、集積の割合は北海道よりも多い二〇・七%。お隣の栃木県は、認定農業者が四一・八%を占めるけれども、集積割合は八・六%。

 つまり、認定農業者がいるかどうかなんというのは関係ないんですよ。農業委員会が機能しているか機能していないかというのは、認定農業者がどうだとか、農業委員が選挙で選ばれているから悪いということではなくて、恐らく因果関係というか、原因とそれに対する対処というのを全くずらしている。間違えているんではなくて、私はあえてずらしているんだと思うんですよ、別の思惑があって。ですから、私は、こうした問題を引き続きしっかり議論していかなきゃならないと思うんです。

 何で認定農業者が多い方が農地利用の適正化が進むのか。そのことを答弁いただけますでしょうか。

奥原政府参考人 全国の農業委員会の活動状況は、本当に地域によって相当違っているのは事実でございます。

 平均的に見ますと、やはり農業委員の中で兼業農家の方が四割を占めている。農家のアンケート調査の中でも出ておりますが、そういうことがやはり農業委員会の活動にかなり影響を与えている。これも私は事実だというふうに思っております。

 やはり地域の農業のことを真剣に考えて、担い手のところに農地の利用集積を進める、あるいは耕作放棄地が発生しないようにきちんと点検する、この活動を中心になってやっていただくためには、農業で本当に生活をしている方々、この方々を中心に運営していくことがやはり一つのポイントであるというふうに思っておりますので、その一つの代表として、この認定農業者というのを考えている、こういうことでございます。

福島委員 ありがとうございます。

 この点は、また後ほどしっかり議論をさせていただきますけれども、そういうのが余りにも実態を踏まえない、脳内革命を起こしている。脳内で考えていて、何か兼業農家だったらみんな悪い。

 うちの地元だと逆なんですよ。農家よりも、例えば学校の校長先生をやっていて、年金をもらいながら農業をやっているけれども、地域で物すごい信用がある人が、その人が農地の話をすれば、農地を出してくれるわけですよ。実際の農村というのは、そういうものなんですよ。誰に言われたか、それで変わるんですよ。それが農村ですよ。

 それを、何か兼業農家だから一律にだめとか、認定農家であっても、その人は何か周りから土地をかき集めて、ちょっと成金で、こんなやつの言うことを聞いてやるかという嫉妬があるのも農村なんですよ。僕らは選挙で回っているから、それをよく知っているわけですよ。それを、何か兼業農家がいるから悪いとか、現にデータでも、そのデータは出ていない。中央会が何か悪いことをしているかというのも、具体的なファクトとしては何も示さない。

 それで、今回の制度改正をするのは、改革は必要です、今抱えている問題を、農業委員会も農協も大改革が必要なのは、これは論をまちませんよ。ただ、現在起きていることと必要なことが余りにも乖離しているんじゃないか。その点を今後もしっかりと議論していきたいと思いますので、今後とも前向きな御審議をお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

江藤委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 民主党の小山展弘です。

 質問に入る前に、一言申し上げたいと思います。

 このたびの農協法の変更の審議に当たって、今、福島委員からも話がありましたが、法律案の逐条の関係資料が出てきたのは二日前でございました。作成は、ここに四月と書いてありますけれども、四月ぐらいからできていたんだと思いますが、これまで少なく見ても二十日余り、もっと早くこの委員会の委員に配付することはできなかったのかと、大変残念に思っております。

 特に、与党の議員の方はひょっとしたら内々に拝見していたのかもしれませんけれども、委員会審議の二日前に細かい法案の配付というのであれば、慎重で中身のある準備、議論というものはなかなかできないかと思います。

 まして、野党というのは、これは国会の役割として、法案の不備等がないかチェックするという役割を負っているわけですから、法案の内容審査、研究時間が一層必要な立場であろうかと思います。

 したがって、きょうは、私は農協法の逐条の質問はいたしません。概論とか概要、あるいは基本的な考え方、委員会審議にどのような観点から議論していくべきか、こういったことを論点に質問させていただきたいと思います。

 それとあわせて、与党、野党の対決とか言う前に、国会の機能、役割というのは何か。政権の入れかわりはあっても、国会での審議を通じて、先ほど、大島議長が、以前、ガス事業法と電気事業法のことで、これは与党の立場からであっても、一本一本の法案を慎重に審議していくんだという姿勢をお持ちだったということを伺いましたけれども、国民全体に資するべく国会での審議を行っていく、異なる意見や見方に対しても敬意を持ちつつ異論を唱えていく、これは高坂正堯の言った言葉ですけれども、そういう姿勢というものを与野党双方がいま一度持ち直すべきではないかと思っております。

 また、その観点から、もう一度私からも申し上げますけれども、農協法と農業委員会法、農地法の変更というものを一つにまとめて審議するとか、ほかの法案でも、安保法制とか刑事訴訟法についても、法案をまとめて審査して、早く審議を終わらせよう、こういうような姿勢というものはぜひ改めていっていただきたいということを私はまず冒頭申し上げたいと思います。

 それと、農協法の質問に入る前に、農協も協同組合であります。協同組合についての認識ということについて、まず伺っていきたいと思います。

 そもそも、協同組合については、先日の大臣の答弁にもありましたけれども、それぞれ、生協法とかあるいは労働金庫法とか、個別法が乱立をしておりまして、同じ協同組合を名乗っていても、性格や法制度が異なる現実となっております。

 国際協同組合年だった二〇一二年には、イギリスとか韓国とか、そういった国々で協同組合基本法が成立をいたしております。韓国については、もともと韓国の農協というのは日本の農協を参考にして制度をつくっていて、韓国全体も個別法が主体だったんですけれども、それと矛盾しない形で協同組合基本法を制定することに成功しております。

 農協法の個別の制度変更もさることながら、その前に、本来、協同組合とは何なのか、協同組合の社会的役割とか存在意義というものは何なのか。各協同組合を横串で貫くような協同組合基本法というものが必要であると考えておりますけれども、これについての大臣の認識を伺いたいと思います。

林国務大臣 我が国におきましては、農業協同組合、漁業協同組合、消費生活協同組合、信用金庫、信用組合、そういったさまざまな協同組合が存在しております。

 これらについては、組合員の範囲の違いに応じて、今御指摘があったように、各協同組合ごとの個別の根拠法というのが設けられておるわけでございますが、こうした法制度のもとで、例えば農業協同組合について見れば、農業、農村の実態を踏まえて、農業者の必要とする事業を行う協同組織の設立、これを可能とすることによって、農業生産力の増進や農業者の経済的社会的地位の向上が図られる、こういうように、それぞれの組合員の特性に合った協同組合制度というのが設定されております。

 共通の法制度というお尋ねでございますが、当省が所管をしていない協同組合、例えば、漁協までは当省所管でございますが、消費生活協同組合とか信金、信組になりますとちょっと所管外ということになりますので、農林水産省としてお答えするのが難しいところがあるのでございますが、一般論として申し上げますと、それぞれの実態に応じて特色ある制度をやっておる、それと、共通法制ということになりますと、共通化する部分というのはどういうところになるのか、その間の関係をどう整理するのかということがありますので、そういうところを慎重に検討する必要がある、こういうふうに考えております。

小山委員 共通法制というところで、私は、これはどちらが正しいとか正しくないとかということではなくて、事実としてどうかということを考える一つの論点として申し上げたいと思うんです。

 例えば、政治的中立性ということで、先ほど齋藤委員からのお話にもあったように、何で民主党が政権のときにやったとかやらないとか、ただ、生協とか労働金庫は中立ということになっていて、同じ協同組合でも農協は農政運動だからやるんだ、これはどちらの考え方もあろうかと思うんですね。

 ところが、同じ協同組合という組織でありながら、片や制限されていて、片やそれは積極的に行っている、この事実の違いがあるということはやはり私は矛盾を感じざるを得ないですし、こういうところなんかも含めて、これはどちらがいいということは私は申し上げませんけれども、同じ協同組合という組織でありながら、違いがあるというところについて一定の共通性というのを持たせていく、そういう論点というのは少なくとも必要ではないかと考えておりますし、協同組合というのは何か、これは先ほど福島委員の話にもありましたけれども、やはり弱者の集合体だと思うんですね。

 また、後ほど申し上げたいと思いますが、林大臣の御答弁にも、農村の中でも、大規模な方から小規模な方から、いろいろなニーズが出てきた。私も福島委員と同じで、大規模な方はもう協同組合なんて必要ない、特に、ネットとかこういった情報ツールも発達していますので。

 そういう中で、協同組合というのはどちらの方を向いて仕事をするのか、どちらのニーズにより寄り添っていくのかということが必要になってくると思っているんですけれども、そういう観点からも、やはり、より弱者の立場に立って事業展開をしていくというようなことになっていくと思います。そのような基本理念というものが、私は、共通基本法を定めていく中からも見えてくるものがあるのではないかと考えております。

