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第4号 平成14年4月2日(火曜日)

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平成十四年四月二日(火曜日)
    午前九時三十二分開議
 出席委員
   委員長 玉置 一弥君
   理事 大野 松茂君 理事 仲村 正治君
   理事 浜田 靖一君 理事 山口 泰明君
   理事 末松 義規君 理事 渡辺  周君
   理事 田端 正広君 理事 藤島 正之君
      石破  茂君    岩屋  毅君
      臼井日出男君    瓦   力君
      木村 太郎君    虎島 和夫君
      中山 利生君    野呂田芳成君
      平沢 勝栄君    山本 公一君
      米田 建三君    伊藤 英成君
      石井 紘基君    江崎洋一郎君
      大出  彰君    前原 誠司君
      山谷えり子君    赤松 正雄君
      赤嶺 政賢君    今川 正美君
      小池百合子君    粟屋 敏信君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      中谷  元君
   内閣府副大臣       村田 吉隆君
   外務副大臣        植竹 繁雄君
   外務副大臣        杉浦 正健君
   防衛庁長官政務官     木村 太郎君
   会計検査院事務総局第二局
   長            増田 峯明君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    吉村 博人君
   政府参考人
   (警察庁警備局長)    漆間  巌君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   宮本 雄二君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            田中  均君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君
   政府参考人
   (外務省経済局長)   佐々江賢一郎君
   政府参考人
   (海上保安庁長官)    縄野 克彦君
   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二日
 辞任         補欠選任
  大出  彰君     石井 紘基君
  川端 達夫君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  石井 紘基君     大出  彰君
  山谷えり子君     川端 達夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)
 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――
玉置委員長 これより会議を開きます。
 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長吉村博人君、警察庁警備局長漆間巌君、防衛庁人事教育局長宇田川新一君、防衛施設庁長官嶋口武彦君、外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官宮本雄二君、外務省アジア大洋州局長田中均君、外務省北米局長藤崎一郎君、外務省経済局長佐々江賢一郎君及び海上保安庁長官縄野克彦君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長増田峯明君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
玉置委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
玉置委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小池百合子君。
小池委員 保守党、小池百合子でございます。よろしくお願いいたします。
 まず、中東問題でございます。
 三月三十一日夜でしたか、シャロン・イスラエルの首相が、イスラエルは現在戦争状態にあるということを宣言し、また、アラファト議長は我々の敵であるということを、エネミーという言葉を明確に使ったところでございます。そして、その言葉どおりに、ラマッラという議長府の置かれているその地に戦車等々を繰り出しまして、現実にアラファト議長を監禁状態に置いているという状況でございます。連日報道がされ、そして電気も水も食料もない、その状態に置かれているのが現在のアラファト議長でございます。
 外務大臣、きょうも勝負服でいらっしゃるようでございますけれども、毎日勝負ばかりで御苦労さまでございますが、引き続き全力で頑張っていただきたいと思います。
 その上でお聞きいたしますのが、せんだって、シャロン首相と直接電話で会談をされたということでございますけれども、日本側として何を要請されたのか、お答えいただきたいと思います。
川口国務大臣 私が三十一日の日曜日に会談をいたしましたのは、シャロン首相ではなくて、イスラエルのペレス外務大臣でございました。
 この会談におきまして、私から、イスラエル、パレスチナ間の暴力の悪循環が続いているという状況は非常に問題であると憂慮をしているということを申し上げて、イスラエル軍のパレスチナ侵攻あるいはアラファト議長府を取り囲むということは、事態の鎮静化には資さないというお話をさせていただきました。そして、イスラエル側のパレスチナ自治区からの即時撤退を含めた最大限の自制をイスラエルに要請したわけでございます。ジニ特使の活動に対して前向きに対応するようにというお話もさせていただきました。
 これに対しましてペレス外務大臣からは、パレスチナ側がとるべき過激派取り締まり、自爆テロの取り締まりを行わなかった、行っていない、そのためにイスラエルは今般の一連の行動をとらざるを得なかった、イスラエルは停戦にコミットしている、パレスチナ側がジニ特使の提案、仲介案に同意をして、自爆テロの停止を呼びかけるということであれば、自治区から撤退をする用意があるということを言われたわけでございます。
小池委員 早速日本からのメッセージを届けていただいたことは、タイミングとしても適切であったかと感じるわけでございますが、残念ながら、そういった国際世論に今イスラエルは耳を傾けるような状況にはないというのが現状でございます。
 特にアラファト議長と、そして先ほど私、聞き間違えました、ペレス外相でしたけれども、実際に首相をやっておられるシャロンさんとはもう長年の、特に八二年のベイルートの難民虐殺ですね、パレスチナ側から言いますと。大量虐殺等々の際の国防大臣であるシャロンさん、もう積年の怨念が怨念を呼びということで、個人的な怨念が八割ぐらい占めているのではないかと思うぐらい、あの両者の間の憎しみというのはすさまじいものがある。
 そして今、アメリカの態度も見ておりますと、どうも、まずアラファトを排除しよう、アラファト議長の排除ということが第一義的な目的となっているようでございます。これはいろいろな観点からそういったことは考えられるわけでございますが、さてそれでは、実際、そのアラファトさん、今守らなければ、その後の後継者問題、そしてパレスチナといってもいろいろな各勢力がうごめいているわけでございまして、その後、収拾がつかなくなるというようなことは十分考えられるわけでございます。その意味で、やはりアラファトさんはしっかりと守るべきではないかと考えているわけですが、外務大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。
川口国務大臣 私は昨晩、パウエル国務長官と電話で話をいたしました。それでアメリカの対応、アメリカはこの問題についてはかぎでございますので、アメリカにこの努力をしっかりやっていただきたいというお話もさせていただいたわけでございます。
 アラファト議長につきましては、イスラエルあるいはパレスチナ自治政府についてアメリカはいろいろなことを言っていますけれども、そういうことを繰り返された上で、アラファト議長を傷つけるということをしないということについてはイスラエルからきちんと確認をとっているということもおっしゃっていらっしゃいましたので、そういう意味で、委員がおっしゃられるような、アメリカがアラファト議長の排除を考えているということではないと私は思っておりますが、いずれにしても、これは私よりも委員の方がよく本当に御存じでいらっしゃると思いますけれども、非常に難しい問題、積年のさまざまな動きが絡まっている問題であると思います。なかなか厳しい、対応が困難な、国際社会として全部の国が協力をして対応していかなければいけない問題だと認識をしております。
小池委員 日本がやれること、やれないこと、やりにくいこと、さまざまあるかと思いますが、これは今、あの地域の方々にとりましては、イスラエルとパレスチナにとっては、第四次が中東戦争でございましたけれども、第五次戦争に入っているということ、そして、今後のさまざまな中東諸国への飛び火、例えばヨルダン、エジプトがイスラエルに送っている大使を引き揚げる等々の動きも出るやに聞いております。
 よって、今この事態を一刻も早く収拾をさせなければ、これはいろいろな飛び火があちこちに起こってくるということで、今その最善の努力をすべきではないかと思うわけで、国連の場でももっと日本からも訴えるべきではないかというふうに思っております。
 せんだっても国連の決議が出ておりますけれども、そういったことも今は全く飛んでしまっていまして、そして、その上で今の戦火が飛び交っている。そしてまた、自爆テロもそのままつながっている。
 私はいつもパレスチナの方には申し上げるんですが、若者がこうやって国のため、祖国をつくるために命を絶っているけれども、これはただただ若い命を失うだけにしか今なっていないじゃないかということも訴えて、ガンジーではないですけれども、むしろ、やるんだったら非暴力で徹底してやった方が迫力がありますよ、その方が効果がありますよというようなことも申し上げさせていただいて、国連の場において日本がもっと声を上げるべきではないかという件については、どのようにお考えになりますでしょうか。
川口国務大臣 国連の場で先日、決議が、一千四百二が採択をされたわけでございますけれども、そういった国連の場での努力に加えまして、我が国といたしましても、実は、きょうから茂田前イスラエル大使を私からの書簡を託しましてイスラエル及びパレスチナに派遣をいたしまして、関係者と話をしてもらうということにいたしております。
 そういった事態の鎮静化の努力も日本として行っておりまして、この点についても昨日パウエル国務長官にもお伝えをいたしましたけれども、現地でジニ特使との会談も行って、我が国としてできることをやっていきたいと考えております。
小池委員 ありがとうございました。
 中東情勢、日にち、時間がたつごとに――議長府、ラマッラというところ、ラマッラというのはそもそも地名で、アッラーのお望みという意味の地名でございますけれども、ぜひ、一人の人間としても、人道的な状況からいきましても、監禁状態、一国の一人の大統領に当たる人を監禁しているというのは尋常ではないわけでございまして、この事態を一刻も早く抜け出るように、また中東への広がり等々考えまして、今、外交の中でも、世界からすれば最大案件であるということ、これをしっかりと外務省として取り組んでいただきたいということを希望いたしておきます。
 続きまして、せんだってのこの安保委員会の中でも取り上げられております、また私も、随分長くこの問題を追いかけておりますけれども、朝銀問題について伺わせていただきたいと思います。
 せんだって、超党派の議員の方々、私も含めてでございますけれども、今回、公的資金注入に至ります中で、さまざまな問題が積み残しをされた中で、これまでと総計いたしますと約一兆円以上がつぎ込まれる計算になっていくわけでございますが、日本の金融機関であることには変わりがないわけでございますから、金融の法律にのっとった形で今それが進められているということでございます。
 さて、この場は安保委員会でございます。私は、安全保障の面からこの面をとらえるべきではないかということを延々と訴えてきているわけでございますが、まず金融の方から伺わせていただきたいんですが、超党派議連の方で、これまで多くが見つけられている架空口座について、イヤマークをつけて精査をすべきだということで、それをひとつ横へずらしておくということをお願いしたところでございます。
 聞くところによりますと、この朝銀は、仮名、架空、借名口座のたまり場でございまして、全体の六割ぐらいはいくんじゃないかというようなことまでうわさもされたことがございます。その後、精査もされたことと思いますけれども、現時点でこのいわゆる架空口座なるものにはどれほどのお金が関係してくるのか、数字でお答えをいただきたいと思います。
村田副大臣 朝銀への公的資金投入に関しましては、超党派の先生方から、例えば架空名義預金の真相解明について努めるべきだ、こういう御指摘を初めとしてさまざまな御指摘をちょうだいいたしまして、私どもといたしましては、破綻朝銀におきます架空名義等の真正権利者が把握されていない預金については実態把握に努めるべき、そういうことでございまして、現在、金融整理管財人におきまして実態解明に努めている、こういうことでございます。
 ただ、先生今、数字を教えてください、こういうことでございましたが、金融整理管財人におきましては、事業譲渡まで引き続き架空預金口座の実態解明に努めていくわけでございまして、現時点で確たる数字は申し上げることはできないということでございます。
 すなわち、新たな真正権利者、真正でない権利者と思われる口座が出てくると同時に解明が進んでいきますものですから、そういう意味で増減があるわけでございまして、数字のお答えは差し控えさせていただきたいと思っております。
小池委員 最後の部分のお答えだけでよかったんですけれどもね。
 ただ、百億程度だろうというようなこともうわさをされているわけでございまして、一兆円の中の百億円の話で、全く微々たるものでこの架空口座という形での仕分けをしようとしているというふうに承知をしているところでございます。
 この架空口座ということの中には、仮名、借名、それからこの利用者、組合の方々は、通称ということで日本名と、そしてもともとのお名前と両方持っておられるわけですね。どこからどこまで含んで調査をされているのか、お答えください。
村田副大臣 その前に、超党派の議員連盟の会合がありましたときに、朝銀東京の金融整理管財人から数字をその時点で申し上げまして、真正権利者がわからない預金というのは百六十六先、百七十七口座、四億八千二百万円でございますというふうにお答えした経緯があることだけ、冒頭、申し上げさせていただきたいと思います。
 真正権利者が把握されていない預金というその定義でございますが、仮名預金と借名預金と架空預金ということでございます。
 架空預金というのは、預金の事実がないという預金でございまして、この架空預金については、これまでのところ、把握がないという報告を受けております。仮名預金につきましては、本人が他人の名義、存在しないそういう名前を言っている場合でございまして、今おっしゃったようなものは借名預金、それが本人と確認されれば、何といいますか、朝鮮の名前であろうと、それから日本名であろうと、それは証拠によって確認されるわけですから、正直言いまして、それが借名預金になるのかどうかというのは私は即断できませんが、いずれそういうものにつきましては、証拠があれば解明されていくたぐいのものではないかというふうに思います。
小池委員 四億何がしということをおっしゃったのは私も記憶しておりますけれども、実際にこの信用組合をずっと使っている方々が、そんなはずはない、我々だってこんなに使ってきたんだというような証言は、もう山ほどあるんですね。四億しかないなんというのは、これは調査していないということに私は等しくなるのではないか。実際にその現場で御苦労されている方々の話も聞いておりますけれどもね。何かどうも違うというのが、前回の委員会からの引き続き多くの人が抱いている疑問ではないかと思います。
 けさほどの安保委の理事会で、それぞれ前回の積み残しの御報告をちょうだいいたしました。幾つかございましたけれども、要は、朝鮮総連とは何の関係もない人たちを新設の受け皿の金融機関の役員にする、それに当たっての調査が不十分ではないか、ましてやそれは単なる自己申告で、結果的に、はいそうですかという形で受けたのではないかということの質問に対して、「金融庁は、新設組合から既に、組合役員が学習組に属している事実はない、との回答を得ている。しかしながら、新設組合に対し、改めて法令に基づく報告徴求を行うとのことである。」、これは銀行法二十四条に従ってということでございます。それで、その調査、報告徴求、いつ行われるんですか。
