衆議院

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第4号 平成17年3月25日(金曜日)

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平成十七年三月二十五日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 赤城 徳彦君 理事 岩屋  毅君

   理事 高木  毅君 理事 仲村 正治君

   理事 大石 尚子君 理事 渡辺  周君

   理事 赤松 正雄君

      石破  茂君    奥野 信亮君

      嘉数 知賢君    瓦   力君

      坂本 哲志君    寺田  稔君

      中谷  元君    額賀福志郎君

      萩生田光一君    浜田 靖一君

      古川 禎久君    御法川信英君

      武正 公一君    津村 啓介君

      中野  譲君    西村 真悟君

      橋本 清仁君    本多 平直君

      前原 誠司君    松崎 哲久君

      松本 剛明君    村越 祐民君

      佐藤 茂樹君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   内閣官房副長官      山崎 正昭君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   総務副大臣        今井  宏君

   法務副大臣        滝   実君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   国土交通副大臣      岩井 國臣君

   経済産業大臣政務官    平田 耕一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊佐敷眞一君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  横畠 裕介君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 岩橋  修君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    柳  俊夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    石川  薫君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     柴生田敦夫君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石川 裕己君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     萩生田光一君

  中野  譲君     橋本 清仁君

同日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     奥野 信亮君

  橋本 清仁君     松崎 哲久君

同日

 辞任         補欠選任

  松崎 哲久君     中野  譲君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件(平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画)


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件、特に平成十七年度以降に係る防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官堀内文隆君、内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官伊佐敷眞一君、内閣法制局第二部長横畠裕介君、警察庁長官官房審議官岩橋修君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君、法務省入国管理局長三浦正晴君、公安調査庁次長柳俊夫君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房審議官西宮伸一君、外務省北米局長河相周夫君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省経済局長石川薫君、外務省経済協力局長佐藤重和君、外務省領事局長鹿取克章君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長柴生田敦夫君及び海上保安庁長官石川裕己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。

赤城委員 おはようございます。自由民主党の赤城徳彦です。

 きょうは、新しい防衛計画大綱そして中期防についてお尋ねをするわけですけれども、これまでの安全保障環境が大きく変わってきた、そういう世界的な情勢を受けてこの見直しがされたということで、我が国の安全保障政策にとっても画期的な、大変大きな一歩になると思っております。

 そこで、この間の大きな動きということで象徴的なのは、一つは九・一一の同時多発テロ、そして、それを受けて、テロの脅威を除去するためにインド洋で我が自衛隊が支援活動をしているということ、そしてもう一つはイラクの問題であります。

 これまでPKOなどで各国の国づくりを支援するという活動をしてきましたけれども、イラクでの復興支援というのは大変大きな、これまた意義のあることだというふうに思っておりますので、その状況について最初に伺いたいと思います。

 今、イラクの政治プロセスが進んでいる、その中でなかなか困難な状況もあるようですが、きちっとこれが進んでいくのかどうかという政治プロセス。それから、その中で相変わらずテロ、自爆テロ等が行われているということ、それが政治プロセスが進行するに伴ってだんだん鎮静化するというふうに見ているのか、この混乱が深まると見ているのか。それからもう一点は、イラク人自身がこういう治安対策をきっちりやっていくという体制、イラク人による治安部隊、これが形成されていかなければいけないと思いますが、その状況はどうなのか。ちょっと、簡単で結構ですから、今後の見通しということでお尋ねをします。

吉川政府参考人 赤城先生から、政治プロセスの進展、それから治安維持とこの回復の見通しについてお尋ねがございました。

 まず、政治プロセスの方でございますが、安保理の決議、それからイラクの基本法に従いまして、これまで、統治権限の移譲でありますとか一月の国民議会の選挙とか、基本的には順調に進展してきているということが言えると思います。特に、一月三十日の選挙は五八%という高い投票率、これが厳しい治安状況の中で行われたということは、大変意義ある、民主化に向けた重要な一歩であったと認識しております。

 三月十六日に国民議会の初会合が行われておりまして、現在、各政党、会派間で新しい政府の発足に向けた調整が続けられております。この後、憲法の草案をつくるとか新憲法に基づく国民議会と、いろいろとスケジュールが予定されております。年末までにはイラク政府の発足というのが、今考えられているスケジュールでございます。

 治安情勢につきましては、先生御指摘いただいておりますように、一月三十日の選挙が終わった後も、残念ながら、武装勢力による攻撃というのは各地で続いております。地域によって脅威の度合いは異なりますが、依然、予断を許さない状況が続いているということ、こういう認識でございます。

 イラク人の治安維持の能力とか回復という御指摘については、イラク暫定政府それから多国籍軍、最近はそこにNATOも加わっておりますが、イラクの治安組織の能力向上のために必要な訓練を実施して、日本としても警察車両を供与するというような格好、また警察官の研修ということで、イラクの警察能力の向上に努めているところでございます。

 イラクの人たちが一月の選挙で見せましたように、テロの脅威に屈せずに自分の国をつくるという強い意向、情熱ということがイラクの治安の回復につながるというふうに私どもとしては期待しております。

赤城委員 ただいまの報告にありましたけれども、いろいろな状況はありますけれども、基本的には政治プロセスはちゃんと進行していて、暫定国民議会、そして移行政権をつくって憲法草案を策定して、国民議会選挙を行って年末には本格的な政権ができる、基本的にはそういうプロセス、大きな流れに沿って動いている、こういうことだと思います。

 また、イラク人による、国づくりの一番基本は治安をきちっと確保するということですから、イラク人自身がそういう部隊を練度を高めて担っていくということ、そういう意味でも進んでいるということであります。

 そういうイラクの新たな国づくりに、日本の自衛隊が、サマワという限られた地域でありますけれども、復興支援、しっかりとした活動ができた、これを続けているということは大変意義があると思います。給水支援、そして医療支援、学校等の補修、そういう活動をしてきて、大野長官は実際に現地を見られて、現地からも大変感謝されているし、そういう成果を目の当たりにされてきたと思います。

 しかし、これは、イラクの国づくりが進むに従って、だんだんイラク人自身がみずからの手で国づくりをしていくわけで、給水支援も二月にはもう終わっていて、現地の給水施設が稼働している。これはODAで供与したものだそうですけれども、稼働しているということですし、だんだん現地のニーズがシフトしてくるだろうなと、それに応じて自衛隊の支援活動というのも変わってくるのではないかと思いますけれども、今の現地のニーズを踏まえて、今後どういうふうな支援活動をしていくのか、伺いたいと思います。

大野国務大臣 赤城先生から、今後、自衛隊としてどういう活動をやっていくのか、こういうことでございます。

 まず、先生御指摘のとおり、二月四日で給水、浄水活動は現地のサマワの人々の手に渡りました。二月五日以来、自衛隊はこれに従事しておりません。

 ただ、私、昨年十二月の初めにサマワに参りましたときに、例えば道、住宅街にパラボラアンテナがかなりあるんですね。これはフセイン政権のもとではなかったような光景でした。それから、住宅建設もかなり進んでいる。しかしながら、これは明るい兆候なんですが、例えば学校ということで見ますと、ムサンナ県内に三百五十校あるんですけれども、その半分以上がやはり復旧を待っている、自衛隊の手による、あるいはほかの手による復旧を待っている、こういう状況でございます。

 それから、医療支援活動は引き続き重要だという認識であり、また、特別に文化遺跡等の修復をやってほしい、こういう話がありました。その中でも、特に雇用について重大な関心を持っている。したがって、自衛隊は引き続きサマワに在住して、そして活動を続けてほしい、これが要望でございました。

 そういうことから見て、我々はやはり、今申し上げたような話を軸に、一つは、その他の分野で考えますと、例えば電力、電力供給に対する需要は大きいのでありますが、これはODAの世界になってくる、こういうことも念頭に置いていかなきゃいけない。では、自衛隊として何ができるかというと、やはり今申し上げたような学校の修復とか、あるいは道、道路もアスファルトの要求もありますし、こういう道についてもかなり需要が残っております。そういうことを考えながら、これからも活動を続けていくことが現地の皆様、サマワの人々の御要望に合うのかな。

 ただ、我々としては、いつまでもそういうことをやるんじゃなくて、なるべく早くこれは現地の方々の手で、自衛隊がやっていることが受け継がれていくような方向、これは先ほどの政治プロセス等との関係もございますけれども、復興の度合い、あるいは多国籍軍、国際的な協力の中でどう考えるか、こういう問題もありますが、やはり徐々にイラクがみずからの手で復興できるような状態になっていくことが望ましいなと思いながらも、やはりニーズはある。そして今後、先ほど申し上げましたような文化遺産の修復等について、特別な要望があればこれを踏まえてやっていきたい、このように思っております。

赤城委員 よく、治安維持に当たっていたオランダ軍が撤退して、あるいはイタリアが撤退するとかしないとかというふうな話があって、もう日本もいいんではないかとか、そういうふうな議論があるんですけれども、私は、それぞれの国の事情は違いますし、特にやっている任務が違っていて、治安維持に当たるものと日本のように復興を支援するものと、これは今後の活動の考え方というのはおよそ違うんだと思います。

 長官が言われるように、現地にはまだまだニーズがあって自衛隊が必要とされているという、今はそれを黙々と任務を遂行し、きちっとした形で、現地の復興に従って現地の手にだんだんに渡っていくという、そこをスムーズにやっていくということが大事だ、こう思っています。

 そういうことを申し上げて、それでは、もう一つの新たな状況変化、特に大量破壊兵器の拡散、ミサイルの拡散という、そちらの方に話を移したいと思うんです。

 ミサイルの脅威といいますと、北朝鮮のことが言われます。もう随分前から、北朝鮮にはノドンミサイルが百基とか二百基とか配備されているということが言われていたんですが、どんどん技術というのは上がっているだろうし、ミサイルを地下に格納しあるいは移動するようにしたり、液体燃料を注入している間、宇宙から監視できますというふうな話だったけれども、それも固体燃料でやれば短時間に済むというふうな、そういう意味での改善といいますか、技術革新というのは進んでいるのではないかと思います。ペイロードの大きな新たなミサイルの開発ということも言われています。

 要するに、ミサイルを発射する兆候があらかじめわかるのかどうかということについては、だんだんそれが困難になりつつあるのではないか。核の搭載の可能性についても、徐々にそれは高まっているのではないかというふうに思います。そこら辺、最新の知見でどういうふうに把握しているのか。

 それから、中国ですね。今回、北朝鮮と中国というふうな名前が出てくるというのは大変大きなことだと思いますけれども、中国の軍備の近代化、そして軍事力を増強しています、ではミサイルはどういう状況にあるのか、その点を伺いたいと思います。

飯原政府参考人 まず、北朝鮮の現状に対する認識でございますが、スカッドとノドンが実戦配備されている。その中で、御指摘のように全土にわたって地下施設化がされている、または、ノドンはスカッドと同様、発射台つきの車両に搭載されますので移動可能である。また、弾道ミサイルの長距離化の研究も進められている。その中で、固体の燃料についてはまだ実戦配備されたという認識は持っておりませんが、核につきましては、ミサイルに搭載するために小型化する、軽量化することが必要でございます。これについては、核兵器開発の現状についてさまざまな指摘がなされておりますが、私どもとして断定的なことは申し上げられないということでございますが、他方、北朝鮮の一連の言動を考えれば、既に核兵器計画が相当に進んでいる可能性を排除することはできないという認識でございます。

 また、中国についてでございますが、御承知のとおり、有人衛星を打ち上げる実力を持っておりますので、これはかなりの高い能力を持っているのは間違いないということで、例えば、例で申しますと、液体燃料だけでなく固体燃料のミサイルも所有しておりますし、また長距離を飛ぶ大陸間弾道弾も所有している。また、潜水艦から発射できるような潜水艦発射型のミサイルも持っている。また、一つのミサイルで幾つかの、複数の弾頭を撃ち込めるような多弾頭型のミサイルも所有しているだろう。また、命中精度も、仮に北朝鮮と比較すれば命中精度もかなり高いものを持っているということだというふうに認識をいたしております。

赤城委員 そこで、ミサイルに対するミサイル・ディフェンス・システムを導入する、技術的にはもうほぼ確立をしているわけですけれども、法的に枠組みをどういうふうにつくるかと考えたときに、あらかじめ防衛出動が下令できる、事前に兆候がわかって相手の意図がわかってという場合でない、いきなり飛んでくるとか、不測の事態にどう対応するかという意味で、法的な整備が必要だということだと思います。

 しからば、その法的な性格はどういうものなのか。要するに、自衛権の行使なのか何なのかということと、自衛隊の行動類型、いろいろありますけれども、それのどこら辺に位置づけられるのかということを伺いたいと思います。

大野国務大臣 確かに、先生おっしゃったとおり、防衛出動ということではとらえられない点もございます。事故で飛んでくる場合もあるかもしれない。しかし、蓋然性としては防衛出動につながる場合が多い、このような新しいタイプの襲撃だと思います。

 そういう意味でいいますと、まず第一に、防衛出動が下令されている場合、これはもう論外としておきます。されていない場合で、まず、原因はどうであろうとも飛んでくる、これは、ほっておきますと国民の生命財産が危なくなるわけですから、これは必ず撃ち落とさなきゃいけない、こういう使命があると同時に、同じような重みで、やはりシビリアンコントロールというのを確保しなきゃいけない、これをどう考えるかという問題であります。

 そういう意味で、今回の法制というのは、国民の生命財産に対する被害を防止するため、我が国として必要な措置をとった。その必要な措置、これは自衛権の行使というとらえ方じゃなくて、いわば自衛隊法上の任務として、公共の秩序の維持というふうにしております。これをあえて整理するとなれば、警察権の行使というふうに位置づけてもいいのではないかと思っております。

 例えば、自衛隊の他の行動類型との関係で申しますと、自衛隊法第八十二条、海上警備行動であります、あるいは八十四条の対領空侵犯措置であります。これらと同じような措置になってくるわけでありますけれども、この類型は、今申し上げましたようなのと同じような類型として、いわば公共の秩序の維持という行動類型にしております。それから、その活動は、自衛隊が武力を行使するのではなく、まず、我が国の治安、秩序を維持するんだ、ここに重点を置いている。

 そこで、今回の法制の目的というのは弾道ミサイル等への対処であり、その手段はBMDシステムを用いて飛来する弾道ミサイル等を破壊するということであります。海上警備行動、対領空侵犯措置とはその目的、手段が異なるために、既存の法文にそのまま入れるのではなくて、八十二条の二という条文を一条設けている。そういう意味で、新たな行動類型として位置づけている、こういうふうな解釈でございます。

赤城委員 ミサイルを確実に落とさなきゃいけないということ、しかも着弾するまでわずかな時間ですから、そういう実効性の確保と、大臣がおっしゃるようにシビリアンコントロールという面での整備というのは、大変難しいことだと思います。

 そういう中で、新たな行動類型としてこれを設けて、その性格は、自衛権の行使ではない、警察権あるいは警察権に類似したもの、公共の秩序の維持のためのもの、こういうふうな整理をされたわけであります。

 そこで、今回の法律は我が国に飛来するミサイルというふうな話なんですが、ちょっと憲法論、集団的自衛権の関係でよく言われることと関連して、これは法制局にお尋ねしたいんですが、我が国に飛来するミサイルを撃ち落とす場合に、防衛出動が下令されて自衛権の行使としてやる場合と、そうではない警察権というふうな場合とがあります、こういうことであります。

 これと同じことが、ほかの国に飛んでいくミサイル、A国からB国へ飛んでいくミサイルをB国が撃ち落とす場合、日本と同じような理屈で、公共の秩序維持のために警察権の行使として落とさなきゃならないという場面があると思います。しかし、B国はミサイル・ディフェンス・システムを持っていなかった。これは日本がミサイル・ディフェンス・システムでもって落とすしかないということで落としたときに、これはもともとのB国にとってそもそも自衛権の行使じゃありませんから、したがって、それを落とすという日本の行動も集団的自衛権に当たらないんじゃないか。

 要するに、ミサイルを落とすというのは、他国に行くミサイルであっても集団自衛権の問題を生じないような場合があるということではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

横畠政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのような、他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、御指摘のとおり、今回の法制化に当たっては全く対象としていないわけでございます。

 また、事実認定の問題も含めて、御指摘のような状況が実際に生じ得るかどうかというのもまた別論とさせていただきまして、純粋に理論的な問題としてお答えさせていただきたいと思いますけれども、他国に向けて飛行する弾道ミサイルが実際に事故や誤射によるものであって、武力攻撃ではないものであって、かつ、その時点においてそのことが明らかであるというような場合でありますれば、それは、自衛権あるいは御指摘のような集団的自衛権の問題になるということはないと考えております。

赤城委員 非常に慎重な、範囲を限定したお答えをされたので、確かに、誤射であるとか事故であるというのがわかっている場合は、これは全く武力の行使とか自衛権がどうとかという話ではないんですが、さっき大野長官言われたように、自衛権とか防衛出動の三要件を認定するいとまがないというか、相手の意図がわからないということで今回のものを発動される場合は、その後、自衛権、防衛出動につながるようなものもあるという、そういうところが一番問題で、ある国からミサイルが発射された、相手国の意図もわからず防衛出動というのは下令できないが、しかし公共秩序の維持のために警察権の行使として落とさなければならないという場面、これは誤射かもしれないけれども、それは認定できないんですね。

 自衛権行使も認定できない、しかし公共秩序のために落とさなきゃならないという場面があるわけで、そういうときに、同じ話を、B国にとっても同じ状況で、それを日本が落とすという行為は、要するに、B国にとって自衛権の行使でないものである以上は日本にとって集団自衛権の行使ではないということを伺っているので、その点についてはどうでしょうか。再度。

横畠政府参考人 ミサイル発射というものを一般的にどう評価するかという前提があるわけでございますけれども、弾道ミサイルが発射された場合、直ちにこれを我が国あるいは他国に対する武力攻撃であると断ずることは、それ自体また難しいというのが今回の法制の前提でございます。さらに、そうは申し上げましても、その手段の性質から見て、相当程度に武力攻撃として行われた可能性というものが含まれているわけでございまして、その意味で、先ほど申し上げましたように、武力攻撃でないということが明らかな場合というのは、またそれ自体非常に少ないのではないかというふうに考えております。

 すなわち、灰色の部分というのが相当多いのですけれども、その両端の明確な部分というのは相当少なくて、武力攻撃であるということが明らかなものも、前提状況によりますけれども全くないとは申し上げませんけれども、通常、いきなり発射されたときに直ちにそれを武力攻撃であると断ずることはなかなか難しい。

 それと同程度あるいはそれ以上にそれが武力攻撃でないということが明らかであるということを認定するのもなかなか難しいというか、ほとんどそういう場合はなかなか想定されないであろう、そういう前提に立って申し上げるわけでございますけれども、我が国に向けて飛来する弾道ミサイルにつきましては、これが実際に我が国に対する武力攻撃であったとしても、それは我が国から見ますれば、客観的に申し上げれば、自衛権の行使としてそれを破壊するということが許される場合、憲法上も国際法上も当然許される場合に当たりますので、法制的には警察権という、先ほど申し上げた警察権のような形で御説明を申し上げておりますけれども、客観的に評価したときに、自衛権として見たとしても、それは許される場合に当たるのであろうかというふうに思っています。

 他方、他国に向かう弾道ミサイルにつきましては、それが実際に他国に対する武力攻撃であったならば、それを我が国が撃墜するということは、やはり集団的自衛権の行使と評価せざるを得ないのではないかと考えておりまして、それを我が国が行うということにつきましては、やはり憲法上の問題を生じ得るのではないかと考えているところでございます。

赤城委員 今部長が言われたように、両極はこれははっきりしていると思うんですね。要するに、武力行使、武力攻撃事態だというのがわかっている場合、これはまさに自衛権の行使とか集団自衛権の世界の話です。それから、誤射とかだということがわかっている事態、これもいいんですよ。

 今回、MDミサイルの日本がやろうとしているのは、そのまさに灰色の部分、武力攻撃事態と認定できないようなものはすべて、誤射も含めて、何だかわからないものも含めてMDミサイルで対応するということです。これは警察権です、自衛権の行使ではありませんというふうな法律の構成をしているわけですから、その構成と同じことが、ほかの国も同じような構成ができるはずです。つまり、武力攻撃事態と認定できない灰色の部分も含めて警察権の行使ですという世界です。

 そういうものであれば、当然論理的には、B国にとって警察権の行使の事態であるものを日本がそれを助けるというか迎撃をするということは、警察権の世界の話ですということを申し上げているので、そこはもうちょっとよく整理していきたいと思います。

 それから、もう一つちょっと気になるのは、急な発射がされてもう対応のいとまがないというふうな場合、物理的にもう間に合わないというような場合なんだけれども、相手国の意図も目的もはっきりしていて、いきなり、やるぞといって来たようなもの、要するに武力攻撃事態そのものなんだけれども防衛出動を下令するにはいとまがないというふうな事態は、これは今回の法の対象になるんでしょうか。

 しかし、これは明らかに武力攻撃事態として認定して防衛出動しなきゃならないというふうな事態になったときに、それをしていたら間に合わないというとき、これはどういうふうに対応したらいいんでしょうね。

大野国務大臣 そのような場合には、まず撃ち落とす、撃ち落とした後、そういう武力攻撃に対する自衛権の行使ということで、安保会議あるいは閣議を経て、あるいは国会の承認を経てという防衛出動ということになろうかと思います。

 まずは、いろいろな幅があるものですから、そこは警察権の行使ととらえて、そしてもし、今赤城先生おっしゃったような本当の武力攻撃事態、急迫不正等々、これであれば自衛権の発動、こういう格好になろうかと思います。

赤城委員 現実を考えると、とにかく我が国の生命財産を守るということで対処するということだと思うんですけれども、武力攻撃事態であるということがはっきりしている状況で、その第一撃を警察権の行使としてまず撃ち落とすということになってしまう。後から防衛出動が下令されるということをどう考えるかというのは、なかなかこれは難しいのではないかと思いますけれども、ちょっとこれは議論していくとどんどん広がりそうなので、また次の課題として残しておきたいと思います。

 それでは次のテーマですが、今回の防衛計画大綱で自衛隊の任務が多様化しているということであります。特に、海外での任務というのが随分ふえています。PKOしかり、インド洋での支援活動しかり、イラクの復興活動しかり。

 その中で、同じ隊員が何度も現地で活動しているというふうな場面がふえていまして、インド洋での支援活動ももう三回目、四回目ですと。隊員御本人は、大変いい経験になったし、ぜひまた行きたい、こういうふうな希望をされる方が多いようですが、しかし、何度も何度も行くということでもうローテーションが大変きつくなっているのではないか。また、通常の訓練がその間できなくなってしまうというようなこともありますし、もちろん隊員や家族のケアということも大事だと思います。

 そこで、今津副長官に伺いたいんですけれども、今津副長官は、イラクへ最初に部隊が行ったときに北海道の部隊が行きましたね、当時は本当にイラクへ行って大丈夫かということを随分心配されました。そこで、無事に任務を遂行して帰ってくるようにというふうな思いを込めて、黄色いハンカチーフ、映画の「黄色いハンカチ」ということになぞらえて、今津副長官がこの運動を大変熱心に主導されまして、そのこともあって、無事に任務を終えて、また次の部隊に引き継いで、こういうふうにうまくスタートを切ることができました。私は、その今津副長官の行動に大変感銘を受けたことを覚えております。

 そこで、今お話ししたような海外任務がふえるのに伴って、なかなか難しい問題も出てくるだろう。そこへどういうふうに、特に通常のというか本来任務というか、そういうものに対して支障の生じないようにということが要請されているわけですけれども、その面についてどういうふうに対応されているか、伺いたいと思います。

今津副長官 厳しい環境の中で頑張っている隊員や家族のことを御心配していただいて、大変感謝を申し上げたいと思います。

 御指摘のとおり、第一次、第二次と北海道第二師団それから十一師団と行きまして、第三次、第四次と青森それから山形、今第五次が行っておりますけれども、ずっと北の方から上ってきておりまして、実は私は、石破長官のときから、大体大方の隊旗授与式だとかあるいは返還式も出させていただいているんですが、あの出かける前のときの緊張した姿、それから帰還してからの胸を張って真っ黒に日焼けして、そしてまさに堂々とした、仕事をなし終えたというかそういう態度の隊員を見て、我々も隊員のその姿勢にこたえなければいけないということをいつも思っておりました。

 そこで、自分の地元のことを例にして申し上げますと、その黄色いハンカチ運動というのは経済界の方からお話が出まして、派遣についていろいろな議論があるけれども、しかし、決まった以上は党派とか立場を超えてみんなで応援しよう、無事帰還を祈ろう、こういうことを目的として運動が始まりましたが、これが隊員の支えになったということも帰還をした隊員から聞いて、ありがとうございましたというようなお礼を受けております。

 また、防衛庁においても、独自に留守家族のことなどに対する相談業務だとかいろいろなことを実施いたしておりますけれども、そういう今言った地元の経済界や自治体や、それぞれ工夫を凝らして派遣をされた隊員の無事を祈りながらいろいろな運動をする、あるいは家族のことを思いながらお手伝いをしていく、こういうまさに一体となったそういう形が全国的に広がっているということについて、非常にありがたいことだと思っております。

赤城委員 ちょっと残り時間が少なくなってしまったので、次のテーマで伺いたいと思うんですが、今津副長官、ぜひお願いしたいと思いますけれども、任務ですから隊員はどこでもどんなことでもいとわずやります。その周辺をきちっとケアしていくということ、それは我々がしっかり考えていかなきゃいけないと思いますので、ぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 そういういろいろな機能がふえていく、しかも海外での活動、国際的な安全環境を守るということは我が国にとってもプラスでありますし、我が国自身の防衛と国際安全保障環境の改善、いわば二本柱であります。そういう大きな柱を立てて海外での平和協力活動をする、これは当然本来任務として位置づけていかないと、今までは、我が国の防衛が主で余裕があれば海外での活動をしますよと。したがって、装備や何かも非常に制約を受けた中で振り回すしかなかった。しかし今回、新しい防衛計画大綱を立てて、まさに二本柱として国際平和協力活動をするのであれば、それは考え方としても、海外での平和協力活動は一つの大きな柱、本来任務とすべきですし、実態面でもそのために必要な装備とか人員とか訓練とか、そういうものを整えるという意味でも、今のような付随任務としての位置づけと本来任務ということでは全くこれは位置づけが変わってくると思うんですね。ですから、この本来任務化というのは防衛計画大綱とまさに表裏をなすことだと思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

大野国務大臣 赤城先生まさに御指摘のとおりでございます。我々の考え方は、まさに自分の国を防衛する、大変大事な根本的な問題でございます。ただ、世界的な例えばテロの現象が、テロというのは、地球上に住む人類共通の敵だ、どこで発生するかわからない、領土を持たない存在でありますから、やはり国際協調をやっていかなきゃいけない。そのためにはやはり、紛争が起こらないように各国協力しようじゃないか、あるいは、紛争が起こった後、その後しまいをきちっとしようじゃないか、こういう考えが非常に大事になってきたわけであります。これが今回の新防衛大綱の一つの特徴であると私は思っております。

 したがいまして、この狭くなった地球で、日本としても、これまでは国際活動というのをやはり一方的な貢献と考えていた。そうじゃなくて、これは平和活動をやることが我が身のためでもあるんだと。いわば仏教の言葉で自利利他という言葉があります。他人の利益は自分の利益なんだ、こういう言葉がありますけれども、まさに外交と防衛との境目がだんだんなくなってきた、こういうことじゃなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。

 そういう環境の中で、日本としてはやはり平和という日本の考え方を、そういうメッセージを世界じゅうに広めていきたい。そしてまた、自衛隊諸君は本当に厳しい環境の中、活動をやっていますし、またサマワでも活動をやっておりますけれども、そういう自衛隊の諸君が一層の自覚と誇りを持って働けるようにしていかなきゃいけない。私は、それが本来任務化の一つの目的だと思っております。そのためには、今後やはり自衛隊が国際平和活動に取り組めるような組織、教育、これをやっていかなきゃいけないと思っておりますし、そういう意味で、赤城先生御指摘の本来任務化というのはできる限り早く実現していきたいな、防衛庁長官としてはそのように思っています。

 ただ、日本の法律体系というのはすべて、これはできますよとポジ体系で書いていますので、このところを一般法でどう考えていくのかという宿題は残りますけれども、やはり私は、日本のメッセージは平和なんだ、自衛官の諸君、どうかそういう世界の平和に貢献すること、人道復興支援をすることが世界のためにもなるし、日本のためにもなるんだ、こういうメッセージをぜひとも出していきたいと思っています。

赤城委員 最後に一点伺いたいと思います。

 マラッカ海峡での海賊事件が起きまして、今回無事解放されました。本当によかったと思っています。

 今後、海賊対策というのをしっかり考えていかなきゃいけないと思うんですが、武器輸出三原則との関係で、先般、MDシステムについては官房長官談話が出されました。しかし、特に海賊対策で、現地から、自衛隊の持っている中古の艦船とか自衛隊の装備、そういうものに対するニーズがやはりあると思うんですね。官房長官談話の中でも、テロ、海賊対策等に資する案件についても、個別の案件ごとに検討の上、結論を得る、こうなっています。今回のこともありますので、これは真剣に海賊対策として、東南アジアに対して自衛隊の装備を提供する、そういうことの検討を政府部内でぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

大野国務大臣 石油エネルギーの九割を外国に依存している日本としては、マラッカ海峡の安全航行というのは死活問題である、このように認識しております。

 私自身も、ことし正月に、シンガポール、マレーシア、インドネシアを訪れた際に、各国防大臣と安全航行の、マラッカ海峡の安全確保について議論をいたしました。もっともっとお互いに情報交換しながら協力していこう、こういうことであります。もちろん、一義的には沿岸国の責任である、このことは十分我々も存じて、認識しておりますけれども、非常に大切な問題であります。

 そこで、お尋ねの、例えば中古艦船含めてのいろいろな問題でありますけれども、これはやはり今後真剣に検討してまいりたい、このように思っております。

赤城委員 ただいまの点、ぜひよろしくお願いを申し上げて、以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小林委員長 次に、仲村正治君。

仲村委員 平成十七年度以降の防衛計画の大綱と中期防衛力整備についてお尋ねをいたしたいと思います。

 三月十七日にこの大綱の説明を受けて、中身を読ませていただきました。今回の新防衛大綱とこれまでの大綱との違いは、第一に、我が国周辺の安全保障環境の変化が起こっていること、また、米国の九・一一のような国際テロ組織の脅威に対応することなどとなっております。それは、第一に、極東ロシア軍は量的には削減されたが、依然として核戦力など大規模な軍事力を維持しているということ。二点目に、北朝鮮の大量破壊兵器や弾道ミサイル開発が進んでいるということ。三点目に、中国の軍事力の拡大と海洋資源調査活動等、我が国周辺の権益に及ぼす影響を注視しなければならないということ。四点目に、国際テロ組織の活動の頻発という新たな脅威の発生を注視しなければならないという点が挙げられております。

 このような環境下で、新防衛大綱は、我が国への直接の脅威の防止と排除のため、我が国独自の防衛体制の整備と、同盟国や国際社会との協力体制構築をして、即応性、機動性、柔軟性とあわせて、多機能的な、実効性のある防衛力を構築するということだと私は理解しておりますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 安全保障の分野では、九・一一事件が新しい歴史を開いたと言われております。したがいまして、こういうテロとかゲリラとか、そういう新しい脅威に対処していかなきゃいけない、これが一つあります。それから、科学技術の発展に従いましてミサイル防衛ということを考えていかなきゃいけない。そしてまた、安全保障環境の問題といたしましては、今、仲村先生おっしゃったように、一つはロシアとか中国とか北朝鮮、こういう問題があります。

 今回、まず安全保障環境の問題からいいますと、きちっと注目していくべき事象というのは書いていこうじゃないか、こういうことで、ロシアなり、それから中国なり北朝鮮、台湾海峡も含めて、きちっと認識していこう。ただし、我々はどこの国を脅威と考える、こんなことは全然言っていません。注目すべき現象としてこういうことがありますね、どこが脅威ということは全然考えていません、そういう問題であります。