 ちなみに、各協同組合がそれぞれ個別法で定められていることによって、こういった共通政策の立案をしようとしても、二〇一二年の協同組合の憲章、これは民主党政権のときだったのでございますが、所管省庁がどこなのかということで、それぞれの役所がばば抜きのばばを引きたくないような、そういうようなことで、嫌がるようにたらい回しになったということがありましたけれども、所管省庁というのは私は必要になってくるかと思いますが、お答えできる範囲で、大臣の認識を伺いたいと思います。

林国務大臣 もし、共通法をつくるときは所管省庁がどうなるのか、こういうお尋ねだと思います。

 先ほど申し上げましたように、現行の制度は、それぞれ個別の根拠法でそれに応じた所管行政庁、こういう制度になっておりまして、そういう意味で、農業とか水産業ということで我々が所管、こういうことになっている、こう理解しております。

 全体の横串で共通法をつくるということになりますと、法人でございますので、民法みたいなものの特則になるのかな。そういうことになると、これは後で確認しなければなりませんが、一般的には、そういう基本法みたいなものが所管をされるという意味で、今確定的に申し上げるわけにいきませんが、印象としては、法務省みたいなところがそれに当たるかもしれませんし、それは、先ほど申し上げましたように、いろいろ検討していく中で、どういうことを共通法に規定するかということによっても変わってくるものではないか、今の時点ではそういうふうに思っております。

小山委員 ありがとうございます。

 私も、農水省さんが所管をするとかどこの省庁が所管するということまではきょうは求めるつもりはもちろんないんですけれども、ただ、こういった協同組合の共通政策を求めていく上で、どこかの窓口、担当官庁というものをこれから定めるように議論を深めていっていただきたいというふうに考えております。

 それと、今般の農協法改正については、株式会社と協同組合というものが国内において比較される議論が、これは国民的にもあるいはマスコミ的にも多かったように思うんです。

 だけれども、本来、日本国内の株式会社と比較をしてどうかということよりも、ドイツやオーストリアとか、あるいはフランスの協同組合、諸外国の協同組合と比較してどうだったのか、こういう視点が非常に少なかったのではないかと思っております。某経済新聞とか、余り具体的には言いませんけれども、よく電車に乗っていると見るような雑誌とか、これは規制改革会議の議論というものを無批判に垂れ流しているようなものが見受けられて非常に残念でございました。

 私は、協同組合というのは、行政の公共セクターでも、株式会社を中心とする民間の営利セクターでもなくて、非営利のサードセクターであると考えております。協同組合に対する国民的な理解が少ないまま、今回の議論は進んできたのではないか。

 二〇一二年の国際協同組合年の議論の際にも民間の国際協同組合年実行委員会から提起があったんですが、今後、協同組合とは何なのかという、認知度を上げていくということが必要であろうかと思っております。これについての政府の認識を問いたいと思います。

    〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕

中川大臣政務官 二〇一二年の国際協同組合年には、農協などの協同組合の代表者や有識者が二〇一二国際協同組合年全国実行委員会を設立いたしまして、協同組合の認知度の向上に向け、フォーラムの開催等取り組みを行いました。

 こうした中で、当時、農林水産省としては、白書や農林水産省の広報誌でありますaffにおきまして、二〇一二年が国際協同組合年であることや協同組合の活動などを紹介いたしました。

 なお、農協について言えば、農産物販売等で特徴ある取り組みを行っている事例を農林水産省のホームページに掲載して、広く周知するとともに、こうした取り組みが横展開されることを促しているところでございます。

小山委員 この国際協同組合年のときに議論がありましたのは、例えば、以前は、教科書にも協同組合とは何なのかというような記載があったんですね。今はもう教科書からも記載が削除されちゃっています。

 こういったことも含めて、何か株式会社の突然変異みたいな、あるいは税制面で不当な優遇を受けている団体というような、そういう誤解というものが非常に流布しているかと思います。

 ですから、株式会社と協同組合を比較するというだけではなくて、今申し上げたような、二〇一二年のアピールだけではなくて、協同組合とは何なのかという、認知度そのものを国民的にあるいは教育の面からも深めていくということが長い目で見て私は必要だと思っております。

 二〇一二年にIYC、協同組合年実行委員会が策定した協同組合憲章草案というものがございました。これについての政府の認識を伺いたいと思うんですが、この協同組合憲章草案は、協同組合の基本理念、政府の協同組合政策における基本原則、政府の協同組合政策における行動指針等を定めたものであります。

 協同組合基本法を各協同組合陣営で一気に制定するというのは、今、個別法もありまして、違いが大き過ぎる、それぞれ歴史を刻んでおりますので、抽象的ですけれども、こういった協同組合の理念と政府の役割というものを定めた憲章の制定というのをまず求めたということでございます。

 これは残念ながら、中小企業憲章と違って、当時の某総理大臣に閣議決定はしていただけなかった。では、国会決議をしようということで、自民党のとある先生ともいろいろ相談もしながらやっていたんですが、決議の準備中に解散になっちゃったということで、制定されないまま今日まで至っております。

 民間がつくった草案ではございますけれども、これについての評価、特に、政府の協同組合政策における行動指針の「(七)協同組合の制度的枠組みを整備する」という項について、「税制、会計基準、自己資本規制などについて検討するにあたっては、協同組合の特質に留意する。」との記載もありますが、これについて、政府の評価、見解をお伺いしたいと思います。

中川大臣政務官 当時、先生が一生懸命このことに関して努力をされたというお話、よく聞いているところでございます。

 国際協同組合年全国実行委員会が策定をいたしました協同組合憲章におきましては、適切な協同組合政策の確立として、税制、会計基準、自己資本規制などについて検討するに当たりまして、協同組合の特質に留意する旨が記載されています。

 農業協同組合について見ますと、税制につきましては、事業の利用分量に応じた配当は法人税法上損金に算入することが認められていますし、会計基準におきましては、合併の際の資産評価を原則として簿価とする特例が認められているわけであります。金融機関に課せられている自己資本規制では、連合会などの上部団体への出資につきましては他の金融機関への出資とは異なる取り扱いが認められているといった、協同組合の特質に留意した対応が既にとられていると認識しております。

小山委員 ぜひ、協同組合の特質に留意するということで、監査に当たっても、営利目的の株式会社、また株式の投資に当たって投資判断として正確な会計情報を得たいという株式会社、特に上場会社に対する公認会計士、監査法人の監査のあり方と、利用者が永続的に協同組合を利用していくということを目的とした協同組合に対する監査というものを、イコールフッティングということだけで制度をそろえる必要はないと私は思っております。

 日本国内の株式会社と農協を初めとする協同組合の制度を比較するのではなくて、協同組合、農協に対する監査も、ドイツやフランス、オーストリアの協同組合の監査制度とこそ比較して検討すべきではないか。今後の委員会審議に対しても、農水委員会の各委員にも、この点、比較する対象が違うんじゃないかということを申し上げたいと思っております。

 次に、日本が戦前、現在の農協のルーツである産業組合、先ほど品川弥二郎の話も出てまいりましたが、設立するに際して参考にしたドイツのライファイゼン組合とか、あるいは、戦前の日本の産業組合の姿とほぼ同様の形態で事業運営されているオーストリアのライファイゼン組合、これらは地域協同組合、農村協同組合として事業運営されております。

 これらの、特にオーストリアのライファイゼン組合の運営のあり方について政府がどのような認識を持っているか、伺いたいと思います。

    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕

林国務大臣 お尋ねがあったオーストリアのライファイゼン組合について詳細は承知をしておらないわけですが、ドイツの協同組合であるライファイゼン組合については、信用事業と購買、販売事業をあわせて行っている信用協同組合、それから、農業資材に限らず生活関連物資の販売を行っている購買、販売協同組合もあるということで、地域の協同組合としての性質を備えているというふうに承知をしております。

 戦前の日本の産業協同組合というのがございましたが、これは、明治三十三年の産業組合法というものに基づきまして、地域の人々を農林、商工、小売業者から消費者まで幅広く構成員としていたもの、こういうふうに承知をしておるところでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、農協は、昭和二十二年に戦後の民主化政策の一環として農業協同組合法が制定をされておりますので、これに基づいて、農業者の協同組合、こういうふうに設立をされたものでございまして、種々の経緯、関連というのはあるのでありますが、当時の産業組合、これが戦後、各種協同組合として独立していった、こういうことだろうと思いますけれども、これとは性格が異なるものであるというふうに考えております。

小山委員 今大臣の答弁にもございました中で、ちょっと私、見解が違うところは、戦前の産業組合というのは、戦時体制に入るときに、農業会というものになります。これは、戦時体制、統制経済に入っていくわけですね。この中で、農村部の農村金融と購買、販売事業を行っていたところと都市部の信金というのが分離させられるんですね。これは国策としてそうしたんです。そういう中で、当時は産業組合は組合員の規制というものはなかった。しかし、当時は第一次産業従事者が多かったですから、その結果として、七割近くが農家、農業者が組合員になっていたということでございます。

