衆議院

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第6号 平成20年4月25日(金曜日)

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平成二十年四月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 嘉数 知賢君

   理事 今津  寛君 理事 北村 誠吾君

   理事 武田 良太君 理事 仲村 正治君

   理事 山口  壯君 理事 渡辺  周君

   理事 赤松 正雄君

      安次富 修君    赤城 徳彦君

      上野賢一郎君    大塚  拓君

      瓦   力君    木原  稔君

      木村 太郎君    坂本 哲志君

      篠田 陽介君    薗浦健太郎君

      寺田  稔君    浜田 靖一君

      細田 博之君    山内 康一君

      川内 博史君    神風 英男君

      津村 啓介君    長島 昭久君

      田端 正広君    赤嶺 政賢君

      辻元 清美君    下地 幹郎君

      西村 真悟君

    …………………………………

   防衛大臣         石破  茂君

   総務副大臣        谷口 隆義君

   国土交通副大臣      松島みどり君

   防衛副大臣        江渡 聡徳君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   防衛大臣政務官      寺田  稔君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  浅利 秀樹君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  山本 庸幸君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 井上 美昭君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (法務省大臣官房訟務総括審議官)         貝阿彌 誠君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 始関 正光君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   林  景一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         桝野 龍二君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 小野 芳清君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   小川 秀樹君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   中江 公人君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  高見澤將林君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛省経理装備局長)  長岡 憲宗君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   安全保障委員会専門員   板垣 芳男君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  山崎  拓君     篠田 陽介君

  馬淵 澄夫君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     坂本 哲志君

  川内 博史君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     上野賢一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上野賢一郎君     山崎  拓君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件


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     ――――◇―――――

嘉数委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官浅利秀樹君、内閣法制局第一部長山本庸幸君、警察庁長官官房審議官井上美昭君、警察庁刑事局長米田壯君、法務省大臣官房訟務総括審議官貝阿彌誠君、法務省大臣官房審議官始関正光君、外務省大臣官房審議官新保雅俊君、外務省大臣官房参事官小原雅博君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省中東アフリカ局長奥田紀宏君、外務省国際法局長小松一郎君、国土交通省航空局次長小野芳清君、防衛省防衛参事官小川秀樹君、防衛省大臣官房長中江公人君、防衛省防衛政策局長高見澤將林君、防衛省運用企画局長徳地秀士君、防衛省人事教育局長渡部厚君、防衛省経理装備局長長岡憲宗君及び防衛省地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

嘉数委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

嘉数委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今津寛君。

今津委員 護衛艦「あたご」と漁船の衝突、イージスシステムにかかわる特別防衛機密流出、また前事務次官の不祥事など事案が発生いたしておりまして、これらの再発防止への取り組みが喫緊の課題となっております。

 不祥事については深刻に受けとめて、防衛省・自衛隊員としての自覚をしっかりと持って、気の緩みが生じないように努め、それぞれの責任を明確にし、再度不祥事が起きないよう体制、管理面の不備を改善する必要があると思います。また、こうした事案を起こさないためにも、抜本的な防衛省改革が必要だと思うのであります。

 その防衛省改革につきましては、石破防衛大臣が日ごろ積極的に取り組んでいただいているところでございまして、私たちは、石破防衛大臣の防衛省改革への姿勢を大きく評価するとともに、ぜひ頑張っていただきたいと激励を送るものでございます。

 さて、名古屋高裁で、イラクへの自衛隊派遣について、まことに理解しがたい判決が出ました。主文ではなくて傍論であったとしても、これは日本の国のあり方に対して大きく影響を与えるものでありますので、この際、私は、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思っているわけであります。

 自衛隊のイラク派遣に反対する市民グループのメンバーが国を相手取って、派遣が憲法違反だとの確認などを求めた訴訟の控訴審判決が、十七日、名古屋の高裁でありました。青山邦夫裁判長は、一審名古屋地裁判決と同様に、違憲の確認や派遣差しとめの訴えは不適法などとして原告側控訴を棄却いたしましたけれども、航空自衛隊の活動について、戦闘地域であるバグダッドへ多国籍軍の武装兵員を空輸するのは、他国の武力行使と一体化した行動である、イラク復興支援特別措置法と憲法九条に違反をすると述べて、違憲判断を示した。私は、このことをニュースで聞きまして、全くびっくりしたわけであります。

 イラクには、陸自がサマワに行って大活躍をして、そしてイラクの国民からしてみたら、要するに残っていてほしい軍への一番大きな評価をいただいたこのイラクへの自衛隊の復旧支援の参加でありますけれども、今、空自がアリ・アルサレム基地からバグダッドへ物資を運んだりなどして、テロとの闘いに貢献をしているわけでありますが、それを憲法違反と断ずるのは、私は、あの過酷な土地で非常に厳しい条件で努力をされておる自衛隊諸君のみならず、我々にしても全く受け入れられない判断だというふうに思いますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 私は、今津委員と認識を全く一にするものでございます。

 御指摘のように、これは傍らの論であって、自衛隊のイラク派遣は違憲であるというロジックを挟むことが結論を導き出す上に必要であったかといえば、どう読んでも、必要であったとは思えない。却下もしくは棄却すべきものであり、それを導くのに必要な論ではないということです。

 また、私どもは、バグダッド空港は非戦闘地域だというふうに申し上げておりますが、バグダッド全体について非戦闘地域であるかどうかという判断はいたしておりません。そこのところは、議論としていかがなものかなというふうにも思います。

 また、一体化論のお話でございますが、一体化しないために非戦闘地域という概念をわざわざ設けている、そしてまた憲法九条第一項に抵触しないように、そこは用心して用心して、憲法の趣旨を体現するために法律を書き、そしてまた、仮にそういうような事態が現出したとすれば、それは中断とか撤収とかそういうことになるわけであります。そこのところがよく御理解をいただけていないのかなという気はいたします。

 いずれにしても、国側全面勝訴の判決でございます。私どもとしては、判決は判決として認識をいたしますけれども、この航空自衛隊の活動というものは、委員御指摘のように、国際の平和と安全に寄与する、私ども日本国としての責任を果たすべきもの、そして日本の国益を確保すべきものというふうに考え、今後とも隊員の士気がいささかなりとも落ちることがないように、政府として努力をしてまいりたいと考えております。

今津委員 大臣は明確に、この判決は理解できない、間違っているのではないか、こういう御発言をされた。私は、やはり大臣が公の場所できちっと自信を持って発言するということが、国民も安心しますし、また自衛隊諸官もほっとするというか、違憲なことをさせられているのか、こういうことを思わせてもかわいそうですから、そういう面できちっとしていただきたいと思います。

 そこで、バグダッドは戦闘地域なのか、そうでないのかということですね。アルカイダというのは、国もしくは国に準ずる者という規定からいうと、違いますよね。だから、国もしくは国に準ずる者であるというふうに思えばいささか疑義が出てきますけれども、我々はテロと闘っている、自衛隊はテロと闘っている、その相手はやはりアルカイダを主体としたテロ集団だということになると、この判決、バグダッドはイラク特措法に言う戦闘地域に当たるというのは、私は間違っている解釈だというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

石破国務大臣 おっしゃるとおりだと思っております。

 私どもは、バグダッドというものを指して非戦闘地域かどうかということは申し上げておりません。バグダッド空港というものに限定をして申し上げているわけでございますが、そこに、国または国に準ずる組織の間において国際紛争が行われているか、武力の行使がなされているかといえば、それは違うだろう。

 まさしく、アルカイダというのはそういうような認識。つまり、国または国に準ずる組織というときに国の要件というのは幾つもありますが、領土があって、そしてアイデンティティーというか同一帰属意識を持った国民のようなものがいて、統治機構があってというのが国の要件というふうに大体言われるわけですが、ではアルカイダというのがそれを満たしているか。アルカイダの領域というものがあり、私はアルカイダ国民であるというような、そういう帰属意識を持った人たちがおって、そこに統治機構があるかといえば、それは全部否定的に解すべきではないだろうか。そうすれば、国際紛争の主体たり得ないということになるのであって、戦闘地域というのは、国際紛争が行われておるところという概念であって、危険なところという概念とは質的に異なるものでございます。

 危険か危険じゃないか、国際紛争が行われているか行われていないかというのは、現実としてクロスするというかオーバーラップすることはございますが、これは、民航機も就航しておる、だから危険度というのはそれほど高くない。しかし、それだけで非戦闘地域という判断にはならないのであって、そこにおいて国際紛争が行われていますかといえば、私どもはそういう評価はしておらないということでございます。

今津委員 国の防衛の最高指揮官がきちっと、この判決については考え方が全く違うという御発言をされたということは、私は非常に大きいというふうに思います。

 それで、なぜこういう議論がいつも出るかということなんですね。そういう国は日本だけでないでしょうか。自衛隊が国際貢献をする、テロと闘う。そのときに、いや、法律に適しているのか適していないのかと。同盟国と一体となって行動しなければならないのに、一体となれない。また、憲法の問題が出てくる。これは我が国だけの特殊事情だというふうに思うんですね。それを我が国は言いわけにするわけですけれども、しかし外国から見れば、何と都合のいい国だなということを恐らく思うと思うんですね。

 大臣、やはり我々は、日本人として誇りのある評価というものを受けたいとすれば、例えば安全保障基本法、それから恒久法、これをやはり早急に野党の方々と議論をして、理解をしてもらって、そして縦横無尽に隊員の方々に頑張ってもらうということと、特に集団的自衛権の解釈ですね。これもいつも問題になってくるわけであります。要するに、日本が何かあったときにはアメリカが武力行使をして、命をかけて守ってくれるけれども、しかし、同盟国アメリカに向かうであろう某国から撃たれたミサイルを落とせる能力があったとしても、その集団的自衛権という物の考え方の中で、そこのところが非常にいろいろな議論があるという国は、恐らく我が国だけではないかというふうに思うのであります。

 この安全保障基本法、恒久法、集団的自衛権の解釈、これについての大臣の御見解を聞きたいと思います。

石破国務大臣 現在、政府といたしまして、集団的自衛権に対する考え方、つまり集団的自衛権というものは、独立国家である以上保有しているのは当然であるが、その行使は、自衛の必要最小限度を超えるので憲法上許されない、大意そのようなことであったかと記憶をしておりますが、それを変更するという考え方は有しておりません。

 他方、国連憲章に定められた固有の権利というものを保有しているが行使できないというのは、これは一体どういうことですかという議論。そして、私がやられたら助けに来てね、あなたがやられても助けに行かないけれどもあしからずねというようなことを公然と主張しているのは、これは我が国だけであって、そのことがどうなのかという議論。さらには、集団的自衛権の定義をどう考えるか。つまり、我が国においては、我が国が攻撃されていないにもかかわらずという、普通の国際法の教科書には出てこないことが書いてあるわけで、そこのところをどう考えるのか等々の議論は、私は今津委員とともに、自民党の防衛政策検討小委員会で随分と長い間議論をしてまいりました。そこにおいてすごく精緻な詰めというのが必要なんだろうと思っております。冒頭申し上げましたように、政府として、この考えを変えるという立場にはございません。それは念のため申し上げておきます。

 恒久法の御議論もございましたが、私は、安全保障政策というのは、どの党が政権をとったとしても、がらっと変わるということがあってはならないことなのだと思っております。そこにおいて共通認識を持っておかないと、政権党がかわったから安全保障政策が百八十度変わりましたというようなことがあっていいのか。それは、そうだとは思いません。恒久法の議論も、テロ特の延長あるいは補給新法において、与党からもそして野党の先生方からも恒久法を制定すべきだというお話がありました。その方向性において一致するとするならば、問題は中身なんだと思います。

 縦横無尽というお言葉をお使いになりましたが、やはり我が国が、本当にそれが国際の平和の実現のためであれば、自衛隊というものを派遣するということがよりフレキシブルに行われていいということはあるのでしょう。しかし、そのときに、国連の決議との関係をどうするか、あるいは議会における文民統制ということで、事前承認なのか事後承認なのか、あるいは数をどうするのか等々の議論、それはやはり行われなければいけないのだと思っております。

 私たちは、国民の財産であります自衛隊というものをいかに国益のために活用するか、あるいは国際社会のために活用するか、そのためにどうすればいいかということは、これは与党も野党も同じ認識の方が多いのだと思います。そこの幾つかの論点というものについて考え方の違いがございますから、そこのところを、なぜそうなのかというお話をきちんとするということが必要なことではないかと考えております。

 政府におきましても、一般法も念頭にはございますが、それをどうするかというスケジュール観は、今申し上げられるような段階にはございません。自由民主党において一般法における議論がなされておるというふうに承知をしておりますし、あるいは各党においてそういう議論がきちんとされる。期限が来たから慌ててばたばたというようなことは、私は、だれのためにもならないのではないかというふうに個人的には考えておるところでございます。

今津委員 大臣のお話は非常に明快でありまして、私は、大臣の国防に対する熱意そして情熱、そういうものに日ごろから敬服をいたしておりまして、さらに、声にはなってもならなくても、とにかく応援部隊が大臣に対しては多いですよということを申し上げて、ひとつ頑張っていただきたいと思います。

 それで、党派を超えて、この間も若手の議員が集まりまして、今大臣が言われた趣旨で勉強を重ねていこうということでありまして、渡辺先生もこの間来ておられましたよね。ぜひ頑張りましょうと申し上げておきたいと思います。

 今、官邸でもあるいは防衛省でも、それから私たち与党として自民党も、防衛省改革にどうあるべきかということで取り組んでいるんですが、党の方は今、浜田靖一先生が委員長で、取りまとめを終わり、きのう記者さんにお話をしたところでございます。まだ党内手続は残っているわけでありますけれども、いろいろな改革を積極的に今やらなければだめだということで提案させていただいているのでありますが、その中には、参事官制度を廃止して補佐官、そしてその補佐官も、制服であったりあるいは民間人からもというようなことで、非常に今までの防衛庁、防衛省とは違う、やはり一つの見識というものを示す内容になっておりますので、ぜひ他の野党の方々もそれに御注目をいただきたいと思うんです。

 時間がもうないのでありますが、一つだけお聞きをしたいというふうに思います。国家安全保障会議、日本版NSCのことでございます。

 小池大臣のときに私ここで筆頭理事をやっていまして、官邸が非常に熱心に、何としてもこれを提案して、そして議論をしてほしい、こういうお話がありました。時期的にどうかな、タイミングもどうかなという感じはあったんですが、大臣は非常に熱心で、ところが、この間の議会で、継続審議でなくて廃案になってしまったんですね。

 浜田委員会でそのことを取り上げて、アメリカとは同じでもない日本型のNSC、これをつくることが日本国国家の安全につながる、こういう認識で御提案をしているのでありますが、これが最後の質問になってしまいましたけれども、日本版NSC、国家安全保障会議を大臣の手元で推進していただきたいと私は思いますけれども、大臣のお考えはどんなものでしょうか。お聞きをしたいと思います。

石破国務大臣 小池補佐官、あるいは小池大臣のときにNSCというものが強力に主張され、法案化まで至ったということはそのとおりでございます。

 ただ、これは法律の形としてはどういう形をとるかというと、安全保障会議設置法を改正する法律案という形で出てきているわけですね。そうすると、安全保障会議とは何ですかというと、これは諮問機関でございまして決定機関ではございません。そこをどう考えるか。今でも安保会議というのはあるわけで、これの機能をいかに充実させるべきかというお話。片や、防衛省設置法の目的には何と書いてあるかというと、防衛省と自衛隊というのは当然組織的同一性を有しているわけでございますが、そこにおいて、防衛省は自衛隊を管理し運営する、こう書いてあるわけですね。

 そうすると、この国の安全保障政策というものはだれがどのように決めるのか、諮問に答えるという形ではなくて決めるのか、そういうところからそもそも論をやっていかなければいかぬのではないかと思います。その形として、NSCというものも一つのアイデア、安保会議というものをさらに充実強化するというのも一つのアイデア、また今の内閣で行っておりますように三大臣会合というもの、官房、外務、防衛、これを頻繁に行う、いろいろなやり方があるんだろうと思います。

 認識は、まさしく委員のおっしゃるとおりだと思いますが、それを形にするときに、それぞれの設置法をどのように変えていくかという議論、私は、防衛省設置法と安全保障会議設置法というのはかなり密接な関係があるような気がしているのです。そこまで詰めて、どうするのかということをぜひ政治の場において、こうではないかという御提言を政府に対して賜り、また政府としてもそれを受けてといいますか、それを見ながらいろいろな議論を深めてまいりたい。

 いずれにしても、そういうような事柄の必要性というのは、これもまた私は委員と認識を一にするものでございまして、いつまでもだらだらと議論をしておっていいというものではないと思います。日本がそういうことができるまで世界の安全保障環境の変化は待ってくれないということは、私は強く認識をしておるところでございます。

今津委員 わかりました。

 大臣のお話を伺っていますと、もう少しちゃんと日本の現状の中で考えてみよう、アメリカはアメリカだし、ドイツはドイツだし、フランスはフランスだ、日本の場合はどうかということの中で日本版NSCを考えてみようということでございますので、私たちもその議論に参加をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

嘉数委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。

 私の方からは、きょういただいた時間二十分で、今自衛隊・防衛省を取り巻く問題のうち、いわば大臣を頂点にして、手足としての最前線の自衛隊員の現状とそれから頭脳としての防衛研究所の問題に絞ってお話を聞いてみたいと思います。

 さきの防衛計画大綱の見直し、さらに中期防の決定に当たりまして、大臣、当時大臣じゃない状況の中で、私も一緒に参画をさせていただいていろいろ議論をした。その結果として、あのときは人数、自衛隊の総枠といいますか、その辺の話に集中しましたけれども、一つ大事な問題として、十七年度から二十一年度にかけての中期防の中身の中で「防衛力の基本的な事項」というくだり、「人的資源の効果的な活用」というところにちょっと注目をしたいわけですが、一つは、先ほど言いました手足としての最前線の隊員の抱えているさまざまな課題、ここでは「人事・教育訓練施策の充実」という形で挙がっています。もう一つは、「安全保障問題に関する研究・教育の推進」ということであります。

 先に防衛研究所の方、頭脳の方から行ってみたいと思うんですけれども、防衛研究所のくだりを正確に読みますと、「防衛研究所の安全保障政策に係る研究・教育機能の充実を図るとともに、安全保障分野における人的交流等により人的基盤を強化する。」こういうふうに、「安全保障問題に関する研究・教育の推進」というくだりの中で明確に書かれております。私も当時、こういう規定ぶりにつきまして非常に期待を持ったといいますか、防衛研究所の中身を充実していくということについて強い関心を持った次第でございます。

 この問題について、この約四年間の中で防衛研究所がどのように、当初ここに掲げたような研究、教育の推進について進展を示してきたかということについて、まず「研究・教育機能の充実」という前段部分についてどのように進展をしてきたのか、努力をしてきたのか、この点につきまして高見澤局長の方から御答弁願いたいと思います。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 防衛研究所は、防衛省のいわばシンクタンクに当たる機関でございまして、先生御指摘のとおり、中期防におきましても、そういった研究機能を強化していく、特に政策、戦略の立案をバックアップしていくというような観点から、政策サイドからの要請に応じた調査研究の実施、そういったことを充実させていくということでございます。そして同時に、教育もやっておるということでございます。

 中期防期間中におきまして具体的にどのような施策をやってきたかといいますと、一つは、諸外国の研究機関や研究者との共同研究を充実させていこうということでございます。平成十七年度以降、ロシア、中国、インドネシア、シンガポール等との共同研究を実施しております。

 それから、教育面におきましては、防衛省、それから防衛省だけではなくて関係省庁の幹部職員にも来ていただきまして教育をやっておりまして、いわゆる一般課程というものがございますけれども、そのカリキュラムの見直しを行っております。具体的には、事例研究を導入したりセミナーを充実させるということで、諸外国の最新の研究機関でもやっているような手法を取り入れてやっているというところでございます。

 それから、今年度でございますけれども、諸外国の研究者の招聘事業というのを新たにまた実施していきたいというふうに考えております。

赤松(正)委員 今言われたことに加えて、「安全保障分野における人的交流」、この後段の部分で「人的交流等により人的基盤を強化する。」これはどういう意味合いを持つというふうに理解すればよろしいでしょうか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 人的交流といった場合には、まず防衛研究所の方からいろいろな諸外国の研究機関に対して積極的に研究員等を派遣して、さらに研さんを積むというようなこともあると思いますし、それから外国の、例えば駐在武官として日本に来る予定になっているような人たちをできるだけ幅広く受け入れて、日本国内でいろいろな研究をする、あるいはできるだけ新しい国からそういった者を招聘するというようなことも含まれているかというふうに思います。

赤松(正)委員 今高見澤局長の答弁を聞いていまして、これは防衛研究所始まって以来の流れの中で当然やるべきテーマというか取り組み課題、そんなふうに思うんですね。

 さきの中期防決定時における我々の状況認識というのはもう少し角度が違っていて、要するに通常日本の直面する東アジアにおけるさまざまな国際政治の中における安全保障的課題というものに加えて、やはり時代背景の変化、さまざまな事態がここ二十一世紀前段から今日に至るまで起こってきているわけですね。サイバー攻撃あるいはハイジャックテロだとか、いわゆるイラク、アフガンの事態に関連するようなさまざまな新しい事態に対して防衛研究所がどう対応するかという観点。つまり、伝統的な安全保障分野におけるさまざまな課題に対応する姿勢というものは、さっき高見澤さんが言われたことで尽きているだろうと思うんですが、そこではすくい切れない、つかみ切れない課題というものに対して防衛研究所がしっかりと対応していく、そういう体制をとるべきだという意味合いを込めて当時私たちはこのくだりを入れた、そんなふうに理解をしているわけなんです。

 同時に、ちょっと角度が違うかもしれませんが、やはり防衛研究所というのは非常に地味な役割で、石破大臣御自身のさまざまな御努力、あるいはまた石破さんだけではなくて防衛省にかかわる皆さん、また与野党を通じて安全保障に強い関心を持っておるみんなの総意によって、このところ、安全保障にかかわるこういう理念的な議論にかかわるさまざまな知的基盤というのは相当に充実してきた、こんなふうに思うんです。そういう状況の中で、私は、まだまだ防衛研究所が果たす役割というものが余り見えてこないところがあると思うんですね。

 例えば、国会で何か安全保障にかかわる識者の意見を聞くといった場合にも、防衛研究所は政府の機関でありますから、なかなかそういった部分に顔を出すというのは難しいかもしれませんが、せっかくさまざまな研究をしている機関であるのに、言ってみればそこの研究の所産が生かされていないというのは非常に残念だ。特定の、政治家でいえば石破さんになるわけですけれども、評論家とか安全保障問題の専門家でも極めて特定の人がいつも出てくるという事態があるんですね。ほかに人はいないのかという感じがするわけですけれども、そういった部分で、今申し上げたような防衛研究所についてのさまざまな課題というのは、きょうは時間が短いので大枠のことしか言えませんけれども、相当ここに力を注ぐ必要がある、こんなふうに私は思うんですね。

 一方で、私、従来PKOの教育センターという話を常にしてきましたけれども、おかげさまで、皆さんの御尽力もあって、防衛研究所の中にこのPKO教育センター、名前はまだ仮称でありますけれども、そういったものができる。こういうことを機縁にして防衛研究所ももっとしっかりとしたてこ入れをする必要がある、こんなふうに思うんですけれども、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。

石破国務大臣 一二〇%同感であります。二〇〇%と言っても、幾らでもいいのですが。

 私は思うのですけれども、我々の組織におけるそういう研究というものは防研がやっていて、もう一つ防衛大学校というのがあるわけですね。そこの人的な配分をどうするか。片方は研究機関だ、片方は教育機関だ、こう言っちゃえばそれまでなんですが、そこにおける人材の活用をどうするかということが一点。

 もう一つは、防衛研究所紀要という論文集があるのですが、これは実におもしろい。実におもしろいが、余り人が読んでいない。結局、学者というのは、一生懸命研究すればいいのですが、同時にそれがいかに政策に反映されるかということも、学者の生きがいというんでしょうか、そういうところがある。ほかの大学と違うところはそこだと思っているのですよ。私は、防研でいろいろと研究されたものがどれだけ政策に生かされているかということは、ちゃんと検証してみなきゃいかぬのじゃないかと思っております。

 私どもの中で防衛政策局というのがあって、高見澤局長がおるわけですが、そこと防研との間で確かに交流もしている、人も来ている。しかしながら、それがもっと生きるような形にならないだろうか。防衛政策局に限らず、内局はみんなそうなのですが、とにかく朝から晩まで日々の仕事に追われて、本当に深くじっくり研究する時間があるかというと、それは十分だとは言えないと思う。そこへどれだけ防研の人、成果を入れていくか。

 私、委員が御指摘いただきましたので、もう一度省内において、防衛省改革の中において防研の位置づけをどうするかということを真剣に考えてみて、ビフォー・アフターというか、これがこう変わったというものを防衛省改革の中できちんと出したいと思います。

 あわせて、人材をどう確保するか。やはり、防研である程度の実績を積んだらば、どこかへスカウトされて助教授になり教授になりということもあるわけですが、私はむしろ、防研という位置づけから考えれば、防研でずっとそういう成果を生かし提言をし続ける、そういうものをもっとさらに定着させたいというふうにも思っておるところでございます。