 次に、多機能、弾力的ということからいいますと、もうミサイルから島嶼防衛、テロまでということになりますので、この点はやはりいろいろな装備の変更も考えていかなきゃいけない。

 一つは、例示的に簡単に申し上げますけれども、戦車などは減らしていく方向、そしてそのかわりに装輪装甲車、機動性の非常に高い装備をやっていこう。その中で、特に多機能、弾力的、実効性のあるといった場合に、私は、大事なのはマンパワーの問題だと思っています。マンパワー、非常に、天然災害、地震とかそういう問題ですけれども、その場合に、やはりすぐさま自衛隊が出動できるように、もちろん要請を受けてですけれども、できるように配備も考えておかなきゃいけない、こういう問題点が一つの大きな問題点であると思っています。

仲村委員 この新防衛大綱を読む限りにおいて、考え方によっては事態が目前に差し迫ってきたような、急迫性とも受け取れるような一面があります。それとも、そうじゃなくて、備えあれば憂いなしという考え方なのかという点ですが、特に極東ロシア軍についての記述は、冷戦時代ならいざ知らず、現在、差し迫って我が国に脅威を与えるような状態かなと思うところがあります。

 一面、中国は、EEZの中の日中中間線すれすれにガス田開発をしたり、あるいは沖ノ鳥島EEZ内で海底資源調査をしたり、また先日は、無害航行のできるところを、わざわざ潜ってそこを通っていったというようなこと。きょうの朝刊からいたしますと、昨年一年間で二十二回我が国の領海内に入ってきたということも書かれているわけでありますが、ある意味で中国は非常に挑発的な行動をとっていることに対しては、私は十分注意をしていかなければならない、こういうふうに思いますが、この点などいかがでしょうか。

大野国務大臣 まず、ロシアについてのお尋ねでございますけれども、ロシアというのは軍事力が量的に大幅に削減いたしておりますけれども、依然として核兵力を含む大規模な軍事力が存在している、こういうことでございます。やはり、そういう意味では、ロシアという存在は、我が国の安全保障問題、安全保障環境を論ずるに当たっては、一つの参考にすべき要素である、注目すべき要素であるということでありまして、これは繰り返しになりますけれども、しかし、ロシアという国を脅威として考えているわけではない、このことはたびたび申し上げていることであります。

 中国につきましては、もう先生御存じのとおり、十七年間継続して国防費を一〇%以上ふやし続けている、このこと自体大変注目すべきことでありましょうし、それからどの部分が実際に防衛費として計上されているのか、されていないのか、これが意外にも必ずしもわからない、こういう状態であります。したがいまして、透明性が出るようなことになってくれないかな、こういうことが一つ問題にあります。

 あと、先生御指摘のEEZの問題、あるいは潜水艦による、領海に入ってきた、こういう問題等でございますけれども、その事件、昨年の問題につきましては、事案として間違ってというような釈明もございましたけれども、我々としては、そういう問題も非常に注目して考えていかなければいけない、このように思っております。

 以上、簡単でございますけれども、ロシアそれから中国についてのポイントを申し上げました。

仲村委員 先ほど防衛庁長官はマンパワーの充実を図っていかなければならない点もおっしゃいましたけれども、一方において、近年、予算の抑制とあわせて、防衛力の効率化、合理化、コンパクト化が進められてきました。特に、陸上自衛隊の十八万人体制から十六万人体制に削減中に、今回の新大綱はどのような政策変更があるのかということについて私はお聞きしたいと思っております。

大野国務大臣 たびたび申し上げておりますように、いわば抑止力ということは非常に大事な要素でございますけれども、必要最小限の抑止力は残しつつも、やはり機動性のある、展開性のある、実効性のある防衛力、こういうことで考えております。

 したがいまして、先ほど申し上げましたように、やはり、問題として、装備の方は減らす、それから人間、マンパワーをどう考えるか、これは大変な議論がありました。制約要因は、例えば出生率が今後どうなるか、若い者がどうなっていくんだろう、こういう議論もありましたし、それからもう一つは、極めて厳しい財政事情の中でこれをどう考えていくんだろうか、こういう議論もありました。しかしながら、我々としては、やはりマンパワーこそ日本の守りの根本でありますから、ここは十分議論の末、十四万八千人という数字に落ちついたわけでございます。

 これによって、例えば全国展開できるだけの数はあります。もしこれがずっと減ってしまいますと、やはり全国的にマンパワーが展開できなくなる。そうすると、身近な問題一つとって考えてみましても、地震、災害のとき、直ちに要請を受けて自衛官が救援活動できない、こういう不安が出てくるわけでございます。私は、最低というか十四万八千ということで、全国的な展開、そしてゲリラとかテロとかに対応できるマンパワーは確保できた、このように思っています。

仲村委員 また、このような新たな脅威に備えるために、予算の面からどのような変化が起こるのかということも考えなければならないと思っております。

 政府は、十七年度以降の中期防で五カ年間で二十四兆二千四百億円を見ておりますが、これを五等分して一年間で四兆八千四百八十億円ですから、平成十七年度予算、四兆八千五百六十三億円よりも八十三億円少ない、こういうことになります。果たして、このような抑制予算で、今回の新大綱で示された新たな脅威に対応するのが可能であるかどうかという点を考えているところであります。

大野国務大臣 仲村先生御指摘のとおり、中期防、平成十七年度から二十一年度でございますけれども、防衛関係費の限度、二十四兆二千四百億円ということであります。いわば、そこにあるもの、背景にあるものは、冷戦終結後、我が国に対する本格的な侵略が発生する可能性は少なくなっていることから、大規模な武力侵攻に備えた装備、要員については、最も基盤的な部分は残しつつ削減していく方向にしよう、これは先ほど御説明したとおりであります。そこで、新たな脅威への対応や国際平和協力活動への取り組みなどをこれまで以上に重視していく、いわばめり張りをつけた、こういうことであります。

 以上のような考え方に基づきまして、先ほども申し上げましたけれども、財政事情は極めて厳しいというような問題があります。それに対応していくためには、やはり効率化、合理化をうんと図っていかなきゃいけない、言うまでもありません。

 そこで、合理化、効率化により経費をできる限り節約する、抑制する、この上に立って、今御議論いただいております多機能で実効性のある防衛力を築いていこう、こういう考えでありますので、乏しい中、財政事情が極めて厳しい中、めり張りをつけながら防衛に支障がないようにやっていく、これが今の考え方でございます。

仲村委員 長官は先ほど、削減計画、これは既定方針どおり十四万八千人体制にすることを今進めているというお話でございましたが、昨年の十一月、チリで日米首脳会談が行われたのであります。そこで小泉総理はブッシュ大統領に対して、在日米軍基地の整理縮小に連動して自衛隊を強化するんだと。それは、ある意味でやはり隊員をふやすということなのかなということを、私はそういう感じで受け取っておるわけですが、その点について、先ほど長官がおっしゃったような形の方針に変更はないのかあるのか。総理がこのようなことを言っておられるので、私は新大綱でそれを増員するのかなという感じを持っているわけですが、どうでしょうか。

大野国務大臣 今、日米間で一つの大きな問題は、やはり米軍の再配置の問題、再配備の問題でございます。これを議論するに当たりまして、我々は、やはり一つは、沖縄を初めとする地元の負担軽減を真剣にやっていく、それからもう一つは、米軍の抑止力を維持していく、こういうことでありまして、相反するような話でありますけれども、それができるのは、日本全体としては自衛隊を効果的、効率的にやっていかなきゃいけないし、しかし、軍事科学技術の発展によって米軍の展開力がふえてきたとすれば、それはそれで考えていかなきゃいけない。あるいは、効率化によって、例えば基地の共同使用というような考え方も議論していかなきゃいけない、こういう状態であります。いわば、最小限のリソースで最大限の効果を上げていこう、こういうことであります。それが数につながるのかつながらないのか。我々は、質で、量より質の時代、このように考えて対処していきたいと思います。

仲村委員 いろいろおっしゃいました。新大綱、また新中期防衛力整備に当たって、いろいろと国民に心配、懸念する点が出てくるとしたら、果たして現在の我が国の防衛の基本方針、例えば専守防衛に徹する、軍事大国にならない、文民統制を堅持する、非核三原則を守る、節度ある防衛力の整備、このような我が国の防衛の基本原則にも変更があるのかないのか、その点についてお答えいただきたいと思います。

大野国務大臣 私は、基本的には変更はない、この信念でございます。日本は、あくまでも専守防衛の国であります。平和三原則、平和の問題、きちっと守っていかなきゃいけない。その中でどのように効率的に日本を守る、これをやっていくか、こういうことである、このように信じております。

仲村委員 今回の新防衛大綱は、在日米軍基地の七五%が集中する沖縄とも少なからぬ関連があると私は見ております。よくSACO、SACOと言いますが、このSACOの最終報告を決定したのは、平成八年二月二十四日、橋本・クリントン会談、これはサンタモニカでその会談が行われて、橋本総理から沖縄の米軍基地を大幅に縮小すべきだ、こういう提言をしたことに対して、四月の十二日、モンデール大使がSACOの中間報告として、十一施設五千ヘクタールを整理、縮小、統合するという中間発表がなされて、そしてその年の十二月二日にSACO最終報告というのがなされたのであります。

 それは十一施設を返還するということですが、その大半が沖縄県内に移設をするという条件がつけられているわけです。ただ一つだけ、県道一〇四号線越えの実弾射撃演習は本土に移転をしたわけですが、そのほかの十施設は、沖縄県内に移設をするという条件で整理統合するということになっておるわけです。しかも、面積も五千ヘクタール、こういうふうにちゃんと提示されているわけですが、私たちとしては、沖縄県内に移設をするなら、新しく沖縄県内に基地をつくる、まさに基地のたらい回しじゃないかということを言ったわけでありますが、しかし、これを受け入れることによって少しでも危険な状態を排除していく、除去していくことができるのであれば、これはやはりベストではないがベターとして受け入れなくちゃならぬということで受け入れたわけです。

 しかし、県民の中には絶対反対だという人もまだ多いんです。しかし、私たちとしては、やはり日米安保条約、そして国の防衛を考える立場から、これは苦渋の選択として受け入れたわけであります。

 例えば、移設については、読谷補助飛行場のパラシュート訓練場を伊江島に移す、それから楚辺通信所をキャンプ・ハンセンに移す、那覇軍港を浦添地先に移す、こういうことで着々進んでいるわけです。SACO全体がとまっているわけではありません。

 読谷補助飛行場でパラシュート訓練というのは、人がパラシュートで降下するわけじゃないんですよ。トラックとか、いろいろな貨物をパラシュートで落とすものですから、風向きによっては民間地域に全部飛んでいくんです。こういう危険な状態を少しでも減らしていくということで伊江島にこれを持っていった、こういうことでございますが、ただ一つ、一番危険な普天間基地、これの移設についてはどこも受け入れない。稲嶺知事はいろいろと考えた末に、やはりキャンプ・シュワブ沿岸というふうにして名護市長を説得して、ようやく名護市も、無条件じゃないですよ、七つの条件を満たすなら受け入れますということで、キャンプ・シュワブ沖に決めた。

 そして、政府はその手続の中で、三工法八案、三つの工法で八つの案を提示して、その中からどういうのがいいのか、これは九回の代替施設協議会でようやく決まったんです。リーフ上埋め立てという今の案ですね。決まってからもう三年、四年になりますけれども、全く前に進まないんですよ。あたかも沖縄県がそれをやらないかのように思っておりますけれども、一体その責任はどこにあるのか、そういうことでございます。

 そこで、二月十九日の2プラス2に行くための事前説明で、二月十六日に飯原防衛局長が総理のところに行った。そのときに総理は、辺野古移設はもうやめろ、進んでいないものはやめるのが小泉内閣の方針だといら立ちを爆発させたと報じております。この事実関係を明らかにしていただきたいと思います。

飯原政府参考人 2プラス2の前に、私と外務省の北米局長が総理のところにお伺いしたのは事実でございますが、その際、そういうやりとりがあったという事実はございません。

 また、総理も先日、参議院の予算委員会でそういうようにおっしゃっております。

仲村委員 まあ、新聞報道ですから、それは、火のないところに煙は立たないと私は思っております。

 それを裏づけるのは何かといいますと、三月十七日の参議院予算委員会でも、辺野古移設は非常に難しいと言われた中で、辺野古移設の見直しの必要性を指摘したと報じているわけであります。

 総理のそのような繰り返しの発言からすると、もう辺野古移設はやめたと考えてよいか。やめたということであれば、まことにありがたい話だと私は思いますよ。しかし、辺野古への移設はやめたとしても、あの危険な普天間基地をそのままにしておくわけにはいかない。どこかに移さなくちゃいかない、一日も早く移さなくちゃならないということでございますが、辺野古をやめたその場合、移設場所は絶対に沖縄県以外でなければならない。どこに移すつもりなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 私も、ことし一月に嘉数の丘から普天間飛行場を見まして、これは大変な、町中に飛行場がある、こういうことを身にしみて感じた次第でございます。

 普天間飛行場は移さなきゃいけない、そして、辺野古の代替移設というのは長くて重い歴史が背景にあって、本当に苦渋の選択ということであります。したがって、私は、やはり辺野古という問題を着実に実現していくことが沖縄の負担の軽減につながる本当に確実な道だな、こういうふうに思っています。

 ただ、問題がいろいろあることは私も十分存じ上げております。したがいまして、もしいろいろな考え方が出てきて、そしてそれが解決されればいいなという希望は捨てておりません。本当に万々が一でありますけれども、希望は捨てていない。しかし、今のところそういう案がなかなか出てこないし、辺野古を着実にやっていくことこそ沖縄の負担の軽減につながっていくんだな、こういうふうに信じております。

 したがいまして、先生おっしゃるような方向性については、まだまだ全く見えない、全く五里霧中という状況でございますので、今の段階でどう考えるかと言われれば、辺野古を着実にやっていく、これしか道はないのかな、このように思っています。

仲村委員 辺野古を着実に進めるということについては2プラス2でも確認した、こういうことでございますけれども、さっき申しましたように、進まぬ辺野古やめろと言ったということが出ているわけですね。そして、参議院予算委員会でもこれはちゃんと答弁されているんです。だから、全くそういうことがないとは私は思っておりません。本当に、変更してくれるならこんなありがたい話はない、こういうふうに思うわけであります。

 私が自民党の国防三部会の中でいつも言うことは、何をこんなにぐずぐずしているんだ、いつまでも協力する稲嶺知事じゃないよ、いつまでも協力する岸本市長じゃないよ、いつ変わるかわからぬよ、そのときに、これはもう待ったなしに不可能になるということは明らかなんだよ、だから、一日も早く積み上げをして、もう後戻りはできないというところまで積み上げろ、こういうことを言っているわけですが、みんながいら立ちを感じて、やめろという言葉が出るのも無理がないと思うんですよ。

 だから、さっき私がずっと説明をしたとおり、三工法八案を検討して、九回の代替施設協議会で決めて、もう何年になりますか。そういうことについては、やはり政府の怠慢があるのかなという感じがいたします。

 それと、まあ、マスコミはいろいろ報じていますよ。嘉手納統合するとか、あるいは下地島に持っていくとか言っておりますが、こういうことができるはずはないわけですよ。政府の方で、防衛庁あるいは防衛施設局で嘉手納統合とか下地島空港へ移設するというような考え方を議論したことがあるのか、検討したことがあるのか、それを答えていただきたいと思います。

飯原政府参考人 在日米軍のトランスフォーメーションにつきましては、事務的な検討というのは、審議官級でいろいろなアイデアの交換ということでやっているということはかねてからお答えを申し上げているわけでございますが、まだ何ら具体的なことを決めているわけではございません。

 また、恐縮でございますが、アイデアの交換……(仲村委員「何を具体的に決めていない」と呼ぶ)具体的な案について何ら決まっているわけではございません。

 それで、アイデアの交換の段階でございますので、具体的に何をということを申し上げるのは、恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと存じます。

仲村委員 ちょっと長官と答弁がちぐはぐですね。長官は、辺野古移設を推進する、着実に実施するということですが、今の局長の話では、具体的にどこにという話はしていないと。という話なら、これは、もう皆さんは、嘉手納に移そうかな、あるいは下地島に持っていこうかなという検討がなされているということじゃないですか。

飯原政府参考人 申しわけございません。ちょっと誤解を招くようなことを申し上げました。

 私が申し上げましたのは、一般的な、全体の米軍のトランスフォーメーションでいろいろなアイデアの交換をしておりますということだけ申し上げましたので、この辺野古に関しましては、まさに大臣が御答弁されたとおりでございます。

仲村委員 もし、仮定の話でありますけれども、辺野古は時間がかかるのでそれ以外のところに、沖縄県内のどこかに持っていこうとしたら、これは辺野古以上に時間がかかる、また、恐らく不可能であると私は思っております。

 さっき申し上げたように、私たちは、SACOというものは基地の整理縮小ではない、新たな基地をつくる、いわゆる基地のたらい回しだということをやはり胸の中に持っているんですよ。だけれども、やはり協力すべきは協力せぬといかぬということでやっているわけです。

 したがいまして、繰り返し申し上げますけれども、嘉手納とかあるいは下地島とか、あるいはその他の場所に、沖縄県内のどこかに移そうという考え方があるなら、これは全く実現不可能であるということを覚悟しなければならない、私はその点は強く言っておきたいと思っております。

 私たちは、沖縄の基地の整理縮小、いわゆる負担軽減という点で総理がしばしば発言をしておられますので、非常に期待をしているわけです。そして、アメリカのトランスフォーメーションに対しても、昨年十一月の日米首脳会談でラムズフェルド国防長官は、今後の抑止力の維持を強調した中で、なぜ負担のことだけ言うのか、利益もあるじゃないかと反論したと報じておりますね。それは何を意味しているかというと、基地からの利益を受けているじゃないかということだと思います。その上で抑止力の維持を強調したということは、トランスフォーメーションの中でもアメリカは全く負担軽減は考えていない。いわゆる抑止力を強調しているという点からすると、これはトランスフォーメーションに私たちがかねて期待したほどの効果は出てこないなということを心配しているわけでございます。その点についてお答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 まず、抑止力の維持を強調したということでございます。

 我々は常に、沖縄を初めとする地元の負担軽減と米軍の抑止力維持、この二つを主張してきております。私どもは、抑止力の維持というのは、一つは、情報力の強化、あるいは日米の役割、任務の分担問題、基地の共同使用等々によってできるじゃないか、こういうふうな観点から議論するように私は指示しております。

 同時に、経済的な効果があるじゃないか、こういう話も今おっしゃったようなところでございますけれども、私は、この問題は、経済効果先にありき、こんなことで議論しちゃ絶対いけない、このように思っています。そういう議論が出るたびに、私は、それは経済効果の問題じゃないんだ、日本の地元の皆さんの問題なんだ、数字であらわせない負担、つまり騒音とか恐怖感とかそういうものもあるんですよ。経済効果というようなことを言ったらなかなか本筋の話ができませんよ、こういうふうに反論しております。

仲村委員 さらに、今月十九日に来日したライス国務長官は、沖縄の負担軽減を大野長官が求めたことに対して、ドイツの例からして米軍の撤退は沖縄でも経済面で影響があるという見方を示したと報じておるという話であります。とんでもない話だと私は思いますけれども、ここにでかでかと出ておるわけでございます。

 そのように、アメリカは、ラムズフェルド長官にしろライス長官にしろ、これでやはり日本からの基地の返還、縮小をはね返していこうという考え方があるのじゃないかと私は思っております。

 沖縄の基地収入は、土地の借料が約八百億円、基地従業員の給料が約四百億円、その他の基地収入を合わせて約千四百億円ぐらいあります。平成十六年度の沖縄県の県民総所得は三兆七千八百三十億円です。これは、私はこの新聞を見てすぐ県庁に主要経済指標、資料をくれと言って、もらったわけです。これからしますと、平成十六年度の県民総所得は三兆七千八百三十億円です。三兆七千八百三十億円。そうすると、経済的に潤っているという考え方、いわゆる基地収入千四百億円はわずか三・八%にすぎないんです。これが五〇%あろうと私たちは基地は要らない、できるだけ、一日も早くそういったいびつな経済構造から脱皮しなければならないという考え方があります。

 そこで私は、このわずか三・八%にすぎない点をあえて基地の撤退は経済に悪影響と、こんなわけのわからぬことを言われて黙っておってはいかない、こういうふうに思っております。

 小泉総理もしばしば沖縄基地の負担軽減を強調しているが、トランスフォーメーションに向けて、政府は沖縄の負担軽減に対して、対米交渉にどのような形で臨まれるのか、しっかり、はっきりこれをお答えいただきたいと思います。

大野国務大臣 我々が申し上げていることは、再度にわたって恐縮でございますが、沖縄を初めとする地元の負担の軽減、そして抑止力の維持でございます。経済効果云々があるからという問題は、決して、それがあるからどうだという見返りのような問題とは考えておりません。

 先ほども申し上げましたとおり、負担というのは、数字にあらわせるもの、数字にあらわせられない、例えば騒音とか不安とか、こういうものもあるわけでございます。そういう問題を踏まえて、まず、沖縄を初めとする地元の負担の軽減、これを考える、そして、一方においては抑止力の問題をきちっとする、こういうことであります。

 あえてそういうことを申し上げた上で、もちろん、先生今三・九%と言っていましたか……(仲村委員「三・八%」と呼ぶ)三・九%なりの数字の問題も、あるなしという問題とは別に、一時的に例えば借料が入らなくなる、そういう問題は出てくる。これは後の経過措置の中で解決していけばいい問題であって、まずまず、こういう問題があるから抑止力なんだ、こういうふうな短絡的な考え方でなくて、きちっと本来の意味の負担の軽減を考えるべきである、こういう方針で今取り組んでいるところでございます。

仲村委員 ライス長官が基地から収益を受けているじゃないかと言っておりますが、これは恐らく借地料あるいは従業員の給料が主だと思います。これは全部日本政府が払っているんですよ。アメリカが出している金じゃないんですよ。こんなわけのわからぬことを言われては困ると私は思っております。

 私は決して反米の人じゃないんですよ。やはりアメリカとは協調し合っていかなくちゃならない。我が国の繁栄のために、我が国の防衛のためにはアメリカと協調し合わなくちゃならないという考え方に立っておりますが、このようなちぐはぐなことを言われては黙っておれないということでございます。

 最後に一点。

 SACOの最終報告の十一施設五千ヘクタール。十一施設のうちの、一つは普天間基地、そして一つは一〇四号越えの実弾射撃演習。ですから、あと九あるわけですね。九のうち、私がさっき言ったように、読谷補助飛行場とか通信施設とか、どんどん進んでいるのがあります。恐らくまだ半分ぐらいだと思うので、あと九施設のうちの残りですね。

 それと、五千ヘクタールという中に普天間基地の四百八十ヘクタールを引きますと、それでも約四千二百ヘクタールぐらいあるわけですよ。それを、大体一番最後ののが平成十九年度じゃなかったかなと思いますが、ぜひその期間中に、普天間基地はともかくとして、この残っている分について実現できるようにしてほしいと思うが、その点の答弁をしていただきたいと思います。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 SACO最終報告に盛り込まれました十一の施設・区域に係る土地の返還でございます。

 先ほど先生、普天間を除く十施設というふうに御指摘いただいたところでございますが、この十の施設・区域のうち、安波訓練場、またキャンプ桑江の一部についてはもう既に返還が実現したところでございます。

 また、瀬名波通信施設など七事案につきましては、返還に必要な施設の移設につきまして関係する地方自治体の了解が得られて、事案処理が進行中でございます。このうち、瀬名波通信施設等四事案につきましては、既に返還条件となっております移設工事が実施されているところでございます。一部おくれはございますけれども、着実に進捗しているところでございます。

 私ども、この十施設の返還の早期実現に向けてできるだけ最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

仲村委員 終わります。ありがとうございました。

小林委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、防衛大綱並びに中期防に関する質疑ということでございますが、私も、与党の安全保障プロジェクトの一員として、昨年の十一月から十二月の初めに政府案をもとにいろいろと議論をさせていただきまして、そういう意味でいいますと、この防衛大綱並びに中期防につきましては我々にも責任の一端がありますし、また理解度は、防衛庁長官や副長官ほどではなくても、相当程度この内容については理解をさせていただいているのではないかなというふうに思っております。ですから、きょうは、内容そのものというよりも、内容に関連して何点かお伺いをさせていただきたいと思うんです。

 我々与党の中でも、この問題についていろいろ距離のあったところもあれば近かったところもあるんですけれども、距離のあったことの一つに、武器輸出三原則をどう取り扱っていくのかということにつきまして、当初は相当距離があったわけでございますが、結果として、最終的には官房長官談話という形でまとまったわけでございます。

 その取りまとめの過程においては、政府側並びに額賀先生、赤松先生に大変御苦労いただいたことに対しましては敬意を表したいと思うんですけれども、我々も実は一員として、まとまったということでひとつ決着ついたんですが、官房長官談話について、これは歴史的な一歩でもありますので、きちっとある程度確認をしなければいけないな。そういう意味で、今回、まず最初に武器輸出三原則につきまして、我が党ではこれを武器禁輸三原則というように言っているんですけれども、何点か確認をさせていただいたいと思うんです。

 まず最初に、今回、この武器輸出三原則につきましては、弾道ミサイル防衛、いわゆるMD関連に限定して例外的に緩和して、引き続き武器禁輸三原則そのものは堅持されるということになったことについては適切な対応であった、我々はそのように評価をしているわけでございます。

 最初に、外務省にお聞きしたいのは、この武器輸出三原則、一九六七年に始まりまして、その後、三木内閣の七六年以来、四十年近く、あるいは三木内閣からですと三十年近くなんですけれども、続いているわけですが、日本が平和国家としての基本理念にかんがみ、国際紛争を助長するであるとか、また他国を攻撃するための武器を輸出しないとの姿勢を内外に強く打ち出すこの武器輸出三原則というものを堅持していることは、我々日本人が国内で考えている以上に国際社会において我が国の評価を高めることに非常に役立っているんだ、そういう指摘をされる方もいらっしゃいます。

 それを具体的に申し上げますと、昨年の三月まで国連の軍縮大使をお務めになりました猪口邦子さんですけれども、帰ってこられて、我々も御本人から直接その話もお聞きしましたけれども、彼女が昨年小型武器の拡散防止を目指す最終報告を議長として全会一致で採択することに成功されたそうなんですけれども、そのときに武器輸出三原則を持っている日本ということが非常に役立ったということを言われております。

 それは昨年の東京新聞の五月四日号にも載せられておるんですけれども、武器輸出三原則は宝物であると。自分の中にある宝物は、自分では気づかないものだ、非合法の武器の拡散防止を目指す最終報告を、困難な局面を乗り越え全会一致で採択することができたのは、三原則を持つ日本が議長国だったからだ、そのように述べられております。採択された瞬間、私は日本という国を誇りに思いました、そういうように言われているわけでございます。

 こういうことを具体的に、外の外交交渉の場で日本がずっと維持をしてきた武器輸出三原則が実は外国から非常に高い評価を得ているんだということを感想として述べられている方もいらっしゃるんですが、外務省として、この武器輸出三原則が外交的にも今まで果たしてきた役割についてどのように考え、評価しておられるのか、まず伺いたいと思います。

逢沢副大臣 大変重要な点につきまして佐藤先生から御指摘をいただきました。我が国、平和国家日本にとりましてこの武器輸出三原則は大変重要な原則であることは、言うまでもございません。戦後六十年の平和国家日本の歩みの中でこの武器禁輸三原則が大きな役割を果たしてきたということは、自他ともに評価ができるのではなかろうかというふうに思います。日本に対する信頼、あるいは、みずからこういう表現はどうかと思いますが、日本に対する尊敬、それはやはりこの武器禁輸三原則も大きな背景にあったということをあえて申し上げておきたいと思います。

 国連の場におきまして、あるいはまたあらゆる国際場裏におきまして、原爆を体験した日本が戦後の新たな歩みの中でこの三原則を掲げてスタートした、そのことによってさまざまな説得力を日本が持ってきた。軍縮でありますとか不拡散の分野におきまして、猪口大使のことを引き合いに御指摘をいただきましたけれども、こういった分野につき日本が国際社会の中にあってある意味ではリーダーシップを発揮してまいりましたけれども、その背景には御指摘の三原則が厳然として存在しておる、我が省としてもそのように認識をいたしております。

 今後も引き続き、国際紛争等を助長しないとの平和国家の理念に基づき、この原理原則を大切にしていくということは、大変重要なことと承知をいたしております。

佐藤(茂)委員 それで、冒頭申し上げましたように、今までは基本的に全面的に禁輸だったものを今回例外的な緩和をすることになったわけですが、私は、この例外的な緩和をなし崩しの武器輸出拡大につなげてはならない、そのように考えているわけでございます。そのためには、厳格な運用というものをどう担保していくのかということがまずやはりこれから大事になってくるであろう、そのように考えているわけでございます。その上で、二、三、今回の官房長官談話の内容につきまして、確認の意味でお尋ねをさせていただきたいんです。

 官房長官談話の第二段落に「弾道ミサイル防衛システムに関する案件については、日米安全保障体制の効果的な運用に寄与し、我が国の安全保障に資するとの観点から、共同で開発・生産を行うこととなった場合には、厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないこととします。」そういうようになっているわけですが、ここで、今回の緩和の前提となっております「厳格な管理を行う」というのは、具体的にどういう管理が行われるのか。これは経済産業省になるかと思いますけれども、確認をしておきたいと思います。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 BMDに関しまして具体的な案件が発生した場合には、まず、当該案件に係る武器の輸出の可否につきまして、我が国の安全保障や日米安全保障体制の効果的な運用に資するものであるのかどうか、また、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念を損なわないものであるのかどうかというような点につきまして、厳格に判断することが必要であると考えております。また、当該案件が予算措置を伴うものである場合には、これに関連する予算につきましては国会の議決をいただくということになります。

 さらに、輸出先の相手国との間で、その国が第三国に当該部品を輸出したり目的外に使用したりする場合には、事前に我が国の同意を得ることを国際約束により義務づけるなど、所要の措置を講ずることといたします。そして、輸出許可申請が具体的になされた場合には、これらの条件が満たされるということを前提といたしまして、厳格な審査を行い、外為法に基づきまして経済産業大臣が個別に許可するものと考えております。

 いずれにせよ、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念にかんがみ、厳格な管理のもと、引き続き慎重に対処するという方針を堅持してまいります。

佐藤(茂)委員 今、管理の内容についてポイントだけお話をいただきました。一つ、今回のことでさらに気になりますのは、日米で今回こういう輸出を認めたのですけれども、果たしてこれが日米以外の第三国に移転を認めるのかどうかということも含めまして、今お話がありました、移転を認める場合には、相手国ときちっと約束事をつくるんだということでございます。これは過去に、武器輸出三原則の物ではなくて技術供与の部分で、一九八三年の中曽根内閣のときに既に事前同意を条件に第三国への技術移転を認める、そういうことが行われているわけですから、今回も、BMDのこの技術は、アメリカが何も自国だけで使うのじゃなくて、世界でいろいろ使っていく可能性も秘めているわけですね。そうすると、やはり日本がアメリカに話して何らかの歯どめをかけないと、日本が輸出したBMD関連部品がアメリカから第三国へ知らないまま移転する、そういうことも出てくるかと思うんです。

 第三国への移転の可否も含めて、アメリカとの間で具体的な協定であるとか取り決め、これを結ぶ必要がやはりあるのではないかと思いますけれども、外務省の今の見解を伺いたいと思います。

逢沢副大臣 大変重要な点について御指摘、御質問いただいたわけであります。

 委員も御指摘のように、昨年十二月の官房長官談話におきまして、武器の供与に関しては、弾道ミサイル防衛システムに関する案件については、共同で開発、生産を行うこととなった場合には、厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないこととすることを確かに決定をいたしたわけであります。しかし、政府といたしましては、我が国の事前同意なく第三国移転が行われないことを国際約束に基づいて確保するといったことを含め、文字どおり厳格な管理を行う前提で武器の供与を行う、その考え方を持たせていただいております。

佐藤(茂)委員 ちょっと一言だけ確認します。

 今副大臣おっしゃった、国際約束をすることも含めということは、五十八年のときには対米武器技術供与取り決めをきちっと決められているんですけれども、そういうものをきちっとアメリカとも話し合いをして結ぶことも含めて検討するという解釈でよろしいでしょうか。