 何でこんな話をしたかと申し上げますと、准組合員のことを考えるときに、准組合員の制度は何でできたかというときに、産業組合から農業会あるいは農協になったときに、地域協同組合として組合員になっていた方々が宙に浮いてしまった。彼らを准組合員としてやっていったわけなんです。

 ですから、この戦前の産業組合の伝統をもう少し見直していくということも必要じゃないか。特に、安倍さん、戦後レジームからの脱却ということを、よくも悪くも戦前回帰とおっしゃっているわけですから、ぜひ農協法についても、アメリカナイズされるような、農家のためだけの農協ではなくて、GHQの押しつけ協同組合ですから、戦前の産業組合というのをもっと参考にしていただいて、民主党の提案する地域で果たす役割というものにもっと御賛同いただければということも思います。

 それと、農業会から戦後の農業協同組合になったときに、当時、GHQは、統制経済をやめさせるんだということで農業協同組合というのをやったんですけれども、では、完全に、農業会であったり、その前身の産業組合から続いてきたものを、出資金も全部返戻して、それから建物なんかも全部解体して、全く一から農協をつくったわけじゃないんですね。システムとしては、産業組合、農業会と来たものを受け継いで、その統制的な部分を変えた。しかし、信金と一緒になったりとか、もとの戦前に戻ったわけではないですから、そういったシステム、あるいは、特に今回の黄色い冊子にも、農林中央金庫というのは大正十二年設立というふうにこれにも書いてあります。これは産業組合中央金庫としてできたんです。そして、よく日経新聞なんかでは間違ったポンチ絵が出ているんですけれども、農林中金については漁協と森林系統の機関でもあるということです。

 そういったことも、産業組合以来、システムとしては伝統があるということはやはり考えるべきではないか。ぜひ、そのような観点から、今後、准組合員のことについても検討していっていただきたいと思うわけでございます。

 それと、二〇一二年、政府広報オンラインでは、協同組合は、地域社会に根差し、人々による助け合いを促進することによって生活を安定させ、地域社会を活性化する役割を担っている、協同組合の特質に留意する、地域経済の有力な主体として協同組合を位置づけると評価し、こういったものを含む基本的考え方に基づいて、協同組合の発展をできる限り後押しするとしております。

 政権が交代いたしましたが、この政府広報オンラインの方針に変化はないんでしょうか。

林政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、二〇一二年の国際協同組合年が協同組合の認知度向上につながることを期待いたしまして、二〇一二年に、「協同組合がよりよい社会を築きます〜二〇一二年は国連の定めた国際協同組合年〜」と題した政府広報オンラインの記事を掲載したところでございます。

 本記事の中には、協同組合を後押しするに当たっての留意事項などの政府の基本的考え方を示したところでございますが、これは現在においても変わっておりません。

小山委員 この当該の政府広報オンラインに照らせば、これは当時の政府の方針ということだと思うんですけれども、それが今、変わりないということで伺いました。

 それであれば、農協も農家のためだけではなくて、協同組合として、この広報オンラインにもありますとおり、地域社会に根差し、地域経済の主体として位置づけるべきだと考えますが、これについての大臣の見解を伺いたいと思います。

林国務大臣 農協法の一条で、農業者の協同組織であるということが明記をされておりまして、先ほど福島議員ともやりとりさせていただきましたが、やはり、農産物の販売、生産資材の調達、こういう事業を農業者が利用していただくことでメリットを受ける、所得を向上させる、これが主目的である農業者の職能組合であるということがこの一条で規定をされている、こういうことでございますので、そのためにも、今、意思決定の仕組みは、十六条でございますが、准組合員の議決権というのはない、こういうことになっております。

 一方で、高齢化、過疎化が進む農村社会においては、農協が実際上は地域のインフラとして機能を果たしている、これは事実でありますが、このことをもって農協が地域経済の主体として位置づけられる地域住民のための協同組合、こういうことにはならないわけでございますので、あくまで一条に規定されていることが主目的であるという原則はあるということだと考えております。

小山委員 私も、戦後の農協の歩みというものを決して否定するつもりはありません。それはそれで歴史を刻んできたものであると思っております。

 そこに、今、農家のためだけの組合にしていくというわけではなくて、むしろ現状維持、あるいはもう少し地域での果たす役割というものをさらに幅を広げていくという方向こそ本来の協同組合、農協の改革方向ではないか、こういうことを申し上げたいと思っておりますし、この観点に基づいて、今後、准組合員の議論、これから、今国会だけではなくて、ひょっとしたら五年ぐらい続くかもしれない、あるいは今国会でもう少し方針が変わるかもしれませんが、ぜひ、この准組合員の制度はそういう観点からも議論をしていっていただきたいと思っております。

 それと、もう少し農協法に近づいた質問をしたいと思います。

 けさの齋藤議員の質問にもありましたが、本来の農政改革というのは農家の所得向上を目指したものである、したがって、農協改革というものも農家の所得向上ということを目的、さらに限定すれば、組合員となっている農家の方の所得向上、農協なんか要らないという人はもう自立して立派にやっているわけですから、そういう観点だと思っております。これはよく玉木さんとか福島さんが質問されている項目です。

 では、農協改革というものは、農家の所得に最も関連する経済事業改革こそ必要、こういうことがきょうの齋藤議員の質問にもありましたし、答弁にもございました。ところが、前回の農水委員会で申し上げましたとおり、経済事業という言葉には実は厳密な定義はございません。

 では、農協の経済事業の中でも、特に農業所得の向上に関連する事業、部門というのはどの部門であるか、これは確認的に質問させてもらいたいと思います。

奥原政府参考人 農協は、農業者が自主的に設立する協同組織でございますので、農業者がメリットを受ける、これが主目的でございます。

 したがって、農業所得の向上に関連するのは、主として農産物の販売事業、それから農業生産資材の購買事業であると考えております。

小山委員 おっしゃるとおりでございまして、経済事業改革、経済事業で黒字化を図るんだといっても、葬祭事業とか、あるいは毛皮、宝石の販売をさらに手広くやって、そこで黒字にしてもこれはしようがないですね。やはり販売、購買事業の改善ということでやっていった方がいい。

 ですから、余り経済事業ということで一くくりにして議論するということは、これ自体の定義が曖昧になってくる部分があると私は思っております。このことは、もう経済事業という言い方自体を本来であればやめた方がいいと思っております。

 それと、この農協の経済事業改革、とりわけ販売、購買事業の改革に全中の監査権限の見直しがどのように関係するのか、その因果関係について問いたいと思います。

小泉副大臣 先生御指摘の部分でございますけれども、まず、今回の農協改革は、御指摘いただいたとおり、地域の農協が自立して自由に経済活動を行いまして、農産物の有利販売など農業者の所得向上に全力投球できること、これを目指しているわけでありまして、農協システムの全体の見直しを行う、これが流れでございます。

 その流れの中で、今、全国中央会の監査の義務づけ、こういう部分にも触れまして、これは廃止することになっているわけでありますが、会計監査につきましては、信金それから信組と同様に公認会計士監査を義務づけることによりまして、信用事業を安定的に継続できるようになると考えているわけであります。

 業務監査につきましては、農協の任意とすることとしておりまして、地域農協が農産物の販売体制の刷新などを進めて農家の所得向上を図ろうとするときに、自由に能力のあるコンサルを選べるようになる、こういうことを考えているわけであります。

小山委員 大変恐縮ですが、全中の監査権限を見直す、あるいは監査の廃止ということと、販売、購買事業の経営改善ということが、因果関係が私はちょっと今の御答弁ではよくわかりませんでした。

 これから逐条審査ということで、さらに経済事業のことは質問していきたいと思いますけれども、何でこんなに経済事業のことを聞くかというと、全中の監査をなくすということと、購買、販売事業がどう経営改善に結びつくかどうか、あるいは、この購買、販売事業も含めた経済事業というものが本当に経営改善していくことと、今回の法改正というものがどの程度因果関係があるのか、あるいはないのか、このことをしっかり議論することによって、経済事業改革に関係ないということになれば、これは立法事実がないということになるわけです。

 私は、農協の経営改善というものは、法律を改正することで果たされるものではないと思っております。よく農家の庭先のお話がございましたけれども、事業体の経営改善をするというのは、それこそ、その経営体の財務担当者と膝詰めで夜中の二時、三時までお酒を飲みながら、いろいろな問題も、信頼関係をつくって、議論をして、一つずつ経営改善というものをやっていくわけです。農協によって、何が原因で経済事業あるいは販売、購買が赤字になっているかどうかというのは、多分これはケース・バイ・ケースで、全部千差万別だと思っています。