赤松(正)委員 ありがとうございます。非常に前向きの、また私が思っていることの方向性に沿った御答弁をいただいて、非常に意を強くいたしました。

 今、防衛研究所のことについて、非常にいい研究という話がありました。私も実は、リデル・ハートの生い立ちから始まって非常におもしろい本を今読みかけておりまして、こういった研究をしている人がいっぱいいるのに、当安全保障委員会等にも、その研究の所産を聞いたり、そういう人を交えていろいろ議論をするというような機会もあっていいんじゃないのかという気もします。そういうこともないということについて、先ほど防衛省改革に伴って云々ということをぜひ俎上に置いていただいて、しっかりとこの防衛研究所の問題について取り組みをしていただきたい、こう思います。

 次の課題、もう時間がなくなってしまいましたけれども、手足としての最前線の防衛省・自衛隊の皆さんのことでありますが、実は私、どこのだれとは事の性質上言えないんですけれども、最前線で苦労している自衛隊のメンバーの話をしっかりと聞く機会がありました。要するに、非常にこれは大変だなという思いを強めたんですね。

 私は、日常的に、防衛省・自衛隊の皆さんを外から、遠いところから見る機会はしばしばあるんですけれども、個別に今業務の中でどういうふうに苦労しているのかという話を聞く機会が余りなかった。このたびしっかり聞いてみて、陸上自衛隊なんですけれども、要するにこの十数年の人員削減、いわゆるコンパクト化、集中合理化するという状況の中で、残っている最前線の自衛隊の皆さん、残っているというか、人員がいろいろ整理されている中でずっと従来の仕事についている人たちに、減った分、がっとさまざまな課題が集中的に起こってきている。

 彼らは、そのうめき声というか嘆きを上げるんだけれども、なかなかそれが上層部に伝わっていない。恐らく、制服の方面総監ぐらいまでのあたりにはある程度は伝わっているんだろうと思うんですけれども、そういうことが伝わって、では、現場の自衛隊員にとって、訴えている、感じている窮状というものが何か解決しているのかというとしないで、精神面で頑張れという感じでとどまっているというふうな印象を強く持ったんですね。

 だから、これは石破大臣に言ってやるから、こう言ってありますので。多分、大臣あるいは副大臣、そういう最前線の隊員の意見をしっかり聞く機会は、そこまで行くまでにいろいろなことが今あるから、なかなか聞く機会は恐らくなかったんだろうと思うんです。一つ二つあるかもしれませんが、ないだろうと思うんですね。

 今残された時間の中で、まず今申し上げたような、事態の認識状況を示していただくとともに、どうすればいいかと思っていることについて御意見をお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 おっしゃるとおりで、私にしましても副大臣にしましても、現場に行く時間がまずないということがあります。また国会のお許しがいただけるような状況になれば現場に行きたいなと。やはり自衛隊の基本は現場ですから、部隊ですから。市ケ谷じゃないと思っていますので。

 そこの、人が足りないのをどうするか。

 私は、防衛省改革の中でいろいろな組織いじりが目的では全然ございませんで、防衛省改革の一つの眼目は、部隊にきちんと人を置こうということだと思っているのです。どんなに中央が立派でも、現場が、非常に人が足りない、困った困ったと言うと、何を言うんだ、足らぬ足らぬは工夫が足らぬのだみたいな話で、精神論でおっつけちゃうとろくなことにならぬと思っておるのです。

 そこで、一つありますのは、例えば予算をつくるということにおいても、現場が、あれが足りない、これが欲しいと言いますよね。ずっと現場から上がり、陸なら陸、海なら海、空なら空の幕僚監部に上がって、そこでいいとか悪いとかいろいろな話がずっとあるわけですよ。これで、陸幕はこれ、海幕はこれ、空幕はこれというふうに出てくる。これがまた内局に上がって、いいだの悪いだのという話になって財務省に行くわけですね。私は、そこの過程というものがもう少し合理化できないか、効率化できないかというふうに思っている。

 もう一つは、陸海空の最適化はなされるが、全体としての最適化の作業は一体どこで行われているのだという思いがありまして、これも防衛省改革の中できちんと論ぜなければいけないことだと思っています。それが二点目。

 三点目は、私も副大臣も心がけておるところでございますが、これは政務官の方々にも御尽力をいただいているのですが、なかなか現場に出るということはできませんけれども、市ケ谷にもいわゆる曹の代表のような方、曹士クラスの代表の方、先任伍長という言い方を海ではしておりますけれども、そういう方々がおられて、委員まさしくおっしゃるように、星をいっぱいつけた人、桜をいっぱいつけた人の話だけ聞くのではなくて、現場はどうなのということを、我々統制する側が聞く機会というのはふやしたいなというふうに思っておるのでございます。

 いずれにいたしましても、我々が論ぜねばならないことは、何のために、どのようなものを、どれだけ、どこに置くか、そしてそれはいつまでに行うのかということを明確にすることが必要なんだと思っておりまして、あれも欲しいこれも欲しいと言えば切りがないのでありますが、何のために、どのようなものを、どれだけ、どこに、そしてそれをいつまでにということを政治の意思として、最終的に予算を決めるのは政治ですから、そこがきちんとした意思を示すという姿勢を持つこと、それがまた現場にも反映していく、現場で一番苦労している人たちの気持ちをきちんとしんしゃくするということにもつながるのではないかなと思っております。

赤松(正)委員 大臣、余り口にしたくない話ですが、大変に残念な事件がありましたね。あるいはまた、自殺者も多いとか、要するに自衛隊・防衛省の最先端で今非常に心配なことが起こっているわけですね。だから、そういったことをしっかりとつかまえるためにも、先ほど来おっしゃったような、要するに現場です。本当に現場が大事なもので、その辺の意見を早急にしっかり吸い上げる努力をしていただきたい、こう申し上げて終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

嘉数委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 きょうは防衛省改革に対する一般質疑というふうに認識をしておりますが、大事な問題なので、先日の名古屋高裁で出ましたイラク派遣に関する違憲判決というものについてまず最初に幾つか質問をさせていただいて、その上で、防衛省改革の一つのポイントであります新たな任務、国際平和協力活動のあり方について議論をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほども今津委員の方からお話がありましたように、それからまた衆参の同僚議員の中からも既にこの違憲判決については何度か質問があったというふうに認識しておりますが、違憲判決が出たけれども政府としてどうなんだという観点が主だったような気がいたしますので、私はあえてもう少し違う角度からお話を伺いたいと思いまして、きょうは法務省の方にもお見えをいただいています。

 まず最初に、事案の概要ですけれども、これは名古屋にお住まいの住民の方千百名、その中には外務省のOBの方も若干一名入っておられたように記憶しておりますが、イラク特措法に基づいてイラクに自衛隊を派遣したことが違憲ではないか、こういうことで、三つ求めていますね。一つは、派遣の差しとめ、もう一つが、派遣が憲法九条に反して違憲であるということを確認しろということ、そして三番目は、派遣によっていわゆる平和的生存権というものが侵害をされた、したがって損害賠償を請求する、この三つが争われた事件であります。

 本判決は、三つのことについていずれも、却下、却下、棄却ということでございまして、まず第一に、差しとめ請求については、行政訴訟として具体的な権利性がない、具体的権利の侵害がないということで、原告適格を欠いてこれは不適法、したがって却下、門前払い。それから違憲確認請求についても、原告の権利義務に関するものではないので権利の利益がなくて、これも不適法、したがって却下、これも門前払い。さらに、損害賠償請求については、派遣によって控訴人らの具体的な権利あるいは法的保護に値する利益というものが侵害されたとは認められないので請求棄却。こういうことで、原判決をすべて支持いたしまして、国としては勝訴。

 しかし、ここで一つトリッキーなことがありまして、本判決、いわゆる主文ではないところで、現在イラクにおいて行われている航空自衛隊による輸送活動というものが憲法第九条に違反する活動を含んでいる、いわゆる違憲判決を主文ではないところで判示した、こういうことになっています。

 一つ、率直に疑問を感じるのは、先ほど紹介いたしましたように、主文のところで、違憲確認請求をしていて、それは権利義務に関するものではないからといって却下をしているわけです。これは一審も同じように却下をしています。したがって、どうして却下をしなきゃならないのかという理由を述べるならばもちろんいいわけでありますが、違憲確認は却下をしておきながら、実は違憲でしたということを判決の中で述べているわけでありまして、第一の疑問は、この違憲判断をした部分というものが本判決の中でどのような位置づけになっているのか。つまりは、今言った違憲確認請求を却下するという結論を導く上で必要があったのかどうか、ここが第一の疑問なんですけれども、お答えいただけますでしょうか。

始関政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員から判決の事案の内容を御説明いただいたわけでございますけれども、その御説明にもありましたように、この違憲判断の部分は、判決の主文、結論であります主文を導き出すのに必要なものではなくて、いわゆる傍論と言われるものであろうと理解しております。

長島(昭)委員 もう少し明確にお答えいただきたいんですけれども、といいますと、結論を導くには必要だったんでしょうか、必要なかったんでしょうか。

始関政府参考人 必要でなかったというふうに理解をしております。

長島(昭)委員 一般的には、裁判所というのは、結論の判断にかかわらないような事柄について判決理由に書き込むことが通例なんでしょうか、そうでないんでしょうか。

始関政府参考人 お答え申し上げます。

 民事訴訟の判決書には、主文と理由を書かなければならないと定められているわけでございますけれども、その理由をどのように書くべきかということについては特段の規定はございませんで、解釈問題ということになるわけでございます。一般に、民事訴訟の判決理由には、判決の結論である主文を導くために必要な争点について、論理的整合関係に従って判断を示すのが適切であるというふうに解されております。

 しかしながら、裁判所は、当該紛争の抜本的な解決、当事者の納得等の観点を考慮いたしまして、判決の結論を導くために論理的には不可欠でない事項、いわゆる傍論でございますけれども、それについても、必要と考える範囲で判断を示すことは可能だという考え方が一般的のようでございます。

長島(昭)委員 当事者の納得というポイントを示されましたので、後でそれについては伺いたいと思います。

 これは名古屋高裁、高等裁判所の判決でありますけれども、これまでにも同じような訴訟が全国各地で多数提起されていると認識をしております。どのくらい提起をされているのか、そして、これから先判決が控えている同趣旨の訴訟がどのくらいあるのか、高裁、地裁、具体的に御説明いただければありがたいと思います。

貝阿彌政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、今までにも多数同種の訴訟が起きております。本件の一審判決を含めまして、これまでに既に六十以上の判決がされております。そして、現在係属中のものは、福岡、札幌の高等裁判所、それから岡山の地方裁判所に係属しております。

 先ほどの件でありますけれども、これまでの六十以上の判決はすべて、平和的生存権は具体的権利性がないということなどを理由としまして、憲法判断はすることなく、訴え却下あるいは請求棄却の判決をしております。

 以上です。

長島(昭)委員 そうしますと、今回の高等裁判所の判決というものが、これから岡山、札幌、福岡で控えている判決にどんな影響を与えると考えられるか、お答えいただけますか。

始関政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、英米におけますような判例法主義というものを採用しておりませんので、下級審の裁判例はもとよりのこと、最高裁の判例であっても、厳密な意味での先例としての法的拘束力はないと一般に解されております。

 したがいまして、今回のような下級審の違憲判断は、それが、傍論でされているわけでございますが、その場合はもちろんのこと、判決の結論を導くのに不可欠な部分でされたものであっても、同種の事件が後に係属した裁判所の裁判官に対して、当該判断に従う法的義務を負わせるものではございません。ましてや、先ほども申し上げましたように、今回の件は傍論として述べられた、結論を導くのに必要な部分ではありませんので、何ら法的な意味はないということになろうかと思います。

長島(昭)委員 確かに、法的拘束力がない、英米法と違うから先例主義ではないということでありますが、しかし、全く影響がないかというと、これはそうも言えないんだろうと思うんですね。

 特に、これは今回言いっ放しになっているんですね。国側が基本的には勝訴しておりますので、傍論の論理に不服があるからといって上告する道は閉ざされておりますので、最高裁に行って違憲か合憲かということを争う道がなくなっている。こういうことの持つ意味は、実はそれほど軽くないと私は思っております。

 これは法務省に伺いたいんですけれども、こういう形で違憲判決がある種確定したまま残る、最高裁できちっと争うことができない、こういう状況をどう考えておられるか。

 私の見解を申し上げますと、我が国は三審制です。そして、最高裁をもって憲法判断の終審裁判所と憲法八十一条に書かれているわけです。その最高裁における判決を待たずにというか、そういうものの入り込む余地をあらかじめ封じておいて、傍論という形でこういう議論をして、そして、その判決が形式的ではあっても、一応現状における最高の裁判所の判決ということで残る、このことの意味をどう考えているか。

 もう一つつけ加えるならば、上訴の権利が封じられている、このことについて、法務の担当者としてどういうふうに考えておられるか、伺いたいと思います。

始関政府参考人 お答え申し上げます。

 今、委員御指摘のとおり、下級審の場合には、その憲法判断が最終的な形になってしまうということは、本来好ましくないものであろうというふうには思っております。

 ただ、理由にどこまで書くことが許されるのかということについては、先ほども申し上げましたように解釈問題でございまして、こういう憲法判断が最終的となってしまうような形での下級審の判決での理由というものが許されるのかどうかということについては、必ずしもこれまで十分な議論がされていないようでございます。

 委員がおっしゃられたような考え方、つまり、その憲法判断が最終的な形になってしまうような判断を傍論として述べることは許されないという見解も一部にあるようでございますけれども、必ずしもそうとは考えられていないようでございまして、当不当の問題にとどまるというふうに考えている考え方も多いようでございます。

 したがいまして、今回の判断が許されないものであるということは申し上げにくいわけでございますけれども、少なくとも妥当ではなかったのではないかというふうに思っております。

長島(昭)委員 許されないなんて言ってもらおうと思って質問しているわけじゃないんですけれども。

 これから先の話になりますと法務委員会の範疇でございますので、余り詳細に入り込むつもりはありませんが、先ほど当事者の納得というお話をされました。これはやはり、私が国側の代弁をしても仕方がないんですけれども、上訴できないということでありますし、そういう意味でいうと、国側の裁判を受ける権利をある種侵害しているような今回の判決だと私は思いますし、これはもしかすると憲法改正の、憲法裁判所の設置というようなことに議論が展開していく一つの余地を見出すような判決だったのではないか、法学部の学生にとっては非常におもしろい題材になったのではないだろうか、こういうふうに思うわけですが、これはしかし、石破大臣、行政府、わけても違憲と言われた自衛隊の最高責任者としては看過すべからざる判決だというふうに思うんですね。

 といいますのは、これからの判決に対しては法的拘束力はない、先ほどこういうふうにおっしゃいましたけれども、それでは行政府に対する拘束力、この判決の傍論で述べられた違憲だという判決の行政府に対する拘束力をどう考えておるのか、法務省から、その後大臣。

始関政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたように、傍論というものは本来必要のないものを書いているだけのことでございますので、それには何ら法的な意味はないわけでございまして、行政府に対する拘束力ももちろんないわけでございます。

長島(昭)委員 ただ、さはさりながら、社会的な影響力というのは相当大きなものがあるんだろうと私は思います。

 したがいまして、裁判の場では反論の機会がなかったようなので、ぜひ石破大臣に、この違憲判決に対する反論をこの場でしていただきたいと思うんですが、この判決、自衛隊の最高責任者として、そして派遣命令をされているお立場としてどう受けとめておられるか、大臣から御説明いただけますか。

石破国務大臣 国が勝訴しておりますからどうしようもない、反論をこれ以上する立場を封じられているので極めて困ったことで、だとすれば、こういう場で申し上げるしかないと思います。

 あるいは、私が気にしておりますのは、この後それぞれの特措法の期限が参ります。補給新法の期限の方が早く来ます。そして、来年のうちにはイラク特措法の期限が来ます。そのときにこれが影響なしとは私は思っておりませんで、本当に一般法の議論というものをちゃんとしなきゃいかぬというのは、それも含んだ上で私は必要性を感じているのです。

 あえて申し上げれば、バグダッドは戦闘地域だ、こういうふうに言っておられますが、私どもはバグダッド空港というふうに申し上げておるわけで、バグダッドが戦闘地域であるかどうかというような議論はしたことがございません。そこは判決として、この法律の持つ意味あるいは構成、よく御理解をいただいていないのではないかというふうに考えております。

 そして、何ゆえこれを戦闘地域であると。たとえ、イラク特措法が九条に合致したものであるとしてもなお、今の航空自衛隊がやっておることは憲法違反である、こういうことを言われますが、では、判決は国際紛争というものをどのように定義をしているか、戦闘地域というものをどのように考えているか、それが憲法九条一項に言うがところの「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というものとどう関連づけられるのかというのは、私は判決を何度読んでもわからないんですね。

 これは、御党のメーンストリームの議論とは反するのかもしれませんが、国際紛争というのは国と国が主体なんです。国際紛争というのはそういうものですから。そういうふうにつくってありますから。九条もそれに基づいて書かれている。

 バグダッド空港において現出している状況の中に、国際紛争の主体は登場しているとは思いません。それは、アルカイダがザ・ベースというふうに英語で訳されますように、国という一定の支配領域を持っているわけでもない、アルカイダ国民というものがいるわけではない、そしてアルカイダ統一組織というものがあるわけではない。そのほかのいろいろなテロあるいはゲリラ組織においても同様であります。それが国際紛争の主体たり得ない以上、少なくとも今の憲法九条一項に抵触するという論理には全くならない。

 だとすれば、憲法を変えるという議論がなければおかしいわけで、憲法違反という議論をするのであるならば、今の憲法九条が禁ずるものは何なのか、そこの主体は何なのかということをきちんきちんと詰めて議論をいたしませんと、国会において議論の末できた法律とは一体何だったんだということになるはずなので、私は正直言って、論理の組み立て方が極めて不正確かつ粗雑である、粗雑という言い方が失礼であるならば、緻密でないというふうに言わざるを得ない、このように思っております。

長島(昭)委員 事実認定については、後で細かくやろうと思っていました。

 ただ、大臣、今の御説明、私ももう何度も伺った。大臣は滑らかにおっしゃいますから、何となく引き込まれるところもあるんですが、しかしそういう説明が、つまりバグダッドはまだしも、我々が相手にしているのは、バグダッドという地域の中にあるバグダッド空港の話をしているんですよ、そこにおいては現に戦闘は行われていない、将来にわたって行われる可能性がない、だから大丈夫だという話にはなかなか、一般の国民から見るとどうも詭弁に聞こえる。

 こういうあいまいなところを今回の判決ではついたという部分は、私はフェアに考えて認めざるを得ないというふうに実は思うんです。その話をします。

 ちょっとその前に、イラクに派遣されている航空自衛隊の皆さんからすると、今回の判決というのは余り好ましい判決じゃないと思うんです。空幕長が、そんなの関係ない、こういう発言もされたように報道されておりますが、航空自衛隊の派遣部隊の方々に対する心理的な影響について、防衛大臣としてどのように考えておられますか。そして、それに対してどういう措置というか処置というか対処というか、されるおつもりですか。それとも、おつもりはありませんか。

石破国務大臣 これは、先ほど来法務省からもお話がありますように、私からもお話ししましたように、行政に対して法的拘束力を持つものではないというお話でございます。

 ただ、こういうものが出たということ、またこれによって力を得るというか、そういう方々がおられる、画期的な判決だと。敗訴して画期的判決というのも不思議な話だと私は思うのでございますが、そういうことは影響なしと私は思いません。したがいまして、これは統合幕僚監部の方から現地の部隊に対して、こういうことのきちんとした内容を伝達し、しかしながら政府としてはということを伝えるということは行っております。

 また、航空幕僚長が、その表現が適切であったかはともかくとして、ただ、後でよく検証してみますと、私よく存じ上げないのですが、最近人気があるお笑いタレントの方を念頭に置いておっしゃったのではないらしいのですね。おちゃらけて言ったのではなくて、本当にそういうのは関係ないのだ、政府の方針は毫も揺らぐものではないということをおっしゃったということでもあります。

 私自身も委員から、詭弁に聞こえるというふうな御批判をいただきました。国際紛争とは何かとか、その主体とは何かとか、そういう一種、マニアックなとは申しませんが、法的にぎりぎり詰めたような議論をすると、やはりそれはすとんと落ちないところがあると思うのですね。戦闘地域というのは危険な地域に決まっているじゃないかという方が、よほどすんなり入りやすいところはあるわけです。

 私は、日本国憲法九条第一項は日本国特有のものではなくて、特有なものは第二項のはずであって、第一項的な規定というのはあちらこちらの国にございますから、日本特有の現象なのかといえば、これは何でそういうことになるのかという気がいたしております。ここのところがやはり、主権者たる国民の方々が、ああ、そうだねというふうに思っていただけるような論理の展開というのができないかということは、私自身ずっと、前の長官のときから考えておるところでございますが、なかなかいい知恵が浮かばない。

 そこのところは、委員ともこの間議論いたしましたように、結局、主権国家というものを主体に構築されている今の国際法システムとかあるいは国連のシステムとか、それをどう考えるんだという問題に逢着せざるを得ないのではないかというふうに考えております。

 ここにおいて、委員から、こういう考え方でどうかとか、やはりここはこう変えねばならないのだとか、そういうような御指摘をいただければ、私も本当にそれを糧としながらよく考えてみたいと思っております。

長島(昭)委員 その提案をさせていただこうと思っています。

 その前に、事実認定、先ほど防衛大臣が、何度判決文を読んでもロジックがよくわからぬ、こういうお話でありましたけれども、二つ言っていますね。一つは、バグダッドが戦闘地域だと言っている。戦闘地域というのは、国際紛争が現に行われているんだ、こういう言い方をしていますね。それからもう一つは、航空自衛隊の輸送対象は武装兵員だ、武装した多国籍軍の兵員だ、したがって武力行使とまさに一体化しているんだ、こういう判示であります。

 実は、これは私が防衛大臣にいつも不満を言っているポイントなんですけれども、十分な情報を国会ももらっていないんです、どういうものを輸送しているのか。物資のトン数は出ているんだけれども、あるいは輸送の回数、飛行回数は出ているんだけれども、何を、どういう形で、どこからどこへというのは、我々ですら情報を得るのはなかなか難しい、こういう状況だったはずですね。

 にもかかわらず、これだけこの高裁の裁判官が断定的に事実認定をしているということは、防衛省としてこの裁判所に対して何か、我々が得られていない、つまり国民が得られていないような特別な情報提供をされたんでしょうか。

石破国務大臣 この点においては、このことがそもそも争点になっているわけでもございませんので、私どもの方からそういう情報を、つまり国会にも提示していないような情報を裁判所に対して提示したということは一切ございません。

長島(昭)委員 それでは、もう一つ疑問がわくんですけれども、裁判所はどのような情報に基づいてこういう事実認定を行ったのか。

 現地の状況、あるいは航空自衛隊の活動内容、これがはっきりしていないと、この違憲判決の、違憲という判決の結論ではないんですけれども、違憲という判断の根拠の正当性が疑われることになると思うんですが、いかがでしょう。

貝阿彌政府参考人 今の御質問の点ですけれども、判決書によりますと、控訴人、一審原告の提出した証拠書類及び証人の証言等が挙げられております。

 具体的に言いますと、国会議事録、防衛白書、新聞記事、軍事史研究家の証言などの証拠が挙げられております。

長島(昭)委員 私は野党の立場ですからなかなか言いにくいんですけれども、非常に証拠としては精度を欠くというか一方的というか、この判決を見る立場として、ここはやはり必要な視点ではないかな、そんな感想は持っております。

 ただ、そうであったとしても、この判決の持っている意味というのは非常に重いと思うんです。特に、これから一般法を議論していこうという我々にとっては、政府解釈の泣きどころといいますかあいまいさというものをかなり効果的についているんじゃないかなという感じを私は持っているんですね。

 一つは戦闘地域、非戦闘地域の概念の問題、それから武力行使の一体化とは何ぞやという問題、この二つについては、先ほど防衛大臣は、何度読んでもわからぬ、こういうお話だったんですが、例えばバグダッドでいわゆる国際紛争のようなものが現に行われているではないか、こういうくだりがあるんですね。

 ちょっと要旨を読み上げますと、現在のイラクにおいては、多国籍軍と国に準ずる組織と認められるような武装勢力との間で、一国国内の治安問題にとどまらないような武力を用いた争いが行われており、これは国際的な武力紛争が行われているものと言うことができる。特に、首都バグダッドにおいては、平成十九年に入ってからも、十九年に入ってからもですから、一年前で少し古いですが、アメリカ軍がシーア派及びスンニ派の両武装勢力を標的に多数回の掃討作戦を展開し、これに武装勢力が相応の兵力をもって対抗し、双方及び一般市民に多数の犠牲者を続出させている地域であるから、国または国に準ずる組織同士の戦闘ですから、まさに国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷しまたは物を破壊する行為が現に行われている地域と言うべきである。したがって、イラク特措法に言う戦闘地域に該当するものと認められる。こういう論理展開なんです。

 大臣、バグダッド空港は現に戦闘が行われていない、政府はそういう定義づけをされていると思いますが、バグダッドを中心とする今のイラク、アメリカ軍を初めとする多国籍軍とスンニ派、シーア派の民兵を中心とする国に準ずるような組織との間での武力闘争だ、そういう観点はお持ちでしょうか、お持ちでないでしょうか。