村田副大臣 お答えがちょっと前後して申しわけありませんが、真正権利者が把握できない預金の実態、その数字につきましては、今後の手続になりますが、最終的に預金保険機構運営委員会によります資金援助の決定がなされる、その時点でははっきりと御報告ができることになろうかと思います。
 今の問題に対してのお答えでございますが、当委員会での御審議の過程を踏まえまして、私ども、改めまして銀行法二十四条に基づく報告を徴求したい、こういうふうに考えておりまして、本日、改めて新設組合に対してこの報告を徴求したい、こういうふうに考えております。
小池委員 その上でまた答えが返ってくるわけでございますけれども、先方にその調査を任せて、また同じ答えが返ってくるだけにすぎないのではないか、そして、それは金融庁が認可したことをまた正当化するだけのものではないのか。どんな調査を期待しておられるのか、また、金融庁側とすればどのような調査をされるのか。
村田副大臣 私ども、既に新設組合から、新設組合の役員が学習組に属していない、そういう回答を得ているわけでございますけれども、今回、協同組織金融業にかかわる法律に基づきます報告を徴するわけでございますが、それに基づきまして、私どもは改めて書面による報告を徴求する、こういうことでございます。ただ、先生からも御指摘のように、私ども金融庁といたしましては捜査権限を有するものではございませんので、私どもの手続といたしましては、報告を徴して再確認をする、こういうことであります。
 審査手続のそれ以上の具体的なやり方については御答弁を差し控えさせていただきますが、いずれにいたしましても、私どもは、協同組織金融にかかわる法律に基づきます報告徴求、あるいは立入検査まで及ぶわけでございますが、今後とも、監督という手続を経て本件の確実な実行というものを求めていきたい、こういうふうに考えているわけであります。
 いずれにしましても、これに違反する場合には一年未満の懲役それから罰金が三百万円ということになりますので、そういうことも申し述べさせていただきたいというふうに思っております。
小池委員 これは霞が関の縦割りではなくて、やはりそれぞれの得意の、得意といいましょうか、そういったことをずっと仕事としてやっておられる例えば警察、公安関係、そういったことに協力を仰ぐべきではないかと思うんですけれども、警備局長、この点での協力体制はいかがでございましょうか。
漆間政府参考人 学習組というのは、何度も申し上げていますが、非公然組織でございまして、情報収集活動によって我々は実態を把握しているわけでございます。
 金融庁から協力の依頼がある場合には、私どもの警察活動に支障が出ない範囲内で協力させていただきます。
小池委員 ぜひともこれ、協力体制をとってやっていただきたいと思うんですが、それに対してのお答えは。
村田副大臣 前回の委員会の後でも、私から改めて事務方に対して、協力体制をとるようにということを指示したところでございます。
小池委員 これを申し上げているのは、前回といいますか、最初に破綻したのが朝銀大阪なんですね。その破綻した朝銀大阪の受け皿となったのが新しくできた朝銀近畿でございまして、最初に破綻をしてそういったことに経営責任のある朝銀大阪の役員をそのまま横滑りで朝銀近畿の方の役員として迎えたという前例があるんですね。つまり、審査は十分せずに、ただただやっているのではないか。今回の新しいメンバーを見ましても、そういった破綻した銀行、信組にかかわっていた方々がそのまま横滑りしている例も見られるわけでございまして、これは学習組に関係しているかしていないかの問題ではなくて、前の破綻した経営責任を持っている、有している人がそのまま新しいところに入っていることは問題だということを指摘させていただいているわけでございます。つまり、もう審査は甘いという前例があるということでございますので、また引き続きこの問題はやらせていただきます。
 続きまして、不審船について伺います。
 防衛庁長官、石原都知事が、これはちゃんとやらなければ倒閣運動に走ると言っていますけれども、どうですか。
中谷国務大臣 この点については、現在、政府の中で、外務省また内閣官房でも協議をされておりますが、せんだっての官房長官の御答弁としましては……(小池委員「違う、防衛庁長官としてどう思うか」と呼ぶ)
 私につきましては、引き揚げに関して海上保安庁の要請があった場合には、防衛庁として必要な協力を行ってまいりたいと思いますし、私としては引き揚げを行うべきだというふうに思っております。
小池委員 そのお答えは常々伺わせていただいておりますので、ぜひとも海上保安庁も動かしてこれを早期に行っていくべきだと思います。
 きのう水中カメラを入れて中の様子を探ったということで、海上保安庁の方からお答えをいただきたいんですが、これは最終的に自爆であったということが、例の年末に事件が起こって直後から言われていることですが、それはほぼ確認できたんでしょうか。海上保安庁、よろしくお願いします。
縄野政府参考人 きのうそのような報道がございましたけれども、私どもとしましては、水中カメラで調査をした範囲で、自爆、自沈、可能性は否定できませんけれども、断定をするところまではいっておりません。自爆、自沈であるのかどうか、あるいは自爆、自沈までして隠そうとした行動目的や犯罪事実が何であるのかということを解明するためにも、この後、有人潜水を計画しておりますが、それによって引き揚げが可能かどうかを判断いたしまして引き揚げたいというふうに私どもとしては考えております。
小池委員 防衛庁長官も引き揚げたい、そして今、海上保安庁の長官からも、まだまだわからない点があるので引き揚げたいということですが、外務大臣、外交努力として今何をし、また何をすべきだとお考えですか。
川口国務大臣 今、海上保安庁で調査を進めていただいているわけでございまして、この調査の結果を見ながら次の段階について判断をするということになると思いますけれども、外務省といたしましては、中国に対しましては、事件発生の当初から、外交ルートを通じまして随時情報の提供を行ってきております。今後とも、こうした情報提供を継続したいと考えております。
 御案内のように、ここは事実上中国の排他的な経済水域でございますので、中国との権利関係が生ずるということになれば、中国と必要な調整を行う必要があるということでございます。
 以上です。
小池委員 きのう外務省入省式が行われたと報道されておりました。そして、外務大臣は、外交、まさに国益を守るために皆さん働いてくださいというふうにおっしゃったばかりであります。
 我が国の安全が脅かされる、そして、現実に戦後初めて戦火を交えたという事実として今回の不審船の問題があるわけでございまして、今後の、そしてこれまでも日本の国益を守るためにも、明確に不審船を引き揚げた上での調査をきっちりとやり、何が我が国を脅かしているのかということを明確に打ち出していくことこそが我が国の国益に沿うものであるということだと私は思っておりますので、きのうの新入の職員の方を迎えられた言葉を外務大臣はぜひとも実行しなければ、他の方々に、若い職員の方々に国益、国益とおっしゃっても意味がないのではないかと思いますので、その点強く要望をして、一日も早くこの不審船の問題を不審なものから明確な問題、そして、それに対して我が国は何をなすべきなのかという戦略を描いていただくことを強く希望いたします。
 最後に、拉致問題、きょうは時間がございませんでしたのでまた追って行いたいと思っておりますし、ぜひとも委員長、今回の拉致で明確な問題が浮き上がってきた、八尾恵さんの裁判を通じて明確になってきている有本さんのケースでございますが、有本さんの御両親をこの安全保障委員会にお招きをいただきまして、ぜひとも参考人としてお話を伺わせていただきたい。そういう機会を設けていただくことを強く要望し、また理事会で御検討いただきたいと申し上げまして私の質問を終わりますが、いかがでしょうか。
玉置委員長 理事会でまた諮らせていただいて決めたいと思います。
小池委員 ありがとうございました。
玉置委員長 次に、石井紘基君。
石井(紘)委員 一昨年、平成十二年の九月に行われました防衛庁の空自新初等練習機の入札に絡みましては、これが不正に行われたのではないかという議論が国会でも、あるいはまたマスメディアの中でも続いてきているわけでありますが、その入札に参加をいたしましたのは富士重工とスイスのピラタスでありました。不当にその契約から排除されたという印象を持たれたのがスイスのピラタスでございまして、スイス政府は我が国に対しまして、足かけ二年にわたって質問あるいは抗議を込めた書簡を送ってきていると思いますが、外務省にまず伺います。このスイスと我が国とのやりとりについて報告をしていただきたいと思います。
佐々江政府参考人 お答え申し上げます。
 これまでの経緯につきましては、スイス側と日本側との間で、今先生がおっしゃられましたように、やりとりがあるわけでございますが、基本的には、本件について、スイス側の質問を受領いたしまして、外務省からその都度防衛庁に照会をし、また防衛庁においては、スイス側への回答を作成して外務省を通じて、あるいはまた防衛庁から直接先方に回答した場合もありますけれども、それを行ってきたということでございます。
石井(紘)委員 今、その都度と言われたその都度を報告してもらいたいんです。それは同時に、例えば日本からスイスに発せられたものであれば、その日本側の差出人はだれであったかということ、あるいはその回答書の差出人、それはだれであったかということも含めて、この経過をずっと知らせてください。
佐々江政府参考人 お答えします。
 まず、平成十二年の十一月に、スイス側からこの調達にかかわる点について防衛庁の回答を求める書簡が外務省に来まして、同年十二月に外務省から返事をしております。それから、平成十三年の二月にもスイス側から書簡が接到いたしまして、三月に外務省から返事を出している。それから、同年六月にスイス側から書簡が参りまして、同じく七月に外務省から返事を出している。それから、同年の十月にスイスの経済省等に対しまして、防衛庁から説明を直接行われたということでございます。それから、この同年の十一月に会計検査院報告の発出がございましたので、それにつきまして、同年の十二月に外務省から、防衛庁の依頼を受けまして、会計検査院報告をスイス側へ送付したということでございます。それから、本年になりまして、スイス側から説明を求める書簡が来ている。以上でございます。
 それから、当時の担当の書簡でございますけれども、これは担当の審議官名でスイス側には出しているということでございます。
石井(紘)委員 これは、今最後におっしゃられたのは、外務省の審議官が差出人になっているんですか。防衛庁は、それは入ってないんですか。
佐々江政府参考人 外務省は、防衛庁の依頼を受けましてこれを先方に転達するという形でございますので、カバリングレターの形で先方に出しているということで、その差出人が外務省の審議官名になっている、こういうことでございます。
石井(紘)委員 これは、外務省はその窓口になっているという意味ですね、今おっしゃったのは。だから、外務省の差出人、出しているけれども、そうすると、この返書のその責任はどこなんですか。防衛庁じゃないんですか。
佐々江政府参考人 回答にかかわる中身については、防衛庁の方で作成されたものでありますので、その意味では、中身については防衛庁の方で措置された、それを外務省として転達をしたという性格のものでございます。
石井(紘)委員 これは、今経過を聞きますと、少なくとも六回にわたって、スイス政府は足かけ二年にわたって、この入札は一体どうなっているんだ、おかしいんじゃないのかということで抗議も含めて言ってきたわけですね。再三再四なんてものじゃないですね。こうなってまいりますと、これはもう一つの大きな国際間の問題になってきている。ましてや、今のお話ですと、昨年十月にスイスで行われた日本とスイスの経済会議の場においても、特に防衛庁がそこに出席をしてこの問題でのやりとりが行われておるということになりますと、これは大変な、重大な国際間の問題に発展しておると言わざるを得ませんね。
 そこで、この一々のやりとりについて、これは外務省に出せるかと言ったら、外務省は、これは防衛庁のことなんだということであります。確かにそうだろうと思いますので、これだけの国際問題になっておるわけですから、防衛庁はこのやりとりの書簡を公表しなきゃいけないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
中谷国務大臣 その文書につきましては、外務省を通じて相手国に伝達をしたわけでございまして、相手国の許可、了解がなくて公表できるかどうか、現時点におきましては相手国の政府の意向を確認中でございます。
石井(紘)委員 これは相手国は、日本のやり方がおかしいんじゃないのか、この入札契約というものが正当に行われなかったんじゃないのかということを言って抗議してきているわけですから、相手国はこれは公表するということについてためらうはずがないんですね。
 むしろ、日本側に問題があって、これは検査院の報告の中にも述べられておりますけれども、日本側に問題があるわけですから、日本側がこれは公表すべき。スイス側が何も公表を拒むべき理由はないだろうと思うんですが、そういうふうにおっしゃいますから、じゃ伺いますが、スイス政府の方が公表してもいいということになったら、これは全部防衛庁は公表するということですね。
中谷国務大臣 外交ルートを通じてスイス政府に送致したものでございますので、先方の御了解がいただけましたら公表できるものだというふうに思います。
石井(紘)委員 それでは、この最近のやりとりの中で、先ほど述べられた、昨年十二月に防衛庁は、会計検査院の検査報告を、こういうことであったということでスイス側に回答書を送っております。会計検査院は、この国会の審議の結果、これは確かにこの入札はいろいろと問題がある、ありそうだということで、昨年、何カ月かかかって、この入札に関して急遽検査を行ったわけですね。そして、その検査院の検査の報告が昨年十一月に出た。それを防衛庁は、こういう報告でございましたよということで、スイス政府から問い合わせをかねて受けておりましたから、その回答を送ったわけであります。
 これは最近のことでございますし、検査院の報告を防衛庁がこういうことだったといって出したわけですから、私は二、三日前からこの内容を国会に出しなさいと申し上げているんですが、きのうの時点では拒否をされておる。どうですか、今ここでお出しいただけませんか。
中谷国務大臣 事実関係としましては、この報告そのものの英文、仮訳は、スイス側の理解を得るべく外務省の方で作成をしておりますけれども、内容が技術的、専門的事項にわたるために、防衛庁においてもチェックを行っております。そして、報告の概要については防衛庁が作成をいたしましたけれども、これはスイス側の理解を得やすくするために作成したものであります。なお、日本文の原文も送付をいたしております。
 内容等につきましては、会計検査院の特定検査対象に関する調査状況として報告を行ったものでございまして、これの内容と、それからこの特定検査対象に関する検査状況の性格、意味等を踏まえて報告を行ったものでございます。
石井(紘)委員 長官に確認しますけれども、それは当然防衛庁が出したものですから、事前にその書簡は長官が目を通して了解しておるというふうに理解していいですか。
中谷国務大臣 スイス側にそういうものを返事として出すということは了解をいたしております。
石井(紘)委員 くどいようですけれども、その内容についても了解したんですか。
中谷国務大臣 私の責任において出したものでございます。
石井(紘)委員 防衛庁はどうしてもこれを出さないというわけです。
 会計検査院にちょっと伺いたいと思うんですが、これは会計検査院の検査報告を防衛庁がこうですよといってスイスに渡したものでありますので、会計検査院は、その検査報告について防衛庁がそれをスイスに回答するということをあらかじめわかっておったんでしょうか、それから、内容も含めて了解していたんですか。
増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 スイス政府の方に検査院の報告の内容について送付するということにつきましては、昨年の十二月に防衛庁の方から話を聞いておりまして、承知しておりました。ただ、その中身、具体的にどのようなものかということにつきましては、本年になりまして承知をした次第でございます。
石井(紘)委員 そうすると、検査報告についてスイス側に防衛庁が回答をする、こういうことだという報告をするということは防衛庁から聞かされておったけれども、しかし、その中身がどういう内容のものであるかということについては、これは昨年の十二月に、もう向こう、スイス側に出されたものですから、それはことしになって知ったということですから、そうすると、事後にこういうものが送られたということがわかったということ、そういう答弁ですね。