逢沢副大臣 先ほど答弁をさせていただいたとおりでありますけれども、政府といたしましては、我が国の事前同意なく第三国移転が行われないことを国際約束に基づいて確保する、そのことがやはり原則でなくてはならないというふうに考えております。厳格な管理を行うという前提、これはやはり武器禁輸三原則にある意味では例外をつくるケースでございますから、厳格の上にも厳格ということがベースになろうかというふうに存じます。

佐藤(茂)委員 それで、今回例外扱いされました案件の対象範囲がどこまでなのかということをあえて確認をさせていただきたいのですけれども、今回例外扱いされるのが、今弾道ミサイル防衛システムの日米共同技術研究で四つの分野を研究しているわけですね、日本が担当して。

 具体的には、日本が担当している試作対象としては、一つはノーズコーン、二つ目が赤外線シーカー、三つ目がキネティック弾頭、四番目が第二段ロケットモーター、そういう特定の四つの部品に今回の対象は限るのか、それとも、これからさらに広がる可能性もあるのでMD関連全般に対象が及ぶ、そのように考えておられるのか、政府の見解を伺いたいと思います。

大野国務大臣 まず、今回、武器輸出三原則の緩和の議論が出ましたのは、先生御存じのとおり、今、日米共同技術研究をやっている、その中の今佐藤先生おっしゃった品目について共同開発段階になったらどうなるんだろうか、こういう議論から始まったわけであります。

 結論から言いますと、ミサイル防衛関連、それからそれがアメリカとの共同関係、こういうふうに絞っていただくと大変わかりやすいんじゃないかと思います。官房長官談話の中で述べられておりますけれども、それ以外のものについても、弾道ミサイル防衛システムに関する案件であって、日米安保体制の効果的運用に寄与し、我が国の安全保障に資すると判断されるものであればということでありますから、まず、一つの枠組みは、日米安保そしてBMDという枠がある、それ以外については厳格に考えてやりましょう、こういうことでございます。

佐藤(茂)委員 余りこればかりだとあれなので、最後に、武器輸出三原則のところで、第三段落なんですけれども、要するに、アメリカとの共同開発、生産案件やテロ、海賊対策支援等に資する案件については、「今後、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念に照らし、個別の案件毎に検討の上、結論を得ることとしております。」ということに、最終的に談話として発表されているわけです。

 この個別の案件ごとに検討する際の判断基準や物差しというものが極めてあいまいであったり緩やかであれば、結果として武器輸出三原則がもうなし崩しになる、骨抜きになるという可能性、おそれがあるわけですが、そのためにも、この個別の案件ごとを判断する厳格な判断基準であるとか物差しというものをやはりつくっていく必要があるであろう。その必要性についての見解と、今もうそういう判断基準等というものが既に具体的にあるならば、それを示していただきたいと思います。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありました点につきまして、米国との共同開発、生産案件やテロ、海賊対策支援等に関する案件につきましては、その具体的な輸出先の国や対象となる設備の種類等々、多様なケースが想定されると考えております。したがいまして、その輸出の可否に係る判断につきましては、事前に一律の基準を定めるというよりは、個別の案件ごとに、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念に照らしまして、具体的な案件ごとの内容に応じて、個別に十分あらゆる角度から吟味されるべきであると考えております。

佐藤(茂)委員 だから、それはもうわかっておる。書いてあるとおりなんですが、その判断基準を明確にしていく必要性というものについて、物差しを持つということについてどうお考えですかということについて、ちょっと再度答弁をいただきたいと思います。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまお答え申し上げましたように、現状では、将来の米国との共同開発、生産案件、それからテロ、海賊対策等々、これにつきましては、やはり多様なケースが想定されると考えておりまして、やはり、現状、一律の基準ということを定めるよりは、個別の案件ごとに具体的に慎重に、国際紛争の助長を回避するという理念に従いまして判断してまいりたいと考えておりまして、その点では個別に十分吟味していきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 今のでは余り満足できる答弁だと思わないのですけれども、結構でございます。それじゃ、経済産業省、帰っていただいて結構です。

 それでは続いて、スーダンのことにつきましてお聞きをしたいんですけれども、今回の防衛大綱でも、国際平和協力活動に主体的、積極的に取り組むということが新しい防衛力のあり方として明記をされているわけですが、今、日本が、これからのことを考えましたときに、新たな国際平和協力活動として慎重に検討すべき課題が、スーダンPKOが要請されてきたときの対応をどうするのかということが考えられるわけでございます。

 私は、二月七日の衆議院予算委員会で、このスーダンPKOについて数点指摘をさせていただいた上で、治安情勢を初めとする現地情勢に対する慎重な判断と見きわめが必要であるがゆえに現地への調査団派遣というものをしてはどうか、そういうことを主張させていただきました。それに対して細田官房長官も、調査団を派遣することを含めて適切に対応したい、そういうふうに述べられて、具体的に、そのとき一般紙には、調査団派遣に前向きな考えを初めて明らかにしたということになっているんです。

 それから一カ月以上たちましたが、三月八日にスーダンに外務省や内閣府の職員の皆さんが三人調査団として派遣されて、三月の十八日に帰国されているということをお聞きしております。その報告内容及びいろいろな観点からのスーダンの情勢に対する評価につきまして、この場で御説明をいただきたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、三月の八日から十八日にかけまして現地に外務省の調査団を派遣いたしました。

 調査の結果でございますが、第一に、南北地域では、御案内のとおり、二〇〇二年十月に敵対停止合意以降、南北両当事者の間では戦闘が停止しておりまして、現在も誠実に遵守されております。また、本年一月に締結されました南北包括和平合意の実施につきまして、南北の両当事者は強い決意を表明しておるということでございます。

 さらに、今後、足かけ七年にわたる和平合意プロセスは複雑な政治調整を伴うものと考えますが、これに対する国際社会の支援、協力が必要であるというのが現地関係者のほぼ一致した見解であったということでございます。また、南北の両当事者は、国連PKOは同国の平和プロセスの進捗のため不可欠と認識し、これを歓迎する意向を示したと聞いております。

 最後に、二十年以上にわたる内戦の結果、南部の基本的インフラ及び公共サービスは欠乏しており、国際的な支援に対する需要は高いと考えられます。

 以上が、今次調査団の調査結果、評価の概要でございます。

佐藤(茂)委員 ということは、ちょっと確認ですけれども、最終的に、今、西部ダルフールの住民迫害の責任者をどう裁くのかということでアメリカとヨーロッパで非常に対立があって、それも最終的なPKO決議案の調整に入りつつある、そういうきょうの朝刊なんかの報道もありますけれども、PKOを、自衛隊が任務として派遣されることに当たって、今のところ、今回の調査で見た限りでは、大きな妨害というか制約的な情勢にはなっていない、どうしてもだめだというような情勢にはなっていない、そういう判断を外務省としてはされているんでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど調査団の報告で、南北間において停戦の合意が履行されているということでございますが、スーダンPKOに関する安保理決議、これは、実は本日、日本時間の朝七時に採択されまして、我々としては、採択されたばかりでございますので、まずこれを精査する必要があると考えております。いずれにいたしましても、国際平和協力法に基づく国際平和協力業務実施を検討する場合は、いわゆる参加五原則につきまして、例えば同原則にある停戦合意の要件が満たされるかどうか等検討が必要と考えており、今般の調査団の調査結果を含む現地の情勢を踏まえまして、内閣府を中心に検討、判断していくことになろうと考えております。

佐藤(茂)委員 では、そのときには慎重な判断と、さらに、与党を含めて議論をお願いしたいな、そのように思うわけでございます。

 それでは続いて、マラッカ海峡における海賊対策につきまして何点かお伺いをしたいんですけれども、今回の、日本人の船長初め三人の方々が海賊に拉致されて、無事解放されたことにつきましては、本当に我々も胸をなでおろす思いをしたわけでございますが、問題は、これから政府としてどういう再発防止策、また安全対策を打っていくかということでございます。

 時間も大分迫ってきましたので、一、二点お伺いをしたいんですけれども、一つは、具体的にどう国際協力を強化していくのかということで、日本のリーダーシップというのが問われてくるであろうということでございまして、具体的には、アジア海賊対策地域協力協定についてどうしていくのかということでございます。

 これは、二〇〇一年のASEANプラス3首脳会談で小泉総理が提唱されまして、日本政府の主導で、昨年十一月に十六カ国でこの協定が採択をされたわけですね。しかしながら、現状は、日本を含めてまだ批准していない国もあって、具体化の段階に入っていない状況なんです。先ほどの質問者の質問に対して防衛庁長官も答えておられましたけれども、マラッカ海峡というのは日本にとって重要なシーレーンでございまして、そういう意味から、日本の主導で採択された協定でもありますし、日本政府として、まずはやはりスピード感を持って、早急に国内の批准を急ぐということが一つポイントであろう。

 さらに、日本の国内だけではなくて、最初、日本のリーダーシップで始まった協定ですから、他の署名国に対しても、早期の批准と対策の具体化へ向けた協力を強力に働きかけるべきではないか、そのように考えますが、政府の所感を伺いたいと思います。

町村国務大臣 この協定ですが、御指摘のように、日本がイニシアチブをとって今日まで進めてまいりました。私も、インドネシアの外務大臣、それからマレーシアの外務大臣、シンガポールの外務大臣、それぞれ、一番のいわば当事国ですね、話をしたのでありますが、情報共有センターというものをどこにつくるのか。一応シンガポールということで決定をされたのでありますけれども、どうも他の二国がううんと言って考え込んでいるというのが実情なんです。

 しかし、そうはいってもこうやってみんなで協議して決めたんだから、こういう話を私も随分、インドネシアの外務大臣ともバイの会談で、ことしの一月七日ですか、津波サミットの直後にやったのでありますが、もう少し考えさせてくれ、こういうような返事でありました。

 そういうさなかに今回の事件が起きたわけでございますが、我々はある意味ではユーザーなわけですね、日本は。やはり一番の当事者であるところのインドネシア、シンガポール、マレーシアが、早くそこでまず意見統一をしてもらうということが大切なものですから、外交ルートなどを通じていろいろ今働きかけをしているところでございまして、その辺がある程度見えてこないと、日本だけ幾ら先にぱっとやってみても、意味がないとはあえて言いませんけれども、余り実効的な意味が薄らいでしまうものですから、まず一番の当事者であるその三カ国できちんとしたコンセンサスがうまくできるように引き続き努力をしていく。これからいろいろなお目にかかる会議もあると思いますし、外交努力もやっておりますので、まずそれをできるだけ早く進めたいな、こう思っているところであります。

佐藤(茂)委員 もう一つ、今せっかく外務大臣が答弁されたので、このマラッカ海峡の問題で一点だけお伺いしておきたいんです。

 三月十六日の参議院の予算委員会で、ODAを活用して巡視船あるいは巡視艇の供与を検討する考えを示されたそうなんですけれども、その巡視船供与の検討のスケジュールであるとか関係国との調整を今後どうされるつもりなのか。

 さらには、日本のODA大綱に触れる可能性というのは、ODA大綱では「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」という、そういう部分もございます、そういうことに触れる可能性をどう考えておられるのか。さらに、武器輸出三原則に抵触するかどうかについて、今の政府の見解を伺いたいと思います。

佐藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 このインドネシアに対する海上安全のための船舶の供与についてでございますが、本件につきましては、インドネシア政府の側からも要請を受けているということでございますし、また、今回このような日本船舶の事件が起こったということもございますので、できるだけ早い段階に私どもの方から調査団を派遣いたしまして、インドネシア政府側と協議をいたしまして、具体的にどういう形で支援できるかということを早急に検討していきたいというふうに考えております。

 そのほかに、今御指摘がありましたODA大綱との関係あるいは武器禁輸三原則との関係でございますが、ODA大綱におきましては、軍事的用途への使用の回避ということが明記をされているわけでございますので、仮にこういう供与を検討いたします場合にも、そうしたODA大綱の原則にのっとった形で協力が行われるようにということは、これは当然のこととして、先方との協議の中でも確保してまいるつもりでございます。

 また、武器禁輸三原則との関係でございますが、これは先ほど来答弁にございますとおり、この案件を検討いたします際にも、武器禁輸三原則等のよって立ちます国際紛争等の助長を回避するという基本理念に照らして、適切に検討をしてまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 それでは、町村大臣、四月中旬に中国を訪中されるということで最終調整をされているとお聞きしておりますので、中国問題につきまして何点かお聞きをしたいんです。

 今回、新防衛大綱の特徴も、初めて中国ということを明記いたしまして、「動向には今後も注目していく必要がある。」そういう結論になっているんですが、そういう新防衛大綱をまとめたやさきに、ことしの今回の全人代で、台湾の独立阻止を目的とする反国家分裂法が成立をいたしました。

 最初申し上げるのを忘れました。私はどちらかというと日中友好論者なんですが、その上に立ってもこの法律はいかがなものかな、そういうように思っておるわけでございますが、要は、内容的には、台湾の平和統一に向け最大限の努力をすると強調する一方、非平和的方法、いわゆる武力行使での分裂阻止も辞さないということを明記しているわけでございます。

 具体的には、三点の事態に至ったときには武力行使を行う。一つは、独立勢力が台湾を中国から切り離す事実をつくる、二番目、台湾の分離を招きかねない重大な事変が起きる、三番目、平和統一の可能性が完全に失われておる。いずれも抽象的であいまいな内容をまず三点掲げております。最大の問題は、解釈権は中国側が握って、いつでも武力行使が可能になる点であるということが一番の問題であるというように思っているわけです。

 私は、このような台湾侵攻に国内法的根拠を与える反国家分裂法というのは、せっかく緊張緩和に向かいつつあった、例えば春節時に直行便が運航されるなどといって人の往来も出てきて、そういう緊張緩和に向かいつつあった中台関係をぶち壊して、結果的にこの台湾海峡の軍事的緊張を確実に高めることになったのではないかな、全く有益でないというように私は考えておりますが、町村外務大臣の見解を伺いたいと思います。

町村国務大臣 佐藤委員御指摘のとおりであると私も考えております。

 あくまでも、平和的な話し合いということでこの問題は解決をすべきである、武力行使には反対である、また同時に、台湾独立も支持しないという原則に基づいているわけでございます。そういうことで、この法律について私ども大変懸念を表明しております。三月十五日の日に日中外相電話会談というのを行いまして、李肇星外交部長にもその旨私の方から改めてお話をし、働きかけをし、先方からは、いやいや違うんだということを盛んに言っておられました。

 いずれにいたしましても、私ども、従前から、平和的な話し合いによる解決、したがって対話を早期に再開すべきであるということを再三にわたって先方にも申し上げているところでございまして、そういう意味で、こういう法律の成立については私どもも反対であるということを、懸念を表明しているわけでございます。

 まだ私自身、ちょっと中国に行く日程について先方との調整ができておりませんので、まだまとまったわけではございませんが、今後いろいろな機会に先方とも会う機会もあろうか、こう思っておりますので、そういう機会を得て、こうした私どもの従来の考え方を改めて強調しておきたいと考えております。

佐藤(茂)委員 私は、この反国家分裂法のことで、人ごとではなくて日本にもかかわりがあるんだということを我々は意識を持たないといけないと思っているんですね。それは、範囲をどの地域までこの反国家分裂法が対象にしているかということなんです。

 中国の立場からすると、我々日本が日本の固有の領土であると言っている尖閣諸島のことを、中国では魚釣島と称して、自分の領土である、そういうふうに言っております。中国からすると、ここは台湾省の一部に当たる、そういう解釈になるのではないかと思うんですが、そのことの確認も含めて、万が一にも武力行使で、今回の反国家分裂法という国内法を盾に、武力行使の範囲が尖閣諸島にまで及んで、気がついたら、今の韓国に実効支配されている竹島と同様に、尖閣諸島まで中国に実効支配されていたということのないように、ぜひ、反国家分裂法に対する日本の懸念、電話だけではなくて、中国に行かれたときに、そういう懸念と同時に、この尖閣諸島のことにつきましても言うべきことはしっかりと言ってきていただきたいと思うんですけれども、外務大臣、答弁をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 尖閣につきましては、こちらから問題を提起する話ではないんです。なぜならば、ここには領土問題は存在をしないというのが日本政府の一貫した主張であります。これは、歴史的にも国際法上にも全く疑う余地のないことでございます。そして、現に私どもが有効に支配をしているという事実もあるわけでございまして、したがって、そもそも解決すべき領有権の問題は存在をしない。したがって、反国家分裂法が中国によって制定されたにしても、尖閣諸島に対する日本の領有権がこれによって影響を受けるということは全くないということでございます。

佐藤(茂)委員 それではもう一点、最近気になる動向として、日韓関係のことにつきまして多く質問したかったんですが、時間が迫ってまいりました。

 一昨日の三月二十三日に、韓国の盧武鉉大統領がホームページで談話という形で発表された。日本批判の内容を含んだ談話を大統領みずからが発表された。大統領が先頭に立って対日批判をこういう形で公にホームページに書かれる、談話を発表されるというのは外交的に極めて異例であると思うんですけれども、日本政府としてどのように受けとめ、また対応策をどうされるのか、伺いたいと思います。

町村国務大臣 二十三日に盧武鉉大統領の国民への手紙というものが出されたわけですが、その前に、十七日の日に韓国政府のNSC、ナショナル・セキュリティー・カウンシルなんでしょうか、この常任委員会声明というのが出されておりました。この延長線上に大統領の声明もあるんだろう、こう思っております。

 日本政府としては、十七日のこの常任委員会声明に対して、同日付で外務大臣談話というものを発出いたしております。その要旨は、先方の声明によって示された韓国国民の過去の歴史をめぐる心情については、これは日本政府としても重く受けとめるものである、こういうことを述べた上で、これまで過去の問題については、村山談話等々、私どもは過去を直視し、反省すべきは反省しつつ、和解に基づいた未来志向的な日韓関係を発展させていく、そういう強い決意を持ってこれまでもやってきたということを触れているわけであります。

 なお、三点述べておりますのは、一つは、日韓の間の財産請求権の問題について先方が触れているわけでありますが、これについてはもう既に国交正常化の時点で解決済みの問題であるということを申し上げております。竹島につきましても、両国の間に立場の違いはあるけれども、こうした問題について感情的な対立を招くことは日韓両国にとってためにならない、漁業問題を含めて日韓関係全体の中で大局的な視点から対応していく必要がある。歴史教科書問題については、教科書の検定というのは、指導要領と検定基準に基づいてこれまでも公正かつ適切に実施されてきたということを述べているわけでございます。

 いずれにしても、日韓両国が相争うような事態というのは決して両国のためにならない、お互いに自制し合うは自制し、また敬意の念を持って両国関係発展のために努力していく必要がある、こういう談話を出しているところでございまして、この談話の基本に沿って、今後とも、韓国側と冷静な話し合いを進めていきたいと考えているところでございます。

佐藤(茂)委員 肝心なところで時間が来ました。

 私は、この大統領の見解を見ましても、極めて誤った認識に基づいた一方的な対日批判を、内容的に見てもされている部分があります。例えば、自衛隊のことを、再軍備をもう一度考えているというような、そういう全く、自衛隊は海外へ行っても武力行使をしないわけですし、現に、イラクに韓国軍も行かれていますけれども、自衛隊も行って人道復興支援活動に専念してやっているわけでありますし、そういうもの。さらには、今外務大臣も答弁で言われました教科書問題、また日本の条例というものがどういう仕組みでできるのかということについて、やはりきちっと日本として反論すべきことは反論する、主張すべきことは主張しながら、しかし、最終的にこういういろいろな問題を乗り越えて日韓の友好関係を築き続けていただきたいことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

小林委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

小林委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 十日前に衆議院の本会議で質問をいたしまして、そのことをさらに、より掘り下げて質問させていただきたいと思います。

 たくさんの役所に来ていただいておりますが、ちょっとその質問は二番目に繰り上げますが、もう少しお待ちをいただきたいと思います。

 まず、この新防衛大綱につきまして、私は十日前の本会議で申し上げたんですが、なぜことしだったのか、去年作業して、ことしからスタートをさせるのかということで、米軍再編の問題これあり、そして中期防を四年で打ち切って新たな次期防も作成をするということの背景には、私は、ミサイル防衛の費用の負担というものがかなり大きくなって、そして陸海空のそれぞれの通常戦力の予算を削減しなくてはいけないという、そういった背景があるんだろうと思っております。

 これについてお答えは結構でございますが、一つ私が心配をしておりますのは、米軍再編の流れの中で、この防衛大綱というものをかなり根本から見直さざるを得ないような状況が来るのか来ないのか、そのことについて防衛庁長官がどのような認識を持っておられるのか、具体的にお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず、2プラス2の会合、防衛庁長官、町村大臣、お二人が行かれたわけでございますが、そのペーパーの中では、幾つかのポイントというものが共同宣言という形でまとめられたわけでございます。

 その話に行く前に、防衛庁長官に一つお伺いをしたいのは、日本として、この米軍のトランスフォーメーションに合わせて、アメリカに対して一体何を要望していこうとされているのか、どういうものを交渉の議題としてのせようとされているのか、そのことについてお伺いをしたいと思います。

 例えば、具体的には、この間のCSのテレビでは、自衛隊に米軍の管轄を移して、そして自衛隊が管理をするとか、そういうお話をされておりましたけれども、そういうことも含めて、具体的にどういったテーマをトランスフォーメーションの協議に合わせて日本側としてはアメリカに対して要求をされようとしているのか、まずその点についてお答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 先生御存じのとおりでございますけれども、まずは、このトランスフォーメーションの協議というのは、言ってみれば三段跳びということであります。一段目のホップというのは、いわば共通の戦略目標ということで、せんだって合意をいたしました。次に、ステップでございますが、これはお互いの役割、任務、さらに基地の共同使用、あるいはお互いの能力という問題を議論する。しかし、その議論の際には、最終のジャンプのところまで念頭に置きながらやっていかなきゃいけない。それはどういう意味かというと、やはり負担の軽減、沖縄を初めとする地元の負担の軽減、そしてまた抑止力の維持、この二つは根本の問題として我々常に念頭に置いているわけであります。

 では、具体的にどういうことをやるのだ、これがお尋ねのポイントだと思いますけれども、やはり量から質への時代、まさに負担の軽減と抑止力の維持というのは相反する概念のように聞こえますけれども、これを可能にするためには、やはり展開力とかそういうものをどう考えていくんだろうか、そしてお互いの任務、役割、指揮権は全く別ですけれども、合同作業がどこまでできるのか、その場合に任務をどういうふうに分担していくのか、そして一番わかりやすい例が基地の共同使用、こういうことであろうかと思います。そういうことを日本側からも積極的にアイデアとして打ち出して協議してもらいたい、こういうふうに私は言っているところでございます。

前原委員 共同使用については私が一つの具体例として申し上げたわけでございますが、このトランスフォーメーションに合わせて、先ほど三段跳びとおっしゃいました。確かに、一段目が共通の戦略目標をこの間日米間で確認をしたということで、次のステップにおいて役割、任務、能力というものを精査していくということでありますけれども、私が問いたいのは、基地の整理の問題というのは、トランスフォーメーションにかかわるものと、全くトランスフォーメーションに関係ないものがありますね。

 例えば、普天間の基地の問題がいろいろ言われておりますが、きょうは具体的な基地の問題を議論するつもりはありませんけれども、これはトランスフォーメーションだから普天間の問題が出ているのではなくて、SACO合意からもう何年もたって、なおかつ動いていない問題をこのトランスフォーメーションの協議に合わせて動かそうというところが一つの大きなポイントとしてあるんだろうと思うんですね。

 ですから、よく基地の問題がトランスフォーメーションの議論だというふうに言われている、見られている向きもありますが、厳密に言うと、トランスフォーメーションに関係をした基地の再編、整理と全く関係ないけれども、とにかくこのときに一緒にやってしまおうという話が私はあるんだと思います。

 そこで、今のお話だと、日本側から要求をするのは、じゃ、基地の共同使用だけをアメリカにこのトランスフォーメーションの協議に合わせて要望するだけなのか、それはいかがなんですか。私は、そんなに日本側のアメリカに投げかけるテーマというのは少ないとは思っておりません。もう少したくさんあるんじゃないかと思っていますが、もう一度御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 確かに、トランスフォーメーションという言葉で方向づけされるものと、全体の中で米軍が日本に駐在しているということで考える問題、二通りあるかと思います。

 私は、今回のトランスフォーメーションというのは、いわば将来長きにわたる日米安保条約のあり方を決めていく非常に大事なコーナーストーンともいうべきものになっていくだろうし、していかなきゃいけない。そうでなければ、世界の中の日米同盟ということも言えなくなるし、それから日本の安全保障という問題も揺れてくる、こういうふうに考えております。

 ですから、私は、狭義のトランスフォーメーションというよりも、もう少し大きい、広い意味でいろいろ物事を考えていって、これからの日米安全保障条約に基づく日本の平和というものを考えていかなきゃいけないんじゃないか、このように思っております。

 そこで、そういうふうに言いますと、どういう問題があるんだろうか。例えば、全部洗いざらいしてみて、もしむだがあれば、それもどうでしょうかと積極的に言っていく必要がある。ここはもう少しこうすれば効率的になっていくんじゃないでしょうか、こういう問題もある。その典型が、いわば基地の共同使用ということになろうかなと思っております。

 全部見直しまして、やはりここはこういうふうにした方がいいんじゃないか、これを日本側から提案しない限り出てこないわけですから、そういう意味で私は、日本からも積極的にアイデアを出していくべきじゃないか、こんなことを言っておるわけであります。

前原委員 では、私の方から具体的に、こういった問題を取り上げるべきではないかという逆に提案をさせていただきたいと思うわけであります。

 一つは、先ほど、むだ、効率化というお話をされましたが、危険な基地を、基地というのはどこでも危険性というものはあるわけでございますが、極めて危険あるいは危険度が高い基地を例えば移転すること、これも私は提案の中に入るんだろうと思うんですね、共同使用のほかに。それが入るのかどうなのか、少し覚えておいていただきたいと思います、幾つか提案をしますので。

 二つ目は、私は、戦後六十年たって、米軍に占領された土地が米軍基地として使われているところがある。そして、日本が管轄をしている基地もあれば、要は二4(b)というものもあれば、米軍が管轄をしているところもある。二4(a)と言われるものもある。基本的には、二4(a)は私はなくすべきじゃないか。主権国家日本の国内に、アメリカがいわゆる六十年前の戦争を受けて引き続き占領している土地があるというのはおかしいんではないかということで、私は、基本的にすべて二4(b)に変えていくべきではないか、これが二つ目です。

 三つ目は、日本が基地の使用権というものの返還を受けたという前提において、日本の上空で日本が航空管制できない空域がございますよね。これは返還を求めていくべきではないかと私は思っています。これが三つ目であります。

 余りたくさん言うと忘れられては困りますので、まず三つ。危険な基地の移転というものについては協議の対象に含まれるのか。それは、狭義のトランスフォーメーションか広義かは別にして、含まれるのかということ。そして、基本的には、日本が管轄をして米軍に必要であれば貸与するという形をとるべきだと思いますけれども、そういうことが日本の主張として今回貫かれるのかどうか。三点目は空域の問題、お答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 大変示唆に富むお話をちょうだいしました。

 第一点。危険といいますと、これは抽象的な話になりまして、具体的にどういう状態が危険なのか、どういうものが負担なのか、こういうものが明快にはわからないわけですけれども、危険というものを私はこういう表現でいつも言っております。負担というものは数字であらわされるものだけじゃない。数字であらわせない騒音とかあるいは不安、危険といいましょうか、そういうものもありますよ、そういうものも十分考慮に入れながらやっていかなきゃいけませんね。ただ、具体的に危険なものはどうするんだと言われますと、ちょっと現状ではお答えしかねます。

 それから二番目の……(前原委員「ですから、それが含まれるんですね、提案に」と呼ぶ)私は常に、今申し上げましたように、数字であらわせるもの、あらわせないもの、これもちゃんと考えていかなきゃいけませんということを言っております。

 それから二番目に、基地の管轄の問題でございます。

 私は、歴史的に見て、日米協力、日米の安保条約というのは、発足当時は、日本が基地を出す、提供する、アメリカ軍が人間を出す、物と人との協力関係みたいなところがあったけれども、今ややはり対等の立場で、人と人との協力が求められる時代になってきているんではないか。そういう意味で、本来日本にある基地等でございます。したがって、私は、おっしゃるように、非常に示唆に富むアイデアでございますが、やはり日本の方に管轄権を移すということが機軸となって協議していくべきだと思っております。

 それから三番目、航空管制についても、基地もそうなんですが、航空管制をもし仮に日本側でやるという協議がまとまれば、これはアメリカにとっても人減らしという大変なメリットが出てきます。そして、日本にとっても一元的に航空管制ができるというメリットも出てまいります。こういう意味でも、その主張もやるようにいたします。

前原委員 二番目、三番目についてはその方向性で議論されるということなんですが、一番目が少しわかりにくかったと思うんです。何度も申し上げておりますが、きょうは具体的な基地の名前を挙げて議論をするつもりはございません。機微に触れる話ですので、それを前提にした話になるとなかなかお答えしにくいと思いますので。

 ただ、もちろん数量化することはできないし、かなり主観的なアイデアにはなると思うんですが、例えば、密集した住宅街の中にあって、そして離発着回数も多いとか、騒音の問題も他地域と比べて極めて問題性が高いとか、そういうものはお互い頭の中に浮かんでいると思うんですね。だから、そういうものも、しっかりとトランスフォーメーションの議論に合わせて日本側から主張していく。だけれども、その場合は、代替基地は日本で見つけろよということになるわけですから、それも含めて責任を持ってやられる御意思があるかどうかということを伺っているわけです。

大野国務大臣 協議に当たる者として当然のことだと思っております。

前原委員 あと、日本から物を言っていくことの幾つかの中に、事前協議というもの、これをどのように考えていくのかということは、私はかなり大きな問題であろうと思っております。

 再三国会の中でも取り上げてまいりましたけれども、事前協議制度というのは、日本が主体的に日米安保条約というものを運用するために、一九六〇年、安保改定のときに、当時の岸総理大臣がこの事前協議というものを活用するということをおっしゃっているわけですが、いまだに一回もこの事前協議というのは行われておりません。岸・ハーター交換公文の事前協議というものは行われておりません。しかも、ベトナム戦争以降、今回のイラクもそうでありますが、一たん移動して、そしてそこから出撃命令が出たということで、事前協議の対象にはならないということで今まで議論をされてきました。

 外務委員会だったと思いますが、町村外務大臣がなられた直後ぐらいに議論したときに、米軍は地球のどこでも行きますというお答えをされたのを覚えておりますけれども、私は今の政府解釈をよしとするわけではありませんが、しかし、この事前協議というものの厳格運用ということも、今後、後から御質問をする、共通の戦略目標を決めて、新たな役割、任務というものをしっかりと定義していく上で、私はこの事前協議の仕組みというもののあり方というものをもう一度議論すべきだと思いますが、防衛庁長官の、外務大臣ですか、両方からお伺いしたいと思います。では、外務大臣。

町村国務大臣 確かに、事前協議はこれまで行われたことはございませんが、それに該当するような事態が現実に起きてこなかったということであるわけでありまして、日米安保体制の抑止力が効果的に機能していたからこそ事前協議事態にならずに済んだという見方もできるのかな、こう思ったりもしております。

 いずれにいたしましても、この事前協議というのは委員御指摘のとおりアメリカ側からなされるということでございますから、事前協議の対象になるような作戦行動が今まではなかった、こういうことで、今後のことはそれはよくわかりませんけれども、いずれにしても、今まではよくイラクのことで多くの委員から御指摘がありましたが、これは移動という概念で十分説明ができるということであろうかと思っております。

前原委員 今の答弁の中で、今までそれに該当する案件がなかったとか、あるいは移動で十分説明ができるとか、日本からむしろ逃げ道をつくってある話になっているわけですね。私はこれは、事前協議制度というものができた背景からすると、完全に脱法行為だと思います。