石破国務大臣 委員のおしかりを覚悟の上で答弁をすれば、私どもは、バグダッド空港ではなく、バグダッドあるいはイラクのほかの地域において、国際紛争を解決する手段としての武力の行使が行われているか、いわゆる戦闘行為が行われているかということを判断するということはいたしておりません。また、この法律もそれを要求しているものではございません。防衛省としてお答えできる範囲はここまででございまして、その点は容赦できないとしかられればそれまででございますが、そういう答弁しかできない。

 ただ、一言言わせていただきたいのは、今委員が引かれました判決、その中において、なぜそれが国または国に準ずる組織というふうに法的に評価されるのかというロジックが抜けていると私は思うんですよ。国とは何ぞやといえば、それはやはり、領土であり、国民であり、統治機構なのではないか。いや、そうではない、戦車を持ち、戦闘機を持ちというようなことで、それが高度の武力を有し、能力を有している、だから国に準ずるんだというのは、それは論理としてはおかしくないでしょうか。

 仮にそういうものを持っていないとしても、ちっちゃな島で、そこに人々が例えば二千人しかいないとしても、それが領土を有し、そしてまた国民の帰属意識がきちんとあり、そして統治の体制がある、それは国に準ずる組織でしょう。しかしながら、どんなにいろいろな武装を持っていて、それが組織化されていたとしても、それがなぜ国または国に準ずる組織という法的評価になるのか、私にはそこが理解できないのでございます。

長島(昭)委員 今の話は、もう少し詰めていかないといけないと思っています。

 過去の答弁例を私は持っていないのでにわかに反論できないんですけれども、たしか国または国に準ずる組織というのは、例えばイラクにあった、サダム・フセイン前政権のバース党が持っている軍事組織とか、あるいはシーア派とかスンニ派の民兵組織も、これは国に準ずる者という規定を政府はされていたような気がするんですね。そうでないのは盗賊だとかゲリラとか匪賊とか、そういうものが国に準ずる者ではないという認定だったような気がするんですが、きょうはそこまで細かくやろうと思っていませんでしたので、ぜひ次回ここはやりたいと思います。

 今大臣も、苦しい御答弁だったというふうに、冒頭に許してもらえるかどうかわからないというようなニュアンスの話をされましたけれども、事ほどさように、この非戦闘地域かどうかという議論、あるいは後で触れます、武力行使と一体化しているかしていないか、この議論というのは極めてまだ説得力に欠けるんです。政府の説明も恐らく、聞いている国民の皆さんに対する説得力に欠けるんです。

 この問題をあいまいにしたまま一般法の議論をたとえ始めていっても、私は、結局は自衛隊が活動する地域が非戦闘地域だみたいな答弁に終始して、最終的に不毛な議論から抜け切れないというように思いますので、やはりこれは立法府として、我々も含めて、どういう基準を設けることが、現場の自衛官にとっても、国際社会から見ても、国民にとっても、政治家にとっても、政府にとっても納得がいくのかということを、もう一回知恵を絞っていかなきゃいかぬ、こういうように思うんです。

 その中で、一体化の議論がよく言われるわけです。この一体化の議論も、今回の判決の中で、武装兵士を輸送することは一体化だ、こう言っています。そのことについてどう解釈をされるかということが一つなんです。

 そもそも、政府の解釈ですら、例えば武器弾薬の提供は、一概には武力行使の一体化にはつながらないけれども、しかし活動からは排除すると言っていますね。つまり、もしかすると武力行使の一体化に触れる可能性もあるというニュアンスだと思うんですね。それから、戦闘作戦に直接発進していく作戦準備中の航空機に対する給油や整備、これは周辺事態法で武力行使と一体化するというおそれがあるので、たしか活動から排除された経緯がありますね。

 今回の判決では、武器弾薬の輸送については全く触れていないんですが、武装した兵員を輸送することは一体化だと言っている。政府の説明を聞いても、あるいは判決を読んでも、何が一体化で何が一体化でないのかというのは、にわかにわからないんですね。

 これは、国際法的にはどういう位置づけなんでしょうか。武力行使の一体化というのは、日本だけの議論なんでしょうか。それとも、国際法上通用する議論なんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 今、国際法との関連でという御質問でございますので、国際法の側面に限りまして御答弁を申し上げます。

 この点につきましてはこれまでも、外務大臣を含めまして外務省から御答弁を申し上げているところでございますが、武力行使との一体化ということは、日本国憲法の憲法上の判断に関する解釈であるということは申し上げているわけでございます。

 国際法との関係でどうかということを申しますと、これも御答弁を申し上げているところでございますけれども、国際法に限ります限りは、武力行使に当たらない行為が他国の武力の行使と一体化をすることによって、自分自身も武力行使をしているというふうに判断をされる法理があるというふうには承知していないわけでございます。

 ごく簡単に、学問的な学会の御意見というものも紹介をさせていただきますと、例えば典型的には、国際法学会という学会が日本にございまして、そこの季刊誌でございますけれども、国際法外交雑誌というものがございます。権威のある雑誌でございますが、この二〇〇六年の中で有力な国際法学者の方が論文を書いておられまして、ごく短くそこから引用をさせていただきますと、「先行する違法行為とそれに対する支援行為は別個の行為とみなされ、支援行為が国際法上違法とされるのは、支援行為の対象となった違法行為の違法性に由来するのではなく、あくまで当該支援行為自体の違法性に基づく評価である以上、「武力行使との一体化」論のように、こうした二つの行為を「一体」とみなして法的な評価を行うことは国際法学での理解とは異なるものといわなければならない。」こういうことでございまして、私どもも基本的にはこのように考えてございます。

長島(昭)委員 今、非常にいい引用をしていただきました。私も実は、常々そういうふうに思っていまして、日本の議論というのは日本でしか通用しない議論に陥っているんだなということを思いました。

 国際法局長のお立場ですから、慎重な言い回しをされました。国際法に限ってという、国際法の空間が何か特別な空間のようなおっしゃり方をしましたけれども、まさに国際社会の中に日本というものが位置づけられているわけですから、国際法上どう考えられているかということは常に、こういう国際的な問題を考える際には我々も念頭に置いていかなきゃならぬ、このように思っております。

 このように、どうしても国際標準から外れるような政府解釈が今まで積み重ねられてきた、その都度その都度野党からの追及に遭って、何となく、これは法制局からすると不本意な言い方かもしれませんけれども、その場しのぎの法律的な、アクロバティックな解釈を積み重ねてきた、こういう気がするのであります。

 これは大臣に伺うのが適切なのかどうか、こういう政府解釈を、これから一般法の議論をしていく中で、今言ったような、先行している違法行為とそれを支援する行為とは分けて考えるべきなんじゃないかというような国際的な標準的な議論を踏まえて、これまでの政府解釈をこの際、国民に対する説得力もないし、裁判所のこういう判決も出ていることだし、今まで積み重ねた政府解釈を、一般法の議論に合わせてもう一度見直してみるおつもりはないんでしょうか。

石破国務大臣 必ずしも、私が政府としてという立場でお答えするのは適切ではないと思っております。

 ただ、この一体化論というのは、私も随分勉強してみたつもりですが、日本独自の議論であって、何を評価して一体というのかというんですね。まさしく今、発進準備中の戦闘機のお話がございました。それは多分、時間的に近接しているとか、そういうような論理になるんだと思うんですね。時間的にどうか、距離的にどうか、行為の態様としてどうかみたいな話ですが、これは相当動き得る概念なんだろうと思う。一つのきちんとしたスケールがあって、それで判断するという話じゃないと思う。

 だとすれば、基地を提供しているという行為はどうなんだと。基地がなければ飛行機は飛ばないわけですよね。甲なかりせば乙なかりしみたいな議論を展開するということになると、これはどうなんだ、いえいえ、距離的にも時間的にも行為の態様からしても一体とは認められませんと。そこのところの考え方をどうするんだという議論を、私は、一度行わなければいけないのだと思う。

 私の立場として、一体化論を否定する立場にはございませんが、例えばインド洋における補給は違憲であるという論理が一つあるとしますね。補給は、イラクにおける他国の艦船の行為と一体化だという議論、これがまたどこかにあるわけですよ。だとすれば、それは一体どうなんだと。つまり、それがなければこっちもないという話になりますと、これは論理をぎりぎり突き詰めていきますと、周辺事態法はどうなの、日米安全保障条約はどうなの、そういう話になってくるわけで、私は、どれが正しくてどれが間違っているということを言う立場にはございません。政府としての立場を変えるつもりは全くございませんが、論理というのは常に一定の整合性を持っていかなければいけないものであります。

 その点、委員がおっしゃいますように、一般法の議論をします際に、政府としてもきちんとそれを整理してお示しをしなければならないし、議論の過程において、御党においてもいろいろな議論をなさった上で、先ほど来申し上げておりますように、どこが政権をとったからといって安全保障政策が変わっていいものだとは思いませんので、一般法の議論において、政府、党あるいは議会の間において論理の整合を図るべきではないか、私はそのように考えます。

長島(昭)委員 ありがとうございます。

 まさに、前の安倍政権ではそういう問題意識のもとに、政府の中にいわゆる安保法制懇という懇談会をつくって、四類型をある種ピックアップをして議論を始めたところで福田政権になって、それが今どういう状況になっているのかよくわかりませんが、報告が出されたらそのとき考えるというような趣旨の総理の答弁があったと思います。

 その四類型のうちの二つは、国際平和協力活動に関するものですよね。一つは後方支援、もう一つは武器使用と武力の行使。この二つについてたしか四類型の中で議論をされたと思いますが、現在その議論はどうなっているんでしょうか。そこで出た成果を、先ほど防衛大臣ぎりぎりおっしゃっておられましたけれども、一般法の議論の中で役立てていこうとされているのか。たしか、きょうは内閣官房に来ていただいていると思いますが、答弁いただけますか。

浅利政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会、いわゆる安保法制懇におきましては、四つの類型を中心に、結論を予断することなくさまざまな観点から議論が行われてきております。

 四つの類型につきましては、若干かいつまんで申し上げますと、一番目が、米国の艦船が公海上で攻撃された場合の我が国自衛隊の艦船の対応。二番目が、我が国同盟国である米国に向かうかもしれない弾道ミサイルをレーダーで捕捉した場合の自衛隊の対応。それから第三番目が、先生先ほどおっしゃいましたPKOなど国際的な平和活動における武器使用の問題。それから第四が、同じく国際的な平和活動における補給、輸送、医療などといった後方支援の問題ということでございまして、懇談会においては、この四つの類型を中心に、さまざまな観点から議論が行われてきているという状況でございます。

 他方、安保法制懇の今後の段取りというものについては未定でございますけれども、総理は先般、先ほど御指摘のとおり、結果が出てから考えたいというような御趣旨の御答弁をされているという状況でございます。

長島(昭)委員 安倍政権、功罪半ばしていると思いますけれども、この問題、せっかく議論を始めたのに政権がかわっちゃうと議論が終息してしまうというようなことは、私は許されないんだろうと思うんです。

 これからまさに一般法の議論をしていく、きょうは、実はここから先の議論が私のメーンの質疑だったんですけれども、次回、ぜひ引き続きやりたいと思います。よろしくお願いします。

 やはりこの議論は、日本の政治として一度きっちりやって、乗り越えて、前進させなきゃならない。もちろん、反対意見もたくさんあるんだろうと思いますけれども、一度煮詰めていかなければならない。先ほど国際法局長が非常に苦しい御答弁をされたのにも象徴されるように、克服しなければ、一般法の議論も結局今までの議論の積み重ねになってしまいますので、そこは、私どももアイデアを出しながら、政府と一緒にこの問題を前進させるように努力をしていきたいというふうに思いますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 質疑を終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

嘉数委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長林景一君及び国土交通省大臣官房総括審議官桝野龍二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

嘉数委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

嘉数委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。

 委員長や与野党の理事の先生方にお許しをいただいて、御発言をいただく機会をいただきました。ありがとうございます。大臣、よろしくお願いします。

 まず、山口県の岩国基地の飛行場の民間使用の件に関してお伺いをさせていただきます。

 岩国基地については、米軍再編に絡んで今大きな動きがあるわけでございますが、一昨日の国土交通委員会で国土交通省と防衛省の方針についてはお伺いをさせていただきました。先日、福田総理も現地に、今補欠選挙が行われておりますのでその補欠選挙の応援に入られたときに、山口県の副知事と岩国市長の要請に対して協力を約束されたということであります。

 そこで確認をさせていただきたいんですが、政府としては、山口二区の補欠選挙の勝敗がどうあろうとも、勝敗にかかわりなく、岩国飛行場の民間使用の再開については、従来、米軍との交渉など順調に進んでいるようでございますので、可能な限り最大限の力を尽くすという理解でよろしいかということを、国土交通省並びに防衛省それぞれから、もう一度端的に御答弁をいただきたいと存じます。

小野政府参考人 お答えをいたします。

 岩国基地の民間航空再開につきましては、今後、政府全体として、山口県あるいは岩国市等の具体的な考えをお聞きしつつ、民間航空再開の進め方について検討していくものと認識しております。

 国土交通省といたしましては、この問題は、今後、政府全体の取り組みの方針が明確になれば、関係省庁との連携の中でどのような協力が可能かについて検討していくべきものというふうに考えております。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 岩国飛行場におけます民間航空機の運航再開につきましては、政府全体として、山口県、岩国市等の具体的なお考えをお聞きしつつ今後の進め方について検討していく考えでございます。

 防衛省といたしましても、民間航空機の運航再開に必要な事項について米側と調整するなど、できる限り協力してまいりたいと考えている次第でございます。

川内委員 よろしくお願いします。

 次に、四月十三日に沖縄県北谷町で発生した米兵の息子さんたちが起こした万引き事件について質問させていただきます。

 まず、警察庁から事件の概要について御説明をいただきたいと思います。

井上政府参考人 沖縄県警察本部からの報告によれば、事件の概要は次のとおりであります。

 四月十三日十五時過ぎごろ、沖縄県北谷町における衣料品店内において、店員が外国人少年による万引き事案を認知し、少年が店の外に出たところで話しかけたところ暴れ出したので、関係少年三人のうち一人を取り押さえた。一人は立ち去ったので、少年二人を確保し、一一〇番した。その後、沖縄県警察が到着する前に米軍憲兵隊が到着をし、少年二人に手錠をかけ、身柄を拘束した。通報を受けた沖縄県警察の警察官は、その後に現場に到着し、まだその場にいた憲兵隊員に対し憲兵隊通訳を介して身柄の引き渡しを求めたが、憲兵隊はこれに応じず、少年二人を基地内に連行したというものであります。

 なおその後、米軍捜査当局の協力も得て関係者の出頭を求め、取り調べを行うなど鋭意捜査中であります。

川内委員 この事件は、地位協定上の問題が二つあるというふうに思います。現行犯で逮捕をし、そして日本側の警察に当然に身柄は引き渡されるべきであったが、憲兵隊があらわれて手錠をかけた、そして基地内に連れ帰った。手錠をかけたということと基地内に連れ帰った、この二つのことが地位協定上何らかの問題があるのではないかというふうに思います。

 手錠をかけたという行為については、米側は逮捕ではないという説明をしていると。逮捕ではないということは、では何なのかということを外務省からちょっと御説明をいただきたいと思います。端的にお願いします。

西宮政府参考人 お尋ねの点につきましては、米側の対応につきまして米側に照会をいたしたわけでございます。これに対して、十七日でございますが米側からあった説明によれば、憲兵隊は、米国人二人が商店で窃盗を働き、逃げ出そうとしているとの通報を受けて、現場に急行の上、少年が暴力を働く可能性を防ぐために手錠をかけたのである、これは逮捕したものではないとの説明を受けております。

川内委員 いや、私が聞いたのは、局長、逮捕ではないとしたら何なんですかということを聞いているんです。

西宮政府参考人 米側の説明によりますと、日米地位協定及び関連取り決めの規定に従って軍事警察を使用したというふうに説明を受けております。

川内委員 いや、済みません、何でこんなにちゃんと答えてくれないのかな、いつも思うんですけれども。

 では、日米地位協定上定められている軍事警察を使用したというのは、日米地位協定の何条の何のどの部分に当たるのかということを説明してください。

西宮政府参考人 お答えいたします。

 日米地位協定第十七条の十(b)でございます。

川内委員 十七条の十の(b)は、「施設及び区域の外部においては、前記の軍事警察は、必ず日本国の当局との取極に従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用されるものとし、その使用は、合衆国軍隊の構成員の間の規律及び秩序の維持のため必要な範囲内に限るものとする。」と。規律及び秩序の維持のためであるという説明ですか。

西宮政府参考人 手錠をかけたという行為につきましては、そのとおりでございます。

川内委員 手錠をかけるという行為は、規律及び秩序の維持のためであると。

 しかし、今私が読み上げさせていただきましたが、日米地位協定第十七条の十には、この施設・区域外において警察権を使用するためには「日本国の当局と連絡して使用されるもの」とすると書いてある。日本国の当局と連絡して使用されなければならない。憲兵隊は、日本国の当局に手錠をかけるよということを連絡したのでしょうか。

井上政府参考人 沖縄県警察からの報告によれば、憲兵隊からの連絡に当たり得るものとして、四月十三日の当該事案発生後に、沖縄県警察署の通信室に憲兵隊から、当該事案の発生現場付近で外人の関係するけんかがある旨の入電があったとのことでありますが、それ以上の詳細な確認はできていないとのことであります。

川内委員 外務省からもちょっと。

西宮政府参考人 ただいまの点につきましては、米側への照会結果といたしまして、軍事警察は、この二名が窃盗を働いている、これを発見した店員から逃げ出そうとしているとの通報を受けて、沖縄県警察に連絡を行い、軍事警察も現場に急行したとの説明を受けております。

川内委員 警察庁からの御説明では、沖縄県警の方に、外人のけんかが起きているという趣旨の通報があったということであります。さらに、外務省の方は、米側の説明として、沖縄県警に連絡したよということが報告をされていると。すなわち、十七条の十の(b)に定められている連絡という言葉がきちんと両国の政府の間で解釈をされているかというところにかかるんだろうというふうに思います。

 最近は、米軍は、施設・区域外で警察権を行使する場合、とにかくだれか行政側に電話しておけ、電話一本入れておけばそれが連絡だというような形で、横須賀であったタクシー運転手さんの刺殺事件においても、五反田で身柄を拘束するときに、横須賀の市役所にこれから身柄を拘束するよと電話をして身柄を拘束したというふうに聞いておりますし、本件も、これから行くよというだけで連絡したということになっている。

 しかし、警察側は、現時点ではその認識さえはっきりとないわけでありまして、本来、主権国家の中において他国の権力機関が主権を行使する場合において、その連絡は、しかるべき方がしかるべき方にしっかりと連絡をした上でとり行うということが必要であろう、そうでなければ、今後もこのような問題というのは起こるのではないかというふうに思うわけですが、日米地位協定、合意議事録、あるいは日米合同委員会合意において、連絡をどのように行うかということについての何らかの取り決めが日米両国政府の間でありますでしょうか。

西宮政府参考人 地位協定十七条十の(b)では、施設・区域の外部において、米軍の軍事警察は、必ず日本国の当局との取り決めに従うことを条件とし、かつ、日本国の当局と連絡して使用される旨規定されておりますが、軍事警察と我が国当局との連絡の態様について具体的に定める規定は、地位協定関連取り決めにはないものと承知しております。

川内委員 この連絡という言葉をしっかりと定義していく、だれがどのようなルートでどのように連絡をするかということについて、しっかりと日米合同委員会で御議論をいただくべき、今後このようなことが起こらないために必要ではないかというふうに思いますが、いかがですか。

西宮政府参考人 現在、憲兵隊と沖縄県警察の間でまだやりとりをやっておる状況でございますし、大使館からの説明も聞いておる最中ではございますが、御指摘の点につきましては、参考にさせていただきたいと思います。

 米軍の軍事警察と我が国当局間の連絡のあり方につきましては、日米の警察当局間の実務的な問題にかかわることでありますので、まずは両当局の間で密な意思疎通が図られることが重要であると考えております。

川内委員 いや、大臣、ちょっと今の答弁、違うと思いませんか。

 施設・区域外、日本の国内において他国の警察が権力を行使するわけですよ。手錠をかける、身柄を拘束するということに関して、実務的なことだから両国の警察が密に連絡をとり合うようにまずしてもらいましょうねと今外務省の事務方はおっしゃるわけですが、こういうことはしょっちゅう起こっているわけですね。委員長はよく御存じだと思いますよ。

 アメリカ側は今、とにかく身柄を米側で確保せよというような行動をとるわけです。ヘリコプターが墜落したときもそうでした。塀を乗り越えて、だあっと走ってきて、日本の救急車が日本の病院に連れていこうとしているのを無理やり米軍の基地の中の病院に連れていく。とにかく、身柄を基地の中にとりあえず連れ戻すんだということをしているわけですね。しかも、それは電話一本で、とにかくこっちがやるからと。それが連絡なんです、日米地位協定上。

 だから、今後このようなことが起こらないようにするためには、日本側が現行犯逮捕しているんですよ。その方たちに対して日本の警察権がしっかりと行使をされるようにするためには、この日米地位協定十七条の十(b)の連絡という言葉については、日米合同委員会でこういうことが連絡なんだということをしっかりと議論していただくべきである。

 合同委員会には防衛省も入っているんでしょう。入っていますよね。大臣、それは議論させると言ってください。

石破国務大臣 必ずしも、私が責任を持ってお答えをできるお話ではございませんが、そこにおいて認識の一致を見る必要はあるのだろうなというふうには思っております。地位協定に書かれております文言において、日米間で認識の相違がないようにそれは努めていかねばならないものだと考えております。

川内委員 今、認識の一致をさせるようにしなければならないと考えておるというふうに防衛大臣から御答弁がありました。

 警察庁は、けんかがあったという趣旨の通報があったと言っているんですからね。それは、外務省はしっかりと合同委員会で問題を提起いたしますというふうにおっしゃっていただかなければならぬというふうに思いますが、どうですか。

西宮政府参考人 具体的にどういうやりとりがあったという点につきましては、先ほど申し上げましたけれども、憲兵隊と沖縄県警の間でまだやりとりが続いておるということでございますので、それを待ちたいと思いますが、連絡のあり方といった点につきましては、関係当局と我々相談させていただきたいと思います。

川内委員 警察庁も、外務省に対して、この日米地位協定十七条の十の(b)の連絡については明確に日米両国政府で定義をすべきである、日米合同委員会で議論すべきだということを提起していただきたいというふうに思いますので、警察庁からもそのような申し入れをするというふうに御答弁いただけますか。

井上政府参考人 それぞれの立場で、それぞれの関係機関が今後連携をよくとり合うことが必要だというふうに思っておりますので、そういう立場で進めてまいりたいというふうに思っております。

川内委員 なかなか思ったような答弁をしていただけないな。明確にすべきことは明確にしていくべきではないかなと私は思うんですけれども。

 明らかに、この間の米国側の行動というのは、電話を一本とにかくどこかに入れろ、行政機関のどこかに入れればそれが連絡なのだという形で行動してきているということを防ぐためにも、それこそ、しっかりと連携をするためにも、連絡というのはこういうことだということを合同委員会で明確にしていただきたいということを私は申し上げておきたいと思います。

 さらに、もう一点。今は、手錠をかけたということに関しての問題点であります。さらには、身柄を基地内に連れ帰ったということに関しての問題点について議論をさせていただきます。

 現行犯逮捕されている、店員によって万引き犯、米兵の息子さんたちは身柄を取り押さえられていた、現行犯逮捕されていた、これは刑事的な手続でいうと、どのような状態にあるというふうに理解していいのかということを教えていただけますか。

井上政府参考人 我が国の刑事訴訟法によりますれば、現行犯逮捕について規定する第二百十三条で、「現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。」とされておりますので、今回の場合は、一般私人が逮捕に及んでおるというふうに理解をしておるところでございます。(川内委員「その後どうなると書いてあるのかな」と呼ぶ)

 私人による現行犯逮捕と被逮捕者の引き渡しについて規定する第二百十四条では、「検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。」とされておるところでございます。

川内委員 刑事訴訟法の二百十三条、二百十四条で、現行犯逮捕、そしてまた現行犯逮捕された犯人は、警察に引き渡されなければならないと書いてあるということでございます。

 したがって、本件万引き事件については、当然にその犯人たちは沖縄県警に身柄を拘束されるべきであったということになるわけですが、それを憲兵隊が連れ去ったということであります。

 これは、憲兵隊が連れ去ることのできる日米地位協定上の根拠はありますでしょうか。

西宮政府参考人 外務省といたしましては、憲兵隊と沖縄県警との間の十分な調整がなされないまま、当該軍人家族が憲兵隊により施設・区域内に戻されたという状態が生じたことは遺憾であると考えています。

 このため、十七日、米側に対し、こうした認識とともに、施設・区域外の警察権の行使に当たっては、日米地位協定及び関連取り決めに基づき適切に行われることが重要であるというふうに申し入れている次第でございます。

川内委員 遺憾であるということは、地位協定上の根拠はないということでよろしいですか。

西宮政府参考人 地位協定上の考え方などにつきましては、今大使館の説明を徴しているところでございます。

川内委員 大使館側がどう説明するかということを待っているということでございますが、大使館は大使館なりに説明をされるでしょうが、日本国政府として、地位協定上根拠がないと現状では考えているということでよろしいですか。