 どうしても防衛庁がこれを提出しない。それだったら、これは私の方から出さざるを得ない。
 これは、ちょっと許可をいただいておりますが、配付をしていただきたいんですが、実はこの会計検査院の検査報告として防衛庁からスイス側に出されたマル秘の文書が、これはマル秘とは書いてありません、書いていないんだと思うんですが、これは邦文と英文とで構成されているわけです。
 今お配りさせていただいておりますのは全文じゃありません。私は全文だと思われるものを持っておりますので、これをちょっと防衛庁長官に今お渡ししますので、確認してください、こういうものであるのかどうなのかということを。検査院の方にも、ちょっとこれを見てください。
 そこで、この文書でございますけれども、会計検査院がことしになって見せられたもの、見せられたのか聞かされたのか知りませんが、見せられたとすれば、この文書でよろしいですか。どうですか。
増田会計検査院当局者 おっしゃるとおりでございます。
石井(紘)委員 防衛庁長官、それでございますか。よろしいですか。
中谷国務大臣 そのようにいたしております。
石井(紘)委員 この全文は、この中には、会計検査院の検査報告を添えて、そしてこの一番上に、一枚紙でもって、和文の方は「防衛庁の新初等練習機の調達についての会計検査報告のポイント(会計検査院作成)」というふうに四角く囲ってある、こういう文書がつけられているわけであります。また、英文に翻訳されたものは、英文の方は、この表紙の部分に「テンタティブトランスレーション」というふうに書いてありまして、これはとりあえずの訳というような意味だろうと思うんですが、その下に、四角く囲って「ザ・ボード・オブ・オーディット・オブ・ジャパン」、会計検査院というふうに書いてございます。
 ですから、これは和文と英文と、英文の方はテンタティブトランスレーションですから、邦文の方が本文というか、本状といいますか、こちらが主たる書簡になるんじゃないかと思いますが、防衛庁、いかがですか。和文の方が。
中谷国務大臣 当然和文の方は原文でございますけれども、英訳につきましては、外務省の方で作成をしていただきまして、防衛庁の方で確認をしたわけでございます。
石井(紘)委員 そういたしますと、和文の方には「(会計検査院作成)」と書いてある。英文の訳の方には、四角くこう囲って会計検査院というふうに書いてある。ですから、どうもこの和文だけですと、これは検査報告が会計検査院が作成したものというふうにとれないこともないんですが、英文をつけますと、この書簡は会計検査院が作成したものですよというふうになりますね。そういうふうに受け取られるようになると思います。
 さて、そこで、会計検査院に伺いたいと思うんですが、この中に三つ丸をしてポイントを書いてございますが、最初のところに、
  本院のこれまでの検査では、今回の新初等練習機の調達に関し、入札、契約手続き、総合評価、契約内容等について、会計法令等に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかった。
というふうに書いてあるわけであります。英文の方には会計法令とは書いていないんですが、まあ一般的にこれ、法律に違反していないんだというようなことが書かれていると思いますが、私は、会計検査院の検査報告の中にこういう言葉を、こういう記述を見受けないのでありますけれども、検査報告に照らして、この記述は違うんじゃありませんか。
増田会計検査院当局者 お答え申し上げます。
 私ども、新初等練習機の調達につきましては、検査いたしました結果、法令、予算に違反し、または不当と認めた事項として取り上げるような事態は見受けられなかったということでありましたけれども、その検査の状況を明らかにする必要があると考えまして、今回の検査報告に特定検査対象に関する検査状況として掲記したところでございます。
 ただいま先生御質問の文言につきましては、確かに私どもの検査報告の文章中にはそのような記述はございません。
石井(紘)委員 会計検査院は、この検査報告を見ると、これは国会でも再三指摘されてきたとおり、あの入札は契約者を決定する手続において非常にあいまいであった。つまり、密封をした最初の二機分の価格についてはピラタス社の方が全然安かったにもかかわらず、富士重工と契約をした。その言いわけとして、将来ずっと長いことかかるところのライフサイクルコスト、そうしたものが富士重工の方が安いんだと。
 しかし、ライフサイクルコストというものの中には、その主要なものとして、機体の定期整備というのがあるんですね。車でいうと車検のようなものがあって、三年に一度ぐらい車検をやる。これが大変値段のかかるものでして、しかし、この定期整備というのは、そのやる都度入札を行って、そしてそのときにならないと、入札ですから値段が決まらないというようなものなんですね。にもかかわらず、そっちの方が富士重工が安い。将来幾らになるかわからない、そういう要素を含んだところのライフサイクルコストでもって富士重工の方が安いというでたらめな論法でもって富士重工に落としたという経過があるわけですね。
 そういうことについても検査院の報告の中にはるる書いてあるわけです。密封されていなかった、そして、差しかえしたとは書いていないんですけれども、現に書類の差しかえをしたという答弁もかつての防衛庁の答弁の中にはあるわけですね、受け付けて以降書類の差しかえもしたと。
 そして、この検査院の報告の中には、将来において拘束されるべき内容に係る主要な項目も示していなかった、価格の客観的な根拠となるべき項目も示していなかった。そればかりか、その提案内容に係るところの詳細な関連データを提出させたりするための方策、方法ですね、これも英文の方では、方策というところをガイドラインというふうに訳している。これも意識的な訳なんですね。全体の訳はなかなか立派な訳だと、これは専門家にも見てもらって言っておりますが、この肝心な部分だけ訳を変えておるということもあるんですね、この内容において。
 こういうことで、検査院の報告はいろいろな問題を、この入札の欠陥を指摘しておるということは、もう既に防衛庁の皆さんも十分御存じのところです。にもかかわらず、ここに、会計検査院の報告にはどこにも書いてない、会計検査法令等に照らして特に不適切と認められる事態は見受けられなかった、というような造語を、捏造ですよ、そういうものをここに持ち出してきて、そして、いかにもこれを会計検査院がつくった書類であるかのごとく防衛庁は書類をつくってスイス政府に対して提出をした。
 これは大うそですよ。外務省も相当うそをつくかもしれないけれども、防衛庁の大うそですよ、これは。これは国際的な公式な文書ですよ。しかも、再三再四スイスから問い合わせをされている。そして、スイスもその都度その都度、その回答がおかしいんじゃないかということで繰り返し繰り返し追及してきている。そして、あげくの果てにこれですよ。こういううそのものをつくって、そしてスイスに出した。
 これは外務大臣いらっしゃいますから、外務大臣の見解も伺いたいんだけれども、国際的にこういううそを、外務省と防衛庁がある意味では一緒になって、外務省は詳しいことはわからないで翻訳だけやりましたと言うのかもしれないけれども、しかし外務省の名前を使ってスイスに出しているというんですから、これは外務省の責任も大きいじゃないですか。外務大臣、こういうことは、国際間の、両国間の信用を著しく傷つける、信頼関係を傷つけるものだと思いませんか。いかがですか。
中谷国務大臣 捏造とかうそをついたという点につきましては御説明をしたいわけでありますけれども、先生も御承知のように、会計検査報告書というものは五種類ありまして、まず、不当事項、そして二は意見表示処理要求事項、三は処理済み事項、四は特記事項、そして五は国会からの検査要請事項及び特定検査対象に関する検査状況の五つに分かれております。
 この特定検査対象に関する検査状況とは、不当な事項または違法な事項などいわゆる指摘事項ではなく、国民の関心の高い問題についてその検査状況を記したものであるということでございまして、これは会計検査院からいただいたパンフレットにも明記をされているわけであります。
 今回は、この五の項目に当たることでありまして、この全文訳につきましては原文と同時に送付をいたしますけれども、それと同時に、防衛庁としてスイス政府に会計検査報告を送ることとしました。
 この文書の性格や基本認識等につきまして情報提供を行う必要があると考えてこの文書を添えて送付をしたところでもございますし、これを送るに先立ちまして、会計検査院には、文書そのものは提示をいたしておりませんが、スイス政府に送付することや内容そのものについては事前に確認をしておりまして、内容そのものに関しては会計検査院の基本認識と違わないものであるというふうに考えておりまして、そういう意味で添付をしたわけでございます。
川口国務大臣 これにつきましては、最初に佐々江局長から御説明をいたしましたように、外務省として防衛庁の依頼を受けて、本体とそれから概要を送付したものでございます。
 それから、ちょっと申し添えさせていただきたいんですが、この概要の英訳は防衛庁が行っておりまして、外務省が行ったものではございません。
石井(紘)委員 今外務大臣から述べられた最後の、英訳は防衛庁が行ったものだと。
 うそを言っているじゃありませんか。そういうこともうそを言っている、こういうやりとりそのものの中で。どういうことなんだ、一体。会計検査院、あなた、増田さん、そんなことは報告書の中に書いてないだろう。あなたは、でたらめを言うんじゃないよ。
 検査院は防衛庁に対して抗議したのか。先に検査院をちょっとやりましょう。
増田会計検査院当局者 防衛庁の方からスイス政府に提出されました文書につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、本年になりまして具体的な中身を承知したわけでございます。ただ、昨年来、私どもの特定検査項目に対する検査状況というものがどういう性格のものであるかといったようなことについては、十分私どもとして説明をさせていただいたものでございます。
 先ほど先生がお示し……(石井(紘)委員「あなたの責任、重大なんだから、ちゃんと簡潔にはっきり言いなさい」と呼ぶ)はい。先ほどのお示しいただきましたスイス政府に送られました「会計検査報告のポイント」という文書につきましては、「会計検査院作成」というふうにも書いてございまして、これが私どもが作成したかのような誤解を与えるということで、その点につきましては防衛庁に対して申し入れを行ったところでございます。
石井(紘)委員 いろいろ防衛庁もあるけれども、その前に会計検査院をちょっとはっきりさせよう。
 どういう申し入れを行ったんだ、いつ。
増田会計検査院当局者 本年二月におきまして、検査を担当しておる課の方から、検査院が作成したものであるというふうな誤解を与えるおそれがあるということで、強く申し入れたところでございます。(石井(紘)委員「どういう形で」と呼ぶ)それは口頭でございます。(石井(紘)委員「だれが、いつ」と呼ぶ)検査課長が、今具体的な期日は承知しておりませんが、二月というふうに報告を受けております。
石井(紘)委員 そのことについて聞きましょう。
 では防衛庁、そういうものを受けたですか。いつ、だれが受けたですか。
中谷国務大臣 そういうお話は、職員が受けているということでございます。
石井(紘)委員 検査院は、あなたのところは国際的にも、日本のいろいろ行われていることは、疑問を持たれていることに対してきちっと答えなきゃならない、そして最も信用を得なければならない、国内的にも国際的にも。そういう立場なんですよ。昨今は国際的な会計検査院の会議だって頻繁に行われているんだから。
 検査院は、勝手に自分のところの名前を使われて、そして外国に出された、しかも検査報告と違うことを書かれて出されたということに対して、そんな程度の措置を、電話か何かで言ったか何か知らないけれども、そんなことで済むんですか。きちっとした措置をとるつもりはないですか、増田さん。
増田会計検査院当局者 お答えいたします。
 確かにこの「検査報告のポイント」という文書につきましては、私どもが作成したかのような誤解を与えるということで、その点について申し入れを行ったところでありますけれども、中身につきましては、これとあわせて……(石井(紘)委員「中身のことじゃないよ、聞いていることだけに答えればいいんだ」と呼ぶ)はい。中身につきましては、その検査報告、私どもの検査の内容と大きく違っているというわけではございませんので、これ以上の申し入れは、あとは防衛庁の方でしかるべく判断されるものというふうに考えております。
石井(紘)委員 私は、会計検査院はもうやめた方がいいと思うんだね。
 会計検査院、中身と違っていないというのと、さっき違っているというのと、あなたは言葉、わからないの。これは、あなた、検査報告に書いてないことがここに書いてあると言ったんじゃないの。今、中身と違っていないと言ったんじゃないの。
 あなた、もう一回、ちょっと整理してちゃんと答えなさい。
増田会計検査院当局者 「検査報告のポイント」の中の一番目にございます会計法令に違反した事実はないという文言は、検査報告にそういう記述はございません。
石井(紘)委員 あなた、わけのわからない答弁ばかり言って。最初からそう言っているんだから。書いてないことでしょう。しかも、中身を見れば、だれが見たってこの入札はおかしいと。いろいろな点が問題があるということを検査報告は、これは坂野さんのところがやったんでしょう。あなたは局長で、中身のことを知らないからそんなことを言っているんでしょう。
 検査院はそういうことを言っていたら、あなた増田さん、重大な責任があるから、そのことはまたちょっと本題を外れるから、これは私、後で別の場でもって、決算委員会で、あなたをちょっときちっとするように、もう一回やりますから。
 さて、これに戻って、防衛庁。
 防衛庁は、そうすると、この中身については検査院にも黙って、そして検査報告にも書いてないことをこうやって出した。これは、しかも防衛庁長官が、先ほどの答弁だと、ちゃんと中身も見ましたと、見て了承しました、その上で出したんだとさっき答弁しましたね。どうなんですか、それは。
中谷国務大臣 この「報告のポイント」の文書の性格でありますけれども、これは、会計検査院の検査を受けた後、特定検査対象に関する検査状況という御報告がありまして、これにつきまして国会等で御質問があった際にお答えができるように、会計検査院側と事務的に調整をいたしまして、このように答えますというときに作成した文書でございます。
 したがいまして、この認識につきましては、会計検査院の側と基本的に一致をするものだというふうな観点でありますが、これのことにつきましては、防衛庁側で作成をいたしまして、この概要のポイントについてということで添付をしたわけでございます。
石井(紘)委員 これはいろいろ説明をされましても、これは事実と違うことは間違いないんですよ。検査報告と違うということは間違いないんですよ。認識が一致しているなんというのは主観の問題でしょう。認識が一致しているかしていないか、そんなにあなたとあそこの増田さんとは一心同体なんですか。
 増田さん、あなたは、ちょっと聞きますけれども、そもそも、十一月にあなたのところの検査報告を出した、その検査報告の作成過程で、防衛庁からあなたのところに、会計検査院に対して、これは法律に違反していないんだという文言を検査報告に入れるようにというふうに求められたんじゃないですか。後ではっきりする問題ですから、正直に言いなさい。
増田会計検査院当局者 お答えいたします。
 私どもの検査報告の作成の過程で、防衛庁といろいろやりとりがございましたけれども、そのような、具体的にどういうような表現にするようにというようなことはございませんでした。
石井(紘)委員 そういうとぼけた答弁も含めて、改めてあなたをちょっと問題にしますから。
 それで、これは外務大臣、やはり国際関係を考えると、スイス政府に対しても、今までのやりとりをお聞きになって、こういう検査院の報告書にないものを検査院の了解もとらずに防衛庁が外務省に渡して、しかも、こういう中身の内容をゆがめた英文の翻訳までつけて外務省に渡して、そして外務省の名前でスイス政府に発したという結果になったわけですが、それに対して、さらにスイス政府は抗議をしてきたんじゃありませんか、ことしの二月に。これは、検査報告をどうもスイス側で自分で翻訳してみるとそれと違う内容のようだというようなことを、ことしの二月に言ってきたんじゃありませんか。
 そういうことになりますと、いいですか、国際的な重大な信用問題です。これは日本とスイスの経済会議の中でも主要な議題として取り上げられているんですよ、昨年十月に。険悪な事態になってきているわけですよ。
 どうですか。スイス政府に対して、このうそを言ったことについて、謝罪をするなり、あるいは何らかの釈明を、あるいは説明をするなりという必要が出てくるんじゃありませんか。いかがですか。外務大臣に聞いているんだ。
佐々江政府参考人 私の方から、まず、技術的なことも先生が含まれましたので、お答えをさせていただきたいと思います。