 つまりは、我々も日米安保条約は大切だというふうに思っておりますけれども、日本の主体性をいかに確保するかということが、先ほど防衛庁長官にも御質問したように、我々としてしっかり提案することはしっかり提案していく、今までのなれ合いというものももう一度見直す時期に来ているんじゃないか、その中に事前協議というものを含めるべきじゃないかと私は思いますが、防衛庁長官、御答弁いただきたいと思います。

大野国務大臣 基本的に町村大臣の御答弁と全く同じでございます。

 お互いの協議、事前協議という枠組みじゃなくて、お互いが指揮権は全く別ですけれども共同作業を行う、これが非常に大事な世界になってまいります。その中で、やはり町村大臣がおっしゃったとおり、アメリカからの提起ということで今まで考えておりました。その辺、お互いに通じ合いながら共同作業をやっていくという中でどういうふうに考えていくか。本当に御示唆に富む話ではございますけれども、現状は外務大臣がおっしゃるとおりでございますし、私もその方向でいいと思っております。

前原委員 残念な答弁ですが、これ以上議論しても時間のむだだと思いますので、これについては割愛をいたします。これで終わります。

 2プラス2の共同宣言の中に、共通の戦略目標を決めました。その共通の戦略目標には、地域の共通の戦略目標と世界の共通の戦略目標、その二つが議論されたわけでございます。先ほど防衛庁長官から答弁がありましたように、いよいよこの共通の戦略目標を具体的に精査していく、そしてお互いの任務、役割、能力というものを精査した上で具体的な戦略目標の実施に向けての努力をしていくということであります。

 具体的にお伺いしたいわけでございますが、まず、地域における共通の戦略目標の中に「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す。」という言葉が入りました。政府の見解としては、今までの台湾に対する見解、中台関係に対する見解の域は出ていない、こういうことであります。

 この共通の戦略目標を具体的に日米が任務、役割、能力という面に合わせてどのように追求をしていくかということをこれから行っていくわけですが、私は、十日前の本会議で、総理の答弁であれっと思う答弁が幾つかありましたけれども、その一つが今から申し上げることであります。つまりは、外交的なアプローチのみなのか、あるいは軍事的なアプローチというものも想定をした日米間の役割分担というものを考えるのか、そういう議論をしたときに、外交的なアプローチのみであるということを答弁されました。

 防衛庁長官、本当にその答弁でよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 総理答弁のとおりだと思います。

前原委員 その2プラス2の後に私もアメリカに行きまして、ワシントンでいろいろな方とお話をいたしましたけれども、私の認識は少し違うんですね、いろいろな方とお話をした中では。

 例えば、中台間で仮に紛争が起きる場合というのはどういうシナリオなのか。台湾が独立宣言をして、中国がそれに対して武力で抑えつけるというシナリオも考えられるかもしれない。あるいは、中国の経済発展というものを背景として、中国が武力統一というものを考える可能性もゼロとは言えない。そうなったときに、日本は全く軍事的な行動というものを考えなくてもいいのかということになると思うんですね。総理の答弁のままだったら、そういうシナリオは考えていません、外交的なアプローチだけやりますと。しかし、そうなったときには、では日本は何もしないのか、日米間でのオペレーションというものは考えないのか。私は、そんなことはあり得ないと思うんですね。つまりは、そういうシナリオを一つの仮定として考えておくのが軍事の面の役割分担であり、任務であり、あるいは能力の分析じゃないですか。

 もう一度御答弁をいただきたいと思います。全く考えないんですか、防衛庁長官。

大野国務大臣 台湾海峡の問題が今回の2プラス2の協議の中でも共通認識として出てまいりました。今回初めてそういう問題が表へ出てきたわけですけれども、この問題自体は、歴史的に見まして随分昔からそういうような問題意識を持っていた。ただし、我々は、明快にこういう問題意識のあるものは書いていこうということで、今回書いているわけでございます。だからといって、それに対して日米共同で武力攻撃等を考えているわけではありません。

 これは、全くそういう事態がない、我々日本としてはあくまでも平和的に解決してもらいたい、平和的な対話をやってもらいたい、こういう切り口で物事を考えておりますので、御指摘のようなそういう事態が出てくる、こういうことは一切考えておりません。

前原委員 仮に起きたときの軍事的なオペレーション、サポートも考えないということですか。

大野国務大臣 仮に起きることを考えておりません。

前原委員 これは、防衛庁長官、大変な問題ですよ。つまりは、2プラス2で、アメリカとの間で共通の戦略目標、地域の戦略目標としてこういったものを入れられた。防衛庁長官も行って入れられたわけです、これについては。平和的な解決を促す、それは我々もそう願っていますし、中台間で紛争があるなんということは我々は願っておりません。しかし、仮に起きた場合のことを考えるのが防衛じゃないんですか、国防じゃないんですか。そしていろいろな法律を今までつくってきたわけじゃないんですか。周辺事態法もそうだし、その前のガイドラインもそうですし、そして、ひょっとしたら日本の有事にもつながる可能性もある有事法制。

 考えたくないけれども、実際に実務にいる人が全くそんなものは考えておりませんという答弁は大きな問題であり、アメリカで同じことがもう一度言えますか、このことについては。軍事的なオペレーションまでその可能性を否定して、全くそのことについては考えない、議論しないということを断言できますか。もう一度、防衛庁長官、答弁ください。

大野国務大臣 我々は、あくまでも平和的な解決を考えております。そして、いち早く中台が、当事者同士が会話を再開してもらいたい、このことに尽きるわけでございます。

前原委員 答弁はいただいていないと思います、私の質問に対して。仮の話をするということは、防衛においては当たり前のことでしょう。北朝鮮からミサイルが飛んでくるなんという話は仮の話じゃないですか。それに備えてミサイル防衛という議論をしているんじゃないですか。そして十年間で八千億から一兆円使うんでしょう。すべて仮の議論をするんじゃないですか。それがリスクマネジメントであり、安全保障じゃないですか。それを、全く議論しません、平和的な解決を望みます、思考停止なんというのはおかしいですよ。

大野国務大臣 ミサイル防衛につきましては、我が国にとっての脅威でございます。我が国に飛来するミサイルを迎撃しなきゃいけない、こういう我が国に対する脅威であります。だから議論しなきゃいけない、だから構えていかなきゃいけない。その他、先生御指摘の事態がどういうふうになっていくのか。まず、根本的に平和的解決を望んでいる、それが日本の脅威とどういう関係になるのか、こういう問題がやはりあると思います。

前原委員 当たり前のことですけれども、中台間で紛争が起きた場合に、アメリカには台湾関係法という法律がありますね、アメリカが関与する可能性が高いわけですよ。そのときにどこの基地を使うんですか。一番近い日本が使われる可能性が高いんじゃないですか。

 そのことを考えれば、直接ではないにしても、同盟関係を結んでいることに対して、日本に対する危機、あるいは日本が対応を迫られるという非常に難しい状況というのは生まれ得るじゃないですか。そういう意味では、直接的なミサイル攻撃とかではないけれども、日本にも十分関係する話じゃないですか。それを、平和的な解決だけで、そのシナリオを全く考えていませんということを、私はそんな答弁はおかしいと思いますよ。もう一度答弁をお願いします。納得できる答弁が出るまで私は次の質問はできませんので。

大野国務大臣 確かに、日米安全保障条約に基づきまして、極東の平和と安全を守るために、そして日本の安全を守るために、アメリカは日本の基地を使うことができる、これがいわば安保条約六条でございます。

 そういう事態になって、先生先ほど御指摘の、それが台湾とかどこか限定しません、そういうことになって、そのときに事前協議が発生する、事前協議という問題が出てくる、そういうときの判断でございます。

前原委員 ですから、事前協議の話は先ほどの話であって、今極東という言葉をおっしゃいましたね。台湾は極東に含まれますよ。フィリピン以北、そのときの中華民国ですけれども、極東に含みますよ。そうすると、六条で、アメリカがコミットメントする条約上の根拠があるじゃないですか。そのときに、またアメリカは台湾関係法があるということですよね。それに対して、日米間のシナリオに基づいたそういった想定を全くしないのかということについて、しないというお答えは、これは私は虚偽答弁としか言いようがないと思いますよ。それを逆に本当にしないのであれば、それは事前協議の話にもなりませんよ。

 では、アメリカは勝手に行ってください、それについて後方支援もしないと言い切れるんですか。あるいは、基地は使用するだけで結構ですよ、日本は何も支援はしないということで、そういう軍事的なオペレーションというのは考えないということをおっしゃっているんですか。その点についてもお答えください。

大野国務大臣 基地使用につきまして事前協議をやる、ここまでは納得していただけると思います。そのときに、どういう状態でどういうふうになっているのか、これはきちっと相互に理解し、日本側もそれでいいのかということで判断していくべき問題だと思っています。

前原委員 何をおっしゃっているかよくわかりません。

 つまりは、事前協議の対象になったときに、イエスという答えもあるしノーという答えもある、ノーという答えを言えるのかどうか。それと同時に、日本に対する後方支援の要請が出てきたときに、全く何もしないということを言えるんですか。あるいは、協議をしない、それについては想定しないということは、まさに日本としては台湾有事においては何も関与しませんということをみずからおっしゃっているようなことなんですよ。それでいいんですか。

大野国務大臣 事前協議あるいは後方支援という問題につきましては、そのときにおける情勢、そのときにおけるいろいろな問題点、これを踏まえて判断していくべき問題かと思います。

 繰り返して恐縮ですが、我々は、あくまでもこの台湾海峡の問題、これは平和的に解決してもらいたい、そして、それだけの交渉の糸口を早くつくってもらいたい、この一語に尽きるわけでございます。

前原委員 防衛庁長官、逆の立場だとなかなか難しい答弁だと思うんです、この答弁の仕方というのは。それはよくわかって、でも、伺っているわけです。

 つまりは、こういう答弁の仕方もあるんですよ、助け船を出すわけじゃないですが。その質問については答弁を差し控えると。そのことで、お互いの国益を考えてこの安保の委員会で議論しているわけですから、それでしつこくさらに聞くということはないですよ。

 つまりは、どういうことかというと、平和的な解決だけで、ミリタリーのオペレーションを全く考えないということになったら、日米関係は物すごく変になると私は思いますよ。現に、私はアメリカに行っていろいろな方と話をして、例えば一九九四年に朝鮮半島で危機が高まったときに、千九百項目ですか、いろいろな要望が来ましたね。恐らくああいうものも含めてアメリカは想定をし始めるんだろうと私は思うんですね、いろいろなシミュレーションにおいて。そのときに、日本に対して何ができるんだという話は必ず来ますよ。それを、平和的な解決を考えて、軍事的なオペレーションは全く考えません、事前協議もそのときになってから考えますと。これは、同盟関係そのものが極めておかしな状況になると私は思いますよ。

 つまりは、特に台湾問題というのは機微に触れる問題ですから、戦略的なあいまいさという言葉が、これはアメリカの中でも言われてまいりました。つまりは、そのことにおいて、お互いの暴走というか、抑制した行動を促すという意味があったわけだから、あいまい性というものを追求したということもあるわけですね。

 ということは、防衛庁長官の御答弁は逆の意味で問題の答弁ではないですか。しっかりと、この中台の問題について、共通の戦略目標の中に入れて、そして日本とアメリカは具体的にこれから話をするわけですよ。絶対に外交的なアプローチだけじゃないはずです。

 そのことについて、防衛庁長官、責任を持って議論していくおつもりですか。もう一度答弁を求めます。

大野国務大臣 前原先生から大変よい御示唆をいただきました。

 このことについて、どういうふうな議論をしていくかにつきましても、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。

前原委員 ただ、この問題は非常に機微に触れる話ですが、特にいろいろ中国との関係もあるし、また、アジアの問題に派生をする可能性があるし、非常に機微に触れる話だと思いますが、ただ、どこかで腹をくくってやらなければいけない問題であることは間違いないと私は思いますし、後で御質問するように、その危険性というのは徐々に徐々に高まっているような気がいたしますので、そこは答弁を差し控えるという中で、私は、あらゆるシナリオというものを責任を持って想定しておいていただきたいということを要望させていただきたいと思います。同僚議員からは甘いと怒られるかもしれませんが、そういうことでこの点についてはしておきたいと思います。

 そこで、地域の共通目標、幾つか並んでいますね。例えば地域の共通目標の中には「海上交通の安全を維持する。」ということも書いてあります。あるいは、世界における共通の戦略目標の中には、いろいろなテロ防止とか、あるいは大量破壊兵器の削減、不拡散、PSIのことも書いてあるんです。

 こういったさまざまなテーマについては、当然ながら、外交的アプローチだけではなくて、具体的に日本が参画するということもあり得ると私は思うんですね。特に「海上交通の安全を維持する。」ということは、この間のマラッカ海峡沖の海賊行為もあわせて、重要なシーレーンです、八割以上の石油を中東に頼っているということを考えれば。

 すべて聞いていたら時間がありませんので、きょうはこれだけにいたしますが、例えば「海上交通の安全を維持する。」という問題については、海保になるのか、あるいは海自になるのか、あるいは空自もかませてやるのか、そこは私はわかりませんけれども、日本としては何らかの、やはりこれを具体化させていくということにすべきだと私はむしろ思うんですが、防衛庁長官の答弁を求めます。

大野国務大臣 先生おっしゃるとおりでございます。

 まず、国際的に、情報戦略、これを共有していかなきゃいけない。そういう意味で、私、ことしの一月にマレーシア、シンガポール、インドネシアへ参ったときに、それぞれの国防大臣と話をしてまいりました。詳細は省きます。それから、国内ででも、法制、法律の制度上は、一義的には海上保安庁でございますけれども、やはり情報は共有しておかなきゃいけない、こういう問題があると思います。すべて、統合的、全体として協力してやっていこう、こういう体制を今からつくっていかなきゃいけない、そのための第一歩が情報の共有である、私はこのように思っています。

前原委員 情報の共有だけで、例えば海上交通の安全確保についてみずから主体的に参加する、そういうお考えはありませんか。

大野国務大臣 法制上の問題はさきに申し上げました。一義的には海上保安庁、それから次に自衛隊、こういうことであります。しかし、そういう仕組みを議論する場、これはぜひとも参加してまいりたい、このように思っています。

前原委員 第一番目の私の質問というのは、幾つか共通の戦略目標というのを今のようにお伺いしていたらわかるんですけれども、例えば今の海上交通の安全確保への参加、可能性はあるわけですね。参加にしても、先ほど防衛庁長官がおっしゃった、米軍から基地をまず返してもらう、そして、管轄権は日本が持ってそれを使用してもらうということになれば、自衛隊が警護をしなきゃいけなくなりますよね。そうなったときには、トランスフォーメーションを具体的にしていった場合に、果たして今の防衛大綱というものをもう一度大きく見直さざるを得ないんじゃないか。

 したがって、ミサイル防衛のことがあって、お金の話から、中期防は四年で打ち切り、新しい大綱をつくらなきゃいけなくなったという理由はわからないでもないけれども、また大きく、大綱なり五カ年計画、中期防、次期防を見直すということになりはしないのか。その可能性について、防衛庁長官は、このトランスフォーメーションの協議、そしてこういった共通の戦略目標の具体化、そして日本が果たすべき役割、能力、役割分担、その中でかなり見直さなきゃいけないところが出てくると私は思うんですが、どのようにお考えなのか、答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 まず、トランスフォーメーションにしましても、新しい防衛大綱にしましても、なぜそういうことになったか、背景はかなり共通していると思っております。それは国際安全保障環境の変化。日本の場合は、テロ、ゲリラ、ミサイル防衛、こういう問題。アメリカの場合は、冷戦構造と、それからもう一つは、科学技術力の大幅な進展によりまして、機動力、展開力、それから爆発力、爆破力、情報力、こういうものが進展してきた、こういう背景。これはほとんど同じかと思います。対象は違いますけれども、背景はそういうことだと思っております。

 それに基づいて、量から質へ、こういう問題意識も共通していると思います。日本でいいますと、多機能、弾力的、実効性のある、それが一つのキーワードであるし、もう一つのキーワードは国際活動、平和というものをやる、平和というものに重点を置く、こういう意味があると思います。

 そこで、トランスフォーメーションの協議を通じて日本の防衛大綱をどう考えたらいいのか。この点につきましては、現在、現時点では、私はそういうことは必要がないと思っております。しかし、今回の新しい防衛大綱におきましては、五年たったらそこで見直そうじゃないか、あるいは五年たつ前でも、必要ならば検討しようじゃないか、そして必要ならば見直しをしようじゃないか、こういうことがきちっとうたわれております。そういう意味で、その辺の問題点については柔軟な対処ができるようになっていることは、前原先生御存じのとおりであります。

前原委員 違う角度から質問したいと思いますが、与党の中でも、トランスフォーメーションの協議が調った段階で日米防衛協力の指針の見直しが必要なんではないかという議論がありますが、防衛庁長官はどのように思っておられますか。

大野国務大臣 これから先の動向をきちっと見詰めながら、必要に応じ対処していきたい、このように思っております。今現在そういう意識は持っていませんが、変化の激しい時代ですから、そういう場面も出てくるのかな、出てくれば、それは当然のことであると思います。今現在はそういうことは考えておりません。

前原委員 引き続き、日米のトランスフォーメーション、アメリカのトランスフォーメーションに合わせる同盟のトランスフォーメーションという議論、そしてトランスフォーメーションに合わせた基地の再編の議論というものもこれからさらに具体的になっていくと思いますので、こういった場をとらまえて、また質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、たくさんの役所にも来ていただいておりますので、テロ対策について質問をさせていただきたいと思います。

 防衛大綱の中にも、テロ、ゲリラといったものの脅威が書かれておりますし、そしてまた同時に、国としての統合的な対応ということが必要だということが書かれているわけでございます。

 では、この新防衛大綱の2の「我が国自身の努力」の中の(2)の「国としての統合的な対応」というものをこれからどういった分野で進めていこうとしているのか、これは官房副長官にお答えをいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 テロ対策でございますが、これは、これまでも内閣官房が主導いたしまして、関係省庁が密接に連携しながら、情報収集、分析を行い、出入国管理、ハイジャック対策、重要施設警備警戒等の各種テロ対策を強化してきたところでございます。

 昨年末でございますが、テロの未然防止に関する行動計画を定めました。これは多岐にわたっておりますけれども、人、物、金をチェックしようということなんですが、一言で言いますと、平成十八年度までに、おおむね、米英独仏等、先進国がとっておりますテロ対策に今ちょっと一歩おくれている状況でございますので、追いつくという目標を決めまして、さまざまな取り組みを決めておるところでございます。

 以上です。

前原委員 新大綱の中に、テロのみならず、国としての安全保障にかかわる問題については統合的な対応というものを進めていく、こういうことが書かれているわけです。特に、「一層の情報共有、訓練等を通じて緊密な連携を確保する」ということでございますが、具体的に、例えば情報の共有の能力を強化させるためにはどのようにしていったらいいと考えておられるのか、これも副長官、お答えをいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 私、官邸に入りまして十カ月になりますが、予想していた以上に情報の統合、集中が行われているというのが正直な印象でございます。

 先生御案内のとおり、官邸に危機管理センターができておりますが、危機管理監も置かれた。それから、情報については、内閣情報官のもとに、情報コミュニティーから情報が集中するようになっております。内閣総理大臣、官房長官、三人の副長官、内閣危機管理監には、内閣情報官のところに集まってまいりました警察庁、防衛庁、外務省、公安調査庁等の情報が、情報官のもとには衛星情報センターもありますが、原則として週一回定期報告が行われております。必要に応じて随時報告も聴取いたしまして、必要な指示を各方面に行うという体制ができております。

 それから、官房長官のもとに合同情報会議というのが置かれております。議長は事務の官房副長官でございますが、ここに情報コミュニティーの主要メンバーが集まりまして、これは隔週集まって情報を共有しております。その上に内閣情報会議というのがございまして、原則として年二回開催するものとされております。それ以外にも必要に応じて開催するとなっておりまして、日常はこの内閣・合同情報会議を中心にして情報の収集を行う、それは事務的には内閣情報官のもとに集中いたしまして、それが私どもに上がり、検討が行われ、各省庁に指示が行くというようなシステムで動いております。

 危機管理センターとも連動いたしておりまして、このところの、テロは幸いないわけですが、災害等の問題それから拉致等の問題について官邸の対応が、もちろん先生の目から見ると不十分だというふうに御指摘を受けると思いますし、私どももこれが完全とは思っておりませんが、以前より比べるとはるかに有効に機能しているという認識を持っております。引き続き情報の共有は強化していかなきゃいけない、こう思っております。

前原委員 警察、海保、入管にも来ていただいております。

 取り組みを強化している、昔よりは情報の統合というものは進んでいる、こういう話でありますが、ということは、警察、海保、入管にお伺いしたいんですが、今までは情報については出し渋っていたけれども、最近は統合が進んで出すようになった、こういう理解でいいんですか。今の官房副長官の答弁だとそういうことですよね、情報統合が進んだということになれば。今も、必要とされる情報については必ず内閣には上がっているのかどうなのかも含めて、三部署、御答弁をいただきたいと思います。

岩橋政府参考人 現時点の情報の集中といいますか、内閣官房への報告というものは、これは今副長官がおっしゃったとおりでございますが、テロ情勢につきましては、ここまで緊迫はしておりませんでしたので、ですから、従来、我々の情報収集にいたしましても、特に海外における情報収集等にいたしましても、それは現在とは全く密度の違うものでございます。したがいまして、そういう意味では実質的に情報が、我々の情報の量も多くなっておりますし、それをまた内閣官房の方へお届けする、そういう回数等もふえておるということだと思います。

滝副大臣 法務省の関係で申し上げたいと思います。

 法務省は、一般的な内閣・合同情報会議の関係では、公安調査庁を通じて内閣に基本的な情報を上げるようにしているわけでございます。

 そのほか、実施部門として、私どもは御案内のとおり入管を持っておりますから、入管情報はこの公安調査庁からもらう情報、そして直接また警察の情報あるいは税関の情報、そういう実施部隊は実施部隊としての情報を別途持って、基本的には、すべて公安調査庁を通じて基本的な重要な情報は内閣に上げる、こういうシステムをとっております。

石川(裕)政府参考人 私ども海上保安庁でございますが、基本的な緊急な情報等につきましては、当然のことながら内閣の危機管理センターとホットラインでつながっているわけでございます。

 そのほかに私どもが、特に水際作戦でございますので、国際空港あるいは港湾における水際対策ということで、内閣の危機管理審議官を中心とした水際危機管理チームというのがございまして、その下に、各重要港湾につきまして、港湾の危機管理官という形で海上保安官が併任をされてございます。ここで、具体的な港湾について陸上警察も含めた日ごろの情報交換、監視活動を行っているわけでございます。

前原委員 これについても、恐らく自民、民主、公明三党で危機管理の体制整備を進めていく上で議論させていただくことになると思いますので、これについてはまた改めてやらせていただきたいと思います。

 残りの時間で、二つのことについて質問をしたいと思います。

 まず防衛庁長官にお伺いしたいんですが、中国の軍事力増強、十七年間連続して年率一〇%を超える防衛力の増強をしていて、特に第四世代の戦闘機そして潜水艦、こういったものの充実というものは目覚ましいものがございます。

 このときに、私がさせていただきたい質問は、日本の領土、領海、排他的経済水域というものを今後もしっかり守っていけるような防衛力というものが、中国の飛躍的な軍事費の増加とそれによる増強があったとしても、この新大綱、あるいは五年、半分で見れば中期防、次期防の中でしっかりと担保できるというふうにお考えなのかどうなのか。本会議でも質問いたしましたが、もう一度答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 中国の動向につきましては、先生、釈迦に説法になりますから申し上げません。ただ、新しい防衛大綱の中では、脅威ではない、しかし注目すべきである、こういうことでございます。

 それで、これから増大していく中国の防衛力をどういうふうに評価するか、これが問題でございますけれども、例えば、調達したものが防衛費の中に入っているのかどうか、それから具体的な飛行機の機数とか、そういう数の問題が必ずしも明快ではございません。したがいまして、透明性ということを我々は求めていきたいとまず思う次第でございます。

 それから、具体的に、例えばEEZの問題があろうかと思います。EEZの問題につきましては、例えば、国連海洋法条約に基づいて、お互いに事前に六カ月前に通報し合って、場所とかそれから方法とか目的とかを言っていれば、お互いに認め合うという可能性も排除できないわけであります。中国との間には、恐らく二カ月だと思いますが、六カ月を二カ月にするというようなお互いの意思表明、取り決めではありません、お互いの意思表明がある。こういうルールに基づいたことをきちっとやるように交渉していかなきゃいけないと思っております。

 それから、潜没潜水艦の問題があります。これは、直ちに出動できるように運用を変更いたしております。自衛隊の方が海上警備行動で直ちに即応できるように運用を改善していっている、こういう問題がございます。

 全体像として、まず透明性、そして、当方としては、新しい防衛大綱にあるような多機能、弾力的、実効性のある防衛力でもってやっていこう、こういうことでございます。

前原委員 ちょっと質問から答えがずれているんですが、つまりは、中国の軍事力増強の中で、日本の領土、領海、領空、例えば制空権、制海権というものを今後も維持できるのかという観点から質問しているわけです。

大野国務大臣 お答えしたつもりでございますけれども、例えば防空識別圏の問題にしましてもきちっとそれはやっておりますし、それから、先ほど申し上げましたようなEEZの海洋調査等の問題、あるいは潜没潜水艦等の問題、こういうことはきちっとこれからやっていく。それに対してもし違反するようなことがあればやはり外交ルートを通じてきちっとやっていく、それがまず第一でございます。

前原委員 いやいや、だから、そういった防空識別圏をしっかりと、その中を守るということで、軍事力のバランスが変わってきているわけでしょう。軍事力の増強の中で、さっき申し上げた第四世代の戦闘機とか潜水艦の増強の中で、果たして制空権、制海権をしっかりと保つことができるのか。今までしっかりやっておりますというのはわかっております。そうじゃなくて、今後もそれが維持できるのか、あるいは主権国家としてそういうものを維持する意思を持っているのかどうか、それははっきり言ってもらわなきゃ困るわけです。

大野国務大臣 先生のお尋ねはパワーバランスという観点からだと思います。

 パワーバランスというのは、量よりも質へという考え方で、多機能、弾力的、実効性のある防衛力という問題が一つ。これは我々の問題であります。

 それから、先方の方については、透明度がないからもう少し透明度を増してほしい、こういうことで先ほどお答えしたつもりでございます。

前原委員 もっと簡単に言えば、相手、相手というか中国の軍事力増強の中で、例えば尖閣なんかも、向こうは日本の領有権を認めていないわけですよね。あるいは中間線も認めていないわけですよね。沖ノ鳥島も、島だと言っていないわけですね、岩だと言っているわけですよね。そういったところに実効支配をしてくる可能性があるわけでしょう。日本の主張しているそういった主権はしっかり守っていく、そういう防衛力が維持できるかどうかということを聞いているわけです。もう一度答弁してください。

大野国務大臣 防衛力につきましては、たびたび申し上げました。それを発動するかどうか、こういう問題とは私は別だと思っています。

 パワーバランスの問題として考えれば、それは、中国が潜水艦を何隻持って日本は何隻だ、こういう比較ではなくて、私は、総合力、外交と防衛、すべてを、総合力を上げて安全保障にきちっと対応していかなきゃいけない、こういうふうに思っています。

前原委員 いや、わかっていておっしゃっているんだったら怒りますよ。

 パワーバランスが崩れていっていて、日本の主権を守り続ける意思を持っているかと言っているわけです、防衛庁長官として。そのための大綱になっているのか、中期防になっているのかということを聞いているわけですよ。

大野国務大臣 簡単に申し上げます。

 それは当然のことでございます。日本を守る、日本の防衛をきちっとやる、当然のことであります。そのために防衛庁があり、そのために自衛隊があるわけですから、それはきちっとやってまいります。

前原委員 時間が参りましたのでこれで最後にいたしますが、海洋権益の中で天然ガスの開発を中国が中間線付近でやっていて、日本もそれについては調査をしておりますが、最後に小此木副大臣に、この先の見通しですね、つまりは、日本として試掘をする意思というものを持つべきかどうか、それはどのように考えておられるのか、その点、副大臣として、政治家としてお答えをいただきたいと思います。

小此木副大臣 最後にお答えをいたしますが、先日もこの件で御質問をいただきました。

 日本といたしましては、これまで、現時点において具体的な計画はないということでありますが、現在さまざまな方策については検討中であるということも事実でありまして、今お尋ねの件が排除されるものではないと私自身は考えております。

前原委員 終わります。

小林委員長 次に、中野譲君。

中野(譲)委員 民主党の中野譲でございます。

 大変勉強になる委員会質疑の後で、私は主にミサイル防衛についてを中心にお聞きをしたいと思います。

 きょうは四十五分時間をいただいているわけですが、私、いつも質問の仕方が非常に悪くて、なかなか時間がしり切れトンボになってしまうものですから、きょうは特に防衛庁長官の御意見を中心にお聞きをしたいと思います。

 非常に失礼な質問になるかもしれないんですが、初歩的な質問で申しわけございませんけれども、ミサイル防衛は何で必要なんでしょうか。

大野国務大臣 ミサイル防衛の必要性でございます。

 これはやはり、周辺諸国の中でそういうミサイルを持っている国もある、そういう実験もやる、いろいろな面があるわけでございます。これは新しい安全保障環境の変化としてとらえております。したがって、今回の防衛大綱の中でも、新しい安全保障の環境として、一方においてミサイル防衛、一方において例えばテロリズム、こういう考え方でやっておるわけでございます。

 今回のミサイル防衛でございますが、これは平成十五年の十二月十九日の閣議で決めているわけでございますけれども、やはり、新しい脅威、こういうものを見越して、きちっと日本の国民の安心、日本の国の安全、これを守っていくために必要である。その方法論としては、専守防衛の考え方に基づいている、つまり、他のものをもって代替できない、本当に国民の安全と安心を守っていかないといけない必要最小限度の装備である、このように理解しております。

    〔委員長退席、高木(毅)委員長代理着席〕

中野(譲)委員 今、日本の国民の安心と安全を守るということでございますが、日本の国民というと、これは一億二千六百万人全員のお話をされているんでしょうか。国土防衛ということは、どこからどこまでをミサイル防衛で守ろうとしているのか、その地域を教えていただきたいと思います。

大野国務大臣 これは世論調査によりますと、某紙の世論調査でございますけれども、ミサイル防衛についてイエスというお答えが六七%ということでございます。やはり政治の要諦というのは、国民の安心、国の安全を守る、これが最も基本的な問題であるというふうに考えております。

 それから、守備範囲はどこかというお尋ねでございますけれども、守備範囲はいわば日本の領域ということになるわけでございます。

中野(譲)委員 世論調査がどうのこうのというのは、私はどうでもいい話だと思っているんですよ。

 防衛庁として、一億二千六百万人の生命と財産、安全を守るためにミサイル防衛という構想を立ち上げているのかどうかという質問でございまして、そして今、国土をどこからどこまで守るかというときに、そうしたら、北海道から沖縄というのか宮古島というのか、いわゆる日本の領域全部をミサイル防衛で守っていくということでよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 第一に、今回導入をしようというミサイル防衛は二重の構えになっているわけであります。

 一段階目は、御存じのとおり、イージスによる態勢であります。これは、イージス艦から見て半径数百キロメートルを対象にするし、高さでいうと百キロメートル以上ということであります。先生御存じのとおり、ミサイルがブースト段階を終わって、大気圏、ミッドコースに入ったとき初めて日本にやってくるのかどうか判断できるわけですから、その段階で日本の領域に入ってくるとなれば撃ち落とす。この範囲で考えますと、大体イージスが二隻から三隻あれば日本領域はカバーできるということになるわけでございます。

 それから、第二段階目の構えは、今度はペトリオットPAC3という地上からの迎撃になるわけでございますが、この半径がやはり数十キロということになるわけでございます。この方は、教育部隊も入れまして四高射群、あるいは三高射群と言っていいかもしれませんけれども、十六個隊がございます。このカバーする範囲というのは、これは日本全体をカバーするわけにはいきません。

 もう一度繰り返します。二段階目の構え、一段はイージス、そして二段階目が、イージスで仮にもし万が一撃ち落とした場合にペトリオットPAC3で迎撃するということでございます。そのカバーできる範囲というのは、今申し上げましたように数十キロでありますから、これは日本全体をカバーできるという数は考えておりません。