西宮政府参考人 申し上げましたことかもしれませんが、憲兵隊と沖縄県警の調整がなされないまま、いわば日本側の捜査手続が中断される形で米軍人家族を施設・区域に戻したとされるような状況が生じたことは事実である。そして、そうした事実が生じたことにつきまして問題があるという点は、我々の今の考え方で申し上げますと、一つは、施設・区域の外部において、先ほど先生からも御指摘のありました地位協定十七条十の(b)でございますが、「日本国の当局と連絡して使用される」、その規定の趣旨。先ほど御議論がございました。それから、刑事裁判管轄権に関します合同委員会合意の十の(一)というのがございますけれども、米軍の法律執行機関が行うのは合衆国軍隊の軍属、家族の間における秩序と規律の維持ということとの関係で、連れ戻したという行為がその範囲にとどまっているのかどうなのかということが問題であるというふうに考えております。

 いずれにしましても、調整が不十分なまま連れ戻した、そしてこういう状態が生じている、一連の状態については遺憾であるということ、そして、地位協定関連取り決めに基づき適切に警察権を行使すべきことが重要であるという申し入れを行っておりますが、地位協定上の考え方そのものにつきましては、今なお米側ともう少し意思疎通をしてみたいと考えております。

川内委員 なるほど。今、なかなか興味深い御答弁が出たわけですが、そうすると、日本側としては、万引き犯に対する現行犯逮捕、そしてまた、その現行犯逮捕後の警察への身柄の引き渡しというものが当然になされなければならなかった、しかし米国側としては、万引きをしたこととは全く別なこととして、暴れている米兵の息子さんたちがいるので、秩序及び規律の維持のために警察権を使用し手錠をかけた、その延長線上で、秩序及び規律の維持のために身柄を基地内に連れ戻したという、警察権が競合する案件であるという考え方ですか。

西宮政府参考人 先生の御説明の事実関係の部分についてはそういうことだと思いますが、米側は、先ほど申し上げたことでございますけれども、逮捕しているということではないということでございまして、よく言われる共同逮捕という事例ではございません。

 ただ、軍事警察を使用したという限りにおきましては十七条十の(b)の範疇の問題である、それの解釈とか運用のあり方としてこれでいいのかという問題提起を我々は米側に対してしておるということでございます。

川内委員 問題提起をしているということは、地位協定上問題があるねということを外務省としても考えているということでしょう。

西宮政府参考人 先ほどのお答えとダブるかもしれませんが、十七条十の(b)、当局と連絡して使用されるということ、それからまた軍隊の、この場合でいきますと家族の間における秩序、規律の維持ということがいろいろ規定されておるわけでありまして、その範囲内にとどまっているのかという観点から問題があると考えております。

川内委員 大臣、万引きをした米兵の家族、少年たちが現行犯逮捕をされた、その方たちは当然に日本の警察に引き渡されなければならない、しかし憲兵隊がやってきて連れていった。これはある意味、公務執行妨害、あるいは拉致、誘拐にも当たる事案ではないか、日本側の警察からいえばですよ。日本の警察が現行犯逮捕されている少年たちを警察に連れていかなきゃいけないわけですよ。しかし、それを憲兵隊が連れていったわけですね。これは本来、日本側の警察からすれば、身柄を自分たちがとるべきところが連れていかれたというのは、公務の執行を妨害されている、あるいは拉致、誘拐されているということにも等しいのではないか。

 よく、現行犯逮捕したけれども犯人を取り逃がしたとか逃げられちゃったとかいうのはたまにありますけれども、しかし、本件は、憲兵隊が連れていったわけですよね。私は、何の地位協定上の根拠も持たないと思いますよ。

 なぜかならば、地位協定上、第十六条には「日本国において、日本国の法令を尊重し、及びこの協定の精神に反する活動、特に政治的活動を慎むことは、合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族の義務である。」日本国の法令を尊重してね、刑事訴訟法を尊重してくださいねと。さらには、犯人の逮捕などについて相互に援助するという規定もありますよね。これは、施設・区域外においてもう既に現行犯逮捕をされている米軍の家族については当然に、日本側の警察がこの人たちを連れていきますよとその場で主張しているわけですから、そうすれば、どうぞというのが地位協定上定められている米国軍隊の役目ではないかというふうに私は思います。

 この問題については、アメリカ側がどのように回答をしてくるか、まだ回答がないということでございますから、それを待って、また議論を引き続きさせていただきたいというふうに思います。

 続いて、イージス艦「あたご」の衝突事故について伺います。

 全く私は信じられないことが起こった。衝突したこと自体も信じられないことでありますが、実は、「あたご」の事件の後、私は防衛省のウエブサイトから、自衛艦乗員服務規則というものを引っ張り出しまして読んでおったわけでございます。この第六十七条に、「艦長は、航海中、航海長には当直勤務を課さないのを例とする。」こう書いてあったんです。

 しかし、新聞報道では、衝突の直前の当直士官は航海長であるというふうに報道されていたので、これは乗員服務規則に違反しているのではないかということを防衛省に指摘いたしましたらば、いや、そのウエブサイトが間違っているんですということで、ウエブサイトは、最近は情報公開のツールとして官報並みに法律上にも位置づけられているものであるというふうに思いますが、そのウエブサイト上に公開をされている服務規則は間違いだ、こっちが正しいんですと言って、どこにも公開をされていないものを持っていらっしゃって、この六十七条に、「艦長は、航海中、航海長を当直勤務に服させることができる。」と書いてある、こっちが本物ですと。どこにも公開されていないものをこっちが本物ですと言って持ってきて、では、一体どうしてこんなことになったんですかと聞いたら、五年前、服務規則を改定したときに間違えましたと。

 五年間ずっとこの間違ったものをウエブサイト上に公開していらっしゃったわけですけれども、このことについて事実関係と、また、どのようにお考えになられるかということをちょっと御説明いただきたいと思います。

中江政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、自衛艦乗員服務規則につきましては、この文章、ホームページに掲載されていたものにつきまして、平成十五年五月の同規則の改正内容が反映されていなかったということでございます。

 どうしてこのようなことが起きたかということでございますが、防衛省ホームページ上の通達類等につきましては、委託業者に更新作業を委託して行っているところでございますけれども、これにつきまして、防衛省から送付した原稿につきまして一部誤りがあったということ、業者による更新作業自体、改正前のものをそのまま掲載していたということ、それから、それを防衛省において十分チェックできていなかったということでございます。

 いずれにしましても、こういう一般の国民の方に情報を発信する防衛省のホームページにおきまして、長い間にわたりまして誤った情報が掲載されていましたことにつきまして、大変遺憾なことというふうに思っております。

 なお現在、三月二十五日に防衛省ホームページ上の同規則は正しいものに修正をしているところでございます。

川内委員 五年間ずっと業者のミスによってということでございましたが、業者のミスにするのもちょっとどうかなと私は思いますが、大臣、ウエブサイト上に公開されている自衛艦乗員服務規則が間違ったものをずっと公開し続けていましたということをいつお聞きになりましたか。

石破国務大臣 委員から御指摘があったということを最近になって聞いたものでございます。何月何日かはよく覚えていませんが、直近ですね、きのうとかの話であって、私は、それはよくないと思います、正直言って。

 これは何重もの誤りみたいな話で、今官房長から御説明申し上げましたが、まず防衛省から送付した原稿において誤りがあった。業者さんによります更新作業の結果、当該規定は改正前のままであった。ここは、何でこうなるのかよくわからぬですね。その後、防衛省において更新作業の結果を十分チェックしなかった。これは一体何だという話であります。

 そういうような指摘が委員からあったということを、私は、その時期何をしておったか、三月十八とか十九とかいう話ですからいろいろなことに忙殺されておったなんというのは何の言いわけにもなりませんで、こういう誤りがあったよということをやはりそのときにきちんと言うべきです。

 そして、これを直すのもまた膨大な量ですが、膨大だからといって、そんなことは言いわけになる話でも何でもないのであって、防衛省のウエブサイトに誤りが記載されているという状況はあってはならないことなので、これは可及的速やかに、業者を督励しようが何しようが、早急に直せということはけさ指示をしたところでございます。

 大変に申しわけございません。こういうことはあっていいことだと私は全く思いません。

川内委員 大臣、私もめちゃめちゃしつこい性格なものですから、いろいろ資料を防衛省からいただきまして見たんです。

 平成十五年の、要するに自衛艦乗員服務規則を変更するに当たっての原議書を見せてください、省内で回したものを見せてくださいと言ったら、いただきまして、「当直幹部」というところに、「航海長を当直士官につけることができる表現に修正」と改正案を書いているんですね。ところが、「改正理由」のところに、「航海長は、当直につけず常にあらゆる事態に即応できる勤務態勢とし、責任と自覚をもたせ、それぞれ航海の全般を把握させることが望ましい旨の趣旨を明確化し、現状にも整合させる。」と。

 航海長を当直士官につけることができる表現に修正すると言っていながら、その理由としては、当直につけず常にあらゆる事態に即応できる勤務態勢とすると改正理由を書いてあるというのは、いかにもよくわからぬなと思うんですけれども、官房長、何か御説明できますか。

中江政府参考人 今お伺いして、その改正理由自体適切なものとは思いません。どうしてそういう改正理由が付されているのか、ちょっとよくわかりません。申しわけございません。

川内委員 では、どうしてそのような理由が付されているのかわからない、適切ではないということですから、なぜそうなったのかということについて、なぜこのような改正理由なのかということについても、またしっかりとお調べいただいて、教えていただきたいというふうに思います。

 だから、こういうことがあるので、物すごくうがった見方をすれば、実はウエブサイトの方が正しくて、いや、こっちが正しいんですとどこにも公開されていないものを持っていらっしゃったけれども、それはつじつま合わせにつくったんじゃないのというようなことを思ってしまうんですよ、だから、しっかり御説明くださいねという趣旨でございます。

 次の論点に移らせていただきます。

 「あたご」の中間報告について私もいろいろ読ませていただきましたが、最大の疑問は、なぜ衝突時に艦橋、操舵室に艦長、副長、船務長、航海長、上から四人がだれもいない、当直士官は水雷長だった。水雷長というのは三十四歳の方で、「あたご」の操艦資格のある十五人のうちでは九番目の方、上から八人は艦橋にだれもいなかったということでありまして、切迫した状況でありながらだれも上級幹部八人が艦橋にいないということに関して、最大のなぞだと思っているんですが、そのことについて中間報告では何ら記述がないわけでございます。

 もう時間が残りあと一分しかないので、ちょっと事実関係をまず一点確認させていただきます。

 報告書の一ページには、衝突直前の午前四時五分の時点で針路三百二十七度、速力十・四ノットと書いてございますが、それでは、午前一時、午前二時、午前三時、午前四時の針路と速力をそれぞれ教えていただきたいと思います。

徳地政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のそれぞれの時点での正確な針路あるいは速力につきましては、捜査との関係でお答えを差し控えさせていただきたいというふうに思ってございますが、これまでの艦船事故調査委員会による調査におきまして、護衛艦「あたご」の衝突前の針路それから速力につきましては、衝突当日、二月十九日の午前一時から二時までの間は、針路はおおむね三百二十度前後、それから速力は約十二ノット強ということでございました。

 それから、これは報告書にも書いてございますが、午前二時半ごろ、航海長が艦長に対しまして、目標を避航する、つまり避けるために右よりのコースで航行するということを報告しております。その後、針路はおおむね三百四十度に変更されまして、三時過ぎまでおおむね同じ針路と速力が維持をされております。

 なお、四時五分の時点では、これも報告書に書いてございますとおり、針路三百二十七度、速力十・四ノットということがわかっておるところでございます。

川内委員 さまざまに議論をさせていただきたいことがあるのでございますけれども、例えば、防衛大臣、この自衛艦乗員服務規則という中には、針路とか速度については艦長が命ずると書いてございます。

 今、事務方の御報告では、午前二時四十分に航海長が針路を変えますよということを艦長に報告したというふうに御答弁になられました。本来であるならば、自衛艦乗員服務規則に忠実に艦を操艦するとすれば、航海長が針路の変更を艦長に進言し、艦長はそれを命じたというふうに、艦長が命じたというふうに報告書にも記載をされていなければならないはずですけれども、そうはなっていない。

 この服務規則どおりに操艦されていれば、絶対に衝突など起こらないはずなんです。絶対に起こらないはずです。私はそう思います。細かくいろいろなことが、それぞれの仕事が明確に規定してあります、当直勤務に任ずるかどうかは別にして。そこはまだなぞがありますけれども。しかし結局、衝突時に上から八人だれも艦橋にいない、これは、この自衛艦乗員服務規則がそもそも守られていたのかどうかということにもかかわる問題であろう、規律が緩み切っていたのではないかというふうに思います。

 防衛省の中の組織改革も大事だ、しかし、現場の人間がしっかり守るべきことをみんなで守ってやろうねということの意識を徹底させることは、より重要だと私は思いますが、最後、大臣の御見解をいただきたいと思います。

石破国務大臣 委員も、船に乗ってごらんになったことが何度かあると思います。船はシステムで動いておりますので、艦長が独裁体制で全部指示を出すわけではございません。部下が何々します、了解と言って、それが命令というふうに評価をされるものなのだということは、多分役所の方から委員に何度か御説明をしたことだろうと思います。

 私が思っていますのは、システム艦になりまして、やれイージスだ、やれSM3だ何だかんだ、いっぱいいろいろなものが入ってきて、そういう技術は大変に向上した。それが隊員の評価になるのだけれども、今委員がおっしゃるような基本的なシーマンシップというもの、船の基礎的な教育というものがどうもおろそかになってはいないだろうかという問題意識を今回強く持っておりまして、防衛大学において、あるいは幹部学校において、そういうシーマンシップとしての、基礎的な船乗りとしての訓練にどれぐらいの時間が割かれているか、あるいは、この服務規則なるものと実態との間に乖離はないか。

 そのあたりは、私、組織改革だけが大事なんて言っているんじゃないんです。組織改革をすれば防衛省が突然よくなるなんということも毛頭思っておりません。これは本当に両方やっていかねばならないものであって、そこは、ほかの国の海軍においてシーマンシップみたいなものにどれぐらいの時間を割いているか、あるいは海上保安大学校においてどうであるのか、あるいは商船大学校、今は違う名前、海洋大学かもしれませんが、要は船乗りとしての基礎訓練をしないままにいろいろな正規の技術だけ習得したとして、それはやはりおかしなことになっていくのではないかという問題意識を強く持っておるところでございます。

 そのあたり、また委員会でも御指摘を賜り、議論をさせていただいて、今回の「あたご」の事故というものを本当に生かしていい海上自衛隊になっていく、そういうふうにしなければ、あの事故で今行方不明となっておられる方、あるいは大変に悲しい思いをしておられる方々のお気持ちにこたえることにはならないのだと思っておるところでございます。

川内委員 後で時間は調整させていただきますので、ちょっと済みません、聞き忘れていたことを最後に一問聞かせてください。

 きのうきょうと、パシフィックコンサルタンツインターナショナルの遺棄化学兵器のことが大きな話題になっておりますが、このPCIに天下り、政府の言葉で言えば再就職者が多数いるのではないかというふうに思われます。

 国土交通省、それから外務省、防衛省それぞれ、再就職者がいるいない、いれば何人ということを御答弁いただきたいというふうに思います。

渡部政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御質問いただきましたので、早速同社の方に確認いたしましたところ、平成十八年三月十八日時点で、防衛省出身の者は在籍していないということでございます。また、本日現在につきましても、在籍者はいないということでございます。

桝野政府参考人 私どもも、会社に早速確認いたしましたところ、パシフィックコンサルタンツインターナショナルに聞き取りましたところ、国土交通省出身者はいないという回答をいただいております。(川内委員「パシフィックコンサルタンツは」と呼ぶ)パシフィックコンサルタンツについては十数名いると思いますが、ちょっと今数字を……(川内委員「違う会社なんですか」と呼ぶ)違う会社でございます。(川内委員「全然違う会社ですか」と呼ぶ)はい。

 ウエブサイト等々で持ってまいりましたが、パシフィックコンサルタンツというものとパシフィックコンサルタンツインターナショナルというものは、俗に言う兄弟会社的な位置づけにある会社だと認識しております。

林政府参考人 私どもで調査いたしましたところでは、平成六年から昨年まで一名再就職を行っておったと承知しておりますが、その後再就職した者はいないと承知しております。

川内委員 終わらせていただきます。ありがとうございます。

嘉数委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党・無所属クラブの津村啓介と申します。

 少し時間が押しているようですので、背景説明的なことは省略をいたしまして、少しテンポよく質問させていただければというふうに思っております。

 今御着席いただきました松島副大臣にまずお伺いしますが、先日、四月の二十一日にソマリア沖でタンカーの被弾事件がございました。現在の捜査状況について、概要を御説明ください。

    〔委員長退席、北村(誠)委員長代理着席〕

松島副大臣 お答え申し上げます。

 おっしゃいました事件でございますけれども、この事件は、日本船籍の、日本船舶に対して行われたものでございますから、当然、旗国である日本の海上保安庁が捜査いたすわけでございます。

 そして、ただ、この高山という船の乗組員の方に直接話を聞いて事情聴取するというのは、この船が日本に戻ってきて、日本に帰港しましたときを活用することになります。

 ただ、捜査というのは直接聞くこと以外にもございますので、現在やっておりますのは、高山の船の船舶管理会社でありますティ・エム・エム、これは東京の会社でございますから、このティ・エム・エムに対して捜査の依頼をしております。

 捜査依頼というのは、損傷箇所の写真撮影ですとか、あるいは当直に当たっていた乗組員の人に対してどんな銃撃状況だったかを確認するとか、あるいは海賊が襲撃に用いたボート及び武器の種類の確認など、いろいろなことがございますけれども、それをティ・エム・エムを通じて、つまり高山からティ・エム・エムの方にメールなどで答えを送ってもらって、それを入手するということをやっている次第でございます。

津村委員 日本人の乗組員の方が七人いらっしゃるというふうにお聞きしておりますけれども、この方たちが帰国をしてからお話を聞くという今のお話でしたが、いつごろになりそうですか。

松島副大臣 この事件の後アデン港に寄り、その後どういうルートをたどって、日本にいつ戻ってくるかということについては、まだ明らかにされておりません、承知しておりません。

津村委員 きのう少し役所の方からもお聞きしたんですけれども、旗国主義ということで、船籍が日本ですので、日本が捜査をするんだ、しかし、現在アデン港、イエメンに係留をしているので捜査ができないんだ、なので、仕方がないから、ティ・エム・エムですか、民間といいますか、当事者に協力を依頼しているというふうに伺いました。しかし、今後いつ帰国されるかもわからないという状況では、今後捜査がどれぐらいかかるのかもわからないということを意味すると思うんですね。

 昨年の十月も、日本人の船長が、これはちょっと海域が少し違うかもしれませんが、誘拐をされたという事件もありました。こうした海賊行為というのは、しばらく少し減っていたそうですけれども、昨年またふえて、特にこのソマリア沖では近年随分ふえているということだそうです。

 そういう緊迫した海域といいますか、日本にとっても非常に重要な海域で、このように、今回は幸いにして重大事故ということまでは必ずしもいかなかったのかもしれませんが、こうした中で捜査のめどが立っていないというのは非常に嘆かわしい状況といいますか、イエメンに現在係留しているのであれば、イエメンに捜査の協力を依頼するであるとか、あるいは日本の海上保安官を派遣して、一刻も早く事情を聞くということをイエメンにも要請することができると思うんですが、そういう努力はされていないんですか。

松島副大臣 先ほど申し上げましたように、ティ・エム・エムを通じて必要な協力は得られている状況でございます。既に、関連資料、写真など、一部入手済みでございますから、海上保安庁としては、このことによりまして、迅速な捜査の実施について特段の支障はないと考えていると聞いております。

津村委員 今回はティ・エム・エムさんが協力的なのかもしれません。また、七人の方が御無事で、きちんと当時の記憶もあるということかもしれませんが、例えば、日本船籍といっても、その日本人の乗組員の方がそのときに、この間の「あたご」の話じゃありませんけれども、事故のその時間にたまたま寝ていたとか、あるいは不幸にしてけがをされたり、そのほかの事情で答えられないというような重大事故になってしまった場合、そういった場合には、そういう民間の協力に依存した捜査体制ではきちんとした捜査がなされないと思うんですけれども、そういう脆弱な捜査体制で十分なんですか。

松島副大臣 捜査は一件一件事案ごとに状況が異なりますので、必要に応じて、もちろん、その必要があるときは、海上保安官の派遣も含めて対応していくことになります。

津村委員 海上保安官の派遣をイエメンに要請するということは、枠組みとしては可能なんですね。

松島副大臣 イエメン政府に対して日本の海上保安官の派遣の要請をすることは、もちろん可能なことです。ただ、今回はその必要が今のところないと考えて、していないということです。

津村委員 余り捜査を迅速に進めようという姿勢を感じないわけですけれども、わかりました、御答弁の限界なんだろうと思っております。

 続きまして、防衛大臣に、この事故は日本の防衛からすれば一つの事故にすぎないかもしれませんけれども、最近海賊行為が横行しているということ、あるいは日本はねらいやすいというような、これは新聞の書いていることですから、どれだけ現地の人が言っているのか知りませんが、そういうような風評もあるとかないとかいうようなことをお聞きします。

 また、もう少し経済的に、合理的に言えば、こういう事故が頻発をすれば損保会社としては保険料の引き上げということになるでしょうし、そうすれば経済的なコストもかかってくる。そうすれば、直接実際に事故が起きなくても、結果的に日本経済に一定のダメージを与えるということにもなり得るということだと思うんです。

 質問を事前に二つ通告させていただいておりましたけれども、少し時間が押しているのでまとめます。

 今回の事案を、事案の捜査状況も含めてですが受けて、我が国のシーレーン防衛の観点から、防衛大臣としては今後どのような対応が必要と思われているかということと、もう少し踏み込みますと、自衛隊派遣の枠組みについて、もちろんこの事件だけのことじゃなくてもっと全般ですよ、シーレーン防衛のための自衛隊派遣の枠組みというものについて、現在の国内法の問題点があるのかないのか、今後どういう形でそれを整備していくとお考えなのか、少し大きな議論ですが、お答えいただければと思います。

    〔北村(誠)委員長代理退席、委員長着席〕

石破国務大臣 冷戦が終わって、海賊というのはえらくふえたのですね。マラッカ海峡なんて特にそうであって、要するに、冷戦中、あのあたりにアメリカ海軍のプレゼンスとソ連海軍のプレゼンスとあったわけで、ソ連が消えてなくなっちゃいますと、ソ連のプレゼンスがなくなって、そうすると海賊がわっとふえたということがあります。

 それはやはり抑止力の問題なんだろうと思いますが、基本的に海賊を取り締まるというのはコーストガードの仕事だと私は思っています。海軍というのは何をするのかといえば、まさしく委員御指摘のシーレーン防衛ということなのだろうと思う。

 シーレーン防衛と海賊との関係というのは、よく整理をしてみなければいけませんが、我が国の法的な枠組みからいえば、シーレーン防衛をやろうと思うと、条文上の根拠は海上警備行動を使わざるを得ないだろうというふうに思っております。シーレーン防衛というのは、ある意味、常続的なものでございますから、そうすると、海上警備行動を出しっ放しというのは、それは法の運用としては極めて不自然だろうというふうに考えております。また、海上警備行動を使いますゆえんは、海上保安庁では足りなくて、特別な必要がある場合というのが条文上の構成でございますので、そこをどう判断するかということが一つあります。

 そうすると、では、シーレーン防衛というものを考えるときに二つ論点があって、一つは、法律上の枠組みをどう仕組むか。まさか、防衛省設置法上の調査研究というので、打ち出の小づち、アラジンの魔法のランプではございませんので、そんなに便利にこれが使えるかというと、それはなかなか限界があるのではないだろうか。これを自衛隊法上どう仕組むかというのが一つの論点。

 もう一つは、シーレーン防衛に特定して申し上げますと、日本からマラッカ海峡あるいはインド洋、中東までのこの長い範囲をシーレーン防衛でやる場合に、どれだけの船の数が必要なのか。それは水上艦の脅威なのか、航空脅威なのか、それとも潜水艦の脅威なのかというものをよく分析して考えてみなきゃいかぬだろう。

 シーレーン防衛というのは、言ってみることは言ってみるんだが実は物すごく難しいのだという考え方と、いや、そうではないのだ、日本の船がそこへ、海上自衛隊の船が幾つか並んでいる、あるいはほかの国と協力を行う、あるいは情報の交換を行うということによって、相当にシーレーン防衛の効果を持ち得ると。

 ごたごた申しましたが、能力的な問題をどうするか、法的な枠組みをどうするか、もう一つは諸外国との協力をどうするか、そういうふうな論点から、これは議員提案により海洋基本法というものができたわけでございます。海洋基本法に基づいてできました政策のセクションにおきまして、このこともきちんと議論をしてまいりたいと思っておりますが、どうか議員からも、こういうような考え方はどうかというような御提案があれば、私、真摯に承らせていただきたいと存じます。