 最初の、日本側から送付した概要と検査院報告との問題でございまして、この件につきましては、外務省はそのまま転達をいたしたわけでございますが、防衛庁の方で会計検査院の確認を受けて作成したものというふうに理解をして、依頼を受けてそのまま送付したというのが事実関係でございます。
 それから、もう一つ、先生がおっしゃいました経済協議の際にこれが取り上げられたということでございますが、正確を期すれば、経済協議の場でこれが行われたということではなくて、経済協議が行われた機会を利用して、別途、防衛庁の当局の方から直接スイスの方に説明されたということでございます。
 いずれにせよ、一連のやりとりを通じまして、スイス政府の方から改めてこの問題についての考え方、それからこの問題についての質問も含めて来ておりますので、その点についてただいま防衛庁の方で検討していただいておりますので、どういうふうに回答するかを含め今後検討をしていく必要がある、こういうふうに思っております。
川口国務大臣 政府としてのこれからの対応につきましては、今、佐々江局長がお話をしたとおりでございますけれども、外務省としては、スイス政府との関係につきましては誠実に対応していきたいと考えております。
石井(紘)委員 防衛庁は、スイスに対して謝罪をするなり訂正をするなり、そういう意思はあるのですか。
中谷国務大臣 スイスには本文も日本文も送っております。
 これにつきましては、この検査の報告の趣旨を説明したものでありまして、この内容等につきましては、国会でも公式にお答えするために、事務的に会計検査院側と協議をいたしまして、合意、御了解をいただいた上で作成したものでございまして、この認識に会計検査院と防衛庁は基本的に一致しているという観点でございますので、特にスイス側に説明をしたり謝罪をするということは考えておりません。
石井(紘)委員 増田さんは非常に、あなた、あなたは大変疑惑の人間じゃないんですか。
 実際にやった課長は坂野さんですよ。坂野さんにちょっと答弁してもらいましょう。これは、いいですか、会計検査院の検査報告と違うということはだれが見たって明らかです。
 ちょっと坂野さんに答弁させてもらいたいんですが、委員長、どうですか。
玉置委員長 事前に話がなかったので、増田さんを通じて答えてもらうしかない。
石井(紘)委員 わかりました。
 では、増田さんについては後で徹底的にこれは追及します。非常に疑惑が深い、あなたは。
 いずれにしても、防衛庁長官、あなたはうそをつきましたよ。いいですか。英文を、これは外務省がやったと、あなたのところは。外務大臣は、邦文と英文と両方これは防衛庁が持ってきたもので、それを外務省は取り次いだんだということじゃないですか。
 それから、この文言は検査報告にないんですから、検査報告にないということは、検査報告とは違うんです。違うということがわからないんですか、あなたは。もし、もしですよ、適法にあの入札がすべて行われたということであれば、検査報告にそういうふうに書かなきゃいけない問題です。いいですか。しかも、それだったら、検査報告さえも要らないのかもしれないんです。問題があるから検査が行われて、そして、さまざまな指摘がなされたわけです、この検査報告の中で。
 防衛庁は、封をしないで差しかえまでやって、そして、将来契約を、その都度入札をしなきゃわからない数字まで想定して、そして、富士重工の方が安いというような全然つじつまも合わない、理屈にもならない理屈でもってこの入札をやった、契約をしたということは、検査院の報告の中にも、いろいろ不備が重ね重ねあったというような中身が書いてあるわけですよ。これはあなた、防衛庁長官、わからないんですか。この検査報告にないことを書いてあるということは、検査報告と違うんだということがわからないんですか。
中谷国務大臣 この点につきましては、趣旨を説明したものでございますが、この文章の中にも、この結果の中で、「これらの提案内容が、各契約に適切に反映されていくか注視していくこととしたい」とか、また、「今後、同様の総合評価落札方式を採用するに当たっては、会計法令上は義務づけられるものではないが、会計検査院報告にあるように、入札及び契約事務の公正性・透明性をより一層高め、提案内容がより確実に履行されるような一定の方策について検討することが望ましいと考える。」というふうに、この本文の中で指摘されている大事なポイントをまとめておりまして、しかも、その本文も送っておりますので、こういう点において、そういう事実を曲げてというものではなくて、会計検査院の検査された性格とその内容についてわかりやすく先方に説明するためにつくった文章で、表現上適切に情報提供を行う必要があると考えて送付したわけでございます。
石井(紘)委員 わかりやすくって、これはうそを言っているわけだから、うそを言ってわかりやすくということはないでしょう。
 この文章は、防衛庁ではどこのセクションでだれが書いたんですか、この英文も含めて。
中谷国務大臣 防衛局が作成をいたしております。
石井(紘)委員 わかりました。きょうのところは、こういううその報告を書簡として出して国際的にうそを言っていたということが明らかになったんだと思います。
 防衛施設庁についても、沖縄の軍用地の問題で重大な問題があるので伺いたかったんですが、時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。
 防衛庁長官、この次まではきちっと、うそなのか、うそじゃないのかということをよく考えてきてください。
 以上、ありがとうございました。
玉置委員長 次に、末松義規君。
末松委員 私の方は、有事法制関連やあるいはアメリカのブッシュ大統領が言った悪の枢軸国発言ですか、そういったこと、北朝鮮の拉致問題等について、きょうは質問をさせていただきます。
 まず最初、ちょっとなんですけれども、有事法制の中で、今回政府が提出を予定しております法案が成立をしたとしても、例えば赤信号で、戦車が道路交通法の関係で赤信号になったらとまらなきゃいけない、そういうふうな状況は実は改善されないんだという懸念が関係者から表明されているわけです。
 これは、防衛庁側で第三分類ということで、そういう整理がなされているということで、いまだ対応が決まっていない、そういう話をちょっと聞いておりますけれども、これは防衛庁長官、本当のことなんでしょうか。
中谷国務大臣 現時点において検討中でございますけれども、議員の御指摘のように、有事に際しては速やかに車両の移動が行われなければならないというふうに思っておりまして、現行の道交法に基づく公安委員会などによる交通規制の実施または公安委員会の指定による緊急自動車の運用により、おおむね円滑に行われるものだというふうに考えておりますが、今後、最終的にさらに検討しなければならないというふうに思っております。
末松委員 おおむね円滑に行われるというのは、要は、新しい法規の改正という形で具体的にそれを検討しているということなんですか。将来的にそういう、今回の予定の法案の中に入っているんですか、いないんですか。そこはどうでしょう、内容的に。
中谷国務大臣 現行の道路交通法の運用によって行われるものだというふうに認識をいたしております。
末松委員 そうすると、くどいようですが、確認なんですけれども、じゃ、現行の道路交通法の中で、例えば戦車が赤信号でとまるというようなことはないということで、そういう解釈でいいんですか。
中谷国務大臣 これは公安委員会等による交通規制の実施、また公安委員会の指定に係る緊急自動車の運用ということで、実際に交通規制等を行う警察官等が、警察庁の方で御判断いただきまして、交通規制等が実施されるようなことでも可能でありますし、また、緊急車両に指定するというようなことでも可能でありますし、そういう点で、現行においておおむね円滑に行われるものではないかなというふうな考えがございます。
末松委員 済みません、ちょっと細かいことで恐縮なんだけれども、例えば戦時においてこの辺は戦時地域だという話になった場合に、車両をきちんと規制するような警察官はその場にいたり、そういう警察官はそこにみんな配置されたりなんだりということが前提として、今の答弁が出てくると思うんですけれども、そういうことでよろしいんですか。何かこういう戦時下においては警察の態勢もかなり違ったものになるんじゃないかという不安もあるんですけれども、いかがですか。
中谷国務大臣 いろいろなケースがあると思いますけれども、自衛隊の車両に支障がないように公安当局と調整をいたしまして、できるだけ広範囲でそういった車両の規制が行っていただけるように調整をいたしたいというふうに思います。
末松委員 ちょっと話題を次に変えます。
 先日、米国のブッシュ大統領が悪の枢軸という枢軸国の発言をいたしました。特にイラン、イラク、北朝鮮というものを具体的に挙げてやったわけなんですが、これは外務大臣としてどういう認識をお持ちでしょうか。
川口国務大臣 ブッシュ大統領が一般教書の演説でおっしゃった、発言をしたわけですけれども、これは、今アメリカ政府として、テロの支援の問題、大量破壊兵器の問題について大きな懸念を持っているわけでございまして、こういったテロの支援と大量破壊兵器の開発は決して許さないという強い決意をおっしゃった形で表明したということだと考えております。
末松委員 そのイラク、イラン、北鮮ということが、名指ししたということは、これはかなり強いメッセージですよね。私なんか中東にいた関係で、イランなんかハタミ大統領ですとか、ある程度穏健派と言われたりそういった方々が、こういったブッシュ大統領の発言によって、保守派からほれ見ろということで、大きな悪影響を受けて地盤が沈下するという状況にもなっているんです。そういうアメリカの発言の真意というものについて、表面的には確かに大量破壊兵器とかテロ支援国という話でアメリカが言ったかと思うんですけれども、こういう強硬姿勢をとっているということは、例えばレーガン大統領がソ連という国を評して悪の帝国だという話を、一番強硬姿勢をとった上で、それからさまざまな交渉をしていたという歴史的な過程もあるんですけれども、そういうアメリカの真意といいますか、そういうことについて、外務省として、外務大臣なりのちょっと見解を伺いたいんですが。
川口国務大臣 二月の半ばにブッシュ大統領、パウエル国務長官が来日をなさいました際にも、この問題についてはお話をする機会がございましたけれども、アメリカ政府といたしましては、問題を平和的に解決するということに変わりはない、外交的な努力を行いたいんだということ、すべての選択肢を排除するわけではないとしながらも、外交的な努力、平和的な解決を強調していらしたわけでございます。
 したがいまして、大きな懸念を表明しつつ、外交的な努力、平和的な解決の方法ということを追求するという姿勢でいると考えております。
末松委員 それであれば、本当にこの三国が大量破壊兵器、あるいは核兵器も含めて、あるいはテロ支援ということで新たな、アメリカはこれまでそこまでは言っていなかったわけですよ。今回新たにここまで言ったということを、アメリカに聞いて、そして、例えば具体的な事実とかそういったものはどうなんだという話をやはり日本の外交として、外務省としてそういう具体的な事実で把握した中で、そうなのかと。あるいは、その事実はちょっとそれは可能性として薄いんじゃないかとか、そういう評価をした中でこのブッシュの発言に対してみずからの判断、評価を加えるということが通常だと思うんですけれども、そういったアメリカとのやりとりの中でそういった事実関係は確認したんですか、してないんですか。
川口国務大臣 イラク、イラン、北朝鮮といった国々について従来から米国政府とは意見の交換は行ってきているわけでございまして、その上で、これは一般教書演説というアメリカ政府の演説でブッシュ大統領が使われた表現でございますので、我が国としては、その表現自体はアメリカ政府の認識をあらわしているということではございますけれども、内容については、これはもう不断に意見交換を行っているわけでございます。
末松委員 そうしたら、不断の意見交換と今回そういった表現を強めたということについて、一切事実関係としては、ほとんど内容が同じなんだ、変更がないんだということを今の外務大臣はあらわしているわけですか。
川口国務大臣 当然に米国政府といたしましては、九月十一日の同時多発テロを受けて、テロの支援及び大量破壊兵器の開発について問題であるという意識を強くしているわけで、それがそういう表現につながったわけでございますけれども、先ほど申しましたように、米国政府とのこれらの問題についての意見交換は、常日ごろ行っているわけでございます。
末松委員 新たな事実としては特に目新しいものはないという評価なんだろうと推測はするわけなんですけれども。
 ちょっと先に行きまして、対イラク攻撃、これについては、ブッシュ大統領が訪日した際、小泉総理あるいは川口外務大臣に対しても何か協力を求めるということは、まだ報道的には憶測の域を出ないんですけれども、先ほど外務大臣が言われたこと以上に何かありましたか、それとも全くないですか。
川口国務大臣 ございませんでした。
末松委員 本当に私なんか、にわかにそういう言葉が、何もなかったんだというのは本当に信じがたいところがあるんですけれども、防衛庁長官、いかがですか。防衛庁として何かそういった意味で協力を求められたことはありますか。
中谷国務大臣 昨年末に日米防衛首脳会談を行ったわけでありますけれども、そのときにラムズフェルド国防長官に私の方から、米国がアフガニスタン以外の軍事行動を開始する場合には前広の情報提供をお願いしたいというふうに発言したところ、国防長官から、国の事情により実施できることとできないことがありますけれども、この戦いに対する任務は時の経過とともにシフトすることが通常である、今後とも情報提供を行うという旨の発言がございまして、意見交換や情報入手には全力を挙げたいというふうに思いますが、現時点におきまして、イラクの対応等について全く言及があったことはございません。
末松委員 では、なかったということですから、それはそれの前提の話をしますけれども、もしアメリカがイラクを攻撃する、そういうことを示唆するようなことをアメリカの方からいろいろなメディアが伝えているわけなんですけれども、仮に対イラク攻撃に対して日本が協力を求められた、そうした場合、政府としては、現時点でどういうお考えでございますか。
中谷国務大臣 全くの仮定の話で、お答えすることは困難でございますけれども、仮に米国の軍事行動が拡大するような場合におきまして、これは対象国の場合ですけれども、現在の我が国の行っている活動を継続するか否かということにつきましては、あの九月十一日のテロ攻撃によってもたらされている脅威除去の目的に対する支援の法律の範囲内であるかどうか、この観点で我が国として主体的に判断して行動していくことになろうかというふうに思います。
末松委員 そうしますと、テロ特措法の中ではできる、全くできないという判断じゃなくて、できるという判断に立っているということですか。範囲内かどうかを検討するということは、つまり、できないということじゃない、そういうことですか。
中谷国務大臣 あくまでもこの法律の趣旨に含まれるかどうかという観点で、どのようなケースがそうなるかということにつきましては将来の話でありますので、いろいろな状況がありますので、この法案に照らして判断することになろうかと思います。
末松委員 将来の話というのは、その態様によって将来的にかかわってくることがあり得るということは可能性としてあるんですけれども、イラクという国を攻撃するということについた場合、そこは何か解釈としては、いろいろと議論があったところなんですけれども、政府の方としては、そこはまだ可能性としては十分ありますねということですね。今のところ、もう一度ちょっと言ってください。
中谷国務大臣 その攻撃の前提が、現時点において確たる状況かどうか全く不明でございますので、その状況をよく把握して、分析して、決断しなければならないというふうに思います。
 現時点におきましてはそのイラク攻撃の前提や理由がわかりませんので、現時点におきましてはお答えをすることが困難であるという状況でございます。
末松委員 そうすると、例えば、アルカーイダとかああいうふうな、九月十一日のあのテロにイラクが極めてバイタルな要因であって、そのアルカーイダの、あれを攻撃するための攻撃要員たちをイラクが囲って、そして訓練をして、それを派遣してあの攻撃が成ったとか、そういうふうな非常にビビッドな事実があったらそれはあの法律の対象になる可能性があるけれども、例えば、イラクが査察を今拒否していますよね、そういったことを理由に攻撃をするといったことはあの法律の対象外だろうという形になろうかと思うんですが、そういう理解でよろしいですか。
中谷国務大臣 この法律の目的が、九月のテロに関係があるかどうか、それから、国連憲章の目的の達成に寄与している外国軍であるかどうかという観点でありますので、よく国連の判断とか各国の状況等も踏まえつつ判断しなければならないというふうに思います。