 しかしながら、そういうペトリオットPAC3というのは、やはり政治とか経済が密集している地域を中心にして構えていかなければならないということが第一。それから第二には、何らかの兆候があれば、これは移動、展開ができますから、そういうことで対応できると思っております。

中野(譲)委員 大変びっくりする答えをいただいているんですが。

 もう一度聞きますけれども、今、日本全土を守るには大体イージス艦で二隻から三隻というふうにおっしゃっていましたが、北海道から沖縄までカバーするにはこれは二隻で足りますか。

大野国務大臣 三隻ということになろうかと思います。

中野(譲)委員 今回のこのBMDシステムで四隻の現存するイージス艦をミサイル対応仕様にするということですが、一つちょっと素朴な疑問なんですけれども、これは例えば定期検査というんですか、毎年やりますよね。それというのは大体何カ月ぐらいかかるのか。あと、何年かに一度に随分長い期間ドックに入らないといけない、それはどのくらいの期間入らないといけないのか。この二点、ちょっと教えてください。

大野国務大臣 まず、イージスは将来六隻ということも念頭に置いておりますけれども、当面は四隻でございます。

 四隻が常に稼働しているというわけにはいきません。必ず、今先生おっしゃったようなドック入りという問題があります。したがいまして、四隻が稼働しているという状況は考えにくい。ドック入りしているのが恐らく八カ月から九カ月ということでございます。したがいまして、常時稼働しているというのは二隻か三隻、こういうようなことになろうかと思います。

 しかしながら、具体的な方法につきましては、先生御存じのとおり、兆候があるときはきちっと守っていく、兆候がない場合には期間を決めてやっていく、こういうような構えでございます。もちろん二十四時間、三百六十五日が理想でありますけれども、そこまではどうかなと。これからその辺を検討していく予定でございます。

中野(譲)委員 ますますびっくりをしてしまいます。

 四隻のうち、大体一年間で二カ月ぐらいはドックに入って調整をしますよね。三年に一度ぐらいは八カ月か九カ月入るということは、四隻仮にBMD仕様にしても、実際には三隻が海の上にいるという状況だと思うんですが、イージス艦が現存としては今四隻のうち、三隻が海の上に出ている。

 この三隻、例えば全部日本海に配置をしているわけではないですよね。長官、これは数からいってどうなんですか。先ほど、イージス艦を三隻配備すれば北海道から沖縄まで全部とりあえず守ることができるんだということをおっしゃっていますけれども、現実として、三隻のうち三隻全部を日本海に配置するということは不可能じゃないですか。その辺、どうですか。

大野国務大臣 いろいろな問題がありますので、すべて張りつけることができるかどうか、これは先生ただいま御疑問のとおりだと思います。四隻フル稼働というのは、これは無理であろう。ドック入りという問題があります。それから、もう一つの要素は、やはりほかの要務ができる可能性があります。

 そういうことで、では一体どういうふうに配置するか。これは運用上の問題でございますので、当面答弁は差し控えさせていただきたいと思います。

中野(譲)委員 先ほどの前原委員の助言がよかったのか、答弁は差し控えさせていただくということで、当面ですかね。

 先ほどの話からいきますと、まず、ちょっと一つぜひとも押さえていただきたいことは、三隻を日本海に配置するという、これはもう物理的に不可能なわけですよ。三隻配置しないと北海道から沖縄まで守れないということは、これが一隻になるのか二隻になるのかわかりませんけれども、まずは、先ほど防衛庁長官がおっしゃったように、イージス艦できちっと守るんだ、抜け落ちたところはPAC3で守るんだというときの、まずその第一の前提のイージス艦できちっと守るということが、果たしてこの計画でできるのかどうかというのが大きな疑問だと私は思っております。

 ちょっと議論を先に進めたいと思うんですが、先ほどの高射隊の話ですよね。十六高射隊で、よくファイアユニットという話をしているわけですが、一つの高射隊の組織としてはランチャーがたしか五つだと思うんですよ。その中で、今この五つがPAC2の仕様になっているものを幾つかはPAC3の仕様に変えていくということでございますが、これは五つのうち幾つをPAC3の仕様に変えていくんでしょうか、各ファイアユニットの中で。

大野国務大臣 五つのランチャーのうち、PAC3に使用できるのは二個でございます。

中野(譲)委員 そうしますと、この五年間の整備計画でいくと、十六ファイアユニットということですから、合計で大体三十二ということになると思うんですよ、ランチャーとしてPAC3仕様になるのは。

 一つのランチャーで守れる守備範囲というのが大体数十キロというお話でございますが、仮に、イージス艦で落とせればいいんだけれども、落とし損ねた。例えば東京目がけて飛んできたというときに、どこまでを東京と呼ぶのか、どこまでを首都圏と呼ぶのかは別として、大体ファイアユニットは幾つぐらい必要ですか、東京、首都圏を守るには。

大野国務大臣 東京を守るために幾つのファイアユニット、個隊が必要か、こういう御質問でございます。

 これは、一概に言うことができませんので、明らかにするわけにはいかない、明快な答えをできかねる問題でありますけれども、申し上げましたとおり、半径数十キロにわたって守備範囲がなっている、ペトリオットPAC3というのは二段階目の防御である、この点を十分御認識いただきたいと思います。

中野(譲)委員 二段階目の防御であるということですが、一段階目の防御がまず危ないということを先ほど私はお話をさせていただいております。

 この二段階目で、いわゆる役所の言葉で言うとそれは防衛上の何たらかんたらということで、お答えいただけないんだと思いますが、首都圏というときに、これが神奈川のどのあたりとか千葉のどのあたりとか埼玉のどのあたりまでというのは別として、恐らく、四から五のファイアユニットは置かないと最低限の防衛は首都圏はできないんだと思います。十六ファイアユニットということでございますが、守る地域というのはどういうふうに考えるんですか。この十六をうまく配備するわけですよね。

 一つちょっと基本的な質問で大変申しわけないんですが、今、防衛庁では高射隊を編成する高射群というのが全部で六つ、北は北海道から南は沖縄まで配備をされておりますが、このうちの四つをこのBMDシステムの方に移行させていくという中で、例えば、高射群を分けても構わないんでしょうかね。四つ高射隊が入っていますよね。例えば、二つを沖縄に置いて二つを九州に置いてオペレーションするということはできるんでしょうか。

大野国務大臣 御指摘のとおり、四高射群でございます。その四高射群の配備につきまして今現在考えておりますことは、第一高射群、入間にまず配備するということであります。それが十六年度予算であります。それから、十七年度予算につきましては、これは教育という目的でもって浜松に配備する。高射教導隊あるいは第二術科学校ということで浜松に配備する。それから、残り二個につきましては、これから十分検討の上、配備先を決めていきたいと思っております。

中野(譲)委員 そうしますと、まず十六年度に配備をされる入間ですが、恐らくこれは、そのロケーションからして首都圏を守るために使われるんだろうと思いますが、入間から首都圏のいわゆるきちっとした防空圏を形成するまでにどのくらいかかるんですか。入間に初動で配備をしないといけないというような命令が下ってから、実際にミサイルが落ちてくる、それを撃ち落とす準備が整うまでというのはどのくらいの時間がかかりますか。

大野国務大臣 その点でございますが、現在、ある程度の時間ということで明快に答えは出ておりませんけれども、配置した以上は早く発動できるようにしなければいけないと思っています。

中野(譲)委員 ある程度の時間というんですけれども、私、ある程度の時間というのがよくわからないんですよね。時間というのは、それはスパニッシュタイムもあればジャパンタイムもあれば、しばらくというのもどのくらいなのかよくわからない。これは、一日、二日という、何日という感覚なのか、何時間、それとも数時間の前半という感覚なのか、どのくらいの感覚なんですか。大体で結構なんですよ、ちょっとイメージがわからないものですから。

大野国務大臣 少し数字の入った問題ですから、私はできる限り説明責任を果たしたいと思っています。ですから、事前に質問をちょうだいできればきちっとお答えできると思うんですけれども、事前に質問がないものですから、もたもたして申しわけありません。しかしながら、本当に、何日単位という感覚でとらえていただいて結構だと思います。

中野(譲)委員 実数を私聞いているわけではなくて、大体なんですよ。これは防衛庁長官が提案をされている法案でございますから、普通であれば、大体どのくらいかかるのかねぐらいの話は当然あると思うんですよね。

 では、北朝鮮からミサイルが飛んでくるかもしれない、そうしたら、入間から駆けつけて所定の位置に配置をして、それでいざ落ちてきても対応ができるというところまでは大体どのくらいかかるんだねという話は、そうすると防衛庁の中ではそういう話もないということなんですか。

大野国務大臣 これは部署部署によってきちっと議論し、計画されておることでございます。

 もちろん、イージス艦のミサイルであれば、指定して、それは数時間で出ていけると思います。これはもうはっきりしております。それから、ペトリオットについても、入間に置いていて、ここが危ないということで、すぐ移動しろ、すぐ出動できます。しかし、それがどのぐらいかかるかは場所によって変わってくるだろうし、そういう意味でちょっとあいまいな答えをして申しわけありませんけれども、それは早ければ数時間で移動することだってできるだろうし、場合によっては、日にち単位で、一日、二日ということもあるかもしれない、そういう意味で申し上げているわけであります。

中野(譲)委員 先ほど私、例えば首都圏、例えばこの国会周辺とか、そういうことをちょっとイメージしていただきたいんですが、そうすると、入間で、どうやら東京の方をねらっているらしいというような情報が入った、そうしたら数時間でこちらの方に移動してくるということですよね。

 そのときに、配備する先は当然確保されているわけですよね。民間のところを借りるとかなんとかというのではなくて、それなりにすぐに配備をされて、どなたからもいわゆる摩擦が起きないようなところがきちっと当然想定をされるということでよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 一つの問題は、民有地を借り上げなければ有効な迎撃態勢ができないんじゃないかという報道がある、これは私も存じておりますけれども、実際にどういうふうな配備をやっていくか、具体的な展開地については現在検討しているところであります。

 PAC3は、まずは自衛隊の施設、これが第一候補に挙がってこようかと思います。それから、まず自衛隊の施設ということでも、ペトリオットPAC3の能力は十分発揮できるものと考えております。

 では次に、自衛隊以外の施設はどうなんだ、こういうことでありますけれども、国や地方公共団体の所有地へ展開すること、これも念頭にしっかりあるわけであります。

 現在、民有地への展開は想定いたしておりませんけれども、万々々が一展開する必要が生じた場合、このような場合には所有者との契約ということになりますが、現在は民有地については考えておりません。

中野(譲)委員 空から降ってくるミサイルを撃つというときに、いわゆるベストのロケーションというのがあると思うんですね、そのランチャーを配備する。

 民有地がもしかしたら必要となるかもしれないというときに、民有地の借り上げというときに、機密情報的には大丈夫なんですか、その辺は。ここを借りますよというときに、あらかじめ話をしておかないとだめですわね、こういう場合にはこの場所を借りますよというふうに民間の方と。契約も、そのときはこういうふうな契約になりますよみたいな話をあらかじめしておかないといけないと思うんですが、そうすると、何か有事のときにはあそこにランチャーが置かれるという、これは機密情報的には大丈夫ですか。

大野国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、現段階では民有地は考えておりません。もし民有地がどうしても必要な場合が将来出てくれば、そういう意味では機密情報は絶対流れないようにしておく必要があります。

 そういう意味で、現在はそういう民有地の問題は考えておりませんが、情報については重々厳格にやってまいりたいと思っております。

中野(譲)委員 その辺は、このミサイル防衛システムが配備をされることが決定をしたら、ぜひとも御検討をきっちりとしていただきたいと思います。

 イージス艦から出るミサイルは、防衛庁の説明によると、七回中六回成功している、迎撃をすることが。これは防衛庁長官は御存じだと思いますけれども、PAC3の方なんですが、これは特にミサイル、PAC3から撃って当たるか当たらないかとか、こういうのをやっていないと思うんですけれども、その辺はそういう認識でよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 PAC3の精度とでも申しましょうか、この問題は、過去の実験によりますと、十二回の試験のうち十回成功いたしております。

 イラク戦争にも実戦で使用されておりまして、イラク戦争でのPAC3、これはPAC2もありましたけれども、イラク戦争ではPAC3とPAC2のいわば能力向上型が用いられておりますけれども、このシステムで九発の弾道ミサイルのうち八発迎撃に成功しておる由でございます。残りの一発も、未確認でありますが、恐らく迎撃に成功したというのがアメリカの国防省の発表、公表でございます。

 そういう意味で、イージスそれからペトリオットPAC3、あわせてかなり信頼性が強いシステムでございまして、一昨年十二月の閣議決定の際の官房長官談話で述べておりますとおり、技術的に実現可能性が極めて高いと判断した上で導入を決定した、こういう経緯がございます。

中野(譲)委員 イラク戦争でPAC3がそれだけの命中度で実証をしているという、これは間違いないということでよろしいですね。

 ミサイルが落ちてきてPAC3で当てるというときに、PAC3は大体射程距離が二十から三十キロぐらいの高さのところで撃つということなんですが、当たり方はいろいろありますけれども、PAC3も破壊をされ、当然向こうのミサイルも当たれば破壊をされるということなんでしょうが、これは二次災害というのはどういうふうに考えていらっしゃいますか。その破片が落ちるわけですよね。

大野国務大臣 これは我々として大変考えておかなきゃいけない問題だと思います。イージスの迎撃の場合は、大気圏外でございますから二次災害ということは考える必要はありません。しかし、今中野先生御指摘のように、いわば十数キロの高さで迎撃する、そして、当たった破片が、当たってそのミサイルの破片がどういうふうになるんだろうか、これは十分考えておかなければいけない問題だと思っております。

 落下する範囲の問題が一つ、それから破片の大きさの問題、それから、そのときの気象状況というものにも左右されるのではないか。いろいろな状況に影響されるために、一概にこうこうだと言うわけにもいきませんけれども、我々は十分その点は注意しておかなければいけないと思っております。

 PAC3ミサイルというのは弾頭は起爆しない、これは御存じのとおりだと思います。ただし、弾道ミサイルの特性として、弾頭に例えば生物兵器とかあるいはその他化学兵器が積まれていたらどうなるんだろうか、このことも考えておかなきゃいけない問題でありますけれども、ここはもう熱で壊滅するということでございます。それから、弾頭というのはほとんど爆発しないで落ちてくる、その場合の例えば放射線の問題はどう考えるか、いろいろな厳しい問題があろうと思います。

 したがいまして、この点はこれからも、まず私は、やはりそういう問題が起こったらいち早くマスコミ、テレビ等を通じて国民の皆様に、ただいまこういうことが起こりましたというようなことはきちっとやっていかなきゃいけないな、そういう議論をこれから、例えば国民保護法制の基本的な問題として考えていく必要があるのかなと。

 だから、先生おっしゃるとおり、危険が全くないわけではない。しかし、ある程度、今申し上げましたように、生物化学兵器の問題、それから弾頭は破裂しないというような問題がありますけれども、危険はある、このことは認識して対応策を考えてまいります。

    〔高木(毅)委員長代理退席、委員長着席〕

中野(譲)委員 今まではちょっと細かい議論をあえてさせていただいたんですね。結局、検討をしないといけないことが余りにもたくさんあるというところの認識は、防衛庁長官も共有をしていただけますか。

大野国務大臣 今申し上げましたような本当に国民の安心と安全を守る、こういう観点から、仮に、万々が一です、万々が一、二重になっているこのミサイル防衛システムでも、もし仮に、万々が一撃ち落とした場合どうなるんだ、どうしたらいいんだろうか、こういう問題はやはり検討しておかなきゃいけない。万が一起こることに対してきちっと考える、私はそういう必要があると思います。

 そういうことをもし何かおかしなことを言っているとお思いになるならば、私は、先ほどから申し上げているとおり、成功率は極めて高い、このことを言っているわけであります。高い反面、万々が一を考えるのが我々の役割であります。真剣に対応していかなきゃいけない。

 それからもう一つは、低空でペトリオットPAC3で迎撃した場合に残る問題が若干あるな、こういう問題をきちっと意識して対応しております。

中野(譲)委員 万々々が一のことを考えて、台湾有事のこともしっかりと防衛を考えていただきたいと思うわけでございます。

 ちょっとこの法律論のところで、午前中、赤城委員でしたか、若干重なるような質問をされていたわけですが、長官、まずは今現存するシステムの性能云々ということじゃなくて、法律上の解釈の問題でちょっととらえていただきたいんですが、例えば、今想定してというのでよく北朝鮮という話が出ていますが、北朝鮮で、飛んでくるミサイルが日本をねらうのか、そのほかの国をねらうのかで、ブースト段階の角度とスピード等が全然違うから見分けることができるというお話をされております。

 ということは、当然のことながら、その段階で見分けた中で、我が国を目がけてくるものは当然撃ち落とす準備はするけれども、ほかの国に行くものには触れないということでよろしいんですよね。

大野国務大臣 この問題は、いわば国民の安心、国の安全を守る、飛んできたものをほうっておきますと、我が国の領域に落ちてきてそれは甚大な被害を及ぼすわけですから、これはきちっと迎撃して撃ち落とす、被害がないようにする。そして、そこにシビリアンコントロールという思想をかっちりと、きっちりと入れていく。これはもう先生御理解のとおりであります。

 しかしながら、あと、これは公共の秩序の維持、強いて言えば警察権の発動だ、こういうことを申し上げました。そして、それが後に防衛出動とつながる可能性が極めて高いミサイル飛来であることも先生御存じのとおり、御理解いただけるとおりであると思います。しかしながら、防衛出動につながる、こういう意味で、やはり海上警備行動のように国会の承認要らないよというわけにはいきません。したがって、防衛出動につながるという意味で国会の承認もきちっととりましょう、こういう法制度になっているわけでございます。

 そこで、朝、法制局からも説明がありましたけれども、問題は、要するに例えば日本を越えてどこかの国へ行くようなミサイルを撃ち落とすのはどうか。これは日本の中の、領域の中の公共の秩序の維持であります。また、集団的自衛権の議論を呼び起こしてしまいます。そういう意味で、我々の考えているBMDというのは、これはもう我が国に飛来するミサイルを迎撃する、この一点に絞り込んでいるわけであります。

中野(譲)委員 この八十二条の二の一と八十二条の二の五、まずはこのミサイルを撃ちますよというのが一だと思います。それを撃った後に説明をするのが五だと思うんですが、説明のときにはそうしたら、このミサイルはどういうミサイルでどういう飛び方をして、だからこれは日本を目がけて撃ってきたものだ、だから私たちは警察権を発動してミサイルを迎撃しましたという説明は、そこまできちっと、これは防衛庁の方からも当然、政府というか、していただけるという理解でよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 まず、おわびを申し上げますけれども、私先ほど、国会の承認と申し上げたと思います。これは大変間違いでございまして、今の法体系は報告でございます。謹んで訂正をさせていただきたいと思います。

 それから、国会報告のとき、どういうところまで報告するのだというお尋ねでございます。これからきちっと検討してまいりますし、それは私は、今先生がおっしゃった、どこからどういうふうに飛んできた、飛行経路ぐらいはこれは当然報告すべき課題ではないか、このように思っております。

中野(譲)委員 承認と報告は似て非なるものでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

 八十二条の二の三なんですが、今度は、「いとまがなく我が国に向けて」ということですが、これは本当に間髪入れず、時間がないということでございます。先ほどの私のイージス艦の問題に戻るんですが、常に三隻のイージス艦が日本海にあるわけではありませんよね。このいとまがないときには、もしかしたら一隻もないのかもしれない、一隻なのかもしれない、運よく三隻あるのかもしれませんが、長官のおっしゃる第一の防衛ということでいいますと、きちっと日本全土を守るようなイージス艦の防空システム、これはいとまがないときには、ない場合はどうするんですか。ほとんどの場合、僕はこれはないと思うんですけれども、三隻あるということはまずありませんから。その辺、どういうふうにお考えでしょうか。

大野国務大臣 法体系で申し上げますと、何らかの兆候がある場合、これはきちっと守っていくということになっておるわけでございます。そのほか、事態が急変して襲撃の蓋然性が極めて高くなった、こういう場合には、あらかじめマニュアルを内閣総理大臣から得て、そのマニュアルで対処する、防衛庁長官が責任を持ってやる、こういうことで対処するわけであります。

 先生お尋ねの問題点は、恐らく、二十四時間、三百六十五日やれるのかというお尋ねにつながるのかと思いますけれども、その体制は、これは極めて厳しい体制になると思います。したがって、やはり兆候がある、この兆候をきちっと把握しておかなきゃいけない、ここから出発して、そういう問題が起こらないように万全を期してまいりたいと思います。

中野(譲)委員 先ほどの話と同じなんですが、万々々が一ですか、それはすべてこちらが情報をきちっとキャッチして、それに対応した防衛システムをきちっと配備するというのであれば、これは問題ないわけですよね。

 ただ、この三の場合で、事態が急変し、どういう事態がどう急変するのかわかりませんが、先ほどのPAC3の問題もそうですけれども、急変して、入間からここまで最低数時間はかかりますよね。イージス艦にしたって、沖合にあれば、それこそ一日かかるのか数時間の前半で終わるのかどうかわかりませんが、対応できないというところはどのように考えていらっしゃるかということをちょっとお尋ねしたい。

 これは、最初に私が質問をしました、このミサイル防衛というのは一体何なんですかというときに、国民の安心と安全を守るためのシステムだとおっしゃっているんですが、そうであれば、三隻きちっとあそこに置かないと、まず第一の防衛網というのはつくれないじゃないか。ただ、これは現実的には無理だということは防衛庁長官もよく御存じのことだと思います。

 そのときに、あいているところがたくさんあるわけですよね。ライトで守っている者がレフトを守ってくれと言っても、これは守れないわけですよね。その辺のところをどのように考えていらっしゃるかということを、簡潔にちょっと教えていただきたいと思います。

大野国務大臣 簡潔にお答えいたします。

 だからこそ、情報の共有、これが大変大事な問題になってくる。つまり、アメリカとの情報の交換、これが大変重要な問題になってくると思っています。

中野(譲)委員 堂々めぐりになると思いますのでやめたいと思いますが、できないときにどうするかというのが、先ほど我が党の、民主党の前原委員も申していましたけれども、できないときにどうするかというところが防衛の一番大切なところだと私は考えております。

 大野防衛庁長官は選挙区が香川三区でございますよね。

 原子力発電所というのは日本に十五、六カ所ぐらいありますよね。政令指定都市というのは今大体十四カ所ぐらいだと思います。あとは別途、自衛隊の駐屯地もあれば米軍基地もある。これは、十六ファイアユニットで、ある程度の地域をカバーするには大体四つか五つのファイアユニットが必要だとしますと、日本全土で恐らく四、五カ所ぐらいしか守れないのかなという気がしております。

 そういうときに、香川三区は果たして守っていただけるのかどうか。これは、地元の有権者の方がそういうことを聞かれたときに、おらが村は大丈夫かという質問をされたときに、どういうふうにお答えになるんですか。

大野国務大臣 まず、全体の防衛構想、繰り返して恐縮です。まず、兆候があればきちっと構えます。ですから、情報をいかに収集するか、その情報をアメリカと交換しながら、しっかり情報をとって構えていく、これが一番であります。その場合は、全域カバーされるということになるわけでございます。

 そのほかは、私は、やはり重要なことは、政治や経済やそういうものが蓄積されている、そういう地区というのをやはり我々念頭に置いておかなきゃいけない、こういう問題でございます。

 私は香川三区でございますが、一般論として、そういうふうにお答えさせていただきます。

中野(譲)委員 私は、香川の状況はよくわからないので何とも言えませんが、政治や経済が成熟している地域というのは、多分、東京はそうなんだと思うんですね。大阪もそうだと思うんですよ。香川がどうかというのは、私はこれはわかりません。あと、町村外相は北海道でいらっしゃいますが、北海道がどういう状況なのかわかりません。逢沢副大臣はたしか岡山でいらっしゃいましたよね。岡山がどういう状況かはわかりませんが、現状として、日本全土は守れない、守ろうとしたらとんでもない数のPAC3が必要ですね、とんでもない数の予算が必要ですねということは、これは皆さんわかっている中で知恵を絞らないといけない。

 そのときに、イージス艦をまずは第一段階として、なるべく日本全体を守っていくというようなことであれば、もうちょっとスピード感を上げて考えるとか、より現実性のあるような防衛システムというのを考えていただきたいというふうな気がしております。

 第二次大戦のときは、知っていたか知らないのかわかりませんが、広島と長崎に原爆が落ちているわけですよね。それによって日本は降伏をしているわけでございます。あのときに広島と長崎というのがどのくらいの重要性を持った地域だったかというのは私はよくは存じませんが、選択をするのは相手方でございまして、相手がどこを攻撃するかということは、わかる場合もあればわからない場合もあって、わからない場合に、私たちはどこまで予防するのかというのが防衛だと思っておりますので、その辺をぜひとも今後検討していただきたいと思います。

 あと若干時間がありますので、済みません、町村大臣、大変時間が押してしまいまして失礼申し上げました。

 日米安保のことでちょっとお尋ねをしたいんですが、先ほどずっと前原委員との議論の中で、事前協議等ありましたが、移動という概念がよく出てくるんですね。私、この移動という概念がいまだにちょっとよくわからないわけです。この移動という概念は、これは日米安保上はどのように定義をされるんでしょうか。

町村国務大臣 日米安全保障条約の中には、移動という文言はなかったと私は思います。

中野(譲)委員 そうしますと、移動という概念は、日米安保の何かよく枠内とか枠外という論議を以前からずっと私の先輩方はやっていらっしゃいますが、これは日米安保の枠外という考え方でよろしいのでしょうか。

町村国務大臣 要するに、日本と極東の平和と安全に寄与しているのが在日米軍である、その部隊のある部隊が、艦船等が日本の領域を去った後どこに移動するのかということについては、これは日米安保条約が関与するところではない。そういう意味で、まあ枠外という表現がいいかどうかわかりませんが、日米安保条約が関与しない話になってくる、こういうことであります。

中野(譲)委員 基地にヘリコプターがとまっているときには、このオペレーションは日米安保に使うかもしれないし、移動して米軍のほかのオペレーションに使うかもしれないから、例えば思いやり予算等も含めて払っているのは当然だというような論議は私もわかるんです。

 例えば、イラクにヘリコプターが飛び立つ、米軍のオペレーションの中でイラクにヘリコプターが飛び立つというようなそういうタスクが与えられたときに、飛び立ちますよね、飛び立って、例えばすぐに墜落をした場合には、これはどういうふうな扱いになるんでしょうか。

町村国務大臣 どういう扱いという、ちょっと御質問の意味がよくわからないんですけれども、地位協定が適用されるか、例えばそういう観点のお尋ねであるならば、日本国の領域にある限りにおいては、当該米軍ヘリであれ何であれ日米協定が適用されますが、領域から出ていった後、これは地位協定というものは適用されないということになります。

中野(譲)委員 移動の場合は、日米安保の枠内か枠外かという話をすれば、枠外であるというような話をずっと政府答弁でもいただいているわけでございますが、地位協定自体は、日米安保条約の、要は米軍の日本で活動する上での文言を定めている条約でございますから、日米安保の中の話だと思うんですよ。

 移動する先で日米安保とは関係ないオペレーションをするときに、幾らそれが日本の領域内だからといって、日米安保の枠外で行うことがどうして地位協定の扱いになるのかというのは、それはどういうふうにどこに書いてあるのか、ちょっと教えていただきたいと思います。

町村国務大臣 先ほど申し上げましたように、その部隊、船であれ飛行機であれヘリであれ、それが日本国の領域内にあれば適用を受ける、それは日米地位協定にそういうことが書いてあります。その領域を出てしまえば地位協定の対象外ということでありまして、例えば、どこかへ飛んでいって、アフガンでもどこでも、そこにある飛行機が日米地位協定の適用がないというのは、これは自明のことであろうと私は思います。

中野(譲)委員 時間が来ましたので次回にしたいと思いますが、私の質問の趣旨は、移動は日米安保とは関係がないということだと思います。地位協定は日米安保の中の話だと思っておりますので、地位協定に書かれている日本の領域の中の米軍云々ということは日米安保の基盤の中での話だと思っておりまして、それが移動するという日米安保外の話に適用されるのかどうかというのが私もよくわからないものですから、これはまた引き続いて次回にでも質問をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小林委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。

 きょうもまた質問に立たせていただくわけでございますが、まず冒頭、外務大臣に、今非常に急に、さざ波がといいましょうか大きな波が、波高くなってまいりました日韓関係についてお尋ねをしたいと思います。

 御案内のとおり、先ほども、午前中、公明党の佐藤委員からこの問題に触れられましたけれども、我々、これから極東の平和、安定あるいは対北朝鮮ということを考えていきますと、まさにこの韓国との関係というものは緊密にしていかなければいけないわけでございます。その中で、今般、残念なことに、韓国のNSCですか、外交安全保障協議会、あるいは先般の、盧武鉉大統領みずからが、韓国の高まってきた国民のいら立ちを代弁するような形で青瓦台のホームページの中で声明を発表されました。

 申し上げるまでもございませんけれども、竹島の日を島根県議会が制定をしたことに端を発したようでございますが、これはだれもが知っているとおりでございまして、竹島は我が国の領土でございます。我が国の当然の領土でありまして、過去におきまして、我々もこの問題を随分勉強しました。そして、この問題については非常に、かねてより日韓両国のまさにのど元に刺さった問題、私どもとしてみれば正当な主張をしておりますけれども、韓国側がこれを聞きますと、先般の在ソウルの高野大使じゃありませんけれども、我が国の当然の立場を言えば、向こうの国からすると妄言であるというような言い方で切り捨てられるわけでございます。

 公式見解につきましては、これは外務省のホームページにも竹島について書いてありますし、また我々もさまざまな古文書等を読んで、あるいは、サンフランシスコ講和条約の時代の台湾、朝鮮半島に対するすべての主権、権原を放棄するという中に竹島が含まれていないということは、我々もさまざまな公文書等で確認をしているわけでございますが、韓国にしてみますと、またこの問題を引っ張り出してきてあおることによって、非常に国家的な求心力を高めようとしているのかな、そういうふうな思いを持たざるを得ない今回のこの数日の出来事でございます。

 そこで、御質問をするわけでございますけれども、竹島の認識については私の認識のとおりでいいと思いますけれども、そういう認識でいいのかどうか。そこは、外務大臣が何か言うことによって、韓国から日本国外務大臣がまた妄言をと、また油を注ぐようなことをしてはいけませんから、それでいいのかどうかということだけを確認しておきたいというふうに思います。

 この事態をどう打開するかということについて、つまり、冷静に冷静にということは何度もおっしゃっています。もちろん冷静に対応しなきゃいけませんけれども、この盧武鉉大統領の談話を読むと、冷静に国民には呼びかけながらも、大変感情的な言葉が端々に読み取れるわけでございまして、その点を考えますと、この問題について、どう本当にこれを解決するのかということについて、外務大臣、現状どのような御認識を持っていらっしゃるのか、あるいはどう打開するべく行動を起こすのか、その点についてお答えいただけますか。

町村国務大臣 竹島問題に関する日本国政府の立場、これまで累次述べているとおりでございます。日韓の間に、立場に相違がある、考え方に相違がある、これもまた事実であろうかと思います。

 今後どうするんだというお尋ねでございます。つい先日、十七日の先ほど委員お触れになった国家安全保障会議常任委員会声明、そして大統領が発出をされた手紙、これが三日ほど前でございましたか、若干、時間が問題を解決するということもまずあるのかな、こう思っておりまして、今すぐ急いで、一刻を争って何かをするというタイミングでは今ないのかな、こう思っております。

 基本的な日本政府の考え方と申しますものは、先方がその委員会声明を出した三月十七日の日に外務大臣談話という形で発出をしております。その内容については先ほどもう申し上げましたので重複は避けますけれども、いずれにしても、やはり主張しなければならないことは主張しつつ、しかし、韓国のリーダーの皆さん方あるいは国民の方々の気持ちというものも、やはり我々受けとめるべきところはしっかり受けとめながら、今後何らかの対応というものが必要とされることも当然あるんだろうと思いますが、今この段階でこれこれの措置を考えておりますと言うのは、正直言って、やや時期が尚早ではないかな、こう思っております。ただ、いつまでもただほっておくということではないこともあわせて申し上げさせていただきます。