津村委員 ありがとうございます。

 私の質問の趣旨は、今、能力的、法的あるいは海外との関係と幾つかの切り口をお示しいただきましたが、特に法的な部分についてお尋ねしたつもりですけれども、今後もその提案も含めて議論を続けさせていただければと思います。

 また海上保安庁、国土交通省への質問に戻りますが、海賊取り締まりに関して、これは私も新聞の、聞き書きですけれども、フランスが国連中心の海賊取り締まりのための国際的な枠組みを提案するなど、国際連携の動きが始まっているというようなことを勉強をしたんですが、こういう海賊の取り締まりについて、今後、海上保安庁としては、国際的にどういう取り組みをしていこうとお考えですか。

松島副大臣 お答えします。

 一つ、フランスの提案につきましては、ソマリア付近の海賊取り締まりにかかわるフランスの動きにつきましては、ニュース報道以上のことは海上保安庁は把握しておりません。これに関しましては、外務省が第一義的かと思いますので、外務省などの関係機関や独自のルートを活用して、関連情報の収集に努めていると聞いております。

 ただ、このことと別にと申しますか、昨年秋にも、おっしゃいましたような、パナマ船籍ですけれども、日本の船舶が事件に遭った。その後、我が国としましても、国際的な行動をこういうふうにとっております。

 昨年十一月の末ですけれども、国際海事機関、IMOの総会がロンドンでございました。この際に、ソマリア沖における海賊及び武装強盗に関する総会決議というのを採択してもらったんですけれども、これはやはり日本とフランス、そしてアメリカ、イギリスなどが熱心に行ったものでございます。

 中身は、ソマリア沖における海賊及び武装強盗の脅威に対応するために、一緒にその行為を非難するとともに、IMOの加盟国、政府及び関係団体に対して、一緒に取り組んでほしいという支援の要請です。

 また、この中で、ソマリア暫定政府に対して、海賊などの防止のための措置をとること、及びインド洋で展開中の艦船等が海賊に対応するために、ソマリア暫定政府、この領海内に立ち入ることへの同意を求めたいということを国連に通知することをIMOで決めました。そして十二月に、実際、IMOから国連の方に対してもその要請を出したところでございます。

 こういった取り組みは、日本も、海上保安庁といたしましても、国際的な取り組みを始めているところであります。

津村委員 松島さんにぜひお伺いしたいんです。

 今のも先ほどのも、事前に通告をさせていただきまして、その場でもいろいろな議論をさせていただいたんですが、まず今のお話にしても、フランスから提案があった、その中身、本当に私自身も一つ、二つの記事で見ているだけですから、不勉強な中でお聞きするのは心苦しいんですけれども、しかし、海上保安庁さんに事前の通告、そのほかの場面で伺っても、全く知らない、外務省に聞いても、外務省も知らないと言っていると言うんですよね。この記事はもう三日前の記事なんですよ。きのうの記事をぱっと取り上げて聞いたわけじゃなくて、三日間、フランスにも聞けるでしょうし、幾らでも調べられると思うんですよ、大事なことですから。

 それからもう一つは、先ほどのものですよ。イエメンに派遣することは可能だ、だけれども今回は必要じゃない、では本人にいつ聞けるんですか、でもそれはわからない。やる気があるのかないのかという話だと思うんですよね。質問の原稿にはそう書いてあるのかもしれませんけれども、私は今回、政府参考人はちょっとお断りしたんですけれども、政治家として、副大臣として、まさにそういう行政の怠慢なのか、理由があるのか、ちょっと今からお伺いしたいんです。

 そういうことをチェックするために政治家としての副大臣がその席に座っていらっしゃるわけですから、こういう、普通に考えると捜査を熱心にやっているようには思えないということや、三日前から報道されていることについていまだに把握できていないという現在の海上保安庁さんの取り組みについて、松島副大臣はどういうふうな御感想をお持ちですか。

松島副大臣 二つのことに分けて申し上げたいと思っております。

 一つは、フランスのその新聞記事について、きちっととらえていないことは確かに問題があると思います。そして、それについて私が今まで知らずにいたことは、確かに、おっしゃるように、私自身として、例えば外務省に対してあるいはフランスに対して何らかの調べるということをしていなかったのは、私も怠っていたと思います。

 もう一つお答えしたいのは、ただ、この海上保安庁という、これは警察組織でございます。捜査権を持っている警察組織でありますところに対して、早くイエメンに行った方がよいとか、あるいはどういう捜査の仕方をした方がよいというようなことは、これはほかの部署と違って、私が担当しているほかの局のことと違って、海上保安庁に対して捜査に関することについては私は言う立場にございません。

 ですから、この答弁のときも、何々と聞いておりますという、本当に自分では歯がゆい、変な言い方だと思いながら、それは、三条機関であります、そしてまた捜査機関であります海上保安庁と私との間の仕切りでございます。

津村委員 わかりました。お考えを持ってされているのはよくわかりましたけれども、確かに、積極的に捜査に介入をされるべきでないというのはおっしゃるとおりかもしれません。ただ、例えば、そんなことはないかもしれませんけれども、捜査の怠慢であるとかあるいはミスであるとか、そういうことが仮にあった場合は、それをチェックするのはやはり役割なんだと思いますので、そういう意味では、緊張感を持って今後ともウオッチをしていただければというふうに思います。

 もう一点、昨日、国土交通省の方とこのシーレーン防衛についてお話しする中で多少疑問に思ったといいますか、これはぜひ考えていただきたいなという問題提起の意味で御質問させていただきます。

 最近の各種論文等で、北極の海氷衰退ということが、新しい海運業界に与える影響ということが議論されているようでございます。アイスキャップというんでしょうか、ずっと凍ったままの氷がこの五十年間で半減をしている。そして、あと五年から十年のうちにはさらに大きく減少をして、ヨーロッパとアジアを結ぶ最短ルートというのは、北西航路というのがまさに北極を通るルートだそうですけれども、これが五年から十年以内に通れるようになる可能性が高いということだそうです。

 例えば、ロッテルダムから横浜まで、現在、スエズ運河を通って、中東海域やマラッカ海峡を通って、まさにいわゆるリスクの高い地域ですけれども、一万一千二百海里のところが、北極ルートを通れば六千五百海里になるということで、日本の経済にとっても大変潜在的な可能性のある地域だと思うんですが、海運業界に与える影響について国土交通省さんとしてはどういう分析をされていますか。

松島副大臣 今おっしゃいました点で、我が国におきましての研究は、国土交通省がやっているというよりは、民間団体でございます海洋政策研究財団などが熱心に行っているところでございます。

 その中で、北極海航路が開設されることになれば、おっしゃいましたように、日本とヨーロッパの航路は現在の距離の六割に短縮されます。そしてまた、短縮される六割に、ただ単に距離が短くなるだけでなくて、現在は、ヨーロッパからアジアへ来るときに日本は最終地点で、その前に、例えばシンガポールや香港や中国の港があって、日本が最終地点になっちゃう。今度、そのルートが変わることによって、ヨーロッパからアジアへ入ってくるとき、日本がその玄関口になる。その後、中国の方へやっていくということになって、メリットは二つの意味で大きいと考えております。

 ただ、北極海航路、おっしゃったのは五年から十年後ということでございましたけれども、今のところ、どの時点でどのように使う可能性があるのか、本当に安全にできるのかということについては、まだ国土交通省としても確認はしておりません。

 そしてまた、我が国の海運会社の関心は今の現状ではそれほど高いとは言えないと思いますが、海洋基本法が制定されて、海洋に関する国民の関心も高まりを見せている折でございますし、私ども国土交通省としても、この航路開設の可能性について、実際に六割になるということと航路をどのように開設するかという、物理的なことと航路の開設というのはまた少し違う問題でございますから、開設の可能性についてしっかりと勉強を進めて、検討を進めてまいる所存でございます。

津村委員 その件は今後の宿題といいますか、私も勉強していきたいと思いますし、国土交通省さんにも、それから、きょうはお呼びしていませんが、潜在的な石油資源はサウジアラビアの倍以上あるそうですので、経済産業行政にもかかわるでしょうし。それから、石破大臣、このことで直接御質問はしませんけれども、聞くところでは、アメリカの海軍も中国も、北極を意識してだと思いますけれども砕氷船をふやしている、ただロシアに比べると全然数が違うということだそうですけれども。五年から十年というのは正しいかどうかわかりませんが、今後、関心を持って研究していただければというふうに思っております。

 それから、ちょっと話が飛びますけれども、ここから残す時間、ミサイル防衛について聞かせていただきたいと思います。

 一部報道で出ておりますが、この夏の洞爺湖サミット警備にミサイル防衛を活用するということは御検討されていますでしょうか。

石破国務大臣 洞爺湖サミットを成功させるということは、日本国にとって極めて重要なことであります。特定のこのような脅威に対してどうかということについて一つ一つお答えはできませんが、私どもとして、あらゆる懸念を念頭に置いて、いかなることが起こっても洞爺湖サミットがきちんと成功裏に行える、そのための対策あるいは抑止力の発現、そういうことには配意をしておるところでございます。

津村委員 この三月に、首都圏の第一高射群を、PAC3の都合四つの配備が終わって、ひとまず当初計画を達成したという報道がありました。

 最近の配備状況、レクをいただきましたけれども、どうも関西の方が少し薄いのかな、九州にはあるようですが、関西圏、それから中国、四国圏はどうやらまだだということのようですけれども、今後の関西、西日本の配備予定をお聞かせください。

石破国務大臣 委員は岡山でありますし、私は鳥取なのですが、では一体、鳥取とか岡山はどうしてくれるかというようなこと、これはもう日本国全部、一、二の三で、北海道から九州、沖縄までパトリオットが全部そろうということは、これはスケジュールからいっても財政的にも無理なことでございます。

 したがいまして、基本的には、イージス艦を配置して、そこで落とす。それで、打ち漏らしたものはパトリオットでやるということになるわけでございまして、パトリオットが配備されていないところは何もしないかといえば、そういうことでは全くないのは、委員御案内のとおりでございます。

 中京、関西圏でございますが、中京、関西圏に、岐阜に第四高射群が所在をいたしております。これには、平成二十一年二月ごろから同年夏ごろまでをめどに配備を実施したいというふうに考えております。

 今後、SM3とパトリオットを組み合わせて行っておる迎撃システムでございますので、これは関西圏も含めまして、岡山も鳥取も、中国も四国もそうです、ここからこういうふうに打たれたらどうなるかというようなシミュレーションをすべて行うことによりまして、それが薄い地域がないようにというシミュレーションを間断なく行うことによりまして、このミサイル防衛システムというものをより完璧なものに近づけたいと考えておるところでございます。

津村委員 ちょっと時間がなくて飛び飛びになりますけれども、総務省の方にもミサイル防衛の関係で来ていただいていますが、PAC3を一気には配備できないという中で、次善の策としてJアラートというものがあると思います。事前に危険だよということを、サイレンなのかあるいは同報系の無線なのか、知らせるということですけれども、現在、この同報系のシステムというのはモデムが必要とかお聞きしましたけれども、実際に稼働状況にある市町村というのは全体の何%なんでしょうか。

谷口副大臣 今委員がおっしゃった、Jアラートというシステムがございまして、これは、人工衛星を用いて情報を送信し、市町村の同報系防災行政無線等を自動起動することによりまして、人手を介さずに国から住民まで瞬時に情報伝達ができる仕組みでございます。

 整備状況でございますが、平成二十年四月二十一日現在におきまして、九十七団体、四十都道府県、五十七市町村におきまして整備がされておりますが、このうち、有事情報の伝達は五十四市区町村でございます。ですから、委員がおっしゃった、全国千八百団体のうち約三%程度だというような状況でございます。

津村委員 もう時間がありませんので、最後に一問だけ、防衛大臣に。

 あすの長野の聖火リレーのことで、大変国民的な関心が高いんですけれども、これは警察のことなんだというふうに一義的には理解しているんですが、政府として万全の体制をということが言われる中で、これまで、事前それから当日も含めてですが、自衛隊への協力の要請なり、あるいは、万が一のときにはという備えということは何かされているんでしょうか。最後にその点だけお伺いします。

石破国務大臣 現在までのところ、私どもに対しまして警備についての協力依頼というものはございません。また、私どもとして、当然この聖火リレーが平穏裏に行われることを望んでいるものでございますが、不測の事態というのは全くないとは言えないものでございます。そのときは、法令にのっとりまして、私どもとして行うべきことを行うということに相なります。

 現在のところ、協力等々の依頼はございませんが、私ども、これがきちんと行われますように、万全の対応というものはその都度なしていく、平素からそういう体制でおるということでございます。

津村委員 終わります。

嘉数委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 それでは、きょうは十二時半から本会議がございますので、皆さん方が本会議場にちゃんと着席できるように時間を配慮しながら質問をさせていただきたいと思います。

 今の津村委員の質問にちょっと関連して、通告にはありませんけれども、いわゆる洞爺湖サミットが行われる中で、航空機テロのような、いわゆる九・一一型、そんな答えづらいことを聞くのかおまえはという嫌な顔をしましたけれども、いわゆる飛行体による突入テロのような場合は、撃ち落とすかどうかという話はやはり現実的に考えなきゃいかぬと思うのです。

 先進国の首脳が集まって一堂に会しているところで、外国勢力あるいは国内勢力も含めて、いかなることが起きるかわからないということを考えれば、何らかの形で、そういう不測の事態の場合を検討はしていると思いますけれども、大臣の個人的なお考えでも結構ですけれども、その場合は撃墜をする、あるいは、飛行停止を呼びかけてもどうにもならない場合は、これは当然、そういう形でも最後は脅威に対して対処しなければならない、そういうことがあり得るのかどうか、そこまで検討しているかどうか、お答えいただけますでしょうか。

石破国務大臣 それは政府全体で判断すべきものでございますから、私がどうこうと断定的に申し上げられる筋合いのものではございません。しかしながら、それを撃墜しなければもっと大きな被害が生ずるということがあり得る場合には、それが選択肢から排除されることがリーズナブルだとは私は全く思いません。

 その場合に法的にどういう枠組みをつくるか、そして、そこにおいて文民統制というものはきちんと図れるか、それが時間的に間に合うようにするにはどうすればよいか、どのような兆候を察知するシステム、どこから何が上がるか、そしてルール・オブ・エンゲージメントをどうするか、そういうことはきちんと詰めておかねばならないことだと私は思っております。

 あくまで個人的にという注釈つきで申し上げれば、それが履行されることによって、実行されることによって大きな被害が起こる場合には、それを食いとめるために何をすべきかということを考えないでおくということは無責任なことだと私は思っております。

渡辺(周)委員 私は、やはりこういう議論をしておくことが、例えばそういうテロ集団が出てきて何らかの不穏なことを考えたときに、やったら撃ち落とされるんだということをちゃんと議論しておくことは大事だと思います。もちろん、そんなことがないにこしたことはない。

 ただ、先日ですか、新聞報道で、アルカイダが日本も標的であるというようなことを、どこかで、ウエブサイトで言ったのかマスコミの質問に答えたのか、ちょっと忘れましたけれども、日本もなぜアメリカに協力をして海外で軍隊を展開しているのかということで、それは一種のブラフなのか本気なのかわかりませんけれども、アルカイダが日本も標的なんだということを言いました。テロというのは最も効果的な政治的、社会的恐怖を与えることを目的としていますから、当然サミットというのは格好の的になるということは想像できるわけでございます。

 その点について、これはなかなかこういう質問は、例えば私が答弁する側にいたら、では、あなた、羽田から千歳に行く飛行機が乗っ取られて、乗客、乗員、四百名も三百名も乗っている飛行機を乗っ取って、サミットの洞爺湖のウィンザーホテルに向かって突入してくるものを千歳基地から出撃した自衛隊が撃ち落としていいんですか、いけませんかと聞かれたときに、それは答えられないと。

 でも、実際そういうことも考えておかないと、最後にそれしかもう脅威を除去する手段はないというときに、それはやはり何らかの腹構えというか心構え、もちろんそんなことが絶対あってはいけないということで、万全な情報収集や警備、警察の警備体制は必要とするところでありますけれども、ただ、もしそれしかないという場合には、やはりこれは残念ながら、悲しいかな選択肢の一つとして考えておかなきゃいけないというふうに思うわけでございます。

 その辺について、今、それは排除するものではないというようなお考えをいただきました。そんな不幸なことがないように、この点についてはぜひ万全の警備をしていただきたい、このことは、まさによく言うことですけれども、与党も野党も関係なく、これはサミットの成功に向けて協力をしていかなきゃいけないことだろう、そのことを冒頭申し上げました。

 それで、きょう午前中から何人かの委員からも質問が出ていますが、名古屋高裁の判決について、もう同じことは伺いません、角度をやや変えて伺います。

 今までも今津委員や長島委員の質問のやりとりをずっと聞いておりました。その上で、しかし、このイラク派遣についての唯一の司法判断という形で、たとえそれが主文でなく傍論であっても、先ほども法務省の方やその他の方がお答えになられたことを聞いておりましたけれども、そうは言いながらも、ただこれは、司法の判断として唯一今回残るわけですね。

 それについて、これは憲法の番人である最高裁の最終判断ではないから、ある意味では中間報告というか途中の考え方であるという見方ももちろんできますけれども、ただ、これは派遣する側の政治の言っていた根拠が、いわゆる司法が、名古屋高裁が初めてこういうことを言ったということによって、やはり自衛隊の今後の国際貢献の活動を考えれば、当然国民世論も味方にしていかなきゃいけない、それは当然現場で働いている行く方々の士気もそうでしょうし、また送り出す側として、最大限の責任として、やはり国民に感謝されて、それなりのモチベーションを持って行ってもらわないと、これは本当に何かかつての機雷の掃海艇が出たとき、あるいはPKOで初めて出たとき、石もて追われるように、おまえら何しに行くのだと出航するときに妨害行為を受けて、何か本当に石をぶつけられながら出ていくような、あんなことはやはり繰り返しちゃいかぬと思うわけです。

 その上でお尋ねしますけれども、今回のこの司法の判断、これは、先ほども話がありました、ある意味では戦闘地域であるという根拠を示したのが、一般市民を含む多数の犠牲者が続出しており、国際的な武力紛争の一環として人を殺傷し、物を破壊する行為が現に行われている、このことを根拠として戦闘地域と認定した。つまり、名古屋高裁の青山さんですか、裁判長、三月三十一日で依願退職されたというふうに報道されていますけれども、この方が断じたいわゆる戦闘地域ということの定義、これと我が国の政府が言ってきた戦闘地域の認定には違いがあるんですね、溝がある。

 まずここについて、この違いをどう埋めていくか、国民の認識は二つに分かれている。だとすれば、これをどうするかということについて、防衛省、今後どうしていかれるのかということが一つ。

 それから、兵士の輸送と断定したということは、これは我々、長島委員も何度も聞きましたけれども、これについてはなかなか明らかにされなかった。ところが、先ほどもお答えがあったように、さまざまな国会の議事録であるとか専門家の意見を聞いて、そう判断したのだろうということでございますけれども。

 だとすれば、兵士の輸送と断定したということの事実は、我々が国会で知る以前に、もう既に司法、名古屋高裁によって明らかにされてしまったわけですから、それについて、それが事実であるか否かということも含めて、あるいは、事実である、断定されたのはこういう理由だということで先ほどお話がありましたけれども、事実と認定した理由ですね。だとすれば、やはり何らかの形で、この国会でも、私は公表すべきところはすべきだと思いますけれども、大臣、いかがですか。

石破国務大臣 去年のイラク特措法の延長のときに、私は与党の筆頭理事をいたしておりました。御党は原口委員が筆頭理事であられたかと思います。そのときに、とにかく情報を出そう、可能な限り出そうということで与野党ともに意見が一致をし、政府にそのように申したところでございます。

 私は、出せるものは全部出したいと思っています。ただ、私どもの国だけでやっておるわけではございませんので、これは国連の要員を運び、あるいは多国籍軍の要員を運んでおりますわけで、それをすべて明らかにするというのは、その当該国が、いいですよ、私たちの要員を何名運びました、これはこんなものを携行しておりましたということを全部言っていいですよということになればそれは出しますが、それは、どこもそんなこと、いいですよというふうに言ってくれないわけであります。そういう了解を得ないまま、私どもがそれを全部明らかにすることができないということは委員御案内のとおりでございます。

 私は、今回大臣になりまして以降、ホームページ等々を通じて出せる限りのものを出せ、そしてまたできるだけ新しいものを出せ、一月たってようやっと出ましたみたいな話ではだめですね、常に更新をしながら新しいものを出すようには申しております。

 なお、もしこれからさらに出せるものがあれば出したいというふうに思っていますが、いずれにしても、名古屋高裁に対して私どもはそんな資料を提供もいたしておりませんし、提供しろという要請もございません。そこにおいてそういうふうに断ぜられてしまいますと、私ども、反論する機会は司法の場においてはないわけで、これはもうこういう場において申し上げるしかないなということでございます。

 委員と私と大体似たような世代なのでございますが、昔、例えば三菱重工が爆破されたとかそういうのがあって、大勢の民間人が亡くなりましたね。連続企業爆破事件というのは、あのころ、昭和四十年代の後半でしたか、ありました。では、あれを国際紛争とだれかが評価したかといえば、だれも評価をしていないわけですね。では、こういう例が適当かどうかは知りませんが、歌舞伎町でやくざとやくざが銃撃戦をやっておって大勢の人が巻き添えになって死んじゃったということが仮にあったとして、これを国際紛争と言うかというと、だれも言わないわけでございますね。

 そこは、国家あるいは国に準ずる組織というものがどう関与をしているかというファクターはやはりあるんだろう。なぜならば、それは憲法九条第一項が「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」ということをいかにして担保するかということでやっているわけで、それはおまえの言う、やくざの例なんか出すなとか言われますが、国際紛争ということがどういうものなのかという法的な評価をしますときに、やはりそこはきちんと議論をせねばならぬところではないだろうか。

 名古屋高裁において、本当にそこが、確かに民間人が大勢命を落としている、けがもしている、非常に危険な状況だ、それがなぜ国際紛争という法的な評価になるのか。そこのロジックが私にはよくわからないということを朝からずっと申し上げておるわけでございます。

渡辺(周)委員 例えが余り適切でなくて、私はすとんと落ちないんですが。

 ただ、私が申し上げたいのは、そうは言いながらも、司法がこういうふうに出た、しかも国は勝訴していますから上告をすることはできない。しかも、向こうもこれで判決はもう確定したということで、いわゆる長沼ナイキ訴訟であるとか砂川事件の訴訟以来のこうした自衛隊あるいは安全保障をめぐる司法の判断としては、そうは言いながらも事実として残ったわけです。

 かつて、横田基地の騒音訴訟というのが何回も繰り返されました。私は新聞社の記者だったときに八王子にいましたから、横田基地の隣の福生だとか昭島だとかの住民が騒音訴訟をやりました。あれは地裁八王子支部というところで何回も行われたんですけれども、そのたびに、いわゆる統治行為論、これは高度に政治的判断を要する問題だから司法の場では判断できないということがこれまで何回も行われてきたんですが、ここをあえて違憲であるということで、戦闘地域の定義や、あるいは何を運んで、要は、米軍を中心とした多国籍軍の兵士を運んだということを断定したわけですね。

 ですから、これが司法の判断とするならば、では、それこそ我々はこの立法府で、あるいは防衛省、行政府の方で、これに対して、そうではないという根拠を示すべきだと私は思うんですけれども、それはどうされますかということを私は伺いましたので、その点について簡潔にお答えいただけますか。

石破国務大臣 根拠は先ほど来るる私が申し上げておるとおりでございます。それは委員はすとんと落ちないとおっしゃる、私もなかなか落ちていないなというふうに思いながら言っているわけですが、これをどういう形でやれるか。ステートメントという形にするのか、どういう形か、あるいは、防衛省のそれこそホームページとかウエブサイトとかああいうところで、私はこのように考えますみたいなことがいいのか、何がいいのかは、ちょっとよく考えてみたいと思っております。

 ただ、これは委員がおっしゃいますように全面勝訴しているもので、それに対して物申すというのもいかがなものか、こういう議論もございまして、どういうやり方が一番いいのか、私自身、あの判決が出てからずっと悩んでおるところでございます。正直言って、そんな状態です。

渡辺(周)委員 この点について、私は、我が国としての役割をやはりちゃんと憲法に明記して、そしてその中で、その範囲内で我々は国際貢献をしていくべきだ、そのためには、当然自衛隊が行くことも、自衛隊でしかできないことは行くべきだという立場も何回も説明しておりますから御存じと思います。

 これから、今後そういう法制化をするに当たっては、今回の判決ということについて、司法の判断というものに対して、やはり我々はそれを踏まえた上でも考えなければいけない一つの大きな命題だと思っています。この点については、もう時間がありませんので、具体の宿題として我々考えていかなきゃならないなというふうなことは思っているわけでございます。

 さて、そんな中で、私はこの問題について最後にもう一つ、田母神俊雄航空幕僚長、そんなの関係ねえと言っちゃいましたね。

 こういう発言をして、もう少し真摯な、誠実な発言をするべきだったと私は思うんです。これでまた茶化して、言葉は悪いですけれども、けつまくったような言い方をしちゃうと、何だと。裁判所が、高裁がそういうことを判断したにもかかわらず、実際の航空幕僚長は、まあ、イラクに行った隊員たちの気持ちを代弁すれば、そんなの関係ねえという心境だみたいなことを言っちゃったんです。こういうことを言っちゃうと、やはり誠実さというか、真摯さを疑われるんですね。私はまだ物言いやわらかく言っていますけれども、やはりこんなことを言ったら、当たり前ですけれども、新たな反発を惹起するわけですよ。