末松委員 北朝鮮が名指しされていますよね。これは、先ほど外務大臣からは、何ら具体的な情報は、新たなものは得ていないということであったんですが、特に北朝鮮について外務大臣、どうですか、何か具体的な状況というものが、あるいは情報というものがあったということですか、あるいは全くなかったですか。
川口国務大臣 北朝鮮に関しまして、私の方からは、注意深く北朝鮮政策を進めて、北朝鮮の具体的行動を引き出していくことが極めて重要である等、それから、そのために引き続き金大中大統領の包容政策への支持と日米韓の緊密な連携が必要であり、そのもとで北朝鮮との対話を進めていくことが必要である、今後とも、北朝鮮問題に関する日米韓三国調整グループ会合の枠組み等を通じまして三カ国の緊密な政策調整を行っていきたい、アメリカに対しては実質的な米朝対話再開を期待している、我が国としては拉致問題等の日朝間の問題の解決を目指したいということをパウエル国務長官にお話をいたしました。
 それに対してパウエル長官から、ブッシュ大統領は一般教書演説で北朝鮮に関して悪の枢軸である旨の発言をしたけれども、我々は、北朝鮮に関しては、いつでも、どこでも、前提条件なしに話をする用意があるということを、そういう方針をアメリカは持っているわけですが、それからの変更はないということをおっしゃったということでございます。アメリカは、人道食糧支援は行っていく、米国として危機を創出するのは本意でないというような発言が……(末松委員「最後、何」と呼ぶ)危機を創出する、つくり出すということは本意ではないという発言がございました。
末松委員 核の疑惑についてはどうでしたか。
中谷国務大臣 北朝鮮はかねてより核開発の疑惑が持たれているところでありますが、既に同国が核兵器一ないし二個を製造するのに十分なプルトニウムを抽出、保有しているというふうな指摘もありまして、同国が極めて閉鎖的な体制をとっているということでございます。
 それから、弾道ミサイルにつきましては、我が国のほぼ全域が射程に入る可能性のあるノドンミサイルの開発を既に完了し、配備を行っていると考えるほか、より長射程のテポドン1の開発が急速に進展していると判断され、さらに長射程のテポドン2も開発中であるということで、こうした動向を懸念いたしておりますが、引き続き、北朝鮮の核ミサイルの開発等につきましても注視をしていきたいというふうに思っております。
末松委員 では、川口外務大臣、さっきのパウエルさんとの話し合いでは、その核疑惑については特になかったわけですね。今、防衛庁長官から状況としては把握しましたけれども。
川口国務大臣 核疑惑につきましては、私とパウエル長官との話し合いの場ではございませんでしたけれども、ブッシュ大統領と小泉総理のお話の中で小泉総理は、済みません、これはイランについてですね。失礼しました。
 北朝鮮については、特になかったと記憶をいたしております。
末松委員 今、中谷防衛庁長官の話なんかをお聞きしていますと、依然、非常に北朝鮮は我が国にとって脅威であるということは言えるわけですよね。こういった、特に今、核開発状況とかミサイル開発状況について、例えば防衛庁の方で、日米韓というのは結構話されているところもあるかと思いますが、中国との間で防衛情報の交換とか対話なんかを行っていますか、あるいは行う気はありますか。
中谷国務大臣 日中間の話し合いにつきましては、九八年に両国の防衛首脳の会談がありました。それから、二〇〇〇年に、統幕議長と人民解放軍の総参謀長の相互訪問、会談が実現するなど、ハイレベルの交流が進展をいたしております。
 このときに、このミサイル等の問題等につきましては、平和的にこの地域の安定を図らなければならないというような形で相互に意見交換があったのではないかというふうに思っておりますし、また、今度は四月末に訪中を予定しておりますけれども……(末松委員「どなたが」と呼ぶ)私自身も中国の方に参りまして、こういったミサイルのあり方等につきましても意見交換を行ってまいりたいというふうに思っております。
末松委員 我が国がもし攻撃をされるとしたら、多分、北朝鮮というものが一番リアリティーに富んでいるところでもありますから、そういうことに常に関心を持っているということと、特に中国は北朝鮮のこと、非常に情報を持っていますから、そこを専門家同士、防衛庁長官あるいは防衛庁関係者が定期的にそんな対話の枠組みをつくって、それをきちんとやっていくことが極めて重要だと思います。
 そういった意味で、そういったしっかりとした枠組みが私は必要だと思いますが、防衛庁長官の決意を聞きたいと思います。
中谷国務大臣 東アジアの安定と平和のためには、日本と中国の関係が大変重要だというふうに思っておりまして、今後とも双方でよく対話また協力を行って同地域の安定を図らなければならない、そういう努力をしなければならないという認識は委員と一緒でございます。
末松委員 そこは頑張ってください。
 日米韓の情報あるいは意見交換の場というのが、外務省はやられておりますけれども、これは極めてごく簡単に枠組みだけ示してください。
川口国務大臣 日米韓の協議、対話の場は、これは北朝鮮をめぐりまして種々な形で行われておりますけれども、これまで継続的に行われてきた代表的な会合といたしましては、日米韓三国の次官級の、事務当局者によるTCOG、北朝鮮問題に関する日韓米三国調整グループ会合という名前でございますが、が挙げられまして、これにつきましては、最近では……(末松委員「詳しくなくていいから、その枠組みだけでいいから」と呼ぶ)枠組みはそういうことでございます。
末松委員 では、北鮮問題をもうちょっと聞きますけれども、拉致問題について、外交努力の成果というのは実際は具体的にあるんですか、私から見たら全然ないんですけれども。その辺はちょっとどうか、一言で言ってください。
川口国務大臣 拉致問題につきましては、もうこれは委員がよく御案内のように、国民の生命にかかわる重大な問題である、国交正常化の話の過程で、国交正常化のためには決して避けて通れない問題であるということを政府として今まで言ってきているわけでございます。
 今に至るまで拉致問題について解決が見られていないということは大変に残念だと思っておりますけれども、政府としては、昨年来、外務省よりさまざまな拉致問題についての諸懸案につきましては申し入れてきたという経緯がございまして、そうした北朝鮮とのやりとりの中で、例えばことしの二月の杉嶋日経記者の解放といったような具体的な動きが出てきたということかと思います。
 政府として、拉致問題は、日朝間の話し合いの場で問題の解決につきまして解決の糸口を探求していくということが最も効果的であると考えておりまして、今後とも、いろいろな場で真剣な対応を粘り強く求めていきたいと考えています。
末松委員 当然そうあるべきだし、まずこの拉致問題の解決がやはり日朝間の正常化の前提になると本当に思いますよね。
 そういった中で、今北朝鮮に対して米支援を行っているわけですよ、数度。これはこの前の拉致問題なんかが特にクローズアップされて、どうも国家的に、日本国民に対して北朝鮮という国家が大きく関与してきた、そういうことをはっきりとまた再度認識させられたわけなんですけれども、そういった中で、米支援についてどういう判断基準でやろうとしているのか。あるいは、例えば核疑惑がさらに強まった段階でもずっとやっていくのか。その辺の判断基準はいかがですか。
川口国務大臣 北朝鮮に対する食糧支援につきましては、今まで、北朝鮮の深刻な食料事情に配慮をいたしまして、人道的な観点から行ってきているということでございます。実際の支援の決定に当たりましては、こうした人道上の考慮に加えまして、総合的な観点から判断を行っているわけでございます。
 一般論として申し上げれば、人道上の考慮に加えて、種々の要素を総合的に勘案するということかと認識をいたしておりますが、現在の時点では、新たな食糧支援について具体的に検討を行っているという事実はございません。
末松委員 別に、食糧支援やるなと言っているわけじゃないんですよ。要は、私たちが、日本人が過去迷惑をかけたというのはまさしく北朝鮮に対してそうであるし、それに対して、隣人が飢えているときに私たち隣国がきちんと支援をしていくのは、ある意味じゃ当然だろう。ただそれが、政府の幹部とかあるいは軍隊とか、そういった人たちだけに支援が行き渡るようなそんなやり方であってはだめだということだと思うんですね。
 ですから、ぜひそこは、北朝鮮への食糧支援がそういった一般の大衆に行くべくどういうふうな、行かなきゃいけないと思っていますから、そういうチェック体制というのはどうなっているんですか。そこはきちんとされているんですか。
川口国務大臣 この北朝鮮の内部事情については、なかなか外からはわかりにくいという事情があるということは事実でございますけれども、世界食糧計画の、これはWFPですが、緊急食糧支援活動に関するアピールにこたえまして我が国が行った食糧支援につきましては、これは子供、老齢者、妊産婦等を対象にしたものでございますので、委員おっしゃられるように、その実施の状況については、きちんとそういったところに行き渡っているということを確認することが大事でございます。その実施状況につきましては、WFP、世界食糧計画ですが、及び我が国の視察団がモニターをしているということでございます。ちなみに、WFPは月二百回から二百五十回のモニタリングを実施しているということでございます。
末松委員 我が国の視察団というのは非常にお粗末なチェック体制しかできなかったという報告も受けていますが、我が国もWFPの視察団にちょっと加わるなりして、やはり我が国の目でもきちんと見るような、そういったことをぜひお願いしたいと思います。
 これをもって一応、さらにこの問題については継続的にやっていきますので、その辺は本当に真剣にチェックをしていく、あるいは真剣にやってください。ということで、質問を終わります。ありがとうございました。
玉置委員長 次に、渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 きょうは時間が余りございませんので、早速質問に移らせていただきます。
 まずは、防衛庁長官、四月、今月ですね、二十日から訪韓されるということのようでございますけれども、どういう目的で韓国の方へ行かれるのか、その点について、まず冒頭お尋ねしたいと思います。
中谷国務大臣 現在準備中でありますけれども、私、就任してまだ韓国の方に訪問したことがございませんので、今後の日本と韓国の防衛交流を一層増進させるという目的と、また共同訓練や防衛交流など、日韓間での安全保障面での担当者の交流が一層拡大するようなこと、また最近の国際情勢や東アジアの安定に向けての認識等の意見交換を行ってまいりたいというふうに思っております。
渡辺(周)委員 それは、韓国で防衛当局の方々と、まさにこの防衛交流ということ、今後の共同の演習等も含めて連携を密にしていかれるということだと思うんです。
 ここでちょっとお尋ねしたいのは、やはり北朝鮮の問題の中で、韓国も大統領が近々にもかわるということでございまして、今後の朝鮮半島の韓国の政策というものがどのように変わるかということが大変注目されるべきところでありますけれども、反面で米軍が、朝鮮半島の軍事境界線に近いところの用地を在韓米軍が五五%返還するということが韓国と米国で合意をされたというようなことでございます、正式合意したと。
 その点につきまして、どういう状況、情報をお持ちなのか、防衛庁にお尋ねしたいと思います。
中谷国務大臣 まず、韓国の国防政策等につきましては、韓国の政治の中で行われているわけでありまして、今後とも注視をしてまいりたいというふうに思っております。
 それから、在韓米軍の規模等の問題でございますけれども、せんだっての二十九日に、韓国の国防長官と在韓米軍司令官が在韓米軍供与地約二万四千六百ヘクタールを一万一千ヘクタールに二〇一一年までに段階的に返還することを盛り込む計画に合意したというふうに伺っておりますが、これは、二十八カ所の米軍用地と施設及び京畿道の三つの米軍訓練場など延べ一万三千六百ヘクタールが返還されるということでありますが、この一万三千六百ヘクタールの中で一万二千九百ヘクタールの米軍訓練場がこの三つにあっておりまして、まとまった地域の返還が実現するのではないかというふうに思っております。
渡辺(周)委員 この時期に来て、この米軍用地の返還ということの戦略、この点はどういうふうにお考えですか。この米軍の戦略、あるいは韓国の対北朝鮮ということを考えた場合、どのように今回のこの合意を日本側としては受けとめているか、その点についてはどうお考えですか。
中谷国務大臣 これは二〇〇〇年の十一月に米側から提案をされて、二〇〇一年の二月から協議が行われてきたものでありまして、あくまでも在韓米軍供与地の統合、縮減であって、米軍兵力の削減であるというふうには認識をいたしておりません。
 また、二〇〇一年の七月十七日に、米国防省の報道官が、従来の基地を多数閉鎖してより効果的に米軍を配備する案を検討しているが、在韓米軍の駐留規模の縮減は論外であるというふうに述べておりまして、ブッシュ大統領も、訪韓の際に、ここに駐留をし続けると。さらに、ブレア太平洋軍司令官も、下院の軍事委員会において、この計画は訓練及び共同戦闘能力を高めながら韓国に所在する主要な米軍基地の数を削減するものというふうにしておりまして、規模自体は変更が大きくないというふうに認識をいたしております。
渡辺(周)委員 こういうことをすると、当然、これを伝える北朝鮮側は、逆に言うと、誤った情報の国内向けのプロパガンダに使われるんじゃないかと私ども思うわけです。
 つまり、よく北朝鮮側が使うのは統一という言葉ですね。半島統一、それと米軍撤退ということの二つをキーワードにして、これまでも国民に対して非常に抑圧的な政策をスローガンを掲げながらとってきたわけであります。
 そうしますと、この出撃拠点である米軍が、我々のサイドとしてはそのように理解をしても、北朝鮮側は、恐らく境界線に近いところのエリアに対して、たとえ効率性を求めるにしても縮小、統合をするということで、ある意味では、在韓米軍撤退という形でプロパガンダをするんではないかなと私なんか思うわけでありますけれども、次回の日韓の防衛庁長官の会談の中ではぜひその辺についても意見を交換していただきまして、そしてまた、北朝鮮側のプロパガンダに使われないように、その点についてはくぎを刺していただきたいというふうに思うわけでありますけれども、その辺についていかがですか。
中谷国務大臣 今回の合意による韓国の国防長官の発言によりますと、長年累積されてきた民願が解消され、地域発展の契機となると同時に、駐韓米軍に安定した駐屯条件を提供し、韓米同盟関係がより強固になるだろう、また、米軍の在韓司令官も、この土地計画は同盟パートナーである韓米両国にウイン・ウイン効果をもたらし、基地の効果的な縮小、統合によって米軍施設が質的に向上し、テロの可能性からも保護されるだろうというふうに述べておりまして、当然のことながら、北朝鮮に対する警戒は現状を維持しつつ、こういう民間に対する配慮等から米韓両国で話し合いがされて実現された問題でございまして、私の認識としては、引き続き米軍の前方展開を重視しており、これを維持して強化をしていく意向であるという認識を持っておりますので、これを踏まえて話し合いをしてまいりたいというふうに思っております。
渡辺(周)委員 私も、ちょっと今驚きを持って聞いたのですが、実は防衛庁長官に就任されてからまだ韓国へは行ったことがなかったんですね。非常に日本の防衛政策を考える上で、やはり韓国とのパートナーシップ、連携ということは、朝鮮半島問題を抱えている現在において、実は今まで長官同士がここで会談をしたことがなかった、防衛交流について話をしたことがなかったということは、実は驚きを持って私も聞いたわけでありますが、ぜひとも実りのあるものにしていただきたいというふうに思うわけであります。
 これは報道記事で出ていたんですけれども、この中で、韓国と共同で不審船の対応をすると。不審船というのは、今後新たな不審船が何らかの形で我が国の周辺に脅威を与えた場合には、韓国とお互いに通報し合って、何らかの形での共同行動をとるということをここで確認するというふうに一部報道されておりましたけれども、それは事実なんでしょうか。
中谷国務大臣 現在、この日韓の会談においていかなる内容を話し合うかということにつきましては調整中でございますが、不審船の事案に対しては、我が国関係省庁間の連携のみならず、周辺諸国とも情報交換等を行って、適切に対処していくことが重要だというふうに認識をいたしておりまして、このような問題についても意見交換等は行ってまいりたいというふうに思っております。
渡辺(周)委員 これは昨日の産経新聞でしょうか、「北朝鮮の武装工作船による領海侵犯やゲリラ・コマンド部隊の侵入に対処するために自衛隊と韓国軍との情報交換を抜本的に強化する方針を固めた。」それによって相互通報システム構築を進める構えだ、日韓防衛首脳会談で合意したい考えというふうに報道されているわけでありますけれども、ある意味では、不審船のみならずゲリラ部隊にも対応する、コマンド部隊の侵入にも対処するというふうに報道はしているわけでありますけれども、当然こういうことも想定をして、実際、首脳会談を行うんですか。