渡辺(周)委員 確かに少し時間を置いた方が、ここで何かを言ったら、韓国側の今のこのちょっとエキサイティングになっている状況をまた長引かせるのかなというふうな気は私もします。ですから、冷静にというのか冷ややかにというのかわかりません。

 これはまた、冷ややかに言うと、それにまた業を煮やしてマスコミがあおって、さまざまな、韓国内ではマスメディア自体が、例えば、在ソウルの日本大使を追放せよとか、日本製品の不買運動をやれとか、そういうことを今あおっているんですね。ちょっとこんなことを言うとまた私のところにも何か言ってくるかもしれませんけれども、メディアとして果たして成熟しているのかなという気すら、私もちょっとだけメディアの世界にいましたので、そんな気がいたします。

 しかし、これ以上言うとまたえらいことになりますので、これは個人的なコメントでございます。これ以上、余り深く外務大臣に何か答えてもらうというつもりはもちろんございません。

 ただ、私どもとして、まず一つやらなければいけないことは、先ほども指摘がありましたけれども、この大統領の談話の中に、日本が自衛隊の海外派兵、再軍備を進める、日露戦争というのは韓半島の侵略戦争であったとか、あるいは、こうした日本の一部国粋主義者の侵略的意図は絶対許せないけれども、国民には冷静に日本とつき合ってくれとか、そういう言葉があるわけですよね。例えば竹島については、日露戦争中に自国の領土に編入したんだとか、こういうことが具体的に書かれているわけでありまして、史実と違った部分もかなりあるんですね。

 ですから、こういう史実と違うことについては、当然違うということを、これは正式な見解として、今回の韓国側の青瓦台、これは公式な談話ですから、当然国際社会はこれを知っているわけでございます。そうしますと、国際社会に対して、やはり日本は、この史実は違うのではないか、この指摘は事実ではないということについては何らかの形で、これは、まさに今回の防衛力整備計画の中にも含まれております国際社会との協力、協調、同盟国との協力及び国際社会との協力ということを安全保障、広義の意味での安全保障から考えれば、こうした、やはり言うべきことははっきり、事実として言うべきことは言うおつもりはないのか、その点についてはいかがですか。

 別に、反論するとかという言葉だとまた過激な言葉になるんでしょうけれども、やはり日本国政府としての、大統領の談話をよく読んだ上で、こことこことここは違うではないかということについてはちゃんとはっきりと、主張すべき部分は主張すべきだと思いますが、その点についてはいかがですか。

町村国務大臣 この十七日の常任委員会声明の中で、これは明らかに我が方の考え方と違うという三点について、私どもは意見を明確にしたところでございまして、一つは日韓間の財産、請求権の問題について、二番目は竹島の問題について、三番目は歴史教科書の問題について、それぞれ日本側の考え方を申し述べたところでございます。

 それから、大統領のホームページに載せられた国民への手紙、この中で、今委員がお触れになりました幾つかの、日露戦争の解釈あるいは竹島問題、さらに教科書問題、あるいは、たしか自衛隊のことについても触れられている部分があったと思います。こうしたことについて、それは私どもの理解、あるいは、実際に自衛隊がやっていることと全く違うといったようなことは、今後、機会を得て、何らかの形で日本政府のきちんとした見解は申し述べるべきであろう、かように思っております。

渡辺(周)委員 それはタイミングもあると思うんですね。ただ、私自身は、ちょっとこれは一体いつまで続くんだろうかと。

 一つ国内事情を考えますと、四月の末に韓国で国会の補欠選挙があるそうなんですが、今大統領を支持している与党が非常に劣勢に立たされている、いや、今回の選挙事情じゃなくて、かつてのような期待がなくなっていて、しりすぼみになっているのではないか。そして、当然、選挙ですから、どちらも反日ということを一つテーマに、争点にすれば、余り違いはなくなるのかなというふうに思います。

 今回のこの声明を出した前後で、大統領の支持率は、聞くところでは、三〇%ぐらいの支持率が四〇%ぐらいに上がったということでございます。そのかいあってといいましょうか、功を奏しているのかなというふうに私自身は思っております。恐らく、こういう動きとうねりというのは、この選挙が終えて、ひょっとしたら、八月の日本で言うところの終戦記念日、韓国で言うところの解放記念日、八月ごろまで続くんじゃないのかなというふうに思います。

 せっかくこれまで外交努力の中で、日本と韓国、近くて遠い隣人だと言われてきた両国が、人的交流、文化的交流、経済的交流、さまざまなことをして、例えばワールドカップサッカーの共催もまさにそうだったと思いますし、今の韓流ブームと呼ばれるものも、やはり一つのお互いの相互理解に大きな影響を与えているということは否定できないことであります。韓国に大勢の日本人観光客が行きまして、ドラマのロケ地なんかは大にぎわいをしている。そしてまた、韓国の俳優さん、タレントさん、女優さんですか、あるいはアーティストが日本のマスメディアの中でも十分に活躍をしてゴールデンタイムに出てくるわけでございます。

 正直言って、遠くて近いと言われた関係が、本当に、文化交流の面から始まって、あるいはスポーツの交流から始まって、非常にいい関係をつくってきたのに、ここへ来て、日韓友情年の見直しであるとか、あるいは自治体同士の交流事業はもう打ち切るんだとか凍結するんだというふうなことになってきた。これはやはり、正直言って、政治が解決をしなければならない問題だと思います。

 そこで、最後にお訴えをしたいのは、じゃ、この問題を解決するときに、やはりこの竹島の問題、決着をつけなきゃいけないんじゃないだろうかと。かつての金大中あるいは今の盧武鉉の両政権が、日韓新時代だ、過去の歴史は繰り返さない、歴史問題を政治問題にしないんだということを言いながら、結局、恐らく国内世論に押される形でそうせざるを得なくなってきた。だとすれば、いつまでたっても、これから将来、新時代を築く上にしても、この問題を白黒つけないことには決着がつかない。

 だとすれば、我が国が、昭和二十九年ですか、この問題でハーグの国際司法裁判所に白黒つけるように提訴しようということをしたときに、韓国側は、この問題については領土問題は存在しないんだということで同意をしませんでした。私もこの国際司法裁判所の資料を読んだら、要は、当事国の同意がないと訴えることができないということになっておりまして、結果的には、両国がそろって出さなければ出てこられない、結論を出せない、あるいは訴えることができないわけですけれども、この点について、これはやはり、この問題を、二国間の問題ではありますけれども、国際社会の中にはっきりさせるためにも、私はこうした手段をもうとるべき時期に来ているのではないかなというふうに思います。

 ここに、一九六五年の六月二十二日、当時の椎名悦三郎外務大臣、そして韓国は李東元外務部長官が交わしました日韓基本条約の交換公文がございまして、この中には、もう長々読み上げることもありませんけれども、まさに「両国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとし、これにより解決することができなかつた場合は、両国政府が合意する手続に従い、調停によつて解決を図るものとする。」ということをお互いもう交わしているわけですから、まさにこの調停というのは、国際司法裁判所に対して、両国がこの交換公文にのっとって、いよいよもう出すべきときに来ているのではないかなと思いますが、そのお考えはおありか。

 それと、もう一つお尋ねしたいのは、今までこの竹島の問題については、事務方の方でも結構ですけれども、何回、韓国とこの話をしたんですかね。あるいは、何らかの形で抗議、口上書を送ったかということを今ここでお答えできますか。後半は事務方で結構でございます。

町村国務大臣 今委員から、国際司法裁判所の問題をお触れいただきました。

 日本は、一九五四年九月二十五日付の口上書をもって、竹島問題について国際司法裁判所に提訴をするということを韓国側に提案いたしましたが、韓国側はこれを拒否したという事実がございます。もう一度、日本側、小坂外務大臣であったと思いますが、一九六二年三月の日韓外相会談で、このICJ提訴ということを韓国外務部長官にもう一度提議をしたと。いずれの場合も先方が拒否をして、今日に至っているということでございます。

 今委員お触れをいただいたように、これは両方が合意をしないといわば裁判手続に入れないという制約があるわけでございます。

 それならば六五年の交換公文があるではないかという御指摘もいただきました。

 この交換公文の対象に竹島が含まれるかどうか。私どもは当然含まれるという解釈をしておりますが、韓国側は、竹島がこの交換公文の対象には含まれないんだと、いわば玉虫色の解釈でこの交換公文が取り交わされたという、どうも歴史的経緯があったようでございます。

 本来であるならば、日韓国交正常化の折に、この問題について相当な激しい議論を長い期間やった結果のものでございます。諸先輩の努力の成果に私があれこれ申し上げるのは不適切かもしれませんが、それは今にして思えば、願わくばその時点でもう少しすっきりとした形がとれればと言いたくもなりますが、しかし、それは国交正常化という大きな命題を達成するために、そこは多分玉虫色にしておいて初めてあの国交正常化交渉が成り立ったという事実があったんであろう、こう思います。

 そのようなことで、残念ながら、この国際司法裁判所プロセスというものは今のところワークをする気配がございませんが、いずれにしても、彼らが国際司法裁判所の提訴に応ずるということであるならば、これはもうその時点で二国間で話し合いがいわば始まるということだって可能なんでしょう、こう私は思うわけであります。

 いずれにしても、私自身も、潘基文さんと最初にお目にかかったのはベトナムのASEMの会合の終わった後、二国間をやったときに、この問題がありますということは私自身も先方外交通商部長官には申し上げたところでございます。

 今まで累次やってきていると思いますが、正式な両国間政府のいわば口上書ベースのやりとりの詳細については、事務方からお答えさせていただきます。

西宮政府参考人 お答え申し上げます。

 竹島問題に関します口上書、日本側から出した数でございますけれども、二〇〇四年一月十六日、これは竹島切手発行に関する抗議でございます。それから、それの反論に対します、韓国側抗議への再反論というのが一月二十九日。これが七十八回目、七十九回目でございます。一番最初は一九五二年一月二十八日でございます。この中に、先ほど来ございます国際司法裁判所への提訴いかんというやりとりが幾つかございます。

渡辺(周)委員 では、大臣、お答えいただきたいのは、今後、国際司法裁判所で決着をつけるというお考えはおありですか。そこだけお聞かせいただけますか。

町村国務大臣 今後いろいろな方法を考えなきゃなりませんし、その際の一つの方法ではあろうかと思っております。引き続き検討させていただきたいと思います。

渡辺(周)委員 ぜひ、竹島の問題につきましては、極東の平和、安定という中においても、大きな安全保障戦略の上においても、韓国と日本の関係というのは非常に大事なわけですから。

 でありまして、怖いのは、それを北朝鮮が、一つ申し上げれば、朝鮮中央放送が直ちに賛意を示したような形で、これは日本再軍備による朝鮮半島の再侵略だなんという、わけのわからない北朝鮮独特のアジテーションを放送しました。つまり、北朝鮮と韓国共通の敵は日本なんだということを彼らはやることによって、北朝鮮は韓国を抱き込む。そして、拉致の問題、核の問題、つまり日本という国を韓国から切り離すということを彼らは今回乗じてやるんであろうなということで、一つまたこれは安全保障上の戦略においても大きな影響を与える問題でございますので、引き続きこれは御努力をいただきたい、また我々もさまざまな形でかかわってまいりたいなと思います。竹島の問題についてはこれで終わりにします。

 続いて防衛庁長官にお尋ねをしますけれども、先ほど前原委員の質問の中にもお答えがございました中台問題でございます。これは先ほど同じような質問が幾つかありますので、一つ御質問をします。

 中国はこの中台問題を、内政問題であって第三国の干渉は許さない、これは内政干渉になるんだというふうに言っているわけでございますね。ただしかし、台湾海峡に有事があった場合、それは平和的努力をするといいますけれども、実際、私は聞きたかったのは、皆さんもそうですけれども、あった場合にはどうするのか。

 もしそれはあった場合、尖閣諸島が彼らの言うところによると、尖閣諸島は自分たちの領土なんだと言えば、これはだから日本の主権とは関係ない話だと、もし万が一、事になると。しかし、当然のことながら尖閣諸島は我が国の主権の及ぶ領土でありますから、ここでもし万が一軍事的なコンフリクト、対立があった場合には、当然これは日本は自衛のための措置をとるわけですね。そこを一つ確認しておきます。

 つまり、周辺であった場合、尖閣であった場合には、日本は当然個別的自衛権に基づいて我が国防衛のための措置をとるということでよろしいですね。

大野国務大臣 尖閣でそういう我が国を侵害するような行為があれば、当然のことながら自衛権の発動ということになります。

渡辺(周)委員 もう先ほども答弁されて、私ども同僚委員から大変すばらしい答弁のヒントを与えてしまいましたので、この後中台問題をもうちょっと深く聞こうと思ったんですけれども、お答えできないと言われたら何にもなりませんので。今この問題でお尋ねをしたことが一つエッセンスだと思います。

 つまり、実態的には、これは確かに日本の今までの公式見解からいえば、中国と台湾、二つの中国を認めないんだということがあるわけでございます。しかし、現実問題として、我が国が主張する領土、またここもはっきりとしていないところで、もし万が一、中台の有事になった場合には、当然ここは我が国は我が国の主権に基づいて自衛権の発動をするわけですね。

 ということになったときに、先ほど中台紛争については想定していないのかということについては、していないというふうなお答えでございましたけれども、当然、台湾から日本の最西端の与那国島まで約百キロです。晴れた日には台湾がよく見える。私も行きました。つまり、非常に現実的には、これは日本の、我が国のすぐ横で起こることであるんですね。

 ですから、その点についてはお答えをしても同じような答えになるから結構でございますけれども、この南西諸島の防衛力の強化ということについて、最後、この間、一部報道もされておりましたけれども、宮古島に隣接する伊良部町の下地島、ここを空自防衛警備計画ですか、この中で明記している。そして今度は陸自も検討をしている。私どもも宮古島のレーダーサイトまでこの間行きました、安全保障委員会で。そのときに見たのは、まさにこの南西諸島というものが非常に中国の脅威を言う上においては手薄であるということを考えて、そしてまた当然台中ということを考えれば、中国と台湾の何らかの衝突があることも想定して何らかのプレゼンスをしなきゃいけないわけでありますけれども、この南西諸島、下地島については現状どうなっているのか、そこだけお答えいただけますか。

大野国務大臣 これから、まず、沖縄の第一混成団を旅団化していく、今の中期防衛力整備計画の中でやっていきたいと思っています。今回の新しい防衛大綱でもうたわれておりますけれども、島嶼防衛を重視する観点から、どのようなものをどのように配備していくか、このことについては今からの課題として検討させていただきます。

渡辺(周)委員 ぜひ、この南西諸島の、まさにここに初めて中国という名前を明記して、三月十七日の大野長官の中にも明記してございます。この点について、やはり中国の動向と、そしてそれに対応する態勢、プレゼンスについては当然これから議論が行われるものであろうということを期待したいと思います。

 それでは、前回質問しました、例のスーパーピューマの選定が行われなかったことにつきまして、残った時間で質問をさせていただきたいと思います。

 先般の委員会で質問をいたしました。この中で、航空燃料が現在の陸自のものを使用できるとは書いていないのに、なぜ導入したのか。また、高度については、これはここにあります型式証明の中では非常に心もとないものであったにもかかわらず、機種選定もしないでなぜ慌てて購入しなきゃいけなかったのかという点について、先般、長官は、人員の訓練であるとか格納庫の問題だとか、そういうことで緊急に決めたんだというふうにありましたけれども、この点について改めてちょっとお尋ねをしますと、現実問題として、要員の教育期間なんというのは、実は二十年前に導入した現行のスーパーピューマが、二十年たっているわけですね。ですから、どの機種を購入しても要員の教育期間については条件は一緒じゃないですか。その点について。

 それからもう一つ申し上げますと、この間の型式証明、あの後にとりに来られましたので、私も親切に差し上げました。それを見て、さっきの燃料の問題、高度の問題、この点については結局どうなんですか、私の疑問は解けますか。

飯原政府参考人 要員の訓練の点でございますが、全く新規に養成する場合、現在、スーパーピューマの場合だったら十名在籍しておりますが、全く新しい機種に新規に養成する場合は、養成費用で二億円、期間で四カ月程度が見込まれます。他方、現有機のパイロットが更新という形で追加講習を受ける場合には、費用で〇・五億円、それから養成期間が二カ月ということで、期間、費用ともいずれも大幅な縮減が図られるということでございます。

 燃料等の点については別途。

大井政府参考人 お答えします。

 燃料の件でございますが、EC225の燃料につきましてはJP8というふうになっているわけでありますけれども、日本エアロスペースの情報によりますと既にJP4の使用が可能であるということを確認しております。本年六月までには、欧州航空局、EASAでございますが、そこの正式な承認がなされるというふうに承知しているところでございます。

 それから、離着陸高度の問題でございますが、現在の型式承認上のものといたしましては、離着陸高度が二千フィートということになっているわけでございますが、これは基本的に現在のスーパーピューマよりはるかに性能が上回るものでございますので、近いうちに一万五千フィート程度の離着陸高度の取得は可能であるというふうに聞いております。

渡辺(周)委員 私がこの間伺ったのは、型式証明では実証されていないにもかかわらずなぜこの購入を急いだかということなんですね。つまりそこなんです。今これからどうこう、型式証明に載せるという、そんなのは当たり前のことでございまして、現実問題として、なぜそのときに購入を急がなきゃいけなかったのか、つまり実証されていないもの、しかもVIPが乗るためのものを、実証していないものをなぜ購入したかということなんです。

 先ほど申し上げました、この間、長官の答弁では、要員の訓練期間のことだとか、あるいは格納庫だとかというふうに言われますけれども、これは別に私はどこの代理店の言うことを言っているわけじゃないですよ。例えば、EH101、これは今度海上自衛隊が購入するわけですよね。EH101を海上自衛隊が購入するのであれば、例えばです、別にしろとは言いません、あるいは別に海上自衛隊はEH101でなくてもよかった。

 つまり、ここでは効率的な取得をうたい、そしてまたここにあるように統合運用体制の強化を図るというようなことであるならば、ちゃんと機種選定をやって、ここにあるように装備品等の効果的、効率的な取得をしてよかったんじゃないか、なぜそんなに急いだのかということをお尋ねしたわけでございます。

 まだ納得いく答えがございませんけれども、この間の型式証明をお渡しした中で、ほかに検討するところはもうないですね。あれでオーケーなんですね。そこだけ聞きます、時間がありませんので。

飯原政府参考人 先回御質問いただきました点、高度、燃料等につきましては、今大井参事官の方からお答えしたとおりでございまして、それ以上検討すべき点はないというふうに思っております。

渡辺(周)委員 私も実はこの間読んでいて思ったんですけれども、では一つ聞きます。

 今回のEC225で温度制限というのが書いてあるんですよ、温度制限が。私も英語が不得手なものですから一生懸命辞書を引きながら実はこれを読んだのですけれども、温度制限がマイナス十五度というふうになっているんですね。つまり、マイナス十五度より寒いところではこの型式証明でいきますとまだ実証されていないわけでございます。

 例えばですけれども、EH101でしたら南極に持っていっているわけですね。これは南極だと、もうちょっと、マイナス三十度ぐらいですか。ですから、既に対応できるものがありながら、温度制限がマイナス十五度というEC225を購入するということになれば、このEC225は現状のままでは、これはVIPが乗る、そしてこの間の山古志村、あの新潟中越地震が一つきっかけになって購入するということになりましたけれども、では、寒冷地、例えば北海道であるとか、あるいは信州方面でありますとか、北陸だとか、そういうところでは、これはまだ型式証明上は使えないということになりますけれども、この温度制限については検討はされていないのですか。

飯原政府参考人 民間機の型式証明の場合は実証試験をして数値を出すということでございますので、当然、私どもはVIP用に使う場合等はその範囲で使うということでございます。

渡辺(周)委員 ただ、これはどういう条件下でやるかということは決まっていないわけですよね。では、VIP用だから北海道に飛ぶことはないとか、あるいはどこか寒冷地に飛ぶことはないと。ただしかし、これは上空ですから、当然あらゆることが考えられるわけですね。

 実際、今わかっているだけでも、既に型式の中で書いたS92だとかEH101というのはマイナス三十度ぐらいまで耐えられるというふうにありながら、今回なぜ、マイナス十五度と書いてあるこのEC225、つまり実証もされていないにもかかわらず、この辺をすっ飛ばして購入を決めたのかなというふうに今思わざるを得ないわけですけれども。

 つまり、型式証明を見れば、今購入しようとしているこのEC225というものがどういうものであるか、どういう能力、性能であるかということがある程度わかるわけですね。あるいは、わからない、実証されていない部分もたくさんあるにもかかわらず、どうしてあえてこれを、この補正予算で緊急に買う必要があったというふうにこの間答弁されましたけれども、やはりおかしくないですか。機種選定もしないで初めからこの機種ありきだ。しかも、私が調べて突っ込んだら、この点についてはみんな実証されていないデータばかり出てくる。

 これについて、なぜこれを決めたのですか、こういうことが証明されていないのに。何か非常に機種選定のプロセスに不透明なものを感じるんですけれども、いかがですか。

飯原政府参考人 前回から累次御説明をさせていただいているところでございますが、現行のスーパーピューマについて、今まで二十年間運用していますが、その時代のものとしては基本的な問題点があるという認識ではございません。今回はそれの買いかえでございますが、基本的に能力向上しているということでございまして、それでなおかつ、これも累次御説明しているところですが、格納庫を現有のものが使えるとか、それからパイロット、さっき十名と申しましたが、転換が容易であるとか、そうした理由から、また平成二十年のサミットに間に合わせるためには一機早急に導入した方がいい、こういった事情を総合勘案しまして今回の補正予算で計上をお願いしたものでございます。

渡辺(周)委員 では、ちょっと言いますけれども、平成二十年のサミットに間に合わせるためにだと。だとすれば、二十年前に購入したとき、今の現行スーパーピューマが政府決定したのは昭和六十年の六月。九月に予算を閣議了承して、六十一年に、当時は防衛庁ではなくて総理府の予算で、政府予備費で購入をして、もう既に昭和六十一年の五月に東京サミットで支援をしているわけですよ、もう既に運航している。

 購入から支援の実施まで約一年で実施しているわけですから、当然のことながら、それから逆算すれば、間に合わない、間に合わないと言いますけれども、例えばことしの八月の概算要求に間に合うように昨年の暮れに機種選定を始めて、そこで決定して、概算要求をして、本予算でも間に合ったんじゃないですか。つまり、急いだ割には、実は過去の例からいえばちゃんと間に合っているんですよ。そこの点についてはどうなんですか。

飯原政府参考人 御承知のとおり、ヘリコプター自体高価なもので特注品でございますので、車を買うようなわけにはいかない。それで、平成二十年度のサミットには三機そろった形で保有している必要があるということで、そのためには、まずことしの補正で例えば全部ということは、向こうの会社の都合上できない。ただ、一機を導入するということによりまして、パイロットの訓練とか整備の訓練とかそういうものが、前倒しでできることで極めて容易になる。それで二十年の東京サミットに万全の体制で臨める、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 もちろん東京サミットに対して万全の体制で臨んでいただいて、そして今、国内でも、これは天皇陛下あるいは皇族、総理が乗るかもしれない点については、それはもちろん万全のことをしていただきたいわけでありますけれども。だから、万全を言うのであれば、なぜ今回こんなに慌てて決めることがあったのかということを言っているんです。時間的には間に合ったはずじゃないかというのが私の主張でございます。

 つまり、昨年の十一月に、購入を補正予算の審議の中で決めなければいけなかった。私、今申し上げるのは、では、もう時間がないからはっきり言いますけれども、機種選定をした、ちゃんと検討をした上でこれだと言うのならわかるんですよ。別に何も文句を言いません。それをしないで決めたからおかしいんじゃないですかと。つまり、三十三億円のものを買って万全を期すためには、高い買い物をして、当然、燃料の問題、離発着高度の問題、あるいは今も追及をしました温度制限の問題、この点について実証もされていないものをなぜ慌てて購入しなきゃいけなかったのかということなんです。そこなんです。

 それについては、もうさっきから同じような答弁ですけれども、どうなんですか。大野長官、いかがですか。この間も同じ質問をしましたけれども。

大野国務大臣 まず経緯については、ただいま事務当局で御説明申し上げました。

 現有機につきましては、先般の新潟県中越地震におきまして、例えばGPS自動装置つきのものとか、こういう問題があるし、悪天候時の問題もある。そういう中で、従来はこれを改修するということで予算要求をしておりましたけれども、そうじゃなくて、やはり新しい時代の要請に応じて早急に対応する必要がある、こういう問題意識が高まってまいりました。

 そこで、例えば内閣総理大臣等が……(渡辺(周)委員「それはもう結構ですから、そのプロセス、なぜ今回慌てて決めなきゃいけなかったのか、そこだけ」と呼ぶ)その問題は、たびたび申し上げておりますとおり、人員の訓練、格納庫の問題、その他いろいろあると思います。

 そこで、十六年度補正予算という問題が出てまいったわけでございます。十六年度補正予算で老朽化したヘリコプターを買いかえる、これは災害対策としてやったわけですから、そういう意味で補正予算で要求させていただいた、こういうことでございます。

渡辺(周)委員 つまり、機体については全く調査もしないで、完全に実証もされていないデータでもってこれを決めているわけですね。

 では、これは非常にマスメディアにも出ました。あるいは幾つかの、いろいろ専門の関係者に聞くと、非常にこれは不透明で、何らかの政治的意図といいましょうか、初めからこれありきだということが実はあったんじゃないかと。それはわかりません。これはある国から強く働きかけがあったのか何なのか、そういう憶測すら、言われたくないことすら言われているわけですね、今回の不透明な決定。つまり、今までの、従来の手続を経ないで慌てて決めた、それも全く何も実証されていないままにここまで来てしまったというわけですね。

 ということは、これはやはり非常に、私のみならず、この問題に関心を持った人間みんな、何らかの疑念を持っているわけでありますから、その点については、もうきょうは時間がありませんので、また改めてやります。また新たに、きょうは居住性の問題とか、今度は事務次官にもぜひ御出席をいただいて、何か今は中国に行っているそうでございますので、本当なら出席をしているところでいろいろやりとりしたかったんですけれども、きょうはいらっしゃらないということでございます。ですから、その点のやりとりがあったことだとか、その他についてまたいろいろ質疑をやりたいと思います。

 ですから、きょうはこの辺で、残念ながらできませんけれども、ぜひ今回の問題については、私は、日本の防衛の問題とかということについては国益に沿う形で、当然、足を引っ張る、だめにする議論をする、何かをつっついて何かをおくらそうとか、何かをだめにしようという気は毛頭ございません。ただ、今回は余りにも不透明な、納得のいかない形で、従来の手続を無視してこういう、まさにここに書かれているような、効率的な装備品の取得、購入だという割には非常にわかりにくいわけですよ。その点について、私は率直にこれは追及しているわけでございますので、この点についてはまた改めて、引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 終わります。

小林委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介でございます。

 まず冒頭、大野防衛庁長官に御質問させていただきます。新防衛大綱と中期防が、昨年の十二月十日に閣議決定をされたわけでございますけれども、次の見直し時期につきましての御質問でございます。

 まず冒頭、少し私、申し上げたいのは、こうした防衛大綱とかあるいは中期防といった中長期のプランというものは、防衛庁内部あるいは自衛隊の皆さんにとっても、今後の自分たちの組織がどういう方向性を持っているのか、そういった組織としてのアイデンティティーの確認でもあると同時に、国民あるいはこれは予算のこともかかわってくるわけですが、今後どの程度、装備品やさまざまな費用が発生するか、費用対効果の観点も含めて、企業で言う中期経営計画のような非常に重要な意味を持つものだと考えるわけですけれども、その非常に重要なポイントの一つは、それがどの程度のスパンについてコミットしたものであるのか、それが中身の説得力にも大きく影響してくるのは言うまでもないことだと思います。

 そうした中で、ちょうど十日前になりますけれども、衆議院本会議におきます前原議員の質問に対しまして、これは大野長官の御答弁だと思いますが、新防衛大綱はおおむね十年後までを念頭に置いていますと一方でおっしゃった後に、五年後または情勢に重要な変化が生じた場合には必要な修正を行いますと、繰り返されている御答弁ですけれども、おっしゃっている。

 ここで、おおむね十年後までを念頭に置いているというのは、それはそれでわかるような気もするのですが、一方で、五年後または情勢に変化が生じた場合には必要な修正を行いますとおっしゃっていて、これは「または」の部分を除くと五年後には必要な修正を行うということをコミットしているようにも聞こえるわけですけれども、この十年後という時間軸と五年後という時間軸はどういう関係になっているのか、教えてください。

大野国務大臣 今回の新しい防衛大綱につきましては、委員十分御存じのとおり、国際的な安全保障環境が変化してきた、科学技術が発達してミサイルという問題が出てきた、こういう環境変化の問題があります。したがいまして、それに応じた防衛力を構築するという意味であります。

 この状態がどう続いていくのか。これが、今までですと、やはり新しい防衛大綱では、おおむね十年ぐらい先までこのような方向性で行くんだろう、しかし世の中の進歩、発展が物すごいスピードで行われ、安全保障環境が変わる可能性だって全く否定できないではないか、こういうことで、まず五年後には必ず見直しましょう、必要であればそこで修正しましょう、直していきましょう、その前に、五年前に、例えば三年目でも何でも、もし大きな情勢の変化があって、そしてどうしても見直していかなければならないのであれば、やはりそこで対応していこうと。考え方が固定的ではなくて、極めて柔軟的になって、変わり行く安全保障環境等に柔軟に対応していこう、こういう気持ちで、まずおおむね十年だという、五年後には必ずやりましょう、しかし、その前でも見直しの必要があれば見直しましょう、極めて柔軟な書き方をしているわけであります。

津村委員 五年後には必ず見直すという明言をされているわけで、大変わかりやすいのですけれども、その場合、このおおむね十年後というのは、これは中身のことをおっしゃっているんですか。なぜ、十年後というものの意味はどういうことですか。

大野国務大臣 十年というのは一つの区切りであり、前回の防衛大綱も十年、実際は九年でございますけれども、そういう節目の年としてとらえております。十年ぐらいを一つの期間としてとらえる、これは当然であろう。

 ただ、繰り返し申し上げますけれども、情勢の変化が厳しい中で、激しい中で、これはやはり五年たったところで見直しましょう、必要なれば変えましょう、こういう考え方であります。なろうことならこの考え方で十年後までいけるのかな、しかし情勢の変化が厳しければこれはやはり見直すべきである。柔軟性の問題でございます。

津村委員 多分私が申し上げていることと意識としては同じかなと思いながら伺っておったのですけれども、この「または」の後で書かれている情勢に重要な変化が云々という、要するに、不確定な要素がある、いろいろなリスクがあるということをここで読み込めばいいのかなと思っているのですが、マックスでも五年後には必ず見直しをするというふうに明言をされているわけで、前原議員の代表質問と同じ趣旨なんですが、米軍の再編協議も今進んでいる中で、機動的にさまざまな不確定要素、リスクに対応していかなければいけないということを一方で強調したいわけです。

 ただ、ちょっとこれは文章に誤解を生じやすいかなと思ったものですからあえて御質問させていただいたのですが、もう少し端的に言えば、見直しは五年後までに、五年以内に行うけれども、しかしながら内容としては、研究開発から装備を実際に確立するまで十年程度の物事で防衛については考えなければいけないので、十年間の内容を中身としているけれども見直しは五年ごとに行う。内容と見直しの時期というのは全く別のことなので、これは一つの文章におさまっているからちょっと誤解を生じやすいのではないかなと私は思います。そこは分けて考えるということでよろしいのでしょうか。

大野国務大臣 国防というものはある程度長いスパンをもって考えるのは当然であり、装備を構築していくのに時間がかかるのも当然でございます。しかし、それと、国際社会の変化、科学技術の変化、この要素も考えておかなきゃいけない。先生のおっしゃるとおり、その二つの側面、切り口がある、これはもう御承知のとおりでございます。