 これはどういう意味なのかなと私は考えた。二つあると思います。

 つまり、違憲と言われようがそんなのは関係ねえんだ、憲法違反だろうとやっちまうんだ、やるんだという意見なのか。それか、そういうふうに名古屋高裁の裁判長は言ったけれども、我々は派遣される側なんだ、行くというのは私たちの意思じゃなくて政治の判断で、当然撤退命令が出ない限りは行って職務を遂行するんだ、だから、その職務遂行を継続するという意味においては、高裁での裁判長の憲法違反だと言われたことについては関係なく行かざるを得ないんだという意味なのかなとも、好意的にというか善意で解釈すればとれるわけですね。

 これは一体どういう意味なのかということについて、大臣は真意をただしましたか。これもまたひとり歩きしますよ。そんなの関係ねえと言って、高裁が言った判断に対して全くそれを無視して、航空自衛隊のトップはそれで任務を遂行すると言っているということになっています。これについて真意をただしましたか、あるいはただすお気持ちはありますか。

石破国務大臣 このことにつきましては事務方が確認をしておりますし、私も、田母神航空幕僚長とは本当に長い、かぎ括弧でいえば「つき合い」というか、長くいろいろなことで議論をし、非常に信頼している私の幕僚でございます。

 これは、よく、活字にしちゃいますと、今人気のあると言われておる、何とかよしおさんとおっしゃるタレントの方の口調をまねたように出ちゃいますが、私は、田母神空幕長と話をしておって、全くそういう意識はなかったんだそうです。何とかよしおさんのこともよく知らない、それを意識して言ったわけでもない。会見録を読みますと、どうもそういうような流れで茶化してという感じではないと。

 委員のおっしゃる前者なのか後者なのかということで申し上げれば、間違いなく、憲法なんか関係ないというような考えは田母神さんにはないということであります。後者の方の、いやいや、憲法違反かもしれないけれども命令なんだからさ、防衛大臣から中断とか撤収とかそういうことがない限りは行くんだよ。それは、裁判長が何を言ったって、それはおれたちがやるとかやめるとかということと関係ない、そのニュアンスでもないと思うのですよ。そうでもないのだと。

 私は、要するに、政府として、これは憲法違反ではない、国益を守り、そして国際的な責任を果たすという意味においてやっている崇高な任務であり、委員が御指摘のように、航空自衛隊にしかできない、日本国の、ほかの民間の航空会社とかそういうことではできない非代替性を持った仕事なのだ。憲法九条にも当然違反もしないし、日本の国益を果たし、国際的な責務を履行するためのものだから、この判決と関係なくというか、判決に動ずることなくというような意味なんだろうと思います。

 私は、むしろ言っていただきたかったとするならば、一つは、タレントの方の発言をまねてというか、そういうふうに茶化したと思われないような、活字にしちゃいますとわかりませんので、そういうような表現はしてもらいたくなかったなということと、関係ないというよりは、動ずることなくとか、そういうような表現を使っていただければなおよかった。田母神空幕長が隊員の気持ちを本当におもんぱかって発言をしたということには私は何らの疑いも抱いておらないところでございます。

渡辺(周)委員 田母神空幕長がこういうことを言うことによって、結果、また自衛隊を見る環境というのは私は決してよくならないだろうというふうに思うわけでございます。さっきも言いましたけれども、茶化してけつまくったような、けつまくったという言葉は品のいい言葉ではありませんけれども、何かもうそんな捨てぜりふみたいな言い方をすると、何だ、結局はシビリアンコントロールだとか、いわゆる法の範囲内でとかと言われるけれども、その態度かということになるわけでございます。

 これは、世が世だったら当然もうやめさせろという話になりますね、真意をただせと。そこまで言わないのは、我々、少しゆとりを持って今は議論をしているわけですけれども、この後の党の方はどうおっしゃるかわかりませんが、これは、私はそれに対して真摯にもう一回対応させるべきだと思いますよ、不適切な言葉であった。ちょっと気分が高揚していたから、つい口をついて出たんだというようなことをやはりやるべきだと思いますけれども、いかがですか、大臣。もう一回聞きます。

石破国務大臣 航空幕僚長の会見において、人から問われてということではなくて、みずからそういうようなことは言うべきではないかと私は思っております。少なくとも誤解を与えるということは極力避けなければいけません。

 私どもは、国の中で唯一の武力集団として、武力集団という言い方がいけなければ最強の実力集団といってもよろしいでしょう、そういうような集団でございますから、発言はもう慎重な上にも慎重であらねばならぬということは当然であります。そしてまた、幕僚長でございますから、私の幕僚でございます。だとするならば、発言がいささかも誤解を与えることのないように、自重自戒をせねばならないものでございます。

 委員の御指摘は、重く受けとめたいと存じます。

渡辺(周)委員 これは自衛隊の体質だ、これが制服を着た人の体質だというふうなイメージを持たれちゃうわけですよ。だから、そういう意味では、当然、改めて何らかの形で真意を伝えられることを望みたいと思います。

 きょうは本会議がありますから、少々質問をはしょらなければいけませんので、あと二点ほどお尋ねをします。簡潔にお答えください。

 防衛省改革案についてちょっと伺います。

 与党案が出たことは新聞で見ました。そして、政府案についても同じくして出ております。

 そんな中で、参事官制度を廃止して、防衛大臣補佐官として登用するというようなことが政府側でも検討されているようでございますけれども、私は、民間人が入るということが一つ目玉なんだと思います。反面で、民間人が入ることによって、例えば防衛機密を盾に情報が入らなくなるんじゃないかというように思ったりするわけですね。防衛大臣補佐官として登用するということについて民間人も入る、私は入れてもいいと思います。

 ただ問題は、民間人が入ることによってかえってそこに情報が入らなくなってお飾りのようなことになってしまうのではないか。そうすると、実際は、結果として、現状と同じように局長と兼務して内局から登用されることになりはしないだろうかということが一つ。

 それから二つ目、総理秘書官に登用する。これは与党案でしたかね……(石破国務大臣「自民党」と呼ぶ)自民党案ですね。私は、中谷さんはきょうはいらっしゃらないけれども本をいただきまして、読んだところ、やはりこのようなことも書いてある。確かに、総理秘書官に財務省や経産省や外務省から秘書官が来られているけれども防衛省から来ていなくて、ちょっと驚いたわけでございまして、総理秘書官に登用することは私も賛成なんです。

 そしてもう一つ言えば、今まで内局以外のいわゆる制服組の方が国会で答弁したこともなければ、国会へ来てもらってといったって、これは今まで大変な与党の抵抗に遭って、私たちもなかなか実現できなかったわけでございますけれども、その点について、やはり国会にも制服を着た方が当然答弁することもあれば、あるいは窓口として何らかの形で政治家と制服を着た方の意見交換をする場、あるいはいろいろ教えてもらう場があってもいいと私は思うんですよ。

 シビリアンコントロールというのは官僚優先じゃなくて政治優先という意味ですから、逆に言うと、我々が、与野党の議員が、そこはまさにもともと言われている文民統制という形になればいいわけでございますので、ぜひ私は、防衛省改革の中で、背広組でない制服の方が、国会で連絡事務所を設けたり、あるいは何らかの形で我々と接触する機会があってもいいと思うんですけれども、その点についてはいかがですか。その点について伺って、質問を終わります。

石破国務大臣 第一点の、自民党がお考えの大臣補佐官に民間人の話でございます。

 仮にそのようなことになったとするならば、この補佐官に対しても保秘に対する責任、義務は当然課すことになります。したがいまして、民間人であるから秘密にかかわることなどは何も教えないというようなことでは、何のために設けたか意味がわかりませんので、仮にそういうことになるとすれば、この人にも保秘の義務を課すということに相なります。これが一点。

 二点目は、総理秘書官のお話でございます。

 これは二つの議論があるんだろうと思います。多分、総理秘書官に内局から、そして、我が国には制度がございませんが総理大臣副官という形で、一佐になるんでしょうかそれとも将補になるんでしょうかそれはよくわかりませんが、そういうものを置くべきではないか、この二つの御提案があるんだろうと思っております。

 ただ、秘書官に、では防衛省から出すんだったらどこどこも、そこも出すんだったらうちも、総理にとりあえずこれだけは御一報、ほかの省庁にはおっしゃらないように他言無用みたいな、そういうようなものが本当にいいのかねという議論もございまして、私どもとして、最高指揮官たる総理の補佐体制というものを防衛省としてどうすべきかということは、自民党の提案も受けまして、政府全体で考えていかねばならないことだというふうに思っております。それが二点目。

 三点目のお話は、国会に制服が出てきて答弁をするかどうか。

 これはまさしく国会がお決めになることでございまして、私どもとして、出さないというようなことを申し上げておるわけではございません。今、本当に制服の人でなければわからないことがありとせば、それは当然そういうことになるのでしょうけれども、私でありますとか副大臣あるいは局長たちが答弁をいたしますときに、本当にこれでいいのかということ、特に今回の「あたご」でありますとかそういうことは、私も護衛艦乗りだったことはございませんので、わからないことは山ほどございます。これは本当に確かかということは必ず制服の方に確認して、誤った答弁をしないように心がけておるところでございます。

 委員の御指摘でもございますので、いわゆる政府控室に制服を配置するか、あるいは連絡所みたいなものを設けるかということは、文民統制の一つの主体であります国会との関係でございますから、これは、委員の御提案を受けて、省改革の中で一つの課題として検討し、結論を出したいと思っております。

 以上でございます。

渡辺(周)委員 終わります。

嘉数委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

嘉数委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、きょうは、普天間飛行場代替施設の建設予定地での環境アセス方法書について聞いていきます。

 建設予定地の辺野古は、海域には発達したサンゴ礁が広がり、そして、湾内では、世界でも有数のアオサンゴ群落が見られ、絶滅危惧種やあるいは準絶滅危惧種の海草藻場があり、絶滅危惧種のジュゴンの回遊が確認をされ、渡り鳥も繁殖地を求めて飛んでくる豊かな干潟、そして、静かな集落、畑と森が広がるところであります。

 こういう場所に基地を建設しようとしているわけです。ところが、防衛省が示した環境影響評価方法書は、専門家からは日本における環境アセスメントの歴史において最悪なものという指摘を受けました。それは、新たな基地を建設する内容について全く説明せず、環境の保全についても、基地建設の完成の年に逆算して自衛隊を使った事前調査を強行したり、専門家が求める必要な調査さえ省略をしているからであります。

 その典型がオスプレーです。オスプレーについて、以前、麻生元外務大臣は、新しいヘリが開発されないなら、オスプレーが完成品になった段階で普天間のヘリと置きかえられる可能性はある、このように答弁をいたしました。高村外務大臣は、沖縄配備の可能性について、一般的にCH46ヘリやCH53ヘリがオスプレーに代替更新されていく予定があることは事実だ、将来、沖縄に配備される可能性がないことはないと言及しております。石破防衛大臣も同じ考えですか。

石破国務大臣 現時点でオスプレーが沖縄に配備されるという情報には接しておりません。私ども承知いたしておりません。しかしながら、麻生元外務大臣あるいは高村現外務大臣がそのように御答弁をされておられますが、可能性を一切否定するということにはならないものと私も考えております。

赤嶺委員 可能性は一切否定することにはならない、まさにだれも否定できないわけですよね。方法書にこれを記載して、そして、配備された場合の環境に与える影響についてきちんと予測し評価すべきではないかと思います。これが環境アセスの役割ではないかと思いますが、いかがですか。

    〔委員長退席、北村(誠)委員長代理着席〕

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 今後、航空機騒音予測コンターを作成することになっておるわけでございますけれども、現在、飛行経路につきましては……。

 失礼いたしました。先般、沖縄県に提出いたしました方法書の追加・修正資料の修正版に記載されておりますように、普天間飛行場代替施設に配備される航空機の種類は、現時点において、基本的には普天間飛行場に配備されている航空機のうち、平成十八年五月一日の米軍再編のためのロードマップにおきまして岩国飛行場を拠点とすることとされておりますKC130以外のものを想定しておりまして、具体的には、回転翼機としてCH53、CH46、UH1及びAH1を、短距離で離発着できる航空機としてC35及びC12を、また他の飛行場から飛来する航空機、例えばC20の使用もあり得ると考えておりますが、オスプレーは想定しておりません。

 オスプレーの沖縄配備につきまして、アメリカ政府に対し外交ルートにより確認しているところでありますが、現時点におきまして、米側から具体的に決まっていないとの説明を得ていることから、現時点では、オスプレーを対象としていないということでございます。

赤嶺委員 オスプレーの配備はだれも否定できない。

 そして、環境アセスというのは日本の政府がやっていることですよね。日本の政府の基地建設事業であるわけです。そして、騒音被害の影響をできるだけ最小限に抑えよう、環境破壊を最小限に抑えよう、そのためにとられる手法が環境アセスですよね。

 ですから、その場合に想定されるオスプレーについて、オスプレーが来たらどんな騒音を出すか、飛行経路はどうなるか、騒音コンターでいくとどうなるか、こういうものについて影響を予測し評価する作業は当然必要じゃないですか、大臣。

地引政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、オスプレーを現在想定していない理由としまして、現在、海兵隊が全世界的に保有しておりますCH46及びCH53ヘリコプターがオスプレーに代替更新されていくという一般的な予定があることは承知しておりますけれども、現時点において外交ルートにより確認している段階では、米側から、具体的に決まっていないという回答を得ておりますので、対象とさせていただいていないというところでございます。

赤嶺委員 ロードマップがつくられて以来、もう何年もたっています。オスプレーの配備について、いわば外交ルートで何もないということなんですが、環境アセスをこれから実行していく上で、オスプレーについてもちゃんと掲載し、その環境に与える影響を予測しそして評価する作業は必要だと私は思いますが、仮にオスプレーを配備したときに、防衛省は環境アセスをやり直すことになるんですね。

石破国務大臣 先ほど来局長からお答えをしておるとおりでございまして、現時点においてオスプレーが配備されるというような情報を私どもは入手いたしておりません。それは何もオスプレーに限ったことではございませんで、ほかにもいろいろな装備品はあるわけでございますが、現時点において入るということが情報としてないものについてまで環境アセスをやる必要があるかということについては、それはマストだということにはならないのではないかと思っております。

 なお、参議院において、御党の委員であったと思いますが、騒音の大きさについての御質問がございました。これは、何もオスプレーというものについてその配備を念頭に置いて議論しておるわけではございませんが、いろいろな交換情報に基づいて考えます限り、オスプレーの騒音というのは今使われておりますヘリよりは少ないというような情報も私どもは得ておるところでございます。

 今後配備されたときに行うのかということは、現時点において仮定の御質問にはお答えをしがたいところでございます。

赤嶺委員 大臣が騒音は少ないということをおっしゃるんであれば、まさに科学的な環境アセス、この方法書の中で検証していこうではありませんか。検証することは避けて、いや、オスプレーは騒音は少ないと聞いています、こんなのでは説明責任にはならないですよね。やはりオスプレーもちゃんと載せて調査すべきじゃないですか。

石破国務大臣 繰り返しのお答えで恐縮でございますが、今、配備されるという予定がない、私どもがそのような情報を得ていない、米軍からもそのような情報が提供されていない、そういうものについて行うということが果たして適切かといえば、私はそういうやり方が適切だと思いません。ほかにどういうものが配備されるかということまで考えて環境アセスを行うということになりますれば、それは環境アセスというのは際限なく行わねばならないということになります。

 私どもとしては、現時点において知り得る情報の限りにおいて、最大限、誠心誠意、科学的知見に基づき環境アセスを行い、現場の環境に与える負荷をいかにして最小限に抑えるかということを行うのが行政の責任だと認識をいたしておるところでございます。

赤嶺委員 何人も否定できないオスプレー配備について、それをあれこれ言って環境アセスの対象にしない、やはりこれは詭弁だと私は思います。

 もう一つ、県民が詭弁だと感じていることについて御質問申し上げたいと思います。

 それは、政府と名護市と宜野座村は、二〇〇六年四月に、「名護市の要求する辺野古地区、豊原地区及び安部地区の上空の飛行ルートを回避する」「宜野座村の上空の飛行ルートを回避する方向で対応する」という基本合意書を締結しております。

 ところが、今出されている方法書ではどんなことがつけ加えられているかといいますと、「訓練の形態等によっては集落上空を飛行することもあり得るものと考えています。しかし、こうしたケースは、本当に必要性が認められるということにおいて得心しない限り、住宅地上空を飛ぶということはないようにしたいと考えています。いずれにしてもこうしたケースは基本飛行パターンではなく、よって、これらについて具体的に飛行ルートを特定することは困難です。」

 意味の非常に読み取りにくい日本語だなと思いながら読みました。石破大臣も同じような答弁をされていますから、石破大臣が得心することはそのとおりだと思いますが、私たちはとてもじゃないけれども、これは一体何が書いてあるんだ、さっぱりわかりません。

 それで、教えていただきたいんですけれども、本当に必要性が認められると得心する場合というのはどういう場合ですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 「本当に必要性が認められるということにおいて得心しない限り、」というのが方法書に書いてございますけれども、これは、普天間飛行場におきましていかなる訓練の形態があり得るかにつきまして日米間で議論されている、そういうわけではございませんけれども、今後米側と調整していく上で、防衛省として、その必要性についてこれはやむを得ないと納得しない限りと、そういう意味でここに記述してございます。

赤嶺委員 ですから、防衛省が本当に必要性が認められると得心する場合、あなた方が言っているわけですから、どういう場合ですかとあなた方に聞いているわけです。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 ですから、まさにどういった訓練の形態があり得るかということについては今後日米間で議論をされていくわけでございまして、具体的な議論というのがまだ行われていない段階で、あらかじめ、こういうケースであれば必要性が認められるというようなことを申し上げるということはできないというふうに考えております。

赤嶺委員 例えばキャンプ・ハンセンや北部訓練場で、今も普天間のヘリが陸上部隊と一体となった訓練を行っています。こういう訓練を行うために集落上空を飛行するというのは、必要性が認められる場合に該当するんですか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 まさに今先生が御質問の普天間飛行場の関係でどういった訓練の形態があり得るかということについては、これから議論させていただくわけでございますし、また、個別のいろいろな実際の飛行あるいは運用に当たりましては、それぞれ個別の事情がある中でいろいろな状況がございます。例えば天候がどうであったかとか、それぞれの形は同じであってもそれをめぐるいろいろな状況は多々異なり得ると思いますので、一概に、こういった飛行であれば運用上認められるとか認められないとか、そういったことにはならないというふうに考えてございます。

赤嶺委員 私は説明してほしいんですよ。天候だとか個別とかいろいろなことを言いますけれども、今沖縄でやっている訓練についてはどうなのか、何もアメリカに聞かなきゃわからない話じゃないですよ、いろいろな意見が出てきているわけですから。

 例えば、普天間のヘリは普天間市街地上空で旋回飛行訓練を行っています。これは政府も先刻承知であります。宜野湾市から繰り返しいろいろな要望書が上がっています。既に名護市や宜野座村の上空でもヘリの訓練が行われています。こういう訓練というのは、必要性が認められる場合に該当しますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになって恐縮でございますけれども、現在方法書の中で議論しておりますのは、新しいところに新しい施設を設けた場合に、それがどういった飛行ルートになるのかというようなお話でございまして、それを、今までの地元の御意向も踏まえて、いろいろ米側にも確認しながらこういった現状の認識を示しているところでございまして、これからまた新しい場所でどういった飛行形態をとるのかということにつきましては、まさに日米間で協議をして検討をしていく。現在行われているような運用がそのままこの施設に行って同じように行われるということではないというふうに考えております。

赤嶺委員 今、普天間に基地がある状況で、名護や宜野座村の上空で訓練が行われたりする。それが辺野古に来ればもっと頻繁になるだろうというのはだれでも予測がつくことですが、今現在、名護市上空やあるいは宜野座村上空で行われている訓練について、日本政府はアメリカに対して何か注文をつけたりしたことはありますか。

高見澤政府参考人 お答えいたします。

 普天間飛行場の移設ということで日米間で合意をされておりますのは、現在の普天間飛行場の機能というのを、代替施設の基地機能というのを最低限維持するためにどのような施設なりどのような運用が必要かということでやってございますので、そういう文脈で御理解をいただきたいと思います。

赤嶺委員 今、普天間、宜野湾市の市街地上空でやっている旋回飛行訓練、これも最低限維持するためにやっている訓練ですよね。これは限度を超えていると、皆さん、抗議したことはありますか。やめてくれと言ったことはありますか。そして、宜野湾市上空でなくて名護や宜野座でもやっているんですよ。それについて、限度を超えている、最低限にとどめてくれと言ったことはありますか。

地引政府参考人 お答えいたします。

 米側に対しまして提供しております施設・区域の上空また以外におきましても、基本的に米側におかれましては公共の安全を考えながら行動されるという認識でございますので、状況によって、安全性、また騒音等が著しくないように、時々においては私どもから申し入れ等を行っている場合もございます。

赤嶺委員 それは早朝離陸訓練だとかという場合であって、いわば市街地上空旋回訓練や集落上空の訓練について、本当にやったことはありますか。結局、米側が運用上必要だからと言えば、米軍の飛行訓練についてこれまでとめられなかったじゃないですか、大臣。米軍が運用上必要だと言って、とめた事例がありますか。

石破国務大臣 具体的に、これは運用上必要じゃないでしょうということでとめた例があるとは私自身は承知をいたしておりません。

 今回、得心云々かんぬんということでおっしゃっておられる、私自身そういうふうに申し上げておるわけですが、委員がおっしゃいますように、全くすべて運用上なのだということで片づけられるかといえば、それはそうではないであろうということでございます。

 私どもがなぜそれが必要なのか。もちろん、米軍が訓練として行っていることであります、運用として行っていることですから、わかることもわからないこともございましょう、言えることも言えないこともございましょう。ですけれども、それに対して日本として、これはなぜやっているのかということをきちんと確認する、それが得心するということの含意だと私は思っています。

 ですから、アメリカの運用なのだから、私どもとして全く何も言わないということは、それは得心の意味するところではございません。

赤嶺委員 それが、米側から安保条約の目的の達成のために必要な訓練だと言われたらどうしますか。

石破国務大臣 やりとり上、そういうふうなやりとりになるかどうか、それはわかりません。アメリカが、日米安全保障条約の目的達成、つまり日本の平和と独立、また極東の平和と安全に寄与する合衆国の軍隊云々かんぬん、こういうようなお話がそのままストレートに出てくるか、それはわかりません。

 ただ、そういうような非常に抽象的なお話で、それで済むものだというふうには私は思っておりませんで、本当にそれが必要なものなのかどうなのか、これは私どもの主権の範囲において、言うべきことはきちんと言わねばなるまいという意識を私は持っているのでございます。

赤嶺委員 北米局長や地引局長なんか、いつもそういう答弁ですよ。漁民の漁業水域に爆弾を落としてということを、久米島の鳥島の射爆撃場の話をしたら、いや、あそこは、地元は撤去を要求しているけれども、安保条約上必要だからどんな訓練でもさせるんだ、こういう繰り返しなんですよ。

 それで皆さんは、とにかく訓練の形態によっては必要と認めるものは行わせるというわけですから、そういう場合の騒音被害の予測、これはつくって方法書の中で当然示しているんですよね。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、騒音コンターをつくるものは、一般的に飛行場におきまして、騒音によりまして周辺の住民の方々に御迷惑をかけている、そういう観点から、少しでも軽減させるために住宅防音工事とかそういうことを我々はやりまして、その観点から騒音コンターをつくりまして、そういう措置をやっている。

 今回は、普天間の移設事業を行うに当たりまして、新たなヘリコプター飛行場を建設するために、環境評価上、騒音コンターをつくりまして、お示しするという観点でやっているところでございます。

赤嶺委員 大臣、今の答弁の趣旨、御理解できましたか。なかなか理解できないですよね。

 この方法書の中にある騒音コンターは、集落地上空を飛ばないということを前提にしてしかつくられていないんですよ。ところが、皆さんは既に、必要によっては、訓練形態によっては集落地上空を飛ぶこともあるというわけですから、そういう場合はどんな騒音被害が出るか、当然、そういうことについてもきちんと予測し、調査をし、評価をするというのが方法書の目的じゃないですか。それが何で載っていないんですか。

地引政府参考人 今後作成いたします騒音コンターにおきましては、陸上部分を避けるような形の飛行パターンを前提にやるわけでございます。それでできますコンターにつきましては、W値で、いろいろな形で表示させていただきます。それによりまして、陸上部においても、どの程度の数値になるのかというのを予測した上で、ある程度は出せるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。

赤嶺委員 もう絶対に集落地上空を飛ばないということでしかコンターはつくっていないわけです。一方で石破大臣が、いや、訓練形態によっては、それは得心すればやることはあるんだと言うわけですからね。これはどんな場合だろうとみんな考えますよね。そんな場合は、だれだって、被害はどうなるかと考えますでしょう。考えない人はいないですよ。だけれども、それが方法書に載っていないんですよ。大臣、どうですか。