 そういったことも含めて、今後、この経済事業のことについても、時間が許す限り、私は、立法事実に関することですので、また議論を深めさせていただきたいと思っています。

 以上で質問を終わります。

江藤委員長 次に、井出庸生君。

井出委員 維新の党、信州長野の井出庸生です。よろしくお願いをいたします。

 いよいよ、ずっと言われてまいりました大きな法案、大きな議論が始まるということで、ただ、そうした大きい改革と言われる法案を審議していく上で、よく農業の現状と進むべき方向性、そこをしっかり確認した上で細かい議論をやっていかなければいけないと思います。

 さきの委員の先生方からのお話の中にも出てきましたが、農協というのは、戦後の農地改革、その流れの中でできてきた。その当時の資料を見ますと、GHQが当時の日本政府に命令を出している文書がありまして、昭和二十年十二月の文書なんです。

 その文書を少し私は読んでみたんですが、当時の状況として、日本の全人口のほとんど半分が農耕に従事をしている、そして、その農家のほぼ半分が一・五エーカー以下の土地を耕作している。一・五エーカーといいますと、大体百メートル掛ける六十メートルぐらいなのかなと思うのですが、そこに終戦直後の小作人の制度があって、全ての農家の半分以上の農家が農業所得のみでは生活をすることができなかった。

 農家の方が苦しい、農業だけではやっていけないという状況は、なかなか今もそういう状況だなと思わざるを得ないところもあるんですが、そういう状況からスタートして、農地解放、農協ができて、先ほど委員の先生からも御指摘がありましたが、農業者が独立して自主的にやっていくということで農業委員会ができた、そういう理解でおります。

 大きい改革をしていくときに、私も以前から質問させていただいております農地のことについて、まず考えさせていただきたいんです。

 私は、耕作放棄地の解消というものは非常に大切だと思っておりますし、前回は、何か税制措置の方でそういった耕作放棄地の解消をすることはできないかというお話をさせていただいたんですが、農地も、昭和三十年代の六百九万ヘクタールをピークに減り続けておりまして、現在は四百五十五万ヘクタールだと伺っております。

 また、農地の中にも、実際耕作をされていない、生産調整でありますとか、農家の方が御病気をされたりして、暫時耕作を休んでいるような土地もあると伺っております。

 そうした中で、耕作放棄地が約四十万ヘクタールある。そのうちの十五万ヘクタールがいわゆる遊休農地と言われて、農業委員会の方がこの遊休農地について農家の方に利用意向の調査をして、そして、農地中間管理機構への貸し付けを誘導したり、そういうことをやっているという説明を受けておりまして、私も、それはまことにそのとおりだなとは思っております。

 一つ、三月の十九日に伺ったお話で、ちょっと私が不勉強だったのか、確認をさせていただきたいんですが、三月十九日の局長にいただいた御答弁、御説明ですと、いわゆる耕作放棄地というものが、平成二十五年の数字で二十七・三万ヘクタール、この中で、再生利用可能なものが十三・八万ヘクタールで、再生利用困難なものが十三・五万ヘクタールあるということでありまして、きのう、ちょっと農水省の方に来ていただいて確認したのは最初に説明したんですけれども、耕作放棄地は四十万ヘクタールあって、そのうちの遊休農地、この十五万というのはざっくりした数字で、実際は十五万までいっていないと思うんですけれども、三月の答弁とちょっと私の理解が何かずれがあるようでしたら、教えていただきたいと思います。

奥原政府参考人 この問題は、言葉の定義がいろいろございまして、ちょっと混乱を招いているのかもしれませんけれども、一つは、農業センサスでもって耕作放棄地というものを調べております。この調査は、五年に一回なんですけれども、農家の方に主観的にどうかということを聞く調査でございます。以前耕地であったもので、過去一年以上作物を栽培せず、しかも、この数年の間に再び耕作する意思のない土地、こういうことで農家の方に伺っておりまして、農家が耕作放棄地だと自分で判断しているものを集計したものが、これは二十二年の数字が最新でございますが、この数字だと三十九万六千ヘクタール、農家の主観ベースの数字でございます。

 これとは別に、市町村と農業委員会の方が毎年調べている、荒廃農地というふうにも言っておりますし、それから農地法上の遊休農地の調査にも該当する部分がございますけれども、こちらの方でいきますと、荒廃農地が全体で二十七万三千ヘクタールございます。この中で、ちょっと手を加えれば再生利用が可能だというところが十三万八千ヘクタール、それから、再生利用は不可能だというふうに思われるところが十三・五万ヘクタール、こういうことでございます。

 主観的な農家の調査か、客観的に市町村、農業委員会が調べた数字か、こういう違いでございます。

井出委員 その主観的な調査だと、耕作放棄地が四十万ヘクタール弱。そうしますと、市町村と農業委員会が調査をされている客観的な、今、荒廃農地というお話がありましたが、その荒廃農地のことを前回御説明いただいたということになるのかと思うんです。

 そうしますと、耕作放棄地というのは、主観的なものが四十万ヘクタールあって、そのうち遊休農地というものが十五万まで至らないけれどもありまして、それを除いたものが荒廃農地で、さらに今御説明のあった再生可能と再生困難なものに分けられるというような、そういう理解でよろしいでしょうか。

奥原政府参考人 センサスで調べております主観的な耕作放棄地は、農家の方に回答していただいたものを集計して、どのくらいになるかを見ているだけでございます。

 一方で、毎年、市町村と農業委員会が調べておりますのは、これは、この圃場そのものが荒廃農地かどうかを一つ一つ確認しているわけです。

 農業委員会は、農地台帳というものをつくっておりますけれども、どこの区画の農地が今荒廃農地になっているかどうか、こういうことを一つ一つ確認して記録をしているわけです。

 最近、農地情報についてはインターネットで見ることができるようになっておりますので、かなり情報公開も進んでおりますけれども、我々の施策の対象としている、要するに、ここは今つくられていないので耕作するようにしましょう、あるいは、その方に担い手のところに農地を貸していただくようにしましょうという対象は客観的なベースでございます。

 したがいまして、この荒廃農地、これは再生可能なものが十三万八千と、再生が不能な方は、これは手続を経て非農地の方に編入していかなきゃいけないものですけれども、これが十三万五千あるということでございます。

 この再生可能な十三万八千ヘクタールぐらいというのは、農地法上の遊休農地、これは二種類あるんですけれども、つくられていないという一号遊休農地と、つくってはいるんだけれども捨てづくり的なものという二号遊休農地とございますが、この一号遊休農地と今の再生可能な荒廃農地が大体同じものということでございます。

井出委員 一号の遊休農地が、今お話にあった、十三万何がしヘクタールあるということは私も確認をさせていただいておりまして、二号も若干あるということなんですけれども、遊休農地は客観的な判断で定義されていると思うんですね。

 だから、主観的に見た耕作放棄地というのが四十万。私の理解ですと、その四十万の中に、遊休農地と今おっしゃった、ちょっと足し算すると四十にならないなと思って困っておるんですけれども、足し算できるものではないのかどうか、教えていただきたいと思います。

奥原政府参考人 これは、センサスの耕作放棄地というものがやはりちょっと特殊なものだと思います。

 要するに、こういう定義ですよということをセンサスの調査票の中で書いた上で、農家の方に対して、こういう耕作放棄地という概念に該当するものをあなたのところでどれだけお持ちですかということを聞いて、答えていただいた数字というだけなんですね。これを集計したら、確かに三十九万六千ヘクタールでございます。

 この中には、主観ですから、農家の方の理解の仕方によっていろいろなものが入っているかもしれません。例えば、生産調整の一環として、ことしはちょっとつくっていないだけとかいうようなもの、そういうようなものも入っている可能性もございますので、これと客観的な数字を並べて、内訳がどれであるというか、そういうことを整理するのはなかなか難しいものではないかなと思っております。

井出委員 そうすると、耕作放棄地を解消しようという議論をするときは、局長の御説明いただいた二十七・三万の荒廃農地の方で、再生可能なものとそうでないものが十三・数万ずつある。要は、どこに目をつけて解消していくのかというところなんです。

 では、荒廃農地の二十七・三万のうちの十三・八万ヘクタール再生可能な土地を頑張って解決していこう、そういうことでよろしいんでしょうか。

奥原政府参考人 政策のターゲットとして言えば、客観的に調べている荒廃農地でございます。

 この中で、再生が可能なところについては、当然、再生をしていただく方向で政策を進めてまいりますし、荒廃農地の中で、もう再生利用が不可能だ、木が相当生えていて、これは難しいというふうに判断されているところも十三万五千ヘクタールぐらいございますので、ここについては、基本的に手続を経た上で非農地の方に入れていく、そういうことを進めていく、こういうことでございます。

井出委員 もともと、全体で農地が減少傾向ですし、再生可能な荒廃農地というものは全体の中から見ればそんなに大きい数字ではないのかなという印象も持つんですけれども、ただ、再生困難な土地になってしまう前にしっかり手を打っていくということは、私も局長と同じ思いで、必要だと思っております。

 そこで、先日の十九日に、農地中間管理機構の実績等に関する資料というものをいただきまして、細かく分析をしていただきましたし、私が前に問題提起をさせていただいた、現場で動き回る職員がどこにどれだけいるのかというところもきちっと出していただけたものだと、その資料を読ませていただきました。