中谷国務大臣 現在、アジェンダの調整を行っておりますけれども、現時点において、そのようなことを固めて合意するというようなところまでは至っておりません。
渡辺(周)委員 しかし、二十日の日に行くに当たって、実際、こういうふうに出ているわけですから、固めていなくても検討は当然されているわけで、というよりも、これは韓国に行くわけですし、また昨今の周辺の状況、朝鮮半島情勢等を考えれば、あるいは、我が国の昨年の不審船事案以来どういうことが起きているかということは、ここで議論を今さらするまでもなく、皆同じ思いを共有しているわけでありますから、その点につきまして韓国とは話をするという方向で当然考えているわけですね、まだこれは確認していないというのですけれども。というか、そういうことが議題にならなかったら、何のために行くんだかもうわからないわけでございます。
中谷国務大臣 今後とも、日韓間が安全保障の面で緊密に連携をして、この地域の安全保障や両国の防衛のために資するということは大切でありまして、日韓間の防衛交流が現時点より進展するように努力をいたしたいと思いますが、内容につきましてはまだ調整中でございますので、今後とも、より一つでも実りがあるように努力をいたしたいというふうに思っております。
渡辺(周)委員 もっと言っちゃうと、いたずらに時間を費やすつもりはありませんけれども、国会の安全保障委員会の答弁よりも新聞の方が詳しく書いてあるというこの方がおかしいわけでありまして、ここでは検討中で、逆に言うと、報道されていることが事実なんだかそうでないかも全然わからない。つまり、今までも議論はどこもそうなんですけれども、いつも、検討中だ、ここでは話はできないと言いながら、逆に言うと、何か国会の方が後回しにされて議論をしているような気がしてしようがないわけでありまして、ここで言ってもしようがないのですが、では、どうぞ一言だけ。
中谷国務大臣 そういう誤解があるなら申し上げますけれども、対応するという方針を固めた事実はございません。
渡辺(周)委員 わかりました。これ以上言っても時間がもったいないので次に行きますけれども、とにかく実りある会談をしてきていただきたいというふうに思うわけであります。
 それで、今も話がありました、現在調査中の不審船についてお尋ねをするわけであります。
 これは海上保安庁に伺うわけでありますけれども、若干質問がダブりますが、既に、船体がどういう形で沈んでいるかということは調査で大体明らかになった。前回、私も質問の中でそのことを申し上げました。お答えをいただいて、不十分ながら答えをいただいたわけでありますけれども、相変わらず今になってもまだ、やっとこさ沈んでいる船の様子がわかったということでございまして、自爆が裏づけられたということで、遺体も三、四人確認したというようなことでありますが、これは事実なんでしょうか。この点についてお尋ねをいたします。
縄野政府参考人 私どもは、二月の下旬に水中カメラで調査をしまして、あの船が沈んでいる船だということを特定いたしました。それから、大まかではございますけれども、大きな損傷は認められないできちんと立っているということも確認をいたしました。これから気象、海象が、波の高さとか風速が許す範囲で時期を選びまして、私どもとしましては、潜水士を潜水させて、今度は詳しく、船の外観、引き揚げに耐える状況になっているかどうか、本当に損傷がないのかどうか、クレーンでつり上げるときに大丈夫かということにつきまして調査をさせていただきたいというふうに思っております。
 報道されておりますようなことにつきましては、私どもとしましては、水中カメラで写った状況をこれから実際に潜水士での調査、あるいは引き揚げて検証して確認をして、これを犯罪捜査として証拠物品として特定をしたいわけでございます。今、その途上でございますので、何がどのような状況で沈んでいるかということについては答弁はこれ以上控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、どういう状況で沈んだのかということにつきまして解明をするために調査をし、引き揚げに全力を尽くしたいというふうに思っております。
渡辺(周)委員 お答えを差し控えさせていただきたいと言われるんですけれども、あちこちで自爆が裏づけられたと書いてあるんですよ。
 それで、自爆は裏づけられた、船体はロシア製、船形を偽装するための空洞状態で何か船橋が分離されていたとか、いろいろなことがもう既に報じられているわけでありまして、ここではお答えを差し控えさせていただきたいと言いながらどんどん、まさにマスメディアは幾らでもこれは書いているわけでございます。もう既に、特殊任務を帯びていたことは確実と見られているなんということを書いているわけです。
 実際、そこまで言われると我々も追及しないわけにはいきませんから、この問題でずっと、私も二回ぐらい過去に質問をいたしました、一体いつになったらわかるのだと。とにかく十二月の二十何日の日の事件で、もう四月なんですよ。四月になっていまだに、船形をやっとこさ確認したとか、一体何がどうなっているかやっとわかったなんと言いながら、これは一般的に考えれば、とにかく時間を稼ぐしかない、時間を稼がないと次の交渉が今なかなか進んでいないから、結局そこで一生懸命、何かまだです、まだですと言いながら、どう考えたって時間がかかり過ぎじゃないですか。その点について、大変に、ここに何か隠されているものがあるんじゃないかというふうに思うわけであります。
 実際、その不審船で今の現状からわかるところ、一体何を今の段階で推測されるかということについてどういう御見解をお持ちか、その点についてはいかがですか。お答えいただけますか。
縄野政府参考人 まず一点でございますが、私どもは引き延ばしておるわけではございませんで、実際に潜水作業をする、あるいはこの後引き揚げをするとすれば、実際の風速、風の強さとか波の高さについて作業の条件が制約がございます。それは冬ではできませんので、そのような気象条件になるのを私どもとしては今準備しながら待っておるということでございます。
 それから、今時点で私どもが確認できておりますことは、先ほど申し上げましたように、沈んだ船があの船であるということと、大きな損傷は見られないということでありまして、報道されたようなことは想像の域を出ないというふうに私どもは思っておりまして、これはいつ明らかになるのかということであれば、引き揚げた時点で明らかになるということでございます。
渡辺(周)委員 引き揚げた時点というんですけれども、引き揚げさせないというような、今度は中国の王さんというんですか、外務次官が発言をされました。この間は外務大臣がおっしゃっていた、今度は外務次官。つまり中国の幹部は、とにかくこの不審船の引き揚げについては重ねて慎重であるべきだ、中止をするべきだと言うわけです。ところが、日本の外務大臣からも外務次官からも、これは引き揚げるべきだという声は全然聞こえてこない。あるいは、中国に対して公の席でそれをやるべきだと前も申し上げました。EEZ内であるから中国としてはそこで非常に慎重だというのであれば、中国立ち会いのもとでやったらいいと私は何度も申し上げましたけれども、どうしてそれができないのか。
 つまり、この間、中国の外務次官ですか、この方は、我々は事態の拡大、複雑化をこれ以上望まないと言っているんですね。別に、複雑化あるいは事態の拡大をさせているつもりはありませんし、もし何でしたら、船体引き揚げであるならば、そこで中国の関係者も立ち会った上で引き揚げ作業をすればいいわけでありまして、その点について前も申し上げましたけれども、その点については、先ほどのどなたかの質問で、外交ルートで交渉していると言っていますけれども、向こうは外務大臣なり外務次官なりが話している。こっち側としては、全然そういう声が正式なコメントは聞こえてこない。外交ルート、外交ルートといいますけれども、今どうなっているんですか、この問題、中国との交渉は。
田中政府参考人 今、海上保安庁長官からお答えございましたように、この問題については事態究明のために手順を踏んできちんとやっていくということでございまして、委員御指摘のとおり、確かに、この船は今中国の排他的経済水域の中にあるということがありますし、中国も、海洋資源であるとか、あるいは海洋環境について一定の権限を持っていることは間違いがありません。したがって、現に引き揚げるということになりますれば、当然のことながら必要な調整は粛々とやっていくということでございまして、これまで中国との間では必要な情報の提供はしておりますし、外交ルートを通じてきちんとした意見交換を行ってきているということでございます。ただ、日本のポジションは、あくまで事態の究明のために粛々と手順を踏んでやっていく、こういうことでございます。
渡辺(周)委員 手順を踏んでいるとおっしゃられましたけれども、引き揚げたらこうすると先ほど海上保安庁は言われたわけですよね。引き揚げたらいろいろな事態の解明ができると。ところが、引き揚げられるかどうかについては全く答えが、いまだに全然、明確な答えというよりも、どちらかというと慎重であるべきだというふうに中国から言われたと。
 これは一つ確認なんですが、先般韓国に行かれた小泉総理大臣は、日韓の首脳会談で引き揚げに慎重であるというようなことをどうも言ったということを、実は私どもが小泉総理大臣の訪韓をされたときの報告を受けたときに、外務省からいただいた資料の中にそういうことがあったんですが、実際、その引き揚げには慎重だというようなことを韓国側に小泉総理は伝えたんですか、その点についてどうなんでしょうか。
田中政府参考人 総理が金大中大統領との会談で言われたのは、まさに今申し上げているとおり、この問題というのは、例えばその引き揚げをするにしても、実際の引き揚げ作業の安全性ということも担保されてなきゃいけないし、気候の問題もありましょうし、いろいろ、きちんとした手順を踏んで慎重に対応していく問題だということでございます。ですから、別に、引き揚げに慎重だとかそういう話をされたわけではなくて、そういうきちんとした手順を踏んで日本の問題として事態究明のためにきちんとやっていきます、こういう趣旨であります。
渡辺(周)委員 ちょっとごっちゃになっているんですけれども、引き揚げをするという行動、アクションに対して慎重に、要は注意深くロープが切れないようにやるという意味の慎重と、つまり中国という国に対して、おたくのその排他的経済水域内で引き揚げるということについて、この慎重という意味が二通りにとられているわけですよね。つまり慎重というのは、注意深く交渉しながらできるだけ誤解を招かないように外交交渉をやって引き揚げると。
 それがどうもごっちゃになって言われていて、ただ、引き揚げには慎重と、引き揚げするということには、例えばもっと言っちゃえば、釣り糸を切らないように引き揚げるという意味での慎重じゃなくて、これは政治的配慮を含めた中国と、あるいは中国側、一説によれば北朝鮮の方から引き揚げを阻止してくれというようなことを言われているとかというようなことが一部言われていますけれども、その点についてどっちなんですか、引き揚げるということが前提なんですね。引き揚げという政治交渉をする上で、日本の国としてやるということは、これは事実としていいんですね。
田中政府参考人 先ほども御説明申し上げましたけれども、総理が言われたのは、まさにもろもろのことをきちんと考えてやっていくということであって、その中には、手順を踏んで安全性を確認しながらやるという意味の慎重もありますし、それから、先ほど申し上げましたように、これが中国が一定の権利を持っていることは間違いないわけですから、きちんとした調整をしながらやっていく、こういうことも意味をされているのだろうというふうに思います。
 ですから、引き揚げについては、まだ決まっているわけではございません。というのは、先ほど海上保安庁長官から御答弁がありましたように、きちんと、ダイバーを潜らせていろいろなことを確認しながらやっていく必要があるから、それは手順を踏んで、その後引き揚げの判断をする、こういうことでございます。
渡辺(周)委員 だから、引き揚げる慎重というのはわかっているんです。そんなもの、途中でロープが切れて、またおっことしちゃったら、どうにもならぬわけであります。
 そうじゃなくて、だから、中国と交渉をちゃんとしているんですかと。では、もう時間がないので言いますけれども、我が国の領域の中に入ってきて何をしていたのか、あるいは何をしようとしていたのか、もしかしたら何かし終わった後かもしれないという怪しげなものが来て、追いかけていった。しかも、相手は対戦車ロケットみたいなものまで持っていて、今わかっている限りでも、これはそのつもりで来た、普通の漁船じゃないよとわかっているわけですよ。何をしていたかわからないようなものを、とにかくよその国の庭先に逃げ込んじゃったからもうどうにもなりませんというんじゃなくて、ある意味では、お互いの国益を守るために引っ張り上げましょうよ、あなた方も一緒に見ていてくださいよ、我々はそれ以外のことは一切しませんから。中国との信頼関係を損ねるつもりで我々はやるんじゃないということをどうして言って、それをやらない。また、言っているんですか、そういうことを。なぜそういうことが聞こえてこないんですか。
田中政府参考人 中国との関係については、ほとんどこの事案が始まった当初から情報交換をしておりますし、先ほど申し上げたような日本の立場というのは、中国との関係で粛々と伝達をいたしてありますし、そういう意味の意見交換というのは、かなり日常的に行われております。
渡辺(周)委員 意見交換じゃなくて、意見交換なんというレベルじゃなくて、日本の国として、ちゃんと毅然として、こういうことがあったんだということをぜひ言ってくださいよ。どうぞ、御答弁ありましたら。
縄野政府参考人 田中局長の答弁を補足させていただきますが、私どもとして承知しておりますのは、これは、海上保安官に対する殺人未遂という犯罪行為を犯した船を追跡して、その証拠物を押収するということでございます。これは、国際法に基づきまして、特に制約のない、正当化される行為だと思っておりますので、そのことは十分に中国に説明してあるというふうに承知しております。
 ただ一方、中国の排他的経済水域であると我が国が扱っている水域でございますので、そういう意味で、沿岸国である中国のEEZに関する権益を侵さないような、そういう配慮はしなければならないということもあわせて伝えている、私どももそのように対応するというふうに承知をしております。
渡辺(周)委員 ぜひ、今殺人未遂というようなことを言われました。まさにそのとおりでありまして、国の治安を脅かして一体何をしようとしていたのかというやからが、相手を、追跡する海上保安庁を、一種の殺害してでも、武器を使って逃走しようとしたわけであります。この問題についてあいまいにするようなことがあったら、まさに、東京都知事じゃないけれども、これは国民から、この内閣は何だ、全く毅然としたところがないじゃないか、そういう評価を受けるんだろうと思います。この点、もう一回やりますけれども、最後に一つだけお尋ねします。
 これは日朝交渉の問題の中であって、これが出てきて足かせになっているのじゃないかと言われている、金丸訪朝団が一九九〇年九月二十八日、行かれたとき、当時の自民党副総裁金丸信氏らが社会党の田辺誠衆議院議員と行きました。朝鮮労働党と覚書を交わした。この三党が覚書をして、その中にいろいろな、北朝鮮の人民に与えた損害に対して十分に償うことを認めるというような文言があるわけでありますけれども、この点について、この文章というものが、この共同宣言が今どのような位置づけにされているか、その点、最後、お尋ねをしたいと思います。
田中政府参考人 委員御指摘の文書というのは、九〇年の九月に、金丸信先生、それから日本社会党の田辺誠先生、いわゆる政党、自由民主党と日本社会党という形で覚書に署名をされているということでございます。
 これは、相手は北朝鮮の労働党ということでございまして、政党間の文書でございますから、今それが有効か無効かというような議論を私どもがする立場にはございません。政府としてそれに拘束されるというものではないというふうに考えております。
渡辺(周)委員 今、政府としてそれに拘束されることはないと言いましたが、過去の幾つかの日朝交渉、本交渉を見てきますと、必ずこの謝罪について、それと賠償という、償いという言葉が出てくるわけであります。これ以上もう償いということが、我々が理解している償いとは違うわけでありますけれども、北朝鮮側はそれを持ち出す。つまり、すべてにおいて、ここにある、十分に償うことを認める、この文言が、今後、日朝交渉の問題の中で必ずや北朝鮮側が出してくる問題であろう。なぜこの文章を書いたかということについて、またこれはぜひ次の機会にやりたいと思います。
 最後に一つお答えしてください。これをまだ有効とするのか、法的に縛られないまでも、これは一回ひとつ見直すというお考えはないのか、その点について、どなたかお答えできますか。