石破国務大臣 それは、決められたルート以外のものを飛ぶということについて、その必要性について、やむを得ないね、納得しない限りということが、必要性が認められるということにおいて得心したということを申し上げておるわけでございます。つまり、極めて例外的に行われるものであって、では、それがどういうふうに飛ぶのかということを、今の時点で、こういうふうに飛ぶかもしれない、ああいうふうに飛ぶかもしれない、そういうものを予測してコンターをつくるということはそもそも無理なことであって、技術的にも行い得ないものでございます。

 私どもは、基本的に、そういう集落の上空を飛ばないという形で設定をしているものであり、さればこそ、V字形というものに変更して、現在、環境アセスを行うということでやっておるわけでございます。基本的に、本当にやむを得ない場合以外にはそういうところを飛ばないということを申し上げておるわけでございます。そのやむを得ない場合というものも、どういうようなルートを飛ぶか全く予測不可能な状況においてルートを想定し、コンターを設定するということは不可能なことではないかと私は思います。

赤嶺委員 本当に納得がいくだとか、訓練形態だとかいろいろ言ってみても、結果としてそれが、何か訓練を限定するものになるであろうというのは、基地のそばで暮らしている沖縄県民はだれも納得しないんですよ。こういうところで何度も答弁しても、絶対にそれは日常化していくだろうと。しかし、コンターをつくるのは不可能だというと、つまり、騒音被害から免れることはできないんじゃないか、あるいはできるとおっしゃる政府の考え方が詭弁だ、こんなので方法書と言えるのかという批判です。

 それから、まだあるんですよ。この事業は、埋立地が飛行場施設で百六十ヘクタールです。作業ヤードが二カ所でおおむね十三ヘクタール。埋め立て材は海砂、沖縄本島周辺から採取、海砂の使用を想定し、工事に伴い発生する切り土も使用するものとするとなっています。その量は、二千百万立方メートルです。うち海砂が一千七百万立方メートルです。

 自然保護団体の調査で、経産省や国土交通省の資料によりますと、日本全国の一年分の海砂の採取量を上回ります。大体一千五百万立方ですから、辺野古で必要なのは一千七百万立方の海砂ですから。これだけでも、自然に与える影響ははかり知れないと私は思います。

 方法書では、どこからどのようにしてその海砂をとってくるのか、環境にどんな影響を与えるのか、これもまた全く掲載されていません。これでどうして環境に与える影響を予測できるんですか。

長岡政府参考人 今御指摘のように、埋立土砂につきまして、全体で二千百万立米のうち、いろいろ調達してまいるのは千七百万立米、引き算でそうなるわけでございますが、これは必ずしも海砂ということではなくて、海砂もございますけれども、しゅんせつ土を含む建設残土とか、県外からの調達、これらを含めまして千七百万立米ぐらいになろうかと存じますけれども、そこのところはすべて海砂ということではありませんで、その辺の細部につきましては、今後、先生おっしゃいますように、環境等に悪い影響を与えないように極力検討してまいりたいと思っておるところでございます。

赤嶺委員 大臣、これはごまかしの答弁なんですよ。必ずしも海砂ばかりじゃないというのは、確かに、辺野古のダムのところからも埋立土砂を採取するとか、あるいは基地の中の高低差がある部分をやるとか、あるいはどこかの建設土砂を持ってくるとかというのはありますが、中心は海砂と書いてあるんですよ、方法書の中に。しかも、その海砂は沖縄本島周辺から採取すると書いてあるんですよ。

 日本全国の一年分の使用量に匹敵する海砂を沖縄本島周辺からとってみたら、これはどうなりますか。どうなるかということについて予測がつかない、その予測さえしていないんですよ。本当にこれで環境に影響を与えないで海砂の採取ということができるんですか。

長岡政府参考人 先ほどの答弁をちょっと補足させていただきます。

 県外からの調達等も当然あるわけでございますし、それから、海砂の採取につきましては、沖縄県の各種の関連法令もございますので、それがすべて海砂ということにはまいらないのではないかと思っております。

 いずれにいたしましても、そういった関係法令等に従いまして、環境に悪影響を与えないように注意深くやっていきたいと思っております。

赤嶺委員 ですから、そういうような、環境に影響を与えないように十分注意してやっていくというのであれば、どこからとるのかと掲載して、こういうとり方をしたら環境に影響を与えないというようなことを明記すべきじゃないですか。そういうのが環境アセスでしょう。その明記もされていない。

 もう一つ言いますけれども、さっき申し上げました、辺野古ダム周辺の七十ヘクタール、ここを削って二百万立方の土砂をとる。ここは非常に自然度が高いところなんですよ。リュウキュウマツがいずれイタジイの森に変わっていくだろう、一番山原らしい風景を保っているところなんですね。こういう場所の自然を破壊してまで、何で埋立土砂をここから確保するんですか。

長岡政府参考人 これは、必要とする土量すべてを購入して海上から運搬するといった場合には、その土砂の調達が土砂供給者の方の事情や海象条件等によっていろいろ左右されるおそれがございますので、我々事業者といたしましても、必要な時期に確実、的確に、安定的に調達するため、事業実施区域の近傍にあって、一般の交通にもできるだけ影響を与えない辺野古ダム周辺の埋立土砂の発生区域から約二百万立米ぐらいを採取させていただきたいと思っておるところでございます。

赤嶺委員 土砂の安定的な調達ができなかったら事業の開始が左右されるおそれがある。つまり、事業を早く進めたいために、こんな環境のいいところの埋立土砂を、環境を破壊してとってくるんですか。まず工事ありきという姿勢じゃないですか。こんなの、環境アセスと言わないですよ、環境破壊アセスですよ。いかがですか、大臣。

石破国務大臣 それはお答えの仕方にもよるのかもしれませんが、私どもとして、まず工事開始ありきだ、早期に完工ありきだということを申し上げているつもりはございません。ただ、そういうものも考慮の要素として入りますが、だからといって、環境を無視していいとか、そういうことには全くならないものでございます。

 局長がお答えをいたしましたように、関係法令等々をきちんと遵守する。関係法令は、それはすべからく、いかにして環境に与える負荷を少なくするか、環境を良好に保つかということでつくられているものでございますから、私どもはそれを遵守しながら、しかしながら、普天間の危険性を一刻も早く除去するために、工事というものを確実に行ってまいりたい。いろいろな条件によって左右されるのではなくて、安定的、確実的に工事が進捗するように配慮をするということは、何ら矛盾するものではございません。

赤嶺委員 関係法令によって業者が海砂をとりに行くというときに、日本全国の一年分の海砂を防衛省が発注すると、どんなことになりますか。とってこい、とってきたら買ってやるというようなことしか書いていないんですよ、これには。

 そして、この方法書、ごらんになってください。「普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価方法書に対する追加・修正資料(修正版)」。何ですか、これ。方法書ではないんですよ、「方法書に対する追加・修正資料(修正版)」。何回も何回も書き改めた。何でか。防衛省の出してきたものは、これでは工事や事業の全体がわからぬ、環境に与える影響の意見を言えと言われても無理だ、書き直せということまで県知事からも言われたわけでしょう。つまり、こんな方法書は欠陥アセスだ、欠陥方法書だということが専門家の意見なんです。

 私は、こういう方法書は撤回してもう一度やり直すべき、その前に辺野古への基地建設をやめるべきということを申し上げて、きょうは地位協定までいけなかったんですが、質問を終わります。

北村(誠)委員長代理 次に、辻元清美さん。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 私は、自衛隊のイラク派遣差しとめ訴訟判決について質問をしたいと思います。

 四月十七日、名古屋高等裁判所民事第三部、青山邦夫裁判長、坪井宣幸裁判官、上杉英司裁判官は、自衛隊のイラク派遣差しとめ等を求めた事件の判決において、航空自衛隊がイラクで現在行っている米兵等の輸送活動は、他国の武力行使と一体化したものであり、イラク特措法二条二項、同三項かつ憲法九条一項に違反するとの判断を下しました。また、それに加えて、判決では、平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であるとして、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではないとし、平和的生存権の具体的権利性を正面から認めたと私は考えております。大臣は、私がこの判断を評価しているということは御理解いただいていると思います。

 大臣、先ほどから、裁判所の傍論だとこれを切り捨てるのはやめた方がいいと思います、日本の防衛大臣として。

 なぜかと申しますと、イラクに派遣する自衛隊、陸上、航空をめぐりまして、この国会の中でも賛否両論、議論がありました。国民の中にも賛否両論、議論がありました。派遣のときは反対の方が多かったこと、御承知のとおりです。その理由は、まさしく今回裁判所が判決の中で書き込んだこの論理とほぼ一致した理由で、イラクに自衛隊を派遣するのはおかしいじゃないかと、国会の中でも議論が二分されたわけです。

 ですから、これは単なる裁判所が傍論として書いたにすぎないじゃなくて、私は、この国会の中の議員諸氏、そして国民の声、半分はこの声があるというように御理解されて、謙虚に受けとめられるべきだと思います。立場が違いますので、では今すぐこれは認めてと、それはおっしゃらないということはよくわかっているわけです。しかし、これは防衛大臣として謙虚に受けとめるべきだと思うんです。

 私が申し上げたいのは、日本の防衛大臣として、大臣、過去に日本は失敗していますね。私は、戦後の防衛をつかさどる方としては謙虚な姿勢が必要だと思います。そのときには、間違ったら間違ったと認める、間違ったときは引き返すという、これができなかったから、戦前は大きな間違いをして多数の犠牲者を出したんじゃないですか。

 ですから、傍論だと切り捨てるのではなくて、やはり国民の中には同じような声があるということを謙虚に認められて、そして、今後防衛の最高責任者として仕事をしていきたいというような姿勢を示していただきたいと私は思いますが、いかがですか。

    〔北村(誠)委員長代理退席、委員長着席〕

石破国務大臣 私は、切り捨てるというようなつもりはありません。無視をするというつもりも全くありません。

 私自身は、この判決文というものを何度も何度も読み返してみました。ある意味、イラク特措法をつくりますときも、私は、詭弁とかいろいろな御批判をいただきながらも、なぜイラクに特措法が、またイラクにおける活動が憲法九条第一項に反しないかということを御説明してまいりました。今もその立場に変わりはございません。

 したがいまして、この判決、ある意味、私に対して向けられたものであるという認識も私は個人としては持っておるところでございます。したがいまして、私は、何度も読み返してみて、自分の議論が間違っていないかということは常に常に考えながら今日まで来たつもりでございます。

 したがって、謙虚にこれを受けとめるということは、それはあらねばならないことだと思います。しかしながら、この立場に私は全くくみするものではございませんし、この論理には賛同いたしかねるということは申し上げておきます。

辻元委員 三権分立の意味というのは多々あると思いますけれども、お互いの権力の濫用を牽制し合うという意味があると思います。

 ですから、先ほどから他の委員の方から、繰り返し繰り返しなぜこのような議論が起こるのかわからないと、午前中御発言もありました。なぜ繰り返し起こるかといえば、日本は立憲主義に基づいた法治国家だからですよ。そうじゃないですか。ですから、私は、これは健全なあるべき姿だと思いますよ。いかがですか。

石破国務大臣 そういう評価は可能だと思います。私は、これを不健全などと思っているわけではありません。ただ、委員と私は立場は違いますが、どうすれば戦争が起こらないかということについて委員が真摯に考えておられることは、私はよく承知をいたしております。

 私は、戦前の失敗の一つの理由は、やはりきちんとした言論が行われなかったということが大きな理由だと思っております。そして、三権分立の仕組みの中に、あるいは報道の自由、言論の自由の中にあって、いろいろな議論が闘わされる、何を言ってもそれは自由である、それが戦前の失敗を繰り返さない大きなシステムとしての機能を果たすものではないかと私は思っております。そして、為政者が常に謙虚であらねばならない、批判に対して、それを等閑視するようなことがあってはならないということは、そのとおりだと思います。

辻元委員 先ほど私、大臣の本音がちらっと出たように思いました。他の委員への答弁なんですね。この判決が特措法の期限が来たときに影響なしとは言えないんだよなという、ちょっと懸念を示したような口調でおっしゃられました。どのような影響がありますか。

石破国務大臣 私は、補給新法のときも、最後は国民の支持だというふうに思ってまいりました。いかに議会で多数を持っておっても、それが多くの国民の支持を得なければそれは政策たり得ないのだというのは、私は今もその思いに変わりはございません。

 そうしますと、私は、国会の答弁だけではなくて、テレビやあるいは街頭や、そういうところでお話をしますときに、こういう高裁判決があるじゃないかということ、これは一つのオーソリティーだと思うのですね、それによって、いろいろと判断を迷っておられる国民の方々に対して、それは間接的に影響を与えることはあるだろうと。

 ですから、そういう意味で、国民世論というものを、私どもとして御理解をいただく上において、この判決が持つ意味というものは、それはあるだろうな、なければおかしいなということです。

辻元委員 今、御発言の中からオーソリティーという言葉が出ました。そのとおりなんですよ。ですから、謙虚に受けとめ、特に行政をつかさどる者は、私は、しっかりとこれを受けとめなければいけないと思いますよ。でも、この間政府の対応を見ていますと、議論すら避けようとするような姿勢をお見受けしますので、しっかりやっていただきたいと思います。

 さてそこで、中身に行きます。

 では、今イラクはどうなっているのか。バグダッド、バグダッド空港はどういう状況にあるのかということを一つ一つ具体的に検証したいと思います。

 先ほどから、この判決を含めまして、こういう意見に対して、大臣は二点反論されていました。バグダッドではなくて、バグダッド空港に限定しているんだと。では、その限定することが果たして正しいのかどうかというのが一点目ですね。二点目は、武力行使を構成する要件として、国または国に準ずる組織についての議論がありました。これも真っ向から反論されていました。

 まず、国または国に準ずる組織について議論したいと思います。

 先ほどから、領土とか国の統治権とか国民ということが確認される場合というような御判断をお示しになっていましたが、私、それはちょっと違うと思いますね。狭いですよ。内閣法制局の解釈、大臣も覚えていらっしゃると思いますよ、この委員会でもやっていますからね。もっと広いんじゃないですか。

 大臣は本当に、領土や国の統治権を持ち、国民がいるということに限定されるとお考えですか。もっと広いんじゃないですか。いかがですか。

石破国務大臣 私は、それに限定されるということを申し上げているのではありません。ただ、いろいろな国際法の教科書等々読んでみても、国とは何ぞやという定義をいたしますときに、この三要素というのを挙げるのが通例であると私は考えております。

辻元委員 秋山内閣法制局長官の御答弁はこうでした。個別具体的な事案に即して、当該行為の主体が一定の政治的な主張を有し、国際的な紛争の当事者たる実力を有する相応の組織や軍事的実力を有する組織体であって、その主体の意思に基づいて破壊活動が行われていると判断されるような場合には、その行為が国に準ずる組織によるものに当たり得るというのが答弁なわけです。わかりますか。

 そうすると、「一定の政治的な主張を有し、」です。大臣は以前こうおっしゃっています。国または国に準ずる組織についての具体例として、フセイン政権の再興を目指して米英軍に抵抗活動を続けるフセイン政権の残党というものがあれば、これに該当することもあるかもしれないという発言もして、かつ、ポル・ポト派のことを例に挙げている答弁もされていますよ。たしかそうだったと思います。

 これらのものは国に準ずる組織とお考えですか。

石破国務大臣 断定的に準ずるとか準じないとか、また、大体準ずるという言葉自体ファジーな表現でございますので、言うことは難しいのだろうと思っています。

 今の秋山さんの答弁、それは前後を全部よく読んでみなければわかりませんが、フセイン政権の残党と申し上げた意味は、フセイン政権の再興というものを目指して統治体制を変革するということ、つまり、そこにおいて統治体制を変えるという意思がなければいけない。そしてまた、そうなった暁には、自分たちはそこにおいて新しい統治体制に帰属するものであるというような、そこはやはり国の三要素というものがすべて入れ込まれているのではないかと私は思いますが。

辻元委員 今、統治体制を転覆させてそれにかわろうと。

 では、お聞きしたいと思います。特に今問題になっておりますバグダッドを中心に、サドルシティーでは激戦が、この間、何回も掃討作戦もあり空爆もあり、相当の武力衝突が起こっています。

 では、お聞きしたいんですが、シーア派のマハディ軍、これは規模はどれぐらいと日本政府は把握されているんでしょうか。

奥田政府参考人 お答えします。

 マハディ軍に限らず、イラクにおける武装勢力の規模について確定的な数字をお答えすることは困難ではありますけれども、あえて申し上げれば、マハディ軍につきましては、二〇〇六年の十二月にアメリカのイラク・スタディー・グループの報告というのが出まして、そこを見ますと、マハディ軍は六万人に上る可能性がある、このように書かれております。

辻元委員 マハディ軍は六万人、シーア派なんですよ。これは、イランの影響を強く受けていると言われています。大臣、あそこにイランと国境線がありますけれども、シーア派はシーア派なんですよ、考え方は。そうなんだよなと今おっしゃいましたけれども。そこに国境線を植民地時代とか引いたわけですよ。ですから、行ったらわかりますよ、パキスタンとアフガニスタンも、同じなんですよ。国境地帯に住んで、そちらの価値観の方が強いわけです。政治的意思も非常に影響を受けているわけです。

 さて、六万人のマハディ軍、これが果たして、先ほど大臣は、私、不見識だと思いましたよ。やくざの抗争とか連続爆破事件を例に出されたでしょう。もしも防衛大臣として、それと今イラクで起こっていることを引き合いに出すことが正当だと思われるんだったら、今すぐ自衛隊を撤収してください。不見識ですよ。

 六万人の実力組織というと、どこの国があるか。兵員の数だけでいえば、カナダが五・二万人です。オーストラリアが五・三万人なんですよ。わかりますか。これでも国に準ずる組織でないとお考えですか。考えるならば、その根拠をお示しください。

石破国務大臣 それが不見識とおしかりをいただけば、それはよく反省をしなければいけませんが、私は、危険であるということと戦闘行為が行われているということは違いますよということを申し上げておるわけでございます。

 また、そこの答弁で申し上げましたが、六万とか三万とか二万とか申しますが、例えば、人口が二万人しかいないちっちゃな国があって、そこにおいてそれは国なのかといえば、それは国でしょう。そこにおいて本当にちっちゃな船が何隻しかなくて戦車が何両しかなくても、それは国際紛争の主体たり得るということだと私は思っております。

 ですから、その数とか実力の多寡において国に準ずるか否かという判断は、私はそれは基準たり得ない。結果としてそうなることはありますが、そのことをもってして国に準ずるという評価をすることはできないと私は思っています。

辻元委員 今私が申し上げたのは、秋山内閣法制局長官のこの御答弁に沿って申し上げているわけです。当事者たり得る実力を有する相応の組織や軍事力を有する組織体だということで、まず数を申し上げました。それだけじゃないとおっしゃいましたね。このマハディ軍は、現在のイラクの大統領以下政府と違う政治的意思を持ち、イランと密接に関係しながら別の政治的主体として活動していると私は理解していますよ。

 ここでもう一つお聞きしたいと思います。

 では、先ほど、ポル・ポト派のことを申し上げましたけれども、ヒズボラとハマスです。これは、先ほど新宿のやくざとおっしゃいましたけれども、そういうような見方ですか。国に準ずる組織じゃないですか、ヒズボラとハマスは、国際的に見て。いかがですか。評価はどうでしょう、大臣として。

石破国務大臣 これは、防衛大臣としてお答えすることが適当ではないと思います。ただ、新宿のやくざという例えが、それは委員のお言葉をかりれば不見識なのかもしれませんが、私は、単なる武力集団、武力集団といいますか暴力集団という評価は、ヒズボラやハマスに対してしているわけではありません。(辻元委員「国に準ずる者かと聞いています」と呼ぶ)国に準ずるという評価は断定的にはできません。

辻元委員 そうすると、私は、明らかにシーア派のマハディ軍、サドルシティーを中心にしながら、これはいろいろなものを調べてみますと、例えば労働力で百五十万人ぐらい動員できるのではないかと言われているわけです。ですから、大臣は謙虚にとおっしゃいました。今のイラクの現状をもっとしっかり見ていただきたいと思います。

 私は、ここは、今大臣は見解が違うとおっしゃいましたけれども、納得していません。はっきりわからないようなことで、なぜ武力行使の一要件として国に準ずる者でないから武力行使とは言えないという論理が展開できるのか、全く今の御答弁では納得できませんよ。

 ちょっと先に進みながら、今の点の反論も後で聞いたらいいですけれども、もう一つ、では、バグダッド空港に限るという論理が成り立つのかということですよ。バグダッド空港については、久間防衛大臣が危険だというような御答弁を多々されています。前の大臣はこういうふうにおっしゃっていますね。クウェートから飛び立ってバグダッド空港でおりる、バグダッド空港から飛び立つときもロケット砲が来る危険性と裏腹にあるとか、バグダッド空港の中にあっても外からロケット砲等が撃たれる、迫撃砲等にねらわれるということもあり、そういう緊張の中で仕事をしていると。同じ認識ですか。

石破国務大臣 反論は後で聞くというお話ですが、今まとめてしますと、私どもは、バグダッドがとかイラクがとかいう評価をしているわけではないのです。バグダッド空港において戦闘が行われているかどうかという評価をしている。求められているのはそういうものです、この法律において。

 バグダッド空港は危険か危険でないかと言われれば、それは久間元大臣がおっしゃったような状況も一時期はあったかもしれません。ただ、今は民航機が就航する、これも定期便として就航しておるような状況でございますから、相当に危険ではなくなっているという評価はでき得ると思います。

 そして、何でおまえはそういう論理を展開するのかというお尋ねですからお答えしますと、まさしく憲法九条第一項というものを遵守するために、国または国準という議論は必要不可欠だからしているのでございます。私たちは、どうも御理解をいただけないのは不徳のいたすところでございますが、いかにして憲法九条一項、国際紛争を解決する手段としては、これを永久に放棄するということを遵守するかということで申し上げておるつもりでございます。

辻元委員 それは机上の空論だと思います。イラクの現状をごらんになったらいかがですか。実際にイランの影響も受けながら、そんな甘い現状じゃないですよ。それは、憲法がある、いたし方がないから、何とか自衛隊を出すために、文言で書いてあるにすぎないですよ。大臣として現状をよくごらんになったらいかがですか。

 今、それで、反論された中に、空港の安全性の問題、町村官房長官も、民間機が飛んでいるとおっしゃいましたね。ベトナム戦争時、サイゴン空港は民間機が飛んでいましたか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の状況につきましては正確に把握することは困難でございますが、ベトナム戦争時、ホーチミン、旧サイゴンでございますが、サイゴンのタンソンニャット空港には民間航空機も乗り入れていたものと承知しております。

 また、一九七五年四月二十七日前後に、このタンソンニャット空港での民間航空機の運航が停止になったとする手記があることも承知しております。その後、五月十五日にこの空港が再開されたということはベトナムの空港当局の資料に書かれております。

辻元委員 私、当時の飛行機の運航の時刻表を調べましたよ。大阪経由東京も飛んでいますよ、サイゴンの空港から、ベトナム戦争時に。

 この法律の所管大臣は官房長官でしょう。実行の主体、運用の責任は防衛大臣ですね。それで、非戦闘地域だという根拠の一番最初に、民間航空機が飛んでいるというようなことを特に町村長官は強調されておっしゃったわけです。所管の大臣が、では、非戦闘地域というのを何で判断しているかということについてその程度の根拠しか今言えないんですか。

 では、お聞きします。今バグダッドの空港が非戦闘地域だと、では空港に限って申し上げましょう、現場ではだれが判断しているのか。司令官なのか。刻々と状況は変わるじゃないですか。だれが判断しているんですか。どれぐらいの頻度でやっているんでしょう。

石破国務大臣 町村長官がおっしゃったのは、それは安全か安全じゃないかという点に力点を置いて言われたのであって、だから非戦闘地域だというようなことで論理を展開されたものではないと私は承知をいたしておるところでございます。

 また、だれが判断するかということ、たしか何年か前もイラク特別委員会で委員と議論をしたような覚えがございますが、それは最終的には政府として判断するものでございます。そこで、そういうような状況が現出をしたとするならば、それは一時中断とか、それで指示を待つということになりますので、判断をするのはあくまで政府でございます。

辻元委員 その判断の基準をお伺いしたいと思います。

 それから今、一時中断とおっしゃいましたので、ではバグダッド空港がどういう状況になれば一時中断なのかということもお聞きしたいと思います。

 これは、イラク特措法では、戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域において実施すると二条三項でなっております。

 大臣、一つ私はお伺いしたいのは、過去に戦闘があった、要するに、航空自衛隊だったら航空自衛隊が行く前に、過去に、一年前、半年前に戦闘があった、しかし今戦闘はない。過去にあった場合は、これはどうなんですか。非戦闘地域ですか、戦闘地域ですか、どちらですか。

石破国務大臣 過去に行われたということは評価の対象とはなりません。

辻元委員 そうですか。

 そうしますと、バグダッド空港でも実際にアメリカは大きな規模の掃討作戦を行っております。それで、飛行機が撃ち落とされたこともあるのは御存じですね。そうしたら、どういう場合実際にバグダッド空港が戦闘地域となるのか、空港に限るとおっしゃっているわけですから。これをお答えできなかったら、非戦闘地域と戦闘地域の区別を大臣みずからされていないということになりますよ。どういう場合ですか。飛行機が撃ち落とされたら戦闘地域ですか、それとも、どういうような状況が来たらでしょうか。