 ちょっとその資料に見当たらなかったので伺いたいのですが、農地中間管理機構の農地集約の取り組みとしても、荒廃農地の中で再生可能なものを中間管理機構で集約していくということも一つ大事な取り組みではないかなと思っておるんですが、そのあたりは一体、この一年、どのような取り組み状況だったのかを教えてください。

奥原政府参考人 農地の中間管理機構は、担い手への農地利用の集積、集約を図ることも一つの目的ですけれども、あわせまして、耕作放棄地、客観的な荒廃農地ができるだけ発生しないようにする、あるいは、発生しているところの中で再生可能なものはこれを使って再生していく、これも目的の中に入っていることでございます。

 しかしながら、今回のこの調査の中では、そこだけを取り出した調査をとりあえずはかけておりません。かなり膨大なものをいろいろ各県に出していただいておりますけれども、今回はお願いをしておりませんので、次のステップで、荒廃農地がどのくらい機構が借りたものの内訳としてあるか、そういったことをさらに調べていかなきゃいけないと思っておりますが、今回の調査には入っておりません。

井出委員 あともう一点、先ほど福島委員が御提示をされた資料で、私もおっと思って見ておったんですが、これは福島委員が農水省に依頼をしてつくっていただいた資料だと、先ほど先生御本人から教えていただきました。

 福島先生の資料の三枚目の一覧表になるんですが、全国各都道府県別に、「農業委員に占める認定農業者の割合」からずっと右に見ていきますと、四つ目に「遊休農地解消面積割合(二十四年度実績)」というものがありまして、残念ながら、一番上の全国の五・五%という解消率ですとか、なかなか厳しい数字が出ているなと思うんですが、荒廃農地を再活用していくというときに、この数字というものをどのようにお考えになっているのかというところを教えていただきたいと思います。

奥原政府参考人 既に発生している客観的な荒廃農地あるいは遊休農地のところにつきましては、できるだけ解消を図っていくということが必要でございます。

 その意味で、これは各農業委員会の方がホームページに載せている資料を集計してみたものなんですけれども、その地域の遊休農地、これはストックベースの遊休農地がある中で、この表に書いておりますのは、二十四年度にその農業委員会でもって管内で解消されたのがどのくらいあるかということでございますが、できるだけ解消に努めていただくということが重要であるというふうに思っております。

井出委員 農業委員会が取り組まれてきた遊休農地の解消策と、そして、今回は、数字として抽出、分析はこの一年はやってこなかったけれども、そういう視点も持っていきたいとさっきお話のあった中間管理機構の遊休農地解消に対する取り組みというものは、これは基本的にはこの一年間は別々でやって、これからもまた別々でやっていくという理解でよろしいのか、教えてください。

奥原政府参考人 この資料に載っておりますのは二十四年度の実績でございますから、この時点ではまだ農地中間管理機構はできていない、こういう状況でございます。

 その後、去年の三月以降、各県で順次農地中間管理機構が立ち上がって仕事をしているわけですので、そのときは、農業委員会とそれから中間管理機構は仕事の上で連動する可能性が当然ございます。農業委員会の方は、自分の管内の農地について毎年調べているわけでございますので、農地台帳もつくっていて、ここの圃場のところが荒廃農地になっているということが明確にわかっているわけですから。ですから、所有者の方にもいろいろ解消してもらうような働きかけをしますし、場合によっては、働きかけをするときに、自分で耕作をしないのであれば農地中間管理機構に貸していただいたらどうですかということもやるようになっているわけです。

 そのときには、農地中間管理機構がその方から農地を借りて、多少条件整備する必要があるかもしれませんけれども、場合によってはしないケースもありますが、その上で、担い手の方にその農地を貸して本当に耕作をしていただくということになるわけでございますので、今後うまく連動していけば、農業委員会と中間管理機構が連携をとることによって耕作放棄地の解消が進んでいくというふうに思っております。

井出委員 少し大きい方向性の話を大臣に伺いたいんですが、農地は昭和三十六年をピークに減ってまいりましたし、この傾向が続いていくとすれば、それがなかなか急にふえたりするということは、私は現実的には少し厳しいのかなという思いがあります。

 その中で、今議論をさせていただいていた、荒廃農地の中でも活用できるものをしていくということは非常に大事だと思うんですけれども、農地がこれからも減っていく中で対策を、これから農政を見ていくというその御認識、大臣もおありかどうかをちょっと御教示いただきたいと思います。

林国務大臣 荒廃農地ですが、先ほど、定義が少し複雑で、数字があれこれありましたけれども、森林の様相を呈してもう再生が難しいというものと再生可能なものに分けられて、再生可能なものについては再生を図っていくということでございますということは答弁したとおりであります。

 今後の農地面積ですが、これは農業基本計画をつくるときにもやっておりますが、近年の農地転用面積、それから荒廃農地の発生面積の趨勢、こういうのをあわせまして、基本計画の期間における荒廃農地の発生の抑制、どれぐらい抑制するかということ、それから荒廃農地の再生等に係る施策の効果を踏まえて、平成三十七年の農地面積を、今現在四百五十二万なんですが、三十七年で農地面積を四百四十万ヘクタールと見通して、この計画に基づいてしっかりと施策をやっていきたい、そう考えておるところでございます。

井出委員 三十七年に四百四十万。自然に任せておけば減少してしまうだろうから、それをできるだけ守っていかれるという取り組みだと思うんですけれども、そのときに、やはりここでも再三問題提起させていただいているんですけれども、農地中間管理機構と農業委員会が二つ併存している。私は、前回、農業委員会の皆さんの現場に対する知見をおかりするべきだ、一体化した方がいいんじゃないか、そういうことを申し上げたんです。

 農地の減っていく現状、しかも、再生可能な荒廃農地というものは十四万ヘクタールに満たない、数字としても低いわけですよね。それは、一時の、何年か耕せるうちはいいですけれども、数年したらもう木が生えたり、そうなってしまったらもう終わりなわけですので、現場に知見のある方が迅速に対応していかなければいけないと思うんです。

 この農地の現状から見ても、やはり中間管理機構と農業委員会のあり方というものを私は考え直すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 この点につきましては、やはり農地中間管理機構と農業委員会がきちんと連携して進めていくということが非常に大事だと思っております。

 農地中間管理機構は、あくまでも、所有者の方から農地をお借りして、これをまとまった形で使いやすいようにして担い手の方に転貸をする、こういう権利の主体でございます。もちろん、自分が借りて転貸をするために、活動する体制をつくらなきゃいけませんので、機構本体の職員体制もございますし、それから、自分でできない分は、市町村、これは農業委員会を含めてですが、市町村なり農協なりいろいろなところに業務委託もできるようになっています。だから、委託先と機構本体とが連携をしていろいろな作業を進めていく。

 やはり、現場でもって、耕作放棄地の場合にも所有者の方ときちんと話し合っていただいて、機構に貸していただくというプロセスは当然必要になりますので、農業委員会がきちんと現場での活動をしていただいて、それを踏まえて、農地中間管理機構がそれを借りて担い手に転貸をする、そういう意味での連携がきちんと行われるということが非常に大事だというふうに思っております。

井出委員 大臣に伺いたいんですが、今度の法案の中に農業委員会の改革がある、人数を半分にして、さらにその人数の半分も認定農業者の方を入れていく。メンバーを縮小して大幅に入れかえるということだと思うんですけれども、私が農業委員会の方に言われるのは、今まで農政のために一生懸命やってきたのに、それをおっぽり出される、自分たちの仕事はなくなるんじゃないかと。

 農業委員会の皆さんは、中間管理機構の役割も理解はしているんですよ。理解はしているんですけれども、やはり、中間管理機構というものは各都道府県単位にあって、農業委員会の組織の数と比べれば、農業委員会の組織は市町村にそれぞれある状況からすれば、農業委員の方から見ても少し遠い存在である。もちろん連携しなければいけないとは言われていて、そこもやっているんですけれども、今まで一生懸命農政のためにそこに従ってやってきて、政府とも連携をとってやってきて、これをおっぽり出されるんじゃないかということは本当に多くの方から言われるんですね。

 そういう思いを酌み取るためにも、私は、一本化するということ、現場で頑張ってくださっている、現場の農地について詳しい知見を持っている農業委員会の皆さんのそのお力をかりる、生かすと言ったら失礼ですので、お力を発揮していただく場が中間管理機構の中でもつくれるんじゃないか、そういう制度設計ができるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

林国務大臣 いろいろな御意見があることは承知をしておりますし、それを聞きながら、この案を最終的につくったとき、私は党におりまして取りまとめの役もやっておりましたので、何回もヒアリングをさせていただいたところでございまして、そういう声を受けながら、丁寧に運用はしていかなきゃいけません。