田中政府参考人 まさにこの問題は、政府間におきましては、日朝国交正常化交渉ということで、政府の立場を貫いていく、こういうことだと思います。
渡辺(周)委員 政府の立場を貫いていく、この問題はもう一回やります。しかし、また御見解を深めていきたいと思います。
 時間が来たので、終わります。
玉置委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美です。
 私は、まず最初に、米軍の厚木基地の爆音問題に関してお尋ねをしたいと思うのであります。
 実は、この厚木基地にかかわる爆音問題は、周辺住民の皆さん方が、とにかくうるさくてかなわない、静かな夜を返してほしいという声を挙げてから、もう既に四十年を超えています。実は私も、先月の十三日に、地元の市民団体とか周辺住民の皆さんが約二百人ほど集まって、怒りの炎集会というふうに題して集会がありまして、そこに行ってまいりました。実はその日は、先日の三月の十二日から十五日まで夜間の離発着訓練をするということが米側から事前通告が来まして、どういう理由かわかりませんが、私ども社民党の議員が三人、この集会に出かけたその日は、この離発着訓練、いわゆるNLPは中止をされています。
 その日、地元の皆さん方からいろいろなお話も伺うことができたわけでありますが、これまでも国会の中で、いろいろな形でこの爆音問題、騒音問題の軽減をめぐっていろいろな質問があったかと思うのです。
 まず、私が最初にお尋ねをしたいのは、厚木基地でのNLPと言われるいわゆる夜間の離発着訓練と、それから夜間ではない、地元の皆さん方はDLPというふうに呼んでいるようでありますが、通常訓練、この実態を、これは防衛施設庁の方でよろしいんでしょうか、どの程度、どのように具体的に実態把握をされているのかをお尋ねしたいと思うのです。
嶋口政府参考人 お答え申し上げます。
 厚木基地における騒音の問題について、私ども、大変悩ましい問題、大変な問題だというふうに理解しています。これまでいろいろ、住宅防音工事とか各種の施策を最優先でやってきております。しかしながら、米軍は、高度の即応態勢を維持する等がございますので、どうしてもNLPは実施したいということでございますけれども、やはりNLPは大変な騒音を出しますので、累次の機会において米側に、できるだけ厚木でNLPをやるのはやめてほしい、硫黄島でできるだけやってほしいということで申し入れてきております。
 最近の数字を申し上げますと、最近五年でございますけれども、平成十年は厚木で八日、四百二十回、硫黄島が十一日、一千九百二十回、十一年が十日、四百六十回、硫黄島では二千九百二十回、十二年、十一日、六百四十回、硫黄島で五日、六百三十回、それから平成十三年、ゼロ回、厚木ではゼロであります、硫黄島で二千百四十回でございます。平成十四年は三日、百十回でございまして、硫黄島では一千二十回ということでございます。
 私ども、累次の機会に、私も着任早々横田に行きまして、司令官に強く申し入れました。周辺住民のことを考えて、できるだけ硫黄島でやってほしいということで申し入れて、相手方も、騒音問題については頭を痛めているということで、できるだけ協力したいということでございます。
今川委員 今の答弁はNLPに関してですよね。通常訓練の方はいかがですか。
嶋口政府参考人 通常の訓練は常時飛行場の中でやっておるわけですが、それにつきましては、その詳細は私どもは承知しておりません。
 ただ、騒音測定器を常時設置しておりまして、その騒音状況については的確に把握して、いろいろな変化がございますれば、騒音コンターの見直し等をやり、所要の住宅防音工事その他の措置を講じているということでございます。
今川委員 今、騒音の測定はなさっているという御答弁でしたが、大ざっぱに、先ほどNLPの場合には平成十年から十三年まで具体的数字が上がっていますが、通常の昼間の訓練が大体年間どの程度行われているという程度の把握もなさっておりませんか。
嶋口政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども施設庁といたしまして、施設を提供している、それに関連するいろいろな問題に対応しておりますけれども、常時厚木基地に人を置いて、また訓練の状況を一々監視するなり見回るということは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、基本的には常時騒音を測定して、周辺住民に対して迷惑をかけないように努力しているということでございます。
今川委員 実は、地元の皆さん方の強い希望というのは、要望というのは、新聞記事なども、いわゆる夜間の離発着訓練に関しては常に新聞でも報道されるんだけれども、むしろNLPではない昼間の訓練というのは別段米軍側から通告があるわけでもなくて、しかし、これがもううるさくてかなわないというふうにおっしゃっています。NLPが問題じゃないという意味じゃなくて、それ以上に騒音被害、爆音被害の主たるものは、むしろ日々行われる通常訓練によるものが最も多いんだ、そういうふうな悩みなんですね。
 それで、先ほど答弁の中で、平成十年から十二年まではそれぞれ厚木もしくは硫黄島での件数が上がりましたが、昨年は全然ないんですか。もう一度、ちょっと確認です。
嶋口政府参考人 ございません。
今川委員 今、私は手元に、昨年の十月十一日付で防衛施設庁長官あてに、厚木基地爆音防止期成同盟、それから第三次厚木爆音訴訟原告団、神奈川平和運動センター、三者で申し入れされているんですね。
 「厚木基地周辺住民の健康・生活被害をもたらす爆音の抜本的解決を要求する申し入れについて」というふうに題して、その中で、昨年九月十一日にアメリカにおいて残忍な多発テロ事件が発生し、米国は直ちに臨戦態勢を敷いたこともあって、いいですか、九月の十五日から十九日の間、無通告のNLPを初め無謀きわまる訓練を実施し、大和市では五百七十件、綾瀬市では二百六十件、他の周辺都市もかつてない怒りの苦情電話が殺到する状況を引き起こしたとあるんですね。
 今の答弁では、昨年は一切そういう、通告があったかなかったかを別にしまして、明らかに厚木で九月の十五日から十九日までの間夜間の離発着訓練はあっているんじゃないですか。
嶋口政府参考人 確かに、今聞きますところによりますと、訓練はやったということでございますけれども、それはNLPではないというふうに理解しております。通常の訓練の範囲だというふうに理解しています。
今川委員 そこで、今申し上げた厚木基地爆音防止期成同盟、通称期成同盟、それから第三次厚木爆音訴訟原告団などが、ことしに入りまして、三月十二日から十五日まで米側からNLPの事前通告があったということに関して、三月の四日に、神奈川の平和運動センターだとか期成同盟や第三次訴訟団が座間の防衛施設事務所へ、あるいはその翌五日には横浜の防衛施設局に、やめてほしいという申し入れがあっていますね。
 あるいはまた、同じく三月四日だったと思いますが、この周辺七市及び神奈川県が、日本政府や在日米大使館あるいは在日米海軍司令部、厚木の司令などに対しても、一月二十九日に日米両政府の間でNLPをめぐる了解事項がございますね、この了解事項というのは、基本的にNLPは硫黄島で行うということでありまして、それを県にしても周辺市町もそのように理解をしておったということで、それをもとに申し入れをされています。
 また、周辺の五つの市、五市市議会議長会の基地対策協議会や大和市議会も、日本政府や米海軍に対して同趣旨の申し入れをされておりますけれども、この点の確認ですが、いかがですか。
嶋口政府参考人 先生御指摘のとおり、日米間で、事務レベルですけれども、これまでやってきたこと、お互いやってきたことを、私どもが申し入れたことについて確認をしております。それで、できるだけ硫黄島でNLPをやってほしい、ただ、運用上の理由とか天候上の事情により、万やむを得ない場合を除き、できるだけ硫黄島でやってほしいということで了解いたしています。
 それから、いろいろな団体の方から非常に苦情が来ているということもよく承知しております。そういうことも米側にきちんと伝えて、できるだけ騒音を低減してほしいということは累次の機会に申し入れております。
今川委員 もう一度確認させていただきたいのは、ことし一月二十九日の日米両政府の了解事項、この中身をもう少し具体的に確認したいんですよ。
 といいますのは、関係自治体がこの了解事項にそれなりの期待感を持っているものですから、ちょっとそこの説明をお願いします。
嶋口政府参考人 了解事項について読み上げさせていただきます。
 「NLPの日米両国政府了解事項」、タイトルでございます。
 一 合衆国政府は、引き続きできる限り多くのNLPを硫黄島で実施する。
 二 合衆国政府が本土の飛行場においてNLPを実施しなければならない場合においては、合衆国政府は、従来の慣行を継続し、できるだけ早く日本政府に通知するとともに、騒音・環境等の面に最大限配慮する。
以上でございます。
今川委員 実は、この騒音・爆音問題というのは非常に地元の皆さんにとっては長年悩ましくて、実際に現地で毎日データをやはり集積しているんですね。これは分刻みですよ。食事をするときも、トイレに行くときもメモ用紙を持って記録をとっていく。すごい執念だとも思いますが、それくらいもうこの爆音に耐えられない、そういう思いがあるから何年もそういうデータをとっているんだと思いますね。だから、もう爆音の音を聞くだけでどういう機種が飛んでいるかがわかるぐらいにやるんですよ。
 ところで、そういう実態調査をずっとしている人の話によりますと、ことしの二月中だけでもNLPが二百二十六機、それから、NLP以外の通常訓練だけでも二月中に千百三十三機が飛び立ったという記録がございます。
 問題は、そういう関係自治体だとか期成同盟とか第三次訴訟団などの政府に対する申し入れに対して、どのように基本的に対応されているのか、どういう認識なのかをちょっと御答弁ください。
嶋口政府参考人 先ほど答弁申し上げたとおり、私どもも、この厚木基地周辺の騒音状況は大変ひどいものであるということは十分認識しております。したがいまして、累次の機会に、先ほど申し上げましたように、私も一月十八日に着任したんですが、早々横田に行きまして、司令官に会いました。それから、かなり具体的に申し入れております、できるだけやめてほしいと。
 ということで、先ほど申しませんでしたけれども、そこは短くすると。ただ、天候上の理由で万やむを得ない場合がある、それから運用上のスケジュールが非常にきついということでございました。それで、三日間だけは厚木でせざるを得ない。ただ、その場合は、低騒音機、戦闘機を除いて、一番音の低いものでというふうな話もございました。そのような配慮をされております。
 引き続きそのような努力を、いろいろな方から苦情が来ておりますので、私もよく理解できますので、引き続きそのような努力をやっていきたい、このように考えております。
今川委員 今御説明の中にありました、基本的には硫黄島でやりたい。ところが、米軍の側が言うところの運用上の理由によっては、この厚木でもやるというわけですね。その運用上の理由というのを、日本の側として、具体的にどういう場合にはこれはやむを得ないのかなというふうに理解されているのですか。
嶋口政府参考人 米軍、特に米海軍でございますけれども、かなり高いレベルの即応態勢に入っている、いつ声がかかっても世界各地に行くというふうな状態でございます。その点は理解しております。
 ただ、具体的に、訓練スケジュールの細部だとかがどういうふうになっているか、そのことについては私も承知しておりません。
今川委員 ところで、この申し入れの中に、例えば厚木基地なら厚木基地を米側が使用する、米軍が使用するに当たって、具体的に基地を使うための使用協定があるはずなんだけれども、それをぜひ公開してほしいというのは文書で申し入れがあっていますよね。これはどうも防衛施設庁の回答としては、承知していないというふうにこの文面ではなっているのですが、それはどうしてでしょう。ちょっと教えてください。
嶋口政府参考人 失礼ですが、突然の御質問でございまして、私自身承知しておりませんけれども。よくは承知しておりません。
 それは、あるかないかも承知しておりません。調べてお答えしたいと思います。
今川委員 実は、私は佐世保にいるんですが、沖縄が施政権が返還された年、一九七二年、いわゆる沖縄返還に関する五・一五メモという有名なものがありますよね。だから、在日米軍基地の中でも、沖縄に関しては非常に事細かに分厚い書類でもって、沖縄の例えば嘉手納を使う場合、普天間を使う場合というふうに、基地を使うための使用協定がきちっと日米間で協定されているわけですね。これが当たり前だと思うんです。
 問題なのは、沖縄以外の、この厚木にしましても佐世保にしましても、なぜ基地を使うための使用協定が国民に明らかにされないのかが不思議でならないんですよ。少なくとも、今申し上げたように、沖縄は明らかにされているわけです。その点をちょっともう一度お聞きしたいと思います。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 今、今川委員から、沖縄の返還時に日米間で合意しました使用協定、いわゆる五・一五メモとの関係で、本土の基地についての御質問がございました。
 これにつきまして、これは各基地によって異なっておりますけれども、厚木基地でございますると、昭和三十八年九月の日米合同委員会におきまして、厚木飛行場における騒音規制措置というものについて合意しております。そして、これにつきましては昭和四十四年に改定いたしておりますけれども、この騒音規制措置に従いまして米軍は運用することになっている次第でございます。
 私どもといたしましては、各こういう規制措置というものについて、これをつくりましたのは周辺住民の方々に騒音の影響が可能な限り及ばないよう、もちろんこれは先ほど施設庁長官からも申し上げましたように、非常に大きな問題ということで私どもも認識しておりまして、これが可能な限り小さくするということでこういう規制をつくっているわけでございます。
 これが守られるよう、引き続ききちんと対処していきたいというふうに考えております。
今川委員 私の質問の趣旨が十分理解されていないみたいなんですけれども、例えば佐世保の場合を例にとりますと、これは外務省なり防衛施設庁、両方にかかわってくると思うんですが、旧安保条約のもとでの行政協定、ございますよね。それが六〇年に安保条約の一部が改定されて地位協定に引き継がれていくわけですが、もともと、日本があの戦争に負けて、米軍中心に占領軍という形で入ってきますね。そうすると、佐世保の場合だと、ほとんど私有地がありませんから、旧海軍工廠、それまで日本海軍が握っていた、管理していた施設を全部接収するわけですね。終戦直後のどさくさですよ。
 一九五一年にサンフランシスコ講和を結び旧安保条約を交わすというふうになるわけですが、そのときに、行政協定から六〇年の安保改定があって地位協定に移り変わっていくときに、これまで、とにかく終戦直後米軍が押さえていたものはそのまま使わせていただくよというふうになっていくんですね。だから、基地の使い方、日本側からすると基地を提供するわけですから、米軍側からすると提供されたものを受けてそれを使っていく、そのときの日米間の、政府間の基地使用に関する協定の交わし方というのが実にあいまいなんです。だから私は申し上げているのです。
 沖縄の五・一五メモにあるように、北は三沢から南は沖縄に至るまで、米軍に沖縄以外の基地をたくさん提供しているわけですから、その基地を、ただ騒音問題だけじゃなくて、基地をこのように使うというふうな協定があって当たり前なのに、なぜそれが国会の場であるいは国民に対して公にできないんだろうか。沖縄に関しては公にしているわけですから。その点をお聞きしているのです。
藤崎政府参考人 お答えいたします。
 各施設につきまして、その経緯に基づきましてどのような米側との使用についての取り決めがあるかということは、おっしゃるとおり一律ではございません。
 沖縄につきましては、おっしゃるように、長い米軍の施政下を経ましてこれが日本のもとに戻りました際に、この五・一五メモという合同委員会の合意を作成いたしまして、後にこれを公表した次第でございます。
 本土の基地、これは厚木を含めまして、あるいは佐世保等を含めまして、沖縄よりも前に復帰しておりまして、沖縄の方々は、これらの基地の使用条件については、むしろ本土の方がいいのではないかという御議論を随分されてきたことは事実でございます。
 私どもといたしましては、これまでの経緯を踏まえまして、各基地の使用条件について、それはそれぞれ異なっているわけでございますけれども、今の厚木等につきまして、例えば騒音規制がきちんとこれは合意されたとおりに守られていくようにということで、今後ともきちんと対処してまいりたいと思っております。
今川委員 ちょっとあとの質問もありますので、これ以上深くは言いませんが、ぜひこれは隠すことではなくて、むしろ、特に米軍基地を擁している自治体、その県民、市民にとりましては当然知っておいて当たり前のことなんで、きちっと、少なくとも沖縄のように明らかにしてほしいと思うのですね。