津村委員 はい、わかりました。内容について、後ほど、幾つかの質問の後に、いわゆるTHAADやエアボーンレーザー等について、向こう十年ということもスパンに入れた新防衛大綱というお話ですから、十年以内に、現在の状況からも容易に想像できる、あるいは想像するのが妥当と思われる幾つかの次世代技術について、この防衛大綱でしっかりとこれが読み込まれるのかどうか、後ほどお伺いいたします。

 その前に、少しミサイル防衛のことについて具体的な御質問をさせていただきたいと思いますけれども、まず、ミサイル防衛の法律案が今いろいろ議論されつつあるわけですけれども、この第八十二条の二第五項におきまして、措置がとられたときには速やかに国会に報告することとされております。速やかにというのは具体的にはどの程度のタイムスパンを考えていらっしゃるのでしょうか。

大野国務大臣 まず類型から申し上げますと、海上警備行動あるいは領空侵犯等と同じような類型にいたしております。

 しかし、この問題は、先生も御存じのとおり、極めて防衛出動に相関連する可能性が大きい。そういうことで、私は、必ず国会へ報告する、これは大切なことだと思っています。そういう意味で、やはり一日も早くこの国会への報告をしていくべきであると考えております。個別の状況に応じて直ちに報告する、もう本当に直ちにぐらいの考えでやっていくべきじゃないか、そういうふうに考えているところでございます。

津村委員 私のお尋ねは精神論ではなくて、具体的に、今長官おっしゃられたように類似の法制はいろいろあるわけですから、過去の事例等もかんがみて、もちろんミサイル防衛自体は今後のこととはいえ、一定の枠を具体的に明示するような法律案でなければ、速やかにという文言がほとんど空文化してしまうということを思ったわけですけれども、もう少し何かお答えいただけませんか。

大野国務大臣 いろいろなケースが具体的にはあると思います。国会が休会中どうするのか。国会が開会中であれば、私は直ちにと思います。休会中に召集をしてどうするのか、こういう問題も出てこようかと思います。

 これはもう一度繰り返して申しわけありませんけれども、八十二条の場合は国会への報告等は要りません。しかし、これは絶対に国会へ報告しなきゃいけないほどの重要な問題である、このような認識のもとに、八十二条、海上警備行動等では必要のない義務を課しているわけであります。

津村委員 続きまして、同じ国会報告に関連してですけれども、俗にといいますか、一般に文民統制と言われている問題について、大変問題のスコープが大きい議論だと思っていますが、多少焦点を絞ってお伺いしたいのですけれども、私は、文民統制というものは、現場の指揮官の立場から見ると、それは、措置の責任が現場には負わされない、文民がその責任を負うんだ、帰責されるんだということに現場から見ると非常に大きな意味があるのかなというふうに考えております。

 そうした意味で、私、この間ほかの場で伺ったので正確な記憶でないのですけれども、国会の承認とか承諾という形であれば、これは法的に責任追及効果が発生する、それは文民たる大臣に発生するというふうに理解しておるのですが、国会報告ということになると、仮に措置にミスが生じた場合、例えば外れたとか、あるいは誤射、第三国に向かったものを間違って撃ってしまったとか、そういったことについての法的な責任というものは発生しないということになろうかと思います。

 当然、政治的な責任としては、報告の内容が十分でない、そういう議論は生じ得ると思うのですけれども、しかし、もともと文民統制ということは憲法にも定められた法的な概念ですので、このミサイル防衛において法的責任がどうやって追及されるのか条文にあらわれていないというのは、私は法律上一貫していないと思うのですけれども、これは大臣、どのようにお考えでしょうか。

大野国務大臣 まず、政治の軍事に対する優先でございます。

 現場の自衛官はどういうふうな立場にあるか、まずこれを考えていただきたいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、兆候がある場合は内閣総理大臣の承諾を得て防衛庁長官が責任を持って命じる、それから、兆候がない場合、にわかに事態が変化してという場合も、あらかじめ防衛庁長官がマニュアルをつくって、総理の承認を得て、その後に現場に実際の射撃ということをやってもらう、こういうことになっているわけです。

 その現場の自衛隊の行動はしからばどういうことになるのか。これは私は、必ず確認をする、レーダーで確認をする、そして、確認してそのミサイルが必ず日本の領域に入ってくる、こういうことがあれば実行する、これが現場の責任であります。単に確認して実行する、こういうことであります。

 確認をしたのに実行しなければ、これは私はやはり現場の命令違反ということになると思います。これは内部統一組織の問題でありますけれども、懲戒免職等を含めて考えていかなきゃいけない問題であると思います。

 しかし、問題の本質はそこにはありません。問題の本質は、やはり防衛庁長官が責任を持って委任を受けて実行するわけですから、一義的には防衛庁長官の、すべていろいろな場合、問題が起こった場合はすべて、シビリアンである防衛庁長官の責任、このことは明快であります。もちろん、内閣総理大臣が代表する内閣の責任ということももちろんありますけれども、一義的には防衛庁長官の責任。

 これを法的にどう考えるか。これは法的な議論はやっておりません。しかし、それはやはり私は、防衛庁長官がミサイルを発射する、その責任において発射する。それが仮に、今申し上げたような、現場が確認して撃つ、確認して撃たなかった、両方含めてもし何かがあれば、これはすべて長官の一義的な責任。その法的な責任といいますと、これは私はやはり政治的道義的責任の問題である、このように思います。

津村委員 今のお答えは、私は一点非常に重要なことをおっしゃったと思うんです。

 法的な責任については検討していないというふうにおっしゃったのは、多分それは恐らく間違いだと思いますし、もし間違いでなければ、きょうは、この法律そのものではないかもしれませんけれども、ここはまさしく法案を議論する場所ですから、ここで議論をすればいいと思うんですが、もともと文民統制というものが法的な概念である以上、これはやはり日本の国の実定法として体系的に一貫していなければいけないわけですから、この国会報告というものでそれが読み込めないのであれば、そこは、まだ成立していない法律ですから、ぜひ修正をしていただいて、国会の承認または承諾ということにしなければ一貫しないと思うんですね。

 これは議論されていないというのは、だとすれば今お考えをお示しいただければいいんですが、何らかの理由があってそうされているのであればそれを説明していただければ結構ですけれども、いかがですか。

大野国務大臣 シビリアンコントロールというのはあくまでも、軍事が優先、先走ってはいけない、すべて軍事はシビリアンのコントロール下にある、政治のコントロールにある、これを確保するということであります。このシステムについてはきちっとつくっているわけであります。

 そして、もし仮に何らかの失敗が起こった場合、これも万々が一というふうに言わざるを得ないのでありますが、そういう場合に、これを法的な責任として追及するのか。シビリアンコントロールというのはそういうような、ではシビリアンコントロールがなかったらどうするんだ、刑法でどうなんだ、こういう議論になじむのかどうか、こういう問題は私はやはりあると思います。

 したがって、シビリアンコントロールというのはあくまでも、シビリアンである防衛庁長官がその責任において実行していく、こういうことであって、もしその中で万々が一失敗があれば防衛庁長官がしかるべき責任をとる、これが筋だと思っております。法的責任という観点から論じるような問題ではなくて、むしろ政治的、本当にシビリアンを優先する民主主義の問題だ、こういう観点から議論していくべき問題ではないかと思っております。

津村委員 どうして法的な議論じゃないと言い切れるのかわからないんですが、もともと、これはもちろん政治的な観念として議論することもできましょうし、今大野長官おっしゃったようなそういう精神論で議論することも、それがふさわしい場においてはそれで結構かと思いますが、しかし、これはミサイル防衛という新しいシステムを立法府においてこれから立法していこうという議論をされているわけですし、その背後といいますか、当然考えるべき課題の一つに文民統制という法的な概念の議論があると思うんですね。

 これは、大臣、文民統制というのは何も観念的な、哲学的な問題ではなくて、憲法に定められていることですからこれは法律として一貫していなければいけないと繰り返し申し上げているとおり思うわけですけれども、この国会報告でそれが読み込めないということになれば、それはやはり大きな問題だと思います。

 先ほど私、あれも大分乱暴なことをおっしゃるなと思ったんですが、確認をして実行する、その現場の判断が間違った場合、それは命令違反であるから懲戒免職も含めてさまざまな措置が考えられるということをおっしゃいましたけれども、あれはもう組織の中の議論であって、こういうミサイル防衛のシステムの枠組みをしているときに、ああいう誤解を招きかねないというか、非常に激しい場面についてここで想定して議論されるのは、現場の方のお立場を考えても非常に場にふさわしくないお話をされたんじゃないかなと思うんです。

 ミサイル防衛そのものについて、私は法的な文民統制のあり方について伺っているわけで、大臣、その話はする必要ないとおっしゃるのはなぜですか。ここはまさしく法律を議論する立法府であるのに、どうして法的な議論として文民統制は論ずる必要がないと言い切れるのか、教えてください。

大野国務大臣 まず一言、現場自衛官の問題につきましては、ここは特別統治組織の問題であるということを申し上げたつもりで、そのことは先生も御理解いただけたと思います。それはそれとして、そういう問題じゃなくて、まさに民主主義のシビリアンコントロールをどうするか、こういう問題であります。

 そのシビリアンコントロール、民主主義の根本でありますことは、いわば法の理念であり法の哲学である、このように私は解釈しております。その哲学なり理念を、しからば何か失敗があったら、例えば防衛庁長官は死刑にするとか、こういうのが法律論争である。理念として、私は、やはり防衛庁長官が道義的に、道義的というか、法理念の問題として、そしてまた法哲学の問題として考えるべき民主主義の根本だと思います。それを例えば、そういう万々が一失敗をした場合に、これは長官の責任ですよ、長官の責任ですが、法律問題として、では長官はどうするんだ、刑務所に入れるかとかそんな議論になるのか。私はそういう議論ではないと思います。その場合、では長官がどういう責任をとるのか、これは御議論いただいていい話でありますけれども、法律できちっとした体系をつくるというか、法文でどういう場合にはどうだということの問題よりも、やはり私は基本的な、民主主義をどう守るか、この観点から考えていただきたいなと思いますけれども、どうぞそういう議論があればどんどん議論していただきたいと思います。

津村委員 いや、もちろん哲学的な、理念的な文民統制の議論はすればいいですし、そこに大きな理解の差があるとは私は思っていません。そこの論争を私は今させていただいているつもりはないんです。

 私は、今大野長官のお話を伺っていて少し首をかしげるのは、このミサイル防衛の、とりわけ法律の一つの大きなねらいというか効果は、現場の自衛官の皆さんが、七分とか十分とかという極めて厳しい環境の中で、もちろんしかるべき命令に従ってではありますけれども、本当に緊張感のある仕事をされることが想定されたシステムの中で、少しでも現場の方々に、できるだけ例えばマニュアル化をするとか、あるいは責任の所在を、文民統制という意味での、上官がしっかりと責任をとる、大臣がしっかり責任を持って仕事を部下に任せるという仕組みを確立して、より働きやすく、使命の重い仕事をされる現場の方々が余計なことを考えずに重要な仕事に集中できる、そういう環境をつくるための法律だというふうに私は理解しておったんですが、今のお話では、法的な責任、私は死刑だの監獄だのなんてお話をしたつもりは全くなくて、法的な話がどこにもないじゃないか、それは、国会承諾、国会承認ならそれは法的責任が読み込めると私は法制局の方から伺ったわけで、だから、承認とか承諾という形にすればそれで法的には一貫するんじゃないかというそのことだけを申し上げているのに、どうして、本来のこの法の趣旨といいますか、現場の方々を不安にさせるような不必要な発言をされるのか、それが理解できないんです。

大野国務大臣 私はあくまでも、マニュアルがきちっとして、そしてマニュアルどおりに現場はやってもらいたい、そのためには相当の神経や緊張感があると思います、そういう問題が一つあるけれども、それは現場の責任というのは全然ありません、特別統治組織の中でそういう問題が出てくるかもしれませんということを言っているので、それは全く別問題です。シビリアンコントロールというのはそういう問題じゃないということを言うために前段としてわかりやすく言ったつもりでありまして、その前段としては特別統治組織の話はわきへ置いておいて、本来の本質的な話というのは、法律でどうするか、シビリアンコントロールの責任、一義的には防衛庁長官だと申し上げました、その問題をどういうふうに法律化していくか。それを先生は国会の承認だというふうにおっしゃる。私の方の案は、国会への報告と言っているわけであります。

 国会での報告と承認、そこのところを考えてみますと、やはり、これは飛んでくると、まず撃ち落とさなきゃ国民の生命財産に甚大な被害を与えるわけですから、そこは私は、まず撃ち落とす、同時にシビリアンコントロールが必要だ、こういうことを申し上げているわけであります。両方とも大事なんですね。

 しかも、その背景にあるのは八十二条、海上警備行動なり領空侵犯なりというのは、国会の関係は明記されておりません。しかしながら、このミサイルの問題は必ず防衛出動に結びついてくる可能性があるから、そこは国会に報告する、そして、その後防衛出動の際には、それは改めてきちっと手続を踏んで、そして防衛出動をするということを国会でお伺いする、こういうシステムでやっていけばどうかな、こういうことであります。

 国会の承認、不承認と言われて非常に私悩みますのは、もう撃ってしまっているんですよ、撃ってしまっているんです。だから、撃ってしまって、後でだめだと言われたら一体どうなるんだろうか、こういう問題が残ります。そういう意味で、私は、やはり国会へ報告して、もう日本へ来て、領域に落ちることが明らかなわけですから、それは迎撃しておいて、すぐ報告する。そして、防衛出動という関連になってくれば改めて安全保障会議を開き、内閣の閣議を開いて、それで国会という道筋でやっていけば、これが新しい時代の新しい事象に対する対応ではないか、このように思って申し上げているわけです。

津村委員 大臣、今おっしゃられた事後承認というのは、ほかにもたくさんあるわけですよ。事後的に承認しても意味がないということですか。すべて、ほかの法制にもこれは影響することなんで、よく言葉を選んでお答えいただいた方がいいと思うんですけれども、ほかにも事後承認するものは決算その他いろいろあるわけで、なぜ承認ということを報告でなくて使っているかというと、これはよく皆さん聞いていただきたいんですけれども、それは法的に責任をそこで担保している、それは本当に法律のロジックの話ではありますけれども、しかしそこで責任が担保されているということに意味があるわけで、そのことを今の御答弁は否定しているように聞こえるんですが、いかがですか。

大野国務大臣 例えば、国会の承認が得られなかった、こういう場合に、治安出動であれ防衛出動であれ、そこでやめるわけですね。これで担保されているわけです。ミサイル迎撃というのは、落ちてきたら終わりなんですよ。そこでやめるとかやめないとかいう問題に全然関係なく、このミサイル防衛はやっていかなきゃいけない。そこに、本当に新しい時代の新しい脅威に対してどう考えていくかということでいろいろ議論した末に、こういう報告ということにしたわけであります。

 承認、例えば閣議を開く、安保会議を開く、これができないから、まさにそういうシビリアンコントロールを担保するためにこういう制度を考えたわけでございます。従来の発想の延長であれば、国会の承認を得られなければそこでやめる、そこで撤収する、こういうことも可能でありますが、このミサイル防衛につきましてはそういうことができない、そこに問題があるというふうに私は思います。

津村委員 この法律案については、まだきょうに限らず議論する場があると思いますので、またきちんと私も調べて、場合によっては質問に立たしていただこうと思うんですけれども、一番前向きなところだけ少し総括して終わらせていただくと、確かに今大臣は、報告だの承諾だのということはとりあえずさておき、大臣自身が最終的にはこれは責めを負うものであるということは明言されたわけですし、衆議院の委員会においてそういうことを明確に答弁されたわけですから、そのこと自体当然大きな意味を持つわけで、私は、そういう委員会答弁という、実際的には同じ効果を持つことをされているんであれば、日本の実定法の中で、先ほど来申し上げているように、承諾、報告はやはり言葉の違いには意味があって、それは承諾という形でようやく一貫するんだ、法律的な概念として一貫するんだということを、もう繰り返しになりますけれども申し上げているわけで、同じ効果を生むことを提言しているだけで、何か新しい努力をお願いしているつもりはないので、そこはそういった意味で議論をかみ合わせて終わらせたいと思います。

 それでは、たくさんそのほかにも伺いたいことがあったんですけれども、時間がありましたら後で聞かせていただきますが、お越しいただいている今井副大臣に少し御質問させていただきます。

 これは、お聞きする事業のタイトルは国民保護即時サイレン調査検討事業という十七年度二億円の予算がついている事業でありまして、本日の午前中に閣議決定された「国民の保護に関する基本指針」の中にも同様の議論が出てくる話なんですが、これは私、ミサイル防衛と大変深い関係にあるということを考えておりまして、そうした観点から伺っていこうと思っています。

 時間が大分押していますので、最初その具体的な中身について伺うつもりでしたけれども、これはもう前提としてお話をさせていただきます。

 この事業は、全国に今、六七・八%だったと思いますが、同報系と呼ばれる防災行政無線が張りめぐらされているという事実がありまして、市町村ごとにウーというサイレンが張りめぐらされているわけですけれども、ミサイル防衛において、一朝事あったとき、ミサイルが飛んでくる、それを今から撃ち落とすぞというときに、これは内閣官房が中心となって、国民に今からミサイルが飛んでくるということを知らせるという仕組みであります。そのほかにも、地震、津波などいろいろな災害にも対応できると思うわけですが、こうした武力攻撃に関する非常事態においても利用することができる。

 これはぜひ防衛庁の皆さんにも聞いていただきたいんですけれども、よく、PAC3で撃ち落としたときに破片が散ったらどうなるとかいう議論があるわけですけれども、このサイレンがしっかりと稼働するという形であれば、屋内への避難を誘導するというふうにこの基本指針に出ていますけれども、十分かどうかは別として、一つのシステムは完成するんだと思います。

 しかし、これは三年後にはミサイル防衛が、PAC3が本格的に配備されていくということになるわけですけれども、現状を見てみると、必ずしも十分でない。先ほど申し上げたように、六七%しか同報系の無線が配置されていない。そうすると、あと三〇%以上のところは、ミサイル防衛の情報が国民に行き渡らない、国民保護の観点から問題があるんじゃないか、そういうお尋ねなんです。ことしはわずか二億円で、伺ったところではたった二十市町村とその都府県、今全国で二千以上の地方自治体があるんですが、そのうちのたった四十しかこれはカバーされないということなんですけれども、あと二年後、PAC3が本格配備されるまでに、この防災行政無線は一〇〇%のカバレッジで国民を保護できるんでしょうか。

今井副大臣 今井でございます。津村委員の御質問にお答えを申し上げます。

 御質問の中にもありましたように、残念ながら、昨年、十六年三月三十一日現在でまだ約三分の二程度しか整備はされていないわけで、全国規模で見ますと隔たりがあるわけでございます。

 そこでの御質問かと思いますが、今回の二億円というのは、調査をしようではないか、検討していこうじゃないか、こういう形の予算でございまして、同時通報するための防災行政無線の整備をする費用ではないわけでございまして、今回の調査によって積極的に、お話しいただきましたように、全国的にカバーリングできるようにしていかなければならない。

 そのために、今総務省といたしましては、ただ単なる自然災害のみならず、御質問がありますように、有事の際の国民保護の対応の観点から、迅速そして的確に伝達手段が必要と思われますので、今後とも重点的な財政措置を講じてまいりたい、かように考えているところでございます。

津村委員 重要であるとか重点的にという力強いお言葉なんですけれども、しかし、先ほど申し上げたように、全国で、これは各都道府県とそれから全市町村に最低三つのものが必要だというふうに聞いております。一つはインターフェースと呼ばれる同報無線の自動起動装置というものと、ナウキャスト情報受信装置というものと、それから末端のサイレン、この三つがすべて整っていないと、五分、十分以内に全国に、あるいはその当該地域に非常警報を発することができないというふうに聞いておるんです。

 これが、単純に今回の二億円の予算を四十県市町村で割りますと、一個当たり大体五百万円程度、インターフェースとかナウキャスト受信装置というのはかかるそうですし、さらには、各都道府県あるいは市町村にサイレンを配備するお金はもっとかかります。一市町村で五百万円どころでは済まない。このお金は大変大きな額になるんですね。

 これはミサイル防衛を考える場合に、実際の国民保護まで考えるのであれば、こうした予算についてもしっかりと検討したり、あるいは消防庁さんなら消防庁さんが、これを将来何年以内に一〇〇%になるかということを国民の皆さんにしっかりとコミットしていかないと、単に空中戦の話だけをされても、国民の安心、安全にはつながっていかない。破片が落ちてくるとか、あるいはサイレンが鳴るとか、こういったことも、国民にとっては目の前の課題ですので、そういった問題意識を持っていれば、ことしわずか二億円、わずか四十カ所の設置にとどまるというのは、重点的とおっしゃってもその姿勢が十分感じられないんです。

 これは、消防庁さんが大変大きなビジョンを持っていたにもかかわらず、財務省さんから絞りに絞られてちょっと困っているということなんですか、それともそういったビジョンはお持ちじゃないということなんですか。

今井副大臣 お答えを申し上げます。

 いずれにいたしましても、今回は調査検討を行うための予算ということになりますので、その調査をしっかりした上で、例えば財政的な支援等々を起債の活用あるいは地方交付税対応とか、そういう意味で、私どもとすれば、積極的な対応を図るように最大の努力をしてまいりたい、こういうふうに思っているところであります。

津村委員 今後ともフォローさせていただきたいと思っております。

 もう時間が余りありませんけれども、町村大臣に、先般の国連事務総長報告、いわゆるアナン勧告について、常任理事国入り問題の観点から、一、二点、時間の許す限り御質問をさせていただきます。

 同報告については、常任理事国を選ぶに当たって二つのことがメンションされていまして、これは昨年末のハイレベル委員会の議論をアナン事務総長がそれにコミットするような形で二つの論点が出ていると思うんですけれども、一つは、先進国であった場合、ODAの対GNI、国民所得比〇・七%の目標を二〇一五年までに達成できるかどうかということが一つ触れられています。それがあたかも常任理事国入りの条件であるかのように報道する向きもあるようですが、これがまず一つのアナン勧告の中身になっている。そしてもう一つは、一方では地域バランスも考えて、途上国も常任理事国になっていいじゃないかというようなことも言われているようです。

 これは、互いに二つの、ダブルスタンダートで常任理事国をこれから議論していこう、そういうふうに読めばよろしいんですか。

町村国務大臣 ダブルスタンダードということなのか、ちょっとよく必ずしも定かではないのでありますが、まず、先進国については、御指摘のように、GNI比〇・七%、または、これに対して十分な進展があることが重要な基準であるというような言い方をしております。それから、開発途上地域をよりよく代表する国々を意思決定過程に参加させるべきである、アフリカ等々がどういうことになるのかということであろうと思います。したがって、そういう意味では、先進国向けにはこういうことをやってもらいたい、発展途上国で常任理事国になるにはこういうこと。

 ただ、先進国と発展途上国のスタンダードなのかどうかというのは、その〇・七はややスタンダードという意味合いが強いと思いますけれども、開発途上国の場合は、とにかくよりよく代表する国が入っていた方がいいということで、これはむしろ先進国、開発途上国の数的バランスのことを言っているという意味で、スタンダードなのかなというのがちょっと私にはよくわからないところであります。

津村委員 ちょっと小さいお声の答弁なのでよく聞こえないんですけれども、私が申し上げているのは、今回のアナン事務総長報告そのものについての、常任理事国入りを目指す日本という立場からどういう評価をしているのかということをこの後お尋ねしますので、お答えしていただきたいと思うんです。

 少し私の意見を申し上げますと、各種新聞報道等にもありますように、いろんな意味合いから、日本にとっては非常に明るいといいますか、日本の今置かれている立場になじむ内容なのかなというふうに思うわけです。ただ一点、報道等は、この〇・七%枠、ODAの対GNI比〇・七%基準というものを日本は満たせないでいて、これをクリアしなければハードルを越えられないというふうに理解する向きもあるようですが、私自身はそれはおかしいと思っております。

 一つには、現に事実として、現在〇・七%目標を達成しているのは五カ国しかない。デンマーク、ルクセンブルク、オランダ、スウェーデン、ノルウェーということですし、また、今後の見通しも明確にしているところは、現常任理事国の五つを含めても本当に数えるほどしかないという現状がまずあると思います。

 そうした中で、論理的にこのアナン勧告の中身を見てみても、アナン総長がハイレベル委員会の答申の中から引用している二つの部分というのは、これは常任理事国入りの話とは全く独立した話とも読むべきなのかな。先ほど大臣の御答弁、ちょっと私にはよくわからなかったんですけれども、もしダブルスタンダードで、先進国が常任理事国になる場合は〇・七%基準は適用するんだけれども、しかし途上国であったら、これは地域バランスだから〇・七%基準はもうどうでもいいということなのか。

 そういうダブルスタンダードなのか、それとも、常任理事国入り問題とはこれは独立した問題であって、〇・七%、先進国は頑張ってねという話はあるけれども、それと常任理事国入りの問題は別のことだと考えるべきなのか、どちらなのかということに触れながら、この勧告の評価をお聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 まず、勧告全体は大変多岐にわたっておりまして、そのすべてについて日本が賛成だと言えるかどうか、必ずしも定かではございません。今、子細に検討しているところであります。ただ、大きな方向性としては、日本としては今回の報告書というものは、私どもとしては評価をし歓迎をするということを言っているわけでございます。

 その際に、このGNI比〇・七%というものがどこまで絶対の要件なのか。今、委員御指摘のように、現在の常任理事国はいずれもそれに未達でございます。それどころか、中国は、発展途上国という分類でありながら援助もやっているという、大変珍しいというか特異な国でございますけれども、仮にどこかアフリカの国が入るというと、それらは間違いなく、援助を出す国ということにはならない、受け取る国ということに多分なるんだろうなというふうに思われます。そういう意味で、発展途上国と先進国との間では違いがそこは確かにあるんだろうと思います。

 そして、この〇・七%について言うならば、率直に言って日本やアメリカのように大変に分母の大きな国、今、日本が大体〇・二%、アメリカが〇・一%、ふえていてもそのくらいという国が、どこまでこれをふやすことができるか、財政的な制約も率直に言ってございます。容易なことではないと思っておりますけれども、今後どういうふうに私どもはこの〇・七あるいは中間段階の〇・五というものを考えていくのかということについては、ようやっと先般予算も成立をしたばかりでございますので、これから政府を挙げてこの問題については真剣に議論をし、一定の方向を出していかなければいけないテーマである、このように認識をしております。

津村委員 もう終わりますけれども、大臣におかれては、私先ほど少し整理させていただきましたとおり、今回の勧告は非常に多岐にわたりますし、ODAの話も常任理事国の話も重なる面と重ならない面と両方あると思うんですが、ぜひ、常任理事国入りに関しましては、ODAの問題は先ほどの整理で、あるいは今後の方向については、しっかりと各国に対して日本の立場を説明していただきながら、積極的に日本の立場を各国に説明していただきながら、常任理事国入り問題に前向きに取り組んでいただければと思います。

 それだけ申し上げて、終わります。

小林委員長 次に、本多平直君。

本多委員 それでは、質問をさせていただきます。本多平直です。

 私、防衛大綱を読ませていただきました。実は読んだ感想としては、大きく私の一つの問題意識としては、いろいろな理由をつけながら、今まで私は一定限の対米協力は必要だという立場ではありますけれども、協力と言う以上、時々私たちの党では追随という言葉を使う場合もありますが、それ以上の一体化というところにどんどん進んでいくのではないかという危惧が読んでの感想でありました。しかし、そのことは、きょうはあえて私の問題意識としてだけ申し上げておきまして、議題とはいたしません。

 実はもう一つ、私はやはり、対外協力でありますとか国際貢献というのも大切なのでありますが、まずは皆さん、日本の国をしっかりと、日本の国民の命を守るというところをしっかりとしていただきたいという原点に戻っていただきたいと思っています。

 そういった観点から防衛大綱を読んでみますと、ミサイルという危機に対する対応は、これからさまざまな議論を私たちもさせていただきますが、一応皆さんの中にしっかりと書き込まれている。しかしもう一つ、私が実は、九・一一以降、やはり国家主体がやり得る場合もあるけれども、国家以外がテロをやるという危険が、スペインでも実際に起きました、アメリカ以降。こういったことにどれだけきちんと対処できていくのかということが、まさに新たな脅威なんだと思っています。

 ただ、言葉としては書いてあるんですけれども、どうしてもやはり、この防衛大綱というものが、まだまだ防衛庁と警察というものの権限の壁を打ち破れていない、そういうものになっているのではないかと危惧をしています。

 そんなことを抽象論で話していても仕方がないので、一つ例として私が可能性を考えておいた方がいいのではないかと思う、例えば新幹線にテロを国家主体にしてもまたは非国家主体にしても仕掛けた場合に、どんな対応があるのかということをちょっと例にしてお話しさせていただきたいと思うんです。

 ある意味非常に小さな話ではあるんですが、私、上越新幹線で選挙区との間を往復しております。そして、一定の期間から新幹線の車内のごみ箱が警察の御指導により使えなくなったということで、ああ、ますますこんな危険な、上越新幹線のごみ箱が封鎖される時代になったのかなと感慨を持って見ていたんですが、実はある日、東海道新幹線は余り乗らないんですが、乗ったときに、ごみ箱がそのまま使用されているんですね。

 警察の指導でやっているのに何でJR東とJR東海でこんなに対応が違うのかなという非常に奇異な感じがしましたので、その事情をまず国土交通省の岩井副大臣、御答弁お願いします。

岩井副大臣 東海道あるいは山陽新幹線の場合は、乗車時間が大変長いですね。したがって、ごみが車内に放置されるということになりがちでございまして、結果としてごみに紛れて不審物が放置されるという懸念が実はあるわけでございます。そういうことで、むしろごみ箱の方の管理をきっちりやって、ごみ箱使用はそのままにしておいた方がいいんじゃないかというJR側の自主的な判断がございまして、そのようなことになっております。

 それで、東北、上越、北陸新幹線の場合には、乗車時間が極めて短い、一時間ないし二時間とかいうことでございまして、列車内のごみは列車内で処分するよう案内いたしまして、車内のごみ箱は閉鎖しておるという状況でございまして、あくまでもJR側の自主的な判断と管理の内容というふうなことになっておるわけでございます。

本多委員 乗車距離が長いとか、そういうことは全く関係ないと思うんですよ。それは、秋田新幹線があるとかなんとか、そういう細かい言いわけをしなくても、それは両面危険はあるわけですよ。私だって、上越新幹線おりるとき、わざわざホームまでごみを持っていくわけです。面倒くさい人は放置している。上越新幹線だってそこに紛れる危険がないなんて言えなくて、こんなことは全く両面に両面のことが発生するわけです。

 役所の書いた答弁を読まれたと思うんですが、岩井先生は、副大臣として本当にこれでいいと思われますか、政治家として。

岩井副大臣 先ほども申し上げましたように、こういった問題というのは管理上の問題で、現場の管理に対する判断だと思うんですね。国のレベルでそこまでああせい、こうせいと言うわけにはいかない。要するに、不審物が紛れないように適正に管理をされたいというところまでだと私は思います。

本多委員 それでは次に、国土交通省さんは間に入って警察からの御指導を鉄道会社に伝えているというお立場だと思いますので、その国土交通省さんを通して鉄道会社にお願いをしている警察の方に、この対応でよろしいんでしょうか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 まさに、委員御質問にございました昨年の三月十一日のスペイン・マドリッドの列車爆破テロ事件、同時多発的に行われました。この事案を踏まえまして、その直後に私どもの方から、鉄道施設におけるテロの未然防止ということで、国土省の鉄道局長あてに、本職の名前をもちまして、鉄道事業者による自主警備の徹底、それから旅客への注意喚起ということでお願いをしたものでございます。

 ごみ箱を例にして今御質問ございましたけれども、警備的に申し上げるならば、一切そういったものはない方がいいわけではございますが、不審物件というのは、例えばごみ箱でなくても、いろいろなところに置かれる可能性というのは実はあるんだろう、こういうふうに思います。