 農家の方を公選というのは、今度選任制に変わりますが、やはり代表した方がなってもらうという考え方自体をしっかりと残していってやっていこうということで、地域からいろいろ推薦していただいたり公募したり、こういう形になっているわけでございまして、農業委員会の皆さんの方も、そういうことで、これでやっていこうということになった、こういうことでもあるかというふうに理解をしております。

 いわば中間管理機構、農地バンクというのは、あくまで県がディベロッパー的にやっていこうということでやる主体でございますので、農家の皆さんの代表をしているというところが、組織の成り立ちとして少し違うのではないのかな。

 したがって、ちょっと乱暴な例えをすると、もう市の仕事は市長さんがやるので、議会は市長と一体化すればどうか、こういうふうなことに、もし揚げ足をとろうと私が思えばそういう言い方をするかもしれないなと思いながら聞いておりました。

 やはり、今局長から答弁いたしましたように、農業委員会、独立行政委員会という立場と、それから、中間管理機構というものがしっかりと連携をしていくことによって所期の目的をさらに達成をしていくということが重要ではないか、こういうふうに考えております。

井出委員 農業委員会の皆さんが、自分たちが放り出されるんじゃないか、そういう不安を持っている。

 私は、今回、農業委員会を、その中身を変えてこれからも存続させていくという案だと思うんですけれども、この案を見ていると、いずれ大きな方向性として、今だって、農地集約のメーンは中間管理機構だ、そのことは明言されているんですよ。

 中間管理機構の方が機能していけば、農業委員会がさらに形骸化をしてしまうのではないか。形骸化してしまうことが事実となってこれから先出てくれば、次に農業委員会に待ち受けているのは何かといえば、もうこれはほっぽり出されたとかそういう話じゃなくて、農業委員会をなくそうというような話も出てくるんじゃないか。そこまで不安を感じて、俺たち今まで一生懸命やってきたのにと、そういう声を上げていただいているんじゃないかと思うんです。

 そこで、私は、中間管理機構が動き出して、一年やってみて、現場で動き回る方もまだ少ない、そういう状況の中で、農業委員会の皆さんのお力をかりることは今が一番チャンスではないかなと思うんです。そういう問題提起をさせていただきたいんですけれども、いかがでしょうか。

奥原政府参考人 その点は、先生御指摘のとおりだと思います。

 それから、今回の農業委員会の改革は、やはり、農業委員会をもっと活性化して、地域の農地の問題の解決に本当に貢献するものになっていただきたいという思いでの改革でございます。

 先ほど、農業委員の数を減らすというお話がございましたけれども、法律の中に人数が書いてあるわけじゃございませんが、方向としては、従来、農業委員一本で、集まって許認可を決定する行為と、それから、それぞれの委員の方々が地域でもって、耕作放棄地が発生しない、あるいは発生している場合には解消する、あるいは、農地の出物があるときに担い手のところに移していくという現場の活動に取り組んでこられました。

 だから、ここのところを分けて、集まって多数決で決めていただく許認可のことを中心にやる方と、それから、それぞれの地域でもって現場で動いていただく方を二つに分けた方がもっと効率的ではないか、目的を達するんではないかということで、農業委員本体と農地利用最適化推進委員という二つの体系に分けました。トータルの人数としては、我々が意図しているのは、トータルがふえることを意図しております。

 そうやって現場でもって動いていただいて、この方々が中間管理機構と本当に連携してやっていただけば、中間管理機構は県に一つでございますし、そこの機構の職員だけで物すごくたくさんの人数ということにはなかなかなりません。やはり、現場の農業委員会、市町村の方々といろいろ連携しながらやっていかなきゃいけませんので、そのために、業務委託のための予算措置まで講じているわけでございます。

 そういう意味では、農業委員の方々にはこれからもしっかりやっていただきたいと思いますし、特に中間管理機構との連携、一年目の数字が出てきましたので、これはまだまだやらなければいけないという状況でございます。

 ぜひ、農業委員会のメンバーの方々に今回真剣に取り組んでいただきたいなと思っております。

井出委員 そうすると、今、農業委員会の活性化というお話がありまして、農業委員会の制度の中身を変えていこう、若い方ですとか、性別についても、女性に入っていただくというようなことも想定されていると思うんですけれども、ただ、農地を集約して、限られた農地、その中でうんと限られた耕作放棄地、使えなくなるかならないか瀬戸際のものもありますよ、どんどん農地が減っていく中で、メーンを中間管理機構に置くわけですよね。

 では、これからの日本の農地を少しでも減らないように、三十七年に四百四十万を維持するために、その役割のメーンを担っていくのは中間管理機構なんですよね、農業委員会じゃないんですよね。

奥原政府参考人 農地中間管理機構は基本的には所有者の方から農地を借りて転貸をする、そういう主体なんですね、権利の主体として各県に一つずつこの機構というのを整備しました。

 もちろん、職員の体制はありますけれども、この体制だけで全部できるわけじゃありませんので、現場でコーディネートする活動というのはいろいろな方々にやはりやっていただかなきゃいけない。これは関係の機関が総力を挙げてやるような、そういう仕事だと思っております。その中で、やはり市町村の農林課もございますけれども、市町村の独立行政委員会としての農業委員会、これは人と農地の問題をやるのが使命のところでございますので、ここがきちんと仕事をしていただくことが極めて重要だというふうに思っております。

 だから、権利の主体の話と現場で動く体制の話は両方必要だというふうに思っております。

井出委員 私が心配をしておりますのは、これから農業委員会の委員の皆さんのところにそういう農地に関する相談があったときに、連携をしなきゃいかぬ、そういう意識は十分持ってもらっておりますので、まずバンクの方に言ってみろと、それなりの財政措置もありますから、中間管理機構の方に集約されていくことがあるのかなと思うんです。

 だから、連携というと確かにいい言葉なんですけれども、やはり、事実上農業委員会の仕事がなくなっちゃうなという危機感はどうしてもあるんですよ。だったら、今だったら、今まで長年農業委員の皆さんが地元を把握されてきた知見を中間管理機構の方にも生かせるんじゃないか、今までやってきた方々の力というものをこれからも生かして、力をかりられる部分はやはりかりていった方が私はいいと思うんですね。

 これは農協についても同じことが言えると思うんですよ。

 先日、きのうきょうですか、農協の政治的中立性の話も出ておりましたが、私のところは非常に中立的ですよ。私もいろいろなところに呼んでいただいて、時には、政策的なものが違うので、配っていただいた鉢巻きを私一人だけ巻けないときもあるんですよ。だけれども、それでも話を、最近もまたTPPの関係で呼んでいただいて、いろいろ御相談いただいたんですけれども、農協の方なんかはもっと、今まで本当に農政のために、政府に言われるようにやってきた、それをもう、俺たちはぶっ壊されちゃうんじゃないかと。私がそれを、いやいや、そんな、ちょっと待ってくださいよと言うのもなかなか、まあ、私も言うんですよ、野党ですけれども、国会の立場ですからそういうことを言うんです。

 まず、そういう大きな不安に対して、今の農業委員会もそうです、農協もそうなんですけれども、今までやってきた人たちの大きな不安に対して、しっかりと大臣の方からメッセージを出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

林国務大臣 これは、党に半年おったときも、いろいろなところへ出かけていったときには注意して必ず言うようにしておりますが、農協をなくそうということはありません、こういうことを現場で常々申し上げてきたところでございますし、先ほど来御議論をいたしておりますように、地域の農協がもっと自由に、いろいろな創意工夫ができるようにしていこう、むしろ、地域の農協をもっと生き生きと、強くしていくんです、こういう話を実はしていたところでございます。

 ただ、今委員がおっしゃるように、昨年の六月に大枠が決まった後、実は、この正月ぐらいから、最後の残った論点、中央会の監査のところを中心に議論がなされましたので、それ以外のところは、そこまでに決まっていたことも随分ありましたし、その後、農協の方で自己改革案というものも出されておりますので、そこはもうやらないのではなくて、やることが決まっていたので議論になっていなかった。

 そして、議論になったのでマスコミの焦点が当たって、記事の見出しになったところは先ほどの中央会の監査のところが中心であったということもあって、それだけをごらんになると、あたかも今委員がおっしゃったような不安を持たれるというのもこれはあるんだろうなと思いまして、この法案が成立した暁には、しっかりと中身を説明するということは、今からも意を用いて、しっかりとやっていきたいと思っておるところでございます。

井出委員 時代の状況に合った改革というものを御提起されることは大変必要だと思いますし、その中身についてはこれからの議論になりますけれども、まず、きょうは、今までやってこられた方のお力、その力を生かせるところは引き続き生かしていった方がいいだろう、そういう提起をさせていただいて、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

江藤委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 先日、六次産業化の取り組みで米の加工と販売を行っている米工房を立ち上げましたある県の農事組合法人のところへお話を伺いに行ってきたんです。そもそもは、女性グループの方々からみそをつくりたいという要望が出されて、当時の県の支援事業を使って加工場をつくったそうです。みそ以外にも、今度は米粉を使った商品などもつくり、広げて、道の駅とか大手のスーパーなどにも展開していったとのことでした。その農事組合法人の方なんですけれども、この後、米のブランド化も進めてきたところで、今度は株式会社も設立して、販売事業も力を入れるというふうなお話だったんです。