 さて、ことし三月の六日に、同じくこの騒音問題を抱えている小松、これは自衛隊機による騒音問題でありますが、この航空自衛隊の小松基地の騒音をめぐる飛行差しとめ訴訟なんでありますけれども、第三次、第四次小松基地騒音訴訟の判決で、金沢地裁の裁判長は次のように下しているのですね。
 国は、住民に受忍限度を超える騒音被害が生じているのに防止措置を講じなかったとして、いわゆるW値、うるささ指数七五以上の原告千七百二十九人について、過去の賠償、計八億一千三百八十四万円の支払いを命じたとございますが、これは厚木基地の場合も横田基地の場合もことしじゅうに判決が出るものと思うのですが、この小松基地の訴訟の判決内容をどのように受けとめ、評価されているのかをお伺いしたいと思います。
嶋口政府参考人 お答え申し上げます。
 本判決において、飛行差しとめ及び騒音規制並びに将来分の損害賠償については、国側の主張が裁判所の理解を得られたところであります。他方、過去分の損害賠償請求が一部容認されたことは、これまで私ども、住宅防音工事等、騒音対策について十分御理解が得られないということもございましたので、三月十九日、名古屋高等裁判所金沢支部に控訴したところでございます。
今川委員 これはむしろ全体的に外務大臣にお尋ねした方がいいのかなと思うんですが、日本が日米安保条約に基づいて米軍に基地を提供していますね。そうしますと、この厚木の問題は一つの象徴的な事例なんですが、騒音問題だけでも、横田、小松、厚木、嘉手納というふうにそれぞれが、地元の住民の皆さん方は、やむにやまれず訴訟という手段に訴えざるを得ない。
 そうしてきますと、やはり日米の安保、同盟関係というのは、地元の住民を含めて、これは仕方がない、日米関係上、ここら辺までは我慢せざるを得ないというのはあると思うんですよ。しかし、こういう形で、二十年も三十年も訴訟に訴えざるを得ない。まず、やはり住民生活優先ということを前提にして日米安保というのは成り立っていくんじゃないかと思うんですけれども、そこの御所見を伺いたいと思うんです。
川口国務大臣 委員が御指摘になられていますように、航空機の騒音問題が基地の周辺の住民に与える影響には大変に深刻なものがあると私も思います。
 おっしゃったように、日米安保条約に基づく日米安保体制というのは、我が国及び極東に平和と繁栄をもたらしているわけでございまして、また、アジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能しているという評価をしております。また、こうした日米安保条約の役割につきましては、国民の大多数からも支持をされていると考えております。
 その上で、政府として、この騒音規制措置、厳格な騒音規制についてどうしていくかということでございますけれども、米軍がその訓練、活動に当たって、安全性の確保、周辺住民への負担の軽減に万全を期すべきということは当然であると思います。この点につきまして、政府から、閣僚レベルを含めまして、さまざまな機会に米側に対しまして申し入れをしているわけでございます。今後とも、その申し入れにつきましては引き続き行っていきたいと考えております。
 また、米軍は、日米安保条約の目的達成を図りながら周辺住民への航空機騒音の影響につきまして最大限配慮をするという観点から、騒音規制措置、これは米側と合意をしたものでございますけれども、これに従いまして、周辺住民に対する航空機騒音の影響をできるだけ軽減するように最大限の努力をするということであると承知いたしております。
 今後といたしましても、政府としましては、この騒音規制措置の厳格な履行をアメリカに求めていくということで、それとともに、地元の方々の御負担の軽減には取り組んでまいりたいと考えております。
今川委員 時間の関係もありますので次の点に移りたいと思いますが、二点目には、これは特に防衛庁長官の方にお尋ねをしたいと思うんですが、例の自衛隊のいじめ問題なんです。
 私は、議員になる前後のところで、例の護衛艦「さわぎり」の自殺問題で、一つは、私自身目を開かれたのは、自衛隊という組織にかかわる論争というのはもう長年、違憲だ合憲だという論争は続いてきましたよね。私自身がやはり気づいたのは、既に二十三万人を超える陸海空の自衛官の問題なんですね。その人権問題というところに私は非常にこだわりがありまして、ホームページにも載せて、いろいろな相談を受けたいということでやってまいりました。
 この護衛艦「さわぎり」の事件というのは、一九九九年十一月の八日の出来事でした。その中身はもう過去の委員会でも申し上げていますから詳しくは申し上げませんが、これが昨年から、やはりお母さんを初め遺族にとりましては、明らかに当時いじめがひどくて、それを苦にして艦内で自殺をした。ところが、海上自衛隊としては、調査委員会を設けた上で、二〇〇〇年の二月二十一日、いじめはなかったという最終的な報告書を出されました。これを不満だとして裁判が起こり、そして今、裁判が行われているのは佐世保です、お母さんは宮崎におられますので、九州規模でこの裁判を支えていくという支援共闘会議も結成をされました。
 それで、今回、これはまず中谷長官にお気持ちを率直に聞いておきたいと思うんですが、この「さわぎり」事件にかかわる裁判が起こってしまったことに関して、率直に、どのように受けとめておられるでしょうか。
中谷国務大臣 このいきさつ等につきましては十分把握はいたしておりませんけれども、この事件につきましては、現在、司法の場で、平成十三年十月一日に第一回の口頭弁論が開始されまして、現在審理中であり、司法の判断の問題でございますので、言及は控えたいというふうに思っております。
 なお、本件の処理につきましては、お話がありましたように、平成十一年の十一月十六日に、佐世保の地方総監部幕僚長を委員長とした一般事故調査委員会を設置いたしまして、関係者から事情聴取を行いまして結論を得たものでございまして、自殺の原因については、自殺者個人に関する要因、訓練、教育、指導に関する要因、勤務環境に関する要因、服務規律に関する要因等、多方面から調査を行いましたけれども、遺書などもなく、原因を特定するには至らなかったというふうに報告をされております。
今川委員 私も裁判の成り行きをずっとこれから見守っていきたいと思うんですが、もう時間がありませんので、このことだけ知っておいていただきたいんです。
 一昨年、いわゆる護衛艦「さわぎり」に私も実際調査に入ったんですが、そのときはっきりしたのは、いじめ問題というのが一つと、もう一つは、教育隊時代に約三年間、上官に、班長クラスに大体貯金通帳なんかを預けるわけですね。これから七十万円を超えるようなお金が抜き取られていたというのが、この自殺をした彼だけじゃなくて、かなり組織ぐるみとも思えるようなことが、これは新聞にも報道されました。そのために、実際に事情聴取に当たっているんですね、自衛隊内部で。
 ところが、彼が所属していた班の上司が、Aさん、Bさんと言っておきましょう、一人は、三回目の事情聴取を受けるその日、一昨年の八月の末です、恐らくこの事情聴取を苦にしたと思われて、それが恐らく理由でしょうけれども、佐世保の山林で首をくくって自殺をするという事件があったんですね。その年の暮れ、まさに呉市から家族で佐世保に戻る途中、佐賀県の国道で、たしか大型ダンプだったと思いますが、正面衝突をして、その事件にかかわったと思われる班長は即死です。中学生だった長女は一週間ぐらい後に亡くなられています。非常にミステリアスなことが続いたんですよ、その二年前というのは。そういう事件を含めた、非常に大切な事件であり、裁判であるわけです。
 さて、もう時間が余りありませんが、過去五年間、自衛官の自殺者の数がどの程度なのかを、まずちょっとデータを示してください。
宇田川政府参考人 過去五年間の自衛官の自殺者数でございます。
 平成九年度は六十二名、平成十年度は七十五人、平成十一年度は六十二人、平成十二年度は七十三人、平成十三年度は五十九名、五年間で合計三百三十一名であります。
今川委員 問題は、自殺の原因、一定の分類というのか、こういうものが理由じゃないだろうかというのが把握されていると思うんだけれども、そこもついでに説明してください。
宇田川政府参考人 過去五年間の自殺の原因でございます。
 私ども、分けていますのは、病苦とか、病気であります、病苦とか借財、借金でありますが、それから家庭、職務、こういうような分類をしておりますが、過去五年で、先ほど申し上げた数字で申しますと、一番多いのが、平成九年度で申しますと、その他不明というのが二十一名で多いんですが、借財が十九名、これが多うございます。そのほかにも、借財でありますと、十年度は十七名、十一年度が十五名、十二年度は二十名と、借財が多うございます。それから、年によってばらつきがありますが、病苦につきましても、十一年だと十一名、十二年だと十名。職務が、九年度だと十二名、十一年で十一名、このようなばらつきになっております。
今川委員 いま一つは、これはわかる範囲内でいいんですけれども、自衛隊員に対する隊内でのカウンセリングが大体年間どういう形で数字が出てきているのか、説明ください。
宇田川政府参考人 カウンセリングについてであります。必ずしも陸海空そろった数字ございませんが、平成十二年度で申し上げます。平成十二年度は、陸上自衛隊員ということでありまして、自衛官及び事務官等を含んではおりますが、これは一万八千五百二十三件。それから、海上自衛隊につきましては、恒常的なデータはございませんが、地方総監部のデータがございます。これでありますと、九百六十六件。それから、航空自衛隊でありますと二千二百五十件。平成十二年度の、必ずしも自衛隊全部ではありませんが、カウンセリングの数としましては二万一千七百三十九件。こうなっております。
今川委員 ちょっと時間がほとんどなくなってきましたが、また次回にもう少し具体的にお尋ねもしたいと思うんですが、これ防衛庁長官、今いわゆる病苦、借財、家庭、それから職務といってもいろいろあると思うんですけれども、それからあと、その他不明というところもありますが、これは価値観の違いからきてなかなかそういう仕分けができないのかなと思うんだけれども、通常の世間で言われるいじめだとかしごきだとか、これはこういう自衛隊という組織だから、厳しい指導だとか訓練だとかという言葉に恐らく置きかわるんだろうと思うけれども、結構私も、匿名も含めましていろいろな相談を受けます。問題は、自衛隊の側に、訓練内容が過酷であったり指導が厳しかったりということはあるんでしょうけれども、明らかにいじめだというふうな自覚があるのかどうか。実際、今、カウンセリング、それから自殺者の数、説明していただきましたが、中谷長官、どうなんでしょう、やはりいじめがその理由の大半だとは言わないにしても、一切自衛隊の中にそういうのはないよと胸を張って言えるものなのかどうなのか。どうなんですか。
中谷国務大臣 最近はわかりませんけれども、私も実際に幹部自衛官として隊員の生活指導等を見ておりまして、私が訓練を受けたりした、心理としては非常につらいこととか、厳しいときとか、将来への不安はありましたけれども、その辺は同僚とか先輩が非常に明るい雰囲気をつくってくれたりして、お互いにそういう部隊を錬成しようということで非常に心がけをいたしております。したがいまして、相互にそういったいじめが起こらないということを注意してやっているというのは現場でございますけれども、実際、このような自殺者の数字も出ておりますので、そういった個々の隊員の心理に対して、逃げ場がないというのではなくて、カウンセリング等で話を聞いてあげたり、また上司が心がけるといった努力は当然必要だというふうに思っております。
今川委員 もう時間が参りましたので、最後にもう一度防衛庁長官に、どうしたらいいのかなと私自身悩んでいるんですよ。この「さわぎり」事件の場合には、二十一歳で、三等海曹だったんですね。これは出所を明らかにするわけにいかないんだけれども、つい最近、これは三佐クラスの人です。実際に、私のホームページで、自衛官の人権問題に関心を抱いている議員がおるのでびっくりしましたと言って、実はいじめにいじめられて、私も一つ間違うと自殺しそうです、しかし妻もおります、子供もおりますと言うんですね。それは一回とにかく会ってくれないかということで、先々週あるところでお会いしたんです。しかし、それは実名はちょっと避けたいと。非常に深刻ですよ。
 それで、これはまた別の機会にもっと具体的に、明らかにできるところはしながらお尋ねをしたいんだけれども、中谷長官、いわゆるカウンセリングで相談を、自衛隊の中でいろいろな相談を持ちかけるのはまだいいんです。ところが、今回私に相談があったように、どうせ組織の中で相談してもまたいじめられるとか、あるいはかえってある意味で出世に響くとか、いろいろなことがあるんでしょうけれども、一たん相談を受けたときに、例えば私がそこの隊に行って、何たることだとやって、それは改善されればいいですよ。かえって陰湿にやられかねないという怖さがありますね。だから、例えばここの国会の場所で実名を明らかにして、ある基地で、施設でこういうことをやっておるやないかとやったところで、事態がそれで解決するなら、もうきょうだって明らかにしたいんです。どうしたらいいと思われますか。本当に悩ましいと思うんですよ。
中谷国務大臣 先生にその隊員が悩みを打ち明けたように、組織の中でそういった意見を打ち明けるような場所を確保すると同時に、そのことによって問題が解決されて、隊員が健全な状態で仕事ができるように処置できるような、そういう機関をつくる必要があるというふうに思っております。
 基本的には、そういった悩みがあったら打ち明けることができるような場所の確保がどうしても必要ではないかというふうに思います。
今川委員 もう時間が来ました。これはまた機会を改めて、長官、これはやはり自衛官一人一人の人権にかかわる問題ですので、立場を超えて、やはり彼らが本当に自信と誇りを持って日々の仕事に打ち込めるというふうに、そのためには、カウンセリングはもちろんなんですが、ぜひもっといろいろな手だてを防衛庁の中でも考えていただきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
     ――――◇―――――
玉置委員長 内閣提出、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を求めます。中谷防衛庁長官。
    ―――――――――――――
 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
中谷国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明します。
 この法律案は、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部改正を内容といたしておりまして、防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画において定められた防衛力の合理化、効率化、コンパクト化を進めるとともに、必要な機能の充実等を図るとの観点から、陸上自衛隊の第四師団の改編等、陸上、海上、航空各自衛隊の情報保全隊の新編等並びに統合幕僚会議における防衛情報通信基盤管理運営室の新設等及び情報の収集・分析態勢の強化等に伴い、自衛官の定数及び即応予備自衛官の員数を変更するものであります。
 以上が、この法律案の提案理由であります。
 次に、この法律案の内容について、その概要を御説明いたします。
 まず、防衛庁設置法の一部改正の内容について御説明いたします。
 これは、陸上自衛隊の第四師団の改編等及び情報保全隊の新編等に伴い、陸上自衛隊の自衛官の定数を四百五十四人削減し、海上自衛隊及び航空自衛隊の自衛官の定数をそれぞれ十四人増加するとともに、統合幕僚会議事務局における防衛情報通信基盤管理運営室の新設等及び情報本部における情報の収集・分析態勢の強化等に伴い、統合幕僚会議の自衛官の定数を百三十五人増加させることを内容とするものであります。これにより、自衛官の定数は計二百九十一人削減されることとなります。
 次に、自衛隊法の一部改正の内容について、その概要を御説明します。
 これは、陸上自衛隊の第四師団の改編に伴い、即応予備自衛官の員数を三人増加するものであります。
 以上が、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案の提案理由及びその内容の概要でございます。
 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
玉置委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る四日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十一分散会


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