 したがいまして、私どもとしては、当然警察として、駅で警備を強化する、警察犬を使って検索をする、あるいは列車への警乗を強化する。警察のそういった活動と同時にあわせまして、鉄道会社の方では、例えば車内の巡回を強化してもらうとか、それからトイレの点検とかごみ箱の回収も頻度を上げてもらうとか、いろいろなことについてお願いをしたり、また車内放送でお客様方への不審物発見の協力もお願いしてほしい、こういった各般にわたるお願いをいたしました。

 それに基づきまして、ただいま副大臣からも御答弁がございましたが、それぞれの各事業者の実情に応じまして、あるところはごみ箱を利用できないように封鎖をするところもございますし、あるいは、どうしても利用を認めざるを得ないというところはごみの回収の頻度を上げる、あるいは巡回を強化する。こういったさまざまな手法を組み合わせることによって鉄道事業者の方としての、御自身といいますか、事業者自体の最大の任務はやはり旅客の安全な輸送、こういうことだろうと私どもも思っておりますし、そういう観点で最大限の御努力をいただいているのではないかというふうに思います。

 いずれにいたしましても、こういった問題につきましては、事業者それから国民の皆様の御理解、御協力をいただきながら進めるということでしか進められないわけでございまして、今後ともいろいろ御協力をお願いしながら、また私どもとしましては、やはり情勢に応じた措置ということが重要だろうと思いますので、いろいろな情報あるいは情勢認識ということについて的確な情報提供もさせていただきながら、協力して進めてまいりたいと考えております。

本多委員 大変私としては残念なんですね。警察は遺憾だというふうな言い方をしていただければありがたかったのでありますが、本来であればごみ箱はない方がいいというお言葉もありました。

 しかし実は、私、この問題の指摘をしておきながら自分が多少無責任だと思うのは、どちらの政策がいいのかは私もわかりません。このまま私の上越新幹線のごみ箱が、いつあれがあくのかよくわかりませんが、あちらの方が少しでも、一%でも確率が低いなら、私はごみをホームまで持ち帰るぐらいの手間はかけるつもりはあります。

 しかし、東海も何かはやっているかもしれないけれども、もし本当に一%でも上越新幹線の方が確率が低いのだとしたら、まさにこれは新幹線がテロリストに、ましてやそういうことをやるというのは巨大な組織である可能性が高いわけですよね。こういうところの政策が、警察が国土交通省に任せきりで、国土交通省が鉄道会社に任せきりで、同じ駅を使っている、ましてや何となく象徴性の高い東海道新幹線の方のごみ箱があいていて、上越新幹線、東北新幹線のごみ箱は封鎖をされている。つまり、何かをやっているんだよというアリバイだけのようなテロ対策をやっていて、本当にこの国は大丈夫なのかということを指摘させていただいているということを、ぜひ御理解いただきたいと思います。

 そして、私たちもこれから指摘をいたしますが、ミサイル防衛には何兆円というお金がかかります。もちろん、かかるから必要ではないという議論をするのではありませんけれども、身近なところで、私の感覚では、実は北朝鮮がミサイルを飛ばしてくる可能性よりも、同じ顔つきをした人たちですから、東京駅で爆弾を置いて、入場券で入っておりれば、それは自爆テロである必要すらないわけですよね。こういうことを何カ月かにわたって繰り返すと、犯人がすぐには特定できないわけですから、アメリカにすぐ反撃してもらえるのかどうか。例えば北朝鮮が我が国を混乱させるとしたら、ミサイルを直接撃つよりも、こちらの方が可能性が高い、そういうものだと思うんです。

 今、方法を提示できないでこういうことを言うのは多少申しわけないんですけれども、やはりそういうところをこういうアリバイ的な、鉄道会社にごみ箱を片方は封鎖させて、片方はそのままでもいい、巡回が多ければいい。もちろん、網棚に置かれたのをどうするんだ、そういうのにも広がります、在来線はどうなるんだという話にも広がりますけれども、少なくとも危険性の高い、高速で走る、そして我が国の動脈を支えている新幹線に関して、このままでいいと私は思いません。

 国務大臣である外務大臣と防衛庁長官に、感想をお聞かせください。

町村国務大臣 国土交通省、警察庁、それぞれの責任の中で今のような対応になっているんだろうと思われますが、ちょっと個人的感想を述べろと言われたので全く個人的な感想を申し述べれば、やはりごみ箱を閉めるのなら全部閉めなきゃそれはうそでしょうねという率直な感想は、今お話を聞いていて受けたところでございます。

大野国務大臣 新しい時代のキーワードというのは、やはり統合、共同とでも言ったらいいんでしょうか。法体系というのは、海上警備行動でもあるいは治安出動でも、まず一次的には警察で二次的に自衛隊だ、一次的には海上保安庁で二次的に自衛隊だ、こうなっております。

 しかし、そういう格好になっているので、縄張り争い、これは本当に今から、やっちゃだめだ、縄張り争いはもう忘れよう、これが一つ。みんなで統合して、共同していくんだ、そこに私はこれからの問題点があるんじゃないか。情報も共有する、そしていざという場合に連携してプレーできるように、いつも相談している、訓練している、こういうことが大事だ、こんな感想を持ちました。

本多委員 大野長官には大変失礼なんですけれども、外務大臣だけに聞けばよかったなという感想を持ちました。

 実は、このことを考えているときに、ある意味どうなんだろうなと思ったことが一つございます。

 アルカイーダとかオウム真理教のような非国家主体の場合はまた別なんでしょうけれども、例えば、北朝鮮が国家としてテロリズムをやったという場合、国としての対応はどういうふうになるんでしょうか、防衛出動なのか治安出動なのか。新幹線の例で、例えばどういう法的な整理が国としてされているのかをお教えください。

山崎内閣官房副長官 官房副長官の山崎でございます。私からお答えをさせていただきたいと思います。

 今ほど御質疑のございましたテロの問題でありますが、現下のテロの情勢を考えますと、今それぞれの皆さんのお答えにありましたように、関係省庁と緊密な連携をとりながら、情報の収集あるいは分析の強化、さらには出入国管理、ハイジャック対策等々、それぞれ各種テロ対策の強化を徹底しておるところでございます。

 先ほどお話がございましたように、三月のスペインの列車爆破事故でございますけれども、これを踏まえまして、国土交通省あるいは警察庁、鉄道事業者等々に対しまして必要な助言を政府として行うとともに、警察官が駅構内を巡回してパトロールを強化しておる、こういうことを徹底しておるところでございます。

 しかしながら、こうした取り組みにもかかわりませず、万一重大なテロが発生した、こういうことになりますと、その初動措置というものを定めた閣議決定が実はございます。これに従いまして、内閣官房の主導のもと、警察庁や海上保安庁、防衛庁並びに関係各省相互に連携をして、被害の拡大の防止とかそういったものに全力を挙げ、犯人の検挙等に努力をしておるところでございます。

 さっきお聞きのように、もし起こった場合、武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷するなどの大規模テロが発生した場合には、当該事態を事態対処法に定める緊急対処事態に認定した場合には、内閣総理大臣を本部長とする緊急対処事態対策本部を設置いたしまして、緊急対処事態対処方針に基づきまして、国全体、地方自治体あるいは報道関係等々が、住民の避難、避難住民の救援等の措置を講ずる、こういうことになっておりまして、こういったことにも全力を挙げて取り組む方針といたしておるところでございます。

本多委員 事態対処法を使うということで理解をさせていただきました。

 最後に二点、外務大臣に伺いたいんですけれども、私の判断、つまり私はミサイル防衛、皆さんの言うとおり、万全でいいものだということにしても、ミサイル防衛をしっかりすればするほど、皆さんは北朝鮮がそういう脅威があるというから何兆円もかけてミサイル防衛をやろうとされているんだと思うんですけれども、もし彼らにそういう意図とかおかしなものがあるとしたら、別な手段を探してくる。それは、意外に簡単なところに簡単にあってしまうんですよ。もちろん、だから、新幹線がやられちゃうかもしれないからミサイル防衛をやらなくていい、こんな議論をしているわけではありません。しかし、我々の税金をかけてミサイルをしっかりしていっても、東京駅で鉄道会社がてんでんばらばらなことをしている、こんなゆるゆるなことで、本当に私はそっちの方の可能性が高いと思う。この可能性が高いかどうかという判断をまず町村外務大臣に伺いたいのが一点。

 事態対処法はきくというのがわかって安心をしましたが、日米安全保障条約で、スペインのあの鉄道テロは、結局警察が犯人を捕まえて、それで、普通のオウム真理教のときのあの犯罪のように、それと一緒になってしまったわけですけれども、国家主体がやったテロの場合でも日米安全保障条約はちゃんとかかわってくるんでしょうか、こういう場合は。

 その二点を外務大臣にお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 どの可能性が高いか、なかなかそれは難しいところがあると思います。

 確かに、委員が御指摘のような新幹線のごみ箱等々というような話、いろいろ考えれば、それは心配すれば本当にいろいろあると思います。そういったいろいろな可能性、例えば原子力発電所を襲うのではないか、いろいろな事態を想定しながら、今、法整備、予算上の対策というのをやっているんだろう、こう思っております。

 今思いついた話で恐縮ですが、例えば第一議員会館だって、表はしっかりと警戒装置をつくり、一々面会証をやっておりましょう。しかし、余りこんなことをばらしていいのか知りませんが、地下の駐車場から来たらもう幾らでも入れますよね。どうもああいうのはやはり本音と建前みたいなところがあって、余りよろしくないなと実は思っておるんです。

 そして、いろいろな国に行きますと、例えばアメリカの国務省の厳重な警戒ぶりなんというのはすさまじいものがあります。国民の利便性、そんなことは二の次だ、まずそういう国家中枢機能は安全にしようということで、その厳重さにやはり我々は唖然とします。多分、日本であんなことをやったらば、国民がアクセスできなくて、どうするんだと言ってごうごうたる非難だろうと思いますが、彼らはそこは敢然と、猛烈な、きちんとした安全を守るということをやっておりましょう。やはり我々、その辺が少しく不徹底といいましょうか、建前と本音みたいなところがちょっとあり過ぎるような気がいたします。

 そういう意味で、これからは、建前も本音もなく、しっかりとしたテロ対策を、これは官庁のみならず、議会のみならず、企業も含めて、すべてのところでやはりしっかりやっていくんだというコンセンサスがないと、やれごみ箱があって不便だとか不便でないとかいう、別の次元の話で対策がばらばらになってくるということは一つの大きな問題なんだろうと思います。

 いずれにしても、外務省としては、外務省としてできる国際的な協力、二国間のテロ対策の協議であったり、国際間のテロ対策のいろいろな条約を結ぶといったような話、テロ情報の収集あるいは交換といったようなこと、あるいはテロ資金対策といったようなことで、政府全体で取り組んでいく必要があるんだろうと思います。

 今、安保条約というお話がございました。それがもし、国というものが明らかに主体であり、かつそれによって国内に相当の騒擾状態が起きる、あるいはそれが攻撃とみなされる、そういうような場合には、まず、それは、我が国のそもそも、安保条約と言わないまでも、日本に対する攻撃で、これは自衛権の発動という形で対応していくのが一番真っ当な対応ではないだろうか。

 ただ現実に、どういう場合にどういう形で自衛隊が出動するか。まず、基本的には、一義的には警察だというのが今私どもの考え方のあれだろうけれども、それがもし大規模であり、かつ警察で対処できない等々、幾つかの要件を満たした場合に、安保条約の前にまず自衛隊が出ていくということが次にあるんだろうな、こう思います。

 そして最後に、日米協力という形でアメリカが出ていく場合というのはどういう場合かな。いろいろ考えたときに一つあるのは、さっきミサイルが飛んでくると、そのために今ミサイルディフェンスをやるわけでしょうけれども、我が方からだって攻撃はできるという権利は当然あるわけであります。自衛権に基づいてあるわけでありますけれども、同時に、米国との協力がもし適切であると判断される場合には米国と協議をするということも、それはあり得るのかなと思いますが、ちょっとこれは余りにも頭の体操に過ぎる話かもしれません。

本多委員 町村大臣から本音と建前というお話がありましたので、ミサイル防衛だけ何兆円もかけて表玄関を守って、東京駅はどこかの地下二階のようにすかすかみたいなことにならないように、しっかりとやっていただきたいと思っています。

 そして、第二点目なんですけれども、ミサイル防衛の話をしていくと、どうしても気になるのが去年の十一月の潜水艦事件の話であります。少し時間がたってしまったんですけれども、どうしても思い出してしまうんです。十分間でいろいろなことをやらなきゃいけない、二十分間でいろいろなことをやらなきゃいけないというのがミサイル防衛なのに、あのときの対応、非常に海上警備行動までの発令が大変遅かったという指摘を受けました。済みません、国土交通省さんと警察さんはもう質問しませんので、お帰りいただいて結構です、官房さんはいてくださいね。

 そして、直後の委員会ではいろいろな方が質問しています。そして、その中では大野長官も、反省すべき点は反省をする、検証すべき点は検証するということを何度も述べられております。その直後ではありませんね、本年の一月十九日に、要は、私はあの事件の反省に基づいたと思っておるんですが、領海内に入っていた潜水艦に対しては、ごちゃごちゃ議論せずに、自動的に海上警備行動を、自動的にといっても、もちろん防衛庁長官が総理の承認を得てということだと思うんですが、自動的にやるという対処方針が決まったんですけれども、これは、どうも官僚の方の説明では反省に基づいていないんだと言っているんですけれども、どうなんでしょう。そこをお聞かせください。

大野国務大臣 まず、私は、前回の海上警備行動、事案が生じてから時間がたってしまった、こんなことではやはり日本の防衛は成り立たない。仮にどこかの船が、潜水艦が領域に入ってくれば、直ちに海上警備行動を発動すべきである、そのためにはどうしたらいいんだろうか。相談している間なんかありません。やはり事前に、潜水艦はいきなり飛んでくるわけじゃありませんから、事前に近寄ってくる、そのときから情報をきちっと共有している、内閣もそれから防衛庁も全部共有している。そういうことで、事前にそういう状況にあるから、もし入ったら直ちに海上警備行動を発動しますよという了解のもとに防衛庁長官が発動する、こういうシステムに直したわけでございます。

本多委員 反省に基づいてでいいんですよね。はい、ではそれで、うなずいていただいたので大変よかったんですけれども。

 私、この点で、官僚の方がいろいろ初めてのことで相談していたというのは百歩譲って何となくわかるんですけれども、実はやはり決定的におかしいと思うのは、官房副長官に伺いたいんですが、総理が八時四十五分の海警行動の発令の直前に知らされているわけですね、八時半ごろというふうに聞いていますが。相談をしている二時間の前半で、とりあえず今こんな相談をしている、承認を求めるかもしらぬ、こんなことだけでも総理に一報を入れておくべきだったというところは絶対に官僚の皆さんの判断が間違ったんだと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

山崎内閣官房副長官 私からお答えを申し上げます。

 今ほどの御質問でございますけれども、さきの潜水艦の事案でございますが、各種の情報等を整理して対応案をまとめた上で、総理に報告をして海上警備行動の承認を得る、こういうことがあるわけでございますけれども、この種の事案につきまして、実はあのときは、政府部内でまず状況を認識する、統一することが重要であるということが私は少し欠けていたと思いますね。

 そういう反省に立って、総理以下、政府部内で早急に情報を共有できるような、そういったシステムを実は行っておるわけでございまして、御指摘のとおり、私は、非常におくれたということは十分反省に立っておる、こう思っております。

本多委員 余り多くの論点を詰め込まないでいただきたいんですけれども、つまり、官僚の方がごちゃごちゃ話し合ったことは私はいいと思いませんが、百歩譲って、外務省が中国に気を使えと言ったのか何かわかりません。それから、法律関係の人が――それは違うと大臣は言っていらっしゃるので違うと信じますが、では何だったのかというと、海上警備行動というのは一体何をやるんだとか言って、いろいろ書類を引っ張り出していたのか何か、そのこと自体問題なんですが、百歩譲って、総理に、今そういう相談をしているんです、あと一時間ぐらいでまとまりますから、その後出してもらいますよ、今領海にもう入っています、できるだけ早くその相談を終わらせますから、ちょっと早目に背広着ていてください、こういう話をすべきだったんではないですか。これは認めていただけますよね。

山崎内閣官房副長官 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、反省に立って……

本多委員 今、いずれにしましてもとおっしゃられたんで、それはいずれにはできないんですよ。これはいろいろ問題があって直された、だから私は評価しているんです。私たちの党の前原委員も、直後に具体的な提案を委員会でして、それはかなりの部分取り入れていただいていい対処になった、これはいいことなんです。

 ただ、私は、こうなれば、事実上もうこれは直後に総理に連絡行くんですから、改善はされているんですよ、だから皆さん、びびることないですよ。ただ、あのときはまずかったということをやはり認めないと。これは官僚の名前まで挙げて本当は責任追及したいんですけれども、どういう役職が何名集まっていたのかということを教えてくれないんですよ。政治家が何時に知ったかだけは教えているんだけれども、官僚何人集まって、だれが何を話し合っていたのか、ブラックボックスなんですね。それはそれでいつか追及するチャンスがあればしたいですけれども、そういうことをしようというわけじゃないんです。

 総理にすぐ上げなかったのは間違いだったですよね、第一報を。

山崎内閣官房副長官 仰せのように、早急に総理に上げるべきだと私も思います。

本多委員 いろいろなことがあると思います。そして今、日本の省庁は縦割りだということが大変問題がいろいろ発生する原因になると思います。調整をされるならされるで、それはそういうこともあるんでしょうけれども、まずは調整中なんだ、こういうことが起こっているけれども調整中なんだというのは総理ぐらいに言っておいていただきたい。

 それで、ちなみになんですけれども、ちょっといろいろ報道や議事録で多少あるんですが、防衛庁長官は何時にお知りになったんでしたっけ、この点。

大野国務大臣 私の記憶が正しければ、六時半だったと思います。

本多委員 これ、ちょっと、防衛庁長官はいいんですが、官房長官が七時ということですが、杉浦官房副長官は発令後の九時だとおっしゃっているんですね。

 ちなみに、きょうお越しいただいた山崎副長官はいつお知りになりましたか。

山崎内閣官房副長官 私も九時ごろ秘書官を通じて報告をいただきました。

本多委員 危機管理監とか役所の責任者もいます。しかし、まさに官房長官であるとか官房副長官というのは、こういうときの調整に入っていていただく。少なくとも、総理が寝ているかもしれないと気を使ってこれは連絡が遅くなったのかもしれませんけれども、だとしたら、官房長官や官房副長官は、専門的なことをわからなくても、横で聞いていてもらいたいわけですよ。

 これは、山崎副長官、お怒りになりませんでしたか、後で聞かされて。

山崎内閣官房副長官 もう少し早く報告をいただきたかった、率直にそう思っております。

本多委員 本当に私、自分がもし与党のそういう政治家だったとしたら、もうちょっと、別の与党の政治家も怒られましたけれども、内閣官房副長官ですからね。これは本当にもう大変な問題で、これからミサイル防衛の法案を審議させていただきますけれども、何か理想図絵みたいにこんなチャートを出されても、去年の十一月に我が国の政府というのはこういう対応をしたんだということはしっかりと反省を、一月十九日の一歩前進は認めますけれども、もっとしっかりと、個別の官僚の責任まで含めて追及をすべきだと私は考えています。

 さて、次に、時間がなくなっていますが、ミサイルの話を少しさせてください。

 新たな脅威のテロ、ゲリラ、いろいろ並べている中でも、皆さんが大変重視をされているのがミサイルだと思います。

 まずコストの話からさせていただきたいんですが、一兆円というような、今これから配備計画がもう具体的に決まっているものはそういう数字が出ております。しかし、実は、今武器輸出三原則の緩和の関係で進んでいる話というのは、今政府が出しているものじゃないですよね。次世代、次の世代のMDというのが既にアメリカでは開発が進んでいて、当然ミサイル防衛を導入すると決定した政府は、これより性能がアップしたものが出てきたら、普通、よほどの大きな欠陥がない限り導入をしていくと思われるんですね。

 このコストというのは、一般的にMDのコスト、コストという話をするときに、皆さんプラスしてお話をされていませんが、次世代のものというのは、何か今の装置と口径というんですか、これが違うんで、全部装置を取りかえなきゃいけないそうなんですよね。新たなものを入れるぐらいの額がかかる。素人的に考えても掛ける二、もっとかかるんじゃないかと思いますが、大野長官、いかがでしょうか。

大野国務大臣 今、日米で共同技術研究をしており、やがて共同開発、生産になっていく、この問題でございます。十一年度から始めておりまして、十六年度までに約二百五十三億円使っております。さらに十七年度予算には、試験等に伴う経費として九億円計上いたしております。本件につきましてはおおむね平成十七年度に終了する見込みでございます。

本多委員 今やっている研究にかかる費用というのはそのぐらいだというのは存じていますが、今後それを配備していくとしたらどのぐらいかかると大体見積もっていらっしゃるのか。

大野国務大臣 開発段階の移行については、現在検討中であります。したがいまして、今後の必要経費について確たるお答えができないということで御理解を賜りたいと思います。

本多委員 そうすると、コスト論もできないんですよ。これから我が国の財政も大変なことになっていって、今のMDだって、余りコスト論だけ言ってもどうかと思いますけれども、それは私たち大変大きなコストだと思っているんです。

 それに、実はこれ自動的に更新されるものが、もう一緒に共同研究して共同開発しているんですから、これは我が国が導入しないということはほぼあり得ないと思っているんですね。それに関して大体の費用見積もりもおっしゃれないまま今ミサイル防衛が進んでいるということだけを指摘させていただきたいと思います。こういう見積もりもしょっちゅう、微調整という範囲ではなくて二倍とか三倍という規模でずれていることがよく過去の戦闘機でもあるわけで、本当にコストの話もまずしっかりと議論をしていきたいと思っております。

 そしてもう一点、これから法案の審議の中でまたミサイル防衛の話もたくさんさせていただきたいと思うんですが、やはり先ほど中野議員が指摘をした点というのは大変大切なことだと思うんですね。実は今まで、日本の国民も税金払う、ミサイル防衛と言ったら、それ、よしと思う方も多いと思うんです。実は、しかし、本当に首都圏の一部とあとどこか三カ所、それも、中野さんの言ったようなさまざまな条件をクリアして、事前に探知して、民有地もいろいろ確保して、首都圏に範囲を広げてやっと首都圏を撃ち落とせる。それも日本全国で三カ所という、それはもちろんイージスありますけれども、こういう国民の間に明らかに守れる土地と守れない土地がはっきりした防衛システムというのは初めてなわけですよね。これは国民の理解を得られるとお考えでしょうか。先ほど、わざわざ中野議員は先生の選挙区のことまで出して言われました。たまたま私は埼玉ですから、入間のあれが入るのかどうかわかりませんけれども、それはどうなんでしょうか。もう一度明確にお答えください。

大野国務大臣 一番大事なことは、情報収集、これをきちっとやって、そしてどの方面からどの方面へということを探知することでございます。こちらの方面から撃ってくるとなるとこっちの方面ということでありますし、それから、そこへ集中する、これも大事なことであります。集中した場合には、イージスでまずやって、それからペトリオットPAC3で構えるということであります。

 問題は、次に、事態が急変してミサイルが日本へ飛んでくるという場合、この場合は、やはりイージスを何隻配備できるかというような問題もありますし、その辺は問題でありますけれども、一番の問題は、やはり先生御指摘のとおり、このペトリオットPAC3が三高射群ということになりますと、そこをたびたび御説明申し上げておりますけれども、例えば政治経済が集積している地域ということが主眼になってくる、このことについては御理解をちょうだいしたいと思います。

本多委員 余りその説明の仕方をされない方がいいと思います。日本全国に政治経済頑張っている方々はたくさんおられますから、首都くらいはいいですけれども、あとの二カ所とほかの違いは何なんだという話になってまいりますので、非常にこれ、私は、皆さんの立場に立って、やるならもうちょっと、中途半端というか、どういうふうに考えたらいいのか。ましてや我が国は、基本的には、北朝鮮からのミサイルに対しては、沖縄にあれだけの基地を置いて、日米安全保障条約で私たちも一定のコストを払い、皆さん的に言えば対米協力もいろいろ一生懸命されてコストを払った上で、核抑止や核ではない抑止で我が国を守ろうという発想に立っているときに、こういう中二階のような、中二階なのにそれもまた中途半端。大野長官は何か技術的にもおかしなことを言っていらっしゃる気がするんです。どこに飛んでいくか調べても、三高射群にしかないわけですから、明らかに間に合わない国土の地域が出てくる。これはしっかりと認めていただきたいと思っております。

 ミサイル防衛の具体的な話をもう一点だけ。弾道ミサイルの中距離の話だけが割と焦点になりますけれども、実は、中国を脅威だと思っていらっしゃる方、そういう論調もたくさんあります、その中で、中国の奥地からICBMのような長距離のものを撃たれたらこの弾道ミサイル防衛は機能をいたしますでしょうか。

大野国務大臣 我が国が導入をしようとしておりますBMDシステムでございますけれども、この対象とするもの、つまり対処能力の問題であります。これは射程が千キロから千三百キロ級の弾道ミサイルに対処し得るように設計されております。

 このような観点から、ICBMどうだ、こういうことでありますけれども、五千五百から一万キロぐらいでしょうか、このICBMの対処は、これも大変、これから現実問題として考えていかなきゃいけない問題でありますけれども、このICBM、五千五百から一万キロ級のものに対しましては対処が困難である、現実的に不可能であろう、こういうようなことでございます。

本多委員 それでは最後に、武器輸出三原則の問題、これも防衛大綱にはいろいろな政治的な事情で本文には書かれず、官房長官の談話ということで書かれた部分ですが、私はやはり日本の政治にとって大事な転換だと思っています。

 ノーズコーンというものをつくる、ミサイル防衛の部品をつくる技術が、皆さんの説明だと日本のたくみのわざでしかできないと。だったら、ちょっと現実性はないのかもしれないんだけれども、私は、武器輸出三原則をどうしても守ろうという立場から、ではその会社に泣く泣くアメリカに行ってもらってアメリカでつくってもらえれば、この三原則はクリアをできるわけです。そこまで申しませんけれども、皆さんの説明はとりあえず納得をしたとしても、そして、私もミサイル防衛を絶対要らないとは思っていませんから、しようがない、ではそれだけはと思いますが、今回の武器輸出三原則はそこで悪乗りでございまして、公明党の先生からも見識のある御指摘がございましたけれども、このものに限らず、いろいろなものを個別に判定して認めていくということが入ってしまったわけですよね。

 個別に判定をして認めるというのは、武器の輸出ですから、それはほぼどこの国もいろいろやっているわけで、これは、先ほど逢沢副大臣は、公明党さんの呼び方に倣いましてこのことを武器禁輸三原則と大変いい呼び名に呼んでいただいたので、私も今後そういうふうに呼ぼうと思っておりますけれども、この武器禁輸三原則は完全に骨抜きにされていると私は思っています。

 時間がないので最後に一点だけ伺いますが、実は私は、自民党の先生方でこれを緩和したいという方々、それから財界で緩和してくれという方々の気持ちは当然わかるんです。これは、武器輸出三原則なんというのを持っているとマイナス面はたくさんあるんです。それは経済的なマイナス、それから技術開発も、私はどこまでおくれるかわかりませんが、それは多少、あんなややこしい原則がない方が、いいこともたくさんある。それから私は、実態論として、おんぼろになった船をインドネシアに売るぐらいの話は、実は、政策としては別にいいかなと思うんです。ただ、原則というのは、破るとメリットもあるけれども、グレーゾーンがあるからちょっとその手前で線を引いて、苦しいけれども守っていこうというのが原則だと私は思うんです。それを今回のような判断で一律に崩壊をさせていくと、実は一方にメリットがあったわけです、我が国が国際場面で発言をしていくときに。

 例えば、いろいろな軍拡の問題に文句を言ったときにも、はっきり言ってフランスやアメリカには言われたくないわけですよ、世界の国は。あなたたちが世界じゅうに、イラクにもアフガニスタンもあんな状態にした大もとの理由はどこの国なんだといったら、フランスが武器を売った、アメリカが武器を売ったと必ずみんな思っているわけですね、言うか言わないかは別にして。その点だけは我が国は、軍事力はそこそこだけれどもしっかりと自信を持って言えるという一つのポイントがあった。これを、ノーズコーンの話は百歩譲って認めてもいいけれども、これを機に全部ずるずるにしたというこの判断は一体どういうことなのか。これをぜひ所管の経済産業政務官、来ていただいていますのでお答えをいただいて、最後に外務大臣と防衛庁長官にもこれでいいのかということをお答えいただきたいと思います。

平田大臣政務官 基本的には、経済産業省といたしましても、国際紛争等の助長を回避するという平和国家としての基本理念に照らしまして、やはり個別の案件ごとに検討の上結論を得る、そのようにお願いを申し上げたいというふうに思っております。

 さらに、さまざまな案件があると思いますけれども、テロ対策あるいは一層の国際協力の必要性、また私どもの立場でいえば、一次エネルギー、大半は輸入でございますので、そういうことが阻害されるということがあれば、これはぜひ個別の案件でしっかり御議論をいただきたいなというふうに思っているところでございます。

町村国務大臣 今委員から、これで武器輸出三原則がずるずるになってしまったというお話がありましたが、私はそんなことは思っておりませんし、また、そうもならないと思っております。

 この官房長官談話、非常に抑制のきいたものになっております。ただ、もちろん原則、基本理念は、国際紛争等の助長を回避するという平和国家の基本理念、これは全くそのとおりだろうと思います。

 ただ、安保会議で実は何度か議論になりましたのは、余り安保会議の議論を言っちゃいけないのかな、いや、まあいいことにしましょう、ここに書いてありますからね。要するに、テロ対策とか海賊対策、例えば今回のマレーシア、インドネシアの、あそこは前から、特にインドネシアからは、海賊対策のために一定の中古船が欲しいという話があるんですね。これは随分議論したんですが、結局、今まではそういうのは一切だめということになっていました。よしんば自衛隊のある船で全部武器を外してもそれはだめだとかいう話で、それはおかしいんじゃないかと。

 私は、こちらで、一方で海賊対策しっかりやりなさいと言いながら、条約までつくろうと言いながら、そのために必要な何か機材をくれと言ったら、これは輸出貿管令別表に書いてある船であり、あるいはヘルメット、防弾チョッキ、何でヘルメット、防弾チョッキまで押さえちゃうんだろうかなと。そもそもヘルメットも防弾チョッキも、それは戦争のときに使うものだから武器だといえば武器かもしれませんが、別に何も人をぼんぼん殺傷しようというものじゃありませんよね。こういうものは見直してもいいのではないか、私なんかはそう思っております。

 ただ、インドネシアに出す、そうすると、それは、インドネシアのアチェの、場合によれば、国内紛争の抑圧に、軍に使われるから困るなというような議論は確かにあると思うんです。そこは、まさにインドネシア側とどういう話をし、どういう用途に使うか、その使われ方等もきちんとチェックをすれば、無制限にどんどん使うということにならないように十分チェックできるのだろう、私はこう思っておりまして、そういう意味で、何も、何でもかんでもどんどん出していいというわけではない。やはり一定の要件に、要件は何かというと、それはあらかじめ全部提示するのは難しいかもしれません。例えば、今のインドネシアのようなケースの際にも、いや、これも、アチェがあるから一切だめですという言い方は、いささかあつものに懲りてなますを吹いているような感じもしますので、そこは個別判断でいいのではないか、私は官房長官談話をそのように受けとめているわけでございます。

大野国務大臣 私は、武器輸出三原則の基本的な理念、つまり、国際紛争等を助長しない、回避する、こういう平和国家の理念は絶対に変えてはいけないと思っています。

 それでは、個々に審査する場合の問題点はどういう視点があるのか、見方があるのか。これは、今町村外務大臣がおっしゃったとおりでございます。テロ、海賊、これを国際的な共同作業の中でどういうふうに考えていくか、あるいは日本の安全についてどう考えていくか、国際的な協調、共同作業についてどう考えていくか、こういうきちっとした理念のもとにここに厳格に考えていくべきだと思っています。

本多委員 私は、海賊対応であるとかヘルメットであるとか、よさげなものまであえて縛って、苦しいながらも頑張って別なメリットをとっていくのがこの武器禁輸三原則の意義だということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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