 さらにいろいろ聞きまして、集落に若い人が減ってきているということもあって、何とか雇用の場を確保できないかという思いもあるんだという話を伺ってきたんですね。ですから、経営についても率直にいろいろ聞かせていただきまして、比較的順風なのかなと思って話を聞くと、いやいや、つくった商品もこれまた売れなくて、販売面ではなかなか苦労しているんだというお話でした。

 あわせて、今回の農協法にかかわる関係や問題意識も伺ってきました。とめどなく話が出てくるわけです。農薬や肥料が高いんだとか、もっと農協が農家を束ねて戦略的に販売をしてくれだとか、こういう話は、私も行く先々でいろいろと問題意識は聞くわけなんです。だけれども、もちろん、農協は不要だとは思っていないし、農家のための農協という原点を進んでほしいというお話を伺ってきました。今回、法改正までやる必要があるのかという点では、私も疑問に思っています。

 今のような実態や話などは、私も北海道でも聞いてきたし、これはどの党を問わず、いろいろと、きょうも議論が出されているように、共通して出されているような疑問であろうというふうに思うんですね。ですから、これから質問でも触れていきたいと思うんですが、農協の方に問題があるのであれば、それは系統組織や組合員を信頼して、自主的な改革を進めていくことでいいのではないかというふうに私は思っています。

 それは、組合員自身に基づく自主的な改革と、今回のように、法改正までして行う改革との違いは何なのかということで、多くの農家の方も知りたがったり、不安が生まれています。この改革が、焦点にもなっている自分たちの経営や所得の向上に本当にどうかかわっていくのか、理解ができないという声も根強くあります。

 しかも、農協法だけでなく、農業委員会、そして農地のことでもセットで変えるとなれば、渦中にいる生産者からすれば、自分たちの経営だけでなく、農業や地域そのものがどうなるかということを知りたがるのも当然だと思います。ただでさえTPPで次々と具体的な数字が出てくる中で、規模の大小を問わず、不安の声が広がるのも当然だというふうに思います。

 きょうは、最初に言いたいことを全部言いましたので、具体的にこのような疑問や不安をもとにして聞き込んでいくということを中心に行っていきたいというふうに思います。

 まず初めに、十四日の本会議で私が行った代表質問に総理が答弁した内容について、まず協同組合の原則にかかわる点で質問を行います。

 私が、政府自身、国際協同組合年の二〇一二年に協同組合の価値と原則を尊重していたではないかということを指摘して、この協同組合の仕組みについての認識を質問いたしました。それへの答弁は、今回の農協改革は、国際協同組合同盟、ICAの声明にある協同組合原則にも合致するというものでした。

 どこの部分で合致しているのか、まず具体的にお答えください。

小泉副大臣 国際協同の関係でございますが、ICA、この原則の第二原則は、組合員による民主的な管理でございまして、これは、組合員は平等の表決権、一人一票ですね、これをお持ちになっているわけでありますので、協同組合が民主的な方法で管理されることを要求しているわけであります。

 この点につきましては、今回の改革では、地域農協の理事の過半数を認定農業者などにすることを求めているが、これは、農業者の協同組織として、責任ある経営体制とするものでございまして、運営が一人一票制により民主的に行われることに変わりはないためということで、この第二原則に合致していると考えているわけであります。

 また、ICAの協同組合原則の第四原則でございますが、自主自立でございまして、これは、協同組合は組合員が管理する自助自立の組織でございます。組合員による民主的な管理を確保し、また、組合の自主性を保つことを要求しているわけであります。

 この点につきましては、これまでの中央会制度は、法律によりまして、行政にかわって指導や監査する権限を与えられまして、全国や都道府県に一つに限り設置するなど、真に自主的な組織とは言えなかったとあります。今回の改革によりまして、自律的な新たな制度に移行することとしていることから、この第四原則に合致することと考えております。

 さらに、ICAの協同組合原則の第七原則でございますが、地域社会へのかかわりでございまして、これは、協同組合が地域社会の持続可能な発展に努めることを要求しているわけであります。

 この点につきましては、今回の改革は、地域農協が農産物販売等を積極的に行い、農業者の所得向上に全力投球できるようにすることで地域農業の発展に寄与することとともに、地域農協の実際上果たしている地域のインフラとしての機能も否定するものではないため、この第七原則にも合致すると考えております。

畠山委員 論点はいろいろあるかと思うんですけれども、きょうは、少し質問を進めたいと思うんですね。

 このICAというのは、一八九五年に設立されて、御存じのように、国連への提言も行う、歴史や知見を持った組織です。今、第二、第四、第七まで述べられましたが、第七原則までありまして、もちろんその中身というものには、今言ったように、歴史や国際的な重みがあるというふうに思っています。

 大臣に伺いますが、先ほどされた答弁と同じ認識でよろしいか、確認したいと思います。

林国務大臣 副大臣が答弁したとおりでございます。

畠山委員 今、第二、第四、第七だけ、なぜ引き抜いたのかというふうに思うんです。

 これは二〇一四年十月九日のICA理事会で、その段階ででしたけれども、見通される農協法の改正の方向性について、ICA原則への侵害があると指摘された項目があって、それに対応する形で合致するようにしたという答弁だというふうに思うんですね。

 その一つに、最初に述べられました第二原則、これは組合員による民主的な管理というのがありまして、当時の指摘ですけれども、組合員はその活動を発展させるための最もよいやり方を自分たち自身で決めなければならないと述べて、つづめて言えば、組合員抜きで決められることはあってはならないよという指摘が当時されたというふうに思うんです。

 大臣に伺います。

 今回、全中が十一月に改革案も出して、さまざまな、与党も含めた合意をされた上で法案を出したというふうに経過は承知はしているわけですけれども、組合員も含めてそういった議論や合意ができてきたという認識を伺いたいのですが、いかがですか。

林国務大臣 今の御質問は、この法案をつくる過程、もしくはこの案をつくる過程において農協の皆さんの意見がどういうふうに反映されたか、こういう御質問である、こういうふうに思います。

 当時私は、去年の九月三日から、この二月二十三日に戻ってくるまでは、党の方の農林水産戦略調査会という立場でございました。党でも何度もヒアリングをやりまして、そして党内の議論もそのヒアリングをベースにやってまいりましたし、党の役員、それから全中の幹部の皆さんとも何度も意見交換会をやりまして、そして最終的には、この案につきまして、向こうの役員の皆さんとお話をさせていただいた上で、正式に全中の理事会でこれを受け入れるということをお決めいただいた、こういう経緯だったというふうに承知をしております。

畠山委員 全中から十一月に改革案も示されて、県によっていろいろあったのかもしれませんけれども、単協あるいは組合員のところまで議論する時間がなかったというふうに私は聞くわけです。末端の組合員まで議論が尽くされたのかという点ではいろいろなことがあるかと思うんですけれども、例えば私の選挙区のJA北海道では、JA北海道独自の改革プランも九月ころから議論をしてきて、理事会や青年部、女性部などでも議論を詰めてきたというふうなお話も伺いましたが、それでも時間が足りなかったという声を組合員からも聞いております。

 確認ですけれども、こういう現状、少なくとも今組合員のそういう声が出るという現状が、先ほどのICAの原則にある最もよいやり方を自分たち自身で決めるという点で合致するのかどうか、その議論や組合員などの合意の上に成り立った現状と思っているかどうか、改めて大臣の認識を伺います。

林国務大臣 これは、農協の系統の役員の皆さんから常々言われたことですが、大きな組織なのでやはり中でいろいろと議論するのに時間がかかるんです、こういうことを常々おっしゃっておられました。したがって、昨年の六月に大きな方向性をまとめ、それから、それを受けた形で、農協の中で自己改革をまとめられる間も時間をかけて御議論されたもの、こういうふうに承知をしております。

 したがって、我々としては、そういう手続を踏んで、最終的には理事会で、先ほど申し上げたように、決定をしていただいた、こういう認識は持っておりますけれども、その中で、どの地域でどれぐらいの御議論をされたのかというのは、必ずしも今この時点で詳細に把握を私のところでしておるわけではございませんので、いろいろな意見があるということは、先生はお聞きになったということは今お聞きしましたけれども、基本的には農協の系統の組織の中で話し合いをされて、最終的に理事会で決定をされたもの、こういうふうに理解をしております。

畠山委員 少し古い資料で恐縮なんですけれども、二〇〇二年の四月に、全中がJAの活動に関する全国一斉調査というのを行っています。なぜこれを引き合いにしたかというと、農協は県によっていろいろというのはありますけれども、多様なルートで意見の集約を図るルートや工夫というのをされてきている蓄積があるんですよね。