石破国務大臣 総合的に判断すると言うと、いいかげんなことを言うなということでお怒りになると思いますけれども、飛行機が落ちるということはどういうことなのか。それは少なくとも危険という判断にはなりますでしょう。イラク特措法第九条というのは、防衛大臣は派遣される隊員の安全に配慮しなければならない、ちょっと正確な文言は忘れましたが、そこから考えれば、そういう危険な状況になったところで展開を続けるということはどうなのだという判断が一つあります。

 そして、そこにおいてそういう状況が現出したとすれば、やはり一時中断というようなことになって指示を待つということになります。そこにおいて、私どもとしては、一体そこで何が起こっているのか。国または国準は登場していないけれども引いた方が安全性確保に資するという判断もございましょう。あるいは、国または国準がそこにおいて出現をしているということだから、これはイラク特措法の趣旨に反するということで撤収するという判断もございましょう。そこにおいて一つのこういう基準だということを申し上げることはできません。

辻元委員 それではバグダッド空港に限るんですか。

 きょうはお手元に地図をお配りしております。ちょっと見てください。バグダッドの地図を見てください。左の端の方に空港がございます。この滑走路を囲むこの空港のみですか。もう一つ東京の地図も配っております。では、例えば、羽田空港をバグダッド空港と見立てると、品川あたりで大規模な戦闘があったら空港は戦闘地域に含まれないのか。では蒲田だったらどうなのか。それとも空港の敷地中だけという御解釈ですか。いかがですか。

石破国務大臣 それは基本的には空港の敷地の中だけです。しかしながら、そこに何が波及してくるかということはあわせて考えなければいかぬことだと思います。

 つまり、羽田から蒲田とか品川とか、そういうようなところを考えて、そこで戦闘が行われているということになれば、それは少なくとも、行動する期間を通じて行われると認められない地域といいますか、そこで実施される活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる、そこにおいて一種の懸念が生ずるということにはなりますでしょう。そこは総合的に判断をすべきものですが、バグダッド空港と書きましたときに、その周辺地域を含むというような理解は法律上いたしておりません。

辻元委員 もう一度東京の地図を見てください。モノレールなどで行きますと、天王洲アイルとか、モノレールの駅がいろいろありますね。どんどん近づいていきますよ。

 では、羽田空港のすぐ横に天空橋というのがあるんですね。地図を見てください、すぐ横ですよ。そこでもしも大きな戦闘が起こった場合、これでも空港の中は非戦闘地域という、イラク特措法によれば、そういう解釈ですか。

石破国務大臣 天空橋になりますと、これは前の……(辻元委員「横、羽田空港の横ですよ」と呼ぶ)横ですか。天空橋、前の羽田東急ホテルがあったようなところですから、前の羽田ターミナルみたいな、あれはもう空港の敷地内という評価になるのではないでしょうか。

 そこは、ここだからどう、あそこだからどうというようなことを申し上げているわけじゃなくて、私は、バグダッド空港というところを際限なくというか、徐々に徐々に広げていってというようなことは法的評価としては適切ではないということを申し上げているのです。

辻元委員 最後に申し上げますけれども、二〇〇五年にもバグダッド国際空港の西側に隣接した地域で大規模な掃討作戦が行われているわけですよ。今みたいなのは、空港は非戦闘地域だけれどもその横は今はわからないとか、どうなるかわからない、そういう態度だから、要するにこれはイラク特措法に対しても憲法に対しても抵触するんじゃないか。(石破国務大臣「しない、しない、しない」と呼ぶ)しない、しない、しないと大臣はおっしゃっていますけれども、そういうような見方は十分成り立つし、私はその立場に立ちます。

 例えば、こういうことを真剣に議論していても、時の総理大臣の小泉さんが、自衛隊が行っているところが非戦闘地域だとか、行ったことがないから私にわかるわけないでしょうというようなことを総理大臣が発言する、そしてそれを行政が追認していく、そういうような立法府に対する司法からの警告だと私は思いますよ、今回の判決も。そしてそれは国民の声に押された警告だというように受けとめるべきです。

 ですから、この間の、最初に申し上げましたように、間違ったときには間違いを認める、そして引き返すときは引き返すということも含めてこの委員会で引き続き私は議論していきたいと思います。

 大臣、最後にもう一回聞きます。謙虚な防衛大臣でいてくださいね。

石破国務大臣 恐れ入ります。

 また議論はさせていただきたいと思います。そこは……(辻元委員「傍論だという発言はやめてくださいね、これからは」と呼ぶ)はい。ですから、真摯である、謙虚であるということは、本当にそうありたいと思います。少しでもそれに近づくべく努力をしていかねばならないのは当然のことだと思っております。

 ただ、また機会を得て議論をさせていただきたいと思いますが、なぜイラク特措法第二条第三項にこういう書き方がしてあるかということは、まさしく委員おっしゃるような問題意識というものも念頭に置きながらこういう書き方をしておるのだ、私はそのような理解をいたしております。いいかげんな運用というものがあってはいけませんし、本当に自衛官たちの命というものをお預かりする者として、そのようないいかげんな運用というものをすることがあっては防衛大臣は務まらないという認識を持っています。

辻元委員 今後は傍論だということを前面に出した御発言は控えた方がいいと思いますので、心していただきたいと思います。

 以上です。

嘉数委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 石破大臣と辻元委員のやりとりは、テレビを見ている人も非常に勉強になるやりとりであったような感じがしますね。これからもお二人で頑張っていただきたいと思います。

 それで、今、名古屋高裁の判決の話がきょうは多く出ておりますけれども、この名古屋高裁の判決において、田母神空幕長がお話をしたことは、私は非常に重い発言だと思うんですよ。彼は沖縄の司令官もしていましたから、人格的にも自衛官としても非常に立派な人であるということは私も重々存じ上げておりますけれども、なぜ彼がこんな発言をしたのかなというふうに思います。

 隊員のお気持ちをわかるということにはなろうかと思いますけれども、日本には三権分立という話がありますから、自分の思いがあっても、裁判所で裁判官が話されたことに関しては、大臣がコメントをするということは必要なことだと思いますけれども、空幕長が発言をするというのにはやはりいささかの疑問があるというふうに私は思いますね。

 なぜそれを言うかといいますと、きょう、大臣にちょっと聞かせていただきたい、お勉強させていただきたいのは、参事官制度について話をしたい。

 この参事官制度をやっていく場合に、やはりシビリアンという問題も出てくるだろうし、そして、大臣がお考えになっているさまざまな、参事官制度を廃止してやりたいということになってくると、制服組が、今まである意味背広がやってきた地域まで入ってきて、その役割を担うというふうなことも出てくるかなというふうに思うんです。そういう意味では、そういうふうに制服組の仕事が数多くふえてくる、役割が大きくなってくるときに、やはり僕は制服組の謙虚さは必要ではないかなと思うんです。

 一つの例ですけれども、おもしろいんですけれども、陸上自衛隊や海上自衛隊は私どもを式典には招待するんですよ。航空自衛隊だけは招待しないんですよね。自民党のころは招待していましたよ。自民党のちょっと外に出て、そうなると、正式な式典には航空自衛隊だけが私どもを招待しないんですね。自民党の国会議員だけ招待して、招待状が来る。

 この前、私、抗議文を出したんですよ、地連部に。そういうふうなことをやっちゃいけない、税金を使うそういう式典には、ちゃんと自衛隊を考えている人たちをお呼びなさいよというふうなことをやった。

 私は、そういう意味でも、こういうふうに参事官制度が変わって制服組の役割が大きくなってきたときに、政治の色分けまで彼らがやるようになったら、こういう制度は国民の理解を得られない。そういうふうなこともしっかりと認識をしながら参事官制度の論議をしていかなければいけないのではないかな、そのことは一つ申し上げておきたいと思います。それについて大臣のお考えを聞かせてください。

石破国務大臣 沖縄の先生は、委員長あるいは仲村先生、安次富先生初め大勢いらっしゃいます。私どもとして、自由民主党だけお呼びをしているというようなことは認識しておりません。今初めて承りました。また、それが空だけにおいてそうだということも初めて承りました。

 私は、委員御指摘のように、そういうことがあっていいとは思っておりません。防衛政策というものに御理解をいただき、自衛隊というものを御支援いただく、そういうような先生方に対しましてお招きをするということは当然のことでありますし、それは礼儀としても、また私どもに対する御指導をいただくという意味でも当然のことでございます。早急に調べまして、そういうことのないように、仮にありとせば、そういうことがないようにいたします。

下地委員 実際、私がその立場にいますから、ありました。だから、この式典というのは、自衛隊を応援する人も必要ですけれども、自衛隊を理解していない人を理解させるためにも必要であるというふうに私たちも思っていますから、ぜひそのことは防衛大臣が直すことが必要かなというふうに私は思います。

 それで、参事官制度について御質問させていただきたいんです。

 この今の参事官制度を廃止して新たな制度をやりたいというふうなことを今いろいろな会議の中でやっていますけれども、一点目に、今、防衛省の改革会議というのが内閣でもありますし、防衛省の中にも事件、事故の再発防止及び発生後の対応について抜本的な対策会議を行うというのもありますし、自民党の中にも小委員会というのがありますし、今私が見ているだけで五つか六つの会議があるのかなと。防衛省改革推進チームだとか、総合取得改革推進プロジェクトチームだとか、海上自衛隊抜本的改革委員会とか幾つかあります。

 これは、防衛庁が省になって、いろいろなさまざまな不祥事がありましたけれども、これから新たな対応をしていく、防衛省としての役割を担おうという意味での改革だと思うんですけれども、これはどこが中心になって最終的に法案をまとめていくのか。

 一つ言えば、きのう出ました自民党の小委員会のチームがつくったものを見ると、内閣で行われている防衛省改革会議に私たちは提案をして政策に反映をしていきたいときょうの新聞に書いてありましたけれども、私は、自民党の改革チームのものは、まず防衛省にこれを提案して、防衛省がおつくりになって内閣に上げて、内閣で論議して最後に決めるというふうな、こういう手段になっていくのではないかなというふうに思っております。

 この六つのあり方なんかをどういうふうにして最終的にまとめておやりになろうとしているのか、そのことをぜひお聞かせいただきたいと思います。

石破国務大臣 自民党がきのうまとめられました案がどこに提出をされるか、本当は浜田小委員長がいらっしゃれば浜田小委員長がお答えになるのが一番よろしいのでしょうが、それは自民党のお考えでございますので、私がとやかく申し上げることではございません。ただ、私も、浜田小委員長なり、あるいは中心的役割を務められました今津筆頭なり、そういう方々からその意味をよくお教えいただいて、今後の糧にしたいと思っております。

 どこが中心的にやるのだというお話ですが、私は、法案作成というレベルになれば、それは防衛省なのだと思います。独立省たる防衛省なのだというふうに考えております。

 ただ、今、防衛省の中で、委員おっしゃいましたプロジェクトチームというのがいろいろな議論をいたしております。複数案になるのか単数案になるのかはわかりませんが、官邸において設けられております有識者の方々によります懇談会の方にそれをお示しして、またそこから御指導をいただいてという形で、そこで何度かやりとりがあるのではないかというふうに、今のところ推測をいたしております。

 いずれにいたしましても、省改革は当然設置法の改正を伴うものでございます。参事官制度もそうでございます。そうしますと、それは独立省たる防衛省として改正案をお示しするということになろうかと考えております。

下地委員 そういう意味の議院内閣制でありますから、そして私は、今、防衛省の中でさまざまな論議をみずからが行って、内閣に上げていって、最後に有識者の中で判断をいただきながら変えていくというのが必要だと思うのです。

 内閣の中で決めて、それを防衛省にどんとおろすというやり方じゃなくて、防衛省から、しっかりとみずからが反省して、みずからが政策をつくって、それを内閣に上げて、有識者で論議をして決定するというふうなやり方が、これから長くこの改革を実行していくのは防衛省でありますから、その人たちがみずからつくって上に上げていくというやり方がいいのかなというふうに思っています。

 その中で、この参事官制度がなぜだめだったのか、そして、参事官制度が全く機能を持たないためにどんなトラブルがあったのか、そのことをまずちょっと大臣からお聞きします。

石破国務大臣 防衛参事官制度というのは、同じ参事官制度でも他省庁の参事官とは全く違うということは委員よく御案内のとおりでございます。

 つまり、防衛庁長官というものは、何だかんだ言っても素人なのである、オタクだろうとマニアだろうと、とにかく素人なのである、実際に戦車を操縦したこともなければ、戦闘機を操縦したこともなければ、護衛艦を操艦したこともないという話であって、しかしながら、選挙によって選ばれておるというその一点においてのみ文民たり得るのだということが前提としてあって、しかるにこの素人がこの膨大な防衛庁・自衛隊というものを統括できるかといえば、それは能力的にもなかなか難しいのではないですかと。

 それは責任とりますといったって、結果が惨たんたるものになってから責任とられてもたまらぬわけで、そうすると、そういうような素人たる防衛庁長官をいかにして補佐するかということで、そういう参事官というものを設けて、ある意味補佐官的に、素人たる大臣をサポートすることが必要ではないかということがそもそもの話の始まりであったというふうに私は承知をいたしております。

 ところが、設置法におきまして、官房長その他の局長は参事官をもってこれを充てるというふうに書いちゃったものですから、それはビューロクラッツが行うのだ、官僚が行うのだという話になってしまいました。官僚が行うのであって制服が行うのではないということは、それはいかがなものですかねということが一つございましょう。

 もう一つは、所掌にとらわれず、広く防衛大臣、防衛庁長官を補佐するということですが、官房長、そのほか局長、参事官もおりますが、防衛政策局長はまさしく防衛政策局長として大臣を補佐する、運用企画局長は運用企画局長として、官房長は官房長として、それぞれ補佐しているのであって、では、広く全般にわたってやっているかといえばそれは違う、私はそう思います。

 防衛庁長官を二年やって、今大臣を半年やっていますが、それは、あなたは防衛政策局長として、運用企画局長として一生懸命補佐はしてくれている、だけれども、違う局のことについて本当に補佐をしているかといえば、それは越権とか、それはあなたの所掌じゃないでしょうみたいなことになって難しいし、大体、時間的にもそんなことはできないだろうと思いますね。自分の局のことで補佐するので精いっぱいなんだと思います。

 そうしますと、素人たる防衛大臣が、素人だから悪いと言っているわけじゃなくて、それは国民に責任を負い得るという意味において価値があるのだが、それの補佐体制として今の体制が本当にいいですかということ、私は、何が支障があったということを申し上げるつもりはありません。しかしながら、本来制度が企図したものと違うことになっているのではないかという問題意識は強く持ちます。

下地委員 素人の私が見ても、局長や官房長に参事官の仕事をやらせて、別の官房長の仕事もやれば参事官の仕事もやるというのは、これは能力的にも不可能だというふうに思いますね。そういうふうな意味では、この改革をしていくことは非常に大事だというふうに思っています。

 きのうの自民党の小委員会の案、これを見ますと、新聞記事ですよ、石破防衛相が提案する背広、制服組の混合を一部取り入れたが、統幕、陸海空の各幕僚監部と内局の全面再編案などは慎重論が出て盛り込まれなかったと、新聞の評価ですけれども、こういうふうに書いてあります。

 きのうの自民党の小委員会が出した今の防衛省改革案について、大臣は、みずからの考え方と少し違う部分がありますけれども、どういうふうに評価しているのか、そのことを少しお伺いします。

石破国務大臣 これは、まだつまびらかに説明を承っておりません。ただ、本当に私が心から信頼し、長い間一緒に仕事をやってきた同志の方々が中心となってつくられたものでございますから、目指す方向性は全く一致しているというふうに認識をいたしております。それは、小委員長ともあるいは委員の先生方とも私は日常いつも意見交換はしておりますし、長い間一緒に仕事をやってまいりました。根本的な方向が違っているわけではない、これは確信を持って言えることでございます。

 では、その方法論としてどうなのかということを考えた場合に、論点は幾つかありますが、一つは、UとC、Cというよりも、ビューロクラッツですから、別のアルファベットを当てはめた方がいいのかもしれませんが、要は、制服組と背広組との関係をどうするかということと、幕僚というからには、これは幕僚です、スタッフです。ラインというものは別個にあるべきなのか、それとも、ラインとスタッフを兼ねるという形がいいのかどうなのか、私はそこの問題なんだろうというふうに考えております。

 それは、国家行政組織法上整理をいたしましたときに、省には局を置くというふうになっていて、特別な必要がある場合には機関を置くことができる、こういう形になっておりますが、そのスタッフ部分をすべてUC統合でやるべきか、背広、制服混合でやるべきか、それとも、幕僚監部という、今まで制服が担ってきましたものはそのままセパレートしておくべきなのかということは、一長一短がございます。

 それぞれアクセントのつけ方で一長一短がございますので、それの長所、短所というものを全部洗い出してみて、文民統制というのは、アカウンタビリティーとエフェクティブネス、この二つの観点から論ぜられるべきものでありまして、それぞれの一長一短というものをよく議論する必要があるのではないかというふうに考えております。

 自民党の案というのは、それなりによくお考えになった、同時に、いろいろな可能性というものを余地としてお含みおきになった案ではないかなというふうに一読して私は感じておるところでございます。

下地委員 今、大臣は、自民党案と私の考えは方向性は一緒だというふうにお話しになりましたけれども、方向性は、一見してみると一緒のような感じがしますよ。

 ただ、運用企画局が廃止されて、統合幕僚監部が一緒になってさまざまな運用面をやるというふうなことの考え方というのと、大臣が考えている防衛力整備と運用と、国民、国会への説明、要は三つの機能に分けたものとでは、私は、方向性が一緒だといっても、根本のところは大きく違ってきている。

 それがなぜかというと、秘書官も防衛省からお出しになって、統合司令部をつくったりとかといういろいろなことが考えられるわけですけれども、私は、こういうふうに制服組が、ある意味、役割を担うようになってくればなるだけ、シビリアンコントロールという役割を、もう一個のところでは、先ほど渡辺先生がおっしゃったけれども、国会で持つべき姿が非常に出てくるのではないかなというふうに思うんですよね。

 だから、それを両方一緒に提案をするような形というのはないだろうか。アメリカなんかではよく公聴会なんかで、軍人だとかなんとかというのが……(発言する者あり)書いてあるんですか、ちょっと勉強不足でしたけれどもね。そういうふうな者が国会に出てきてやるという仕組みもぜひ提案の中には入れてやらなければいけない。

 だから、ある意味、国会の仕組みもつくるというところまで防衛省の中から提案が出てきてもいいのではないか。先ほどは、これはもう国会が決めるお仕事ですからというふうなことを言っておりますけれども、やはりシビリアンというのを、今のような形じゃない場合には、国会というのに役割を担わすというふうなことをお考えになったらどうかなというふうに思うんですけれども、見識だけ少しお伺いします。

石破国務大臣 それは、私もそうだと思いますよ。

 自民党の案には、今委員がおっしゃったことはもう書かれております。ただ、我々行政府の立場として、立法府に対してそこまで物を申し上げるのは僣越ではないかというふうに考えておるところでございますが、当然、文民統制の主体というのは、第一義的には内閣総理大臣であり防衛大臣でございますけれども、国会というのも文民統制の主体として大きな役割を果たしていただくものでございます。

 そこにおいて私は御議論いただきたいと思っておりますのは、一つは、制服を出すか出さないかというお話。ここにおいては、それが政治利用、逆に、制服の側が政治を利用する、昔、もう黙れとか言った制服が戦前はおったように覚えておりますが、そういうようなやり方だけではなくて、政治の側が制服を利用してというようなことがないように、どういう形で制服の立場というものをきちんとキープするかという問題が一つある。

 もう一つは、これは制服の出席とは直接関係ございませんが、前回の補給新法のときも議論になりかけましたけれども、保秘体制というものをどうするのかということでございます。

 これは議院運営委員会でお話しいただく事柄と思いますが、それは、軍事機密に属することで言えないことはある、当然ございます。しかしながら、秘密会というものが憲法において規定がございますけれども、実際にどのように運用するかということについてきちんとしたルールが確立をされているというのは、私は議員を二十二年やっておりますが、余り記憶にございません。

 その文民統制というものをきちんとした形にするためには幾つかの御議論というのが必要だというふうに思っておりまして、それに対して行政からあれこれ申し上げることは越権ではないかと思っておるところでございます。

下地委員 この防衛省の改革に関しては、不祥事が起こったから改革をするというレベルの話ではなくて、防衛庁が省になったから、今後の防衛省のあり方はどうなるのかという論議をしていきながら不祥事も減らしていくという概念になっていかなきゃいけないというふうに思っていますから、できるだけ慎重に、そしてよく話をして国民にも理解を深めてやる、後期高齢者みたいにならないようにやっていかなければいけないなと思っていますから、そのことを、十分なる国民論議へ持っていくような論議のあり方にしていただきたいなというふうに思います。

 それで、最後になりますが、一点ですけれども、この前台湾に行ってまいりまして、江丙坤さんという今度海峡委員会の委員長になられた方とお会いをしたんです。

 お会いをさせていただいたら、こういうふうに言うんですね。直接貿易やりますよ、そして直行便も飛ばしますよ、一日一万人近くの観光客を入れますよ、中国の投資も受け入れます、そして中国からの労働者に関しても、枠をつくりますけれども受け入れることになるでしょう、そして和平条約を結ぶことも検討していますというようなことを明確におっしゃっていまして、私もびっくりしましたけれども、中国と台湾との関係が、経済の論理ではありますけれども、物すごく近くなるというふうなことを江丙坤さんは見識を示しておりました。

 私たちは、安全保障を考えるときに、外交に基づいて安全保障の論理を展開しなければいけないと思うんですけれども、その外交の中でも経済においては、もう中国と台湾は物すごく近い関係になるというふうなことが彼の言葉からして聞こえてくるわけです。私たちは、日本のシーレーンの防衛とかさまざまなことが、台湾の海峡を通りながら日本の経済の安定というのをつくっている。私の選挙区など、沖縄県は台湾に近い関係にもある。

 こういうふうに、中国と台湾がこれだけ近い関係になってくると、今までの台湾に対する考え方、そして尖閣を含めた今までの安全保障論議というのも、ある意味、根本からまた考え直さなければいけない時期が来るのではないかというふうに思っているんですよね。

 そういう意味でも、まだまだその姿が見えてきませんけれども、ただ、馬英九さんの選対本部長をなされて、馬英九さんの意をもって中国の窓口の代表になった人が、これだけ中国との関係を近いものにしていくというふうなことをおっしゃっていることで、私たちもそろそろ、この関係が緊密になればなるほど、私たちの安全保障や外交はどうすべきかという勉強をしていかなければいけないんじゃないかなというふうに思います。今のままでいいというふうにはならないのではないかと私は思いますね。

 そういう意味でも、こういう関係が強化していくことで我が国の外交や防衛はどういうふうに変わっていくのだろうか、そういうふうなお考えを大臣はどう思っているのか、ぜひ聞かせていただきたいなというふうに思います。

石破国務大臣 私も政府の役職にないときは努めて台湾に行っておりました。十数回今まで訪問をし、大統領、総統というのですか、あるいは軍の関係の方、あるいは外交の関係の方と随分長い時間いろいろな議論をしてまいりました。

 私は、中国と台湾がどんどん関係が改善をされていく、経済においてどんどん交流が深まっていくというのは、実はとてもいいことなのだと思っております。台湾なくして中国は成り立たないし、中国なくして台湾は成り立たないのであって、やはり経済の関係がどんどん緊密になってくれば、それは戦なんか起こしたってどっちも損するだけの話でございますから、そういう意味で、信頼関係が醸成されていくということは、私は評価すべきだなというふうに思っております。

 他方、安全保障政策がどのように変わっていくかということは、それは、意図を見抜くことは極めて困難でございます。台湾において民主主義というものが相当定着をしておるとは考えておりますけれども、台湾においてどんな議論がなされていくのかということ、そして、中国の一党独裁体制のもとにおいてどういうような国防政策が出されていくかということについては、よく認識を持たねばならないことは一つあります。

 もう一つは、中国にせよ台湾にせよ、どのようなものをどれだけどこに置いているかということ、それをどのように運用しようとしているかということ、そして、中国の場合には十四の国・地域と国境を接しておりますから、それぞれとの関係がどうなっていくのかということは正確に頭に入れておかないと、私は、日本の外交政策、安全保障政策を語ることはできないと思っております。

 また、台湾におきましても、例えば飛行機でもミラージュ、経国、F16と持っておるわけでございますが、それがどのように運用をされていくのか等々、台湾についても可能な限りの知識を持つことが必要だと思います。

 知識を持たないことが平和をもたらすのではなくて、きちんとした知識を持つことが平和をもたらすのだというふうに考えておりまして、委員の御指摘のように、ちゃんとした認識を、今回の馬英九総統就任ということに合わせて、私どもは新しい認識を常に持っておかねばならないというふうに考えております。

下地委員 変化が起こっているときが大事なので、いつでも変化に備えて勉強しておくということが大事かなというふうに思います。どうもありがとうございました。

嘉数委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十四分散会


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