 このときは、例えば准組合員の農協運営への参画について聞いたもので、総会の出席を認めているのが二九・一%あるとか、あるいは集落座談会への参加も四二・〇%でやっているとか、こういうさまざまな形で意見の集約や反映ということを行ってきた組織としての蓄積を持つJAで、先ほど述べたような、議論の時間をとれなかったという意見がある事実を重く見るべきであることだけをまず指摘しておきたいと思います。

 あわせて、本会議のときの質問ですが、別の議員の質問への答弁で、総理が、農協は農業者が自主的に設立する組織だとも述べています。きょうも林大臣からそのような答弁がございました。組織という以上、その中心となる役員の構成は重要でして、農協でいえば、一つのかなめは理事であるというふうに思います。

 改正案では、その理事について、過半数を、原則として、認定農業者や、農産物販売や経営のいわゆるプロとすることを求めています。きょうも議論がありましたけれども、改めて、農産物販売や経営のプロとはどういう人たちのことを指すのか、御答弁ください。

林国務大臣 今お話がありましたように、今回の農協改革では、地域農協が、担い手農業者の意向も踏まえて、農業所得の増大に配慮した経済活動を積極的に行えるようにするために、農協の理事の過半数を、原則として、認定農業者、農産物の販売や経営に関し実践的な能力を有する者とすることを求める規定を置くことになっております。

 認定農業者については、担い手の意向を農業の業務執行に反映していくことを目的として、また、実践的な能力を有する者については、大口の事業者等と渡り合って農産物の有利販売等を実現することを目的としておるわけでございます。

 先ほども、稲津委員のときにお答えしたように、こういう原則を定めましたので、どういう方を具体的に任命するのかというのは、それぞれの地域農協、販売の方向とか経営の方向というのがそれぞれあると思いますので、それにきちっと合致をして、農産物販売事業等を発展させる観点に立って、適切な人物をそれぞれ役員として選出していただく、このことが重要だと考えております。

畠山委員 この点に関して、私の方から本会議で質問した際の答弁でも、それぞれのところで農業所得の増大に向けて事業運営を行っていく観点からのものでもあるという答弁がされました。

 先ほど述べたように、それぞれの組織の中心ともなる役員、今回でいえば、理事の要件ということは、本来は組織の内部自治に委ねるべきものであるというふうに思うんですが、今回、政策上の考えから改革するものであるというふうに思います。

 今でも経済事業が良好な農協もありますし、その先例に学びながら経営していくということなら、アドバイザーであったりコンサルタントのようなものを招くということでも十分ではないのかという指摘があると思います。

 全中の十一月の自己改革案でも、ガバナンス強化の項のところに、販売や経営など多様な分野の専門的な知見を有する学識経験者の活用と示されております。

 この点について、何でアドバイザーではだめなんでしょうか、なぜここまでする必要があるのか、改めて伺います。

奥原政府参考人 それぞれの農協で農産物の有利販売に本当に責任を持って取り組んでいただくということが必要でございますが、そのときに、経営責任を持っている方は誰かということだと思います。

 それは、基本的には、農協法上、役員の体制は法律の中で決まっておりますので、この役員の方が経営責任を負っている。これは、農協に限らず、会社においても、あるいはほかの協同組合においても同じだと思いますが、この方々がきちんと責任を持って判断をして、いろいろな工夫をしていただく。そういう体制をつくるためには、アドバイザーという法律に位置づけられない役員ではなくて、正式な理事というところにこの枠組みをはめていくということが必要であるというふうに考えております。

畠山委員 今、経営責任という言葉がありまして、そのとおり、部分的にはそうですよね、理事には議決権ももちろん伴いますし。

 ただ、今回の、こうやって理事の要件を変えるという点では、後で触れますけれども、第八条に、目的にかかわるところで、収益を上げることに責任を負うようなことだけであってはならないわけです。収益を上げることが必要だからと役員の要件を政策的に変えていく。もう少し別な言い方をしますと、その時々の政府の政策によって、きょうは、最初から議論してきた協同組合の原則を変えることになっていかないか。

 きょうの質問を準備する上で、ほかの国の協同組合についても私は調べましたけれども、基本法にかかわっては、とりわけ内部自治や性格にかかわることは極めて抑制的に議論や法の制度がされているというふうに思うんです。

 今言ったような形で、経営責任にこのような、かかわるという答弁でしたけれども、一方で、先ほどから述べている協同組合の内部自治の原則と合致しているというふうに、大臣はどのように御判断されますか。

林国務大臣 そもそも、農業協同組合の目的というのは、農業者の利便の向上、こういうことが書かれておるわけでございますので、その目的を達成するためにどういうことにならなければならないのかということを改めて規定をさせていただいて、その選任については、先ほど申し上げましたように、これに委ねる、こういうふうになっておりますので、先ほど来御議論がありますように、この自治の原則というのが貫かれている、こういうふうに理解をしております。

畠山委員 今、目的の話が出ましたので、あわせて、時間も残りわずかですので、現行法の第八条とかかわって一緒に質問をしたいと思います。

 現行法第八条を今回削除するわけですけれども、改めてその理由を、これは事務方で結構ですので、端的にお答えください。

奥原政府参考人 現行第八条のところに、農協は、「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という規定がございます。この趣旨は、株式会社のように、出資配当を目的として事業を行ってはならない、こういう意味でございます。

 これは法制的に大体確定をした解釈でございますけれども、出資配当を目的として事業を行ってはならない、この趣旨につきましては、この条文だけではございませんで、出資配当に上限を設ける規定が従来から置かれております。農協法の五十二条第二項でございまして、この点は今回全く改正をしておりません。出資配当の上限は今後とも設けられます。

 現在の「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という、この書きぶりにつきまして、趣旨は先ほど申し上げたとおりですけれども、そもそも農協は利益を得てはならない、あるいはもうけてはいけないんだといったような解釈がされている側面もございます。

 その結果として、農産物を有利に販売しようという意欲が十分でないということもございますので、今回の改正では、誤解を生んでおりますこの規定の部分を削除いたしまして、農協が農産物の有利販売等に積極的に取り組んでいただくということを促すために、これに追加をいたしまして、組合は、事業の実施に当たり、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければいけないということを追加いたします。

 それから、組合は、農産物の販売等において、事業の的確な遂行により高い収益性を実現し、その収益で、事業の成長発展を図るための投資または事業利用分量配当に充てるよう努めなければいけないというのを追加して、これを新しい第七条にしているということでございます。

畠山委員 解釈で、利益を上げてはならないというふうに、いわば誤解が生じるような、さまざまレクなどでも聞いてきたんですけれども、いろいろな農協やその関係者から聞きますけれども、そういう利益を上げちゃだめだという誤解などは聞いたことがないです。

 今、条文を挙げられた改正法では、より高い収益性の実現に努める旨が書かれていて、現行法では、協同組合が上げる経済上の利益は剰余と言ってきたはずです。

 確認になりますけれども、収益と剰余の違いは、今回の法においては、何が違って、何でこのような違う言葉を使うようにしたのでしょうか。

奥原政府参考人 農協法の中では、何カ所か剰余金という言葉を使っております。

 この剰余金という言葉は、組合の経済的な事業活動によるものだけではなくて、例えば遊休資産の売却とか、こういった臨時の取引により生じたものを含めて、決算の結果計上された利益、これを剰余金という言葉で呼んでおります。この剰余金をベースにして配当するとか、そういうことが規定をされているということでございます。

 今回の改正後の第七条、八条を改正して七条に変えるわけですけれども、この七条の中では、農協の事業の目的に農業所得の増大を規定して、それを実現するために、的確な事業活動によりもうけを出して、それを組合員に還元していく、こういう趣旨におきまして、決算の結果としての剰余金ではない、収益という言葉を使っているということでございます。

畠山委員 剰余としてきたのは、協同組合がさまざまな組合員への、現行の法には最大の奉仕という言葉が入っていて、その最大の奉仕を行った後に残るから剰余としてきたわけです。

 奉仕という言葉があるからこそ、例えば昨年度でも、米価下落に対する補填ができたりだとか、あるいは子牛価格が高騰して肥育農家が御苦労されている、その救済のために飼料の手数料の引き下げに取り組んだりするのに、期中における剰余の先取り的取り崩しとしてできてきたということがあったと思うんですね。これが、期末における最大限の収益、利益計上が目的となれば、今言ったような事業ができるのかという不安があるわけです。

 ですから、第八条の規定を削除し、変更するとなれば、期末の収益、利益を追求することが目的化して、限りなく株式会社化して接近するのではないかとか、今さまざまな論点や疑問が出されてきたというふうに思うんですね。

 時間になりましたので、この続きなども引き続き質問をしていきたいと思います。

 終わります。

    ―――――――――――――

江藤委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査の参考に資するため、議長に対し、委員派遣承認の申請を行うこととし、派遣地、派遣期間、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

江藤委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査中、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、その出席を求めることとし、人選及び日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

江藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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